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心音曲面二次元関数処理
携帯性に優れ個人が自宅でも使用できる、心音を録音し、その曲面(三次元グラフ)の二次元関数処理に基づき自動診断するシステムを試作した。システムは、集音及び録音する録音系、録音された音をWAVEデータとして記録する記録系、WAVEデータをx軸を周波数、y軸を時間、z軸を振幅量とした曲面に変換する処理系、曲面から病名を診断する人工知能から成る。着衣時の良好な聴診の為に、ベルの大型化が課題である。また、録音系と記録系の小型化が課題である。収集できた健全者20名の心音は大きな個人差を示し、人工知能の学習には曲面の情報小型化と共により多くのデータを必要とする。非健全者の心音データの収集も今後の課題である。研究目的:心音データを録音し、その音データに基づき健康度や病変を自動診断できるプログラムの構築を目指す。遠隔地等における診断手法、或いは若手医師の育成手法として活用される事を期待する。また、健康や病理のメカニズムの解明等につながれば良いと思っている。進捗状況1)過去の研究事例などの調査:従来からなされてきている心音図の診断について、技術整理中。その自動化に関する研究事例を調査中。また、市販されている心音診断に関する主な教科書を調査し、CDサンプルが幾つかあったのでそれを入手した。また、何人かの医師に聴診のやり方を尋ね、その内容の整理方法も含めてべースとすべき聴診方法についてを思案検討中。進捗状況2)録音系の検討:現存する録音機能付き聴診器を調査した。精度が良いと思われるものはLitmann製のものであり、それで取得した音は汎用書式でない電子データとなるので、今回の研究に適さない事が確認された。そこで、高性能マイクを選別し、それに治具を付与して録音できる様、録音系システムを構築中。小径マイク(三研製COS-11D)を聴診器に直結させる方法が、現在の最有力。なお、その方法で録音した心音や市販サンプルをWAVEデータ書式で取り出し、それをTXTデータに変換し、様々なデータ処理が可能である事を確認した。進捗状況3)データ処理方法の検討:一般的な医師の診断過程に基づき、脈波リズム、各波ピーク値等の主要代表値を音データから抽出する事を検討中。一方、各医師の持つノウハウを調査予定。従来の診断過程を考慮しないデータ処理方法も検討中。ニューラルネットワークの使用(学習方法)を検討中。研究目的:心音データを録音し、その音データに基づき健康度や病変を自動診断できるプログラムの構築を目指す。遠隔地等における診断手法、或いは若手医師の育成手法として活用される事を期待する。また、健康や病理のメカニズムの解明等につながれば良いと思っている。進捗状況1)過去の研究事例等の調査:従来の心音図の診断や教科書については、調査と整理を暫定完了した。平成27年度にも継続調査するが、追加がなければ完了とする。暫定結果を後述の出力形式に反映する。自動診断に関する事例については、継続調査中。CDによるサンプルについてはCD差が大き過ぎる為に、基準音となり得るかどうかを含め、調査と検討を継続中。進捗状況2)録音系の一次構築:暫定完了した。但し、雑音除去や携帯性等の観点により、予算の範囲内で可能な精度向上を継続中。進捗状況3)録音データの画像化:プログラムを暫定完成。但し、汎用性を考えると操作性に改善を要するので、平成27年度に改善を検討する。また、並行してExcelによる簡易的なデータ可視化ツールを作成予定。進捗状況4)ニューラルネットワークの構築:録音データのニューラルネットワークへの入力イメージの検討中。医師のノウハウのプログラム化は困難と判明したので、単純学習を最初に試みる。進捗状況5)心音データ:集積中。但し、患者からの録音については難航、病変音をCD音と方針を変更したが、CDによっても音がかなり異なるので、本件医師も交えて検討中。出力方法は、従来の心音診断項目について、それぞれの危険度を出力する形式で試験的に研究を進める事とする。携帯性に優れ、個人が自宅にて使用できる最終形態を見据え、心音を録音し、その二次元曲面に基づき自動診断するシステムの構築を目的に、以下の成果を得た。システムを、集音及び録音する録音系、録音された音をWAVEデータとして記録する記録系、WAVEデータをx軸を周波数、y軸を時間、z軸を振幅量とした二次元曲面に変換する処理系、二次元曲面から病名を診断する人工知能から構成した。1)録音系を、既存の聴診器やマイクロフォンを活用し自作した。聴診器やマイクロフォンは日進月歩なので、今後も調査を継続する。自己聴診の為の聴診器の改善点を幾つか見出した。大型の膜無し面(オープンベル面)を用いるべきだが、特定の病気に対応する膜面も効果的と推察された。2)記録系を、既存のオーディオ関連機器ソフトを用いて自作した。携帯する為の小型化は、今後の課題としたい。3)二次元曲面をTXT形式で出力可能な処理系を、R言語で自作した。従来問題だったデータの互換性、可塑性、操作性等が改善された。4)心音のデータをある程度集積し、それぞれの二次元曲面データを得た。一方、約20名の健全者から心音データを採取した。
KAKENHI-PROJECT-25350573
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25350573
心音曲面二次元関数処理
非健全者の心音データを当初患者から採取する予定だったが、個人情報取扱制度の厳格化により予定外に難しくなり、市販の医療教育用CDサンプル音を用いざるを得なかった。データ増しを今後の重要課題としたい。5)ニューラルネットワークの学習に関して、一定の見解を得た。一方、健全心音の個体差が予想以上に大きく、データ増しが必要との結論に至った。時間軸方向より周波数方向に関して個体差が大きく、年齢、性別、身長、性格、運動経歴等に依存する可能性が見られた。非健全者のデータについても同様である。個体差や雑音に対する抵抗力を高める事を今後の重要課題としたい。携帯性に優れ個人が自宅でも使用できる、心音を録音し、その曲面(三次元グラフ)の二次元関数処理に基づき自動診断するシステムを試作した。システムは、集音及び録音する録音系、録音された音をWAVEデータとして記録する記録系、WAVEデータをx軸を周波数、y軸を時間、z軸を振幅量とした曲面に変換する処理系、曲面から病名を診断する人工知能から成る。着衣時の良好な聴診の為に、ベルの大型化が課題である。また、録音系と記録系の小型化が課題である。収集できた健全者20名の心音は大きな個人差を示し、人工知能の学習には曲面の情報小型化と共により多くのデータを必要とする。非健全者の心音データの収集も今後の課題である。幾つか変更点が発生し、都度対応している。いよいよ、心音図の自動診断手法研究がありながら心音の自動診断手法が少ない理由に直面したと云う事である。<変更>心音の実データの病院での入手が困難につき、CD音を学習させる事と予定を変更して進める。この為、平成26年度予定のモデル心音による診断システムの学習が未完。<変更>録音系の部品調達が現時点で完備されていないので、この点について調査中。(マイクが故障した時点で、心音録音が出来なくなる。)<変更>予算削減部分はニューラルネットワークの自作により解消。健全者の心音データ集積中。平成27年度予定の診断システムの入力雑音感受性の評価は前倒し検討中で、音響系の構築はほぼ完成。計算力学正常心音録音を、現在進行中。可能な限り集積する。5月末までに、マイク調査とニューラルネットワークの基本試学習を負える。今後の最大の問題は、実際に患者から録音できるかどうか。無理な場合、CDによるサンプル音での評価を行う。今のところ工学院大学単独で進められる内容なので、研究計画通り進んでいる。但し、装置やソフトウェアの予定変更などがあり、予定も適宜変更しながら進めている。ニューラルネットワーク構築を独自に実施した。患者からの心音データを録音できなかった。等の計画変更による。東京医科大学との連携と、実際の心音採取のための倫理審査などによるタイミングロスに注意して進める。また、予算額が削減された結果、やり方を一部変更工夫しているので、今後大きなしわ寄せが来ない様に注意して進める。録音系のバックアップ及び心音録音の被験者を集める為に費用が発生すると思われる。また、学会発表を行っていく。予算額減額につき、測定手段を一部変更工夫する等したため、購入予定物が変更となったため。
KAKENHI-PROJECT-25350573
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25350573
交渉による時系列データのプライバシ保護に関する研究
スマートフォンの普及やGPS測位機器の発達等により,人々の位置情報が正確かつ容易に把握できるようになっている.最終年度は,位置情報プライバシ選好の推薦と道路ネットワークにおける位置情報プライバシ保護に関する研究を行った.位置データは様々な応用が可能であり,その有用性に基づくニーズから,それらを売買する市場の整備も始まっている.しかし一方で,正確に位置情報を公開することには個人が特定されてしまうなどのプライバシリスクも伴う.そのためには,まず,位置情報プライバシ選好,すなわち“ある場所と時間において,位置情報を公開するかどうか"を指定することが必要となるが,ユーザにとって,このような選好を全ての場所と時間に関して把握し指定することは難しい.そこで本研究ではユーザの意思決定を支援するために,オンラインショッピングサイトなどで利用される商品推薦の概念を利用し,位置情報プライバシ選好を推薦するシステムを提案した.実験によって,予測の正誤,真の評価値と予測の誤差について評価を行い,提案手法がプライバシ保護を満足しながら高い有用性を担保していることを示した.また,位置情報プライバシ保護のために,従来は自分の位置情報を送る前に,ランダムな雑音を加えることでプライバシを保護する摂動法が提案されているが,道路ネットワークを考慮していなかった.近くのレストランを探すなどの近傍検索などの位置情報サービスは,道路ネットワークを用いた方が近傍が正確に表されることから,より良いサービスを提供可能である.そこで,このような位置情報サービスを対象とし,プライバシ保護の強さと雑音付加後の情報の有用性を両立させた摂動法の手法を開発した.研究機関全体を通じ,各ユーザ個人の要求に応じたプライバシ保護基準でパーソナルデータを収集,解析し,公共的利益を創出するための基盤技術を開発した.まず,個人時空間データを活用するための厳密で柔軟なプライバシ保護の枠組みに関する研究を行った.具体的には,プライバシ情報漏洩リスクを数学的に厳密に表現可能な差分プライバシに基づき,時間的な相関があるデータのためのプライバシモデルを開発すると共に,データ漏洩の程度を定量化する手法の開発,データ保護手法の開発を行った.既存の差分プライバシはデータには時間的な相関関係がないと仮定する。しかし、時系列データには通常,時間的依存関係が存在することが多いため,ある対象期間の統計値の開示がその対象期間より過去や未来のデータに対する情報をある程度漏洩することになる.その上、一般に攻撃者はこのような相関関係を容易に取得できる。本研究では、攻撃者がマルコフモデルでモデル化できる時間的な相関関係の知識を持つ場合でも、差分プライバシを達成する方法を提案した。具体的には、既存研究で提案されたプライバシ保護機構を時間的な相関があるデータを保護できる機構に転換する方法を設計した。次に,差分プライバシの概念に基づいて地図上の場所を曖昧化する手法であるgeo識別不能性を拡張することにより,自宅の位置などのような移動経路の端点を曖昧化する手法を開発した.これにより,自宅などプライバシ保護が必要な場所は保護程度を高くする一方で駅の近くなど公共性が高い地域の移動経路情報は少ない誤差で収集することが可能となる.さらに,多数の個人が自らの移動経路,購買履歴,心拍データなどの時系列データに対し個人識別ができない程度に雑音を加えた後に売却し,会社などはそのような大量のパーソナルデータの統計情報を購入できるパーソナルデータ市場に関する研究を行った.各利用者のプライバシ保護レベルに対する要求には個人差があるため,それを反映したパーソナルデータ市場の価格機構に関する研究を行った.時間的な相関があるデータのプライバシモデルは,相関をマルコフモデルでモデル化できる場合は,データ漏洩確率の定量化手法を与えた.また,既存研究で提案されたプライバシ保護機構を時間的な相関があるデータを保護できる機構に転換する方法を開発したため,提案した枠組みは高い汎用性を持つ.この成果の論文は,データ工学のトップカンファレンスであるIEEE ICDE2017に採択された.また,差分プライバシの概念に基づき移動経路の端点を曖昧化し自宅などの位置情報を保護する手法は基本的な実験によりその有用性を確認した.さらに,パーソナルデータ市場の価格付けに関する研究では,個人のパーソナルデータ保護に対する要求の程度を調査するため,クラウドソーシングにより大規模アンケートを実施し,概ね保護要求の程度が異なる二つの利用者群が存在することを確認した.プライバシ情報は適切に保護すると共にそれらを収集,解析し公益に資することも重要である.本研究では,心拍などの生体データ,購買履歴データ,移動履歴データなど個人の日常生活により生成される有用性を持つパーソナルデータの多くは時系列データであることに着目し,時系列パーソナルデータのプライバシ保護と価値評価を課題とし研究を行った.現在,プライバシ情報漏洩リスクを数学的に厳密に表現可能な差分プライバシが広く研究されている.しかし,差分プライバシは,生年月日,血液型などの静的な個別データを対象として開発されたため,差分プライバシを時系列データに適用可能できるように拡張し,現実の状況を反映するため,特に次の点の拡張,精緻化を行った.(a)各利用者のプライバシ保護レベルに対する要求には個人差があるため,それを反映したプライバシ保護機構とする.(b)時系列データには通常,過去のデータと現在のデータが関連しているなど時間的依存関係が存在するため,ある対象期間の統計値の開示が,その対象期間より過去や未来のデータに対する情報をある程度漏洩することになる.このような時間依存性によるプライバシ漏洩リスクを明らかにした.
