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定印上に宝塔を載せる弥勒如来像の研究
定印上に宝塔を載せる弥勒如来の図像は、善無畏訳の弥勒儀軌等には像容の説明が十分でない。このためか定印弥勒像には、彫刻、絵画、工芸の諸作例にわたっていくつかの異なるかたちが存する。しかし、これら定印弥勒像を密教史と対応させながら図像学的に系統だてて分析した研究は無かった。本研究では、先ずこのタイプの弥勒像が頭髪、着衣、持物等の表現にそれぞれ異なる特徴をそなえていることに着目した。そして、このタイプの弥勒を図像の上から第一類、第二類、第三類に分類した。その結果、第一類から第三類の定印弥勒像制作の背景にはつぎのような事実があるという知見も得た。◎第一類儀軌の記述に忠実な如来形で古いかたち(例、仁和寺本『弥勒菩薩畫像集』一図等)。螺髪上に宝冠を頂き、衲衣を着し、宝塔を捧ぐ。この如来形は善無畏訳『胎蔵図像』の毘瀘遮那を意識した台密(寺門系)伝来の図像。弥勒即大日の密教思想が反映。◎第二類宋図様の影響をうけた宝冠毘瀘遮那を意識した如来形と菩薩形の中間的像容(例、『撹禅鈔』一図、快慶作建久三年銘像等)。宝髻上に宝冠を頂き、衲衣を着すという宋仏画の形式をとる。この第二類も弥勒(菩薩)即大日(毘瀘遮那如来)という密教思想を反映。これら第一類、第二類は請来図像をもととしたもので、盲目的にそのかたちを踏襲するという共通した特徴がある。したがって、構図にも変化が乏しい。◎第三類儀軌にこだわらない菩薩形で新しいかたち。宝髻上に宝冠を頂き、条帛・裙を着け、五輪塔を捧ぐ(和歌山・慈尊院本、高山寺鏡弥勒像等)。この菩薩形は、非善無畏系現図曼荼羅の胎大日を意識。この図像は兜率即密厳=弥勒即大日という東密の深秘釈に基づく。第三類は12世紀末頃わが国で成立し、以後定印弥勒像の主流をなす。第三類は定印弥勒像の日本的展開ともいえ、阿闇梨の意楽が反映され構図等に改変が多い。定印上に宝塔を載せる弥勒如来の図像は、善無畏訳の弥勒儀軌等には像容の説明が十分でない。このためか定印弥勒像には、彫刻、絵画、工芸の諸作例にわたっていくつかの異なるかたちが存する。しかし、これら定印弥勒像を密教史と対応させながら図像学的に系統だてて分析した研究は無かった。本研究では、先ずこのタイプの弥勒像が頭髪、着衣、持物等の表現にそれぞれ異なる特徴をそなえていることに着目した。そして、このタイプの弥勒を図像の上から第一類、第二類、第三類に分類した。その結果、第一類から第三類の定印弥勒像制作の背景にはつぎのような事実があるという知見も得た。◎第一類儀軌の記述に忠実な如来形で古いかたち(例、仁和寺本『弥勒菩薩畫像集』一図等)。螺髪上に宝冠を頂き、衲衣を着し、宝塔を捧ぐ。この如来形は善無畏訳『胎蔵図像』の毘瀘遮那を意識した台密(寺門系)伝来の図像。弥勒即大日の密教思想が反映。◎第二類宋図様の影響をうけた宝冠毘瀘遮那を意識した如来形と菩薩形の中間的像容(例、『撹禅鈔』一図、快慶作建久三年銘像等)。宝髻上に宝冠を頂き、衲衣を着すという宋仏画の形式をとる。この第二類も弥勒(菩薩)即大日(毘瀘遮那如来)という密教思想を反映。これら第一類、第二類は請来図像をもととしたもので、盲目的にそのかたちを踏襲するという共通した特徴がある。したがって、構図にも変化が乏しい。◎第三類儀軌にこだわらない菩薩形で新しいかたち。宝髻上に宝冠を頂き、条帛・裙を着け、五輪塔を捧ぐ(和歌山・慈尊院本、高山寺鏡弥勒像等)。この菩薩形は、非善無畏系現図曼荼羅の胎大日を意識。この図像は兜率即密厳=弥勒即大日という東密の深秘釈に基づく。第三類は12世紀末頃わが国で成立し、以後定印弥勒像の主流をなす。第三類は定印弥勒像の日本的展開ともいえ、阿闇梨の意楽が反映され構図等に改変が多い。
KAKENHI-PROJECT-07710034
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07710034
地理情報システムを利用した都市建築物の地震被害分布即時評価法の確立
(1)建物や都市基盤施設の地震被害分布をGIS(地理情報システム)上で即時評価を行うことを目指して,兵庫県南部地震で被害を受けた西宮市域を対象に,震災に関する多様なデータを収集し,GIS上に展開した。そこで災害情報処理のツールとしてのGISの活用法とデータベース構築の要点を明らかにした。扱ったデータは,地盤変状や地震動などのハザードに関わるデータ,地形・地質条件など環境条件に関わるデータ,家屋被害,ライフライン被害など物理的な被害に関わるデータ,避難所などの緊急対応に関するデータ,被災家屋撤去・復興の経過などである。これらは,いずれも面的な広がりをもって分析され,物理的な災害事象の時空間的特性の定量的把握と,機能的復旧過程や緊急対応過程との関連の把握などに用いた。(2)西宮市の建物被災度判定データと建物瓦礫撤去・新築状況データとの間の相違点を検討し,その過程で明らかになった建物被災データの問題点を整理した。(3)震災後の建物被災ならびに復興データの調査・収集において,より迅速で正確なGISデータの構築を行うため,ペン入力式の携帯型パソコンを用いた災害情報収集システムを開発した。これはGISをGPS(汎地球測位システム)と共に搭載したもので,西宮市北口町・高木西町を対象地域としてデータ収集試用実験を行い,その長所と問題点をまとめた。(4)都市地盤のマイクロソ-ニングのための地盤構造調査資料の収集・解析を行った。兵庫県南部地震による神戸阪神間の「震災の帯」の原因を究明するために,脈動(長周期微動)観測と重力細密測定を実施して,六甲山系東部の甲陽断層周辺の基盤岩構造を求めた。この結果,基盤岩は甲陽断層に伴い2段の逆断層として約800m沈降しており,落差200mの芦屋断層を併合して西に走向を転じながら神戸市域に伸びて盆地境界を形成していることが明らかになった。(1)建物や都市基盤施設の地震被害分布をGIS(地理情報システム)上で即時評価を行うことを目指して,兵庫県南部地震で被害を受けた西宮市域を対象に,震災に関する多様なデータを収集し,GIS上に展開した。そこで災害情報処理のツールとしてのGISの活用法とデータベース構築の要点を明らかにした。扱ったデータは,地盤変状や地震動などのハザードに関わるデータ,地形・地質条件など環境条件に関わるデータ,家屋被害,ライフライン被害など物理的な被害に関わるデータ,避難所などの緊急対応に関するデータ,被災家屋撤去・復興の経過などである。これらは,いずれも面的な広がりをもって分析され,物理的な災害事象の時空間的特性の定量的把握と,機能的復旧過程や緊急対応過程との関連の把握などに用いた。(2)西宮市の建物被災度判定データと建物瓦礫撤去・新築状況データとの間の相違点を検討し,その過程で明らかになった建物被災データの問題点を整理した。(3)震災後の建物被災ならびに復興データの調査・収集において,より迅速で正確なGISデータの構築を行うため,ペン入力式の携帯型パソコンを用いた災害情報収集システムを開発した。これはGISをGPS(汎地球測位システム)と共に搭載したもので,西宮市北口町・高木西町を対象地域としてデータ収集試用実験を行い,その長所と問題点をまとめた。(4)都市地盤のマイクロソ-ニングのための地盤構造調査資料の収集・解析を行った。兵庫県南部地震による神戸阪神間の「震災の帯」の原因を究明するために,脈動(長周期微動)観測と重力細密測定を実施して,六甲山系東部の甲陽断層周辺の基盤岩構造を求めた。この結果,基盤岩は甲陽断層に伴い2段の逆断層として約800m沈降しており,落差200mの芦屋断層を併合して西に走向を転じながら神戸市域に伸びて盆地境界を形成していることが明らかになった。建物や都市基盤施設の地震被害分布をGIS(地理情報システム)上に展開して,即時評価を行うことを目指し,兵庫県南部地震で被害を受けた西宮・宝塚・芦屋の各市域を対象として,震災に関する多様なデータを収集し,多元的な分析を行った。得られた主な成果は次の通りである。(1)災害評価のためのGISの概念の構成と,GISに導入しておくべきデータベースの整備ならびに可視化を行った。扱ったデータは,地盤変状や地震動などのハザードに関わるデータ,地形・地質条件など環境条件に関わるデータ,家屋被害,ライフライン被害など物理的な被害に関わるデータ,避難所などの緊急対応に関するデータ,被災家屋撤去・復興の経過などである。これらは,いずれも面的な広がりをもって分析され,物理的な災害事象の時空間的特性の定量的把握と,機能的復旧過程や緊急対応過程との関連の把握などに用いた。(2)都市地盤のマイクロゾーニングのための地盤構造調査資料の収集・解析を行った。兵庫県南部地震による神戸阪神間の「震災の帯」は,その東部である西宮市付近で走向が転じたり,パッチ状に分かれたりする。都市地盤のマイクロゾーニングの観点からこの原因を究明するために,脈動(長周期微動)観測と重力細密測定を実施して,六甲山系東部の甲陽断層周辺の基盤岩構造を求めた。この結果,基盤岩は甲陽断層に伴い2段の逆断層として約800m沈降しており,落差200mの芦屋断層を併合して西に走向を転じながら神戸市域に延びて盆地境界を形成していることが明らかになった。この甲陽断層は南西方向延長に分岐して市街地下に伸びていることも示唆された。
KAKENHI-PROJECT-08455260
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08455260
地理情報システムを利用した都市建築物の地震被害分布即時評価法の確立
(3)都市災害情報の効果的な現地収集方法論の実現へ向けて,ノートパソコンとモ-ビルGPSセンサーを導入した移動型コンピュータによる被害情報入力装置の利用法の開発を行うため,機器の整備,ならびに適用の概念構成を行った。本研究の成果は次のように要約される。(1)西宮市域を対象に,震災に関する多様なデータを収集し,GIS(Geographic Information System:地理情報システム)上に展開した。都市施設の被害とそれによる都市機能への影響,ならびに緊急対応活動への影響に関する多元的な分析を進めた。本研究では,災害現象の多重分析を行うとともに,工学的視点と地理学的視点を合わせた横断的な考察を行い,ライフラインの耐震性強化・防災都市の開発などに有用な資料を提供することを最終的に目指した。災害情報処理ツールとしてのGISの活用法とデータベース構築の要点を明らかにした。(2)阪神・淡路大震災による西宮市の建物被災度判定データと建築瓦礫撤去・新築状況データとの間の相違点を検討し,その過程で明らかになった建物被災データの問題点を整理した。また,震災後の建物被災ならびに復興データの調査・収集において,より迅速で正確なGISデータの構築を行うため,ペン入力式の携帯型パソコンを用いた災害情報収集システムを開発した。これはGISをGPS(Global Positioning System:汎地球測位システム)と共に搭載したもので,西宮市北口町・高木西町を対象地域としてデータ収集試用実験を行い,その長所と問題点をまとめた。(3)1996年中国雲南省麗江地震(M7.0)による麗江盆地の被害分布と盆地地質構造の関係を把握するために,盆地の基盤岩構造を脈動観測により調査した。盆地境界の基盤岩の急峻な沈降が地震動の増幅に関与している。防災GISの構築のために,震災の被害例の検証と想定地震による被害予測の枠組みの分析を行い,マイクロゾーニングに関わる基盤構造の研究には脈動や重力などの地球物理学的資料が有効に利用できることを示した。
KAKENHI-PROJECT-08455260
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08455260
モット転移近傍における電子状態の研究
銅酸化物高温超伝導体の金属-絶縁体転移(モット転移)近傍では、様々な異常な電子状態の振る舞いが観測されており、それらは高温超伝導のメカニズムと密接に関連していると考えられている。本研究では、モット転移近傍の2次元系の数値シミュレーションを行い、2次元系のモット転移の主な特徴は1次元系の性質と同様に説明できることを明らかにした。また、このモット転移の描像から、銅酸化物高温超伝導体で観測されている様々な異常な振る舞いを統一的に説明することに成功した。高温超伝導体の性質を定量的に説明するために、次近接ホッピングを導入した正方格子ハバードモデルの1電子励起に関する理論的解析を行った。これにより、ホールドープ系および電子ドープ系の高温超伝導体で観測されている様々な振る舞いを2次元系のモット転移近傍の性質として統一的に説明することに成功した。具体的には、ホールドープ系と電子ドープ系における擬ギャップの開く波数の違いを、次近接ホッピングによるスペクトル強度分布の変化によって説明した。まず、次近接ホッピングを摂動と考えた理論を構築し、スペクトル強度分布の定性的な特徴を捉え、クラスター摂動理論を用いて定量的にスペクトル強度分布を解析した。これにより、ホールドープ系および電子ドープ系の高温超伝導体で観測されている様々な振る舞いを統一的かつほぼ正確に再現することに成功した。ホールドープ系と電子ドープ系の擬ギャップの違いは、波数(π,0)付近の大きなスペクトル強度をもつモードとモット転移に向けてスペクトル強度を失うモードが化学ポテンシャル付近の性質に与える影響が、ホールドープ系と電子ドープ系では次近接ホッピングのために異なるためであることを明らかにした。これまで電子ドープ系の擬ギャップは反強磁性秩序の形成によるものと考えられてきたが、今回明らかにした描像では、擬ギャップの形成には反強磁性秩序は必要なく、次近接ホッピングのある2次元系のモット転移近傍の性質として自然に理解でき、ホールドープ系および電子ドープ系の性質を統一的かつ直感的に説明することができる。この研究結果は、第68回日本物理学会年次大会において発表を行った。銅酸化物高温超伝導体の金属-絶縁体転移(モット転移)近傍では、様々な異常な振る舞いが観測されており、それらは高温超伝導のメカニズムと密接に関連していると考えられている。本研究では、2次元系のモット転移近傍の電子状態の特徴を明らかにするために、2次元ハバードモデルに対してクラスター摂動理論による数値シミュレーションを行った。シミュレーションで得られた結果について、1次元系からの摂動理論に基づく考察を加えることにより、2次元系のモット転移近傍の主な特徴は、1次元系の性質が連続的に変化したものとして説明できることを明らかにした。特に、モット転移については、2次元系でも1次元系の場合と同様に、モット転移に向けて1電子励起の分散関係がモット絶縁体のスピン波励起のものへと連続的に変化し、下部ハバードバンドの電子を加える励起スペクトルの強度が徐々に消失することを明らかにした。このことから、モット転移は、電子の動きをスピン自由度に残したまま、電荷の自由度が凍結する転移として特徴づけられることがわかった。また、このモット転移の描像から、高温超伝導体で観測されている様々な異常な振る舞い(擬ギャップ、フェルミアーク、スピンノン的励起、ホロン的励起、分散関係のキンクとウォーターフォール、ドーピング誘起状態、ホールポケットなど)を、2次元系のモット転移近傍の性質として統一的に説明することに成功した。さらに、次近接ホッピングを導入したモデルを考えることにより、ホールドープ系および電子ドープ系の高温超伝導体で観測されている特徴についても、統一的に説明することができた。銅酸化物高温超伝導体の金属-絶縁体転移(モット転移)近傍では、様々な異常な電子状態の振る舞いが観測されており、それらは高温超伝導のメカニズムと密接に関連していると考えられている。本研究では、モット転移近傍の2次元系の数値シミュレーションを行い、2次元系のモット転移の主な特徴は1次元系の性質と同様に説明できることを明らかにした。また、このモット転移の描像から、銅酸化物高温超伝導体で観測されている様々な異常な振る舞いを統一的に説明することに成功した。厳密解と高精度シミュレーションによって得られた1次元系の結果をもとにして、2次元強相関系のモット転移近傍の電子状態を調べ、高温超伝導体で観測されている様々な異常な電子状態の振る舞いを定量的に説明するとともに、1次元系の準粒子に由来する新奇な準粒子描像によって、モット転移近傍の特徴に統一的な解釈を与えることを目的として研究を行った。平成23年度は、まず鎖間弱結合理論によって、鎖間ホッピングが1次元系の結果にどのような影響を与えるのかについて研究を行った。次に、高温超伝導体で観測されている振る舞いとの関係を明らかにするために、等方的2次元系のモデル(2次元ハバードモデル)の性質をクラスター摂動理論によって調べた。その結果、波数空間の対角線方向の性質は鎖間弱結合理論によって定性的に説明できることがわかった。特に、モット転移においては、1次元系と同様に、スピンの自由度は連続的にモット絶縁体のスピン波励起へと変化し、電荷の自由度は徐々に凍結することが明らかになった。また、高温超伝導体で観測されていた様々な異常な振る舞い(擬ギャップ、フェルミアーク、スピンノン的励起、ホロン的励起、キンク、ウォーターフォール、ギャップ内励起、ホールポケットなど)も、2次元ハバードモデルのモット転移近傍の性質として統一的に説明するができた。
KAKENHI-PROJECT-23540428
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23540428
モット転移近傍における電子状態の研究
さらに、2次元系の上部ハバードバンドは、鎖間結合を弱くすることによってギャップを閉じることなく連続的に1次元系のものへと変化させられることから、2次元系の上部ハバードバンドも1次元系のストリング解で定義される準粒子(ダブロン)に由来するものであることがわかった。この研究成果は、2012年2月のPhysical ReviewLetters誌に掲載された。また、プレス発表によって、日経産業新聞、日刊工業新聞、科学新聞の記事としても掲載された。平成23年度中に平成24年度の計画まで完了したので、平成25年度に行う予定であった研究の一部を平成24年度に行った。平成23年度に1次元系が弱く結合した系の性質を調べ、平成24年度に等方的2次元系の性質を調べる計画であったが、平成23年度中に平成24年度の計画まで完了した。今後、これまで得られた結果を発展させて、高温超伝導体のより現実的なモデルに対して研究を行う予定である。今後、これまで得られた結果を発展させて、次近接ホッピングを含む系など、フラストレートした系におけるモット転移について研究を行う予定である。クラスター計算機を購入する。当初の計画通り、クラスター計算機を購入する。
KAKENHI-PROJECT-23540428
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23540428
中性子回析による物体内部の3次元応力分布測定法の開発
(1)測定原理の検討、(2)実験に必要な附属装置の考案、(3)測定条件の検討、および(4)測定結果の解析方法の開発を目的として研究した。中性子応力測定法で測定されるのは「弾性ひずみ」である。ひずみには6つの成分があるが、通常は主軸方向を推定して3方向(もしくは軸対称を仮定して2方向)の測定を行なっている。それでは一般性に欠けるので、6つのひずみ成分をきちんと測定することが望ましい。応力主軸が自明である試料として、高周波焼き入れしたS45CおよびSCM440鋼丸棒(応力分布がなだらかになるように深めに焼きを入れた)を用意した。簡便法であるX線応力測定法を用いて逐次表面を研磨しながらsin^2φ法で表面2方向の応力を測定し(非破壊法ではない)、単純形状であるので解析解を利用して半径方向の応力を推算し3次元応力状態の表面から内部にかけての分布を明らかにした。同じ試料を用いて中性子回折角度分散法(原研のRESAを使用)により非破壊的に内部の弾性ひずみを主軸3方向から測定し応力に換算した。この時の応力フリー基準面間隔は試料を細かく切断して組織依存性を含めて実測した。その結果、破壊的手法であるX線2次元測定から推定した内部の応力状態と中性子で直接測定した応力は良い一致を示すことがわかった。続いて角度分散法により7つ以上の方向から測定して、主軸および応力フリー面間隔も未知変数とすることが可能か否か、検討した。多元一次連立方程式を解き、主軸の方向と主応力の大きさを決定する手法を考え合理的な測定手順を検討した。一方、飛行時間法中性子回折法では、高エネルギー加速器研究機構のVEGAに合計3方向の回折中性子検出バンクがあり、そこから6点以上を選んで検討を加えた。検討結果は、現在建設中の大強度陽子加速器施設に提案中の残留応力測定装置設計(飛行時間法)に反映させた。この方法では、多くの回折ピークを同時に測定できるので、回折弾性係数の相違を利用して応力フリーの試料なしに解析することが原理上は可能であり、今後、実証・検討を進めたい。中性子応力測定法の課題のひとつは、応力フリー状態の格子面間隔を精度良く測定もしくな推定することである。また、一般には応力主軸が未知なので、6つのひずみ成分を測定して6つの応力成分に換算し、主応力と主軸を求めることが必要になる。これらを系統的に処理する方法として、7方向以上の線ひずみを求めて、連立方程式を解き、主軸と主応力の大きさを決定することを研究の目的とした。まず、応力主軸が自明である試料として、高周波焼き入れしたS45CおよびSCM440鋼丸棒(応力分布がなだらかになるように深めに焼きを入れた)を用意した。簡便法であるX線応力測定法を用いて逐次表面を研磨しながらsin^2φ法で表面2方向の応力を測定し(非破壊法ではない)、単純形状であるので解析解を利用して半径方向の応力を推算し3次元応力状態の表面から内部にかけての分布を明らかにした。残留応力分布が既知の上記試料を用いて中性子回折角度分散法(原研のRESAを使用)により非破壊的に内部の弾性ひずみを主軸3方向から測定し応力に換算した。この時の応力フリー基準面間隔は試料を細かく切断して組織依存性を含めて実測し計算に用いた。その結果、破壊的手法であるX線2次元測定から推定した内部の応力状態と中性子で直接測定した応力はよい一致を示すことが分かった。次に、一般化するために、他方向から測定し、その中から3つを選んで主応力を推算し、測定角度の選択方法を検討した。次に、4方向を選んで応力フリー状態の面間隔も未知数として、計算を試みた。さらに、7方向からの測定値を利用すれば、主軸も未知変数とすることが可能と思われるが、これに関しては、来年度、さらに測定方向を増やして検討する。飛行時間法中性子回折法では測定体積を絞ることが困難であったので、パーライト加工材の相応力を対象として、上記の検討を行っている。ビーム強度が大きいJ-PARCの利用開始までに基本的手法の目途をつけておきたい。(1)測定原理の検討、(2)実験に必要な附属装置の考案、(3)測定条件の検討、および(4)測定結果の解析方法の開発を目的として研究した。中性子応力測定法で測定されるのは「弾性ひずみ」である。ひずみには6つの成分があるが、通常は主軸方向を推定して3方向(もしくは軸対称を仮定して2方向)の測定を行なっている。それでは一般性に欠けるので、6つのひずみ成分をきちんと測定することが望ましい。応力主軸が自明である試料として、高周波焼き入れしたS45CおよびSCM440鋼丸棒(応力分布がなだらかになるように深めに焼きを入れた)を用意した。簡便法であるX線応力測定法を用いて逐次表面を研磨しながらsin^2φ法で表面2方向の応力を測定し(非破壊法ではない)、単純形状であるので解析解を利用して半径方向の応力を推算し3次元応力状態の表面から内部にかけての分布を明らかにした。同じ試料を用いて中性子回折角度分散法(原研のRESAを使用)により非破壊的に内部の弾性ひずみを主軸3方向から測定し応力に換算した。この時の応力フリー基準面間隔は試料を細かく切断して組織依存性を含めて実測した。
KAKENHI-PROJECT-15656182
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15656182
中性子回析による物体内部の3次元応力分布測定法の開発
その結果、破壊的手法であるX線2次元測定から推定した内部の応力状態と中性子で直接測定した応力は良い一致を示すことがわかった。続いて角度分散法により7つ以上の方向から測定して、主軸および応力フリー面間隔も未知変数とすることが可能か否か、検討した。多元一次連立方程式を解き、主軸の方向と主応力の大きさを決定する手法を考え合理的な測定手順を検討した。一方、飛行時間法中性子回折法では、高エネルギー加速器研究機構のVEGAに合計3方向の回折中性子検出バンクがあり、そこから6点以上を選んで検討を加えた。検討結果は、現在建設中の大強度陽子加速器施設に提案中の残留応力測定装置設計(飛行時間法)に反映させた。この方法では、多くの回折ピークを同時に測定できるので、回折弾性係数の相違を利用して応力フリーの試料なしに解析することが原理上は可能であり、今後、実証・検討を進めたい。
KAKENHI-PROJECT-15656182
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15656182
ハレクシスCBED法を用いた鉄シリサイド半導体薄膜の結晶性評価
本研究では、スパッタ法により様々な成膜条件でSi基板上に作製したβ-Fesi_2薄膜についてTEM微細構造観察を行い、シリサイド薄膜の成長プロセスについて議論した。また、エピタキシャル方位制御の新たな試みとして、パターンSi基板上にスパッタ成膜したシリサイド薄膜についてもTEM微細構造解析を行った。さらに、高輝度PL発光を示すCu堆積Si基板β-FeSi_2薄膜についてALCHEMI法、HARECXS法およびCBED法による測定を行った結果、次のようなことが明らかになった。(1)比較的基板温度が高い場合には、基板内部のSi{111}面にエピタキシャル成長したα-FeSi_2相が生成する。基板温度を下げると、基板表面にエピタキシャル成長したR-FeSi_2相が生成する.また、堆積速度を変えることで同じ相が生成する基板温度が低温側にシフトする。(2)Si基板表面の加工形状によってもFe供給量を変化でき、部分的に生成相の種類を制御できる。(3)Cu層を挿入したSi基板では、非発光再結合中心となるSi界面およびβ-FeSi_2粒内の欠陥を大幅に減少でき、それに伴ってPL発光特性が大幅に改善される。(4)ALCHEMI測定によりβ-FeSi_2微粒子内の微量添加元素のサイト占有位置を初めて解析することに成功し、CuはFeサイトを占有する傾向が見出された。ただし、300nm程度のβ-FeSi_2粒では入射ビームを一点に留めたままロッキングさせることは難しく、HARECXS法の適用は今後の課題である。(5)β-FeSi_2粒およびSi基板のいずれからも明瞭なCBEDパターンが取得でき、接合界面近傍での格子歪みの評価が可能であることがわかった。本研究では、スパッタ法により様々な成膜条件でSi基板上に作製したβ-Fesi_2薄膜についてTEM微細構造観察を行い、シリサイド薄膜の成長プロセスについて議論した。また、エピタキシャル方位制御の新たな試みとして、パターンSi基板上にスパッタ成膜したシリサイド薄膜についてもTEM微細構造解析を行った。さらに、高輝度PL発光を示すCu堆積Si基板β-FeSi_2薄膜についてALCHEMI法、HARECXS法およびCBED法による測定を行った結果、次のようなことが明らかになった。(1)比較的基板温度が高い場合には、基板内部のSi{111}面にエピタキシャル成長したα-FeSi_2相が生成する。基板温度を下げると、基板表面にエピタキシャル成長したR-FeSi_2相が生成する.また、堆積速度を変えることで同じ相が生成する基板温度が低温側にシフトする。(2)Si基板表面の加工形状によってもFe供給量を変化でき、部分的に生成相の種類を制御できる。(3)Cu層を挿入したSi基板では、非発光再結合中心となるSi界面およびβ-FeSi_2粒内の欠陥を大幅に減少でき、それに伴ってPL発光特性が大幅に改善される。(4)ALCHEMI測定によりβ-FeSi_2微粒子内の微量添加元素のサイト占有位置を初めて解析することに成功し、CuはFeサイトを占有する傾向が見出された。ただし、300nm程度のβ-FeSi_2粒では入射ビームを一点に留めたままロッキングさせることは難しく、HARECXS法の適用は今後の課題である。(5)β-FeSi_2粒およびSi基板のいずれからも明瞭なCBEDパターンが取得でき、接合界面近傍での格子歪みの評価が可能であることがわかった。環境低負荷型半導体として脚光を浴びる鉄シリサイド(β-FeSi_2)薄膜のナノ組織制御についての指針を得るために、本年度はまずスパッタ法でSi(001)およびSi(111)基板に作製した鉄シリサイド薄膜について、研究代表者らが開発した微小傾斜制限視野電子回折法による方位解析を含めた詳細な電子顕微鏡(TEM)観察を行った。基板温度500°C以下でFe堆積速度を0.02mn/s程度で成膜すると、α-FeSi_2相が抑制されてβ-FeSi_2相の生成が促進されることがわかった。また、この条件で成膜すると、βFeSi_2微結晶はいずれのSi基板においても基板表面にエピタキシャル成長したものが得られることが明らかとなった。上記の研究からα-FeSi_2の生成を抑えるために、基板温度を350°Cまで低温化し、さらにFe堆積速度を0.01nm/s程度まで落して成膜を行った。その結果、TEMレベルでもα-FeSi_2の生成は認められず、約30nm厚のβ-FeSi_2がSi基板にエピタキシャル成長して、Si基板表面を連続的に覆った多結晶β-FeSi2連続膜を得ることに成功した。次に、エピタキシャル成長に及ぼす基板方位の影響を解明する目的で、Si(001)基板表面に種々のメサ形加工を施したパターン基板へのスパッタ成膜を試みた。パターン基板においてもβ-FeSi_2微結晶を生成させたスパッタ膜を得ることができたが、加工により表面とは異なる面方位を有する部分ではターゲットからのFeの供給量が変化して生成相の種類に影響がでることがわかった。今後さらに成膜条件の検討を行って、β-FeSi_2微結晶を優先的にエピタキシャル成長させたスパッタ膜を得ることで、成長方位制御への指針が得られるものと期待される。
KAKENHI-PROJECT-16360315
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ハレクシスCBED法を用いた鉄シリサイド半導体薄膜の結晶性評価
環境低負荷型半導体として脚光を浴びる鉄シリサイド薄膜のナノ組織制御についての指針を得るために、本年度はまずSi(001)基板にスパッタ法でβ-FeSi_2薄膜を作製する際の成膜条件(Fe堆積速度V_<Fe>、基板温度Ts)と得られる薄膜の微細構造との関係を透過電子顕微鏡(TEM)を用いて解析した。V_<Fe>=0.02nm/s,Ts=500°Cではα-FeSi_2相がまず生成し、β-FeSi_2相が遅れて生成する。この際得られるβ-FeSi_2相は粒状であるが、いずれの粒もSi基板にエピタキシャル成長していた。一方、V_<Fe>=0.01nm/s,Ts=350°Cによる成膜ではα-FeSi_2相の生成が抑えられ、約30nm厚のβ-FeSi_2がSi基板表面を連続的に覆うようにエピタキシャル成長した多結晶β-FeSi_2連続膜を得ることに成功した。以上の結果は、成膜条件により得られるシリサイド相の種類だけでなく、界面形状を含めた薄膜の形態をさまざまに制御できる可能性を示唆している。形態制御への試みとして、Si(001)基板表面を矩形加工したパターン基板に種々の条件でスパッタ成膜を試みた。パターンを構成する基板面によりターゲットからのFeの供給量が異なり、その結果基板面毎に生成相の種類と形態が変化するという興味深い結果が得られた。次に、収束電子回折(CBED)法によるβ-FeSi_2/Si界面での格子歪みの解析について検討を行った。まず、簡単な計算機シミュレーションを行って試料膜厚および入射方位などについて検討した。この結果を基に、実際にCBED測定を行ってSi基板側の歪みが約0.1%の制度で検出できることを確かめた。今後、実際にPL発光が確認されているβ-FeSi_2薄膜について界面近傍での格子歪みの検出を行って、発光特性と格子歪みとの関連を明らかにして行く予定である。今年度は、実際に高輝度PL発光を示すCu堆積Si基板β-FeSi_2薄膜についてTEM微細構造観察ならびにALCHEMI法(HARECXS法)による第3元素占有サイトの同定、およびCBED法による格子歪み測定を試みた結果、次のようなことが明らかになった。(1)Cu層なしの試料はβ(100)//Si(001)のエピ関係を有する多結晶連続膜となるが、β-FeSi_2/Si界面のSi側およびβ-FeSi_2膜内に多数の欠陥が観察された。(2)Cu層を挿入すると、β-FeSi_2はジャストエピの関係からずれていき、界面がファセット化して膜状から粒状へと形態が変化し、β-Fesi_2粒内の欠陥が消失する。そのため、非発光再結合中心となるSi界面およびβ-FeSi_2粒内の欠陥が大幅に減少し、それに伴ってPL発光特性が大幅に改善される。(3)ALCHEMI測定によりβ-FeSi_2微粒子内の微量添加元素のサイト占有位置を初めて解析することに成功した。β-FeSi_2微粒子内に入ったCuはFeサイトを占有することが見出された。(4)300nm程度のR-FeSi_2微粒子においては、入射ビームを一点に留めたままロッキングさせることが装置の精度上難しく、HARECXS法の適用は今後の課題である。(5)β-FeSi_2粒およびSi基板のいずれからも明瞭なCBEDパpターンが取得でき、接合界面近傍での格子歪みの評価が可能であることがわかった。特に、β-FeSi_2粒からのCBEDパターン測定はこれまでに報告がなく、今後格子歪み評価の新たな展開が期待される。
KAKENHI-PROJECT-16360315
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能動性皮膚血管拡張神経と発汗神経の分離・同定の試み
本研究は、我々が以前運動時ヒトで示した「低血液量時には食道温上昇に対する皮膚血管拡張は等血液量に比べて抑制されるが発汗反応は抑制されない」という結果に基づき、安静時ヒトにおいて利尿剤服用による低血液量時に暑熱負荷を行い、これらが分離するときの皮膚交感神経活動(SSNA)を測定し、発汗・皮膚血管拡張神経活動の分離を行うことを目的とした。[実験方法]延べ20名の男子学生を利尿剤服用群10名(Low)と対照群10名(Eu)に分けた。Lowでは朝7時に利尿剤を服用し排尿のために3時間待機した後、サーマルスーツを着用し測定準備を行った。実験開始後10分間は34°Cの水を流してベースライン測定を行い、次に水温を47°Cに設定しさらに60分間データ収録した。Euでは同じ時間待機し同様の測定を行った。測定は、腓骨神経よりSSNA(微小電極法)、同神経支配領域である足背部において皮膚血流量(レーザー血流計)と発汗速度(カプセル換気法)を測定し200Hzで収録し、食道温(熱電対)を15秒毎に収録した。さらにSSNAバースト検出のための解析プログラムを開発した。[研究結果]我々は、食道温上昇によりSSNAバースト発生頻度(Freq)が2群でともに亢進し、その増加率に差を認めない一方、ベースラインを100%としたバースト振幅(Amp)の食道温上昇に対する増加率がEuに比べてLowにおいて減弱することを明らかにした。[追加実験]加えて、脱水による高血漿浸透圧は皮膚血管拡張や発汗を抑制するが、今年度我々は「高血漿漫透圧状態で運動時に飲水を行うと咽頭部機械受容器を介して高血漿浸透圧による皮膚血管拡張や発汗反応の抑制を解除する」(Kamijo et al.J Physiol.2005)ことを明らかにした。そこで我々は、高浸透圧状態の安静時ヒトで暑熱負荷時に飲水を行わせると、発汗と皮膚血管拡張の亢進とともにFreqとAmpがともに増強することを確認した。[結論]以上より我々は、発汗はFreqにより決定される一方で、皮膚血管拡張はAmpの大きさにより決定されることを明らかにした。平成16年度は、我々が以前運動時のヒトで示した「低血液量時(Low)には深部体温上昇に対する皮膚血管拡張は等血液量(Eu)に比べて抑制されるが発汗反応は抑制されない」という結果に基づき、安静時ヒトでこれらが分離するときの皮膚交感神経活動(SSNA)を測定する目的で、実験プロトコール、測定・データ収録システムを確立した。1.実験プロトコールの確立:実験は利尿剤を服用する場合(Low)としない場合(Eu)の2条件で行った。被験者は朝7時に実験室で利尿剤を服用し排尿のために3時間待機した後、サーマルスーツを着用し人工気象室(28°C)へ移動した。スーツに34°Cの水を流す間に測定準備をし、10分間のベースライン測定後、水温を47°Cに設定しさらに40分間データを収録した。Euでは利尿剤を服用する以外は時間配分をLowと同様にした。2.SSNA測定・収録方法の確立:測定に先立ち、タングステン電極を腓骨神経に留置した。SSNAを高感度増幅器により10000倍に増幅し、700-2000Hzのバンドパスフィルターをかけ、整流・積分化(Tc=0.1sec)した後、200Hzで収録した。今年度我々はEuに皮膚血管拡張や発汗反応の亢進とともにSSNAが増強することを示した(Kamijo et al.J Appl Physiol.2005)。3.食道温、皮膚血流量、発汗速度の測定・収録方法:深部体温の指標として鼻腔より挿入した熱電対により食道温を30秒毎に測定した。前腕部と腓骨神経の支配領域である足背部で皮膚血流量をレーザー血流計によりモニターした。これは両部位における血流パターンが同一であることを示す目的で行った。さらに前腕部においてカプセル換気法により発汗速度を測定した。これらのデータは200Hzで収録した。今年度我々は運動時と同様、安静時においてもLowに食道温上昇に対する皮膚血管拡張と発汗反応が分離することを確認した。平成17年度はさらにデータ収録と解析を続け、「Lowに発汗開始時における皮膚交感神経活動の増強に加えて、遅れて生じる皮膚血管拡張時にもSSNAの加算的な増加が見られる」ことを証明する。本研究は、我々が以前運動時ヒトで示した「低血液量時には食道温上昇に対する皮膚血管拡張は等血液量に比べて抑制されるが発汗反応は抑制されない」という結果に基づき、安静時ヒトにおいて利尿剤服用による低血液量時に暑熱負荷を行い、これらが分離するときの皮膚交感神経活動(SSNA)を測定し、発汗・皮膚血管拡張神経活動の分離を行うことを目的とした。[実験方法]延べ20名の男子学生を利尿剤服用群10名(Low)と対照群10名(Eu)に分けた。Lowでは朝7時に利尿剤を服用し排尿のために3時間待機した後、サーマルスーツを着用し測定準備を行った。実験開始後10分間は34°Cの水を流してベースライン測定を行い、次に水温を47°Cに設定しさらに60分間データ収録した。Euでは同じ時間待機し同様の測定を行った。
KAKENHI-PROJECT-16790143
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16790143
能動性皮膚血管拡張神経と発汗神経の分離・同定の試み
測定は、腓骨神経よりSSNA(微小電極法)、同神経支配領域である足背部において皮膚血流量(レーザー血流計)と発汗速度(カプセル換気法)を測定し200Hzで収録し、食道温(熱電対)を15秒毎に収録した。さらにSSNAバースト検出のための解析プログラムを開発した。[研究結果]我々は、食道温上昇によりSSNAバースト発生頻度(Freq)が2群でともに亢進し、その増加率に差を認めない一方、ベースラインを100%としたバースト振幅(Amp)の食道温上昇に対する増加率がEuに比べてLowにおいて減弱することを明らかにした。[追加実験]加えて、脱水による高血漿浸透圧は皮膚血管拡張や発汗を抑制するが、今年度我々は「高血漿漫透圧状態で運動時に飲水を行うと咽頭部機械受容器を介して高血漿浸透圧による皮膚血管拡張や発汗反応の抑制を解除する」(Kamijo et al.J Physiol.2005)ことを明らかにした。そこで我々は、高浸透圧状態の安静時ヒトで暑熱負荷時に飲水を行わせると、発汗と皮膚血管拡張の亢進とともにFreqとAmpがともに増強することを確認した。[結論]以上より我々は、発汗はFreqにより決定される一方で、皮膚血管拡張はAmpの大きさにより決定されることを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-16790143
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老人性痴呆に伴う心理・行動学的症状に対する和漢薬治療の検証
[目的]認知症における心理行動学的症状(BPSD)とADLに対する漢方薬抑肝散の効果と安全性を観察者盲検ランダム化比較臨床研究で検討した。[方法]52名の認知症患者(男性18名女性34名、平均年齢80.3±9.0歳)をランダムに二群に分け、一群(n=27)には医療用エキス製剤抑肝散(1日7.5g分3)を4週間内服させ、非服用群(n=25)をコントロールとした。両群共に従来の治療及び看護を継続した。抗精神病薬の使用については研究開始後1週間の時点でやむを得ない場合に限り、塩酸チアプリドを投与した。The Neuropsychiatric Inventory(NPI) testをBPSDの指標とし、またMini-Mental State Examination(MMSE)を認知機能の、さらにBarthel IndexをADLの指標として用い、前後の値を評価した。錐体外路症状他あらゆる有害事象について観察し、記録した。[結果]全ての対象者が観察を終了した。コントロール群では観察開始1週間の時点で11名が塩酸チアプリドの追加投与を必要とした。抑肝散投与群ではNPIが37.9±16,1から19.5±15.6(mean±SD)へ有意に改善し、Barthel indexで評価したADLも56.4±34.2から62.9±35.2へと有意に改善した。MMSEには有意な変化を認めなかった。コントロール群ではいずれの指標も有意な変化を生じなかった。錐体外路症状は両群とも観察されなかったが、コントロール群で塩酸チアプリドを使用した対象者の内6名にはめまい、ふらつきが生じた。[結論]抑肝散は認知症患者に於けるBPSDとADLを有意に改善した。本方剤の有用性について今後placeboを用いた大規模二重盲検ランダム化比較研究が望まれる。[目的]認知症における心理行動学的症状(BPSD)とADLに対する漢方薬抑肝散の効果と安全性を観察者盲検ランダム化比較臨床研究で検討した。[方法]52名の認知症患者(男性18名女性34名、平均年齢80.3±9.0歳)をランダムに二群に分け、一群(n=27)には医療用エキス製剤抑肝散(1日7.5g分3)を4週間内服させ、非服用群(n=25)をコントロールとした。両群共に従来の治療及び看護を継続した。抗精神病薬の使用については研究開始後1週間の時点でやむを得ない場合に限り、塩酸チアプリドを投与した。The Neuropsychiatric Inventory(NPI) testをBPSDの指標とし、またMini-Mental State Examination(MMSE)を認知機能の、さらにBarthel IndexをADLの指標として用い、前後の値を評価した。錐体外路症状他あらゆる有害事象について観察し、記録した。[結果]全ての対象者が観察を終了した。コントロール群では観察開始1週間の時点で11名が塩酸チアプリドの追加投与を必要とした。抑肝散投与群ではNPIが37.9±16,1から19.5±15.6(mean±SD)へ有意に改善し、Barthel indexで評価したADLも56.4±34.2から62.9±35.2へと有意に改善した。MMSEには有意な変化を認めなかった。コントロール群ではいずれの指標も有意な変化を生じなかった。錐体外路症状は両群とも観察されなかったが、コントロール群で塩酸チアプリドを使用した対象者の内6名にはめまい、ふらつきが生じた。[結論]抑肝散は認知症患者に於けるBPSDとADLを有意に改善した。本方剤の有用性について今後placeboを用いた大規模二重盲検ランダム化比較研究が望まれる。老人性痴呆症では認知機能の低下と共に、心理行動学的症状(いわゆる問題行動、BPSD)が介護上重大な障害となり、施設入所の最大の要因となる。向精神薬はBPSDに有効であるが同時にADL低下、錐体外路症状、転倒、誤嚥などの副作用があり、それに替わる治療法が強く求められている。抑肝散はBPSDに対し有効であるとの症例報告が散見される。方法:52名のBPSDを有する老人性痴呆症患者をランダムに2群に分け、一群(抑肝散群27名)には抑肝散(TJ54)7.5g/日を4週間内服させ、他(対照群25名)は通常治療を継続した。期間の前後で両群のBPSD(NPI)、認知機能(MMSE)、ADL(Barthel index)をそれぞれ盲検化された観察者によって計測し、群間比較を行った。また錐体外路症状その他の有害事象の有無を記録した。投与1週間でBPSDについてコントロール不十分な時、塩酸tiapride75mg1錠を追加投与した。結果:抑肝散群ではBPSDスケールであるNPIが37.9±16.1から19.5±15.6まで有意に低下し,一方コントロール群では有意な変化を認めなかった。MMSEは両群とも有意な変化は認めなかった。ADLの指標であるBarthel Indexは抑肝散群で56.4±34.2から62.9±35.2と有意に改善し、対照群では変化がなかった。抑肝散群において有害事象は認めなかった。対照群ではコントロール不良のため11名が塩酸tiaprideの追加投与を要し、そのうち6名がふらつきを訴えた。
KAKENHI-PROJECT-17590592
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17590592
老人性痴呆に伴う心理・行動学的症状に対する和漢薬治療の検証
抑肝散は痴呆症のBPSDに有効で、かつ向精神薬で問題となる錐体外路症状、転倒、誤嚥などの有害事象を生じなかった。服用後のADLがむしろ有意な改善を示し、また認知機能もMMSEレベルでは影響を受けなかった。[目的]認知症における心理行動学的症状(BPSD)とADLに対する漢方薬抑肝散の効果と安全性を観察者盲検ランダム化比較臨床研究で検討した。[方法]52名の認知症患者(男性18名女性34名、平均年齢80.3士9.0歳)をランダムに二群に分け、一群(n=27)には医療用エキス製剤抑肝散(1日7.5g分3)を4週間内服させ、非服用群(n=25)をコントロールとした。両群共に従来の治療及び看護を継続した。抗精神病薬の使用については研究開始後1週間の時点でやむを得ない場合に限り、塩酸チアプリドを投与した。The Neuropsychiatric Inventory(NPI)testをBPSDの指標とし、またMini-Mental State Examination(MMSE)を認知機能の、さらにBarthel IndexをADLの指標として用い、前後の値を評価した。錐体外路症状他あらゆる有害事象について観察し、記録した。[結果]全ての対象者が観察を終了した。コントロール群では観察開始1週間の時点で11名が塩酸チアプリドの追加投与を必要とした。抑肝散投与群ではNPIが37.9±16.1から19.5±15.6(mean±SD)へ有意に改善し、Barthel indexで評価したADLも56.4±34.2から62.9±35.2へと有意に改善した。MMSEには有意な変化を認めなかった。コントロール群ではいずれわ指標も有意な変化を生じなかった。錐体外路症状は両群とも観察されなかったが、コントロール群で塩酸チアプリドを使用した対象者の内6名にはめまい、ふらつきが生じた。[結論]抑肝散は認知症患者に於けるBPSDとADLを有意に改善した。本方剤の有用性について今後placeboを用いた大規模二重盲検ランダム化比較研究が望まれる。
KAKENHI-PROJECT-17590592
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17590592
インターロイキン4による消化器癌治療法開発のための基礎的研究
IL-4は,種々の生体内細胞に対し,多彩な作用を有するサイトカインであり,これまでわれわれは,ヒト胃癌,大腸癌細胞にIL-4レセプターが存在し,IL-4がin vitroでこれらの癌細胞に対し,増殖抑制等の作用を有することを見出した。今回,これらの基礎的実験結果をもとに,IL-4の臨床応用を目指し,IL-4のin vivoにおける効果や,その投与法の基礎的検討を行うことを目的として研究を行った。ヌードマウスを用いたin vivoの実験では,IL-4投与量を最大200μgまで増量したが,胃癌細胞HTB-135に対する有為な増殖抑制効果を認めることはできなかった。In vitroにおける追加実験によって,IL-4をTNF-αやIFN-γと併用することにより,相乗的増殖抑制効果が得られることが判明した。すなわち,より低濃度のIL-4によっても増殖抑制が可能であると考えられ,これらサイトカインを組み合わせた投与による効果を検討する予定である。IL-4遺伝子の胃癌細胞への導入実験では,IL-4mrNA発現は認めるが,蛋白レベルでの産生は確認できなかった。しかし,同時に進行した悪性黒色腫細胞M101への導入実験では,IL-4遺伝子の導入効率もよく,かつ蛋白レベルでの産生も確認された(2,500pg/10^6cells/24hr)。産生分泌期間は約2週間であった。すなわち,標的とする癌細胞の種類によって,IL-4遺伝子の導入効率,IL-4産生能などに大きな差があることが示唆された。このIL-4遺伝子導入悪性黒色腫細胞では,MHC-class I,class IIさらにはVCAM-1の発現が増大した。すなわち,ワクチンとしての有用性も期待され,今後種々の消化器癌細胞について検討する予定である。今後のIL-4の臨床応用計画の一環として,癌患者より採取した樹状突起細胞をin vitroにおいて,IL-4,GM-CSFおよび腫瘍細胞と混合培養し,効率よい抗原提示細胞を誘導・増加させ,再び患者に戻すことによる抗腫瘍免疫誘導法を計画中である。IL-4は,種々の生体内細胞に対し,多彩な作用を有するサイトカインであり,これまでわれわれは,ヒト胃癌,大腸癌細胞にIL-4レセプターが存在し,IL-4がin vitroでこれらの癌細胞に対し,増殖抑制等の作用を有することを見出した。今回,これらの基礎的実験結果をもとに,IL-4の臨床応用を目指し,IL-4のin vivoにおける効果や,その投与法の基礎的検討を行うことを目的として研究を行った。ヌードマウスを用いたin vivoの実験では,IL-4投与量を最大200μgまで増量したが,胃癌細胞HTB-135に対する有為な増殖抑制効果を認めることはできなかった。In vitroにおける追加実験によって,IL-4をTNF-αやIFN-γと併用することにより,相乗的増殖抑制効果が得られることが判明した。すなわち,より低濃度のIL-4によっても増殖抑制が可能であると考えられ,これらサイトカインを組み合わせた投与による効果を検討する予定である。IL-4遺伝子の胃癌細胞への導入実験では,IL-4mrNA発現は認めるが,蛋白レベルでの産生は確認できなかった。しかし,同時に進行した悪性黒色腫細胞M101への導入実験では,IL-4遺伝子の導入効率もよく,かつ蛋白レベルでの産生も確認された(2,500pg/10^6cells/24hr)。産生分泌期間は約2週間であった。すなわち,標的とする癌細胞の種類によって,IL-4遺伝子の導入効率,IL-4産生能などに大きな差があることが示唆された。このIL-4遺伝子導入悪性黒色腫細胞では,MHC-class I,class IIさらにはVCAM-1の発現が増大した。すなわち,ワクチンとしての有用性も期待され,今後種々の消化器癌細胞について検討する予定である。今後のIL-4の臨床応用計画の一環として,癌患者より採取した樹状突起細胞をin vitroにおいて,IL-4,GM-CSFおよび腫瘍細胞と混合培養し,効率よい抗原提示細胞を誘導・増加させ,再び患者に戻すことによる抗腫瘍免疫誘導法を計画中である。ヒト胃癌、大腸癌細胞にIL-4レセプターが存在し、in vitroで、IL-4がこれらの細胞に対し、増殖抑制など種々の生物学的修飾作用を有することにより、ヒト消化器癌に対するIL-4の臨床応用が可能かどうかを基礎的に検討することが本研究の目的である。本年度の研究はIL-4の臨床応用のための、in vivoでの効果の検討を目的としていた。ヌードマウスを用いた実験では、IL-4感受性の胃癌細胞株HTB-135をマウス背部皮下に移植し、5mmの腫瘤形成後、ヒトリコンビナントIL-4(10^3-10^5units)(米国Stering社)を腫瘍内へ投与し、腫瘍の退縮および増殖抑制効果を検討したが、期待された効果はみられなかった。腫瘍移植時に同時に10^5unitsのIL-4を注入した実験においては、一回注入群では効果が見られなかったが、2回注入した群ではコントロール群に比べ腫瘍増大が抑制されたが、統計的有意差は得られなかった。以上の予備実験の結果よりin vitroではIL-4に対し感受性のみられた胃癌細胞もin vivoでは効果が半減すると考えられた。この理由としてIL-4のin vivoでの投与時における生体内半減期が関与すると考えられた。
KAKENHI-PROJECT-06671291
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06671291
インターロイキン4による消化器癌治療法開発のための基礎的研究
そこで、IL-4を持続的に腫瘍内へ放出するシステムの確立が先決であると考えられ、現在IL-4を注入したマイクロカプセルの応用を検討している。また当初予定していたIL-4遺伝子の胃癌細胞への導入実験は導入効率が悪く手間取っており、上記予備実験結果より考えて、腫瘍細胞を用いるより、むしろIL-4の長期にわたる分泌が期待される線維牙細胞への導入、利用が期待できると考えられ、現在導入効率の基礎的検討をおこなっている。なおIL-4の胃癌細胞に対する増殖抑制の機序については本研究の分担者である森崎らが、細胞周期阻害との関連を最近報告し、IL-4のin vivoにおける効果を改善するためにも重要な知見と考えられた。ヒト胃癌,大腸癌細胞はIL-4レセプターを発現しており,in vitroの系においては,IL-4が,これらIL-4レセプターを発現する細胞の増殖を抑制することを報告した.本研究の目的は,この結果に基づき,ヒト消化器癌に対するIL-4の臨床応用が可能かどうかを基礎的に検討することである.前年度,recombinant IL-4をヒト胃癌細胞を移植したヌードマウスに投与したが,期待する抗腫瘍効果を得ることはできなかった.したがって,今年度も投与量などを変えて,引き続き同様の実験を行った.しかし,IL-4投与量を最大200μgまで増量しても,ヒト胃癌HTB-135の有為な増殖抑制は得られなかった.そこで,IL-4の抗腫瘍効果増強を目的として,TNF-αやIFN-γとの併用を検討した.In vitroの系においては,これらサイトカインとIL-4の間に相乗的増殖抑制効果を誘導することができた.しかし,今年度においては,ヌードマウスを用いたin vivoの系での結論的なデータを手にすることはできなかた.IL-4 geneの胃癌細胞への導入は,比較的容易であるが,これらの細胞からの蛋白レベルでのIL-4産生の誘導は困難であった.一方,悪性黒色腫細胞M101へのIL-4 geneの導入は高率が高く,蛋白レベルでのIL-4産生が確かめられた.この結果から,IL-4 geneの導入状況は,標的とする癌細胞によってかなり異なることが予想された.
