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新しいπ電子骨格からなる有機超伝導体とそれらを構成成分とする超分子機能体の開発
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今後より吸光度が大きい部位の導入を検討する必要がある。超伝導発現を目指した物質開発として,従来研究されてきた有機ドナー分子であるテトラチアフルバレン(TTF)やテトラチアペンタレン(TTP)誘導体の共役π電子系を縮小した新たなドナー分子の開発と,それを基にした電荷移動型ラジカルカチオン塩の物性研究を行なってきた。有機ドナー分子のπ電子系を縮小することは,同一分子上に電荷が存在した際生じるクーロン反発,つまりオンサイトクーロン反発を,従来の有機導体の設計指針とは逆に増大させることになり,化学的な分子修飾によって,電子相関を強めることが出来る。これまでに,TTFの縮小π電子系であるDODHTから3種類の超伝導体を発見している。今年度の研究業績として,新たなTTPの縮小π電子系の設計・合成を行なった。これまでTTP系の縮小π電子系の合成では,置換基によっては収率が極端に低かったり,分離生成が困難な副生成物の生成があったが,合成法を改良することにより,反応段階数の減少,全収率の向上,副生成物生成の抑制に成功した。この結果,これら縮小π系TTP誘導体を用いた物性研究も可能となった。また,超伝導体を与えるDODHTのラジカル塩に関しては,その磁気物性を詳細に調べることにより,常圧における絶縁体相が,電荷秩序相(チャージオーダー)であることが明らかとなった。絶縁体相に電荷秩序があることは,X線構造解析の温度変化を調べることによって確認された。超伝導相の近傍に電荷秩序相が存在する系は,無機物質においてつい最近発見され,超伝導発現のメカニズムの解明を含め非常に興味がもたれている。今回の系で,有機導体の系でも超伝導相の近傍に電荷秩序絶縁体相が存在していることが,実験的にはじめて確認されたことになり,有機超伝導体研究の分野において,非常に有意義な結果が得られた。これらの結果に関しては,現在投稿準備中である。さらに,TTFをドナー成分に,C_<60>フラーレンをアクセプター成分に用いたドナー-アクセプター系ダイアッド分子を新たに合成した。このようなダイアッド分子は,有機太陽電池など有機薄膜デバイスへの応用の観点から非常に興味がもたれている系である。今回の分子は,従来のC_<60>-TTF系と異なり,基底状態で分子内電荷移動相互作用が強く,また,C60とTTFの接合位置により,分子内電荷移動をコントロール出来ることを見出した。また,今年度はこのダイアッド分子の有機デバイスへの応用を目指して,静膜性を向上させるため長鎖アルキル基を導入した分子,および電荷分離状態の寿命を大きくするため,デンドリマー構造を導入した超分子系の合成に新たに成功した。超伝導発現を目指した物質開発として、従来研究されてきた有機ドナー分子であるテトラチアフルバレン(TTF)やテトラチアペンタレン(TTP)誘導体の共役π電子系を縮小した新たなドナー分子の開発と、それを基にした電荷移動型ラジカルカチオン塩の物性研究を行なってきた。有機ドナー分子のπ電子系を縮小することは、同一分子上に電荷が存在した際生じるクーロン反発,つまりオンサイトクーロン反発を、増大させることになり、化学的な分子修飾によって、電子相関を強めることが出来る。これまでに、TTFの縮小π電子系であるDODHTから3種類の超伝導体を発見している。昨年度の業績としては、TTP系縮小π電子ドナーの新合成法の開発、DODHT超伝導体の常圧における絶縁相の解明を行った。
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KAKENHI-PROJECT-15550127
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15550127
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現代アジア女性の社会参画にみるコンフリクトと感情に関する比較民族誌的研究
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本科研は現代アジア女性の社会参画をめぐる問題について、コンフリクトと「感情」という観点から、比較民族誌の方法論に基づき実証的に検討することを目的としている。対象とするのは、東アジア、東南アジア、南アジアの各地域社会に暮らす女性、あるいはそこで活動する女性主体の組織や集団を取り上げている。この課題に取り組むにあたり、初年度は、各メンバーが関連の研究のまとめとその批判的検討を行い、それぞれに短期フィールド調査を実施した。2年目は、各メンバーが引き続き資料収集およびフィールド調査を実施した。例えば代表者である伊藤は、かねてから調査対象にしてきたベトナム南部地域ホーチミン市で活動するカオダイ教バンチンダオ派組織のD寺を再訪し、組織内における女性信者のネットワーク構築のあり方と、彼女たちの役職昇格及び組織運営の参与について調査を実施している。こうした調査の途中経過を持ち寄りながら、2月25日に研究会を国立民族学博物館において開催した。研究会では、メンバーによっては個別の事情からフィールド調査が実施てきていない点などを考慮し(この点は昨年の進捗状況でも報告済み)、本科研を当初の予定の3年計画から1年延長し、延長年度でのワークショップの開催の可能性について議論した。そして3年目となる本年度は、10月に再び国立民族学博物館にて研究会を実施し、各メンバーの進捗状況の報告とともに、1研究計画の1年の延長と、2代表者が現在所属しているベトナム国家大学ハノイ校・日越大学でのワークショップの開催を検討し、メンバーからの合意を得た。本科研の進捗状況がやや遅れている理由は、主に以下の点である。第1に、分担者の宮脇が、予定していた調査対象地での調査継続が困難になったことから、異なる対象地に変更したことである。実施年度の途中で対象地の変更を判断したこともあり、必然的に調査実施に遅れが出ることとなった。第2に、分担者の櫻田が育児などの家族の問題で、調査地であるマレーシアに行くことがかなわなかったという点である。そのため調査計画自体を変更せざるを得なくなった。本科研の実施状況はやや遅れ気味であり、1年延長することとなったものの、各分担者と調査対象地との既存の関係性にもとづき、以下のように研究遂行が期待できる。宮脇は当初の研究対象地である岩手から、中国雲南省に対象地を変更した。しかし中国雲南省は、宮脇が長らく人類学的調査を実施してきた地域であり、すでに十分なラポール関係を構築していることから、本科研のテーマでの調査も十分可能であると判断している。櫻田に関しても同様であり、マレーシアを調査対象とした長い実績があることから、それを基礎としながら、本科研のテーマを取り組むことができている。したがって、延長年度におけるワークショップでも、充実した研究報告が期待できる。本科研は、現代アジア女性の社会参画をめぐる問題について、コンフリクトと「感情」という観点から、東アジア、東南アジア、南アジアの各地域社会に暮らす女性主体の組織や集団を事例として、比較民族誌の方法論にもとづき実証的に明らかにすることを目的としている。この課題を検討するにあたり、初年度である28年度は、次の二点を活動課題とした。1各研究分担者がそれぞれの対象地域における女性主体の集団、組織に関連する「伝統的な」構成原理と、近現代の急速な社会変動にともなうその性質の変化に関する先行研究を整理すること。2研究分担者のテーマについて、短期フィールド調査を実施し、先行研究との比較分析すること。このために本年度は、平成28年6月18日(於東京福祉大学)と平成29年2月11日(於東京都のレンタル会議室)の2回の科研研究会を開催した。第1回研究会では、代表者(伊藤)が本科研の概要について報告したうえで、各分担者と今後の研究の方向性を確認し、その後、各分担者による各個研究の概要と計画について報告をおこなった。ここでは、本科研において各分担者がどのような研究活動を実施することが可能か、相互に意見交換することができた。第2回研究会では、人類学における感情に関する議論を分担者間で共有するために、Catherine Lutzによる「Anthropology of Emotion」の読解を伊藤と菅野が行い、それに基づき他の分担者とともに討論し、次年度以降の活動のための核論とすることで合意形成した。本年度の活動においては、次年度以降、各分担者が研究活動をより充実させていくために理論的枠組みと方向性の確認をおこなうことができ、本科研の基礎をつくる上で成果を上げることができたと言える。本科研がおおむね順調に進展している理由として、以下の点があげられる。第一に、6月に第一回研究会を実施し、本科研課題の前提となる学問的/社会的背景、および民族誌的比較研究という枠組みにおける本科研の意義を確認することを通じて、各分担者と研究の方向性についてより明確に合意形成が図れたことである。ここでは、1男女平等の思想の普遍化と女性のライフコースの多様化の提唱が唱えられる現代的現象と、2女性の社会参画と活躍が追求される現代日本において問われるリーダーシップの質という、現代日本の女性が直面している問題を確認した。そしてこの問題を相対化するためのひとつの方策として、各地域における事例の比較研究を主とする本科研の学問的/社会的重要性を共有することができた。第二に、2017年2月に第二回目の研究会を実施し、文化人類学における感情をテーマとした論文「Anthropology of Emotion」(Catherine Lutz)を取り上げ、代表者(伊藤)と分担者の菅野が解読し、それについての討論を全分担者と共に行った。
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KAKENHI-PROJECT-16K13129
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K13129
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現代アジア女性の社会参画にみるコンフリクトと感情に関する比較民族誌的研究
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これにより、人類学的視点から「感情」をキーワードとして注目する際に、どのような視点が重要となってくるのかについて相互で学問的枠組みの共有を行うことができた。これにより、各分担者が現地調査に取り組む際に注目する点について、より具体化することができたといえる。本科研は、現代アジア女性の社会参画をめぐる問題について、コンフリクトと「感情」という観点から、東アジア、東南アジア、南アジアの各地域社会に暮らす女性主体の組織や集団を事例として、比較民族誌の方法論にもとづき実証的に検討することを目的としている。この課題に取り組むにあたり、1年目の28年度は、代表および各分担者が関連の先行研究のまとめとその批判的検討を行い、それぞれに短期フィールド調査を実施した。これを踏まえて2年目となる29年度は、代表および各分担者が資料収集およびフィールド調査を引き続き実施した。例えば代表である伊藤は、かねてから調査対象にしてきたベトナム南部地域ホーチミン市で活動するカオダイ教系宗教組織D聖室(以降、D聖室)を8月中旬に再訪し、組織内における女性信者の役職昇格および組織運営への参与のあり方と、それに関連する組織内コンフリクトについて追跡調査した。また分担者の菅野は、年度末の3月にインド北部の対象地域を訪問し、インド農村における女性の政治参画とコンフリクト解決について継続調査している。これらの各自の調査活動に加えて、今年度のまとめと最終年度の活動についての議論を目的として、2月25日に第3回目の研究会を国立民族学博物館において開催した。研究会では、議論の方向性の練り上げを再度行うと同時に、各分担者が各事例についての経過報告を簡単に行った。加えて成果報告についても議論した。その際、当初の計画では最終年となる30年度にワークショップの開催を予定していたが、以下でも述べるように様々な理由からそれが難しいと判断し、もう一年の活動延長の可能性と延長年でのワークショップ開催について議論した。そこで最終年度となる30年度10月に、そのための事前の打ち合わせを国立民族学博物館で改めて開催し、ワークショップ開催に関する具体的な検討に入る予定である。本科研の進捗状況がやや遅れている理由は、次の通りである。第一点目は代表者である伊藤の勤務先に変更が生じ、校務との関係から計画していた研究対象地での資料収集および調査活動の計画を変更せざる負えない状況となった点である。第二点目は、分担者である宮脇の調査地変更である。宮脇は当初、東日本大震災で被害を受けた地域を対象にして、仮設住宅を基盤に活動する女性たちの手芸グループを調査する計画であった。しかしながら震災から7年が経過し、被災者の生活再建が進む中で仮設住宅コミュニティも小規模化し、そこを基盤とした手芸グループの活動も変化が生じた。そのため当初予定したような継続調査が難しくなった。第三点目は、分担者である櫻田が育児と勤務校での校務との関係で、調査対象地での調査活動が実施できず、具体的な資料収集がかなわなかったことである。本科研は現代アジア女性の社会参画をめぐる問題について、コンフリクトと「感情」という観点から、比較民族誌の方法論に基づき実証的に検討することを目的としている。
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KAKENHI-PROJECT-16K13129
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K13129
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自家間葉系幹細胞を用いた先天性横隔膜ヘルニアの低形成肺に対する再生医療
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胎仔の横隔膜欠損を確認したものをCDH群とした。間葉系幹細胞を採取し、母獣の子宮静脈内に注射し、胎仔の横隔膜欠損を確認したものをMSC投与-CDH群とした。MSC投与-CDH群では、CDH群と比較して肺胞中隔や末梢肺動脈の中膜径の有意な菲薄化を認めた。また、MSC投与-CDH群では、CDH群と比較して肺胞面積は拡張していた。MSC投与によってCDHの低形成肺が成熟した可能性があるものと考えられた。1)間葉系幹細胞の採取・精製・培養について; 1.肺を摘出された胎仔ラットの、脛骨と大腿骨から骨髄採取を試みたが、検体が小さく脆弱であり、骨髄からの採取は困難であった。2.胎盤からの間葉系幹細胞の採取を試みるも精製・分離・抽出作業が困難であり、断念した。3.自家骨髄間葉系幹細胞の採取には手技的・時間的な労力がかかるために、コマーシャルベースのヒト胎盤由来の間葉系幹細胞の投与は費用がかさむために断念した。4.eGFPラットを購入し、同ラット肺から肺組織内間葉系幹細胞を分離抽出することができたため、これを培養し、妊娠12日目のCDHモデルラットの子宮静脈内に投与し、その後に出生する上記3群の胎仔肺の成長発達に関しての形態学的群間格差を検証した。2)胎仔肺への間葉系幹細胞の投与効果;1.ヘマトキシリン・エオジン染色を行い、上記3群間における形態学的評価を行った。2.肺胞上皮細胞のマーカーであるTTF-1,Sp-Cについて免疫染色を行い、3群間における発現についての形態学的評価を行った。3.肺血管平滑筋のマーカーであるα-SMAについて免疫染色を行い、3群間における発現についての形態学的評価を行った。3)結果; eGFP ratの胎児肺への移行を確認するために、各群から得られた肺を抗eGFP抗体で染色し、eGFPがLMSC群のみに発現していることを確認した。H.E.染色では、CDH群と比較して、CDH+LMSC投与群では肺胞の拡張を認め、投与効果を認めた。また、CDH+LMSC投与群は、CDH群と比較してTTF-1,Sp-C陽性細胞数が増加し、a-SMAでは肺血管の狭小化が改善している所見を認めた。4)意義および重要性;今回の実験結果から、LMSC投与群では、CDHにおける肺成熟を成熟させ、肺血管の狭小化を改善する可能性があることが示唆された。(目的)この研究の目的は、間葉系幹細胞がニトロフェン投与先天性横隔膜ヘルニアモデルラットにおいてどのような投与効果を示すかを検討したものである。(実験モデル動物作成と実験方法)胎生9.5日目に100mgのニトロフェンをオリーブオイル1mlに溶解し、母獣の胃内に投与し、胎生21日目に母獣を犠死せしめ、胎仔の横隔膜欠損を確認したものを横隔膜ヘルニアモデルラット(CDH群)とした。コントロール群(Control群)として、胎生9.5日目に母獣の胃内にオリーブオイル1mlを入れたものをコントロール群とした。eGFP成獣ラット肺から間葉系幹細胞を採取し、培養、増殖させ、胎生12.5日目に母獣を開腹し、母獣の子宮静脈内に間葉系幹細胞を注射した後に閉創し、胎生21日目に母獣を犠死せしめ、胎仔の横隔膜欠損を確認したものを間葉系幹細胞投与-横隔膜ヘルニアモデルラット(MSC投与-CDH群)とした。3群の胎仔から摘出した肺をヘマトキシリン・エオジン染色(H.E.染色)、抗PCNA抗体、抗Sp-C抗体、抗-SMA抗体を用いた免疫染色を行い、形態的評価を行った。(結果)MSC投与-CDH群では、CDH群と比較して肺胞中隔や末梢肺動脈の中膜径の有意な菲薄化を認めた。また、MSC投与-CDH群では、CDH群と比較して肺胞面積は拡張し、PCNA陽性細胞やSp-C陽性細胞は有意に多かった。MSC投与-CDH群では、胎仔肺の間質にGFP陽性細胞があることが確認された。(結語)MSC投与群では潜在的に肺胞や肺血管の成熟を促進する可能性があり、MSC投与によって先天性横隔膜ヘルニアモデルラットの低形成肺が成熟した可能性があるものと考えられた。胎仔の横隔膜欠損を確認したものをCDH群とした。間葉系幹細胞を採取し、母獣の子宮静脈内に注射し、胎仔の横隔膜欠損を確認したものをMSC投与-CDH群とした。MSC投与-CDH群では、CDH群と比較して肺胞中隔や末梢肺動脈の中膜径の有意な菲薄化を認めた。また、MSC投与-CDH群では、CDH群と比較して肺胞面積は拡張していた。MSC投与によってCDHの低形成肺が成熟した可能性があるものと考えられた。1)CDHモデルラットの作成1.ニトロフェン投与CDHモデルラット:妊娠9日目の母獣にニトロフェン100mg(オリーブオイルに溶解)を胃内に投与してCDHモデル胎仔を作成した。コントロール群として、オリーブオイルのみの投与群をコントロール群とした。
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KAKENHI-PROJECT-23792031
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23792031
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自家間葉系幹細胞を用いた先天性横隔膜ヘルニアの低形成肺に対する再生医療
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2.比較群設定:妊娠20日目に胎仔を娩出し、開腹して横隔膜の有無を確認し、横隔膜ヘルニア群、非横隔膜ヘルニア群、コントロール群の3群に分別した。現在も検体数を増やしている。2)間葉系幹細胞の採取・精製・培養について1.肺を摘出された胎仔ラットの、脛骨と大腿骨から骨髄採取を試みたが、検体が小さく脆弱であり、骨髄からの採取は困難であった。2.胎盤からの間葉系幹細胞の採取を試みるも精製・分離・抽出作業が困難であり、断念した。3.自家骨髄間葉系幹細胞の採取には手技的・時間的な労力がかかるために、コマーシャルベースのヒト胎盤由来の間葉系幹細胞の投与を行い、先行的実験を行うこととした。4.ヒト胎盤由来の間葉系幹細胞を妊娠11日目の母獣に経静脈的に投与し、その後に出生する上記3群の胎仔肺の成長発達に関しての形態学的群間格差を検証した。3)胎仔肺への間葉系幹細胞の投与効果1.ヘマトキシリン・エオジン染色を行い、上記3群間における形態学的評価を行った。2.肺胞上皮細胞のマーカーであるTTF-1,Sp-Cについて免疫染色を行い、3群間における発現についての形態学的評価を行った。3.肺血管平滑筋のマーカーであるα-SMAについて免疫染色を行い、3群間における発現についての形態学的評価を行った。当初計画していたラット胎仔の大腿骨、骨髄からの自家骨髄間葉系幹細胞の精製・分離・抽出作業は検体が小さく手技的に困難であり、断念した。また、次に胎盤からの間葉系幹細胞の採取を試みるも精製・分離・抽出作業が困難であり、断念した。コマーシャルベースのヒト胎盤由来の間葉系幹細胞はコストがかかるために断念した。最終的には、eGFPラット肺からの間葉系幹細胞の抽出が可能となり、実験系統がようやく確立した。すなわち、eGFPラット肺から抽出した肺組織内MSCを胎仔期の子宮静脈内に投与することで胎仔肺の成長を促進することができるという仮説を検証することとして、実験系統が確立した。胎盤内へのMSCの投与効果を確認するために、eGFPラットを用いることとしたが、eGFPラットを用いた実験には、遺伝子組み換え操作が伴うために倫理審査が必要であり、動物実験計画を再度作成し、倫理委員会による審査を経て承認された。免疫染色に関しては、抗体を再購入したが、最終的には手技的にも安定し、検体数を増やすことができた。当初計画していたラット胎仔の大腿骨、骨髄からの自家骨髄間葉系幹細胞の精製・分離・抽出作業は検体が小さく手技的に困難であり、断念した。また、次に胎盤からの間葉系幹細胞の採取を試みるも精製・分離・抽出作業が困難であり、断念した。間葉系幹細胞が胎仔肺の発達に及ぼす影響をみた報告はないため、コマーシャルベースのヒト胎盤由来の間葉系幹細胞の投与を行い、先行的実験を行うこととしたため実験計画に変更が生じ、遅れが生じた。また、免疫染色に関しては、従来使用していた抗体が劣化しており、原因検索と確認といったトラブルシューティングに時間を要した。今後の計画としては、コントロール群、CDH群、CDH +LMSC群の3群の肺検体から分離・抽出したmRNAや蛋白を用いてreal-time PCRやIn situ hybridization、Western-blotを行うことで分子生物学的検討を行いたいと考えている。再現性が得られることを証明するために検体数を増やして、繰り返し研究を行う必要性がある。また、得られた研究結果に関しては、適宜学会発表を行うとともに論文作成の準備をすすめる。所属部署には実験補助員や大学院生などの実験補佐が可能な人材があり、これを教育、指導することで研究を推進できる可能性がある。今後の研究推進方策については、研究代表者の時間的制約をいかにして克服するかが重要である。
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KAKENHI-PROJECT-23792031
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23792031
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IL-12によるcostimulatory分子を介する新生児T細のヘルパー能誘導
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IL-12による新生児期のCD4陽性T細胞の免疫グロブリン産生補助能の誘導機序を研究した。臍帯血CD4陽性T細胞は殆どCD45RO陰性のいわゆるナイーブ型で、抗原刺激によるIL-4,IL-10,IFN-γなどのサイトカイン産生は著明に低下していた.また新生児T細胞は成人B細胞との混合培養ではlgGやlgA産生補助能は極めて低下していた.T細胞の抗原特異的な活性化には、Costimulatory分子を介するシグナルが必要不可欠であり、とくにCD28/CTLA4-CD80/CD86,CD40リガンド(L)-CD40がT細胞とB細胞間相互作用で重要である.新生児T細胞のCD40LはPHA,PWM,PMAとcalciumionophoaなどの刺激後も全く誘導されず,ヘルパー能低下の一因と考えられた.一方、IL-12は、CD4陽性T細胞をTh1型に誘導しIFN-γ産生能を高めるサイトカインであると理解されている.IL-12単独ではB細胞のIg産生は誘導できなかったが、ヘルパー能がなくサップレッサー能が亢進しているとされる新生児CD4陽性T細胞と成人B細胞の混合培養系で、PWM刺激でヘルパー能を示した.PWM刺激培養後の成人B細胞のCD80抗原発現はIl-12やIL-4による増強はみられず、さらに新生児CD4陽性T細胞はPWM刺激によりCD45RO抗原を発現するようになるが、IL-12存在下においてもCD40Lの誘導は全くなく、CD28抗原の有意な増強も観察されなかった.したがって、IL-12によるヘルパー能誘導の機序におけるCD80-CD28やCD40-CD40Lを介するCostimulatory分子の関与を明らかにすることはできなかった。今後他のCostimulatory分子の関与を検討する必要がある.IL-12による新生児期のCD4陽性T細胞の免疫グロブリン産生補助能の誘導機序を研究した。臍帯血CD4陽性T細胞は殆どCD45RO陰性のいわゆるナイーブ型で、抗原刺激によるIL-4,IL-10,IFN-γなどのサイトカイン産生は著明に低下していた.また新生児T細胞は成人B細胞との混合培養ではlgGやlgA産生補助能は極めて低下していた.T細胞の抗原特異的な活性化には、Costimulatory分子を介するシグナルが必要不可欠であり、とくにCD28/CTLA4-CD80/CD86,CD40リガンド(L)-CD40がT細胞とB細胞間相互作用で重要である.新生児T細胞のCD40LはPHA,PWM,PMAとcalciumionophoaなどの刺激後も全く誘導されず,ヘルパー能低下の一因と考えられた.一方、IL-12は、CD4陽性T細胞をTh1型に誘導しIFN-γ産生能を高めるサイトカインであると理解されている.IL-12単独ではB細胞のIg産生は誘導できなかったが、ヘルパー能がなくサップレッサー能が亢進しているとされる新生児CD4陽性T細胞と成人B細胞の混合培養系で、PWM刺激でヘルパー能を示した.PWM刺激培養後の成人B細胞のCD80抗原発現はIl-12やIL-4による増強はみられず、さらに新生児CD4陽性T細胞はPWM刺激によりCD45RO抗原を発現するようになるが、IL-12存在下においてもCD40Lの誘導は全くなく、CD28抗原の有意な増強も観察されなかった.したがって、IL-12によるヘルパー能誘導の機序におけるCD80-CD28やCD40-CD40Lを介するCostimulatory分子の関与を明らかにすることはできなかった。今後他のCostimulatory分子の関与を検討する必要がある.
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KAKENHI-PROJECT-08670863
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08670863
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高原子価鉄錯体の構築を基軸とする不活性結合活性化
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遷移金属錯体を用いた不活性な分子や結合の直接的官能基化の開発は、究極的な直截的物質変換を可能とするため現在最も注目され、その開発・確立が望まれている課題の一つである。本研究課題では、地殻中に豊富に存在するため安価かつ入手容易であり、人体をはじめとする生体などの環境への付加の少ない鉄に注目し、高い反応性を示す鉄錯体を精緻に設計・合成することで、不活性な結合の活性化・変換を達成することを目的としている。一連の研究において特に、鉄中心に強く電子供与するため高反応性錯体を与え、かつ結合活性化における鍵中間体として機能しうる高原子価中間体を安定化しうるキレート型ケイ素配位子に着目し、これを有する高反応性鉄錯体の構築と不活性結合活性化への展開を行ってきた。本年度は、最近開発した1,2-bis(dimethylsilyl)benzeneをジアニオン性キレート型ケイ素配位子として持つ高反応性鉄(II)錯体(1)が、ヒドロシランを還元剤とする種々のカルボニル化合物の還元反応に対し高い触媒活性を示す点に注目し、錯体1を触媒として用い、ヒドロシランをケイ素源とする、indoleのC-H結合シリル化へと展開した。その結果、錯体(1)はindoleのC-3位のC-H結合の選択的なシリル化が可能であることを見出した。この反応において、C-2位シリル化等の他の副反応は全く進行しない。また、indoleの5位にOMeやCl基を持つ基質を用いても反応は効率的に進行し、対応するC-3位シリル化体を選択的に高収率で与えることを見出し、基質適用範囲の広い反応であることも明らかにした。同様の反応を一般的な鉄(0)カルボニル錯体であるFe(CO)5やFe3(CO)12を触媒として用いてもほとんど進行しないことから、錯体(1)が配位不飽和活性種を効果的に発生しうることが、反応を高効率的に進行する鍵であることが分かった。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。遷移金属錯体を用いた不活性な結合の直接的官能基化の開発は、究極的な直截的物質変換を可能とするため現在最も注目され、その開発・確立が望まれている課題の一つである。本研究課題では、地殻中に豊富に存在するため入手容易で安価であり、かつ環境への負荷の少ない鉄に注目し、不活性な結合を活性化しうる鉄錯体の精密設計・合成・応用を目的としている。特に、鉄中心に強く電子供与するため高反応性錯体を与え、かつ高原子価状態を安定化しうるキレート型ケイ素配位子に着目し、これを有する高反応性鉄錯体の構築と、C-H結合をはじめとする不活性結合活性化への展開を行っている。本年度は、1,2-bis(dimethylsilyl)benzeneをキレート型ケイ素配位子として持つ高反応性鉄(II)錯体を用いることで、pyrazolyl基やpyridyl基を配向基として有するareneのオルト位C-H結合アルキル化、アルケニル化が可能であることを見出した。この反応では、キレート型ケイ素配位子を鉄上に導入することで、areneのC-H結合の酸化的付加により生成する高原子価鉄(IV)錯体の構築が可能となることが鍵であると考えられる。また、同様の鉄錯体は高効率的にSi-H結合を活性化しうることを見出し、これを応用することでindole類の3位選択的C-H結合シリル化が触媒的に達成できることも見出した。遷移金属錯体を用いた不活性な分子や結合の直接的官能基化の開発は、究極的な直截的物質変換を可能とするため現在最も注目され、その開発・確立が望まれている課題の一つである。本研究課題では、地殻中に豊富に存在するため安価かつ入手容易であり、人体をはじめとする生体などの環境への付加の少ない鉄に注目し、高い反応性を示す鉄錯体を精緻に設計・合成することで、不活性な結合の活性化・変換を達成することを目的としている。一連の研究において特に、鉄中心に強く電子供与するため高反応性錯体を与え、かつ結合活性化における鍵中間体として機能しうる高原子価中間体を安定化しうるキレート型ケイ素配位子に着目し、これを有する高反応性鉄錯体の構築と不活性結合活性化への展開を行ってきた。本年度は、最近開発した1,2-bis(dimethylsilyl)benzeneをジアニオン性キレート型ケイ素配位子として持つ高反応性鉄(II)錯体(1)が、ヒドロシランを還元剤とする種々のカルボニル化合物の還元反応に対し高い触媒活性を示す点に注目し、錯体1を触媒として用い、ヒドロシランをケイ素源とする、indoleのC-H結合シリル化へと展開した。その結果、錯体(1)はindoleのC-3位のC-H結合の選択的なシリル化が可能であることを見出した。この反応において、C-2位シリル化等の他の副反応は全く進行しない。また、indoleの5位にOMeやCl基を持つ基質を用いても反応は効率的に進行し、対応するC-3位シリル化体を選択的に高収率で与えることを見出し、基質適用範囲の広い反応であることも明らかにした。同様の反応を一般的な鉄
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KAKENHI-PUBLICLY-25105743
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25105743
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高原子価鉄錯体の構築を基軸とする不活性結合活性化
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(0)カルボニル錯体であるFe(CO)5やFe3(CO)12を触媒として用いてもほとんど進行しないことから、錯体(1)が配位不飽和活性種を効果的に発生しうることが、反応を高効率的に進行する鍵であることが分かった。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。本年度の研究において、高原子価錯体を安定化しうる機能を有するキレート型ケイ素配位子を持つ鉄錯体を用いることで、配向基を持つareneの不活性C-H結合官能基化が可能であることを見出した。この形式の反応は、鉄と同族のルテニウム錯体を用いた例は数多く報告されているが、鉄錯体による例はほとんどなく、精緻に設計された鉄錯体を用いることで初めて実現できたものである。さらに、このareneのC-H結合官能基化に加えて、indoleのC-H結合官能基化も同様の鉄錯体を用いることで達成できることも併せて見出している。このように、キレート型ケイ素配位子を鉄錯体へ導入することで、高原子価中間体の安定化を鍵とする多様な結合活性化が可能な高反応性鉄錯体を構築できることを明らかにすることができ、研究は概ね順調に進んでいると言うことができる。これまで得られた成果を基に、まずはareneのC-H結合官能基化、およびindoleの3位選択的C-H結合シリル化の基質適用範囲の拡大を目指す。鉄錯体を用いた配向基を持つareneのC-H結合官能基化については、現在のところ化学量論反応にとどまっている。そこで、重水素化された反応基質の適用などによる反応機構解析を行うことで、より高効率的な反応への応用展開を目指す。併せてindole類のC-H結合官能基化においては、様々な置換基を持つ誘導体や、indole以外の類縁体を用いた反応への適用を目指す。一連の検討において、必要に応じて、キレート型ケイ素配位子および鉄錯体の構造・電子状態の精密設計を併せて検討する。特に、反応達成の鍵となる高原子価鉄錯体の安定化を効果的に行うため、高い電子供与性を示す配位子の導入などを検討する。
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KAKENHI-PUBLICLY-25105743
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25105743
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プロトン・ポンプの高次細胞機能の発現と疾病に関する研究
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動物個体には多彩な酸性環境(オルガネラ、コンパートメント)が存在している。細胞内においては、細胞内膜系のオルガネラ、すなわち、ゴルジ体、エンドソーム、リソソームなどの内部は酸性に保たれている。個体レベルでは、骨吸収窩、尿細管、膀胱、輸精管などの内腔も酸性である。細胞の内外に形成されている酸性環境は、タンパク質分解、小胞輸送をはじめ、免疫・神経機能、骨代謝、イオン恒常維持などに重要な役割を果たしている。酸性環境の異常は骨粗鬆症、大理石病、ガン転移、感音性難聴、腎アシドーシス、不妊症など様々な疾病と密接に関連している。今年度は、腎臓および内分泌における液胞型ATPase(V-ATPase)の生理機能を中心に解析を行った。私たちはサブユニット・イソフォームによってV-ATPaseが細胞あるいは組織特異的な局在を示すことを明らかにした.同時に,特定なオルガネラ膜に特異的な膜タンパク質を複数同定してきた.さらに,リソソーム局在型a3イソフォームが,V-ATPase複合体のまま,細胞形質膜に局在を変化する「リソソームの分泌」と言うべき現象を発見した.これは,極めて興味深い研究成果であり,破骨細胞などの機能を解明する上で重要な知見である.これらの研究成果はNature Cell Biologyをはじめ、複数報の論文に発表した。動物個体には多彩な酸性環境が形成されている.細胞内においては,細胞内膜系のオルガネラ,すなわち,ゴルジ体,エンドソーム,リソソームなどの内部は酸性に保たれている.個体レベルでは、骨吸収窩,尿細管,膀胱,輸精管などの内腔も酸性である.細胞の内外に形成されている様々な酸性環境は、タンパク質分解,小胞輸送をはじめ,免疫・神経機能,骨代謝,イオン恒常維持などに重要な役割を果たしている.これらの酸性環境の形成に中心的な役割を果たしているのは,液胞型プロトンATPase (V-ATPase)とよばれる複数のサブユニットからなるプロトン・ポンプである.研究代表者らは,V-ATPaseの機能が哺乳類の初期発生に必須であることを示した.すなわち,ジーンターゲティング法により作出したV-ATPaseの欠損マウスの表現型を詳細に調べ,V-ATPaseを欠損した胚は胞盤胚期まで発生するが,着床直後の段階で致死となることを示した.さらに,マウスおよびヒトのV-ATPaseの複数のサブユニット・イソフォームを同定し,その発現様式を明らかにしてきた.そのうち,a3アイソフォームを持つV-ATPaseが破骨細胞への分化に従って,その局在がリソソームから形質膜へ変化することを見出した.この結果は,a3遺伝子欠損マウスが大理石病の表現型を示すこと,胎児悪性大理石病患者のa3をコードする遺伝子に5種類の変異が見いだされたことなどの最近の報告とよく一致する.また,B2とa4イソフォームが遺伝性遠位尿細管アシドーシスの原因適伝子であることが明らかとなった.遺伝病との関連はまだ不明であるが,G2,C2,E1イソフォームがそれぞれ中枢神経細胞シナプス小胞,肺胞上皮細胞ラメラボーディ、精子先体に特異的に局在し,酵素の活性調節、特定の膜へのターゲティングに重要な役割を持つことが明らかとなった.これらの成果は,固体レベルでの生理機能を明らかにする上で基盤となるものである.動物には一方向のプロトン輸送から形成される多彩な酸性環境(胃内腔、骨吸収窩、尿細管、膀胱、輸精管および細胞内オルガネラ)が存在する.酸性環境の異常は胃潰瘍,骨粗鬆症,大理石病,ガン転移,感音性難聴,'腎アシドーシス,不妊症など様々な疾病と密接に関連している.これまで,酸性環境に関しての研究は分子・細胞レベルでの研究が中心であった.しかし,疾病との関連で酸性環境を考える上では個体レベルでの研究が必須であることが明白である.研究代表者らは,酸性環境の形成に中心的な役割を果たしているのは,液胞型プロトンATPase(V-ATPase)とよばれる複数のサブユニットからなるプロトン・ポンプに着目し、これまで、ジーンターゲティング法により作出したV-ATPaseの欠損マウスの表現型を詳細に調べ,V-ATPaseを欠損した胚は胞盤胚期まで発生するが,着床直後の段階で致死となることを示した.さらに,マウスおよびヒトのV-ATPaseの複数のサブユニット・イソフォームを同定し,その発現様式を明らかにしてきた.今年度は、これらのサブユニット・イソフォームのコンディショナル欠損マウスを作出し、V-ATPaseの特異的な組織における生理機能、特に遺伝病との関連および発症メカニズムを詳細に解析できる動物モデルを開発した。さらに、サブユニット・イソフォームと緑色蛍光タンパクとの融合タンパクを発現するマウスを作出し、酸性環境をin vivoで観察する系を構築した。動物個体には多彩な酸性環境(オルガネラ、コンパートメント)が存在している。細胞内においては、細胞内膜系のオルガネラ、すなわち、ゴルジ体、エンドソーム、リソソームなどの内部は酸性に保たれている。個体レベルでは、骨吸収窩、尿細管、膀胱、輸精管などの内腔も酸性である。細胞の内外に形成されている酸性環境は、タンパク質分解、小胞輸送をはじめ、免疫・神経機能、骨代謝、イオン恒常維持などに重要な役割を果たしている。
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KAKENHI-PROJECT-15687004
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15687004
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プロトン・ポンプの高次細胞機能の発現と疾病に関する研究
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酸性環境の異常は骨粗鬆症、大理石病、ガン転移、感音性難聴、腎アシドーシス、不妊症など様々な疾病と密接に関連している。今年度は、腎臓および内分泌における液胞型ATPase(V-ATPase)の生理機能を中心に解析を行った。私たちはサブユニット・イソフォームによってV-ATPaseが細胞あるいは組織特異的な局在を示すことを明らかにした.同時に,特定なオルガネラ膜に特異的な膜タンパク質を複数同定してきた.さらに,リソソーム局在型a3イソフォームが,V-ATPase複合体のまま,細胞形質膜に局在を変化する「リソソームの分泌」と言うべき現象を発見した.これは,極めて興味深い研究成果であり,破骨細胞などの機能を解明する上で重要な知見である.これらの研究成果はNature Cell Biologyをはじめ、複数報の論文に発表した。
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KAKENHI-PROJECT-15687004
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15687004
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ベイズ的推測方法の理論的研究とその応用
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母数の推定において、対称損失関数よりも非対称損失関数を用いるのが適当な場合がある。本研究では、Varian (1975)によって提案されたLINEX (Linear-Exponetial)損失関数を対象に研究を行った。平成12年度は、LINEX損失関数のもとでの正規分布の平均の逐次推定問題(ミニマムリスク問題)の研究を行った、特に、標本抽出法として、純逐次方法と、加速型逐次方法を用いた場合について、標本平均を推定量に用いる逐次推定方法は漸近的に非許容的であるという結果を得た。更に、多変量正規分布の平均ベクトルのLINEX損失関数のもとで逐次推定問題(最小リスク問題、有界リスク問題)についての研究を行い、標本平均ベクトルを推定量とする逐次推定方法は漸近的に非許容的であるという結果を得た。平成13年度は、一母数指数型分布族を仮定し、その平均のベイズ逐次推定問題をLINEX損失関数のもとで研究した。事前分布としては共役事前分布を採用した。しかし、ベイズ逐次推定方式の構成は困難であるので、漸近的にベイズ逐次推定方式と同等となる逐次推定方式の構成について研究を行った。特に、Bickel and Yahav (1967).によるAPO方式の構成とその特性について研究を行った。特にポアソン分布の平均に関するAPO方式については、ベイズ逐次推定方式と比較して、2次の漸近有効性を持つことを示すことができた。今後の研究計画として、一般の指数型分布族に対して同様の結果を得ることができるかについて研究を行い、更に、その結果を踏まえて、経験ベイズ逐次推定問題についての研究を行う予定である。母数の推定において、対称損失関数よりも非対称損失関数を用いるのが適当な場合がある。本研究では、Varian (1975)によって提案されたLINEX (Linear-Exponetial)損失関数を対象に研究を行った。平成12年度は、LINEX損失関数のもとでの正規分布の平均の逐次推定問題(ミニマムリスク問題)の研究を行った、特に、標本抽出法として、純逐次方法と、加速型逐次方法を用いた場合について、標本平均を推定量に用いる逐次推定方法は漸近的に非許容的であるという結果を得た。更に、多変量正規分布の平均ベクトルのLINEX損失関数のもとで逐次推定問題(最小リスク問題、有界リスク問題)についての研究を行い、標本平均ベクトルを推定量とする逐次推定方法は漸近的に非許容的であるという結果を得た。平成13年度は、一母数指数型分布族を仮定し、その平均のベイズ逐次推定問題をLINEX損失関数のもとで研究した。事前分布としては共役事前分布を採用した。しかし、ベイズ逐次推定方式の構成は困難であるので、漸近的にベイズ逐次推定方式と同等となる逐次推定方式の構成について研究を行った。特に、Bickel and Yahav (1967).によるAPO方式の構成とその特性について研究を行った。特にポアソン分布の平均に関するAPO方式については、ベイズ逐次推定方式と比較して、2次の漸近有効性を持つことを示すことができた。今後の研究計画として、一般の指数型分布族に対して同様の結果を得ることができるかについて研究を行い、更に、その結果を踏まえて、経験ベイズ逐次推定問題についての研究を行う予定である。本研究の主目的は、ベイズ推定方法の理論的研究とその応用である。本年度はLINEX損失関数に関する逐次推定問題について研究を行った。以下に本年度得られた主要な成果、次年度の研究課題について述べる。1.LINEX損失関数のもとでの正規分布の逐次推定固定標本では、正規分布の平均を標本平均で推定する方法は非許容的であることが知られている。この結果が逐次推定の場合にも成立するかどうかを研究した。特にpurely sequential,accelerated sequentialの場合について研究を行い、漸近的ではあるが成立することが分かった。この問題に関するベイズ(経験ベイズ)逐次推定方法、多変量正規分布への拡張に関する研究は次年度の課題である。2.ポアソン分布の平均のLINEX損失関数のもとでのベイズ逐次推定ポアソン分布の平均のベイズ逐次推定問題を、事前分布がガンマ分布の場合について研究を行った。ベイズ逐次推定方法を実際に使用可能な形で求めるのは困難であるので、Bickel and Yahav(1967)の方法を用いて漸近的有効な方式を構成した。その方式がWoodroofe(1981)の意味でnon-defficientであることを示すことができた。事前分布が未知である場合に用いられる経験ベイズ逐次推定方法に関する研究は次年度の課題である。本年度の研究計画は、一母数指数型分布族を仮定し、その平均のベイズ逐次推定問題、経験ベイズ逐次推定問題をLINEX損失関数のもとで考察することであった。先ず事前分布としては共役事前分布の場合についてのベイズ逐次推定問題について研究を行った。しかし、ベイズ逐次推定方法は存在するが、少数の例外を除いて、その具体的な構成は困難である。そのため、漸近的にベイズ逐次推定方法と同等となる逐次推定方法の構成の研究を行った。特に、Bickel and Yahav(1967)によるAPO方式は、そのための一般的な方法として、広く用いられ、2乗損失誤差においては、Woodroofe(1981)が、その有効性を示している。
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KAKENHI-PROJECT-12640131
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12640131
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ベイズ的推測方法の理論的研究とその応用
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本研究においても、APO方式による逐次推定方法の構成とその特性について研究を行った。まず、一般的な考察を行う前に、ポアソン分布の平均に関するAPO方式にもとづく逐次推定方法の構成とその性質について研究を行った。その成果として、その逐次推定方式は、ベイズ逐次推定方法と比較して、2次の漸近有効性を持つことを示すことができた。すなわち、ベイズ推定方法とのリスクの差は、漸近的に標本1個の抽出コストの差以下であることが分かった。しかしながら、その結果を一般の指数型分布族に拡張するためには、事後分布の漸近的特性等の性質を研究することが必要であることが分かり、本研究期間中には、その結果を得ることができなかった。今後の研究の展開として、一般の指数型分布族の場合にもポアソン分布の場合に得られた結果が成立するかどうか。更に、事前分布を共役分布ではなく、一般の分布の場合についてはどうかが考えられる。又本年度は、ベイズ逐次推定方法に関する結果を踏まえて、経験ベイズ逐次推定問題についての研究も行う予定であったが、それも今後の研究課題である。
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KAKENHI-PROJECT-12640131
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12640131
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オミクス解析を応用した歯周病菌感染による肝糖脂質代謝異常誘導の経門脈因子同定