KAKENHI-PROJECT-16K12437
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K12437
交渉による時系列データのプライバシ保護に関する研究
また,パーソナルデータ市場において各個人が市場機構とプライバシ漏洩の程度と対価に関する契約を結び,データ購買者は要求するデータに関する問合せと予算を提示する場合に,各個人のプライバシ保護要求を満たしながら,購買者に対しては低価格でしかも雑音印加の程度を低く抑えるための手法を開発した.時系列データに対し差分プライバシを適用した場合のプライバシ漏洩の程度を定量化し,IEEE ICDE国際会議及びIEEE TKDE論文誌に発表した.パーソナルデータ市場における各個人のプライバシ保護要求を満たしながら取引を促進する手法についてはACM SIGIR eCommerceワークショップで発表した.また,移動経路における経路端点の曖昧化手法を開発し日本データベース学会論文誌に発表した.スマートフォンの普及やGPS測位機器の発達等により,人々の位置情報が正確かつ容易に把握できるようになっている.最終年度は,位置情報プライバシ選好の推薦と道路ネットワークにおける位置情報プライバシ保護に関する研究を行った.位置データは様々な応用が可能であり,その有用性に基づくニーズから,それらを売買する市場の整備も始まっている.しかし一方で,正確に位置情報を公開することには個人が特定されてしまうなどのプライバシリスクも伴う.そのためには,まず,位置情報プライバシ選好,すなわち“ある場所と時間において,位置情報を公開するかどうか"を指定することが必要となるが,ユーザにとって,このような選好を全ての場所と時間に関して把握し指定することは難しい.そこで本研究ではユーザの意思決定を支援するために,オンラインショッピングサイトなどで利用される商品推薦の概念を利用し,位置情報プライバシ選好を推薦するシステムを提案した.実験によって,予測の正誤,真の評価値と予測の誤差について評価を行い,提案手法がプライバシ保護を満足しながら高い有用性を担保していることを示した.また,位置情報プライバシ保護のために,従来は自分の位置情報を送る前に,ランダムな雑音を加えることでプライバシを保護する摂動法が提案されているが,道路ネットワークを考慮していなかった.近くのレストランを探すなどの近傍検索などの位置情報サービスは,道路ネットワークを用いた方が近傍が正確に表されることから,より良いサービスを提供可能である.そこで,このような位置情報サービスを対象とし,プライバシ保護の強さと雑音付加後の情報の有用性を両立させた摂動法の手法を開発した.研究機関全体を通じ,各ユーザ個人の要求に応じたプライバシ保護基準でパーソナルデータを収集,解析し,公共的利益を創出するための基盤技術を開発した.差分プライバシは異なる利用者のデータ間に相関関係がないと仮定する。しかし、利用者の社会活動により生産されたデータには相互に関連性が存在する場合がある。攻撃者がこの関連性に関する知識を持っていれば、差分プライバシの保護レベルが下がる可能性がある。本研究では、差分プライバシのプライバシ漏洩を定量化し、利用者データ間の相関がある場合にデータを保護できる機構について研究を推進する予定である.
KAKENHI-PROJECT-16K12437
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K12437
線形表現のモジュライ空間と非可換トーション不変量
当研究課題は基本群の線形表現のなす空間と3次元多様体の非可換トーション不変量の研究の相互発展を図った.その結果,3次元多様体を本質的に分解するような全ての曲面は,高次元表現のなす空間の無限遠点から構成されることが明らかになった.また,トーション不変量を線形表現のなす空間の上の関数と見做すことで,無限遠点から構成される曲面のホモロジー類が当関数のその点におけるある正則性によって制限されることが見出された.更に,数論的位相幾何学の見地から,結び目に対して有限体上の2次元表現の変形が定める新しいトーション不変量が導入された.基本群の線形表現のモジュライ空間と3次元多様体の非可換トーション不変量の研究の相互発展を図ることを目的として研究を行った.当該年度は,主に,線形表現の変形から構成される3次元多様体内の曲面とその変形に伴う非可換トーション不変量の値の変化についての研究を行った.その結果,これらの間に予想されていた関係を裏付け,非可換トーション不変量をモジュライ空間上の関数と見做すことで現れる新しい応用を提示することができた.具体的には,以下の成果が得られた.CullerとShalenによって,基本群の複素2次元表現のモジュライ空間である指標多様体の無限遠点から3次元多様体を本質的に分解するような曲面を構成する理論が確立されている.また,基本群の線形表現に付随して定まる3次元多様体のねじれAlexander多項式は,非可換トーション不変量の一種であることが知られており,多項式の各係数は指標多様体上の正則関数を誘導することが分かる.研究代表者は,指標多様体の無限遠点から複雑性が最小であるような非分離的な曲面が構成されるならば,ねじれAlexander多項式の最高次係数が誘導する関数はその無限遠点において収束することを示した.帰結として,結び目補空間の指標多様体とねじれAlexander多項式に関するDunfield,Friedl,Jacksonによる予想を肯定的に部分解決し,当予想を一般の3次元多様体の場合にまで拡張することに成功した.基本群の線形表現のモジュライ空間と3次元多様体の非可換トーション不変量の研究の相互発展を図ることを目的として研究を行った.当該年度は,高次元線形表現が導く多様体の分解の追及をテーマとして,主に,高次元線形表現の変形から3次元多様体内の曲面を構成する理論の整備を進め,当理論によって構成される曲面の集合を決定することに取り組んだ.その結果,そのような集合を完全に特徴付けることに成功し,研究分野を大きく発展させることができた.具体的には以下の成果が得られた.CullerとShalenによって,基本群の複素2次元表現のモジュライ空間である2次元指標多様体の無限遠点から3次元多様体を本質的に分解するような曲面を構成する理論が確立されている.更に,Culler-Shalen理論の高次元線形表現に対する場合への拡張として,研究代表者と原隆氏の共同研究によって,高次元指標多様体の無限遠点からも3次元多様体を本質的に分解するような(分岐を許す)曲面を構成する方法が見出されている.また,古典的な理論においては,分岐を持たない本質的曲面であって,2次元指標多様体の無限遠点からは構成されないものがあることが知られている.研究代表者は,Stefan Friedl氏とMatthias Nagel氏との共同研究において,分岐を持たない全ての本質的曲面はある次元の指標多様体の無限遠点から構成されることを明らかにした.帰結として,研究代表者と原隆氏によるCuller-Shalen理論に関する予想を肯定的に解決した.当該年度に計画していた,対応する曲面が分岐を持たないための指標多様体の無限遠点に関する十分条件の研究においては,そのような無限遠点を実際に構成する方法を見出すことができ,分岐を持たない本質的曲面が理論によって全て構成されることまで明らかにできた.より精密な十分条件を研究する余地は多分に残されているが,当初の計画とは異なる方向に研究が円滑に進展し,研究分野を大きく発展させる成果を得ることができた.基本群の線型表現のモジュライ空間と3次元多様体の非可換トーション不変量の研究の相互発展を図ることを目的として研究を行った.当該年度は,数論的位相幾何学の見地から,Galois表現とその変形に対して期待される諸命題について,3次元多様体論における類似を追究することをテーマとして,主に,3次元多様体の基本群に対して有限体上の線型表現の変形理論を展開し,表現の普遍的な変形に付随して定まるトーション不変量の性質を明らかにすることに取り組んだ.具体的には以下の成果が得られた.森下昌紀氏,丹下稜斗氏,寺嶋郁二氏との共同研究において,まず,結び目群の有限体上の2次元線型表現の普遍変形に付随するねじれAlexander加群は,適当な条件の下でねじれ加群であることを示した.これは,MazurがGalois表現の普遍変形のSelmar群の性質に対して提唱していた問題の,結び目群に対する類似的命題と見做せる.そして,このSelmar加群に付随する代数的p進L関数の類似物として,結び目群のねじれAlexander加群に付随するL関数を導入した.更に,幾らかの2橋結び目とそれらの2次元線型表現に対するL関数を明示的に計算した.この計算例においては,代数的p進L関数の零点に関してMazurが提唱していた問題の,結び目群に対する類似についても確認することができた.
