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抗腫瘍血管新生能を持つPECAMアンタゴニストの探索と解析 | α2,6-シアリル化糖鎖を添加することで細胞内のPECAM-VEGFR2複合体の量が増大することを見出した。複合体のエンドサイトーシスが更新していると考えられる。また、この時に細胞に伝達されるシグナルを特定するため、リン酸化アレイ解析を行った結果、EGFR2のリン酸化が更新していることを見出した。α2,6-シアリル化糖鎖がPECAM-VEGFR2-インテグリンの協同的な機能調節を行っていること、その下流にEGFR依存的なシグナル伝達経路が連結していることなどが明らかになった。これらの結果を元に、α2,6-シアリル化糖鎖をミミックする化合物をスクリーニング中である。具体的にはPECAMに結合する化合物をライブラリーから見出し、その中からPECAM-PECAM相互作用を調節する化合物を二次スクリーニングしている。α2,6-シアル酸を欠損したST6Gal IKOマウスを用いて、そのKOマウスと野生型マウスに腫瘍細胞を移植し、その後の腫瘍のサイズや腫瘍内の血管新生について調べました。その結果、欠損マウスでは腫瘍の増殖が野生型マウスと比べて明らかに減退していることがわかりました。さらに両マウスの腫瘍組織において血管内皮マーカーとアポトーシスマーカーであるcleavef PARPの二重染色をおこなった結果、欠損マウスでは腫瘍内部の血管内皮細胞の多くが死んでいることが分かりました。本来PECAMは、α2,6-シアル酸に結合することで細胞同士を接着させると同時に、他の細胞膜上のシグナル分子であるVEGFFR2やインテグリンと機能的複合体を形成して生存シグナルを伝えています。しかし、α2,6-シアル酸が欠損するとPECAM同志のホフィリックな相互作用が失われる結果、細胞表面にとどまれず、結果的に複合体成分が異常なシグナルを伝えることで、血管内皮細胞が死にやすくなることが明らかになり、この結果は2018年のOncogeneに掲載されました。現在、α2,6-シアル酸を模倣した低分子化合物のスクリーニング中であり、将来的にPECAMの相互的結合を阻害するような選択的化合物を得られれば、新たな抗血管新生阻害剤の候補になると期待できます。α2,6-シアリル化糖が腫瘍血管新生を調節する機構の背景としてとしては、PECAMがα2,6-シアル酸依存的にホモフィリックに相互作用するため細胞表面にとどまり、パートナー分子分子であるVEGFR2やintegrinをとどめてシグナル伝達を調節する分子機構を明らかにしたため、論文をまとめ、投稿直前まで来ている。現在、共同研究者からのコメントを集めており、コメントを集約して投稿作業を進める計画である。また、PECAMに結合するヒット化合物11種類を前年度に同定したので、本年度はPECAM-PECAM相互作用にどのような影響を与えるか否か、in vitroで解析を進めていく計画である。また、予想に反してPECAMアゴニストとして作用するペプチドを発見したため、血管内皮細胞を用いてその効果を確認していく計画である。PECAMに結合する化合物の中には、in vitroでPECAMPECAM相互作用を弱めるタイプに加え、強めるタイプもあることが分かってきた。前者は抗血管新生阻害剤候補と考えられる一方で、後者は血管内皮の透過性をブロックする効果を持つ可能性が考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-16K08601 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K08601 |
ロシア極東・ザバイカル地域の教育・文化政策及び施設・活動に関する総合的調査研究。 | 第一年次(平成11年度)には、極東及び東シベリア地域の主要都市(1)ユジノサハリンスク、(2)イルクーツク、(3)ウラジオストック、(4)ハバロフネクの4地点で初等・中等普通教育学校、職業教育機関、高等教育機関、学校外教育機関、教育行政機関その他の教育・文化関係機関・施設の訪問調査を行った。その結果、初等・中等・高等教育の状況については全般に堅調に維持されつつ、中央と同様に多様化に向けての改革が着実に進行していること、また、学校外教育についても、経済不況下にもかかわらずソビエト期以来のインフラが維持され、公教育の第二セクションとしての機能を発揮していること、その他、英語を主とする外国語教育が低学年から実施され、日本語教育の実施もかなり増えていることなどが明らかになった。第二年次(平成12年度)には、農村部への調査訪問をイルクーツク、ハバロフスクの2箇所の地域に絞り込んで行った。どちらの地点でも教員研修所等への訪問調査に加えて、農村部のロシア人学校及び非ロシア人学校等について訪問調査し、農村部の人口の減少の中で少数民族居住地域では民族教育への取り組みが強化されるとともに、ロシア人文化と民族文化が地域文化としてどの民族にも共有化されている状況が明らかになった。第三年次(平成13年度)には、ロシアから教育研究者及び地方教育行政担当者を招き、<ロシア教育シンポジウム・地方に見るロシアの教育-イルクーツクとハバロフスクを中心に>を行った。その中で、ロシアの行財政改革の進行の中で、経済指標の下げ止まりとともに教育分野の諸指標においても若干の改善の兆しが見えること、全般的には大きな問題が残されているにもかかわらず、教員数、クラスサイズ等の部の指標ではわが国より高い数値を示していることなどが明らかになった。第一年次(平成11年度)には、極東及び東シベリア地域の主要都市(1)ユジノサハリンスク、(2)イルクーツク、(3)ウラジオストック、(4)ハバロフネクの4地点で初等・中等普通教育学校、職業教育機関、高等教育機関、学校外教育機関、教育行政機関その他の教育・文化関係機関・施設の訪問調査を行った。その結果、初等・中等・高等教育の状況については全般に堅調に維持されつつ、中央と同様に多様化に向けての改革が着実に進行していること、また、学校外教育についても、経済不況下にもかかわらずソビエト期以来のインフラが維持され、公教育の第二セクションとしての機能を発揮していること、その他、英語を主とする外国語教育が低学年から実施され、日本語教育の実施もかなり増えていることなどが明らかになった。第二年次(平成12年度)には、農村部への調査訪問をイルクーツク、ハバロフスクの2箇所の地域に絞り込んで行った。どちらの地点でも教員研修所等への訪問調査に加えて、農村部のロシア人学校及び非ロシア人学校等について訪問調査し、農村部の人口の減少の中で少数民族居住地域では民族教育への取り組みが強化されるとともに、ロシア人文化と民族文化が地域文化としてどの民族にも共有化されている状況が明らかになった。第三年次(平成13年度)には、ロシアから教育研究者及び地方教育行政担当者を招き、<ロシア教育シンポジウム・地方に見るロシアの教育-イルクーツクとハバロフスクを中心に>を行った。その中で、ロシアの行財政改革の進行の中で、経済指標の下げ止まりとともに教育分野の諸指標においても若干の改善の兆しが見えること、全般的には大きな問題が残されているにもかかわらず、教員数、クラスサイズ等の部の指標ではわが国より高い数値を示していることなどが明らかになった。第一年次である平成11年度には、以下の5箇所の地域を訪問し、一定の成果を収めることができた。ロシア連邦の極東・ザバイカル地域に属する地点として、当初の計画通り、(1)ユジノサハリンスク、(2)イルクーツク、(3)ウラジオストック、(4)ハバロフスクの4地点を訪問した。それぞれの地点では、共通して、初等・中等普通教育学校、職業教育機関、高等教育機関、学校外教育機関、教育行政機関を訪問した。さらに、可能な地点では、幼稚園などの就学前教育機関、研究機関、その他教育・文化・芸術に関わる施設を訪問し、インタビューの実施及び資料の収集を行った。調査結果の内容については、別に詳細な報告書をまとめ、日本比較教育学会で発表の予定である。その概要は、初等・中等・高等教育の状況については全般に堅調に維持されつつ、中央と同様に多様化に向けての改革が着実に進行しているといえる。また、学校外教育についても、経済不況下にもかかわらずソビエト期以来のインフラが維持され、公教育の第二セクションとしての機能を発揮している。その他、英語を主とする外国語教育が低学年から実施され、日本語教育の実施もかなり増えている。しかし、日本語教育については、指導者や特に教材の不足が深刻な状況にあり、学習者の意欲に十分応えられない問題があるといえる。第二年次である平成12年度には、第一年次に訪問調査した(1)ユジノサハリンスク、(2)イルクーツク、(3)ウラジオストック、(4)ハバロフスク、(5)モスクワの5箇所の地域についての調査成果を日本比較教育学会第36回大会(7月9日午後)に発表し、さらに中間報告書として研究代表者遠藤忠『ロシア極東・ザバイカル地域の教育・文化政策及び施設・活動に関する総合的調査研究中間報告書』(平成12年6月、全101頁)をまとめることができた。 | KAKENHI-PROJECT-11691004 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11691004 |
ロシア極東・ザバイカル地域の教育・文化政策及び施設・活動に関する総合的調査研究。 | また、現地への訪問調査としては初年度に極東及びザバイカルの4つの都市を選んで訪問調査したのに対し、農村部への調査訪問を前年度の調査の知見に基づいて以下の2箇所の地域に絞り込んで行い、所期の成果を収めることができた。(1)イルクーツクでは、州の教育行政部及び教員研修所への訪問や昨年度に実施できなかった宗教系の私立学校の訪問調査に加えて、州内に位置するがロシア連邦構成主体の一つであるウスチ・オルダ・ブリャート自治管区の政庁所在地ウスチ・オルダを訪問し、本地域での教育全般及び民族教育に関する取り組み状況について聞き取り調査を行う一方、資料を収集し、さらに、当地の学校を訪問し、教育の具体的状況について聞き取り及び資料収集を行った。同様の調査を、同じくブリャート人が比較的多く居住するがイルクーツク州に位置する集落タラサと、さらにロシア人居住者が多数を占めるホムトーヴァ区アヨーク村について実施し、農村部の全般的教育状況と、住民の民族構成や行政単位の編制原理(「民族」対「地域」)による民族教育の取り組みの差異について調査を行った。(2)ハバロフスクでも同様の調査を実施したが、特に、これまで閉鎖都市として外国人が殆ど立ち入ることのなかったコムソモーリスク・ナ・アムーレに入り、当地の学校及び学校外教育の状況について多くの資料を得ることができたのは、大きな成果であった。本年度は、まず、第1年次(平成11年度)及び第2年次(平成12年度)で行ったロシア連邦の極東及び東シベリア地域の調査の整理、分析を行った。また、最終的なまとめを行うために、N.D.ニカンドロフ(ロシア教育アカデミー総裁)、L.A.ヴィゴフスキー(イルクーツク州普通・職業教育総局局長)、A.B.レフチェンコ(ハバロフスク地方高等・中等職業教育局局長)の3氏を招き、ロシア連邦の地方教育に関する資料の提供を受けるとともに研究の内容等について意見を求め、内容の深化をはかった。以上を踏まえ、10月8日(月)午前10時午後4時半に国立教育政策研究所にて〈ロシア教育シンポジウム・地方に見るロシアの教育-イルクーツクとハバロフスクを中心に〉を行い、研究成果の公開を行った。以上に基づき、2002年3月に「最終報告書」をとりまとめた。 | KAKENHI-PROJECT-11691004 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11691004 |
銅代謝異常を伴うLECラット肝発癌の分子機構の解明 | LCEラットは急性肝炎から慢性肝炎に至り最終的には肝癌を発生する突然異変ラットである。これまでにLECラットの肝炎発症は常染色体劣性遺伝子様式によること、さらに銅代謝異常の関与によることが明らかにされている。本研究の目的は(1)肝炎発症遺伝子htsの単離とその機能解析、(2)肝炎から肝癌発生に至る過程での銅代謝異常に基づくイニシェーション、プロモーション、およびプログレッション因子の分子生物学的解析、および(3)hts遺伝子と銅代謝異常、肝癌発生との関連を明らかにし、ヒト肝癌発生機構の一因を解明することにある。本年度の研究実績として、LECラットの肝炎遺伝子をクローニングし、この遺伝子はヒトウイルソン病原因遺伝子WDである銅輸送性ATPaseを支配する遺伝子と相同であることを明らかにした。そして、LECラットのhts遺伝子はWD相同遺伝子の銅輸送性ATPaseの膜結合部位とストップコドン相当部位が欠失した突然異変であることが分かった。また、生体における銅の輸送の制御機構、活性酸素の産生増加と活性酸素消去酵素の発現低下、発癌物質高感受性、慢性肝炎が肝癌への強力なプロモーションであること、肝再生因子HGFとそのレセプターについてHGFの癌細胞の浸潤誘導、HGFとc-metとの共発現による細胞癌化など機能的なことなどが明らかとなった。LCEラットは急性肝炎から慢性肝炎に至り最終的には肝癌を発生する突然異変ラットである。これまでにLECラットの肝炎発症は常染色体劣性遺伝子様式によること、さらに銅代謝異常の関与によることが明らかにされている。本研究の目的は(1)肝炎発症遺伝子htsの単離とその機能解析、(2)肝炎から肝癌発生に至る過程での銅代謝異常に基づくイニシェーション、プロモーション、およびプログレッション因子の分子生物学的解析、および(3)hts遺伝子と銅代謝異常、肝癌発生との関連を明らかにし、ヒト肝癌発生機構の一因を解明することにある。本年度の研究実績として、LECラットの肝炎遺伝子をクローニングし、この遺伝子はヒトウイルソン病原因遺伝子WDである銅輸送性ATPaseを支配する遺伝子と相同であることを明らかにした。そして、LECラットのhts遺伝子はWD相同遺伝子の銅輸送性ATPaseの膜結合部位とストップコドン相当部位が欠失した突然異変であることが分かった。また、生体における銅の輸送の制御機構、活性酸素の産生増加と活性酸素消去酵素の発現低下、発癌物質高感受性、慢性肝炎が肝癌への強力なプロモーションであること、肝再生因子HGFとそのレセプターについてHGFの癌細胞の浸潤誘導、HGFとc-metとの共発現による細胞癌化など機能的なことなどが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-06280101 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06280101 |
老化・がん化耐性齧歯類ハダカデバネズミにおける発生工学技術の開発 | ハダカデバネズミは平均寿命28年の老化・がん化耐性を持つマウスと同程度の大きさの齧歯類である。本研究では、ハダカデバネズミにおける老化・がん化耐性機構の個体レベルでの解明に向けて、遺伝子改変ハダカデバネズミの作製に必要な発生工学的技術基盤を整備することを目的とする。真社会性動物であるハダカデバネズミは、コロニーの中で1匹の女王と1-3匹の王のみが繁殖に携わる。それ以外のワーカーは雌雄ともに不妊であるが、雌ワーカーは女王から引き離すと女王化するということがこれまでに報告されている。発生工学的技術基盤を整備するにあたり、ハダカデバネズミの性周期は約34日と非常に長いため、解析や介入操作が困難である。そこで性周期を人為的に同期化することで、計画的に研究が可能になる。そこで、前年度に手法を立ち上げた膣スメア法をもとに、性周期を決定した女王、および女王から隔離して女王化誘導した雌に対して性周期同期化法を検討した。日数を振って同期化法を検討したところ、日数によらず性周期をほぼ同期化することができた。しかしながら、膣スメア法で性周期の変動が確認できなかった個体では、同期化法もうまくいかなかった。このような個体では女王化誘導自体が成功していないと考えられ、すべての雌ワーカー個体が女王から引き離すと自動的に女王化するわけではない可能性があり、今後の検討が必要である。すでに性周期が回っている個体に対しては、この性周期同期化法は有効であると考えられるため、さらに手法を最適化する。本研究では、ハダカデバネズミ(NMR)における老化・がん化耐性機構の個体レベルでの解明に向けて、遺伝子改変NMRの作製に必要な発生工学的技術基盤を整備することを目的とする。本年度はまず、マウスにおける非侵襲的採卵法の開発を行った。真社会性動物であるNMRは、コロニーの中で1匹の女王と1-3匹の王のみが繁殖に携わる。それ以外のワーカーは不妊であるが、女王から引き離すと女王化させることができる。しかし、現在までの観察の結果、女王から隔離し、ペア飼育しても必ずしも出産に至る訳ではないことが判明した。依然として複数回出産できる優秀な女王は限られるため、安楽死させることなく卵を採取することが重要となる。さらに採卵した個体にそのまま胚移植することができれば、使用個体数を削減することができる。そこで、NMRと体格が類似しているICRマウスに過排卵処理を施し、卵管からの生体灌流を試みた。その結果、複数個の卵を採取することに成功した。さらに侵襲度を低下させるため、経膣灌流を試みたところ、卵管からの灌流よりは数が少なかったものの、卵を採取することができた。また、性周期を決定するために膣スメア法およびELISAによる尿中プロゲステロン濃度測定法を検討した。膣スメア法について、ペア飼育している17匹のメスNMRの膣スメアを採取し、ギムザ染色により評価した。マウスと異なり、NMRは無毛のため、膣上で蒸留水をピペッティングする際に液体が流れ落ちてしまい、採取が困難であった。採取できたスメアを観察したところ、マウスと同様に有核細胞や無核角化細胞が見られたが、小型の多核のように見受けられる細胞が多く含まれているスメア像も見られた。他の染色法で何の細胞かを決定するとともに、麻酔下で行い、確実に汚染の少ないスメアを採取する。ELISA法については、尿中プロゲステロンの簡便な評価法を確立した。本年度は、同程度の体格であるICRマウスにおいて非侵襲的採卵法の開発を行い、生体から卵を得ることができた。また、膣スメア法についても不明細胞が混じっているものの、マウスと類似した細胞像を得ることに成功した。また、尿中プロゲステロンの測定法についても、通常のELISA法では2ー3日かかり、その間に性周期が進行する恐れがあったが、簡便法により1日で測定することが可能となった。ハダカデバネズミは平均寿命28年の老化・がん化耐性を持つマウスと同程度の大きさの齧歯類である。本研究では、ハダカデバネズミにおける老化・がん化耐性機構の個体レベルでの解明に向けて、遺伝子改変ハダカデバネズミの作製に必要な発生工学的技術基盤を整備することを目的とする。真社会性動物であるハダカデバネズミは、コロニーの中で1匹の女王と1-3匹の王のみが繁殖に携わる。それ以外のワーカーは雌雄ともに不妊であるが、雌ワーカーは女王から引き離すと女王化するということがこれまでに報告されている。発生工学的技術基盤を整備するにあたり、ハダカデバネズミの性周期は約34日と非常に長いため、解析や介入操作が困難である。そこで性周期を人為的に同期化することで、計画的に研究が可能になる。そこで、前年度に手法を立ち上げた膣スメア法をもとに、性周期を決定した女王、および女王から隔離して女王化誘導した雌に対して性周期同期化法を検討した。日数を振って同期化法を検討したところ、日数によらず性周期をほぼ同期化することができた。しかしながら、膣スメア法で性周期の変動が確認できなかった個体では、同期化法もうまくいかなかった。このような個体では女王化誘導自体が成功していないと考えられ、すべての雌ワーカー個体が女王から引き離すと自動的に女王化するわけではない可能性があり、今後の検討が必要である。 | KAKENHI-PROJECT-16K07079 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07079 |
老化・がん化耐性齧歯類ハダカデバネズミにおける発生工学技術の開発 | すでに性周期が回っている個体に対しては、この性周期同期化法は有効であると考えられるため、さらに手法を最適化する。膣スメア法およびELISAによる尿中プロゲステロン濃度測定法を組み合わせ、NMRの性周期を決定する。その後、交配をビデオ撮影にて確認し、上記非侵襲的採卵法を行うとともに採卵が困難であった場合には開腹後に採取する。非侵襲的採卵法については、膣に挿入するガラス管などを工夫することにより、さらなる採卵数の向上を目指す。採卵後の卵をマウス胚培養液やヒト胚培養液で培養することにより、培養方法を確立するとともに発生の様子を観察する。必要な消耗品について複数業者から相見積もりを取ったところ、予定していた金額より安い価格で購入することができた。次年度は研究の発展により、消耗品購入費が増加する可能性があるため、消耗品費に組み込んで使用する。 | KAKENHI-PROJECT-16K07079 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07079 |
多自由度クレーン型マニピュレータに関する研究 | 本研究では複数のワイヤにより一つの吊り荷を懸垂し,吊り荷の3次元位置・姿勢制御を可能とする"多自由度クレーン型マニピュレータ"の開発とその制御手法の検討を目的とした.本年度は,このうち風などの外乱が存在する場合でも懸垂系に揺れを生じない動作制御手法の開発に焦点をあて,以下の2つの研究をおこなった.1)複数ワイヤによる懸垂型位置決め機構の構成原理の確立申請者らはすでに3本ワイヤによる3次元位置・姿勢制御可能な一つの機構を提案しているが,その他のワイヤ懸垂機構で同様な機能が実現できないか,また,このようなワイヤ懸垂機構の一般的な力学的性質については明らかでなかった.そこで,ワイヤ懸垂系の一般的な動力学モデルを導出し,この力学釣合式における解の存在条件に基づいた,位置決め機構成立条件を導いた.この研究は裏面の論文"非完全拘束型パラレルワイヤ懸垂機構の逆運動学解析と順運動学計算法"において公表している.2)逆動力学補償による状態フィードバックを用いた動作制御手法の確立前年度の研究では,多自由度クレーン型マニピュレータの動作制御手法として,システムの逆動力学計算による非線形特性の補償と状態フィードバックにより,外乱が存在する場合にも有効な,懸垂系に揺れを生じない制御則を提案し,シミュレーションによりその有効性を確認した.本年は多自由度クレーン実験装置を開発し,実験により有効性を確認した.このとき,状態フィードバックにおいては懸垂系の位置と速度を測定する必要があるが,この状態量を得るためにワイヤの引き出し角度をエンコーダで検出し,状態量を推定する手法を開発した.この技術は裏面の論文"逆動力学計算に基づくクレーンのフィードバック制御"において公表している.本研究では従来の走行型クレーン機構を3組用いることで,3本のワイヤにより3次元の位置・姿勢制御が可能となる"多自由度クレーン型マニピュレータ"に対する動作制御手法の開発を目的とした.このうち今年度はこのクレーン型マニピュレータを用いて吊り荷を搬送するときに外乱などにより生じる懸垂系の揺れを抑制することに焦点をあて,このため以下の主要な2つの技術を開発した.1)順動力学および逆動力学計算法を開発2)振動抑制のための目標軌道生成法を開発多自由度クレーン型マニピュレータでは吊り荷の3次元の位置・姿勢制御が可能であるが,吊り荷の搬送中に揺れを生じる可能性があることが問題となる.そこで,開発した逆動力学計算法を用いて,動力学的になめらかな吊り荷の目標軌道を生成する手法を開発した.また,この軌道生成を実時間で実行できる効率的な手法を裏面の論文"走行型クレーンの振動抑制のための実時間目標軌道修正"において提案した.本研究では複数のワイヤにより一つの吊り荷を懸垂し,吊り荷の3次元位置・姿勢制御を可能とする"多自由度クレーン型マニピュレータ"の開発とその制御手法の検討を目的とした.本年度は,このうち風などの外乱が存在する場合でも懸垂系に揺れを生じない動作制御手法の開発に焦点をあて,以下の2つの研究をおこなった.1)複数ワイヤによる懸垂型位置決め機構の構成原理の確立申請者らはすでに3本ワイヤによる3次元位置・姿勢制御可能な一つの機構を提案しているが,その他のワイヤ懸垂機構で同様な機能が実現できないか,また,このようなワイヤ懸垂機構の一般的な力学的性質については明らかでなかった.そこで,ワイヤ懸垂系の一般的な動力学モデルを導出し,この力学釣合式における解の存在条件に基づいた,位置決め機構成立条件を導いた.この研究は裏面の論文"非完全拘束型パラレルワイヤ懸垂機構の逆運動学解析と順運動学計算法"において公表している.2)逆動力学補償による状態フィードバックを用いた動作制御手法の確立前年度の研究では,多自由度クレーン型マニピュレータの動作制御手法として,システムの逆動力学計算による非線形特性の補償と状態フィードバックにより,外乱が存在する場合にも有効な,懸垂系に揺れを生じない制御則を提案し,シミュレーションによりその有効性を確認した.本年は多自由度クレーン実験装置を開発し,実験により有効性を確認した.このとき,状態フィードバックにおいては懸垂系の位置と速度を測定する必要があるが,この状態量を得るためにワイヤの引き出し角度をエンコーダで検出し,状態量を推定する手法を開発した.この技術は裏面の論文"逆動力学計算に基づくクレーンのフィードバック制御"において公表している. | KAKENHI-PROJECT-12750223 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12750223 |
九州地方における弥生人骨の地域的特性に関する人類学的研究 | 形質人類学的側面から九州地方から出土している弥生人骨の地域的特性に関する研究を遂行した。調査対象人骨は長崎大学に保管されている資料を用い、縄文時代と同様に漁労・採集に生活基盤をおいていた西北九州地域の弥生人骨、南九州離島群出土の弥生相当期人骨と大陸からの渡来系と考えられる北部九州地域の弥生人骨について骨計測、頭蓋小変異観察を行い、次の結果を得た。1.西北九州及び南九州離島弥生人の計測的特徴(1)西北九州弥生人は、北部九州弥生人と比較して脳頭蓋がやや小さく、特に高径が小さい。頭型は西北九州弥生人の方がやや短頭に傾く。顔面頭蓋では幅径はほぼ同じであるが、顔高、上顔高の高径にはかなりの差が見られ、北部九州弥生人よりも著しい低顔傾向を示す。また、西北九州弥生人の顔面は平坦ではなく、立体的である。(2)南九州の弥生相当期人は、大局的には西北九州弥生人と同類で縄文系の弥生人と考えられるが、頭型が短頭に傾くことと顔面の平坦性がやや強い点で西北九州弥生人とは違いが見られる。(3)各遺跡ごとでの男性の平均推定身長値は、北部九州弥生人が162cm以上あるのに対し、西北九州及び南九州弥生人は160cm以下であり低身長である。2.西北九州及び南九州弥生入の頭蓋形態小変異形質の特徴(1)西北九州弥生人の出現頻度は、北部九州弥生人と比較して眼窩上孔が低頻度で出現し、逆に舌下神経管二分、翼棘孔、頬骨後裂、横後頭縫合残存は高頻度で出現する。この傾向は縄文人に酷似している。(2)南九州弥生人の出現傾向は西北九州弥生人に類似するが、舌下神経管二分と顎舌骨筋神経管が低頻度である点でこれと異なる。(3)外耳道骨腫は、西北九州及び南九州弥生人に高率で出現しており、形質のみならず生活様式が北部九州地域の弥生人と異なっていたことが示唆された。形質人類学的側面から九州地方から出土している弥生人骨の地域的特性に関する研究を遂行した。調査対象人骨は長崎大学に保管されている資料を用い、縄文時代と同様に漁労・採集に生活基盤をおいていた西北九州地域の弥生人骨、南九州離島群出土の弥生相当期人骨と大陸からの渡来系と考えられる北部九州地域の弥生人骨について骨計測、頭蓋小変異観察を行い、次の結果を得た。1.西北九州及び南九州離島弥生人の計測的特徴(1)西北九州弥生人は、北部九州弥生人と比較して脳頭蓋がやや小さく、特に高径が小さい。頭型は西北九州弥生人の方がやや短頭に傾く。顔面頭蓋では幅径はほぼ同じであるが、顔高、上顔高の高径にはかなりの差が見られ、北部九州弥生人よりも著しい低顔傾向を示す。また、西北九州弥生人の顔面は平坦ではなく、立体的である。(2)南九州の弥生相当期人は、大局的には西北九州弥生人と同類で縄文系の弥生人と考えられるが、頭型が短頭に傾くことと顔面の平坦性がやや強い点で西北九州弥生人とは違いが見られる。(3)各遺跡ごとでの男性の平均推定身長値は、北部九州弥生人が162cm以上あるのに対し、西北九州及び南九州弥生人は160cm以下であり低身長である。2.西北九州及び南九州弥生入の頭蓋形態小変異形質の特徴(1)西北九州弥生人の出現頻度は、北部九州弥生人と比較して眼窩上孔が低頻度で出現し、逆に舌下神経管二分、翼棘孔、頬骨後裂、横後頭縫合残存は高頻度で出現する。この傾向は縄文人に酷似している。(2)南九州弥生人の出現傾向は西北九州弥生人に類似するが、舌下神経管二分と顎舌骨筋神経管が低頻度である点でこれと異なる。(3)外耳道骨腫は、西北九州及び南九州弥生人に高率で出現しており、形質のみならず生活様式が北部九州地域の弥生人と異なっていたことが示唆された。九州地方から出土する弥生人骨の地域性を明らかにすることを研究目的に、平成11年度においては本教室が保管している佐賀平野の吉野ヶ里、二塚山、志波屋六本松、朝日北、安永田、柚比大久保、柚比梅坂等の大規模カメ棺群遺跡より出土した弥生人骨の整理・復元作業を行った。併せて性別の同定、骨計測、頭蓋小変異形質の観察を進め、地域性の分析に備えて本研究費で購入したパソコンを活用して主要項目のデータ入力を行った。現在までの計測と観察による成果を以下に示す。1.佐賀平野弥生人の男性頭蓋の計測結果(1)既報告の縄文人の継続と考えられる西北九州弥生人(長崎県)と比較して、脳頭蓋がやや大きく、特に高径に差が見られる。頭型は中頭型に属すが、西北九州弥生人の方がやや短頭に傾く。顔面頭蓋では幅径はほぼ同じであるが、顔高、上顔高といった高径はかなりの差が見られ、西北九州弥生人よりも著しい高顔傾向を示す。また、顔面の平坦性も顕著である。 | KAKENHI-PROJECT-11640710 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11640710 |
九州地方における弥生人骨の地域的特性に関する人類学的研究 | (2)渡来系と称される福岡県出土の弥生人と比較すると、脳頭蓋においては大差ないが、顔面の諸計測値は幅径、高径ともに佐賀平野の弥生人の方がやや大きくて、顔面は幾分か頑丈である。2.佐賀平野弥生人の頭蓋形態小変異形質西北九州弥生人の出現頻度と比較して、佐賀平野弥生人の眼窩上孔及び頚静脈孔二分は高頻度で出現し、逆に舌下神経管二分、翼棘孔、頬骨後裂、横後頭縫合残存については低頻度で出現する。この傾向は福岡県出土の弥生人と同様であり出現頻度も近い。次年度においては、計画に沿って佐賀平野の小規模の遺跡から出土している弥生人骨、西北九州地域及び南九州地域の弥生人骨の整理・復元とデータの集積を進める。九州地方から出土する弥生人骨の地域性を明らかにすることを研究目的に、平成11年度より研究を遂行している。平成12年度においては、本教室が保管している文化的には北部九州の土器形式を使用しながらも縄文時代と同様に漁労・採集に生活基盤をおいていた西北九州地域(長崎県を中心とする)出土の弥生人骨及び南九州離島群(沖縄県を中心とする)出土の縄文晩期-弥生相当期人骨、具体的には西北九州地域では浜郷、宇久松原、宮の本、大友の各遺跡出土弥生人骨、南九州離島群では真志喜安座間原及び具志川島遺跡より出土した縄文晩期-弥生人骨の整理と復元作業を行った。併せて骨計測、頭蓋小変異形質の観察を進め、地域性の分析に備えて主要項目のデータ入力を行った。現在までの計測と観察による成果を以下に示す。1.西北九州地域及び南九州離島地域の男性頭蓋の計測結果(1)既調査・報告より大陸からの渡来系と考えられる北部九州弥生人(佐賀県、福岡県)と比較して、脳頭蓋がやや小さく、特に高径に差が見られる。頭型は中頭型に属すが、西北九州弥生人の方がやや短頭に傾く。顔面頭蓋では幅径はほぼ同じであるが、顔高、上顔高といった高径にはかなりの差が見られ、北部九州弥生人よりも著しい低顔傾向を示す。また、顔面は平坦ではなく、立体的である。(2)南九州離島地域出土の縄文晩期-弥生相当期人は、大局的には西北九州地域と同類と考えられるが、頭型が短頭に傾くことと顔面の平坦性がやや強い点で西北九州弥生人とは違いが見られる。2.西北九州弥生人の頭蓋形態小変異形質北部九州弥生人の出現頻度と比較して西北九州弥生人の眼窩上孔は低頻度で出現し、逆に舌下神経管二分、翼棘孔、頬骨後裂、横後頭縫合残存は高頻度で出現する。この傾向は縄文人に酷似している。次年度、集積データの整理と分析を行い、九州における弥生人の地域性に関する研究報告書を作成する。九州地方から出土する弥生人骨の地域性を明らかにすることを研究目的に、平成11年度より研究を遂行している。平成13年度においては、縄文時代と同様に漁労・採集に生活基盤をおいていた西北九州地域の弥生人骨及び南九州離島群の縄文晩期-弥生相当期人骨、北部九州地域の弥生人骨の骨計測、頭蓋小変異観察成績の集計、分析を行い、次の結果を得た。I.西北九州及び南九州離島弥生人の計測的特徴(1)西北九州弥生人は,大陸からの渡来系と考えられる北部九州弥生人と比較して脳頭蓋がやや小さく、特に高径が小さい。頭型は西北九州弥生人の方がやや短頭に傾く。顔面頭蓋では幅径はほぼ同じであるが、顔高、上顔の高径にはかなりの差が見られ、北部九州弥生人よりも著しく低顔傾向を示す。また、西北九州弥生人の顔面は平坦ではなく、立体的である。(2)南九州離島の縄文晩期-弥生相当期人は、大局的には西北九州弥生人と同類で縄文系の弥生人と考えられるが、頭型が短頭に傾くことと顔面の平坦性がやや強い点で西北九州弥生人とは違いが見られる。 | KAKENHI-PROJECT-11640710 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11640710 |
消散システム理論によるロバスト制御系設計 | ・安定余裕を考慮した制御システムの設計理論の研究むだ時間要素を含む制御システムの安定化問題を考え、むだ時間要素を制御系の位相遅れ要素とみなすことにより、この問題を、むだ時間要素のないシステムに対して指定された位相余裕を持たせるという問題に帰着させた。これにより、むだ時間要素をもつシステムの安定化の問題をH無限大制御問題の特殊な場合に帰着することができた。このことは、むだ時間も外乱やシステムのパラメータ変動と同様に制御系に対する摂動とみなすことができることを意味し、従来の制御方法を用いることでむだ時間システムのロバスト安定化が可能であることを示した。・シミュレーション実験開発した設計法の有効性を確認するために、航空機の運動制御をとりあげ、シミュレーション実験を行った。航空機の制御は、耐空性基準により厳しく制御仕様が定められている。そこでコントローラの計算時間遅れをむだ時間と考え、開発した設計法を適用することによりコントローラを求め、実際に仕様を満たすことをシミュレーションにより確かめた。さらに、柔軟構造物の振動制御のシミュレーションを行い、本研究の有用性と汎用性を確かめた。・安定余裕を考慮した制御システムの設計理論の研究むだ時間要素を含む制御システムの安定化問題を考え、むだ時間要素を制御系の位相遅れ要素とみなすことにより、この問題を、むだ時間要素のないシステムに対して指定された位相余裕を持たせるという問題に帰着させた。これにより、むだ時間要素をもつシステムの安定化の問題をH無限大制御問題の特殊な場合に帰着することができた。このことは、むだ時間も外乱やシステムのパラメータ変動と同様に制御系に対する摂動とみなすことができることを意味し、従来の制御方法を用いることでむだ時間システムのロバスト安定化が可能であることを示した。・シミュレーション実験開発した設計法の有効性を確認するために、航空機の運動制御をとりあげ、シミュレーション実験を行った。航空機の制御は、耐空性基準により厳しく制御仕様が定められている。そこでコントローラの計算時間遅れをむだ時間と考え、開発した設計法を適用することによりコントローラを求め、実際に仕様を満たすことをシミュレーションにより確かめた。さらに、柔軟構造物の振動制御のシミュレーションを行い、本研究の有用性と汎用性を確かめた。平成10年度は以下のような研究を行った.●安定余裕を考慮した制御システム設計理論の展開一人力一出力制御システムに対して確立された位相余裕を指定できるγ-正実性と位相特性の関係に基づいたロバスト制御系設計理論を多入力多出力システムへ拡張することを行った。また、この設計法をサンプル値制御システム・離散時間制御システムに適用するための理論の拡張を行った。●シミュレータの開発コントローラと組み合わせ本設計理論の有用性及び汎用性を示すシミュレーション実験を行うために,任意のプラントを容易に実現可能とする制御対象を模擬する装置(シミュレータ)の開発に着手した。この装置においては,システムを模擬するプログラムにおけるサンプル時間が模擬するシステムの位相遅れと密接な関係があるので,できるだけサンプル時間の短い装置を得るための検討を行いながら,サンプル時間と位相特性の関連を検討できるような仕様を検討した。平成11年度は,以下のような研究を行った.・安定余裕を考慮した制御システム設計理論の展開むだ時間要素を含むシステムにおいて,むだ時間要素を位相遅れ要素と見なし,むだ時間要素のないシステムが十分な位相余裕を持つようにコントローラを設計することにより,むだ時間要素を持つシステムのロバスト安定化を達成する設計法を提案した.この方法とこれまで行われてきたパデ近似による設計法とを比較し,提案するの方法が安定化の十分条件を導けることを示した.また,消散性と深い関係のある正実性について検討し,離散時間システムにおける擬似強正実性が強正実性と等価であることについて連続時間システム比較しながら考察を加えた.・消散性に基づいた制御系設計理論の応用高次モードを構造化されない不確かさと考える宇宙構造物などに代表される柔軟構造物の制振制御やLPVシステムのロバスト制御において,消散性に基づいたロバストコントローラの設計法を適用し,その有効性をシミュレーションと実験で確認した.・シミュレータの開発前年度に引き続き,シミュレータの構成に必要な仕様と基本的なプログラムについて検討を加えた.平成12年度は,以下のような研究を行った.・安定余裕を考慮した制御システム設計理論の展開むだ時間要素を含むシステムの安定化問題において、むだ時間要素を制御系の位相遅れ要素とみなすことにより、むだ時間要素のないシステムに対して指定された位相余裕を持たせるという問題に帰着させた。これによってむだ時間要素をもつシステムの安定化の問題をH-infinity制御問題の特殊な場合に帰着させることができた。このようにして、むだ時間も外乱やシステムのパラメータ変動と同様に、制御系に対する摂動とみなすことにより、むだ時間システムのロバスト安定化の理論を確立した。・シミュレーション実験開発した設計法の有効性を確認するために、航空機の運動制御をとりあげ、シミュレーション実験をおこなった。航空機の制御においては、耐空性基準によって、厳しく制御仕様が定められている。そこで、コントローラの計算時間遅れをむだ時間と考え、開発した設計法を適用することによりコントローラを求め、実際に仕様を満たすことをシミュレーションによってたしかめた。さらに、柔軟構造物の振動制御のシミュレーション等を行い、本研究の有用性と汎用性をたしかめた。 | KAKENHI-PROJECT-10555142 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10555142 |
全身麻酔薬か脳内エリスロホエチン誘導におよほす影響の分子生物学的解析 | エリスロポエチンの脳における主たる産生源は、アストロサイトであると考えられているが、これまで、全身麻酔薬のアストロサイトに対する作用については、まだ十分研究がなされていない。全身麻酔薬が共通してアストロサイトに作用することにより低酸素下での脳内エリスロポエチン誘導を抑制することを見いだした。マウス脳におけるエリスロポエチンは、虚血、低酸素により誘導され、中枢神経の保護作用を有すると考えられている。我々は低酸素環境に暴露したマウス脳を用いて、検討した全ての全身麻酔薬(イソフルラン、セボフルラン、ハロタン、バルビタール、プロポフォール、ケタミン)により、低酸素下でのエリスロポエチン誘導が濃度、時間依存的に抑制されることを見いだした。また初代培養アストロサイトを用いた実験系において、同様に全身麻酔薬がエリスロポエチン誘導を抑制することを示した。これらの結果から、血圧低下や呼吸の変化といった二次的な変化によるものではなく、全身麻酔薬が脳内エリスロポエチンの主たる産生源であるアストロサイトに直接作用していることが強く示唆された。これまで麻酔薬のグリア細胞に対する作用は、ほとんど明らかではなかったが、本研究の結果により、全身麻酔薬がアストロサイトに共通した作用を有することが明らかとなった。また幼若マウスを使用した研究では、イソフルランを暴露することにより、脳内のエリスロポエチン誘導が濃度依存的に抑制されることが示された。麻酔薬による神経発生に対する影響は、近年多数の報告により無視できないものであることが示唆されており、エリスロポエチンの神経発生における重要性を考慮すると、麻酔薬がエリスロポエチン抑制を介して、脳の正常な発達を抑制する可能性があると考えられる。今後はさらに麻酔薬がエリスロポエチンを抑制する詳細な機構を検討することで、さらに麻酔薬がアストロサイトに及ぼす影響を明らかにしうるものと考えている。エリスロポエチンの脳における主たる産生源は、アストロサイトであると考えられているが、これまで、全身麻酔薬のアストロサイトに対する作用については、まだ十分研究がなされていない。全身麻酔薬が共通してアストロサイトに作用することにより低酸素下での脳内エリスロポエチン誘導を抑制することを見いだした。マウス脳におけるエリスロポエチンは、虚血、低酸素により誘導され、中枢神経の保護作用を有すると考えられている。我々は低酸素環境に暴露したマウス脳を用いて、検討した全ての全身麻酔薬(イソフルラン、セボフルラン、ハロタン、バルビタール、プロポフォール、ケタミン)により、低酸素下でのエリスロポエチン誘導が濃度、時間依存的に抑制されることを見いだした。また初代培養アストロサイトを用いた実験系において、同様に全身麻酔薬がエリスロポエチン誘導を抑制することを示した。これらの結果から、血圧低下や呼吸の変化といった二次的な変化によるものではなく、全身麻酔薬が脳内エリスロポエチンの主たる産生源であるアストロサイトに直接作用していることが強く示唆された。これまで麻酔薬のグリア細胞に対する作用は、ほとんど明らかではなかったが、本研究の結果により、全身麻酔薬がアストロサイトに共通した作用を有することが明らかとなった。また幼若マウスを使用した研究では、イソフルランを暴露することにより、脳内のエリスロポエチン誘導が濃度依存的に抑制されることが示された。麻酔薬による神経発生に対する影響は、近年多数の報告により無視できないものであることが示唆されており、エリスロポエチンの神経発生における重要性を考慮すると、麻酔薬がエリスロポエチン抑制を介して、脳の正常な発達を抑制する可能性があると考えられる。今後はさらに麻酔薬がエリスロポエチンを抑制する詳細な機構を検討することで、さらに麻酔薬がアストロサイトに及ぼす影響を明らかにしうるものと考えている。初代培養アストロサイトを用いた実験系のうち、初年度に予定していた研究はほぼ完全に施行しえたものと考えられ、当初考えていた神経細胞とアストロサイトとの共培養は必要ないと考えている。麻酔薬がアストロサイトに及ぼす影響をより詳細に検討する予定である。具体的には転写因子であるHIF-2の誘導抑制が予想されるが、これが細胞内の酸素消費の変化によるものか、あるいはMAPKなどの細胞内シグナル伝達を介したものであるのかを検討する予定である。分子生物学的試薬、実験要動物の購入に使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-23791703 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23791703 |
子育て中のがん患者の包括的心理支援システムの開発と効果検証 | 本研究では、若年層のがん患者に多く見られる、治療しながら行う子育てに関する心理的負担や懸念に対する包括的心理支援システムの構築を目指す。具体的には、現状とニーズによるスクリーニングを行い、そのアセスメントに基づいた心理教育プログラムなどによる介入の実施とその効果検証を行う。病院内のさまざまな資源を活かしながらご家族の状況に応じる包括的な支援が提供できるシステムを構築する。本研究では、若年層のがん患者に多く見られる、治療しながら行う子育てに関する心理的負担や懸念に対する包括的心理支援システムの構築を目指す。具体的には、現状とニーズによるスクリーニングを行い、そのアセスメントに基づいた心理教育プログラムなどによる介入の実施とその効果検証を行う。病院内のさまざまな資源を活かしながらご家族の状況に応じる包括的な支援が提供できるシステムを構築する。 | KAKENHI-PROJECT-19K03294 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K03294 |
国際法基礎理論の再構築-「現実主義」的国際法学及び批判法学の批判的検討を通じて- | 本研究は国際法学における現実主義の可能性を検討する3年連続のプロジェクトであり、年に3回程度のペースでメンバーによる集中的な研究合宿を行うとともに、年数回の公開研究会を開催することを通じて、ストーン、モーゲンソー、シュワルツェンバーガー、ドゥ・ヴィシェール、ヴェイルなど国際法学で現実主義者と呼ばれた論者の論文・著書を共同で検討してきた。初年度と次年度は、メンバーの分担報告と共同の討論を通じて、ストーン、シュワルツェンバーガー、ヴェイルの主要著作の全てを読み込み、その意義と問題点を探り、国際法学における現実主義の可能性を検討してきた。また、英米法学、国際法社会学のゲスト・スピーカーを招き、英米法における現実主義の伝統、国際法社会学から見た現実主義に関してお話をいただき、討議した。最終年度は、以上の蓄積をふまえ、特に法と力の関係を理論的に考察することに重点を置いて、これまでの研究成果の一層の深化を図ってきた。国際法学における法実証主義の問題点と限界を、法源論や国際社会論といった各種視点から、あるいは人権法や武力行使といった個別領域において、詳細に検討することが出来た。更にはシュワルツェンバーガーのように現実主義と呼ばれた学者が、同時に一見正反対の法実証主義に基づく作品を多数公にしているなど、現実主義と法実証主義の内的連関の重要性を気づくに至った。最終年度の後半から、研究成果を全体的にまとめる作業に着手した。その際、これまでの研究合宿に加え、東大国際法研究会と共催で「国際社会における法と力」と題した連続研究会合を04年から05年の11月-1月にかけて行った。以上の研究合宿と公開研究会を通じ、各メンバーの報告の集約と検討を重ねることで、研究会メンバー執筆の論文集『国際社会における法と力』(仮題、東信堂)として、2006年には研究の中心的成果の刊行を見込める状況に至ることができた。本研究は国際法学における現実主義の可能性を検討する3年連続のプロジェクトであり、年に3回程度のペースでメンバーによる集中的な研究合宿を行うとともに、年数回の公開研究会を開催することを通じて、ストーン、モーゲンソー、シュワルツェンバーガー、ドゥ・ヴィシェール、ヴェイルなど国際法学で現実主義者と呼ばれた論者の論文・著書を共同で検討してきた。初年度と次年度は、メンバーの分担報告と共同の討論を通じて、ストーン、シュワルツェンバーガー、ヴェイルの主要著作の全てを読み込み、その意義と問題点を探り、国際法学における現実主義の可能性を検討してきた。また、英米法学、国際法社会学のゲスト・スピーカーを招き、英米法における現実主義の伝統、国際法社会学から見た現実主義に関してお話をいただき、討議した。最終年度は、以上の蓄積をふまえ、特に法と力の関係を理論的に考察することに重点を置いて、これまでの研究成果の一層の深化を図ってきた。国際法学における法実証主義の問題点と限界を、法源論や国際社会論といった各種視点から、あるいは人権法や武力行使といった個別領域において、詳細に検討することが出来た。更にはシュワルツェンバーガーのように現実主義と呼ばれた学者が、同時に一見正反対の法実証主義に基づく作品を多数公にしているなど、現実主義と法実証主義の内的連関の重要性を気づくに至った。最終年度の後半から、研究成果を全体的にまとめる作業に着手した。その際、これまでの研究合宿に加え、東大国際法研究会と共催で「国際社会における法と力」と題した連続研究会合を04年から05年の11月-1月にかけて行った。以上の研究合宿と公開研究会を通じ、各メンバーの報告の集約と検討を重ねることで、研究会メンバー執筆の論文集『国際社会における法と力』(仮題、東信堂)として、2006年には研究の中心的成果の刊行を見込める状況に至ることができた。本研究は三年連続のプロジェクトであり、研究成果の公表は、三年間の蓄積を踏まえて最後の年に行われる予定である。現段階では、参加者相互のレポート交換という形で成果蓄積につとめているが、他研究会との合同合評会を開催するなどして、その学会への還元も図っている。本研究会は、既存の法理論では捉え切れない国際現象(例えばテロ組織の拡大)に対応するために、国際法基礎理論の再構築を目指すものである。具体的には、(1)20世紀国際法学の主流をなす法実証主義の意義と限界を見定め、(2)法実証主義に対抗する「現実主義的」国際法学と批判法学をそれぞれ検討しながら、(3)それらに代わる新たな理論形成の方向を探る。そこで本年度は、三回の研究合宿を開催し、主に「現実主義的」国際法学について集中的な研究を行った。夏合宿と秋合宿はそれぞれ8月、11月に開催され、大沼、古谷、西海、王、川崎、寺谷などの参加を得た。Julius Stoneの代表的著作をテキストとし、参加者全員が事前に詳細なレポートを作成・交換した。合宿では、重要な論点について、自由にディスカッションを行いながら理解を深めた。韓国(釜山大学)から朴培根助教授を迎え、国際的交流も図った。冬合宿は1月に開催された。Prosper Weilのハーグ講義録をテキストにして、Stoneとの比較検討を行った。先のメンパーに国際政治学を専門にする篠田も加わり、多角的な研究を行った。なお、11月には、東大国際法研究会との合同合評会を開催した。古谷、朴の両名が報告者となり、Julius StoneのOf Law and Nations(1974)を批判的に検討した後、フロアからも参加を募ってディスカッションを行った。 | KAKENHI-PROJECT-14320011 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14320011 |