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本研究は、歯周病菌が消化管に到達することで腸内細菌叢ならびに腸管上皮にどの様な影響を及ぼし、経門脈的にいかなる分子が肝臓等に到達することにより糖・脂質代謝異常を引き起こし得るのかについて、オミクス解析により分子レベルにて解明することを目的としている。糖尿病マウスにおける歯周病菌感染群において、μCT解析にて歯槽骨吸収量の有意な増加と、時間経過とともに血糖値の有意な上昇を確認した。同感染マウスの肝臓組織のPCR解析の結果、炎症関連遺伝子には変化はみられないものの、脂質合成関連遺伝子の減少と糖新生関連および胆汁酸合成関連の遺伝子の発現上昇を確認しており、肝臓における糖・脂質代謝に影響を及ぼしている変化を捉えた。さらにプロテオーム解析により腸管内の菌叢の変化および糞便内において歯周病菌であるPorphyromonas gingivalis菌(P.g菌)の存在を菌固有のペプチドで確認することに成功した。また、予備実験として門脈血に対するメタボローム解析を行った結果、菌投与群において一部の有機化合物の上昇を確認した。これらの結果から、歯周病による糖尿病の病態修飾は炎症による結果ではなく、細菌叢の変化による糖・脂質代謝ネットワークに対する修飾因子の可能性を考察している。引き続き本研究計画によって小腸-門脈血-肝臓等を対象にオミクス解析することにより、これらをつなぐ特異的な分子を同定し、歯周病が代謝異常病態を増悪する分子メカニズムの一端を解明したい。門脈血に関するオミクス解析に関して、前処理と機器の測定条件の予備的検討を開始した段階である。研究分担者である石濱の研究室は高速液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS)に用いるユニークなLCカラムを有しており、世界で初めてバクテリア(大腸菌)の完全プロテオーム解析を達成し、リン酸化プロテーム解析にも実績を有する。そこで糞便、腸管、門脈血、肝臓等の試料に対して、タンパクを酵素消化してペプチド断片にし、質量分析計にて測定するショットガンプロテオーム解析を行うとともに、外部機関での受託解析にて並行して門脈血のメタボローム解析を行う。これにより、腸内細菌叢の変化による特異的代謝産物の痕跡を包括的に探索する。また、糖・脂質代謝ネットワークに対する肝臓におけるリン酸化プロテオーム解析を行い、ネットワークの異常を俯瞰的に検討する。さらに抽出された候補分子について、過剰投与等を行い上記の現象の再現による解析により、特異的病態修飾因子として同定する。本研究は、歯周病菌が消化管に到達することで腸内細菌叢ならびに腸管上皮にどの様な影響を及ぼし、経門脈的にいかなる分子が肝臓等に到達することにより糖・脂質代謝異常を引き起こし得るのかについて、オミクス解析により分子レベルにて解明することを目的としている。糖尿病マウスにおける歯周病菌感染群において、μCT解析にて歯槽骨吸収量の有意な増加と、時間経過とともに血糖値の有意な上昇を確認した。同感染マウスの肝臓組織のPCR解析の結果、炎症関連遺伝子には変化はみられないものの、脂質合成関連遺伝子の減少と糖新生関連および胆汁酸合成関連の遺伝子の発現上昇を確認しており、肝臓における糖・脂質代謝に影響を及ぼしている変化を捉えた。さらにプロテオーム解析により腸管内の菌叢の変化および糞便内において歯周病菌であるPorphyromonas gingivalis菌(P.g菌)の存在を菌固有のペプチドで確認することに成功した。また、予備実験として門脈血に対するメタボローム解析を行った結果、菌投与群において一部の有機化合物の上昇を確認した。これらの結果から、歯周病による糖尿病の病態修飾は炎症による結果ではなく、細菌叢の変化による糖・脂質代謝ネットワークに対する修飾因子の可能性を考察している。引き続き本研究計画によって小腸-門脈血-肝臓等を対象にオミクス解析することにより、これらをつなぐ特異的な分子を同定し、歯周病が代謝異常病態を増悪する分子メカニズムの一端を解明したい。門脈血に関するオミクス解析に関して、前処理と機器の測定条件の予備的検討を開始した段階である。研究分担者である石濱の研究室は高速液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS)に用いるユニークなLCカラムを有しており、世界で初めてバクテリア(大腸菌)の完全プロテオーム解析を達成し、リン酸化プロテーム解析にも実績を有する。そこで糞便、腸管、門脈血、肝臓等の試料に対して、タンパクを酵素消化してペプチド断片にし、質量分析計にて測定するショットガンプロテオーム解析を行うとともに、外部機関での受託解析にて並行して門脈血のメタボローム解析を行う。これにより、腸内細菌叢の変化による特異的代謝産物の痕跡を包括的に探索する。また、糖・脂質代謝ネットワークに対する肝臓におけるリン酸化プロテオーム解析を行い、ネットワークの異常を俯瞰的に検討する。さらに抽出された候補分子について、過剰投与等を行い上記の現象の再現による解析により、特異的病態修飾因子として同定する。
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KAKENHI-PROJECT-18K09573
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K09573
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DNAオリガミ超分子の合理設計に向けた新規プラットフォーム開発
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2018年度において、DNAオリガミヘテロ多量体を作製するためのソフトウェア開発と、DNAオリガミのデータベース構築を行った。50万原子におよぶDNAオリガミを効率的に表現するためのデータ構造を定義し、既存のソフトウェアによって出力されたファイルを変換する機能を実装した。データ構造では、申請書に記述した通り、二重らせんDNAを剛直なロッドとみなす、大胆な粗視化を行った。ソフトウェアは、三次元的な視覚情報をもとに回転や平行移動を行い、直観的に構造物を組み合わせることが可能である。既存ソフトウェアではDNAのらせんの向きが平行でなく、かつ格子状にらせんが拘束されるという制限があったが、本ソフトウェアでは二重らせんを自由自在に配置可能であり、設計の自由度が大きく改善された。データベースの構築は、すでに報告されているDNAオリガミに関する設計情報を蓄積する目的で行った。ウェブ公開することで、分野の研究や開発を加速されることが期待される。既存ソフトウェアで設計した構造ファイルを入力することで、実験を行うための配列ファイル、シミュレーションを行うための全原子ファイル、プレゼンテーションを行うためのレンダリングファイル等に変換する機能を実装した。また、四角形や棒状など、標準的な構造物をスクリプトにより自動設計した。結果として、既存の論文から30の構造、スクリプトにより作成された510の一次元構造、487の二次元構造、837の三次元構造がデータベースに蓄積されている。これらの成果は、2019年3月に行われた分子ロボティクス年次大会において報告し、また2019年5月にフィンランドで行われるNANTECHと呼ばれる国際会議で発表予定である。ソフトウェア開発とデータベース構築において一定の成果が得られた。ソフトウェアは申請書に書いた通り、直観的に操作可能なインターフェースを備えている。既存のソフトウェアでは表現不可能であった、二重らせんの自由配置にも成功しており、今後のアルゴリズム開発もスムーズに進むと考えられる。疑似コードレベルではプリミティブなアルゴリズムができているものの、実装や高速化を速やかに行う必要がある。データベースについても、設計図を変換して複数の可視化可能なデータを提供することに成功している。さらに1000以上の標準構造を設計し、パーツライブラリを提供する準備が整っている。ただし、1年目の段階でウェブ上にデータベースを公開予定であったが、情報管理の観点で問題があるため公開は先送りしている。今後はユーザー登録や情報管理などの機能の実装を速やかに行う必要がある。データベースとソフトウェアの連携は、共通の規格のファイルフォーマットを介することで一定レベルで実現されている。今後はシームレスに連携できるように、インポートやエクスポートの機能を充実させる。実験による本研究の評価は2年目から行う予定であるため、現時点での進捗評価は難しい。ただし、申請時には透過型電子顕微鏡による観察は外部機関に委託する予定であったが、1年目において、東北大学の共用施設で観察できるよう協力体制を確立した。DNAオリガミ単量体を観測するための最適条件を見出したため、今後多量体を作製して本研究の妥当性を評価する場合の障害が小さくなったと考えられる。今後は、ソフトウェアに連結アルゴリズムを実装し、実際に実験可能なDNAオリガミ多量体の設計を行う。アルゴリズムの実装においては、粗視化されたDNAのデータをもとに、各塩基の位置座標を一時的に計算する必要がある。必要となる塩基だけを計算することで高速化を図る。さらに塩基間の距離を計算し、連結可能な塩基の組み合わせをハイライトしてユーザーに提示する。不要な組み合わせを計算しないように、三角不等式と分割統治法を活用して枝刈りを行う。データベースではインターフェースを充実させる。現在のバージョンでは、ユーザー登録なしでファイルをアップロードすることができるため、管理体制に問題がある。ユーザーごとにファイルの公開・非公開を選択できるように改良を行い、データベースとしての価値を高める。また投稿された構造にユーザーがコメントを付けられる機能を実装し、オープンサイエンスの手法により分野の発展につなげる。十分な情報管理が可能になった段階で、現在は研究室内のLANのみ公開しているデータベースをウェブ上に公開する。公開後はユーザーからのフィードバックをもとに改良を続ける。今後、本研究の成果をデモンストレーションするために、DNAオリガミ多量体の設計および実験を行う。現在のところ、ロボットアームのような構造を設計予定であるが、進捗状況に合わせて、渦巻状構造の設計や多関節リングの設計などにシフトする。設計後は原子間力顕微鏡や透過型電子顕微鏡を活用して、構造体の評価を行う。2018年度において、DNAオリガミヘテロ多量体を作製するためのソフトウェア開発と、DNAオリガミのデータベース構築を行った。50万原子におよぶDNAオリガミを効率的に表現するためのデータ構造を定義し、既存のソフトウェアによって出力されたファイルを変換する機能を実装した。データ構造では、申請書に記述した通り、二重らせんDNAを剛直なロッドとみなす、大胆な粗視化を行った。ソフトウェアは、三次元的な視覚情報をもとに回転や平行移動を行い、直観的に構造物を組み合わせることが可能である。既存ソフトウェアではDNAのらせんの向きが平行でなく、かつ格子状にらせんが拘束されるという制限があったが、本ソフトウェアでは二重らせんを自由自在に配置可能であり、設計の自由度が大きく改善された。データベースの構築は、すでに報告されているDNAオリガミに関する設計情報を蓄積する目的で行った。ウェブ公開することで、分野の研究や開発を加速されることが期待される。
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KAKENHI-PROJECT-18K18144
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K18144
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DNAオリガミ超分子の合理設計に向けた新規プラットフォーム開発
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既存ソフトウェアで設計した構造ファイルを入力することで、実験を行うための配列ファイル、シミュレーションを行うための全原子ファイル、プレゼンテーションを行うためのレンダリングファイル等に変換する機能を実装した。また、四角形や棒状など、標準的な構造物をスクリプトにより自動設計した。結果として、既存の論文から30の構造、スクリプトにより作成された510の一次元構造、487の二次元構造、837の三次元構造がデータベースに蓄積されている。これらの成果は、2019年3月に行われた分子ロボティクス年次大会において報告し、また2019年5月にフィンランドで行われるNANTECHと呼ばれる国際会議で発表予定である。ソフトウェア開発とデータベース構築において一定の成果が得られた。ソフトウェアは申請書に書いた通り、直観的に操作可能なインターフェースを備えている。既存のソフトウェアでは表現不可能であった、二重らせんの自由配置にも成功しており、今後のアルゴリズム開発もスムーズに進むと考えられる。疑似コードレベルではプリミティブなアルゴリズムができているものの、実装や高速化を速やかに行う必要がある。データベースについても、設計図を変換して複数の可視化可能なデータを提供することに成功している。さらに1000以上の標準構造を設計し、パーツライブラリを提供する準備が整っている。ただし、1年目の段階でウェブ上にデータベースを公開予定であったが、情報管理の観点で問題があるため公開は先送りしている。今後はユーザー登録や情報管理などの機能の実装を速やかに行う必要がある。データベースとソフトウェアの連携は、共通の規格のファイルフォーマットを介することで一定レベルで実現されている。今後はシームレスに連携できるように、インポートやエクスポートの機能を充実させる。実験による本研究の評価は2年目から行う予定であるため、現時点での進捗評価は難しい。ただし、申請時には透過型電子顕微鏡による観察は外部機関に委託する予定であったが、1年目において、東北大学の共用施設で観察できるよう協力体制を確立した。DNAオリガミ単量体を観測するための最適条件を見出したため、今後多量体を作製して本研究の妥当性を評価する場合の障害が小さくなったと考えられる。今後は、ソフトウェアに連結アルゴリズムを実装し、実際に実験可能なDNAオリガミ多量体の設計を行う。アルゴリズムの実装においては、粗視化されたDNAのデータをもとに、各塩基の位置座標を一時的に計算する必要がある。必要となる塩基だけを計算することで高速化を図る。さらに塩基間の距離を計算し、連結可能な塩基の組み合わせをハイライトしてユーザーに提示する。不要な組み合わせを計算しないように、三角不等式と分割統治法を活用して枝刈りを行う。データベースではインターフェースを充実させる。
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KAKENHI-PROJECT-18K18144
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K18144
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CSRとステークホルダー・コミュニケーション-豊かな消費生活の実現に向けて-
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ステークホルダーとの生産的なコミュニケーションなくして、企業行動の社会的価値が高まることはない。本研究は、企業が消費者に対する社会的責任を遂行していく上での、対消費者コミュニケーションにおける課題を明らかにしている。企業が社会的責任を遂行していく上では、消費者間の情報取捨選択能力の格差を想定することが不可欠であること、特定の責任内容にとらわれ過ぎることによって消費者間の公平性を損なってはならないことを主張する。ステークホルダーとの生産的なコミュニケーションなくして、企業行動の社会的価値が高まることはない。本研究は、企業が消費者に対する社会的責任を遂行していく上での、対消費者コミュニケーションにおける課題を明らかにしている。企業が社会的責任を遂行していく上では、消費者間の情報取捨選択能力の格差を想定することが不可欠であること、特定の責任内容にとらわれ過ぎることによって消費者間の公平性を損なってはならないことを主張する。本研究は、豊かで安全な消費活動の実践における企業の役割および企業とステークホルダーとのコミュニケーションにおける経営課題について考察するものである。高度情報化社会の下での消費者の発言力の増大や、消費者の自律性の育成を目的とした消費者教育への注目など、消費者をとりまく環境は大きく変化しつつある。企業倫理論および企業社会責任論においては、企業権力の増大とそれに伴う責任範囲・対応領域の拡大の必要性が主張されてきた。この主張の下では、企業と消費者のコミュニケーションを図る上で、企業側からの働きかけがとりわけ重要であるという見解が導かれる。しかしながら、豊かで安全な消費活動のための一手段として両者のコミュニケーションを捉えるならば、それは企業からの働きかけという一方向的な視点ではなく、消費者の主体性やコミュニケーション上の困難性等、両者のコミュニケーションを促進もしくは阻害する社会的要因についても注目されるべきであろう。本研究においては、対消費者を中心とする企業のステークホルダー・コミュニケーションを困難にせしめている要素の一つとして、ステークホルダーの多義性があることを主張する。既存のステークホルダー理論においてもステークホルダーの類型化はなされており、それらにおいては主にステークホルダーの持つ利害関係の性質から類型化されてきた。本研究では、企業がコミュニケーションの客体と方法をより明確な形でターゲット化するために、以下の観点からの類型化およびそれらに基づく具体的な施策が必要であると考える。すなわち、ステークホルダーの判断力、情報に対する感度および解釈の仕方といった能力・行動の相違、購入者や使用者といった属性の相違等、ステークホルダー自身の具体的性質である。これらの要素をもとに消費者のパターン化を行うことによって、コミュニケーションのあり方についてより詳細に検討することが出来る。*「多様なステークホルダー」の想定とCSR経営に対する示唆CSE経営の基本的課題は、企業活動にいかにして社会性を持たせるかという内容に集約される。社会性の内容は、企業とステークホルダーとの双方向的なコミュニケーションの過程の中で生成・変化していくものであると一般に理解される。しかしながら企業とステークホルダーとのコミュニケーションにおいて、情報に対する感度や解釈の仕方はステークホルダー間において一様ではないという事実は、非常に重要である。同じ属性でありながら性質の異なるステークホルダーの要請に総括的に応えようとすることは、現実的には非常に困難である。ステークホルダーの類型の複雑化は社会性の内容が拡散することを意味しており、企業がこれに全て十分に応えることは、ほぼ不可能と言えるかもしれない。多様なステークホルダーの存在を前提とする環境下においては、企業が彼らからの要請に綿密に応えるという社会応答的なアプローチには限界があるのではないか。また今日のように高度化・重層化した情報社会の下では、立場の異なる主体間のコミュニケーションにおいて、情報の非対称性のみならず、その拡大や歪み、およびその発生の不確実性までもが想定されなければならない(ステークホルダー・モデルにおける情報環境の想定)。本研究では、このような環境下においてこそ企業自身のリーダーシップによる、「有益な提言者としてのステークホルダーの育成」か重要であることを主張する。ステークホルダーとの生産的なコミュニケーション無くしては、企業行動の社会的価値も高まることはない。とりわけ消費者というステークホルダーは、質・量およびコミュニケーション経路が多様な存在であり、彼らを「要請する者」としてではなく、「有益な提言者」までに高めた上でコミュニケーションを図ること、そして企業がその育成過程において一定の役割を果たすことこそが、CSR経営自体の価値を高める上で重要である。
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KAKENHI-PROJECT-20830128
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20830128
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多孔性シリカコロイド結晶による波長可変発光素子の創製とベイポルミネセンスへの展開
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タンニン酸とアミノシランを用いると、微量のカーボンを含有した真球状の多孔質シリカが合成できることを明らかにした。この多孔質シリカは紫外線照射により、可視光領域にブロードな発光スペクトルを示し、白色に発光することを見いだした。また、超低速ディップコート法により、真球状多孔質シリカナノ粒子分散液からコロイド結晶を作製できることを明らかにした。これらを組み合わせることで、シリカのみで波長制御した発光素子の作製について可能性を示した。天然物由来の成分とシランカップリング剤を用いて真球状シリカナノ粒子が合成できることを明らかにした。特に、アミノ基を有するシランカップリング剤を用いることで、15秒程度の非常に短い時間で200nm程度の球状粒子が合成できることを明らかにした。球状粒子が生成するための最適な天然由来成分とシランカップリング剤のモル比が存在することを明らかにした。種々の条件で合成したところ、粒子径の単分散性を示すCV値(変動係数)は約10%程度まで高めることに成功した。また、焼成条件を制御し、ごく微量の炭素を残すことで、ブラックライト照射下で白色に発光する球状シリカが合成できることを明らかにした。さらに、新規に見いだした球状シリカナノ粒子の合成メカニズムについて検討を行った。その結果、天然由来成分のフェノール基がアニオン性、シランカップリング剤のアミノ基がカチオン性になるpH条件のときのみ、球状粒子が合成できることを明らかにした。すなわち、粒子合成の第一段階として、天然由来成分のフェノール基とシランカップリング剤のアミノ基が相互作用することで、小さな核が形成され、その核同士が自己組織化することで、数百nmの球状ナノ粒子が生成していると考えられる。コロイド結晶が作製可能な10%という最低限の単分散性まで到達することはできた。また、天然物を内包した球状シリカナノ粒子を炭化後、空気焼成することで、わずかに炭素を残留させることに成功し、ブラックライト照射下で白色に発光することを確認した。球状多孔質シリカを合成するときの、各種合成条件が粒子の形状、粒子径、単分散性に及ぼす影響を検討した。その結果、pH10付近のときだけ球状粒子が生成することを明らかにし、粒子の形状には合成時のpHが大きく関与していることを明らかにした。また、タンニン酸水溶液とアミノシランを混合してから約15秒後には白濁し、100200nm程度の球状粒子が生成していることがSEM観察からわかった。さらに、反応時間とともに粒子径は大きくなり、白濁後、約15分で粒子の成長がほぼ止まることが明らかとなった。合成温度や撹拌方法などにより、単分散性が変化することも明らかにした。合成したタンニン酸/シリカ複合体の焼成条件を制御することで、微量のカーボンを含有するシリカが合成できた。270nmの紫外線を照射することで420nmをピークとし、可視光領域にブロードな発光スペクトルを示した。その結果、白色に発光するシリカが合成することに成功した。焼成温度を550°Cで一定にし、焼成時間を変えることで、白色発光の最適化を行った。焼成時間とともにカーボンの含有量が減少することをCHN分析より明らかにした。また、UV-Vis吸収スペクトル測定から、カーボンの含有量が減少するとともに、吸収が短波長側にシフトすることがわかった。さらに、FT-IR測定から、シリカ中に残存したカーボンの存在状態を明らかにし、白色発光のメカニズムを推察した。球状シリカの白色発光特性の最適化およびその発現メカニズムを予測するところまでは達成したが、コロイド結晶を作製するところまでは至らなかった。タンニン酸水溶液にアミノシランを添加することで、真球状ナノ粒子を合成した。タンニン酸水溶液の濃度、アミノシランの種類、合成時間を最適化することで、目的とする200 nmから300 nmの真球状ナノ粒子を合成できることを明らかにした。また、合成時のpHの影響を詳細に検討した結果、タンニン酸のフェノール基とアミノシランのアミノ基が静電的に相互作用するpH領域でのみ粒子が生成し、さらに、pHが10付近でのみ真球状ナノ粒子が生成することがわかった。以上のことから、タンニン酸とアミノシランから真球状ナノ粒子を合成する反応においては、溶液のpHの値が最も大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。つぎに、得られた真球状ナノ粒子を焼成することでタンニン酸を除去し、真球状多孔質シリカを合成した。焼成温度および時間を制御すると、真球状多孔質シリカの細孔内にわずかに炭素を残留させることに成功した。UV-Vis吸収スペクトル測定より、炭素含有量が減少するにつれ、吸収端が短波長側にシフトすることがわかった。この結果から、炭素含有量の減少とともに、細孔内の炭素の芳香環の数が減少していることが示唆された。炭素を含有した真球状多孔質シリカは紫外線の励起により、可視光領域にブロードな発光スペクトルを示し、白色に発光することを見いだした。さらに、最適な炭素含有量が存在することも明らかとなった。この白色に発光する炭素含有真球状多孔質シリカを用いて、コロイド結晶膜の作製を試みた。500 nm/sという超低速で基板を引き上げることで、粒子1層分のコロイド結晶膜を作製できることを明らかにした。タンニン酸とアミノシランを用いると、微量のカーボンを含有した真球状の多孔質シリカが合成できることを明らかにした。
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KAKENHI-PROJECT-15K13820
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K13820
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多孔性シリカコロイド結晶による波長可変発光素子の創製とベイポルミネセンスへの展開
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この多孔質シリカは紫外線照射により、可視光領域にブロードな発光スペクトルを示し、白色に発光することを見いだした。また、超低速ディップコート法により、真球状多孔質シリカナノ粒子分散液からコロイド結晶を作製できることを明らかにした。これらを組み合わせることで、シリカのみで波長制御した発光素子の作製について可能性を示した。平成28年度は単分散性をさらに高めるため、急速かつより均一に混合できるマイクロリアクターを利用して、球状ナノ粒子の合成を試みると同時に、超低速ディップコーターにより、コロイド結晶を作製する。種々の粒径のコロイド粒子を用いてコロイド結晶を作製し、光学特性についても評価を行う。昨年度の課題であったコロイド結晶の作製を行い、紫外線励起白色発光特性を評価する。コロイド結晶は超低速ディップコート法により作製する。シリカの粒子径の違いにより、発光波長が変化することを確認する。その上で、エタノール、メタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、水蒸気など種々のガスを吸着・脱離させることで、発光波長は可逆的に変化することを確認する。無機材料化学予定していた学会の旅費が予定より少なかったため、旅費を次年度に繰り越した。平成28年度、学会発表の旅費として使用する。
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KAKENHI-PROJECT-15K13820
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K13820
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日本中世仏教の構造的研究
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本研究によって、日本中世仏教の基本構造は,「体制仏教」「反体制仏教」「超体制仏教」の三つの思想空間から成り立っていたことが確認された。また、この「体制仏教」の一半を占める「武家的体制仏教」は、鎌倉幕府の宗教世界を構築し、その基調は「禅密主義(臨済宗と真言密教の総和)に採られていた。幕府はこの「禅密主義」を東国地域に、一種の「宗教的祭祀権」の行使という形で現実化し、もって幕府の国家権力を誇示した。執権時頼の東国廻国とは、まさにその歴史的形象に他ならない。東国政権として発足した鎌倉幕府の宗教世界は、福島・宮城・山形県という自治体史の「宗教編」に徴したところ、予測以上に、この当該地域と宗教史的関わりを有していたことが判明した。すなわち、幕府自らが宗教政策として志向・構築せんとした臨済禅と真言密教と総和たる「禅密主義」が、東国地方の中に宗教指導ないしは宗教的祭祀権の現実的行使という形で展開されていたのである。これは、明らかに幕府の「武家的体制仏教」の世界が始動・展開していたことを示しており、興味深い。本研究によって、日本中世仏教の基本構造は,「体制仏教」「反体制仏教」「超体制仏教」の三つの思想空間から成り立っていたことが確認された。また、この「体制仏教」の一半を占める「武家的体制仏教」は、鎌倉幕府の宗教世界を構築し、その基調は「禅密主義(臨済宗と真言密教の総和)に採られていた。幕府はこの「禅密主義」を東国地域に、一種の「宗教的祭祀権」の行使という形で現実化し、もって幕府の国家権力を誇示した。執権時頼の東国廻国とは、まさにその歴史的形象に他ならない。小生は、日本中世仏教の構造に関して、「体制仏教」、「反体制仏教」および「超体制仏教」の三つの思想空間を見取図として考えている。今回の研究では、そのうち「体制仏教」の一半である「武家的体制仏教」すなわち、鎌倉幕府の宗教政策が東国社会にどう展開したかを次の要領で調査研究した。(1)中世東国仏教史の「未刊史料」の蒐集および「既刊史料の整理と目録の作製」を実施した。(2)上記(1)の見体的な史料探訪の場として、主として秋田、岩手、青森県を当てて実施した。本研究によって、日本中世仏教の基本構造は、「体制仏教」「反体制仏教」「超体制仏教」の三つの思想空間から成り立っていたことが確認された。また、この「体制仏教」の一半を占める「武家的体制仏教」は鎌倉幕府の宗教世界を構築し、その基調は「禅密主義」(臨済禅と真言密教の総和)に彩られていた。幕府はこの「禅密主義」を東国地域に、一種の「宗教的祭祀権」の行使という形で現実化し、もっと幕府の国家権力を誇示した。執権時頼の東国廻国とは、まさにその歴史的形象に他ならない。
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KAKENHI-PROJECT-06610297
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06610297
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オープンサイエンスの視点から見たプレプリントの影響の研究-新学術情報流通の解明-
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本研究課題の核心は、新たな学術情報のルートを流通するプレプリントを活用して研究した著者、所属機関、国およびプレプリントの特性の解明、その流通量、速度と加速度、新旧学術情報流通の比較を通してウェブ可視化情報のアクセス優位性の検証および若手研究者の育成を通して学術情報の循環を加速させることにある。本研究課題の核心は、新たな学術情報のルートを流通するプレプリントを活用して研究した著者、所属機関、国およびプレプリントの特性の解明、その流通量、速度と加速度、新旧学術情報流通の比較を通してウェブ可視化情報のアクセス優位性の検証および若手研究者の育成を通して学術情報の循環を加速させることにある。
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KAKENHI-PROJECT-19K12707
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K12707
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胃瘻からの半固形経管栄養法の安全で簡便な看護技術の開発
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医療職が少ない特別養護老人ホーム(以下特養)で胃瘻からの経管栄養を安全に実施するために、ランダムに抽出した特養に経管栄養のトラブルに関する調査票を送付し看護職に回答を求め、379施設より回答を得た(回収率21.1%)。栄養剤は液体栄養剤(以下液体)が1823名、半固形栄養剤(以下半固形)は493名で液体を使用している利用者が多かった。トラブルとしては「瘻孔部のただれや不良肉芽」が多く「胃食道逆流傾向」は液体より半固形の方が有意に高い発生率であった。医療職が少ない特別養護老人ホーム(以下特養)で胃瘻からの経管栄養を安全に実施するために、ランダムに抽出した特養に経管栄養のトラブルに関する調査票を送付し看護職に回答を求め、379施設より回答を得た(回収率21.1%)。栄養剤は液体栄養剤(以下液体)が1823名、半固形栄養剤(以下半固形)は493名で液体を使用している利用者が多かった。トラブルとしては「瘻孔部のただれや不良肉芽」が多く「胃食道逆流傾向」は液体より半固形の方が有意に高い発生率であった。本研究の2010年度における主な課題は、(1)胃瘻からの経管栄養法における安全で簡便な半固形栄養剤注入用補助装置の開発と、(2)半固形栄養用法の注入時の困難点や導入後のトラブルを半構成的なインタビューによって明らかにし、全国の訪問看護ステーションと介護老人保健施設における半固形短時間摂取法の使用実態の全国調査にむけての調査項目の精選と郵送調査の準備を行うことであった。本研究では2009年度に胃瘻からの半固形栄養剤を注入するときのチューブ内の圧力を測定できる胃瘻モデルを作成した。2010年度はそのモデルを使用して半固形栄養剤の注入時の労力を減らすための、利用者にとって適切な圧力で半固形栄養剤を少しの力で注入する半固形栄養剤注入用補助装置(パッくん)を考案した。その装置の使用可能性と安全性を段階的に検証する研究を行い、それらは人間工学学会などで発表をしてきた。次に開発した半固形栄養剤注入用補助装置(パッくん)の(1)注入時の対象者への安全性、(2)使用者が少ない労力で効率よく使えること、(3)柔軟な使い勝手、(4)ベッド回りで使用でき目立たないこと、(5)使い方が容易にわかること、(6)使い方を間違えても重大な結果にならないこと(fail safe)、(7)環境に負担をかけないことなどユニバーサルなデザインであるかを特別養護老人ホームの職員を対象にパッくんを使用しての注入実験を実施した。その結果安全性や効率性などは確保できたが、柔軟な使い勝手などの点で改良の余地が残された。さらに、胃瘻からの半固形経管栄養剤の注入を実際に行っている特養の看護師を対象に注入時の思いや困難感、トラブルなどを半構成的面接法によってインタビューを行い質的に分析した。その結果、看護師は注入時の労作の大きさによる身体的な負担を自覚しながらも、手に伝わる力や、表情などから敏感に感じ取り、利用者の体調や予後などのバロメーターとしてとらえていることが分かった。胃瘻からの経管栄養法には、液体栄養剤の粘稠度を増すことによって半固形化し、短時間で注入する方法がある。この半固形栄養剤を短時間で注入する方法は、誤嚥性肺炎の発生の減少や下痢の改善、胃内Phの正常化、血糖の安定などが認められている優れた方法である。このように半固形栄養剤は利用者にとっての利点が多い一方で、約20000cpという粘稠度のために、栄養剤のパックから栄養剤を絞りだすための介助者側の労力は大きい。そこで、昨年度は半固形栄養剤注入用補助装置、「パッくん」を考案しその使用感と安全性を確認する調査を行った。23年度は「パッくん」の特許を申請し(特願2011-199960)、さらに日本経腸静脈栄養学会でyounginvestigator賞を受賞した。「パッくん」の台数を増やし、実際の患者さんにも使用してもらうなど、実用化に向けて紙上などでも公表予定である。またもう一つの研究の軸である、特養の看護師を対象とした半固形栄養用法のトラブルに関する調査は一昨年のインタビュー調査において、看護職が半固形栄養剤を注入するときの手から伝わる感覚から利用者の身体状況をアセスメントしながら実施していることが明らかになった。平成24年度より「社会福祉士法及び介護福祉士法施行規則の一部を改正する省令」に伴い、都道府県単位での介護職への50時間の研修によって利用者への胃瘻からの経管栄養の実施が可能となる。この変革は看護職の利用者への観察力やアセスメント能力がさらに要求されるために、23年度は全国調査に向けて調査用紙を作成し、倫理委員会の承認を得て、特養の看護師においてプレ調査として調査用紙の確認を行い調査用紙の洗練に努めた。その結果、調査では看護師のアセスメントの過程について詳しく調査する必要があることが示唆された。【目的】特別養護老人ホーム(以下特養)での胃瘻からの経管栄養の実施状況や対象者の特徴、トラブルの実態と看護師が苦慮することを明らかにする。【方法】
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KAKENHI-PROJECT-22592622
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22592622
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胃瘻からの半固形経管栄養法の安全で簡便な看護技術の開発
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福祉保健医療情報に掲載された開設して3年以上の特護5812施設からランダムに抽出した1800施設の特養の施設長に研究協力依頼書と調査票を送付し看護職に回答を求めた。調査は昭和大学保健医療学部の倫理委員会の承認を得た。【結果】379施設の看護職より回答を得た(回収率21.1%)。入所者が50名以下の施設は102施設(27%)、5175人が106施設(28.1%)であった。夜間看護師が勤務している施設は11施設でその他はオンコール等待機型であった。栄養剤の種類として液体栄養剤(以下液体)を使用している利用者が1823名、半固形栄養剤(以下半固形)は493名、両方使用している利用者は65名であった。半固形は施設の入所者の定員に対し平均2.4%の入所者が使用していた(最大20%)。液体は入所者定員のうち平均7.6%が使用し(最大36.7%)、液体を使用している入所者の方が有意に多かった(p<0.05)。胃瘻からの経管栄養の年数として510年のものは486人、10年以上のものは49人であった。経管栄養のトラブルとしては「瘻孔部のただれや不良肉芽」で液体は17%、半固形は20%と多く、次に「胃食道逆流傾向」で液体は8%、半固形は13%で有意に半固形の方が高い発生率であった。トラブルの中で看護師が苦慮することとして「胃瘻周囲のスキントラブルへのケア方法」が119名、次に「下痢や嘔吐等の消化器症状時の経管栄養管理法」81名で、「特にない」と答えてものは133名(30%)であった。【考察】半固形の方が下痢や便秘、胃食道逆流現象が少ないといわれているが「胃食道逆流現象」は半固形の方が多く検討課題として挙げられた。当研究の目的は、簡便で安全な半固形栄養剤の注入補助装置の開発と普及、また半固形栄養剤注入時の看護師によるアセスメントを抽出して教育に反映させることであった。現在、注入補助装置を開発し、在宅の場で実際に使用してもらい使用感などを確認している。また特許も申請した。さらに特養の看護師の経管栄養における利用者の状態観察や注入時の注意などをインタビューによって調査し、それをもとに質問紙を作成し倫理委員会の承認を得ている。24年度が最終年度であるため、記入しない。半固形栄養剤の注入補助装置については、今後HPなどを作成して普及を図る予定である。特養の経管栄養の実態調査と看護師のアセスメント調査は今後無作為抽出にて全国調査の予定である。24年度が最終年度であるため、記入しない。
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KAKENHI-PROJECT-22592622
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22592622
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自己増殖能を有する多様性分子集団の構築とその機能探索
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本研究の目的は有機化学と遺伝子工学を巧みに組み合わせることにより、分子の多様性と自己増殖能の両者を兼ね備えた、今までにはない新しい分子集団を構築し、その機能性を探索することである。平成11年度はDNAポリメラーゼの本来基質であるdCTP(デオキシシチジン3リン酸),dTTP(デオキシチミン3リン酸)の塩基部分に種々の糖鎖、アミノ酸を化学的に修飾した化合物を合成した。Heck反応を用いて、dCTP,dTTPの5'位に置換基を導入した。これらの合成した新しい基質が、Klenow FragmentによってDNA鎖内に取り込まれることをアクリルアミド電気泳動法により確認した。両端にPCR増幅(耐熱性のDNAポリメラーゼ、dATP,dCTP,dGTP,dTTP,プライマーというものを加えて反応することにより、1分子のDNAを何百万倍にも増幅させる事ができる)のための20mer程度のプライマーを有する全長90mer程度の化学合成DNAを用意した。この化学合成DNAを鋳型とし、プライマー、化学合成した新しい基質、DNAポリメラーゼを加えて、DNAの伸長反応を行なった結果、目的通り、合成した新しい基質がDNA内に取り込まれていることをゲル電気泳動解析より、確認した。これらの非天然ヌクレオチドのKlenow Fragmentによる導入効率は天然のものとくらべて30-50%を維持していた。この手法の特徴は、テンプレートを設計することにより、任意の官能基がオングストロームオーダーで並んだ超分子化合物を簡便に合成できることである。例えばグルコース修飾dUTPを用い、Aが5個連続したテンプレートとを用いて、グルコース残基がらせん構造に沿った構造のDNAが、またAが5個おきに並んだテンプレートを用いると、グルコース残基が左右交互に並んだDNAを合成できた。このように糖鎖がクラスター化した分子は、細胞表面の糖鎖のレセプターと高い親和性を有すると考えられる。本研究の目的は有機化学と遺伝子工学を巧みに組み合わせることにより、分子の多様性と自己増殖能の両者を兼ね備えた、今までにはない新しい分子集団を構築し、その機能性を探索することである。平成11年度はDNAポリメラーゼの本来気質であるdCTP(デオキシシチジン3リン酸),dTTP(デオキシチミン3リン酸)の塩基部分の種々の糖鎖、アミノ酸、糖鎖を化学的に修飾した化合物を合成した。Heck反応を用いて、dCTP,dTTPの5'位に置換基を導入した。これらの合成した新しい基質が、DNAポリメラーゼによってDNA鎖内に取り込まれることを確認した。両端にPCR増幅(耐熱性のDNAポリメラーゼ、dATP,dCTP,dGTP,dTTP,プライマーというものを加えて反応することにより、1分子のDNAを何百万倍にも増幅させる事ができる)のための20mer程度のプライマーを有する全長90mer程度の化学合成DNAを用意した。この化学合成DNAを鋳型とし、プライマー、化学合成した新しい基質、DNAポリメラーゼを加えて、DNAの伸長反応を行った結果、目的通り、合成した新しい基質がDNA内に取り込まれていることをゲル電気泳動解析より、確認した。DNAポリメラーゼもその由来により基質特異性が異なる。本研究で合成した新規な基質がどのポリメラーゼにもっとも取り込まれやすいか、数種類の由来の酵素を用いてスクリーニングを行った。本研究の目的は有機化学と遺伝子工学を巧みに組み合わせることにより、分子の多様性と自己増殖能の両者を兼ね備えた、今までにはない新しい分子集団を構築し、その機能性を探索することである。平成11年度はDNAポリメラーゼの本来基質であるdCTP(デオキシシチジン3リン酸),dTTP(デオキシチミン3リン酸)の塩基部分に種々の糖鎖、アミノ酸を化学的に修飾した化合物を合成した。Heck反応を用いて、dCTP,dTTPの5'位に置換基を導入した。これらの合成した新しい基質が、Klenow FragmentによってDNA鎖内に取り込まれることをアクリルアミド電気泳動法により確認した。両端にPCR増幅(耐熱性のDNAポリメラーゼ、dATP,dCTP,dGTP,dTTP,プライマーというものを加えて反応することにより、1分子のDNAを何百万倍にも増幅させる事ができる)のための20mer程度のプライマーを有する全長90mer程度の化学合成DNAを用意した。この化学合成DNAを鋳型とし、プライマー、化学合成した新しい基質、DNAポリメラーゼを加えて、DNAの伸長反応を行なった結果、目的通り、合成した新しい基質がDNA内に取り込まれていることをゲル電気泳動解析より、確認した。これらの非天然ヌクレオチドのKlenow Fragmentによる導入効率は天然のものとくらべて30-50%を維持していた。この手法の特徴は、テンプレートを設計することにより、任意の官能基がオングストロームオーダーで並んだ超分子化合物を簡便に合成できることである。例えばグルコース修飾dUTPを用い、Aが5個連続したテンプレートとを用いて、グルコース残基がらせん構造に沿った構造のDNAが、またAが5個おきに並んだテンプレートを用いると、グルコース残基が左右交互に並んだDNAを合成できた。このように糖鎖がクラスター化した分子は、細胞表面の糖鎖のレセプターと高い親和性を有すると考えられる。
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KAKENHI-PROJECT-11780418
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11780418
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造血幹細胞の未分化性維持機構の解明 ―レドックスと自己複製―
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野生型造血細胞機能に対する活性酸素産生の影響を検討したところ、造血幹細胞特異的にその機能低下を起こした。その際の各種MAPK活性及びその阻害剤の効果の検討から、野生型造血幹細胞においても、活性酸素産生が造血幹細胞特異的にp38MAPK活性化を介してその機能を低下させることが判明した。造血幹細胞の細胞周期の検討からp38MAPK活性抑制は造血幹細胞の静止状態の維持にも不可欠であることが判明した。さらにp38MAPK阻害剤の生体投与の検討から、その投与は連続移植による野生型造血幹細胞の自己複製能低下を抑制することが判明した。さらに造血幹細胞にp38MAPK活性化抑制作用のあるASK1を強発現させたところ、阻害剤の全身投与と同様の結果が得られた。以上の結果から、p38MAPK活性化抑制が微小環境ではなく造血幹細胞に直接作用し、幹細胞を静止状態に保ち自己複製能を維持すると結論付けた。野生型造血細胞機能に対する活性酸素産生の影響を検討したところ、造血幹細胞特異的にその機能低下を起こした。その際の各種MAPK活性及びその阻害剤の効果の検討から、野生型造血幹細胞においても、活性酸素産生が造血幹細胞特異的にp38MAPK活性化を介してその機能を低下させることが判明した。造血幹細胞の細胞周期の検討からp38MAPK活性抑制は造血幹細胞の静止状態の維持にも不可欠であることが判明した。さらにp38MAPK阻害剤の生体投与の検討から、その投与は連続移植による野生型造血幹細胞の自己複製能低下を抑制することが判明した。さらに造血幹細胞にp38MAPK活性化抑制作用のあるASK1を強発現させたところ、阻害剤の全身投与と同様の結果が得られた。以上の結果から、p38MAPK活性化抑制が微小環境ではなく造血幹細胞に直接作用し、幹細胞を静止状態に保ち自己複製能を維持すると結論付けた。
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KAKENHI-PROJECT-17689030
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17689030
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視神経炎の疾患感受性遺伝子の研究
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視神経炎の発症に関連する疾患感受性遺伝子を調べる目的で、視神経炎患者73例から病歴の聴取とDNAサンプルの提供を受けた。これらのうち51例について、DNAマイクロアレイ(Axiom Genome-Wide Human DNA Array)を用いてSNPのタイピングを行い、健常人419例のSNP多型データとの間でゲノムワイド関連解析を行った。その結果、第2染色体短腕,第4染色体短腕、第9染色体短腕、第9染色体短腕、第16染色体長腕、第17染色体短腕の領域にp=10^-410^-6程度の弱い相関性をもつ、感受性遺伝子の候補領域が見出された。2013年3月10日までに視神経炎患者のDNAを51サンプル収集した。51症例の内訳は、男性10例、女性41例、平均年齢48.6±14.0才であった。両眼性が21例、片眼性が30例であった。視神経炎の病型としては多発性硬化症に伴うもの6例、視神経脊髄炎に伴うもの7例、肥厚性硬膜炎1例、特発性37例であった。血清中抗Aquaporin抗体陽性は41例中14例(34%)に認められた。経過中に21例に再燃が認められ、視神経炎の増悪回数は1例あたり平均1.84±1.62回であった。視神経炎の疾患感受性遺伝子を明らかにする目的で、これらの51例の視神経炎患者DNAサンプルに対し、DNAマイクロアレイ(Axiom Genome-Wide Human DNA Array)を用いてゲノム解析を行っている。コントロールとして東京大学医学部人類遺伝学教室が保有する健常人419例のDNAマイクロアレイのSNP多型データを用いて、ゲノムワイド関連解析を行う予定である。視神経炎患者サンプルの収集が予定よりも遅れているため、現在協力施設数を増やす手続きを行っている。今後、さらに多くの視神経炎患者のサンプルを集め、解析を継続する予定である。2014年3月31日までに、新たな研究協力施設(清澤眼科)を追加し、視神経炎患者のDNAを73サンプル収集した73症例の内訳は、男性18例、女性55例、平均年齢48.2±14.8才、経過観察期間は4.0±3.8年であった。両眼性が29例、片眼性が44例であった。視神経炎の病型としては多発性硬化症(MS)に伴うもの10例、視神経脊髄炎(NMO)に伴うもの13例、MSとNMOの合併例2例、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)1例、肥厚性硬膜炎1例、特発性46例であった。血清中抗Aquaporin4抗体は検査を行った54例中23例(43%)に認められた。経過中に36例(49%)に再燃が認められ、視神経炎の再燃回数は平均1.04±1.55回であった。視神経炎の発症に関連する疾患感受性遺伝子を調べる目的で、視神経炎患者73例から病歴の聴取とDNAサンプルの提供を受けた。これらのうち51例について、DNAマイクロアレイ(Axiom Genome-Wide Human DNA Array)を用いてSNPのタイピングを行い、健常人419例のSNP多型データとの間でゲノムワイド関連解析を行った。その結果、第2染色体短腕,第4染色体短腕、第9染色体短腕、第9染色体短腕、第16染色体長腕、第17染色体短腕の領域にp=10^-410^-6程度の弱い相関性をもつ、感受性遺伝子の候補領域が見出された。本年度は東京大学付属病院眼科および井上眼科病院における視神経炎患者のリストを作成した。また、視神経炎の診断で行うべき検査の手順(フローチャート)を作成した。さらに本研究に関する研究倫理審査を東京大学医学部ヒトゲノム研究倫理委員会に申請し、承認された。また過去に多発性硬化症で疾患感受性遺伝子として報告されているTNFRSF1A遺伝子のSNP多型の検索のためのTaqman probeを試作し、その反応の確認を行った。今後、東京大学付属病院眼科附属病院と井上眼科病院において視神経炎患者の血液サンプルを収集していく予定である。また、健常人の血液サンプルについては、東京大学付属病院アレルギーリウマチ内科が保有するサンプルに加え、新たに東京大学付属病院眼科およびアレルギーリウマチ内科でサンプル収集を行う予定である。また、遺伝子解析についても、まずは候補遺伝子研究でTNFRSF1A遺伝子のSNP多型から解析を始める予定である。視神経炎患者の症例数が、各施設とも当初見込んでいた数よりもかなり少なかったため、患者のDNAサンプルの収集が予定よりもかなり遅れている。本年度は東京大学付属病院眼科および井上眼科病院における視神経炎患者のリストを作成した。また、視神経炎の診断で行うべき検査の手順(フローチャート)を作成した。さらに本研究に関する研究倫理審査を東京大学医学部ヒトゲノム研究倫理委員会に申請し、承認された。また過去に多発性硬化症で疾患感受性遺伝子として報告されているTNFRSF1A遺伝子のSNP多型の検索のためのTaqman probeを試作し、その反応の確認を行った。現在、研究協力施設の数を増やす手続きを行っている。今後、さらに多くの視神経炎患者のサンプルを集め、解析を継続する予定である。今後、東京大学付属病院眼科附属病院と井上眼科病院において視神経炎患者の血液サンプルを収集していく予定である。また、健常人の血液サンプルについては、東京大学付属病院アレルギーリウマチ
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KAKENHI-PROJECT-23592554
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23592554
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視神経炎の疾患感受性遺伝子の研究
