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関節間協調に着目した歩行のコツの発見 | この点の一般性についてはより多くの被験者に対する解析を行うことで今後継続的に検証していく予定である。また、関節間シナジーが神経系の働きによる結果か、もしくは筋骨格系の力学的構造に生み出されるものかを調べるために、受動歩行ロボットの関節間シナジーを計算機シミュレーションによって解析した。その結果,脚を振り出す時の躓きが起きやすい瞬間などにおいては,よく設計された受動歩行機でもヒトと同様に関節間シナジーが生じていることがわかった。このことは,ヒトの脚の機構系が歩行に適した物理構造になっていることを示唆する点で興味深い。一方で,ヒトには観察されても受動歩行ロボットでは観察されない関節間シナジーの存在も確認した。このような関節間シナジーは神経系の支配による可能性が高いが,受動歩行ロボットの身体パラメータが異なる場合にも同様な結果が得られるかについての検討も継続的に行っている。当初の計画は、前年度に引き続き、成人、子ども(10才)、ニホンザルの二足前進歩行の運動計測データに対してUCM解析を行い、関節間協調(関節間シナジー)が歩行中のどの様なタイミングにどのように活用されているかを調べ、その比較検討を行うことであった。以上の点に加え、今年度は成人の後進歩行の解析を行っており、さらに関節間協調の生成メカニズムを探るための予備的実験を行なうことが出来たので、研究は当初の計画以上に進展していると判断でする。24年度が最終年度であるため、記入しない。今後も引き続き被験者数を増やすことで、これまでに得られた知見の検証を進めると同時に、今後は筋電位の計測・解析や、受動歩行器の歩行時に生じる関節間協調も探っていくことで、歩行中に観察される関節間協調が神経系の働きによるものか、それとも筋骨格系の物理的特性によるものかを考察を進めていく予定である。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22500526 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22500526 |
モンゴルにおける砂塵嵐の遊牧に対する影響評価 | モンゴルの砂塵嵐の影響を、気象災害のリスク=大気現象の規模x遊牧社会の脆弱性(社会経済・保健医学・獣医学要因)という新しい枠組みでとらえ、気象解析により砂塵嵐の規模を評価するとともに、牧民の社会経済調査、健康調査、家畜の病理学調査により遊牧社会の脆弱性評価を行うことで、砂塵嵐が引き起こした影響を解明した。とくに、同じ規模の砂塵嵐が通過した地域でもその影響が異なる場合、遊牧社会の脆弱性に差異があるかを検討した。モンゴルの砂塵嵐の影響を、気象災害のリスク=大気現象の規模x遊牧社会の脆弱性(社会経済・保健医学・獣医学要因)という新しい枠組みでとらえ、気象解析により砂塵嵐の規模を評価するとともに、牧民の社会経済調査、健康調査、家畜の病理学調査により遊牧社会の脆弱性評価を行うことで、砂塵嵐が引き起こした影響を解明した。とくに、同じ規模の砂塵嵐が通過した地域でもその影響が異なる場合、遊牧社会の脆弱性に差異があるかを検討した。モンゴルの砂塵嵐の影響を、気象災害のリスク=大気現象の規摸x遊牧社会の脆弱性(社会経済・保健医学・獣医学要因)という新しい枠組みでとらえ、気象解析により砂塵嵐の規模を評価するとともに、牧民の社会経済調査、健康調査、家畜の病理学調査により遊牧社会の脆弱性評価を行うことで、砂塵嵐が引き起こした影響を解明する。とくに、同じ規模の砂塵嵐が通過した地域でもその影響が異なる場合、遊牧社会の脆弱性に差異があるかを検討する。2008年5月終わりには、雪をともなった砂塵嵐が観測史上最大規模の52人の死者と約28万の家畜死をもたらし、大きな社会経済問題となった。平成21年度は、この砂塵嵐の被害の大きかったモンゴル東部に焦点をあてて解析を行った。気象解析では、初夏を思わせるような天候の後、低気圧の通過に伴って天気が急変したことで遊牧民の対応が遅れたことがわかった。すなわち、風が強まると、気温が氷点下近くまで低下し、降雪を伴った。社会経済調査では、モンゴル国で発行された砂塵嵐に関する報告書の分析を行い、家畜や人口が特異に密集した地域に雪を伴った嵐が通過したケースにおいて被害が極大化していることを明らかにした。保健医学調査では、被災地の医療機関や公的機関で調査を行い、緊急時の通信網や救急搬送システムなど危機管理の不備が被害を大きくした可能性を指摘した。また、遊牧民の健康調査を行った結果、砂塵嵐の被災によって健康関連のquality of lifeが低下していることが判明した。獣医病理学調査では、気候変動(砂塵嵐・温暖化を含む)に伴う草地の牧草の植生の変化(毒草が繁茂)の結果、毒草を摂取した20例以上のヤギに中毒性疾患が発生していることが判明した。そのうちの一症例の病理解析により、本疾患が小脳プルキンエ細胞変性脱落を特徴とする小脳失調症である可能性が示唆された。モンゴルの砂塵嵐の影響を、気象災害のリスク=大気現象の規模x遊牧社会の脆弱性(社会経済・保健医学・獣医学要因)という新しい枠組みでとらえ、気象解析により砂塵嵐の規模を評価するとともに、牧民の社会経済調査、健康調査、家畜の病理学調査により遊牧社会の脆弱性評価を行うことで、砂塵嵐が引き起こした影響を解明する。とくに、同じ規模の砂塵嵐が通過した地域でもその影響が異なる場合、遊牧社会の脆弱性に差異があるかを検討する。2008年5月終わりには、雪をともなった砂塵嵐が観測史上最大規模の52人の死者と約28万の家畜死をもたらし、大きな社会経済問題となった。平成22年度は、この砂塵嵐の被害の大きかったモンゴル東部に焦点をあてて重回帰解析を行った結果、家畜の死亡率に対して、風速、降水量、前年の家畜死亡率、総人口に対する牧民の割合が予測変数として有意であると示された。前2変数は気象条件、後2変数は家畜の健康状態・管理に関する条件である。保健医学調査では、モンゴルと並行して国内(鳥取)でも健康影響の調査を実施した結果、健常人において眼や鼻・咽頭、皮膚の症状に黄砂が影響している可能性を指摘した。また、皮膚の症状に関しては、黄砂の成分分析や症状の経過より黄砂粒子に付着した物質によるアレルギー反応によるものの可能性が示唆された。獣医病理学調査では、気候変動(砂塵嵐・温暖化を含む)に伴う草地の牧草の植生の変化(毒草が繁茂)に伴い発生している植物中毒罹患ヤギ3例を入手し、臨床ならびに病理学的に解析した。その結果、いずれの症例も小脳プルキンエ細胞傷害を示し、臨床症状の悪化と一致してプルキンエ細胞の脱落が顕著となることが判明した。モンゴルの砂塵嵐の影響を、気象災害のリスク=大気現象の規模x遊牧社会の脆弱性(社会経済・保健医学・獣医学要因)という新しい枠組みでとらえ、気象解析により砂塵嵐の規模を評価するとともに、牧民の社会経済調査、健康調査、家畜の病理学調査により遊牧社会の脆弱性評価を行うことで、砂塵嵐が引き起こした影響を解明する。とくに、同じ規模の砂塵嵐が通過した地域でもその影響が異なる場合、遊牧社会の脆弱性に差異があるかを検討する。2008年5月終わりには、雪をともなった砂塵嵐が観測史上最大規模の52人の死者と約28万の家畜死をもたらし、大きな社会経済問題となった。 | KAKENHI-PROJECT-21310121 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21310121 |
モンゴルにおける砂塵嵐の遊牧に対する影響評価 | 保健医学調査では、前年度に実施した現地調査の詳細な解析により、砂塵嵐が眼症状の悪化などに直接的に影響していることが判明した。さらに、環境因子との関連性を含めた健康調査を新たに行った結果、砂塵嵐に伴う気圧や湿度の変化も呼吸器などの症状に影響を及ぼしていることがわかった。また、災害をもたらすような砂塵嵐では、家畜などの経済的な損失により住民の長期にわたる健康関連のquality of lifeの低下が示された。獣医病理学調査では、気候変動(砂塵嵐・温暖化を含む)に伴う草地の牧草の植生の変化(毒草が繁茂)に伴い発生している植物中毒罹患ヤギ3例を入手し、臨床ならびに病理学的に解析した。その結果、いずれの症例も小脳プルキンエ細胞傷害を示し、臨床症状の悪化と一致してプルキンエ細胞の脱落が顕著となることが判明した。さらに、小脳のプルキンエ細胞の電子顕微鏡学的解析により、ミトコンドリアの異常を示唆する所見が得られた。社会経済調査では、2011年夏季にモンゴル国南部の乾燥地域で気象災害に対応する形で遊牧民が行う長距離移動に関して聞き取り調査を実施し、長距離移動が社会・経済的に及ぼす影響の分析を行うとともに、主として乾燥度の違いに起因するモンゴル国内の地方差についても検討を行った。モンゴルの砂塵嵐の影響を、気象災害のリスク=大気現象の規模x遊牧社会の脆弱性(社会経済・保健医学・獣医学要因)という新しい枠組みでとらえ、気象解析により砂塵嵐の規模を評価するとともに、牧民の社会経済調査、健康調査、家畜の病理学調査により遊牧社会の脆弱性評価を行うことで、砂塵嵐が引き起こした影響を解明する。とくに、同じ規模の砂塵嵐が通過した地域でもその影響が異なる場合、遊牧社会の脆弱性に差異があるかを検討する。2008年5月終わりには、雪をともなった砂塵嵐が観測史上最大規模の52人の死者と約28万の家畜死をもたらし、大きな社会経済問題となった。保健医学調査では、砂塵嵐の直後の影響として住民の眼症状や呼吸器症状の悪化が認められたこと、長期的な影響として家畜などの経済的な損失による健康関連のquality of lifeの低下したことが示された。また、砂塵による皮膚の痒みといったアレルギー反応を疑わせる症状が一部の住民にみられ、現地で採取した砂塵の成分分析を行った。獣医病理学調査では、モンゴル国内の砂塵嵐に曝露された地域のヤギおよびヒツジの呼吸器臓器合計26例を入手し、病理学的に解析した。その結果、いずれの症例も砂塵由来ダストの肺組織・肺リンパ節内の蓄積、肺組織傷害像(肺気腫、肺胞壁の線維化)を示し、現地の家畜に砂塵嵐による健康被害が生じていることを示唆する所見が得られた。社会経済調査では、2013年春季にモンゴル国北部で追加の聞き取り調査を行うとともに、ここ数年来実施してきた調査地域の事例データに基づいて比較を行い、特に所有家畜頭数が多い牧民グループにおいて、移動戦略が気象災害に対する脆弱性に大きな影響を及ぼすという知見が得られた。今後はひととおり行った解析結果を再検討して、昨年度までに作成した家畜の死亡数を推定する統計モデルを精緻化していく。さらに、そのモデルをもとに、気象災害に対する遊牧社会の脆弱性を評価するための指標群(社会経済、人と家畜の健康に関する)を考案してゆく。今後は最終年度であるため、これまでの調査項目の指標化と気象災害のリスク評価のモデル化が主要な課題となる。まず、モデル化に利用可能な気象災害のリスク、ハザード、脆弱性(暴露,感受性,復元力)を測る指標群を提案する。さらに、郡または村単位で指標群のデータベースを作成し、GISを用いて指標間の相互関係が理解できるような重層的な地図化を行う。 | KAKENHI-PROJECT-21310121 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21310121 |
住民基本台帳制度の検討を通じた住民概念の構築と動揺に関する研究 | 現代日本の住民基本台帳制度に具現化されている住民概念は、実際の自治体の現実の行政活動では必ずしもそのまま利用されておらず、制度の想定からの乖離がある。諸個人は多数の自治体と関係を持ち、自治体は住民概念以外の方法によっても諸個人を把握する。それゆえ、行政の実務に非効率・不公平などの問題を起こしている。そこで、本研究は、現代日本の住民概念について、歴史的に構築されたこと(構築性)を踏まえて根本的に検討し、行政活動においてどのような形で諸個人と自治体が結びついているのか(諸個人ー自治体間関係)の実態を解明する。現代日本の住民基本台帳制度に具現化されている住民概念は、実際の自治体の現実の行政活動では必ずしもそのまま利用されておらず、制度の想定からの乖離がある。諸個人は多数の自治体と関係を持ち、自治体は住民概念以外の方法によっても諸個人を把握する。それゆえ、行政の実務に非効率・不公平などの問題を起こしている。そこで、本研究は、現代日本の住民概念について、歴史的に構築されたこと(構築性)を踏まえて根本的に検討し、行政活動においてどのような形で諸個人と自治体が結びついているのか(諸個人ー自治体間関係)の実態を解明する。 | KAKENHI-PROJECT-19H01443 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H01443 |
匂いの絆:その刷り込みのメカニズム | 雌マウスに形成される交配雄フェロモンの記憶のシナプス機構、鋤鼻ニューロンと副嗅球ニューロンの共培養によるニューロンの成熟分化、シナプス形成、及び幼若ラットの匂い学習機構を解析し、以下の結果を得た。1.フェロモン記憶の基礎過程としてのLTPの入力特異性と可逆性スライス標本を用いて、副嗅球の僧帽細胞から顆粒細胞へのグルタミン酸作動性シナプス伝達に誘導される長期増強(LTP)に入力特異性と可逆性が認められた。2.僧帽細胞から顆粒細胞へのシナプス伝達のalpha2受容体を介した抑制のメカニズムノルアドレナリンは僧帽細胞のG_<i/o>を活性化して電位依存性Ca^<2+>チャネルを抑制するほか、Ca^<2+>流入後の放出過程をも抑制することが判明した。3.alpha2受容体の活性化によるシナプス伝達のハイ・フィデリティの達成alpha2受容体の活性化は副嗅球の僧帽細胞から顆粒細胞へのシナプス伝達のハイ・フィデリティを達成させた。これがLTP誘導促進の鍵となっているものと考えられる。4.副嗅球ニューロンとの共培養による鋤鼻ニューロンの成熟と機能的シナプスの形成副嗅球ニューロンとの共培養によって鋤鼻ニューロンが成熟分化し、3週間の共培養により両ニューロン間に機能的なシナプスが形成されることが判明した。5.幼若ラットにおける匂いの嫌悪学習とLTPとの相関匂いと電撃の対提示による匂いの嫌悪学習の成立には電撃による嗅球のbeta受容体の活性化が不可欠であった。スライス標本を用いて、嗅球の僧帽細胞から顆粒細胞へのグルタミン酸作動性シナプス伝達に誘導されるLTPもbeta受容体によって制御された。この知見は、このLTPが匂い学習の基礎過程であることを示唆している。雌マウスに形成される交配雄フェロモンの記憶のシナプス機構、鋤鼻ニューロンと副嗅球ニューロンの共培養によるニューロンの成熟分化、シナプス形成、及び幼若ラットの匂い学習機構を解析し、以下の結果を得た。1.フェロモン記憶の基礎過程としてのLTPの入力特異性と可逆性スライス標本を用いて、副嗅球の僧帽細胞から顆粒細胞へのグルタミン酸作動性シナプス伝達に誘導される長期増強(LTP)に入力特異性と可逆性が認められた。2.僧帽細胞から顆粒細胞へのシナプス伝達のalpha2受容体を介した抑制のメカニズムノルアドレナリンは僧帽細胞のG_<i/o>を活性化して電位依存性Ca^<2+>チャネルを抑制するほか、Ca^<2+>流入後の放出過程をも抑制することが判明した。3.alpha2受容体の活性化によるシナプス伝達のハイ・フィデリティの達成alpha2受容体の活性化は副嗅球の僧帽細胞から顆粒細胞へのシナプス伝達のハイ・フィデリティを達成させた。これがLTP誘導促進の鍵となっているものと考えられる。4.副嗅球ニューロンとの共培養による鋤鼻ニューロンの成熟と機能的シナプスの形成副嗅球ニューロンとの共培養によって鋤鼻ニューロンが成熟分化し、3週間の共培養により両ニューロン間に機能的なシナプスが形成されることが判明した。5.幼若ラットにおける匂いの嫌悪学習とLTPとの相関匂いと電撃の対提示による匂いの嫌悪学習の成立には電撃による嗅球のbeta受容体の活性化が不可欠であった。スライス標本を用いて、嗅球の僧帽細胞から顆粒細胞へのグルタミン酸作動性シナプス伝達に誘導されるLTPもbeta受容体によって制御された。この知見は、このLTPが匂い学習の基礎過程であることを示唆している。 | KAKENHI-PROJECT-17021031 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17021031 |
超対称性と統一理論 | 超対称理論は統一理論のもっとも有力な候補である。弱電磁相転移pに際してバリオン数の非保存が起こる。もしもレプトン数が既にあれば、レプトン数がバリオン数に変換されることによって、現在の宇宙のバリオン数を説明できる可能性がある。この立場にたって、超対称統一理論で具体的に宇宙のバリオン数がどうなるかを計算した。CP非保存はもっとも謎に満ちた物理現象である。実験データとしては中性Kメソン以外にCP非保存は観測されていない。そこで、最小超対称統一理論で大統一のスケールでは湯川結合定数以外に複素パラメターがないという仮定に基づき、中性子の電気双極子能率を計算した。現在の実験の精度から二桁程度精度が上がれば観測に掛かる可能性があることを示した。一方、行列模型に対して繰り込み群を用いて二次元量子重力理論を研究した。我々は行列模型については、繰り込み群方程式が予想に反して非線形となることを発見した。さらに、一行列模型の場合だけでなく、二行列模型に対しても同様の非線形繰り込み群方程式が成り立つことを示した。具体的に臨界指数などの有用な情報を得ることができた。一方、量子重力のもう一つの定式化として2+ε次元での量子重力理論を研究した。特にディラトンと呼ばれるスカラー場がある場合が興味深い。我々はディラトン重力が非線形シグマ模型に結合している場合を取り上げ、繰り込みを実行した。超対称統一理論では超対称性の破れが大きな問題である。重力の中に埋め込めば超対称性の破れを与えるゲージ-ノ凝縮について、2次元超対称ゲージ理論を取り上げ、光円錐量子化を行った。数百個の状態の間のハミルトニアンを厳密に対角化することによって質量スペクトルを求めた。その際超対称性が保たれる正則化を行うことに成功した。超対称理論は統一理論のもっとも有力な候補である。弱電磁相転移pに際してバリオン数の非保存が起こる。もしもレプトン数が既にあれば、レプトン数がバリオン数に変換されることによって、現在の宇宙のバリオン数を説明できる可能性がある。この立場にたって、超対称統一理論で具体的に宇宙のバリオン数がどうなるかを計算した。CP非保存はもっとも謎に満ちた物理現象である。実験データとしては中性Kメソン以外にCP非保存は観測されていない。そこで、最小超対称統一理論で大統一のスケールでは湯川結合定数以外に複素パラメターがないという仮定に基づき、中性子の電気双極子能率を計算した。現在の実験の精度から二桁程度精度が上がれば観測に掛かる可能性があることを示した。一方、行列模型に対して繰り込み群を用いて二次元量子重力理論を研究した。我々は行列模型については、繰り込み群方程式が予想に反して非線形となることを発見した。さらに、一行列模型の場合だけでなく、二行列模型に対しても同様の非線形繰り込み群方程式が成り立つことを示した。具体的に臨界指数などの有用な情報を得ることができた。一方、量子重力のもう一つの定式化として2+ε次元での量子重力理論を研究した。特にディラトンと呼ばれるスカラー場がある場合が興味深い。我々はディラトン重力が非線形シグマ模型に結合している場合を取り上げ、繰り込みを実行した。超対称統一理論では超対称性の破れが大きな問題である。重力の中に埋め込めば超対称性の破れを与えるゲージ-ノ凝縮について、2次元超対称ゲージ理論を取り上げ、光円錐量子化を行った。数百個の状態の間のハミルトニアンを厳密に対角化することによって質量スペクトルを求めた。その際超対称性が保たれる正則化を行うことに成功した。弦理論の理解を深めるために、行列模型に対して繰り込み群を用いて二次元量子重力理論を研究した。中心電荷が1を越えるような物質場と相互作用するような解けない場合にも臨界指数などの有用な情報を得るために、繰り込み群理論が役立つはずである。我々はまず、一次元重力の離散的な模型であるベクトル模型について研究し、繰り込み群が成り立つことを証明した。さらに行列模型については、中心電荷が1以下の場合について、繰り込み群方程式を導くことに成功した。この繰り込み群方程式は予想に反して、非線形となることが我々の研究によって初めて分かった。一方、量子重力のもう一つの定式化として2+ε次元での量子重力理論がある。すなわち、二次元では重力が繰り込み可能になるはずだという点に着目して、高次元での量子重力を解析接続によって得ようという立場である。我々はこの理論にも、超対称性を取り入れて、2+ε次元での超重力理論を構成することを試みた。超対称統一理論で自然界を記述した場合に、特に宇宙の初期には超対称性の痕跡が残っている可能性が高い。我々は、電弱相転移でレプトン数がバリオン数に転化されるという考えに基づき、超対称統一模型で宇宙のバリオン数がどのような値になるかを考察した。統一理論の最有力候補である弦理論の理解を深めるために、行列模型に対して繰り込み群を用いて二次元量子重力理論を研究した。臨界指数などの有用な情報を得るために、繰り込み群理論が役立つはずである。既に我々が示したように、ベクトル模型に対しては通常の繰り込み群れ方程式が成り立つ。これに対して行列模型については、繰り込み群方程式は予想に反して、非線形となる。我々はさらに、一行列模型の場合だけでなく、二行列模型に対しても同様の非線形繰り込み群方程式が成り立つことを示すことに成功した。 | KAKENHI-PROJECT-05640334 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05640334 |
超対称性と統一理論 | 一方、量子重力のもう一つの定式化として2+ε次元での量子重力理論がある。すなわち、二次元では重力が繰り込み可能になるはずだという点に着目して、高次元での量子重力を解析接続によって得ようという立場である。ところが、重力理論は二次元では位相的理論となるために、通常のアインシュタイン型の理論では二次元で不連続となる。我々は、ディラトンを含む重力理論は二次元以外では重力に一つ余分なスカラー場がある理論と同等であることに着目し、ディラントを含む重力理論を用いることを提唱した。実際に、ディラトン重力理論の1ループ繰込みを行い、二次元への極限が連続的であることを示し、固定点を求めることに成功した。統一理論の最有力候補である弦理論の理解を深めるために、行列模型に対して繰り込み群を用いて二次元量子重力理論を研究した。我々は行列模型については、繰り込み群方程式が予想に反して非線形となることを発見したが、さらに一行列模型の場合だけでなく、二行列模型に対しても同様の非線形繰り込み群方程式が成り立つことを示した。具体的に臨界指数などの有用な情報を得ることができた。一方、量子重力のもう一つの定式化として2+ε次元での量子重力理論がある。すなわち、二次元では重力が繰り込み可能になるはずだという点に着目して、高次元での量子重力を解析接続によって得ようという立場である。特にディラトンと呼ばれるスカラー場がある場合が興味深い。我々はディラトン重力が非線形シグマ模型に結合している場合を取り上げ、繰り込みを実行した。超対称統一理論では超対称性の破れが大きな問題である。重力の中に埋め込めば超対称性の破れを与えるギ-ジ-ノ凝縮について、超対称ゲージ理論を用いて考察した。具体的な模型としては2次元超対称ゲージ理論を取り上げ、方法としては光円錐量子化の方法を用いた。数百個の状態の間のハミルトニアンを厳密に対角化することによって質量スペクトルを求めた。その際超対称性が保たれる正則化を行うことに成功した。CPの破れを検証し得る実験として中性子電気双極能率がある。超対称模型でこの値がどのようになるかを最小模型で検討し、現在の実験の精度よりも数桁精度を上げれば観測に掛かる可能性があることを示した。 | KAKENHI-PROJECT-05640334 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05640334 |
超音波診断装置を利用した閉塞性睡眠時無呼吸の上気道評価 | 成人の閉塞性睡眠時無呼吸の原因は多岐にわたり、さらに自然睡眠下での形態学的評価が困難であることから、上気道の閉塞部位を特定することは容易でない。超音波診断装置の利点は、非侵襲的で安価、動的な情報をリアルタイムに捉えることができ、ベッドサイドでも使用可能なことである。本研究の目的は、超音波診断装置を用いて、自然睡眠下での上気道の形態学的評価と閉塞部位の評価を行うことである。前年度までの研究において、睡眠時の頸部を縦断面で描出するにはマイクロコンベックス型の探触子が最適であるものの、睡眠中の上気道の観察および解析には探触子の固定が重要であることが明らかとなり、より軽量で小型な術中エコー用の探触子と粘着性のカプラを用いることとし、検査手技を一部変更した。最終年度である平成30年度は、前年度までに獲得した検査手技をもとに、閉塞性睡眠時無呼吸疑いの成人に対し、終夜睡眠ポリグラフィーと頸部超音波検査を同時に施行して、睡眠段階および呼吸波形と超音波検査所見を比較検討した。その結果、閉塞性呼吸イベントにおいて、舌骨とその周辺の構造物が吸気相で後方に引き込まれる所見を認めた。動画解析ソフトを用いて舌骨を追尾すると、その動きは終夜睡眠ポリグラフィーでの努力性呼吸の増大とともにダイナミックになり、舌骨の動きは努力性呼吸の指標となる可能性が示唆された。また、舌根部の重心が後方に移行していく所見を認め、頸部超音波検査によって舌根沈下を捉えることができる可能性が示唆された。成人の閉塞性睡眠時無呼吸の原因は多岐にわたり、睡眠時の上気道閉塞部位を特定することは容易でない。簡便な手法で閉塞部位の予測が可能となれば、適切な治療選択と治療成績の向上にも繋がると思われる。超音波診断装置の利点は非侵襲的で安価、動的な情報も捉えることができ、ベッドサイドでも使用可能なことである。本研究の目的は、超音波診断装置を用いて、自然睡眠下での上気道の形態評価と閉塞部位の評価を行うことである。まずは超音波診断装置のBモードで頸部を観察し、頸部構造の同定を行った。結果、舌や舌筋、舌骨、声帯など多くの構造物の描出が可能で、動的な情報も得ることができた。しかし空気や超音波の反射が強い気管の背側に位置する構造物については描出困難であった。探触子の選択については、覚醒時の頸部を進展させた状態で探触子を正中縦方向に当てる場合には、コンベックス型が頸部の構造に合っており、舌を含め幅広くかつ深部まで観察するのに適していた。しかし睡眠時においては、頸部の進展具合が上気道形態に影響を及ぼすため、頸部伸展させない手技で行う必要があった。検証の結果、視野幅は狭いがマイクロコンベックス型が最適と判断した。周波数などの設定については脂肪量が多い場合には周波数を低めに設定するなど、対象ごとに調整が必要であった。次に被検者に対して上気道の超音波検査を終夜睡眠ポリグラフィーと同時に行い、脳波をモニターしながら覚醒を促さないための手技を確認した。マイクロコンベックス型の探触子を用いて、人肌程度に温めたエコーゼリーを多量に使用することで、微小覚醒は生じるものの完全覚醒には移行しにくく、浅い睡眠であるStage12でも継続した観察が可能であった。音響的な減衰のおきないカプラの作成が難しく、研究開始時にやや遅れが生じた。しかし既製品のエコーゼリーを用いることによってその後の研究は順調に進んでいる。成人の閉塞性睡眠時無呼吸の原因は多岐にわたり、睡眠時の上気道閉塞部位を特定することは容易でない。簡便な手法で閉塞部位の予測が可能となれば、適切な治療選択と治療実績の向上にも繋がると思われる。超音波診断装置の利点は非侵襲的で安価、動的な情報も捉えることができ、ベッドサイドでも使用可能なことである。本研究の目的は、超音波診断装置を用いて、自然睡眠下での上気道の形態評価と閉塞部位の評価を行うことである。前年度の研究では、超音波診断装置で頸部の構造物が詳細に観察できることを確認でき、睡眠時の頸部を縦断面で描出するにはマイクロコンベックス型の探触子が最適と判断した。実際に短時間記録においてはこの測定法で問題は生じなかった。しかし実験と情報収集を行う過程で、長時間記録と探触子の固定が重要と判断し、研究計画を一部変更する必要があった。従来のマイクロコンベックス型は固定に不向きであり、さまざまな探触子と固定方法を用いて検証した結果、非常に軽量で小型である術中エコー用の探触子と粘着性のカプラによって長時間固定に成功した。探触子を固定できたことで、検査者の介入が不要となり、超音波検査中の脳波上覚醒を最小限に抑えることに成功した。さらに動画解析においては、手動の検査では探触子を当てる部位にずれが生じることが課題であったが、探触子の固定によりデータの質も向上した。現在は、閉塞性睡眠時無呼吸の患者を対象に、終夜睡眠ポリグラフィー下で睡眠段階や呼吸イベントを確認しながら、同時に上気道超音波検査と動画記録も行い、データを収集している。睡眠時の呼吸の動的評価には、上気道超音波検査の長時間記録と探触子の固定が重要と判断し、研究計画を一部変更した。 | KAKENHI-PROJECT-16K19194 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K19194 |
超音波診断装置を利用した閉塞性睡眠時無呼吸の上気道評価 | 長時間記録において、所持しているコンベックス型とリニア型の探触子では固定が困難な上、大きく重量もあり睡眠および体位変換の妨げになった。検証の結果、小型で固定のしやすい特殊な探触子を用いることとしたが、入手に時間を要したため、当初の計画から遅れが生じた。成人の閉塞性睡眠時無呼吸の原因は多岐にわたり、さらに自然睡眠下での形態学的評価が困難であることから、上気道の閉塞部位を特定することは容易でない。超音波診断装置の利点は、非侵襲的で安価、動的な情報をリアルタイムに捉えることができ、ベッドサイドでも使用可能なことである。本研究の目的は、超音波診断装置を用いて、自然睡眠下での上気道の形態学的評価と閉塞部位の評価を行うことである。前年度までの研究において、睡眠時の頸部を縦断面で描出するにはマイクロコンベックス型の探触子が最適であるものの、睡眠中の上気道の観察および解析には探触子の固定が重要であることが明らかとなり、より軽量で小型な術中エコー用の探触子と粘着性のカプラを用いることとし、検査手技を一部変更した。最終年度である平成30年度は、前年度までに獲得した検査手技をもとに、閉塞性睡眠時無呼吸疑いの成人に対し、終夜睡眠ポリグラフィーと頸部超音波検査を同時に施行して、睡眠段階および呼吸波形と超音波検査所見を比較検討した。その結果、閉塞性呼吸イベントにおいて、舌骨とその周辺の構造物が吸気相で後方に引き込まれる所見を認めた。動画解析ソフトを用いて舌骨を追尾すると、その動きは終夜睡眠ポリグラフィーでの努力性呼吸の増大とともにダイナミックになり、舌骨の動きは努力性呼吸の指標となる可能性が示唆された。また、舌根部の重心が後方に移行していく所見を認め、頸部超音波検査によって舌根沈下を捉えることができる可能性が示唆された。上気道の超音波検査を終夜睡眠ポリグラフィーと同時に行い、無呼吸や閉塞部位の評価において有用な測定部位と所見を明らかにする。記録したデータを解析し、閉塞部位や無呼吸イベントの種類による違いなどについても検証する。画像解析では探触子の固定が重要となる可能性があり、解析がうまくいかない場合には固定方法の検討も必要と考えている。引き続き、上気道の超音波検査を終夜睡眠ポリグラフィーと同時に施行して、データ解析し無呼吸や閉塞部位の評価に有用な所見を明らかにする。さらに超音波画像の動画解析を行い、閉塞部位や無呼吸イベントの種類による違いなどについても検討していく。また覚醒時の超音波検査により得られる頸部の解剖所見と、無呼吸の重症度との関連性についてもデータ収集し検討を行う予定である。平成28年度に必要とした物品や消耗品は現有する設備で対応可能であったことと、カプラの作成が困難であったため。探触子の固定が必要となったが、固定器具の作成に経費がかからなかったため、次年度使用額が生じた。未使用額は当初予定していた研究計画の遂行に使用する。未使用額は次年度交付額と合わせて使用し、当初予定していた研究計画を遂行する。解析結果で探触子の固定が問題となった場合は固定器具の作成が必要になる。学会参加と成果発表、論文投稿料等にも使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-16K19194 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K19194 |
亡命知識人と戦後アメリカ-越境と相互浸透 | 本研究は、1930年代に亡命者としてアメリカに渡ったヨーロッパ系知識人たちが、第二次世界大戦後にアメリカ知識人およびアメリカ文化・社会との葛藤、対話、交渉などを経て、独自の学問研究、および創作活動を行っていく過程を検証した。国家、言語、文化、学問領域の越境と相互浸透の過程で、異種混交的な斬新なスタイルや言語空間が生み出されていく経過と、その背景を、思想、文学、映画学という三つの側面から分析した。我々は、こうしたプロセスが、第二次世界大戦から冷戦へと続く緊張した文化状況のなかで進行したことに注目し、不確実性と周縁性のなかで常に生きることを強いられた亡命知識人が、流動的な国際情勢のなかに身を置きつつ、同時にアメリカの論壇、文壇、映画の常識を破るような新たな境地を開いていったことを、それぞれに立証していった。本研究は、1930年代に亡命者としてアメリカに渡ったヨーロッパ系知識人たちが、第二次世界大戦後にアメリカ知識人およびアメリカ文化・社会との葛藤、対話、交渉などを経て、独自の学問研究、および創作活動を行っていく過程を検証した。国家、言語、文化、学問領域の越境と相互浸透の過程で、異種混交的な斬新なスタイルや言語空間が生み出されていく経過と、その背景を、思想、文学、映画学という三つの側面から分析した。我々は、こうしたプロセスが、第二次世界大戦から冷戦へと続く緊張した文化状況のなかで進行したことに注目し、不確実性と周縁性のなかで常に生きることを強いられた亡命知識人が、流動的な国際情勢のなかに身を置きつつ、同時にアメリカの論壇、文壇、映画の常識を破るような新たな境地を開いていったことを、それぞれに立証していった。本研究は、1930年代に亡命者としてアメリカに渡ったヨーロッパ系知識人たらが、第二次世界大戦後にアメリカ社会・文化との葛藤、対話、交渉などを経て、独自の学問研究および創作活動を行っていく過程を検証するものである。国家、言語、文化、学問領域の越境と相互浸透の過程のすかで異種混淆的で斬新なスタイルが生み出されていく経過とその背景を我々は、思想、文学、大衆文学という三つの側面から分析した。研究代表者の前川は、ロックフェラー文書館に保存された資料を手掛かりに、1950年代の冷戦の時代にロックフェラー財団の援助を受けた三つのプロジェクトへの亡命知識人の参加とその政治的背景を追うと共に、新たな学際的研究の可能性を分析した。ニコラス・ナボコフやマイケル・ポランニーなどの参加した文化的自由会議の活動、経済学者ゲールハート・コルムを中心とした競争的共存の経済学研究、フランツ・ノイマン、ハンナ・アーレントなどの学際的研究を支援した法・政治哲学プログラムなどを扱った英文リポートは、ロックフェラー文書館のウェッブ・サイトhttp://www.rockarch.org/publications/resrep/rronlinealpha.phpに公開される。文学の分野では、分担研究者の若島が、ウラジーミル・ナボコフの未完長篇The Original of Lauraを論じた2篇の論文を発表した。そのうら、「彼方の青空」の英語版"A Blue Sky Beyond"はフランスの文芸誌Revuedex deux mondesで仏訳出版される予定である。また、2010年3月に京都で開催された国際ナボコフ学会ではLolitaを論じる研究発表を行った。さらに大衆文化の分野では、分担研究者の加藤が文化の越境の問題を映像文化の分析を通して詳細に分析した『アニメーションの映画学』を上梓すると共に、古典的ハリウッド映画の1920年代の日本映画に対する影響(カメラワーク、編集、物語構成等)のリサーチを通して、文化的越境、相互浸透に関する理論的かつ実証的枠組み研究を行った。本研究は、1930年代に亡命者としてアメリカに渡ったヨーロッパ系知識人たちが、第二次世界大戦後に独自の学問研究および創作活動を行っていく過程を検証するものである。言語、文化、学問領域の越境と相互浸透の過程のなかで異種混淆的で斬新な思考スタイルや言語空間が創出されていく経過とその背景を、思想、文学、映画という三つの側面から分析した。研究代表者の前川は、マサチューセッツ大学歴史学教授のDarwin Stapleton氏を招聘して「越境と相互浸透-多文化社会アメリカの歴史的背景と現状」をテーマにしたワークショップを開催した。"An Ambivalent New Home : the United States and Refugee Scholars, 1933-1950"という題の講演があり、学内外の研究者が参加して活発な討論がなされた。さらに、神学者・哲学者のパウル・ティリッヒがニューヨークの亡命知識人コミュニティで演じた役割を、ハーバード大学所蔵の資料を基に分析し、その成果は2点の論文にまとめられた。文学の分野では、亡命ロシア人作家ナボコフの研究を一貫して行ってきた分担研究者の若島が、2010年に京都で行われたナボコフ国際学会の報告書を英文の共編著としてまとめ、またナボコフの遺作『ローラのオリジナル』については、論文をフランスの批評誌に発表した。さらに、この遺作の本邦初の翻訳を、長い解題を付して作品社から発表した。さらに映画学の分野では、分担研究者の加藤が、英国、ドイツからの第二次世界大戦前の亡命映画人および19世紀末のユダヤ系移民の末裔からなるハリウッド映画史上最も突出した映画作家たちの芸術作品をとりあげ、社会文化的消費財としての映画のアメリカ文化・社会のコンテクストを踏まえて、多孔質的テクスト分析を行った。 | KAKENHI-PROJECT-21520247 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21520247 |
亡命知識人と戦後アメリカ-越境と相互浸透 | これによって、アメリカの巨大地場産業としての映画産業が芸術とイデオロギーにいかに貢献したかを解明した。本研究は、1930年代に亡命者としてアメリカに渡ったヨーロッパ系知識人たちが、第二次世界大戦後にアメリカ社会・文化との葛藤、対話、交渉などを経て、独自の学問研究および創作活動を行っていく過程を検証するものである。国家、言語、文化、学問領域の越境と相互浸透の過程で、異種混淆的で斬新なスタイルが生み出されていく経過とその背景を、思想、文学、映画学という三つの側面から分析した。研究代表者の前川は、アメリカ学会の反知性主義に関するシンポジウムで、ホーフスタッターらのアメリカ知識人がアドルノやフロムなどの亡命社会科学者から受けた影響関係に光を当て、亡命知識人のマルクス主義的な社会学的知見とフロイト主義的な精神分析的知見をアメリカの歴史家および社会学者が受容していった経過、さらに亡命知識人がナチズムの研究から発展させた大衆文化論がアメリカでいかなる変容を遂げるかを分析しようとした。同時に、南部の大学で教鞭をとった知られざる亡命知識人の生き方や思想に焦点を当て、亡命知識人研究の幅を広げることを目指した。文学の分野では、若島が、昨年3月の京都開催のナボコフ国際学会における発表を日本語にまとめたものを、共編著書『書きなおすナボコフ、読みなおすナボコフ』に収録された論文「『ロリータ』と英国大衆小説」として発表した。また、今年の1月にニュージーランドのオークランド大学で開催されたナボコフ国際学会において、ナボコフの生前は発表されなかった未完の長編『ローラのオリジナル』からナボコフの著作全体を見返すという視点に基づいた研究発表を行った。また、招待講演4件を含めた7件の学会発表において、本研究のキーワードでもある「越境」とナボコフの創作活動との有機的関係に迫った。映画学の分野では、加藤が、日本映画学会会長としてアメリカ映画研究を推進し、アメリカの映画史の中で重要な歴史的役割を担った亡命知識人にも光を当てた。とりわけ2011年度は、1900年代初頭から1950年代末までのアメリカ映画の主要ジャンルであった「西部劇映画」と、世界映画史において最初期(1895年)から20世紀を経て21世紀にいたるまで変遷し続けている広義のジャンル映画としての「列車映画」との関係を、アメリカの近代技術と文化および西部開拓史の相互連関、さらに芸術映画と大衆文化の観点から分析した。2011年度が本研究実施の最終年度にあたることから、研究代表者と分担者は、こうした個別の研究を踏まえながら、戦後の亡命知識人が、アメリカ知識人および大衆社会に対して親和と反発のアンビバレントな関係をもちながら、逆にその周縁的で批判的な視座故にアメリカの論壇、文壇、映画の常識を破るような新たな分野を開拓していったことに関して、それぞれの知見を交換し、個別研究の相互深化を図った。 | KAKENHI-PROJECT-21520247 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21520247 |
大学「大衆化」の日本的構造と大衆化大学の経営行動に関する総合的研究 | 高等教育の量的拡大に伴って、現在我が国の高等教育はあらゆる面で「大衆化」への対応に追われている。にもかかわらず、これまでの大学研究はなによりも「学問の府」としての大学が前提とされ、とかく学術研究や人材育成の問題に関心が偏りがちであった。といっても、大衆化がこれだけ進んだ最近では大衆化の問題にも関心が向けられなかった訳ではないが、それとてエリート大学、就中伝統ある国立大学に焦点が置かれていた。これに対して、我々は次のような認識に基づいて、この問題にアプローチしようとした。すなわち、今日の高等教育の問題は学術研究に劣らず国民大衆の教育問題である。大学の大衆化は在学者の8割近くを占める私学が中心的役割を果してきた。そうしたことからも窺えるように、我が国の高等教育大衆化には固有のメカニズムが存在する。むろんそれにはアメリカの後を追うという面があることは否定しないが、同時にアジア諸国と共通する面があるのではないか。そうした見地から、この研究では以下のことを研究課題とした。(1)高等教育拡大の全体像、特に大衆化の担い手となった私学の拡大メカニズムを明らかにする。(2)大衆化が我が国高等教育全体にいかなる影響を及ぼすかを吟味する。(3)大衆化に伴う教育並びに経営上の諸問題とそれに対する個別大学の対応を調査する。(4)諸外国、特にアメリカ及びアジア諸国との比較において大学大衆化の日本的特質を抽出する。個々のテーマの研究成果は本年度刊行された研究報告書『大学「大衆化」の日本的特質と大衆化大学の経営行動』を参照されたい。そこには日本ではじめて大学大衆化が論じられた1960年代とはだいぶ違った様相が確認できる筈である。そしてそれはアメリカともアジアの各国とも違う「日本の大学大衆化」を示している。高等教育の量的拡大に伴って、現在我が国の高等教育はあらゆる面で「大衆化」への対応に追われている。にもかかわらず、これまでの大学研究はなによりも「学問の府」としての大学が前提とされ、とかく学術研究や人材育成の問題に関心が偏りがちであった。といっても、大衆化がこれだけ進んだ最近では大衆化の問題にも関心が向けられなかった訳ではないが、それとてエリート大学、就中伝統ある国立大学に焦点が置かれていた。これに対して、我々は次のような認識に基づいて、この問題にアプローチしようとした。すなわち、今日の高等教育の問題は学術研究に劣らず国民大衆の教育問題である。大学の大衆化は在学者の8割近くを占める私学が中心的役割を果してきた。そうしたことからも窺えるように、我が国の高等教育大衆化には固有のメカニズムが存在する。むろんそれにはアメリカの後を追うという面があることは否定しないが、同時にアジア諸国と共通する面があるのではないか。そうした見地から、この研究では以下のことを研究課題とした。(1)高等教育拡大の全体像、特に大衆化の担い手となった私学の拡大メカニズムを明らかにする。(2)大衆化が我が国高等教育全体にいかなる影響を及ぼすかを吟味する。(3)大衆化に伴う教育並びに経営上の諸問題とそれに対する個別大学の対応を調査する。(4)諸外国、特にアメリカ及びアジア諸国との比較において大学大衆化の日本的特質を抽出する。個々のテーマの研究成果は本年度刊行された研究報告書『大学「大衆化」の日本的特質と大衆化大学の経営行動』を参照されたい。そこには日本ではじめて大学大衆化が論じられた1960年代とはだいぶ違った様相が確認できる筈である。そしてそれはアメリカともアジアの各国とも違う「日本の大学大衆化」を示している。本研究の目的は、最近新設された私立の大学・短大を主要な対象にして、その量的拡大の過程と、経営・教育の両面に見られる「大衆化」の具体的特質を調査・分析することである。近年・学校・大学の系列化の進展はめざましく、ひとつの学校法人が多数の学校・大学を傘下に収めていることはめずらしくない。私学が高等教育人口の8割を占めるわが国にあっては、このような学校・大学の構造は大学の大衆化、高等教育の量的拡大ときわめて関連が深いと推察される。本年度は3カ年計画の第1年度に当たり、定例の研究うちあわせ会を軸に下記のような研究作業を行った。1.現場の専門家および高等教育の研究者からのヒアリング私学補助、大学入試、専修学校、高等教育計画、短期大学、アジアの高等教育などのテ-マについて講師を招き、計6回のヒアリングを実施した。2.大学・短大の個別デ-タの入力と所在地のマップ化1960年以降に設置された大学・短大の設置年度、所在地、学部・学科の内容および改組・改称年度等を入力した。なお、デ-タベ-スは第2年次に完成予定である。3.地方の大学・短大等への訪問聞き取り調査(本調査は次年度への継続)1980年以降に設置された大学を対象に下記の7校の調査を行った(姫路獨協大学、石巻専修大学、いわき明星大学、常磐大学、ミネソタ州立秋田校、筑紫女学園大学、福岡女学院大学)。4.大学・短大等の学生募集要項、カリキュラム等の資料収集調査の実施1970年以降に設置された大学96校、短大118校を対象に平成3年3月に調査を実施した。 | KAKENHI-PROJECT-02301044 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02301044 |
大学「大衆化」の日本的構造と大衆化大学の経営行動に関する総合的研究 | 本研究の目的は、最近新設された私立の大学・短大を主要な対象にして、その量的拡大の過程と、経営・教育の両面にみられる「大衆化」の具体的特質を調査、分析することである。私学が高等教育人口の8割を占めるわが国にあっては、高等教育の大衆化、量的拡大を分析するうえで新設私立大学の存在はきわめて重要な構造的位置を占めていると考えられる。本年度は3ヵ年計画の第2年次にあたり、定例の研究会を軸に下記のような調査研究を実施した。(1)研究会及び専門家のヒアリング各研究分担者からの研究報告のほか「女子の高等教育進学率の上昇」などのテ-マについて、外部の研究者を招き公開の研究会を催した。(2)大学・短大の個別デ-タベ-スの作成19751991年に限定していた学校法人別のデ-タを19451991年に拡張してデ-タ入力を行った。また、個別の大学・短大のデ-タについては学部・学科構成、設置年度、定員等の入力を完了した。(3)大学・短大等への訪問聞き取り調査(継続)1985年以降に設置された大学のうち、特に同一学校法人傘下の系列校のパタ-ンに注目し、特徴的な大学・短大を選びだして調査を進めた。1950年代には戦前の高等教育機関が大学・短大を設置するパタ-ンが多かったが、196070年代では既設の大学・短大が学部、学科を増やし、大規模化する事例が多くなる。最近は、いわゆる公私協力方式の設置が普及したためか、一つの学校法人が複数の大学・短大を設置する、あるいは中等教育以下の学校しか持たなかった法人が大学・短大を設置するような事例が増えている。なお、今年度、訪問調査を行った大学・短大は高岡法科大学、吉備国際大学、流通科学大学、小松短大、七尾短大、東京理科大学山口短大、東海大学福岡短大などである。高等教育の量的拡大に伴って、現存我が国の高等教育はあらゆる面で「大衆化」への対応に追われている。にもかかわらず、これまでの大学研究は何よりも「学問の府」として大学が前提とされ、とかく学術研究や人材育成の問題に関心が偏りがちであった。といっても、大衆化の問題にも関心が向けられなかった訳ではないが、それとてエリート大学就中伝統ある国立大学に焦点が置かれていた。これに対して、我々は次のような認識に基づいて、この問題にアプローチしようとした。すなわち、今日の高等教育の問題は学術研究に劣らず国民大衆の教育問題である。大学の大衆化は在学者の8割近くを占める私学が中心的張割を果してきた。そうしたことからも窺えるように、我が国の高等教育大衆化には固有のメカニズムが存在する。むろんそれにはアメリカの後を追うという面があることは否定しないが、同時にアジア諸国と共通する面があるのではないか。そうした見地から、この研究では以下のことを研究課題とした。(1)高等教育拡大の全体像、特に大衆化の担い手となった私学の拡大メカニズムを明らかにする。(2)大衆化が我が国高等教育全体にいかなる影響を及ぼすかを吟味する。(3)大衆化に伴う教育並びに経営上の諸問題とそれに対する個別大学の対応を調査する。(4)諸外国、特にアメリカ及びアジア諸国との比較において大学大衆化の日本的特質を抽出する。個々のテーマの研究成果は本年度刊行された研究報告書『大学「大衆化」の日本的特質と大衆化大学の経営行動』を参照されたい。そこには日本ではじめて大学大衆化が論じられた1960年代とはだいぶ違った様相が確認できる筈である。 | KAKENHI-PROJECT-02301044 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02301044 |
