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表面磁場を用いる大口径RFプラズマの開発
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また、ハロゲンやメタンを使わずに、水素やヘリウムの放電によってクリーンなエッチングが実用的速度で行なえることが解った。また、エッチングによる化学反応生成物を検出し、物理スパッタリングも調べてエッチングの機構を調べた。3.誘導結合型RF放電をCF_4/H_2を用いて行い、SiO_2/Siの選択エッチングの研究を進めた。プラズマ内のラジカル測定から、高選択比を得るにはラジカル密度比(CF_x/F)を大きくする必要があり、プラズマ容器の加熱と放電のパルス化により、その比を大きくできることを初めて示した。4.ヘリコン波プラズマの生成機構について調べ、弱磁場(<100 G)で低RFパワー(< kW)の放電は、ヘリコン波よりもアンテナ近接場による電子加速が重要であることを見出した。
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KAKENHI-PROJECT-04558002
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04558002
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分子性ナノゼオライトで安定化される巨大水クラスターの構造とダイナミクス
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私たちは分子で作られたナノポーラス結晶の中に水分子を閉じこめて、ナノサイズの3層構造をもつ水クラスターチューブを構築した。このクラスターチューブは1.6nmの直径をもつ空孔に閉じこめられているため、中心付近の水分子が水-氷に関係する転移挙動(Fig.3)を明らかにしつつある。生体分子と水分子との相互作用は理論科学を中心に発展したきたが、このような分子結晶の水素結合骨格に捉えられた3層系の水クラスターは、生体分子の水との関わり合いを研究する上で、過冷却や構造水などの重要なモデルを提供することができる。我々が現在まで得ている結果は、このクラスターの水-氷転移に関係する一次転移が-40°C付近で起こる。040°Cまでの間で重水置換結晶に関する固体の^2H-NMR測定の結果、この過冷却領域で分子レベルまで空孔が狭められたことによる連続的な相変化が観測され、単純な理論でのフィッテングできる動きを持つことが判明した。さらに、低温での熱測定による結果は、完全に氷化するのに-120°Cであることが判り、その固化の仕方は転移ではなく不整合であった。また、-220°C付近ではプロトンのオーダーと思われる弱い発熱ピークが観測された。さらに、一次転移温度以下でのX線結晶構造解析と比較した結果(Fig.2)、-120°Cの固化温度では、恐らく、氷の二配位の水素結合構造でディスオーダーしている特殊な水分子部分が局在化するものと考えている。この研究では、過冷却部分と一次相転移温度以下-150°CでのX線結晶構造解析を行おうとしている。また、茨城大学の新村先生との共同研究によって、中性子線を用いた実験を行い、プロトン情報に関係するデータの収集を行っている最中である。また、このような相転移挙動を持つ新しい分子性ナノポーラス結晶を見出すことに成功した。この結晶についても水分子の構造学的な転移挙動を明らかにすると共に、水分子クラスターのもつ、プロトン移動度の構造活性相関を研究していきたいと考えている。私たちは分子で作られたナノポーラス結晶の中に水分子を閉じこめて、ナノサイズの3層構造をもつ水クラスターチューブを構築した。このクラスターチューブは1.6nmの直径をもつ空孔に閉じこめられているため、中心付近の水分子が水-氷に関係する転移挙動(Fig.3)を明らかにしつつある。生体分子と水分子との相互作用は理論科学を中心に発展したきたが、このような分子結晶の水素結合骨格に捉えられた3層系の水クラスターは、生体分子の水との関わり合いを研究する上で、過冷却や構造水などの重要なモデルを提供することができる。我々が現在まで得ている結果は、このクラスターの水-氷転移に関係する一次転移が-40°C付近で起こる。040°Cまでの間で重水置換結晶に関する固体の^2H-NMR測定の結果、この過冷却領域で分子レベルまで空孔が狭められたことによる連続的な相変化が観測され、単純な理論でのフィッテングできる動きを持つことが判明した。さらに、低温での熱測定による結果は、完全に氷化するのに-120°Cであることが判り、その固化の仕方は転移ではなく不整合であった。また、-220°C付近ではプロトンのオーダーと思われる弱い発熱ピークが観測された。さらに、一次転移温度以下でのX線結晶構造解析と比較した結果(Fig.2)、-120°Cの固化温度では、恐らく、氷の二配位の水素結合構造でディスオーダーしている特殊な水分子部分が局在化するものと考えている。この研究では、過冷却部分と一次相転移温度以下-150°CでのX線結晶構造解析を行おうとしている。また、茨城大学の新村先生との共同研究によって、中性子線を用いた実験を行い、プロトン情報に関係するデータの収集を行っている最中である。また、このような相転移挙動を持つ新しい分子性ナノポーラス結晶を見出すことに成功した。この結晶についても水分子の構造学的な転移挙動を明らかにすると共に、水分子クラスターのもつ、プロトン移動度の構造活性相関を研究していきたいと考えている。本研究は合成化学的なアプローチによって、細孔内に取り込まれた水クラスターの科学を研究した。従来の水の科学はバルクの水や氷を使った研究が主流であり、物性科学的な面からもあらゆる物理化学的な測定がなされている。しかし、液体としての水の構造がどのようなものなのか、あるいは水から氷になるときの相転移の臨界点やどの水分子から氷核を作っていくのか、また氷中のプロトンの長距離秩序化など、氷の多形の物性も含めて残された水分子の集合体に関する多くの課題が残されている。平成16年度は主に、現在我々が得ている結果をさらに発展させて、共同研究により、さらに低温での相転移はないのか、あるいは極低温での結晶構造解析を行うことにより、精密なIce-Nanotubeの構造を明らかにすることを目指す。特に、0°Cから相転移温度の-38°Cまで、できる限り精密なX線結晶構造解析を行い、相転移の挙動を解析し、細孔内の水分子がどのような動きをして相転移が起こっているのか、映像化したいと考えた。しかし、室温でのX線解析の精度が悪いため、低温のみに限って研究を行った。
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KAKENHI-PROJECT-16350034
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16350034
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分子性ナノゼオライトで安定化される巨大水クラスターの構造とダイナミクス
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特に共同研究によって極低温領域までの熱測定を行った結果、-38°Cでの細孔中での水分子の転移は不整合であることが判った。そして、この動きが-120度まで続き、恐らくこの温度で実質的な「氷」の状態になることが判った。また、-220度でも恐らくプロトンの局在化に関するピークが観測しており、この温度でプロトンが完全に停止するものと考えている。また、プロトンの位置を決めるために中性子線回折を行った。試料は2mm各程度のものを作成し、ある程度の反射が観測され、測定できることが判ったが、本測定は17年度になりそうである。このナノチューブの-75度での構造は明らかになり、速報にてアクセプトされる予定である。水が物性科学で注目されているのはプロトン移動による半導体的な性質を持つことである。一般的に液体である水は水分子の4量体であるH_qO_4^+を構成単位として、この水クラスター間をトンネルジャンプ機構によってプロトンを伝達するものとされている。一方、氷では水分子が並進運動できないため、結晶内ではトンネルジャンプ機構よりも欠陥を介した分子回転によるプロトン伝達機構が優勢であるものとされている。我々の合成したWater-Nanotubeも単結晶であるが、水クラスターを介したプロトンの良導体であるものと考えられた。そのため、交流誘電率を用いた擬似4端子法によるプロトン伝導を測定した。その結果、湿度100%でペレット錠剤の測定を行うと1.70×10^<-5> S-cm^<-1>のプロトン伝導度をもつことが分かった。この室温のプロトン伝導度は、バルクの水では5.7×10^<-8> S-cm^<-1>、氷では1.0×10^<-9> S-cm^<-1>を示すのに比べて、2桁もそのプロトン電導度が高くなっていることが分かった。私たちは分子で作られたナノポーラス結晶の中に水分子を閉じこめて、ナノサイズの3層構造をもつ水クラスターチューブを構築した。このクラスターチューブは1.6nmの直径をもつ空孔に閉じこめられているため、中心付近の水分子が水-氷に関係する転移挙動(Fig.3)を明らかにしつつある。生体分子と水分子との相互作用は理論科学を中心に発展したきたが、このような分子結晶の水素結合骨格に捉えられた3層系の水クラスターは、生体分子の水との関わり合いを研究する上で、過冷却や構造水などの重要なモデルを提供することができる。我々が現在まで得ている結果は、このクラスターの水-氷転移に関係する一次転移が-40°C付近で起こる。0-40°Cまでの間で重水置換結晶に関する固体の^2H-NMR測定の結果、この過冷却領域で分子レベルまで空孔が狭められたことによる連続的な相変化が観測され、単純な理論でのフィッテングできる動きを持つことが判明した。さらに、低温での熱測定による結果は、完全に氷化するのに-120°Cであることが判り、その固化の仕方は転移ではなく不整合であった。また、-220°C付近ではプロトンのオーダーと思われる弱い発熱ピークが観測された。さらに、一次転移温度以下でのX線結晶構造解析と比較した結果(Fig.2)、-120°Cの固化温度では、恐らく、氷の二配位の水素結合構造でディスオーダーしている特殊な水分子部分が局在化するものと考えている。この研究では、過冷却部分と一次相転移温度以下-150°CでのX線結晶構造解析を行おうとしている。また、茨城大学の新村先生との共同研究によって、中性子線を用いた実験を行い、プロトン情報に関係するデータの収集を行っている最中である。また、このような相転移挙動を持つ新しい分子性ナノポーラス結晶を見出すことに成功した。
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KAKENHI-PROJECT-16350034
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16350034
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スーパーオキシドラジカルの新奇な直接酸化特性とその発現メカニズム
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スーパーオキシドアニオンが関与する反応の生成物や中間体を気相クラスター反応を利用して真空中に単離し,光電子分光法によってその電子・幾何構造を決定することで反応機構に関する知見を得た.大気反応である二酸化硫黄との反応では,硫酸型の会合体イオンを生成する新たな反応経路の存在を明らかにした.生体内過程である一酸化窒素・二酸化炭素との反応系では,中間体イオンnitrosoperoxycarbonateを初めて実験的に捕捉・同定し,この中間体を経由した炭酸ラジカルの生成機構を実証することができた.スーパーオキシドアニオンは大気環境や生体内の多くの反応に関与する重要な活性種であり,その反応メカニズムを分子レベルで解明することは大気・生命現象を理解するうえで不可欠である.本研究では気相溶媒和クラスター環境を利用して,スーパーオキシドアニオンの関与する反応の生成物イオンや反応中間体イオンを気相中に単離し,電子・幾何構造に関する情報を得ることによって,スーパーオキシドアニオンの新奇な反応性を実証すること,およびその発現メカニズムを解明することを目的としている.平成27年度は,スーパーオキシドアニオンの水和クラスターと二酸化硫黄との衝突反応によって生成するSO_4アニオンの電子・幾何構造を光電子分光と量子化学計算を組み合わせて決定した.得られた光電子スペクトルから、peroxy型構造とsulfate型構造の2つのSO_4構造異性体が生成していることがわかった.量子化学計算による最近の報告では,スーパーオキシドアニオンと二酸化硫黄を出発物質とした気相反応はperoxy型SO_4アニオンのみを生成すると予測しており,本研究の結果はこの理論予測を覆す結果である.peroxy型の生成は求核付加反応,sulfate型の生成はO-O結合の開裂を伴う直接酸化反応とみなすことができ,孤立した状態では穏やかな還元剤であるスーパーオキシドアニオンが溶媒和によって同じ反応試剤に対して求核反応性・酸化反応性を持つようになることを示している.本年度は,(1)イオン源・分光システムの改良,(2)溶媒和スーパーオキシドアニオンと二酸化硫黄との反応によって生成する負イオン種のキャラクタリゼーションを行った.(1)については,新たなパルスエントレイメントイオン源の開発によって反応出発物質であるスーパーオキシド溶媒和クラスターのイオンビームを高強度化・安定化することができた.これにより光電子分光に十分な量の衝突反応生成物が得られるようになった.また,光電子分光の励起光を水素ラマンシフターの導入によって深紫外域まで高エネルギー化した.これらの改良によって,(2)の実施において,スーパーオキシドの気相反応からperoxy型とsulfate型両方のSO_4アニオンが生成することを明らかにすることができた.以上のことから,おおむね順調であると判断した.本年度は,スーパーオキシドアニオンと二酸化炭素・一酸化窒素が関与する反応系を主な対象として以下の成果を得た.(1) CO_4負イオンの生成と分光:酸素/二酸化炭素混合クラスターへの電子付着過程によって,クラスター内O_2- + CO_2反応を進行させ,CO_4(CO_2)nクラスター負イオンを生成した.光電子分光と量子化学計算から,CO_4負イオン(n = 0)はperoxy型OOCO_2構造の分子負イオンと同定した.また,n>1のクラスター負イオンは,CO_4負イオンをイオンコアとしたOOCO_2(CO_2)n溶媒和型クラスター構造であることを明らかにした.(2) ONOOCO_2負イオンの気相単離と分光:前項(1)で生成したCO_4(CO_2)nクラスターを反応試剤として一酸化窒素NOと反応させることで,ONOOCO2負イオン(nitrosoperoxycarbonate)を気相中に単離し,シス・トランス両方の構造異性体が生成していることを明らかにした.この負イオンは生体内過程であるONOO-(peroxynitrite)とCO_2の反応の中間体と考えられてきたが,実験的には未検出であった.本研究では,この反応がCO_2クラスター内で進行するため,CO_2溶媒の蒸発に伴うエネルギー緩和によって中間体イオンの捕捉が可能となったと考えられる.(3) CS_3負イオンの分光:クラスター内イオン分子反応の新しい適用例としてS-+CS_2反応に着目し,CS_2/Ar超音速ジェットの放電イオン化を利用してCS_3負イオン生成した.S-がCS_2のC原子を攻撃すると炭素中心型CS_3-が,S原子を攻撃すると直鎖型SCSS-が生成することを明らかにした.スーパーオキシドアニオンが関与する反応の生成物や中間体を気相クラスター反応を利用して真空中に単離し,光電子分光法によってその電子・幾何構造を決定することで反応機構に関する知見を得た.大気反応である二酸化硫黄との反応では,硫酸型の会合体イオンを生成する新たな反応経路の存在を明らかにした.生体内過程である一酸化窒素・二酸化炭素との反応系では,中間体イオンnitrosoperoxycarbonateを初めて実験的に捕捉・同定し,この中間体を経由した炭酸ラジカルの生成機構を実証することができた.本年度の成果をもとに,量子化学計算によってsulfate型SO_4アニオンの気相生成メカニズムを明らかした上で,学術論文としてまとめて発表する.また並行して,計画にある他のスーパーオキシド反応系にも着手し,生成物・中間体イオンの検出・分光によって,それぞれの反応系におけるスーパーオキシドの反応性を明らかにする.クラスター物理化学計画していた装置全体の改良(イオン源・光源・分光計)の内,イオン源と光源を改良した時点で生成イオン種の光電子分光が遂行可能となったため,分光測定を優先した.
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KAKENHI-PROJECT-15K17804
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K17804
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スーパーオキシドラジカルの新奇な直接酸化特性とその発現メカニズム
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このため,分光計の改良は次年度に持ち越すこととした.次年度に着手する反応系では,より高感度・高効率の分光測定が求められると予想される.このための分光計の改良を行う予定であり,これに繰越し費用と次年度の研究費の一部を充てる予定である.
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KAKENHI-PROJECT-15K17804
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K17804
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精神科入院患者の身体合併症対策についての官民共同システムの構築に関する研究
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精神科病院では身体合併症患者が増加している実態が明らかとなった。院外他科受診している患者割合も比較的高く、受診依頼・転院先は公立総合病院、個人病院が多かった。最近1年間の依頼件数は31件以上が25.1%となっており、断られた件数は13件が35.5%、0件が28.6%、46件が15.6%となっており、自治体により格差があることが推察された。理由としては、精神症状への対応が困難、空床なし、他患者への影響があり、転院先が見つからない背景には精神科患者ゆえの受入れ拒否があると捉えられていることが分かった。現在の治療枠組みの機能についてはどちらともいえない40.3%、機能していない36.4%、機能している21.6%と若干の差はあるものの自治体間に格差があるためか結果が分かれた。精神科病院が行政に望むことでは、受入体制の整備、指導的関与があげられており、受診をスムーズにするための調整システムの構築が必要とする回答が多かった。一方、身体科病院では入院患者の15%が精神疾患を合併していると38%が回答しており、そうした患者の対応では民間精神科病院に転院依頼37.6%がなされ、公立精神医療機関への依頼は9.5%にとどまっていた。病床数の限界から民間精神科病院に頼らざるを得ない実態の一端がうかがわれる。しかし、精神科病院に断られたことがあるが66.9%、その理由として身体疾患への対応困難31.6%があり、必ずしもスムーズには機能していないことが推察される。精神科病院からの転院依頼を断ったことがあるが51.0%あり、理由として精神症状増悪時の対応困難26.5%、空床なし22.0%、他患者への影響13.1%があげられている。構造としては互いに必要とする専門医の未整備がある。身体科病院管理者が考える現在の治療枠組みについてはどちらともいえない47.3%、機能していない27.0%、機能している20.5%と精神科病院の管理者が考える構造と相似していた。身体科医師は精神科診療を兼務することについてはよくない41.4%と回答し、課題として精神科医の雇用・確保32.8%、精神科診療技術の向上23.4%、看護師の精神科看護技術の向上15.6%をあげながらも精神科病院も身体科に対応できる体制を整備すること35.4%、都道府県レベルで受療システムを整備する必要があること33.3%と回答している。これらのことから精神科病院においても身体科病院においても互いに必要とする患者問題を抱えながらも独自に対応しつつ、かつ行政に対する受療調整機能の確立を求める意向が強いことが明らかになった。どのようなシステムが必要かを考えるときに東京都の例は重要な先例になると思われる。精神科病院では身体合併症患者が増加している実態が明らかとなった。院外他科受診している患者割合も比較的高く、受診依頼・転院先は公立総合病院、個人病院が多かった。最近1年間の依頼件数は31件以上が25.1%となっており、断られた件数は13件が35.5%、0件が28.6%、46件が15.6%となっており、自治体により格差があることが推察された。理由としては、精神症状への対応が困難、空床なし、他患者への影響があり、転院先が見つからない背景には精神科患者ゆえの受入れ拒否があると捉えられていることが分かった。現在の治療枠組みの機能についてはどちらともいえない40.3%、機能していない36.4%、機能している21.6%と若干の差はあるものの自治体間に格差があるためか結果が分かれた。精神科病院が行政に望むことでは、受入体制の整備、指導的関与があげられており、受診をスムーズにするための調整システムの構築が必要とする回答が多かった。一方、身体科病院では入院患者の15%が精神疾患を合併していると38%が回答しており、そうした患者の対応では民間精神科病院に転院依頼37.6%がなされ、公立精神医療機関への依頼は9.5%にとどまっていた。病床数の限界から民間精神科病院に頼らざるを得ない実態の一端がうかがわれる。しかし、精神科病院に断られたことがあるが66.9%、その理由として身体疾患への対応困難31.6%があり、必ずしもスムーズには機能していないことが推察される。精神科病院からの転院依頼を断ったことがあるが51.0%あり、理由として精神症状増悪時の対応困難26.5%、空床なし22.0%、他患者への影響13.1%があげられている。構造としては互いに必要とする専門医の未整備がある。身体科病院管理者が考える現在の治療枠組みについてはどちらともいえない47.3%、機能していない27.0%、機能している20.5%と精神科病院の管理者が考える構造と相似していた。身体科医師は精神科診療を兼務することについてはよくない41.4%と回答し、課題として精神科医の雇用・確保32.8%、精神科診療技術の向上23.4%、看護師の精神科看護技術の向上15.6%をあげながらも精神科病院も身体科に対応できる体制を整備すること35.4%、都道府県レベルで受療システムを整備する必要があること33.3%と回答している。
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KAKENHI-PROJECT-21659528
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21659528
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精神科入院患者の身体合併症対策についての官民共同システムの構築に関する研究
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これらのことから精神科病院においても身体科病院においても互いに必要とする患者問題を抱えながらも独自に対応しつつ、かつ行政に対する受療調整機能の確立を求める意向が強いことが明らかになった。どのようなシステムが必要かを考えるときに東京都の例は重要な先例になると思われる。初年度に予定していた目的の1つとして精神科入院患者の身体合併症への対応と現状について全国約1200か所の精神科病院の管理者を対象に質問紙調査を実施した。質問項目の中には合併症患者の動向や身体科病院に入院を依頼した際の患者の受け入れ拒否の実態を把握するための内容を含み、現状に対する管理者の意識や現在のシステムが有効に機能していないと考える管理者には解決策について自由筆記の回答を求めた。分析結果として、一つには精神科医が身体科治療にかかわることで負担感が増している実態が明らかとなり、受療システムが存在する一部の自治体では病院間の連携がうまくとれているものの、多くの自治体では機能していないことが明らかとなった。結果の概要は関連会において順次、公表した。本研究の重要性は実態把握に基づいて精神科病院と身体科病院の有機的な連携の可能性を多角的に検討し、従来の精神障害者に対する偏った身体科治療処遇を改善することで人権問題に発展することを防止し将来的には自殺者の減少や医療費の削減にもつながる研究である。次年度は、今回の結果を踏まえながら身体科病院の管理者に対し、精神科入院患者の身体合併症対策について対応の現状と課題、共同対応の可能性などについて調査を実施する予定である。2年目の今年は計画どおり2つ目の目的として精神科患者の対応と現状について全国1507か所の身体科病院の管理者を対象に質問紙調査を実施した。質問項目には特定の精神科病院と患者受入れについての協力提携(契約)の有無や入院患者が精神症状を発症した際の対応の現状、精神疾患患者の外来受診の状況、精神疾患患者の入院治療(受入れ)の実態などについて詳細に把握し、今後の方向性と対策としては、現状の治療枠組み(治療完了までのプロセス)が円滑に機能していると考えるか、など精神科病院との連携についての在り方について把握した。同時に精神科入院患者や精神疾患患者の身体合併症医療の円滑な運営について管理者としての認識を自由記載で回答を求めた。結果は現在分析中であるが、近年、精神疾患患者の利用率が増加していること、治療システムが存在する一部の自治体ではある程度の連携がとれているものの、多くの管理者が連携は不十分であると認識していることが分かった。分析結果の概要はまだ公表していないが、有益な成果を得たので順次、全国学会において発表する予定である。本研究の重要性は実態を把握し身体科病院と精神科病院の機能的な連携を可能にする方策を多角的に検討することであり、従来の精神障害煮に対する偏った身体科治療処遇を改善し、人権に配慮した社会の形成、ひいては円滑な治療開始による医療費の削減など今後、車要性を増す研究と考えている。次年度はこれまでの結果を踏まえ調査結果を詳細に検討し官民共同システムの理論的構築を試みる予定である。1年目と2年目の調査結果とを照合した結果、精神科入院患者の受入れに拒否的な身体科病院では理由として精神科対応が困難なため精神疾患患者を受入れても看護を含む医療的対応ができないことをあげるケースが多かった。こうしたケースでは、背景として、本来、精神疾患患者の身体科対応は公的医療機関が果たすべき機能であり、精神科病院から個々に受入れ要請が来ないよう行政がきちんと関与し対応すべきであるとの意識が強いように思われた。さらに分析結果から明らかになったことは、一定の自治体ではこうした問題に悩む状況はほとんどなく、各自治体による格差が大きいと推察されたことである。
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KAKENHI-PROJECT-21659528
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21659528
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シプナス形成におけるプロリン指向性プロテインキナーゼとCキナーゼの役割
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申請者らは、既に大脳皮質ニューロンの初代培養系において、キナーゼ阻害剤であるK-252bが、シナプス形成を阻害すること、その際、[^<32>P]ATPの取り込みで見たリン酸化の阻害が数個の蛋白質で見られること、その内の一つがMAP1Bであることを明らかにしている.本年度はキャピラリー高速液体クロマトグラフィーにエレクトロスプレー質量分析計をオンラインで結合したLC/MS法を用い、MAP1Bのリン酸化部位を詳細に解析した.試料は大脳皮質ニューロンの初代培養を用いSDSゲル電気可動を行いMAPIBに相当するバンドを切り出し、SDS存在下、直接ゲル片をプロテアーゼ処理して得られたペプチド混合物を用いた.その結果、従来その寄与が示唆されていたカゼインキナーゼIIによるリン酸化部位以外の部位で、8ヵ所以上もMAP1Bがリン酸化されていること、これらの新しく見出されたリン酸化部位が、いずれもリン酸化部位の直後にプロリンが存在することが明らかとなった.このことから、最近注目を浴びているMAPキナーゼやCdk5キナーゼなど、いわゆるプロリン指向性キナーゼが、MAP1Bをリン酸化し、そのリン酸化がシナプス形成に必須であると考えられる.MAP1Bは神経突起伸長の初期の段階に重要な役割を果たしていると考えられていることから、突起伸長のシグナスを伝えるMAPキナーゼの重要なターゲットである可能性がある.同様に成長円錐の主要蛋白質であり、Cキナーゼの主要基質として知られているGAP-43の翻訳後修飾を解析した結果、GAP-43もプロリン指向性キナーゼでリン酸化され、そのリン酸化にはMAPキナーゼ、Cdk5以外のプロリン指向性キナーゼによりリン酸化されていることが明らかとなった.申請者らは、既に大脳皮質ニューロンの初代培養系において、キナーゼ阻害剤であるK-252bが、シナプス形成を阻害すること、その際、[^<32>P]ATPの取り込みで見たリン酸化の阻害が数個の蛋白質で見られること、その内の一つがMAP1Bであることを明らかにしている.本年度はキャピラリー高速液体クロマトグラフィーにエレクトロスプレー質量分析計をオンラインで結合したLC/MS法を用い、MAP1Bのリン酸化部位を詳細に解析した.試料は大脳皮質ニューロンの初代培養を用いSDSゲル電気可動を行いMAPIBに相当するバンドを切り出し、SDS存在下、直接ゲル片をプロテアーゼ処理して得られたペプチド混合物を用いた.その結果、従来その寄与が示唆されていたカゼインキナーゼIIによるリン酸化部位以外の部位で、8ヵ所以上もMAP1Bがリン酸化されていること、これらの新しく見出されたリン酸化部位が、いずれもリン酸化部位の直後にプロリンが存在することが明らかとなった.このことから、最近注目を浴びているMAPキナーゼやCdk5キナーゼなど、いわゆるプロリン指向性キナーゼが、MAP1Bをリン酸化し、そのリン酸化がシナプス形成に必須であると考えられる.MAP1Bは神経突起伸長の初期の段階に重要な役割を果たしていると考えられていることから、突起伸長のシグナスを伝えるMAPキナーゼの重要なターゲットである可能性がある.同様に成長円錐の主要蛋白質であり、Cキナーゼの主要基質として知られているGAP-43の翻訳後修飾を解析した結果、GAP-43もプロリン指向性キナーゼでリン酸化され、そのリン酸化にはMAPキナーゼ、Cdk5以外のプロリン指向性キナーゼによりリン酸化されていることが明らかとなった.
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KAKENHI-PROJECT-07279242
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07279242
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網膜視覚情報並列処理に関わる神経機序の研究
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網膜は、眼に映った外界の風景をそのまま脳へ伝えるのではなく脳での情報処理に向けて網膜を構成する神経細胞間での情報のやりとりの中で、視覚情報の前処理を行う知能センサとも呼ばれる機能を有している。その機能の1つに網膜に投影された物体の形や色、動きの情報が異なる神経経路にて並列処理することがあげられる。本研究は、これに関わる神経機序を生理学的に比較的詳細な数理モデルを構築することで明らかにしていくことを目指している。網膜は、眼に映った外界の風景をそのまま脳へ伝えるのではなく脳での情報処理に向けて網膜を構成する神経細胞間での情報のやりとりの中で、視覚情報の前処理を行う知能センサとも呼ばれる機能を有している。その機能の1つに網膜に投影された物体の形や色、動きの情報が異なる神経経路にて並列処理することがあげられる。本研究は、これに関わる神経機序を生理学的に比較的詳細な数理モデルを構築することで明らかにしていくことを目指している。
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KAKENHI-PROJECT-19K12225
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K12225
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パラジウム錯体による異性化重合を活用する高機能ポリオレフィンの創製
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本研究ではジイミンパラジウム錯体によるオレフィン類の異性化重合を利用し、官能基の密度、分布が完全に制御された高分子の合成と、その機能の探索を目指して研究を行った。ジイミンパラジウム錯体により非共役ジエンやトリエン、アルキルシクロペンテンやアルケニルシクロヘキサンなどの異性化重合が選択的に進行し、立体構造の制御された五員環や六員環を含む高分子が得られることを見いだした。モノマーのアルキル基の長さを変えることにより、高分子中の環構造の密度や分布を完全に制御することも可能である。トリエンの重合では官能基が一定間隔で交互にならんだ高分子が得られた。1,3-トランス五員環を含む高分子は液晶性を示した。本研究ではジイミンパラジウム錯体によるオレフィン類の異性化重合を利用し、官能基の密度、分布が完全に制御された高分子の合成と、その機能の探索を目指して研究を行った。ジイミンパラジウム錯体により非共役ジエンやトリエン、アルキルシクロペンテンやアルケニルシクロヘキサンなどの異性化重合が選択的に進行し、立体構造の制御された五員環や六員環を含む高分子が得られることを見いだした。モノマーのアルキル基の長さを変えることにより、高分子中の環構造の密度や分布を完全に制御することも可能である。トリエンの重合では官能基が一定間隔で交互にならんだ高分子が得られた。1,3-トランス五員環を含む高分子は液晶性を示した。従来の重合法では側鎖官能基の平均的な密度の制御された高分子の合成は比較的用意であるが、その分布を完全に制御することは不可能であった。本研究ではジイミン配位子を有するパラジウム錯体によるオレフィン類の異性化重合を利用し、様々な官能基の密度、分布が完全に制御された高分子の合成と、その機能の探索を目指して研究を行っている。本年度は、特に五員環および六員環のシクロアルカン構造を主鎖に有する高分子の立体選択的合成と、その物性について検討を行った。我々はこれまでにパラジウム錯体が4-アルキルシクロペンテンの付加異性化重合を引き起こし、シクロペンタン骨格が主鎖上に一定の間隔で配置された高分子を与えることを見いだしている。しかも、環の立体構造が全て一定にそろった高分子は液晶性を示す。本年度は同様の触媒を用いた3-アルキルシクロペンテンの異性化重合も進行することを見いだした。しかもその重合は、モノマーの光学純度に応じて繰り返し単位の構造が変わるという従来にない特徴を有していることが明らかとなった。重合において鍵となるのは、用いている錯体が動的なキラリティーを有しているという点であり、さらに光学活性なモノマーによってその配向が誘起されていることが分かった。光学活性な3-メチルシクロペンテンを用いることにより得られる光学活性なポリマーは、従来合成に成功していたラセミ体のポリマーに対してより高く狭い温度範囲で液晶性を示すことが示唆された。アルケニルシクロヘキサンも同様に重合し、六員環構造を主鎖に有するポリマーが得られることが分かった。その立体構造はトランス-1,4型に制御されている。この構造を高分子主鎖中に組み込むことは、従来非常に困難であった。得られたポリマーは非常に高融点であることが分かった。従来の重合法では側鎖官能基の平均的な密度の制御された高分子の合成は比較的用意であるが、その分布を完全に制御することは不可能であった。本研究ではジイミン配位子を有するパラジウム錯体によるオレフィン類の異性化重合を利用し、様々な官能基の密度、'分布が完全に制御された高分子の合成と、その機能の探索を目指して研究を行っている。昨年度までに、パラジウム錯体が4-アルキルシクロペンテンや3-アルケニルシクロペンテンの付加異性化重合を引き起こし、シクロペンタン骨格が主鎖上に山定の間隔で配置された高分子を与えることを見いだしている。環の立体構造が全て一定にそろった高分子は液晶性を示す。アルケニルシクロヘキサンも向様に重合し、トランス-1,4型に制御された六員環構造を主鎖に有するポリマーが得られる。本年度は、ジイミンパラジウム錯体がメチレンシクロヘキサンの異性化重合を引き起こすことを見出した。得られたポリマーは、アルケニルシクロヘキサンと同様にトランス-1,4-シクロヘキサン環を含んでいる。1,1-二置換オレフィンは配位重合性が低く、単独重合の例は極めて限られており、本重合は非常に珍しい。ジイミンパラジウム錯体は一酸化炭素とメチレンシクロヘキサンとの共重合にも有効であり、この場合にはトランス-1,2-シクロヘキサン環を含むポリケトンが得られる。C2対称ジイミンパラジウム錯体は4-メチルシクロペンテンの立体規則性重合を引き起こす。得られるポリマーはキラルであることから、光学活性錯体を用いた不斉重合について検討を行った。光学活性ジイミセパラジウム錯体は、ジイミン配位子と光学活性ビスオキサゾリンパラジウム錯体との配位子交換により合成した。得られた錯体は4-メチルシクロペンテンの不斉重合を引き起こし、光学活性ポリマーが得られることが分かった。様々なアルキル基を有する1,6,11-トリエンのダブル環化重合が円滑に進行し、ビスシクロペンタン環を有するポリマーが得られることも見出した。
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KAKENHI-PROJECT-22685012
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22685012
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パラジウム錯体による異性化重合を活用する高機能ポリオレフィンの創製
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本研究ではジイミン配位子を有するパラジウム錯体によるオレフィン類の異性化重合を利用し、様々な官能基の密度、分布が完全に制御された高分子の合成と、その機能の探索を目指して研究を行っている。一昨年度までに、パラジウム錯体が4-アルキルシクロペンテンや3-アルキルシクロペンテンなどのシクロペンテン類や、アルケニルシクロヘキサンやメチレンシクロヘキサンなどのモノマーの異性化重合を引き起こし、立体構造の制御された五員環や六員環が主鎖上に一定の間隔で配置された高分子を与えることを見いだしている。パラジウム錯体はトリエンのダブル環化重合にも有効であり、異なる二種類の官能基を有するシクロペンタン環が交互に一定間隔で配置されたポリマーを与えることも見出している。昨年度は、ジイミンパラジウム錯体を用いて、メチレンシクロヘキサン類と一酸化炭素の共重合を行った。無置換のメチレンシクロヘキサンおよび3位、4位にメチル基を有したメチレンシクロヘキサンと一酸化炭素の共重合では1,2-trans-シクロヘキサン構造を有するポリマーが生成した。一方、2-メチルメチレンシクロヘキサンと一酸化炭素との共重合では1,2-cis-シクロヘキサン構造を有するポリマーが得られた。2-メチルメチレンシクロヘキサンと一酸化炭素との共重合の反応は1次の速度式に従って進行し、他のメチレンシクロヘキサンの重合比べて非常に速く進行していることがわかった。また、反応開始時から終了時まで狭い分子量分布を保ったまま分子量が増加していくことから、リビング的に重合が進行していることが明らかとなった。メントンから誘導されたモノマーを用いてポリマーを合成することにも成功した。本研究ではジイミン配位子を有するパラジウム錯体によるオレフィン類の異性化重合を利用し、様々な官能基の密度、分布が完全に制御された高分子の合成と、その機能の探索を目指して研究を行っている。一昨年度までに、パラジウム錯体が4-アルキルシクロペンテンや3-アルキルシクロペンテンの異性化重合を引き起こし、シクロペンタン骨格が主鎖上に一定の間隔で配置された高分子を与えることを見いだしている。また、アルケニルシクロヘキサンやメチレンシクロヘキサンも同様に重合し、シクロヘキサン環を含んだ高分子が生成する。パラジウム錯体は様々なアルキル基を有する1,6,11-トリエンのダブル環化重合を引き起こし、ビスシクロペンタン環を有するポリマーを与えることも見出している。昨年度は、様々な官能基の導入されたアルケニルシクロヘキサン、メチレンシクロヘキサンの合成を行い、その重合を行った。コレステロール骨格を有するメチレンシクロヘキサンを合成し、その単独重合および一酸化炭素との共重合について検討を行ったが、ポリマーは得られなかった。一方、4-アルキル-1-メチレンシクロヘキサンおよび2-アルキル-1-メチレンシクロヘキサンの重合は進行し、ポリマーが得られた。アルキルシクロペテン類の重合について、得られるポリマーの光学純度の向上を目指して、キサンテン骨格を有するS形C2対称ジイミン配位子を合成した。両親媒性官能基や発光性官能基を導入した様々なビスアルコキシメチルヘプタジエンの重合により、それらの側鎖官能基が均一に分布したポリオレフィンの合成を行った。また、親水性官能基および疎水性官能基をトリエンモノマー上に導入し、ダブル環化重合を行うことにより、それらの官能基がポリマー上に交互に配置した両親媒性ポリマーの合成について検討を行った。
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KAKENHI-PROJECT-22685012
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22685012
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癌の超早期発見にむけたDNAtoolboxによるmiRNA濃度判別システムの開発
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本年度は,(1)線形分類器の閾値である入力DNA濃度の調整手法を確立した他,(2)入力となるDNAの種類が増えたケースにおける,化学反応ネットワークによる線形分離,また,(3)出力ノードが増加したケースにおける各出力DNA間の化学反応の連鎖,および独立性などを検討した。(1)当研究で開発を行った線形分類器の入力DNA濃度の閾値は出力DNA濃度の増幅速度および分解速度のバランスで決定される。当年度は,線形分類器反応中の出力DNA濃度の分解速度を増加させる調整を行うことで,閾値濃度の調整が可能なことを検討した。具体的には,分解速度を促進させるために,出力DNAを不活化させるドレインテンプレートの濃度を増加させた。ドレインテンプレートの増加により,閾値濃度が調節することができることを明らかにした。(2)では,多入力DNAの判別が可能であることを示すため,最大9種類までの異なる配列をもつ入力DNAからの変換テンプレートを新たに設計し,これらを連結させた線形分類器を利用したDNA濃度パターンの線形分離(DNA濃度の重みつき和のチューニングや非線形性の確認,反応温度の最適化,各酵素濃度調整による反応速度のコントロール等)についてin vitroの実験系を利用し,詳しく検討を行った. (3)は,線形分類器の出力多層化に該当する内容である。新しく双安定性スイッチとなる出力DNAの配列のデザインを行い,その各種テンプレートをデザインした.そして,これらの異なる配列をもつ出力DNAの双安定システムを3種類まで同時に独立して反応させることができるかどうか,すなわち,各インジケータ間のクロストークの有無や,蛍光リークなどの脆弱性となりうる部分をin vitro実験系を用いて詳しく検討し,設定温度の調整や選択する蛍光の種類を変化させることによってこれらの問題を低減可能であることを明らかにした。本研究計画における初年度は研究目的として、診断システムに必要な線形分類器の基盤開発を行うことを掲げた。本研究の最終的な研究目的はリキッドバイオプシーのための診断システムの構築であり、10種類以上のバイオマーカー(miRNA)が混在する状態で、その濃度パターンを判別し、特定のDNAを合成することで診断が可能なマスターミックスの開発である。そのためには分子演算を実行可能な、化学反応ネットワークのアセンブリ手法のプラットフォームを構築することが必要となる。そこで、本研究で開発するDNAパターン判別システムをより多数の入力と多数の出力に対応できるように新たにデザインを行なった。具体的には、変換テンプレートやスイッチシステムの設計を新しくデザインした。その結果、修士の研究をベースとして、より他入力かつ他出力のシステムに対して、線形分離が可能であることを確認した。具体的に本年度検討した点は(1)線形分類器の閾値である入力DNA濃度の調整手法を確立した他,(2)入力となるDNAの種類が増えたケースにおける,化学反応ネットワークによる線形分離,また,(3)出力ノードが増加したケースにおける各出力DNA間の化学反応の連鎖,および独立性の確認、を行った。これらの成果を学会にて発表を行った。当初予期していなかったこととしては、線形分類器における偶発的に発生するノイズによる信号増幅に対する処理手法の研究も行った。具体的には、算出されるインジケータDNAが、標的となる配列がなくとも合成されてしまう現象であり、EXPAR(等温増幅手法)における誤診の原因になりうる。この分子ノイズを取り除くために、利用する実験器具の抗DNA処理や、変換テンプレートの配列の再設計を検討した。実験により、上記の操作でノイズを低減できることが確認された。今後の研究計画の概要として、(1)今までにシステムを用いてなどの論理回路と組み合わせた、より複雑なパターン判別手法の構築を行うとともに、(2)細胞株のパターン判別に対しても適用し、PENによるパターン判別手法を確立することを目指す。具体的には、これまでに構築した線形分離システムの出力DNAと、インヒビター機構やDNAのストランド置換反応を利用したANDゲートやORゲートを組み合わせたパターン判別を行なったり、また、線形分類器のチューニングにあたる手法の開発および出力ごとのアフィニティの違いの調整手法など、システムのチューニング部分についてのより詳細な検討を重ねることを目指す。具体的には、パターン判別にはそれぞれの入力DNAに対して個別に重みを設定する必要がある。この個別の重みの設定手法については既に検討を行なったが、多数のストランドを取り扱う際には、できる限り用いるストランドの種類を少なくすることが望ましいため、開発を検討している。また、液滴プラットフォームを用いた線形分離の評価手法をマルチターゲットに適用させることについても検討を行う。DNAビーコンを用いた蛍光強度の測定により行われるため、蛍光の出力として2種類までのDNAのみに留まっていたが、新たなフィルターを利用することで、3種類までのインジケータDNAの解析が可能であることを検討する。(2)細胞から得られるmiRNAをターゲットとし、そのパターンをPEN DNA tooboxによって設計したパターン判別システムを用いて分類することで、細胞腫が判別できることを証明することを目指す。具体的には、正常細胞、がん細胞でそれぞれ発現蛍光が変化するバイオマーカを同定したのち、PEN DNA toolboxを用いてこれらを検出し、パターン判別ができるようなシステムをデザインする。本年度は,(1)線形分類器の閾値である入力DNA濃度の調整手法を確立した他,(2)入力となるDNAの種類が増えたケースにおける,化学反応ネットワークによる線形分離,また,(3)出力ノードが増加したケースにおける各出力DNA間の化学反応の連鎖,および独立性などを検討した。(1)当研究で開発を行った線形分類器の入力DNA濃度の閾値は出力DNA濃度の増幅速度および分解速度のバランスで決定される。
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KAKENHI-PROJECT-18J22815
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J22815
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癌の超早期発見にむけたDNAtoolboxによるmiRNA濃度判別システムの開発
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当年度は,線形分類器反応中の出力DNA濃度の分解速度を増加させる調整を行うことで,閾値濃度の調整が可能なことを検討した。具体的には,分解速度を促進させるために,出力DNAを不活化させるドレインテンプレートの濃度を増加させた。ドレインテンプレートの増加により,閾値濃度が調節することができることを明らかにした。(2)では,多入力DNAの判別が可能であることを示すため,最大9種類までの異なる配列をもつ入力DNAからの変換テンプレートを新たに設計し,これらを連結させた線形分類器を利用したDNA濃度パターンの線形分離(DNA濃度の重みつき和のチューニングや非線形性の確認,反応温度の最適化,各酵素濃度調整による反応速度のコントロール等)についてin vitroの実験系を利用し,詳しく検討を行った. (3)は,線形分類器の出力多層化に該当する内容である。新しく双安定性スイッチとなる出力DNAの配列のデザインを行い,その各種テンプレートをデザインした.そして,これらの異なる配列をもつ出力DNAの双安定システムを3種類まで同時に独立して反応させることができるかどうか,すなわち,各インジケータ間のクロストークの有無や,蛍光リークなどの脆弱性となりうる部分をin vitro実験系を用いて詳しく検討し,設定温度の調整や選択する蛍光の種類を変化させることによってこれらの問題を低減可能であることを明らかにした。本研究計画における初年度は研究目的として、診断システムに必要な線形分類器の基盤開発を行うことを掲げた。本研究の最終的な研究目的はリキッドバイオプシーのための診断システムの構築であり、10種類以上のバイオマーカー(miRNA)が混在する状態で、その濃度パターンを判別し、特定のDNAを合成することで診断が可能なマスターミックスの開発である。そのためには分子演算を実行可能な、化学反応ネットワークのアセンブリ手法のプラットフォームを構築することが必要となる。そこで、本研究で開発するDNAパターン判別システムをより多数の入力と多数の出力に対応できるように新たにデザインを行なった。具体的には、変換テンプレートやスイッチシステムの設計を新しくデザインした。その結果、修士の研究をベースとして、より他入力かつ他出力のシステムに対して、線形分離が可能であることを確認した。具体的に本年度検討した点は(1)線形分類器の閾値である入力DNA濃度の調整手法を確立した他,(2)入力となるDNAの種類が増えたケースにおける,化学反応ネットワークによる線形分離,また,(3)出力ノードが増加したケースにおける各出力DNA間の化学反応の連鎖,および独立性の確認、を行った。これらの成果を学会にて発表を行った。
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KAKENHI-PROJECT-18J22815
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J22815
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植物由来のSOSシグナルを介した生態免疫システムに及ぼす農薬の影響評価