KAKENHI-PROJECT-06671291
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06671291
新規発想による省エネ型酸素供給装置を適用した農業用水路の水環境改善に関する研究
1.研究目的我が国の稲作における水の供給には農業用水路が用いられる場合が多い。稲作において、水管理(中干し、間断潅水など)が重要なポイントであるので、用水路に堰を入れ稲田へ取水するが、空梅雨の夏季には閉鎖性水域になりやすく、水質悪化の原因となる植物プランクトンが大量発生する。数年前から取り組んできた省ェネ型酸素供給装置は、水深の浅い所(0.5m)でも機械的拡散が生じない流動特性を備えている理由で、用水路の表層水を取水する稲作に適用し、水環境改善について検討する。2.実験方法宇部市平原(かつては稲作地域であった)で実験を行なった。小高い所に設けられた、灌漑用貯水池から放流される用水路が、東西南北四方に交叉した処から西へ約5m行った場所を選定した。北方が源流であり、東西南方面へ水を供給している。西側を試験区、東側を対照区として表層水の分析を行なった。用水路(幅約1m、水深0.5m)に装置(消費電力80W,水流動65L/min.)を設置し、装置から約20m離れた川底から装置へ水を吸引循環した。流速は0.2cm/sec.であった。3.実験結果および考察(1).溶存酸素濃度(DO):試験区は対照区と明確な差が出た。日中には、過飽和(試験区は19.9mg/L以上、対照区は1214mg/L)になるが、朝方には、対照区では0mg/Lを示し、試験区では、日没から3mg/L以上で推移した。(2).ろ過速度:GFBろ紙で試験区の採水1Lを速やかにろ過できたが、対照区では約0.5Lで目詰まりを起こした。粒度分布の結果、目詰まりの原因として1μm以下の微細粒子の存在が考えられた。(3).藻類の発現:表層水のクロロフィルaや濁度の値は試験区の方が良好であった。また、試験区では、溶存炭素濃度、DO、pHの測定結果は、光合成が盛んに行なわれたことを示した。試験区の川底に約100mに渡りアオミドロがグリーンベルト状にへばり付き、藻内に多くの微生物が共生し、良好な水環境を形成した。1.研究目的我が国の稲作における水の供給には農業用水路が用いられる場合が多い。稲作において、水管理(中干し、間断潅水など)が重要なポイントであるので、用水路に堰を入れ稲田へ取水するが、空梅雨の夏季には閉鎖性水域になりやすく、水質悪化の原因となる植物プランクトンが大量発生する。数年前から取り組んできた省ェネ型酸素供給装置は、水深の浅い所(0.5m)でも機械的拡散が生じない流動特性を備えている理由で、用水路の表層水を取水する稲作に適用し、水環境改善について検討する。2.実験方法宇部市平原(かつては稲作地域であった)で実験を行なった。小高い所に設けられた、灌漑用貯水池から放流される用水路が、東西南北四方に交叉した処から西へ約5m行った場所を選定した。北方が源流であり、東西南方面へ水を供給している。西側を試験区、東側を対照区として表層水の分析を行なった。用水路(幅約1m、水深0.5m)に装置(消費電力80W,水流動65L/min.)を設置し、装置から約20m離れた川底から装置へ水を吸引循環した。流速は0.2cm/sec.であった。3.実験結果および考察(1).溶存酸素濃度(DO):試験区は対照区と明確な差が出た。日中には、過飽和(試験区は19.9mg/L以上、対照区は1214mg/L)になるが、朝方には、対照区では0mg/Lを示し、試験区では、日没から3mg/L以上で推移した。(2).ろ過速度:GFBろ紙で試験区の採水1Lを速やかにろ過できたが、対照区では約0.5Lで目詰まりを起こした。粒度分布の結果、目詰まりの原因として1μm以下の微細粒子の存在が考えられた。(3).藻類の発現:表層水のクロロフィルaや濁度の値は試験区の方が良好であった。また、試験区では、溶存炭素濃度、DO、pHの測定結果は、光合成が盛んに行なわれたことを示した。試験区の川底に約100mに渡りアオミドロがグリーンベルト状にへばり付き、藻内に多くの微生物が共生し、良好な水環境を形成した。
KAKENHI-PROJECT-20924012
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20924012
複素ハーディ空間の加群構造に関するトレース‐ランク不等式についての研究
(1)複素ハーディ空間には自然に加群構造が入るため、ヒルベルト関数と呼ばれる関数が定義される。これまでヒルベルト関数の具体的な計算は困難であったが、本研究では、特別な場合にその明示公式を与えることができた。(2)(1)を得る過程において得た知見と先行研究とを再検討した結果、ヒルベルト関数の重要な性質がある作用素の摂動論に関連することに気付いた。結果として、これまでの研究に作用素論、摂動論の種々の概念を持ち込むことが可能となり、研究の幅が格段に広まった。(1)複素ハーディ空間には自然に加群構造が入るため、ヒルベルト関数と呼ばれる関数が定義される。これまでヒルベルト関数の具体的な計算は困難であったが、本研究では、特別な場合にその明示公式を与えることができた。(2)(1)を得る過程において得た知見と先行研究とを再検討した結果、ヒルベルト関数の重要な性質がある作用素の摂動論に関連することに気付いた。結果として、これまでの研究に作用素論、摂動論の種々の概念を持ち込むことが可能となり、研究の幅が格段に広まった。本研究の今年度の主な研究実績は以下の二つである。1.関数解析的ヒルベルト関数の研究内容:関数解析的に定義されるヒルベルト関数を、特別な場合にではあるが、具体的に計算し、その値と、ある作用素の固有空間の次元との関係を詳しく調べた。この結果をまとめた論文を現在執筆中である。意義:1990年代、R.G.DouglasとK.Yanにより、可換関論における重要な研究対象であるヒルベルト関数が、関数解析学に導入された。この関数解析的ヒルベルト関数は、近年、J.Eschmeier、X.Fangらによって活発に研究されている。本研究では、これらの先行研究とは異なった観点から、関数解析的ヒルベルト関数を研究した。特に、限定された場合ではあるが、非自明な場合に、ヒルベルト関数を具体的に計算し、その値と、加群のランク、ある作用素の固有空間の次元との関係を見出した。これは先行研究にない成果である(この関係がより一般的なものかを検証することが、22年度の目標である)。2.ベクトル値ハーディ空間上の可換な作用素のペアについて研究内容:n次元ベクトル空間を一つ固定し、それを値域とするハーディ関数の全体を考える。本研究では、このハーディ空間上の作用素のペアに関する、合同不変部分空間について研究した。この研究成果は、中路教授(北星学園大学)との共著論文としてまとめた。意義:研究実績1では、主に多重円板上のハーディ空間を扱った。一方、n次元ベクトル空間を値域とするハーディ空間は、次元nに関し極限をとれば、多重円板上のハーディ空間と同型になる。その意味で本研究は研究実績1と関連がある。実際、nが無限の場合では計算が困難なことも、nが有限の場合の対応物は比較的扱いやすいということがある。従って、ここで種々の概念を試すことができるという意味で、本研究は重要である。研究代表者が「研究目的」、「研究実施計画」の中で予想したトレース-ランク不等式の検証のためには、ある作用素(後述のΔ)を深く調べる必要を感じたため、研究の方向を当初のものから修正した。今年度はその作用素の摂動の研究に集中して取り組んだ。その内容と意義を以下に纏める。内容:多重円板上の複素バーディ空間を、有界正則関数環を係数環とするヒルベルト加群として考えると、その部分加群それぞれにその構造を司るとされるある作用素が対応する。その作用素をここではΔと表わす。このΔは、J.Aglerによりhereditary polynomialとして、その後独立にR.Yangによりcore operator(又はdefect operatorと呼ばれることもある)としてそれぞれの観点から導入された。研究代表者は前年度までに得られた結果と先行研究とを検討し、多変数という設定では、考えている領域(スペクトル)の自己同型写像(双正則写像)でΔを摂動した作用素全体を考える必要があるだろうということに気付いた。そこで今年度はその摂動による作用素の固有値、固有関数の動き方を研究した。意義:前年度に研究し報告したヒルベルト関数と加群のランクとの関係は、摂動されたΔの固有値、固有関数の性質に翻訳されることが判明した。さらに、これまでの研究に作用素論、摂動論の種々の概念を持ち込むことが可能となり、研究の幅が格段に広まった。これは今年度の研究成果の大きな意義である。これらの結果を論文"A perturbation theory forcore operators of Hilbert-Schmidt submodules"にまとめ、作用素論の専門誌である"Integral Equations and Operator Theory"に投稿し、採録が決定した。さらに強調したい重要な点として、上記の論文で与えた方法は、多重円板上のHardy空間だけではなく、良い再生核と良い自己同型写像が存在する再生核ヒルベルト空間(例:単位球上のHardy空間、多重円板、単位球上のBergman空間、Drury-Arveson空間)であれば議論することができることである。ここに一般論を展開できる可能性があり、現在研究を継続中である。
KAKENHI-PROJECT-21740099
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悪性黒色腫における免疫抑制マーカーの探索的研究
悪性黒色腫は予後不良な皮膚腫瘍であり、特に進行例では患者が免疫抑制状態になっていることが知られている。我々は悪性黒色腫における免疫抑制現象を検討し、進行例では末梢血中のTh17細胞が減少し、腫瘍細胞は増加するが、化学療法施行後にはTh17細胞が増加し、腫瘍細胞は減少することを見出した。腫瘍の進行度や化学療法によって腫瘍免疫が変動することが示唆された。悪性黒色腫、特に進行例では患者が免疫抑制状態になっていることが知られているが、この要因として腫瘍自体が免疫抑制性のサイトカインを放出すること、抑制性T細胞の増殖を誘導することが知られている。悪性黒色腫における免疫抑制は様々な現象が複合的に重なって生じており、これらの現象を特にT細胞の機能に着目して検討する。まず、悪性黒色腫の患者の末梢血中の腫瘍細胞を評価するため、患者の末梢血よりリンパ球を分離したのち抗MCSP抗体にて染色し、フローサイトメーターにて測定を行った。免疫学的検討として、患者の末梢血からficoll-paque法で単核球を分離し、phobol myristate acetate(PMA)とカルシウムイオノフェアで8時間刺激後、抗IL-17抗体での細胞内サイトカイン染色と、抗CD3抗体または抗CD8抗体にて2重染色を行った。CD3陽性CD8陰性でIL-17陽性の細胞をTh17細胞としてフローサイトメーターで測定した。同時に、抑制性T細胞を測定するため、抗CD4抗体および抗CD25抗体を用いて表面抗原を染色し、細胞内のFoxp3の染色を行った。化学療法開始前と化学療法開始後にそれぞれ測定を行い、これらのパラメータがどのように変動していくかを検討した。悪性黒色腫は予後不良な皮膚腫瘍であり、特に進行例では患者が免疫抑制状態になっていることが知られている。我々は悪性黒色腫における免疫抑制現象を検討し、進行例では末梢血中のTh17細胞が減少し、腫瘍細胞は増加するが、化学療法施行後にはTh17細胞が増加し、腫瘍細胞は減少することを見出した。腫瘍の進行度や化学療法によって腫瘍免疫が変動することが示唆された。悪性黒色腫、特に進行例では患者が免疫抑制状態になっていることが知られているが、この要因として腫瘍自体が免疫抑制性のサイトカインを放出すること、抑制性T細胞の増殖を誘導することが知られている。悪性黒色腫における免疫抑制は様々な現象が複合的に重なって生じており、これらの現象を特にT細胞の機能に着目して検討していく。まず、悪性黒色腫の患者の末梢血中の腫瘍細胞を評価するため、患者の末梢血よりリンパ球を分離したのち抗MCSP抗体にて染色し、フローサイトメーターにて測定を行った。免疫学的検討として、患者の末梢血からficoll-paque法で単核球を分離し、phobol myristate acetate (PMA)とカルシウムイオノフェアで8時間刺激後、抗IL-17抗体での細胞内サイトカイン染色と、抗CD3抗体または抗CD8抗体にて2重染色を行った。CD3陽性CD8陰性でIL-17陽性の細胞をTh17細胞としてフローサイトメーターで測定した。同時に、制御性T細胞を測定するため、抗CD4抗体および抗CD25抗体を用いて表面抗原を染色し、細胞内のFoxp3の染色を行った。化学療法開始前と化学療法開始後にそれぞれ測定を行い、これらのパラメータがどのように変動していくかを検討する。平成25年度はこれらの測定結果をTNM分類、化学療法の前後、化学療法のレジメン、化学療法の効果等の患者背景ごとに分類し、各測定結果との相関について評価を行っていく。悪性黒色腫は皮膚悪性腫瘍の中で最も悪性度が高く、手術療法や化学療法を行っても不幸な転機をたどる例も多い予後不良な悪性腫瘍である。悪性黒色腫の患者、特に進行例では患者が免疫抑制状態になっていることが知られている。この要因として腫瘍自体が免疫抑制性のサイトカインを放出すること、抑制性T細胞の増殖を誘導することが知られている。悪性黒色腫における免疫抑制現象を、特にT細胞の機能に着目して検討した。まず、悪性黒色腫の患者の末梢血中の腫瘍細胞を評価するため、患者の末梢血より単核球を分離したのち抗MCSP抗体にて染色し、フローサイトメーターにて測定を行った。測定の結果、腫瘍の進行度に応じて末梢血中のMCSP陽性細胞が増加する傾向を示した。転移の有無(M0,M1)で比較すると、有意差を持って転移あり(M1)の群で高い結果となった。また、これらのMCSP陽性細胞は化学療法後に減少した。免疫学的検討として、末梢血から単核球を分離し、phobol myristate acetate(PMA)とカルシウムイオノフェアで8時間刺激後、抗CD3抗体または抗CD8抗体とIL-17抗体での細胞内サイトカイン染色を行った。CD3陽性CD8陰性でIL-17陽性の細胞をTh17細胞としてフローサイトメーターで測定した。末梢血中のTh17細胞の割合はTNM分類のT分類が進行するにつれ減少する傾向を示したが、腫瘍ステージでの分類では一定の傾向は認めなかった。一方、化学療法前後で比較すると、Th17細胞の割合は有意に上昇する結果となった。医歯薬学化学療法開始前および化学療法開始後にTh17細胞や抑制性T細胞の経時的変化を測定することができた。また、これらの測定値をTNM分類などの患者背景ごとに比較検討することができた。
KAKENHI-PROJECT-24791188
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24791188
悪性黒色腫における免疫抑制マーカーの探索的研究
TNM分類や治療経過等の患者背景ごとに、Th17細胞や制御性T細胞の経時的変化を測定することができたため。測定された結果をもとに、患者背景ごとのTh17細胞の推移や免疫抑制性T細胞の動向についてさらなる解析を行っていく。平成24年度に測定した結果をもとに、患者背景ごとのTh17細胞の推移や免疫抑制性T細胞の動向について解析し、悪性黒色腫における免疫抑制状態のメカニズムを解明する。また、末梢血中の腫瘍細胞をより詳細に解析するためにマグネティックビーズを用いて腫瘍細胞を分離し、PD-L1などの免疫抑制性分子の発現を評価していく。育児休業の取得に伴い、研究が一時中断されていたため。平成26年度はこれまでに測定した結果の解析を行うとともに、末梢血中の腫瘍細胞をより詳細に解析するためにマグネティックビーズを用いて腫瘍細胞を分離するとともに、免疫抑制性分子の発現を評価し、その他のマーカーとの相関を検討する。平成24年度は患者の末梢血中からficoll-paque法で単核球を分離する手法を主体として腫瘍細胞の測定を行ったため繰越額が生じている。平成25年度は測定した結果の解析を行うとともに、末梢血中の腫瘍細胞をより詳細に解析するために、ficoll-paque法に加えてマグネティックビーズを用いて腫瘍細胞を分離し、PD-L1などの免疫抑制性分子の発現を評価し、その他のマーカーとの相関を検討する。
KAKENHI-PROJECT-24791188
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24791188
日本人における補体C9欠損症遺伝子変異(R95X)の保因者頻度に関する研究
後期補体成分の最終成分としてはたらくC9の先天的欠損症は、海外において数例しか報告されていないが日本では最も頻度の高い遺伝性疾患のひとつで、北海道から九州まで頻度に差がなく、およそ1,000人に1人がホモ接合体とされる。本研究代表者である吉良らは日本人C9欠損症4例の遺伝子解析を行い、全例がエクソン4にあるナンセンス変異(R95X)のホモ接合であることをこれまでに明らかにした。またこの解析において対立遺伝子特異的増幅法(ASPCR)を利用したR95X変異を容易に検出する方法を開発した。昨年度の研究ではこの方法を用いて日本人300人におけるR95X変異の保因者頻度を調べ、日本人の15人に1人(6.7%)がR95X変異のヘテロ接合であること、日本人C9欠損症の大部分がこの変異によることを明らかにした。本年度の研究では、日本の近隣諸国におけるR95X変異の保因者頻度についてASPCR法を用いて検討した。その結果、中国北部(ハルビン市、漢民族)および韓国一般集団におけるR95X変異の保因者頻度はそれぞれ順に、2/194人(1.0%)、4/200人(2.0%)であった。このように中国、韓国においてもR95X変異の保因者が少数ながら存在していることがわかった。日本人集団が形成される際にR95X変異が高率に広まったと推測された。次に他の補体成分欠損症(C1-C8)で報告されている全身性エリテマトーデス(SLE)との関連の有無について検討した。その結果SLE78例におけるR95X変異保因者の頻度は一般集団と変わりなかった。C9欠損症はSLE発症と関連がないことが明らかとなった。後期補体成分の先天的欠損症は、髄膜炎菌や淋菌などのナイセリア菌属による重症感染症に罹患しやすいことが知られている。後期補体成分の最終成分としてはたらくC9の先天的欠損症は海外では数例しか報告されていないが、日本では最も頻度の高い遺伝性疾患のひとつで、北海道から九州まで頻度に差がなく、およそ1,000人に1人がホモ接合体とされる。本研究協力者である原らは、散発性の髄膜炎菌性髄膜炎症例の半数に後期補体成分欠損症(C9欠損症4例、C7欠損症4例)を見出し、C9欠損症の大多数は健康であるが、一般人口と比較して有意に髄膜炎菌性髄膜炎を発症しやすいことを明らかにした。本研究代表者である吉良らはこのC9欠損症4例の遺伝子解析を行い、全例がエクソン4にあるナンセンス変異(R95X)のホモ接合であることをこれまでに明らかにした。またこの解析において対立遺伝子特異的増幅法(ASPCR)を用いR95X変異を容易に検出する方法を開発した。本研究では福岡150人および鳥取150人のDNAを用いて、日本人におけるR95X変異の保因者頻度をASPCRにより調べた。その結果、それぞれ10人ずつすなわち15人に1人(6.7%)がR95X変異のヘテロ接合であった。これから推定されるホモ接合体の頻度は、日本人の約1,000人に1人がC9欠損症という血清疫学の頻度にほぼ一致しており、日本人C9欠損症の大部分がR95X変異によることが明らかとなった。C9欠損症は海外では数例しか報告されておらず、日本人に特異的に多い疾患と考えられている。今後、近隣諸国におけるこの変異の調査により、どのようにしてこれほど高頻度のR95X変異が日本人に広まったのか明らかにされる可能性がある。後期補体成分の最終成分としてはたらくC9の先天的欠損症は、海外において数例しか報告されていないが日本では最も頻度の高い遺伝性疾患のひとつで、北海道から九州まで頻度に差がなく、およそ1,000人に1人がホモ接合体とされる。本研究代表者である吉良らは日本人C9欠損症4例の遺伝子解析を行い、全例がエクソン4にあるナンセンス変異(R95X)のホモ接合であることをこれまでに明らかにした。またこの解析において対立遺伝子特異的増幅法(ASPCR)を利用したR95X変異を容易に検出する方法を開発した。昨年度の研究ではこの方法を用いて日本人300人におけるR95X変異の保因者頻度を調べ、日本人の15人に1人(6.7%)がR95X変異のヘテロ接合であること、日本人C9欠損症の大部分がこの変異によることを明らかにした。本年度の研究では、日本の近隣諸国におけるR95X変異の保因者頻度についてASPCR法を用いて検討した。その結果、中国北部(ハルビン市、漢民族)および韓国一般集団におけるR95X変異の保因者頻度はそれぞれ順に、2/194人(1.0%)、4/200人(2.0%)であった。このように中国、韓国においてもR95X変異の保因者が少数ながら存在していることがわかった。日本人集団が形成される際にR95X変異が高率に広まったと推測された。次に他の補体成分欠損症(C1-C8)で報告されている全身性エリテマトーデス(SLE)との関連の有無について検討した。その結果SLE78例におけるR95X変異保因者の頻度は一般集団と変わりなかった。C9欠損症はSLE発症と関連がないことが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-11770411
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11770411
ジョン・ホークスワースの『航海記』(1773)が英文学に与えたインパクトの検証
本研究は、18世紀後半のイギリスにパラダイムシフトを引き起こした「リンネの植物学」が、本来、保守的なものであったにも拘わらず、人々の認識上、急進的なものへと変貌した理由を、John HawkesworthのVoyages (3vols.1773)の第2巻を中心として暴露されたタヒチの異文化情報に求めるものである。この変貌が、英文学の新古典主義からロマン主義への移行と連動することを、Erasmus DarwinやWilliam Blakeらの作品を含めた様々な文献から検証することを究極の目的としている。本研究は、18世紀後半のイギリスにパラダイムシフトを引き起こした「リンネの植物学」が、本来、保守的なものであったにも拘わらず、人々の認識上、急進的なものへと変貌した理由を、John HawkesworthのVoyages (3vols.1773)の第2巻を中心として暴露されたタヒチの異文化情報に求めるものである。この変貌が、英文学の新古典主義からロマン主義への移行と連動することを、Erasmus DarwinやWilliam Blakeらの作品を含めた様々な文献から検証することを究極の目的としている。
KAKENHI-PROJECT-19K00418
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K00418
17-19世紀イギリス東インド会社の在インド商館における会計実務の解明
本年度は,受給2年度目にあたり,昨年度に引き続き,史料収集と史料批判に時間を割いた。研究成果の一部については,日本会計史学会の学会誌に掲載された(2018年12月)。当該論文は,東インド会社本社会計について私貿易の観点から考察したものである。とはいえ,当該科研費の研究課題である商館会計を明らかにするためには,本社会計との接続の関係も大きな課題である。引き続き,商館会計の検討に必要な本社会計の考察も必要と考えられる。なお,この論文は,2018年度の日本会計史学会の奨励賞(概ね40歳以下を対象とした論文の部における賞)を受賞した。今年度は,2018年9月よりイギリスで在外研究中ということもあり,史料の考察を中心に研究を進めている。加えて,海外の研究者との交流なども行った。また,当該年度においては,これまでの研究成果の一部が学会誌に掲載された。一方で,考察を進める過程で必要となると思われる検討課題もいくつかでてきており,これらについても次年度以降,検討していくこととする。とはいえ,以上のように,成果の一部については学会誌などに掲載され,史料の分析も継続して実施することができており,現在のところ概ね順調に進展していると考えられる。2019年8月末までは在外研究のため英国に滞在する予定であり,その間,継続して史料の考察(史料批判),研究成果の発信ないしその準備に時間を当てる予定である。特に研究テーマに関連して,海外の大学におけるセミナー等で研究報告を実施し,研究成果について海外の研究者に向けても発信するつもりである。加えて,在外研究中に大英図書館などで,引き続き研究課題と関連する史料の閲覧等も予定している。本研究の目的は,17-19世紀イギリス東インド会社の本支店会計の全容を明らかにすることである。今年度は,研究初年度ということもあり基礎的な作業となる先行研究のレビューの他,大英図書館(British Library)に所蔵される東インド会社の一次史料について複写注文(HPからオンラインでCD-Rへの複写注文)を行った。会計帳簿などの史料入手後は,史料の考察を実施した。なお,史料収集はこれまで継続して行っていた作業であるため,スムーズに進めることができている。さらに,研究成果の途中経過について,筆者が所属する研究会と日本会計史学会で研究報告を行った。この報告では,17世紀から18世紀半ば頃までの東インド会社の主な経営活動として認識される東インド貿易に焦点を当てた。特に,東インド会社の在インド商館と本国イギリスを結びつけた貿易に着目することで,在インド商館の取引が,如何にしてロンドン本社側の会計処理に反映されていったのかについて考察を試みた。これは,本社と支店間の取引を帳簿に記録していく本支店間の処理の検討につながるとともに,本社と在インド商館(在外支店)の会計の仕組みを考察する上で意義が見出されると考えられたからである。また,一連の研究成果に関しては日本会計史学会誌に論文として投稿中である。この他にも今年度は専門雑誌『企業会計』で論文を発表した。これは,東インド会社の報告書と簿記手続きとの関係に焦点を当てたものである。特に当時の財産有高報告書に複式簿記の記録が利用されたのか否か(誘導法の是非)について整理した。本研究では東インド会社の本社と在インド商館等の会計システムを検討することが主な目的である。そのため,今年度は基礎となる先行研究のレビュー,史料の入手,史料批判に時間を割いた。史料の入手についてはこれまでの経験から比較的スムーズに進行しているといえよう。史料入後は,東インド会社は海外とイギリスをまたぐ取引(貿易)を軸とした事業活動を営んでいることもあり,貿易に関する会計処理,特に本社とインド商館に関係する私貿易に対して課された許可料および罰金の徴収という側面からアプローチした。研究の成果の一部については,上記のように研究会,学会で報告した。研究成果は学会報告1回,刊行論文1本(単著)ではあるが,現時点でこれまでの研究成果として学会誌へ投稿中の論文が1本あげられる。また,今年度は9月に開催された会計史の国際学会(於:イタリア)に参加をして(報告はしていないものの),イギリスの研究者らとも意見交換を行った。あわせて,次年度(2018年9月から2019年8月)には英国への在外研究を予定している。在外研究は当該研究テーマを進める上でも意義深いものであると考えている。なお詳細は後述するが,当該科研費の申請を行った際(2016年秋)における出張期間と受け入れ先の大学に変更が生じている。しかし当該研究テーマを実行する上で重要となる在外研究の調整も進めることができている。本年度は,受給2年度目にあたり,昨年度に引き続き,史料収集と史料批判に時間を割いた。研究成果の一部については,日本会計史学会の学会誌に掲載された(2018年12月)。当該論文は,東インド会社本社会計について私貿易の観点から考察したものである。とはいえ,当該科研費の研究課題である商館会計を明らかにするためには,本社会計との接続の関係も大きな課題である。引き続き,商館会計の検討に必要な本社会計の考察も必要と考えられる。なお,この論文は,2018年度の日本会計史学会の奨励賞(概ね40歳以下を対象とした論文の部における賞)を受賞した。
KAKENHI-PROJECT-17K04082
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K04082
17-19世紀イギリス東インド会社の在インド商館における会計実務の解明
今年度は,2018年9月よりイギリスで在外研究中ということもあり,史料の考察を中心に研究を進めている。加えて,海外の研究者との交流なども行った。また,当該年度においては,これまでの研究成果の一部が学会誌に掲載された。一方で,考察を進める過程で必要となると思われる検討課題もいくつかでてきており,これらについても次年度以降,検討していくこととする。とはいえ,以上のように,成果の一部については学会誌などに掲載され,史料の分析も継続して実施することができており,現在のところ概ね順調に進展していると考えられる。本研究の目的でもある本社と在外商館に関連する史料の検討を行うため,引き続き史料収集と史料批判を行う予定である。これに加えて次年度(2018年9月2019年8月)では英国での研究活動を実施する予定である。なお,当該科研費を申請した際に予定していた在外研究先の大学に変更が生じている。これは,在外研究先(受け入れの研究者)を杉田の研究テーマとの親和性の高さに基づいて改めて判断した結果,University of Sussex, School of Business, Management and Economics(以下,サセックス大学)に会計史研究者として複式簿記の歴史研究を行うとともに,トップジャーナルに論考を数多く発表している研究者が在籍していたからでもある。いずれにせよ次年度は在外研究のため英国に滞在予定でもあるため,在籍予定のサセックス大学等での研究活動として,東インド会社の本社と在外商館の会計システム構築に関する考察などを進めていく予定である。さらに,科研費に関連するテーマの研究成果の報告を同大学でのセミナー等で予定している。当然ながら同大学における滞在を通して現地での研究者との交流も図ることで,海外の研究者による知見も吸収できればと考えている。この他に国際学会等での研究報告も検討しているところである。他方,ロンドンにある大英図書館を訪問して,同社の史料収集等の作業も予定している。入手後は,引き続き史料批判を実施していく。2019年8月末までは在外研究のため英国に滞在する予定であり,その間,継続して史料の考察(史料批判),研究成果の発信ないしその準備に時間を当てる予定である。特に研究テーマに関連して,海外の大学におけるセミナー等で研究報告を実施し,研究成果について海外の研究者に向けても発信するつもりである。加えて,在外研究中に大英図書館などで,引き続き研究課題と関連する史料の閲覧等も予定している。本来であれば,海外での史料収集等を計画していたものの,時間的制約により見送ることとなった。そのため,使用額と予算に差額が生じることとなった。使用計画としては,次年度9月より在外研究の予定でもあるので,現地での研究活動に予算を使用したいと考えている。特に研究に必要となる消耗品や物品等の購入代,研究会や学会などへ参加するための旅費なども想定している。2018年9月より英国での在外研究中ということもあって,執行の頻度が少なくなってしまった。しかしながら,次年度における研究活動に多くの予算を充てることを想定しているため,大きな支障はないと考えている。特に,出張旅費,書籍,物品の購入,史料の複写代等にその予算を充てる予定である。
KAKENHI-PROJECT-17K04082
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巡礼における宗教性の表出に関する宗教人類学的研究-近現代の四国遍路を事例として
本研究は、巡礼空間における宗教的物語の共有・消費に関する当事者性からの検討と、現代資本主義社会における意味づけの解明という課題を遂行するために、四国遍路における現代的な宗教性の表出に焦点を当てた巡礼研究の新しいパースペクティブの提示を目的として実施された。最終年度となる本年度の研究活動は、(1)これまでの調査、執筆論文・学会発表等を踏まえた追加調査、(2)四国遍路における現代的な宗教性の表出をグローバルなレベルに位置づけるための海外調査、(3)研究の総まとめとなる論文の執筆の3つに大別される。(1)については、研課題「接待の場における宗教的正統性」および「現代の歩き巡礼の精神性」の複合的領域と位置づけられる、巡礼および巡礼道を文化資源として認識・整備する動き、いわば「巡礼路復興運動」とも呼べる活動に関する調査を行った。2000年以降顕著になったこの「巡礼路復興運動」は、四国遍路の現代性を顕著にしめすものであり、代表的なものとしては、徳島県が主導する「いやしのみち」づくりと、四国霊場58番札所仙遊寺住職の小山田憲正氏が提唱する「世界遺産登録運動」がある。前年度の「いやしのみち」づくり運動の調査に引き続いて、本年度は後者に関する調査を7月に行い、「四国へんろ道文化」世界遺産化の会のフォーラムに参加し、小山田氏ほか多数の関係者にインタビューを行った。これに関連して(2)では、巡礼路復興運動についての海外調査を行った。平成16年度のスペインに続き、本年度はイングランド南東部ケント州のカンタベリー等のイギリスの聖地についてのフィールドワークを行い、大聖堂のボランティアスタッフへのインタビューや資料収集等を行った。また(3)については、特に8月後半以降は集中した執筆活動を行い、全6章構成でA4用紙300枚あまりの論文にまとめた。本研究は、巡礼空間における宗教的物語の共有・消費に関する当事者性からの検討と、現代資本主義社会における意味づけの解明という課題を遂行するために、四国遍路における現代的な宗教性の表出に焦点を当てた巡礼研究の新しいパースペクティブの提示を目的としている。本年度は研究目的に掲げた課題である「接待の場における宗教的正統性」に焦点をあて、既に調査を行っていた徳島県阿南市等の南部地域に加え、調査が未着手であった徳島県北部の神山町にて集中的な聞き取り調査を行い、接待体験の語りの地域差がそれほど見られないことを確認した。5月には、2003年日韓人文学連合・国際学術大会にて、南部地域での調査をまとめた口頭発表「ムラにめぐりくる者-近代四国遍路における巡礼者の類型について-」を行い、韓国人研究者らとの意見を交換した。また「宗教性」概念に関する理論的整理に関する研究については、3月に京都で開かれた巡礼研究会・日本民俗宗教学会合同シンポジウムにおいて、地理学者、民俗学者、歴史学者らと合同で巡礼研究の理論的展望に関する発表を行った。そこでは宗教学と地理学における巡礼論を整理し、両者の接合領域における巡礼研究の理論的展望を示した。まず、日本宗教学の歴史において、当初等閑視されていた巡礼が、1950年代に「民間信仰」という概念を通して研究対象として発見され、70年代に本格化、80年代頃から多様化し、そして1990年以降隆盛するという流れを示した。また、どちらかと言えば聖地に着目した宗教学に対し、地理学では「巡礼路」の研究を発達させてきたことを指摘し、その成果を確認した。なお現在はこの議論を発展させ、巡礼研究の学際的課題として、宗教的空間論・景観論としての巡礼研究の可能性を探索する論考の執筆を行っている。本研究は、四国遍路における宗教性の表出に焦点を当てた巡礼研究の新しいパースペクティブの提示を目的としている。本年度は、研究目的に掲げた課題である「接待の場における宗教的正統性」について、前年度に行ったフィールドワークの成果を以下のようにまとめた。まず、日本文化人類学会第38回研究大会にて、近代における行政文書や新聞社説などに見られる遍路者排斥論を取り上げ、そこにみられる遍路観がどのように構築されてきたのかを論じた。また、こうした遍路観が、遍路者に対する「語りわけ」として現れているということに着目し、「オヘンロサン」と「ヘンド」というふたつのフォークタームを巡る言説分析を行い、徳島地域文化研究会の機関誌に論文として発表した。もうひとつの課題である「現代の歩き巡礼の精神性」については、現代のメディアにおける四国遍路の諸状況を整理し、「徒歩巡礼」「若者」「接待」の3つのキーワードの相互関連によって、現代の四国遍路を巡る言説が構築されていると読み解く視点を提示した。また、前年度に示した課題である宗教的空間論・景観論としての巡礼研究の可能性については、地理学者・宗教学者とシンポジウムを組み、国際宗教学宗教史学会にて発表した。本年度のフィールドワークは、四国遍路をとりまくマクロな環境に焦点を当てた。四国遍路の世界遺産化運動や、徳島県が中心に進めている「いやしのみち」づくり運動など、巡礼および巡礼道を文化資源として認識・整備する動きに着目し、徳島県庁担当部局を初め、関連の札所寺院や運動組織にインタビューを試みた。また同様の動きに関する比較として、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼の視察した。サンティアゴでは巡礼者へのインタビューや巡礼道の調査、サンティアゴ教会での巡礼ミサへの参加、また各種資料の収集に努めた。こうした諸資料は最終年度に改めて整理・分析する予定である。
KAKENHI-PROJECT-03J01926
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巡礼における宗教性の表出に関する宗教人類学的研究-近現代の四国遍路を事例として
本研究は、巡礼空間における宗教的物語の共有・消費に関する当事者性からの検討と、現代資本主義社会における意味づけの解明という課題を遂行するために、四国遍路における現代的な宗教性の表出に焦点を当てた巡礼研究の新しいパースペクティブの提示を目的として実施された。最終年度となる本年度の研究活動は、(1)これまでの調査、執筆論文・学会発表等を踏まえた追加調査、(2)四国遍路における現代的な宗教性の表出をグローバルなレベルに位置づけるための海外調査、(3)研究の総まとめとなる論文の執筆の3つに大別される。(1)については、研課題「接待の場における宗教的正統性」および「現代の歩き巡礼の精神性」の複合的領域と位置づけられる、巡礼および巡礼道を文化資源として認識・整備する動き、いわば「巡礼路復興運動」とも呼べる活動に関する調査を行った。2000年以降顕著になったこの「巡礼路復興運動」は、四国遍路の現代性を顕著にしめすものであり、代表的なものとしては、徳島県が主導する「いやしのみち」づくりと、四国霊場58番札所仙遊寺住職の小山田憲正氏が提唱する「世界遺産登録運動」がある。前年度の「いやしのみち」づくり運動の調査に引き続いて、本年度は後者に関する調査を7月に行い、「四国へんろ道文化」世界遺産化の会のフォーラムに参加し、小山田氏ほか多数の関係者にインタビューを行った。これに関連して(2)では、巡礼路復興運動についての海外調査を行った。平成16年度のスペインに続き、本年度はイングランド南東部ケント州のカンタベリー等のイギリスの聖地についてのフィールドワークを行い、大聖堂のボランティアスタッフへのインタビューや資料収集等を行った。また(3)については、特に8月後半以降は集中した執筆活動を行い、全6章構成でA4用紙300枚あまりの論文にまとめた。