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内科が保有するサンプルに加え、新たに東京大学付属病院眼科およびアレルギーリウマチ内科でサンプル収集を行う予定である。また、遺伝子解析についても、まずは候補遺伝子研究でTNFRSF1A遺伝子のSNP多型から解析を始める予定である。次年度は、視神経炎のDNAサンプルを新たに50例集めることを目標とする。それらに対しても今年度同様にDNAマイクロアレイ(Axiom Genome-Wide Human DNA Array)を用いてゲノム解析を行う予定である。コントロールとしては東京大学医学部人類遺伝学教室が保有する健常人419例のDNAマイクロアレイのSNP多型データを用いる予定である。ゲノムワイド関連解析により視神経炎に疾患感受性のある遺伝子領域を絞り込むことを目標とする。今年度は視神経炎患者の血液サンプルを東京大学付属病院眼科で50例、井上眼科病院で100例収集することを目標とする。また、血液からDNAサンプル、血清を抽出し、血清中抗Aquaporin-4抗体濃度測定、TNF-α、CTLA-4などの遺伝子多型の解析を行う予定である。
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KAKENHI-PROJECT-23592554
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内科系病棟・外来におけるフィジカルアセスメント定着のための研究
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研究目的:内科系病棟において看護師が実施するフィジカルアセスメント項目の活用状況を把握する。研究方法:平成17年度は地域中核病院(395床)の内科系病棟37床に勤務する看護師11名、同病棟診療録22件を対象とした。入院時のアナムネ聴取時あるいは検温時に許可を得て参加観察法を用い、実施されているフィジカルアセスメント項目を把握した。診療録に関しては、フィジカルアセスメント項目と看護援助について作成した用紙に必要事項を転記した。平成18年度は2004年に企画運営したフィジカルアセスメント研修に参加した同施設の看護師22名に質問紙調査を実施し、そのうち面接の了承が得られた5名に面接を行った。結果:平成17年度は、13場面(アナムネ聴取場面8件、検温時場面5件)を参加観察した。対象者の疾患は脳梗塞2件、透析導入目的3件、高血糖・アシドーシス1件、腎生検目的1件、不明熱1件。アナムネ聴取時は全員施設内の基礎情報用紙に沿って問診を行い、バイタルサイン測定と酸素飽和度測定、浮腫の有無(下肢)の触診を実施していた。診療録22件は、肺炎10件、糖尿病4件、腎炎2件その他SLE、脳梗塞、筋ジストロフィー・不明熱・ネフローゼ症候群・結節性多発動脈炎が1件であった。診療録に記載のあったフィジカルアセスメント項目は基礎情報用紙の問診項目とバイタルサイン測定値と日常生活の自立に関してであった。平成18年度は、対象者(平均年齢41.5歳)に対し調査したところ、知識面・技術面ともに「呼吸器系」「循環器系」の項目に大変役立ったとし、「筋・骨格系」「神経系」「感覚器系」はあまり役立たなかったと反応していた。現在は「自分の知識を増やす」「自分の技術の幅が広がる」「対象者を全体として捉える観察力がアップした」等の感想を持っていることと、看護師は身体状況を的確に把握する能力に優れている必要があるべきと考えていることがわかった。研究目的:内科系病棟において看護師が実施するフィジカルアセスメント項目の活用状況を把握する。研究方法:平成17年度は地域中核病院(395床)の内科系病棟37床に勤務する看護師11名、同病棟診療録22件を対象とした。入院時のアナムネ聴取時あるいは検温時に許可を得て参加観察法を用い、実施されているフィジカルアセスメント項目を把握した。診療録に関しては、フィジカルアセスメント項目と看護援助について作成した用紙に必要事項を転記した。平成18年度は2004年に企画運営したフィジカルアセスメント研修に参加した同施設の看護師22名に質問紙調査を実施し、そのうち面接の了承が得られた5名に面接を行った。結果:平成17年度は、13場面(アナムネ聴取場面8件、検温時場面5件)を参加観察した。対象者の疾患は脳梗塞2件、透析導入目的3件、高血糖・アシドーシス1件、腎生検目的1件、不明熱1件。アナムネ聴取時は全員施設内の基礎情報用紙に沿って問診を行い、バイタルサイン測定と酸素飽和度測定、浮腫の有無(下肢)の触診を実施していた。診療録22件は、肺炎10件、糖尿病4件、腎炎2件その他SLE、脳梗塞、筋ジストロフィー・不明熱・ネフローゼ症候群・結節性多発動脈炎が1件であった。診療録に記載のあったフィジカルアセスメント項目は基礎情報用紙の問診項目とバイタルサイン測定値と日常生活の自立に関してであった。平成18年度は、対象者(平均年齢41.5歳)に対し調査したところ、知識面・技術面ともに「呼吸器系」「循環器系」の項目に大変役立ったとし、「筋・骨格系」「神経系」「感覚器系」はあまり役立たなかったと反応していた。現在は「自分の知識を増やす」「自分の技術の幅が広がる」「対象者を全体として捉える観察力がアップした」等の感想を持っていることと、看護師は身体状況を的確に把握する能力に優れている必要があるべきと考えていることがわかった。研究目的:看護実践現場(病院)におけるフィジカルアセスメント活用の実態を把握する。研究方法:研究対象は、395床地域中核病院の内科病棟(診療科:腎臓リウマチ内科)37床に勤務する(1)内科病棟看護師10名と、(2)その病棟で記録されている診療録22件である。研究期間は、2006年2月22日2006年3月23日であった。(1)については、看護師が入院患者に実施するアナムネーゼ聴取あるいは定時の検温の場に一緒に入り参加観察を行った。(2)について、上記研究期間中に病棟において随時記録されているカルテから、フィジカルアセスメントに関連した患者の情報を経時的に転記する方法をとった。倫理的配慮については、研究協力依頼を看護部経由で行ったため、個々の研究協力者には研究協力は自由参加であり、途中での拒否や、研究に協力しないことで業務上の不利益を蒙らないことを口頭と書面において明言する等を行った。結果:(1)10名の看護師に参加観察を行ったうち、アナムネーゼ聴取は8件で、定時の検温は5件であった。アナムネーゼ聴取対象者の疾患は脳梗塞2件、透析導入目的3件、高血糖・アシドーシス1件、腎生検目的1件、不明熱1件であった。
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KAKENHI-PROJECT-17592222
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17592222
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内科系病棟・外来におけるフィジカルアセスメント定着のための研究
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看護師は基礎情報用紙に関連した問診に20分から35分かけ、その後体温測定(電子体温計使用)、脈拍・酸素飽和度(オキシメータ使用)、血圧測定(自動血圧計使用)を実施し身体面の情報収集を行い、疾患にかかわらず下肢の浮腫程度を触診する行為を行っていた。腎臓疾患系の患者に対し、背部の打診を行う看護師もいた。(2)診療録による情報22件は、31歳から82歳で男性14名女性8名であった。疾患は肺炎10件、糖尿病4件、腎炎2件、SLE・脳梗塞・筋ジストトフィー・不明熱・ネフローゼ症候群・結節性多発動脈炎が1件ずつであった。記載されていたフィジカルアセスメント内容は、基礎情報用紙に従った問診とバイタルサイン測定、日常生活の自立程度であった。研究目的:看護師が活用しているフィジカルアセスメント項目についての実態を把握すること。研究方法:研究対象者は2004年度に研究者が企画運営した「フィジカルアセスメント研修」に参加した22名の看護師のうち回答の得られた21名(回収率95.5%)で、研究期間は2007年1月16日3月29日であった。方法は、2004年以降フィジカルアセスメント項目(感覚器系・循環器経・呼吸器系・消化器系・筋骨格系・神経系)の知識面と技術面について研修で実施したことが役立っているか、どのように活用されているかについて調査した。また承諾の得られた5名の看護師に対して、フィジカルアセスメントに関する捉え方や活用に関する意見を半構成的面接法にて聴取した。結果:対象者の平均年齢は41.5歳、職位は看護師長1名、副看護師長6名、主任8名。知識面において全員が「(大変)役に立った」に回答した項目は呼吸器系であり、次に多かったのは循環器系、腹部(消化器系)の順であった。「あまり役に立たなかった」が多かったのは筋骨格系と神経系(7名33.3%)、感覚器系(6名28.6%)であった。技術面においても呼吸器系・消化器系・循環器系は「(大変)役に立った」であり、感覚器系・筋骨格系・神経系はあまり「役に立たなかった」であった。次に現在どのように活用されているかについては、「自分の知識を増やす」16名(76.2%)が最も多く、次に「自分の技術の幅が広がる」「病棟の特性に応じて、活用できるところと活用できないところがある」いずれも13名(61.9%)、「研修前より解剖学・生理学に関心が向いた」11名(52.4%)、「対象者を部分的にではなく、全体として捕らえる観察力がアップした」10名(47.6%)であった。面接から得られたフィジカルアセスメントに関する捉え方や考えについては、<看護師は身体のことを十分理解しているべきである><異常の早期発見ができる能力に必要><医師の診療行為の意味が理解できる>が共通していた。
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KAKENHI-PROJECT-17592222
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α崩壊に伴う非等方的X線放出
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本番測定に先だって我々はまず、α崩壊における非等方的LX線放出機構を破壊する可能性のある外殻電子の多重電離状態が存在するか否かを調査した。この理由は特にここ数年来、重イオンー原子衝突の分野における非等方的LX線放出の研究から重イオン衝撃によって生ずる多重空孔によって非等方性が弱められるという報告がなされているからである。本研究に関連して我々は、α崩壊及び重イオン衝突が娘(標的)原子の電子系に与える影響を外殻、内殻電離を通じて研究してきているが(Phys.Lett.A,Nucl.Instrum.and Methods及び、J.Phys.Bに発表済み)、これらの成果からLX線のなかで特にLγ線が外殻電子状態を敏感に反映することを発見している。(Lγ線は収量が小さいために実験的調査が遅れている。詳細は我々の平成元年度科研費計画調書、一般研究(C)「重イオンー固体衝突における高分解能LX線測定」に述べてある。)この着想に基いてM、N殻の多重電離を調査するために、POー210のα崩壊より放出されるPbのLγ線エネルギースペクトルを観測し、きめ細かく分析した。その結果Lγ線を6本の成分に分解しそれぞれのエネルギーシフト及び相対的収量比からM殻に空孔は存在せず、N殻に存在しても高々1個であるという結論を得た。この結果は、本研究申請に詳述した理由によって、α崩壊に於ては大きな非等方性が存在し得ることを強く示唆している。この結果を京都大学化学研究所紀要に発表した。上記の結果を踏まえて非等方性測定実験は現在進行中である。更にα粒子がCoulomb Barrierをトンネル現象で通過し、その後衝突径数=0、外向き波のみからなる過程を経るという、一般荷電粒子衝突と異なるα崩壊の特質を組み入れた理論計算が相対論的半古典近似(Relativistic SCA)を用いて進んでおり、本研究で得られた成果すべてを合わせて今夏New Yorkで開催される国際会議(ICPEAC)に発表する予定である。本番測定に先だって我々はまず、α崩壊における非等方的LX線放出機構を破壊する可能性のある外殻電子の多重電離状態が存在するか否かを調査した。この理由は特にここ数年来、重イオンー原子衝突の分野における非等方的LX線放出の研究から重イオン衝撃によって生ずる多重空孔によって非等方性が弱められるという報告がなされているからである。本研究に関連して我々は、α崩壊及び重イオン衝突が娘(標的)原子の電子系に与える影響を外殻、内殻電離を通じて研究してきているが(Phys.Lett.A,Nucl.Instrum.and Methods及び、J.Phys.Bに発表済み)、これらの成果からLX線のなかで特にLγ線が外殻電子状態を敏感に反映することを発見している。(Lγ線は収量が小さいために実験的調査が遅れている。詳細は我々の平成元年度科研費計画調書、一般研究(C)「重イオンー固体衝突における高分解能LX線測定」に述べてある。)この着想に基いてM、N殻の多重電離を調査するために、POー210のα崩壊より放出されるPbのLγ線エネルギースペクトルを観測し、きめ細かく分析した。その結果Lγ線を6本の成分に分解しそれぞれのエネルギーシフト及び相対的収量比からM殻に空孔は存在せず、N殻に存在しても高々1個であるという結論を得た。この結果は、本研究申請に詳述した理由によって、α崩壊に於ては大きな非等方性が存在し得ることを強く示唆している。この結果を京都大学化学研究所紀要に発表した。上記の結果を踏まえて非等方性測定実験は現在進行中である。更にα粒子がCoulomb Barrierをトンネル現象で通過し、その後衝突径数=0、外向き波のみからなる過程を経るという、一般荷電粒子衝突と異なるα崩壊の特質を組み入れた理論計算が相対論的半古典近似(Relativistic SCA)を用いて進んでおり、本研究で得られた成果すべてを合わせて今夏New Yorkで開催される国際会議(ICPEAC)に発表する予定である。
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KAKENHI-PROJECT-63540288
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63540288
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ブラインドアスリートにおける歩行中の聴覚刺激の角度変化が方向覚へ与える影響
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本研究は、動的環境下での聴覚刺激の角度変化が方向覚へ与える影響を明らかにすることを目的とした。対象は、ブラインドアスリート群と晴眼群とした。測定は、対象者にアイシェードを装着させ聴覚刺激として基準歩行路の延長上に聴覚刺激装置を30°-330°の範囲で設定し、音が鳴る方向に歩行するように指示し、その誤差角度を算出した。その結果、両群ともに、正中線上では誤差角度は少なく、対称方向からの刺激時に誤差角度は増大した。また、誤差角度の差はブラインドアスリート群と比較し晴眼群の方が大きかった。今後、さらに要因の検討を行うことで、ブラインドアスリートの動的な方向覚の特性について明らかにしていく必要がある。本研究ではブラインドアスリートの聴覚空間認知特性の基礎研究として、動的環境下(歩行時)での聴覚刺激の角度変化が方向覚へ与える影響を明らかにすることを目的としている。H28年度においては、ブラインドアスリートおよび晴眼者を対象に,歩行中に12方向の異なる角度から聴覚刺激を行い,対象者の歩行時の方向転換について動画データに記録した。測定方法は,対象者にはアイシェードを装着させ,基準歩行路に基づきブザーが鳴る方向の設定をし,音に応じ方向転換させた。記録をしたデータを下に,対象者自身の位置と聴覚刺激の位置に対する誤認角度(方向覚)について、開発したデータ化の手法に基づき,分析に着手している。この分析方法においては, X,Y座標にデータ化をし、ブザー位置および基準路の各ポイントの座標から誤差角度を算出し、各角度での平均誤差値の算出を行う。これまでのこの分野における先行研究は,静的環境下での聴覚弁別能力やローカライズ能力を明らかにした研究が多く、スポーツ場面での動的環境下の方向覚特性はまた異なると考えられる。特に,聴覚空間認知は,速度により影響することを考えられ,数値化し定量化できる部分や,性別や受傷歴など対象者の特性面についての定性部分など,こうした点についても分析をさらに深めていく必要性を認めた。そのため,引き続き平成29年度には,動的環境下の方向覚特性について,ブラインドアスリートおよび晴眼者の各群の誤差角度の変位パターンを明らかにしていく。H28年度においては、当初の研究計画通りに,ブラインドアスリートおよび晴眼者群を対象とし,実施をした測定に基づき動画データの生成を行う事であった。予定通りに対象者の確保,同意が得られ遂行が可能であったため,本研究目的の達成に向けて順調に研究が進んでいると考えられる。本研究は、H28-29年を通じて、ブラインドアスリートの聴覚空間認知特性の基礎研究として、動的環境下での聴覚刺激の角度変化が方向覚へ与える影響を明らかにすることを目的に行った。対象者は本研究に同意を得た視覚障害手帳を有するブラインドアスリート群と晴眼群とした。測定は体育館を使用し、基準歩行路の設定を行った。基準歩行路の延長上に聴覚刺激装置を30°-330°の範囲で置き、ビデオカメラ6台を設置した。対象者には、歩行中に音が鳴る方向に歩行するように指示をし、計測を行った。データ測定後は、動画データの分析を行い、対象者が実際に通過した地点をX,Y座標にデータ化し、ブザーの位置および基準路の各ポイントの座標から誤差角度を算出した。その結果、両群ともに、0°および180°の正中線上では誤差が低い傾向を示し、対称方向の角度における聴覚刺激時には誤差が増大した。また、晴眼群では、ブラインドアスリート群と比較し誤差角度の差が大きかった。このことから、ブラインドアスリート群では、動的場面において聴覚情報をより早く適切に処理をしていることが分かった。本研究課題を通じて、ブラインドアスリートを対象とした動的環境下の方向覚特性について新たな視座を得られたといえる。今後、さらにブラインドアスリートの空間認知特性の検討をしていくことで、そのメカニズムの解明や科学的根拠に基づいたトレーニング方法の開発につながることが期待できる。本研究は、動的環境下での聴覚刺激の角度変化が方向覚へ与える影響を明らかにすることを目的とした。対象は、ブラインドアスリート群と晴眼群とした。測定は、対象者にアイシェードを装着させ聴覚刺激として基準歩行路の延長上に聴覚刺激装置を30°-330°の範囲で設定し、音が鳴る方向に歩行するように指示し、その誤差角度を算出した。その結果、両群ともに、正中線上では誤差角度は少なく、対称方向からの刺激時に誤差角度は増大した。また、誤差角度の差はブラインドアスリート群と比較し晴眼群の方が大きかった。今後、さらに要因の検討を行うことで、ブラインドアスリートの動的な方向覚の特性について明らかにしていく必要がある。H29年度は、引き続き,考案した分析手法を用いて,ブラインドアスリートおよび晴眼者における各群の誤差角度の変位パターンを明らかにする。さらに,ブラインドアスリートと晴眼者における聴覚刺激の角度変化による方向覚特性の比較を行う。これらの分析が終了次第,論文の執筆および成果報告書の作成に着手する。応用健康科学今年度の国内・国際学会での出費が予定より、削減ができた。しかし、次年度において、動画データの分析に測定補助が必要であることが想定されるため、次年度への繰り越しを行った。H29年においては予定通りに、ブラインドアスリートと晴眼者における聴覚刺激の角度変化による方向覚特性の特性を明らかにするための分析を行う。そのため、その際にかかる測定補助者の謝金に用いる予定である。
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KAKENHI-PROJECT-16K21428
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K21428
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向精神薬の副作用発現と個体の薬物代謝能との相関についての分子生物学的検討
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アルコール代謝酵素でアルコール依存症への発展のリスクファクターであるALDH2や,後天的に誘導され飲酒量増加に関係している可能性のあるCYP2EIの遺伝子多型が,アルコール飲酒後の血中アルコールおよびアセトアルデヒド濃度に及ぼす影響をin vivoにて検討した.その結果,とくにALDH2についてはALDH2*1遺伝子が血中アルコールとアセトアルデヒド両方の急速な濃度消失に,有意に影響していることが判明した.CYP2EIの誘導がこれらの濃度に与える影響については,現在さらに調査中である.また,ハロペリドールとカルバマゼピン併用時に,シトクロムP-450の誘導等によって,心毒性を持った代謝産物が増加する可能性を指摘していたが,特に,ハロペリドール血中濃度がより高めで,心電図上QTcの延長がみられる者は,心不全に陥る危険性が高いのではないかという可能性を指摘した.さらに,フェニトイン投与中の患者において,CYP2C19のm2遺伝子を持った者は,フェニトインの血中濃度が急上昇しやすい(poor metabolizer)のではないかという可能性も指摘した.アルコール代謝酵素でアルコール依存症への発展のリスクファクターであるALDH2や,後天的に誘導され飲酒量増加に関係している可能性のあるCYP2EIの遺伝子多型が,アルコール飲酒後の血中アルコールおよびアセトアルデヒド濃度に及ぼす影響をin vivoにて検討した.その結果,とくにALDH2についてはALDH2*1遺伝子が血中アルコールとアセトアルデヒド両方の急速な濃度消失に,有意に影響していることが判明した.CYP2EIの誘導がこれらの濃度に与える影響については,現在さらに調査中である.また,ハロペリドールとカルバマゼピン併用時に,シトクロムP-450の誘導等によって,心毒性を持った代謝産物が増加する可能性を指摘していたが,特に,ハロペリドール血中濃度がより高めで,心電図上QTcの延長がみられる者は,心不全に陥る危険性が高いのではないかという可能性を指摘した.さらに,フェニトイン投与中の患者において,CYP2C19のm2遺伝子を持った者は,フェニトインの血中濃度が急上昇しやすい(poor metabolizer)のではないかという可能性も指摘した.
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KAKENHI-PROJECT-08770773
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08770773
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移植ヒト気管支上皮の発癌モデルの作製と肺癌早期診断への臨床応用の可能性について
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肺癌の発癌過程を経時的に観察する目的でヒト気管支上皮細胞を用い発癌剤暴露実験を行った。突然死乳児症例の剖検から得られた気管気管支あるいは当施設の手術時摘出肺の気管支を組織培養することにより大量のヒト気管支上皮細胞を得ることが成功した。培養法は米国NIHのDr.Lechnerの方法に準じ、培養液はわれわれが米国Fox Chase Cancer CenterのDr.Klein-Saitoと共同開発したACB-1を用いた。気管支上皮細胞を予め摘出して上皮を脱落させておいたラット気管内に注入後、ヌードマウス皮下に移植し4週後にDMBA100μg含有ペレットを挿入して暴露実験を行った。また発癌後の増殖早期のモデルとしてヒト肺癌培養細胞を、同様に脱上皮処理を施したラット気管内に注入後ヌードマウスに移植して増殖形態を観察した。乳児気管気管支上皮細胞に対する発癌実験ではDMBA暴露後4ヵ月で過形成あるいは異型偏平上皮化生が認められた。またこれら異型上皮を有する気管片の再培養により得られた細胞は血清抵抗性を示し、染色体分析では二動原体染色体が認められるなど形質の転換が認められた。手術時摘出肺より得た気管支上皮細胞については暴露後5ヵ月の時点で過形成、化生などの変化は認められていない。肺癌培養細胞のラット気管内における増殖形態の観察では腺癌由来の3細胞株で3様の形態か観察された。3者とも1層に生着した時点でそれぞれbronchial surfaceepitheliem、clara cell、goblet cellに類似した細胞形態を示し、増殖パターンも管状、乳頭状、篩状と異なっていた。発癌実験については本システムによる、さらに長期の暴露により癌腫の形成が可能と考えられた。培養細胞の増殖形態の観察から本法は組織発生の検索に有用であると考えられた。肺癌の発癌過程を経時的に観察する目的でヒト気管支上皮細胞を用い発癌剤暴露実験を行った。突然死乳児症例の剖検から得られた気管気管支あるいは当施設の手術時摘出肺の気管支を組織培養することにより大量のヒト気管支上皮細胞を得ることが成功した。培養法は米国NIHのDr.Lechnerの方法に準じ、培養液はわれわれが米国Fox Chase Cancer CenterのDr.Klein-Saitoと共同開発したACB-1を用いた。気管支上皮細胞を予め摘出して上皮を脱落させておいたラット気管内に注入後、ヌードマウス皮下に移植し4週後にDMBA100μg含有ペレットを挿入して暴露実験を行った。また発癌後の増殖早期のモデルとしてヒト肺癌培養細胞を、同様に脱上皮処理を施したラット気管内に注入後ヌードマウスに移植して増殖形態を観察した。乳児気管気管支上皮細胞に対する発癌実験ではDMBA暴露後4ヵ月で過形成あるいは異型偏平上皮化生が認められた。またこれら異型上皮を有する気管片の再培養により得られた細胞は血清抵抗性を示し、染色体分析では二動原体染色体が認められるなど形質の転換が認められた。手術時摘出肺より得た気管支上皮細胞については暴露後5ヵ月の時点で過形成、化生などの変化は認められていない。肺癌培養細胞のラット気管内における増殖形態の観察では腺癌由来の3細胞株で3様の形態か観察された。3者とも1層に生着した時点でそれぞれbronchial surfaceepitheliem、clara cell、goblet cellに類似した細胞形態を示し、増殖パターンも管状、乳頭状、篩状と異なっていた。発癌実験については本システムによる、さらに長期の暴露により癌腫の形成が可能と考えられた。培養細胞の増殖形態の観察から本法は組織発生の検索に有用であると考えられた。肺癌の早期診断に応用するために肺の発癌過程を経時的観察する目的でヒト気管支上皮細胞を用い発癌剤暴露実験を行った. 1才未満の突然死乳児症例の剖検により非癌症例からの気管,気管支を得,また,当科において切除された肺より担癌患者の気管支非癌部分あるいは非癌成人気管支を採取した.これらの標本の組織培養により大量のヒト気管支上皮細胞を得ることに成功した.培養法は米国NIHのDr,Lechnerに方法に準じ,培養液はわれわれがDr.Klein-Szanto(米国, Fox Clnase Cancer Center)との共同研究により開発したACB-1を用いた. ACB-1はウシ胎児血清を1.25%含有するもので繊維芽細胞の発育を抑制し気管支上皮細胞の増生を促進するすぐれたものであった.約2週間で培養四上の気管(支)片から気管支上皮細胞が遊出し,これらの細胞を採取してあらかじめ摘出して上皮を脱落させておいたラット気管内に注入し,両端を閉鎖してヌードマウスの背部皮下に移植した.4週間后にはヒト気管支上皮細胞はヌードマウス皮下のラット気管の内腔も増生して内面を覆い,組織学的には線毛円柱上皮として分化しており,以後6ケ月までの観察ではほとんど正常の気管支上皮を形態学的には維持することが可能であった.この結果は乳児由来,担癌成人由来,非担癌成人由来いずれの材料を用いても可能でありわれわれの培養液と培養法は非常に有用と考えられる.また,このヒト気管支モデルに発癌剤を作用させるためにbceswax(蜜ロウ)に発癌剤を混合し,特製のペレットメーカーを用いて発癌剤ペレットを作製した.
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KAKENHI-PROJECT-62570630
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62570630
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移植ヒト気管支上皮の発癌モデルの作製と肺癌早期診断への臨床応用の可能性について
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このペレットは約4週間で90%以上の発癌剤を放出する比較的放出速度の遅いものであった.ヒト気管支上皮細胞を注入しヌードマウスの背部皮上に移植して4週間経過した気管支モデルの内腔にこのペレットを挿入し,現在暴露中である.今后経時的に屠殺し上皮の変化を観察する方針である.肺癌の発癌過程を経時的に観察する目的でヒト気管支上皮細胞を用い発癌暴露実験を行なった。突然死乳児症例の剖検から得られた気管支あるいは当施設の手術時摘出肺の気管気管支を組織培養することにより大量のヒト気管支上皮細胞を得ることに成功した。培養法は米国NIHのDr.Lechnerの方法に準じ、培養液はわれわれが米国Fox chase cancer CenterのDr.Klein-Szantoと共同開発したACB-1を用いた。気管支上皮細胞を予め摘出して上皮を脱落させておいたラット気管内に注入後、ヌードマウス皮下に移植し4週後にDMBA100ng含有ペレットを挿入して暴露実験を行なった。また発癌後の増殖早期のモデルとしてヒト肺癌培養細胞を、同様に脱上皮処理を施したラット気管内に注入後ヌードマウスに移植して増殖形態を観察した。乳児気管気管支上皮細胞に対する発癌実験ではDMBA暴露後4カ月で過形成あるいは異型扁平上皮化生が認められた。またこれら異型上皮を有する気管片の再培養により得られた細胞は血清抵抗性を示し、染色体分析では二動原体染色体が認められるなど形質の転換が認められた。手術時摘出肺より得た気管支上皮細胞については暴露後5カ月の時点で過形成、化生などの変化は認められていない。肺癌培養細胞のラット気管内における増殖形態の観察では腺癌由来の3細胞株で3様の形態が観察された。3者とも1層に生着した時点でそれぞれbronchial surface epithelium、clara cell、goblet cellに類似した細胞形態を示し、増殖パターンも管状、乳頭状、篩状と異なっていた。発癌実験については本システムによる、さらに長期の暴露により癌腫の形成が可能と考えられていた。培養細胞の増殖形態の観察から本法は組織発生の検索に有用であると考えられた。
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KAKENHI-PROJECT-62570630
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沖縄における「格差と学び」をめぐる臨床教育学研究ー教師教育の質的向上をめざして
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本研究は、貧困問題を抱え、全国学力・学習状況調査出発時において厳しい結果となった小学校と琉球大学との10年目となる共同研究に基づくものである。本共同研究においては、「豊かな学び」を基本とする学校文化づくり、教員文化づくり、学びの文化づくり、読書文化づくりを掲げ、学びに対するケア論的アプローチを試みている。今年度は、共同研究を体験した若手教師にインタビュー調査を行い、その考察を「貧困問題と学力問題の間で苦悩する地域で求められる教師の専門性とは何か」というテーマで日本臨床教育学会で発表した。若手教師が、学習スタンダードを基準とする評価のまなざしによって「学級崩壊するのでは」と自信喪失するなか、先輩教師と子どもの小さなエピソードを日常的に共有する体験を通して「子どもに寄り添う」ことの意味を認識し、教室/教科の内だけにとどまらないまるごとの子どもから出発する「豊かな学び」づくりと実践の取り組み、その豊かさを教師の専門性として認識していくプロセスを明らかにした。一方で管理職を含めて5年以内で移動となる教員集団において、また全国学力・学習状況調査等の学力調査で、性急に数値的成果が問われるなか「豊かな学び」の文化を継承する困難に直面している。そのため数値的検証として、フィールドとする小学校の10年間にわたる全国学力・学習状況調査調査の結果を分析し、「学校に行くのは楽しい」という学校体験への肯定的感覚を多くの子どもたちが相対的に「学力」の好結果を支えていた可能性や、「自分の考えを発表する機会」を設けるなど子どもたちの主体性を生かした授業を作り出していたことが、「学力」の好結果につながっていた可能性を明らかにした。学力格差を克服する上で、「温かい居場所のある学校づくり」「子ども理解に基づき、主体性を引き出す授業づくり」等が有効であることを数値的に検証し、その結果を小学校と共有した。昨年度、本研究がフィールドとする学校における実践事例集『海と空の小学校から学びとケアをつなぐ教育実践自尊感情を育むカリキュラムマネジメント』(明石書店、2018年)を刊行し、今年度はその書に収められた実践事例を書いた教師たちへのインタビュー調査を行い、その分析を学会発表した。またこの学校における全国学力・学習状況量差の結果について詳細に検討した。そのような意味でおおむね順調に進展している。ただし論文化と成果の発信には至っておらず、最終年度にまとめに力を注ぐ必要がある。今年度は最終年度であるために、研究の論文化を行うとともに、困難を抱えた地域にねざした教師教育の質的向上に関するシンポジウムを行う予定である。その内容を広く学校現場や行政に発信し、研究内容を還元できるようにリーフレットを作成し、配付していきたい。本研究は、貧困問題や学力問題等の矛盾が集中して顕現している沖縄地域の小学校をフィールドとし、学びの質へと視点を移し、〈格差と学び〉をめぐる諸論点の検証を目的として研究に取り組んだ。今年度は、貧困問題と学力問題について別々の文脈で対策が講じられている現状を踏まえ、統一的に考える礎として、学校長による自尊感情を育むカリキュラムマネジメント実践や教科横断的な実践について、実践を省察する「実践記録」を書くことに取り組んだ。校長、20代教師2名、30代教師3名、特別支援学級の教師1名を含み、11の実践記録集が編まれた。これらの実践記録は、今後の沖縄県教師教育の質的向上のための重要な礎となるだろう。実践記録集は、1子どもの身体や言葉が発する表現を聴き、読み解く子ども理解を核に据える、2読み書き文化に非親和的な地域性を踏まえ、読書環境を豊かにデザインする、3子どもの生活背景に根ざした「学びの文脈」を豊かに紡ぐ、3)「教科の本質」とケアの視座との統合をめざす、4地域の独自の文化である海人文化の学習をカリキュラムに位置づけ。自尊感情を育成する、の4点を意識して編集し、『沖縄八重山学びのゆいまーる研究会『海と空の小学校から学びとケアをつなぐ教育実践自尊感情を育むカリキュラムマネジメント』(明石書店、2018年3月)として刊行した。この取り組みを通して、ケア概念がそもそも知と切り離せず、学び;学校、ケア;福祉という二項対立的な捉えをのりこえ、学びとケアをつないで考える=共感的知性を育む学びの創造が重要であることを確かめるとともに、1,共感的知性の育みと学力保障の統一的な探究の道筋についてさらに追究し、明らかにすること、2.困難を抱えた地域の教師教育においては、「教科の本質」に根ざしつつ全人格的な視野から学びの意味を省察できる力の養成が課題であること、などの課題を導き出した。今年度、11の実践記録をまとめた書を編集し刊行したことは、貧困問題と学力問題に苦悩する沖縄教師教育の課題を明らかにする上で、今後の研究の貴重な礎となり、おおむね順調に進展している。本研究は、貧困問題を抱え、全国学力・学習状況調査出発時において厳しい結果となった小学校と琉球大学との10年目となる共同研究に基づくものである。本共同研究においては、「豊かな学び」を基本とする学校文化づくり、教員文化づくり、学びの文化づくり、読書文化づくりを掲げ、学びに対するケア論的アプローチを試みている。今年度は、共同研究を体験した若手教師にインタビュー調査を行い、その考察を「貧困問題と学力問題の間で苦悩する地域で求められる教師の専門性とは何か」というテーマで日本臨床教育学会で発表した。
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KAKENHI-PROJECT-17K04561
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K04561
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沖縄における「格差と学び」をめぐる臨床教育学研究ー教師教育の質的向上をめざして
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若手教師が、学習スタンダードを基準とする評価のまなざしによって「学級崩壊するのでは」と自信喪失するなか、先輩教師と子どもの小さなエピソードを日常的に共有する体験を通して「子どもに寄り添う」ことの意味を認識し、教室/教科の内だけにとどまらないまるごとの子どもから出発する「豊かな学び」づくりと実践の取り組み、その豊かさを教師の専門性として認識していくプロセスを明らかにした。一方で管理職を含めて5年以内で移動となる教員集団において、また全国学力・学習状況調査等の学力調査で、性急に数値的成果が問われるなか「豊かな学び」の文化を継承する困難に直面している。そのため数値的検証として、フィールドとする小学校の10年間にわたる全国学力・学習状況調査調査の結果を分析し、「学校に行くのは楽しい」という学校体験への肯定的感覚を多くの子どもたちが相対的に「学力」の好結果を支えていた可能性や、「自分の考えを発表する機会」を設けるなど子どもたちの主体性を生かした授業を作り出していたことが、「学力」の好結果につながっていた可能性を明らかにした。学力格差を克服する上で、「温かい居場所のある学校づくり」「子ども理解に基づき、主体性を引き出す授業づくり」等が有効であることを数値的に検証し、その結果を小学校と共有した。昨年度、本研究がフィールドとする学校における実践事例集『海と空の小学校から学びとケアをつなぐ教育実践自尊感情を育むカリキュラムマネジメント』(明石書店、2018年)を刊行し、今年度はその書に収められた実践事例を書いた教師たちへのインタビュー調査を行い、その分析を学会発表した。またこの学校における全国学力・学習状況量差の結果について詳細に検討した。そのような意味でおおむね順調に進展している。ただし論文化と成果の発信には至っておらず、最終年度にまとめに力を注ぐ必要がある。1子どもたちの自尊感情を育み、支え会う学びの文化づくりにひきつづき取り組む。また校長を含め、入れ替わりのある教師集団において、どのように学びの文化の継承と発展が可能となるかについて、その道筋を解明する。2刊行した実践記録を読み合う会を設け、教師が何に葛藤し、実践を通してどう変容していくか、教師に対する板ビュー調査を行い、その語りを考察していく。3全国学力学習状況調査の経年分析と教育実践の歩みとの関わりについて、考察を深める。できれば小中つないだ考察を進めていきたい。5読書環境整備の課題と意義について、ひきつづき探究する。今年度は最終年度であるために、研究の論文化を行うとともに、困難を抱えた地域にねざした教師教育の質的向上に関するシンポジウムを行う予定である。その内容を広く学校現場や行政に発信し、研究内容を還元できるようにリーフレットを作成し、配付していきたい。研究分担者が、附属小学校校長となったり、学部運営に重点を置かざるを得ない立場に急遽立たされたりしたため、授業研究会等に参加することができず、予算執行が困難な状況となった。また、今年度は、実践記録を書き、収集し、編集する作業に重点を置いたため、旅費の執行額がやや少なくなってしまった。今年度、校長職のために予算の執行が十分にできない研究分担者が生じた。次年度は、校長職を離れるため、研究時間を確保できるため、次年度において教員に対するインタビュー調査とそのとりまとめのために使用する。
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KAKENHI-PROJECT-17K04561
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K04561
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IRを活かす学内データ管理に関する研究:統合型データベース構築への第一歩として
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本研究の目的は、学内データの「収集」および「活用」に関する規定のドラフトおよび学生情報を正しく取り扱うためのトレーニングプログラムを開発し、我が国におけるIR(Institutional Research)のさらなる発展に貢献することである。その目的を果たすため、IR先進国である米国におけるFERPA(FamilyEducational Rights and Privacy Act)等の個人情報管理に関する法律と、米国の各大学が独自に策定している「学内データの収集等に関する規定」に着目し、米国の大学がどのように学内外のデータを収集・活用しているのかを調査している。平成30年度は、大学評価コンソーシアム主催の大学評価・IR担当者集会2018(8/22-8/24)の1セッション(半日)を担当し、米国におけるFERPAを紹介するとともに、データ収集や活用に関する規定策定の必要性等について議論した。また、米国でも統合型DBの構築が進んでいることで有名なミネソタ州立大学機構に属しているベミジ州立大学(BSU、州立教育系大学)、ノースダコタ州立大学(NDSU、州立研究系総合大学、州立フラッグシップ大学)およびインディアナ大学-パーデュー大学インディアナポリス校(IUPUI、州立研究系総合大学)の3大学を訪れ、各大学におけるFERPAへの対応および学内外のデータ収集・活用の実態を調査した。IRの責任者に加えて学内データの管理・運用の責任者である「Registrar」にインタビューを行った他、BSUとNDSUでは筆頭副学長である「Provost」ともお会いして、大学執行部からの意見をお聞きできたことは本研究を進める上で大変有意義であった。平成30年度研究実施計画に挙げた5点のうち「海外研究協力者を招いたIR(Institutional Research)関連の勉強会を開催する」以外の計画は、ほぼ実施できたと考えている。IR勉強会の開催が出来なかった理由は、当初お願いしていた海外研究協力者が所属校の学長に就任され、米国外への長期出張が難しくなったことにある。研究の最終年度である平成31年度は、研究目的を完遂するため、平成29年度および平成30年度研究実施計画を通じて得られた以下2点の知見を、学会・勉強会・論文等において広く共有する。(1)国内大学において適用可能な学内データの「収集」および「活用」に関する規定のドラフトを策定・発表する。(2)日本版FERPAトレーニングプログラムを策定・発表する。本研究の目的は、学内データの「収集」および「活用」に関する規定のドラフトおよび学生情報を正しく取り扱うためのトレーニングプログラムを開発し、我が国におけるIR(Institutional Research)のさらなる発展に貢献することである。その目的を果たすため、IR先進国である米国におけるFERPA(Family Educational Rights and Privacy Act)等の個人情報管理に関する法律と、米国の各大学が独自に策定している「学内データの収集等に関する規定」に着目し、米国の大学がどのように学内外のデータを収集・活用しているのかを調査している。平成29年度は、米国内でも情報公開が特に進んでいることで有名なフロリダ州にあるサウスフロリダ大学(州立研究系総合大学)、サウスフロリダ大学セント・ピーターズバーグ校(州立教育系大学)およびタンパ大学(私立総合大学)の3大学を訪れ、各大学におけるFERPAへの対応および学内外のデータ収集・活用の実態を調査した。また、日本国内の大学(国立・私立)に関しては、学内データの収集および活用面においてどのような規定が存在し、それらの規定がどのように運用されているかについて、インタビューを実施した。米国大学におけるデータ活用の実態を調べていく中で、米国にはCIP(Classification of Instructional Programs)と呼ばれる教育プログラムの分類コードがあり、米国の大学における教育プログラムの現状および学業修了状況を正確に把握することが可能となっていることが分かった。我が国においても、CIPのような教育プログラムの開発は必要であると考えたことから、これらCIPの仕組みや表記法および実際の活用例をまとめて、論文として発表した。平成29年度研究実施計画に挙げた5項目のうち「海外研究協力者を招いたIR(Institutional Research)関連の勉強会を開催する」以外の計画は、ほぼ実施できたと考えている。IR勉強会の開催が出来なかった理由は、当初お願いしていた海外研究協力者が所属校の学長代理に就任され、米国外への長期出張が難しくなったことにある。本研究の目的は、学内データの「収集」および「活用」に関する規定のドラフトおよび学生情報を正しく取り扱うためのトレーニングプログラムを開発し、我が国におけるIR(Institutional Research)のさらなる発展に貢献することである。その目的を果たすため、IR先進国である米国におけるFERPA(FamilyEducational Rights and Privacy Act)等の個人情報管理に関する法律と、米国の各大学が独自に策定している「学内データの収集等に関する規定」に着目し、米国の大学がどのように学内外のデータを収集・活用しているのかを調査している。平成30年度は、大学評価コンソーシアム主催の大学評価・IR担当者集会2018(8/22-8/24)の1セッション(半日)を担当し、米国におけるFERPAを紹介するとともに、データ収集や活用に関する規定策定の必要性等について議論した。また、米国でも統合型DBの構築が進んでいることで有名なミネソタ州立大学機構に属しているベミジ州立大学(BSU、州立教育系大学)、ノースダコタ州立大学(NDSU、州立研究系総合大学、州立フラッグシップ大学)およびインディアナ大学-パーデュー大学インディアナポリス校(IUPUI、州立研究系総合大学)の3大学を訪れ、各大学におけるFERPAへの対応および学内外のデータ収集・活用の実態を調査した。
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KAKENHI-PROJECT-17K04603
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K04603
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IRを活かす学内データ管理に関する研究:統合型データベース構築への第一歩として
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IRの責任者に加えて学内データの管理・運用の責任者である「Registrar」にインタビューを行った他、BSUとNDSUでは筆頭副学長である「Provost」ともお会いして、大学執行部からの意見をお聞きできたことは本研究を進める上で大変有意義であった。平成30年度研究実施計画に挙げた5点のうち「海外研究協力者を招いたIR(Institutional Research)関連の勉強会を開催する」以外の計画は、ほぼ実施できたと考えている。IR勉強会の開催が出来なかった理由は、当初お願いしていた海外研究協力者が所属校の学長に就任され、米国外への長期出張が難しくなったことにある。平成30年度は、米国の大学において実施されているFERPAトレーニングプログラム(データを適切に管理・運用するためのトレーニングプログラム)の日本版を開発する。また、米国の大学におけるデータの取り扱いの実態を学会で発表し、論文化も開始する。海外研究協力者を招いたIR勉強会については引き続き調整中であるが、スケジュール調整が上手く行かなかった場合は、以下の方法で研究を進めることを考えている。(1)日本での学会発表等で出された質問をまとめ、電子メールでのコミュニケーションで研究を進める(2)こちらから再度先方の大学へ出向き、研究成果を報告し助言を得る。研究の最終年度である平成31年度は、研究目的を完遂するため、平成29年度および平成30年度研究実施計画を通じて得られた以下2点の知見を、学会・勉強会・論文等において広く共有する。(1)国内大学において適用可能な学内データの「収集」および「活用」に関する規定のドラフトを策定・発表する。(2)日本版FERPAトレーニングプログラムを策定・発表する。海外研究協力者を招いたIR勉強会を開催する予定であったが、当初お願いしていた海外研究協力者が所属校の学長代理に就任され、米国外への長期出張が難しくなったことにより生じたものである。先方とのスケジュール調整が上手く行けば、平成30年度にIR勉強会を開催したいと考えているが、不調に終わった場合は、こちらから再度先方の大学に出向き、アドバイスを得ることも選択肢の一つに入れている。海外研究協力者を招いたIR勉強会を開催する予定であったが、当初お願いしていた海外研究協力者が所属校の学長に就任され、米国外への長期出張が難しくなったことにより生じたものである。先方とのスケジュール調整が上手く行けば、平成31年度にIR勉強会を開催したいと考えているが、不調に終わった場合は、こちらから再度先方の大学に出向き、アドバイスを得ることも選択肢の一つに入れている。もう一点は、購入予定だった米国の図書を米国大学訪問調査の際に現地で受け取ることにより、大幅に送料を削減できたことにある。
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KAKENHI-PROJECT-17K04603
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K04603
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癌幹細胞の誤修復誘導による放射線増感を利用した新たな治療戦略の開発