アルキル―アルキルカップリング反応の集積化による脂質合成手法の開拓 | 平成28年度に開発したcis-およびtrans-シクロプロパン含有ビルディングブロックを用いて各種シクロプロパン含有脂肪酸類の効率的合成手法を開発した。さらに、cis-シクロプロパン含有ビルディングブロックを用い、二官能性のビルディングブロックと逐次的にアルキルーアルキルカップリング反応により連結することにより、超長鎖脂肪酸の一種であるミコール酸の形式全合成を達成した。また、長鎖アルキル鎖の連結反応では、基質の溶解度の低下が反応効率に悪影響を与えることより、最適な反応条件の探索も併せて行った。本研究の基盤技術であるアルキルーアルキルクロスカップリング反応についても検討を進め、安価な鉄触媒系を見出した。また、以前に報告していたコバルト触媒を最適化することにより、フッ化アルキルをアルキル化剤とするアルキルーアルキルクロスカップリング反応を実現した。本手法は、既存の遷移金属触媒反応と相補的かつオルソゴナルな化学選択性を示すことより、従来手法と組合せた新規炭素骨格構築手法を提供するものと期待している。これまでに開発した不飽和炭化水素のアルキル化による長鎖アルキル鎖の構築について反応機構研究を実施し、その触媒活性種を明らかにするとともに、位置選択性発現メカニズムを実験および理論計算を用いて明らかにした。以上のように当初の目的であったcis-およびtrans-シクロプロパン含有ビルディングブロックなどの合成素子を開発し、それを用いた各種シクロプロパン含有脂肪酸類およびシクロプロパン含有天然化合物の効率的合成手法を開発した。新規アルキルーアルキルクロスカップリング反応を多数開発し、飽和炭化水素骨格の構築手法を確立した。これらの手法は、既存の遷移金属触媒反応と相補的かつオルソゴナルな化学選択性を示すことより、反応集積化の手法として利用できると期待できる。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。シクロプロパン含有脂肪酸類の合成:シクロプロパンは脂肪酸の骨格的特徴である不飽和結合の生物学的等価である。すでにcis-オレフィンを自在に導入する手法を開発していることより、本研究ではシクロプロパン含有脂肪酸の合成から着手した。シクロプロパンを導入する上で問題となることは、オレフィンとは異なり、シクロプロパンが不斉炭素を有することである。そこで、アリルアルコールの不斉シクロプロパン化に対応したシクロプロパン含有ビルディングブロックの合成を検討した。その結果、安価はホモプロパルギルアルコールより5段階でシクロプロパンを有し、両端にクロスカップリング反応によりアルキル鎖を導入可能な官能基を有するビルディングブロックを効率よく合成するルートを確立した。次にニッケル触媒を用いたクロスカップリング反応によりシクロプロパン含有脂肪酸の合成を検討した。ビルディングブロックとアルキルグリニャール試薬とのクロスカップリング反応と続くブロモアルカン酸との二段階目のクロスカップリング反応によりシクロプロパンを望む位置に有する脂肪酸を網羅的に合成できることを示した。イノシトールリン脂質の合成: EhPlaは炭素数30の不飽和脂肪酸を有するイノシトールリン脂質である。そこで、クロスカップリング反応を利用した脂肪酸の合成を合成ルートに組み込むことによりその全合成を達成した。本研究は慶應義塾大学藤本教授(A01班公募班員)、大阪大学深瀬教授(領域代表)との共同研究として実施した。不飽和炭化水素のアルキル化による長鎖アルキル鎖の構築:不飽和化合物のアルキル化反応の検討を行った。その結果、ニッケル触媒を用いることによりブタジエンの二量化を伴ったアルキル化反応を見出した。また、研究の過程で、アレンの異性化を伴ったC-H結合の切断を伴うアルキル化反応を新たに見出した。cis-およびtrans-シクロプロパン含有ビルディングブロックを新たに開発した。これまでに、cis-およびtrans-オレフィンの導入手法も確立している。さらに、水酸基の立体選択的導入を可能とするビルディングブロックについても安価なリンゴ酸より誘導可能なビルディングブロックを開発しており、これらを用いたクロスカップリング反応による炭素鎖伸長についても着実に成果が得られている。以上の様に、脂質中の脂肪酸部位に見られる部分構造であるオレフィン、シクロプロパン、水酸基を導入する手法については概ね確立した。また、平成29年度から研究着手を予定していた超長鎖脂肪酸の一種であるミコール酸の全合成研究にも平成28年度に予備検討に着手しており予想を上回る進展が見られた。不飽和化合物のアルキル化反応に関しては当初想定していたアレンのアルキル化反応を検討した結果、予想に反して異なる様式のアルキル化反応が進行することを見出した。すなわちアレンのハロゲン化アルキルによるヒドロアルキル化反応により炭素鎖の伸長を伴いcis-アルケンが生成すると想定していたが、アレンの不飽和度を保持したまま不飽和結合の異性化を伴いアルキル化された生成物が得られることを明らかにした。共同研究の成果として、慶應義塾大学藤本教授(A01班公募班員)、大阪大学深瀬教授(領域代表)との共同研究の成果がOrg. Biomol. Chem.誌に掲載された。また、九州大学大嶋教授(A03班計画班員)より触媒の提供を受けるなど共同研究の取り組みも幾つか推進中である。平成28年度に開発したcis-およびtrans-シクロプロパン含有ビルディングブロックを用いて各種シクロプロパン含有脂肪酸類の効率的合成手法を開発した。さらに、cis-シクロプロパン含有ビルディングブロックを用い、二官能性のビルディングブロックと逐次的にアルキルーアルキルカップリング反応により連結することにより、超長鎖脂肪酸の一種であるミコール酸の形式全合成を達成した。 | KAKENHI-PUBLICLY-16H01150 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-16H01150 |
アルキル―アルキルカップリング反応の集積化による脂質合成手法の開拓 | また、長鎖アルキル鎖の連結反応では、基質の溶解度の低下が反応効率に悪影響を与えることより、最適な反応条件の探索も併せて行った。本研究の基盤技術であるアルキルーアルキルクロスカップリング反応についても検討を進め、安価な鉄触媒系を見出した。また、以前に報告していたコバルト触媒を最適化することにより、フッ化アルキルをアルキル化剤とするアルキルーアルキルクロスカップリング反応を実現した。本手法は、既存の遷移金属触媒反応と相補的かつオルソゴナルな化学選択性を示すことより、従来手法と組合せた新規炭素骨格構築手法を提供するものと期待している。これまでに開発した不飽和炭化水素のアルキル化による長鎖アルキル鎖の構築について反応機構研究を実施し、その触媒活性種を明らかにするとともに、位置選択性発現メカニズムを実験および理論計算を用いて明らかにした。以上のように当初の目的であったcis-およびtrans-シクロプロパン含有ビルディングブロックなどの合成素子を開発し、それを用いた各種シクロプロパン含有脂肪酸類およびシクロプロパン含有天然化合物の効率的合成手法を開発した。新規アルキルーアルキルクロスカップリング反応を多数開発し、飽和炭化水素骨格の構築手法を確立した。これらの手法は、既存の遷移金属触媒反応と相補的かつオルソゴナルな化学選択性を示すことより、反応集積化の手法として利用できると期待できる。上記の如く当初計画していたビルディングブロックの合成ルートの確立およびそれを用いたクロスカップリング反応によるアルキル鎖の構築については順調に進展しており、今後はその適用範囲拡大に取り組むことにより当初想定した成果が得られると考えている。また、初年度の検討の結果幾つかの問題点も明らかにした。具体的には炭素数30程度までアルキル鎖を伸長した段階で化合物の溶解性が極端に低下することが合成上大きな問題となることを明らかにした。次年度の研究開始に当たってはこの問題の早期解決が必要であると考えている。反応温度や反応溶媒の最適化により問題の解決を図る。不飽和結合のアルキル化反応に関しては当初の想定とは異なる反応生成物が得られることを明らかにした。見出した反応は、通常の合成反応では困難な炭素骨格を効率よく与えることより、次年度も継続して取り組む予定である。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-16H01150 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-16H01150 |
食の安全と貿易自由化の政策デザインへの計量経済分析の応用 | 家禽類・家畜の伝染病などに対する禁輸措置、農薬等の残留量規制などの食品安全規制は世界貿易や各国経済への影響は大きい一方、消費者の食の安全のため不可欠である。本研究は食品安全規制に対して便益と費用の両面から定量分析し政策評価を行った。本研究では食品安全規制の食品貿易への影響の分析、消費者データによる支払意思額の分析や特定の輸入国に対して原産地分化型需要システム分析を行った。これらにより、食品安全基準の厳格化は貿易の減少を引き起こすこと、また、消費者はより高い輸入食品の安全性に価値を見出すため、輸入食品に対する安全基準の厳格化(緩和)により輸入需要が促進(抑制)されること、などが示された。平成25年度においては、研究の目的及び実施計画に沿って1、平成24年度に行った消費者の食品安全意識アンケートのデータ分析を補強するために平成25年度に再度アンケート調査の実施と再分析、2、農産物における農薬基準、動物医薬品基準データによる多国間バイラテラルデータ分析、3、ベトナム・マレーシア企業データによる技術的貿易措置の企業行動への影響の分析、4、ベトナム企業データによる企業存続への効果の分析、5、ベトナム企業データによる安全規制、環境基準(ISO14001)等の企業業績への影響の分析、6、16途上国の企業データを用いた技術的貿易措置の企業行動への影響の分析を行った。1については2回目のアンケートデータを加え、より精緻な分析手法を検討し結果を得た。とりわけ牛肉においてはBSE発生国や放射能汚染地域の生産に対する負の支払意思額、動物医薬品基準の準拠に対しては正の支払意思額が観察された。2については他の研究者のコメントなどを得ながら規制データの指標化を試み、さらに分析手法についてもより精緻な分析(サンプルセレクショングラビティモデルやポワソン分布最尤法によるゼロ貿易への対処)を行い、論文としてまとめた。3についてはアジア経済研究所の研究員の方々との協力により、ベトナム及びマレーシアのREACH規制などへの対処の実態を踏まえながら、企業レベルのミクロ計量分析を行い、アジア地域以外の途上国企業のデータで分析を行ったMaskus, Otsuki and Wilson (2013)やChen, Otsuki and Wilson (2008)と同様の結果を得た。4についてはFDIや政府の効率性がベトナム企業の存続期間にプラスの影響を与えることを示した。5については予備的な結果を得たが、結果が安定的でないため分析を継続している。6については技術的貿易措置の企業への費用増加、輸出促進の効果を実証し、論文を完成させた。平成24年度においては研究の目的及び実施計画に沿って、1、消費者の製品基準に対する支払意思額(WTP)の推定方法の先行研究サーベイ及び手法の吟味。2、規制変数を含む需要システムモデルのサーベイと新手法の開発。3、農薬基準、動物医薬品基準のグラビティモデル分析を行った。4、貿易円滑化のグラビティモデル分析及び制度設計のためのシミュレーション分析を行った。1の手法については先行研究サーベイの結果及びデータの性質を鑑みて表明選好法としてのコンジョイント分析が最適であると考えている。5、さらに、当初計画外の新たな研究として、4のベトナムでの技術的貿易措置やその他の品質基準に対する対応の仕方や技術進歩への外資の影響などに対する計量分析プロジェクトを立ち上げ、ベトナム統計局から過去11年間の企業サーベイデータを購入し、データの整理・集計を進めた。データは従業員10名以上の全ての企業から採取されたものであるため、ベトナムの産業全体の生産活動や技術進歩を観察でき、またサプライチェーンに着眼し輸出向けのサプライチェーンほど海外の技術基準や国際基準への準拠や研究開発活動が盛んかどうか、また、FDIの導入がさかんかどうかなど分析することができると思われる。また、24年5月から8月にかけて米国ワシントンの世界銀行の開発リサーチ部門で在外研究を行い、そこで、上記研究における専門家の貴重な情報やアドバイスを得ることができたため、手法やテーマ設定の面で改善の手がかりを得た。家禽類の伝染病、家畜のBSEなどに対する禁輸措置、残留農薬・医薬品の基準値など技術的貿易障壁の貿易・各国経済への影響は大きい一方で、食品安全規制は消費者の食の安全確保に枢要であるため、貿易自由化とのバランスを考慮した政策デザインが必要である。本研究では規制による主要な貿易国の生産者・消費者の損益を定量化する手法を考案し政策評価及び提言を行った。主に、1.食品安全意識アンケート調査の実施と分析、2.食品安全基準データによる多国間分析、3.ベトナム・マレーシア企業データによる技術的貿易措置の企業行動に与える影響及び国際サプライチェーンが企業行動に与える影響の分析、4.16途上国の企業データを用いた技術的貿易措置の企業行動への影響の分析、5.規制がベトナム企業の参入退出に与える影響の分析、6.技術的貿易措置が世界貿易に与える影響の実証分析のサーベイ、7.食品安全規制が貿易や企業行動に与える分析のサーベイ、8.日本の鶏肉輸入需要に対する食品安全規制の効果の分析を行った。家禽類の伝染病、家畜のBSEなどに対する禁輸措置、残留農薬・医薬品の含有量規制などTBT(Technical Barriers to Trade)と呼ばれる技術的貿易障壁の世界貿易や各国の国内経済への影響は大きい一方で、食品安全規制は消費者の職の安全のため不可欠であるため、便益と費用の両面からシステマティックに定量分析を行う経済学的アプローチが必要である。本研究ではTBTの生産者・消費者の損益を定量化する手法を改善し、政策評価を行った。 | KAKENHI-PROJECT-24653059 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24653059 |
食の安全と貿易自由化の政策デザインへの計量経済分析の応用 | 予定されていた研究のほとんどが平成26年度までに実施されたが、消費者データによる規制の価値評価の分析がデータと分析法の再検討により平成27年度に持ち越されていた。平成27年度には分析が完了し、その成果を反映した学会発表1の論文が完成し、平成27年9月にカリフォルニア大学バークリー校で行われた研究会において発表を行った。本論文の新規性は、食品安全規制の2国間貿易への影響は輸出国生産者側に着目する研究が圧倒的に多いが、本研究では輸入国消費者側から見た影響の分析を行っていることである。その際に用いられた計量経済分析手法も、従来のグラビティモデル分析ではなく、ミクロ計量経済手法を駆使していることが特徴的である。これにより、輸入国同士の傾向の違いや消費者間の選好の違いも反映することができ、より現実的かつ柔軟な分析結果が得られる。また、食品安全と規制の研究に関するサーベイを行った論文が図書1の章の1つとして掲載された。家禽類・家畜の伝染病などに対する禁輸措置、農薬等の残留量規制などの食品安全規制は世界貿易や各国経済への影響は大きい一方、消費者の食の安全のため不可欠である。本研究は食品安全規制に対して便益と費用の両面から定量分析し政策評価を行った。本研究では食品安全規制の食品貿易への影響の分析、消費者データによる支払意思額の分析や特定の輸入国に対して原産地分化型需要システム分析を行った。これらにより、食品安全基準の厳格化は貿易の減少を引き起こすこと、また、消費者はより高い輸入食品の安全性に価値を見出すため、輸入食品に対する安全基準の厳格化(緩和)により輸入需要が促進(抑制)されること、などが示された。上記研究の進展については以下の通りである。平成2426年度の期間中に上記研究の成果が計6本の国際査読雑誌、1本の国内学術誌、計6本のディスカッションペーパー、2本のブックチャプターに掲載され、計2回の国際学会・国際研究会で発表、計1回の国内学会、計3回の国内研究会で発表された。これにより、本研究における手法の開発、ケーススタディーによる政策評価・提言、研究成果の発表が概ね目標通り達成されたことになる。国際経済学平成27年3月でほぼ予定通りの研究が完成したが、食品安全意識調査データによる消費者の支払意思額推定の分析は完成に至らなかった。今後は、平成26年度初旬に行ったアンケート調査の一部フォーローアップやデータの再クリーニング、他の分析手法の導入と現行の手法との比較などを行い、平成27年8月には分析の完成、12月にはディスカッションペーパーとしての完成、及び研究会での報告、さらに、平成28年2月には国際査読雑誌への投稿を行い予定の研究を完成する。上記研究実績の概要16の進展については以下のとおりである。1については2回目のアンケートデータを加えより新しく精緻な分析により有用な結果を得た。今年度はさらに品目を増やし頑健性を高めて論文としてまとめワーキングペーパーを完成する予定である。2については、世界銀行ワーキングペーパーへの出版、及び査読雑誌への投稿を行った。3については結果をまとめアジア経済研究所のワーキングペーパーでの出版を行った。 | KAKENHI-PROJECT-24653059 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24653059 |
情報化の受容過程に関する地理学的研究 | 本研究は,情報通信技術(ICT)が特定の地域に受容されていくプロセスを一般化するため, ICTの先進国たる日本と欧州,新興国たる中国の3地域における医薬品流通システムの実態分析を通じて,日本の医薬品流通システムを相対化した。本研究は,情報ネットワークの受容プロセスに焦点を当てることで,国や自治体などの政策など制度的環境や顧客特性を踏まえた取引形態などの地域的文脈が,情報ネットワークの態様を規定していることを明らかにした。本研究は,情報通信技術(ICT)が特定の地域に受容されていくプロセスを一般化するため, ICTの先進国たる日本と欧州,新興国たる中国の3地域における医薬品流通システムの実態分析を通じて,日本の医薬品流通システムを相対化した。本研究は,情報ネットワークの受容プロセスに焦点を当てることで,国や自治体などの政策など制度的環境や顧客特性を踏まえた取引形態などの地域的文脈が,情報ネットワークの態様を規定していることを明らかにした。ICTの地域的な受容プロセスとその前提条件として行われる利害調整過程を,医薬品卸および同社と取引関係や利害関係を有する企業や組織に対して,ヒアリングを通じて明らかにした。筆者はすでに日本において,医薬品卸が顧客たる医療機関や保険薬局に対してICTを通じていかなるサービスを提供しているのか,その過程においていかなる利害調整が行われているのかについてフィールドワークを実施してきた。この一連の分析で得られた成果は,学術雑誌に論文として発表した。具体的には,人口密度と比較して医薬品卸数の多い長崎県の五島列島,卸間競争が激しい富山県や川崎市を対象として,企業概要に加えて,取引業務のうち,主要な取引先とその概要,取引の理由,その他の利害関係を有する組織との利害調整過程,特にICTの導入前後におけるこれら取引先や利害関係組織との協調関係が明らかになった。一方,米国や欧州における医療環境の特性を既存統計や各国の事情に詳しいアナリストなどに対するヒアリングを通じて明らかにすることで,国際比較の実態調査に向けた事前調査を行った。欧米の医薬品流通の現状について,英国人の医薬品流通アナリスト(ドナルド・マッカーサー氏)と意見交換し,欧州における調査上のアドバイスを受けた。2010年11月には,筆者は自身がメンバーでもある,私的研究グループ「サプライチェーンロジスティクス研究会」メンバーとともに,医薬品卸や欧州卸協会,製薬企業,病院薬局に対して,欧州の医薬品流通の現状と事業内容をヒアリングした。その成果は学会で発表した。同研究会では,海外の医薬品流通の現状について定期的に勉強会を開催しており,その成果は,20102011年「Monthlyミクス」に「海外医薬品流通からのメッセージ」として,保高氏と筆者との共著で連載した。昨年度に続き,医薬品卸がICTを通じて,ローカルな医療ニーズにいかに対応しているかを明らかにした。昨年度実施した,欧州におけるICTにともなう医薬品流通の変容に関する実態調査で得られた成果は,学会で発表した。また,私的な医薬品産業に関する研究会(サプライチェーン・ロジスティクス研究会)のメンバーで共有するとともに,商業誌「Monthlyミクス」に「海外医薬品流通からのメッセージ(欧州編)」としてメンバーとの共著で去年度に引き続き,今年度においても継続して連載した。新興国市場の一つである中国において,日本からも先進的な情報技術を有した医薬品卸が進出し始めている。しかし,中国においてはそもそも統計データの整理が不十分で,医薬品流通の実態でさえ把握されていないのが現状である。そこで,新興国市場の例として,中国における医薬品流通システムの現状と情報化への取組みについて,現地調査により明らかにした。中国では保険医療改革が実施されており,M&Aを通じた医薬品流通の効率化が進みつつあることが明らかになった。これらの成果は,商業誌「Monthlyミクス」にメンバーとの共著で来年度以降連載する予定である。日本においては,東日本大震災を事例に,非常時の医薬品供給体制において,需要と供給のミスマッチが起きたメカニズムを明らかにし,非常時にも対応しうる医薬品供給体制について安全性と効率性の観点から検討した。これらの成果は学会で発表するとともに,東北地理学会東日本大震災災害対応委員会ホームページに掲載した。加えて,商業誌「Monthlyミクス」にて公表した。ICTが特定の地域に受容されていくプロセスをより一般化して提示するため,ICTの先進国たる日本と欧州,新興国たる中国の3地域における医薬品流通システムの実態分析を通じて,日本の医薬品流通システムを相対化することができた。 | KAKENHI-PROJECT-22720306 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22720306 |
薬物速度論を用いたMRSA用抗生物質の適正使用とその医療経済学的研究 | MRSA用抗生物質であるバンコマイシン、アルベカシン、テイコプラニンの血中濃度をコンピューターで速度論的解析を行い、医療経済学的にも臨床的にも最適の投与計画立案について検討した。バンコマイシンについては、エビデンスとして得られている日本人の平均的な速度論的パラメータでコンピューターシュミレーションした結果、体重52kgの患者では1日1回1300mgを間欠点滴投与することで、ピークもトラフも理想的な血中濃度を達成することが実証された。添付文書記載内容どおり、1日2000mgを2週間投与した場合、その経費は【symmetry】0,200かかるのに対して、本投与法では【planck's constant】2,650で、済み、コストを≪,550も削減することが明らかとなった。また、添付文書にある老人薬用量である、1日1000mgを2回分割する投与では、血中濃度のピーク濃度がその有効濃度である2540ug/mLに達せず、MRSAを陰性化し得ないことが判明した。データを解析した関連病院における臨床所見においてもこの投与方法で陰性化した例はなく、極めて非効果的かつ非効経済的投与方法であることが示唆された。一方、アルベカシンについても、1日200mgを2分割する添付文書の投与法では、血中濃度のピーク濃度がMRSAを陰性化するのに不十分で、1日200mgを1回投与すると、格段に効果的であることが明らかになった。テイコプラニンについては、申請者で小集団における平均的な薬物速度論的パラメータを算出した結果、分布容積は0.6436L/kg,クリアランスは0.0018L/kg/hrであることがわかり、このパラメータを用いてコンピューターによる最適投与計画を算出した結果、添付文書にある1日200mg間欠点滴投与では不適当で、添付文書のもう一つの投与方法である、1日400mg投与が有効であることを明らかにした。本研究成果は、限られた医療資源を有効に使用するというこれからの医療に極めて示唆的な端緒を示した点で意義深い。MRSA用抗生物質であるバンコマイシン、アルベカシン、テイコプラニンの血中濃度をコンピューターで速度論的解析を行い、医療経済学的にも臨床的にも最適の投与計画立案について検討した。バンコマイシンについては、エビデンスとして得られている日本人の平均的な速度論的パラメータでコンピューターシュミレーションした結果、体重52kgの患者では1日1回1300mgを間欠点滴投与することで、ピークもトラフも理想的な血中濃度を達成することが実証された。添付文書記載内容どおり、1日2000mgを2週間投与した場合、その経費は【symmetry】0,200かかるのに対して、本投与法では【planck's constant】2,650で、済み、コストを≪,550も削減することが明らかとなった。また、添付文書にある老人薬用量である、1日1000mgを2回分割する投与では、血中濃度のピーク濃度がその有効濃度である2540ug/mLに達せず、MRSAを陰性化し得ないことが判明した。データを解析した関連病院における臨床所見においてもこの投与方法で陰性化した例はなく、極めて非効果的かつ非効経済的投与方法であることが示唆された。一方、アルベカシンについても、1日200mgを2分割する添付文書の投与法では、血中濃度のピーク濃度がMRSAを陰性化するのに不十分で、1日200mgを1回投与すると、格段に効果的であることが明らかになった。テイコプラニンについては、申請者で小集団における平均的な薬物速度論的パラメータを算出した結果、分布容積は0.6436L/kg,クリアランスは0.0018L/kg/hrであることがわかり、このパラメータを用いてコンピューターによる最適投与計画を算出した結果、添付文書にある1日200mg間欠点滴投与では不適当で、添付文書のもう一つの投与方法である、1日400mg投与が有効であることを明らかにした。本研究成果は、限られた医療資源を有効に使用するというこれからの医療に極めて示唆的な端緒を示した点で意義深い。MRSA用抗生物質としてバンコマイシン、アルベカシン、テイコプラニンについて薬物速度論的検討を実施した結果、バンコマイシンについては、得られた日本人の平均的な速度論的パラメータでコンピューターシュミレーションした結果、一日一回1300mgを間欠投与することで、理想的ピークを描くことが実証された。この結果、従来のバンコマイシンの添付文書どおりの1日2000mg2週間投与すると\270.200かかるのに対して、本投与法は\202.650で、\67.550もコストを削減できることが明かとなった。一方、アルベカシンについても、1日200mgを2分割する添付文書の方法では血中濃度のピーク濃度がMRSAを陰性化するのに不十分で、1日200mgを一回投与すると遥に効果的であることが明かになった。テイコプラニンについても申請者で平均的な速度論的パラメータを算出した結果、分布容積0.6436L/kg,クリアランスは0.0182L/kg/hrであることが判明、このパラメータを用いて最適投与計を作成した結果、添付文書の1日1回200mg投与では不適当で、副作用を回避しながら効果を得るには、1日1回400mg投与が必要であることが明かとなった。本研究結果は、限られた医療資源を有効に使用する方法の端緒を示した点で意義深いものがある。 | KAKENHI-PROJECT-11672247 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11672247 |
薬物速度論を用いたMRSA用抗生物質の適正使用とその医療経済学的研究 | MRSA用抗生物質であるバンコマイシン、アルベカシン、テイコプラニンの血中濃度をコンピューターで速度論的解析を行い、医療経済学的にも臨床的にも最適の投与計画立案について検討した。バンコマイシンについては、エビデンスとして得られている日本人の平均的な速度論的パラメータでコンピューターシュミレーションした結果、体重52kgの患者では1日1回1300mgを間欠点滴投与することで、ピークもトラフも理想的な血中濃度を達成することが実証された。添付文書記載内容どおり、1日2000mgを2週間投与した場合、その経費は【symmetry】0,200かかるのに対して、本投与法では【planck's constant】2,650で、済み、コストを≪,550も削減することが明らかとなった。また、添付文書にある老人薬用量である、1日1000mgを2回分割する投与では、血中濃度のピーク濃度がその有効濃度である2540ug/mLに達せず、MRSAを陰性化し得ないことが判明した。データを解析した関連病院における臨床所見においてもこの投与方法で陰性化した例はなく、極めて非効果的かつ非効経済的投与方法であることが示唆された。一方、アルベカシンについても、1日200mgを2分割する添付文書の投与法では、血中濃度のピーク濃度がMRSAを陰性化するのに不十分で、1日200mgを1回投与すると、格段に効果的であることが明らかになった。テイコプラニンについては、申請者で小集団における平均的な薬物速度論的パラメータを算出した結果、分布容積は0.6436L/kg,クリアランスは0.0018L/kg/hrであることがわかり、このパラメータを用いてコンピューターによる最適投与計画を算出した結果、添付文書にある1日200mg間欠点滴投与では不適当で、添付文書のもう一つの投与方法である、1日400mg投与が有効であることを明らかにした。本研究成果は、限られた医療資源を有効に使用するというこれからの医療に極めて示唆的な端緒を示した点で意義深い。 | KAKENHI-PROJECT-11672247 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11672247 |
新たな糖尿病腎症モデル動物の確立とミッドカインを標的とする分子治療法の開発 | 本研究により以下の点が明らかにされた。1)「STZ糖尿病モデルにおけるMKの関与」Mdk-/-に比してMdk+/+で有意に1ヵ月後に微量アルブミン尿の増加、2ヵ月後に尿蛋白増加、腎機能低下を認め、徐々に糸球体硬化が進行した。また、Mdk+/+で有意にMCP-1の誘導、糸球体内マクロファージの浸潤を認めた。更に、Mdk+/+由来培養メサンギウム細胞では、高血糖処理にてMK発現は経時的に誘導され、PKC・,ERKのリン酸化とMCP-1の誘導が有意に亢進していた。以上より、高血糖により誘導されたMKは糸球体内でPKC・,ERKのリン酸化及びマクロファージ遊走を介して、糸球体硬化に寄与していると考えられた。また、間質へのマクロファージの浸潤もMdk-/-では有意に抑制された。培養尿細管細胞を高血糖刺激するとMKの発現が二峰性に誘導され、NF-kBのリン酸化がMdk-/-由来の尿細管細胞に比して有意に亢進していた。また、マクロファージからのMK産生誘導も確認した。この結果より尿細管間質障害において高血糖により誘導される尿細管上皮細胞及びマクロファージ由来MKは、糖尿病性腎症における尿細管間質障害のvicious cycleを形成している。2)膵β細胞特異的カルモジュリン過剰発現マウスの腎症発症機序・CaMTgマウスはヒトの糖尿病性腎症に類似の特徴的な病変「メサンギウム融解像・結節性病変・滲出性病変、高度の輸出・入動脈の硝子化、血管極及び間質での著しい血管新生を呈する。・高血糖により、VEGFの発現亢進・eNOSの発現低下を認め、VEGFR-2を介する内皮細胞への刺激亢進が、これらの病変の重要な病因のひとつと考えられた。以上の研究成果から、上記2つのモデルは糖尿病性腎症発症メカニズムを検討する上で非常に有用であり、新たな糖尿病性腎症の治療法の開発にも有用と考えられた。本研究により以下の点が明らかにされた。1)「STZ糖尿病モデルにおけるMKの関与」Mdk-/-に比してMdk+/+で有意に1ヵ月後に微量アルブミン尿の増加、2ヵ月後に尿蛋白増加、腎機能低下を認め、徐々に糸球体硬化が進行した。また、Mdk+/+で有意にMCP-1の誘導、糸球体内マクロファージの浸潤を認めた。更に、Mdk+/+由来培養メサンギウム細胞では、高血糖処理にてMK発現は経時的に誘導され、PKC・,ERKのリン酸化とMCP-1の誘導が有意に亢進していた。以上より、高血糖により誘導されたMKは糸球体内でPKC・,ERKのリン酸化及びマクロファージ遊走を介して、糸球体硬化に寄与していると考えられた。また、間質へのマクロファージの浸潤もMdk-/-では有意に抑制された。培養尿細管細胞を高血糖刺激するとMKの発現が二峰性に誘導され、NF-kBのリン酸化がMdk-/-由来の尿細管細胞に比して有意に亢進していた。また、マクロファージからのMK産生誘導も確認した。この結果より尿細管間質障害において高血糖により誘導される尿細管上皮細胞及びマクロファージ由来MKは、糖尿病性腎症における尿細管間質障害のvicious cycleを形成している。2)膵β細胞特異的カルモジュリン過剰発現マウスの腎症発症機序・CaMTgマウスはヒトの糖尿病性腎症に類似の特徴的な病変「メサンギウム融解像・結節性病変・滲出性病変、高度の輸出・入動脈の硝子化、血管極及び間質での著しい血管新生を呈する。・高血糖により、VEGFの発現亢進・eNOSの発現低下を認め、VEGFR-2を介する内皮細胞への刺激亢進が、これらの病変の重要な病因のひとつと考えられた。以上の研究成果から、上記2つのモデルは糖尿病性腎症発症メカニズムを検討する上で非常に有用であり、新たな糖尿病性腎症の治療法の開発にも有用と考えられた。この間の研究期間において、以下の2つの糖尿病性腎症モデルについて、その概要を明らかにし、現在、詳細なメカニズムの解明・さらにinterventionに関する研究に移行している。最初のモデルについては、既に論文が掲載され、2番目のモデルについては投稿準備中である。1)我々はSTZ誘発性糖尿病モデルを作製し、糸球体および尿細管間質障害に関わるMKの役割について検討した。野生型(Mdk+/+)およびMK欠損型(Mdk-/-)129SV系マウスにSTZ140mg/kg体重を腹腔内に二日間投与し、1,2,4,6ヵ月後に検討した。投与後300500mg/dlの血糖を維持するとMdk-/-に比してMdk+/+で有意に1ヵ月後に微量アルブミン尿の増加、2ヵ月後に尿蛋白増加、腎機能低下を認め、徐々に糸球体硬化と尿細管腔の拡張等の間質病変を呈した。また、Mdk+/+で有意にMCP-1の誘導、マクロファージの浸潤を認めた。 | KAKENHI-PROJECT-17590825 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17590825 |
新たな糖尿病腎症モデル動物の確立とミッドカインを標的とする分子治療法の開発 | 更に、Mdk+/+由来培養メサンギウム細胞および尿細管細胞の高血糖処理にてMK発現は経時的に誘導され、Mdk-/-由来細胞に比べそれぞれERKのリン酸化とMCP-1の誘導が有意に亢進していた。この結果より糖尿病性腎症へのMK関与の可能性を糸球体、尿細管間質両者で示し、MKが今後新たなる治療戦略の一つとなると考えられた。2)膵β細胞特異的カルモジュリン過剰発現マウス(CaMTg)は、生後数週より膵β細胞の破壊と低インスリン血症を伴う著しい高血糖を示す。この糖尿病モデルにおける腎糸球体病変の特徴を解析した。方法はCaMTg群及び同胞の正常対照群について血液・尿の生化学的検査を行うとともに、腎の組織学的所見を光顕・電顕・免疫組織学的に検討した。結果:CaMTg群では3ヶ月齢より、尿中アルブミンの有意の増加を認めた。また、3ヶ月齢よりメサンギウム領域の有意な拡大を示し、Type IIIおよびType IV collagen沈着は有意に増加した。メサンギウム細胞でのαsmooth muscle actin発現は亢進し、6ヶ月齢より血管極の動脈硬化、9ヶ月齢では結節性病変・滲出性病変も認めた。結論:CaMTgはヒト糖尿病性腎症類似の病変を呈し、この合併症の解析に有用なモデルと考えられた。研究期間の2年目においては、尿細管・間質障害におけるミッドカインの関与について明らかにし、その成果を現在投稿中である。膵・細胞特異的カルモジュリン過剰発現マウス(CaM-Tgマウス)における腎症発現メカニズムについては、VEGF-NOシグナルの関与を明らかにし、現在投稿中(in revision : J Am Soc Nephrol)である。1)「STZ糖尿病モデルにおけるMKの関与」:ノックアウトマウス(Mdk-/-)では尿細管間質病変の進行や腎機能の低下、MCP-1の誘導、炎症細胞の浸潤は有意に抑制しえた。更に、野生型マウス由来尿細管細胞を高血糖刺激するとMKの発現が二峰性に誘導され、NF-kBのリン酸化がMdk-/-由来の尿細管細胞に比して有意に亢進していた。また、マクロファージからのMK産生誘導も確認した。この結果より尿細管間質障害において高血糖により誘導される尿細管上皮細胞及びマクロファージ由来MKは、糖尿病性腎症における尿細管間質障害のvicious cycleを形成している。2)「CaM-Tgマウス」:・CaMTgマウスはヒトの糖尿病性腎症に類似の特徴的な病変を呈する。1.著しいメサンギウム基質の増生に加え、メサンギウム融解像・結節性病変・滲出性病変を認める2.糸球体病変に加えて、高度の輸出・入動脈の硝子化を呈する3.糸球体血管極及ぴ間質での著しい血管新生を認める・高血糖により、VEGFの発現亢進・eNOSの発現低下を認め、VEGFR-2を介する内皮細胞への刺激冗進が、これらの病変の重要な病因のひとつと考えられた。・CaMTgでは、高血糖によりVEGF-2を介する血管新生・内皮障害が発症初期から認められ、これがヒト糖尿病性腎症に特徴的なさまざまな病変、即ち血管極hyalinosis、結節性病変・滲出性病変を引き起こし、最終的に糸球体硬化にいたると考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-17590825 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17590825 |
インフルエンザ菌感染症難治化の要因解析と治療戦略 | 繰り返し中耳炎が発症した小児患者から分離されたbeta-lactamase-negative ampicillin-resistant (BLNAR)インフルエンザ菌を用い、薬剤耐性、バイオフィルム及び細胞内侵入の解析を行い、抗生剤による菌体の変化をfocused ion beam (FIB/SEM)システムを用いて観察した。気道上皮細胞表面上の菌だけではなく、細胞内侵入していた菌株も菌体の変形や破裂などの著しい形態変化像が観察され、キノロン系抗生物質であるトスフロキサシンの殺菌作用が高いことが証明され、同剤の小児への使用が難治性小児中耳炎の有効な治療となる可能性があることが示唆された。本研究の目的は、本邦において、臨床的に問題となっているbeta-lactamase-negative ampicillin-resistant (BLNAR)株などの薬剤耐性菌を含めたインフルエンザ菌の難治化の要因を薬剤耐性、細胞内寄生およびバイオフィルムのそれぞれについて、どの程度難治化の要因となっているかを解析し、かつ治療戦略をたてることである。2006年7月から2011年6月までに、小児急性中耳炎患者74名より分離された74株のインフルエンザ菌株の内、繰り返し中耳炎が発症した患者(再燃患者)から分離されたBLNAR株であるOk-9, Ok-30,及びOk-80株を用い、解析を行った。薬剤感受性試験結果では、Ok-9, Ok-30,及びOk-80株に対し、エリスロマイシン、セフジニル及びトスフロキサシンの最小発育阻止濃度(μg/ml)はそれぞれ0.5, 1, 0.03、4, 0.5, 0.03及び0.125, 0.5, 0.03であった。バイオフィルム産生についてはOk-9, Ok-30,及びOk-80株において、OD600値の平均がそれぞれ2.34, 0.81, 0.68であった。一方、この3株とも細胞内寄生株と判明され、平均細胞内侵入率はそれぞれ2.9%, 5.44%, 1.86%であった。上記の結果より、これらの菌株は強いバイオフィルム産生能を示し、同時に高い細胞内侵入性を有することが示唆された。また、in vitroでの人気道上皮細胞への感染実験を行い、また上記の菌株を対象とし、トスフロキサシンの投与を行い、抗生剤による菌体の変化をfocused ion beam (FIB/SEM)システム(Quanta 3D FEG, FEI)を用いて観察した。結果として、人気道上皮細胞表面上の菌だけではなく、細胞内侵入していた菌株も菌体の変形や破裂などの著しい形態変化像が観察された。繰り返し中耳炎が発症した小児患者から分離されたbeta-lactamase-negative ampicillin-resistant (BLNAR)インフルエンザ菌を用い、薬剤耐性、バイオフィルム及び細胞内侵入の解析を行い、抗生剤による菌体の変化をfocused ion beam (FIB/SEM)システムを用いて観察した。気道上皮細胞表面上の菌だけではなく、細胞内侵入していた菌株も菌体の変形や破裂などの著しい形態変化像が観察され、キノロン系抗生物質であるトスフロキサシンの殺菌作用が高いことが証明され、同剤の小児への使用が難治性小児中耳炎の有効な治療となる可能性があることが示唆された。本研究の目的は、本邦において、臨床的に問題となっているbeta-lactamase-negative ampicillin-resistant (BLNAR)株などの薬剤耐性菌を含めたインフルエンザ菌の難治化の要因を薬剤耐性、細胞内寄生およびバイオフィルムのそれぞれについて、どの程度難治化の要因となっているかを解析し、かつ治療戦略をたてることである。2006年7月から2011年6月までに、小児急性中耳炎患者74名(男児39,女児35;平均年齢1.35歳)より、74株のインフルエンザ菌が分離され、その内、37(50%)株はBLNARであった。バイオフィルム産生については、OD600値の平均が0.81 ±0.77 (range: 0-3.5)であった。一方、46 (62.2%)株は細胞内寄生株と判明され、平均細胞内侵入率は0.29 ±0.82%であった。また、Ok-9, Ok-30,及びOk-80株は繰り返し中耳炎が発症した患者(再燃患者)から分離されたBLNAR株であった。これらの菌株において、強いバイオフィルム産生能を示し、同時に高い細胞内侵入性を有することが示唆された。本研究の目的は、本邦において、臨床的に問題となっているbeta-lactamase-negative ampicillin-resistant (BLNAR)株などの薬剤耐性菌を含めたインフルエンザ菌の難治化の要因を薬剤耐性、細胞内寄生およびバイオフィルムのそれぞれについて、どの程度難治化の要因となっているかを解析し、かつ治療戦略をたてることである。小児急性中耳炎患者より分離されたインフルエンザ菌株の内、繰り返し中耳炎が発症した患者から分離されたBLNAR株を用い、薬剤感受性試験やバイオフィルム産生度及び細胞内侵入率についての解析を行った。 | KAKENHI-PROJECT-24591495 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24591495 |
インフルエンザ菌感染症難治化の要因解析と治療戦略 | また、in vitroでの人気道上皮細胞への感染実験を行い、また上記の菌株を対象とし、セフォタキシム及びトスフロキサシンの投与を行い、抗生剤による菌体の変化をfocused ion beam (FIB/SEM)システムを用いて観察した。結果として、人気道上皮細胞表面上の菌だけではなく、細胞内侵入していた菌株も菌体の変形や破裂などの著しい形態変化像が観察された。今回の研究結果により、キノロン系抗生物質であるトスフロキサシンの殺菌作用が高いことが証明され、同剤の小児への使用が難治性小児中耳炎の有効な治療となる可能性があることが示唆された。感染症本研究において、小児急性中耳炎患者より分離されたインフルエンザ菌株内、さらに難治症例や再燃症例より分離された菌株のみを対象とし、薬剤感受性試験、バイオフィルム産生、細胞内寄生性及び人気道上皮細胞内侵入していた菌株に対する抗生剤治療効果について解析を行った。以上の成果から、当初の計画以上に進展しているという自己点検による評価とする。本研究において、前述の小児急性中耳炎患者より分離されたインフルエンザ菌の集積を行い、難治症例や再燃症例などについての臨床データの解析も順調に進んでいる。また、薬剤感受性試験、細胞内寄生およびバイオフィルム産生能についても解明した。以上の成果から、当初の計画以上に進展しているという自己点検による評価とする。今後、Ok-9, Ok-30,及びOk-80菌株を用いたin vitroでの人気道上皮細胞への感染実験を行い、Confocal laser scanning microscopy (CLSM)やFIB/SEMシステムで感染実態を総合的に観察する。また、in vitroで人気道上皮細胞へ感染させた後に、新たに小児中耳炎の治療薬剤として承認されたキノロン系抗生物質トスフロキサシンを含めた各種抗生物質を添加し、どのタイプの抗生物質をどのように投与すれば殺菌効果が高いかを培養検査で解析するとともに、FIB/SEMシステムを用いて、インフルエンザ菌側における形態変化などの比較検討を行う。以上の実験データを総合的に評価し、難治例と非難治例より得られた菌株間で、薬剤耐性、細胞内寄生およびバイオフィルム産生について比較検討し、難治化の要因の解析を行なった上で治療戦略をたてる予定である。今後、小児中耳炎難治例より分離され、細胞内寄生すること、及びバイオフィルム産生することが確認された菌株(Ok-9, Ok-30, Ok-80)を用いたin vitroでの人気道上皮細胞への感染実験を行い、Confocal laser scanning microscopy (CLSM)やfocused ion beam (FIB/SEM)システム(Quanta 3D FEG, FEI)で感染実態を観察する。また、in vitroで人気道上皮細胞へ感染させた後に、新たに小児中耳炎の治療薬剤として承認されたキノロン系抗生物質Tosufloxacinを含めた各種抗生物質を添加し、どのタイプの抗生物質をどのように投与すれば殺菌効果が高いかを培養検査で解析するとともに、FIB/SEMシステムを用いて、インフルエンザ菌側における形態変化などの比較検討を行う。以上の実験データを総合的に評価し、難治例と非難治例より得られた菌株間で、薬剤耐性、細胞内寄生およびバイオフィルム産生について比較検討し、難治化の要因の解析を行なった上で治療戦略をたてる予定である。経理の事務手続き上の問題により次年度に繰り越した。主に消耗品として使用する予定である。該当金額は少ないため(689円)、次年度の予算と合わせて消耗品(培地)代として使用する予定としている。 | KAKENHI-PROJECT-24591495 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24591495 |
定在波音響管内の微粒子の集合・分散特性 | 1)定在波音響管内の現象には,レイリー型音響流,ドボルザークの噴水,クントの微粒子縞の生成など物理的に興味ある音響現象が多い。音響流については理論,実験の両面でほぼ解明されつつある。2)しかし,管内での微粒子縞の成因については決め手がないと思える。そこで,微粒子の異粒径粉体を定在音波中に置いたところ,粒子速度の違いによる集合・分散現象を認めた。大粒径粒子は粒子速度の腹の位置に集合し,腹から節に向かい,小粒径粒子が順次集合した。このことは気体中での異粒径粒子の分別に応用できる。3)次に,笹川民雄氏の論文;「物理教育」57(2009)p.201にある縞の高調波成因説を確かめるため,矩形音響管壁振動の寄与抑制として,管を強固に固定し,波形をFFTしたが,卓越した高調波は確認できなかった。4)集合・分散の原因を高調波とすると,縞の微細構造間隔から超音波領域の波長であるため,28kHzと40kHzの超音波振動子で定在波音発生させ,微粒子縞を観察したところ,可聴音波波長の10分の1の0.5mm程度の微粒子縞が粒子速度の腹の両側にできたが,約10倍の高調波超音波観測できなかった。この時,開口端での空気の流速は風速計で約5cm/sであった。管内の風速は管径が小さいため,プローブを挿入できず,不明である。5)管内空気の代わりにヘリウム気体を満たしたところ,微粒子縞の微細構造の間隔は数倍に拡がった。6)従来,微粒子縞は共鳴時に生じるとされて来たが,ワラのような円筒形の物体では非共鳴時でも縞状に1段1段積層した。共鳴周波数から数10%変化させてもワラは積層を続けた。7)非共鳴時で,ワラの場合,数段の積層壁の間隔は微粒子の微細構造間隔よりも数倍大きくなった。この時,波形をFFTしても基本波より大きい振幅の高調波は見当たらず,高調波放射圧説をさらに検討する必要がある。以上の研究は主に電気通信大学鎌倉研究室の指導協力を得て行った。研究成果のトピックは6)の実験結果から,クント縞は流体力学的作用により生ずると考えられ,音波共鳴は微粒子縞の成因に本質的ではないことを発見したことである。共鳴はエネルギーを集中させる効果と推測する。これらの結果はドボルザーク(Dvorak)の噴水現象をよく説明でき,アンドレード(Andrade)の実験で示した渦説を支持する。今後は微粒子の集合・分散現象の解明のため,流体・粉体力学的観点から微粒子縞をモデル化し,数値計算で確かめる必要がある。1)定在波音響管内の現象には,レイリー型音響流,ドボルザークの噴水,クントの微粒子縞の生成など物理的に興味ある音響現象が多い。音響流については理論,実験の両面でほぼ解明されつつある。2)しかし,管内での微粒子縞の成因については決め手がないと思える。そこで,微粒子の異粒径粉体を定在音波中に置いたところ,粒子速度の違いによる集合・分散現象を認めた。大粒径粒子は粒子速度の腹の位置に集合し,腹から節に向かい,小粒径粒子が順次集合した。このことは気体中での異粒径粒子の分別に応用できる。3)次に,笹川民雄氏の論文;「物理教育」57(2009)p.201にある縞の高調波成因説を確かめるため,矩形音響管壁振動の寄与抑制として,管を強固に固定し,波形をFFTしたが,卓越した高調波は確認できなかった。4)集合・分散の原因を高調波とすると,縞の微細構造間隔から超音波領域の波長であるため,28kHzと40kHzの超音波振動子で定在波音発生させ,微粒子縞を観察したところ,可聴音波波長の10分の1の0.5mm程度の微粒子縞が粒子速度の腹の両側にできたが,約10倍の高調波超音波観測できなかった。この時,開口端での空気の流速は風速計で約5cm/sであった。管内の風速は管径が小さいため,プローブを挿入できず,不明である。5)管内空気の代わりにヘリウム気体を満たしたところ,微粒子縞の微細構造の間隔は数倍に拡がった。6)従来,微粒子縞は共鳴時に生じるとされて来たが,ワラのような円筒形の物体では非共鳴時でも縞状に1段1段積層した。共鳴周波数から数10%変化させてもワラは積層を続けた。7)非共鳴時で,ワラの場合,数段の積層壁の間隔は微粒子の微細構造間隔よりも数倍大きくなった。この時,波形をFFTしても基本波より大きい振幅の高調波は見当たらず,高調波放射圧説をさらに検討する必要がある。以上の研究は主に電気通信大学鎌倉研究室の指導協力を得て行った。研究成果のトピックは6)の実験結果から,クント縞は流体力学的作用により生ずると考えられ,音波共鳴は微粒子縞の成因に本質的ではないことを発見したことである。共鳴はエネルギーを集中させる効果と推測する。これらの結果はドボルザーク(Dvorak)の噴水現象をよく説明でき,アンドレード(Andrade)の実験で示した渦説を支持する。 | KAKENHI-PROJECT-22917038 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22917038 |