KAKENHI-PROJECT-03J01926
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健康増進のための身体活動の政策監査ツールを用いた我が国の政策評価と国際比較
本研究の目的は,身体活動を促進するための我が国の政策を監査することである.政策監査には,Fiona Bull(西オーストラリア大)らが開発した「身体活動を促進するための政策監査ツール」を使用した.調査対象は厚生労働省,文部科学省,公益財団法人日本体育協会,および国土交通省であった.その結果,健康部門のみならずスポーツ部門にも身体活動に関連する法律が制定されていた.さらに,両部門は身体活動基準や国家目標,およびそれらを達成するための行動計画を策定していた.しかしながら,政策や行動計画の実施状況はほとんど把握できなかった.本研究の目的は,身体活動を促進するための我が国の政策を監査することである.政策監査には,Fiona Bull(西オーストラリア大)らが開発した「身体活動を促進するための政策監査ツール」を使用した.調査対象は厚生労働省,文部科学省,公益財団法人日本体育協会,および国土交通省であった.その結果,健康部門のみならずスポーツ部門にも身体活動に関連する法律が制定されていた.さらに,両部門は身体活動基準や国家目標,およびそれらを達成するための行動計画を策定していた.しかしながら,政策や行動計画の実施状況はほとんど把握できなかった.1、英文で公表されているPATの開発経緯や意義および調査項目をすべて和訳し、英文と和文を表記したPAT調査票日本語版を作成した(2013年78月)。2、和訳内容について、開発責任者のFiona Bull教授のチェックを受けて、調査票の日本語版を完成した(2013年910月)。3、この調査票を用いて、厚生労働省の保健部門、文部科学省のスポーツおよび教育部門、国土交通省の交通および都市計画部門の担当者にPATの調査意義を説明した上で調査の回答を依頼した(2013年112014年1月)。4、すべての回答内容を確認し、不明および欠損点について追加調査を行った(2014年23月)。2013年度において、厚生労働省、文部科学省、および国土交通省を対象に、身体活動促進に関する国家政策を監査するための調査(National Policy Audit Tool: N-PAT、Prof. F. Bullらが開発)を実施した。その結果、以下のことが明らかになった。1)調査対象としたすべての省は身体活動促進に関連する法律あるいは政策を策定していた。2)厚生労働省と文部科学省は、国民に対して身体活動水準の推奨値を提示していた。3)両省は達成すべき目標値と行動計画を設定していた。4)両省は身体活動量や体力水準を把握するための全国調査を実施していた。しかしながら、今回の調査では施策や行動計画の実施状況が十分に把握できないという問題点が明らかになった。このことは、政策や行動計画は国が策定するものの、その実施は地方自治体に委ねられていることが原因と考えられた。そこで、2014年度はこの問題点を解決するために、地方自治体を対象とした調査(Local Policy Audit Tool: L-PAT)の開発を試みた。調査項目の選定には、PATの開発(Prof. Fiona Bull、Dr. Sonja Kahlmeier)の助言を得た。完成した調査項目は以下に示すとおりである。1身体活動促進に関する行動計画の策定について、2行動計画の策定における部門・組織間の連携について、3身体活動に関する目標について4科学的根拠の利用について、5実際に行われた事業や活動について、6行動計画の評価について(住民に対する評価)、7行動計画の評価について(環境に対する評価)、8身体活動促進を管轄する部門・組織について、9キャンペーン活動について、10身体活動の専門家に対する支援について、11身体活動促進のための取組に関する進歩と挑戦について運動疫学2013年度の目標は、PATを用いて身体活動を促進するための我が国の政策監査を実施することであった。計画通り、省庁からの回答により我が国の政策や行動計画については概ね調査することができた。しかしながら、現場での実施状況や具体的な実施内容については十分な把握に至らなかった。現在、政策と行動計画の実施内容を把握するためのPAT調査改良版を作成中である。2014年度はこの調査を用いて、47都道府県を対象に調査を実施する。これによって、広域自治体レベルでの実施状況を把握する。また、Fiona Bull教授らはPAT調査を用いてヨーロッパ7カ国の政策や実施状況を比較した研究結果を公表している(British J. Sports Medicine, 2014)。これらの結果を本研究の2014年度の結果と比較することによって、2つ目の目的である国際比較を行う。研究分担者の井上茂先生は、PATによる政策評価の先進事例があるスイスを訪問し、チューリッヒ大学のBrian Martin博士、Sonja Kahlmeier博士との打ち合わせを2013年8月に計画していたが、都合により訪問中止となった。本年夏に再度、チューリッヒ大学への出張を計画する。
KAKENHI-PROJECT-25560359
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廃棄物処分に関わる安全性検討のための沿岸地圏域地下水流動システムの探査技術開発
放射性廃棄物処分においては、放射性物質の生物圏への移行過程の評価がその安全性を検討する上で重要な課題となっている。そのシナリオとして主要なものは、処分場を通過する地下水中に溶解した核種の移行である。日本列島のように、周辺を海に囲まれている国では、沿岸域および沿岸海底下がその放出地点となることが想定される。沿岸域の地下水流動システムは複雑であると想定されるが、実際の現象についての知見は非常に少ない。そのため、沿岸域での地下水流動システムに関して、観測に基づいた調査研究を実施し、実態を把握するための探査手法およびデータ評価技術を開発することが大きな課題であると考えられる。本研究では、地質工学、物理探査工学、水文学の手法を利用し、それらを統合化することにより、沿岸域及び沿岸海底下の地下水流動システムの探査手法・評価技術の開発を行うことを目標とした。具体的には、沿岸域および沿岸海底下における地下水ポテンシャル分布、地下水水質分布、塩淡境界の形状、水理地質構造、を少数の観測孔の掘削により評価・把握する手法の開発を試みた。ここでは、ボーリングコアを用いた地質解析、複数区間の間隙水圧連続計測による地下水ポテンシャル評価、問隙水圧の気圧・潮汐・波浪に対する反応を用いた水理物性分布評価のための時系列データ解析手法の開発と適用、複数区間の間隙水の採水と水質・同位体分析、を行った。また、海底地下水湧出地点の空間分布探査手法としてリモートセンシングデータと、原位置探査を組み合わせた方法の確立を目指した。本研究では、熊本県宇城市不知火町地域及び黒部川扇状地地域を研究対象として選択した。本研究においては、海底下における長期間の地盤内間隙水圧計測や、海底下へのボーリング孔掘削(50m)およびその孔を用いた採水・問隙水圧連続計測の実施といった、新しい試みを行い、興味深い成果を得ることができた。また、原位置における熱赤外計測と室内実験成果との統合も試みた。放射性廃棄物処分においては、放射性物質の生物圏への移行過程の評価がその安全性を検討する上で重要な課題となっている。そのシナリオとして主要なものは、処分場を通過する地下水中に溶解した核種の移行である。日本列島のように、周辺を海に囲まれている国では、沿岸域および沿岸海底下がその放出地点となることが想定される。沿岸域の地下水流動システムは複雑であると想定されるが、実際の現象についての知見は非常に少ない。そのため、沿岸域での地下水流動システムに関して、観測に基づいた調査研究を実施し、実態を把握するための探査手法およびデータ評価技術を開発することが大きな課題であると考えられる。本研究では、地質工学、物理探査工学、水文学の手法を利用し、それらを統合化することにより、沿岸域及び沿岸海底下の地下水流動システムの探査手法・評価技術の開発を行うことを目標とした。具体的には、沿岸域および沿岸海底下における地下水ポテンシャル分布、地下水水質分布、塩淡境界の形状、水理地質構造、を少数の観測孔の掘削により評価・把握する手法の開発を試みた。ここでは、ボーリングコアを用いた地質解析、複数区間の間隙水圧連続計測による地下水ポテンシャル評価、問隙水圧の気圧・潮汐・波浪に対する反応を用いた水理物性分布評価のための時系列データ解析手法の開発と適用、複数区間の間隙水の採水と水質・同位体分析、を行った。また、海底地下水湧出地点の空間分布探査手法としてリモートセンシングデータと、原位置探査を組み合わせた方法の確立を目指した。本研究では、熊本県宇城市不知火町地域及び黒部川扇状地地域を研究対象として選択した。本研究においては、海底下における長期間の地盤内間隙水圧計測や、海底下へのボーリング孔掘削(50m)およびその孔を用いた採水・問隙水圧連続計測の実施といった、新しい試みを行い、興味深い成果を得ることができた。また、原位置における熱赤外計測と室内実験成果との統合も試みた。本年度は、以下の研究を実施し成果を得た。熊本県宇土半島地域においては、海域において50mの岩盤ボーリング孔の掘削を行い、コアサンプルを取得するとともに、多深度間隙水圧計測システムを設置し、3深度で間隙水圧連続計測を開始した。また、コアからの採水を実施し、間隙水の抽出に成功するとともに、その塩素濃度分布計測を行い、海成粘土層がら下位の凝灰角礫岩中へ向かう塩素イオンの拡散プロファイルを得た。間隙水圧計測では、深度方向への圧力の減衰が認められ、また、潮汐に伴う間隙水圧の反応に位相の前進があることがわかった。この原因に関しては、まだ明確にはされておらず、今後の検討が必要である。地表面からの計測に関しては、海底からの地下水湧出がすでに確認されている地点において、熱赤外リモートセンシングデータを取得することにより、海底地下水湧出地点の把握可能性の検討を行なった。現時点では、海底地下水湧出地点の水深が1.5m程度より浅い場合には、海表面温度の連続計測を実施し、その時系列解析を行うことにより、海底からの淡水性地下水湧出地点を把握することが可能となっている。富山県黒部川扇状地においては、地中レーダ(GPR)を用いた地下水面深度探査を行った。ここでは、GPR探査にRTK-GPS(real time kinematic GPS)による詳細な空間位置測位技術を組み合わせることにより、地下水面よりやや上位に位置する毛管帯上面を広域に亘って計測することに成功した。
KAKENHI-PROJECT-16360448
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16360448
廃棄物処分に関わる安全性検討のための沿岸地圏域地下水流動システムの探査技術開発
この技術をさらに、扇状地全域に拡張することにより、不圧地下水面分布の三次元形態を明らかにすることが可能となることが期待される。本年度は、昨年度に引き続き、以下の研究を実施し成果を得た。熊本県宇土半島地域においては、昨年度掘削したボーリング孔から得られたコアサンプルを用い、昨年得られた塩素イオン濃度に基づく拡散プロファイルに加え、塩素安定同位体比を用いた拡散現象の定量的な検討を行なった。この解析のために必要な周辺地域の相対的海水準変動に関する既存データの収集を行い、また、堆積物の年代データを用いた堆積速度変遷を明らかにした。これらの成果に基づき、堆積・拡散の両現象を表現することが可能なモデルを構築した。さらに、3深度での間隙水圧連続計測を継続して実施し、ほぼ1年間にわたる連続データを取得した。間隙水圧連続計測では、その平均的な間隙水圧の静水圧からのずれが、深度方向へ大きくなることが明らかとなり、何らかの理由で過剰な間隙水圧が発生していることが示された。この原因に関しては、潮汐に伴う間隙水圧反応における位相の前進とともに明らかになっておらず、来年度引き続き検討を行なう予定である。地表面からの計測に関しては、熱赤外リモートセンシングデータを用いた詳細な検討を行ない、その可能性と探査能力の限界を明らかにした。この結果に基づき、熊本県葦北郡福浦において、熱赤外リモートセンシングデータを用い、海底からの淡水性地下水湧出地点の把握を試みた。また、当該地点において、シーページメータ、比抵抗探査を用いた湧出地点・量の検討及び湾への流入河川水の流量継続観測を実施した。塩素イオン濃度及び塩素安定同位体比を用いた定量的な検討を更に進めるため、霞ヶ浦におけるボーリング掘削及びコアサンプル採取を行った。コアからの間隙水抽出、分析や、堆積物を用いた年代測定・堆積環境推定等は現在進行中である。放射性廃棄物処分においては、放射性物質の生物圏への移行過程の評価がその安全性を検討する上で重要な課題となっている。そのシナリオとして主要なものは、処分場を通過する地下水中に溶解した核種の移行である。日本列島のように、周辺を海に囲まれている国では、沿岸域および沿岸海底下がその放出地点となることが想定される。沿岸域の地下水流動システムは複雑であると想定されるが、実際の現象についての知見は非常に少ない。そのため、沿岸域での地下水流動システムに関して、観測に基づいた調査研究を実施し、実態を把握するための探査手法およびデータ評価技術を開発することが大きな課題であると考えられる。本研究では、地質工学、物理探査工学、水文学の手法を利用し、それらを統合化することにより、沿岸域及び沿岸海底下の地下水流動システムの探査手法・評価技術の開発を行うことを目標とした。具体的には、沿岸域および沿岸海底下における地下水ポテンシャル分布、地下水水質分布、塩淡境界の形状、水理地質構造、を少数の観測孔の掘削により評価・把握する手法の開発を試みた。ここでは、ボーリングコアを用いた地質解析、複数区間の間隙水圧連続計測による地下水ポテンシャル評価、間隙水圧の気圧・潮汐・波浪に対する反応を用いた水理物質性分布評価のための時系列データ解析手法の開発と適用、複数区間の間隙水の採水と水質・同位体分析、を行った。また、海底地下水湧出地点の空間分布
KAKENHI-PROJECT-16360448
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Sox遺伝子の導入による変形性関節症の治療に関する先駆的研究
本研究に先立って、変形性関節症における遺伝子発現をレーザー・マイクロダイセクションと定量的PCRにより詳細に調べたところ、従来の報告と合致して軟骨変性部表層において軟骨基質の成分であるII型コラーゲン、アグリカンの発現が低下していることが確認された。ついで本研究において病変部軟骨細胞への導入を予定したSox9の発現を調べたところ、この発現は予想に反して軟骨変性部でも低下しておらず、この部位での軟骨基質の発現減少はSox9の発現レベルと連動せずに生じていることが明らかとなった。この一見矛盾する現象が生じる理由として(1)Sox5,Sox6などSox9と協調的に働く分子の発現の変化、(2)Sox9の細胞内局在の変化、(3)Sox9以外の系によるマトリクス分子発現の転写レベルでの抑制、などの可能性が考えられる。この結果から今回の研究で予定していたSox9の導入によるOAの治療の試みは合理性に乏しいと考えられたため、研究の主眼を軟骨病変の研究において必須かつ必要な技術である軟骨基質中の軟骨細胞に対する遺伝子導入法の開発に切り替えることとした。この実験については、当初器官培養により維持された軟骨片の内部の軟骨細胞に対する遺伝子導入をアデノウイルスベクターを用いて試みた。結果としてこの方法では培養軟骨片のごく表層の細胞においてわずかな遺伝子の導入が観察されただけで、軟骨基質に包埋された細胞にはこの方法では導入が困難であると考えられた。ついでelectroporation法を試みた。最近Amaxa社から発売されたNucleofectorRは一次培養軟骨細胞に対しては非常に効率よく遺伝子を導入することが可能であり、我々自身も実際にこれを確認している。この方法を用いて基質内の軟骨細胞に対してGFP発現ベクターの導入を種々の条件下に試みたが、結果として成功しなかった。この一因はプラスミドが比較的分子量の大きな分子であり、物理的に軟骨基質内に浸透しにくいこと、さらに軟骨基質が多量のプロテオグリカンを含んで負に帯電しており、プラスミドの進入を電気的にも阻害することにあると考えられた。引き続いて現在も皮膚などにおいてマトリクス内の線維芽細胞に対して遺伝子導入が可能と報告されているparticle bombardment (gene gun)の方法を試みている。本研究に先立って、変形性関節症における遺伝子発現をレーザー・マイクロダイセクションと定量的PCRにより詳細に調べたところ、従来の報告と合致して軟骨変性部表層において軟骨基質の成分であるII型コラーゲン、アグリカンの発現が低下していることが確認された。ついで本研究において病変部軟骨細胞への導入を予定したSox9の発現を調べたところ、この発現は予想に反して軟骨変性部でも低下しておらず、この部位での軟骨基質の発現減少はSox9の発現レベルと連動せずに生じていることが明らかとなった。この一見矛盾する現象が生じる理由として(1)Sox5,Sox6などSox9と協調的に働く分子の発現の変化、(2)Sox9の細胞内局在の変化、(3)Sox9以外の系によるマトリクス分子発現の転写レベルでの抑制、などの可能性が考えられる。この結果から今回の研究で予定していたSox9の導入によるOAの治療の試みは合理性に乏しいと考えられたため、研究の主眼を軟骨病変の研究において必須かつ必要な技術である軟骨基質中の軟骨細胞に対する遺伝子導入法の開発に切り替えることとした。この実験については、当初器官培養により維持された軟骨片の内部の軟骨細胞に対する遺伝子導入をアデノウイルスベクターを用いて試みた。結果としてこの方法では培養軟骨片のごく表層の細胞においてわずかな遺伝子の導入が観察されただけで、軟骨基質に包埋された細胞にはこの方法では導入が困難であると考えられた。ついでelectroporation法を試みた。最近Amaxa社から発売されたNucleofectorRは一次培養軟骨細胞に対しては非常に効率よく遺伝子を導入することが可能であり、我々自身も実際にこれを確認している。この方法を用いて基質内の軟骨細胞に対してGFP発現ベクターの導入を種々の条件下に試みたが、結果として成功しなかった。この一因はプラスミドが比較的分子量の大きな分子であり、物理的に軟骨基質内に浸透しにくいこと、さらに軟骨基質が多量のプロテオグリカンを含んで負に帯電しており、プラスミドの進入を電気的にも阻害することにあると考えられた。引き続いて現在も皮膚などにおいてマトリクス内の線維芽細胞に対して遺伝子導入が可能と報告されているparticle bombardment (gene gun)の方法を試みている。
KAKENHI-PROJECT-16659416
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16659416
急性脳症における神経・免疫・代謝のインターフェース
急性脳症の病態生理を神経、免疫、代謝のクロストークという観点から解明する目的で、急性脳症の3大症候群である急性壊死性脳症(ANE),けいれん重積型急性脳症(AESD),脳梁膨大部脳症(MERS)における神経、免疫、代謝に関連する候補遺伝子の多型解析及びリスク遺伝子の機能解析を行った。ANEに関しては、前年度にHLA遺伝子タイピングを行い、疾患感受性遺伝子素因としてHLA-DRB1*09:01、DQB1*03:03及びA*31:01を同定したので、これを論文として公表した。また自然免疫を調節するTLR3について、以前に報告された点変異F303SがあるかANE31症例で検討したが、認められなかった。AESDに関しては、自然免疫抑制因子であるCTLA4の3'末端の1塩基多型CT60についてAESD(87例)、熱性けいれん(54例)、健常者(186例)を解析したところ、AESDと他の2群との間にアレル頻度の有意差を認めた。FSと異なるAESDの病態として、自然免疫系の賦活が示唆された。MERSに関しては、AESD、ANEなど重症の病型との関連が報告されていたミトコンドリア酵素CPT2の熱感受性多型についてMERS40例で検討したところ、健常者との間に頻度の有意差を認めた。代謝異常の所見を示さないMERSの病態にもエネルギー代謝の異常(発熱時におけるATP産生の低下)が関与することが示された。以上より急性脳症の3大症候群の病態に代謝(ミトコンドリア代謝)と免疫(自然免疫、サイトカイン)に関わる遺伝的素因の関与が明らかとなった。平成29年度が最終年度であるため、記入しない。平成29年度が最終年度であるため、記入しない。急性脳症の病態生理を神経、免疫、代謝のクロストークという観点から解明する目的で、急性脳症患者における神経、免疫、代謝に関連する候補遺伝子の多型解析およびリスク遺伝子型の機能解析を行った。本年度はEphrin, Ephrin受容体、S1P (sphingosine-1-phosphate)などの候補因子に関する解析を開始し、予備実験を行った。けいれん重積型(二相性)急性脳症(AESD)については、その病初期には熱性けいれん(FS)重積と区別できないため、AESD、FS、対照の3群間の比較検討を行った。本年度は自然免疫抑制因子であるCTLA4 (cytotoxic T-lymphocyte antigen 4)の3'末端の1塩基多型(CT60)に注目して遺伝子解析を行ったところ、AESDと正常対照の間、およびAESDとFSの間に遺伝子型頻度の有意差が見いだされた。リスク遺伝子型であるCT60/GG遺伝子型はCTLA4発現の減少と関連し、中枢神経系ではリポ多糖(LPS)による炎症性サイトカインIL1B発現を亢進させる可能性がある。FSとAESDの病態の相違をもたらす遺伝子素因として、自然免疫系の過剰な賦活が示唆された。急性壊死性脳症(ANE)は近年、日本における発症頻度がきわめて低くなっており、新しい症例の検体の収集が計画どおりには進まなかった。けいれん重積型急性脳症(AESD)については、当初の計画に入っていなかったCTLA4遺伝子に関する新知見が得られたことにより、計画以上に進展した。急性脳症の病態生理を神経、免疫、代謝のクロストークという観点から解明する目的で、急性脳症患者における神経、免疫、代謝に関連する候補遺伝子の多型解析及びリスク遺伝子の機能解析を行った。本年度は急性壊死性脳症(ANE)の日本人患者31症例を対象として、第1に欧米に多発する家族性再発性ANEの原因遺伝子RANBP2(核膜孔複合体の構成タンパクRanBP2をコード)及び関連するCOX11、COX10、COX15(ミトコンドリア電子伝達系酵素複合体の構成要素をコード)の全エクソン解析を行った。その結果、日本人ANEには病原性RANBP2変異はなく、日本人の孤発性ANEの病因は欧米人の家族性再発性ANEの病因と異なることが判明した。またCOX10遺伝子多型に関して症例と健常対照者の間に有意差があり、COX10がANEの新たな疾患感受性遺伝子として同定された。第2に同じ患者群でPCR-rSSO法によりHLA遺伝子タイピングを行った。その結果、疾患感受性遺伝子素因としてHLA-DRB1*09:01とDQB1*03:03及びA*31:01が同定された。これらの遺伝子型の保有率は欧米人に比し日本人で高いことが、ANEが日本人に多発する理由のひとつと考えられた。第3にANE患者を対象にサイトカイン遺伝子(IL1B、IL6、IL8、IL10、TNFA)の多型解析を行った。その結果、IL10プロモーター領域の多型とIL6プロモーター領域の多型に関して症例と健常対照者の間に有意差があった。機能解析の結果、IL10のリスク多型を有するリンパ芽球のPMA刺激によるIL10産生能は低いことが判明した。以上よりANEの発症に代謝(ミトコンドリア代謝)と免疫(自然免疫、サイトカイン)に関わる遺伝的素因の関与が明らかとなった。急性壊死性脳症(ANE)は罹病率が低いため症例数の集積がけいれん重積型急性脳症(AESD)に比し遅れていたが、今年度までにようやく31症例を得ることができた。
KAKENHI-PROJECT-15H04872
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急性脳症における神経・免疫・代謝のインターフェース
多くの候補遺伝子について検討を加えた結果、複数の遺伝子について有意な結果を得ることができた。急性脳症の病態生理を神経、免疫、代謝のクロストークという観点から解明する目的で、急性脳症の3大症候群である急性壊死性脳症(ANE),けいれん重積型急性脳症(AESD),脳梁膨大部脳症(MERS)における神経、免疫、代謝に関連する候補遺伝子の多型解析及びリスク遺伝子の機能解析を行った。ANEに関しては、前年度にHLA遺伝子タイピングを行い、疾患感受性遺伝子素因としてHLA-DRB1*09:01、DQB1*03:03及びA*31:01を同定したので、これを論文として公表した。また自然免疫を調節するTLR3について、以前に報告された点変異F303SがあるかANE31症例で検討したが、認められなかった。AESDに関しては、自然免疫抑制因子であるCTLA4の3'末端の1塩基多型CT60についてAESD(87例)、熱性けいれん(54例)、健常者(186例)を解析したところ、AESDと他の2群との間にアレル頻度の有意差を認めた。FSと異なるAESDの病態として、自然免疫系の賦活が示唆された。MERSに関しては、AESD、ANEなど重症の病型との関連が報告されていたミトコンドリア酵素CPT2の熱感受性多型についてMERS40例で検討したところ、健常者との間に頻度の有意差を認めた。代謝異常の所見を示さないMERSの病態にもエネルギー代謝の異常(発熱時におけるATP産生の低下)が関与することが示された。以上より急性脳症の3大症候群の病態に代謝(ミトコンドリア代謝)と免疫(自然免疫、サイトカイン)に関わる遺伝的素因の関与が明らかとなった。また本年度の成果をさらに発展させるため、CTLA4に関する機能解析を新たに追加する。次年度は、AESDに関して有望な候補遺伝子のさらなる解析、またリスク遺伝子型の機能解析を進める。AESDのサブタイプであるHHE症候群(片側半球障害)とAIEF(前頭葉障害)の異同について解析する。ANEに関してRANBP2変異やIL6多型などにつき現在進行中の機能解析を完成させる。平成29年度が最終年度であるため、記入しない。平成29年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15H04872
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大規模実世界時空間データストリーム処理のための高度検索・発見技術の展開
本申請課題では,多様で膨大な実世界時空間ストリームデータに対する高速大規模な知識処理の基盤となる超高速な検索・発見技術の研究開発を行った.本年度は,次の結果を得た.(a)多様で膨大な実世界時空間ストリームデータから,特徴的なパターンや規則性を検索・発見する超高速な検索・発見技術の基礎技術を開発した.(a.i)RMSD距離に対して,3次元点集合マッチングに対する効率良いオフライン照合アルゴリズムを与えた(Sasaki et al. IEICE Trasn).(a.ii)ストリームからの学習の理論的モデルである正データからの帰納推論に,検証と比較が可能な新しいモデルを導入し,そのストリームからの学習可能性を明らかにした(Gao et al. ALT2018).(a.iii)ビット詰め込みを用いて小さなサイズで格納可能な圧縮データ構造DenseZDDとその高速検索アルゴリズムを開発した(Denzumi et al., Algorithms).(a.iv)理論計算機科学の学術誌であるTCS誌にて,データからの学習可能性と計算量に関する論文特集を企画・掲載した.(b)実績世界時空間ストリーム上で,複雑な構造パターンに対して,適応性・文脈性・低メモリ性・高速性を満足する知識の検索・発見技術を開発した. (b.i)グラフコードのトライであるグラフ断片決定木を用いた多様で小さな高精度のパターン集合を構築する軽量手法を開発した(坂上他,JSAI2018).(b.ii)系列データに対するグラフパターンである菱形エピソードの族に対し,統計的な有意性を考慮した効率良いデータマイニング手法を開発した.(c)実世界情報からの知識獲得のためのアーキテクチャの研究開発については,項目(a)と項目(b)で開発した各種アルゴリズムの実装,理論的実証的解析を行ない,開発にフィードバックした.初年度は,項目(a)の多様で膨大な実世界時空間ストリームデータを対象とした特徴的なパターンや規則性の検索・発見については,組合せパターンに対する高速な検索手法や,ストリームデータに対する学習モデルの提案と理論的解析,発見した組合せパターンの効率良い格納法など,順調に進捗している.また成果の啓蒙に貸しては,データからの学習可能性と計算量に関する論文特集を企画している.項目(b)の複雑な構造パターンに対して,適応性・文脈性・低メモリ性・高速性を満足する知識の検索・発見技術については,グラフ断片決定木の軽量学習アルゴリズムの開発や,エピソードパターンの族に対するマイニングアルゴリズムの開発など順調に進んでいる.項目(c)の実世界情報からの知識獲得のためのアーキテクチャの研究開発については,各種アルゴリズムの実装を都度行い,順調に進んでいる.今後の方策として,(a)については,3次元点集合マッチングに関してはストリーム化を行う.ストリーム学習の理論的モデルに関しては,実際の応用シナリオを検討して,検証と比較以外の演算を許した新しいモデルを検討する.圧縮データ構造DenseZDDを利用した集約計算を研究する.(b)については,グラフ断片決定木のストリームを化を行い,そこで得られた構造特徴を用いたオンライン学習器の構築法を研究開発する.菱形エピソードの族を階層構造をもつエピソードに拡張し,効率良いマイニングアルゴリズムを開発した.項目(c)については,引き続き,各種アルゴリズムを実装し,理論的および実証的な性能評価を行ない,開発にフィードバックする.本申請課題では,多様で膨大な実世界時空間ストリームデータに対する高速大規模な知識処理の基盤となる超高速な検索・発見技術の研究開発を行った.本年度は,次の結果を得た.(a)多様で膨大な実世界時空間ストリームデータから,特徴的なパターンや規則性を検索・発見する超高速な検索・発見技術の基礎技術を開発した.(a.i)RMSD距離に対して,3次元点集合マッチングに対する効率良いオフライン照合アルゴリズムを与えた(Sasaki et al. IEICE Trasn).(a.ii)ストリームからの学習の理論的モデルである正データからの帰納推論に,検証と比較が可能な新しいモデルを導入し,そのストリームからの学習可能性を明らかにした(Gao et al. ALT2018).(a.iii)ビット詰め込みを用いて小さなサイズで格納可能な圧縮データ構造DenseZDDとその高速検索アルゴリズムを開発した(Denzumi et al., Algorithms).(a.iv)理論計算機科学の学術誌であるTCS誌にて,データからの学習可能性と計算量に関する論文特集を企画・掲載した.(b)実績世界時空間ストリーム上で,複雑な構造パターンに対して,適応性・文脈性・低メモリ性・高速性を満足する知識の検索・発見技術を開発した. (b.i)グラフコードのトライであるグラフ断片決定木を用いた多様で小さな高精度のパターン集合を構築する軽量手法を開発した(坂上他,JSAI2018).(b.ii)系列データに対するグラフパターンである菱形エピソードの族に対し,統計的な有意性を考慮した効率良いデータマイニング手法を開発した.
KAKENHI-PROJECT-18K19771
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大規模実世界時空間データストリーム処理のための高度検索・発見技術の展開
(c)実世界情報からの知識獲得のためのアーキテクチャの研究開発については,項目(a)と項目(b)で開発した各種アルゴリズムの実装,理論的実証的解析を行ない,開発にフィードバックした.初年度は,項目(a)の多様で膨大な実世界時空間ストリームデータを対象とした特徴的なパターンや規則性の検索・発見については,組合せパターンに対する高速な検索手法や,ストリームデータに対する学習モデルの提案と理論的解析,発見した組合せパターンの効率良い格納法など,順調に進捗している.また成果の啓蒙に貸しては,データからの学習可能性と計算量に関する論文特集を企画している.項目(b)の複雑な構造パターンに対して,適応性・文脈性・低メモリ性・高速性を満足する知識の検索・発見技術については,グラフ断片決定木の軽量学習アルゴリズムの開発や,エピソードパターンの族に対するマイニングアルゴリズムの開発など順調に進んでいる.項目(c)の実世界情報からの知識獲得のためのアーキテクチャの研究開発については,各種アルゴリズムの実装を都度行い,順調に進んでいる.今後の方策として,(a)については,3次元点集合マッチングに関してはストリーム化を行う.ストリーム学習の理論的モデルに関しては,実際の応用シナリオを検討して,検証と比較以外の演算を許した新しいモデルを検討する.圧縮データ構造DenseZDDを利用した集約計算を研究する.(b)については,グラフ断片決定木のストリームを化を行い,そこで得られた構造特徴を用いたオンライン学習器の構築法を研究開発する.菱形エピソードの族を階層構造をもつエピソードに拡張し,効率良いマイニングアルゴリズムを開発した.項目(c)については,引き続き,各種アルゴリズムを実装し,理論的および実証的な性能評価を行ない,開発にフィードバックする.
KAKENHI-PROJECT-18K19771
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総裁政府から統領政府へ-その社会史的経済史的変化-
総裁政府期,アッシニア紙幣の価値の著しい下落にもかかわらず,その発行が1796年初まで続けられたのは,紙幣に代わる政府の支払手段がなく,強制公債による正貸調達もはかばかしくなかったためである.額面価値の89%まで下落したアッシニアは幾度目かの代替処置と引替えに廃棄されるが,その直前から1775年設立の割引銀行の取締役を中心に国立銀行案が練られていた.当時,総裁政治・議会の中では,共和左派の唱導する累進的強制課税・アッシニア再建路線と,共和右派および財務担当行政官クラスの附加税・間接税復活・銀行家資金の糾合を求める路線が対立していた.やがてナポレオンのイタリア戦役での成果が伝えられると,後者のグループはシェイエズを介してナポレオンに接近する姿勢を示し,イタリアからの財宝を基盤に国立銀行案を具体化させる. 1797年9月のフリュクチドール・クーデタ以後,独裁色を強めた総裁政府は,ジャコバンの退出をも阻んで(1798年5月・フロレアールのクーデタ)租税財政政策の道を一本化した.すなわち,共和左派から共和中道派の分出と共和右派との連携によって国立銀行設立の政治的基盤ができ上る.統領政府発足後,国立銀行とそれによって支えられる国庫体制が樹立されるが,これらを担ったのは旧フィナンシエの生き残り銀行家層,首席事務官層,財務・税務部局長クラスの者であり,絶対王政末期に一定の地歩を築いていた者であった.統領制・帝制期を通じ経済は1805年秋迄の景気上昇, 1806・07年の停滞, 1807年夏から1810年秋までの再上昇, 1810年冬1815年の不振という四局面にわけられる.このうち低滞局面は,信用の欠乏による通貨の混乱,財政危機と工業融資の低迷が指摘でき,国立銀行は国庫からのたえざる資金調達の要求にさらされていた.ナポレオン期は,金融・財政の機構・制度面では後続史への遺産を残したが,なおその成果を十分享受しえた時代でなかった.総裁政府期,アッシニア紙幣の価値の著しい下落にもかかわらず,その発行が1796年初まで続けられたのは,紙幣に代わる政府の支払手段がなく,強制公債による正貸調達もはかばかしくなかったためである.額面価値の89%まで下落したアッシニアは幾度目かの代替処置と引替えに廃棄されるが,その直前から1775年設立の割引銀行の取締役を中心に国立銀行案が練られていた.当時,総裁政治・議会の中では,共和左派の唱導する累進的強制課税・アッシニア再建路線と,共和右派および財務担当行政官クラスの附加税・間接税復活・銀行家資金の糾合を求める路線が対立していた.やがてナポレオンのイタリア戦役での成果が伝えられると,後者のグループはシェイエズを介してナポレオンに接近する姿勢を示し,イタリアからの財宝を基盤に国立銀行案を具体化させる. 1797年9月のフリュクチドール・クーデタ以後,独裁色を強めた総裁政府は,ジャコバンの退出をも阻んで(1798年5月・フロレアールのクーデタ)租税財政政策の道を一本化した.すなわち,共和左派から共和中道派の分出と共和右派との連携によって国立銀行設立の政治的基盤ができ上る.統領政府発足後,国立銀行とそれによって支えられる国庫体制が樹立されるが,これらを担ったのは旧フィナンシエの生き残り銀行家層,首席事務官層,財務・税務部局長クラスの者であり,絶対王政末期に一定の地歩を築いていた者であった.統領制・帝制期を通じ経済は1805年秋迄の景気上昇, 1806・07年の停滞, 1807年夏から1810年秋までの再上昇, 1810年冬1815年の不振という四局面にわけられる.このうち低滞局面は,信用の欠乏による通貨の混乱,財政危機と工業融資の低迷が指摘でき,国立銀行は国庫からのたえざる資金調達の要求にさらされていた.ナポレオン期は,金融・財政の機構・制度面では後続史への遺産を残したが,なおその成果を十分享受しえた時代でなかった.