国際法基礎理論の再構築-「現実主義」的国際法学及び批判法学の批判的検討を通じて- | 以上の諸成果をふまえ、来年度は引き続きWeilを検討するほか、徐々に批判法学も視野に入れて研究を進めていく予定である。本研究は3年連続のプロジェクトであり、研究成果の公表は、3年間の蓄積をふまえた最終年度に予定している。2年目となる本年度は、8月下旬、11月初旬、12月下旬に3回の研究合宿を開催し、昨年度に引き続いて「現実主義」国際法学者の論文・著書を主な検討対象として、参加者がレポート作成・報告・討論を行うことで研究成果の蓄積につとめた。8月に開催した研究合宿では、昨年度は前半部分を取り上げたヴェイルのハーグアカデミー一般講義の後半部分について、各メンバーの分担報告と全員による討論を通じて多角的に検討するとともに、ヴェイルに続いて重点的な検討対象とするシュワルツェンバーガーの著作にも検討を加えた。11月に開催した研究合宿では、これまでの検討成果をふまえた総括的検討によってヴェイル研究に一区切りをつけるとともに、検討対象をシュワルツェンバーガーに移し、その著作及び二次文献に集中的検討を加えた。12月に開催した研究合宿では、シュワルツェンバーガーの検討を継続するとともに、各論的課題として国際社会における主権平等の現実性についても検討を加えた。以上の諸成果をふまえつつ、来年度は、「国際社会」、「現実主義」、「力」といった本研究の基本概念に再検討を加えるほか、これまで通り、数回の集中的な研究合宿を通して、引き続き共通文献の検討を行うとともに、各メンバーがこれまでの検討を掘り下げ、個別のテーマに結晶させる形で、研究成果の公表・公刊に向けた具体的作業にも着手する予定である。本研究は3年連続のプロジェクトであり、最終年度にあたる本年度は、これまでの研究の蓄積をふまえた研究成果を全体的にまとめる時期にあたる。そのため、夏期(8月2931日)と冬期(12月1819日)の2回、メンバーによる集中的な研究合宿を行うとともに、11月・12月・1月には、公開の研究会を連続して開催し、研究成果の公表に向けた検討を重ね、これまでの研究成果の一層の深化を図ることができた。本年度に開催された研究会の期日と報告者及び報告題目を中心とする主たる内容は以下の通りである。8月2931日(研究合宿)各自の論文執筆に有用な文献読解及び論文概要の報告11月20日(公開研究会)篠田英朗著『平和構築と法の支配』合評会12月18日(公開研究会)寺谷広司「国際法学における『力』概念の重層性--諸方法論の架橋はいかにして可能か?」12月1819日(研究合宿)各自の報告書原稿(論文集原稿の原型)の検討2005年1月29日(公開研究会)西海真樹「国家平等観念における力とイデオロギー」、篠田英朗「国際法秩序の重層的系譜:モンロー体制の歴史的再検討」本研究成果の公刊作業の中心は、研究会メンバー執筆の論文集の形で刊行する単行書の出版にあるが、上記の各種研究会と並んで、その原型となる各研究分担者の草稿の提出に基づく報告書の集約作業を1月頃から進め、2005年中には刊行を見込める状況に至ることができた。 | KAKENHI-PROJECT-14320011 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14320011 |
紀伊半島熊野酸性岩とその捕獲岩類にみられる部分溶融・同化作用の岩石学的研究 | 今年度は捕獲岩類と母岩の花こう斑岩について主として、プラズマ発光分析法によりREEを含む微量成分組織を分析した。また昨年度に続いて岩石の記載文意、XRFによる主成分組成の分析も行った。これらのデータに基づき捕獲岩類を改めて次の4つに分類した。(1)弱変成の砂、泥質ホルンフェルス、(2)半自形等粒状でマフィックな暗色包有岩、(3)縞状組織をもつ中性・珪長質あるいは泥質の片麻岩類、(4)他形粒状で弱い平行組織をもつ斜方輝石・斜長石グラニュライト。これらのうちグラニュライトは新しい発見で、SiO_2は53-54%で、著しくMgO(9.43)とFeO^*(13.67)、そしてNi(196ppm)、Cr(399)に富む。REEパターンは、花こう斑岩に対して、片麻岩類はその下側を並行し、グラニュライトはLREEに乏しくHREEに富む。暗色包有岩はLREEは片麻岩類と以てやや乏しくHREEに富む。また累帯した片麻岩捕獲岩の核、マントルのREEの変化は、核はレスタイト、マントルは、片麻岩が融解した液から晶出した斜長石、隣灰石、斜方輝石、黒雲母などの集積物、花こう斑岩はその分化物であることを示す。主成分・微量成分組成の特徴、および岩石組織、鉱物組合せに基づけば、暗色包有岩は花こう斑岩をつくったマグマのより早期晶出物、片麻岩類は花こう岩質マグマの一つの主要な起源物質およびそのレスタイトと考えられる。高マグネシウムグラニュライトは、主成分組成の類縁性から花こう岩質マグマとの何らかの関係、例えば"初生マグマの集積物"、あるいはレスタイト、を予想させる。今後はグラニュライトの起源、および片麻岩類やグラニュライトの融解一分別結晶作用のプロセスを具体的定量的に解析したい。さらに今回は準備に終ってしまったが、その融解プロセスを検討するために、熱水合成実験の手法を確立することを進めたい。今年度はとくに,現在まで地質調査とサンプリングされた酸性岩と捕獲岩の岩石学的記載を基礎とし, EPMAによる鉱物分析と,選ばれた37個の岩石について蛍光X線による全岩分析を行った.またICPによるREEを含む21の微量成分の分析法を標準化し,現在分析を行っている.さらに,地殻物質の変成脱水反応,溶融反応,物質移動などを実験的に明らかにするために,溶液を出入させて合成できる熱水合成装置を購入し準備を進めている.捕獲岩類と酸性岩37試料の全岩主成分組成の解析の結果,次のような事実が得られた.(ここで捕獲岩類は, A:片麻岩などの変成組織をもつ高度変成岩類, B:変成組織をもたない中性塩基性の捕獲岩類,の2種類で,弱変成のホルンフェルスは除く. )(1)SiO_2に対する主成分元素の変化図において,日本の平均花崗岩類のトレンドと比較すると,捕獲岩類はTiO_2, P_2O5, MnO, FeO^*(全鉄), MgOに富み, Na_2O, K_2O, Al_2O_3, CaOに乏しい.(2)AばかりでなくBの捕獲岩も組成変化の幅が広く,火成岩のような滑らかな分化トレンドを示さない. (3)酸性岩は既に指摘されているように, FeO*, K_2Oに富みCaOに乏しい.(4)捕獲岩と酸性岩のほとんどすべてに石墨が存在し,とくにAとBの捕獲岩の一部では大量に濃集する.(1)の特徴は,捕獲岩類は起源物質からアルカリ成分に富む最低溶融物がしぼり出された,黒雲母,ザクロ石, Al_2SiO_5鉱物,スピネル,燐灰石,石墨,斜長石,石英などに富んだ難溶残滓であることを示す.捕獲岩類の起源物質としては(4)の石墨の存在, (1)と(3)のCaOの枯渇を考えると, A, B両者とも泥質堆積岩が最も適当である.Bの捕獲岩は(2)の特徴からも酸性マグマの同源的早期晶出物とは考えにくい.捕獲岩にしばしば見られる反応帯の大部分は,溶融時にはマグマと平衡にあった難溶性残滓が,マグマの上昇後にマグマと非平衡になり反応したものである.今年度は捕獲岩類と母岩の花こう斑岩について主として、プラズマ発光分析法によりREEを含む微量成分組織を分析した。また昨年度に続いて岩石の記載文意、XRFによる主成分組成の分析も行った。これらのデータに基づき捕獲岩類を改めて次の4つに分類した。(1)弱変成の砂、泥質ホルンフェルス、(2)半自形等粒状でマフィックな暗色包有岩、(3)縞状組織をもつ中性・珪長質あるいは泥質の片麻岩類、(4)他形粒状で弱い平行組織をもつ斜方輝石・斜長石グラニュライト。これらのうちグラニュライトは新しい発見で、SiO_2は53-54%で、著しくMgO(9.43)とFeO^*(13.67)、そしてNi(196ppm)、Cr(399)に富む。REEパターンは、花こう斑岩に対して、片麻岩類はその下側を並行し、グラニュライトはLREEに乏しくHREEに富む。 | KAKENHI-PROJECT-62540626 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62540626 |
紀伊半島熊野酸性岩とその捕獲岩類にみられる部分溶融・同化作用の岩石学的研究 | 暗色包有岩はLREEは片麻岩類と以てやや乏しくHREEに富む。また累帯した片麻岩捕獲岩の核、マントルのREEの変化は、核はレスタイト、マントルは、片麻岩が融解した液から晶出した斜長石、隣灰石、斜方輝石、黒雲母などの集積物、花こう斑岩はその分化物であることを示す。主成分・微量成分組成の特徴、および岩石組織、鉱物組合せに基づけば、暗色包有岩は花こう斑岩をつくったマグマのより早期晶出物、片麻岩類は花こう岩質マグマの一つの主要な起源物質およびそのレスタイトと考えられる。高マグネシウムグラニュライトは、主成分組成の類縁性から花こう岩質マグマとの何らかの関係、例えば"初生マグマの集積物"、あるいはレスタイト、を予想させる。今後はグラニュライトの起源、および片麻岩類やグラニュライトの融解一分別結晶作用のプロセスを具体的定量的に解析したい。さらに今回は準備に終ってしまったが、その融解プロセスを検討するために、熱水合成実験の手法を確立することを進めたい。 | KAKENHI-PROJECT-62540626 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62540626 |
アガツトンスコアを基準とした頸動脈プラークの網羅的遺伝子発現解析 | 頸動脈狭窄症患者のMDCT画像を再構成しアガツトンスコア(AS)を算出した。標本のmRNAを抽出し、Gene tip expression array解析を行いAS100を基準として1:1の比較解析を行ったところ、炎症関連遺伝子等について共通して2倍以上の変動がみられた。特に石灰化の強い頸動脈プラークではNFAT,ADAMTS,Angptl4の発現が有意に多くAngptl7の発現が抑制傾向にあった。頸動脈狭窄症患者のMDCT画像を再構成しアガツトンスコア(AS)を算出した。標本のmRNAを抽出し、Gene tip expression array解析を行いAS100を基準として1:1の比較解析を行ったところ、炎症関連遺伝子等について共通して2倍以上の変動がみられた。特に石灰化の強い頸動脈プラークではNFAT,ADAMTS,Angptl4の発現が有意に多くAngptl7の発現が抑制傾向にあった。64列multidetector CT(Siemens Definltion)を用いて頸動脈狭窄症患者の術前の病変のDICOMデータを得(これまでに蓄積した計130側の頸動脈データを含む)、3D-Workstation soft Aquarious^<[○!R]>(Terarecon)を用いてCT画像を再構成しデータ処理しアガツトンスコアを算出した。頸動脈内膜剥離術によって摘出された標本を処理、組織標本(HE染色)と3DCTA画像所見を参照して、データ処理で得られた数値と比較検討し、石灰化を正確に評価した。とくに微小な石灰化についても組織画像を画像処理し占有度を計算し、これらの結果からカルシウムを基準にしたプラークの定量的分類を行った。本年名古屋市立大学ヒト遺伝子解析研究倫理審査委員会に申請し研究計画の承認を得たため、20年度新たに行われた頸動脈内膜剥離術によって摘出された3標本のmRNAを抽出した。比較する各々のサンプルを逆転写時にCy3,5で標識しcDNAを合成し、数万種類の遺伝子をアレイ化したスライドガラス上でハイブリダイゼーションさせ、各スポットの蛍光強度を蛍光スキャナーで検出した。これらについてGene tip expression array解析を行い、ARR, CEL, CHPのraw dataとsingle array analysisとしてのシグナルデータを得た。次年度以降、アガツトンスコア算出、標本摘出、mRNA抽出、Genetip解析を繰り返し症例を蓄積し、カルシウムスコアをもとにしたプラークの定量的分類の分布、スコア値に従ってデータマイニングを行う予定である。64列multidetector CT(Siemens Definition)を用いて頸動脈狭窄症患者の術前の病変のDICOMデータを得(これまでに蓄積した計130側の頸動脈データを含む)、3D-Workstation soft Aquarious^(R)(Terarecon)を用いてCT画像を再構成しデータ処理しアガツトンスコアを算出した。頸動脈内膜剥離術によって摘出された標本を処理、組織標本(HE染色)と3DCTA画像所見を参照して、データ処理で得られた数値と比較検討し、石灰化を正確に評価した。とくに微小な石灰化についても組織画像を画像処理し占有度を計算し、これらの結果からカルシウムを基準にしたプラークの定量的分類を行った。昨年名古屋市立大学ヒト遺伝子解析研究倫理審査委員会に申請し研究計画の承認を得たため、2021年度新たに行われた頸動脈内膜剥離術によって摘出された6標本のmRNAを抽出した。比較する各々のサンプルを逆転写時にCy3, 5で標識しcDNAを合成し、数万種類の遺伝子をアレイ化したスライドガラス上でハイブリダイゼーションさせ、各スポットの蛍光強度を蛍光スキャナーで検出した。これらについてGene tip expression array解析を行い、ARR, CEL, CHPのraw dataとsingle array analysisとしてのシグナルデータを得た。アガツトンスコア100を基準として6検体について1:1の比較解析を行ったところ、ケモカイン、コラーゲン関係遺伝子について共通して2倍以上の変動がみられた。この6検体について、次年度にさらにデータマイニング解析を行う予定である。64列multidetector CT(Siemens Definition)を用いて頸動脈狭窄症患者の術前の病変のDICOMデータを得、3D-Workstation soft Aquarious^<[O!R]>(Terarecon)を用いてCT画像を再構成しデータ処理しアガツトンスコアを算出した。頸動脈内膜剥離術によって摘出された標本を処理、組織標本(HE染色)と3DCTA画像所見を参照して、データ処理で得られた数値と比較検討し、石灰化を正確に評価した。とくに微小な石灰化についても組織画像を画像処理し占有度を計算し、これらの結果からカルシウムを基準にしたプラークの定量的分類を行った。新たに行われた頸動脈内膜剥離術によって摘出された標本のmRNAを抽出し、比較する各々のサンプルを逆転写時にCy3, 5で標識しcDNAを合成して数万種類の遺伝子をアレイ化したスライドガラス上でハイブリダイゼーションさせ、各スポットの蛍光強度を蛍光スキャナーで検出した。これらについGene tip expression array解析を行い、ARR, CEL, CHPのraw dataとsingle array analysisとしてのシグナルデータを得た。アガツトンスコア100を基準として6検体について1:1の比較解析を行ったところ、慢性炎症に関する遺伝子等について共通して2倍以上の変動がみられた。とくに、石灰化の強い頸動脈プラークでは炎症関連遺伝子であるNFAT1, ADAMTS1, Angptl4の発現が有意に多く、Angptl7の発現が抑制傾向にあった。 | KAKENHI-PROJECT-20591692 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20591692 |
重粒子線照射後におけるヒト癌細胞の浸潤、転移能についての研究 | 1)炭素線照射によるヒト非小細胞肺癌の浸潤能更新とY-27632による抑制効果についての分子生物学的検討。ヒト非小細胞肺癌であるA549において、Inviroの環境でBoyden chamber assayを行い低線量炭素線照射後の浸潤能亢進を確認した。さらにRhoキナーゼ(ROCK)阻害剤であるY-27632を用いることで細胞の浸潤能を抑制することも確認できた。このことからROCK阻害剤は遊走能だけでなく、立体的に組織間を浸潤する能力においても抑制効果を発揮することが示唆された。Matrigelを使用したInvasion Assayにおいては粒子線治療は浸潤能の亢進を認めなかった。2)炭素線照射によるヒト腫瘍細胞における接着能への影響の確認ヒト非小細胞肺癌細胞であるA549を用いて、InVitroの環境で腫瘍細胞における接着能への炭素線照射の影響を確認した。照射後12時間から24時間の接着能増強が示唆された。さらに詳細な条件検討を行い、Westernblotを用いて接着能に関わるタンパク質(FA、Eカドヘリンなど)の発現量変化を確認した。Invivoにおける動物実験用のCTを使用した転移評価モデルを構成を試みた。実験はマウス:BALB/cJメス6-8週齢と移植細胞:4T1(マウス乳がん細胞)を用いて、1x10^6 cells/匹、下腿皮下に移植し、移植後20日以降、肺転移出現を確認することができた。今後は他の腫瘍株での転移形成能の評価と原病に対する放射線照射の有無による転移病巣の変化を確認し、invitroで効果のあったROCKinhibitor投与での転移抑制効果を認めるのか確認が必要である。1)炭素線照射によるヒト非小細胞肺癌の浸潤能亢進とYー27632による抑制効果についての分子生物学的検討。ヒト非小細胞肺癌であるA549において、In vitroの環境でBoyden chamber assayを行い低線量炭素線照射後の浸潤能亢進を確認した。さらにRhoキナーゼ(ROCK)阻害剤であるYー27632を用いることで細胞の浸潤能を抑制することも確認できた。このことからROCK阻害剤は遊走能だけでなく、浸潤能においても抑制効果を発揮することがわかった。現在実験系をMatrigelを使用したInvasion Assayへ移行し、組織間質を溶解する能力とこれに関係するMMP(Matrix MetalloProiteinase)の発現についてもWesternblotを用いて解析している。2)炭素線照射によるヒト腫瘍細胞における接着能への影響の確認放射線照射によってヒト腫瘍細胞で接着能が亢進する現象する報告は複数認められるが、炭素線照射による遊走能や浸潤能への影響はまだ未解明な部分が多い。ヒト非小細胞肺癌細胞であるA549を用いて、In vitroの環境で腫瘍細胞における接着能への炭素線照射の影響を確認した。照射後12時間から24時間の接着能増強をみとめたため、さらに詳細な条件検討とWesternblotを用いた、接着能に関してFAやE-カドヘリンなどの接着能に関わる蛋白質の発現量変化を確認している。Matrigelを使用したInvasionAssayを行い、MMPの発現を確認したが、MMP発現の条件を出すのに時間がかかっている。1)炭素線照射によるヒト非小細胞肺癌の浸潤能更新とY-27632による抑制効果についての分子生物学的検討。ヒト非小細胞肺癌であるA549において、Inviroの環境でBoyden chamber assayを行い低線量炭素線照射後の浸潤能亢進を確認した。さらにRhoキナーゼ(ROCK)阻害剤であるY-27632を用いることで細胞の浸潤能を抑制することも確認できた。このことからROCK阻害剤は遊走能だけでなく、立体的に組織間を浸潤する能力においても抑制効果を発揮することが示唆された。現在実験系をMatrigelを使用したInvasion Assayへ移行し、組織間質を溶解する能力とROCK阻害剤の関係を確認している。さらに浸潤能における組織間質の溶解に必要なタンパク質であるMMP(Matrix Metalloproiteinase)の発現についても炭素線照射後の変化とROCK阻害剤阻害剤の有無における変化をWesternblotを用いた解析を試みている。2)炭素線照射によるヒト腫瘍細胞における接着能への影響の確認放射線照射によってヒト腫瘍細胞で接着能が亢進する現象の報告は複数認められるが、炭素線照射による接着能や浸潤能への影響はまだ未解明な部分が多い。ヒト非小細胞肺癌細胞であるA549を用いて、InVitroの環境で腫瘍細胞における接着能への炭素線照射の影響を確認した。照射後12時間から24時間の接着能増強がしさされた。さらに詳細な条件検討を行い、Westernblotを用いて接着能に関わるタンパク質(FA、Eカドヘリンなど)の発現量変化を確認している。MMPの発現条件、接着能にかかわる、FAや関連蛋白の条件検索、動物実験の条件検討に時間がかかっている。1)炭素線照射によるヒト非小細胞肺癌の浸潤能更新とY-27632による抑制効果についての分子生物学的検討。ヒト非小細胞肺癌であるA549において、Inviroの環境でBoyden chamber assayを行い低線量炭素線照射後の浸潤能亢進を確認した。さらにRhoキナーゼ(ROCK)阻害剤であるY-27632を用いることで細胞の浸潤能を抑制することも確認できた。 | KAKENHI-PROJECT-16K19807 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K19807 |
重粒子線照射後におけるヒト癌細胞の浸潤、転移能についての研究 | このことからROCK阻害剤は遊走能だけでなく、立体的に組織間を浸潤する能力においても抑制効果を発揮することが示唆された。Matrigelを使用したInvasion Assayにおいては粒子線治療は浸潤能の亢進を認めなかった。2)炭素線照射によるヒト腫瘍細胞における接着能への影響の確認ヒト非小細胞肺癌細胞であるA549を用いて、InVitroの環境で腫瘍細胞における接着能への炭素線照射の影響を確認した。照射後12時間から24時間の接着能増強が示唆された。さらに詳細な条件検討を行い、Westernblotを用いて接着能に関わるタンパク質(FA、Eカドヘリンなど)の発現量変化を確認した。Invivoにおける動物実験用のCTを使用した転移評価モデルを構成を試みた。実験はマウス:BALB/cJメス6-8週齢と移植細胞:4T1(マウス乳がん細胞)を用いて、1x10^6 cells/匹、下腿皮下に移植し、移植後20日以降、肺転移出現を確認することができた。今後は他の腫瘍株での転移形成能の評価と原病に対する放射線照射の有無による転移病巣の変化を確認し、invitroで効果のあったROCKinhibitor投与での転移抑制効果を認めるのか確認が必要である。1)浸潤能におけるMMP発現の条件を整える。2)接着能におけるFA、Eーカドヘリンの発現条件を確認する。3)上記の条件と遊走能の条件からInVivoにおける転移能を測定する。1)浸潤能におけるMMPの発現変化を確認する。2)接着能における関連蛋白の発現変化を確認する。3)InVivoにおける、固形腫瘍の肺転移モデルを用いて、Y27632または同効薬のファスジルによる転移抑制能を確認する。予定されていたInvivo研究が終了できなかったことと、蛋白発現の研究の条件を検討していたために次年度使用額が生じた。1)浸潤能におけるMMPの発現変化を確認する。2)接着能における関連蛋白の発現変化を確認する。3)InVivoにおける、固形腫瘍の肺転移モデルを用いて、Y27632または同効薬のファスジルによる転移抑制能を確認する。 | KAKENHI-PROJECT-16K19807 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K19807 |
出生率に生活関連の社会資本が及ぼす効果についての実証的研究 | 本研究では生活基盤型の社会資本が出生率に与える影響を実証的に分析した。まず、実証分析をブラッシュアップした結果、生活基盤型の社会資本を増加させることは出生率の上昇に必ずしも寄与しないことがあきらかになった。また、個別の社会資本ごとに分析した結果、総合効果として、道路と都市公園がマイナスとなって、また公共賃貸住宅、水道、下水道がプラスとなっているが、廃棄物処理および文教は出生率に対して効果はないという結果が得られた。本研究では生活基盤型の社会資本が出生率に与える影響を実証的に分析した。まず、実証分析をブラッシュアップした結果、生活基盤型の社会資本を増加させることは出生率の上昇に必ずしも寄与しないことがあきらかになった。また、個別の社会資本ごとに分析した結果、総合効果として、道路と都市公園がマイナスとなって、また公共賃貸住宅、水道、下水道がプラスとなっているが、廃棄物処理および文教は出生率に対して効果はないという結果が得られた。本研究の目的は、生活関連の社会資本が出生率に与える影響を実証的に明らかにすることである。本研究では、まず(1)生活基盤型の社会資本が出生率に及ぼす影響について、関連するデータをなるべく近年までのものに更新し、実証分析をよりブラッシュアップする。また、個別の生活基盤型社会資本の近年までのデータを構築する。さらに、(2)個別の生活基盤型の社会資本が出生率に及ぼす影響について分析を拡張する。最後に、(3)所得などの経済変数を外生としているものを内生変数化するために、理論モデルを新たに構築すると共に、社会資本整備が出生率に及ぼす影響について経済政策を考察する。研究の時間的流れとしては、基本的には上記の(1)(2)(3)の順で進めてゆく予定である。本年度は研究初年度ということもあり、実証分析においてもっとも重要となる基礎的なデータの整備を中心に進めた。本研究で用いるデータは都道府県パネルデータで、これまでの取り組みによって、平成7-8年度までしかデータが整備されていなかった。そこでまず、地価関数や出生率関数を推計する準備として、(1)に関連し出生率としては平成18年度まで、社会資本のデータとしては平成15-16年まで整備した。特に社会資本については(2)にも関連する個別の社会資本(市町村道、公園、水道、社会福祉施設等)についても整備を進めた。以前のデータ期間では、現在より10年以上のタイムラグがあり、問題があると思われたからである。また、実証分析において説得力があり頑健な推定結果を得るためには、推定方法等の工夫も重要であるが、まず経済データの整備が欠かせない重要な研究活動の一部となる。本研究の目的は、生活関連の社会資本が出生率に与える影響を実証的に明らかにすることである。本研究では、まず(1)生活基盤型の社会資本が出生率に及ぼす影響について、関連するデータをなるべく近年までのものに更新し、実証分析をよりブラッシュアップする。また、個別の生活基盤型社会資本の近年までのデータを構築する。さらに、(2)個別の生活基盤型の社会資本が出生率に及ぼす影響について分析を拡張する。最後に、(3)所得などの経済変数を外生としているものを内生変数化するために、理論モデルを新たに構築すると共に、社会資本整備が出生率に及ぼす影響について経済政策を考察する。研究の時間的流れとしては、基本的には上記の(1)(2)(3)の順で進めてゆく予定である。本年度は研究2年目ということもあり、(2)の個別の生活基盤型の社会資本が出生率に及ぼす影響について分析を拡張した。一般的なパネル分析での総合効果として、道路と都市公園がマイナスとなって、また公共賃貸住宅、水道、下水道がプラスとなっている。一方で、廃棄物処理および文教は出生率に対して効果はないという結果が得られた。つぎに、人口密度により都道府県を二つに区分した場合の分析結果として、高人口密度の地域では道路、水道、都市公園、文教がマイナスで、下水道および廃棄物処理がプラスとなった。また、低人口密度の地域では公共賃貸住宅と下水道がプラスとなったが、廃棄物処理、水道、都市公園、文教がマイナスとなった。このような結果が得られた理由として、水道、公園、文教の場合、社会資本の整備によって地価が上昇し、その影響が大きいために出生率がマイナスになる影響が強く出ていることが挙げられる。本研究の目的は、生活関連の社会資本が出生率に与える影響を実証的に明らかにすることである。本研究では、まず(1)生活基盤型の社会資本が出生率に及ぼす影響について、実証分析をよりブラッシュアップすること、(2)個別の生活基盤型の社会資本が出生率に及ぼす影響について分析を拡張すること、(3)所得などの経済変数を外生としているものを内生変数化するために、理論モデルを新たに構築すると共に、社会資本整備が出生率に及ぼす影響について経済政策を考察することを予定していた。研究の時間的流れとしては、基本的には上記の(1)(2)(3)の順で進めて、本年度は研究最終年度ということもあり、(3)所得などの変数を内生化する理論モデルを新たに構築すること、経済政策を考察することを予定していた。しかしながら、2009年8月に政権交代があり、民主党が政権を担うことになったことによって、その政策に対応するように研究の方向性を多少変更せざるを得なくなった。 | KAKENHI-PROJECT-20530285 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20530285 |
出生率に生活関連の社会資本が及ぼす効果についての実証的研究 | 民主党の政策として、2010年4月から「子ども手当」が支給されたこと、および「コンクリートから人へ」と言う言葉に表されている民主党政権の政策(予算の配分においてこれまでのような公共事業に向けられてきた予算を、子育て支援などに振り向けようという政策)が行われてきている。これらの政策は、本研究の内容に密接に関連しているので、研究の最終年度ではあるが本来の研究予定を若干修正した。すなわち、これまで行ってきた分析の大枠を維持しつつ、子ども手当などの直接の所得保障によって出生率が改善されるかを急遽分析することにした。分析の結果、子ども手当などの直接の所得保障は必ずしも出生率を改善せず、むしろ引き下げてしまうこともあり得るということが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-20530285 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20530285 |
琉球列島におけるクロダイ属種群の回遊パターンとコネクティビティー解析 | 琉球列島に分布するミナミクロダイ、ナンヨウチヌ、オキナワキチヌの生態の詳細は明らかになっていない。ナンヨウチヌがマングローブ域に特異的に生息したり、オキナワキチヌでは沖縄島以外の琉球列島では見られないような分布を示したりする。これらは水産資源として持続的利用に供されるために管理方策の観点からも不明な生態を明らかにする必要がある。これらを明らかにするために、耳石の微量元素であるストロンチウム/カルシウム比などによる仔稚魚から成魚期における汽水域から海水域の回遊や移動の推定技術やミトコンドリアDNAマーカーによって明らかにしてきたためコネクティビティー(集団構造)解析が可能である。琉球列島に分布するミナミクロダイ、ナンヨウチヌ、オキナワキチヌの生態の詳細は明らかになっていない。ナンヨウチヌがマングローブ域に特異的に生息したり、オキナワキチヌでは沖縄島以外の琉球列島では見られないような分布を示したりする。これらは水産資源として持続的利用に供されるために管理方策の観点からも不明な生態を明らかにする必要がある。これらを明らかにするために、耳石の微量元素であるストロンチウム/カルシウム比などによる仔稚魚から成魚期における汽水域から海水域の回遊や移動の推定技術やミトコンドリアDNAマーカーによって明らかにしてきたためコネクティビティー(集団構造)解析が可能である。 | KAKENHI-PROJECT-19F19094 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19F19094 |
門司市立白野江養護学校の戦後史―戦後初の公立養護学校の消滅と復活 | 本研究は白野江養護学校の戦後史、なかでも同養護学校が「養護学校→小学校→養護学校」と紆余曲折した要因や、その中での教育の変遷を明らかにすることを目的としている。本年度は門司市立光陽養護学校が,五市合併により北九州市立門司養護学校へ移り変わる昭和32年昭和38年までのプロセスを、養護学校の創立記念誌,門司市議会議事録、門司市教育委員会議事録,門司市の予算書、決算書、新聞資料等から明らかにすることにした。このため、北九州市立文書館や中央図書館に行き、上記資料収集を行った。この際,合わせて当時の学校管理規則等の法令集も収集することができた。これらの資料から、昭和32年に市立光陽小学校から市立光陽養護学校に変化して以降,昭和35年度に初めて卒業生1名を輩出したことが判明した。一方,6年生の他の児童は原籍校に帰り,卒業したことが判明した。このことから,1原籍校から一時的に離れて児童が就学をした戦後の門司市独自の養護学校の制度と,2公立養護学校整備特別措置法により正式に養護学校となって生まれた制度の2種類が存在していたことが判明した。以上のように,養護学校に関する法律の整備がなされるとともに,独自の制度が消失する一方,一部の制度は戦後以降の特徴を残していた。門司市議会議事録その他の関係する資料が膨大であり,研究期間中に収集を終えることが困難であったため。また,当時の養護学校の複数の教職員に対してインタビューをする予定であったが,事情によりインタビューが困難になったため。平成30年度中にできなかった当時の養護学校の複数の教職員に対してインタビューをできるよう、現在の特別支援学校との連絡を積極的に取るとともに,退職管理職・教員のネットワークを活用していきたい。本研究は白野江養護学校の戦後史、なかでも同養護学校が「養護学校→小学校→養護学校」と紆余曲折した要因や、その中での教育の変遷を明らかにすることを目的としている。本年度は白野江養護学校が光陽小学校へ移り変わるプロセスを、門司市議会議事録、門司市の予算書、決算書、新聞資料、教職員の口述資料等から明らかにすることにした。このため、北九州市立文書館や中央図書館に行き、上記資料収集を行うとともに、白野江養護学校の周辺に居住した1名の教員にインタビューし、口述資料とすることができた。この資料収集の中で、幸運にも光陽小学校時代に使用されていた日誌や通知表も入手することができた。以上の資料から、白野江養護学校から光陽小学校に移り変わる際には、教育課程上の一定の連続性があったことや、養護学校対象者のみならず多様な児童が入学していることが明らかになった。また、名称を変更することになった要因として、学校設置をめぐる国レベルの補助金政策の変化があったことが判明した。養護学校として戦後出発を遂げた学校はほとんどなく、白野江養護学校のようなパターンはレアケースではあるため、その実態はほとんど明らかにされていなかった。今年度の研究においては、従来見過ごられていた日本における戦後教育史、障害児教育史の一断面を明らかにすることができた。次年度は今年度の成果を踏まえ、さらに光陽小学校から再度養護学校へと変化する重要な局面を明らかにしていくこととする。平成28年度中に所属研究機関が変更になり、年間を通じた継続的な資料収集調査が困難になったため。本研究は白野江養護学校の戦後史、なかでも同養護学校が「養護学校→小学校→養護学校」と紆余曲折した要因や、その中での教育の変遷を明らかにすることを目的としている。本年度は市立光陽小学校が市立光陽養護学校へ移り変わるプロセスを、門司市議会議事録、門司市教育委員会議事録,門司市の予算書、決算書、新聞資料等から明らかにすることにした。このため、北九州市立文書館や中央図書館に行き、上記資料収集を行った。この際,合わせて当時の学校管理規則等の法令集も収集することができた。これらの資料から、昭和32年の市立光陽養護学校に変化する前年度(昭和31年度)に,福岡県が初めて学校教育法に基づく養護学校として認めるようになったことや,児童の在学期間を1年間に変更したことが明らかになった。また,市立光陽養護学校になると同時に,教育財政の法令に基づき施設補助,定数に基づいた寮母等の配置が実現し,門司市としての財政の負担の軽減につなげていたことも明らかになった。以上のように,戦後初の公立養護学校は,財政負担の軽減とリンクする形で国の教育財政の法令の諸基準に学校の形を合わせることになり,規格化されるとともに徐々にそのユニークさを消失させていくことになった。次年度は今年度の成果を踏まえ、門司市立養護学校から,北九州五市の合併により,北九州市立養護学校へと設置主体が変化する局面において,学校の独自性がどのように変化したのかを明らかにしていく。資料収集が円滑に進むとともに,教育委員会の議事録をはじめ多くの関連資料が北九州市立文書館に残されており,国の教育財政に関する法令の整備と照応する形で事実関係を明確にすることができたため。本研究は白野江養護学校の戦後史、なかでも同養護学校が「養護学校→小学校→養護学校」と紆余曲折した要因や、その中での教育の変遷を明らかにすることを目的としている。本年度は門司市立光陽養護学校が,五市合併により北九州市立門司養護学校へ移り変わる昭和32年昭和38年までのプロセスを、養護学校の創立記念誌,門司市議会議事録、門司市教育委員会議事録,門司市の予算書、決算書、新聞資料等から明らかにすることにした。 | KAKENHI-PROJECT-16K21302 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K21302 |
門司市立白野江養護学校の戦後史―戦後初の公立養護学校の消滅と復活 | このため、北九州市立文書館や中央図書館に行き、上記資料収集を行った。この際,合わせて当時の学校管理規則等の法令集も収集することができた。これらの資料から、昭和32年に市立光陽小学校から市立光陽養護学校に変化して以降,昭和35年度に初めて卒業生1名を輩出したことが判明した。一方,6年生の他の児童は原籍校に帰り,卒業したことが判明した。このことから,1原籍校から一時的に離れて児童が就学をした戦後の門司市独自の養護学校の制度と,2公立養護学校整備特別措置法により正式に養護学校となって生まれた制度の2種類が存在していたことが判明した。以上のように,養護学校に関する法律の整備がなされるとともに,独自の制度が消失する一方,一部の制度は戦後以降の特徴を残していた。門司市議会議事録その他の関係する資料が膨大であり,研究期間中に収集を終えることが困難であったため。また,当時の養護学校の複数の教職員に対してインタビューをする予定であったが,事情によりインタビューが困難になったため。平成28年度中にできなかった門司市内の小学校訪問を平成29年度早期に行うこととしたい。また、養護学校の複数の教職員に対してインタビューできるよう、北九州市教育委員会や現在の特別支援学校との連絡を積極的に取るようにしたい。平成29年度中にできなかった当時の養護学校の複数の教職員に対してインタビューできるよう、北九州市教育委員会や現在の特別支援学校との連絡を積極的に取るとともに,退職管理職・教員のネットワークを活用していきたい。平成30年度中にできなかった当時の養護学校の複数の教職員に対してインタビューをできるよう、現在の特別支援学校との連絡を積極的に取るとともに,退職管理職・教員のネットワークを活用していきたい。平成28年度中に所属研究機関を変更したことにより、継続的な資料収集調査及び資料のデータ化が困難になったため。旅費が予想以上に増加し,これに伴い人件費や報告書の発行の費用の見直しをしたため。次年度は旅費に使用する額が抑えられることが見込まれるため,収集した資料をバイトを雇用するなどしてデータ化に努めるとともに,報告書発行に努めることとしたい。所属先の改組のタイミングと重なり,それに関係する会議等が増加し,また,家族に対する介護等のために,予定していた研究時間が大幅に削られ,研究遂行及び予定していた学会発表や論文投稿が困難になった。これにより,使用額が生じることとなった。次年度は10月頃を目途に資料収集やインタビュー調査を終了させ,残りの期間で研究成果の総括を行うこととしたい。平成29年度早期に資料収集調査を実施するとともに、収集した資料のデータ化に努めることとしたい。 | KAKENHI-PROJECT-16K21302 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K21302 |
人工栄養素結合体の化学シグナル | 本研究の目的は、天然物と合成化合物の中間にあたる「人工栄養素結合体」という新しい分野を開拓することである。天然物である栄養素の複数を網羅的に化学結合させた人工栄養素結合体のライブラリーを化学合成し、領域内共同研究を含めてさまざまな細胞アッセイでスクリーニングする。活性のある結合体のメカニズムを解析し、化学コミュニケーションを理解する。天然物の利点は、生物活性に富むことである。しかし、天然物の数には限りがある。一方、合成化合物の利点は、ほぼ無限に合成できることである。しかし、それらの多くは生物活性を示さない。栄養素という天然物の人工的な結合体は、生物活性に富む合成化合物になるだろう。また、栄養素は細胞に取り込まれやすく安全であるので、それらの人工結合体も細胞透過性に優れた安全な化合物である可能性が高い。医薬品開発に新しい考え方を提供できるかもしれない。平成29年度は、1人工栄養素結合体ライブラリーの作成を完結させた。ヒトの体内には様々な栄養素(Nutrients)が存在している。例えば、脂質、アミノ酸、糖質、核酸、ビタミン、そして、それらの代謝物である。栄養素は細胞に取り込まれやすく、補酵素や生体分子の構成物、時にはシグナル分子として、生体内で利用される。このため、栄養素は疾病を予防するサプリメントとして利用されたり、安全な医薬品の源流となってきた。これらの栄養素や代謝物の複数を化学結合させた栄養素結合体を網羅的に600種化学合成した。計画通り、栄養素結合体600種の化学合成を完結し、スクリーニングに着手した。予備的な実験によると、予想通り複数の興味深い化合物を得ることができた。平成30年度は、研究の第二段階として2細胞ベーススクリーニングにすすむ。様々な代謝のシグナルは、脂質生合成の司令塔であるSREBP (sterol regulatory element-binding protein)という転写因子に影響を及ぼす。SREBPの活性を指標にしてスクリーニングし、SREBP転写因子の活性化を阻害する化合物を同定する。人工栄養素結合体のそれぞれのパーツ自体の活性など、構造活性相関研究をおこなう。人工栄養素結合体ライブラリーには糖脂質様の化合物が多く含まれる。糖脂質が受容体を介して免疫を賦活することが知られており、栄養素複合体が免疫を賦活すると予想される。そこで、マクロファージ細胞を人工栄養素結合体で処理し、IL6の産生をELISA法で計測することで、免疫賦活化化合物を同定する。人工栄養素結合体のそれぞれのパーツ自体の活性など、構造活性相関研究をおこなう。ある特定の脂質受容体に結合して免疫を賦活する栄養素複合体が見つかる可能性がある。本研究の目的は、天然物と合成化合物の中間にあたる「人工栄養素結合体」という新しい分野を開拓することである。天然物である栄養素の複数を網羅的に化学結合させた人工栄養素結合体のライブラリーを化学合成し、領域内共同研究を含めてさまざまな細胞アッセイでスクリーニングする。活性のある結合体のメカニズムを解析し、化学コミュニケーションを理解する。天然物の利点は、生物活性に富むことである。しかし、天然物の数には限りがある。一方、合成化合物の利点は、ほぼ無限に合成できることである。しかし、それらの多くは生物活性を示さない。栄養素という天然物の人工的な結合体は、生物活性に富む合成化合物になるだろう。また、栄養素は細胞に取り込まれやすく安全であるので、それらの人工結合体も細胞透過性に優れた安全な化合物である可能性が高い。医薬品開発に新しい考え方を提供できるかもしれない。平成29年度は、1人工栄養素結合体ライブラリーの作成を完結させた。ヒトの体内には様々な栄養素(Nutrients)が存在している。例えば、脂質、アミノ酸、糖質、核酸、ビタミン、そして、それらの代謝物である。栄養素は細胞に取り込まれやすく、補酵素や生体分子の構成物、時にはシグナル分子として、生体内で利用される。このため、栄養素は疾病を予防するサプリメントとして利用されたり、安全な医薬品の源流となってきた。これらの栄養素や代謝物の複数を化学結合させた栄養素結合体を網羅的に600種化学合成した。計画通り、栄養素結合体600種の化学合成を完結し、スクリーニングに着手した。予備的な実験によると、予想通り複数の興味深い化合物を得ることができた。平成30年度は、研究の第二段階として2細胞ベーススクリーニングにすすむ。様々な代謝のシグナルは、脂質生合成の司令塔であるSREBP (sterol regulatory element-binding protein)という転写因子に影響を及ぼす。SREBPの活性を指標にしてスクリーニングし、SREBP転写因子の活性化を阻害する化合物を同定する。人工栄養素結合体のそれぞれのパーツ自体の活性など、構造活性相関研究をおこなう。人工栄養素結合体ライブラリーには糖脂質様の化合物が多く含まれる。糖脂質が受容体を介して免疫を賦活することが知られており、栄養素複合体が免疫を賦活すると予想される。そこで、マクロファージ細胞を人工栄養素結合体で処理し、IL6の産生をELISA法で計測することで、免疫賦活化化合物を同定する。人工栄養素結合体のそれぞれのパーツ自体の活性など、構造活性相関研究をおこなう。ある特定の脂質受容体に結合して免疫を賦活する栄養素複合体が見つかる可能性がある。 | KAKENHI-PLANNED-17H06408 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-17H06408 |