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農業生態系では害虫の被害を受けた植物由来のSOSシグナルに天敵が誘引される働きが農薬散布で阻害され、天敵による害虫密度抑制(生態免疫システム)が十分機能しない可能性がある。本研究は、農薬が天敵の害虫探索行動に及ぼす阻害効果について植物・害虫・天敵昆虫の3者系を用い検討した。その結果、各種の化学農薬を散布した植物では、農薬の忌避効果によって天敵が植物に誘引されず、天敵が植物上の害虫を攻撃できない場合があることを発見した。農業生態系では害虫の被害を受けた植物由来のSOSシグナルに天敵が誘引される働きが農薬散布で阻害され、天敵による害虫密度抑制(生態免疫システム)が十分機能しない可能性がある。本研究は、農薬が天敵の害虫探索行動に及ぼす阻害効果について植物・害虫・天敵昆虫の3者系を用い検討した。その結果、各種の化学農薬を散布した植物では、農薬の忌避効果によって天敵が植物に誘引されず、天敵が植物上の害虫を攻撃できない場合があることを発見した。害虫の被害を受けた物は特異的な揮発性物質(SOSシグナル)を放出し、これに天敵が誘引される。自然生態系ではSOSシグナルを介した天敵の働き(生態免疫システム)が機能しているが、農業生態系では十分に機能していない。本研究では農薬が生態免疫システムに及ぼす阻害効果に注目する。19年度は、SOSシグナルの誘引作用に及ぼす農薬の忌避効果の実証など、致死濃度以下での影響を検討する。主に2種類の実験系を用い研究を実施した。1)マメ科植物・ナミハダニ・捕食性天敵類系。天敵ミヤコカブリダニを用いた生物検定の結果、ハダニ被害植物のSOSシグナルと同程度の高い誘引活性成分(サリチル酸メチル)を発見した。また、各種農薬に対する感受性試験を実施し、殺虫効果等に関する知見を得た。さらに、殺虫効果が低い薬剤を対象に天敵のパフォーマンスに及ぼす影響を調査した結果、致死濃度以下での産卵数減少が認められた。天敵昆虫に関しては、ケシハネカクシ等に対する各種農薬の殺虫効果に関する知見を得た。2)アブラナ科植物・コナガ・コナガコマユバチ系。合成ピレスロイド系のペルメトリン乳剤において天敵忌避作用が認められたが、コナガ被害コマツナ株からのSOSシグナルの天敵誘引作用よりも忌避効果は弱く、農薬散布後のコナガ被害株に天敵が定位するという興味深い現象が観察され、想定外の成果を得た。株上での天敵のパフォーマンス及ぼす影響を調査したところ、餌探索行動や滞在後の生存に対する悪影響が認められた。以上の結果は、農薬の殺虫効果が高く、一方で忌避効果が弱い場合、SOSシグナルに誘引された天敵が植物上で死亡するか、もしくは行動異常を起こす可能性があることを示唆している。3)その他の成果。天敵カブリダニや天敵昆虫を用い、農薬等の各種化学物質の天敵忌避作用を効率的に検出するための生物検定法および化学分析法を開発した。自然生態系では害虫の被害を受けた植物由来のSOSシグナルに天敵が誘引されることで植物上での害虫密度が抑制されているが、農業生態系ではこのような生態免疫システムは十分機能していない。本研究は農薬が生態免疫システムに及ぼす阻害効果に注目する。本年度は、前年度の研究進展が顕著であったアブラナ科植物・コナガ・コナガコマユバチ系を主な対象とし、SOSシグナルの誘引作用に及ぼす各種農薬の忌避作用の程度を比較検討した。薬剤処理されたコナガ被害コマツナ株へのハチの定位行動や株上での探索行動に及ぼす影響を比較したところ、阻害効果が高い農薬(エトフェンプロックス乳剤、メソミル水和剤等)や低い農薬(エマメクチン安息香酸剤、クロチアニジン水和剤)が見られた。前者では害虫探索後の天敵に及ぼす致死作用は低く、後者では逆に致死作用は高くなった。天敵が長時間農薬に触れた場合には農薬の種類に関わらず全ての個体が死亡したことから、天敵の探索行動をあまり阻害しない農薬は、天敵の死亡率をかえって高める危険性があることが明らかとなった。これは従来の知見とは異なる新たな発見であり、農薬が天敵に及ぼす影響を評価する上で貴重な成果である。マメ科植物・ナミハダニ・捕食性天敵類系については、上記の実験系での研究をより優先したため、前年度に実施した各種試験の追加データの収集や論文作成等の取りまとめを行うことにとどめた。その中で、ナミハダニのコロニーを構成する立体網による対捕食者防衛の機能的意義を明らかにし、立体網から受ける影響の程度や立体網に対する対抗能力が天敵の種類ごとに異なることを実証した。農薬の影響に関する前年度・本年度の研究成果については、ハダニの天敵飼育技術の開発に関連した特許出願後に学会発表や論文等で公表する予定である。自然生態系では害虫の被害を受けた植物由来のSOSシグナルに天敵が誘引されることで植物上での害虫密度が抑制されているが、農業生態系ではこのような生態免疫システムは十分機能していない。本研究は農薬が生態免疫システムに及ぼす阻害効果に注目する。本年度は、前年度の研究進展が顕著であったアブラナ科植物・コナガ・コナガコマユバチ系を主な対象とし、SOSシグナルの誘引作用に及ぼす農薬(ダイアジノン)の忌避作用の程度について、散布後の経過日数との関係を検討した。
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KAKENHI-PROJECT-19380188
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19380188
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植物由来のSOSシグナルを介した生態免疫システムに及ぼす農薬の影響評価
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コナガ被害コマツナ株(農薬無散布)と農薬処理(1、24時間経過)したコナガ被害コマツナ株とを選択させたところ、有意に多くのハチが前者に定位行動を示し、農薬による忌避効果が見られたが、処理後72時間の被害株では忌避効果は見られなくなった。農薬処理1時間後の被害株上では滞在時間が短く、滞在終了後のハチ成虫の死亡率は高かったが、農薬処理24時間および72時間経過した被害株上での滞在時間は長く、滞在終了後のハチ成虫の死亡率は低かった。滞在期間中の寄生率を比較すると、農薬処理1時間後の被害株上での寄生率は低かったが、農薬処理24時間および72時間後の被害株上では寄生率が有意に高くなった。これらの実験条件下では、農薬(ダイアジノン)処理後2472時間経過した被害株上においては、天敵寄生蜂の寄主探索行動や生存率に及ぼす影響は小さかったが、農薬処理72時間経過した被害株上で寄主探索を繰り返す実験条件下においては、探索後のハチ成虫の死亡率は高くなることが明らかになった。
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KAKENHI-PROJECT-19380188
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19380188
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損傷前のAMPA受容体シナプス移行能が脳損傷後の機能回復を促進するメカニズム
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本研究では、脳損傷前に豊かな環境下でマウスを飼育することで、損傷後のリハビリテーションによる機能回復を促進するのではないかと仮説をたて、研究を行った。昨年度、豊かな環境設備(巨大なケージ、回し車、遊具)を適切に設置し、前肢を使用して餌を把握する運動課題(リーチングタスク)の運動学習効率が良くなることが明らかになった。今年度は、損傷後の機能回復能を検討するために、シリンダーテスト、ポールテスト、リーチングタスクを損傷後、3日、10日、17日、24日、31日に実施した。シリンダーテスト、ポールテストではControl群とEnrich群で差は認められなかった。リーチングタスクでは、損傷後3日ではほぼ同等の成功率の低下を呈したが、損傷後10日では有意差はないが成功率の増加傾向が認められた。損傷後17日以降は同等の成功率を示した。また、本研究費で購入した皮質微小刺激法の構築を行うことができた。しかし、Control群とEnrich群で電気生理学的な違いは検出できなかった。豊かな環境下で飼育後に急性脳スライスを作製し、運動野第2/3層の錐体細胞からホールセルパッチクランプ法を用いてAMPA受容体を介したシナプス後電流(Excitatory postsynaptic current: EPSC)を測定したが、Control群とEnrich群で変化が認められなかった。以上のことから、豊かな環境下で飼育することで、学習課題の効率的な習熟、損傷後のリハビリテーションによる早期回復の可能性が示唆された。今後さらにこれらの現象の分子細胞メカニズムを明らかにしていく必要がある。脳血管障害により生じた麻痺は元の水準までの機能回復は困難である。機能回復を促進するアプローチが近年開発されているが、十分な改善には至っていない。それは、リハビリテーションにより機能回復が促進されるメカニズムが明らかにされていないことに起因すると考えられる。そこで、本研究では、脳損傷前AMPA受容体のシナプス移行能に着目し、リハビリテーションにより可塑性が誘導され、機能回復が促進するメカニズムを明らかにすることを目的としている。本研究では、損傷前のAMPA受容体シナプス移行を促進する方法として、豊かな環境下での飼育を行った。豊かな環境下で飼育すると、海馬CA1領域の錐体細胞における長期増強が促進し、AMPA受容体の発現量も増大することが既に明らかになっている(FosterらBrain research 1996)。今年度の研究実績として、まず、豊かな環境設備(巨大なケージ、回し車、遊具)を適切に行うことができた。豊かな環境下で飼育したマウスは、前肢を使用して餌を把握する運動課題(リーチングタスク)の運動学習効率が良くなることが明らかになった。大脳皮質(運動野)凍結損傷モデルを構築することができた。大脳皮質凍結損傷を作成する損傷強度の設定を適切に行うことができた。機能回復能を評価する行動タスクを複数検討し、リーチングタスクにおいて、豊かな環境飼育マウスでは機能回復を促進する傾向が認められた。豊かな環境設備の設定や大脳皮質凍結損傷モデルを構築することができたため。本研究では、脳損傷前に豊かな環境下でマウスを飼育することで、損傷後のリハビリテーションによる機能回復を促進するのではないかと仮説をたて、研究を行った。昨年度、豊かな環境設備(巨大なケージ、回し車、遊具)を適切に設置し、前肢を使用して餌を把握する運動課題(リーチングタスク)の運動学習効率が良くなることが明らかになった。今年度は、損傷後の機能回復能を検討するために、シリンダーテスト、ポールテスト、リーチングタスクを損傷後、3日、10日、17日、24日、31日に実施した。シリンダーテスト、ポールテストではControl群とEnrich群で差は認められなかった。リーチングタスクでは、損傷後3日ではほぼ同等の成功率の低下を呈したが、損傷後10日では有意差はないが成功率の増加傾向が認められた。損傷後17日以降は同等の成功率を示した。また、本研究費で購入した皮質微小刺激法の構築を行うことができた。しかし、Control群とEnrich群で電気生理学的な違いは検出できなかった。豊かな環境下で飼育後に急性脳スライスを作製し、運動野第2/3層の錐体細胞からホールセルパッチクランプ法を用いてAMPA受容体を介したシナプス後電流(Excitatory postsynaptic current: EPSC)を測定したが、Control群とEnrich群で変化が認められなかった。以上のことから、豊かな環境下で飼育することで、学習課題の効率的な習熟、損傷後のリハビリテーションによる早期回復の可能性が示唆された。今後さらにこれらの現象の分子細胞メカニズムを明らかにしていく必要がある。1.マウスを豊かな環境下で飼育した後に、損傷前のAMPA受容体のシナプス移行能を検証する。AMPA受容体のシナプス移行は、ホールセルパッチクランプ法を用いて、検討する。また、大脳皮質のマッピングの変化を調べるために、皮質内微小刺激法を用いて検討する。2.損傷後の機能回復能及びメカニズムを解明する。現在、豊かな環境下で飼育したマウスは機能回復を促進する傾向が見られているため、個体数を追加した実験を行う。さらに、機能回復を仲介するメカニズムとして、AMPA受容体の量的・機能的変化を電気生理学的実験や生化学的実験から明らかにする予定である。現在得られている結果より、有意差を検出するために、次年度に動物個体を増加させ、検討していくために、今年度から繰越額が生じた。
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KAKENHI-PROJECT-17K13060
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K13060
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新規末梢循環癌細胞検出法を応用した膵癌幹細胞の治療抵抗性機序解明とその打破
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局所進行膵癌に強度変調放射線治療を用いた術前化学放射線療法(NACRT)を行った。TelomeScan F35を用い血中遊離癌細胞(v-CTCs)検出を行いその意義を解析した。対象は男:女=4:11、計15例。NACRT有効性:切除不能1例を除く14例でR0手術ができ、CA19-9値では治療前に比し治療後の数値が50%以上低下した症例は9例。v-CTC推移:5例がNACRT前より陽性で、5例中1例はNACRT後に陰性化、残り4例でv-CTC値はNACRT後急上昇し、術直後も陽性で術後約1年で陰性化した。v-CTC上昇4例中2例で術後早期に肝再発した。v-CTC値は良好なバイオマーカーである。【研究目的】膵癌手術症例、術後転移再発症例、切除不能症例を含めた膵癌患者の血液より新規膵癌末梢循環腫瘍細胞(Circulating tumor cell: CTC)検出システムであるテロメスキャンを用いてviable pancreatic CTCを検出し、臨床経過および予後とCTC検出の意義を解析することを目的とする。【研究方法】手術症例においては術前(術前化学放射線療法の前・後)、退院時の計3回、切除不能症例、転移再発症例では抗癌剤治療など治療開始前および投与終了後1ヵ月の計2回の採血を膵がん患者に行い、テロメスキャンシステムを用いたviable pancreatic CTCの検出を行い、腫瘍マーカーの推移などの臨床経過、予後とCTC検出数の変化と合わせて解析しCTC発現の意義を検証する。【結果】当初、OBP401というアデノウイルスを用いてCTC検出を行ったが、癌細胞に対する精度、特異性を向上させるべくテロメスキャンF35という新規開発したアデノウイルスを用いてCTCの検出を行った。ウイルスをF35に変更することで、非特異的GFP陽性細胞の検出数は格段に減少した。CTC検出を行った20例中9例でviable pancreatic CTCを検出した。CTC陽性患者9例のうち4例で肝転移、リンパ節再発を認め、2例は早期死亡した。現在、中長期での予後をフォロー中である。さらに検出されたCTCの免疫染色の結果、vimentin-cytokeratin double positiveのCTCを検出でき、予後も極めて不良であることが判明した。【結語】テロメスキャンを用いた新規膵癌末梢循環腫瘍細胞)検出システムによりCTC陽性と判定された膵癌患者の予後は極めて不良であり、viable pancreatic CTC検出は有用な予後予測因子である。【背景・目的】局所進行膵癌(PK)に強度変調放射線治療(IMRT)を用いたNACRTを行っている。同患者にTelomeScan F35を用い末梢血中の遊離癌細胞(viable CTCs)検出を行い予後予測を行い、v-CTCの有無、推移の臨床的意義を解析した。【治療・対象】PKにIMRT 60Gy+GEM +S-1によるNACRTを実施、NACRT前・後、術後にv-CTC値を測定した(N群)。同時期に実施したPK surgery first症例でも術前後v-CTC値を測定(S群)。【結果】N群は男:女=5:11、計16例、年齢中央値は69歳。[NACRT有効性]切除不能3例を除く13例でR0手術ができ(TP:PD:DP=3:7:3)、CA19-9値、PDG-PETでは治療前に比し治療後の数値が50%以上低下した症例は各々7例、6例、標本の組織学的効果でも全例Evans分類IIa以上の効果を認めた。[v-CTC推移]5例がNACRT前よりv-CTC陽性で、5例中1例はNACRT後にv-CTCは陰性化したが、残り4例でv-CTC値はNACRT後急上昇し、術後1ヵ月でもv-CTCは陽性を維持し、術後半年1年でv-CTCは陰性化した。v-CTC上昇の4例中1例は術後8ヵ月目に肝再発し死亡した。[S群]男:女=5:3、計8例、年齢中央値70歳。7例にR0手術を行った(PD:DP=5:2)。術前後共にv-CTCが0であった症例は4例で、1例は術前v-CTCは陰性で術後4 cellsと上昇、S-1補助療法後v-CTCは陰性化。術前v-CTC陽性は3例で、2例は術後陰性化、残り1例は術中に微小肝転移が判明し切除不能。【結語】v-CTC陽性例に対するNACRTはPKにEMTを誘発、v-CTC遊出を惹起し早期転移巣形成が示唆され、v-CTC値は良好なバイオマーカーである。局所進行膵癌に強度変調放射線治療を用いた術前化学放射線療法(NACRT)を行った。TelomeScan F35を用い血中遊離癌細胞(v-CTCs)検出を行いその意義を解析した。対象は男:女=4:11、計15例。NACRT有効性:切除不能1例を除く14例でR0手術ができ、CA19-9値では治療前に比し治療後の数値が50%以上低下した症例は9例。
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KAKENHI-PROJECT-25462129
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25462129
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新規末梢循環癌細胞検出法を応用した膵癌幹細胞の治療抵抗性機序解明とその打破
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v-CTC推移:5例がNACRT前より陽性で、5例中1例はNACRT後に陰性化、残り4例でv-CTC値はNACRT後急上昇し、術直後も陽性で術後約1年で陰性化した。v-CTC上昇4例中2例で術後早期に肝再発した。v-CTC値は良好なバイオマーカーである。医歯薬学、消化器外科学研究計画に従っておおむね順調に研究は進行できた。今後、臨床データーとつきあわせて中長期での予後予測因子となるか、さらには術後補助療法の有効性判定に応用できるかを解析する。膵癌患者においてviable pancreatic CTCの出現はきわめて予後不良であることが本研究成果により明らかとなった。したがって、以下の研究推進によりCTCの新しい知見を深めることは、膵癌の治療抵抗性の打破につながるものと確信している。膵癌原発巣由来tumor lysateおよび増殖能を有するCTC両者をα1,3GT酵素を用いて-galエピトープを酵素学的に生合成しα-gal pancreatic tumor lysateおよびα-gal CTCを作成する。これらをhigh Anti-Gal K.O. miceに各々投与しanti- pancreatic tumor lysate抗体、anti-CTC抗体をマウス血清中に誘導する。膵癌原発巣およびCTC由来糖タンパク質をそれぞれ二次元電気泳動で展開・分離し、上記の免疫マウスの血清を用いてWestern blottingを行う。それぞれのblotting signalsを比較し、膵癌原発巣およびCTC由来糖タンパク質の中で両方の血清で増強したスポット、さらにanti-CTC抗体を含むマウス血清でのみ増強するスポットを確認し、その注目スポットに相当する部位のゲルを切り出しマススペクトロメトリーで解析し新しいCTC標的タンパクの同定を行う。当初計画よりも少ない予算で進行したため。物品等の購入。
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KAKENHI-PROJECT-25462129
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発達障害児・者の就労移行支援のための認知アセスメント解釈フォーマットの開発
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学校教育では教えず、問われず、保護されていることが、就労では必須の能力となることがある(就業能力)。例えば、エラー検出、作業効率、作業持続、マルチタスク、プランニング、対人コミュニケーションなどであり、発達障害児・者はそれらの能力に困難を示すことが報告されている。そこで本研究事業では、学校教育と就労において共通して利用されるウェクスラー成人用知能検査(WAIS-III)の検査結果に基づき、このような就業能力を分析・評価するための解釈フォーマット(分析シート)を開発した。学校教育では教えず、問われず、保護されていることが、就労では必須の能力となることがある(就業能力)。例えば、エラー検出、作業効率、作業持続、マルチタスク、プランニング、対人コミュニケーションなどであり、発達障害児・者はそれらの能力に困難を示すことが報告されている。そこで本研究事業では、学校教育と就労において共通して利用されるウェクスラー成人用知能検査(WAIS-III)の検査結果に基づき、このような就業能力を分析・評価するための解釈フォーマット(分析シート)を開発した。近年の発達障害支援の動向として、早期支援、高等教育における学修支援、及び就労支援が注目されている。このことは、発達障害支援が学校教育における支援に留まることなく、発達過程において連続的な支援に拡がりつつあることを示している。学校教育から就労への移行においては環境に大きな質的変化が生じる。その移行支援を円滑に進めるためには、1.就労支援において特別支援教育の支援資産を継承・活用すること、2.就労において問題化することを、特別支援教育において予防的に支援することの2つが必要になる。発達障害児の特別支援教育について、個別支援計画の作成においては、WISCやWAIS、K-ABC、DN-CASなどの知能検査(認知アセスメント)が中心的な役割を果たしている。これらの検査は複数の下位検査から構成され、その下位検査得点間のプロフィールを分析する手続きが既に開発されており、アセスメントや支援において積極的に活用されてきた。これらの検査やそのプロフィール分析を共通のものとして、特別支援教育と就労支援を関連づけることが、円滑な就労移行支援や支援の連携に繋がることが期待される。神経心理学では、反応時間(反応潜時)が神経機能の成熟度や損傷度の第一の指標であるとされ、これはWISCやWAISの「処理速度」群指数に相当する。WISCやWAISの「符号」及び「絵面配列」下位検査は、就労の良否を予測することが指摘されていた。また「理解」下位検査は、対人葛藤の解決力をみることができるが、言語能力の高い者ではこの下位検査に正答しても現実場面とは異なる場合がある。自閉症児・者の中で「積木模様」や「組合せ」下位検査を含め「知覚統合」群指数が高い場合は、言語指示による作業内容の理解が困難であっても、視覚パターンの呈示によりそれが可能となる。こうした知見を体系化し、教育的支援と就労支援を関連づけることが次の課題である。学校教育と就労は理念や目的において単純に直結せず、環境に大きな相違がある。学校教育では教えないこと、問われないこと、保護されていることが、就労においては必須の能力(就業能力)となる。例えば、エラーやミスの検出(製品の品質・責任)、作業効率(企業収益)、プランニング・マルチタスク(作業マネジメント)、チームワーク・対人コミュニケーション能力(組織活動)などである。このような就業能力について、定型発達児は教わらなくても自然と身に付けるが、発達障害児・者は就業能力について敢えてトレーニングする必要があり、また努力しても身に着かないこともある。そこで就業能力をアセスメントすることが必要になり、そのためには学校教育と就労で共通して利用される心理検査が必要になる。学校教育と就労では利用される心理検査にも大きな相違があるが、知能指数(IQ)の情報は障害支援のどのような分野でも必須であり、IQを測定する知能検査として最も広く利用されているのがウェクスラー式知能検査(WAIS)である。つまりWAIS知能検査は学校教育と就労に共通の心理検査である。学校における特別支援教育ではWAIS知能検査は主要な心理検査の1つであり、下位検査得点によるプロフィール分析の手続きや分析シートがすでに開発されている。しかし就労(労働)の分野では、WAIS知能検査がIQ情報以外に活用されることはほとんどみられない。そこで本年度は、学校教育と就労に共通の心理検査であるWAIS-III知能検査の検査結果に基づき、就業能力を分析・評価するための解釈フォーマット(分析シート)を作成した。この分析シートを活用することにより、学校における特別支援教育の支援資産をキャリア教育や就労移行支援において継承・活用することが可能となり、キャリア教育の理念を実現するための目標が具体化され、キャリア教育の推進力として貢献することが期待される。
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KAKENHI-PROJECT-22730532
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22730532
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セクター理論における分類空間の幾何学的構造
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量子場に代表される無限自由度量子系の数学的構造に関わる当研究計画の内容とその成果を要約すると,対称性とその破れおよび熱的性質に基いて量子状態を特徴づけ,「(状態族の)分類空間の幾何構造」の視点からそれらを分類し記述・解釈するための理論的枠組の構成・整備を目指すという初期の目標は,この3年間の研究により大枠で実現されると共に,状態概念に重点を置いた問題設定から大きく踏み出して物理系を記述する代数自体及びそれに働く群作用の決定をも視野に入れ,当初の予想にない射程で問題を論ずる状況となった。具体的に見ると,状態分類は表現の中心環に属する秩序変数だけで指定可能な「セクター」と「セクター内部」という2つのレベルの区別が重要である。前者については破れのない内部対称性に付随したセクター構造を扱うDoplicher-Haag-Robertsのセクター理論が知られていたが,その一般的本質を"selection criterion"の概念およびそれが果たす「方程式」並びに圏論的adjunctionとしての役割に見出し,Galois理論と密接な関連での接合積の機能に着眼することで,破れた対称性や対称性以外の文脈でのセクター概念の扱いとその普遍的記述の枠組を提起した[論文1-4]。そこからセクター内部に踏み込むには,中心環を極大可換部分環に置き換え,群・Kac代数の双対性で重要なKac-竹崎作用素を導入することが本質的で,これにより観測過程の一般的数学的構成が可能になる[論文6]。更に状態の同定に必要な観測データのなす数学的構造の情報から,逆にそれを生成するミクロ量子系の無限次元非可換代数も再構成できることが,接合積に関する竹崎双対定理から分かる。量子場のtype III局所部分環の再現には外部作用で与えられるdynamicsが本質的なこともこの文脈で明らかとなり,観測による動力学の決定までが新たな数学的課題となる(I.Ojima & M.Takeori, in preparation)。量子場に代表される無限自由度量子系の数学的構造に関わる当研究計画の内容とその成果を要約すると,対称性とその破れおよび熱的性質に基いて量子状態を特徴づけ,「(状態族の)分類空間の幾何構造」の視点からそれらを分類し記述・解釈するための理論的枠組の構成・整備を目指すという初期の目標は,この3年間の研究により大枠で実現されると共に,状態概念に重点を置いた問題設定から大きく踏み出して物理系を記述する代数自体及びそれに働く群作用の決定をも視野に入れ,当初の予想にない射程で問題を論ずる状況となった。具体的に見ると,状態分類は表現の中心環に属する秩序変数だけで指定可能な「セクター」と「セクター内部」という2つのレベルの区別が重要である。前者については破れのない内部対称性に付随したセクター構造を扱うDoplicher-Haag-Robertsのセクター理論が知られていたが,その一般的本質を"selection criterion"の概念およびそれが果たす「方程式」並びに圏論的adjunctionとしての役割に見出し,Galois理論と密接な関連での接合積の機能に着眼することで,破れた対称性や対称性以外の文脈でのセクター概念の扱いとその普遍的記述の枠組を提起した[論文1-4]。そこからセクター内部に踏み込むには,中心環を極大可換部分環に置き換え,群・Kac代数の双対性で重要なKac-竹崎作用素を導入することが本質的で,これにより観測過程の一般的数学的構成が可能になる[論文6]。更に状態の同定に必要な観測データのなす数学的構造の情報から,逆にそれを生成するミクロ量子系の無限次元非可換代数も再構成できることが,接合積に関する竹崎双対定理から分かる。量子場のtype III局所部分環の再現には外部作用で与えられるdynamicsが本質的なこともこの文脈で明らかとなり,観測による動力学の決定までが新たな数学的課題となる(I.Ojima & M.Takeori, in preparation)。様々な物理的状況に対応してその記述に直接寄与する物理的状態を全て選び出す判定基準と共に,選び出された物理的状態をセクター概念に基づいて分類し,それらの物理的解釈を自然に与えるような一般的理論的枠組を論文3で与えたが,それに沿って群・Hopf代数の双対作用・接合積の概念をそこに自然な形で取り込むことと,熱的状況での状態・表現の数学的取扱いに本質的な役割を果たすmodular構造に関わる手法の整備を目的として,セクター理論に非コンパクト群が出現する状況の数学的整備を,第1年目の主要課題として設定した。この目的のために,論文4では温度の概念がスケール不変性の破れに付随して現れる秩序変数であることを解明すると同時に,上記の接合積代数がミクロ量子系固有の物理量とそれを分類するマクロ変数の両方を含んだ複合系として,破れた対称性の整合的記述において果たす本質的役割を明らかした。この視点を更に一歩進めると,論文5に示すように,破れた対称性に伴って生成される状態のfamilyの記述に留まらず,基本的な自然定数を「動かす」変換を考えることも可能となり,それによってミクロからマクロに及ぶ「理論のfamily」の統一的扱いが可能になる。これは相転移・臨界現象に伴う相共存や相境界に伴うsingularityの一般的取扱いに重要な役割を演ずることが期待され,セクター理論におけそ分類空間の構造解明に大きく資するものと考えられる。
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KAKENHI-PROJECT-15540117
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15540117
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セクター理論における分類空間の幾何学的構造
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種々の物理的状況の記述に適合した物理的状態をもれなく選び出すselection criterionと,選び出された物理的状態をセクター概念によって分類し,その物理的解釈を与える一般的枠組を提起した昨年度の研究成果(論文1および概要については論文6を参照)を踏まえて,今年度は,群双対性とmodular theoryに絡む数学的構造を主要な方法論的手掛かりとして,状態・セクターの分類空間の幾何学的解明を進めた。それによって,ヒステリシスのような熱力学的概念が接続のholonomyとして幾何学的意味を持つこと(論文3),群・Kac代数の双対性定式化で本質的役割を演ずるmultiplicative unitary(またはKac-竹崎作用素)が観測過程の記述において決定的役割を演じ,type III von Neumann環を含んだ量子場の観測過程を記述可能にすること,更に,群双対性の視点からmodular theoryを見直すことによって,そのGalois理論的構造が明らかになった(論文4)。また,量子場の局所状態の相空間的性質を特徴づける核型性条件をmodular theoryとそこに絡む作用素空間の視点から見直すことによってε-entropyの概念が有効に働く可能性が見えてきた(論文5)。これらはセクター理論における分類空間の幾何学的構造解明に重要な新しい視点を与えるものである。無限自由度量子系の内部対称性とその破れや熱的状況の違い等に起因して生成するセクター構造およびその実験的観測過程の記述に必要な一般的理論枠は,報告者の2004年以前の研究により,代数的場の量子論と非可換確率論に基づく文脈で基本的な諸点が与えられた。しかし異なるセクターを区別する物理量である秩序変数は一つのセクター内の全ての状態で同じ値を取るため,それを用いてセクター内部の構造を記述することはできない。今年度,報告者の研究はこのセクター内部の構造解析を課題の焦点に据えて,次の基本的な点を明らかにした:i)セクター内部の状態の現実的実験的な同定に必要な物理的過程を実現する対象系と測定装置の間のcoupling termおよびそれに付随する"instrument"の概念は,測定される物理量から成る極大可換部分環(MASA)Aおよびそれを生成するユニタリ群Uを指定すれば,群・Kac代数の双対性に関する理論で中心的な役割を演ずるKac-竹崎作用素とそれから決まる接合積を用いて,統一的・普遍的な形で記述され[論文2],ii)半単純Lie環の構造がCartan部分環とそのルート系の構造に関する情報で定まるように,ミクロ量子系を記述する無限次元非可換代数Mの構造も,MとUの接合積とその双対性に関する竹崎双対定理に基づき,Aおよびその測定データの配置構造を記述するUの双対作用の概念を用いた第二接合積によって再構成できることが証明され,更に,
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KAKENHI-PROJECT-15540117
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15540117
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E型カドヘリンの発現よりみたクモ膜絨毛における脳脊髄液の吸収機序
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子ザル3頭および成人ザル3頭の計6頭のニホンザルを用いた。実験に際してはケタラールとペントバルビタールの静脈内注射により、十分な除痛と麻酔効果を得た。無処置群とEDTAを大槽に注入した群を作成し、EDTA注入群は注入後1週間後に開胸を行い4%パラフォルムアルデヒドに0.1%タンニン酸を混合した固定液で灌流固定を行った。頭蓋円蓋部の硬膜を損傷しないように頭蓋骨を除去し、頭頂部の硬膜・クモ膜・軟膜と脳実質を一塊として取り出し、その一部を光顕・電顕用標本とした。結果:EDTA注入群では無処置群と比較して脳室のサイズが軽度拡大していた。クモ膜下腔の拡大やクモ膜の癒着はほとんどみられなかった。無処置群では免疫組織学的にはクモ膜絨毛ではarachnoid cell layer・capcell cluster・central core内のクモ膜細胞周囲にE型カドヘンリンが陽性であった。EDTA群では無処置群とほぼ同様のE型カドヘリン分布を示したが、全体にその染色性の低下がみられた。電顕的にはEDTA群のcapcell clusterのクモ膜細胞間隙の拡大が目立ち、正常のcapcell clusterよりも嵌合がルーズになっている傾向を示した。さらに、central coreのクモ膜細胞にはintermediate junctionが解離している像がみられた。これらの結果から、髄液吸収機構にクモ膜絨毛内のクモ膜細胞間の細胞間接着が関与しており、特にintermediate junctionの形成に関わるE型カドヘリンが密接に関係していることが示唆された。今後は、一定量のクモ膜絨毛に含まれるこのE型カドヘリンをwestern blottingにより半定量を行い、免疫電顕的手法によりE型カドヘリンの超微レベルでの局在についても検索し、さらに、カオリン水頭症モデルにおけるクモ膜絨毛内E型カドヘリンの関与について検討する予定である。子ザル3頭および成人ザル3頭の計6頭のニホンザルを用いた。実験に際してはケタラールとペントバルビタールの静脈内注射により、十分な除痛と麻酔効果を得た。無処置群とEDTAを大槽に注入した群を作成し、EDTA注入群は注入後1週間後に開胸を行い4%パラフォルムアルデヒドに0.1%タンニン酸を混合した固定液で灌流固定を行った。頭蓋円蓋部の硬膜を損傷しないように頭蓋骨を除去し、頭頂部の硬膜・クモ膜・軟膜と脳実質を一塊として取り出し、その一部を光顕・電顕用標本とした。結果:EDTA注入群では無処置群と比較して脳室のサイズが軽度拡大していた。クモ膜下腔の拡大やクモ膜の癒着はほとんどみられなかった。無処置群では免疫組織学的にはクモ膜絨毛ではarachnoid cell layer・capcell cluster・central core内のクモ膜細胞周囲にE型カドヘンリンが陽性であった。EDTA群では無処置群とほぼ同様のE型カドヘリン分布を示したが、全体にその染色性の低下がみられた。電顕的にはEDTA群のcapcell clusterのクモ膜細胞間隙の拡大が目立ち、正常のcapcell clusterよりも嵌合がルーズになっている傾向を示した。さらに、central coreのクモ膜細胞にはintermediate junctionが解離している像がみられた。これらの結果から、髄液吸収機構にクモ膜絨毛内のクモ膜細胞間の細胞間接着が関与しており、特にintermediate junctionの形成に関わるE型カドヘリンが密接に関係していることが示唆された。今後は、一定量のクモ膜絨毛に含まれるこのE型カドヘリンをwestern blottingにより半定量を行い、免疫電顕的手法によりE型カドヘリンの超微レベルでの局在についても検索し、さらに、カオリン水頭症モデルにおけるクモ膜絨毛内E型カドヘリンの関与について検討する予定である。
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KAKENHI-PROJECT-05771016
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05771016
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昆虫における遺伝子ターゲティングの分子機構とその効率的利用
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遺伝子ターゲティングとは、生物が遺伝子修復機能として備えている相同組換えを利用して特定の標的遺伝子に操作を行うことである。遺伝子ターゲティングは標的遺伝子のみを正確に破壊できるため、非特異的な遺伝子機能障害が起る可能性のあるRNAiに比べて、信頼性の高い手法である。遺伝子ターゲティング効率の向上を目的に、細胞内におけるin vivo HR検出系を構築し、染色体外でのHRを測定した結果、ほとんどのDSBはSSAを用いて修復が行われていた。さらに、向上因子のスクリーニングの結果単離された遺伝子はカイコAGO2であり、この因子は、生じたDSBが染色体上にあるのか、染色体外にあるのかを識別し、修復の方向付けを行っている可能性が示唆された。染色体DNAは、クロマチンにより高次構造を形成しており転写・複製・修復に大きく影響を及ぼしていると考えられる。カイコAGO2もこのクロマチンの制御を介してDSB部位の識別を行っているのであろう。そこで、クロマチン関連因子をターゲティング効率の上昇に利用すべく、遺伝子ターゲティングを含むDNAの組み換え阻害的に働くと考えられるヘテロクロマチン形成に関わる遺伝子群についての解析を行った。その結果、カイコにおいてもピストンH3の9番目のリジン残基が、モノ、ジ、トリメチル化修飾を受けること、そのメチル基転移反応にSu(Var)3-9が関与していることが示唆された。メチル化されたカイコヒストンH3に、ヘテロクロマチンタンパク質であるHP1aとHP1bが結合することが示されたが、他の生物と異なり、HP1aの転写調節領域へのリクルートにより、ヘテロクロマチン形成を介した転写抑制は誘導されにくい可能性があることが示唆された。遺伝子ターゲティングとは、生物が遺伝子修復機能として備えている相同組換えを利用して特定の標的遺伝子に操作を行うことである。遺伝子ターゲティングは標的遺伝子のみを正確に破壊できるため、非特異的な遺伝子機能障害が起る可能性のあるRNAiに比べて、信頼性の高い手法である。遺伝子ターゲティング効率の向上を目的に、細胞内におけるin vivo HR検出系を構築し、染色体外でのHRを測定した結果、ほとんどのDSBはSSAを用いて修復が行われていた。さらに、向上因子のスクリーニングの結果単離された遺伝子はカイコAGO2であり、この因子は、生じたDSBが染色体上にあるのか、染色体外にあるのかを識別し、修復の方向付けを行っている可能性が示唆された。染色体DNAは、クロマチンにより高次構造を形成しており転写・複製・修復に大きく影響を及ぼしていると考えられる。カイコAGO2もこのクロマチンの制御を介してDSB部位の識別を行っているのであろう。そこで、クロマチン関連因子をターゲティング効率の上昇に利用すべく、遺伝子ターゲティングを含むDNAの組み換え阻害的に働くと考えられるヘテロクロマチン形成に関わる遺伝子群についての解析を行った。その結果、カイコにおいてもピストンH3の9番目のリジン残基が、モノ、ジ、トリメチル化修飾を受けること、そのメチル基転移反応にSu(Var)3-9が関与していることが示唆された。メチル化されたカイコヒストンH3に、ヘテロクロマチンタンパク質であるHP1aとHP1bが結合することが示されたが、他の生物と異なり、HP1aの転写調節領域へのリクルートにより、ヘテロクロマチン形成を介した転写抑制は誘導されにくい可能性があることが示唆された。遺伝子ターゲティングに関わる新規遺伝子の探索については既存のアッセイ系に加えて、新たな遺伝子スクリーニング用の系を構築している。この系は、レポーターとしてPuroDsRed(赤色蛍光を発しPuromycin耐性)とZeoGFP(緑色蛍光を発しZeocin耐性)を用い、ZeoGFPを発現している細胞に遺伝子ターゲティングが成功した場合にのみ赤色蛍光を発しPuromycin耐性に形質転換されるアッセイ系で、レポーター系の構築が終了した。遺伝子ターゲティングは、基本的には相同組換えと共通の因子を利用すると考えられる。そのため、組換えが開始される切断点の保護とその切断点を非相同末端結合による修復ではなく、結果としてのターゲティングを含む組換え修復系へとリクルートする遺伝子が初期反応に関わると想定される。そこで、MRE11、RAD50、NBS1、RAD52、CHK2、BRCA2、ATMなどの既知遺伝子を用いて、当該遺伝子の過剰発現やノックダウンによるターゲティング効率の解析や組換え修復経路選択性の変化を解析し、各遺伝子の役割を明らかにする。これらの中でも、カイコBRCA2が相同組み換えに深く関与していることが同定できたため、同一経路に関わると予想されるFancD2についても遺伝子クローニングを行い、相同組み換えにおける機能を解析中である。同様にホリデイジャンクションの形成を含む中期反応に関わる遺伝子や終期反応である組換え中間体の解離に働く遺伝子についても、中期反応遺伝子としてはRAD51、DMC1、MSH4、MSH5、RPA複合体、終期反応遺伝子としてはMUS81とMUS308の構造解析、発現解析を終了した。また、初期反応遺伝子としてSPO11を新たに発現ベクターにクローニングした。これまでの研究により、染色体のヘテロクロマチン化は、遺伝子ターゲティングを含むDNAの組み換え阻害的に働くと考えられるが、カイコにおいては、ヘテロクロマチン形成に関わる遺伝子群についての研究がほとんどなされていなかった。特に分散型動原体を持つカイコはそのヘテロクロマチン形成機構が、他の生物とは異なる制御を受けている可能性が考えられた。
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KAKENHI-PROJECT-17380037
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17380037
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昆虫における遺伝子ターゲティングの分子機構とその効率的利用
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そこで、カイコのヘテロクロマチン形成において正の制御を行うことが予想されるヒストンメチルトランスフェラーゼ(SU(Var)3-9)についての機能解析を行った。同時に、その基質となるカイコヒストンH3とヒストンメチルトランスフェラーゼの下流でヘテロクロマチン形成の誘導維持を行うHP1-α,HP1-βについても遺伝子を単離し、機能解析を行った。その結果、カイコにおいてもヒストンH3の9番目のリジン残基が、モノ、ジ、トリメチル化修飾を受けること、そのメチル基転移反応にSU(Var)3-9が関与していることが示唆された。メチル化されたカイコヒストンH3に、ヘテロクロマチンタンパク質であるHP1-αとHP1-βが結合することが示されたが、他の生物と異なり、HP1-αの転写調節領域へのリクルートにより、ヘテロクロマチン形成を介した転写抑制は誘導されない可能性があることが示唆された。今回は、染色対外のプロモーターに対する影響を解析したため、ヘテロクロマチン形成を介した転写抑制が染色体内外で異なる可能性がある。現在、同様の手法を用いて、染色体上での影響を解析している。合わせて、ヘテロクロマチン形成が、遺伝子ターゲティングに及ぼす影響についても解析を進めている。生体内でターゲティングに関わっている因子を解析し、積極的に利用しようとする試みはほとんどなされていないが、本研究ではこのターゲティング分子機構の理解を手がかりに、クロマチン関連因子をターゲティング効率の上昇に利用すべく、遺伝子ターゲティングを含むDNAの組み換え阻害的に働くと考えられるヘテロクロマチン形成に関わる遺伝子群についての解析を行った。ヒストンH3を標的にメチル基転移酵素(Su(Var)3-9)に引き続き、脱メチル化酵素(JMJD2)についての機能解析を行った。また、Su(Var)3-9の下流でヘテロクロマチン形成の誘導維持を行うHP1α,HP1βについては,ヒト由来のHP1α,HP1βはカイコ細胞での転写抑制を誘導できるのに対して、カイコ由来のHP1、特にHP1αの転写抑制効果は低かった。リカイコHP1αとSu(Var)3-9との相互作用は確認されたことから、カイコヘテロクロマチン形成の分子機構は他生物とは大きく異なる可能性が示唆された。また、これらの因子の過剰発現やノックダウンによる遺伝子ターゲティング効率の著しい変化は認められなかった。本研究の遂行にあたり、カイコ培養細胞系での種々の遺伝子ターゲティング因子スクリーニングシステムやターゲティングベクター等、今後の研究に有効なツールを構築することができた。関連因子のスクリーニングの結果、遺伝子ターゲティング効率を飛躍的に改善する遺伝子は単離されていないが、これらのツールを利用し、本研究の成果をさらに発展させれば、クロマチン工学に基づいた効率的な遺伝子ターゲティングが確立できると期待される。
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KAKENHI-PROJECT-17380037
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17380037
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皮膚アレルギー反応部位におけるeotaxinの産生細胞と発現誘導因子の解明
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皮膚のアレルギー反応部位における好酸球浸潤のメカニズムを明らかにするために、マウスの皮膚遅発型反応におけるeotaxinの発現、その産生細胞、誘導因子について研究を行った。Balb/cマウスにオボアルブミン(OVA)特異的な遅発型反応を誘導し、0,3,6,12,24時間後に生検した。12時間をピークとする好酸球浸潤がみられ、eotaxinのreverse transcription polymerase chain reaction (RT-PCR)では3時間後をピークとする早期の発現を認めた。同時に好酸球遊走能をもつ他のケモカインについても検討したが、regulated upon activation in normal T-cellsexpressed and secreted (RANTES)は1224時間がピークの遅い発現で抗原特異的ではなかった。macrophage inflammatory protein-1α(MIP-1α)はeotaxin同様、早期の発現がみられた。次にPCR productより、プローブを作成し、non-RIのin situ hybridizationをeotaxinについて行った。eotaxinのメッセージを認めたのは、表皮のケラチノサイト、真皮の線維芽細胞、真皮に浸潤する単核球(おそらくマクロファージやTリンパ球)であり、以上の細胞が皮膚におけるeotaxinの産生細胞と考えられた。その誘導因子を明らかにするために、同マウスの線維芽細胞を培養し、IL-4を添加し、eotaxinのmRNAの発現をみた所、1ng/mlの濃度より発現が認められた。IL-4は皮膚でのeotaxinの誘導因子の一つであると考えられた。皮膚のアレルギー反応部位における好酸球浸潤のメカニズムを明らかにするために、マウスの皮膚遅発型反応におけるeotaxinの発現、その産生細胞、誘導因子について研究を行った。Balb/cマウスにオボアルブミン(OVA)特異的な遅発型反応を誘導し、0,3,6,12,24時間後に生検した。12時間をピークとする好酸球浸潤がみられ、eotaxinのreverse transcription polymerase chain reaction (RT-PCR)では3時間後をピークとする早期の発現を認めた。同時に好酸球遊走能をもつ他のケモカインについても検討したが、regulated upon activation in normal T-cellsexpressed and secreted (RANTES)は1224時間がピークの遅い発現で抗原特異的ではなかった。macrophage inflammatory protein-1α(MIP-1α)はeotaxin同様、早期の発現がみられた。次にPCR productより、プローブを作成し、non-RIのin situ hybridizationをeotaxinについて行った。eotaxinのメッセージを認めたのは、表皮のケラチノサイト、真皮の線維芽細胞、真皮に浸潤する単核球(おそらくマクロファージやTリンパ球)であり、以上の細胞が皮膚におけるeotaxinの産生細胞と考えられた。その誘導因子を明らかにするために、同マウスの線維芽細胞を培養し、IL-4を添加し、eotaxinのmRNAの発現をみた所、1ng/mlの濃度より発現が認められた。IL-4は皮膚でのeotaxinの誘導因子の一つであると考えられた。現在までに多数の好酸球遊走因子が報告されているが、皮膚のアレルギー反応部位における好酸球浸潤のメカニズムは明らかにされていない。今年度はマウスの皮膚の遅発型反応における好酸球浸潤に好酸球に特異的で強力な遊走因子であるeotaxinの発現、その産生細胞について研究を行った。Balb/cマウスにオボアルブミン(OVA)をアラムとともに2週おきに2回腹腔感作し、最後の免疫の2週後にOVA、コントロールとしてphosphate buffered saline(PBS)を皮内チャレンジした。アラムのみで免役した群にも同様にチャレンジした。皮内チャレンジ後、0,3,6,12,24時間後に生検し、組織中の好酸球浸潤数のカウントとRNA抽出を行った。chromotrope 2Rによる染色では12時間をピークとするOVA抗原特異的な好酸球浸潤がみられた。抽出したRNAでeotaxinのreverse transcription polymerase chain reaction(RT-PCR)を行った所、3時間後をピークとする早期の抗原特異的な発現を認めた。同時に好酸球遊走能をもつ他のケモカインについても検討したが、regulated upon activation in normal T-cellsexpressed and secreted(RAHTES)は1224時間がピークの遅い発現で抗原特異的ではなかった。macrophage inflammatory protein-1α(MIP-1α)はeotaxin同様、早期の抗原特異的発現がみられた。次にPCR productより、プローブを作成し、non-RIのin situ hybridizationをeotaxinについて行った。eotaxinのメッセージを認めたのは、表皮のケラチノサイト、真皮の線維芽細胞、真皮に浸潤する単核球(おそらくマクロファージやTリンパ球)であり、以上の細胞が皮膚におけるeotaxinの産生細胞と考えられた。皮膚のアレルギー反応部位における好酸球浸潤のメカニズムを明らかにするために、マウスの皮膚遅発型反応におけるeotaxinの発現、その産生細胞、誘導因子について研究を行った。Balb/cマウスにオボアルブミン(OVA)特異的な遅発型反応を誘導し、0,3,6,12,24時間後に生検した。12時間をピークとする好酸球
