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コショウ属の多様性と進化-化学成分に着目して-
4、化学成分分析:摂南大学薬学部と岐阜県保健環境研究所において、中国云南省南部産のPiper flaviflorumとアマゾン川流域産のPiper carosumの抽出・分析を開始している。小笠原に固有のタイヨウフウトウカズラについては予備的な実験に続いて、成分の構造解析を行っている。1.資料収集:2004年9月に鹿児島県熊毛郡中種子町の杉林に自生する非常に茎の太いフウトウカズラPiperkadzuraを地下部から採集し、果実部、その他の地上部(葉、茎)、地下部に分けて持ち帰り、化学成分研究用資料とした。また同時に、DNA抽出用サンプルも採集した。また厚生労働省国立医薬品食品衛生研究所種子島薬用植物栽培試験場にて栽培されているコショウ科植物を栽培用、DNA抽出用に分譲して頂いた。研究分担者の邑田仁がベトナムから収集してきたコショウ属植物の種子を播種し3種類が発芽してきた。またその際にコショウ属植物7種類を挿し木用に採取してきたものを摂南大学薬学部附属薬用植物園温室で挿し木したところ、これらも活着しつつある。これらについてはDNA抽出用サンプルも同時に入手している。同時にコショウ科のZippelia begoniaefoliaを採集することが出来たので、系統解析の資料とする予定である。またミャンマーからも2種類のコショウ属植物を採集して来たので栽培を開始している。ミャンマーからは化学成分研究用の資料も採集することができた。2.系統解析:現在までに入手した資料からDNAの抽出、塩基配列の解析を開始している。3.化学成分分析:摂南大学薬学部と岐阜県保健環境研究所において、中国雲南省南部産のPiper flaviflorum,タイヨウフウトウカズラP.postersianumについて化学成分の分離、構造解析を開始した。Piper flaviflorumからは8種類(6種類の酸アミド、2種類のリグナン)、タイヨウフウトウダズラからは5種類(フェニルプロパノイド)の成分を単離し、各成分について主にNMRを用いて構造解析を行っている。この結果の一部は第125年会日本薬学会において発表する。また種子島で大量に採集してきたフウトウカズラについては成分の抽出、分析を開始している。1.標本調査、資料収集と同定:平成17年7月24日から8月3日まで、邑田裕子と稲冨由香はドイツのミュンヘン植物園、ボン大学附属植物園、ドレスデン工科大学附属植物園にてコショウ属を中心としたコショウ科の標本調査、生植物の調査を行い、資料の分譲を受けた。また、研究分担者の邑田仁が海外から収集したコショウ属植物、京都府立植物園から分譲されたコショウ属植物もあわせて、系統解析と化学成分検索に用いた。2.系統解析:現在までに入手した資料からDNAを抽出し、核DNAのITS領域の変異に基づく分子系統解析を行った。得られた系統樹では、カワPiper methysticumとタイヨウフウトウカズラP.postelsianumはニュージーランド原産のMacropiper exelsumとともに、他のコショウ属と姉妹群となる単系統群(Macropiper群)として分離した。
KAKENHI-PROJECT-15570088
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15570088
ナノ狭窄電子系におけるスピンダイナミックスとマイクロ波発信に関する研究
本研究の目的は,積層磁性膜素子中に複数のナノメーターオーダーの導電チャネルを有する極薄の酸化物絶縁体層(NOL : Nano-Oxide-Layer)を挿入し,電流狭窄や狭窄磁壁などの狭窄効果を用いることにより,高出力でかつ周波数の調律が可能な低消費電力型の新規なマイクロ波発信デバイスの開発を行うことにある.平成21年度は強磁性接点磁気抵抗(NCMR)素子のマイクロ波発振特性を測定し、そのスピンダイナミクスの解明を試みた。ここで、NCMR素子とは、強磁性接点を有するNOLが挿入されたスピンバルブ素子であり、2つの強磁性層の磁化を反平行にすることでナノ接点中に磁壁が狭窄され、磁気抵抗が発現することが示唆されている。マイクロ波発振特性の面内印加磁場角度依存性を調べた結果、強磁性層磁化の相対角度が140度近傍でのみ強くシャープな発振が観測された。この結果は、強磁性ナノ接点に狭窄された磁壁の運動をNeel磁壁とBloch磁壁間の状態変化の時間展開から理論的に予測したシミュレーション結果と定性的に一致しており、強磁性ナノ接点中の狭窄磁壁の存在を示唆するものである。さらに、発振周波数が強磁性層の強磁性共鳴周波数に一致していること、及び不均一系において最小8MHzの低線幅の発振ピークが観測されていたことから、スピン波伝搬を考慮した、発振源を狭窄磁壁とするNCMR素子特有の発振機構モデルを構築した。また、インピーダンスマッチングの改善、磁気抵抗変化率の向上、及び素子の直並列接続によるマイクロ波電流励起型位相同期により、現状0.1nW程度である出力が3μWにまで上昇させることが可能であることを見出し、NCMR素子が超小型マイクロ波発振器として実用検討が可能であることを示した。磁性積層膜中にNOL(Nano-Oxide-Layer)を挿入した積層薄膜素子の作製を行った。この磁性積層膜において、NOLは二つの強磁性層の間に挿入されることにより、酸化物絶縁層中に強磁性のナノコンタクトを形成し、強磁性層の磁化状態を反平行にすることでナノコンタクト中に磁壁が狭窄され、磁気抵抗効果を発言することが示唆されている。この素子のことをナノ狭窄磁壁型素子と呼ぶ。また、ナノ狭窄磁壁型素子のLCR発振特性を、直流電流バイアス及び直流磁場下において測定した。この結果、狭窄磁壁に起因すると考えられるマイクロ波の発振が観測された。積層薄膜の磁化状態とマイクロ波発振特性を比較することで、ナノコンタクト中の磁壁の状態によりマイクロ波の出力・周波数が変化することが示唆された。この結果を元に、ナノ狭窄磁壁素子におけるマイクロ波発振機構のモデルを立てた。また、そのマイクロ波出力はMgO障壁層を用いたトンネル磁気抵抗素子と同等のものが得られた(20nVHz^<-1/2>、10pW)。これは複数の発振モードの位相が同期した結果得られたものであると考えられる。トンネル磁気抵抗素子は50100%の高いMR変化率を示すのに対し、ナノ狭窄磁壁型素子のMRは現状510%という低い値である。磁性積層薄膜素子におけるマイクロ波発振はMR変化率の2乗に比例することから、MR変化率を100%にまで上昇させることにより、ナノ狭窄磁壁型素子のマイクロ波出力を更に上昇させることが可能であることを見出した。本研究の目的は,積層磁性膜素子中に複数のナノメーターオーダーの導電チャネルを有する極薄の絶縁体層(NOL:Nano-Oxide-Layer)を挿入し,電流狭窄や狭窄磁壁などの狭窄効果を用いることにより,高出力でかつ周波数の調律が可能な低消費電力型の新規なマイクロ波発信デバイスの開発を行うことにある.2008年度は強磁性ナノコンタクト磁気抵抗(NCMR)素子のマイクロ波発振特性を、直流電流バイアス及び直流磁場下において測定した。ここで、NCMR素子とは、強磁性ナノコンタクトを有するNOLが挿入されたスピンバルブ素子であり、2つの強磁性層の磁化を反平行にすることでナノコンタクト中に磁壁が狭窄され、磁気抵抗が発現することが示唆されている。このNCMR素子のマイクロ波発振特性と、抵抗-磁場曲線から推察される素子の磁化状態を比較することにより、NCMR素子においては2つの強磁性層の磁化が磁場及び電流により不安定になる際に発振が起こることが示唆され、概ね4つの発振モードが存在するという知見が得られた。また、NCMR素子において最大0.2nWのマイクロ波出力が得られた。この出力はマイクロ波発振器としての実用が可能な1μWには到達していない。しかしながら、NCMR素子のMR変化率は現状510%と低い値であり、マイクロ波発振出力はMR変化率の2乗に比例することが理論提唱されていることから、MR変化率を向上させれば実用可能な出力に近づくことが可能であると考えられる。本研究の目的は,積層磁性膜素子中に複数のナノメーターオーダーの導電チャネルを有する極薄の酸化物絶縁体層(NOL : Nano-Oxide-Layer)を挿入し,電流狭窄や狭窄磁壁などの狭窄効果を用いることにより,高出力でかつ周波数の調律が可能な低消費電力型の新規なマイクロ波発信デバイスの開発を行うことにある.
KAKENHI-PROJECT-07J05710
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07J05710
ナノ狭窄電子系におけるスピンダイナミックスとマイクロ波発信に関する研究
平成21年度は強磁性接点磁気抵抗(NCMR)素子のマイクロ波発振特性を測定し、そのスピンダイナミクスの解明を試みた。ここで、NCMR素子とは、強磁性接点を有するNOLが挿入されたスピンバルブ素子であり、2つの強磁性層の磁化を反平行にすることでナノ接点中に磁壁が狭窄され、磁気抵抗が発現することが示唆されている。マイクロ波発振特性の面内印加磁場角度依存性を調べた結果、強磁性層磁化の相対角度が140度近傍でのみ強くシャープな発振が観測された。この結果は、強磁性ナノ接点に狭窄された磁壁の運動をNeel磁壁とBloch磁壁間の状態変化の時間展開から理論的に予測したシミュレーション結果と定性的に一致しており、強磁性ナノ接点中の狭窄磁壁の存在を示唆するものである。さらに、発振周波数が強磁性層の強磁性共鳴周波数に一致していること、及び不均一系において最小8MHzの低線幅の発振ピークが観測されていたことから、スピン波伝搬を考慮した、発振源を狭窄磁壁とするNCMR素子特有の発振機構モデルを構築した。また、インピーダンスマッチングの改善、磁気抵抗変化率の向上、及び素子の直並列接続によるマイクロ波電流励起型位相同期により、現状0.1nW程度である出力が3μWにまで上昇させることが可能であることを見出し、NCMR素子が超小型マイクロ波発振器として実用検討が可能であることを示した。
KAKENHI-PROJECT-07J05710
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07J05710
咬合障害の形態的因子がラットの前頭皮質ドーパミン及びグルタメート分泌に及ぼす影響
実験的に咬合障害を付与されたラットは咬合異常のモデルとして多用されている.本研究では咬合障害の高さが心理ストレスとして生体に及ぼす影響を明らかにするために,心理ストレスにより代謝が亢進することが明らかにされている前頭皮質ドーパミン放出を高さの異なる咬合障害を与えたラットを用いて計測した.前頭皮質中のDA放出の測定は,脳内微小透析法を用いて行った.咬合障害は長さ2mm,幅1mmの厚さの異なる3種類(0.5mm,1.0mm,2.0mm)のアルミ板とした.実験群は咬合障害を付与しない対照群と,咬合障害の高さの違いによる3群の合計4群とした.実験1は咬合障害付与より6時間のDA放出量を測定した.実験2は咬合障害を付与されたラットのドーパミン放出量を180分間測定した後に20分間摂食させ,その後のドーパミン放出量を180分間測定した.実験1の結果,咬合障害の高さ及び交互作用に有意差は認められなかった.咬合障害の高さは合着後360分間においてDA放出に影響を与えなかった.本実験結果より咬合障害を付与しただけではラットのドーパミン放出量の変化は生じないことが明らかにされた.実験2の結果,0.5mm群は対照群に比べて摂食後ドーパミン放出量の有意な増加を認め,実験群と経過時間に交互作用を認めた.本実験結果より,0.5mmの高さの咬合障害がラットのドーパミン放出量に最も強い影響を与えることが明らかにされた.本実験結果は高い咬合障害(1.0mm、2.0mm)を与えるよりも低い咬合障害(0.5mm)を与えた方が心理的ストレッサーとして生体に強い影響を及ぼすことを示す.実験的に咬合障害を付与されたラットは咬合異常のモデルとして多用されている.本研究では咬合障害の高さが心理ストレスとして生体に及ぼす影響を明らかにするために,心理ストレスにより代謝が亢進することが明らかにされている前頭皮質ドーパミン放出を高さの異なる咬合障害を与えたラットを用いて計測した.前頭皮質中のDA放出の測定は,脳内微小透析法を用いて行った.咬合障害は長さ2mm,幅1mmの厚さの異なる3種類(0.5mm,1.0mm,2.0mm)のアルミ板とした.実験群は咬合障害を付与しない対照群と,咬合障害の高さの違いによる3群の合計4群とした.実験1は咬合障害付与より6時間のDA放出量を測定した.実験2は咬合障害を付与されたラットのドーパミン放出量を180分間測定した後に20分間摂食させ,その後のドーパミン放出量を180分間測定した.実験1の結果,咬合障害の高さ及び交互作用に有意差は認められなかった.咬合障害の高さは合着後360分間においてDA放出に影響を与えなかった.本実験結果より咬合障害を付与しただけではラットのドーパミン放出量の変化は生じないことが明らかにされた.実験2の結果,0.5mm群は対照群に比べて摂食後ドーパミン放出量の有意な増加を認め,実験群と経過時間に交互作用を認めた.本実験結果より,0.5mmの高さの咬合障害がラットのドーパミン放出量に最も強い影響を与えることが明らかにされた.本実験結果は高い咬合障害(1.0mm、2.0mm)を与えるよりも低い咬合障害(0.5mm)を与えた方が心理的ストレッサーとして生体に強い影響を及ぼすことを示す.実験的に咬合障害を付与されたラットは咬合異常のモデルとして多用されている.本研究では咬合障害の高さが心理ストレスとして生体に及ぼす影響を明らかにするために,心理ストレスにより代謝か冗進することが明らかにされている前頭皮質ドーパミン放出を高さの異なる咬合障害を与えたラットを用いて計測した.前頭皮質中のDA放出の測定は,脳内微小透析法を用いて行った.咬合障害は長さ2mm・幅1mmの厚さの異なる3種類(0.5mm,1.0mm,2.0mm)のアルミ板とした.実験群は咬合障害を付与しない対照群と,咬合障害の高さの違いによる3群の合計4群とした.実験1は咬合障害付与より6時間のDA放出量を測定した.実験2は咬合障害を付与されたラットのドーパミン放出量を180分間測定した後に20分間摂食させ,その後のドーパミン放出量を180分間測定した.実験1の結果,咬合障害の高さ及び交互作用に有意差は認められなかった.咬合障害の高さは合着後360分間においてDA放出に影響を与えなかった:本実験結果より咬合障害を付与しただけではラジトのドーパミン放出量の変化は生じないことが明らかにされた.実験2の結果,0.5mm群は対照群に比べて摂食後ドーパミン放出量の有意な増加を認め,実験群と経過時間に交互作用を認めた.本実験結果より,0.5mmの高さの咬合障害がラットのドーパミン放出量に最も強い影響を与えることが明らかにされた.本実験結果は高い咬合障害(1.0mm、2.0mm)を与えるよりも低い咬合障害(0.5mm)を与えた方が心理的ストレッサーとして生体に強い影響を及ぼすことを示す.実験的に咬合障害を付与されたラットは咬合異常のモデルとして多用されている.
KAKENHI-PROJECT-14571876
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14571876
咬合障害の形態的因子がラットの前頭皮質ドーパミン及びグルタメート分泌に及ぼす影響
本研究では咬合障害の高さが心理ストレスとして生体に及ぼす影響を明らかにするために,心理ストレスにより代謝が亢進することが明らかにされている前頭皮質ドーパミン放出を高さの異なる咬合障害を与えたラットを用いて計測した.前頭皮質中のDA放出の測定は,脳内微小透析法を用いて行った.咬合障害は長さ2mm,幅1mmの厚さの異なる3種類(0.5mm,1.0mm,2.0mm)のアルミ板とした.実験群は咬合障害を付与しない対照群と,咬合障害の高さの違いによる3群の合計4群とした.実験1は咬合障害付与より6時間のDA放出量を測定した.実験2は咬合障害を付与されたラットのドーパミン放出量を180分間測定した後に20分間摂食させ,その後のドーパミン放出量を180分間測定した.実験1の結果,咬合障害の高さ及び交互作用に有意差は認められなかった.咬合障害の高さは合着後360分間においてDA放出に影響を与えなかった.本実験結果より咬合障害を付与しただけではラットのドーパミン放出量の変化は生じないことが明らかにされた.実験2の結果,0.5mm群は対照群に比べて摂食後ドーパミン放出量の有意な増加を認め,実験群と経過時間に交互作用を認めた.本実験結果より,0.5mmの高さの咬合障害がラットのドーパミン放出量に最も強い影響を与えることが明らかにされた.本実験結果は高い咬合障害(1.0mm、2.0mm)を与えるよりも低い咬合障害(0.5mm)を与えた方が心理的ストレッサーとして生体に強い影響を及ぼすことを示す.
KAKENHI-PROJECT-14571876
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14571876
ネットワークとしての地域ブランドの誕生と発展に関する研究
本研究は、地域ブランドの新しいパラダイムについて考察したものである。地域間、地域内で競争し、それに勝った事業者が地域ブランドのモデルになるのではなく、互いに協力しあいながら、それぞれが事業として成り立ち、ひいては地域活性化に繋がるモデルである。その協力関係をアクターネットワーク理論にもとづいて探った。具体的な地域ブランド商品は、日本ワインである。これが、アクターネットワークを最もよく表しているからである。分析の結果、これは、地域内、地域間の競合によらない、地域活性化を可能にすることがわかった。平成25年度は、研究課題の「ネットワークとしての地域ブランド」に関して、地域観光の点から、観光地域ブランドの生成に係わる社会的ネットワークの作用を分析した。定性的データ分析法を用いて、観光地のブランドが形成される過程について、社会的ネットワーク論(ソーシャルキャピタル論を含む)および関係性マーケティング論の理論に依拠して、事例分析をおこなった。分析の結果、次の点が明らかになった。1.観光地としての地域ブランド化には、衰退した観光地のブランドの再興を図るものと、これまでブランドとして認知去れていなかった地域を新たにブランドを構築するものとに大別できる。2.ブランドの再興には、旧来からその地域に影響力を持つ人物が指導的役割を担って、地域ブランドの諸要素をいったん解体して、地域の諸資源、人的関係などを再構築してブランドを再興する方法が多く見られる。他方、新しくブランド化を図るものに関しては、旧来からその地域に係わる者以外に、外部からの参加者が新たに加わり、旧来の視点では気付かれない新たな視点によって、地域の諸資源を発掘して、ブランド化する方法が見られる。3.両者とも、地域の観光資源および人的な社会ネットワークを、増殖する資源としての資本(キャピタル)化する、すなわちソーシャル・キャピタルとして捉えなおすことによって、観光地域のブランド化、活性化に成功している。さらに、その地域を訪れる人々との関係性構築、すなわち、関係性マーケティングも積極的におこなっている。こうした視点が欠如している地域には、観光地としての地域ブランドの衰退が見られる。以上の点から、今後の研究理論には、社会ネットワーク論(ソーシャル・キャピタル論を含む)と関係性マーケティング論の融合を図ることが必要となってくる。日経リサーチによる地域ブランド戦略サーベイ名産品編(以下、日経調査)をデータベースに加工して、ブランド化している商品の分類をおこなった(農林水産物、菓子、ご当地料理)。その結果地域ブランド商品は、「未ブランド」「発展途上」「ブランド化」に分類できることが分かった。地域ブランド商品を成功させるためには、「未ブランド」および「発展途上」をいかにして「ブランド化」できるかにかかっている。そのポイントは、商品生産体制と販売経路の維持、拡充であると考えられる。続いて、これらの観点から、地域ブランド商品の販売経路としての観光地、ならびに観光産業に関する分析をおこなった。1.研究代表者は、観光産業のさまざまな事業者間の事業ネットワークについて、国土交通省観光庁の観光圏事業計画書のデータを分析し、観光産業者間のネットワーク組織の構造特性を比較した。2.分担者は、同じく、観光庁のデータから、各観光地の季節変動の実態と平滑化について分析した。その結果、1の分析からは、これまでの観光産業は、大手旅行代理店により、観光地のサプライヤー(=観光関連事業者)群が中間組織的に組織化されていること、ならびに、近年、さまざまな情報媒体の登場によってこれらの組織体制が崩れてきており、個人による観光プランニングがなされていることから、これらの動きに対応した観光産業の再編が見込まれることが明らかになった。また、2の分析からは、各観光地において季節変動は避けられないが、できるだけ平滑化することによって、アイドルキャパシティコストを削減することが必要なことが明らかになった。以上の分析結果から、日経調査の最新版(2013年発表予定)の分析や、現地調査による事例分析などを交えて、地域ブランド商品の販売経路としての観光産業の関係について、より深い分析をする必要があることが分かった。研究テーマの「地域ブランド」について、新しい法制度である「地理的表示法」の成立(平成26年度公布、平成27年度施行)を受けて、この制度に関する情報収集と当該産品の生産地に及ぼす影響の分析をと6次産業化の可能性を中心に研究をおこなった。具体的には、すでに「地域団体商標登録制度」に登録している産品のうち、「地理的表示法」の登録申請の要件である「生産地(人的な特性と自然的特性)と産品の特性の間に、主として帰せられる結びつき」が、どのようなものであるのかを公表されている資料によって分析した。つぎに、これらの産品について、農林水産省の政策である「6次産業化」の観点から、地域ブランド化の方向と取組ポイントを分析した。以上の分析から、地域ブランド産品とそれに取り組む主体はきわめて多いため、また、その経済効果や社会効果が明確でないものも多く見られるため、分析対象を絞り込む必要性が明らかになった。そこで分析対象を日本のワイナリー事業に絞った。理由は、この産業が多くの関連産業とつながりを持ち(ブドウ農家、飲食事業者、観光・宿泊事業者、流通事業者(酒販のみならず、名産品販売など)多種多様な事業者のネットワークに拡充する可能性を秘めるからである。それらの事業構造やブランド化のあり方と、6次産業化の視点からは、地域への効果(経済的効果や、コミュニティ的=人的紐帯の再構築・地域の誇りの取り戻しなどの社会的効果)などの可能性について、公表されている資料と、実地のヒアリングをもとに考察した。
KAKENHI-PROJECT-24530526
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24530526
ネットワークとしての地域ブランドの誕生と発展に関する研究
日本産ワインの事業構造については、早晩EUのようなワイン法ができ、生産地と産品の結びつきが法に基づいて明確にされること、日本産ワインの市場は開拓の余地が大きいこと、耕作放棄地の活用など、これの6次産業化によって、地方活性化が図られる意義と効果が大きいことが分かった。最終年度は、地域ブランドの焦点を「日本ワイン」に絞り、消費市場の実態と、それを踏まえた地域ブランドとしての、地域ワイナリーの経営のあり方について考察した。国税庁告示平成27年の通達によって、酒税法上、日本で作られたぶどうを使って、日本で醸造されたもののみ「日本ワイン」と称することができることに変わった。ここから日本ワインが各地域の「地域ブランド」となる可能性がでてきた。そこで、日本ワインの市場(生産、消費)を把握した。(1)生産については、専門雑誌、書籍、業界資料から推計した。(2)消費市場については、インターネット調査をおこなった(楽天リサーチのパネル600名に対しての、質問票調査)。(1)の日本ワインの生産市場は、162万ケース(約2000万本)と推計された。この生産は、1大手ワイナリー(サントリーなど、計1000万本)、2地域の中堅、老舗ワイナリー(十勝ワインなど、計500万本)、地域の小規模、個人ワイナリー(500万本)と推定される。このことから、日本ワインの生産量のうち約25%が、地域の小規模、個人ワイナリーで作られていることがわかる。2と3を合わせて250億円(単価2500円として)となる。これをレストラン、宿泊(ワインツーリズム)などと関連させると、25005000億円になる。この規模の経済効果が生まれれば、地域の活性化は現実的なものとなる。そこで、地域のワイナリーに対する消費者の認知を調査した(「聞いたことがある」の割合)。結果、1の大手ワイナリーの認知度は高い(8090%)ものの、2については約3040%、3については5-8%であることがわかった。今後の課題は、2と3の認知度をいかにして上げていくかということであることである。一つの方法は、個々のワイナリーではなく、地域のクワインクラスター(すなわち地域ブランド)としての認知を獲得することである。本研究は、地域ブランドの新しいパラダイムについて考察したものである。地域間、地域内で競争し、それに勝った事業者が地域ブランドのモデルになるのではなく、互いに協力しあいながら、それぞれが事業として成り立ち、ひいては地域活性化に繋がるモデルである。その協力関係をアクターネットワーク理論にもとづいて探った。具体的な地域ブランド商品は、日本ワインである。これが、アクターネットワークを最もよく表しているからである。分析の結果、これは、地域内、地域間の競合によらない、地域活性化を可能にすることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-24530526
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24530526
国外所得免除方式の導入が多国籍企業の経済活動に与えた影響
日本は2009年度税制改正において、国内の親会社が海外子会社から受け取る配当を一定の条件の下で非課税とした。その結果、日本の国際課税制度は、国外所得を原則非課税とする国外所得免除方式へと移行した。本研究では、国外所得免除方式への移行が多国籍企業の企業価値や海外子会社からの配当送金に与える影響を実証的に分析した。分析の結果、内部留保を蓄積していた海外子会社がこの税制改正に反応して、親会社への配当を増加させたことを明らかにした。さらに税制改正後は海外子会社の配当送金は、投資先国が課す配当への源泉徴収税率により強い影響を受けるようになっていることも示された。日本は2009年度税制改正において、日本企業が海外子会社から受け取る配当金を一定の条件のもとで非課税(益金不算入)とした。この結果、日本の法人所得に関する国際課税制度は、本国では国外所得に原則課税しない国外所得免除方式へと移行した。平成26年度は、日本の国外所得免除方式の導入に関する二つの研究テーマに取り組んだ。第一に、この国際課税制度の変更が、2009年から2011年にかけて海外子会社から日本の親会社への配当送金に及ぼした影響について、実証的に分析をした。そして、その研究成果を国内外の学会・研究会において発表し、そこでの参加者との意見交換を踏まえて、分析内容の修正を行った。さらに、最新の分析結果を、“The Effect of Moving toa Territorial Tax System on Profit Repatriations: Evidencefrom Japan"および、「国外所得免除方式の導入が海外現地法人の配当送金に与えた影響:2009-2011年の政策効果の分析」という二編の論文にまとめた。日本は2009年度税制改正において、外国子会社配当益金不算入制度を導入し、日本企業が海外子会社から受け取る配当を一定の条件の下で非課税(益金不算入)とした。その結果、日本の法人所得に関する国際課税制度は、それまでの外国税額控除方式から国外所得免除方式へと移行した。平成27年度は昨年度に引き続き、この制度改正が海外子会社から日本の親会社への配当送金行動に与えた影響を分析し、最新の結果をもとに、昨年度作成した論文“The Effect of Moving toa Territorial Tax System on Profit Repatriation: Evidencefrom Japan"を改訂した。そして政策研究大学院大学のディスカッション・ペーパーとして、論文を公開した。さらに、この論文を国際学術誌に投稿した。現在、学術誌からの要求に応じて再投稿するために、論文を改訂しようとしている。上記の研究と並行して、国際課税制度(国際的二重課税の調整方式)が多国籍企業の経済活動(海外直接投資、利益還流、海外合併・買収、本社の海外移転、所得移転)に与える影響について分析した実証研究のサーベイを行った。その上で、先行研究から得られた知見をもとに、日本の外国子会社配当益金不算入制度の政策的評価について考察した。そしてその結果を「国際課税制度が多国籍企業の経済活動に与える影響」という題目のサーベイ論文にまとめた。日本は2009年度税制改正において、外国子会社配当益金不算入制度を導入し、日本企業が海外子会社から受け取る配当を一定の条件の下で非課税(益金不算入)とした。その結果、日本の法人所得に関する国際課税制度は、それまでの外国税額控除方式から国外所得免除方式へと移行した。上記の研究と並行して、国際課税制度(国際的二重課税の調整方式)が多国籍企業の経済活動(海外直接投資、利益還流、海外合併・買収、本社の海外移転、所得移転など)に与える影響を実証的に分析した先行研究のサーベイを行った。そして「国際課税制度が多国籍企業の経済活動に与える影響」という題目の論文を作成した。論文では、サーベイした先行研究を解説し、日本の外国子会社配当益金不算入制度の政策的評価について考察した。この論文は2016年10月にフィナンシャル・レビューに掲載された。日本は2009年度税制改正において、国内の親会社が海外子会社から受け取る配当を一定の条件の下で非課税とした。その結果、日本の国際課税制度は、国外所得を原則非課税とする国外所得免除方式へと移行した。本研究では、国外所得免除方式への移行が多国籍企業の企業価値や海外子会社からの配当送金に与える影響を実証的に分析した。分析の結果、内部留保を蓄積していた海外子会社がこの税制改正に反応して、親会社への配当を増加させたことを明らかにした。さらに税制改正後は海外子会社の配当送金は、投資先国が課す配当への源泉徴収税率により強い影響を受けるようになっていることも示された。国外所得免除方式の導入の海外子会社の配当送金への効果、および親会社の企業価値への効果について分析を行い、計三本の論文に研究成果をまとめることができたから。国際学術誌からの要求に応じて、再投稿に向けて上記の論文を改訂する。そして本年度中に論文を再投稿する。また、外国子会社配当益金不算入制度が日本の多国籍企業の海外直接投資に与えた影響についても分析を行い、論文を作成することを目指す。財政・公共経済学平成27年度は、親会社の海外からの利益還流行動に焦点を当てながら、国外所得免除方式の導入が、親会社の海外子会社からの配当受け取り額に与えた影響について分析を行う予定である。28年度に旅費・物品費などの経費が計画よりも増えることが見込まれたため、27年度は当該助成金の利用額を減らしたから。27年度に旅費・物品費などの経費が計画よりも増えることが見込まれたため、26年度は当該助成金の利用額を減らしたから。旅費、物品費、英文校正費などを賄うために使用する。
KAKENHI-PROJECT-26780172
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26780172
国外所得免除方式の導入が多国籍企業の経済活動に与えた影響
旅費、物品費、英文校正費などを賄うために使用する。
KAKENHI-PROJECT-26780172
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レーザーアブレーションにおける原子、イオンの生成機構
レーザーアブレーションによっておこる粒子生成の機構を明らかにする目的で、放出される一価イオンの速度、生成量の挙動を、時間分解質量分析法を用いて調べ、粒子生成のトリガと生成後のエネルギー分配について主として解析した。高真空中(10^<-8>mbar)においたCa,Sr,Ba及びCuの金属ディスクにArPエキシマレーザーを照射してアブレーションをおこさせ、生成した一価イオンを四極子資料分析計で時間分解測定し、飛行時間分布(TOF)スペクトルを得た。レーザーエネルギー密度が比較的弱い領域では、TOFスペクトルは、重心速度の補正を行ったMaxwell-Boltzmann分布で良く説明できる。この結果より生成した粒子は熱平衡に達していると結論できる。この時の温度は、照射したレーザーのエネルギー密度に比例するが、これは、一旦生成した粒子が、さらに光エネルギーを吸収し、それが運動エネルギーに交換されるとすると、比較的単純な仮定のもとに導かれる結論に一致する。粒子の生成量は、レーザーエネルギー密度のべき乗に比例し、多光子過程による、粒子生成機構を示唆する。各金属におけるべき乗則の指数と、電子状態のエネルギーダイアグラムを比較した結果、内毅の最高準位にある電子をフェルミ面以上に励起することが、粒子生成のトリガになっいると考えると、この4種の金属の挙動が全て説明できる。レーザーアブレーションによっておこる粒子生成の機構を明らかにする目的で、放出される一価イオンの速度、生成量の挙動を、時間分解質量分析法を用いて調べ、粒子生成のトリガと生成後のエネルギー分配について主として解析した。高真空中(10^<-8>mbar)においたCa,Sr,Ba及びCuの金属ディスクにArPエキシマレーザーを照射してアブレーションをおこさせ、生成した一価イオンを四極子資料分析計で時間分解測定し、飛行時間分布(TOF)スペクトルを得た。レーザーエネルギー密度が比較的弱い領域では、TOFスペクトルは、重心速度の補正を行ったMaxwell-Boltzmann分布で良く説明できる。この結果より生成した粒子は熱平衡に達していると結論できる。この時の温度は、照射したレーザーのエネルギー密度に比例するが、これは、一旦生成した粒子が、さらに光エネルギーを吸収し、それが運動エネルギーに交換されるとすると、比較的単純な仮定のもとに導かれる結論に一致する。粒子の生成量は、レーザーエネルギー密度のべき乗に比例し、多光子過程による、粒子生成機構を示唆する。各金属におけるべき乗則の指数と、電子状態のエネルギーダイアグラムを比較した結果、内毅の最高準位にある電子をフェルミ面以上に励起することが、粒子生成のトリガになっいると考えると、この4種の金属の挙動が全て説明できる。
KAKENHI-PROJECT-06740446
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RNAi技術を利用した、ガン細胞におけるDNAメチル化の制御
先進国における最大死因であるがんの分子レベルの発症機構としてゲノムの変化や遺伝子発現の脱制御、タンパク質の構造異常や発現異常が考えられる。これらがんにおけるジェネティックな変化とエピジェネティックな変化はがんの診断のためのバイオマーカーとしても注目されている。エピジェネティックな変化として遺伝子のメチル化がある。がん抑制遺伝子の発現調節を担うプロモーター領域が、高度にメチル化されることによって、がん抑制遺伝子の発現が減少し、がんを引き起こす原因となっている。本研究の目的は、発がんのエピジェネティックな制御機構としてDNMT遺伝子の発現抑制によるがんの表現形質の変化を調べるとともに、タンパク質の発現異常について質量分析を用いた解析を行い、がんの診断・治療ターゲット探索のための基礎研究とする。今年度は胆管がんを対象にして、がんにおけるエピジェネティックな変化としての癌抑制遺伝子群のDNAメチル化の役割とタンパク質発現の変化について培養細胞と患者サンプルを用いた解析を行った。昨年度から引き続いて、DNWT1(DNAメチル化酵素1)遺伝子をターゲットとするsiRNAの設計を用いてDNMT1遺伝子の発現について抑制効果の有無をリアルタイム定量PCR法とウェスタンブロット法を用いて調べた。siRNAの設計を繰り返して行い、トランスフェクションの条件検討などの基礎検討なども含め最も効果の得られる条件の検討を行った。遺伝子レベルの発現制御の解析に集中したため、今後はプロテオーム解析を用いたエピジェネティックな変化による細胞内変化について研究を進めたい。いくつかのガンの原因は、ガン抑制遺伝子の変異あるいは発現抑制によって引き起こされることが明らかになっており、ガン抑制遺伝子の発現を正常にする事で、疾病が改善されると考えられている。近年注目されているのは、ガン抑制遺伝子の発現調節をになうプロモーター領域が、高度にメチル化されることによって、ガン抑制遺伝子の発現が減少し、ガンを引き起こす原因となっているのではないか、という説である。仮に、当該プロモーター領域のメチル化を防ぐ事ができれば、ガン抑制遺伝子の発現は正常になり、病状の改善が見られる可能性がある。DNAのメチル化を引き起こすと言われているDNMT遺伝子の発現を、人工的に抑制する事ができれば、ガンの治療が可能となるかもしれない。本研究の目的は、DNMT遺伝子の発現制御を行い、メチルかが関与する疾病のメカニズムを解明することである。DNMT遺伝子の発現抑制には、本研究室で開発されたRNAi技術を用いる事により、達成されると考えられる。既存のメチル化抑制剤では、全ての遺伝子のメチル化抑制を行ってしまうため、試験的な臨床応用には留意が必用となる。本研究室のRNAi技術は、遺伝子に対する特異性が非常に高く、選択的にDNAのメチル化を制御する事が可能であるため、我々の提案を遂行する上で最良の方法論であると思われる。先進国における最大死因であるがんの分子レベルの発症機構としてゲノムの変化や遺伝子発現の脱制御、タンパク質の構造異常や発現異常が考えられる。本研究の目的は、発がんのエピジェネティックな制御機構としてDNMT遺伝子の発現抑制によるがんの表現形質の変化を調べるとともに、タンパク質の発現異常について質量分析を用いた解析を行い、がんの診断・治療ターゲット探索のための基礎研究とする。肝がん(胆管がんと肝細胞がん)を対象にして、がんにおけるエピジェネティックな変化としての癌抑制遺伝子群のDNAメチル化の役割とタンパク質発現の変化について培養細胞と患者サンプルを用いた解析を行った。DNMT1(DNAメチル化酵素1)遺伝子をターゲットとするsiRNAの設計を行いオリゴsiRNAを合成した。またDNMT1遺伝子の発現について抑制効果の有無をウェスタンブロット法による確認を行った。またタンパク質発現解析として、肝がんにおける遺伝子発現パターンのマイクロアレイ解析ならびにタンパク質を行った。肝がんの患者血清を用いて血液中のバイオマーカーの探索をあわせて行い、以下の成果を得た。解析プラットホームとしてオンライン化二次元高速液体クロマトグラフィー/質量分析法の条件検討を行い、再現よく血清中のタンパク質を検出することができた。タイ王国で発症率の高い胆管がんの血清を約20例収集した。特に寄生虫感染例と非感染例に分類して同数の症例を集めることができた。肝細胞がんについては、三重大学医学部との共同研究で肝がんのがん組織・非がん組織ならびに血漿・血清を収集し、これらの解析を来年度進める予定である。先進国における最大死因であるがんの分子レベルの発症機構としてゲノムの変化や遺伝子発現の脱制御、タンパク質の構造異常や発現異常が考えられる。これらがんにおけるジェネティックな変化とエピジェネティックな変化はがんの診断のためのバイオマーカーとしても注目されている。エピジェネティックな変化として遺伝子のメチル化がある。がん抑制遺伝子の発現調節を担うプロモーター領域が、高度にメチル化されることによって、がん抑制遺伝子の発現が減少し、がんを引き起こす原因となっている。本研究の目的は、発がんのエピジェネティックな制御機構としてDNMT遺伝子の発現抑制によるがんの表現形質の変化を調べるとともに、タンパク質の発現異常について質量分析を用いた解析を行い、がんの診断・治療ターゲット探索のための基礎研究とする。今年度は胆管がんを対象にして、がんにおけるエピジェネティックな変化としての癌抑制遺伝子群のDNAメチル化の役割とタンパク質発現の変化について培養細胞と患者サンプルを用いた解析を行った。昨年度から引き続いて、DNWT1(DNAメチル化酵素1)遺伝子をターゲットとするsiRNAの設計を用いてDNMT1遺伝子の発現について抑制効果の有無をリアルタイム定量PCR法とウェスタンブロット法を用いて調べた。siRNAの設計を繰り返して行い、トランスフェクションの条件検討などの基礎検討なども含め最も効果の得られる条件の検討を行った。
KAKENHI-PROJECT-05F05683
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RNAi技術を利用した、ガン細胞におけるDNAメチル化の制御
遺伝子レベルの発現制御の解析に集中したため、今後はプロテオーム解析を用いたエピジェネティックな変化による細胞内変化について研究を進めたい。
KAKENHI-PROJECT-05F05683
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近世後期の在方町をめぐる地域社会と文化
19世紀の社会経済発展や地域文化の興隆を担った在方町を対象にして、その始原である近世後期を中心に社会的文化的特質を追究した。下総佐原を中心的な分析対象として、これを下総の鎌ヶ谷・木下、武蔵秩父、下野鹿沼などと比較対照することによって、関東在方町に一般化する方法をとった。佐原では近世後期、伊能家・清宮家のように旧来の居付の住人が村政を主導するが、外来の商工業者・利貸資本家も流入して経済的な発展を遂げる。清宮家との金融関係をもっていた飯岡村大河家においては未整理文書の調査を行い、在方町周辺の豪農が参入し、屋敷地経営を広範化したことがわかった。また御坊の沼野家文書などから、紀州移民の酒造業者が流入していることもわかった。次に、佐原下分町文書、浄国寺文書などから、近世後期には「町(ちょう)」が成立しており、それは移住民も含んで構成されていた。在方町の「町」は村政組織の村組の下に位置し、これらの流入する移住民をも組織する単位として存立していたとみられる。このことは、秩父・鹿沼においても同様な状況がみとめられ、それまでの支配組織とは異質で、在方町独自の自治的な社会編成のありかたが形成されていたと推測することができる。また、これらの「町」は、近世後期に隆盛となる祭礼の運営主体となっており、秩父や鹿沼にも同様な事象が表出している。また旧来から居付いていた清宮家では、新たな社会状況に対応する地域指導層として、地域課題に応える文化活動を展開させていた。飯岡村大河家と密接な関係を持ち、在村歌人として注目される神山神貫に、清宮秀堅は師事して学問を形成していた、経済活動にも裏付けられ、地域指導者相互に広域的なネットワークが形成されて、地域に根ざした独自の文化が形成されていったとみることができる。19世紀の社会経済発展や地域文化の興隆を担った在方町を対象にして、その始原である近世後期を中心に社会的文化的特質を追究した。下総佐原を中心的な分析対象として、これを下総の鎌ヶ谷・木下、武蔵秩父、下野鹿沼などと比較対照することによって、関東在方町に一般化する方法をとった。佐原では近世後期、伊能家・清宮家のように旧来の居付の住人が村政を主導するが、外来の商工業者・利貸資本家も流入して経済的な発展を遂げる。清宮家との金融関係をもっていた飯岡村大河家においては未整理文書の調査を行い、在方町周辺の豪農が参入し、屋敷地経営を広範化したことがわかった。また御坊の沼野家文書などから、紀州移民の酒造業者が流入していることもわかった。次に、佐原下分町文書、浄国寺文書などから、近世後期には「町(ちょう)」が成立しており、それは移住民も含んで構成されていた。在方町の「町」は村政組織の村組の下に位置し、これらの流入する移住民をも組織する単位として存立していたとみられる。このことは、秩父・鹿沼においても同様な状況がみとめられ、それまでの支配組織とは異質で、在方町独自の自治的な社会編成のありかたが形成されていたと推測することができる。また、これらの「町」は、近世後期に隆盛となる祭礼の運営主体となっており、秩父や鹿沼にも同様な事象が表出している。また旧来から居付いていた清宮家では、新たな社会状況に対応する地域指導層として、地域課題に応える文化活動を展開させていた。飯岡村大河家と密接な関係を持ち、在村歌人として注目される神山神貫に、清宮秀堅は師事して学問を形成していた、経済活動にも裏付けられ、地域指導者相互に広域的なネットワークが形成されて、地域に根ざした独自の文化が形成されていったとみることができる。
KAKENHI-PROJECT-22904002
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22904002
神経線維腫症に合併する悪性神経鞘腫誘発に関わる放射線照射の影響の解析
神経線維腫症1型の患者に見られる良性腫瘍に対する放射線照射が悪性転化を誘発し、悪性神経鞘腫の発症に関与すると考えられ始めた。この悪性化の機構を解析する為に、腫瘍の組織構造を単純化した細胞培養モデル系を構築し、放射線照射前後で細胞内で変化する因子を形態的及び二次元電気泳動上の蛋白質スポットを手がかりに観察した。これまでに報告のある放射線照射により誘発されるアポトーシスに関連する因子と、今回我々が同定を試みた因子は、分子量等から推定して異なる因子群であり、細胞の悪性化に関与する可能性がある。またその因子は、分子内の複数のアミノ酸残基のリン酸化により制御されている可能性が高い事が示唆された。ラット及びマウスの神経節細胞にras及びmosを導入した変異細胞株を用いた腫瘍細胞モデル系を使い解析をおこなった。各細胞にセシウム線源からのガンマ線、1Gy、2Gyおよび8Gyをそれぞれ照射し、その後の細胞の形態学的変化及び細胞生化学的変化を経時的に観察した。細胞生化学的変化としては、各細胞の細胞分画を1細胞質蛋白質2膜蛋白質3核蛋白質4クロマチン結合蛋白質5細胞骨格蛋白質に分画した上で放射線照射前と後でのそれぞれの蛋白質分画を2D-DIGE法で比較検討した。8Gy照射後48時間では、細胞の多く(8090%以上)に細胞死を誘発した。また1Gy照射でも比較的多くの細胞が死細胞となることが観察された。しかし生き残った細胞には、明らかな形態変化は見られなかった。放射線照射前後の2D-DIGE法解析の結果、明らかな増減を示す蛋白質スポットは、膜蛋白質分画では見られず、細胞質蛋白質分画、クロマチン結合蛋白質分画では、それぞれ数個が有意なスポットとして観察された。対照群としては、細胞分裂の速度が早い腸管細胞株:IEC6と肝癌細胞由来の細胞株:HepG2を同じく放射線照射前後で同様に分画を比較し、その変化が神経細胞特異的なものか否かを検討した。細胞分画で得られる蛋白のパターンはそれぞれ細胞ごとに異なり、共通するスポットは限られた。それらの共通するスポットの中に照射前後で異なるものがあれば、神経細胞で見られた蛋白質の変化は放射線共通の反応である可能性が高くなり、神経細胞特異的な変化であれば、神経細胞に固有の変化と判断出来る。これまでの解析の結果、神経特異的な蛋白質スポットを発見するには至っていないが、いずれの細胞にも共通するクロマチン結合蛋白質のスポットとして有力な蛋白スポットを見出しており、現在同定及び解析を進行中である。前年度に検討課題として残った細胞内蛋白質の分画方法の条件検討、及び放射線照射後の細胞の変化の解析を継続した。放射線(γ線)の照射前後で細胞内の蛋白質を分画した場合、細胞質内蛋白質及びクロマチン結合蛋白質の分画に発現の有意な差が2次元電気泳動上のスポットとして見られた。また、ほぼ同じ分子量のスポット数個が異なる等電点で横一列に並ぶ事が認められた。このことは、放射線照射により細胞内で変化する蛋白質のアミノ酸のいくつかに、リン酸化されるアミノ酸残基を持つことを意味する可能性が高い。そのため、リン酸化蛋白質を選択的に結合するビーズを組み合わせて、さらに細かい分画に分けて放射線照射前後で比較検討した。この際用いた照射線量は、4Gyの比較的高い線量を用いて解析を行った。これは、これまで8Gy照射では、多くの細胞に細胞死を誘発し、1Gyでは細胞死の割合が不安定であったためである。ただし、神経細胞は本来細胞分裂がほとんど起こらないため、高線量でも細胞死に至らない場合が多い。一方、神経線維腫のモデルとなりうるRasを相対的に多く発現させた変異株では、細胞死を誘発しやすいため、照射線量に関しては、今後線量を低線量から高線量までいくつか設定して検討する必要があると考えられた。これは、良性の神経線維種の悪性転化が起こりうる線量はアポトーシスを誘発するような高線量ではなく、より低い線量ではないかと推定されるためである。加えて、蛋白質の修飾としてリン酸化とならんで代表的な糖鎖修飾についても解析をおこなった。レクチンを用い、細胞内蛋白質分画法とレクチンビーズによる糖鎖含有蛋白質分画法とを組み合わせて、リン酸化蛋白質同様に、さらに細かく細胞内蛋白質を分画した後、同じく2D-DIGE法で検討した結果、クロマチン結合蛋白質の分画に有意差が認められた。これらの蛋白質スポットの解析は今後の課題である。放射線による障害性を検討しているが、使用している細胞(がん遺伝子などを導入し株化した細胞)放射線感受性が一定に保てず、条件の検討に手間取っている。細胞分画を複数の条件により決定していたため、条件の最適化に時間を要している。これまでの細胞内蛋白質の分画条件、設定した放射線線量での照射後の細胞の変化の解析を継続した。4Gyのγ線照射後の細胞内の蛋白質を分画した場合、クロマチン結合蛋白質分画に発現の差が有意に見られ、2次元電気泳動上のスポットとして、ほぼ同じ分子量のスポットが数個異なる等電点で横一列に並ぶ事が再現性良く見られた。通常このように異なる等電点に蛋白質が二次元泳動される場合、複数のリン酸化されるアミノ酸部位を持つことを意味し、その泳動スポットの数とリン酸化部位のアミノ酸(セリン、スレオニン、チロシン残基)の数が一致する。