酵母性フェロモン、αファクターによるCa^<2+>動員機構の解析 | 酵母の半数体の接合過程は相異なる性をもつ細胞が互いに分泌する性エロモンによって支配されている。α細胞の分泌するαファクターはa型細胞に作用し、その初期過程にはSTE2遺伝子(リセプター)、GPA1(Gα)、STE4(Gβ)、STE18(Gγ)などが関与し、高等動物のシグナル伝達糸と極めて類似性の高い分子装置からなっていることが明らかになっている。一方αファクターのもう1つの作用として、細胞の形態変化-局所的細胞表層の成長による突起形成-の誘導がある。この過程は初期過程よりもさらに100倍程度も高いαファクターによって引き起こされる。本研究計画はαファクターによる形態変化の誘導現象が初期過程とは異なるシグナル伝達系によるという筆者の知見に基づいている。この形態変化の誘導は、細胞内へのCa^<2+>の動員がシグナルとなっている。低い濃度のαファクターを感知した細胞は6080分後に高い濃度のαファクターを感知し得る状態になり、αファクターが存在するとCa^<2+>が細胞内に取り込まれる。Ca^<2+>の動員は細胞に極性を与え、細胞内に誘導された多数の表層の成長に関与する膜小胞が細胞の一点に集中し突起形成が開始される。この過程の詳細は本年度電子顕微鏡による微細構造の観察と、連続切片の二次元構築によって明らかにすることが出来た。これらの膜小胞の単離を試み、exoグルカナーゼを指標として一定の成果を挙げることが出来た。Ca^<2+>動員に至るシグナル伝達系を明らかにすることを目指し、αファクターによって誘導されるタンパク質、αファクター作用をバイパスするcdc36、cdc39変異株によって誘導される変化について分子レベルの解析を現在進めている。さらにCa^<2+>イオンの細胞内分布を知るために液胞形成の変異株を用いた解析を行い、液胞がαファクターによって動員されるCa^<2+>イオンの主なリザーバーとして機能していることを明らかにした。酵母の半数体の接合過程は相異なる性をもつ細胞が互いに分泌する性エロモンによって支配されている。α細胞の分泌するαファクターはa型細胞に作用し、その初期過程にはSTE2遺伝子(リセプター)、GPA1(Gα)、STE4(Gβ)、STE18(Gγ)などが関与し、高等動物のシグナル伝達糸と極めて類似性の高い分子装置からなっていることが明らかになっている。一方αファクターのもう1つの作用として、細胞の形態変化-局所的細胞表層の成長による突起形成-の誘導がある。この過程は初期過程よりもさらに100倍程度も高いαファクターによって引き起こされる。本研究計画はαファクターによる形態変化の誘導現象が初期過程とは異なるシグナル伝達系によるという筆者の知見に基づいている。この形態変化の誘導は、細胞内へのCa^<2+>の動員がシグナルとなっている。低い濃度のαファクターを感知した細胞は6080分後に高い濃度のαファクターを感知し得る状態になり、αファクターが存在するとCa^<2+>が細胞内に取り込まれる。Ca^<2+>の動員は細胞に極性を与え、細胞内に誘導された多数の表層の成長に関与する膜小胞が細胞の一点に集中し突起形成が開始される。この過程の詳細は本年度電子顕微鏡による微細構造の観察と、連続切片の二次元構築によって明らかにすることが出来た。これらの膜小胞の単離を試み、exoグルカナーゼを指標として一定の成果を挙げることが出来た。Ca^<2+>動員に至るシグナル伝達系を明らかにすることを目指し、αファクターによって誘導されるタンパク質、αファクター作用をバイパスするcdc36、cdc39変異株によって誘導される変化について分子レベルの解析を現在進めている。さらにCa^<2+>イオンの細胞内分布を知るために液胞形成の変異株を用いた解析を行い、液胞がαファクターによって動員されるCa^<2+>イオンの主なリザーバーとして機能していることを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-63641508 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63641508 |
寡占における技術革新,ライセンス,ロイヤルティをめぐる理論および政策の一般的研究 | 相対利潤最大化を一般化したゼロ・サムゲームの研究および同質財または差別化財を生産する寡占などの不完全競争における技術革新,新技術の導入とそれをめぐる補助金などの政策的な研究を進め,複数の論文を海外の査読付き学術誌に発表したり,あるいは発表することが決定したりした。ゼロ・サムゲームについては,主に各プレイヤーが複数の戦略変数を持つような場合に,いずれの戦略を用いても結果が同じになるということについて対称的な構造を持つ三人以上のゼロ・サムゲームを対象にして研究を展開するとともに,数学のミニマックス定理を3人以上のプレイヤーからなるゼロ・サムゲームに応用する研究を進めた。後者では産業外の革新企業が自らは参入せずに既存企業に対してライセンス料をとって新技術を供与する戦略,自らも参入しながら既存企業に対してライセンス料をとって新技術を供与する戦略,自ら参入するだけで技術の供与をしない戦略のいずれが最適な戦略になるのかというような問題や,固定的なライセンス料だけではなく産出量1単位当たりのロイヤルティを合わせて課すような戦略を含めた比較などの研究も行った。また2企業からなる複占のケースとともに3企業以上を含む寡占も研究対象にし,加えて国際的な貿易の枠組みにおける新技術獲得の問題も扱った。差別化についても水平的差別化とともに品質の異なる財を生産する垂直的差別化のケースも取り上げた。相対利潤最大化の考え方を基礎に,それを抽象化したゼロ・サムゲームの研究や,応用としての寡占における技術革新に関する企業行動と政府の政策に関する問題の研究を進め,いくつかの研究成果を査読付きの雑誌に発表したり,掲載が決定したりしている。予定どおりに研究を進めるが,さらに動学的に企業の行動を分析する微分ゲームを取り入れた研究を進めており成果を上げる見通しも立っている。相対利潤最大化を一般化したゼロ・サムゲームの研究および同質財または差別化財を生産する寡占などの不完全競争における技術革新,新技術の導入とそれをめぐる補助金などの政策的な研究を進め,複数の論文を海外の査読付き学術誌に発表したり,あるいは発表することが決定したりした。ゼロ・サムゲームについては,主に各プレイヤーが複数の戦略変数を持つような場合に,いずれの戦略を用いても結果が同じになるということについて対称的な構造を持つ三人以上のゼロ・サムゲームを対象にして研究を展開するとともに,数学のミニマックス定理を3人以上のプレイヤーからなるゼロ・サムゲームに応用する研究を進めた。後者では産業外の革新企業が自らは参入せずに既存企業に対してライセンス料をとって新技術を供与する戦略,自らも参入しながら既存企業に対してライセンス料をとって新技術を供与する戦略,自ら参入するだけで技術の供与をしない戦略のいずれが最適な戦略になるのかというような問題や,固定的なライセンス料だけではなく産出量1単位当たりのロイヤルティを合わせて課すような戦略を含めた比較などの研究も行った。また2企業からなる複占のケースとともに3企業以上を含む寡占も研究対象にし,加えて国際的な貿易の枠組みにおける新技術獲得の問題も扱った。差別化についても水平的差別化とともに品質の異なる財を生産する垂直的差別化のケースも取り上げた。相対利潤最大化の考え方を基礎に,それを抽象化したゼロ・サムゲームの研究や,応用としての寡占における技術革新に関する企業行動と政府の政策に関する問題の研究を進め,いくつかの研究成果を査読付きの雑誌に発表したり,掲載が決定したりしている。予定どおりに研究を進めるが,さらに動学的に企業の行動を分析する微分ゲームを取り入れた研究を進めており成果を上げる見通しも立っている。本年度はパソコン購入等や海外出張など大きな出費が少なかったため。次年度はパソコン更新や研究発表の計画もあり,過不足なく使用できるものと思われる。 | KAKENHI-PROJECT-18K01594 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K01594 |
成長ホルモン分泌促進ペプチドの視床下部における作用の解析 | 成長ホルモン分泌促進ペプチド(GHRP;growth hormone relasing peptide)あるいは内因性リガンドであるグレリン(ghrelin)の受容体(GHS-R)に対するアンチセンスmRNAを発現するトランスジェニック(Tg)ラットを作製し、その特徴を検討した。Tgラットは正常ラットと比較して、弓状核のGHS-R量が著しく低下していた。Tgラットは、正常ラットと比較して低体重で、体重/体長も低値であった。脂肪重量を比較したところ、Tgラットでは、体重あたりの脂肪重量が正常ラットに比較して有意に低下していた。これは他の研究施設より発表されたグレリンが脂肪組織を増加させるという事実を裏付ける結果である。また、雌のTgラットでは正常雌ラットと比較して成長ホルモン(GH)の基礎分泌は有意に低下しており、拍動性GH分泌の振幅および回数も有意に減少していたが、雄Tgラットでは正常雄ラットと同様の拍動性のGH分泌を認めた。麻酔下で、GHRPの一つであるKP-102(1μg/kg BW)を投与したところ、GH反応は雄雌ともTgラットで有意に減弱していた。高濃度(10μg/kg BW)のKP-102投与では、雌Tgラットでは正常ラットに比較してGH反応は有意に低下していたが、雄Tgラットでは差を認めなかった。また、KP-102を脳室内投与し摂食行動を検討した結果、正常ラットでは摂食行動の亢進が観察されたが、Tgラットではいずれの濃度においても摂食行動の亢進を認めなかった。これらのことから、弓状核のGHS-RはGHの分泌調節および摂食行動に関わっている可能性が示唆された。成長ホルモン分泌促進ペプチド(GHRP;growth hormone relasing peptide)あるいは内因性リガンドであるghrelinの受容体(GHS-R)に対するアンチセンスmRNAを発現するトランスジェニック(Tg)ラットを作製した。プロモーターとして視床下部の弓状核に発現しているtyrosine hydroxylase(TH)を用いた。この遺伝子の染色体への導入を確認した後、ホモ接合体を作製した。このTgラットの視床下部においてアンチセンスmRNAの発現を確認した。また視床下部、特に弓状核の部分を特異的に摘出し、GHS-RのWestern blottingを行った。Tgラットでは正常ラットと比較して、弓状核のGHS-R量は低下していた。このTgラットでは、4週から12週まですべての週齢について、雄雌それぞれ、正常ラットに比較して有意に体重が低下していた。また、体重/体長は、正常ラットに比較してTgラットで有意に低下していた。体重あたりの臓器重量を測定したところ、Tgラットでは下垂体の重量は有意な差を認めなかったが、精巣の重量は有意に低下していた。下垂体におけるGHの含有量は両者の間で差を認めなかった。また血清中のIGF-I濃度も両者の間で差はなかった。従ってこのTgラットは、GHRPおよびghrelinの作用機構を解明する上で、非常に有用であると考えられた。今後はこのTgラットにGHRPあるいはghrelinを投与してGHの反応を正常ラットと比較検討する予定である。またGHRPは摂食亢進作用があることを我々はすでに報告しており、このTgラットを用いて摂食作用に関しても検討したい。成長ホルモン分泌促進ペプチド(GHRP;growth hormone relasing peptide)あるいは内因性リガンドであるグレリン(ghrelin)の受容体(GHS-R)に対するアンチセンスmRNAを発現するトランスジェニック(Tg)ラットを作製し、その特徴を検討した。Tgラットは正常ラットと比較して、弓状核のGHS-R量が著しく低下していた。Tgラットは、正常ラットと比較して低体重で、体重/体長も低値であった。脂肪重量を比較したところ、Tgラットでは、体重あたりの脂肪重量が正常ラットに比較して有意に低下していた。これは他の研究施設より発表されたグレリンが脂肪組織を増加させるという事実を裏付ける結果である。また、雌のTgラットでは正常雌ラットと比較して成長ホルモン(GH)の基礎分泌は有意に低下しており、拍動性GH分泌の振幅および回数も有意に減少していたが、雄Tgラットでは正常雄ラットと同様の拍動性のGH分泌を認めた。麻酔下で、GHRPの一つであるKP-102(1μg/kg BW)を投与したところ、GH反応は雄雌ともTgラットで有意に減弱していた。高濃度(10μg/kg BW)のKP-102投与では、雌Tgラットでは正常ラットに比較してGH反応は有意に低下していたが、雄Tgラットでは差を認めなかった。また、KP-102を脳室内投与し摂食行動を検討した結果、正常ラットでは摂食行動の亢進が観察されたが、Tgラットではいずれの濃度においても摂食行動の亢進を認めなかった。これらのことから、弓状核のGHS-RはGHの分泌調節および摂食行動に関わっている可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-11770637 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11770637 |
純度7Nレベルの超高純度アルミニウムを目標とする帯溶融精製法の高精度・高能率化 | 純度7Nレベルのアルミニウム材を安定的に精製する技術を開発することを目的として、帯溶融精製実験と精製材の分析・評価、精製過程のシミュレーションを行い、帯溶融精製法の精製メカニズムを考察した。シミュレーションにより、5パス程度の精製では溶融幅200mm前後にすると効率よく高純度化できると推測されるが、一方で、温度計測により、溶融幅を長くすると最高温度が上昇することが確認できた。したがって、純度5Nの高純度アルミニウムの帯溶融精製において、溶融幅を150mm程度とすることにより、5パス程度の少ないパス回数で、純度7Nレベルに高純度化できることが明らかとなった。純度7N(99.99999%)レベルの超高純度アルミニウム材を安定的に精製する技術の開発を目的として、純度6N7Nレベルの帯溶融精製実験を行い、各溶質の濃度分布の高精度分析から精製メカニズムを明らかにするとともに、溶融域移動制御機構を取り入れた精製システムを構築して、帯溶融精製法の高精度・高能率化を行う。帯溶融精製の諸条件の検討において、純度5Nの高純度アルミニウム(18×18×900mmの角柱)を素材として、溶融幅およびパス回数と精製効果の関係を調べ、少ないパス回数で高い精製効果が得られる溶融幅が明らかとなった。また、すでに開発済みの帯溶融過程のシミュレーション計算プログラムを用いて、パス回数の進展に伴う、各溶質の濃度分布の変化を求めた結果、本実験結果が裏付けられた。さらに、溶融域の温度分布を高精度に測定する機能を導入し、すでに把握している溶融幅変化と真空度変化の関係と併せて、溶融域移動制御のアルゴリズムの検討を始めた。精製材の分析・評価において、精製後の試料の各部分から得られた電気抵抗測定用試料(1.7×1.7×60mmの角柱)を4.2K及び300Kで電気抵抗測定して残留抵抗比を求めた。さらに、同じ試料について、各溶質(3540元素)の濃度分布を、GDMS(VG9000、検出限界0.001mass-ppm)で分析した。これらの結果を総合的に解析した結果、純度7N(99.99999%)レベル以上、すなわち残留抵抗比100,000以上のアルミニウムが精製できたことが確認された。純度7N(99.99999%)レベルの超高純度アルミニウム材を安定的に精製する技術の開発を目的として、純度6N7Nレベルの帯溶融精製実験を行い、各溶質の濃度分布の高精度分析から精製メカニズムを明らかにするとともに、溶融域移動制御機構を取り入れた精製システムを構築して、帯溶融精製法の高精度・高能率化を行う。これまでに、純度5Nの高純度アルミニウム(18×18×900mmの角柱)を素材として、溶融幅およびパス回数と精製効果の関係を調べ、少ないパス回数で高い精製効果が得られる溶融幅が明らかとなっている。また、帯溶融過程のシミュレーション計算プログラムを用いて、適正な精製条件を明らかにしている。本年度は、精製メカニズムの解明において、既に得られた純度7Nレベルの試料を長手方向に細分化し、各部分のMg、Si、Fe、Cu等のk<1元素及びTi、V、Cr等のk>1元素の濃度をGDMSで高分解能分析し、精製条件と精製効率の関係から純度7Nレベルに至る精製メカニズムを考察した。さらに、目標の材質(溶質組成、純度)に応じた適正な精製条件について考察を加えた。帯溶融精製システムの構築において、これまでの温度分布測定から得れた結果と溶融幅変化及び真空度変化にもとづいて高周波出力を制御して溶融幅を一定に保つ溶融域移動制御を構築する計画を進めた。この前段階として、簡便に温度分布を可視化できる赤外線サーモグラフィと温度定量性に優れた熱電対温度計測装置を用いて溶融域の温度分布を高精度に測定し、温度分布と精製効果の関係について調査した。さらに、有限要素法解析ソフトウェアCOMSOL Multiphysicsを用いて、溶融中の試料温度を伝熱解析して、二つの測定結果と比較した。純度7N(99.99999%)レベルの超高純度アルミニウム材を安定的に精製する技術の開発を目的として、帯溶融精製実験を行い、各溶質の濃度分布の高精度分析から精製メカニズムを明らかにするとともに、溶融域移動制御機構を取り入れた精製システムを構築して、帯溶融精製法の高精度・高能率化を行う。これまでに、純度5Nの高純度アルミニウム(18×18×900mmの角柱)を素材として、溶融幅およびパス回数と精製効果の関係を調べ、少ないパス回数で高い精製効果が得られる溶融幅が明らかとなっている。また、帯溶融過程のシミュレーション計算プログラムを用いて、適正な精製条件を明らかにしている。本研究では、精製メカニズムの解明において、既に得られた純度7Nレベルの試料を長手方向に細分化し、各部分のMg、Si、Fe、Cu等のk<1元素及びTi、V、Cr等のk>1元素の濃度をGDMSで高分解能分析し、精製条件と精製効率の関係から純度7Nレベルに至る精製メカニズムを考察した。帯溶融精製システムの構築において、これまでの温度分布測定から得れた結果と溶融幅変化及び真空度変化にもとづいて高周波出力を制御して溶融幅を一定に保つ溶融域移動制御を構築する計画を進めた。 | KAKENHI-PROJECT-25420794 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25420794 |
純度7Nレベルの超高純度アルミニウムを目標とする帯溶融精製法の高精度・高能率化 | 簡便に温度分布を可視化できる赤外線サーモグラフィと温度定量性に優れた熱電対温度計測装置を用いて溶融域の温度分布を高精度に測定し、温度分布と精製効果の関係について調査した。さらに、有限要素法解析ソフトウェアCOMSOL Multiphysicsを用いて、溶融中の試料温度を伝熱解析して、二つの測定結果と比較した。以上の成果をもとにして、従来(10パス)と比べると少ない(5パス)のパス回数で、従来と同様な高い精製効果(7Nレベル)が得られる生成条件を明らかにし、実験により証明した。さらに、目標(溶質組成、純度)に応じた適正な精製条件について考察を加えた。純度7Nレベルのアルミニウム材を安定的に精製する技術を開発することを目的として、帯溶融精製実験と精製材の分析・評価、精製過程のシミュレーションを行い、帯溶融精製法の精製メカニズムを考察した。シミュレーションにより、5パス程度の精製では溶融幅200mm前後にすると効率よく高純度化できると推測されるが、一方で、温度計測により、溶融幅を長くすると最高温度が上昇することが確認できた。したがって、純度5Nの高純度アルミニウムの帯溶融精製において、溶融幅を150mm程度とすることにより、5パス程度の少ないパス回数で、純度7Nレベルに高純度化できることが明らかとなった。精製メカニズムの解明において、既に得られた純度7Nレベルの試料を長手方向に細分化し、各部分のMg、Si、Fe、Cu等のk<1元素及びTi、V、Cr等のk>1元素の濃度をGDMSで高分解能分析し、精製条件と精製効率の関係から純度7Nレベルに至る精製メカニズムを考察し、帯溶融過程シミュレーション結果と併せて精製メカニズムを明らかにした。さらに、目標の材質(溶質組成、純度)に応じた適正な精製条件選定の指針を明らかにした。帯溶融精製システムの構築において、これまでの温度分布測定から得れた結果と溶融幅変化及び真空度変化にもとづいて高周波出力を制御して溶融幅を一定に保つ溶融域移動制御を構築する計画を進めた。この前段階として、簡便に温度分布を可視化できる赤外線サーモグラフィと温度定量性に優れた熱電対温度計測装置を用いて溶融域の温度分布を高精度に測定し、温度分布と精製効果の関係について調査した。さらに、有限要素法解析ソフトウェアCOMSOL Multiphysicsを用いて、溶融中の試料温度を伝熱解析して、二つの測定結果と比較した。この結果から、加熱用の高周波コイルの形状(軸方向長さ、コイル密度など)により、溶融域の温度分布や最高温度が影響を受けること等、実用化に貢献できる事実が明らかとなった。材料工学本研究は3カ年計画であり、平成25年度実施事項:1)帯溶融精製の諸条件の検討、2)精製材の分析・評価、平成26年度実施事項:精製3)メカニズムの解明、4)帯溶融精製システムの構築については、ほぼ目標を達成している。したがって、当初計画に従って、次のように進める。平成27年度実施事項:帯溶融精製の適正化において、本研究で明らかになった適正な精製条件を、構築した精製システムに適用し、純度5Nの高純度アルミニウムを素材として精製実験を行い、純度7N(99.99999%)レベル、すなわち、残留抵抗比100,000以上のアルミニウムを安定的に精製する技術を確立する。研究総括において、3ヵ年の研究成果を統合し、純度7N(99.99999%)レベルに至るアルミニウム帯溶融の精製メカニズムを解明する。さらに、目標の材質(溶質組成、純度)に応じた適正条件の指針を明らかにし、高精度で高能率な帯溶融精製システムを確立する。研究計画調書に記載した下記の実施項目について、ほぼ目標を達成した。 | KAKENHI-PROJECT-25420794 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25420794 |
異なるクローディン分子種を発現するがん細胞集団の相互作用とその意義 | ヒト子宮内膜がん細胞株であるECC1とHEC1Aのクローディンー6(CLDN6)発現細胞株を用いてウェスタンブロットを行った結果、内在性に発現するCLDN4の発現が顕著に減少することを再確認した。また一過性にCLDN6を発現させた場合においても早期に内在性に発現するCLDN4の発現が顕著に減少すること、CLDN6の発現量依存的にCLDN4発現が減少することが明らかとなった。さらにHEK293T細胞にCLDN4を発現させた後にCLDN6を発現させると、CLDN6発現が起こらないことが明らかとなった。次に、ECC1細胞において、野生型とCLDN6発現株からRNAを採取し、定量的RT-PCRを行った結果、CLDN4のmRNAレベルには変化がないことが分かった。これらの結果から、CLDN4とCLDN6の排他的な発現制御機構は他の細胞においても存在すること、またCLDN6による内在性CLDN4の発現減少はタンパクレベル、つまり分解経路(エンドサイトーシス、リソソーム、オートファジーなど)の誘導によって起こっていることが示唆された。さらにECC1細胞の免疫染色を行った結果、CLDN6発現細胞ではCLDN4発現が殆ど認められなかったが、CLDN4陽性細胞とCLDN6陽性細胞の細胞間接着部位では、極僅かにCLDN4とCLDN6が共局在する領域を認めた。これはCLDN4とCLDN6が互いを認識し、互いの排他的シグナルを細胞内に伝達している可能性を示唆するものを考えられる。使用していた市販CLDN6抗体は、僅かではあるが他CLDNとの反応性が確認されたため、再評価が必要となった。新たに特異性の高いモノクローナル抗体を作製し、ヒト子宮内膜がん症例での検討を進め、概ね同様の結果が得られており、この結果をもとにCLDN4陽性の程度をIRSスコア算定により検討を行う。またヒト乳癌症例では、CLDN6陽性症例が殆ど認められず、予後との相関性は解析出来なかった。さらにヒト卵巣癌症例ではCLDN6陽性と予後との相関は認められなかった。当初計画通りに、新規作製した抗CLDN6モノクローナル抗体を用いて、ヒト子宮内膜がん症例でのCLDN6陽性とCLDN4陽性の割合と予後相関について、IRSスコア算定により評価する。またCLDN6陽性が報告される胃がんなど他がんについて、CLDN4排他的メカニズムが存在するかを検討する、さらにはこれらの細胞株を用いて、CLDN4とCLDN6の排他的関係の普遍性とがんの悪性形質機構への関与を明らかにする。排他的関係のメカニズムとしてタンパク分解経路が関与していることが示唆されたため、CLDN6によるCLDN4タンパク分解の経路を同定するため、各タンパク分解経路の阻害剤を用い、その詳細なメカニズムを解明する。排他的作用は短時間で誘導されることが示唆されたため、蛍光融合CLDN4とCLDN6を細胞株に導入し、タイムラプスイメージングにより動的に本現象を捉える。ヒト子宮内膜がん細胞株であるECC1とHEC1Aのクローディンー6(CLDN6)発現細胞株を用いてウェスタンブロットを行った結果、内在性に発現するCLDN4の発現が顕著に減少することを再確認した。また一過性にCLDN6を発現させた場合においても早期に内在性に発現するCLDN4の発現が顕著に減少すること、CLDN6の発現量依存的にCLDN4発現が減少することが明らかとなった。さらにHEK293T細胞にCLDN4を発現させた後にCLDN6を発現させると、CLDN6発現が起こらないことが明らかとなった。次に、ECC1細胞において、野生型とCLDN6発現株からRNAを採取し、定量的RT-PCRを行った結果、CLDN4のmRNAレベルには変化がないことが分かった。これらの結果から、CLDN4とCLDN6の排他的な発現制御機構は他の細胞においても存在すること、またCLDN6による内在性CLDN4の発現減少はタンパクレベル、つまり分解経路(エンドサイトーシス、リソソーム、オートファジーなど)の誘導によって起こっていることが示唆された。さらにECC1細胞の免疫染色を行った結果、CLDN6発現細胞ではCLDN4発現が殆ど認められなかったが、CLDN4陽性細胞とCLDN6陽性細胞の細胞間接着部位では、極僅かにCLDN4とCLDN6が共局在する領域を認めた。これはCLDN4とCLDN6が互いを認識し、互いの排他的シグナルを細胞内に伝達している可能性を示唆するものを考えられる。使用していた市販CLDN6抗体は、僅かではあるが他CLDNとの反応性が確認されたため、再評価が必要となった。新たに特異性の高いモノクローナル抗体を作製し、ヒト子宮内膜がん症例での検討を進め、概ね同様の結果が得られており、この結果をもとにCLDN4陽性の程度をIRSスコア算定により検討を行う。またヒト乳癌症例では、CLDN6陽性症例が殆ど認められず、予後との相関性は解析出来なかった。さらにヒト卵巣癌症例ではCLDN6陽性と予後との相関は認められなかった。当初計画通りに、新規作製した抗CLDN6モノクローナル抗体を用いて、ヒト子宮内膜がん症例でのCLDN6陽性とCLDN4陽性の割合と予後相関について、IRSスコア算定により評価する。またCLDN6陽性が報告される胃がんなど他がんについて、CLDN4排他的メカニズムが存在するかを検討する、さらにはこれらの細胞株を用いて、CLDN4とCLDN6の排他的関係の普遍性とがんの悪性形質機構への関与を明らかにする。 | KAKENHI-PROJECT-17K08766 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K08766 |
異なるクローディン分子種を発現するがん細胞集団の相互作用とその意義 | 排他的関係のメカニズムとしてタンパク分解経路が関与していることが示唆されたため、CLDN6によるCLDN4タンパク分解の経路を同定するため、各タンパク分解経路の阻害剤を用い、その詳細なメカニズムを解明する。排他的作用は短時間で誘導されることが示唆されたため、蛍光融合CLDN4とCLDN6を細胞株に導入し、タイムラプスイメージングにより動的に本現象を捉える。本年度に予定していたトランスクリプトーム解析を次年度に実施することとしたため。 | KAKENHI-PROJECT-17K08766 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K08766 |
ナノレベル有機・無機複合化粒子からの生体必須微量金属の放出制御 | 申請者らはこれまでの研究結果を基に骨類似マトリックスかの骨再生因子の一つである亜鉛などの生体内必須微量金属の細胞分化における役割に着目し,これらを骨組織近傍あるいは骨随腔に亜鉛を放出することにより骨細胞を分化誘導し骨再生を活性化すること目的に生体薬理活性を持つ材料として開発された亜鉛含有β3リン酸カルシクム(ZnTCP)は骨再生を促進する人工骨材料として注目されているZnTCPを単独あるいは,コラーゲンあるいは合成高分子などと混合し粉砕することによりナノレベルの微粒子化が有機物マトリックスに分散した複合化ZnTCPを調製することを目的に以下の研究成果を上げてきた.まず,アパタィトセメントと合成生体親和性ポリマーであるBisGMAを練合し,抗生物質セファレキシンを徐放化する骨セメントを開発し,ラット体内に埋め込み薬物徐放化と生体親和性を評価し,有機・無機複合化の薬物徐放化に対する影響を示した.また,ZnTCPの微粒子化を生理食塩水などに分散し懸濁化することにより亜鉛徐放化するインジェクタブルZnTCP注射剤を用いることにより骨粗鬆症患者の骨再生能を促して,自家骨を再生できる可能性がある.準安定形β3リン酸カルシウムに1-20mol%の亜鉛を溶融し種々の濃度の亜鉛を含有するZnTCPを調製した.このZnTCP粉末を遠心ボールミルによりメカノケミカル処理を行い,ナノレベルのZnTCP粒子が縣濁液中に分散しマイクロメータレベルの粒子が分散する注射剤を調製した.これらの準安定型リン酸カルシウムは,アパタイト結晶への転移により徐々に亜鉛を放出した.これらのin vitro溶出特性と調製の処方との関係を検討した.本薬物送達システムを骨粗しょう症病ラットに複合粒子懸濁液を適用し,複合体粒子径,分散ナノ粒子径,分散度,溶液分散性,亜鉛溶解速度,カルシウム放出速度,リン酸放出速度などのin vitro溶出特性とIn Vivo複合粒子の薬物放出挙動は,良好な薬物放出特性を示した.また,亜鉛の治療効果を定量的に把握するためにアルカリフォスファターゼ活性,骨密度の測定を行い,これらの亜鉛による影響を検討した.申請者らはこれまでの研究結果を基に骨類似マトリックスかの骨再生因子の一つである亜鉛などの生体内必須微量金属の細胞分化における役割に着目し,これらを骨組織近傍あるいは骨随腔に亜鉛を放出することにより骨細胞を分化誘導し骨再生を活性化すること目的に生体薬理活性を持つ材料として開発された亜鉛含有β3リン酸カルシクム(ZnTCP)は骨再生を促進する人工骨材料として注目されているZnTCPを単独あるいは,コラーゲンあるいは合成高分子などと混合し粉砕することによりナノレベルの微粒子化が有機物マトリックスに分散した複合化ZnTCPを調製することを目的に以下の研究成果を上げてきた.まず,アパタィトセメントと合成生体親和性ポリマーであるBisGMAを練合し,抗生物質セファレキシンを徐放化する骨セメントを開発し,ラット体内に埋め込み薬物徐放化と生体親和性を評価し,有機・無機複合化の薬物徐放化に対する影響を示した.また,ZnTCPの微粒子化を生理食塩水などに分散し懸濁化することにより亜鉛徐放化するインジェクタブルZnTCP注射剤を用いることにより骨粗鬆症患者の骨再生能を促して,自家骨を再生できる可能性がある.準安定形β3リン酸カルシウムに1-20mol%の亜鉛を溶融し種々の濃度の亜鉛を含有するZnTCPを調製した.このZnTCP粉末を遠心ボールミルによりメカノケミカル処理を行い,ナノレベルのZnTCP粒子が縣濁液中に分散しマイクロメータレベルの粒子が分散する注射剤を調製した.これらの準安定型リン酸カルシウムは,アパタイト結晶への転移により徐々に亜鉛を放出した.これらのin vitro溶出特性と調製の処方との関係を検討した.本薬物送達システムを骨粗しょう症病ラットに複合粒子懸濁液を適用し,複合体粒子径,分散ナノ粒子径,分散度,溶液分散性,亜鉛溶解速度,カルシウム放出速度,リン酸放出速度などのin vitro溶出特性とIn Vivo複合粒子の薬物放出挙動は,良好な薬物放出特性を示した.また,亜鉛の治療効果を定量的に把握するためにアルカリフォスファターゼ活性,骨密度の測定を行い,これらの亜鉛による影響を検討した.骨類似マトリックスかの骨再生因子の一つである亜鉛などの生体内必須微量金属の細胞分化における役割に着目し,これらを骨組織近傍あるいは骨随腔に亜鉛を放出することにより骨細胞を分化誘導し骨再生を活性化することを試みる.生体薬理活性を持つ材料として開発された活性ガラスセメントは骨再生を促進する人工骨材料として注目されているこのセメントを単独あるいは、コラーゲンあるいはBisGMAなどの合成高分子などと混合し,粉砕することによりナノレベルの微粒子化が有機物マトリックスに分散した複合化セメントを調製した.これらのセメントにモデル薬物として抗生物質セファレキシンを含有させて薬物の放出制御を行い,生体親和性の高い骨セメントからの薬物徐放化をさせること可能となった.これらのセメントの内部構造は,高分子マトリックス中に数百ナノメータのアパタイト微粒子が分散し,その間隙をナノメータ単位の微細な空隙が迷走しいる構造であることが示された.これらの骨類似マトリックスからの薬物放出は,骨生成をつかさどる細胞への刺激因子として重要な役割を担うと思われる.合成高分子などと混合し,粉砕することによりナノレベルの微細構造をさらに制御したマトリックスを得ることができることが示された. | KAKENHI-PROJECT-13680958 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13680958 |
ナノレベル有機・無機複合化粒子からの生体必須微量金属の放出制御 | 申請者らはこれまでの研究結果を基に骨類似マトリックスかの骨再生因子の一つである亜鉛などの生体内必須微量金属の細胞分化における役割に着目し,これらを骨組織近傍あるいは骨随腔に亜鉛を放出することにより骨細胞を分化誘導し骨再生を活性化すること目的に生体薬理活性を持つ材料として開発された亜鉛含有β3リン酸カルシウム(ZnTCP)は骨再生を促進する人工骨材料として注目されているZnTCPを単独あるいは,コラーゲンあるいは合成高分子などと混合し粉砕することによりナノレベルの微粒子化が有機物マトリックスに分散した複合化ZnTCPを調製することを目的に以下の研究成果を上げてきた.まず,アパタイトセメントと合成生体親和性ポリマーであるBisGMAを練合し,抗生物質セファレキシンを徐放化する骨セメントを開発し,ラット体内に埋め込み薬物徐放化と生体親和性を評価し,有機・無機複合化の薬物徐放化に対する影響を示した.また,ZnTCPの微粒子化を生理食塩水などに分散し懸濁化することにより亜鉛徐放化するインジェクタブルZnTCP注射剤を用いることにより骨粗鬆症患者の骨再生能を促して,自家骨を再生できる可能性がある.準安定形β3リン酸カルシウムに1-20mol%の亜鉛を溶融し種々の濃度の亜鉛を含有するZnTCPを調製した.このZnTCP粉末を遠心ボールミルによりメカノケミカル処理を行い,ナノレベルのZnTCP粒子が縣濁液中に分散しマイクロメータレベルの粒子が分散する注射剤を調製した.これらの準安定型リン酸カルシウムは,アパタイト結晶への転移により徐々に亜鉛を放出した.これらのin vitro溶出特性と調製の処方との関係を検討した.本薬物送達システムを骨粗しょう症病ラットに複合粒子懸濁液を適用し,複合体粒子径,分散ナノ粒子径,分散度,溶液分散性,亜鉛溶解速度,カルシウム放出速度,リン酸放出速度などのin vitro溶出特性とIn Vivo複合粒子の薬物放出挙動は,良好な薬物放出特性を示した.また,亜鉛の治療効果を定量的に把握するために,アルカリフォスファターゼ活性,骨密度の測定を行い,これらの亜鉛による影響を検討した. | KAKENHI-PROJECT-13680958 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13680958 |
Classroom Activitiesの測定・分析方法の開発に関する実証的研究 | 児童のActivityについて、児童は学校生活のなかで、どこで活動性を高め、どこでそれを抑制しているかを調べることは本研究上あるいは児童の保健上重要な視点である。ただ万歩計などのActivity測定の方法では活動量の総和は測定出来るが、時間を伴う変化は明らかに出来ない。そこで小型の加速度センサを児童のベルトに取り付け、Activityの変化をアナログ測定し、それをFM変調方式でテレメータ伝送する方式を検討した。現在FM変調回路の誤動作があり、信頼性を高める必要があり開発作業を継続している。児童のClassroom Activityと動機づけとの関連性が示唆された60年度の研究成果をふまえ、動機づけの高まりを第1の目標とした授業の典型として、読みに遅れのある特殊学校児童に対する国語の授業を分析した。マイコンを用いた教材提示を行ない、児童の興味・関心を高めることを意図した授業を担任が行った結果、授業の山場では児童のActivityの亢進と抑制が交互に出現するパタンが認められた。このことはActivityの量ではなく、変化パターンが動機づけの尺度になる可能性を示すものと解釈された。教師のClassroom Activityとして、教育実習生の活動内容のカテゴリー分析を行った。実習生の1日の活動のうち、教科を指導する活動は予想外に低く(3%)、教科外活動が大部分を占めるという興味深い結果が得られた。また実習生の授業におけるClassroom Activitiesに関して体育の授業(17時間)を分析した。教師の発言行動をカテゴリー分析した結果、予想外に発問の占める割合が低く(2.2%)、講義,指示が56.8%と圧倒的に多いという結果が得られた。以上個々に興味ある結果が得られたが、本研究の主要目的である教師-児童間の相互作用過程を客観的に記述する点については、現在までの分析結果からは最終的な結論づけには今後数ケ月間の分析作業が必要であり、7月末までを目標に作業を進める予定である。児童のActivityについて、児童は学校生活のなかで、どこで活動性を高め、どこでそれを抑制しているかを調べることは本研究上あるいは児童の保健上重要な視点である。ただ万歩計などのActivity測定の方法では活動量の総和は測定出来るが、時間を伴う変化は明らかに出来ない。そこで小型の加速度センサを児童のベルトに取り付け、Activityの変化をアナログ測定し、それをFM変調方式でテレメータ伝送する方式を検討した。現在FM変調回路の誤動作があり、信頼性を高める必要があり開発作業を継続している。児童のClassroom Activityと動機づけとの関連性が示唆された60年度の研究成果をふまえ、動機づけの高まりを第1の目標とした授業の典型として、読みに遅れのある特殊学校児童に対する国語の授業を分析した。マイコンを用いた教材提示を行ない、児童の興味・関心を高めることを意図した授業を担任が行った結果、授業の山場では児童のActivityの亢進と抑制が交互に出現するパタンが認められた。このことはActivityの量ではなく、変化パターンが動機づけの尺度になる可能性を示すものと解釈された。教師のClassroom Activityとして、教育実習生の活動内容のカテゴリー分析を行った。実習生の1日の活動のうち、教科を指導する活動は予想外に低く(3%)、教科外活動が大部分を占めるという興味深い結果が得られた。また実習生の授業におけるClassroom Activitiesに関して体育の授業(17時間)を分析した。教師の発言行動をカテゴリー分析した結果、予想外に発問の占める割合が低く(2.2%)、講義,指示が56.8%と圧倒的に多いという結果が得られた。以上個々に興味ある結果が得られたが、本研究の主要目的である教師-児童間の相互作用過程を客観的に記述する点については、現在までの分析結果からは最終的な結論づけには今後数ケ月間の分析作業が必要であり、7月末までを目標に作業を進める予定である。 | KAKENHI-PROJECT-60580234 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60580234 |
網膜血管新生調節因子の分子解析 | 1.生後7日のC57BL/6Jマウスを75%高濃度酸素下で5日間飼育することにより網膜血管新生を惹起し、高酸素負荷マウス網膜血管新生モデルを作成した。2.生後15日の高酸素負荷マウスと非負荷マウスの網膜よりmRNAを抽出し、DNAマイクロアレイを用いて発現遺伝子の比較解析を行った。高酸素負荷群においては、血管新生に関与する既知の遺伝子に加え、クリスタリンファミリーの著明な発現増加を認めた。3.解析データをもとにクリスタリンの発現について、網膜伸展標本、凍結切片を用い、蛋白レベルでの局在を免疫組織化学的に検討した。高酸素負荷マウスにおいて、生後15日ではクリスタリンはneovascular tuftと呼ばれる塊状の新生血管の周囲に局在を認めた。4.Western blottingにより網膜におけるクリスタリン発現の経時変化を検討した結果、クリスタリンは生後12日から15日の網膜血管新生初期に高発現を示した。5.増殖糖尿病網膜症患者の硝子体手術時に採取された新生血管を含む増殖組織を用い、クリスタリンの局在を免疫組織化学的に検討した。増殖組織においては、クリスタリンは新生血管の周囲に局在を示した。以上より、網膜血管新生にクリスタリンが重要な役割を担っている可能性が示唆された。これらの結果については現在、論文投稿準備中である。1.生後7日のC57BL/6Jマウスを75%高濃度酸素下で5日間飼育することにより網膜血管新生を起こさせ、フルオレセイン標識デキストランにて蛍光眼底造影を行ったのち網膜伸展標本を作成し、病期ごとの血管新生の評価を行った。その結果、生後15日において網膜血管野と無血管野の境界部に血管新生が認められた。また、高酸素負荷マウス網膜血管新生モデルの作成に成功したことが確認された。2.高酸素負荷マウスと非負荷マウスの生後15日の網膜よりmRNAを抽出し、DNAマイクロアレイを用いて発現遺伝子の比較解析を行った。高酸素負荷群においては、血管新生に関与する既知の遺伝子に加え、クリスタリンファミリーの著明な発現増加を認めた。3.DNAマイクロアレイ解析データをもとにクリスタリンの発現について。網膜伸展標本、凍結切片を用い、蛋白レベルでの局在を免疫組織化学的に検討した。高酸素負荷マウスにおいて、生後15日ではクリスタリンはneovascular tuftと呼ばれる塊状の新生血管の周囲に局在を認めた。4.Western blottingにより網膜におけるクリスタリン発現の経時変化を検討した結果、クリスタリンは生後12日から15日の網膜血管新生初期に高発現を示した。以上より、網膜血管新生初期にクリスタリンが重要な役割を担っている可能性が示唆された。1.生後7日のC57BL/6Jマウスを75%高濃度酸素下で5日間飼育することにより網膜血管新生を惹起し、高酸素負荷マウス網膜血管新生モデルを作成した。2.生後15日の高酸素負荷マウスと非負荷マウスの網膜よりmRNAを抽出し、DNAマイクロアレイを用いて発現遺伝子の比較解析を行った。高酸素負荷群においては、血管新生に関与する既知の遺伝子に加え、クリスタリンファミリーの著明な発現増加を認めた。3.解析データをもとにクリスタリンの発現について、網膜伸展標本、凍結切片を用い、蛋白レベルでの局在を免疫組織化学的に検討した。高酸素負荷マウスにおいて、生後15日ではクリスタリンはneovascular tuftと呼ばれる塊状の新生血管の周囲に局在を認めた。4.Western blottingにより網膜におけるクリスタリン発現の経時変化を検討した結果、クリスタリンは生後12日から15日の網膜血管新生初期に高発現を示した。5.増殖糖尿病網膜症患者の硝子体手術時に採取された新生血管を含む増殖組織を用い、クリスタリンの局在を免疫組織化学的に検討した。増殖組織においては、クリスタリンは新生血管の周囲に局在を示した。以上より、網膜血管新生にクリスタリンが重要な役割を担っている可能性が示唆された。これらの結果については現在、論文投稿準備中である。 | KAKENHI-PROJECT-15790979 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15790979 |
高等教育における職業実践的プロジェクトの効果を高める問題解決型学習モデルの構築 | 人文社会科学系学科の授業における職業実践的プロジェクトの設計・評価を通じ、問題解決型の学習活動モデルについて次の4点から検討した。(1)学習科学の立場から、先行研究を踏まえた学習活動のデザインと評価を行った。(2)卒業生へのインタビューを質的に分析し、学習環境の要件を導出して、授業デザインに反映した。(3)事例調査として、国内外の多様な実践を検討し、分析枠組みとして応用した。(4)実践的検証と事例の蓄積として、関連の実践者を招いての授業研究会の開催、実践者向けの資料作成を行った。最後に、初年次の産学連携プロジェクトの実践的検証を通じ、ジグソー法を応用した協調的な学習活動モデルを提案した。本研究が対象とする授業実践では、専門科目の中に、その科目と関係のある職業的文脈を想定した活動を構成することにより、科目自体の学習成果を高めることを目指している。今年度はプロジェクト型で実施している授業に加え、講義形式の科目において職業的文脈を想定した展開を検討してきた科目についても分析対象に加えて、以下のとおり進めた。研究代表者が5年間継続しているプロジェクト型のゼミの授業では、情報デザインの基礎に基づく広報紙制作活動という活動形式を再度明確にした上で、デザイン研究を継続してデータを収集した。この授業については今年度で5年間のデータ収集が完了したことになり、総合的な分析方法の検討にはいった。分析方法を検討した結果は日本認知科学会の全国大会において発表した。認知科学で行われてきた転移研究を実践のフィールドで応用することを念頭に、授業デザインとその評価方法を提示することができた。授業に参加した学生を含め、所属する学科の卒業生に対して継続してきたインタビューについては、質的な分析と授業改善を総合的に考察する活動を進め、EARLI2013およびWALS2013での発表の機会を得て、ポスター発表と口頭発表を行った。当該分野における専門家からのコメントを得た。また、京都大学の高等教育研究フォーラムにて、全体的な考察をまとめ、授業実践の成果を考えるために卒業生へのインタビューをどう位置付けるべきかについての方向を示した。職業教育、キャリア教育の観点で行っている研究代表者の授業を中心に対象とする実践を増やし事例としてまとめることを試み、関連の査読付き論文誌への採録を2件得た。いずれの内容においても、地域の課題に密着した授業デザイン、文脈設定、課題設定の重要性や協調的な学習方法の有用性を示唆した。本研究は、人文社会科学系学科における職業実践的プロジェクトの設計・評価を通じ、専門科目の学習効果を高める問題解決型の学習モデルの構築を目的とする。本研究プロジェクト活動では、専門科目の中に、その科目と関係のある職業的文脈を想定した活動を構成することにより、科目自体の学習成果を高めることを目指す。この点が、特定の職業における業務の遂行に必要な知識・技能を身につけることを目指すタイプの職業教育と異なる点であり、人文社会科学系学科にとって必要なアプローチとなる。この考え方に基づき、1)職業実践的プロジェクトの学習効果を高めるデザイン原則の導出、2)卒業生、企業へのインタビュー実施、3)職業実践的プロジェクトの事例調査、4)大学・短期大学における実践的検証と事例の蓄積、を研究項目として研究を開始し、平成24年度は、1)と2)を中心に研究活動を進めた。1)としては、認知科学、情報デザインの基礎に基づく広報紙制作活動のデザイン研究を継続した。本実践はサービス・ラーニングの知見を参考に継続的な改善を行っており、活動デザインを精緻化した上で実践を重ね、総合的な分析方法の検討と実践のまとめに入った。2)については、本研究の学習活動を経て就職した学生へのインタビューは少し先になるため、本務校の卒業生調査で取得したインタビューデータを用いて、グラウンディッド・セオリー・アプローチを用いたデータの分析方法と授業改善への示唆の得方を検討した。授業を履修している期間のインタビュー、卒業直後のインタビューも必要と考え、履修者へのインタビューも開始した。以上について、研究経過の発表のために、職業教育研究、高等教育から職業生活への移行について研究が盛んなヨーロッパの学会(EARLI)をベースに関連研究者との意見交換、国際学会への発表論文の投稿を行い、平成25年度の学会に向けて2件の発表が採択された。本研究は、人文社会科学系学科における職業実践的プロジェクトの設計・評価を通じ、専門科目の学習効果を高める問題解決型の学習モデルの構築を目的とする。本研究が対象とするプロジェクト活動では、専門科目の中に、その科目と関係のある職業的文脈を想定した活動を構成することにより、科目自体の学習成果を高めることを目指す。この点が、特定の職業における業務の遂行に必要な知識・技能を身につけることを目指すタイプの職業教育と異なる点であり、人文社会科学系学科にとって必要なアプローチとなる。この考え方に基づき、1)職業実践的プロジェクトの学習効果を高めるデザイン原則の導出、2)卒業生、企業へのインタビュー実施、3)職業実践的プロジェクトの事例調査、4)大学・短期大学における実践的検証と事例の蓄積、の4点を研究項目としてきた。今年度は、1)、2)で蓄積したデータおよび学会発表をまとめての学習モデルに関する論文の執筆と投稿、3)と4)については、関連の実践的研究の動向を踏まえての授業研究会の開催、また4)については集大成としての資料作成あるいは情報発信を主眼に研究を進めた。結果として、査読付き論文誌への採録1件、紀要論文として1件、関連学会等でのポスター発表2件の成果となった。研究会については所属研究機関を開催場所として、学内外の関連の研究者による発表と指定討論から構成される授業研究会「国際コミュニケーション科大学と社会をつなぐ授業ー | KAKENHI-PROJECT-24530981 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24530981 |