KAKENHI-PROJECT-62510209
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耳石器官の有毛細胞集団が方向性の異なる複数の平面極性パターンを形成する仕組み
聴覚・平衡感覚刺激を受容する内耳の有毛細胞が感覚上皮内に形成する平面内細胞極性パターンの構築原理を調べるためにゼブラフィッシュ胚を対象にして有毛細胞の感覚毛を可視化して極性形成過程を解析した。2つの耳石器官(卵形嚢、球形嚢)のうち、球形嚢では受精後30時間に約2個の有毛細胞が存在し、いずれも腹側後方方向の平面内細胞極性をもっていた。一方、受精後36時間では有毛細胞が新たに分化して数が増加し、それぞれ器官内の位置に対応した異なる極性を獲得していた。また、感覚毛を蛍光タンパク質で可視化した遺伝子組換え胚を用いて生体継時観察を行い、新しく分化する有毛細胞はわずか3時間以内に極性を獲得することを明らかにした。さらに、平面内細胞極性遺伝子(vangl2)の機能欠損変異体では感覚毛は形成されるものの、極性パターンが受精後30時間からすでに乱れていることから、この遺伝子が極性の形成および維持に必要であることを明らかにした。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。聴覚・平衡感覚受容を担う内耳有毛細胞は感覚上皮の平面方向に特有の平面内細胞極性パターンを形成する。細胞集団が感覚上皮器官を形成する組織化・秩序化の原理を調べるために、本研究ではゼブラフィッシュ内耳の耳石器官(卵形嚢および球形嚢)の有毛細胞集団が形成する感覚毛の極性パターンに注目し、その形成過程を解析した。有毛細胞の不動毛を構成するアクチンフィラメントを免疫染色により可視化し、ゼブラフィッシュ胚の各発達時期における内耳の耳石器官の感覚毛の配列を単一細胞レベルで解析し、個々の細胞の時空間的な極性ベクトルデータを抽出した。受精後1日胚ではいずれの耳石器官でも有毛細胞の感覚毛の配列は一方向にのみ向いていたのに対し、球形嚢では受精後2日には相互外向きの感覚毛の配列パターンが形成されており、卵形嚢では受精後3日には相互内向きの感覚毛の配列パターンが形成されていることを見出した。各器官に特有の配列パターンがどのような過程で形成されるのかを詳細に明らかにするためには経時観察が必要であるため、ゼブラフィッシュ生体を数時間にわたって観察するためのアガロース包埋標本作成法と、有毛細胞を観察する際に邪魔になる耳石を微小ガラスプローブを使って有毛細胞上から除去する操作法を確立した。また、不動毛を可視化するための遺伝子組換え系統および平面内細胞極性の形成に必要とされるタンパク質群に対する抗体の候補を選定した。聴覚・平衡感覚刺激を受容する内耳の有毛細胞が感覚上皮内に形成する平面内細胞極性パターンの構築原理を調べるためにゼブラフィッシュ胚を対象にして有毛細胞の感覚毛を可視化して極性形成過程を解析した。2つの耳石器官(卵形嚢、球形嚢)のうち、球形嚢では受精後30時間に約2個の有毛細胞が存在し、いずれも腹側後方方向の平面内細胞極性をもっていた。一方、受精後36時間では有毛細胞が新たに分化して数が増加し、それぞれ器官内の位置に対応した異なる極性を獲得していた。また、感覚毛を蛍光タンパク質で可視化した遺伝子組換え胚を用いて生体継時観察を行い、新しく分化する有毛細胞はわずか3時間以内に極性を獲得することを明らかにした。さらに、平面内細胞極性遺伝子(vangl2)の機能欠損変異体では感覚毛は形成されるものの、極性パターンが受精後30時間からすでに乱れていることから、この遺伝子が極性の形成および維持に必要であることを明らかにした。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。ゼブラフィッシュ胚において内耳は体表面から数十マイクロメートルの深さに位置しており、透明度の高いゼブラフィッシュ胚を用いても観察には試行錯誤が必要であり実験の進行に多少の遅れが生じたため。本年度に得た知見、確立した実験手法、準備した遺伝子組換え系統や抗体を用いて効率的に研究を進める。
KAKENHI-PUBLICLY-25127705
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25127705
浄土教思想の体系的研究ー文献資料の集成と分析ー
浄土教思想の体系的研究-文献資料の集成と分析-の研究をはじめてから3年が経過した。各研究分担における関係著述の選定及び関係雑誌研究論の選定とともに、コンピュータ入力の作業を精力的に継続している。入力にあたっては、著書部門と雑誌部門とに分けて作業を行なっているが、平成4年3月の時点で、入力件数は177582件である。このなか書籍関係は117435件、雑誌関係は60147件である。この総入力件数の内訳を著者別、書名別、冊数別に記すと次のようになる。著者別総人数は17585件であり、このなか書籍関係は8472件、雑誌関係は9113件である。また書名総数は13696件であり、このなか書籍関係は13230件、雑誌関係は466件である。さらに総冊数については11920件であり、このなか書籍関係は11397件、雑誌関係は523件となっている。入力件数は第1年度、56376件、第2年度、89948件、第3年度、31258件となるが、第3年度の入力件数が減少したのは、和本の判読、整理に手間取ったためと、17万点余りのデータについて著者名、論文題目名、年代別、キーワード別等の視点による研究分析に作業が移行したためである。浄土教全体の研究動向の把握をめざす本研究にとって、現時点での研究進捗の状況は、文献資料の膨大さのために、現在全体の3分の1程度の入力作業が終わったところである。それゆえ、全体的、個別的な研究動向等を推察するのは時期尚早といわなければならないが、浄土教思想の体系的研究については、今後さらに資料データの蓄積を続け、その分析検討の成果を待たなければならないと考えられる。浄土教思想の体系的研究-文献資料の集成と分析-の研究をはじめてから3年が経過した。各研究分担における関係著述の選定及び関係雑誌研究論の選定とともに、コンピュータ入力の作業を精力的に継続している。入力にあたっては、著書部門と雑誌部門とに分けて作業を行なっているが、平成4年3月の時点で、入力件数は177582件である。このなか書籍関係は117435件、雑誌関係は60147件である。この総入力件数の内訳を著者別、書名別、冊数別に記すと次のようになる。著者別総人数は17585件であり、このなか書籍関係は8472件、雑誌関係は9113件である。また書名総数は13696件であり、このなか書籍関係は13230件、雑誌関係は466件である。さらに総冊数については11920件であり、このなか書籍関係は11397件、雑誌関係は523件となっている。入力件数は第1年度、56376件、第2年度、89948件、第3年度、31258件となるが、第3年度の入力件数が減少したのは、和本の判読、整理に手間取ったためと、17万点余りのデータについて著者名、論文題目名、年代別、キーワード別等の視点による研究分析に作業が移行したためである。浄土教全体の研究動向の把握をめざす本研究にとって、現時点での研究進捗の状況は、文献資料の膨大さのために、現在全体の3分の1程度の入力作業が終わったところである。それゆえ、全体的、個別的な研究動向等を推察するのは時期尚早といわなければならないが、浄土教思想の体系的研究については、今後さらに資料データの蓄積を続け、その分析検討の成果を待たなければならないと考えられる。本研究を進めるにあたって、浄土教関係著作の選定、浄土教関係研究論文の選定を各研究分担別に行うと共に、その収集には、今年度は、手近かにある龍谷大学真宗学専攻の蔵書・雑誌等によって、四台のコンピュ-タ-入力を蔵書(著書)部門と論文部門との二部門に分けて行うこととし、平成2年3月15日現在、入力論文件数56376件に及んでいる。これを著者別人数にすると5911名、書名数にすると2895件、冊数にすると2985冊になる。但し、一研究機関の紀要は一書名と見なすから、例えば龍谷大学真宗学会の機関誌「真宗学」(No.1No.80)は一書名とするために、そこに収録された論文件数は件となる。また一著書において章節項目の目次はこれを一つ一つ論文と見做すことによって、その著作のキ-ワ-ドすることが可能となるようにしたため、章節の少ないものでも五論文となり、大著になると30論文、50論文という論文件数ともなるために、56376件の論文数となっているのである。本研究を進めて二年度目を終わろうとしている。役割分担の各部門における浄土教関係著作の選定及び浄土教関係研究論文の選定と共に、コンピュタ-への入力を精力的に継続している。入力にあたっては、著書部門と論文部門との二部門に分けて入力している。平成3年3月10日現在、入力総件数は146324件に達している。これを著者別人数ににすると3057名、書名数にすると5071件、冊数にすると4905冊になる。入力件数からすると第一年度の平成2年3月15日の56376件の約2.6倍の量となる。
KAKENHI-PROJECT-01410002
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浄土教思想の体系的研究ー文献資料の集成と分析ー
しかし現時点での入力はまだ龍谷大学図書館内の真宗学専攻部門の蔵書に留まり、全体の約1/5割を終えたことになる。浄土教全体に及ぶ著作を目指す本研究にとっては道遠しの感はするが、来年度一杯に真宗学専攻部門を完了を目指す。これによって、体系的研究の大要がつかめることになる.浄土教思想の体系的研究ー文献資料の集成と分析ーの研究をはじめてから3年が経過しようとしている。各研究分担における関係著述の選定及び関係雑誌研究論文の選定とともに、コンピュ-タ入力の作業を精力的に継続している。入力にあたっては、著書部門と雑誌部門とに分けて作業を行なっているが、平成4年3月13の時点で、入力件数は177582件である。このなか書籍関係は117435件、雑誌関係は60147件である。この総入力件数の内訳を著者別、書名別、冊数別に記すと次のようになる。著者別総人数は17585件であり、このなか書籍関係は8472件、雑誌関係は9113件である。また書名総数は13696件であり、このなか書籍関係は13230件、雑誌関係は466件である。さらに総冊数については11920件であり、このなか書籍関係は11397件、雑誌関係は523件となっている。入力件数は第一年度、56376件、第二年度、89948件、第三年度、31258件となるが、第三年度の入力件数が減少したのは、龍谷大学図書館内の真宗学専攻部門の和綴本の判読、整理に手間取ったためと、17万余りのデ-タについて著者名、論文題目名、年代別、キ-ワ-ド別等の視点による研究分析に作業が移行したためである。浄土教全体の研究動向の把握をめざす本研究にとって、現時点での研究進捗の状況は十全であるとは考えられないが、およその浄土教研究の動向は把捉することができるものと考えられる。
KAKENHI-PROJECT-01410002
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01410002
超冷中性子の生成環境下での検出に関する基礎研究
最終年度で約1年にわたり実験を行った。その結果中性子の測定数が日にちの経過とともに緩やかに減少していくことが判明した。この原因は錫球の周辺にある^6Li化合物が長期間の間にバックグランドの中性子と反応した結果錫球周辺部の^6Li化合物の現象によるものと推定される。今後中性子を確実に検出できたと主張できる程度の統計量を得るために、現有の線源よりも1桁強い線源を用いて再度測定を行い、低温環境下での中性子の検出を確立したい。我々の実験結果を当てはめれば、線源の有無の差が40前後になると期待できる。最終年度で約1年にわたり実験を行った。その結果中性子の測定数が日にちの経過とともに緩やかに減少していくことが判明した。この原因は錫球の周辺にある^6Li化合物が長期間の間にバックグランドの中性子と反応した結果錫球周辺部の^6Li化合物の現象によるものと推定される。今後中性子を確実に検出できたと主張できる程度の統計量を得るために、現有の線源よりも1桁強い線源を用いて再度測定を行い、低温環境下での中性子の検出を確立したい。我々の実験結果を当てはめれば、線源の有無の差が40前後になると期待できる。我々の計画に対して超伝導微粒子を用いた粒子検出器の開発研究を行っているパリ大学のGeorge Waysand、リスボン大学のTom Gerardらのレヴュ-を受け議論した結果1.ボロメーター方式は断熱空間が不可欠で、スーパーサーマル法で液体ヘリウム中に生成された超冷中性子の検出には超伝導微粒子方式が適している。多数の粒の表面積を大きくするには小さい粒の方が良いが、一個一個の粒の検出が難しくなるので、粒径をを50ミクロンに決めた。我々も粒を用意しているが、不足すれば彼等からも提供してくれることになった。検出器の形状は当初計画では平板形を考えていたが、信号のS/Nを上げる為には円筒形にすべきと指摘を受け、円筒形に変更した。またスーパーサーマル法で超冷中性子の生成を研究している呉大学の吉城肇、タービン法で超冷中性子の生成を研究している東京大学原子炉実験所の宇津呂雄彦、超冷中性子の検出器の研究をしている東北学院大学の北垣敏男らとの議論及びInternational Workshop on JHF Science(JHF98於KEK)に出席し得た情報等を総合的に考えて以下の実験の方針を決めた。2.中性子との反応物質として6Li化合物、3He(気体、液体)の実験を行う。最初に6Li化合物を試みる。3.中性子の減速材としては液体ヘリウム中に置かれたポリエチレン、重水の実験を行う。当面はポリエチレンを試みる。4.中性子源は252Cfしかなく、その強度が弱い為観察時間で稼ぐしか方法がない。またポリエチレン、重水を減速材としても超冷中性子を生成するのは難しいが、最悪でも冷中性子なら生成できる。冷中性子の検出に成功すれば、超冷中性子の反応断面積は冷中性子より大きいので超冷中性子の検出ができることになる。5.実験に必要な機器、減速材などは用意でき、低温装置関係はほぼ組み上がっている。得られた信号をデジタルオシロスコープ(本年度購入)で受け、パソコンで処理するソフトの開発が出来次第順次実験を行う予定である。初年度に超伝導微粒子を用いた粒子検出器の開発研究を行っているパリ大学のGeorge Waysand、リスボン大学のTom Gerardらのレヴューを受け議論した結果またスーパーサーマル法で超冷中性子の生成を研究している呉大学の吉城肇、タービン法で超冷中性子の生成を研究している京都大学原子炉実験所の宇津呂雄彦、超冷中性子の検出器の研究をしている東北学院大学の北垣敏男らとの議論及びInternationalWorkshop on JHF Science(JHF98於KEK)に出席し得た情報等を総合的に考えた方針に基づいて実験の準備をすすめ、本年度は以下の実験を行った。1.中性子との反応物質として6Li化合物の実験を行う。最初に6Li化合物を試みた。2.中性子の減速材としては液体ヘリウム中に置かれたポリエチレン、重水の実験を行う。今年度はポリエチレンを試みた。3.中性子源は252Cfしかなく、その強度が弱い為観測時間で稼ぐしか方法がない。またポリエチレン、重水を減速材としても超冷中性子を生成するのは難しいが、最悪でも冷中性子なら生成できる。冷中性子の検出に成功すれば、超冷中性子の反応断面積は冷中性子より大きいので超冷中性子の検出が出来ることになる。4.実験に必要な機器、減速材などは用意でき、低温装置関係も組み上がり、得られた信号をデジタルオシロスコープ(初年度購入)で受け、パソコンで処理するソフトの開発が終わり実験を行った。5.実験の結果、中性子源252Cfの有り、無しで有為の信号が得られていない。次年度には中性子の減速材として重水を用いた実験を行う予定で準備を進めている。最終年度で約1年にわたり実験を行った。その結果中性子の測定数が日にちの経過と共に穏やかに減少して行くことが判明した。この原因は錫球の周辺にある^6Li化合物が長期間の間にバックグランドの中性子と反応した結果錫球周辺部の^6Li化合物の減少によるものと推定される。今後中性子を確実に検出できたと主張できる程度の統計量を得る為に、現有の線源よりも1桁強い線源を用いて再度測定を行い、低温環境下での中性子の検出を確立したい。我々の実験結果を当てはめれば、線源の有無の差が40前後になると期待できる。
KAKENHI-PROJECT-09640360
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熱化学変換による水素製造とヒ-トポンプ
水から熱化学分解反応サイクルを用いて水素を製造するプロセス,および同じく熱化学反応によって低温排熱を高温の熱エネルギ-に変換して再利用できるようにするケミカルヒ-トポンプの開発を目指している。主要な成果を以下に列挙する。(1)熱化学分解サイクルとして、カルシウムー臭素ー鉄の化合物から成るUTー3反応を小型実験装置で実証運転を行った。4段の反応を直列に連結して,1つの反応器から出るガスを直接に次の反応器に送る方式で連続的に水素製造運転を行い、13サイクルまで連結運転に成功し、反応物質の安定性が確認された。(2)上記のサイクル工業化には、臭素と酸素が共存する腐食雰囲気下で大型製造設備を作り出せる材料技術の開発を必用とする。ステンレス材料上にチタンとケイ素の炭化物を化学吸着法により付着させて多尸膜をコ-ティングさせることで耐食性を付与することを試みた。腐食雰囲気に繰り返し曝したところ,見事な耐食性を示した。今後、温度変化に対する付着性を検討していく。(3)上記のサイクルにおいて水素の分離は反応生成ガスを冷却すれば臭素や水蒸気が凝縮するので可能である。しかし、熱経済の上から生成ガス排出温度で膜による分離ができることが望ましい。アルミナやジルコニアのセラミック膜による水素の分離が試みられ、分離性能と分離機構の解明が行われた。(4)工場から排出される150°C近傍の熱エネルギ-は利用されることなく捨てられている。ベンゼンの水添反応を用いて,300°Cまで汲み上げて再利用を可能とするヒ-トポンプサイクルが研究された。本反応の工業化に必要な熱交換機能を有する優れた平板上の触媒が開発されて、耐久性も確認された。水から熱化学分解反応サイクルを用いて水素を製造するプロセス,および同じく熱化学反応によって低温排熱を高温の熱エネルギ-に変換して再利用できるようにするケミカルヒ-トポンプの開発を目指している。主要な成果を以下に列挙する。(1)熱化学分解サイクルとして、カルシウムー臭素ー鉄の化合物から成るUTー3反応を小型実験装置で実証運転を行った。4段の反応を直列に連結して,1つの反応器から出るガスを直接に次の反応器に送る方式で連続的に水素製造運転を行い、13サイクルまで連結運転に成功し、反応物質の安定性が確認された。(2)上記のサイクル工業化には、臭素と酸素が共存する腐食雰囲気下で大型製造設備を作り出せる材料技術の開発を必用とする。ステンレス材料上にチタンとケイ素の炭化物を化学吸着法により付着させて多尸膜をコ-ティングさせることで耐食性を付与することを試みた。腐食雰囲気に繰り返し曝したところ,見事な耐食性を示した。今後、温度変化に対する付着性を検討していく。(3)上記のサイクルにおいて水素の分離は反応生成ガスを冷却すれば臭素や水蒸気が凝縮するので可能である。しかし、熱経済の上から生成ガス排出温度で膜による分離ができることが望ましい。アルミナやジルコニアのセラミック膜による水素の分離が試みられ、分離性能と分離機構の解明が行われた。(4)工場から排出される150°C近傍の熱エネルギ-は利用されることなく捨てられている。ベンゼンの水添反応を用いて,300°Cまで汲み上げて再利用を可能とするヒ-トポンプサイクルが研究された。本反応の工業化に必要な熱交換機能を有する優れた平板上の触媒が開発されて、耐久性も確認された。
KAKENHI-PROJECT-02203105
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グリコシル・ホスファチジルイノシトール・アンカー蛋白質の構造と機能
マウスB細胞由来のミエローマ細胞であるNS-1および牛赤血球膜より、GPIアンカー蛋白質の検索を行った。NS-1細胞には少なくとも8種類のGPIアンカー蛋白質の存在を確認した。その内、4種類については新たなGPIアンカー蛋白質である可能性が示された。牛赤血球膜ではアセチルコリンエステラーゼ以外に4種類のGPIアンカー蛋白質の存在の可能性を確認した。これらのGPIアンカー蛋白質はGC-MSによりmyo-イノシトールを同定することにより最終的に確認した。myo-イノシトール以外の異性体であるchiro-イノシトールがGPIアンカー蛋白質の分解産物より同定された。種々のGPIアンカー蛋白質におけるchiro-イノシトールの検出量は、加水分解の条件により異なっていた。6H HCl溶液中では20-60%の異性化が見られ。N2ガス気流中では0.1%以下の異性化しかおこらなかった。ホスファチジルイノシトールやイノシトール1ーリン酸の場合6N塩酸溶液中の加水分解でも異性化はおこらなかった。このことはmyo-イノシトールの6-位にグルコサミン、1-位にリン酸の置換基を持つGPIアンカーにおける加水分解において特異的に異性化が生じる物と考えられる。我々はGPIアンカーの構造解析に、従来から質量分析に用いられているイオン化法に比べ、より高感度で、かつまたソフトなイオン化法であるエレクトロスプレーイオン化とmatrix-assisted laser dessorptioninonization(MALDI)を用いた。GPIアンカーペプチドのmicroheterogeneity及びそれから生じる特異的なフラグメントが同定された。ESI/MS/MSとMALDI/TOF/MSは10pmpl以下の微量のGPIアンカーの構造解析においても有効かつ高感度な方法であることが判った。マウスB細胞由来のミエローマ細胞であるNS-1および牛赤血球膜より、GPIアンカー蛋白質の検索を行った。NS-1細胞には少なくとも8種類のGPIアンカー蛋白質の存在を確認した。その内、4種類については新たなGPIアンカー蛋白質である可能性が示された。牛赤血球膜ではアセチルコリンエステラーゼ以外に4種類のGPIアンカー蛋白質の存在の可能性を確認した。これらのGPIアンカー蛋白質はGC-MSによりmyo-イノシトールを同定することにより最終的に確認した。myo-イノシトール以外の異性体であるchiro-イノシトールがGPIアンカー蛋白質の分解産物より同定された。種々のGPIアンカー蛋白質におけるchiro-イノシトールの検出量は、加水分解の条件により異なっていた。6H HCl溶液中では20-60%の異性化が見られ。N2ガス気流中では0.1%以下の異性化しかおこらなかった。ホスファチジルイノシトールやイノシトール1ーリン酸の場合6N塩酸溶液中の加水分解でも異性化はおこらなかった。このことはmyo-イノシトールの6-位にグルコサミン、1-位にリン酸の置換基を持つGPIアンカーにおける加水分解において特異的に異性化が生じる物と考えられる。我々はGPIアンカーの構造解析に、従来から質量分析に用いられているイオン化法に比べ、より高感度で、かつまたソフトなイオン化法であるエレクトロスプレーイオン化とmatrix-assisted laser dessorptioninonization(MALDI)を用いた。GPIアンカーペプチドのmicroheterogeneity及びそれから生じる特異的なフラグメントが同定された。ESI/MS/MSとMALDI/TOF/MSは10pmpl以下の微量のGPIアンカーの構造解析においても有効かつ高感度な方法であることが判った。牛赤血球膜およびマウスNS-1細胞膜上のグリコシル・ホスファチジルイノシトール(GPl)アンカー蛋白質をHPLCで分離し、各分画をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離た後、ブロッティングによりPVDF膜に移し、各蛋白バンドから諸処理により分解物を溶出させ、ガスクロマトグラフィー・マススペクトロメトリー(GC-MS)によりinositolの検出を行なった。その結果、このmyo-inositolとその構造異性体でであるchiro-inositolが5:1から1:1の比率で検出された。このchiro-inositolは酸分解等の処理条件による異性化により生じた可能性も考えられるため、異性化の生じる条件等についてさらに検討中してゆく予定である。GPlアンカー蛋白質のC末アンカーペプチドの構造解析、特に糖鎖の分岐によるmicroheterogenietyの解析に対してのエレクトロスプレーイオン化マススペクトロメトリー(ESl-MS)とtime of flight(TOF)-MSの利用を検討した。その結果、GPlアンカー糖鎖由来の特異的解裂ピークを同定した。この解裂情報を用いることにより、新たに見出したGPlンカー蛋白質よりC末アンカーペプチドを容易に同定し、MS/MS分析により糖鎖構造を詳しく解析する事が可能となった。同様にESl-MS/MSによりGPlアンカー蛋白質のリン脂質部分の脂肪酸分子種の同定が可能であることが判った。この方法によりGPlアンカー蛋白質やその前駆体に結合するホスファチジルイノシトールの脂肪酸分子種の構造を、アシルであるかアルキルであるのかを含め明らかにして生きたい。マウスB細胞由来のミエローマ細胞であるNS-1および牛赤血球膜より、GPIアンカー蛋白質の検索を行った。NS-1細胞には少なくとも8種類のGPIアンカー蛋白質の存在を確認した。その内、4種類にについては新たなGPIアンカー蛋白質である可能性が示された。
KAKENHI-PROJECT-07672372
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07672372
グリコシル・ホスファチジルイノシトール・アンカー蛋白質の構造と機能
牛赤血球膜ではアセチルコリンエステラーゼ以外に4種類のGPIアンカー蛋白質の存在の可能性を確認した。これらのGPIアンカー蛋白質はGC-MSによりmyo-イノシトールを同定することにより最終的に確認した。myo-イノシトール以外の異性体であるchiro-イノシトールがGPIアンカー蛋白質の分解産物より同定された。種々のGPIアンカー蛋白質におけるchiro-イノシトールの検出量は、加水分解の条件により異なっていた。6H HC1溶液中では20-60%の異性化が見られ。N2ガス気流中では0.1%以下の異性化しかおこらなかった。ホスファチジルイノシトールやイノシトール1ーリン酸の場合6N塩酸溶液中の加水分解でも異性化はおこらなっかた。このことはmyo-イノシトールの6-位にグルコサミン、1-位にリン酸の置換基を持つGPIアンカーにおける加水分解において特異的に異性化が生じる物と考えられる。我々はGPIアンカーの構造解析に、従来から質量分析に用いられているイオン化法に比べ、より高感度で、かつまたソフトなイオン化法であるエレクトロスプレーイオン化とmatrix-assisted laser dessorptioninonization (MALDI)を用いた。GPIアンカーペプチドのmicroheterogeneity及びそれから生じる特異的なフラグメントが同定された。ESI/MS/MSとMALDI/TOF/MSは10pmpl以下の微量のGPIアンカーの構造解析においても有効かつ高感度な方法であることが判った。
KAKENHI-PROJECT-07672372
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周術期の免疫活性と術後痛の関連性に関する研究
オピオイドは免疫抑制作用を有するが、周術期オピオイド使用の術後予後、とくに術後感染や癌の再発、術後生存率への臨床的影響は不明である。周術期免疫と術後感染の関連を食道癌、脊椎手術にて検討した。食道癌手術においては、術前好中球・リンパ球比は術後1週間以内に発症した肺炎と相関した。しかし術後好中球・リンパ球比は術後急性期合併症や癌の再発、予後とは関連性を認めなかった。またフェンタニル、レミフェンタニル、モルヒネ使用量と好中球数、好中球・リンパ球比、術後感染との関連もなかった。食道癌においては術中管理よりむしろ、術前アルブミン値やヘモグロビン値等、術前化学療法、放射線療法の影響、栄養状態と術後合併症の関係が示唆された。一方、脊椎手術においては、術中フェンタニル総使用量や術後フェンタニル使用日数は手術部位感染と関連を示したが、レミフェンタニル使用量は関連を認めなかった。また出血量や輸血量との関連もみられた。脊椎手術患者では術前の低栄養、免疫抑制状態を示唆する所見を認めないことが多かったことからも、術前患者背景の差異が影響しているものと考えられた。オピオイドの免疫抑制作用や予後への影響は、オピオイドの種類や癌の病理、疾患・臓器によって異なることが報告されており、今後、異なる術式や患者背景による相違の検討が必要である。またオピオイドに対するがん細胞、免疫細胞の感受性は、細胞によって異なることが示唆されていることも、今後の課題である。臨床研究の学術発表を概ね達成しており、現在論文投稿中である。近年術後機能回復が免疫シグナル活性と相関していることが指摘されており、前向き研究による免疫細胞のシグナル解析や、術後痛モデルマウスをもちいた術後鎮痛との関連性を検討していく。オピオイドは免疫抑制作用を有するが、周術期オピオイド使用の術後予後、とくに術後感染や癌の再発、術後生存率への臨床的影響は不明である。周術期免疫と術後感染の関連を食道癌、脊椎手術にて検討した。食道癌手術においては、術前好中球・リンパ球比は術後1週間以内に発症した肺炎と相関した。しかし術後好中球・リンパ球比は術後急性期合併症や癌の再発、予後とは関連性を認めなかった。またフェンタニル、レミフェンタニル、モルヒネ使用量と好中球数、好中球・リンパ球比、術後感染との関連もなかった。食道癌においては術中管理よりむしろ、術前アルブミン値やヘモグロビン値等、術前化学療法、放射線療法の影響、栄養状態と術後合併症の関係が示唆された。一方、脊椎手術においては、術中フェンタニル総使用量や術後フェンタニル使用日数は手術部位感染と関連を示したが、レミフェンタニル使用量は関連を認めなかった。また出血量や輸血量との関連もみられた。脊椎手術患者では術前の低栄養、免疫抑制状態を示唆する所見を認めないことが多かったことからも、術前患者背景の差異が影響しているものと考えられた。オピオイドの免疫抑制作用や予後への影響は、オピオイドの種類や癌の病理、疾患・臓器によって異なることが報告されており、今後、異なる術式や患者背景による相違の検討が必要である。またオピオイドに対するがん細胞、免疫細胞の感受性は、細胞によって異なることが示唆されていることも、今後の課題である。臨床研究の学術発表を概ね達成しており、現在論文投稿中である。近年術後機能回復が免疫シグナル活性と相関していることが指摘されており、前向き研究による免疫細胞のシグナル解析や、術後痛モデルマウスをもちいた術後鎮痛との関連性を検討していく。
KAKENHI-PROJECT-18K08819
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回転セリウム微小血管造影装置での心筋再生医療効果判定
回転セリウム陽極微小血管造影装置を開発した。イヌ(N=2)の冠動脈に造影剤を注入し、摘出心を本装置で造影したところ、左前下行枝から心筋を貫通する、直径50μmまでの微小な分枝を可視化した。次にイヌ(N=5)の自己C-kit陽性心筋幹細胞を作製し、心筋梗塞領域の境界部へ注入、摘出心を造影した。細胞非注入群では細胞の代わりに外液を注入した(N=5)。細胞非注入群では虚血巣に無血管野が認められた。一方細胞注入群では、心尖部に蛇行し拡張した血管構造が可視化され、心筋幹細胞により出現した新生血管であると考えられた。本装置は、心筋幹細胞治療後の効果判定に役立つと考えられる。回転セリウム陽極微小血管造影装置を開発した。イヌ(N=2)の冠動脈に造影剤を注入し、摘出心を本装置で造影したところ、左前下行枝から心筋を貫通する、直径50μmまでの微小な分枝を可視化した。次にイヌ(N=5)の自己C-kit陽性心筋幹細胞を作製し、心筋梗塞領域の境界部へ注入、摘出心を造影した。細胞非注入群では細胞の代わりに外液を注入した(N=5)。細胞非注入群では虚血巣に無血管野が認められた。一方細胞注入群では、心尖部に蛇行し拡張した血管構造が可視化され、心筋幹細胞により出現した新生血管であると考えられた。本装置は、心筋幹細胞治療後の効果判定に役立つと考えられる。再生医療の技術向上は顕著であるが、効果判定のための装置はいまだ十分ではない。我々が開発した、血管径50μmの微小血管を可視化できる回転セリウム陽極微小血管造影装置を用い、再生治療の効果判定法に応用することを目標とした。再生治療法は、C-kit陽性心臓幹細胞を用いた。まずGroup1としてビーグル犬で心筋梗塞を作成し、微小血管造影装置で造影した(n=5)。心尖部周囲の冠動脈と徐々に膨張する細動脈を糸で結紮し、さらに1時間置くことで完全に心筋梗塞が作成できることが肉眼所見、心電図所見、カテーテルの所見から確認でき、微小血管造影装置でも無血管野が認められた。また、Group3を自己のC-kit陽性心臓幹細胞投与による治療群、Group2を対称群とし、それぞれビーグル犬5匹ずつ用い、実験を行った。全例でヒトとほぼ同様の試薬を用い、C-kit陽性心臓幹細胞の培養が可能であった。ビーグル犬の細胞はヒトより小型で、成長が著しく早かった。両Group合わせて10匹で心筋梗塞を作成したが、術中の心室細動によりGroup2で3匹、Group3で2匹を失った。生存したイヌでは予定通り細胞注入(Group3)もしくは外液を注入(Group2)した。2週間後に心臓を取出し、微小血管造影装置で造影しGroup2とGroup3を比較した結果、Group3のみで無血管領域とした心尖部に新しい血管構造が確認された。血管は蛇行し、既存の血管より太かった。Group2では血管構造は認められず、心尖部は無血管野であった。細胞投与したGroup3にのみ、虚血巣に既存の血管形態と異なる蛇行した血管が認められ、C-kit陽性心臓幹細胞による新生血管の可視化と考えられた。今後はGroup2,3の実験を継続し、新しい血管構造が新生血管であることを確認し、さらに血管の統計学的処理を行う予定である。回転セリウム陽極微小血管造影装置による新生血管可視化を検討した。Group1;ビーグル犬(N=4)を用いた。全身麻酔下に開胸し、4-0プローリンを用いて冠動脈の左前下行枝末梢側と、心尖部を囲むような冠動脈分枝を結紮し、心筋梗塞を作成。摘出心の冠動脈に濃縮し濾過されたバリウムを注入し、回転セリウム陽極装置で撮影した。Group1結果;初期では左前下行枝と心尖部周囲の分枝の結紮が甘く、側副血行路が発達した。そのため、入念に結紮をすることで心尖部を中心とした心筋梗塞ができ、無血管野を一定して得ることができた。急性期であり、結紮した血管は途絶し側副血行路は認めなかった。Group3(細胞注入群);ビーグル犬(N=15)を用いた。右心耳を切除し細胞を分離、培養、C-kit陽性心筋幹細胞を作製した。2週間後に開胸しGroup1と同様に心筋梗塞を作成。培養された自己C-kit陽性心臓幹細胞を心筋梗塞領域の境界部へ注入し閉胸。全身管理の後、2週間目で心臓を摘出。摘出心をGroup1と同様に撮影した。Group2(細胞非注入群);ビーグル犬(N=15)を用いた。Group3と同様であるが、自己C-kit陽性心臓幹細胞は注入せず、外液を注入。Group2,3結果;Group2では、心尖部にて無血管野が認められた。一方、Group3では心尖部に蛇行し、拡張した血管構造が可視化された。これらの所見は、Group内でほぼ共通して認められる所見であった。このGroup3で認められた蛇行血管は、C-kit陽性心筋幹細胞により出現した新生血管であると考えられた。
KAKENHI-PROJECT-25861233
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25861233
回転セリウム微小血管造影装置での心筋再生医療効果判定
また、心筋梗塞作成前後、細胞注入前で左室造影を施行し壁運動を比較した。心筋梗塞後と細胞注入前での壁運動は、両Groupともにさほど変化なかった。これは細胞注入後の変化を、壁運動の改善よりも早期に新生血管の可視化で確認できる可能性を示唆した。微小血管造影法医師として臨床医学の実務にも並行して携わっている。そのため患者数や手術の件数とも関連し、研究にあたる時間の確保が困難であった期間があった。当該年度は研究の準備として、研究ミーティングなどの時間をもち、また今までの研究成果報告のため臨床での実務の間に学会発表などを積極的に行った。次年度は臨床医療を最小限とし、研究を第一と考え実験を行う。実験の遂行が可能となるよう、今後のスケジュールを組んでいる。当該年度では実験にかかる経費そのものが少なかった。また、実験にかける時間が計画段階より少なくなったことが理由である。次年度はイヌを購入し、Group2,3の実験を行う。イヌの購入と飼育費、維持費などで、予算の大部分が消耗される。それ以外の予算では、実験のための試薬や実験器具費の購入を予定している。
KAKENHI-PROJECT-25861233
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25861233
スピロ共役した不対電子間相互作用を活用した高次元スピンネットワークの構築
有機物からなる強磁性体の開発は、機能材料の出現につながる重要な研究課題である。空間的に分子の広がりを持つ開殻分子を設計するために、スピロ共役型分子に着目し、基礎的知見を整理することを目的とした。具体的には、放射状に広がった系の中心構造としてスピロ共役を介した軌道間相互作用に基づき強磁性的なスピン整列が期待されるビアクリジン構造を、また複数のフェニル環を有する窒素中心型安定有機ラジカルを選択した。これらを効率よく合成するために、ラジカル状態で分子を化学修飾する方法を開拓した。さらにヘテロ原子を含むスピン原子を介した軌道間相互作用により、強磁性的にスピン整列することを計算化学的に明らかにした。有機物のみからなる強磁性体の開発は、全く新しい機能材料の出現にもつながる基礎的かつ重要な研究課題である。強磁性などの磁気秩序はバルクな特性であるので、このような電子物性を有する有機化合物または有機固体を設計するために、分子内および分子間においてスピン間で磁気的な相互作用が伝播するように精密な分子設計と結晶設計を実現する必要がある。本研究では、π電子系が互いに直角の位置関係で接近したスピロ共役系に着目し、これをコア分子とするデンドリマー分子を合成し、空間的に広がったπ共役系同士の接近を利用して分子間においても強磁性的な相互作用を有するスピンネットワークの構築し、より高性能なバルク強磁性体を実現するための方法論を確立することを目的としている。平成25年度においては、本研究の目的に適した分岐ユニットなりうる化学構造を有するトリフェニルフェルダジルおよび類似骨格を有するジフェニルベンゾトリアジニルなど窒素中心型の安定有機ラジカルを対象に有機金属触媒を用いて化学修飾が可能であるかを検討し、Pd触媒、ホウ素試薬ならびに溶媒などの反応条件を最適化することに成功した。さらに、コア分子となるジヒドロアクリジンN-オキシル型スピロ共役バイラジカル分子の合成法ならびに分光学的性質及び磁気的性質を詳細に議論し、スピン中心となる原子サイズが、分子構造ならびに分子間の磁気的相互作用に大きく影響することを明らかにした。金属種を含まない軽元素のみからなる磁性体の開発は、全く新しい機能材料の出現にもつながる基礎的かつ重要な研究課題である。強磁性などの磁気秩序はバルクな電子物性であるので、磁性有機固体を合理的に設計するためには、分子内および分子間において不対電子のスピン間に磁気的な相互作用が伝播するように精密な分子設計と結晶設計を両立させる必要がある。本研究課題では、π電子系が互いに軌道が直交するように接近することが可能なスピロ共役系に着目し、これをコア分子とするデンドリマー状分子を合成し、空間的に広がったπ共役系同士の接近を利用した高スピンネットワークの構築を目指している。平成26年度においては、(1)コア分子となりスピロバイラジカルの周辺置換基に関する知見を整理すること、(2)分岐ユニットとなる窒素中心ラジカルの化学修飾法の確立を目指した。(1)の項目については、様々な置換基を導入したジヒドロアクリジンN-オキシル型スピロ共役バイラジカル分子を合成し、分光学的性質、電気化学的性質ならびに、不対電子間の磁気的性質を明らかにした。さらに計算化学的手法を取り入れてスピン中心を介した磁気的相互作用に関する知見を深めることができた。(2)の項目に関しては、ジフェニルベンゾトリアジニル、トリフェニルフェルダジルの化学修飾法ならびに有機金属反応を利用した分岐ユニットのオリゴマー化に道筋を立てるとともに、これらラジカルの集積特性について整理し構造と磁性の相関を明らかにすることができた。有機物のみからなる分子磁性性物質の開発は、新しい機能材料の出現にもつながる基礎的かつ重要な研究課題である。強磁性などの磁気モーメントの秩序整列はバルクな電子物性であるので、このような特性を示す有機化合物または有機固体を設計するために、分子内および分子間においてスピン間で磁気的な相互作用が伝播するように精密な分子設計と結晶設計を実現する必要がある。本研究では、π電子系が互いに直角の位置関係で接近したスピロ共役系に着目し、これをコア分子とするデンドリマー分子を合成し、空間的に広がったπ共役系同士の接近を利用して分子間においても強磁性的な相互作用を有するスピンネットワークの構築し、より高性能なバルク強磁性体を実現するための方法論を確立することを目的としている。平成27年度においては、(1)コア分子となるジヒドロアクリジンを基本骨格とするニトロキシドラジカルおよびスピロビラジカルの簡便な合成法の開拓すること、(2)生成ラジカルの電子状態に及ぼす導入置換基の効果の評価すること、(3)分岐ユニットとなるフェルダジルおよびトリアジニルラジカル誘導体の合成法を確立すること、を目指した。(1)、(2)の項目に関しては、ケイ素、ゲルマニウムを含む誘導体を簡便に合成する方法を明らかにすることができた。生成したラジカル種の分光学的性質、電気化学的性質ならびに、不対電子間の磁気的性質を定量的に評価した。さらに計算化学的手法を取り入れてスピン中心を介した磁気的相互作用に関する知見を整理することができた(3)の項目に関しては、6-オキソフェルダジルの化学修飾法ならびに有機金属反応を利用した分岐ユニットの基本骨格となるバイラジカル、トリラジカル分子の合成法を確立し、構造と磁性の相関を明らかにすることができた。有機物からなる強磁性体の開発は、機能材料の出現につながる重要な研究課題である。
KAKENHI-PROJECT-25620066
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スピロ共役した不対電子間相互作用を活用した高次元スピンネットワークの構築
空間的に分子の広がりを持つ開殻分子を設計するために、スピロ共役型分子に着目し、基礎的知見を整理することを目的とした。具体的には、放射状に広がった系の中心構造としてスピロ共役を介した軌道間相互作用に基づき強磁性的なスピン整列が期待されるビアクリジン構造を、また複数のフェニル環を有する窒素中心型安定有機ラジカルを選択した。これらを効率よく合成するために、ラジカル状態で分子を化学修飾する方法を開拓した。さらにヘテロ原子を含むスピン原子を介した軌道間相互作用により、強磁性的にスピン整列することを計算化学的に明らかにした。平成26年度においては、コア分子となるスピロ共役型分子の構築法を確立することができた。また、平成25年度に引き続き有機金属反応を活用したラジカル分子の化学修飾法に関する知見をより詳細に検討することが可能となった。以上より、平成26年度は、概ね順調に研究が進行していると判断した。有機機能材料化学スピロ共役分子の効率的ラジカル発生法に関する実験条件の最適化を図るとともに、分岐型ラジカル分子の設計と合成を展開する。多面的な機能物性評価からスピン間相互作用についての知見を明らかにしている。平成25年度においては、有機金属試薬を使い窒素中心ラジカルを保護基を用いることなく化学修飾することに成功し、効率よく基底多重項分子を構築できる可能性が出てきた。一方コア分子となるスピロ共役型バイラジカルでは、前駆体からのラジカル発生において周辺置換基の影響が多きいことが明らかとなり、酸化条件、前駆骨格のさらなる検討が必要であることが判明した。以上より、平成25年度は、おおむね順調に研究が進展していると判断した。2月下旬に液体ヘリウムを用いた低温ESR測定を計画していたが、測定に必要な試料量を確保できず。27年度に実施したため。平成25年度に引き続き、平成26年度においてもスピロ共役分子の効率的ラジカル発生方法の確立を目指す。さらにデンドロン部位を担うオリゴフェルダジルの合成研究と磁気測定を行い、スピン間相互作用についての物理化学的な知見の蓄積を計る予定である。試料の合成が完了次第、液体ヘリウムを購入し、低温ESR測定を実施する。
KAKENHI-PROJECT-25620066
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捕食性天敵を誘引する花香成分の探索
1.花の匂いの化学分析農地周辺に咲く花を採取して実験室に持ち帰り、水差しの状態でセパラブルフラスコ内のヘッドスペースに放出される花香成分について、Tenaxを充填した吸着管を用いてダイナミック捕集した。吸着管に捕集した成分は、加熱脱着装置を用いてガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS)へ導入することで分析した。野外において傷を与えることなく花に袋をかけて成分を捕集することも検討したが、日中に捕集する場合、植物によっては袋内での結露が多く、これによって成分の捕集が妨げられることから、採取した花から室内条件下で成分を捕集することとした。得られた花香成分のプロファイルは実に多様であり、引き続きGC-MS分析を進めてデータを蓄積する必要がある。2.花に対する捕食性天敵昆虫の行動試験捕食性天敵昆虫のモデルとしてツヤヒメハナカメムシを実験材料に用い、ガラス温室内で操作実験を行った。コマツナの花を添えた健全株と花を添えない対照の健全株とを選択箱内に設置し、そこへ導入して両者に対する選好性を調べたところ、ツヤヒメハナカメムシは花を添えた健全株により多く滞在する傾向があることを確認した。本件について、学会で成果発表した。また、ヒメカメノコテントウでも同様の傾向が認められた。さらに、花を花香のみに置き換えた場合でも、それに対して選好性を示すのかどうかについて検証を試みた。コマツナ花香の代表的な成分の標準品を入手し、トリエチルシトレイトの溶液として健全株に添え、上と同様の行動試験を行ったところ、ヒメカメノコテントウは花香成分に対して選好性を示す傾向が認められた。花の匂いの化学分析について、広い植物種で結果が得られる捕集法と分析法を定め、データが蓄積されつつある。また、行動試験において、花の匂いに対して捕食性天敵昆虫が選好性を示す傾向が認められている。以上のことから、おおむね当初の計画通り、順調に研究が進捗している。当初の計画通り、引き続き、花の匂いのGC-MS分析を行い、様々な花の香気成分プロファイルのデータを蓄積する。行動試験の結果と照らし合わせながら、有望な天敵誘引成分の候補をリストアップし、効果的な誘引剤の開発を目指す。また、花の匂いが害虫に与える影響についても検討する。当初の計画では、初年度に予定していた海外の国際学会での成果発表を翌年度以降に行う。また、翌年度以降に必要に応じて器具類を補充する。これらにより、助成金を使用する。1.花の匂いの化学分析農地周辺に咲く花を採取して実験室に持ち帰り、水差しの状態でセパラブルフラスコ内のヘッドスペースに放出される花香成分について、Tenaxを充填した吸着管を用いてダイナミック捕集した。吸着管に捕集した成分は、加熱脱着装置を用いてガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS)へ導入することで分析した。野外において傷を与えることなく花に袋をかけて成分を捕集することも検討したが、日中に捕集する場合、植物によっては袋内での結露が多く、これによって成分の捕集が妨げられることから、採取した花から室内条件下で成分を捕集することとした。得られた花香成分のプロファイルは実に多様であり、引き続きGC-MS分析を進めてデータを蓄積する必要がある。2.花に対する捕食性天敵昆虫の行動試験捕食性天敵昆虫のモデルとしてツヤヒメハナカメムシを実験材料に用い、ガラス温室内で操作実験を行った。コマツナの花を添えた健全株と花を添えない対照の健全株とを選択箱内に設置し、そこへ導入して両者に対する選好性を調べたところ、ツヤヒメハナカメムシは花を添えた健全株により多く滞在する傾向があることを確認した。本件について、学会で成果発表した。また、ヒメカメノコテントウでも同様の傾向が認められた。さらに、花を花香のみに置き換えた場合でも、それに対して選好性を示すのかどうかについて検証を試みた。コマツナ花香の代表的な成分の標準品を入手し、トリエチルシトレイトの溶液として健全株に添え、上と同様の行動試験を行ったところ、ヒメカメノコテントウは花香成分に対して選好性を示す傾向が認められた。花の匂いの化学分析について、広い植物種で結果が得られる捕集法と分析法を定め、データが蓄積されつつある。また、行動試験において、花の匂いに対して捕食性天敵昆虫が選好性を示す傾向が認められている。以上のことから、おおむね当初の計画通り、順調に研究が進捗している。当初の計画通り、引き続き、花の匂いのGC-MS分析を行い、様々な花の香気成分プロファイルのデータを蓄積する。行動試験の結果と照らし合わせながら、有望な天敵誘引成分の候補をリストアップし、効果的な誘引剤の開発を目指す。また、花の匂いが害虫に与える影響についても検討する。当初の計画では、初年度に海外の国際学会での成果発表を予定していたが、発表するには十分な成果が得られておらず、予定を見送った。また、新たに分析等で必要となる捕集管等の購入を予定していたが、本年度は既に保有している器具類で賄えたため、翌年度以降に必要に応じて補充することととした。これらのため、次年度使用額が生じた。当初の計画では、初年度に予定していた海外の国際学会での成果発表を翌年度以降に行う。また、翌年度以降に必要に応じて器具類を補充する。これらにより、助成金を使用する。
KAKENHI-PROJECT-16K07631
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肺大細胞神経内泌分癌の翻訳後修飾プロテオミクス研究
研究目的:高悪性度の肺神経内分泌癌(小細胞癌、大細胞神経内分泌癌)は、転写因子hASH1(human achaete-scute homologue1)に制御され、神経内分泌分化を示すことが知られている。今回、ヒト肺腺癌培養細胞株A549細胞にhASH1を導入した細胞株を樹立し、コントロールmock導入A549細胞と比較した結果、神経内分泌分化、形態的未熟性、接着能の低下、細胞増殖能の亢進などの表現型が見られた。本研究では、これらの表現型を司る機能蛋白質を明らかにするために、このhASH1導入細胞株を用いた核内蛋白質の翻訳後修飾プロテオミクス解析を行った。研究方法:hASH1結合タンパク質を同定するために、試料には、HA-tagを標識したhASH1導入A549細胞とコントロールmock導入A549細胞から抽出した核蛋白質を用いた。免疫沈降によりHA-tag結合核蛋白質を精製し、イオントラップ型の質量分析型を用いてhASH1結合蛋白質の同定を試みた。研究成果:hASH1特異的結合蛋白質を103分子、mock特異的結合蛋白質を82分子、共通の結合蛋白質を73分子同定した。同定したhASH1特異的結合蛋白質103分子の中には、リン酸化蛋白質も存在していた。この後、hASH1特異的結合蛋白質103分子について、神経内分泌分化を有する特定の機能蛋白質を絞り込むために、高悪性度の神経内分泌肺癌と非神経内分泌肺癌の培養株からmRNAの発現解析を行った。この中からhASH1特異的に結合している蛋白質で且つ高悪性度の肺神経内分泌癌細胞株にのみ発現の高い分子を、hASH1-binding protein2, 10として選別した。この2つの候補分子について、複数の肺癌術後臨床検体を用いて免疫染色を行った結果、肺神経内分泌癌において強い発現が認められた。今後、特にこの2分子について分子生物学的、生化学的機能解析を進める予定である。研究目的:高悪性度の肺神経内分泌癌(小細胞癌、大細胞神経内分泌癌)は、転写因子hASH1(human achaete-scute homologue1)に制御され、神経内分泌分化を示すことが知られている。今回、ヒト肺腺癌培養細胞株A549細胞にhASH1を導入した細胞株を樹立し、コントロールmock導入A549細胞と比較した結果、神経内分泌分化、形態的未熟性、接着能の低下、細胞増殖能の亢進などの表現型が見られた。本研究では、これらの表現型を司る機能蛋白質を明らかにするために、このhASH1導入細胞株を用いた核内蛋白質の翻訳後修飾プロテオミクス解析を行った。研究方法:hASH1結合タンパク質を同定するために、試料には、HA-tagを標識したhASH1導入A549細胞とコントロールmock導入A549細胞から抽出した核蛋白質を用いた。免疫沈降によりHA-tag結合核蛋白質を精製し、イオントラップ型の質量分析型を用いてhASH1結合蛋白質の同定を試みた。研究成果:hASH1特異的結合蛋白質を103分子、mock特異的結合蛋白質を82分子、共通の結合蛋白質を73分子同定した。同定したhASH1特異的結合蛋白質103分子の中には、リン酸化蛋白質も存在していた。この後、hASH1特異的結合蛋白質103分子について、神経内分泌分化を有する特定の機能蛋白質を絞り込むために、高悪性度の神経内分泌肺癌と非神経内分泌肺癌の培養株からmRNAの発現解析を行った。この中からhASH1特異的に結合している蛋白質で且つ高悪性度の肺神経内分泌癌細胞株にのみ発現の高い分子を、hASH1-binding protein2, 10として選別した。この2つの候補分子について、複数の肺癌術後臨床検体を用いて免疫染色を行った結果、肺神経内分泌癌において強い発現が認められた。今後、特にこの2分子について分子生物学的、生化学的機能解析を進める予定である。
KAKENHI-PROJECT-24931014
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24931014
ソフトウェア発展方式の研究
阿草は、既存ソースプログラムを解析しその結果を蓄積するために、細粒度のリポジトリを開発した。CASEツール作成者は、このリポジトリを使うことにより、構文解析や依存解析などのモジュールを作成する手間を省くことができる。ソースプログラムの解析によりライブラリの典型的な利用パターンを発見した。片山は、要求仕様変更とプログラム変更の関係を代数束により形式化し、ソフトウェア発展関係の理論的基礎を与えた。ソフトウェアの段階的詳細化において各段階でプログラムテストを可能とする方式として、抽象実行に基づくソフトウェア構成法を開発した。また、オブジェクト指向開発法の形式化を試み、分析モデルの統合と分析モデルの検証法を与えた。落水は、近年のソフトウェア開発は、分散環境における共同作業であることに注目し、このような環境下でのソフトウェア開発支援のために、開発状況を保持する情報リポジトリを用いて漸進的に情報の矛盾や不確実さの解消を行うモデルを提案し、それに基づく支援環境を構築した。中田は、スライディングウィンドウを持つ計算機の命令レベルの並列化のために、ループのソフトウェアパイプライニングのレジスタ割付方式としてスパイラルグラフを提案した。また、コメントの処理などに必要とされる字句解析器の最短一致法を開発した。佐伯は、再利用プロセスの形式化をユースケースのパターン化とその構造変換規則として行った。分析パターンや設計パターンの構造をパターン化し、必要に応じてホットスポットを埋める手法を提案した。また、ソフトウェアアーキテクチャをカラーペトリネットで形式化し、非機能要求の検証を可能とした。阿草は、既存ソースプログラムを解析しその結果を蓄積するために、細粒度のリポジトリを開発した。CASEツール作成者は、このリポジトリを使うことにより、構文解析や依存解析などのモジュールを作成する手間を省くことができる。ソースプログラムの解析によりライブラリの典型的な利用パターンを発見した。片山は、要求仕様変更とプログラム変更の関係を代数束により形式化し、ソフトウェア発展関係の理論的基礎を与えた。ソフトウェアの段階的詳細化において各段階でプログラムテストを可能とする方式として、抽象実行に基づくソフトウェア構成法を開発した。また、オブジェクト指向開発法の形式化を試み、分析モデルの統合と分析モデルの検証法を与えた。落水は、近年のソフトウェア開発は、分散環境における共同作業であることに注目し、このような環境下でのソフトウェア開発支援のために、開発状況を保持する情報リポジトリを用いて漸進的に情報の矛盾や不確実さの解消を行うモデルを提案し、それに基づく支援環境を構築した。中田は、スライディングウィンドウを持つ計算機の命令レベルの並列化のために、ループのソフトウェアパイプライニングのレジスタ割付方式としてスパイラルグラフを提案した。また、コメントの処理などに必要とされる字句解析器の最短一致法を開発した。佐伯は、再利用プロセスの形式化をユースケースのパターン化とその構造変換規則として行った。分析パターンや設計パターンの構造をパターン化し、必要に応じてホットスポットを埋める手法を提案した。また、ソフトウェアアーキテクチャをカラーペトリネットで形式化し、非機能要求の検証を可能とした。ソフトウェア発展方式の研究に関して次のような研究を行い、所期の研究成果を得た。(1)理解性の高い構造的仕様化技法の研究(担当:阿草清滋)世の中に流通している大量の既存プログラムから,プログラム・パターンを獲得するための手法,およびその実現方法について研究を行った.また,獲得したプログラムパターンを用いたソースプログラムをチェッカを実現した.(2)仕様,設計,プログラムの対応関係の記述法および対応関係の維持メカニズムの研究(担当:中田育男)ソフトウェアを状況の変化に応じて発展させるためにコンパイラの支援は不可欠である.その一例として,スライドウインドウ機構を持ったCPUに対するレジスタ割付け方式を提案し,その見通し良い形式化を行った.(3)仕様の漸増的無矛盾性の検証とその波及解析(担当:片山卓也)プログラムの詳細化はそれが扱うデータの具体化に対応して行われる点に着目して,中間段階のプログラムに対応しても,それに対応した具象度のデータを用いて抽象実行可能な開発方法論に関する研究を行った.(4)漸増的ソフトウェア設計・実現法の研究(担当:落水浩一郎)共同作業においてさけられない,作業者間の合意事項や中間生成物の内容認識に関するズレを調整する作業を支援するために,上記問題の理論的分析,分散開発のためのソフトウェアプロセスモデルに関する研究を行った.(5)構造的発展に適したソフトウェアやプログラムの構造の研究(担当:佐伯元司)フレームワーク中の部品の結合変更,追加,部品の安全なカスタマイズを可能とすることをめざして,機能変更や拡張がフレームワークや部品に及ぼす変更をパターン化するための形式化,モデル化に関する研究を行った.ソフトウェア発展方式の研究に関して次のような研究を行い、所期の研究成果を得た。[1]理解性の高い構造的仕様化技法の研究(担当:阿草清滋)本年度は、プログラムはライブラリ関数の組合せによって構成されるとの立場から、プログラムを再利用するための適切な粒度の表現モデルとして、関数呼び出し依存グラフを提案し、その応用としてプログラミングナビゲーションシステムに関する研究を行った。[2]仕様、設計、プログラムの対応関係の記述法および対応関係の維持メカニズムの研究(担当:中田育男)本年度は、並列計算機を意識せずに書かれたプログラムを並列計算機用に変換する場合に必要になる技術の1つとして、配列要素の各計算機への再分散を効率良く行なう方式に関する研究を行った。[3]仕様の漸増的無矛盾性の検証とその波及解析(担当:片山卓也)
KAKENHI-PROJECT-09245105
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09245105
ソフトウェア発展方式の研究
本年度は、(1)ソフトウェア発展の代数的束にもとづく原理、(2)抽象実行にもとづくリアクティブシステムの発展方式、(3)オブジェクト指向方法論の形式化、(4)耐故障ソフトウェアの構成法に関する研究を行なった。[4]漸増的ソフトウェア設計・実現法の研究(担当:落水浩一郎)本年度は、ソフトウェア分散共同開発にともなって発生する中間生成物間の矛盾を漸増的に補強するための基本概念を確立しモデルを精密化した。またその主要機能の一つである未来版管理機構についてプロトタイプを完成した。[5]構造的発展に適したソフトウェアやプログラムの構造の研究(担当:佐伯元司)本年度は、要求獲得からアーキテクチャ設計までを、過去の資産を活用して開発するプロセスに関して、過去の資産(要求仕様や設計仕様、アーキテクチャ記述、設計法)のパターン化、パターン化した資産の形式的な記述、パターンを再利用する際の適合プロセスのモデル化の研究を行った。以下の研究を行い,所期の成果を得た.[1]ソフトウェア発展のための解析データの収集とその応用(阿草清滋)本年度は,既存のソフトウェアを解析して,変更の必要な場所を同定するための解析ツールを開発し,UNIXシステソースプログラムを対象にプログラム発展を統計的に解析した.[2]ソフトウェア発展のためのコンパイラの研究(中田育男)本年度は,分散メモリ型並列計算機のためのコンパイラの研究を進め,データ分散のために線形分散法を開発し,再分散のための転送回避のための転送順序計算アルゴリズムを示した.[3]ソフトウェア発展方式の研究(片山卓也)本年度は,要求仕様変更とプログラム変更の関係を代数束により形式化し,ソフトウェア発展関係の理論的基礎を与えた.また,抽象実行に基づくソフトウェア構成法を開発した.[4]ネットワークを介した共同作業の支援法(落水浩一郎)本年度は,分散環境のソフトウェア開発支援のための,開発状況を保持する情報リポジトリを用いて漸進的に情報の矛盾や不確実さの解消を行うモデルの提案とそれに基づく支援環境を構築した.[5]構造的発展に適したソフトウェアやプログラムの構造(佐伯元司)本年度は,再利用プロセスの形式化をユースケースのパターン化とその構造変換規則として行い,分析パターンや設計パターンの構造をパターン化した.また,ホットスポットを埋める操作により特定の問題を解決できることを示した.[6]ソフトウェアクォークモテルに基づく発展パターンの発見と発展支援(鯵坂恒夫)本年度は,さまざまな抽象度レベルで現れるソフトウェア構成要素を統一的に扱うためのソフトウェアクォークモデルを提案しこのモデルを用いてソフトウェアの変更容易性や波及効果の大きさなどの性質を定義した.