KAKENHI-PROJECT-26800032
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26800032
線形表現のモジュライ空間と非可換トーション不変量
また,東京大学数理科学研究科において開催された国際研究集会The 12th East Asian School of Knots and RelatedTopicsの組織委員を務めた.集会では,3次元多様体のトーション不変量を含め,低次元トポロジーなど結び目理論に関連する諸話題を巡って,広く学術交流が行われた.集会には多くの若手研究者が参加し,当該分野の今後の発展に寄与するものと期待される.初年度の研究において,Culler-Shalen理論とトーション不変量との関連を新しく見出したが,本年度は,この成果を更に発展させる上で課題となっていた,数論的位相幾何学の見地に立った研究を大きく進めることができた.また,当初計画していた,3次元以上の線型表現による3次元多様体の本質的分解の究明については,昨年度までの研究において既に十分な成果が得られているが,もう一つの研究テーマであるクラスター代数の応用との関連において,その理解を更に深める研究が進展中である.基本群の線形表現のモジュライ空間と3次元多様体の非可換トーション不変量の研究の相互発展を図ることを目的として研究を行った.最終年度は,3次元多様体内の本質的曲面のCuller-Shalen構成の拡張について研究し,構成される曲面のホモロジーがSL_n-指標多様体上の特別な関数の正則性によってどのように制限されるかを記述した.まず,Culler,Gordon,Luecke,Shalenによる結果の一般化として,トーラス境界を持つような3次元多様体に対して,構成される本質的曲面の境界スロープは境界上のループに付随するSL_n-指標多様体上の基本的な関数の理想点における正則性によって決まることを証明した.また,初年度に得た成果の一般化として,理想点が固定されたホモロジー類を代表するような本質的曲面を与えるためのトーション不変量に関する必要条件を提示した.この必要条件は,ねじれAlexander多項式の最高次係数が誘導するSL_n-指標多様体上の関数の理想点における正則性によって定式化される.研究期間全体を通じて,高次元線形表現のモジュライ空間の幾何学を低次元位相幾何学に応用する研究の基礎付けを進めることができた.特に,古典的なCuller-Shalen理論の基礎的な成果をSL_n-指標多様体の場合に拡張し,一般化された理論によって全ての本質的曲面が捉えられることを明らかにした.更に,理論においてトーション不変量が有効に応用されることを見出し,数論的位相幾何学との関連研究の理解を深めた.当研究課題は基本群の線形表現のなす空間と3次元多様体の非可換トーション不変量の研究の相互発展を図った.その結果,3次元多様体を本質的に分解するような全ての曲面は,高次元表現のなす空間の無限遠点から構成されることが明らかになった.また,トーション不変量を線形表現のなす空間の上の関数と見做すことで,無限遠点から構成される曲面のホモロジー類が当関数のその点におけるある正則性によって制限されることが見出された.更に,数論的位相幾何学の見地から,結び目に対して有限体上の2次元表現の変形が定める新しいトーション不変量が導入された.当該年度に計画していた,3次元多様体の非可換
KAKENHI-PROJECT-26800032
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26800032
山羊の培養乳腺細胞における有用物質遺伝子の導入と発現に関する研究
山羊の乳腺上皮細胞に有用物質を導入して発現させるためには前段階として乳腺細胞の恒常的増殖の獲得と、導入するゲノムDNAあるいはcDNAの精製が必要である。今回の研究ではその基礎的実験を行ってその可能性を探るのにとどまり、導入と発現については今後の研究の進展に待つ事になった。先ず山羊乳腺上皮細胞の培養については材料採取が簡単な乳汁中の上皮細胞の培養法を確立するとともに培養細胞の形態について観察を行った。即ち、通常の培養においては10%にウシ胎児血清を添加しているが、山羊乳汁由来乳腺上皮細胞の培養においては30%で良好な結果が得られることが判明した。培養細胞の形態については継代を重ねるに従って多型性を示すようになったが、電子顕微鏡的あるいは免疫組織化学的に上皮細胞の特徴を示していた。次に、生体により近い状態を実現できるとされているコラ-ゲン・ゲル培養法を山羊乳汁由来乳腺上皮細胞に応用した。その結果固定ゲル上では平板培養と大差無かったが、浮遊ゲル上では細胞は円形化して生体内におけると同様の形態を示して増殖した。一方ゲル内に包埋した上皮細胞は増殖しなかった。以上の結果より乳腺上皮細胞の増殖分化には間質線維芽細胞の関与が重要となっているのではないかと言う推測のもとに、線維芽細胞の培養上精添加と同細胞との非接触同時培養を行って比較した。その結果、培養上精は50%混合するのが乳腺上皮細胞の増殖に良好な結果を与えたが、非接触同時培養によりは悪かった。一方、ゲノムDNAの精製に関してはヒトのカルシトニン遺伝子およびカルシトニン遺伝子関連ペプチド遺伝子を用いて、馬の精巣ゲノムDNAの同遺伝子群について解析した。その結果ヒトとウマでは同遺伝子群に構造上の相違が有ることが示唆され、更にサラブレッド種においては比較的均一に同遺伝子が保存されている事が判明した。山羊の乳腺上皮細胞に有用物質を導入して発現させるためには前段階として乳腺細胞の恒常的増殖の獲得と、導入するゲノムDNAあるいはcDNAの精製が必要である。今回の研究ではその基礎的実験を行ってその可能性を探るのにとどまり、導入と発現については今後の研究の進展に待つ事になった。先ず山羊乳腺上皮細胞の培養については材料採取が簡単な乳汁中の上皮細胞の培養法を確立するとともに培養細胞の形態について観察を行った。即ち、通常の培養においては10%にウシ胎児血清を添加しているが、山羊乳汁由来乳腺上皮細胞の培養においては30%で良好な結果が得られることが判明した。培養細胞の形態については継代を重ねるに従って多型性を示すようになったが、電子顕微鏡的あるいは免疫組織化学的に上皮細胞の特徴を示していた。次に、生体により近い状態を実現できるとされているコラ-ゲン・ゲル培養法を山羊乳汁由来乳腺上皮細胞に応用した。その結果固定ゲル上では平板培養と大差無かったが、浮遊ゲル上では細胞は円形化して生体内におけると同様の形態を示して増殖した。一方ゲル内に包埋した上皮細胞は増殖しなかった。以上の結果より乳腺上皮細胞の増殖分化には間質線維芽細胞の関与が重要となっているのではないかと言う推測のもとに、線維芽細胞の培養上精添加と同細胞との非接触同時培養を行って比較した。その結果、培養上精は50%混合するのが乳腺上皮細胞の増殖に良好な結果を与えたが、非接触同時培養によりは悪かった。一方、ゲノムDNAの精製に関してはヒトのカルシトニン遺伝子およびカルシトニン遺伝子関連ペプチド遺伝子を用いて、馬の精巣ゲノムDNAの同遺伝子群について解析した。その結果ヒトとウマでは同遺伝子群に構造上の相違が有ることが示唆され、更にサラブレッド種においては比較的均一に同遺伝子が保存されている事が判明した。昭和62年度における研究は,山羊の乳汁に含まれる脱落細胞が培養可能かどうかについて検討を行った.まず,山羊の乳汁を無菌的に搾乳し,それを軽く遠心して中に含まれる細胞成分を集めて,これをPBSで数回洗浄後,イーグルMEM培地に平板培養した.培養に当たって,牛胎子血清の最適濃度を知るため異なった濃度の牛胎子血清を添加した培地を用いて培養した.その結果,牛胎子血清を含まないもの,あるいは10%及び20%含むものでは脱落細胞はほとんど増殖しないか,しても僅かであった.一方, 30%及び40%牛胎子血清を含む培地では脱落上皮は良好に増殖した.このことにより,山羊乳汁由来の細胞が培養可能であることが判明した.それ故,これらの条件のうち,胎子血清濃度の低い30%の条件を用いて以下の観察を行った.細胞は培養開始後1-2日で培養血に接着し,約5日位経過すると数個の細胞からなる小コロニーを形成した.このようなコロニーは日数の経過と共にその大きさを増し, 10-20日後にはシートを形成した.このようなシートを形成する細胞は紡錘型,立方型及び星型等の種々の形態を示した. 5-6代継代後は主要な細胞組成は長円形と多型性を示す細胞であった.これらの細胞のほとんどは抗ケラチン抗体及び抗アクチン抗体陽性であった.シートを電子顕微鏡で観察すると,細胞は偏平な核を持ち,細胞質は伸張していた.これらの細胞には細胞陥合,微繊毛及び接着装置等の上皮性要素を示す細胞小器官を認めた.
KAKENHI-PROJECT-62560311
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62560311
山羊の培養乳腺細胞における有用物質遺伝子の導入と発現に関する研究
カゼイン粒子や脂肪滴等の乳腺の分泌機能を示すような形態的特徴は今回の培養条件においては見いだすことが出来なかった.今後はこの細胞を用いて乳腺上皮と間質,特に線維芽細胞との関係を検索C_1さらにin vitroにおける分泌機能を発現させるための条件を検討したい.昭和63年度は、62年度に平板培養して得られた山羊乳汁由来の乳腺上皮細胞を、より生体に近い環境を作り出すといわれているコラーゲンゲルを培養基質として用いて培養し、その増殖形態、増殖態度について検討を加えた。即ち、コラーゲンゲルを用いた培養法としては培養血にコラーゲンゲルを付着固定したままその上で培養する方法と、前記の方法である程度まで培養した後ゲルを培養皿から遊離して浮遊状態にしたまま培養する方法、及びコラーゲンゲル内に細胞を埋没して培養する方法の3種である。これらの増殖した細胞は通常の位相差顕微鏡の他に電子顕微鏡的及び免疫組織化学的に検索した。固定したコラーゲンゲル上に培養した場合、細胞は前回の平板培養と同様に伸長した細胞形態と変形状を示した。コラーゲンゲルを培養液中に浮遊したフローティングコラーゲンゲル上で培養した場合には、細胞は円形化し、生体内におけると同様の形態を示した。コラーゲン内で培養した場合、細胞は増殖を止め、次第に変性していった。以上のことより、山羊乳腺上皮細胞をコラーゲンゲルを用いて培養する場合には、浮遊培養法が最も適していると考えられるが、埋没したものについては間質の線維芽細胞が無いため、種々の補助的役割がなされなかったためであろうと考えられ、線維芽細胞との同時培養も検討してみる必要がある。また、今後、ホルモン等の成長或いは分化促進作用を持つ物質の添加による変化も検討する必要があろう。平成元年度は乳腺細胞の恒常的増殖を獲得するための手段の一つとして、コラ-ゲン・ゲルを用いた培養法とインタ-セルを用いた乳腺上皮細胞と乳腺線維芽細胞の非接触同時培養を行った。一方、導入するゲノムDNAあるいはcDNAの精製を行う第一段階としてウマのカルシトニン遺伝子およびカルシトニン関連ペプチド遺伝子を検索した。先ず山羊乳汁由来乳腺上皮細胞前年度のコラ-ゲン・ゲルを用いた実験で、ゲル内に包埋した上皮細胞は増殖しないという結果をえたため、乳腺上皮細胞の増殖分化には間質線維芽細胞の関与が重要な要素となっているのではないかと言う推測のもとに、線維芽細胞の培養上精添加と同細胞との非接触同時培養を行って比較した。その結果、培養上精は50%混合するのが乳腺上皮細胞の増殖に良好な結果を与えたが、非接触同時培養のほうがより良い結果を得るということが判明した。一方、ゲノムDNAの精製に関してはヒトのカルシトニン遺伝子およびカルシトニン遺伝子関連ペプチド遺伝子を用いて、馬の精巣ゲノムDNAの同遺伝子群について解析した。その結果ヒトとウマでは同遺伝子群に構造上の相違が有ることが示唆され、更にサラブレッド種においては比較的均一に同遺伝子が保存されている事が判明した。
KAKENHI-PROJECT-62560311
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身体運動による哺乳類生体リズムの再同調促進メカニズムの解明