定在波音響管内の微粒子の集合・分散特性 | 今後は微粒子の集合・分散現象の解明のため,流体・粉体力学的観点から微粒子縞をモデル化し,数値計算で確かめる必要がある。 | KAKENHI-PROJECT-22917038 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22917038 |
健康格差を縮小しソーシャルキャピタルの醸成を促進する市町村保健師の地区管理 | 健康格差の縮小とソーシャルキャピタルの醸成を促進するための市町村保健師による地区管理の方法を明らかにすることを目的に、人口規模により無作為抽出した841市町村の保健師を対象に郵送による無記名自記式質問紙調査を行った。結果、保健師活動の様相は人口規模により異なっており、特に人口「1万未満」と「5万以上」の市町村で異なっていた。活動分野別では、「介護予防」と、「母子保健」及び「健康づくり」で異なっていた。人口規模別及び活動分野別各々の地区管理にかかわる保健師活動の課題と活動の工夫を明らかにした。保健師活動体制の様相及び活動の工夫を要する地区の特徴を明らかにするために郵送自記式質問紙調査を実施。対象は人口規模により層化無作為抽出した841市町村の母子保健、健康づくり、介護予防の担当保健師各1名、計2523名。調査項目は1保健師個人の地区活動の課題2保健師全体の地区活動の課題3組織内外や住民とのコミュニケーション、保健福祉活動への住民の協力状況等4市町村及び保健活動体制に関する客観的情報。また、地区や集団の特性に合わせた活動の実態と課題。回収数(率)809(32.1%)。結果は「地区分担制と業務分担制」83.5%、集中配置62.7%。保健師個人の課題は「地区の状況や特徴に即した活動ができていない」62.6%。保健師全体の課題は「地区診断ができていない」63.6%、「一人で地区を担当する活動には限界がある」62.5%。「保健福祉活動に協力を得られる住民が多い」の『思わない』27.8%。「地区や集団の特性に合わせて活動方法を変えている割合」は母子保健が最少。活動方法を変えている地区や集団の特性について、自由記述の質的分析の結果、3分野共通は【人口流出入が激しい】【へき地である】等。母子保健では【出生率が低い】【発達障害児のサポート資源が少ない】等、健康づくりでは【第一次産業従事者が多い】等、介護予防では【農業従事者が多い】【独居世帯および高齢者世帯が多い】等。地区の特徴に関連する課題は「保健福祉活動の住民側協力者の育成に限界がある地区がある」65.8%。結果から、保健師活動体制の類型化に活動分野の視点は有用であり、地理的特徴だけではなく、人口等からの地域特性の類型化の必要性が示唆された。活動方法を変えている地区や集団の特性は、健康格差が生じる可能性がある環境的要因を示唆しており、地区管理において必要となるアセスメントの視点になると考えられる。市町村の地域特性別及び活動体制の類型別の、健康格差とソーシャルキャピタルの醸成に関する地区管理の観点からの保健師活動の課題及び活動方法を明らかにするために、平成26年度の調査結果を分析した。昨年度の調査結果から、保健師活動体制の類型化については活動分野の視点が有用であること、また、地域特性についても地理的特徴だけではなく人口等から類型化を検討する必要性が示唆されたため、人口1満未満(180件)、1万以上3万未満(209件)、3万以上5万未満(110件)、5万以上10万未満(163件)、10万以上(127件)に分け、「保健師活動の課題」及び「地区や集団の健康課題を改善するために工夫していること」の記述データを質的に分析した。その結果、課題には【地区把握・地域診断】【健康課題への対応方法】【保健師間の連携】【住民との協働】【体制整備】【保健師の認識・スキル】【保健師の資質向上対策】【マンパワー】等に関するものがあった。また、工夫していることには【地区の課題の明確化】【地区活動】【保健事業提供方法】【住民又は住民組織への関わり方】【保健師間の連携】【他部署又は他職種との連携】等に関することがあった。次年度はさらに、人口規模別、活動分野別の共通性と相違性について検討していく。また、健康格差を縮小し、ソーシャルキャピタルの醸成を促進する又は持続発展させる保健師の活動方法を明らかにするために半構成的インタビュー調査を実施した。対象は平成26年度の調査においてインタビュー調査への協力の意向が示された18名の統括保健師又は管理的立場等にある保健師又はこれらの保健師により推薦された保健師とし、改めて調査協力を依頼し、同意が得られた16名の内、12名に対し実施した(2名は平成26年度に実施済み、2名は日程調整がつかず未実施)。今年度は、活動の課題及び課題に対して工夫していること(活動方法)について質的に個別分析を行った。平成27年度の目標は、市町村の地域特性別及び活動体制の類型別の、健康格差とソーシャルキャピタルの醸成に関する地区管理の観点からの保健師活動の課題及び活動方法を明らかにするために、平成26年度の調査結果を分析し、人口規模別、活動分野別、人口規模別かつ活動分野別の共通性と相違性について検討することであった。しかし、人口規模別に分析し、課題と工夫していることの種別を明らかにすることに留まり、人口規模別、活動分野別、人口規模別かつ活動分野別の比較検討まで実施することができなかった。 | KAKENHI-PROJECT-26463569 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26463569 |
健康格差を縮小しソーシャルキャピタルの醸成を促進する市町村保健師の地区管理 | また、健康格差を縮小し、ソーシャルキャピタルの醸成を促進する又は持続発展させる保健師の活動方法を明らかにするための半構成的インタビュー調査の対象数の目標は20市町村の保健師としていたが、実施数は12名であり、多様な地域特性類型及び活動体制類型の市町村が対象となるよう調査対象者を加えることもできなかった。これは平成26年度調査においてインタビュー調査への協力の意向が示された18名の保健師に改めて調査協力を依頼したところ、2名の同意が得られなかったこと、また2名は日程調整がつかなかったことに加え、インタビュー調査の対象者が、北海道から愛知県、三重県、山口県等に渡り、また、調査及び質的分析の精度をあげるために可能な限り二人体制で調査を実施することとしたため、平成27年度当初予算計画の調査旅費18万円に前年度繰越金51万円をあてても大幅に超過し、12名を超える調査の実施が困難となったためである。さらに、個別分析に時間を要したため、地域特性類型及び活動体制類型によって個別分析結果を比較検討するまでに至らなかった。以上から、現在までの達成度を「やや遅れている」とした。健康格差とソーシャルキャピタルの醸成に関する地区管理の観点からの保健師活動の課題及び活動方法を明らかにするために、人口規模により層化無作為抽出した841市町村の母子保健、健康づくり、介護予防の各分野担当保健師各1名を対象に郵送無記名自記式質問紙調査を実施した。平成27年度までに3分野共通及び各分野に特化した、活動方法に工夫が必要な地区・集団の特性を明らかにするとともに、【地区把握・地域診断】【健康課題への対応方法】【住民との協働】【体制整備】等の保健師活動の課題の側面及び【地区の課題の明確化】【保健事業提供方法】【住民又は住民組織への関わり方】等の活動の工夫の側面を明らかにした。また、保健師活動体制の類型化に活動分野や人口規模の視点が有用であり、それらから類型化を検討する必要性が示唆された。これを受け平成28年度は、人口規模別(1満未満、13万未満、35万未満、510万未満、10万以上)、活動分野別(母子、健康づくり、介護予防)、人口規模別かつ活動分野別に保健師活動の課題及び活動の工夫を分析し、15市町村の統括保健師等15名への半構成的インタビューの結果も併せて、その共通性と相違性について検討した。その結果、人口「1満未満」の町村は他の区分の市町村とは課題に対する認識が異なることや「35万未満」の市町は課題の認識が低いこと等人口規模別又は分野別の課題と工夫が明らかになり、さらに人口規模別かつ活動分野別では特に介護予防分野について人口規模による課題と工夫の相違点があった。結果の活動方法に工夫が必要な地区や集団の特性は健康格差が生じる可能性がある環境的要因を示唆しており、活動を創意工夫し健康格差を縮小するためのアセスメントの視点になると考える。また、結果は地区管理における活動分野と人口規模の視点の重要性を示唆し、課題と工夫はそれらの視点に応じた保健師の地区管理に役立つ。健康格差の縮小とソーシャルキャピタルの醸成を促進するための市町村保健師による地区管理の方法を明らかにすることを目的に、人口規模により無作為抽出した841市町村の保健師を対象に郵送による無記名自記式質問紙調査を行った。結果、保健師活動の様相は人口規模により異なっており、特に人口「1万未満」と「5万以上」の市町村で異なっていた。活動分野別では、「介護予防」と、「母子保健」及び「健康づくり」で異なっていた。人口規模別及び活動分野別各々の地区管理にかかわる保健師活動の課題と活動の工夫を明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-26463569 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26463569 |
前立腺がんおよび乳がんにおける潜伏がんならびに微小がんの発生と進展 | 1.前立腺がん1)微小癌の発生については近年、若年層で増加している結果が示された(矢谷)。2)微小癌の進展については、がん関連遺伝子、ホルモンとの関係について検討された。NDPキナーゼ/nm23遺伝子産物の発現は低分化型で高頻度であったが、転移能との相関はなかった(古武)。4)ホルモンとの関係では、ヒト前立腺癌のアンドロゲン受容体は、ホルモン不応性癌の10%にのみ点突然変異がみられた(島崎)。5)発生部位を三次元的に解析すると肥大結節は主にtransition zoneに発生し、潜在癌はperipheral zoneにみられた(今井田)。2.乳がん1)潜伏癌と顕性癌の発生頻度の比較から20年で潜伏癌が顕在化すると予想された(坂元)。2)切除標本の検索から推計すると潜伏癌の頻度は約10%になる(秋山)。3)非浸潤性乳管癌における遺伝子異常の頻度は浸潤癌より頻度が低い傾向にあったが、c-erbB-2の増幅は逆に高頻度であった(広橋)。4)アンドロゲン誘導性増殖因子の遺伝子解析を行い構造を決定した。正常ヒト組織ではmRNAの発現はみられなかった(田中)。5)テネイシン欠損マウスへの乳癌移植系の実験では、環境によってテネイシンは癌に対し促進的にも抑制的にも作用した(坂倉)。1.前立腺がん1)微小癌の発生については近年、若年層で増加している結果が示された(矢谷)。2)微小癌の進展については、がん関連遺伝子、ホルモンとの関係について検討された。NDPキナーゼ/nm23遺伝子産物の発現は低分化型で高頻度であったが、転移能との相関はなかった(古武)。4)ホルモンとの関係では、ヒト前立腺癌のアンドロゲン受容体は、ホルモン不応性癌の10%にのみ点突然変異がみられた(島崎)。5)発生部位を三次元的に解析すると肥大結節は主にtransition zoneに発生し、潜在癌はperipheral zoneにみられた(今井田)。2.乳がん1)潜伏癌と顕性癌の発生頻度の比較から20年で潜伏癌が顕在化すると予想された(坂元)。2)切除標本の検索から推計すると潜伏癌の頻度は約10%になる(秋山)。3)非浸潤性乳管癌における遺伝子異常の頻度は浸潤癌より頻度が低い傾向にあったが、c-erbB-2の増幅は逆に高頻度であった(広橋)。4)アンドロゲン誘導性増殖因子の遺伝子解析を行い構造を決定した。正常ヒト組織ではmRNAの発現はみられなかった(田中)。5)テネイシン欠損マウスへの乳癌移植系の実験では、環境によってテネイシンは癌に対し促進的にも抑制的にも作用した(坂倉)。 | KAKENHI-PROJECT-05151032 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05151032 |
シナプス前代謝型グルタミン酸受容体の機能解析 | グルタミン酸は中枢神経系における主要な神経情報伝達物質であり、学習や記憶の形成等のシナプス可塑性に深く関与する。従ってその受容体の機能を解明することは神経回路の成熟と特異的機能発現のメカニズムの理解に大いに貢献するものと考えられる。我々が研究の対象とするグルタミン酸作動性シナプスは電気生理学的に広く解析が行われており、LTPやLTDという重要な現象の形成機構については多くの報告がなされている。近年、イオン型グルタミン酸受容体に関しては機能解析が分子のレベルで詳細に行われつつある。一方、代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)に関しては分子レベルでの機能解析は緒についたところである。従って研究計画で述べたように本研究ではmGluRに結合する蛋白を同定することによる受容体の分子レベルでの機能解析を行うことにした。結果1酵母ハイブリッド法を用いてmGluR結合蛋白を同定しtamalinと名付けた。2 tamalinは394アミノ酸からなりそのPDZ domainを介してmGluR1及び5のC末端部分と結合する。3 tamalinは低分子量G蛋白Arfに対するGEFであるcytohesinとも結合する。5 Arfが細胞内輸送に深く関わることに一致してtamalinはmGluR1の膜表面への、mGluR5の神経突起への発現量を増加させた。6 cytohesin以外にもtamalin結合蛋白を幾つか同定しており、現在解析を進めている。まとめ我々はmGluRl及び5に結合する蛋白tamalinを同定し、tamalinがmGluRl及び5の輸送に関わることを見つけた。イオン型グルタミン酸受容体の機能にPDZ domainをもつ蛋白が深く関わることが報告されているが、mGluRの機能に関してもPDZ domainをもつtamalinが重要な関与をするものと考える。グルタミン酸は中枢神経系における主要な神経情報伝達物質であり、学習や記憶の形成等のシナプス可塑性に深く関与する。従ってその受容体の機能を解明することは神経回路の成熟と特異的機能発現のメカニズムの理解に大いに貢献するものと考えられる。我々が研究の対象とするグルタミン酸作動性シナプスは電気生理学的に広く解析が行われており、LTPやLTDという重要な現象の形成機構については多くの報告がなされている。近年、イオン型グルタミン酸受容体に関しては機能解析が分子のレベルで詳細に行われつつある。一方、代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)に関しては分子レペルでの機能解析は緒についたところである。従って研究計画で述べたように本研究ではmGluRに結合する蛋白を同定することによる受容体の分子レベルでの機能解析を行うことにした。結果1酵母ハイブリッド法を用いてmGluR結合蛋白を同定しtamalinと名付けた。2 tamalinは394アミノ酸からなりそのPDZdomainを介してmGluR1及び5のC末端部分と結合する。3 tamalinは低分子量G蛋白Arfに対するGEFであるcytohesinとも結合する。5 Arfが細胞内輸送に深く関わることに一致してtamalinはmGluR1の膜表面への、mGluR5の神経突起への発現量を増加させた。まとめ我々はmGluR1及び5に結合する蛋白tamalinを同定し、tamalinがmGluR1及び5の輸送に関わることを見つけた。イオン型グルタミン酸受容体の機能にPDZdomainをもつ蛋白が深く関わることが報告されているが、mGluRの機能に関してもPDZdomainをもつtamalinが重要な関与をするものと考える。グルタミン酸は中枢神経系における主要な神経情報伝達物質であり、学習や記憶の形成等のシナプス可塑性に深く関与する。従ってその受容体の機能を解明することは神経回路の成熟と特異的機能発現のメカニズムの理解に大いに貢献するものと考えられる。我々が研究の対象とするグルタミン酸作動性シナプスは電気生理学的に広く解析が行われており、LTPやLTDという重要な現象の形成機構については多くの報告がなされている。近年、イオン型グルタミン酸受容体に関しては機能解析が分子のレベルで詳細に行われつつある。一方、代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)に関しては分子レベルでの機能解析は緒についたところである。従って研究計画で述べたように本研究ではmGluRに結合する蛋白を同定することによる受容体の分子レベルでの機能解析を行うことにした。結果1酵母ハイブリッド法を用いてmGluR結合蛋白を同定しtamalinと名付けた。2 tamalinは394アミノ酸からなりそのPDZ domainを介してmGluR1及び5のC末端部分と結合する。3 tamalinは低分子量G蛋白Arfに対するGEFであるcytohesinとも結合する。5 Arfが細胞内輸送に深く関わることに一致してtamalinはmGluR1の膜表面への、mGluR5の神経突起への発現量を増加させた。6 cytohesin以外にもtamalin結合蛋白を幾つか同定しており、現在解析を進めている。まとめ我々はmGluRl及び5に結合する蛋白tamalinを同定し、tamalinがmGluRl及び5の輸送に関わることを見つけた。イオン型グルタミン酸受容体の機能にPDZ domainをもつ蛋白が深く関わることが報告されているが、mGluRの機能に関してもPDZ domainをもつtamalinが重要な関与をするものと考える。 | KAKENHI-PROJECT-13041026 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13041026 |
耳鳴発生の分子機構の解明と新規治療法の模索 | 申請者本人が平成26年5月1日付で、大阪大学准教授から奈良県立医科大学教授に赴任したため、新環境において耳鳴動物モデルの立ち上げを行った。平成25-27年度科研費による成果として、新環境におけるラット用動物行動学的逃避実験装置を用いてサリチル酸耳鳴動物モデルの作成に成功し、らせん神経節において発現上昇する侵害受容体TRPV1がサリチル酸耳鳴分子マーカーとして利用可能であることを確かめた。さらに細胞障害受傷機構としてのアラキドン酸経路および細胞生命維持機構としての脳由来神経栄養因子BDNF自己調節経路を検索し、カプサゼピンの中耳腔投与がサリチル酸耳鳴の治療として可能であることが示された。サリチル酸のヒト投与での耳鳴の副作用はアスピリン耳鳴としてよく知られているが、その過剰投与で小動物にも耳鳴を引き起こすことが電気生理学的に証明されている。前回、サリチル酸耳鳴動物行動モデルを作成し、その耳鳴分子マーカーとして侵害受容体TRPV1が有用であることを報告した。今回、神経栄養因子であるBDNFのらせん神経節における発現動態を、生後4週の雄ラットを使用し、real-time PCR法を中心とした形態学的手法により検索した。サリチル酸投与によってラットの耳鳴による反応行動が引き起こされ、投与2時間後にらせん神経節のTRPV1mRNAに引き続きBDNFmRNAの発現も有意に上昇した。さらにサリチル酸投与に先んじて、TRPV1拮抗剤、TRPV1アンチセンス、抗酸化剤、BDNFアンチセンスそれぞれを、浸透圧ミニポンプから正円窓経由で持続投与すると、TRPV1mRNAは4群すべてにおいて、BDNFmRNAは後2者のみで、サリチル酸投与2時間後の発現上昇は有意に抑制された。以上のことから、サリチル酸投与による耳鳴の発生機序に、BDNFを介したTRPV1の転写調節が関与している可能性が示唆された。逆にTRPV1を抑制する薬物治療は、BDNFの転写調節に影響しない可能性が示唆された。申請者本人が平成26年5月1日付で、大阪大学准教授から奈良県立医科大学教授に赴任したため、新環境において耳鳴動物モデルの立ち上げを行った。[目的]我々はラットを用いた耳鳴動物モデルを考案するとともに、耳鳴を評価する分子マーカーとして聴覚伝導路における痛み受容体TRPV1 (Transient receptor potential cation channel superfamily V-1)の発現について検討した。[方法・結果]67週齢オスのwistarラットを用いた。ケージの天井に取り付けたスピーカーから呈示音を5秒間発し、その1秒後に底部の金網に電気ショックを与えると、ラットは壁を乗り越え隣部屋へ移動する。これを繰り返すと、ラットはスピーカーの音を聞くと電気ショックなしで隣部屋へ移動するようになる。これが目的行動であり、10回の実験中8回(80%)以上この行動が認められるようになればテストへうつる。テストでは、条件付けされたラットにサリチル酸(400mg/kg)を投与し、2時間後に同様の音呈示(10回)を行い、音に正しく反応して隣部屋に移動した回数(score)と無音状態で隣部屋に移動した回数(false positive responses)をそれぞれカウントした。サリチル酸投与2時間後、false positive responsesの有意な増加を認め、ラットに耳鳴が生じている可能性が考えられた。なお、呈示音が16KHz・60dBの際に最も顕著に増加が見られたことよりサリチル酸投与時に生じる耳鳴は16KHz、60dBに最も近いと考えられた。次にreal-time PCR法およびwestern blot法により、サリチル酸投与2時間後にラセン神経節におけるTRPV1発現の上昇が認められた。以上より、ラット耳鳴動物モデルの立ち上げを確認した。申請者本人が平成26年5月1日付で、大阪大学准教授から奈良県立医科大学教授に赴任したため、新環境において耳鳴動物モデルの立ち上げを行った。平成25-27年度科研費による成果として、新環境におけるラット用動物行動学的逃避実験装置を用いてサリチル酸耳鳴動物モデルの作成に成功し、らせん神経節において発現上昇する侵害受容体TRPV1がサリチル酸耳鳴分子マーカーとして利用可能であることを確かめた。さらに細胞障害受傷機構としてのアラキドン酸経路および細胞生命維持機構としての脳由来神経栄養因子BDNF自己調節経路を検索し、カプサゼピンの中耳腔投与がサリチル酸耳鳴の治療として可能であることが示された。耳科・神経耳科実験室の整理により、耳鳴の動物行動学的な研究が頓挫することとなった。しかしながら、上記のごとく分子生物学的手法により、サリチル酸耳鳴の際にBDNFが活性化するとともにTRPV1を転写促進することがわかった。平成26年5月1日付で大阪大学医学部耳鼻咽喉科准教授から奈良県立医科大学耳鼻咽喉科教授として赴任することになった。そのため研究室の準備に相当期間を要する可能性がある。しかしその間を使って、研究実績の概要にも述べさせていただいた内容で海外論文、海外学会で発表していく予定である。研究準備が整えば、分子生物学的アプローチにより、内耳障害を起こす他の誘因、音響外傷、アミノグリコシド内耳障害においても、らせん神経節細胞で同様の分子動態が確認できるかを確認する。また、内耳障害の時間経過とともに聴覚系末梢および中枢での分子動態の移行があるかを確認する。平成26年度5月1日より研究主任である北原糺が大阪大学医学部耳鼻咽喉科から奈良県立医科大学耳鼻咽喉科に異動。 | KAKENHI-PROJECT-25462639 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25462639 |
耳鳴発生の分子機構の解明と新規治療法の模索 | そのため本研究の中心である耳鳴動物モデル実験装置の購入を控えたため。新しい赴任先である奈良県立医科大学耳鼻咽喉科において、耳鳴動物モデル実験装置の購入を含めた研究再立ち上げに使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-25462639 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25462639 |
並列コンピューティングによる大型船体構造の振動応答解析法に関する研究 | 従来、船体構造の振動解析は「共振回避設計」を行うための部分構造の固有振動解析が主流であった。しかし、船体各部は様々な固有振動数を持つため、全ての固有振動数を回避することは難しいだけでなく、接水影響で固有振動数が低下し、通常の上逃げによる共振回避が困難な場合もある。そこで、次世代の振動設計は振動応答量を予測して制御する設計を行うべきであると考えられる。減衰の定量化が実現され、応答が精度良く得られるようになれば、応答によっては共振回避する必要がなくなる。そのような周波数応答解析を行うには、全船解析や精度良い大規模構造振動解析が必要であり、膨大な計算量と計算時聞、およびFEMメッシュ作成時間を要する。本研究ではそこで並列コンピューティングの技術を用いて、分散型計算機により大規模な周波数応答解析を効率よく行う手法を開発した。まず、MPIの通信ライブラリー、WindowsまたはLinuxのOS、Fortranコンパイラー、および高速のネットワークを用いた並列計算機システムを構築し、オフィスで通常使用されているコンピューター環境を利用して大規模な並列構造解析ができることを示した。船体の全船振動解析を行うための、Domain Decomposition before Mesh Generation、すなわち対象構造物の領域分割をまず行った後に有限要素メッシュ生成を行う並列計算用プリ処理の思想を新たに示した。この方法により、メッシュ生成が部分領域毎に行えるため、メッシュ生成に関わる人的作業の並列化も行えるので設計における数値解析が短期間で行える。また、複数の平板からなる構造に対して領域分割法を用いて、周波数応答解析を並列化して行なうプログラムを開発した。部分領域の境界の適合性を満たすよう、共役勾配法を用いて反復計算を行い、領域境界上の不平衡力を0へ収束させるものである。領域境界には一般に並進と回転の自由度が混在しているため、収束しない場合もあることを示し、前処理によって収束性が大幅に改善されることを示した。また、周波数が高くなるにつれ、収束性が悪化することを明らかにした。従来、船体構造の振動解析は「共振回避設計」を行うための部分構造の固有振動解析が主流であった。しかし、船体各部は様々な固有振動数を持つため、全ての固有振動数を回避することは難しいだけでなく、接水影響で固有振動数が低下し、通常の上逃げによる共振回避が困難な場合もある。そこで、次世代の振動設計は振動応答量を予測して制御する設計を行うべきであると考えられる。減衰の定量化が実現され、応答が精度良く得られるようになれば、応答によっては共振回避する必要がなくなる。そのような周波数応答解析を行うには、全船解析や精度良い大規模構造振動解析が必要であり、膨大な計算量と計算時聞、およびFEMメッシュ作成時間を要する。本研究ではそこで並列コンピューティングの技術を用いて、分散型計算機により大規模な周波数応答解析を効率よく行う手法を開発した。まず、MPIの通信ライブラリー、WindowsまたはLinuxのOS、Fortranコンパイラー、および高速のネットワークを用いた並列計算機システムを構築し、オフィスで通常使用されているコンピューター環境を利用して大規模な並列構造解析ができることを示した。船体の全船振動解析を行うための、Domain Decomposition before Mesh Generation、すなわち対象構造物の領域分割をまず行った後に有限要素メッシュ生成を行う並列計算用プリ処理の思想を新たに示した。この方法により、メッシュ生成が部分領域毎に行えるため、メッシュ生成に関わる人的作業の並列化も行えるので設計における数値解析が短期間で行える。また、複数の平板からなる構造に対して領域分割法を用いて、周波数応答解析を並列化して行なうプログラムを開発した。部分領域の境界の適合性を満たすよう、共役勾配法を用いて反復計算を行い、領域境界上の不平衡力を0へ収束させるものである。領域境界には一般に並進と回転の自由度が混在しているため、収束しない場合もあることを示し、前処理によって収束性が大幅に改善されることを示した。また、周波数が高くなるにつれ、収束性が悪化することを明らかにした。大型客船などのベオウルフ型並列コンピューティングによる大規模な強制振動解析が行える数値解析技術を開発することを目的として、平成14年度は次のような研究を実施した。まず、ハードウェアの設定を行った。ネットワークによるデータ通信による計算速度低下を極力小さくするために、現時点で最速のGIGAbps級のネットワークを構築しておく必要がある。研究費により購入したコンピュータ3台のうち、1台(Dell precision)をソフトウェア開発用として他の2台(Dell dimension)を並列計算用のコンピュータとして設定した。これら3台に高速ネットワークカードを装着し、同じく本研究費によって購入した高速ネットワークハブ装置(ギガビットスイッチングハブ)に1000BaseTケーブルで接続した。次に並列計算用のソフトウェア環境を構築した。数値計算用の2台のPCにOSとしてVine Linux、数値計算言語としてFortran、および通信用ライブラリー(MPI)をインストールした。次に、並列計算における有限要素解析のデータ構造について検討を行った。本研究の数値解析においては、従来の構造解析ツールが容易に転用できるように、大規模構造を部分構造に分割し、各部分構造をそれぞれコンピュータ(1CPU)に割り当て、それぞれの構造ごとに独立に有限要素データ(剛性マトリックス、減衰マトリックス、質量マトリックス、外力ベクトル、節点変位ベクトルなど)を構築し、部分構造間のインターフェース部の物理量データ(節点変位ベクトル、節点内力ベクトルのみを通信によってやりとりすることとした。部分構造間の物理量の整合性を達成するアルゴリズムには、共役勾配法を応用した手法を用いることとした。平成14年度にはまず、梁柱要素からなる並列振動解析ツールを作成した。 | KAKENHI-PROJECT-14550862 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14550862 |
並列コンピューティングによる大型船体構造の振動応答解析法に関する研究 | 平成15年度には板殻要素を用いて並列振動解析ツールを完成させる予定である。大規模な振動解析を並列計算機システムで行うための解析技術を開発することを目標として、平成15年度は、主に1)動的陽解法による構造物の過渡応答振動解析、および2)調和起振力による強制振動解析の2種類の並列振動解析の開発に関する研究を行い、問題点や今後克服すべき点を明らかにした。前年度はOSにLINUXを採用したシステムの構築を行ったが、将来的にGrid computingが設計環境で普及することを予想して、WindowsをOSとしたPC群による並列計算システムを新たに構築した。Job hostのPCで開発した並列振動解析プログラムのソースファイルをコンパイルして実行ファイルを作成し、各領域ごとの境界条件すなわち領域境界条件を含む境界条件に対する入力データを各PCに転送した後Job Hostからプログラムを起動することにより並列計算が行うことができるようになった。動的陽解法FEMによる過渡応答振動解析は、並列化が比較的容易である上、領域間境界における繰り返しが必要ないので、並列化効率が非常に高く、非並列解析と同じ解析結果がえられ、並列解析が非常に有効であることがわかった。並列強制振動解析では、船体構造解析に多く用いられている4節点矩形平面シェル要素を用いて、有限要素法の解析プログラムを作成した。並列化には、共役勾配法を用いた領域分割法のアルゴリズムを採用して計算を行った。しかし、領域境界における繰り返しの収束性が良いとは言えないので改善が必要である。上記2種類の並列解析について研究した結果、問題点が明らかになったので次年度は1)並列強制振動解析における並列化効率の改善方法、2)減衰を考慮した複素並列振動応答解析の開発、3)領域境界入出力データのハンドリングの効率化と系統化について研究する予定である。大規模な振動解析を並列計算機システムで行うための解析技術を開発することを目標として、平成16年度は、平成15年度に引き続き、1)動的陽解法による構造物の過渡応答振動解析、および2)調和起振力による強制振動解析の2種類の並列振動解析の開発に関する研究を行った。将来的にGrid computingが設計環境で普及することを予想して、Windows2000およびWindowsXPをOSとしたPC群による並列計算システムを構築した。本研究の経費よりPCの台数をさらに大きくして、計算の規模を大きくした。可視化ソフトウェアを利用して全体的に可視できるように開発した。 | KAKENHI-PROJECT-14550862 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14550862 |
ブタ永久歯歯胚の歯根形成部位に存在する非コラーゲン性タンパク質について | ブタの歯根形成部位におけるエナメルタンパクの検出と発現について調べるため、切歯永久歯歯胚の歯根形成端のみを調整した。組織学的観察によって、この試料には象牙前質が形成し始めている部分から象牙質が石灰化している部分を含み、また、象牙質の表面には薄いセメント質の層と多数の細胞が存在し、歯随側には主に象牙芽細胞が含まれているのがわかった。この試料の4Mグアニジン可溶性画分中に、3種類のアメロゲニンの抗体に反応する低分子量で塩基性のタンパク質が存在したので、これらを精製し、アミノ酸配列を調べたところ、これらがすべてヒストンであることが確認され、調整した試料から多量の細胞成分が溶出していることがわかった。そこで抽出方法を変えて酢酸可溶性画分を調整し、エナメルタンパクの存在をイッムノブロットで確認したところ、量的には少ないが、明らかに存在することがわかった。この試料から総RNAを調整し、RT-PCR法でエナメルタンパクの発現を調べると、アメロゲニン、エナメリン、シースリンのすべてが発現していたが、アメロゲニンの発現量はエナメリン、シースリンに比較して多くなく、基質形成期のエナメル芽細胞におけるエナメルタンパクの発現の割合いとは異なっていた。これらのことから、歯根形成部位ではアメロゲニンは幼若エナメル質の基質のような構造を構築しえないと考えられた。また、免疫反応物の分布からエナメルタンパクの分解が起きていることがわかったので、ザイモグラムでプロテアーゼを調べると、エナメルタンパクの分解に関与するEMSP1やエナメリシンの活性は検出されなかった。これから歯根の形成端におけるエナメルタンパクの分解の機構は不明であるが、分泌されたエナメルタンパクは分解されながら、将来セメント質が形成される部位に拡散し、セメント芽細胞が誘導されてくると考えられた。ブタの歯根形成部位におけるエナメルタンパクの検出と発現について調べるため、切歯永久歯歯胚の歯根形成端のみを調整した。組織学的観察によって、この試料には象牙前質が形成し始めている部分から象牙質が石灰化している部分を含み、また、象牙質の表面には薄いセメント質の層と多数の細胞が存在し、歯随側には主に象牙芽細胞が含まれているのがわかった。この試料の4Mグアニジン可溶性画分中に、3種類のアメロゲニンの抗体に反応する低分子量で塩基性のタンパク質が存在したので、これらを精製し、アミノ酸配列を調べたところ、これらがすべてヒストンであることが確認され、調整した試料から多量の細胞成分が溶出していることがわかった。そこで抽出方法を変えて酢酸可溶性画分を調整し、エナメルタンパクの存在をイッムノブロットで確認したところ、量的には少ないが、明らかに存在することがわかった。この試料から総RNAを調整し、RT-PCR法でエナメルタンパクの発現を調べると、アメロゲニン、エナメリン、シースリンのすべてが発現していたが、アメロゲニンの発現量はエナメリン、シースリンに比較して多くなく、基質形成期のエナメル芽細胞におけるエナメルタンパクの発現の割合いとは異なっていた。これらのことから、歯根形成部位ではアメロゲニンは幼若エナメル質の基質のような構造を構築しえないと考えられた。また、免疫反応物の分布からエナメルタンパクの分解が起きていることがわかったので、ザイモグラムでプロテアーゼを調べると、エナメルタンパクの分解に関与するEMSP1やエナメリシンの活性は検出されなかった。これから歯根の形成端におけるエナメルタンパクの分解の機構は不明であるが、分泌されたエナメルタンパクは分解されながら、将来セメント質が形成される部位に拡散し、セメント芽細胞が誘導されてくると考えられた。歯牙の形成においてエナメルタンパクがセメント質の形成ならびに歯根膜の形成にどのように関与しているかを調べるために、ブタの永久歯歯胚から歯根形成部位の形成端の組織を調整した。これは約1mmの幅があり、組織学的に、象牙質、象牙前質、さらに薄いが明らかなセメント質の組織が確認され、それらの周囲に多数の細胞が存在した。この試料から4Mグアニジン溶液で可溶化されるタンパク質について、予備的にブタのアメロゲニンの抗体で免疫化学的に調べたところ、この抗体に反応する分子量がアメロゲニンより小さい3種類の塩基性のタンパク質が量的に多く存在することが確認されたので、これらの精製を試みた。これらのタンパク質の精製に抽出画分中のコラーゲンが妨害するので、これをコラーゲナーゼで消化し、その消化物についてHPLCにより精製した。精製したタンパク質のアミノ酸配列を調べたところ、これらがすべてヒストンであることが確認され、調整した試料から多量の細胞成分が溶出していることがわかった。そこでターゲットをこれらの組織にエナメルタンパクが存在するか否かに変えて、試料を酢酸溶液で抽出することを試み、この抽出画分について各種のエナメルタンパクの抗体で免疫化学的に調べた。酢酸抽出画分にも多数の非コラーゲン性タンパク質が存在したが、ヒストンはほとんど存在せず、アルブミンが存在し、その大部分は血液由来と思われた。アメロゲニン、エナメリン、シースリン共に量的に少ないが、それらの存在が確認された。これらのエナメルタンパクの存在をさらに確認するために、この試料に含まれる細胞から、総RNAを抽出し、アメロゲニン、エナメリン、シースリンのプライマーを使用してRT-PCR法を行い、その結果、歯根を形成しつつある組織にはこれらのエナメルタンパクが発現していることを確認した。 | KAKENHI-PROJECT-11671859 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11671859 |
ブタ永久歯歯胚の歯根形成部位に存在する非コラーゲン性タンパク質について | ブタの歯根形成部位において、RT-PCR法でエナメルタンパクの発現を確認し、またイムノブロット法でそれらのタンパク質を検出したのであるがこれらの免疫反応物の分布からエナメルタンパクの分解が起きていることがわかったので、ザイモグラムでプロテアーゼ活性を調べた。ブタの歯根形成端にはエナメルタンパクの分解に関与するEMSP1やエナメリシンの活性は検出されなかったのでこれらの分解の機構は不明であるが、分泌されたエナメルタンパクは分解されながら、将来セメント質が形成される部位に拡散し、それによってセメント芽細胞が誘導されてくると考えられた。次に、歯根形成部位でエナメルタンパクを発現している細胞を同定するため、エナメル芽細胞層、象牙芽細胞層、セメント質が形成されている部分の細胞群をそれぞれ調整し、エナメルタンパクの発現を調べた。組織学的に象牙芽細胞層は前駆象牙芽細胞も含んでいたが、ほぼ均一であることが確認された。アメロゲニンに関しては象牙芽細胞層でわずかに発現し、セメント質細胞群ではほとんど検出できなかった。これらから、歯根形成部位のアメロゲニンの発現は、これらの細胞ではなく、断裂したヘルトビッヒの上皮鞘の細胞が関与していると予想された。しかしながら、この問題に関しては方法論的に問題が有るので、今後、in situによる検討を要する。今後の研究の方向として、セメント芽細胞の誘導に関わるエナメルタンパクを同定するために、その手段として、細胞培養によるセメント芽細胞の誘導について調べる必要が有る。セメント芽細胞であることを確認するためには、セメント質に特有なタンパク質を見つけ、それが発現している細胞を同定する必要が有ると考え、歯胚から形成されて間もなくと考えられるセメント質を調整し予備的にHPLCによって酸性タンパク質を分離し、それらの同定を試みている。 | KAKENHI-PROJECT-11671859 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11671859 |
到着の非斉時性と受付期間の有限性を反映した待ち行列モデルに関する研究 | 標準的な待ち行列理論では,サービス利用者の到着を支配する確率過程が時間的に同質であるとする,「斉時性」の仮定が本質的となっている.通常は,この仮定に加えて,観測期間が無限大とみなせるほど長いという前提の下,各種の定常分布が性能評価指標として用いられる.これらは,短期間に非常に多数の利用要求が多重化されて到着する,情報通信ネットワークや計算機システムにおいては比較的妥当な仮定である一方,病院や空港などのサービス施設では大半の場合,このようなモデルの適用は難しい.これは,多くのサービス施設で生じる待ち行列に共通する性質である,到着の非斉時性ならびに受付期間の有限性が,待ち行列のダイナミクスに大きな影響を与えるためである.本研究では,これらの性質を反映させた待ち行列モデルを考え,その数理的基礎付けを行なうこと,ならびに実データに基づいたフィッティング手法を検討することを目的とする.平成30年度は,連続時間斉時マルコフ連鎖に対する基本的な数値計算法である「一様化法」の非斉時マルコフ連鎖への拡張に関する検討を行った.時間に依存する生成作用素が特定の形式の無限級数で表されるという仮定の下,有限回の手続きにより非斉時マルコフ連鎖の過渡確率分布が計算可能であることを理論的に証明し,小規模なモデルに対して実際にアルゴリズムが実行可能であることを確認した.加えて,医療施設から提供を受けた現実の待ち時間データに対するデータ分析を行い,非斉時かつ有限受付期間の待ち行列の振る舞いに関する知見を得た.本年度は,連続時間非斉時マルコフ連鎖に対する一様化法の拡張を行い,比較的小規模な問題に対してその実行可能性が確認できた.また,実データの分析では前処理工程に大きな労力を要するが,主だった前処理工程部分のプログラムの実装は本年度中に完了し,加えて,待ち時間に関する基本的な時系列データ分析が既に完了した.本年度に開発した,非斉時マルコフ連鎖に対する一様化法は,そのまま実装するとマルコフ連鎖の状態数が大きくなるに伴って計算時間が大幅に増大するという問題を有している.今後は,この手法を待ち行列モデルの過渡解析へ適用する方法を検討するため,モデル特有の構造を利用した計算時間の短縮方策について考察を進めていく.標準的な待ち行列理論では,サービス利用者の到着を支配する確率過程が時間的に同質であるとする,「斉時性」の仮定が本質的となっている.通常は,この仮定に加えて,観測期間が無限大とみなせるほど長いという前提の下,各種の定常分布が性能評価指標として用いられる.これらは,短期間に非常に多数の利用要求が多重化されて到着する,情報通信ネットワークや計算機システムにおいては比較的妥当な仮定である一方,病院や空港などのサービス施設では大半の場合,このようなモデルの適用は難しい.これは,多くのサービス施設で生じる待ち行列に共通する性質である,到着の非斉時性ならびに受付期間の有限性が,待ち行列のダイナミクスに大きな影響を与えるためである.本研究では,これらの性質を反映させた待ち行列モデルを考え,その数理的基礎付けを行なうこと,ならびに実データに基づいたフィッティング手法を検討することを目的とする.平成30年度は,連続時間斉時マルコフ連鎖に対する基本的な数値計算法である「一様化法」の非斉時マルコフ連鎖への拡張に関する検討を行った.時間に依存する生成作用素が特定の形式の無限級数で表されるという仮定の下,有限回の手続きにより非斉時マルコフ連鎖の過渡確率分布が計算可能であることを理論的に証明し,小規模なモデルに対して実際にアルゴリズムが実行可能であることを確認した.加えて,医療施設から提供を受けた現実の待ち時間データに対するデータ分析を行い,非斉時かつ有限受付期間の待ち行列の振る舞いに関する知見を得た.本年度は,連続時間非斉時マルコフ連鎖に対する一様化法の拡張を行い,比較的小規模な問題に対してその実行可能性が確認できた.また,実データの分析では前処理工程に大きな労力を要するが,主だった前処理工程部分のプログラムの実装は本年度中に完了し,加えて,待ち時間に関する基本的な時系列データ分析が既に完了した.本年度に開発した,非斉時マルコフ連鎖に対する一様化法は,そのまま実装するとマルコフ連鎖の状態数が大きくなるに伴って計算時間が大幅に増大するという問題を有している.今後は,この手法を待ち行列モデルの過渡解析へ適用する方法を検討するため,モデル特有の構造を利用した計算時間の短縮方策について考察を進めていく.予定していた国際会議での成果発表を次年度に行うことになった.次年度の早い時期に国際会議旅費として支出予定である. | KAKENHI-PROJECT-18K18007 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K18007 |