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KAKENHI-PROJECT-12670826
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12670826
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皮膚アレルギー反応部位におけるeotaxinの産生細胞と発現誘導因子の解明
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浸潤がみられ、eotaxinのreverse transcription polymerase chain reaction(RT-PCR)では3時間後をピークとする早期の発現を認めた。同時に好酸球遊走能をもつ他のケモカインについても検討したが、regulated upon activation in normal T-cellsexpressed and secreted(RANTES)は1224時間がピークの遅い発現で抗原特異的ではなかった。macrophage inflammatory protein-1α(MIP-1α)はeotaxin同様、早期の発現がみられた。次にPCR productより、プローブを作成し、non-RIのin situhybridizationをeotaxinについて行った。eotaxinのメッセージを認めたのは、表皮のケラチノサイト、真皮の線維芽細胞、真皮に浸潤する単核球(おそらくマクロファージやTリンパ球)であり、以上の細胞が皮膚におけるeotaxinの産生細胞と考えられた。その誘導因子を明らかにするために、同マウスの線維芽細胞を培養し、IL-4を添加し、eotaxinのmRNAの発現をみた所、1ng/mlの濃度より発現が認められた。IL-4は皮膚でのeotaxinの誘導因子の一つであると考えられた。
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KAKENHI-PROJECT-12670826
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12670826
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明治三〇年代の文学と島崎藤村の小説「破戒」-その主題としての部落問題をめぐって-
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一八七一(明治四)年に近世以来の「賤民制」が廃止され、賤民は法と制度からは解放されたが、その旧賤民を<賤視差別>するイデオロギーとその習俗的遺制は、国の政策や社会的諸関係のなかで温存され、明治二〇年代における地方自治制が成立する過程で、社会構造に位置づけられ、近代における部落問題が成立した。そして資本主義の確立する日清戦争後、部落問題は社会問題として顕在化し、近代における部落問題は明治三〇年代において、初めて本格的に文学の素材としてとりあげられることになった。すなわち明治三〇年代の文学状況のなかで、模索された様々な文学的可能性がその主題の一つとして部落問題をとりあげたのである。悲惨小説における部落問題は、部落民が社会的に顕在化する中で、殊更に<おぞましい異類>としてその異常さを強調するものであったが、一部の批評家によって先導され文壇に登場したのである。そして悲惨小説の背徳性の反措定として登場した家庭小説は、日常生活の中に初めて部落民を登場させ、それが一定のパターン化しながら、破滅しない部落民を描くことになった。またキリスト教の部落伝道を描いた作品も散見されるが、総じて明治三〇年代において文学の主題としてとりあげられた状況が、やがて島崎藤村の「破戒」に結実することになった。「破戒」における部落民は、<血の穢れ>という負性において捉えている同様の限界はあるが、それまでの眺められる部落民ではなく、部落民自らがその素性に煩悶する個性として、藤村自身の文学的渇望が創造したものである。このように藤村自身の感性を通わせた文学的営為によって、明治三〇年代の部落民をとりあげた数多くの小説を越えた「破戒」一篇の価値が生み出されたものである。しかし内面的な煩悶が、その告白によって未熟な社会的形象をしか結ぶことができなかったことに、部落問題をとりあげた「破戒」の時代的な制約が存するのである。一八七一(明治四)年に近世以来の「賤民制」が廃止され、賤民は法と制度からは解放されたが、その旧賤民を<賤視差別>するイデオロギーとその習俗的遺制は、国の政策や社会的諸関係のなかで温存され、明治二〇年代における地方自治制が成立する過程で、社会構造に位置づけられ、近代における部落問題が成立した。そして資本主義の確立する日清戦争後、部落問題は社会問題として顕在化し、近代における部落問題は明治三〇年代において、初めて本格的に文学の素材としてとりあげられることになった。すなわち明治三〇年代の文学状況のなかで、模索された様々な文学的可能性がその主題の一つとして部落問題をとりあげたのである。悲惨小説における部落問題は、部落民が社会的に顕在化する中で、殊更に<おぞましい異類>としてその異常さを強調するものであったが、一部の批評家によって先導され文壇に登場したのである。そして悲惨小説の背徳性の反措定として登場した家庭小説は、日常生活の中に初めて部落民を登場させ、それが一定のパターン化しながら、破滅しない部落民を描くことになった。またキリスト教の部落伝道を描いた作品も散見されるが、総じて明治三〇年代において文学の主題としてとりあげられた状況が、やがて島崎藤村の「破戒」に結実することになった。「破戒」における部落民は、<血の穢れ>という負性において捉えている同様の限界はあるが、それまでの眺められる部落民ではなく、部落民自らがその素性に煩悶する個性として、藤村自身の文学的渇望が創造したものである。このように藤村自身の感性を通わせた文学的営為によって、明治三〇年代の部落民をとりあげた数多くの小説を越えた「破戒」一篇の価値が生み出されたものである。しかし内面的な煩悶が、その告白によって未熟な社会的形象をしか結ぶことができなかったことに、部落問題をとりあげた「破戒」の時代的な制約が存するのである。
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KAKENHI-PROJECT-06610418
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06610418
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新規大腸癌転移マウスモデル実験系の構築と臓器特異的転移関連バイオマーカーの同定
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大腸癌関連遺伝子の複合的変異をもつマウスモデルを作製し以下の成果をえた。(1)腫瘍の発生に関する条件設定ができた。(2)細径内視鏡による腫瘍の観察が可能であった。(3)特定の薬剤が腫瘍の増大スピードに与える影響を解析可能であった。(4)変異型KRASを持つマウスの作製をおこない、KRASによる遺伝子発現の変化を網羅的に解析した。以上の成果から、大腸癌の個別化医療に有用なマウスモデルの確立ができた。大腸癌関連遺伝子の複合的変異をもつマウスモデルを作製し以下の成果をえた。(1)腫瘍の発生に関する条件設定ができた。(2)細径内視鏡による腫瘍の観察が可能であった。(3)特定の薬剤が腫瘍の増大スピードに与える影響を解析可能であった。(4)変異型KRASを持つマウスの作製をおこない、KRASによる遺伝子発現の変化を網羅的に解析した。以上の成果から、大腸癌の個別化医療に有用なマウスモデルの確立ができた。本研究の基本モデルであるCPC ; Apcマウス(Apcヘテロノックアウト)とCDX2P-G22-Cre ; Apcマウスの飼育、観察を行ったところ、これらのマウスで腫瘍の発生がpublicationされたデータと異なることが判明した。このため、腸内細菌のコントロールを飲料水内の塩素濃度の調節を行い、飼育条件の設定を行った。これによりこの設定条件でCPC ; Apc+Krasマウス(Apcはヘテロでノックアウト)の作製を試みたが、Krasは胎生期の発達においてCDX2Pの転写活性をもつ領域でノックインを受けると胎生死を起こすことが判明した。このため、発現誘導型のCDX2P-G22-Cre ; Apc+Kras(Apcはホモでノックアウト)を作製した。このマウスでは腫瘍が発生することが観察された。病理所見として、分化度の低い、より悪性度の高い腫瘍が発生することが判明した。現在、CDX2P-G22-Cre ; Apc+Krasの発生頻度を高める組み合わせでの親マウスを作製済で、今後は、これらの親マウスから効率よくマウスを作製することが可能となった。現在、飼育の条件設定と、発現誘導型モデルによるダブルノックアウトが可能であることが、ApcとKrasのWnt5a,TGFb,p53マウスとの交配を進めていおり、23年度中には、Apc+Kras、Apc+p53,Apc+TGFb,Apc+Wnt5aマウスの作製が可能となり、腫瘍の回収とそれらの解析(トランスクリプトーム、プロテオーム、miRNA解析)などを開始するとともに、転移巣についての解析を進める。腸上皮細胞特異的ホメオボックズ転写因子CDX2の消化管癌における発現機構解析の過程で、CDX2のプロモーター領域に腸上皮特異的転写活性領域を同定し、それを利用したコンディショナルノックアウトマウスを作製して、2種類の新規大腸癌マウスモデルの作製に取り組んできた。大腸上皮特異的転写活性配列であるCDX2P9.5kbを利用して大腸上皮特異的Apcコンディショナルノックアウトマウス(CPC;Apc^<+/loxP>、ヘテロ)と、マイクロサテライト不安定性を利用した新規の発現誘導型Apcコンディショナルノックアウトマウス(CDX2P-G22-Cre;Apc^<loxP/loxP>、ホモ)を作製して、発生した腫瘍性病変の形態および遺伝子変異の解析を行った。CPC;Apc^<+/loxP>マウスでは、ApcのLOHにより遠位大腸に5-8個大腸癌が発生し、ヒト左側大腸癌のモデルとして有用と思われた。300日齢のマウス36匹中6匹(17%)で、粘膜下浸潤癌を認めた。広範囲でのDNAメチル化と異数性(aneuploidy)が認められた。またCDX2P-G22-Cre;Apc^<loxP/loxP>マウスでは、マイクロサテライト不安定性に依存して近位大腸に発生した腫瘍が粘膜下に浸潤し、ヒト右側結腸癌のモデルとして有用と思われた。ほぼ全例が30日齢までに腫瘍死した。大腸上皮細胞特異的プロモーターを利用してadenoma-carcinoma sequence型の左側結腸癌モデルとマイクロサテライト不安定性に依存してde novoに発生する右側結腸癌モデルが確立された。これらのモデルにApc+K-Ras変異型のダブルノックアウトモデルを作製し、腫瘍の構築、網羅的遺伝子解析を行っている。これらのモデルは発癌機構の解明のみならず、癌幹細胞、および微小環境や免疫応答についての幅広い研究に有用であることが示唆された。私共が作製した大腸上皮特異的Apcコンディショナル・ノックアウトマウスを応用して、大腸癌関連遺伝子に複合的変異をもつマウスを作製し、発癌から浸潤・転移までの過程を生理的条件で再現したマウスモデル実験系を構築し以下の成果を得た。(1)Apc欠損マウスにおいて、腫瘍の発生に関する条件設定、細径内視鏡による腫瘍のリアルタイムでの観察などをおこなった。この成果により、Apc欠損マウスにおける薬剤投与が腫瘍の増大スピードに与える影響を解析することが可能となった。また腫瘍増大促進因子の投与により、腫瘍の増大促進小効果が確認できた。いずれの実験においても、統計学的に有意な差をもって再現性のあるデータを得る事に成功し、これらのマウスをつかった薬剤や有害物質のスクリーニングを可能とするモデルが確立された。(2)Apc欠損+既知の大腸癌
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KAKENHI-PROJECT-22390257
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22390257
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新規大腸癌転移マウスモデル実験系の構築と臓器特異的転移関連バイオマーカーの同定
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関連遺伝子(変異型KRAS,変異型TGFb2型受容体、PTEN欠損など)の変異を加えたマウスの確立に成功した。変異型KRAS以外は、現在も腫瘍組織の回収を行っている途中であり、今後のプロジェクトとして継続する。(3)Apc欠損+KRAS変異型マウスで発生した腫瘍とApc欠損マウスの腫瘍の遺伝子発現プロファイルを網羅的に解析して、変異型KRASによる標的遺伝子の同定をおこなった。これらのうち、既に大腸癌細胞株をつかった実験で同定された遺伝子について、マウスモデルでも変異型KRASの標的遺伝子であることが確認された。またヒトの臨床検体でもその現象が確認された。(4)Apc欠損+KRAS変異型マウスにおいて、浸潤性の高いphenotypeをもつ腫瘍発生モデルの作製に成功した。現在、腫瘍検体を回収しており、従来の浸潤性が低いphenotypeをもつ腫瘍との網羅的遺伝子解析が現在継続中のプロジェクトである。CPC;Apcマウス、CDX2P-G22-Cre;Apc^<loxP/loxP>、の作製を行い、再現性を確認した。現在、K-Ras変異型+Apcのダブルノックアウトマウスの作製中である。他のダブルノックアウトマウスも順調に確立されてきている。24年度が最終年度であるため、記入しない。K-Ras変異型+Apcのダブルノックアウトマウスの作製中であるが、同時に他のダブルノックアウトマウスも順調に確立されてきており、これらから新しいphenotypeが観察されたり、それらの標的遺伝子を網羅的遺伝子解析によって同定できる可能性がある。24年度が最終年度であるため、記入しない。
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KAKENHI-PROJECT-22390257
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22390257
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がん浸潤におけるβカテニン-増殖因子受容体間結合とそのシグナル伝達機構の解明
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がん浸潤におけるβカテニン-増殖因子受容体間結合とシグナル伝達機構を明らかにする目的で、βカテニンにおける増殖因子受容体との物理的結合部位を明らかにすると同時に、実際のがん組織を用いて、βカテニンを介した増殖因子受容体かたのシグナル伝達機構の臨床的意義を検討した。本研究において以下のことが明らかになった。1.ヒトがん細胞を用いた検討により増殖因子刺激によりβカテニンがチロシンリン酸化されることが示された。また、ヒトがん細胞においても、細胞間の解離した低分化がんならびに浸潤先進部でβカテニンが強くチロシンリン酸化されていることが示された。2.βカテニンの増殖因子受容体との結合部位を同定を試み、βカテニンの中央に存在するアルマジロ反復配列の12番目の反復配列と結合することが明らかとなった。同部位は上皮増殖因子による刺激でリン酸化されることにより、増殖因子受容体からのβカテニンへのシグナル伝達機構が存在することが明らかになった。3.βカテニンの増殖因子受容体との結合部位のチロシンリン酸化ペプチドを用いて、βカテニンチロシンリン酸化抗体を作製した。本チロシンリン酸化抗体を用いた検討により、増殖因子受容体からのシグナル伝達機構はβカテニンをチロシンリン酸化し、βカテニンとαカテニンとの結合を解離させることによりカドヘリン細胞接着機構の阻害を来していることが示された。4.実際のヒトがん組織を免疫組織化学的に検討すると、ヒト大腸がんの浸潤先進部においてがん細胞ががん腺管から解離し浸潤する部位で強くβカテニンのチロシンリン酸化が認められていることが示され、実際のがん浸潤に増殖因子受容体-βカテニンシグナル伝達機構が重要な役割を果たしていることが示された。がん浸潤におけるβカテニン-増殖因子受容体間結合とシグナル伝達機構を明らかにする目的で、βカテニンにおける増殖因子受容体との物理的結合部位を明らかにすると同時に、実際のがん組織を用いて、βカテニンを介した増殖因子受容体かたのシグナル伝達機構の臨床的意義を検討した。本研究において以下のことが明らかになった。1.ヒトがん細胞を用いた検討により増殖因子刺激によりβカテニンがチロシンリン酸化されることが示された。また、ヒトがん細胞においても、細胞間の解離した低分化がんならびに浸潤先進部でβカテニンが強くチロシンリン酸化されていることが示された。2.βカテニンの増殖因子受容体との結合部位を同定を試み、βカテニンの中央に存在するアルマジロ反復配列の12番目の反復配列と結合することが明らかとなった。同部位は上皮増殖因子による刺激でリン酸化されることにより、増殖因子受容体からのβカテニンへのシグナル伝達機構が存在することが明らかになった。3.βカテニンの増殖因子受容体との結合部位のチロシンリン酸化ペプチドを用いて、βカテニンチロシンリン酸化抗体を作製した。本チロシンリン酸化抗体を用いた検討により、増殖因子受容体からのシグナル伝達機構はβカテニンをチロシンリン酸化し、βカテニンとαカテニンとの結合を解離させることによりカドヘリン細胞接着機構の阻害を来していることが示された。4.実際のヒトがん組織を免疫組織化学的に検討すると、ヒト大腸がんの浸潤先進部においてがん細胞ががん腺管から解離し浸潤する部位で強くβカテニンのチロシンリン酸化が認められていることが示され、実際のがん浸潤に増殖因子受容体-βカテニンシグナル伝達機構が重要な役割を果たしていることが示された。がん浸潤におけるβカテニン-増殖因子受容体間結合とそのシグナル伝達機構を明らかにする目的で、βカテニンにおける増殖因子受容体との物理的な結合部位を明らかにすると同時に、実際のヒトがん組織を用いて、βカテニンを介した増殖因子受容体からのシグナル伝達がどのような意義を持っているかを検討した。1.βカテニンと増殖因子受容体との結合部位を明らかにする目的で、種々の大きさのβカテニンのdeletion mutantを作製し、c-erbB-2ならびにEGF受容体との結合部位を検索したところ、少なくともβカテニンの中央に存在するアルマジロ反復配列12個のうちc端側12番目のアルマジロ配列(42アミノ酸)により結合していることが明らかとなった。同部位でβカテニンはc-erbB-2/EGF受容体と結合し、増殖因子であるTGFαの刺激によりリン酸化を受ける。また、このリン酸化により増殖因子受容体とβカテニンの結合が強固になることを明らかにした。この12番目のアルマジロ反復配列をがん細胞内に強制発現させると、がん細胞においてc-erbB-2/EGF受容体とβカテニンの結合は阻害されるとともに、がん細胞の細胞間接着は強固となり、上皮様形態を示した。実際のヒト胃がん組織におけるカドヘリン・カテニン細胞接着分子の局在とチロシンリン酸化並びに種々の増殖因子受容体の発現を検索し、細胞間接着の乏しい低分化胃がんにおいてカドヘリン・カテニン分子の細胞質内への分布異常と細胞内チロシンリン酸化およびk-sam遺伝子産物の発現が強く相関することを初めて示した。また、一部症例では、がん組織よりβカテニンタンパクを抽出し、これらの症例でβカテニンが実際にリン酸化されていることを示し、βカテニンのリン酸化ががん浸潤に関わっていることを明らかにした。
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KAKENHI-PROJECT-09470056
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09470056
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がん浸潤におけるβカテニン-増殖因子受容体間結合とそのシグナル伝達機構の解明
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がん浸潤におけるβカテニン-増殖因子受容体間の結合とそのシグナル伝達機構を明らかにする目的で、βカテニンの増殖因子受容体との結合部位を明らかにしてきたが、今年度はβカテニンのc-erbB-2との結合部位が増殖因子刺激によりシグナル伝達されチロシンリン酸化を受けることを明らかにするため、βカテニン結合部位のチロシン残基に対するモノクローナル抗体を作製し、細胞接着機能に結合部位のチロシンリン酸化がいかに関わるかを明らかにするとともに、実際のがん組織においてもβカテニンの増殖因子受容体結合部位のチロシンリン酸化が起こっているかを検討した。1. βカテニンの12番目のアルマジロ反復配列のチロシン残基をリン酸化させたペプチドを抗原としてモノクローナル抗体の作製を試み、チロシンリン酸化βカテニンに反応するが非リン酸化βカテニンには反応しない抗体(4G7)を作製した。4G7抗体は増殖因子でリン酸化されたがん細胞のβカテニンならびにγカテニンに結合することを確認した。同抗体を用いた検討では、増殖因子の刺激によりβカテニンの結合部位はチロシンリン酸化され、増殖因子受容体c-erbB-2と離れる。一方、カドヘリン-βカテニン間の結合は保たれるが、βカテニン-αカテニン間の結合が解離することが明らかとなった。2.実際のヒトがん組織を用いて4G7抗体の反応性を検討したところ、がん細胞ががん包巣から解離する部位で本抗体が陽性となり、実際のヒトがん組織でも増殖因子受容体からの刺激によりがん細胞間の解離が起こっていることが示された。がん浸潤におけるβカテニン-増殖因子受容体間の結合とシグナル伝達機構を明らかにする目的で、βカテニンにおける増殖因子受容体との物理的結合部位を明らかにすると同時に、実際の人がん組織を用いて、βカチニンを介した増殖因子受容体からのシグナル伝達機構の臨床的意義を検討した。今年度はβカテニンと増殖因子受容体との結合部位のチロシンリン酸化抗体を作製し増殖因子受容体からのシグナル伝達機構が存在することをヒトがん培養細胞ならびに実際の手術材料を用いた検討により明らかにした。1.ヒト胃がん培養細胞を用いた検討により、増殖因子の刺激により増殖因子受容体は活性化され、増殖因子受容体からのシグナル伝達機構によりE-カドヘリンの細胞内結合分子であるβカテニンがチロシンリン酸化されるとともに、E-カドヘリンとβカテニンの結合は強固のままだが、βカテニンとαカテニンとの間の結合が乖離することを明らかにした。また、増殖因子受容体との結合はβカテニンのリン酸化によりカドヘリン-カテニン複合物からは離れることが初めて明らかになった。2.実際のヒトがん組織を用いて増殖因子受容体からのシグナル伝達が起こっているかを、βカテニンチロシンリン酸化抗体を用いて免疫組織化学的に染色し検討したところ、細胞間接着能が明瞭な腺管形成部位にはβカテニンリン酸化は乏しいが、がんの浸潤先進部においてがん細胞ががん腺管から分離し浸潤する部位において強く陽性像が認められた。大腸がん症例をチロシンリン酸化抗体、βカテニンチロシンリン酸化抗体ならびに上皮増殖因子受容体と活性化上皮増殖因子受容体抗体を用いて検索したところβカテニンのチロシンリン酸化された症例には、がん細胞のチロシンリン酸化の亢進が認められ、上皮増殖因子受容体の発現増加と活性化が認められた。
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KAKENHI-PROJECT-09470056
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09470056
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近隣民主主義法施行後のフランス都市(アミアン市)における「住区評議会」の実態調査
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本研究において明らかにされたことは,まず2002年の「近隣民主主義法(近隣民主主義に関する2002年2月27日の法律第2002-276号)」が,一方では人口8万人以上のコミューンに対して「住区評議会」の設置(市内を複数の住区に区画し,地元住民による評議会を置く)を義務づけながらも,他方でその制度設計については,国家法レベルで規律せず,各コミューン議会に一任した結果,新設「住区評議会制」の実践状況は設置を義務づけられたコミューンの数だけパターン化されるという点である。従って,この新設「住区評議会制」の実践状況に関する研究は,自ずと各都市コミューンを対象とした個別的な現地実態調査が必要とされるのであり,本研究においては,アミアン市(フランス北部の人口14万人都市)を現地調査のフィールドに設定した。同法に対するアミアン市の対応は,すでに10年が経過した住区委員会システムを存置・継続した点に特徴がある。平成19年度における研究のうち,重要な位置を占めているのが8月31日から9月24日までの国外研究(パリでの資料収集の後,9月11日以降,アミアン市で実態調査実施)である。同市では,住区委員会の日常的な活動について見学させていただくとともに,一方では市役所地域民主主義担当職員B.ピエール氏と,他方では住区委員会連合のN.ラヴァラール会長ほか幹部の方々と面会して,アミアン市における近隣民主主義の現状について,双方の見解を聴取することができた。その結果,普通選挙に基づく政治的正統性の点で,市当局と住区委員会との間には厳然たる格差が存在し,近年市当局は,住区委員会の頭越しに住民と直接対話する路線を打ち出しつつあることが明らかになった。報告者は,彼らアクターが市当局の圧倒的主導性を当然視する限り,「住民合議」の理念も実体を伴わないものとならざるを得ないとの結論を導き出した。ミッテラン左翼政権下で1982年に開始された地方分権改革は、1992年の住民参加改革を経て2002年の近隣民主主義法へ到達し、2004年以降、反対に保守政権の下で「第2次地方分権改革」が開始されている。本研究において注目したのは、左翼政権下で推進された地方分権改革のなかに、彼らの「ジャコバン主義者」としてのイメージとは違和感のある市民参加論的要素が含まれている点であり、この点を整理するためまずモーロワ元首相が2000年に提出した報告書『地域公共政策の再建』について検討し、さらにこれを法文化した2002年法が、地域住民と自治体との「近隣民主主義」強化の観点から、人口8万人以上のコミューン(市町村)に「住区評議会」の設置を義務づけている点を明らかにした。しかし、地域住民組織による自発的活動が成果を収め、「近隣民主主義」を既に実現している幾つかの都市にとっては、同法は「余計な法制度化」であったかもしれない。2006年9月にアミアン市で実施した予備的調査では、同市役所の職員や地域住民組織であるアミアン市住区委員会連合会長と面会し、同法をどのように受け止め、どのように対応したのかについてインタビューを行った。その結果明らかになったことは、同市議会が、2002法が住区評議会制の導入を義務づけながらも、実施形態については市議会の決定に任せている点に依拠し、従来の住民合議システムを続行することによって同法の要請に応えるとした点である。このことから分かることは、地方自治の強化を目指す地方分権改革が、全国一律の法制度改革として実施される限りにおいて、本来自発的活動に支えられるべき住民自治に対し意図せざる抑制要因となる可能性があるという点であり、近隣民主主義強化という課題は、結局各自治体の状況に大きく依存せざるをえないということである。次年度へ向けては、今回解明された制度枠組みにおいて、アミアン市の諸アクターがどのような活動を展開しているかについて本格的な実態調査を実施(本年9月)するとともに、これらをまとめ本年10月に開催される日本政治学会で報告する予定である。本研究において明らかにされたことは,まず2002年の「近隣民主主義法(近隣民主主義に関する2002年2月27日の法律第2002-276号)」が,一方では人口8万人以上のコミューンに対して「住区評議会」の設置(市内を複数の住区に区画し,地元住民による評議会を置く)を義務づけながらも,他方でその制度設計については,国家法レベルで規律せず,各コミューン議会に一任した結果,新設「住区評議会制」の実践状況は設置を義務づけられたコミューンの数だけパターン化されるという点である。従って,この新設「住区評議会制」の実践状況に関する研究は,自ずと各都市コミューンを対象とした個別的な現地実態調査が必要とされるのであり,本研究においては,アミアン市(フランス北部の人口14万人都市)を現地調査のフィールドに設定した。同法に対するアミアン市の対応は,すでに10年が経過した住区委員会システムを存置・継続した点に特徴がある。平成19年度における研究のうち,重要な位置を占めているのが8月31日から9月24日までの国外研究(パリでの資料収集の後,9月11日以降,アミアン市で実態調査実施)である。同市では,住区委員会の日常的な活動について見学させていただくとともに,一方では市役所地域民主主義担当職員B.ピエール氏と,他方では住区委員会連合のN.ラヴァラール会長ほか幹部の方々と面会して,アミアン市における近隣民主主義の現状について,双方の見解を聴取することができた。
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KAKENHI-PROJECT-18730099
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18730099
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近隣民主主義法施行後のフランス都市(アミアン市)における「住区評議会」の実態調査
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その結果,普通選挙に基づく政治的正統性の点で,市当局と住区委員会との間には厳然たる格差が存在し,近年市当局は,住区委員会の頭越しに住民と直接対話する路線を打ち出しつつあることが明らかになった。報告者は,彼らアクターが市当局の圧倒的主導性を当然視する限り,「住民合議」の理念も実体を伴わないものとならざるを得ないとの結論を導き出した。
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KAKENHI-PROJECT-18730099
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18730099
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小笠原諸島の先住移民の生活世界に関する社会学的研究:20世紀を中心に
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本研究では、19世紀に世界各地から小笠原諸島に移住し近代日本国家=帝国が同諸島を占領する過程で帰化させられた人びと(以下、その子孫を含め先住移民と表記)が、国家=帝国がもたらす諸力と交渉しながらどのように生きぬいてきたのかを、歴史社会学的な手法により検討した。対象時期としては主に20世紀を扱い、具体的には、(1)20世紀前半に先住移民が培ってきた自律的な経済的・社会的・文化的諸実践の領域が切り縮められていくプロセス、(2)アジア太平洋戦争末期に「内地」への強制疎開の対象となった先住移民の諸経験、(3)戦後米軍占領下の父島に帰島を認められた先住移民をめぐる諸状況、について明らかにした。本研究では、19世紀に世界各地から小笠原諸島に移住し近代日本国家=帝国が同諸島を占領する過程で帰化させられた人びと(以下、その子孫を含め先住移民と表記)が、国家=帝国がもたらす諸力と交渉しながらどのように生きぬいてきたのかを、歴史社会学的な手法により検討した。対象時期としては主に20世紀を扱い、具体的には、(1)20世紀前半に先住移民が培ってきた自律的な経済的・社会的・文化的諸実践の領域が切り縮められていくプロセス、(2)アジア太平洋戦争末期に「内地」への強制疎開の対象となった先住移民の諸経験、(3)戦後米軍占領下の父島に帰島を認められた先住移民をめぐる諸状況、について明らかにした。小笠原諸島には、1830年以降、欧米諸地域や太平洋・インド洋・大西洋の島々から、入植者、寄港船からの脱走者、漂流者、略奪者など、雑多な人びと(以下、子孫を含め先住移民と表記)が上陸・移住してきて、同諸島を結節点とする自律的な生活世界を形成っていた。だがこの島々は、日本帝国が形成される過程で、「小笠原島回収」の名の下に占領され始める。そして、それまでに世界各地から移住してきていた先住移民は、日本帝国の出先機関の説諭と命令によって、1882年までに全員が臣民に編入され、「帰化人」と呼ばれるようになった。かれらは、次第に「異人」などと名指され差別の対象となっていく一方、臣民の一員として日本帝国の戦争に動員されていく。平成18年度は、1944年に「内地」への強制疎開を経験した先住移民が、日本帝国の敗戦前後や戦後をどのように生き延びたのかについて、インタヴュー調査を行った。とりわけ今回は、1946年にGHQによって先住移民のみが帰島を許された際、帰島を選択しなかった人びと(の子孫)を各地で探索し、そのうち数名の方から話を聴くことができた(但し、内容の公表については現在も交渉中である)。また、各公共図書館や国内外の各大学が所蔵している、公文書・日米軍関係文書・日誌・手記等から、当該期の先住移民の生活世界をうかがうことができる資料を、探索・収集し、分析を進めた。並行して、19世紀から20世紀初頭の小笠原諸島を中心とする博士論文(既提出)の考察に、20世紀半ばを対象とする本研究課題初年度(平成18年度)の成果を加えた考察を進め、小笠原諸島の"近代"経験に関する単著の執筆を進めてきた。これは、『近代日本と小笠原-移動民の島々と帝国』と題して、平成19年夏までに平凡社から刊行予定である。小笠原諸島には、1830年以降、欧米諸地域や太平洋・インド洋・大西洋の島々から、入植者、寄港船からの脱走者、漂流者、略奪者など、雑多な人びと(以下、子孫を含め先住移民と表記)が上陸・移住してきて、同諸島を結節点とする自律的な生活世界を形作っていた。だがこの島々は、日本帝国が形成される過程で、「小笠原島回収」の名の下に占領され始める。それまでに世界各地から移住してきていた先住移民は、日本帝国の出先機関の説諭と命令によって、1882年までに全員が臣民に編入され、「帰化人」と呼ばれるようになった。かれらは、次第に「異人」などと名指され差別の対象となっていく一方、臣民の一員として日本帝国の戦争に動員されていく。本年度は小笠原諸島現地で行った資料収集とインタヴュー調査、また各地で収集した文献資料の検討に基づいて、20世紀前半の小笠原諸島に関する考察を重点的に行った。第一に、日本帝国による国境や法の再編・再設定のために、先住移民がいとなんできた自律的な経済活動が切り縮められていく中で、かれらが従来の労働技術を組み替えながらしたたかに生計を立てていくプロセスを検討した。第二に、父島が日本帝国の軍事要塞=秘密基地となり小笠原諸島における法や社会秩序の再編が進み、先住移民の生活習慣や言語(英語)使用の領域が監視・禁圧の標的となっていく中で、かれらが生活世界を巧みに再編しながらマイノリティとして生き抜いていくプロセスを分析した。また本年度は、19世紀から20世紀初頭の小笠原諸島を中心とする歴史社会学的研究をまとめた博士論文(既提出)の考察に、20世紀を対象とする本研究課題の成果を加えた、著書(単著)をまとめあげ、『近代日本と小笠原諸島-移動民の島々と帝国』と題して平凡社から公刊した。1944年、小笠原諸島を米軍との地上戦に利用しようとした日本軍は、大多数の住民を「内地」に強制的に疎開させた。
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KAKENHI-PROJECT-18730316
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18730316
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小笠原諸島の先住移民の生活世界に関する社会学的研究:20世紀を中心に
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1945年に小笠原諸島を占領した米軍は翌年、日本帝国のもとで「帰化人」として掌握されていた先住移民とその親族約130名のみに帰島を許可し、父島の秘密基地化を進めていった。本年度は再度小笠原諸島におもむき、(1) 19451968年の米軍占領下の父島に帰還を許された先住移民の労働・生活状況や意識過程、(2) 1968年に実施された小笠原諸島の米国から日本への「施政権返還」に対する先住移民の意識や行動、(3)「施政権返還」後も米国移住等を選択せず父島に住み続けた先住移民の労働・生活状況や意識過程に関して、重点的なインタヴュー調査を実施した。前年度までに十分データが得られなかったトピックについても、補充調査を実施した。また関係各機関において前年度までに未収集・未読であった関連文献資料の入手に努め、読解・分析を進めた。これらの調査研究の結果、小笠原諸島の先住移民が、戦時期から戦後にかけてのアジア太平洋の構造的再編に伴う矛盾の前線に置かれ、重ね書かれる主権的な力に翻弄されながら、国家・帝国の法に服属したりこれとわたりあったりしつつ、したたかに生き抜いてきた試行錯誤のプロセスを、歴史具体的に明らかにできたと考えている。なお本年度に本研究課題が受けた学術的評価として特筆されるのは、本研究課題の成果を含む著書『近代日本と小笠原諸島--移動民の島々と帝国』(平凡社、2007年)が第7回日本社会学会奨励賞(著書の部)を受賞したことである。
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KAKENHI-PROJECT-18730316
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ヒルベルト空間・クレイン空間の作用素の数域の境界についての研究とその応用
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有限次元のヒルベルト空間の線形作用素の数域の境界につき、特にシフト作用素の場合につき、代数曲線論的に特異点を用いてその性質を明らかにすることができた。また、クレイン空間の作用素の数域に関しては、関連する行列要素の積がなす領域に関して前進があった。核磁気共鳴装置や分光学への応用の基礎の部分に貢献するものと考える。成果は、15編の学術論文と1冊の著書の形でまとめて発表した。また、外国での研究集会1回を含む7回の学会発表でも成果を公開した。ヒルベルト空間とクライン空間の線形作用素を数域という特性量を用いて解析し、量子計算における誤り訂正や核磁気共鳴装置の制御など関連する応用への基礎づくりを行うという目標に沿って研究を進め、成果を2012年7月9日より12日まで、台湾の高雄市の国立中山大学で開催された国際研究集会11th WONRAで、発表したほか、国内では、2012年12月東京で開催の研究集会で発表した。目標達成に向けて、力学系と結びついた作用素の数域や高次元数域を決定することができた。高次元数域の境界の方程式を具体的に求めることができたので、これを用いて量子計算における誤り訂正への応用が具体化されるものと期待できる。成果は論文としては、線形解析の分野の著名な専門誌Linear Algebra and Its Applications誌に、2012年から、2013年第一4半期に3編、数学解析の著名誌Journal of Mathematical Analysis and Applicationsに1編、線形代数学の専門誌Electronic Journal of Linear Algebraに1編、発表した。目標としていた高次元数域の解析のほか、同時数域の解明に関しても、発展的な形で研究の前進があった。共同研究を行っている台湾の東呉大学(台北)の簡茂丁教授や、ポルトガルのコインブラ大学のBebiano教授との研究は順調に進んでおり、上記のような成果のほか、コインブラ大学のテキストとして研究成果を発表する予定のものもある。ヒルベルト空間における線形作用素の数域の境界の方程式を求めることに関して大きな前進があった。特に、巡回型のシフト行列の数域の境界方程式については、代数曲線論的方法により、関係する代数曲線の種数の最小値が1であることを示した。また、クレイン空間の作用素の数域に関連しては、行列要素の積のなす領域の解明を行い、ポルトガルのコインブラ大学の教科書シリーズに共著者のBebiano教授らとともに冊子掲載型の論文として出版した。数域の形状を求める問題と双極型の偏微分方程式との間に深い関係があることが3年間の研究の成果として明らかにされた。核磁気共鳴装置の制御や分光学への応用に関しては、数域の境界の方程式の解析方法を前進させることができたので、この点で応用にむけての基礎を進めることができた。中心力力学系の解析への数域の応用や数理天文学の古典的モデルの解釈など計画当初は予期していなかったことが発見されるなどのあたらしい展開もあった。研究の進め方としては、台湾の東呉大学の簡茂丁教授との共同研究が順調に前進し、高次元数域と植物の開花時期の問題との関連などで、桜の開花を連想させる図の登場など数域の研究が広い応用を持つことを伺わせる例に出会うこともできた。最終年度には、モンゴルの国立大学のUndrakh研究員との研究も開始し、新たな発展が見込める。一般化数域を古典的な数域に帰着させる問題や、同時数域の凸性についての新結果など、3年間の研究で、成果を15の論文と1つの冊子として成果発表を行った。有限次元のヒルベルト空間の線形作用素の数域の境界につき、特にシフト作用素の場合につき、代数曲線論的に特異点を用いてその性質を明らかにすることができた。また、クレイン空間の作用素の数域に関しては、関連する行列要素の積がなす領域に関して前進があった。核磁気共鳴装置や分光学への応用の基礎の部分に貢献するものと考える。成果は、15編の学術論文と1冊の著書の形でまとめて発表した。また、外国での研究集会1回を含む7回の学会発表でも成果を公開した。研究の対象は、ヒルベルト空間・クレイン空間における作用素の数域であり、研究の目的は数域の基本的な性質の解明と、情報通信や量子計算の誤り訂正、核磁気共鳴装置の制御などに見出されているその応用を発展のさせるための端緒を与えることである。平成23年度は、特に高階の数域の研究に関して、2011年9月に科学研究費補助金の旅費にて行った台北での、有名な私立大学である東呉大学の簡茂丁Mao-Ting Chien教授との共同研究を基礎に大きな成果をあげることができた。特に、計画当初、米国のHelton教授による数域に関する50年にわたる予想の肯定的解決を用いた研究の成果は、"Linear Algebra and Its Applications"誌に掲載予定の論文を含め3論文で発表される。このほか、アルゴリズムに関する論文が1つある。数域の境界の方程式を求めるアルゴリズムに関しても研究は順調に進んでいる。これらの成果も、論文および学会発表の形で公開している。研究の進展の中で、数域を考えるモデルの一つとして取り上げた中心力の下での質点の運動の軌道の研究は大いに進展した。当初、古典力学に基づく研究であったが、相対性理論による運動の解析が登場するなど、新たで当初予期していなかったような成果もあらわれている。研究成果については、国内外の研究集会で発表しているほか、論文としても順調に成果の発表を行っている。
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KAKENHI-PROJECT-23540180
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23540180
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ヒルベルト空間・クレイン空間の作用素の数域の境界についての研究とその応用
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論文掲載雑誌は、例えばJournal of Mathematical Analysis and Applications誌は、5-year Impact Factor 1.305, Linear Algebra and Its Applications誌は、5-year Impact Factor 1.1011であり、それらは基礎解析の研究とその応用を扱っている専門誌としては、国際的な平均的水準をクリアし、若干それよりも高いと言えよう。高次元数域など、量子計算における誤りの訂正に関連すると考えられる成果も順調に得られている。クライン空間の作用素の数域に関しては、関連する積の形の一般化数域について、コインブラ大学のグループとの共同研究で成果が得られている。理由:研究目的の達成に関して、ヒルベルト空間の作用素の高階数域あるいは数域の境界の方程式を求めるアルゴリズムについての成果を、著名雑誌2誌(Journal of Mathematial Analysis and Applications; Impact Factor 1.174, Linear Algebra and Its Applications; Impact Factor 1.005)に期間に1論文、3論文を掲載または掲載予定にしている。計画していた研究のうち、クレイン空間の作用素の数域の研究は、足踏み状態にあることなど、未達成の部分もある。力学モデルからくる数域の研究成果など、計画時はあまり予期していなかったような成果も一方であがっている。研究の進展にともない、量子計算に伴う誤り訂正への応用といった初期の目標のほかに同時数域の研究や力学系への応用などの点でも進展があったので、当初の目標の達成を図りつつ、これらの研究も行っていきたい。台湾の簡茂丁教授との共同研究など、これまで協力関係にあった研究者とも引き続き協力して成果をあげたい。成果は、京都、札幌などの研究集会で発表するほか、数編の論文の形でも発表したい。高階の数域に関する研究ならびに、数域の境界の方程式に関するアルゴリムの開発を引き続き行うとともに、平成23年度は足踏み状態であった、クレイン空間の作用素の数域の研究を、ポルトガルのコインブラ大学所属で、これまで何度か共同研究をおこなっているBebiano, Providencia両教授のもとを訪れ、足踏み状態の打開を行いたい。台湾の簡教授とは、これまでと同様、共同研究を進めたい。平成24年度の研究経費使用に関しては、平成25年1月上旬に開催が予定され、参加を予定していた国際研究集会(共同研究者のひとりである、ポルトガルのコインブラ大学のBebiano教授が開催主催者であったが、この主催者の病気で)延期となった。これにともない、この研究集会の平成25年度の開催を想定して、10万円を少し上回る額を繰越しすることに方針を変えた。平成25年度には、平成24年の残に当たる11万4678円と平成25年度分の40万円の計51万4678円を報告書作成費7万4678円、謝金6万円、物品8万円、旅費30万円という形で、使用し、研究のための情報交換や成果発表などにあてたい。平成24年度の科学研究費補助金による研究費の使用計画は、次の通り国内旅費、外国旅費の合計27万円書籍等の物品・消耗品10万円謝金3万円
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KAKENHI-PROJECT-23540180
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23540180
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妊娠時インフルエンザウイルス感染による胎児および母体に対する影響
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季節性のインフルエンザウイルスと比べて、2009年にパンデミックを起こしたインフルエンザウイルス(K4)は、妊娠マウスにおいて重症化を引き起こしている可能性が示唆された。K4を感染させ、血液中でインフルエンザウイルスを検出したインフルエンザ感染重症化妊娠マウスでは、母体重の減少と胎児体重の減少が認められたが胎児数に違いは無かった。重症化した非妊娠感染マウスと比べて、重症化した妊娠感染マウスでは、妊娠を維持するために炎症を抑える制御系細胞と抗炎症性サイトカインの産生が誘導されている可能性が示唆された。季節性のインフルエンザウイルスと比べて、2009年にパンデミックを起こしたインフルエンザウイルス(K4)は、妊娠マウスにおいて重症化を引き起こしている可能性が示唆された。K4を感染させ、血液中でインフルエンザウイルスを検出したインフルエンザ感染重症化妊娠マウスでは、母体重の減少と胎児体重の減少が認められたが胎児数に違いは無かった。重症化した非妊娠感染マウスと比べて、重症化した妊娠感染マウスでは、妊娠を維持するために炎症を抑える制御系細胞と抗炎症性サイトカインの産生が誘導されている可能性が示唆された。正常マウスにA型インフルエンザウイルス(A/Udorn/307/72(H3N2))を1X10*6PFU/body経鼻感染させると感染5日後には、約10%の体重減少が認められたのに対して、妊娠14日目のマウスでは約20%の体重減少を認めた。このとき、生まれてきた仔の体重は、感染マウス・非感染マウスで違いは認められなかったが、生後4日目において、感染マウスの仔で発育遅延傾向が認められた。今回用いたウイルス量では、流産および死産は認められなかった。一方、新型インフルエンザウイルスK4(A/Kyoto/2011(H1N1))を正常マウスに1X10*6PFU/body経鼻感染させると、感染5日後には約30%の体重減少が認められ、感染10日後には死亡した。妊娠14日目のマウスでは、感染5日後には約35%の体重減少が認められ、出産予定日に死亡し、一部の胎児で発育不良が認められた。胎児数は、感染マウス・非感染マウスで違いは認められなかった。以上の結果から、新型インフルエンザウイルスK4(A/Kyoto/2011(H1N1))を1X10*6PFU/body経鼻感染させると致死的であることから、ウイルス量を5X10*4PFU/bodyに変更し、正常マウスに感染させると感染5日後には約20%の体重減少が認められた。妊娠マウスでは、感染5日後には約15%の体重減少が認められた。新型インフルエンザウイルスK4をX10*4PFU/body感染させた場合、死亡は認められなかったが、体重減少の著しいマウスでは、末梢血中でもウイルスを検出された(qPCR)。さらに、感染妊娠マウスの体重減少の著しいマウスでは、胎児の体重も非感染妊娠マウスの約半分であり、胎児への影響が認められた。妊婦ではインフルエンザウイルス感染に対して、重症化や合併症が起きやすいとされている。2009年に発生したパンデミックを引き起こしたインフルエンザウイルスは、海外で妊婦の死亡や合併症の報告がされている。しかし、その詳細なメカニズムについては未だに解明されていない。妊娠中は免疫寛容が誘導され、胎児を排除しないように免疫応答変化が起こっているが、妊娠中のインフルエンザウイルス感染重症化時の免疫応答変化については不明な部分が多い。本研究では、2009年にパンデミックを引き起こしたK4(A/Kyoto/2011(H1N1))を感染させた感染妊娠モデルを確立し、母体と胎児への影響を検討した。さらに、母体肺組織での炎症性サイトカインの関与についても検討を行い、以下の結果を得た。1)高濃度のK4を感染させた場合、非妊娠マウスでは約10日後に、妊娠マウスでは約5日後に全例死亡した。2)K4感染妊娠マウスの一部で血液中にインフルエンザウイルスを検出した。季節性インフルエンザウイルス感染時には、血液中でインフルエンザウイルスを検出することは稀であるが、今回、血液中にインフルエンザウイルスを検出した妊娠感染マウスでは、流早産は認められなかったが、母体の体重増加抑制と胎児の体重減少が認められ、胎児数に違いは無かった。3)非妊娠感染マウスと妊娠感染マウスの肺組織では、Foxp3・IL-1β・IL-10、TGF-β、GATA-3の発現が異なっていた。以上の結果から、K4感染妊娠マウスでは非妊娠マウスよりも重症化しやすいと考えられた。また、妊娠中の免疫応答変化により、非妊娠マウスと妊娠マウスでは、K4感染時の制御性T細胞の誘導や炎症性サイトカインの産生が異なり、妊娠時のインフルエンザウイルスの感染は妊娠を維持するために炎症を抑える制御系が誘導されている可能性が示唆された。産婦人科学本研究では、妊娠時のインフルエンザウイルス感染における母体や胎児への影響を軸として、重症化メカニズムの解明を目的としている。1年目は、まず季節性A型インフルエンザウイルス(A/Udorn/307/72(H3N2))による感染妊娠モデルマウスの確立を行い、さらに母体及び胎児への影響を検討した。また、当初2年目に予定していた、新型インフルエンザウイルスK4(A/Kyoto/2011(H1N1))についても感染妊娠モデルマウスの確立し、母体及び胎児への影響を検討を始めた。