明暗サイクルを位相変位させた際に、特定位相でマウスを新規環境に暴露すると、行動リズムの開始位相の再同調が促進されることを発見した.さらに、行動リズムが新たな明暗周期に再同調するまでの移行期では、生物時計の中枢である視交叉上核の遺伝子発現行動リズムは視交叉上核の領域により異なるが、行動リズムの開始と終了との間に強い相関を認めた.これらの結果は、身体運動が視交叉上核内の特定領域に影響する、または、中枢時計と末梢時計間の相互カップリングが強化されることで行動リズムの再同調が促進される、2つの可能性が浮上した.明暗サイクルを位相変位させた際に、特定位相でマウスを新規環境に暴露すると、行動リズムの開始位相の再同調が促進されることを発見した.さらに、行動リズムが新たな明暗周期に再同調するまでの移行期では、生物時計の中枢である視交叉上核の遺伝子発現行動リズムは視交叉上核の領域により異なるが、行動リズムの開始と終了との間に強い相関を認めた.これらの結果は、身体運動が視交叉上核内の特定領域に影響する、または、中枢時計と末梢時計間の相互カップリングが強化されることで行動リズムの再同調が促進される、2つの可能性が浮上した.近年,生物発光レポーターマウスの組織培養系が確立されたことで,生物時計中枢である視交叉上核(中枢時計)だけでなく肝臓、肺、骨格筋など多くの末梢臓器にも時計遺伝子発現とリズム振動がみられることが明らかとなった(末梢時計).時差飛行のように明暗周期を大きく位相シフトさせた際に,末梢臓器の時計遺伝子発現リズムは視交叉上核に比べ再同調が遅延することが報告されており,時差ボケ症状の背後には中枢時計と末梢時計間の脱同調が関わっていることが予測されている.本研究では明暗周期位相シフト後の生体リズム再同調を促進する手段として身体運動に着目し,その可能性とメカニズムを検証することが目的である.平成21年度は,時計遺伝子の1つであるmPerlのプロモーター領域にホタルルシフェラーゼ遺伝子を導入した生物発光レポーターマウス(Perl-luc.マウス)を使用し,明暗周期を8時間位相前進させた際に,位相シフトした暗期開始から3時間,または明期開始までの3時間,回転輪運動を伴う新奇環境に暴露し,新奇環境を負荷するタイミングにより自発活動リズム,視交叉上核、末梢臓器の時計遺伝子発現リズムの再同調速度にちがいがみられるかを検討した.マウスは位相シフトした明暗周期で3サイクル,4回新奇環境へ暴露された後視交叉上核,肝臓,肺,骨格筋を採取しPerl-lucリズムを計測した.自発活動リズムを測定する際には3サイクル後に恒常暗へ移行した直後の行動開始位相から再同調を評価した.その結果,暗期開始から3時間回転輪運動を伴う新奇環境へ暴露すると自発活動リズム,末梢時計の再同調が早期に完了したが,明期開始までの3時間新奇環境へ暴露した群では再同調は完了せず移行期にあった.視交叉上核のPerl-lucリズムは新奇環境暴露のタイミングに関わらず再同調を完了することが分かった.時差飛行のように環境周期が急速に変化すると環境周期と生体リズム間で脱同調が生じ、いわゆる時差ボケ症状を訴える.本研究は、時計遺伝子Perirod1(Per1)のプロモーター支配下に生物発光遺伝子を導入したPer1-lucマウスを用いた組織培養実験および行動リズム実験により、明暗周期位相シフト後の運動が生体リズムの再同調を促進するメカニズムを解明することを目的として行われた.21年度には、明暗周期を8時間前進(東方飛行に相当)させた際に、マウスに回転輪運動を負荷すると行動および骨格筋等の運動に関わる末梢臓器のリズム再同調が促進されるが、運動のタイミングに依存することを明らかにした.しかし、視交叉上核(SCN)のリズムは運動による再同調促進効果は認められず、行動リズムとの乖離がみられた.最近の研究から、日長を変化させるとSCNの領域特異的に遺伝子発現リズムの位相が変化し、視交叉上核内のダイナミズムが行動リズムの制御に関わることが報告されている.そこで、22年度は、SCN内の領域特異的な解析が、回転輪運動による行動リズム再同調促進メカニズムを解明する足がかりになると考え、回転輪運動を負荷しない条件下で、SCNのPer1リズムと行動リズムを明暗周期位相シフト前後で経時的に測定する実験を行った.SCNは、冠状断方向に吻側、中間部、尾側の3領域にわけ、各領域のPer1リズムを測定した.その結果、明暗周期を位相シフトした数日間はSCNの吻側と中間部のPer1リズムは2縫性となり、尾側では単峰性のリズムがみられSCNの領域間ではPer1リズムの位相差が生じていた.行動リズムの解析では、位相シフトした明暗周期に対する位相反応は行動終了位相が開始位相に比べて有意な位相前進がみられ2つの位相が異なる反応性を示した.即ち、明暗周期の位相シフトによりSCNの領域間でPer1発現リズムに位相差が生じることから、各領域のリズムが行動リズムの開始、終了位相間にみられる位相反応の差を説明する手がかりとなることが示唆される.
KAKENHI-PROJECT-21700650
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21700650
表現論における積分と特殊関数
本研究は、表現論に現れる積分や足し上げ操作で得られる特殊関数を研究対象とし、いくつかの場合に、それらの関数が満たす微分方程式や関数関係式を得ることや、特殊解を既存の特殊関数で表示するという結果を得た。また、同じ思考様式が適用できる枠組みとして、多成分系の線形微分方程式系のスペクトル問題やスペクトルゼータ関数、多重ゼータ関数なども研究の対象とし、特殊関数とのつながりや関数関係式を与える結果を得ている。これらは超幾何関数からそれを超えていく範囲への発展の手がかりとなっている。本研究では、(微分)方程式系の解析、(特殊)解の研究、表現論と調和解析への応用、という3つの視点から『リー群の表現論で決定的な役割をする関数はどのような特殊関数か』を解明することを目的とする。たとえば次のようなことを考える。ベクトル値(多成分系)の微分方程式系を対象とし、その方程式系の分解を調べることでベクトル値の方程式系を解析する。より一般に方程式系の間の準同型ならびに表現の構成要素を合わせて調べる。非可換調和振動子のスペクトル問題をHeunの微分方程式に応用し、アクセサリパラメータの決定に対する問題を研究する。固有状態(固有関数)や固有値、スペクトルゼータも特殊関数とみてその振る舞いを研究する。領域に実現される表現の関数空間の決定と分解、準同形写像の特殊関数による表示、漸近形など、調和解析を行うのに必要となる基本的な関数の振る舞いを決定する。これらは積分変換や超幾何関数の手法や経験にも基づくが、超幾何関数を越えて行くことを遠望している。本研究は、表現論に現れる積分や足し上げ操作で得られる特殊関数を研究対象とし、いくつかの場合に、それらの関数が満たす微分方程式や関数関係式を得ることや、特殊解を既存の特殊関数で表示するという結果を得た。また、同じ思考様式が適用できる枠組みとして、多成分系の線形微分方程式系のスペクトル問題やスペクトルゼータ関数、多重ゼータ関数なども研究の対象とし、特殊関数とのつながりや関数関係式を与える結果を得ている。これらは超幾何関数からそれを超えていく範囲への発展の手がかりとなっている。本研究では、表現論や関連研究に現れる特殊関数を取り扱う。積分変換や超幾何関数の手法や経験にも基づくが、超幾何関数を越えて行くことを遠望している。落合啓之は、指標和に基づくリー群上の積分で表わされた関数(ベッセル関数のある種の拡張)を考え、これが階数2の例外型リー群に付随する場合にはパラメータ0でホインの微分方程式を満足することを示した。この場合、難題であるアクセサリパラメータは決めることができる。現在一般のパラメータの場合に研究を進めている。これらは黒川信重との共同研究である。大島利雄は、示野信一とルート系に付随した超幾何微分方程式系の1変数への制限で得られる常微分方程式を解析し、その具体形ならびに剛性を決定した。これを契機として、より一般の常微分方程式の接続公式を与える新しい手法を提出し、アクセサリパラメータの問題を「分かる」問題に書き換えるプログラムが進行中である。小林俊行は不定値直交群の極小表現を土台とするフーリエ変換の理論を(一部は真野元とともに)構築した。若山正人は非可換調和振動子のスペクトルゼータ関数の特殊値を表示する積分の評価を行い、高次の積分に対しても漸化的な構造を明らかにした。また、多重ゼータ値や多変数マーラー測度も積分で表示される。(ただし、超幾何積分や球関数とは異なりサイクル上の積分とならない場合が多い。)多重ゼータ値に関しては重シャッフル関係式の空間がワイル群の対称性を持つことを井原健太郎と示した。また、多変数相反多項式を含む多項式族に対して、マーラー測度を一般化超幾何関数で与える公式を黒川信重、M. Lalinと共同で導いた。本研究では、表現論や関連研究に現れる特殊関数を取り扱う。積分変換や超幾何関数の手法や経験にも基づくが、超幾何関数を越えて行くことを遠望している。多変数のマーラー測度は多変数多項式に対して多重トーラス上の積分で与えられる数値であるが、多項式の族に対してはそのパラメータに関する関数と考えることができる。ただし、超幾何関数や球関数とは異なり、サイクル上の積分とはならない場合が多い。落合は黒川信重,M. Lalinとの共同の研究で、マーラー測度の高次への拡張を考え、これらの母関数となるゼータ積分を導入した。高次のマーラー測度の計算できる例は少ないが、多重対数関数や一般超幾何関数の関係式を巧みに用いることにより、いくつかの例を与えた。また、多重ゼータ関数に関して落合は複数の研究を行った。井原健太郎とは、多重ゼータ「値」の線形関係式の対称性を研究し、重さが3の場合に重シャッフル関係式の空間がワイル群の対称性を持つことを示した。また、松本耕二、中村隆、津村博文と共同で、多重ゼータ「関数」のうちMordell-Tornheim型と呼ばれるものに対して、線形関係式と解析接続における特異性の位置を考察した。その他、積分で表わされる特殊関数として、階数2のルート系に付随したベッセル関数のある種の拡張を考えた。パラメータOではホインの微分方程式を満足し、もとのパラメータの取り方では超幾何的ではないが、超幾何関数を独立変数の有理変換したものであることがわかる。そして、Oでないいくつかのパラメータに対してもこれらの関数がホインの微分方程式からのintertwining微分作用素を使って書けることを観察した。
KAKENHI-PROJECT-19204011
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表現論における積分と特殊関数
また、Uuganbayarとの共同研究で、Gelfand流の多変数超幾何関数の高次行列式への一つの拡張である関口の偏微分方程式系の解の次元を研究し、Kostka数を使って書き表す公式を得ている。本研究では、表現論や関連研究に現れる特殊関数を取り扱う。積分変換や超幾何関数の手法や経験にも基づくが、超幾何関数を越えて行くことを遠望している。まず、Zunderiya Uuganbayar(名古屋大学)との共同研究では、多変数超幾何微分方程式系の関口英子(東京大学)によって拡張されたものの研究を推し進めた。この方程式系は不定値ユニタリ群の表現をペンローズ変換で与えたときの特徴付けに関係するものであり、重複度有限性は小林理論の思想圏内にある。我々の共同研究では、非ホロノミー系であるという予想の解決(フルランクあるいは行列サイズが4以上の場合)、非ホロノミー系であるにもかかわらず原点正則解の有限次元性の純微分方程式的根拠づけ、ならびに次元の組み合わせ的(Kostka数)表示とそれによる漸近評価の改良を与えた。有限次元性の根拠は小林理論と互いに他を含むものではなく、独立に興味深い。論文は投稿中である。伊吹山知義(大阪大学)、葛巻孝子(岐阜大学)との共同研究では、ジーゲル保形形式に働く定数係数の偏微分作用素の特殊関数的な表示を企図し、研究を進めた。柏原Vergneの重複度自由の設定を活かし、変数分離の長い計算を経て、BC型のルート系に付随する球函数との関係づけが得られるというところまで一般の階数で導出した。論文執筆の最終の段階にある。また、黒川信重(東京工業大学)との共同研究では、ヒルベルト行列の交代行列版の固有値分布を研究した。特殊な反自己共役な積分作用素と見ることでDirac作用素とも考えられる。対称行列版は良く研究されているが交代行列版は研究が少なく、しかし、むしろ、非自明な固有値の規則性が交代行列版に観察されることを指摘し、種々の予想を提唱した。将来の研究を促す点で意義あると考えている。本研究では、表現論や関連研究に現れる特殊関数を取り扱う。積分変換や超幾何関数の手法や経験にも基づくが、超幾何関数を越えて行くことを遠望している。西山享(青山学院大学)との共同研究では、群の多重旗多様体の理論を、球部分群の設定に拡張する試みを開始し、軌道の個数の有限性を保証する原理・条件を複数発見した。これらの軌道は、表現の重複度や積分作用素で書かれるインタートワイニング作用素の核関数に関する情報のうち幾何学的部分を担っている。この仕事は既にモーメント写像に関する仕事(P.Trapa;ユタ大学)、軌道の具体的なパラメータ付けに関する仕事(松木敏彦、京都大学)を誘発した。黒川信重との共同研究では、無限対称群の元に付随したディリクレ級数型の母関数の解析接続や特殊値に関する以前よりも詳しい研究を行った。絶対体上の有限型概形とのつながりを考察し、積分(幾何学的には写像による直像)としての意味を追求した。比較的新しい対象としては、アルファ行列式の正値性を与えるパラメータ領域に関する予想を半分解いた。予想の動機は確率論にあるが、ここではそこからは離れ、対称錐に於ける積分の理論を援用してアルファ行列式を特殊な場合に一般超幾何関数を用いて書き切った。