超高速レーザカオスを用いた情報理論的セキュリティに基づく暗号鍵発生 | 本研究では、情報理論的セキュリティに基づく暗号鍵発生方式を提案し、超高速レーザカオスを用いてこれを工学的に実装することを目的とする。特に相関乱数暗号の要素技術として、共通カオス信号により駆動された半導体レーザカオス同期および相関の制御を実験的に実現した。本実験では、3つのDFB半導体レーザ(それぞれDrive、Response1、Response2と呼ぶ)を用いた。外部鏡を用いてDriveに戻り光を付加することでカオスを発生させた。Driveの緩和発振周波数とRepsonse1, Response2の緩和発振周波数を異なる値に設定した。Driveからのカオス的レーザ光を、ビームスプリッタ(BS)を調整することでRespoense1とResponse2に注入させた。このときDrive-Response間では低い相関、Response1-Response2間では高い相関を確認した。次にResponsel、Response2にそれぞれ外部鏡を用いて戻り光を付加させた。Response1の外部鏡の距離をピエゾステージによりナノメータ(nm)単位で変化させ、Response1の戻り光の位相を変化させることにより、2つのResponseレーザカオス同期波形の相関の制御を行った。その結果、戻り光の位相が一致したときの2つのResponse間の時間波形は一致しており、相関値を計算したところ0.907と高いことが分かった。一方で、戻り光の位相が一致していないときの2つのResponse間の時間波形は一致しておらず、相関値も0.076と低いことが分かった。以上より、戻り光の位相を変化させることで、Response1-Response2間の相関を制御可能であることが実験的に確認された。本特性は相関乱数暗号方式への応用における要素技術として非常に重要である。高度情報化仕会の基盤となる全世界規模の光通信ネットワークは既に不可欠なインフラストラクチャとして定着しつつあるが、伝送時における情報セキュリティ問題は現在未解決のままである。本研究では、新たな概念である情報理論的セキュリティに基づく暗号鍵発生方式を提案し、超高速レーザカオスを用いてこれを工学的に実装することを目的とし、以下の成果を得た。(1)半導体レーザ実験装置の構築本セキュリティ方式を実証するために、半導体レーザ実験装置の構築を行った。数百ミクロンの大きさである半導体レーザを固定するための銅製ホルダーや、数mm径の集光用レンズの設計・製作を行った。レーザが安定に発振するためにこれらの周辺機器は非常に重要であり、約半年を要して完成した。現在では半導体レーザの安定発振が達成され、今後のセキュリティ実証実験へと繋がる成果となっている。(2)レーザカオスを用いた物理乱数生成セキュリティシステムでの暗号鍵の生成には真性乱数を用いることが望ましい。GHzオーダーで超高速振動する半導体レーザカオスは物理乱数生成器として利用可能であり、本研究ではレーザカオスを用いた乱数生成シミュレーションを行った。二つの独立したカオス波形を周期サンプリングし、しきい値処理によりデジタル化した後、排他的論理和を計算して二値乱数列を生成した。1Gビットの二値乱数列に対して、国際標準的な乱数検定方式NIST Special Publication 800-22を適用し、15種類の項目から成る乱数検定を行った。その結果13種類の項目に合格することができ、レーザカオスからランダム性の高い乱数列を作成することに成功した。(3)半導体レーザカオス同期新たなセキュリティ方式としてカオス波形にデータを直接埋め込む方式が提案されており、これはカオス同期を用いることで復号化が可能となる。本研究では直交偏光フィードバックを有する二つの半導体レーザ間のカオス同期のシミュレーションを試みた。その結果、パラメータ偏差に対してロバストなカオス同期が達成可能であることが明らかとなった。さらにレーザ発振周波数差や結合強度を変化させたところ、二種類のカオス同期が存在することを明らかにした。本研究では、情報理論的セキュリティに基づく暗号鍵発生方式を提案し、超高速レーザカオスを用いてこれを工学的に実装することを目的とする。以下に本年度の主な成果を示す。(1)共通カオス信号による半導体レーザ間のカオス同期実験本研究では相関乱数暗号の要素技術として、共通カオス信号により駆動された半導体レーザカオス同期を実験的に実現した。駆動用レーザ(Drive)において、外部鏡を用いて戻り光を付加することでカオスを発生させた。次に、Driveの光を2つの受信レーザ(Response)に注入し温度制御を用いて光周波数差を精密に制御することでインジェクションロッキングを達成させた。ここで緩和発振周波数をDriveとResponseで異なる値に設定し、Drive-Response間および2つのResponse同士の時間波形を測定してカオス同期の観測を行った。その結果、2つのResponse同士では精度の高いカオス同期が達成されたが、DriveとResponse間ではカオス同期精度が低いことが確認できた。またResponseの緩和発振周波数の変化と光周波数差の変化に対する相互相関関数を調査したところ、広いパラメータ領域において2つのResponse間の同期精度がDrive-Response間の同期精度よりも高いことが明らかになった。これらの結果はシミュレーションにおいても再現された。以上のように、駆動用カオス信号と同期したカオス信号との相関が低い場合、駆動信号を用いたカオス信号の推定が困難となり、暗号鍵配送方式として有用となり得る。(2)カオス同期した半導体レーザ間における相関の制御2つのResponseレーザに外部鏡を設置し、Responseレーザにおける戻り光の位相を変化させることで、同期したResponse波形間の相関の制御を行った。 | KAKENHI-PROJECT-17760051 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17760051 |
超高速レーザカオスを用いた情報理論的セキュリティに基づく暗号鍵発生 | 精密なX軸ステージを用いてResponseレーザの外部共振器長を波長オーダーで変化させた場合、戻り光の位相が変化し、カオス同期の精度が変化した。特に波長の距離の変化に合わせて同期精度が周期的に変化することが実験的に明らかとなった。本研究では、情報理論的セキュリティに基づく暗号鍵発生方式を提案し、超高速レーザカオスを用いてこれを工学的に実装することを目的とする。特に相関乱数暗号の要素技術として、共通カオス信号により駆動された半導体レーザカオス同期および相関の制御を実験的に実現した。本実験では、3つのDFB半導体レーザ(それぞれDrive、Response1、Response2と呼ぶ)を用いた。外部鏡を用いてDriveに戻り光を付加することでカオスを発生させた。Driveの緩和発振周波数とRepsonse1, Response2の緩和発振周波数を異なる値に設定した。Driveからのカオス的レーザ光を、ビームスプリッタ(BS)を調整することでRespoense1とResponse2に注入させた。このときDrive-Response間では低い相関、Response1-Response2間では高い相関を確認した。次にResponsel、Response2にそれぞれ外部鏡を用いて戻り光を付加させた。Response1の外部鏡の距離をピエゾステージによりナノメータ(nm)単位で変化させ、Response1の戻り光の位相を変化させることにより、2つのResponseレーザカオス同期波形の相関の制御を行った。その結果、戻り光の位相が一致したときの2つのResponse間の時間波形は一致しており、相関値を計算したところ0.907と高いことが分かった。一方で、戻り光の位相が一致していないときの2つのResponse間の時間波形は一致しておらず、相関値も0.076と低いことが分かった。以上より、戻り光の位相を変化させることで、Response1-Response2間の相関を制御可能であることが実験的に確認された。本特性は相関乱数暗号方式への応用における要素技術として非常に重要である。 | KAKENHI-PROJECT-17760051 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17760051 |
量子重力と弦の理論の非摂動的研究 | 自然界における4種類の基本相互作用:強い力、弱い力、電磁気力及び重力ならびにすべての素粒子を統一して書きあらわす統一理論の最有力候補は超弦理論である。この理論を完成させ素粒子の性質ばかりでなく宇宙の誕生を探求することは物理学における最も興味のある課題である。この超弦理論は近年摂動論をこえて非摂動的に構成する方法が大きく進展した。なかでもD膜というソリトン的な励起をもとにした定式化や、双対制を利用した方法などが重要となりM理論というマスター理論の探求が行われてきた。しかしながら、これら非摂動理論は未だ弦の生成消滅を記述する方法を備えておらず、従って第2量子化された弦の場の理論をつくるに至っていない。そこで二宮はHolger B.Nielsen(デンマーク、ニールス・ボーア研究所)と共同で弦の座標の右向きモードと左向きモードを基本構成要素にとって弦の場の理論を構成する研究を行ってきた。第2量子化に際してボース統計に対応する新しい対称性が必要なことが判明し、この対称性を応用して、状態を構成した。今後は散乱振巾の双対性のチェックなどに進む予定である。この弦の場の理論の発展に際し、ボソンの負エネルギーモードをフェルミオンのそれと同様に扱うDiracの海の方法を見出した。これは粒子に対する場の理論における永年の問題に対して答を与えるものと考えられる。重力の量子論においては2次元時空近傍の2+ε次元において統計力学的場の理論とくりこみ群の方法を用いて量子重力の距離(高エネルギー)の性質をくわしく研究し、スケーリング則や臨界指数などの力学量の算出を行った。自然界における4種類の基本相互作用:強い力、弱い力、電磁気力及び重力ならびにすべての素粒子を統一して書きあらわす統一理論の最有力候補は超弦理論である。この理論を完成させ素粒子の性質ばかりでなく宇宙の誕生を探求することは物理学における最も興味のある課題である。この超弦理論は近年摂動論をこえて非摂動的に構成する方法が大きく進展した。なかでもD膜というソリトン的な励起をもとにした定式化や、双対制を利用した方法などが重要となりM理論というマスター理論の探求が行われてきた。しかしながら、これら非摂動理論は未だ弦の生成消滅を記述する方法を備えておらず、従って第2量子化された弦の場の理論をつくるに至っていない。そこで二宮はHolger B.Nielsen(デンマーク、ニールス・ボーア研究所)と共同で弦の座標の右向きモードと左向きモードを基本構成要素にとって弦の場の理論を構成する研究を行ってきた。第2量子化に際してボース統計に対応する新しい対称性が必要なことが判明し、この対称性を応用して、状態を構成した。今後は散乱振巾の双対性のチェックなどに進む予定である。この弦の場の理論の発展に際し、ボソンの負エネルギーモードをフェルミオンのそれと同様に扱うDiracの海の方法を見出した。これは粒子に対する場の理論における永年の問題に対して答を与えるものと考えられる。重力の量子論においては2次元時空近傍の2+ε次元において統計力学的場の理論とくりこみ群の方法を用いて量子重力の距離(高エネルギー)の性質をくわしく研究し、スケーリング則や臨界指数などの力学量の算出を行った。自然界の全ての力と全ての素粒子を統一して記述する統一理論を構成することは、現代の素粒子論における最も重要な課題の一つである。この統一理論の最も有力なおそらく唯一の候補は超弦理論であると考えられる。この理論は10^<-33>cmを基本とする超極微の世界を支配する基本理論と考えられ、素粒子の研究のみならず、宇宙の誕生およびその直後の謎を探究するのに必須のものと思える。現在のところ超弦は第1量子化の理論として定式化が行われてきた。このためその非摂動的な研究が極めて困難であり、特に基底状態を決定することができないまま、現在に至っている。一方弦を第2量子化した弦の場の理論はいくつかの先駆的研究があるが様々な困難を内包しており成功した理論は未だ存在しない。本研究計画においては弦の断片を構成要素とし、それらを第2量子化することにより、矛盾のない理論を構成するという新しい方法をコペンハーゲン大学ニールスボ-ア研究所のH.B.Nielsen教授と共同で提唱した。この方法に従い、まず、ボゾン弦の第1量子化の理論から出発して、弦の断片に関する生成消滅オペレーターを導入した。更に、それらに対する一般化されたボ-ス対称性として置換対称性を定義し、Fock空間を構成することにより、第2量子化を実行した。このようにして、矛盾のない弦の場の理論のモデルを構成することに成功した。成果は現在論文としてまとめているところであり、まもなく発表される予定である。さらに、この際、ニールセン教授と共同で、用いるボゾンの第2量子化の方法としてDirac Seaの方法を全く新たに構成した。これまでフェルミオンに対しては、負エネルギーをすべて満たすことによりDirac seaをつくり、基底状態を作ることができたが一方ボソンに対してはこのDirac seaに対応する方法が見い出されていなかった。永年場の理論における問題として残っていたこの欠落していた方法を見い出し、この問題に解答を与えたものと考える。量子重力の構成とその性質の解明は近年長足の進歩を遂げつつあるが二宮はこれまでいくつかの注目される結果を得てきた。 | KAKENHI-PROJECT-09640349 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09640349 |
量子重力と弦の理論の非摂動的研究 | 繰り込み群とε展開に基づく統計力学的な場の理論を応用して研究を行ってきたが、この研究の特色はアインシュタインの重力理論が繰り込み可能となる1時間1空間の2次元の近くにおいて統計的場の理論によって研究し得られた結果を現実の4次元に拡張しよう、という方法にある。これまで2+ε次元において繰り込み可能な矛盾のない量子重力の理論を構成することができその繰り込み可能性の厳密な証明を与えることができた。この理論を用いて量子重力の微少距離つまり高エネルギーにおける諸性質を明確に解明した。更に宇宙の始まりのビッグバン近傍における時空の量子的性質、つまり古典重力の特異点が量子効果によって消失するか否かの分析を開始した。以上の成果の上に本計画において2+ε量子重力理論を用いてビッグバン近傍の量子時空の性質の解明を進めるとともに3次元及び4次元の時空における量子重力理論の形成を目指す。重力を含む素粒子の全ての相互作用の統一理論の唯一の候補として超弦理論は近年大きく研究が進展している。これまでの摂動論による解析によって無数の真空の存在が明らかとなり、そのため非摂動的に扱うことによって唯一の真空を見出すことが必要不可欠と考えられている。具体的な非摂動的な超弦理論の定式化の方法として超弦を量子化して超弦の場の理論を構成する。これまでのことろ、right-movingとleft-moving waveを基本要素として弦の場の理論の定式化を発展させてきた。また、この研究を発展させる過程でボソン場に関するDirac seaを用いた量子論の構成法を発展させ、場の量子論に対する新しい知見を得た。自然界の4つの基本的な相互作用、強・弱・電磁及び重力の相互作用と全ての素粒子を統一して記述する統一理論の候補として、超弦理論は非摂動的に再構成する研究が大きく進展してきた。実際、これまで5種類の異なるモデルに見えたものが一つにまとめることが出来、さらに背後に単一のM理論が存在するらしいことが明らかとなってきた。またD膜というソリトン的励起が弦のダイナミクスを調べる上で重要な役割を果たす事が分かった。弦の非摂動的定式化として、これまで第1量子化のレベルで主として行われていた。二宮はHolger B.Nielsen(デンマーク、ニールスボーア研究所教授)と共に第2量子化を遂行し、弦の場の理論を構成する研究を行ってきた。我々の方法の特徴は弦の座標のright movingモードとleft movingモードを基本要素に用い、波動関数を構成することにある。我々はこのモデルが弦を構成するために要請される対称性として、要素であるモードがボース統計に対応する対称性が必要であることを見出した。この対称性を用いて、具体的にleftとright movingモードから状態を構成した。これから更に散乱振巾を計算し、それが双対性を満足するかどうかをチェックすることは次のステップとして計画される。この弦の場の理論を発展させる際、通常の光錐座標系を用いないで理論を検討し、その過程においてボソン場の理論における負エネルギーモードを取り扱う新しい方法を見出した。我々のこの方法によってボソンとフェルミオンの第2量子化は同等の方法、つまり負エネルギー粒子の海いわゆるDirac seaの方法によって行うことが出来ることを示した。これにより、場の理論に関し、新しい知見を得ることが出来た。 | KAKENHI-PROJECT-09640349 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09640349 |
科学技術論争の構造についての歴史的・理論的研究 | 科学技術論争についての歴史的・現代的事例を、(1)分野内論争と、分野間ないし分野外との論争について分析し、(2)その終結のパターンについて複数のタイプを同定し、これまでの論争を位置づけた。また特に今年度の成果として「研究モード論」に基づいて、「モード1」と「モード2」の概念を新たに導入することが有益であることが明らかになった。そしてこの観点から、特に「モード2」型のものについて「コンセンサス・コンフェランス」のような制度を導入することが意義あるとの結論を得た。さらに、アメリカにおける「サイエンス・ウオ-」が上記分野間ないし分野外との論争として位置づけられうること、及びSSC中止問題にまつわる論争が本研究の立場から分析しうることが明らかになった。.平成7年度の研究は、おおむね予定通り行われ、今後も基本的な方針に変更の必要はないことが明らかになった。.現代の科学技術論争にどのようなものがあるかを国内および国外について調査した。.科学技術政策をめぐる規範理論関係の書物や論文を集め、その理論的内容を検討した。.以上の研究を遂行するため、資料を購入し、必要な複写を行った。そうした調査・研究活動とともに、専門的知識の提供を受けた。本研究の問題意識や中間成果について研究会で発表し、研究打合せを行った。.以下の点について成果が得られた。1.科学史上のどの論争に対立する解釈があり、さらに分析する必要があるかを明らかにした。2.現代の科学技術論争のうち、どの事例が興味深くまた研究可能かについて検討した。3.科学技術論争の論理構造に関するこれまでの一般理論を整理した。4.科学政策に関する規範理論について同様なことを行った。.以上をふまえて、今日の研究水準を把握し、問題点を整理した。本年度は、科学研究モード論に基いて、科学技術論争の分析の道具立てを明らかにする作業を行った。アカデミズム科学の研究スタイルであるモード1に対して、近年それと違ったスタイルモード2のタイプのあることに注目が集まっている。科学技術論争についてもモード1型のものの内部における論争の場合には、パラダイムに基く紀書が容易であるが、モード2型のものの場合にはそうはいかない。具体的なケースとして、デュエムとデカルトについての研究者の論争の構図を明らかにする作業を行い。特にデカルトの場合、自然子研究よりこの二つの伝統にそった型の研究史がモード1的に成立しており、この両方にまたがる問題を解決するのが困難であることが示された。現代日本における論争についても、いくつかの素材を集めて検討し、次年度にさらにたち入って検討することとした。科学技術論争についての歴史的・現代的事例を、(1)分野内論争と、分野間ないし分野外との論争について分析し、(2)その終結のパターンについて複数のタイプを同定し、これまでの論争を位置づけた。また特に今年度の成果として「研究モード論」に基づいて、「モード1」と「モード2」の概念を新たに導入することが有益であることが明らかになった。そしてこの観点から、特に「モード2」型のものについて「コンセンサス・コンフェランス」のような制度を導入することが意義あるとの結論を得た。さらに、アメリカにおける「サイエンス・ウオ-」が上記分野間ないし分野外との論争として位置づけられうること、及びSSC中止問題にまつわる論争が本研究の立場から分析しうることが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-07680086 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07680086 |
低浸透圧刺激時の内耳外有毛細胞の形態変化と細胞内Ca^<2+>及びNO動態の同時測定 | メニエール病や内リンパ水腫における内耳液イオン環境とイオン透過性の変化は外有毛細胞の浸透圧を変化させ、持続的な短縮と膨張を引き起こし、聴力低下の原因となると言われている。以前我々は、低浸透圧刺激による外有毛細胞の腫脹によって細胞内Ca^<2+>濃度が上昇し、Ca^<2+>が外有毛細胞の体積調節に重要な役割を担っている事を報告した。又、細胞外ATP刺激による外有毛細胞のCa^<2+>に依存するNO産生を示し、NOが聴覚情報伝達に重要な役割を演じている可能性について述べた。更に最近、NOが様々な細胞における体積調節に重要な役割を担っている可能性が示唆されている。今回我々はモルモット蝸牛の外有毛細胞を用い、低浸透圧刺激時の細胞内Ca^<2+>動態及びNO産生と細胞の形態変化の同時測定を行い、細胞の体積調節におけるCa^<2+>とNOの役割について検討した。まず、正常白色モルモットの蝸牛より外有毛細胞を単離した。細胞内Ca^<2+>濃度測定にはfura-2AMを、NO測定にはDAF-2DAを用いた。従来の画像解析装置に2光路アダプターを設置し、1つの光路では蛍光像の観察と蛍光強度の変化を記録し、もう一方で形態の変化の観察を行った。形態変化の観察には別の画像解析装置を用いた。以上の設定で、細胞に低浸透圧刺激を行い、細胞の形態変化と細胞内Ca^<2+>及びNO動態の同時測定を行い、解析検討した。又細胞外に内Ca^<2+>を含まない場合についても同様に行った。結果、低浸透圧刺激により外有毛細胞の細胞腫脹を伴った細胞内Ca^<2+>濃度上昇とNO産生がみられた。又細胞外液にCa^<2+>がない場合、細胞の腫脹はみられるが細胞内Ca^<2+>濃度上昇とNO産生はみられなかった。この事から、外有毛細胞において低浸透圧刺激による細胞腫脹により細胞外から細胞内へCa^<2+>が流入し,細胞内Ca^<2+>濃度上昇が起こり、NO産生が惹起されると考えられた。又今回外有毛細胞の体積調節においてNO産生が重要な役割を演じている事が示唆された。メニエール病や内リンパ水腫における内耳液イオン環境とイオン透過性の変化は外有毛細胞の浸透圧を変化させ、持続的な短縮と膨張を引き起こし、聴力低下の原因となると言われている。以前我々は、低浸透圧刺激による外有毛細胞の腫脹によって細胞内Ca^<2+>濃度が上昇し、Ca^<2+>が外有毛細胞の体積調節に重要な役割を担っている事を報告した。又、細胞外ATP刺激による外有毛細胞のCa^<2+>に依存するNO産生を示し、NOが聴覚情報伝達に重要な役割を演じている可能性について述べた。更に最近、NOが様々な細胞における体積調節に重要な役割を担っている可能性が示唆されている。今回我々はモルモット蝸牛の外有毛細胞を用い、低浸透圧刺激時の細胞内Ca^<2+>動態及びNO産生と細胞の形態変化の同時測定を行い、細胞の体積調節におけるCa^<2+>とNOの役割について検討した。まず、正常白色モルモットの蝸牛より外有毛細胞を単離した。細胞内Ca^<2+>濃度測定にはfura-2AMを、NO測定にはDAF-2DAを用いた。従来の画像解析装置に2光路アダプターを設置し、1つの光路では蛍光像の観察と蛍光強度の変化を記録し、もう一方で形態の変化の観察を行った。形態変化の観察には別の画像解析装置を用いた。以上の設定で、細胞に低浸透圧刺激を行い、細胞の形態変化と細胞内Ca^<2+>及びNO動態の同時測定を行い、解析検討した。又細胞外に内Ca^<2+>を含まない場合についても同様に行った。結果、低浸透圧刺激により外有毛細胞の細胞腫脹を伴った細胞内Ca^<2+>濃度上昇とNO産生がみられた。又細胞外液にCa^<2+>がない場合、細胞の腫脹はみられるが細胞内Ca^<2+>濃度上昇とNO産生はみられなかった。この事から、外有毛細胞において低浸透圧刺激による細胞腫脹により細胞外から細胞内へCa^<2+>が流入し,細胞内Ca^<2+>濃度上昇が起こり、NO産生が惹起されると考えられた。又今回外有毛細胞の体積調節においてNO産生が重要な役割を演じている事が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-15790962 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15790962 |
SCN5A遺伝子異常陰性のブルガダ症候群における遺伝子異常の同定と機能解析 | ブルガダ症候群におけるSCN5A遺伝子変異陰性症例の遺伝子解析の結果, 2例の発端者にKCNH2遺伝子変異を見出した。これらの変異は機能亢進型(gain of function)の機能異常を有した。SCN5A遺伝子陽性例と臨床像を比較検討すると, KCNH2変異陽性例ではQTc間隔が短縮しており,臨床像が軽症であった。ブルガダ症候群は責任遺伝子によって臨床像が異なることが示唆され,遺伝子-表現型(genotype-phenotype)の検討がさらに必要であると考えられた。ブルガダ症候群におけるSCN5A遺伝子変異陰性症例の遺伝子解析の結果, 2例の発端者にKCNH2遺伝子変異を見出した。これらの変異は機能亢進型(gain of function)の機能異常を有した。SCN5A遺伝子陽性例と臨床像を比較検討すると, KCNH2変異陽性例ではQTc間隔が短縮しており,臨床像が軽症であった。ブルガダ症候群は責任遺伝子によって臨床像が異なることが示唆され,遺伝子-表現型(genotype-phenotype)の検討がさらに必要であると考えられた。Brugada症候群は夜間安静時の心室細動を引き起こす遺伝性不整脈疾患であり.、突然死の家族歴を認めることが特徴である。1998年にその原因遺伝子が心筋NaチャネルのαサブユニットをコードするSCN5Aであることが報告されたが、80-90%の患者にはSCN5Aの変異を見出すことができず、ここ10年近く新たな原因遺伝子も報告されてこなかった。我々はSCN5A遺伝子異常を認めないBrugada症候群の1家系にKチャネルの一種であるIkrをコードするKCNH2に新規の遺伝子変異を見出した。哺乳類細胞を用いた機能解析において、この変異チャンネルはIkr電流の脱活性化が障害される機能亢進型の異常(gain of function)であった。このBrugada症候群の家系はQT間隔の短縮を伴っていることが特徴で、Ikr電流のgain of functionはQT間隔の短縮の原因となるが、後述するCaチャネルに関係する遺伝子の変異がオーバーラップしていないか現在検:討中である。なおこの研究結果は第57回米国心臓病会議(ACC、ニューオリンズ)で発表した。ブルガダ症候群の原因遺伝子である心筋NaチャネルαサブユニットをコードするSCN5Aの遺伝子検索を引き続き継続しているが、その結果、78例の発端者のうち9例(11.5%)に遺伝子変異を認めた(第72回日本循環器学会学術集会総会シンポジウム)。E1784K変異はSCN5Aの遺伝子変異では"common"な変異であるが、多施設共同研究による37例の変異症例の解析結果から、本変異はブルガダ症候群、QT延長症候群、洞不全症候群等の異なる臨床像を引き起こすオーバラップ症候群の原因遺伝子であることを突き止めた(第72回日本循環器学会学術集会総会プレナリーセッション)。強制発現実験による機能解析結果から、本変異は機能亢進型と機能喪失型の相反する機能異常持つ変異であるだけではなく、抗不整脈薬の薬剤感受性が野生型と異なっていた。2007年11月のCirculation誌に新たなブルガダ症候群の責任遺伝子としてGPD1(Lglycerol-3 phosphate dehydrogenase-1 like)遺伝子の変異が報告されたが(Circulation 2007;116:2253-9,2260-8)、我々の症例においては本変異は認めなかった。QT短縮を伴うブルガダ症候群の責任遺伝子であると報告されている心筋Caチャネル関連遺伝子の検索を同時に進行させたが、現時点で明らかな疾患の原因となる変異は認めていない。前年までの検討で、ブルガダ心電図症例に新たに遅延性整流性カリウムチャネルの遺伝子(KCNH2)変異を見出したことからさらに検索を継続した。その結果、新たな変異をさらに見出した。このR164C/KCNH2変異は今までに報告のない変異で、哺乳類培養細胞を用いた検討では野生型のチャネルの約1.4倍の電流量であり、いわゆるgain of function型の変異であった。さらにブルガダ心電図症例をSCN5A遺伝子陽性群、KCNH2遺伝子変異陽性群、変異を認めない群の3群に分類すると、KCNH2遺伝子変異陽性群では有意に他の2群よりQTc間隔は短縮していた(KCNH2変異群、SCN5A変異群、その他; 355±15、421±37、411±36ms, p<0.008)。またKCNH2遺伝子変異陽性例はすべて無症状であり、ブルガダ心電図をしめす症例において、臨床症状の重症度においてその責任遺伝子は異なることが示唆された。Widersら(1)は我々が見出した変異の機能解析から心筋活動電位をシミュレーションした結果、これらのブルガダ心電図症例に見いだされるKCNH2遺伝子変異はQT間隔の短縮だけではなく、ブルガダ心電図そのものの原因となっていることを報告しており、遅延性整流性カリウムチャネルの遺伝子異常がQT間隔の短縮を伴うブルガダ心電図に関与していることが考えられた。(1) Wilders R, Verkerk AO. Role of the R1135H KCNH2 mutation in Brugada syndrome. Int J Cardiol2009, in press. | KAKENHI-PROJECT-18790496 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18790496 |
細胞間接着における低分子量Gタンパク質の役割と作用機構 | これまでの研究により、細胞間接着形成において重要な役割を担う低分子量Gタンパク質Cdc42、Racの活性化には、細胞間接着分子ネクチンと細胞-基質間接着分子インテグリンαvβ3との協調的な作用が必要であることが明らかになっている。さらに詳細な検討により、そのシグナル伝達機構としてインテグリンαvβ3下流のPKC-FAKの活性化が重要であった(Ozaki, et. al. Genes Cells.2007)。また、細胞間接着形成後もインテグリンαvβ3はネクチンと細胞間接着部位で共局在するものの、インテグリンαvβ3は活性化状態から不活性化状態へと変化し、それに伴ってCdc42やRacも不活性化される。今まで、細胞間接着形成後にインテグリンav(33が不活性化される分子機構については全く不明であったが、本年度の研究により、インテグリンαvβ3の活性化に関わるI型ボスファチジルイノシトール5-キナーゼの活性が、ネクチン同士の結合によって活性化されるホスファターゼPTPμによって抑制されるためであることを明らかにした(Sakamoto eta1.J Biol Chem.2008)。インテグリンαvβ3の不活性化により細胞の運動・増殖は抑制されることから、この分子機構は細胞間接着完成後の細胞間接着維持および細胞の接触阻害機構を理解する上で極めて重要である。さらに、別の低分子量Gタンパク質Raplがネクチン-1の下流で、表皮の分化に大きな役割を担っているロリクリンの発現制御に関わっていることを見出した(Wakamatsu, et. al.J Biol Chem.2007)。ロリクリンの発現量低下により、物理的刺激に対する表皮細胞の抵抗性は著しく低下することから、ネクチン-1によるRaplの活性化は表皮細胞間の接着を維持する上で重要である。正常細胞は、お互いに接着していない状態では、運動と増殖を繰り返すが、細胞が密になり細胞同士が接触して細胞間接着が形成されると運動と増殖は停止する。この現象は、細胞の運動と増殖の接触阻害と呼ばれている。また、上皮細胞では細胞間接着が形成される過程で、細胞極性が生じ、細胞間接着装置の一つであるタイトジャンクション(TJ)により細胞の頭頂側と側基底側が分離される。しかし、細胞の増殖と運動の接触阻害や、細胞間接着部位でTJの位置が決定される分子メカニズムについては今までほとんど解明されていない。そこで本研究では、細胞間接着が形成される際に、低分子量Gタンパク質がどのような細胞内シグナル伝達ネットワークを介して細胞の運動と増殖の接触阻害や、細胞の極性形成に関与するかを検討し、本年度は、以下のような知見を得た。1.低分子量Gタンパク質が細胞の運動と増殖の接触阻害を制御する分子機構細胞間接着形成時、ネクチンによる低分子量Gタンパク質Cdc42、Racの活性化にインテグリンαvβ3の活性化が必要であること(J Biol Chem, 2006)、さらに、Cdc42、Rac活性化のシグナル伝達にプロテインキナーゼCが関与していること(論文印刷中)、を明らかにした。また、この活性化したインテグリンはネクチンと物理的・機能的に相互作用するが、細胞間接着の完成後、インテグリンαvβ3は不活性化状態となりネクチンと細胞間接着部位で共局在した。このインテグリンの不活性化は細胞運動を抑制し、細胞間接着完成後の細胞間接着の維持および細胞の接触阻害に関与すると考えられた。2.低分子量Gタンパク質が細胞極性形成時にTJの位置決定に関わる分子機構細胞の極性形成や細胞間接着部位におけるTJの位置決定に、インテグリンαvβ3が必要であるとの予備的結果を得ており、今後、来年度に向けて、ネクチン、インテグリン、低分子量Gタンパク質がどのようにこの分子機構に関わっているかについてさらに検討していく。これまでの研究により、細胞間接着形成において重要な役割を担う低分子量Gタンパク質Cdc42、Racの活性化には、細胞間接着分子ネクチンと細胞-基質間接着分子インテグリンαvβ3との協調的な作用が必要であることが明らかになっている。さらに詳細な検討により、そのシグナル伝達機構としてインテグリンαvβ3下流のPKC-FAKの活性化が重要であった(Ozaki, et. al. Genes Cells.2007)。また、細胞間接着形成後もインテグリンαvβ3はネクチンと細胞間接着部位で共局在するものの、インテグリンαvβ3は活性化状態から不活性化状態へと変化し、それに伴ってCdc42やRacも不活性化される。今まで、細胞間接着形成後にインテグリンav(33が不活性化される分子機構については全く不明であったが、本年度の研究により、インテグリンαvβ3の活性化に関わるI型ボスファチジルイノシトール5-キナーゼの活性が、ネクチン同士の結合によって活性化されるホスファターゼPTPμによって抑制されるためであることを明らかにした(Sakamoto eta1.J Biol Chem.2008)。インテグリンαvβ3の不活性化により細胞の運動・増殖は抑制されることから、この分子機構は細胞間接着完成後の細胞間接着維持および細胞の接触阻害機構を理解する上で極めて重要である。 | KAKENHI-PROJECT-18057012 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18057012 |
細胞間接着における低分子量Gタンパク質の役割と作用機構 | さらに、別の低分子量Gタンパク質Raplがネクチン-1の下流で、表皮の分化に大きな役割を担っているロリクリンの発現制御に関わっていることを見出した(Wakamatsu, et. al.J Biol Chem.2007)。ロリクリンの発現量低下により、物理的刺激に対する表皮細胞の抵抗性は著しく低下することから、ネクチン-1によるRaplの活性化は表皮細胞間の接着を維持する上で重要である。 | KAKENHI-PROJECT-18057012 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18057012 |
新しい電子スピン共鳴法による金属錯体の光化学反応の研究 | 二年間の本国際学術研究により、多くの外国人研究者と接する機会があり、研究の成果以外にいくつかの大きな進展があった。これらは、我々の期待以上の成果であり、以下にまとめられる。1)2年間の本共同研究を基盤として、ドイツ・フリー大学物理学教室と我々の反応化学研究所の間で学術交流協定を結ぶことが決定した。2)我々仙台の3研究室の磁気共鳴グループが長年待望していたAdvanced EPRに関する国際会議(仙台シンポジウム)を発足させ、すでに第三回を決定する段階にまで発展させることができた。3)本研究分担者、協力研究者であったドイツ・メビウス教授、ディンゼ教授、イスラエル・レバノン教授は勿論のこと、彼等の周辺の研究グループとも親交が深まり、今後の研究に大きな財産を残すことができた。4)今年度のヨーロッパへの研修、仙台シンポジウムにおける議論・口頭発表などを通して、大学院生の国際意識を著しく向上させることができた。本研究で得られた研究成果は以下の通りである。まず装置に関しては、1)これまでのスピンエコー装置を改良して、光化学反応解析用のフーリエ変換(FT)パルスESR装置を完成させた。これにより、時間分解能10ナノ秒で多次元ESR信号の観測が可能になった。2)ドイツのMobiusの研究室では、高周波W-バンド(95GHz)ESR装置を完成させ、時間分解・パルスの両測定が可能になった。3)ドイツのDinseの研究室では、自作のX-バンド(9.5GHz)ESR装置を改良して多次元測定を可能にした。これらの自作の装置を用いて以下のことが明らかになった。4)励起三重項とラジカルの間のスピン分極移動が金属ポルフィリンを用いて初めて観測された。これによりラジカルのスピン格子緩和時間が測定されるとともに、スピン分極を持たないラジカルにスピン分極を生成させることで、時間分解ESR法の適用範囲を著しく拡大することができた。5)FT-ESRの開発のより、時間分解能が向上し、光誘起電子移動、プロトン移動、分解反応系におけるESR信号の立ち上がりの解析が可能になり、これを用いて種々の系で反応速度を直接決定した。6)二次元ESRのパルス系列を開発して、金属フラーレンのESRの温度変化を追跡し、分子回転及び、スピンダイナミクスに関する詳細なデータを得た。7)W-バンドESRにより、in vivoの単結晶を用いて光合成反応中心ESR信号を観測し、その構造を決定した。8)二次元ニューテーション法を開発して、ポルフィリン-キノン系おけるイオン対の分離と決定的な同定に成功した。また、スペクトルの解析から、交換相互作用のパラメータJが0.3Gと求めた。9)ポルフィリン-とフラーレンにラジカルを結合させた分子を合成した。これらの分子に対して、W-バンドESRを用いて信号を分離し、二次元ニューテーション法によって多重項の同定を行って、励起四重項と励起二重項の観測に成功した。二年間の本国際学術研究により、多くの外国人研究者と接する機会があり、研究の成果以外にいくつかの大きな進展があった。これらは、我々の期待以上の成果であり、以下にまとめられる。1)2年間の本共同研究を基盤として、ドイツ・フリー大学物理学教室と我々の反応化学研究所の間で学術交流協定を結ぶことが決定した。2)我々仙台の3研究室の磁気共鳴グループが長年待望していたAdvanced EPRに関する国際会議(仙台シンポジウム)を発足させ、すでに第三回を決定する段階にまで発展させることができた。3)本研究分担者、協力研究者であったドイツ・メビウス教授、ディンゼ教授、イスラエル・レバノン教授は勿論のこと、彼等の周辺の研究グループとも親交が深まり、今後の研究に大きな財産を残すことができた。4)今年度のヨーロッパへの研修、仙台シンポジウムにおける議論・口頭発表などを通して、大学院生の国際意識を著しく向上させることができた。本研究で得られた研究成果は以下の通りである。まず装置に関しては、1)これまでのスピンエコー装置を改良して、光化学反応解析用のフーリエ変換(FT)パルスESR装置を完成させた。これにより、時間分解能10ナノ秒で多次元ESR信号の観測が可能になった。2)ドイツのMobiusの研究室では、高周波W-バンド(95GHz)ESR装置を完成させ、時間分解・パルスの両測定が可能になった。3)ドイツのDinseの研究室では、自作のX-バンド(9.5GHz)ESR装置を改良して多次元測定を可能にした。これらの自作の装置を用いて以下のことが明らかになった。4)励起三重項とラジカルの間のスピン分極移動が金属ポルフィリンを用いて初めて観測された。これによりラジカルのスピン格子緩和時間が測定されるとともに、スピン分極を持たないラジカルにスピン分極を生成させることで、時間分解ESR法の適用範囲を著しく拡大することができた。5)FT-ESRの開発のより、時間分解能が向上し、光誘起電子移動、プロトン移動、分解反応系におけるESR信号の立ち上がりの解析が可能になり、これを用いて種々の系で反応速度を直接決定した。6)二次元ESRのパルス系列を開発して、金属フラーレンのESRの温度変化を追跡し、分子回転及び、スピンダイナミクスに関する詳細なデータを得た。7)W-バンドESRにより、in vivoの単結晶を用いて光合成反応中心ESR信号を観測し、その構造を決定した。8)二次元ニューテーション法を開発して、ポルフィリン-キノン系おけるイオン対の分離と決定的な同定に成功した。また、スペクトルの解析から、交換相互作用のパラメータJが0.3Gと求めた。 | KAKENHI-PROJECT-07044058 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07044058 |
新しい電子スピン共鳴法による金属錯体の光化学反応の研究 | 9)ポルフィリン-とフラーレンにラジカルを結合させた分子を合成した。これらの分子に対して、W-バンドESRを用いて信号を分離し、二次元ニューテーション法によって多重項の同定を行って、励起四重項と励起二重項の観測に成功した。今年度は、イタリアの国際会議における実質的な研究打合わせに始まり、大庭・秋山のドイツ訪問、実習、Mobius・Dinse教授の長期の日本訪問と、技術および人的交流において大きな進展があった。特に、我々が待望していたAdvanced EPRに関する仙台シンポジウムが実現したことは大きな成果であった。今年度第2回を行い、是非定期的なシンポジウムとして継続させたい。場所をかえた数回の議論から種々のアイデアが生まれ、来年度の研究でそれらを実現させることとなった。来年度は是非、外国人分担者と共著の論文を書きたい。今年度、それぞれのグループで得られた成果は以下の通りである。1.励起三重項と安定ラジカル間のスピン分極の移動が金属ポルフィリンを用いて初めて観測された。これは分極のないラジカルに分極を与える機構で、時間分解およびパルスESRの適用範囲を著しく拡大するものである。2.フーリエ変換(FT)ESRの開発により、ESRの時間分解能が10ナノ秒まで向上し、光誘起プロトン移動、電子移動、分解反応などの立ち上がり(反応速度)をESRで観測することが可能となった。FT-ESRは過渡吸収などに比べて中間体の同定が確実であり、極めて有用な光反応解析手段としての見通しをつけることができた。3.二次元ESRのパルス系列を開発して、金属内包フラーレンに適用した。その結果、分子回転の温度変化に対する詳細な情報が得られた。4.高周波(Wバンド,95GHz)ESR装置を開発して、in vivoの光合成反応中心の電荷分離状態(ラジカル対)の構造解析を行った。その結果、これまでに得られていたいくつかの可能な構造の中から1つを決定することができた。今年度の本研究の最大の行事は、大学院生二人を伴って行った3週間のヨーロッパへの研究調査である。今回は、3つの研究室とを訪問して講演・意見交換を行い、充分な議論をすることができた。特に二人の大学院生にとっては、自分の仕事を英語で話す機会が何度もあり、大きな自信になったようである。ベルリンでは、Mobius教授の研究室で10日間に渡って実験を行うことが出来、大きな成果が得られた。また、1月には分担者のMobius,Dinse両教授の他に、ソビエトのSalikov教授、アメリカのWilligen教授を一同に会して、第2回の仙台シンポジウムを開催することができた。この2つが今年度の主な行事であった。これらの学術交流を通じて得られた研究成果は、以下の通りである。1)パルスESRの多次元法の開発を我々の研究室とDinseのところで行い、2次元ニューテーション法、2次元Cosy法、J分光法等の形で論文をだすことができた。2)我々の研究室とMobiusの研究室で、光合成系の実験を行い、それぞれに興味ある結果が得られた。 | KAKENHI-PROJECT-07044058 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07044058 |
力覚制御ロボットによる生体関節の摩擦係数の測定 | 今年度は、主としてロボットの制御システムの構築を行いその精度を検証した。ロボットの操作およびデータの収集は、既設のパーソナルコンピュータを用いて行い、C言語でプログラミングして制御した。最初に、リアルタイム制御でロボットの微調整を行った。摩擦面の間隔が、約2mmとなるように微調整した。次に、シーケンシャル制御で、摩擦面の検索を行った。すなわち、ロボットの末端効果器を垂直方向に動作させて、摩擦面が接触した位置を力覚センサで認識し、末端効果器に検索した順序の番号を付してロボットのコントロールボックスにある記憶装置に格納する作業を行った。この検索段階では、荷重を6N、検索のメッシュの幅を0.1mmとした。また、全すべり距離を3mmとした。次に、摩擦測定のための動作を行った。まず、記憶された番号に沿ってロボットを動作させ、末端効果器を摩擦面に沿って運動させた。測定段階での摩擦速度を秒速2mmとした。荷重については、検索段階と測定段階のいずれも脛骨側に固定された6軸力センサでセンシングして、DIOボードを介してパーソナルコンピュータに入力した。予備実験として、まず人口材料で作成したいくつかの関節モデルについて摩擦を測定した。測定されたそれぞれの摩擦係数は、振子法あるいは摩擦角測定によって求めた摩擦係数とよく一致した。次に、ウサギ膝関節を対象としたいくつかの実験を行った。まず、正常な関節について実験を行った結果、摩擦係数は約0.01であった。次に、関節摩擦面を洗浄することにより異常関節のモデルを作成して測定した結果、摩擦係数は、約0.02に上昇した。それに、ヒアルロン酸を塗布した結果、0.015程度まで摩擦係数が低下した。これらの結果は、研究者が過去に行ったイヌ股関節を対象とした振子法測定での実験結果とよく一致した。これらの結果により、ロボットの位置精度および6軸力センサの分解能が十分高いことを確認した。今年度は、主としてロボットの制御システムの構築を行いその精度を検証した。ロボットの操作およびデータの収集は、既設のパーソナルコンピュータを用いて行い、C言語でプログラミングして制御した。最初に、リアルタイム制御でロボットの微調整を行った。摩擦面の間隔が、約2mmとなるように微調整した。次に、シーケンシャル制御で、摩擦面の検索を行った。すなわち、ロボットの末端効果器を垂直方向に動作させて、摩擦面が接触した位置を力覚センサで認識し、末端効果器に検索した順序の番号を付してロボットのコントロールボックスにある記憶装置に格納する作業を行った。この検索段階では、荷重を6N、検索のメッシュの幅を0.1mmとした。また、全すべり距離を3mmとした。次に、摩擦測定のための動作を行った。まず、記憶された番号に沿ってロボットを動作させ、末端効果器を摩擦面に沿って運動させた。測定段階での摩擦速度を秒速2mmとした。荷重については、検索段階と測定段階のいずれも脛骨側に固定された6軸力センサでセンシングして、DIOボードを介してパーソナルコンピュータに入力した。予備実験として、まず人口材料で作成したいくつかの関節モデルについて摩擦を測定した。測定されたそれぞれの摩擦係数は、振子法あるいは摩擦角測定によって求めた摩擦係数とよく一致した。次に、ウサギ膝関節を対象としたいくつかの実験を行った。まず、正常な関節について実験を行った結果、摩擦係数は約0.01であった。次に、関節摩擦面を洗浄することにより異常関節のモデルを作成して測定した結果、摩擦係数は、約0.02に上昇した。それに、ヒアルロン酸を塗布した結果、0.015程度まで摩擦係数が低下した。これらの結果は、研究者が過去に行ったイヌ股関節を対象とした振子法測定での実験結果とよく一致した。これらの結果により、ロボットの位置精度および6軸力センサの分解能が十分高いことを確認した。 | KAKENHI-PROJECT-05221229 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05221229 |
日本の企業統治と取締役会の機能について | 本研究課題では、近年変容の激しい日本の企業統治について、特に取締役会の機能に注目した点からの分析を行った。本研究課題の目的は、「外国人投資家の増加」・「独立取締役導入の要請」といった近年の企業統治の変容が真に日本企業の企業統治改革として妥当であったものか否かを実証研究によって検証することにある。同時に、企業統治改革に付随して行われた証券市場改革が市場流動性に与える影響についても考察を行った。本研究課題では、近年変容の激しい日本の企業統治について、特に取締役会の機能に注目した点からの分析を行った。本研究課題の目的は、「外国人投資家の増加」・「独立取締役導入の要請」といった近年の企業統治の変容が真に日本企業の企業統治改革として妥当であったものか否かを実証研究によって検証することにある。同時に、企業統治改革に付随して行われた証券市場改革が市場流動性に与える影響についても考察を行った。本年度は研究計画の1年目ということで、今後の研究活動を行う上で必須となる研究の基盤作りを行った。具体的には、研究課題を遂行する上で必要な2000年代後半の企業統治についてのデータベース購入並びにデータ整備作業を行った。データベース構築作業は、以下のような手順で進められた。第一に、本研究で主に使用する日本企業の取締役会構成に関するデータベースであるNikkei Needs Cgesを購入した。第二に、購入した取締役会構成に関するデータベースと企業の財務データベースであるNikkei Needs等と合併させる作業等が中心になった。企業統治関連のデータと企業財務データを合体させたパネルデータを構築することで、今後の分析のための基礎的なデータベースを構築することができた。以上のようなデータベース構築作業に加えて、日本の企業統治メカニズムの変遷を捉える目的から、2000年代以前の日本の企業統治における取締役会の経営監視機能についての分析も行った。この分析に関しては、特に、1990年代の日本の取締役会の経営監視機能についての分析を中心とした学術論文にまとめることができた。同研究成果は、論文(「経営者報酬と取締役会の経営監視機能についての検証」)として、金融経済研究に公刊された。このような研究活動に加えて、今後の研究計画を実行して、研究論文を執筆する際に必須な最新の研究成果の収集を行うために、国内学会・国際会議等に参加して、最新の研究成果を収集した。本年度の研究は、企業統治に関する研究のサーベイ活動と、企業統治に関する実証分析の2点で主に構成される。1点目のサーベイ活動は、以下のようにまとめられる。企業統治全般に関するサーベイ活動を行うために、昨年度ならびに本年度に国内外の関連する学会に出張して最新の研究成果の収集を行ってきた。その成果の一つとして、既存のサーベイ活動をまとめた論文を、「経営者報酬と企業パフォーマンスに関するサーベイ」という形で、証券アナリストジャーナル第46巻5-14頁において出版を行った。2点目の企業統治に関する実証分析は、実証分析のためのデータベース構築作業と実証分析とその改善の2段階を踏んで行っている。まず、企業統治の実証分析に関しては、2010年度のNikkei Cges Databaseと従来まで使用していた2009年度までのデータ並びにNikkei Needs財務データベースとのマッチングを行った。企業統治に関しては、特に金融業において、非金融業との相違が大きいことから、非金融業と金融業を分けた形でのデータ収集ならびにデータベース化を行う必要があり、そのための作業をそれぞれ独立して行った。また、従来までに行っている実証分析結果を改善して論文の完成度を高めるために、昨年度ならびに本年度の実証研究において明らかになっていることをいくつかの最初段階の論文としてまとめた。これらの論文の再検証を行うため、国内外の学会・ワークショップでの報告を行い、論文の改善を行うための有益なコメントを得ることができた。本研究の目的は、日本の企業統治改/革の有効性について、特に「取締役会」の機能に注目した分析を行うことである。その意味で、主に三点の視点に合わせた分析を行った。一点目の研究課題では、先行研究の少ない「銀行業」の企業統治ついての研究を行った。この研究では、取締役会の機能として、企業統治改革以降にその有効性を前提として導入された「独立取締役」の有効性に注目した検証を行った。特に、取締役会の機能と業績指標の間には、Helmalin and Weisbach(2003)を始めとする数多くの先行研究で知られる内生性の問題が存在する可能性が高いことから、その問題を緩和する目的でGMM推定を用いた検証を行い、「取締役会規模」は、公的資金投入銀行においては業績を向上させる効果を有しており、公的資金投入行の企業統治改革が適切に機能していることを示唆する結果を得た。一方で、「独立取締役」の機能は日本の銀行業では十分に確認されなかった。二点目の研究課題では、「取締役会」の経営者に対する重要な規律付け機能としての「経営者報酬」に関する実証分析を行った。この研究では、(1)経営者報酬データの現状と研究についての展望と(2)伝統的な企業統治メカニズムである「銀行持株」・「銀行派遣役員」等の経営者報酬に与える効果についての実証研究を実施した。最後に、三点目の研究課題として、市場透明性を高めるという証券市場改革が、真に証券市場に有益であり、「市場流動性」を高める効果を有していたかの実証研究を行った。この研究では、市場透明性を高める東証の改革が行われた前後の期間における「市場流動性」の効果を検証するために、マーケットマイクロストラクチャーのイベントスタディーの手法を用いて検証を行った。 | KAKENHI-PROJECT-21730252 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21730252 |