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KAKENHI-PROJECT-25670708
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25670708
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妊娠時インフルエンザウイルス感染による胎児および母体に対する影響
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一般的にインフルエンザウイルス感染では、ウイルス血症にはなりにくいと考えられているが、我々は新型インフルエンザウイルス感染モデルにおいて、体重減少の著しいマウス、すなわち重症化したと考えられるマウスでは、肺組織中だけでなく末梢血中でもウイルスを確認した。末梢血中でウイルスを確認できた妊娠マウスにおいても、著しい体重抑制あるいは体重減少が認められ、その胎児は、非感染マウスの胎児と比べて体重が約半分になっており、インフルエンザウイルス感染の重症化が胎児に影響を与えることが示唆された。また、いくつかの感染妊娠マウスにおける子宮所属リンパ節や胎盤においても、インフルエンザウイルスの存在が確認(qPCR)された。今後予定している母体免疫の変化を検討するために非感染妊娠マウスから胎盤細胞分離法を確立し、どのような細胞で構成されているかをフローサイトメトリーで検討を行った。以上のことから、本研究は当初の計画以上に進展していると考えられる。前年度の結果を踏まえ、本年度は、妊娠中にインフルエンザウイルスに感染した場合、肺・子宮所属リンパ節および胎盤で細胞の局在、変動およびサイトカインの変動を検討する予定である。すでに、我々は感染した妊娠マウスの何頭かにおいて子宮所属リンパ節や胎盤でウイルスの存在を確認しているが、未妊娠感染マウスでは子宮所属リンパ節でウイルスは確認されなかったを見いだしている。そこで、感染妊娠マウスの子宮所属リンパ節及び胎盤の免疫組織化学染色を行い、ウイルスの局在を検討する予定である。また、感染妊娠マウスの胎盤にどのような細胞が存在しているのかを免疫組織化学線色で検討する。さらに感染妊娠マウスの胎盤細胞を分離し、フローサイトメトリーで胎盤細胞の変動とサイカイン産生能を検討する予定である。また、1年目の感染実験の結果からウイルス血症を起こすマウスと起こさないマウスの存在が明らかとなった。特に妊娠感染マウスでは、体重の著しい抑制あるいは減少を認めた場合、ウイルス血症を生じており、重症化していると考えられた。重症化に移行したマウスと重症化しなかったマウスの違いを遺伝子レベル・タンパクレベルで網羅的検索を行い、インフルエンザウイルス感染重症化メカニズムの解明に繋げていきたいと考えている。本研究は、当初の計画以上に進展しており、今後、研究を遂行する上で特に問題は無いと考えられる。
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KAKENHI-PROJECT-25670708
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25670708
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乳児の知覚的アウェアネスに関する実験的研究
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本研究の目的は、知覚的アウェアネス(気づきやすさ)の発生過程を、乳児の視知覚の実験を通じて明らかにすることにある。具体的には、選好注視法を用いて乳児の知覚発達を検討し、アウェアネス獲得以前の乳児の知覚世界が大人と全く異なるものであることを示すものとして計画された。本年度は、物体の明るさの変化が影の領域と光源の領域で異なることを知覚できているのか、逆にいえば明るさの恒常性が成立しているのか、といった点についての成果が得られたほか、運動視や顔認知についてもいくつか成果が得られた。また、錯視が見ているときと見えていないときで眼球運動に違いが見られることや注意と知覚に関する検討も行った。本年度も研究は順調に進行していた。本研究計画では、乳児の視覚的アウェアネスを検討する目的で、まずは計画した陰影を手掛かりとして知覚的アウェアネスの検討を現在も行っている。また、object-baseの注意処理過程が乳児でどのように発達してくるのかを、手掛かり刺激の出現を制御し四角形が出現する位置に対する選好注視を用いて注意の働きを検討した。その結果、object-basedな注意は8ヶ月頃に発達してくることが明らかとなった。また、錯視図形に対する眼球運動については、横方向と縦方向の眼球運動を測定し、乳児が、錯視を最大化するような眼球運動を行っていることを示すことに成功した。また、分担者の成果としては、視覚系が緩やかな速度変化よりも急峻な速度変化に容易に気づくことを示す結果を得、初期視覚系には鋭い加減速を検出するメカニズムが存在することが示唆されている。今後も、様々な視覚刺激の変化に対するchange detection paradigmを用いた注視時間の測定を行っていく。また、change detectionのみにもこだわらず、選好注視法や馴化法も併用して検討は行っていく。計画全体の最大のポイントは、低月齢において、通常大人では検出することができない視覚情報を検出できることを示す点にある。したがって低月齢児のデータが最も重要となるのだが、特に3か月前後の月齢が低い乳児のデータを重視し、その知覚世界が「アウェアネス」の観点からどのような状態になっているのかを、様々な視覚刺激を用いて検討していく。あわせて、知覚、注意、の機能的側面、ならびにその認知神経科学的な側面についても、従来からの選好注視を用いた検討を行っていく。本研究の目的は、知覚的アウェアネス(気づきやすさ)の発生過程を、乳児の視知覚の実験を通じて明らかにすることにある。具体的には、選好注視法を用いて乳児の知覚発達を検討し、アウェアネス獲得以前の乳児の知覚世界が大人と全く異なるものであることを示していく。大人にとって認知が難しい視覚刺激がより幼い乳児にはむしろ容易に判断できることを、選好注視法を用いて示していくことで、逆に知覚的アウェアネスの成立以前と以後の知覚世界を浮かびあらせる。本計画では、この成立時期を、生後5カ月以降に生じる面、明るさ、色、動き、奥行などに関する「恒常性」維持の仕組みであるととらえ、現在我々のグループが取り組んでいる選好注視法をベースとした刺激呈示法などを用いて知覚的アウェアネスの発達過程を解明する。現在まで研究は順調に進行している。本研究計画では、乳児の視覚的アウェアネスを検討する目的で、まずは計画した陰影を手掛かりとして知覚的アウェアネスの検討を、計画書に記載したいわゆるchange detection paradigmを用いて選好注視を指標として実験しデータを収集中である。実験では、ターゲット刺激として、形状は変化せず陰影パターンのみが変化する条件(陰影変化条件)と陰影は変化せず逆に3次元形状が変化する条件(形状変化条件)の2種類の実験条件を設け、非ターゲット条件は、ISIのみを含むが画像が変化しない条件を設定した。現在も実験は進行中ではあるが、すでに低月齢児においては陰影変化に選好を示す一方、高月齢児においては形状変化に選好を示すなどの仮説通りの結果が得られており、今後の成果が期待できる。また、分担者の成果としては、視覚系が緩やかな速度変化よりも急峻な速度変化に容易に気づくことを示す結果を得ており、初期視覚系には鋭い加減速を検出するメカニズムが存在することが示唆されている。その他、乳児の知覚的アウェアネスの基礎となる数多くの知覚発達に関する成果も得ており、研究は順調に進捗している。本研究の目的は、知覚的アウェアネス(気づきやすさ)の発生過程を、乳児の視知覚の実験を通じて明らかにすることにある。具体的には、選好注視法を用いて乳児の知覚発達を検討し、アウェアネス獲得以前の乳児の知覚世界が大人と全く異なるものであることを示すものとして計画された。本年度は、物体の明るさの変化が影の領域と光源の領域で異なることを知覚できているのか、逆にいえば明るさの恒常性が成立しているのか、といった点についての成果が得られたほか、運動視や顔認知についてもいくつか成果が得られた。また、錯視が見ているときと見えていないときで眼球運動に違いが見られることや注意と知覚に関する検討も行った。本年度も研究は順調に進行していた。本研究計画では、乳児の視覚的アウェアネスを検討する目的で、まずは計画した陰影を手掛かりとして知覚的アウェアネスの検討を現在も行っている。また、object-baseの注意処理過程が乳児でどのように発達してくるのかを、手掛かり刺激の出現を制御し四角形が出現する位置に対する選好注視を用いて注意の働きを検討した。
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KAKENHI-PROJECT-16H03755
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H03755
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乳児の知覚的アウェアネスに関する実験的研究
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その結果、object-basedな注意は8ヶ月頃に発達してくることが明らかとなった。また、錯視図形に対する眼球運動については、横方向と縦方向の眼球運動を測定し、乳児が、錯視を最大化するような眼球運動を行っていることを示すことに成功した。また、分担者の成果としては、視覚系が緩やかな速度変化よりも急峻な速度変化に容易に気づくことを示す結果を得、初期視覚系には鋭い加減速を検出するメカニズムが存在することが示唆されている。今後は、主に陰影と形状の変化に対するchange detection paradigmを用いた注視時間の測定を行っていく。本実験の最大のポイントは、低月齢において、通常大人では検出することができない画像の変化を検出できることを示す点にある。したがって低月齢児のデータが最も重要となるのだが、特に3か月前後の月齢が低い乳児については、被験者募集の観点からも集まりが難しく、また低月齢児は、実験中のfussinessなどの要因でデータが取れない確率も高いため、引き続きデータ収集を強化していく必要があると考える。あわせて、知覚、注意、の機能的側面、ならびにその認知神経科学的な側面についても、従来からの選好注視を用いた検討を行っていく。また、研究分担者と協力しながら、乳児の知覚的アウェアネスを探るための最適な刺激についての検討も行っていく。今後も、様々な視覚刺激の変化に対するchange detection paradigmを用いた注視時間の測定を行っていく。また、change detectionのみにもこだわらず、選好注視法や馴化法も併用して検討は行っていく。計画全体の最大のポイントは、低月齢において、通常大人では検出することができない視覚情報を検出できることを示す点にある。したがって低月齢児のデータが最も重要となるのだが、特に3か月前後の月齢が低い乳児のデータを重視し、その知覚世界が「アウェアネス」の観点からどのような状態になっているのかを、様々な視覚刺激を用いて検討していく。あわせて、知覚、注意、の機能的側面、ならびにその認知神経科学的な側面についても、従来からの選好注視を用いた検討を行っていく。
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KAKENHI-PROJECT-16H03755
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H03755
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胃・大腸癌でのSMAD遺伝子の異常、及び多変量解析による臨床病理学的因子との検討
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TGF-βsignaling pathwayに関わる重要なシグナル伝達機構分子Smad群の遺伝子のなかでもSmad2,4は、第18番染色体長腕にある大腸癌抑制遺伝子DCCのごく近傍(18q21.1)に位置することが判明している。これまでもDCC以外の遺伝子がターゲットになっている可能性が指摘されてきており、胃癌においても18qのLOHの頻度が高く癌抑制遺伝子の存在が指摘されているが、いまだ胃癌の癌抑制遺伝子は単離されていない。そこで、胃・大腸癌におけるSmad4,2の遺伝子解析を行い、変異等の異常が存在した場合には臨床病理学的因子との関連を検討することにより臨床的意義を明らかにした。対象は当科にて外科的に切除された胃・大腸癌のうち、解析可能な核酸が抽出できた大腸癌36例、胃癌35例であり、Tumor-node-metastasis(TNM)分類にて病期分類を行った。遺伝子解析法としてTR-PCR-SSCPとそれに続くクローニング・dideoxy法により塩基配列を決定した。大腸癌におけるSmad2,4の遺伝子解析結果は、Smad4変異例5例中3例に肝転移例があり有意差を認め、Smad2変異例は1例のみと低頻度のため臨床病期との統計学的解析不能であった。変異部位はSmad2,4ともにMH2領域とされる部位であり、Smad蛋白が3量体を形成する際の結合部位と一致した。胃癌における遺伝子解析結果ではSmad2,4ともに変異を認めず、Smad2,4が胃癌の癌抑制遺伝子である可能性は極めて低いことが示唆された。TGF-beta signaling pathwayに関わる重要なシグナル伝達機構分子SMAD群の遺伝子についてヒト大腸癌、胃癌での検討を行い、これらの遺伝子異常と臨床病理学的因子との関連を検討した。これまで胃癌35例・大腸癌48例について解析が終了したところであるが、その結果を報告する。胃癌:(a)SMAD2,4の異常はPCR-SSCP法で認めなかった。大腸癌:(a)SMAD4遺伝子異常は7例で、内5例にPCR-SSCPにて移動度の異なる変異DNAを認めた。サブクローニングにて各々の塩基配列を検索した結果、Case9は12塩基対の欠失、Case21はcodon350においてValからAspへの点変異(以下表記法をV350Nとする)、Case24はK340Eを示した。以下、Case12はA118E,Case36はE330Aの点突然変異4例とCase4,5はmRNAの発現低下であった。(b)SMAD2遺伝子異常は3例に認め、Case31においてPCR-SSCPにて異常を認め、塩基配列を決定したところH441Rであった。また、Case4,5はmRNAの発現低下であった。これらの結果と臨床病理学的因子との関係を解析すると、SMAD4遺伝子陽性症例は病期がIII以上であり、かなり進行した症例ばかりであった。組織型は5例中4例が中分化型腺癌であったが、Case36は粘液癌で家族性大腸腺腫症から発癌した。SMAD2遺伝子変異例はlyO,vO,nO,ssで遠隔転移の無い症例であった。Case4,5はSMAD4,2領域のhomozygos deletionと考えられたが、nO症例であった。統計学的に解析できるSMAD4について変異と臨床病理学的因子との関係をロジスティック回帰分析による多変量解析を用いて検討したところ、SMAD4遺伝子変異例はpN因子にのみ有意差を認めた。変異部位をSMAD-4,2の塩基配列に照らし合わせてみた場合、MH1(Mad homology 1)に1箇所、MH2に5箇所の変異部位が存在した。MH2の5箇所のうち4箇所がSMAD4,2の両遺伝子に保存されたアミノ酸に生じた変異であった。胃癌では異常を認めなかったが大腸癌では8例に異常を認めた。異常の型は点変異が5例でその変異部位は構造機能的に重要とされる部位と判明した。TGF-βsignaling pathwayに関わる重要なシグナル伝達機構分子Smad群の遺伝子のなかでもSmad2,4は、第18番染色体長腕にある大腸癌抑制遺伝子DCCのごく近傍(18q21.1)に位置することが判明している。これまでもDCC以外の遺伝子がターゲットになっている可能性が指摘されてきており、胃癌においても18qのLOHの頻度が高く癌抑制遺伝子の存在が指摘されているが、いまだ胃癌の癌抑制遺伝子は単離されていない。そこで、胃・大腸癌におけるSmad4,2の遺伝子解析を行い、変異等の異常が存在した場合には臨床病理学的因子との関連を検討することにより臨床的意義を明らかにした。対象は当科にて外科的に切除された胃・大腸癌のうち、解析可能な核酸が抽出できた大腸癌36例、胃癌35例であり、Tumor-node-metastasis(TNM)分類にて病期分類を行った。遺伝子解析法としてTR-PCR-SSCPとそれに続くクローニング・dideoxy法により塩基配列を決定した。大腸癌におけるSmad2,4の遺伝子解析結果は、Smad4変異例5例中3例に肝転移例があり有意差を認め、Smad2変異例は1例のみと低頻度のため臨床病期との統計学的解析不能であった。変異部位はSmad2,4ともにMH2領域とされる部位であり、Smad蛋白が3量体を形成する際の結合部位と一致した。
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KAKENHI-PROJECT-10770584
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10770584
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胃・大腸癌でのSMAD遺伝子の異常、及び多変量解析による臨床病理学的因子との検討
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胃癌における遺伝子解析結果ではSmad2,4ともに変異を認めず、Smad2,4が胃癌の癌抑制遺伝子である可能性は極めて低いことが示唆された。
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KAKENHI-PROJECT-10770584
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10770584
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安楽性を追求したロボティックマットレスの褥瘡管理におけるポジショニングの検証
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褥瘡の管理において、体位変換やエアマットレスなどの体圧分散ケアは、その有用性から国際ガイドラインにおいて強く推奨されている。しかし、体位変換が強い痛みを引き起こし実施が困難となることがあるため、安楽に着目した褥瘡管理が必要である。そこで、本研究では、人の手では行えない微細な動きを可能とするロボティックマットレスを用いて、1体位変換による身体の動きと痛みとの関連性を検証し、安楽を損なわない体位変換機の方法を明らかにし、2ロボティックマットレスを用いた疼痛を伴わない安楽なポジショニングの実現を目指した。これまでに、ロボティックマットレスによる自動体位変換機能を用いることで、同一部位へ過度な体重がかかることによる痛みは回避できるが、一方で患者自身の姿勢はほとんど変化しないために関節周囲に痛みが生じることがあり、必ずしも安楽な体位とは言えないことが明らかとなった。そのため平成30年度は、ロボティックマットレスには、どのような患者・状況におけるポジショニングをサポートするのに何が不足しており、新たにどのような機能を追加すれば安楽なポジショニングを実現できるかを明らかにすることを目的に調査を行った。その結果、現状のロボティックマットレスによる自動体位変換では、姿勢の変化が痛みを引きおこす場合に、大きなポジショニングエアセルがゆっくりと膨張・収縮することで、急激な姿勢の変化をもたらすことなく体位変換を可能とすることで患者の安楽に寄与していた。一方で、体位変換時のみでなく同一体位を保持している間の安楽を保つなめには、腰部・肩・四肢などの関節部位とエアセルの位置・膨張の程度が個人にフィットする必要があり、身体面を大きく支えるエアセルのみでなく小さなエアセルによる身体の支持が必要であった。圧力および接触面積から個人に適したエアセル自動制御が可能となることが課題である。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。褥瘡の管理において、体位変換やエアマットレスなどの体圧分散ケアは、その有用性が科学的エビデンスに裏付けされており、褥瘡管理の国際的なガイドラインにおいて強く推奨されている。しかし、体位変換が強い痛みを引き起こし、痛みのために体位変換の実施が困難となることがあるため、痛みに着目した褥瘡管理が必要である。そこで、本研究では、人の手では行えない微細な動きを可能とするロボティックマットレスを用いて、1体位変換による身体の動きと痛みとの関連性を検証し、安楽を損なわない体位変換機の方法を明らかにし、2ロボティックマットレスを用いた疼痛を伴わない安楽なポジショニングの実現を目指す。平成29年度は目的1に取り組み、健常者実験よりロボティックマットレスによる自動体位変換機能を用いることで、同一部位へ過度な体重がかかることによる痛みは回避できるが、一方で、体圧管理の面での姿勢は変化しているものの患者自身の姿勢はほとんど変化しないため、関節周囲に痛みが生じることがあり、必ずしも安楽な体位とは言えないことがわかった。臨床症例では、ロボティックマットレスによる体位変換介助と看護師による介助を組み合わせて提供しており、それにより患者の安楽が得られているケースがみられた。これらのことから、ロボティックマットレスを用いた体位変換のみでは、患者に真に安楽なポジショニングを提供することは難しいのが現状である。そのため、今後はどのような患者・状況におけるポジショニングをサポートするのに、何が不足しており、どのような新たな機能を追加すれば安楽なポジショニングを実現できるかを明らかにし、その機能を検証することを行っていく。当初計画していた、ロボッティックマットレスを用いたアルゴリズムのみでは、患者の安楽性が十分に保てないことがあり、計画の変更が必要となったため。褥瘡の管理において、体位変換やエアマットレスなどの体圧分散ケアは、その有用性から国際ガイドラインにおいて強く推奨されている。しかし、体位変換が強い痛みを引き起こし実施が困難となることがあるため、安楽に着目した褥瘡管理が必要である。そこで、本研究では、人の手では行えない微細な動きを可能とするロボティックマットレスを用いて、1体位変換による身体の動きと痛みとの関連性を検証し、安楽を損なわない体位変換機の方法を明らかにし、2ロボティックマットレスを用いた疼痛を伴わない安楽なポジショニングの実現を目指した。これまでに、ロボティックマットレスによる自動体位変換機能を用いることで、同一部位へ過度な体重がかかることによる痛みは回避できるが、一方で患者自身の姿勢はほとんど変化しないために関節周囲に痛みが生じることがあり、必ずしも安楽な体位とは言えないことが明らかとなった。そのため平成30年度は、ロボティックマットレスには、どのような患者・状況におけるポジショニングをサポートするのに何が不足しており、新たにどのような機能を追加すれば安楽なポジショニングを実現できるかを明らかにすることを目的に調査を行った。その結果、現状のロボティックマットレスによる自動体位変換では、姿勢の変化が痛みを引きおこす場合に、大きなポジショニングエアセルがゆっくりと膨張・収縮することで、急激な姿勢の変化をもたらすことなく体位変換を可能とすることで患者の安楽に寄与していた。一方で、体位変換時のみでなく同一体位を保持している間の安楽を保つなめには、腰部・肩・四肢などの関節部位とエアセルの位置・膨張の程度が個人にフィットする必要があり、身体面を大きく支えるエアセルのみでなく小さなエアセルによる身体の支持が必要であった。圧力および接触面積から個人に適したエアセル自動制御が可能となることが課題である。
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KAKENHI-PROJECT-17H06646
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H06646
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安楽性を追求したロボティックマットレスの褥瘡管理におけるポジショニングの検証
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本年度は、大きな姿勢の変化を引き起こさずに体位変換を行えるというロボティックマットレスの利点を生かしながら、関節周囲の不快感を軽減させるためにはさらにどのような機能が必要であるかを検証する。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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KAKENHI-PROJECT-17H06646
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H06646
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電気化学インピーダンス法による燃料電池の水素リーク計測
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本研究では,燃料電池セルに既知の並列抵抗を接続することで,電圧急増を抑制しながら,電気化学インピーダンス分光(EIS)法によるガスクロスオーバー測定を試みた。測定には電解質膜としてNafion212膜を組み込んだ固体高分子形燃料電池セルを使用した。セル温度,加湿器温度はそれぞれ室温とした。アノードには純水素を流し,カソード側への水素リークを模擬するため,カソードには窒素に少量の水素を混合したガスを流した。測定中にセル電圧が高くなり電極劣化が生じることがないよう,セルに51Ωの抵抗を並列に挿入した。カソード流量を変えて水素リーク量を調節しながらインピーダンスを測定した。インピーダンスを測定しNyquistプロットを作成した。インピーダンス測定中,電圧の急増は観察されなかった。水素リーク量が少ない場合,Nyquistプロットは,大きな円の一部分のような形となった。これは,セルの電荷移動抵抗が非常に大きく,電気化学反応が起きにくい状態であることを意味している。これより水素欠乏状態の電極インピーダンスが計測されているものと思われる。水素リーク量が多くなると小さな円になった。これは,電荷移動抵抗が急に小さくなったことを意味している。インピーダンスと同時に電流を測定し,水素リーク量と比較すると,水素リーク量が少ない場合,電流と水素リーク量が比例した。しかし,水素リーク量が多くなると観察される電流がほぼ同じ値になった。未反応の水素が電極に残っている状態にあると推察される。従来の水素リーク計測法では,リーク水素はすべて電流になるとしてリーク量を求めているが,リーク量が大きい場合にはこのような誤差が発生することが分かった。このように,EIS法を用いて電圧急増することなく,燃料電池の水素欠乏状態を観察することができた。燃料電池セルに既知の並列抵抗を接続することで,電圧急増することなく固体高分子形燃料電池における水素欠乏状態を観察することができた。しかし,得られた電圧,電流や抵抗などの値が,予想した値と異なっていた。水素欠乏状態における新現象かどうかを確認するため,現在は規定の値を持つ抵抗やコンデンサを用いて正しい測定値が得られているかを確認している。進捗状況で記載したように測定した電圧,電流や抵抗などの値が,予想した値と異なっていた。そのため,規定の値を持つ抵抗やコンデンサを用いて正しい測定値が得られているかを確認し,予想と異なる結果が得られた原因を解明する。その後,水素が十分ある状態から水素欠乏状態まで水素欠乏の程度や並列抵抗の値などを変化させ測定条件の影響を調べる。また,燃料電池セルのインピーダンスを測定し,測定したセルインピーダンスと等価回路を基に算出した計算値を比較しながら,実際の物理現象と対応づけてモデルを確立する。本研究では,燃料電池セルに既知の並列抵抗を接続することで,電圧急増を抑制しながら,電気化学インピーダンス分光(EIS)法によるガスクロスオーバー測定を試みた。測定には電解質膜としてNafion212膜を組み込んだ固体高分子形燃料電池セルを使用した。セル温度,加湿器温度はそれぞれ室温とした。アノードには純水素を流し,カソード側への水素リークを模擬するため,カソードには窒素に少量の水素を混合したガスを流した。測定中にセル電圧が高くなり電極劣化が生じることがないよう,セルに51Ωの抵抗を並列に挿入した。カソード流量を変えて水素リーク量を調節しながらインピーダンスを測定した。インピーダンスを測定しNyquistプロットを作成した。インピーダンス測定中,電圧の急増は観察されなかった。水素リーク量が少ない場合,Nyquistプロットは,大きな円の一部分のような形となった。これは,セルの電荷移動抵抗が非常に大きく,電気化学反応が起きにくい状態であることを意味している。これより水素欠乏状態の電極インピーダンスが計測されているものと思われる。水素リーク量が多くなると小さな円になった。これは,電荷移動抵抗が急に小さくなったことを意味している。インピーダンスと同時に電流を測定し,水素リーク量と比較すると,水素リーク量が少ない場合,電流と水素リーク量が比例した。しかし,水素リーク量が多くなると観察される電流がほぼ同じ値になった。未反応の水素が電極に残っている状態にあると推察される。従来の水素リーク計測法では,リーク水素はすべて電流になるとしてリーク量を求めているが,リーク量が大きい場合にはこのような誤差が発生することが分かった。このように,EIS法を用いて電圧急増することなく,燃料電池の水素欠乏状態を観察することができた。燃料電池セルに既知の並列抵抗を接続することで,電圧急増することなく固体高分子形燃料電池における水素欠乏状態を観察することができた。しかし,得られた電圧,電流や抵抗などの値が,予想した値と異なっていた。水素欠乏状態における新現象かどうかを確認するため,現在は規定の値を持つ抵抗やコンデンサを用いて正しい測定値が得られているかを確認している。進捗状況で記載したように測定した電圧,電流や抵抗などの値が,予想した値と異なっていた。そのため,規定の値を持つ抵抗やコンデンサを用いて正しい測定値が得られているかを確認し,予想と異なる結果が得られた原因を解明する。その後,水素が十分ある状態から水素欠乏状態まで水素欠乏の程度や並列抵抗の値などを変化させ測定条件の影響を調べる。
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KAKENHI-PROJECT-18K04102
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K04102
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電気化学インピーダンス法による燃料電池の水素リーク計測
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また,燃料電池セルのインピーダンスを測定し,測定したセルインピーダンスと等価回路を基に算出した計算値を比較しながら,実際の物理現象と対応づけてモデルを確立する。本研究の目的は,EIS法による水素欠乏や水素リーク状況の診断の基礎となる水素欠乏や水素リークとインピーダンスとの対応関係を理論と実験の両面から解明することである。2018年度は,燃料電池セルでの結果における問題が発生したため,必要な測定を実施するに至らず,未使用が生じた。2019年度はこの問題を解決し,燃料電池スタックで同様の測定を行う必要があるが,所有している市販のEIS測定のための電気化学計測装置(AutoLab社PGSTAT128N)では,スペクトル解析の精度が不十分なので,当該経費でインピーダンスアナライザ装置を導入し,実験精度を向上させる。
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KAKENHI-PROJECT-18K04102
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K04102
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フィードバック型超音波ドラッグデリバリ実現のための微小気泡の高感度その場検出法
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超音波援用ドラッグデリバリシステムでは、微小気泡に対し強力超音波を照射することで気泡を圧壊し、あらかじめ気泡に付加させた薬剤を患部や細胞内へ効率よく取り込ませることが基本になるが、高効率化のためには気泡破壊に至るまでの2次超音波信号をその場で観測し、これをフィードバックすることで効率向上を図ることが重要になる。本研究は気泡からの信号をマイクロ秒オーダーの高時間分解能でその場観察し、従来の超音波イメージングには実現できない「時間的・空間的分解能を有する新規の気泡観測法」を実現する。本手法は気泡表面を修飾した機能性気泡を組み合わせることで癌の超早期発見が可能になるなど、気泡観測だけでなく、革新的な治療診断技術創出を拓く基盤技術になる。平成30年度は、平成29年度までの研究成果を展開し、可視化システムの生体応用を見据えた実験に取り組んだ。これまでに確立した気泡からの信号観測技術を応用し、哺乳動物系細胞の浮遊細胞を用いたファントム実験を行い、得られた信号と生体作用との関連を得るため観測結果の解析項目と生体作用効果が相関を示すパラメータを統計的に評価した。使用した浮遊細胞についてはリンパ芽球系の細胞を対象とし、蛍光色素は生細胞の膜透過性がなく核酸との相互作用により蛍光を発する色素を用いた。これにより超音波照射によって色素導入が起こった細胞のみを標識し、細胞を回収後に蛍光顕微鏡観測を行うことで定量的に導入効率を評価できる。実験の結果、気泡破壊に至る気泡と割れ残る気泡からの信号の空間分布が細胞への生体作用と関連する可能性を示し、フィードバックシステム構築に有効であることが示唆された。超音波援用ドラッグデリバリシステムでは、微小気泡に対し強力超音波を照射することで気泡を圧壊し、あらかじめ気泡に付加させた薬剤を患部や細胞内へ効率よく取り込ませることが基本になるが、高効率化のためには気泡破壊に至るまでの2次超音波信号をその場で観測し、これをフィードバックすることで効率向上を図ることが重要になる。本研究は気泡からの信号をマイクロ秒オーダーの高時間分解能でその場観察し、従来の超音波イメージングには実現できない「時間的・空間的分解能を有する新規の気泡観測法」を実現する。本手法は気泡表面を修飾した機能性気泡を組み合わせることで癌の超早期発見が可能になるなど、気泡観測だけでなく、革新的な治療診断技術創出を拓く基盤技術になる。平成29年度は以下の研究を行った。キャビテーション信号の高時間分解能の観測手法の開発のため、可視化システムの映像化原理の確立と気泡特性化計測への適用を行った。映像化原理の確立に関しては、信号をアレイ振動子で観察し、受信RFデータから波動の逆伝搬を行うことで、気泡キャビテーションの時間ー位置平面での気泡ダイナミクスを可視化する方法を開発した。本手法を超音波造影剤Sonazoidに対し適用した結果、低音圧照射下では、信号の強度が小さいだけでなく、高調波と分調波からなるビート信号による周期的なパターンが観測され、高音圧照射時には気泡破壊による高調波、分調波以外の広帯域な信号成分による複雑なパターンが顕著に現れることが分かった。気泡特性化計測への適用では工業用の中空マイクロカプセルや、発酵培養させることにより細胞内にCO2を発生させる酵母細胞を観測した。本年度はデコンボリューションのWiener filter適用による空間分解能の向上を適用し、ラテラル方向の空間分解能0.34mmを実現したが、本手法は臨床で求められる空間分解能を達成する方法と考えている。平成29年度の成果は、可視化システムの開発に留まらず、気泡特性化や細胞を使った計測など、応用開拓に向けた研究を推進できた点が挙げられる。まず、可視化システムの映像化原理の確立については、本手法の時間的・空間的分解能を有する特徴に基づいて、気泡のキャビテーションに特有な信号パターンを観測した。この方法では、時間ー位置からなる2次元画像上に、キャビテーションのマイクロ秒オーダーでの時間発展とアレイのラテラル方向のキャビテーション・ダイナミクスを同時に観察できる。時間的分解能による特徴だけでなく、空間的にも特徴的なパターンを観測できた点は、従来の観測技術には示すことができない本研究の成果の一つとして挙げられる。また、応用開拓に向けた研究については、既存の造影気泡だけでなく、細胞に含まれる気泡からの信号の映像化にも成功した。この結果については現在解析中であるが、これにより細胞との相互作用を評価できる可能性があり、生体作用を示す信号を特定できればフィードバックシステム実現に向けて大きく前進することができる。また、細胞に含まれる気泡量は極微量であり、従来法よりも高感度な観測が可能であることを示せた点も本研究の大きな成果の一つとして挙げられる。超音波援用ドラッグデリバリシステムでは、微小気泡に対し強力超音波を照射することで気泡を圧壊し、あらかじめ気泡に付加させた薬剤を患部や細胞内へ効率よく取り込ませることが基本になるが、高効率化のためには気泡破壊に至るまでの2次超音波信号をその場で観測し、これをフィードバックすることで効率向上を図ることが重要になる。本研究は気泡からの信号をマイクロ秒オーダーの高時間分解能でその場観察し、従来の超音波イメージングには実現できない「時間的・空間的分解能を有する新規の気泡観測法」を実現する。本手法は気泡表面を修飾した機能性気泡を組み合わせることで癌の超早期発見が可能になるなど、気泡観測だけでなく、革新的な治療診断技術創出を拓く基盤技術になる。
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KAKENHI-PROJECT-17K17634
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K17634
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フィードバック型超音波ドラッグデリバリ実現のための微小気泡の高感度その場検出法
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平成30年度は、平成29年度までの研究成果を展開し、可視化システムの生体応用を見据えた実験に取り組んだ。これまでに確立した気泡からの信号観測技術を応用し、哺乳動物系細胞の浮遊細胞を用いたファントム実験を行い、得られた信号と生体作用との関連を得るため観測結果の解析項目と生体作用効果が相関を示すパラメータを統計的に評価した。使用した浮遊細胞についてはリンパ芽球系の細胞を対象とし、蛍光色素は生細胞の膜透過性がなく核酸との相互作用により蛍光を発する色素を用いた。これにより超音波照射によって色素導入が起こった細胞のみを標識し、細胞を回収後に蛍光顕微鏡観測を行うことで定量的に導入効率を評価できる。実験の結果、気泡破壊に至る気泡と割れ残る気泡からの信号の空間分布が細胞への生体作用と関連する可能性を示し、フィードバックシステム構築に有効であることが示唆された。平成30年度以降は、細胞を用いた薬剤・遺伝子導入への適用に領域を拡げて研究を進める。平成29年度の研究成果を展開し、可視化システムの機能性気泡への適用および生体応用を見据えた実験に取り組む。機能性気泡への適用では、薬学との連携により、分子標的能を有する気泡製剤を評価する。気泡径・シェル物性等の気泡の質的情報と本手法で得られる信号の統計量との比較により気泡の特性化を図る。さらに可視化技術をツールとする高感度な極微量気泡検出法の応用展開を図るため、細胞に取り込まれた気泡からの微弱信号検出および感度向上のためのフィルタ設計について検討する。生体応用を見据えた実験については、これまでに得られた物理現象と生体作用との関連を得るため、血球由来の細胞や酵母細胞等、浮遊細胞を用いたファントム実験を行い、像再生結果の解析項目と生体効果が相関を示すパラメータを統計的に評価する。さらに構成した可視化システムを用いて医学を専門とする研究協力者とともに実験動物での評価および実験動物から採取した細胞を用いた評価を行い、可視化システムの超音波支援DDSにおける有効性を明らかにするとともに、本システムを用いたDDSの高効率化のための気泡制御技術について検討する。これら成果をまとめて内外の関連学会で報告する。研究進捗との調整により物品購入に遅れが生じたが、平成30年6月中に次年度使用額としての請求分は執行済みとなる見込み。
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KAKENHI-PROJECT-17K17634
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K17634
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水田表面水中のウィルスの生態
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本研究においては、水田表面水中のウイルスの生態解明を目的とし、1)水田表面水中には細菌数の平均8倍程度多数のウイルスが存在すること、細菌数とウイルス数の間に正の相関がみとめられた。2)表面水から分離した18株の細菌を供試し、これらに感染するバクテリオ数の季節変動と肥料の種類の影響を調査した結果、表面水中のファージ群集は、系統的に広い範囲の細菌に感染するファージから構成されていることが示唆された。3)表面水中に生息する細菌へのウイルスの感染状況を、透過型電子顕微鏡による細菌細胞の観察から推定した結果、平均で23%の細菌細胞中にファージの存在が観察され、水田表面水中のファージ群集が細菌群集の死滅を引き起こすとともに、細菌群集の遷移に大きく影響していることを推察した。また、4)藍藻ファージに特異的なプライマーを用いて同ファージの群集構造を評価した結果、水田にはこれまで知られていなかった未知の藍藻ファージの存在が推定された。本研究においては、水田表面水中のウイルスの生態解明を目的とし、1)水田表面水中には細菌数の平均8倍程度多数のウイルスが存在すること、細菌数とウイルス数の間に正の相関がみとめられた。2)表面水から分離した18株の細菌を供試し、これらに感染するバクテリオ数の季節変動と肥料の種類の影響を調査した結果、表面水中のファージ群集は、系統的に広い範囲の細菌に感染するファージから構成されていることが示唆された。3)表面水中に生息する細菌へのウイルスの感染状況を、透過型電子顕微鏡による細菌細胞の観察から推定した結果、平均で23%の細菌細胞中にファージの存在が観察され、水田表面水中のファージ群集が細菌群集の死滅を引き起こすとともに、細菌群集の遷移に大きく影響していることを推察した。また、4)藍藻ファージに特異的なプライマーを用いて同ファージの群集構造を評価した結果、水田にはこれまで知られていなかった未知の藍藻ファージの存在が推定された。1)愛知県安城農業技術センターの長期肥料連用試験圃場(無肥料区、NPK区、NPKCa区、堆肥区)から、計11回田面水を採取し、ウィルス数と細菌数の季節変動を調査した。その結果、ウィスル数は5.6x10^61.2x10^9mL^<-1>(平均1.5x10^8mL^<-1>)、細菌数は9.2x10^54.3x10^8mL^<-1>(平均5.1x10^7mL^<-1>)と大きな季節変動を観察し、ウィルス数は、これまで海洋や湖沼で観察された数に比べて多い数であった。また、ウィルスと細菌の比は0.11から72と広い範囲で変動し、細菌数の低下に伴ってその比の増加する傾向が認められた。2)同じ田面水を用いて、水田から分離した18種の細菌に感染するファージ数の季節変動を調査した。その結果、田値え後6日目の田面水で多くのファージが観察され、中干し期まで減少する傾向を示した。また、ウィルス数は一般に中干し以降に多かった。なお、ウィルス数に対する施肥来歴の影響は認められなかった。供試した細菌中Sphingomonas sp. Enterobacter sp. Cytophaga sp. Microbacterium sp.に感染するファージ数が多いことも判明した。加えて、18種の細菌のゲノム中のprophageの存在と、これら細菌に対する田面水中のファージ数の関係を調査した結果、prophageの存在により田面水中のファージの感染が抑制される傾向(superinfection immunity)は認められなかった。3)透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、田面水中のウィルスのサイズ分布を調査した結果、処理区間での違いや季節変動は全く観察されず、平均5070nmで正二十面体のウィスルが多く観察された。1)水田表面水に生息する細菌の死滅に対するファージの影響を評価するため、表面水中の細菌をグリッド上に集菌し透過型電子顕微鏡を用いて、高倍率で細菌細胞内のファージの有無を観察した。水田として、愛知県農業総合試験場安城農業技術センター内の長期肥料連用試験圃場を供試した。堆肥区の表面水中では2.43.6%(平均3.0%)の細菌細胞中にファージが観察され、石灰三要素区の表面水中細菌(1.62.9%、平均2.0%)より高い値であった。細菌細胞中のファージは感染後の後期のみ顕微鏡で観察される。観察できない時期を考慮し、ファージによる細菌の死滅を試算した結果、堆肥区では21.735.0%(平均27.9%)、石灰三要素区では12.827.3%(平均17.3%)と推定され、ファージが表面水中の細菌群集の変動に少なからず影響しているものと結論された。2)表面水中の主要な細菌であるSphingomonasに感染するファージを58株分離し、その形態、宿主範囲およびカプシド遺伝子g23の塩基配列による系統的多様性を調査して結果、形態からはいずれもSiphoviridae科に属し、宿主範囲はファージの分離に用いたSphingomonas.株によって様々であった。g23遺伝子の塩基配列は、海洋中のファージの配列と全く異なり土壌に特有の配列で、その多様性はこれまで土壌から得られたクローンの多様性に匹敵する広いものであった。
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KAKENHI-PROJECT-18380051
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18380051
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水田表面水中のウィルスの生態
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3)同じ水田の表面水からDNAを抽出し、g23遺伝子に特異的なプライマーを用いてPCR増幅し、抽出DNAと実験2)で得られたファージのg23遺伝子の多様性を比較した。その結果、抽出DNA中には、土壌特有のg23遺伝子配列に加えて、大腸菌群および海洋から得られたファージやクローンに類似した塩基配列が観察され、Sphingomonas.に感染するファージ群集より、より多様であることが判明した。1)水田表面水中のファージ群集の特徴を明らかにするため、同一圃場から作土還元層を採取し、そのg23遺伝子の多様性を水田表面水中のファージの多様性と比較した結果、その多様性が類似するとともに、水田表面水中のg23遺伝子に類似した塩基配列が得られた。2)さらに、全国の水田土壌中のg23遺伝子を探索し、青森、秋田、愛知、福岡の各水田土壌中には、類似したg23遺伝子の存在することが明らかとなった。本結果は、ファージの宿主特異性を考えるとき、きわめて興味深い結果であった。3)このような水田におけるg23遺伝子が中国東北部の水田においても当てはまるか否かを調査した。その結果、わが国と中国東北部に特有のg23遺伝子の塩基配列が観察されたものの、大半のg23遺伝子の塩基配列は、共通するものであった。4)昨年度、Sphingomonas属菌に感染するファージ群集を分離し、g23遺伝子の塩基配列の多様性が極めて大きいことを明らかにした。今年度は分離に使用した水田表面水を供試し、表面水から直接DNAを抽出後にg23遺伝子に特異的なプライマーを用いてPCR増幅後、各クローンの多様性をSphingomonas属菌に感染するファージの多様性と比較した結果、その多様性は、Sphingomonas属菌に感染するファージ群集と類似しており、Sphingomonas属菌に感染するファージ群集の多様性が、水田表面水中のg23遺伝子の多様性に匹敵することが判明した。
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KAKENHI-PROJECT-18380051
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18380051
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active repressor domainを利用した転写制御因子の標的の検索
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転写を積極的に抑制する機能をもついわゆるactive repressor domainを利用して、既知の転写制御因子の標的となる遺伝子を単離するための実験系の確立を試みた。癌遺伝子産物/転写活性化因子Mafと、転写抑制因子Mxilのrepressor domainであるSID(Sin3-interaction domain)とのキメラ蛋白質SID-Mafは、期待されたように強い転写抑制能を示した。さらに、非常に強い転写活性化能を持つVP16 activation domainをMafに結合したキメラ蛋白質VP16-Mafを作製し、これらの転写活性化能とChicken embryo fibroblastにおけるtransformation能とを調べたところ、Mafの転写活性化能とtransformationとのあいだに明確な相関間係があることがわかった。すなわち、Mafの標的遺伝子の発現量は、通常の細胞とMafを強制発現させた細胞との差に比べて、SID-MafおよびVP16-Mafを発現する細胞間の差の方がより顕著であることが期待され、したがって、標的遺伝子を単離する上で有用であると考えられた。実際に標的遺伝子を単離するには既存の技術であるSubtractionやcDNA micro arrayなどを利用することが考えられるので、現在これらのキメラMaf蛋白質を恒常的に発現している細胞の確立を進めている。また、これらのキメラMaf蛋白質の発現のON/OFFをコントロールできる系ができればMafの1次標的遺伝子のみを効率よく単離できるであろうと考えられるので、これも同時に試みている。本研究で試みたSIDおよびVP16といった転写制御domainを利用する系は、モデルとして用いたMaf以外の転写因子についてもその標的遺伝子を単離する上で一般的に応用可能かつ有用である。既知の転写制御因子の標的となる遺伝子を単離するための工夫として、転写を積極的に抑制する機能をもついわゆるactive repressor domainとのキメラ転写因子を作製してその性状を調べた。転写活性化因子でもある癌遺伝子Mycに転写抑制因子Mxilのrepressor domain(SID : Sin3-interaction domain)を結合したキメラ蛋白質を構築したところ、Myc結合配列を持つ人工的なreporter geneの発現を抑制することが確認された。しかしながら、Mycの転写活性化能とその重要な生物活性のひとつである細胞のtransformation能とのあいだに明確な相関関係を認めることが出来なかったため、対象を癌遺伝子産物/転写活性化因子Mafに変更して同様の実験を行った。MxilのSIDとMafとのキメラ蛋白質は、これも期待されたように強い転写抑制能を示した。さらに、非常に強い転写活性化能を持つVP16 activation domainをMafに結合したキメラなど一連の組み換え蛋白質を作製し、これらの転写活性化能とchicken emoryo fioroblastにおけるtransformation能とを調べたところ、Mafの転写活性化能はtransformationにとって必須であり、かつMaf自身の転写活性化domainはVP16などのヘテロな転写活性化domainで置換可能であることがわかった。すなわち、Mafについてはその転写活性化能と生物学的機能とのあいだに明確な相関関係があり、Mafは標的遺伝子の転写を活性化することでその機能を発揮するであろうことが推測された。したがって、本研究の目的である標的遺伝子の単離を試みるのに適していると考えられ、次年度以降これを試みる。転写を積極的に抑制する機能をもついわゆるactive repressor domainを利用して、既知の転写制御因子の標的となる遺伝子を単離するための実験系の確立を試みた。癌遺伝子産物/転写活性化因子Mafと、転写抑制因子Mxilのrepressor domainであるSID(Sin3-interaction domain)とのキメラ蛋白質SID-Mafは、期待されたように強い転写抑制能を示した。さらに、非常に強い転写活性化能を持つVP16 activation domainをMafに結合したキメラ蛋白質VP16-Mafを作製し、これらの転写活性化能とChicken embryo fibroblastにおけるtransformation能とを調べたところ、Mafの転写活性化能とtransformationとのあいだに明確な相関間係があることがわかった。すなわち、Mafの標的遺伝子の発現量は、通常の細胞とMafを強制発現させた細胞との差に比べて、SID-MafおよびVP16-Mafを発現する細胞間の差の方がより顕著であることが期待され、したがって、標的遺伝子を単離する上で有用であると考えられた。実際に標的遺伝子を単離するには既存の技術であるSubtractionやcDNA micro arrayなどを利用することが考えられるので、現在これらのキメラMaf蛋白質を恒常的に発現している細胞の確立を進めている。また、これらのキメラMaf蛋白質の発現のON/OFFをコントロールできる系ができればMafの1次標的遺伝子のみを効率よく単離できるであろうと考えられるので、これも同時に試みている。本研究で試みたSIDおよびVP16といった転写制御domainを利用する系は、モデルとして用いたMaf以外の転写因子についてもその標的遺伝子を単離する上で一般的に応用可能かつ有用である。