高等教育における職業実践的プロジェクトの効果を高める問題解決型学習モデルの構築 | 学生の学びをどう捉えるかー」を開催した(平成27年2月6日清泉女学院短期大学)。今年度の研究活動を通じて、人文社会科学系学科における初年次の産学連携教育の学習モデルを提案し、ジグソー法を応用した協調的な学習デザインの有用性を示唆することができた。本研究は、人文社会科学系学科における職業実践的プロジェクトの設計・評価を通じ、専門科目の学習効果を高める問題解決型の学習モデルの構築を目的とし、1.職業実践的プロジェクトの学習効果を高めるデザイン原則の導出、2.卒業生・企業へのインタビュー実施、3.職業実践的プロジェクトの事例調査、4.大学・短期大学における実践的検証と事例の蓄積、という4点を具体的な研究項目に展開した。1と2については、主として短期大学2年次に配置されている専門科目の授業を対象とした実践研究を行い、ジグソー法の考え方を応用した協調的な学習デザインに基づく産学連携プロジェクト活動の設計と継続的な改善を行い、初年次の産学連携教育の学習モデルを提案した。あわせて、関連の卒業生や企業へのインタビューを行い、授業をベースとする実践コミュニティの中に、職業的文脈を想定した活動を構成することの必要性を導出し、それを踏まえた授業デザインを検討した。以上をもとに、3と4においては、関連する授業の担当者相互の実践を比較検討する活動を推進し、授業研究会、共著によるポスター発表を行った。最終年度はここまでの成果に基づき、他の教育実践者が使えるようなワークシート等を印刷資料としてまとめた。また、その内容をもとにした他機関における応用実践の実施と評価を継続し、WACE世界大会でのポスター発表とオープンスペーステクノロジーへの参加、日本協同教育学会での発表、京都大学高等教育研究開発推進センター主催のフォーラムでの実践発表と参加者企画セッションへの参加を行うことができた。近年増加している産学連携によるPBLの学習効果を高めるためには丁寧な授業設計とそれに基づく継続的なデザイン研究が必要となる。本研究が提示した基礎的なモデルはその一助となるものと考える。人文社会科学系学科の授業における職業実践的プロジェクトの設計・評価を通じ、問題解決型の学習活動モデルについて次の4点から検討した。(1)学習科学の立場から、先行研究を踏まえた学習活動のデザインと評価を行った。(2)卒業生へのインタビューを質的に分析し、学習環境の要件を導出して、授業デザインに反映した。(3)事例調査として、国内外の多様な実践を検討し、分析枠組みとして応用した。(4)実践的検証と事例の蓄積として、関連の実践者を招いての授業研究会の開催、実践者向けの資料作成を行った。最後に、初年次の産学連携プロジェクトの実践的検証を通じ、ジグソー法を応用した協調的な学習活動モデルを提案した。本研究は、研究の中心部分ではおおむね順調に進んでいると考えられるが、そこに至る過程において想定以上の時間を要したため、最終的なまとめの部分にやや遅れが出ている。 | KAKENHI-PROJECT-24530981 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24530981 |
次世代舶用燃料からの排ガス粒子状物質が海洋生態系に及ぼす影響評価 | 次世代燃料を用いた船舶ディーゼルエンジンからの排ガス中の粒子状物質(PM)が海洋生態系に及ぼす有害影響をバイオアッセイにより評価し、PMに吸着する有機有害成分とアニオンの関連性を評価した。C重油やA重油に比較すると、ジャトロファ油からのPM排出量は低く、海産生物への有害性は低く、変異原性も低かった。C重油やA重油にジメチルエーテル(DME)を添加した燃料では、DME添加によって減少した燃料の量に見合う有害性の低減は必ずしも認められなかった。次世代燃料を用いた船舶ディーゼルエンジンからの排ガス中の粒子状物質(PM)が海洋生態系に及ぼす有害影響をバイオアッセイにより評価し、PMに吸着する有機有害成分とアニオンの関連性を評価した。C重油やA重油に比較すると、ジャトロファ油からのPM排出量は低く、海産生物への有害性は低く、変異原性も低かった。C重油やA重油にジメチルエーテル(DME)を添加した燃料では、DME添加によって減少した燃料の量に見合う有害性の低減は必ずしも認められなかった。次世代燃料を用いた船舶ディーゼルエンジンからの排ガスの粒子状物質(SDEP)が海洋生態系に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、水不溶性画分(有機溶媒可溶画分:SOF)および水溶性画分(イオン性物質)に着目して以下の研究を行った。1.燃料由来の多環芳香族炭化水素(PAH)とニトロ化PAH(NPAH)の定量供試試料(A重油、C重油、ジャトロファ油、潤滑油)をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて分画し、HPLC-FD-CDにより15種類のPAHおよび11種類のNPAHを定量した。総PAH濃度はA重油が最も多く、次いでC重油であり、ジャトロファ油と潤滑油は少なかった。また、4種の試料にはNPHAは検出されなかった。しかしながら、総PAH濃度の絶対値が低く、次年度に再検討を要する。2.DME添加重油燃料からのSDEPの有害性評価ジメチルエーテル(DME)を30%以下の濃度でA重油およびC重油に混合した燃料を用い、エンジン負荷率を4段階で稼動させてSDEPを得た。常法に従ってSOFを調製し、PAHおよびNPAHを定量すると共に、海産発光細菌への影響と変異原性を評価した。DME混合燃料ではSDEPの排出量は顕著に抑制され、SOF中の総PAH濃度および1NP濃度は例外はあるものの概して減少した。バイオアッセイによる評価では、DMEをA重油に混合した燃料からのSOFの有害性は減少したが、C重油に混合した場合には有害性が増加した。3.SDEP由来イオン性物質の分析法の開発既設のHPLCにカラムオーブンと電気伝導度検出器を新たに導入し、水中の陰イオン(F,Cl,NO_2,Br,NO_3,SO_4)の分析法を開発した。SDEPをフィルターごと水抽出してろ過し、上記陰イオンの分離定量を試みた。次世代燃料を用いた船舶ディーゼルエンジンからの排ガスの粒子状物質(SDEP)が海洋生態系に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。異なる燃料からのSDEPの水不溶性画分(有機溶媒可溶画分:SOF)に含まれる多環芳香族炭化水素(PAH)およびニトロPAH(NPAH)、および水溶性画分に含まれるイオン性物質を定量するとともに、SOFの変異原性を評価した。1.SDEP試料:4種類の供試燃料油(1)ジャトロファ油、(2)ジャトロファ油に水をエマルジョン添加した燃料、(3)C重油、(4)C重油にジメチルエーテル(DME)を添加した燃料を用い、エンジン負荷率を4段階として排ガスを発生させ、3回の繰返し実験によりフィルター上にSDEP試料を得た。1枚のフィルターを4等分し、1/4枚を有機溶媒抽出してHPLCにより3分画してSOF試料とし、PAH,NPAHを測定し、変異原性を評価した。また1/4枚を水抽出してイオン性物質を測定した。PM排出量を燃料ごとに比較すると(1)より(2)の方が低く、(3)より(4)の方が低く、所期の予想通りだった。2.SDEPに吸着する有機溶媒可溶成分:ジャトロファ油および水エマルジョン燃料からのSOF試料には、NPAHとしては1ニトロピレンのみが検出された。ジャトロファ油および水エマルジョン燃料からの水抽出試料には、濃度が高い順に、亜硝酸イオン>硝酸イオン>硫酸イオンが検出された。3.SOFの変異原性評価:HPLCで3分画したSOF試料について、ウムラックATにより評価した。ジャトロファ油および水エマルジョン燃料では、いずれの画分にも変異原性は認められなかった。これに対して、C重油およびDME添加C重油では、C重油からの画分2と3に直接変異原性および間接変異原性が認められたので、NPAHとの関連性が示唆された。C重油とジメチルエーテル(DME)を用いた2種類の混合燃料、A重油とDMEに硫黄化合物を添加した4種類の混合燃料からPMを採取し、化学分析および生物試験を実施した。1)PMの排出量: C重油をベースとした場合には60-160mg/kWhであり、C重油の30%をDMEとすると1例を除いて減少した。 | KAKENHI-PROJECT-22656200 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22656200 |
次世代舶用燃料からの排ガス粒子状物質が海洋生態系に及ぼす影響評価 | A重油をベースとした場合のPM排出量は30-80mg/kWhであり、硫黄を5%添加しても有意に増加せず、A重油の30%をDMEとするとエンジン負荷率が高いと顕著に減少したが、これに5%硫黄を添加しても顕著に増加しなかった。2)PMに吸着するアニオン:超純水にPG60フィルターを入れて超音波処理すると、硝酸イオンの生成は認められなかったが、亜硝酸イオンが生成した。そこで、振とう抽出した水試料は遠心分離により除粒子し、硫酸イオン濃度はフィルターに含まれる量を差し引いて定量した。C重油をベースとした際のPM重量当たりの硫酸イオンは7-15%であった。キロワット時当りの硫酸イオンは4-20mg/kWhで、PMの6-13%を占めた。C重油の30%をDMEとすると、硫酸イオン濃度には、1例を除いて変化は認められなかった。A重油をベースにした際のPM重量当たりの硫酸イオンは8-12%であり、硫黄を添加すると9.9-22%に増加した。キロワット時当りの硫酸イオンは4-6mg/kWhであり、PMの7-13%であり、これに硫黄を添加するとPMの10-18%を占めた。3)PMに吸着する有害成分: C重油およびA重油をベースにしたPM粗抽出物の第2及び第3画分には、重油の種類に関わらず変異原性が認められた。これらの画分の化学発光検出によるLCクロマトグラムには共通の複数のピークが認められたが、11種類の標準ニトロPAHとは一致しなかった。いずれの試料も、海産発光細菌に対する阻害は弱かった。実機エンジンを用いてのSDEP試料の調製が予定よりもやや遅れたので、化学分析および生物評価が遅れたため。24年度が最終年度であるため、記入しない。最終年度に向けて、早めにSDEP試料を採取、調製し、化学分析および生物評価に取り組むこととする。また、分析用のフィルターが室内大気によって汚染されていた可能性が高かったので、フィルターを使用直前まで厳密に個別包装するなどの対策をとり、十分に注意して分析、解析する。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22656200 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22656200 |
自家ラット臼歯歯髄幹細胞を用いた歯髄組織再生法の確立 | 本研究はラット臼歯歯冠歯髄再生モデルを用いて、効率よく歯髄組織の再生を誘導できるシステムを構築することを目指した。ラット下顎臼歯あるいは切歯より、歯髄幹細胞および血管内皮細胞を単離した。共培養にて、細胞増殖に関する検索を行いVEGFがこれらの細胞増殖に重要な因子の一つであることが示唆された。そこで、この歯髄幹細胞を、冠部歯髄のみを除去したラット上顎臼歯へ移植し、歯髄の再生が誘導可能かどうかを、12週間の動物埋植実験により検証したところ、幹細胞と血管内皮細胞を混合し、さらにVEGFを添加して移植後、およそ1週間という短期間でdentin bridge様硬組織を有する歯髄様組織が再生できた。研究実績1:ラット下顎臼歯歯髄幹細胞および歯血管内皮細胞の単離・培養系の確立実験動物として雌性Wistarラットを用いた。両側の下顎臼歯を抜歯後、歯根膜細胞を溶解して除去した。歯冠をスライサーにて水平切断し、冠部歯髄を表出させた後、細胞分散液を用いて歯髄組織の細胞を分離・分散した。その後、pericyteマーカーであるCD146(MCAM)抗体、さらにMAP1B抗体と反応させたダイナビーズ(Daynal社)を用いた磁気分離法により、ラット下顎臼歯歯髄幹細胞(CD146+MAP1B+細胞)およびラット下顎臼歯血管内皮細胞(CD146+MAP1B-細胞)の分離を行った。分離した細胞を、培養・増殖し、凍結保存した。研究実績2:培養条件の設定速やかに培養増殖させるための歯髄幹細胞および血管内皮細胞の培養条件の設定を行った。ほぼ実験計画書通りに研究が実施されたため。本研究は、同一ラットの下顎第一臼歯より単離・培養した幹細胞を、速やかに培養増殖させるための方法を検索し、これらの細胞をPLLAスキャホールドと組み合わせて、生活歯髄切断法を行ったラット上顎第一臼歯へ移植し歯冠部歯髄を組織工学的手法により再生させることを目的とした。ラット下顎臼歯を抜歯後、歯冠歯髄より歯髄細胞を分散・分離し、pericyteマーカーであるCD146抗体、あるいはMAP1-B抗体と反応させ、CD146+MAP1B+ラット臼歯歯髄幹細胞およびCD146+MAP1B-血管内皮細胞を単離、培養した。さらにこれら血管内皮細胞に対してVEGFを添加し培養・増殖させ、この血管内皮細胞と幹細胞をPLLA/ペプチドハイドロゲル混合型3次元スキャホールドとともにラット臼歯に移植し、観察期間を3、7、14日間として、歯髄再生が誘導可能かどうかを検証している。おもな研究成果歯科の著名な国際誌に3本の論文がアクセプトされた。新潟大学から東京医科歯科大学へ移動したため、研究室の整備に多少の時間を費やしたが、研究は順調に実施され、研究結果は3本の論文が国際誌にアクセプトされた。本研究においては、申請者がこれまでに確立している生活断髄後の歯冠歯髄腔にラット骨髄間葉系幹細胞とポリ乳酸/Matrigelスキャホールドを移植しdentin bridgeを有する歯髄様組織をおよそ2週間で再生させるラット臼歯歯冠歯髄再生モデルを用いて、効率よく歯髄組織の再生を誘導できるシステムを構築することを目指した。ラット下顎臼歯を抜歯後、歯冠歯髄より歯髄細胞を分散・分離し、pericyteマーカーであるCD146抗体、あるいはMAP1-B抗体と反応させ、ダイナビーズ(Daynal社)を用いた磁気分離法を用いて、CD146+MAP1B+ラット切歯歯髄幹細胞およびCD146+MAP1B-血管内皮細胞を単離した。これらの細胞に対して、VEGFなどの増殖関連化合物を添加し、3および7日間の期間で細胞培養を行い、VEGFが細胞増殖に重要な因子の一つであることがin vitroにおいてわかった。そこで、CD146+MAP1B+ラット下顎臼歯歯髄幹細胞を、PLLA/ペプチドハイドロゲル混合型3次元スキャホールドとともに、根部歯髄を残し冠部歯髄のみを除去したラット上顎臼歯へ移植し、歯髄の再生が誘導可能かどうかを、12週間の動物埋植実験により検証した。さらに、ラット切歯歯髄幹細胞とラット切歯血管内皮細胞を前述と同様の手法を用いて移植し、さらに速やかな歯髄の再生が生じるかどうかを検証したところ、幹細胞と血管内皮細胞を混合し、さらにVEGFを添加して移植すると、およそ1週間でdentin bridgeを有する歯髄様組織が再生できることがわかった。実験結果の一部は、Journal of Endodontics、International Endodontic Journal、およびOdontologyなどの国際雑誌に掲載された。日本歯科保存学会においてジーシー優秀ポスター賞を受賞した。本研究はラット臼歯歯冠歯髄再生モデルを用いて、効率よく歯髄組織の再生を誘導できるシステムを構築することを目指した。ラット下顎臼歯あるいは切歯より、歯髄幹細胞および血管内皮細胞を単離した。共培養にて、細胞増殖に関する検索を行いVEGFがこれらの細胞増殖に重要な因子の一つであることが示唆された。そこで、この歯髄幹細胞を、冠部歯髄のみを除去したラット上顎臼歯へ移植し、歯髄の再生が誘導可能かどうかを、12週間の動物埋植実験により検証したところ、幹細胞と血管内皮細胞を混合し、さらにVEGFを添加して移植後、およそ1週間という短期間でdentin bridge様硬組織を有する歯髄様組織が再生できた。 | KAKENHI-PROJECT-15K11110 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K11110 |
自家ラット臼歯歯髄幹細胞を用いた歯髄組織再生法の確立 | これまでの我々の研究から、PLLA/ペプチドハイドロゲル混合型3次元スキャホールドとラット間葉系幹細胞をラット臼歯に移植すると、12週間でスキャホールド移植部が歯髄様組織で満たされることが分かっている。そこで、上記の培養方法(2)で得られた初代培養のCD146+MAP1B+ラット下顎臼歯歯髄幹細胞を、PLLA/ペプチドハイドロゲル混合型3次元スキャホールドとともに、根部歯髄を残し冠部歯髄のみを除去したラット上顎臼歯へ移植し、歯髄の再生が誘導可能かどうかを、12週間の動物埋植実験により検証する。1.炎症歯髄より採取した幹細胞の炎症上顎臼歯への移植実験を行う。実際の臨床においては、炎症を生じた歯髄より幹細胞を採取し、その細胞を当該歯へ移植することが想定される。そこで本実験においては、炎症を生じさせた下顎臼歯より幹細胞を採取後、あらかじめ歯髄炎を生じさせた上顎臼歯へ移植し、歯髄組織が再生可能かを検索する。a.LPSにより炎症をおこさせた下顎第一臼歯を抜歯後、実験1、2と同様の手法によりラット下顎臼歯歯髄幹細胞(CD146+MAP1B+細胞あるいはCD146+STRO1+細胞)を採取し、37日間培養・増殖させる。b.ラウンドバーを用いて上顎および下顎臼歯を点状露髄後、LPSを貼薬し、それぞれの歯に実験的歯髄炎を生じさせる。c.幹細胞添加三次元スキャホールドを実験5aの上顎炎症歯髄へ、12週間埋入する。d.再生した組織の評価:実験2と同様に、再生した歯髄組織を組織学的、免疫組織化学染色学的、分子生物学的に検索する。2.自家幹細胞と自家血管内皮細胞を用いたラット上顎歯髄組織の再生を実施するa.実験1と同様の手法を用いてラット下顎臼歯歯髄幹細胞(CD146+MAP1B+細胞)およびラット下顎臼歯血管内皮細胞(CD146+MAP1B-細胞あるいはCD146+STRO1+細胞)を採取する。これらの細胞を細胞増殖効率が優れていた培養液および培養条件を使用し、23日間培養し、増殖させる。b.幹細胞・血管内皮細胞添加PLLA/ペプチドハイドロゲル混合型三次元スキャホールドの作成:実験2と同様の手法を用い、ゲル状の三次元スキャホールドを作成する。c.上顎臼歯への幹細胞・血管内皮細胞添加三次元スキャホールドの埋入:実験2と同様に三次元スキャホールドを、12週間埋入する。d.再生した組織の評価:実験2と同様に、再生した歯髄組織を組織学的、免疫組織化学染色学的、分子生物学的に検索する。歯内療法学投稿中のオンラインジャーナル2本分の投稿料を確保していたため、次年度使用額が生じた。注文した抗体が、国内在庫がなく、年度内に納品できなかったため。上述のオンラインジャーナルの投稿料に、この次年度使用額を合わせて、使用する予定。研究計画に沿って、計画的に助成金を使用し、研究を滞りなく実施する。 | KAKENHI-PROJECT-15K11110 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K11110 |
“基板のクランプ効果による可逆配向スイッチング機構”を用いた巨大圧電体膜の創成 | (100)/(001)配向したPb(Zr0.5Ti0.5)O3膜をSi、SrTiO3およびCaF2基板上に作製した。電界印加時には、可逆な格子の伸長と(100)配向から(001)配向へのドメインスイッチングが確認された。格子の伸長はすべての膜でほぼ同様に観察されたのに対し、ドメインスイッチングはSi基板上で最大となった。これが、Si基板上の膜の大きな圧電性の起源であると考えられる。本研究の目的は、申請者が見出した“基板のクランプ効果により可逆応答する配向スイッチング機構"を用いて、巨大圧電特性を有する膜を創成することである。変位を阻害するため、否定的に捉えられてきた圧電体膜基板の“クランプ効果"を“配向をスイッチバックさせるための推進機構"として積極活用する。従来、圧電特性発現には電界に対しての結晶相の不安定性を利用した“相境界組成"が不可欠とされてきたが、これを用いることなく大きな圧電特性の発現を目指す。さらに、これまで“相境界組成"は鉛元素なしでは作製できないと考えられており、圧電体の非鉛化は困難とされてきたが、新機構の導入により非鉛圧電体膜を実現する。本年度の成果は以下である。1) (100)/(001)配向において、電界印加によって分極の方向をそろえる分極処理時に(001)配向が大きく変化することを確認した。この変化によって、応力とドメイン構造変化が考えられる。2)電界下で大きなドメインのスイッチングが起こっていることが、電界下のXRD観察から明らかになった。3) (100)/(001)配向に加えて、ドメインのスイッチングが期待できる(110)/(101)配向についても、Si基板上にPdO/Pdのバッファーを用いて再現性良く作製できるようになった。MOCVD法によるPb(Zr, Ti)O3膜の作製は順調に進んでいる。また非鉛圧電体の作製にも着手できた。さらに評価は電界下も含めて当初の予定通り進んでいる。本研究の目的は、研究代表者が見出した“基板のクランプ効果により可逆応答する配向スイッチング機構"を用いて、巨大圧電特性を有する膜を創成することである。変位を阻害するため、否定的に捉えられてきた圧電体膜基板の“クランプ効果"を“配向をスイッチバックさせるための推進機構"として積極活用する。従来、圧電特性発現には電界に対しての結晶相の不安定性を利用した“相境界組成"が不可欠とされてきたが、これを用いることなく大きな圧電特性の発現を目指す。さらに、これまで“相境界組成"は鉛元素なしでは作製できないと考えられており、圧電体の非鉛化は困難とされてきたが、新機構の導入により非鉛圧電体膜を実現する。本年度は以下の成果を得た。1)SiおよびSrTiO3基板上にZr/(Zr+Ti)比を変化させて{100}配向したエピタキシャル膜を作製した。その結果、(100)の体積分率が大きく、正方晶性が低いZr/(Zr+Ti)比の高い組成で、大きな圧電性が得られることが明らかになった。2)非鉛圧電体として(Bi1/2K1/2)TiO3膜の作製を行い、(100)SrTiO3基板上に正方晶のエピタキシャル膜を作製することに成功した。さらに得られた膜は強誘電性を有し、その残留分極値は、膜の正方晶性から予想される自発分極値とおおよそ一致することを確認した。この成果によって、非鉛の強誘電体でもドメインスイッチングによる大きな圧電性発現の可能性が見いだされた。非鉛圧電体の正方晶強誘電体の(Bi1/2K1/2)TiO3のエピタキシャル膜の作製に成功したことで、組成相境界を用いない大きな圧電性の発現が非鉛材料でも実現できる可能性がでてきた。本研究の目的は、研究代表者が見出した“基板のクランプ効果により可逆応答する配向スイッチング機構"を用いて、巨大圧電特性を有する膜を創成することである。変位を阻害するため、否定的に捉えられてきた圧電体膜基板の“クランプ効果"を“配向をスイッチバックさせるための推進機構"として積極活用する。従来、圧電特性発現には電界に対しての結晶相の不安定性を利用した“相境界組成"が不可欠とされてきたが、これを用いることなく大きな圧電特性の発現を目指す。さらに、これまで“相境界組成"は鉛元素なしでは作製できないと考えられており、圧電体の非鉛化は困難とされてきたが、新機構の導入により非鉛圧電体膜を実現する。本年度は以下の成果を得た。1)製膜時にPb(Zr,Ti)O3膜に引っ張り歪が存在する場合は、最初に面内に分極したドメインが形成され、その後に上向きの分極が形成されるため、この2つの構造が組み合わさった非常に複雑なドメイン構造になりやすい。この構造が大きなドメインスイッチングと圧電性を生む可能性があることがあきらかになった。2)非鉛圧電体として(Bi1/2K1/2)TiO3および(Bi1/2Na1/2)TiO3-BatiO3膜の作製を行い、正方晶の膜が作製できることを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-15H04121 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H04121 |
“基板のクランプ効果による可逆配向スイッチング機構”を用いた巨大圧電体膜の創成 | 特に(Bi1/2Na1/2)TiO3-BatiO3膜では、分極が面何と面外に向いたドメインが共存した膜の作製の可能性が示唆された。この成果は、非鉛圧電体膜においても、ドメインスイッチングによる大きな圧電性発現を示唆している。(100)/(001)配向したPb(Zr0.5Ti0.5)O3膜をSi、SrTiO3およびCaF2基板上に作製した。電界印加時には、可逆な格子の伸長と(100)配向から(001)配向へのドメインスイッチングが確認された。格子の伸長はすべての膜でほぼ同様に観察されたのに対し、ドメインスイッチングはSi基板上で最大となった。これが、Si基板上の膜の大きな圧電性の起源であると考えられる。今後は、非鉛圧電体である(Bi1/2K1/2)TiO3膜も含めて検討を行う。物質系に依存しない圧電性向上方法を探索する予定である。正方晶強誘電体の(Bi1/2K1/2)TiO3に(100)/(001)の両方の配向を導入し、ドメインスイッチングによる大きな圧電性発現を目指す。29年度が最終年度であるため、記入しない。工学酸化物機能材料29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-15H04121 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H04121 |
先天性サイトメガロウイルス感染が顕性感染へと至るリスク判定法の開発 | サイトメガロウイルス(CMV)gH領域について型特異的リアルタイムPCR法を開発し、厚生労働科学研究によって同定された先天性CMV感染児について検討した。血清抗体型(serotype)では両型が検出される例(重感染)であっても感染児尿中に存在するウイルス型(genotype)は片型のみであり、先天性CMV感染を起こしているウイルスは両型ではないことがわかった。異型CMVの重感染でも先天性CMV感染が起こされることを詳細に解明した。サイトメガロウイルス(CMV)gH領域について型特異的リアルタイムPCR法を開発し、厚生労働科学研究によって同定された先天性CMV感染児について検討した。血清抗体型(serotype)では両型が検出される例(重感染)であっても感染児尿中に存在するウイルス型(genotype)は片型のみであり、先天性CMV感染を起こしているウイルスは両型ではないことがわかった。異型CMVの重感染でも先天性CMV感染が起こされることを詳細に解明した。先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染の要因は妊婦におけるCMV初感染と考えられてきた。しかし実際には既感染の妊婦でも起こり、妊娠中に中和できないタイプのCMVに重感染することが原因である。既に我々の研究室では血清抗体価から感染しているCMV型を判別できるELISA法を開発していた。このELISA法によりCMV gBのAD2領域に対する抗体の有無が、腎移植後のCMV関連疾患発生に関わることが明らかとなり(Transplant Infectious Disease, 2010)、先天性CMV感染症においても検討予定である。ELISA法では先天性CMV感染におけるCMV型別の感染経歴をみることが出来た(第25回ヘルペスウイルス研究会)。血清学のみでは現在感染しているウイルスを解析するに不十分である。CMV型を判別できるリアルタイムPCR法を開発した(第58回日本ウイルス学会)。感染した新生児が実際に尿中に排泄しているCMVのDNA量を型別に検出・定量を行った。ELISA法による血清学の結果より、先天性CMV感染児16例中2例(12.5%)が重感染によるものと分かった。樹立したCMV型別リアルタイムPCR法により、重感染2例において、尿中に排泄されるCMV型は1種類であると分かった。以上により、血清学的には重感染であるが、実際に先天性CMV感染を引き起こしているCMVは片型であり、これが妊娠中に重感染した型であると考えられた。先天性CMV感染の80%は不顕性感染であるが、発症に至る感染と、不顕性に終わる感染とを見分ける危険因子は全く解っていない。本研究の継続により症例数の増加と症例ごとの経時的調査を加え、重感染例が顕性感染のリスクとなりうるのかを検討したい。先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染は妊娠中のCMV初感染によると考えられてきた。しかしCMV感染児はCMV既感染であった妊婦からも生まれており、中和できない型のCMVに重感染することが原因である。我々の研究室では既にCMV型特異的ELISA法を開発しており、AD169型とTowne型のCMVとして血清型を判別している。このELISA法により先天性CMV感染における母児血清中のCMV感染経歴を検討した結果、AD169型またはTowne型の片型CMVに感染している例が大半ななか、両型CMVに感染している例を見出した。また本研究ではCMV型を判別できるリアルタイムPCR法を開発した。AD169とTowneのCMV DNAを用い、両者が100倍未満のウイルス量比で混在している場合は少数側のCMV型も定量可能であることを確認した、実際にELISA法においてAD169型またはTowne型CMV抗体陽性と確認された感染児において、尿中CMV DNA量の型別検出・定量を行った。尿中に排泄されるCMV型は血清型と一致していた。更には血清中に両型CMV抗体を有する例では尿中CMV型は1種類であることが分かり、血清学的に重感染であっても体内で増殖しているCMVは片型である可能性が示唆された。血清型の異なるCMVの重感染を確認する方法(ELISA法・リアルタイムPCR法)を確立した。今後は先天性CMV感染例ごとの経時的調査を加え、片型感染例と重感染例、顕性感染例と不顕性感染例を比較し、顕性感染のリスクを引き続き検討したい。妊娠中のサイトメガロウイルス(CMV)初感染は、多くの胎児に先天性感染を引き起こす。顕性感染では精神発達遅滞や聴覚障害などが認められる。先天性CMV感染の80%は不顕性感染であるが、成長に伴い聴覚障害などを発症する例もある。初感染のみでなく、妊娠中に中和できないタイプのCMVに重感染すると、既感染妊婦でも先天性CMV感染は起こりうる。我々の研究室ではCMVのgH領域に対する血清抗体から感染しているCMV型を判別できるELISA法を有しており、また前年度までにCMV型判別用のリアルタイムPCR法を開発した(J Clin Microbiol 2012)。健常妊婦344人におけるCMV抗体保有率は68%であり、型別抗体保有率はCMV-ADが41%、CMV-Toが18%、重感染が6%であった。gHに対するIgG抗体のサブタイプはIgG1とIgG3に偏っており、胎児に移行抗体として運ばれうるサブタイプであった。胎児における感染防御を担っていることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-22791034 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22791034 |
先天性サイトメガロウイルス感染が顕性感染へと至るリスク判定法の開発 | 先天性CMV感染において、顕性感染では移行抗体となりえないIgGサブタイプに偏りがあると仮定して検証を行ったが、顕性感染へのリスク因子として見出すには至らなかった。CMV感染児における尿中CMV型、また児と母親におけるCMV血清型の検討を行った。血清型の検索により見つかった重感染を精査したところ、当初認められていた2つの型(CMV-ADとCMV-To)のCMV抗体のうち一方(CMV-To)が生後1か月以降消失した例を確認した。尿中ウイルスが1種類(CMV-AD)であることからも、消失した抗体は移行抗体であったと考えられる(in submission)。CMVの重感染例でも先天性CMV感染が起こり、異型の移行抗体では防御できていないことが明らかに出来た。今後は病原性に寄与しうるCMV型を特定・解析出来る方法の確立に努めたい。我々の研究室で開発した既存のELISA法を用い、先天性CMV感染児とその母親のCMV感染状態を検討出来るに至った。また数種類のプライマー・プローブ・反応条件を検討した結果、新たにCMV血清型別リアルタイムPCR法開発に成功し、CMV感染児に適用することが出来た。結果は学会・研究会・論文にて発表出来たため、研究はおおむね当初の計画通り順調に進展していると考えられる。24年度が最終年度であるため、記入しない。来年度(最終年度)ではCMV型別ELISA法とリアルタイムPCR法を健常成人・CMV感染児とその母親に適用し、CMV型別抗体価・ウイルス量が経時的にどのような変化をおこすのかなど、CMV感染児で認められる特徴を探索する。また既存のELISA法を改良したIgGサブタイプ別CMV抗体も検討中である。これらの結果を総括し、学会・研究会・論文等で報告する。現時点で研究計画の変更または研究を遂行する上での問題点は認められていない。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22791034 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22791034 |
caspin/PEDF/EPC-1による血管新生抑制作用の分子機序に関する研究 | Caspin/PEDF/EPC-1による血管新生抑制作用の分子機序を解明すべく、免疫組織化学的解析とin situハイブリダイゼーションン法、ならびにin vitro実験モデルを用いて、軟骨分化におけるcaspinの分子動態の検討を行った。1.胎発生期マウス組織における免疫組織染色では、caspinは軟骨組織形成前の未分化間葉系細胞で特異的に発現し、軟骨が形成される部位のマトリックスで局所的に蓄積される。その後、内軟骨骨化に伴って消失するものの、骨外縁に沿って再び強く発現し、同部マトリックスで局所的に集積することが明らかにされた。3.マウス未分化培養細胞株ATDC5でのウエスタン法とRT-PCR法による解析では、insulin添加による軟骨分化誘導前には発現を認めないアグリカンやX型コラーゲン、ならびにVEGFの発現は分化誘導とともに増大し、さらに肥大軟骨細胞への分化時期に相当する分化誘導7日目以降もこれらの分子の発現は増大しつづけるのとは対照的にcaspinの発現は急激に減弱した。これらの解析結果から、無血管組織である軟骨の組織形成過程や内軟骨骨化における血管侵入抵抗性から許容性へのスイッチングの分子機序には、生理的な血管新生促成因子と抑制因子の発現バランスによる巧妙な調節機序が存在し、caspinが同機序の重要な抑制因子として関与していることが示唆された。Caspin/PEDF/EPC-1による血管新生抑制作用の分子機序を解明すべく、免疫組織化学的解析とin situハイブリダイゼーションン法、ならびにin vitro実験モデルを用いて、軟骨分化におけるcaspinの分子動態の検討を行った。1.胎発生期マウス組織における免疫組織染色では、caspinは軟骨組織形成前の未分化間葉系細胞で特異的に発現し、軟骨が形成される部位のマトリックスで局所的に蓄積される。その後、内軟骨骨化に伴って消失するものの、骨外縁に沿って再び強く発現し、同部マトリックスで局所的に集積することが明らかにされた。3.マウス未分化培養細胞株ATDC5でのウエスタン法とRT-PCR法による解析では、insulin添加による軟骨分化誘導前には発現を認めないアグリカンやX型コラーゲン、ならびにVEGFの発現は分化誘導とともに増大し、さらに肥大軟骨細胞への分化時期に相当する分化誘導7日目以降もこれらの分子の発現は増大しつづけるのとは対照的にcaspinの発現は急激に減弱した。これらの解析結果から、無血管組織である軟骨の組織形成過程や内軟骨骨化における血管侵入抵抗性から許容性へのスイッチングの分子機序には、生理的な血管新生促成因子と抑制因子の発現バランスによる巧妙な調節機序が存在し、caspinが同機序の重要な抑制因子として関与していることが示唆された。caspin/PEDF/EPC-1による血管新生抑制作用の分子機序を解明すべく、今年度は免疫組織染色とin situハイブリダイゼーション法、ならびにin vitro実験モデルを用いて、軟骨分化におけるcaspinの分子動態の検討を行った。胎発生期のマウス組織において、caspinは軟骨組織形成前の未分化間葉系細胞で特異的に発現し、軟骨が形成される部位のマトリツクスで局所的に蓄積される。その後、内軟骨骨化に伴って消失するものの、骨外縁に沿って再び強く発現し、同部マトリックスで局所的に集積する。また、マウス未分化培養細胞株ATDC5でのウエスタン法とRT-PCR法による解析では、insulin添加による軟骨分化誘導前には発現を認めないアグリカンやX型コラーゲン、ならびにVEGFの発現が分化誘導とともに増大する。しかし、肥大軟骨細胞への分化時期に相当する分化誘導7日目以降、これらの分子の発現増大とは対照的にcaspinの発現は急激に減弱した。これらの解析結果から、無血管組織である軟骨の組織形成過程や内軟骨骨化における血管侵入抵抗性から許容性へのスイッチングの分子機序には、生理的な血管新生促進因子と抑制因子の発現バランスによる巧妙な調節機序が存在し、caspinが同機序の重要な制御因子として関与していることが示唆された。今後は、これまでの研究の継続を計りつつ、今年度の研究で完了し得なかったcaspin/PEDF/EPC-1による血管内皮細胞特異的アポトーシス誘導に関する分子機序の解析、ならびに未だ明らかにされていないcaspin受容体の単離・同定を目指した研究をも進める予定である。昨年度の解析結果から、無血管組織である軟骨の組織形成過程や内軟骨骨化における血管侵入抵抗性から許容性へのスイッチングの分子機序には、生理的な血管新生促進因子と抑制因子の発現バランスによる巧妙な調節機序が存在すること、ならびにcaspin/PEDF/EPC-1が同機序の重要な制御因子として関与していることが示唆された。今年度は、胎発生期マウス組織におけるcaspinの分子動態についてin situハイブリダイゼーション法による詳細な検討を進め、caspinが軟骨組織形成前の未分化間葉系細胞や増殖軟骨細胞、成熟軟骨細胞、前肥大軟骨細胞で特異的に発現し、その後、内軟骨骨化や膜性骨化の進展に伴って発現が消失するものの、骨外縁に沿って再び強く発現することを見出した。また、同検討結果は昨年度の胎発生期マウス組織における免疫組織染色によって得られた結束や、insulinによる軟骨様分化誘導が可能なマウス未分化培養細胞株ATDC5での解析結果とよく一致していた。 | KAKENHI-PROJECT-14570205 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14570205 |
caspin/PEDF/EPC-1による血管新生抑制作用の分子機序に関する研究 | 以上の結果から、無血管組織である軟骨組織から血管の豊富な骨組織へのダイナミックな変化の過程においてcaspinは特異的な発現分布を示し、且つその発現変化はアグリカンやX型コラーゲンならびにVEGFと逆相関すること、さらに、caspinは骨化完了後の骨外縁で強発現することによって骨組織への血管進入を生理的に制御している可能性が示唆された。今後は、本研究の継続を図りつつ、caspinによる血管内皮細胞特異的アポトーシス誘導に関する分子機序の解析、ならびに未だ明らかにされていないcaspin受容体の単離・同定を目指した研究を進める予定である。 | KAKENHI-PROJECT-14570205 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14570205 |
バックスキャッタ通信と無線電力伝送を融合するための研究ツールの開発 | IoTデバイスの電源問題を抜本的に解決するために、無電源で動作するバッテリレスIoTデバイスと、バッテリレスIoTデバイスに対して電波を介して通信機能と電源機能を提供する周辺環境を実現する。具体的には、数十μWでのバックスキャッタ通信と数mWの無線電力伝送を前提として、「1.バックスキャッタ送信と無線電力受信を具備したIoTデバイス」と「2.搬送波送信・バックスキャッタ受信・無線電力送信を具備した協調型アクセスポイント」を実現し、その上で動作する「3.既存の無線通信・バックスキャッタ通信・無線電力伝送が共存可能なMACプロトコル」を実証する。IoTデバイスの電源問題を抜本的に解決するために、無電源で動作するバッテリレスIoTデバイスと、バッテリレスIoTデバイスに対して電波を介して通信機能と電源機能を提供する周辺環境を実現する。具体的には、数十μWでのバックスキャッタ通信と数mWの無線電力伝送を前提として、「1.バックスキャッタ送信と無線電力受信を具備したIoTデバイス」と「2.搬送波送信・バックスキャッタ受信・無線電力送信を具備した協調型アクセスポイント」を実現し、その上で動作する「3.既存の無線通信・バックスキャッタ通信・無線電力伝送が共存可能なMACプロトコル」を実証する。 | KAKENHI-PROJECT-19K11923 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K11923 |
アジアのテレビ広告におけるジェンダー役割の国際比較 | 「アジアのテレビ広告におけるジェンダー役割の国際比較」と題した本研究は、アジア諸社会のテレビ広告に現れるジェンダー役割の内容分析を中心とした国際比較を通じて、社会と広告の相互関係の解明をめざすものである。最大の研究目的は、異なった文化的・歴史的背景をもつアジア諸社会において、いかに広告におけるジェンダー役割が社会状況やその変化を反映しているかを明らかにすることである。具体的には、アジア6ヵ国(日本・中国・韓国・台湾・シンガポール・タイ)の広告において、ジェンダー役割、特に労働場面でのジェンダー役割がいかに現れているか、その類似点と相違点を考察することである。本研究の最終目標は、こうした課題を通して〈アジア広告の社会学〉という新たな研究分野を創設することである。また、研究実施計画について、平成30年度において、先行研究の検討/調査設計のための研究打合せ/各国における広告サンプルの収集と分析/広告専門家と視聴者のインタビュー調査を行っている。さらに、研究成果として、大学の授業での有効活用、国内外の学会発表や学術雑誌・学内論文への掲載を行っている。今後の研究計画について、各国のデータを収集と分析し、研究の結果をまとめ、学会発表や学術雑誌を続きたいと考えている。平成30年度において、2018年の6カ国(日本・中国・韓国・台湾・シンガポール・タイ)におけるテレビ広告サンプルの収集や広告専門家と視聴者のインタビュー調査を行い、研究計画どおりに進展している。今後の課題として、2019年から2020年までの広告サンプルを収集し、3年間のアジア6カ国のテレビ広告内容分析の研究調査結果の考察と取りまとめ、そして、国内外研究成果発表などを予定としている。(2019年度の計画)2018年度と2019年度の2年間研究結果による研究成果の国内外発表と論文の執筆/公開講座。具体的には、日本社会学会、日本ジェンダー学会、日本広告学会、日本タイ学会などで研究成果の発表を行う予定である。「アジアのテレビ広告におけるジェンダー役割の国際比較」と題した本研究は、アジア諸社会のテレビ広告に現れるジェンダー役割の内容分析を中心とした国際比較を通じて、社会と広告の相互関係の解明をめざすものである。最大の研究目的は、異なった文化的・歴史的背景をもつアジア諸社会において、いかに広告におけるジェンダー役割が社会状況やその変化を反映しているかを明らかにすることである。具体的には、アジア6ヵ国(日本・中国・韓国・台湾・シンガポール・タイ)の広告において、ジェンダー役割、特に労働場面でのジェンダー役割がいかに現れているか、その類似点と相違点を考察することである。本研究の最終目標は、こうした課題を通して〈アジア広告の社会学〉という新たな研究分野を創設することである。また、研究実施計画について、平成30年度において、先行研究の検討/調査設計のための研究打合せ/各国における広告サンプルの収集と分析/広告専門家と視聴者のインタビュー調査を行っている。さらに、研究成果として、大学の授業での有効活用、国内外の学会発表や学術雑誌・学内論文への掲載を行っている。今後の研究計画について、各国のデータを収集と分析し、研究の結果をまとめ、学会発表や学術雑誌を続きたいと考えている。平成30年度において、2018年の6カ国(日本・中国・韓国・台湾・シンガポール・タイ)におけるテレビ広告サンプルの収集や広告専門家と視聴者のインタビュー調査を行い、研究計画どおりに進展している。今後の課題として、2019年から2020年までの広告サンプルを収集し、3年間のアジア6カ国のテレビ広告内容分析の研究調査結果の考察と取りまとめ、そして、国内外研究成果発表などを予定としている。(2019年度の計画)2018年度と2019年度の2年間研究結果による研究成果の国内外発表と論文の執筆/公開講座。具体的には、日本社会学会、日本ジェンダー学会、日本広告学会、日本タイ学会などで研究成果の発表を行う予定である。当初、2018年度にアジア6カ国の広告内容分析を行い、その結果を国内・国際学会において発表する予定であったが、広告内容分析に予定より多少時間がかかったため学会発表が行えず、未使用額が生じた。今後の使用計画として、アジア6カ国の広告内容分析の続き及び国内・国際学会での発表を次年度に行うこととし、未使用額はその旅費や参加費に充てることとしたい。具体的には、日本社会学会、日本ジェンダー学会、日本広告学会、日本マスコミュニケーション学会、広告研究国際会議などで研究成果の発表を行う予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18K01979 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K01979 |