日本の企業統治と取締役会の機能について | 『結果として、証券市場の透明性が高まった結果、「市場流動性」が高まったことを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-21730252 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21730252 |
糖鎖変異マウスを用いたスフィンゴ糖脂質の生体内機能の解明 | 本研究では、シアル酸を含む酸性スフィンゴ糖脂質であるガングリオシド糖鎖が、主に神経系組織において果たしている役割と、その分子メカニズムに関して、その合成酵素(糖転移酵素)遺伝子のノックアウトマウスを用いて解析した。対象としたノックアウトマウスは、複合型ガングリオシドを欠損するGM2/GD2合成酵素ノックアウト、b-系列ガングリオシドを欠損するGD3合成酵素ノックアウトマウス、上記2種類ノックアウトマウスを交配して得たダブルノックアウトマウス、そしてこれらの前駆体であるラクトシルセラミドの合成酵素であるβ4ガラクトース転移酵素6小脳などである。複合型ガングリオシド欠損マウスでは、加齢とともに末梢神経および脊髄の変性、破壊が認められ、また小脳においても著明な萎縮・変性が認められた。一方、b-シリーズガングリオシドを欠損するGD3合成酵素ノックアウトマウスでは、一見して明らかな異常は見られなかったが、行動異常解析でオスにおいてのみ明らかな高次機能の異常が認められた。また、これらのダブルノックアウトマウスにおいては、幼弱マウスでも明らかな神経変性が認められ、12週齢ころより顔面と頚部を中心に、難治性皮膚損傷が出現した。その発症メカニズムとして、末梢神経の変性に基づく痛覚の低下が原因となって、損傷部に対する頻回の掻爬行動がくり返されることがトリッガーとなっているものと思われた。これまで、DNAアレイやcDNAサブトラクション法により、糖鎖変異マウスにおいて発現レベルが大きく変動している遺伝子の同定を行ってきたが、まだ決定的に重要な遺伝子を同定するには至っていない。今後、特定部位からのRNA抽出法と、微量RNAを用いた発現レベルの比較検討により、変性と再生に関わる遺伝子を同定し、それらの分子機能を明らかにする予定である。本研究では、シアル酸を含む酸性スフィンゴ糖脂質であるガングリオシド糖鎖が、主に神経系組織において果たしている役割と、その分子メカニズムに関して、その合成酵素(糖転移酵素)遺伝子のノックアウトマウスを用いて解析した。対象としたノックアウトマウスは、複合型ガングリオシドを欠損するGM2/GD2合成酵素ノックアウト、b-系列ガングリオシドを欠損するGD3合成酵素ノックアウトマウス、上記2種類ノックアウトマウスを交配して得たダブルノックアウトマウス、そしてこれらの前駆体であるラクトシルセラミドの合成酵素であるβ4ガラクトース転移酵素6小脳などである。複合型ガングリオシド欠損マウスでは、加齢とともに末梢神経および脊髄の変性、破壊が認められ、また小脳においても著明な萎縮・変性が認められた。一方、b-シリーズガングリオシドを欠損するGD3合成酵素ノックアウトマウスでは、一見して明らかな異常は見られなかったが、行動異常解析でオスにおいてのみ明らかな高次機能の異常が認められた。また、これらのダブルノックアウトマウスにおいては、幼弱マウスでも明らかな神経変性が認められ、12週齢ころより顔面と頚部を中心に、難治性皮膚損傷が出現した。その発症メカニズムとして、末梢神経の変性に基づく痛覚の低下が原因となって、損傷部に対する頻回の掻爬行動がくり返されることがトリッガーとなっているものと思われた。これまで、DNAアレイやcDNAサブトラクション法により、糖鎖変異マウスにおいて発現レベルが大きく変動している遺伝子の同定を行ってきたが、まだ決定的に重要な遺伝子を同定するには至っていない。今後、特定部位からのRNA抽出法と、微量RNAを用いた発現レベルの比較検討により、変性と再生に関わる遺伝子を同定し、それらの分子機能を明らかにする予定である。1)まずGM2/GD2合成酵素遺伝子ノックアウト(KO)マウスの異常表現型とメカニズムの解明に関しては、加齢に伴う歩行障害等の詳細な検討により特に小脳の機能異常の存在が考えられた。病理組織学的検討により、KOマウスの小脳の萎縮とプルキンエ細胞の消失を確認し、電顕観察ではアポトーシス像を認めた。よって複合型ガングリオシドがプルキンエ細胞の生存に必須であることが示された。2)初代ニューロン培養法の確立のため、まず野生型マウスの脊髄後根神経節よりニューロンを培養し、その突起伸長とviabilityを種々の条件下で比較検討した。結論としてコラーゲンをプレートにコートした時に、ニューロンのviabilityが高く、突起の伸長も著明となり、培養2日目から検出されることが判明した。また、Ara-Cの濃度を適度に調節して、glia cellを低レベルてで生存させると、ニューロンのviabilityが高くなることを明らかにした。現在、KOマウス由来の脊髄後根神経節ニューロンを初代培養し、その基本的な性状につき検討中である。3)野生型マウスとKOマウスの脊髄よりRNAを抽出し、KOマウスにおいて特異的に発現が低下又は消失する遺伝子の同定を行った。これらの中で、真に変性に関連する遺伝子を、cDNAの発現ベクターを構築して神経系培養細胞に導入して検討する予定である。4)GD3合成酵素遺伝子のKOマウスの神経機能を解析し、脳の形態形成に大きな異常を認めなかったが、舌下神経の切断、再生実験で明らかな舌下神経核ニューロンの死滅の上昇と再生能の低下が見られた。よって、b系列ガングリオシドが神経修復に重要であることが示された。GM2/GD2合成酵素遺伝子KO(ノックアウト)マウスにおける神経変性のメカニズムの解明として、(1)脊髄における遺伝子発現プロフィールの変化、(2)小脳におけるガンダリオシド発現と形態の変化、(3)脊髄後根神経節ニューロンの初代培養細胞の検討、などを行った。 | KAKENHI-PROJECT-13470021 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13470021 |
糖鎖変異マウスを用いたスフィンゴ糖脂質の生体内機能の解明 | 脊髄の遺伝子発現プロフィールに関しては、野生型マウス由来RNAよって、KOマウス由来のRNAをサブトラクトした後のcDNAをクローン化し、ドットブロットハイブリダイゼーションによって、KOマウスで発現低下する遺伝子、上昇する遺伝子を同定した。同時に、マウスcDNAチップを用いて、発現レベルの変化が変動する遺伝子を検討したところ、種々のサイトカイン遺伝子およびその制御下にある遺伝子のup-regulationが明らかになった。よって、KOマウスにおける、恐らくグリアの反応性増殖に基づくサイトカインの合成・分泌の促進が示唆された。小脳においては、生後1年以上経過すると小脳の萎縮が明らかになると共に、ブルキンエ細胞の破壊、脱落が顕著に認められた。ガングリオシド分画の検討では、GM3、GD3の蓄積以外に、新たな未知の成分の増強がTLC上で認められ、ガングリオシド欠損の補正としてup-regulationがかかっていることが示唆された。初代培養系として、後根神経節のニューロン培養が可能となり、その細胞数、突起伸長、生存日数、NGF依存性などにつき比較検討しているが、現在のところ明らかな差は認められていない。GM2/GD2合成酵素とGD3合成酵素のダブルKOマウスに関しては、高率に発現する難治性皮膚損傷と神経変性との関わりを解析した。ホットプレートテストとvon Freyテストで知覚異常を比較検討したところ、ダブルKOでは機械刺激に対して鈍感になっていたが、熱刺激には却って高い感受性を示し、その間に解離が見られた。現在、痛覚受容器の機能変異、免疫学的メカニズムの介在の有無につき検討中である。酸性スフィンゴ糖脂質の糖鎖が神経系の維持と再生において果たす役割について糖鎖遺伝子ノックアウト(KO)マウスを用いて検討した。これまで加齢に伴う末梢神経および中枢神経の変性が認められていたが、更に複合型ガングリオシド欠損マウスにおいて小脳の変性萎縮が著明に認められた。50週齢でプルキンエ細胞が約半数に減少し、100週齢になると約20%にまで減少することが判明した。電顕では、プルキンエ細胞の破壊像と細胞質における空砲、ミトコンドリアの変性が著明に認められた。これらの所見はマウスにみられた進行性の歩行障害とよく一致していた。小脳変性のメカニズム解明のため、小脳細胞の初代培養を確立し、特にプルキンエ細胞の数と突起伸長に注目して解析を進めた。KOマウスのプルキンエ細胞は野生型の1/3くらいしか見られず、生後間もない時点での生存能力に著しい産量が見られた。さらに、複合型ガングリオリドを欠損するGM2/GD2合成酵素のKOマウスとb-シリーズガングリオリドを欠損するGD3合成酵素のKOマウスを交配して、ダブルノックアウトマウス(D-KO)を作成した。GM3のみと発現するD-KOマウスは、幼若時より末梢神経の変性と破壊が認められ、12週齢頃より、顔面や頚部に難治性の皮膚損傷が出現した。はじめに比較的小規模の外傷が発生し、それを頻回に掻爬することで損傷部が拡大するものと推定された。その要因として、神経変性に基づく痛覚の低下が考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-13470021 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13470021 |
心ペースメーカーリズム発生と調節のメカニズム | ウサギ心臓の洞房結節よりペースメーカー細胞を単離し、そのイオン電流をパッチクランプ法により解析した。過分極で活性化される陽イオン電流については、電流の活性化の速度が膜電位だけでなく外液の陽イオン組成により影響されることを発見した。外液Na濃度の減少で過分極による活性化の速度が遅くなることは、時定数と膜電位の関係がNa濃度の減少に伴い負電位側に平行移動することによる。外液の陽イオン種を換えてもそれらの速度が変化する。開閉機構を説明するため、二つの閉状態と三つの開状態を仮定したモデルを作成し、陽イオン電流の関与を計算すると全電流の10-20%であることが解った。Ca電流については拡張期緩徐脱分極の電位範囲で活性化するものを保持電位を-70-80mVにして検索したところ、L-あるいはT-型電流と異なる電流を発見した。この電流は-60mVより脱分極側で活性化され、電流の最大振幅はL-型電流の約20%程度であるが、不活性化は拡張期電位の範囲では極めて遅い。Ca拮抗薬によって抑制されカテコラミン刺激によって増大することから、Caチャネル類似の構造を有すると考えられる。この新たな電流系はペースメーカー電位発生に重要な寄与をしていると考えられる。背景電流としてイオン選択性の弱い陽イオン電流成分が記載されているが、我々はムスカリン受容体によって制御されるKチャネルの自発活動による電流の関与を調べた。外液を高K液にするとこのチャネル活動に基づく電流が増幅され、それには明かなチャネルの開閉による微小ノイズが伴っていた。チャネルの自発活動は細胞内のMg、ATPに依存することが解っているが、この高K液により増幅された電流はこれらの物質を細胞内から除去すると消失した。雑音解析で単位電流振幅やチャネルのキネティックスを求めると、ムスカリンチャネルの性質と良く一致していた。背景電流のうち、外向き電流は殆どこのチャネルによることが示唆された。(1)細胞標本作成法の改良。心臓ペ-スメ-カ-細胞はきわめて豊富な結合組織によって囲まれ、細胞の単離に工夫が必要であった。いろいろな酵素や処理法について比較検討したが、次のような手順で実験に充分使用できる細胞を得ることが出来た。まず、人工呼吸下に開胸し、大動脈にカニュ-レを挿入し、正常塩溶液による潅流を開始し、その状態で心臓を摘出し、潅流装置に固定する。Caを含まない塩溶液約150mlを潅流後、40mg/300mlのコラゲナ-ゼ液によって20分間処理、続いて約5分間15mg/150mlのプロテア-ゼ処理を行う。洞房結節を切り出し、これを細切し、15mg/25mlのコラゲナ-ゼによって更に20分の処理をし、高K、低Cl、無Ca塩溶液中で細胞を分離する。得られる細胞はかなりの比率で正常な細長い形を保ち、これにパッチクランプ法を適用した。(2)イオン電流の解析。過分極によって活性化するイオン電流の本体について明かにする目的で調べた結果、この電流はNaイオンとKイオンによって運ばれ、Clイオンは電流を運んでいないこと、Clイオンを外液から取り除くと、電流は消失するが、これはClイオンによるチャネルの活性化を仮定しないと説明できないこと、Kイオンを外液から取り除くと、やはりチャネルのコンダクタンスは完全に消失した。いろいろな濃度でのチャネル活性化のキネチックスを調べたが、明かな変化を認めることはできなかった。チャネルは外液のCsイオンやRbイオンによってブロックされるが、内向き電流についていろいろな電位で比較したが、明かな電位依存性を認めることはできなかった。細胞内のKイオンをCsイオンによって置き換えても、内向き電流は全く影響を受けなかった。パッチクランプ法のoutsideーoutの方法でこの電流を記録できたが、単一チャネルに基づくと思われるようなノイズを検出することは出来なかった。心ペ-スメ-カ-リズムの発生は主として、Caチャネル、遅延整流Kチャネル、それに背景電流によっているとの我々の説に対して、過分極で活性化される陽イオンチャネルが重要な役割を担っているとするDiFrancesco等の説がある。我々はまずこの過分極で活性化される陽イオンチャネルの性質を明らかにする目的で、今回は外液CIイオンの影響を調べた。このチャネルは陽イオンチャネルであるにも関わらず、CIイオンを取り去ると電流が消失するという全く意外な性質を示す。実験の結果、(1)細胞外のCIイオンをisethionate、glutamate,acetateやaspartateに置き換えると、電流が消失し、I、NO_3ではコントロ-ルと同じ電流が得られる。(2)細胞体から剥離した細胞膜でも同じ結果であることから、これらの効果はイオンチャネルへの直接効果であることがわかった。(3)Cl濃度と電流の大きさの関係はヒル定数1で、半飽和値が11mMである。(4)電流活性化の電位依存性はCl濃度変化によっては影響されない。これらの結果に基づいて、このチャネルの外側に面した開口部には正の固定電荷が存在し、これをClイオンのような負イオンが電気的に消去した状態で、陽イオンがチャネルを通り抜けることが出来るのではないかと考えられた。大きな陰イオンはこの結合部位に到達出来ないのではないか。細胞内のKイオンをCsで置き換えると遅延整流Kチャネル電流をほとんど抑制した状態で、陽イオン電流を記録できるが、この電流の活性化の閾値はほぼー70mVであった。 | KAKENHI-PROJECT-02454123 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02454123 |
心ペースメーカーリズム発生と調節のメカニズム | 文献的にはー30ー70mVと細胞によって異なると報告されているが、我々の実験では極めて一定の活性化曲線が得られた。この電流の積極的な関与はペ-スメ-カ-機転では考えられない。これらの成果についてはJournal of Physiologyに近く掲載される。ウサギ心臓の洞房結節よりペースメーカー細胞を単離し、そのイオン電流をパッチクランプ法により解析した。過分極で活性化される陽イオン電流については、電流の活性化の速度が膜電位だけでなく外液の陽イオン組成により影響されることを発見した。外液Na濃度の減少で過分極による活性化の速度が遅くなることは、時定数と膜電位の関係がNa濃度の減少に伴い負電位側に平行移動することによる。外液の陽イオン種を換えてもそれらの速度が変化する。開閉機構を説明するため、二つの閉状態と三つの開状態を仮定したモデルを作成し、陽イオン電流の関与を計算すると全電流の10-20%であることが解った。Ca電流については拡張期緩徐脱分極の電位範囲で活性化するものを保持電位を-70-80mVにして検索したところ、L-あるいはT-型電流と異なる電流を発見した。この電流は-60mVより脱分極側で活性化され、電流の最大振幅はL-型電流の約20%程度であるが、不活性化は拡張期電位の範囲では極めて遅い。Ca拮抗薬によって抑制されカテコラミン刺激によって増大することから、Caチャネル類似の構造を有すると考えられる。この新たな電流系はペースメーカー電位発生に重要な寄与をしていると考えられる。背景電流としてイオン選択性の弱い陽イオン電流成分が記載されているが、我々はムスカリン受容体によって制御されるKチャネルの自発活動による電流の関与を調べた。外液を高K液にするとこのチャネル活動に基づく電流が増幅され、それには明かなチャネルの開閉による微小ノイズが伴っていた。チャネルの自発活動は細胞内のMg、ATPに依存することが解っているが、この高K液により増幅された電流はこれらの物質を細胞内から除去すると消失した。雑音解析で単位電流振幅やチャネルのキネティックスを求めると、ムスカリンチャネルの性質と良く一致していた。背景電流のうち、外向き電流は殆どこのチャネルによることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-02454123 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02454123 |
析出相及び双晶組織の微小領域X線回折法による評価法の確立 | 酸化物超伝導体のような複雑かつ異方性の著しい結晶構造の化合物から成る材料の臨界電流密度のような特性向上を目的とした試料作成では、結晶組織の形態と、組織を形成する結晶相の方位を制御することが重要な課題の一つである。本研究では、X線回折法により非破壊で組織を形成する結晶相を同定し、結晶形態を観察し、更に、結晶相相互の方位関係などの情報をも得ること目的とし、組織中の微小領域でのX線回折法の確立を課題とした。4軸型単結晶回折計に類似のω、χ、φの3軸による試料方位の制御と湾曲型比例計数管の活用を併せ、結果として、510μm程度の領域にある結晶相の方位、格子定数などの決定、回折強度の測定などを可能とした。さらに、試料面内xーy微動移動装置の制御のソフトウエアの開発を現在行なっており、ω、χ、φ、x、yの制御を同時に行なうことにより、近い将来、結晶相相互の方位関係に基づく組織観察が可能となる。この方法を熔融(QMG)法で得たYBa_2Cu_3O_<7ーx>試料(123相)J_c>10^4A/cm^2,1T,77K、文献)の組織解析に適用した。30μmのX線束(40KV、30mA、CuK/Ni)により、研磨試料表面の種々の位置について、123相が単晶として存在するか、複数の区域から構成されるかなどを識別した。いずれの位置も斜方晶c軸の方位はほぼ一致し、c軸の周りの回転は相互に610度程度であることが分った。また、特定の結晶面での回折条件を満足するように試料方位を保ち、研磨試料面内で平行移動することにより、結晶方位を同一とする区域の分布を得た。結果として、熔融法で得たYBa_2Cu_3O_<7ーx>試料は、試料全体にわたり斜方晶の最長軸cを共有し、cmの程度の大きさの区域の中に数ミリメ-トル程度の区域構造、更にその中に10010μmの微細な区域構造を示すことを明らかにした。酸化物超伝導体のような複雑かつ異方性の著しい結晶構造の化合物から成る材料の臨界電流密度のような特性向上を目的とした試料作成では、結晶組織の形態と、組織を形成する結晶相の方位を制御することが重要な課題の一つである。本研究では、X線回折法により非破壊で組織を形成する結晶相を同定し、結晶形態を観察し、更に、結晶相相互の方位関係などの情報をも得ること目的とし、組織中の微小領域でのX線回折法の確立を課題とした。4軸型単結晶回折計に類似のω、χ、φの3軸による試料方位の制御と湾曲型比例計数管の活用を併せ、結果として、510μm程度の領域にある結晶相の方位、格子定数などの決定、回折強度の測定などを可能とした。さらに、試料面内xーy微動移動装置の制御のソフトウエアの開発を現在行なっており、ω、χ、φ、x、yの制御を同時に行なうことにより、近い将来、結晶相相互の方位関係に基づく組織観察が可能となる。この方法を熔融(QMG)法で得たYBa_2Cu_3O_<7ーx>試料(123相)J_c>10^4A/cm^2,1T,77K、文献)の組織解析に適用した。30μmのX線束(40KV、30mA、CuK/Ni)により、研磨試料表面の種々の位置について、123相が単晶として存在するか、複数の区域から構成されるかなどを識別した。いずれの位置も斜方晶c軸の方位はほぼ一致し、c軸の周りの回転は相互に610度程度であることが分った。また、特定の結晶面での回折条件を満足するように試料方位を保ち、研磨試料面内で平行移動することにより、結晶方位を同一とする区域の分布を得た。結果として、熔融法で得たYBa_2Cu_3O_<7ーx>試料は、試料全体にわたり斜方晶の最長軸cを共有し、cmの程度の大きさの区域の中に数ミリメ-トル程度の区域構造、更にその中に10010μmの微細な区域構造を示すことを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-02227206 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02227206 |
高いスケーリング性能と高精度性を併せ持つ次世代固有値・特異値分解ライブラリの開発 | 科学技術計算や大規模データ解析の基盤技術である行列の固有値・特異値分解について,次世代の大規模並列スーパーコンピュータ向けに,並列性能と計算精度に優れた新しいライブラリを開発する.特に,申請者らが海外共同研究者らと共同で開発してきた並列動的オーダリング型ブロックヤコビ法と呼ばれる新しい固有値・特異値分解手法の実用化に向け,海外共同研究者と連携して理論的解析,高性能実装,機能拡張などの課題に取り組む.また,開発したライブラリを著名な電子状態計算ソフトに組み込み,普及を促進するとともに,欧州の学会でのオーガナイズドセッションを実施し,研究成果の発信と研究者ネットワークの拡大を図る.科学技術計算や大規模データ解析の基盤技術である行列の固有値・特異値分解について,次世代の大規模並列スーパーコンピュータ向けに,並列性能と計算精度に優れた新しいライブラリを開発する.特に,申請者らが海外共同研究者らと共同で開発してきた並列動的オーダリング型ブロックヤコビ法と呼ばれる新しい固有値・特異値分解手法の実用化に向け,海外共同研究者と連携して理論的解析,高性能実装,機能拡張などの課題に取り組む.また,開発したライブラリを著名な電子状態計算ソフトに組み込み,普及を促進するとともに,欧州の学会でのオーガナイズドセッションを実施し,研究成果の発信と研究者ネットワークの拡大を図る. | KAKENHI-PROJECT-19KK0255 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19KK0255 |
生活習慣に関連した健康障害をもつ思春期の子どものヘルスプロモーションに関する研究 | 生活習慣に関連した健康障害をもつ思春期の子どもの生活習慣に関する認識・行動、自己効力感、ソーシャルサポート、親の生活習慣に関する認識・行動と子どもの健康状態との関係を明らかにすること、また、ヘルスプロモーションのためのセルフケア技術を高める看護介入を行い、その有効性を検討することを目的に研究を行った。対象者は10歳18歳の子どもとその親7組で、病名は肥満5名、糖尿病1名、高脂血症1名であった。看護介入前の調査結果としては、一般の同年齢の子どもに比べ、自己効力感の得点は低く、ソーシャルサポートの得点は高い傾向が見られた。子どもの健康生活の自己管理に対する認識では、7名中6名が今の調子で生活を管理していたら何らかの健康障害を起こすかも知れないと思っていたが、やせたいなど健康管理上の目標を持っていたのは3名のみであった。子どもも親も肥満を健康障害と捉えていなく、親は生活習慣に問題があると思っていたが、子どもの生活習慣の改善は難しいと思っていた。また、介入前の子どもの行動変容の段階は、熟考前が3名、熟考が1名、実行が1名、維持が2名であった。4時点のデータが得られた5名の子どもの介入後の変化としては、3名に3カ月後に自己効力感の得点の増加、病状の改善が見られた。また、介入1年後には4名の子どもに自己効力感の得点の増加が見られ、そのうちの3名に病状の改善が見られた。この3名は、いずれも介入前に行動変容の段階が「熟考」以上であり、健康管理上の自分の目標を持っていた。そのため、ヘルスプロモーションモデルを用いた看護介入は行動変容の「熟考」以上の段階にいる子どもへの看護介入としては有効であると考えられる。しかし、看護介入3カ月後に病状が改善した子どもでも、6カ月後、1年後と徐々に病状が悪化していく傾向が見られた。そのため、継続的に看護介入を行うことが必要であると考えられる。生活習慣に関連した健康障害をもつ思春期の子どもの生活習慣に関する認識・行動、自己効力感、ソーシャルサポート、親の生活習慣に関する認識・行動と子どもの健康状態との関係を明らかにすること、また、ヘルスプロモーションのためのセルフケア技術を高める看護介入を行い、その有効性を検討することを目的に研究を行った。対象者は10歳18歳の子どもとその親7組で、病名は肥満5名、糖尿病1名、高脂血症1名であった。看護介入前の調査結果としては、一般の同年齢の子どもに比べ、自己効力感の得点は低く、ソーシャルサポートの得点は高い傾向が見られた。子どもの健康生活の自己管理に対する認識では、7名中6名が今の調子で生活を管理していたら何らかの健康障害を起こすかも知れないと思っていたが、やせたいなど健康管理上の目標を持っていたのは3名のみであった。子どもも親も肥満を健康障害と捉えていなく、親は生活習慣に問題があると思っていたが、子どもの生活習慣の改善は難しいと思っていた。また、介入前の子どもの行動変容の段階は、熟考前が3名、熟考が1名、実行が1名、維持が2名であった。4時点のデータが得られた5名の子どもの介入後の変化としては、3名に3カ月後に自己効力感の得点の増加、病状の改善が見られた。また、介入1年後には4名の子どもに自己効力感の得点の増加が見られ、そのうちの3名に病状の改善が見られた。この3名は、いずれも介入前に行動変容の段階が「熟考」以上であり、健康管理上の自分の目標を持っていた。そのため、ヘルスプロモーションモデルを用いた看護介入は行動変容の「熟考」以上の段階にいる子どもへの看護介入としては有効であると考えられる。しかし、看護介入3カ月後に病状が改善した子どもでも、6カ月後、1年後と徐々に病状が悪化していく傾向が見られた。そのため、継続的に看護介入を行うことが必要であると考えられる。思春期の子どもへのヘルスプロモーション及びその看護介入方法に関する文献検討を行い、以下のことが明らかになった。思春期の子どもには自分の行動パターンとそれに対する認識にずれがあった。自己効力感・自尊感情・健康の認知的利益は健康行動・健康危険行動の回避と正の相関関係にあり、これらの変数を促進させる介入の重要性が示唆されていた。伝統的な教育的介入は知識を増やすためには効果的であったが、QOLと血糖コントロールの改善には効果がなく、心理社会的介入はQOLと血糖コントロールの改善の両方に効果的であったとの報告など、心理社会的な看護介入を行った研究は極少なかったが、思春期の子どもの健康行動を改善させるために有効であることが提示されていた。そのため、食事、運動、摂食習慣の指導を行うという末梢からのアプローチではなく、生活習慣の認知を矯正するために精神構造を改革するという,中枢からのアプローチが重要である。Health Promoting Lifestyle Profileは、包括的な健康の概念に基づいたPender Health Promotion Modelに基づき開発されたものであるが、既存研究における対象年齢の下限が18歳であったため、中・高校生への使用には限界があると考え、それの使用を取りやめ、面接の中にライフスタイルに関する認識と実際の行動についての内容を盛り込むことにした。そして、成田らが開発した特性的自己効力感尺度に加えて、人間関係の影響を捉えるために中村らが開発したソーシャルサポート尺度を用いることにした。両方の心理測定尺度に関しては、著者に使用許可及び使用上の注意等の助言を頂いた。 | KAKENHI-PROJECT-13672530 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13672530 |
生活習慣に関連した健康障害をもつ思春期の子どものヘルスプロモーションに関する研究 | また、調査及び看護介入に必要な物品の準備を行い、A病院に文書と共に調査協力依頼のための説明に伺い、許可が得られたため、4月から外来研修ならびに調査を開始する予定である。平成14年度は、生活習慣に関連した健康障害をもつ思春期の子どもの生活習慣に関する認識・行動、自己効力感、ソーシャルサポート、親の生活習慣に関する認識・行動と子どもの健康状態との関係を明らかにすること、また、ヘルスプロモーションのためのセルフケア技術を高める看護介入を行い、その有効性を検討することを目的に2施設で調査を行った。対象者は10歳18歳の7名で、男子3名、女子4名であった。病名は、肥満5名、糖尿病1名、高脂血症1名であった。また、看護介入6ヵ月後までの3時点のデータが得られている者が2名、看護介入3ヵ月後までの2時点のデータが得られている者が3名であった。介入前の調査結果としては、自己効力感の得点は、一般の同年齢の子どもに比べ、低い子どもが多かった。また、ソーシャルサポートの得点は、一般の同年齢の子どもに比べ、高い子どもが多く、特に、親と友達からのサポートの得点が高い傾向にあった。健康生活の自己管理の認識は、親に言われなくてもある程度自分でできると答えた者は3名のみで、ストレスが多いと感じている者は2名のみであった。今の調子で生活を管理していても自分には何も起こらないと思っていた者は1名のみで、ほとんどの者が何らかの健康障害を起こすかも知れないと思っていた。しかし、やせたいなど健康管理上の目標を持っている者は3名のみであった。親子の認識の相違が大きかった生活習慣は、間食、睡眠、遊びであった。子どもも親も肥満を健康障害と思っていなく、親は生活習慣に問題があると思っていたが、生活習慣の改善は難しいと思っていた。また、介入後のデータが得られている5名のうち、介入前に行動変容の計画・準備の段階、実行の段階にあった3名は、介入後、自分で設定した目標を達成し、HbAlc値・肥満度の改善が見られている。平成15年度は、平成14年度に引き続き、生活習慣に関連した健康障害をもつ思春期の子どもと親にペンダーのヘルスプロモーションモデルを用いて看護介入を行い、その有効性を検討した。看護介入前のデータが得られたのは7名であったが、そのうち介入前、介入3カ月後、6カ月後、1年後の4時点のデータが得られたのは5名であった。7名の介入前の行動変容の段階は、熟考前が3名、熟考が1名、実行が1名、維持が2名であった。4時点のデータが得られた5事例の介入後の変化としては、介入前に比べ、3カ月後に自己効力感の得点が増加した者は5名中3名(事例3,5,7)であった。病状の改善が見られた者は5名中3名(事例1,5,7)で、そのうちの1名である事例1は自己効力感の得点が増加していなかった。しかし、子どもが「間食を食べずに我慢できる」「友達にも私、食べないって言った」と発言したり、母親が「以前は隠れて体重を測っていたが、今は私の前で堂々と体重計で測っています」と発言していたことから、自己効力感が上がっているのではないかと考えられた。また、介入1年後では5名中4名に自己効力感の得点の増加が見られ、そのうち3名は病状の改善が見られた。この3名は、いずれも介入前に行動変容の段階が「熟考」以上であり、健康管理上の自分の目標をもっていた。一方、介入前に「熟考前」の段階にいた子どもは、病状の改善が見られなかった。 | KAKENHI-PROJECT-13672530 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13672530 |
英語スピーキングテストでの発話者のジェスチャーが発話の流暢さと正確さに及ぼす影響 | 本研究では、発話者のジェスチャー使用がスピーキングの流暢さと正確さに及ぼす影響を、日本人英語学習者を対象に検証した。使用したタスクはPicture Descriptionと呼ばれる、4コマ漫画の内容を口頭で叙述するもので、ジェスチャーの定義を「発話者が発話中に行う自然発生的な手の動き」とした。調査方法としては、近年、脳科学分野で活発に研究が行われている“ミラーニューロン"(人間の脳にある無意識的に他者の動作を自分の動作の中に取り込もうとする神経部位のこと)による効果を予測し、以下のような実験群、及び統制群を設定した:実験群-タスクの説明を行う際、教師が意図的にジェスチャーを使用し、生徒たちにモデルを示したクラス統制群一タスクの説明の際、教師が一切ジェスチャーを使用せずに、口頭のみでモデルを示したクラス実験の結果、以下の内容が明らかになった:1.ジェスチャー使用頻度(1分間あたりに使用するジェスチャー回数)は、実験群の方が有意に高かった2.ジェスチャー使用頻度と発話の流暢さには、低い正の相関が認められた3.ジェスチャー使用頻度と発話の正確さには、正の相関が認められた以上の結果から、日本人英語学習者にジェスチャーを用いてスピーキング活動を行うように推進することは、発話者のスピーキングパフォーマンスを向上させる上で有効な手段だということが明らかになった。なお上記の研究は論文としてまとめられ、2016年2月20日に英語授業研究学会の研究紀要(全国誌)に投稿された。現在掲載の有無を査読中である。また、研究の一部は2015年8月に行われた「英語授業研究学会第27回全国大会」において発表された。本研究では、発話者のジェスチャー使用がスピーキングの流暢さと正確さに及ぼす影響を、日本人英語学習者を対象に検証した。使用したタスクはPicture Descriptionと呼ばれる、4コマ漫画の内容を口頭で叙述するもので、ジェスチャーの定義を「発話者が発話中に行う自然発生的な手の動き」とした。調査方法としては、近年、脳科学分野で活発に研究が行われている“ミラーニューロン"(人間の脳にある無意識的に他者の動作を自分の動作の中に取り込もうとする神経部位のこと)による効果を予測し、以下のような実験群、及び統制群を設定した:実験群-タスクの説明を行う際、教師が意図的にジェスチャーを使用し、生徒たちにモデルを示したクラス統制群一タスクの説明の際、教師が一切ジェスチャーを使用せずに、口頭のみでモデルを示したクラス実験の結果、以下の内容が明らかになった:1.ジェスチャー使用頻度(1分間あたりに使用するジェスチャー回数)は、実験群の方が有意に高かった2.ジェスチャー使用頻度と発話の流暢さには、低い正の相関が認められた3.ジェスチャー使用頻度と発話の正確さには、正の相関が認められた以上の結果から、日本人英語学習者にジェスチャーを用いてスピーキング活動を行うように推進することは、発話者のスピーキングパフォーマンスを向上させる上で有効な手段だということが明らかになった。なお上記の研究は論文としてまとめられ、2016年2月20日に英語授業研究学会の研究紀要(全国誌)に投稿された。現在掲載の有無を査読中である。また、研究の一部は2015年8月に行われた「英語授業研究学会第27回全国大会」において発表された。 | KAKENHI-PROJECT-15H00139 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H00139 |
ソルボサーマル法を駆使するゼロリコンビネーション光触媒の開発 | 本研究では、有機溶媒の多様性を利用して、さまざまなソルボサーマル技術を新たに開発する。これらを駆使して様々なTiO_2光触媒系を調製し、その光触媒特性の評価や新規反応系を開拓するとともに、その量子効率の向上およびゼロリコンビネーション化を目指した。1)ソルボサーマル法によるブルカイト型酸化チタン光触媒の合成と光触媒特性評価TiO_2はアナタース、ルチル、ブルカイトの3つの結晶系で存在する。その中でアナタースとルチルはよく知られており、これらの合成および光触媒や触媒担体への応用に関する研究例は多い。一方、純粋なブルカイト型TiO_2は合成が困難であるため、その物性や光触媒特性についてはあまり研究されていない。そこで、ソルボサーマル法によるブルカイト型TiO_2の合成を種々検討した。その結果、チタン源にチタンオキシアセチルアセトナート、溶媒にエチレングリコール-水混合系、共存物質に各種ナトリウム塩を用いるとブルカイト型酸化チタンのナノ結晶が生成することを見いだした。これを複数の光触媒反応系に用いたところ、ブルカイト酸化チタンの最適な物性は反応系に依存して大きく異なること、および、最適な物性を付与された試料は、市販高活性品P-25やST-01と比べても遜色ない特性を示すことが明らかになった2)ソルボサーマル法を用いる酸化チタン-吸着剤コンポジットの合成とその評価気相中に拡散した物質の分解・無害化反応を効率的に進めるためにはTiO_2-吸着剤コンポジットが有効であると考えられる。しかし、高活性な光触媒を吸着剤と複合化されるのはかなり難しい。ソルボサーマル合成条件時に吸着剤を系内に共存させ、吸着剤上に直接高活性TiO_2を生成させる手法を開発し、これが期待通り優れた光触媒特性を示した。本研究では酸化チタンを用いた光触媒反応によるNO_3^-のN_2への還元無害化を検討した。TiO_2(50 mg)を硝酸(または亜硝酸ナトリウム)水溶液(50μmol、5 cm^3)に懸濁させ、正孔捕捉剤として所定量のシュウ酸(OA)、金属助触媒源として塩化銅または塩化パラジウムを加え、水酸化ナトリウムにてpH調整後、磁気撹拌、アルゴン雰囲気下、室温で高圧水銀灯の紫外光(> 300 nm)を照射した。0.5 wt%Cu-TiO_2を用いたとき、懸濁液のpHを上げると生成物はNH_3からNO_2^-へと変化した。次に触媒に銅パラジウム-酸化チタン(CuPd-TiO_2)を用いてpH12で12 h光照射するとNO_2^-は生成せず、代わりにN_2が生成し、光触媒によるNO_3^-のN_2への還元無害化が可能であることを見出した。照射時間が短い領域でNO_2^-が一時的に生成するが、時間を延ばすとNO_2^-はすぐに減少し検出されなくなった。一方、N_2の生成は誘導期を伴って増加した。つまり、NO_3^-のN_2への還元はNO_2^-を中間生成物とする逐次反応で進行していることが推察される。CuおよびPdの担持量の影響を検討したところ、TiO_2に対してCuが0.5 wt%、Pdが1.0 wt%のときに最大活性となり、いずれかの成分をさらに増加させると活性は減少した。次にNO_3^-のN_2への還元をさらに明らかにするために基質をNO_2^-に代え、触媒としてパラジウム-酸化チタン(Pd-TiO_2)を用いてアルカリ性条件下で光触媒還元を行うと、NO_2^-は誘導期を持たずにN_2へと還元された。触媒にCuPd-TiO_2を用いるとN_2が選択的に生成するもののPd-TiO_2と比べるとその生成量は減少し、Cu担持量が増えるにしたがって生成量はさらに減少した。またCu-TiO_2触媒を用いた場合、N_2生成は見られなかった。以上のことから水中NO_3^-の光触媒還元による無害化反応においてCuPd-TiO_2触煤が有効に作用する。助触媒のCu、Pdの機能は異なり、CuはNO_3^-の酸素を引き抜く2電子還元の過程に、PdはNO_2^-からN_2を生成する3電子還元の過程に有効であると考えられる。本研究では、有機溶媒の多様性を利用して、さまざまなソルボサーマル技術を新たに開発する。これらを駆使して様々なTiO_2光触媒系を調製し、その光触媒特性の評価や新規反応系を開拓するとともに、その量子効率の向上およびゼロリコンビネーション化を目指した。1)ソルボサーマル法によるブルカイト型酸化チタン光触媒の合成と光触媒特性評価TiO_2はアナタース、ルチル、ブルカイトの3つの結晶系で存在する。その中でアナタースとルチルはよく知られており、これらの合成および光触媒や触媒担体への応用に関する研究例は多い。一方、純粋なブルカイト型TiO_2は合成が困難であるため、その物性や光触媒特性についてはあまり研究されていない。そこで、ソルボサーマル法によるブルカイト型TiO_2の合成を種々検討した。その結果、チタン源にチタンオキシアセチルアセトナート、溶媒にエチレングリコール-水混合系、共存物質に各種ナトリウム塩を用いるとブルカイト型酸化チタンのナノ結晶が生成することを見いだした。 | KAKENHI-PROJECT-15033272 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15033272 |
ソルボサーマル法を駆使するゼロリコンビネーション光触媒の開発 | これを複数の光触媒反応系に用いたところ、ブルカイト酸化チタンの最適な物性は反応系に依存して大きく異なること、および、最適な物性を付与された試料は、市販高活性品P-25やST-01と比べても遜色ない特性を示すことが明らかになった2)ソルボサーマル法を用いる酸化チタン-吸着剤コンポジットの合成とその評価気相中に拡散した物質の分解・無害化反応を効率的に進めるためにはTiO_2-吸着剤コンポジットが有効であると考えられる。しかし、高活性な光触媒を吸着剤と複合化されるのはかなり難しい。ソルボサーマル合成条件時に吸着剤を系内に共存させ、吸着剤上に直接高活性TiO_2を生成させる手法を開発し、これが期待通り優れた光触媒特性を示した。 | KAKENHI-PROJECT-15033272 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15033272 |
有機-無機ハイブリッド型光触媒による選択的物質変換 | 本研究では、無機光触媒材料への有機種の導入による有機-無機ハイブリッド型光触媒材料の開発とその機能解明を進めてきた。平成21年度は、光触媒活性を水溶液中の有機酸の種類と濃度により制御できるハイブリッド型光触媒を開発した。本研究では、二酸化チタン粒子を含有するメソポーラスシリカを合成し、メソポーラス内に界面活性剤を残した状態で1-[3-(トリメトキシリル)プロピル]ジエチレントリアミン(DETA)と反応させることで、外表面にDEIA基を修飾したハイブリッド型光触媒を開発し、反応溶液中における有機酸の濃度等に対する光触媒活性の変化を調べた。本触媒は、シュウ酸やクエン酸(各5mM、pH3付近)を加えた水溶液中では、ニトロベンゼンの光還元反応を触媒しないことを見出した。これに対し、DETA基を修飾していない触媒を用いた場合には反応が進行する。pHの低い水溶液中でDETA基がプロトン化する。これにより、細孔の出入口付近に修飾されたDETA基は静電反発により大きく広がるため、細孔を塞ぎ、ニトロベンゼンの細孔内への拡散が抑制されるためと考えられる。また、酸の濃度を下げると反応は徐々に進行するようになる。これは、酸濃度が低下することでDETA基の静電反発が弱くなり、基質の細孔内への拡散が抑制されにくくなるためと考えられる。一方、ギ酸存在下(5100mM)では、本触媒でもニトロベンゼンの光還元反応が進行する。これは、DETA基の開きかたが、アニオン種のイオン半径に依存しているためと考えられる。このように本研究では、表面をDETA基で修飾した簡単な構造の光触媒が、溶液中の酸の種類や濃度の変化にともなうDETA基の構造変化により触媒活性を制御する特異的な機能を発現することを明らかにした。本研究では、無機光触媒材料への「有機種」の導入による有機-無機ハイブリッド型光触媒材料の開発とその機能解明を進めている。平成20年度は、光触媒活性を溶媒極性により制御できるハイブリッド型光触媒を開発した。本研究では、TiO_2粒子を含有するメソポーラスシリカを合成し、細孔内に界面活性剤を残したままオクタデシル(OD)トリクロロシランと反応させることで、外表面に疎水性のOD基を修飾したハイブリッド型光触媒を開発し、OD基の修飾量に対する、触媒粒子の溶液中への分散挙動および光触媒活性の変化を調べた。本触媒は、OD基を修飾したことで、粒子表面の疎水性が増加しているため、水溶液表面に浮く。これにより、水溶液中でフェノールの光酸化反応を行うと、細孔内のTiO_2粒子へのフェノールのアクセスが抑制され、フェノール転化率はほぼゼロとなる。一方、水より極性の低いアセトニトリルを加えていくと、溶液の極性が減少するため、OD基の溶解度が高くなり、触媒は溶液中に分散し始める。この時、OD基の修飾量の少ない触媒ほど少量のアセトニトリルの添加でも溶液中へよく分散することを明らかにした。これにともない、フェノールの細孔内への拡散が促進されるため、フェノールの転化率は大きく増加し始める。さらに、アセトニトリル量が50vol%以上になると、活性は大きく減少する。これは、溶液の極性が減少したことでOD基の溶解度がさらに増加し、OD基がバルク溶液に向けて大きく伸び、基質の細孔内への拡散を抑制するためと考えられる。このように本研究では、表面をOD基で修飾した簡単な構造の光触媒粒子が、落液の極性の変化にともなう粒子の分散性および疎水基の構造変化により触媒活性を制御する極めて特異的な機能を発現することを明らかにした。本研究成果は、学術論文として現在投稿準備中である。本研究では、無機光触媒材料への有機種の導入による有機-無機ハイブリッド型光触媒材料の開発とその機能解明を進めてきた。平成21年度は、光触媒活性を水溶液中の有機酸の種類と濃度により制御できるハイブリッド型光触媒を開発した。本研究では、二酸化チタン粒子を含有するメソポーラスシリカを合成し、メソポーラス内に界面活性剤を残した状態で1-[3-(トリメトキシリル)プロピル]ジエチレントリアミン(DETA)と反応させることで、外表面にDEIA基を修飾したハイブリッド型光触媒を開発し、反応溶液中における有機酸の濃度等に対する光触媒活性の変化を調べた。本触媒は、シュウ酸やクエン酸(各5mM、pH3付近)を加えた水溶液中では、ニトロベンゼンの光還元反応を触媒しないことを見出した。これに対し、DETA基を修飾していない触媒を用いた場合には反応が進行する。pHの低い水溶液中でDETA基がプロトン化する。これにより、細孔の出入口付近に修飾されたDETA基は静電反発により大きく広がるため、細孔を塞ぎ、ニトロベンゼンの細孔内への拡散が抑制されるためと考えられる。また、酸の濃度を下げると反応は徐々に進行するようになる。これは、酸濃度が低下することでDETA基の静電反発が弱くなり、基質の細孔内への拡散が抑制されにくくなるためと考えられる。一方、ギ酸存在下(5100mM)では、本触媒でもニトロベンゼンの光還元反応が進行する。これは、DETA基の開きかたが、アニオン種のイオン半径に依存しているためと考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-08J00752 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J00752 |
有機-無機ハイブリッド型光触媒による選択的物質変換 | このように本研究では、表面をDETA基で修飾した簡単な構造の光触媒が、溶液中の酸の種類や濃度の変化にともなうDETA基の構造変化により触媒活性を制御する特異的な機能を発現することを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-08J00752 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J00752 |