KAKENHI-PROJECT-26461707
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神経線維腫症に合併する悪性神経鞘腫誘発に関わる放射線照射の影響の解析
単純に細胞全体を分画した蛋白質の場合、夾雑する蛋白質は多く、同一の泳動ゲルに泳動出来る蛋白質量に限りがあるため、リン酸化蛋白質を結合するビーズに結合させることで、蛋白質を濃縮して放射線照射前後で比較検討した。その結果、それぞれのリン酸化部位の増減は均一ではなく差が見られることが判って来た。この事は、γ線照射による当該蛋白質のリン酸化を受ける部位には特異性がある事を強く示唆している。増減するスポットに該当する蛋白質の同定を質量分析法による同定を試みると伴に、その因子のリン酸化されるアミノ酸残基の特定とその部位のγ線照射による生理的意義を明らかにする解析を行った。ある程度の線量を越えた放射線の照射は細胞のアポトーシスを誘発することは報告されている。今回我々が同定を試みた因子は、既存のアポトーシスを導く因子とは分子量が異なるため、異なる機序である可能性が高い。その機序に関しては分子のリン酸化部位のアミノ酸残基のアラニン変異体を作成した解析を追加的に実施し、その増減を含め生理的意義を確認する必要があるが、リン酸化も同時に失うため、リン酸化結合ビーズでは濃縮が出来ず、該当する蛋白質の特異的抗体を使う検索が必要となっている。現在、更なる解析を追加的に実施し論文投稿準備中である。神経線維腫症1型の患者に見られる良性腫瘍に対する放射線照射が悪性転化を誘発し、悪性神経鞘腫の発症に関与すると考えられ始めた。この悪性化の機構を解析する為に、腫瘍の組織構造を単純化した細胞培養モデル系を構築し、放射線照射前後で細胞内で変化する因子を形態的及び二次元電気泳動上の蛋白質スポットを手がかりに観察した。これまでに報告のある放射線照射により誘発されるアポトーシスに関連する因子と、今回我々が同定を試みた因子は、分子量等から推定して異なる因子群であり、細胞の悪性化に関与する可能性がある。またその因子は、分子内の複数のアミノ酸残基のリン酸化により制御されている可能性が高い事が示唆された。細胞から各蛋白質を抽出する段階で適切な分画方法が見つからず、分画方法の検討に時間が掛かったため。また、細胞に照射する放射線量の適切な線量がなかなか決まらず、照射線量の設定に時間がかかったため。これまでの解析の結果、放射線照射によって変化する蛋白の二次元電気泳動のゲル上でのスポットの有力な候補の絞り込みが出来つつある。今後は、このスポットの蛋白質の同定の段階になる。これまで、蛍光色素による蛍光として解析をして来たため、可視化できていたが、実際に蛋白の解析を行うには、ある程度の量がどうしても必要になる。しかしながら、質量分析の感度は限られるため、その感度に至るまでの蛋白質の量を得るまでの条件設定は単純ではない。再現性は、これまでの解析で得られているものの、些細な条件によって蛋白質のスポットが重なったり、スポットがずれたりすることが経験されているため、これらの点をいかに克服するかが課題である。なるべく多くの蛋白質を用いて泳動を開始する事による解決法では不純物の混入による質量解析が困難になるため、その前処理である蛋白の分画の精製度をあげるという手法で条件設定を行い、より蛋白質を濃縮できる条件検討を今後行う予定である。その後、質量分析を行い蛋白質の同定を行い、同定が終了すれば、抗体の作成などを行い解析の範囲を広げていく予定である。病態生化学現状の細胞内蛋白質の分画方法でまだ十分であるとは言えない。有力なスポットが見いだされている細胞質蛋白質、クロマチン結合蛋白質に対してさらに追加的な分画が必要である。
KAKENHI-PROJECT-26461707
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ナノ電子線加工による表面活性化を利用した超微細接合の原子挙動解析
最新の電子顕微鏡に用いると電子線によるナノメートルレベルの材料表面の除去加工が可能になることを、まず明らかにした。これはセラミックスや半導体の表面にある酸化物や他の化合物などの汚染層を電子顕微鏡で観察しながらある領域を選択的に加工するものである。除去後には活性な表面が現れており、この活性表面同志を接触させると、常温においても結晶学的に結合した界面が形成されることがわかった。結合時に試料表面を加熱する必要がないため、また焼結助剤やろう材を必要としないため、接合後の残留熱応力による接合界面の破壊は起きないことがわかった。また電子顕微鏡内真空蒸着による金属/セラミックス異相界面の生成過程を蒸着その場で、かつ原子レベルの空間分解能で観察し、その機構を明らかにした。これは薄膜、界面、原子クラスターの形成に深く関わる機構であり、材料学、固体物理学上、極めて重要な知見である。本研究で明らかにされた以上の成果は、現在の接合工学研究では全く触れられていなかったことであり、新たな接合法の開発の糸口になるものである。本研究で得た成果は材料学的に高く評価されており、申請者は本多記念研究奨励賞(1995)、日本金属学会奨励賞(1995)、アメリカ材料学会国際材料組織写真賞(1995)、及び第三位(1995)、日本金属学会組織写真賞(1996)、同佳作賞(1995)、同奨励賞(1995)を受賞した。最新の電子顕微鏡に用いると電子線によるナノメートルレベルの材料表面の除去加工が可能になることを、まず明らかにした。これはセラミックスや半導体の表面にある酸化物や他の化合物などの汚染層を電子顕微鏡で観察しながらある領域を選択的に加工するものである。除去後には活性な表面が現れており、この活性表面同志を接触させると、常温においても結晶学的に結合した界面が形成されることがわかった。結合時に試料表面を加熱する必要がないため、また焼結助剤やろう材を必要としないため、接合後の残留熱応力による接合界面の破壊は起きないことがわかった。また電子顕微鏡内真空蒸着による金属/セラミックス異相界面の生成過程を蒸着その場で、かつ原子レベルの空間分解能で観察し、その機構を明らかにした。これは薄膜、界面、原子クラスターの形成に深く関わる機構であり、材料学、固体物理学上、極めて重要な知見である。本研究で明らかにされた以上の成果は、現在の接合工学研究では全く触れられていなかったことであり、新たな接合法の開発の糸口になるものである。本研究で得た成果は材料学的に高く評価されており、申請者は本多記念研究奨励賞(1995)、日本金属学会奨励賞(1995)、アメリカ材料学会国際材料組織写真賞(1995)、及び第三位(1995)、日本金属学会組織写真賞(1996)、同佳作賞(1995)、同奨励賞(1995)を受賞した。
KAKENHI-PROJECT-07750796
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07750796
肥満細胞腫のコンパニオン診断とリスク評価ツリーの構築
平成29年度は、新規の分子生物学的メカニズムに焦点を当て、KIT変異を有する、あるいは有さない肥満細胞腫細胞の増殖や脱分化機構を解析した。とくに、小胞体ストレス応答における肥満細胞の反応性が、正常及び腫瘍化した肥満細胞でどのように変動するかについて検証を進め、細胞の活性化が誘導された時に起こる小胞体膜状での分子生物学的変化を検出することができた。また、腫瘍化した肥満細胞の高感度の検出系として、1) KIT受容体の自己リン酸化の検出、2)細胞外及び膜近傍ドメインの変異の存在を示すKIT二量体化の評価、3)機能的GR発現の遺伝子およびタンパク質レベルでの検出、4)5アミノレブリン酸取り込み能のフローサイトメトリー解析、5)小胞体ストレス応答性のリアルタイムPCR法による検出系確立の基礎となる研究を実施した。さらに、実際の肥満細胞腫症例から得られた血液サンプルを検査系に適用し、特にフローサイトメトリー法を用いた循環がん細胞検出の予備検討を行い、肉眼的に再発が確認される2ヶ月ほど前から末梢血中のKIT陽性細胞数が増加するというデータを検証することができた。これをもとに臨床的な再発や転移の有無と循環がん細胞検出の相関性を引き続き評価している。薬物への反応性の評価解析としては、分子標的治療薬への薬物感受性の低下の原因となる新たな遺伝子変異の追加や一塩基多型(SNPs)の存在を検証した。また、グルココルチコイド耐性の原因として、機能的グルココルチコイド受容体のタンパク質レベルでの発現異常を確認することができた。今後の解析材料として、チロシンキナーゼ阻害剤イマチニブに対して感受性を示す肥満細胞腫細胞株を少量のイイマチニブを添加して継続的に培養することでイマチニブに耐性を示す肥満細胞腫株を数腫作出することができた。肥満細胞を用いた分子生物学的な解析は順調に進んでおり、小胞体ストレス応答や低酸素応答など、これまでの肥満細胞研究では解明されていなかった新たな細胞増殖や活性化の機構を明らかにしつつある。今年度は、新たに解明することができた肥満細胞の低酸素応答性や小胞体ストレス応答に関する学術論文を完成させ、国際的学術雑誌に投稿するとともに国際学会での発表を予定している。また、引き続き臨床サンプルの提供を各方面に呼びかけ、特に再発や転移の早期発見につながる検査・診断系を確立したい。さらに、治療に汎用されるグルココルチコイドやイマチニブに対する薬剤耐性の発現メカニズムを、遺伝子およびタンパク質の両面から解析していきたい。獣医臨床において厄介な悪性腫瘍であり続けた肥満細胞腫に対する理解は、この10年で大きく変化した。分子生物学的解析によりイヌに特徴的なKIT受容体の遺伝子変異が解析され、イヌ用の分子標的治療薬が開発された。しかし肥満細胞腫に対する分子標的治療薬適用の適切性を判断する基準は未だ不十分で、臨床獣医師が最適な治療法を選択する根拠を提供できていない。本研究では、KIT遺伝子解析に依らないKIT依存性・非依存性腫瘍の分別法、薬剤応答性や副作用の発現リスクを見極める方法、及び循環がん細胞検出法を確立、新時代の獣医腫瘍学における最適な治療法の選択に根拠を与えるために必須となるコンパニオン診断の構築を目的とする。平成27年度は肥満細胞腫への投与が想定される化学療法剤の中でも、特に使用頻度が増えている分子標的治療薬及び高頻度に使用されるグルココルチコイドに関して、獣医師が根拠を持って投与できるコンパニオン診断法確立のための基礎研究を遂行した。代表者らが維持しているイヌ肥満細胞腫由来細胞株を用いてグルココルチコイド感受性を調べたところ、感受性にばらつきがあることがわかった。そこで細胞質内に存在するグルココルチコイド受容体(GR)の発現動態を調べたところ、GRの発現量とグルココルチコイド感受性には相関が認められた。GRの遺伝子解析により変異が認められないこと、薬剤耐性遺伝子MDR1の発現に差がないことから、GRの発現強度が犬肥満細胞種細胞のグルココルチコイド感受性を決めている可能性が明らかとなった。また、肥満細胞種に使用されるリン酸化KITのチロシンキナーゼ阻害剤について、KITにどのような構造的変化を起こしているのかを調べたところ、KITの二量体化を阻害せず、無機能性の二量体画像化することがわかった。さらに、循環がん細胞の検出を目指したフローサイトメトリー法の条件設定を行っている。平成27年度に計画していたグルココルチコイドやチロシンキナーゼ阻害剤の肥満細胞に与える作用を分子生物学的手法で順調に解析を進めている。また次年度以降の研究の進捗に必要となる基礎的なデータの収集や条件設定なども予定通り実施できている。平成29年度は、新規の分子生物学的メカニズムに焦点を当て、KIT変異を有する、あるいは有さない肥満細胞腫細胞の増殖や脱分化機構を解析した。とくに、小胞体ストレス応答における肥満細胞の反応性が、正常及び腫瘍化した肥満細胞でどのように変動するかについて検証を進め、細胞の活性化が誘導された時に起こる小胞体膜状での分子生物学的変化を検出することができた。また、腫瘍化した肥満細胞の高感度の検出系として、1) KIT受容体の自己リン酸化の検出、2)細胞外及び膜近傍ドメインの変異の存在を示すKIT二量体化の評価、3)機能的GR発現の遺伝子およびタンパク質レベルでの検出、4)5アミノレブリン酸取り込み能のフローサイトメトリー解析、5)小胞体ストレス応答性のリアルタイムPCR法による検出系確立の基礎となる研究を実施した。
KAKENHI-PROJECT-15H02478
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肥満細胞腫のコンパニオン診断とリスク評価ツリーの構築
さらに、実際の肥満細胞腫症例から得られた血液サンプルを検査系に適用し、特にフローサイトメトリー法を用いた循環がん細胞検出の予備検討を行い、肉眼的に再発が確認される2ヶ月ほど前から末梢血中のKIT陽性細胞数が増加するというデータを検証することができた。これをもとに臨床的な再発や転移の有無と循環がん細胞検出の相関性を引き続き評価している。薬物への反応性の評価解析としては、分子標的治療薬への薬物感受性の低下の原因となる新たな遺伝子変異の追加や一塩基多型(SNPs)の存在を検証した。また、グルココルチコイド耐性の原因として、機能的グルココルチコイド受容体のタンパク質レベルでの発現異常を確認することができた。今後の解析材料として、チロシンキナーゼ阻害剤イマチニブに対して感受性を示す肥満細胞腫細胞株を少量のイイマチニブを添加して継続的に培養することでイマチニブに耐性を示す肥満細胞腫株を数腫作出することができた。肥満細胞を用いた分子生物学的な解析は順調に進んでおり、小胞体ストレス応答や低酸素応答など、これまでの肥満細胞研究では解明されていなかった新たな細胞増殖や活性化の機構を明らかにしつつある。化学療法剤選択指標については、臨床現場で実施可能な針生検サンプルからの検出系を模擬し、担がんマウスからの生検サンプルを用いて検出系を作るための、基礎的な研究を進める。とくに、KIT受容体の自己リン酸化の検出、細胞外及び膜近傍ドメインの変異の存在を示すKIT二量体化の評価、機能的GR発現の検出、解糖系亢進の評価、小胞体ストレス応答性の検出に焦点を絞りコンパニオン診断に繋がる基礎研究を実施する。また、薬物の有効性や副作用の発現予測について、分子標的治療薬への薬物感受性の低下は、新たな遺伝子変異の追加や一塩基多型(SNP)の存在が原因であることが多いことから、初年度に得られた基礎的な情報をもとに、特に我が国で飼育頭数の多い犬種(柴犬、シーズー、ダックスフントなど)を中心に、できる限り多くの臨床症例から末梢血を提供してもらい、GRおよびCYPの遺伝子解析を実施、発現量やSNPの解析データを得る。今年度は、新たに解明することができた肥満細胞の低酸素応答性や小胞体ストレス応答に関する学術論文を完成させ、国際的学術雑誌に投稿するとともに国際学会での発表を予定している。また、引き続き臨床サンプルの提供を各方面に呼びかけ、特に再発や転移の早期発見につながる検査・診断系を確立したい。さらに、治療に汎用されるグルココルチコイドやイマチニブに対する薬剤耐性の発現メカニズムを、遺伝子およびタンパク質の両面から解析していきたい。
KAKENHI-PROJECT-15H02478
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細織工学的手法によるハイブリッド再生軟骨の開発と表面置換型関節形成術への応用
本究により、研究代表者が開発したDPPC(dipalmitoylphosphatidylcholine)リポソームにヒアルロン酸等を内包させた、関節内投与型DDSを採用し、関節軟骨摺動面の力学環境が改善するまで良好な関節潤滑機能を保つ能力が存在することを、ブタ関節軟骨組織を用いた関節潤滑機能評価試験により確認することが出来た。すなわち、ブタ軟骨摺動面モデルにおいて摩擦係数を測定した結果、正荷電状態のLα-DPPCリポソームにヒアルロン酸ナトリウムを封入した製剤を用いた場合において、摩擦係数の減少が観察できた。角速度(Angular velocity)との関係については、角速度が高くなる、つまり摺動面の関節面の相対速度が大きくなるにしたがい、中性荷電状態のLα-DPPCリポソーム分散溶液を潤滑液とした場合に摩擦係数の減少を認めた。病的関節における潤滑動態は主に境界潤滑が優位に働いていると考えられており、低角速度環境下において最も低摩擦環境を得ることの出来る潤滑液、すなわち、中性荷電状態のLα-DPPCリポソーム分散溶液が有利と考えられた。本研究に採用した関節内投与型DDSは、潤滑力学環境を改善しつつ、軟骨再生に効果的な薬剤の関節内濃度をその徐放性により保ちつつ、軟骨再生作用に効果しうるものであり、本研究の成果は、関節鏡視下手術により、変性軟骨及び軟骨下骨をドリリングその他の手技を用いて、これらを活性化し、その組織に内在するコラーゲンを足場(Scaffold)として、外界から人工材料等のScaffoldを導入することなく、関節内を培養器(Incubator)とし、関節鏡視下手術により力学的収縮を加えた変性病変軟骨を培地(Culture media)、培養皿(Culture dish)とし、欠損および変性関節軟骨を修復する関節軟骨再生-関節温存型関節形成術の治療体系の確立という目標に大きく寄与するものである。上記の治療体系の確立にむけて、次の研究課題(課題番号:18591672、研究課題名:関節潤滑を改善し、軟骨再生を促進するドラッグデリバリーシステム)に引き継ぎ研究展開する計画である。本究により、研究代表者が開発したDPPC(dipalmitoylphosphatidylcholine)リポソームにヒアルロン酸等を内包させた、関節内投与型DDSを採用し、関節軟骨摺動面の力学環境が改善するまで良好な関節潤滑機能を保つ能力が存在することを、ブタ関節軟骨組織を用いた関節潤滑機能評価試験により確認することが出来た。すなわち、ブタ軟骨摺動面モデルにおいて摩擦係数を測定した結果、正荷電状態のLα-DPPCリポソームにヒアルロン酸ナトリウムを封入した製剤を用いた場合において、摩擦係数の減少が観察できた。角速度(Angular velocity)との関係については、角速度が高くなる、つまり摺動面の関節面の相対速度が大きくなるにしたがい、中性荷電状態のLα-DPPCリポソーム分散溶液を潤滑液とした場合に摩擦係数の減少を認めた。病的関節における潤滑動態は主に境界潤滑が優位に働いていると考えられており、低角速度環境下において最も低摩擦環境を得ることの出来る潤滑液、すなわち、中性荷電状態のLα-DPPCリポソーム分散溶液が有利と考えられた。本研究に採用した関節内投与型DDSは、潤滑力学環境を改善しつつ、軟骨再生に効果的な薬剤の関節内濃度をその徐放性により保ちつつ、軟骨再生作用に効果しうるものであり、本研究の成果は、関節鏡視下手術により、変性軟骨及び軟骨下骨をドリリングその他の手技を用いて、これらを活性化し、その組織に内在するコラーゲンを足場(Scaffold)として、外界から人工材料等のScaffoldを導入することなく、関節内を培養器(Incubator)とし、関節鏡視下手術により力学的収縮を加えた変性病変軟骨を培地(Culture media)、培養皿(Culture dish)とし、欠損および変性関節軟骨を修復する関節軟骨再生-関節温存型関節形成術の治療体系の確立という目標に大きく寄与するものである。上記の治療体系の確立にむけて、次の研究課題(課題番号:18591672、研究課題名:関節潤滑を改善し、軟骨再生を促進するドラッグデリバリーシステム)に引き継ぎ研究展開する計画である。1)日本白色家兎の膝関節(大腿骨および脛骨顆部)から採取した軟骨細胞から2次元軟骨細胞培養を行った。8週の組織培養にても厚さ約2mm以上には成長せず、この培養期間を過ぎても軟骨細胞の増殖および軟骨基質の増生に関しての限界と判断した。これらを層状に重ね合わせて立体組織構造とすることを試みた。平面軟骨組織シート間の結合は不十分であり、粘弾性測定時にシート間でのすべりが生じた。2)Poly-DL-lactide-co-glycolide (PLGA)を多孔性を持つ円板状に形成し、軟骨細胞用のScaffoldとした。作成時に使用した水溶性の粒子の粒径により、その力学的特性が左右され、作成した多孔性PLGAは粘弾性を中心とした力学的強度が不十分であった。3)上記の1)、2)の結果を踏まえて、さらに、関節内での使用時に報告されている、吸収性高分子材料による炎症反応誘発性を考慮して、岡野が報告している3次元培養をScaffoldを用いないで行う方法、すなわちcell sheet engineeringの手法を用いて本研究を遂行することに実験計画を一部変更し、現在以下のごとく準備中である。すなわち、軟骨細胞ペレットを作成して、3次元培養する。
KAKENHI-PROJECT-14571397
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細織工学的手法によるハイブリッド再生軟骨の開発と表面置換型関節形成術への応用
作成した軟骨槐を接着因子を用いて3次元的に構築して再生軟骨組織とする。力学的強度を高める為に加圧チャンバーを作成し、その中で培養し、経時的に粘弾性を測定してゆき、最適条件を決定する。以降の実験計画は申請時の計画にそって遂行してゆく。1)軟骨組織の3次元培養綿状コラーゲン繊維を支持体として軟骨細胞の3次元培養を行なった。十分な軟骨細胞増殖及び軟骨基質産生が得られなかった。2)損傷軟骨の再生とストレス緩和全く新たに軟骨細胞を増殖させて、軟骨組織を再生させることは、多大な時間がかかること、力学的強度が当初から不十分である、などのことから、ハイブリッド再生軟骨の開発には以下に述べる方法が合理的かつ、実用的であると考えた。A)軟骨損傷部位直下の軟骨下骨骨髄から幹細胞を誘導して軟骨細胞に分化させて増殖させる。B)支持体としての機能と軟骨組織再生に適した特性・効果を合わせ持ちかつ、関節外から経皮的に導入が可能であるような、ゲル状の軟骨成分を含む合成潤滑性薬剤を開発する。3)1)、2)の結果をふまえて、臨床応用により直結可能なように一部の研究計画の追加を行なった。すなわち、ブタ関節軟骨組織欠損モデルを作成して、軟骨下骨をドリリングの後、軟骨修復促進作用を持たせた軟骨組織に親和性を持つゲル状潤滑剤を関節内に注入し、経時的に組織反応を観察する。軟骨組織に親和性を持つゲル状潤滑剤には、DPPC(dipalmitoylphosphatidylcholine)、ヒアルロン酸等を成分とした、新たな潤滑剤を開発中である。関節鏡下の手術手技を用いた、臨床応用が実現可能であり、関節鏡視下手術に即した治療体系を開発中である。この結果をふまえて、来年度以降の実験計画はおおむね申請時の計画にそって遂行してゆく。本年度に遂行及び遂行中の研究項目は以下の4項目である。1)DDS機能をもつ合成潤滑性薬剤の開発2)ウシ関節軟骨円板状組織片による摩擦係数の測定3)軟骨再生3次元培養組織への1)の薬剤の投与による軟骨組織再生の評価4)再生軟骨組織の動的粘弾性の測定1)DDS機能をもつ合成潤滑性薬剤の開発:関節軟骨成分に徐放性を持たした薬剤を開発した。含有率、徐放性については測定を委託し評価することを検討している。2)ウシ関節軟骨円板状組織片による摩擦係数の測定:ストレスレオメーターを用いて1)の薬剤の関節摩擦への影響を評価した。コントロールとして生理的緩衝液、ヒアルロン酸溶液を用いて測定した結果、関節摩擦係数への投与薬剤の影響が確認された。現在結果を解析中である。3)家兎膝関節内への1)の薬剤の投与による軟骨組織再生の評価:現在このin vitro実験を遂行中である。ウシ関節軟骨から軟骨細胞を採取し、アガロースゲル内で3次元培養しプレート状とする。軟骨修復促進作用を持たせた軟骨組織に親和性を持つゲル状潤滑剤を培養液内に添加し、経時的に組織反応を観察する。軟骨組織のうち、単位面積あたりの軟骨細胞数に変化があるか、軟骨基質量・質に変化が生じるかを評価する。同時に動的粘弾性測定し、再生軟骨もしくは修復軟骨が関節の力学環境に耐えうるかを評価する。
KAKENHI-PROJECT-14571397
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14571397
新規ニトログアノシン環状-リン酸の生体内生成とそのNOシグナルへの関与
新規な環状ヌクレオチドである8-ニトログアノシン3', 5'-サイクリック一リン酸(8-ニトロcGMP)は蛋白質チオール基に対してユニークな翻訳後修飾である蛋白質S-グアニル化(蛋白質チオール基に対するcGMP付加)をもたらす。本研究では、8-ニトロcGMPとチオール基の反応機構を解析した。また、蛋白質S-グアニル化の新しい分析法として、S-グアニル化に対する特異抗体と質量分析を組み合わせたS-グアニル化プロテオミクスを開発した。新規な環状ヌクレオチドである8-ニトログアノシン3', 5'-サイクリック一リン酸(8-ニトロcGMP)は蛋白質チオール基に対してユニークな翻訳後修飾である蛋白質S-グアニル化(蛋白質チオール基に対するcGMP付加)をもたらす。本研究では、8-ニトロcGMPとチオール基の反応機構を解析した。また、蛋白質S-グアニル化の新しい分析法として、S-グアニル化に対する特異抗体と質量分析を組み合わせたS-グアニル化プロテオミクスを開発した。8-ニトログアノシン3',5'-サイクリックーリン酸(8-ニトロcGMP)は、一酸化窒素生成に依存して細胞内に生成する新規な環状ヌクレオチドであり、蛋白質のチオール基に対して付加反応を起こし、蛋白質8-チオールcGMP付加体を形成する。本研究では、8-ニトロcGMPとチオール基との反応メカニズムを解析するとともに、その細胞シグナルへの影響を解析することを目的としている。平成19年度は、8-ニトロcGMPとチオール基の反応メカニズムを解析した。まず、8-ニトロcGMPと種々のアミノ酸の反応を解析したところ、8-ニトロcGMPはシステインとのみ反応し、その他のアミノ酸とは見かけ上全く反応せず、チオール基に選択的であることが分かった。また、チオール化合物と8-ニトログアニン誘導体との反応速度を解析した結果、8-ニトロcGMP>8-ニトログアノシン>>8-ニトログアニンの順であった。8-ニトロcGMPとチオール化合物の反応速度はpH依存的であり、チオール化合物のpKa付近で最大の反応速度を示し、それよりも弱酸性領域では反応性が著しく減少した。したがって、8-ニトロcGMPとの反応には、チオール基が酸解離したチオレートアニオンが主たる反応種であることが示された。蛋白質8-チオール付加体を検出するために特異抗体の作製を試みた。8-チオールcGMP付加体については、ウサギポリクローナルとマウスモノクローナル抗体を得た。また、8-チオールグアノシン付加体については、ウサギポリクローナル抗体を得た。これら抗体を用いて、次年度以降、細胞内における8-チオール付加体形成反応の解析を進める予定である。8-ニトログアノシン3',5'-サイクリックーリン酸(8-ニトロcGMP)は、一酸化窒素生成に依存して細胞内に生成する新規な環状ヌクレオチドであり、蛋白質のチオール基に対して付加反応を起こし、蛋白質8-チオールcGMP付加体を形成する(蛋白質S-グアニル化)。本研究では、8-ニトロcGMPとチオール基との反応メカニズムを解析するとともに、その細胞シグナルへの影響を解析することを目的としている。平成20年度は、蛋白質S-グアニル化について、質量分析に基づく解析手法の検討を行った。タンパク質モデルとして、組換えKeap1を用いた。すでに我々は、Keap1がS-グアニル化の細胞内標的タンパク質の一つであることを明らかにしている(Nature Chem.Bio1.,3,727,2007)。組換えKeap1を8-nitro-cGMPと反応させ、S-グアニル化Keap1を得た。それをトリプシン消化し、S-グアニル化システインを含むペプチド断片を作成した。抗S-グアニル化抗体を結合した抗体カラムを作成し、それを用いてS-グアニル化ペプチドを選択的に精製・濃縮した後、質量分析に供した。質量分析は、MALDI-TOF-MSおよびLC-ESI-MSにより行った。推定分子量と一致していたペプチドについては、さらにMSMS解析を行い、S-グアニル化ペプチドであることを確認した。特に、S-グアニル化ペプチドでは、cGMP構造に特徴的で優先的な解裂・脱離が起こっており、これを指標にS-グアニル化ペプチドを容易に同定できることが分かった。本手法は、新しい翻訳後修飾である蛋白質S-グアニル化の解析に有用であることが示された。
KAKENHI-PROJECT-19590312
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19590312
Lu-Hf法を用いた遠洋性褐色粘土堆積物の堆積年代決定手法の確立
過去の地球環境変動を知るには,それを記録しながら長期間かけて堆積した海底堆積物の組成を把握し,それを堆積年代値と結びつけることが有効である.ところが,大陸から遠く離れた広大な海域を占める遠洋性褐色粘土と呼ばれる堆積物については,正確な年代値を得る手法が確立されておらず,これが真の地球環境変動記録を知ることを阻んでいる.そこで本研究では遠洋性褐色粘土が魚骨片化石を多く含むことに着目し,それに高濃度で含まれるルテチウムが一定の時間で放射改変することを利用した年代測定法を適用することで,信頼性の高い年代値を得る手法を開発する.過去の地球環境変動を知るには,それを記録しながら長期間かけて堆積した海底堆積物の組成を把握し,それを堆積年代値と結びつけることが有効である.ところが,大陸から遠く離れた広大な海域を占める遠洋性褐色粘土と呼ばれる堆積物については,正確な年代値を得る手法が確立されておらず,これが真の地球環境変動記録を知ることを阻んでいる.そこで本研究では遠洋性褐色粘土が魚骨片化石を多く含むことに着目し,それに高濃度で含まれるルテチウムが一定の時間で放射改変することを利用した年代測定法を適用することで,信頼性の高い年代値を得る手法を開発する.
KAKENHI-PROJECT-19K14817
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K14817
層状複合アニオン化合物を用いた超高速シンチレータ材料探索
本研究では、超高速時間応答性を持つ新規シンチレータ材料の開発を行った。従来のシンチレータには数ナノ秒程度の発光寿命を持つ物質が使われており、この時定数が計測の時間分解能を決定づけている。本研究では数10ピコ秒程度の減衰定数を持つ半導体励起子発光をもつ新規材料を探索し、シンチレータ材として用いることで、時間分解能の大幅向上を目指す。励起子発光は通常、極低温下でしか発現しないが、層状構造を持つ化合物を用いることにより、量子閉じ込め効果による励起子結合エネルギーの増大を狙った。本研究では励起子発光を示す新規の複合アニオン化合物を探索し、その特性を評価することを目標とする。一年目は、新規材料の設計とその合成手法の開発を行った。励起子発光を示す複合アニオン化合物(Cu2S2)(Sr3Sc2O5)を基本構造とし、重元素で置換した新物質を検討することで、X線やガンマ線のエネルギー付与率の高い物質の設計を行った。これらの物質の生成の可能性を推測するために、前駆体と目的物質の生成エネルギーを第一原理計算によって評価した。この結果、新物質である(Cu2Se2)(Sr3Sc2O5)、(Ag2Se2)(Sr3Sc2O5)の生成が可能であることを示唆する結果が得られた。また、バンド構造から、これらの物質が基本物質と同様の直接遷移型の半導体であることが示唆された。この結果をもとに実際に固相反応法を用いて合成を行ったところ、2種類の新物質の合成がそれぞれ単相で得られた。拡散反射スペクトルと発光スペクトルを測定すると、これらの物質がそれぞれ2.9,2.5evのバンドギャップを持つ半導体であり、バンド端付近に数10ピコ秒の発光寿命を持つ励起子発光を示すことを確認した。また、この他にも複数の新物質が合成可能であることを発見した。新物質探索を行うにあたり、第一原理計算を利用した予測を行い、実際に予測に従った新物質を発見することができた。また、本研究を行うにあたり類似構造を持つ新物質も複数発見しており、これらの物質からも半導体励起子発光が確認されている。また、一連の新規層状化合物は励起子発光だけでなく、熱電特性やイオン電導などの他の機能性を示すものも含まれており、今後の発展が期待できる。1年目で発見した化合物については既にいくつかの物質の発光特性を評価している。今後はその他に発見した新物質の測定を行う。また、計算科学を利用した物質探索法を他の構造にも利用し、引き続き新物質探索を行う。本研究では、超高速時間応答性を持つ新規シンチレータ材料の開発を行った。従来のシンチレータには数ナノ秒程度の発光寿命を持つ物質が使われており、この時定数が計測の時間分解能を決定づけている。本研究では数10ピコ秒程度の減衰定数を持つ半導体励起子発光をもつ新規材料を探索し、シンチレータ材として用いることで、時間分解能の大幅向上を目指す。励起子発光は通常、極低温下でしか発現しないが、層状構造を持つ化合物を用いることにより、量子閉じ込め効果による励起子結合エネルギーの増大を狙った。本研究では励起子発光を示す新規の複合アニオン化合物を探索し、その特性を評価することを目標とする。一年目は、新規材料の設計とその合成手法の開発を行った。励起子発光を示す複合アニオン化合物(Cu2S2)(Sr3Sc2O5)を基本構造とし、重元素で置換した新物質を検討することで、X線やガンマ線のエネルギー付与率の高い物質の設計を行った。これらの物質の生成の可能性を推測するために、前駆体と目的物質の生成エネルギーを第一原理計算によって評価した。この結果、新物質である(Cu2Se2)(Sr3Sc2O5)、(Ag2Se2)(Sr3Sc2O5)の生成が可能であることを示唆する結果が得られた。また、バンド構造から、これらの物質が基本物質と同様の直接遷移型の半導体であることが示唆された。この結果をもとに実際に固相反応法を用いて合成を行ったところ、2種類の新物質の合成がそれぞれ単相で得られた。拡散反射スペクトルと発光スペクトルを測定すると、これらの物質がそれぞれ2.9,2.5evのバンドギャップを持つ半導体であり、バンド端付近に数10ピコ秒の発光寿命を持つ励起子発光を示すことを確認した。また、この他にも複数の新物質が合成可能であることを発見した。新物質探索を行うにあたり、第一原理計算を利用した予測を行い、実際に予測に従った新物質を発見することができた。また、本研究を行うにあたり類似構造を持つ新物質も複数発見しており、これらの物質からも半導体励起子発光が確認されている。また、一連の新規層状化合物は励起子発光だけでなく、熱電特性やイオン電導などの他の機能性を示すものも含まれており、今後の発展が期待できる。1年目で発見した化合物については既にいくつかの物質の発光特性を評価している。今後はその他に発見した新物質の測定を行う。また、計算科学を利用した物質探索法を他の構造にも利用し、引き続き新物質探索を行う。
KAKENHI-PROJECT-18J01627
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J01627
抗炎症性分泌蛋白Sfrp5のBリンパ球抑制機序と胎児母体間免疫寛容への関与
妊娠は骨髄におけるBリンパ球の分化の早期の段階を抑制し、同様の現象をエストロゲンの投与で誘導することが出来た。エストロゲンによって間質細胞で誘導される蛋白としてSFRP5を同定した。SFRP5を過剰発現するマウスを作製し解析を行ったところ、Bリンパ球造血が顕著に抑制され、特に骨髄中のリンパ球系共通前駆細胞の段階で分化障害を引き起こした。そのメカニズムとして、SFRP5は多くの遺伝子発現に影響を与え、特にNotchシグナル系の活性化が造血幹細胞・リンパ球系前駆細胞の分化に影響を与えている可能性が示唆された。さらにSFRP5欠損マウスでは、妊娠やエストロゲンが誘導するBリンパ球抑制に変化を生じた。申請者らは、エストロゲン刺激後の骨髄間質細胞において、Wntシグナルの調節分子soluble Frizzled-relatedprotein (SFRP)が高発現することを見出した。さらに、SFRPが免疫系において中心的な働きをするリンパ球の分化・増殖を抑制することを、マウスの細胞を用いたin vitroの実験系で示した。本研究では、SFRP上昇が生理的なリンパ球造血に及ぼす影響を明らかにする目的で、過剰発現マウスを作製し解析を行った。Wntシグナルの変化を介して胎児の発生に影響を与える可能性があったため、生後数週目から循環血液中で高濃度になるように工夫したノックインマウスモデルを用いた。SFRP1とSFRP5の2種類の過剰発現マウスを作製して解析したところ、どちらのマウスも野生型と比較してBリンパ球が有意に減少していた。特にSFRP5過剰発現の方がSFRP1よりも顕著なBリンパ球減少と脾臓の縮小をきたした。SFRP5過剰発現マウスの脾臓では幼弱な形質のBリンパ球が減少していたため、骨髄でのBリンパ球の分化が障害されているのではないかと推測し解析を進めた。その結果、SFRP5過剰発現マウスの骨髄ではpro-B細胞以降のBリンパ球前駆細胞が著減している一方で、リンパ系共通幹細胞が有意に増加していることが分かった。このことから、SFRP5の過剰発現状態は、骨髄中のBリンパ球の分化過程において、リンパ系共通幹細胞からproB細胞への段階を障害していると考えられた。この現象の分子メカニズムを明らかにする目的で、SFRP5過剰発現マウスのリンパ系共通幹細胞の遺伝子発現の特徴を、野生型マウスのリンパ系共通幹細胞と比較検討した。その結果、SFRP5過剰発現マウスのリンパ系共通幹細胞ではNotchシグナルが活性化していることが分かった。哺乳動物にとって妊娠は、非自己の組織が体内に長期間存在する異常な状態であり、その維持のために母体は自らの免疫系を大きく変容させる。申請者らは、母体の胎児に対する免疫寛容の誘導メカニズムを明らかにすることを目標とし、女性ホルモンの骨髄間質細胞を介した作用に着目して解析を行った。その結果、女性ホルモン(エストロゲン)刺激後の骨髄間質細胞において、Wntシグナルの調節分子soluble Frizzled-related protein (SFRP)が高発現することを見出した。そこで本研究では、SFRP過剰発現マウスを作製し解析を行った。SFRPはWntシグナルの変化を介して胎児の発生に影響を与える可能性があったため、生後数週目から目的蛋白が循環血液中で高濃度になるように工夫したノックインマウスモデルを用いた。SFRP1とSFRP5の2種類の過剰発現マウスを作製して解析したところ、どちらのマウスも野生型と比較してBリンパ球が有意に減少していた。特にSFRP5過剰発現の方がSFRP1よりも顕著なBリンパ球減少と脾臓の縮小をきたした。この現象の分子メカニズムを明らかにする目的で、SFRP5過剰発現マウスの骨髄からリンパ系共通幹細胞を高純度で分離し、それらの遺伝子発現の特徴を野生型マウスと比較検討した。その結果、SFRP5過剰発現マウスのリンパ系共通幹細胞ではNotchシグナルが活性化していることが分かった。さらにその知見の裏付けを得るため、SFRP5ノックアウトマウスを用いた検討を行った。興味深いことにSFRP5ノックアウトマウスの骨髄中に含まれる造血幹細胞やリンパ系共通幹細胞は、エストロゲンに対する感受性が野生型よりも高かった。また、エストロゲン刺激後の遺伝子発現を検討した結果、Notchシグナルの下流に存在する遺伝子の発現に変化が認められた。申請者らは、母体の胎児に対する免疫寛容の誘導メカニズムを明らかにすることを目標とし、女性ホルモンの骨髄間質細胞を介した作用に着目して解析を行った。その結果、エストロゲン刺激後の骨髄間質細胞において、Wntシグナルの調節分子soluble Frizzled-related protein (SFRP)が高発現することを見出した。そこで本研究では、SFRP過剰発現マウスを作製し解析を行った。SFRP1とSFRP5の2種類の過剰発現マウスを作製して解析したところ、どちらのマウスも野生型と比較してBリンパ球が有意に減少したが、特にSFRP5過剰発現の方がSFRP1よりも顕著なBリンパ球減少と脾臓の縮小をきたした。この現象の分子メカニズムを明らかにする目的で、SFRP5過剰発現マウスの骨髄からリンパ系共通幹細胞を高純度で分離し、それらの遺伝子発現の特徴を野生型マウスと比較検討した。その結果、SFRP5過剰発現マウスのリンパ系共通幹細胞ではNotchシグナルが活性化していることが分かった。さらにその知見の裏付けを得るため、SFRP5ノックアウトマウスを用いた検討を行った。
KAKENHI-PROJECT-25461450
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25461450
抗炎症性分泌蛋白Sfrp5のBリンパ球抑制機序と胎児母体間免疫寛容への関与
興味深いことにSFRP5ノックアウトマウスの骨髄中に含まれる造血幹細胞やリンパ系共通幹細胞は、エストロゲンに対する感受性が野生型よりも高かった。また、エストロゲン刺激後の遺伝子発現を検討した結果、Notchシグナルの下流に存在する遺伝子の発現に変化が認められた。しかし、SFRP5ノックアウトマウスを妊娠させて骨髄での造血機能を評価した結果では、野生型の妊娠マウスと比較して優位な変化を認めなかった。その原因として、妊娠期のSFRP5ノックアウトマウスの骨髄における他のSFRPファミリーの変化を調べたところ、SFRP1-4のすべてにおいて発現の上昇が認められた。このことからSFRP5ノックアウトマウスでは、他のSFRP分子による代替機能が働いていると考えられた。妊娠は骨髄におけるBリンパ球の分化の早期の段階を抑制し、同様の現象をエストロゲンの投与で誘導することが出来た。エストロゲンによって間質細胞で誘導される蛋白としてSFRP5を同定した。SFRP5を過剰発現するマウスを作製し解析を行ったところ、Bリンパ球造血が顕著に抑制され、特に骨髄中のリンパ球系共通前駆細胞の段階で分化障害を引き起こした。そのメカニズムとして、SFRP5は多くの遺伝子発現に影響を与え、特にNotchシグナル系の活性化が造血幹細胞・リンパ球系前駆細胞の分化に影響を与えている可能性が示唆された。さらにSFRP5欠損マウスでは、妊娠やエストロゲンが誘導するBリンパ球抑制に変化を生じた。交付申請書ではSFRP過剰発現マウスの精緻な解析を初年度の目標として掲げ、2年目の目標としてSFRP5ノックアウトマウスを用いた検討を進めてSFRP5が生理的にBリンパ球抑制に関与していることを明らかにすることを掲げた。これらの研究成果は米国血液学会にて発表でき、さらに現段階までの成果をまとめた論文が2015年1月にEuropean Journal of Immunologyに受理された。マイクロアレイを用いた発現遺伝子検索から、Bリンパ球の分化障害を誘導するメカニズムとしてNotchシグナルの関与が示唆されたが、現在これらのメカニズムの関与を証明するため研究を進めている。以上の状況を総合すると,本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。血液内科学SFRP5ノックアウトマウスを用いた検討を進め、SFRP5がどのような分子機構でBリンパ球系の早期分化過程を抑制しているのかを明らかにする。さらに造血幹細胞・リンパ球前駆細胞におけるSFRP5の受容体を同定することを目標に検討を進めていく計画である。交付申請書では、SFRP過剰発現マウスの精緻な解析を初年度の目標として掲げた。SFRP5過剰発現マウスの骨髄において、リンパ系共通幹細胞の分化が障害されていることが示され、初期分化過程に極めて特異的に作用していることが明らかとなった。さらにマイクロアレイを用いた発現遺伝子検索においても信頼できるデーターが得られ、分化障害の分子メカニズムとしてNotchシグナルの関与が示唆された。現在SFRP5ノックアウトマウスを用いた実験でその裏付けをとる検討を行っている。
KAKENHI-PROJECT-25461450
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複数人物が存在する環境での色情報による単一人物の実時間追跡
複数人物が存在する環境での色情報による単一人物の実時間追跡に関する研究として,本年度は以下の項目について研究した.・指定人物を同定する特徴量として,人物の着ている服の色情報を利用した.服装やその模様によっては,部位や見る方向により見えが変化するため,人物の簡易立体モデルを作成した.人物モデルは頭部・胴部・脚部からなり,それぞれ直方体で表現する.その表面をメッシュ状に分割する際,分割数を可変とすることで体型や服装の違いに対応できるよう改良した.・人物追跡時に人物の向きを推定する手法を考案した.人物は進行方向を向いて移動していると仮定し,顔の向きを検出することでその人物の向きを推定する.指定人物の顔を8方向から撮影した画像を頭髪領域,肌色領域に分割し,テンプレートマッチングにより顔の向きを検出した.また,画面上で顔が検出されない場合には画面上での人物の移動方向から人物の向きを推定するよう改良した.・人物追跡手法としては,これまでに提案してきた手法を利用した.人物検出時は,想定される画面上での向きと大きさから人物モデルのメッシュサイズを計算し,画面上をメッシュ状に分割した上で代表色のヒストグラムを利用して指定人物を検出する手法を考案した.画面上で四方へ移動するジャケットを着た人物を正しく追跡できることを確認した.・実時間追跡の実現に向け,人物検出処理を分散処理化した.ただし,現状ではまだ一部分の分散処理化に留まっているため,処理速度が多少高速化された状態である.・今後の課題としては,人物検出時に粗密検出による人物向き推定精度の向上や,実時間処理化へのボトルネックの調査,実時間処理の実装などが挙げられる.複数人物が存在する環境での色情報による単一人物の実時間追跡に関する研究として,本年度は以下の項目について研究した.・指定人物を同定する特徴量として,人物の着ている服の色情報を利用した.服装やその模様によっては,部位や見る方向により見えが変化するため,人物の簡易立体モデルを作成した.指定人物を複数方向から撮影し,各方向から観測された人物領域から立体モデルの大きさを決定する.立体モデルは頭部・胴部・脚部からなり,それぞれ直方体で表現する.その表面をメッシュ状に分割し,小領域ごとに色情報を登録する.人物領域全体を色空間でクラスタリングすることで代表色を選択し,小領域ごとに含まれる代表色情報とその割合を登録する.・人物追跡時に人物の向きを推定する手法を考案した.人物は進行方向を向いて移動していると仮定し,顔の向きを検出することでその人物の向きを推定する.指定人物を登録するとき,複数の方向から指定人物を撮影し,顔の代表色情報とともにそれらの色の配置パターンも登録しておく.人物の向きを推定するときは,頭部の代表色領域を検出後,その配置パターンから向きを推定する.ただし,画面上での人物の大きさや隠蔽度合いによっては正しい向きが検出できない場合もあり,さらなる改良が必要である.・人物追跡手法としては,これまでに提案してきた手法を利用した.ただし,人物の移動方向や向きから次フレームでの見えを推定し,立体モデルから次フレームで観測されうる代表色を選択することで,人物の向きによる見えの違いに対応した.画面上で四方へ移動するジャケットを着た人物を正しく追跡できることを確認した.・今後の課題としては,人物の向き推定手法の改良や,指定人物以外の人物に関する情報の動的取得やその利用方法についての検討,さらに分散処理による実時間処理化などが挙げられる.複数人物が存在する環境での色情報による単一人物の実時間追跡に関する研究として,本年度は以下の項目について研究した.・指定人物を同定する特徴量として,人物の着ている服の色情報を利用した.服装やその模様によっては,部位や見る方向により見えが変化するため,人物の簡易立体モデルを作成した.人物モデルは頭部・胴部・脚部からなり,それぞれ直方体で表現する.その表面をメッシュ状に分割する際,分割数を可変とすることで体型や服装の違いに対応できるよう改良した.・人物追跡時に人物の向きを推定する手法を考案した.人物は進行方向を向いて移動していると仮定し,顔の向きを検出することでその人物の向きを推定する.指定人物の顔を8方向から撮影した画像を頭髪領域,肌色領域に分割し,テンプレートマッチングにより顔の向きを検出した.また,画面上で顔が検出されない場合には画面上での人物の移動方向から人物の向きを推定するよう改良した.・人物追跡手法としては,これまでに提案してきた手法を利用した.人物検出時は,想定される画面上での向きと大きさから人物モデルのメッシュサイズを計算し,画面上をメッシュ状に分割した上で代表色のヒストグラムを利用して指定人物を検出する手法を考案した.画面上で四方へ移動するジャケットを着た人物を正しく追跡できることを確認した.・実時間追跡の実現に向け,人物検出処理を分散処理化した.ただし,現状ではまだ一部分の分散処理化に留まっているため,処理速度が多少高速化された状態である.・今後の課題としては,人物検出時に粗密検出による人物向き推定精度の向上や,実時間処理化へのボトルネックの調査,実時間処理の実装などが挙げられる.