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グリオーマ細胞を用いてX線、粒子線での染色体異常解析を解析した。放射線増感効果が期待できるNBS1遺伝子の阻害剤であるmirinでCD133+, CD133-細胞で比較を行った。CD133+のstem like cellはCD133-細胞と比較するとAKTの活性化が促進されることがわかった。DNA損傷を修復する能力がCD133+のstem like cellは高いことが示唆された。また、正常線維芽細胞の静止期細胞に粒子線およびX線を照射しPLDRに関しても検討を行った。エックス線とことなり粒子線では非対数増殖期でも誤修復が多くPLDRが欠損する原因と考えられ粒子線治療の有効性が示唆された。放射線による増感効果を高める目的として、ATM阻害剤、NBS1阻害剤を使用した。静止期細胞ではATM阻害により誤った修復が起こりやすいことがわかり、また、NBS1阻害でも同様に誤修復の誘導が確認された。ただし、ATM阻害剤よりもNBS1阻害剤では誤修復の頻度が低く、静止期ではATMが重要な役割を果たしていると考えられた。実際、AT細胞にNBS1阻害剤を加えても誤修復頻度には有意な変化は見られなかったが、NBS細胞にATM阻害剤を加えて照射すると、誤修復が増加する現象が見られた。幹細胞は静止期でいると考えられており本年度は粒子線によるPLDRの欠如の原因を解析した。粒子線ではPLDRが欠損していることが知られているが、X線の場合と異なり静止期でも細胞周期を進行させた場合でも同様な誤修復が見られることが分かり、PLDR欠損の原因であることを示した。また、染色体解析からG0/G1期の染色体異常がG2/M期よりも高いことが本年度の研究から示唆され、粒子線では細胞周期の永久的なG1停止が染色体損傷の程度と相関することが示唆された。また、低線量率照射によるATM異常細胞および正常細胞の染色体損傷から、ATM異常細胞は低線量率でも高頻度に染色体異常が見られたことから、細胞周期進行異常よりも誤修復がAT細胞の異常な放射線感受性の原因と考えられた。来年度は、粒子線に対するATM遺伝子阻害剤、NBS1遺伝子阻害剤の影響も調べる予定である。癌細胞の放射線感受性を高める研究として、引き続き放射線感受性の高いATM遺伝子およびNBS1遺伝子欠損細胞、正常細胞、脳腫瘍細胞を用いて放射線感受性を検討した。正常細胞の多くは静止期であり、癌組織と比較して相対的に対数増殖をしている細胞分画は低いと考えている。一方、盛んに分裂している癌組織を構成する細胞分画は対数増殖期である割合が多く感受性が高く、放射線治療が有効な理由と考えられる。腫瘍細胞ではATM、NBS1遺伝子抑制により静止期での細胞はやはり放射線増感が見られた。一方、AT細胞はNBS1阻害剤では増感効果は見られなかったが、NBS1欠損細胞ではATM阻害剤で増感効果が得られた。染色体解析からは、NBS1細胞では誤った修復が顕著であった。このことは静止期ではNBS1の上流にATM遺伝子が存在している可能性を示唆する。ATM異常細胞ではPLDR(potentially lethal damage repair)が欠如していること、NBS1異常細胞ではATM異常細胞と異なり、PLDRが保たれていることと関係があると考えられる。本年度は重粒子線を用いてPLDRの有無を正常細胞を用いて染色体解析と生存率から解析を加えた。X線では正常細胞、腫瘍細胞でも静止期ではPLDRが観察され静止期幹細胞の存在が治療抵抗性につながることが推測されたが、重粒子ではPLDRが観察されないことが染色体異常解析から証明されたことから、静止期における癌細胞の治療にも有効であることが示唆された(論文として発表)。グリオーマ細胞を用いてX線、粒子線での染色体異常解析を解析した。放射線増感効果が期待できるNBS1遺伝子の阻害剤であるmirinでCD133+, CD133-細胞で比較を行った。CD133+のstem like cellはCD133-細胞と比較するとAKTの活性化が促進されることがわかった。DNA損傷を修復する能力がCD133+のstem like cellは高いことが示唆された。また、正常線維芽細胞の静止期細胞に粒子線およびX線を照射しPLDRに関しても検討を行った。エックス線とことなり粒子線では非対数増殖期でも誤修復が多くPLDRが欠損する原因と考えられ粒子線治療の有効性が示唆された。癌細胞の放射線感受性を高める研究として、初年度は放射線感受性の高いATM遺伝子およびNBS1遺伝子欠損細胞、正常細胞、脳腫瘍細胞を用いて放射線感受性を検討した。我々の体の正常細胞の多くは静止期であり、癌組織と比較して相対的に対数増殖をしている細胞分画は低いとかんが得られる。一方、盛んに分裂している癌組織を構成する細胞分画は対数増殖期である割合が多い。ただ、腫瘍細胞内の幹細胞も低酸素ニッチであれば静止期で存在すると考えられるので、本研究では、低栄養状態の静止期細胞集団を作成した。正常細胞は、腫瘍細胞ではATM、NBS1遺伝子抑制により静止期での細胞はやはり放射線増感が見られた。一方、AT細胞はNBS1阻害剤では増感効果は見られなかったが、NBS1欠損細胞ではATM阻害剤で増感効果が得られた。染色体解析からは、NBS1細胞では誤った修復が顕著であった。このことは静止期ではNBS1の上流にATM遺伝子が存在している可能性を示唆する。
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KAKENHI-PROJECT-23591849
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23591849
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癌幹細胞の誤修復誘導による放射線増感を利用した新たな治療戦略の開発
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ATM異常細胞ではPLDR(potentially lethal damage repair)が欠如していること、NBS1異常細胞ではATM異常細胞と異なり、PLDRが保たれていることと関係があると考えられる。低酸素領域の癌幹細胞では細胞周期がとまった状態と予測しており、静止期癌幹細胞に何らかの刺激を与えて細胞周期を進行させることは、放射線感受性を高めることと関連している可能性があり、来年度はその研究すすめる。本年度は研究発表、論文作成も進んでいる。腫瘍細胞の低栄養下で、おおむね、非対数増殖期の細胞がえられており、対数増殖期との感受性の違いを実験回数はすくないが得られている。追試が必要ではあるが、順調である。NBS1、ATM遺伝子の増感がキーポイントとなると考えており、正常細胞の染色体解析も順調に進んでいる。放射線による増感、細胞周期による放射線感受性、細胞周期によるATM, NBS1阻害剤の効果を来年度は検討したい。一年目、二年目はvitroを中心に実験を行いたい。脳腫瘍幹細胞を入手後には、腫瘍幹細胞の感受性試験、増感効果を検討する。三年目にはマウスを使用し、vivoでの研究成果を挙げたいと思う。FISHプローブの購入や、海外での研究発表に充てる予定でいる。未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。マウスに腫瘍細胞を移植し、静止期細胞をBURD陰性細胞として扱う実験を行っている。現在のところ、静止期、増殖期の鑑別が困難であるが、BURD陰性細胞に着目して研究を遂行する。BURDは腫瘍に直接注射することにより、増殖期細胞では取り込まれるが、静止期細胞では取り込みがないので、免疫染色を併用することで評価する。BURDを取り込んだ細胞と取り込まない細胞では、後者が高感受性をしめすとかんがえているが、染色体解析を併用することにより明らかにしたい。未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。
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KAKENHI-PROJECT-23591849
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23591849
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転写終結複合体のX線結晶構造解析
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高度好熱菌の菌体からRNAポリメラーゼ(コア酵素およびホロ酵素)を単離し、高純度に精製した。転写休止ないし終結に関与する高度好熱菌の転写因子(NusA、NusGおよびRho)について、大腸菌内での大量発現系を構築し、高純度のサンプルとして精製する方法を確立した。これらの精製タンパク質と高度好熱菌から調製したRNAポリメラーゼを組み合わせたin vitroの転写終結アッセイ系を確立した。転写終結因子Rhoについて、単独およびNusGとの複合体の結晶化に成功した。大型放射光施設SPring-8を用いて2.8Åのデータセットの収集に成功した。大腸菌Rhoの構造を検索モデルにした分子置換法での位相決定を試みたが、解は得られなかった。高度好熱菌のRhoは既知構造とは異なるコンフォメーションをとっていると考えられる。現在MAD法での位相決定を行うために、セレノメチオニン置換体タンパク質の結晶化を行っている。RNAポリメラーゼによる転写の終結ないし休止を引き起こすRNAを結合した複合体(転写終結ないし休止複合体)を再構成するための核酸(RNAおよびDNA)の配列のデザインを行い、複合体のin vitro再構成に成功した。ゲルシフトアッセイ等により、再構成した複合体が生物学的に意味のある複合体に相当することを示した。これらの複合体の結晶化に着手し、再現性よく単結晶を得ることに成功している。特に休止複合体については、シンクロトロン放射光をもちいて測定したところ、4Åを超える分解能の回折が得られた。構造解明にはいま少し時間を要するが、核酸配列の最適化と結晶化条件の改良により、より高質のデータを取得し、高分解能の構造解明ができると期待できる。はじめに、高度好熱菌の菌体からRNAポリメラーゼ(RNAP)を単離し、高純度に精製した。RNAポリメラーゼと相互作用する転写因子(NusA、NusGおよびRho)を大腸菌内で大量に発現させるために、遺伝子のクローニング・発現系の構築を行った。これらのタンパク質を各々大腸菌で発現させ、高純度に精製することに成功している。つぎに、in vitroの転写終結実験を行い、精製された個々のタンパク質が実際にRNAPに対して機能することを確認した。結晶化に向けてRNAPの転写終結複合体をin vitroで再構成するために、RNAPや転写因子に結合する核酸(RNAおよびDNA)の配列や長さをデザインした。精製されたこれらの核酸を用いて、RNAPや転写因子とのin vitroでの再構成実験を行い、いくつかの組み合わせで安定な複合体を形成させることができた。これらの複合体について結晶化に着手した。再構成されたRNAP複合体について、X線解析に向けた結晶化のスクリーニングを行っている。また、転写終結因子Rho単独についても結晶化を行い、これまでに単結晶を得ている。これについては、大型放射光施設SPring-8を用いて2.8Åのデータセットの収集に成功している。現在このデータを用いて位相決定を試みている。結晶解析と並行して、ここで挙げた転写因子とRNAPとの相互作用部位を特定するために、転写因子の変異体を作製し、RNAPとの結合実験を行っている。高度好熱菌の菌体からRNAポリメラーゼ(コア酵素およびホロ酵素)を単離し、高純度に精製した。転写休止ないし終結に関与する高度好熱菌の転写因子(NusA、NusGおよびRho)について、大腸菌内での大量発現系を構築し、高純度のサンプルとして精製する方法を確立した。これらの精製タンパク質と高度好熱菌から調製したRNAポリメラーゼを組み合わせたin vitroの転写終結アッセイ系を確立した。転写終結因子Rhoについて、単独およびNusGとの複合体の結晶化に成功した。大型放射光施設SPring-8を用いて2.8Åのデータセットの収集に成功した。大腸菌Rhoの構造を検索モデルにした分子置換法での位相決定を試みたが、解は得られなかった。高度好熱菌のRhoは既知構造とは異なるコンフォメーションをとっていると考えられる。現在MAD法での位相決定を行うために、セレノメチオニン置換体タンパク質の結晶化を行っている。RNAポリメラーゼによる転写の終結ないし休止を引き起こすRNAを結合した複合体(転写終結ないし休止複合体)を再構成するための核酸(RNAおよびDNA)の配列のデザインを行い、複合体のin vitro再構成に成功した。ゲルシフトアッセイ等により、再構成した複合体が生物学的に意味のある複合体に相当することを示した。これらの複合体の結晶化に着手し、再現性よく単結晶を得ることに成功している。特に休止複合体については、シンクロトロン放射光をもちいて測定したところ、4Åを超える分解能の回折が得られた。構造解明にはいま少し時間を要するが、核酸配列の最適化と結晶化条件の改良により、より高質のデータを取得し、高分解能の構造解明ができると期待できる。
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KAKENHI-PROJECT-17770083
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17770083
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治療抵抗性統合失調症動物モデルにおける電気けいれん療法の作用機序に関する検討
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本研究では、従来から統合失調症の縦断モデル、治療反応性モデルといわれている覚醒剤動物モデルと横断モデル、治療抵抗性モデルといわれているN-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体遮断薬動物モデルを応用し、このモデルに対する電気痙攣療法(ECT)の効果を検討した。ECTが統合失調症と共通する動物の異常行動、可塑的変化を阻止したことからECTが統合失調症の病態進行を阻止する可能性が示唆された。本研究では、従来から統合失調症の縦断モデル、治療反応性モデルといわれている覚醒剤動物モデルと横断モデル、治療抵抗性モデルといわれているN-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体遮断薬動物モデルを応用し、このモデルに対する電気痙攣療法(ECT)の効果を検討した。ECTが統合失調症と共通する動物の異常行動、可塑的変化を阻止したことからECTが統合失調症の病態進行を阻止する可能性が示唆された。平成20年度に予定していた行動科学的検討を行うにあたり、まず電気痙攣療法(ECT)の電気刺激の設定を行った。海外の文献などから周波数150Hz、波長0.9ms、通電時間1sec、電流90mAの設定から開始したが、有効な痙攣誘発に至らないことなどが多く、最終的に周波数50Hz、波長1.0ms、通電時間1.0上の変化が少なかったため、濃度展開をした上で投与経路も腹腔内、皮下投与のそれぞれを検討し、最終的に0.15mg/kgを皮下投与することとした。その後平成20年度に予定していた行動科学的検討の中の運動量の亢進に関して検討を行ったが、MK-801に対する移所運動量は、ECT処置群の方がコントロール群と比較して大きく亢進し、予想と異なる結果となった。そのためECTの回数を14回に増やし、処置後1週、2週、4週、6週と同量のMK-801を反復して投与して検討したところ、上述したECT処置群のMK-801に対する行動上の過感受性は認められず、またコントロール群の総運動量でMK-801に対する行動上の逆耐性現象が形成されていたが、ECT処置群では形成されなかった。さらに、この逆耐性現象の抑制効果は、処置後6週程度で消失していた。少ない回数でECTがMK-801に対する行動上の過感受性を誘発するメカニズムは不明であるが、日常の臨床ではECTによって脱抑制を呈することがあり、その関与が考えられた。また本実験結果では、ECTの回数を増すと処置後6週程度の期間はMK-801に対する逆耐性現象を抑制する可能性があることがわかった。このことから統合失調症の治療抵抗性の病態にECTが何らかの改善効果をもたらす可能性が考えられた。平成20年度の行動実験の結果では、電気痙攣療法(ECT)処置が5回である場合、予想に反してMK-801に対する移所運動量はECT処置群の方がコントロール群よりも大きく亢進し、ECT処置を14回に増加した際にはMK-801の行動上の逆耐性現象が阻止されたことを考慮し、平成20年度に予定していた驚愕反応抑制(prepulse inhibition : PPI)の障害に関する検討に関しては、ECTを13回に、また薬休時間を48時間に延長して行った。その結果、%PPIにおいては68dBでECTがMETH誘発性のPPI障害を改善することがわかった。しかし、71dBではECTの効果は認められず、METH誘発性のPPI障害がECT処置群、非処置群の両群で認められていた。このことは、ECTの反復処置によって、METH誘発性の行動障害が部分的に阻止される可能性を示唆する。またラットの行動上の変化に関して、平成20年度の実験結果からMK-801誘発性の行動変化は認められなかったことから、これを覚醒剤(methamphetamine : METH)に変更し、同様にECT処置回数と休薬時間を延長して検討した。その結果、ECT反復処置群では、METH誘発性の異常行動を軽度改善することがわかった。この結果は、ECT反復によって覚醒剤誘発性の行動異常を改善する可能性を示唆し、先程のPPI障害の改善を考慮すると、ECTは覚醒剤誘発性の様々な異常行動を、可塑的変化を阻止する可能性を示唆する。従来から覚醒剤動物モデルは、統合失調症の縦断モデル、治療反応性モデルといわれている。覚醒剤によって誘発される様々な脳内の変化をECTが阻止することを考慮すると、ECTが統合失調症の病態進行を阻止する可能性があるのではないかと考えられる。
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KAKENHI-PROJECT-20790826
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20790826
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くりこみ群による量子トンネル効果の解析
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非自明な環境下、特に散逸がある場合の量子トンネル効果の解析を行った。散逸効果は、古典的には摩擦力として簡単に導入できるが、ラグランジアンやハミルトニアンを必須とする量子論では、簡単に導入することはできない。そこで、摩擦のミクロな根拠に戻って、実際に多数の環境自由度と相互作用がある系を用意し、環境自由度についての量子効果を積分することによってターゲット自由度の有効相互作用を導き、この有効相互作用のもとでのトンネル効果について非摂動くりこみ群によって解析する、という手法を開発した。有効相互作用は、時間方向に非局所的な長距離相関項を含み、普通の意味でのハミルトニアンはエネルギー固有値、エネルギー固有状態という概念で系を考察することができない。これまでは、経路積分を半古典的に解析するいわゆるインスタントン法に対して、この長距離相関項を摂動的に取り入れて解析されてきた。しかし、長距離相関項を摂動的に扱える保証はまったくない。そこで我々は、普通の非調和振動子や、摩擦のないトンネル効果の場合に、インスタントン法と相補的に良い結果を与えることを既に示している非摂動くりこみ群による有効ポテンシャルの評価、という手法をこの場合に拡張して適用した。トンネル効果が摩擦によって抑制されると、局在化が起きることが予想されるが、これを相転移として捉え、局在化感受率を定義して、それの発散を外挿によって求めた。その結果、摩擦力を十分強くすると、局在化相転移が確かに起きること、しかし、その臨界摩擦力はこれまでのインスタントン法による評価よりはかなり大きいことを示した。更に、この相転移が2次転移で、ある種のユニバーサリティを持っていること、を示唆する結果を得た。非摂動くりこみ群による量子論の解析は、有効作用に対する汎関数微分方程式を如何に有効に近似して解く事ができるか、が眼目となる。時空1次元のスカラー理論である、いわゆる量子力学系では、有効作用として微分相互作用を含まない関数空間が、広いパラメタ領域で非常に良い結果を与えているが、トンネル効果の重要な領域ではこの近似が急速に悪くなる。これを改善する方法を探るために、同じ1次元系のスピン系を考察した。スピン系の基本相互作用を最近接相互作用に限り、ひとつおきのサイトのスピンを積分する方法をとると、生成される有効作用は残ったスピンに対して最近接相互作用となる。この事を連続空間の理論に読みかえると、場の微分が有効相互作用に現れるとしても、1階微分のみで表現されることになる。この方向で、1階微分の任意関数を加えた相互作用空間でのくりこみ群方程式の性質について分析しているが、未だはっきりした結論にはいたっていない。くりこみ群方程式をたてる際のスキームを最適化すると、この拡大された関数空間内で閉じる可能性があり、この場合には、量子論を解ききることが可能になる。いずれにしても、非線形の偏微分方程式の数値解析になるので、その準備を進めている。1次元の量子トンネル効果を散逸のある場合に考察した。散逸効果を直接に系のハミルトニアンとして表現することはできないと考えられる。そこで、Caldeira-Leggett模型に従って、有効作用を求め、そのもとでの系の性質を考察した。まず、多自由度の系を用意し、注目する自由度以外の自由度(いわゆる環境の自由度)を積分してしまう。この事は、環境自由度の量子的な役割を先に足し上げて、注目する自由度の有効作用を導くことになる。環境の自由度を十分に稠密に用意し、しかもその最低エネルギー状態を0に近づけると、得られる有効作用は、時間方向に長距離の相関を持つ項となり、通常の時間に局所的なハミルトニアン解釈はできなくなる。この長距離相関の項が系にどのような影響を与えるかを、非摂取くりこみ群を用いることによって考察した。そして、長距離相関項のタイプに応じて、非摂取くりこみ群のβ関数が変化し、量子補正項が抑制されたり強調されたりすることがわかった。いわゆるオーム型の長距離相関の場合には、量子補正が抑制され、本来の量子力学では起こり得ない、局在化相転移があるかも知れない。いわゆるインスタントン法によってこれまで多くの解析が行われているが、その中では本質的な問題を含む近似が行われており、定性的にも信用できない。私たちは、この局在化相転移を解析するために、局在化感受率を非摂動くりこみ群を用いて計算し、それを臨界指数解析によって、相転移の存在を調べた。また同時に、数値シミュレーションも行って、非摂動くりこみ群の結果と比べている。非自明な環境下、特に散逸がある場合の量子トンネル効果の解析を行った。散逸効果は、古典的には摩擦力として簡単に導入できるが、ラグランジアンやハミルトニアンを必須とする量子論では、簡単に導入することはできない。そこで、摩擦のミクロな根拠に戻って、実際に多数の環境自由度と相互作用がある系を用意し、環境自由度についての量子効果を積分することによってターゲット自由度の有効相互作用を導き、この有効相互作用のもとでのトンネル効果について非摂動くりこみ群によって解析する、という手法を開発した。有効相互作用は、時間方向に非局所的な長距離相関項を含み、普通の意味でのハミルトニアンはエネルギー固有値、エネルギー固有状態という概念で系を考察することができない。これまでは、経路積分を半古典的に解析するいわゆるインスタントン法に対して、この長距離相関項を摂動的に取り入れて解析されてきた。しかし、長距離相関項を摂動的に扱える保証はまったくない。
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KAKENHI-PROJECT-12874029
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12874029
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くりこみ群による量子トンネル効果の解析
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そこで我々は、普通の非調和振動子や、摩擦のないトンネル効果の場合に、インスタントン法と相補的に良い結果を与えることを既に示している非摂動くりこみ群による有効ポテンシャルの評価、という手法をこの場合に拡張して適用した。トンネル効果が摩擦によって抑制されると、局在化が起きることが予想されるが、これを相転移として捉え、局在化感受率を定義して、それの発散を外挿によって求めた。その結果、摩擦力を十分強くすると、局在化相転移が確かに起きること、しかし、その臨界摩擦力はこれまでのインスタントン法による評価よりはかなり大きいことを示した。更に、この相転移が2次転移で、ある種のユニバーサリティを持っていること、を示唆する結果を得た。
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KAKENHI-PROJECT-12874029
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12874029
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網膜色素変性症モデルの比較病理学的検討
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N-methyl-N-nitrosourea(MNU)による網膜病変を系統発生的にみると、齧歯目(マウス・ラット・ハムスター)、食虫目(スンクス)、霊長目(サル)といった広範な哺乳類の成獣への単回投与により、各種属に雌雄差なく視細胞アポトーシスに起因する網膜変性症(Retinal degeneration)が惹起された。これは、ヒト網膜色素変性症(Retinitis pigmentosa)と同一機転によるが、サルではヒトと同様赤道部に病変が初発するのに対し、マウス・ラット・ハムスター・スンクスでは後極部より病変が始まる。一方、ヒトでは視細胞アポトーシスに続発して色素上皮細胞の網膜内遊走、次いで網膜内血管周囲集簇が生じるが、マウス・スンクス・サルでは色素上皮細胞の網膜内遊走はみられず、ラットでは色素上皮細胞の遊走はみるが網膜内血管周囲集簇は認めず、ハムスターのみ網膜内血管周囲集簇を呈した。2. MNU誘発網膜病変の個体発生的比較MNUの網膜病変を個体発生的にみると、MNUのマウスへの単回投与を網膜細胞増殖期(生後1日あるいは3日)に行うと、ロゼット形式で特徴づけられる網膜異形成(Retinal dysplasia)の発生をみるが、網膜細胞分化期(生後5あるいは8日)では網膜は形態変化を示さず、網膜の分化が終了した後(生後11日以降)では網膜変性をみた。MNUは性差・種属差なく網膜障害を誘発するが、投与時期により反応は異なる。N-methyl-N-nitrosourea(MNU)による網膜病変を系統発生的にみると、齧歯目(マウス・ラット・ハムスター)、食虫目(スンクス)、霊長目(サル)といった広範な哺乳類の成獣への単回投与により、各種属に雌雄差なく視細胞アポトーシスに起因する網膜変性症(Retinal degeneration)が惹起された。これは、ヒト網膜色素変性症(Retinitis pigmentosa)と同一機転によるが、サルではヒトと同様赤道部に病変が初発するのに対し、マウス・ラット・ハムスター・スンクスでは後極部より病変が始まる。一方、ヒトでは視細胞アポトーシスに続発して色素上皮細胞の網膜内遊走、次いで網膜内血管周囲集簇が生じるが、マウス・スンクス・サルでは色素上皮細胞の網膜内遊走はみられず、ラットでは色素上皮細胞の遊走はみるが網膜内血管周囲集簇は認めず、ハムスターのみ網膜内血管周囲集簇を呈した。2. MNU誘発網膜病変の個体発生的比較MNUの網膜病変を個体発生的にみると、MNUのマウスへの単回投与を網膜細胞増殖期(生後1日あるいは3日)に行うと、ロゼット形式で特徴づけられる網膜異形成(Retinal dysplasia)の発生をみるが、網膜細胞分化期(生後5あるいは8日)では網膜は形態変化を示さず、網膜の分化が終了した後(生後11日以降)では網膜変性をみた。MNUは性差・種属差なく網膜障害を誘発するが、投与時期により反応は異なる。MNUを0.05%酢酸加生食水に溶解してマウス・ラット・ハムスター(齧歯類)、スンクス(食虫類)、サル(霊長類)といった各種属の成熟動物に単回投与すると、性差なく全種属に視細胞アポトーシスに起因する網膜変性が両眼性に惹起された。各種属ともアポトーシスはMNU投与直後より始まり、約1週間の経過でほぼ全ての視細胞の脱落をもって終了する。但し、アポトーシス誘発に要するMNU量はサルでの40mg/kg・体重からハムスターの90mg/kg・体重まで種属により閾値は異なる。なお、病変はサルでは赤道部に初発するが、他の種属ではともに後極部に始まり、やがて全網膜に広がる。MNUより生ずる網膜障害の初発部位ならびに障害誘発に要するMNU量は種属により異なるが、性差・種属差なく視細胞アポトーシスは惹起され、MNU誘発視細胞アポトーシスは、普遍性のある現象であることが判明した。2.網膜色素上皮細胞の動態視細胞脱落後の病変が進行した網膜像を比較した。マウス・スンクス・サルでは網膜色素上皮細胞(RPE)はブルッフ膜上に一層連続して正常に配列して存在したが、ラット・ハムスターでは網膜内遊走をみた。なお、ハムスターでは遊走RPEのあるものは網膜内血管基底膜と親和性をもち、血管周囲沈着をみた。3.ヒト色素性網膜変性症との比較ヒト色素性網膜変性症(retinitis pigmentosa)は(1)赤道部に初発する視細胞のアポトーシスに始まり、視細胞が脱落した後、(2)RPEの網膜内血管周囲沈着が出現し、眼底所見では骨小体様の形態をもつ色素斑で特徴づけられる。比較病理学的に各MNU誘発モデルを検討すると、いずれも視細胞アポトーシスによる網膜変性は惹起されるが、赤道部に初発する点ではサルモデルのみがヒトと同一であった。しかし、視細胞脱落に続発するRPEの動態に関せば、唯一ハムスターモデルのみがRPEの網膜内血管周囲沈着をみた。(1)視細胞アポトーシスの普遍性MNUを0.05%酢酸加生食水に溶解してマウス・ラット・ハムスター(齧歯類)、スンクス(食虫類)サル(霊長類)の成獣に単回投与すると、性差なく全種属に視細胞アポトーシスに起因する網膜変性が全種属に両眼性に惹起された。
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KAKENHI-PROJECT-09671823
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09671823
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網膜色素変性症モデルの比較病理学的検討
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各種属ともアポトーシスはMNU投与直後に始まり、約1週間の経過でほぼ全ての視細胞の脱落をもって終了する。(2)ヒト網膜色素変性症(RP)との比較ヒトRPは(1)赤道部に初発する視細胞のアポトーシスに始まり、視細胞消失後、(2)網膜色素上皮細胞(RPE)の網膜内血管周囲集蔟が出現し、眼底所見では骨小体様の形態をもつ色素斑で特徴づけられる。比較病理学的に各種属モデルを解析すると、いずれも視細胞アポトーシスによる網膜変性は惹起されるが、赤道部に初発する点ではサルのみがヒトと同一で、RPEの挙動に関せば、唯一ハムスターモデルのみがRPEの網膜内血管周囲集集蔟をみた。(3) MNUの暴露時期と誘発病変以上、MNUを各種成獣に単回投与するとアポトーシスが惹起された。成獣に投与したと同量のMNUの新生仔期単回投与をマウス・ラットに試みたところ、出生直後のものではロゼット形成で特徴づけられる網膜異形性(retinal dysplasia)の発生をみた。経時的にみると、マウスでは網膜増殖期(生後1日あるいは3日)にMNUを投与すると網膜異形成をみるが、網膜分化期(生後5日あるいは8日)では網膜は形態変化を示さず、網膜が分化を終了した後(生後11日以降)では網膜変性をみた。個体発生的にみると、網膜のMNUのに対する反応には時期特異性が存在する。
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KAKENHI-PROJECT-09671823
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09671823
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短時間の電気的感覚情報入力と運動の組み合わせによる学習促進効果
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これまでの研究代表者の研究成果によって、身体抹消からの体性感覚刺激入力は、直後の運動技能課題実行中の脳内運動領野の神経活動変化を引き起こし、停滞していた運動パフォーマンスを更に向上させる行動学的変容を導く効果があることが明らかとなった。こうした研究成果に基づき、本年度はまず、新規の運動学習過程に対する体性感覚刺激の介入効果を検証した。手指の巧緻運動課題を新規に学習していく際の課題試行間を利用し、被験者の手部に短時間の体性感覚刺激を施した。このような運動課題実行と刺激介入を繰り返し実施し、運動技能の学習率を算出した。その結果、特別な介入を施さなかった対照群に比較して技能の学習率が向上し、翌日の運動パフォーマンスも相対的に高いレベルを示した。このことから、運動実行直前の体性感覚入力は、学習の初期・後期どちらにおいてもその学習を更に高めるような作用を及ぼすことが明らかとなり、体性感覚刺激介入はリハビリテーションの治療効果を促進させる補助手段として広く応用できることが示唆された。次に、運動学習効率の促進という観点に着目した新たな実験を行った。体性感覚入力による運動技能学習の促進効果を高めるには、向上した運動技能を運動記憶として脳内にどの程度定着させ、それをどの程度忠実に再現できるかが重要な鍵となる。そこで、運動記憶の定着とそれを再現する能力について調査するための行動学的実験を行った。その結果、一度獲得した運動記憶を再現する時の正確性は、その運動を練習するときの戦略に依存することが明らかとなった。つまり、2種類の運動をランダムな順序で学習するような戦略を用いた場合には、各運動をまとめて練習する場合に比べてそれらの運動を再現する時の正確性が高くなることが明らかとなった。一方、まとめて練習する戦略を用いた場合には、運動を再現する際に2つの運動同士が干渉し合ってしまい、運動の正確性が相対的に低くなることがわかった。このことから、運動練習に体性感覚入力を組み合わせる際には、その練習方法に応じて複合的かつ効率的な運動技能学習の促進を引き起こせる可能性があることが示唆された。身体抹消からの体性感覚情報は、脳内でその感覚に対する情報処理が行われると同時に、直接或いは間接的に運動関連領野へ神経信号が到達し、結果的に運動領野の神経活動を修飾することができる。運動実行や技能の獲得・学習に関わるとされる運動関連領野の神経活動を、感覚入力によって修飾できるのならば、運動技能やその学習過程における行動学的変化をも望める可能性がある。そこで本研究は、体性感覚入力による運動領野神経修飾作用を応用し、ヒト運動技能や運動学習に対する感覚入力の介入効果を行動実験及び脳機能画像法を用いて検証することを目的とする。今年度は、短時間の電気的感覚入力が直後の運動領野の神経活動、及び運動技能に及ぼす影響について、神経生理学実験と行動実験を用いて検証を行った。母指皮膚上から運動閾値下の電気刺激を入力し、対側皮質脊髄路の神経興奮性を経頭蓋磁気刺激法を用いて評価した。皮質脊髄路の興奮性は刺激直後に増大しており、同様の変化は対照条件では確認できなかった。これにより、短時間の筋感覚刺激であっても、一時的に運動領野の神経活動修飾が生じていることが明らかとなった。更に、感覚刺激直後に手指の運動技能を評価した所、刺激介入前のパフォーマンスよりも、刺激直後は高いレベルで実行できることがわかった。詳細な運動分析の結果、実行中は手指の運動変位量が減少していることが明らかとなり、余計な運動成分の抑制、つまりは効率的な運動制御の促進が、その背景に関わっている可能性が示された。最後に、感覚入力による即時的な技能向上効果は翌日まで維持され、刺激と運動の組み合わせを日々繰り返すことで、停滞していた技能を更に段階的に促進できることがわかった。これらの結果は、運動前の感覚刺激が、運動学習を促進する効果的手段の一つとして応用できる可能性を示している。初年度は主に行動学的実験を用いて体性感覚入力が直後の手指巧緻運動技能に及ぼす影響、更にはより長期的な学習効果に及ぼす影響を検証した。その結果、体性感覚入力による介入は手指の運動量の減少から見られる効率的な制御を導きながら、停滞していた運動技能を即時的に向上させる効果が明らかとなった。また、介入と運動を日々繰り返すことで、5日間の継続的練習では明らかな向上が見られなかった学習の停滞状態に対して、更なる段階的な技能向上、つまりは学習促進を導けることが明らかとなった。では、停滞した運動技能の更なる向上の背景にはどのような脳内神経基盤が関わっているのだろうか。昨年度は機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いてその解明に取り組んだ。介入前の運動時と介入によって技能向上が見られた運動時の脳活動を計測し、両者の比較検証を行った。その結果、運動関連領域内におけるBOLD信号量には両者の差異は認められなかったものの、信号値の挙動(相関関係)に着目すると、介入後の運動時には一次運動感覚野を中心とする皮質感覚運動領域と小脳(小脳中部)・基底核(被殻)の皮質下領域との間の相関関係が強くなっていることが明らかとなった。したがって、停滞していた運動技能の改善には、運動・感覚の一次的処理に関わる皮質感覚運動領域と、運動技能学習に中心的に関わる基底核(被殻)や身体末梢からの感覚情報入力の求心経路である脊髄小脳との間の領域間機能結合の強化が関わっている可能性が示された。
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KAKENHI-PROJECT-10J04098
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J04098
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短時間の電気的感覚情報入力と運動の組み合わせによる学習促進効果
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以上より、事前に施す感覚入力介入が運動実行に関わる脳領域間結合を強化する方向へと作用し、その結果として効率的制御、運動技能向上といった行動学的恩恵を導いた可能性が推察された。これまでの研究代表者の研究成果によって、身体抹消からの体性感覚刺激入力は、直後の運動技能課題実行中の脳内運動領野の神経活動変化を引き起こし、停滞していた運動パフォーマンスを更に向上させる行動学的変容を導く効果があることが明らかとなった。こうした研究成果に基づき、本年度はまず、新規の運動学習過程に対する体性感覚刺激の介入効果を検証した。手指の巧緻運動課題を新規に学習していく際の課題試行間を利用し、被験者の手部に短時間の体性感覚刺激を施した。このような運動課題実行と刺激介入を繰り返し実施し、運動技能の学習率を算出した。その結果、特別な介入を施さなかった対照群に比較して技能の学習率が向上し、翌日の運動パフォーマンスも相対的に高いレベルを示した。このことから、運動実行直前の体性感覚入力は、学習の初期・後期どちらにおいてもその学習を更に高めるような作用を及ぼすことが明らかとなり、体性感覚刺激介入はリハビリテーションの治療効果を促進させる補助手段として広く応用できることが示唆された。次に、運動学習効率の促進という観点に着目した新たな実験を行った。体性感覚入力による運動技能学習の促進効果を高めるには、向上した運動技能を運動記憶として脳内にどの程度定着させ、それをどの程度忠実に再現できるかが重要な鍵となる。そこで、運動記憶の定着とそれを再現する能力について調査するための行動学的実験を行った。その結果、一度獲得した運動記憶を再現する時の正確性は、その運動を練習するときの戦略に依存することが明らかとなった。つまり、2種類の運動をランダムな順序で学習するような戦略を用いた場合には、各運動をまとめて練習する場合に比べてそれらの運動を再現する時の正確性が高くなることが明らかとなった。一方、まとめて練習する戦略を用いた場合には、運動を再現する際に2つの運動同士が干渉し合ってしまい、運動の正確性が相対的に低くなることがわかった。このことから、運動練習に体性感覚入力を組み合わせる際には、その練習方法に応じて複合的かつ効率的な運動技能学習の促進を引き起こせる可能性があることが示唆された。初年度の行動学的実験と翌年度の機能的核磁気共鳴画像法を用いた実験は申請時の計画に則した内容となっている。従って、当該研究の目的達成に向けておおむね順調に研究を推進できていると言える。研究計画に基づき、昨年度中に得られたデータの詳細分析を進めるとともに、異なる神経生理学的実験手法を駆使しながら神経メカニズムの解明に迫っていく予定である。
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KAKENHI-PROJECT-10J04098
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J04098
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リー理論を用いた複素解析幾何の新展開
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本研究では、リー理論を用いた複素解析幾何の研究を中心につぎのような研究成果を得た。1.可解な自己同型群をもつチューブ領域に関する正則同値問題について研究を進めた。具体的には、Dを複素n次元数空間内の多項式無限小自己同型のみをもつチューブ領域とし、その底は直線を含まない凸領域であるとする。そしてDの正則自己同型群Gは可解である仮定する。このとき、Gのリー環の、実平行移動の群に対応する部分環の共役性について、新たな知見を得た。2.金沢大学名誉教授の児玉秋雄氏と共同で、フォック・バーグマン・ハルトーグス領域に関する、内容的には独立した2つの定理を得た。一方を定理1、もう一方を定理2とするとき、定理1では、2つの同次元フォック・バーグマン・ハルトーグス領域に対して、それらの間の固有正則写像がどういうものであるかを調べた。その際、ある場合については、「基本的事実」がすでに知られていた。従って、そのような場合以外について、どのようなことが生じるかを問うことになる。実際、定理1では同次元フォック・バーグマン・ハルトーグス領域間の固有正則写像全体のなす空間の構造を明らかにした。ところで、「基本的事実」は最初にTu-Wangにより証明され、その後、児玉氏が別証を与えた。それらの証明において、Tu-Wangは代数幾何学からの既知の結果を利用し、他方、児玉氏はリー群論における手法を用いた。いずれにせよ、両証明ともいささか長く込み入ったものである。このことを考慮し、定理1においては、「基本的事実」の新証明も与えた。また定理2においては、D、Eを必ずしも同次元とは限らないフォック・バーグマン・ハルトーグス領域とするとき、Dの正則自己同型群とEの正則自己同型群のデータを用いて、DとEの直積空間の正則自己同型群の構造を決定した。本研究では、リー理論を用いた複素解析幾何の研究を中心に、研究代表者および連携研究者の専門分野において主として、つぎのような研究成果を得た。1.これまで研究代表者が行って来た研究で得られた、チューブ領域上の完備多項式ベクトル場に関する延長定理を利用して、可解な自己同型群をもつある種のチューブ領域の構造と同値性を調べた。具体的には、Dを複素n次元数空間内の多項式無限小自己同型をもつチューブ領域とし、その底は直線を含まない凸領域であるとする。このとき、Dの正則自己同型群Gが可解で、Dのある点を通るGの軌道の次元がn + 1である場合に、Dの無限小正則自己同型環の構造を明らかにすると同時に正則同値問題に肯定的解答を与えた。2.多項式無限小自己同型をもつチューブ領域Dの間で、第1種ジーゲル領域、すなわち底が凸錐体であるチューブ領域はつぎの点で特徴的である:Dが第1種ジーゲル領域のとき、Dの正則自己同型群Gが可解であるならば、Gの単位成分は必ずアフィン自己同型のみから成る。上記1の結果の具体例として、多項式無限小自己同型をもつチューブ領域Dの底が凸錐体ではない場合に、Dの正則自己同型群が非アフィン自己同型を含み可解となるようなDの例を与えた。3.次元の異なる一般複素擬楕円体の間の固有正則写像の分類を行った。定義域と値域の次元の差があまり大きくないときには、それぞれの領域の自己同型群の差をはぶくと、線形埋め込みの写像しか存在しないことが分かった。また実3次元無限型超曲面で、無限型になっている点がある条件を満たす場合に、その無限小CR自己同型を決定した。4.有界等質領域上の群共変性をもつ正値函数から定義されるHartogs領域について、その上の様々な荷重つきBergman空間上の再生核を明示的に記述する公式を与えた。本研究のコアとなる内容について大きな進展をみている。また具体的な成果がまだ得られていない問題についても、その研究を通じて新たな結果、問題の知見を得ることが出来ており、研究全体としておおむね順調に進展していると言える。本研究では、リー理論を用いた複素解析幾何の研究を中心に、研究代表者および連携研究者の専門分野において主として、つぎのような研究成果を得た。1.これまで研究代表者が行って来た研究で得られた、チューブ領域上の完備多項式ベクトル場に関する延長定理を利用して、可解な自己同型群をもつある種のチューブ領域に対して、その無限小正則自己同型環の構造を調べた。具体的には、Dを複素n次元数空間内の多項式無限小自己同型をもつチューブ領域とし、その底は直線を含まない凸領域であるとする。そしてDの正則自己同型群Gは可解である仮定する。このときGのリー環に属する2次の多項式ベクトル場に対して、実線形座標変換を利用し、その標準形を与えた。2.上記1の結果を基にして、Gのリー環の巾零根基に属する多項式ベクトル場の次数が必ず1以下であることを示した。このことから、Dが可解な自己同型群Gをもつときには、Gのリー環に属する任意の多項式ベクトル場は次数が2以下であるということが分かった。3.上記1の結果を利用して、Dが可解な自己同型群Gをもつとき、Gのリー環の一般的構造を調べた。そしてGのリー環の直和分解における、本質的な意味で次数が2であるような多項式ベクトル場のなす部分空間について、その標準的な基底を与えた。
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KAKENHI-PROJECT-15K04913
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K04913
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リー理論を用いた複素解析幾何の新展開
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4.次元の異なる一般複素擬楕円体の間の固有正則写像を分類した。写像の微分のある種の非退化性と、次元の差についての仮定を置くことにより、問題となっている写像は、定義域と値域の自己同型群の差を省いて線形埋め込みになっていることが分かった。これはHuang等による、球に対するギャップ定理の弱擬凸版とみなすことができる。本研究のコアとなる内容について大きな進展をみている。また具体的な成果がまだ得られていない問題についても、その研究を通じて新たな結果、問題の知見を得ることが出来ており、研究全体としておおむね順調に進展していると言える。本研究では、リー理論を用いた複素解析幾何の研究を中心に、研究代表者および連携研究者の専門分野において主として、つぎのような研究成果を得た。1.可解な自己同型群をもつチューブ領域に関する正則同値問題について研究を進めた。具体的には、Dを複素n次元数空間内の多項式無限小自己同型のみをもつチューブ領域とし、その底は直線を含まない凸領域であるとする。そしてDの正則自己同型群Gは可解である仮定する。このとき、Gのリー環の、実平行移動の群に対応する部分環の共役性について、新たな知見を得た。2.複素有界領域の幾何において、ある大域的特性をもつ領域を局所的に特徴付けることは興味ある課題である。これに関連して、等質有界領域の準局所的特徴付けを与えた。そして応用として、対称領域の特徴付けやある種の非対称等質有界領域の特徴付けに関する結果を得た。3.一般複素擬楕円体は、その定義関数に自然数に値を持つパラメータが含まれる。次元の異なる一般複素擬楕円体の間に固有正則写像が存在するとき、定義域に対応するパラメータと値域に対応するパラメータとの間にある関係式を求めることができた。また、そのような正則写像を定義域と値域の自己同型群の作用の差を省いて分類した。28年度には写像のヤコビ行列の非退化性と次元についてのいくつかの(不自然な)条件が必要であったが、29年度にはヤコビ行列の条件を取り省くことができ、さらに次元の条件も自然なものに置き換えることができた。4.等質ケーラー多様体のアファイン類似である等質ヘッセ領域について研究を進めた。とくに、全ての等質ヘッセ領域が、特定のブロック分解をもつ実対称行列の集合として実現できることを証明し、その実現を用いて群作用や不変ヘッセ計量を明示的に構成した。これは情報幾何のような応用数学においても意義をもつ。本研究のコアとなる内容について大きな進展をみている。また具体的な成果がまだ得られていない問題についても、その研究を通じて新たな結果、問題の知見を得ることが出来ており、研究全体としておおむね順調に進展していると言える。本研究では、リー理論を用いた複素解析幾何の研究を中心につぎのような研究成果を得た。1.可解な自己同型群をもつチューブ領域に関する正則同値問題について研究を進めた。具体的には、Dを複素n次元数空間内の多項式無限小自己同型のみをもつチューブ領域とし、その底は直線を含まない凸領域であるとする。そしてDの正則自己同型群Gは可解である仮定する。このとき、Gのリー環の、実平行移動の群に対応する部分環の共役性について、新たな知見を得た。2.金沢大学名誉教授の児玉秋雄氏と共同で、フォック・バーグマン・ハルトーグス領域に関する、内容的には独立した2つの定理を得た。一方を定理
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KAKENHI-PROJECT-15K04913
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K04913
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プロトン伝導性ポリイミド膜の開発と応用
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スルホン酸基がポリイミド主鎖の芳香環に直接結合した芳香族スルホン酸ジアミンおよび、プロピルオキシ基を介して側鎖に結合したものを合成し、NTDAと各種ジアミンとの溶液縮重合・イミド化によりスルホン化ポリイミドS-PIを合成した。スルホン酸基がポリイミド主鎖直結型では、アミン塩基性が強い芳香族スルホン酸ジアミンからのポリイミドほど、そして、エーテル基などフレキシブルなユニットを含むジアミンからのポリイミドほど高温耐水性に優れる。たとえば、80°C水に1000h以上浸漬しても膜強度を保持した。側鎖結合型では,さらに高い耐水性を示した。例えば、80°C水に4000h以上浸漬しても膜強度を保持した。このポリイミドは、疎水性のポリイミド主鎖骨格部と親水性のプロピルオキシスルホン酸基部とがミクロ相分離構造して、スルホン酸基がリッチなチャンネル構造を有するらしい。イオン交換容量(IEC)が大きいほど水収着量は大きく、側鎖結合型のS-PI膜は、膜面積方向の寸法安定性に優れる。ナフィオン膜に比べて、S-PI膜の水収着量は多いが、スルホン酸基1ヶ当たりの収着水分子数λH_2O/SO_3Hは、ナフィオンと同程度であり、側鎖型S-PIの方が、低湿度域でのλが小さい。S-PI膜のプロトン伝導度は、主にイオン交換容量(IEC)に依存し、IECの大きい膜ほど大きいが、1次構造にも依存した。側鎖型のS-PIは、低湿度でもナフィオン117とほぼ同じ伝導度を示したが、主鎖直結型のS-PI膜の伝導度は湿度100%を除いてナフィオンより小さい。これらの側鎖型のS-PIが、主鎖直結型のS-PIに比べて、低湿度で、低い水蒸気収着量にもかかわらず、高いプロトン伝導性を示したのは、スルホン酸基部がチャンネル類似構造を取っているためかもしれない。また、他のスルホン酸化芳香族系炭化水素膜に比べると、S-PIの伝導度はかなり大きい。S-PI膜を触媒坦時炭素電極と熱プレスして、電極-膜接合体を作製し、その燃料電池単セルの電池特性をしらべた。S-PI膜を用いた燃料電池は、比較的高い電池特性を示した。スルホン酸基がポリイミド主鎖の芳香環に直接結合した芳香族スルホン酸ジアミンおよび、プロピルオキシ基を介して側鎖に結合したものを合成し、NTDAと各種ジアミンとの溶液縮重合・イミド化によりスルホン化ポリイミドS-PIを合成した。スルホン酸基がポリイミド主鎖直結型では、アミン塩基性が強い芳香族スルホン酸ジアミンからのポリイミドほど、そして、エーテル基などフレキシブルなユニットを含むジアミンからのポリイミドほど高温耐水性に優れる。たとえば、80°C水に1000h以上浸漬しても膜強度を保持した。側鎖結合型では,さらに高い耐水性を示した。例えば、80°C水に4000h以上浸漬しても膜強度を保持した。このポリイミドは、疎水性のポリイミド主鎖骨格部と親水性のプロピルオキシスルホン酸基部とがミクロ相分離構造して、スルホン酸基がリッチなチャンネル構造を有するらしい。イオン交換容量(IEC)が大きいほど水収着量は大きく、側鎖結合型のS-PI膜は、膜面積方向の寸法安定性に優れる。ナフィオン膜に比べて、S-PI膜の水収着量は多いが、スルホン酸基1ヶ当たりの収着水分子数λH_2O/SO_3Hは、ナフィオンと同程度であり、側鎖型S-PIの方が、低湿度域でのλが小さい。S-PI膜のプロトン伝導度は、主にイオン交換容量(IEC)に依存し、IECの大きい膜ほど大きいが、1次構造にも依存した。側鎖型のS-PIは、低湿度でもナフィオン117とほぼ同じ伝導度を示したが、主鎖直結型のS-PI膜の伝導度は湿度100%を除いてナフィオンより小さい。これらの側鎖型のS-PIが、主鎖直結型のS-PIに比べて、低湿度で、低い水蒸気収着量にもかかわらず、高いプロトン伝導性を示したのは、スルホン酸基部がチャンネル類似構造を取っているためかもしれない。また、他のスルホン酸化芳香族系炭化水素膜に比べると、S-PIの伝導度はかなり大きい。S-PI膜を触媒坦時炭素電極と熱プレスして、電極-膜接合体を作製し、その燃料電池単セルの電池特性をしらべた。S-PI膜を用いた燃料電池は、比較的高い電池特性を示した。