KAKENHI-PROJECT-09245105
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09245105
祖父母教育に向けた孫育て手帳の開発と評価
本研究は祖父母教育の一環として、孫育てに関する基礎的知識を盛りこんだ「孫育て手帳」を開発し、その内容と活用の評価を行うものである。孫育て手帳の作成にあたり、祖父母を対象としたニーズ調査を行った。その結果、約9割の祖父母が孫育て手帳の活用を希望しており、特に乳幼児期の安全に関する内容についてニーズが高かった。ニーズ調査の結果と、より孫育てをイメージ化しやすいように、育児に携わっている助産師や子育て中の母親の意見を参考にしながら、妊娠期から幼児期に関する知識を盛り込んだ孫育て手帳の素案を作成した。初孫を出産予定の祖父母に孫育て手帳の素案を配布し、手帳の内容および読みやすさやデザイン等について質問紙調査にて意見を収集した。意見をもとに、加筆および修正を行い、約70ページにわたる手帳を完成させた。完成した手帳を活用した祖父母からは、昔と現代の育児の違いを知ることができ、子どもの母親と一緒に手帳を読むことで育児についての知識を共有することができた、といった肯定的な意見が得られた。今後、孫育て手帳の活用を広めていくなかで、さらなる内容の精査を行い、より祖父母や子どもの両親のニーズに合った手帳にしていきたいと考える。本研究は祖父母教育の一環として、孫育てに関する基礎的知識を盛りこんだ「孫育て手帳」を開発し、その内容と活用の評価を行うものである。孫育て手帳の作成にあたり、祖父母を対象としたニーズ調査を行った。その結果、約9割の祖父母が孫育て手帳の活用を希望しており、特に乳幼児期の安全に関する内容についてニーズが高かった。ニーズ調査の結果と、より孫育てをイメージ化しやすいように、育児に携わっている助産師や子育て中の母親の意見を参考にしながら、妊娠期から幼児期に関する知識を盛り込んだ孫育て手帳の素案を作成した。初孫を出産予定の祖父母に孫育て手帳の素案を配布し、手帳の内容および読みやすさやデザイン等について質問紙調査にて意見を収集した。意見をもとに、加筆および修正を行い、約70ページにわたる手帳を完成させた。完成した手帳を活用した祖父母からは、昔と現代の育児の違いを知ることができ、子どもの母親と一緒に手帳を読むことで育児についての知識を共有することができた、といった肯定的な意見が得られた。今後、孫育て手帳の活用を広めていくなかで、さらなる内容の精査を行い、より祖父母や子どもの両親のニーズに合った手帳にしていきたいと考える。【本研究の意義】本研究では、育児に関する知識を盛り込んだ孫育て手帳を開発していく。祖父母が孫育てを担っていくにあたり、手帳を活用していくことで祖父母の不安の解消を図るとともに、現代の育児に関する知識について、子どもの母親と祖父母が共通認識のもと、孫育てをしていくことができる。【今年度の研究内容】岩手県内の産婦人科医院あるいは保健センター、各2施設に健診の目的で来訪した母親に対して、本調査は孫育て手帳の開発について祖父母のニーズを把握することを目的としており、身近に祖父母が住んでいる場合には質問紙を渡して頂きたい旨、文書を用いて個別に行った。研究協力はあくまでも任意であり、質問紙に切手を添付した封筒をつけ、郵送をもって同意を得ることとした。質問紙の内容は、孫育てに関する知識について現存する母子手帳の内容をもとにし、孫育て手帳の利用希望度等を加え、独自に作成した573部配布し、216名から回答が得られ、回答率は37.7%であった。孫育て手帳の利用希望者は188名(87%)と非常に高く、手帳に盛り込んでほしい内容としては"子どもの注意したい身体の症状"が201名(93%)ともっとも多く、次いで"乳幼児突然死症候群の予防"、"乳幼児の安全"であつた。乳幼児期の知識に関する希望が多く、妊娠期の知識については全体として少なかった。就学前の孫がいる祖父母は159名(73.6%)と大半を占めていたが、孫と同居している者は53名(24.5%)と少ない結果であった。孫育てにあたり、事前に育児に関する学習をしていた祖父母は31名(14.4%)と少なく、その中で子どもの母親と育児について考え方の相違があった者は80名(37%)であった。次年度は今回の結果をさらに精査し、孫育て手帳の素案を作成、評価を行っていく。本研究は、孫育てに関わるすべての祖父母に、祖父母教育の一環として、妊娠中から幼児期までの基礎的知識と、祖父母の役割について盛り込んだ『孫育て手帳』を開発することを目的とする。昨年度実施した、孫育て手帳に関する祖父母へのニーズ調査の結果をもとに、今年度は孫育て手帳の作成を行った。昨年度の調査では、祖父母からのニーズとして、乳幼児期の知識に関する希望が多く、「子どもの注意したい身体症状」や「乳幼児突然死症候群の予防」、「乳幼児の安全」といった項目について強い要望があった。しかし、祖父母は里帰りなどで妊娠期から関わっており、先行研究では妊娠期における食事や妊婦の生活について、戸惑いがあることが明らかになっていたことから、今回の手帳には乳幼児に関する内容だけではなく、妊娠中に起こりうる異常やその予防策についての知識も盛り込んだ。現在の祖父母世代は4070歳代と幅広く、勤務をしている人が多いことから、読みやすいフォント設定と、育児に関して文字だけの説明にならないように、できるだけ絵や図を挿入し、読みやすい工夫を行った。また、医学用語の使用を避け、わかりづらい言葉がないか、手帳の素案ができた時点で複数の祖父母に読んで頂いた。その後、祖父母から意見をもらい、内容の加筆・修正を行った。
KAKENHI-PROJECT-20791732
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20791732
祖父母教育に向けた孫育て手帳の開発と評価
さらに、現在、乳児を子育て中の母親に、育児をしていく中で工夫している点(たとえば、簡単な離乳食の作り方など)や、乳児が好んだ絵本・手遊びについて意見をもらい、手帳を作成する際の参考とした。今後、この手帳を孫育てセミナーなどで配布し、孫育てに向けて妊娠中から祖父母としての心構えができるよう活用していきたい。さらに、随時祖父母から手帳に関する意見をもらい、内容の修正を行っていくことで、より孫育て手帳を身近なものとして、有効に活用してもらえるよう、精査していく。
KAKENHI-PROJECT-20791732
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多孔質珪藻軟岩の工学的特性の解明と切土斜面の合理的設計法の確立
報告書は第1章:序論、第2章:珪藻土の堆積と分布、第3章:珪藻土の物理・化学特性、第4章:珪藻土の変形と強度特性、第5章:乾湿を与えた珪藻土の力学特性、第6章:珪藻土表層斜面の有限要素解析、第7章:珪藻土の安定処理、第8章:結論からなる。第1章序論では、大分県に堆積する珪藻土(軟岩)が、高速道路の基盤や道路周辺の切土斜面の対象となっている。この珪藻土は粒子自信が多孔質であり、含水比は有明粘土なみであるが、セメンテーション効果が著しく大きい。しかし乾湿によるスレ-キング現象が著しい。これら珪藻土の物理・化学特性と力学特性、切土斜面の安定問題、安定処理による地盤材料としての有効利用などの課題の解明の必要性を述べている。第2章では、堆積過程による分類、日本および大分県における分布を示した。第3章では、珪藻類の特性、物理・化学特性について記し、九州地方の土と比較した。珪藻土の物理特性は有明粘土に、化学特性と力学特性はしらすに似ていることが分かった。第4章では各種土質粘土質試験を行い、圧密特性、せん断特性、変形・強度異方性、引張り強度特性を明らかにした。第5章では、乱さない試料に室内で乾湿の操り返しを与え、一面せん断特性、三軸圧縮特性、圧裂引張り強度の変化、劣化を調べた。乾湿による強度の低下は、圧縮強度よりも引張り強度において著しいことが判明した。これらの結果を用いて、有限要素法により表層斜面の安定性を論じたのが第6章である。表層部の乾湿による引張り強度の低下が、引張り破壊による斜面崩壊につながる恐れがあり、表層部の保護工が必要である。7章では、乱した珪藻土に生石灰とセメント別途添加した安定処理土の改良効果とその力学特性を明らかにした。生石灰10%、セメント15%を添加すると乱さない強度とほぼ同じになること、養生日数とともに強度定数c、φが増えることなどが明らかになった。報告書は第1章:序論、第2章:珪藻土の堆積と分布、第3章:珪藻土の物理・化学特性、第4章:珪藻土の変形と強度特性、第5章:乾湿を与えた珪藻土の力学特性、第6章:珪藻土表層斜面の有限要素解析、第7章:珪藻土の安定処理、第8章:結論からなる。第1章序論では、大分県に堆積する珪藻土(軟岩)が、高速道路の基盤や道路周辺の切土斜面の対象となっている。この珪藻土は粒子自信が多孔質であり、含水比は有明粘土なみであるが、セメンテーション効果が著しく大きい。しかし乾湿によるスレ-キング現象が著しい。これら珪藻土の物理・化学特性と力学特性、切土斜面の安定問題、安定処理による地盤材料としての有効利用などの課題の解明の必要性を述べている。第2章では、堆積過程による分類、日本および大分県における分布を示した。第3章では、珪藻類の特性、物理・化学特性について記し、九州地方の土と比較した。珪藻土の物理特性は有明粘土に、化学特性と力学特性はしらすに似ていることが分かった。第4章では各種土質粘土質試験を行い、圧密特性、せん断特性、変形・強度異方性、引張り強度特性を明らかにした。第5章では、乱さない試料に室内で乾湿の操り返しを与え、一面せん断特性、三軸圧縮特性、圧裂引張り強度の変化、劣化を調べた。乾湿による強度の低下は、圧縮強度よりも引張り強度において著しいことが判明した。これらの結果を用いて、有限要素法により表層斜面の安定性を論じたのが第6章である。表層部の乾湿による引張り強度の低下が、引張り破壊による斜面崩壊につながる恐れがあり、表層部の保護工が必要である。7章では、乱した珪藻土に生石灰とセメント別途添加した安定処理土の改良効果とその力学特性を明らかにした。生石灰10%、セメント15%を添加すると乱さない強度とほぼ同じになること、養生日数とともに強度定数c、φが増えることなどが明らかになった。1.試料採取大分県豊後中村でかなり硬い不撹乱珪藻軟岩を新たに採取し、圧密特性とせん断特性を、以前採取した比較的柔らかい珪藻軟岩について、乾湿を与えたスレーキング特性を明らかにしようとした。2.圧密特性不撹乱試料と締固めた試料の高圧密試験の結果、不撹乱試料のe-logp曲線は変曲点、すなわち圧密降伏応力が明白である。締め固め試料では不鮮明である。3.せん断特性多孔質珪藻軟岩の圧密非排水三軸圧縮試験を行った。ほぼB値=1で間隙水圧の測定が可能となった。圧密降伏応力より推定すると、かなり大きな過圧密比(520)の三軸圧縮試験であるため、せん断強度は拘束圧が変わってもほとんど変化していない。データ数が不足しており、今の時点でははっきりした知見を既述することができない。4.スレーキング特性乾燥した供試体を一面せん断試験機にセットして3通りの方法で水浸・載荷して強度を求めた結果上部から水浸するとスレーキング特性を示すことが分かった。拘束圧の小さい斜面表面では、乾湿による崩壊すなわち、スレーキングを起こし易いことを表している。
KAKENHI-PROJECT-04452229
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多孔質珪藻軟岩の工学的特性の解明と切土斜面の合理的設計法の確立
過圧密領域における珪藻軟岩の強度・変形特性大分県玖珠群下尾本の未風化の切土斜面よりブロックサンプリングした試料を用いて、供試体の切り出し角度の異なる2種類の供試体について、過圧密領域における圧密排水(CD)および圧密非排水(CU)条件の三軸圧縮試験を行った。なお、通常の切り出し角の供試体をH-sample、90度傾いた供試体をV-sampleと呼ぶことにしている。乱さない珪藻土のセメンテーションによる固結力を力学的に破壊することにより、その力学的特性がどのように変化するかを見るために、乱さない供試体と同じ含水比、間隙比になるように静的に締め固めた供試体についても、圧密非排水(CU)三軸圧縮試験を実施した。圧密排水条件:ピーク強度は僅かにH-sampleの方が大きいが、初期接線係数はV-sampleの方がH-sampleの約1.2倍である。ピーク強度は拘束圧の影響を受けず一定であるが、残留強度は拘束圧に依存する。破壊に至るまでの体積収縮は拘束圧や切り出し角の影響を受けないが、その後の体積変化は拘束圧に大きく支配される。H-sampleの方が若干収縮が大きいが、全体の試験を通じて、圧密排水条件のこの供試体のみがきれいなせん断面を示さないことと関係があるのか、はっきりしない。圧密非排水条件:圧密排水条件と同じく、ピーク強度は拘束圧の影響をあまり受けず、H-sampleの方が僅かに大きいが、初期接線係数はV-sampleの方がH-sampleより大きい。間隙水圧は最大軸差応力時にピークを示し、その後一定値となる。せん断時の間隙水圧は当然のことながら、B値に依存しており、間隙水圧の測定値の信頼性は特に多孔性軟岩の場合、いかに飽和度を高めることができるかにかかっている。圧密試験からのセメンテーションの解明当初、セメンテーションを化学的に除去する方法を見いだして、珪藻土のセメンテーションを定量的に把握する計画であったが、適切な方法を見いだすことができなっかた。そこで、不撹乱土と、撹乱後の締固め土、およびスラリー状の土の高圧密試験を行い、e-logp曲線からの不撹乱土のセメンテーションを定量的に求めた。このセメンテーションが変形特性や力学特性に及ぼす影響を明らかにした。乾湿履歴を与えた珪藻土の力学的特性珪藻土の表層斜面の風化現象による強度低下に注目して、乾湿の繰り返し作用を与えた珪藻土の圧密排水三軸圧縮試験と圧列試験を行った。乾湿履歴の風化作用を受けると、圧縮強度、弾性係数、ダイレイタンシー係数、引っ張り強度が減少する。すなわち風化作用により、セメンテーションが消失すること、これにより高含水比・高間隙比の珪藻土本来の特性が発現することが明らかになった。切土斜面の安定解析鉛直な切土斜面について、三軸圧縮試験より得られた各種定数を用いて有限要素法により弾性解析を行った。風化作用を受けた斜面では未風化のものに較べ、大きな引っ張り応力が斜面下端に生じ、圧列試験で得られた引っ張り強度より大きな値を示した。このことは、風化を受けると高い斜面では、下端で引っ張り破壊が生じ、これが上方に広がって斜面全体の崩壊につながる恐れのあることを示している。
KAKENHI-PROJECT-04452229
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高次衛星解析による大気エアロゾル分布の精密推定
本研究は、衛星データ・地上計測・モデル計算を複合利用して、精度の高い大気エアロゾル分布の導出を目指すものである。気候や環境変動のために大気エアロゾルが通常値を超えて卓越するエアロゾル・イベントは、環境や健康に大きな影響を与える。東アジアのエアロゾル・イベントというと、土壌性ダストによって引き起こされる黄砂現象、火山爆発による灰燼、森林火災由来の燃焼性炭素エアロゾル汚染等が挙げられる。ここでは、このエアロゾル・イベントに焦点を当て、エアロゾル特性導出手法(リトリーバル)の高精度効率化に取り組んだ。得られる結果は通常時のエアロゾル・リトリーバルに対しても有用である。本課題研究から以下の成果が得られた。1.10年間の蓄積されたグローバルなAERONETデータに基づきエアロゾルタイプを分類。2.光学的無限の地球大気モデルにおける放射計算手法の提案と実稼働(無限大気放射コード)。3.波長0.55μmにおける光学的厚さが5を越える大気からの太陽反射光(衛星観測値に相当)は、項目2の無限大気モデルの値に収束する事を数値モデル放射計算から検証確認。4.MODISデータが捉えた高濃度黄砂現象を、新たに構築した無限大気放射コードに基づき解析し、土壌性エアロゾル・リトリーバルを実施。5.GOSAT/CAIとPARASOL/POLDERの併合利用による2010年ロシアの森林火災起源煤煙粒子特性導出。6.(高度分布を考慮したエアロゾルタイプ別)衛星データからのPM粒子推定式の提案。本研究は、衛星データ・地上計測・モデル計算を複合利用して、精度の高い大気エアロゾル分布の導出を目指すものである。典型的な大気エアロゾルとして、硫酸性、海塩性、土壌性、炭素性の4タイプがある。実際には種々のタイプが混合して浮遊する。気候や環境変動のために大気エアロゾルが通常値を超えて卓越するエアロゾルイベントは、1(土壌性エアロゾル),2(燃焼性炭素エアロゾル)の2タイプによって引き起こされるケースが多い。タイプ1の黄砂イベントの検出法に関しては、既に報告したので、今年度は燃焼性炭素エアロゾルの検出アルゴリズムの開発に焦点を当てた。炭素性粒子は短波長に吸収帯を持つ。この短波長データを用いた炭素性エアロゾル検出指標値:γ=R(λ)/R(0.38μm)が1を越える画素は炭素性エアロゾル域と判別できる。本手法をADEOS-2/GLIデータに適用してγ-値の広域分布図を導出し,同時期にTerra/MODISデータの輝度温度から求めたActive Fire Productと矛盾しない事を示した。更にGOSAT/CAIセンサデータを用いて,2009年9月のカリマンタン(ボルネオ)島上空に滞留する山林火災由来の炭素性エアロゾルを検出した。本年度は,衛星データから燃焼性炭素エアロゾル画素の検出法を探った。その後,エアロゾルの放射特性を求めねばならない。光学的に非常に厚いエアロゾルイベント時には,半無限大気モデルが効率的である。現在,新たに放射シミュレーションモデルの構築に取り組んでいる。本研究は、衛星データ・地上計測・モデル計算を複合利用して、精度の高い大気エアロゾル分布の導出を目指すものである。気候や環境変動のために大気エアロゾルが通常値を超えて卓越するエアロゾル・イベントは、環境や健康に大きな影響を与える。東アジアのエアロゾル・イベントというと、土壌性ダストによって引き起こされる黄砂現象、火山爆発による灰燼、森林火災由来の燃焼性炭素エアロゾル汚染等が挙げられる。ここでは、このエアロゾル・イベントに焦点を当て、エアロゾル特性導出手法(リトリーバル)の高精度効率化に取り組んだ。得られる結果は通常時のエアロゾル・リトリーバルに対しても有用である。本課題研究から以下の成果が得られた。1.10年間の蓄積されたグローバルなAERONETデータに基づきエアロゾルタイプを分類。2.光学的無限の地球大気モデルにおける放射計算手法の提案と実稼働(無限大気放射コード)。3.波長0.55μmにおける光学的厚さが5を越える大気からの太陽反射光(衛星観測値に相当)は、項目2の無限大気モデルの値に収束する事を数値モデル放射計算から検証確認。4.MODISデータが捉えた高濃度黄砂現象を、新たに構築した無限大気放射コードに基づき解析し、土壌性エアロゾル・リトリーバルを実施。5.GOSAT/CAIとPARASOL/POLDERの併合利用による2010年ロシアの森林火災起源煤煙粒子特性導出。6.(高度分布を考慮したエアロゾルタイプ別)衛星データからのPM粒子推定式の提案。
KAKENHI-PUBLICLY-21120509
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コースティックス法によるセラミックスの動的強度評価法に関する研究
コースティックス法に超高速度カメラ,高温炉,衝撃負荷装置を組合せた装置により,種々のセラミックスについて高温動的破壊挙動を明らかにするとともに,コースティックス法の実験手法に関するいくつかの改良を行った。その結果,以下のような成果を得ることができた。(1)セラミックスの表面を高精度に研磨し,光学系に工夫を行うことによって,明瞭なコースティックス像を得ることができ,高温,動的負荷条件下においてもセラミックスの破壊挙動評価へのコースティックス法の適用が可能であることを示した。(2)ジルコニアセラミックスでは2mWガスレーザ光源により1200°Cまで,また,窒化けい素セラミックスでは強力な35mWのガスレーザ光源により約1100°Cまでの実験を行い,ジルコニアセラミックスでは温度,負荷速度の影響が大きいが,窒化けい素セラミックスの破壊挙動に及ぼすこれらの影響はあまり大きくないことを明らかにした。(3)アルミナおよびサイアロンについては,特にコースティック像の増倍法を用いると大きな明瞭な像が得られることを示し,動的負荷条件下においても実験が可能であることを確かめた。(4)モードII負荷条件下の破壊問題にコースティックス法を適用することを検討した結果,この場合には初期曲線の影響はほとんどないことを明らかにし,さらに動的負荷条件下においても解析を試みた。(5)破壊時に発生するAE波の可視化像も得られることを明らかにし,このAE波像は表面波の速度で広がることを示した。(6)画像処理装置の導入により,実験の省力化,解析精度の向上を計れる可能性があることを示すとともに,弾性定数の測定に関しても非接触的,簡易測定法を提案した。以上の研究により,高温動的負荷条件下における強度評価のための実験方法の改良とともに,その基礎的手法を作り,さらに,2,3のセラミックスについて,強度評価のための多くの有用なデータを得ることができた。コースティックス法に超高速度カメラ,高温炉,衝撃負荷装置を組合せた装置により,種々のセラミックスについて高温動的破壊挙動を明らかにするとともに,コースティックス法の実験手法に関するいくつかの改良を行った。その結果,以下のような成果を得ることができた。(1)セラミックスの表面を高精度に研磨し,光学系に工夫を行うことによって,明瞭なコースティックス像を得ることができ,高温,動的負荷条件下においてもセラミックスの破壊挙動評価へのコースティックス法の適用が可能であることを示した。(2)ジルコニアセラミックスでは2mWガスレーザ光源により1200°Cまで,また,窒化けい素セラミックスでは強力な35mWのガスレーザ光源により約1100°Cまでの実験を行い,ジルコニアセラミックスでは温度,負荷速度の影響が大きいが,窒化けい素セラミックスの破壊挙動に及ぼすこれらの影響はあまり大きくないことを明らかにした。(3)アルミナおよびサイアロンについては,特にコースティック像の増倍法を用いると大きな明瞭な像が得られることを示し,動的負荷条件下においても実験が可能であることを確かめた。(4)モードII負荷条件下の破壊問題にコースティックス法を適用することを検討した結果,この場合には初期曲線の影響はほとんどないことを明らかにし,さらに動的負荷条件下においても解析を試みた。(5)破壊時に発生するAE波の可視化像も得られることを明らかにし,このAE波像は表面波の速度で広がることを示した。(6)画像処理装置の導入により,実験の省力化,解析精度の向上を計れる可能性があることを示すとともに,弾性定数の測定に関しても非接触的,簡易測定法を提案した。以上の研究により,高温動的負荷条件下における強度評価のための実験方法の改良とともに,その基礎的手法を作り,さらに,2,3のセラミックスについて,強度評価のための多くの有用なデータを得ることができた。イメコン790の超高速度カメラにコースティックス法と高温炉を組み合わせた装置により、常温から、ある程度の高温までのコースティック像を得ることができた。ジルコニアセラミックスでは1000°Cまでの温度において、静的から、クラックの伝搬速度で約2km/sまでコースティック像を得ることができ、この像から、破壊の様子を解析し、動的破壊じん性値、伝搬するクラックの動的応力拡大係数を解析することができた。窒化ケイ素セラミックスについては表面状態が悪いので反射光が弱く、コースティック像を得ることが困難であったが、1000°C近くまでは高出力のレーザー光の使用により、撮影できる可能性があることを確かめ、この温度までの動的応力拡大係数の解析を試みた。コースティック像の解析には、基本的には拡大投影機を用いたが、画像処理装置による解析も検討した。最初に、画像処理装置の基本的操作に習熟するとともに、二値化、細線化によってコースティック像の形状、寸法の測定が容易に行えることを確かめた。また、光学定数の精度を上げるために、レーザー光を用いた非接触法によりヤング率とポアソン比を求める方法を検討し、基本的関係式を導出するとともに、比較的実験を行いやすいアクリル板および鉄鋼材料を用いて実際に測定を行い、かなりの精度で測定が可能であることを明らかにした。さらに、破壊とともに発生するAE波形の撮影を行い、基本的な可視化像の撮影が可能であることを確かめるとともに、AEセンサーにより、AE波形の測定も試み、この波形と可視化像の対比も行った。その結果、コースティック像から得られるクラック速度あるいは応力拡大係数とAE波に基づく可視化像を比較検討することにより、セラミックスの動的破壊挙動がより詳細に解析できる可能性があることが分かった。
KAKENHI-PROJECT-05650095
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コースティックス法によるセラミックスの動的強度評価法に関する研究
昨年度に引き続いてジルコニアセラミックスの高温動的破壊挙動を詳細に解析するとともに、窒化ケイ素セラミックスへのコースティックス法の適用方法を研究し、高温動的破壊挙動を明らかにした。窒化ケイ素セラミックスの場合には35mWの強力レーザを使用することにより、約1100°Cまでの動的破壊の様子を調べることができた。これら2種類のセラミックスよりさらに実験条件が厳しいアルミナセラミックスとサイアロンについて実験を試み、表面にアルミ蒸着を行い、増倍法を適用することによって、かなり明瞭なコースティック像の撮影が可能であることを示した。また動的試験にも適用した結果、アルミナについてはトリガーの方法に検討の余地があるが、サイアロンについては割合容易に動的破壊じん性を求めうることがわかった。モードII試験法については、最初に、アクリルおよびエポキシ樹脂を用いた実験と有限要素法による数値解析により基本的な問題点を調べ、さらにジルコニアセラミックスについて動的実験を行い、モードIの場合と類似したAE波の像が現れることを明らかにした。このAE波像については、AEプローブにより波形の測定も行ったが、雑音の影響などのため、十分にコースティック像と対応づけるには至らなかった。実験手法に関する検討としては、画像処理方法とコースティック定数のためのポアソン比の測定方法について調べた。画像処理についてはコースティック像の実時間的測定に応用し、精度の向上と実験の自動化が可能であることを確認した。ポアソン比の測定に関しては、昨年導いた基礎関係式を用いて、ジルコニアセラミックスについて実験した結果、十分な精度で測定できることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-05650095
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霊長類の雌の競争と共存
京都市嵐山のニホンザル餌付け群、鹿児島県屋久島のニホンザル野生群、タンザニア・マハレ山塊国立公園のチンパンジー個体群、マダガスカル・ベレンテイ保護区のワオキツネザル個体群等でのフィールド調査で得られた資料をもとに、霊長類の雌の競争と共存のメカニズムについての研究を進めた。主要な成果として、(1)嵐山のニホンザルの長期データにもとづいて、母系的近親者間での配偶行動の回避が一般的であることを明らかにして英文学術論文として公表した。(2)屋久島の野生ニホンザル個体群について、海岸域の高密度で生息する群れ間でのエンカウンターについて英文論文1編を公刊した。(3)屋久島のヤクスギ林帯での群れ密度の調査法を確立して、英文論文1編を公刊した。(4)野生ワオキツネザルについて、1989年の調査開始から10年以上に及ぶ長期観察データにもとづいて、個体群動態ならびにメスの繁殖パラメーターを分析して、英文論文2編を公刊した。(5)また、ワオキツネザルの母系的社会構造において、雌が経験する二重の競争関係(集団内ならびに集団間の競争)について分析を進めた。出産時の行動をテーマに英文論文1編を公刊した他、群間と群内の競争のバランスシートについての英文論文1編を投稿中である。(6)同じく、ワオキツネザル個体群を対象に、雌雄の優劣関係の長期的変遷について分析を進めており、現在、論文を作成中である。さらに、(7)チンパンジーの雌が発情を同調させているかどうかについて、メスの競争の視点から分析を続け、現在、論文を作成中である。京都市嵐山のニホンザル餌付け群、鹿児島県屋久島のニホンザル野生群、タンザニア・マハレ山塊国立公園のチンパンジー個体群、マダガスカル・ベレンテイ保護区のワオキツネザル個体群等でのフィールド調査で得られた資料をもとに、霊長類の雌の競争と共存のメカニズムについての研究を進めた。主要な成果として、(1)嵐山のニホンザルの長期データにもとづいて、母系的近親者間での配偶行動の回避が一般的であることを明らかにして英文学術論文として公表した。(2)屋久島の野生ニホンザル個体群について、海岸域の高密度で生息する群れ間でのエンカウンターについて英文論文1編を公刊した。(3)屋久島のヤクスギ林帯での群れ密度の調査法を確立して、英文論文1編を公刊した。(4)野生ワオキツネザルについて、1989年の調査開始から10年以上に及ぶ長期観察データにもとづいて、個体群動態ならびにメスの繁殖パラメーターを分析して、英文論文2編を公刊した。(5)また、ワオキツネザルの母系的社会構造において、雌が経験する二重の競争関係(集団内ならびに集団間の競争)について分析を進めた。出産時の行動をテーマに英文論文1編を公刊した他、群間と群内の競争のバランスシートについての英文論文1編を投稿中である。(6)同じく、ワオキツネザル個体群を対象に、雌雄の優劣関係の長期的変遷について分析を進めており、現在、論文を作成中である。さらに、(7)チンパンジーの雌が発情を同調させているかどうかについて、メスの競争の視点から分析を続け、現在、論文を作成中である。平成12年度は、鹿児島県・屋久島の野生ニホンザル個体群について人口学的資料の収集を目的に、夏季に現地調査をおこなった。京都府嵐山のニホンザル餌付け群については、長期の配偶行動の資料をもとに、13親等の母系的血縁者間で近親交配が回避されることなどを論文にまとめ、学術雑誌に投稿中である。また、同じ資料について、長期にわたる配偶者選択の変化を分析中である。チンパンジーでは、東アフリカのタンザニア・マハレ山塊国立公園の野生集団での資料をもとに、雌の発情のタイミングが同調するかどうかを、雌の配偶者競争の視点から分析中である。ワオキツネザルについては、マダガスカル・ベレンティ保護区での資料をもとに、10年間にわたる繁殖パラメーターの変化についての論文を共同執筆して、学術雑誌に掲載された。さらに、ワオキツネザルの出産について、他の昼行性の霊長類と異なり、日中に出産するケースが少なくないことから、ワオキツネザルが昼行性に進化したのは比較的近年ではないかとする論文を作成して、現在学術雑誌に投稿中である。現在は、出産直後に見られた敵対的交渉から、ワオキツネザル集団内の雌の競争について分析を進めている。また、ワオキツネザルの集団サイズと出産率・幼児死亡率等の繁殖パラメーターの相関について、これまでに社会生物学/行動生態学から提出された母系的社会構造での雌の競争に関する仮説と合致するかどうか、分析をすすめているところである。平成13年度は前年度に引き続いて、京都市嵐山のニホンザル餌付け群、鹿児島県屋久島のニホンザル野生群、タンザニア共和国マハレ山塊国立公園のチンパンジー個体群、マダガスカル共和国ベレンテイ保護区のワオキツネザル個体群を対象とするフィールド調査で得られた資料をもとに、主として集団内の雌の競争と共存のメカニズムについての研究を進めた。具体的な成果として、(1)ニホンザルの配偶者選択の長期的な分析を通して、母系的血縁者間の配偶行動(近親交配)に関する学術論文を作成・投稿して、英文学術雑誌に印刷中である。(2)ワオキツネザル個体群では昼間に出産する雌が多いが、この原因を推測するとともに、これらの出産で起きる雌間の攻撃行動について分析した。この結果をもとに英語論文を作成して、学術雑誌に投稿・印刷済みである。
KAKENHI-PROJECT-12640700
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12640700
霊長類の雌の競争と共存
(3)ワオキツネザル個体群の個体群動態を分析した結果、群れサイズと出産率等の関係について、集団間と集団内の競争のバランスシートを重視するWrangham(1980)の仮説に合致することがあきらかになった。これらの結果については論文を作成中で、学術雑誌で公表する予定である。(4)ワオキツネザルの群れの雌間関係を、近接と相互交渉によって解析するとともに、群れサイズと繁殖成功の相関から、群れのサイズによる雌の競争のあり方について分析をすすめながら、論文を作成中である。(5)チンパンジーの雌の発情周期を分析して、雌たちはランダムに発情/排卵しているのではなく、互いに排卵のタイミングをずらしている可能性があきらかになった。この結果をメスの競争の視点から分析して、現在、論文を作成中である。平成14年度は前年度に引き続いて、京都市嵐山のニホンザル餌付け群、鹿児島県屋久島のニホンザル野生群、タンザニア共和国マハレ山塊国立公園のチンパンジー個体群、マダガスカル共和国ベレンテイ保護区のワオキツネザル個体群を対象とするフィールド調査で得られた資料をもとに、主として集団内の雌の競争と共存のメカニズムについての研究を進めた。具体的な成果として、(1)野生ワオキツネ個体群について、198998年の人口学的資料を分析して、(1)対象集団の人口が増加している、(2)個体数が20頭を超すと、群れの分裂やメスの追放等が頻発した、(3)その結果、メスの群れからの離脱・移籍も起こるが、本質的にfemale philopatryにあたる、(4)メスの生存曲線では、2-3歳で生存率はほぼ50%となったのち、9歳で20%まで低下すること等について、英語論文を作成して、学術雑誌に発表した。(2)チンパンジーの雌について人口学・繁殖生理学的資料を分析するとともに、近縁種であるビーリャ(ピグミーチンパンジー)と比較研究をおこなった。この結果は専門書『マハレのチンパンジー』(西田利貞、上原重男、川中健次編、京都大学学術出版会刊)の第17章「性をめぐる比較」(pp.393-417)で公刊した。(3)ワオキツネザルの群れの雌間関係を、近接と相互交渉によって解析するとともに、群れサイズと繁殖成功の相関から、群れのサイズによる雌の競争のあり方について分析をすすめながら、論文を作成中である。同じく(4)チンパンジーの雌の発情の同調について、メスの競争の視点から分析して、現在、論文を作成中である。平成15年度も前年度に引き続き、京都市嵐山のニホンザル餌付け群、鹿児島県屋久島のニホンザル野生群、タンザニア共和国マハレ山塊国立公園のチンパンジー個体群、マダガスカル共和国ベレンテイ保護区のワオキツネザル個体群等でのフィールド調査で得られた資料をもとに、霊長類の雌の競争と共存のメカニズムについての研究を進めた。具体的な成果として、(1)屋久島のヤクスギ林帯におけるニホンザルの個体群調査の方法論について論文を作成して、American Journal of Primatology誌において発表した。(2)野生ワオキツネ個体群について、母系的社会構造で雌が経験する二重の競争関係(集団内の優劣関係、ならびに集団間の競争)について分析をすすめ、現在、論文を投稿中である。(3)同じく、ワオキツネザル個体群を対象に、雌雄の優劣関係の長期的変遷について分析を進めている。ワオキツネザルでは、(1)直線的な順位関係が存在するが,(2)個体の順位はしばしば変動する。
KAKENHI-PROJECT-12640700
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12640700
癌温熱治療法用マイクロ波組織内アンテナの開発とその臨床応用
マイクロ波組織内加温用同軸リングスロットアンテナを開発した。セミリジッドケーブルの外導体にリング状の放射スロットを配列したものであり、スロットの各種パラメータを調整させることにより、アンテナ長軸方向のエネルギー分布(SAR分布)を変化させることが可能である。アンテナ全体がテフロンで被覆され、直径は0.86mm、21ゲージのカテーテル内の挿入して用いる。筋肉とほぼ等価な電気的特性を有する0.4%NaCl水溶液寒天ファントムを用いて本アンテナの加温特性を検討した。その結果、(1)アプリケータは直径0.86mmと十分に細く実用的である。(2)先端を短絡させることによりアプリケータの先端を超えた加温域が得られる。(3)数本のアンテナ素子を2-3cm間隔で平行に配列させたアレーアプリケータを使用することに、比較的均一で広範囲の高温度加温域を実現できる。以上のことが示されその有用性が明らかとなった。家兎筋肉あるいは移植腫瘍を用いて生体内温度分布特性を検討した。生体内においてもアンテナに沿った高温度域が示され、その有用性が確認された。病理組織学的にも腫瘍の著明な凝固壊死が認められた。臨床に使用されているマイクロ波温熱治療装置との整合性についても検討され、ダミ-ロードの使用にて良好なマッチングが得られた。すなわち、臨床応用の際、同装置の測温および温度制御システムが利用できることが示された。更なる温度分布特性および臨床の利便性の検討を行なった上で、その臨床応用が強く望まれる。マイクロ波組織内加温用同軸リングスロットアンテナを開発した。セミリジッドケーブルの外導体にリング状の放射スロットを配列したものであり、スロットの各種パラメータを調整させることにより、アンテナ長軸方向のエネルギー分布(SAR分布)を変化させることが可能である。アンテナ全体がテフロンで被覆され、直径は0.86mm、21ゲージのカテーテル内の挿入して用いる。筋肉とほぼ等価な電気的特性を有する0.4%NaCl水溶液寒天ファントムを用いて本アンテナの加温特性を検討した。その結果、(1)アプリケータは直径0.86mmと十分に細く実用的である。(2)先端を短絡させることによりアプリケータの先端を超えた加温域が得られる。(3)数本のアンテナ素子を2-3cm間隔で平行に配列させたアレーアプリケータを使用することに、比較的均一で広範囲の高温度加温域を実現できる。以上のことが示されその有用性が明らかとなった。家兎筋肉あるいは移植腫瘍を用いて生体内温度分布特性を検討した。生体内においてもアンテナに沿った高温度域が示され、その有用性が確認された。病理組織学的にも腫瘍の著明な凝固壊死が認められた。臨床に使用されているマイクロ波温熱治療装置との整合性についても検討され、ダミ-ロードの使用にて良好なマッチングが得られた。すなわち、臨床応用の際、同装置の測温および温度制御システムが利用できることが示された。更なる温度分布特性および臨床の利便性の検討を行なった上で、その臨床応用が強く望まれる。(1)最大7本のアンテナから構成されたアレーアンテナの温度分布につき、3次元有限要素法によるシミュレーション結果と加温実験結果とがよく一致する事が確認され、寒天ファントムにおける温度シミュレーションの有用性が明らかになった。(2)加温実験において、各アンテナ素子に電力を分配する必要があるため、電力分配装置を試作した。その結果、実験の操作性及び効率が格段に向上した。(3)寒天ファントムを用いた加温実験および有限要素法によるシミュレーションの結果、アンテナの長さ、刺入深さおよびアレーアンテナにおけるアンテナ間隔等に対する加温範囲の変化および温度分布に対する基礎的資料を得ることができた。(4)アンテナ刺入深さが浅い場合に問題となっていたファントム表面付近の不要な発熱現象を、ゾンマーフェルト積分を用いた解析により理論的に明らかにした。また、これを解決するため生理食塩水を含ませた脱脂綿をファントム上に設置し、等価的な刺入深さを深くする手法を提案し、寒天ファントムを用いた加温実験によりその有効性を確認した。臨床応用に向けて以下の点を明らかにした。1.体表面付近で生じる不必要な発熱(ホットスポット)が実用に際し問題となるため、この解決法についての検討を主に行った.2.実際臨床の場で使用されているマイクロ波加温装置(Tokimec CO.,Type HTS1000)の本体に接続し、家兎の大腿部筋肉内に刺入し、その稼動の可否を検討した。体表のホットスポットに対しては、アンテナの電流分布から電界分布を理論計算し、その発生原理を明らかにした。スロットが1個の場合について、アンテナ上の電流分布の理論解析を行い、スロット位置及び刺入深さに対する発熱分布の依存性について検討し、その結果としてアンテナの放射部の短いアンテナを作成し、体表と放射部遠位端との距離を長くすることにより深部のみを加温する事が可能となった。HTS1000による稼動は電力分配装置を介してダミーロードを接続することにより実験の操作性及び効率が格段に向上し、加温装置に改良を加える必要なしに装置に備わっている測温、温度制御、温度解析ソフトを利用して有効な加温を行なえることが明らかになった。尚、この際体表のホットスポットは出現しなかった。3.改良前のアンテナを用いて表在性腫瘍について臨床応用を試みたが、アンテナ刺入部にホットスボットが出現した。
KAKENHI-PROJECT-04454295
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癌温熱治療法用マイクロ波組織内アンテナの開発とその臨床応用
家兎の大腿部筋肉の実験から見てこの点はすでに改良されていると思われる。4.温度シミュレーション関しては、従来の方法では体表付近での計算精度が不十分であり、ホットスポットの評価が不可能であったため、シミュレーションソフトウェアを再構築中である。1.同軸スロットアンテナの基本特性を調べるために、一つのスロットを持つ同軸スロットアンテナについて、アンテナ単体もしくは複数のアンテナを用いてアレーとした場合の発熱(SAR)分布を導出する計算ソフトウエアを開発した。2.上記ソフトウエアを用いて、望ましい発熱分布を実現するスロット位置を評価した。また、様々なアレー形状による発熱分布を検討することにより、対象とする腫瘍に対し最適なアンテナ配置をシミュレートし得るようになった。3.実際の治療現場では、特に注意を払われることなく使用されるカテーテルが、同軸スロットアンテナの作る発熱分布に対し無視できない影響を及ぼすことを、上記ソフトウエアを用いて解析的に評価し、カテーテルのサイズ、電気的特性の重要性を示した。4.アンテナ刺入深さが浅い場合に体表面付近に生じるホットスポット(不要発熱部分)を抑制するために、同軸ケーブル部に磁性体を装荷する方法を提案し、その効果を解析的に検討した。5.これらの解析結果を実験的に確認するために用いられるファントム(模擬生体)を新たに開発した。これは、マイクロ波における人体の電気的特性を正確に模擬するSAR推定用ファントムであり、日本ハイパーサーミア学会QA委員会において、これまで存在しなかった照射型加温用標準ファントムに認定された。
KAKENHI-PROJECT-04454295
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画像情報と言語情報の結合化による画像データベース検索システム
植物図鑑のように画像とその解説が対になった情報のデータベースとその検索の方式について研究を行った。具体的には国立民族学博物館の展示標本資料の一部と平凡社の植物図鑑、その他の画像について研究を行った。画像処理の技術を用いて画像中の主な対象の輪部線抽出、形状抽出、画像全体の平均的な色情報を抽出、画像中の主な対象の色情報の抽出などを行い、画像データベースの画像特徴キ-とした。一方、画像の解説文を言語処理の技術によって解析し、その中に含まれる専門用語と形容詞情報を抽出し、これを言葉による画像検索のキ-とした。さらにここで得た専門用語を言葉の概念構造および植物分野の学問体系に基づいた概念の階層構造に整理し、検索の時にこれらの知識を使って柔軟な検索ができるよう工夫した。さらに画像の対象がもつ構造に着目し、これを包含関係に基づく木構造としてとらえ、それぞれの部分に適切な名称を付与することを行った。これは表示画像上でマンマシン対話によって行った。こうして国立民族学博物館の資料画像に対して対象の任意の部分の名称によって検索が可能なようにした。検索は、言葉による方法、画像特徴による方法、この両者の組合せによる方法のいずれでも行える。例えば、「オレンジ色の丸い果実を付けた植物」という内容の検索要求を、言葉によっても、またオレンジ色を色チャートから適当と思われる色を目で見て選ぶといった手法によっても行うことが出来る。植物図鑑のように画像とその解説が対になった情報のデータベースとその検索の方式について研究を行った。具体的には国立民族学博物館の展示標本資料の一部と平凡社の植物図鑑、その他の画像について研究を行った。画像処理の技術を用いて画像中の主な対象の輪部線抽出、形状抽出、画像全体の平均的な色情報を抽出、画像中の主な対象の色情報の抽出などを行い、画像データベースの画像特徴キ-とした。一方、画像の解説文を言語処理の技術によって解析し、その中に含まれる専門用語と形容詞情報を抽出し、これを言葉による画像検索のキ-とした。さらにここで得た専門用語を言葉の概念構造および植物分野の学問体系に基づいた概念の階層構造に整理し、検索の時にこれらの知識を使って柔軟な検索ができるよう工夫した。さらに画像の対象がもつ構造に着目し、これを包含関係に基づく木構造としてとらえ、それぞれの部分に適切な名称を付与することを行った。これは表示画像上でマンマシン対話によって行った。こうして国立民族学博物館の資料画像に対して対象の任意の部分の名称によって検索が可能なようにした。検索は、言葉による方法、画像特徴による方法、この両者の組合せによる方法のいずれでも行える。例えば、「オレンジ色の丸い果実を付けた植物」という内容の検索要求を、言葉によっても、またオレンジ色を色チャートから適当と思われる色を目で見て選ぶといった手法によっても行うことが出来る。研究は画像を中心とした研究と言語記述を中心とした研究との両方から行っている。その統合は最終年次に行う予定である。(1)画像検索のための1つの要素は画像がどのようなものであるかを明らかにすることである。我々はこれを対話的に作成するソフトウェアシステムを作った。先ず、画像をディスプレイに表示し、その任意の部分をカーソルで領域指定すると、その領域の位置、面積、色、画質などが自動的に解析される。人はこの領域に対して適切な名称を与える。これを画像の任意の場所に対して自己埋め込み的にすることを許すことによって、画像の構造と特徴が任意の精度で木構造とその各ノードに付与された豊富な画質情報の形で得られる。(2)画像検索には人間の持つ主観や印象をどのように扱うべきかという問題がある。画像データからこれらの情報を直接抽出することは困難なので、絵画に付属する解説文を対象に自然言語処理を行ない、対象情報および感性的情報を抽出する方法を提案した。解説文に記述されている情報を分類し、それを抽出するための意味解析の方法とそれに必要な体言と用言の意味辞書と格フレーム情報を明かにした。さらに約50文の絵画の説明文について実験を行い、本方法の有効性を示した。画像データベースの知的検索システムのプロトタイプシステムを作成した。このシステムは画像データベース、画像情報データベースおよび検索システムの3つの部分から構成されている。画像データベースは通常の画像データベースである。画像情報データベースは画像情報を抽出して記憶したデータベースで、先ず、画像の領域分割を行い、それぞれの領域の位置、大きさ、形状、色、テクスチュア性等の画像特徴を抽出する。次にこの領域分割画像を表示し、人間がそれぞれの領域を適当に統合しながら名前を与えて行く。これらの名称情報は画像の構造に従った木構造に表現し、それぞれのノードには対応する領域の画像特徴をリンクさせて管理する。またこれらの領域相互間の隣接性、相対位置関係なども記憶させる。画像の検索は3つの異なった観点から行うことが出来る。1つは検索画像を与え、この画像に近い画像を検索する場合であり、検索画像の領域を抽出し、その画像特徴、領域の相互関係性を取り出し、これらを画像データベース内の情報とマッチングすることによって検索する方法である。もう1つは検索する人が線画を画き、これと類似の形をしたものを取り出すというものである。第3は名称によって検索するもので名称による検索のほかに、色やテクスリュア性に関する言葉、大きさや形状に関する言葉をも適切に解釈して画像情報に対応させて検索を行うことができる。このシステムに約80枚の人形などの画像を入れ、種々の質問で検索を行い、ほぼ正しい結果が得られることを示した。
KAKENHI-PROJECT-05402062
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画像情報と言語情報の結合化による画像データベース検索システム