KAKENHI-PROJECT-19204011
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19204011
超高圧直流ポリエチレン電力ケーブル開発に関する基礎的研究
本年度の研究成果は以下のようである。1.メタロセン触媒を利用した新規低密度ポリエチレンを絶縁材料として適用するために、高電界電流、インパルスおよび直流絶縁破壊、静電圧力法による空間電荷分布、トリーイング特性を評価した。その結果、新規LDPEは現在ケーブル絶縁に利用されている高圧法により作成されたLDPEよりも絶縁特性は優れていることがわかった。従来報告されていないトリーイング特性においても、新規ポリエチレンは高圧法により作成されたLDPEよりもトリー開始電圧が高く、高温でのトリー進展を抑制した。2.膜厚の異なる変性高密度ポリエチレンの高電界電流、レーザ誘起圧力法および静電圧力法による空間電荷分布を測定した。いずれの試料においても陰極付近に負のホモ空間電荷の蓄積がみられた。試料膜厚の増加に伴い、電流は抑制され、蓄積される空間電荷量は減少した。この原因としてフィルム表面付近の固体構造の変化が原因として考えられる。本年度の研究成果は以下のようである。1.メタロセン触媒を利用した新規低密度ポリエチレンを絶縁材料として適用するために、高電界電流、インパルスおよび直流絶縁破壊、静電圧力法による空間電荷分布、トリーイング特性を評価した。その結果、新規LDPEは現在ケーブル絶縁に利用されている高圧法により作成されたLDPEよりも絶縁特性は優れていることがわかった。従来報告されていないトリーイング特性においても、新規ポリエチレンは高圧法により作成されたLDPEよりもトリー開始電圧が高く、高温でのトリー進展を抑制した。2.膜厚の異なる変性高密度ポリエチレンの高電界電流、レーザ誘起圧力法および静電圧力法による空間電荷分布を測定した。いずれの試料においても陰極付近に負のホモ空間電荷の蓄積がみられた。試料膜厚の増加に伴い、電流は抑制され、蓄積される空間電荷量は減少した。この原因としてフィルム表面付近の固体構造の変化が原因として考えられる。本研究は超高圧固体絶縁直流電力ケーブル開発を進めるに際して重要となる高分子絶縁材料中の空間電荷分布測定システムの確立、空間電荷挙動の解明および直流ケーブル用絶縁材料のための指針を得ることを目的として実施され、本年度の主な研究実績は以下のようである。1現有のレーザ誘起圧力パルスによる空間電荷分布計測システムにDigital Oscilloscopeを組み込み測定システムの改善を行った。また、ケーブル形状試料の空間電荷分布を測定するための電極系の設計・試作を行った。2電力ケーブル用絶縁材料として優れた絶縁性能を示すポリエチレン中の空間電荷分布を各種条件で実測し、空間電荷効果の定量的評価を行った。空間電荷の挙動は印加する直流電圧や試料温度のみならず、ポリエチレンの劣化(例えば酸化劣化)、架橋残さなどにより大きく影響されることを明らかにした。3ポリエチレンの固体構造、分岐の程度、微量に含まれる2重結合などが、高電界電流や絶縁破壊強度に及ぼす影響を明らかにし、ポリエチレンの絶縁性能改善のための指針を得た。4実測した空間電荷挙動を理論的に解明するため、コンピュータ・シミュレーションを行い、空間電荷分布の形状や直流高電界印加時にときどき観測されるパケット状空間電荷の挙動を説明数するモデルを提案した。本研究は超高電圧固体絶縁直流電力ケーブル開発を進めるに際して重要となる高分子絶縁材料中の空間電荷分布計測システムの確立、空間電荷挙動の解明および直流ケーブル用絶縁材料開発のための指針を得ることを目的として実施され、本年度の主な研究成果は以下のようである。1.パルス静電応力法を用いた空間電荷分布計測装置を試作するとともに、信号処理のためのコンピュータソフトを開発した。このシステムを電力ケーブルの絶縁材料であるポリエチレンに適用し、空間電荷分布が計測できることを実証した。2.従来から使用しているレーザ誘起圧力波法を用いる空間電荷分布計測システムの高性能化を図るため、電極構成と検出回路の改善を実施した。3.ポリエチレンの絶縁性能と固体構造、分子構造との関連を詳細に調べ、実用上重要な高温領域の絶縁性能がポリエチレンの密度の増加とともに向上することを明らかにした。また、二重結合、末端メチル基、カルボニル基の濃度と絶縁性能との関連を調べ、ポリエチレンの絶縁性能改善のための手法について検討した。4.新規触媒を用いたポリエチレンの絶縁性能を調べ、従来のチ-グラー触媒を用いたものに比し絶縁性能が優れていることを示し、それが固体構造の差に起因することを明らかにした。また、この新規ポリエチレンの空間電荷の量が少ないことを実験的に明らかにし、直流電力ケーブル用絶縁材料として適していることを示した。本年度の研究成果は以下のようである。1.メタロセン触媒を利用した新規低密度ポリエチレンを絶縁材料として適用するために、高電界電流、インパルスおよび直流絶縁破壊、静電圧力法による空間電荷分布、トリーイング特性を評価した。その結果、新規LDPEは現在ケーブル絶縁に利用されている高圧法により作成されたLDPEよりも絶縁特性は優れていることがわかった。従来報告されていないトリーイング特性においても、新規ポリエチレンは高圧法により作成されたLDPEよりもトリー開始電圧が高く、高温でのトリー進展を抑制した。2.膜厚の異なる変性高密度ポリエチレンの高電界電流、レーザ誘起圧力法および静電圧力法による空間電荷分布を測定した。いずれの試料においても陰極付近に負のホモ空間電荷の蓄積がみられた。試料膜厚の増加に伴い、電流は抑制され、蓄積される空間電荷量は減少した。この原因としてフィルム表面付近の固体構造の変化が原因として考えられる。
KAKENHI-PROJECT-08455132
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08455132
主体的なキャリア形成のための自己効力感を育む相互評価学習実践モデルの構築
本研究の目的は,高等教育の初年次キャリア教育において,主体的にキャリアを形成する能力を育むために進路選択自己効力に着目し,相互評価学習の実践モデルを構築することである.相互評価学習の実践をもとに検証した結果,1相互評価学習の要素と自己効力の変化の関連の質的検討から,他者から評価を受けることによって自信を獲得し,進路選択課題の達成につながり,効力感に影響する可能性が示唆された.2相互評価学習を含む授業設計が,対面授業とeラーニング科目において自己効力向上に有効であるものの,長期的に進路選択自己効力を維持するための方策,相互評価学習システムの改善,学習コミュニティ構築の必要性が浮かび上がった.A.相互評価学習の要素と効力感の因果関係:学習者は,キャリア教育における相互評価学習のどの要素で効力感を感じているのかを明らかにするため,半構造化形式のインタビューを実施した.対象は,H26年度前期のキャリア教育科目において相互評価学習に参加した受講生10名であり,一人当たり30分程度をかけて,1対1で聞き取りを行った.インタビューガイドは前年度に実施した予備調査をもとに作成し,主にキャリアプラン作成と発表といった課題の認知と,相互評価をすることについての考え,相互評価学習前後の変容について尋ねた.合わせて,課題に対する効力感を把握するための質問紙調査を行った.B.相互評価学習システムの検討と開発:所属機関内に設置されたサーバに,学習管理システム(Moodle)をインストールし,構築・設定作業を行った.C.相互評価学習の授業デザイン検討:授業デザイン検討のため,H25年度のキャリア教育科目について,開講時期によって受講生の進路選択自己効力の変容に差が生じるかを調査した.その結果,後期開講の初年次キャリア教育科目における相互評価学習によって前期と同様に受講生の進路選択自己効力が向上すること,キャリア教育科目の前期受講生は入学からの1年間で進路選択自己効力が向上しているものの,非受講生は後期開始の時点でやや下がり,1年間でほぼ変化がないことが明らかになった.相互評価学習の授業デザインについて,初年次キャリア教育科目における実践は受講時期を問わず進路選択自己効力の向上に有効であるものの,自己効力維持のためには,学習方法の改善やその後のフォローが必要であることが示唆された.本成果は,2014年7月の日本教育工学会研究会において発表された.今年度は,自己効力感を育む相互評価学習実践モデルの構築に向けて,対面科目とeラーニング科目におけるこれまでの実践をもとに,受講生の特性および受講生の自己効力の変化の検討を進めた.以下,研究の目的別に詳細を記述する.A.相互評価学習の要素と効力感の因果関係:相互評価学習の事前事後における学習者の進路選択自己効力の変化を調査し,尺度の各項目の変化を検証した.その結果,進路選択自己効力尺度の30項目中24項目が有意に上昇しており,特に自己評価,目標選択,将来設計に関わる項目に変化が多く見られることが明らかになった.本成果を,2015年9月の日本教育工学会全国大会にて発表した.B.相互評価学習システムの検討と開発:所属機関内に設置されたサーバの学習管理システム(Moodle)のバージョンアップを行い,相互評価学習モジュールの最新の仕様を確認した.C.相互評価学習の授業デザイン検討:eラーニング科目における相互評価学習を含む授業デザイン検討のため,H26年度にオンラインで開講されたキャリア教育科目について,受講生の特性を分析・可視化することを目的として,進路選択自己効力の調査と,コース志望理由の計量テキスト分析を行った.分析結果から,全国平均よりも進路選択自己効力の高い学生が受講していること,受講生の学年によって志望理由や科目への期待が異なることが示唆された.本成果を,2015年9月の教育システム情報学会全国大会にて発表した実施期間中に研究代表者が産休/育休を取得したため研究の遂行ができず,計画よりもやや遅れている.研究の目的に照らし合わせた達成度は以下のとおりである.A.相互評価学習の要素と効力感の因果関係:量的調査をもとにした効力感の変化の分析を実施した.前年度に行った質的調査(半構造化インタビュー)の分析が途中であり,やや遅れている.B.相互評価学習システムの検討と開発:学習管理システムをバージョンアップして仕様の確認と必要条件の洗い出しを行ったが,類似のシステムについての情報収集が進んでいないため,やや遅れている.C.相互評価学習の授業デザイン検討:過去の実践をもとに分析を行い成果を発表したので,おおむね順調に進んでいる.今年度は,自己効力感を育む相互評価学習実践モデルの構築に向けて,対面科目とeラーニング科目におけるこれまでの実践をもとに,相互評価学習の要素と効力感の因果関係の検討,相互評価学習システムの観点からの授業デザインの改善案模索を進めた.以下,研究の目的別に詳細を記述する.A.相互評価学習の要素と効力感の因果関係:対面授業実践後の受講生のアンケート調査の自由記述から,進路選択課題に関わる相互評価学習を通じて自己効力がどのように変化したか質的に検討したところ,多くの学習者がキャリア意識の変化や効力感の変化を認識しており,特に進路選択課題の遂行そのものと他者から評価を受ける言語的説得を通じて,進路選択に対する効力感を得ていることが示唆された.本成果を,2016年9月の日本教育工学会全国大会にて発表した.B.相互評価学習システムの検討と開発:対面授業実践後の受講生のアンケート調査をもとに,授業デザインの改善を検討した.システムの使いやすさについて受講生の94.3%が肯定的に回答し,相互評価学習についても肯定的に受け止めていることが分かった.