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KAKENHI-PROJECT-14655294
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14655294
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サブメソスケールで起こる黒潮続流域の栄養塩供給メカニズムの解明と定量
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本研究課題における現場観測は、2009年秋期に東京海洋大学、マサチューセッツ大学、ウッズホール海洋研究所、マサチューセッツ工科大学と共同で実施した。観測の結果、黒潮フロントは、暖水側の混合層域と黒潮本流直下の躍層付近で、乱流混合が比較的強いことが明らかとなり、黒潮フロント域が混合層から躍層以深まで、乱流混合・散逸が卓越して発生する海域であることを示す。また、本観測結果を初期条件とした高解像度モデルを用いた黒潮フロントの数値実験を実施した結果、黒潮フロントが強い内部波が励起している可能性が明らかとなった。また、本観測で取得した栄養塩の観測の結果、高栄養塩の舌状構造が表層からサブダクションしている様子を示した。この結果は、高栄養塩水である親潮水がサブダクションによって黒潮フロント域へ供給される可能性を示唆するもので、非常に興味深い。本研究課題における現場観測は、2009年秋期に東京海洋大学、マサチューセッツ大学、ウッズホール海洋研究所、マサチューセッツ工科大学と共同で実施した。観測の結果、黒潮フロントは、暖水側の混合層域と黒潮本流直下の躍層付近で、乱流混合が比較的強いことが明らかとなり、黒潮フロント域が混合層から躍層以深まで、乱流混合・散逸が卓越して発生する海域であることを示す。また、本観測結果を初期条件とした高解像度モデルを用いた黒潮フロントの数値実験を実施した結果、黒潮フロントが強い内部波が励起している可能性が明らかとなった。また、本観測で取得した栄養塩の観測の結果、高栄養塩の舌状構造が表層からサブダクションしている様子を示した。この結果は、高栄養塩水である親潮水がサブダクションによって黒潮フロント域へ供給される可能性を示唆するもので、非常に興味深い。本年度は、昨年度から実施している既存の現場観測データの整理と、毎年行っている黒潮続流横断観測を実施した。データ整理の結果は今後論文その他にまとめて、国内外の雑誌に投稿予定である。黒潮続流観測の結果、黒潮流軸付近の水温躍層内部で比較的強い乱流混合を観測することに成功した。従来、フロントジェット流軸付近のシア流が直接乱流に結びつくことはないと考えられていた為、本観測によって観測された流軸付近の乱流混合は、メソスケールから直接エネルギーを熱に散逸する過程がフロント強化時に存在することを立証する有力な証拠となり得る。本研究結果は、Geophysical Research Letterに投稿中である。また、France Niceで開催されたASLO Aquatic SciencesMeetingにて口頭発表を行った他、日本海洋学会春季大会においても口頭発表を行った。さらに、上記の現場観測主体の研究に加えて、黒潮流域の数値シミュレーションを試みている。本シミュレーションによって水平8kmの解像度で再現しうる渦場や、平均的な黒潮の流路などは良く再現された。今後は本シミュレーションをサブメソスケールの現象解像を目指してさらに高解像度化し、黒潮流域現場観測データのより理論的な解析に用いることができると考える。このシミュレーション結果と観測結果を合わせてUK-FoSシンポジウムにてポスター発表を行った。本研究は、サブメソスケールで起こる栄養塩湧昇のメカニズムの解明を目標とし、2年目である平成21年度においては、数値実験や現場観測を行った。平成21年度においては、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究船共同利用に採択され、同機構の「なつしま」を用いた大規模な黒潮フロントにおける現場観測を行った。観測は、平成21年10月17日から24日まで行い、主催した東京海洋大学をはじめ、University of Massachusetts Dartmouth、Woods Hole海洋研究所、マサチューセッツ工科大学の研究者らが多数参加した。観測では、黒潮フロント域における乱流構造と密度構造(水温、塩分)等の海洋物理構造をはじめ、植物プランクトンや動物プランクトンの種組成を調べるためにVisual Plankton Recorderを用いた。また、持ち込んだ採水器でフロント域の栄養塩分布の特徴の調査を試みた。フロント域における乱流混合は、性質の異なる水塊の境界であるフロントでの様々な物質輸送に非常に重要である。まず、乱流拡散によって等密度面を横切る拡散による輸送が生じる。また、フロントでの乱流は拡散のみならず、"摩擦"が引き起こすセカンダリ-循環を介して輸送を生じる。本観測で行った現場観測では、黒潮フロントの最もフロントが強化されている断面で、低塩分水が表層から水深300mまで舌状分布しサブダクションしている様子を捉える事に成功した。この時に同時に測定した乱流運動エネルギー散逸率は低塩分水の舌状構造内部で平均的に10^<-8>W/kg程度を示しており、低塩分水が混ざりながらサブダクションしていることを示唆する。研究代表者は、この結果をOcean Sciences Meeting 2010 Portlandにて口頭発表した。今後は、本観測で得た乱流データがフロント構造とどのように関わっており、上記した二つのメカニズム(拡散とセカンダリーフロー)を経てフロントにおける物質輸送に如何に寄与するのかを調査する。さらに、平成21年度優秀若手海外派遣事業に採択され平成21年3月31日からUniversity of Massachusetts Dartmouthに訪問研究者として1年間在籍しており、本分野で先駆的な研究を行っているProf.Amit Tandonと共同でデータを解析する予定である。本研究では、2009年秋期にJAMSTECの調査船「なつしま」を用いて、東京海洋大学、マサチューセッツ大学、ウッズホール海洋研究所、マサチューセッツ工科大学と共同で実施した。
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KAKENHI-PROJECT-20710002
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20710002
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サブメソスケールで起こる黒潮続流域の栄養塩供給メカニズムの解明と定量
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観測の結果、黒潮フロントは、暖水側の混合層域と黒潮本流直下の躍層付近で、相対渦度の寄与から低渦位となっており、この低渦位水塊周辺で乱流混合が強いことが明らかとなった。この結果は、Symmetric Instabilityによるフロント周辺域の乱流混合強化を間接的に報告したD'Asaro et al.(2011年3月Science Magazine受理)の結果を支持するものである。しかしながら本研究結果は乱流をより直接的に測定して得た結果であるので、非常に重要な意味を持つと考える。また、黒潮本流直下が低渦位であり、乱流が強いことを示した結果は、これまで報告されていない為、黒潮フロント域が混合層から躍層以深まで、乱流混合・散逸が卓越して発生する海域であることを示す興味深い結果である。この結果は、Journal of Geophysical Researchに投稿中である。また、本観測結果を初期条件とした高解像度非静水圧モデルを用いた黒潮フロントの数値実験を実施した結果、黒潮フロントが数kW/m程度のエネルギー流量を持つ内部波を励起している可能性が明らかとなった。この結果は観測した非地衡流シアの様子を現実的に再現するもので、黒潮フロント域の非地衡流シアの構造が内部波によってつくられていることが示唆された。本結果は、Science Magazineに投稿を予定している。また、MITのClayton氏らは、本観測で得た海水を分析した結果、高栄養塩水が表層から混合層フロント南部の混合層下部ヘサブダクションしている様子を示した。この結果は、高栄養塩水である親潮水がサブダクションによって黒潮フロント域へ供給される可能性を示し興味深い。
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KAKENHI-PROJECT-20710002
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樹木集団としての森林の風雪害抵抗力(樹冠の接触摩擦による相互支持効果の解析)
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2本の固定立木樹冠の間を、1本の移動木樹冠が接触し、かつ通過するときに生ずる力学的現象を、主要な影響因子と関連づけて解析・検討した。またその結果に基づいて、接触・通過時に発生する最大抵抗力と通過に要する仕事を求めるための基本式を導いた。立木梢端部を用いたモデル実験および理論的考察から、接触・通過現象は樹冠を構成する枝の形状、材質、伸長方向、小枝や葉の状態、そして立木密度など多くの物理的因子に関係することがわかった。これらの因子はさまざまな仕方で影響するが、抵抗力や通過仕事に関しては基本的にはすべて樹冠を構成する枝のたわみを通じて影響が及ぶことが判明した。そこで枝のたわみの抵抗力基礎として最大抵抗力F_mを求める式を導いた。ここでηは枝と枝が接触するときの接触効率、μは接触摩擦係数、そしてf_<bm>は接触区間における枝のたわみ抵抗力の合計の最大値である。通過仕事W_tも以下のように同じ形式の式で表せる。ただしW_<bt>は樹冠接触に関わる全ての枝のたわみ仕事の合計である。計算に必要な項目のうちf_<bm>とW_<bt>については、枝の密度、形状、材質などから比較的容易に定めることができる。今後の課題は実験棟により、接触効率ηと接触摩擦係数μを適切に推定することである。2本の固定立木樹冠の間を、1本の移動木樹冠が接触し、かつ通過するときに生ずる力学的現象を、主要な影響因子と関連づけて解析・検討した。またその結果に基づいて、接触・通過時に発生する最大抵抗力と通過に要する仕事を求めるための基本式を導いた。立木梢端部を用いたモデル実験および理論的考察から、接触・通過現象は樹冠を構成する枝の形状、材質、伸長方向、小枝や葉の状態、そして立木密度など多くの物理的因子に関係することがわかった。これらの因子はさまざまな仕方で影響するが、抵抗力や通過仕事に関しては基本的にはすべて樹冠を構成する枝のたわみを通じて影響が及ぶことが判明した。そこで枝のたわみの抵抗力基礎として最大抵抗力F_mを求める式を導いた。ここでηは枝と枝が接触するときの接触効率、μは接触摩擦係数、そしてf_<bm>は接触区間における枝のたわみ抵抗力の合計の最大値である。通過仕事W_tも以下のように同じ形式の式で表せる。ただしW_<bt>は樹冠接触に関わる全ての枝のたわみ仕事の合計である。計算に必要な項目のうちf_<bm>とW_<bt>については、枝の密度、形状、材質などから比較的容易に定めることができる。今後の課題は実験棟により、接触効率ηと接触摩擦係数μを適切に推定することである。
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KAKENHI-PROJECT-08660183
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08660183
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中学校の技術科実習室における安全・衛生教育の実践に関する基礎的研究
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1授業環境の見直しと安全・衛生の指導(技術科教育)主に一年生のものづくりに関わる学習において,本校第一加工室の環境整備と実習に関わる安全・衛生の指導を行った。実習時間の効率化の為に,安全・衛生を指導して次のような電動工具の使用をするなどを目的とした。(1)ディスクサンダ(ベルトサンダ)板材のこぐち面の加工を,ディスクサンダを用い,集塵を処理するために電気掃除機を設置した。使用においては,防護眼鏡をかけさせるとともに,予想される事故を考えさせ,安全に使用する方法を指導した。また,希望者にはマスクをつけさせる指導も行った。結果,怪我や事故を発生させることなく作業を行うことができた。機器の消費電力と生徒数に対する機器数が問題としてあげられる。(2)卓上ボール盤くぎ打ちでの下穴開けに使用させた。使用においては,防護眼鏡をかけさせるとともに,予想される事故を考えさせ,安全に使用する方法を指導した。結果,怪我や事故を発生させることなく作業を行うことができた。(3)空気清浄機の導入二年生で電気実習のはんだ付け作業を行う際に,通行量が多い道路に面しているため窓が開けられない実習室である。また実習室に換気扇がないため空気が汚れる。そのため大型の空気清浄機を導入し,空気の浄化を図れるように対策をし,衛生的な環境で実習ができるようになった。(4)大学と共同研究による安全・衛生教育に関わる推進愛知教育大学教授・宮川秀俊先生の指導の下,大学生とともに加工室に,防護眼鏡・ヘッドセット・マスク・救急箱を整理するボードを設置した。生徒の安全・衛生に対する意識を高めることができた。2安全・衛生教育に関する資料集めインターネットで資料や書籍の確認を行ったが,該当するものが見られなかった。島根県出雲市立河南中学校長・中島康博先生より,工業高校や農業高校の教科書を基にして,安全や衛生に関する基礎的塗指導を考えることを教えていただいた。高校の教科書を準備し,上級学校での教育の視点から中学校での指導を見つめることができた。また,新学習指導要領におけるガイダンス的な内容としての活用もできるものと考える。1授業環境の見直しと安全・衛生の指導(技術科教育)主に一年生のものづくりに関わる学習において,本校第一加工室の環境整備と実習に関わる安全・衛生の指導を行った。実習時間の効率化の為に,安全・衛生を指導して次のような電動工具の使用をするなどを目的とした。(1)ディスクサンダ(ベルトサンダ)板材のこぐち面の加工を,ディスクサンダを用い,集塵を処理するために電気掃除機を設置した。使用においては,防護眼鏡をかけさせるとともに,予想される事故を考えさせ,安全に使用する方法を指導した。また,希望者にはマスクをつけさせる指導も行った。結果,怪我や事故を発生させることなく作業を行うことができた。機器の消費電力と生徒数に対する機器数が問題としてあげられる。(2)卓上ボール盤くぎ打ちでの下穴開けに使用させた。使用においては,防護眼鏡をかけさせるとともに,予想される事故を考えさせ,安全に使用する方法を指導した。結果,怪我や事故を発生させることなく作業を行うことができた。(3)空気清浄機の導入二年生で電気実習のはんだ付け作業を行う際に,通行量が多い道路に面しているため窓が開けられない実習室である。また実習室に換気扇がないため空気が汚れる。そのため大型の空気清浄機を導入し,空気の浄化を図れるように対策をし,衛生的な環境で実習ができるようになった。(4)大学と共同研究による安全・衛生教育に関わる推進愛知教育大学教授・宮川秀俊先生の指導の下,大学生とともに加工室に,防護眼鏡・ヘッドセット・マスク・救急箱を整理するボードを設置した。生徒の安全・衛生に対する意識を高めることができた。2安全・衛生教育に関する資料集めインターネットで資料や書籍の確認を行ったが,該当するものが見られなかった。島根県出雲市立河南中学校長・中島康博先生より,工業高校や農業高校の教科書を基にして,安全や衛生に関する基礎的塗指導を考えることを教えていただいた。高校の教科書を準備し,上級学校での教育の視点から中学校での指導を見つめることができた。また,新学習指導要領におけるガイダンス的な内容としての活用もできるものと考える。
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KAKENHI-PROJECT-22909006
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22909006
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高強度溶接金属再加熱域の靭性とその改善
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80kgf/mm2級の高張力鋼(HT80鋼)などにおいては、溶接熱影響部(HAZ)での靭性確保の観点から入熱制限がなされている。その場合、厚板の溶接では両面一層溶接又は多層溶接となることが多く、溶接金属部では後続パスにより再加熱される領域が形成され、溶接金属部の靭性確保のためには、その領域での靭性を検討する必要がある。一方、近年の構造物の大型化及び溶接の高能率化に伴い、大入熱溶接の適用がますます望まれている。本研究は、HT80鋼を対象とし、溶接金属部での靭性確保の一助とするため、組織と靭性との関連性について検討したものである。まず、溶接金属の靭性に及ばす溶接入熱量の影響について組織面から検討した。次いで、多層溶接時に形成される再加熱域の靭性を調査し、組織との関連性について検討した。さらに、再加熱域の靭性に対する溶接入熱量の影響についても検討し、靭性改善についての考察を行った。得られた知見を要約して以下に示す。1)溶接金属においても、母板のHAZと同様に、大入熱溶接時には靭性劣化が生じるが、その劣化量は母板のHAZに比べると小さいものであった。2)このような溶接入熱量の増加による靭性劣化には、島状マルテンサイト組織の生成及び、組織の粗大化が影響すると考えられた。3)多層溶接時に形成される再加熱域の靭性は、溶接入熱量によらず、最高加熱温度が750°C950°Cの領域で溶接のままより劣化した。また、溶接入熱量の増加に伴い、その劣化量も大きくなる傾向にあった。4)これら再加熱域での最高加熱温度750°C950°Cの領域での靭性劣化にも、島状マルテンサイト組織の生成及び組織の大きさが影響すると考えられた。5)溶接金属及び再加熱域の靭性改善に、島状マルテンサイト組織の生成量の低減が有効であることを考察した。80kgf/mm2級の高張力鋼(HT80鋼)などにおいては、溶接熱影響部(HAZ)での靭性確保の観点から入熱制限がなされている。その場合、厚板の溶接では両面一層溶接又は多層溶接となることが多く、溶接金属部では後続パスにより再加熱される領域が形成され、溶接金属部の靭性確保のためには、その領域での靭性を検討する必要がある。一方、近年の構造物の大型化及び溶接の高能率化に伴い、大入熱溶接の適用がますます望まれている。本研究は、HT80鋼を対象とし、溶接金属部での靭性確保の一助とするため、組織と靭性との関連性について検討したものである。まず、溶接金属の靭性に及ばす溶接入熱量の影響について組織面から検討した。次いで、多層溶接時に形成される再加熱域の靭性を調査し、組織との関連性について検討した。さらに、再加熱域の靭性に対する溶接入熱量の影響についても検討し、靭性改善についての考察を行った。得られた知見を要約して以下に示す。1)溶接金属においても、母板のHAZと同様に、大入熱溶接時には靭性劣化が生じるが、その劣化量は母板のHAZに比べると小さいものであった。2)このような溶接入熱量の増加による靭性劣化には、島状マルテンサイト組織の生成及び、組織の粗大化が影響すると考えられた。3)多層溶接時に形成される再加熱域の靭性は、溶接入熱量によらず、最高加熱温度が750°C950°Cの領域で溶接のままより劣化した。また、溶接入熱量の増加に伴い、その劣化量も大きくなる傾向にあった。4)これら再加熱域での最高加熱温度750°C950°Cの領域での靭性劣化にも、島状マルテンサイト組織の生成及び組織の大きさが影響すると考えられた。5)溶接金属及び再加熱域の靭性改善に、島状マルテンサイト組織の生成量の低減が有効であることを考察した。
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KAKENHI-PROJECT-60550524
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60550524
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X線分光による酸素の異方的電子状態が誘起する酸化物薄膜の新規強誘電性の解明
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通常のバルク体では強誘電性を示さないチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)や酸化ハフニウム(HfO2)をナノスケール薄膜にすると強誘電性が出現する。なぜ強誘電性が現れるのか?ナノ薄膜のX線解析は格子長を測定するのが限界で、リートベルト法による精密な原子位置決定ができないため、自発分極(陽・陰イオンの重心のずれ)の発現機構はわかっていない。本研究では、薄膜に対する感度を高め同時にエネルギー分解能を向上させた蛍光X線検出X線分光法(高分解能XAS法)を用いることで、薄膜固有の格子歪みを元素選択的に調べ、酸化物薄膜に現れる新規強誘電性の発現機構の解明を目指す。高分解能XAS法の高感度な元素選択性を利用することで、陽イオンだけでなく、対をなす「陰イオン(酸素イオン)の配位環境の歪み」を電子状態の異方性を介して明らかにすることが可能になり、定量的あるいは定性的に誘電率や自発分極の増大が理解できるようになる。研究初年度は、チタン酸ストロンチウム薄膜に対して偏光X線を用いたチタンK吸収分光測定を行うとともに、酸化ハフニウム薄膜のハフニウムL3吸収端共鳴発光スペクトル測定を行った。薄膜のため信号強度が弱いものの、特徴的な吸収ピークに異方性を反映していると期待される変化がみられている。研究計画2年目上半期に、統計精度を向上させた測定を行い、まずはチタンやハフニウムといった遷移金属の側から異方的電子状態を明らかにしていく。研究対象物質について、ひとまずのスペクトルデータ測定はできている。この結果を踏まえて、次年度以降の準備(共同利用研究所の課題申請や研究協力者との相談)を進めた。研究初年度に測定したスペクトルで、異方性があると予測されるエネルギー領域を統計精度を上げて測定する。また、酸素K吸収端スペクトルの測定も行う。特に、理論計算による電子状態の予測の助けも借りて、異方性が期待されるべきスペクトル構造を中心に測定を進める。通常のバルク体では強誘電性を示さないチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)や酸化ハフニウム(HfO2)をナノスケール薄膜にすると強誘電性が出現する。なぜ強誘電性が現れるのか?ナノ薄膜のX線解析は格子長を測定するのが限界で、リートベルト法による精密な原子位置決定ができないため、自発分極(陽・陰イオンの重心のずれ)の発現機構はわかっていない。本研究では、薄膜に対する感度を高め同時にエネルギー分解能を向上させた蛍光X線検出X線分光法(高分解能XAS法)を用いることで、薄膜固有の格子歪みを元素選択的に調べ、酸化物薄膜に現れる新規強誘電性の発現機構の解明を目指す。高分解能XAS法の高感度な元素選択性を利用することで、陽イオンだけでなく、対をなす「陰イオン(酸素イオン)の配位環境の歪み」を電子状態の異方性を介して明らかにすることが可能になり、定量的あるいは定性的に誘電率や自発分極の増大が理解できるようになる。研究初年度は、チタン酸ストロンチウム薄膜に対して偏光X線を用いたチタンK吸収分光測定を行うとともに、酸化ハフニウム薄膜のハフニウムL3吸収端共鳴発光スペクトル測定を行った。薄膜のため信号強度が弱いものの、特徴的な吸収ピークに異方性を反映していると期待される変化がみられている。研究計画2年目上半期に、統計精度を向上させた測定を行い、まずはチタンやハフニウムといった遷移金属の側から異方的電子状態を明らかにしていく。研究対象物質について、ひとまずのスペクトルデータ測定はできている。この結果を踏まえて、次年度以降の準備(共同利用研究所の課題申請や研究協力者との相談)を進めた。研究初年度に測定したスペクトルで、異方性があると予測されるエネルギー領域を統計精度を上げて測定する。また、酸素K吸収端スペクトルの測定も行う。特に、理論計算による電子状態の予測の助けも借りて、異方性が期待されるべきスペクトル構造を中心に測定を進める。
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KAKENHI-PROJECT-18H01153
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H01153
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エネルギ回生型準能動的制振の衛星構造への適用
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エネルギ回生型準能動的制振を実際の衛星に適用する第一歩として、実際のハレー彗星探査機「すいせい」の構造モデルを供試体として用いた制振実験を行って本手法の制振効果について確認を行った。まず、供試体の有限要素モデルを作成し、モード解析を行った。制御対象となる振動モードを決定し、加振実験で、制御モードの確認を行った。モード形状の情報に基づいて供試体上の貼付位置を設定した81枚の圧電素子を用いたエネルギ回生型準能動的制振システムを構築し、小型加振機や大型加振機で供試体を励振して、制振実験を行った。その結果を以下に示す。1.本手法が、現実に入手可能な圧電素子や電子デバイスを用いた回路や制御ロジックで構築され、それが衛星構体を模した供試体の制振に有効に機能することを確認した。2.従来のエネルギ散逸型準能動的制振手法に比べて、本手法の制振性能が高いことを確認した。3.本手法が、比較的有効質量の大きなグローバルモードと局所的に振動するローカルモードの両方に有効であることを確認した。特に、実験において、ローカルモードに対して高い制振効果が得られた。4.本手法が、正弦波振動だけでなく、実際の振動環境に近いランダム振動に対しても有効に機能することを確認した。また、その制御効率についての考察を行った。5.多数の圧電素子のつなぎ方について検討し、解析的には、直列度の高いつなぎ方がより高い制振性能が得られることを証明し、実験においても、ある程度の直列度までは解析に符合した結果を得た。6.完全無電力エネルギ回生型準能動的制振に関する実験を行い、作成した回路が正しく機能することを確認した。このように、本研究は、エネルギ回生型準能動的制振手法の実衛星への適用の実用化に向けて、有用な成果をあげることができた。これは、航空宇宙工学のみならず様々な分野で遭遇する振動問題の解決に寄与することが見込まれる。エネルギ回生型準能動的制振を実際の衛星に適用する第一歩として、実際のハレー彗星探査機「すいせい」の構造モデルを供試体として用いた制振実験を行って本手法の制振効果について確認を行った。まず、供試体の有限要素モデルを作成し、モード解析を行った。制御対象となる振動モードを決定し、加振実験で、制御モードの確認を行った。モード形状の情報に基づいて供試体上の貼付位置を設定した81枚の圧電素子を用いたエネルギ回生型準能動的制振システムを構築し、小型加振機や大型加振機で供試体を励振して、制振実験を行った。その結果を以下に示す。1.本手法が、現実に入手可能な圧電素子や電子デバイスを用いた回路や制御ロジックで構築され、それが衛星構体を模した供試体の制振に有効に機能することを確認した。2.従来のエネルギ散逸型準能動的制振手法に比べて、本手法の制振性能が高いことを確認した。3.本手法が、比較的有効質量の大きなグローバルモードと局所的に振動するローカルモードの両方に有効であることを確認した。特に、実験において、ローカルモードに対して高い制振効果が得られた。4.本手法が、正弦波振動だけでなく、実際の振動環境に近いランダム振動に対しても有効に機能することを確認した。また、その制御効率についての考察を行った。5.多数の圧電素子のつなぎ方について検討し、解析的には、直列度の高いつなぎ方がより高い制振性能が得られることを証明し、実験においても、ある程度の直列度までは解析に符合した結果を得た。6.完全無電力エネルギ回生型準能動的制振に関する実験を行い、作成した回路が正しく機能することを確認した。このように、本研究は、エネルギ回生型準能動的制振手法の実衛星への適用の実用化に向けて、有用な成果をあげることができた。これは、航空宇宙工学のみならず様々な分野で遭遇する振動問題の解決に寄与することが見込まれる。・約20年前に製作され、廃棄されようとする150kgクラスの衛星(惑星間探査機)の主構体試作品を整備・点検し、大きな破損のないことを確認した。・また、当時の記録から、本探査機の搭載機器を模したダミー機器19個を製作した。これらは重量や重心位置を概略再現するのみではあるが、主構体とのインターフェイスは必要な精密で再現した。・探査機主構体試作品に、これらの製作したダミー搭載機器を搭載し、探査機を力学的に模擬した供試体を作製した。・更に供試体を振動試験機に装着する為のアダプタをも製作し振動試験の準備を整えた。・低レベルでの予備的な振動試験により、探査機の主たる共振の概略を把握し、制振の対象とする振動モードを仮設定した。・圧電セラミックス板を購入し、その特性を実測した後、探査機構体の仮設定した対象振動モードの制振に効果的と考えられる位置に接着し、低レベル加振下でそれらの出力を確認するとともに、エネルギ回生型準能動的制振の予備実験を実施した。現状はエネルギ回生型準能動的制振のロジックが機能する事を確認した段階であり、制振性能の定量的な吟味を行う一歩手前である。
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KAKENHI-PROJECT-18360412
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18360412
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エネルギ回生型準能動的制振の衛星構造への適用
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・以上のように、本年度は、惑星間探査機を力学的に模擬した供試体を整備、作成すると共に、制振用の圧電素子の装着をし、予備的な振動試験や制御ロジックの作動を含む諸確認を実施した。これらにより、来年度の本格的な試験を含む研究に向けてほぼ準備を整えることが出来た。・昨年度整備した実験用供試体とそれに貼り付けた100枚の圧電素子と電子回路を含む制御系、及び、計測系からなる実験系を用いて、2つのコンフィギュレーションでエネルギ回生型準能動的制振実験を行った。・最初に、衛星の上部をクレーンから吊した小型加振機で加振するコンフィギュレーションで実験を行った。まず、正弦波掃引によって供試体の応答特性を取得すると共に、各圧電素子からの出力電圧の振幅および位相差を測定し、貼り付けた圧電素子が効率的に機能する振動モードの同定を行った。・次に、正弦波掃引、及び、制御対象振動モードの固有振動数での正弦波加振の条件下で、エネルギ回生型準能動的制振実験を行い、制御ロジックが正しく機能することを検証するとともに、制御対象としたモードにおいて、ある程度の制振効果があることも確認した。・並行して、供試体の有限要素モデルを作成し、振動モード解析を行い、上記の実験で制御対象としたモードを解析的に同定すると共に、貼り付けた圧電素子がそのモードに有効に働くことをモード形状から確認した。・2つ目のコンフィギュレーションとして、衛星全体を大型加振機に取り付けて加振する方法で制振実験を行った。正弦波掃引、及び、制御対象モードの固有振動数での正弦波加振の条件の下で、制御実験を行い、ある程度の効果があることを確認すると共に、「制御なし」、「従来の準能動的制御方法」と比較して、制振効果が高いことも確認した。また、圧電素子の直列度が多くなりすぎると逆に効果が低下し始めるという結果を得たため、その原因の検討を行った。・実際の打上時の振動環境に近いランダム加振を行い、制御ロジックが機能すること確認した。・上記の実験において、完全無電力化された回路による実験を行い、本回路が正しく機能することと、ある程度の制振効果があることを確認した。
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KAKENHI-PROJECT-18360412
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18360412
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新規リン糖及びリン糖誘導体の合成と生理活性
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1.リン酸ヌクレオシドの合成研究:リン糖モノマーをヌクレオシドやグリコシドに導くためのC-1のOH基活性化検討の目的で、入手しやすいモデル化合物としてD-マニトール及びL-リンゴ酸からそれぞれ(2R)-2,3-O-イソプロピリデン-1-ホスフィニルグリセロール及び(3S)-3,4-O-イソプロピリデン-1-ホスフィニルテトリトールを合成した。これらの1-OHをメシレートあるいはトリフレートによって活性化し、アルキルアミノ基やアジド基に変換できた。さらに収率はまだ低いがアデニルも導入できることが判明した。現在D-リボフラノスース型及び2-デオキシ-D-リボフラノース型リン糖のC-1活性モノマー調製を行っており、ついで基本的な塩基との縮合反応によりリン糖ヌクレオシドの合成を行なう。2.リン糖グリコシドの合成研究:D-キシロピラノースおよびD-グルコピラノースのC-1活性モノマー(O-メシレート、トリフレート、ブロモ誘導体)の調製を検討したが、26-OHの最適な保護基の選択的導入、脱離の問題が、まだ完全に解決していない。この点がクリアーできれば、グリコシル化は容易と考えられ、鋭意検討中である。3.新規リン糖モノマー合成研究:コハク酸より導かれる1,4-ジブロモ-2,3-ジメトキシブタンをフェニルホスホニルジクロリド存在下グリニアール反応を利用して、効率的な環化を行い、次いで環リン原子のα位をカルバニオンにして、種々の置換基を導入することにより、新規経路によるリン糖合成を行っている。また、D-グルコースを出発原料として、6-アミノ-D-グルコース型リン糖合成に成功した。D-フルクトース型、L-フコース及びフコサミン型リン糖モノマーも合成された。現在、2-N-アセチルグルコサミン型リン糖が完成しつつある。4.上記合成の中間体及び生成物の生物活性については順次テストしている。1.リン酸ヌクレオシドの合成研究:リン糖モノマーをヌクレオシドやグリコシドに導くためのC-1のOH基活性化検討の目的で、入手しやすいモデル化合物としてD-マニトール及びL-リンゴ酸からそれぞれ(2R)-2,3-O-イソプロピリデン-1-ホスフィニルグリセロール及び(3S)-3,4-O-イソプロピリデン-1-ホスフィニルテトリトールを合成した。これらの1-OHをメシレートあるいはトリフレートによって活性化し、アルキルアミノ基やアジド基に変換できた。さらに収率はまだ低いがアデニルも導入できることが判明した。現在D-リボフラノスース型及び2-デオキシ-D-リボフラノース型リン糖のC-1活性モノマー調製を行っており、ついで基本的な塩基との縮合反応によりリン糖ヌクレオシドの合成を行なう。2.リン糖グリコシドの合成研究:D-キシロピラノースおよびD-グルコピラノースのC-1活性モノマー(O-メシレート、トリフレート、ブロモ誘導体)の調製を検討したが、26-OHの最適な保護基の選択的導入、脱離の問題が、まだ完全に解決していない。この点がクリアーできれば、グリコシル化は容易と考えられ、鋭意検討中である。3.新規リン糖モノマー合成研究:コハク酸より導かれる1,4-ジブロモ-2,3-ジメトキシブタンをフェニルホスホニルジクロリド存在下グリニアール反応を利用して、効率的な環化を行い、次いで環リン原子のα位をカルバニオンにして、種々の置換基を導入することにより、新規経路によるリン糖合成を行っている。また、D-グルコースを出発原料として、6-アミノ-D-グルコース型リン糖合成に成功した。D-フルクトース型、L-フコース及びフコサミン型リン糖モノマーも合成された。現在、2-N-アセチルグルコサミン型リン糖が完成しつつある。4.上記合成の中間体及び生成物の生物活性については順次テストしている。
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KAKENHI-PROJECT-05640609
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05640609
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希金属資源評価に関する基礎的研究
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資源量を評価するにあたって、埋蔵量、生産量、需要、用途、価格、代替品、備蓄、地質などが基礎的事項となっている。しかしこれらの諸量は、物理的量や化学的組織のような絶対的な基準はなく、相対的なもので、社会情勢、経済状況の変化によって大きな影響を受けている。このため資源需給予測はつねにあいまいな要素を多く含んでいる。このあいまいさを軽減し信憑性の高いものにするためには鉱物資源の現状を的確に把握し、評価を下すことが必要である。上記のような考えにもとづき、本研究ではまず希金属資源についての現状を文献により調査した。初年度の昭和62年度は主に硫化鉱物として産する希金属を、昭和63年度は主に酸化物として産する希金属を、さらに平成元年度は硫化物、酸化物以外の鉱物で産する希金属に分けて調査をすすめ、合計35の鉱物種についてまとめた。この調査過程で、希金属資源は、基本的に2つの異なるグル-プ、すなわち、独自の探鉱開発、製錬の行われている金属とベ-スメタルの製錬の中間精製物を出発物質としてバイプロダクトされているものに分けて考えることが重要で、とくに希金属資源量の把握、安定供給を論ずるときにはこの違いは大きく、もっとも基本的な事項となっていることが明らかとなった。たとえばビスマスは鉛や銅製錬の、カドミウムは亜鉛の、さらにタリウムはカドミウムのバイプロダクトとして回収されており、これらの希金属の供給を考える場合、十分な量の製錬中間精製物をベ-スメタルが提供できるかどうかが問題であり、枯渇の問題はベ-スメタルの問題に置き換えて考える方が現実的な面を多くもっている。このような事情から、ベ-スメタルのアルミニウム、鉄、銅、鉛、亜鉛、錫の現状についても調査しあわせて記載した。資源量を評価するにあたって、埋蔵量、生産量、需要、用途、価格、代替品、備蓄、地質などが基礎的事項となっている。しかしこれらの諸量は、物理的量や化学的組織のような絶対的な基準はなく、相対的なもので、社会情勢、経済状況の変化によって大きな影響を受けている。このため資源需給予測はつねにあいまいな要素を多く含んでいる。このあいまいさを軽減し信憑性の高いものにするためには鉱物資源の現状を的確に把握し、評価を下すことが必要である。上記のような考えにもとづき、本研究ではまず希金属資源についての現状を文献により調査した。初年度の昭和62年度は主に硫化鉱物として産する希金属を、昭和63年度は主に酸化物として産する希金属を、さらに平成元年度は硫化物、酸化物以外の鉱物で産する希金属に分けて調査をすすめ、合計35の鉱物種についてまとめた。この調査過程で、希金属資源は、基本的に2つの異なるグル-プ、すなわち、独自の探鉱開発、製錬の行われている金属とベ-スメタルの製錬の中間精製物を出発物質としてバイプロダクトされているものに分けて考えることが重要で、とくに希金属資源量の把握、安定供給を論ずるときにはこの違いは大きく、もっとも基本的な事項となっていることが明らかとなった。たとえばビスマスは鉛や銅製錬の、カドミウムは亜鉛の、さらにタリウムはカドミウムのバイプロダクトとして回収されており、これらの希金属の供給を考える場合、十分な量の製錬中間精製物をベ-スメタルが提供できるかどうかが問題であり、枯渇の問題はベ-スメタルの問題に置き換えて考える方が現実的な面を多くもっている。このような事情から、ベ-スメタルのアルミニウム、鉄、銅、鉛、亜鉛、錫の現状についても調査しあわせて記載した。本年度は,硫化物鉱床から産出する希金属資源について地球資源的立場から考察した.まずこれら希金属資源量の評価に関するもっとも特筆すべき事柄は主目的金属として採掘されているのではなく, Cu, Pb, Znなどのベースメタルの製錬時の副産物として回収されている点である.個々の元素についてみると, GeがZn, Cu, Pbの, BiがPb, Cuの, In, CdがZnの, TlはさらにCdの, As, Seは硫化鉱物全般の, TeはCuの, ReはMoの副産物が主体となっている.またAgは75%, Auにおいては510%が硫化物鉱床からの副産物として回収されているものである.次に,これら個々の希金属についてアメリカ鉱山局の資料をもとにして,西暦2000年までは成長率を考慮し,以後は成長率を考慮せずに耐用年数を計算してみた.その結果は耐用年数が西暦2000年までの元素にGeが,西暦2025年までにはBi, Ag, In, Cd, As, Au, Tl, Sbが,西暦2050までではSeが存在した.しかしながら,このようにして求められる耐用年数はFe, Al, Cu, Znなどの大量生産金属の耐用年数とは基本的に異なっている.すなわち,これらの希金属の耐用年数は大量生産金属の製錬中間精製物がすべて保存され,利用された時の数字であり,現在の世界の製錬業の状勢とは一致しない.むしろ,これらの希金属の耐用年数はベースメタルのCu(2022年), Zn(2018年), Pb(2010年)と同等とみなす方が現実的である.以上のことから,希金属資源量の評価は副産物として産出する金属と主目的金属として産出するものとでは基本的に異なり,副産物として産出する希金属については,主目的金属の耐用年数に置き換えて考えるべきであるとの結論が得られつつある.本年度も希金属資源の基礎的な統計資料の収集と資料整理に重点を置き研究をすすめた。
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KAKENHI-PROJECT-62550463
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62550463
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希金属資源評価に関する基礎的研究
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資料の収集は本年度は酸化物鉱床に関するものが主体であった。これまでに収集された統計資料は41元素に達し、その内容には埋蔵量、生産量、価格、リサイクル、代替品、備蓄、公害、わが国の状況、地質などの項目を含んでいる。これらの資料収集作業を通じて、天然資源の消費量は時代とともに増加を続け、とくに1960年以降の消費量は巨大で、用途も複雑多岐にわたり錯綜していること、この大量消費と用途の多様化は資源情報の氾濫をもたらし、さらに二次資源の有効利用の問題も加わり、きわめて複雑な状況にあることが痛感された。そこで膨大になった資料をそれぞれの項目に従い、最近5ヶ年間のデータ、それ以前については5年毎のデータを抽出し、鉱物資源データベースの構築を試みた。ソフトにはLotus1-2-3を使用した。同じ項目に二つ以上のデータが存在する時はより信頼性の高いと思われるものを選んだ。昨年報告したように希金属資源の多くはベースメタルの副産物として産出するので、その評価にはまずベースメタルを評価しなければならない。そこで、新しく構築されたデータベースをもとにベースメタルの静態的耐用年を検討したが、いずれのベースメタルの静態的耐用年数も1955年以降減少はみられずほぼ同等かあるいは銅のように増加している資源もみとめられた。この事実は昨年度行った2000年頃の需給予測とは明らかに矛盾している。この矛盾については、鉱物資源の需給予測については自然科学、工学、社会科学、人文科学の広い範囲にわたる事項の影響が考えられるが、長期需給予測には地球科学的な制約が、短期需給予測には経済活動にかかわる問題が大きく反映しているためと結論された。本年度は、前年度に引き続き希金属資源に関する資料を収集するとともに3年間の研究成果のまとめを行った。資料の収集では昭和62年度は主に硫化物として産出する希金属について、昭和63年度は主に酸加物として産出する希金属について調査したので、本年度は、硫化物、酸加物以外の鉱物種、たとえば金、白金など金属状態で産出する希金属に重点をおいた。次にこの3年間の成果をまとめるにあたって、これまでの資料を整理すると、希金属資源は供給面から基本的に2つのグル-プ、独自の探鉱開発、精錬の行われている希金属とベ-スメタルの製錬の中間精製物を出発物質としてバイプロダクトされているものに分かれた。希金属の資源量の把握、安定供給を論ずるときにはこの違いはもっとも基本的になっており、後者に属する希金属の問題は各々のベ-スメタルの問題に置き換えられる部分が多い。そこで、まず独自探鉱開発、製錬の行われている希金属、バイプロダクトとして生産されている希金属あわせて35種について資源量の評価を試み、つぎに参考資料としてベ-スメタルの現状もあわせて記載した。なお、ベ-スメタルと希金属の厳密な区分はないようであるが、本研究ではアルミニウム、鉄、銅、鉛、亜鉛、錫をベ-スメタルとした。資源の評価の基礎的事項としては、生産量・需要・用途・価格・代替品・備蓄・埋蔵量・地質などをとりあげ、各メタルごとに事項別にまとめ、論じた。統計資料では1987年までの最新統計とわが国の輸入消費などを掲載した。
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KAKENHI-PROJECT-62550463
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62550463
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炭素-フッ素結合の位置選択的切断に立脚したパーフルオロ化合物の自在合成
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パーフルオロ化合物に含まれる複数の炭素ーフッ素結合の中から、特定の炭素ーフッ素結合を位置選択的に切断する手法を確立した。例えば、プロピレンの全ての水素がフッ素に置換されたヘキサフルオロプロピレンの炭素ーフッ素結合は0価パラジウムによって切断されるが、このときに添加するルイス酸を適切に選択することにより、アリル位とビニル位の炭素ーフッ素結合を位置選択的に切断できることを明らかにした。また、フルオロアルキル錯体上でのαフッ素脱離、およびβフッ素脱離を制御する手法を確立した。本研究課題では、種々のパーフルオロ化合物の炭素-フッ素結合を位置選択的に活性化(切断)できる遷移金属活性種の創出を目的とし、パーフルオロ化合物の1つであるヘキサフルオロプロピレン(CF2=CFCF3)を0価パラジウム上に予め配位させた錯体[(PCy3)2Pd(CF2=CFCF3)]をモデル化合物として用い、炭素-フッ素結合の位置選択的に取り組んだ。その結果、0価パラジウム上での炭素-フッ素結合切断を促進するルイス酸添加剤の種類を変えることにより、位置選択的な炭素-フッ素結合の切断が達成されることを明らかにした。すなわち、添加剤として三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体[BF3・Et2O]をモデル化合物に作用させたところ、末端sp2炭素に結合したフッ素原子が選択的に切断され、パーフルオロ1-プロぺニル基を有するパラジウム(II)錯体を2種類の異性体混合物として定量的に得た。一方、添加剤としてトリスペンタフルオロフェニルボラン[B(C6F5)3]をモデル化合物に作用させたところ、アリル位の炭素-フッ素結合切断が選択的に進行し、カチオン性パーフルオロアリルパラジウム錯体が定量的に得られることを見出した。後者の反応は、遷移金属上でヘキサフルオロプロピレンのアリル位の炭素フッ素結合を選択的に活性化した世界初の例である。この反応において特異な位置選択性が発現する理由を明らかにするため、計算化学的手法を用いて考察したところ、主に嵩高いトリスペンタフルオロフェニルボランに起因する立体的な要因により、もっともパラジウムから遠いアリル位の炭素フッ素結合がされていることを明らかにした。本研究課題では、種々のパーフルオロ化合物の炭素ーフッ素結合を位置選択的に活性化(切断)しうる遷移金属活性種の創出を目的とし、ヘキサフルオロプロピレンを0価パラジウム上に予め配位させた錯体[(PR3)2Pd(CF2=CFCF3)]をモデル化合物として用い、炭素ーフッ素結合の位置選択的切断に引き続き取り組んだ。その結果、パラジウムの支持配位子であるホスフィン配位子の種類と、炭素ーフッ素結合切断を促進するルイス酸の種類を適切に組み合わせることにより、ヘキサフルオロプロピレンの異なる炭素ーフッ素結合を位置選択的に切断できることを見出し、その成果をAngew. Chem. Int. Ed.にて発表した。特に、支持配位子としてPCy3を有するモデル化合物に、添加剤として[B(C6F5)3]を作用させると、ユニークなη2-配位様式をもつパーフルオロアリルパラジウム錯体の単離に成功した。さらに、パーフルオロデセンを用い、本課題で見出した位置選択的な炭素ーフッ素結合切断の一般性を確認したところ、同様の位置選択的切断が確認された。これらの反応における位置選択性発現の理由について理論化学計算を用いて検証したところ、反応の初期過程においてはルイス酸添加剤の種類によらず、アリル位の炭素-フッ素結合が速度論的に切断されていることが示唆された。さらに、0価ニッケルを活性種とするトリフルオロアセトフェノン(CF3C(O)Ph)の炭素ーフッ素結合切断反応を新たに開発し、ニッケル含フッ素エノレートの単離・構造決定に成功した。さらに、このエノレート種を鍵中間体とするティッシェンコ反応の開発を達成し、その成果をJACS誌にて発表した。また、四フッ化エチレンからヘキサフルオロブタジエンへの還元的二量化反応の最適化に取り組み、トリフルオロビニル亜鉛の大幅な収率改善(58%→83%)に成功した。平成27年度においては、0価パラジウム活性種とルイス酸添加剤との協働効果によるパーフルオロアルケンの炭素ーフッ素結合切断反応における位置選択性発現の機構を明らかにすべく、種々の量論反応を行うとともに、理論化学的アプローチによる機構解明に取り組んだ。その結果、反応の初期過程において、アリル位の炭素-フッ素結合が速度論的に切断されていることを見出すととともに、この過程で生じた共役塩基や対アニオンの嵩高さ/求核性が生成物の構造決定に大きな役割を果たしていることを明らかにした。特に、BF3・Et2Oをルイス酸として用いた場合には、アリル位の炭素-フッ素結合切断に引き続き、2度目の炭素-フッ素結合切断を経てパーフルオロプロぺニル錯体へと異性化する興味深い機構を明らかにした。また、0価ニッケル上でのテトラフルオロエチレン(以降、TFEと略)とスチレンとの酸化的環化によって生じるニッケラサイクルからのαフッ素脱離(α位の炭素-フッ素結合切断)がアミンによって促進されることを明らかにした。一方、TFEとエチレンとの酸化的環化によって生じるニッケラサイクルを鍵活性種として用い、目的とする位置選択的な炭素-フッ素結合切断について検証したが有意な結果は得られなかった。しかし、この過程で、TFEをエチレンとの酸化的環化体を鍵中間体とする2種類のニッケル触媒を用いた三量化反応の開発に成功し、専門誌上にて成果発表した。