本年度は研究の最終年度としてシステムの作成を中心として研究を行った。特に画像形状と色彩を画像データベースの各画像から自動的に抽出する方法を明確化し、プログラムを作り、その有効性を確かめた。そこでこのような情報を用いて画像の検索ができるシステムを作った。植物図鑑の解説文の解析には植物の専門用語が必要であるので、このテキストからの専門用語を自動抽出し、さらにこれらを植物の構造や分類体系に整合するように一種のシソ-ラスを作る方法の研究も行い、よい結果を得た。質問者の探索要求はキーワードの組合せで表現されるが、これをこのシソ-ラスを用いて適切な要求表現に自動的に変換したあと、画像データベースの説明文章の方の検索を行うシステムを作った。そしてこれと画像データベースとをリンクすることによって、説明文に対する画像を検索表示することによって、検索した画像が期待したものかどうかを調べ、不満足の時は次の候補を出すなどが出来るようになっている。また図鑑のテキストから無作為に抽出した名詞述語文200文に対し、この専門知識を用いて用例にもとづいた意味解析と係受け解析を行った。その結果、図鑑の解説文において画像の内容に関する重要な情報を表現する名詞述語文の意味関係の87%、係受け関係の96%の解析に成功した。さらに、図の理解で獲得した情報を図鑑のテキストから抽出した図鑑を理解するためのメタ知識と統合し、より正確なメタ知識が獲得出来ることを示した。
KAKENHI-PROJECT-05402062
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東南極セールロンダーネ山地~リュツォホルム湾における大陸衝突・分裂過程の復元
東南極セールロンダーネ山地リュツォホルム岩体の形態線図と断面図を作製し,変形史と年代値の解析と整理を行った。その結果,セールロンダーネ山地は東南極造山帯における東・西ゴンドワナ大陸の衝突による変成・変形作用の後,水平伸張,水平圧縮,左ずれトランスプレッションなどを被ったことが明らかとなった。リュツォホルム岩体は起源・年代の異なる複数ユニットからなり,東南極造山帯と違う造山帯に属すると予想された。既存の地質図幅・空中写真と申請者の取得データを用いて,1/25万縮尺のセールロンダーネ山地の形態線図を作製し、部分的に走向線図も作製した。それらの結果と既存の岩相分布図や重力図、変成分帯などを組み合わせて,広域テクトニクスのフレームワークである大構造を把握した。そして、既存のセールロンダーネ山地の変成岩・深成岩の年代データと、地質構造形成史を対比し、広域テクトニクスについて現時点でのまとめを行った。その結果、セールロンダーネ山地の岩石は複数回の圧縮テクトニクスと引張テクトニクスを受けて複雑な地質構造を示すことが明らかとなった。また,セールロンダーネ山地の広域テクトニクスについて,国立極地研究所や九州大学の地質研究者と討論を行った。これらの結果は、日本地質学会の学術大会と国立極地研究所シンポジウムにて発表されるとともに、論文として学術雑誌に掲載された(Toyoshima et al., 2013など)。さらに、セールロンダーネ山地の変成岩の構造解析と変成作用の解析を進め、圧力上昇を伴う高温条件の獲得の後、温度が低下する中で、珪線石の再結晶を伴うSーテクトナイトの形成が起こり、その後にマイロナイト化作用が起こったことを見出した。マイロナイトを形成させたテクトニクスとして、3種類の候補があることも明らかにした。この結果を国立極地研究所シンポジウムにて発表した。そしてブラットニーパネ,メーニパなど構造解析のキーとなる場所を複数選定した。また、既存の地質図幅・空中写真を用いて,1/25万縮尺のリュツォホルム岩体とやまと山脈の形態線図を作製し、部分的に走向線図も作製して、広域テクトニクスのフレームワークである大構造を把握した。これをスリランカの地質構造と比較して、類似性を整理した。これらの結果を国立極地研究所シンポジウムにて発表し、大構造と変成岩分布との関係についての討論を行った。セールロンダーネ山地南西テレーンの構造解析と変成作用の解析を進め,東西ゴンドワナ大陸衝突による圧力上昇後に形成された,正断層センスを示すマイロナイトについて,3つの可能性のある形成モデルとテクトニクスを論じ,大陸衝突過程との関連とともに,地球惑星科学連合2014年大会にて発表した。さらに,昨年度作製した1/25万縮尺のリュツォホルム岩体とやまと・ベルジカ岩体の形態線図を地質図幅・空中写真を用いて修正し,広域断面図を作製した。その結果,リュツォホルム岩体にはWNW-ESE走向断層が発達し,変成岩層の繰り返しが頻繁に起こっている可能性とともに,同岩体が地質構造的に3地域に分けられることを明らかにした(プリンス・オラフ海岸地域,リュツォホルム湾東部地域,リュツォホルム湾南部地域)。プリンス・オラフ海岸地域にはWNW-ESE走向面構造が卓越する部分とN-SまたはNW-SE走向面構造が卓越する部分が交互に現れている。後者の部分にはN-SからNW-SEトレンドの褶曲が発達する。また,日の出岬南西端の大規模断層が推定され,このことは日の出岬にのみ変成年代の古いグラニュライトが分布することと整合的である。リュツォホルム湾東部地域では大きく見てN-Sトレンドを示すが,褶曲によって複雑に乱されている。リュツォホルム湾南部地域(スカーレン以西)ではWNW-ESEトレンドを示す。これらのことから,リュツォホルム岩体の累進変成作用ピーク時の大構造はWNW-ESEトレンドであるが,それがN-SからNW-SEトレンドの褶曲およびWNW-ESE走向断層など,多時相変形作用によって乱されたと考えられる。これらのことを第81回西日本南極セミナーにて発表した。この結果,リュツォホルム岩体のキーとなるいくつかの地域が選定され,同岩体の大構造が概ねスリランカのそれと類似していることが明らかとなった。岩相層序区分図・地質構造図(Yoshida, 1978),重力異常図(Nogi et al., 2013)を用いて,1/25万縮尺のリュツォホルム岩体の形態線図とその広域断面図を修正した。その結果,リュツォホルム岩体は地質構造的に大きく4つの地域に分けられることが明らかとなった(プリンス・オラフ海岸地域,リュツォホルム湾東部地域,リュツォホルム湾南東端地域,リュツォホルム湾南部地域)。境界には大規模断層が推定される。プリンス・オラフ海岸地域はYoshida(1978)のOkuiwa Groupに相当するが,さらに2つ以上に分けられる。これらの区分は奥岩およびその周辺の変成岩層(Okuiwa Group)が地質構造的特徴等からリュッツォホルム湾地域の中で最も新しいとされていること(Yoshida, 1978)とも整合的である。また,文献調査と構造解析の結果を入れて,リュツォホルム岩体とやまと・ベルジカ岩体,それぞれの地質構造形成史・変形運動史を構築した。
KAKENHI-PROJECT-25400483
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東南極セールロンダーネ山地~リュツォホルム湾における大陸衝突・分裂過程の復元
これらの結果,リュツォホルム岩体では,NW-SE走向断層が発達しそれによる変成岩層の繰り返しがあるだけでなく,変成年代や変成条件,形成過程が異なる変成岩類が断層を介して集積していることが明らかとなった。また,同岩体の大部分にはE-Wトレンドの地質構造がもともと(累進変成作用ピーク時に)大構造としてあり,それがN-SからE-Wトレンドの褶曲構造およびNW-SE走向断層など,後性的な多時相変形作用によって変形を受けたと考えられる。これらの問題をさらに解決するためには,リュツォホルム岩体の新南岩,日の出岬,明るい岬,スカルブスネス,ルンドボークスヘッタにおける現地調査が必要であることも明らかとなった。東南極セールロンダーネ山地リュツォホルム岩体の形態線図と断面図を作製し,変形史と年代値の解析と整理を行った。その結果,セールロンダーネ山地は東南極造山帯における東・西ゴンドワナ大陸の衝突による変成・変形作用の後,水平伸張,水平圧縮,左ずれトランスプレッションなどを被ったことが明らかとなった。リュツォホルム岩体は起源・年代の異なる複数ユニットからなり,東南極造山帯と違う造山帯に属すると予想された。平成26年度の計画であったリュツォホルム岩体ややまと・ベルジカ岩体における岩相分布や地質構造形成史,運動学的解析の文献調査を行い,1/25万縮尺のリュツォホルム岩体とやまと・ベルジカ岩体の形態線図の作製と,広域テクトニクスのフレームワークである大構造の把握を行った。リュツォホルム岩体の既存研究における変成岩・深成岩の既存の年代データと地質構造形成史の整理・対比,変形構造とさらなる構造解析・変成作用の解析のキーとなる地域の選定など,多くが達成されている。これらのことから,おおむね順調に進展していると判断される。ただし,変形岩の放射年代の測定とEBSDによる構造解析が行われていない。地質学セールロンダーネ山地で地質構造上キーとなる地域であるブラットニーパネ,メーニパなどにおいて構造解析と変成作用の解析を組み合わせてさらに詳しく行い,EBSDによる構造解析も進めて,変成作用と変形作用との関係を詳しく考察する。リュツォホルム岩体ややまと・ベルジカ岩体において選定された,地質構造上キーとなる地域(新南岩,日の出岬南部,明るい岬,スカルブスネス,ルンドボークスヘッタ,ベルジカ山脈,やまと山脈北部など)において,既に採取され国立極地研究所が保管・管理している岩石標本・地質構造データを提供していただき,大微細構造の構造解析を行う。文献調査と構造解析の結果を入れて,リュツォホルム岩体とやまと・ベルジカ岩体,それぞれの地質構造形成史・変形運動史を構築する。そして,セールロンダーネ山地・リュツォホルム岩体・やまと・ベルジカ岩体の地質構造形成史・変形運動史を対比してまとめ,セールロンダーネ山地からリュツォホルム岩体にかけての地域の地質構造形成史・変形運動史を構築する。さらに,それを西方のドロンイングモードランド中央部西部やスリランカのそれらと対比する。セールロンダーネ山地からリュツォホルム岩体にかけての地域の地質構造形成史・変形運動史に時間軸を入れるため,既存の年代データ(Shiraishi et al., 2008など)を地質構造形成史に関連づけるとともに,強変形の岩石中のジルコンなどを用いて,地質構造の形成年代を求める。これらの結果と既報の変成史や火成活動史を統合して,本地域の広域テクトニクス,ゴンドワナ超大陸形成時の大陸の衝突過程やその後の分裂過程を考察する。
KAKENHI-PROJECT-25400483
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近代日本における子どものジェンダーと「少年」・「少女」
(1)明治の子ども投稿雑誌『穎才新誌』の分析をおこなった。全国初の子ども雑誌『穎才新誌』は、「少年」・「少女」というジェンダー・カデゴリーをタイトルに含みこむ少年少女雑誌が登場する前に生まれた雑誌である。したがって、この雑誌の分析をおこなうことで、「少年」・「少女」というジェンダー・カテゴリーの誕生のプロセスに迫ることができるのである。分析の結果は以下のとおりである。もともと「少年」は男子も女子も含みこむカテゴリーであった。そして男子と女子は、文明開化とメリトクラシーの徹底によって、同じ「少年」として学問による立身出世を目指す存在としてとらえられていた。ところが、中等普通教育の別学化が実施された1879年以降、徐々に「少女」が「少年」から分化していくことがわかった。それとともに、「少女」はそれのみで完結する特別な時代を生きる存在としてとらえられていくことがわかった。この結果は『教育学研究』に論文として掲載された。(2)少女雑誌『少女の友』・『少女画報』で大流行した「エス」をテーマにした小説を分析し、女学生同士の親密な関係を示す「エス」という関係の全容を明らかにした。その結果、「エス」はこれまでの研究が指摘するように異性愛の前段階でも同性愛でもなく、当時の高等女学校のごく一般的にみられる親密な関係として人々にとらえられていることがわかった。(3)戦間期、少女雑誌『少女の友』の読者たちが親密なコミュニティをつくっていたことがこれまでの研究で明らかになっている。報告者はさらに高齢になった読者たちが現在もなおそのコミュニティを維持しているのかどうか確認することにした。そのために愛読者の会を組織している人物への聞き取りをおこなった。その結果、現存もコミュニティが維持されていることが確認できた。(1)戦前の少年少女雑誌表紙絵分析少年少女雑誌という男女の別を設けた雑誌が創刊されはじめた1885年から、太平洋戦争終結の1945年までの期間、近代日本に誕生した「少年」、「少女」がどのようなヴィジュアル・イメージであったのか、少年少女雑誌の表紙絵を分析し、その変遷をたどった。第一次世界大戦以降の1920年頃から、「少女」という身体が「少年」と類似していくことがわかった。すなわち、スポーツに興じるなどの活動的なふるまいが求められ、健康美を象徴するはつらつとした笑顔と長い手足、そしてそれらにふさわしい洋装、断髪が求められていくことがわかった。その成果は、『ソシオロジ』第48巻1号(2003)と『人環フォーラム』第14号(2004)に発表した。(2)1930年代の少年少女雑誌の投稿欄分析戦前の少年少女雑誌がもっとも繁栄した1930年代、投稿欄では編集者と読者、そして読者同士の非常に親密な関係が築かれていく。このような関係は戦前の雑誌特有の文化であり、同時に戦前の少女文化の核をなすものである。特に投稿欄の充実を特色とした実業之日本社の少女雑誌『少女の友』と少年雑誌『日本少年』を取り上げ、少女雑誌と少年雑誌の比較を試みた。その結果、少女たちは雑誌上で、「汚れた」大人と対抗し、「清らかで無垢な」少女として結束し、独特の共同体を形成していることがわかった。しかし、少年雑誌では投稿欄がセンチメンタリズムの象徴のようにみなされ、編集者の手によって繰り返し縮小が試みられていた。成果は、『女性学』第11号に発表した。(3)戦前の少女雑誌の目次分析戦前の少女雑誌のほとんどのものの目次に目を通し、少女雑誌の内容分析を試みた。まずは、少女雑誌のなかで模範人物として取り上げられている女性をピックアップし、その変遷をたどった。その結果、女性の模範人物は皇族からエリートへと変化し、男性と同様、属性主義から業績主義へ、という大きな変化がみられた。その成果は、「近代日本の少女文化と規範-少女雑誌の模範人物像の変遷-」という題目で、2003年の日本教育社会学会第55回大会で発表した。(1)明治の子ども投稿雑誌『穎才新誌』の分析をおこなった。全国初の子ども雑誌『穎才新誌』は、「少年」・「少女」というジェンダー・カデゴリーをタイトルに含みこむ少年少女雑誌が登場する前に生まれた雑誌である。したがって、この雑誌の分析をおこなうことで、「少年」・「少女」というジェンダー・カテゴリーの誕生のプロセスに迫ることができるのである。分析の結果は以下のとおりである。もともと「少年」は男子も女子も含みこむカテゴリーであった。そして男子と女子は、文明開化とメリトクラシーの徹底によって、同じ「少年」として学問による立身出世を目指す存在としてとらえられていた。ところが、中等普通教育の別学化が実施された1879年以降、徐々に「少女」が「少年」から分化していくことがわかった。それとともに、「少女」はそれのみで完結する特別な時代を生きる存在としてとらえられていくことがわかった。この結果は『教育学研究』に論文として掲載された。(2)少女雑誌『少女の友』・『少女画報』で大流行した「エス」をテーマにした小説を分析し、女学生同士の親密な関係を示す「エス」という関係の全容を明らかにした。その結果、「エス」はこれまでの研究が指摘するように異性愛の前段階でも同性愛でもなく、当時の高等女学校のごく一般的にみられる親密な関係として人々にとらえられていることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-03J04935
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03J04935
近代日本における子どものジェンダーと「少年」・「少女」
(3)戦間期、少女雑誌『少女の友』の読者たちが親密なコミュニティをつくっていたことがこれまでの研究で明らかになっている。報告者はさらに高齢になった読者たちが現在もなおそのコミュニティを維持しているのかどうか確認することにした。そのために愛読者の会を組織している人物への聞き取りをおこなった。その結果、現存もコミュニティが維持されていることが確認できた。
KAKENHI-PROJECT-03J04935
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03J04935
循環器疾患の危険因子としての抗酸化物および食事の意義に関する横断研究
関東地方茨城県内の一地域を対象として、栄養調査を含む生活習慣・環境調査ならびに血液検査を行った。食事中の抗酸化物質の摂取と血中過酸化脂質との関連および既知の危険因子と過酸化脂質との関連を分析する断面調査を行った。調査対象者および試料採取については、大規模追跡調査に発展させる前段階として茨城県県西部の農村一地区(K町)を選び、4069歳の男女233名を抽出した。循環器精密検診時に予告の上、空腹で午前中に受診させ、食生活・栄養調査として食物摂取頻度調査24時間リコール法による栄養調査・生活習慣調査を行った。この際特に抗酸化物質としてサプリメントを含むビタミンCおよびビタミンEの摂取量について調査した。食生活以外にも飲酒、喫煙等の生活習慣調査を実施した。血液検査については同検査時に採血し、血清中総コレステロール、HDL-コレステロール、中性脂肪等の動脈硬化危険因子に加え、過酸化物の蓄積結果とされる過酸化脂質(TBARS、MDA)の測定を行い、食事中の抗酸化物質や血中過酸化脂質の循環器疾患の危険因子としての関与、要因としての検討を行った。その結果過酸化脂質と有意な相関が見られたのは、性、BMI、中性脂肪、飲酒、喫煙であり、収縮期血圧については正の相関傾向、HDL-コレステロールは負の相関傾向が見られた。また食事中の抗酸化物質と血中過酸化脂質との関連を検討した結果、サプリメントを含むビタミンCおよび・あるいはビタミンEを多く摂取している場合、血中過酸化脂質値は有意に低値であった。すなわち抗酸化物質の摂取が、血中過酸化脂質を減少させる可能性が示唆された。関東地方茨城県内の一地域を対象として、栄養調査を含む生活習慣・環境調査ならびに血液検査を行った。食事中の抗酸化物質の摂取と血中過酸化脂質との関連および既知の危険因子と過酸化脂質との関連を分析する断面調査を行った。調査対象者および試料採取については、大規模追跡調査に発展させる前段階として茨城県県西部の農村一地区(K町)を選び、4069歳の男女233名を抽出した。循環器精密検診時に予告の上、空腹で午前中に受診させ、食生活・栄養調査として食物摂取頻度調査24時間リコール法による栄養調査・生活習慣調査を行った。この際特に抗酸化物質としてサプリメントを含むビタミンCおよびビタミンEの摂取量について調査した。食生活以外にも飲酒、喫煙等の生活習慣調査を実施した。血液検査については同検査時に採血し、血清中総コレステロール、HDL-コレステロール、中性脂肪等の動脈硬化危険因子に加え、過酸化物の蓄積結果とされる過酸化脂質(TBARS、MDA)の測定を行い、食事中の抗酸化物質や血中過酸化脂質の循環器疾患の危険因子としての関与、要因としての検討を行った。その結果過酸化脂質と有意な相関が見られたのは、性、BMI、中性脂肪、飲酒、喫煙であり、収縮期血圧については正の相関傾向、HDL-コレステロールは負の相関傾向が見られた。また食事中の抗酸化物質と血中過酸化脂質との関連を検討した結果、サプリメントを含むビタミンCおよび・あるいはビタミンEを多く摂取している場合、血中過酸化脂質値は有意に低値であった。すなわち抗酸化物質の摂取が、血中過酸化脂質を減少させる可能性が示唆された。13年度に行った研究結果の概要は、以下のとおりである。1)調査対象者の抽出および試料採取:本研究期間中においては、大規模追跡調査に発展させる前段階として、茨城県内県西部の農村一地区(K町)を選び、4060歳代の男女、250名を抽出し、循環器精密検診時に予告の上、空腹で午前中に受診させた。2)食生活・栄養調査:同対象者に対し、食生活問診、24時間リコール法による栄養調査ならびに、食生活以外には、喫煙、飲酒等の生活習慣調査を「栄養のバランスに関するお尋ね」として行った。すなわち熟練栄養士によって、実物あるいはフードモデル等を用いて問診し、またアンケート調査を実施した。特に本研究においては、抗酸化物質関連の栄養素・ビタミンC,ビタミンE,等についても注目して尋ねている。各食品群に加え、栄養補助食品としての、ドリンク剤については、7%程度の人が、ビタミンE剤を飲用していることが判明した。3)血液検査:血液試料の採取については、検診時の午前中空腹時に採血し、血清、血漿を分離し、測定時まで、-80°Cにて保存した。検査項目としては、血清中総コレステロール、HDLおよびLDLコレステロール、中性脂肪、血液凝固線溶系因子等の、動脈硬化危険因子に加え、過酸化物の蓄積結果とされる、過酸化脂質・TBARSの測定を行っている。現在、それらの詳細について分析中である。4)予備調査結果の報告:第14回国際栄養学会議において、本研究のプレリミナリとして行った若年者の、栄養バランス調査の結果を報告し、討議を行った。平成14年度に行なった研究結果の概要は以下のとおりである。今年度は、大規模な追跡調査に発展させる前段階として、関東地方・茨城県内の一地域を選び、各年齢層における栄養調査を含んだ生活環境調査ならびに血液検査を行い、従来よりの危険因子との関連を分析する断面調査をおこなった。昨年度に行った調査対象者の抽出および試料採取については、大規模追跡調査に発展させる前段階として、茨城県内西部の農村一地区(K町)を選び、4060歳代の男女、250名を抽出し、循環器精密検診時に予告の上、空腹で午前中に受診させ、食生活・栄養調査として、食生活問診、24時間リコール法による栄養調査、生活習慣調査を行ったが、何らかの因子によって不備となった対象者・試料について、再度、対象者・試料の整備を行った。
KAKENHI-PROJECT-13670377
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13670377
循環器疾患の危険因子としての抗酸化物および食事の意義に関する横断研究
食生活以外にも、喫煙、飲酒等の生活習慣調査を、すなわち熟練栄養士によって、実物あるいはフードモデル等を用いて問診し、アンケート調査を実施した。血液検査については、本年も検診時の午前中空腹時に採血し、血清中総コレステロール、HDLおよびLDLコレステロール、中性脂肪等の、動脈硬化危険因子に加え、過酸化物の蓄積結果とされる、過酸化脂質・TBARSの測定を行った。循環器疾患について既知の危険因子との関連を解析した。すなわち、年齢、血圧、喫煙、飲酒、運動量等の相関を求め、統計解析することによって、食事中あるいは血中抗酸化物質濃度や、TBARS濃度の、循環器疾患の危険因子としての関与、要因としての重みづけを検討した。今後大規模コホート研究に発展可能と考えられる。
KAKENHI-PROJECT-13670377
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内向き整流K^+チャネル遺伝子導入による頻拍性不整脈治療(成熟動物心筋細胞を用いた基礎研究)
本研究では、頻拍性不整脈における新たな治療法を開発することをめざし、心筋細胞に外来のK^+チャネル遺伝子を導入する試みを行ってきた。これまでにアフリカツメガエル卵母細胞や、哺乳動物培養細胞株(CHO細胞、COS細胞)へIRK1チャネル遺伝子を導入し、単一チャネル電流および全細胞電流を記録して、単一チャネルコンダクタンスや、平均開時間、閉時間、Ba^<2+>感受性などを調べ、IRK1チャネルの発現を確認した。本年度は、成熟心筋細胞への遺伝子導入への第一歩として、ラットの異所心移植モデル(Ono-Lindseyモデル)を作成し、電気穿孔法による遺伝子ベクター導入の試みを行った。このモデルは、ドナー心の大動脈と肺動脈をレシピエントの下大動脈と下大静脈に、それぞれ吻合させるものである。移植された心臓はレシピエントの血液循環を担う必要がないので、電気穿孔法を用いた遺伝子導入手技に伴う侵襲に十分耐えることができる。K^+チャネル遺伝子の導入に先だち、遺伝子発現のレポーター分子GFP(Green Fluorescent Protein)をコードするベクターの導入実験を行った。その結果、広範な心筋細胞が蛍光を発するようになり、電気穿孔法による遺伝子導入が可能であるという示唆が得られた。その後、実際にIRK1の遺伝子導入実験を続けているが、現段階では明らかなチャネル発現は確認されていない。今後とも引き続き、最適な手技の開発をめざして検討を進める予定である。本研究では、頻拍性不整脈治療における新たな手法として、病的心筋細胞に外来のK^+チャネル遺伝子を導入する試みを行う。病的心筋で発生する致死的な頻拍性不整脈は興奮波の旋回(リエントリ-)もしくは撃発活動(トリガード・アクティビティー)が原因と考えられる。病的心筋に外来のK^+チャネル遺伝子を導入、チャネル蛋白を発現させることにより、静止膜電位が過分極して興奮伝導が改善され、また、Na^+/Ca^<2+>交換機構を介したCa^<2+>排泄が高進して、撃発活動による不整脈発生が抑止されることが期待される。心筋のK^+チャネルには、一過性外向き電流型、遅延整流型、内向き整流型があるが、本研究では、著しい内向き整流性を持つため、活動電位持続時間をあまり変えずに静止電位を過分極させる効果が期待される内向き整流K^+チャネル遺伝子(IRK1)を心筋細胞に導入することによる不整脈治療の可能性を追求しようとする。本年度は、研究の第一歩として、アフリカツメガエル卵母細胞に発現させたIRK1チャネルの基本的諸性質を「Whole cell」および「single channel」モードのパッチクランプ法を用いて確認し、引き続き、リポフェクトアミン法による新生児ラット培養心室筋細胞へのIRK1 cDNA導入を試みた。その結果、1.IRK1チャネル遺伝子を導入した卵母細胞において、Ba^<2+>およびCs^+によってブロックされる強い内向き整流性を示す電流が出現し、過分極側でのコンダクタンスが約500%増大した。2.新たに発現したチャネルの単一チャネルコンダクタンスは細胞外液中に45、90、150mMのKCIが存在するとき、それぞれ、9、13、24pSであった。3.試験電位-100-140mVにおいて単一IRK1チャネル電流の開時間ヒストグラムは時定数約400msecの単一指数関数に近似され、一方、閉時間は時定数がそれぞれ、およそ10msecと90msecの2つの指数関数で近似された。これらの値はこれまで報告されているIRK1チャネル電流のものとよく一致した。4.新生児ラット培養心室筋細胞に対し、リポフェクトアミン法を用いてIRK1遺伝子cDNAの導入を試み、細胞全膜電位固定法、単一チャネル電流記録法の両面から、IRK1チャネルの発現量を目下確認中である。本研究では、病的心臓で発生する致死的頻拍性不整脈について、薬物治療にかわる新たな治療法開発の可能性をさぐる目的で、成熟心筋細胞に外来の内向き整流K^+チャネル遺伝子を導入する方法の確立を目指している。病的心筋細胞ではカリウムコンダクタンスが減少して静止膜電位が脱分極していることが知られている。このため、正常な興奮伝導が阻害されて興奮波の旋回(リエントリー)による頻拍性不整脈や、撃発活動(トリガードアクティビティー)による不整脈が発生しやすい。このような心筋細胞に外来のK^+チャネル遺伝子を導入することにより、静止電位の過分極がもたらされ、興奮伝導の改善やNa^+/Ca^<2+>交換機構の活性化によるCa^<2+>排泄が促進されて撃発活動が抑止されることが期待される。本年度は、リポフェクトアミン法にて、哺乳類培養細胞株(CHO細胞、CHW細胞)へのマウス由来の内向き整流K^+チャネル(IRK1)cDNAの導入を行い、チャネル蛋白発現をパッチクランプ法にて検討した。細胞全膜電位固定法により、Ba^<2+>とCs^+感受性の内向き整流性を示す電流が新たに発現し、。また、単一チャネル電流記録法により、細胞外側のK^+濃度が150mEqの時、single channel conductanceが約25pSの内向き整流カリウムチャネルの発現を確認した。チャネルの開時間・閉時間のヒストグラムなどからみたチャネルキネティクスも、これまでのIRK1チャネルの報告と同様であった。
KAKENHI-PROJECT-09877011
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09877011
内向き整流K^+チャネル遺伝子導入による頻拍性不整脈治療(成熟動物心筋細胞を用いた基礎研究)
引き続き、生体の心筋により近い、新生児ラットからコラゲナーゼ・ディスパーゼなどを用いて新鮮単離した培養心筋細胞への同cDNAを導入を目指して、現在、種々の条件を試し最適な実験条件を検討中である。本研究では、頻拍性不整脈における新たな治療法を開発することをめざし、心筋細胞に外来のK^+チャネル遺伝子を導入する試みを行ってきた。これまでにアフリカツメガエル卵母細胞や、哺乳動物培養細胞株(CHO細胞、COS細胞)へIRK1チャネル遺伝子を導入し、単一チャネル電流および全細胞電流を記録して、単一チャネルコンダクタンスや、平均開時間、閉時間、Ba^<2+>感受性などを調べ、IRK1チャネルの発現を確認した。本年度は、成熟心筋細胞への遺伝子導入への第一歩として、ラットの異所心移植モデル(Ono-Lindseyモデル)を作成し、電気穿孔法による遺伝子ベクター導入の試みを行った。このモデルは、ドナー心の大動脈と肺動脈をレシピエントの下大動脈と下大静脈に、それぞれ吻合させるものである。移植された心臓はレシピエントの血液循環を担う必要がないので、電気穿孔法を用いた遺伝子導入手技に伴う侵襲に十分耐えることができる。K^+チャネル遺伝子の導入に先だち、遺伝子発現のレポーター分子GFP(Green Fluorescent Protein)をコードするベクターの導入実験を行った。その結果、広範な心筋細胞が蛍光を発するようになり、電気穿孔法による遺伝子導入が可能であるという示唆が得られた。その後、実際にIRK1の遺伝子導入実験を続けているが、現段階では明らかなチャネル発現は確認されていない。今後とも引き続き、最適な手技の開発をめざして検討を進める予定である。
KAKENHI-PROJECT-09877011
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2つの新規な糖質ホスホリラーゼの分子解析
反芻動物の第一胃ルーメンに共生する偏性嫌気性細菌Ruminococcus albusは二つのマンノシルグルコースホスホリラーゼ(I型酵素とII型酵素)を持つ。基質特異性を検討したところ,I型酵素はマンノシルグルコースに特異的な酵素であり,II型酵素はマンノオリゴ糖に高い活性を示す酵素であることが判明した.合成反応では,I型酵素のみ6-OHグルコース誘導体をアクセプタ基質とした.アミノ酸配列の比較から推定したアミノ酸残基の変異酵素の解析から,I型酵素のAsp129が触媒残基と考えられた.また,I型酵素のIle212がグルコース6位誘導体への合成活性に重要な残基であることが明らかになった.Ruminococcus albusが持つ二つのβ-1,4-マンノシルグルコースホスホリラーゼアイソザイム(I型とII型)の触媒残基を決定するとともに二つのアイソザイムにおける基質特異性の違いに重要なアミノ酸残基を決定した。I型酵素とII型酵素を含む類縁タンパク質のアミノ酸配列の比較を行い,I型酵素のAsp129,Glu311およびAsp341がすべての類縁タンパク質群で完全に保存されていることを確認した。これらの残基をそれぞれAsnもしくはGlnに置換した変異酵素の活性を検討したところ,D129NとD341Nにおいて大幅な活性の減少が見られた.D341Nについては,加リン酸分解,合成反応においてNaClやアジ化ナトリウムなどの添加によって活性が部分的に活性が回復したことから,基質との結合においてAsp341の側鎖の負電荷が重要な働きを持つと考えられた.このことから置換により著しい活性の低下を示したAsp129が触媒残基であると判断された.この結論はX線結晶構造解析により得られた結果と矛盾しない.I型酵素とII型酵素ではアクセプタ分子の6位水酸基に対する認識が大きく異なる.I型酵素はグルコースの6位誘導体に対して合成反応を触媒するが,II型酵素は当該基質に全く作用しない.I型酵素とII型酵素で配列を比較すると,アクセプタの6位水酸基近傍に位置する残基は,I型酵素ではIle212,II型酵素ではHis186であった.そこでI型酵素とII型酵素でこれらの残基を入れ替えた変異体を作製した.その結果,I型酵素のI212H変異体では,6-デオキシグルコースやキシロースに対する特異性が低下し,II型酵素のH186I変異体はこれらの基質をアクセプタとする合成反応を触媒した.以上のことからI型酵素のIle212は,グルコース6位誘導体に対する合成活性に重要であると考えられた.反芻動物の第一胃ルーメンに共生する偏性嫌気性細菌Ruminococcus albusは二つのマンノシルグルコースホスホリラーゼ(I型酵素とII型酵素)を持つ。基質特異性を検討したところ,I型酵素はマンノシルグルコースに特異的な酵素であり,II型酵素はマンノオリゴ糖に高い活性を示す酵素であることが判明した.合成反応では,I型酵素のみ6-OHグルコース誘導体をアクセプタ基質とした.アミノ酸配列の比較から推定したアミノ酸残基の変異酵素の解析から,I型酵素のAsp129が触媒残基と考えられた.また,I型酵素のIle212がグルコース6位誘導体への合成活性に重要な残基であることが明らかになった.本研究では,偏性嫌気性細菌Ruminococcus albusに見出した新規な構造と機能を持つ二つのβ-1,4-マンノシルグルコースホスホリラーゼアイソザイム(I型とII型)の生化学的機能の解明と機能発現に重要な構造因子の決定を目的とした。本年度は大腸菌による組換え酵素の生化学的機能解析を実施した。二つの組換え酵素をそれぞれ電気泳動的に単一になるまで精製した。両酵素は共にpH 6.5で最大活性を示した。ゲル濾過とSDS-PAGEによる解析によりI型酵素は2量体,II型酵素は6量体であることが判明した。β-1,4-マンノシルグルコースの加リン酸分解反応の反応速度論的解析から,両酵素がいずれもランダム機構により加リン酸分解を触媒することを明らかにした。マンノース1-リン酸を糖供与体,様々な糖質を受容体として合成反応を行い,無機リン酸の遊離量から合成活性を評価した。I型酵素は天然の糖質ではグルコースとキシロースに合成活性を示したが、グルコースに対する活性の方が圧倒的に高かった。このことから本酵素はβ-1,4-マンノシルグルコースに特異的な酵素と考えられた。一方,II型酵素についてはグルコースよりセロビオースやマンノビオースのようなオリゴ糖を良い受容体とした。またII型酵素は3糖以上の重合度のマンノオリゴ糖に対してβ-1,4-マンノシルグルコースに対するよりも高い加リン酸分解活性を示した。このことから、II型酵素はマンノオリゴ糖の加リン酸分解を担う新規な糖質ホスホリラーゼであることが明らかになった。これらのことから,マンノオリゴ糖の代謝経路を推定した。すなわち,II型酵素によるマンノオリゴ糖の加リン酸分解,セロビオース2-エピメラーゼによるマンノビオースの異性化(β-1,4-マンノシルグルコースの生成),I型酵素によるβ-1,4-マンノシルグルコースの加リン酸分解,である。
KAKENHI-PROJECT-24780091
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24780091
2つの新規な糖質ホスホリラーゼの分子解析
本年度は,Ruminococcus albusの二つのβ-1,4-マンノシルグルコースホスホリラーゼアイソザイムの組換え酵素の調製と酵素機能の解析を計画していた。両酵素遺伝子をR. albusのゲノムDNAを鋳型としたPCRによりクローニングして,大腸菌による組換え酵素生産系を構築した。二つの酵素については,当該発現系を利用することで解析に十分な量の精製酵素を調製することが可能となった。これらの酵素の生化学的機能解析を実施し,計画通り基質特異性を中心とした生化学的性質を明らかにした。すなわち,I型酵素がβ-1,4-マンノシルグルコースに特異的な加リン酸分解酵素であること,II型酵素が当初β-1,4-マンノシルグルコースホスホリラーゼと思われていたが,マンノオリゴ糖に高い活性を持つ新規な糖質ホスホリラーゼであることを明らかにした。I型酵素とII型酵素の機能的相違については,本年度の解析を通じて得られた非常に興味深い知見であった。以上のことから,二つのアイソザイムの生化学的アイデンティティを与えることができたため,本年度の目標は十分に達成できたものと考えている。β-1,4-マンノシルグルコースホスホリラーゼの機能発現に重要な構造因子の特定と解析を行う.本酵素は新規な構造を持つ酵素であるため,活性中心も現時点では不明である。このため,I型酵素をモデルとして活性残基の決定を行う。β-1,4-マンノシルグルコースホスホリラーゼはα-マンノース1-リン酸を生じることから,アノマー型の反転を伴う加リン酸分解反応を触媒する反転型ホスホリラーゼである。このような反転型ホスホリラーゼは一般酸触媒として機能するアミノ酸残基が唯一の触媒残基として働く。まずはこの一般酸触媒残基を特定する。I型酵素とII型酵素のホモログのアミノ酸配列を多重整列し,完全に保存された酸性アミノ酸残基を特定する。特定された酸性アミノ酸残基を置換した変異酵素を作製し,活性の減少から触媒残基を決定する。次にI型酵素とII型酵素の基質特異性の違いを生じる構造因子を決定する。生化学機能は未知だが立体構造情報が利用できるThermotoga maritima由来TM1225タンパク質の立体構造情報を利用し,基質結合部位と推定されるポケット様構造を構成するアミノ酸残基をI型酵素とII型酵素間で詳細に比較する。I型酵素とII型酵素で明確に異なるアミノ酸残基をピックアップし,I型酵素のアミノ酸残基をII型酵素型に置換した一連の変異酵素を作製し,基質特異性を検討する.該当なし
KAKENHI-PROJECT-24780091
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深海高水圧中のパルスパワー放電による衝撃波生成と電磁波放射に関する研究
高圧水槽ならびに実海域で試験できるように、小型高電圧パルス発生装置の試作を行なった。海中での発生した電磁波の伝播特性を計測するために、センサを開発した。発生した電磁波の周波数特性を計測した。モデル化の研究を実施した。成果を国内の学会(3件)で発表した。平成19年度は実海域の試験を行うためのシップタイムが取れなかったため、実海域の圧力下での試験が実施できなかったが、平成20年度にシップタイムが取れているため、そこで実海域試験を行う計画である。平成18年度までに製作したチャンバーならびにセンサを用いて、1000mまでの圧力下において1kVまでの電圧を放電ギャップに印加して、そのとき発生する弾性波と電磁波、放電電流を、パラメータを変化させて特性試験を行った。発生した水中の電磁波の周波数特性が比較的ブロードであることから、これを光源とした応用が考えられるため、海中での周波数特性を詳細に調べるために、まずは低圧力下での電磁波周波数特性の計測を行った。その結果、HF帯までの電磁波は水中を伝播できるらしいメカニズムがあることが分かった。今後の実験でさらに検証してゆく予定である。パルス放電はエネルギーを集中できる特徴があることから、発生した電磁波を用いてHF帯までの波長(水中ではm単位)を使った、深海アプリケーションが可能であることがわかった。これらの結果について、国内の学会にて3回発表した。また、実験結果をまとめ論文に投稿する。さらに平成20年度3月には実海域での放電試験を計画した。高圧水槽ならびに実海域で試験できるように、小型高電圧パルス発生装置の試作を行なった。海中での発生した電磁波の伝播特性を計測するために、センサを開発した。発生した電磁波の周波数特性を計測した。モデル化の研究を実施した。成果を国内の学会(3件)で発表した。平成19年度は実海域の試験を行うためのシップタイムが取れなかったため、実海域の圧力下での試験が実施できなかったが、平成20年度にシップタイムが取れているため、そこで実海域試験を行う計画である。平成18年度までに製作したチャンバーならびにセンサを用いて、1000mまでの圧力下において1kVまでの電圧を放電ギャップに印加して、そのとき発生する弾性波と電磁波、放電電流を、パラメータを変化させて特性試験を行った。発生した水中の電磁波の周波数特性が比較的ブロードであることから、これを光源とした応用が考えられるため、海中での周波数特性を詳細に調べるために、まずは低圧力下での電磁波周波数特性の計測を行った。その結果、HF帯までの電磁波は水中を伝播できるらしいメカニズムがあることが分かった。今後の実験でさらに検証してゆく予定である。パルス放電はエネルギーを集中できる特徴があることから、発生した電磁波を用いてHF帯までの波長(水中ではm単位)を使った、深海アプリケーションが可能であることがわかった。これらの結果について、国内の学会にて3回発表した。また、実験結果をまとめ論文に投稿する。さらに平成20年度3月には実海域での放電試験を計画した。
KAKENHI-PROJECT-17645080
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17645080
貿易摩擦と多国籍企業-問題認識の新しい視点を求めて-
現地生産を伴なう企業進出が貿易取引活動に量・質両面から大きな質的変化を与えるようになった資本主義世界市場の現段階における各種の経済摩擦を研究分担者がそれぞれ所期の研究テーマに沿って現状分析的な検討をすすめた.具体的な研究成果は別紙様式1,2で後日報告されるわけであるが,当年度内に行なわれた研究実績はおよそ次の2つの内容に大別される.A.多国籍企業の企業行動様式にみる新しい局面分析に係わるもの.まず,日本企業の成長戦略の展開が米国を中心とする各国との経済摩擦をいかにひき起してきたかをみずからの立地転換サイクル・モデルを利用して分析した(衣笠).また特に日欧間の経済摩擦と企業進出の現状分析をはじめ(荻野)中小企業にみる経済摩擦への対応のプロセスを検討した(高井).さらに輸出入活動が従来の独立した個別企業間の取引だけでなく多国籍企業の世界市場における企業内貿易によることが明らかにされた.まず貿易論,企業論,組織論などの理論的考察を行なう(角松)だけでなく,企業内貿易の新しい発展としての「関連企業」の国際分業と国際価格を個別経営レベルでの構造分析を行った(竹田).そして特にソーシング戦略との関係を明確にするためOEM取引に焦点をおく(沼口)だけでなく,自動車産業部門にみる全体的な企業提携過程とその問題点の検出を行った(小林).B.多国籍企業の活動結果および経営与件に係わるもの.多国籍企業の対外進出に伴なって自国経済に及ぼす影響としてのいわゆる「空洞化」問題を米国の最近の局面にとらえ,その相関を分析した(佐藤).また現地生産における現地化促進を条件づける法的条例を全体的に検討するほか(桜井), "摩擦"の極限としての戦争を繊維産業の発展との関係で明らかにした(大谷).現地生産を伴なう企業進出が貿易取引活動に量・質両面から大きな質的変化を与えるようになった資本主義世界市場の現段階における各種の経済摩擦を研究分担者がそれぞれ所期の研究テーマに沿って現状分析的な検討をすすめた.具体的な研究成果は別紙様式1,2で後日報告されるわけであるが,当年度内に行なわれた研究実績はおよそ次の2つの内容に大別される.A.多国籍企業の企業行動様式にみる新しい局面分析に係わるもの.まず,日本企業の成長戦略の展開が米国を中心とする各国との経済摩擦をいかにひき起してきたかをみずからの立地転換サイクル・モデルを利用して分析した(衣笠).また特に日欧間の経済摩擦と企業進出の現状分析をはじめ(荻野)中小企業にみる経済摩擦への対応のプロセスを検討した(高井).さらに輸出入活動が従来の独立した個別企業間の取引だけでなく多国籍企業の世界市場における企業内貿易によることが明らかにされた.まず貿易論,企業論,組織論などの理論的考察を行なう(角松)だけでなく,企業内貿易の新しい発展としての「関連企業」の国際分業と国際価格を個別経営レベルでの構造分析を行った(竹田).そして特にソーシング戦略との関係を明確にするためOEM取引に焦点をおく(沼口)だけでなく,自動車産業部門にみる全体的な企業提携過程とその問題点の検出を行った(小林).B.多国籍企業の活動結果および経営与件に係わるもの.多国籍企業の対外進出に伴なって自国経済に及ぼす影響としてのいわゆる「空洞化」問題を米国の最近の局面にとらえ,その相関を分析した(佐藤).また現地生産における現地化促進を条件づける法的条例を全体的に検討するほか(桜井), "摩擦"の極限としての戦争を繊維産業の発展との関係で明らかにした(大谷).所期の研究目的に沿って多国籍企業の企業内国際取引の理論,実態に関する整理,検討が企業内および関連企業間の国際分業体制の側面から行なわれた(竹田)。特に米国系多国籍企業関連貿易に係わる統計数値による実態の分析,企業内国際取引の位置づけ(量的側面)が行なわれた(角松)。また日本企業の国際経営活動を輸出からグローバル・オプティマイゼイションに至る発展過程のなかにとらえ、当面する経営管理上の課題の検出を行なった(小林)。これをふまえ個別経営的視点からする問題としては、まず、わが国の生産立地をめぐる構造的変化のなかで日本産業の空洞化を回避しようとする日本企業の外国(米国なり,NICsなり)生産立地活用の研究があげられる(衣笠)。さらに輸出入活動に関連していえば、まず、対外輸出の変質をもたらしつつあるOEM輸出についての調査がなされ,対米OEM輸出は約50億ドルと推定され,ハイテク分野の貿易摩擦商品のウエイトの高いことが確認された(沼口)。一方輸入に関してはわが国の市場開放と輸入構造の変化を背景とした輸入品市場の実態と外資系企業の流通戦略に関するデータ収集と整理がすすめられた(高井)。以上のような多国籍企業化の道をいく企業行動の集積として、国民経済レベルでの貿易量の変化とそれに係わる紛争の諸相を整理,検討すること(大谷)に加え、特に日米間の経済摩擦が社会経済的視点から分析されている。すなわち、すでになされた通貨調整にもかかわらず、なぜ米国の貿易収支は改善されなかったのか,米国経済の構造的欠陥および米国経済「活性化」のための諸条件の研究がすすめられた(佐藤)。そして対米投資摩擦の回避,軽減をめざして、(1)摩擦発生の可能性ある分野の現況、(2)各分野での日系企業に対する米国側の反応の調査が行なわれたのである(桜井)。
KAKENHI-PROJECT-61301078
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61301078
貿易摩擦と多国籍企業-問題認識の新しい視点を求めて-
現地生産を伴なう企業進出が貿易取引活動に量・質両面から大きな質的変化を与えるようになった資本主義世界市場の現段階における各種の経済摩擦を研究分担者がそれぞれ所期の研究テーマに沿って現状分析的な検討をすすめた.具体的な研究成果は別紙様式1,2で後日報告されるわけであるが,当年度内に行なわれた研究実績はおよそ次の2つの内容に大別される.A.多国籍企業の企業行動様式にみる新しい局面分析に係わるもの.まず,日本企業の成長戦略の展開が米国を中心とする各国との経済摩擦をいかにひき越してきたかをみずからの立地転換サイクル・モデルを利用して分析した(衣笠).また特に日欧間の経済摩擦と企業進出の現状分析をはじめ(荻野),中小企業にみる経済摩擦への対応のプロセスを検討した(高井).さらに輸出入活企が従来の独立した個別企業間の取引だけでなく多国籍企業の世界市場における企業内貿易によることが明らかにされた.まず貿易論,企業論,組織論などの理論的考察を行なう(角松)だけでなく,企業内貿易の新しい発展としての「関連企業」内の国際分業と国際価格を個別経営レベルでの構造分析を行なった(竹田).そして特にソーシング戦略との関係を明確にするためOEM取引に焦点をおく(沼口)だけでなく,自動車産業部門にみる全体的な企業提携過程とその問題点の検出を行なった(小林).B.多国籍企業の活動結果および経営与件に係わるもの.多国籍企業の対外進出に伴なって自国経済に及ぼす影響としてのいわゆる「空洞化」問題を米国の最近の局面にとらえ,その相関を分析した(佐藤).また現地生産における現地化促進を条件づける法的条件を全体的に検討するわか(桜井),"摩擦"の極限としての戦争を繊維産業の発展との関係で明らかにした(大谷).