増殖刺戟下における細胞の変異原・癌原物質に対する染色体切断の発生機序 | 1.増殖刺激を受けている標的細胞では変異原・癌原物質により染色体切断頻度が増加する.増殖刺激及び抑制がある場合には染色体間分布はそれほど変動しないが染色体内分布では切断部位の分布はpeakの出現が増殖刺激がある場合にはより強調され,増殖抑制がある場合にはpeakの出現は明らかではない.染色体内分布では, No.1染色体では動原体から相対距離で40%の部位に, No.2染色体では30%, 55%, 80%の部位に切断が頻発した.2.細胞増殖刺激があるとクロマチッド交換は著明に上昇し,増殖抑制があると交換頻度は減少した.姉妹クロマチッド交換の染色体間分布では変わらずNo.1.2染色体にいずれも高頻度であった.クロマチッド交換部位の染色体内分布は, DMBA,NMUともに類似し, No.1染色体では動原体からの相対距離で40%の部位に, No.2染色体では30%, 55%, 80%の部位に交換が頻発するが,細胞増殖刺激があるとクロマチッド交換部位の染色体内分布は,やはり同部位にクロマチッド交換が頻発した.3.染色体切断と姉妹染色分体交換は増殖ないし抑制刺激により同様の変化を示す事が明らかとなり,関連した現象である事が推察される.4.これは増殖中の細胞で休止状態ではヒストンないし非ヒストン蛋白で防備されているDNAが無防備の状態になっている可能性を示唆している.5.白血病の発生の頻度では男性ホルモン(testosterone)存在の有無が白血病発生に大きく関与している.即ち, testosteroneの過剰な存在下では白血病発生は著明に低下する.これに対し女性ホルモン(esterogen)の存在の有無は白血病に大きな影響を示さなかった.1.増殖刺激を受けている標的細胞では変異原・癌原物質により染色体切断頻度が増加する.増殖刺激及び抑制がある場合には染色体間分布はそれほど変動しないが染色体内分布では切断部位の分布はpeakの出現が増殖刺激がある場合にはより強調され,増殖抑制がある場合にはpeakの出現は明らかではない.染色体内分布では, No.1染色体では動原体から相対距離で40%の部位に, No.2染色体では30%, 55%, 80%の部位に切断が頻発した.2.細胞増殖刺激があるとクロマチッド交換は著明に上昇し,増殖抑制があると交換頻度は減少した.姉妹クロマチッド交換の染色体間分布では変わらずNo.1.2染色体にいずれも高頻度であった.クロマチッド交換部位の染色体内分布は, DMBA,NMUともに類似し, No.1染色体では動原体からの相対距離で40%の部位に, No.2染色体では30%, 55%, 80%の部位に交換が頻発するが,細胞増殖刺激があるとクロマチッド交換部位の染色体内分布は,やはり同部位にクロマチッド交換が頻発した.3.染色体切断と姉妹染色分体交換は増殖ないし抑制刺激により同様の変化を示す事が明らかとなり,関連した現象である事が推察される.4.これは増殖中の細胞で休止状態ではヒストンないし非ヒストン蛋白で防備されているDNAが無防備の状態になっている可能性を示唆している.5.白血病の発生の頻度では男性ホルモン(testosterone)存在の有無が白血病発生に大きく関与している.即ち, testosteroneの過剰な存在下では白血病発生は著明に低下する.これに対し女性ホルモン(esterogen)の存在の有無は白血病に大きな影響を示さなかった.【I】.増殖刺戟下の変異原・癌原物質投与後の染色体切断効果:正常ラットにDMBAを投与した時は、骨髄細胞において投与後3時間より染色体切断頻度は増加しはじめ、18時間で60%と最高に達し、その後切断頻度は下降し72時間で対照群まで下降した。投与6時間の時点で種々の刺戟下での切断頻度を比べると対照群は27.6%、貧血ラットに投与した場合は45.3%と切断頻度は著明に上昇した。逆に多血症ラットでは切断頻度は17.3%と減少した。多血症ラットでもエリトロポイエチンを6unit前投与すると切断頻度31.5%と再び上昇した。DMBA誘発ラット白血病の頻度がエリトロポイエチン投与により上昇することが知られているが、これは染色体切断頻度の変化とよく一致する。NMUをラットに投与した場合では、切断頻度は1時間目から10.0%と上昇しはじめ3時間で最高に達する。貧血及び多血の同様の処置によって、この頻度はDMBAの場合と同じく変化した。構造の異なる変異原・癌原物質でも増殖刺戟かの作用は同一であった。更に、増殖刺戟の存否が標的細胞における染色体切断の増減に直接的に影響することは明らかである。【II】.増殖刺戟下での姉妹染色分体交換の変動:ラット線維芽細胞、肝細胞、骨髄細胞を用い、それぞれ線維芽細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、エリトロポイエチン存在下で変異原・癌原物質を投与し、標的細胞の染色体に及ぼす作用について姉妹クロマチッド交換の発生頻度、分布部位を検索している。現在、その分析を急いでおり、実験結果をinvivoの系と比較検討する予定である。【III】.その他:男性ホルモンなどの蛋白同化ホルモンもまた細胞・組織の増殖にかかわっているが、テストステロンおよびエステロゲンのDMBA誘発ラット白血病の発生率に及ぼす影響を観察した。この実験では、テストステロン投与により白血病発生頻度は著明に低下した。(71.6%→31.3%)。 | KAKENHI-PROJECT-61570176 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61570176 |
水温(-1℃)における長時間心保存の効果 | 我々は0°C以下の心筋未凍結温度領域である水温(-1°C)における長時間心保存効果を実験的に検討した.1.氷温保存における心機能の評価;A群=4°C保存群,B群=氷温保存群(各群n=6)の2群間で6時間保存後の心機能の回復律をラット摘出灌流心を用いて比較した.大動脈流量回復率(A群53.1±16.6%,B群78.8±13.5%),心拍出量回復率(A群60.9±13.1%,B群77.1±11.4%),大動脈収縮期圧回復率(A群79.4±10.9%,B群100.9±8.1%)においてB群はA群より有意(p<0.05)に高値を示した.冠灌流量回復率(A群80.0±21.9%,B群73.8±9.7%),心拍数回復率(A群98.7±17.1%,B群101.7±8.2%)には有意差を認めなかった.2.氷温保存における心筋代謝の評価;心筋内高エネルギーリン酸化合物を6時間保存後と再灌流70分後に,Luciferin-Luciferase法を用いて測定した.6時間保存後におけるATP(A群5.6±1.9μg/mg protein,B群13.0±2.0)Total adeninenucleotides(A群13.2±4.4μg/mg protein,B群23.1±1.7)においてB群はA群よりも有意(p<0.01)に高値を示した.しかし,ADP,AMP,creatinephosphateでは有意差がみられなかった.また再灌流70分後の心筋内高エネルギーリン酸化合物において両群間に差は認められなかった.再灌流70分後の心筋水分含有率はB群(82.0±0.9%)がA群(84.3±1.8%)よりも有意(p<0.05)に低値を示した.これらの結果から本実験において,氷温(-1°C)保存は4°C保存よりも良好な心保存効果のあることが示唆された.さらにマウス培養心筋細胞を用いた実験を現在進めており,倒立型システム顕微鏡で形態観察や収縮機能の測定を行っているところである.我々は0°C以下の心筋未凍結温度領域である水温(-1°C)における長時間心保存効果を実験的に検討した.1.氷温保存における心機能の評価;A群=4°C保存群,B群=氷温保存群(各群n=6)の2群間で6時間保存後の心機能の回復律をラット摘出灌流心を用いて比較した.大動脈流量回復率(A群53.1±16.6%,B群78.8±13.5%),心拍出量回復率(A群60.9±13.1%,B群77.1±11.4%),大動脈収縮期圧回復率(A群79.4±10.9%,B群100.9±8.1%)においてB群はA群より有意(p<0.05)に高値を示した.冠灌流量回復率(A群80.0±21.9%,B群73.8±9.7%),心拍数回復率(A群98.7±17.1%,B群101.7±8.2%)には有意差を認めなかった.2.氷温保存における心筋代謝の評価;心筋内高エネルギーリン酸化合物を6時間保存後と再灌流70分後に,Luciferin-Luciferase法を用いて測定した.6時間保存後におけるATP(A群5.6±1.9μg/mg protein,B群13.0±2.0)Total adeninenucleotides(A群13.2±4.4μg/mg protein,B群23.1±1.7)においてB群はA群よりも有意(p<0.01)に高値を示した.しかし,ADP,AMP,creatinephosphateでは有意差がみられなかった.また再灌流70分後の心筋内高エネルギーリン酸化合物において両群間に差は認められなかった.再灌流70分後の心筋水分含有率はB群(82.0±0.9%)がA群(84.3±1.8%)よりも有意(p<0.05)に低値を示した.これらの結果から本実験において,氷温(-1°C)保存は4°C保存よりも良好な心保存効果のあることが示唆された.さらにマウス培養心筋細胞を用いた実験を現在進めており,倒立型システム顕微鏡で形態観察や収縮機能の測定を行っているところである. | KAKENHI-PROJECT-06671356 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06671356 |
界面液体のFM-AFM計測:固液界面における構造接続のメカニズム解明 | 液体中で10 pNオーダーの微弱力を検出しうる原子間力顕微鏡を利用して、固体に接する液体の構造(密度分布)を分子スケールの位置分解能で断面計測する研究を展開した。グラファイト・カルサイト(炭酸カルシウム鉱物)・有機化合物結晶などに接する液体の断面構造を計測した結果を報告する。さらに、統計力学的な考察と分子動力学シミュレーションの結果をあわせて、原子間力顕微鏡による計測結果をギブズ自由エネルギー分布をもとに解釈する方法論を提案した。本研究では、固液界面に存在する「構造化した界面液体」の断面構造(界面垂直な平面にそった密度分布)を周波数変調方式の原子間力顕微鏡(FM-AFM)を使って計測する。固体表面が界面液体とどのように構造接続するかを実験によって明らかにすることが目的である。固体と液体の化学組成と分子構造という構造要素(サイズ0.1-1 nm)が、界面液体層の大域構造(サイズ1-10 nm)を規制するメカニズムを分子論的に解明して、複雑系の理解と制御を指向する新世代のサイエンスとテクノロジーにとって意義あるコンセプトを提案したい。2013年度の研究実績は(1)炭酸カルシウム結晶と水またはアルコール界面、および(2)サリチル酸結晶と有機溶媒界面を対象として、固液界面の構造接続をFM-AFMを用いて観測したことである。以下に各々の概要を述べる。(1)炭酸カルシウムはセメント・真珠・骨などの主要成分であり人間生活に密着した無機化合物である。常温常圧で最も安定な結晶であるカルサイト(方解石)の(104)結晶面と、水および2-プロパノールの界面をFM-AFMで計測した。主な実験は2012年度に完了しており、2013年度には測定結果の解釈と学術論文発表をおこなった。カルサイトに接する液体水がこれまで報告された界面水のなかで最も明瞭な液体構造を形成することを指摘して、その原因がカルサイトの高いイオン性、または結晶表面の著しい凹凸構造にあることを提案した。(2)固体表面の凹凸が界面液体の構造化を促進することを証明するために、著しい凹凸を呈するがイオン性をもたないサリチル酸結晶と有機溶媒(デカン・ヘキサデカン・フェニルオクタン・OMCTS)の界面をFM-AFMで計測した。予想外に強い界面液体の構造化を観測したので、構造化要因を明らかにすべくAdam Foster教授(海外共同研究者)らと分子動力学シミュレーションによる共同研究を開始した。本研究の目的は、固液界面に存在する「構造化した界面液体」の断面構造(界面垂直な平面にそった密度分布)を周波数変調方式の原子間力顕微鏡(FM-AFM)を使って計測することである。(1)固体表面が界面液体とどのように構造接続するか、および(2)界面液体がバルク液体とどのように構造接続するかを実験によって明らかにすることが目的である。同時に、計測に用いるAFM探針が計測結果におよぼす影響を統計力学にもとづくシミュレーションによって評価する。固体と液体の化学組成と分子構造という構造要素(サイズ0.1-1 nm)が、界面液体層の大域構造(サイズ1-10 nm)を規制するメカニズムを分子論的に解明して、複雑系の理解と制御を指向する新世代のサイエンスとテクノロジーにとって意義あるコンセプトを提案することをめざしている。第二年次となる平成26年度には(1)結晶表面にナノメーターサイズの「みぞ」をもつサリチル酸結晶に接する有機溶媒の断面構造計測をおこなった。さまざまな分子形状(鎖状・球状など)もつ有機溶媒を使って、液体分子形状と固体表面の「みぞ」とのマッチングが界面液体の構造におよぼす影響を評価した。また(2)炭酸カルシウム結晶(方解石)および粘土鉱物の表面構造を水中観察した。これらは天然に広く存在する鉱物であり、表面を構成する原子を水中で顕微鏡観察することは鉱物結晶の成長過程を理解する基礎となる。さらに炭酸カルシウムと粘土はともにイオン性の結晶であるが、前者の表面は原子サイズで凹凸をもち、後者の表面は平坦である。表面に存在する原子分子サイズの凹凸が接触する液体の構造におよぼす影響を評価する対象として次年度に利用することを想定している。固体と液体の接触面で、固体内に侵入できない液体分子が層状に整列する現象は「界面液体の構造化」として知られている(図1左)。構造化した界面液体が電荷移動・物質移動・化学反応・摩擦・伝熱などの現象に深く関係する可能性は1960年代から指摘されてきた。しかしながら、両側を凝縮相に挟まれた埋没界面に存在し、しかも軽元素からなる流体である界面液体の構造を実験的に計測することは簡単ではない。代表者は原子間力顕微鏡で固液界面を走査し、顕微鏡探針が液体分子から受ける力の強弱分布を計測することで、不均一な界面液体を平均化せずに断面計測する可能性に着目して実験方法論の整備を進めてきた。本研究では固液界面に存在する「構造化した界面液体」の断面構造(界面垂直な平面にそった密度分布)を周波数変調方式の原子間力顕微鏡(FM-AFM)を使って計測した。(1)固体表面が界面液体とどのように構造接続するか(2)界面液体がバルク液体とどのように構造接続するかを実験によって明らかにすることが目的である。同時に、計測に用いるAFM探針が計測結果におよぼす影響を統計力学的な考察と分子動力学シミュレーションを併用して評価する。 | KAKENHI-PROJECT-25286009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25286009 |
界面液体のFM-AFM計測:固液界面における構造接続のメカニズム解明 | 固体と液体の化学組成と分子構造という構造要素(サイズ0.1-1 nm)が、界面液体層の大域構造(サイズ1-10 nm)を規制するメカニズムを分子論的に解明して、複雑系の理解と制御を指向する新世代のサイエンスとテクノロジーにとって意義あるコンセプトを提案することを目的とした。最終年度であるH27年度は(1)FM-AFMに中性子反射率解析を組み合わせて潤滑界面の構造組成分析の方法論を開拓し(2)統計力学的な考察によって、原子間力顕微鏡探針が存在しない場合の界面液体構造を、原子間力顕微鏡による計測結果をもとに決定する手法を考案して有効性を実証した。液体中で10 pNオーダーの微弱力を検出しうる原子間力顕微鏡を利用して、固体に接する液体の構造(密度分布)を分子スケールの位置分解能で断面計測する研究を展開した。グラファイト・カルサイト(炭酸カルシウム鉱物)・有機化合物結晶などに接する液体の断面構造を計測した結果を報告する。さらに、統計力学的な考察と分子動力学シミュレーションの結果をあわせて、原子間力顕微鏡による計測結果をギブズ自由エネルギー分布をもとに解釈する方法論を提案した。3年を要する研究計画の第二年次として、固体表面の物理的形状(凹凸)が接触する液体の構造に伝搬する現象に焦点をあてて研究を展開した。研究のまとめとなる最終年次にむけて順調に進展している。27年度が最終年度であるため、記入しない。界面分子科学これまでの研究では単一組成の液体を対象をしてきた。最終年次となる平成27年度には、二種類の有機溶媒を混合した液体を対象として研究を進める。界面液体の組成(二種溶媒の混合比)はバルク溶液と異なる可能性があり、FM-AFMだけではその組成を決定できないため、J-PARKにおける中性子反射率測定を併用して研究を進める。さらに統計力学にもとづいて界面液体構造の形成要因を明らかにする研究も進展させる。(1)カルサイト結晶については前年の計測結果を解釈することで予定どおりの成果をあげることができた。(2)サリチル酸結晶と有機溶媒の界面については、予想外に明瞭な界面液体構造化を観測し、海外共同研究者との共同研究を予定より早期に実施することとなった。27年度が最終年度であるため、記入しない。博士研究員人件費が当初予定より67,000円あまり少なかったために残額を平成27年度に繰越した。27年度が最終年度であるため、記入しない。(1)カルサイト結晶と水溶液界面については当該分野に経験ある博士研究員を2014年度に雇用して、バイオミネラリゼーションのメカニズム解明を目指した研究を展開する。(2)サリチル酸結晶については分子サイズの異なる有機溶媒を用いた実験を進めると共に、海外共同研究者とのシミュレーション研究によって、固体表面の凹凸が界面液体構造に転写するメカニズムを解明する。平成27年度の博士研究員人件費に充てる。27年度が最終年度であるため、記入しない。H25年度交付申請書に記載した支出予定のうちアクティブ除振台一台を購入する必要なくなった。研究の進捗にともなってH26年度に博士研究員一名を雇用する必要が生じたため、H25年度残高を26年度に繰越して、26年度配分と合算して、博士研究員人件費に充てることとしたため。学術推進員(博士研究員)一名の人件費としてH26年度中に全額を使用する。 | KAKENHI-PROJECT-25286009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25286009 |
古人骨の化学分析から見た水田稲作農耕による食生活・生業形態の変化 | 今年度は、本格的な人骨試料の分析に先立ち、大学・博物館等に保管されているに人骨試料の調査・収集した。また大量の資料を迅速かつ高精度に測定するために、元素分析計と安定同位体比質量分析計の連結を実施した。資料収集に関しては、東京大学総合研究博物館所蔵人骨資料より弥生時代に属する6遺跡22個体を採取し、これらを用いて前処理および分析方法の検討を実施した。また、九州大学社会比較社会文化研究科、東北大学医学部、札幌医科大学医学部収蔵の弥生時代人骨に関して保存状態等を調査し、管理責任者に来年度以降のサンプリング計画を申請している。先史時代人類集団によって消費されていたと考えられる食糧資源に関しては現生動植物試料の最終と予備的分析を開始した。食糧資源に関しては並行して文献データの収集・解析を実施した。現在ところ、肉類・魚類・穀物・堅果類・イモ類等に関してSr/Ca比、Ba/Ca比、Zn/Ca比による分類を実施した。その結果、肉類や穀物はZn/Ca比で、また一部の堅果類ではBa/Ca比で特徴があることが明らかになった。今後、生育環境の相違等による元素含有量への影響を引き続き検討する必要がある。来年度の本格的な人骨試料な分析にむけ、元素分析計と安定同位体比質量分析計の連動を実施した。炭素ではδ^<13>Cでは±0.5‰、δ^<15>Nでは±1‰程度の再現性を実現しているが、より高精度化するために確度改善に調整が必要である。これによって安定同位体分析における分析時間の大幅な短縮と試料の微量化が期待される。今年度は、本格的な人骨試料の分析に先立ち、大学・博物館等に保管されているに人骨試料の調査・収集した。また大量の資料を迅速かつ高精度に測定するために、元素分析計と安定同位体比質量分析計の連結を実施した。資料収集に関しては、東京大学総合研究博物館所蔵人骨資料より弥生時代に属する6遺跡22個体を採取し、これらを用いて前処理および分析方法の検討を実施した。また、九州大学社会比較社会文化研究科、東北大学医学部、札幌医科大学医学部収蔵の弥生時代人骨に関して保存状態等を調査し、管理責任者に来年度以降のサンプリング計画を申請している。先史時代人類集団によって消費されていたと考えられる食糧資源に関しては現生動植物試料の最終と予備的分析を開始した。食糧資源に関しては並行して文献データの収集・解析を実施した。現在ところ、肉類・魚類・穀物・堅果類・イモ類等に関してSr/Ca比、Ba/Ca比、Zn/Ca比による分類を実施した。その結果、肉類や穀物はZn/Ca比で、また一部の堅果類ではBa/Ca比で特徴があることが明らかになった。今後、生育環境の相違等による元素含有量への影響を引き続き検討する必要がある。来年度の本格的な人骨試料な分析にむけ、元素分析計と安定同位体比質量分析計の連動を実施した。炭素ではδ^<13>Cでは±0.5‰、δ^<15>Nでは±1‰程度の再現性を実現しているが、より高精度化するために確度改善に調整が必要である。これによって安定同位体分析における分析時間の大幅な短縮と試料の微量化が期待される。 | KAKENHI-PROJECT-09208217 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09208217 |
メラノーマおよびスピッツ母斑における染色体異常の検討 | スピッツ母斑は臨床的にも組織学的にもメラノーマと鑑別が困難な良性の病変である。現在のところ、鑑別には皮膚病理組織がもっとも有用であるが、鑑別不能な症例も少なくない。典型的な病理組織像を呈するスピッツ母斑およびメラノーマの組織切片よりマイクロダイセクション法によりメラノサイトをそれぞれ取り出し、comparative genomic hybridization (CGH)法にて染色体の欠失あるいは増幅を検討予定であった。この方法は両者の鑑別の手段の一つになる可能性があると考え、研究を開始した。研究成果ホルマリン固定、パラフィン切片組織から抽出されたDNAは細かく切断されており、CGH法はかなり困難との報告がある。まず、日本人女性の末端黒子型悪性黒色腫より樹立された細胞株MMG1を用いCGH法の技術の確立を試みた(対照には成人正常女性末梢血)。2.ラベリング時間:プローブのサイズに関連するため種々の時間で検討を試みたが、細胞株MMG1では1時間30分が最適時間である。(対照末梢血は3時間が最適である。)3.エタノール沈澱:種々の時間を検討したが1時間-80°Cのフリーザーに置くことで問題はない。4.ハイブリダイゼーション:湿潤箱で37°C、72時間インキュベーションで問題はない。今後の研究の展開CGH法の技術は確立できたが、これはあくまでも培養腫瘍細胞より得られたDNAを用いた場合である。ホルマリン固定、パラフィン切片組織においてはCGH法に適する十分な量と十分に長いDNAの抽出ができるか問題となる。この問題を解決できれば、目的とした病理組織切片よりのCGH法が可能となる。スピッツ母斑は臨床的にも組織学的にもメラノーマと鑑別が困難な良性の病変である。現在のところ、鑑別には皮膚病理組織がもっとも有用であるが、優れた皮膚病理組織医でも鑑別不能な症例も少なくない。典型的な病理組織像を呈するスピッツ母斑およびメラノーマの組織切片よりマイクロダイセクション法によりメラノサイトをそれぞれ取り出し、comparaive genomic hybridization(CGH)法にて染色体の欠失あるいは増幅を検討予定である。Bastian BCらの報告ではメラノーマ細胞では9p、10q、6q、8pの欠失、および7、8、6pなどの増幅を認めるが、スピッツ母斑では17例中わずか3例に11pの増幅を認めるのみでこの2つの疾患において、明らかに染色体変異のパターンが異なっていた。この方法は鑑別の手段の一つになりうる可能性がある。平成13年11月に科学研究費の補助がきまり、信州大学医学部附属病院に保存してある病理組織学的に明らかなスピッツ母斑を及びメラノーマの組織を選びだしている。組織切片の作製に必要な滑走式ミクロトームは既に納入している。またマイクロダイセクションシステムは当院中央検査部のものを使用し、CGH法でスピッツ母斑およびメラノーマの染色体変異を検討予定である。さらに病理組織学的に鑑別困難であった数症例にこの方法による検討も加える予定である。スピッツ母斑は臨床的にも組織学的にもメラノーマと鑑別が困難な良性の病変である。現在のところ、鑑別には皮膚病理組織がもっとも有用であるが、鑑別不能な症例も少なくない。典型的な病理組織像を呈するスピッツ母斑およびメラノーマの組織切片よりマイクロダイセクション法によりメラノサイトをそれぞれ取り出し、comparative genomic hybridization (CGH)法にて染色体の欠失あるいは増幅を検討予定であった。この方法は両者の鑑別の手段の一つになる可能性があると考え、研究を開始した。研究成果ホルマリン固定、パラフィン切片組織から抽出されたDNAは細かく切断されており、CGH法はかなり困難との報告がある。まず、日本人女性の末端黒子型悪性黒色腫より樹立された細胞株MMG1を用いCGH法の技術の確立を試みた(対照には成人正常女性末梢血)。2.ラベリング時間:プローブのサイズに関連するため種々の時間で検討を試みたが、細胞株MMG1では1時間30分が最適時間である。(対照末梢血は3時間が最適である。)3.エタノール沈澱:種々の時間を検討したが1時間-80°Cのフリーザーに置くことで問題はない。4.ハイブリダイゼーション:湿潤箱で37°C、72時間インキュベーションで問題はない。今後の研究の展開CGH法の技術は確立できたが、これはあくまでも培養腫瘍細胞より得られたDNAを用いた場合である。ホルマリン固定、パラフィン切片組織においてはCGH法に適する十分な量と十分に長いDNAの抽出ができるか問題となる。この問題を解決できれば、目的とした病理組織切片よりのCGH法が可能となる。スピッツ母斑は臨床的にも組織学的にもメラノーマと鑑別が困難な良性の病変である現在のところ、鑑別には皮膚病理組織がもっとも有用であるが、鑑別不能な症例も少なくない。典型的な病理組織像を呈するスピッツ母斑およびメラノーマの組織切片よりマイクロダイセクション法によりメラノサイトをそれぞれ取り出し、comparative genomic hybridization (CGH)法にて染色体の欠失あるいは増幅を検討予定であったこの方法は両者の鑑別の手段の一つになる可能性があると考え、研究を開始した。研究成果ホルマリン固定、パラフィン切片組織から抽出されたDNAは細かく切断されており、CGH法はかなり困難との報告がある。 | KAKENHI-PROJECT-13670875 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13670875 |
メラノーマおよびスピッツ母斑における染色体異常の検討 | まず、日本人女性の末端黒子型悪性黒色腫より樹立された細胞株MMG1を用いCGH法の技術の確立を試みた(対照には成人正常女性末梢血)。2.ラベリング時間:プローブのサイズに関連するため種々の時間で検討を試みたが、細胞株MMG1では1時間30分が最適時間である。(対照末梢血は3時間が最適である。)3.エタノール沈澱:種々の時間を検討したが1時間-80°Cのフリーザーに置くことで問題はない。4.ハイブリダイゼーション:湿潤箱で37°C、72時間インキュベーションで問題はない。今後の研究の展開CGH法の技術は確立できたが、これはあくまでも培養腫瘍細胞より得られたDNAを用いた場合である。ホルマリン固定、パラフィン切片組織においてはCGH法に適する十分な量と十分に長いDNAの抽出ができるか問題となる。この問題を解決できれば、目的とした病理組織切片よりのCGH法が可能となる | KAKENHI-PROJECT-13670875 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13670875 |
太陽光エネルギーを利用する二酸化炭素からメタノールへの光触媒変換反応系の構築 | 1.Ru(II)-2,2'-ビピリジル錯体/チタニア触媒の調製(1)コロイダルチタニア(100nm)をRu(II)-トリス(2,2'-ビピリジル)錯体(Ru(II)-bpy)を部分加水分解したポリ(2-メチル-2-オキサゾリン)へグラフトしたポリマー錯体で表面修飾した複合チタニア粒子(1)の調製に成功した。この調製において、最大3.52x10^<-4> mol/g(14.2Ru-atom/nm^2)の錯体の担持が可能であった。(2)水溶液中でより安定なRu(II)-bpy錯体/TiO_2触媒を調製するために、まず粒径20nmのコロイダルシリカから2段修飾法によってRu(II)-bpy錯体/シリカ(20nm)を調製し、次にこの粒子とコロイダルチタニアの複合化によっても粒径4070nm程度の複合チタニア粒子(2)を調製した。2.可視光照射下での光触媒能の評価(1)紫外線をカットしたキセノンランプ光の照射下、水溶液中での粒子1の光触媒活性をメチルビオロゲン(MV^<2+>)への電子移動によって評価した結果、最大量子収率1.5%が得られた。また、この光触媒反応の速度論的解析から、Ru(II)-bpy錯体で光励起された電子のMV^<2+>への移動は、チタニア粒子表面を経由する経路とRu(II)-bpy錯体からMV^<2+>へ直接移動する経路で起こっており、直接経路はMV^<2+>の拡散律速であることおよび逆電子移動の割合が多いことなどが明らかになった。さらに、MV^<2+>濃度が低くなると、直接電子移動よりもチタニア表面を経由する電子移動の割合が70%程度まで増大することが観測された。(2)粒子2は水溶液中で極めて安定な光触媒活性を示した。この活性はチタニア含有量が増加とともに増大したが、粒子1のそれの10%程度であった。今後、この粒子2の触媒系が実用的であるので、この系の量子収率向上に向けての改良が課題である。1.Ru(II)-2,2'-ビピリジル錯体/チタニア触媒の調製(1)コロイダルチタニア(100nm)をRu(II)-トリス(2,2'-ビピリジル)錯体(Ru(II)-bpy)を部分加水分解したポリ(2-メチル-2-オキサゾリン)へグラフトしたポリマー錯体で表面修飾した複合チタニア粒子(1)の調製に成功した。この調製において、最大3.52x10^<-4> mol/g(14.2Ru-atom/nm^2)の錯体の担持が可能であった。(2)水溶液中でより安定なRu(II)-bpy錯体/TiO_2触媒を調製するために、まず粒径20nmのコロイダルシリカから2段修飾法によってRu(II)-bpy錯体/シリカ(20nm)を調製し、次にこの粒子とコロイダルチタニアの複合化によっても粒径4070nm程度の複合チタニア粒子(2)を調製した。2.可視光照射下での光触媒能の評価(1)紫外線をカットしたキセノンランプ光の照射下、水溶液中での粒子1の光触媒活性をメチルビオロゲン(MV^<2+>)への電子移動によって評価した結果、最大量子収率1.5%が得られた。また、この光触媒反応の速度論的解析から、Ru(II)-bpy錯体で光励起された電子のMV^<2+>への移動は、チタニア粒子表面を経由する経路とRu(II)-bpy錯体からMV^<2+>へ直接移動する経路で起こっており、直接経路はMV^<2+>の拡散律速であることおよび逆電子移動の割合が多いことなどが明らかになった。さらに、MV^<2+>濃度が低くなると、直接電子移動よりもチタニア表面を経由する電子移動の割合が70%程度まで増大することが観測された。(2)粒子2は水溶液中で極めて安定な光触媒活性を示した。この活性はチタニア含有量が増加とともに増大したが、粒子1のそれの10%程度であった。今後、この粒子2の触媒系が実用的であるので、この系の量子収率向上に向けての改良が課題である。1.色素/チタン触媒(明触媒)の調製(1)コロイダルチタニア(100nm)をRu(II)-トリス(2,2'-ビピリジル)錯体(Ru(II)-bpy)を部分加水分解したポリ(2-メチルオキサゾリン)ヘグラフトしたポリマー錯体で表面修飾した複合チタニア粒子(1)の調製に成功した。(2)水溶液中でより安定なRu(II)-bpy錯体/TiO_2触媒を調製するために、まず粒径20nmのコロイダルシリカから2段修飾法によってRu(II)-bpy錯体/シリカ(20nm)を調製し、次にこの粒子とコロイダルチタニアの複合化によっても粒径40nm程度の複合チタニア粒子(2)を調製した。2.可視光照射下での光触媒能の評価 | KAKENHI-PROJECT-12650837 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12650837 |
太陽光エネルギーを利用する二酸化炭素からメタノールへの光触媒変換反応系の構築 | (1)紫外線をカットしたキセノンランプ光の照射下、水溶液中での粒子1の光触媒活性をメチルビオローゲンへの電子移動によって評価した結果、最大量子収率1.5%が得られた。また、この量子収率はRu(II)-bpy錯体のグラフト量やポリマーの分子量に依存することが明になった。さらに、この触媒系では、Ru(II)-bpy錯体からチタニアへの電子移動が効率よく起こっており、これらの触媒系が二酸化炭素のメタノールへの光変換に有望であることがわかった。(2)粒子2の光触媒活性は、チタニア含有量が増加とともに増大したが、粒子1のそれの10%程度となった。今後、この粒子2の触媒系が実用的であるので、この系の量子収率向上に向けての改良が課題である。(1)コロイダルチタニア(100nm)をRu(II)-トリス(2,2'-ビピリジル)錯体(Ru(II)-bpy)を部分加水分解したポリ(2-メチルオキサゾリン)ヘグラフトしたポリマー錯体で表面修飾した複合チタニア粒子(1)の調製において、最大3.52x10^<-4>mol/g(14.2Ru-atom/mn^2)の錯体の担持が可能であった。(2)紫外線をカットしたキセノンランプ光の照射下、水溶液中での粒子1の光触媒活性をメチルビオロゲン(MV^<2+>)への電子移動によって評価した結果、最大量子収率1.5%が得られた。また、この光触媒反応の速度論的解析から、Ru(II)-bpy錯体で光励起された電子のMV^<2+>への移動は、チタニア粒子表面を経由する経路とRu(II)-bpy錯体からMV^<2+>へ直接移動する経路で起こっており、直接経路はMV^<2+>の拡散律速であることおよび逆電子移動の割合が多いことなどが明らかになった。さらに、MV^<2+>濃度が低くなると、直接電子移動よりもチタニア表面を経由する電子移動の割合が70%程度まで増大することが観測された。(3)このチタニア複合触媒1の光触媒反応において、励起電子のアクセプターにビロゲンオリゴマー(VO)を用いて実験を行ったところ、このVOはMV^<2+>よりも高い光触媒効率を与えた。また、この反応系での粒子1の光触媒活性はVOの分子量とともに増大した。このとき、粒子1からVO1分子当たり最大2個の電子移動が観測され、二酸化炭素の光電子還元反応によるメタノールの生成が可能であることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-12650837 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12650837 |
パプア諸語の比較言語学的研究-南ブーゲンヴィル諸語と東シンブー諸語を対象として | 本研究では、パプア諸語のうち、南ブーゲンヴィル諸語と東シンブー諸語を対象に、それぞれのグループに属する言語の基礎資料を収集し、比較言語学的手法を用いて分析、その下位分類と祖語の再構を目指した。その結果、南ブーゲンヴィル諸語に関しては、6言語のうち4言語の、また東シンブー諸語については、所属する言語すべての、下位分類に関する仮説が建てられる段階となった。本研究は、パプア諸語のうち、南ブーゲンヴィル諸語と東シンブー諸語を対象とした、比較言語学的研究を目的とする。それぞれの言語グループを専門とする大西正幸(研究代表者)と千田俊太郎(研究分担者)が、各言語グループの主要な言語や方言の語彙・形態データを、現地調査を通して収集し記述するとともに、稲垣和也(連携研究者)と寺村裕史(連携研究者)の協力のもと、データベースや言語地図を作成する。そしてそのデータの比較言語学的分析を行ない、それらの言語/方言の下位分類と、祖語の再構を目指す。また、研究の過程で、互いのデータ分析を検討し合いながら、パプア諸語の比較言語学的分析に共通する重要課題の、理論的・実践的解決を模索する。長期的には、両研究者は、本研究の成果をもとに、ブーゲンヴィル諸語とシンブー諸語のすべての言語と方言の通時的関係を明らかにすることを目指している。本研究では、パプア諸語のうち、南ブーゲンヴィル諸語と東シンブー諸語を対象に、それぞれのグループに属する言語の基礎資料を収集し、比較言語学的手法を用いて分析、その下位分類と祖語の再構を目指した。その結果、南ブーゲンヴィル諸語に関しては、6言語のうち4言語の、また東シンブー諸語については、所属する言語すべての、下位分類に関する仮説が建てられる段階となった。本年度は、まず6月に、千田がシドニー大学でのパプア諸語に関する国際学会に出席、シンブー諸語の歴史的再構築に関する発表を行なうとともに、おもなパプア諸語研究者に研究計画を周知し、協力関係を確立した。続いて8-9月にかけて、大西および研究協力者のKemelfieldがブーゲンヴィルを中心に、また千田がシンブーを中心に、約1ヶ月の現地調査を行なった。さらに千田は、若手研究(B)(20720107)の予算で、3月に補足調査を行なった。主要な業績としては、パプア諸語比較言語学的研究の現在の到達点を示すPapuan Pasts所収の諸論文の英文レヴューを大西/千田の共同で執筆したこと、千田がドム語の意味論をめぐる論文を大西編集の論集に掲載したこと、等があげられる。大西/Kemelfieldの現地調査では、南ブーゲンヴィル4言語のうち、3言語の5主要方言の基礎語彙とテキストをある程度収集することができた。政治的に不安定であった南ブーゲンヴィル南部は避け、その他の地域でデータを集めた。また次年度の本格的な調査に向けて、政府関係者や現地の協力者からの情報集めと連絡・調整に時間を費やした。これらはおおむね順調に進んだ。千田は、8-9月の調査では、東シンブー地域全域の方言探査を行い、基礎語彙の収集を行なった。GPSにより地理的情報のデータを得ることも行なった。言語/方言境界の輪郭がかなり明らかになった。(この成果の一部は民博で口頭発表。)さらに、3月の補足調査で、言語データの収集を続けた。言語地図作成の作業は、現地で集めた地図のデジタル化や、言語/方言の地理的分布に関する情報の整理等が、連携協力者寺村の助けを得て徐々に進んでいる。しかし、特にブーゲンヴィルでは、12月のGovernorの選挙の後自治政府の体制が変わったこと、大西/Kemelfieldがまだ研究ヴィザを取得していないこと等から、ホームページによる情報公開を見合わせている。なお、大西と千田が収集したデータの分析とデータベース化の作業は、研究協力者稲垣和也の助けで着実に進んでいる。大西(研究代表者)、千田(研究分担者)、稲垣和也(連携研究者)は、4月から7月にかけて、前年度得たデータの整理分析を続けながら、8月のブーゲンヴィルおよびシンブーでの現地調査に向けて、寺村(連携研究者)や研究協力者との間で調査計画の詳細の検討を行った。大西は、7月30日から1週間、オーストラリア在住の新たな研究協力者Elsie Makino(ナーシオイ語コンガラ方言話者)との語彙調査を行なった。その後、ポートモレスビーにて、オーストラリア在の研究協力者Therese Minitong Kemelfieldと稲垣と合流。三名で8月10日にブカ島に行き、ブーゲンヴィル南部の情勢に関する情報を収集。そのあと、全員でブーゲンヴィル南部に向かう。千田が8月17日に合流。大西はアラワ在住のWilliam Takakuの協力を得て、その周辺の人々からナーシオイ語データを収集。また、今後の共同研究の打ち合わせを行なう。他の3名もそれぞれフィールドに入り、稲垣はナゴヴィシ・シベ語、Kemelfieldはモトゥナ語、千田はエイヴォ語の調査を行なった。帰途、ブカ島にてナーシオイ語研究者のConrad Hurdに会い、彼の辞書の編集/作成に協力することを決める。(その辞書原稿を、稲垣が帰国後データベース化した。)ポートモレスビーでは、稲垣はナゴヴィシ・シベ語、大西とKemelfieldはバイツィ語話者との間で調査を行なった。千田は8月27日から東シンブー諸語の現地調査に入り、9月19日まで調査を継続した。 | KAKENHI-PROJECT-20320065 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20320065 |
パプア諸語の比較言語学的研究-南ブーゲンヴィル諸語と東シンブー諸語を対象として | 帰国後すぐ、大西・千田・稲垣・寺村の四者で現地調査報告を行い、収集した言語データの整理分析をはじめた。寺村は、GPSの情報を集約し、言語地図の作成を進めた。稲垣が9月、千田が12月、大西が1月の「記述言語研究会」で、その成果を報告、稲垣と大西はその成果を『地球研記述論集』にまとめた。なお、千田は、22年2-3月に、シンブーにて、1ヶ月間の補足調査を行なった。(なお、千田の調査は、一部、「若手研究」の科研費によっている。)大西(研究代表者)、千田(研究分担者)、稲垣(連携研究者)、寺村(連携研究者)の4名は、4月から7月にかけて、前年度のデータ整理を行ういっぽう、8-9月の南ブーゲンヴィル/シンブーにおける調査計画を検討した。大西は、8月25日から9月8日にかけて、アラワ(ブーゲンヴィル)およびポートモレスビーにおける実地調査で、ナーシオイ語とバイツィ語のデータを収集。また、稲垣は、8月23日から9月1日にかけ、ポートモレスビーでナゴヴィシ語のデータを収集したあと、寺村と合流し、9月3日から9月12日にかけ、南ブーゲンヴィルでナゴヴィシ語地域の詳細な地理情報を収集した。大西は、この実地調査の直後、インドで開催された国際学会Chotro 3に参加し、ブーゲンヴィルの言語状況について発表、世界の少数言語研究者たちと情報交換を行った。ナーシオイ語のテキストデータの分析結果は、『地球研記述論集』に発表した。一方、稲垣・寺村は、得られた地理情報をもとにナゴヴィシ語の詳細な方言分布地図を作成、記述研で口頭発表の後『地球研記述論集』に論文として発表した。千田は、4月と5月に記述研で、また7月には国立国語研で発表を行い、これまでに得られた東シンブー諸語の比較データを整理した後、8月30日から9月21日にかけて、情報が不足していたグミネ地区、シネシネ地区で、集中的にデータ収集を行い、『地球研記述論集』に、サブグルーピングに関する成果を発表。なお、千田は、さらに3月3日から14日にかけても、同地域で補足調査を行った。(なおこれらの実地調査の一部は、「若手研究」の科研費によっている。)大西(研究代表者)、千田(研究分担者)、稲垣(連携研究者)、寺村(連携研究者)の4名は、4月から7月にかけて、前年度のデータ整理を行った。大西は、4-5月、7月、8月、12月-1月の4度にわたり、オーストラリア・アデレード在の研究協力者、テレーズ・ケメルフィールドのもとで、バイツィ語およびモトゥナ語の資料整理を集中的に行った。このうち、8月のアデレード出張は、その続けて2名で南ブーゲンヴィルに行き、最終実地調査を行う予定だったが、その予約直後に科研予算が秋まで凍結されるという通知が来たため、現地調査をキャンセルせざるをえなくなった。稲垣は、これも予算執行の凍結のため、自費で9月10日から24日にかけて、ポートモレスビー、南ブーゲンヴィルでの、短期のナゴヴィシ語実地調査を行った.このように、23年度の後半の最終実地調査が予定通りにできなかったため、南ブーゲンヴィル諸語の比較語彙集のまとめや,予定していた英語論文の執筆が遅れている。24年度中にまとめたい。この他、大西は、インドの北ベンガル大学およびアッサム州での国際セミナーで、危機言語の記録に関するセミナーや講演を行った他、業績にあるような危機言語関係の共著書を刊行した。 | KAKENHI-PROJECT-20320065 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20320065 |
コミュニケーション・プロセスとしての生態人類学:アフリカ熱帯雨林における研究 | 本研究は,モノについての定量的なデータを扱う分野であるという印象を強くしてきた生態人類学においても,実はすぐれてコミュニケーショナルな現象が扱われてきたという視点から,アフリカ熱帯雨林住民の生活を捉え直すことを目的とした。具体的には以下のような事項に関する調査・研究がおこなわれた。人々のおりなす社会的相互行為という側面からは,木村によって農耕民,狩猟採集民の日常的会話・行動の分析が進められた。この成果は「共在感覚」と題する著書として出版されている。研究協力者・大石,島,稲井も,農耕民,狩猟採集民,漁撈民のコミュニケーション状況について調査をおこなった。そこでの議論は単なるメディア研究ではなく,生業活動,文化と密接なかかわりを持ちつつおこなわれている。狩猟採集民の日常的相互行為の根幹に位置するとされてきた「平等主義」と「分配」については,寺嶋によって理論的な,北西によって実際のデータにもとづいた研究がおこなわれ,この成果も著書として出版されている。生業を異にする民族間,あるいは国家と民族の社会・経済的関係をコミュニケーションという視点から明らかにしていく作業は,市川,北西,大石,稲井を中心におこなわれ,豊富な事例データが蓄積されてきている。寺嶋,市川,小松は人々の自然環境についての豊かな知識がどのように獲得され,コミュニケートされているかについて,具体的事例にもとづいた研究をおこなった。現在,生態人類学の研究においては,何らかの形で方法論的なフロンティアを求める必要があることが言われているが,本研究は,そこにコミュニケーションという形のフロンティアを見いだそうという,ひとつの実践的試みであった。ここでは一定の成果を挙げることができたが,今後その成果をもとに,さらなる研究を積み重ねていく必要があると言える。本研究は,モノについての定量的なデータを扱う分野であるという印象を強くしてきた生態人類学においても,実はすぐれてコミュニケーショナルな現象が扱われてきたという視点から,アフリカ熱帯雨林住民の生活を捉え直すことを目的とした。具体的には以下のような事項に関する調査・研究がおこなわれた。人々のおりなす社会的相互行為という側面からは,木村によって農耕民,狩猟採集民の日常的会話・行動の分析が進められた。この成果は「共在感覚」と題する著書として出版されている。研究協力者・大石,島,稲井も,農耕民,狩猟採集民,漁撈民のコミュニケーション状況について調査をおこなった。そこでの議論は単なるメディア研究ではなく,生業活動,文化と密接なかかわりを持ちつつおこなわれている。狩猟採集民の日常的相互行為の根幹に位置するとされてきた「平等主義」と「分配」については,寺嶋によって理論的な,北西によって実際のデータにもとづいた研究がおこなわれ,この成果も著書として出版されている。生業を異にする民族間,あるいは国家と民族の社会・経済的関係をコミュニケーションという視点から明らかにしていく作業は,市川,北西,大石,稲井を中心におこなわれ,豊富な事例データが蓄積されてきている。寺嶋,市川,小松は人々の自然環境についての豊かな知識がどのように獲得され,コミュニケートされているかについて,具体的事例にもとづいた研究をおこなった。現在,生態人類学の研究においては,何らかの形で方法論的なフロンティアを求める必要があることが言われているが,本研究は,そこにコミュニケーションという形のフロンティアを見いだそうという,ひとつの実践的試みであった。ここでは一定の成果を挙げることができたが,今後その成果をもとに,さらなる研究を積み重ねていく必要があると言える。本年度は,研究計画の初年度として,(1)これまでに収集した資料の整理・分析をおこなうことによって今後の展望を図り,(2)研究会を開催して研究テーマに関する討議,研究連絡をおこない,(3)研究協力者として二人の大学院生を派遣し(現地参加・現地離隊),新しい角度からの研究テーマへの切り込みをおこなった。(1)に関しては,アルバイトを雇用して,木村がこれまでに収録し未整理のままであった,現地における会話などの相互行為の画像および録音資料をコンピュータにデジタル形式で保存し,自由に分析できる体制を整えた。また,現地の人々の会話データの転記・翻訳作業を進め,会話の形式的・意味的特徴を明らかにすることを試みた。(2)では,月に一度「コミュニケーションの自然誌」研究会を開催し,人類学・地域研究研究者のみならず,言語学,情報科学,行動科学等の研究者を交えた討議をおこなった。また2003年1月に富山において,ピグミー系狩猟採集民の研究者を集めて研究会を開催した。寺嶋は連合王国において,資料収集,研究連絡をおこなった。(3)では,京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科の佐々木経司をカメルーンに,島隆一をブルキナファソへ派遣した。佐々木は,カメルーン北西部の仮面結社における儀礼的コミュニケーションの予備調査をおこない,島はブルキナファソのサポネ村において,現地の村人たちが設立したNGOによって運営される「コミュニティFM放送」という新しいコミュニケーション形態の発展状況についての調査をおこなった。本年度は研究計画の2年目として,(1)現地調査の続行,(2)研究会の開催,(3)資料の整理,(4)出版活動,などをおこなった。(1)に関しては,木村(研究代表者)が2003年の12月から2004年の1月にかけてカメルーン東南部のバカ・ピグミーのフィールドに入り,バカの会話映像を撮影し,会話の転記作業を進めた。今回から,幼児と母親の相互行為に関する映像も重点的に収集するように努めた。 | KAKENHI-PROJECT-14401013 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14401013 |