RNAi法を利用した変性促進遺伝子を抑制する椎間板細胞移植治療法の開発 | 椎間板変性抑制が腰痛対策として有効な手段になりうると考え、実験を行った。椎間板が有するshock absorberとしての働きには高い含水性を持つアグリカンを中心とした、プロテオグリカンが大きな役割を果たしている。アグリカンは特定の部位でMatrix MetalloproteinaseやADAMTS(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin-like repeat)ファミリーに属するいくつかのメタロプロテアーゼにより切断される。以上より、変性椎間板に発現しているadamts5遺伝子をsiRNA(small interfering RNA)を用いてknock downすることにより、椎間板変性を抑制させることが可能か否かを検討した。研究の方法として、in vitroとin vivo研究を行った。In vitro研究は家兎髄核細胞を用いて、adamts5遺伝子をknock downするために、siRNAを作成し、単層培養の髄核細胞にトランスフェクションし、real-time PCR法を用いてadamts5遺伝子のknock down率を検討した。その結果、アルジネートビーズ培養下で、adamts5 siRNAが取り込まれることが分かった。Adamts5のknock downが可能であるかを検討したところ、コントロールsiRNAに比べてadamts5 siRNAは約70%のknock down率を示した。In vivo研究では、家兎椎間板変性モデル(puncture model)を椎間板を18G針にて穿刺し作成し、無穿刺対照群と比較検討した。Adamts5 siRNA投与群とcontrol siRNA群を作成し、2週間毎に単純X線像で椎間板高を測定した。注入後8週間経過観察し、屠殺後MRIおよび組織学的検討を行った。MRIはT2像の輝度を4段階に分類しスコア化することにより評価した。組織は、椎間板組織の正中矢状断面をサフラニン-O、およびヘマトキシリンにて染色し、組織評価スコアによって評価した。結果は、椎間板高には変化を認めなかったものの、adamts5 siRNAを投与した群では髄核部の輝度が、コントロールsiRNAよりも有意に高く、高い水分含量を反映していた。組織学的なスコアでもadamts5 siRNA投与群で有意な変性の抑制が認められた。以上より、椎間板髄核変性において、adamts5は主要な役割を果たしていると考えられ、adamts5 siRNAを用いることにより椎間板変性を抑制し、腰痛を予防できる可能性があることがわかった。椎間板変性抑制が腰痛対策として有効な手段になりうると考え、実験を行った。椎間板が有するshock absorberとしての働きには高い含水性を持つアグリカンを中心とした、プロテオグリカンが大きな役割を果たしている。アグリカンは特定の部位でMatrix MetalloproteinaseやADAMTS(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin-like repeat)ファミリーに属するいくつかのメタロプロテアーゼにより切断される。以上より、変性椎間板に発現しているadamts5遺伝子をsiRNA(small interfering RNA)を用いてknock downすることにより、椎間板変性を抑制させることが可能か否かを検討した。研究の方法として、in vitroとin vivo研究を行った。In vitro研究は家兎髄核細胞を用いて、adamts5遺伝子をknock downするために、siRNAを作成し、単層培養の髄核細胞にトランスフェクションし、real-time PCR法を用いてadamts5遺伝子のknock down率を検討した。その結果、アルジネートビーズ培養下で、adamts5 siRNAが取り込まれることが分かった。Adamts5のknock downが可能であるかを検討したところ、コントロールsiRNAに比べてadamts5 siRNAは約70%のknock down率を示した。In vivo研究では、家兎椎間板変性モデル(puncture model)を椎間板を18G針にて穿刺し作成し、無穿刺対照群と比較検討した。Adamts5 siRNA投与群とcontrol siRNA群を作成し、2週間毎に単純X線像で椎間板高を測定した。注入後8週間経過観察し、屠殺後MRIおよび組織学的検討を行った。MRIはT2像の輝度を4段階に分類しスコア化することにより評価した。組織は、椎間板組織の正中矢状断面をサフラニン-O、およびヘマトキシリンにて染色し、組織評価スコアによって評価した。結果は、椎間板高には変化を認めなかったものの、adamts5 siRNAを投与した群では髄核部の輝度が、コントロールsiRNAよりも有意に高く、高い水分含量を反映していた。組織学的なスコアでもadamts5 siRNA投与群で有意な変性の抑制が認められた。以上より、椎間板髄核変性において、adamts5は主要な役割を果たしていると考えられ、adamts5 siRNAを用いることにより椎間板変性を抑制し、腰痛を予防できる可能性があることがわかった。(1)髄核細胞の摘出:ラビット10匹をネンブタールにて犠牲に供し、その後無菌的に脊柱を摘出し、椎間板の髄核組織を無菌的に単離した。DMEM 10%FBSにコラゲナーゼ、プロネースを入れて37度で組織が完全に溶解するまでincubationして、椎間板組織が完全に分解後に遠心、70uMのセルストレイナーを使用して細胞を単離した。(2)髄核細胞のアルジネートビーズ内での三次元培養:摘出した髄核細胞を1.2%sodium alginateを用い、101mMCaCl_2溶液に滴下することでビーズ内に髄核細胞を包埋し、軟骨細胞分化培地(Takara)にて2週間3次元ビーズ内培養を行った。細胞の生存率、および形質を高めた後、以下の遺伝子導入に備えた。 | KAKENHI-PROJECT-17591556 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17591556 |
RNAi法を利用した変性促進遺伝子を抑制する椎間板細胞移植治療法の開発 | ビーズ培養後すぐに12well plateに細胞を撒いて以下のトランスフェクションの実験に利用した。髄核細胞は1wellあたり5×10^4の細胞数で撒いた。(3)Knock down用dsRNAの作成:Knockdown用のRNAは、これまでの文献的検討、adamts-4(aggrecanase 1)、adamts-5(aggrecanase 2)および、我々の同定した椎間板変性を促進すると考えられるcilpが適切と考え、これらの作製を行った。(4)髄核細胞への遺伝子導入:現在リポフェクション法を用いて、rabbit adamts-4(aggrecanase 1)、adamts-5(aggrecanase 2)、cilp(cartilage intermediate layer protein)の遺伝子のmRNAに対するtarget sequence(2本鎖のRNA)の決定および、髄核細胞にトランスフェクションする条件を検討している。試薬はTakaraのtrans-it-TKOを用いて試薬の濃度、RNAの濃度、FBSの濃度、反応時間等の条件検討を現在行っている。最適な条件の決定は、rabbit adamts-4,5の発現をreal-time PCRを用いて行なう予定である。Real-time PCRはSyber greenを用いた系で行っている。standardを作成するためにまずrabbit髄核細胞より抽出したRNAを逆転写し、cDNAを合成した。そのcDNAをtemplateとしてadamts-4,5,およびcilpのprimerを作成して、PCRをTakara Ex taqを用いて施行した。PCR productをゲルで泳動してバンドを確認後にTA cloningを行った。そこで作成したプラスミドをreal-time用のstandardとして現在利用している。研究課題に対し、今年度は以下の検討を行った。(1)髄核細胞の摘出ラビット10匹をネンブタールにて犠牲に供し、その後無菌的に脊柱を摘出し、椎間板の髄核組織を無菌的に単離した。コラゲナーゼ処理をして細胞を単離した。(2)髄核細胞のアルジネートビーズ内での三次元培養摘出した髄核細胞を1.2%sodium alginateを用い、軟骨細胞分化培地(Takara)にて2週間3次元ビーズ内培養を行った。ビーズ培養後すぐに12 well plateに細胞を撒いて以下のトランスフェクションの実験に利用した。 | KAKENHI-PROJECT-17591556 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17591556 |
「ソフトウェア=プログラム+ドキュメント」の視点に基づく多言語対応大規模コーパス | 人工言語で書かれたソースプログラムだけでなく自然言語で記述されたドキュメントを含めて総合的に扱うことができるCASEツールの開発をめざして以下の研究を行なった.1.C言語プログラムに関する細粒度のモデルI-modelと組み合わせて使うことができる,コメントに関するモデルComment-viewを整備した.2.ソースプログラムとドキュメントの各々に含まれる識別子に注目し,ソースプログラムとドキュメントの対応付けを行なう手法を提案した.ドキュメントに含まれる識別子に関して,文脈を考慮して「定義」と「参照」に区別して扱うことにより,識別子名の一致のみによる対応付けよりも有用なもめにした.3.プログラム中の英文コメントを抽出し,構文解析することによって得られた情報から,コメント記述の特徴を得る手法を示した.4.コーパスの作成支援のために,情報工学で多用されるカタカナ語を対象として,対象文書における文字列の出現頻度を用いた単語分割を行う手法を提案した.5.多様なプログラミング言語を対象となるように再利用可能なCASEツール・プラットフォーム支援環境を提案した.ソースプ面グラム中に存在する複雑な名前空間を表現するために,記号表間の関係をモデル化することで多くのプログラミング言語での利便性が高まった.6.Javaのメソッドを対象に,慣習に沿った識別子の命名作業を支援するためのシステムを提案した.具体的には,Javaのメソッド名と対応するドキュメンテーションコメントから,開発プロジェクトで使用されているメソッド名の命名規則を抽出する手法を提案した.7.既存プロジェクトのソースプログラム内のコメント文を抽出し,そのコメント文を検索,参照することで新規追加プログラムに対するコメント文作成を支援する手法を提案した.8.本研究で整備したコーパスを用いる応用アプリケーションの作成を通じて,コーパスを評価・洗練することを目指してキーワード系列をクエリとして受け取り,それらが形成する構造的なパターンを自動的に同定する用例文検索を提案した.人工言語で書かれたソースプログラムだけでなく自然言語で記述されたドキュメントを含めて総合的に扱うことができるCASEツールの開発をめざして以下の研究を行なった.1.C言語プログラムに関する細粒度のモデルI-modelと組み合わせて使うことができる,コメントに関するモデルComment-viewを整備した.2.ソースプログラムとドキュメントの各々に含まれる識別子に注目し,ソースプログラムとドキュメントの対応付けを行なう手法を提案した.ドキュメントに含まれる識別子に関して,文脈を考慮して「定義」と「参照」に区別して扱うことにより,識別子名の一致のみによる対応付けよりも有用なもめにした.3.プログラム中の英文コメントを抽出し,構文解析することによって得られた情報から,コメント記述の特徴を得る手法を示した.4.コーパスの作成支援のために,情報工学で多用されるカタカナ語を対象として,対象文書における文字列の出現頻度を用いた単語分割を行う手法を提案した.5.多様なプログラミング言語を対象となるように再利用可能なCASEツール・プラットフォーム支援環境を提案した.ソースプ面グラム中に存在する複雑な名前空間を表現するために,記号表間の関係をモデル化することで多くのプログラミング言語での利便性が高まった.6.Javaのメソッドを対象に,慣習に沿った識別子の命名作業を支援するためのシステムを提案した.具体的には,Javaのメソッド名と対応するドキュメンテーションコメントから,開発プロジェクトで使用されているメソッド名の命名規則を抽出する手法を提案した.7.既存プロジェクトのソースプログラム内のコメント文を抽出し,そのコメント文を検索,参照することで新規追加プログラムに対するコメント文作成を支援する手法を提案した.8.本研究で整備したコーパスを用いる応用アプリケーションの作成を通じて,コーパスを評価・洗練することを目指してキーワード系列をクエリとして受け取り,それらが形成する構造的なパターンを自動的に同定する用例文検索を提案した.(1)ソースプログラム動作部-コメント対応コーパスの設計ソースプログラムを解析し、動作部・コメント部を対応づけて取り出すシステムを設計した。「宣言的なプログラム解析が可能なRDFに基づく細粒度ソフトウェアリポジトリ」および「XMLを用いたCASEツール・プラットフォーム作成支援環境」にてこれらの成果を発表した。(2)ソースプログラム-マニュアル対応コーパスの設計ソースプログラムとドキュメントの間を、識別子の出現によって対応づけるシステムを設計・試作した。また、本システムによって得られる対応づけ情報を応用した支援型CASEツールの試作を行い、その有用性を確認した。「文脈に基づいたソースプログラムとドキュメント間の識別子の対応付け手法」にてこれらの成果を発表した。(3)日-英マニュアル対応コーパスの設計Linuxのマニュアル文書を題材として、同一内容の和文・英文のテキストの対応づけ実験を行った。マニュアル文の対応が多く1:N対応である、文の出現順序は交差しない、などの性質が見いだされた。自動対応づけの実験において、91.6%という正解率を得た。文書の対応箇所の同定、文書の分類を行う方法に関する研究成果として、「依存構造を用いたテキスト間の対応箇所の同定」「単語間の依存性を考慮したナイーブベイズ法によるテキスト分類」を発表した。(4)コーパス作成支援環境の設計技術文書に頻出する新語が未知語であることによる形態素解析・構文解析の誤動作を防ぐため、辞書を使わず文字列出現頻度に基づき単語分割を行う手法を開発した。定評のある日本語形態素解析器であるchasenによる解析結果と併用することで、従来よりも高精度の形態素解析を実現した。自然言語の意味解析には、語や概念の間の関係を構造的に定義するオントロジーが必要である。計算機科学分野の専門用語に関するオントロジーを構築する方法について研究を行った。文書からの専門用語の自動抽出、自然言語による辞書テキストから概念の包含関係を自動抽出する方法についての知見を得た。 | KAKENHI-PROJECT-16200001 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16200001 |
「ソフトウェア=プログラム+ドキュメント」の視点に基づく多言語対応大規模コーパス | 実験はFreeBSDのドキュメントを対象として行った。本年度は,プログラム-ドキュメント間対応コーパスの作成支援システムの構築を目標に自然言語処理分野およびプログラムの分析に関して必要な要素技術の開発を行った.また,試験的に作成した対応コーパスを用いて,対応コーパスの応用技術である用例検索についても研究を行った.ニュース記事から,文節をまたがった名詞句や文を抽出することでコンピュータウィルスに関する事典を作成する手法を提案する.情報の抽出を,アドホックな知識である手掛かり語を利用したテンプレートを用いる方法ではなく,前後の形態素や文に含まれる単語などといった情報を素性として使用し,Support Vector Machineを用いて抽出を行う点が特徴である.実験の結果,平均で適合率86.2%,再現率77.5%という結果を得た.2.構文木に着目してXMLマークアップされたソースプログラム間の差分抽出CASEツールで利用される情報がマークアップされたソースプログラムのXML表現であるXSDMLを対象として,プログラムのバージョン間の精密な差分を抽出するアルゴリズムを提案する.差分を構成する編集操作がプログラムに対する編集の操作に対応していること,CASEツール応用に適した差分表現の出力形式を持つことが特徴である.3.依存構造に基づく英語用例検索システムキーワードの系列から構造的なクエリを自動生成するコーパス検索システムを提案する.依存構造に基づくコーパス検索を実現する.まず,ユーザからのクエリとしてキーワードの系列を受け取り,受け取ったクエリに対して,クエリ中のキーワードを含むような依存構造パターンを,依存構造付きコーパスを参照しながら自動生成し,それにマッチする依存構造を持つ文を検出する.依存構造を活用したコーパス検索が実現できる一方で,ユーザは事前に文法を設計する必要もなければ,LSEのように構造的なクエリを編集する必要もなく,キーワードに基づくシステムと同じように簡単にシステムを利用できる.本年度は,プログラムードキュメント間対応コーパスに基づく応用アプリケーションの実現により,対応コーパスの有効性の確認および問題点の検証を行った.1.プログラマ向け応用アプリケーションの開発ソフトウェア開発では,プロジェクト毎にプログラムの識別子に対する慣習的な命名法が存在する.これに従うことで,開発者は識別子名からその内容に関する認識を共有することができる.また,プログラム理解に必要なコストを低減する効果もある.慣習に不慣れなプロジェクト新規参入者が慣習に沿った命名を行うことを支援するツールを開発した. | KAKENHI-PROJECT-16200001 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16200001 |
Design of Iron Catalyst for Activation of Simple Arenes and Heteroarenes | 29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-16H01005 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-16H01005 |
核融合炉液体ブランケット用セラミックコーティングの試作とその特性 | 核融合炉液体ブランケット用セラミックコーティングにおいては、大量生産が容易であること、液体金属との両立性やトリチウム透過バリアー、絶縁性バリヤーとしての機能が使用条件下において長期間にわたり確保されることが必要である。本研究では、候補材料を選定し、それらの材料について実際のコーティングを試作したのち、その特性測定を行うことにより、核融合炉液体ブランケット用セラミックコーティングの製造方法を確立することを目的にした。その成果は以下のようにまとめられる。(1)セラミックコーティング用材料の選定:熱力学的安定性の検討やバルク材料を用いた実験により、Li17-Pb83に対しては、耐食性と電気絶縁性からAl_2O_3とY_2O_3を候補材料として選定した。一方、金属リチウムに対しては完全は耐食性を持つものは酸化物中には見いだされず、窒化物であるAlNを選定した。(2)セラミックコーティング用材料の核融合炉環境下における物性変化:上記により選定した材料の高温液体金属共存実験後の電気絶縁性を測定したところ、Y_2O_3については、金属リチウムによる還元のために亜定比化合物が生成し、電気絶縁性が低下することを見いだした。また、高温放射線照射下では、照射誘起電気伝導によりコーティングの絶縁性が大きく低下することを示した。(3)セラミックコーティングの試作とその実用性についての評価:上記の結果をふまえ、いくつかの方法によりAl_2O_3、Y_2O_3、AlNなどのコーティングを作製し、その特性を測定した。その結果、プラズマ溶射法については、内部に生成する気孔の除去が課題であり、ディップコーティング法では、特にAlNコーティングの場合に、効率的な窒化方法が検討課題であること、スパッタリング法では、下地の処理が必要であることを結論した。そして、現時点でもっとも有望なコーティングは、Li17-Pb83に対してはAl_2O_3のディップコーティングであり、金属リチウムに対しては、ディップコーティング法やスパッタリング法でAl層を作製した上にスパッタリング法やCVD法によって作製したAlNコーティングであると結論した。核融合炉液体ブランケット用セラミックコーティングにおいては、大量生産が容易であること、液体金属との両立性やトリチウム透過バリアー、絶縁性バリヤ-としての機能が使用条件下において長期間にわたり確保されることが重要である。本研究では、いくつかの候補材料について実際にコーティングを試作し、その形態、化学組成、物性などの測定を行い、核融合炉液体ブランケット用セラミックコーティングに適した作製技術を確立すること、また作製したコーティング試料について、放射線照射下、高温下、高腐食性雰囲気下における諸機能の変化についての知見を得ることを目的として研究を行いつつある。平成7年度は本研究計画の初年度であり、以下のような成果を得た。(1)セラミックコーティングの試作:化学緻密化法、プラズマ溶射法、ディップコーティング法などの方法で、Al_2O_3,Al_2O_3-MgO,Y_2O_3などのセラミックコーティングを試作しつつあり、その製造条件や製造過程における試料の組織変化などについて明らかにしつつある。またこれらと並行して、スパッタリング法を試みるための装置を整備した。(2)セラミックコーティングの特性評価:(1)により作成した試料について、SEM,XMA,XRD,化学インピーダンス測定装置などにより、その形態、化学組成、コーティングの健全性、電気伝導率などの評価を行いつつある。(3)セラミックコーティングの機能試験:(1)により作成した試料について、加速器を用い、放射線照射下、高温下、高電圧勾配下における電気伝導率の変化について測定しつつある。また、液体金属と共存する場合における還元に伴う電気伝導率の変化や両立性についての研究を行いつつある。これらの成果は、いくつかの国際会議での発表や投稿論文などにより、公表しつつある。核融合炉液体ブランケット用セラミックコーティングにおいては、大量生産が容易であること、液体金属との両立性やトリチウム透過バリアー、絶縁性バリヤーとしての機能が使用条件下において長期間にわたり確保されることが必要である。本研究では、候補材料を選定し、それらの材料について実際のコーティングを試作したのち、その特性測定を行うことにより、核融合炉液体ブランケット用セラミックコーティングの製造方法を確立することを目的にした。その成果は以下のようにまとめられる。(1)セラミックコーティング用材料の選定:熱力学的安定性の検討やバルク材料を用いた実験により、Li17-Pb83に対しては、耐食性と電気絶縁性からAl_2O_3とY_2O_3を候補材料として選定した。一方、金属リチウムに対しては完全は耐食性を持つものは酸化物中には見いだされず、窒化物であるAlNを選定した。(2)セラミックコーティング用材料の核融合炉環境下における物性変化:上記により選定した材料の高温液体金属共存実験後の電気絶縁性を測定したところ、Y_2O_3については、金属リチウムによる還元のために亜定比化合物が生成し、電気絶縁性が低下することを見いだした。また、高温放射線照射下では、照射誘起電気伝導によりコーティングの絶縁性が大きく低下することを示した。(3)セラミックコーティングの試作とその実用性についての評価:上記の結果をふまえ、いくつかの方法によりAl_2O_3、Y_2O_3、AlNなどのコーティングを作製し、その特性を測定した。その結果、プラズマ溶射法については、内部に生成する気孔の除去が課題であり、ディップコーティング法では、特にAlNコーティングの場合に、効率的な窒化方法が検討課題であること、スパッタリング法では、下地の処理が必要であることを結論した。 | KAKENHI-PROJECT-07558188 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07558188 |
核融合炉液体ブランケット用セラミックコーティングの試作とその特性 | そして、現時点でもっとも有望なコーティングは、Li17-Pb83に対してはAl_2O_3のディップコーティングであり、金属リチウムに対しては、ディップコーティング法やスパッタリング法でAl層を作製した上にスパッタリング法やCVD法によって作製したAlNコーティングであると結論した。核融合炉液体ブランケット用セラミックコーティングにおいては、大量生産が容易であること、液体金属との両立性・トリチウム非透過性・絶縁性などの機能が使用環境下において長期間にわたり確保されることが重要である。本研究では、実際にコーティングを試作し、その作製技術を確立するとともに、使用現境下におけるその諸機能の変化についてあきらかにすることを目的とする。これらの目的を達成するため、以下のような研究を実施しつつある。(1)セラミックコーティングの試作:プラズマ溶射法、ディップコーティング法などによりAl_2O_3,Al_2O_3-MgO,Y_2O_3などのセラミックコーティングを試作し、その製造条件や製造過程における組織変化などについて明らかにした。またスパッタリング法のための装置を製作し、これを用いたAl_2O_3コーティング作製の条件を明らかにしつつある。(2)セラミックコーティングの特性評価:作成した試料について、その形態・化学組成・コーティングの健全性・電気伝導率などの評価を行いつつある。(3)セラミックコーティングの機能試験:作成した試料について、放射線照射・高温・高電圧勾配下における電気伝導率の変化について研究している。また、液体金属による還元に伴う電気伝導率の変化や両立性についての研究を行っている。今後は、これまでの研究をさらに進める一方、バルク材料の結果との比較を通して、セラミッタコーティングの材料としての特殊性を明らかにするとともに、AlNなどの酸化物以外のセラミックコーティングについての研究もあわせて実施する予定である。核融合炉液体ブランケット用セラミックコーティングにおいては、大量生産が容易であること、液体金属との両立性やトリチウム透過バリアー、絶縁性バリヤ-としての機能が使用条件下において長時間にわたり確保されることが重要である。本研究では、いくつかの候補材料を選定し、それらの材料について実際にコーティングを試作したのち、その形態・化学組成・物性などの測定と評価を行い、核融合炉液体ブランケット用セラミックコーティングの製造方法を確立することを目的として研究を行った。その成果は以下のようにまとめられる。(1)セラミックコーティング用材料の選定:熱力学的安定性の検討やバルク材料を用いた実験により、Li17-pb83に対しては、Al_2O_3,MgO,Y_2O_3などが候補材料として挙げられ、その中で電気絶縁特性が優れていることからAl_2O_3とY_2O_3が第一候補材料として選定された。一方、金属リチウムに対しては、Y_2O_3を除いて腐食耐性を持つものは酸化物中には見いだされず、窒化物についても検討した結果、AlNが候補材料として選定された。 | KAKENHI-PROJECT-07558188 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07558188 |
食品廃棄物のフロー解析およびゼロエミッション化 | (1)食品工場における環境負荷の評価に関して、ビール工場における原料から製品ビールに至る製造工程をLCAインベントリー解析して、製品ビールに負わされる累積CO_2排出原単位を求めた。その結果、累積CO_2排出原単位の55%以上が製造各工程で投入される水道、電力、ガス、灯油など工程ユーティリティに関係していること、排水をメタン発酵してバイオガスを回収して、燃料電池によって電力変換した場合、工場の年間電力の9.74%をセーブできて、2.99%の累積CO_2排出原単位の削減になると分かった。(2)核廃棄物のメタン発酵によるエネルギー回収に関して、トーフ工場から排出されるおからを、有機廃液である寄せ込み排水とともにメタン発酵する場合の、メタン回収率の向上について検討した。その結果メタン転換率は、おから単独基質の場合には理論値の95%近くまで可能であるが、寄せ込み排水単独では理論値の64%程度にとどまった。しかし、寄せ込み排水をおからと混合処理した場合、理論値の80%近くまで上昇し、エネルギー(有機炭素)回収率の向上がはかれることが分かった。(3)食品廃棄物を原料とする活性炭製造とその用途開発に関して、ビール滓、おから及び酒粕を原料として、これらを炭化後水蒸気賦活する事によって活性炭を製造した。製造された活性炭は市販ヤシガラ炭と同等の比表面積を有することが分かった。また、薬品賦活法によって製造したおから活性炭の液相で農薬(2-4-D,CAP)の吸着特性を評価した。その結果、各農薬に対して吸着等温線はフロインドリッヒ式で表された。またおから活性炭は低濃度域での吸着能が高く、吸着速度も高いことが分かった。(1)食品工場における環境負荷の評価に関して、ビール工場における原料から製品ビールに至る製造工程をLCAインベントリー解析して、製品ビールに負わされる累積CO_2排出原単位を求めた。その結果、累積CO_2排出原単位の55%以上が製造各工程で投入される水道、電力、ガス、灯油など工程ユーティリティに関係していること、排水をメタン発酵してバイオガスを回収して、燃料電池によって電力変換した場合、工場の年間電力の9.74%をセーブできて、2.99%の累積CO_2排出原単位の削減になると分かった。(2)核廃棄物のメタン発酵によるエネルギー回収に関して、トーフ工場から排出されるおからを、有機廃液である寄せ込み排水とともにメタン発酵する場合の、メタン回収率の向上について検討した。その結果メタン転換率は、おから単独基質の場合には理論値の95%近くまで可能であるが、寄せ込み排水単独では理論値の64%程度にとどまった。しかし、寄せ込み排水をおからと混合処理した場合、理論値の80%近くまで上昇し、エネルギー(有機炭素)回収率の向上がはかれることが分かった。(3)食品廃棄物を原料とする活性炭製造とその用途開発に関して、ビール滓、おから及び酒粕を原料として、これらを炭化後水蒸気賦活する事によって活性炭を製造した。製造された活性炭は市販ヤシガラ炭と同等の比表面積を有することが分かった。また、薬品賦活法によって製造したおから活性炭の液相で農薬(2-4-D,CAP)の吸着特性を評価した。その結果、各農薬に対して吸着等温線はフロインドリッヒ式で表された。またおから活性炭は低濃度域での吸着能が高く、吸着速度も高いことが分かった。 | KAKENHI-PROJECT-11128251 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11128251 |
メタルフリー接着性修復のin vivo/in vitro評価 | 本研究では、見た目にも美しいメタルフリー接着性修復の臨床的条件下における挙動を明らかにすることを目的に、口腔内環境想定の複合ストレス負荷による微小漏洩・窩洞内象牙質接着強さ・微小接着強さに基づく接着信頼性等について検討した。また、in vivo / in vitro両用小型接着試験器による臨床的修復歯面を含めた各種歯面に対するレジン接着システムの引張接着強さを測定し、評価した。それら得られた結果から、従前の研究では明らかにされなかった多くの客観的な事象を確認した。本研究課題では、"患者・歯科医師双方が求める質の高いメタルフリー直接・間接接着性修復の達成を図る"ことを目的として検討を行っている。そこで、平成24年度に得た主たる成果を以下に示す。1)髄床底を窩底とする2級MO直接修復を想定し、動的荷重因子がレジンコア併用症例の窩壁象牙質接着強さに及ぼす影響を明らかにすることを目的に評価検討を行った。その結果、コアシステムにかかわらず、ストレス負荷条件下のP壁における接着が著しい影響を受けることが明らかとなった。2)新規汎用性オールインワン接着システムの接着信頼性を明らかにすることを目的に、口腔内環境想定の複合ストレス負荷の有無条件下における歯頸部修復窩洞内象牙質窩壁に対するμ-TBSを測定し、評価検討を行った。その結果、新規汎用性システムのμ-TBS値は、複合ストレス負荷の有無による影響を受けていなかった。また、ワイブル係数(m値)に関して、+S条件下の当該システムのm値は、従前システムより有意に大きく、接着信頼性に優れていた。3)フロアブルレジン(F)による歯頸部修復の接着実態について、ユニバーサルレジン(U)を対照として、複合ストレス負荷試験によって評価検討した。その結果、Fの漏洩は、Uと同等または小さい漏洩を示した。また、m値において、F値はU値より有意に大きく、接着信頼性に優れていた。4)4種被着体に対するレジンセメントの接着強さに及ぼす新規汎用性前処理材の効果を明らかにすることを目的に、市販の先行前処理材と比較検討を行った。その結果、新規汎用性前処理材のTUPはメタル(M)とセラミック(C)において、DCAはハイブリッドセラミックス(H)とジルコニア(Z)において先行前処理材と同等または優れた接着強さ獲得効果を有していた。また、近年の前処理材を活用した場合,TBS値はZ>M・C>Hの大小関係となることが示唆された。最終年度に得た研究成果の概容を以下に示す。1)髄床底を窩底とするレジンコア併用2級コンポジットレジン直接修復において、動的荷重ストレスの負荷は、歯頂側壁の辺縁封鎖性のみに有意な影響を与えていた。2)最新のCERECシステムを用いたセラミックアンレー修復に際し、レジンコーティングの応用は、咀嚼環境想定の動的荷重による窩底部接着強さの減弱を抑制する効果を有していた。3)フロアブルレジンの選択応用はユニバーサルレジンより優れた辺縁封鎖性の獲得に有用であった。また、フロアブルレジンの選択応用はユニバーサルレジンより接着信頼性を向上させ、併せて優れた接着耐久性の獲得に有用と推測できた。4)歯頸部罹患象牙質に対する接着は、最近のオールインワン接着システムを活用することによって、健全歯質と同等の初期接着強さを獲得できるものの、接着信頼性の点では難点を有していた。また、過去3箇年を通じて得た研究成果を要約すると以下のとおりとなる。1)交付申請書で掲げた"患者・歯科医師双方が求める質の高いメタルフリー直接・間接接着性修復の達成を図る"という目的の具現化に寄与できた。2)複合機能試験機およびMicro-tensile bond testを活用した実験系では、新規のレジン接着システム、レジンセメントおよびコンポジットレジンをはじめとする材料を用いて、口腔内環境を想定した条件下における直接・間接法によるメタルフリー接着修復の接着実態を評価確認した。3)次世代の歯冠修復を担うCAD/CAM修復を検討し、その窩洞適合性、形態再現性、ストレス条件下における接着挙動、辺縁封鎖性について検証した。4)in vivo/in vitro小型接着試験器を活用した実験系では、新規・試作レジン接着システムを用いて、摩耗症露出象牙質および齲蝕罹患象牙質に対する接着強さを測定し、臨床的修復歯面の接着実態や各種レジン接着システムの接着性能について探究した。本研究では、見た目にも美しいメタルフリー接着性修復の臨床的条件下における挙動を明らかにすることを目的に、口腔内環境想定の複合ストレス負荷による微小漏洩・窩洞内象牙質接着強さ・微小接着強さに基づく接着信頼性等について検討した。また、in vivo / in vitro両用小型接着試験器による臨床的修復歯面を含めた各種歯面に対するレジン接着システムの引張接着強さを測定し、評価した。それら得られた結果から、従前の研究では明らかにされなかった多くの客観的な事象を確認した。本研究では、患者・歯科医師双方が求めるメタルフリー接着性修復に焦点を絞り、直接・間接法による質の高い修復の達成を目的に検討を行った。"複合機能試験機(MFA)およびMicro-tensile bond test(μ-TBS)を活用した実験系"では、規格化1級型築造用窩洞に2種レジンコアシステムによる歯冠築造を行い、髄床底象牙質(P壁)ならびに近心軸側壁象牙質(A壁)への微小接着強さを測定した。その結果、コア材一層塗布を実施しない填塞試料はμ-TBS値が得られなかった。 | KAKENHI-PROJECT-23592815 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23592815 |
メタルフリー接着性修復のin vivo/in vitro評価 | 一方、コア材一層塗布による填塞試料値は約10MPa以下であり、レジンコアシステムの違いにかかわらず、P壁へのμ-TBS値はA壁値より有意に小さく、窩壁象牙質の違いにかかわらず2種コアシステムのμ-TBS値は同等であった。さらに、新規オールインワン接着システムの辺縁封鎖性に及ぼす口腔内環境想定の複合ストレス有無の影響を明らかにすることを目的に、歯頸部V字状窩洞修復に対する色素浸透試験を行った。その結果、歯頂側壁漏洩では、EXLとEBにおいて+S群がーS群より有意に大きな漏洩を示し、MBでは同等であった。一方、歯肉側壁漏洩では、システムにかかわらず、+S群とーS群との漏洩は同等であった。"in vivo / in vitro小型接着試験器(PAT)を活用した実験系"では、歯頸部摩耗症露出象牙質(ALD)に対する初期接着特性を明らかにすることを目的に、最近のオールインワン接着システムを用いて健全切削エナメル質(SE)と健全切削象牙質(SD)を含めた各歯面に対する引張接着強さを測定した。その結果、ALDは、オールインワン接着システム活用の場合、SD・SEとも同等の接着強さを獲得できる傾向にあることが確認できた。しかし、ALDに対する接着信頼性はSDより有意に劣り、SEとは同等であることが明らかとなった。平成23年度25年度の科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)としての承認を受け、本研究課題では、"患者・歯科医師双方が求めるメタルフリー接着性修復に焦点を絞り、直接ならびに間接法による質の高い当該修復の達成を図る"ことを目的として検討を行っている。今年度は、昨年度の研究成果を踏まえながら、「研究実績の概要」の部分で述べた成果を挙げることができ、それぞれにおいて、以下に述べる臨床的意義・寄与を確認することができた。1)髄床底を窩底とする2級症例は、臨床における遭遇機会が多く、接着信頼性の向上には、レジンコアシステムの改善に加え、術者によるレジン重合収縮への配慮、歯面処理時のエアーブロー法、光照射方法などに注意を払い、システム性能を最大限に引き出す対応が重要であることが示唆された。2)新規汎用性オールインワン接着システムは、ポリアクリル酸コポリマーの配合、シラン剤の添加、接着機能性モノマーMDPの活用、新規光重合触媒・多官能親水性モノマーの導入などによって、口腔内環境想定の苛酷なストレス条件下においても安定かつ高いレベルでの歯頸部接着信頼性を示し、臨床においても良好な予後獲得に寄与することが考えられた。3)フロアブルレジンの選択応用は、ユニバーサルレジンより確実な接着強さの獲得と同時に、接着破壊への耐久性に優れていることが考えられ、歯頸部修復の予後向上に寄与すると考えられた。4)メタルフリー接着性間接修復に際し有効な前処理剤の内、新規汎用性前処理材は、先行前処理材と同等または優れた接着強さ獲得効果を有し、製品によって修復物への効果が異なることが明らかになった。以上から、現在までの達成度に対する自己点検評価としては、「おおむね順調に進展している。」と考える。 | KAKENHI-PROJECT-23592815 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23592815 |
アンジオテンシンIIリセプターの単離とcDNAクローニングによる構造決定 | 血管平滑筋細胞や副腎球状層細胞の膜上にあって、血圧調節や体液バランスの保持に重要な役割を果たしているアンジオテンシン【II】リセプターを単離し、構造を決定するための基礎研究を行い、以下のような成果を得た。(1)部分精製法はすでに昨年度の研究で確立済みであるが、アンジオテンシン【II】リセプターの存在量は予想以上に少なく、通常の精製手段のみでは、N末端分析やフラグメント化したペプチドのアミノ酸配列の決定にこぎつけるだけの量を入手するのは困難であることがわかった。そこで、どうしてもアフィニティクロマトグラフィーが必要となるが、これもリガンドであるアンジオテンシン【II】を一旦ゲルに固定化すると、もはや遊離のリガンドとは違って、リセプターに結合する能力を失うとあって困難とされてきた。過去の報告について詳細な考察を加えたところ、残された可能性はスペーサーの長さを極端に長くしてみる以外にないことに気付いた。実際に長いスペーサーを介してアンジオテンシン【II】をゲルに固定化したものは、リセプター結合能を保持しており、アフィニティー担体として使えることがわかった。(2)ウシ副腎のCHAPS抽出液をアフィニティーカラムにかけ、よく洗浄した後、吸着した膜蛋白質を溶出し電気泳動で分析したところ、分子量17万の蛋白質が特異的に濃縮されていた。アフィニティーラベリングにより推定した分子量と一致するところから、アンジオテンシン【II】リセプターをとらえることに成功したものと思われる。(3)血圧調節のしくみを理解するためには、アンジオテンシン【II】とは逆の働きをする心房性ナトリウム利尿ホルモン(ANP)の作用機構をも解明しなければならない。本研究では、ANPリセプターに関する仕事をも進め、ウシの肺より、それを完全に純粋な形で単離することに成功した。世界が注目している物質であり今後の発展が期待される。血管平滑筋細胞や副腎球状層細胞の膜上にあって、血圧調節や体液バランスの保持に重要な役割を果たしているアンジオテンシン【II】リセプターを単離し、構造を決定するための基礎研究を行い、以下のような成果を得た。(1)部分精製法はすでに昨年度の研究で確立済みであるが、アンジオテンシン【II】リセプターの存在量は予想以上に少なく、通常の精製手段のみでは、N末端分析やフラグメント化したペプチドのアミノ酸配列の決定にこぎつけるだけの量を入手するのは困難であることがわかった。そこで、どうしてもアフィニティクロマトグラフィーが必要となるが、これもリガンドであるアンジオテンシン【II】を一旦ゲルに固定化すると、もはや遊離のリガンドとは違って、リセプターに結合する能力を失うとあって困難とされてきた。過去の報告について詳細な考察を加えたところ、残された可能性はスペーサーの長さを極端に長くしてみる以外にないことに気付いた。実際に長いスペーサーを介してアンジオテンシン【II】をゲルに固定化したものは、リセプター結合能を保持しており、アフィニティー担体として使えることがわかった。(2)ウシ副腎のCHAPS抽出液をアフィニティーカラムにかけ、よく洗浄した後、吸着した膜蛋白質を溶出し電気泳動で分析したところ、分子量17万の蛋白質が特異的に濃縮されていた。アフィニティーラベリングにより推定した分子量と一致するところから、アンジオテンシン【II】リセプターをとらえることに成功したものと思われる。(3)血圧調節のしくみを理解するためには、アンジオテンシン【II】とは逆の働きをする心房性ナトリウム利尿ホルモン(ANP)の作用機構をも解明しなければならない。本研究では、ANPリセプターに関する仕事をも進め、ウシの肺より、それを完全に純粋な形で単離することに成功した。世界が注目している物質であり今後の発展が期待される。 | KAKENHI-PROJECT-61232006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61232006 |
電子文章に内在する攻撃的因子の特定とそのデバッグに関する教育支援マニュアルの作成 | 3年間に亘る研究を通して、まず電子文章の中に潜む「攻撃的因子」の特定化を行なった。この特定化に関しては、得られたデータの表層的特質を統計的手続きによって明らかにする方法と、オーラルリサーチによって収集したネットトラブルの頻発事例を情報倫理・道徳教育・精神病理の観点から分析する方法との2方向から行った。その結果、電子文章における攻撃性を助長する因子としては、利用者側では「匿名」「中傷」が主因であり、電子媒体側では「掲示板」「メール」であることが確認された。また、利用される側では「無知」「無関心」に依存していることも合わせて確認された。しかし、これらの背景に対してさらに検証を推し進めてみたところ、一連の現象下には、いわゆる電子文章の送り手と受け手との間そのものに、「リテラシー」の欠如が介在していることも明らかとなり、必然的に、その原因を探ることが本研究の最大のテーマとなった次第である。そして、本研究終盤の方向性は、専らこの「リテラシー」を「対社会文脈を読み取る力」と定義して多角的に研究を推し進め、最終的に「攻撃性」との遭遇回避のためには学校教育における「リテラシーの育成」が不可欠であるとの知見を得てそのガイドラインの策定を思案した。しかし、必ずしも学校教育という教育の場でのみ培える素養ではありえない部分もあり、家庭教育との具体連携をどう進めていくかが今後の課題として残された。さらに今後も継続して取り組んでいく考えである。3年間に亘る研究を通して、まず電子文章の中に潜む「攻撃的因子」の特定化を行なった。この特定化に関しては、得られたデータの表層的特質を統計的手続きによって明らかにする方法と、オーラルリサーチによって収集したネットトラブルの頻発事例を情報倫理・道徳教育・精神病理の観点から分析する方法との2方向から行った。その結果、電子文章における攻撃性を助長する因子としては、利用者側では「匿名」「中傷」が主因であり、電子媒体側では「掲示板」「メール」であることが確認された。また、利用される側では「無知」「無関心」に依存していることも合わせて確認された。しかし、これらの背景に対してさらに検証を推し進めてみたところ、一連の現象下には、いわゆる電子文章の送り手と受け手との間そのものに、「リテラシー」の欠如が介在していることも明らかとなり、必然的に、その原因を探ることが本研究の最大のテーマとなった次第である。そして、本研究終盤の方向性は、専らこの「リテラシー」を「対社会文脈を読み取る力」と定義して多角的に研究を推し進め、最終的に「攻撃性」との遭遇回避のためには学校教育における「リテラシーの育成」が不可欠であるとの知見を得てそのガイドラインの策定を思案した。しかし、必ずしも学校教育という教育の場でのみ培える素養ではありえない部分もあり、家庭教育との具体連携をどう進めていくかが今後の課題として残された。さらに今後も継続して取り組んでいく考えである。平成14年度は,3ヵ年に亘る研究計画の初年度であることから研究テーマに関係する専門的資料の探索,実態調査,フィールドスタディに時間を集中的に配して研究を執り行った。実態調査としては,ネット上に氾濫する電子文章の内,相互作用上の変容を分析する上で有意味であると思われるリアルタイムチャットにフォーカスし,分析者である淺間・河原も実際にチャットに加わることでより正確な資料を得るよう配慮した。収集した電子文章サンプルは膨大なものとなったので、分析対象の絞込みを行いながら「ポライトネス」(politeness)の観点から機能分類を実施した。フィールドスタディとしては,平成14年10月3日から10月10日までの間,淺間・松王が後に我が国との比較分析研究を執り行う意図から欧州連合(ベルギー)およびヘルシンキ大学のヴァーチャルユニバーシティー部門(フィンランド)を訪問し,資料収集に従事しながらあわせて専門家からの助言提供を積極的に受け入れた。とりわけ,フィンランドでの調査研究の結果,我が国のネットコミュニケーション環境での実際と比してみると次の2点において大きく相違することが判明し,平成15年度に着手する実験分析研究への大いなる参考資料となった。(1)携帯電話を教育的(個の成長に資する)ツールとして社会が受け入れている傾向にある。(2)テキストメッセージの使用頻度が高まりつつあるフィンランドでは,日本の若者達がsmiley marksを多用・援用しながらコミュニケーションの歪みを埋めようとしているのに対して,フィンランドの若者達はより感情度の高いテキストメッセージを交わし合っている。上記の更なる検証により,我が国の電子文章様式に巣くう人格変容の誘発因子を特定していきたい。平成15年度は,平成14年度において得た電子文章(電文)サンプルデータとの比較資料を得るために,自筆文章(自文)によるサンプルデータの収集に着手した。そして,得られた自文データを電文データの時と同様に,多様な文機能分析の手法に基づいて分類した。その結果,いわゆる入力ミス(記入ミス)に対しては,「自文」の方が修正努力の痕跡が「電文」に比べて著しいことが明らかとなった。また,電文の方は「道具的機能」(依頼・要求など)が高かったが,自文は相互作用機能が高まることも判明した。このことより,簡単に総括すれば,電文の場合は相手との心的距離を縮減し,好感度の高いメッセージスタイルを採用する一方で,利己的なメッセージ内容をも発信しやすい状況に置かれると言える。 | KAKENHI-PROJECT-14380102 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14380102 |