KAKENHI-PROJECT-16700178
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16700178
無人小型ヘリに搭載した熱カメラによる夜間の災害把握
本研究では,地震や津波の被災地域を小型無人ヘリコプター(UAV)から撮影し,得られた画像からSfM(Structure from Motion)手法により3次元モデルの構築を試みた.2011年東日本大震災に関しては倒壊建物,2016年熊本地震に関しては地表地震断層,墓石の転倒,斜面崩壊,被災橋梁,倒壊建物などを空撮し,3Dモデルを構築した.これらにより,詳細に視覚的な被災状況の把握を行うことが可能であることを確認できた.また,3Dモデルに地上基準点の座標を与え,位置情報を追加する前後でのモデル精度を比較した.無人航空機(UAV)は有害物質の流出地域や火山,ダムや高層ビルといった高所等,有人での調査・観測が困難な現場での運用が可能である.また,災害発生時においては,UAVは即時性に優れているため迅速な状況把握への利用が期待される.また,対象物に接近できるため高解像度の画像を得やすいという利点からも,最近非常に注目を集めている.本研究では,2011年東北地方太平洋沖地震津波によって被災した建物をUAVと地上から撮影し,得られた画像からSfM (Structure from Motion)手法によって,その3次元モデルの構築を試みた.構築した3Dモデルと別の3Dモデルを結合させることによって,モデルの精度向上を試みた.さらに2015年4月25日に発生したネパール地震の被災状況に関しても,現地で直後に撮影されたUAV空撮画像を用いて被害建物の3次元モデルの構築を行い,被災状況を正確にかつ視覚的に表現できることを示した.UAV空撮とSfM技術の融合によって,災害時に倒壊の危険性がある建物や有害物質の発生している場所などを安全,簡便,迅速に観測及びモデリングすることが今後可能となる.また,得られた情報をデジタルアーカイブとして保存し,今後の災害対応に役立てることができると考えられる.今後の課題として,UAV空撮画像のみによって,高精度の3Dモデルを構築するための飛行・撮影条件の検討が必要である.また被災建物だけでなく,土木構造物等のモデルを作成し,安全点検や災害時におけるUAVの有用性を示すことを考えている.東日本大震災の被災建物が残されている地区があったので,その周囲でドローンを飛ばし,画像データを取得することができた.ネパール地震に関しては,各国の調査隊が持ち込んだドローン空撮映像がウェブ上に掲載されており,それらを使用して被害把握や3次元モデルを構築することができた.無人航空機(UAV,ドローン)は有害物質の流出地域や火山,ダムや高層ビルといった高所等,有人での調査・観測が困難な現場での運用が可能である.災害発生時においては,UAVは即時性に優れているため迅速な状況把握への利用が期待される.また,対象物に接近できるため高解像度の画像を得やすいという利点からも,最近非常に注目を集めている.本研究では,2011年東北地方太平洋沖地震による津波によって被災した建物をUAVと地上から撮影し,得られた画像からSfM (Structure from Motion)手法によって,その3次元モデルの構築を試みた.2015年4月25日に発生したネパール地震の被災状況に関しても,現地で直後に撮影されたUAV空撮画像を用いて被害建物の3次元モデルの構築を行い,被災状況を正確にかつ視覚的に表現できることを示した.2016年4月に発生した一連の熊本地震に関しては,地表地震断層,墓石の転倒被害,斜面崩壊,被災橋梁,建物倒壊被害などを実際にUAVで空撮し,取得した空撮画像からSfM手法による3Dモデルの構築,及びオルソ画像と数値表層モデル(DSM)の作成を行った.これらにより,詳細に視覚的な被災状況の把握を行うことが可能であることを確認できた.また,3Dモデルに地上基準点の座標を与え,位置情報を追加する前後でのモデル精度を比較した.今後の課題として,UAV空撮画像のみによって,高精度の3Dモデルを構築するための飛行・撮影条件の検討が必要である.また被災建物だけでなく,土木構造物等のモデルを作成し,安全点検や災害時におけるUAVの有用性を示すことを考えている.本研究では,地震や津波の被災地域を小型無人ヘリコプター(UAV)から撮影し,得られた画像からSfM(Structure from Motion)手法により3次元モデルの構築を試みた.2011年東日本大震災に関しては倒壊建物,2016年熊本地震に関しては地表地震断層,墓石の転倒,斜面崩壊,被災橋梁,倒壊建物などを空撮し,3Dモデルを構築した.これらにより,詳細に視覚的な被災状況の把握を行うことが可能であることを確認できた.また,3Dモデルに地上基準点の座標を与え,位置情報を追加する前後でのモデル精度を比較した.研究に必要なUAV(ドローン)を購入し,千葉市の消防学校の訓練施設を借用して,空撮実験を行う段取りを整えている.最近,ドローンの市街地での飛行には国土交通省の許可が必要になったため,申請を行う.撮影対象として,千葉市緑区にある千葉市消防学校の訓練棟を選定し,この構造物を現地で自動操縦および手動操縦によりUAVから空撮を行う.使用するUAVは,4回転の小型マルチローターPhantom2 vision+ (DJI社製)を用いる.飛行高度は地上約80m,撮影角度は鉛直下方とし,空撮を行なう.SfM手法による3次元モデル構築には商用ソフトウェアPhotoScanを使用する.SfMは,対象物をカメラの視点を変えながら撮影した複数枚の画像から,3次元幾何形状とカメラの位置・姿勢を同時に算出する手法である.
KAKENHI-PROJECT-15K12480
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K12480
無人小型ヘリに搭載した熱カメラによる夜間の災害把握
また, GPSを測定する標定点として,白黒のプラスチックタイルを主塔屋上と訓練棟周囲の地上に設置し,空撮画像に写り込むタイルに地上参照点として座標を追加することで,作成した3次元モデルに位置情報を与える.これにより,モデルからDTMや長さ,体積の情報を取得することが可能となる.またこのほか,国土地理院等が災害現場を撮影した映像を用いて,被害把握を行う.都市システム安全工学空撮画像データなど,無料で一般公開されていたものを多く研究に利用したため.高解像度4Kカメラを搭載した新型のUAVを購入し,より高精度な検証用空撮画像データを取得する.国内外の学会などに積極的に参加し,情報収集と研究成果発表を行う.
KAKENHI-PROJECT-15K12480
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K12480
両アレル変異を有するES細胞ライブラリーの構築と遺伝子探索
ES細胞を利用すると、任意の遺伝子を欠損させた遺伝子改変マウスを作製することが可能であるばかりでなく、試験管内であらゆる組織に分化可能である。本研究では、ES細胞において相同組み換えを高頻度に起こさせるために、Bloom遺伝子をテトラサイクリンで制御できるようにした。そうすることにより、片アレルに変異が導入された細胞がテトラサイクリンを添加することにより、両アレルに変異を有する細胞に転換し、様々な変異を両アレルに有するようなES細胞ライブラリーが構築された。実際に両アレル変異を有するクローンを取得出来るか確かめた。変異形質としては、膜表面に発現するGPI-アンカー型蛋白欠損クローンを選択した。このシステムの良いところは、GPI-アンカー生合成に関わっている遺伝子が20数種類知られていてそれらはゲノム全体に均一に分布していることである。しかも、それら生合成に関わるどれか一つの遺伝子が欠損した時には、膜表面のGPI-アンンカー欠損という同じ表現型を示し、欠損細胞はエアロリジン耐性細胞として生き残ってくる特徴がある。結果は既存の23種類の遺伝子の内、12種類の遺伝子変異をもつ細胞株が取得できたので、システムの有効性が証明できた。(Yusa, K., etal.:Genome-wide phenotype analysisin EScells by regulated disruption of the Bloom's syndrome gene. Nature 429, 896-899, 2004)ES細胞を利用すると、任意の遺伝子を欠損させた遺伝子改変マウスを作製することが可能であるばかりでなく、試験管内であらゆる組織に分化可能である。本研究では、ES細胞において相同組み換えを高頻度に起こさせるために、Bloom遺伝子をテトラサイクリンで制御できるようにした。そうすることにより、片アレルに変異が導入された細胞がテトラサイクリンを添加することにより、両アレルに変異を有する細胞に転換し、様々な変異を両アレルに有するようなES細胞ライブラリーが構築された。実際に両アレル変異を有するクローンを取得出来るか確かめた。変異形質としては、膜表面に発現するGPI-アンカー型蛋白欠損クローンを選択した。このシステムの良いところは、GPI-アンカー生合成に関わっている遺伝子が20数種類知られていてそれらはゲノム全体に均一に分布していることである。しかも、それら生合成に関わるどれか一つの遺伝子が欠損した時には、膜表面のGPI-アンンカー欠損という同じ表現型を示し、欠損細胞はエアロリジン耐性細胞として生き残ってくる特徴がある。結果は既存の23種類の遺伝子の内、12種類の遺伝子変異をもつ細胞株が取得できたので、システムの有効性が証明できた。(Yusa, K., etal.:Genome-wide phenotype analysisin EScells by regulated disruption of the Bloom's syndrome gene. Nature 429, 896-899, 2004)
KAKENHI-PROJECT-16659102
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16659102
がん化に伴う肝P450分子種の変動とその特徴;治療への応用を目指して
本報告では、適当な誘導物質でP450分子の誘導(あるいは減少)が認められるモデル細胞株を検索する目的で、各臓器由来のヒト腫瘍細胞株の細胞内P450レベルを検索した。細胞内P450レベルは、抗CYP1A,CYP2CあるいはCYP3A抗血清を用いたflow cytometryによって解析した。この際、細胞は必要に応じてフェノバルビタール(PB)、あるいはデキサメタゾン(DEX)による前処理を行った。検索した約10種類の細胞株に於いて、CYP1A分子種の発現は認められなかった。一方、白血病細胞、胃癌細胞、肝癌細胞、膀胱癌細胞の一部などでCYP2CおよびCYP3A分子種の恒常的な発現が認められた。細胞1個あたりのP450発現レベルは、酵母発現系での定量的解析との比較より最大6.5×10^4P450分子程度と評価された。PBによるCYP2CおよびCYP3Aのin vitro発現誘導はいずれの細胞にも認められなかったが、T24膀胱癌細胞において、DEXによるCYP3Aレベルの約3倍の増加が認められた。次いで、CYP3Aでの代謝活性化が示唆されている抗癌剤シクロフォスファミドのT24細胞に対する増殖抑制効果を検討したところ、そのIC_<50>はDEXの存在下で未処理の場合の約1/2に減少した。今後、他のパネルの癌細胞の検索、より有効な誘導剤、誘導条件の検索を行うとともに、リポソームを用いた細胞内抗癌剤送達法とP450誘導剤との併用による抗癌剤の効果増強を検討したい。本報告では、適当な誘導物質でP450分子の誘導(あるいは減少)が認められるモデル細胞株を検索する目的で、各臓器由来のヒト腫瘍細胞株の細胞内P450レベルを検索した。細胞内P450レベルは、抗CYP1A,CYP2CあるいはCYP3A抗血清を用いたflow cytometryによって解析した。この際、細胞は必要に応じてフェノバルビタール(PB)、あるいはデキサメタゾン(DEX)による前処理を行った。検索した約10種類の細胞株に於いて、CYP1A分子種の発現は認められなかった。一方、白血病細胞、胃癌細胞、肝癌細胞、膀胱癌細胞の一部などでCYP2CおよびCYP3A分子種の恒常的な発現が認められた。細胞1個あたりのP450発現レベルは、酵母発現系での定量的解析との比較より最大6.5×10^4P450分子程度と評価された。PBによるCYP2CおよびCYP3Aのin vitro発現誘導はいずれの細胞にも認められなかったが、T24膀胱癌細胞において、DEXによるCYP3Aレベルの約3倍の増加が認められた。次いで、CYP3Aでの代謝活性化が示唆されている抗癌剤シクロフォスファミドのT24細胞に対する増殖抑制効果を検討したところ、そのIC_<50>はDEXの存在下で未処理の場合の約1/2に減少した。今後、他のパネルの癌細胞の検索、より有効な誘導剤、誘導条件の検索を行うとともに、リポソームを用いた細胞内抗癌剤送達法とP450誘導剤との併用による抗癌剤の効果増強を検討したい。
KAKENHI-PROJECT-07274209
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07274209
古代寺院における「伝」と「像」の制作活動-長安と平城京の諸寺院間ネットワーク-
高志の国文学館・大伴家持生誕1300年記念連続講演1「大伴家持と聖武天皇」(2018.4.15、於高志の国文学館)において、『万葉集』・大伴家持と聖武朝の仏教寺院の「伝」と「肖像」の制作活動を対比して示し、『万葉集』の漢文序にも、大安寺三碑に共通する概念が見られることを指摘、大伴家持と聖武朝の仏教の関係を論じた。仏教文学会6月例会シンポジウム「《冥界》というもうひとつの世界ー『日本霊異記』の国家観と歴史叙述」(2018.6.9、於大東文化会館ホール)でコーディネーター・司会をつとめ、「シンポジウム総括」を『仏教文学』44号(2019年5月刊行予定)に執筆。『日本霊異記』序文および中巻第一縁の聖武天皇像をはじめとする国家観と歴史叙述には、大安寺三碑のひとつ『南天竺婆羅門僧正碑并序』と同じ論理が展開することを指摘し、正倉院文書から知られる聖武朝の写経と勘経を経て、官大寺の僧侶の経典理解と学問体系が醸成され、それが薬師寺僧景戒の撰になる『日本霊異記』にも継承されてたことを論じた。大安寺三碑や金石文にみられる仏教的な概念は、出典語、翻訳・翻案表現として、奈良時代の文学に浸透しており、それが聖武朝の造寺・造像をはじめとする仏教的環境に如実に反映していることを論じた。『考古学ジャーナル』724号(2019年4月刊)に、同705号(2017年11月刊)の続稿として「古代寺院における「伝」と「像」の制作活動ー長安と平城京の諸寺院間ネットワークー(2)」を掲載し、本研究の進捗状況を報告した。「古代・『懐風藻』と奈良朝漢文学」として「漢籍受容」「近江朝の漢文学」「記紀風土記の漢文」「懐風藻」を『日本思想史事典』(2019年4月刊行予定)に執筆。「「碑文」体の伝と檀像ー大安寺文化圏以前の碑ー」を『小口雅史教授記念論集』(2019年4月刊行予定)に執筆。「長安と平城京の寺院ネットワーク」について、第一に、官大寺の文化の伝播である。8世紀末の大安寺三碑の国家観・歴史叙述が『日本霊異記』に通底し、長安西明寺大安寺文化圏の出典体系のみならず、碑石の形状までもが地方寺院「浄水寺南大門碑」に伝播していた。第二に、大安寺三碑のもつ新たな「伝」「賛」「肖像」の3点セットの様式は、鑑真伝・『唐大和上東征伝』巻末詩群・影像と同一であり、8世紀後半に渡来僧がもたらした。第三に、その様式は空海撰『故僧正勤操大徳影讃并序』に継承され、「賛」の重要性が確認された。「伝」に付載される「賛」、『日本霊異記』の「賛」を検証する。碑文体の「伝」のみならず、寺碑『大安寺碑文』・『薬師寺仏足石記』、空海撰『沙門勝道歴山瑩珠碑』『益田池碑文』をはじめ、平安初期までの金石文を再検討し、従来、空海将来の「真言祖師伝」が淵源とされてきた「賛」の文学が、大安寺三碑に溯る系譜を形成していることを検証する。第四に、大安寺三碑の嚆矢「道セン碑」と鑑真伝三部作が重視する中国祖師伝の法統系譜という観点から、最澄をはじめとする天台系の文献を調査する。次に、「肖像」について、第五に、天平期の「肖像」彫刻について、鑑真和上像・興福寺八部衆等の塑像彫刻群と大安寺様式・唐招提寺様式とよばれる檀像彫刻群について、正倉院文書を視野にいれた調査を続行する。第六に、空海将来の「真言祖師伝」によって画像に注目する。さらに、インド・カンボジア・中国・フランス・イタリア・スウェーデンとの国際共同研究である。第六に、各国の説話や「伝」、芸能・儀礼との比較研究を進める。海外の要請に応え、時代とジャンルの幅を広げ、広く仏教美術・版本挿絵等の「画賛」や芸能・儀礼を視野に入れた国際シンポジウムを開催する。第七に、翻訳論出典論研究会で、日本古典文学の翻訳、海外の日本語教育のための画像入り翻訳テキストを作成する。大安寺三碑の特質と重要性が確認されたので、これをひとつの基準とし、従来の墓誌・墓碑・碑文の概念を再検討し、誄についても検討を加える。民俗学・文化人類学との学際研究により、口承文学と「伝」、葬送儀礼と「伝」の関係について調査を進め、8月1922日、日本文化学会AI2019年度夏季大会国際シンポジウム「古代からの風」(於神戸女子大学)との共催で、国際シンポジウム第一日「海彼からの風」、第二日「日本の古代信仰と芸能・儀礼」、第三日「伝・物語と口承文学」の開催を予定している。マリア・キアラ・ミリオーレと、『南天竺婆羅門僧正碑并序』『大安寺碑文』の翻訳を完成させるとともに、伝の文体について研究を進める。
KAKENHI-PROJECT-16K02373
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古代寺院における「伝」と「像」の制作活動-長安と平城京の諸寺院間ネットワーク-
10月19日、水門の会国際シンポジウム(於大東文化会館ホール)において、マリア・キアラ・ミリオーレとの共同研究の成果を発表し、日本古典文学の翻訳の問題について検討を加える。10月27日「東西文化の融合」国際シンポジウム(於大東文化会館ホール)において、翻訳論・出典論をテーマとして、シンポジウムを開催予定。2020年2月、パリ・東洋文化研究所、ナポリ東洋大学との共催による国際シンポジウムを開催予定。「伝」と「肖像」の概念を、真言祖師伝をはじめとする僧侶の肖像画、歌人の肖像である百人一首絵、『南総里見八犬伝』をはじめとする版本の口絵・挿絵にも拡大して検討を加え、国際的な日本学としての可能性を探る。国際的に日本古典文学研究を発信し、海外の日本学との連携を図っていくためには、翻訳の重要性あわせて、海外における日本語教育の需要に応えて、日本古典文学の翻訳教材の開発と発信について、全国大学国語国文学会学会創立60周年記念大会シンポジウム「日本とインドー文明における固有と普遍」の講演「日本文化の源流としてのインド」で、天竺僧菩提僊那の伝『南天竺婆羅門僧正碑并序』の菩提僊那が弟子に託した遺言を分析、伝が第一の遺言の「阿弥陀浄土」の完成に沈黙するのは、同じ天平宝字四年(760)に崩御した光明皇太后のふたつの追善事業、1平面的二次元で阿弥陀画像を顕現した四十九日斎会、2立体的三次元の浄土庭園を造営した一周忌斎会が同趣旨であったため、官大寺である大安寺僧がこの事業に参画し、個人的な菩提僊那の遺言が発展的に吸収されたとみて、菩提僊那と光明皇后の造寺・造仏事業との深い関係を論じた。「伝」と「肖像」の問題を日本文学史のうえで俯瞰するために、第8回「東西文化の融合」国際シンポジウム「傀儡子と観相(人相占い)の東西」で『南総里見八犬伝』巻六巻頭口絵を伝で絵解きし、犬坂毛野と女田楽旦開野の「伝」と「肖像」を分析した。第一に、口絵の漢詩賛は男姿の毛野、和歌賛は女姿の旦開野に対応し、本文中の伝を要約する。漢詩賛は、毛野の父粟飯原胤度の冤罪事件の伝記的な語り、1品七の昔物語、2毛野の犬田小文吾への告白、3小文吾の称讃に対応し、口絵の漢詩賛へと収斂されていく。第二に、役者絵的な口絵と説明的な挿絵が対応し、口絵枠の肖像群十九名が役者絵的趣向で千鳥に配され、下半部は十五年前の冤罪事件、上半部は対牛楼仇討ちの登場人物群である。第三に、女田楽旦開野は傀儡子で、巷間の傀儡師を題材にした竹田近江からくり「船弁慶」の意匠である。第四に、旦開野の肖像は第六輯刊行の三年前、文政七年江戸市村座で三代目坂東三津五郎初演した清元『傀儡師』の趣向で、続く演目「雀踊り」の雀を描く。第五に、口絵の兎は名詮自性で、冤罪の冤、籠山逸東太の逸、毛野を擬えた木兔に対応する。以上、本文・賛・図像の緊密な関係を論じた。全国大学国語国文学会学会創立60周年記念大会シンポジウム「日本とインドー文明における固有と普遍」の講演「日本文化の源流としてのインド」をきっかけとして、インド・コルカタ総領事の招聘により、初めてインドを訪問し、講演を行った。これによって、従来、漢訳仏典を通して理解していた中国初期仏教の天竺・西域からの渡来僧や求法僧の伝、玄奘三蔵関連文献について、インドの視点を得、天竺なるものの捉え方が大きく変わった。インドでは、初めて日本に渡来した菩提僊那に対する関心が非常に高い。鑑真は日中交流の象徴とされるが、菩提僊那は日印交流の象徴であることを知った。菩提僊那伝について、正倉院文書と美術史研究の視点をもつという当初の研究計画の有効性を確認した。光明皇太后の追善事業との深い関係を前提とし、生前の光明皇后と菩提僊那との関係を再検討し、光明皇后の造寺・造仏事業を見直していく。「伝」と「肖像」の問題は、広く日本文化、日中・日印の文化全体に波及する問題である。特に、肖像は、禅の頂相、祖師像と賛、画賛の問題として追究する必要がある。江戸時代の読み本『南総里見八犬伝』巻頭口絵を分析したことは、日本文学史の問題として「伝」と「肖像」の問題をとらえ、後世への展開を視野に入れるうえで非常に有効であった。伝とその要約としての賛、文字化された伝と図像化された肖像の問題は、古代から近世への展望のなかで把握する意義がある。
KAKENHI-PROJECT-16K02373
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司法権・憲法訴訟論の総合構築
最終年度は、「刑事手続ー憲法学的検討の序として」大沢秀介退職記念(山本龍彦=大林啓吾編)『違憲審査基準ーアメリカ憲法と判例の現在』227-252頁(弘文堂、2018年4月30日)を公表した。本研究は、日本の憲法学が司法審査基準論研究として手薄であった、刑事手続上の権利の司法審査基準をめぐる議論の端緒として、アメリカの連邦最高裁判例を分析したものであり、本研究の今後の補充の重要な基軸となるものである。このほか、「法廷における写真撮影と報道の自由ー北海タイムス事件」長谷部恭男=山口いつ子=宍戸常寿編『メディア判例百選』〔第2版〕6-7頁(有斐閣、2018年12月20日)は、掲載物の性格上、本基金に基づく研究との記載ができなかったが、本基金に基づく研究である。また、君塚正臣編『大学生のための憲法』71-94頁「包括的基本権および生命・身体的自由」(法律文化社、2018年4月5日)も公表したほか、別基金による業績も多数ある(「裁判官の独立ー『司法権・憲法訴訟論』補遺(2)」横浜国際社会科学研究23巻1号19-57頁(2018年8月20日)など)。これらは、前年度に公表した『司法権・憲法訴訟論上巻』i-xiv,1-611頁(法律文化社、2018年1月31日)及び『司法権・憲法訴訟論下巻』i-vi,1-762頁(法律文化社、2018年1月31日)を補完する性格も有しており、本基金の成果として示せるものであるが、別基金の報告との重複を避け、ここで研究実績として取り上げることは差し控える。司法権・憲法訴訟の研究を進め、平成25年度は以下の論説を公表した。「統治行為論再考ー《ある》が《ない》」横浜法学22巻1号33-77頁(2013年9月)では、公法学では多くの議論があった統治行為論につき、検討を行った。基本的には、憲法訴訟に限定した問題ではなく、司法権行使の例外か否かの問題であるところ、国家存立・憲法秩序維持のための例外としてこの概念は認めざるを得ないが、実際にこれを理由に司法判断を否定する場面が想定し難いことを指摘した。「司法権定義に伴う裁判所の中間領域論ー客観訴訟・非訟事件等再考(1)」横浜法学22巻3号143-169頁(2014年3月)では、議論の多かった日本国憲法76条「司法権」の定義を再考し、理論的概念構成を是とし、特に、佐藤幸治説の妥当性を確認する結果となった。この上で、これに従えば、「司法権」ではないが、裁判所に役割が付与されている客観訴訟・非訟事件等についての検討を,今後進めることとしたい。なお、「対審権と伝聞証拠ーThe Story of Crawford v. Washington」大沢秀介=大林啓吾編『アメリカ憲法判例の物語』411-440頁(成文堂、2014年4月予定)については本年度内に原稿を提出したが、刊行は次年度となったため、次年度に業績として報告する。また、本年度には、「続・憲法保障システムとしての選挙制度考」横浜国際社会科学研究18巻6号1-23頁(2014年2月)、判例研究「空知太訴訟再上告審判決」新・判例解説Watch(速報判例解説)12号11-14頁(2013年4月)、「同性愛者に対する公共施設宿泊拒否」長谷部恭男=石川健治=宍戸常寿編『憲法判例百選I』〔第6版〕66-67頁(2013年11月)、書評「南野佳代編『法曹継続教育の国際比較』(日本加除出版、2012年)」ジェンダーと法10号154-155頁(2013年7月)なども公表した。司法権・憲法訴訟の研究を進め、平成26年度には以下の論説を公表した。「対審権と伝聞証拠ーThe Story of Crawford v. Washington, 541 U.S. 36(2004)」大沢秀介=大林啓吾編『アメリカ憲法判例の物語』411-440頁(成文堂、2014年4月1日)では、アメリカの刑事手続上に関する憲法法理の研究を行った。「過度に広汎性ゆえ無効の法理」横浜法学23巻2号1-36頁(2014年12月25日)では、表現権規制場面における文面審査の一原則について、あまり分析が進んでいない点を踏まえて、検討を進めた。そして、「司法権定義に伴う裁判所の中間領域論ー客観訴訟・非訟事件等再考(2)、(3・完)」横浜法学23巻1号1-40頁(2014年9月25日)、3号111-146頁(2015年3月25日)では、前年度公表の「(1)」に続き、司法権の定義に鑑みれば、これまで必ずしもそうでないと解されてきた、非訟事件、略式訴訟、客観訴訟の多くの部分も「司法」であって、憲法の手続保障の要請が大きく関わってくることを指摘した。また、本年度には、判例研究「戸籍法四九条二項
KAKENHI-PROJECT-25380029
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司法権・憲法訴訟論の総合構築
一号の規定のうち出生の届出に係る届書に『嫡出子』と『嫡出でない子』の別を記載すべきものと定めることは、憲法一四条一項に反しないか(消極)」判例評論667号2-6頁(判例時報2226号132-136頁)(2014年9月1日)、「女性の再婚禁止期間の合憲性」水野紀子=大村敦志編『民法判例百選III』12-13頁(有斐閣、2015年2月1日)を執筆したほか、野田進=松井茂記編『新・シネマで法学』(有斐閣、2014年9月10日)、憲法訴訟研究会=戸松秀典編『続・アメリカ憲法判例』(有斐閣、2014年9月30日)を分担執筆するなどした。法学教室に12回、演習を担当した。司法権・憲法訴訟の研究を進め、平成27年度は以下の論説を公表した。「続・私立大学入学試験『政治・経済』における日本国憲法の扱いについてー司法制度改革・法教育の導入以降」横浜国際社会科学研究20巻3号15-38頁(2015年9月20日)では、司法権・憲法訴訟論の進展、或いは司法制度改革に伴い、裁判員制度の導入もあって法教育が高校以下の教育に反映されて以降の大学入試「政治・経済」の問題を、過去の論考と比較しながら、検証した。「判例の拘束力ー判例変更、特に不遡及的判例変更も含めて」横浜法学24巻1号87-132頁(2015年12月25日)では、判例の法的拘束力の有無の議論を行い、日本は大陸法系ゆえに法的拘束力なしとの結論を斥け、判例変更について裁判所が法的説明を十分に行う責務があることを論じた。「成熟性・ムートネスの法理ー『司法権』要件の動中静的要請」横浜国際社会科学研究20巻4=5=6号13-28頁(2016年1月20日)では、憲法訴訟論の一環として、裁判所に憲法判断を求める要件が、訴訟の最初から最後まで存在することが原則として必要であり、例外とされる場合は何であるかを論じた。また、本年度には、研究ノート「刑事訴訟法281条の4違反被告事件鑑定意見書」横浜国際社会科学研究20巻3号113-134頁(2015年9月20日)、判例研究「株主会員制のゴルフ場会社及びその運営団体が性別変更を理由に入会及び株式譲渡承認を拒否したことに対して、憲法一四条一項及び国際人権B規約二六条の趣旨から公序良俗に反し違法であるとして損害賠償を認められるか(積極)」判例評論678号14-20頁(判例時報2259号144-150頁)(2015年8月1日)を執筆した。このほか、川岸令和ほか『憲法』〔第4版〕(青林書院、2016年3月30日)を分担執筆するなどした。大きなテーマが確定している中、その中で執筆すべき課題も幾つかに確定しており、法科大学院長(法曹実務専攻長)退任後、若干の余裕が生まれたため、これを順調に執筆することができた。特に判例の拘束力についての長めの論説を公表できたことは大きい。本年度は、論説として、「第三者の憲法上の権利の主張ー第三者没収事件の再考ー『憲法的事件争訟性』要件の例外的許容範囲」横浜国際社会科学研究21巻1=2号1-20頁(2016年8月20日)、「参政権の制約と司法審査基準・合憲性判断テストー議員定数不均衡問題の解決に向けて(1)」横浜法学25巻1号51-124頁(2016年9月25日)、「法曹実務にとっての近代立憲主義(第12回)ー立憲主義と司法審査ー記憶されていない近現代史も含めて」判例時報2309号3-10頁(2016年12月11日)、「事情判決の法理ー議員定数不均衡問題の解決に向けて(2)」横浜法学25巻2号1-44頁(2016年12月25日)、「ブランデンバーグ・テストもしくは『明白かつ現在の危険』基準ー渋谷暴動事件再考、そしてヘイト・スピーチ」横浜国際社会科学研究21巻4=5号1-28頁(2017年1月20日)、「立法の不作為の合憲性を争う訴訟についてー在宅投票制度違憲訴訟の再考」
KAKENHI-PROJECT-25380029
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高速駆動・高耐久性を有するハイバーブランチゲルの創製
本研究は、ソフト&ウェットな性質を有する高分子ゲルの分子構造を空間的にデザインすることによって、アクチュエーターとしての機能として望まれている高速駆動・高耐久性を実現することを目標とする。本研究では、ゲルの分子構造を空間的にデザインするという新しい着想を用いて、高速・高耐久性を有する新規高分子ゲルアクチュエーターを実現することを目指した。さらに、本提案ゲルの物理化学的諸物性を明らかにすることで、そのメカニズムを明らかとすることも目的としていた。本研究は、ソフト&ウェットな性質を有する高分子ゲルの分子構造を空間的にデザインすることによって、アクチュエーターとしての機能として望まれている高速駆動・高耐久性を実現することを目標とする。本研究では、ゲルの分子構造を空間的にデザインするという新しい着想を用いて、高速・高耐久性を有する新規高分子ゲルアクチュエーターを実現することを目指した。さらに、本提案ゲルの物理化学的諸物性を明らかにすることで、そのメカニズムを明らかとすることも目的としていた。本研究は、ソフト&ウェットな性質を有する高分子ゲルの分子構造を空間的にデザインすることによって、アクチュエーターとしての機能として望まれている高速駆動・高耐久性を実現することを目標とする。申請者はこれまで自律的に膨潤収縮運動を行う高分子ゲルの研究及び、それらの自律歩行型アクチュエーターへの応用展開を図ってきた。しかし、生体と同様にソフト&ウェットな性質を有するゲルアクチュエーターは、応答速度が遅く、繰り返し動作特性(耐久性)が低いことから、実用化を図る上で大きな問題となっていた。このような致命的な欠点を改善するため、本申請では、ゲルの分子構造を空間的にデザインするという新しい着想を用いて、高速・高耐久性を有する新規高分子ゲルアクチュエーターを実現することを目指す。さらに、本提案ゲルの物理化学的諸物性を明らかにすることで、そのメカニズムを明らかとすることも目的としている。ゲルアクチュエーターを繰り返し駆動させると劣化する原因は、ゲル内部で高分子鎖同士がみ合いを起こし、元の状態に復元しないことが原因とされてきた。そこで、ゲル内部に溶媒排出のための流路を分子レベルで確保し、さらに高分子鎖同士の絡み合いを同時に回避することが可能な、球状高分子(デンドリマー)でゲルの骨格を形成させることを目標とした。(Polyamidoamine)dendrimer(Ethylendiamine Core)と、BisN-Succinimidyl-(pentaethyene glycol)esterをリン酸バッファー中で反応させることによって、デンドリマーを骨格に持つゲルの合成に成功した。新規に合成したデンドリマーゲルは、アセトン中に浸漬すると高速の収縮挙動をみせた。ゲルの膨潤速度は、合成時のデンドリマー濃度、および架橋剤である直鎖状分子の濃度で、コントロール可能なことが明らかとなった。調整時の濃度を高くするほど応答が鈍くなり、また膨潤収縮率が小さくなることが明らかになった。新規ゲルは、デンドリマー構造によりゲル内部の高分子鎖局所密度分布の差は大きくなるが、アンサンブル平均した高分子鎖の密度は通常のゲルと大きく変化しないため、ゲルの強度の損失が少ないのも特徴の一つである。高分子アクチュエーターの特徴として、軽量・柔軟性・成形加工のしやすさが挙げられる。また有機材料で構成されているため金属疲労が発生せず、電磁モーターの振動や摩擦など耳障りな雑音を回避できるのも特徴として挙げることができる。このような高分子アクチュエーターの特徴を活かせば、人工筋肉に代表される次世代デバイスの実現可能性を大幅に改善することができる。本研究は、ソフト&ウェットな性質を有する高分子ゲルの分子構造を空間的にデザインすることによって、アクチュエーターとしての機能として望まれている高速駆動・高耐久性を実現することを目標とした。これまでのゲルアクチュエーターは、応答速度が遅く、繰り返し動作特性(耐久性)が低いことから、実用化を図る上で大きな問題となっていた。高分子ゲルの駆動速度は、含有する溶媒をいかに素早く外部に排出するかが最大のポイントとなる。また、ゲルアクチュエーターを繰り返し駆動させると劣化する原因は、ゲル内部で高分子鎖同士が絡み合いを起こし、元の状態に復元しないことが原因とされてきた。そこで申請者は、ゲル内部に溶媒排出のための流路を分子レベルで確保し、さらに高分子鎖同士の絡み合いを同時に回避することが可能な、球状高分子でゲルの骨格を形成し、それらを直鎖状高分子で化学架橋する新規ゲルを合成した。このような新規ゲルは、ゲルの骨格が球状高分子で構成されているため、溶媒排出のための流路が常に確保されことで高速応答が実現できた。さらに球状同士は絡み合いを起こしにくいため、アクチュエーターの繰り返し特性(耐久性)が大幅に改善された。
KAKENHI-PROJECT-19850005
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シグナル伝達経路選択的活性化法の開発
本研究では、シナプス内でシグナル伝達経路を選択的に活性化することができる光遺伝学的ツールを開発することを目的とした。これによって、長期増強誘起に必要な分子種、シグナル伝達経路を調べることが可能になる。現在までに、光応答性のCaMKII分子の作製に成功しつつある。この過程で、LOV2をCaMKIIに挿入することで分子全体のフォールディング効率の低下や、凝集が起こりやすくなることが分かってきた。そこで、ランダム変異導入によるフォールディング効率の改善法を開発した。この方法を光応答性のCaMKII分子に適用することで、細胞内局在と活性のダイナミックレンジを大きく改善できた。本研究では、PKCやPKAなどのキナーゼ分子に着目し、これらの分子の活性を青色光照射で、“ミリ秒レベルの時間分解能"と“マイクロメートルの空間分解能"で直接制御できるように遺伝子改変する。また、作製した光感受性分子を生細胞内で、光照射により活性化させ、シグナル伝達経路を選択的に活性化したときの応答を調べる。現在までに、我々が選択したキナーゼ分子について、植物タンパク質であるPhototropin1のLOV2ドメインを用いることにより、光照射依存的にキナーゼ活性を上昇させることに成功しつつある。具体的には、キナーゼ下流にLOV2ドメインを様々なリンカー配列を用いて遺伝子工学的に挿入した。各種分子をHeLa細胞に発現させ、光照射することにより、基質のリン酸化が起こるかどうかをキナーゼアッセイにより調べた。これにより、以下の2点を満たすような分子を選別した。1,光非存在化ではLOV2ドメインがキナーゼの触媒ドメインに直接結合しており、その活性を阻害している。2,光照射によって、LOV2ドメインがキナーゼより解離し、キナーゼ活性が上昇する。このようにして現在までに光応答性キナーゼ分子のプロトタイプを得ることに成功した。光操作可能なシグナル分子を開発し、細胞内でシグナル分子を選択的に活性化する手法を確立するのが本研究の目的である。特に、CaMKII, PKC, PKAの3種類のキナーゼについて、LOV2ドメインを用いることで光応答性の分子の開発を行っている。現在までに、様々な長さのリンカーでキナーゼドメインとLOV2を融合し光応答性のキナーゼの開発を試みているが、これまでの実験から全体的な問題として、LOV2ドメインを挿入することによって分子全体のフォールディング効率が落ちてしまうことが分かってきた。このような場合は分子を発現させると細胞内で大きな凝集塊を形成し、発現させた分子が機能しなくなってしまう。そこで、平成27年度はLOV2にランダム変異導入することによって、分子のフォールディング効率を改善することを試みた。具体的には、ランダム変異導入したLOV2のC末端にmCherryを融合し大腸菌に導入し、大腸菌内でmCherryの蛍光が明るいものを選択した。ランダム変異導入したLOV2をその結果、LOV2へのランダム変異導入によってフォールディング速度を2倍程度上昇(mCherryの蛍光が2倍の速度で明るくなる)させることに成功した。さらに同定したLOV2変異体のN末端とC末端にmEGFPとmCherryをそれぞれ融合したFRETセンサーを作製した。この分子をHeLa細胞に遺伝子導入して、2光子蛍光寿命イメージング顕微鏡でFRETを観察することにより、光応答性があることを確認した。本研究では、シナプス内でシグナル伝達経路を選択的に活性化することができる光遺伝学的ツールを開発することを目的とした。これによって、長期増強誘起に必要な分子種、シグナル伝達経路を調べることが可能になる。現在までに、光応答性のCaMKII分子の作製に成功しつつある。この過程で、LOV2をCaMKIIに挿入することで分子全体のフォールディング効率の低下や、凝集が起こりやすくなることが分かってきた。そこで、ランダム変異導入によるフォールディング効率の改善法を開発した。この方法を光応答性のCaMKII分子に適用することで、細胞内局在と活性のダイナミックレンジを大きく改善できた。本研究の目的は、シグナル伝達経路を選択的に活性化しその表現型を調べるという全く新しい方法論を提案することである。現在までに光応答性キナーゼ分子のプロトタイプを得ることに成功しており、生細胞内でシグナル伝達経路を選択的に活性化するためのツールが完成しつつあるため、予定通りにおおむね順調に進展している。生物物理現在までに得られている光応答性分子についてさらに詳細な解析を進めて行く。特にFRET法を用いることにより、光照射による分子構造変化を直接調べることで活性化時間等を明らかにする。また、光応答化により、基質の特異性が変化していないかどうかをキナーゼアッセイにより調べる。助成金の一部を消耗品代として次年度に使用する必要が生じた為。消耗品代として使用。
KAKENHI-PROJECT-26650067
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26650067
マウスの量的形質に関与する遺伝子の染色体マッピング
マウスをモデル動物として用いて、マイクロサテライトDNAマーカーとの連鎖解析により量的形質に関与する遺伝子群(QTL:quantitative trait loci)の染色体マッピングを試みた。この時、容易に得ることができる体重形質を量的形質として用いた。使用したマウスは近交系のC57BL/6J(Mus musculus domesticus)とフィリピン産野生マウス(M.m.castaneus)で、それぞれの平均成体重は25.4gと16.5gであった。これらのマウスからF_1個体を得、野生個体を戻し交配することによりN_2個体を約400匹得た。得られたN_2個体の体重を生後3から10週齢まで1週間毎に測定した。PCR法とアガロースゲル電気泳動法を用いて、マイクロサテライトDNAマーカーの遺伝子型を決定した。得られたN_2の雄81匹について、10週齢体重差に関与するQTLの有無をDNAプーリング法を用いてスクリーニングした。その結果、調査したマウスの染色体3本のうち1本について比較的大きな表現型効果を持つQTLが存在することが推定された。そこで、その染色体について、7個のDNAマーカーを使ってN_2雄81匹全ての遺伝子型を決定し、QTL解析ソフトMAPMAKER/QTLを用いて解析した。その結果、1個のQTL(LOD=2.3,total variance=13%)を検出することができた。このQTLのallele substitution effectは1.1gであった。また、確認のため単回帰分析法を用いて再度解析を行ったところ、同様の結果が得られた。今後、得られたN_2個体を全て用いて、QTLが検出された染色体及びその他の染色体についてQTL解析を進める予定である。マウスをモデル動物として用いて、マイクロサテライトDNAマーカーとの連鎖解析により量的形質に関与する遺伝子群(QTL:quantitative trait loci)の染色体マッピングを試みた。この時、容易に得ることができる体重形質を量的形質として用いた。使用したマウスは近交系のC57BL/6J(Mus musculus domesticus)とフィリピン産野生マウス(M.m.castaneus)で、それぞれの平均成体重は25.4gと16.5gであった。これらのマウスからF_1個体を得、野生個体を戻し交配することによりN_2個体を約400匹得た。得られたN_2個体の体重を生後3から10週齢まで1週間毎に測定した。PCR法とアガロースゲル電気泳動法を用いて、マイクロサテライトDNAマーカーの遺伝子型を決定した。得られたN_2の雄81匹について、10週齢体重差に関与するQTLの有無をDNAプーリング法を用いてスクリーニングした。その結果、調査したマウスの染色体3本のうち1本について比較的大きな表現型効果を持つQTLが存在することが推定された。そこで、その染色体について、7個のDNAマーカーを使ってN_2雄81匹全ての遺伝子型を決定し、QTL解析ソフトMAPMAKER/QTLを用いて解析した。その結果、1個のQTL(LOD=2.3,total variance=13%)を検出することができた。このQTLのallele substitution effectは1.1gであった。また、確認のため単回帰分析法を用いて再度解析を行ったところ、同様の結果が得られた。今後、得られたN_2個体を全て用いて、QTLが検出された染色体及びその他の染色体についてQTL解析を進める予定である。
KAKENHI-PROJECT-07780753
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07780753
水素と電力の同時獲得を可能とする光触媒反応系の構築
光触媒による水分解反応は、太陽の光エネルギーから水素エネルギーを獲得する手段として広く研究されている。本事業では、新規な太陽エネルギー変換貯蔵システムとして、貯蔵電力を同時獲得可能な水分解反応系の構築を目指した取り組みを行う。2018年度は、2017年度に実証した、本提案手法に利用可能な2種類の光触媒反応およびレドックスフロー電池の原理を利用した放電反応をNafion膜で仕切った2室セルを発生ガスの分析が可能な閉鎖循環型のバッチ装置に接続した反応システムを用いて同時に進行させた。その結果、系内に投入したレドックスの物質量を大きく超えても定常的に反応が進行できることを実証した。反応初期の太陽光エネルギー変換効率は0.05%程度と見積もられた。反応を長時間進行させると、反応活性が徐々に低下した後に定常状態に落ち着く挙動が見られた。これは反応初期の光触媒反応の反応速度に対して、放電反応の反応速度が遅いため、レドックスの組成が充電された状態へシフトしてから定常状態に達したためであった。以上の結果より、効率良く放電反応を進行させる手法の開発が重要であることがわかった。レドックスの濃度依存を評価した結果、濃い濃度条件の場合には、水素発生側および酸素発生側共に、充電反応に当たる光触媒反応が100%レドックスを転換する前に失活してしまった。これは、放電反応に当たる逆反応が光触媒上で競争的に起こってしまい、レドックスの濃度が濃くなるにつれてその望まれない逆反応の反応速度が上昇してしまうためであった。このことから、逆反応を抑制するための手法開発が重要であることがわかった。昨年度実証した組み合わせ以外のレドックスの適用可能性を評価した。Co錯体に関しては、昨年度検討したビピリジン錯体だけでなく、フェナントロリン錯体およびターピリジン錯体を用いた場合にも同様に反応が進行した。2018年度は、おおむね研究計画書の予定通りに研究を進められており、貯蔵電力を同時獲得可能な新規水分解反応系を定常的に駆動させることが可能であることを実証するところまでたどり着いた。さらに、今後の課題も明確化できた。候補となるレドックスや水素生成用の光触媒の候補が限られている点に関しても、新規材料の適用が可能であることを明らかにした。これらの結果が得られていることから、おおむね順調に進展しているとした。2018年度には、提案手法が定常的に駆動可能であることを実証できた。これより2019年度は、本提案手法を運用するうえで改善が必要な課題について取り組む。具体的には、放電反応が律速となっていることからPEM型の反応セルを用いて放電反応がどこまで改善できるかを評価する。望まれない逆反応を抑制するために、光触媒の表面処理に取り組み。また、候補となるレドックスや水素生成用の光触媒の候補が限られている点に関しても、引き続き、新規材料の開発を進めていく。光触媒による水分解反応は、太陽の光エネルギーから水素エネルギーを獲得する手段として広く研究されている。本事業では、新規な太陽エネルギー変換貯蔵システムとして、貯蔵電力を同時獲得可能な水分解反応系の構築を目指した取り組みを行う。2017年度は、候補レドックスとして例示したコバルトビピリジン錯体およびバナジウムイオンを用い、レドックスフロー電池の原理で実際に電力の取り出しが可能か評価した。さらにその充電反応に相当する光触媒反応を進行させる光触媒材料の開発を行った。レドックスフロー電池の放電反応を評価した結果、両極にカーボンフェルトを用いることで効率よく放電反応が進行した。取り出せる電力はpH2.1程度で最大となった。続いて、この電池の充電反応に相当する2種類のレドックス反応を光触媒反応で進行できるか評価した。Ru/SrTiO3:Rhを光触媒として用いることで、バナジウムイオンが(IV)価から(V)価へ100%酸化されるまで効率よく進行し同時に水素が生成した。一方、BiVO4を用いたコバルトビピリジン錯体水溶液からの酸素生成を評価した結果、中性からアルカリ性条件下では酸素が効率よく生成したのに対し、酸性条件下ではわずかな酸素しか発生しなかった。そこで、様々な助触媒の導入効果を評価した結果、Pdを助触媒として担持することで、酸素生成速度が著しく向上した。以上の結果から、例示したレドックスを用いることで、貯蔵電力を同時獲得可能な新規水分解反応系の構築が可能であることを実証した。2017年度は同時に、本提案手法に利用可能なレドックス媒体および光触媒材料の種類が少ないという課題に対しても取り組みを行った。その結果、LaFeO3という材料が水素生成光触媒として機能すること、およびフェロシアン酸カリウム水溶液をレドックスとして利用可能なこと等を明らかにした。2017年度は、おおむね研究計画書の予定通りに研究を進められており、貯蔵電力を同時獲得可能な新規水分解反応系の構築が可能であることを実証するところまでたどり着いた。さらに、候補となるレドックスや水素生成用の光触媒の候補が限られている点に関しても、新規材料の適用が可能であることを明らかにした。これらの結果が得られていることから、おおむね順調に進展しているとした。光触媒による水分解反応は、太陽の光エネルギーから水素エネルギーを獲得する手段として広く研究されている。本事業では、新規な太陽エネルギー変換貯蔵システムとして、貯蔵電力を同時獲得可能な水分解反応系の構築を目指した取り組みを行う。