コミュニケーション・プロセスとしての生態人類学:アフリカ熱帯雨林における研究 | 研究分担者である北西功一は,2004年2月から3月にかけて,木村と同じフィールドに入り,バカと近隣の農耕民バクウェレの分配活動について調査をおこなった。また,京都大学理学部大学院の大石高典を研究協力者として同じフィールドに派遣し(木村が同行),バクウェレとバカの移動をめぐるコミュニケーションについての調査をすすめた。(2)では,毎月一度の割で「コミュニケーションの自然誌」研究会を開催し,人類学だけではなく,認知科学,言語学,哲学等の研究者を交えて,現地調査で得られた資料に関する討議をおこなった。また,会話分析に関する研究会,ワークショップに積極的に参加した。(3)では,未整理であった画像データ,音声データのデジタル化を進めるとともに,画像を交えた会話分析用のフリーソフトAnvilを導入し,これまでの会話データの見直しをおこなった。(4)さらに今年度は,研究代表者のこれまでの研究成果の集大成である,著書「共在感覚」を出版することができた。この本には,本研究課題によって得た成果が数多く盛り込まれている。本年度は研究計画の3年目として,(1)現地調査の続行,(2)研究会の開催,(3)蓄積した資料の整理をおこなった。(1)ではまず,研究分担者の小松かおりが2004年7月から9月にかけて,カメルーン共和国東部州モンディンディム村に滞在し,農耕民カコの農耕活動における文化伝播の調査をおこなった。研究代表者木村は11月から12月にかけて,同地域の狩猟採集民バカ・ピグミーの村ドンゴに入り,日常会話の採取と分析作業を進めた。今回の調査を含め,相当量のバカの会話の転記資料が得られたので,今後それを目本・欧米で得られたデータと比較し,ピグミー系狩猟採集民の会話的相互行為の特性を明らかにする作業の見通しが得られた。さらに12月に,研究協力者の入江晋也(京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科大学院生)をマリ共和国に派遣し,都市部および農村部におけるサウンドスケープ(音環境)とコミュニケーションの調査をおこなった。(2)については,昨年にひきつづき,月一回のペースで「コミュニケーションの自然誌」研究会を開催し,これまでの調査によって得られた資料のコミュニケーション論的な位置づけに関する討論を重ねた。また3月に静岡大学で研究分担者,協力者らを集めた研究会をおこない,これまでの研究の進行状況について振り返るとともに,今後の進め方について話し合いをおこなった。(3)については,8ミリビデオ,デジタルビデオに録画してあった映像資料をDVD化する作業を進めた。本年度は研究計画の最終年度として,(1)現地調査の続行,(2)これまでに蓄積された資料の分析,(3)研究会の開催,の三つの活動をおこなった。(1)ではまず,研究協力者の稲井啓之(京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科大学院生)をカメルーン共和国に派遣し,北部に住む漁撈民ムズグンの生態と漁撈活動をめぐるコミュニケーションに関する調査をおこなった。 | KAKENHI-PROJECT-14401013 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14401013 |
染色体の均等分裂と還元分裂の違いを作る分子機構 | 体細胞が増殖分裂する過程で、複製された染色体のコピーが娘細胞へ均等に分配されるためには、染色体の中心部分にある動原体が反対方向からのスピンドル微小管によって捕らえられることが重要である。このためには、細胞分裂のときに、動原体部分の接着が維持されていることと、その向きが正しく制御されることが必要である。この過程には、我々が酵母において発見し命名したシュゴシンとMoa1というタンパク質が本質的な役割を持つことが明らかになった。この機構は、ヒトにおいても保存されていると考えられる。体細胞が増殖分裂する過程で、複製された染色体のコピーが娘細胞へ均等に分配されるためには、染色体の中心部分にある動原体が反対方向からのスピンドル微小管によって捕らえられることが重要である。このためには、細胞分裂のときに、動原体部分の接着が維持されていることと、その向きが正しく制御されることが必要である。この過程には、我々が酵母において発見し命名したシュゴシンとMoa1というタンパク質が本質的な役割を持つことが明らかになった。この機構は、ヒトにおいても保存されていると考えられる。今までの我々の研究から、染色体接着因子Rec8は減数第一分裂特異的な還元分裂の確立に必須であり、Rec8を欠損させると減数第一分裂の分配様式が還元型から均等型へシフトしてしまうことが分かっていた。セントロメアの中央領域は微小管との結合を介して、おそらく均等型あるいは還元型という方向性の決定に重要な働きを担っている可能性が示唆されており、中央領域に局在するRec8が還元型(一方向性)の姉妹動原体の確立に重要な役割を果たしていると考えられた。しかし、このRec8に依存した還元型染色体分配の確立機構はまだ明らかではない。還元分裂に必要なさらなる因子を遺伝学的スクリーニングにより探索した結果、新規因子Moa1(monopolar attachment)が単離された。moa1破壊株では減数第一分裂で還元分裂ではなく均等分裂を行う細胞の割合が増加した。さらに組み換え反応に欠損を生じる変異を導入したmoa1 rec12二重変異株では、全ての細胞で均等型の分配が観察された。(ちなみに、rec12破壊株単独ではほとんどの細胞で還元型染色体分配が観察されることが示されている。)また、Moa1は減数第一分裂に特異的に発現してセントロメアの中央領域にのみ局在すること、およびRec8と相互作用することがわかった。さらに、セントロメア中央領域のRec8を特異的に不活性化すると、moa1変異株と同一の表現型を示した。以上より、Moa1が減数分裂において姉妹動原体の一方向性の制御において、Rec8の機能を補助し、セントロメア中央領域の接着を確立することにより、動原体が同一方向へ向くようにしていると考えられた。これにより、先の「動原体の接着モデル」の信憑性が裏付けられた。シュゴシンが、セントロメアのコヒーシンを保護する分子機構を明らかにする目的で、HeLa細胞からSgo1を免疫沈降して、共沈してくるタンパク質を解析した。その結果、Sgo1が特異的なタンパク質脱リン酸化酵素(2A型プロテインフォスファターゼ: B56型PP2A)と複合体を形成していることが分かった。さらに、PP2AのRNAi実験から、このPP2A自身がコヒーシンを守る上で必須の役割を持つことが分かった。コヒーシンが分裂前期に染色体腕部からはずれる過程でPolo-like kinaseによるコヒーシンのリン酸化が重要であることが既に示されていたので、我々の今回の解析結果から、シュゴシンはPP2Aを動原体へ呼び込むことにより、染色体接着因子のリン酸をはずし染色体接着因子が染色体からはずれるのを阻止していることが強く示唆された。つまり、接着を守る本質に特異的なタンパク質脱リン酸化酵素が関わることを明らかにした。また、分裂酵母のSgo1と相互作用する分子を検索した研究からも、PP2AのB56型サブユニットが単離し、その機能解析を行った。その結果、脱リン酸化酵素PP2Aによる染色体の接着を守る機構は、分裂酵母の減数分裂においても保存されていることが明らかになった。以上の解析結果から、シュゴシンがPP2A活性を用いて染色体の接着を保護する機構は、真核生物における染色体接着の本質的な分子機構であることが分かった。また、還元分裂で顕著に見られたコヒーシン保護の機構は、本質的に体細胞分裂の細胞にその起源があることが明らかになった。シュゴシンは、もともと減数分裂のときにセントロメアのコヒーシンをセパレースの切断から守る因子として酵母から単離されたものである。今回、我々は、哺乳動物の卵細胞を用いて、姉妹染色分体が同じ方向へ引っ張られる減数第一分裂においては、シュゴシンSgo2がセントロメアのコヒーシンをセパレースの切断から保護していることを明らかにした。これにより、以前に我々が酵母で見つけた減数第一分裂期でのセントロメアの接着保護機構が、動物を含めた真核生物一般で広く保存されていることが証明された。しかし一方では、この事実は、哺乳動物のシュゴシンが体細胞分裂の前期において、コヒーシンがセパレース非依存的に解離するのをセントロメアで保護するが、分裂後期のセパレースの切断から保護しないという以前の報告と一見矛盾する。この矛盾は、以下の発見によって解決された。 | KAKENHI-PROJECT-17002014 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17002014 |
染色体の均等分裂と還元分裂の違いを作る分子機構 | すなわち、セントロメアのコヒーシンは動原体(セントロメア)が反対方向から引っ張られていないとき(体細胞分裂の前期および減数第一分裂の全過程)はシュゴシンによって守られているが、体細胞あるいは減数第二分裂の分裂中期にセントロメアに反対方向の張力がかかると、シュゴシンがコヒーシンから局所的に離れ、その保護機構が解除されることを明らかにした。これらの結果は、シュゴシンがセントロメアの接着を守る様式について、体細胞分裂および減数分裂いずれにも通じる統一的な見解を提示するものである。さらに、分裂酵母のシュゴシンSgo2の解析から、シュゴシンはオーロラキナーゼをセントロメアに局在化させることにより、動原体とスピンドル微小管の正しい接着を制御する働きがあることが分かった。合わせて、動物細胞でもオーロラキナーゼとシュゴシンの機能的な相互作用が見出された。生殖細胞で見られる減数分裂では、1回のDNA複製の後に2回の連続した染色体分配が起き、その結果、半数体の配偶子が形成される。このとき、減数第一分裂では、組み替えを終えた相同染色体が両極に分配され、続く減数第二分裂で姉妹染色分体が両極へと分配される。正確な減数第二分裂を行うためには、減数第一分裂後にも姉妹染色分体間の接着がセントロメアで保たれることが必要である。この接着を保護する因子として分裂酵母で同定されたのが、セントロメアタンパク質シュゴシンSgo1である。シュゴシンは真核生物に広く保存されたタンパク質であり、さらに、ヒトのシュゴシンは体細胞においてもセントロメアに局在し、体細胞分裂での姉妹染色分体間の接着の保護に必須の役割を果たすことも分かっている。しかし、シュゴシンがどのようにしてセントロメアに局在しているのかは不明であった。今回、我々はこのシュゴシンのセントロメア局在化機構の解明を目指して研究を行った。まず、シュゴシンsgo1の相互作用因子を探索したところ、ヘテロクロマチンタンパク質Swi6/HP1が得られた。swi6はセントロメアを含むヘテロクロマチン領域に局在し、セントロメアにおいてSgo1と共局在する。また、swi6破壊株ではSgo1が正常にセントロメアに局在できないということも分かった。さらにこのSwi6によるSgo1の局在化は、両者の直接の結合を介しており、Swi6と結合できないSgo1は正常にセントロメアに局在できず、減数第一分裂時に姉妹染色分体間の接着を保護できないために、減数分裂の染色体分配に異常をきたすということも分かった。さらに、このヘテロクロマチンタンパク質によるシュゴシンのセントロメア局在化という機構は、ヒトのSwi6ホモログHP1とhSgo1の間でも保存されており、生物種を超えて広く保存された機構であるということも併せて示した。以上の研究から、これまで役割が不明であったセントロメアのヘテロクロマチンの一義的な機能が明らかになった。[連携研究者]東京大学分子細胞生物学研究所作野剛士 | KAKENHI-PROJECT-17002014 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17002014 |
炎症性腸疾患患者へのe-ポートフォリオを用いたセルフケア支援プログラムの開発 | 炎症性腸疾患は若年で発症することが多く、長期にわたってセルフケアを必要とする疾患である。ポートフォリオは教育の場で多く用いられる手法であるが、これを患者に適応し、セルフケア支援に役立てたいと考えた。今年度は、昨年度の調査結果をもとに、e-ポートフォリオアプリのバージョンアップを行った。アプリを使って「私の夢・願い」をもとに「現在の健康状態と治療法・体調管理の仕方」をアセスメントし、マイゴール(私の目標)を設定する。マイゴールに向けて行う毎日の「マイアクション」を自ら定め、その実施状況や日々の健康記録をアプリに記録することによってセルフケアの意欲を高めることをねらいとしている。e-ポートフォリオシステムの新たな開発として、最終的に以下の機能を完成させた。1健康チェック:マイアクション、元気度、服薬、腹痛、下痢、他の症状、体重、便の回数、体温、経腸栄養剤のチェック、これらはグラフ機能により日々の状況を確認すことができる。またマイアクションの達成率や元気度を数値化し、カレンダー機能によって確認することもセルフケアの励みとなる。2食事記録:文字入力またはカメラ機能にて、実際に食べた食事の画像と食事による身体への影響を記録することができる。3健康記録:処方箋や検査結果、様々な情報を記録し、個々に必要な情報を集約できる。4みんなのレシピ:食事療法に役立つレシピを登録し、公開することによって利用者が互いにセルフケアの参考にすることができる。5リマインダー:受診日や自己注射日などをメールでリマインドする。6つながる:アプリ利用者同士のチャット機能によって、同病者による情報交換ができる。以上、本研究で開発したアプリは、炎症性腸疾患患者が日々の健康行動を長期に継続していくためのツールとして有用なものとなった。今後、このツールを活用し実際の看護支援を構築しプログラム化していく予定である。本研究は炎症性腸疾患患者を対象に慢性疾患におけるセルフケア支援の新たな試みとして、「e-ポートフォリオを用いた看護師との面接によるセルフケア支援の開発」を目的としている。ポートフォリオでは自分の生活や健康状態を自分自身でアセスメントし、自らの目標(マイゴール)を定める。e-ポートフォリオには、患者が日々生活する中で体験した症状や習得したセルフケア能力、知識、健康管理状態を示す生理学的データや検査結果、食事記録あるいは健康管理に役立つWeb情報や新聞の切り抜きなどを保存する。当初、安価なアプリを利用する予定であったが、自作のe-ポートフォリオシステムを新たに開発し、これを用いた看護支援プログラムの構築を目指している。1.e-ポートフォリオの開発:ポートフォリオに保存する内容を検討し、項目や評価方法などについて検討を重ね、初めに手書きのポートフォリオを作成した。これを用いて5名の患者に実際に2週間試用していただき、意見から修正を加えた。この内容をe-ポートフォリオとしてタブレットPCで活用できるアプリを開発中である。早期に試作を完成させ、確認作業を行う予定としている。2.セルフケア支援方法の準備:e-ポートフォリオをセルフケアに役立てるため、マイゴールシート、ポートフォリオの使い方マニュアル、看護師との面接手順、支援内容について統一した介入が可能となるようにツールを作成中である。3.研究施行のための調整:実際の介入方法と手順、対象者への依頼方法、介入効果の測定については準備中である。e-ポートフォリオを活用したセルフケア支援のアプリ開発とプログラム作成について準備を進めている。当初既存のアプリを利用する予定であったが、独自のアプリの作成が可能となり、プログラミングを進めている。また手書きのポートフォリオを実際の協力者に使っていただき、内容を検討した。それに基づいてセルフケア支援の手順やマニュアル作成も終えている。ただし予定していた本調査に対する倫理審査は遅れており、準備を進めている。本研究は、炎症性腸疾患患者を対象としたセルフケア支援の試みとしてe-ポートフォリオを用いた看護支援プログラムを開発し、その効果を検証することを目的としている。H28年度は、前年度プレテストとして行った手書きでのポートフォリオの内容を再検討し、これに基づいてe-ポートフォリオWebシステム「マイポートフォリオ」を開発した。介入にあたり、e-ポートフォリオの説明書(冊子「マイポートフォリオ」)、Webシステム利用のためのマニュアル、現状分析と目標設定を行うゴールシートを作成した。Webシステム「マイポートフォリオ」は、ゴールシートで設定した「マイゴール」とそれを達成するための毎日の行動「デイリーアクション」を設定する。ポートフォリオは「健康チェック」、「健康記録」、「情報保存」、「食事記録」から構成されている。「健康チェック」では自ら設定したデイリーアクションを評価し、自覚症状や服薬をチェックし登録する。「健康記録」、「情報保存」、「食事記録」は検査結果や体調が変化したときの記録、入手した情報、食事内容などを文字または写真で保存できるシステムになっている。記録の閲覧によって、デイリーアクションの達成率やグラフにて健康度の推移を確認したり、保存した写真をすぐに見みたりできるように工夫した。介入効果の測定はQOL、セルフエフィカシーの測定、Webシステムの使用状況や使用感の意見により効果を検証するための質問紙を作成した。倫理審査を経て介入を進めているが、十分な参加者を募ることができていない。研究対象病院の協力を得て外来にて、医師から紹介された患者に対し研究の趣旨とe-ポートフォリオの使い方について説明を行っているが目標数に達していない。本研究の目的は、慢性疾患における自己管理の新たな試みとして炎症性腸疾患患者を対象にe-ポートフォリオを用いたセルフケア支援アプリを開発することである。今年度は、実際に試用し、その結果を検証し、e-ポートフォリオのシステム修正につなげた。 | KAKENHI-PROJECT-15K15841 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K15841 |
炎症性腸疾患患者へのe-ポートフォリオを用いたセルフケア支援プログラムの開発 | e-ポートフォリオ内で、患者は生活や健康状態のアセスメントによって自ら目標を定め、マイゴールを設定する。e-ポートフォリオには目標に向けた健康行動の実施状況や日々の症状、健康管理状態を示す生理学的データ、検査結果、食事記録、健康管理に役立つ情報などを保存する。研究は所属大学の倫理委員会の承認を受けて行い、研究参加者には研究目的と内容、e-ポートフォリオに登録された個人情報の保護等について文書および口頭で説明し、同意を署名にて得た。2017年3月4月にA大学病院を受診し医師より紹介された外来患者33名に研究内容を説明し、26名より同意を得た。その内10名から8週間後に質問紙の返送があった。使用しての感想として、毎日利用するスマートフォンに自分で決めた健康行動の記録を残せることはセルフケアに役立ったという意見などが聞かれた。e-ポートフォリオの効果については今後さらに検証する必要があるが、セルフケアに関する看護支援に向けた一つのツールとしての可能性を示すことが出来た。システムの不具合に関する指摘や表示の修正、リマインド機能や利用者同士が交流できるSNS機能の希望などもあり、それらを参考に新たなアプリの作成に取り組んだ。現在、機能の追加とLINEでのログイン機能の追加に向けて作業継続中である。今年度でe-ポートフォリオの開発を終了する予定であったが、システム作業に時間がかかり完成していない。炎症性腸疾患は若年で発症することが多く、長期にわたってセルフケアを必要とする疾患である。ポートフォリオは教育の場で多く用いられる手法であるが、これを患者に適応し、セルフケア支援に役立てたいと考えた。今年度は、昨年度の調査結果をもとに、e-ポートフォリオアプリのバージョンアップを行った。アプリを使って「私の夢・願い」をもとに「現在の健康状態と治療法・体調管理の仕方」をアセスメントし、マイゴール(私の目標)を設定する。マイゴールに向けて行う毎日の「マイアクション」を自ら定め、その実施状況や日々の健康記録をアプリに記録することによってセルフケアの意欲を高めることをねらいとしている。e-ポートフォリオシステムの新たな開発として、最終的に以下の機能を完成させた。1健康チェック:マイアクション、元気度、服薬、腹痛、下痢、他の症状、体重、便の回数、体温、経腸栄養剤のチェック、これらはグラフ機能により日々の状況を確認すことができる。またマイアクションの達成率や元気度を数値化し、カレンダー機能によって確認することもセルフケアの励みとなる。2食事記録:文字入力またはカメラ機能にて、実際に食べた食事の画像と食事による身体への影響を記録することができる。3健康記録:処方箋や検査結果、様々な情報を記録し、個々に必要な情報を集約できる。 | KAKENHI-PROJECT-15K15841 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K15841 |
電子・核運動共役測定による水素・プロトン移動反応中の電子デカップリング効果の解明 | プロトンおよび水素原子移動反応は最も単純な反応素過程であるが、そのメカニズムの理解はいまだ十分ではない。最近の研究から、単に水素原子やプロトンが移動するのではなく、電子と水素原子核(プロトン)は別々の経路により移動し、再結合反応を経て最終的に水素あるいはプロトン移動が完了するデカップリング機構の重要性が予想されている。本研究課題では、電子、原子核の運動を独立に観測し、この説を実験的に検証することを目的とし研究を行ってきた。本年度は、昨年度見出されたフェノール-アンモニア1:5クラスターにおける新たな極めて応答の速い過渡吸収帯も含めた反応メカニズムを理論計算の結果も含めて解釈し、フェノール-アンモニアクラスターにおける励起状態水素移動反応メカニズムの溶媒数依存性を明らかにすることができた。1:5クラスターについては、ππ*状態とπσ*状態の強い混合から生じる電荷移動状態(S2状態)を経由する電子・プロトンデカップリング機構が成立することを立証することができた。さらに、溶媒数が増加するにつれて、溶媒和により安定化されたプロトン移動状態の関与が水素移動反応に重要な役割を果たすこともわかった。プロトン移動の寄与は水素移動反応の発見後、排除されてきたが、本研究はこれを再登場させる必要性があることを明らかにした。このほか新たな展開として、分子間ダイナミクスへのフェムト秒近赤外分光の適用も試み、ベンゼン二量体の光イオン化における構造変化ダイナミクスの実時間観測にも成功した。基本的ではあるが、芳香環の運動の時間スケールについての基本的情報として重要である。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。プロトンおよび水素原子移動反応は最も基礎的な化学反応素過程であるが、そのメカニズムはいまだ十分に理解されているとは言えない。最近の理論研究から、単に水素原子やプロトンが移動するのではなく電子と水素原子核(プロトン)が別々の経路で移動し、その後の再結合反応を経て最終的に水素あるいはプロトン移動が完了するのではないかと予想された。本研究では、電子、原子核の運動を独立に測定することでこの説の検証を目指す。これまで原子核の運動についてはピコ秒時間分解赤外分光を用いて研究を進めていたが、より速い電子の運動を検出するために27年度は、フェムト秒時間分解近赤外分光システムの構築を行なった。フェムト秒波長変換装置(TOPA)を購入し、励起用波長可変紫外光および検出用波長可変近赤外光発生システム構築を行なった。既存のチタンサファイア再生増幅器を調整したため、TOPASシステムの調整を慎重に行い時間分解能100 fsの時間分解近赤外分光光源を立ち上げた。さらに、超音速ジェット分光装置と組み合わせ、測定条件確認のためのナノ秒分光装置の調整と併せて行い、測定装置を構築することが出来た。装置の基本性能の確認のために、基礎情報がすでに良くわかっているフェノール-(NH3)nクラスターに対し、S1状態励起後の近赤外吸収の立ち上がり時間の見積りを行なった。その結果、フェノール-(NH3)5だけが他のサイズのクラスターと比べ特異的に速く、数百フェムト秒の立ち上がり時間を示すことが見出された。本研究が目的とする水素移動メカニズムに顕著なサイズ依存性があることを示しており、今後サイズ依存性、波長依存性などを詳細に検討することで、電子、原子核のダイナミクスの理解につながると考えられる。速い電子移動を検出するためのフェムト秒時間分解近赤外分光システムの構築を行ない、フェノール-(NH3)5の近赤外吸収の立ち上がり時間の測定を行っており、当初計画での予定をほぼ達成しているため、おおむね順調であると判断した。プロトンおよび水素原子移動反応は最も単純な反応素過程であるが、なおそのメカニズムの理解は十分ではない。最近の研究から、単に水素原子やプロトンが移動するだけでなく、電子と水素原子核(プロトン)が別々の経路により移動し、再結合反応を経て最終的に水素あるいはプロトン移動が完了するデカップリング機構の重要性が予想されている。本研究課題では、電子、原子核の運動を独立に観測し、この説を実験的に検証することを目的としている。フェムト秒パルスの時間幅を測定し、昨年度得られたフェノール-(NH3)5クラスターの特異的に速い電子移動速度が光励起とほぼ同時に生じることがわかった。これは、n = 5においてππ*状態とπσ*状態の強い混合が生じることを示す理論計算による結果とよく対応するものであり、デカップリング反応の存在と対応すると考えられる。また、フェノール以外の系におけるプロトン/水素移動デカップリング機構研究のため、フェノールよりも反応性が高いと考えられるカテコール-アンモニアクラスターにおける反応の検討を行った。フェノールとは異なり、n = 3以外では水素移動反応は顕著ではなく、電子励起に伴う構造変化もフェノールとは異なることが明らかになった。特にn = 2、n >= 4では反応がほとんど見られず、フェノールとは異なる反応を起こすことが予想される。さらに、生体系などでより重要であるペプチドなどの研究を念頭に、難揮発性試料の気相導入のための高温加熱可能なパルスバルブの試作を行い、250°Cまでの実験が可能になった。しかし、溶媒和クラスターを安定して得るまでは至っておらず、サンプルホルダーの工夫などをさらに進める必要がある。 | KAKENHI-PROJECT-15H02157 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H02157 |
電子・核運動共役測定による水素・プロトン移動反応中の電子デカップリング効果の解明 | 昨年度までに測定したフェノール-(NH3)5の近赤外吸収の立ち上がり時間の確認を行い、またフェノール以外の系での測定や、より現実に即した系での測定を想定した試料導入法の準備などが進んでおり、当初計画の予定をほぼ達成しているため、上記の判断とした。波長依存性の測定については、測定が完全に予定通りには進んでいないため次年度の優先的課題とする。プロトンおよび水素原子移動反応は最も単純な反応素過程であるが、そのメカニズムの理解はいまだ十分ではない。最近の研究から、単に水素原子やプロトンが移動するのではなく、電子と水素原子核(プロトン)は別々の経路により移動し、再結合反応を経て最終的に水素あるいはプロトン移動が完了するデカップリング機構の重要性が予想されている。本研究課題では、電子、原子核の運動を独立に観測し、この説を実験的に検証することを目的としている。本年度は、これまで実験を行ってきた系に対する時間分解測定を中心に研究を進めた。昨年度までに装置の立ち上げとともに予備的に行ったフェノール-アンモニア1:5クラスターの電子移動速度について、昨年度の課題であったフェムト秒時間分解近赤外分光の波長依存性の測定から決定した。さらに、これまで最終生成物からの吸収しか現れないと考えられていた波長において、光励起後、フェムト秒パルスの装置関数以内に現れる極めて応答の速い吸収の存在を新たに発見した。これらの近赤外吸収の時間応答は、先に提案したππ*状態とπσ*状態の強い混合から生じる電荷移動状態(S2状態)を経由する電子・プロトンデカップリング機構から予測される吸収帯とよく対応しており、理論的予測の実験的検証に成功したと言える。このほか、置換基効果と溶媒和効果の解明の試みとして昨年反応性を検証したカテコール-アンモニアクラスターの時間分解分光を行なった。その結果、カテコールではフェノールとは違い、反応速度に顕著なサイズ依存性が見られないことがわかった。理論計算による解析が必要であるが、この結果についても電荷移動的な分極の大きな電子状態の溶媒和による安定化の観点から説明できると予想している。本研究課題における第一の目標であったフェノール-アンモニア1:5クラスターのフェムト秒時間分解近赤外分光測定を完了し、その解釈も行うことができた。さらに、カテコール-アンモニアクラスターのピコ秒時間分解分光から、理論的に予測された反応機構が一般的に成立すると考えられることを明らかにするなど、反応機構の解明が進んでいることから、おおむね順調であると判断した。プロトンおよび水素原子移動反応は最も単純な反応素過程であるが、そのメカニズムの理解はいまだ十分ではない。最近の研究から、単に水素原子やプロトンが移動するのではなく、電子と水素原子核(プロトン)は別々の経路により移動し、再結合反応を経て最終的に水素あるいはプロトン移動が完了するデカップリング機構の重要性が予想されている。本研究課題では、電子、原子核の運動を独立に観測し、この説を実験的に検証することを目的とし研究を行ってきた。本年度は、昨年度見出されたフェノール-アンモニア1:5クラスターにおける新たな極めて応答の速い過渡吸収帯も含めた反応メカニズムを理論計算の結果も含めて解釈し、フェノール-アンモニアクラスターにおける励起状態水素移動反応メカニズムの溶媒数依存性を明らかにすることができた。 | KAKENHI-PROJECT-15H02157 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H02157 |
複雑乱流場における巨視的ダイナミクスの発現の研究 | 乱流境界層などにおける壁面近傍から境界層内せん断層内に出現する渦運動の大規模ダイナミクスを研究することによって,研究目的である複雑乱流場における巨視的ダイナミクスの出現について解析を行った.流れは乱流遷移構造を含み下流に乱流境界層が発達する空間発展型計算によるデータ・ベースを構築して様々な無次元パラメーター(マッハ数,レイノルズ数,上流かく乱条件,壁面境界温度条件)における直接計算結果のデータ・ベースを構築し解析を行った.多くのストリークが発達する上流条件を用いた場合は,かく乱の変動が比較的大きな領域のスポット構造が発展してヘアピン渦パケット構造を起点として低速ストリークに関連した大規模なLift-Upメカニズムが発生する.壁面近傍の低速ストリーク群と対数則より上の境界層外層までの観察される低速領域を繋げて観察される大規模構造は, Toh & Itano(2005)が提唱した分水嶺と類似な立体的見え方をし,壁面近傍低速ストリークは分水嶺の谷の構造で発達して,谷の構造が合流し大きなストリーク構造には低速塊が上昇する基本的なダイナミクスを形成されることが明らかになった.その階層の上層には馬蹄形渦の形成に見られる新たなダイナミクスが観察された.豊富な渦構造群は一連の構造形成とともに2次や3次渦構造として発達して,大規模な渦構造群"渦の森"として観察されることになることが明らかになった.統計的にはPremultipliedspectraを調べると,その極大値が壁面近傍と境界層外層に存在し,構造の階層性が示されている.低速ストリークに関連した低速塊のLift-Up機能が働くことによって階層ごとの不安定性と渦構造に起因する新旧世代間階層型の巨視的ダイナミクスが発現されることが解明できた.乱流境界層などにおける壁面近傍から境界層内せん断層内に出現する渦運動の大規模ダイナミクスを研究することによって,研究目的である複雑乱流場における巨視的ダイナミクスの出現について解析を行った.流れは乱流遷移構造を含み下流に乱流境界層が発達する空間発展型計算によるデータ・ベースを構築して様々な無次元パラメーター(マッハ数,レイノルズ数,上流かく乱条件,壁面境界温度条件)における直接計算結果のデータ・ベースを構築し解析を行った.多くのストリークが発達する上流条件を用いた場合は,かく乱の変動が比較的大きな領域のスポット構造が発展してヘアピン渦パケット構造を起点として低速ストリークに関連した大規模なLift-Upメカニズムが発生する.壁面近傍の低速ストリーク群と対数則より上の境界層外層までの観察される低速領域を繋げて観察される大規模構造は, Toh & Itano(2005)が提唱した分水嶺と類似な立体的見え方をし,壁面近傍低速ストリークは分水嶺の谷の構造で発達して,谷の構造が合流し大きなストリーク構造には低速塊が上昇する基本的なダイナミクスを形成されることが明らかになった.その階層の上層には馬蹄形渦の形成に見られる新たなダイナミクスが観察された.豊富な渦構造群は一連の構造形成とともに2次や3次渦構造として発達して,大規模な渦構造群"渦の森"として観察されることになることが明らかになった.統計的にはPremultipliedspectraを調べると,その極大値が壁面近傍と境界層外層に存在し,構造の階層性が示されている.低速ストリークに関連した低速塊のLift-Up機能が働くことによって階層ごとの不安定性と渦構造に起因する新旧世代間階層型の巨視的ダイナミクスが発現されることが解明できた.乱流境界層における壁面近傍から境界層内に出現する大規模ダイナミクスを研究することによって,研究目的である複雑乱流場における巨視的ダイナミクスの出現について解析を行った。流れは,乱流遷移構造を含み下流に乱流境界層が発達する空間発展計算によるデータ・ベースを解析した。壁面条件が断熱境界条件と低温度境界条件であり,また入り口撹乱条件の複数の場合に,ヘアピン渦パケット構造,低速ストリーク形成・崩壊およびそれに伴う二次的・三次的ヘアピン構造の形成に重要な役割を果たす渦ダイナミクスを研究した。壁面近傍で形成された低速ストリークは常に上昇傾向をもち,低速ストリークは分水嶺と谷の構造になっており,分水嶺の低速ストリークのまわりにヘアピン渦およびそれに類する構造が多く見られ,近くの類似の渦と相互作用を始めると,それに伴い急激に渦構造が豊かかつ複雑に発達することによって低速ストリークであった低速塊が乱流境界層の外層付近で崩壊していることが明らかになった。崩壊に伴い,ストリーク間隔の数倍のスパンにわたる馬蹄渦形状が外層に形成され、境界層の一つの特徴が形成される。さらに重要なことは、一連の崩壊過程において、壁面近傍は次世代のヘアピン随伴渦の覆われ、これらは新世代の低速ストリークを形成することに重要な役割をはたしていることである。なお、超音速境界層においてレイノルズ数の影響や壁面温度条件によって異なる発達を示すヘアピン渦構造の統計的性質も調べられた。昨年度に引き続き,乱流境界層における壁面近傍から境界層内に出現する巨視的ダイナミクスを研究した。また,自由せん断乱流として超音速乱流混合層(分担者:渡辺)について,その大規模構造と巨視的ダイナミクスの出現について解析をおこなった。 | KAKENHI-PROJECT-21560165 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21560165 |
複雑乱流場における巨視的ダイナミクスの発現の研究 | さらに,希薄ガス流(分担者:尾形)について,中クヌッセン数(Kn0(1))流れに対し、希薄効果に伴う壁面での「速度2階滑り境界条件」をナビエストークス方程式に組み込み、その有効性の検証を行ったが、マイクロボアズイユ流れ等で剛体球モデルのボルツマン方程式の解・実験値と良く一致する結果を得た。研究目的である複雑乱流場における巨視的ダイナミクスの出現について解析を行った。乱流境界層については,壁面条件が断熱境界条件と低温度境界条件であり,また入り口撹乱条件の複数の場合に,ヘアピン渦パケット構造,低速ストリーク形成・崩壊およびそれに伴う二次的・三次的ヘアピン構造の形成に重要な役割を果たす渦ダイナミクスがどのように出現するか解析した。壁面低速ストリークは常に上昇傾向をもち,谷に対応する低速ストリークのまわりにヘアピン渦およびそれに類する構造が多く見られ,それに伴い急激に渦構造が豊富かつ複雑に発達することによって低速ストリークであった低速塊が乱流境界層の外層付近で崩壊していることが明らかになった。崩壊に伴い,ストリーク間隔の数倍のスパンにわたる馬蹄渦形状が外層に形成され、境界層の一つの特徴が形成される。重要な一連の崩壊過程において、壁面近傍は次世代のヘアピン随伴渦の覆われ、これらは次世代の低速ストリークを形成することに重要な役割をはたしていることが明らかになった。なお、分担者出川はコンパクトスキームを用いる本計算法の高速化を主に研究した。乱流境界層などにおける壁面近傍から境界層内せん断層内に出現する渦運動の大規模ダイナミクスを研究することによって,研究目的である複雑乱流場における巨視的ダイナミクスの出現について解析を行った。流れは乱流遷移構造を含み下流に乱流境界層が発達する空間発展型計算によるデータ・ベースを構築して様々な無次元パラメーター(マッハ数、レイノルズ数、上流かく乱条件、壁面境界温度条件)における直接計算結果のデータ・ベースを構築し解析を行った。多くのストリークが発達する上流条件を用いた場合は、かく乱の変動が比較的大きな領域のスポット構造が発展してヘアピン渦パケット構造を起点として低速ストリークに関連した大規模なLift-Upメカニズムが発生する。これまでに発見した分水嶺の谷の構造にストリークが発達して,谷の構造が合流するより大きなストリーク構造が低速塊が上昇する基本的なダイナミクスを形成し、その階層の上層には馬蹄形渦の形成に見られる新たなダイナミクスが観察された。豊富な渦構造群は一連の構造形成とともに2次や3次渦構造として発達して,大規模な渦構造群として観察されることになることが明らかになった。低速ストリークに関連した低速塊のLift-Up機能が働くことによって階層ごとの不安定性と渦構造に起因する新旧世代間階層型の巨視的ダイナミクスが発現されることが解明できた。 | KAKENHI-PROJECT-21560165 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21560165 |
単結合窒素と重遷移金属から成る窒化物のメガバール領域相安定性と電子構造の解明 | 超高圧下で温度制御可能な合成・その場測定システムを開発し確立した.窒素ー窒素間結合が単結合となる窒化物が十分に形成可能となるメガバール領域を対象として,相図の作成に耐えうる合成・その場測定システムを開発し確立した.超高圧高温超臨界窒素流体と金属の直接窒化反応という単一合成法を適用して,重遷移金属窒化物の系統的な合成に成功し,全く新しい重遷移金属窒化物を発見した.その場測定によって相を同定し,これを基にした相安定性を決定した.極微小な超高圧合成試料でも高精度の電子構造スペクトルが得られる測定技術を開発し確立した.重遷移金属窒化物の結合状態・結晶構造・電子構造の系統性と相安定性機構を解明した.単結合窒素と重遷移金属(4d,5d遷移金属)から成る遷移金属窒化物は,近年,ダイアモンドアンビルセル超高圧発生装置と赤外レーザー加熱を組み合わせた超高圧合成によって見出された新しい物質群であり,将来薄膜化することにより電子材料や超硬材料としても期待されている.しかしながら,合成技術上の制約から未だ系統的な実験研究はなく,相安定性や電子構造の理解は進んでいない.そこで本研究では,従来のレーザー加熱型超高圧合成システムとは根本的に異なり,メガバールという超高圧領域においても,系統的な合成実験とその場測定が可能なシステムを開発する.これにより,本物質群の相図を決定し,結合状態・結晶構造・電子構造の系統性を実験と理論の両面から明らかにするとともに,単結合窒素重遷移金属窒物の相安定性機構を解明する.25年度の主たる計画内容は,超高圧高温研究に関する様々な高度な要素技術を組み合わせて,超高圧合成・その場測定システムの開発・確立であった.そこで,超高圧地球科学が専門の協力者を得て,代表者らが,現有のシステムをベースにして,メガバール領域での超高圧合成システムの開発・確立に成功した.さらに,分担者らが,現有のラマン測定装置をこのシステムに組み込み,超高圧高温その場ラマン測定による相変化の調査も可能なシステムとした.また,別の分担者らが,極微小な超高圧合成試料でも高精度の電子構造スペクトルが得られる測定技術を開発・確立した.このシステムを用いて,遷移金属窒化物の合成を試み,Ruの多窒化物などの新規遷移金属窒化物の合成に成功した.超高圧下でのラマン分光測定や放射光X線回折測定や回収試料の光電子分光測定などによって,新規遷移金属窒化物の結晶構造,圧縮挙動,相安定性,結合状態,電子構造などを明らかにした.単結合窒素と重遷移金属(4d,5d遷移金属)から成る遷移金属窒化物は,近年ダイアモンドアンビルセル超高圧発生装置と赤外レーザー加熱を組み合わせた超高圧合成によって見出されつつある新しい物質群であり,将来薄膜化することにより電子材料や超硬材料としても期待されている.しかしながら,合成技術上の制約から未だ系統的な実験研究はなく,相安定性や電子構造の理解は進んでいない.26年度では,従来のレーザー加熱型超高圧合成システムとは根本的に異なり,メガバールという超高圧領域においても,系統的な合成実験とその場測定が可能なオリジナルなシステム:「LASER-DACシステム」の改良・確立に成功した.これよって,遷移金属窒化物,特に重遷移金属から成る遷移金属窒化物の新物質を創製することに成功した.また,温度・圧力に対する新物質群の安定性・相関係を決定した.さらに,TEM-EELSや放射光を用いたXRDやXPSさらにはラマン分光などの最先端分析手法によって,これらの金属窒化物内の結合状態・結晶構造・電子構造・力学物性の系統性を明らかにした.加えて,第1原理計算による理論からも結合状態や電子構造を考察し,実験結果に解釈を与えた.これらの実験・理論の両面からの結果より,単結合窒素重遷移金属窒物の相安定性機構と物性の解明が進んだ.単結合窒素と重遷移金属(4d,5d遷移金属)から成る遷移金属窒化物は,近年ダイアモンドアンビルセル超高圧発生装置と赤外レーザー加熱を組み合わせた超高圧合成によって見出された新しい物質群であり,将来薄膜化することにより電子材料や超硬材料としても期待されている.本研究では,昨年度までに従来のレーザー加熱型超高圧合成システムとは根本的に異なり,超高圧領域においても系統的な合成実験とその場測定が可能なシステムを開発してきた.最終年度では,これまで開発した合成装置と試料評価装置を用いて,新規重遷移金属窒化物を合成しさらに第一原理電子構造計算による理論的な解析も同時に行い,これら物質群の結合状態・結晶構造・電子構造を系統的に解明した.例えば,白金族窒化物MN2 (M = Ru, Ir, Pt)について硬X線光電子分光及び軟X線分光によって電子構造と化学状態を評価した.試料は約0.1 mm以下と小さく.SPring-8の硬X線および軟X線マイクロビームを用いて光電子スペクトルおよび窒素K吸収端スペクトルを取得した.結晶構造パラメタを用いて計算した状態密度分布と価電子帯硬X線光電子スペクトルを比較したところ,計算予測と実験結果はよく対応した.このように,実験・計算ともに,RuN2は金属,IrN2およびPtN2は半導体的電子構造を示した. | KAKENHI-PROJECT-25289219 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25289219 |
単結合窒素と重遷移金属から成る窒化物のメガバール領域相安定性と電子構造の解明 | 一方,PtN2やIrN2では内殻準位に大きな化学シフトが見られたが,RuN2では見られなかった.これらの結果から,窒素K吸収端X線分光の結果も含め化学状態と電子構造について議論し,窒素の単結合と大きな体積弾性率の相関を明らかにした.また,本研究で得られた知見の他物質への展開も試みた.さらに,マルチアンビル型大型プレス装置を用いた研究への展開を念頭に置いて初期実験を試みた.その結果,本研究の成果を応用した様々な展開の可能性が見いだされた.超高圧下で温度制御可能な合成・その場測定システムを開発し確立した.窒素ー窒素間結合が単結合となる窒化物が十分に形成可能となるメガバール領域を対象として,相図の作成に耐えうる合成・その場測定システムを開発し確立した.超高圧高温超臨界窒素流体と金属の直接窒化反応という単一合成法を適用して,重遷移金属窒化物の系統的な合成に成功し,全く新しい重遷移金属窒化物を発見した.その場測定によって相を同定し,これを基にした相安定性を決定した.極微小な超高圧合成試料でも高精度の電子構造スペクトルが得られる測定技術を開発し確立した.重遷移金属窒化物の結合状態・結晶構造・電子構造の系統性と相安定性機構を解明した.本研究の最も重要な目的は2つである.1つ目は,研究対象物質である遷移金属窒化物,特に,単結合窒素と重遷移金属から成る遷移金属窒化物の新物質を創製することである.2つ目は,これらの物質群の結合状態・結晶構造・電子構造の系統性を実験と理論の両面から明らかにし,単結合窒素重遷移金属窒物(4d,5d遷移金属窒化物)の相安定性機構を解明することである.本年度では,1つ目の目的である新物質を創製するために,従来の合成システムとは根本的に異なりメガバールという超高圧領域においても系統的な合成実験が可能なシステムとその場測定が可能なオリジナルなシステム:「LASER-DACシステム」の改良・確立に成功した.これは当初の計画通りの成果である.次に,この独自のシステムを用いて,当初の重要な目的の1つである単結合窒素と重遷移金属(4d,5d遷移金属)から成る新規な遷移金属窒化物の創製に成功した.また,これら新規物質の結合状態・結晶構造・電子構造・力学物性の系統性を,当初の目的とおり精密に明らかにし,第2の重要な最終目的の達成に大きく前進した.さらに,これらの成果をもとに,重遷移金属窒物である4d,5d遷移金属窒化物のみならず,3d遷移金属窒化物にも同様の手法を適用したところ,新物質の創製に成功しつつあり,当初の計画以上に研究が進展し,27年度の研究の進展がおおいに期待される.27年度が最終年度であるため、記入しない。超高圧物質科学26年度の成果と問題を整理し,最終目的を達成するために,合成・評価・解析・考察をこれまでと同様に推進する.各担当分野の担当者が常に有機的に連携して,実験研究に理論計算解析研究を加えて,系統的かつ包括的に研究を進める.合成に関しては,26年度までに手法をほぼ確立したため,これを用いて,次から次へと遷移金属窒化物の合成を試みて,新物質の創製を目指す.ただし,もしも,技術的な壁にぶつかった場合は,固体窒素単体のメガバール領域の研究などで顕著な業績があり,代表者らと現在すでに共同研究を進めているドイツのグループに技術的なサポートを要請して問題を克服する.さらに,実際にDACを製作してもらう会社と綿密に連絡をとり,あらゆるノウハウを駆使して問題を克服する.合成時に,高圧高温その場ラマン測定を行い,相変化や結合の変化を調査する.また,超高圧下での相安定性と結晶構造を解析する.放射光施設を利用したXPS・UPS等の測定実験を行い,常圧回収試料の結合状態(特に窒素間結合)と電子構造を解析する. | KAKENHI-PROJECT-25289219 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25289219 |