KAKENHI-PROJECT-61301078
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ホヤの変態に関わる遺伝子の網羅的解析
本研究の目的は、ホヤ類の変態開始に関わる遺伝子とそのメカニズムを明らかにすることである。本研究では、ホヤ類の変態過程に関わる遺伝子として、カタユウレイボヤの幼生期から尾部吸収後にかけて発現量が増加する遺伝子のクローンおよび発現量が減少する遺伝子のクローンを単離して解析を行ってきた。これまでの研究では、発現量が増加する遺伝子の解析を中心に行い、また発現量が減少する遺伝子については、Ciona cDNA projectのデータベースを用いて解析を行ってきた。本年度は、発現量が減少する遺伝子について、さらに引き続き解析を行った。遊泳幼生期から尾部吸収後にかけて発現量が減少する遺伝子のクローンは219クローン得られた。両端塩基配列を決定してクラスターに分類したところ53の独立クラスターに分けられた。これらのクラスターは、尾部組織で発現するクラスター群、細胞外マトリックスに関わる遺伝子やドメインをコードするクラスター群、既知の遺伝子に相同性のないクラスター群に大別することができた。尾部組織で発現するクラスター群には、尾部筋肉を構成するmyosin heavy chainやトロポミオシンなどが多く含まれていた。幼生の尾部組織は変態開始後に体幹部に吸収され成体組織の形成には寄与しないことから、尾部組織で発現するクラスター群は予想どおりの結果であった。細胞外マトリックスに関わる遺伝子やドメインをコードするクラスター群には、typeI Vcollagenなどが含まれており、変態過程では細胞外基質や表皮などを含めた全体的な形態の再構築が行われることが示唆された。既知の遺伝子に相同性のないクラスター群の中には、発現量の変化が顕著で特徴的な発現パターンを示すクローンのクラスターが含まれており、これらは今後の解析が期待される。本研究は今後のカタユウレイボヤの変態機構の解明と発展に対し、発現遺伝子の重要な基礎情報を提供する。本研究の目的は、ホヤ類の変態開始に関わる遺伝子とそのメカニズムを明らかにすることである。本研究では、ホヤ類の変態過程に関わる遺伝子として、カタユウレイボヤの幼生期から尾部吸収後にかけて発現量が増加する遺伝子のクローンおよび発現量が減少する遺伝子のクローンを単離して解析を行ってきた。これまでの研究では、発現量が増加する遺伝子の解析を中心に行い、また発現量が減少する遺伝子については、Ciona cDNA projectのデータベースを用いて解析を行ってきた。本年度は、発現量が減少する遺伝子について、さらに引き続き解析を行った。遊泳幼生期から尾部吸収後にかけて発現量が減少する遺伝子のクローンは219クローン得られた。両端塩基配列を決定してクラスターに分類したところ53の独立クラスターに分けられた。これらのクラスターは、尾部組織で発現するクラスター群、細胞外マトリックスに関わる遺伝子やドメインをコードするクラスター群、既知の遺伝子に相同性のないクラスター群に大別することができた。尾部組織で発現するクラスター群には、尾部筋肉を構成するmyosin heavy chainやトロポミオシンなどが多く含まれていた。幼生の尾部組織は変態開始後に体幹部に吸収され成体組織の形成には寄与しないことから、尾部組織で発現するクラスター群は予想どおりの結果であった。細胞外マトリックスに関わる遺伝子やドメインをコードするクラスター群には、typeI Vcollagenなどが含まれており、変態過程では細胞外基質や表皮などを含めた全体的な形態の再構築が行われることが示唆された。既知の遺伝子に相同性のないクラスター群の中には、発現量の変化が顕著で特徴的な発現パターンを示すクローンのクラスターが含まれており、これらは今後の解析が期待される。本研究は今後のカタユウレイボヤの変態機構の解明と発展に対し、発現遺伝子の重要な基礎情報を提供する。
KAKENHI-PROJECT-01J60054
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サハリンの白亜系の層序・古生物学的研究と北太平洋地域の白亜紀事変の検討(第2次)
平成5-6年度の第一次調査(代表者加瀬友喜)に引き続き,サハリン南西端クリリオン地域の白亜系を中心とした野外調査と,サハリンの白亜系模式地のナイバ川流域の補足調査を行った.クリリオン地域(旧能登呂半島)は北海道の白亜系との対比にはきわめて重要な位置にあるが,軍事的要衝として厳しく立入りが制限されていたためこれまでほとんど調査がなされていなかった.今回の調査ではクリリオン西岸地域のガルブ-シャ川と同東岸地域のクラ川のセクションを中心に,アンモナイトほか大型化石による生層序学的検討をした.その結果,クラ川ではブイコフ層上部からクラスノヤルカ層にわたって保存のよい大型化石が連続して多産し,これまで北海道やサハリンで断片的にしか知られていなかったカンパニアン階の生層序を一つのルートで確認することができた.とくに,カンパニアン階最上部を指示するPacydiscus awajiensisの産出を認め,"Pachydiscus"soyaensisとP.awajiensisの産出する層準の間に,これまでに知られていない化石群を見出すことができたことが注目に値する.カンパニアン階の対比を行う上で,クラ川ルートは北太平洋地域の重要な基準セクションとなる.ナイバ川支流のクラスノヤルカ川では,従来の生層序調査に加えて,36地点(約250点)の古地磁気測定試料を採取した.その結果,サントニアン期まで続いた白亜紀磁気静穏期の正磁極期以後,カンパニアンマ-ストリヒシアン期の古地磁気層序との対応を明らかにし得た.並行して検討を行っている,炭素の同位体比層序とあわせて,北太平洋地域における上部白亜系のもっとも細密な生層序・年代層序をサハリンで確立できる見通しである.また,海成動物化石の他に,陸源の植物遺体の試料収集・検討も行っており,北太平洋地域における海陸両域の白亜紀事変の多角的検討が可能となった.平成5-6年度の第一次調査(代表者加瀬友喜)に引き続き,サハリン南西端クリリオン地域の白亜系を中心とした野外調査と,サハリンの白亜系模式地のナイバ川流域の補足調査を行った.クリリオン地域(旧能登呂半島)は北海道の白亜系との対比にはきわめて重要な位置にあるが,軍事的要衝として厳しく立入りが制限されていたためこれまでほとんど調査がなされていなかった.今回の調査ではクリリオン西岸地域のガルブ-シャ川と同東岸地域のクラ川のセクションを中心に,アンモナイトほか大型化石による生層序学的検討をした.その結果,クラ川ではブイコフ層上部からクラスノヤルカ層にわたって保存のよい大型化石が連続して多産し,これまで北海道やサハリンで断片的にしか知られていなかったカンパニアン階の生層序を一つのルートで確認することができた.とくに,カンパニアン階最上部を指示するPacydiscus awajiensisの産出を認め,"Pachydiscus"soyaensisとP.awajiensisの産出する層準の間に,これまでに知られていない化石群を見出すことができたことが注目に値する.カンパニアン階の対比を行う上で,クラ川ルートは北太平洋地域の重要な基準セクションとなる.ナイバ川支流のクラスノヤルカ川では,従来の生層序調査に加えて,36地点(約250点)の古地磁気測定試料を採取した.その結果,サントニアン期まで続いた白亜紀磁気静穏期の正磁極期以後,カンパニアンマ-ストリヒシアン期の古地磁気層序との対応を明らかにし得た.並行して検討を行っている,炭素の同位体比層序とあわせて,北太平洋地域における上部白亜系のもっとも細密な生層序・年代層序をサハリンで確立できる見通しである.また,海成動物化石の他に,陸源の植物遺体の試料収集・検討も行っており,北太平洋地域における海陸両域の白亜紀事変の多角的検討が可能となった.平成5-6年度の第一次調査(代表者加瀬友喜)に引き続き,サハリン南西端クリリオン地域の白亜系を中心とした野外調査と,サハリンの白亜系摸式地のナイバ川流域の補足調査を行った.クリリオン地域(旧能登呂半島)は北海道の白亜系との対比にはきわめて重要な位置にあるが,軍事的要衝として厳しく立入りが制限されていたためこれまでほとんど調査がなされていなかった.今回の調査ではクリリオン西岸地域のガルブ-シャ川と同東岸地域のクラ川のセクションを中心に,アンモナイトほか大型化石による生層序学的検討をした.その結果,クラ川ではブイコフ層上部からクラスノヤルカ層にわたって保存のよい大型化石が連続して多産し,これまで北海道やサハリンで断片的にしか知られていなかったカンパニアン階の生層序を一つのルートで確認することができた.
KAKENHI-PROJECT-08041113
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08041113
サハリンの白亜系の層序・古生物学的研究と北太平洋地域の白亜紀事変の検討(第2次)
とくに,カンパニア階最上部を指示するPacydiscus awajiensisの産出を認め,"Pachydiscus"soyaensisとP.awajiensisの産出する層準の間に,これまでに知られていない化石群を見出すことができたことが注目に値する.カンパニアン階の対比を行う上で,クラ川ルートは北太平洋地域の重要な基準セクションとなる.ナイバ川支流のクラスノヤルカ川では,従来の生層序調査に加えて,36地点(約250点)の古地磁気測定試料を採取した.その結果,サントニアン期まで続いた白亜紀磁気静穏期の正磁極期以後,カンパニアンマ-ストリヒシアン期の古地磁気層序との対応を明らかにし得た.平行して検討を行っている,炭素の同位体比層序とあわせて,北太平洋地域における上部白亜系のもっとも細密な生層序・年代層序をサハリンで確立できる見通しである.また,海成動物化石の他に,陸源の植物遺体の試料収集・検討も行っており,北太平洋地域における海陸両域の白亜紀事変の多角的検討が可能となった.
KAKENHI-PROJECT-08041113
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重度認知症高齢者における標準的口腔ケアガイドラインの開発に関する研究
初年度に,認知症治療病棟に勤務する看護師にインタビューを実施し重度認知症高齢者に実施している口腔ケア介入を明らかにした.次いで書籍に記された口腔ケア方法と比較した.2年目に重度認知症高齢者の看護を担う看護師10名に確定した口腔ケア方法の評価と有用性についてインタビューした.最終年度は,認知症疾患医療センターを有する全国264施設に勤務する看護職員を対象に,重度認知症高齢者に対する口腔ケア方法の実践頻度と必要性についてアンケート調査を実施し,ガイドラインに含むべき口腔ケア項目として、重度認知症高齢者の状態・症状20項目、実践方法90項目を確定した.厚生労働省の推計によると2012年の段階で介護を必要とする認知症高齢者の数は全国で305万人を超え、平成31年には470万人に増加する見通しである。「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」による報告書(2008年7月)では、今後の認知症対策として重要なのは、認知症ケアの標準化・高度化の推進により、適切な医療・介護サービスを提供するとともに、本人やその家族の生活を支援し、認知症ケアの質の向上をはかることである、と指摘している。認知症高齢者では、症状の重症度が増すほど、口腔状態の悪化や、誤嚥性肺炎などの増加が報告されており、口腔ケア自立度の低下と、介護度の上昇が推測される。そのため、重度認知症高齢者における標準的口腔ケアガイドラインの開発は、必須であると考える。そこで、本研究は、第一段階として、重度認知症高齢者の状態に適した口腔ケア方法を具体的な実践のレベルで明らかにすることとした。初年度は、認知症疾患医療センターを揺する病院に勤務し、重度認知症高齢者に直接関わっている看護師へのインタビューを実施し、内容分析を行った。重度認知症高齢者の口腔ケア介入の現状として、461枚のラベルを分析した結果、【口腔ケアに関する介入】【認知機能低下に関する介入】【リスク管理に関する介入】【義歯における介入】【口腔ケアにおける連携】の5項目にまとめることができた。これらには、重度認知症高齢者を対象に、実際に行っている具体的な工夫や効果的な方法が示されていた。次年度は、今年度の結果を元に、ガイドライン案の作成と実施状況について全国調査を実施する予定である。厚生労働省の推計によると2012年の段階で介護を必要とする認知症高齢者の数は全国で305万人を超え,平成37年には470万人に増加する見通しである。「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」による報告書(2008年7月)では,今後の認知症対策として重要なのは,認知症ケアの標準化・高度化の推進により,適切な医療・介護サービスを提供するとともに,本人やその家族の生活を支援し,認知症ケアの質の向上をはかることである,と指摘している。また,「2015年の高齢者介護」報告においては認知症高齢者ケアの普遍化が謳われている。認知症ケアの普遍化にはケアの標準化が必須であり,認知症高齢者の有する能力に応じ,生活の中で主体的に能力を発揮できるような支援方法の開発や系統的なエビデンスの収集と評価の確率が早急に求められている。しかし,現在,認知症高齢者への口腔ケアに関する研究の多くは事例研究や質的な分析にとどまり,認知症高齢者に対する口腔ケアの一側面を捉えたものが多く,標準化を目的とした研究は充分とはいえないのが現状である。認知症高齢者は重症化が進むほど口腔内の状態が悪化し,介護が必要となることが明らかである。今後,増加が予測される重度認知症高齢者に対して,施設・在宅を問わず標準的な口腔ケアガイドラインの開発は重要な課題であると考える。本研究において、初年度は、認知症疾患医療センターを有する病院に勤務する看護師にインタビューを行い、内容分析を行った。2年目は、その結果を元に、全国約250の認知症疾患医療センターを有する施設の看護師を対象にアンケート調査を行った。次年度は、アンケート調査を分析し、重度認知症高齢者に対して使用する標準的な口腔ケアガイドラインを作成する予定である。2年目に計画した、全国の認知症疾患医療センターを有する施設に勤務する看護師に対し、郵送法にてアンケートを依頼し、約550人(40%)から返信を得ている。平成26年度に、認知症治療病棟に勤務する看護師にインタビューを実施し,重度認知症高齢者に実施している口腔ケア介入を具体的行為レベルで明らかにした.次いで,重度認知症高齢者の状態に供されている口腔ケア方法の確定のために,口腔ケアに関する主要な書籍に記された口腔ケア方法を確認し,看護師が行っていた口腔ケア介入と書籍に記された口腔ケア方法と比較した.次に,認知症看護認定看護師1名,摂食・嚥下障害看護認定看護師2名に提示し,彼らの意見も加え,口腔ケア方法を確定した.平成27年度は,重度認知症高齢者に対する口腔ケア方法の各項目に沿った研修会実施後に,重度認知症高齢者の看護を日常業務として担う看護師10名に確定した口腔ケア方法の評価を必要性・実施・効果の視点で依頼し,それぞれについての発言回数,相関関係等を比較すると同時に有用性について分析した.平成28年度は,認知症疾患医療センターを有する全国264施設に勤務する看護職員を対象に,重度認知症高齢者に対する口腔ケア方法の実践頻度についてアンケート調査を実施した。全送付数は1337名であり、108施設543名から返却があった。そのうち、有効回答数は476名であった。
KAKENHI-PROJECT-26463479
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26463479
重度認知症高齢者における標準的口腔ケアガイドラインの開発に関する研究
平均年齢は42.90±10.0歳、男性78人16.4%、女性398人83.6%であった。看護師経験平均年数は18.16±9.85歳、認知症治療病棟経験平均年数は6.84±6.06年であった。摂食・嚥下障害看護認定看護師2人0.4%、認知症看護認定看護師16人3.4%、老人看護専門看護師1人0.2%であった。最終的に、ガイドライン項目の実施状況をアンケートにより確認し,ガイドラインに含むべき口腔ケア項目として、重度認知症高齢者の状態・症状20項目、実践方法90項目を確定した.初年度に,認知症治療病棟に勤務する看護師にインタビューを実施し重度認知症高齢者に実施している口腔ケア介入を明らかにした.次いで書籍に記された口腔ケア方法と比較した.2年目に重度認知症高齢者の看護を担う看護師10名に確定した口腔ケア方法の評価と有用性についてインタビューした.最終年度は,認知症疾患医療センターを有する全国264施設に勤務する看護職員を対象に,重度認知症高齢者に対する口腔ケア方法の実践頻度と必要性についてアンケート調査を実施し,ガイドラインに含むべき口腔ケア項目として、重度認知症高齢者の状態・症状20項目、実践方法90項目を確定した.初年度に計画した、認知症疾患医療センターを有する病院に勤務し、重度認知症高齢者に直接関わっている看護師へのインタビューが終了し、内容分析まで終了している。今後は、3年目に計画している全国調査のデータ分析を行い、重度認知症高齢者における標準的口腔ケアガイドラインを作成する予定である。医歯薬学今後は、口腔ケアに関する基本文献を参考に研究協力者である認知症看護認定看護師1名と摂食嚥下障害看護認定看護師2名、老年看護学研究者2名と十分な検討を行い、重度認知症高齢者へに口腔ケアの要素を抽出し、重度認知症高齢者への口腔ケアガイドライン案を作成し、認知症疾患医療センターを有する施設に勤務する看護職員を対象に重度認知症高齢者への口腔ケアガイドライン案の項目ごとに、そのケア行為を実際にどの程度実施しているか実践頻度を質問紙によるアンケート調査を実施する予定である。調査対象は、全国の認知症疾患医療センターを有する施設に勤務する看護職員約2500名を対象とする。調査方法は郵送法で行う。本年度、国際学会での発表を行い、旅費が予算より多く使用することとなったため。当初の予定であった、研究分担者による物品の購入が次年度となったことと、人件費が予想より下回ったため。次年度は、データ分析とガイドライン作成が主となり学会発表には至らないため、予算として計画していた旅費を今年度使用した。次年度は、データ入力と報告書作成費用が主となると考える。研究分担者による物品の購入と、研究に関する成果発表のための交通費・宿泊費として計画している。
KAKENHI-PROJECT-26463479
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遺伝性神経変性疾患(特に痙性対麻痺)におけるAAAファミリー蛋白の機能解析
常染色体優性遺伝形式をとる痙性対麻痺のうち、最も頻度が高いSPG4の原因遺伝子はspastinをコートしている。spastinはAAAファミリー蛋白に属しているが、spastinの機能と神経変性に至る機序を解明することを目的として研究を行った。1.Spastinの細胞内局在の解析強制発現系では、全長の正常および変異蛋白(A485V)は核周囲に偏在し、L426V変異蛋白は一部α-tubulinと一致するfiber状の局在を示した。TM+のみの部分蛋白は核周囲に偏在し全長と類似の局在を示したが、TM-の部分蛋白では核または細胞質にびまん性に局在した。α-tubulin染色では、正常の全長蛋白が強く発現した細胞において微小管の染色性が低下し、切断された微小管が観察された。2.抗spastin抗体を用いた発現と細胞内局在の解析N末の合成ペプチドに対するポリクローナル抗体と、リコンビナント蛋白(230-616アミノ酸)に対するポリクローナル抗体を作成した。Spastinはどちらの抗体においても、HeLa細胞の細胞分裂間期では主に核に局在し、分裂期では一部centrosomeにも局在がみられた。hNT2細胞では核と神経突起の先端に局在していた。3.siRNAを用いた蛋白機能の解析HeLa細胞でspastinをknock-downさせたところ、細胞分裂後期に細胞の分離障害がみられた。またhNT2細胞では神経突起の先端の脆弱化または枝状の細胞が観察された。遺伝子プロファイリングでは、二種類のsiRNAともにcontrolに比べて増減を示した遺伝子群の中に、M期にリン酸化されるモーター蛋白であるMPP1を認めたが、このMPP1は強制発現系において一部spastinと局在が一致していた。常染色体優性遺伝形式をとる痙性対麻痺のうち、最も頻度が高いSPG4の原因遺伝子はspastinをコートしている。spastinはAAAファミリー蛋白に属しているが、spastinの機能と神経変性に至る機序を解明することを目的として研究を行った。1.Spastinの細胞内局在の解析強制発現系では、全長の正常および変異蛋白(A485V)は核周囲に偏在し、L426V変異蛋白は一部α-tubulinと一致するfiber状の局在を示した。TM+のみの部分蛋白は核周囲に偏在し全長と類似の局在を示したが、TM-の部分蛋白では核または細胞質にびまん性に局在した。α-tubulin染色では、正常の全長蛋白が強く発現した細胞において微小管の染色性が低下し、切断された微小管が観察された。2.抗spastin抗体を用いた発現と細胞内局在の解析N末の合成ペプチドに対するポリクローナル抗体と、リコンビナント蛋白(230-616アミノ酸)に対するポリクローナル抗体を作成した。Spastinはどちらの抗体においても、HeLa細胞の細胞分裂間期では主に核に局在し、分裂期では一部centrosomeにも局在がみられた。hNT2細胞では核と神経突起の先端に局在していた。3.siRNAを用いた蛋白機能の解析HeLa細胞でspastinをknock-downさせたところ、細胞分裂後期に細胞の分離障害がみられた。またhNT2細胞では神経突起の先端の脆弱化または枝状の細胞が観察された。遺伝子プロファイリングでは、二種類のsiRNAともにcontrolに比べて増減を示した遺伝子群の中に、M期にリン酸化されるモーター蛋白であるMPP1を認めたが、このMPP1は強制発現系において一部spastinと局在が一致していた。1.spastinの細胞内局在の解析spastinの全長をGFP、Myc、Hisとの融合蛋白としてHelaおよびhNT2細胞に強制発現させたところ、正常蛋白もミスセンス変異蛋白(A486V)もともに細胞質に斑点状、もしくは核周囲に偏在して発現した。α-tubulin染色では、正常も変異蛋白も切断された微小管が観察され、微小管の染色性が低下した。我々はspastinにNES配列が存在することをはじめて見いだしたが、spastinの核外輸送には、70アミノ酸ほどの長い配列が必要であることが判明した。また、CRM-1の結合阻害剤であるLMBだけでなく、酸化剤(H_2O_2)によっても核外への輸送が阻害された。2.抗spastin抗体の作成と発現・細胞内局在の解析spastinのN末1-15アミノ酸の合成ペプチドに対するボリクローナル抗体を作成した。正常ヒト組織におけるspastinの発現量は腎臓で多く、筋肉では少なかった。中枢神経系では脊髄での発現が少なかった。抗体を用いた細胞内局在の検討では、内因性spastinは主として核に局在した。強制発現系とのspastinの局在の違いは、過剰発現によるものと思われた。3.siRNAを用いた蛋白機能の解析136ntから合成したsiRNAにおいて、mRNAの抑制効果が認められた。今後、spastin機能のknock downにより変化する遺伝子群について解析を行う予定である。4.sacsin遺伝子変異の同定我々は遺伝性痙性対麻痺の遺伝子解析において、本邦ではじめてsacsin遺伝子変異を見いだした(Neurology 2004年1月号)1.Spastinの細胞内局在の解析強制発現系では、全長の正常および変異蛋白(L485V)は核周囲に偏在し、L426V変異蛋白は一部α-tubulinと一致するfiber状の局在を示した。
KAKENHI-PROJECT-15590903
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15590903
遺伝性神経変性疾患(特に痙性対麻痺)におけるAAAファミリー蛋白の機能解析
TM+のみの部分蛋白は核周囲に偏在し全長と類似の局在を示したが、TM-の部分蛋白では核または細胞質にびまん性に局在した。α-tubulin染色では、正常の全長蛋白が強く発現した細胞において微小管の染色性が低下し、切断された微小管が観察された。2.抗spastin抗体を用いた発現と細胞内局在の解析N末の合成ペプチドに対するポリクローナル抗体と、リコンビナント蛋白(230-616アミノ酸)に対するポリクローナル抗体を作成したが、spastinはどちらの抗体においても、HeLa細胞の細胞分裂間期では主に核または細胞質に局在し、分裂期では一部centrosomeにも局在がみられたが、主にα-tubulinと一致していた。hNT2細胞では核と神経突起の先端に局在していた。3.siRNAを用いた蛋白機能の解析HeLa細胞でspastinをknock-downさせたところ、細胞分裂後期に細胞の分離障害がみられた。またhNT2細胞では神経突起の先端の脆弱化または枝状の細胞が観察された。遺伝子プロファイリングでは、二種類のsiRNAともにcontrolに比べて増減を示した遺伝子群の中に、M期にリン酸化されるモーター蛋白であるMPP1を認めたが、このMPP1は強制発現系において一部spastinと局在が一致していた。
KAKENHI-PROJECT-15590903
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律蔵の構造に関する総合的研究
昨年度に引き続いて、律蔵関係資料の収集を行いながら、パーリ上座部のVinaya-pitaka(いわゆるパーリ律)と法蔵部の四分律を主たる対象として、そこに説かれている「学処(律規定)」の調査を行ない、データベース作成のための基礎的な整理作業を行った。パーリ律と四分律に関しては、基本的なデータ抽出をほぼ終えることが出来たと考えるが、平行して存在する他の律文献(五分律・十誦律・摩訶僧祇律・根本説一切有部律)に関する調査・整理については、与えられた時間の中で完了するにはいたらなかった。しかし、昨年度の報告にも示したように、研究の過程で明らかになった「淨」および「淨人」の問題に関しては、その重要性を再確認することがてき、この間題をめぐる研究の成果を「律規定の解禁をめぐる諸問題」と題して日本印度学仏教学会の学術大会(及び雑誌『印度学仏教学研究』)で公表した。そこでは、仏教教団がそれを取りまく社会的な状況の変化に応じて学処を随時改正・変更していく様子を明確化し、加えて「食」の受容をめぐる規制緩和の実態や問題点などを明らかにした。その結果、一般的に考えられているように、仏教教団が成立の当初から厳格主義(rigorism)を一貫して保とうとしてきたとは必ずしも考えられない事が確認された。この問題は律蔵の構造を解明していく上でも重要な点であり、昨年度より注目している「淨」のシステムと密接に関わりながら展開してきた問題であると捉えられる。従って、仏教史を「教団」という視点から眺める場合には、このような教団の方向性や理念を正確に把握する必要があり、その上で個々の律文献の展開史も考慮することによって、はじめて律蔵の全体的な構造と機能が明らかになっていくことを再確認することが出来たと言える。平成10年度の研究計画に則り、律蔵関係資料の収集を行いながら、まずはパーリ上座部のVinaya-pitakaと法蔵部の『四分律』を主な対象として、そこに説かれている「学処(律規定)」の調査を行ない、併せてデータベース作成のための基礎的な整理作業を行った。対象とする資料が膨大であるため、そのすべてを調査・整理するには至らなかったが、その過程で、初期の仏教教団と密接な関わりを有していた「アーラーミカ」の存在が確認され、それが「律蔵」や「学処」の構造、および教団における実際上の機能を解明するための重要な要素の一つであることが明かとなった。この事実を基にして、「学処」の総合的な調査と平行する形で、本年度は「アーラーミカの起源」についても調査を行い、その成果を「律蔵にあらわれるアーラーミカ」と題して日本印度学仏教学会の学術大会(及び雑誌『印度学仏教学研究』)で公表した。そこでは特に、「アーラーミカ」と呼ばれる一群の人々が教団に関与し始める経緯を明らかにし、それによって仏教教団が変容していく過程や、「律蔵」が構造的にも変化していく点などを明確化した。この「アーラーミカ」は、後に「淨人」と呼ばれるようになる人々と密接な関係を有する存在であるが、「学処」を詳細に調査していくと、その殆どが「淨人」および彼らの行う「淨」というシステムの上に成立している可能性のあることが確認された。従って、「淨人」や「淨」の制度を検討することは、「律蔵」の全体的な構造を解明するために不可欠の要素であると思われる。平成11年度は、「学処」の総合的整理を継続して行いながら、特に「淨人」に注目して、「学処」や教団との関わり等についての検討を行っていく予定である。昨年度に引き続いて、律蔵関係資料の収集を行いながら、パーリ上座部のVinaya-pitaka(いわゆるパーリ律)と法蔵部の四分律を主たる対象として、そこに説かれている「学処(律規定)」の調査を行ない、データベース作成のための基礎的な整理作業を行った。パーリ律と四分律に関しては、基本的なデータ抽出をほぼ終えることが出来たと考えるが、平行して存在する他の律文献(五分律・十誦律・摩訶僧祇律・根本説一切有部律)に関する調査・整理については、与えられた時間の中で完了するにはいたらなかった。しかし、昨年度の報告にも示したように、研究の過程で明らかになった「淨」および「淨人」の問題に関しては、その重要性を再確認することがてき、この間題をめぐる研究の成果を「律規定の解禁をめぐる諸問題」と題して日本印度学仏教学会の学術大会(及び雑誌『印度学仏教学研究』)で公表した。そこでは、仏教教団がそれを取りまく社会的な状況の変化に応じて学処を随時改正・変更していく様子を明確化し、加えて「食」の受容をめぐる規制緩和の実態や問題点などを明らかにした。その結果、一般的に考えられているように、仏教教団が成立の当初から厳格主義(rigorism)を一貫して保とうとしてきたとは必ずしも考えられない事が確認された。この問題は律蔵の構造を解明していく上でも重要な点であり、昨年度より注目している「淨」のシステムと密接に関わりながら展開してきた問題であると捉えられる。
KAKENHI-PROJECT-10710008
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律蔵の構造に関する総合的研究
従って、仏教史を「教団」という視点から眺める場合には、このような教団の方向性や理念を正確に把握する必要があり、その上で個々の律文献の展開史も考慮することによって、はじめて律蔵の全体的な構造と機能が明らかになっていくことを再確認することが出来たと言える。
KAKENHI-PROJECT-10710008
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超安定型アニオン交換膜の創製とアルカリ形燃料電池の高性能化
アルカリ形燃料電池の高性能化および高耐久化を目指して、新型のアニオン交換膜の設計および合成を行った。芳香族ポリエーテルブロック共重合体に着目し、剛直な主鎖から成る疎水部ブロックとアンモニウム基を高密度で置換した親水部ブロックからなるアニオン交換膜を合成した。得られたアニオン交換膜は水中で高いアニオン導電性と優れた安定性を示した。ヒドラジンを燃料に用いたアルカリ形燃料電池では、高い性能を達成した。アルカリ形燃料電池の高性能化および高耐久化を目指して、新型のアニオン交換膜の設計および合成を行った。芳香族ポリエーテルブロック共重合体に着目し、剛直な主鎖から成る疎水部ブロックとアンモニウム基を高密度で置換した親水部ブロックからなるアニオン交換膜を合成した。得られたアニオン交換膜は水中で高いアニオン導電性と優れた安定性を示した。ヒドラジンを燃料に用いたアルカリ形燃料電池では、高い性能を達成した。本年度は芳香族高分子にアンモニオ基を導入したアニオン交換膜において、ブロック共重合化の効果を検討した。芳香族ポリエーテルブロック共重合体は、求核置換重縮合により重合した。得られたポリマーのクロロメチル化反応を行い、溶液キャスト法により製膜を行った。この前駆体高分子膜をトリメチルアミン水溶液に浸漬させることで四級アンモニオ化し、続いて1Mの水酸化ナトリウム水溶液を用いたイオン交換により、OH^-型の淡黄色透明の強靭な膜として得た。水中におけるアニオン導電率、含水率、モルフォロジー、化学的安定性などの評価を行った。芳香族ポリエーテルブロック共重合体は、疎水性ブロックの長さ(X)と親水性ブロックの長さ(Y)を調節して合成を行った。全てのブロック共重合体は高分子量体(重量平均分子量は90kDa以上)であり、強靭で柔軟な膜を得た。クロロメチル化反応時間を変化させることでクロロメチル基の導入率を制御し、四級アンモニオ化反応により様々なイオン交換容量(IEC=0.41.9mequiv/g)を有する電解質膜(QPE)を作製した。透過型電子顕微鏡観察から、ランダム共重合体膜(rQPE)に比べてミクロ相分離構造が発達していることが確認できた。QPE膜の水中におけるイオン導電率の温度依存性を測定したところ、QPE膜はrQPE膜に比べてIECが低いにもかかわらず、高いアニオン導電率を示した。例えば、IECが1.44mequiv/gのQPE膜は、80°Cにおいて77mS/cmという高いヒドロキシイオン導電率を示した。QPE膜の化学的安定性(10wt%-HH、1M-KOH、燃料:5wt%-HH+1M-KOH)を試験したところ、いずれの試験でも500h経過後も膜形状に大きな変化は認められず、優れた安定性を示した。本年度は、アニオン交換膜を用いて膜電極接合体を作製し、燃料電池発電特性を評価した。疎水部にスルホンとケトンを含む芳香族オリゴエーテル、親水部にアンモニウム置換フルオレンを含む芳香族オリゴエーテル、から成る高分子電解質QPE-bl-1膜を選定した。アンモニウム基としては合成の容易さ、溶解性、化学安定性の点からトリメチルアンモニウム基を用いた。QPE-bl-1膜はブロック構造に基づく親疎水相分離構造が発達していることが透過型電子顕微鏡像より確認し、水中で144mS/cmという非常に高い水酸化物イオン伝導度を示した。また、80°Cの水中において5000時間の耐久性後でも高い伝導度を保持し、優れた化学安定性を示した。QPE-bl-1を用いて膜電極接合体(MEA)を作製した。アノード触媒にはニッケル粉末、カソード触媒にはコバルト/ポリピロール錯体を用いて、触媒コート(CCM)法によって作製した。このMEAを用いて、ヒドラジン水溶液を燃料とする燃料電池運転実験を行った。燃料にはヒドラジニウムの生成抑制と電解質膜の導電率向上、カソードにおける酸素還元反応促進のために水酸化カリウムを加えた。この燃料電池の開回路電圧(OCV)は、酸素および空気を酸化剤に用いた場合にそれぞれ0.76V、0.71Vであった。水素を燃料に用いた一般的な燃料電池(OCV=ca. 1.0V)に比べてOCVは低いのは、電解質膜中をヒドラジンが透過するためである(30°Cにおける電解質膜中のヒドラジン透過率は2.3g mm/m2 h)。出力特性も良好であり、最高出力は酸素および空気を酸化剤に用いた場合にそれぞれ297mW/cm2(電流密度826mA/cm2)、161mW/cm2(電流密度446mA/cm2)を達成した。QPE-bl-1膜がアルカリ形燃料電池において優れた特性を示すことを実証できた。本年度はアニオン導電性電解質膜の更なる安定性向上を目的として、前駆体ポリマーとしての安定性が高い主鎖構造を用いトリメチルアンモニオ基以外のイオン交換基の安定性を比較した。疎水性、前駆体親水性オリゴマーおよびブロック共重合体は求核置換重合法により合成し、NMRスペクトルから目的構造であることを確認した。ブロック共重合体は、GPC測定より高分子量体(重量平均分子量が40 kDa以上)が得られたことを確認した。クロロメチル化反応はクロロ
KAKENHI-PROJECT-23350089
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超安定型アニオン交換膜の創製とアルカリ形燃料電池の高性能化
メチルエーテルを用いたフリーデルクラフツ反応により行い、1H NMR測定よりクロロメチル基を定量的に導入したことを確認した。モデル反応により最適化した様々な三級アミンの四級化反応条件をクロロメチル化ポリマーに適用することで、異なるイオン交換基を持つアニオン交換膜の合成に成功した。アニオン交換膜の水中における導電率は、イオン交換基に依存していた。この依存性は、イオン交換基の疎水性、塩基性および陽電荷の局在化に起因していると考えられる。同程度のイオン交換容量(IEC)で比較すると、トリメチルアンモニウム型が最も高い導電率を示した。膜の含水率は、導電率にほぼ対応しており、含水に伴うアニオンの解離と水和がイオン導電に寄与していることが確認できた。ヒドラジン水溶液中における加速劣化試験では、イオン交換基の種類にかかわらず全ての膜で機械強度が低下し、高分子主鎖構造の分解が起こったものと推察される。また、試験後ではイオン導電率と含水率も低下したことから、イオン交換基の分解も同時に起きたと考えられる。他方、KOH水溶液中では比較的高い安定性を示し、膜の脆化などは認められなかった。芳香族ポリエーテル高分子の分子構造を検討した結果、アニオン導電性と化学安定性を両立できるブロック共重合体を見出した。これにより、高分子電解質膜のヒドロキシイオン導電率としては非常に高い値を達成し、500時間の安定性も確認した。25年度が最終年度であるため、記入しない。新規アニオン交換膜の各種基礎物性を明らかにした。また、構造とイオン導電性、含水率、および耐久性の相関関係を明らかにした。次年度の燃料電池運転試験に用いるアニオン交換膜の基本構造を選定した。今年度は、前年度に見出したブロック型芳香族ポリエーテル高分子電解質を中心に、その構造の最適化を進める。具体的には、高分子電解質としての基礎物性(分子量、耐熱性、結晶化度、イオン部分と結晶性部分の相分離構造)に加え、アルカリ形燃料電池用電解質膜として満たすべき特性(アニオン導電率、熱水・強アルカリ耐性、機械強度、気体・液体の溶解度と拡散速度)を測定する。嵩高く非晶性な親水性ブロック、直線型で結晶性な疎水性ブロック、電荷非局在型のオニウム塩、の効果を独立に検討し、各物性を掌る構造規制因子を明らかにする。これら複合させて、高性能アルカリ形燃料電池に適したアニオン交換膜の分子構造を明らかにする。25年度が最終年度であるため、記入しない。選定したアニオン交換膜を用いて、膜電極接合体を作製する。電極触媒層用のイオン交換バインダーには、市販電解質溶液あるいは膜と同じアニオン交換材料の溶液を用いる。具体的には、触媒(NiあるいはCoのナノ粒子を高表面積カーボンブラックに高分散担持したもの)と電解質溶液を混合したペーストを、パルススワールスプレーまたは転写(デカール)法でアニオン交換膜上に塗布する。これをガス拡散層(カーボンペーパー上に撥水化CBの層を設けたもの)2枚で挟持することにより、膜電極接合体とする。これまでの知見を活かせるように、燃料電池セルはプロトン交換膜型燃料電池で使用しいているものを適用する。温度(室温80°C)、燃料・酸素利用率(570%)を変化させながら、水素(またはヒドラジン水溶液)/酸素(または空気)を用いたアルカリ形燃料電池を運転する。カソード・アノード各電位、セル抵抗を独立に評価しながら電流電位特性を測定する。
KAKENHI-PROJECT-23350089
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液面微生物膜による廃水処理に関する研究
本研究は,液面に生育する微生物菌膜の生物酸化活性を利用する新しい形式の排水処理装置を開発するための基礎的研究を行ったものである.液巾3.0cm(または1.4cm),液長147cm(または288cm)の水平型流通反応装置を試作しこの装置に酢酸を10,000ppm含む合成廃水を張り込み,前培養した酢酸酸化菌の菌膜を接種し約10hの滞留時間で約1月間30°Cで連続的に廃水の供給を行なうことにより液面に菌膜を形成させた.菌膜は装置自体に衝撃を与えなければ比較的安定であり,液線速度3.0cm min^<-1>まで破壊されないことを確認した.この装置に酢酸含有合成廃水を下記の条件で流通させた:仕込液量40-1000mL液流量17および31mLh^<-1>,液深0.4-2.2cm,比液面積a=0.45-2.5cm^<-1>,液滞留時間τ=4.5-59h.定常状態における装置出口の酢酸除去率は,比液面積aにより著しい影響を受ける. a=1.0cm^<-1>では, τ=28h, a=2.5cm^<-1>ではτ=5hの条件でほぼ90%の酢酸が除去できることが分かった.酢酸廃水の代わりに合成下水を用いた場合も土壌抽出液を接種し同様の操作を行なうことにより液面に厚い菌膜が形成することを認めた.下水BODの除去に本生物酸化装置が適用できる可能性が高いと考えられる.以上の結果から,液面微生物膜の生物酸化作用により廃水の浄化を効率良く行える見通しを得ることができた.本研究は,液面に生育する微生物菌膜の生物酸化活性を利用する新しい形式の排水処理装置を開発するための基礎的研究を行ったものである.液巾3.0cm(または1.4cm),液長147cm(または288cm)の水平型流通反応装置を試作しこの装置に酢酸を10,000ppm含む合成廃水を張り込み,前培養した酢酸酸化菌の菌膜を接種し約10hの滞留時間で約1月間30°Cで連続的に廃水の供給を行なうことにより液面に菌膜を形成させた.菌膜は装置自体に衝撃を与えなければ比較的安定であり,液線速度3.0cm min^<-1>まで破壊されないことを確認した.この装置に酢酸含有合成廃水を下記の条件で流通させた:仕込液量40-1000mL液流量17および31mLh^<-1>,液深0.4-2.2cm,比液面積a=0.45-2.5cm^<-1>,液滞留時間τ=4.5-59h.定常状態における装置出口の酢酸除去率は,比液面積aにより著しい影響を受ける. a=1.0cm^<-1>では, τ=28h, a=2.5cm^<-1>ではτ=5hの条件でほぼ90%の酢酸が除去できることが分かった.酢酸廃水の代わりに合成下水を用いた場合も土壌抽出液を接種し同様の操作を行なうことにより液面に厚い菌膜が形成することを認めた.下水BODの除去に本生物酸化装置が適用できる可能性が高いと考えられる.以上の結果から,液面微生物膜の生物酸化作用により廃水の浄化を効率良く行える見通しを得ることができた.