KAKENHI-PROJECT-17K14528
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水素と電力の同時獲得を可能とする光触媒反応系の構築
2018年度は、2017年度に実証した、本提案手法に利用可能な2種類の光触媒反応およびレドックスフロー電池の原理を利用した放電反応をNafion膜で仕切った2室セルを発生ガスの分析が可能な閉鎖循環型のバッチ装置に接続した反応システムを用いて同時に進行させた。その結果、系内に投入したレドックスの物質量を大きく超えても定常的に反応が進行できることを実証した。反応初期の太陽光エネルギー変換効率は0.05%程度と見積もられた。反応を長時間進行させると、反応活性が徐々に低下した後に定常状態に落ち着く挙動が見られた。これは反応初期の光触媒反応の反応速度に対して、放電反応の反応速度が遅いため、レドックスの組成が充電された状態へシフトしてから定常状態に達したためであった。以上の結果より、効率良く放電反応を進行させる手法の開発が重要であることがわかった。レドックスの濃度依存を評価した結果、濃い濃度条件の場合には、水素発生側および酸素発生側共に、充電反応に当たる光触媒反応が100%レドックスを転換する前に失活してしまった。これは、放電反応に当たる逆反応が光触媒上で競争的に起こってしまい、レドックスの濃度が濃くなるにつれてその望まれない逆反応の反応速度が上昇してしまうためであった。このことから、逆反応を抑制するための手法開発が重要であることがわかった。昨年度実証した組み合わせ以外のレドックスの適用可能性を評価した。Co錯体に関しては、昨年度検討したビピリジン錯体だけでなく、フェナントロリン錯体およびターピリジン錯体を用いた場合にも同様に反応が進行した。2018年度は、おおむね研究計画書の予定通りに研究を進められており、貯蔵電力を同時獲得可能な新規水分解反応系を定常的に駆動させることが可能であることを実証するところまでたどり着いた。さらに、今後の課題も明確化できた。候補となるレドックスや水素生成用の光触媒の候補が限られている点に関しても、新規材料の適用が可能であることを明らかにした。これらの結果が得られていることから、おおむね順調に進展しているとした。2017年度には、提案手法がうまく機能することを実証できた。これより2018年度以降は、本提案手法を運用するうえでより理想的な高濃度レドックス条件下での光触媒性能の評価を行う。性能の改善が必要な場合には、その条件に適した材料の改質手法を開発することを目指す。また、候補となるレドックスや水素生成用の光触媒の候補が限られている点に関しても、引き続き、新規材料の開発を進めていく。2018年度には、提案手法が定常的に駆動可能であることを実証できた。これより2019年度は、本提案手法を運用するうえで改善が必要な課題について取り組む。具体的には、放電反応が律速となっていることからPEM型の反応セルを用いて放電反応がどこまで改善できるかを評価する。望まれない逆反応を抑制するために、光触媒の表面処理に取り組み。また、候補となるレドックスや水素生成用の光触媒の候補が限られている点に関しても、引き続き、新規材料の開発を進めていく。(理由)ほぼ予定通りに使用したが、1000円程度次年度への繰り越し金が生じた。(使用計画)消耗品の購入に使用する。
KAKENHI-PROJECT-17K14528
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網膜錐体構成の個人差を補償する色知覚の普遍性機序の光生理学・心理物理学的解明
個人のL/M比の測定をERGフリッカー法とAO眼底カメラ法により行った。被験者の遺伝子解析結果を用いて、分光感度の補正を行い、その結果、5人の被験者のL/M比を測定することができた。同じ5人の被験者を用いて、ユニーク色の測定を行なった。その結果、色の見えとL/M比には相関がないことが示された。さらに同じ被験者を用いて、色弁別閾値の測定を行なったところ、L/M比は輝度弁別直線の傾きと相関傾向が見られたが、色度弁別とは関係がないことがわかった。fMRI法によりユニーク色に対する脳活動は高次領野からの影響を受け、特にV4において顕著である事が明らかになった。L/M比個人差を補償するモデルを考察した。本年度は個人の眼光学系の分光吸収特性、L/M比の測定及び色の見えの測定のための方法の確立を実施計画とした。眼光学系の濃度測定に関しては、水晶体の平均データの調査から個人間で対数濃度で0.2の差異があることが分かり、個人別の分光測定が必要であることが確認された。黄斑色素濃度については既存の装置を用いて試行として数人の被験者の黄斑色素を測定し、方法の有効性を確認した。L/M比の測定に関しては、網膜電位(ERG)測定システムのノイズ対策として専用アンプを導入し、補償光学系(AO)には高速DM deformable mirrorを取り付け、両方法によるL/M錐体比の精度良い推定を可能とした。また、補償光学走査レーザ検眼鏡を用いて錐体の輝度変化について調べた。色の見えの測定に関しては、刺激呈示用のハイパースペクトルデイスプレイを完成させ、ハイパースペクトルイメージの刺激呈示を可能とし、ユニーク色を与える単色光の波長、色度図内でのユニーク色軌跡を求める準備を完了した。また、個人のL/M比と色弁別閾値の関係を測定するためのCRTモニターを用いる装置の準備を行った。さらに、fMRI測定実験に関する予備的測定を行い、視覚野のマッピングを行う実験と色に対する反応実験を行った。これらの実験は錐体応答およびユニーク色の脳内表現について調べることを目的とし、錐体反対色に関連する色応答とユニーク色に関する応答を測定し比較した。今年度は研究会を6月と3月に2回開催し、研究代表者と各分担者間で研究の目的と方法、及び担当についての確認と意見交換を行った。本年度は、昨年度に確立された実験方法を用いて、個人のL/M錐体比と色の見えのデータ収集を本格的に行った。さらに、昨年度より引き続き、fMRI法による脳機能計測を行った。(1) ERGフリッカー法と被験者毎の錐体の遺伝子解析により被験者毎のL/M錐体比の測定、黄斑色素濃度分布の測定による錐体分光感度の補正を継続して行った。被験者は8名となった。(2)既存のAO-SLO装置を用いて、順応法によって、L錐体とM錐体の視物質の褪色濃度変化を赤外光で測定した結果、濃度変化の分光ヒストグラムに2峰性が見られ、L/M錐体比が観測可能であることがわかった。可視光を使った新AO装置の開発は、他のグループの研究の進捗に合わせて高い仕様にしたため開発中であるが、軸上および横方向の色収差の補正方法を確立するなど、研究的には進展できた。(3)水晶体濃度の加齢変化要因について、CIE委員会(TC 6-15)報告を中心に検討しつつ、水晶体濃度測定手法を精査した結果から、ハイパースペクトラルイメージング手法による濃度測定を企図し、その準備をほぼ終了した。(4) fMRI法を用いてユニーク色相と反対色応答が零になる色相との誘発する脳活動の差を測定する実験を開始した。(5)心理物理実験により、L/M錐体比のわかった被験者に対して、錐体コントラスト空間上で色弁別閾値を測定し、色弁別閾値がLノイズあるいはMノイズによってどの方向に増大がするかを見て、L/M錐体比との相関を取る実験を開始した。さらに、ハイパースペクトルデイスプレイによる単色光刺激を用いて各被験者のユニーク色波長を求めた。(6)ハイパースペクトルディスプレイを用いて、自然風景分光反射率画像に照明光スペクトルを変化させて照明したシミュレーション刺激画像を作り、この刺激画像により照明光色弁別が可能であることを確認した。(1)黄斑色素濃度,L/M錐体比を求めた被験者に対して条件等色実験を行った。三刺激値が等しいが黄斑色素吸収量が異なる刺激の等色点には青ー黄方向で系統立った違いが見られ、黄斑色素濃度と強い相関が見られた。また、L/M錐体比については、日本人はコーカサス人種と比較し、有意に低いことがわかった。(2)被験者個人のERG法によって推定したL/M錐体比とユニーク色の波長及び色検出閾値を比較した。L/M錐体比とユニーク色波長とは相関がないこと、また、ΔL/L対ΔM/Mの錐体コントラスト平面上での色弁別閾値の輝度メカニズム線の傾きにはL/M錐体比と相関がある可能性が見られたが、L、Mノイズによる閾値の増大には相関が見られないことが示された。(3)fMRIを用いて錐体応答拮抗型反対色とユニーク色に対する脳活動を計測し、初期視覚野における応答の特性について調べた。
KAKENHI-PROJECT-25245065
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網膜錐体構成の個人差を補償する色知覚の普遍性機序の光生理学・心理物理学的解明
V4において脳活動パターンの再現性が課題による影響を受け、その違いがユニーク色に対する脳活動において統計的有意差を示す事がわかった。全脳の脳活動を課題間で比較した結果,色同定課題を行う際には視覚野(V1-V4)に加え前頭葉(MFG)や側頭葉(insula)の領野で有意な信号上昇も見られ、これらの領野からのフィードバックがユニーク色の見えの評価に関与していたことが明らかになった。(4)L/M錐体比の個人差とユニーク黄の乖離について説明するために、まず、視環境の統計データ、物質のデータベースからシミュレーションによって、視覚刺激として生じやすい色度を明らかとした。感覚刺激として生じやすいものが、視覚認知の座である下側頭皮質においてどのように情報表現されているかを議論し、スパースコーディングによる応答特性の偏りが新しい環境光適応型色覚モデルには重要であること示した。(5)830nmのAO-SLO法によるL/M錐体比測定の可能性を示した。個人のL/M比の測定をERGフリッカー法とAO眼底カメラ法により行った。被験者の遺伝子解析結果を用いて、分光感度の補正を行い、その結果、5人の被験者のL/M比を測定することができた。同じ5人の被験者を用いて、ユニーク色の測定を行なった。その結果、色の見えとL/M比には相関がないことが示された。さらに同じ被験者を用いて、色弁別閾値の測定を行なったところ、L/M比は輝度弁別直線の傾きと相関傾向が見られたが、色度弁別とは関係がないことがわかった。fMRI法によりユニーク色に対する脳活動は高次領野からの影響を受け、特にV4において顕著である事が明らかになった。L/M比個人差を補償するモデルを考察した。本研究の研究目的は、人間の網膜内のL, M錐体の比率と分光感度には個人差が大きいにもかかわらず、色の見えには個人差がほとんどないことから、L, M錐体から大脳皮質に至る色覚過程で、L、M錐体構成の個人差を補償し、色の見えと物理的な光スペクトルとの普遍的な対応関係を付けるキャリブレーションメカニズムが存在していることが考えられるが、この色覚個人差補償メカニズムを調べるために、ERG等を用いた光生理学的方法でL/M錐体比の個人差を明らかにし、色の見えを心理物理的に測定すると共にfMRI法によって普遍的な色の見えの脳内部位を同定し、最終的にアウトカムとして新しい環境光適応型色覚モデルを提案することである。本年度は、昨年度に確立された実験方法を用いて、個人のL/M錐体比を主にERG法とLM錐体の遺伝子型の同定により順調に行い、また心理物理実験による色の見えと色弁別測定を開始し、データの収集を行った。さらに、昨年度より引き続き、fMRI法による脳機能計測を行った。したがって、本年度の研究はおおむね順調に進展していると判断できる。27年度が最終年度であるため、記入しない。社会科学今後は、収集したデータの解析を行い色覚系の補償メカニズムの解明と新しい環境光適応型色覚モデルの提案を行う。(1)各個人から測定されたL/M比の範囲と過去に公表されているL/M比を比較して、本研究方法の妥当性や優れた点を明らかにする。(2) L/M比から計算される赤緑(L-M)反対色応答値が零になる刺激光のスペクトルと、赤みも緑みもない色の見えを与える実験から求められた刺激光スペクトルを比較して、色覚系のキャリブレーション係数を求める。(3) fMRI法による測定された部位の結果を解析し、赤みも緑みもない色の見えを与える刺激光スペクトルに対して特的な反応をする部位がV1 V4のどの領域にあるかを明らかにする。
KAKENHI-PROJECT-25245065
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25245065
四肢/鰭の形成位置の多様性を生み出すメカニズム
今年度は、四肢位置の決定と細胞死の関係を調べるため、胚体内の局所的な細胞死の分布状態を調べた。まだ予備的な観察であるが、肢芽形成期に前肢と後肢の間(わき腹)の部分に特異的な細胞死が観察された(東北大医学部の若松先生との共同研究)。また、FGF10添加による背中AER形成が哺乳類でも起こるかどうかを調べる目的で、マウス胚の全胚培養技術を獲得した(東北大医学部の大隅先生との共同研究)。一方で、前肢・後肢の違いを生み出す機構を明らかにする目的で、さまざまな移植実験・組織培養実験を用い、tbx5/4遺伝子発現を指標にして解析を行った。その結果、前後肢identityの獲得は側板中胚葉の中で自立的に行われるのではなく、他の組織からの影響、とくに中軸組織からの誘導と抑制の作用が大きく影響していることを見出した(Saito et al.,2002)。さらに、詳しい移植実験とリアルタイムPCR機の導入による解析により、前後肢identity決定に関わる中軸組織が体節である可能性を占めるデータを得た。四肢位置を決めるメカニズムの多様性と相同性を解析するために、トラザメ胚からfgf8、msx遺伝子の部分配列をPCR単離し、発現解析を行った。その結果、トラザメ胚ではわき腹の部分に鰭状の構造は観察されないものの、高等脊椎動物(四足動物)では、四肢位置に限局して発現するmsx遺伝子がわき腹にも発現していることを見出した。現在、他のいくつかの遺伝子マーカーとの発現比較を検討中であるが、これらの事実は、四肢および鰭構造が、体側部全体に存在する鰭形成能力の一部として形成されているという、我々の当初の仮説を裏付けるものであり、興味深い発見である。現在、論文投稿を準備している。今年度は、四肢位置の決定と細胞死の関係を調べるため、胚体内の局所的な細胞死の分布状態を調べた。まだ予備的な観察であるが、肢芽形成期に前肢と後肢の間(わき腹)の部分に特異的な細胞死が観察された(東北大医学部の若松先生との共同研究)。また、FGF10添加による背中AER形成が哺乳類でも起こるかどうかを調べる目的で、マウス胚の全胚培養技術を獲得した(東北大医学部の大隅先生との共同研究)。一方で、前肢・後肢の違いを生み出す機構を明らかにする目的で、さまざまな移植実験・組織培養実験を用い、tbx5/4遺伝子発現を指標にして解析を行った。その結果、前後肢identityの獲得は側板中胚葉の中で自立的に行われるのではなく、他の組織からの影響、とくに中軸組織からの誘導と抑制の作用が大きく影響していることを見出した(Saito et al.,2002)。さらに、詳しい移植実験とリアルタイムPCR機の導入による解析により、前後肢identity決定に関わる中軸組織が体節である可能性を占めるデータを得た。四肢位置を決めるメカニズムの多様性と相同性を解析するために、トラザメ胚からfgf8、msx遺伝子の部分配列をPCR単離し、発現解析を行った。その結果、トラザメ胚ではわき腹の部分に鰭状の構造は観察されないものの、高等脊椎動物(四足動物)では、四肢位置に限局して発現するmsx遺伝子がわき腹にも発現していることを見出した。現在、他のいくつかの遺伝子マーカーとの発現比較を検討中であるが、これらの事実は、四肢および鰭構造が、体側部全体に存在する鰭形成能力の一部として形成されているという、我々の当初の仮説を裏付けるものであり、興味深い発見である。現在、論文投稿を準備している。
KAKENHI-PROJECT-13045003
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硬組織誘導性新規合成ペプチドの歯内治療への適用についての検索
ラット直接覆髄による歯髄反応の解析として新規合成ペプチドの歯髄への適用方法の検索を行った。新規合成ペプチドの単独での適用が理想的であると考えていたが粉末状の物質であり直接覆髄材として露髄面への適用量の一定化が難しく、プロピレングリコールアルジネート水溶液に溶解させて用いることで使用することとした。また、含有させる新規合成ペプチドの濃度を調整した。上記と同時に手技が容易に一定となるような直接覆髄法の検討を行った。ラットは6週齢のSDラットを使用し行うこととした。ラット下顎前歯側面を露髄させて直接覆髄を行う計画であったが、げっ歯類下顎切歯は、その性質から経時的観察に不向きで、上顎臼歯で遂行していくことに変更した。上顎臼歯への変更で、手技の検討を加える必要が生じた。ラット上顎臼歯への直接覆髄は術野の確保が最大の課題であると感じたがラット上顎臼歯へのラバーダム防湿が、手技の一定化ならびに容易化に対応できると考えた。そこで、ラットクランプの作成ならびにラバーダム防湿法の検討へとうつっている。また、上記研究期間内におけるラットの新規合成ペプチドを使用した直接覆髄後の組織標本による経時的解析から処置後2週程度で硬組織が形成することがわかった。当初は2週以内の1、3、7日での詳細な解析も予定してたが、組織標本を作製したうえで各種染色を施し、短期での免疫組織化学的検索による他の覆髄材との詳細な比較検討までは不必要ではないかと考えられた。下顎前歯を材料として実験することを予定していたが、上顎臼歯に変更したため、その対応に少し時間を要していたが、解決に至りそうで、今後への支障は取り除かれつつある。直接覆髄についてはさらに進めていくが、穿孔部封鎖材、根管充填材としての可能性についての検索も同時に開始してゆく。また、現在の問題点は、解決可能であると現在考えているが、ラットの歯の小ささに起因する術式の不安定さに問題が由来する可能性もありうる。その際は、ラットから別の大きな動物に材料を変更することによって実験の遂行を検討したい。ラット直接覆髄による歯髄反応の解析として新規合成ペプチドの歯髄への適用方法の検索を行った。新規合成ペプチドの単独での適用が理想的であると考えていたが粉末状の物質であり直接覆髄材として露髄面への適用量の一定化が難しく、プロピレングリコールアルジネート水溶液に溶解させて用いることで使用することとした。また、含有させる新規合成ペプチドの濃度を調整した。上記と同時に手技が容易に一定となるような直接覆髄法の検討を行った。ラットは6週齢のSDラットを使用し行うこととした。ラット下顎前歯側面を露髄させて直接覆髄を行う計画であったが、げっ歯類下顎切歯は、その性質から経時的観察に不向きで、上顎臼歯で遂行していくことに変更した。上顎臼歯への変更で、手技の検討を加える必要が生じた。ラット上顎臼歯への直接覆髄は術野の確保が最大の課題であると感じたがラット上顎臼歯へのラバーダム防湿が、手技の一定化ならびに容易化に対応できると考えた。そこで、ラットクランプの作成ならびにラバーダム防湿法の検討へとうつっている。また、上記研究期間内におけるラットの新規合成ペプチドを使用した直接覆髄後の組織標本による経時的解析から処置後2週程度で硬組織が形成することがわかった。当初は2週以内の1、3、7日での詳細な解析も予定してたが、組織標本を作製したうえで各種染色を施し、短期での免疫組織化学的検索による他の覆髄材との詳細な比較検討までは不必要ではないかと考えられた。下顎前歯を材料として実験することを予定していたが、上顎臼歯に変更したため、その対応に少し時間を要していたが、解決に至りそうで、今後への支障は取り除かれつつある。直接覆髄についてはさらに進めていくが、穿孔部封鎖材、根管充填材としての可能性についての検索も同時に開始してゆく。また、現在の問題点は、解決可能であると現在考えているが、ラットの歯の小ささに起因する術式の不安定さに問題が由来する可能性もありうる。その際は、ラットから別の大きな動物に材料を変更することによって実験の遂行を検討したい。消耗品で特注品を注文した際、正確な納期が未定であったため、予算を確保する必要が生じ次年度使用額が生じた。
KAKENHI-PROJECT-18K09590
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K09590
圧電性ポリ乳酸高分子物質の骨形成促進への応用
生体吸収性高分子であるポリ乳酸に延伸操作を行つたポリ乳酸フイルムは良好な“ずり圧電性"を持つ。ポリ乳酸乳酸(以下PLLA)圧電フイルムによる骨形成促進の効果と骨形成に対して最も有効な圧電フイルムの体内における設置方法を決定するために、動物実験を行った。PLLA圧電フイルムは4倍延伸で、延伸配向0°,45°,90°の3種類を用いた。対照群には未延伸のPLLAフイルムを用いた。各群5羽の成熟日本白色家兎を用い、全身麻酔下に、脛骨中央前外側骨膜上にPLLAフイルム(6×12×0.2mm)を縦方向に置き、その上下端を前脛骨筋後面の筋膜に縫合した。6週後屠殺し、脱灰標本とし、H.E.染色による組織学的な観察を行い、新生骨部分の面積を計測した。その結果、組織標本上、対照群中の一例を除き全例に、フイルム設置部を中心に、皮質骨上に新生骨を認めた。45°フイルム設置群の新生骨面積は、対照群に比し、有意に大きかった。また0°及び90°フイルム設置群と比較しても、有意に大きかった。圧電フイルム設置個体群が、対照群に比べ、骨形成が促進されたことより、PLLA圧電フイルムは大きな骨形成促進能を持つ事が証明された。また、45°の方向に延伸されたフイルムを筋の伸縮方向に設置したときに、最大の骨形成が認められたことより、PLLA圧電フイルムの延伸方向に対し、“ずり応力"が作用した時に、最も骨形成促進作用が大きくなる事が証明された。生体吸収性高分子であるポリ乳酸に延伸操作を行つたポリ乳酸フイルムは良好な“ずり圧電性"を持つ。ポリ乳酸乳酸(以下PLLA)圧電フイルムによる骨形成促進の効果と骨形成に対して最も有効な圧電フイルムの体内における設置方法を決定するために、動物実験を行った。PLLA圧電フイルムは4倍延伸で、延伸配向0°,45°,90°の3種類を用いた。対照群には未延伸のPLLAフイルムを用いた。各群5羽の成熟日本白色家兎を用い、全身麻酔下に、脛骨中央前外側骨膜上にPLLAフイルム(6×12×0.2mm)を縦方向に置き、その上下端を前脛骨筋後面の筋膜に縫合した。6週後屠殺し、脱灰標本とし、H.E.染色による組織学的な観察を行い、新生骨部分の面積を計測した。その結果、組織標本上、対照群中の一例を除き全例に、フイルム設置部を中心に、皮質骨上に新生骨を認めた。45°フイルム設置群の新生骨面積は、対照群に比し、有意に大きかった。また0°及び90°フイルム設置群と比較しても、有意に大きかった。圧電フイルム設置個体群が、対照群に比べ、骨形成が促進されたことより、PLLA圧電フイルムは大きな骨形成促進能を持つ事が証明された。また、45°の方向に延伸されたフイルムを筋の伸縮方向に設置したときに、最大の骨形成が認められたことより、PLLA圧電フイルムの延伸方向に対し、“ずり応力"が作用した時に、最も骨形成促進作用が大きくなる事が証明された。
KAKENHI-PROJECT-05671222
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671222
高強度テラヘルツパルスによる極限スピン制御
2018年度では,THzパルス発生光学系を用いて,高強度THzパルス発生を試みた.パルス面傾斜法で得られた高強度THzパルスは,EOサンプリング法によって検出した.パルス面傾斜の非線形結晶は,良く用いられるLiNbO3(LN)結晶を使用し,EO結晶には,ZnTe結晶を使用した.観測されたTHzパルスの時間波形には,三つのピークが現れファーストピークとセカンドピークが同程度の強度であること,またファーストピークを拡大すると,ピークの先端が不自然に折れている形状になっていること,を考慮し本来のTHzパルス電場の時間波形でないことが分かった.ZnTe結晶は,この波長帯での屈折率変化が大きいため感度が高いため,数10 kV/cm以上の強いTHz電場パルスを計測するとこのようなことが起こることが知られている.そこで,この波長帯での屈折率変化が小さいGaPをEO結晶としてTHzパルスの時間波形を測定した.ZnTeをEO結晶として用いた結果と異なり,本来のTHzパルス電場の時間波形が得られた.THzパルスの電場振幅を求めた式を適用することで,最大電場振幅は126.5 kV/cmであった.実験以外にもGaAsのE-k分散を考慮したモンテカルロ(MC)シミュレーションを行ったが, 25 V/cm以上のTHzパルス照射によってTHzパルスによるスピンの反転が可能であることが分かっている.今回得られたTHzパルスの強度はは25 V/cmを大きく上回っている.励起キャリアが観測できたので,THzパルス発生光学系からTHzパルスを,サンプル裏側から入射して,サンプルの表側でキャリアのダイナミクス測定を行った.しかし,現時点ではTHzパルスの相互作用は観測できなかった.高強度THzパルスの強度の観測,またキャリアダイナミクスの観測に成功したことは良かったが,キャリアと高強度THzパルスとの相互作用が全く観測できなかったことは想定外であった.キャリアまたはスピンが励起されている時間内に,THzパルスを照射し何等かの影響を観測したかった.MCシミュレーションによると,今回用いた試料のGaAsでは高強度すぎる(100 kV/cm以上)のTHzパルスでは電子に負の速度が働き,大きく動かないことが分かっていた.そのため,励起キャリアダイナミックスへの信号変化が観測できたなかったと考えている.次回はピーク強度を落とし,10 kV/cm程度で実験を行う必要がある.他にも相互作用が観測できなかった理由として,そもそもスピン(キャリア)観測光学系とTHzパルス発生光学系の光路長が適していないことが考えられた.実験光学系において光を分離させた箇所(ビームスプリッター)からサンプルまでの光路長を測定してみたところ,現在の光学系では,スピンあるいはキャリアを励起する前にTHzパルスが到達してしまう可能性が高いことが分かった.THzパルスの強度を落とすこと,また光学系の光路長を見直し,改めて実験を行う必要がある.電子スピンは,「電荷」と「スピン」の両方の性質を持ち,特に「スピン」の量子力学的な性質を積極的に利用した全く新しいデバイスが実現・提案されている.このような新規デバイスを半導体中で実現するには,半導体中でのスピンの高速制御が重要となる.特にスピン軌道相互作用が強いIII-V族半導体中では,スピンをドリフトさせることで内部有効磁場を利用した無磁場でのスピンの回転操作が可能である.ピーク強度が1 MV/cmに達する高強度THzパルス発生が通常の実験室レベルで実現できるようになったが,この高強度THzパルスを半導体中の電子スピンに照射すれば,スピンは強い電場を感じてドリフトし,上記の原理による超高速スピン制御が実現可能となる.我々のシミュレーションによると1 ps以内といったスピンの超高速制御を実現するためには,ピーク強度が100 kV/cm以上の高強度THzパルスが必要である.本研究を実施するために100 kV/cm以上の高強度THzパルスが出力可能な繰り返し周波数が1 kHzの超短パルスレーザーを保有する阪大レーザー研で実験を行い,共同研究(共同研究者:中嶋氏)を開始した.実験開始前の準備として平成29年度前半は,1高強度なTHzパルスを発生する光学系と2スピンの時空間ダイナミクスを検出する光学系の構築を行った.平成29年度後半は,二つの光学系を組み合わせた最終光学系をブレッドボード上に作製した.光学系全体を阪大レーザー研まで移動し,それらをレーザー研のレーザー光源横の光学定盤上に設置した.実際の実験では,室温下でGaAs量子井戸中にスピンが生成できることを確認した.平成29年度は,高強度THzパルスによるスピン制御の実験を行うために,THzパルス発生光学系とスピン検出光学系を組み合わせた光学系の構築,設置を阪大レーザー研で行った.阪大レーザー研での設置を終えるところまでは終了したため,概ね順調といえる.100 kHz以上の繰り返し周波数を有する超短パルスレーザーを用いた実験では,GaAs量子井戸中のスピンの生成・検出が容易であった.しかし,阪大レーザー研の1 kHzレーザーでは,スピンの生成・検出が非常に難しいことが分かった.ワンパルスあたりのエネルギーが大きいため,試料を破壊しない程度の励起パルス強度まで抑えようとすると,逆にポンプ光とプローブ光の強度が弱まり高いSNでのスピンの検出が難しいことが分かってきた.平成29年度の研究では,実験だけでなくTHzパルスによるスピン制御のモンテカルロシミュレーションも行った.その結果によると,THzパルスの強度をあまり高くすると(数kV/cm以上),Dresselhausスピン軌道相互作用の3次項によってスピンがすぐに緩和してしまうことが分かった.従って,スピンの高速制御のためとはいえ,THzパルスの強度を上げてはいけないことが分かった.
KAKENHI-PROJECT-17H02795
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高強度テラヘルツパルスによる極限スピン制御
平成30年度はこれらの問題解決のための対策を考えた上で実験を進めることが望まれる.2018年度では,THzパルス発生光学系を用いて,高強度THzパルス発生を試みた.パルス面傾斜法で得られた高強度THzパルスは,EOサンプリング法によって検出した.パルス面傾斜の非線形結晶は,良く用いられるLiNbO3(LN)結晶を使用し,EO結晶には,ZnTe結晶を使用した.観測されたTHzパルスの時間波形には,三つのピークが現れファーストピークとセカンドピークが同程度の強度であること,またファーストピークを拡大すると,ピークの先端が不自然に折れている形状になっていること,を考慮し本来のTHzパルス電場の時間波形でないことが分かった.ZnTe結晶は,この波長帯での屈折率変化が大きいため感度が高いため,数10 kV/cm以上の強いTHz電場パルスを計測するとこのようなことが起こることが知られている.そこで,この波長帯での屈折率変化が小さいGaPをEO結晶としてTHzパルスの時間波形を測定した.ZnTeをEO結晶として用いた結果と異なり,本来のTHzパルス電場の時間波形が得られた.THzパルスの電場振幅を求めた式を適用することで,最大電場振幅は126.5 kV/cmであった.実験以外にもGaAsのE-k分散を考慮したモンテカルロ(MC)シミュレーションを行ったが, 25 V/cm以上のTHzパルス照射によってTHzパルスによるスピンの反転が可能であることが分かっている.今回得られたTHzパルスの強度はは25 V/cmを大きく上回っている.励起キャリアが観測できたので,THzパルス発生光学系からTHzパルスを,サンプル裏側から入射して,サンプルの表側でキャリアのダイナミクス測定を行った.しかし,現時点ではTHzパルスの相互作用は観測できなかった.高強度THzパルスの強度の観測,またキャリアダイナミクスの観測に成功したことは良かったが,キャリアと高強度THzパルスとの相互作用が全く観測できなかったことは想定外であった.キャリアまたはスピンが励起されている時間内に,THzパルスを照射し何等かの影響を観測したかった.平成30年度は,29年度に行った問題点を踏まえて,これまでのようにスピンの生成・検出を行う実験でなく,キャリア(電子)の生成・検出を,試料を破壊することなく行うことができる条件出しの実験から着手する.そのために,1ポンプとプローブパルスを回折格子,レンズ,ミラーの一式で波長を切り出し,時間幅100fsから1psまで伸ばすこと,2試料温度とポンプとプローブの波長の適した関係を見出すこと,の二つの課題を重視し研究を進める.それにより,THzパルスによって動く電子の空間的な振る舞いについて調べることが可能になる.本来のスピン制御といる目標とは離れるが,まずはTHzパルスによってどの程度電子が空間移動するのかについての原理検証実験を行う.
KAKENHI-PROJECT-17H02795
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清朝の『皇輿全覧図』作製とその世界史的な意義に関する研究
1 1727年の北京会議においてロシア側代表ヴラジスラヴィッチは、国境交渉の参考として清側にホマンの地図帳を提供した。その中には1723年頃に作製されたロシア一般図とカムチャツカ・カスピ海図が含まれており、二つの地図はその後に作られた清朝の官製ユーラシア地図に強い影響を残すことになった。たとえば『乾隆十三排図』では、中国本土とその周辺は『皇輿全覧図』に従い、ロシアなど『皇輿全覧図』がカバーしない外側の地域は、ホマンのロシア一般図を模倣した。このような清の官製ユーラシア地図は、『雍正十排皇輿図』に起源をもっており、そのことは北京会議を指揮していた恰親王允祥の考えによるものである。2 18世紀のヨーロッパにおけるエゾ論争(現在の北海道がいかなる形状をして、いかなる位置に存在するのかをめぐる論争)について研究を行なった。18世紀初めにロシアで、カムチャツカ半島の南部がエゾであるという説が起こり、それが西ヨーロッパに伝わり、1720年代から10年間その説がヨーロッパを席巻した。しかしデュアルド『中国誌』(1735年刊)が『皇輿全覧図』とベーリングの地図を同時に公開して、西太平洋北部の海岸線が明らかになると、カムチャツカ=エゾ説は一挙に没落した。それからそれに代わって支配的となった説は、サハリン南部と北海道を結合させる巨大なエゾを考えるものであった。それが約50年間続いて、18世紀末になりラペルーズとブロートンという二人の航海者が、それぞれ独自にこの海域を実地調査して、北海道とサハリンを発見しエゾ論争に終止符を打ったのである。1 1727年の北京会議においてロシア側代表ヴラジスラヴィッチは、国境交渉の参考として清側にホマンの地図帳を提供した。その中には1723年頃に作製されたロシア一般図とカムチャツカ・カスピ海図が含まれており、二つの地図はその後に作られた清朝の官製ユーラシア地図に強い影響を残すことになった。たとえば『乾隆十三排図』では、中国本土とその周辺は『皇輿全覧図』に従い、ロシアなど『皇輿全覧図』がカバーしない外側の地域は、ホマンのロシア一般図を模倣した。このような清の官製ユーラシア地図は、『雍正十排皇輿図』に起源をもっており、そのことは北京会議を指揮していた恰親王允祥の考えによるものである。2 18世紀のヨーロッパにおけるエゾ論争(現在の北海道がいかなる形状をして、いかなる位置に存在するのかをめぐる論争)について研究を行なった。18世紀初めにロシアで、カムチャツカ半島の南部がエゾであるという説が起こり、それが西ヨーロッパに伝わり、1720年代から10年間その説がヨーロッパを席巻した。しかしデュアルド『中国誌』(1735年刊)が『皇輿全覧図』とベーリングの地図を同時に公開して、西太平洋北部の海岸線が明らかになると、カムチャツカ=エゾ説は一挙に没落した。それからそれに代わって支配的となった説は、サハリン南部と北海道を結合させる巨大なエゾを考えるものであった。それが約50年間続いて、18世紀末になりラペルーズとブロートンという二人の航海者が、それぞれ独自にこの海域を実地調査して、北海道とサハリンを発見しエゾ論争に終止符を打ったのである。研究代表者は、今年度以下の研究成果をえた。(1)清朝は、18世紀初めに科学白的な実測にもとづく中国と周辺の地図『皇輿全覧図』を作製した。『皇輿全覧図』のコピーは、ロシアとフランスに送られて、当時ヨーロッパの地理学において空白地域であった西太平洋の研究に大きく貢献した。『皇輿全覧図』においては、アムール川河口までのアジア大陸の東海岸が明確になり、謎の土地であったエゾ(北海道)は日本に近い島であるとして、地図の中には描かれなかった。、ロシアではキリロフが、『皇輿全覧図』の海岸線を採用し、ベーリングの地図と結合して、カムチャツカ以西のアジアの海岸線をほぼ明らかにした。さらにキリロフとドゥリルは、サハリンを2つの島と考えて、そのうちのサハリン南部を北海道と合わせて一つの巨大な島とした。これに対してダンヴィルは、デュアルド『中国誌』のために、『皇輿全覧図』にもとづいた東アジア地図を作製したが、そのうちの1枚に『皇輿全覧図』には描かれないエゾを描いた。ダンヴィルは、本州の北にエゾガシマ、エゾ、サハリン北部の3島を考えたが、ヨーロッパではかれの考えは支持されず、ドゥリルらの説が有力になり影響力を強めた。エゾ問題を最終的に解決したのは、後者の地図に従ってこの海域を探検したラペルーズであり、その結果西太平洋海域は、大体明らかになった。(2)清朝は、『皇輿全覧図』のあと『皇輿十排全図』と『乾隆十三排図』を作製した。これらの地図では、東アジアとともにロシアや地中海までも含むが、それを描くために清が参考にしたのは、カムチャツカ半島やアムグン川などの特徴から、1727年の北京会議のときにロシアが提供したホマンの地図であった。(1)1727年の北京会議においてロシア側代表ヴラジスラヴィッチは、国境交渉の参考として清側にホマンの地図帳を提供した。その中には1723年ごろに作製されたロシア一般図が含まれており、この地図がその後に作られる清朝の官製ユーラシア地図に強い影響を与えることになった。
KAKENHI-PROJECT-16520375
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清朝の『皇輿全覧図』作製とその世界史的な意義に関する研究
たとえば『乾隆十三排図』では、中国とその周辺は『皇輿全覧図』に従い、ロシアなど『皇輿全覧図』がカバーしない外側の地域は、ホマンのロシア一般図に拠った。なお『乾隆十三排図』は、その前にできた『雍正十排皇輿図』の構図をそのまま模倣したものとみられる。(2)ホマンの地図帳に含まれるカムチャダリア(カムチャツカ)・カスピ海地図とロシア一般図では、幻の大地エゾはカムチャツカの南端であり、マツマイ(松前)はその南の小島であるとされていた。デュアルド『中国誌』によって『皇輿全覧図』とベーリングの地図が紹介されると、東アジアの海岸線が明確になって、エゾ=カムチャツカ説は否定された。それからはエヅをめぐって北海道とサハリン南部を一島と考える説と、それを二つに分ける考えが対立したが、前者がしだいに優勢となった。マツマイがエゾとは分離した小島であるという考えは、その間両方の説で生き残った。こうしたエゾ論争に決着をつけたのは、18世紀末に行なわれたラペルーズとブロートンの航海であった。(3)スシエとゴービルなどの著作を通して、『皇輿全覧図』を作製する一環で清が行なったチベットと中央アジア調査について明らかにした。しかしまだ調査隊の人名を特定できるまでには至っていない。(1)清朝時代に個人が作製した世界地図を研究して、その系統と歴史的な意義を考えた。それらの世界地図は一枚ものの地図として刊行されることは少なく、書籍の中に掲載されているものがほとんどである。ロシアの地図から影響を受けたものとしては、『異域録』「異域録輿図」や『雍正十排皇輿図』、『乾隆内府輿図』と、後者から出た『大清一統図』などが存在する。これに対して『海国聞見録』「四海総図」は『皇輿全覧図』ができる以前のヨーロッパ製の地図を模倣しており、『圜天図説』「地球正面全図」は『皇輿全覧図』がヨーロッパに伝わった後に作製されたヨーロッパ製の地図を模倣している。清朝前期に作製された世界地図は、全部で10点前後にのぼるが、それらの地図はいずれも中国社会に確かな痕跡を残すことはできなかった。(2)18世紀ロシアにおける地図学の発展について研究した。とくにエゾ論争に一石を投じた地図二つの起源と西ヨーロッパ社会に及ぼした影響を明らかにした。すなわちカムチャツカ=エゾ説を初めて主張したホマンの地図は、ロシアのピョートル一世がホマンに送ったストラレンベルグの原図がそのもとになった。その後10年間にホマンの地図を模倣するものが相継いで現れ、カムチャツカ=エゾ説は西ヨーロッパを席巻した。しかし『皇輿全覧図』が現れた後、それは一挙に没落した。それに代わって隆盛となったのは、ロシア人キリロフが考えるサハリン南部と北海道を結合させる巨大なエゾであった。キリロフの説も西ヨーロッパ社会に受け入れられて、ラペルーズとブロートンが実地調査を行なう18世紀末まで権威をもっていた。
KAKENHI-PROJECT-16520375
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16520375
発展途上諸国の急成長都市群におけるヒートアイランド現象の形成要因と将来予測
アジア及びアフリカの急成長都市群を対象に,衛星画像データから地表面温度,土地被覆・利用パターンを推定するとともに,社会経済的特性の分布の空間可視化を行った.都心から郊外に向かってどの程度の距離減衰効果が働くかは,複雑系科学によるパターン認識法を用いて把握した.分析結果を踏まえ,ヒートアイランド現象を空間的(中心ー周辺)に捉えて,都市構造(単極,多極分散)との因果関係を探った.対象とした都市は,マニラ,上海,北京,カトマンズ,コロンボ,テヘラン,ラゴスなどである.ヒートアイランド現象の理論化については,アジアのメガシティの都市化に伴う気候変化をより高精度に計算するために多層キャノピーモデルを開発し,その精度検証を行った.具体的には,領域気候モデルを用いて,アジアのメガシティの都市化に伴う気候変化を推定した.また,ヒートアイランド現象の悪化がもたらす都市生態系の変化に関する分析を行った.文献レビューにより都市熱リスクの評価を行い,リスクと脆弱性の各要素について考えられる指標をリストした.さらに,フィリピンの都市を対象に衛星写真解析から地表面温度指標を推定するとともに,現地においてデータの入手可能性を確認し,専門家に対するヒアリングを実施した.理論的研究を補強するため,クアラルンプールとシンガポールの都市中心部において,ヒートアイランド緩和効果のある水辺空間の整備状況とその活用・維持管理に関する現地調査を実施した.さらに本年度は,スリランカを重点的な研究対象地域に選び選定し,研究代表者と分担者2名がチームを組んで,都市化,土地被覆・土地利用の現地観察,専門家ヒアリング,データの入手可能性に関するインテンシブなフィールドワークを行った.コロンボ大都市圏およびキャンディ大都市圏で,土地利用の高度化及びそれに伴う都市環境の変化に関する現地調査を実施した.予定通り作業が進み,着実に成果をあげている.本研究では,熱画像のソースとしてLandSat衛星画像を利用している.しかし,雲や影の影響により精確な情報を得られないことがある.その場合には,対象年次を変更したり,場合によっては対象都市を変更するなどの措置を講じる.都市ヒートアイランドの形成要因の分析では,市街地の水平的拡大と建物の垂直的拡大,さらにそれに伴う社会経済的な機能変化に注目する.ランドサットデータをもとに都市の土地利用を分類し,1985年以降に市街地(人工建造物)が空間的にどの程度増加したか,その一方で緑地がどの程度減少したかを定量的に捉えたい.アジアとアフリカでは,ヒートアイランドの発生要因やポテンシャル強度の差異が予想されるので,地理学的観点から両地域を比較考察して相違をもたらす原因を解明する.発展途上国の諸都市におけるヒートアイランド形成のメカニズムは,欧米の都市がたどってきたプロセスとは成因が根本的に異なる.このため,発展途上の各都市が有する地理的特性に応じた独自の視点と分析枠組が必要になる.地理学的視点に立って実証分析を積み重ねるとともに,都市間比較を通して,有効な方法論や分析手法を確立することが求められる.さらに,ヒートアイランド現象の深化が社会にどんな影響を及ぼすのかを的確に予想し,今後の対策や政策に生かすことが重要である.アジア及びアフリカの急成長都市群を対象に,衛星画像データから地表面温度,土地被覆・利用パターンを推定するとともに,社会経済的特性の分布の空間可視化を行った.都心から郊外に向かってどの程度の距離減衰効果が働くかは,複雑系科学によるパターン認識法を用いて把握した.分析結果を踏まえ,ヒートアイランド現象を空間的(中心ー周辺)に捉えて,都市構造(単極,多極分散)との因果関係を探った.対象とした都市は,マニラ,上海,北京,カトマンズ,コロンボ,テヘラン,ラゴスなどである.ヒートアイランド現象の理論化については,アジアのメガシティの都市化に伴う気候変化をより高精度に計算するために多層キャノピーモデルを開発し,その精度検証を行った.具体的には,領域気候モデルを用いて,アジアのメガシティの都市化に伴う気候変化を推定した.また,ヒートアイランド現象の悪化がもたらす都市生態系の変化に関する分析を行った.文献レビューにより都市熱リスクの評価を行い,リスクと脆弱性の各要素について考えられる指標をリストした.さらに,フィリピンの都市を対象に衛星写真解析から地表面温度指標を推定するとともに,現地においてデータの入手可能性を確認し,専門家に対するヒアリングを実施した.理論的研究を補強するため,クアラルンプールとシンガポールの都市中心部において,ヒートアイランド緩和効果のある水辺空間の整備状況とその活用・維持管理に関する現地調査を実施した.さらに本年度は,スリランカを重点的な研究対象地域に選び選定し,研究代表者と分担者2名がチームを組んで,都市化,土地被覆・土地利用の現地観察,専門家ヒアリング,データの入手可能性に関するインテンシブなフィールドワークを行った.コロンボ大都市圏およびキャンディ大都市圏で,土地利用の高度化及びそれに伴う都市環境の変化に関する現地調査を実施した.予定通り作業が進み,着実に成果をあげている.本研究では,熱画像のソースとしてLandSat衛星画像を利用している.しかし,雲や影の影響により精確な情報を得られないことがある.その場合には,対象年次を変更したり,場合によっては対象都市を変更するなどの措置を講じる.都市ヒートアイランドの形成要因の分析では,市街地の水平的拡大と建物の垂直的拡大,さらにそれに伴う社会経済的な機能変化に注目する.ランドサットデータをもとに都市の土地利用を分類し,1985年以降に市街地(人工建造物)が空間的にどの程度増加したか,その一方で緑地がどの程度減少したかを定量的に捉えたい.アジアとアフリカでは,ヒートアイランドの発生要因やポテンシャル強度の差異が予想されるので,地理学的観点から両地域を比較考察して相違をもたらす原因を解明する.発展途上国の諸都市におけるヒートアイランド形成のメカニズムは,欧米の都市がたどってきたプロセスとは成因が根本的に異なる.