電子文章に内在する攻撃的因子の特定とそのデバッグに関する教育支援マニュアルの作成 | また,自文の場合は,「書く」という一連の作業が「打つ」(入力)という電文における瞬時動作の連続体と比べると,思考の連鎖を維持しやすいということも言えるようである。これらの知見に基づいて,電文には人間の道徳性の発達の上で幾多の危険因子が垣間見られるのではないか,との仮説を立て,様々な観点からの実験を行った。その中でも,「フォント」の持つトーンの調査実験に関しては,フォントそのものの種類によって,威圧効果もあれば癒し効果もあるのではないかという仮説を証明しようとする独創的な試みとなった。サンプル数を出来るだけ数多く取りたいとの意図から,調査は継続中であり,その総括は次年度において行いたいと考えている。さらにまた,電文受信者の視覚認知に関する実験も試みた。すなわち,ディスプレーという「一覧性の乏しい環境にある場合の思考の連鎖はどうなるか」の問いを中心課題として調査を試みた。自文と比べるとかなり分散型思考が強まるようであるが,この点に関しては精神病理学専攻のジュゴンを中心に,次年度に組織メンバー全員での分析を試みたいと考えている。平成16年度は、3年間に亘る研究の最終年度であることから、前半は、平成14年度および平成15年度に得られた調査データの再検証を実施して、電子文章の中に潜む「攻撃的因子」の特定化を行なった。特定化に関しては、統計手続きによってこれまでに得られたデータの表層的特質を明らかにする方法と、オーラルリサーチの一環として収集したネットトラブルの頻発事例を精神病理学的な見地から解明する方法との両面で実施した。その結果、電子文章における「攻撃性」を助長する要因が利用者側では「匿名」「中傷」であり、電子的媒体側では「掲示板」「メール」であり、そして利用される側では「無知」「無関心」に依存していることがあらためて確認されることとなった。しかし、さらに研究を推し進めてみると、これらの現象の背景には、いわゆる電子文章の送り羊と受け手との間そのものにリテラシーの「ずれ」が生じていることが明らかとなった。したがって、本最終年度の後半は、電子文章を送受信する場合に必要なリテラシー能力を、道徳教育との連携においてステップ・バイ・ステップに育成する教育支援の方途を探索することにした。その研究の一環から、リテラシー能力育成においてより強力な示唆を提示してくれるであろう、昨今その分野で国際的評価の非常に高いフィンランドの教育機関の視察を実施した。教育関係者から本研究内容へのレビューを受けると同時に、電子情報環境をめぐるフィンランドの若者と日本の若者との間の意識差をも浮き彫りにすることができ、教育支援マニュアル作成に向けての新たな視点移動の必要性を認識することができた。 | KAKENHI-PROJECT-14380102 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14380102 |
新しい官能試験法による浄水カルキ臭の全体像の解明と超微粉化活性炭による制御 | 本研究は,ヒト嗅覚をGC/MSの検出器として加えたシステム(ヒト嗅覚GC/MSシステム)を用いて,水道水に対する不満足の一因である水道水のカルキ臭の原因物質の同定と官能試験を一斉かつ網羅的に行うことのできる新たな官能試験法を確立し,全く明らかとなっていない浄水カルキ臭原因物質の全体像の把握をすることを目的としている。本年度は,本研究で試みているヒト嗅覚GC/MSシステムによる官能試験法を用いた新たな臭気試験法を構築するべく,カルキ臭の原因物質の前駆体の有機窒素化合物であり,塩素との反応により強い臭気を発するフェニルアラニンを用いて実験を行い,様々な臭気物質の分析が可能な条件の最適化試みた。昨年度に続き,サンプル調整方法の見直しや分析メソッド,サンプルの注入方法などの実験方法や臭気試験方法の見直しを行い,感度の向上も試みた。その結果,フェニルアラニンを塩素処理した試料から確認・検出された3つの臭気を有するピークの感度を上げることが出来た。また,それにともない,新たな臭気を有するピークを発見することができた。本年度の予定では,前年度までに構築完了する予定であった,ヒト嗅覚GC/MSによる新しい官能試験法および,官能試験用サンプルの新たな濃縮・回収方法により,浄水カルキ臭原因物質の全体像の解明および臭気強度の定量を試みる予定であったが,臭気を感じるピークの強度が低く,また再現性も得られないことが続いたため,分析条件の再検討に時間がかかったため,試料の新たな濃縮・回収方法の検討まで進んでおらず,予定より遅れが出てしまっている。今年度は,昨年度までに発見された臭気を有するピークの分析を進め,カルキ臭の原因と考えられる物質の同定を進める。さらに,ヒト嗅覚GC/MSシステムを用いた新たな官能試験法により,様々な臭気物質の分析を行うための条件の最適化を図るとともに,活性炭の物性の違いによるカルキ臭原因物質の除去効率の変化を確認し,カルキ臭の原因物質および様々な臭気原因物質を活性炭により効率的に制御する方法の検討を行う。本研究は,ヒト嗅覚をGC/MSの検出器として加えたシステム(以下「ヒト嗅覚GC/MSシステム」)を用いて,水道水に対する不満足の要因になっている水道水のカルキ臭の原因となる物質の同定と官能試験を一斉かつ網羅的に行うことのできる新たな官能試験法を確立し,現段階で全く明らかとなっていない浄水カルキ臭原因物質の全体像の把握をすることを目的としている。本年度は,まず,カルキ臭の原因物質の前駆体として考えられている有機窒素化合物の中で,塩素との反応により強い臭気を発することがわかっており,また,GC/MSにより分離されて気体として出てきた試料を臭い嗅ぎポートで嗅いだ際に複数の臭気を感じるピークを検出することが出来たフェニルアラニンについて,ヒト嗅覚GC/MSシステムによる官能試験法を用いて,新たな臭気試験法の構築を試みた。以前行った予備実験の段階では,フェニルアラニンを塩素処理した試料をヒト嗅覚GC/MSシステムで分析したところ,3つのピークが確認でき,各ピークで臭気を感じることが出来ていたが,本実験において,その3つのピークの検出や臭気の確認が上手く出来なくなるなどしたため,分析条件やサンプル調整方法の見直しなどに時間を要してしまった。GC/MSで使用するカラムや分析メソッドや,サンプルの注入方法などをはじめとする実験方法や臭気試験方法の見直しを行うことで,フェニルアラニン塩素処理サンプルより,新たに臭気を有する物質を発見することができた。本年度の予定では,予備実験から扱ってきたフェニルアラニンを用いて標準品が無くても官能試験と機器分析を組み合わせて行える新たな臭気試験法の構築と共に,フェニルアラニン以外アミノ酸を塩素処理した試料なども用いて,様々な臭気物質の分析が可能な条件の最適化を図る予定であったが,フェニルアラニン由来の臭気原因物質の検出および同定に時間がかかってしまったため,予定より少し遅れが出てしまっている状況である。本研究は,ヒト嗅覚をGC/MSの検出器として加えたシステム(以下「ヒト嗅覚GC/MSシステム」)を用いて,水道水に対する不満足の要因になっている水道水のカルキ臭の原因となる物質の同定と官能試験を一斉かつ網羅的に行うことのできる新たな官能試験法を確立し,現段階で全く明らかとなっていない,浄水カルキ臭原因物質の全体像の把握をすることを目的としている。本年度は,昨年度に続き,カルキ臭の原因物質の前駆体として考えられている有機窒素化合物の中で,塩素との反応により強い臭気を発することがわかっており,また,GC/MSにより分離されて気体として出てきた試料を臭い嗅ぎポートで嗅いだ際に複数の臭気を感じるピークを検出することが出来たフェニルアラニンについて,ヒト嗅覚GC/MSシステムによる官能試験法を用いて,新たな臭気試験法の構築を試みた。昨年度に続き,予備実験の結果をもとに,サンプル調整方法の見直しやGC/MSで使用するカラム,分析メソッド,および,サンプルの注入方法などをはじめとする実験方法や臭気試験方法の見直しを行った。その結果,予備実験の段階で確認されていた,フェニルアラニンを塩素処理した試料から確認・検出された3つのピークと各ピークで感じることが出来た臭気に加え,フェニルアラニン塩素処理サンプルより,臭気を有する物質のピークが新たに検出され,カルキ臭の原因と考えられる物質を発見することができた。 | KAKENHI-PROJECT-16K21568 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K21568 |
新しい官能試験法による浄水カルキ臭の全体像の解明と超微粉化活性炭による制御 | 本年度の予定では,ヒト嗅覚GC/MSシステムによる官能試験と機器分析を組み合わせて行える新たな官能試験の構築を行い,さらに,フェニルアラニン以外のアミノ酸を塩素処理試料も用いて実験を行い,様々な臭気物質の分析が可能な条件の最適化を図る予定であったが,不調に伴う分析装置の更新により,分析条件の再検討やフェニルアラニン由来の臭気原因物質の検出および同定に時間がかかってしまったため,予定より遅れが出てしまっている状況である。本研究は,ヒト嗅覚をGC/MSの検出器として加えたシステム(ヒト嗅覚GC/MSシステム)を用いて,水道水に対する不満足の一因である水道水のカルキ臭の原因物質の同定と官能試験を一斉かつ網羅的に行うことのできる新たな官能試験法を確立し,全く明らかとなっていない浄水カルキ臭原因物質の全体像の把握をすることを目的としている。本年度は,本研究で試みているヒト嗅覚GC/MSシステムによる官能試験法を用いた新たな臭気試験法を構築するべく,カルキ臭の原因物質の前駆体の有機窒素化合物であり,塩素との反応により強い臭気を発するフェニルアラニンを用いて実験を行い,様々な臭気物質の分析が可能な条件の最適化試みた。昨年度に続き,サンプル調整方法の見直しや分析メソッド,サンプルの注入方法などの実験方法や臭気試験方法の見直しを行い,感度の向上も試みた。その結果,フェニルアラニンを塩素処理した試料から確認・検出された3つの臭気を有するピークの感度を上げることが出来た。また,それにともない,新たな臭気を有するピークを発見することができた。本年度の予定では,前年度までに構築完了する予定であった,ヒト嗅覚GC/MSによる新しい官能試験法および,官能試験用サンプルの新たな濃縮・回収方法により,浄水カルキ臭原因物質の全体像の解明および臭気強度の定量を試みる予定であったが,臭気を感じるピークの強度が低く,また再現性も得られないことが続いたため,分析条件の再検討に時間がかかったため,試料の新たな濃縮・回収方法の検討まで進んでおらず,予定より遅れが出てしまっている。平成29年度は,まずは前年度から引き続き,早急にヒト嗅覚GC/MSシステムによる官能試験と機器分析を組み合わせて行える新たな官能試験の構築を行い,さらに,フェニルアラニン以外のアミノ酸を塩素処理試料も用いて実験を行い,様々な臭気物質の分析が可能な条件の最適化を図る。その後,平成28年度の実験において検出された新たなフェニルアラニン由来の臭気物質も含め,さらなる臭気物質の発見・同定のための新たな臭気物質の濃縮・回収方法の確立を目指す。平成30年度は,早急にヒト嗅覚GC/MSシステムによる官能試験と機器分析を組み合わせて行える新たな官能試験の構築を行い,さらに,フェニルアラニン以外のアミノ酸を塩素処理試料も用いて実験を行い,様々な臭気物質の分析が可能な条件の最適化を図る。その後,現在までの実験において検出されている新たなフェニルアラニン由来の臭気物質も含め,さらなる臭気物質の発見・同定のための新たな臭気物質の濃縮・回収方法の確立を目指す。今年度は,昨年度までに発見された臭気を有するピークの分析を進め,カルキ臭の原因と考えられる物質の同定を進める。さらに,ヒト嗅覚GC/MSシステムを用いた新たな官能試験法により,様々な臭気物質の分析を行うための条件の最適化を図るとともに,活性炭の物性の違いによるカルキ臭原因物質の除去効率の変化を確認し,カルキ臭の原因物質および様々な臭気原因物質を活性炭により効率的に制御する方法の検討を行う。 | KAKENHI-PROJECT-16K21568 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K21568 |
複雑システム最適化問題に対する生物群最適化に基づくソフトソリューション技術の開発 | 本研究では,ますます複雑化・多様化する現代社会におけるシステム最適化問題に対して,近年注目されている生物群最適化に基づいて,高速性,正確性および頑健性をあわせもつソフトソリューション技術の開発を行った.具体的には,従来の生物群最適化手法の改良を行うとともに,多目的計画問題や離散最適化問題への拡張を行った.さらに,ロボットの最大跳躍問題や現実の空調プラントの運転計画問題への応用も行った。本研究では,ますます複雑化・多様化する現代社会におけるシステム最適化問題に対して,近年注目されている生物群最適化に基づいて,高速性,正確性および頑健性をあわせもつソフトソリューション技術の開発を行った.具体的には,従来の生物群最適化手法の改良を行うとともに,多目的計画問題や離散最適化問題への拡張を行った.さらに,ロボットの最大跳躍問題や現実の空調プラントの運転計画問題への応用も行った。本年度は研究の対象となる問題の定式化および生物群最適化手法の改良について行った.1.対象とする非凸非線形計画問題の定式化:現実社会のシステム最適化の例として,ロボットの最大跳躍問題を取り上げ,非凸非線形計画問題として定式化した.2.従来の生物群最適化手法の改良:これまでに提案されている生物群最適化手法の非凸非線形計画問題への適用において指摘されている,(1)制約条件のある問題に対して直接適用できない,(2)局所的最適解に停留しやすい,という問題点に対して,新しい個体の修正方法,新しい初期個体群の生成方法,移動方法の改良,離脱行動の導入,多重Stretching技法,という解決法を提案し,これらの解決法をとりいれた改良型生物群最適化手法を提案した.3.改良された生物群最適化手法のコード化:上記の2.で考案された改良型生物群最適化手法のアルゴリズムをコード化した.4.数値例を用いたシミュレーションによる有効性の検討:本研究で考案された新しい生物群最適化手法を,さまざまなタイプの非凸非線形計画問題の数値例に適用し,有効性・問題点を検討した.特に,ロボットの跳躍最大化問題などのような現実の最適化問題の特性を考慮した数値例を作成し,提案手法を適用することにより,その実用性についても検討した.今年度の研究で得られた結果から,提案した改良型生物群最適化手法が単一目的の非凸非線形計画問題に対する最適化手法として有望であるということが示されたので,来年度以降は,離散計画問題や多目的計画問題に対する拡張を試みる予定である.本年度は多目的非凸非線形計画問題及び非線形整数計画問題に焦点をあて,生物群最適化手法の改良を行った.1.対象とする多目的非凸非線形計画問題及び非線形整数計画問題の定式化:現実社会のシステム最適化の例として,地域冷暖房プラントの運転計画問題を取り上げ,多目的非凸非線形計画問題として定式化した.2.単一目的計画問題及び整数計画問題に対する改良型生物群最適化手法の改良:前年度に提案した単一目的計画問題に対する改良型生物群最適化手法を多目的計画問題に直接適用した場合,求解精度の低下が確認されたため,(近似)パレート最適解情報を利用した新しい個体の移動方法や閾値の導入により,求解精度の改善を図った。また,離散最適化問題への拡張に関しても考察した.3.多目的計画問題及び整数計画問題に対する改良型生物群最適化手法のコード化:上記の2.で提案した新しい改良型生物群最適化手法のアルゴリズムをコード化した.4.数値例を用いたシミュレーションによる有効性の検討:本研究で考案された新しい生物群最適化手法を,さまざまなタイプの多目的非凸非線形計画問題及び非線形整数計画問題の数値例に適用し,有効性・問題点を検討した.特に,地域冷暖房プラントの運転計画問題などのような現実の最適化問題の特性を考慮した数値例を作成し,提案手法を適用することにより,その実用性についても検討した.今年度の研究で得られた結果から,提案した改良型生物群最適化手法が多目的の非凸非線形計画問題及び非線形整数計画問題に対する最適化手法として有望であるということが示された.来年度以降は,離散最適化問題への適用におけるさらなる改良を試みる予定である.本年度は非線形0-1計画問題に焦点をあて,生物群最適化手法の改良を行ろた.1.生物群最適化手法の改良:平成18,19年度の研究によって,決定変数が連続値をとる非凸非線形計画問題に対して有効な生物群最適化手法及び決定変数が離散値をとる非凸非線形整数計画問題に対して有効な生物群最適化手法が提案されているので,本年度は,決定変数がより強い離散性をもつ0-1計画問題に焦点をあてた.0-1計画問題では,すべての解が境界上にあるため,生物群最適化手法の各手順において次のような考察が必要となった.(1)決定変数が0-1の場合においても,効率的に実行可能な初期個体を生成できる方法を検討し,新しい初期個体の生成方法を提案した.(2)0-1計画問題では,すべての解が境界上にあるため,通常の移動では解が停留しやすい.そこで,停留を防ぐために,局所探索に基づく解の移動について検討し,新しい解の移動方法を提案した.(3)0-1計画問題では,局所探索に基づく解の移動を導入した場合,大域的探索能力の低下がみられたため,解の定在頻度などに基づく多様化技術を導入した.2.改良された生物群最適化手法のコード化: | KAKENHI-PROJECT-18510127 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18510127 |
複雑システム最適化問題に対する生物群最適化に基づくソフトソリューション技術の開発 | 上記の2.で考案された改良型生物群最適化手法のアルゴリズムを電子計算機上で実行可能となるようにコード化した.3.数値例を用いたシミュレーションによる有効性の検討:本研究で考案された新しい生物群最適化手法を,さまざまなタイプの非線形0-1計画問題の数値例に適用し,有効性・問題点について考察した. | KAKENHI-PROJECT-18510127 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18510127 |
合成メチル化カテキンによる抗腫瘍効果のメカニズムの解析及び臨床応用への基礎研究 | メチル化カテキンは肝癌細胞株Huh7に対し、in vitroにおいて強いPI3K/Aktシグナル系抑制作用、抗酸化作用をしめすことを示した。さらに、in vivoにおいても、癌移植マウスにおいて腹腔内投与、さらには経口投与(一日7.5mg/Kg)にても腫瘍増殖抑制効果を示した。このことは、メチル化カテキンが抗癌剤への応用につながる可能性を得ることができるという成果を得た。カテキン540mg含有のお茶の飲料品があることを考えるとその副作用はかなり少ないと考えられる。さらに、ある飲料会社がメチル化カテキン高濃度(20%)含有べにふうき茶抽出パウダーを開発していた。それを、当初は無料で条件なしで供与していただけるようになった。現在、カプセル化して一日500mgのメチル化カテキン(250mgのカプセル、10錠を一日)をのんでいただく準備を終了した(3人分30日分)。これら、具体的な製剤の作製は臨床研究へすすむことへの大きな成果である。メチル化カテキンは肝癌細胞株Huh7に対し、in vitroにおいて強いPI3K/Aktシグナル系抑制作用、抗酸化作用をしめすことを示した。さらに、in vivoにおいても、癌移植マウスにおいて腹腔内投与、さらには経口投与(一日7.5mg/Kg)にても腫瘍増殖抑制効果を示した。このことは、メチル化カテキンが抗癌剤への応用につながる可能性を得ることができるという成果を得た。カテキン540mg含有のお茶の飲料品があることを考えるとその副作用はかなり少ないと考えられる。さらに、ある飲料会社がメチル化カテキン高濃度(20%)含有べにふうき茶抽出パウダーを開発していた。それを、当初は無料で条件なしで供与していただけるようになった。現在、カプセル化して一日500mgのメチル化カテキン(250mgのカプセル、10錠を一日)をのんでいただく準備を終了した(3人分30日分)。これら、具体的な製剤の作製は臨床研究へすすむことへの大きな成果である。カテキンより抗酸化力価が強いとされるメチル化カテキンの肝癌細胞に対する抗腫瘍効果について検討した。方法1)PI3K/Aktシグナルの活性化(Aktのリン酸化)の検討。肝癌細胞株Huh7に0,0.5,2,5,10,20μMのメチル化カテキン処理6時間で処理。その後,脱リン酸化効果を示した最低濃度で,肝癌細胞株Huh7を6時間処理した。さらにHuh7でリン酸化Aktの発現と,この下流分子である細胞周期促進分子のCyclinD1の経時的変化を検討した。2)細胞増殖抑制の検討。Huh7をメチル化カテキンで処理,BrdUの取り込みをELISA,細胞数の変化,細胞周期の変化をフローサイトメトリーで観察した。3)メチル化カテキンの抗酸化作用の検討。Huh7を過酸化水素で細胞を処理した後,酸化マーカーであるDCF-DAによるフローサイトメトリーで測定した。4)In vivo,Huh7を皮下に移植し,1mg/kgメチル化カテキンを連日腹腔内に投与し,その増殖の程度を生食群と比較した。結果1)メチル化カテキン処理にてHuh7,のAktのリン酸化の脱リン酸化が最低濃度5μMの低濃度でもみられた。Huh7ではリン酸化AktとCyclin D1発現はメチル化カテキン処理3,8時間後で低下していた。2)BrdUの取り込み,細胞数は有意に減少し,G1 arrestがみられた。3)過酸化水素処理での抗酸化力は生食群の約3倍であった。4)Invivoでは生食群に比較して1mg/kgメチル化カテキンでは2週目(p<0.05),3週目(p<0.01)ともに有意な腫瘍体積の差を認めた。平成19年度までの研究により、べにふうき茶から抽出できる3"メチル化カテキンが非常に強い抗酸化能力をもつこと、また、この能力が細胞増殖シグナルに重要な分子であるAktのリン酸化を阻害し強い増殖抑制効果をもつことをin vitroのみならず、in vivo(マウスへのヒト肝癌腫瘍移植モデル)にても腹腔内注射にて証明した(論文投稿準備中)。今成20年度は実際のヒトへの応用のために、経口投与が効果があるのか、その量はどのくらいかをマウスのヒト肝癌腫瘍移植モデルを用い検討した。3"メチル化カテキン投与量を振り分け経ロゾンデを用いて連日投与した。その結果、10mg/Kgの投与投与良にて有意に非メチル化カテキン投与群にくらべ差があった。緑茶から抽出する非メチル化カテキンは消化管よりの吸収能率は大変悪い。その原因のひとつに、すでに消化管内で胃酸などの強い酸性液への接触してしまうことが考えられる。また、非メチル化カテキンは通常、メチル化、スルホン化など何らかの修飾をされると抗酸化作用は消失してしまう。カテキンは肝臓を一周通過するだけで様々な修飾をうけるため吸収後も即座に抗酸化力は消失する。しかしながら、カテキン環の3"の部位がメチル化されたカテキンは逆に、非メチル化カテキンより強い抗酸化力を示すことが報告されている。べにふうき茶は最近、栽培量も増加しつつあるお茶であるが、これからは高率に3"の部のメチル化カテキンが抽出できる。 | KAKENHI-PROJECT-19590797 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19590797 |
合成メチル化カテキンによる抗腫瘍効果のメカニズムの解析及び臨床応用への基礎研究 | 今期の研究において体重60kgの成人であれば一日、600mgの3"メチル化カテキンの内服で抗酸化効果、ひいては抗腫瘍効果も期待できると考えられる。カテキン540mg含有のお茶の飲料品があることを考えるとその副作用はかなり少ないと考えられる。今期の研究成果はメチル化カテキン含有抗癌剤の発明につながる大きな成果と考えられる(PCT国際特許申請中)。#1メチル化カテキンのメカニズムのさらなる検討。これまで、メチル化カテキンの添加において細胞の抗酸化、ひいてはPI3K-Aktの不活性化をAktのリン酸化にてみてきた。方法;本年度は、それを確信するためにHuh7細胞株にAktをT遺伝子導入して過剰発現させ、この細胞がメチル化カテキンで増殖抑制がかからないかどうかを検討した。結果;Akt過剰発現細胞群ではメチル化カテキンで増殖抑制がかからないことが(Glarrstをおこさない)ことがFlow cytometryでの検討でみられた。結論;メチル化カテキンとAktとの関連を確信させるデータがえられた。#2人への臨床研究への移行昨年度の腫瘍移植マウスに対する、経口投与に対する効果の実験において7.5mg/Kgで腫瘍縮小効果が得られることがわかった。今年度はそれを人への臨床研究への移行できるような薬剤の作製をおこなった。方法;製薬会社、食品会社、試薬会社等に大學が広報できるいつかのイベントで発表した。企業への直接の問い合わせを当大学の知的財産本部からしていただいた。結果;ひとつの飲料会社が同様にメチル化カテキン高濃度(20%)含有べにふうき茶抽出パウダーを開発していた。またそれを、無料で条件なしで供与していただけるようになった。それを、カプセル化して一日500mgのメチル化カテキンを(250mgのカプセル、10錠を一日)のんでいただく準備を終了した(3人分30日)。 | KAKENHI-PROJECT-19590797 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19590797 |
線虫の中枢系嗅覚順応を担う神経回路機能の解明と匂い情報の処理過程の可視化 | 神経回路を介して成立する中枢系嗅覚順応について、線虫を用いた独自の系によって解析を行った。中枢系順応を担う神経回路の同定を行い、順応に関わる介在神経が順応成立前後で活性を変化させることを見出した。さらに、順応に必須の働きをするRasタンパク質の活性をin vivoイメージングできる系を確立し、Rasの活性ダイナミクスについて詳細な観察と制御メカニズムの解明を行った。また、匂いシグナルがインプットされる仕組みを明らかにするために、匂いと受容体との対応関係について網羅的に調べた。その結果を発展させ、同一の匂いでも濃度によって、反応する嗅覚神経だけでなく、反応する受容体も変化することを見出した。神経回路を介して成立する中枢系嗅覚順応について、線虫を用いた独自の系によって解析を行った。中枢系順応を担う神経回路の同定を行い、順応に関わる介在神経が順応成立前後で活性を変化させることを見出した。さらに、順応に必須の働きをするRasタンパク質の活性をin vivoイメージングできる系を確立し、Rasの活性ダイナミクスについて詳細な観察と制御メカニズムの解明を行った。また、匂いシグナルがインプットされる仕組みを明らかにするために、匂いと受容体との対応関係について網羅的に調べた。その結果を発展させ、同一の匂いでも濃度によって、反応する嗅覚神経だけでなく、反応する受容体も変化することを見出した。線虫の中枢系嗅覚順応について、本年度は以下のような成果を得ることができた。・網羅的RNAi法を用いた匂いシグナルのインプットの仕組みの解明RNAi法を用いて、嗅覚レセプター遺伝子の網羅的機能阻害を行い、機能阻害株の匂い物質へ化学走性を調べるスクリーニングを4次まで終了した。これまでに得られた候補遺伝子に加え、srx-47が高濃度ジアセチルの受容に関与している可能性が明らかとなった。さらに、得られた候補遺伝子について、網羅的に発現解析プラスミドの作製を行った。・in vivoライブイメージングによるRas-MAPK経路の活性の時空間的制御本年度は嗅覚神経におけるRasの活性化、不活性化メカニズムについて詳細な解析を行った。まずRasの活性化因子GEFに注目した解析を行い、嗅覚神経ではRas-GRPであるRGEF-1が機能していることを明らかにした。陰門形成など、これまでにRasが関与することがわかっていた細胞では、Ras活性化因子としてSOS-1が使われていることが多い。このことから、嗅覚神経でのRasの素早い活性化は、GEFの種類を使い分けることによって行われている可能性が考えられる。さらに、Rasは数秒で活性化したのち、匂い刺激が持続していても数秒で不活性化することがわかった。Rasの下流にあるMAPKの変異体では、Rasの活性化が有意に持続することから、Rasの素早い不活性化には下流からのネガティブフィードバック機構が重要な働きをしていることが示唆された。・中枢系順応に関わる新規分子の探索および機能の解析フェロモンシグナルによって発現が制御される神経ペプチドSNET-1と、その分解に関わるネプリライシンが中枢系順応に必須の働きをすることを突き止め、学術誌に報告した。1.網羅的RNAi法を用いた匂いシグナルのインプットの仕組みの解明RNAi法を用いたスクリーニングにより嗅覚受容体候補遺伝子として得られたもののうち、13個について発現神経の同定を行った。その結果、ほとんどの候補遺伝子は、嗅覚に関与する感覚神経に発現していることが分かった。srd-17はイソアミルアルコールの受容に関与している可能性があるものとして得られた遺伝子であるが、srd-17はAWC嗅覚神経(イソアミルアルコールを受容する)に発現が観察された。よって、SRD-17がイソアミルアルコールの受容体として機能している可能性が示唆された。また、srd-17は高濃度ジアセチルからの忌避に関わるものとして得られた遺伝子である。sri-14はAWC、ASH感覚神経に発現が観察された。神経特異的なsri-14のRNAiを行ったところ、ASH特異的なsri-14の機能阻害により高濃度ジアセチルからの忌避行動が阻害されることがわかった。従って、SRI-14はASH感覚神経において高濃度ジアセチルの受容体として働いている可能性が示唆される。また、濃度によって匂いシグナルのインプットの仕組みが変化することを明らかにし、学術誌Nature Communicationsに報告した(東京大学との共同研究)。2.in vivoライブイメージングによるRas-MAPK経路の活性の時空間的制御本年度は特に嗅覚神経におけるRasの活性が嗅覚系をどのように制御しているかについて解析を行った。その結果、Rasの恒常活性化型変異体let-60(gf)では、嗅覚神経の下流にある介在神経の活性化が見られないことが分かった。一方、Rasの機能低下型変異体let-60(lf)では、介在神経の活性が不安定になることが観察された。よって、Rasシグナルは介在神経の活性を制御していることが示唆された。1.中枢系嗅覚順応を制御する神経回路の同定:嗅覚順応に重要であることが示されたAIY、AIA神経について、順応成立前後で神経活性に変化が見られるかをカルシウムイメージングで調べた。その結果、AIY、AIA神経は通常の匂い刺激に対して活性化するが、順応成立後は活性化が有意に抑えられることが観察された。 | KAKENHI-PROJECT-22680028 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22680028 |
線虫の中枢系嗅覚順応を担う神経回路機能の解明と匂い情報の処理過程の可視化 | 順応成立によって匂いシグナルの伝達経路が変化し、結果として行動変化が引き起こされることが示唆された。2.網羅的RNAi法を用いた匂いシグナルのインプットの仕組みの解明:高濃度ジアセチルの受容体候補SRI-14が、嗅覚受容体として働いていることを示すために、本来sri-14が発現していない感覚神経に異所的に発現させた。すると、その感覚神経が高濃度ジアセチルに有意に強く応答するようになることが観察された。低濃度ジアセチルに対する応答には変化がなかった。これらの結果は、SRI-14が高濃度に限定したジアセチル受容体として機能するという結論を補完するものである。3.in vivoライブイメージングによるRas-MAPK経路の活性の時空間的制御:Rasタンパク質の瞬時の活性変化が、嗅覚応答にとってどのような意味を持つのかを明らかにするために、Ras-MAPK経路の下流で働く因子の探索を行った。得られた候補因子については、AWC嗅覚神経特異的にRNAiを行って嗅覚応答への影響を調べた。その結果、陰イオンチャネルを含む複数の因子がAWC嗅覚神経で重要な機能をしていることが見出された。4.中枢系順応に関わる新規分子の探索および機能の解析:中枢系順応に関わる新規分子の探索を行ったところ、翻訳制御因子、IP3経路の因子、mTOR経路の因子が候補として得られてきた。これらの候補の変異体は中枢系順応に著しい欠陥を示したことから、順応を制御する重要な因子として働くことが示唆される。1.中枢系嗅覚順応を制御する神経回路の同定嗅覚神経から直接シナプス入力を受ける介在神経のうち、AIY、AIA神経が順応に重要であり、AIZ、AIB神経は関与していないことを明らかにした。2.網羅的RNAi法を用いた匂いシグナルのインプットの仕組みの解明高濃度ジアセチルの受容体候補として得られたsri-14について重点的に解析を行った。sri-14がどの嗅覚神経で機能するかを明らかにするために、sri-14cDNAを作製し、sri-14変異体の嗅覚神経に特異的に発現させて機能回復実験を行った。その結果SRI-14はASH神経で働いていることがわかった。そこで、野生型とsri-14変異体のASH神経のジアセチルに対する応答をイメージングにより観察した。観察のために、カルシウム濃度のインジケーターをASHに発現させ、蛍光変化を微細に捉えることが可能なカメラを搭載したイメージングシステムを用いた。イメージング実験の結果、ASHが高濃度ジアセチルにのみ反応し、低濃度ジアセチルには反応しないこと、sri-14変異体ではASHがジアセチルに反応しないことを見出した。また既知のジアセチル受容体odr-10の変異体では、AWA嗅覚神経の低濃度ジアセチルへの反応が全く無くなり、ASHの高濃度ジアセチルへの反応は正常であることがわかった。これらの結果は、匂いの濃度によって嗅覚受容体が使い分けられていることを示唆している。3.in vivoライブイメージングによるRas-MAPK経路の活性の時空間的制御 | KAKENHI-PROJECT-22680028 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22680028 |
街路沿道施設の景観評価を目的としたCG動画の呈示方法に関する研究 | 本研究では,景観評価における呈示手法としてのCGアニメーションの設計方法検討を目的として,以下のように,歩行者デッキを対象として、景観呈示時の移動方法が空間把握および心象評価に与える影響を分析した。1.空間把握に関する分析CG画像の呈示における視点移動が、評価対象空間の把握正確性に与える影響を分析した。具体的には,歩行者デッキの高さを変化させた3種の設計案を作成し、それぞれについて頭蓋移動、接近移動、パンニングと注視点移動を組み合わせた視点移動タイプ18種類、さらに1秒15コマのハーフアニメーション,1秒5コマのコマ落とし動画,1秒1.5コマの静止画連続像呈示の動画精度3種類について,CG動画を作成した。これらから任意の2種を被験者に呈示して、構造物の形状変化の認識と,自視点位置の認識をアンケートによって調査し、その正確性と視点移動方法の関係を分析した。この結果,注視点が主対象に対して移動しないタイプ,動画精度の高い呈示方法が優れていることが明らかになった。2.景観評価意識の分析同様の視点移動タイプのCGプレゼンテーションの各々に対して,プレゼンテーションの印象,わかりやすさ,などの心象的評価を調査し,計量心理手法を用いて視点移動タイプやコマ割りの変化が与える影響を分析した。これによっては注視点が主対象に対して移動せず,移動経路が単純な移動タイプ,動画精度の高い呈示方法が優れていることが明らかになった。本研究では,景観評価における呈示手法としてのCGアニメーションの設計方法検討を目的として,以下のように,歩行者デッキを対象として、景観呈示時の移動方法が空間把握および心象評価に与える影響を分析した。1.空間把握に関する分析CG画像の呈示における視点移動が、評価対象空間の把握正確性に与える影響を分析した。具体的には,歩行者デッキの高さを変化させた3種の設計案を作成し、それぞれについて頭蓋移動、接近移動、パンニングと注視点移動を組み合わせた視点移動タイプ18種類、さらに1秒15コマのハーフアニメーション,1秒5コマのコマ落とし動画,1秒1.5コマの静止画連続像呈示の動画精度3種類について,CG動画を作成した。これらから任意の2種を被験者に呈示して、構造物の形状変化の認識と,自視点位置の認識をアンケートによって調査し、その正確性と視点移動方法の関係を分析した。この結果,注視点が主対象に対して移動しないタイプ,動画精度の高い呈示方法が優れていることが明らかになった。2.景観評価意識の分析同様の視点移動タイプのCGプレゼンテーションの各々に対して,プレゼンテーションの印象,わかりやすさ,などの心象的評価を調査し,計量心理手法を用いて視点移動タイプやコマ割りの変化が与える影響を分析した。これによっては注視点が主対象に対して移動せず,移動経路が単純な移動タイプ,動画精度の高い呈示方法が優れていることが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-06750591 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06750591 |
ヒトの指先の触知覚に方向性があるのはなぜか?その機構の解明 | 本研究では,ヒト指先の「つるつる・ざらざら」という触感覚認識機構を解明することを目指している.これまでに,10 μm程度のステップ状の微小段差刺激をヒト指先に呈示し,その知覚能力を測定してきた.本研究では,微小段差を呈示しながらそのとき指先にかかる力を計測する装置を開発した.実験では,30 mm/sの速度で往復運動する20 μm,50 μm,100 μmの段差を指先で知覚するときの力を測定した.今後は得られたデータの解析方法について検討する.10μm程度のステップ状の微小段差刺激をヒトが指先で触って知覚するとき,その知覚能力に方向性があることが先行研究で明らかになった.指先を横に動かすよりも指の長手方向に動かすほうが微小な刺激を弁別しやすかった.本研究では,このようにヒトの指先の触知覚に方向性があるのはなぜか?その機構を解明することを目的とする.そこで,ヒトが微小段差刺激を知覚するとき,触運動の方向により指先の変形の仕方が異なる点に着目し,微小段差弁別時の指先に作用する力を計測して,触運動の方向や速度と,微小段差が指先に与える力の関係を明らかにすることにした.まず,微小段差弁別時の力を計測可能な微小段差呈示装置を開発した.ステンレス製板を突き合わせたステップ状の数μmの微小な段差を試料とし,試料の刺激強度,呈示速度,呈示方向,呈示温度の4つのパラメータをそれぞれ制御して,被験者に呈示し,このときのステンレス製板に加えられた指の押し付け力や,触運動時に微小段差が指に与える力などを計測する微小段差呈示装置を開発した.つぎに,ヒトが微小段差を弁別するときの指先力を測定した.ヒトが微小段差を弁別するとき,微小段差に加えられた指の押し付け力や,触運動時に微小段差が指に与える力などを計測した.実験では,往復運動する段差を右手示指の指腹部で知覚するときの力を測定した.このときの段差量は20,50,100μm,段差の移動速度は30mm/sとした.段差が指腹部の中央を通過したときのせん断方向の力に注目したが,段差量が20μmと50μmのときでは明確な違いは見られなかった.押し付け力に注目すると,段差量が100μmのとき,指先が高い段を触っているときと低い段を触っているときを比較すると,力の最大値に約15gfの差があった.100μm程度の段差では,この違いが段差判別に影響を与える可能性があることがわかった.本研究では,ヒト指先の「つるつる・ざらざら」という触感覚認識機構を解明することを目指している.これまでに,10 μm程度のステップ状の微小段差刺激をヒト指先に呈示し,その知覚能力を測定してきた.本研究では,微小段差を呈示しながらそのとき指先にかかる力を計測する装置を開発した.実験では,30 mm/sの速度で往復運動する20 μm,50 μm,100 μmの段差を指先で知覚するときの力を測定した.今後は得られたデータの解析方法について検討する.10μm程度のステップ状の微小段差刺激をヒトが指先で触って知覚するとき,その知覚能力に方向性があることが先行研究で明らかになった.指先を横に動かすよりも指の長手方向に動かすほうが微小な刺激を弁別しやすかった.本研究では,このようにヒトの指先の触知覚に方向性があるのはなぜか?その機構を解明することを目指している.そこで,ヒトが微小段差刺激を知覚するとき,触運動の方向により指先の変形の仕方が異なる点に着目し,微小段差弁別時の指先に作用する力を計測して,触運動の方向や速度と,微小段差が指先に与える力の関係を明らかにする.本年度の研究実績を以下にまとめる.1.微小段差弁別時の力を計測可能な微小段差呈示装置を設計・開発した.ステンレス製板を突き合わせたステップ状の数μmの微小な段差を試料とし,試料の刺激強度,呈示速度,呈示方向,呈示温度の4つのパラメータをそれぞれ制御して,被験者に呈示することができて,さらに,このときのステンレス製板に加えられた指の押し付け力や,触運動時に微小段差が指に与える力などを計測可能な微小段差呈示装置を設計・開発した.装置では,力を計測するために6軸力覚センサを用いた.また,呈示試料の刺激強度,呈示速度,呈示方向の3つのパラメータをコンピュータにより制御可能とするため,楔形Zステージ,Xテーブル,回転テーブルなどを用いた.2.開発した力計測可能な微小段差呈示装置の基本性能を評価した.ヒトが微小段差を弁別するとき,微小段差に加えられた指の押し付け力や,触運動時に微小段差が指に与える力などを計測可能であることを確認した.微小段差弁別時の力を計測可能な微小段差呈示装置を設計・開発した.装置では,ステンレス製板を突き合わせたステップ状の数μmの微小な段差を試料とし,試料の刺激強度,呈示速度,呈示方向,呈示温度の4つのパラメータをそれぞれ制御して,被験者に呈示できるようにした.さらに,ステンレス製板に加えられた指の押し付け力や,触運動時に微小段差が指に与える力などを計測可能な装置とした.本年度,実験装置を開発できたことから,研究はおおむね順調に進展しているといえる. | KAKENHI-PROJECT-23653223 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23653223 |
ヒトの指先の触知覚に方向性があるのはなぜか?その機構の解明 | 触運動の方向や速度により指先の変形の仕方が異なる点に着目して,微小段差弁別時に指先に加わる力を計測する.心理物理実験では,指と刺激との相対的な運動に対して,段差刺激の強度,移動速度および移動方向の三つのパラメータを制御し,またそのとき指に加わる力を計測して,触運動の方向,速度および指先に加わる力が触感覚認識機構に及ぼす影響を定量的に明らかにする.実験においては,被験者の指に対する段差刺激の移動方向をコンピュータ制御により縦,横,斜めなどの任意の方向に設定して,段差刺激の呈示方向を制御したときの弁別閾と主観的等価値を求める.これにより,触運動に伴う指先の変形と触覚の認識能力との関係を定量的に評価して,触知覚の方向性のメカニズムの解明を目指す.日本機械学会,バイオメカニズム学会などの各学会の学術講演会,国際会議において,研究発表・調査を行う予定であり,研究費をその参加費や旅費などに充てる.また,心理物理実験の被験者への謝金などにも充てる.さらに,必要に応じて装置の改良費などにも充てる. | KAKENHI-PROJECT-23653223 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23653223 |
対人的コミュニケーションの成立基盤と可塑性に関する認知心理学的研究 | 本研究は定型発達者が日頃意識せずに顔、身体、そして言語を媒介として行っている「自然な」コミュニケーションの成立基盤とその発達過程を明らかにし、自閉症における病態形成メカニズムを明らかにするために行われた。(1)無意識的・自動的な顔処理:定型発達者においては、他者の顔はサブリミナルで呈示されていても、感情的に中立な物よりも(Kamio et al.,2006;神尾ら,2003)、表情ありの顔は表情なしの顔より(神尾ら,2004,2006)、直後の認知判断にバイアスを与える感情プライミングを誘導したのに対して、自閉症者では感情プライミングを認めなかった。閾上知覚された表情顔については、児童では群間差はなかったが、青年では経験の効果と考えられる表情選好の群間差が観察された(神尾ら,2004,2006)。これらより、自閉症者は自動的なレベルにおいては顔や物と同等な情動的意味しか持たないため、定型発達者とは質的に異なる情動体験をしていること、また日常の失敗体験によって本来顔が持つ選好性とは逆の脅威対象としての性質を帯びてくることが示唆された。(2)身体を介する自他処理:動作文の記憶課題を用いて、定型発達児にみられた自己実演効果(自己の実演>文章のみ)は自閉症群にはみられず、他者実演効果(他者の観察>文章のみ)のみが認められることを示した(Yamamoto et al.,2003;山本ら,2004)。これらより、エピソード記憶の形成に重要な自分が何を行ったかではなく、自分がどのように行ったかについての意識が自閉症では希薄であることが示され、自己モニタリングや運動イメージの障害の存在が示唆された。(3)言語の自動的連想:定型発達者と比べて、自閉症者における意味プライミング効果の低下は軽微であったが、より大きな音韻プライミングを示すことが明らかとなった(Kamio et al.,2006;神尾,印刷中)。ほぼ正確な意味構造を形成しうる高機能自閉症における日常会話の維持困難の背景には、意味よりも音韻という感覚的要素が支配的となる非定型な自動連想が存在することが示された。以上より、自閉症における「自然な」コミュニケーションの障害の基盤として、対物処理と比べて自動的な対大処理が優先的になされず、また事物の感覚処理が意味処理を上回るという独特のパターンが示された。本研究が今年度、目的とした、実験材料の完成、臨床群実験、米国データの収集、は予定通り修了した。課題が適切であることが明らかになったので、来年度以降引き続き、臨床群の対象を拡大して実験を行う。平成15年7月までに、大学生、定型発達児を対象に予備実験を行い、実験材料の妥当性を確認した。夏までに医療・相談機関、学校を通して研究協力者を募り、数十名に及ぶ高機能自閉症児、学習障害児、多動児を含む学童期の軽度発達障害児と、十数名の青年の応募を得た。8月から9月にかけて、九州大学において、協力児童と保護者に個別面接を行い、精神医学的および心理学的評価、実験課題を施行した。10月以降は、データ解析、発表、論文作成を行った。その結果、(1)他者の表情に対する情動両群とも青年期までは情動反応は自動化されていなかった。自閉症青年ではネガティブ表情に、定型青年ではポジティブ反応に特異的という結果が得られた。(2)自他意識自閉症児にも動作を介した自己意識が働いていることが認められた。しかし自閉症の自己は他者に対して優位でなかった。(3)言語連想高い言語知能を持つアスペルガー児童青年では、定型発達児と同様な自動的単語連想反応が生じているおり、会話の困難な原因は単語処理レベルの問題ではないことがわかった。本研究は、自閉症児のコミュニケーション諸機能の無意識の自動的処理を調べた初めての研究である。自閉症児において、情動、自己意識、言語の単語処理に関して、基本的な自動化メカニズムは、定型発達児とほぼ同様に機能していることが示された。そして定型児で自動化した反応のうち、自閉症児に欠落していた側面は、他者の感情の対人的意味、対人的報酬性が関与する処理であった。このことから、要素的機能の障害というよりもむしろ、他者との関係性において対人学習する時に必要な諸機能の相互連関が機能せず、対人的側面が未発達である可能性が示唆された。本研究は、対人的コミュニケーションは何を基盤として成立するのか、自閉症のようにその成立基盤に欠陥がある場合、対人的コミュニケーションに必要な認知機能の諸側面はどのように発達していくのか、代償的発達の結果はどうなるのか、を明らかにすることを目的とするものである。今年度は、昨年度に引き続き、3課題((1)(2)(3))については、さらにサンプル数を増やし、昨年度の知見を更新し新たな分析も追加した。さらに今年度、あらたに、より自然に近い構造化された場面での談話データの分析により対人的場面も追加した。さらに今年度、あらたに、より自然に近い構造化された場面での談話データの分析により対人的場面での言語特徴を解明する手がかりを得た((4))。これらの論文は投稿中あるいは準備中である。今年度、あらたに明らかとなった結果の要約は、(1)他社の表情に対する自動的情動 | KAKENHI-PROJECT-15650047 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15650047 |