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KAKENHI-PROJECT-25708018
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25708018
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炭素-フッ素結合の位置選択的切断に立脚したパーフルオロ化合物の自在合成
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さらに、トリフルオロメチルケトン誘導体のボリルキュプレーションとこれに続くβフッ素脱離を鍵過程とする銅触媒を用いたトリフルオロメチルケトン誘導体のレフォルマトスキー反応の開発に成功した。当該年度の実施計画に挙げた研究目的「炭素ーフッ素結合の位置選択的活性化を達成する遷移金属活性種」を開発するとともに、その位置選択性発現機構を解明したことから、概ね順調に推移していると考えている。平成28年度においては、0価ニッケル上での四フッ化エチレン(これ以降、TFEと略)とスチレンとの酸化的環化によって生じるニッケラサイクルからのαフッ素脱離(α位の炭素フッ素結合の選択的活性化)が、アミンの添加によって促進されることを明らかにするとともに、このαフッ素脱離を鍵過程とする含フッ素有機化合物への化学量論的な分子変換反応を創出した。また、我々の研究グループで開発した手法から簡便に得られるトリフルオロビニル亜鉛クロリドを出発原料とする、パーフルオロ化合物の自在合成法の確立を目指し、トリフルオロビニル亜鉛クロリドから有用含フッ素化合物への誘導体化を検討した。例えば、トリフルオロビニル亜鉛クロリドとパーフルオロアルキルヨージド等との反応から、低収率ながらもパーフルオロアルケンが生成していることを確認した。パーフルオロ化合物に含まれる複数の炭素ーフッ素結合の中から、特定の炭素ーフッ素結合を位置選択的に切断する手法を確立した。例えば、プロピレンの全ての水素がフッ素に置換されたヘキサフルオロプロピレンの炭素ーフッ素結合は0価パラジウムによって切断されるが、このときに添加するルイス酸を適切に選択することにより、アリル位とビニル位の炭素ーフッ素結合を位置選択的に切断できることを明らかにした。また、フルオロアルキル錯体上でのαフッ素脱離、およびβフッ素脱離を制御する手法を確立した。当該年度の実施計画に挙げた研究目的「炭素ーフッ素結合の位置選択的活性化を達成する遷移金属活性種」を開発するとともに、その位置選択性発現の理由解明に一定の目途がついたことから、概ね順調に推移していると考えている。0価ニッケル上でのテトラフルオロエチレン(TFE)とスチレンとの酸化的環化によって生じる含フッ素ニッケラサイクルとアミン類との反応によって促進される位置選択的な炭素-フッ素結合切断反応の機構解明と位置選択性発現の理由解明に向けて実験的・理論的手法に基づいた検証を実施する。その成果を専門誌に投稿するとともに、これらの切断反応を鍵過程とする分子変換反応の開発に取り組む。28年度が最終年度であるため、記入しない。有機金属化学、錯体化学、触媒化学0価パラジウム上でのパーフルオロアルケンの位置選択的炭素-フッ素結合活性化の詳細な機構に関して実験的・理論的手法を駆使して更なる検証を加え、その成果を専門誌に投稿するとともに、これらの切断反応を鍵過程とする分子変換反応の開発に取り組む。さらに、パーフルオロ化合物の還元的二量化についても、四フッ化エチレン以外の基質の反応条件最適化に取り組む。当該年度の実施計画に掲げていた目的である「炭素-フッ素結合の位置選択的活性化を達成する遷移金属活性種」を開発することができ、順調に推移している。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。
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KAKENHI-PROJECT-25708018
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25708018
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正と負の制御系によるGA3-酸化酵素遺伝子の発現調節機構の解析
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ジベレリン(GA)は発芽、茎伸長、花芽形成など植物の生活環の様々な局面を調節している植物ホルモンである。GA内生量が変化すると植物はネガティブフィードバック制御を発動させGA内生量を維持しようとする。本研究ではシロイヌナズナの主要なGA3-酸化酵素遺伝子、AtGA3ox1のフィードバック調節の分子機構を明らかにすることを目的とした。前年度までの解析でAtGA3ox1プロモーター内のGAに関する負のシス因子に結合する転写因子としてATフックモチーフを有するタンパク質AGF1を見出した。ATフックモチーフはHMG型転写因子等に認められるDNA結合モチーフである。点突然変異の導入によりAGF1との結合能力を失わせた変異型AtGA3ox1プロモーターはGAフィードバック応答を消失する。AGF1の転写はGA内生量の影響を受けないので、GAに依存したAGF1の転写後または翻訳後の機能制御が存在すると考えられた。そこでAGF1と特異的に相互作用するタンパク質を酵母two-hybrid法により探索した結果、Znフィンガー型転写因子ZAF1が単離された。プルダウン法によりAGF1とZAF1のin vitroでの特異的結合を証明した。ZAF1と複合体を形成したAGF1はAtGA3ox1プロモーター上のAGF1標的配列に結合できないので、ZAF1はAGF1を負に制御していると考えられた。in vivoにおけるAGF1の機能を調べるためT-DNA挿入によるAGF1機能喪失変異体を解析した。発芽率を指標にすると、T-DNA挿入株は野生型植物に比べてGA合成阻害剤に対する耐性が上昇していた。これらの結果はZAF1がAtGA3ox1のフィードバック制御における負の調節因子であることを示唆している。ジベレリン(GA)は発芽、茎伸長、花芽形成など植物の生活環の様々な局面を調節している植物ホルモンである。GA内生量が変化すると植物はネガティブフィードバック制御を発動させGA内生量を維持しようとする。我々はシロイヌナズナの主要なGA3-酸化酵素遺伝子AtGA3ox1のプロモーターにはGAに対して負に応答するシス因子だけでなく、GAに対して正に応答するシス因子も同時に存在することを見出した。本研究ではAtGA3ox1のGAに対する正と負の応答を司る転写因子を同定し、GAによるGA生合成酵素遺伝子の転写調節の分子機構を明らかにすることを目的とする。そして正と負の転写制御系がそれぞれ植物の生活環のどこで機能しているかを調べ、GA生合成の鍵酵素遺伝子AtGA3ox1がGAに対して一見相反する二つの転写制御系を持つ生理的意義を明らかにすることを目的とする。AtGA3ox1のGAに関する負のシス因子は、GA内生量が低下すると転写を活性化させ、GA量が増加すると転写を抑制することで、フィードバック制御において中心的な役割を果たしている。シロイヌナズナ形質転換体を用いてAtGA3ox1プロモーターの5'欠失変異体とgain-of-functionの解析から、GAに関する負のシス領域を同定した。このシス因子に特異的に結合する転写因子のcDNAを酵母を用いたone-hybrid法によりクローン化した。構造を決定したところ、このcDNAはATフックモチーフを有するタンパク質をコードしていた。ATフックモチーフはHMGグループに保存された構造である。HMGは動物のホメオボックス型転写因子、NFκB型転写因子等の転写因子と相互作用し標的遺伝子の転写を促進的あるいは阻害的に調節することが知られており、GAフィードバック制御における役割に興味が持たれる。ジベレリン(GA)は発芽、茎伸長、花芽形成など植物の生活環の様々な局面を調節している植物ホルモンである。GA内生量が変化すると植物はネガティブフィードバック制御を発動させGA内生量を維持しようとする。我々はシロイヌナズナの主要なGA3-酸化酵素遺伝子MM3ox1のプロモーターにはGAに対して負に応答するシス因子だけでなく、GAに対して正に応答するシス因子も存在することを見出した。本研究ではAtGA3ox1のGAに対する正と負の応答を司る転写因子を同定し、GAによるGA生合成酵素遺伝子の転写調節の分子機構を明らかにすることを目的とした。前年度までの解析からAtGA3oxlがプロモーター内のGAに関する負のシス因子に結合する転写因子としてATフックモチーフを有するタンパク質を見出した。ATフックモチーフはHMGグループに保存された構造である。HMGは動物のホメオボックス型転写因子、NFκB型転写因子等の転写因子と相互作用し標的遺伝子の転写を促進的あるいは阻害的に調節することが知られている。今年度はゲルシフト法によりATフックタンパク質の標的DNA配列を決定した。ATフックタンパク質が植物体内で実際にネガティブフィードバック制御に関与しているかを明らかにするために、点突然変異を、AtGA3ox1プロモーターに導入しATフックタンパク質と結合できない変異型AtGA3ox1プロモーターを作製した。この変異型とプロモーターとGUSの融合遺伝子をシロイヌナズナ形質転換体で発現させた。するとATフックタンパク質との結合能力を失った変異型AtGA3oxlがプロモーターではGAフィードバック応答が消失したので、ATフックタンパク質が植物体におけるフィードバック制御に関与していることが示された。ジベレリン(GA)は発芽、茎伸長、花芽形成など植物の生活環の様々な局面を調節している植物ホルモンである。GA内生量が変化すると植物はネガティブフィードバック制御を発動させGA内生量を維持しようとする。本研究ではシロイヌナズナの主要なGA3-酸化酵素遺伝子、AtGA3ox1のフィードバック調節の分子機構を明らかにすることを目的とした。前年度までの解析でAtGA3ox
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KAKENHI-PROJECT-15657012
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15657012
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正と負の制御系によるGA3-酸化酵素遺伝子の発現調節機構の解析
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1プロモーター内のGAに関する負のシス因子に結合する転写因子としてATフックモチーフを有するタンパク質AGF1を見出した。ATフックモチーフはHMG型転写因子等に認められるDNA結合モチーフである。点突然変異の導入によりAGF1との結合能力を失わせた変異型AtGA3ox1プロモーターはGAフィードバック応答を消失する。AGF1の転写はGA内生量の影響を受けないので、GAに依存したAGF1の転写後または翻訳後の機能制御が存在すると考えられた。そこでAGF1と特異的に相互作用するタンパク質を酵母two-hybrid法により探索した結果、Znフィンガー型転写因子ZAF1が単離された。プルダウン法によりAGF1とZAF1のin vitroでの特異的結合を証明した。ZAF1と複合体を形成したAGF1はAtGA3ox1プロモーター上のAGF1標的配列に結合できないので、ZAF1はAGF1を負に制御していると考えられた。in vivoにおけるAGF1の機能を調べるためT-DNA挿入によるAGF1機能喪失変異体を解析した。発芽率を指標にすると、T-DNA挿入株は野生型植物に比べてGA合成阻害剤に対する耐性が上昇していた。これらの結果はZAF1がAtGA3ox1のフィードバック制御における負の調節因子であることを示唆している。
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KAKENHI-PROJECT-15657012
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重力空間情報処理機構の解明
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脳が外界を再構成する際に,その空間構造を適切に把握することは生存において非常に重要な役割である。本研究課題では,特に上下方向の空間表現が,どのように我々の知覚に影響を与えているのかに焦点を当て,脳の空間把握メカニズムの解明を試みることを目標とする。我々はこれまで,逆さ絵とよばれる多義図形を用いることによって,我々の視知覚が鉛直方向に引きずられ,鉛直上向きが上であるように多義図形の見え方が変わることが示してきた(Yamamoto et al.,2006)。このように,これまで多ぐの研究によって,視知覚が鉛直方向の影響を受けるという証拠が多数上がってきた。今回我々は,バイオロジカルモーション刺激と呼ばれるヒトの関節のみを点で表した動画の知覚が,鉛直方向の影響を受けているのかどうかを解明することを目標として実験を行った。被験者は正立,側臥位(右上,左上)の3種類の姿勢をとり,ヘッドマウントディスプレイ上に提示されるバイオロジカルモーション刺激として,網膜に対して,および空間に対して0°,±90°となるような7種類の刺激を用いた。被験者のバイオロジカルモーション刺激の検出力は,空間内での刺激の回転には影響を受けず,網膜像上での刺激の回転のみに影響を受けるというものだった。すなわち,より鉛直方向の影響を受けるタイプの刺激であるはずのバイオロジカルモーションの知覚がむしろ鉛直方向の影響を受けないということ示していた。本研究成果はバイオロジカルモーションの知覚の特殊性を示唆するとともに,空間知覚における新しい知見を与えるものである。脳が外界を再構成する際に、その空間構造を適切に把握することは、生存において非常に重要な役割を果たしている。これまでの神経科学の研究において、さまざまな観点から、空間の再構成のメカニズムの解明が行われてきたが、中でもヒトを用いた「左右」の空間表現に関する研究は数多くなされてきた。一方、空間内における「左右」軸はあくまで相対的なものであり、ほかの2軸と密接にかかわりあってくる。このように、脳の空間認知機構を考える上で、上下の知覚を考えることは必要不可欠であり、本研究計画は、脳における上下方向の脳内表現の解明することによって、空間認知のメカニズムの理解に貢献することを目標とした。はじめに、我々は、上下をひっくり返すことによって違う意味を持つタイプの多義図形(以下「逆さ絵」)を用い、重力に対する我々の姿勢が視知覚に影響を与えるのかどうかを調べた。逆さ絵を顔に対して横に提示し、さまざまな姿勢で提示した場合、この知覚がどのように変化するだろうか?逆さ絵を、uprightで見た場合、顔に対して右側が上の図が見える確率と顔に対して左側が上の図が見える確率はほぼ五分五分であった。一方、顔に対してはあくまで横向きのまま(ヘッドマウントディスプレイ等で網膜像をほぼ同一のものにしたまま)、姿勢だけを変えた場合、顔の右側を上にした場合には、顔に対して右側が上の意味が知覚される確率は70%と有意に増加し、顔の左側を上にした場合には、その確率が40%以下に有意に減少した。このように、網膜への視覚入力がほぼ同じなのにもかかわらず姿勢によって視知覚が変わることから、逆さ絵の知覚は単に視覚入力のみならず、前庭入力や固有覚入力・触覚入力のマルチモーダルな情報を統合することによって生成されている可能性が示唆された。このような情報統合が脳内で実際にどのように行われているかは未だ不明であり、今後の解明が求められる。脳が外界を再構成する際に,その空間構造を適切に把握することは生存において非常に重要な役割である。本研究課題では,特に上下方向の空間表現が,どのように我々の知覚に影響を与えているのかに焦点を当て,脳の空間把握メカニズムの解明を試みることを目標とする。我々はこれまで,逆さ絵とよばれる多義図形を用いることによって,我々の視知覚が鉛直方向に引きずられ,鉛直上向きが上であるように多義図形の見え方が変わることが示してきた(Yamamoto et al.,2006)。このように,これまで多ぐの研究によって,視知覚が鉛直方向の影響を受けるという証拠が多数上がってきた。今回我々は,バイオロジカルモーション刺激と呼ばれるヒトの関節のみを点で表した動画の知覚が,鉛直方向の影響を受けているのかどうかを解明することを目標として実験を行った。被験者は正立,側臥位(右上,左上)の3種類の姿勢をとり,ヘッドマウントディスプレイ上に提示されるバイオロジカルモーション刺激として,網膜に対して,および空間に対して0°,±90°となるような7種類の刺激を用いた。被験者のバイオロジカルモーション刺激の検出力は,空間内での刺激の回転には影響を受けず,網膜像上での刺激の回転のみに影響を受けるというものだった。すなわち,より鉛直方向の影響を受けるタイプの刺激であるはずのバイオロジカルモーションの知覚がむしろ鉛直方向の影響を受けないということ示していた。本研究成果はバイオロジカルモーションの知覚の特殊性を示唆するとともに,空間知覚における新しい知見を与えるものである。
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KAKENHI-PROJECT-18020037
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18020037
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戦後の引き揚げ者による農村開拓と大規模化農政における海外移民との関係に関する研究
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2018年度は、おもに、(1)ラテンアメリカ諸国間にて移動する、かつて日本から移出していった日系人について、資料収集や、現地での日系人に対する聞き取り調査を行った。また、岩手の現地においては、岩手からの日系移民としての側面にとどまらず、現在、岩手に農業実習生として入ってきているフィリピンからの実習生や、彼ら彼女らを雇う農家に対して、聞き取り調査を行った。また同様に、本研究は、岩手県か最大の戦後開拓地である奥中山を対象としているが、岩手県(四国四県を合わせた面積ほど大きい)の全体的な状況のもとに、この奥中山を位置づけるために、岩手に詳しい方々へ、本研究の最新の見解を話し、意見を伺った。現在、予定していた出版社とやり取りしつつ、単著として取り纏めるべく執筆活動を毎日行っている。順当に行けば今年度の初夏には、第一草稿を完成させ、パラグアイや岩手にて、単著にて取り上げさせていただいた方々へ、掲載承諾を得に訪れ、また、若干の最終的な補足調査を、夏季休暇を利用しておこなうつもりである。成果として取り纏めるのは、一般読者向けの、また手に取りやすい価格帯にするため、分量は400字詰め原稿用紙にして250枚と、きわめて限られている(昨今の出版業界の危機的状況の影響だと説明を受けている)。ゆえに、全編書き下ろしであり、学術的な記述ではないので、学会発表や学会誌論文といった成果はない。2018年度は、大学の異動などもあり(研究者番号の所属先:成蹊大学アジア太平洋研究センターは継続)、パラグアイでの現地聞き取り調査や、現地での資料収集は予定したものより少し届かなかった(それゆえに、少なからぬ額を、2019年度にキャリー・オーバーさせることになった)。だが一方で、本研究課題に向けての岩手での聞き取り調査や資料収集は、単著にまとめ上げることを目的とするならば、十分に終えることができたと言える。一年間、延長させていただいたことにより、今年度内には、最低でも印刷の段階まではたどり着けると考えている。繰り返しになるが、とにかく、一般読者向け(ではあるが、学的にも十分な意義のある)低価格で、広い読者層に手にとってもらえるような単著として、最終成果を発表すべく、作業を進めている。今年度以内には、少なくとも印刷にまで回すことができると考えている。2017年度は、4月から7月、および、9月においては、岩手県奥中山戦後開拓地で戦後開拓および戦後の南米への移住に関する聞き取り調査を、現地の住民を対象におこなった。また、JAの奥中山支部や役場に隣接された奥中山の図書館等において、郷土資料を閲覧・複写した。結果、この奥中山という地の、戦後に開拓されるプロセスとは、予め明確かつ具体的な構想とともに進められたものではなく、戦後にこの地が、大規模酪農地帯として転化していくなかで、ムラとしてのまとまりが出来てきたことがわかった。また、同期間において、盛岡市において岩手県立図書館の郷土資料コーナーや岩手県開拓振興協会などで、資料を閲覧・複写した。さらには、同市において、戦後の上記動向に詳しい方々に話を聞くとともに、個人的に収集されてきた資料を閲覧・複写させて頂いた。さらに海外調査としては、2017年の2月にパラグアイのピラポ日本人居住区(「岩手村」があることからもわかるように、ここには岩手県出身の移住者が多い)に滞在し、移住してこられた人たちから話を聞くことができた。また、個人資料も閲覧、あるいは写真撮影などをさせて頂いた。また、パラグアイには合計五つの日本人居住区があるが、(最後に形成された)イグアス日本人居住区以外の日本人村にも、現地の方々に車で連れて行ってもらい、大まかな予備的調査(最低限、挨拶をして実施したい研究内容についての説明)をすることができた。とりわけ奥中山戦後開拓地と、パラグアイのピラポ日本人居住区において、聞き取り協力者の方々から予想以上の協力を頂いた。そのことによって、当初予定していたよりも遥かに多くの方々に聞き取りを行うことができた。また、予想以上に、図書館には所蔵されていない、個人所有の資料に多々出会うことができ、またそれらをお借りすることができたので、予定していた調査ポイントに関する裏付けとなる資料を揃えることができた。これに対して、次年度において一層努力したい研究作業としては、今年度に収集した聞き取りや資料を取り纏め、学会での口頭発表や、論文として取り纏め、アウトプットを増やしていくということである。二年目が終わる現在、本科研において行った研究活動および、発表した研究成果は次の通りである。本研究は、岩手県県北内陸部にある山村、奥中山戦後開拓地のモノグラフを、戦後高度成長期(1960年代半ば)まで多くを排出した人たちによる南米パラグアイの「岩手村」を含み込んだうえで描くということが主たる作業内容となる。このことから、岩手県奥中山戦後開拓地での(とりわけ戦後開拓時代を経験として覚えている老人を主たる対象として)聞き取りを、何度も現地を訪れ行った。また、岩手県においては岩手大学等の大学ではなく、盛岡駅傍の岩手県立大学に圧倒的な資料が所蔵されており、県立図書館での資料閲覧も重点的に行った。また、2017年3月には「岩手村」のある南米パラグアイを訪れ、とりわけ岩手県人会、しかも奥中山からの移民の方々に聞き取り調査を展開した。発表した成果については、NPO法人の研究機関、社会理論・動態研究所の発行する学術雑誌(完全匿名の査読あり)に投稿した。現在査読中である。また、成果としては都内の出版社から単著として発表するべく現在、話を進めている。
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KAKENHI-PROJECT-16K07927
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07927
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戦後の引き揚げ者による農村開拓と大規模化農政における海外移民との関係に関する研究
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岩手の方々、パラグアイの方々の調査協力が予想以上に協力的であると言うことに尽きる。本研究申請の際には、聞き取り調査を量的調査ではなく、スノーボーリング・サンプリング方式による質的社会調査を採用するとしたが、追いつけないようなスピードで次々に「この人に聞いたらいいよ」と紹介して頂いている。また、議論を展開しようとした論点にかんして、予想以上に、その狙いに合致した資料が発見できたこともある。これも岩手県立図書館はじめとした方々の温かい研究協力がもとになっている。2018年度は、おもに、(1)ラテンアメリカ諸国間にて移動する、かつて日本から移出していった日系人について、資料収集や、現地での日系人に対する聞き取り調査を行った。また、岩手の現地においては、岩手からの日系移民としての側面にとどまらず、現在、岩手に農業実習生として入ってきているフィリピンからの実習生や、彼ら彼女らを雇う農家に対して、聞き取り調査を行った。また同様に、本研究は、岩手県か最大の戦後開拓地である奥中山を対象としているが、岩手県(四国四県を合わせた面積ほど大きい)の全体的な状況のもとに、この奥中山を位置づけるために、岩手に詳しい方々へ、本研究の最新の見解を話し、意見を伺った。現在、予定していた出版社とやり取りしつつ、単著として取り纏めるべく執筆活動を毎日行っている。順当に行けば今年度の初夏には、第一草稿を完成させ、パラグアイや岩手にて、単著にて取り上げさせていただいた方々へ、掲載承諾を得に訪れ、また、若干の最終的な補足調査を、夏季休暇を利用しておこなうつもりである。成果として取り纏めるのは、一般読者向けの、また手に取りやすい価格帯にするため、分量は400字詰め原稿用紙にして250枚と、きわめて限られている(昨今の出版業界の危機的状況の影響だと説明を受けている)。ゆえに、全編書き下ろしであり、学術的な記述ではないので、学会発表や学会誌論文といった成果はない。2018年度は、大学の異動などもあり(研究者番号の所属先:成蹊大学アジア太平洋研究センターは継続)、パラグアイでの現地聞き取り調査や、現地での資料収集は予定したものより少し届かなかった(それゆえに、少なからぬ額を、2019年度にキャリー・オーバーさせることになった)。だが一方で、本研究課題に向けての岩手での聞き取り調査や資料収集は、単著にまとめ上げることを目的とするならば、十分に終えることができたと言える。一年間、延長させていただいたことにより、今年度内には、最低でも印刷の段階まではたどり着けると考えている。すでに予定していた聞き取り調査協力者の方々から、さらに重要だと思われる、とりわけご老人を紹介して頂けることとなった。それによって、本研究が対象とする奥中山やパラグアイのピラポといった地域のミクロなレベルにおける、より詳細な戦後開拓の歴史および、戦後海外移住の歴史、パラグアイ現地での日本人村の形成の歴史などが、オーラルヒストリーなどをも含め、再構成できると考えている。また、今年度2016年度において貸して頂いたり、複写させて頂いた一次資料で、詳細に読み込んでいないものが膨大にある。また、数十時間に及ぶ聞き取り調査も、まだすべてを文字おこしして、諸史料と相互参照するという作業が多く残っている。
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KAKENHI-PROJECT-16K07927
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07927
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導来圏の安定性条件とDonaldson-Thomas不変量の研究
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3次元カラビヤウ多様体上の安定対象のモジュライ空間はDonaldson-Thomas不変量の研究やシフト化された導来スキームの研究と関わる重要な数学的対象であるが、その双有理幾何的性質については付随する特異点が通常扱うものよりも悪い特異点であるためこれまで議論されてこなかった。一方、これらのモジュライ空間にはJoyceが導入したd-臨界構造が入ることが知られている。今年度は、d-臨界構造を持つスキームに対してd-臨界フリップやd-臨界フロップといった双有理変換の類似物を定義した。これらは通常の双有理変換ではなく、いわば仮想的な双有理変換と呼ぶべきものである。更にDonaldson-Thomas不変量の研究で用いられた3次元カラビヤウ多様体上の安定対象のモジュライ空間の壁越え図式が、d-臨界フリップやd-臨界フロップによって記述できることを証明した。これにより、従来までは問いを与える事すらできなかった3次元カラビヤウ多様体上の安定対象のモジュライ空間の双有理幾何学について新たな道が拓かれることになった。更に通常の双有理幾何学においては代数多様体の間のフリップやフロップが与えられるとそれらの連接層の導来圏の間に充満忠実関手や同値が存在することが予想されている。この予想はD/K予想と呼ばれている。そこでd-臨界フリップやd-臨界フロップに対しても同様の現象が存在することが期待される。3次元カラビヤウ多様体上のPandaripande-Thomas安定対のモジュライ空間がd-臨界フリップで関係づけられる特殊な状況において連接層の導来圏の間に充満忠実関手が存在することを証明し、D/K予想のd-臨界版が成立する可能性を示した。より一般の場合には「圏論的DT理論」の概念を導入することでd-臨界版D/K予想を定式化できると考えており、今後の研究課題である。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。3次元カラビヤウ多様体上の連接層の導来圏の安定性条件を調べ、その応用として3次元カラビヤウ多様体上の曲線の数え上げ理論に応用を与える事がこれまでの一貫した研究テーマである。これまでの研究で、例えば双有理同値な3次元カラビヤウ多様体の曲線の数え上げを比較するといった応用が得られていた。しかし3次元カラビヤウ多様体と、それと双有理同値なDeligne-Mumfordスタック上の曲線の数え上げを比較することはこれまでの技術では困難があった。例えば2次元射影平面を含む3次元カラビヤウ多様体を考えると、それと双有理同値なDeligne-Mumfordスタックを構成することができる。この場合に、2次元射影平面に台を持つ半安定層の数え上げ不変量の生成関数をmock theta型の級数を用いて記述し、この結果と弱安定性条件の理論を用いて上述の曲線の数え上げの比較問題を解決した。また、一般に3次元代数多様体上のBridgeland安定性条件の存在は未解決であるが、この存在問題は2011年にBayer-Macri氏らと共同で提唱したBogomolov-Gieseker型不等式予想に帰着されている。Piyaratne氏と共同で、このBG型不等式予想が成立する3次元代数多様体に対して、Bridgeland半安定対象のモジュライスタックが固有な有限型代数スタックであることを証明した。この結果を用いて、BG型不等式予想が成立する3次元カラビヤウ多様体上にBridgeland半安定対象を数えるDonaldson-Thomas型不変量を定義した。現時点でBG型不等式予想が成立する3次元カラビヤウ多様体はアーベル多様体のエタール商として得られるものが知られており、この場合のDT型不変量の詳細な研究が今後の研究の展開として考えられる。代数多様体上の連接層の導来圏は、双有理幾何学、非可換代数、シンプレクティック幾何学とのミラー対称性等と関わる大変重要な研究対象である。3次元双有理幾何学においてはフロップと呼ばれる操作が重要であるが、このフロップによって導来圏が多くの場合で保たれることは以前から知られていた。一方、3次元フロップを2回合成すると導来圏の自己同値が得られるが、この自己同値を記述する際に層の非可換変形を用いる必要があることが近年になってDonovan-Wemyssにより発見された。昨年度の研究でDonovan-Wemyssが考察した3次元フロップに付随する非可換変形代数の次元が、Gopakumar-Vafa不変量と呼ばれる量子不変量と関わることが明らかになった。Gopakumar-Vafa不変量とは代数多様体上の曲線を数える不変量であり、連接層を数え上げるDonaldson-Thomas(DT)不変量の特別なものと理解して良い。今年度はその研究を受けて、より一般的な状況で非可換変形代数とDT不変量の関係を明らかにするための数学的基礎づけを行った。3次元フロップとは限らない一般的な状況で、代数多様体上の安定層のモジュライ空間を考えると多くの場合で射影的な代数的スキームとなる。このスキーム上にKapranovの意味でのNC構造を弱めた擬NC構造が入ることを証明した。更にこの擬NC構造を用いて、安定層のモジュライ空間上の非可換仮想構造層の概念を導入した。
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KAKENHI-PROJECT-26287002
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26287002
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導来圏の安定性条件とDonaldson-Thomas不変量の研究
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一方、Donaldson-Thomas不変量とは安定層のモジュライ空間を用いて定義される量子不変量であるため、この擬NC構造とDT不変量との間の関連も期待される。今後、これらの非可換構造を用いてDT不変量への応用を与える事が課題である。安定層のモジュライ空間上に大域的な非可換構造が入ることを発見したのは予期せぬことであった。この発見により、今年度は非可換変形の研究に専念することになった。今年度はD.Maulik氏と共同でGopakumar-Vafa (GV)不変量の数学的定式化を行った。GV不変量とは1998年に物理学者のGopakumarとVafaによって提唱された不変量で、3次元カラビヤウ多様体上の曲線を数えるGromov-Witten (GW)不変量やPandharipande-Thomas (PT)不変量と等価になると期待される不変量である。一方、GV不変量を数学的に正しい形で定義するのは,これまで大きな問題であった。2001年に細野・斎藤・高橋がその数学的定式化を与えたが、彼らの定義がGW不変量と整合しないことは当初から知られていた。より近年になって、2012年にKiem-LiがGV不変量の数学的定式化を消滅サイクル層を用いて与えたが、彼らの定義が正しいことを示唆する根拠は希薄であった。今年度の我々の研究によって、Kiem-Liが定義したGV不変量が予想されるGW不変量との等価性を満たさないことが示された。そこでKiem-Liの定式化を修正して、我々は新たなGV不変量の定義を導入した。更に我々が定義したGV不変量と代数曲面上の標準束上のPT不変量が、曲線の数値類が既約である場合に等価であることを証明した。この結果は我々の定義の妥当性を示す大きな根拠を与えている。以上の結果は論文「Gopakumar-Vafa invariants via vanishing cycles」として書き上げ、プレプリントとしてarXivに公表している。今後、我々が定義したGV不変量の変形不変性の証明、より複雑な状況下でのPT不変量との整合性などを示していく必要がある。3次元代数多様体上のBogomolov-Gieseker型不等式予想については曲面と曲線の直積の場合に少し進展があったものの、決定的な結果を得るには至らなかった。一方、Gopakumar-Vafa不変量についてMaulik氏と共同で研究を行い、Kiem-Liの定義が正しくないことを示したこと、また新たなGV不変量の定義を導入できたことは思いがけない進展であった。この結果によってGV不変量のより深い理解が得られたことになる。よって、総合的にはおおむね順調に進展していると判断できる。今年度は、3次元Calabi-Yau多様体上のGopakumar-Vafa不変量の壁超え不変性について調べた。Gopakumar-Vafa不変量とは物理学者であるGopakumarとVafaが提唱した整数値不変量であり、Gromov-Witten不変量やPandharipande-Thomas不変量などと生成関数を通じて等価になると考えられている不変量である。これまでその数学的定義は厳密ではなかったが、昨年度のMaulik氏との共同研究でその数学的定義を提唱した。今年度の研究はそれを更に推し進めるものである。種数が1以上のGV不変量の壁超え現象を解析するには、これまでDT不変量等で用いられてきた
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KAKENHI-PROJECT-26287002
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高性能コンクリートの実環境における性状変化と耐凍害性
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乾湿繰返し、暴露が高強度コンクリートの耐凍害性におよぼす影響について検討した。主な結果は、1)既往のデータによる凍結融解試験結果予測手法の提案、2)含水率分布による凍害劣化形態の分類、3)含水率分布が生じたコンクリートの凍結融解による含水率上昇の確認、4)屋外暴露による含水状態等の実測、5)実環境における乾湿繰返しの影響を考慮した耐凍害性評価方法の提案、である。乾湿繰返し、暴露が高強度コンクリートの耐凍害性におよぼす影響について検討した。主な結果は、1)既往のデータによる凍結融解試験結果予測手法の提案、2)含水率分布による凍害劣化形態の分類、3)含水率分布が生じたコンクリートの凍結融解による含水率上昇の確認、4)屋外暴露による含水状態等の実測、5)実環境における乾湿繰返しの影響を考慮した耐凍害性評価方法の提案、である。non-AEの高性能・高強度コンクリートは、乾湿繰返しを受けると耐凍害性が大きく低下するものがあるが、この理由として、乾湿繰返しによって生じる微細ひび割れ、材質変化、含水率分布および水分移動の影響等が考えられる。本年度の実験では、このメカニズムを検討するため、含水率分布がある場合の凍結融解時の水分移動性状、乾湿繰返しの有無による凍結水量の変化、水中浸漬時間を変えることによって含水率分布を変化させた場合の耐凍害性を検討した。この結果、凍結融解時の外部からの水分供給の有無および表層の含水状態によって、凍結融解開始時にコンクリート内部の水分移動性状が異なること、乾湿繰返しを行った試験体は水中養生直後のものよりも凍結水量が大きくなること、乾燥によって含水率分布の生じた試験体を長期間水中浸漬すると耐凍害性が向上することが明らかとなった。また、既往の促進凍結融解試験データを整理し、乾湿繰返し・暴露およびコンクリートに使用される材料の種別がコンクリートの耐凍害性に及ぼす影響を検討した。この結果、凍結融解試験開始条件が乾湿繰返し後または屋外暴露後のコンクリートの耐凍害性は、水セメント比40%以下で低下するが、水セメント比40%以上で向上する傾向のあることが認められた。さらに、促進凍結融解試験における相対動弾性係数の変化の標準化式を水セメント比ごとに分類して検討し、乾湿繰返し・暴露を受けたコンクリートの標準的な相対動弾性係数低下式を求めた。non-AEの高性能・高強度コンクリートは、乾湿繰返し等を受けると耐凍害性が大きく低下するものがあるが、この理由として乾湿繰返し等によって生じる微細ひび割れ、材質変化、含水率分布および水分移動の影響等が考えられる。今年度は、既往の文献のデータを用いた分析、このメカニズムおよびこの影響を考慮した評価方法について検討した。・乾湿繰返しによる耐凍害性の低下に対し、そのメカニズム、試験条件等の影響要因およびコンクリート種別の影響について検討した。この結果、凍害劣化が発生する以前に凍結水量が増加する傾向をとらえることができ、non-AEの高強度コンクリートの凍害劣化メカニズム解明のための有効なデータとなるものと考えられる。さらに、コンクリートの種別によって乾湿繰返し等の影響が大きく異なることが明らかになった。・昨年実施した含水率分布がある場合の高強度コンクリートの凍結融解時の水分移動の実験について、一般的な強度のコンクリートについても同様の実験を実施した。しかしながら、高強度コンクリートめように明確な劣化が生じなかった。この結果については検討中であるが、昨年度のデータと比較ことにより、高強度コンクリートの凍害劣化の特殊性が明確になるものと考えられる。・各種材料の吸水性状の変化・限界飽水度の算定方法、仕上材の効果の評価方法、暴露による含水率の変化について検討し、限界飽水度法を用いた材料性状の変化を考慮した評価方法の可能性が示された。non-AE高強度コンクリートは、屋外暴露等の後に凍結融解試験を行うと耐凍害性が大きく低下するものがあるが、この理由として、乾湿繰返し等によって生ずる微細ひび割れ、材質変化、含水率分布・水分移動の影響等が考えられる。この原因とメカニズムを明らかにすることは、高強度コンクリートの実環境における耐凍害性の評価および環境条件に応じた適切な空気量の設定等を行ううえで重要である。本年度は、主に含水率分布・水分移動の影響を実験的に検討した。non-AE高強度コンクリートの試験体を作製し、水中養生期間、乾燥日数、湿潤期間等を変えた14種類の乾湿繰返し後に凍結融解試験を行い、コンクリートの耐凍害性におよぼす影響要因の検討を行った。この結果、乾湿繰返しによる含水率の低下が内部まで進むと耐凍害性が著しく低下することが判明した。さらに、このときの劣化のパターンには、質量が増加するものとスケーリングを生ずるものがあることが明らかになり、含水率分布の状態と劣化形態を分類した。高強度コンクリートは乾燥によって大きな含水率勾配を生じやすく、表層の含水率が低く、内部の含水率の高い状態で表層から凍結融解を受けた場合、表層の凍結水量が大きくなり、融解後に表層の含水状態が上昇し、その隣接する深部の含水率が低下することを示した。このことから、凍結時に未凍結部分から凍結部分に水分移動が生じていることが考えられる。
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KAKENHI-PROJECT-19360243
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色素添加ガラス導波路による光第2高調波発生素子の研究
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最近、パイ共役系の骨格とドナー基とアクセプタ基を有する有機材料が、光波に対して従来の無機材料に比べて極めて大きな非線形感受率を有し、かつその応答速度の早いことが注目され、第2高調波発生(SHG)素子や広帯域光変調素子への応用が期待されている。しかし、有機非線形材料には光デバイスとして必要な大きさの結晶が得難いとか、機械的強度や物理的、化学的安定性に欠ける欠点がある。その欠点を克服するために、有機非線形材料を高分子中に分散添加するか、側鎖に結合させて電界配向する方法があるが、配向緩和による作製後の非線形性の劣化、又は非線形性の小さいことが問題であった。本研究では、まずガラスの低温合成法であるゾルゲル法を用いて、シリカ膜中に有機非線形色素のディスパースレッド1(DR1)を分散添加した有機無機複合非線形薄膜を作製した。メーカーフリンジ法による非線形光学定数テンソルの3独立成分の測定法を考案し、非線形薄膜を測定した結果、最大の成分がd_<33>=190pm/Vという極めて大きな非線形性と、その劣化が全く観測されない安定性を示した。非線形性が増大した要因は、色素をゾルゲル開始溶液に溶かす際の温度を上げて40wt%まで添加することを可能にしたことである。次に、この非線形薄膜を用いて導波形のSHG素子を研究した。スラブ型およびチャネル型導波路の各々について、チェレンコフ放射型位相整合条件と単一モード条件を満たすように設計・試作した結果、Nd:YLFレーザ光のSHGの観測にいずれも成功した。チャネル導波路は、非線形膜の上部をリッジ形に加工した構造である。SHG変換効率の理論値は、スラブ型が0.0032%に対して、チャネル型が0.2%と2桁増加した。なお、DR1より青色光における吸収が小さくβ値が大きい、シリカ膜に添加可能な新材料を見出している。最近、パイ共役系の骨格とドナー基とアクセプタ基を有する有機材料が、光波に対して従来の無機材料に比べて極めて大きな非線形感受率を有し、かつその応答速度の早いことが注目され、第2高調波発生(SHG)素子や広帯域光変調素子への応用が期待されている。しかし、有機非線形材料には光デバイスとして必要な大きさの結晶が得難いとか、機械的強度や物理的、化学的安定性に欠ける欠点がある。その欠点を克服するために、有機非線形材料を高分子中に分散添加するか、側鎖に結合させて電界配向する方法があるが、配向緩和による作製後の非線形性の劣化、又は非線形性の小さいことが問題であった。本研究では、まずガラスの低温合成法であるゾルゲル法を用いて、シリカ膜中に有機非線形色素のディスパースレッド1(DR1)を分散添加した有機無機複合非線形薄膜を作製した。メーカーフリンジ法による非線形光学定数テンソルの3独立成分の測定法を考案し、非線形薄膜を測定した結果、最大の成分がd_<33>=190pm/Vという極めて大きな非線形性と、その劣化が全く観測されない安定性を示した。非線形性が増大した要因は、色素をゾルゲル開始溶液に溶かす際の温度を上げて40wt%まで添加することを可能にしたことである。次に、この非線形薄膜を用いて導波形のSHG素子を研究した。スラブ型およびチャネル型導波路の各々について、チェレンコフ放射型位相整合条件と単一モード条件を満たすように設計・試作した結果、Nd:YLFレーザ光のSHGの観測にいずれも成功した。チャネル導波路は、非線形膜の上部をリッジ形に加工した構造である。SHG変換効率の理論値は、スラブ型が0.0032%に対して、チャネル型が0.2%と2桁増加した。なお、DR1より青色光における吸収が小さくβ値が大きい、シリカ膜に添加可能な新材料を見出している。
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KAKENHI-PROJECT-05650040
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05650040
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絶縁物からの二次電子放出機構の解明と二次電子収率データベース構築
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エキソ電子検出システムの開発を進めると共に,パルスイオン照射システムを開発・改良し,絶縁物の二次電子収率測定系を開発してその測定精度を向上させた.さらに絶縁物の実材料におけるガス吸着等による二次電子収率の変化を測定するシステムを構築し,収率変化を定量的に捉えることに成功した.また,二次電子データベース構築等については,日本学術振興会産学研究協力委員会である第141委員会内に設置した専門委員会において,材料・デバイスを製造している企業等と連携した研究活動を行った.エキソ電子検出システムの開発を進めると共に,パルスイオン照射システムを開発・改良し,絶縁物の二次電子収率測定系を開発してその測定精度を向上させた.さらに絶縁物の実材料におけるガス吸着等による二次電子収率の変化を測定するシステムを構築し,収率変化を定量的に捉えることに成功した.また,二次電子データベース構築等については,日本学術振興会産学研究協力委員会である第141委員会内に設置した専門委員会において,材料・デバイスを製造している企業等と連携した研究活動を行った.本研究では,エキソ電子計測系を搭載した二次電子検出装置を開発し,絶縁物への電子・イオン照射による帯電と二次電子放出過程の解明を目指す.また,小型簡易二次電子収率測定ホルダーを試作して収率測定を行うことで,汎用装置を用いた実材料の二次電子収率測定法を確立するとともに,得られた収率のデータベース構築を推進する.さらに,低加速走査電子顕微鏡(SEM)用標準試料を作製し,低速SEMにおける二次篭子放出過程の解明を自指す.これらの課題を推進することで,二次電子放出過程に関する新しい知見を得ることを目指す.エキソ電子検出システムについては現在測定システムの開発を進めている.本検出器を用いた二次電子検出については,パルスイオン照射システムを開発して,電流ならびに口荷モードによる絶縁物からの二次電子収率測定を行っている.そのために必要な測定システムや試料加熱システムなども試作した.新たな二次電子収率測定用の試料ホルダーについては,現在までに開発している試料ホルダーに改良を加えて新たなホルダーの試作を行っているところである.二次電子収率データベースについては,日本学術振興会産学研究協力委員会である第141委員会内に専門委員会を設置し,実用的なデータベース構築に向けた活動を開始した.本委員会では高感度チャージアンプを用いた絶縁物からの二次電子収率測定など新しい試みも開始した.また,これらとあわせて,イオンや電子と固体表面との相互作用の解明に関する研究も推進している.本研究では,エキソ電子計測系を搭載した二次電子検出装置を開発し,絶縁物への電子・イオン照射による帯電と二次電子放出過程の解明を目指す.また,小型簡易二次電子収率測定ホルダーを試作して収率測定を行うことで,汎用装置を用いた実材料の二次電子収率測定法を確立するとともに,得られた収率のデータベース構築を推進する.さらに,低加速走査電子顕微鏡(SEM)用標準試料を作製し,低速SEMにおける二次電子放出過程の解明を目指す.これらの課題を推進することで,二次電子放出過程に関する新しい知見を得ることを目指す.エキソ電子検出システムについては現在測定システム、特に制御電源系の開発を進めている.本検出器を用いた二次電子検出については,パルスイオン照射システムの電源・制御系の改良による高精度化等を行い,絶縁物からのイオン誘起二次電子収率測定の精度を5倍程度向上させた.さらに絶縁物材料表面へのガス吸着など実材料における収率の変化を調べるための試料処理系を立ち上げ,加熱やガス吸着による収率変化を捉えられるシステムを構築した.また,構築したシステムを用いてMgO膜からの二次電子放出の加熱・ガス吸着による変化を定量的に捉えることに成功した.二次電子収率データベース構築と汎用試料ホルダー開発については,日本学術振興会産学研究協力委員会である第141委員会内に設置した専門委員会において,材料・デバイスを製造している企業等と連携した議論を開始した.また,これらとあわせて,イオンや電子と固体表面との相互作用の解明に関する研究も推進している.