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KAKENHI-PROJECT-09780625
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09780625
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口腔癌における分泌型microRNAの発現と機能
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本研究では口腔癌患者の血液および唾液に特異的に存在するmicroRNA (miRNA)の同定を試みた。口腔癌患者血清に共通して存在量が増加するmiRNAを17種類、存在が検出できなくなるmiRNAを15種類同定した。その中でも、hsa-miR-181bは口腔癌患者血清のみならず唾液においても特異的にその存在量が著明に増加していた。これらmiRNAは口腔癌の診断に応用できるかもしれない。本研究では口腔癌患者由来の体液中に存在する分泌型miRNAのプロファイルを明らかにした上で、それらmiRNAが含まれているとされるエクソソームのヒト正常口腔粘膜上皮細胞および口腔癌細胞の増殖能に及ぼす影響を検討した。癌の既往のない健常者および口腔癌患者より同意を得た上で血清および唾液を採取し、分泌型miRNAを抽出した。それぞれの検体より抽出された分泌型miRNAを用いてマイクロアレイによる網羅的発現解析を行い、健常者と比較して口腔癌患者で変動する分泌型miRNAの同定を試みた。口腔癌患者血清(10検体)と非担癌健常者血清(10検体)のmiRNAマイクロアレイ解析により、口腔癌患者血清に共通して存在量が増加するmiRNAを17種類、存在が検出できなくなるmiRNAを15種類同定した。その中でも、hsa-miR-181bは口腔癌患者血清のみならず唾液においても特異的にその存在量が著明に増加していた。hsa-miR-181bは白板症から口腔癌への進行に関与していることが報告されていることから唾液中のmiRNAが白板症から口腔癌への進行を促す可能性を示唆した。次に、同一口腔癌患者由来の正常口腔粘膜上皮初代培養細胞と口腔癌初代培養細胞それぞれの培養上清よりエクソソームを抽出し、正常細胞由来のエクソソームで口腔癌細胞を、癌細胞由来のエクソソームで正常細胞を72時間処理したところ、それぞれのエクソソームは各細胞の増殖に全く影響を及ぼさなかった。エクソソームの精製度や濃度など処理条件の詳細な検討が必要であることが示唆された。本研究では口腔癌患者の血液および唾液に特異的に存在するmicroRNA (miRNA)の同定を試みた。口腔癌患者血清に共通して存在量が増加するmiRNAを17種類、存在が検出できなくなるmiRNAを15種類同定した。その中でも、hsa-miR-181bは口腔癌患者血清のみならず唾液においても特異的にその存在量が著明に増加していた。これらmiRNAは口腔癌の診断に応用できるかもしれない。細胞の分化や増殖に関わっていることが知られているmicroRNA (miRNA)は複数の標的遺伝子の発現を細胞内で制御しているが、最近miRNAがヒト体液中に存在することが明らかとなった。この分泌型miRNAは体液中のエクソソーム分画から検出され、細胞間のコミュニケーションツールとして機能している可能性が示唆されている。本研究では、まず口腔癌患者血清(10検体)と非担癌患者血清(10検体)よりmiRNAを抽出し、マイクロアレイ解析を行った。その結果、口腔癌患者に共通して存在量が増加するmiRNAを17種類、存在量が減少あるいは検出できなくなるmiRNAを15種類同定した。つづいて、ヒト口腔癌細胞の増殖に影響を与えるmiRNAを同定するために、ヒトmiRNA knockdown libraryとoverexpression libraryを用いてmiRNAの網羅的機能解析を行った。ヒト918種類に対するmiRNA knockdown libraryを用いたmiRNAの網羅的機能阻害解析では、ヒト口腔扁平上皮癌細胞あるいは唾液腺癌細胞において14種類の癌遺伝子様の機能を有するmiRNAを同定した。その中でもhsa-miR-361-3pはヒト口腔扁平上皮癌細胞の増殖を有意に促進した。次に、1,000種類のヒト合成模倣型miRNA libraryを用いた網羅的過剰発現解析では、ヒト口腔扁平上皮癌細胞あるいは唾液腺癌細胞において17種類の癌抑制遺伝子様miRNAを同定した。特に、hsa-miR-1289の過剰発現は両細胞の増殖を著明に抑制した。以上の結果より、miRNAが口腔癌の診断および治療に有用となる可能性が示唆された。口腔癌患者血清で発現変動するmicroRNAを確認した。さらに、ヒト口腔癌細胞を用いたmicroRNAの網羅的機能解析を行い、口腔癌細胞の増殖に関与するmicroRNAを同定した。以上の結果より、本研究は順調に進展していると考える。今後は、口腔癌患者血清で存在量が変動し、かつヒト口腔癌細胞の増殖に影響を及ぼすmicroRNAに研究対象を絞り、その発現および機能解析を行う。また、正常細胞および口腔癌細胞の分泌するエクソソームについての性状および機能解析も併せて行う。ヒト正常口腔粘膜上皮細胞と口腔癌細胞の培養上清を回収し、ExoQuickにてそれぞれの細胞が分泌するエクソソームを抽出する。正常細胞由来のエクソソームで口腔癌細胞を、癌細胞由来のエクソソームで正常細胞を72時間処理し、エクソソームのそれぞれの細胞の増殖に及ぼす影響を検討する。さらに、それぞれのエクソソーム内に含まれるmiRNAをプロファイルする。つづいて、口腔癌患者および健常者特有の血清microRNA (miRNA)と正常口腔粘膜上皮細胞および口腔癌細胞に特有の分泌型miRNA全ての模倣型miRNAを合成する。これら合成miRNAを、正常口腔粘膜上皮細胞および口腔癌細胞にリポフェクション法にてリバーストランスフェクションする。
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KAKENHI-PROJECT-23659947
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23659947
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口腔癌における分泌型microRNAの発現と機能
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合成miRNA導入後72時間後にWST-8にて細胞数を定量することにより、それぞれの細胞の増殖能を評価する。
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KAKENHI-PROJECT-23659947
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23659947
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多国籍企業によるイノベーションの国際展開とその要因に関する研究
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本研究の目的は、多国籍企業のイノベーション活動が国際的にどう展開されているのかを明らかにし、その要因を分析することである。本研究では、まず経済産業研究所の個票データを用いて、日本に本社を置く多国籍企業のR&D調達の在り方を解明する。次に理論モデルに照らしながら同データを用いて、多国籍企業のイノベーション立地の決定要因を明らかにする。本研究の目的は、多国籍企業のイノベーション活動が国際的にどう展開されているのかを明らかにし、その要因を分析することである。本研究では、まず経済産業研究所の個票データを用いて、日本に本社を置く多国籍企業のR&D調達の在り方を解明する。次に理論モデルに照らしながら同データを用いて、多国籍企業のイノベーション立地の決定要因を明らかにする。
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KAKENHI-PROJECT-19K23233
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K23233
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電離圏・熱圏の春・秋非対称性
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長期間わたって中間圏及び電離圏の観測を行っている、大型大気レーダーであるMUレーダーによって観測された中間圏エコーのデータを解析し、乱流拡散係数を求め、乱流拡散係数が春よりも秋に大きいことを明らかにした。全球モデルによる結果を考慮すると、この乱流拡散係数の春・秋非対称性は、電離圏電子密度の春・秋非対称性の原因となっていると言える。また、タイのチェンマイに設置されたファブリ・ペロー干渉計で観測された熱圏風のデータを解析し、南北方向の熱圏風の春・秋非対称性がプラズマバブル発生頻度の春・秋非対称性の主な原因と考えられることを示した。1.MUレーダーによる電離圏標準観測として電子密度、電子・イオン温度、プラズマドリフト速度の観測が1986年から毎月3日間(1996年以降は、4日連続観測を年間9回)行われてきた。これらのデータを解析し、電子密度、電子・イオン温度、プラズマドリフト速度、及び子午面中性風のデータ・ベースを作成した。2.インドネシア・コトタバンの赤道大気レーダー(EAR)サイトにおいて2003年から観測を行っているGPS受信機のデータを解析し、シンチレーション発生頻度の春・秋非対称性及びその太陽活動サイクルによる違いを調べた。2003-2004年の高太陽活動極大期では、シンチレーション発生頻度は9-10月よりも3-4月に高かったが、2011-2012年においてはその非対称は顕著ではなかった。また、2011-2012年は、2003-2004年とほぼ同程度の太陽活動度であるが、シンチレーションの発生頻度は高かった。これは、シンチレーションの原因であるプラズマバブルの発生には、日没時の東向き電場の大きさだけでなく、他の要因も寄与しているためと考えられる。3.名古屋大学太陽地球環境研究所は、滋賀県信楽の京都大学MUレーダー・サイトにおいて1997年以降、ファブリ・ペロー干渉計(FPI)による熱圏中性大気風速の連続観測を行っている。本研究では、掃天型の観測を行った2000年10月以降にFPIで得られた熱圏中性大気風速データを統計解析し、熱圏中性大気風速の日変化を明らかにするとともに、顕著な南北非対称性があることを見出した。中緯度及び赤道域電離圏は、熱圏中性大気の組成と運動に大きく影響されている。本研究では、電離圏・熱圏の年変化、特に春と秋との違いの原因を解明することにより、電離圏・熱圏結合過程、つまり中性大気・電離大気結合過程の一端を明らかにすることを目的とする。また、近年、下層に位置する中間圏の乱流が熱圏・電離圏に与える影響が大きいことがシミュレーションにより示されており、中間圏乱流が電離圏・熱圏の春・秋非対称性の原因になっている可能性がある。しかし、未だ充分な観測データが得られていない。そこで、本研究では、1986年から現在まで中間圏及び電離圏の観測を行っている、大型大気レーダーであるMUレーダーのデータを解析している。特に、MUレーダーによって観測された中間圏エコーのスペクトル幅から、乱流拡散係数を求め、その季節変化を調べた。その結果、中間圏における乱流拡散係数は、夏季に大きいこと、春よりも秋に大きいことが明らかになった。Qianらによる全球モデルによる結果を考慮すると、夏季には中間圏乱流拡散係数が大きいため、高高度まで乱流による大気組成の混合が起こり、熱圏における酸素原子の割合が小さくなると考えられる。このため、電離圏における電離生成率が減小し、電離圏電子密度が小さくなる。よって、中間圏乱流の季節変化は、夏季において電離圏電子密度が冬季よりも小さくなる冬季異常とよばれる現象の原因となっていることが分かった。同様に、春・秋非対称についてQianらの結果に基づいて考察すると、中間圏乱流拡散係数は春よりも秋に大きいため、熱圏における酸素原子は春よりも秋に小さいと考えられる。この熱圏の組成からは、春よりも秋に電子密度が小さいと予想され、電離圏観測結果と一致する。しかし、熱圏大気の経験モデルであるMSISモデルとは一致しないことから、さらに数値モデルによる定量的な研究が必要である。長期間わたって中間圏及び電離圏の観測を行っている、大型大気レーダーであるMUレーダーによって観測された中間圏エコーのデータを解析し、乱流拡散係数を求め、乱流拡散係数が春よりも秋に大きいことを明らかにした。全球モデルによる結果を考慮すると、この乱流拡散係数の春・秋非対称性は、電離圏電子密度の春・秋非対称性の原因となっていると言える。また、タイのチェンマイに設置されたファブリ・ペロー干渉計で観測された熱圏風のデータを解析し、南北方向の熱圏風の春・秋非対称性がプラズマバブル発生頻度の春・秋非対称性の主な原因と考えられることを示した。1. 1986年以降、MUレーダーにより電離圏標準観測として電子密度、電子・イオン温度、プラズマドリフト速度の観測が毎月3日間(1996年以降は、4日連続観測を年間9回)行われてきたが、これまで2003年以降のデータは殆ど解析されていなかった。本研究では、2003年以降のデータを生データから解析し、電子密度、電子・イオン温度、プラズマドリフト速度を導出した。2.国土地理院が所有するGPS観測網データを利用して電離圏全電子数を算出し、1998年から2007年までに得られた全電子数の季節・地方時変化を統計的に調べた。
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KAKENHI-PROJECT-23540523
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23540523
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電離圏・熱圏の春・秋非対称性
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その結果、全電子数は、春・秋に極大をもつ半年周期変化を示すこと、春・秋に非対称性があり、春の方が秋よりも全電子数が大きいことが明らかになった。3.名古屋大学太陽地球環境研究所は、滋賀県信楽の京都大学MUレーダー・サイトにおいて1997年にファブリ・ペロー干渉計(FPI)を設置し、連続観測を行っている。本研究では、掃天型の観測を行った2000年10月以降にFPIで得られた熱圏中性大気風速データを統計解析した。その結果、夜間において、南北風は真夜中付近に最も南向きが大きくなり、東西風は日没時において東向きで時間とともに西向きに転じる日変化を示すことが明らかになった。また、南北風は顕著な春・秋非対称性を示し、春の方が秋よりも夜間を通して南向きに大きいことが明らかになった。南向き中性風は、電離圏プラズマを消滅率が小さい高高度へ磁力線に沿って持ち上げるため、電子密度の増大をもたらす。従って、全電子数の春・秋非対称性の原因は、中性大気風速の春・秋非対称性であると考えられる。本研究の成果は、熱圏の中性大気風速が電離大気に及ぼす影響が大きいことを示しており、中性大気・電離大気間の相互作用の研究に貢献する。中緯度及び赤道域電離圏は、熱圏中性大気の組成と運動に大きく影響されている。本研究では、電離圏・熱圏の年変化、特に春と秋との違いの原因を解明することにより、電離圏・熱圏結合過程、つまり中性大気・電離大気結合過程の一端を明らかにすることを目的とする。また、近年、下層に位置する中間圏の乱流が熱圏・電離圏に与える影響が大きいことが示されており、中間圏乱流が電離圏・熱圏の春・秋非対称性の原因になっている可能性がある。しかし、未だ充分な観測データが得られていない。そこで、本研究では、1986年から現在まで中間圏及び電離圏の観測を行っている、大型大気レーダーであるMUレーダーによって観測された中間圏エコーのスペクトル幅から、乱流拡散係数を求め、その季節変化を調べた。その結果、中間圏における乱流拡散係数は、夏季に大きいこと、春よりも秋に大きいことが明らかになった。Qianらによる全球モデルによる結果を考慮すると、中間圏乱流拡散係数は春よりも秋に大きいため、熱圏における酸素原子は春よりも秋に小さいと考えられる。この熱圏の組成からは、春よりも秋に電子密度が小さいと予想され、電離圏観測結果と一致する。しかし、熱圏大気の経験モデルであるMSISモデルとは一致しないことから、さらに数値モデルによる定量的な研究が必要であると考えられる。一方、赤道域においてプラズマバブルの発生頻度に春・秋非対称性が見られることが知られており、その原因として日没時における東西方向の熱圏風によるダイナモ電場や、南北方向の熱圏風による電場の抑制効果が考えられていたが、熱圏風の直接観測はこれまで行われていなかった。本研究では、タイのチェンマイに設置されたファブリ・ペロー干渉計で観測された熱圏風のデータを解析し、南北方向の熱圏風の春・秋非対称性が電離圏の春・秋非対称性の主な原因と考えられることを示した。超高層大気物理学本研究では、MUレーダーで観測された電離圏物理量を統計解析しているが、MUレーダーは、電離圏を観測するための非干渉散乱(Incoheren t Scatter; IS)レーダーとしては周波数が低いために受信電波の信号対雑音比(SN比)が低く、外来雑音の影響を受けやすく、データを十分に吟味しながらデータ処理を行う必要がある。
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KAKENHI-PROJECT-23540523
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23540523
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医薬品として期待されるラブダンおよびクレロダン型ジテルペノイドの合成
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Forskolinはインド産シソ科植物の根茎から単離され、高度に酸化された構造を持つラブダン型ジテルペノイドである。この化合物は細胞内情報伝達物質であるアデニレートシクラーゼを活性化する(cAMP賦活作用)。そのため広範な生理・薬理活性、特に強力な血圧降下作用、強心作用で知られ、Forskolinを用いる研究が極めて多く報告されている。同時に単離された1,9-DideoxyforskolinはcAMP賦活作用を持たないものの、強い選択的糖輸送阻害作用を持ち、アルツハイマー、糖尿病、癌などグルコースの異常取り込みに起因する疾病の治療に対し期待が持たれている。本研究では、西日本に広く分布するシダレゴヘイゴケより大量に単離されるPtychantin Aより、Forskolinおよび1,9-Dideoxyforskolinへの変換を行なうことを目的とした。1,9-Dideoxyforskolinの合成:Ptychantin Aの7位アセトキシ基の選択的加水分解、6、7位のアセトナイド保護、続いて11位水酸基の選択的酸化を行った。1位水酸基は固相法によるチオカルボニルイミダゾイル化、ラジカル開裂により除いた。アセトナイドの加水分解、7位水酸基の選択的アセチル化により8段階、全収率37%で1,9-Dideoxyforskolinの最初の合成に成功した。Forskolinの合成:上記合成の中間体の11位カルボニル基を11,12-エノールエーテルとして保護した後、1位の酸化、続くNa/t-BuOH還元により1位の立体化学を反転させた。11,12-エノールエーテルを加水分解後あらためて9,11-エノールエーテルへと変換した。エノールエーテルのエポキシ化、加水分解により1位α-水酸基を導入し、アセタールの脱保護、アセチル化により12段階、全収率12%でForskolinの化学合成に成功した。Forskolinはインド産シソ科植物の根茎から単離され、高度に酸化された構造を持つラブダン型ジテルペノイドである。この化合物は細胞内情報伝達物質であるアデニレートシクラーゼを活性化する(cAMP賦活作用)。そのため広範な生理・薬理活性、特に強力な血圧降下作用、強心作用で知られ、Forskolinを用いる研究が極めて多く報告されている。同時に単離された1,9-DideoxyforskolinはcAMP賦活作用を持たないものの、強い選択的糖輸送阻害作用を持ち、アルツハイマー、糖尿病、癌などグルコースの異常取り込みに起因する疾病の治療に対し期待が持たれている。本研究では、西日本に広く分布するシダレゴヘイゴケより大量に単離されるPtychantin Aより、Forskolinおよび1,9-Dideoxyforskolinへの変換を行なうことを目的とした。1,9-Dideoxyforskolinの合成:Ptychantin Aの7位アセトキシ基の選択的加水分解、6、7位のアセトナイド保護、続いて11位水酸基の選択的酸化を行った。1位水酸基は固相法によるチオカルボニルイミダゾイル化、ラジカル開裂により除いた。アセトナイドの加水分解、7位水酸基の選択的アセチル化により8段階、全収率37%で1,9-Dideoxyforskolinの最初の合成に成功した。Forskolinの合成:上記合成の中間体の11位カルボニル基を11,12-エノールエーテルとして保護した後、1位の酸化、続くNa/t-BuOH還元により1位の立体化学を反転させた。11,12-エノールエーテルを加水分解後あらためて9,11-エノールエーテルへと変換した。エノールエーテルのエポキシ化、加水分解により1位α-水酸基を導入し、アセタールの脱保護、アセチル化により12段階、全収率12%でForskolinの化学合成に成功した。
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KAKENHI-PROJECT-17035031
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17035031
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多母集団パス解析による炎症関連物質を考慮した歯周病と動脈硬化の関係の性差の解明
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歯周病と動脈硬化の関係に性差があると予想され、その性差に炎症関連物質が関与していると考えられる。本研究は、炎症関連物質として多価不飽和脂肪酸(PUFA)と高感度C-Reactive Protein(hsCRP)を測定し、歯周組織の状態とPUFA量、hsCRPの関係に性差が認められるか分析を行った。平成20年度久山町研究における歯科健診受診者451人を分析対象とした。多母集団分析の結果、60歳以上の女性では、歯周病とhsCRPの関係、歯周病とn-3系PUFA量の関係は有意に認められたが、男性では両者の関係とも有意でなかった。よって、女性のほうが、歯周病と炎症状態の関係が強いことが示唆された。当初の予定であった平成24年度の健診受診者の血清を取得することは困難となったため、今年度は、冷凍保存されている平成20年度の歯科健診受診者の血清を用いて、多価不飽和脂肪酸(PUFA)濃度を測定した。また、歯周組織の健康状態とPUFAの関係について性差があるか分析を行った。平成20年度の歯科健診受診者は465名(男性193名、女性272名)で、平均年齢は55.3±12.2歳であった。歯周組織の健康状態として、平均アタッチメントロス(AL)の深さは男性で2.6±1.0 mm、女性で2.3±0.8 mmと性差が認められた(p < 0.001)。PUFAはn-3系とn-6系があり、n-3系はドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA)を測定し、n-6系はγリノレン酸(DHLA)とアラキドン酸を測定した。n-3系ではDHAとEPAとも男性のほうが女性より高い値であった。また、n-6系ではDHLAが男性のほうが高い値であった。DHAとEPAの和をn-3系PUFA量、DHLAとアラキドン酸の和をn-6系PUFA量とした場合、n-3系PUFA量は性差が認められ、男性のほうが高い値を示した。歯周組織の健康状態とPUFAの関係を評価する際に、平均AL3mm以上の有無で歯周組織状態を評価した。その結果、60歳以上の対象者では、平均ALが3mm以上の者は男性ではn-3系PUFA量が多く、女性では逆にn-3系PUFA量が少なかった。歯周組織の健康状態はn-3系PUFA量と関係があり、その関係には性差が認められた。歯周病と動脈硬化の関係に性差があると予想され、その性差に炎症関連物質が関与していると考えられる。本研究は、炎症関連物質として多価不飽和脂肪酸(PUFA)と高感度C-Reactive Protein(hsCRP)を測定し、歯周組織の状態とPUFA量、hsCRPの関係に性差が認められるか分析を行った。平成20年度久山町研究における歯科健診受診者451人を分析対象とした。多母集団分析の結果、60歳以上の女性では、歯周病とhsCRPの関係、歯周病とn-3系PUFA量の関係は有意に認められたが、男性では両者の関係とも有意でなかった。よって、女性のほうが、歯周病と炎症状態の関係が強いことが示唆された。平成24年度は、福岡県の久山町生活習慣病予防健診で、40歳以上の久山町住民を対象に歯科健診を実施し、2,654人(男性1,191人、女性1,463人)が受診した。久山町住民の口腔健康状態として、現在歯数、歯周組織状態を評価し、平成23年度の歯科疾患実態調査(全国調査)と比較した。尚、歯周組織状態はCommunity Periodontal Index(CPI)で評価し、CPIコード3以上(歯周ポケット深さ4mm以上を保有)を歯周病と定義した。全国調査のデータと比較すると、久山町住民の59歳以下(1,049人)は、現在歯数や歯周病の有病率は同程度であった。一方、久山町住民の60歳以上(1,605人)では、全国調査のデータと比較すると、現在歯を20歯以上保有している者がやや多く、歯周病の有病率はやや高かった。口腔健康状態の性差について解析をしたところ、59歳以下の者で、現在歯を20歯以上保有している者は男性で92.6%、女性は96.9%であり、統計学的に有意な差が認められた(p=0.003)。60歳以上において、男性は66.0%、女性は64.3%で男女差はなかった。また、歯周病の有病率は、59歳以下で男性は38.7%で、女性は27.6%で性差が認められ(p < 0.001)、60歳以上で男性は47.5%で、女性は38.6%と年齢に関わらず男女差があった(p < 0.001)。平成24年度の歯科健診の結果から口腔健康状態には性差が認められた。平成25年度は口腔健康状態と多価不飽和脂肪酸濃度、動脈硬化の評価指標の関係における性差について解析する予定である。平成24年度に歯科健診を実施し、歯周病の評価はできているが、血清を頂いていないため多価不飽和脂肪酸の評価ができていない。
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KAKENHI-PROJECT-24792356
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24792356
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多母集団パス解析による炎症関連物質を考慮した歯周病と動脈硬化の関係の性差の解明
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また、動脈硬化のデータを提供して頂いていないため、歯周病との関連を検討できていない。平成24年度の健診受診者の血清を提供して頂けない場合は、既に冷凍保存されている平成2023年度の健診受診者の血清を用いて、多価不飽和脂肪酸濃度を測定する。平成2023年度は、歯科健診を実施しているため歯周病の評価ができる。横断データで歯周病と多価不飽和脂肪酸濃度の関係を調べた後、平成24年度の歯科健診結果から歯周病の変化を評価し、歯周病の変化と多価不飽和脂肪酸、動脈硬化の関係の性差について分析を行う。平成24年度の健診受診者の血清について提供を未だ受けておらず、多価不飽和脂肪酸の解析ができていないため、当該助成金が生じた。平成25年度は、歯周病の変化と多価不飽和脂肪酸、動脈硬化の関係の性差について分析を行う。
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KAKENHI-PROJECT-24792356
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特異積分と関数空間の研究(偏微分方程式を視野に入れて)
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特異積分作用素を中心として、応用上重要な積分作用素の性質を調べた。特にHardy空間、Morrey空間、Herz空間上の有界性を調べた。多重線形特異積分作用素とその重みつき評価についても研究した。特異積分作用素を中心として、応用上重要な積分作用素の性質を調べた。特にHardy空間、Morrey空間、Herz空間上の有界性を調べた。多重線形特異積分作用素とその重みつき評価についても研究した。(1)一般化された特異積分作用素のハーティー空間上での有界性に関しては以下の結果を得た.n次元ユークリッド空間上の電気2重層ポテンシャル作用素これはconvolution型ではない特異積分作用素のハーディー空間上での有界性を「T1=0という強い条件を仮定しないで示す」という一連の研究のなかで得られたものである.以前に我々が導入した重みのクラスにおいて,修正Hardy-Littlewood最大作用素の重み付きL^p評価を得ていたが,Dachun Yang氏の論文(2008)でこの重みのクラスが最良であるかどうかが問題として提出されていた.この問題に対して反例を作ることにより,この重みのクラスが最良であることを示した.(3)今年度から始めた多重線形特異積分素については,山形大学の飯田,佐藤氏との共同研究で以下の結果を得た.多重線形fractional積分(簡単のため本文で2重の場合を記す)が重みつきMorrey空間の直積空間上で有界であることを示した.これはTangとKomori and Shiraiの結果の拡張になっている.「特異積分と関数空間の研究」という主テーマの下で,今年度は(1)Herz空間とそのcritical indexに相当するCMO空間上での特異積分作用素の有界性,(2)fractionalintegralのMorrey空間上での重みつき評価,(3)近年重要性が増している多重線形作用素の性質について集中的に研究を行った.(1)特異積分作用素のHerz空間上での有界性はよく知られているが,その端点に相当するBp空間ではp>1でないと有界にはならない.松岡勝男氏と共同でp=1のとき弱型の有界性を示した.さらにBpより広いCMOから弱CMOへの有界性を示した.重みつき評価も示した.Fractional integralのHerz空間K(α,p,q)上での有界性はpがcritical indexより小さい場合は知られていた.pがcritical indexより大きい場合はBMO,リプシッツ空間へ写されることを示し,Hardy-Littlewood-Sobolevの結果を改良した.(2) Fractional integralが「Morrey空間Lp,λからLq,λへの有界作用素である」というAdamsの結果の重みつき評価を,新しいweightのクラスを導入することにより示した.飯田毅,佐藤圓治の両名との共同研究である.一般化された特異積分作用素の様々な関数空間上での有界性を示すということが大きな目標の一つであった。これに関連して[b,p(x,D)]f(x)=b(x)・p(x,D)f(x)-p(x,D(bf)(x)の形の擬微分作用素p(x,D)と掛け算作用素bの交換子の局所ハーディー空間h^p(R^n)上での有界性を示すことができた。Fractional integral operatorに関して2つの結果をえることができた。Morrey空間上での重みつき評価を得た。この結果は重みのついていない場合はAdamsの不等式に相当するのもである。さらに多重線形fractionalintegralについても同様の結果を得た。これらの結果は山形大学の飯田毅士、佐藤圓治両氏との共同研究である。Fractional integralが臨界指数のHerz空間からBMOへの有界作用素であることを証明できた。これはfractional integralが臨界指数においてL^pからBMOへの有界作用素であるという結果を改良したことになる。なぜならHerz空間の方がL^pより広い空間であるので。Morrey空間とHerz空間を統合するような形の新しい空間であるBσ空間を導入し、その空間上での最大関数や特異積分の有界性を示した。茨城大学の中井英一、京都大学の澤野嘉宏、日本大学の松岡勝男氏らとの共同研究である。私が主催した研究集会は調和解析セミナー(大阪大学)。この研究集会では多重線形作用素とMorrey空間に関する多くの研究発表があった。科研費で補助した研究集会は実解析学シンポジウム(信州大学)、発展方程式シンポジウム(東海大学)、実関数論、関数解析合同シンポジウム(東京女子大学)。
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KAKENHI-PROJECT-21540199
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21540199
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生活文化の世代間伝承による持続可能な消費ー消費者教育のパラダイムシフトー
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生活文化ESC(Education for Sustainable Consumption)は世代間伝承による持続可能な消費に関する教育である。大学における5つのアクティブラーニング試行事例により、日本型生活文化ESCの特徴と可能性を整理した。生命の維持・生活の質を重視する生活者の視点から、リカレント(循環)型社会を創造する知の体系生活の価値に関する研究として、経済の量的拡大を基本的価値ないし目標としない、生活文化を捉えた。生活文化ESC(Education for Sustainable Consumption)は世代間伝承による持続可能な消費に関する教育である。大学における5つのアクティブラーニング試行事例により、日本型生活文化ESCの特徴と可能性を整理した。生命の維持・生活の質を重視する生活者の視点から、リカレント(循環)型社会を創造する知の体系生活の価値に関する研究として、経済の量的拡大を基本的価値ないし目標としない、生活文化を捉えた。平成23年度は食領域の生活文化研究の蓄積をもとに、講義・演習・実習など授業形態や、セミナー・アンケートなど、方法・連携先を変えた消費者教育の試行調査を、関東・関西の3大学4キャンパスにおいて実施し、各事例の有効性を検討した。事例1)生活学セミナーの参画:84歳の女性農業者が取り組む6次産業型の活動を紹介するセミナーに参加した139名のコア学生の意識変容をアンケート調査から検証した。事例2)食文化講義でのレポート活用:授業ごとに学生が提出したリアクションペーパーをもとに、授業を受講することで知識が蓄積し、行動や意識に変化を与えるプロセスを探った。事例3)調理実習:地域密着の調理実習授業によって、生産と消費の現場を経験することで持続可能な消費に、実習授業が与える影響を検討した。事例4)学外の講師によるプロシューマー演習:6次産業化や伝統文化を再価値化する現場をマネジメントする講師からの演習を受講後にその内容を学生がプレゼンテーションし、産業と生活文化が結びつくことで、生活価値観の変容が促されることを確認した。事例5)台湾と日本の金融に関するアンケート:家計管理や金銭に関する台湾と日本の意識や行動の比較を行う調査を学生が実施し、金銭感覚の世代間伝承の国や地域による差を考察した。持続可能な消費のための教育(ESC:Education for Sustainable Consumption)は消費生活の現場を改善するための実践的学び生涯学習である.平成25年度は大学における消費者教育をアクティブラーニングとして体系的に捉えることとした。1アクティブラーニングを主体形成のための能動的学びと定義し2和食がユネスコの文化遺産に登録されたことと関わりながら大学における食のアクティブラーニングについて3つの事例を試行し3国内・国外での金融経済教育の動きをもとに、2012年に続き台湾との比較調査や日本の家計管理など学校教育を通じた生活主体形成教育の流れと意義を整理した。事例1(上村協子)家庭生活の経済的研究を行った3名の女性経済学者の系譜を解明。大正期日本の家政学のなかで、松平友子が家事経済学で無償の経済について論じ、戦後、大学の家政学部で伊藤秋子実証的な家庭経済学に発展させ、御船美智子が生活創造時代の生活協同にむけた生活者の経済の理論形成をしている流れを整理した。事例2(江原絢子)ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された日本人の伝統的食文化としての和食は「社会的慣習」としての食文化を指している。和食テキストを使った際の理解度とその内容について調査を行った。事例3(片平理子)神戸旬菜(地元の野菜)を使った新しい製品を開発し地域住民のためのイベントで販売する活動が学生に与えた影響を報告事例4(山岡義卓)横浜の都市農業に注目して市内のレストランや消費者に横浜の地場の野菜を届ける活動をしている事業者の応援プロジェクトに参加した学生の活動を検討事例5(藤野次雄)日本と中国・台湾の家庭や学校での金融教育の違いをアンケート調査によって明らかにした。事例6(萩原なつ子)フィンランドの消費者市民教育ヒアリング調査を行った。平成25年度報告書作成「消費者教育の推進に関する法律」(平成24年12月13日施行)により消費者市民社会の概念が示され自治体に地域協議会設置の努力義務が課せられた。本研究と推進法は、日本の消費者教育がパラダイムを転換し持続可能な消費を目指す変革期を迎えているとの認識している点で共通する。行政の動向を踏まえつつ、天野正子の現代生活者論にもとずき最終消費を生命生活の再生産であるとの捉える論説を整理した。生活文化ESCの5つの試行事例(1セミナー2食文化3調理実習4プロシューマー教育5金融経済教育)を継続実施した。また御船美智子の家事労働と消費に関する概念について図式化した。事例1)セミナー実施:セミナーが学生の行動にあたえる影響を観察するため、食品ロス削減と社会福祉政策を結びつけるフードバンクの活動や被災地での生活復興支援活動に取り組む団体によるセミナーを実施した。事例2)食文化教育:食育・環境教育に地域の生活文化の視点を加えて総合的な視野から活動を再検討し、中学校で行ったアンケート結果から授業の有効性を検証した。事例3)調理実習:片平は御船美智子が、消費生活を、1選択2購買3転化4最終消費5処理6廃棄リサイクルの6段階に分けたなかでの3転化に注目して「消費と生活文化」の関係について検討する。生活文化は転化の段階で使われる知識や技術やその底流に存在する価値観ととらえる可能性を示した。
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KAKENHI-PROJECT-23300262
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23300262
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生活文化の世代間伝承による持続可能な消費ー消費者教育のパラダイムシフトー
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事例4)プロシューマー教育:大学教育でキャリア教育と重ねながら能動的・主体的な学び(アクティブ・ラーニング)として消費者教育を捉えることでその意義と効果測定の方法が明確となる可能性を示唆した。事例5)金融経済教育:OECDが2008年5月に組成した「金融教育に関する国際ネットワーク会議(INFE)」などにも注目しつつ台湾との国際比較アンケートを実施した。平成23年度、24年度の報告書を作成した。平成26年度は理論に立ち戻り『生活者』が消費者(consumer)や市民(citizen)と異なる日本の自生え(独自)の言葉である点に注目し、御船美智子2000「生活者の経済」、天野正子2012「現代生活者論」をもとに日本型生活文化ESCを整理した。4年間の研究を集約し、生命の維持、生活の質を重視する生活者の視点から持続可能な社会を創造する生活者の学『現代生活学』を提示することとした。経済の量的拡大を目標としない、地域に根付いた生活の協同による持続可能な社会の形成が消費者教育フェスタなどでも目指されつつある。家政学や家庭科教育では産業依存社会に対抗的(オルタナティブ)な、衣食住や家計管理・生活設計など地域や家庭の知を蓄積・伝承してきた。第1に大学における食文化・調理実習教育を通じて家事労働の付加価値(独自化)論を示した。第2に金融教育の日本・台湾・韓国・フィリピン・中国の5か国比較と、日本の松平友子1925「家事経済学」から伊藤秋子へ、さらに御船美智子へと発展した家庭生活の経済的研究の系譜を組み合わせ再評価した。研究の総括に天野正子『現代生活学』定義をもとに5つのリカレント(循環)型社会を提示し現代生活学を展望した。26年度が最終年度であるため、記入しない。家政学生活経済学26年度が最終年度であるため、記入しない。研究初年度で、生活文化ESCとして(1)セミナー(2)講義(3)実習(4)演習(5)アンケート実施など、5つの試行調査を関東・関西の3大学、4キャンパスで実施した。アンケート実施に当たっては、大学の倫理委員会の承認をえることができた。産学官民連携で、コア学生に対する調査を継続的に行う体制を整えてきた。効果検証方法や、九州などの地域を追加するかは検討中である。さらに、大学における消費者教育指針の英訳を行い、ドイツ調査、東南アジアでの調査に活用している。日本型ESC法構築サイクルを継続して実施してきた。平成23年度生活文化ESC方法の開発に5つの試行事例を取組の柱とした。平成24年度は、消費者教育推進法をはじめ消費者行政に大きな動きがあり本研究でも、国内外の消費者政策を分析することとして、個人・家族・地域・国家・生活圏・グローバル経済という空間的な検討を行った。平成25年度は大学における消費者教育をアクティブラーニングとして体系的に捉え、若者が地域の持続可能な消費生活にポジティブ・コミットメントするケースを中心に事例を蓄積してきた。また家庭生活の経済的研究の系譜から、持続可能な消費生活に関する理論の変容を検討した。
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KAKENHI-PROJECT-23300262
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23300262
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植物病原菌のダイカルボキシイミド耐性とその発現機構の解明
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植物病原性糸状菌におけるダイカルボキシイミド耐性に深く関わると考えられている浸透圧調節系遺伝子のうち,ヒスチジンキナーゼ遺伝子をBipolarismaydis(Cochliobolus heterostrophus)からクローニングし,遺伝子構造を明らかにするとともに遺伝子破壊株の作製を試みた。本菌の3種のヒスチジンキナーゼ遺伝子のうち,bmhk1は各種生物のヒスチジンキナーゼの保存配列HboxとNbox特異的ディジェネレートプライマーを用いて,得られたものである。bmhk1は5つのORFを含む全長約6kbpからなる遺伝子であり,全域にわたってnik-1遺伝子との高い相同性を保持していた。また,nik-1に特徴的にみられる92アミノ酸残基から成る繰り返し配列も高度に保存されていた。また,HboxとGlbox,ClboxとDbox特異的ディジェネレートプライマーを用いて得られたbmhk2,bmhk3は,それぞれGlomerella cingulataのchk-1遺伝子とVibrio choleraeのLuxQ遺伝子との相同性を有していた。これらの遺伝子の部分配列をトランスフォームベクターpCB1004にクローニングし,Bipolaris maydis野生型株を形質転換した。その結果,bmhk2,bmhk3の遺伝子破壊株が得られたがbmhk1については得られなかった。bmhk2,bmhk3の遺伝子破壊株の表現型は野生型と変わらなかった。植物病原性糸状菌におけるダイカルボキシイミド耐性のメカニズムを明らかにするため,ヒスチジンキナーゼ情報伝達系に関与する遺伝子群(hisK,MAPKKK,MAPKK,MAPK)のうち,hisKならびMAPK遺伝子のクローニングを試みた。供試菌としては,Botrytis cinerea,BipoarismaydisおよびNeurospora crassaを用いた。Saccharomyces cerevisiaeなどで明かとなっているこれら遺伝子の推定アミノ酸配列を基に,PCRプライマーを設計,各供試菌株よりこれらのPCRプライマーを用いて,遺伝子の増幅を試みた。その結果,hisK遺伝子について,Bipolaris maydisでは3種類のものが,Neurospora crassaでは既知のhisK遺伝子(nik-1)の他,新たな1種類が増幅された。Botrytis cinereaではhisKと相同性のある遺伝子配列は得られなかった。MAPKについては,すべての供試菌で,相同性のある遺伝子が得られた。次に,得られたPCR産物を用い,ゲノミックライブラリーをスクリーニングし,各遺伝子の全長を含むクローンの探索を行った。現在,これらクローンの塩基配列を解析し,遺伝子構造を明らかにしている。また,得られたPCR産物を用いて,各供試菌の野生型株の遺伝子破壊実験を行い,遺伝子破壊株と既知突然変異株との表現型比較ならびに,交配試験による,突然変異遺伝子の同定をも試みている。植物病原性糸状菌におけるダイカルボキシイミド耐性に深く関わると考えられている浸透圧調節系遺伝子のうち,ヒスチジンキナーゼ遺伝子をBipolarismaydis(Cochliobolus heterostrophus)からクローニングし,遺伝子構造を明らかにするとともに遺伝子破壊株の作製を試みた。本菌の3種のヒスチジンキナーゼ遺伝子のうち,bmhk1は各種生物のヒスチジンキナーゼの保存配列HboxとNbox特異的ディジェネレートプライマーを用いて,得られたものである。bmhk1は5つのORFを含む全長約6kbpからなる遺伝子であり,全域にわたってnik-1遺伝子との高い相同性を保持していた。また,nik-1に特徴的にみられる92アミノ酸残基から成る繰り返し配列も高度に保存されていた。また,HboxとGlbox,ClboxとDbox特異的ディジェネレートプライマーを用いて得られたbmhk2,bmhk3は,それぞれGlomerella cingulataのchk-1遺伝子とVibrio choleraeのLuxQ遺伝子との相同性を有していた。これらの遺伝子の部分配列をトランスフォームベクターpCB1004にクローニングし,Bipolaris maydis野生型株を形質転換した。その結果,bmhk2,bmhk3の遺伝子破壊株が得られたがbmhk1については得られなかった。bmhk2,bmhk3の遺伝子破壊株の表現型は野生型と変わらなかった。
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KAKENHI-PROJECT-11760035
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11760035
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企業遺伝子の形成過程および継承過程とその影響に関する研究
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企業による経営行動にはイノベーションのような社会に寄与する行動と、企業不祥事のような反社会的行動が存在し、その展開状況は特定企業に集中または連続・反復する場合が多い。本研究はこうした現象の要因としての個別企業が保有する企業遺伝子を企業対象アンケート調査により解明し、二種の企業遺伝子の存在を検証するとともに、創業期間の長期化に伴い、企業遺伝子の独自性が強化されていく傾向の存在を確認した。企業による経営行動にはイノベーションのような社会に寄与する行動と、企業不祥事のような反社会的行動が存在し、その展開状況は特定企業に集中または連続・反復する場合が多い。本研究はこうした現象の要因としての個別企業が保有する企業遺伝子を企業対象アンケート調査により解明し、二種の企業遺伝子の存在を検証するとともに、創業期間の長期化に伴い、企業遺伝子の独自性が強化されていく傾向の存在を確認した。本研究の目的は企業遺伝子の存在とその機能および継承過程の解明を図ることであり、平成22年度における研究実績については、企業遺伝子に関し蓄積してきた研究成果の追加的理論研究の実施と、わが国の企業を対象としたアンケート調査による実証を主たる内容としている。その際、本研究の遂行前提の一つとして位置づける「企業の特異的行動における連鎖性および非連鎖性と企業特性との因果性における企業遺伝子の関係性」に関し、企業による特異的行動のうち、(1)非連鎖性を帯びる特異的行動としての「革新」、(2)連鎖性を帯びる特異的行動としての「企業不祥事などに代表される企業の負の経営行動」の2点に求めることから、関連理論研究としての文献調査として、(1)企業革新に関連する領域、(2)企業不祥事・企業不正行為等に関連する領域、(3)生命体における遺伝子および脳神経機能、神経行動に関する領域、の3領域を中心に行った。特に平成22年度実施の研究における主たる活動は、文献調査から得られる知見と理論的裏付けを基に構築する「企業遺伝子の存在」と「その機能および継承過程」に関する仮説に対する検証作業を実際の企業を対象としたアンケート調査の実施にあり、わが国の企業のうち、主要企業指標としての日経225対象企業、創業100年を超える老舗企業から371社を対象とした、FAXを用いたアンケートを実施し、うち63社から有効回答を得た。なお得られたデータについては、各質問項目ごとに統計処理を行い、本研究における最大焦点である企業遺伝子の存在に関する質問に対する有意性の高い結果を導き出すことに成功した。本研究は企業における特異的行動(革新活動や不祥事等)の原因と過程の解明を図ることを研究契機とし、企業組織編成要因である人間に内在する遺伝子と、それによる思考および意思決定とその結果としての行動にみる諸要因が、企業組織にも適応できるという研究代表者独自の研究視点であるニューロマネジメント概念に基づき、「企業遺伝子の存在確認と機能についての分析」および「組織における企業遺伝子の継承過程の解明」を、企業対象アンケート調査およびヒアリング調査に基づいて実施する点にある。平成22年度は、企業対象アンケート調査およびヒアリング調査による検証を主とし、日経指標対象企業225社(日経225企業)および、創業経過期間100年±10年にある企業(100年企業)、株式会社帝国データバンクの定義に基づく老舗企業(老舗企業)の3つのカテゴリーに属する計353社(有効回答数60件)を対象としたFAX方式によるアンケート調査においては、日経225企業の53.6%、100年企業の71.4%、老舗企業の64.3%において企業遺伝子の存在に対する肯定的回答を得たことにより、企業遺伝子の存在を学術的に初めて検証した。平成23年度は、上記調査結果の精査を踏まえ、(1)企業遺伝子の解読過程に関する考察、(2)企業遺伝子の培養過程に関する考察、(3)企業遺伝子の組み換え過程に関する考察、(4)企業遺伝子の継承過程に関する考察、に関する理論的考察を実施した。特に上記のアンケート調査によって得られた企業遺伝子の存在事実に関しては、「日経225型企業遺伝子」と「老舗企業型企業遺伝子」という異なる二種の遺伝子を抽出することができ、企業としての規模および組織特性、文化を醸成しつつある企業と、長期間の創業期間において経営志向性や組織特性および文化を熟成しえた企業においては保有する企業遺伝子に差異が生じることを検証した意義は大きい。