KAKENHI-PROJECT-26750093
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主体的なキャリア形成のための自己効力感を育む相互評価学習実践モデルの構築
一方で,自由記述の分析から,評価対象者の割当方法,評価入力時間の確保,評価対象選択画面での表示方法,評価入力フォームについてそれぞれ改善の必要性が明らかになった.本成果を,2016年9月の教育システム情報学会全国大会にて発表した.C.相互評価学習の授業デザイン検討:上記A,Bをもとに,H29年度の授業デザイン・相互評価学習方法の見直しを進めている.また,eラーニング科目の実践における自己効力の変化について,論文を教育システム情報学会に投稿中である.実施期間中に研究代表者が産休/育休を取得したため研究の遂行ができず,計画よりもやや遅れている.研究の目的に照らし合わせた達成度は以下のとおりである.A.相互評価学習の要素と効力感の因果関係:受講生のアンケート調査をもとにした効力感の変化の質的分析を実施した.H27年度に行った質的調査(半構造化インタビュー)の分析が途中であり,遅れている.B.対面授業実践後の受講生のアンケート調査をもとに,相互評価学習システムの改善策を検討した.システム開発業者等の選定を進めているが,やや遅れている.C.相互評価学習の授業デザイン検討:過去のeラーニング科目実践をもとに分析を行い成果を発表したので,おおむね順調に進んでいる.本研究の目的は,キャリア教育において主体的にキャリアを形成する能力や態度を育むための相互評価学習の実践方法をシステムと授業設計の両面から検討し,相互評価学習の実践モデルを構築することである.本年度は,相互評価学習システムの観点から学習方法を検討するために,LMSのプラグインを新たに導入し,既存システムとの相違点を検討した.また,eラーニング科目における実践をもとに,相互評価学習を中心としたeラーニング科目の授業デザインについて検討した成果を論文として投稿・公開した.以下,研究の実施計画に照らし合わせて詳細を記述する.・相互評価学習システムの検討と開発:講義収録システムとMoodleの相互評価学習プラグインを新たに購入し,既存システムへのインストールと試験運用を行った.これまで,受講生のアンケート調査の自由記述の分析から,評価対象者の割当方法,評価対象選択画面での表示方法等についてそれぞれ改善の必要性が明らかになっており,新たなモジュールを用いた解決方法を検討した.・相互評価学習の授業デザイン検討:eラーニング科目の実践における自己効力の変化と相互評価学習の認知の関連の検討をもとに,相互評価学習を中心としたeラーニング科目の授業設計における課題を考察した.また,その成果を教育システム情報学会誌に論文として投稿し,2017年発行の34巻3号に掲載された.
KAKENHI-PROJECT-26750093
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26750093
対流圏におけるハロゲンの化学と循環に関する研究
本研究では、大気中のハロゲンに着目し、観測と室内実験の立場から以下の課題を実施した。(1)無機ハロゲンの測定と大気中での動態、(2)ハロゲンラジカル測定法の開発および対流圏における塩素・臭素分子の測定、(3)揮発性ハロゲン炭化水素の動態、(4)含ハロゲン有機物の検索と有機エアロゾルの解析、(5)非メタン炭化水素の炭素安定同位体比測定、(6)ハロゲン類の気液界面取り込み過程の動力学的研究、(7)生物界由来の揮発性ハロゲン化合物の生成機構と循環。無機ハロゲンガスの自動連続測定のために拡散スクラバーを用いた自動測定装置を開発し海洋大気中での測定を行った結果、海洋大気中での海塩粒子からの無機ハロゲンガスの生成が認められた。又、隠岐島において、Cl_2の濃度は日中に減少し、HClは日中に高くなる傾向を見いだした。塩素、臭素分子等の無機ハロゲン種の濃度測定を目指して化学イオン化質量分析装置を製作した。この装置を用いて臭化ナトリウム及び合成海塩上で、塩素の取り込みに伴う臭素分子の生成反応を確認した。一方、オゾンの取り込みに伴う臭素分子の生成も、高い反応確率で観測し、海塩上での不均一化学反応によるハロゲン放出の機構を明らかにした。ハロゲン有機物の海洋・海氷中の分布を測定し、その変動要因を解析した。カナダ・アラート、沖縄波照間島、および北西太平洋上におけるCH_3Iの測定を行った結果、その大気濃度は地域により異なる季節変化を示した。北極域では年間を通して低濃度であったが、北西太平洋上では8-9月に高濃度(最高1-2pptv)を示した。海洋エアロゾル試料中に臭化コハク酸、塩化コハク酸を発見した。臭化コハク酸はアジア大陸に近い西部北太平洋で高く、東に行くに従い減少する傾向を示した。一方、塩化コハク酸は西部から中部北太平洋にかけて増加傾向を示した。この結果は、海洋大気中で有機物の臭素化および塩素による置換反応が起こっており、ハロゲンは有機エアロゾルの変質に深く関わっている可能性を明らかにした。本研究では、大気中のハロゲンに着目し、観測と室内実験の立場から以下の課題を実施した。(1)無機ハロゲンの測定と大気中での動態、(2)ハロゲンラジカル測定法の開発および対流圏における塩素・臭素分子の測定、(3)揮発性ハロゲン炭化水素の動態、(4)含ハロゲン有機物の検索と有機エアロゾルの解析、(5)非メタン炭化水素の炭素安定同位体比測定、(6)ハロゲン類の気液界面取り込み過程の動力学的研究、(7)生物界由来の揮発性ハロゲン化合物の生成機構と循環。無機ハロゲンガスの自動連続測定のために拡散スクラバーを用いた自動測定装置を開発し海洋大気中での測定を行った結果、海洋大気中での海塩粒子からの無機ハロゲンガスの生成が認められた。又、隠岐島において、Cl_2の濃度は日中に減少し、HClは日中に高くなる傾向を見いだした。塩素、臭素分子等の無機ハロゲン種の濃度測定を目指して化学イオン化質量分析装置を製作した。この装置を用いて臭化ナトリウム及び合成海塩上で、塩素の取り込みに伴う臭素分子の生成反応を確認した。一方、オゾンの取り込みに伴う臭素分子の生成も、高い反応確率で観測し、海塩上での不均一化学反応によるハロゲン放出の機構を明らかにした。ハロゲン有機物の海洋・海氷中の分布を測定し、その変動要因を解析した。カナダ・アラート、沖縄波照間島、および北西太平洋上におけるCH_3Iの測定を行った結果、その大気濃度は地域により異なる季節変化を示した。北極域では年間を通して低濃度であったが、北西太平洋上では8-9月に高濃度(最高1-2pptv)を示した。海洋エアロゾル試料中に臭化コハク酸、塩化コハク酸を発見した。臭化コハク酸はアジア大陸に近い西部北太平洋で高く、東に行くに従い減少する傾向を示した。一方、塩化コハク酸は西部から中部北太平洋にかけて増加傾向を示した。この結果は、海洋大気中で有機物の臭素化および塩素による置換反応が起こっており、ハロゲンは有機エアロゾルの変質に深く関わっている可能性を明らかにした。本研究の目的は、大気観測と室内実験の立場から、対流圏における無機および有機ハロゲンの分布と循環を明らかにすることである。平成10年度に研究代表者・分担者がおこなった研究成果は以下のとおりである。河村公隆と大河内直彦は、海洋・極域エアロゾル試料から分離した水溶性有機画分中に、質量分析計を用いて含ハロゲン有機物を検索した結果、塩素または臭素を分子内に含むコハク酸を同定することに成功した。この化合物はこれまで、大気中では報告されていない新化合物である。これらは、光化学反応によって大気中で二次的に生成された可能性があり、大気中ではハロゲンが関与する反応によって水溶性有機物が生成している可能性が指摘された。田中茂は、拡散スクラバー/イオンクロマトグラフ法を改良することによって、海洋大気中の無機ハロゲンの測定方法を作成した。この方法を自動化することによって、海洋上での測定データを飛躍的に増やすことに成功した。現在その解析をおこなっている。横内陽子は、大気・海水中に存在するブロモホルムなどの有機ハロゲンをパージ&トラップ・ガスクロマトグラフ・質量分析計による測定する方法を完成し、西部北太平洋の表層海水を分析し7種類の揮発性ハロゲン化炭化水素を測定した。
KAKENHI-PROJECT-10144101
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10144101
対流圏におけるハロゲンの化学と循環に関する研究
その結果、表面海水中での濃度は1-4ng/Lと高く、これらが海洋生物活動の結果生産され、それらが大気中に放出される重要なソースであることを見いだした。廣川淳は、海塩粒子の関与する不均一反応に着目し、塩化ナトリウム、臭化ナトリウムとオゾン、窒素酸化物などの大気微量成分との反応を室内実験により調べた。その結果、光の作用によって海塩表面から臭素、塩素原子が放出されることを確認し、海洋大気中でのハロゲンの生成の重要性を明らかにした。本研究の目的は、大気観測と室内実験の立場から、対流圏における無機および有機ハロゲンの分布と循環を明らかにすることである。平成11年度に研究代表者・分担者がおこなった研究成果は以下のとおりである。河村公隆は、前年度、海洋・極域エアロゾル試料から分離した水溶性有機画分中に、塩素または臭素を分子内に含むコハク酸を同定することに成功したが、この画分にハロゲンを持つアルデヒドを同定できた。しかし、ハロゲンの位置を特定するには至らなかった。この化合物は、光化学反応によって大気中で二次的に生成された可能性があり、大気中ではハロゲンが関与する反応によって水溶性有機物が生成している可能性が指摘された。田中茂は、前年度に拡散スクラバー/イオンクロマトグラフ法を改良することによって、海洋大気中の無機ハロゲンの測定方法を作成したが、11年度には、壱岐、沖縄島および観測船を用いた海洋大気中でのハロゲンガスの濃度測定をおこなった。その結果より、塩化水素の濃度は昼間に増加するのに対し塩素分子は昼間に下がることを見いだした。横内陽子は、前年度までに確立した大気・海水中に存在するブロモホルムなどの有機ハロゲンの測定法を用いて、西部北太平洋の表層海水中の7種類の揮発性ハロゲン化炭化水素を測定した。その結果、表面海水中での濃度は1-4ng/Lと高く、これらが海洋生物活動の結果生産され、それらが大気中に放出される重要なソースであることを見いだした。廣川淳は、海塩粒子の関与する不均一反応に着目し、塩化ナトリウム、臭化ナトリウムとオゾン、窒素酸化物などの大気微量成分との反応を室内実験を引き続き行った。また11年度は、多成分イオンを含む合成海塩を個体粉末試料として用い、不均一化学反応実験を行った。更に、前年度作成した装置に、新たに購入した質量分析計を取り付けることにより、ハロゲン検出感度を2桁上げることに成功した。本研究の目的は、大気観測と室内実験の立場から、対流圏における無機および有機ハロゲンの分布と循環を明らかにすることである。平成12年度中に研究代表者・分担者がおこなった研究成果は以下のとおりである。河村公隆は、海洋エアロゾル試料から分離した水溶性有機画分中に、塩素または臭素を分子内に含むコハク酸とともにハロゲンを持つアルデヒドを同定した。これらの結果とシュウ酸、コハク酸のデータを結合し、海洋大気中でのハロゲンと有機物との反応モデルを提案した。田中茂は、改良した拡散スクラバー/イオンクロマトグラフ法によって、海洋大気中の無機ハロゲンの測定を行った。壱岐、沖縄島での結果は、塩化水素の濃度は昼間に増加するのに対し塩素分子は昼間に下がることを観測し、酸性物質と海塩粒子の反応による塩化水素生成の証拠を確認した。