KAKENHI-PROJECT-18H00763
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H00763
発展途上諸国の急成長都市群におけるヒートアイランド現象の形成要因と将来予測
このため,発展途上の各都市が有する地理的特性に応じた独自の視点と分析枠組が必要になる.地理学的視点に立って実証分析を積み重ねるとともに,都市間比較を通して,有効な方法論や分析手法を確立することが求められる.さらに,ヒートアイランド現象の深化が社会にどんな影響を及ぼすのかを的確に予想し,今後の対策や政策に生かすことが重要である.
KAKENHI-PROJECT-18H00763
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H00763
カルボニルストレス解毒システムをターゲットとした骨格筋老化抑制の検証
植物の病気予防システム(カルボニルストレス解毒システム)を参考に、本研究では、カルボニルストレス解毒システム(glyoxalase system)をターゲットとして骨格筋老化抑制が可能であるか検証する。まず、若齢および高齢マウスを用いて、骨格筋のglyoxalase I発現と活性を調べ、加齢に伴って骨格筋のglyoxalase systemがどのように変化するのか明らかにする。次に、glyoxalase systemの活性化が骨格筋の老化抑制に有効であるのかについて、老化促進マウスにglyoxalase I誘導剤を投与し検討する。植物の病気予防システム(カルボニルストレス解毒システム)を参考に、本研究では、カルボニルストレス解毒システム(glyoxalase system)をターゲットとして骨格筋老化抑制が可能であるか検証する。まず、若齢および高齢マウスを用いて、骨格筋のglyoxalase I発現と活性を調べ、加齢に伴って骨格筋のglyoxalase systemがどのように変化するのか明らかにする。次に、glyoxalase systemの活性化が骨格筋の老化抑制に有効であるのかについて、老化促進マウスにglyoxalase I誘導剤を投与し検討する。
KAKENHI-PROJECT-19K22806
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K22806
シェイクスピア映画に対する日米知覚反応の比較
今年度はマイケル・ラドフォード監督が2005年に制作した『ヴェニスの商人』を研究した。この映画はホロコーストを経験した20世紀の人類にユダヤ人の抑圧の意味を問い直させるだけでなく、現代において宗教の名においてくり返されるテロリズムの悲惨さもあらためて考えさせる。この劇は日本人にとっては明治以来繰り返し上演されてきた劇であるが、浅利慶太が1968年に演出した時には「私には、シャイロックはどうしても悪人に思えない」とかいて、悲劇的なシャイロックを演出している。ラドフォードも犠牲者としてのシャイロックを描き出し、現代の宗教の違いによる悲惨な争いに警鐘をならしている。また、ゼフィレッリ監督の『じゃじゃ馬馴らし』(1967)を詳細に鑑賞し、日本人としてのどのような知覚反応があり得るかを、中村の感性をもとに検討した。その結果、映画におけるペトルーチオの貧しさが、劇全体の解釈に大きく影響を与えていることを発見した。また、『オセロー』について場面ごとの中村の反応を日本人のひとつの観客反応として詳細に記述し、映画作品分析の基礎的作業をおこなった。マイケル・ゴーマンはアメリカ人として受けた教育のなかでシェイクスピアが占めていた位置を検討し、それまで文化的にもよそよそしかったシェイクスピアが、ガーランド・ライト演出の『ハムレット』演劇の経験によって急に身近になったことを語る。その体験を核として、1990年からの10年間に公開された3本の『ハムレット』映画を比較検討し、それぞれの映画の特徴を明らかにしている。今年度はマイケル・ラドフォード監督が2005年に制作した『ヴェニスの商人』を研究した。この映画はホロコーストを経験した20世紀の人類にユダヤ人の抑圧の意味を問い直させるだけでなく、現代において宗教の名においてくり返されるテロリズムの悲惨さもあらためて考えさせる。この劇は日本人にとっては明治以来繰り返し上演されてきた劇であるが、浅利慶太が1968年に演出した時には「私には、シャイロックはどうしても悪人に思えない」とかいて、悲劇的なシャイロックを演出している。ラドフォードも犠牲者としてのシャイロックを描き出し、現代の宗教の違いによる悲惨な争いに警鐘をならしている。また、ゼフィレッリ監督の『じゃじゃ馬馴らし』(1967)を詳細に鑑賞し、日本人としてのどのような知覚反応があり得るかを、中村の感性をもとに検討した。その結果、映画におけるペトルーチオの貧しさが、劇全体の解釈に大きく影響を与えていることを発見した。また、『オセロー』について場面ごとの中村の反応を日本人のひとつの観客反応として詳細に記述し、映画作品分析の基礎的作業をおこなった。マイケル・ゴーマンはアメリカ人として受けた教育のなかでシェイクスピアが占めていた位置を検討し、それまで文化的にもよそよそしかったシェイクスピアが、ガーランド・ライト演出の『ハムレット』演劇の経験によって急に身近になったことを語る。その体験を核として、1990年からの10年間に公開された3本の『ハムレット』映画を比較検討し、それぞれの映画の特徴を明らかにしている。本年度はシェイクスピアの『マクベス』を映画化した黒澤明監督による『蜘蛛巣城』を中心に研究した。シェイクスピアの劇を安土時代の日本を舞台に翻案したこの映画は、グレゴリー・コジンチェフによって「シェイクスピア映画の最高傑作」と批評されているが、そうした西洋の批評家による高い評価の根底には、彼らにとって未知なる東洋芸術である能への畏怖と尊敬がある。しかも、実際に能を見た経験からなされた批評というよりは、多分に繰り返し本の中で再生産される「日本的なもの」を黒澤の映画から読取ろうとする点で「オリエンタリズム」的なものである。さらに、そうした「日本的なもの」を理解する知的枠組みはあくまで西洋的なものであり、したがって、鷲津の行為がヨブやサタンとの比較によって理解されるようなことになる。一方、日本人による『蜘蛛巣城』の理解は、シェイクスピアの『マクベス』についての知的・学問的理解に基づいた映画批評が多いが、西洋の批評や意見を参考にしたり批判したりするなかで目立つのが、西洋の批評家による『蜘蛛巣城』の高い評価への驚きである。それは日本映画であるにもかかわらず世界にも通用するというより、「日本的である」が故に世界に通要するのだという事実が、当時の日本人に初めて認識されたためであろう。現代では「日本的なもの」が「西洋的なもの」によってかなり影響を受けているが、こうした状況は日本人の知覚にも影響を与えており、純粋に日本人的な反応を日本人は西洋文化にできなくなっている。これは一種の文化的コロニアリズムの状況であるが、むしろ、私たちはそれを「ハイブリッドな」状況として、新たに積極的に理論化する時期に来ているのではないか。ゼフィレリ監督の『じゃじゃ馬馴らし』について狩野良規は『シェイクスピア・オン・スクリーン』において「とくに男性にとっては胸のスカッとする喜劇である」と述べている。また何人かの男性のウェッブ上のコメントも好意的なものが多い。しかもウェッブ上でこの劇にコメントしている女性がほとんどいないことも考慮すると、この映画の受容は鑑賞者のジェンダーに大きく左右されていることは否定できない。日本においてこの映画のファロセントリズムを正面から批判する女性の批評については調査中である。
KAKENHI-PROJECT-13610574
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シェイクスピア映画に対する日米知覚反応の比較
本研究では、もっぱら一般の日本人のメンタリティが、先鋭的な批評的知識を持たない状態で、『じゃじゃ馬馴らし』をどう知覚するかに重点を置いていたために、結局、日本の消費文化自体のファロセントリズムが依然としてドミナントなものとして流通していることが確認されただけであり、さほど実りのある結果が得られなかったのは残念なことである。これに対して欧米の『じゃじゃ馬馴らし』批評は質・量ともに充実しており、しかも現代的な批評的関心を正面から扱っている。そうした本は必ずしも特に研究者向けにかかれたものではなく、一般の人々がシェイクスピア劇を見た後で、もっと本格的にそれらの映画について知りたいという欲求に答えたものである。日本においてジェンダー論や本格的な映画研究が一般読者のレベルまで浸透していないことが、欧米のような本格的な映画研究がなされない大きな原因のひとつであろう。しかも日本においてそうした本格的なシェイクスピア映画研究を進めようとすると、欧米の映画理論だけでなく西洋特有の感受性まで学習してしまう。となると、シェイクスピア映画に対する日本人特有の感じ方がそうした研究に存在するかどうかさえ疑わしくなる。この点が当該研究のもっとも難しいところであるが、いまだにどのようにそれを理解してよいのか分からない状態である。今年度は『ロミオとジュリエット』には対照的な二つの映画版を考察した。1954年にフランコ・ゼフィレッリ監督によって制作された映画と、1996年にバズ・ラーマン監督が制作した『ロミオ+ジュリエット』である。研究の視点は日米の観客の受容に変化があるのかを考察したが、結論から言えば、それほど違いは見られなかった。理由は、この劇は欧米の観客だけでなく、日本の観客にも十分知られた劇であり、その点では両者の文化の中で神話的な作品であったためである。ただ、ラーマンの映画におけるポストモダン的要素に関しては、日本の一般の映画鑑賞者だけでなく、映画批評家についても、欧米ほど精緻な分析を試みたものはなかった。現代消費社会を特徴づける宣伝看板、現代の暴力を象徴する拳銃、警察ヘリコプターによる追跡などが、マリア像やキリスト像と同じレベルで併置されて映画のミザンセーヌの一部になっているラーマンの映画においては、パスティーシュやシュミラークルという概念の理解が不可欠である。しかし日本の映画批評ではそれは必ずしも十分なものになっていない。欧米の批評ではその点は精緻であり、その点では日本の研究者は依然として受容段階にとどまらざるを得ない。とりわけ精密な映画研究になればなるほど、そういう傾向に陥っていく。しかし、私としてはそういう状況においても、日本的な映画受容がシェイクスピア映画鑑賞においてどのような形であり得るのかを探っていくことが、本研究の最終的な課題であると感じている。本年度はゴダールの『リア王』を中心に日米の批評を比較しながら、シェイクスピア映画作品についての日米の知覚反応について考察した。ゴダールの『リア王』はシェイクスピアの『リア王』を再現した映画ではなく、むしろシェイクスピアの文化的中心性を脱構築した映画であり、批評においては映画が何を言おうとしているかというより、アクロバット的な演出法に関心が向けられている。アメリカの批評において、黒澤の『乱』への言及がしばしば見られるのは、同じくシェイクスピアの作品を素材としながら、忠実な映画化を目指さず、むしろ監督の映像芸術への姿勢を開示する点が共通しているためであろう。
KAKENHI-PROJECT-13610574
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理科教育の内容とその配列に関する総合的研究
本研究の目的は,今後のわが国の理科の教育課程における指導内容とその配列を決定する諸要因を実証的に調べるとともに,指導内容の選択や配列の基本モデルを作成し,今後の理科の教育課程における指導内容とその配列について提言を行った。具体的には,(1)諸外国の理科カリキュラム内容の比較研究,及び(2)わが国の新しい理科カリキュラムの中で児童・・生徒の理解が困難な内容を明確にし,どのような指導法が効果的であるかに関する研究の2つを行い,諸外国と比較分析することによって,わが国の理科の教育課程の特徴を明らかにするとともに,理科の内容に対する児童・生徒の理解度やつまずきを明らかにし,その結果をもとに指導内容とその配列についての提言を試みた。それぞれの研究の成果は次の通り。(1)平成14年度において収集した主要10か国の全国的あるいは州や地域レベルのカリキュラムにおける「科学の内容」についての配当学年,配列の順序等のデータに加え,平成15・16年度は,主要各国の最新のカリキュラムにおける理科の内容の配当学年や配列の順序等に関するIEA-TIMSS2003調査のデータを入手し,分析を行った。(2)全国の中学校500校の理科主任を対象として平成12年度末と平成14年度末に実施した「生徒の理解度及びつまずき調査」に引き続き,全国の小学校500校の理科主任を対象として平成15年度末に「児童の理解度及びつまずき調査」の調査を実施した。その結果,中学校においては,学習指導要領の改訂により,生徒の理解が比較的困難な内容としてあがった項目数が8項目から3項目に減った。小学校においては,C区分の内容が児童の理解が比較的困難であることが明らかとなった。また,小・中学校の教員を中心としたカリキュラム検討委員会において,本研究のアンケート調査結果や「教育課程実施状況調査」の結果を踏まえ,児童・生徒の理解を高めたり,つまずきを克服したりするための具体的な方策の検討を行った。(1)「わが国の理科の教育課程の特徴を明確にする研究」平成14年度は,主要10か国の全国的あるいは州や地域レベルのカリキュラムにおける「科学の内容」,についての配当学年,配列の順序等のデータを収集した。平成15・16年度はこれらのデータに加え,各国の教科書の記載内容を科学的な内容面・目標面等で分類したデータ(IEA-TIMSS調査の一環)を分析し,整理・集計することを計画中である。この教科書の内容分析から,実際に学校で指導されている,あるいは指導される可能性が高い,より具体的な内容に関するデータが得られ,このデータを合わせることによって,各国の状況がより詳細に概観でき,我が国の教育課程の特徴もより明確にできると予想される。一方で,TIMSSにおけるカリキュラム調査と同じ手法を用いて,主要各国の最新のカリキュラムにおける理科の内容の配当学年や配列の順序等に関する調査を,TIMSS2003調査の各国調査責任者に対して,1995年のTIMSS調査と同様の質問紙票を用いて,再調査し,最新のデータを入手する予定である。(2)「理科における児童・生徒の理解度やつまずきの実態等を把握する研究」平成14年度末に無作為に抽出した全国の中学校500校の理科主任またはこれに代わる方に対して実施した「児童・生徒の理解度及びつまずき調査」アンケートの第一次集計を行った。前回(平成12年度末に同規模で実施,回収率4割)よりも回収率が高く,約250校のデータ(回収率5割)を集計した結果,前回に比べて今回は,生徒の理解が比較的困難な内容(30%以上の教師が回答)としてあがった項目数が8項目から3項目に減った。今回も30%を超える教師から生徒の理解が困難であると回答があったのは,「力と圧力」「電流」「天体の動きと地球の自転・公転」の3項目であり,前回も30%を超える教師から回答があった内容である。なお,前回の調査で比較的理解が困難であるとされた「熱と温度」「電気分解とイオン」「仕事とエネルギー」は中学校から高等学校へ移行している。本研究の目的は,今後のわが国の理科の教育課程における指導内容とその配列を決定する諸要因を実証的に調べるとともに,指導内容の選択や配列の基本モデルを作成し,今後の理科の教育課程における指導内容とその配列について提言を行った。具体的には,(1)諸外国の理科カリキュラム内容の比較研究,及び(2)わが国の新しい理科カリキュラムの中で児童・・生徒の理解が困難な内容を明確にし,どのような指導法が効果的であるかに関する研究の2つを行い,諸外国と比較分析することによって,わが国の理科の教育課程の特徴を明らかにするとともに,理科の内容に対する児童・生徒の理解度やつまずきを明らかにし,その結果をもとに指導内容とその配列についての提言を試みた。それぞれの研究の成果は次の通り。(1)平成14年度において収集した主要10か国の全国的あるいは州や地域レベルのカリキュラムにおける「科学の内容」についての配当学年,配列の順序等のデータに加え,平成15・16年度は,主要各国の最新のカリキュラムにおける理科の内容の配当学年や配列の順序等に関するIEA-TIMSS2003調査のデータを入手し,分析を行った。(2)全国の中学校500校の理科主任を対象として平成12年度末と平成14年度末に実施した「生徒の理解度及びつまずき調査」に引き続き,全国の小学校500校の理科主任を対象として平成15年度末に「児童の理解度及びつまずき調査」の調査を実施した。
KAKENHI-PROJECT-15020269
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理科教育の内容とその配列に関する総合的研究
その結果,中学校においては,学習指導要領の改訂により,生徒の理解が比較的困難な内容としてあがった項目数が8項目から3項目に減った。小学校においては,C区分の内容が児童の理解が比較的困難であることが明らかとなった。また,小・中学校の教員を中心としたカリキュラム検討委員会において,本研究のアンケート調査結果や「教育課程実施状況調査」の結果を踏まえ,児童・生徒の理解を高めたり,つまずきを克服したりするための具体的な方策の検討を行った。
KAKENHI-PROJECT-15020269
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地殻流体: その実態と沈み込み変動への役割
領域全体の5年間の研究を締めくくるGeofluid-3国際シンポジウムNature and Dynamics of Fluids in Subduction Zonesを平成26年2月28日ー3月3日の4日間東京工業大学デジタル多目的ホールを用いて開催し、アメリカ、イギリス、ドイツ、ニュージーランド、中国から合計12名の指導的研究者を招聘し135名がシンポジウムに参加した。Geofluid-3国際シンポジウムおよびその後1年間の海外研究者との意見交流を通じて地殻流体領域の研究成果を海外に浸透することができた。研究成果特集号がSpringer社の刊行するオープンアクセスジャーナルEPS(Earth, Planets and Space)から出版され、特集号Geofluid Processes in Subduction Zones and Mantle Dynamics、編集長:川本竜彦)として31編の論文が掲載された。本研究の関連研究者は延べ75人は5年間で678件の学術論文(うち652編は査読有)を生み出した。総括班は日本鉱物科学会誌『岩石鉱物科学』(2011年)、日本地球化学会誌『地球化学』第46巻4号(2012年)でそれぞれ「地殻流体特集号」を組んだ。これら5年間の研究成果を総括班は取りまとめるために平成26年5月と9月に2階の総括班会議を開催した。9月に実施された事後評価ヒアリングにおいてA+の評価を受けた。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。日本列島は2つの海洋プレートが沈み込む『地球上で最も激しい変動帯』に位置する。「地震・火山活動」など沈み込み変動の多くに「地殻流体」(岩石鉱物の粒界に存在するH2Oなどの流体)が深くかかわっている。本研究は新学術領研究「地殻流体」の総括班として、沈み込むプレートに由来する「地殻流体」の発生から地表に至るまで、「地殻流体」の実態とそれが沈み込み変動に果たす役割の全貌解明を目指した。精密な地震波観測と電磁気観測を共同で実施し、観測結果を高温高圧実験に基づいて解釈し、地殻流体の分布を3次元的に示す、“Geofluid Map"を作成した。総括班は、各大学の研究代表者を専用メイルアドレスによる書面審議で結び、5計画研究(A01観測班,A02実験・翻訳班,A03ダイナミクス班)を統括し交流を図った。総括班は平成21年度だけで300回(H22年度は400回)のメイル審議を実施した。また総括班は専用のホームページ開催し、地殻流体研究に関連する研究者に広く情報を提供した。各研究チームの進度を調整し、分野横断研究の飛躍的推進を図るため、総括班の下に、1)総括班メンバーによる地殻流体評価室、2)外国人協力研究者によるアドバイザリーボード、3)特任助教3人PD1人からなる地殻流体融合研究センターを設置した。平成21年9月23日-25日、川渡の東北大学セミナーハウスにおいて「第1回地殻流体研究会」を開催し、メンバーおよび院生合計80人が集合して研究交流に努めた。さらに総括班では地殻流体融合研究セミナーを13回開催し、分野横断研究推進に努めた。代表者が怪我でH21年11月7日から2カ月入院したため総括班の研究計画に遅延を生じ平成21年度から平成22年度へ直接経費150万円を繰り越した。繰り越した経費を用いて平成22年9月10日-13日にラフォーレ修善寺で「第2回地殻流体研究会」を開催し、さらに若手育成のために並行して「地殻流体サマースクール」を開講し、参加者(学生・院生40)の旅費援助を行った。総括班の領域計画に従って、5つの研究領域の研究はそれぞれ順調に進み、ニュージーランド下の地殻流体分布をMT法により解明した論文がNature誌に掲載されるなど多くの研究成果を上げ、領域全体で平成21年度に85編の原著論文を発表した。地殻流体は、地震活動・火山活動・地殻変動の背後にあってそれらの発生メカニズム、分布、活動様式に広汎な影響を与えている可能性が近年指摘されている。我々は本新学術領域研究で最精鋭の研究チームを組織し、複数のプレートがせめぎ合う『地球上で最も激しい変動帯に位置する日本列島をテストフィールド』として、地震波・電磁気MT共同観測を実施している。総括班は研究の全体を活発に推進するため、特任助教2名を雇用し、国内外の研究者との融合研究の推進に努めている。平成22年度は地球惑星科学連合大会(2010年5月22-27日幕張メッセ参加者約3000人)において地殻流体セッションが固体地球科学分野を代表するユニオンセッションに選ばれ、2日間にわたりのべ400人の参加者を得て活発な研究発表と討論を行った。さらに、メンバー全員による地殻流体研究会を2010年9月10日-13日の期間ラフォーレ修善寺で開催した。またラフォーレ修善寺を会場にサマースクールを研究会と同じ会場にて午後の時間に開催し学生・院生40人が参加した。サマースクールの講師は特任助教など若手教員が務めた本領域初めての国際シンポジウム「Geofluid-1」を東工大デジタル多目的ホールにて2011年3月17日-20日開催予定であったが、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)により、中止を余儀なくされた。
KAKENHI-ORGANIZER-21109001
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地殻流体: その実態と沈み込み変動への役割
講演予稿集を参加者全員に配布してGeofluid-1会議を書面成立させ平成23年度に国際会議の経費を繰り越した。地殻流体は、地震活動・火山活動・地殻変動の背後にあってそれらの発生メカニズム、分布、活動様式に広汎な影響を与えている可能性が近年指摘されている。我々は本新学術領域研究で最精鋭の研究チームを組織し、複数のプレートがせめぎ合う『地球上で最も激しい変動帯に位置する日本列島をテストフィールド』として、地震波・電磁気MT共同観測を実施している。総括班は研究の全体を活発に推進するため、融合研究センターに特任助教2名を雇用し、国内外の研究者との融合研究の推進に努めている。第1回の国際シンポジウム「Geofluid-1」を2011年3月17-20日東工大で開催する準備を進めていたが、大震災により中止、講演要旨を参加予定者全員に郵送して「書面開催」とした。平成23年度は地球惑星科学連合大会(2011年5月22-27日幕張メッセ参加者約3000人)において本学術領域は特別セッション「流体と沈み込み帯のダイナミクス」(コンビーナー:川本竜彦・岡本敦・松澤暢)を主催した。特別セッションは5月25日に開催され、口頭講演24件、ポスター発表20件の発表があり活発な討議が行われた。さらに、2011年9月17日-22日に岩手県花巻にて「地殻流体研究会・サマースクール」を開催した。大震災の余波もある中、あえて東北復興を支援する意味から岩手県で研究会を開催し、ほぼ全メンバーにあたる研究者60名、学部生・大学院生30名の参加を得た。地震により繰り越した総括班経費200万円を用いて、岡山大学地球物質科学研究センター(センター長:神崎正美ほか本領域のメンバー4人が在籍)と共同開催で、国際シンポジウム[Misasa-2012&Geofluid-2:Dynamics and Evolution of the Earth's Interior: special emphasis on the role of fluids]を鳥取県三朝町文化ホールなどを会場に2012年3月18-21日に開催した。この国際会議には外国人30名を含む150人の参加者があり、大震災をきっかけに明らかになった新たな観察事実を含め、日本列島ダイナミクスに地殻流体がどのような役割を果たしているかについて活発な国際共同研究のスタートとなった。6つの計画研究代表者、高橋栄一(X01総括班)、松澤暢(A01-1)、小川康雄(A01-2)、小木曽哲(A02-1)、中村美千彦(A02ー2)、岩森光(A03-1)に栗田敬(東大)、河村雄行(岡山大)、横山哲也(事務局長)を加えた9名からなる実施委員会を総括班に置いた。総括班は研究の全体を活発に推進するため、特任助教2名を雇用し、国内外の研究者との融合研究の推進に努めた。平成25年度は各計画研究の連携を図ると同時に「分野融合研究」を積極的に推進した。平成25年5月に幕張メッセで開催された地球惑星連合大会において、地殻流体に関連した国際セッション(Geofluids and their roles in dynamics of the Earth's interior)とレギュラーセッション(流体と沈み込み帯のダイナミクス)の2つをそれぞれ主催し、2日間にわたり述べ300人の参加を得た。
KAKENHI-ORGANIZER-21109001
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尿細管特異的保護機構発現による糖尿病性腎臓病の新たな治療戦略の構築
本研究では、腎尿細管上皮においてTFF3発現増強による、DKDの腎線維化に対する新規治療法の開発を行うことを目的とする。まずDKDのヒト腎生検組織におけるTFF3発現と線維化との関連を証明する。次に遺伝子改変動物に作成したDKDモデルを用いて、TFF3過剰発現による腎尿細管障害および線維化に対する治療効果を明らかにする。更に、高糖濃度培養した腎尿細管上皮細胞を用いて、TFF3発現亢進による腎線維化抑制の細胞内シグナル伝達機構を解明する。ヒトDKDにおける病態解析を起点にして、実験動物、培養細胞を用いた機序解析を行い、腎尿細管上皮におけるTFF3過剰発現によるDKDへの新たな治療戦略を開発する。本研究では、腎尿細管上皮においてTFF3発現増強による、DKDの腎線維化に対する新規治療法の開発を行うことを目的とする。まずDKDのヒト腎生検組織におけるTFF3発現と線維化との関連を証明する。次に遺伝子改変動物に作成したDKDモデルを用いて、TFF3過剰発現による腎尿細管障害および線維化に対する治療効果を明らかにする。更に、高糖濃度培養した腎尿細管上皮細胞を用いて、TFF3発現亢進による腎線維化抑制の細胞内シグナル伝達機構を解明する。ヒトDKDにおける病態解析を起点にして、実験動物、培養細胞を用いた機序解析を行い、腎尿細管上皮におけるTFF3過剰発現によるDKDへの新たな治療戦略を開発する。
KAKENHI-PROJECT-19K08679
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K08679
肺線維症におけるmicroRNA機能に着目した分子標的治療法開発に向けた基盤研究
間質性肺炎は肺間質の線維化により呼吸不全を示す難病である。microRNAは複数の標的遺伝子に結合しその発現を強力に抑制することから線維化抑制の新たな治療標的として注目されている。本研究では生検材料を用いて本疾患の発症進展に特異的なmicroRNAを選定するとともに動物実験で間質性肺炎の発症と進展に与える影響を臓器レベルで検証し、新規治療法開発のための基盤形成に発展させることを目的とする。間質性肺炎は肺間質の線維化により呼吸不全を示す難病である。microRNAは複数の標的遺伝子に結合しその発現を強力に抑制することから線維化抑制の新たな治療標的として注目されている。本研究では生検材料を用いて本疾患の発症進展に特異的なmicroRNAを選定するとともに動物実験で間質性肺炎の発症と進展に与える影響を臓器レベルで検証し、新規治療法開発のための基盤形成に発展させることを目的とする。
KAKENHI-PROJECT-19K17686
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K17686
1型糖尿病の新規自己抗原を用いた発症・進展予知法の開発
GAD抗体陽性NIDDMの前向き調査により、GAD抗体の抗体価が高い場合、GAD65中央部分のエピトープを認識する場合、他の膵島関連自己抗体(インスリン自己抗体、IA-2抗体、ZnT8抗体)の重複陽性が早期インスリン治療開始の予知因子であることおよび、他の膵島関連自己抗体の重複陽性が最も強い独立した進展予知因子であることが明らかになった。また、ZnT8抗体エピトープ解析により、発症年齢によってZnT8に対する液性免疫反応の違いが証明された。GAD抗体陽性NIDDMの前向き調査により、GAD抗体の抗体価が高い場合、GAD65中央部分のエピトープを認識する場合、他の膵島関連自己抗体(インスリン自己抗体、IA-2抗体、ZnT8抗体)の重複陽性が早期インスリン治療開始の予知因子であることおよび、他の膵島関連自己抗体の重複陽性が最も強い独立した進展予知因子であることが明らかになった。また、ZnT8抗体エピトープ解析により、発症年齢によってZnT8に対する液性免疫反応の違いが証明された。1.抗ZnT8抗体測定系の確立と疾患特異性の検討:ヒトZnT8cDNAを用い、RIA法により抗ZnT8抗体の高感度測定系を確立した。(1)ヒトZnT8cDNAの268-369番目のアミノ酸をコードするcDNAを、発現ベクターに挿入した。(2)In vitro transcription/translation法により^<35>S標識ZnT8蛋白を作成し、RIA法にて健常人、1型糖尿病、2型糖尿病患者血清との反応性を検討した。(3)ZnT8蛋白に対する結合率を陽性コントロールおよび陰姓コントロールを利用してindexとして表し、健常人139名のindexの99パーセンタイル値をカットオフ値に設定した。(4)ZnT8抗体の陽性率は、典型的1型糖尿病で59%、劇症1型糖尿病で0%、GAD抗体陽性2型糖尿病で21%、GAD抗体陰性2型糖尿病で2%と1型糖尿病において有意に高頻度であった。2.抗ZnT8抗体の特異性と遺伝子多型の関連についての検討:(1)ZnT8遺伝子(SLC30A8)のArg325Trp多型は、2型糖尿病疾患感受性SNPであるが、同時にZnT8抗体の認識部位に存在している。(2)ZnT8の325Trp、325Arg、およびそのhybrid cDNAを用いて、1型糖尿病患者のArg325Trp多型とZnT8への反応性について検討した。(3)Arg325Trp多型は、ZnT8抗体の結合性に強い関連を示し、本多型がZnT8抗体の特異性を決定していることが明らかになった。1.抗ZnT8抗体のインスリン依存状態予知に関する検討:(1)前年度に確立したZnT8抗体測定系(Radioligand binding法)を用いて、緩徐進行1型糖尿病におけるインスリン依存状態予知に関する検討を行った。(3) ZnT8抗体陽性と追跡調査中のインスリン使用開始との関連を解析した。(4) GAD抗体陽性NIDDMにおけるZnT8抗体の陽性率は19%であり、38%はインスリン自己抗体(IAA)、IA-2抗体、ZnT8抗体のいずれか1抗体以上を有していた。(5)追跡調査中36%のGAD抗体陽性NIDDMで血糖コントロールのためにインスリン治療が必要になり、その予知因子として、(1)高GAD抗体価、(2)GAD65中央部分に対するGAD抗体エピトープの存在、(3)IAA、IA-2抗体、ZnT8抗体の重複陽性の3つが同定された。2. ZnT8/ZnT3キメラ蛋白の作成と抗ZnT8エピトープの解析:(1)立体構造を保持するためにZnT8と相同性が高いがZnT8抗体に認識されないZnT3とのキメラ蛋白を、ZnT3の細胞内部分およびZnT8の細胞内部分のcDNAを用いて作成した。(2)得られたZnT8/ZnT3キメラcDNAのシークエンス配列および蛋白発現を、直接シークエンス法、in vitrotranscription/translation法により確認した。1.抗ZnT8抗体と1型糖尿病の臨床像に関する検討:(1)平成21年度に確立したZnT8抗体測定系(Radioligand binding法)を用いて、1型糖尿病の臨床像と陽性率ならびに遺伝因子に関する検討を行った。(3)1型糖尿病の発症年齢、病型とZnT8抗体陽性率およびHLA-DRとの関連を解析した。(4)ZnT8抗体の陽性率は50%であり、他の膵島関連自己抗体の陽性率はGAD抗体82%、IA-2抗体58%、IAA55%であった。また、この4つの膵島関連自己抗体を組み合わせて解析すると、94%がひとつ以上の自己抗体が陽性であった。(5)ZnT8抗体の陽性率は小児期発症1型糖尿病で高く、発症年齢と陽性率は逆相関を示した。また、ZnT8抗体価とHLA-DR4コピー数との逆相関が見られた。(1)前年度に作成したZnT8/ZnT3キメラcDNAを用いてZnT8抗体エピトープの解析を行った。(2)1型糖尿病患者では、主に2つの主要なエピトープがあることが分かった。
KAKENHI-PROJECT-20591064
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20591064
成長因子とドラッグデリバリーシステムを用いた重症気管軟化症の非侵襲治療法開発
重症気管軟化症では,咳嗽や啼泣などの胸腔内圧上昇によって気管が潰れ,呼吸困難から致死的となることがある.現在行われている外科治療は侵襲が大きく,術後の生活の質が落ちることもある.一方で気管軟化症の症状は成長に伴って軽快することが知られている.本研究では,徐放化した塩基性線維芽細胞増殖因子をラットの気管膜様部背側に投与すると,気管の成長が促進され,気管内腔面積が増大するとともに気管軟骨が厚くなることがわかった.本研究の成果は重症気管軟化症の低侵襲な新治療法につながるものである.重症気管軟化症では,咳嗽や啼泣などの胸腔内圧上昇によって気管が潰れ,呼吸困難から致死的となることがある.現在行われている外科治療は侵襲が大きく,術後の生活の質が落ちることもある.一方で気管軟化症の症状は成長に伴って軽快することが知られている.本研究では,徐放化した塩基性線維芽細胞増殖因子をラットの気管膜様部背側に投与すると,気管の成長が促進され,気管内腔面積が増大するとともに気管軟骨が厚くなることがわかった.本研究の成果は重症気管軟化症の低侵襲な新治療法につながるものである.本研究の目的は,外科的介入を必要とするような重症気管軟化症を低侵襲に治療する方法を開発することである.塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)などの成長因子を,ドラッグデリバリーシステム(DDS)を駆使して効果的に気管軟骨に作用させる手法を用いる.平成22年度は,摘出したラット気管の外圧を変化させた時の,気管内腔の変化を観察することが可能な評価実験系の構築を行った.この一部は平成21年度川野小児医学奨学財団の助成によるものであるが,その改良,および測定プロトコールの確立を行った.本実験系を用いることによって,ラット摘出気管に外圧を加えていくと膜様部が膨隆して前壁に近づいていき,三日月状につぶれていくというヒト気管軟化症と同様の変化を観察することができるようになった.また,外圧と断面積の量的関係の解析が可能となった.7wラットを用いて正常値の取得を行い,外圧を40cmH2Oまで上昇させると気管内腔面積は非加圧時の約60%まで減少することを確認した.今後,本実験系を用いて,b-FGFで成長を促進した気管の機能評価を行っていく.また,平成23年以降の計画である,b-FGF含有マイクロスフェアー吸入のための基礎的研究をマウスによって行なった.マウスへ気管内挿管を行い,気管内にb-FGFを投与し,気管軟骨の成長促進について検討した.その結果,2.5μg/回を5日間投与することで,投与4週後には気管軟骨の成長による軟骨壁の肥厚を組織学的に確認した.また,b-FGF投与群は,挿管のみのSham群と比較して,有意に内腔面積の増大を確認した.これらのデータは,マイクロスフェアー吸入量を算出する上で重要な基礎的データとなりえる.本研究の目的は,外科的介入を必要とするような重症気管軟化症を低侵襲に治療する方法を開発することである.塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)などの成長因子を,ドラッグデリバリーシステム(DDS)を駆使して効果的に気管軟骨に作用させ,成長促進させる手法を用いる.平成23年度は,b-FGFをゼラチンスポンジに含ませた徐放製材をラットの頸部気管膜様部背側に留置することで,気管軟骨の成長促進が得られるのかどうかを検証し,その最適濃度を決定するための実験を行った.3週齢,雄のWistarラットの頸部気管背側にb-FGF徐放化製材(0.5μg,5μg,50μg)を留置し,4週間後(7週齢)に摘出した頸部気管と同週齢正常ラットの気管を病理学的に比較検討した.その結果,気管内腔面積はb-FGF5μg群で最も増加しており,50μg群では狭窄が認められた.一方,気管軟骨の厚さは用量依存性に増加していた.以上より,気管を成長促進する最適濃度はb-FGF5μgであることがわかった.また、さらなる低侵襲治療を行うために、気道内に塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を投与して、気道軟骨の成長促進について検討した。4週齢マウスの気管内にbFGFを投与し、気道軟骨の肥厚、軟骨長の成長促進を確認した。また、気道内に徐放化bFGF製剤を投与することで、気管軟骨の成長を確認したが、必ずしも投与量によって軟骨成長が促進されていなかった。本研究の目的は,外科的介入を必要とするような重症気管軟化症を低侵襲に治療する方法を開発することである.塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)などの成長因子を,ドラッグデリバリーシステム(DDS)を駆使して効果的に気管軟骨に作用させ,成長促進させる手法を用いる.平成23年度までに,b-FGF 5μgを含浸させたゼラチンスポンジをラットの頸部気管膜様部背側に留置すると,気管内腔面積と気管軟骨の厚さが増大し,最も効果的に気管の成長を促進することができることがわかった.