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KAKENHI-PROJECT-22653046
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22653046
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脳梗塞再発予防のための治療薬および検査機器の医療経済評価に関する研究
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この成果を踏まえ、より精緻な研究を実施するために、分析に用いるデータソースであるレセプト情報等データベースから第三者提供を申し出るために、厚生労働省保険局が定めた手続きに沿って、レセプト情報等の提供に関する申出を行った。申出内容は、平成21年4月診療分から平成30年12月診療分(9年9ヶ月分)の(1)医科(入院・入院外)対象の傷病名(疑いを除く)のレセプト、(2) DPC対象の傷病名(疑いを除く)のレセプト(3)調剤のレセプト、(4)歯科のレセプトから全保険者のレセプトから、抽出条件の傷病名(疑い病名を除く)を有するレセプトのハッシュ値1またはハッシュ値2について、対象期間中の「医科」「DPC」「調剤」レセプトをすべておよび抽出条件の歯科診療行為コードを有するレセプトのハッシュ値1またはハッシュ値2について対象期間中の「歯科」レセプトをすべて抽出することとした。申出の結果、平成30年12月19日付厚生労働省発保1219第2号により、平成30年10月25日付でレセプト情報等の提供に関する申出について承諾を得たことから、データ抽出・加工条件について手続きを進めている。これらを基に、国立保健医療科学院研究倫理審査委員会へ研究倫理申請を行い、平成31年3月28日の研究倫理審査専門委員会によって承認された(承認番号:NIPH-IBRA#12234)。さらに2年目の実施計画であるレセプト情報を用いた分析手法の手順書に着手しており、「提供を受けたデータベースから解析用データセットを生成するまでのプログラム処理の手順」を作成が完了している。現時点では「解析計画書」「変数定義書」「集計表様式」を作成し、分担研究者との検証作業を進めている。しかしながらレセプト情報等データベースの利用申出承諾以降、データが厚生労働省から研究代表者へ届くまではかなりの時間を要することが他の研究報告からも明らかになっている。そのため現在までに申出したデータは提供されていない。そのため分析モデルに係る有効性や費用のパラメーターを算出することまでには至っていない。このような進捗状況を踏まえ「概ね順調に進展している」とした。レセプト情報等データベースの利用申出承諾以降、データが厚生労働省から研究代表者へ提供され次第、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)と植込型心電図記録計(ICM)それぞれの医療経済評価の分析モデルを作成し、有効性指標と費用を国内臨床試験結果とNDBからそれぞれ比較する。NOACに対する分析モデルは分担研究者の小寺が予備的研究で作成したモデルを基に、医療経済評価の代表的手法で患者の状態を確率で表すマルコフモデルを用いて患者一人ひとりを個別に追跡するマイクロシミュレーション分析を行うことを検討している。また、ICMは潜因性脳梗塞発症患者に対するICMの関連医療費である1「脳卒中関連疾病費用減」は「検査費用増」を上回るかどうか、2ICMを使用することで再発率が低下するならば、検査費用増の価値があるかどうかを明らかにする。分析モデルはマルコフモデルを用いる。レセプトの提供にあたってはNOACやICMを使用する循環器専門医が配置されている医療機関と配置されていない医療機関を分類し、当該情報を識別した様式でレセプトの提供を受ける。これにより専門医の配置状況と患者の有害事象等のアウトカムと医療費等の費用を比較し、従来の既存治療と比べた費用対効果を明らかにする。そのため全国医療機関の循環器専門医の人数を網羅したデータを収集・加工し、医療機関マスタの作成を進めている。このようなマスタ作成方法を含めたレセプト情報を用いた分析手法の手順書については、昨年度の研究計画を継続し「対象患者の同定」、「対象技術の抽出」、「比較技術の抽出」「医療費用の集計」について、第三者が再現可能にするための「解析計画書」「変数定義書」「集計表様式」を作成する。この成果を踏まえ、より精緻な研究を実施するために、分析に用いるデータソースであるレセプト情報等データベースから第三者提供を申し出るために、厚生労働省保険局が定めた手続きに沿って、レセプト情報等の提供に関する申出を行った。申出内容は、平成21年4月診療分から平成30年12月診療分(9年9ヶ月分)の(1)医科(入院・入院外)対象の傷病名(疑いを除く)のレセプト、(2) DPC対象の傷病名(疑いを除く)のレセプト(3)調剤のレセプト、(4)歯科のレセプトから全保険者のレセプトから、抽出条件の傷病名(疑い病名を除く)を有するレセプトのハッシュ値1またはハッシュ値2について、対象期間中の「医科」「DPC」「調剤」レセプトをすべておよび抽出条件の歯科診療行為コードを有するレセプトのハッシュ値1またはハッシュ値2について対象期間中の「歯科」レセプトをすべて抽出することとした。申出の結果、平成30年12月19日付厚生労働省発保1219第2号により、平成30年10月25日付でレセプト情報等の提供に関する申出について承諾を得たことから、データ抽出・加工条件について手続きを進めている。これらを基に、国立保健医療科学院研究倫理審査委員会へ研究倫理申請を行い、平成31年3月28日の研究倫理審査専門委員会によって承認された(承認番号:NIPH-IBRA#12234)。
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KAKENHI-PROJECT-18K09989
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K09989
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脳梗塞再発予防のための治療薬および検査機器の医療経済評価に関する研究
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さらに2年目の実施計画であるレセプト情報を用いた分析手法の手順書に着手しており、「提供を受けたデータベースから解析用データセットを生成するまでのプログラム処理の手順」を作成が完了している。現時点では「解析計画書」「変数定義書」「集計表様式」を作成し、分担研究者との検証作業を進めている。しかしながらレセプト情報等データベースの利用申出承諾以降、データが厚生労働省から研究代表者へ届くまではかなりの時間を要することが他の研究報告からも明らかになっている。そのため現在までに申出したデータは提供されていない。そのため分析モデルに係る有効性や費用のパラメーターを算出することまでには至っていない。このような進捗状況を踏まえ「概ね順調に進展している」とした。レセプト情報等データベースの利用申出承諾以降、データが厚生労働省から研究代表者へ提供され次第、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)と植込型心電図記録計(ICM)それぞれの医療経済評価の分析モデルを作成し、有効性指標と費用を国内臨床試験結果とNDBからそれぞれ比較する。NOACに対する分析モデルは分担研究者の小寺が予備的研究で作成したモデルを基に、医療経済評価の代表的手法で患者の状態を確率で表すマルコフモデルを用いて患者一人ひとりを個別に追跡するマイクロシミュレーション分析を行うことを検討している。また、ICMは潜因性脳梗塞発症患者に対するICMの関連医療費である1「脳卒中関連疾病費用減」は「検査費用増」を上回るかどうか、2ICMを使用することで再発率が低下するならば、検査費用増の価値があるかどうかを明らかにする。分析モデルはマルコフモデルを用いる。レセプトの提供にあたってはNOACやICMを使用する循環器専門医が配置されている医療機関と配置されていない医療機関を分類し、当該情報を識別した様式でレセプトの提供を受ける。これにより専門医の配置状況と患者の有害事象等のアウトカムと医療費等の費用を比較し、従来の既存治療と比べた費用対効果を明らかにする。そのため全国医療機関の循環器専門医の人数を網羅したデータを収集・加工し、医療機関マスタの作成を進めている。このようなマスタ作成方法を含めたレセプト情報を用いた分析手法の手順書については、昨年度の研究計画を継続し「対象患者の同定」、「対象技術の抽出」、「比較技術の抽出」「医療費用の集計」について、第三者が再現可能にするための「解析計画書」「変数定義書」「集計表様式」を作成する。次年度使用額が生じた理由は以下の通りです。当初研究計画では、今年度中に厚生労働省より第三者提供によってレセプト情報データベースの提供を受け、必要な解析ソフトウェア等の調達および人件費や外部委託費を用いた作業計画を実行する予定であった。しかしながら本研究のために申出を行い厚生労働大臣の許可を得られているにもかかわらず、現時点でレセプト情報データベースの提供が完了していない。これは本研究以外のレセプト情報データベースを用いた研究で生じている事象であり、やむを得ない状況である。このような理由から、レセプト情報データベースの提供を受けた後可及的速やかに研究計画を実施するため、次年度使用額が生じた。
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KAKENHI-PROJECT-18K09989
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K09989
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新しいトランスメンブランシグナリングとしての糖鎖シグナルネットワーク
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本研究は、糖鎖遺伝子のマニピュレーションによる糖鎖構造改変が細胞応答や細胞機能の制御に及ぼす影響を分子レベルで解明することを目的として、具体的には、EGF受容体、カドヘリン-カテニン系、血管新生因子、マトリックス分解プロテアーゼの機能制御に関して解析を開始した。成果の一部は、5月にスイスで開催された「Protein traffic, Glycosylation, and Human Health」に関する国際シンポジウムで発表され、諸外国の一線の研究者と糖鎖の機能に関して、最新の情報が交わされた。この後急遽、基盤研究(S)「糖鎖機能の統合的把一握:グライコミクス」(課題番号13854010)(平成13年度平成17年度)が採択されたので、本研究はそちらで発展継続することとなった。本研究は、糖鎖遺伝子のマニピュレーションによる糖鎖構造改変が細胞応答や細胞機能の制御に及ぼす影響を分子レベルで解明することを目的として、具体的には、EGF受容体、カドヘリン-カテニン系、血管新生因子、マトリックス分解プロテアーゼの機能制御に関して解析を開始した。成果の一部は、5月にスイスで開催された「Protein traffic, Glycosylation, and Human Health」に関する国際シンポジウムで発表され、諸外国の一線の研究者と糖鎖の機能に関して、最新の情報が交わされた。この後急遽、基盤研究(S)「糖鎖機能の統合的把一握:グライコミクス」(課題番号13854010)(平成13年度平成17年度)が採択されたので、本研究はそちらで発展継続することとなった。
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KAKENHI-PROJECT-13307007
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13307007
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無反動マニピュレータの研究
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本研究では、まず平面に拘束された柔軟ベース(フレキシブルアーム)を製作し、その先端に制御可能な2リンク剛体マニピュレータを付加した。実験装置TREPにおいて、軌道計画方法として、二つの無反動軌道による動作と、1つの折りたたみ状態のアームの動作の組み合わせによる、3-phase path planningを提案した。これにより、剛体マニピュレータの動作中の反動が最小限におさえられることが確認された。さらに、剛体マニピュレータの動作による反動のみならず、外力などの外乱による柔軟ベースへの反動をおさえ、その反動による柔軟ベースの振動を抑制するため、振動抑制制御が導入された。PTP動作、無反動動作、あるいは3-phase動作と振動抑制制御との組み合わせで、システムパフォーマンスの向上が実験によって確認された。そして、実験装置において、第二剛体マニピュレータを付加し、実験装置TREP-IIを製作した。この実験機において、単腕での作業と双腕での作業の両方の場合実験を行ってきた。結果としは、以下に示す。・双腕のうちの片方のマニピュレータのみで作業をするときに、もう片方のマニピュレータによってその反動を補償する反動補償制御を提案し、無反動制御の式をもとに制御則を導いた。そして、当研究室の平面モデル実験装置モデル実験装置TREPに制御則を適用し、その有効性を確かめた。・双腕で物体を搬送する作業を考え、そのときの動作パターンを解析し、それぞれについての条件式を求めた。さらに、その条件式と無反動制御の式を組み合わせ、双腕で物体を搬送するときの動作についての無反動制御の制御則を導いた。そして、制御式を実験装置TREPに適用し、それぞれの場合についての実験を行った。その結果から、振動については有効であることが確かめられた。・双腕動作の条件式と従来の振動抑制制御則から、双腕動作時の振動抑制制御則を導いた。そして、実験装置TREPでの実験によりその有効性を確かめた。さらにPTP制御と振動抑制制御を組合せ、反動によって生じた振動を抑制するこにも有効であることがわかった。本研究では、まず平面に拘束された柔軟ベース(フレキシブルアーム)を製作し、その先端に制御可能な2リンク剛体マニピュレータを付加した。実験装置TREPにおいて、軌道計画方法として、二つの無反動軌道による動作と、1つの折りたたみ状態のアームの動作の組み合わせによる、3-phase path planningを提案した。これにより、剛体マニピュレータの動作中の反動が最小限におさえられることが確認された。さらに、剛体マニピュレータの動作による反動のみならず、外力などの外乱による柔軟ベースへの反動をおさえ、その反動による柔軟ベースの振動を抑制するため、振動抑制制御が導入された。PTP動作、無反動動作、あるいは3-phase動作と振動抑制制御との組み合わせで、システムパフォーマンスの向上が実験によって確認された。そして、実験装置において、第二剛体マニピュレータを付加し、実験装置TREP-IIを製作した。この実験機において、単腕での作業と双腕での作業の両方の場合実験を行ってきた。結果としは、以下に示す。・双腕のうちの片方のマニピュレータのみで作業をするときに、もう片方のマニピュレータによってその反動を補償する反動補償制御を提案し、無反動制御の式をもとに制御則を導いた。そして、当研究室の平面モデル実験装置モデル実験装置TREPに制御則を適用し、その有効性を確かめた。・双腕で物体を搬送する作業を考え、そのときの動作パターンを解析し、それぞれについての条件式を求めた。さらに、その条件式と無反動制御の式を組み合わせ、双腕で物体を搬送するときの動作についての無反動制御の制御則を導いた。そして、制御式を実験装置TREPに適用し、それぞれの場合についての実験を行った。その結果から、振動については有効であることが確かめられた。・双腕動作の条件式と従来の振動抑制制御則から、双腕動作時の振動抑制制御則を導いた。そして、実験装置TREPでの実験によりその有効性を確かめた。さらにPTP制御と振動抑制制御を組合せ、反動によって生じた振動を抑制するこにも有効であることがわかった。本研究では,主に柔軟ベース上ロボットの軌道計画及び運動制御に関する研究を行っている.これまで,1リンクのフレキシブルアームと,2リンクの剛体マニピュレータより構成された柔軟ベース上ロボットTREPを製作し,柔軟ベース部に反動を生じないような剛体マニピュレータの軌道,いわゆる,無反動軌道を導出し,その有効性をコンピュータシミュレーション,実験によって確認した.実験機において,従来の柔軟ベース部のフレキシブルアームは1枚の板ばねのアームであったため,動作中の剛体マニピュレータの姿勢によってはねじれが生じていた.そこで,フレキシブルアームを新たに2枚の板ばねによる平行板に改良した.これによって,フレキシブルアームのねじれが生じにくくなった.また,柔軟ベース上ロボットの軌道計画方法として,2つの無反動軌道による動作と,1つの折りたたみ状態のアームの動作の組み合わせによる,3-phase path planningを提案した.これにより,剛体マニピュレータの動作中の反動が最小限におさえられることが期待できる.さらに,剛体マニピュレータの動作による反動のみならず,外力などの外乱による柔軟ベースへの反動をおさえ,その反動による柔軟ベースの振動を抑制するため,振動抑制制御が導入された.PTP動作,無反動動作,あるいは3-phase動作と振動抑制制御との組み合わせで,システムパフォーマンスの向上が実験によって確認された.本研究では,主に柔軟ベース上ロボットの軌道計画及び運動制御に関する研究を行なう。
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KAKENHI-PROJECT-07805027
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07805027
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無反動マニピュレータの研究
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これは、従来のロボットと違い、土台に反動を返さない様々なマニピュレータの制御方法を確立しようとするものである。我々はこれまで,2枚の板ばねで平面に拘束された柔軟ベース(フレキシブルアーム)を製作し,その先端に制御可能な一組の2リンク剛体マニピュレータを付加し基本的な実験を行ってきた.今回、この実験機に,二組目の剛体マニピュレータアームを作成し,柔軟ベース上に取り付けた。しかし,双腕化により,先端部の重量が増加し,実験機が静止状態の場合でもフレキシブルアームにねじれを生じ,剛体マニピュレータの姿勢に変化を生じさせた.そこで,フレキシブルアームの2枚の板ばねの間に3枚の中間板を置き、平面内のフレキシブル性を大きく損なうことなく垂直方向の剛性を向上させるための改良を行った.その結果,フレキシブルアーム部の剛性が増しマニピュレータに大きな姿勢変化は生じなくなった。しかし、このことによりフレキシブルアーム部の柔軟性が変わったので,新しく剛性特性を調べた.現在,二組目の剛体マニピュレータの配線を行ない、その動きを確認し実験を始めたところである。年度内に、これまで確立をしてきた制御アルゴリズムを用いて、2組のマニピュレータを用いた場合の反動抑制制御の基礎的実験を行う予定である。本研究では、主に柔軟ベース上ロボットの軌道計画及び運動制御に関する研究を行なってきた。これは、従来のロボットと違い、土台に反動を返さない様々なマニピュレータの制御方法を確立しようとするものである。我々はこれまで、2枚の板ばねで平面に拘束された柔軟ベース(フレキシブルアーム)を制作し、その先端に制御可能な二組の2リンク双腕剛体マニピュレータを付加し(実験装置TREP-II)、単腕での作業と双腕での作業の両方の場合実験を行ってきた。結果としは、以下に示す。・双腕のうちの片方のマニピュレータのみで作業をするときに、もう片方のマニピュレータによってその反動を補償する反動補償制御を提案し、無反動制御の式をもとに制御則を導いた。そして、当研究室の平面モデル実験装置TREPに制御則を適用し、その有効性を確かめた。・双腕で物体を搬送する作業を考え、そのときの動作パターンを解析し、それぞれについての条件式を求めた。さらに、その条件式と無反動制御の式を組み合わせ、双腕で物体を搬送するときの動作についての無反動制御の制御則を導いた。そして、制御式を実験装置TREPに適用し、それぞれの場合についての実験を行った。その結果から、振動については有効であることが確かめられた。・双腕動作の条件式と従来の振動抑制制御則から、双腕動作時の振動抑制制御則を導いた。そして、実験装置TREPでの実験によりその有効性を確かめた。さらにPTP制御と振動抑制制御を組合せ、反動によって生じた振動を抑制することにも有効であることがわかった。
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KAKENHI-PROJECT-07805027
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07805027
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教育委員会の「活性化」を規定する教育長のリーダーシップ特性要因の分析
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1)本研究は、教育委員会の「活性化」過程における市町村教育長のリーダーシップの役割・機能が実際にどのようなものであるかをフィールド調査を通して明らかにするとともに、リーダーシップの有効性についても実証的に検証することを目的としていた。2)本研究の主な結果は、以下の通りである。(1)フィールド調査によれば、教育委員会の「活性化」過程における教育長のリーダシップの果たす役割は大きく、とりわけ、教育長の教育政策に対する理解度、教育ビジョン、そして首長部局との政治的交渉能力の如何が教育委員会の活性化に影響を与える一つの要因になっている。(2)しかし、教育委員会の単独事業数基づいた実証的研究を見る限り、教育委員会の活性化度と教育長のリーダーシップとの間には必ずしも統計的に有意な関係はない。(3)教育委員会の会議の活発度と教育委員会のリーダーシップとの間にも、統計的に有意な関係は認められない。(4)教育長のリーダーシップの発揮度は、教育長の職業的出身によって差異が認められる。すなわち、教職出身者の方が、行政職出身者よりも、その職務の遂行において、よりリーダーシップを発揮していると知覚している。(5)なお、教育長のキャリア分析の結果、教育長の職能発達段階について興味深い知見を得た。3)今後は、教育委員会の「活性化」を測る尺度をもっと精緻化し、教育長のリーダーシップとの関係を検討する必要がある。なお、本研究成果の一部を、平成12年5月に開催される西日本教育行政学会において発表する予定である。1)本研究は、教育委員会の「活性化」過程における市町村教育長のリーダーシップの役割・機能が実際にどのようなものであるかをフィールド調査を通して明らかにするとともに、リーダーシップの有効性についても実証的に検証することを目的としていた。2)本研究の主な結果は、以下の通りである。(1)フィールド調査によれば、教育委員会の「活性化」過程における教育長のリーダシップの果たす役割は大きく、とりわけ、教育長の教育政策に対する理解度、教育ビジョン、そして首長部局との政治的交渉能力の如何が教育委員会の活性化に影響を与える一つの要因になっている。(2)しかし、教育委員会の単独事業数基づいた実証的研究を見る限り、教育委員会の活性化度と教育長のリーダーシップとの間には必ずしも統計的に有意な関係はない。(3)教育委員会の会議の活発度と教育委員会のリーダーシップとの間にも、統計的に有意な関係は認められない。(4)教育長のリーダーシップの発揮度は、教育長の職業的出身によって差異が認められる。すなわち、教職出身者の方が、行政職出身者よりも、その職務の遂行において、よりリーダーシップを発揮していると知覚している。(5)なお、教育長のキャリア分析の結果、教育長の職能発達段階について興味深い知見を得た。3)今後は、教育委員会の「活性化」を測る尺度をもっと精緻化し、教育長のリーダーシップとの関係を検討する必要がある。なお、本研究成果の一部を、平成12年5月に開催される西日本教育行政学会において発表する予定である。1.本研究は、教育長のリーダーシップ行動に焦点を当てながら、教育委員会の「活性化」がどのように図られているか、その活性化の過程とダイナミズムを、フィールド調査を通しながら検討した。2.その結果、次のようなことが明らかにされた。(1)教育委員会の「活性化」の問題を捉える場合、新しい教育情報が効果的に生み出され、活用され、普及していく、いわばイノベーション過程全体に教育長が実際にどのように係わっているかを詳細に解明する必要がある。(2)教育委員会の「活性化」を促すためには、教育委員会の政策立案能力を抜本的に高める必要がある。そのためには、教育長の教育ビジョン設定能力と政策立案能力の向上とそのための研修の充実が極めて重要となる。また、彼らをサポートする幹部事務局職員の資質能力の向上も強く求められる。(3)新しい教育政策を効果的に実施するためには、地方自治体の長や議会に対する対応も重要となってくる。教育長にはかなり強力な政治的リーダーシップの発揮が求められていることも看過すべきではない。(4)なお、今後、教育委員会の「活性化」と教育長のリーダーシップやその他の要因がどうのような影響を与えるかを分析するにあたっては、活性化の尺度として、新しい単独事業、会議の活発さの度合、事務局職員のモラールなどを、また、独立変数としては、財政力指数、教育委員会の規模、地方議会の政治的安定度、住民の教育に対する関心度、首長の教育に対する理解度などを活用することが望ましい。3.今後は、本研究で得た知見を一般化できるかどうかを確かめるために、約700の市町村教育委員会を対象とした実証的研究を実施してみる必要がある。なお、本研究成果は、平成11年度中国四国教育学会で発表する予定である。1)本研究は、教育委員会の「活性化」過程における教育長のリーダーシップ行動の役割や機能の解明とその有効性について検証することを目的としていた。2)本研究の結果、次のようなことが明らかにされた。(1)教育委員会の単独事業数を見る限り、教育委員会の活性化度と教育長のリーダーシップ行動との間には必ずしも統計的に有意な関係はない。(2)教育委員会の会議の活発度と教育長のリーダーシップの発揮度との間には、統計的に有意な関係は認められない。(3)教育長のリーダーシップの発揮度は、教育長の職業的出身によって差異が認められる。すなわち、教職出身者の方が、行政職出身者よりも、その職務の遂行において、よりリーダーシップを発揮していると知覚している。
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KAKENHI-PROJECT-10610261
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10610261
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教育委員会の「活性化」を規定する教育長のリーダーシップ特性要因の分析
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(4)なお、本研究係わって、教育長のキャリア分析をしたところ、教職出身の教育長のキャリアは、教師(22歳)-社教主事(43.8歳)-指導主事(44歳)-教頭(47歳)-管理主事(48歳)-校長(53歳)-教育長(61歳)の段階を踏むことが、また、行政職出身者のキャリアは、職員(21歳)-係長(33歳)-課長補佐(39歳)-議会事務局長(47歳)-病院事務長(49歳)-部長(50歳)-教育長(55歳)の段階をそれぞれ踏むことが明らかとなった。3)今後は、教育委員会の「活性化」を測る尺度をもっと精緻化し、教育長のリーダーシップとの関係を検討する必要がある。なお、本研究の成果は、平成12年5月に開催される西日本教育行政学会でその一部を発表する予定である。
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KAKENHI-PROJECT-10610261
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偏光を用いた脳神経機能・組織の術中顕微鏡下イメージングの開発
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光学的特徴による脳神経機能や術中の組織の弁別を目的として、偏光を用いた脳神経外科手術中の術中顕微鏡イメージングを検討した。ラットを用いた実験では、反射照明を用いた偏光顕微鏡では、複屈折の差や変化で脳神経組織や機能を捉えることは困難であった。一方、余分な散乱光を軽減することにより、表面より深部の情報が可視的に得られた。これらの結果から、実際の術野で用いることができる顕微鏡を試作した。光学的特徴による脳神経機能や術中の組織の弁別を目的として、偏光を用いた脳神経外科手術中の術中顕微鏡イメージングを検討した。ラットを用いた実験では、反射照明を用いた偏光顕微鏡では、複屈折の差や変化で脳神経組織や機能を捉えることは困難であった。一方、余分な散乱光を軽減することにより、表面より深部の情報が可視的に得られた。これらの結果から、実際の術野で用いることができる顕微鏡を試作した。偏光を用いて複屈折という指標から組織の機能を可視的に同定を試みると共に、偏光の特性を生かした脳神経外科手術に有用な顕微鏡下での観察系を開発することが本研究の目的である。まず前者の検討のため、組織の微弱な複屈折の観測条件を通常の偏光顕微鏡下に小生物を実験に用いて設定した。その際、波長板(鋭敏色板)の挿入角は、通常用いる45度ではなく、条件によっては小さい挿入角の方が色調のコントラストが強く観察できることを確認した。これは透過・反射観察ともに同様であった。複屈折の同定のみであれば赤色や緑色など単色光の利用も有用であったが、形態の把握が不充分となるため本研究の目的には必ずしも沿うものではなかた。諸条件を暫定的に設定して上記の系で動物実験に移行した。ラット人工呼吸管理下に、坐骨神経の電気刺激を行い運動感覚野ならびに坐骨神経の観察を行った。鏡視下肉眼では明かな複屈折の変化の同定はできなかった。表面の散乱光成分の除去を目的として近赤外光を用いても同様であった。ハイスピードカメラを用いて単色光で同様の検討を行い、加算平均による処理も試みたところ、刺激に伴うなんらかの変化が誘発されるようであったが、非常に小さな変化でありまた振動などに伴うアーチファクトの除去が困難であり複屈折の変化とは断定できるものではなかった。本研究のようなマクロな領域での観察はラットを使った実験系はかならずしも適切ではないこともわかり、次年度以降は臨床で偏光観察の可能な機器を作成することを優先し、その過程で近赤外光な照明の適切な波長を明らかにしていくこととした。偏光を用いて複屈折という指標から組織の機能を可視的に同定を試みると共に、偏光の特性を生かした脳神経外科手術に有用な顕微鏡下での観察系を開発することが本研究の目的である。前者について、前年度から継続して脳神経組織の複屈折の鏡視下観察を様々な条件下に試みてきたが、反射光での観察は、表面の散乱光が除去できないことなどから、困難であることがわかった。今後、鏡視下肉眼観察ではなくマシンビジョンを用いた観察を検討していく予定とした。一方、ラットを用いた実験系において、偏光を用いて逆に反射光をカットして組織の観察を行うと、平常光での観察とかなり見え方が異なり、条件によっては微細な構造がコントラスト良く観察され、細い血管や神経、あるいは組織の弁別に有用であることがわかってきた。このことから、上記の検討と平行して、手術用顕微鏡と基本構成を同じくする実体顕微鏡で反射光による偏光観察ができるようにすることを試みた。この際、既存の顕微鏡を単純に改造するのみでは偏光観測に充分な光学系を満たさないことがわかった。同様に、従来型の既存の手術用顕微鏡の改造では偏光観察が困難であることもわかった。また、偏光照明の方法や照明に用いる光の波長や平行度などが大きく観察結果に影響することもわかった。これらをふまえて次年度は、従来型の手術用顕微鏡ではなく、上記のこれまで得られた要件を満たす観察に適切な顕微鏡の開発を行う予定とする。前年度までの検討をもとに、単眼鏡筒を用いた偏光観測の観察系を新たに組み立てた。当初、同軸落射型の照明を用いて構築したが十分な結果が得られないため、さらに照明に関する検討を重ね、最終的にリング型照明が比較的良好であったためそれを用いてプロトタイプを作成した。しかし、光源の光量が不足するなどいくつかの問題を解決できず、実際の術野での有用性を確認するには至らなかった。従来の偏光顕微鏡を用いた複屈折に関する基礎研究も平行して行ったが、ラット脳の観察において、これまで反射観測で困難と思われた複屈折の同定が、絞りを狭く設定することで肉眼的にある程度観察可能なことがわかった。ただしこの方法では観察範囲が極めて狭い範囲に限られてしまい、手術野への応用は困難と思われた。またラットでの実験系においても呼吸による体動で連続的な観察が不可能であり時間的変化の観察はできず、現状では機能との関連を調べることは困難であった。一方、当初から継続していた小生物(ミジンコ)のモデルでの検討も継続したが、こちらは、これまで得られた観察条件の工夫により従来指摘されていない筋組織が初めて同定されたため、学会報告した。これまでの結果からは、当初の目的である複屈折という指標から組織の機能を顕微鏡下に可視的に同定・弁別することは、実際の術野のような広い範囲では困難であることがわかった。
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KAKENHI-PROJECT-21659336
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21659336
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偏光を用いた脳神経機能・組織の術中顕微鏡下イメージングの開発
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しかしながら、狭い領域での定性的な評価の可能性は残されており、また、これを肉眼的観察にこだわらずマシンビジョンを用いれば、近赤外光などの非可視光を用いることで散乱を押さえた観察が有用となる可能性がある。
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KAKENHI-PROJECT-21659336
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支持運動系のバイオメカニクスとその応用
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支持運動系の機能と構造の特性理解ならびに研究手法に進歩を得た。筋収縮のモデル化を目指して重要な知見が得られた(赤沢)。ヒト膝関節の等尺性トルク,関節角度,積分筋電図の間の関係を満足する非線形モデルを構築したところ,関節角度の増大につれて筋の弾性係数が正から負へ変化することがわかった。複合運動からなる肩関節運動を正確に捉え,そのメカニズムを明らかにした。足関節の動的安定性を拮抗筋トルクの平衡として解析した(石田)。独自に開発したシステムによって関節の接触圧をもとめ,関節構成体の役割を明らかにした。関節の安定性,適合性と構造の劣化の関連,あるいは人工関節の設計などに大きな貢献が期待される(原)。関節機構が良好に維持される秘密は,多モード潤滑機構にあるとして,関与する機構を解明してきた。特に滑液の組成と粘度,摩擦係数の関係を明らかにし,関節の病態理解に資するところが大きい(村上)。骨と結合組織の連鎖からなる脊柱の安定性を包括的に解明した(金田)。すなわち,脊椎の機能単位を死体から取り出して安定性のメカニズムを詳細に検討し,これを前後方から手術的に固定した場合の固定法の優劣を,強度テストによって明らかにした。脊柱運動の実際を記録する方法についても工夫を重ね,生体内における腰椎の荷重条件についても貴重な知見が発表された。脳性麻痺による頚のアテト-ゼ運動が早期に脊椎症を惹き起こす事例に鑑みて,脊椎における変性疾患を,加齢現象ではなく,微小外傷の蓄積による構造劣化として説明した(小野)。椎間板に繰り返し負荷を加えて,その変化をバイオメカニカルに,また組織学的に明らかにし,実際の変性椎間板と比較して仮説を実証しようとした。小動物における脊椎症モデル開発とその構造特性変化を証明する手法についても実りが多かった。支持運動系を脊柱、関節、筋肉に分け、以下の成果が得られた。1)脊柱:in vivoでは、健常人腰椎屈曲伸展運動のX線撮影による動態分析により、椎間板の連続変形挙動のデータを得た。また、腰椎不安定性の術中計測の結果をまとめ、変性に伴う剛性値の低下と固定操作に伴う剛性値の回復を明示した。in vitroでは、人腰椎運動単位の安定性に果たす各構成要素の役割を明らかにした。また、家兎腰椎への繰り返し捻り負荷試験を行い、繰り返し荷重による剛性値の漸減を示し、その組織学的対応を調査中である。2)関節:キネマティクスの分野では、磁気センサシステムを用いて、肩複合体、頸椎の三次元運動データを得た。ダイナミクスの面では、足関節の角度変化に伴う関節モーメントの変化から、関節の剛性、粘性を推定する方法につき検討を行っている。関節荷重伝達の分野では、感圧ゴムセンサを使って股関節モデルを用いた荷重の方向による関節内部荷重伝達様式の基本的知見を得た。また、人脛骨に衝撃圧縮荷重作用時の力学的異方性、応力一歪関係、粘弾性を明らかにした。さらに、下肢アライメントや膝屈曲角の変化に伴う大腿脛骨関節内部の荷重伝達様式の変化を明示した。関節潤滑の分野では、各種人工膝関節モデルを用いた歩行シミュレータ試験で潤滑モードを評価し、形状適合性に優れた円筒型か生体軟骨に近い弾性率の摩擦面のモデルでは、中粘度の潤滑液が供給されれば、弾性流体潤滑状態を実現できることを明示した。そして粘度低下時には接触が生じるため、多モード適応潤滑機能が必要とされることが示唆できた。3)筋肉:弛緩時、等尺性収縮時における健常人の関節を他動的に屈伸させ筋肉に加わる張力、変位を計測するシステムを構成し、その過渡的な応答と筋モデルを用いて筋の弾性係数を推定するアルゴリズムを作成した。この有用性を母指筋に適応して確認し、下肢筋に適用し係数推定を行った。前年度に引き続き支持運動系を脊椎、関節、筋肉にわけ研究調査を進め、以下の結果を得た。1)脊椎関連以前に作成した繰り返し荷重負荷による家兎脊椎症モデルを用いて、椎間関節も含めた組織学的解析をすすめた。また、そうした繰り返し荷重が脊椎単位の力学特性をどのように変化させているかをねじり負荷についてin vitroで計測し、その不安定性が増大してくることを示した。以上より疲労現象として脊椎症を見做しうる可能性を示した。(小野)In vitroでの脊椎安定性評価により、人腰椎の剪断に対する椎間関節の重要性、胸椎における肋椎関節の重要性を示した。In vivoではX線連続動態撮影法による不安定腰椎の動態、椎間板の変形挙動を、腰椎疾患を有する患者群に対象を広げて調査中であり、また、椎弓根スクリュー創外固定応用による生体内荷重装置の患者群への応用を開始した。(金田)2)関節関連豚膝関節を用いて、動的荷重を与えた際の関節内部接触圧力分布を測定した。静的荷重時に比べ動的荷重時には大きな圧力が作用しており、その際の圧力の、部位による違い、時間的変化を示した。衝撃荷重作用時の関節動揺性、荷重分散能が確認され、衝撃荷重と関節不安定性の密接な関連性が推察された。(原)人工膝関節モデルの歩行シミュレータ試験により、低摩擦低磨耗を維持するために、以前より推奨している多モード適応潤滑機構の必要性を示した。関節液の構成成分の粘度特性、摩擦磨耗特性への影響を明らかにした。さらに計算機による膝関節の形状解析と接触解析により、転がり運動が摩擦の過酷度を低減していることを示した。
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KAKENHI-PROJECT-04237106
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04237106
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支持運動系のバイオメカニクスとその応用
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(村上)3)筋肉関連長母指屈筋の粘性および弾性係数の推定法を確立し、両係数と等尺性張力の比例関係およびその個体差を示した。また膝関節のトルク、角度、下肢筋筋電図を計測するシステムを試作し、膝伸筋の粘弾性が等尺性トルクと共に増大するという結果を得た。(赤澤)直立姿勢を保持しているときの種々の条件下での足関節周囲の筋の剛性、粘性を調査し、条件が困難になるほど筋の弾性係数、粘性係数が増加し、身体の前傾増大が起きていることを示した。こうした関節インピーダンスの増加が姿勢の安定性確保に有利に働いていると推察した。(石田)支持運動系の機能と構造の特性理解ならびに研究手法に進歩を得た。筋収縮のモデル化を目指して重要な知見が得られた(赤沢)。ヒト膝関節の等尺性トルク,関節角度,積分筋電図の間の関係を満足する非線形モデルを構築したところ,関節角度の増大につれて筋の弾性係数が正から負へ変化することがわかった。複合運動からなる肩関節運動を正確に捉え,そのメカニズムを明らかにした。足関節の動的安定性を拮抗筋トルクの平衡として解析した(石田)。独自に開発したシステムによって関節の接触圧をもとめ,関節構成体の役割を明らかにした。関節の安定性,適合性と構造の劣化の関連,あるいは人工関節の設計などに大きな貢献が期待される(原)。関節機構が良好に維持される秘密は,多モード潤滑機構にあるとして,関与する機構を解明してきた。特に滑液の組成と粘度,摩擦係数の関係を明らかにし,関節の病態理解に資するところが大きい(村上)。骨と結合組織の連鎖からなる脊柱の安定性を包括的に解明した(金田)。すなわち,脊椎の機能単位を死体から取り出して安定性のメカニズムを詳細に検討し,これを前後方から手術的に固定した場合の固定法の優劣を,強度テストによって明らかにした。脊柱運動の実際を記録する方法についても工夫を重ね,生体内における腰椎の荷重条件についても貴重な知見が発表された。脳性麻痺による頚のアテト-ゼ運動が早期に脊椎症を惹き起こす事例に鑑みて,脊椎における変性疾患を,加齢現象ではなく,微小外傷の蓄積による構造劣化として説明した(小野)。椎間板に繰り返し負荷を加えて,その変化をバイオメカニカルに,また組織学的に明らかにし,実際の変性椎間板と比較して仮説を実証しようとした。小動物における脊椎症モデル開発とその構造特性変化を証明する手法についても実りが多かった。
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KAKENHI-PROJECT-04237106
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04237106
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古典籍の奥書・識語の総合的研究
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1.奥書・識語データの蒐集状況(1)公刊されている目録・書目等からのデータ蒐集・仮入力。主な対象は以下の通り。『新修成簣堂文庫善本書目』『図書寮典籍解題続文学篇・歴史篇』『柿衛文庫目録書冊篇』『龍門文庫善本書目』(2)公刊されているマイクロフィルムからのデータ蒐集・仮入力。主な対象は以下の通り。静嘉堂文庫蔵歌書、大東急記念文庫蔵国文学関係書。(3)原本の直接調査によるデータ蒐集・仮入力。京都大学附属図書館中院文庫蔵国文学関連書(特に歌書が中心)。2.汎用データベースソフトウェアの設計1.で進めつつあるデータ仮入力に合わせて、データベースソフトの設計を詰めつつある。具体的には、*フィールドを可変長にする*ガイダンス行を設ける*基本的に画面設計はキャラクタベースとする等である。パソコン上で、ユーザーが周辺機器を増設することなく、かつ、汎用性を持たせるため、の二点も、考慮にいれる事とした。1.奥書・識語データの蒐集状況(1)公刊されている目録・書目等からのデータ蒐集・仮入力。主な対象は以下の通り。『新修成簣堂文庫善本書目』『図書寮典籍解題続文学篇・歴史篇』『柿衛文庫目録書冊篇』『龍門文庫善本書目』(2)公刊されているマイクロフィルムからのデータ蒐集・仮入力。主な対象は以下の通り。静嘉堂文庫蔵歌書、大東急記念文庫蔵国文学関係書。(3)原本の直接調査によるデータ蒐集・仮入力。京都大学附属図書館中院文庫蔵国文学関連書(特に歌書が中心)。2.汎用データベースソフトウェアの設計1.で進めつつあるデータ仮入力に合わせて、データベースソフトの設計を詰めつつある。具体的には、*フィールドを可変長にする*ガイダンス行を設ける*基本的に画面設計はキャラクタベースとする等である。パソコン上で、ユーザーが周辺機器を増設することなく、かつ、汎用性を持たせるため、の二点も、考慮にいれる事とした。
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KAKENHI-PROJECT-05801057
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05801057
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多階層イメージングを可能にする新規蛍光プローブ群の開発
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精神疾患の多くがシナプス原性の病態生理を呈する中、増強したシナプス群を標識・操作する手法が確立されていないために、病態を担う神経回路を同定することは難しかった。そのため、シナプス前後を神経活動依存的に同時標識し、増強したスパイン群を可視化・操作するシナプス・アンサンブル標識法を確立するとともに、本標識法をPTSDモデルに応用することを試みる。同等のストレス下でPTSDを発症する疾患脆弱群と発症しない抵抗群がいることは臨床的に知られており、この脆弱・抵抗群は慢性社会敗北ストレスモデルで再現されている。本標識法で脆弱・抵抗群間の神経回路の差異をシナプスと脳領域間の2つの異なる階層で明らかにする。精神疾患の多くがシナプス原性の病態生理を呈する中、増強したシナプス群を標識・操作する手法が確立されていないために、病態を担う神経回路を同定することは難しかった。そのため、シナプス前後を神経活動依存的に同時標識し、増強したスパイン群を可視化・操作するシナプス・アンサンブル標識法を確立するとともに、本標識法をPTSDモデルに応用することを試みる。同等のストレス下でPTSDを発症する疾患脆弱群と発症しない抵抗群がいることは臨床的に知られており、この脆弱・抵抗群は慢性社会敗北ストレスモデルで再現されている。本標識法で脆弱・抵抗群間の神経回路の差異をシナプスと脳領域間の2つの異なる階層で明らかにする。
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KAKENHI-PROJECT-19J15405
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19J15405
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分子機械の潤滑機構のナノマシンへの利用に関する研究
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今回の研究は理論的及び実験的両面からおこなわれた.まず国内の研究者の特に,関節の弾性流体潤滑機構と細菌の鞭毛モーターの軸受け部分の潤滑機構に関する研究を調査し,関節や鞭毛モーターの機械的構造,化学的成分構成,及び物理的な挙動に対する知見を得ることができ,またまた以後の研究においても適切な助言も受ける事が出来た.この調査より,生物における超低摩擦機構の発現機構にはまだ不明な点が多数あり,またモデル化によりこの潤滑機構を再現することは困難であることもわかった.このような場合には計算機を用いた数値計算により,比較的単純な状況下における仮想実験とも言える,分子動力学を用いたシミュレーションが有効であることがわかった.次の段階として原子間力をポテンシャルを用いて表現する原子力場の方法をもちいて,分子動力学を用い鞭毛モーターの軸受部分の超低摩擦機構のシミュレーションをおこなった.この計算により,ミクロな摩擦係数は摺動面相互の単位構造の周期の差に非常に敏感に依存することがわかった.しかしながらポテンシャルという量子力学を考慮に入れていない計算であるために化学種の差による摩擦係数の変化についての定量的な情報を得いることは出来なかった.そこで量子力学的計算を用いて鞭毛モーターの潤滑機構に対する化学種の差の影響のシミュレーションもおこなった.量子力学的計算は古典的な計算に比べて,おなじ原子数の計算でもはるかに多くの記憶容量と計算時間を要するため単位構造の周期の差による摩擦係数への影響との相関の研究には改良の余地が残った.また理論的研究と並行して実験的研究も行った,理論的な研究から単位構造の周期の差を無理数に近づけることは低摩擦に有利であることがわかったので,グラファイト相関化合物やシリコンの結晶面を用いてモデルとなる系を構成し潤滑の実験を行った.この実験により通常は摩擦係数を下げる役割のある酸素がミクロな潤滑機構の場合には逆に摩擦係数を上昇させる悪影響を及ぼすことがわかった.今回の研究は理論的及び実験的両面からおこなわれた.まず国内の研究者の特に,関節の弾性流体潤滑機構と細菌の鞭毛モーターの軸受け部分の潤滑機構に関する研究を調査し,関節や鞭毛モーターの機械的構造,化学的成分構成,及び物理的な挙動に対する知見を得ることができ,またまた以後の研究においても適切な助言も受ける事が出来た.この調査より,生物における超低摩擦機構の発現機構にはまだ不明な点が多数あり,またモデル化によりこの潤滑機構を再現することは困難であることもわかった.このような場合には計算機を用いた数値計算により,比較的単純な状況下における仮想実験とも言える,分子動力学を用いたシミュレーションが有効であることがわかった.次の段階として原子間力をポテンシャルを用いて表現する原子力場の方法をもちいて,分子動力学を用い鞭毛モーターの軸受部分の超低摩擦機構のシミュレーションをおこなった.この計算により,ミクロな摩擦係数は摺動面相互の単位構造の周期の差に非常に敏感に依存することがわかった.しかしながらポテンシャルという量子力学を考慮に入れていない計算であるために化学種の差による摩擦係数の変化についての定量的な情報を得いることは出来なかった.そこで量子力学的計算を用いて鞭毛モーターの潤滑機構に対する化学種の差の影響のシミュレーションもおこなった.量子力学的計算は古典的な計算に比べて,おなじ原子数の計算でもはるかに多くの記憶容量と計算時間を要するため単位構造の周期の差による摩擦係数への影響との相関の研究には改良の余地が残った.また理論的研究と並行して実験的研究も行った,理論的な研究から単位構造の周期の差を無理数に近づけることは低摩擦に有利であることがわかったので,グラファイト相関化合物やシリコンの結晶面を用いてモデルとなる系を構成し潤滑の実験を行った.この実験により通常は摩擦係数を下げる役割のある酸素がミクロな潤滑機構の場合には逆に摩擦係数を上昇させる悪影響を及ぼすことがわかった.