KAKENHI-PROJECT-62602511
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ヒト・マラリア原虫の赤血球内寄生を支える膜分子基盤に関する研究
ヒト・マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の赤血球内寄生時における原虫外膜系の形成と血球膜への膜タンパク輸送機構を分子レベルで解明するためのプローブを作成した。すなわち、感染赤血球膜のノブ構造にPfNSFとともにerythrocyte membrane protein 1 & 3(EMP1,EMP3)が局在することを証明した。また、感染赤血球膜の細胞質にPfNSFとEMP1を含むエンドソーム様構造が存在すること、この小胞にPfNSFがassociateする事を見いだした。従って、原虫はPfNSFなどの小胞輸送装置を原虫外に分泌し、エンドソーム様構造体を介して、EMP1を赤血球膜まで小胞輸送しているものと考えられる。今後はその各プロセスに関与する因子を同定する予定である。現在、PfNSFの分泌とエンドソーム様オルガネラ、原形質膜への組み込み過程を可視化することで、輸送過程の全貌を明らかにしようとしている。このためPfNSFFの原虫発現プラスミドを作成した。その輸送過程の可視化にとりくんでいる。また、PfNSFタンパク質そのもの機能(生化学的性質)を解析するために活性を保持したままのタンパク質を大量に精製できる昆虫細胞発現系を構築した。現在、cell free系での小胞輸送機能を解析している。今年度までの成果は、タンパク輸送に関与する新しいエンドソーム様オルガネラの発見は、原虫が細胞外に小胞輸送の全装置をおき、輸送していることを示すものである。これはこれまでの「小胞輸送」にはみられなかった新しい概念である。PfNSFと複合体(SNARE複合体)を構成する全要素を明らかにしようとしている。ヒト・マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の赤血球内寄生時における原虫外膜系の形成と血球膜への膜タンパク輸送機構を分子レベルで解明するためのプローブを作成した。すなわち、感染赤血球膜のノブ構造にPfNSFとともにerythrocyte membrane protein 1 & 3(EMP1,EMP3)が局在することを証明した。また、感染赤血球膜の細胞質にPfNSFとEMP1を含むエンドソーム様構造が存在すること、この小胞にPfNSFがassociateする事を見いだした。従って、原虫はPfNSFなどの小胞輸送装置を原虫外に分泌し、エンドソーム様構造体を介して、EMP1を赤血球膜まで小胞輸送しているものと考えられる。今後はその各プロセスに関与する因子を同定する予定である。現在、PfNSFの分泌とエンドソーム様オルガネラ、原形質膜への組み込み過程を可視化することで、輸送過程の全貌を明らかにしようとしている。このためPfNSFFの原虫発現プラスミドを作成した。その輸送過程の可視化にとりくんでいる。また、PfNSFタンパク質そのもの機能(生化学的性質)を解析するために活性を保持したままのタンパク質を大量に精製できる昆虫細胞発現系を構築した。現在、cell free系での小胞輸送機能を解析している。今年度までの成果は、タンパク輸送に関与する新しいエンドソーム様オルガネラの発見は、原虫が細胞外に小胞輸送の全装置をおき、輸送していることを示すものである。これはこれまでの「小胞輸送」にはみられなかった新しい概念である。PfNSFと複合体(SNARE複合体)を構成する全要素を明らかにしようとしている。
KAKENHI-PROJECT-15019066
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熱傷と免疫異常:焼痂由来物質alarminの関与
Alarminの一つとして注目されているadenosineは数.Mの低濃度から強い炎症性サイトカイン産生抑制能を有する。また組織損傷の強い熱傷では血中adenosine濃度が有意に上昇していることが明らかになった。熱傷のさいに遊離されたadenosineは局所における過剰な炎症を抑制する生理的な働きを果たしている可能性が示唆された。Alarminの一つとして注目されているadenosineは数.Mの低濃度から強い炎症性サイトカイン産生抑制能を有する。また組織損傷の強い熱傷では血中adenosine濃度が有意に上昇していることが明らかになった。熱傷のさいに遊離されたadenosineは局所における過剰な炎症を抑制する生理的な働きを果たしている可能性が示唆された。熱傷早期に発生する過剰炎症の正確な発生機序は不明である。近年、壊死組織由来の様々な内因性物質が免疫炎症系に大きな影響を与えていることが明らかになりつつある。本来、細胞内にとどまって生理的役割を果たしている細胞構成成分の細胞外への放出は、組織の異常発生を生体に認知させるalarminとして知られている。熱傷では、焼痂由来の大量のalarminが絶えず細胞外に放出され、その結果、免疫炎症系が多大な影響を与えていることが推察される。現在重症熱傷患者におけるalarminとして以下の2種類を測定中である。血液中HMGB1はELISAキットを用いて測定している。Ademosineは高速液体クロマトグラフィーで測定している。測定しえた症例数が少ないので断定はできないが熱傷重症度に応じてalarmin放出の増加している傾向が認められる。今後症例を重ねalarminの免疫炎症系に及ぼす影響、熱傷創部から放出されるalarminの種類、量、期間を検討する予定にしている。In vivoでは、マウス熱傷モデル(熱傷面積: 5, 15, 30%)を作成して、血液、および熱傷創部浸出液中の各種alarmin濃度を経時的に測定する。その際、脾細胞における免疫活性、および血中のmediatorを同時に測定することにより、alarninが免疫能、炎症状態に与える影響を検討する予定である。本来、細胞内にとどまって生理的役割を果たしている細胞構成成分の細胞外への放出は、組織の異常発生を生体に認知させるalarminもしくはdamage-associated molecular patternsとして知られている。熱傷では、焼痂由来の大量のalarminが絶えず細胞外に放出され、その結果、免疫炎症系に多大な影響を与えていることが推察される。現在重症熱傷患者におけるalarminとして血液中HMGB1はELISAキットを用いて、Adenosineは高速液体クロマトグラフィーで測定した。その結果、熱傷重症度に応じてalarmin放出の増加している傾向が認められた。また同時に熱傷患者の凝固線溶系異常に関する検討も同時に行っている。その結果血中plasminogen activator inhibitor 1(PAI-1)が熱傷初期に著明に増加していることが明らかになった。すなわち凝固系の亢進と線溶系の抑制が生じることにより血栓傾向が強まり微小循環障害の一要因となっていることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-20791329
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新しいナノ組織体を目指したヘテロ2官能性親-疎水ブロックポリマーの分子設計
親水性高分子と疎水性高分子とを分子レベルで結合させた親水/疎水型のブロックコポリマーから成る高分子は水中において自己組織化し、高分子ミセルあるいはナノスフィアーを形成する。最近、この様にして得られた高分子ミセルを薬物キャリヤ-として用いる試みが成され、注目されつつある。しかしながら従来法による親水/疎水型ブロックコポリマーの合成法で作製されたブロックコポリマーの末端はメトキシ基のような不活性基であり、結果として自己組織化した高分子ミセルのコロナ部分の自由末端はなんら反応に寄与することは出来ないのが現状である。そこで本申請の研究では高分子ミセルの難点を解決しうるため、表面に任意の官能基を任意の割合で導入した高分子ミセルを調製するべく、新しいヘテロテレケリック型親水/疎水ブロック共重合体の分子設計を目的とした。本目的のブロックポリマー合成のための具体的な反応設計として、1)官能基を有する開始剤を用いたヘテロポリエチレングリコール(HeteroPEG)の合成、2)HeteroPEGの片末端から疎水性モノマーのリビング重合3)ブロックポリマーのオメガ末端への他の官能基の導入、の3点を中心に検討を進めてきた。この様にして得られるブロックポリマーは水中において自己組織体を形成するだけでなく、その表面に種々官能基を任意の割合で導入することが可能であり、また、疎水性コア部分には架橋基或いは共有結合による薬剤導入等が可能なオメガ末端が位置する新しいナノ組織体構成用材料である。本年度は上述の反応設計に基づき、PEG/PLAブロックコポリマーのPEG末端にアルデヒドを有する材料を合成し、そのミセル調製を行うことにより反応性高分子ミセルを創出することに成功した。親水性高分子と疎水性高分子とを分子レベルで結合させた親水/疎水型のブロックコポリマーから成る高分子は水中において自己組織化し、高分子ミセルあるいはナノスフィアーを形成する。最近、この様にして得られた高分子ミセルを薬物キャリヤ-として用いる試みが成され、注目されつつある。しかしながら従来法による親水/疎水型ブロックコポリマーの合成法で作製されたブロックコポリマーの末端はメトキシ基のような不活性基であり、結果として自己組織化した高分子ミセルのコロナ部分の自由末端はなんら反応に寄与することは出来ないのが現状である。そこで本申請の研究では高分子ミセルの難点を解決しうるため、表面に任意の官能基を任意の割合で導入した高分子ミセルを調製するべく、新しいヘテロテレケリック型親水/疎水ブロック共重合体の分子設計を目的とした。本目的のブロックポリマー合成のための具体的な反応設計として、1)官能基を有する開始剤を用いたヘテロポリエチレングリコール(HeteroPEG)の合成、2)HeteroPEGの片末端から疎水性モノマーのリビング重合3)ブロックポリマーのオメガ末端への他の官能基の導入、の3点を中心に検討を進めてきた。この様にして得られるブロックポリマーは水中において自己組織体を形成するだけでなく、その表面に種々官能基を任意の割合で導入することが可能であり、また、疎水性コア部分には架橋基或いは共有結合による薬剤導入等が可能なオメガ末端が位置する新しいナノ組織体構成用材料である。本年度は上述の反応設計に基づき、PEG/PLAブロックコポリマーのPEG末端にアルデヒドを有する材料を合成し、そのミセル調製を行うことにより反応性高分子ミセルを創出することに成功した。
KAKENHI-PROJECT-08246249
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08246249
医療依存状況にある在宅高齢者の療養生活上の葛藤概念の分析と葛藤に影響を及ぼす要因
高齢者は生活者として自分史を紡いできた。本研究の目的は、医療依存状況にある在宅高齢者の身体・心理・社会的な実態と葛藤に影響を及ぼす要因及び葛藤概念を明らかにすることである。研究の結果、葛藤に影響を及ぼす要因は医療処置の有無、転倒リスクの高低、ADL(日常生活動作)であった。葛藤はうつにも影響を与えていた。また葛藤概念は、「回復への期待」「不自由な身体に対する辛さ」「不自由な身体に対する諦め」「他者への感謝」「今後の不安」が抽出された。医療を必要とする在宅高齢者の葛藤は、うつへ移行する前段階であると推察され、葛藤が高まらないようにアセスメントし、早期対応が重要であることが示唆された。質問紙による調査研究を実施した。対象は65歳以上の何らかの医療管理を必要とする在宅療養者108名、及び比較対象群として地域で生活している健常高齢者130名であった。調査内容は、背景、医療管理状況、家族状況、身体状況、心理状況、社会状況、生活状況であった。調査方法は在宅療養者に対して訪問看護ステーション等の協力を得て対象者の選定を依頼し、内諾の得られた療養者宅に訪問し再度研究者から研究目的等について説明後、同意書を得て聞き取り調査を実施した。健常高齢者に対しては、事前に老人会やサークル活動等の責任者に研究目的等を説明し承諾を得た。会合時等に参加者に対して調査全般について説明し、調査用紙を配布後、後日郵送していただき、郵送されたことにより同意を得たものとした。健常高齢者は男性46名(35.4%)、女性84名(64.6%)であり、平均年齢は71.38±5.94歳であった。他者交流は5割の者が十分交流していた。身体症状の有る者は84名(64.6%)であった。QOLの平均値は8.80±2.84、うつの平均値は0.96±1.19、自己効力感の平均値は50.67±9.85等であった。地域在住高齢者のQOLは、自己効力感から正の影響を、葛藤状況及びうつから負の影響を受けていた。また間接的に、葛藤状況を介して転倒から負の影響を受けていた。この結果については、2015年7月に開催される日本在宅ケア学会で発表予定である。在宅療養者は男性56名(51.9%)、女性52名(48.1%)であり、平均年齢は80.16±8.5歳であった。介護度は要介護2が最も多く20名(18.5%)、次いで要介護1及び3が18名(16.7%)であった。データ分析後、日本看護科学学会の研究発表に応募予定である。26年度に実施した医療依存状況にある在宅高齢者の実態調査研究については、結果をまとめ学会に論文投稿した。本研究は訪問看護を利用している在宅高齢者のQOL(生活の質)に影響を与えている要因について明らかにすることを目的とした。対象は65歳以上で認知障害がなく会話可能な在宅療養者であった。方法は対象者108名に対して、研究者が居宅に出向き聞き取り調査を実施した。内容は質問紙に基づいて属性(年齢、介護度、家族同居の有無、病名等)、医療処置の状況、QOL(生活の質)、葛藤(揺れ動く気持ち当)状況、うつ等であり、分析はt検定及びパス解析等を用いた。分析の結果、医療依存状況にある在宅高齢者のQOLは、医療処置(在宅酸素、褥瘡等)のある高齢者の方が、医療処置の無い高齢者よりも有意に低い結果であった(t(90)=-2.15,p<.05)。パス解析では、訪問看護を利用している在宅高齢者のQOLに影響を及ぼす直接要因は葛藤とうつであり、間接要因は年齢、医療処置、転倒、ADL、IADL、自己効力感、友人交流、家族交流であることが明らかになった。在宅高齢者は種々の葛藤を繰り返しながら生活していると思われるが、訪問看護師やサービス提供者等は在宅高齢者の抱えている精神的なニーズに留意し、うつ状態にならないように予防的介入が求められる。在宅高齢者の実態調査研究結果により、高齢在宅療養者の生活の質は「葛藤」と「うつ」が大きく影響しており、葛藤が重要な要因であると推察された。27年度はその結果から葛藤状況についてインタビューガイドを作成し、それに基づいて12名の高齢在宅療養者に面接法によりインタビューを実施した。高齢在宅療養者の同意を得てICレコーダーに録音し、語っていただいた内容を文章にした。今後分析を進めていく予定である。高齢在宅療養者に実施したインタビュー内容を逐語録に起し、現在内容分析を実施中である。2年間の研究成果から、医療依存状況にある高齢在宅高齢者及び地域高齢者共に,うつと葛藤が重要な要因であることが明らかとなった。また医療依存状況にある高齢在宅療養者の語りから抽出された葛藤概念は,【回復への期待】,【不自由な体に対する辛さ】,【不自由な体に対する諦め】,【他者への感謝】,【今後の不安】であり,それらが複雑に絡み合って関係しながら,高齢在宅療養者は日常生活の中で様々な葛藤を抱いていた。高齢在宅療養者は良くなることを期待しつつ治療し,内に秘めた思いを表出できない辛さ等を感じながらも,他者の手を借りなければ生活できないこと等への諦めがあった。
KAKENHI-PROJECT-26463519
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医療依存状況にある在宅高齢者の療養生活上の葛藤概念の分析と葛藤に影響を及ぼす要因
そして家族等に感謝をしていたが,身体状況が悪化することや介護者が先立ち取り残されること、経済的な不安等を抱いており,支援者は本音が表出できるような関わりが求められる。2016年度は、研究成果の中から「高齢在宅療養者の医療処置と心理状況との関連性」について国際地域看護学会で発表した。医療処置のある者は無い者と比較し、主観的幸福感が有意に低く、葛藤が有意に高かった。在宅療養者は医療処置があることにより、心理的動揺や負担感を感じてストレスフルな状況になることが考えられ、その結果主観的幸福感が低く、葛藤が高くなっていると推察できた。その後研究成果をまとめ、報告書を作成した。うつと葛藤が重要な要因であることが明らかとなったことから、今後医療依存状況にある高齢在宅高齢者の葛藤尺度を開発し、支援の一助としたい。高齢者は生活者として自分史を紡いできた。本研究の目的は、医療依存状況にある在宅高齢者の身体・心理・社会的な実態と葛藤に影響を及ぼす要因及び葛藤概念を明らかにすることである。研究の結果、葛藤に影響を及ぼす要因は医療処置の有無、転倒リスクの高低、ADL(日常生活動作)であった。葛藤はうつにも影響を与えていた。また葛藤概念は、「回復への期待」「不自由な身体に対する辛さ」「不自由な身体に対する諦め」「他者への感謝」「今後の不安」が抽出された。医療を必要とする在宅高齢者の葛藤は、うつへ移行する前段階であると推察され、葛藤が高まらないようにアセスメントし、早期対応が重要であることが示唆された。健常高齢者については順調に協力を得られ、分析結果まで終了しているが、在宅療養者については協力を得るのに日時がかかった。調査は2月までに終了したものの、他の日常業務等に追われ現在まだ分析途中であるが、近日中に終了させ、学会発表する予定である。1葛藤状況について分析を進め、概念を抽出する。2「高齢在宅療養者の医療処置と心理状況との関連性」について国際学会発表予定である(投稿しているが採用の有無は未定)。32年間の研究経過及び内容について、報告書を作成する予定である。在宅看護高齢者看護医療依存状況にある在宅高齢者の療養生活上の葛藤について、事前に了解の得られた療養者に対して個別訪問により質的研究を行う。結果は内容分析を行い、カテゴリーを抽出する。その後平成26年度に得られた結果を基に、関連性を検討する。対象者は要介護度13で、認知障害がなく会話可能な65歳以上の在宅療養者10名とし、調査期間は平成27年5月平成27年10月、内容は在宅療養者の療養生活に対する葛藤概念の抽出である。半構造化面接を行い、「在宅療養者の療養生活への思い」「今まで生きてきた人生」についてナラティブな語りとして把握する。帰納的推論により葛藤概念を抽出し、概念の構造化をする。方法は訪問看護ステーション等の協力を得て、対象者の選定をお願いし、研究者が在宅療養者宅に赴きNarrativeapproachを実践する。Narrative approachは、研究者が在宅療養者と対面し「療養生活への思い」という質問から始め、次に「今まで生きてきた人生について」自由に想起してもらう。語りの内容は本人の承諾を得て録音する。Narrative approach実施中に、語りの妨げにならないよう参加観察法を用いてフィールドノートを作成する。フィールドノートは意図的な項目として、語ることによる表情及び動作の変化、重要と思われる語りの事実の2点とし、語りの終了後に研究者が感じたことを追記する。語りに要する時間は60分程度とする。情報が不十分な場合は、面接回数を増やす。
KAKENHI-PROJECT-26463519
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細胞融合によるマウス精子幹細胞分化能の解析
本研究ではGS細胞(精子幹細胞の長期培養系)というユニークな材料を用い、精子幹細胞の分化能を解析する方法として細胞融合に着目した。GS細胞と種々の細胞とを細胞融合し、そのハイブリッド細胞の増殖能、分化能、表現系およびエピジェネティクス解析によって、精子幹細胞の分化能を調べることを目的とした。Greenマウス由来の細胞とLacZ遺伝子と共にネオマイシン耐性遺伝子を発現するROSA26マウス由来の細胞を用い、細胞融合した細胞を薬剤選択によってクローン化した。GS細胞どうしの細胞融合ではハイブリッド形成を染色体解析によって確認することができたが、その増殖はGS細胞に比べて非常に遅く、そのクローン化および分化能を解析することが困難であった。GS細胞と種々の体細胞との融合細胞の増殖も同様な結果であった。一方、精子幹細胞が起源と考えているmGS細胞(ES細胞と同等の多分化能をもつ生後マウス精巣由来の多能性幹細胞)についても同時に注目し細胞融合を行った結果、胸腺細胞とのハイブリッドのクローン化に成功した。このmGS×胸腺細胞は、mGS細胞様の形態および増殖能を示し、奇形腫形成能をもち、ALP染色、RT-PCRおよびFACS解析ではmGS細胞様の表現系を示した。さらに、通常は発現していない体細胞中の未分化状態を維持する遺伝子が、mGS細胞との融合によって再活性化されることもわかった。これらの結果は、ES細胞がもつ体細胞核の初期化能を細胞融合実験によって証明した過去の報告と一致し、mGS細胞も体細胞核の初期化能をもつことが明らかとなった。さらに、mGS細胞とES細胞との性質を比較する目的で、mGS細胞を用いたノックアウトマウスの作製を試みた結果、その作製に成功し、mGS細胞でも相同組換えによる個体遺伝子改変が可能なことを明らかにした。本研究ではGS細胞(精子幹細胞の長期培養系)というユニークな材料を用い、精子幹細胞の分化能を解析する方法として細胞融合に着目した。GS細胞と種々の細胞とを細胞融合し、そのハイブリッド細胞の増殖能、分化能、表現系およびエピジェネティクス解析によって、精子幹細胞の分化能を調べることを目的とした。Greenマウス由来の細胞とLacZ遺伝子と共にネオマイシン耐性遺伝子を発現するROSA26マウス由来の細胞を用い、細胞融合した細胞を薬剤選択によってクローン化した。GS細胞どうしの細胞融合ではハイブリッド形成を染色体解析によって確認することができたが、その増殖はGS細胞に比べて非常に遅く、そのクローン化および分化能を解析することが困難であった。GS細胞と種々の体細胞との融合細胞の増殖も同様な結果であった。一方、精子幹細胞が起源と考えているmGS細胞(ES細胞と同等の多分化能をもつ生後マウス精巣由来の多能性幹細胞)についても同時に注目し細胞融合を行った結果、胸腺細胞とのハイブリッドのクローン化に成功した。このmGS×胸腺細胞は、mGS細胞様の形態および増殖能を示し、奇形腫形成能をもち、ALP染色、RT-PCRおよびFACS解析ではmGS細胞様の表現系を示した。さらに、通常は発現していない体細胞中の未分化状態を維持する遺伝子が、mGS細胞との融合によって再活性化されることもわかった。これらの結果は、ES細胞がもつ体細胞核の初期化能を細胞融合実験によって証明した過去の報告と一致し、mGS細胞も体細胞核の初期化能をもつことが明らかとなった。さらに、mGS細胞とES細胞との性質を比較する目的で、mGS細胞を用いたノックアウトマウスの作製を試みた結果、その作製に成功し、mGS細胞でも相同組換えによる個体遺伝子改変が可能なことを明らかにした。精子幹細胞の分化能を解析するため、GreenマウスおよびROSA26マウスから樹立または調整した、GS(germline stem cells:精子幹細胞の長期培養系)細胞株、mGS(multipotent GS:新生仔精巣由来でES細胞様の性質をもつ)細胞株、胸腺細胞、神経幹細胞、繊維芽細胞を用い、様々な組み合わせで細胞融合を行いハイブリッド細胞のクローン化を試みた。ROSA26マウスはLacZ遺伝子と共にneomycin耐性遺伝子も発現することから、細胞融合を起こしたハイブリッド細胞をG418処理により選択的に増殖させてやることができる。トリプシンまたは機械的にバラバラにした各種細胞を混合し、電気融合法もしくはpolyethylene glycol法により細胞融合させた後、G418存在下で培養し薬剤選択を行った。この結果、GS細胞同士のハイブリッド形成を染色体解析によって確認することができた。このハイブリッド細胞の分化能を調べるためにクローン化および大量調整を試みている。さらに、我々がGS細胞由来と考えているmGS細胞についても同時に着目し細胞融合を行った結果、胸腺細胞とのハイブリッドのクローン化に成功した。このmGS/胸腺ハイブリッド細胞は、mGS様(ES様)の形態を示し、RT-PCRおよびFACS解析によってもmGS様(ES様)の表現系を示した。この結果は、ES細胞と胸腺細胞との融合実験によりES細胞がもつ体細胞核の初期化能を示した過去の報告と一致した。これらのことから、mGS細胞がES細胞同様の体細胞核の初期化能をもつことが示唆された。前年度クローン化に成功したmGS細胞(精子幹細胞由来の多能性幹細胞)と胸腺細胞とのハイブリッドの分化能の検討を行った。mGS/胸腺ハイブリッド細胞を免疫不全マウスの皮下に移植すると奇形種を形成し、この結果からmGS/胸腺ハイブリッド細胞が多分化能をもつことがわかった。
KAKENHI-PROJECT-18590167
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細胞融合によるマウス精子幹細胞分化能の解析
これまでの体細胞との細胞融合を用いた実験から、mGS細胞がES細胞と同様な性質も持つことが明らかとなった。さらに, mGS細胞とES細胞との性質を比較する目的で, mGS細胞を用いたノックアウトマウスの作製を試みた結果、その作製に成功し、mGS細胞でも相同組換えによる特異的な遺伝子改変が可能なことを実証した。GS細胞(精子幹細胞の長期培養系)については、繊維芽細胞などの体細胞とのハイブリッド形成を確認することができたが、GS/体細胞ハイブリッドの増殖はmGS/体細胞と比較して非常に遅く、そのクローン化が困難であった。現在そのGS/体細胞ハイブリッドを用いて, GS細胞の体細胞核の初期化能などについて解析を行っている。さらにGS細胞とmGS細胞との細胞融合から, GS/mGSハイブリッドクローンを得ることができた。このGS/mGSハイブリッド細胞を用いて、マウスの精巣や皮下への移植による分化能の解析、GS細胞の安定した精子型のゲノムインプリンティングパターンに及ぼすmGS細胞の影響をCOBRA法およびBisulfite genomic sequencing法によって確認している。
KAKENHI-PROJECT-18590167
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eラーニングにおける汎用TAエージェント
本研究では、コンピュータを利用した学習において学習者が次にすべき作業や注目すべき場所などを示すことが可能なデスクトップマスコット型の支援システムを提案した。本手法の特徴は、教員が作成して学習者に与える画像つきの作業手順書と基本操作の知識ベースを利用し、学習者に質問をしたりPC画面のキャプチャ結果を参照することで、授業で利用するアプリケーションやLMSの種類によらずに支援できる点にある。本研究の成果として、システムの全体の枠組みを明確にし、知識表現や対話戦略をはじめとした具体的な実装方法をまとめた。本研究では,e-Learning形式の授業において学習者のトラブルを解決するために自律的に動作するティーチングアシスタント(TA)の役割をするエージェントを設計・開発して運用・評価することを目的としている.昨年度は予備的な調査にもとづき,支援の目的を狭い範囲(次にすべき作業手順を示すこと)に限定したうえで最低限必要な機能を持つプロトタイプシステムを設計・実装した.本年度はプロトタイプシステムの動作検証を行ったうえで,実際に学習者の役に立つシステムを構築するために,TAが授業でどのような支援活動を行っているかを詳細に調査・分析し,プロトタイプシステムに追加・拡張すべき機能を検討した.具体的な方法としては,まずコンピュータを利用する対面形式の授業において実際にTAが行っている支援の様子を撮影し,その動画から教育方法とその意図を整理した.その結果,エージェントに与えるべき教授戦略(例えば「一般的な知識や手順を説明する」「学習者へ現状を把握させる」など)と,エージェントに実装すべき基本動作(「オンラインの資料を示す」「学習者に質問して答えさせる」など)が整理された.次に,この結果を実現するために必要な機能及びシステム構成を検討した.その結果,教材知識として必要な要素(例えば「一般的な知識と作業手順を関連させること」「作業の前提条件とその確認手順を付与すること」など)やアドバイス生成時に必要な機能(「現状に基づいて一般的な手順を具体化する機能」など)をはじめとした,本研究の目的を達成するためにエージェントに実装すべき要素が明らかとなった.この成果は「汎用TAエージェントにおける教授戦略の検討」というタイトルで情報処理学会第76回全国大会で発表した.本研究では,e-Learning形式の授業において,主にパソコンの操作などの技術面でのトラブルの解決を支援するティーチングアシスタント(TA)の役割を担う自律エージェントソフトウエアを設計・開発し,運用・評価することを目的とする.平成24年度は主にシステム全体の設計とプロトタイプの実装を行った.まず,システム全体の枠組みを整理したうえで,コンピュータを利用する対面形式の授業においてTAが行っている学習支援活動を観察・記録してエージェントに必須の基本動作を検討した.次に検討結果にもとづいて必要最低限の機能を選定し,システムの設計を行った.そのシステムの実現に必要な機能(エージェントを視覚的に表示させる方法やアニメーションによる操作指示の仕方,学習者が行っている作業を把握するためにパソコン画面をキャプチャして手順書の画像との間でマッチングを行う方法,パソコンの状態に応じてアドバイスの内容をコントロールする方法など)の実装方法を調査し,最低限の機能を含むエージェントを試作して動作検証を行った.その結果,非常に限定された範囲ではあるが,学習者が行う作業を指示するエージェントを作成できることがわかった.このエージェントはデスクトップマスコットの形で利用者のパソコン上に表示され,教師があらかじめ用意しておいた作業手順書に従って次々に作業指示を出すことが可能である.指示を出す際には学習者のパソコンの画面と手順書の画面写真とを比較しており,状況に応じて画面をポインティングしたり,すでに学習者が行っていると思われる手順の説明をスキップすることができるようになっている.この成果は,「e-Learning学習を支援する汎用TAエージェントの設計」というタイトルで情報処理学会第75会全国大会にて発表した.本研究では、e-Learning形式の授業において学習者のトラブルを解決するために自律的に動作するティーチングアシスタントの役割をするエージェントを設計・開発して運用・評価することを目的としている。初年度はエージェントのプロトタイプを作成して本システムの実現可能性を示し、次年度は実際のTAの活動を録画した映像の分析から必要な機能を整理してシステムの再設計を行った。本年度は再検討の結果に基づき一部の機能を実装した。本研究のポイントはパソコンの画面をキャプチャしたデータと教員が作成した手順書の画像にもとづいて学習者の状況を把握することにより、授業で利用しているアプリケーションなどの環境によらない支援を実現できる点にある。しかし、ウインドウの重なり等により存在してはいるが画面には見えていない状況が頻繁に生じる点に問題があった。本年度は特にこの問題を中心に検討し、実際のTAが学習者に作業指示を出して画面を確認させることでこの問題を解決していることが昨年度の研究成果よりわかったため、そのような指示を出すための教材知識の記述方法、学習者との対話の戦略、指示した結果の確認方法、これらを連携する方法、について明らかにし、それにしたがってシステムの実装を行った。その結果、本システムが学習者に対して想定通りの作業の指示を出すことができ、また、その結果から学習者の作業の進行状況を確認してアドバイスを提示できることが確認できた。この成果は「e-Learningにおける汎用TAエージェントの作業指示機能の実装」というタイトルで情報処理学会台77回全国大会で発表した。本研究では、e-Learning形式の授業における学習者のトラブルを解消することを支援するティーチングアシスタント(TA)の役割をするエージェントシステムを提案することを目的としている。本研究の目指すTAエージェントの特徴は、パソコンの画面をキャプチャした結果と、教員が作成した画像入りの作業手順書にもとづいてアドバイスを提供することにある。
KAKENHI-PROJECT-24700910
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24700910
eラーニングにおける汎用TAエージェント
本研究では初年度に最もシンプルなプロトタイプを作成し、次年度に実際のTAの支援活動を観察・分析して必要な機能を明確にし、昨年度はその結果に基づいてシステムを拡張した。昨年度までの研究で、注目すべきアイコンをポインティングしたり、もしそのアイコンがウインドウ等に隠れていた場合にはそれを探すように指示をするなどのアドバイスをしながら学習者を支援するシステムを構築できた。しかし、学習者との対話や指導の流れについては固定されたひとつのプログラムで実現しており、柔軟性に欠けていた。そこで本年度の前半では、学習者の現在の状況やエージェントのそれまでの指示に応じて柔軟に支援の流れを制御する方法を検討した。その結果、ひとつひとつの支援方法や対話方法を別々のジョブとして実装し、その列をキューのような形で順番に実行する手法を考案した。この手法の特徴のひとつは、個々の支援の途中で一時的に別の指導が必要になったときにキューの先頭へジョブを追加する点にあり、これにより固定されたプログラムと比較して柔軟な支援の流れが簡便に実装できるようになった。この手法を実装したシステムを用い、限定的な範囲ではあるが、典型的な学習者のいきづまりに対して学習者と対話をしながら支援ができることを確認した。本年度の後半では、これまでの4年間の研究の成果をまとめて「コンピュータを用いた学習を支援する汎用TAエージェントの検討」というタイトルの論文にし、北里大学一般教育紀要にて公表した。本研究では、コンピュータを利用した学習において学習者が次にすべき作業や注目すべき場所などを示すことが可能なデスクトップマスコット型の支援システムを提案した。本手法の特徴は、教員が作成して学習者に与える画像つきの作業手順書と基本操作の知識ベースを利用し、学習者に質問をしたりPC画面のキャプチャ結果を参照することで、授業で利用するアプリケーションやLMSの種類によらずに支援できる点にある。本研究の成果として、システムの全体の枠組みを明確にし、知識表現や対話戦略をはじめとした具体的な実装方法をまとめた。平成26年度は前年度に再設計したシステム全体の基盤部分を完全に実装する予定でいたが、パソコンの画面をキャプチャして学習者の状況を把握するという本研究の重要な点についての問題が生じたためにその解決方法の検討に時間がかかったことと、システムにバグ等が発生して想定していた以上に開発に時間がかかったため、アドバイス生成にとって重要な対話機能と画面を確認させることを含めた作業指示機能の実装は行ったものの、予定していた関連知識提示機能や教員をサポートするオーサリング機能などの実装までには至らなかったため。
KAKENHI-PROJECT-24700910
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24700910
新構造完全単一縦モード分布帰還型半導体レーザの開発
研究代表者のグループは、0.8μm帯ストライプ幅変調構造分布帰還型(DFB)レーザを開発する一環として、昭和60年度にリッジ導波路型GaAlAs/GaAsDFBレーザを作製、研究し、この時点で最も低い閾値電流と高い微分量子効率を達成した。これによって短波長帯でも実用的なDFBレーザを得ることが可能であることが示されたが、同時に精密な横モード解析の結果、この導波路構造は液相成長法に対し必ずしも最適な構造ではないことが判明した。昭和61年度には、より液相成長法に適する構造として二重チャネル埋め込みヘテロ構造を採用しGaAlAs/GaAsDFBレーザを世界で初めて試作したところ、室温連続発振の閾値電流が12mAである等の極めて高性能な素子の開発に成功した。こうして得られた素子に、更に種々のストライプ幅変調構造を適用し、理論的予測に合致する完全単一縦モード動作を確認した。研究分担者神谷は、半導体レーザ特性の機能化について主として材料物性的側面から検討した。まず、半導体中のキャリア寿命および再結合係数の位相シフト法による推定を行った。また、双安定半導体レーザの温度特性におよぼすオージェ再結合の効果を調べた。これらを通じて半導体レーザを記述するレート方程式の精密化、材料パラメータの精度の向上への寄与を行った。研究分担者永井は、端面劈開構造によるDFBレーザの完全単一縦モード化について考察した。劈開両端面を有する1.3および1.5μm帯素子の単一縦モード発振確率、単一縦モード動作温度範囲を理論的、実験的に研究し、これを通じて端面劈開構造の効果の解明に寄与した。研究分担者秋葉は、λ/4シフト構造による縦モード完全単一化について検討を行った。詳しい理論的考察、1.5μm帯λ/4シフト構造素子の試作を通じて、設計技法、製作技法を確立し、この構造を有するDFBレーザの実用化へ向けての寄与を行った。研究代表者のグループは、0.8μm帯ストライプ幅変調構造分布帰還型(DFB)レーザを開発する一環として、昭和60年度にリッジ導波路型GaAlAs/GaAsDFBレーザを作製、研究し、この時点で最も低い閾値電流と高い微分量子効率を達成した。これによって短波長帯でも実用的なDFBレーザを得ることが可能であることが示されたが、同時に精密な横モード解析の結果、この導波路構造は液相成長法に対し必ずしも最適な構造ではないことが判明した。昭和61年度には、より液相成長法に適する構造として二重チャネル埋め込みヘテロ構造を採用しGaAlAs/GaAsDFBレーザを世界で初めて試作したところ、室温連続発振の閾値電流が12mAである等の極めて高性能な素子の開発に成功した。こうして得られた素子に、更に種々のストライプ幅変調構造を適用し、理論的予測に合致する完全単一縦モード動作を確認した。研究分担者神谷は、半導体レーザ特性の機能化について主として材料物性的側面から検討した。まず、半導体中のキャリア寿命および再結合係数の位相シフト法による推定を行った。また、双安定半導体レーザの温度特性におよぼすオージェ再結合の効果を調べた。これらを通じて半導体レーザを記述するレート方程式の精密化、材料パラメータの精度の向上への寄与を行った。研究分担者永井は、端面劈開構造によるDFBレーザの完全単一縦モード化について考察した。劈開両端面を有する1.3および1.5μm帯素子の単一縦モード発振確率、単一縦モード動作温度範囲を理論的、実験的に研究し、これを通じて端面劈開構造の効果の解明に寄与した。研究分担者秋葉は、λ/4シフト構造による縦モード完全単一化について検討を行った。詳しい理論的考察、1.5μm帯λ/4シフト構造素子の試作を通じて、設計技法、製作技法を確立し、この構造を有するDFBレーザの実用化へ向けての寄与を行った。(1)GaAlAs/GaAs0.8μm帯用素子(東大多田、村井):昭和60年度は、現有の液相エピタキシー装置を刷新し、新たにコンピュータコントロールの高精度・高純度システムとした。これにより、キャリア密度の低い良質の成長層を得ることが可能となり、また分布帰還型(DFB)レーザ作製時に必要な0.1μm程度の積層薄膜構造を、再現性良く均一に成長できるようになった。0.8μm帯では元来、DFBレーザを作製するのが種々の理由から難かしく、従って本研究で提唱するストライプ幅変調構造を適用する前提として、この波長帯での実用的なDFBレーザ(通常型素子)をまず開発する必要があった。そこで、GaAsによるDFBレーザを、リッジ導波路構造を用い初めて作製し、基本性能の点で過去に報告された素子よりも優れていることを確認した。これによって0.8μm帯でも充分実用に供するDFBレーザの作製され得ることが実証され光情報処理・光応用計測の分野でも将来DFBレーザの導入が可能であることを示した。一方、半導体レーザとして最も標準的な構造である埋込ヘテロ構造によっても素子の作製を試みており、リッジ導波路構造と比較して利害得失を明らかにする予定である。以上のように0.8μm帯DFBレーザ作製の準備はほぼ整った。
KAKENHI-PROJECT-60850009
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新構造完全単一縦モード分布帰還型半導体レーザの開発
これらレーザにストライプ幅変調構造を適用するのは極めて容易なので、この方法による完全単一縦モード化の効果を、今後調べて行きたい。(2)InGaAsP/InP1.3μm、1.5μm帯用素子(NTT永井KDD秋葉):p型基板DBH構造DFBレーザの特性分布から、完全単一縦モード動作素子の出現確率を調べた。また、単一縦モード確率の端面構造依存性を計算し、反射率に非対称性を持たせることが確率向上に有効であることを示した。(NTT永井)λ/4シフト型の完全単一縦モードDFBレーザを作製するにあたって、新たにノボラック系ネガレジストを採用し、良好な単一モード性を持つ素子の試作に成功した。(KDD秋葉)
KAKENHI-PROJECT-60850009
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60850009
魚介類筋肉トリメチルアミンオキシドの酵素および非酵素的分解と品質への影響
魚介類のなかでタラ科の魚肉にはトリメチルアミンオキシド(TMAO)が多量に含まれており,貯蔵中にジメチルアミン(DMA)とホルムアルデヒド(FA)に分解され,生成したFAは魚肉の品質を劣化させる。しかし,貯蔵中のTMAOの分解機構は不明で,TMAO脱メチル化酵素(TMAOase)による説と非酵素的分解説があるが,酵素は未だ精製単離されていない。(1)本研究ではまず,スケトウダラ筋肉の筋原繊維画分にTMAOase活性が存在することを明らかにした。そこで,これから酵素を単離するために種々の方法を検討した結果,次の調製方法を開発した。すなわち,酸処理により酵素を可溶化し,イオン交換クロマトグラフィー,ゲル濾過,nativePAGEによって精製し,単離することに成功した。(2)単離した酵素は分子量23,000,至適pH7.0で,活性発現にはFe^<2+>をcofactorとして必要とした。Fe^<3+>は効果がないことから,Cys,アスコルビン酸,DTTのような還元剤は鉄の酸化を防止するために必要なことがわかった。TMAOaseのアミノ酸分析でAspを多量に含む特殊なタンパク質であることが明らかになった。現在一次構造は解析中である。二次構造はランダムコイル状に近いことがCD分析でわかった。本酵素は耐熱性で,変性剤に対しても安定であった。(3)魚肉中のDMAとFAの生成は-5-10°Cの凍結貯蔵中に顕著におきるが,この反応は非酵素的であることを推定した。-4°Cでの過冷却状態ではTMAOは酵素存在下でのみ分解されたが,-4°C凍結状態ではFe^<2+>とCys存在下で非酵素的に分解され,酵素の影響はなかった。-20°C凍結の場合もTMAOは非酵素的に分解された。(4)魚肉筋原繊維タンパク質は数mMのFAで変性し,その塩溶解性,ねり製品製造におけるかまぼこゲル形成能が失われるが,Cys,His,グルタチオンはこれらの変性を効果的に防止できることを発見した。魚介類のなかでタラ科の魚肉にはトリメチルアミンオキシド(TMAO)が多量に含まれており,貯蔵中にジメチルアミン(DMA)とホルムアルデヒド(FA)に分解され,生成したFAは魚肉の品質を劣化させる。しかし,貯蔵中のTMAOの分解機構は不明で,TMAO脱メチル化酵素(TMAOase)による説と非酵素的分解説があるが,酵素は未だ精製単離されていない。(1)本研究ではまず,スケトウダラ筋肉の筋原繊維画分にTMAOase活性が存在することを明らかにした。そこで,これから酵素を単離するために種々の方法を検討した結果,次の調製方法を開発した。すなわち,酸処理により酵素を可溶化し,イオン交換クロマトグラフィー,ゲル濾過,nativePAGEによって精製し,単離することに成功した。(2)単離した酵素は分子量23,000,至適pH7.0で,活性発現にはFe^<2+>をcofactorとして必要とした。Fe^<3+>は効果がないことから,Cys,アスコルビン酸,DTTのような還元剤は鉄の酸化を防止するために必要なことがわかった。TMAOaseのアミノ酸分析でAspを多量に含む特殊なタンパク質であることが明らかになった。現在一次構造は解析中である。二次構造はランダムコイル状に近いことがCD分析でわかった。本酵素は耐熱性で,変性剤に対しても安定であった。(3)魚肉中のDMAとFAの生成は-5-10°Cの凍結貯蔵中に顕著におきるが,この反応は非酵素的であることを推定した。-4°Cでの過冷却状態ではTMAOは酵素存在下でのみ分解されたが,-4°C凍結状態ではFe^<2+>とCys存在下で非酵素的に分解され,酵素の影響はなかった。-20°C凍結の場合もTMAOは非酵素的に分解された。(4)魚肉筋原繊維タンパク質は数mMのFAで変性し,その塩溶解性,ねり製品製造におけるかまぼこゲル形成能が失われるが,Cys,His,グルタチオンはこれらの変性を効果的に防止できることを発見した。海産魚介類組織中にはトリメチルアミン-N-オキシド(TMA○)が多量に含有されているが,一部の魚介類,特にタラ科魚類では筋肉中のTMAOの酵素的分解によって生成するホルムアルデヒドによる肉タンパク質の変性が問題となっている。これまでの多くの研究にもかかわらず、本酵素(TMAOase)は可溶化されていないため,性状が不明である。そこでスケトウダラ筋肉中の本酵素活性の所在を調べたところ,水溶性タンパク質画分及びミクロソーム画分には検出されず,全活性は筋原繊維画分に検出されたので,これを酵素標品としてその性質を検討した。その結果によると,至適pH7.0,熱安定性を調べたところ活性は40゚C以上で低下した。また活性の発現にはcofactorとしてFe^<2+>と還元剤(アスコルビン酸,システイン)が必要であった。筋原繊維画分を用いた実験結果から,スケトウダラのフィレー,落身,すり身中には本酵素がそのまま存在しているので,基質があれば反応が起きる可能性が推測された。次に,本酵素の可溶化を試みた。
KAKENHI-PROJECT-10460090
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10460090