KAKENHI-PROJECT-22591977
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22591977
成長因子とドラッグデリバリーシステムを用いた重症気管軟化症の非侵襲治療法開発
平成24年度は.平成22年度に構築した実験系を用いて,気管の外圧を変化させた時の内腔面積の変化を計測し,成長促進させた気管が実際に潰れにくいものになっているかどうかを検証し,b-FGF 5μg投与によって成長促進した気管は,同週齢の正常気管と比較して潰れにくい傾向があることがわかった.さらに平成24年度は、マウスの気管内にb-FGF2.5μgを5日間投与することで、投与後4週間後に有意に気管の成長が促進されることを確認した。また、家兎に対して、気管支鏡を用いて、b-FGF100μgのゼラチンマイクロスフェアー溶液を気管支壁に局注することで、局注後4週間で有意に気管断面積の拡大を確認した。平成23年度の研究計画は,bFGFの気管軟骨成長促進効果に関する基礎的データを蓄積することであった.具体的には,(1)気管軟骨を成長促進させる最適bFGF量の決定,(2)bFGFによる効果持続期間の検証,(3)bFGFの最適な投与方法の確立を予定していた.(1)を達成することができたが(3)は継続中であり,(2)に関しては平成24年度へ持ち越しとなった.24年度が最終年度であるため、記入しない。平成23年度から取り組んでいる,bFGF気道内投与による気管軟骨成長促進実験を継続する.また,昨年度の持ち越し課題であるbFGFの効果持続期間の検証(晩期合併症の観察)を今後行っていく予定である.24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22591977
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『元史』の志と表の再編纂-大元ウルスの政治と文化の解析-
まず、『元史』の「食貨志」に記載のない英宗シディバラ以降の大元ウルスの勧農政策を再構成し概説を試みた。魯明善『農桑衣食撮要』をはじめとする農書のテキストの成立、由来についても少なからぬ新事実を提示した。また、「混一疆理歴代国都之図」という、モンゴル時代に成立した世界地図の成立過程、日本への伝来の経緯を検討、「地理志」の書き換えはもちろん、1315世紀にかけて、ユーラシアから朝鮮半島、日本に渉って広く共有された文化をさまざまな角度から眺め、空前絶後のひと・もの・知識の交流について、これまでの研究成果をヴィジュアルな概説書にまとめ社会への還元につとめた。同書では、地図と同様、時代と国を越え、王侯、貴族、官僚、僧侶たちの座右に置かれ愛用された『事林広記』という挿絵入りの百科事典についても広く紹介を試みたが、その過程で、対馬藩の宗家の旧蔵に係る現存最古のテキストを発掘、従来知られていた諸版本と比較検討し、価値を措定した。さらには、この宗家のテキストの欠落部分を補う写本をも、滋賀県の叡山文庫に再発見した。その結果、世祖クビライの中統、至元年間の初めは、金朝の儀礼や官僚制度がいくぶんの改良を加えながらも踏襲されていたことが証明され、『元典章』などにのこる官職一覧表よりも早い段階のリスト、図の存在から、南宋接収直前のモンゴル朝廷の様子、システムが浮かびあがってきた。したがって、「百官志」「刑法志」「礼楽志」は大きな書き換えを要求されることとなった。そして、現在散逸して伝わらない金代の『泰和律』やクビライ初期に制定された『至元大典』の一部分、宋代の官僚制、朝廷の文化等についての唯一無二の記述、図表の存在も紹介することができた。『元史』の「釈老伝」、「食貨志」、「百官志」の検討および「芸文志」の編纂の準備として、これまで紹介されていないモンゴル時代に関わる書物を元刊本、朝鮮版、五山版を中心に、日本では国会図書館、国立公文書館、京都建仁寺等において、国外では台湾国家図書館、故宮博物院において閲覧および複写を行った。「祭祀志」、ジャムチについては、中国遼寧省において大元時代の碑刻、寺廟建築、山岳河川、遺構を参観し、関連資料の収集に努めた。「地理志」については、九州大分県の臼杵、宇佐において中国、世界地図の調査を行った。その成果のひとつとして、「徽州文書にのこる衍聖公の命令書」を発表した。大元末期、曲阜孔家のトップに立つ衍聖公はモンゴルの庇護、承認のもと、全国の孔子、孟子、顔子の子孫たちが各地の学校、書院で不自由なく優れた師友とともに勉強しできるよう、宿泊費、交通費を免除し、生活費、書籍購入費の支給を約束するパスポートの発給権をみとめられていたこと、また、その前提として、全国の孔氏、孟氏、顔氏の系図の整理、統合が進められていたこと等が明らかになった。これは、既に整理した道教教団の正一教、全真教とそのトップに対するモンゴル朝廷の政策とともに、こんご進めるチベット仏教、禅宗の研究の参考となる。また、大元時代末期にモンゴル朝廷の仏教政策のシステムを身をもって学び、明の建国初期に朱元璋のブレインのひとりとなった禅僧季潭宗〓の文集の学界未知のテキストが、日本の中世、近世の対中国外交の一翼を担った京都建仁寺に眠っていることを紹介した。さらに、モンゴル時代の水利事業と救荒政策について解明する前段階として、担当の官庁であった大司農司の変遷を『農桑輯要』をてがかりに辿り、「食貨志」の農桑、「百官志」の再編纂を行った。その成果は、長編のため、上下二編に分けて公刊する予定である。なお、これまでに明らかになったモンゴル時代の政治、文化のシステムの一部と学界未知の資料を一刻もはやく共有し、研究レヴェルの底上げを図る目的から、ここ数年来の論文をまとめなおし、新しいデータ、将来の展望もまじえながら一冊の書物として公刊した。『元史』の「釈老伝」、「芸文志」の再編纂のために継続中の、京都五山の建仁寺は両足院での漢籍、抄物の調査の成果の一端を、京都大学大学院文学研究科国語国文学研究室の木田章義教授、朴真完ほか大学院生とともに、平成18年度東方学会関西部会(5月27日開催)において、「両足院-学問と外交の軌跡-」と題する展示会を企画、立案、カタログを作成したさいに、公開した。カタログの内容は、禅宗史、書誌学等の分野において、じゅうらいまったく言及されていない事実、貴重書を紹介することに主眼を置いた。展示会の書籍選定、予行演習等、準備には、半年を要した。「地理志」の再編纂、ジャムチ(駅伝)地図の作成を目的のひとっとして、8月22日から9月6日まで、中央アジアのウズベキスタン、カザフスタン、中国の新彊ウィグル自治区において、13-15世紀のモンゴル、とくにチャガタイ・ウルスと大元ウルスにかかわる遺跡の調査、資料、情報の収集を行った。
KAKENHI-PROJECT-17720067
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『元史』の志と表の再編纂-大元ウルスの政治と文化の解析-
そこで得られた知見の一端を11月23日、同志社大学薪島会館において、京都橘大学の小野浩教授とともに「13-15世紀の遺跡をめぐって」、「農業からみた遊牧国家」と題するふたつの共同報告において発表、さらに後者については今年度より収集を開始したモンゴル時代のペルシア語資料も用いながら「『農桑輯要』からみた大元ウルスの勧農政策」と題する論文においてより詳細に解説した。また、クビライ初期の政治、外交、軍事、財政等、根本的な問題を総合的に考えるさい鍵となる重要な碑刻について数回にわたり、京都大学大学院文学研究科において報告発表の機会をもったこの成果は近く公開の予定である。まず、『元史』の「食貨志」に記載のない英宗シディバラ以降の大元ウルスの勧農政策を再構成し概説を試みた。魯明善『農桑衣食撮要』をはじめとする農書のテキストの成立、由来についても少なからぬ新事実を提示した。また、「混一疆理歴代国都之図」という、モンゴル時代に成立した世界地図の成立過程、日本への伝来の経緯を検討、「地理志」の書き換えはもちろん、1315世紀にかけて、ユーラシアから朝鮮半島、日本に渉って広く共有された文化をさまざまな角度から眺め、空前絶後のひと・もの・知識の交流について、これまでの研究成果をヴィジュアルな概説書にまとめ社会への還元につとめた。同書では、地図と同様、時代と国を越え、王侯、貴族、官僚、僧侶たちの座右に置かれ愛用された『事林広記』という挿絵入りの百科事典についても広く紹介を試みたが、その過程で、対馬藩の宗家の旧蔵に係る現存最古のテキストを発掘、従来知られていた諸版本と比較検討し、価値を措定した。さらには、この宗家のテキストの欠落部分を補う写本をも、滋賀県の叡山文庫に再発見した。その結果、世祖クビライの中統、至元年間の初めは、金朝の儀礼や官僚制度がいくぶんの改良を加えながらも踏襲されていたことが証明され、『元典章』などにのこる官職一覧表よりも早い段階のリスト、図の存在から、南宋接収直前のモンゴル朝廷の様子、システムが浮かびあがってきた。したがって、「百官志」「刑法志」「礼楽志」は大きな書き換えを要求されることとなった。そして、現在散逸して伝わらない金代の『泰和律』やクビライ初期に制定された『至元大典』の一部分、宋代の官僚制、朝廷の文化等についての唯一無二の記述、図表の存在も紹介することができた。
KAKENHI-PROJECT-17720067
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胎仔由来細胞保護メタボローム・セロフェンド酸の生理・薬理作用に関する研究
胎仔由来細胞保護メタボロームであるセロフェンド酸の脳疾患への応用の可能性を検討する目的でin vivo実験系でのセロフェンド酸の有効性を検討する研究を中心に実験を実施した。動物実験モデルとしてはラット一過性中大脳動脈閉塞モデルを用いた。虚血開始30分後にセロフェンド酸を脳室内投与すると再灌流48時間後の環状切片における梗塞巣体積が有意に減少した。また、行動学的検討を行うためにneurological deficit scoresを測定したところ、セロフェンド酸投与によりvehicle群と比較して有意なスコアの改善が観察された。また、対照薬として用いたエダラボンを脳室内投与したところ、虚血側の梗塞巣体積は有意に減少したが、行動学的指標となるneurological deficit scoresへは影響を与えなかった。セロフェンド酸投与が生理機能への影響を与えているか否かについて、生理学的パラメータと脳血流量の測定を行った。セロフェンド酸は血液内の各種イオンおよび酸素分圧、二酸化炭素分圧には影響を与えなかった。また、脳虚血時に減少する脳血流量に関してもvehicle群との優位な差は観察されなかった。セロフェンド酸は脳室内に投与することにより脳虚血障害に対して有意な抑制作用を発現し、また既存の治療薬であるエダラボンよりもより有用な作用を発現した。このことはセロフェンド酸の脳疾患への応用の可能性を示唆するものである。牛胎仔血清のエーテル抽出物中より発見したセロフェンド酸について、低濃度のグルタミン酸の長時間投与によるアポトーシスに対する保護作用機序について検討した。セロフェンド酸はグルタミン酸により誘発されるミトコンドリア膜の脱分極を抑制した。また、ミトコンドリア膜の脱分極に引き続き起こるカスパーゼ3の活性化も抑制したが、カスパーゼ3の酵素活性を抑制するには神経保護作用を発現する濃度よりも高濃度が必要であった。したがって、セロフェンド酸はグルタミン酸により誘発されるミトコンドリア膜の脱分極を抑制することにより、カスパーゼの活性化を抑制し、アポトーシスに対して保護作用を発現したことが示唆される。また、セロフェンド酸が培養アストロサイトにおいて細胞内cAMP濃度上昇による形態変化を促進することを見いだしているので、その作用機序について検討した。cAMPの作用点と考えられるProtein Kinase A(PKA)への作用を調べる目的でPKAの阻害薬であるKT5720の作用を検討した。その結果、セロフェンド酸による星状化促進作用はKT5720により部分的に抑制され、その作用機序の一部にPKAが関与していることが明らかとなった。また、細胞骨格の制御に重要なRhoファミリータンパクの1つであるROCKの阻害薬であるY-27632はアストロサイトに星状化を引き起こす。セロフェンド酸はY-27632による星状化には影響を与えなかった。これらの結果より、アストロサイトにおけるセロフェンド酸の作用部位はPKAの活性化の調節に関与していることが示唆された。胎仔由来細胞保護メタボロームであるセロフェンド酸の脳疾患への応用の可能性を検討する目的でin vivo実験系でのセロフェンド酸の有効性を検討する研究を中心に実験を実施した。動物実験モデルとしてはラット一過性中大脳動脈閉塞モデルを用いた。虚血開始30分後にセロフェンド酸を脳室内投与すると再灌流48時間後の環状切片における梗塞巣体積が有意に減少した。また、行動学的検討を行うためにneurological deficit scoresを測定したところ、セロフェンド酸投与によりvehicle群と比較して有意なスコアの改善が観察された。また、対照薬として用いたエダラボンを脳室内投与したところ、虚血側の梗塞巣体積は有意に減少したが、行動学的指標となるneurological deficit scoresへは影響を与えなかった。セロフェンド酸投与が生理機能への影響を与えているか否かについて、生理学的パラメータと脳血流量の測定を行った。セロフェンド酸は血液内の各種イオンおよび酸素分圧、二酸化炭素分圧には影響を与えなかった。また、脳虚血時に減少する脳血流量に関してもvehicle群との優位な差は観察されなかった。セロフェンド酸は脳室内に投与することにより脳虚血障害に対して有意な抑制作用を発現し、また既存の治療薬であるエダラボンよりもより有用な作用を発現した。このことはセロフェンド酸の脳疾患への応用の可能性を示唆するものである。
KAKENHI-PROJECT-17790059
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生物の歩行に学ぶセミアクティブ振動制御
本研究では,身体のサイクリックな運動である歩行運動に関連しているとされる神経振動子の働きを減衰係数励振の制御方法に取り入れることを目的とし,その基礎的な検証を行った.減衰の係数励振においては実際の可変ダンパの非線形性が含まれる状況で利用できるように制御則の導出を行い,さらに並列に連結された構造物での利用方法を提案した.また,振動子の有する基本特性を把握するため, 1自由度構造物に設置したアクティブ動吸振器を対象に,神経振動子とPD制御を組み合わせた制御器を導出し,数値計算によってその有効性を検証した.また提案した制振手法の同期特性の評価を行うため,非線形振動子の同期を評価する位相縮約法を利用して振動子の位相特性を評価することでシステム全体の評価を行う手法を提案した.本研究では,身体のサイクリックな運動である歩行運動に関連しているとされる神経振動子の働きを減衰係数励振の制御方法に取り入れることを目的とし,その基礎的な検証を行った.減衰の係数励振においては実際の可変ダンパの非線形性が含まれる状況で利用できるように制御則の導出を行い,さらに並列に連結された構造物での利用方法を提案した.また,振動子の有する基本特性を把握するため, 1自由度構造物に設置したアクティブ動吸振器を対象に,神経振動子とPD制御を組み合わせた制御器を導出し,数値計算によってその有効性を検証した.また提案した制振手法の同期特性の評価を行うため,非線形振動子の同期を評価する位相縮約法を利用して振動子の位相特性を評価することでシステム全体の評価を行う手法を提案した.本研究では,申請者が提案している「減衰の係数励振を利用した機械・構造物の振動制御方法」をランダムな入力が作用した場合に対応できるように拡張するため,身体のサイクリックな運動である歩行運動に関連しているとされるCentral Pattern Generator (CPG)を減衰係数の励振方法に取り入れることを提案し,それについての基礎的な検証を数値解析と実験を通して行うことを目的としているが,これまでの研究で次の成果を得た.先行研究では理想的な可変ダンパを設置した構造物を対象に,二つの振動数による励振と減衰係数励振の作用によって応答の振幅低減を行う方法について検討を行い,提案する手法の有効性を確認してきた.しかし,実際の可変ダンパとして利用される装置にはその特性に非線形性が含まれるなどの理由によって,理想的なダンパ用に導出された制御則をそのまま直接利用することができない.そこで可変ダンパとして磁気粘性流体を利用したMRダンパを対象に制御則を再度導出し,実験によってその有効性を検証した.また,CPGの導入をアクティブ・セミアクティブの制振装置に応用した例は申請者の知る限りでは報告されていないため,基礎的なCPGの適用方法及びその効果について把握することから始める必要があった.そこで,CPGの有する基本特性を把握するため,1自由度構造物に設置したアクティブ動吸振器を対象に,CPGとPD制御を組み合わせた制御器を導出し,数値計算によってその有効性を検証した.数値計算の結果,この制御器に利用したCPGは構造物の速度と,動吸振器の相対変位間に必要となる逆位相の関係を維持することが分かり,制御器として適切な位相関係を出力できた.さらに,正弦波入力に対して動吸振器補助質量の変位限界内で動作可能となる目標値を導出し,一定の制振効果が得られることが分かった.本研究では,申請者が提案している「減衰の係数励振を利用した機械・構造物の振動制御方法」をランダムな入力が作用した場合に対応できるように拡張するため,身体のサイクリックな運動である歩行運動に関連しているとされるCentral Pattern Generator (CPG)を減衰係数の励振方法に取り入れることを提案し,それについての基礎的な検証を数値解析と実験を通して行うことを目的としているが,これまでの研究で次の成果を得た.先行研究では理想的な可変ダンパを設置した構造物を対象に,二つの振動数による励振と減衰係数励振の作用によって応答の振幅低減を行う方法について検討を行い,提案する手法の有効性を確認してきた.しかし,地震入力等を受ける構造物において二つの振動数を有する理想的な正弦波入力を仮定して構成した制御器は利用できない.そこで東京スカイツリーのように主となる二つの構造物間を可変ダンパで連結し,それぞれの固有振動数近傍の振動成分と減衰の係数励振を利用することで見かけ上の減衰力を増加させる制御法の提案を行い,数値計算によってその有効性を検証した.また,CPGの導入をアクティブ・セミアクティブの制振装置に応用した例は申請者の知る限りでは報告されていないため,基礎的なCPGの適用方法及びその効果について把握することから始める必要があった.そこで,先行研究ではCPGの有する基本特性を把握するため,1自由度構造物に設置したアクティブ動吸振器を対象に,CPGとPD制御を組み合わせた制御器を導出し,数値計算によってその有効性を検証し,一定の制振効果が得られることが分かっていた.しかし,通常の線形制御理論によって構成したシステムとは異なり,制御系の安定性等の評価手法がないため,提案した手法の同期特性や制振特性の評価ができていなかった.そこで非線形振動子の同期を評価する位相縮約法を利用して振動子の位相特性を評価することでシステム全体の評価を行う基礎的な手法を提案した.
KAKENHI-PROJECT-22760172
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22760172
植物オルガネラ間相互作用による異物認識機構に関する分子解析
感染サイクルの大半を細胞外(植物表面や細胞間隙)で営む病原糸状菌や細菌をモデルとして、分子パターン認識と病原性エフェクターの作用機構について解析してきた(H1518年度)。今年度は、糸状菌由来エフェクター(サプレッサー)の分子標的である宿主植物の細胞壁アピラーゼの相互作用分子の解析を進め、TOF/MS解析から複数の情報伝達や酸化還元関連分子の存在を示した。また、アピラーゼで生成するリン酸は細胞壁に構成的に存在するペルオキシダーゼ(POX)依存性の活性酸素生成を亢進し、さらに一群の細胞外POX遺伝子を転写レベルから活性化することを示した。一方、表層でのパターン認識に続く過敏感細胞死の分子機構について、エリシチンをモデルに解析した結果、細胞周期(M期)制御系の構成因子NbCdc27Bは過敏感細胞死には直接関与しないが、抵抗性機能発現にそのC末端領域が必要である可能性が示唆された。また、細菌由来分子パターン(フラジェリン)による下流の情報伝達・遺伝子応答についてマイクロアレーで解析し、植物固有の転写因子WRKY41を同定した。WRKY41はフラジェリン処理で急速に発現が誘導されるが、エフェクターにより発現が抑えられる。さらに、WRKY41高発現体ではPseudomonas syringaeに対する抵抗性が増高したが、逆にErwinia carotovoraに対する感受性は高まった。この結果は、WRKY41はSA系に対して正に作用していることを示す。しかし、アピラーゼ高発現体の解析から、SA経路やJA経路とは異なる情報伝達系の存在も示されている。以上から、細胞壁には植物独自の異物認識機構が存在し、細胞壁始発のシグナルは感染防御を担う様々な細胞小器官へ情報伝達され、固有の細胞内因子の活性化あるいはフィードバック機構(増幅)を介して、最終応答(抵抗性発現)が制御されているものと考察した。感染サイクルの大半を細胞外(植物表面や細胞間隙)で営む病原糸状菌や細菌をモデルとして、分子パターン認識と病原性エフェクターの作用機構について解析してきた(H1518年度)。今年度は、糸状菌由来エフェクター(サプレッサー)の分子標的である宿主植物の細胞壁アピラーゼの相互作用分子の解析を進め、TOF/MS解析から複数の情報伝達や酸化還元関連分子の存在を示した。また、アピラーゼで生成するリン酸は細胞壁に構成的に存在するペルオキシダーゼ(POX)依存性の活性酸素生成を亢進し、さらに一群の細胞外POX遺伝子を転写レベルから活性化することを示した。一方、表層でのパターン認識に続く過敏感細胞死の分子機構について、エリシチンをモデルに解析した結果、細胞周期(M期)制御系の構成因子NbCdc27Bは過敏感細胞死には直接関与しないが、抵抗性機能発現にそのC末端領域が必要である可能性が示唆された。また、細菌由来分子パターン(フラジェリン)による下流の情報伝達・遺伝子応答についてマイクロアレーで解析し、植物固有の転写因子WRKY41を同定した。WRKY41はフラジェリン処理で急速に発現が誘導されるが、エフェクターにより発現が抑えられる。さらに、WRKY41高発現体ではPseudomonas syringaeに対する抵抗性が増高したが、逆にErwinia carotovoraに対する感受性は高まった。この結果は、WRKY41はSA系に対して正に作用していることを示す。しかし、アピラーゼ高発現体の解析から、SA経路やJA経路とは異なる情報伝達系の存在も示されている。以上から、細胞壁には植物独自の異物認識機構が存在し、細胞壁始発のシグナルは感染防御を担う様々な細胞小器官へ情報伝達され、固有の細胞内因子の活性化あるいはフィードバック機構(増幅)を介して、最終応答(抵抗性発現)が制御されているものと考察した。本研究では、病原微生物シグナルについて、そのシグナルが認識され植物感染の成否に至るメカニズムとともに情報伝達系を植物のオルガネラの応答及びオルガネラ間のクロストークという切り口で解明する。本年度は、1)オルガネラと核とのクロストークに関する解析として、シロイヌナズナの培養細胞にPseudomonas syringaeのべん毛繊維タンパク質フラジェリンとP.aeruginosa由来でフラジェリンのアミノ末端に保存されている22残基のペプチドflg22をエリシターとして処理し、転写因子に注目しつつマイクロアレイ法を用いて遺伝子発現解析を試みた。その結果、その両者においても552個の遺伝子については発現量が2倍以上に増高し、105個の遺伝子については2倍以下に減少した。増高した遺伝子のうち430個はフラジェリン特異的に、108個がフラジェリン、flg22の双方の処理で発現が誘導された。2)次に、細胞壁-原形質膜クロストークによる原形質膜情報伝達系に関する解析として、ササゲのアピラーゼ遺伝子であるVsNTPase1及び2を単離し、これらについてエリシターおよびサプレッサーに対する遺伝子応答解析を試みた。その結果、ササゲのアピラーゼである組換えVsNTPase1タンパク質がエリシターやサプレッサーに直接応答すること、VsNTPase2は恒常的に発現していたがVsNTPase1が傷処理やエリシターとサプレッサーの混合処理によって発現が誘導されること、VsNTPase1は転写レベルにおいても防御応答と同様に制御されていることが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-15108001
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植物オルガネラ間相互作用による異物認識機構に関する分子解析
3)さらにオルガネラに存在するイオンや二次代謝産物輸送のシグナル応答とクロストークに関する解析として、ジャガイモ疫病菌が生産するエリシター;INF1エリシチンに応答するタバコのNtPDR1遺伝子について、遺伝子発現の応答性解析を試みた。この遺伝子はサリチル酸には応答しなかったが、エチレンやメチルジャスモン酸には強く発現が誘導された。さらにこの遺伝子のプロモーターについて遺伝子構造解析を行ったところ、その基本プロモーター配列であるTATA-boxの近傍にエチレン及びメチルジャスモン酸の発現誘導に関与すると考えられるcis-elements boxが見いだされた。本研究では、病原微生物シグナルについて、そのシグナルが認識され植物感染の成否に至るメカニズムとともに情報伝達系を植物のオルガネラの応答及びオルガネラ間のクロストークという切り口で解明する。本年度は、1)植物細胞膜上におけるエリシターシグナル認識と植物感染の成否に関わるメカニズムの解析として、病原細菌Pseudomonas syringe pv.tabaciのフラジェリンとフラジェリンアミノ酸配列を基に作成されたflg22を用いて、flg22のレセプターであるFLS2を保持するシロイヌナズナCol-0エコタイプと保持しないエコタイプWs-0の防御応答を比較解析した。結果、フラジェリンはCol-0,Ws-0の両エコタイプにおいて活性酸素、防御応答遺伝子の発現を強く誘導するのに対して、flg22はWs-0エコタイプにおいてのみ活性酸素、防御応答遺伝子の発現を誘導しなかった。このことはFLS2に依存しないシグナル伝達機構が存在することを示唆している。2)次に、細胞壁-原形質膜クロストークによる原形質膜情報伝達系に関する解析として、昨年に引き続きアピラーゼ遺伝子に関する解析を試みている。エンドウ褐紋病菌が生産するサプレッサーは宿主植物のアピラーゼ(Apy)を1標的とし、これと同調して働く細胞壁防御応答を阻害する。実際、Apy遺伝子をノックダウンしたベンサミアーナタバコには抵抗性が一部崩壊し,病原細菌Pseudomonassyringe pv. tabaciによる激しい病徴が認められたのに対し、逆にエンドウのApy(PsAPY1)を高発現させたタバコには病原菌に対する抵抗性が獲得された。また、防御応答遺伝子PR-1の上流で働くサリチル酸を定量した結果、野生型と比べて顕著に増加しているものと、増加が認められない形質転換体があることが判明した。以上からアピラーゼは抵抗性に深く関与しているが、既知の防御応答情報伝達系とは異なる情報伝達系を制御している可能性が示唆された。3)過敏感細胞死現象においては液胞とミトコンドリア、クロロプラスト間におけるクロストークが重要である。我々は過敏感細胞死シグナル伝達と細胞周期制御因子に注目し、INF1エリシチン処理によりその発現が抑制される遺伝子として細胞周期(M期)を制御している核分裂後期促進複合体APC/Cの構成因子であるCdc27B遺伝子を同定した。そこでベンサミアーナタバコにおいてこのNbCdc27B遺伝子についてサイレンシングを試みたところDwarf表現型が現れ、さらに防御関連遺伝子群の顕著な活性化、葉でのカロース蓄積、液胞の膨張を伴う細胞死様電子顕微鏡像が観察された。
KAKENHI-PROJECT-15108001
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マルチスケール情報技術サービスをベースとする物流システムの構築
本研究では、物流システムを構築するためファジィ理論・意思決定・計算知能という3分野を融合する視点から解決法を提案した。具体的には、まず、ファジィ近傍度の理論的整備および計算速度向上等を実現し巡回セールスマン問題(TSP)の小規模なものを用いて、ファジィ近傍度の値とアルゴリズムの切り換えに関する実験を完成した。それから、TSPの中大規模なデータでの実験を行い、規模が大きくなっても現実的な計算時間内で実施できることを確認した。さらに、石油業界とコンビニエンス業界の物流実データで実験をした。その成果を国際会議と論文誌に発表している。平成23年度後半に実施した巡回セールスマン問題ベンチマークデータで、データサイズの規模をあげ数百都市から千都市程度までを取り扱った。データサイズの増大に伴い、計算量も急速に増えるため(最大でデータサイズの自乗オーダ)、ファジィ近傍度の計算値とアルゴリズム切り替えのタイミングを更に細かく検討する必要があるため、経験則を、ルール型ファジィ推論の形式でとりまとめた。その結果は,最終年度25年度に実施予定の実用化実証実験のツールとして使用する。ベンチマークデータ実験で得られた成果を基に、実世界物流データでの実証実験を計画し、最初に、申請者グループで既にHIMSによる手法で実績のある、石油業界の配車配送計画の実データを用いて実証実験を行った。本データに関しては、現場専門家の基本的な評価まで得られていたので、それらをもとに、本研究による実証実験結果について評価分析を行った。平成24年度に於いても、研究成果を、研究会・国際会議・ジャーナル論文などでいくつか発表を行った。課題名「マルチスケール情報技術サービスをベースとする物流システムの構築」の研究では、物流システム構築に関して、3分野を融合する視点から解決手法を提案する。すなわち、まずファジィ理論によりファジィ近傍度指標を提案してそれで取り扱う問題の評価関数を汎用定式化する。次に意思決定手法によりパラメータ設定を自動化し、最終的に計算知能手法で物流問題の良好な現実解を取得する。研究実施計画に基づき、初年度平成23年度では、ファジィ近傍度の理論的整備を完成し、TSP(巡回セールスマン問題)の比較的小規模なデータを用いて、ファジィ近傍度の値とアルゴリズムの切り換えに関する基本実験を行っている。平成24年度に入って、TSPの中大規模なデータを用いて、実用化を確認している。最終年度平成25年度には、前半ではベンチマークデータ実験で得られた成果を基に、実世界物流データでの実証実験を行った。最初に、申請者グループで既にHIMSによる手法で実績のある、石油業界の配車配送計画の実データを用いて実証実験を行っている。現場の経験15年以上のベテランプランナーが深夜から早朝にかけて作成する配車配送計画を、申請者グループで開発したHIMSによる手法では、ベテランプランナーの解と同等以上の品質の解を現場でのノートPCを用いて20分程度で得ることが出来ることを確認した。本研究では、それを更に短縮して数分程度に抑えた。次に、コンビニエンスストアの配送計画も取り扱った。いくつかの性質や特量の異なる、実配車配送計画データを求めて実証実験を行い、本研究提案手法の有効性と適用限界を明確した。研究成果は、研究会での発表や、ホームページなどで公開をすることによって情報発信を行った。本研究では、物流システムを構築するためファジィ理論・意思決定・計算知能という3分野を融合する視点から解決法を提案した。具体的には、まず、ファジィ近傍度の理論的整備および計算速度向上等を実現し巡回セールスマン問題(TSP)の小規模なものを用いて、ファジィ近傍度の値とアルゴリズムの切り換えに関する実験を完成した。それから、TSPの中大規模なデータでの実験を行い、規模が大きくなっても現実的な計算時間内で実施できることを確認した。さらに、石油業界とコンビニエンス業界の物流実データで実験をした。その成果を国際会議と論文誌に発表している。デパート・コンビニエンスストア・石油スタンドなど種々の配送業界で、多数の顧客の発注に応じて指定された物品を、指定された量・時間・場所に、出荷基地から配送をするという実世界における物流の問題は、配車配送計画に関する最適化スケジューリング問題として定式化され研究されてきている。理論的には巡回セールスマン問題などが基本概念となり得るが、現実問題では人間社会特有の感性までをも考慮していないと、システムが実用的にはならない。本研究では、最高のサービス・最小の配送コスト・CO2排出の低減・安全運転という4つの目標の実現を目指す物流システム構築に関して、3分野を融合する視点から解決手法を提案する。まず、ファジィ理論により取り扱う問題の評価関数を汎用定式化する。次に意思決定手法によりパラメータ設定を自動化し、最終的に計算知能手法で物流問題の良好な現実解を取得する。初年度平成23年度では、研究計画に基づき前半では、ファジィ近傍度の理論的整備完成、計算速度向上のための工夫などを行った。後半には、ベンチマークデータとして巡回セールスマン問題の(30から100都市程度の)比較的小規模なものを用い、ファジィ近傍度の値とアルゴリズムの切り換えに関する基本実験をした。その成果として、1本の雑誌論文を投稿し、2本の国際会議論文(平成23年9月のWISP2011でA Solution for Delivery Problem Based on HIMS Model and Service Science,同じく9月のThe 4th Gyor Symposium on Computational IntelligenceでDevelopment of the Delivery Planning System using HIMS Model)を発表している。
KAKENHI-PROJECT-23500272
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マルチスケール情報技術サービスをベースとする物流システムの構築
目標としていた巡回セールスマン問題の千都市程度のベンチマークデータで、所期の実験結果を得ることが出来た。アルゴリズム切り替えタイミングに関するルール集合を構築し、タンクローリの配車配送計画という実用化データに適用する見通しが得られた。成果をいくつかの研究会・国際会議・ジャーナル論文に発表することが出来た。以上の理由で、ほぼ予定通り研究が進んでいる。当初目標としていた、ファジィ近傍度の理論的整備完成、計算速度向上のための工夫などを完了し、ベンチマークデータとして巡回セールスマン問題の(30から100都市程度の)比較的小規模なものを用い、ファジィ近傍度の値とアルゴリズムの切り換えに関する基本実験も完了した。さらに、より大規模な300都市のデータについてもある程度の実証実験を実施することが出来た。現場の経験15年以上のベテランプランナーが深夜から早朝にかけて作成する配車配送計画を、申請者グループで開発したHIMSによる手法では、ベテランプランナーの解と同等以上の品質の解を現場でのノートPCを用いて20分程度で得ることが出来ていた。本研究では、それを更に短縮して5分程度(即ち、少し待つ間に結果を得る)を目標としており、ファジィ近傍度の概念を利用して25年度にそれを実施する。この石油配車配送計画では、(狭い道は走れない最大20トンクラスの)大型ローリー50台程度、顧客(ガソリンスタンド)数500程度の規模であり、数件程度の顧客を回った後で出荷基地に戻って商(各種燃料)の再積載が頻繁に必要になるという、特徴を有する。次に、これとは特徴が異なる、2トンから4トン程度の小型トラック数台程度で顧客数50件程度、出荷基地への戻りはあまり必要のない、異業種の例として、コンビニエンスストアの配車配送計画も取り扱う。このほかにも、いくつかの性質や特量の異なる、実配車配送計画データを求めて実証実験を行い、本研究提案手法の有効性と適用限界を明確にする。平成25年度に於いても随時、研究会・国際会議などでいくつか発表をし、実証実験結果をまとめてジャーナル論文として投稿する。平成24年度前半では、巡回セールスマン問題の中、大規模なデータ(数百都市から数千都市)を用いた実験を行い、規模が大きくなっても現実的な計算時間内で実施できることを確認する。後半では、それらの成果を基礎として、石油業界および可能ならばコンビニエンス業界等の物流実データを用いて、実用化システムとして機能することを確認する。最後に、それらの結果を踏まえて、最終年度25年度のとりまとめの方針を確定する。なお、昨年度は効率的に研究費の使用ができた。繰り越し分を今年度6月に開催のIEEE主催する国際会議発表のための出張に使用することとする。効率的に使用したため発生した未使用額も、次年度の計画のために有効に使用する。実験などに用いる計算機環境は既存のものを用いるので、新規購入予定の備品はなし。
KAKENHI-PROJECT-23500272
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不飽和ヘテロポリ酸イオンを配位子とする希土類錯体の構造と性質
ヘテロ原子がP,Si,GeおよびBのKeggin構造誘導体(X^<n+>W_<11>O_<39>^<(12-n)>)並びにDawson構造誘導体(P_2W_<17>O_<61>^<10>)等の不飽和ヘテロポリ酸イオンを配位子とするセリウム(III)錯体について、CV,DPV,OSWV,SHACVおよび対流ボルタンメトリー(回転ディスク電極を用いる方法)など、いくつかの電気化学測定法を併用して、レドックス電位と電極反応の可逆性について綿密に検討した。更にCVシミュレーターを用いる実測との比較を行った。昨年度BAS CV-50WからupgradeしたBAS 100B/Wに本年度は特に、回転ディスク電極RDE-1(ビ-・エ-・エス)を設備し、拡散係数Dを求めた。〔Ce(PW_<11>O_<39>)_2〕^<11>の水溶液中の拡散係数DとしてLevich plotsから0.19×10^5cm^2s^<-1>を得た。参考のため、CVのポテンシャルスイ-プ法から求めると0.14×10^<-5>cm^2s^<-1>であった。得られたDの値を用い、transfer coefficient α=0.5および電極反応の速度定数k_s5×10^<-3>にすると実測とほぼ同じ幅広いサイクリックボルタモグラムがシミュレートされることがわかった。目下k_3とαを決定中である。研究継続中であるがOSWV,RDE法.CVシミュレーションは非常に有用な価値の高い方法であるといえる。他方、希土類元素の不飽和ヘテロポリ酸錯体のカリウム塩の有機溶媒(アセトニトリル、メタノール、クロロホルム等)への可溶化に関して、クラウンエーテルが有効であることを見出した。ただし、電気化学測定においては、完全に脱水する方法を検討する必要がある。ヘテロ原子がP,Si,GeおよびBのKeggin構造誘導体(X^<n+>W_<11>O_<39>^<(12-n)>)並びにDawson構造誘導体(P_2W_<17>O_<61>^<10>)等の不飽和ヘテロポリ酸イオンを配位子とするセリウム(III)錯体について、CV,DPV,OSWV,SHACVおよび対流ボルタンメトリー(回転ディスク電極を用いる方法)など、いくつかの電気化学測定法を併用して、レドックス電位と電極反応の可逆性について綿密に検討した。更にCVシミュレーターを用いる実測との比較を行った。昨年度BAS CV-50WからupgradeしたBAS 100B/Wに本年度は特に、回転ディスク電極RDE-1(ビ-・エ-・エス)を設備し、拡散係数Dを求めた。〔Ce(PW_<11>O_<39>)_2〕^<11>の水溶液中の拡散係数DとしてLevich plotsから0.19×10^5cm^2s^<-1>を得た。参考のため、CVのポテンシャルスイ-プ法から求めると0.14×10^<-5>cm^2s^<-1>であった。得られたDの値を用い、transfer coefficient α=0.5および電極反応の速度定数k_s5×10^<-3>にすると実測とほぼ同じ幅広いサイクリックボルタモグラムがシミュレートされることがわかった。目下k_3とαを決定中である。研究継続中であるがOSWV,RDE法.CVシミュレーションは非常に有用な価値の高い方法であるといえる。他方、希土類元素の不飽和ヘテロポリ酸錯体のカリウム塩の有機溶媒(アセトニトリル、メタノール、クロロホルム等)への可溶化に関して、クラウンエーテルが有効であることを見出した。ただし、電気化学測定においては、完全に脱水する方法を検討する必要がある。
KAKENHI-PROJECT-08220252
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08220252
覚せい剤慢性心筋障害の超微免疫組織化学的方法による解析
覚せい剤メタンフェタミン(以下MAと略す)常用者が、中毒量以下のMAを摂取しても死亡することが知られている。常用者の心臓には肥大型心筋症の像に類似した変化が認められ、その病変のうち光顕レベルで錯綜配列心筋の分布や拡がりの程度が問題になることが指摘されている。MAによって発生したこの慢性心筋病変を有する者が、MAを摂取して死亡する際、この病的心筋に対してMAがいかなる動態変化を示すかを、特異的抗MAモノクロ-ナル抗体を用いて、免疫化学的に光顕レベルで検索した。一方、心筋のミトコンドリアの膜変化に着目し、電顕による超微免疫組織化学的方法により、ブ-スタ-MAによるミトコンドリア膜の変化を現在病態解析中であるが、以下のような結果を得た。ラットに種々の量のMAを常用的に腹腔内に投与したところ、510mg/kgで1箇月ころより心筋に虚血性変化並びに心筋症に類似した病変が発生し始めた。このような時期のラットにMAを投与したあと、心臓を採取して、抗MAモノクロ-ナル抗体を用いて、組織中のMAの局在と心筋病変との関係を光顕で観察したところ、虚血性変化のある心筋の周囲に一致してMAが局在する傾向が認められた。このことから、虚血性変化の周囲に再生された毛細血管にMAが分布することにより、虚血性変化が進行する機序が示唆され、さらにこの病変が刺激伝導系に波及することにより急死が起こることが推測された。明瞭な心筋症様変化は認められなかったが、その発生条件について今後検討したい。電顕によるミトコンドリアの膜変化については解析中である。ヒト覚せい剤関連の死亡例の剖検例については、光顕レベルではラットのモデル実験と同様の所見をも認めている。覚せい剤メタンフェタミン(以下MAと略す)常用者が、中毒量以下のMAを摂取しても死亡することが知られている。常用者の心臓には肥大型心筋症の像に類似した変化が認められ、その病変のうち光顕レベルで錯綜配列心筋の分布や拡がりの程度が問題になることが指摘されている。MAによって発生したこの慢性心筋病変を有する者が、MAを摂取して死亡する際、この病的心筋に対してMAがいかなる動態変化を示すかを、特異的抗MAモノクロ-ナル抗体を用いて、免疫化学的に光顕レベルで検索した。一方、心筋のミトコンドリアの膜変化に着目し、電顕による超微免疫組織化学的方法により、ブ-スタ-MAによるミトコンドリア膜の変化を現在病態解析中であるが、以下のような結果を得た。ラットに種々の量のMAを常用的に腹腔内に投与したところ、510mg/kgで1箇月ころより心筋に虚血性変化並びに心筋症に類似した病変が発生し始めた。このような時期のラットにMAを投与したあと、心臓を採取して、抗MAモノクロ-ナル抗体を用いて、組織中のMAの局在と心筋病変との関係を光顕で観察したところ、虚血性変化のある心筋の周囲に一致してMAが局在する傾向が認められた。このことから、虚血性変化の周囲に再生された毛細血管にMAが分布することにより、虚血性変化が進行する機序が示唆され、さらにこの病変が刺激伝導系に波及することにより急死が起こることが推測された。明瞭な心筋症様変化は認められなかったが、その発生条件について今後検討したい。電顕によるミトコンドリアの膜変化については解析中である。ヒト覚せい剤関連の死亡例の剖検例については、光顕レベルではラットのモデル実験と同様の所見をも認めている。
KAKENHI-PROJECT-02670251
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遷移金属触媒を用いる含高周期元素有機化合物の合成と変換
ロジウム触媒を用いて高周期ヘテロ元素化合物の高効率合成反応を検討した。イオウ単体とアルキンから1,4-ジチインとチオフェンを与えるロジウム触媒反応を見出した。この反応を基に、同触媒条件下、1,4-ジチインのC-S結合切断を伴う異性化反応とアルキン交換反応を開発した。これらの成果は、イオウ単体から多様な有機イオウ化合物の触媒的合成と変換を行えることを示す。加えて、リン単体を直接用いる反応開発の前段階として、二種のジホスフィンP-P結合間のロジウム触媒的交換反応を開発した。次に、P-P-P結合を有するポリホスフィンをロジウム触媒的に切断して、有機リン化合物の合成に利用できることを示した。即ち、環状ジスルフィドS-S結合間にポリホスフィンのリン原子を挿入して含リン環状化合物の触媒的合成法を開発した。一連の研究によって、イオウ単体やポリホスフィンからロジウム触媒的に有機イオウ・リン化合物を合成できることを示した。また、ロジウム触媒によるヘテロ元素試薬の活性化様式についても明らかした。加えて、複素環/芳香族エーテルの二つのC-O結合を選択的に切断してフッ素化する反応を開発した。即ち、安定な複素環/芳香族エーテルから合成中間体として有用な複素環フッ素化物を合成できることを示した。この反応を基に、複素環/芳香族エーテルからロジウム触媒複素環交換によって、非対称ビス複素環エーテルと非対称ビス複素環スルフィドの合成反応を開発した。本反応は、5員環と6員環複素環を有する多様な非対称ビス複素環化合物の合成に適用でき、新しい非対称ビス複素環化合物群を合成できた。二つの複素環の間に一原子挿入したビス複素環化合物は、回転可能なsp2-C/sp3-X結合を有する柔軟な化合物群であり、新しい機能性材料や医薬品の基礎骨格として期待される。いずれの反応も塩基や有機金属反応剤を全く用いない特徴がある。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。ロジウム・パラジウム触媒を用いて、高周期ヘテロ元素化合物の高効率合成反応を検討した。本年度は、シクロアルキンにイオウ単体が付加して触媒的に対称1,4-ジチインとチオフェンを与える反応を見出した。アセチレンジカルボン酸とシクロアルキンあるいはビニルエーテルを反応させると、非対称1,4-ジチインあるいは非対称ジヒドロ-1,4-ジチインを選択的に与えることを示した。本反応は、ロジウム触媒がイオウ単体を活性化してジチオロジウム錯体の形成を経て進行することを確かめた。なお、アルキンとイオウ単体に二硫化炭素を反応させると、触媒的にトリチオカーボネートが得られたことから、ジチオロジウム錯体はイオウを一原子ずつアルキンにトランスファーすることが分かった。この研究の過程で、パラジウム錯体がチオエステルのC-S結合を切断してノルボルネン誘導体に付加する反応を見出した。この方法によって、β-位にチオ基を有するケトンが合成可能になった。これは、チオエステルC-S結合を切断してアルケンに付加した初めての例である。本研究で見出した高周期ヘテロ元素化合物の触媒合成は、多くの場合に平衡反応であり、効率的に生成物を得るためには平衡を制御する必要がある。本年度は、生成物除去による平衡制御を開発した。ロジウム触媒ジスルフィド交換反応は、3種のジスルフィドをモル比1:2:1で与える平衡反応である。キラルシリカナノ粒子の不斉認識を利用すると、ジスルフィド交換平衡反応下から1種のジスルフィドを分子認識して凝集し反応系から除去できた。結果として、平衡を生成系に移動させることができた。本年度は、ロジウム・パラジウム触媒が高周期ヘテロ元素化合物の合成に利用できることを示した。この過程で、金属塩基を利用しない本触媒法では、多くの場合に平衡反応系になることを示した。平衡系は結合生成反応に加えて、結合切断変換反応を同一の触媒を用いて実現できる利点がある。本研究では予備的に、イオウ単体とアルキンからロジウム触媒的に合成した1,4-ジチインのC-S結合を同一触媒下切断し、異性化・脱硫・イオウ原子付加反応といった多様な変換を触媒的に行えることを見出した。加えて、有機リン化合物の触媒的合成法について新しい知見を得た。ロジウム錯体と(PhP)5の反応では、ロジウムジホスフェン錯体が生成し、予備的にリン原子の移動反応に利用できることを示した。更に、本触媒系は高周期ヘテロ元素化合物の合成に加えて、ジアリールエーテルC-O結合やフルオロベンゼンC-F結合の切断変換反応に利用でき、高周期ヘテロ元素化合物合成時の基質前駆体になることを示し、当初の計画以上の成果を見出している。ロジウム触媒を用いて高周期ヘテロ元素化合物の高効率合成反応を検討した。イオウ単体とアルキンから1,4-ジチインとチオフェンを与えるロジウム触媒反応を見出した。この反応を基に、同触媒条件下、1,4-ジチインのC-S結合切断を伴う異性化反応とアルキン交換反応を開発した。これらの成果は、イオウ単体から多様な有機イオウ化合物の触媒的合成と変換を行えることを示す。加えて、リン単体を直接用いる反応開発の前段階として、二種のジホスフィンP-P結合間のロジウム触媒的交換反応を開発した。
KAKENHI-PUBLICLY-15H00911
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-15H00911
遷移金属触媒を用いる含高周期元素有機化合物の合成と変換