KAKENHI-PROJECT-10144101
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10144101
熱弾性効果を利用した衝撃応力の非接触計測
本研究では,断熱状態における材料の熱弾性効果を利用することにより,衝撃応力を非接触的に計測する方法の開発を目的とした.本年度は,以下の手順により実験を実施した.(1)圧縮空気を利用した弾性棒の1次元縦衝撃実験装置を製作し,ひずみゲージを用いて弾性棒に生じる衝撃応力を計測して実験装置の動作を確認した.(2)赤外線放射温度計による非接触温度計測システムを構築し,熱弾性効果による温度変化,すなわち,衝撃応力の計測を試みた.弾性棒の材質,衝撃応力の大きさなどを種々変化させて実験を行ったが,本年度は温度を的確に検出するには至らなかった.熱弾性効果による温度変化は高々1K程度で微小である上に,衝撃応力の場合には現象が高速で1ms以下で終了するために,元来温度の検出は困難ではある.本研究ではこのような温度変化を計測するのに十分な仕様の温度計測システムを用意していたが,それにも拘らず温度の検出が成功しなかった第1の理由としては,測定対象以外からの赤外線放射によるノイズが予想以上に大きかったことが挙げられる.今後,温度の検出を実現するためには,(1)実験装置(特に温度計測システムにおける光学系)をドライアイスなどを使った低温壁で囲うことにより,外部から放射される赤外線を遮断する.(2)弾性棒を加熱することにより相対的な計測感度を向上させる.などの装置の改善が有効であると考えられる.本研究では,断熱状態における材料の熱弾性効果を利用することにより,衝撃応力を非接触的に計測する方法の開発を目的とした.本年度は,以下の手順により実験を実施した.(1)圧縮空気を利用した弾性棒の1次元縦衝撃実験装置を製作し,ひずみゲージを用いて弾性棒に生じる衝撃応力を計測して実験装置の動作を確認した.(2)赤外線放射温度計による非接触温度計測システムを構築し,熱弾性効果による温度変化,すなわち,衝撃応力の計測を試みた.弾性棒の材質,衝撃応力の大きさなどを種々変化させて実験を行ったが,本年度は温度を的確に検出するには至らなかった.熱弾性効果による温度変化は高々1K程度で微小である上に,衝撃応力の場合には現象が高速で1ms以下で終了するために,元来温度の検出は困難ではある.本研究ではこのような温度変化を計測するのに十分な仕様の温度計測システムを用意していたが,それにも拘らず温度の検出が成功しなかった第1の理由としては,測定対象以外からの赤外線放射によるノイズが予想以上に大きかったことが挙げられる.今後,温度の検出を実現するためには,(1)実験装置(特に温度計測システムにおける光学系)をドライアイスなどを使った低温壁で囲うことにより,外部から放射される赤外線を遮断する.(2)弾性棒を加熱することにより相対的な計測感度を向上させる.などの装置の改善が有効であると考えられる.
KAKENHI-PROJECT-06750083
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06750083
細胞膜担体輸送系の基質構造認識特性を利用したドラッグデリバリ-
本研究は、「種々の栄養物質およびその構造類似薬物の小腸、腎臓、肝臓、脳組織における細胞膜輸送機構」を解明し、「担体輸送系の基質認識特性」を検討することによって「組織選択的ドラッグデリバリ-システムの確立」を目指すことを目的とした。小腸上皮細胞膜輸送にはラット、ウサギ刷子縁膜小胞を、腎尿細管上皮細胞膜輸送にはラット側底膜小胞および刷子縁膜小胞の他にラット腎、肝組織抽出法を、血液脳関門輸送には、ウシ単離脳毛細血管、脳毛細血管内皮培養細胞および脳組織抽出法を、それぞれの目的に応じて用い、以下に示すように薬物の担体介在輸送を明らかにした。1)リン酸系薬物:リン酸構造を有するfosfomycinは、既に報告したfoscarnetと同様に、細胞内に向けられたNa^+勾配を駆動力として小腸刷子縁膜リン酸輸送系を介して二次性能動輸送される。2)モノカルボン酸系薬物:本系薬物の消化管吸収や脳移行は従来よりpHー分配仮説に従って単純拡散で進行すると解釈されてきた。これに対して本研究では、酢酸が小腸刷子縁膜をH^+との共輸送系あるいはHCO_3ーとの交換輸送系を介して二次性能動輸送される。いずれの輸送においても酢酸の取り込みはpH依存的であり、管腔側酸性環境で促進される。血液脳関門においても酢酸はH_+と共輸送系を介してpH依存的に脳内に取り込まれる。これらのモノカルボン酸輸送系はnicotinic acid,salicylic acid,valproic acidなどのモノカルボン酸構造を有する薬物のみを立体選択的に認識し、輸送する。3)塩基性薬物:thiamine,scopolamine,eperizoneなどの塩基性薬物は脳毛細血管内皮細胞コリン輸送系を介して脳内に取り込まれる。βーラクタム系抗生物質:腎臓と肝臓の血液側細胞膜および肝胆管腔側膜をprobenecidと共通の有機アニオン輸送系を介して取り込まれる。以上の知見は、生体膜輸送系の構造認識輸送特性を利用することによって、薬物を特定の組織にタ-ゲッティングし、または逆に移行性を回避させるなど、創薬に貢献するものと期待される。本研究は、「種々の栄養物質およびその構造類似薬物の小腸、腎臓、肝臓、脳組織における細胞膜輸送機構」を解明し、「担体輸送系の基質認識特性」を検討することによって「組織選択的ドラッグデリバリ-システムの確立」を目指すことを目的とした。小腸上皮細胞膜輸送にはラット、ウサギ刷子縁膜小胞を、腎尿細管上皮細胞膜輸送にはラット側底膜小胞および刷子縁膜小胞の他にラット腎、肝組織抽出法を、血液脳関門輸送には、ウシ単離脳毛細血管、脳毛細血管内皮培養細胞および脳組織抽出法を、それぞれの目的に応じて用い、以下に示すように薬物の担体介在輸送を明らかにした。1)リン酸系薬物:リン酸構造を有するfosfomycinは、既に報告したfoscarnetと同様に、細胞内に向けられたNa^+勾配を駆動力として小腸刷子縁膜リン酸輸送系を介して二次性能動輸送される。2)モノカルボン酸系薬物:本系薬物の消化管吸収や脳移行は従来よりpHー分配仮説に従って単純拡散で進行すると解釈されてきた。これに対して本研究では、酢酸が小腸刷子縁膜をH^+との共輸送系あるいはHCO_3ーとの交換輸送系を介して二次性能動輸送される。いずれの輸送においても酢酸の取り込みはpH依存的であり、管腔側酸性環境で促進される。血液脳関門においても酢酸はH_+と共輸送系を介してpH依存的に脳内に取り込まれる。これらのモノカルボン酸輸送系はnicotinic acid,salicylic acid,valproic acidなどのモノカルボン酸構造を有する薬物のみを立体選択的に認識し、輸送する。3)塩基性薬物:thiamine,scopolamine,eperizoneなどの塩基性薬物は脳毛細血管内皮細胞コリン輸送系を介して脳内に取り込まれる。βーラクタム系抗生物質:腎臓と肝臓の血液側細胞膜および肝胆管腔側膜をprobenecidと共通の有機アニオン輸送系を介して取り込まれる。以上の知見は、生体膜輸送系の構造認識輸送特性を利用することによって、薬物を特定の組織にタ-ゲッティングし、または逆に移行性を回避させるなど、創薬に貢献するものと期待される。
KAKENHI-PROJECT-02671051
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02671051
食行動関連障害のあるレビー小体型認知症高齢者の在宅ケアモデルの検討
本研究では、認知症疾患の20%程度を占め、パーキソニズムや誤認妄想、抑うつなどの症状を呈するレビー小体認知症の在宅高齢者とその家族の食行動栄養実態と保健医療福祉支援へのニーズを明らかにすることで、在宅レビー小体認知症高齢者の健康的な生活を支援するための在宅ケアモデルを検討することを目的としている。2年目の2018年は研究対象の参加するデイケアや医療機関の協力を得て参加観察を3回実施し、研究計画における質問項目および質問紙の検討を行った。研究計画書を所属大学の倫理委員会に提出できる状況にある。また、在宅認知症高齢者の「低栄養」「嚥下障害」「摂食行動」の既存文献から効果的なケアとどのような課題が生じているかを概観するため文献検討を行った。診断を受けているレビー小体認知症高齢者の患者を多く診療する医療機関との接触がまだ十分でないことが主要な要因である。対象患者の診療を行っている首都圏近郊の大規模な精神科病院等への連携を取り、対象者数を20例に増やすことを目標としている。分担研究者の関連する医療機関の協力を依頼している。対象患者の情報収集、および同居家族のインタビューを実施し、研究論文を作成する。在宅で生活するレビー小体型認知症高齢者の食行動関連問題への効果的なケアモデルを検討することを目的に、平成29年度は在宅で生活するレビー小体型認知症高齢者の栄養状態と関連する要因および介護保険サービスおよび公的社会福祉サービスの活用状況の縦断調査を行う予定であった。研究法の具体的検討や対象患者にアプローチするための医療機関の開拓に時間を費やしたため、調査には至っていないないが、研究計画を練り直すことができた。研究協力者が当該疾病の患者の診療症例が少ないこと、研究対象施設の選定および調整に時間を要しており研究実施が遅れている。研究方法として、前向き研究としてして実施する予定であり、そのための倫理審査申請の準備を行ったが、関連研究の実績を調査する必要性が指摘された。本研究では、認知症疾患の20%程度を占め、パーキソニズムや誤認妄想、抑うつなどの症状を呈するレビー小体認知症の在宅高齢者とその家族の食行動栄養実態と保健医療福祉支援へのニーズを明らかにすることで、在宅レビー小体認知症高齢者の健康的な生活を支援するための在宅ケアモデルを検討することを目的としている。