対人的コミュニケーションの成立基盤と可塑性に関する認知心理学的研究 | 反応:通常他者の表情を知覚すると、意識せずとも自動的に情動反応が生じるのに対し、自閉症では無意識的には特別な反応が生じないことが明らかになった。また意識せずに生じる情動反応は、青年期になって認められたが、ネガティブな他社の表情に対してのみ敏感な反応をするという独特な発達プロセスが示唆された。(2)自らの動作と他者動作観察の記憶に及ぼす効果の比較検討:定型発達と知的障害の児童では自己の動作が優先的効果を持つのに対して、自閉症児では視覚情報の効果の方が大きかったことから、自閉症では自己意識の希薄な様式で独特な外界体験をしており、その記憶形成のプロセスは感覚的要素が強いことが示唆された。(3)単語連想及び(4)談話分析:形式的な言語発達に遅れのない高機能自閉症では、単語の意味処理および談話形式において成績低下はみられないが、複数のモダリティ(単語の音韻要素や他者の非言語的手がかり)の言語関連情報を統合するプロセスにおいて、定型発達と異なる言語反応パターンを生じることがわかった。これらにより、自己および他者に向かう優先的注意の上に、知覚、情動、言語、記憶の諸能力が発達することで、それらの種々の情報は有機的に結合され、意味のある外的世界の体験、そしてそれに対峙する自己概念を形成していくという通常の発達プロセスが、自閉症においては障害されていることが明らかになった。従来の認知検査のように特定の機能のみを測定すると、代償的発達と定型発達を区別できず、自閉症にみられる深刻な有機的な機能結合不全が見逃されてしまう。来年度は、自閉症に特徴的で、かつ定型発達に重要な対人機能を支える有機的な機能結合の特徴を測定できる検査バッテリーの開発を目指す予定である。本研究は定型発達者が日頃意識せずに顔、身体、そして言語を媒介として行っている「自然な」コミュニケーションの成立基盤とその発達過程を明らかにし、自閉症における病態形成メカニズムを明らかにするために行われた。(1)無意識的・自動的な顔処理:定型発達者においては、他者の顔はサブリミナルで呈示されていても、感情的に中立な物よりも(Kamio et al.,2006;神尾ら,2003)、表情ありの顔は表情なしの顔より(神尾ら,2004,2006)、直後の認知判断にバイアスを与える感情プライミングを誘導したのに対して、自閉症者では感情プライミングを認めなかった。閾上知覚された表情顔については、児童では群間差はなかったが、青年では経験の効果と考えられる表情選好の群間差が観察された(神尾ら,2004,2006)。これらより、自閉症者は自動的なレベルにおいては顔や物と同等な情動的意味しか持たないため、定型発達者とは質的に異なる情動体験をしていること、また日常の失敗体験によって本来顔が持つ選好性とは逆の脅威対象としての性質を帯びてくることが示唆された。(2)身体を介する自他処理:動作文の記憶課題を用いて、定型発達児にみられた自己実演効果(自己の実演>文章のみ)は自閉症群にはみられず、他者実演効果(他者の観察>文章のみ)のみが認められることを示した(Yamamoto et al.,2003;山本ら,2004)。これらより、エピソード記憶の形成に重要な自分が何を行ったかではなく、自分がどのように行ったかについての意識が自閉症では希薄であることが示され、自己モニタリングや運動イメージの障害の存在が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-15650047 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15650047 |
室内環境中におけるガスと粒子の相互作用 | 本研究の目標として、空間中でのガス状物質がただ単に空間中で浮遊しているのか、もしくはガス-粒子変換などの化学反応により異なる物質に変化しているのか、また浮遊粒子に吸着することによるものなのかを解明することを目的とする。ここでは、ガスと粒子をモニタリング、それぞれの化学組成、あるいはそれぞれの相互作用を観察することにより、この研究の第一歩として解明されるものである。室内中におけるガス粒子変換により室内汚染を引き起こす項目について検討を行ってきた。この中で、コピー機やレーザープリンタから発生する微粒子が問題と考えられる。これらはトナーによる発じんの他に、紫外線の使用やオゾンを発生させているために、ガス状物質のガス-粒子変換による、超微粒子の発生が問題となってくると考えた。そこで、微粒子の発生機構と共に室内中で起こりうるガス-粒子変換に影響を与えるオゾン濃度を調査し、ガス状物質とオゾン共存下における粒子生成について実験を行った。超微粒子は、本研究室で所有している凝縮核計測器(CNC)を、ガスの測定は有機物質の中でもトルエンを対象として、本研究室所有のガスクロマトグラフィ(GC)により分析を行った。これにより、室内環境中で考えられ得るトルエンとオゾン濃度で、ガス状有機物質の一部は粒子に変換していることが定性的ではあるが明らかとなった。今後は、オゾンによるガス-粒子変換のメカニズムを解明すると共に、一般環境下で起こりうる粒子生成の可能性を明らかにしていくことにある。本研究の目的として、空間中でのガス状物質が実際どのように浮遊しているのかを解明することを目的としている。この空間中における有機物質の挙動の予測としては、ただ単に空間中で浮遊している、居住環境中の壁や天井など建築材料に吸脱着を繰り返している、ガス-粒子変換などの化学反応により異なる物質に変化している、また浮遊粒子に吸着する等がある。ここでは、ガスと粒子をモニタリング、それぞれの化学組成、あるいはそれぞれの相互作用を観察することにより、この研究の第一歩として解明されるものである。新建材として酸化チタンを塗布した壁材が近年注目されている。これは、有機物質を壁材表面に吸着させることにより、酸化チタンと紫外線のエネルギーにより分解除去するものである。この中で、材料から発生する有機物質の知見は多く存在するが、有機物質の材料表面への吸着に関する知見が少ない。そこで本年度は、以上のような新建材を想定して、壁表面に吸着する有機物質の吸脱着挙動について実験的に把握し、吸脱着特性を表す吸着率、脱着率及び吸着平衡係数に着目し、建材表面の形状・有機物質の種類との関係について明らかにすることとした。実験の結果、脱着の速度を表す脱離率は表面に既に吸着している吸着量には依存せず、有機物質の種類・表面の形状(材料の種類)・表面温度に影響を受けることがわかった。また、吸着のしやすさを表す吸着率及び平衡吸着係数は、表面の形状に依存し、特に多孔質材料いわゆる表面積の大きい材料の方が大きくなることを明かとした。更に、吸脱着挙動は、有機物質が単成分か多成分系により異なり、有機物質同士の相互作用が関係しているものと示唆された。以上より、次年度では、表面における有機有機物質の吸脱着挙動とガスと粒子の反応について検討を行う予定である。本研究の目標として、空間中でのガス状物質がただ単に空間中で浮遊しているのか、もしくはガス-粒子変換などの化学反応により異なる物質に変化しているのか、また浮遊粒子に吸着することによるものなのかを解明することを目的とする。ここでは、ガスと粒子をモニタリング、それぞれの化学組成、あるいはそれぞれの相互作用を観察することにより、この研究の第一歩として解明されるものである。室内中におけるガス粒子変換により室内汚染を引き起こす項目について検討を行ってきた。この中で、コピー機やレーザープリンタから発生する微粒子が問題と考えられる。これらはトナーによる発じんの他に、紫外線の使用やオゾンを発生させているために、ガス状物質のガス-粒子変換による、超微粒子の発生が問題となってくると考えた。そこで、微粒子の発生機構と共に室内中で起こりうるガス-粒子変換に影響を与えるオゾン濃度を調査し、ガス状物質とオゾン共存下における粒子生成について実験を行った。超微粒子は、本研究室で所有している凝縮核計測器(CNC)を、ガスの測定は有機物質の中でもトルエンを対象として、本研究室所有のガスクロマトグラフィ(GC)により分析を行った。これにより、室内環境中で考えられ得るトルエンとオゾン濃度で、ガス状有機物質の一部は粒子に変換していることが定性的ではあるが明らかとなった。今後は、オゾンによるガス-粒子変換のメカニズムを解明すると共に、一般環境下で起こりうる粒子生成の可能性を明らかにしていくことにある。 | KAKENHI-PROJECT-12875102 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12875102 |
『シュローカ・ヴァールティッカ』綱要書に基づくインド祭事哲学体系の研究 | ミーマーンサー学派バーッタ派の哲学体系の全容を、これまでほとんど取り上げられることのなかった『シュローカヴァールティッカ』綱要書の読解を通じて、提示することが本研究の目的であった。本研究の成果として『シュローカヴァールティッカ』『ニーティタットヴァーヴィルバーヴァ』との対応関係を出来うる限り示した『マーナメーヨーダヤ』の日本語訳が完成した。同書の日本語訳は本邦初であり、インド哲学諸派の研究にも資するところ大である。インド正統哲学派のひとつミーマーンサー祭事哲学派は,人間の倫理・宗教の源泉をインド最古の文献であるヴェーダ聖典に求め,そのヴェーダ聖典の超越性を哲学的に基礎づけようとした.インドにおける真理論,言語論等は同派の思想を抜きにしては考えられない.本研究は,そのようなミーマーンサー学派の哲学的営為の全体像を,同派最大の学匠クマーリラ・バッタ(七世紀頃)の『ミーマーンサー・シュローカ・ヴァールティッカ』に対する綱要書『ニーティ・タットヴァーヴィルバーヴァ』と『マーナメーヨーダヤ』に基づき解明しようとするものである.具体的には,まず第一に,『マーナメーヨーダヤ』の初の和訳研究を行う.第二に現行の刊本の校訂が不十分な『ニーティ・タットヴァーヴィルバーヴァ』を写本及び注釈『ヴャーキャー』を利用し再校訂する.第三に『ニーティ・タットヴァーヴィルバーヴァ』和訳研究を行う.これらの作業を通じてミーマーンサー・シュローカ・ヴァールティッカ』の諸論点を明確に提示することをめざすミーマーンサー学派バーッタ派の哲学体系の全容を、これまでほとんど取り上げられることのなかった『シュローカヴァールティッカ』綱要書の読解を通じて、提示することが本研究の目的であった。本研究の成果として『シュローカヴァールティッカ』『ニーティタットヴァーヴィルバーヴァ』との対応関係を出来うる限り示した『マーナメーヨーダヤ』の日本語訳が完成した。同書の日本語訳は本邦初であり、インド哲学諸派の研究にも資するところ大である。本研究は,人間の倫理・宗教の源泉をインド最古の文献であるヴェーダ聖典に求めその超越性を哲学的に基礎づけようとしたミーマーンサー祭事哲学派の哲学的営為の全体像を,同派最大の学匠クマーリラの『シュローカ・ヴァールティッカ』に対する綱要書『ニーティ・タットヴァーヴィルバーヴァ』と『マーナメーヨーダヤ』に基づき解明しようとするものである.研究の目的達成のため,本年度は次の作業を行った.(1)原典読解.計画に従い,『マーナメーヨーダヤ』前半部(マーナ部)および『ニーティ・タットヴァーヴィルバーヴァ』の対応箇所の既存刊本に基づく読解作業を行った.その作業を通じて,『マーナメーヨーダヤ』は『ニーティ・タットヴァーヴィルバーヴァ』の要約とされるが,『マーナメーヨーダヤ』は議論がよく整理されているものの,『ニーティ・タットヴァーヴィルバーヴァ』はそうではなく,両者の対応関係は単純ではないことが判明した.(2)関連文献のデータベース作成.ミーマーンサー学派研究において,いまだクマーリラとプラバーカラ派の主要著作のデータベースさえ整っていない現状に鑑み,再校訂の必要が指摘されてはいるが,現行の刊本にもとづく関連文献のデータベース化が必須である.本年度は既に準備されていた『ニーティ・タットヴァーヴィルバーヴァ』と『マーナメーヨーダヤ』の修正作業およびクマーリラの『タントラヴァールティッカ』のデータベース化を行った.以上の成果の上で,最終年度に予定している『ニーティ・タットヴァーヴィルバーヴァ』と『マーナメーヨーダヤ』の再校訂及び翻訳研究の公表にむけて,両書の検討を継続する予定である.本研究は,人間の倫理・宗教の源泉をインド最古の文献であるヴェーダ聖典に求めその超越性を哲学的に基礎づけようとしたミーマーンサー祭事哲学派の哲学的営為の全体像を,同派最大の学匠クマーリラの『シュローカ・ヴァールティッカ』に対する綱要書『ニーティ・タットヴァーヴィルバーヴァ』と『マーナメーヨーダヤ』に基づき解明しようとするものである.研究の目的達成のため、本年度は次の作業を行った。(1)南インドにおける写本収集タミールナドゥ州およびケーララ州において『ニーティ・タットヴァーヴィルバーヴァ』とその注釈『ティーカー』『ヴャーキャー』および『マーナメーヨーダヤ』の写本を収集した。『ニーティ・タットヴァーヴィルバーヴァ』に対する注釈は未校訂・未出版であり、それらを利用して『ニーティ・タットヴァーヴィルバーヴァ』を読解することは大きな意義をもつ。また、『マーナメーヨーダヤ』については既存刊本が用いた「写本」が実はデーヴァナガリ文字による転写であり、おそらくそれに先行する一刊本とデーヴァナガリ文字転写を利用して校訂されたものであると思われる。このことからもこれらのテキストの再校訂作業の意義が確認された。(2)原典読解・前年度に引き続き『ニーティ・タットヴァーヴィルバーヴァ』『マーナメーヨーダヤ』の読解作業を行った。(3)関連文献のデータベース作成前年度に引き続きクマーリラの『タントラヴァールティッカ』のデータベース化作業を行った。前年度および本年度の読解作業および関連文献データペース作成作業の成果の上で、今年度収集された写本を用いた作業を次年度に本格化し、『ニーティ・タットヴァーヴィルバーヴァ』と『マーナメーヨーダヤ』の校訂と翻訳の作業を次年度以降継続する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-19520051 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19520051 |
『シュローカ・ヴァールティッカ』綱要書に基づくインド祭事哲学体系の研究 | 本研究は、人間の倫理・宗教の源泉をインド最古の文献であるヴェーダ聖典に求めその超越性を哲学的に基礎づけようとしたミーマーンサー祭事哲学派の哲学的営為の全体像を、同派最大の学匠クマーリラの『シュローカ・ヴァールティッカ』に対する綱要書『ニーティ・クットヴァーヴィルバーヴァ』と『マーナメーヨーダヤ』に基づき解明しようとするものである。研究の目的を達成するため、本年度は次の作業を行った。(1)写本前年度までに収集した写本類の整理及び校訂作業を行った。『ニーティ・タットヴァーヴィルバーヴァ』については、2008年にバンガロールで刊行されたK.T. Pandurangi氏による校訂本が入手されたため、これまで利用していた既存刊本(マイソール本)に加え、本校訂本も検討対象に加えることとしたが、校訂の良否を判断する段階には今年度は至らなかった。(2)原典読解前年度に引き続き『マーナメーヨーダヤ』および『ニーティ・タットヴァーヴィルバーヴァ』のテキスト読解作業を行った。(3)関連文献のデータベース作成前年度に引き続きクマーリラの『タントラヴァールッティッカ』のデータベース化作業を行った。前年度および本年度の読解作業および関連文献データベース作成作業また収集された写本を利用した『マーナメーヨーダヤ』および『ニーティ・タットヴァーヴィルバーヴァ』の校訂と翻訳の作業を次年度も継続の予定である。インド正統哲学派のひとつミーマーンサー祭事哲学派は,人間の倫理・宗教の源泉をインド最古の文献であるヴェーダ聖典に求め,そのヴェーダ聖典の超越性を哲学的に基礎づけようとした.インドにおける真理論,言語論等は同派の思想を抜きにしては考えられない.本研究は,そのようなミーマーンサー学派の哲学的営為の全体像を,同派最大の学匠クマーリラ・バッタ(七世紀頃)の『ミーマーンサー・シュローカ・ヴァールティッカ』に対する綱要書『ニーティ・タットヴァーヴィルバーヴァ』と『マーナメーヨーダヤ』に基づき解明しようとするものであった.具体的には,まず第一に,『マーナメーヨーダヤ』の初の和訳研究を行い、第二に現行の刊本の校訂が不十分な『ニーティ・タットヴァーヴィルバーヴァ』を写本及び注釈『ヴャーキャー』を利用し再校訂し、第三に『ニーティ・タットヴァーヴィルバーヴァ』和訳研究を行い、これらの作業を通じてミーマーンサー・シュローカ・ヴァールティッカ』の諸論点を明確に提示することをめざした。最終年度である本年度は、前年度までの成果の上で、研究協力者石村克氏の協力を得て、『マーナ・メーヨーダヤ』の翻訳研究を一応完成させた。『ニーティ・タットヴァーヴィルバーヴァ』については『マーナ・メーヨーダヤ』の翻訳研究の一部として『シュローカ・ヴァールティッカ』と同様に対応を明らかにすることに努めた。『マーナ・メーヨーダヤ』の日本語訳は初めてのものであり、祭事哲学体系の解明に大きな意義をもつ。さらに、『タントラ・ヴァールッティカ』のテキストデータベース化も継続した。これも祭事哲学研究の基礎ツールとして本研究のみならず今後も有用である。 | KAKENHI-PROJECT-19520051 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19520051 |
パーソナリティに基づく健康-疾患連続性の検討:遺伝子発現プロファイルとの関連 | 本研究では、個人志向型パーソナリティ分類と網羅的遺伝子発現プロファイルの関連を検討することで、適応的・非適応的な心理的要因が個人内で複雑に相互作用することによって個人の健康・不健康が決定される、という仮説を検証した。われわれは既報論文において、個人志向型の統計的分類手法である潜在プロフィール分析を用い、一般人口から募集した455名の健常成人がパーソナリティ特性等に基づいて2つの適応的グループ(ストレスからの回復力を持つ群、ストレスの影響を受けにくい群)と1つの非適応的グループ(ストレス脆弱性を有する群)に分類されることを見出した(Hori et al., 2014)。そこで本研究課題では、上記の各群から年齢・性別をマッチさせた20名ずつ、計60名を選び、各被験者の末梢血から抽出済みのRNA検体を用いて、Agilent社製マイクロアレイによりトランスクリプトーム測定を行った。このデータに対し、正規化とフィルタリングを施した後、分散分析とfold changeの基準を用いて発現プロファイル3群間で比較した。群間で発現変動が認められた遺伝子群に対し、パスウェイ解析、ネットワーク解析、および共発現解析を適用することにより、ストレス脆弱性に関与する分子系としてリボソーム遺伝子群が重要であることを見出した。次に、その中でも発現変動が大きく重要性が示唆されたリボソーム遺伝子としてRPL17とRPL34を選定し、うつ病患者における発現変動を検討した。既取得マイクロアレイデータセット、および独立サンプルセットを用いた逆転写定量PCRデータのいずれにおいても、健常対照者と比較してうつ病患者において、上述のストレス脆弱性に関連した発現亢進と同様のRPL17とRPL34の発現亢進が認められた。本研究の成果は、ストレス関連精神疾患の発症予測に資するバイオマーカーの同定につながりうるものである。本研究では、個人志向型パーソナリティ分類と網羅的遺伝子発現プロファイルの関連を検討することにより、種々の適応的・非適応的な心理的要因が個人内で複雑に相互作用し、その結果として個人の健康・不健康が決定される、という仮説を検証する。それによってストレス関連精神疾患の発症予測法・個別化予防法開発に資することが目的である。研究代表者らは本研究に先立ち、一般人口からリクルートした健常者455名を対象としてパーソナリティ特性に対する潜在プロフィール分析を行い、一般健常者は(i)全体に適応的なパーソナリティを有する群、(ii)全体に非適応的なパーソナリティを有する群、(iii)非適応的とされているパーソナリティ特性を一定程度持ちながらも、それ以外の部分では適応的で高機能の群、という3群に分類されることを示した(Hori et al., 2014. J Psychiatr Res)。その後の検討により、これらの群間でストレス脆弱性の程度も有意に異なることを見出している。上述の結果に基づき、本研究課題では、上記の各群から年齢・性別をマッチさせた20名ずつ、計60名を選び、各被験者の末梢血から抽出済みのRNA検体を用いてAgilent社製マイクロアレイによってmRNAとlong non-coding RNA(lncRNA)をゲノムワイドに測定した(専門業者に委託)。納品されたトランスクリプトームの生データを用い、以下の手順で網羅的発現解析を行った。正規化とフィルタリングを施した後、分散分析とfold changeの基準を用いて発現プロファイルを比較し、群間で発現変動が認められたmRNAとlncRNAを同定した。現在、これらの発現変動mRNA/lncRNAに対してパスウェイ・ネットワーク解析や共発現解析を適用し、パーソナリティやストレスに関連した発現変化をシステムとして理解することを試みている。必要サンプルの収集とマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現実験が完了し、データ解析の段階まで進んでいるため。本研究では、個人志向型パーソナリティ分類と網羅的遺伝子発現プロファイルの関連を検討することで、適応的・非適応的な心理的要因が個人内で複雑に相互作用することによって個人の健康・不健康が決定される、という仮説を検証する。それによってストレス関連精神疾患の発症予測法・個別化予防法開発に資することが目的である。われわれは既報論文において、個人志向型の統計的分類手法である潜在プロフィール分析を用い、一般人口から募集した455名の健常成人がパーソナリティ特性等に基づいて2つの適応的グループ(ストレスからの回復力を持つ群、ストレスの影響を受けにくい群)と1つの非適応的グループ(ストレス脆弱性を有する群)に分類されることを見出した(Hori et al., 2014)。上述の結果に基づき、本研究課題では、上記の各群から年齢・性別をマッチさせた20名ずつ、計60名を選び、各被験者の末梢血から抽出済みのRNA検体を用いて、Agilent社製マイクロアレイによりトランスクリプトーム測定を行った。このデータに対し、正規化とフィルタリングを施した後、分散分析とfold changeの基準を用いて発現プロファイル3群間で比較した。群間で発現変動が認められた遺伝子群に対し、パスウェイ解析、ネットワーク解析、および共発現解析を適用することにより、ストレス脆弱性に関与する分子系としてリボソーム遺伝子群が重要であることを見出した。次に、その中でも発現変動が大きく重要性が示唆されたリボソーム遺伝子としてRPL17とRPL34を選定し、うつ病患者における発現変動を検討した。既取得マイクロアレイデータセット、および独立サンプルセットを用いた逆転写定量PCRデータのいずれにおいても、健常対照者と比較してうつ病患者において、上述のストレス脆弱性に関連した発現亢進と同様のRPL17とRPL34の発現亢進が認められた。 | KAKENHI-PROJECT-16KT0198 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16KT0198 |
パーソナリティに基づく健康-疾患連続性の検討:遺伝子発現プロファイルとの関連 | 一連の実験・データ解析を完了し、最終的な成果を論文にまとめ、国際科学誌に投稿中であることから。本研究では、個人志向型パーソナリティ分類と網羅的遺伝子発現プロファイルの関連を検討することで、適応的・非適応的な心理的要因が個人内で複雑に相互作用することによって個人の健康・不健康が決定される、という仮説を検証した。われわれは既報論文において、個人志向型の統計的分類手法である潜在プロフィール分析を用い、一般人口から募集した455名の健常成人がパーソナリティ特性等に基づいて2つの適応的グループ(ストレスからの回復力を持つ群、ストレスの影響を受けにくい群)と1つの非適応的グループ(ストレス脆弱性を有する群)に分類されることを見出した(Hori et al., 2014)。そこで本研究課題では、上記の各群から年齢・性別をマッチさせた20名ずつ、計60名を選び、各被験者の末梢血から抽出済みのRNA検体を用いて、Agilent社製マイクロアレイによりトランスクリプトーム測定を行った。このデータに対し、正規化とフィルタリングを施した後、分散分析とfold changeの基準を用いて発現プロファイル3群間で比較した。群間で発現変動が認められた遺伝子群に対し、パスウェイ解析、ネットワーク解析、および共発現解析を適用することにより、ストレス脆弱性に関与する分子系としてリボソーム遺伝子群が重要であることを見出した。次に、その中でも発現変動が大きく重要性が示唆されたリボソーム遺伝子としてRPL17とRPL34を選定し、うつ病患者における発現変動を検討した。既取得マイクロアレイデータセット、および独立サンプルセットを用いた逆転写定量PCRデータのいずれにおいても、健常対照者と比較してうつ病患者において、上述のストレス脆弱性に関連した発現亢進と同様のRPL17とRPL34の発現亢進が認められた。本研究の成果は、ストレス関連精神疾患の発症予測に資するバイオマーカーの同定につながりうるものである。マイクロアレイ解析で得られた主要な結果については、必要に応じて逆転写定量PCRによって再現性を確認した上で、全体の結果を論文として学術誌上で報告する。現在投稿中の論文について、査読者のコメントによっては修正や追加実験等を行い、平成30年度中に国際科学誌に掲載されることを目標とする。専門業者に委託したマイクロアレイ解析の費用や学会発表のための旅費が当初予定していた金額より少なくて済んだことで、未使用額が生じた。(理由)専門業者に委託したマイクロアレイ実験の費用や学会発表のための旅費が当初予定していた金額より少なく済んだことで、未使用額が生じた。(使用計画)学会発表の旅費や論文の掲載費用として使用予定である。遺伝子発現解析(逆転写定量PCR)に必要な試薬類の購入や学会発表の旅費として使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-16KT0198 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16KT0198 |
超周期π電子化合物における電子構造と物性 | 我々はフラレン合成過程で得られたaziteにヒントを得て2次元超周期π電子系の電子状態について一般的な考察を行なった。炭素原子から成る蜂の巣対称性を持った2次元超格子系を考える。この系は局所的には主に6員環構造を持ち、かつ蜂の巣格子超構造を持つπ電子系と捉えられる。この様な系の組成は一般的にnを整数として(Cn)2あるいは(Cn+3/2)2である。前者(単位胞内の原子を2つのスーパーa、bサイトに分けられる物)をAタイプ、後者(スーパーa、bサイトの境界に原子が共有される物)をBタイプとする。これらはそれぞれ単位胞の角に原子が無いAo,Boタイプ(n=3m m:整数)と原子が有るAc,Bcタイプ(n=3m+1)の2種類に分類される。これらのタイプの系のπ電子に着目して最近接原子間相互作用のみによるバンド分散を考える。格子当りの電子数は1個とし、異なる副格子間の相互作用のみを考えると、一般にAoは半導体、Ac,Bo,Bcは半金属となる事を示すことが出来る。特にBo,Bcはフェルミ準位の位置に最低それぞれ3個及び1個の分散の無いバンドを持つ。これらの分散の無いバンドが電子で半分満たされている場合には電子間クーロン相互作用により強磁性状態が実現することが期待されるため、Bo,Bcの様な系が実際に合成されれば非常に興味深い。Bcの構造を持ち、分散の無いバンドが半分満たされうる一番簡単な系としてB_2N_3薄膜を取り上げて電子状態計算を行なった所、分散の非常に小さいバンドを持つ構造が安定状態として得られた。さらにB_2N_3薄膜を積み重ねた層状物質の電子状態を求めると層方向の分散が小さいバンドが層に垂直方向のみに分散を持ったバンドに変わり、フェルミ準位付近の電子状態は擬一次元的となる。ここで行なった考察は2次元でのC_4、三角格子超格子、あるいは三次元ダイヤモンド超格子にも拡張する事ができる。我々はフラレン合成過程で得られたaziteにヒントを得て2次元超周期π電子系の電子状態について一般的な考察を行なった。炭素原子から成る蜂の巣対称性を持った2次元超格子系を考える。この系は局所的には主に6員環構造を持ち、かつ蜂の巣格子超構造を持つπ電子系と捉えられる。この様な系の組成は一般的にnを整数として(Cn)2あるいは(Cn+3/2)2である。前者(単位胞内の原子を2つのスーパーa、bサイトに分けられる物)をAタイプ、後者(スーパーa、bサイトの境界に原子が共有される物)をBタイプとする。これらはそれぞれ単位胞の角に原子が無いAo,Boタイプ(n=3m m:整数)と原子が有るAc,Bcタイプ(n=3m+1)の2種類に分類される。これらのタイプの系のπ電子に着目して最近接原子間相互作用のみによるバンド分散を考える。格子当りの電子数は1個とし、異なる副格子間の相互作用のみを考えると、一般にAoは半導体、Ac,Bo,Bcは半金属となる事を示すことが出来る。特にBo,Bcはフェルミ準位の位置に最低それぞれ3個及び1個の分散の無いバンドを持つ。これらの分散の無いバンドが電子で半分満たされている場合には電子間クーロン相互作用により強磁性状態が実現することが期待されるため、Bo,Bcの様な系が実際に合成されれば非常に興味深い。Bcの構造を持ち、分散の無いバンドが半分満たされうる一番簡単な系としてB_2N_3薄膜を取り上げて電子状態計算を行なった所、分散の非常に小さいバンドを持つ構造が安定状態として得られた。さらにB_2N_3薄膜を積み重ねた層状物質の電子状態を求めると層方向の分散が小さいバンドが層に垂直方向のみに分散を持ったバンドに変わり、フェルミ準位付近の電子状態は擬一次元的となる。ここで行なった考察は2次元でのC_4、三角格子超格子、あるいは三次元ダイヤモンド超格子にも拡張する事ができる。 | KAKENHI-PROJECT-06243106 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06243106 |
シナプス分子のスプライスバリアント特異的な局在を検出するための技術開発 | Cbln1は小脳におけるシナプス形成分子であり、他の脳領域ではCbln2および4も重要な働きをしていると考えられているが局在は不明である。Cbln分子はスプライスサイト4を持つNeurexin(NrxSS4)に結合するが、NrxSS4の個々のシナプスでの局在に関しても、特異的な抗体が存在しないため不明であった。本研究では、抗体を作る代わりに、ゲノム編集技術を用いてエピトープタグそのものをノックインすることで、Cbln分子とNrxSS4の局在を解明する事を試みた。その結果Cbln1およびCbln2のノックインマウスは得られたが、NrxSS4では得られなかった。現在免疫組織実験を進行中である。本研究は、シナプス分子の局在を解明するために、抗体を作る代わりに、CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いて抗原(エピトープタグ)そのものを、目的シナプス分子をコードする遺伝子にノックインすることによってシナプス分子局在解析技術を確立する事、さらに、抗体が存在しないNeurexinのスプライスサイト4(30アミノ酸)バリアントの時空間的発現プロファイルを明らかにする事が目的である。平成28年度はProof of principle実験として、既に申請者が所属する研究室で詳細に解析され、HAタグが挿入可能であることが明らかとなっているCbln1、およびタグ導入法の開発に関する報告(Mikuni et al.,Cell, 2016)で示されたArcにHA配列を導入した。マウス受精卵へのガイドRNAとCas9の導入は電気穿孔法にて行った。得られた遺伝子導入受精卵に対して、ゲノム切断後のindelの有無を遺伝子型判定したところ、ガイドRNAの配列によって効率が異なるが、合成RNAはどちらの方法でも効率が高い事が明らかとなった。これらの方法でどちらの遺伝子に対してもHA配列が導入された個体が得られた。続いて免疫染色や蛍光化合物ラベリングで使用可能な既存のエピトープタグであるHA、FLAG、HIS、Myc、およびT7タグをノックインタグの候補とし、エピトープタグの種類と挿入位置を最適化するために各々のタグとタグの位置をin vitroのアッセイ系で検討した。タグを導入したNeurexinが野生型のNeurexinと比較して、Cbln1やNeuroliginとの結合能に影響が無いか、また、HEK細胞を使った人工的シナプス形成アッセイを行い、シナプス形成能に影響が無いかを確認した。その結果、最適なタグとタグの位置が得られた。平成28年度はProof of principle実験とノックインするタグの選定、さらにノックイン個体の作製を計画していた。Proof of principle実験とノックインするタグの選定に関しては計画通りに遂行出来たが、ノックイン個体はまだ得られておらず計画よりやや遅れている。本研究は、シナプス分子の局在を解明するために、抗体を作る代わりにCRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いて、抗原(エピトープタグ)そのものを目的シナプス分子をコードする遺伝子にノックインすることによって、その局在を解析する技術を確立する事、特に、抗体が存在しないNeurexinのスプライスサイト4バリアントの時空間的発現プロファイルを明らかにする事が目的である。平成29年度は、前年度に得られた結果をもとに、Neurexinのスプライスサイト4へのタグの挿入を試みた。マウス受精卵へガイドRNAとCas9の導入は電気穿孔法にて行った。その結果3種類のガイドRNAを試みたが、いずれもゲノム切断後のindelのみが起こり、タグが挿入された個体は得られなかった。そこで他のシナプス分子へタグの導入を試みた。シナプス形成分子であるCblnファミリー分子にはCbln1から4の4種類が存在するが、高い相同性を持つ事から、特異的な抗体を作製するのが難しい。そこでHAタグをそれぞれのN末端またはC末端に挿入する事を試みた。その結果、Cbln2のゲノムにHAタグの配列を挿入する事が出来た。Cbln1に関しては、前年度にHAタグを挿入した個体が得られているため、マウス個体でのCbln1とCbln2の発現部位や細胞内局在の違い、さらに同じエピトープタグを使用しているため、個体での発現量の違いに関しても今後明らかにする予定である。また、同様にNeuroliginファミリー分子の一つであるNeuroligin1にHAタグ配列が挿入された個体を得る事が出来た。CblnとNeuroliginはどちらもNeurexin分子に結合する。そのため各シナプスにおけるCbln/Neuroliginタンパク質の量比に違いがあるかに関しても今後明らかにしていく予定である。Cbln1は小脳におけるシナプス形成分子であり、他の脳領域ではCbln2および4も重要な働きをしていると考えられているが局在は不明である。Cbln分子はスプライスサイト4を持つNeurexin(NrxSS4)に結合するが、NrxSS4の個々のシナプスでの局在に関しても、特異的な抗体が存在しないため不明であった。本研究では、抗体を作る代わりに、ゲノム編集技術を用いてエピトープタグそのものをノックインすることで、Cbln分子とNrxSS4の局在を解明する事を試みた。その結果Cbln1およびCbln2のノックインマウスは得られたが、NrxSS4では得られなかった。現在免疫組織実験を進行中である。ノックイン個体の作製を早急に行い、平成29年度の計画に記した実験を遂行する。ノックイン個体のタグ付きNeurexinのスプライスサイト4バリアントをタグに対する抗体や蛍光化合物でラベルして発現と局在の解析をする。 | KAKENHI-PROJECT-16K13107 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K13107 |
シナプス分子のスプライスバリアント特異的な局在を検出するための技術開発 | Cbln1が多く発現している小脳顆粒細胞の軸索上のシナプスレベルでのNeurexinのスプライスサイト4バリアントの発現と局在を解析する。また、小脳以外でもCbln1はある程度発現しており、Neurexinのスプライスサイト4バリアントが小脳以外の脳部位でどの様な局在をしているかを解析する。さらに発達過程で変化するのか、シナプス可塑性誘導前後にどのように変化するのかも検討する。さらにいくつかの自閉症モデルマウスの解析から、シナプス分子の遺伝子変異が自閉症発生の一因であることが知られている。そこで、自閉症モデルマウスと野生型マウスにおいてNeurexinのスプライスサイト4バリアントの発現パターンを比較することで、Neurexinのスプライシングの違いが自閉症モデルマウスの共通の表現型かどうかを検討する。特にCAPS2やNeuroliginのノックアウトマウスといった直接シナプスの機能に関わる分子をノックアウトしたモデルマウス群と、FMR1やMECP2ノックアウトマウスといった、細胞内で多くの機能を制御している分子をノックアウトしたモデルマウス群での差異を検討する。神経科学平成28年度の計画に関してノックイン個体の作製以外は順調に遂行出来たため当初の計画より消耗品の購入が少なかった。そのため次年度使用額が生じた。平成29年度はノックイン個体の作製を急ぐと共に平成29年度の実験計画を遂行するために使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-16K13107 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K13107 |
後根神経節に着目した末梢性かゆみ過敏のメカニズムの解明と治療法の開発 | 前年度までの研究により、アトピー性皮膚炎(AD)を発症したNC/Ngaマウス(AD-NC/Nga)のsatellite glialcell (SGC)においてリポカリン2(LCN2)の発現が増加していること、そのLCN2がアトピー性皮膚炎の増悪に関与していることを見出してきた。本年度はSGCが産生するLCN2がDRG細胞に作用すると、どのように皮膚炎を増悪させるのかを明らかにするために、後根神経節(DRG)のin vitro培養系を用いた研究を展開した。器官培養したマウスDRGにLCN2を添加したところ、matrix metalloproteinase (MMP)-9の発現量が有意に増加した。またLCN2は、培養DRG細胞の神経突起伸長を促進することが明らかとなった。さらに、未発症コントロールマウスと比較して、AD-NC/NgaマウスのDRGではAD病態の誘発2週目からLCN2及びMMP-9のタンパク発現量が有意に増加した。以上のことから、SGCから分泌されたLCN2は、DRG細胞のMMP-9発現を増加させ、感覚神経線維の伸長を促すことで皮膚炎の増悪を引き起こしていると考えられた。前年度までの研究により、アトピー性皮膚炎(AD)を発症したNC/Ngaマウス(AD-NC/Nga)のsatellite glialcell (SGC)においてリポカリン2(LCN2)の発現が増加していること、そのLCN2がアトピー性皮膚炎の増悪に関与していることを見出してきた。本年度はSGCが産生するLCN2がDRG細胞に作用すると、どのように皮膚炎を増悪させるのかを明らかにするために、後根神経節(DRG)のin vitro培養系を用いた研究を展開した。器官培養したマウスDRGにLCN2を添加したところ、matrix metalloproteinase (MMP)-9の発現量が有意に増加した。またLCN2は、培養DRG細胞の神経突起伸長を促進することが明らかとなった。さらに、未発症コントロールマウスと比較して、AD-NC/NgaマウスのDRGではAD病態の誘発2週目からLCN2及びMMP-9のタンパク発現量が有意に増加した。以上のことから、SGCから分泌されたLCN2は、DRG細胞のMMP-9発現を増加させ、感覚神経線維の伸長を促すことで皮膚炎の増悪を引き起こしていると考えられた。本年度は、アトピー性皮膚炎(AD)のDRGにおいてかゆみに関与する新規分子を発見することを目的とした。AD様病態を誘発しないNC/Ngaマウス(Controlマウス)と比較し、AD様病態を発症させたNC/Ngaマウス(AD-NC/Nga)のDRGではかゆみ関連受容体(IL-31RA及びNK1R)及びsatellite glial cell (SGC)マーカー(GFAP)遺伝子の発現量が増加することを見出した。また、Control及びADマウスのDRGから抽出したタンパク質溶液をサイトカインアレイに供した結果、リポカリン2(LCN2)の増加が認められた。免疫組織学化学法によりDRGにおけるLCN2の発現部位を検討した結果、SGCに特異的に発現することが明らかとなった。また、ControlマウスのSGCと比較して、ADマウスのSGCではLCN2陽性SGCの割合が有意に増加した。さらに、ADマウスのDRG細胞において、LCN2の受容体の一つである24p3Rの発現が認められた。近年、LCN2は脊髄レベルでADのかゆみの増強に関与することが報告されていることから、SGC由来のLCN2もADにおけるかゆみの増強に関与することが示唆された。本年度は、AD-NC/NgaマウスのDRGで発現増加するかゆみ関連分子LCN2の同定とその発現細胞であるSGCを特定した。このことから、本年度は当初の計画通りに、おおむね順調に研究が進展したと考えられる。髙森建二.乾燥肌と静電気の関係性,あさイチ,放映2018年12月17日現在、培養DRG細胞にLCN2を添加することで、DRGにおけるかゆみ関連受容体の発現変動を検討中である。今後は、髄腔内LCN2投与マウスを用いて、かゆみ行動やその過敏性に対するLCN2の影響について検討する予定である。残額が14円では本研究に使用する物品を購入できないため。残額は平成29年度経費とともに物品費として使用する。 | KAKENHI-PROJECT-16K08997 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K08997 |
新規電気磁気効果の探索と中性子散乱による起源解明 | スピン・ネマティック相互作用を持つマルチフェロイクス物質Ba2CoGe2O7、似た構造を持つCa2CoSi2O7やBa2CoSi2O7を取り上げ、スピン・ネマティック相互作用の本質を調べた。各単結晶に対する磁化測定や中性子散乱実験を行い、スピン・ネマティック相互作用を通した新規電気磁気効果の発見、collinear磁気構造をもつマルチフェロイクス物質におけるエレクトロマグノンについて解明した。磁性と誘電性の新奇関係に注目し、マルチフェロイクスBa2CoGe2O7、磁性イオンをもつリラクサー誘電体(リラクサー磁性体)LuFeCoO4の研究を行った。リラクサー誘電性は、polar nanoregion (PNR)と呼ばれる自発分極を持ちながらランダムな方向を向いた局所領域を考えることによって説明されている。我々は、リラクサー磁性体LuFeCoO4に注目し、誘電性と磁性の新たな関係を探索した。LuFeCoO4単結晶に対する中性子散乱実験を行ったところ、PNR起源の異方的核散漫散乱が観測された。一方磁性に関しては、短距離磁気秩序を表す幅広い磁気反射が観測される。c軸方向の磁気相関はほとんど無いが、面内方向の磁気秩序は、温度下降に伴い徐々に成長し、それに伴い核散漫散乱も減少する。さらに、核散漫散乱から見積もられるPNRサイズと磁気相関長が密接に関係している。中性子散乱実験の結果は、磁気転移温度付近においてPNR起源のナノ磁気ドメインが存在していることを示しており、磁化測定で観測されている超常磁性の起源もPNRだと考えられる。二次元反強磁性体Ba2CoGe2O7は、磁場下においてab面内のcollinear反強磁性秩序とc軸方向の自発的誘電分極が同時に出現するマルチフェロイック物質である。磁性を担うCoO4四面体に反転中心が存在しないことから、Coサイトのスピン四極子は電気分極と等価となる。また、Coイオンの局所的及び非局所的対称性の考察から、ab面内の磁気異方性の最低次は、スピン四極子間の相互作用であることが導かれる。我々は、スピン四極子相互作用を通した電気磁気効果を明らかにするため、Ba2CoGe2O7のc軸方向に電場印加し電場中偏極中性子実験を行った。その結果、電場印加によって磁気モーメントがc面内で回転することを発見した。この変化は、基底状態であるS//<100>の反強誘電状態から励起状態であるS//<110>の強誘電状態に移り変わっていることを意味しており、新規な電気磁気効果である。マルチフェロイクスBa2CoGe2O7の電場中非弾性中性子散乱実験をオークリッジのSNSにあるCNCSで行ったが、SNSの試料環境の問題によって、当初予定していた高電場をかけることができなかった。そのため、データが不十分なものになってしまった。磁性と誘電性の新奇関係に注目し、マルチフェロイクスBa2CoGe2O7、Ca2CoSi2O7、磁性イオンをもつリラクサー誘電体(リラクサー磁性体)LuFeCoO4の研究を行った。二次元反強磁性体Ba2CoGe2O7Ba2CoGe2O7では、スピン四極子間の相互作用によって反強誘電秩序が実現し、それに伴い磁気モーメントが<100>を向いたcollinear反強磁性秩序が起こるマルチフェロイック物質であることを解明した。我々は、スピン四極子相互作用を通した電気磁気効果を明らかにするため、Ba2CoGe2O7のc軸方向に電場印加し電場中偏極中性子実験を行った。その結果、電場印加によって磁気モーメントがc面内で回転することを発見した。この変化は、基底状態であるS//<100>の反強誘電状態から励起状態であるS//<110>の強誘電状態に移り変わっていることを意味しており、新規な電気磁気効果である。さらに似た結晶構造を持つCa2CoSi2O7の磁気構造解析を行い、Ca2CoSi2O7においても反強誘電秩序とそれに伴う磁気モーメントが<100>を向いたcollinear反強磁性秩序が実現していることが明らかになった。リラクサー誘電性は、Polar Nano-Region (PNR)と呼ばれる自発分極を持ちながらランダムな方向を向いた局所領域を考えることによって説明されている。我々は、リラクサー磁性体LuFeCoO4における誘電性と磁性の新たな関係を探索し、Multiferroic Nano-Region (MNR)と呼ばれる強誘電性と反強磁性が共存するナノドメインを発見した。さらにMNRを詳しく調べるため、LuFeCoO4単結晶に対する中性子散乱実験、準弾性散乱測定を行った。その結果、MNRのサイズ・揺らぎの変化に伴い、磁気励起が変化することがわかった。海外実験施設での中性子散乱実験の予定が遅れたことと、電気磁気効果の測定におけるリークカレント・絶縁破壊電場といった結晶の質の問題により、少し遅れている。磁性と誘電性の新奇関係に注目し、マルチフェロイクス物質Ba2CoGe2O7、Ca2CoSi2O7の研究を行った。二次元反強磁性体Ba2CoGe2O7では、以前の中性子非弾性散乱実験において、1つの音響モードと2つの光学モードが観測された。 | KAKENHI-PROJECT-15K05123 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K05123 |