次に、P-P-P結合を有するポリホスフィンをロジウム触媒的に切断して、有機リン化合物の合成に利用できることを示した。即ち、環状ジスルフィドS-S結合間にポリホスフィンのリン原子を挿入して含リン環状化合物の触媒的合成法を開発した。一連の研究によって、イオウ単体やポリホスフィンからロジウム触媒的に有機イオウ・リン化合物を合成できることを示した。また、ロジウム触媒によるヘテロ元素試薬の活性化様式についても明らかした。加えて、複素環/芳香族エーテルの二つのC-O結合を選択的に切断してフッ素化する反応を開発した。即ち、安定な複素環/芳香族エーテルから合成中間体として有用な複素環フッ素化物を合成できることを示した。この反応を基に、複素環/芳香族エーテルからロジウム触媒複素環交換によって、非対称ビス複素環エーテルと非対称ビス複素環スルフィドの合成反応を開発した。本反応は、5員環と6員環複素環を有する多様な非対称ビス複素環化合物の合成に適用でき、新しい非対称ビス複素環化合物群を合成できた。二つの複素環の間に一原子挿入したビス複素環化合物は、回転可能なsp2-C/sp3-X結合を有する柔軟な化合物群であり、新しい機能性材料や医薬品の基礎骨格として期待される。いずれの反応も塩基や有機金属反応剤を全く用いない特徴がある。ロジウム・パラジウム触媒系を用いると、有機金属試薬や塩基を用いずに、無機塩を副生しない高周期ヘテロ元素化合物の合成を行えることを示した。このような触媒反応系はしばしば平衡反応系になる。高周期ヘテロ元素化合物は第2周期ヘテロ元素化合物を比較して結合エネルギーが弱く酸素等に不安定である。そのため、キラルシリカナノ粒子の不斉認識を利用して、比較的不安定な生成した高周期ヘテロ元素化合物を選択的に分子認識・凝集し、効率的に平衡移動を行う工夫を行う。本方法論は、結合生成反応および分離過程のいずれも独創性の高い方法論で、新しい成果が期待できる。最近、高周期ヘテロ元素を二原子有するロジウム錯体を単離し、これが活性前駆体であることを示すことができた。π-逆供与可能なリン配位子とσ-供与可能なリン配位子を多数合成し、活性前駆体の触媒活性を制御する。複数の高周期ヘテロ元素(S,P,Cl,Si,As,Se,Te等)の活性化を多面的に行い、触媒活性を評価することで、本研究の目的を達成できると考えている。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-15H00911
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関節軟骨の無定形最表層と変形性関節症との関連性についての研究
【ウサギの膝の靱帯機能不全による変形性関節症での関節軟骨の無定形最表層および軟骨下骨の変化の観察】ウサギの右膝の前十字靱帯と内側側副靱帯の切離後2週間で、関節軟骨の無定形最表層は不整となり、一部で欠損しその下の表層のコラーゲン線維網が露出していた。軟骨実質部では、サフラニンOの染色性の低下、細胞の増多や集簇形成などの変性や、関節面周辺部からの増殖滑膜による関節軟骨の置換が始まっていた。術後1カ月半では、軟骨の消化変性は表層から深部へ進み、所々で亀裂や潰瘍を形成していた。骨形態計測上有意な軟骨下骨の増殖性変化は、この時期より明らかとなった。術後3カ月と6カ月では、軟骨の変性と軟骨下骨の増殖が進行し、関節全体として著しい変形を呈した。この実験的関節症では、術後2週間の早期より、軟骨の最表層の不整、表層の消化変性が見られ、軟骨下骨の変化は、これより遅れ、術後1カ月半以降に有意な変化を呈した。【ウサギの膝の関節表面擦過により変形性関節症が発生するか調べる実験】ウサギの右膝の関節軟骨表面の擦過後2週間では、最表層は欠損しその下のコラーゲン線維網が露出していた。軟骨は染色性が低下し、表層の消化が見られ、関節面周辺部から滑膜による軟骨の置換が始まっていた。術後1カ月半では、軟骨の消化変性が進み菲薄化し、一部で潰瘍を形成していた。術後3カ月では、軟骨はさらに菲薄化し、一部では骨が露出していた。6カ月および1年時では、さらに関節症性変化が進行していた。関節軟骨表面の擦過後1年までの経過で、進行性の関節症性変化を認めた。これは、軟骨下骨に達しない軟骨の損傷では、進行性の変化を生じないとする従来の定説に反するものである。おそらく、擦過による軟骨表面の損傷の範囲が広範であったために、この様な差を生じたものであろう。本実験系は、新しい実験的関節症モデルといえる。【ウサギの膝の靱帯機能不全による変形性関節症での関節軟骨の無定形最表層および軟骨下骨の変化の観察】ウサギの右膝の前十字靱帯と内側側副靱帯の切離後2週間で、関節軟骨の無定形最表層は不整となり、一部で欠損しその下の表層のコラーゲン線維網が露出していた。軟骨実質部では、サフラニンOの染色性の低下、細胞の増多や集簇形成などの変性や、関節面周辺部からの増殖滑膜による関節軟骨の置換が始まっていた。術後1カ月半では、軟骨の消化変性は表層から深部へ進み、所々で亀裂や潰瘍を形成していた。骨形態計測上有意な軟骨下骨の増殖性変化は、この時期より明らかとなった。術後3カ月と6カ月では、軟骨の変性と軟骨下骨の増殖が進行し、関節全体として著しい変形を呈した。この実験的関節症では、術後2週間の早期より、軟骨の最表層の不整、表層の消化変性が見られ、軟骨下骨の変化は、これより遅れ、術後1カ月半以降に有意な変化を呈した。【ウサギの膝の関節表面擦過により変形性関節症が発生するか調べる実験】ウサギの右膝の関節軟骨表面の擦過後2週間では、最表層は欠損しその下のコラーゲン線維網が露出していた。軟骨は染色性が低下し、表層の消化が見られ、関節面周辺部から滑膜による軟骨の置換が始まっていた。術後1カ月半では、軟骨の消化変性が進み菲薄化し、一部で潰瘍を形成していた。術後3カ月では、軟骨はさらに菲薄化し、一部では骨が露出していた。6カ月および1年時では、さらに関節症性変化が進行していた。関節軟骨表面の擦過後1年までの経過で、進行性の関節症性変化を認めた。これは、軟骨下骨に達しない軟骨の損傷では、進行性の変化を生じないとする従来の定説に反するものである。おそらく、擦過による軟骨表面の損傷の範囲が広範であったために、この様な差を生じたものであろう。本実験系は、新しい実験的関節症モデルといえる。【ウサギの膝の靱帯機能不全による変形性関節症での関節軟骨の無定形最表層および軟骨下骨の変化の観察】成熟ウサギの右膝の前十字靱帯と内側側副靱帯の切離後2週間で、関節軟骨の無定形最表層は不整となり、一部で欠損しその下の消化された表層のコラーゲン線維網が露出していた。軟骨下骨では、テトラサイクリンの取り込みが増加していた。術後1ヵ月半では、軟骨の消化変性は表層から深部へと進み、所々で亀裂や潰瘍を形成していた。術後3ヵ月と6ヵ月では、軟骨の変性と軟骨下骨の増殖が進行し、肉眼的にも関節全体として著しい変形を呈した。この実験的関節症では、術後2週間の早期より、最表層の不整化、表層から深部へ進む軟骨の消化変性と、軟骨下骨の増殖が見られ、経時的に進行した。【ウサギの膝の関節表面擦過により変形性関節症が発生するか調べる実験】成熟ウサギの右膝の関節軟骨表面の擦過後2週間で、最表層は欠損しその下の消化されたコラーゲン線維網が露出していた。
KAKENHI-PROJECT-06671450
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06671450
関節軟骨の無定形最表層と変形性関節症との関連性についての研究
1ヵ月半では、軟骨は消化変性が進み菲薄化し、軟骨下骨から肉芽と血管が侵入していた。一部では、軟骨が消失し、潰瘍を形成していた。術後3ヵ月時には、軟骨は変性が進行し、さらに菲薄化していた。関節軟骨表面の擦過後3ヵ月までの経過で、軟骨の進行性の変性を認めた。これは、軟骨下骨に達しない軟骨の損傷は、進行性の変化を生じないとの従来の定説に反するものである。、おそらく、擦過による軟骨表面の損傷の範囲が広範であったために、この様な差を生じたものであろう。本実験系は、新しい実験的関節症モデルとなる可能性が高いので、さらに術後6ヵ月、1年の変化を調べる予定である。【ウサギの膝の靱帯機能不全による変形性関節症での関節軟骨の無定形最表層および軟骨下骨の変化の観察】ウサギの右膝の前十字靱帯と内側側副靱帯の切離後2週間で、関節軟骨の無定形最表層は不整となり、一部で欠損しその下の表層のコラーゲン線維網が露出していた。軟骨実質部では、サフラニンOの染色性の低下、細胞の増多や集簇形成などの変性や、関節面周辺部からの増殖滑膜による関節軟骨の置換が始まっていた。術後1ヵ月半では、軟骨の消化変性は表層から深部へ進み、所々で亀裂や潰瘍を形成していた。骨形態計測上有意な軟骨下骨の増殖性変化は、この時期より明らかとなった。術後3ヵ月と6ヵ月では、軟骨の変性と軟骨下骨の増殖が進行し、関節全体として著しい変形を呈した。この実験的関節症では、術後2週間の早期より、軟骨の最表層の不整、表層の消化変性が見られ、軟骨下骨の変化は、これより遅れ、術後1ヵ月半以降に有意な変化を呈した。【ウサギの膝の関節表面擦過により変形性関節症が発生するか調べる実験】ウサギの右膝の関節軟骨表面の擦過後2週間では、最表層は欠損しその下のコラーゲン線維網が露出していた。軟骨は染色性が低下し、表層の消化が見られ、関節面周辺部から滑膜による軟骨の置換が始まっていた。術後1ヵ月半では、軟骨の消化変性が進み菲薄化し、一部で潰瘍を形成していた。術後3ヵ月では、軟骨はさらに菲薄化し、一部では骨が露出していた。6ヵ月および1年時では、さらに関節症性変化が進行していた。関節軟骨表面の擦過後1年までの経過で、進行性の関節症性変化を認めた。これは、軟骨下骨に達しない軟骨の損傷では、進行性の変化を生じないとする従来の定説に反するものである。おそらく、擦過による軟骨表面の損傷の範囲が広範であったために、この様な差を生じたものであろう。本実験系は、新しい実験的関節症モデルといえよう。
KAKENHI-PROJECT-06671450
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ABCA1を介したコレステロール搬出促進による動脈硬化の予防と改善
コレステロール搬出促進成分の検索系構築のために、ヒトABCA1及びCaveolinの全長cDNA、ヒトABCA1及びCaveolinのゲノムプロモーター領域をクローニングした。クローニングされたcDNAおよびゲノムプロモーター領域は、それぞれ発現系ベクターpcDNA3およびルシフェラーゼ遺伝子含有pGL3ベクターに導入した。これらのcDNAおよびゲノムプロモーター領域取得プラスミドを用いて、コレステロール搬出系に影響を与える食事成分の検索系の構築を行った。その結果、リポフェクション法によりヒト及びマウス由来マクロファージ細胞へのベクター導入に成功し、コレステロール搬出促進成分検索系が確立された。この評価系を用いて、数種類の酸化コレステロールが細胞内余剰コレステロールの搬出系に及ぼす作用について検討を行った。培地中のアクセプターであるApoA-Iへの細胞中[^3H]コレステロールの移行を指標として評価した結果、コレステロールの一次代謝産物である7α-ハイドロキシコレステロールはコレステロール搬出を抑制し、24-ハイドロキシコレステロールは逆にコレステロール搬出を促進することが示された。同時にコレステロール搬出促進能と対応したmRNA発現量の変動も確認された。また、必須脂肪酸であるリノール酸の位置・幾何異性体である共役リノール酸異性体の中から、コレステロール搬出促進能を持つものの検索を行った。9c,11t-、9c,11c-、9t,11t-、10t,12c-、10c,12c-、10t,12t-CLAについて、リノール酸を対照として比較を行ったところ、9c,11t-CLAで増加傾向は認められたものの有意さは認められなかった。その他のCLA異性体に関しては、リノール酸と差が認められなかった。よって、共役リノール酸異性体はマクロファージ細胞に対してはコレステロール搬出促進能を示さないことが明らかとなった。引き続きヒト正常動脈壁由来平滑筋細胞などへの影響を検討中である。コレステロール搬出促進成分の検索系構築のために、ヒトABCA1及びCaveolinのcDNAクローニングとヒトABCA1及びCaveolinのゲノムプロモーター領域のクローニングを行った。クローニングされたcDNAおよびゲノムプロモーター領域は、その後の利用を考えて、それぞれ発現系ベクターpcDNA3およびルシフェラーゼ遺伝子含有pGL3ベクターに導入した。これらのcDNAおよびゲノムプロモーター領域取得プラスミドを用いて、コレステロール搬出系に影響を与える食事成分の検索系の構築を試みた。検索系に用いる細胞として、ヒト繊維芽細胞、ヒト動脈由来平滑筋細胞およびヒト動脈由来内皮細胞を候補として検討した。その結果、ヒト動脈由来内皮細胞はもともとのABCA1発現量が非常に低く、食事成分によるABCA1mRNA発現量への影響を測定するのが困難であり、ヒト繊維芽細胞はルシフェラーゼ遺伝子含有pGL3ベクターの細胞への導入効率が非常に低かったため、食事成分によるABCA1及びCaveolin遺伝子の転写活性への影響を検討する系としての構築が困難であると判断した。また遺伝子の導入法としては、カルシウム沈澱法での効率は非常に低かったが、リポフェクション法を用いることで高い遺伝子導入効率が得られた。よって、ヒト動脈由来平滑筋細胞を用いたコレステロール搬出促進成分検索系が確立された。この評価系を用いて、数種類の酸化コレステロールが細胞内余剰コレステロールの搬出系に及ぼす作用について検討を行った。培地中のアクセプターであるApoA-Iへの細胞中[^3H]コレステロールの移行を指標として評価した結果、コレステロールの一次代謝産物である7α-ハイドロキシコレステロールはコレステロール搬出を抑制し、24-ハイドロキシコレステロールは逆にコレステロール搬出を促進することが示された。これらの作用と細胞中のABCA1及びCaveolinのmRNA発現量と転写活性に与える影響との関係については現在測定中である。コレステロール搬出促進成分の検索系構築のために、ヒトABCA1及びCaveolinの全長cDNA、ヒトABCA1及びCaveolinのゲノムプロモーター領域をクローニングした。クローニングされたcDNAおよびゲノムプロモーター領域は、それぞれ発現系ベクターpcDNA3およびルシフェラーゼ遺伝子含有pGL3ベクターに導入した。これらのcDNAおよびゲノムプロモーター領域取得プラスミドを用いて、コレステロール搬出系に影響を与える食事成分の検索系の構築を行った。その結果、リポフェクション法によりヒト及びマウス由来マクロファージ細胞へのベクター導入に成功し、コレステロール搬出促進成分検索系が確立された。この評価系を用いて、数種類の酸化コレステロールが細胞内余剰コレステロールの搬出系に及ぼす作用について検討を行った。培地中のアクセプターであるApoA-Iへの細胞中[^3H]コレステロールの移行を指標として評価した結果、コレステロールの一次代謝産物である7α-ハイドロキシコレステロールはコレステロール搬出を抑制し、24-ハイドロキシコレステロールは逆にコレステロール搬出を促進することが示された。同時にコレステロール搬出促進能と対応したmRNA発現量の変動も確認された。また、必須脂肪酸であるリノール酸の位置・幾何異性体である共役リノール酸異性体の中から、コレステロール搬出促進能を持つものの検索を行った。9c,11t-、9c,11c-、9t,11t-、10t,12c-、10c,12c-、10t,12t-CLAについて、リノール酸を対照として比較を行ったところ、9c,11t-CLAで増加傾向は認められたものの有意さは認められなかった。その他のCLA異性体に関しては、リノール酸と差が認められなかった。よって、共役リノール酸異性体はマクロファージ細胞に対してはコレステロール搬出促進能を示さないことが明らかとなった。引き続きヒト正常動脈壁
KAKENHI-PROJECT-14760084
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14760084
ABCA1を介したコレステロール搬出促進による動脈硬化の予防と改善
由来平滑筋細胞などへの影響を検討中である。
KAKENHI-PROJECT-14760084
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並列連成解析手法による高精度な温熱療法シミュレーションの実現
今年度は,昨年度に引続き温熱療法シミュレーションシステムにおいて核となる高周波(Full-wave)電磁界解析手法が目標性能を達成するためのコードの改良を実施した.これまで,放射電磁界の吸収境界条件としてインピーダンス境界:Murの一次吸収境界条件を適用していたが,より吸収精度が高いことで知られるBerengerの完全吸収境界(Perfect Matched Layer: PML)の導入,およびダイポールアンテナの遠方界による誤差評価を実施した.その結果,吸収性能を示すS_11パラメータが-20dB程度と高い吸収性能を示し,遠方界の理論界との誤差は数%と非常に高精度であることがわかった。今年度の研究開発項目として予定していた人体モデルを用いた熱伝導解析との連成は,Full-wave電磁界解析の高精度化の研究開発に時間を要したため実施ができなかった。Full-wave電磁界-熱伝導の連成解析は,来年度実施することとする。今年度の研究実績として,査読付きジャーナル論文が10本,査読付き国際会議論文4本を刊行でき,また,4件の国際会議,8件の国内学会・研究会の講演を実施した。また4件の国際会議の内2件が招待・基調講演である。さらに,昨年度の引続き第2回目の科研費合同研究集会(基盤研究(B) 17H02829との合同研究集会, https://sites.google.com/view/lscem2019/)を宮崎にて開催した。本研究会は課題参加者同士の報告およびディスカッションにとどまらず,当該分野で著名な研究者を基調講演者としてお越しいただき,討論会を実施することで大変自由闊達な議論・意見交換ができ研究分野の将来的な発展の方向性をも含めた今後の見通しを得ることができ,大変有意義な会となった。今年度は,昨年度に引続き温熱療法シミュレーションシステムにおいて核となる高周波電磁界解析手法が目標性能を達成するためのコードの改良を実施した.これまで,放射電磁界の吸収境界条件としてインピーダンス境界:Murの一次吸収境界条件を適用していたが,より吸収精度が高いことで知られるBerengerの完全吸収境界(Perfect Matched Layer: PML)の導入,およびダイポールアンテナの遠方界による誤差評価を実施した.これにより,Full-wave電磁界解析の高精度化を実現できた。一方,Full-wave電磁界解析-熱伝導解析の連成解析を数値人体モデルを用いての実施が来年度に持ち越しとなったが,それを補う高精度化およびその実証ができたため,研究進捗自体はおおむね順調であると判断する。Full-wave電磁界解析-熱伝導解析の連成解析を数値人体モデルを用いてのテスト計算,および性能検証を速やかに実施する。今年度は,温熱療法シミュレーションシステムにおいて核となる高周波電磁界解析手法が目標性能を達成するためのコード改良を、WSクラスタ構築とともに研究を実施した.改良内容は,階層型領域分割法においてボトルネックとなる領域間釣合問題の収束性の改善に向け,従来の共役勾配法系統よりも残差ノルムの振動が少なく,より安定した反復計算が可能となる共役残差法系統の適用を試みた.その結果,収束性が向上し,これまで解くことが非常に困難であった160億要素規模の超大規模解析に成功した.また,並列メッシュ平滑化機能を実装した。テスト計算を繰返し,正しく動作していることを確認した.さらに,高周波電磁界解析の技術移転として音響解析コードの開発もあわせて実施し,5,000万要素規模の大空間の音響解析に成功し,本研究によって開発した手法の波及性を実証した.現在,熱伝導解析コードの整備,および電磁界解析ー熱伝導連成解析手法の準備中である.高周波電磁界解析の階層型領域分割法においてボトルネックとなる領域間釣合問題の収束性の改善に成功した.現在,熱伝導解析コードの整備,および連成解析手法の準備中である.今年度は,昨年度に引続き温熱療法シミュレーションシステムにおいて核となる高周波(Full-wave)電磁界解析手法が目標性能を達成するためのコードの改良を実施した.これまで,放射電磁界の吸収境界条件としてインピーダンス境界:Murの一次吸収境界条件を適用していたが,より吸収精度が高いことで知られるBerengerの完全吸収境界(Perfect Matched Layer: PML)の導入,およびダイポールアンテナの遠方界による誤差評価を実施した.その結果,吸収性能を示すS_11パラメータが-20dB程度と高い吸収性能を示し,遠方界の理論界との誤差は数%と非常に高精度であることがわかった。今年度の研究開発項目として予定していた人体モデルを用いた熱伝導解析との連成は,Full-wave電磁界解析の高精度化の研究開発に時間を要したため実施ができなかった。Full-wave電磁界-熱伝導の連成解析は,来年度実施することとする。今年度の研究実績として,査読付きジャーナル論文が10本,査読付き国際会議論文4本を刊行でき,また,4件の国際会議,8件の国内学会・研究会の講演を実施した。また4件の国際会議の内2件が招待・基調講演である。さらに,昨年度の引続き第2回目の科研費合同研究集会(基盤研究(B) 17H02829との合同研究集会, https://sites.google.com/view/lscem2019/)を宮崎にて開催した。
KAKENHI-PROJECT-17H03256
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H03256
並列連成解析手法による高精度な温熱療法シミュレーションの実現
本研究会は課題参加者同士の報告およびディスカッションにとどまらず,当該分野で著名な研究者を基調講演者としてお越しいただき,討論会を実施することで大変自由闊達な議論・意見交換ができ研究分野の将来的な発展の方向性をも含めた今後の見通しを得ることができ,大変有意義な会となった。今年度は,昨年度に引続き温熱療法シミュレーションシステムにおいて核となる高周波電磁界解析手法が目標性能を達成するためのコードの改良を実施した.これまで,放射電磁界の吸収境界条件としてインピーダンス境界:Murの一次吸収境界条件を適用していたが,より吸収精度が高いことで知られるBerengerの完全吸収境界(Perfect Matched Layer: PML)の導入,およびダイポールアンテナの遠方界による誤差評価を実施した.これにより,Full-wave電磁界解析の高精度化を実現できた。一方,Full-wave電磁界解析-熱伝導解析の連成解析を数値人体モデルを用いての実施が来年度に持ち越しとなったが,それを補う高精度化およびその実証ができたため,研究進捗自体はおおむね順調であると判断する。今後,熱伝導解析コードの整備を進め,テスト計算を繰返す.また,電磁界解析ー熱伝導連成解析手法の準備を進め,ベンチマーク問題であるTEAM Workshop #29を用いた解析を行い,正しく解析結果が得られることを確認した上で,人体モデルによる解析に進む.Full-wave電磁界解析-熱伝導解析の連成解析を数値人体モデルを用いてのテスト計算,および性能検証を速やかに実施する。
KAKENHI-PROJECT-17H03256
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H03256
液体窒素とセラミックスとの複合体における絶縁破壊現象の研究
当初、液体窒素とセラミックの組合せによる複合体の破壊現象がテ-マであったが、入手したセラミックの破壊電圧が高く、現有のクライオスタットでは実験に限界があると思われたので、とりあえずセラミックの代わりに高分子フィルムであるPETフィルムと液体窒素の組合せによる複合体に対して針平板電極構成の基で直流ランプ電圧を印加した時の破壊現象を調べてみた。これまで我々がシリコ-ン油と高分子フィルムとによる複合体では負針においてシリコ-ン油よりも破壊電界がかなり高い高分子フィルムを陽極平板電極上に配置したときフィルム厚さが薄いときはシリコ-ン油単独の場合よりもその破壊電圧がかなり低くなりうるという興味深い現象についてその破壊機構を含めて研究成果をあげているが、液体窒素とPETフィルムでは負針においてもその様な破壊電圧の低下という特異な現象はみられなかった。シリコ-ン油と高分子フィルムの組合せでその様な特異な現象がみられる理由は次のようなものである。負針から放出された負電荷がフィルム上に堆積しフィルム破壊を引き起こし、負針から負電荷が放出され油中を移動し、破壊点に集中し正ストリ-マの発生を引き起こし全路破壊が導かれる。液体窒素と組合せでその様なことが生じないのは、液体窒素中では正ストリ-マの進展がシリコ-ン油中に比べそれほど容易でないことが、液体窒素のみの破壊において、多くの誘電体にみられる破壊電圧の正針の場合の方が負針に比べ破壊し易いという極性効果がみられないという事実を明らかにすることができた。更にフィルム厚さが増すにつれて両極性ともに破壊電圧は増すが正針の場合フィルム厚さが薄いときにはやや液体窒素単独の場合より低くなる傾向があることも判明した。今後、光電子増倍管などにより放電光の測定を行い破壊機構の確認を行う予定で、成果はとりあえず、電気学会の研究会などで報告する予定である。当初、液体窒素とセラミックの組合せによる複合体の破壊現象がテ-マであったが、入手したセラミックの破壊電圧が高く、現有のクライオスタットでは実験に限界があると思われたので、とりあえずセラミックの代わりに高分子フィルムであるPETフィルムと液体窒素の組合せによる複合体に対して針平板電極構成の基で直流ランプ電圧を印加した時の破壊現象を調べてみた。これまで我々がシリコ-ン油と高分子フィルムとによる複合体では負針においてシリコ-ン油よりも破壊電界がかなり高い高分子フィルムを陽極平板電極上に配置したときフィルム厚さが薄いときはシリコ-ン油単独の場合よりもその破壊電圧がかなり低くなりうるという興味深い現象についてその破壊機構を含めて研究成果をあげているが、液体窒素とPETフィルムでは負針においてもその様な破壊電圧の低下という特異な現象はみられなかった。シリコ-ン油と高分子フィルムの組合せでその様な特異な現象がみられる理由は次のようなものである。負針から放出された負電荷がフィルム上に堆積しフィルム破壊を引き起こし、負針から負電荷が放出され油中を移動し、破壊点に集中し正ストリ-マの発生を引き起こし全路破壊が導かれる。液体窒素と組合せでその様なことが生じないのは、液体窒素中では正ストリ-マの進展がシリコ-ン油中に比べそれほど容易でないことが、液体窒素のみの破壊において、多くの誘電体にみられる破壊電圧の正針の場合の方が負針に比べ破壊し易いという極性効果がみられないという事実を明らかにすることができた。更にフィルム厚さが増すにつれて両極性ともに破壊電圧は増すが正針の場合フィルム厚さが薄いときにはやや液体窒素単独の場合より低くなる傾向があることも判明した。今後、光電子増倍管などにより放電光の測定を行い破壊機構の確認を行う予定で、成果はとりあえず、電気学会の研究会などで報告する予定である。
KAKENHI-PROJECT-02650204
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02650204
自生種に見出した両性自家結実性と耐暑性形質のキウイフルーツへの導入
1.両性Mh1と四倍体A. chinensis品種の交雑後代で,A. chinensisの2品種(雌)を種子親,両性系統を花粉親として得た個体は全て形態的に両性花を着生した.一方,両性系統を種子親とし,A. chinensisの雄系統を交配して得た後代では,雄花のみ着生した個体と,雄花と両性花を着生したものがあった.雄花では12%未満と低いものの花粉発芽が見られたが,形態的な両性花では花粉は発芽しなかった.両性系統Mh1の自殖実生は,両性花を着生し,1.6%と極めて低いが花粉発芽が確認された.A.chinensis×両性系統Mh1の交雑個体(AP/H-1)にA.chinensis`孫悟空'および両性系統Mh6の花粉の授粉で種子が得られ,F2実生を得た.2. A. chinensis`アップル'と両性系統Mh1の交雑実生1個体が結実し,果実は,両性・自家結実性系統よりも大きかったが,A. chinensis`アップル'よりは小さかった.成熟果実の可溶性固形物含量は812%,滴定酸含量は1.31.6%であった.3.対照品種の`ヘイワード'では,湛水処理開始7日目に葉やけが発生し,14日目まで落葉が生じた.一方両性系統Mh6は,処理開始7日目まで葉やけは見られず,14日目に2個体で見られたが,残りの1個体では見られなかった.`ヘイワード'の湛水処理区の光合成速度は,処理開始3日後から急激に低下したが,Mh6湛水処理区では処理終了時まで`ヘイワード'よりも高い値を示した.4.両性系統Mh6を台木としたデリシオサ種`ヘイワード',チネンシス種`レインボーレッド',種間雑種`香川UPーキ5号',の接ぎ木3年目において,台負け,台勝ちの症状はなく,生育は正常であった.新梢伸長量は`レインボーレッド'と`香川UPーキ5号'に比べ,`ヘイワード'でやや少なかった.1.両性自家結実性個体およびキウイフルーツとの交雑後代の性表現の発現様相については,これまでに12個体が着花に至っており,花器の形態形質および生殖形質についての調査が進展しており,さらに今後着花する個体について継続調査を行うことで,F1集団の評価をまとめることができる.また,F2実生が獲得できたことからこれらを対象とした調査が可能となった.2.着果した個体の結実特性と果実形質を明らかにすることができた.3.両性系統は,デリシオサ種キウイフルーツと比較し,耐水性に優れることが確認され,キウイフルーツとの交雑後代の形質に受け継がれる可能性が示唆された.4.両性系統を台木としたデリシオサ種,チネンシス種および種間交雑品種の接ぎ木個体の初期生育を比較したところ,正常な活着と生育が認められ,台木としての利用できる可能性が確認できた.2年目の計画は,ほぼ達成できたことから,当初の予定どおり,引き続き以下の研究計画を実施することとする.1)両性自家結実性個体とキウイフルーツとの交雑後代のF2個体の生育特性,2)両性自家結実性個体およびキウイフルーツとの交雑後代の高温・強日射耐性,3)両性自家結実性系統を用いたキウイフルーツ育種と台木利用の可能性についての総括1.両性・自家結実性系統と四倍体A. chinensis品種を交配して得られた交雑実生のうち着花に至った4個体の開花期は,5月中旬で,2個体は両性花を着生し,他は雄花を着生した.両性花の1個体で,極めて低い率であったが花粉発芽が見られた.両性花の1個体のみ結実が見られ,果実形質は両性・自家結実性系統と類似していた.2.両性花を着生した個体について,四倍体A. chinensis`孫悟空'および両性・自家結実性系統Mh6の花粉を交配したところ,いずれの交配組合せでも正常な黒色種子が得られた.A. chinensis`孫悟空'を交配した場合,両性・自家結実性系統Mh6を交配した場合よりも黒色種子が多い傾向が見られた.追熟果実のTSS含量は13ー14%,TA含量は1.7ー1.8%であった.果肉色は,交配親の両性.自家結実性系統Mh6(16)と比較してやや黄色方向を示す傾向が見られた.3.5日間の乾燥処理において,`ヘイワード'の乾燥処理区では,処理開始2日目から急激に葉の萎れが進行し3日目には全葉が枯れた.一方,両性・自家結実性系統Mh6では,乾燥処理終了時まで葉色にも大きな変化はなく,葉枯れは生じなかった.`ヘイワード'では乾燥処理開始後,光合成速度が急激に低下し,3日後に0となった.一方,Mh6では,処理開始3日後まで緩やかに低下し続けたが,その後も`ヘイワード'の対照区と同程度の値を維持した.4.Mh6を台木として`レインボーレッド',`香川UPーキ5号',`ヘイワード'の接ぎ挿しを行い,親和性を検討した.活着率は,いずれの組み合わせも休眠枝接ぎで高かった.
KAKENHI-PROJECT-17K07642
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自生種に見出した両性自家結実性と耐暑性形質のキウイフルーツへの導入
また,接ぎ木2年目の個体においても,台負け,台勝ちの症状は見られなかった.新梢伸長量は`レインボーレッド'と`香川UPーキ5号'で多く,`ヘイワード'では少なかった.1.両性自家結実性個体およびキウイフルーツとの交雑後代の性表現の発現様相については,開花に至った個体が限られていたが,稔性花粉を有するものが認められたことから,予備的な結果は得られたが,今後着花する個体について継続調査を行い,集団としての評価を行う必要がある.2.両性自家結実性個体とキウイフルーツとの交雑後代の結実特性と果実特性については,両性自家結実性系統およびA.chinensis種キウイフルーツの花粉の授粉により結実し,正常種子が得られることが確認できたことから,計画はほぼ達成できた.3.両性自家結実性個体およびキウイフルーツとの交雑後代の乾燥ストレス耐性については,強度の乾燥状態に置かれても,光合成を維持し,葉やけを生じず,キウイフルーツと比較して,著しい耐乾性を有することが明らかとなり,計画はほぼ達成できた.4.両性自家結実性個体とキウイフルーツ各種との接ぎ木親和性については,A.deliciosaおよびA.chinensis種のキウイフルーツおよびA.rufaとA.chinensis種の種間交雑品種との接ぎ木試験の結果,いずれとも活着が可能であることが確認できたことから,計画はほぼ達成できた.1.両性Mh1と四倍体A. chinensis品種の交雑後代で,A. chinensisの2品種(雌)を種子親,両性系統を花粉親として得た個体は全て形態的に両性花を着生した.一方,両性系統を種子親とし,A. chinensisの雄系統を交配して得た後代では,雄花のみ着生した個体と,雄花と両性花を着生したものがあった.雄花では12%未満と低いものの花粉発芽が見られたが,形態的な両性花では花粉は発芽しなかった.両性系統Mh1の自殖実生は,両性花を着生し,1.6%と極めて低いが花粉発芽が確認された.A.chinensis×両性系統Mh1の交雑個体(AP/H-1)にA.chinensis`孫悟空'および両性系統Mh6の花粉の授粉で種子が得られ,F2実生を得た.2. A. chinensis`アップル'と両性系統Mh1の交雑実生1個体が結実し,果実は,両性・自家結実性系統よりも大きかったが,A. chinensis`アップル'よりは小さかった.成熟果実の可溶性固形物含量は812%,滴定酸含量は1.31.6%であった.3.対照品種の`ヘイワード'では,湛水処理開始7日目に葉やけが発生し,14日目まで落葉が生じた.一方両性系統Mh6は,処理開始7日目まで葉やけは見られず,14日目に2個体で見られたが,残りの1個体では見られなかった.`ヘイワード'の湛水処理区の光合成速度は,処理開始3日後から急激に低下したが,Mh6湛水処理区では処理終了時まで`ヘイワード'よりも高い値を示した.4.両性系統Mh6を台木としたデリシオサ種`ヘイワード',チネンシス種`レインボーレッド',種間雑種`香川UPーキ5号',の接ぎ木3年目において,台負け,台勝ちの症状はなく,生育は正常であった.新梢伸長量は`レインボーレッド'と`香川UPーキ5号'に比べ,`ヘイワード'でやや少なかった.1.両性自家結実性個体およびキウイフルーツとの交雑後代の性表現の発現様相については,これまでに12個体が着花に至っており,花器の形態形質および生殖形質についての調査が進展しており,さらに今後着花する個体について継続調査を行うことで,F1集団の評価をまとめることができる.また,F2実生が獲得できたことからこれらを対象とした調査が可能となった.2.着果した個体の結実特性と果実形質を明らかにすることができた.3.両性系統は,デリシオサ種キウイフルーツと比較し,耐水性に優れることが確認され,キウイフルーツとの交雑後代の形質に受け継がれる可能性が示唆された.
KAKENHI-PROJECT-17K07642
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元明時代の法制に関する基礎的研究-『皇明条法事類纂』の分析を中心として-
今回の研究では、『皇明条法事類纂』の構成と内容を分析し、明代の文書行政の実態を明らかにするとともに、同書が明代中期から現れる年次別の法令マニュアルをもとに編纂された事実を論証した。また、東京大学総合図書館のwebサイトに同書の全文を公開するのにあわせて、『皇明条法事類条名目録』を作成し、内外の研究者がこの史料を十分に活用できるようはかった。本研究の課題は、元代と明代の法制の連続性に着目し、この時代の一貫した特徴とも言うべき「先例中心主義」の内実を問い直すと同時に、明代後期に至り、ある意味でこうした法実務のかたちに修正を迫る「問刑条例」が登場してくる歴史的意義を明らかにすることにある。その第一年目にあたる平成29年度は、第一に、隔月単位で東京大学経済学部資料室にて『皇明条法事類纂』の会読作業を行い、明代の成化・弘治期(14651505)の法令や裁判例に即して明代の法実務のあり方を検証し、『元典章』などとの比較対照を通じて元制と明制の関係についてもあわせて考察した。また東京大学附属図書館収蔵本の写真版にもとづきテキストの校訂や基本語彙の収集・分類も並行して行った。とくに従来ほとんど未整備のままであった目録については、全体の三分の二にあたる第1巻から第50巻までほぼ整理作業を終えることができた。第二に、元明時代の法制に関する主要な研究業績を整理する作業の一環として、内藤湖南『中国近世史』(岩波書店)の校注・解説を行い、内藤史学の近世中国論を分析・紹介した。本書は戦後の中国近世史の出発点となったいわば金字塔ともいうべき業績であり、その検証作業は今後の研究を深化させていくためにも欠かせない意義を有している。第三に、平成27年11月には富山大学人文学部にて科研費メンバーはもとより、学内外の研究者の協力を得て、「分裂する中国ー二つの南北朝ー」と題する共同シンポジウムを開催し、後漢末から元の統一に至る政治的分裂の時代の政治と法制に焦点をあてた討論を行い、元代以降の中国との差違についてもあわせて活発に議論した。先行研究の蓄積がきわめて少ない領域であるうえに、テキストの精確な校訂と分析作業に当初の想定以上の時間を費やしているため。平成28年度は、東京大学経済学部において、6月・9月・12月・2月の四回にわたり定例研究会を開催し、『皇明条法事類纂』巻一巻二「名例類」の精読と検討を行った。基本テキストには引き続き東京大学附属図書館収蔵本の写真版を用い、『中国珍稀法律典籍集成』(科学出版社、1994年刊)所収の点校本もあわせて参照しながら校訂・分析作業を進めた。とくに今年度は『天一閣蔵明代政書珍本叢刊』(線装書局、2009年刊)所収の「条例全文」などと比較対照する便宜に恵まれたこともあり、本書が元代の法律書『元典章』と相似たかたちで編纂された私撰法律文献であり、その成立も本文の主要な内容をなす天順八年(1464)弘治七年(1494)からさらに三十余年を経た嘉靖六年(1527)以降と考えられることなどが判明した。また昨年度から整理作業を続けてきた「分類目録」については、主要部分をなす第一巻から第五十巻までに加え、全体の三分の一を占める不分巻の整理作業がほぼ終了し、これまでその扱いが困難であった本書を有効に利用するための基盤整備に一定のめどをつけることができた。なお、平成28年11月には、富山大学人文学部において共同シンポジウム「中国専制国家の官僚制ー『六典』的世界の形成と変容」(科研費15K12938と共催)を開催し、外部の研究者も招いて、唐代から清代に至る時期の官僚制と法典との関係を軸に研究報告と質疑応答を行った。このなかで常に話題になったのは、『六典』的世界を理想として掲げ続けた近世中国の法制と官僚制とに内在する問題であり、ともすれば別物と捉えられがちな両者が実は緊密な関係にあることが改めてメンバーの共有する認識となった。『皇明条法事類纂』の整理・分析作業がほぼ順調に進み、本書を明代法制史料として本格的に用いるための基盤が整いつつあるほか、関連史料との比較対照を有効に行うための準備作業も着実に進行しているため。平成29年度は、東京大学経済学部資料室において、5月・7月・9月・12月・3月の5回にわたり定例研究会を開催し、『皇明条法事類纂』巻3「名例類」の精読と検討を行った。基本テキストには引き続き東京大学附属図書館収蔵本のデジタル写真版を用い、『中国珍稀法律典籍集成』(科学出版社、1994年刊)所収の点校本も参照しながら校訂・分析作業を進めた。さらに『天一閣蔵明代政書珍本叢刊』(線
KAKENHI-PROJECT-15K02890
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元明時代の法制に関する基礎的研究-『皇明条法事類纂』の分析を中心として-
装書局、2009年刊)に収める「皇明成化条例」や「皇明弘治条例」をはじめ、国立公文書館に所蔵する『条例備考』などとの比較対照を進めた結果、本書が孝宗の弘治年間(14881505)を境に新たな皇帝が即位するたびに既存の条例を一括して廃棄し、律のみを唯一の法源と宣言する慣行をやめ、律と例をいわば一体の法規として整理・集成する動きが一般化するなかで現れたものであり、行政の現場が個別の事案に応じて関連する条例(例)を簡便に検出できるよう編まれた私撰の法令マニュアルであることが判明した。また初年度から整理作業を続けてきた新たな底本づくりについても、本書の全編にわたる整理・検討を経て、『皇明条法事類纂条名目録』として完成させただけでなく、旧鈔本の写真版公開の準備を終えることができた。本書が元明時代の法制に占める歴史的意義をはじめ、本研究で得られた知見は目録の「解題」にも掲載したが、これらの成果によって、かねてから貴重な史料とされながら、ほとんど活用されてこなかった『皇明条法事類纂』の本格的な解読が大きく進むことは間違いない。なお、本研究で用いた『皇明条法事類纂』のデジタル写真画像は、『条名目録』の内容ともども、平成30年の夏期までには新たな整理番号を付けて東京大学総合図書館のwebサイトで公開されることになっており、今後、内外の研究者を裨益するところは少なくないと判断される。今回の研究では、『皇明条法事類纂』の構成と内容を分析し、明代の文書行政の実態を明らかにするとともに、同書が明代中期から現れる年次別の法令マニュアルをもとに編纂された事実を論証した。また、東京大学総合図書館のwebサイトに同書の全文を公開するのにあわせて、『皇明条法事類条名目録』を作成し、内外の研究者がこの史料を十分に活用できるようはかった。当初の予定どおり、『皇明条法時類纂』の精読と整理・分析を重点的に進める。研究作業の遅延は、対象となる史料の性格上、些かやむを得ないところもあるが、目録の整理・集成については、ほぼ順調に進んでいることから、今後は法律文書の構造分析や法律用語の集成作業など、これまでに得られた成果をふまえ、さらなる効率化に向けて努めたい。当初の予定どおり、『皇明条法事類纂』の精読と整理・分析を重点的に進め、同書の「研究解題」および「分類目録」の完成をめざす。また、その成果の一環として、平成30年度以降に東京大学附属図書館のwebサイトに原書全文の写真版と「解説目録」の掲載をできるよう準備を進める。中国近世史購入予定の図書資料が年度内に入手できなかった事情に加え、研究の進捗の遅れから、成果報告書の公表・刊行を見合わせたため。「分類目録」の完成度を高めるべく、未定稿の刊行を見合わせたことと、購入予定の図書資料が年度内に入手できなかったため。史料整理の成果としての分類目録の刊行とシンポジウム開催のため遠方からの研究者への旅費の支給を計画している。史料整理の成果としての「分類目録」および「研究解題」の刊行とシンポジウム開催のため遠方からの研究者への旅費の支給を計画している。
KAKENHI-PROJECT-15K02890
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地球中心核の伝導特性の解明
電気伝導度・熱伝導率は地球内部の温度構造と熱進化を知るための基礎的な物理量であるにも関わらず、実際の地球中心核の条件での測定例は殆ど存在しない。本研究の目的は高温高圧実験によって地球の核を構成する鉄ー軽元素合金の電気伝導度測定を実際の地球中心核の温度圧力条件で行い、地球中心核の電気伝導度及び熱伝導率構造を明らかにすることであった。技術の開発を経て、実際の地球中心核の温度圧力条件における純鉄の電気伝導度を測定することに成功した。また、硫黄、水素の固溶が鉄の電気伝導度に与える影響も実験から明らかにした。本研究によって得られた結果は地球及び地球型岩石惑星の熱進化を考える上で重要な情報となるだろう。超高温の地球中心から地表までの間に存在する大きな熱勾配は融体金属からなる地球外核とマントルの対流を引き起こし、地磁気の生成やプレート運動などの地球のダイナミズムの原動力となっている。電気伝導度・熱伝導率は地球内部の熱構造と熱進化を知るための基礎的な物理量であるにもかかわらず、実際の地球中心核条件での測定例は殆ど存在しない。本研究の目的は高温高圧実験によって地球の核を構成する鉄ー軽元素合金の電気伝導度を実際の地球中心核の温度圧力条件で行い、地球中心核の電気伝導度及び熱伝導率構造を明らかにすることである。平成26年度は地球中心核の主成分である純鉄を対象試料とし、研究を行った。レーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセル高温高圧発生装置を用いて、純鉄の電気抵抗率(電気伝導度の逆数)測定を地球中心核条件に相当する160万気圧、4500ケルビンまでの条件で行った。地球中心核に相当する温度圧力条件において、純鉄の電気抵抗率の測定に成功したのは本研究が初めてである。この実験は大型放射光施設SPring-8を利用し、電気抵抗率測定と同時に試料の結晶構造解析も行っている。そのため、純鉄の電気抵抗率の相転移による変化を精密に決定することが可能となっている。その結果、本実験によって純鉄の電気抵抗率が圧力、温度、相転移によってどう変化するのかを定量化することが出来た。この結果は、翌年以降に鉄ー軽元素合金の電気抵抗率測定を行う際に基礎的データとして非常に有用である。本研究の結果は3件の学会で発表を行った。うち2回は国際学会における招待講演である。またこの研究成果を論文としてまとめ、科学雑誌Natureに投稿した。超高温の地球中心から地表までに存在する大きな熱勾配は融体金属からなる地球外核とマントルの対流を引き起こし、地磁気の生成やプレート運動の原動力となっている。電気伝導度・熱伝導率は地球内部の熱構造と熱進化を知るための基礎的な物量であるにもかかわらず、実際の地球中心核条件での即手入れは殆ど存在しない。本研究の目的は高温高圧実験によって地球の核を構成する鉄ー軽元素合金の電気伝導度を実際の地球中心核の温度圧力条件で行い、地球中心核の電気伝導度および熱伝導率構造を明らかにすることである。平成26年度には地球中心核の主成分である純鉄を研究対象試料とし、実験を行った。レーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセル高温高圧発生装置を用いて、純鉄の電気伝導度測定を地球中心核条件に相当する温度圧力下で行った。地球中心核に相当する温度圧力条件において、純鉄の電気伝導度の測定に成功したのは本研究が初めてである。この結果について3件の学会で発表を行い。この成果をまとめた論文はNatureから掲載を受理された。地球中心核は純鉄の他に水素、珪素、酸素、硫黄、炭素などの軽元素が含まれていると考えられているため、これらの軽元素が純鉄に固溶した際の伝導度の変化を調べることは重要である。これまでに鉄ー珪素合金の電気伝導度測定は数例報告されているが、その他の軽元素の固溶効果は全く調べられていない。そこで、平成27年度は硫黄、酸素、水素の純鉄への固溶が電気伝導度に与える影響を実験的に調べた。その結果、硫黄・酸素は珪素と同等の固溶効果を持つこと、水素は純鉄の電気伝導度を殆ど変化させないことを明らかにした。これらの結果は国際学会で口頭発表済である。研究の進捗状況はおおむね当初の計画どおりに進んでいる。純鉄の電気伝導度に関する研究成果がNature誌に掲載されることから、この研究の重要性が広く認知されることを期待している。地球中心核の主成分である純鉄の電気抵抗率を212万気圧、4500 Kの条件まで測定することに成功し、得られた結果から中心核の熱伝導率と熱進化を議論した学術論文をNatureに発表した。この結果に加えて、同じ純鉄試料の熱伝導率測定を高温高圧条件下で行った。研究代表者の行った、同一試料での電気抵抗率・熱伝導率測定結果から、金属の電気抵抗率と熱伝導率の関係式であるWiedemann-Franz則の検証を行った。その結果は40万気圧、1500 Kにおいて純鉄にはWiedemann-Franz則が成り立たないことを示唆している。地球中心核には純鉄だけでなく硫黄などの軽元素も含まれていると考えられているため、鉄硫黄合金の電気抵抗率測定を110万気圧まで測定し、硫黄が固溶することで鉄の電気抵抗率がどの程度変化するのかを定量的に見積もった。その結果、硫黄の固溶効果は同じく核の有力な軽元素候補であるケイ素よりも小さいことがわかった。
KAKENHI-PROJECT-26707029
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26707029
地球中心核の伝導特性の解明
これまで、鉄硫黄合金の電気抵抗率は常圧条件においても測定された例はなく、本研究によって初めて鉄硫黄合金の電気抵抗率が明らかにされたといえる。硫黄は地球だけでなく、火星の中心核にも多く含まれていると言われているため、実験結果を用いて火星及び地球の中心核の電気抵抗率・熱伝導率構造の推定を行った。これは今後、地球や火星の熱進化を議論するうえで非常に重要な基礎データとなるであろう。電気伝導度・熱伝導率は地球内部の温度構造と熱進化を知るための基礎的な物理量であるにも関わらず、実際の地球中心核の条件での測定例は殆ど存在しない。本研究の目的は高温高圧実験によって地球の核を構成する鉄ー軽元素合金の電気伝導度測定を実際の地球中心核の温度圧力条件で行い、地球中心核の電気伝導度及び熱伝導率構造を明らかにすることであった。技術の開発を経て、実際の地球中心核の温度圧力条件における純鉄の電気伝導度を測定することに成功した。また、硫黄、水素の固溶が鉄の電気伝導度に与える影響も実験から明らかにした。本研究によって得られた結果は地球及び地球型岩石惑星の熱進化を考える上で重要な情報となるだろう。平成26年度の交付申請書内で設定した研究実施計画で目標にしたゴールは、純鉄の電気抵抗率の温度、圧力、相転移依存性を地球中心核に相当する条件下で行うことであった。上の研究実績の概要に記載したとおり、当初の計画は達成したと言える。また、平成27年度以降の研究課題であった鉄ー軽元素合金の高温高圧下電気抵抗率測定にも昨年度末から既に着手している。そのため、現在までの研究の達成度は計画以上に進展していると考えられる。今年度も残された核中の軽元素候補である炭素に着目し、核の電気伝導度の取りうる範囲に制約を与えたい。平成28年度が本研究課題の最終年であるため、得られた実験結果を学術論文、学会などで積極的に情報発信していく。28年度が最終年度であるため、記入しない。高圧地球惑星科学平成26年度の研究によって、純鉄の電気抵抗率の温度・圧力・相転移依存性が明らかになった。地球中心核は純鉄の他に少量の軽元素(珪素、硫黄、酸素、炭素、水素)が含まれていると考えられている。これらの軽元素が純鉄の電気抵抗率に与える影響を明らかにすることは地球中心核の電気抵抗率を推定する上で重要な研究である。交付申請書に記載した平成27年度の計画では、鉄ーニッケル合金の電気抵抗率測定を行った後に、鉄ー軽元素合金の研究に着手するとしていた。しかし、すでに鉄ーニッケル合金においては先行研究が存在することから、今年度は鉄ー軽元素合金の電気抵抗率測定に着手したい。研究代表者に加えて、2名の学生も研究の協力者とする。それぞれが1元素ずつを担当し、鉄ー硫黄合金、鉄ー酸素合金、鉄ー水素合金の電気抵抗率測定を地球中心核に相当する温度・圧力条件で行うことを目指す。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-26707029