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KAKENHI-PROJECT-21686005
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21686005
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縦接符号の信頼性の評価
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1.縦接符号において、内部符号で一定数【t_1】、以下のビット誤りを訂正し、【t_1】+1以上の誤りを検出したとき、(1)その符号語を消去するか、訂正せずそのままにしておくか、さらに、(2)外部符号として交錯符号を用いるか否か、の各組み合わせそれぞれの場合に、2元対称通信路で用いたときの誤り見逃し確率の上界Peや正しく復号する確率Pcの値を求める式を導出した。2.上述の1.の方法に基づき、PeやPcを計算するプログラム群を大阪大学大型計算機センターのACOS-1000上に作成した。3.これらのプログラムを用いて、各種の具体例についてPeやPcの値を計算した。(1)符号のレートが比較的大きい(例えば0.6以上の)場合として、内部符号に、短縮ハミング符号(例えば(56,48)符号)、短縮BCH符号(例えば(61,48)符号)等を用い、外部符号として、(255,223)RS(リードソロモン)符号を用いたときに、例えば、ビット誤り率εが【10^(-2)】でも、Pc>0.1かつPe<【10^(-10)】で、十分信頼性が高いことを示した。(2)符号のレートは小さくてもよいが、εのかなり大きい場合でも高い信頼性を要求される応用のための一例として、内部符号に(16,5)biorthogonal符号を、外部符号にGF(【2^5】)上の(31,15)RS符号を用いたとき(レート0.151)、例えば、εが【10^(-1)】でも、Pc>0.9987かつPe<【10^(-23)】であることを示した。4.上の2.で述べたプログラム群等を用いて、次の(1)または(2)のような縦接符号設計支援システムを作成した。(1)具体的な内部符号、外部符号、誤り見逃し確率の上界、が与えられたとき、正しく復号される確率を最大にするように、復号のパラメータ(訂正する誤りの個数等)を選択する。(2)内部符号、誤り見逃し確率の上界、正しく復号される確率の下界が条件として与えられたとき、縦接符号のレートを最大にするように、外部符号とその復号パラメータを選択する。1.縦接符号において、内部符号で一定数【t_1】、以下のビット誤りを訂正し、【t_1】+1以上の誤りを検出したとき、(1)その符号語を消去するか、訂正せずそのままにしておくか、さらに、(2)外部符号として交錯符号を用いるか否か、の各組み合わせそれぞれの場合に、2元対称通信路で用いたときの誤り見逃し確率の上界Peや正しく復号する確率Pcの値を求める式を導出した。2.上述の1.の方法に基づき、PeやPcを計算するプログラム群を大阪大学大型計算機センターのACOS-1000上に作成した。3.これらのプログラムを用いて、各種の具体例についてPeやPcの値を計算した。(1)符号のレートが比較的大きい(例えば0.6以上の)場合として、内部符号に、短縮ハミング符号(例えば(56,48)符号)、短縮BCH符号(例えば(61,48)符号)等を用い、外部符号として、(255,223)RS(リードソロモン)符号を用いたときに、例えば、ビット誤り率εが【10^(-2)】でも、Pc>0.1かつPe<【10^(-10)】で、十分信頼性が高いことを示した。(2)符号のレートは小さくてもよいが、εのかなり大きい場合でも高い信頼性を要求される応用のための一例として、内部符号に(16,5)biorthogonal符号を、外部符号にGF(【2^5】)上の(31,15)RS符号を用いたとき(レート0.151)、例えば、εが【10^(-1)】でも、Pc>0.9987かつPe<【10^(-23)】であることを示した。4.上の2.で述べたプログラム群等を用いて、次の(1)または(2)のような縦接符号設計支援システムを作成した。(1)具体的な内部符号、外部符号、誤り見逃し確率の上界、が与えられたとき、正しく復号される確率を最大にするように、復号のパラメータ(訂正する誤りの個数等)を選択する。(2)内部符号、誤り見逃し確率の上界、正しく復号される確率の下界が条件として与えられたとき、縦接符号のレートを最大にするように、外部符号とその復号パラメータを選択する。
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KAKENHI-PROJECT-61550243
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61550243
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ストレスホルモンによる場(神経回路)の変化とマイクログリアの相互作用
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母子乖離操作により慢性ストレスを付加したマウスを成体の時点で研究した結果、以下の知見を得た。雄の母子乖離マウスにおいて、(1)母子乖離マウスでは体性感覚野における神経活動が亢進しており、それに相関して知覚閾値の低下がみられた。(2)同部位ではグルタミン酸の過剰放出が起こっていた。(3)ホームケージにいるときでもストレスホルモン(コルチコステロン)の分泌が増加していた。(4)急性ストレスの追加負荷により、通常みられるコルチコステロンの一過性上昇が、母子乖離マウスでは消失していた。一方、同時に計測したグルタミン酸の濃度は、母子乖離マウスで顕著に増加していた。(5)急性ストレス負荷後、対照群に比べ一部のグルタミン酸受容体の発現が過剰増加していた。(6)同マウスをin vivo imaging法により生きたまま観察すると、マイクログリアの動態が変化していることが分かった。以上の結果は2報の論文として執筆中である。また、雌の母子乖離マウスにおいて(1)母子乖離マウスは妊娠・出産に至る割合が低下し、かつ、仔育てを失敗する(育児放棄により仔が死亡する)割合が増加していた。(2)母子乖離マウスを母親にもつ仔では、体重が減少傾向にあり、血中コルチコステロン濃度が有意に増加していた。(3)母子乖離マウスを母親にもつ仔の行動パターンに異常が見られた。(4)(1)の知見は世代間で伝搬する傾向があり、母子乖離マウスの娘や孫でも妊娠・出産率の低下や育児放棄率の増加がみられた。以上の結果は1報の論文として執筆中である。24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度が最終年度であるため、記入しない。本年度は母子解離モデル(慢性ストレス動物)を利用し、(1)マイクログリアと神経の2重染色モデルマウスを用いたin vivo imagingの実験系を確立する。(2)2重染色マウスで母子解離モデルを作成し、慢性ストレス動物でマイクログリアが神経回路に与える影響について観察する(3)経血管的に薬理的操作を行い、(2)で観察されたマイクログリアーシナプス連関がどのように変化するかを検討する。(4)(3)の結果を踏まえ、行動実験を組み合わせることで、ストレスが引き起こす場の変化と個体としての影響を検証する-という計画のうち、(1)(2)の項目を遂行する計画であった。レンチウィルスの作成および発現実験、Iba-1EGFPマウスを利用した2重染色モデルの確立はほぼ完了した。24年度は確立したモデルでin vivo imagingを行う予定である。また、計画全体がやや遅れていたため、先行して(3)(4)の計画を遂行するための予備実験を行った。結果、慢性ストレスモデルマウスでは、自由行動時のグルタミン酸放出量が優位に上昇していることが分かった。mRNAの解析では、平常状態(home cageに十分時間順化したのち脳標本を採取)では見られない変化が、刺激入力(感覚刺激を強制的に入力した後で体性感覚野を採取)で顕著化することが分かった(論文投稿準備中)。この動物における、刺激環境下でのホルモン動態は来年度初頭に解析する予定であり、その結果を踏まえ、in vivo imagingによる形態的変化と液性因子の関連を検証する予定である。母子乖離操作により慢性ストレスを付加したマウスを成体の時点で研究した結果、以下の知見を得た。雄の母子乖離マウスにおいて、(1)母子乖離マウスでは体性感覚野における神経活動が亢進しており、それに相関して知覚閾値の低下がみられた。(2)同部位ではグルタミン酸の過剰放出が起こっていた。(3)ホームケージにいるときでもストレスホルモン(コルチコステロン)の分泌が増加していた。(4)急性ストレスの追加負荷により、通常みられるコルチコステロンの一過性上昇が、母子乖離マウスでは消失していた。一方、同時に計測したグルタミン酸の濃度は、母子乖離マウスで顕著に増加していた。(5)急性ストレス負荷後、対照群に比べ一部のグルタミン酸受容体の発現が過剰増加していた。(6)同マウスをin vivo imaging法により生きたまま観察すると、マイクログリアの動態が変化していることが分かった。以上の結果は2報の論文として執筆中である。また、雌の母子乖離マウスにおいて(1)母子乖離マウスは妊娠・出産に至る割合が低下し、かつ、仔育てを失敗する(育児放棄により仔が死亡する)割合が増加していた。(2)母子乖離マウスを母親にもつ仔では、体重が減少傾向にあり、血中コルチコステロン濃度が有意に増加していた。(3)母子乖離マウスを母親にもつ仔の行動パターンに異常が見られた。(4)(1)の知見は世代間で伝搬する傾向があり、母子乖離マウスの娘や孫でも妊娠・出産率の低下や育児放棄率の増加がみられた。以上の結果は1報の論文として執筆中である。24年度が最終年度であるため、記入しない。東日本大震災および原子力発電所事故の影響により、年度開始当初に電力供給不足が起き、実験動物の放棄を余儀なくされた。これにより、実験動物の繁殖が遅れた。また、ウィルス作成を担当していた大学院生が心労から失踪したため、10月以降ウィルス作成を最初からやり直すことになった。24年度が最終年度であるため、記入しない。上記に示した今年度の遅れは、年度末までにほぼ取り戻すめどがついた。しかし現在、来年度のin vivo imagingを行う場所の確保でやや問題がある。複数施設に打診することで解決できる予定である。
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KAKENHI-PUBLICLY-23111504
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-23111504
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ストレスホルモンによる場(神経回路)の変化とマイクログリアの相互作用
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また、in vivo imaging以外の研究計画も予定しているため、行動薬理実験を中心とした研究を並行して進めることで、ある程度、当初予定の成果があげられると考えられる。
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KAKENHI-PUBLICLY-23111504
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外来がん化学療法を受ける在宅高齢がん患者世帯の治療継続アセスメントシートの開発
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平成30年度は、調査2をの分析を実施した。訪問看護師6名へのインタビュー調査から、訪問看護導入からの支援として,【在宅療養継続に向けた介護力の把握】【多職種連携による情報共有・方向性の統一】【療養者・家族に対する看取りの意向確認】【日々の在宅介護が続けられる状況に導く】【医療職者不在の療養生活における家族への安心感の提供】【遺される家族の糧となるよう療養生活の中での希望を叶える】の6カテゴリーであった。また,臨死期での支援では【臨死期の告知に向けて医師と連携し,タイミングを計る】【家族が納得するための臨死期の説明方法を工夫する】の2カテゴリーであった。そして,療養者の死後の支援は【遺族の思いを聞く機会を設ける】【遺族の思いを受け止める】の2カテゴリーであった。患者と共に家族介護者を支える全人的サポートを実施していた。さらに、がん拠点病院の後方支援病院となる地域病院看護師への質問調査から、看護師の困難感として治療期のがん患者にかかわる機会が少なく、対応に困難感を感じていることが明らかとなった。治療期のがん患者気関わる機会が少ないからこそ看護師は、治療・疼痛・症状のケアに関する困難感を持ち、治療期といえども看取りを見据えていると考える。医師や多職種チーム実働でのコミュニケーションに困難感を感じていた。一方、患者の家族が介護負担感を予見し自宅への退院を阻む現状は、家族の不安が考えられるまた、調査3の継続として旧社会主義国家のがん看護に関する治療期から終末期の支援システムの現状を調査予定であったが、災害により次年度へ繰り越しとなった。また、病気と治療により生活の侵害をされている患者に対するアセスメントシートを開発中である。調査2の訪問看護師や病院看護師へのインタビュー及びアンケート調査はおおむね終了した。しかし、予定していた調査3の継続として旧社会主義国家のがん看護に関する治療期から終末期の支援システムの現状を調査予定で調整、病院への依頼を行ったていたが、関西国際空港の豪雨災害により中止となった。そのため次年度へ繰り越する。また、病気と治療により生活の侵害をされている患者に対する質問紙の開発に時間を要している。昨年度繰り越された調査3を実施するための調整が終了し、旧社会主義国家のシステムを調査するためにハンガリーの病院とがん看護教育の現状を知るために渡欧する予定である。また、作成したアセスメントシートの内容妥当性の調査を行う。さらに、作成したアセスメントシート外来化学療法室の看護師に使用してもらい、その効果を評価する外来がん化学療法を受けるがん患者・家族は、副作用だけでなく医療者不在の生活の不安の中で自分らしさが失われていく現実と向き合いながら治療継続を行っている。そこで、平成28年度は、がん高齢者世帯に特化して感情コーピング・問題解決コーピングとサポート体制の要素を抽出するため、国内外の文献を精読した。それぞれの世帯でのコーピングには家族関係が影響しており、共闘するパターンと分離するパターンに二分する傾向が明らかになった。しかし、共闘パターンには介護負担が、分離パターンには患者のQOLに影響があることが示唆された。がんという慢性疾患とその治療となる外来化学療法が、患者とその家族の生活のどの領域を侵害しているかを明らかにするために尺度を用いて調査するための準備を行っている。また、在宅療養高齢者世帯の生活上の困難と生活の見極めについて訪問看護師に半構造化面接を実施し看護師の知見を明らかにした。看護師は、在宅療養を継続するために必要な支援と介護力の状況を見極めながら、できるだけ在宅療養が継続できるように関わりを続けていた。さらに、医療処置を必要とする高齢療養者の配偶者と主介護者に対し面接調査を実施し、配偶者が感じる困難感を明らかにした。配偶者は、医療処置に対し自信を持ち、医療者への信頼と処置を代行する副介護者の存在が療養継続のカギになっていた。自身の加齢に伴う変化により健康管理と対応の折り合いが取れなくなった時、在宅療養が限界になることが示唆された。主介護者においては、家族への愛情を基盤に覚悟を持って接し寿命に関わるリスクを排除することで急変リスクを低下させていた。コミュニティにおいてのサポートも在宅療養継続にかかせない資源となっていた。国内外の論文を取り寄せ精読しているが、予定の半分ほどしかまとめれていない。訪問看護師、在宅療養者の家族(遺族)のインタビューは終了したが、分析に時間を要している。平成29年度は、調査3:イギリスのがん看護に関する治療期から終末期に至る在宅医療の公的支援システムの現状についての実態調査を実施した。Macmillan Cancer Supportの本部とMacmillan Cancer Information and Support Service at Croydon UniversityHospitalの見学を行い、Macmillan Cancer Supportの活動とNational Hearth Service Hospitalの現状を知ることができた。がん患者へのサポートは医療チームで構成される。これは、日本と同様に医師、精神腫瘍医、看護師(専門看護師やNurse Prescriberを含む)、薬剤師、リハビリテーション関連技師、精神療法士、臨床心理士等である。また、地域においては、メンタルヘルスへの支援を重要視していると感じた。Macmillan Nurseのように専門特化した看護師の育成は、公的な助成とともに基金としての資金面の助成が必要である。また、現任教育を担う専門看護師の配置を病院単位でなく二次医療圏などの地域性をもって配置する必要性がある。さらに、患者が外来へ行くだけでなく、在宅医療を充実させるためにもデリバリーの専門治療と基盤となる在宅医療の連携の在り方を見直す必要性がある。
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KAKENHI-PROJECT-16K12071
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K12071
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外来がん化学療法を受ける在宅高齢がん患者世帯の治療継続アセスメントシートの開発
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今回は、保健医療システムが国営システムであるイギリスでの視察を行ったが、民間保険システムであるアメリカやシンガポール、日本と同様の社会保険システムであるドイツや東欧諸国のがん医療システムやがん看護について知る必要がある。また、Bangor大学でカリキュラムを確認したのちに、ウエールズのホスピスを見学し、管理者から設立主体などの説明を聞き、住民からの基金で設立されているが、絶対数はまだ足りないということが明らかになった。調査1:国内外の高齢者・配偶者のコーピングについて文献検討を行った。また、調査2:在宅療養高齢者世帯の訪問看護師の半構造化面接は終了している。調査3を先行させたため、分析は今年度中に行う。また、調査3:イギリスのがん看護に関する実態調査は終了し、知見を得ることができた。平成30年度は、調査2をの分析を実施した。訪問看護師6名へのインタビュー調査から、訪問看護導入からの支援として,【在宅療養継続に向けた介護力の把握】【多職種連携による情報共有・方向性の統一】【療養者・家族に対する看取りの意向確認】【日々の在宅介護が続けられる状況に導く】【医療職者不在の療養生活における家族への安心感の提供】【遺される家族の糧となるよう療養生活の中での希望を叶える】の6カテゴリーであった。また,臨死期での支援では【臨死期の告知に向けて医師と連携し,タイミングを計る】【家族が納得するための臨死期の説明方法を工夫する】の2カテゴリーであった。そして,療養者の死後の支援は【遺族の思いを聞く機会を設ける】【遺族の思いを受け止める】の2カテゴリーであった。患者と共に家族介護者を支える全人的サポートを実施していた。さらに、がん拠点病院の後方支援病院となる地域病院看護師への質問調査から、看護師の困難感として治療期のがん患者にかかわる機会が少なく、対応に困難感を感じていることが明らかとなった。治療期のがん患者気関わる機会が少ないからこそ看護師は、治療・疼痛・症状のケアに関する困難感を持ち、治療期といえども看取りを見据えていると考える。医師や多職種チーム実働でのコミュニケーションに困難感を感じていた。一方、患者の家族が介護負担感を予見し自宅への退院を阻む現状は、家族の不安が考えられるまた、調査3の継続として旧社会主義国家のがん看護に関する治療期から終末期の支援システムの現状を調査予定であったが、災害により次年度へ繰り越しとなった。また、病気と治療により生活の侵害をされている患者に対するアセスメントシートを開発中である。調査2の訪問看護師や病院看護師へのインタビュー及びアンケート調査はおおむね終了した。
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KAKENHI-PROJECT-16K12071
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K12071
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LEOにおける原子状酸素/紫外線の相対強度がシナジーにおよぼす影響
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本研究は、独自に開発したCO_2レーザーによるレーザーデトネーション型原子状酸素発生装置に紫外線光源を取り付け、高度300500kmの低地球軌道環境(10w Earth orbit : LEO)を模擬し、原子状酸素と紫外線の同時照射効果を詳細に解明することを目的としたものである。試料としてはMLIのモデル表面としてポリイミドフィルムを選び、5eVの運動エネルギーを有する原子状酸素と172nmの紫外線を照射した前後で表面状態の変化をX線光電子分光法により大気曝露なしの状態で検証した。また、原子状酸素と紫外線の相対強度を連続的に変化させ、原子状酸素と紫外線の複合照射効果(シナジー)におよぼす原子状酸素/紫外線の強度比の影響を明らかにした。平成14年度には、原子状酸素および紫外線を照射したときの反応のメカニズムを解明するために、質量分析管を使用して反応生成物の同定を行った。その結果、原子状酸素照射後の試料に紫外線を照射すると反応生成物としてCOが検出された。また、X線光電子分光法により原子状酸素照射後にはO量が増加し、同じ試料に対して紫外線を照射後には原子状酸素未照射に近い状態に戻ることが確認された。このことから、原子状酸素照射によって吸着されたO原子が紫外線によってCOとなり脱離したと考えられる。また、原子状酸素/紫外線の相対強度比の影響については平成13年度の結果を基に、紫外線の相対強度比を1桁増加させて実験を行った。その結果、紫外線の相対強度が高い場合にはポリイミドのエロージョンレートは原子状酸素のみを照射した場合に比べて約34倍に増大することが確認された。本研究により、宇宙実験では制御が困難な原子状酸素と紫外線の相対強度比の影響を地上模擬実験により明確化することができた。本研究は、当研究グループで独自に開発した炭酸ガスレーザーによるレーザーデトネーション型原子状酸素発生装置に紫外線光源を取り付け、高度300500kmの低地球軌道環境(low Earth orbit : LEO)をシミュレートし、原子状酸素と紫外線の同時照射効果を詳細に解明することを目的としている。試料としてはMLIのモデル表面としてポリイミドフィルムを選び、5eVの運動エネルギーを有する原子状酸素と紫外線を照射した前後で表面状態の変化をX線光電子分光法を用いて大気曝露なしの状態で検証した。また、原子状酸素と紫外線の相対強度を連続的に変化させ、原子状酸素と紫外線の複合照射効果(シナジー)におよぼす原子状酸素/紫外線の強度比の影響を明らかにした。平成13年度には、紫外線としてエネルギーの高い172nmの波長域の真空紫外線を使用した。その結果、(1)原子状酸素のみ照射した場合、ポリイミドのエロージョンレートは原子状酸素の入射角に対してcos則に従うことが判った。(2)原子状酸素/紫外線の相対強度比とエロージョンレートとの間には相関関係があり、原子状酸素に対する紫外線の相対強度が低い場合には、エロージョンレートは原子状酸素のみ照射したときに比べて減少し、紫外線の相対強度が高い場合には逆に増加することが明らかになった。また、紫外線の影響は原子状酸素により材料表面が酸化された場合にのみ生じることが、X線光電子分光法による表面解析により明らかになった。これにより、宇宙実験では制御できない原子状酸素と紫外線の相対強度比の影響を地上模擬実験により明確化することができた。これらの結果から本年度の当初の目標は十分に達成されており、来年度の研究を遂行するにあたり何ら問題はないと考えられる。本研究は、独自に開発したCO_2レーザーによるレーザーデトネーション型原子状酸素発生装置に紫外線光源を取り付け、高度300500kmの低地球軌道環境(10w Earth orbit : LEO)を模擬し、原子状酸素と紫外線の同時照射効果を詳細に解明することを目的としたものである。試料としてはMLIのモデル表面としてポリイミドフィルムを選び、5eVの運動エネルギーを有する原子状酸素と172nmの紫外線を照射した前後で表面状態の変化をX線光電子分光法により大気曝露なしの状態で検証した。また、原子状酸素と紫外線の相対強度を連続的に変化させ、原子状酸素と紫外線の複合照射効果(シナジー)におよぼす原子状酸素/紫外線の強度比の影響を明らかにした。平成14年度には、原子状酸素および紫外線を照射したときの反応のメカニズムを解明するために、質量分析管を使用して反応生成物の同定を行った。その結果、原子状酸素照射後の試料に紫外線を照射すると反応生成物としてCOが検出された。また、X線光電子分光法により原子状酸素照射後にはO量が増加し、同じ試料に対して紫外線を照射後には原子状酸素未照射に近い状態に戻ることが確認された。このことから、原子状酸素照射によって吸着されたO原子が紫外線によってCOとなり脱離したと考えられる。また、原子状酸素/紫外線の相対強度比の影響については平成13年度の結果を基に、紫外線の相対強度比を1桁増加させて実験を行った。その結果、紫外線の相対強度が高い場合にはポリイミドのエロージョンレートは原子状酸素のみを照射した場合に比べて約34倍に増大することが確認された。本研究により、宇宙実験では制御が困難な原子状酸素と紫外線の相対強度比の影響を地上模擬実験により明確化することができた。
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KAKENHI-PROJECT-13750842
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13750842
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金属と絶縁体のヘテロ接合超格子による光・電子集積化デバイス用高機能材料の研究
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金属/絶縁体/半導体超格子を用いた電子デバイス、光デバイス、およびそれらの融合デバイスをシリコン基板上に形成し高機能集積回路を構成することを目的とし、材料系として、ヘテロ接合のポテンシャル障壁が高く、薄膜において顕著な量子効果が現れるため高機能デバイスに適していると考えられるCaF2/CdF2およびSi/CaF2からなる超格子構造の高精度結晶成長法の研究を行い、この結果に基づいて共鳴トンネル素子を形成するとともに、これらの素子と集積して高機能集積回路を形成するためのトランジスタとして、金属電極からなる極短チャネルショットキー接合MOSFETを作製した。極薄膜結晶成長では、イオン化ビーム結晶成長法を用い、10^5の非常に大きなピーク/バレー比を持つ共鳴トンネルダイオード構造の結晶成長に成功した。またSi基板上にSiO2をマスクとして形成した数百ナノメートルサイズの微小面積への成長により、成長層の結晶性が大幅に向上することを見出し、室温できわめて再現性・均一性のよい良好な微分負性抵抗特性をもつ共鳴トンネルダイオードを得た。一方、これらの素子と集積するためのPtSiを用いたp形ショットキーソース/ドレインSOI-MOSFETおよびErSi2を用いたn形ショットキーソース/ドレインSOI-MOSFETを作製し、いずれも25ナノメートルの極短チャネル素子において室温トランジスタ動作を達成した。またSOI層の薄膜化によりon/off比が大幅に向上することを明らかにした。p形では、共鳴トンネル素子との集積に適した構造として、垂直構造のショットキーMOSFETを作製し、チャネル幅8nm、チャネル長50nmの極微細素子において室温トランジスタ動作を達成した。以上により、シリコン基板上の高機能量子効果素子及び集積回路の基本的要素となる素子の構造作製プロセスと基本動作を得ることができた。金属/絶縁体/半導体超格子を用いた電子デバイス、光デバイス、およびそれらの融合デバイスをシリコン基板上に形成し高機能集積回路を構成することを目的とし、材料系として、ヘテロ接合のポテンシャル障壁が高く、薄膜において顕著な量子効果が現れるため高機能デバイスに適していると考えられるCaF2/CdF2およびSi/CaF2からなる超格子構造の高精度結晶成長法の研究を行い、この結果に基づいて共鳴トンネル素子を形成するとともに、これらの素子と集積して高機能集積回路を形成するためのトランジスタとして、金属電極からなる極短チャネルショットキー接合MOSFETを作製した。極薄膜結晶成長では、イオン化ビーム結晶成長法を用い、10^5の非常に大きなピーク/バレー比を持つ共鳴トンネルダイオード構造の結晶成長に成功した。またSi基板上にSiO2をマスクとして形成した数百ナノメートルサイズの微小面積への成長により、成長層の結晶性が大幅に向上することを見出し、室温できわめて再現性・均一性のよい良好な微分負性抵抗特性をもつ共鳴トンネルダイオードを得た。一方、これらの素子と集積するためのPtSiを用いたp形ショットキーソース/ドレインSOI-MOSFETおよびErSi2を用いたn形ショットキーソース/ドレインSOI-MOSFETを作製し、いずれも25ナノメートルの極短チャネル素子において室温トランジスタ動作を達成した。またSOI層の薄膜化によりon/off比が大幅に向上することを明らかにした。p形では、共鳴トンネル素子との集積に適した構造として、垂直構造のショットキーMOSFETを作製し、チャネル幅8nm、チャネル長50nmの極微細素子において室温トランジスタ動作を達成した。以上により、シリコン基板上の高機能量子効果素子及び集積回路の基本的要素となる素子の構造作製プロセスと基本動作を得ることができた。金属/絶縁体/半導体超格子を用いた電子デバイス、光デバイス、およびそれらの融合デバイスをシリコン基板上に形成し高機能集積回路を構成することを目的とし、本年度は、材料系としてヘテロ接合のポテンシャル障壁が高く薄膜において顕著な量子効果が現れるため高機能デバイスに適していると考えられるCaF2/CdF2およびSi/CaF2からなる超格子構造の高精度結晶成長法の研究を行い、この結果に基づいて共鳴トンネル素子を形成した。まず、これらの極薄膜結晶成長が基板の結晶テラス幅に強く依存することを見出し、面方位(111)からのオフ角の異なる基板に対して、熱処理によってテラス幅の均一化を行う条件を明らかにし、熱処理した基板上に平坦で結晶性のよいCaF2極薄膜を得るための最適結晶成長条件を把握した。引き続いて、CaF2極薄膜上にSiあるいはCdF2の極薄層およびこれらの半導体/絶縁体や絶縁体/絶縁体の数層からなる構造を成長する条件を明らかにした。得られた結晶成長条件を用いて二重障壁共鳴トンネルダイオードを作製し、Si/CaF2およびCaF2/CdF2のいずれにおいても再現性のよい微分負性抵抗特性を得た。特にCaF2/CdF2共鳴トンネルダイオードにおいてはピーク/バレー比10^510^6と、従来の半導体ヘテロ接合では考えられない極めて大きな値を実現した。また、電界制御型量子効果素子の基本となるシリコン/フッ化カルシウム極薄多層構造によるトンネル制御型電界効果トランジスタを作製し、三端子動作を達成するとともに、短チャネル構造に拡張するための作製プロセスを明らかにした。以上により、シリコン基板上の高機能量子効果素子及び集積回路の基本的要素となる素子の構造作製プロセスと基本動作を得ることができた。
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KAKENHI-PROJECT-11555084
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11555084
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金属と絶縁体のヘテロ接合超格子による光・電子集積化デバイス用高機能材料の研究
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金属/絶縁体/半導体超格子を用いた電子デバイス、光デバイス、およびそれらの融合デバイスをシリコン基板上に形成し高機能集積回路を構成することを目的とし、材料系として、ヘテロ接合のポテンシャル障壁が高く、薄膜において顕著な量子効果が現れるため高機能デバイスに適していると考えられるCaF2/CdF2およびSi/CaF2からなる超格子構造の高精度結晶成長法の研究を行い、この結果に基づいて共鳴トンネル素子を形成するとともに、これらの素子と集積して高機能集積回路を形成するためのトランジスタとして、金属電極からなる極短チャネルショットキー接合MOSFETを作製した。極薄膜結晶成長では、イオン化ビーム結晶成長法を用いて、Si基板上にSiO2をマスクとして形成した数百ナノメートルサイズの微小面積への成長により、成長層の結晶性が大幅に向上することを見出し、これによって得られた結晶成長条件を用いて二重障壁共鳴トンネルダイオードを作製し、室温できわめて再現性・均一性のよい良好な微分負性抵抗特性を得た。また、PtSiを用いたp形ショットキーソース/ドレインSOI-MOSFETおよびErSi2を用いたn形ショットキーソース/ドレインSOI-MOSFETを作製し、いずれも25ナノメートルの極短チャネル素子において室温トランジスタ動作を達成した。またSOI層の薄膜化によりon/off比が大幅に向上することを明らかにした。さらにp形では、共鳴トンネル素子との集積に適した構造として、垂直構造のショットキーMOSFETを作製し、チャネル幅8nm、チャネル長50nmの極微細素子において室温トランジスタ動作を達成した。以上により、シリコン基板上の高機能量子効果素子及び集積回路の基本的要素となる素子の構造作製プロセスと基本動作を得ることができた。
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KAKENHI-PROJECT-11555084
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11555084
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東日本における初期仏教寺院導入期の考古学的研究
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寺谷廃寺は埼玉県比企郡にある、東日本最古の寺院である。寺谷廃寺の付近には、大型古墳が存在しない。寺谷廃寺が造営された理由は、安閑天皇の時代に横渟屯倉が設置されたことと関係があろう。7世紀前半に推古朝が屯倉の殖産として、羽尾に須恵器の窯が、平谷に須恵器と瓦の窯が作られ、寺谷に寺院を建立して、先進的な仏教文化を最も早く導入したのであろう。その導入に関わったのは、『聖徳太子伝暦』に登場する、633年に武蔵国造になった物部連(直)兄麻呂であろう。当該年度の調査は、大学院生2名を研究協力者として、埼玉県埋蔵文化財調査事業団が保有する寺谷廃寺出土瓦の分析と、駒澤大学が発掘した窯跡・寺跡出土瓦のうち未発表分の実測、拓本、写真をとり、『駒沢史学』第79号に掲載した。この調査を通して寺谷廃寺の創建期の平瓦が歪んでいることは、瓦生産に須恵器工人が関わったために高温焼成になったためだと想定できた。この調査、発表はこれまでの資料を充実させると共に、次年度行うまとめを考える材料になった。また、寺谷廃寺の軒丸瓦の特徴が素弁で、中房が大きく、蓮子が1+4である資料を探す作業をした。地域は飛鳥地域および飛鳥時代の瓦出土地を、報告書や資料集を中心に集成した。また韓国については、国立扶餘文化財研究所、国立扶餘博物館、忠南大学等で出した報告書や図録等を中心に集成したが、研究書、書籍なども対象にした。寺谷廃寺出土瓦の系譜の一端が推定できるようになってきた。3月には大学院生2名と、国立慶州博物館での百済系瓦の調査、慶州の寺跡調査、国立中央博物館、国立公州博物館、国立扶餘博物館での百済瓦の調査を行った。今回の調査で判明したことは、叩き文様は寺谷廃寺が正格子・斜格子・格子叩きの組み合わせ文で有るのに対して、飛鳥では平行叩きが主体で、扶餘でも平行叩きがほとんどである点が判明したことである。今回の調査では軒丸瓦の瓦当に丸瓦の接合方法を検討することであったが、実見した資料では細部まで分からず今後の課題となった。当該年度の調査は、埼玉県埋蔵文化財調査事業団が所蔵する寺谷廃寺出土瓦を借用し、大学院生3名を研究協力者として、今まで集成した資料収集をさらに充実するための基礎資料とした。実測、拓本、写真、胎土の確認・細分を行った。また、寺谷廃寺出土瓦は、時期ごとに胎土が異なることから、今まで集成した資料の胎土拡大写真を撮影して、今後の基礎資料とする作業を行った。これにより、実測図、拓本とともに寺谷廃寺出土瓦の基礎資料が提示できる。また、最終年度でもあり研究成果をまとめを『駒沢史学』80号(2014.3)に「埼玉県寺谷廃寺から勝呂廃寺へー素弁軒丸瓦から棒状子葉軒丸瓦へー」として執筆した。比企郡北部の寺谷廃寺の素弁軒丸瓦が、棒状子葉単弁軒丸瓦に変遷し、それが入間郡北部の勝呂廃寺創建瓦に使用され、比企郡南部に分布することに注目し、入間郡の物部直氏が関わったと想定した。また、寺谷廃寺の創建については、やはり物部(直)氏が関わったと想定されている見解があることから、安閑紀武蔵国に置かれた四処屯倉の一つ、横渟屯倉に近接していることも考慮して建立の歴史的背景を想定した。3月には昨年に引き続いて韓国慶尚道地域で百済系譜の瓦の調査を行った。その目的は、百済中央部(公州・扶余)では平行叩きが主体で、寺谷廃寺は格子・斜格子叩きであることから、百済から周辺部を経由して列島へ渡ってきたのではないかと想定した。今回は釜山・慶州・大邱を調査した。瓦当文様では類似するものの、叩き技法では共通する資料は確認出来なかった。寺谷廃寺は埼玉県比企郡にある、東日本最古の寺院である。寺谷廃寺の付近には、大型古墳が存在しない。寺谷廃寺が造営された理由は、安閑天皇の時代に横渟屯倉が設置されたことと関係があろう。7世紀前半に推古朝が屯倉の殖産として、羽尾に須恵器の窯が、平谷に須恵器と瓦の窯が作られ、寺谷に寺院を建立して、先進的な仏教文化を最も早く導入したのであろう。その導入に関わったのは、『聖徳太子伝暦』に登場する、633年に武蔵国造になった物部連(直)兄麻呂であろう。基礎資料集成として、高橋史朗氏所蔵寺谷廃寺資料と発掘調査資料で未実測の瓦を実測した。高橋史朗氏の軒丸瓦は寺谷廃寺出土の中でも最大で、多くの情報を得ることが出来た。発掘調査未実測の瓦は、叩き文様が確認できる資料を特に選び行った。これによりほぼ寺谷廃寺の平瓦の特徴が判明してきた。しかし、今後寺谷廃寺A地点の瓦の実態調査が必要であることが再確認された。
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KAKENHI-PROJECT-23520927
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23520927
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東日本における初期仏教寺院導入期の考古学的研究
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今まで胎土分析していなかった、寺谷廃寺A地点の瓦を2名の所蔵者から提供して頂き、また、新たに寺谷廃寺B地点と平谷1号窯の瓦と共に胎土分析を行った。寺谷廃寺B地点の瓦はすでに前回分析したが、今回肉眼的に明らかにB地点の特色と想定できる胎土1a類について分析した。平谷1号窯については、窯で最終床面に分布している最終焼成品を選び、どこへ供給したか検討する目的で分析した。胎土分析の結果を肉眼的胎土観察と比較を行い、両者の関係について検討したが、両方の分類には大きな違いはなかった。この結果から平谷窯跡と寺谷廃寺A・B地点の需給関係について検討したが、分析結果と共に『駒澤考古』に掲載した。2月16日22にまで、滑川町教育委員会とともに寺谷廃寺B地点で最も高く、建物があったのではないかと推定されていた地域の地形測量調査を行い、寺院跡の痕跡を検討した。3月20日24日まで韓国へ行き、百済瓦との瓦当文様、技法との比較検討を行った。特に類似する国立扶餘文化財研究所が発掘調査した軍守里廃寺の瓦の実見は大きな成果であった。特に叩き技法の違いは今後の研究に資するものがあった。寺谷廃寺は埼玉県比企郡滑川町にある、東日本最古の寺院跡である。寺谷廃寺の付近には、大型古墳が存在しないことから、なぜこの地に造営されたかを探ることを目的とした。寺谷廃寺は、近接する平谷窯跡から瓦が運ばれており、平谷窯跡出土の須恵器から、7世紀前半に創建された。創建瓦は素弁軒丸瓦が3種あり、中心の中房には1+4の蓮子があり、飛鳥寺にはない様式である。類例は百済に多く、百済からの渡来人との関連が想定されている。百済の瓦は平行叩きが主体であるが、寺谷廃寺では格子系の叩きがほとんどであることから、今後もその関係は検討が必要である。寺谷廃寺が造営された理由は、安閑天皇の時代に横渟屯倉が設置されたことと関係があろう。7世紀前半に推古朝が屯倉の殖産として、羽尾・花気に須恵器の窯が、平谷に須恵器と瓦の窯が作られ、寺谷に寺院を建立して、先進的な仏教文化を最も早く導入したのであろう。その導入に関わったのは、『聖徳太子伝暦』に登場する、633年に武蔵国造になった物部連(直)兄麻呂の可能性がある。寺谷廃寺では時期が下った棒状子葉軒丸瓦という単弁系の瓦が出土するが、東松山市大谷瓦窯跡や坂戸市勝呂廃寺の創建瓦とし使用された。勝呂廃寺は入間郡の郡寺と想定されており、8世紀後半にいた入間郡の大伴部赤男、物部直広成のどちらかが関わっていたと考えられる。物部直広成と考える立場で、寺谷廃寺を創建した物部と連なると想定している。寺谷廃寺から勝呂廃寺へ、また、その間に棒状子葉軒丸瓦という軒丸瓦が分布することが、この勢力の範囲にあり、そこに南比企丘陵窯跡群が作られ、国分寺の瓦が生産されたのであろう。考古学寺谷廃寺、あるいは平谷窯跡出土と類似する瓦を探索しているが、文様の点では従来からいわれているように、飛鳥地域、あるいは韓国扶餘地域の資料との類似点は想定できてきたものの、技法の検討は遅れている。叩き技法については様相が判明してきたが、軒丸瓦の瓦当と丸瓦の接合方法は、良好な剥離面を持つ資料を見ていないので十分な検討が出来ていない。寺谷廃寺の軒丸瓦は、良好な剥離面が残っているので、もしそのような資料を実見できれば系譜を考える材料になることであろう。また、平谷窯跡の溝付排煙口型窯の構造の系譜については宇治市隼上り窯跡との関連が強くなってきたことまで想定できたが、類例がないことから断定が出来ていない。しかし、寺谷廃寺・平谷窯跡を考えるための資料が順次整ってきている。昨年度同様、寺谷廃寺、平谷窯跡の瓦の検討からは、日韓の軒丸瓦の類似点は確認出来たものの、技法の検討は遅れている。しかし、現段階で寺谷廃寺・平谷窯跡の出土瓦の資料化が進んだ。また、武蔵における素弁軒丸瓦は、寺谷廃寺と羽尾窯跡、馬騎の内廃寺と末野窯跡に対応しており、前者が陸路で、後者が荒川による水運で埼玉古墳群の首長層とお互い結びついていると考えた。さらに寺谷廃寺は、武蔵において安閑紀に置かれた四処屯倉の一つ、横渟屯倉に近く、寺院建立が屯倉と関わる可能性も想定できた。
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KAKENHI-PROJECT-23520927
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23520927
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骨格筋におけるグルココルチコイドレセプターとmTORのクロストークの機構と意義
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グルココルチコイドレセプターは骨格筋において複数の転写因子の発現誘導を介して多彩な標的遺伝子の発現を制御すること、その結果引き起こされるタンパク質異化促進と同化抑制が、筋萎縮機構の両翼を担うことを示した。さらに、生理量を超えた分岐鎖アミノ酸の経口投与が、これら標的遺伝子群の転写活性化をプロモーターレベルで抑制し、グルココルチコイドによる筋萎縮の発症を予防することを動物個体レベルで実証した。本研究は、骨格筋代謝、骨格筋量調節における内分泌ホルモンシグナルと栄養センシングのクロストークならびに副腎皮質グルココルチコイドレセプター(GR)とその下流転写因子ネットワークによる遺伝子発現制御の意義に関する理解を進展させ、グルココルチコイドが治療薬として用いられる際の副作用である筋萎縮を克服する方法の開発に貢献できる分子基盤を構築することを目的とした。生理量の内因性グルココルチコイドおよび、薬理量投与したグルココルチコイドが、マウス骨格筋(腓腹筋、ヒラメ筋、前脛骨筋、長趾伸筋、足底筋)において惹起する遺伝子発現変化を同定し、それらの制御機構と生理的・病態生理的意義を、骨格筋特異的GRノックアウトマウスと対照マウスの比較により解析した。また、グルココルチコイド筋萎縮モデル動物において、骨格筋mTORC1活性を分岐鎖アミノ酸の経口投与によって一過性に上昇させることが、筋萎縮病態とその発症メカニズムに与える影響を解析した。その結果、骨格筋GRは転写因子Kruppel-like factor 15 (KLF15)、Forkhead box O (FoxO)1, 3、の発現を誘導するとともに、これら下流転写因子と協調してGR転写カスケードを形成し、多彩な標的遺伝子の転写を一括して制御することが示された。これら標的遺伝子群の機能は、タンパク質分解系、アミノ酸分解系、といった異化促進機能および、mTORC1阻害によるタンパク質翻訳抑制系による同化抑制機能に大別され、骨格筋量を減少させる機構の両翼を担っていると考えられる。さらに、mTORC1活性化はGRによるこれら標的遺伝子群の転写活性化をプロモーター結合レベルで抑制し、グルココルチコイドによる筋萎縮の発症を予防することを動物レベルで実証した。グルココルチコイドレセプターは骨格筋において複数の転写因子の発現誘導を介して多彩な標的遺伝子の発現を制御すること、その結果引き起こされるタンパク質異化促進と同化抑制が、筋萎縮機構の両翼を担うことを示した。さらに、生理量を超えた分岐鎖アミノ酸の経口投与が、これら標的遺伝子群の転写活性化をプロモーターレベルで抑制し、グルココルチコイドによる筋萎縮の発症を予防することを動物個体レベルで実証した。本研究は、骨格筋代謝、骨格筋量調節における内分泌ホルモンシグナルと栄養センシングのクロストークならびに副腎皮質グルココルチコイドレセプター(GR)とその下流転写因子ネットワークによる遺伝子発現制御の意義に関する理解を進展させ、グルココルチコイドが治療薬として用いられる際の副作用である筋萎縮を克服する方法の開発に貢献できる分子基盤を構築することを目的としている。本年度は、骨格筋特異的GRノックアウト(GRmKO)マウスにおいて、mTORC1活性を正負に調整した状況下でDEXを経腹腔投与し、経時的に骨格筋(前脛骨筋、腓腹筋、ヒラメ筋)細胞から核タンパク質およびRNAを抽出してGRと相互作用している因子および、GRの翻訳後修飾(リン酸化、アセチル化、ユビキチン化、SUMO化等)の異同を質量分析法によって網羅的に解析した。その結果、骨格筋GRは転写因子Kruppel-like factor 15 (KLF15)、Forkhead box O (FoxO)1, 3、の発現を誘導するとともに、これら下流転写因子と協調してGR転写カスケードを形成し、多彩な標的遺伝子の転写を一括して制御することを示した。これら標的遺伝子群の機能は、(1)ユビキチンプロテアソーム系(E3ユビキチンリガーゼatrogin-1, MuRF1)、(2)オートファジー系(LC3, Bnip3)、(3)アミノ酸分解系酵素(BCAT2)、(4) mammaliantarget of rapamycin complex 1 (mTORC1)阻害によるタンパク質翻訳抑制系(REDD1, BCAT2)であった。すなわち、かかる骨格筋GR転写カスケードは、筋細胞内の代謝をタンパク質合成によるエネルギー貯蔵(同化)優位から、タンパク質分解によるエネルギー供給(異化)優位にスイッチするといえる。交付申請書に記載した研究実施計画の年次計画をおおむね達成している。すなわち、GR下流の転写制御には、FoxOとKLF15が共にatrogin-1, MuRF1を活性化するような重複した機構があり、かつFoxOはオートファジーの活性化、KLF15はmTORC1の抑制をももたらすように標的分子が多岐にわたることが分かった。したがって、これら一連のネットワークの鍵分子となるGRを抑制する戦略は、GC筋萎縮の予防・治療に合目的的と考える。ここで得られた結果を基にして、次年度に計画している研究を行うことにより、交付申請書に記載した「研究の目的」を達成できる見込みが高いと考える。1. mTORC1がGR下流転写制御機構に及ぼす影響の生理的・病態生理的意義の解明mTORC1活性によりDEX依存的発現活性化が減弱する転写因子KLF15, FoxO1,3を単独あるいは組み合わせで、GRmKOマウス骨格筋に導入する。標的遺伝子発現、ユビキチンープロテアソーム系活性、オートファジー活性、BCAA代謝活性、mTORC1活性、筋繊維径、筋量、筋力変化を解析し、これらGR下流転写因子の骨格筋量調節における役割を明確にする。
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KAKENHI-PROJECT-23791050
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23791050
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骨格筋におけるグルココルチコイドレセプターとmTORのクロストークの機構と意義
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また、野生型マウスにP1.(2)と同様のmTORC1活性調節を行いDEX投与後、骨格筋におけるゲノムDNAへのGRリクルートメント(ChIP-on-chip)とGR依存的mRNA発現(DNA microarray)に与えるmTORC1活性の影響を網羅的に解析し、mTORC1-GR系の標的を同定する。2.薬理学的mTORC1活性化療法開発の分子基盤構築GC筋萎縮モデル動物(ラット・マウスに5日間DEX経腹腔投与)を用いて、BCAAカクテルによるmTORC1活性誘導の最適化を、アミノ酸組成(誘導体を含む)・投与経路・投与タイミング・用量・回数・頻度・期間の検討により達成する。またBCAAレセプター(BR)同定を、表面にBCAAを固定化した親水性高分子被覆フェライト核粒子を利用したアフィニティ精製により行う。さらに、上記から得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。上記研究を推進するために必要な支出を計画している。すなわち、マウス作出、系統維持、組織抽出のため1名の実験補助員の雇用費用(所属研究所規定に基づく時給制)、国内外の学会における成果発表、また研究協力者との打合せと供与材料運搬のため、国内旅費(計1-2週間)・国外旅費(計1-2週間)、また成果発表のための論文投稿料を、次年度に交付をうける予定の助成金を以てまかなう。消耗品費は現在までに従事した関連研究における使用実績に基づき概算を算出した。
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KAKENHI-PROJECT-23791050
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23791050
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東アジア比較板木研究体制の構築
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本研究は、研究代表者がこれまで実施してきた日本国内の板木に対する研究の視野を、東アジアに拡大することにより、東アジア比較板木研究体制の構築を目指すものである。2018年度の実績は以下のとおりである。2.韓国古版画博物館が所蔵する日本の板木の調査を実施した(3月)。163点の板木(ただし、銅版等を含む)を調査し、1505カットのデジタル画像によるデジタルアーカイブ構築をおこなった。日本国内では、本山佛光寺(京都市)が所蔵する板木の調査を進め、ナンバリング等の作業を進捗させた。この他、木版が「本の印刷」という認識を超える用途を持った事実を示せるよう、当該予算により扇面等の板木収集も実施した。3.構築したデジタルアーカイブおよび公開中のARC板木ポータルデータベースの今後の展開を検討するため、Reflectance Transformation Imaging (RTI)による画像統合について試験をおこなった。4.上記の活動を踏まえ、口頭発表3件、論文3件の成果発表をおこなった。1. 7次原州世界古版画文化祭国際学術大会(韓国、5月)、東亜古代彫版印刷与版片国際学術検討会(中国、10月)に参加した。前者では東アジア木版比較研究におけるデジタルアーカイブの効用と可能性について、後者では日本の近世期の板木現存状況に関する口頭発表をおこなった。また、両者を通じて各国の木版研究者との研究交流を進めた。2.韓国古版画博物館が所蔵する日本の板木の調査を実施した(3月)。当年度は板木73点を調査し、622カットのデジタル画像によるデジタルアーカイブ構築をおこなった。日本国内では、当年度は本山佛光寺(京都市)の板木デジタルアーカイブを進捗させ、板木344点について、6710カットのデジタルアーカイブ構築をおこなった(3月)。これらは次年度、画像処理作業を進めるとともに、代表者が構築するwebデータベース「板木閲覧システム」に登録し、基本情報の蓄積を進めることとなる。また、板木所蔵機関を対象に、今後のデジタルアーカイブ対象とすべく、プロモート活動をおこなった。3.当該予算によって、錦絵彫摺技法を受け継ぐ近代版画(能画)の板木収集をおこなった。これらは、次年度にデジタル化を実施するとともに、2と同様、webデータベースに登録することとなる。4.上記の活動を踏まえて、口頭発表2件、論文1件の成果発表をおこなった。口頭発表の内容は上記に記したとおりであり、論文1件の内容は、浮世絵研究における板木研究活用の課題に関する内容である。緊急性のあった板木原物の収集に注力したため、予算的に調査日程が当初予定ほど確保できず、デジタルアーカイブ構築の進捗にやや遅れが見られた。またそれにより、特に国内の板木所蔵機関の調査が1機関に限られるなどしたため、やや遅れていると判断した。本研究は、研究代表者がこれまで実施してきた日本国内の板木に対する研究の視野を、東アジアに拡大することにより、東アジア比較板木研究体制の構築を目指すものである。2017年度の実績は以下のとおりである。1. 8次原州世界古版画文化祭国際学術大会(韓国、10月)、国際シンポジウム"Preservation of woodblocks in Asia: Sharing experiences"(ベトナム、11月)に参加した。前者では浮世絵を初めとする版画の板木とその研究活用のあり方について、後者では日本で行われている保存科学を活用した板木研究の実状について口頭発表をおこなった。また、両者を通じて各国の木版研究者との研究交流を進めた。また、この研究交流成果を基盤として、2018年2月に日本・中国・韓国・ベトナムの板木研究者が集う国際ワークショップを開催し(開催費用は別資金)、今後の研究交流を深めていく上での課題を把握した。2. 2017年度に実施した板木デジタルアーカイブの画像処理を実施した。また、当年度は立命館大学アート・リサーチセンター所蔵板木150点、個人所蔵板木26点のデジタルアーカイブ構築をおこなった。これらを代表者が構築するwebデータベース「板木閲覧システム」に登録し、基本情報の蓄積を進めた。3. 2に含まれる『奥細道菅菰抄』の板木について、板本・出版記録と合わせて分析し、刊行経緯を考究し、蕉門俳書全体に及ぶ板株の流れについて、特に大坂の板元の関与について考察をおこなった。4.上記の活動を踏まえて、口頭発表5件、web掲載の英文エッセイ1件の成果発表をおこなった。予定していた板木調査およびデジタルアーカイブの進捗に遅れが発生している。これに伴い、2017年度は特に海外所蔵板木のデジタル化が実施できなかったため、やや遅れていると判断した。本研究は、研究代表者がこれまで実施してきた日本国内の板木に対する研究の視野を、東アジアに拡大することにより、東アジア比較板木研究体制の構築を目指すものである。2018年度の実績は以下のとおりである。2.韓国古版画博物館が所蔵する日本の板木の調査を実施した(3月)。163点の板木(ただし、銅版等を含む)を調査し、1505カットのデジタル画像によるデジタルアーカイブ構築をおこなった。日本国内では、本山佛光寺(京都市)が所蔵する板木の調査を進め、ナンバリング等の作業を進捗させた。この他、木版が「本の印刷」という認識を超える用途を持った事実を示せるよう、当該予算により扇面等の板木収集も実施した。3.構築したデジタルアーカイブおよび公開中のARC板木ポータルデータベースの今後の展開を検討するため、Reflectance Transformation Imaging (RTI)による画像統合について試験をおこなった。