新規電気磁気効果の探索と中性子散乱による起源解明 | これらの磁気励起は拡張スピン波理論によって解析され、4 meVで観測されたエレクトロマグノンは、longitudinalモードであることが期待された。拡張スピン波理論で期待される磁気励起のモードを明確にするため、偏極中性子散乱実験を行い、Ba2CoGe2O7における磁気励起モード解析を行った。その結果、面内のtransverseモード(T1モード)、面外のtransverseモード(T2モード)、longitudinalモード(Lモード)に分類される磁気励起を偏極中性子散乱実験で分離して観測することができた。二次元反強磁性体Ba2CoGe2O7では、スピン四極子間の相互作用によって反強誘電秩序が実現し、それに伴い磁気モーメントが<100>を向いたcollinear反強磁性秩序が起こるマルチフェロイック物質であることがわかっている。似た結晶構造を持つCa2CoSi2O7の磁気構造解析を行い、その異方性を調べた。その結果、Ca2CoSi2O7においても反強誘電秩序とそれに伴う磁気モーメントが<100>を向いたcollinear反強磁性秩序が実現していることが明らかになった。スピン・ネマティック相互作用を持つマルチフェロイクス物質Ba2CoGe2O7、似た構造を持つCa2CoSi2O7やBa2CoSi2O7を取り上げ、スピン・ネマティック相互作用の本質を調べた。各単結晶に対する磁化測定や中性子散乱実験を行い、スピン・ネマティック相互作用を通した新規電気磁気効果の発見、collinear磁気構造をもつマルチフェロイクス物質におけるエレクトロマグノンについて解明した。すでにマルチフェロイクスCa2CoSi2O7の中性子弾性散乱実験、類似物質Ba2CoSi2O7の中性子弾性散乱実験・中性子非弾性散乱実験、リラクサー磁性体LuFeCoO4の中性子非弾性散乱実験を行っており、解析を進めるとともに、論文にまとめていく。また、今までの実験結果をもとに新奇電気磁気効果の可能性を探索する。すでにマルチフェロイクスBa2CoGe2O7の偏極中性子非弾性散乱実験、類似物質Ba2CoSi2O7の中性子弾性散乱実験・中性子非弾性散乱実験、リラクサー磁性体LuFeCoO4の中性子非弾性散乱実験を行っており、解析を進めるとともに、論文にまとめていく。また、今までの実験結果をもとに新奇電気磁気効果の可能性を探索する。固体物理達成度の項目で書いたように電圧印加の実験に遅れが生じたため、高電圧電源購入が遅れ、次年度使用額が生じた。電圧印加の実験に遅れが生じたため、高電圧電源購入が遅れ、次年度使用額が生じた。当初の計画通り高電圧電源を購入する予定である。平成29年度より所属が変更になるため、まわりの実験環境を考慮し、機器の購入に関しては精査する。 | KAKENHI-PROJECT-15K05123 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K05123 |
上皮間葉転換と細胞運命制御因子を標的にした難治性癌治療法の開発 | これまでの解析で乳癌細胞株・膠芽細胞腫株においてshP1によるMET誘導が可能であり、MET誘導が癌細胞の増殖に与える影響は、乳癌と膠芽腫細胞で異なり、乳癌細胞の増殖は抑えないが抗癌剤に対する感受性を高めること、膠芽腫細胞の増殖を抑えることが判明している。さらに他の間葉組織由来細胞株におけるshP1によるMET誘導能力・増殖能力に対する影響を解析した。間葉系細胞由来悪性腫瘍におけるshP1のMET誘導能力を、dual EMT/MET reporter導入骨肉腫細胞株(HOS, SaOS2, U2OS)・滑膜肉腫細胞株(1273/99, HS-SYII , SYO-1)におけるフローサイトメーターによるGFP/mCherry発現解析により評価した。またshP1の増殖能力に対する影響を2D, 3D培養における増殖能で評価した。すべての細胞株においてE-cadherinプロモーター活性の上昇を認めた。増殖能に対する影響は、細胞によって異なることが判明した。血球細胞に対する上皮化誘導による影響をdual EMT/MET reporter導入K562白血病細胞株におけるフローサイトメーターによるGFP/mCherry発現解析により評価した。K562細胞においてもshP1によるE-cadherinプロモーター活性の上昇、形態変化が認められた。白血病細胞においてEMTプログラムがその増殖と分化に寄与していることが複数報告されていることと関連し、同定したMET誘導shP1・shH1は固形癌細胞のみならず血球系の悪性腫瘍に対する効果を有する可能性があり、今後検討する予定である。当大学臨床検査学プログラム1期生の国試合格に向けた体制作り・国試対策講義等、教育業務に時間を割く必要があり、当初予定の研究活動に時間を配分することが困難になった。また前任地からの移動にあたり、Flowcytometer・DNA解析ソフトウエアの更新・整備に時間と経費を割く必要があった。研究の遅れの原因となった教育体制整備と勤務地の移動に伴う研究環境の変化にも対応しつつあり、徐々に研究に従事できる時間は確保されてきた。2019年度は、2つの当初計画のうちの(a)に焦点を絞って研究を進めていく方針である。(a)shH1の増殖抑制効果の作用機序の確認H遺伝子機能喪失によるものか、shH1耐性H遺伝子cDNAによるレスキュー実験を行う。H遺伝子は、DNA修復に関わる遺伝子であり、DNA修復経路の抑制がMETと合成致死効果を生み出す可能性がある。相同組換・ミスマッチDNA修復関連遺伝子の遺伝子編集による機能喪失、ヌクレオチド除去修復に関与するPARP1阻害剤が、METと相乗的に癌細胞の増殖を阻害するか、MET前後の癌細胞の増殖能を2D・3D培養にて解析・検討する。shH1単独或いはMETと相乗効果のある組み合わせについて、造腫瘍性に対する効果を、免疫不全マウスへの癌細胞の移植実験にて確認する。これまでの解析で乳癌細胞株・膠芽細胞腫株においてshP1によるMET誘導が可能であり、MET誘導が癌細胞の増殖に与える影響は、乳癌と膠芽腫細胞で異なり、乳癌細胞の増殖は抑えないが抗癌剤に対する感受性を高めること、膠芽腫細胞の増殖を抑えることが判明している。さらに他の間葉組織由来細胞株におけるshP1によるMET誘導能力・増殖能力に対する影響を解析した。間葉系細胞由来悪性腫瘍におけるshP1のMET誘導能力を、dual EMT/MET reporter導入骨肉腫細胞株(HOS, SaOS2, U2OS)・滑膜肉腫細胞株(1273/99, HS-SYII , SYO-1)におけるフローサイトメーターによるGFP/mCherry発現解析により評価した。またshP1の増殖能力に対する影響を2D, 3D培養における増殖能で評価した。すべての細胞株においてE-cadherinプロモーター活性の上昇を認めた。増殖能に対する影響は、細胞によって異なることが判明した。血球細胞に対する上皮化誘導による影響をdual EMT/MET reporter導入K562白血病細胞株におけるフローサイトメーターによるGFP/mCherry発現解析により評価した。K562細胞においてもshP1によるE-cadherinプロモーター活性の上昇、形態変化が認められた。白血病細胞においてEMTプログラムがその増殖と分化に寄与していることが複数報告されていることと関連し、同定したMET誘導shP1・shH1は固形癌細胞のみならず血球系の悪性腫瘍に対する効果を有する可能性があり、今後検討する予定である。当大学臨床検査学プログラム1期生の国試合格に向けた体制作り・国試対策講義等、教育業務に時間を割く必要があり、当初予定の研究活動に時間を配分することが困難になった。また前任地からの移動にあたり、Flowcytometer・DNA解析ソフトウエアの更新・整備に時間と経費を割く必要があった。研究の遅れの原因となった教育体制整備と勤務地の移動に伴う研究環境の変化にも対応しつつあり、徐々に研究に従事できる時間は確保されてきた。2019年度は、2つの当初計画のうちの(a)に焦点を絞って研究を進めていく方針である。(a)shH1の増殖抑制効果の作用機序の確認H遺伝子機能喪失によるものか、shH1耐性H遺伝子cDNAによるレスキュー実験を行う。H遺伝子は、DNA修復に関わる遺伝子であり、DNA修復経路の抑制がMETと合成致死効果を生み出す可能性がある。相同組換・ミスマッチDNA修復関連遺伝子の遺伝子編集による機能喪失、ヌクレオチド除去修復に関与するPARP | KAKENHI-PROJECT-18K07335 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K07335 |
上皮間葉転換と細胞運命制御因子を標的にした難治性癌治療法の開発 | 1阻害剤が、METと相乗的に癌細胞の増殖を阻害するか、MET前後の癌細胞の増殖能を2D・3D培養にて解析・検討する。shH1単独或いはMETと相乗効果のある組み合わせについて、造腫瘍性に対する効果を、免疫不全マウスへの癌細胞の移植実験にて確認する。研究の進捗が遅れているために当初の予算額を使用せず、体制が整う2019年度以後に回すこととした。また研究領域の情報を取得するためにアメリカ学会出張に使用した。 | KAKENHI-PROJECT-18K07335 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K07335 |
求核性硫黄配位子と求電子性NHC多核金属ユニットの融合による電解還元触媒系の開発 | キレート型N-へテロ環カルベン白金およびパラジウム錯体ユニットを組み込んだ三重架橋硫化物配位子をもつ異種金属三核錯体の水溶液中での電気化学的挙動の調査に加えて、硫化物配位子をセレン化物配位子に変えた三核錯体の合成を行い、その電気化学的性質を明らかにした。さらに硫化物錯体とセレン化物錯体のプロトン還元触媒能を比較し、触媒反応における三重架橋部の役割を明らかにした。異種金属三核錯体の対イオンをテトラフェニルホウ酸イオンから塩化物イオンに変更することで、これらの三核錯体が水溶性となることを見出した。これらの水溶性錯体のうち、ジロジウム白金錯体とジイリジウム白金錯体を用いた水中でのサイクリックボルタンメトリー(CV)測定により電気化学的挙動を調査し、生成する還元体が電極に吸着することを明らかにした。また、これらの錯体を用いて水中でのプロトン還元触媒能の調査を行ったところ、ジロジウム白金錯体のみが触媒活性を示した。ジイリジウム白金錯体では触媒電流は観測されないが、酸の濃度に依存した1電子還元体由来の吸着波が減少することより、1電子還元体とプロトンの相互作用を明らかにした。より低い塩基性の三重架橋部位と、より電子密度の高い金属部位をもつ三重架橋セレン化物三核錯体のプロトン電解触媒能の比較による相互作用部位の解明を目指し、セレン化物配位子をもつ類似三核錯体を新たに合成した。アセトニトリル中におけるCV測定において、セレン化物錯体は、硫化物錯体と同様の酸化還元挙動を示した。セレン化物錯体のプロトンの電解還元触媒能の評価を行ったところ、触媒電流は観測されなかった。これは、より塩基性の低いセレン化物配位子ではプロトンと相互作用出来なかったものと考えられる。以上より、硫化物錯体のプロトンの電解還元反応におけるプロトンとの相互作用部位は三重架橋硫化物配位子であると結論づけられた。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。キレート型N-へテロ環カルベン白金およびパラジウム錯体ユニットとペンタメチルシクロペンタジエニルロジウムあるいはイリジウムユニットを組み込んだ三重架橋硫化物配位子をもつ異種金属三核錯体群の還元体の調査および酸存在下でのプロトン還元触媒能の評価を行った。電気化学測定で、ジカチオン錯体からモノカチオン錯体、モノカチオン錯体から中性の分子性錯体、二段階の可逆な還元波を示すロジウムー白金ジカチオン錯体を段階的に電解還元し、吸収スペクトルを測定した。電解還元により得られたモノカチオン錯体では、ジカチオン錯体で670 nm付近に観測された吸収が減少し、770 nm付近に新しい吸収を示した。更に還元した分子性錯体では、710 nm付近に吸収を示した。これらの錯体の分子軌道計算から、観測された吸収が、ジカチオン錯体ではHOMO-LUMO、モノカチオン錯体ではSOMO-LUMO、分子性錯体ではHOMO-LUMOの遷移と帰属した。また、混合金属三核錯体群について、酸存在下でのサイクリックボルタンメトリー測定を行い、電解還元触媒能の調査と錯体中の白金とパラジウムの違いにより生じる差異に注目し、比較を行った。プロトンソースに酢酸を用いた時には、白金もパラジウム錯体のどちらの場合にも触媒電流は観測されず、これらの錯体は触媒として働いていないことが分かった。しかし、プロトンソースにトリフルオロ酢酸を用いた時には、白金錯体では2電子還元後に、パラジウム錯体では1電子還元後に触媒電流が観測され、どちらにおいても錯体がそれぞれ2電子あるいは1電子還元後にプロトンと相互作用し、その後に水素への還元が起こるというECE過程で進行していると考えられる。白金錯体とパラジウム錯体で異なる挙動を示したのは、それぞれの錯体のコア部位の塩基性の差違がプロトンとの相互作用に大きく関係しているからであると推測出来る。キレート型N-へテロ環カルベン白金およびパラジウム錯体ユニットを組み込んだ三重架橋硫化物配位子をもつ異種金属三核錯体の水溶液中での電気化学的挙動の調査に加えて、硫化物配位子をセレン化物配位子に変えた三核錯体の合成を行い、その電気化学的性質を明らかにした。さらに硫化物錯体とセレン化物錯体のプロトン還元触媒能を比較し、触媒反応における三重架橋部の役割を明らかにした。異種金属三核錯体の対イオンをテトラフェニルホウ酸イオンから塩化物イオンに変更することで、これらの三核錯体が水溶性となることを見出した。これらの水溶性錯体のうち、ジロジウム白金錯体とジイリジウム白金錯体を用いた水中でのサイクリックボルタンメトリー(CV)測定により電気化学的挙動を調査し、生成する還元体が電極に吸着することを明らかにした。また、これらの錯体を用いて水中でのプロトン還元触媒能の調査を行ったところ、ジロジウム白金錯体のみが触媒活性を示した。ジイリジウム白金錯体では触媒電流は観測されないが、酸の濃度に依存した1電子還元体由来の吸着波が減少することより、1電子還元体とプロトンの相互作用を明らかにした。より低い塩基性の三重架橋部位と、より電子密度の高い金属部位をもつ三重架橋セレン化物 | KAKENHI-PROJECT-14J05648 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J05648 |
求核性硫黄配位子と求電子性NHC多核金属ユニットの融合による電解還元触媒系の開発 | 三核錯体のプロトン電解触媒能の比較による相互作用部位の解明を目指し、セレン化物配位子をもつ類似三核錯体を新たに合成した。アセトニトリル中におけるCV測定において、セレン化物錯体は、硫化物錯体と同様の酸化還元挙動を示した。セレン化物錯体のプロトンの電解還元触媒能の評価を行ったところ、触媒電流は観測されなかった。これは、より塩基性の低いセレン化物配位子ではプロトンと相互作用出来なかったものと考えられる。以上より、硫化物錯体のプロトンの電解還元反応におけるプロトンとの相互作用部位は三重架橋硫化物配位子であると結論づけられた。白金をパラジウムに置き換えた混合金属三核錯体の合成を確立できた。これにより、金属部位が、白金ーロジウム、白金ーイリジウム、パラジウムーロジウム、パラジウムーイリジウムの錯体群を得ることができた。これによって、本研究の目的達成に不可欠な、それぞれの錯体群の電気化学的性質、電子的性質、電解還元触媒能の比較が可能となった。混合金属三核錯体の還元体の単離については、生成物が非常に不安定なため、現在のところ成功していないが、電解スペクトル測定によって得られた各還元段階の生成物の650 800 nmの間に現れる吸収帯と、分子軌道計算によって得られた結果が良く一致しており、計算で得られた最適化構造が妥当であるとの結果を得ている。また、混合金属三核錯体のサイクリックボルタンメトリー測定を二酸化炭素存在下で行ったが、還元電流は観測されなかった。そのため、ターゲットをプロトン還元に絞り、混合金属三核錯体群が、プロトン還元能を示すことを明らかにした。この系では、白金とパラジウムの違いにより、プロトンの還元挙動に大きな差があることが見いだされた。これは、電解還元サイクルの反応機構解明におおいに役立つと考えられる重要な結果である。また、当初の目的であった硫化物配位子をセレン化物配位子に置き換えた混合金属三核錯体の合成については、これまでにその生成を核磁気共鳴分光により確認できている。現在、単離と精製を行っており、若干の遅れはあるが、セレン化物配位子をもつ混合金属三核錯体の合成は、ほぼ達成しているといえる。27年度が最終年度であるため、記入しない。混合金属三核錯体の還元体の構造解析は、本研究で重要な位置を占めるため、化学的還元による生成物の単離については、反応条件の最適化を行うなどして引き続き試みる。また、二酸化炭素の電解還元については、ペンタメチルシクロペンタジエニル配位子を持つイリジウム三核錯体で報告されているのと同様に、混合金属三核錯体の還元体がそのまま触媒活性種となっているのではなく、還元体が溶媒分子等と反応して触媒活性をもつ化学種となることが考えられるが、サイクリックボルタンメトリーで可逆な還元波を示すことから、触媒活性種が生成する反応は比較的遅いものと予想される。これらのことから、混合金属三核錯体をバルク電解し、その生成物の反応の経時変化を調べる必要があると考えている。経時変化を示した場合には、生成した化学種の同定および単離を行い、この化学種を触媒として用いた二酸化炭素の電解還元反応を検討する。さらに、前年度に生成を確認したセレン化物配位子を持つ三核錯体の単離、構造解析、電子的および化学的性質の調査を行い、硫化物三核錯体と比較するとともに、二酸化炭素に対する電解触媒能を調べる。プロトン還元については、これまでに合成した混合金属三核錯体を電解触媒として用いたプロトン還元触媒反応の詳細について検討を行い、中間体の構造の解明等を通して、そのメカニズムの解析を行う。 | KAKENHI-PROJECT-14J05648 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J05648 |
フロー方式による尿沈渣自動分類システム開発のための基礎研究 | 1.試作した装置の概要フロー方式による尿沈渣画像の計測装置は、尿沈渣の細胞を流す流体系,撮像用レーザ光源,細胞画像撮像部,画像メモリ並びに情報処理部から構成されている。2.実験方法並びにその結果フローチャンバ中に尿沈渣の細胞を流し、それにパルス幅10nsのN2レーザ光を照射し、細胞の透過光をCCDテレビジョンカメラで撮像し、画像メモリ中にデータとして取り込んだ。図A,図B,図C,図D並びに図Eは、この装置により得られた赤血球細胞,白血球細胞,扁平上皮細胞,移行上皮細胞並びに円柱の画像を示したものである。3.画像の特徴抽出並びに分類尿沈渣成分中、赤血球,白血球,扁平上皮細胞,移行上皮細胞並びに円柱について特徴を調べた。その結果、特徴パラメータとして面積と円形度により5種類に分類することができた。1.試作した装置の概要フロー方式による尿沈渣画像の計測装置は、尿沈渣の細胞を流す流体系,撮像用レーザ光源,細胞画像撮像部,画像メモリ並びに情報処理部から構成されている。2.実験方法並びにその結果フローチャンバ中に尿沈渣の細胞を流し、それにパルス幅10nsのN2レーザ光を照射し、細胞の透過光をCCDテレビジョンカメラで撮像し、画像メモリ中にデータとして取り込んだ。図A,図B,図C,図D並びに図Eは、この装置により得られた赤血球細胞,白血球細胞,扁平上皮細胞,移行上皮細胞並びに円柱の画像を示したものである。3.画像の特徴抽出並びに分類尿沈渣成分中、赤血球,白血球,扁平上皮細胞,移行上皮細胞並びに円柱について特徴を調べた。その結果、特徴パラメータとして面積と円形度により5種類に分類することができた。 | KAKENHI-PROJECT-60550275 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60550275 |
フエの歴史的環境保全と関連する周辺集落における段階的再定住手法に関する研究 | フエ市とその近郊において実施済みの再定住事業の実績を分析した上で,今後再定住対象となっている集落の実態調査を通じて将来の再定住に対する提案を行うことを目的とした.ケーススタディとして、阮朝歴代皇帝陵の周辺における水環境と集落生活の間にある関係性に着目し,集落の住まいと住まい方の実態と生活意向を分析した.そして世界遺産の歴代皇帝陵周辺における持続可能な集落環境整備のためのガイドラインを作成,提案した.フエ市とその近郊において実施済みの再定住事業の実績を分析した上で,今後再定住対象となっている集落の実態調査を通じて将来の再定住に対する提案を行うことを目的とした.ケーススタディとして、阮朝歴代皇帝陵の周辺における水環境と集落生活の間にある関係性に着目し,集落の住まいと住まい方の実態と生活意向を分析した.そして世界遺産の歴代皇帝陵周辺における持続可能な集落環境整備のためのガイドラインを作成,提案した.1.ベトナム・フエにおける歴史的環境周辺の集落の再定住に関する調査・研究フエ市とその近郊において実施済みの再定住事業の実績(投資,事業範囲,定住率,環境社会影響評価)をデータベース化し,また,すでに事業によって居住地移転した居住者の生活実態調査も実施した.その結果を元に,居住地移転した場合の生活シーンを仮に作成した.さらには,実際に居住地移転した際の居住者を取り巻く状況の変化を詳細に記録し,再定住対象となっている人々の生活場所の変化に伴う心境や考えの変化を詳細に記録し,事業データベースを作成するための情報整理を行った.2.阮朝の歴代皇帝陵周辺集落における歴史的な水環境の実態とその利用に関する研究歴代皇帝陵周辺集落における歴史的な水環境,特に周辺住民によって管理されている水田の取水排水の実態と,周辺の山から河川への排水に至るまでの流水経路の特定把握を行った.これによって,歴史的環境と一体となった水環境があることと,その管理主体としての住民による生産活動の存在が明らかにされた.以上のように,歴代皇帝陵周辺における歴史的な水環境と住民生活の間にある関係性に着目し,住民が持続可能に歴史的環境周辺で生活することの価値を明確化することができた.その上で,周辺集落民の生活空間と住まい方の実態,今後の生活意向を記録し,データベース化するための調査情報の整理を行った.3.阮朝の歴代皇帝陵周辺集落における歴史的な水環境の保全と再生に関するガイドライン案の作成ユネスコ世界遺産に登録されている歴代皇帝陵だけではなく,周辺の集落を含めた住環境も一体となった歴史的環境の保全と再生に関する計画手法としてガイドライン案を作成し,現地の人民委員会に対して提案した.本研究では,東アジア特有の環境と共生するように計画・設計された歴史資産を持続的に保全する方法論として,その生態学基盤を支える周辺集落の住環境と歴史的環境との一体的な環境再生モデルを提示するための基礎的な学術調査を行うことを主目的とした.本研究で設定した最終目標は,歴史都市フエにおいて,歴史資産の持続的な保全と関係付けながら,周辺集落の住環境を改善しつつ段階的に居住者の再定住を進める方法論を,代替案の検討を通じて開発することであった.具体的な方法としては,阮朝第三代皇帝陵(紹治帝陵)周辺の開発規制がかけられているゾーンにおいて,(1)周辺集落の生活実態を調査・分析し,(2)歴史的環境保全の持続可能性に周辺集落が与える影響を評価した上で,(3)居住地移転に加えてオンサイトでの定住化のシナリオを作成し,その可能性を検討した.そして,最後には遺跡保存に従事する現地関連行政担当者との共同作業を通じてFileMakerProを用いたデザインデータベースを構築し,住民が遺跡と共生するように住みつづけるためのオンサイト再定住のシナリオ代替案を考えるためのアイディアデータとしてまとめた.当初予定していた紹治帝陵の周辺集落における段階的再定住のシナリオ体験ワークショップは,大型台風による洪水の影響で研究対象集落内の低地部分にあったいくつかの住宅が大きな被害を受けたことを考慮し,住民に負担をかけないために,遺跡周辺のゾーニングによる開発規制を検討する現地関連行政担当者が、今後集落の住環境改善の検討のために使うことのできるようなデザインデータベースを作成した.結果として段階的な居住者再定住の代替案の検討を行うための情報基盤が整備された. | KAKENHI-PROJECT-22760472 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22760472 |
薬用植物甘草の有用トリテルペン生合成に関わる転写制御因子の統括的解析 | 薬用植物カンゾウは,マメ科の多年生草本であり,その地下部(肥大根およびストロン)は,医薬品および食品添加物原料として需要の大きいトリテルペンサポニンであるグリチルリチンを含有する。古くから,トリテルペンサポニンの薬理学的研究は数多いが,サポニンの生合成およびその制御機構は驚くほど研究が進んでいない。そこで,カンゾウの有用トリテルペンサポニンに注目し,その生産制御機構を明らかにすることを目的として以下の研究を行った。平成19年度内における研究成果は,1)18年度中に整備した完全長cDNAライブラリーから,グリチルリチン生合成経路においてβ-amyrin 11位酸化酵素として働くP450(CYP88ファミリー)および,ソヤサポニンの生合成経路においてβ-amyrin 24位水酸化酵素として機能すると考えられるP450(CYP93ファミリー)を単離,機能同定した。2)これら2種のP450およびβ-amyrin合成酵素は類似した遺伝子発現パターンを示すことから,これら3種の遺伝子について,プロモーター領域をPCR-based walking法により単離し,プロモーター領域中のシス配列の候補(モチーフ)の分布を比較した。これにより,3種の遺伝子に共通して見られるシスエレメントの候補を見いだした。3)プロモーター::GUSレポーターコンストラクトを構築し,パーティクルガン法によるプロモーター解析に着手した。トリテルペンサポニン生合成において骨格形成以降のステップに関わる酵素(P450および配糖化酵素)の同定は未だ数例に限られている。今回,カンゾウにおいてトリテルペンサポニン生合成に関わる2種のP450を同定し,さらに,その発現制御を担うプロモーター塩基配列を明らかにできたことから,今後,「シス配列の特定→シス配列に作用する転写因子の単離」といったアプローチが可能となった。同時に,cDNAライブラリーからの転写因子遺伝子の抽出と塩基配列決定も継続して行い,発現パターンを指標とした候補の選定も進めた。薬用植物カンゾウ(Glycyrrhiza uralensis Fish., G.glabra L.)は、マメ科の多年生草本であり、その地下部(肥大根およびストロン)は、医薬品および食品添加物原料として需要の大きいトリテルペンサポニンを含有する。本研究では、グリチルリチンに代表されるカンゾウの有用トリテルペンの生産制御に関わる転写制御因子を明らかにすることを目的としている。平成18年度内における研究成果は、1)ストロン組織をソースとする完全長cDNAライブラリー(約32,000クローン)を構築・解析し、得られた配列情報を基にオリゴDNAアレイを設計した。2)相同性検索から、全体の45%のcDNAクローンが転写制御因子をコードすることを見出した。3)グリチルリチン生合成はメチルジャスモン酸やエリシター処理による影響を強く受けることが知られていることから、これらのストレス応答との関わりが良く知られている転写因子ファミリーとしてAP2/ERF(38分子種)及びWRKY(21分子種)転写因子ファミリーを優先し全長塩基配列を決定・構造比較を行った。4)グリチルリチンを蓄積する器官(肥大根、ストロン)および蓄積が見られない器官(葉、地上茎、培養細胞)を材料とした遺伝子発現解析に着手した。5)グリチルリチン生合成には、前駆体であるβ-アミリンを基質とするP450モノオキシゲナーゼおよびUDP-糖転位酵素が関与すると考えられるが、それら生合成遺伝子は未同定である。グリチルリチン生合成に関わる生合成遺伝子が特定できれば、「制御配列(プロモーター領域中のシス配列)の解析→シス配列に作用する転写因子の単離」といったアプローチが可能となる。そこで研究代表者は、グリチルリチン生合成遺伝子の探索にも着手し、構築した完全長cDNAライブラリーの中から幾つかの候補P450モノオキシゲナーゼおよびUDP-糖転位酵素を特定し、機能解析に着手した。薬用植物カンゾウは,マメ科の多年生草本であり,その地下部(肥大根およびストロン)は,医薬品および食品添加物原料として需要の大きいトリテルペンサポニンであるグリチルリチンを含有する。古くから,トリテルペンサポニンの薬理学的研究は数多いが,サポニンの生合成およびその制御機構は驚くほど研究が進んでいない。そこで,カンゾウの有用トリテルペンサポニンに注目し,その生産制御機構を明らかにすることを目的として以下の研究を行った。平成19年度内における研究成果は,1)18年度中に整備した完全長cDNAライブラリーから,グリチルリチン生合成経路においてβ-amyrin 11位酸化酵素として働くP450(CYP88ファミリー)および,ソヤサポニンの生合成経路においてβ-amyrin 24位水酸化酵素として機能すると考えられるP450(CYP93ファミリー)を単離,機能同定した。2)これら2種のP450およびβ-amyrin合成酵素は類似した遺伝子発現パターンを示すことから,これら3種の遺伝子について,プロモーター領域をPCR-based walking法により単離し,プロモーター領域中のシス配列の候補(モチーフ)の分布を比較した。これにより,3種の遺伝子に共通して見られるシスエレメントの候補を見いだした。3)プロモーター::GUSレポーターコンストラクトを構築し,パーティクルガン法によるプロモーター解析に着手した。トリテルペンサポニン生合成において骨格形成以降のステップに関わる酵素(P450および配糖化酵素)の同定は未だ数例に限られている。今回,カンゾウにおいてトリテルペンサポニン生合成に関わる2種のP450を同定し,さらに,その発現制御を担うプロモーター塩基配列を明らかにできたことから,今後,「シス配列の特定→シス配列に作用する転写因子の単離」といったアプローチが可能となった。 | KAKENHI-PROJECT-18780082 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18780082 |
薬用植物甘草の有用トリテルペン生合成に関わる転写制御因子の統括的解析 | 同時に,cDNAライブラリーからの転写因子遺伝子の抽出と塩基配列決定も継続して行い,発現パターンを指標とした候補の選定も進めた。 | KAKENHI-PROJECT-18780082 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18780082 |
脱臼歯の歯周組織治癒機構に関する実験的研究-根管開放と整復法の評価- | 脱臼歯を歯槽窩へ整復する際、根管を開放状態にした場合の術後の根尖組織学的に検索した。推定年齢約6歳の歯根完成永久歯を有するカニクイザル1頭を使用し、上下顎切歯を被験歯とした。全身麻酔後、歯肉に浸潤麻酔を施し、歯根膜損傷を生じないよう注意しながら鉗子で抜歯を行った。抜去歯を滅菌生食液ガ-ゼ内に保持し、髄室開放、抜髄、根管の拡大を施した。右側歯はGutta-percha pointとCANALS-Nにて根管充填を行い、左側歯はクロラムフェニコールを綿栓で貼薬し、窩洞内に綿球を置いて根管の開放を行った。それぞれの歯を整復後、脱臼歯を接着性レジンと唇側線にて暫間固定し、Soft Food飼育下で1週間経過観察した。実験期間終了後、10%ホルマリン頭頸部灌流固定を行い、顎骨ごと歯を摘出し、アルコール系列脱水、スチレン透撤後、樹脂包埋した。厚さ10μmの非脱灰研磨切片を連続的に作製し、トルイジンブルー染色、hematoxyline-eosin染色等を施した。整復固定後、根管開放歯と根充歯では経過観察中に脱落するものはなく、肉眼的にも口腔軟組織に異常は認めなかった。現在、光顕観察で根尖病巣の発現を認めていないが、今後、根尖の歯周組織、根尖側1/3、根中央1/3、歯頚側1/3の歯根膜について各々観察し、それらについて比較検討し発表する予定である。脱臼歯を歯槽窩へ整復する際、根管を開放状態にした場合の術後の根尖組織学的に検索した。推定年齢約6歳の歯根完成永久歯を有するカニクイザル1頭を使用し、上下顎切歯を被験歯とした。全身麻酔後、歯肉に浸潤麻酔を施し、歯根膜損傷を生じないよう注意しながら鉗子で抜歯を行った。抜去歯を滅菌生食液ガ-ゼ内に保持し、髄室開放、抜髄、根管の拡大を施した。右側歯はGutta-percha pointとCANALS-Nにて根管充填を行い、左側歯はクロラムフェニコールを綿栓で貼薬し、窩洞内に綿球を置いて根管の開放を行った。それぞれの歯を整復後、脱臼歯を接着性レジンと唇側線にて暫間固定し、Soft Food飼育下で1週間経過観察した。実験期間終了後、10%ホルマリン頭頸部灌流固定を行い、顎骨ごと歯を摘出し、アルコール系列脱水、スチレン透撤後、樹脂包埋した。厚さ10μmの非脱灰研磨切片を連続的に作製し、トルイジンブルー染色、hematoxyline-eosin染色等を施した。整復固定後、根管開放歯と根充歯では経過観察中に脱落するものはなく、肉眼的にも口腔軟組織に異常は認めなかった。現在、光顕観察で根尖病巣の発現を認めていないが、今後、根尖の歯周組織、根尖側1/3、根中央1/3、歯頚側1/3の歯根膜について各々観察し、それらについて比較検討し発表する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-06771764 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06771764 |
衛星搭載レーダによる豪雨の立体構造推定のための多重散乱波解析 | 本研究では、衛星搭載用降雨レーダの高性能化を目指し、ビーム波に対する降雨散乱の多重解析結果を総合的に検討することにより、降雨の構造を明らかにする事を目的とした。入射ビーム幅が散乱平均自由行程より小さければ、多重散乱効果は、平面波入射時と比較すると、かなり異なることがわかった。実際のレーダ散乱エコーは、多重散乱を含んでいるので、降雨の立体構造の評価において、多重散乱をすべて無視したときの単一散乱と多重散乱時のレーダエコーを比べると、多重散乱によりレーダエコーが大きくなるため、降雨量を過大評価する事を示した。本研究では、衛星搭載用降雨レーダの高性能化を目指し、ビーム波に対する降雨散乱の多重解析結果を総合的に検討することにより、降雨の構造を明らかにする事を目的とした。入射ビーム幅が散乱平均自由行程より小さければ、多重散乱効果は、平面波入射時と比較すると、かなり異なることがわかった。実際のレーダ散乱エコーは、多重散乱を含んでいるので、降雨の立体構造の評価において、多重散乱をすべて無視したときの単一散乱と多重散乱時のレーダエコーを比べると、多重散乱によりレーダエコーが大きくなるため、降雨量を過大評価する事を示した。地球規模での異常気象と言われる局地的な集中豪雨・雷雨が多発化し、各地で大きな災害が引き起こされている。このため、豪雨の空間立体構造、及びその移動を衛星から早期にレーダで探知することが望まれている。本研究では、ビーム形状のミリ波パルスを使って、降雨時におけるパルス散乱・伝搬特性を、従来の単一散乱理論ではなく、実体に即した散乱現象を解明するため、多重散乱理論に基づいて受信波形を求めることを目的としている。平成19年度においては、それまで、一般的に解析法として用いられていた横方向に一様である平面波入射ではなく、ミリ波の波長において、新たに狭ビーム幅でかつ任意形状のパルス波形を仮定し、空間的な入射ビーム幅、時間的パルス幅、及びパルス形状に依存する降雨散乱の定式化を検討した。その結果、強雨における雨滴粒形分布と基本となるミリ波での単一散乱特性の評価において、降雨タイプに散乱特性が大きく依存することを確かめた。また、横方向に空間分布のあるビーム波入射による場合の散乱解析を行うため、多重散乱を考慮している時空間輸送方程式を基本式として、ビーム波解析に対する解析手法を検討した。ビーム波の解析に対しても、従来の方法に比べて、あまり複雑にならず、しかも時間・空間座標のままで、散乱過程を明示する形で解ける積分方程式を導出することが出来た。これを使って、一部のパルス波形を計算することができた。また従来の横方向に一様な平面波入射の場合との解析的比較を論じた。なお、3次以上の散乱についての結果に関しては、数値計算を行うまでには至らなかった。本研究では、ビーム形状のミリ波パルスを使って、降雨時におけるパルス散乱特性を、従来の単一散乱理論ではなく、実体により即した散乱理論で散乱現象を解明し、豪雨の立体構造を推定することである。このため、多重散乱理論に基づき、降雨量と受信パルス波形の関係を求めることを目的としている。前年度において、ミリ波の入射波が横方向に一様である平面波入射ではなく、新たに狭ビーム幅でかつ任意形状のパルス波形を仮定し、降雨散乱の定式化を行ったことを受けて、平成20年度では、実際に多重散乱がどのように影響を及ぼすかについて検討した。最初に、降雨からの受信強度が、散乱マトリックスを方位角方向にモードで展開することにより、空間的な入射ビーム幅に依存する形で求められ、その式から見いだされる定性的評価を行うため、ビームファクターを導入して議論を行い、次に具体的な数値計算を行った。その結果、二次の散乱項に対する有限ビームサイズの影響は、平面波入射と異なり、ビーム径方向の入射強度の不均一さにより、散乱行列における方位角方向間において、モード間の結合を引き起こすことがわかった。そして、このモード結合の度合いは、ビーム幅と径方向の散乱自由行程に依存することが示された。実際、ビーム幅に相当する衛星レーダのフットプリントが平均自由行程より大きくなると、降雨からの散乱強度は、平面波入射の結果と同じになることが確かめられた。しかしながら、現実の衛星利用の場合でも、必ずしもフットプリントが大きくなるとは限らないため、本研究成果により、初めてフットプリントの多重散乱への依存性を示すことができた。本研究では、衛星搭載用降雨レーダの高性能化を目指して、ビーム波に対する降雨散乱解析結果を総合的に検討し、降雨の構造を明らかにする事を目的にしている。ビーム波に対しては、平面波と異なり、空間的に限定されているために、横方向の積分が複雑になり、最終的には、平面波以上に数値計算を使う必要が出てくることになった。降雨の立体構造については、通常の1回散乱であれば、降雨量とレーダ強度が1対1に対応するので、レーダエコーから降雨強度を得られやすく、構造もわかりやすいが、現実には、従来無視されていた多重散乱が関与してくるため、その関係式は複雑になる。この場合、降雨を過大に評価しがちになる。実際、多重散乱をすべて無視したときの単一散乱と多重散乱時のレーダエコーを比べると、多重散乱時のレーダエコーが大きくなることがわかった。また、降雨量、降雨層の厚さ、送信ビーム幅、送信パルス幅、パルス形状、および入射偏波に対するレーダエコーの依存性について検討を行なった。 | KAKENHI-PROJECT-19560430 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19560430 |
衛星搭載レーダによる豪雨の立体構造推定のための多重散乱波解析 | 降雨量が増加すると、先に述べたように、多重散乱寄与が増してくるため、レーダエコーが増加することが示された。水平方向の降雨の空間分布において、降雨密度に大きな変化があった場合、それまで均一としてきた場合と比べて、ビーム幅のサイズの変化で降雨量の推定にどのような変化が現れてくるかについては、やはり複雑であり、数値的以外に評価するのは困難であった。更に、時間依存に対する新しい散乱理論に対しては、拡散近似を入れて解くことが、理論解析の上簡易で有効であることが示された。これまでの成果を基にして、地球環境問題、豪雨による災害の防止・軽減の観点からも、衛星搭載型レーダへの豪雨強度等の定性的かつ定量的評価として実用的に利用可能な方法については更に検討を重ねたい。 | KAKENHI-PROJECT-19560430 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19560430 |
分散型農作業体系における車両の群制御 | 1.分散型農作業の群制御に必要と考えられる車両間の相対方向を検出する装置を考案し、原理の構築、プロトタイプによる検証、実用機の設計・製作及びその特性の検証を行い、装置の有効性を確認した。2.構築した理論を検証するために、プロトタイプの装置を製作した。これは受光部に円錐鏡、凸レンズおよび平面受光素子として2次元PSDを使用し、その到来方向を検出する。また、送光部は、レーザ発振器を水平面内で回転させた。この装置により実験を行ったところ以下の知見を得た。(1)実際に得られたデータから方向を知るには、変化を逐次計算しながら最大値を求める必要があり、計算が複雑になり時間を要することが判明した。(2)レーザ光を用いたが屋外ではほとんど実用にならず、また、高さ方向の検出範囲が狭かった。3.プロトタイプで得られた結果を踏まえて、送光部をレーザ光の回転から、変調赤外線の全周同時発光方式に変更した。これにより検出距離は短くなるが、方向の計算が容易、屋外で実用可能、高さ方向の検出範囲が広いという実用機を設計・製作し、その基礎特性を調べた結果以下の知見を得た。(1)最大検出可能距離は22.5mであり、実際の圃場での使用を想定した場合少し距離が短く、さらなる改良が必要である。また、高さ方向の検出幅は距離により異なるが、最大で±8cmであった。(2)方向の検出精度は、誤差のRMSで表した場合、最小5mで4.5゚、最大20mで16.7゚であり、距離の増加に伴い、RMSも増加した。また、高さの相違による誤差の相違は認められなかった。しかし、誤差は傾斜の影響を受けることが明確になり、この対策が課題となる。(3)実験は晴天時に時折曇るという状況で行ったが、太陽等の外乱の影響は、ほとんど認められなかった。1.分散型農作業の群制御に必要と考えられる車両間の相対方向を検出する装置を考案し、原理の構築、プロトタイプによる検証、実用機の設計・製作及びその特性の検証を行い、装置の有効性を確認した。2.構築した理論を検証するために、プロトタイプの装置を製作した。これは受光部に円錐鏡、凸レンズおよび平面受光素子として2次元PSDを使用し、その到来方向を検出する。また、送光部は、レーザ発振器を水平面内で回転させた。この装置により実験を行ったところ以下の知見を得た。(1)実際に得られたデータから方向を知るには、変化を逐次計算しながら最大値を求める必要があり、計算が複雑になり時間を要することが判明した。(2)レーザ光を用いたが屋外ではほとんど実用にならず、また、高さ方向の検出範囲が狭かった。3.プロトタイプで得られた結果を踏まえて、送光部をレーザ光の回転から、変調赤外線の全周同時発光方式に変更した。これにより検出距離は短くなるが、方向の計算が容易、屋外で実用可能、高さ方向の検出範囲が広いという実用機を設計・製作し、その基礎特性を調べた結果以下の知見を得た。(1)最大検出可能距離は22.5mであり、実際の圃場での使用を想定した場合少し距離が短く、さらなる改良が必要である。また、高さ方向の検出幅は距離により異なるが、最大で±8cmであった。(2)方向の検出精度は、誤差のRMSで表した場合、最小5mで4.5゚、最大20mで16.7゚であり、距離の増加に伴い、RMSも増加した。また、高さの相違による誤差の相違は認められなかった。しかし、誤差は傾斜の影響を受けることが明確になり、この対策が課題となる。(3)実験は晴天時に時折曇るという状況で行ったが、太陽等の外乱の影響は、ほとんど認められなかった。1.これまでに光学的手法による車両間の相対方向の認識を可能とするために、考案、試作した方向認識センサを用いて、基本的な検出特性の把握を行うとともに実用に供するための課題点について検討し、実用機に必要と考えられる機能を明確にして設計方針を立て、製作を行った。2.理論解析を基に、円錐鏡、凸レンズおよび平面受光素子として2次元PSDを用いた簡易実験装置を構築し、特性を検討した結果以下のことが明らかになった。(1)点光源にレーザ光源および平面受光素子にPSDを用いたため、得られた軌跡は理論解析とは異なり、円に近い楕円形となった。これはPSDの出力値が光源の位置と背景光の位置の光強度平均された位置の値とされたためであった。この組合せではピーク値を特定することが多少困難であった。(2)点光源を水平線光源に変えて実験したところ、線光源の1部が円錐鏡全体に入射していれば光源方向を特定できることがわかった。また、点光源ではなくある程度大きさを持った光源の方が、PSDとの組合せでは有効であることがわかった。(3)レーザ光による室内における角度精度は平均±1.0°(3m)、距離は室内で最大40m、屋外5mであった。3.以上の結果を踏まえて、屋外で使用可能な実用的なセンサを構築するために以下の点を考慮に入れて設計製作をした。次年度では本センサについて検討し、これを搭載するモデル車両を製作する予定である。(1)外乱防止のため変調光および光学フィルターを採用する受光部 | KAKENHI-PROJECT-09660271 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09660271 |
分散型農作業体系における車両の群制御 | (2)レーザ光を回転させるのではなく、多数の赤外線LEDによるブロードな光線を発光する投光部1.前年度までに、プロトタイプの方向認識センサを用いて、原理の妥当性を検証した。本年度はこれらより得られた知見を基に、屋外で実用可能な装置の製作を行い、その基礎特性を確認した。また、モデル車両を2台製作したが、方向認識センサを搭載として、検証するまでには至らなかった。2.実用機として試作した方向認識センサの特徴は、受光部においては、外乱の影響を減少させるための変調光の採用、距離の増大に伴う光強度の低下を補うAGCの採用、その他光学装置の精度向上を行い、屋外での実用性を向上させた。一方、送光部は全周同時発光を可能とするために赤外線発光ダイオードを利用し、これを円周上に40個、検出範囲を広げるために上下方向に18mmの間隔で2段設置した。3.製作した方向認識センサの基本特性を検証した結果以下のことが明らかになった。(1)最大検出可能距離は22.5mであり、実際の圃場での使用を想定した場合少し距離が短く、さらなる改良が必要である。また、高さ方向の検出幅は距離により異なるが、最大で±8cmであり、赤外線の利用と2段に設置した効果が認められた。(2)方向の検出精度は、誤差のRMSで表した場合、最小5mで4.5゚最大20mで16.7゚であり、距離の増加に伴い、RMSも増加した。高さの相違による誤差のRMSはほぼ一定で、多少高さが異なっても同等の精度で検出可能であることを確認した。誤差は、傾斜の影響を受け、精度よく設置された場合には、誤差0に近い場合もあり、動的応用には工夫が必要となる。(3)実験は晴天時に時折曇るという状況で行ったが、太陽等の外乱の影響は、ほとんど認められなかった。 | KAKENHI-PROJECT-09660271 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09660271 |
Subsets and Splits