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KAKENHI-PROJECT-07650167
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07650167
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都市圏産業連関表の作成と都市圏応用一般均衡モデルの開発
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本研究は、産業連関表が作成されていないような小地域(都市圏)を対象とした応用一般均衡モデル及び産業連関モデルを開発し、実際に地域で行われる様々な政策分析を実施することを目的として行った。そのため、初年度(平成14年度)では、小地域(都市圏)を対象とした精度の高い産業連関表のノンサーベイ作成手法を開発した。さらに、産業連関プロパーのモデル開発として同様の小地域(都市圏)を対象とした上で、全国を上位地域が下位地域を内包する3地域に分割した3地域間産業連関モデルを構築した。また、都市圏産業連関表の作成手法の検討及び産業連関モデルの構築と同時並行して進めた都市圏応用一般均衡モデルの開発においては、開放経済下を想定した都市圏CGEモデルのプラットフォームを構築した。これらを踏まえ最終年度(平成15年度)では、任意の都市圏における産業連関表を作成するためのノンサーベイ手法をあらためてレビューし各種手法の評価を行った。これまでのノンサーベイ手法に関する既往研究は地域の大きさを議論の対象としてこなかったが、本研究では地域の大きさのレベルごとにノンサーベイ手法の検証を行い、地域レベルと評価結果の関連性について検討した。その結果、産業連関モデルの中に地域間交易のノンサーベイ手法を組み込むことによって比較的リーズナブルに高精度の地域連関乗数を得ることが可能であるが、産業連関表としての輸移出入部門の実額の推計においては、地域レベルが小さくなるほど推計誤差が大きくなると言う傾向があることを検証した。都市圏応用一般均衡モデルの開発においては、政策オプションとして地方自治体における産業誘致・育成政策を取り上げ、定量的に政策評価するためのモデルを開発し、モデルの現状再現性のチェックと鳥取県を対象とした事例分析を行った。本研究は、産業連関表が作成されていないような小地域(都市圏)を対象とした応用一般均衡モデル及び産業連関モデルを開発し、実際に地域で行われる様々な政策分析を実施することを目的として行った。そのため、初年度(平成14年度)では、小地域(都市圏)を対象とした精度の高い産業連関表のノンサーベイ作成手法を開発した。さらに、産業連関プロパーのモデル開発として同様の小地域(都市圏)を対象とした上で、全国を上位地域が下位地域を内包する3地域に分割した3地域間産業連関モデルを構築した。また、都市圏産業連関表の作成手法の検討及び産業連関モデルの構築と同時並行して進めた都市圏応用一般均衡モデルの開発においては、開放経済下を想定した都市圏CGEモデルのプラットフォームを構築した。これらを踏まえ最終年度(平成15年度)では、任意の都市圏における産業連関表を作成するためのノンサーベイ手法をあらためてレビューし各種手法の評価を行った。これまでのノンサーベイ手法に関する既往研究は地域の大きさを議論の対象としてこなかったが、本研究では地域の大きさのレベルごとにノンサーベイ手法の検証を行い、地域レベルと評価結果の関連性について検討した。その結果、産業連関モデルの中に地域間交易のノンサーベイ手法を組み込むことによって比較的リーズナブルに高精度の地域連関乗数を得ることが可能であるが、産業連関表としての輸移出入部門の実額の推計においては、地域レベルが小さくなるほど推計誤差が大きくなると言う傾向があることを検証した。都市圏応用一般均衡モデルの開発においては、政策オプションとして地方自治体における産業誘致・育成政策を取り上げ、定量的に政策評価するためのモデルを開発し、モデルの現状再現性のチェックと鳥取県を対象とした事例分析を行った。本研究は、産業連関表が作成されていないような小地域(都市圏)を対象とした応用一般均衡モデル及び産業連関モデルを開発し、実際に地域で行われるような政策分析を行うことを目的としている。そのため1年目にあたる平成14年度では、まず任意の小地域を対象とした精度の高い産業連関表の作成手法を検討した。地域の産業連関表を作成する上で最も大きな課題は、当該地域における移出入額を推定することであるが、本年度は移出入額推計における既往研究のサーベイと問題点の把握、及び精度の高い推定方法開発の方向性を検討した。また、ノンサーベイ型の産業連関表推定手法とサーベイ型推定方法の比較検討を行い、ノンサーベイ型推定手法の有用性について検証した。さらに、産業連関表が準備されていない小都市圏を主な対象地域とした上で,全国を上位地域が下位地域を内包する3地域に分割した3地域間産業連関モデルを構築した.特定地域において需要の増加または減少が生じたとき,その経済的な影響は当該地域のみならず,それを取り囲む中地域,大地域の3つの地域レベルにおいて分析することが求められる場合が多い.本研究で構築したモデルは,その要求に応えることが可能であり,計算の容易性から実務的に見てもその有用性は極めて高い.都市圏産業連関表の作成手法の検討及び産業連関モデルの構築と同時並行して進めた都市圏応用一般均衡モデルの開発においては、具体的に鳥取市を対象とした都市圏産業連関表を作成し、開放経済下を想定したCGEモデルを構築した。また、その構築したモデルを用いて、都市圏の交通整備と税制政策を想定したケーススタディを行った。本研究は、産業連関表が作成されていないような小地城(都市圏)を対象とした応用一般均衡モデル及び産業連関モデルを開発し、実際に地城で行われる様々な政策分析を実施することを目的として行った。そのため、初年度(平成14年度)では、小地城(都市圏)を対象とした精度の高い産業連関表のノンサーベイ作成手法を開発した。
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KAKENHI-PROJECT-14550534
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14550534
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都市圏産業連関表の作成と都市圏応用一般均衡モデルの開発
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さらに、産業連関プロパーのモデル開発として同様の小地域(都市圏)を対象とした上で、全国を上位地城が下位地域を内包する3地城に分割した3地城間産業連関モデルを構築した。また、都市圏産業連関表の作成手法の検討及び産業連関モデノしの構築と同時並行して進めた都市圏応用一般均衡モデルの開発においては、開放経済下を想定した都市圏CGEモデルのプラットフォームを構築した。これらを踏まえ最終年度(平成15年度)では、任意の都市圏における産業連関表を作成するためのノンサーベイ手法をあらためてレビューし各種手法の評価を行った。これまでのノンサーベイ手法に関する既往研究は地城の大きさを議論の対象としてこなかったが、本研究では地城の大きさのレベルごとにノンサーベイ手法の検証を行い、地城レベルと評価結果の関連性について検討した。その結果、産業連関モデルの中に地域間交易のノンサーベイ手法を組み込むことによって比較的リーズナブルに高精度の地域連関乗数を得ることが可能であるが、産業連関表としての輸移出入部門の実額の推計においては、地城レベルが小さくなるほど推計誤差が大きくなると言う傾向があることを検証した。都市圏応用一般均衡モデルの開発においては、政策オプションとして地方自治体における産業誘致・育成政策を取り上げ、定量的に政策評価するためのモデルを開発し、モデルの現状再現性のチェックと鳥取県を対象とした事例分析を行った。
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KAKENHI-PROJECT-14550534
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14550534
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肝硬変に合併した糖尿病はいかにコントロールすべきか
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C型慢性肝炎患者を対象として耐糖能障害と肝線維化の関連を検討した結果、耐糖能異常者は耐糖能正常者より、HOMA-Rは有意に高値で、インスリン早期分泌能は有意に低下しており、肝線維化はHOMA-Rと有意な正の相関がみられた。耐糖能障害合併とC型慢性肝炎の進展に関しての検討では、耐糖能障害合併の有無で、その後10年間の血小板数変化には有意差はみられなかった。しかしBMI24以上の例では、24未満の例に比し、血小板数が低下する傾向が見られた。肝細胞癌治療後の再発と耐糖能障害合併との関連を検討したが、再発に最も強く影響を与えていたものは、初発時の進行度と肝予備能であり、耐糖能障害を含めた環境・生活因子と累積生存率、再発率との関連は認められなかった。また、アミノ酸刺激によるインスリン、グルカゴン分泌と血糖値の変動に関する検討では、G/Iモル比の低下にもかかわらず早期肝硬変では血糖値が上昇し、進行肝硬変ではその上昇が軽度となることが観察され、肝予備能の低下とともにインスリンやグルカゴンに対する抵抗性が変化してくることが推測された。以上より、今回の研究では、耐糖能障害が肝病変の進展に促進的に働くとの結果は得られなかったが、耐糖能障害は肝線維化と密接に関連していることが示唆され、さらに、一旦発癌すると、耐糖能障害は予後に影響しないことから、発癌の前段階までに耐糖能障害はコントロールする必要があるものと考えられた。この際、肝障害に伴う耐糖能障害はインスリン抵抗性とβ細胞機能低下に基づくものであること、また肝予備能によってインスリンやグルカゴンに対する反応性が異なることから、耐糖能障害のコントロールを行う際には、肝予備能の状態を考慮して治療方法を検討する必要があると思われた。C型慢性肝炎患者を対象として耐糖能障害と肝線維化の関連を検討した結果、耐糖能異常者は耐糖能正常者より、HOMA-Rは有意に高値で、インスリン早期分泌能は有意に低下しており、肝線維化はHOMA-Rと有意な正の相関がみられた。耐糖能障害合併とC型慢性肝炎の進展に関しての検討では、耐糖能障害合併の有無で、その後10年間の血小板数変化には有意差はみられなかった。しかしBMI24以上の例では、24未満の例に比し、血小板数が低下する傾向が見られた。肝細胞癌治療後の再発と耐糖能障害合併との関連を検討したが、再発に最も強く影響を与えていたものは、初発時の進行度と肝予備能であり、耐糖能障害を含めた環境・生活因子と累積生存率、再発率との関連は認められなかった。また、アミノ酸刺激によるインスリン、グルカゴン分泌と血糖値の変動に関する検討では、G/Iモル比の低下にもかかわらず早期肝硬変では血糖値が上昇し、進行肝硬変ではその上昇が軽度となることが観察され、肝予備能の低下とともにインスリンやグルカゴンに対する抵抗性が変化してくることが推測された。以上より、今回の研究では、耐糖能障害が肝病変の進展に促進的に働くとの結果は得られなかったが、耐糖能障害は肝線維化と密接に関連していることが示唆され、さらに、一旦発癌すると、耐糖能障害は予後に影響しないことから、発癌の前段階までに耐糖能障害はコントロールする必要があるものと考えられた。この際、肝障害に伴う耐糖能障害はインスリン抵抗性とβ細胞機能低下に基づくものであること、また肝予備能によってインスリンやグルカゴンに対する反応性が異なることから、耐糖能障害のコントロールを行う際には、肝予備能の状態を考慮して治療方法を検討する必要があると思われた。高血糖状態は腎においてはTGF-βを介して線維化を促進することが知られているが、肝においては高血糖と線維化促進の関連については十分検討されていない。耐糖能障害は慢性肝炎、肝硬変に合併することが多いため、腎と同様に高血糖が線維化を促進するのであれば、コントロール不良の耐糖能障害は肝病変進展の増悪因子となる可能性があり、適切に血糖をコントロールすることは極めて重要なこととなる。そこで、耐糖能異常が肝線維化に関連しているか否かの基礎データを得るために、産業医科大学病院第3内科に入院した症例のうち、肝生検が施行されたC型慢性肝炎患者131例を対象として、耐糖能異常合併の有無が肝線維化進展といかなる関連があるかを検討した。方法は、肝線維化の程度の評価は、マッソン・トリクローム染色標本を用い、IBASにて青色部を抽出して単位面積当たりの青色部の面積を算出し、線維化の指標とした。インスリン抵抗性やβ細胞機能を含めた耐糖能障害の評価は75gOGTTにて行ない、以下の結果を得た。耐糖能異常は131例中36例(27.5%)に認められ、うち10例が糖尿病パターンを示した。HOMA-Rは耐糖能異常者において正常者より有意に高値を示した。インスリンの早期分泌能は正常者より耐糖能異常者において有意に低値を示し、さらにインスリン抵抗性の進展に伴って低下していった。肝線維化との関連においては、線維化はHOMA-Rと有意な正の相関がみられた。以上の結果より、C型慢性肝炎において、耐糖能障害はインスリン抵抗性とβ細胞機能低下に基づくものであることが推察され、これは肝線維化と密接に関連していることが示唆された。
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KAKENHI-PROJECT-15590701
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15590701
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肝硬変に合併した糖尿病はいかにコントロールすべきか
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今後、耐糖能障害の程度と線維化進展との関連をより明確にするために、各症例の経過を経時的に追跡し、肝障害に合併した耐糖能異常の適切な対処方法を明らかにしていく予定である。肝硬変では高率に耐糖能障害を合併しているが、これは主にインスリン抵抗性の増大によるものと考えられている。しかし、進行した肝硬変では、グルカゴン貯蔵量の低下等からインスリン拮抗ホルモンに対する反応も低下していると考えられる。一方、肝硬変に伴う肝性脳症の場合、分岐鎖アミノ酸含有量の多いアミノ酸製剤を投与することがある。一般的にアミノ酸はインスリンやグルカゴン分泌を刺激することが知られているが、血糖値にどのような影響を及ぼすかは明かでない。そこで、肝不全用特殊アミノ酸製剤を投与し、肝予備能別に血糖値やインスリン、グルカゴン値がどのように変動するかを検討した。アミノ酸投与により血糖値は、Child-Aの早期肝硬変では2型糖尿病例と同様に著明に上昇したが、Child-B,Cの進行肝硬変では健常人と同様に軽度上昇にとどまった。インスリン、CPRおよびグルカゴンは、すべての群においてアミノ酸投与開始後上昇したが、グルカゴン/インスリン(G/I)モル比はすべての群で低下していた。G/Iモル比の低下にもかかわらず早期肝硬変では血糖値が上昇し、進行肝硬変ではその上昇が軽度であったことは、肝硬変ではまずインスリン抵抗性の出現によりグルカゴンの作用が優位となって現われ、肝予備能の低下とともにグリコーゲン貯蔵量が減少し、グルカゴンに対する抵抗性も出現し、これにより血糖値上昇が軽度となることが推測された。進行肝硬変に対して、アミノ酸製剤とブドウ糖を同時に投与した場合には、血糖値は著明上昇を示し、これに伴いインスリンの著明上昇とグルカゴンの分泌抑制がみられ、G/Iモル比の低下は遷延する傾向を示した。このように肝予備能によってインスリンやグルカゴンに対する血糖値の反応性が異なることは肝疾患に対する栄養療法や糖尿病治療の際には肝予備能の違いを考慮して検討する必要があると考えられた。生活習慣や耐糖能障害などの生活習慣に起因する異常が、肝発癌を促進する可能性が指摘されているが、治療後の再発に対して、これらの生活習慣に絡む諸問題がどのように影響を及ぼすかについてはふめいである。そこで、当科に入院したC型肝炎ウイルス陽性の肝細胞癌初発例299例を対象とし、飲酒及び喫煙の状態、耐糖能障害と血糖コントロール状態などの背景因子および治療内容と、再発や予後との関連を検討した。飲酒に関しては、習慣的に飲酒を行うものは93例(31.1%)おり、うち36例が大酒家であった。喫煙に関しては、90例(30.1%)が喫煙中であり、過去に喫煙していたものは65例(21.7%)であった。糖尿病は95例(31.7%)で、75g OGTTで境界型であったものは6例であった。初回治療前の肝予備能はChild-Pugh分類で、grade A、B、Cがそれぞれ232例、55例、12例であった。肝細胞癌のステージはstage I、II、III、IV-A、IV-Bがそれぞれ79例、103例、86例、22例、9例であった。全症例における予後は、1年生存率86.9%、3年生存率67.7%、5年生存率45.4%であった。予後影響を与える因子としては、単変量解析では性別、Child-Pugh分類、肝障害度、ステージ、最大腫瘍径および治療法が抽出されたが、多変量解析ではChild-Pugh分類とステージのみが独立した因子として抽出された。さらに、ステージか高いものほど再発率が高く、再発が早いものほど予後は不良であった。また、習慣的な飲酒、喫煙および耐糖能障害合併に関しては、累積再発率および累積生存率に各群間での有意差は認められなかった。
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KAKENHI-PROJECT-15590701
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15590701
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バーチャル・リアリティ(VR)手法の導入によるNC加工シミュレーションの研究ー加工物形状の触感覚情報抽出についてー
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ジオメトリック・モデルから触感覚データを抽出するためには対象となるモデルが3次元表現(ソリッドモデル化)されていることが必須となる。そこでまず、NC工具移動軌跡形状のソリッドモデル化を以下の様に図った。すなわち、対象とするNC工具はボール・エンドミルとフラット・エンドミルに限定し、また、工具の運動は工具制御点の移動軌跡(即ち、工具経路)と工具軸の向き(即ち、工具動作)で記述した。また、工具経路を構成する曲線要素として直線と円弧を与えることにし、工具動作は始点と終点における工具軸ベクトルで与えることにした。このような前提条件の下で、3軸及び5軸動作の場合の工具移動軌跡形状を表す関数式を導出した。また、導出された関数式に基づいたプログラム開発を行いその有効性を確認した。次に、開発した工具移動軌跡生成プログラムをCSG(Constructive Solid Geometry)表現法を基本とするソリッドモデラTIPS-1へ組み込んだ。これにより、加工物形状のソリッドモデル生成が実現可能となった。すなわち加工物形状モデルは、すでにソリッド表現されている素材形状モデルから工具移動軌跡形状モデルを除去する集合演算操作(差演算)を行うことにより生成される。次に、ソリッドデータを触感覚入・出力デバイスでピックするプログラム開発を行った。このプログラムは、本年度購入した3次元座標入力装置(3SPACE ISOTRAK)からのデータ入力を前提に開発されたものであり、サンプルデータか所望の精度で仮想世界へ入力されることを簡単な実験により確認した。ジオメトリック・モデルから触感覚データを抽出するためには対象となるモデルが3次元表現(ソリッドモデル化)されていることが必須となる。そこでまず、NC工具移動軌跡形状のソリッドモデル化を以下の様に図った。すなわち、対象とするNC工具はボール・エンドミルとフラット・エンドミルに限定し、また、工具の運動は工具制御点の移動軌跡(即ち、工具経路)と工具軸の向き(即ち、工具動作)で記述した。また、工具経路を構成する曲線要素として直線と円弧を与えることにし、工具動作は始点と終点における工具軸ベクトルで与えることにした。このような前提条件の下で、3軸及び5軸動作の場合の工具移動軌跡形状を表す関数式を導出した。また、導出された関数式に基づいたプログラム開発を行いその有効性を確認した。次に、開発した工具移動軌跡生成プログラムをCSG(Constructive Solid Geometry)表現法を基本とするソリッドモデラTIPS-1へ組み込んだ。これにより、加工物形状のソリッドモデル生成が実現可能となった。すなわち加工物形状モデルは、すでにソリッド表現されている素材形状モデルから工具移動軌跡形状モデルを除去する集合演算操作(差演算)を行うことにより生成される。次に、ソリッドデータを触感覚入・出力デバイスでピックするプログラム開発を行った。このプログラムは、本年度購入した3次元座標入力装置(3SPACE ISOTRAK)からのデータ入力を前提に開発されたものであり、サンプルデータか所望の精度で仮想世界へ入力されることを簡単な実験により確認した。
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KAKENHI-PROJECT-04650137
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04650137
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有機結晶環境下での反応設計
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結晶中での有機化学反応に於いて,分子の配列の規則性と反応の選択性との相関性を12人の研究者によって異なった観点から総合的に研究した。反応基質分子単独の結晶及びホストとゲスト分子からなる包接結晶中の反応の選択性を検討した結果,一般に後者の場合に能率が良いことが判明した。特に、不斉選択的反応は,キラルホストとプロキラルゲストとの包接結晶中で極めて能率良く起こることが判った。しかし、反応基質分子が単独で不斉結晶を形成し,固体反応で不斉を凍結して不斉合成を行うこともできることが判明した。これらの,分子の配列の規則性と反応の選択性の相関性は,結晶のX線構造解析によって詳細に分析研究した。これらの総合研究の成果を生かして、重点領域研究「有機結晶環境下での反応設計」の準備を行った。結晶中での有機化学反応に於いて,分子の配列の規則性と反応の選択性との相関性を12人の研究者によって異なった観点から総合的に研究した。反応基質分子単独の結晶及びホストとゲスト分子からなる包接結晶中の反応の選択性を検討した結果,一般に後者の場合に能率が良いことが判明した。特に、不斉選択的反応は,キラルホストとプロキラルゲストとの包接結晶中で極めて能率良く起こることが判った。しかし、反応基質分子が単独で不斉結晶を形成し,固体反応で不斉を凍結して不斉合成を行うこともできることが判明した。これらの,分子の配列の規則性と反応の選択性の相関性は,結晶のX線構造解析によって詳細に分析研究した。これらの総合研究の成果を生かして、重点領域研究「有機結晶環境下での反応設計」の準備を行った。
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KAKENHI-PROJECT-05353018
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05353018
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多面的なアプローチによる小児睡眠評価法の開発
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日本の睡眠習慣に即した子どもの睡眠評価のための「子どもの眠りの質問表」を開発した。また、睡眠時のビデオグラフィの解析により、子どもの体動量と睡眠疾患の関係を明らかにした。日本の睡眠習慣に即した子どもの睡眠評価のための「子どもの眠りの質問表」を開発した。また、睡眠時のビデオグラフィの解析により、子どもの体動量と睡眠疾患の関係を明らかにした。乳幼児期の睡眠不足や睡眠の質の低下は、後年の多動・衝動性のリスクとなることが報告されている。小児の睡眠の判定のために、我々は多面的な新しいアプローチを試み、初年度は、以下のような成果を得た。1)睡眠時ビデオグラフィの予備的検討:睡眠関連疾患が疑われる子どもに対して、PSGと同時に赤外線ビデオカメラを用いて終夜ビデオグラフィを行い、比較検討することにより、(1)睡眠時体動量がstage 1>stage 2、REM>Stage 3, Stage 4であること、(2)睡眠関連疾患の治療により体動が減少することより、体動量が睡眠のステージと質に関連していることが示唆された。2)睡眠質問表の予備検討:就学前児の睡眠習慣、睡眠関連疾患に関連した質問票を作成した。当初8つのドメイン、計73項目を設定し、インタビュー形式にて1次調査を行い不適切な質問を修正後に、25歳の、睡眠関連疾患群32名と、正常対照群86名において2次調査を行った結果、9ドメイン、39項目からなる質問票を作成した。3)発達障害児の睡眠脳波の解析:発達障害児において睡眠の問題が存在する子どもについてPSGを行い、その脳波を通常のR&Kに加えて、CAP(Cyclic Alternating Pattern)解析を行った結果、発達障害児ではCAPの出現が低い可能性が示唆された。当該研究の遂行により、睡眠の異常が発達に及ぼす影響に関する研究が進展すると同時に、発達障害児の脳神経基盤についての知識を得ることができると期待される。乳幼児期の睡眠不足や睡眠の質の低下は、後年の多動・衝動性のリスクとなることが報告されている。小児の睡眠の判定のために、我々は多面的な新しいアプローチを試み、2年次は、以下のような成果を得た。1)睡眠時ビデオグラフィの発達障害児における検討:広汎性発達障害、注意欠陥/多動性障害の子どもに対して、PSGと同時に赤外線ビデオカメラを用いて終夜ビデオグラフィを行い、両データを比較検討することにより、(1)睡眠時体動量がstage 1>stage 2、REM>Stage 3,Stage 4であること、(2)睡眠関連疾患の治療により体動が減少することより、体動量が睡眠のステージと質に関連していることが示唆された。2)睡眠質問表の予備検討:就学前児の睡眠習慣、睡眠関連疾患に関連した質問票を作成した。当初8つのドメイン、計73項目を設定し、1次調査を行い不適切な質問を修正後に、2-5歳の、睡眠関連疾患群32名と、正常対照群86名において2次調査を行った結果、9ドメイン、39項目からなる質問票を作成した経緯が雑誌に掲載された。また、この「子どもの眠りの質問票」を用いて、2-5歳の3,014人の乳児に睡眠調査を行い、年齢別、性別、睡眠習慣別に統計学的処理を行っている。3)発達障害児の睡眠脳波の解析:発達障害児において睡眠の問題が存在する子どもについてPSGを行い、その脳波を通常のR&Kに加えて、CAP(Cyclic Alternating Pattern)解析を行った結果、発達障害児ではCAPの出現が有意に高いことを見いだした。幼少の広汎性発達障害児の睡眠脳波データは稀少であり、幼少児のCAPのデータは世界発であり、現在投稿中である。当該研究の遂行により、睡眠の異常が発達に及ぼす影響に関する研究が進展すると同時に、発達障害児の脳神経基盤についての知識を得ることができると期待される。乳幼児期の睡眠不足や睡眠の質の低下は、後年の多動・衝動性のリスクとなることが報告されている。小児の睡眠の判定のために、我々は多面的な新しいアプローチ法の開発を試み、以下のような成果を得た。1)睡眠ビデオグラフィ法の開発:子どもにおいて、終夜ポリソムノグラフと同時に施行し、妥当性を証明した終夜ビデオグラフィを用いて、注意欠陥多動性障害児では睡眠中の多動がどの睡眠ステージにおいても定型発達児よりも多いことを見いだした。2)睡眠質問表の開発:幼児版「子どもの眠りの質問票」の背景データを用いて、約3000名の3-6歳児から情報を収集し、標準化を行った。日本の夜間平均睡眠時間は9.7時間、平均就寝時刻が21時17分、一日平均テレビ視聴時間が2.6時間であることが判明した。さらに、1)一日のテレビ視聴時間が2時間以上、20時を過ぎた夜間の外出、保護者が0時以降に就寝することが、子どもが22時以降に就寝する、いわゆる遅寝のリスクを高めること、2)テレビ視聴時間が2時間を超えること、またテレビをつけながら就寝することが、入眠潜時を延長させ、総睡眠時間を短縮させる因子であることが示された。3)発達障害児の睡眠脳波の解析:睡眠の問題が存在する発達障害児において終夜ポリソムノグラフを行い、NREM睡眠の安定性についての解析法であるCAP(Cyclic Alternating Pattern)解析を行った結果、発達障害児ではCAPの出現が定型発達児に比して有意に多く、またCAPの指標は、多くの昼間の行動の指標と相関していることが判明した。このことはNREM
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KAKENHI-PROJECT-21659256
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21659256
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多面的なアプローチによる小児睡眠評価法の開発
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睡眠の不安定性が昼間の行動に影響を及ぼしていることを示唆している。
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KAKENHI-PROJECT-21659256
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21659256
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極端な葉フェノロジー多型の進化適応的意義と種の絶滅・侵入リスク評価
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多様な葉フェノロジーをもつジンチョウゲ属種(冬緑性・夏緑性・常緑性)は、それぞれの生育ハビタットで生存するための戦略として、葉フェノロジーを多様に進化させてきたことが、系統解析によって明らかになった。さらに、葉フェノロジーの多様な進化は葉の生理的特性に制限があることによって生じていたことが示唆された。これらの研究成果は、常緑性で北米で侵入種として問題となっているD.laureolaの侵入成功要因や、希少種で夏緑性のチョウセンナニワズ(D.pseudomezerem var. koreana)の脆弱性要因の一部を説明することができると考えられる。多様な葉フェノロジーをもつジンチョウゲ属種(冬緑性・夏緑性・常緑性)は、それぞれの生育ハビタットで生存するための戦略として、葉フェノロジーを多様に進化させてきたことが、系統解析によって明らかになった。さらに、葉フェノロジーの多様な進化は葉の生理的特性に制限があることによって生じていたことが示唆された。これらの研究成果は、常緑性で北米で侵入種として問題となっているD.laureolaの侵入成功要因や、希少種で夏緑性のチョウセンナニワズ(D.pseudomezerem var. koreana)の脆弱性要因の一部を説明することができると考えられる。チョウセンナニワズ(夏緑性)、オニシバリ(冬緑性)、コショウノキ(常緑性)、カラスシキミ(常緑性)の4種において、異なる発達段階の葉の生理特性(光合成能力、呼吸、クロロフィル含量、葉の形態)の測定をおこなった。その結果、オニシバリは強光では高い生理的能力を示したが、弱光には生理的には適応しておらず、そのため上層が暗くなる夏に葉を落とすというフェノロジーが発達した可能性が示唆された。生育地の光環境と葉の光合成速度の測定結果から、チョウセンナニワズとオニシバリは葉の生理的能力が類似しており、異なるハビタットの違いが異なるフェノロジーの獲得につながった可能性がある。チョウセンナニワズは樹冠の明るい場所にしか生育しておらず、他の樹木の密度が高くなって上層が暗くなることが、この種の衰退の1つの要因である可能性が考えられた。さらに他の樹種が林冠を覆うなどによって、ある個体群が絶滅した場合、個体群間の種子散布(つまり遺伝子流動)が制限されているために、recolonizationが難しく、それが希少性の要因である可能性がある。したがって、チョセンナニワズについては、上層を覆う他の樹木が入り込みにくい場所、もしくは撹乱が頻繁にあって、上層の樹木が減るような環境が、個体群維持にとって必要とされるのではないかと考えられた。遺伝解析の結果から、常緑性のコショウノキとカラスシキミは系統が落葉性のものと大きく異なり、これらの種分化はかなり古い年代に起きたことが示唆された。一方、夏緑性のチョウセンナニワズ、冬緑性のオニシバリ、ナニワズは遺伝構造がよく類似しており、比較的最近になって分化が起きたと考えられた。ジンチョウゲ属の系統解析をおこなうために、葉緑体ゲノムの領域(rbcL、matK)、イントロン(trnL-trnF, psaB-rp14, rp114-rps16, trnH-psbA)について解析した。その結果、常緑のものが落葉性のものよりも起源が古いことが示唆された。また、夏緑性のものは、常緑性のものから分化したことが明らかとなった。冬緑性のオニシバリ(D.pseudo-mezereum)は、夏緑性のチョウセンナニワズ(D.koreana)から分化したと考えられた。これらの結果から、ジンチョウゲ属の進化の方向性について検討すると、祖先種は常緑で耐陰性があり、その次に夏緑性の種がopenな場所や石灰岩地などの他種との競争のあまりない場所に広がり、耐陰性を失ったと考えられる。その後、より分化の進んだ種が落葉広葉樹林に広がり、光に対して敏感な特性をもつことから生育場所の光環境に適応するために、冬緑性のフェノロジーを獲得していったと考えられる。ジンチョウゲ属の年間のCO2収支、成長についてモデル化するために、4種の生育環境データの測定(光環境、気温、土壌水分について、1種につき2生育地)を継続した。各種の環境への適応能力を評価するためのモデル作成を開始した。このモデルを用いて、種の最適な生育環境および生育が限界となる環境を予測することができる。また、種の潜在的分布域と実際の分布域を比較することにより、現在の環境条件下での脆弱性や、将来の気象変化が集団の安定性にどのようなインパクトを与えるかを解析する。本研究は、生理生態特性、生育環境条件のデータから得たパラメーターに基づき適応戦略を検証し、分子系統解析から種分化の年代配列を調べることにより、各種の葉のフェノロジーの適応進化のプロセスを解明することを目的とした。系統解析の結果、カラスシキミ・コショウノキを含む常緑性のものは、単系統でより基部で分岐し、祖先的であった。ナニワズを含む落葉性の種もまた単系統であったが、こちらが派生的であり、さらに夏緑性のチョウセンナニワズから冬緑性のナニワズ・オニシバリが生じていた。
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KAKENHI-PROJECT-20380093
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20380093
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極端な葉フェノロジー多型の進化適応的意義と種の絶滅・侵入リスク評価
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これらの結果を照らし合わせてみると、葉のフェノロジーが常緑→夏緑性→冬緑性、性表現は、両全性→雌雄異株性へと機能的分化が進み、これらの形質を獲得したことによって生育環境が、常緑樹林内からより明るい落葉広葉樹林へと移っていったものと推定された。標高の高い山の林冠のオープンな場所に生育する夏緑性のチョウセンナニワズは、標高の低い落葉広葉樹林内に生育する冬緑性のオニシバリよりも祖先種であり、オニシバリは、林冠が閉鎖する暗い夏の間に林床で生存するために必要な生理的可塑性を獲得できなかったため、葉のフェノロジーをシフトさせることで、林内が暗い間は余計なコストをかけないため葉を落とし休眠状態を保つという戦略を獲得したものと考えられる。フィールドでの環境条件をシュミレーションし実験室で生育させたオニシバリの年間獲得炭素量を推定したところ、夏は葉を落とし、秋と春に光合成をおこなうというフェノロジーパターンで、年間炭素量が最大になることが明らかとなり、葉フェノロジー多型の獲得が種の生存戦略のキーとなり、種分化のトリガーとなったことが検証された。
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KAKENHI-PROJECT-20380093
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20380093
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鎖状ペプチドの直接的、高立体選択的修飾法の開発と応用
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初年度の研究により、キラル相間移動触媒の特徴を生かしたジペプチド類のN末端不斉アルキル化反応において、触媒の分子構造が反応の立体選択性を大きく左右することが明らかとなった。この知見を基に本年度は、N末端をシッフ塩基とすることで活性化したトリペプチドを基質とする反応を足掛かりとして、オリゴペプチドの高立体選択的官能基化に取り組み、適切な分子デザインを施した触媒を用いることで、既存のペプチドの不斉アルキル化による修飾にとどまらず、完全に非天然型の鎖状ペプチドの不斉合成のための新たな手法を確立することができた。続いて、ペプチド類のアルキル化に極めて有効であったデザイン型キラル相間移動触媒の可能性をさらに評価するため、プロキラルなα-アミノ酸アミドのシッフ塩基の不斉アルキル化反応への展開を計った。その結果、アミド部位の保護基としてジフェニルメチル基を有する基質と組み合わせることで、高い反応性、選択性の獲得に成功した。特に、単純な構造の第二級ハロゲン化アルキルとの反応が、穏和な条件下円滑に、しかも高エナンチオ選択的に進行する点は注目に値すると言える。これにより、通常の方法では合成が困難である、立体的に混み合った不斉四級炭素を有する光学活性1,2-ジアミン類を容易に得ることができる。さらに、これまでほとんど報告例のない、β-位に不斉炭素を有する第一級ハロゲン化アルキルとの相間移動条件下での反応における顕著な二重立体区別及び速度論的分割を実現し、生成物のα-位及び-位の二つの不斉炭素の立体化学を一挙にしかも高度に制御することが可能であることを明確に示した。初年度の研究計画に従い、末端グリシン残基をシッフ塩基とすることで活性化したジペプチドを典型的な基質とし、N-スピロ型光学活性四級アンモニウム塩を触媒とする相間移動条件下でのN末端の不斉アルキル化を試みた。ベンジル化反応をモデルとした反応条件の最適化の過程で、トルエン溶媒中、50%水酸化カリウム水溶液を塩基として用い0°Cで反応を行えば、既存のアミノ酸ユニットの不斉中心の立体化学は保持されたまま、アミド水素引き抜きによるN-アルキル化の関与もなく反応が進行することがわかった。さらに、既存のアミノ酸のキラリティーと触媒のキラリティーの関係を明らかにするとともに、触媒のビナフチル骨格の3,3'位のフェニル基の3,5位に立体的に嵩高いtert-ブチル基を導入し、これを放射状に伸ばしていく戦略で深いキラルポケットを形作ることで効率良い不斉転写を実現し、ほぼ完全なジアステレオ選択性の獲得に成功した。続いて、各種の天然α-アミノ酸残基を有するジペプチド誘導体を用い、本反応の反応性及び選択性はアミノ酸側鎖の構造にほとんど影響を受けないことを明らかにした。同時に、様々な親電子剤(アルキルハライド)との反応を検討し、本システムが十分な一般性を備えていることを明確に示した。これらの知見を基に、末端に置換基を有するα-アミノ酸ユニットを持つジペプチドのアルキル化反応による不斉四級炭素構築をも実現した。これは、ペプチド鎖への非天然型α,α-ジアルキル-α-アミノ酸の簡便な導入法を提供するものである。この手法を連続的に繰り返すことによる、オリゴペプチドの立体選択的合成の可能性の一端を示す結果も既に得ていることを付け加えたい。現在は、そのさらなる展開に加え、一般的なα-アミノ酸アミド誘導体のエナンチオ選択的官能基化とその合成化学的応用についても検討している。初年度の研究により、キラル相間移動触媒の特徴を生かしたジペプチド類のN末端不斉アルキル化反応において、触媒の分子構造が反応の立体選択性を大きく左右することが明らかとなった。この知見を基に本年度は、N末端をシッフ塩基とすることで活性化したトリペプチドを基質とする反応を足掛かりとして、オリゴペプチドの高立体選択的官能基化に取り組み、適切な分子デザインを施した触媒を用いることで、既存のペプチドの不斉アルキル化による修飾にとどまらず、完全に非天然型の鎖状ペプチドの不斉合成のための新たな手法を確立することができた。続いて、ペプチド類のアルキル化に極めて有効であったデザイン型キラル相間移動触媒の可能性をさらに評価するため、プロキラルなα-アミノ酸アミドのシッフ塩基の不斉アルキル化反応への展開を計った。その結果、アミド部位の保護基としてジフェニルメチル基を有する基質と組み合わせることで、高い反応性、選択性の獲得に成功した。特に、単純な構造の第二級ハロゲン化アルキルとの反応が、穏和な条件下円滑に、しかも高エナンチオ選択的に進行する点は注目に値すると言える。これにより、通常の方法では合成が困難である、立体的に混み合った不斉四級炭素を有する光学活性1,2-ジアミン類を容易に得ることができる。さらに、これまでほとんど報告例のない、β-位に不斉炭素を有する第一級ハロゲン化アルキルとの相間移動条件下での反応における顕著な二重立体区別及び速度論的分割を実現し、生成物のα-位及び-位の二つの不斉炭素の立体化学を一挙にしかも高度に制御することが可能であることを明確に示した。
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KAKENHI-PROJECT-15750033
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15750033
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緩和ケアにおける遺族ケアプログラムの開発とその有効性の検証