部分観測マルコフ決定過程理論に基づく発達尺度の言語関連タスクの包括的実現 | 本研究では、発達尺度のタスクのうちで言語に関連するものを多数行うことのできるエージェントを開発することを目的とし、「円がいくつか描かれた絵を見て円の個数を答える(3歳9ヶ月レベル)」などを行うロボットを開発することができた。さらに、各タスクの遂行に必要な情報処理を機能要素モジュールの組み合わせによって実現し、それらのモジュールの組み合わせ方はエージェント自身が自動的に最適化するようにしたことで、多くのタスクを行うエージェントを効率的に開発できるようにした。本研究は、発達尺度のタスクのうちで言語に関連するものを多数行うことのできるエージェントを開発することを目的としている。その際、部分観測マルコフ決定過程(POMDP)理論を用いることによって、どのタスクを行うべきかの指示をエージェントが理解できるようにするとともに、各タスクの遂行においてどのような情報処理を行えばよいかを、エージェント自身が自動的に最適化できるようにすることを目指している。昨年度は、発達尺度のタスクのうちで言語に関連するものを複数個行うことのできるエージェントを作製する計画としており、「言葉を聞いて対応する絵を指さす(1歳7ヶ月レベル)」、「絵を見てその名称を答える(2歳0ヶ月レベル)」、「円がいくつか描かれた絵を見て円の個数を答える(3歳9ヶ月レベル)」などについては行えるようになった。今年度は、それに加えて「2本の棒を見てどちらが長いかを答える(2歳9ヶ月レベル)」などについて研究を進め、まだ完成には至っていないが、行える目処がついた。また、昨年度は、各タスクの遂行においてどのような情報処理を行えばよいかについて、モデル有り型強化学習を用いて自動的に最適化することに成功していたが、今年度は、モデル有り型強化学習に汎化能力を持たせ、最適化に要する時間を短縮させることに成功した。また、強化学習ではなく、階層的な確率モデルを用いた最適化手法を用いるアプローチについても研究し、実装までは行うことができた(現在、性能評価を行っている)。本研究は、発達尺度のタスクのうちで言語に関連するものを多数行うことのできるエージェントを開発することを目的としている。その際、部分観測マルコフ決定過程(POMDP)理論を用いることによって、どのタスクを行うべきかの指示をエージェントが理解できるようにするとともに、各タスクの遂行においてどのような情報処理を行えばよいかを、エージェント自身が自動的に最適化できるようにすることを目指している。本年度は、発達尺度のタスクのうちで言語に関連するものを複数個行うことのできるエージェントを作製する計画としており、例えば、「言葉を聞いて対応する絵を指さす(1歳7ヶ月レベル)」、「絵を見てその名称を答える(2歳0ヶ月レベル)」、「2本の棒を見てどちらが長いかを答える(2歳9ヶ月レベル)」、「円がいくつか描かれた絵を見て円の個数を答える(3歳9ヶ月レベル)」などから少なくとも2個以上のタスクを行えるようにする予定としていたが、上記のうち「2本の棒を見てどちらが長いかを答える(2歳9ヶ月レベル)」を除く3個のタスクについては概ね行えるようになった。さらに、個々のタスクをOpenRTM-aistを用いて複数のモジュールの組み合わせで実現するようにし、各タスクに対して、その実現に必要なモジュールの組合せを、モデル有り型強化学習を用いて自動的に最適化することにも成功した。また、物体の名称を聞いてその形状を推定するなどの、上記以外のタスクについても研究を進めることができた。本研究は、発達尺度のタスクのうちで言語に関連するものを多数行うことのできるエージェントを開発することを目的としている。その際、部分観測マルコフ決定過程(POMDP)理論を用いることによって、どのタスクを行うべきかの指示をエージェントが理解できるようにするとともに、各タスクの遂行においてどのような情報処理を行えばよいかを、エージェント自身が自動的に最適化できるようにすることを目指している。今年度は、タスクの数が増えた場合の検討を行った。特に、各タスクの遂行においてどのような情報処理を行えばよいかをエージェント自身が自動的に最適化する部分について、主に学習の側面から研究を進めることができた。この最適化は、画像認識や音声認識など個別の情報処理を行うモジュールをあらかじめいくつか用意しておき、それらをタスクごとに適切な順序で組み合わせて用いることで、それぞれのタスクに必要な情報処理を実現するというものであるが、昨年度までは、その最適化のために必要な各モジュールの動作モデルを設計者が手で与える必要があり、非常に手間がかかっていた。そこで今年度は、エージェントが自らの経験に基づいて各モジュールの動作モデルを自動的に学習できるようにした。さらに、帰納論理プログラミングを用いて汎化学習を可能にしたことで、タスクの数が増えても少数の経験から学習できるようにし、例えばタスクの数が12個の場合に、100試行程度で学習可能であることなどを示した。本研究では、発達尺度のタスクのうちで言語に関連するものを多数行うことのできるエージェントを開発することを目的とした。その際、部分観測マルコフ決定過程(POMDP)理論を用いることによって、どのタスクを行うべきかの指示をエージェントが理解できるようにするとともに、各タスクの遂行においてどのような情報処理を行えばよいかを、エージェント自身が自動的に最適化できるようにすることを目指した。前年度までで、「言葉を聞いて対応する絵を指さす(1歳7ヶ月レベル)」、「絵を見てその名称を答える(2歳0ヶ月レベル)」、「2本の棒を見てどちらが長いかを答える(2歳9ヶ月レベル)」、「円がいくつか描かれた絵を見て円の個数を答える(3歳9ヶ月レベル)」などのタスクを行えるようにした。 | KAKENHI-PROJECT-24500277 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24500277 |
部分観測マルコフ決定過程理論に基づく発達尺度の言語関連タスクの包括的実現 | また、タスクの遂行を細かな処理モジュールの組み合わせで実現するようにし、どのように各モジュールを組み合わせれば求められたタスクを遂行できるかをエージェント自身がモデル有り型強化学習により自動的に最適化できるようにした。その際に必要となる各モジュールの動作モデルはエージェントが経験から自動的に学習できるようにし、その学習には帰納論理プログラミングを用いて汎化能力をもたせたことで、タスクの数が増えても少数の経験から学習できるようにした。本年度はさらに、強化学習ではなく階層的な確率モデルを用いた最適化手法を用いるアプローチに関して研究を進めた。特に、階層的な確率モデルの学習に関して論文を発表することができた。本研究では、発達尺度のタスクのうちで言語に関連するものを多数行うことのできるエージェントを開発することを目的とし、「円がいくつか描かれた絵を見て円の個数を答える(3歳9ヶ月レベル)」などを行うロボットを開発することができた。さらに、各タスクの遂行に必要な情報処理を機能要素モジュールの組み合わせによって実現し、それらのモジュールの組み合わせ方はエージェント自身が自動的に最適化するようにしたことで、多くのタスクを行うエージェントを効率的に開発できるようにした。発達尺度の言語関連タスクを多数実現することと、どのような情報処理をすればよいかを最適化することに関しては、ある程度研究を進めることができた。しかし、指示の理解についてまだあまり研究を進めることができていない。また、情報処理の最適化に関して階層的な確率モデルを用いた最適化手法を検討したが、性能評価に想定以上に時間がかかり論文発表が遅れてしまったため、次年度の課題としたい。人工知能研究期間を一年延長していただいたため、未達成の部分の研究を着実に行う。前述の通り進展はしたが、まだ完成していない部分が多い。特に、指示をエージェントが理解する部分に、POMDP理論に基づく手法を十分効果的に使用できていない。また、本年度は、発達尺度に詳しい心理学の専門家に判定してもらう予定であったが、それもできなかった。遅れている理由は、今年度は研究以外の業務が多く研究を行える時間が少なかったためであり、研究上で特に問題が発生しているわけではない。各種タスクの実現については、前述の通り計画以上に進めることができた。しかし、未達成の事項として、指示をエージェントが理解する部分や、情報処理の最適化の部分に、POMDP理論に基づく手法を十分効果的に使用できていないことが挙げられる。このように、計画以上に進んだ部分と、計画通りには進まなかった部分とがあるが、平均しておおむね順調に進展しているものと考える。進まなかった部分は次年度に取り返したい。ロボットが故障したことや、性能評価のために想定以上に時間がかかったことにより、論文投稿が遅れてしまった。そのため、投稿用に残していた額(英文校正費を含む)が未使用となってしまった。今後は、未達成の部分について研究を進める。特に、「指示をエージェントが理解したり、情報処理を最適化したりする際に、POMDP理論に基づく手法を使用する」という部分について研究を進める。 | KAKENHI-PROJECT-24500277 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24500277 |
脳動脈瘤形成メカニズムに関する生化学的および免疫組織学的検討 | 【方法】千葉大学脳神経外科および関連病院の受診した、頸部内頸動脈狭窄の評価が行われた脳梗塞患者を対象に、インフォームド・コンセントを得て採血を行った。ヒト微小血管内皮細胞由来cDNAライブラリーを組み込んだλZAPIIファージを、大腸菌に感染させ内皮細胞由来タンパク質を発現させた。タンパク質をニトロセルロース膜に転写後、上述の脳梗塞患者血清に反応する陽性プラークを同定した。塩基配列を決定し抗原タンパク質を同定した。同定したタンパク質を組み換えタンパク質として精製し、ELISA法による血中抗体価の測定を行った。【結果】10例の頸動脈狭窄病変患者血清のスクリーニングで、39種のクローンを抗原タンパク質候補として同定した。6種類のタンパク質の精製を行い、ELISA法により128人の血中抗体価を測定した。6種のタンパク質のうち、Replication protein A2に対する抗体価が高度動脈硬化患者血清で高価を示した。多変量解析の結果、Replication protein A2に対する抗体価は高血圧、糖尿病、高脂血症などの古典的動脈硬化のリスクファクターなどと独立して高度動脈硬化と関連していた。【結語】今後、脳動脈瘤患者を対象にした前向き研究により、脳動脈瘤破裂の予測マーカーとしての有用性を検討してゆく予定である。【基礎的研究】先に行った疫学的調査において,くも膜下出血の危険因子であることが明らかとなった,喫煙の血清酵素活性に及ぼす影響を動物実験により検討した。タバコの主流煙抽出液をラットの腹腔内に投与し,投与後経時的に動脈採血をした。プロテアーゼ活性の経時的変化を,ザイモグラフィーにより検出した。結果:ザイモグラフィーでは経時的に変化するプロテアーゼ活性を認めた。インヒビターを用いた検討により,matrix metalloproteinase (MMP)と考えられた。MMP markerとの比較よりMMP 9と考えている。結論:メタロプロテアーゼをはじめとする細胞外マトリックス代謝に関与する複数の酵素が,タバコ主流煙の腹腔内投与により経時的に活性変化を示すことが明らかとなった。酵素活性変化と動脈瘤形成の関係に関しては,今後の検討が必要である。【臨床的研究】作業仮説:破裂前脳動脈瘤壁において,動脈壁修復などのダイナミックな生化学的病態が存在し,血管壁の未熟なタンパクや分解産物などが産生されている。方法:インフォームド・コンセントを得たくも膜下出血および未破裂脳動脈瘤患者の血清を用いて,SEREX法による一次スクリーニングを行った。続いて,一次スクリーニングで得られたマーカー候補に対してWestern blotting法による二次スクリーニングを行った。結果:現在20例の患者の一次スクリーニングが終了し,約100クローンが単離された。単離されたタンパクの性質をインターネット上で検索するとともに,動脈瘤形成および破裂のマーカーとなりうるか検討を行っている。【方法】千葉大学脳神経外科および関連病院の受診した、くも膜下出血または未破裂脳動脈瘤患者、頸部内頸動脈狭窄による脳梗塞患者を対象に、インフォームド・コンセントを得て採血を行った。ヒト臍帯静脈内皮細胞由来cDNAライブラリーを組み込んだλZAPIIファージを、大腸菌に感染させ内皮細胞由来タンパク質を発現させた。タンパク質をニトロセルロース膜に転写後、上述の脳動脈瘤および脳梗塞患者血清に反応する陽性プラークを同定した。塩基配列を決定し抗原タンパク質を同定した。【結果】20例の脳動脈瘤患者血清のスクリーニングで107種、4例の頸動脈狭窄病変患者血清のスクリーニングで24種のクローンを抗原タンパク質候補として同定した。同定されたタンパク質の機能分類の内訳は、脳動脈瘤患者血清では細胞接着関連13%、転写・翻訳関連7%、細胞骨格、酵素、小胞輸送、、細胞外マトリックス関連がそれぞれ4%だった。一方頸部内頸動脈狭窄患者血清と反応したクローンは増殖因子、核酸修飾がそれぞれ8%、酵素4%であり、動脈瘤患者より得られたクローンと傾向の違いを認めた。また脳動脈瘤患者より得られたクローンのうちSPARC(Secreted protein, acidic, cysteine-rich),LGALS9(lectin, galactoside-binding, soluble,9)はSAGE法によって脳動脈瘤壁で発現が上昇している遺伝子として同定されたものと同一であった。【方法】千葉大学脳神経外科および関連病院の受診した、頸部内頸動脈狭窄の評価が行われた脳梗塞患者を対象に、インフォームド・コンセントを得て採血を行った。ヒト微小血管内皮細胞由来cDNAライブラリーを組み込んだλZAPIIファージを、大腸菌に感染させ内皮細胞由来タンパク質を発現させた。タンパク質をニトロセルロース膜に転写後、上述の脳梗塞患者血清に反応する陽性プラークを同定した。塩基配列を決定し抗原タンパク質を同定した。同定したタンパク質を組み換えタンパク質として精製し、ELISA法による血中抗体価の測定を行った。【結果】10例の頸動脈狭窄病変患者血清のスクリーニングで、39種のクローンを抗原タンパク質候補として同定した。6種類のタンパク質の精製を行い、ELISA法により128人の血中抗体価を測定した。6種のタンパク質のうち、Replication protein A2に対する抗体価が高度動脈硬化患者血清で高価を示した。多変量解析の結果、Replication protein A2に対する抗体価は高血圧、糖尿病、高脂血症などの古典的動脈硬化のリスクファクターなどと独立して高度動脈硬化と関連していた。【結語】今後、脳動脈瘤患者を対象にした前向き研究により、脳動脈瘤破裂の予測マーカーとしての有用性を検討してゆく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-14657335 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14657335 |
ストキャスティックモデルを用いたガラス転移の研究 | 本研究の主たるテ-マは、過冷却液体中の原子にみられるストキャスティックな運動をトラッピング拡散模型を用いて表し、ガラス転移点近傍の過冷却液体の動的性質を理解するとともに、ガラス転移に対する知見を得ることである。ノンガウシアンパラメ-タ-が極大となる時間からガラス転移を有限時間のシミュレ-ションから決定する方法を開発した。これを用いてソフトスフェア-系のガラス転移点がΓ=1.58と決定された。次に、モデルと実在系との対応づけを行うとともにモデルの妥当性を検討するために、原子のジャンプ運動の待ち時間分布を比較した。ソフトコア系の原子のジャンプ運動を解析し、待ち時間分布関数が巾関数のテイルを持つことが示された。これは、ジャンプ率が巾関数分布をするトラッピング拡散模型から期待されるものと一致しており、モデルの妥当性が確立された。さらに、待ち時間分布の比較から、トラッピング模型のパラメ-タ-(巾関数分布の巾)とソフトコア系の熱力学変数(カップリング定数)との具体的な関係式を得た。また、ある物理量を与えられた精度内で求めるために必要な時間は、ガラス転移点で急激に増加すること、従って準異常拡散がガラス転移点より上で起ることによって見掛上の転移が見られることを示した。さらに有限時間での振舞の解析を詳しく行うために、トラッピング拡散模型の中間散乱関数および動的構造因子を解析した。準異常拡散によって、中間散乱関数が引伸ばされた指数関数型の減衰をする或いは動的構造因子に巾関数型の減少をする振動数領域が有るといういわゆるαー緩和の特徴が現れることを示した。ジャンプ率の分布と自由体積、配置エントロピ-との関連についても考察を深めた。本研究の主たるテ-マは、過冷却液体中の原子にみられるストキャスティックな運動をトラッピング拡散模型を用いて表し、ガラス転移点近傍の過冷却液体の動的性質を理解するとともに、ガラス転移に対する知見を得ることである。ノンガウシアンパラメ-タ-が極大となる時間からガラス転移を有限時間のシミュレ-ションから決定する方法を開発した。これを用いてソフトスフェア-系のガラス転移点がΓ=1.58と決定された。次に、モデルと実在系との対応づけを行うとともにモデルの妥当性を検討するために、原子のジャンプ運動の待ち時間分布を比較した。ソフトコア系の原子のジャンプ運動を解析し、待ち時間分布関数が巾関数のテイルを持つことが示された。これは、ジャンプ率が巾関数分布をするトラッピング拡散模型から期待されるものと一致しており、モデルの妥当性が確立された。さらに、待ち時間分布の比較から、トラッピング模型のパラメ-タ-(巾関数分布の巾)とソフトコア系の熱力学変数(カップリング定数)との具体的な関係式を得た。また、ある物理量を与えられた精度内で求めるために必要な時間は、ガラス転移点で急激に増加すること、従って準異常拡散がガラス転移点より上で起ることによって見掛上の転移が見られることを示した。さらに有限時間での振舞の解析を詳しく行うために、トラッピング拡散模型の中間散乱関数および動的構造因子を解析した。準異常拡散によって、中間散乱関数が引伸ばされた指数関数型の減衰をする或いは動的構造因子に巾関数型の減少をする振動数領域が有るといういわゆるαー緩和の特徴が現れることを示した。ジャンプ率の分布と自由体積、配置エントロピ-との関連についても考察を深めた。トラッピング拡散模型を用いたガラス転移の詳細な研究が行われた。まず、ガウシアン・ノンガウシアン転移点を有限時間のシミュレ-ションによっても容易に決定できる方法の開発を試みた。原子の微小振動を考慮に入れると、振動による平均二乗変位とジャンプ運動によるそれとが同程度になる時にノンガウシアンパラメ-タ-が極大となることに着目した。この時刻は、ガラス転移点に近づくと急速に大きくなり、従ってその振舞いから転移点を決定できることを示した。これを用いてソフトスフェア-系のガラス転移点がΓ=1.58と決定された。次にモデルの妥当性を検討するためにレジデンスタイム分布の比較を行った。トラッピング拡散模型のレジデンスタイム分布は巾関数のテイルを持ち、ガラス転移点に近づくとテイルが長くなる。分子動力学によっても同様の振舞いが見られモデルの妥当性が示されるとともに、トラッピング拡散模型のパラメ-タ-とソフトスフェア-系のパラメ-タ-の定量的な関係が求められた。また、分子動力学によって観測されているΓ=1.45付近のダイナミックスにおける転移を説明するためにアパレントグラスという概念を導入した。アパレントグラスは準異常拡散の出現(平均2乗変位にtの1次式以外にも発散する項が現われる)によって、時間のスケ-ルによっては異常拡散が観測される領域として定義される。現在定量的な解析を行なっており、トラッピング拡散模型によってガラス転移点近傍のダイナミックスを統一的に説明することを試みている。本研究の主たるテ-マは、過冷却液体中の原子にみられるストキャスティックな運動をトラッピング拡散模型を用いて表し、ガラス転移点近傍の過冷却液体の動的性質を理解するとともに、ガラス転移に対する知見を得ることである。まず、モデルと実在系との対応づけを行うとともにモデルの妥当性を検討するために、原子のジャンプ運動の待ち時間分布を比較した。ソフトコア系の原子のジャンプ運動を解析し、待ち時間分布関数が巾関数のテイルを持つことが示された。これは、ジャンプ率が巾関数分布をするトラッピング拡散模型から期待されるものと一致しており、モデルの妥当性が確立された。 | KAKENHI-PROJECT-02640275 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02640275 |
ストキャスティックモデルを用いたガラス転移の研究 | さらに、待ち時間分布の比較から、トラッピング模型のパラメ-タ-(巾関数分布の巾)とソフトコア系の熱力学変数(カップリング定数)との具体的な関係式を得た。つぎに、アパラントガラス転移の本質にせまるため、有限時間のシミュレ-ションによって求められる物理量の観測時間依存性を、トラッピング拡散模型によって解析した。ある物理量を与えられた精度内で求めるために必要な時間は、ガラス転移点で急激に増加すること、従って計算機シュミレ-ションに必要な時間が飛躍的に大きくなること、また準異常拡散がガラス転移点より上で起ることによって見掛上の転移が見られることを示した。さらに有限時間での振舞の解析を詳しく行うために、トラッピング拡散模型の中間散乱関数および動的構造因子を解析した。準異常拡散によって、中間散乱関数が引伸ばされた指数関数型の減衰をする或いは動的構造因子に巾関数型の減少をする振動数領域が有るといういわゆるαー緩和の特徴が現れることを示した。ジャンプ率の分布と自由体積、配置エントロピ-との関連についても考察を深めた。 | KAKENHI-PROJECT-02640275 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02640275 |
無人電池推進船による浅岸域海洋試料採取に関する研究 | 本研究の目的は、世界最高性能の無人電池推進船を開発し、海洋探査機器として、我が国の喫緊の課題である原子力発電所の海水モニタリング及び浅岸域海洋試料採取を行うことである。平成29年度は、引き続き、1)急速充電対応型電池推進船の完全無人化・サンプリング採取装置の自動化、2)母船・陸上施設とのデータ通信・充電設備設置として、a)船体・資料採取機器改造設計→b)船体無人化改造→c)海洋試料採取機器自動化→d)陸上試験を既存の電池推進船について行い、電池推進船に試料採取機器・GPSなどを取り付けるなどの改造を行った。11月、10月に行った海上無人航行試験及びその解析をもとに、「無人電池推進船を用いた世界最高性能(出力、安定性)の海洋探査機器の開発」の達成について課題を整理した。その結果当初の予測に反し、主として対波浪性の観点から推進・無線操縦システム等船舶構造が安全航行するには不十分であると判明したため、既存の電池推進船のさらなる改造を行った。また1年を通しての外洋域の海象気象に対応した海水モニタリングのためには、電池推進船の対波浪性・位置保持性能の抜本的な向上が必要であることも判明したため、全く新しい船舶の減揺システムを考案し予備実験を行った結果、これまでにない6成分の減揺が可能になることが明らかになっている。並行して電池推進船の推進効率および操作性向上のためのモータ制御に関する予備実験を平成28年度に継続して行い、これまでのモータ推進船のプロペラ推進に比較して新しいプロペラ作動検知を提唱することができたため、2件の特許(プロペラ近傍のキャビテーション気泡及び巻き込み気泡の検出方法及びプロペラ負荷検出方法)を出願した。また以上の結果を専門学会誌に3件の論文として投稿した。平成29年度は、1)急速充電対応型電池推進船の完全無人化・サンプリング採取装置の自動化、2)母船・陸上施設とのデータ通信・充電設備設置として、a)船体・資料採取機器改造設計→b)船体無人化改造→c)海洋試料採取機器自動化→d)陸上試験を既存の電池推進船について行い、電池推進船に試料採取機器・GPSなどを取り付けるなどの改造を行った。11月、10月に行った海上無人航行試験及びその解析をもとに、「無人電池推進船を用いた世界最高性能(出力、安定性)の海洋探査機器の開発」の達成について課題を整理した。その結果当初の予測に反し、主として対波浪性の観点から推進・無線操縦システム等船舶構造が安全航行するには不十分であると判明したため、既存の電池推進船のさらなる改造を行った。3ヶ年目となる平成30年度は、これまでの成果を踏まえて平成29年度以降に予定していた海上試験を踏まえた船体・試料採取機器改造設計を前倒して、早期に海上遠隔操縦の安定化を実施し、本研究目的である「無人電池推進船を用いた世界最高性能(出力、安定性)の海洋探査機器の開発」をさらに加速する。具体には、東京海洋大学繋船場及び富山高等専門学校近傍での海上試験を行った後に、福島第一原子力発電所もしくはその他の原子力発電所港内での海水モニタリング試験を実施し、「無人電池推進船を用いた世界最高性能(出力、安定性)の海洋探査機器の開発」の達成のための課題点の抽出と解決を行う。これまで用いてきた既存の電池推進船は、船体疲労による劣化が激しいこと、及び平水使用のため外洋の使用に適さないことから、新しい船体建造の検討も行う予定である。また1年を通しての海象気象に対応した海水モニタリングのためには、対波浪性・位置保持性能のさらなる向上が必要であることから、平成29年度に考案し、予備実験を行った、新しい船減揺・位置保持システムについて開発を継続し、特許出願を行う。本研究の目的は、無人電池推進船を用いた世界最高性能(出力、安定性)の海洋探査機器を研究開発し、これらを用いて喫緊の課題である原子炉事故汚染水の解明及び海底火山島噴火・生物再生メカニズムを解明することである。研究初年度である平成28年度は、1)急速充電対応型電池推進船2隻の完全無人化・サンプリング採取装置の自動化、2)母船・陸上施設とのデータ通信・充電設備設置として、a)船体・資料採取機器改造設計→b)船体無人化改造→c)海洋試料採取機器自動化→d)陸上試験を「らいちょうI」について行った。「らいちょうI」については、試料採取機器・GPSなどを取り付けた場合の重心・メタセンタ(浮力中心)の予備試算と保有している採取機器の取り付けを行っている。その結果、本年度実施計画の船体無人化改造について著しい進展があり(上記a)→d)の実施が順調であった)、平成29年度に予定していた海上遠隔操縦試験を既に2回実施した。その海上遠隔操縦試験及びその解析結果をもとに、これも平成29年度に実施予定であった海上試験を踏まえたらいちょうIの改造も経費(部品、消耗品等)を前倒使用して行った。この結果、本研究の目的である「無人電池推進船を用いた世界最高性能(出力、安定性)の海洋探査機器の開発」の達成について、早期に問題点を洗い出すことができ、平成29年度以降にこの問題点を十分に対処できる時間を設けることができている。 | KAKENHI-PROJECT-16H02431 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H02431 |
無人電池推進船による浅岸域海洋試料採取に関する研究 | また当初の計画以外に、無人電池推進船のプロペラ推進効率向上のためのモータ制御に関する予備実験を並行して行い、これまでのプロペラ制御に比較して新しいプロペラ作動検知を提唱することができたため、2件の特許を出願準備中であり、学会発表予定他、学会誌(Journal of the Japan Institute of Marine Engineering)に論文として投稿査読中である。初年度である平成28年度は、実施計画の船体無人化改造について著しい進展があり、平成29年度に予定していた海上遠隔操縦試験を既に2回実施した。その海上遠隔操縦試験及びその解析結果をもとに、これも当初は平成29年度に実施予定であった海上試験を踏まえたらいちょうIの改造も経費(部品、消耗品等)を前倒使用して行った。この結果、本研究の目的である「無人電池推進船を用いた世界最高性能(出力、安定性)の海洋探査機器の開発」の達成について、早期に操縦プログラムなどの問題点を洗い出すことができ、平成29年度以降にこの問題点を十分に対処できる時間を設けることができている。また当初の計画以外に、無人電池推進船のプロペラ推進効率向上のためのモータ制御に関する予備実験を並行して行い、これまでのプロペラ制御に比較して新しいプロペラ作動検知を提唱することができたため、2件の特許を出願準備中であり、学会発表他、学会誌(Journal of the Japan Institute of Marine Engineering)に論文として投稿査読中である。本研究の目的は、世界最高性能の無人電池推進船を開発し、海洋探査機器として、我が国の喫緊の課題である原子力発電所の海水モニタリング及び浅岸域海洋試料採取を行うことである。平成29年度は、引き続き、1)急速充電対応型電池推進船の完全無人化・サンプリング採取装置の自動化、2)母船・陸上施設とのデータ通信・充電設備設置として、a)船体・資料採取機器改造設計→b)船体無人化改造→c)海洋試料採取機器自動化→d)陸上試験を既存の電池推進船について行い、電池推進船に試料採取機器・GPSなどを取り付けるなどの改造を行った。11月、10月に行った海上無人航行試験及びその解析をもとに、「無人電池推進船を用いた世界最高性能(出力、安定性)の海洋探査機器の開発」の達成について課題を整理した。その結果当初の予測に反し、主として対波浪性の観点から推進・無線操縦システム等船舶構造が安全航行するには不十分であると判明したため、既存の電池推進船のさらなる改造を行った。また1年を通しての外洋域の海象気象に対応した海水モニタリングのためには、電池推進船の対波浪性・位置保持性能の抜本的な向上が必要であることも判明したため、全く新しい船舶の減揺システムを考案し予備実験を行った結果、これまでにない6成分の減揺が可能になることが明らかになっている。並行して電池推進船の推進効率および操作性向上のためのモータ制御に関する予備実験を平成28年度に継続して行い、これまでのモータ推進船のプロペラ推進に比較して新しいプロペラ作動検知を提唱することができたため、2件の特許(プロペラ近傍のキャビテーション気泡及び巻き込み気泡の検出方法及びプロペラ負荷検出方法)を出願した。また以上の結果を専門学会誌に3件の論文として投稿した。平成29年度は、1)急速充電対応型電池推進船の完全無人化・サンプリング採取装置の自動化、2)母船・陸上施設とのデータ通信 | KAKENHI-PROJECT-16H02431 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H02431 |
運動前野と前頭前野の冷却による小脳外側核ニューロンの発射活動の変化 | サルの小脳外側核尾部のニューロンは前頭前野および吻側運動前野からの入力を受け、視床運動核内側部に投射することから主に運動前野に出力すると考えられる。これらは遅延条件付きGO/NO-GO課題の遂行中、視覚刺激に対し、短潜時(50-110ms)の応答とそれに続くやや長潜時の応答を示すが、より吻側に位置する運動野と尾側運動前野のみから入力を受け、運動野に出力する外側核ニューロンは、視覚応答としては後者のみを示す。以上のことが先行研究からわかっていた。本研究で、前頭前野主溝腹側部、および吻側運動前野を冷却すると、各々の領野から入力を受ける外側核ニューロンの短潜時視覚応答が減弱することから、この応答の一部は前頭前野の活動に依存することが明らかとなった。また本研究とこれまでのデータから、やや長潜時の視覚応答の半数以上がGO試行とNO-GO試行で異なる発射変化を示すことが分かった。この課題ではGO/NO-GOの区別を知らせる二度目の光刺激は、どちらの試行でも同じ赤か緑のLEDであるため、視覚応答の違いは刺激の持つ意味の違いを反映している可能性が高く、GO/NO-GOの判断に関与する活動と思われる。このような長潜時の応答は、短潜時視覚応答が運動前野に出力されて同野の視覚関連活動を増強し、その結果が小脳に再入力されて生じるとも考えられる。前頭前野入力は外側核尾部のニューロンに短潜時視覚応答を生じさせることにより、次のGO/NO-GOの判断に関与する認知的活動を始動させると思われる。サルの小脳外側核尾部のニューロンは前頭前野および吻側運動前野からの入力を受け、視床運動核内側部に投射することから主に運動前野に出力すると考えられる。これらは遅延条件付きGO/NO-GO課題の遂行中、視覚刺激に対し、短潜時(50-110ms)の応答とそれに続くやや長潜時の応答を示すが、より吻側に位置する運動野と尾側運動前野のみから入力を受け、運動野に出力する外側核ニューロンは、視覚応答としては後者のみを示す。以上のことが先行研究からわかっていた。本研究で、前頭前野主溝腹側部、および吻側運動前野を冷却すると、各々の領野から入力を受ける外側核ニューロンの短潜時視覚応答が減弱することから、この応答の一部は前頭前野の活動に依存することが明らかとなった。また本研究とこれまでのデータから、やや長潜時の視覚応答の半数以上がGO試行とNO-GO試行で異なる発射変化を示すことが分かった。この課題ではGO/NO-GOの区別を知らせる二度目の光刺激は、どちらの試行でも同じ赤か緑のLEDであるため、視覚応答の違いは刺激の持つ意味の違いを反映している可能性が高く、GO/NO-GOの判断に関与する活動と思われる。このような長潜時の応答は、短潜時視覚応答が運動前野に出力されて同野の視覚関連活動を増強し、その結果が小脳に再入力されて生じるとも考えられる。前頭前野入力は外側核尾部のニューロンに短潜時視覚応答を生じさせることにより、次のGO/NO-GOの判断に関与する認知的活動を始動させると思われる。9年度の実験により、サルの前頭前野(PF)と運動前野(PM)の両方の電気刺激に応答を示す単一小脳核ニューロンは、光刺激を手がかりとする認知運動課題において、短潜時の視覚性応答を示すことが判ってきた。視覚性応答がどちらの皮質領野からの入力に依存するかを調べるために各皮質領野の冷却による同応答の変化を観察する計画に基づき、10年度は、冷却実験用サルの課題訓練を開始した。これと併行して上記の記録実験を継続し、組織学的検索を行った結果、以下の知見が得られた。1.外側核の最後尾1/4に位置するニューロンはPFとPMのみから、その前の1/4区分に位置するものは両野に加えて運動野からも、外側核前1/2のニューロンはPMと運動野のみから入力を受ける。2.短潜時視覚性応答を示すニューロンは小脳外側核の後1/2に局在し、視床VL核の吻背内側部により多く投射する(同部の刺激に低閾値逆行性応答を示すものが多い)。VL核吻背内側部は、PMにも投射すること、PMには視覚性応答を示すニューロンが多数存在することが知られているので、PF、あるいはPMから小脳へ送られた視覚情報は、外側核尾部から視床を経て、PMに送り返される可能性が高い。この回路は、随意運動の実行よりも、外界の状況に合った運動パターンを選択することに関与するのではないかと想像される。冷却実験については、一頭目のサルが昨年末に死亡したため、二頭目のサルを訓練しほぼ完了したところである。冷却槽、冷温水の配管切り替え装置などの準備は完了しており、今後、MRI撮影、電極刺入点の決定を行い、約二カ月後には電極、冷却槽の取り付け手術を行う予定である。サルの前頭前野(PF)と運動前野(PM)の両方の電気刺激に応答を示す単一小脳核ニューロンは、光刺激を手がかりとする認知運動課題において、短潜時の視覚性応答を示す。視覚性応答がどちらの皮質領野からの入力に依存するかを調べるために各皮質領野の冷却による小脳核ニューロン発射活動の変化を観察している。 | KAKENHI-PROJECT-10680763 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10680763 |
運動前野と前頭前野の冷却による小脳外側核ニューロンの発射活動の変化 | 現在、実験記録中のサルは、11年8月に、刺激電極(大脳皮質、視床)および、大脳皮質冷却槽の取り付け手術を行い、9月より認知運動課題の再訓練、11月より、皮質冷却が同課題の遂行に及ぼす影響を観察した。12年1月中旬よりニューロン活動の記録を開始し、冷却ポンプ、熱電対温度計など計画どおり作動し、ユニット記録に支障がないことが確認された。現在までに8個の小脳核ニューロンについて冷却の効果を観察し得たが、短潜時の視覚性応答を示すニューロンについては、まだその効果を調べられていない。(サルが、2-3時間大きな体動なく課題を遂行することに十分慣れていないので、視覚性応答を示すニューロンが集中している部分の調査はもう少し慣れてから行う予定)なお、研究の主目的からずれるが、前頭前野主溝腹側部(PSv)を17-18°C以下で約15分間冷却すると痙攣発作が高頻度に生ずることが観察された。(現在は20°C以上で観察)大脳皮質から外部への出力は興奮性とされているので、冷却で皮質ニューロン活動を抑えることが痙攣発作を誘発することは意外であり注目すべきことと思われる。前頭前野PF(PSv、PSd)、吻側運動前野PMr、尾側運動前野PMc(PMd、PMv)および運動野(Mot)に刺激電極を、また前3者には冷却槽を設置し、遅延条件付きGO/NO-GO課題を訓練した1頭のサルを用い、45個の小脳核ニューロンについて、大脳皮質電気刺激に対する応答PSTHにより前頭葉皮質各部からの入力を調べ、かつ、それらの課題遂行時の発射活動を観察できた。PFあるいはPMrから入力を受けるニューロンの大多数は、課題に用いた光刺激(LED)に対して短潜時(110ms以下)の応答を示すことが確認された。これらのほとんど(43)が視床電気刺激に対し逆行性応答を示し視床への投射が確認された。26個のニューロンで大脳皮質の1カ所または23カ所の冷却の効果を調べた。PFの主溝腹側部PSvの冷却をテストした9個のニューロンのうち7個で、またPMrの冷却では15個中5個で、短潜時視覚応答の減弱が見られた。PMdの冷却による短潜時視覚応答の減弱は7個中2個で見られたが、2例とも同じニューロンに対するPSv,PMr冷却の効果に比べ減弱の程度は弱かった。以上の結果から小脳外側核ニューロンの短潜時視覚応答の一部は前頭前野の活動に依存することが明らかになった。この種の小脳核ニューロンは、短潜時の応答に続いて、やや潜時の長い(110180ms)視覚応答を示す。本実験および以前のデータからその半数以上はGO試行とNO-GO試行で異なった応答を示すことが明確になった。この課題GO/NO-GOの区別を知らせる二度目の光刺激は、どちらの試行でも同じ赤か緑のLEDであるため、視覚応答の違いは刺激の持つ意味の違いを代表している可能性が高く、GO/NO-GOの判断に関与し得る。短潜時視覚応答はその後に続く認知的活動のきっかけになるように思われる。 | KAKENHI-PROJECT-10680763 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10680763 |
磁気浮上技術を用いた低溶血・無血栓ディスポーザブル血液ポンプの研究 | 本研究では,インペラを磁気軸受によって浮上する磁気浮上遠心血液ポンプを提案している.平成22年度は,1.使い捨てインペラに永久磁石を内蔵した1次試作機の2ヵ月の長期動物実験,および2.使い捨てインペラに永久磁石を内蔵しない磁気浮上遠心血液ポンプの評価,3.血液ポンプ用磁気軸受のコントロールシステムの小型化を実施した.1.1次試作機の長期動物実験生体適合性評価のため,東京医科歯科大学と連携して,仔牛を用いた長期動物実験を実施し,2ヵ月の連続運転に成功した.本実験を通して,市販血液ポンプよりも血栓形成の発生が少なかったことから,インペラを磁気浮上することによる生体適合性向上を確認している.2.使い捨てポンプヘッドに永久磁石を用いない磁気浮上遠心血液ポンプ使い捨てポンプヘッドの低コスト化,安定供給のため,インペラ内部にレアアース磁石を内蔵しない磁気浮上血液ポンプを提案している.本年度はその評価を実施した。具体的には,Hinfinity制御を磁気軸受に適用することで安定した磁気浮上を実現し,臨床使用範囲をカバーする0-4000rpmの回転数において非接触回転を実現している.ポンプ性能は最大で流量5L/min,揚程600mmHgを実現し,臨床時に要求される性能の3倍を実現した.3.磁気軸受コントロールシステムの小型化本血液ポンプは体外設置型であるが,コントローラや電源系を小型化し,患者が持ち運び可能なポータブルシステムとすることを目標としている.その第一段階として,埋め込みシステムを導入することで,磁気軸受用コントロールシステムをA5用紙程度のボードに集約することに成功した.従来の使い捨て遠心血液ポンプでは,血液吐出用の羽根車(インペラ)を接触式軸受で支持することによる,低耐久性,血球破壊,血栓形成が問題になっている.そこで,本研究では,インペラを磁気軸受によって浮上する,磁気浮上遠心血液ポンプを提案している.平成20年度は,(1)インペラの形状が血球破壊に及ぼす影響,(2)動物実験に向けたポンプ性能の評価と向上,および(3)動物実験を行った.(1)インペラ形状が血球に及ぼす影響では,血液吐出用のインペラが羽を有するベーン型インペラと,羽根を有さないコーン型インペラを設計・試作し,血球破壊量の比較を行った.その結果,ベーン型インペラの方が血球破壊量が少ないことが明らかとなった.なお,ベーン型インペラは,血球破壊量が臨床使用されている血液ポンプの半分程度であり,磁気浮上の有効性を確認している.(2)動物実験に向けたポンプ性能の評価と向上では,実用レベルの流量5L/min,揚程800mmHgの性能が達成できるように,インペラにモータトルクを伝達する機構の改良と試作を行った.その結果,5L/min,810mmHgの性能を達成している.また,救急車内の振動を模擬した基盤加振・衝撃試験を実施し,ポンプの安定動作を確認した.これらの実験を通し,試作ポンプの高信頼性を実証している.(3)動物実験では,ポンプ内の血栓特性を評価するため,人間の成人に近い体重60kg程度の仔牛に試作血液ポンプを接続した.8頭実施したところ,12週間の生存に成功し,実験後にポンプヘッドを分解・観察したところ,血栓形成は一切見られず,従来の血液ポンプで問題となっている血栓形成に関しても,解決の兆しが見られた.(1)(3)の研究成果を通し,提案する血液ポンプが従来の血液ポンプよりも血球破壊,血栓形成の点で優れている可能性が示唆された.また,高信頼性を有することが実証された.本研究では,インペラを磁気軸受によって浮上する磁気浮上遠心血液ポンプを提案している.平成21年度は,1.使い捨てポンプヘッドにインペラ磁気浮上・回転用の永久磁石を用いた1次試作機の動物実験,および2.使い捨てポンプヘッドに永久磁石を用いない磁気浮上遠心血液ポンプの提案・設計を実施した.1.1次試作機の動物実験血栓特性を評価するため,東京医科歯科大学の協力のもと,仔牛を用いた2週間程度の動物実験を実施した.その際,心臓の左心室と大動脈に試作血液ポンプを接続し,左心室脱血・下行大動脈送血とした.その結果,これまでに3頭の子牛が2週間の生存に成功し,インペラを磁気浮上することの有効性を確認している.また,長期運用時の生体への影響や,ポンプシステムの耐久性等を確認するため,約一カ月の動物実験も1例実施し,仔牛の生存に成功している.2.使い捨てポンプヘッドに永久磁石を用いない磁気浮上遠心血液ポンプ1次試作機ではインペラ内部に浮上・回転用のネオジム磁石を使用していたが,ネオジム磁石の個々のばらつきが比較的大きく,量産時に高精度回転の維持が困難となることが懸念される.また,レアメタルへの依存の観点からも望ましくない.そこで,使い捨て部に永久磁石を使用しない磁気軸受を提案した.本磁気軸受は,インペラ内部に埋め込んだロータの径方向を電磁石で能動的に制御し,軸・傾き方向を再利用部に用いた永久磁石のバイアス磁束で受動的に支持する2自由度制御型磁気軸受である.設計の際,十分な耐衝撃性を確保するため,磁気軸受の支持剛性が1次試作機と同等となるように磁気回路を工夫した.提案する磁気軸受を適用した2次試作機を用いてインペラの磁気浮上を試みたところ,液体中にてインペラの磁気浮上・非接触回転を実現し,磁気軸受の動作を確認した. | KAKENHI-PROJECT-08J07168 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J07168 |
磁気浮上技術を用いた低溶血・無血栓ディスポーザブル血液ポンプの研究 | 今後は,2次試作機を動物実験に適用する予定である.本研究では,インペラを磁気軸受によって浮上する磁気浮上遠心血液ポンプを提案している.平成22年度は,1.使い捨てインペラに永久磁石を内蔵した1次試作機の2ヵ月の長期動物実験,および2.使い捨てインペラに永久磁石を内蔵しない磁気浮上遠心血液ポンプの評価,3.血液ポンプ用磁気軸受のコントロールシステムの小型化を実施した.1.1次試作機の長期動物実験生体適合性評価のため,東京医科歯科大学と連携して,仔牛を用いた長期動物実験を実施し,2ヵ月の連続運転に成功した.本実験を通して,市販血液ポンプよりも血栓形成の発生が少なかったことから,インペラを磁気浮上することによる生体適合性向上を確認している.2.使い捨てポンプヘッドに永久磁石を用いない磁気浮上遠心血液ポンプ使い捨てポンプヘッドの低コスト化,安定供給のため,インペラ内部にレアアース磁石を内蔵しない磁気浮上血液ポンプを提案している.本年度はその評価を実施した。具体的には,Hinfinity制御を磁気軸受に適用することで安定した磁気浮上を実現し,臨床使用範囲をカバーする0-4000rpmの回転数において非接触回転を実現している.ポンプ性能は最大で流量5L/min,揚程600mmHgを実現し,臨床時に要求される性能の3倍を実現した.3.磁気軸受コントロールシステムの小型化本血液ポンプは体外設置型であるが,コントローラや電源系を小型化し,患者が持ち運び可能なポータブルシステムとすることを目標としている.その第一段階として,埋め込みシステムを導入することで,磁気軸受用コントロールシステムをA5用紙程度のボードに集約することに成功した. | KAKENHI-PROJECT-08J07168 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J07168 |
睡眠・覚醒時のヒスタミンニューロンが示す活動変化の制御メカニズムの解明 | 睡眠・覚醒中のマウスの脳内から、睡眠・覚醒の各状態の発現に重要な役割を果たすとされている種々のニューロン群の活動を記録した。状態の移行期においてそれらの活動がどのような順序で変化するかを調べた結果、覚醒時に活動するニューロンの活動変化が睡眠時に活動するニューロンの活動変化よりも早く起きていることが明らかになった。睡眠の開始においては、睡眠中枢から覚醒系ニューロン群への抑制ではなく、覚醒系ニューロン群の脱促通の連鎖が最初の重要なステップであると考えられた。睡眠・覚醒中のマウスの脳内から、睡眠・覚醒の各状態の発現に重要な役割を果たすとされている種々のニューロン群の活動を記録した。状態の移行期においてそれらの活動がどのような順序で変化するかを調べた結果、覚醒時に活動するニューロンの活動変化が睡眠時に活動するニューロンの活動変化よりも早く起きていることが明らかになった。睡眠の開始においては、睡眠中枢から覚醒系ニューロン群への抑制ではなく、覚醒系ニューロン群の脱促通の連鎖が最初の重要なステップであると考えられた。本研究は、睡眠開始時のヒスータミン(HA)ニューロンの活動停止は視索前野(POA)の睡眠ニューロンの活動開始よりも先に起こるというこれまでの解析結果を、HAニューロンとPOAニューロンを同時に記録することで、脳波変化を基準とせず直接比較し、証明することを目指している。本年度はまずPOAの領域内にどのような睡眠ニューロンが存在し、睡眠ニューロン以外のニューロンにはどのようなものがあるかを網羅的に探索し、把握することから開始した。その結果、POAの睡眠ニューロンはこれまで示唆されていたよりも広範囲に分布し、覚醒時に特異的に発火するニューロン群も多数混在していることがあきらかになった。また、外側部のアセチルコリンニューロンの分布域では、覚醒及び逆説睡眠時にのみ低頻度で持続的な発火を示すニューロン群が見つかった。(現在アセチルコリンニューロンであることを証明する実験を行っている。)単に睡眠中枢として考えられているPOAにおいて、多数の覚醒ニューロンが示されたことは、脳内の睡眠・覚醒調節機を考える上で重要な知見となった。これらの発火パターンを詳細に解析した結果、POAの内部で覚醒ニューロンと睡眠ニューロンの両者が相互抑制し、この系が脳幹などからの修飾を受けて睡眠・覚醒を調節するモデルを提案した(Neuroscience 2009 (in press))。2箇所同時記録については、予備的な実験により方法論を確立しつつある。マルチユニット記録については、本研究課題グループ内での連携により、実際め記録を始める体制になりつつある。前年度より引き続き、ヒスタミン(HA)ニューロンを含めた覚醒系ニューロン群のふるまいを明らかにするため、青斑核(LC)のノルアドレナリン(NA)ニューロンの単一ニューロン活動記録を行った。その結果、LC-NAニューロンは覚醒の開始時に、これまでに記録したHAニューロン、オレキシンニューロン、視索前野(POA)覚醒ニューロン等のどの覚醒ニューロン群よりも早く活動を開始することがわかった。睡眠の開始(覚醒の終了)時にも、LC-NAニューロンはHAと共にPOA睡眠ニューロンの活動開始に先行して活動を低下させていた。これらの結果は睡眠・覚醒の切り替えにおいて、POA睡眠ニューロンではなく覚醒ニューロン群の活動変化が重要であるという我々の仮説を支持している。HAニューロンに対してNAは、間接的に興奮性作用を持つことが示されており、覚醒ニューロン群の連鎖的な活動変化のメカニズムが考えられる。POA睡眠ニューロンとの同時記録についても実験装置の工夫などにより可能であることがわかったが、長時間安定させるのが難しく、現在も記録実験を続けているところである。また、連携研究者の小山、辛島らとともに、多点記録用電極の開発、テストを行っており、脳幹において数個のニューロンを同時に記録できるようになった。今後はこの方法の利点を生かして、安定したニューロン活動記録を行い、脳幹やPOAを含む視床下部での2か所同時記録の質を高める。目的.我々は最近マウスの視索前野(POA)及び前脳基底部(BFB)において睡眠時あるいは覚醒時に特異的に活動するニューロン(睡眠ニューロン/覚醒ニューロン)を見出し、睡眠・覚醒状態の移行期おけるPOA/BFB睡眠ニューロンの活動の変化は、POA/BFB覚醒ニューロン及び視床下部後部(PH)のヒスタミンニューロンやオレキシンニューロン等の覚醒ニューロンの活動変化に遅れることを示した。この睡眠・覚醒の切替機構をさらに明らかにするため、POA/BFBの睡眠/覚醒ニューロン活動を調節しているとされる青斑核(LC)ノルアドレナリン(NA)ニューロンの単一ユニット活動をマウスの睡眠・覚醒サイクルで記録した。結果.LC-NAニューロンは覚醒時に不規則な持続的活動を示し、徐波睡眠開始の指標である脳波の同期化に先行して活動を完全に停止した。この移行期において、LC-NAニューロンの活動は徐波睡眠およびPOA/BFB睡眠ニューロンの活動開始に1秒程度先行して有意に低下していた。音による覚醒刺激に対しては、単発又は2-3発のスパイクによる応答を示し、その潜時は11.2±1.9ms(平均±標準偏差、n=48)と短かった。自発的な徐波睡眠から覚醒への移行期では、覚醒の指標となる脳波の脱同期化の前にスパイク発火を開始した。 | KAKENHI-PROJECT-20500288 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20500288 |
睡眠・覚醒時のヒスタミンニューロンが示す活動変化の制御メカニズムの解明 | その先行時間は、移行期に頸筋電図の大きな変動を伴う場合には361.1±129.2ms(平均±標準偏差、n=105)、変動を伴わない場合には986.4±549.1ms(n=208)であり、POA/BFBやPHの覚醒ニューロンのそれよりも有意に長かった。結論。以上の結果は、LC-NAニューロンの活動が持続的かつ相同的な覚醒の維持に関与し、その活動の変化が覚醒と睡眠の切替機構においてきわめて重要な役割を果たしていることを示唆している。 | KAKENHI-PROJECT-20500288 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20500288 |
Subsets and Splits