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KAKENHI-PROJECT-16K02381
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K02381
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東アジア比較板木研究体制の構築
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4.上記の活動を踏まえ、口頭発表3件、論文3件の成果発表をおこなった。2017年度は海外1機関、国内23機関のデジタルアーカイブ構築実施が行えるように調査日程を十分に確保したい。また、日本国内において研究交流イベントを実施し、東アジアの木版関連研究者のネットワークを強化すべく調整を進めている。昨年度の推進方策に記した研究交流およびネットワーク強化は順調に進んでいる一方、デジタルアーカイブの進捗が遅れているため、その推進に注力する。2018年度は、海外1機関、国内2機関のデジタルアーカイブ構築実施が行えるように、調査日程を組んでいる。27,864円の未使用額が発生しているが、大部分は会計システムの上で次年度使用となったものである。2017年3月に、物品費として24,825円、人件費として2,730円を使用しており、これらは実質的には次年度に使用するものではない。残る309円は、航空券の代金が見込みを下回り、その差額を他の費用に振り向けた結果として発生したものである。当年度後半に実施する予定であったデジタルアーカイブ構築について進捗が滞ったため、その作業において発生するはずであったアルバイト謝金が執行しきれず、次年度使用額が発生した。この使用額は、2018年度の板木調査およびデジタルアーカイブ構築に活用する。上記の残額309円は、次年度の板木デジタルアーカイブ費用に繰り入れて使用する予定である。
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KAKENHI-PROJECT-16K02381
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K02381
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アメリカ占領下における沖縄文学の基礎的研究
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2003年5月、岡本恵徳他編著で【沖縄文学選日本文学のエッジからの問い】が刊行された。「沖縄文学の全体像を俯瞰する初のアンソロジー」をうたい文句にして刊行されたそれは、岡本恵徳が総説にあたる「はじめに」を、仲程昌徳が第一部、浦田義和が第二部、新城郁夫が第四部の解説を、そして黒澤亜里子が作品の解説にあたるといったように、「アメリカ占領下における沖縄文学の基礎的研究」グループが揃って協力し、出来上がったものであった。本研究のメンバーは、そのことひとつをとっても分かるように「沖縄文学」の研究にとって欠かすことのできないメンバーであった。そこに【日本統治期台湾文学集成】等の編著にあたった星名宏修を加え、次のような目標を掲げて調査・研究がすすめられていった。1、アメリカ占領下にあった27年間に発表されたされた作品の収集、整理。2、同時期、東京を中心にして刊行された雑誌に掲載された沖縄関係作品の収集、整理。3、同時期に発表された沖縄文学と日本文学との比較。4、日本統治下にあった台湾で書かれた日本語文学の収集、整理。5、日本統治下にあった朝鮮で書かれた日本語文学の収集、整理。6、日本統治下にあった植民地文学とアメリカの統治下にあった沖縄文学との比較。これらの目標が、充分に達成されたとはいえないが、少なくとも、収集、整理といった点で、これまでにない、飛躍的な成果があったことは間違いないし、占領下において書かれた沖縄文学の研究においても、新しい見地からする論考が発表されていったし、今後いよいよ、その成果の発表が勢いを増してくるはずである。本研究とのかかわりで、今後なされなければならないことで明確になったことがある。朝鮮、台湾における日本統治期における日本語表現とは別に朝鮮語や中国語、台湾語で書かれた作品、さらには日本が占領したアジア地域で書かれた同時期の作品の収集、整理といったことで、それらの収集、整理がなされることで、日本、アジアの文学の中における、沖縄の占領期の文学の特質が、鮮明になってくるのはまちがいないだろうし、新しい文学の創出も研究もそこからはじまっていくことになるはずである。2003年5月、岡本恵徳他編著で【沖縄文学選日本文学のエッジからの問い】が刊行された。「沖縄文学の全体像を俯瞰する初のアンソロジー」をうたい文句にして刊行されたそれは、岡本恵徳が総説にあたる「はじめに」を、仲程昌徳が第一部、浦田義和が第二部、新城郁夫が第四部の解説を、そして黒澤亜里子が作品の解説にあたるといったように、「アメリカ占領下における沖縄文学の基礎的研究」グループが揃って協力し、出来上がったものであった。本研究のメンバーは、そのことひとつをとっても分かるように「沖縄文学」の研究にとって欠かすことのできないメンバーであった。そこに【日本統治期台湾文学集成】等の編著にあたった星名宏修を加え、次のような目標を掲げて調査・研究がすすめられていった。1、アメリカ占領下にあった27年間に発表されたされた作品の収集、整理。2、同時期、東京を中心にして刊行された雑誌に掲載された沖縄関係作品の収集、整理。3、同時期に発表された沖縄文学と日本文学との比較。4、日本統治下にあった台湾で書かれた日本語文学の収集、整理。5、日本統治下にあった朝鮮で書かれた日本語文学の収集、整理。6、日本統治下にあった植民地文学とアメリカの統治下にあった沖縄文学との比較。これらの目標が、充分に達成されたとはいえないが、少なくとも、収集、整理といった点で、これまでにない、飛躍的な成果があったことは間違いないし、占領下において書かれた沖縄文学の研究においても、新しい見地からする論考が発表されていったし、今後いよいよ、その成果の発表が勢いを増してくるはずである。本研究とのかかわりで、今後なされなければならないことで明確になったことがある。朝鮮、台湾における日本統治期における日本語表現とは別に朝鮮語や中国語、台湾語で書かれた作品、さらには日本が占領したアジア地域で書かれた同時期の作品の収集、整理といったことで、それらの収集、整理がなされることで、日本、アジアの文学の中における、沖縄の占領期の文学の特質が、鮮明になってくるのはまちがいないだろうし、新しい文学の創出も研究もそこからはじまっていくことになるはずである。一九四五年から一九七二年--敗戦から復帰--まで、アメリカ統治下にあった二七年間の沖縄の文学活動を展望するには、まずその間に発刊された新聞、雑誌、同人雑誌等の調査から始めなければならないということで、研究代表者を始め分担者が、出来る限りの努力を払って調査に当たることを研究会で確認。研究会出発当初は、細かく--小説、詩、短歌、俳句、評論、随想といった形での調査分担を決めたが、それは実状にそぐわないということで方向を修正。とりあえず、各自調査に入る場所で見つかった資料を収集することにし、二七年間に発刊された雑誌の調査から始めることにした。沖縄は、良く知られている通り、地上戦が戦われたことで、荒廃が激しく、復興が遅れた。雑誌の発刊など当然遅れたことで、まず本土で刊行されていた雑誌に掲載された沖縄関係作品の調査、収集から入ることにし仲程昌徳、岡本恵徳が国会図書館を中心に調査、後に新城郁夫、黒澤亜里子が日本近代文学館を中心に調査した。
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KAKENHI-PROJECT-13410126
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13410126
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アメリカ占領下における沖縄文学の基礎的研究
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沖縄では、戦後間もなく発刊された雑誌として良く知られているのに八重山石垣で刊行されていた『八重山文化』があって、その検討を行う中で、引揚者たちの活動が中心になったことを知り、その中でもとりわけ台湾引揚者たちの作品が優れていたことで、台湾の日本語文学を研究している星名宏修を団長にして台湾に渡り、台湾中央図書館分館の日本語資料室、台湾国立大学の日本語資料室での調査を行い、多大な収穫を得た。やはり、海外からの引揚者たちの文学を知るための大切な前提になるとして、目本統治下にあった朝鮮における日本語文学を調査する事になっている浦田義和は、今年は、研究会への参加をかねて沖縄県立図書館を中心にして沖縄の調査から入った。調査、収集は概ね順調で、特に大学院の学生を研究補助者として、各調査地に同行したことで、調査が活気溢れるものとなったことを付け加えておきたい。アメリカ占領下で創作活動を始め、その後もっとも精力的に小説・エッセイを発表し続けてきた大城立裕の「全集全十三巻」が刊行され、編集員の一人として参加した仲程昌徳は、その第一巻の解説を担当。また「全集」についで「文学アルバム」の刊行が企画されたことで、岡本恵徳が仲程とともにそれぞれ大城の文学に関する論考を提出した。仲程はまた、沖縄戦で「ひめゆり」の学徒たちを引率した仲宗根政善の日記の解説を担当した。近年、日本文学史を読み替える試みが盛んに行われているが、その一環として、新城郁夫が、これまで日本文学史の中では触れられることのなかった「琉大文学」を取りあげ、文学史の欠落を埋める試みをするとともに、「戦後沖縄文学」の提出した問題を論じた。同様に、浦田義和の占領期の沖縄の詩及び戦記小説を取り上げた論考も、文学史を埋める試みとしてなされた大切な研究の一つであるといっていいだろう。浦田は沖縄で占領初期の文芸作品を調査・収集するとともに、植民地下にあった朝鮮で刊行されていた日本語で書かれた文芸雑誌を韓国国立中央図書館、ソウル大学図書館、チェジュ大学図書館等で調査・収集し、星名宏修はやはり日本の植民地にあった台湾で刊行されていた日本語の文芸雑誌を国立台湾大学図書館、中央研究院、台湾中央図書館分館等で調査、収集した。星名の論文は、これまで殆ど省みられることのなかった台湾における日本語文学と関わるもので、これもまた日本文学史の中の新しい領域を切り開くものとなる論考であるといえよう。星名はまた、日本統治期の台湾で書かれた日本語作品の編纂に参加、台湾の日本語文学研究を促進させる上で欠かせない大層重要な仕事を行った。アメリカ占領下で創作活動を始め、戦後沖縄文学を牽引してきた大城立裕の文学全集が刊行されたあと、引き続き『大城立裕アルバム』が刊行され、仲程昌徳と研究協力者の岡本恵徳が、それぞれ大城の作品論を執筆。岡本はまた『沖縄文学選日本文学のエッジからの問い』の編集にあたるとともに概説、解説を担当。同書に仲程、黒澤亜里子、新城郁夫が概説、解説等を書き、新しい見解を提出した。同書は、本土の大学の教科書として採用され、沖縄文学の普及、研究の広がりに大きく寄与するなど注目された。日本文学史の新しい構築および日本文学の研究方法が大きく変わりつつあるのを受けて、新城郁夫が、これまでの研究成果をまとめて出版、沖縄文学を取り上げて論じている同書が、日本文学史および日本文学の研究に、新しい一頁を加えた。今年は山之口貘の生誕100年にあたり、それを記念する色々な事業がなされたが、浦田義和を中心に、琉球新報社ホールでシンポジウムを開催。
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KAKENHI-PROJECT-13410126
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13410126
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急速な進化と表現型可塑性の個体群動態・進化モデルと培養実験による検証
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生物は環境の変化に適応して、形質をさまざまに変化させる。これまでの進化生態学では、形質変化の適応的な意義について調べられることが多かったが、形質の変化が個体群動態・群集構造・生態系機能に及ぼす影響はほとんどわかっていなかった。このような形質変化がもたらす生態的影響は、近年、活発な研究トピックになってきたが、実際に形質の変化をもたらすメカニズムの違いを比較した研究はほとんどなかった。そこで、集団中の遺伝子型頻度が変化する「迅速な進化」と、遺伝的な変化なしに個体の形質が可塑的に変化する「表現型可塑性」という2つのメカニズムを明示的に記述した数理モデルを用いて、個体群動態に及ぼす影響を比較した。連続培養装置(ケモスタット)中のワムシ(捕食者)・イカダモ(被食者)のプランクトン群集をもとにモデルを構築し、先行研究に基づいてパラメータを設定した。イカダモは、捕食者の存在下で食べられにくい群体を形成するという「誘導防御」を行うことが知られている。解析の結果、群体の防御が有効である場合には可塑性の方がより系の振動を抑え安定化するが、防御がそれほど有効でない場合には可塑性が系を不安定化しうるということがわかった。これはつまり、形質変化のメカニズムによって個体群動態が受ける影響は変化しうるということである。また、可塑性のある遺伝子型とない遺伝子型の双方を含むモデルで、より長期的な進化的安定性を調べたところ、変動環境で可塑性が有利になることが示された。以上の結果から、可塑性は振動を抑える傾向を持つものの、振動がないと可塑性が不利になるというジレンマが存在し、その結果として可塑性が迅速に進化して間欠的な振動をもたらす動態が起こりうることが明らかになった。今後は、ケモスタット実験とメタ解析による理論的な予測の検証が必要になってくると考えられる。生物は環境の変化に対応して、形質をさまざまに変化させる。これまでの進化生態学では、形質の変化の適応的な意義について研究が行われることが多かったが、形質の変化が個体数変動・群集動態に及ぼす影響まで調べられることは稀であった。近年になって形質の変化がもたらす生態学的影響に注目が集まっているが、形質の変化をもたらすメカニズムの違いを明示的に比較したものはなかった。そこで、集団中の遺伝子型頻度が変化する「迅速な進化」と、個体の表現型が可塑的に変化する「表現型可塑性」という2つのメカニズムを明示的に記述した数理モデルを用いて、その影響を比較した。実験室で培養されるプランクトン群集のワムシ(捕食者)-イカダモ(被食者)系をもとにモデルを構築し、過去の実証研究に基づいてパラメータ設定を行った。イカダモは、捕食者の存在下で繁殖重視の「繁殖型」から防御重視の「防御型」に誘導防御を行うことが知られている。解析の結果、防御型の防御が有効である場合には可塑性の方がより系の振動を抑え安定化するが、防御がそれほど有効でない場合には可塑性が系を不安定化しうるということが明らかになった。また、可塑性のある遺伝子型とない遺伝子型の競争モデルを構築し、より長期的な進化的安定性を調べた。すると、可塑性は定常環境で不利だが、変動環境では有利になることが示された。現在、以上の数理モデル解析の内容を投稿中であり、同時に理論的な予測を検証すべく、プランクトン群集の実験的な検証の準備も進めている。生物は環境の変化に対応して、形質をさまざまに変化させる。これまでの進化生態学では、形質の変化の適応的な意義について研究が行われることが多かったが、形質の変化が個体群動態・群集構造に及ぼす影響まで調べられることは稀であった。近年になって形質の変化がもたらす生態的影響に注目が集まっているが、形質の変化をもたらすメカニズムの違いを明示的に比較した研究はなされてこなかった。そこで、集団中の遺伝子型頻度が変化する「迅速な進化」と、個体の発現が可塑的に変化する「表現型可塑性」という2つのメカニズムを明示的に記述した数理モデルを用いて、その個体群動態に及ぼす影響を比較した。連続培養装置(ケモスタット)中のワムシ(捕食者)・イカダモ(被食者)系をもとにモデルを構築し、過去の実証研究に基づいてパラメータを設定した。イカダモは、捕食者の存在下で食べられにくいコロニーを形成し、誘導防御を行うことが知られている。解析の結果、コロニーの防御が有効である場合には可塑性の方がより系の振動を抑え安定化するが、防御がそれほど有効でない場合には可塑性が系を不安定化しうるということが明らかになった。また、可塑性のある遺伝子型とない遺伝子型の競争モデルを構築し、より長期的な進化的安定性を調べた。すると、可塑性は変動環境では有利になることが示された。以上の結果から、可塑性は振動を抑えるものの、振動があると可塑性が有利になるというジレンマが存在し、その結果として可塑性が迅速に進化して間欠的な振動をもたらすという動態が起こりうることが明らかになった。生物は環境の変化に適応して、形質をさまざまに変化させる。これまでの進化生態学では、形質変化の適応的な意義について調べられることが多かったが、形質の変化が個体群動態・群集構造・生態系機能に及ぼす影響はほとんどわかっていなかった。
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KAKENHI-PROJECT-09J07611
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J07611
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急速な進化と表現型可塑性の個体群動態・進化モデルと培養実験による検証
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このような形質変化がもたらす生態的影響は、近年、活発な研究トピックになってきたが、実際に形質の変化をもたらすメカニズムの違いを比較した研究はほとんどなかった。そこで、集団中の遺伝子型頻度が変化する「迅速な進化」と、遺伝的な変化なしに個体の形質が可塑的に変化する「表現型可塑性」という2つのメカニズムを明示的に記述した数理モデルを用いて、個体群動態に及ぼす影響を比較した。連続培養装置(ケモスタット)中のワムシ(捕食者)・イカダモ(被食者)のプランクトン群集をもとにモデルを構築し、先行研究に基づいてパラメータを設定した。イカダモは、捕食者の存在下で食べられにくい群体を形成するという「誘導防御」を行うことが知られている。解析の結果、群体の防御が有効である場合には可塑性の方がより系の振動を抑え安定化するが、防御がそれほど有効でない場合には可塑性が系を不安定化しうるということがわかった。これはつまり、形質変化のメカニズムによって個体群動態が受ける影響は変化しうるということである。また、可塑性のある遺伝子型とない遺伝子型の双方を含むモデルで、より長期的な進化的安定性を調べたところ、変動環境で可塑性が有利になることが示された。以上の結果から、可塑性は振動を抑える傾向を持つものの、振動がないと可塑性が不利になるというジレンマが存在し、その結果として可塑性が迅速に進化して間欠的な振動をもたらす動態が起こりうることが明らかになった。今後は、ケモスタット実験とメタ解析による理論的な予測の検証が必要になってくると考えられる。
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KAKENHI-PROJECT-09J07611
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J07611
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アルミニウム反応剤と有機ケイ素化合物を利用した位置選択的多置換ベンゼン合成と応用
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水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H)を用いて、ケイ素化された1,3-エンインの環化二量化および異なる二種類の1,3-エンインの交差反応により四置換ベンゼンを位置選択的に合成する方法を見いだした。本交差反応においては、2段階目に加える1,3-エンインのかわりに、シリル化されたアルキンを用いても低収率ではあるが、対応する四置換ベンゼンを位置選択的に合成できることがわかった。本反応で得られる生成物のうち、o,o'-ビスシリルスチルベン類が溶液状態よりも固体や結晶状態で高効率蛍光発光することを明らかにした。これは、トリメチルシリル基の立体的な効果に起因する現象であると考えている。水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H)を反応剤とし、有機ケイ素基が置換した1,3-エンインとの反応により、反応系中で、ジエニルアルミニウム中間体を調製し、もう一分子の1,3-エンイン類を加えることで四置換ベンゼンを位置選択的に合成できることを見いだしているが、収率が低いという問題があった。そこで本反応の効率化を実現するべく検討を行った。その結果、異なる構造を有する1,3-エンインを追加することにより、中程度ではあるが目的とする四置換ベンゼンを完全な位置選択制で合成できることがわかった。途中で加える1,3-エンインをケイ素置換アルキンにしても、低収率ながら対応する四置換ベンゼンを与えることがわかった。また、上述の反応で得られた自己二量化体であるo,o'-ビスシリルスチルベン誘導体の光物性について詳細な検討を行った。o,o'-ビスシリルスチルベン誘導体は、単離精製すると、白色の固体として得られることがわかった。また、本誘導体には2つのシリル基が存在するため、ヘキサンに非常に溶け易く精製や再結晶がし易いことがわかり、機能性材料として装置化する際に有利であることも明らかとなった。比較のため、2つのシリル基のうち、1つ及び2つのシリル基を切除した誘導体も調製し、これら3種類のスチルベン誘導体の光物性について精査した。試料として、ジクロロメタン溶液、粉体、単結晶の3サンプルを用意し、それらの励起スペクトル、蛍光発光スペクトル、蛍光量子収率、蛍光寿命を測定した。驚いたことに、これまで一般的に固体や結晶状態では、濃度消光といわれる現象のため、これらの状態では効率良く蛍光発光しない、あるいは全く光らないと報告されていたが、本研究で調製した試料は、いずれも溶液状態よりも、粉体のほうが、さらに結晶状態のほうが遥かに良く蛍光発光を示すことが明らかとなった。水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H)を用いて、ケイ素化された1,3-エンインの環化二量化および異なる二種類の1,3-エンインの交差反応により四置換ベンゼンを位置選択的に合成する方法を見いだした。本交差反応においては、2段階目に加える1,3-エンインのかわりに、シリル化されたアルキンを用いても低収率ではあるが、対応する四置換ベンゼンを位置選択的に合成できることがわかった。本反応で得られる生成物のうち、o,o'-ビスシリルスチルベン類が溶液状態よりも固体や結晶状態で高効率蛍光発光することを明らかにした。これは、トリメチルシリル基の立体的な効果に起因する現象であると考えている。有機ケイ素基が置換した1,3-エンインと水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H)との反応により対称な四置換ベンゼンが、単一の位置異性体として生成することを既に報告している。しかし、この反応では、同一の1,3-エンインが、転位をともなう二量化を経て四置換ベンゼンを与えるため、多様な多置換ベンゼンを合成するという目的には制限があった。これに対して、平成24年度の研究では、本反応を段階的に進行させることが可能であり、2種類の異なった1,3-エンインの交差反応が進行することが明らかとなった。すなわち、活性種であるアルミニウム反応剤の反応性を低下させることを目的に、反応系二加える添加剤を種々検討したところ、DIBAL-Hと等量のジエチルエーテルを加えることにより、1,3-エンインの自己二量化反応を完全に抑制できることが分かった。続いて同一反応容器に、異なる構造を有する1,3-エンインを追加することにより、反応が段階的に進行し、異なった1,3-エンイン間での交差反応が進行することが分かった。これにより、置換基が異なる非対称な四置換ベンゼンが、中程度の収率ではあるが、完全な位置選択性で合成できることが分かった。また、途中で加える1,3-エンインの代わりに、トリメチルシリルアセチレンを加えたところ、低収率ではあるが、同様の反応が進行し対応する三置換ベンゼンが完全な位置選択性で得られることも分かった。以上の結果は、アルミニウム反応剤という入手容易な反応剤や、簡便に調製できる出発物質を用いること、さらに今まで合成できなかった多置換ベンゼンを位置選択的に合成できるという点で、これまでに報告されている多置換ベンゼン合成法に比べ優れているといえる。当初予定した平成24年度の計画通り、二種類の異なる1,3-エンイン間の交差反応が進行し、非対称な四置換ベンゼンが完全な位置選択制で合成可能となったことから、本研究は順調に進展していると言える。しかし、四置換ベンゼンの収率は、3060%と中程度に留まっているため、反応のさらなる効率化が必要であると考えている。
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KAKENHI-PROJECT-24750082
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24750082
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アルミニウム反応剤と有機ケイ素化合物を利用した位置選択的多置換ベンゼン合成と応用
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また、本反応では、ジエチルエーテルの添加をもってしても、副生物として二段階目に加えた1,3-エンインの自己二量化体が生成してしまう。この自己二量化体は、反応の効率を低下させるのみならず、目的とする交差環化体と構造が非常に似ているため、生成物の単離精製を困難にしている。以上の二点が,問題点として挙っており、これらを解決する必要がある。しかし現時点で、問題点が明確になっており、また、目的生成物も単離精製し,その構造が同定できているため、本計画は、おおむね順調に進展している。アルミニウム反応剤を用いる多置換ベンゼンの位置選択的合成反応の効率化と、副生物である自己二量化体の抑制に焦点を当てて研究を進める。具体的には、反応機構から自己二量化体の生成する理由を解析し、その生成を抑える添加剤や、反応操作の詳細な検討を行う。これまでの研究から、本反応が効率良く進行しない大きな理由の1つとして、活性なアルミニウム反応剤であるDIBAL-Hが系中で再生しており、これが,同定できないような副生物を生じさせていると考えている。そこで、系中で発生したDIBAL-Hを効率良く補足するような添加剤の探索を行い、反応の効率化を実現する計画である。また、出発物質として様々な1,3-エンインを用いることにより反応の適用限界を調査するとともに、より多様な多置換ベンゼンの構築を行う。さらに、本反応で得られる多置換ベンゼンは、シリル基の置換したスチルベン誘導体であるため、その光物性についても精査する。このシリル基置換スチルベンは、固体として得られることから、固体状態で効率良く蛍光する有機分子材料の開発に繋がるものと考えられる。すなわち、得られたスチルベン誘導体の極大吸収波長や蛍光量子収率など光物性値を測定するとともに、単結晶X線構造解析や計算化学的手法を用いて分子の構造や結晶構造を解析することにより、高効率発光する蛍光有機固体分子材料の創出を行う。これまで、シリル基が置換したスチルベン誘導体は、ほとんど研究されておらず、本研究により新規固体発光材料が見いだせると考えている。「該当なし」
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KAKENHI-PROJECT-24750082
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24750082
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発生工学動物を利用した腎Na-Clトランスポーター遺伝子機能および発現解析
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サイアザイド感受性Na-Clトランスポーター(TSC)遺伝子は腎皮質部曲尿鋼管に局在しており、この部位において腎糸球体から濾過されたNaClの約7%がTSCを介した機構によって再吸収されている。本研究では、このTSC遺伝子の腎曲尿細管での特異的発現機構を遺伝子転写のレベルにおいて解明した。まずラットTSC遺伝子の機能的遺伝子転写調節領域をクローニングし、これをLacZ遺伝子の上流に融合したコンストラクトを作製した。これを用いてトランスジェニック・ラットを作製し、各組織におけるLacZ発現をベータガラクトシダーゼ蛋白の免疫組織染色にて検討した。その結果、LacZは腎臓にのみ有意に発現がみられ、腎臓のなかでもTSC発現が免疫組織染色にて確認できる皮質部遠位部尿細管にその発現が局在していた。このことから、我々がクローニングし構造を明らかにした転写領域には腎曲尿細管特異的発現を規定する核酸領域があることが判明した。この転写領域を調べてみると、HFH-3という腎曲尿細管特異的発現がみられる転写因子の応答配列に類似した構造が有り、ゲルシフト・アッセイやルシフェラーゼ・レポーター・アッセイによってこれが機能的HFH-3応答領域であることを確認した。おそらくは、TSC遺伝子は遺伝子転写レベルでHFH-3依存性に腎曲尿細管発現が規定されているものと考えられた。また、TSC遺伝子の転写領域はステロイド(アルドステロンなど)によってアップレギュレーションされていることが示され、これらステロイドによるNaCl再吸収亢進機能にTSC遺伝子発現増加が関係している可能性が示唆された。今後、我々が作製したトランスジェニック・ラットを用いin vivoの系において、ステロイドをはじめとする腎尿細管NaClに影響を及ぼす因子とTSC遺伝子発現について検討を加え、その臨床的意義を明らかにしたい。サイアザイド感受性Na-Clトランスポーター(TSC)遺伝子は腎皮質部曲尿鋼管に局在しており、この部位において腎糸球体から濾過されたNaClの約7%がTSCを介した機構によって再吸収されている。本研究では、このTSC遺伝子の腎曲尿細管での特異的発現機構を遺伝子転写のレベルにおいて解明した。まずラットTSC遺伝子の機能的遺伝子転写調節領域をクローニングし、これをLacZ遺伝子の上流に融合したコンストラクトを作製した。これを用いてトランスジェニック・ラットを作製し、各組織におけるLacZ発現をベータガラクトシダーゼ蛋白の免疫組織染色にて検討した。その結果、LacZは腎臓にのみ有意に発現がみられ、腎臓のなかでもTSC発現が免疫組織染色にて確認できる皮質部遠位部尿細管にその発現が局在していた。このことから、我々がクローニングし構造を明らかにした転写領域には腎曲尿細管特異的発現を規定する核酸領域があることが判明した。この転写領域を調べてみると、HFH-3という腎曲尿細管特異的発現がみられる転写因子の応答配列に類似した構造が有り、ゲルシフト・アッセイやルシフェラーゼ・レポーター・アッセイによってこれが機能的HFH-3応答領域であることを確認した。おそらくは、TSC遺伝子は遺伝子転写レベルでHFH-3依存性に腎曲尿細管発現が規定されているものと考えられた。また、TSC遺伝子の転写領域はステロイド(アルドステロンなど)によってアップレギュレーションされていることが示され、これらステロイドによるNaCl再吸収亢進機能にTSC遺伝子発現増加が関係している可能性が示唆された。今後、我々が作製したトランスジェニック・ラットを用いin vivoの系において、ステロイドをはじめとする腎尿細管NaClに影響を及ぼす因子とTSC遺伝子発現について検討を加え、その臨床的意義を明らかにしたい。ラットサイアザイド感受性Na-Clトランスポーター(TSC)は腎曲尿細管に局在するトランスポーターである。本年度はこのTSCの組織特異的発現機構について転写レベルでの解明を試みた。TSC遺伝子の転写調節領域(5'-FL/TSC)の約2kbをクローニングし、その細胞特異的転写活性をルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイにて検討した。その結果、この5'-FL/TSCは腎臓由来で、TSCを内因性に発現するHEK293細胞においてのみ転写活性が著明であることが明らかとなり、5'-FL/TSCは組織発現に関与する転写調節領域であることが判明した。この結果を踏まえ、この領域とLacZ遺伝子を融合したコンストラクトを作成して、これを用いてトランスジェニックラットを作成した。その結果、LacZ遺伝子産物であるβ-galactosidaseが腎曲尿細管に特異的に発現していることが明らかとなった。さらに、この転写機構にどのような転写調節因子が関与するかを検討した。我々は、TSC同様に腎曲尿細管に特異的に発現する転写因子のHFH-3に着目した。そして、deletion mutantsや核酸変異導入によって5'-FL/TSCの中にHFH-3結合領域を同定した。また、この領域はHFH-3過剰発現によって反応することを示した。さらに、ゲルシフトアッセイによって、in vitroに作成したHFH-3とこの5'-FL/TSC内のHFH-3結合配列は実際に特異的結合が見られることが明かとなった。以上の成果から、TSCの腎曲尿細管における特異的発現機構として、転写調節領域がそれを担っており、転写因子のHFH-3がその機構の一部に関与そていることが示唆された。サイアザイド感受性Na-Clトランスポーター(TSC)
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KAKENHI-PROJECT-12671020
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12671020
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発生工学動物を利用した腎Na-Clトランスポーター遺伝子機能および発現解析
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遺伝子は腎皮質部曲尿細管に局在しており、この部位において腎糸球体から濾過されたNaClの約7%がTSCを介した機構によって再吸収されている。本研究では、このTSC遣伝子の腎曲尿細管での特異的発現機構を遺伝子転写のレベルにおいて解明した。まずラットTSC遺伝子の機能的遺伝子転写調節領域をクローニングし、これをLacZ遺伝子の上流に融合したコンストラクトを作製した。これを用いてトランスジェニック・ラットを作製し、各組織におけるLacZ発現をベータガラクトシダーゼ蛋白の免疫組織染色にて検討した。その結果、LacZは腎臓にのみ有意に発現がみられ、腎臓のなかでもTSC発現が免疫組織染色にて確認できる皮質部遠位部尿細管にその発現が局在していた。このことから、我々がクローニングし構造を明らかにした転写領域には腎曲尿細管特異的発現を規定する核酸領域があることが判明した。この転写領域を調べてみると、HFH-3という腎曲尿細管特異的発現がみられる転写因子の応答配列に類似した構造が有り、ゲルシフト・アッセイやルシフェラーゼ・レポーター・アッセイによってこれが機能的HFH-3応答領域であることを確認した。おそらくは、TSC遺伝子は遣伝子転写レベルでHFH-3依存性に腎曲尿細管発現が規定されているものと考えられた。また、TSC遺伝子の転写領域はステロイド(アルドステロンなど)によってアップレギュレーションされていることが示され、これらステロイドによるNaCl再吸収亢進機能にTSC遣伝子発現増加が関係している可能性が示唆された。今後、我々が作製したトランスジェニック・ラットを用いin vivoの系において、ステロイドをはじめとする腎尿細管NaClに影響を及ぼす因子とTSC遣伝子発現について検討を加え、その臨床的意義を明らかにしたい。
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KAKENHI-PROJECT-12671020
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12671020
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痛み感受性に関わるPain matrixの動態:脳磁図による痛み受容の可視化
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島皮質および弁蓋部領域は多様な感覚入力を統合するため、触覚性入力による鎮痛機序もこの領域で生じると仮説を立てた。本研究では右前腕に対するAδ(痛覚)入力をAβ刺激(触覚)により変化させ、脳磁図を用いて触覚性鎮痛の脳内機序詳細を調べた。最小ノルム法を用いた信号源推定解析によって、痛覚に関連した脳活動は島皮質後部に、触覚に関連した脳活動は頭頂葉弁蓋部に推定された。さらに、皮質レベルでの調節を反映する、島皮質後部における痛覚関連活動の有意な抑制を認めた。視覚的評価スケールによる主観的痛みの減弱も認めた。この結果は島皮質後部における多感覚統合が触覚性鎮痛において重要な役割を担うこと示している。二次体性感覚野(S2)と島皮質は、痛覚と触覚の処理に関与していることはよく知られている。最近のfMRI研究ではS2・/島皮質の機能マッピングが行われ、痛覚はS2前方島皮質後方、触覚はS2後方に局在が示唆されている。しかしながら、両者の情報が時間的に近接し情報が混在する場合にどのような相互作用が生じるのかは未だ明らかではない。今回、我々は触覚および痛覚刺激をそれぞれの皮質到達時間を考慮して与え、脳磁図を用いて時間・部位特異的な皮質活動を用いた痛覚ゲーティングを検討した。【方法】健常成人11名を対象として触圧覚(Aβ)刺激および痛覚(Aδ)刺激を与え、体性感覚誘発磁場を記録した。先ず、痛覚刺激の皮質到達時間を推測するため、右上肢遠位(手背)及び近位(前腕肘部上腕)の2条件におけるS2/島皮質の誘発反応を記録し(n=3)、伝導速度を求めた。次に、皮質到達が同時ないしは痛覚入力が僅かに先行するよう刺激を加え、さらにS2/島皮質内の痛覚の機能局在に特異的な誘発反応の変化を検証した。【結果】痛覚の頂点潜時は遠位条件では140-180 ms、近位条件では110-150 msであり、伝導速度は10-15 m/sと推定された。触覚の伝導速度を50-60 m/sとすると、皮質到達時間の差は約60 msと推定された。そのためゲーティング条件では痛覚刺激を触覚刺激より60 ms先行させて与えた。S2/島皮質内における局在はfMRI研究で示されたように痛覚が触覚より有意に前方に位置し、前者の活動最大点において振幅の低下が認められた。視覚的アナログ尺度により主観的にも痛みが減弱することが示された。【結論】皮質到達時間および機能局在の違いを基に検討すると、S2・島皮質に特異的な痛み抑制メカニズムが生じることが示唆された。二次体性感覚野(S2)と島皮質は、痛覚と触覚の処理に関与していることはよく知られている。最近のfMRI研究ではS2・/島皮質の機能マッピングが行われ、痛覚はS2前方島皮質後方、触覚はS2後方に局在が示唆されている。しかしながら、両者の情報が時間的に近接し情報が混在する場合にどのような相互作用が生じるのかは未だ明らかではない。今回、我々は触覚および痛覚刺激をそれぞれの皮質到達時間を考慮して与え、脳磁図を用いて時間・部位特異的な皮質活動を用いた痛覚ゲーティング(=痛み受容の変化)メカニズムについて検討した。健常成人11名を対象として触圧覚(Aβ)刺激および痛覚(Aδ)刺激を与え、体性感覚誘発磁場を記録した。大脳皮質到達が同時ないしは痛覚入力が僅かに先行するよう刺激を加え、さらにS2/島皮質内の痛覚の機能局在に特異的な誘発反応の変化を検証した。痛覚の頂点潜時は遠位条件では140-180 ms、近位条件では110-150 msであり、伝導速度は10-15 m/sと推定された。触覚の伝導速度を50-60 m/sとすると、皮質到達時間の差は約60 msと推定された。そのため、脳内でゲーティングを生じさせるためには痛覚刺激を触覚刺激より60 ms先行させて与えた。S2/島皮質内における局在はfMRI研究で示されたように痛覚が触覚より有意に前方に位置し、前者の活動最大点において振幅の低下が認められた。視覚的アナログ尺度により主観的にも痛みが減弱することが示された。皮質到達時間および機能局在の違いを基に検討すると、S2・島皮質に特異的な痛み抑制メカニズムが生じることが示唆された。前年度までの検討においては誘発磁場(数十回の刺激に対する脳反応を平均して評価する方法)に注目して痛み受容の変化を検討したが、近年では神経活動の“ゆらぎ"(ミリ秒単位で刻々とゆらぎ変化し、平均すると打ち消しあって消えてしまう)が注目されている。本年度は触覚による痛み緩和の脳内基盤をさらに確立するため、脳磁計(MEG)を用いて神経磁気振動のゆらぎを検討した。健常被験者11人を対象とし、まず前年度までと同様に痛覚+触覚刺激下で脳磁場反応を計測した。2つの刺激の間隔を変えることにより、脊髄レベル及び皮質レベルでの痛み緩和が生じる時の脳活動を比較した。最小ノルム法で解析を行い、2次体性感覚野及び島皮質に着目し、誘発波形としてみた抑制効果を確認した。
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KAKENHI-PROJECT-25870511
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25870511
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痛み感受性に関わるPain matrixの動態:脳磁図による痛み受容の可視化
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さらに、これに対応する神経活動のゆらぎを時間周波数解析により抽出・検討した。結果、誘発波形で評価した抑制効果は、脊髄レベル条件・皮質レベル条件ともに有意差なく認められた。ゆらぎの評価では、脊髄レベル条件では触覚単独の情報処理と類似のパターンを呈したのに対し、皮質レベル条件では触覚・痛覚の混合ないしは固有のパターンを呈した。脊髄レベルの痛覚抑制条件のゆらぎパターンは痛覚刺激の求心性入力が大脳皮質まで到達しなかった可能性を示唆すると考えられる。一方、皮質レベル条件におけるゆらぎパターンは中枢で相互作用が生じていることを反映しているものと考えられた。これらの結果は、脊髄と大脳皮質における異なる痛覚緩和メカニズムを支持するものと考えられた。島皮質および弁蓋部領域は多様な感覚入力を統合するため、触覚性入力による鎮痛機序もこの領域で生じると仮説を立てた。本研究では右前腕に対するAδ(痛覚)入力をAβ刺激(触覚)により変化させ、脳磁図を用いて触覚性鎮痛の脳内機序詳細を調べた。最小ノルム法を用いた信号源推定解析によって、痛覚に関連した脳活動は島皮質後部に、触覚に関連した脳活動は頭頂葉弁蓋部に推定された。さらに、皮質レベルでの調節を反映する、島皮質後部における痛覚関連活動の有意な抑制を認めた。視覚的評価スケールによる主観的痛みの減弱も認めた。この結果は島皮質後部における多感覚統合が触覚性鎮痛において重要な役割を担うこと示している。痛覚抑制(ゲーティング)について島皮質・二次体性感覚野の関与を示す結果を得て、現在論文投稿中である。神経生理学、神経内科学痛みを伝える線維には、伝達の早いAδ線維(fast pain)と伝達の遅く温度覚とも関連のあるC線維(slow pain)がある。これまで得た反応は前者に関連するものであるが、後者も痛み受容の変化(ゲーティング)のメカニズムにおいて重要である。これからはC線維に特異的な脳内反応について検討・考察を加えて行く予定である。脳磁計を用いて二次体性感覚野・島皮質に特異的な痛み抑制メカニズムが生じている結果を得た。現在原著論文を作成中である。脳磁計の使用代金は時間当たりで請求されるが、実験手順の効率化により使用時間が当初よりも短くなった。痛覚ー痛覚、触覚ー触覚、痛覚ー触覚の3つの感覚入力の組み合わせで生じる脳内相互作用(=ゲーティング)の違いについて詳細を明らかにする。痛み刺激用電極(消耗品)の購入に当てる。
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KAKENHI-PROJECT-25870511
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経内視鏡的細胞シート移植術の大腸ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)への応用
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食道ESD後の狭窄抑制を目的とした口腔粘膜上皮細胞シートによる再生医療的治療の経験を基に、大腸ESDへの応用に向けて基礎実験を行った。ミニブタを用いて大腸ESDモデルを作製し移植を試みた。当初、ブタ線維芽細胞シートの作製を行ったが、培養不安定なためヒト口腔粘膜上皮細胞シートを使用した。本実験系は異種移植であったものの短時間であれば移植は可能で、大腸でも細胞シートの移植が可能であることが判明した。本法は穿孔の修復やリスクを回避できる可能性があるため引き続き研究を推し進める必要がある。食道ESD後の狭窄抑制を目的とした口腔粘膜上皮細胞シートによる再生医療的治療の経験を基に、大腸ESDへの応用に向けて基礎実験を行った。ミニブタを用いて大腸ESDモデルを作製し移植を試みた。当初、ブタ線維芽細胞シートの作製を行ったが、培養不安定なためヒト口腔粘膜上皮細胞シートを使用した。本実験系は異種移植であったものの短時間であれば移植は可能で、大腸でも細胞シートの移植が可能であることが判明した。本法は穿孔の修復やリスクを回避できる可能性があるため引き続き研究を推し進める必要がある。1.ESDによる大腸潰瘍モデルの作製:ブタモデルで行った。臨床と同様の方法で、直腸の内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection : ESD)を試みた。フックナイフ[○!R](KD-620LR,オリンパス)とフレックスナイフ[○!R](KD-630L,オリンパス)を使用した。粘膜下局注は、インジコカルミンを混入したグリセロールを局注針で注入する。全周切開の後、粘膜下層を剥離することで、人工潰瘍を作製することが可能であった。ブタモデルでの大腸ESDのfeasibilityを確認した。但し、前処置が悪く、ESD施行に難渋した。2.培養口腔粘膜上皮細胞シートの作製と大腸ESD後人工潰瘍面に対する経内視鏡的移植術手技の開発:全身麻酔下にブタの口腔粘膜組織を紡錘状に切除する。タンパク質分解酵素であるディスパーゼを用いて基底膜を分解して上を回収し、トリプシンを用いて上皮細胞を単離する。単離した口腔粘膜上皮細胞を温度応答性培養皿に播種し、マイトマイシンCで処理した3T3フィーダーレーヤー存在下で、約2週間培養する。2.4cm×2.4cmの正方形に温度応答性高分子であるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)と、これを取り囲むように細胞非接着性のポリアクリルアミドが固定化されている培養皿を使用し、ブタ口腔粘膜上皮細胞シートを作製に成功した。現在、最適化を検討中。来年度に移植とビーグル犬の口腔粘膜上皮細胞シートとの培養条件を比較する予定。評価(1)内視鏡的形態学的評価:移植出来ていないため、評価はしていません。評価(2)組織学的評価:ブタ口腔粘膜上皮細胞シートを作製し、サイトケラチン染色施行。現在、解析中。前年に引き続きESDによる大腸潰瘍モデルの作製と培養口腔粘膜上皮細胞シートの作製と大腸ESD後人工潰瘍面に対する経内視鏡的移植術手技の開発を継続した。前年にブタ口腔粘膜上皮細胞シート作製成功したが、個体により細胞シートとして回収できないことがあり、養方法の最適化を行う必要があった。そこで培養液の内容および細胞播種数等を調整したり、温度応答性培養皿のIPPAmの含有量を変えたりすることで、内視鏡的な移植にも使用可能なブタ培養口腔粘膜上皮細胞シートを作製する実験を行った。安定化した細胞シートを作製することが可能となった。本年度の予定であった培養口腔粘膜上皮細胞シート移植のシール効果の検討は、現在数例プレリミナリーな実験を行ったばかりで、今後症例を増加させシーリング効果の有無について評価する予定である。しかしながらプレリミナリーな実験では急性汎発性腹膜炎の状況はなく生存していることから、シーリング効果が期待できるものと思われた。また穿孔モデルについては、作製するための手術機材であるEESエナジーセットを本年度末に入手したばかりで、他の機材も入手し実験可能な状況が整ってきたため、次年度行う予定である。来年度予定のブタ線維芽細胞シート作製をすでに開始し、培養に成功している。こちらも引き続き培養法を最適化し安定化した線維芽細胞シートを作製する方法を確立したい。本年度は本研究に必要なブタ口腔粘膜上皮細胞シートの最適化とその移植を試み、またブタ線維芽細胞シートを作製するという本研究を進める上で重要な実験を行った。食道ESD後人工潰瘍の狭窄抑制効果を目的とした口腔粘膜上皮細胞シートの経内視鏡的移植術による再生医療的治療法の臨床応用の経験を基に、新たに細胞シート移植を大腸ESDへ応用することで術中穿孔の修復や遅延性穿孔のリスクを回避できるのではないかとの仮説を立て、大腸ESDに対する細胞シート治療の有用性の検証を目的として研究を開始した。本年度の研究実施計画では(1)培養口腔粘膜上皮細胞シート移植のシール効果の検討(2)培養線維芽細胞シートの作製と経内視鏡的移植術手技の開発(3)培養口腔粘膜上皮細胞シートと培養線維芽細胞シート移植によるシール効果の比較を予定していた。
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KAKENHI-PROJECT-21591735
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経内視鏡的細胞シート移植術の大腸ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)への応用
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神崎ら(Kanzaki M,Eur J Cardiothorac Surg,34,p864-869,2008)の培養法に準じ、線維芽細胞シート作製を試みたが、口腔粘膜上皮細胞シートの作製可能だったが、ミニブタでの線維芽細胞の増殖が不良であった。そのため培養系の確立したヒト培養口腔粘膜上皮細胞シートを用いて大腸ESD後の人工潰瘍にも移植しうるか内視鏡的形態学的評価と組織学的評価を行った。大形動物では前処置(下剤)投与が困難なため、いったん人工肛門をS状結腸に作製し、直腸EMR/ESDを行った人工潰瘍部位にヒト培養口腔粘膜上皮細胞シートの移植を行った。短時間での評価では移植部位にHE染色で細胞シートの移植を確認した。本実験では異種移植のため、長期では拒絶反応が懸念されるが、短時間であれば移植は可能であることが示唆された。本研究により食道だけでなく組織の異なる(扁平上皮と円柱上皮)大腸粘膜であっても、細胞シートの移植が可能であることが判明した。
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KAKENHI-PROJECT-21591735
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入院患者の状況の変化に即した退院支援スケジュールの作成及び退院支援内容の標準化
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平成17年度に調査を実施したケースについては、その後のフォロアップ調査を実施できなかったため、今回新たに、研究協力者を依頼し、国内の複数の病院の熟練退院支援看護師の協力を得て、医療依存度が高く退院が困難と思われたが、自宅退院することができたケースに絞って、退院支援の実際についてのインタビューを行い、インタビューデータを元に事例検討を行った。その結果、1.ケース依頼時から、支援全体の見通しを立てて行動している。2.患者・家族の自宅退院への意思確認を十分に実施している。決断に時間がかかる場合は、入院期間上制約があっても、必要な時間を取れるように調整している。3.一方で、自宅退院の可能性を探るために、同時進行で地域のケア機関に打診し、困難ケースを自宅でケアすることができるかどうか検討している。4.自宅退院の方向性が決まった後は、医療チームの目標設定を行い、各職種・部門に役割分担をしている。5.退院日を設定し、それから逆算して各種の手続きやケアを実施している。6.患者・家族指導には、十分時間をかけるケースと、見切りをつけて後は地域ケア機関に依頼する場合とがある。入院期間の制約、ターミナル等ケース自体が退院を急ぐ状況にあるかどうか、生命に直結する医療処置かどうか、等によって対応が異なる。7.困難ケースの場合、合同カンファレンスを実施する。同時に医療処置等について病棟看護師から訪問看護師等に伝達する機会を設けるなどして対応する。などの結果が得られた。これらは、限られた入院期間の中で、安心して在宅ケアに移行できるようにするためのスキルであると考えられた。以上を元に、退院支援のスケジュールや個別の支援内容についてのまとめを作成した。本年度は、退院支援の介入研究および観察研究で今までに用いられているアウトカム指標について、文献検討を行った。MedlineおよびCINAHLで、過去10年間の論文について「discharge planning」をキーワードに検索した後、主に成人・高齢患者を対象とした介入研究と観察研究を抜き出し、アウトカム指標を整理した。その結果、介入研究では、23本の研究から、19のアウトカム指標が抽出された。また、観察研究では、24本の研究から、13のアウトカム指標が抽出された。介入研究・観察研究とも、最も多かったのは、再入院の減少であった。介入研究では、その他に、退院後のサービス利用増加、在院日数の短縮、療養先が自宅であること(施設入所防止)、満足度の改善、退院後の患者のQOL改善、コストの削減などが複数見られていた。また、観察研究では、療養場所(自宅か施設か)、退院支援に対する満足度・評定・適切性、介護者の健康状態などが複数見られていた。国内での研究に応用するに当たり、欧米諸国よりも日本では、全般に在院日数が長く、治療が終了してから退院するケースが多いことを鑑みると、退院支援によって再入院率を減少させることは難しいことが考えられる。退院後の適切なケアプラン、患者の心身の状態の安定、新たな療養場所での生活への適応などがアウトカムとして考えられるが、量的な指標として確立されたものは殆どなく、研究の蓄積が必要と考えられた。本年度は、アウトカム指標に関するレビューと退院患者のフォロアップ調査を実施した。1.アウトカム指標の検討退院支援のアウトカムについての国内外の論文のレビューを行い、「退院後に患者が有する困り事」に目を向けることの重要性、および、その指標が確立されていないことが明らかになった。研究者が平成1516年に実施した研究(投稿準備中)で、「退院後の不安・困り事」の質問項目の信頼性・妥当性が検証されていることから、本研究では、既存の「在院日数」「サービス利用状況」「再入院」「満足度」に加え、「不安・困り事」にも焦点を当てることにした。2.退院患者のフォローアップ調査および入院中の情報収集関西圏の一般病院において、平成17年9月12月に退院した患者(1週間未満の入院等除く)のうち、了解が得られた全患者を対象として、調査を実施した。患者の疾患・機能状態・家族構成などの基礎情報、退院支援の依頼の有無とその内容を、受け持ち看護師が記録用紙に転記するよう依頼すると共に、退院支援のアウトカム(前述)に関する退院後の患者へのアンケート調査を実施した。175名の患者の了解が得られ、退院後のアンケートには約130名から回答が得られた。現在、アウトカム指標(不安・困り事)の信頼性・妥当性の再検証、患者の状態像と退院支援の実施との関連などの観点からの分析を行うと共に、退院支援を実施されたケースについては、その内容の詳細について情報収集を行っているところである。平成17年度に調査を実施したケースについては、その後のフォロアップ調査を実施できなかったため、今回新たに、研究協力者を依頼し、国内の複数の病院の熟練退院支援看護師の協力を得て、医療依存度が高く退院が困難と思われたが、自宅退院することができたケースに絞って、退院支援の実際についてのインタビューを行い、インタビューデータを元に事例検討を行った。その結果、1.ケース依頼時から、支援全体の見通しを立てて行動している。2.患者・家族の自宅退院への意思確認を十分に実施している。決断に時間がかかる場合は、入院期間上制約があっても、必要な時間を取れるように調整している。
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KAKENHI-PROJECT-16791427
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