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ゲーム理論的意味論を用いた比喩表現の意味の記述に関する研究
当研究の当初の目的は、意味論的に特殊であるとされる隠喩表現の意味とは何かを明確にし、その形式化を行うことであり、その手法としてゲーム理論的意味論を用いることにあった。しかし隠喩表現の意味の柔軟性(意味がひとつには定まらず、別の言葉で置き換えると複数の言葉が必要になってくることが多い:意味の複数性)を尊重することを重視し、かつ隠喩表現を用いることによって情報の効率的な受け渡しが可能であること(一つの表現を用いることによって、複数の要素の参照を示唆でき、かつ理解が容易になる:アナロジーを用いた説明など)を考慮すると、ゲーム理論的意味論よりもInformation Flowの枠組みを用いる方が、より的確なモデルを提示できると考えるに至った。この場合、表現の「意味」から「情報の伝達」に重点が移行することになり、この移行は隠喩の、意味として不安定な在り方を考慮した場合に、有意義かつ生産的な移行であると思われる。平成17年度に行った研究結果は以下の通りである。4,Gaerdenforsのconceptual spaceに関する研究5,1、2、3の成果としての学会発表(日本科学哲学会)7,1、2、3の成果としての論文執筆(現在執筆中、日本科学哲学会誌に投稿予定)今後の研究予定は、二年間の研究結果を総括し、博士論文を完成させることである。当研究の目的は、意味論的に特殊であるとされる隠喩表現の意味とは何かを明確にし、その形式化を行うことである。その方法としてゲーム理論の概念を用い、その拡張に前提とされる条件について哲学的考察を行う。平成16年度に行った研究結果は以下の通りである。1ゲーム理論の数学的基礎付けに関する研究(1)20世紀半ばから現在までのゲーム理論の数学的発展についての研究(2)アリストテレスの三段論法とゲーム概念を組み合わせたものという意味で広くはゲーム論理とみなされる、ヨーロッパ中世における談話論理(dialogue logic)に関する研究2比喩表現に関する研究(2)アリストテレス、キケロにおける古代ギリシア・ローマの修辞学(弁論学)における比喩表現の使用と効果に関する語用論的研究3その他の意味論に関する研究(1)様相論理の基礎とその応用に関する、形式的研究ならびに哲学的研究(2)ラムダ計算を用いた意味論の研究ならびにその言語学的応用(3)BarwiseのInformation Flowのチャネル理論に関する研究(4)チャネル理論の具体的応用を示唆するShimojimaのfree rideの概念に関する研究(5)チャネル理論とfree rideの概念を、Lakoff & Johnsonの認知的隠喩論の概念的隠喩に当てはめて解釈するモデルの構築平成17年度の研究予定は以下の通りである。語の単位に於けるゲーム理論の応用と意味の合成性を関連づける意味論的形式化は、計算が膨大になる可能性が高い。この計算を縮小するための規制が必要である。ここでいう規制とは、文脈による意味の特定化をさす。従って文脈そのものをいかに形式化するか、既存の理論(モンタギュー以降の形式的言語論)をふまえた研究を行い、実際の隠喩の意味解釈(実験)と適合するかを考察し、総括を行う。当研究の当初の目的は、意味論的に特殊であるとされる隠喩表現の意味とは何かを明確にし、その形式化を行うことであり、その手法としてゲーム理論的意味論を用いることにあった。しかし隠喩表現の意味の柔軟性(意味がひとつには定まらず、別の言葉で置き換えると複数の言葉が必要になってくることが多い:意味の複数性)を尊重することを重視し、かつ隠喩表現を用いることによって情報の効率的な受け渡しが可能であること(一つの表現を用いることによって、複数の要素の参照を示唆でき、かつ理解が容易になる:アナロジーを用いた説明など)を考慮すると、ゲーム理論的意味論よりもInformation Flowの枠組みを用いる方が、より的確なモデルを提示できると考えるに至った。この場合、表現の「意味」から「情報の伝達」に重点が移行することになり、この移行は隠喩の、意味として不安定な在り方を考慮した場合に、有意義かつ生産的な移行であると思われる。平成17年度に行った研究結果は以下の通りである。4,Gaerdenforsのconceptual spaceに関する研究5,1、2、3の成果としての学会発表(日本科学哲学会)7,1、2、3の成果としての論文執筆(現在執筆中、日本科学哲学会誌に投稿予定)今後の研究予定は、二年間の研究結果を総括し、博士論文を完成させることである。
KAKENHI-PROJECT-04J03569
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04J03569
芳香環ラジカル求核置換反応(S_<RN>Ar)を基盤とする不斉環化反応の開発
当初、芳香環ラジカル求核置換反応を基盤とする不斉環化反応の開発研究に着手していたが、一連のアレニル誘導体を用いる環化反応の開発研究において興味ある研究成果が得られつつあったので、“高次構造構築の方法論の開発"としてより有用な研究課題である“アレニルアルコール誘導体の新規環拡大反応の開発"に変更して研究を展開した。われわれは従来、ルイス酸存在下における置換フェニル共役アレニルケトン系を活用する様々なエンドモード環化反応を開発し報告してきた。以下に述べる反応は強塩基あるいはPd(0)触媒存在下におけるアレニルアルコール誘導体の環拡大反応である。すなわち、各種N-置換フタルイミド体から合成したヒドロキシメチルアレニル誘導体をTHF中強塩基n-BuLi、(TMS)_2NLi、あるいは(TMS)_2NNaと加熱還流下に反応させると、各種ベンズアゼピン誘導体が高収率で得られた。本環拡大反応は塩基によるタンデムな開環-マイケル型閉環反応によって進行したと考察している。同様に、各種ヒドロキシメトキシアレニルインダノン体をTHF中HMPA存在下に(TMS)_2NLiと加熱還流下に反応させると高収率で各々対応するベンゾシクロへプテンジオン誘導体を得ることができた。次いでHeck反応を基盤とするタンデムなカルボパラデーション-複素環拡大反応を活用する新規環拡大反応を達成した。各種ヒドロキシメチルアレニルイソインドリノンをTHF中触媒量のPd(PPh_3)_4とK_2CO_3存在下にヨウ化アリールと加熱還流すると、高収率で各種オキソイソキノロン誘導体が得られた。同様の反応条件下に各種ヒドロキシメトキシアレニルフタラン体のイソクロマノン誘導体への変換、ならびに各種ヒドロキシメトキシアレニルインダノン体のオキソ-α-テトラロン誘導体への変換にも成功した。当初、芳香環ラジカル求核置換反応を基盤とする不斉環化反応の開発研究に着手していたが、一連のアレニル誘導体を用いる環化反応の開発研究において興味ある研究成果が得られつつあったので、“高次構造構築の方法論の開発"としてより有用な研究課題である“アレニルアルコール誘導体の新規環拡大反応の開発"に変更して研究を展開した。われわれは従来、ルイス酸存在下における置換フェニル共役アレニルケトン系を活用する様々なエンドモード環化反応を開発し報告してきた。以下に述べる反応は強塩基あるいはPd(0)触媒存在下におけるアレニルアルコール誘導体の環拡大反応である。すなわち、各種N-置換フタルイミド体から合成したヒドロキシメチルアレニル誘導体をTHF中強塩基n-BuLi、(TMS)_2NLi、あるいは(TMS)_2NNaと加熱還流下に反応させると、各種ベンズアゼピン誘導体が高収率で得られた。本環拡大反応は塩基によるタンデムな開環-マイケル型閉環反応によって進行したと考察している。同様に、各種ヒドロキシメトキシアレニルインダノン体をTHF中HMPA存在下に(TMS)_2NLiと加熱還流下に反応させると高収率で各々対応するベンゾシクロへプテンジオン誘導体を得ることができた。次いでHeck反応を基盤とするタンデムなカルボパラデーション-複素環拡大反応を活用する新規環拡大反応を達成した。各種ヒドロキシメチルアレニルイソインドリノンをTHF中触媒量のPd(PPh_3)_4とK_2CO_3存在下にヨウ化アリールと加熱還流すると、高収率で各種オキソイソキノロン誘導体が得られた。同様の反応条件下に各種ヒドロキシメトキシアレニルフタラン体のイソクロマノン誘導体への変換、ならびに各種ヒドロキシメトキシアレニルインダノン体のオキソ-α-テトラロン誘導体への変換にも成功した。
KAKENHI-PROJECT-10125228
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10125228
タイにおけるイスラーム聖者信仰の興隆に関する人類学的研究
本研究は、近年タイにおいて活動を活発化させているイスラーム聖者信仰(以下、聖者信仰)を取り上げ、聖者信仰とイスラーム復興運動が並存する村落と聖者廟で関係者への聞き取りや活動の参与観察等を行う。また、新聞や雑誌といった印刷メディアやウェブサイト上の聖者信仰に関する情報を収集、分析する。これらの調査をもとに本研究は、聖者信仰の活動の実態とイスラーム復興運動との関係性、聖者信仰興隆の社会文化的影響、ならびにタイにおける聖者信仰の特徴を明らかにすることを試みる。本研究は、近年タイにおいて活動を活発化させているイスラーム聖者信仰(以下、聖者信仰)を取り上げ、聖者信仰とイスラーム復興運動が並存する村落と聖者廟で関係者への聞き取りや活動の参与観察等を行う。また、新聞や雑誌といった印刷メディアやウェブサイト上の聖者信仰に関する情報を収集、分析する。これらの調査をもとに本研究は、聖者信仰の活動の実態とイスラーム復興運動との関係性、聖者信仰興隆の社会文化的影響、ならびにタイにおける聖者信仰の特徴を明らかにすることを試みる。
KAKENHI-PROJECT-19K13469
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K13469
生活習慣病の複雑な病態を説明する迷走神経異常の解明
肥満・インスリン抵抗性では、高血圧・糖尿病・脂肪肝炎など、心血管調節・糖脂質代謝・炎症に及ぶ多系統で複雑な生理機能の制御異常が引き起こされる。迷走神経は、その心血管調節作用が知られているが、近年の検討から、炎症や糖代謝の制御にも重要な役割を担うことが解明されている。また、肥満・インスリン抵抗性では、迷走神経制御障害が起こることも明らかにされている。多系統の生理機能を制御する迷走神経の制御障害が、肥満・インスリン抵抗性における複雑病態の形成に重要な役割を担っている可能性が考えられる。そこで、肥満・インスリン抵抗性で引き起こされるこれらの生理機能の制御異常を、「迷走神経の制御障害」という観点から系統的に解明することを目的として、本研究を行った。代表者らは、迷走神経の肝臓炎症・糖代謝制御メカニズムとして、α7型ニコチン受容体重要性を見出している。そこで、本年度には、α7型ニコチン受容体欠損マウス(a7KO)を用いて、肥満・インスリン抵抗性の代表的な肝臓合併症である非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)における迷走神経性肝制御の役割を検討した。具体的には、a7KOに対し、高脂肪高コレステロール食摂餌またはメチオニン・コリン欠損餌を投与し、NAFLDの発症・進行、すなわち、肝臓の慢性炎症および線維化を検討した。その結果、a7KOでは、炎症性サイトカインと1型コラーゲンの肝臓遺伝子発現が増加し、シリウスレッドコラーゲン線維染色においても、肝臓の線維化の増悪を認めた。これらの知見から、肥満・インスリン抵抗性における迷走神経制御障害が、生活習慣病の一つであるNAFLDの発症・進行に関与することが示唆された。本年度には、迷走神経と肝臓における糖脂質代謝・慢性炎症の役割についての検討を行った。具体的に、迷走神経α7型ニコチン受容体欠損マウス(a7KO)を用いて、肥満・インスリン抵抗性の代表的な肝臓合併症である非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)における迷走神経性肝制御の役割を検討した。NAFLD誘導は、高脂肪高コレステロール食摂餌またはメチオニン・コリン欠損餌の投与により行い、NAFLDの発症・進行の評価は、肝臓の炎症性サイトカインおよびコラーゲン発現により検討した。その結果、a7KOでは、炎症性サイトカインと1型コラーゲンの肝臓遺伝子発現が増加し、シリウスレッドコラーゲン線維染色においても、肝臓の線維化の増悪を認めた。これらの知見から、肥満・インスリン抵抗性における迷走神経制御障害が、生活習慣病の一つであるNAFLDの発症・進行に関与することが示唆された。迷走神経による糖脂質代謝および炎症制御が、生活習慣病の発症・進行に果たす役割を解明するために、NAFLDへの役割の解明を推進し、実験計画2年目には論文発表を行うことを目指す。さらに、迷走神経刺激にともない変動する血中ホルモンなどを同定し、新規な生活習慣病バイオマーカーとしての有用性を、a7KOなどのマウスモデルを用いて検討する。肥満・インスリン抵抗性では、高血圧・糖尿病・脂肪肝炎など、心血管調節・糖脂質代謝・炎症に及ぶ多系統で複雑な生理機能の制御異常が引き起こされる。迷走神経は、その心血管調節作用が知られているが、近年の検討から、炎症や糖代謝の制御にも重要な役割を担うことが解明されている。また、肥満・インスリン抵抗性では、迷走神経制御障害が起こることも明らかにされている。多系統の生理機能を制御する迷走神経の制御障害が、肥満・インスリン抵抗性における複雑病態の形成に重要な役割を担っている可能性が考えられる。そこで、肥満・インスリン抵抗性で引き起こされるこれらの生理機能の制御異常を、「迷走神経の制御障害」という観点から系統的に解明することを目的として、本研究を行った。代表者らは、迷走神経の肝臓炎症・糖代謝制御メカニズムとして、α7型ニコチン受容体重要性を見出している。そこで、本年度には、α7型ニコチン受容体欠損マウス(a7KO)を用いて、肥満・インスリン抵抗性の代表的な肝臓合併症である非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)における迷走神経性肝制御の役割を検討した。具体的には、a7KOに対し、高脂肪高コレステロール食摂餌またはメチオニン・コリン欠損餌を投与し、NAFLDの発症・進行、すなわち、肝臓の慢性炎症および線維化を検討した。その結果、a7KOでは、炎症性サイトカインと1型コラーゲンの肝臓遺伝子発現が増加し、シリウスレッドコラーゲン線維染色においても、肝臓の線維化の増悪を認めた。これらの知見から、肥満・インスリン抵抗性における迷走神経制御障害が、生活習慣病の一つであるNAFLDの発症・進行に関与することが示唆された。本年度には、迷走神経と肝臓における糖脂質代謝・慢性炎症の役割についての検討を行った。具体的に、迷走神経α7型ニコチン受容体欠損マウス(a7KO)を用いて、肥満・インスリン抵抗性の代表的な肝臓合併症である非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)における迷走神経性肝制御の役割を検討した。NAFLD誘導は、高脂肪高コレステロール食摂餌またはメチオニン・コリン欠損餌の投与により行い、NAFLDの発症・進行の評価は、肝臓の炎症性サイトカインおよびコラーゲン発現により検討した。その結果、a7KOでは、炎症性サイトカインと1型コラーゲンの肝臓遺伝子発現が増加し、シリウスレッドコラーゲン線維染色においても、肝臓の線維化の増悪を認めた。これらの知見から、肥満・インスリン抵抗性における迷走神経制御障害が、生活習慣病の一つであるNAFLDの発症・進行に関与することが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-18KT0020
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18KT0020
生活習慣病の複雑な病態を説明する迷走神経異常の解明
迷走神経による糖脂質代謝および炎症制御が、生活習慣病の発症・進行に果たす役割を解明するために、NAFLDへの役割の解明を推進し、実験計画2年目には論文発表を行うことを目指す。さらに、迷走神経刺激にともない変動する血中ホルモンなどを同定し、新規な生活習慣病バイオマーカーとしての有用性を、a7KOなどのマウスモデルを用いて検討する。
KAKENHI-PROJECT-18KT0020
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巨大スピンホール効果を利用した微小領域の磁化制御とGMR磁気センサへの応用
巨大磁気抵抗効果(GMR)を利用した磁気センサは,さまざまな応用研究がなされている。我々は,磁歪の逆効果を利用して出力変化が得られる歪みセンサの研究を行なってきたが,本研究では,スピンバルブ構造の磁化自由層の磁化方向の制御のためにスピンホール効果を利用することを提案している。磁化自由層の磁化方向を制御する電流をGMR膜へのセンス電流から切り離して流すためには,GMR層とスピンホール効果を起すTa/磁性層を電気的に絶縁する必要がある。しかし,絶縁性を確保すると同時にGMR膜の磁化自由層との間を磁気的に結合させる必要がある。つまり,スピンホール効果によって,Ta/磁性層の磁化方向を交流的に振動させ,その振動が磁気的なカップリングによって,GMR膜の磁化自由層に伝達される必要がある。絶縁性の磁性膜としては,Coフェライトなどの強磁性体があるが,これらの膜の製作には,熱処理が必要であり,GMR膜と組み合わせることが難しい。そこで本研究では,室温でスパッタ成膜が可能な反強磁性NiO膜の交換結合を利用するため,Si基板/Ta/NiFe/MnIr/CoFe/Cu/CoFe/NiO/CoFe/Ta積層膜を8元スパッタ装置で成膜した。別途,計測したNiO(約20nm)膜の比抵抗は,600Ωcmと,比較的大きな値を示したが,試料サイズ3×3mm^2で,膜厚10nmの層間抵抗を計算すると,6mΩとなり,層間絶縁が困難な値となってしまう。そこで,GMR素子の微細加工を試みた。例えば,GMR素子部の面積を10×10μm^2にすれば,600Ωとなり,GMR素子部のシート抵抗より1桁以上大きくなる。今年度は,上記のGMR膜におけるNiO層の絶縁性の評価を行なうとともに,薄板ガラス上に作成したGMR歪みセンサのセンサ特性の評価とシュミレーションを行なった。Si基板/Ta/NiFe/MnIr/CoFe/Cu/CoFe/NiO/CoFe/Ta積層膜を8元スパッタ装置で成膜し,幅3mm×長さ12mm程度に試料を切り出して,その磁気抵抗効果を直流4端子法で測定した。NiO層厚を0,10,20nmと変化させても,膜の比抵抗は,ほとんど変化しなかった。これは,NiO層の層間抵抗が小さ過ぎるためと考え,GMR素子部を微細加工により,約10μmサイズの素子に加工して,その磁気抵抗特性を測定した。GMR特性のセンス電流は,GMR部だけに流れるよう素子構造を工夫した。NiO層の層間絶縁が不十分であれば,NiO/CoFe/Ta層を付加することでGMR膜のセンス電流が分流して磁気抵抗変化率が低下することになるが,NiO(10nm)とNiO(20nm)の膜で測定した結果では,MR比の低下は認められなかった。これより,NiO層の絶縁は,ほぼ確保できているものと考えられる。一方,薄板ガラス上へのGMR歪みセンサ素子については,幅30μmのGMR細線の上にAl2O3絶縁層を介して幅100μmのAl導体線を形成したデバイスを開発した。Al導体に1kHzの交流電流を流すことで,GMR膜の磁化自由層の磁化方向を1kHzで振動させて,歪み印加による交流信号変化を検出することができた。歪みセンサの特性については,GMR部の磁化分布が一様であるという仮定の下,特性の計算機シミュレーションを行なった。その結果,磁化固定層と磁化自由層の間にオレンジピールカップリングが20 Oe前後,存在していると仮定することによって,出力電圧,印加磁界,印加した歪みの関係がほぼ説明できることが明らかとなった。以上にようにほぼ計画にしたがって,順調に研究が進捗している。昨年度にNiO層の絶縁性について,確認することができたので,これをベースに,スピンホール効果による磁化自由層の磁化方向変調を確認できる素子構造の開発を行なう。そのために,GMR素子がSi基板側,スピンホール効果を起すCoFe/Ta層を表面側として,間にNiO層が配置される構造とし,GMR素子部と,スピンホール部に独立した電流を流せるような素子構造を開発する。具体的には,Si基板/Ta/NiFe/MnIr/CoFe/Cu/CoFe膜を作成後に,10×10μm^2程度のGMR細線部をECRエッチングにより作製して,周辺をAl2O3で埋めもどす。次にリフトオフによりGMR細線に直交する方向にスピンホール効果用の細線を形成する。特性の計測は,次のように行なう。まず,上部のTa層に1kHzの交流電流を流して,GMR細線に1kHzの信号が現れることを確認する。また,この信号が,交流電流が作る交流磁界によるものかスピンホールによるものかを判別するために,シミュレーションによって特性の解析を行なう。スピンホール効果による信号が得られたら,GMRセンス電流を1kHzで変調して外部磁界の検出がどの程度,低ノイズ化できるかなどの評価を行なう。薄い板ガラス上に作製してきた歪みセンサについては,基板をフレキシブルなPEN基板上に替えて,1次元アレイを作製して,触覚センサの基礎的な応用研究を行う。また,センサ構造の最上部にPd層を付加して,水素センサへの応用を検討する。Pdは,水素吸蔵合金として知られており,水素の吸蔵によって,格子が膨張する。
KAKENHI-PROJECT-17H03249
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H03249
巨大スピンホール効果を利用した微小領域の磁化制御とGMR磁気センサへの応用
水素の吸蔵によって,Pd層の格子歪みが変化し,これが磁化自由層の歪みをもたらすことによって,GMR素子の磁気抵抗が変化する。このようなガスセンサは,報告例がなく,さまざまな種類のガスのセンシングに応用できる可能性がある。本研究では,スピンホール効果による磁化方向変調を利用した磁気センサの開発を目標としているが,本年度は,反強磁性のNiO層をサンドウィッチした磁化自由層を有するスピンバルブ膜を作成して,その磁気抵抗効果を評価した。NiO層は,スピンホール効果を引き起こすための交流電流が,GMR膜に分流しないようにするための絶縁層であるが,NiO単層の膜をスパッタ成膜してその電気抵抗を測定したところ,比抵抗が100Ωcmのオーダーであった。Si基板上にスパッタしたSi/Ta/NiFe/MnIr/CoFe/Cu/CoFe/NiO/CoFe/Ta積層膜において,NiO層の層厚を0 nmと20 nmの試料を作製し,試料表面にプローバの針をコンタクトさせて,比抵抗と磁気抵抗変化率を測定したところ,NiO (0nm)が,それぞれ40μΩcm,3.3%,NiO (20nm)が,81μΩcm,3.0%であった。NiO層の挿入による比抵抗の増加が期待されるほど大きくないことと,磁気抵抗変化に大きな違いが見られないことは,NiO層の比抵抗が不十分で,最表面から流した電流が,GMR層にも分流していることを示している。このような分流を防ぐためには,素子サイズを微細化する必要があり,現在,作製プロセスの検討を進めている。一方,GMR効果を利用した歪みセンサについては,GMR細線の上に絶縁層を形成後,幅100μmのAl導体パターンを形成したデバイスを作製した。Al導体に1kHzの交流電流を流すことで,幅30μmのGMR素子部に0.6 Oe程度の交流磁界を発生させた。この交流磁界によってGMR素子に1kHzの信号が現れることを確認するとともに,素子に歪みを加えたときの交流出力が変化することを明らかにした。歪みに対する出力特性が,素子に印加するバイアス磁界の大きさや方向によって大きく変化することを見出した。H29年度には,2つの磁性層で反強磁性のNiO層をサンドウィッチしたCoFe/NiO/CoFeを磁化自由層とするスピンバルブ膜を作製して,電気特性や磁気抵抗特性を測定したが,幅4mm×長さ10mm程度に切り出したサンプルにおける測定では,NiO層の絶縁性,つまり比抵抗が不十分であることが分かった。NiO単層膜のシート抵抗から見積もった比抵抗は,100Ωcm程度で,これは必ずしも低い値とはいえないが,4mm角/厚さ20nmのNiO膜の膜厚方向の抵抗値は,約0.001Ωとなってしまい,層間絶縁ができないことが分かった。一方,反強磁性のNiO層を介した磁気的な結合に関しては,CoFe/NiO/CoFeBサンドウィッチ膜においてNiO層の膜厚を20nmから薄くすることで,2つの磁性層が磁気的に結合し,外部磁界によって同時に反転するようになることを確認した。これは,CoFe/NiO/CoFeBサンドウィッチ膜のうち,膜厚を十分厚くしたCoFeB層を微小な磁界に応答して磁化方向変化する層とし,この磁化方位の変化をNiO層を介してスピンバルブを構成するCoFe層に伝えることが可能であることを示しており,本研究の当初の目論見に合致している。一方,GMR膜を利用した歪みセンサに関しては,GMR細線の上に酸化Al層を介してAl導体を形成した素子の作製を行なったが,当初,層間絶縁が確保できていない素子しか得られなかった。
KAKENHI-PROJECT-17H03249
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H03249
鉄-マンガン系合金の高温制振効果の解明とその応用
新タイプ制振材料の開発を目的とし、レーザー・ドップラー振動計およびFFTアナライザー(H6年度科研費補助金)を用い、高Mn(Mn:1530%)鋼の内耗挙動を調べその内耗支配機構の解明を試みた。結果はつぎのとうり。1.予歪を与えた高Mn鋼の内耗には、予歪付加時に生成したε相の存在が寄与することを確認した。とくに低予歪域(56%以下)においてはε相の寄与が大部分を占める。2.予歪10%以上で得られる最大の内耗値には、ε相の存在も寄与するが、同時にγ相中のすべり転位の寄与も考えられる。3.ε相が関係して内耗が増す機構として、ε相中の(拡張)転位によるヒステリシス型の機構が考えられる。4.予歪10%以上では、予歪付加ままより、部分的に逆変態させた方が内耗大となる。その理由は現時点では詳らかでないが、実用上極めて興味ある知見である。実用化につなげるための今後の課題として、歪振幅依存性の観点から検討を進める必要がある。新タイプ制振材料の開発を目的とし、レーザー・ドップラー振動計およびFFTアナライザー(H6年度科研費補助金)を用い、高Mn(Mn:1530%)鋼の内耗挙動を調べその内耗支配機構の解明を試みた。結果はつぎのとうり。1.予歪を与えた高Mn鋼の内耗には、予歪付加時に生成したε相の存在が寄与することを確認した。とくに低予歪域(56%以下)においてはε相の寄与が大部分を占める。2.予歪10%以上で得られる最大の内耗値には、ε相の存在も寄与するが、同時にγ相中のすべり転位の寄与も考えられる。3.ε相が関係して内耗が増す機構として、ε相中の(拡張)転位によるヒステリシス型の機構が考えられる。4.予歪10%以上では、予歪付加ままより、部分的に逆変態させた方が内耗大となる。その理由は現時点では詳らかでないが、実用上極めて興味ある知見である。実用化につなげるための今後の課題として、歪振幅依存性の観点から検討を進める必要がある。
KAKENHI-PROJECT-06650776
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06650776
国際連盟における中国外交と日中関係-中国外交档案による「リットン史観」の克服」
平成19年度は最終年度なので、国際連盟と中国外交、日中関係について、成果のとりまとめを目指した。具体的な成果として、「中華民国の国際運盟外交-『非常任理事国』層から見た連盟論」(緒方貞子・半澤朝彦編著『グローバル・ガヴァナンスの歴史的変容-国連と国際政治史-』、ミネルヴァ書房、2007年4月、49-74頁)を公刊することができた。このほか、朝鮮総督府文書に残されたリットン調査団の来訪時の記録調査など、これまで明らかにされていない調査団の活動の全貌に近づくための調査をおこなった。このほか、国際政治学会2007年度研究大会の東アジア国際政治史分科会(《東アジアにおける国際連盟-知的交流と衛生事業-》)において司会を担当し、斎川貴嗣、安田佳代といった若手研究者の国際連盟と日中関係に関する研究との交流、議論の機会を得た(2007年10月27日、於福岡国際会議場)。本科研が当初企図した、(1)国際連盟での中国の代表人事、経費負担、委員会参加、具体的な投票行動、活動状況のデータベース化、(2-1)連盟創設期から日本が委員会レヴェルからも脱退する1938年に至る、各種委員会での議論、公共事業(衛生、アヘン、交通建設等)における中日のやりとり、応酬の年表化、(2-2)リットン調査団に対する中国側の意図、政策、議論の経緯を中国側の档案で詳細に明らかにするという目標については、特に第三点目については成果を出すことができたが、前半の二点について、第一点が作業中、第二点が若手の研究者により実現されつつあるといった状況である。今後は、ジュネーブでの調査を含めて、本課題のへの考察を深め、大型の科研の申請につなげていきたい。本研究は、国際連盟における日中関係について研究し、そこから従来の日中関係史研究には見られなかった側面を浮かび上がらせるとともに、直接的な二国間関係に基づくものではない、国際機関を通じての東アジアにおける秩序形成のあり方を追求しようとするものである。今年度は、第一に国際連盟の全身とも言えるハーグ平和会議における日中関係について検討をくわえた。その成果は、下記に記した「歴史物語の中の近代中国論-日本はなぜ中国の主要敵か-」として公刊した。第二回ハーグ平和会議では、既に国際司法裁判所の判事の数をめぐって日中の間で相克があり、日本が中国を三等国として位置づけようとする局面があった。第二に、国際連盟のリットン調査団をめぐる日中間の調整について、特にその「近代」をめぐる解釈の相違や、相互認識の問題について検討を加え、「"歴史的"に見る日中歴史問題」などとして公刊した。リットン調査団の報告書は、まさに両国の近代を総括しようとするものでもあった。第三に、日本外務省記録などを通じて、衛生や文教など、国際連盟の対中協力をめぐる日本側の見方などについて初歩的な調査をおこなった。今年度は、国際連盟における日中関係の背景ともなるハーグ平和会議、またリットン調査団の報告書それじたいを読み解くという所期の目標を達成したが、多くの課題も残されている。次年度は、国際連盟の議事録などから、日中間の応酬を総合的に把握し、リスト化するような試みをしたい。国際連盟における日中関係の論点一覧とでも言うべきものを作成して、その後に事例研究を進めていきたい。本研究は、国際連盟における日中関係について研究し、そこから従来の日中関係史研究には見られなかった側面を浮かび上がらせるとともに、直接的な二国間関係に基づくものではない、国際機関を通じての東アジアにおける秩序形成のあり方を追求しようとするものである。今年度は、初年度の成果を報告、公刊しつつ、リットン調査団に関する史料を読み進めた。まず、中国の国際連盟外交を「国際的地位」という中国近代外交の主要政策目標から捉えなおした「中国外交における象徴としての国際的地位」(『国際政治』<特集・天安門事件後の中国>145号、2006年夏、17-35頁)を刊行した。ここでは、1920年代の中国が国際的地位の向上を企図して国際連盟の原加盟国になり、理事会の非常任理事国ポストを獲得すべく、選挙の際にアジア枠を設けるよう要求し、他方で経費面では常任理事国波の経費を負担しようとしたことを明らかにした。また、非常任理事国のポストがあったからこそ、満洲事変を理事会に訴えることが容易になったことは言うまでもない。「中華民国の国際連盟外交-『非常任理事国』層から見た連盟論」(緒方貞子・半澤朝彦編著『グローバル・ガヴァナンスの歴史的変容-国連と国際政治史-』、ミネルヴァ書房、2007年、49-74頁)は、先の論考を基礎としつつ、1930年代初頭の中国が国際連盟からの近代化支援(経済援助、衛生建設、アヘン撲滅など)を受け、連盟の社会事業の主要な場となっていたこと、連盟との緊密な関係が日本の孤立化につながったこと、この緊密な関係が1940年代における国際連合組織過程における中国の発言権確保に結びついたことなどを明らかにした。こうした検討を背景にして、本科研の主題である国際連盟における日中関係というテーマに踏み込んだ報告として、"Sino-JapaneseRelations at the League of Nations"(Session2: Japan and China atthe LN/UN, Japan and the UN in International Politics : Historical Perspectives,2006年12月10日、明治学院大学)がある。それは、Sino-Japanese Relationship Relationship at the League of Nations, Asahiko Hanzawa
KAKENHI-PROJECT-17653017
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17653017
国際連盟における中国外交と日中関係-中国外交档案による「リットン史観」の克服」
ed., Japan and the UN in International Politics : Historical Perspectives, Academia Juris Booklet, No.24.2006.pp.92-126.として公刊された。ここでは、1920年代に中国が理事会の常任理事国になろうとした際に日本がとった態度を含め、国際連盟における日中関係というテーマにおける論点を提示している。次年度は、これらの論点を踏まえながら、日本側の文書やリットン報告書を含めて読み込んでいきたい。平成19年度は最終年度なので、国際連盟と中国外交、日中関係について、成果のとりまとめを目指した。具体的な成果として、「中華民国の国際運盟外交-『非常任理事国』層から見た連盟論」(緒方貞子・半澤朝彦編著『グローバル・ガヴァナンスの歴史的変容-国連と国際政治史-』、ミネルヴァ書房、2007年4月、49-74頁)を公刊することができた。このほか、朝鮮総督府文書に残されたリットン調査団の来訪時の記録調査など、これまで明らかにされていない調査団の活動の全貌に近づくための調査をおこなった。このほか、国際政治学会2007年度研究大会の東アジア国際政治史分科会(《東アジアにおける国際連盟-知的交流と衛生事業-》)において司会を担当し、斎川貴嗣、安田佳代といった若手研究者の国際連盟と日中関係に関する研究との交流、議論の機会を得た(2007年10月27日、於福岡国際会議場)。本科研が当初企図した、(1)国際連盟での中国の代表人事、経費負担、委員会参加、具体的な投票行動、活動状況のデータベース化、(2-1)連盟創設期から日本が委員会レヴェルからも脱退する1938年に至る、各種委員会での議論、公共事業(衛生、アヘン、交通建設等)における中日のやりとり、応酬の年表化、(2-2)リットン調査団に対する中国側の意図、政策、議論の経緯を中国側の档案で詳細に明らかにするという目標については、特に第三点目については成果を出すことができたが、前半の二点について、第一点が作業中、第二点が若手の研究者により実現されつつあるといった状況である。今後は、ジュネーブでの調査を含めて、本課題のへの考察を深め、大型の科研の申請につなげていきたい。
KAKENHI-PROJECT-17653017
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17653017
緑茶による薬食相互作用の萌芽的トランスレーショナル研究
カテキン類高含有緑茶の, 1シンバスタチン(SIM)の体内動態への影響及び,2ヒト肝ミクロソームのCytochrome P450 3A(CYP3A)とCYP2C8への作用を検討した.被験者にカテキン類高含有緑茶を2週間飲用しSIMを経口服用することにより、SIMの活性代謝物シンバスタチン酸(SVA)の最高血中濃度および血中濃度時間推移下面積は有意に上昇した.またカテキン類はCYP3AおよびCYP2C8活性を阻害した.これより,ヒトにおいてカテキン類を多く含んだ緑茶の飲用はSIMの活性本体であるSVAの体内動態を変動させることが示された.【背景・目的】緑茶およびカテキン類は,これまでに癌予防効果をはじめ様々な健康増進作用を有することが報告されている.最近,イタリア人の高脂血症患者においてカテキン類を多く含んだ緑茶の飲用によりシンバスタチン(SIM)の血中濃度が顕著に増加した症例が報告された.この報告に基づき,カテキン類高含有緑茶の摂取がSIMの体内動態に及ぼす影響を,健常人を対象としたオープンラベル・クロスオーバー試験により検討した.【実験方法】試験は文書同意を得られた健常人男性7名を対象とした.被験者は被験飲料としてカテキン類高含有緑茶または水を2週間飲用し,15日目にSIMを同時に経口服用した.SIM投与後24時間までのSIMおよび活性代謝物シンバスタチン酸(SVA)の血漿中濃度を高速液体クロマトグラフ/タンデム質量分析法にて定量し薬物動態パラメータを算出した.2週間の休薬期間の後,被験飲料を入れ替えて同様の試験を行った.本研究は浜松医科大学倫理委員会の承認のもと実施し,UMIN-CTRに臨床試験の事前登録を行った.【結果】緑茶投与群では,コントロール群と比較してSVAの最高血中濃度および血中濃度時間推移下面積はそれぞれ2.2および2.3倍に上昇したが,消失半減期に変化はみられなかった.一方,SIMの薬物動態パラメータについては両群間に差異が認められなかった.【結論・考察】ヒトにおいてカテキン類を多く含んだ緑茶の飲用はSIMの活性本体であるSVAの体内動態を変動させることが示された.SVAは種々の代謝酵素やトランスポーターの基質になることが報告されていることから、カテキン類の代謝酵素やトランスポーターに対する作用について検討が必要と考えられた.【目的】最近,カテキン類を多く含んだ緑茶の併用によりシンバスタチンの血中濃度が著しく上昇したことが報告された.その機序としてシンバスタチンの主な代謝酵素であるシトクロムP450(CYP)3Aの関与が推察されるが,ヒト肝および小腸CYPに対するカテキン類の阻害活性に関する報告は僅少である.本研究はgreen tea extract(GTE)およびGTEの主成分であるepigallocatechin gallate(EGCG)がヒトCYP活性に及ぼす影響を検討した.【方法】ヒト肝または小腸ミクロソーム(HLMおよびHIM)において,GTE(総カテキン量86.5%,w/w)またはEGCG存在下,CYP2B6, 2C8, 2C19および3Aに対する特異的基質の代謝反応を観察した.各代謝物の生成量をUPLC/ESI-MS法により定量し,カテキン類の各CYPに対する阻害活性について速度論的解析を行った.【結果】HLMにおいて,CYP2B6と2C8に対するGTEの阻害定数は,それぞれ10.2および10.9 μg/mLであった.また,EGCGの阻害定数は,4.0(CYP2B6),6.4(CYP2C8),26.1(CYP2C19)および14.0 μM(CYP3A)であった.一方,HIMにおいてCYP3A以外の分子種は代謝活性が非常に弱かったため,CYP3Aについてのみカテキン類の阻害活性を検討した.その結果,CYP3Aに対するGTEおよびEGCGの阻害定数はそれぞれ20.5 μg/mLおよび30.6 μMであった.【考察】GTEおよびEGCGはいずれのCYPにおいても阻害活性を有することが示唆された.特に,肝CYP2B6および2C8に対するEGCGの阻害活性は強く,薬物代謝に影響を及ぼす可能性が考えられた.カテキン類高含有緑茶の, 1シンバスタチン(SIM)の体内動態への影響及び,2ヒト肝ミクロソームのCytochrome P450 3A(CYP3A)とCYP2C8への作用を検討した.被験者にカテキン類高含有緑茶を2週間飲用しSIMを経口服用することにより、SIMの活性代謝物シンバスタチン酸(SVA)の最高血中濃度および血中濃度時間推移下面積は有意に上昇した.またカテキン類はCYP3AおよびCYP2C8活性を阻害した.これより,ヒトにおいてカテキン類を多く含んだ緑茶の飲用はSIMの活性本体であるSVAの体内動態を変動させることが示された.近年,健康食品への関心が高まる一方で医薬品との相互作用による副作用の報告数も増加しており,食品と医薬品の併用効果・相互作用についての科学的検証が強く求められている.現在までに緑茶と医薬品の相互作用についての報告は僅少である。
KAKENHI-PROJECT-23659287
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23659287
緑茶による薬食相互作用の萌芽的トランスレーショナル研究
本年度は,カテキン類高含有緑茶エキス(GTE)がシンバスタチン(SIM)の薬物動態に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.GTEとしてSunphenon BG-3 extract(太陽化学)を使用し,雌性SD系ラットにGTEおよびcontrol群として生理食塩水を単回または7日間投与し,30分後にSIMを経口投与した.SIM投与後6時間まで経時採血を行い,SIMおよび活性代謝物シンバスタチン酸(SVA)の血漿中濃度をLC/MS/MS法により測定した.GTEおよびTAO単回投与ラットにおけるSIMの血漿中濃度ー時間曲線下面積(AUC)はcontrol群に比較してそれぞれ156%および481%有意に増加した.また,CmaxはGTE群で1.7倍control群より高値であった.GTE反復投与ラットにおいても同様に,SIMのAUCおよびCmaxはcontrol群に比べ著しい増加がみられた.SVAについては,GTE単回および反復投与のいずれの場合においてもAUC,Cmaxおよびt1/2はcontrol群と比較し高値を示す傾向が認められた.以上より,ラットにおいてGTEがSIMの体内動態を変動させることが示唆された.予備試験として、健常人での臨床薬の体内動態に及ぼす緑茶の影響を調べ,緑茶が薬物の血漿中濃度を上昇させる知見を得た。緑茶に含有されるカテキン類の医薬品、特に高脂血症治療薬のスタチン剤(シンバスタチン)の体内動態に及ぼす影響を調べる研究において、昨年度(23年度)は、ラットを用いた動物実験により検証した。その結果、カテキン類がラットにおいて経口投与されたシンバスタチンの血漿中濃度を有意に増加させることを明らかにした。この結果に基づき、本年度は日本人の健常人における臨床研究を実施したところ、ラットでの実験結果と同様に、緑茶カテキン類の飲用がシンバスタチンの血漿中濃度を有意に増加させることが示された。本結果は、イタリア人患者で報告されたWerbaらの報告と同様であった。以上の結果から、シンバスタチン服用の高脂血症患者においては、緑茶の飲用はシンバスタチンの治療効果や副作用(横紋筋融解症やミオパシーなど)を増強する可能性が示唆された。当初の研究計画はほぼ達成されたが、イタリア人での結果との比較研究や、緑茶カテキン類とシンバスタチン剤の相互作用のメカニズムをin vitro実験により検証することが必要である。2008年にWerbaらにより、高脂血症患者での緑茶飲用が、その治療薬のシンバスタチンの血漿中濃度を有意に上昇させ副作用(横紋筋融解症)を惹起するという臨床知見が報告された。本研究は、この報告に基づき、その作用メカニズムと日本人での緑茶とシンバスタチンの相互作用を検証する目的で開始した。初年度は、まず基礎研究を主眼として、ラットを用いて緑茶飲用がシンバスタチンの体内動態に与える影響を精査した。その結果、ラットへの緑茶飲用がシンバスタチン経口投与によるシンバスタチン酸(薬理活性代謝物)の血漿中濃度を有意に上昇させることを見出した。一方、シンバスタチンそれ自体の血漿中濃度には変化なかった。これより、Werbaらの高脂血症患者での結果をラットでも再現することができ、本研究結果を基に、今後の緑茶とシンバスタチンなどの医薬品との相互作用メカニズム並びに日本人での臨床研究を推進する予定である。以上の結果から、初年度の研究の目的を達成できた。ラットおよび日本人健常人におけるこれまでの研究結果に基づき、今後はイタリア人での緑茶(カテキン類)飲用とシンバスタチンの相互作用や、その相互作用のメカニズムを精査する研究をすることが重要となる。
KAKENHI-PROJECT-23659287
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23659287
表面磁場を用いる大口径RFプラズマの開発
材料プロセス用の高密度・大口径・低圧力プラズマを生成するために、プラズマの生成、計測および制御に関する技術開発を幅広く行った。この研究で得られた成果は次のように要約される。1.高密度プラズマの生成誘導RFアンテナを真空容器内に挿入し、その容器壁を表面磁場で覆うことにより、高エネルギー電子の長寿命化をはかり、大口径の高密度プラズマを低圧力で生成することができた。また、ファラデーシールドによりアンテナとプラズマとの静電的結合を抑制できることを示した。一方、ヘリコンプラズマにおけるRFパワー吸収機構を研究し、低磁場(<100G)で低パワー(<1kW)のとき、RFパワーはヘリコン波よりもアンテナ近接場を通してプラズマに入ることが示された。2.高密度プラズマの計測・制御と応用詳細なプラズマ診断から、高い電子密度はラジカル組成を大きく変えてしまい、エッチングにおける材料選択性を劣化させることが分かった。この問題を解決する方法として、プラズマ容器壁の加熱(100-200°C)と放電のパルス化(周期10μs)が有効であることを初めて示した。この他、新しい診断技術としてプラズマ振動法による電子密度測定、光バイアスプローブによる電子エネルギー分布関数の測定、紫外吸収分光によるSiH_3ラジカルと微粒子の簡易モニター法を開発した。材料プロセス用の高密度・大口径・低圧力プラズマを生成するために、プラズマの生成、計測および制御に関する技術開発を幅広く行った。この研究で得られた成果は次のように要約される。1.高密度プラズマの生成誘導RFアンテナを真空容器内に挿入し、その容器壁を表面磁場で覆うことにより、高エネルギー電子の長寿命化をはかり、大口径の高密度プラズマを低圧力で生成することができた。また、ファラデーシールドによりアンテナとプラズマとの静電的結合を抑制できることを示した。一方、ヘリコンプラズマにおけるRFパワー吸収機構を研究し、低磁場(<100G)で低パワー(<1kW)のとき、RFパワーはヘリコン波よりもアンテナ近接場を通してプラズマに入ることが示された。2.高密度プラズマの計測・制御と応用詳細なプラズマ診断から、高い電子密度はラジカル組成を大きく変えてしまい、エッチングにおける材料選択性を劣化させることが分かった。この問題を解決する方法として、プラズマ容器壁の加熱(100-200°C)と放電のパルス化(周期10μs)が有効であることを初めて示した。この他、新しい診断技術としてプラズマ振動法による電子密度測定、光バイアスプローブによる電子エネルギー分布関数の測定、紫外吸収分光によるSiH_3ラジカルと微粒子の簡易モニター法を開発した。(1)表面磁場による電子の閉じ込め効果容器の壁にそって永久磁石を多数はりめぐらせて表面磁場を形成すると、電子の損失が減って低圧力までプラズマが維持できる。この実験事実を説明するために、表面磁場中の電子の運動をモンテカルロ・シミュレーションによって調べ、複雑な多極磁場の電子のロスコーンを初めて定量的に明らかにした。(2)誘導型RF放電の維持機構誘導型RF放電プラズマの維持機構の理論解析を進め、表面磁場による電子の閉じ込め効果を考慮した両極性拡散モデルを用いて、非弾性衝突も取り入れたパワーバランスの式と粒子連続の式を、適当な境界条件のもとに解いた。この結果、ガスの圧力、RF入力パワー、プラズマのサイズを指定するとセルフコンシステントに電子密度や電子温度が得られるようになった。このようにして得られた計算結果は、ガス種をHe,Ne,Arとかえて測定した実験データとほぼ一致した。(3)新しい電子密度の測定法RFプラズマの密度をラングミュア探針で測定する場合、精度が悪くなることが知られている。我々はこの問題を解決する新しい方法として、電ビームを入射して波を励起し、その振動数を測定して電子密度の絶対値を得る方法を考案した。この方法は、従来の方法に比べて任意性が入ることなく、密度を直読できるので信頼性が高い。(4)放電用RFアンテナこれまでRFアンテナをプラズマ内に挿入していたが、将来、不純物放出などが懸念されるので、ガラス容器の外側にアンテナをおく方式を試み、十分に放電が維持できることを確認した。永久磁石を容器壁のまわりに多数配置してつくる表面磁場は強い不均一性をもつ複雑な系であるため、これまでほとんど理論的解析がなされていなかった。今年度我々はモンテカルロ・シミュレーションを行って、表面磁場による電子の閉じ込め効果を定量的に評価することに成功した。高周波誘導コイルを用いるRF放電においては、アンテナ近傍の誘導電界だけでなく静電界も重要な働きをするという推論のもとに、それらの実測を行った。その結果、予想通りにアンテナ近くに強い静電界が発生してイオンを加速し、壁をたたいて不純物を出すなどの悪影響を与えることが分かった。さらに、ファラデーシールドを行うことにより、静電界を除けることを実証した。最後に、開発中の誘導結合型RFプラズマを用いてシリコンおよびITO(Indium-Tin-Oxide)薄膜のエッチングを試行し、エッチング速度、選択比などについて有望なデータが得られた。1.誘導結合型RF放電の物理機構を解明するために、発光分析を行って電子の加速の様子を実測した。その結果、アンテナ直下の表皮効果の領域から電子の加速が起こっていることが証明された。また、アンテナをファラデーシールドすることにより、プラズマとの静電的結合を抑制できることを示した。2.誘導結合型RFプラズマをもちいてITO膜のドライエッチングを行なった所、これまでになく高速のエッチングが可能であることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-04558002
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04558002