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緩和ケア病棟で家族を看取った遺族を対象とした遺族ケアプログラムの一環として遺族サポートグループを実施し、その有効性と役割および限界について検討した。質問紙による効果測定の結果、遺族サポートグループは複雑性悲嘆など精神症状の軽減に有効であることが示唆された。インタビュー調査では遺族サポートグループの役割が明らかになり、同じ境遇であるからこそ何でも話せる場であると同時に、悲嘆についての知識を得る場としても機能していた。また、遺族サポートグループにおける参加者の語りを分析した結果、遺族サポートグループは参加者の心理プロセスを促進する要因となっていることが示された。本研究は、緩和ケア病棟で家族を看取った遺族を対象とした遺族ケアプログラムの開発とその効果の検証を目的とする。研究代表者はこれまで研究協力者である医療機関(緩和ケア科)スタッフの協力を得て、遺族に対して死別直後から切れ目なくケアを提供できるようなプログラムを開発し、実践を行ってきた。本研究ではプログラムの一環として遺族サポートグループを実施し、その有効性と役割、および限界についてさまざまな側面から総合的に検討する。本年度は、平成24年度と同様、遺族サポートグループの有効性を確認するため質問紙調査を実施した。対象は平成23年10月から平成24年9月までの1年間に緩和ケア病棟(在宅緩和ケアを受けた者も含む)で家族を看取り、死別後6ヶ月以上経過した遺族343名である。調査に使用した尺度は、複雑性悲嘆をICG、気分・不安障害をK6、人間的成長を成長感尺度により測定した。研究代表者が運営している遺族サポートグループは、年度ごとに参加者を募り、当該年度の4月から翌年3月までの1年間、月1回(全12回)定期的に開催している。グループ参加者には、グループ開始前(初回調査)とグループ終了時(追跡調査)に調査用紙を配布した。また、サポートグループに参加していない遺族(対照群)にも同様の調査を実施した。その結果、初回調査、追跡調査ともに回答の得られた62名(参加群6名、対照群56名)を分析の対象として、現在、集計段階に入っている。また、本年度の研究計画として、遺族サポートグループの各セッションにおける参加者の発言内容をICレコーダーを用いて録音し、逐語記録としてデータ化することを挙げていた。ただ、2月は大雪のため中止となり全11回の開催となったが、これらの作業はほぼ予定通り進めることができた。次年度はこれらの逐語記録を質的研究法により分析するほか、インタビュー調査も実施する予定である。緩和ケア病棟で家族を看取った遺族を対象とした遺族ケアプログラムの一環として遺族サポートグループを実施し、その有効性と役割および限界について検討した。質問紙による効果測定の結果、遺族サポートグループは複雑性悲嘆など精神症状の軽減に有効であることが示唆された。インタビュー調査では遺族サポートグループの役割が明らかになり、同じ境遇であるからこそ何でも話せる場であると同時に、悲嘆についての知識を得る場としても機能していた。また、遺族サポートグループにおける参加者の語りを分析した結果、遺族サポートグループは参加者の心理プロセスを促進する要因となっていることが示された。本研究は、緩和ケア病棟で家族を看取った遺族を対象とした遺族ケアプログラムの開発とその効果の検証を目的とする。研究代表者はこれまで研究協力者である医療機関(緩和ケア科)スタッフの協力を得て、遺族に対して死別直後から切れ目なくケアを提供できるようなプログラムを開発し、実践を行ってきた。本研究ではプログラムの一環として遺族サポートグループを実施し、その有効性と役割、および限界についてさまざまな側面から総合的に検討する。初年度は遺族サポートグループの有効性を確認するため質問紙調査を実施した。対象は平成22年10月から平成23年9月までの1年間に緩和ケア病棟(在宅緩和ケアを受けた者も含む)で家族を看取り、死別後6ヶ月以上経過した遺族540名(270家族)である。調査に使用した尺度は、複雑性悲嘆をICG、気分・不安障害をK6、人間的成長を成長感尺度により測定した。研究代表者が運営している遺族サポートグループは、年度ごとに参加者を募り、当該年度の4月から翌年3月までの1年間、月1回(全12回)定期的に開催している。グループ参加者には、グループ開始前(初回調査)とグループ終了時(追跡調査)に調査用紙を配布した。また、サポートグループに参加していない遺族(対照群)にも同様の調査を実施した。その結果、初回調査、追跡調査ともに回答の得られた69名(参加群6名、対照群63名)を分析の対象とし、現在、集計段階に入っている。また本年度の研究計画として、遺族サポートグループの各セッションにおける参加者の発言内容をICレコーダーを用いて録音し、逐語記録としてデータ化することを挙げていたが、これらの作業もほぼ予定通り進めることができた。次年度はこれらの逐語記録を質的研究法により分析するほか、インタビュー調査も実施する予定である。本研究の目的は、緩和ケア病棟で家族を看取った遺族を対象とした遺族サポートグループの有効性と役割および限界について検討することである。平成24年度および平成25年度は、月1回(全12回)のプログラムを実施し、参加者にはグループ開始前(初回調査)とグループ終了時(追跡調査)に調査用紙を配布した。また、サポートグループに参加していない遺族(対照群)にも同様の調査を実施した。その結果、遺族サポートグループは複雑性悲嘆など精神症状の軽減に有効であることが示唆された。
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KAKENHI-PROJECT-24530899
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24530899
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緩和ケアにおける遺族ケアプログラムの開発とその有効性の検証
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平成25年度および最終年度は、サポートグループに参加していた遺族にインタビュー調査を実施し、遺族サポートグループの役割と限界について聴取した。その結果、遺族サポートグループの役割として、「同じ境遇だからこそ何でも話せる場」であると同時に、「悲嘆についての知識を得る場」としても機能していることが明らかになった。その一方で、サポートグループへの参加を途中で断念した遺族もおり、その理由としてニーズの違いによるものや同質の喪失体験を持つ人がグループ内にいない場合に生じやすい疎外感や孤立感によるもの、他のメンバーの言動による傷つきなどが挙げられた。また、遺族サポートグループにおける参加者の語りをデータ化し、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)により分析した。その結果、遺族サポートグループにおける参加者の心理プロセスが明らかになり、サポートグループはそれらの変化を促進する要因となっていることが示された。社会科学遺族サポートグループの有効性を検討するための質問紙調査を実施できたこと、また遺族サポートグループの各セッションにおける参加者の発言内容を録音し、逐語記録としてデータ化できたことは、本年度の成果だと考える。ただ、遺族サポートグループへの参加者数が予想していた人数よりも少なかったことが問題点として挙げられる。研究計画に記したグループ参加者数の目標は30名であり、平成24年度に実施した遺族サポートグループの参加者を合わせても目標を大きく下回っている。このようにグループ参加者数の問題はあるものの、本年度の目的は概ね順調に進展していると言える。遺族サポートグループの有効性を検討するための質問紙調査を実施できたこと、また遺族サポートグループの各セッションにおける参加者の発言内容を録音し、逐語記録としてデータ化できたことは、初年度の成果だと考える。ただ、遺族サポートグループへの参加者数が予想していた人数よりも少なかったことが問題点として挙げられる。研究計画に記したグループ参加者数の目標は30名であり、初年度に実施した遺族サポートグループの参加者は目標を大きく下回っている。したがって、次年度も引き続き質問紙調査を行うとともに、次年度のグループ参加者も分析の対象とする予定である。このようにグループ参加者数の問題はあるものの、初年度の目的は概ね順調に進展していると言える。次年度は、データ化された逐語記録を修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づき分析する。遺族サポートグループに参加することで何がどのように変化するのか、またグループは参加者にとってどのような役割を果たしているのかについて明らかにする。また、遺族サポートグループの参加者(中断した者も含む)にインタビュー調査を実施する。グループ参加者にはグループの役割と問題点について、途中で参加を中断した者についてはその理由などを聴取する。最終的には、これらの研究成果を学会等で発表する予定である。次年度は、データ化された逐語記録を修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づき分析する。
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KAKENHI-PROJECT-24530899
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24530899
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体育雑誌に見る大正自由教育の影響について-大正後期から昭和初期を中心として-
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大正後期から昭和初期における学校体育の歴史的展開の中に大正自由教育の理論と実践がどのような影響を及ぼしていたのか、このことを実証的に明らかにするための基礎的資料を得ることを目的として当時の代表的な体育関係の雑誌を収集し、検討した。特に今年度は前年度の作業を踏まえて、まず雑誌『學校體育』と『國民體育』の未収集巻号分の補完と、さらには雑誌『小学校體育』の収集と分析を行った。分析の視点は前年度と同様に、第一に大正自由教育の代表的イデオローグがどれだけ寄稿しているか、第二に体育関係者による大正自由教育を養護する論考が見受けられるか、という点においた。前年度の成果によると、『學校體育』と『國民體育』の二誌は東京高師系の雑誌『體育と競技』や『女子と子供の體育』に比べて、大正自由教育への系統度合いが濃く現れていたが、今年度の未収集巻号の補完作業により、この傾向はいっそう顕著となった。また『小学校體育』にも大正自由教育の強い影響が現れていたことが明らかとなった。さらに今年度は『學校體育』と『國民體育』、そして『小学校體育』の中に奈良女子高等師範学校附属小学校体操科訓導北井柳太郎の名が多数見られることに着目し、遺族への聞き取り調査を実施した。その結果、北井は当時の文部省を中心とした体育界と大正自由教育実践校をつなぐ重要な人物であったことが判明した。つまり北井は大正自由教育の理論と実践を体育の中に取り込み、それを体育雑誌というメディアを通じて体育界に発信していた人物であった。2カ年間を通じて、体育雑誌に見る大正自由教育の影響を考察してきたが、分析は論考執筆者の氏名とその題目に着目した統計的な検討に止まり、表層的考察という間は否めない。今後はそれぞれの人物や論考の内容を詳細に分析、考察し、実証の精度を高めることが大きな課題である。大正後期から昭和初期における学校体育の歴史的展開の中に大正自由教育の理論と実践がいかなる影響を及ぼしていたのか、このことを実証的に明らかにするための基礎的史料を得ることを目的として当時の体育雑誌を収集し、検討した。特に今年度は当時の体育関係者の間で広く購読されていた『體育と競技』、『學校體育』、『國民體育』、『真体育』、『女子と子供の体育』の5誌を収集し、検討対象とした。分析の視点は第一に大正自由教育の代表的イデオローグがどれだけ寄稿しているのか、第二に体育関係者による大正自由教育を擁護する論考が見受けられるか、という点においた。分析の結果、『體育と競技』、『真体育』、『女子と子供の体育』の3誌には大正自由教育の代表的イデオローグの論考は全く見られなかった。大正自由教育を擁護するような論考もまた見られなかった。僅かに『體育と競技』誌上において東京高師附小訓導の齋藤薫雄が大正自由教育の代表的実践校であった奈良女高師附小の体育に注目していた事実が把握できたに過ぎない。それに比して『學校體育』、『國民體育』の2誌には大正自由教育の代表的イデオローグの論考が頻繁に見受けられた。また『國民體育』誌上においては主筆である横浜高等工業学校の飯塚晶山が再三にわたり大正自由教育を擁護する論考を発表していた。以上のように大正後期から昭和初期における体育雑誌の間には、大正自由教育のとりあげ方、接近の度合いにおいて大きな雑誌間格差が存在していた。『體育と競技』、『女子と子供の体育』など、東京高師系とも言うべき雑誌には大正自由教育への傾倒が薄く、逆に『學校體育』、『國民體育』など、日本體育学会系の雑誌はその関係が密であったことが実証された。次年度は残された2誌『日本體育』と『小学校体育』の収集と分析を行い、加えて大正自由教育を擁護していたと見られる飯塚晶山の体育論について詳細に分析したいと考えている。大正後期から昭和初期における学校体育の歴史的展開の中に大正自由教育の理論と実践がどのような影響を及ぼしていたのか、このことを実証的に明らかにするための基礎的資料を得ることを目的として当時の代表的な体育関係の雑誌を収集し、検討した。特に今年度は前年度の作業を踏まえて、まず雑誌『學校體育』と『國民體育』の未収集巻号分の補完と、さらには雑誌『小学校體育』の収集と分析を行った。分析の視点は前年度と同様に、第一に大正自由教育の代表的イデオローグがどれだけ寄稿しているか、第二に体育関係者による大正自由教育を養護する論考が見受けられるか、という点においた。前年度の成果によると、『學校體育』と『國民體育』の二誌は東京高師系の雑誌『體育と競技』や『女子と子供の體育』に比べて、大正自由教育への系統度合いが濃く現れていたが、今年度の未収集巻号の補完作業により、この傾向はいっそう顕著となった。また『小学校體育』にも大正自由教育の強い影響が現れていたことが明らかとなった。
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KAKENHI-PROJECT-11780021
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11780021
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体育雑誌に見る大正自由教育の影響について-大正後期から昭和初期を中心として-
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さらに今年度は『學校體育』と『國民體育』、そして『小学校體育』の中に奈良女子高等師範学校附属小学校体操科訓導北井柳太郎の名が多数見られることに着目し、遺族への聞き取り調査を実施した。その結果、北井は当時の文部省を中心とした体育界と大正自由教育実践校をつなぐ重要な人物であったことが判明した。つまり北井は大正自由教育の理論と実践を体育の中に取り込み、それを体育雑誌というメディアを通じて体育界に発信していた人物であった。2カ年間を通じて、体育雑誌に見る大正自由教育の影響を考察してきたが、分析は論考執筆者の氏名とその題目に着目した統計的な検討に止まり、表層的考察という間は否めない。今後はそれぞれの人物や論考の内容を詳細に分析、考察し、実証の精度を高めることが大きな課題である。
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KAKENHI-PROJECT-11780021
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11780021
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遷移金属多核ポリアルキニル錯体を用いる特異的有機合成反応の開発
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本研究では、申請者らが最近見いだし、X線解析により構造の詳細を明らかにしている一連の複核ルテニウム-チオラート錯体上での各種末端アルキン類の活性化と反応性を詳細に検討し、二核サイトに特異的な炭素-炭素結合生成反応を見いだした。カオチン性Ru(III)錯体[Cp^*Ru(μ_2-Cl)(μ_2-SPr^i)RuCp^*][OTf](Cp^*=η^5-C_5Me_<5'>OTf=OSO_2CF_3)上では、HC≡CR(R=Tol,Ph,cyclohexeny1)2分子のカップリング反応が室温で速やかに進行し、ルテニウム2原子を含む5員環メタラサイクル骨格を有する複核錯体が各々ほぼ定量的に得られた。本反応は、まず2分子のアルキンが隣接する各々のルテニウム原子上で一方はアルキニル基、他方はビニリデン基へと活性化された後、これら2つの有機基が二核サイト上でカップリングして進行するものと考えられ、単核サイト上ではみられなかった新しいタイプの炭素-炭素結合生成反応である。中性Ru(II)錯体Cp^*Ru(μ_2-SPr^i)RuCp^*上では、ルテニウム-イオウ結合へアルキン2ないし3分子が形式的に挿入したと考えられる、上記と全く異なる構造を有する二核錯体が、アルキンの種類により各々選択的に得られた。反応条件を検討することにより、これらの変換反応の中間体をいくつか単離し、反応経路を明らかにした。さらに、架橋原子としてセレソやテルルを有する新規に核錯体の合成にも成功しており、今後これらを反応場とする有機合成反応の開発を引き続き行っていきたい。本研究では、申請者らが最近見いだし、X線解析により構造の詳細を明らかにしている一連の複核ルテニウム-チオラート錯体上での各種末端アルキン類の活性化と反応性を詳細に検討し、二核サイトに特異的な炭素-炭素結合生成反応を見いだした。カオチン性Ru(III)錯体[Cp^*Ru(μ_2-Cl)(μ_2-SPr^i)RuCp^*][OTf](Cp^*=η^5-C_5Me_<5'>OTf=OSO_2CF_3)上では、HC≡CR(R=Tol,Ph,cyclohexeny1)2分子のカップリング反応が室温で速やかに進行し、ルテニウム2原子を含む5員環メタラサイクル骨格を有する複核錯体が各々ほぼ定量的に得られた。本反応は、まず2分子のアルキンが隣接する各々のルテニウム原子上で一方はアルキニル基、他方はビニリデン基へと活性化された後、これら2つの有機基が二核サイト上でカップリングして進行するものと考えられ、単核サイト上ではみられなかった新しいタイプの炭素-炭素結合生成反応である。中性Ru(II)錯体Cp^*Ru(μ_2-SPr^i)RuCp^*上では、ルテニウム-イオウ結合へアルキン2ないし3分子が形式的に挿入したと考えられる、上記と全く異なる構造を有する二核錯体が、アルキンの種類により各々選択的に得られた。反応条件を検討することにより、これらの変換反応の中間体をいくつか単離し、反応経路を明らかにした。さらに、架橋原子としてセレソやテルルを有する新規に核錯体の合成にも成功しており、今後これらを反応場とする有機合成反応の開発を引き続き行っていきたい。
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KAKENHI-PROJECT-06855104
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06855104
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日本官僚制の連続と変化-昭和・平成期上級官僚のライフコースと役割行動-
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本研究は、上級官僚の役割創出・変容の解明を通して、戦後日本官僚制の歴史的役割を検証評価するものである。そのため、1.193579年間に入省した本省庁局筆頭課長以上1575人の官僚経歴を第2次的資料に拠って追跡する「官僚経歴調査」('98'00年実施)、2.1336名の退官・現役官僚に、役割認知とアイデンティティ、政策過程における諸アクターの影響力、戦後政策評価等を調査内容とする「郵送質問紙調査」('99年7月実施)、および、3.その回答者のうちから123名を対象とする「口述生活史法調査」('00年2月と7月実施)の、3つのタイプの調査を実施した。これらの調査結果の一端を、'00年5月の関西社会学会大会と'00年11月の日本社会学会大会で共同発表した。以下に、調査の知見の一部を列挙する。1.階位昇進の低速度化と上位階位でのそれの顕著化、退官年齢の一定性(55歳前後)、それらの省庁間類似化等々、キャリア・パターンには連続と変化の様相がある。2.上級官僚は、政策の課題形成、立案、決定の各ステージにおける相対的影響力を、「行政官僚」が第1位、「政府首脳」「与党幹部」が第2・3位であると認知する。そのコーホート間差異は小さい。3.上級官僚には、政策過程における影響力を維持して日本の政治行政を支えてきたという誇りがある一方で、政治家主導の動きのもと、自己の重みが低下しつつあるとの自己認識がある。ケーススタディの結果が映し出すのは、上級官僚の強い自負とモラルの高さであり、自己の役割を正当に評価してほしいという思いである。4.上級官僚には、戦後復興に取り組み経済再建の成果を高度成長につなげた「国士型」タイプから、低成長移行後の「政策転換」の重荷を背負い、意見の調整と根回しに諸アクターの間を駆け回る「調整型」タイプへの変化がみられる。本研究は、上級官僚の役割創出・変容の解明を通して、戦後日本官僚制の歴史的役割を検証評価するものである。そのため、1.193579年間に入省した本省庁局筆頭課長以上1575人の官僚経歴を第2次的資料に拠って追跡する「官僚経歴調査」('98'00年実施)、2.1336名の退官・現役官僚に、役割認知とアイデンティティ、政策過程における諸アクターの影響力、戦後政策評価等を調査内容とする「郵送質問紙調査」('99年7月実施)、および、3.その回答者のうちから123名を対象とする「口述生活史法調査」('00年2月と7月実施)の、3つのタイプの調査を実施した。これらの調査結果の一端を、'00年5月の関西社会学会大会と'00年11月の日本社会学会大会で共同発表した。以下に、調査の知見の一部を列挙する。1.階位昇進の低速度化と上位階位でのそれの顕著化、退官年齢の一定性(55歳前後)、それらの省庁間類似化等々、キャリア・パターンには連続と変化の様相がある。2.上級官僚は、政策の課題形成、立案、決定の各ステージにおける相対的影響力を、「行政官僚」が第1位、「政府首脳」「与党幹部」が第2・3位であると認知する。そのコーホート間差異は小さい。3.上級官僚には、政策過程における影響力を維持して日本の政治行政を支えてきたという誇りがある一方で、政治家主導の動きのもと、自己の重みが低下しつつあるとの自己認識がある。ケーススタディの結果が映し出すのは、上級官僚の強い自負とモラルの高さであり、自己の役割を正当に評価してほしいという思いである。4.上級官僚には、戦後復興に取り組み経済再建の成果を高度成長につなげた「国士型」タイプから、低成長移行後の「政策転換」の重荷を背負い、意見の調整と根回しに諸アクターの間を駆け回る「調整型」タイプへの変化がみられる。本研究は、昭和・平成期上級官僚の役割創出・変容の解明を通して、昭和期日本官僚制の歴史的役割を検証評価することを課題とする。計画初年である本年度は、上級官僚の役割意識を形成する官僚キャリアに関する第2次的資料調査を実施し、彼らの経歴データを加工処理するデータベース(DB)システムを開発した。以下に、その成果概要を示す。1.DBシステムの基本設計には、リレーショナル型DBシステム(マイクロソフト社のACCESS97)を採用して、システムの基幹となる(1)基礎項目DB(コーホート・氏名・生年等)の主DB、(2)経歴DB(就任年月・在職期間等)、(3)部局職位DB(省庁・部局・職位等)、(4)各種コードDB(都道府県・官庁等)等の副DBを作成し、クエリー機能を用いてDB間のリンク構造を設計した。システム詳細設計では、実際の運用のための画面設計、帳票設計、統計パッケージへのデータ変換設計を行った。さらに、プログラマ開発、データの移行、システム稼働確認の後行フェーズへ開発を進めている途上である。2.平成6・7年度科研費研究対象者604名の経歴を「人事興信録」「全国官公界名鑑」(38・39版)「職員録」(平成910年版)によって追跡調査し、加えて「職員録」から新たに抽出した763名(平成10年版から501名、昭和30・40・50・60年版から262名の局筆頭課長クラス以上)の経歴を上記人名録・職員録の各年版によって調べ、そのデータをカード(紙)DB化した。
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KAKENHI-PROJECT-10610173
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10610173
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日本官僚制の連続と変化-昭和・平成期上級官僚のライフコースと役割行動-
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全対象者(193875年入省)を5つの入省コーホートに分け、官僚経歴のコーホート分析を行った結果、(1)東大卒比率、法学専攻修了者比率の低下、(2)新卒採用の確立、(3)後行コーホートへと、初任課長、局筆頭課長、局長、次官・長官の初就任年齢が高くなり、それは階位が高くなるほど顕著化すること、退官年齢の高齢化はそれに対応していないこと、等々の知見を得た。経歴の調査と分析は次年度に継続される。本研究は、上級官僚集団の役割創出・変容の解明を通して、戦後日本官僚制の役割を検証評価しようとするものである。そのため、ライフコース・アプローチに拠って上級官僚の外面的・内面的経歴を跡づけ、その所産としての役割行動を歴史的脈絡において追求した。1.『人事興信録』『全国官公界名鑑』『職員録』各年版による退官・現役上級官僚(1367名)の経歴調査を前年度から継統し、その結果をコーホート分析した。それにより、階位昇進の低速度化(課長初任37歳→43歳)と上位階位でのそれの顕著化(局長就任49歳→52歳)、退官年齢の不変性(55歳前後)、それらの省庁間類似化等々の知見を得た。2.「公務員」としての役割認知とアイデンティティ、政策過程における諸アクターの影響力とリンケージ、地域開発等戦後政策の評価等々を内容とする質問紙調査(郵送法)を、1.の対象者および追加選定上級官僚(263名)に対して実施した(78月。回収数・率490、36.7%)。コーホート分析の結果、高い公務員としてのアイデンティティや誇り、経済的待遇への不満と職務の専門性や職場環境への高い満足、階位による役割認知の変異(課長補佐の政策課題の解決、課長の政策形成、局長の国家見地からの職務遂行等)、戦後官僚制に対する「行政の安定性・使命感」「長期的な政策推進」の評価、「政治家の政策力向上の期待と公正・効率的なシンクタンクである官僚制のパワーアップ志向と交錯」等々の知見を得た。なお、コーホート別単純集計表を集成した『昭和・平成期上級官僚のキャリアと役割行動に関する調査報告』(平成12年1月、全70頁)を作成した。3.質問紙調査の回答者のうち、面接調査の許諾を得た83名を対象に東京、静岡、名古屋、大阪、京都、兵庫の都府県で口述による生活史調査を実施した(平成12年2月。1人当たり23時間)。現在、収録したテープの再生と生活史の再構成作業が進行中である。本研究は、上級官僚の役割創出・変容の解明を通して、戦後日本官僚制の歴史的役割を検証評価するものである。そのため、1.193579年間に入省した本省庁局筆頭課長以上1575人の官僚経歴を第2次的資料に拠って追跡する「官僚経歴調査」('98'00年実施)、2.1336名の退官・現役官僚に、役割認知とアイデンティティ、政策過程における諸アクターの影響力、戦後政策評価等を調査内容とする「郵送質問紙調査」('99年7月実施)、および、3.その回答者のうちから123名を対象とする「口述生活史法調査」('00年2月と7月実施)の、3つのタイプの調査を実施した。これらの調査結果の一端を、'00年5月の関西社会学会大会と'00年11月の日本社会学会大会で共同発表した。以下に、調査の知見の一部を列挙する。1.階位昇進の低速度化と上位階位でのそれの顕著化、退官年齢の一定性(55歳前後)、それらの省庁間類似化等々、キャリア・パターンには連続と変化の様相がある。2.上級官僚は、政策の課題形成、立案、決定の各ステージにおける相対的影響力を、「行政官僚」が第1位、「政府首脳」「与党幹部」が第2・3位であると認知する。そのコーホート間差異は小さい。
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KAKENHI-PROJECT-10610173
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10610173
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プラスミドDNAのマウス体内動態と遺伝子発現との相関
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現在、遺伝子治療を目的として、塩基性リボソームやポリマーを遺伝子キャリアーとして用いる手法が精力的に研究されている。しかし、その多くがin vivoにおいて、有効に機能しているとは言い難い。そこで本研究ではいくつかの遺伝子キャリアーを例に挙げ、DNA複合体の静脈から全身投与後の血清成分との相互作用、そして、体内動態、細胞内でのタンパク質との相互作用を総合的に評価した。遺伝子キャリアーとしてデンドリティックポリリジンを使い、そのDNA複合体をマウス尾静脈から投与すると、数時間の血中滞留性を示したが、ポリエチレングリコール(PEG)修飾を行うと、さらにステルス性が向上することがわかった。また、培養細胞を対象にした実験においても、PEG修飾によりトランスフェクション効率は大きく減少することがわかった。しかし、PEG鎖の末端にRGDペプチド(腫瘍組織へのターゲティングリガンド)や腫瘍細胞表面に現れるフォスファチジルセリンに選択的に結合するペプチドで修飾することにより、腫瘍細胞内へのトランスフェクション効率が大幅に向上することがわかった。一方、細胞内において、DNAキャリアー複合体が相互作用するタンパク質の同定も行った。その結果、アクチンやアデノシルメチオニン合成酵素、アルギノコハク酸合成酵素などがその候補として同定され、その結合量は遺伝子キャリアーの種類によって異なることがわかった。これら細胞内で相互作用するタンパク質が細胞内でのDNAの挙動に大きな影響を与えると考えられる。細胞外でのステルス性、標的化、細胞内への取り込みと核への輸送を総合的にコントロールする遺伝子キャリアーシステムの構築が重要であることがわかった。遺伝子治療を目的として、塩基性リポソームやポリマーを遺伝子キャリアーとして用いる手法が精力的に研究されている。しかし、その多くが培養細胞を対象にした実験で、その結果は動物を対象にしたin vivoの結果にそのまま反映していないケースが非常に多い。もう一度、遺伝子キャリアー分子構造と遺伝子デリバリー効率について基礎的な視点から根本的に見直す必要がある。そこで、本研究では代表的な遺伝子キャリアーとして直鎖状ポリリジンとデンドリティック構造をもつポリリジンに注目し、それらを比較した。デンドリティックポリリジンはDNAとほぼ中性の複合体を形成するがリニアポリリジンはカチオン性の複合体を形成した。また、いずれの場合も時間が経過するにつれてそのサイズは数マイクロメーターまで大きくなった。一方、血清存在下においては、その複合体の成長は抑えられ、血清成分が複合体間の相互作用を低減させたものを考えられる。複合体に吸着しているタンパク質成分をSDS-PAGEで分析した結果、デンドリティック構造とリニア構造の場合でアルブミンやカーボニックアンヒドラーゼと推測されるタンパク質が同様に検出された。一方で、血清存在下で培養細胞にトランスフェクションするとデンドリティックなものがリニアと比べて100倍程度の高遺伝子発現を示した。蛍光顕微鏡観察により、細胞内への取り込み量には違いは見られなかったことから、細胞質へあるいは核への細胞内での移行効率に違いがあるものを考えられる。この複合体をマウス尾静脈から投与した結果、デンドリティック構造を持つポリリジンの血中滞留性はリニアポリリジンに比較して長かった。複合体のゼータポテンシャルの違いがその理由と考えられるが、複合体に吸着する血清タンパク質成分に大きな違いは見られないため、吸着物質量の正確な定量も含め、さらに詳細な構造・活性相関研究が必要であろう。現在、遺伝子治療を目的として、塩基性リボソームやポリマーを遺伝子キャリアーとして用いる手法が精力的に研究されている。しかし、その多くがin vivoにおいて、有効に機能しているとは言い難い。そこで本研究ではいくつかの遺伝子キャリアーを例に挙げ、DNA複合体の静脈から全身投与後の血清成分との相互作用、そして、体内動態、細胞内でのタンパク質との相互作用を総合的に評価した。遺伝子キャリアーとしてデンドリティックポリリジンを使い、そのDNA複合体をマウス尾静脈から投与すると、数時間の血中滞留性を示したが、ポリエチレングリコール(PEG)修飾を行うと、さらにステルス性が向上することがわかった。また、培養細胞を対象にした実験においても、PEG修飾によりトランスフェクション効率は大きく減少することがわかった。しかし、PEG鎖の末端にRGDペプチド(腫瘍組織へのターゲティングリガンド)や腫瘍細胞表面に現れるフォスファチジルセリンに選択的に結合するペプチドで修飾することにより、腫瘍細胞内へのトランスフェクション効率が大幅に向上することがわかった。一方、細胞内において、DNAキャリアー複合体が相互作用するタンパク質の同定も行った。その結果、アクチンやアデノシルメチオニン合成酵素、アルギノコハク酸合成酵素などがその候補として同定され、その結合量は遺伝子キャリアーの種類によって異なることがわかった。これら細胞内で相互作用するタンパク質が細胞内でのDNAの挙動に大きな影響を与えると考えられる。細胞外でのステルス性、標的化、細胞内への取り込みと核への輸送を総合的にコントロールする遺伝子キャリアーシステムの構築が重要であることがわかった。
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KAKENHI-PROJECT-16790106
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16790106
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卵巣明細胞腺癌に発現する変異TrkBアイソフォームのシグナル解析
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卵巣癌組織サンプルより総RNAの抽出を行なった。また、TrkBアイソフォーム発現パターンについて解析が可能となるようにプライマーを設計し、これらのサンプルで発現するTrkBmRNAのアイソフォームを確認した。さらに、トランスフェクションに適した細胞株の選出を行うことを目的として、各種卵巣明細胞腺癌細胞株が発現するTrkBmRNAアイソフォームを確認するとともに、TrkB阻害剤感受性レベルも確認した。(1)神経栄養因子受容体TrkBの3つのアイソフォームの識別可能なプライマーを設計し、リアルタイムPCRを行なった。検体は、卵巣明細胞腺癌について約15例、漿液性腺癌、類内膜腺癌、粘液性腺癌については小数例を用いた。さらに、卵巣明細胞腺癌の12細胞株を用いた。その結果、すべての検討例にTrkBアイソフォームの発現を認めた。TrkBアイソフォームの発現構成は明細胞腺癌の中でも多様であり、ライブラリーから遺伝子を抽出する候補を得ることができた。(2)免疫組織化学においてTrkBタンパクの発現を20数例の卵巣明細胞腺癌の手術検体を用いて確認した。(3)TrkBの発現を確認した上記卵巣明細胞腺癌のうち5細胞株を用いて、抗がん剤シスプラチン添加実験、TrkB阻害剤K252a添加実験を行なった。これらの細胞株が抗がん剤感受性と、TrkB阻害剤感受性を確認した。(4)また、これらの細胞株を用いて、BDNF存在下・非存在下でのTrkB下流シグナル分子のリン酸化をWestern blottingにより解析する系の確率に着手した。(5)卵巣明細胞腺癌細胞株に、細胞内にチロシンキナーゼ(TK)を持つ完全長型アイソフォームTrkB-TK、細胞内にTKを持たないdominant negativeアイソフォームのTrkB-Shc,TrkB-T1のベクターを組み込み、実験系を検討している。(1)明細胞腺癌以外の組織型、すなわち漿液性腺癌、類内膜腺癌、粘液性腺癌について今までRT-PCRを用いて検出していたアイソフォームをリアルタイムでの定量にシフトしたため、リアルタイムPCRの条件設定の際に、プライマーの再設計に時間を要した。そのため、現時点で初年度の予定である各10検体のリアルタイムPCR解析が未了となった。これについては、卵巣癌組織検体を用いたリアルタイムPCRにおいて、3つのTrkBアイソフォームを認識するように、細胞外の3つに共通するドメイン、リガンドのBDNF結合領域、TrkB-T1のみが持つドメイン、TrkB-shcのみが持つshc結合ドメイン、TrkB-TKのみが持つTKドメインを認識するようにプライマーを設計した。組織サンプルは既に収集済みであるため、残りの明細胞腺癌以外のリアルタイムPCRは直ちに実施可能である。(2)上記のように、プライマーの再設計によりリアルタイムPCRの解析に時間を要したため、初年度に行う予定であった、TrkBアイソフォームのRNAレベルでの変異を認めた検体について次世代シークエンスに着手できていない。これについては、用いる予定の明細胞腺癌検体の方向はすでに絞り込まれており、今年度に直ちに実施可能である。(3)先行研究で使用していたTrkBの細胞外ドメイン、細胞内のTKを認識する2種類の抗TrkB抗体が市販されなくなり入手できなくなっていたため、新たな抗体の選定、有効性の確認に時間を要し、初年度の予定であった免疫組織化学がまだ終了していない。これについれは、新たな2つの抗TrkB抗体の有効性を確認できたため、すでに収集済みの卵巣癌サンプルを用いて今年度に免疫組織化学を実施可能な状態である。TrkB分子は、多くのスプライシングバリアントを持つ可能性があるため、当初の予定より再現性を得にくく、組織片よりアイソフォームを同定することが困難であることが明らかとなった。しかし、2年間の研究推進により、アイソフォーム同定のための手段は確立できたと考える。以下に、今後の研究推進の方法を示した。(1)リアルタイムPCR、免疫組織化学については実験条件はすでに確立しており、組織検体も収集済みであるため、今年度前半に行うことが可能である。(2)すでに、卵巣明細胞腺癌の細胞株におけるTrkBアイソフォームの発現とTrkB阻害剤感受性については明らかであるため、これらを用いて今年度前半にBDNFシグナルによるAKT、MAPKを含むシグナル分子の活性化、およびSnai,ZebなどのEMT関連分子の活性化をWestern blottingにより解析し、TrkBアイソフォーム・細胞の性状とシグナル分子の関与に差があるかどうかを明らかにする。これらに差があることが明らかになれば、各細胞株が発現するアイソフォームのトランスフェクタントを作製し、同様の実験を行う。今年度後半には、これらの細胞とトランスウェルを用いてEMTに関連するTrkB機能解析も行なう。(3)リアルタイムPCR、免疫組織化学について、TrkBアイソフォームの発現構成と組織型、臨床進行期、転移の有無、抗がん剤耐性等との関連をデータ解析する。(4)リアルタイムPCRの結果、RNAレベルで変異が明らかになった検体について、cDNA遺伝子配列を次世代シークエンサーにより明らかにし、mRNA発現プロファイルを比較して、他の腫瘍関連遺伝子発現に関する影響を解析する。(1)神経栄養因子受容体TrkBの3つのアイソフォームを識別できるようにリアルタイムPCR用のプライマーを設計し、卵巣癌の4つの組織型(漿液性腺癌、類内膜腺癌、粘液性腺癌、明細胞腺癌)の各少数例でアイソフォーム発現の検討を行った。
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KAKENHI-PROJECT-17K11298
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K11298
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卵巣明細胞腺癌に発現する変異TrkBアイソフォームのシグナル解析
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現在までの検討の範囲内ではTrkBアイソフォームの構成の症例組織型による相違は明らかではない。(2) 20種の細胞株(卵巣癌明細胞腺癌12株、その他卵巣癌5株、神経芽細胞腫1株、その他2株)についても同様にqRT-PCRによるアイソフォーム検索を行なうと同時に、細胞増殖アッセイを行なった。明細胞腺癌細胞株において、3パターンのTrkBアイソフォームの発現構成がみられた。3つのアイソフォームをすべて発現するもの、完全長型以外の2つのドミナントネガティブアイソフォームだけを発現するもの、ドミナントネガティブのいずれかのみを発現するものの3パターンである。また、明細胞腺癌細胞株から3つのアイソフォーム発現パターンについてそれぞれ2株ずつ選択し、抗癌剤添加下に細胞増殖アッセイにおこなったところ、完全長型アイソフォームを発現している細胞株では細胞増殖能が高い傾向がみられた。(3)卵巣癌手術検体組織マイクロアレイ(明細胞腺癌約40例)での免疫組織化学的検討をめざし、TrkBの3つのアイソフォームを認識する抗体、TrkBの完全長型を認識する抗体、汎Trk抗体の3抗体の信頼性、有用性を確かめた。組織を用いた研究については、卵巣癌組織検体を用いた免疫染色およびqRT-PCRを数例ずつ行ない、抗体およびプライマーの有効性を確認した。進捗状況としては、当初の初年度の予定より遅れているが、検体・抗体・プライマーが準備できているため本年度、比較的早期に初年度の予定を実施できる見込みである。細胞株を用いた研究については、概ね初年度の予定を実施した。また、TrkBベクターを導入前の細胞株で抗癌剤添加実験を行なっており、3年目の予定を一部実施した。卵巣癌組織サンプルより総RNAの抽出を行なった。また、TrkBアイソフォーム発現パターンについて解析が可能となるようにプライマーを設計し、これらのサンプルで発現するTrkBmRNAのアイソフォームを確認した。さらに、トランスフェクションに適した細胞株の選出を行うことを目的として、各種卵巣明細胞腺癌細胞株が発現するTrkBmRNAアイソフォームを確認するとともに、TrkB阻害剤感受性レベルも確認した。(1)神経栄養因子受容体TrkBの3つのアイソフォームの識別可能なプライマーを設計し、リアルタイムPCRを行なった。検体は、卵巣明細胞腺癌について約15例、漿液性腺癌、類内膜腺癌、粘液性腺癌については小数例を用いた。さらに、卵巣明細胞腺癌の12細胞株を用いた。その結果、すべての検討例にTrkBアイソフォームの発現を認めた。TrkBアイソフォームの発現構成は明細胞腺癌の中でも多様であり、ライブラリーから遺伝子を抽出する候補を得ることができた。(2)免疫組織化学においてTrkBタンパクの発現を20数例の卵巣明細胞腺癌の手術検体を用いて確認した。(3)TrkBの発現を確認した上記卵巣明細胞
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KAKENHI-PROJECT-17K11298
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Subsets and Splits
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