2年目の2018年は研究対象の参加するデイケアや医療機関の協力を得て参加観察を3回実施し、研究計画における質問項目および質問紙の検討を行った。研究計画書を所属大学の倫理委員会に提出できる状況にある。また、在宅認知症高齢者の「低栄養」「嚥下障害」「摂食行動」の既存文献から効果的なケアとどのような課題が生じているかを概観するため文献検討を行った。診断を受けているレビー小体認知症高齢者の患者を多く診療する医療機関との接触がまだ十分でないことが主要な要因である。29年度は文献検討・具体的な研究方法を検討することはできたが、実際の調査に進めることができなかった。30年度は開拓した医療施設での在宅で生活するレビー小体型認知症高齢者の栄養状態と関連する要因および介護保険サービスおよび公的社会福祉サービスの活用状況の縦断調査を後ろ向き研究法で実施する。同時に、地域保健医療福祉職者の在宅療養中のレビー小体型認知症高齢者の食事支援に関する質的研究を、看護師・介護士・ケアマネジャーの訪問に同行し参加観察を行い食支援場面を質的に研究するために、研究倫理審査を受ける準備を行っている。対象患者の診療を行っている首都圏近郊の大規模な精神科病院等への連携を取り、対象者数を20例に増やすことを目標としている。分担研究者の関連する医療機関の協力を依頼している。対象患者の情報収集、および同居家族のインタビューを実施し、研究論文を作成する。初年度のため、研究会議等計画に開催できずに経過し、実際に研究調査の実行するまでに至らなかった。30年度は29年度の実施予定であった縦断調査と、当初計画で30年度に実施予定である地域保健医療福祉職者の在宅療養中のレビー小体型認知症高齢者の食事支援に関する質的研究を分析するため、研究費が必要である。研究計画の検討の結果、前向き研究ではなく、すでに行った検査結果を追跡するため検査費用の支出は行わないと変更するため。
KAKENHI-PROJECT-17K12426
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K12426
外部刺激応答性を有する新規発光性液晶の開発
発光部位にねじれた構造を有する9,9'-ビアントリル(BA)に着目し、液晶化および機能化を試みた。申請者の知る限りではこの分子に液晶性を付与し、バルク材料としての検討がなされた例は無く、新規機能性材料としての発展が期待される。液晶性を発現させるためのメソゲンを導入したBA誘導体を設計・合成した所、BA誘導体は室温を含む温度範囲で液晶性を示すことがわかり、BAにスメクチック液晶性を付与することに成功した。さらに、このBA誘導体は機械的せん断を印加することで発光特性の変化するメカノクロミックルミネッセンスを示した。加えて、この分子は加熱、冷却を繰り返すことで再び元の発光を示すようになった。この再利用可能であるという特性は、材料としての応用を考慮した際に利点となる。流動性の高い液晶相における刺激応答性材料の開発は、より高感度な材料となることが期待されるが、これまでに開発してきた熱的刺激応答性材料の発光特性変化はそれほど大きくない。そこで流動性の高いスメクチックA相状態において大きな長波長シフトを示すようなエキシマーを形成する材料の開発を行った。立体的にかさ高い置換基を導入することで、エキシマー発光の長波長シフトを引き起こすことに成功した。今後モノマー発光とのスイッチングを達成できれば、大きな発光色の変化を示すスメクチック液晶の開発が期待できる。本研究では、新規刺激応答性発光材料の開発のための分子設計指針の確立を目指した。熱的・機械的刺激に応答する液晶材料の開発に成功し、流動性の高いスメクチックA相状態においてエキシマー発光の長波長シフトを達成した。これらの結果は、発光材料の開発のみならず、超分子化学、材料科学、光科学など、幅広い分野の研究の進展に寄与すると考えられる。近年、外部刺激に応答して発光特性の変化する材料がセンサーやメモリー等への応用を目指し、盛んに研究されている。中でも分子構造の変化ではなく分子の集合状態の変化により発光特性を変化させることのできる材料は耐久性に優れたものとなる可能性があるが、この様な刺激応答性発光材料に印加する刺激は熱や力学的刺激であり、その他の刺激を印加することにより発光特性を変化させた例は報告されていない。そこで本研究では従来のπ共役分子の集合状態の変化に加え、π共役分子周辺の環境変化を誘起することでπ共役分子の発光特性を変化させることを目指している。具体的には、溶媒の極性により発光色が変化する分子を用い、電場などの外部刺激によりπ共役部位周辺の極性を変化させることを目的としている。上述の特性を示すことが知られている9,9'-ビアントリル(BA)に着目し、このBAに液晶性を発現させるためのメソゲンを導入した。この合成したBA誘導体は室温を含む温度範囲で液晶性を示すことがわかり、BAにスメクチック液晶性を付与することに成功した。続いて、このBA誘導体を一軸配向させることで偏光発光材料の作製を検討した。配向処理の手法としてラビング処理を施したポリイミド配向膜を用いる手法を選択した。ポリイミド配向膜を用いることでBA誘導体を一軸に配向させることに成功し、配向したBA誘導体は偏光発光特性を示した。今後、外部刺激応答性の付与について検討を進めてゆくとともに、金属イオンの複合化を行い、金属イオンの添加が与える配向性及び発光特性の変化についても検討する。近年、外部刺激に応答して発光特性の変化する材料がセンサーやメモリー等への応用を目指し、盛んに研究されている。中でも分子構造の変化ではなく分子の集合状態の変化により発光特性を変化させることのできる材料は耐久性に優れたものとなる可能性があるが、この様な特性を示す明確な分子設計指針の確立には至っていないのが現状である。そこで本研究では結晶の秩序性と液体の流動性を併せ持つ機能性材料である液晶に着目し、刺激応答性発光材料の開発を目指している。本研究ではTwisted Intramolecular Charge Transfer(TICT)状態からの発光を示す9,9'-ビアントリル(BA)に着目し、液晶化および機能化を試みた。液晶性を発現させるためのメソゲンを導入したBA誘導体を数種設計・合成した所、これらの合成したBA誘導体は室温を含む温度範囲で液晶性を示すことがわかり、BAにスメクチック液晶性を付与することに成功した。さらに、いくつかのBA誘導体は機械的せん断を印加することで発光特性の変化するメカノクロミックルミネッセンスを示した。この分子は加熱、冷却を繰り返すことで再び元の発光を示すようになった。また、この分子をポリイミド配向膜を用いて一軸に配向させることに成功し、配向したBA誘導体は偏光発光特性を示した。以上のような結果から、BA誘導体は、光機能性材料として有用であるといえる。発光部位にねじれた構造を有する9,9'-ビアントリル(BA)に着目し、液晶化および機能化を試みた。申請者の知る限りではこの分子に液晶性を付与し、バルク材料としての検討がなされた例は無く、新規機能性材料としての発展が期待される。液晶性を発現させるためのメソゲンを導入したBA誘導体を設計・合成した所、BA誘導体は室温を含む温度範囲で液晶性を示すことがわかり、BAにスメクチック液晶性を付与することに成功した。さらに、このBA誘導体は機械的せん断を印加することで発光特性の変化するメカノクロミックルミネッセンスを示した。加えて、この分子は加熱、冷却を繰り返すことで再び元の発光を示すようになった。
KAKENHI-PROJECT-10J09475
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J09475
外部刺激応答性を有する新規発光性液晶の開発
この再利用可能であるという特性は、材料としての応用を考慮した際に利点となる。流動性の高い液晶相における刺激応答性材料の開発は、より高感度な材料となることが期待されるが、これまでに開発してきた熱的刺激応答性材料の発光特性変化はそれほど大きくない。そこで流動性の高いスメクチックA相状態において大きな長波長シフトを示すようなエキシマーを形成する材料の開発を行った。立体的にかさ高い置換基を導入することで、エキシマー発光の長波長シフトを引き起こすことに成功した。今後モノマー発光とのスイッチングを達成できれば、大きな発光色の変化を示すスメクチック液晶の開発が期待できる。本研究では、新規刺激応答性発光材料の開発のための分子設計指針の確立を目指した。熱的・機械的刺激に応答する液晶材料の開発に成功し、流動性の高いスメクチックA相状態においてエキシマー発光の長波長シフトを達成した。これらの結果は、発光材料の開発のみならず、超分子化学、材料科学、光科学など、幅広い分野の研究の進展に寄与すると考えられる。外部刺激応答性を示すBA誘導体の開発に成功し、刺激応答性材料開発へ向けた分子設計指針を新たに示すことができたため、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。しかしながらいまだ十分な応答速度、発光波長の変化を達成したとは言えないため、さらなる検討が必要であると考えている。BA誘導体が刺激応答性発光材料として有用であることは示すことができたものの、刺激応答速度の向上やより大きな発光波長の変化など、改善すべき課題はいまだ残されている。このため、これらの課題を解決するべく新規化合物を設計・合成し、分子構造と分子集合構造並びに発光特性の関連を調査する予定である。
KAKENHI-PROJECT-10J09475
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J09475
教育と震災が賃金分布に与える影響に関するミクロ計量分析
本研究では学校教育と震災が賃金分布に与える影響を実証的に分析した。学校教育の影響について得られた結果は、賃金分布の低分位よりも高分位において学校教育の影響が大きいということである。1995年の阪神淡路大震災が17年後の賃金分布に与えた影響については次の通りである。第1に、Blinder-Oaxaca分解によると、男性労働者の平均賃金に対して震災は負の影響を与えていた。第2に、DFL分解によると、震災は中賃金男性の賃金を引き下げていた。第3に、MMM分解によると、震災は中賃金男性の賃金を5.08.6%引き下げ、高賃金女性の賃金を8.313.8%引き下げた。2012年の個票データを用いて、1995年の阪神淡路大震災が17年後の賃金分布にどのような影響を与えたのかを実証的に明らかにした。具体的には、Machado and Mata(2005)の改良版の手法により、被災者と非被災者の賃金分布の差を二つののグループの属性の差の部分と震災の影響の部分に分解し、震災の影響の部分が賃金分布のどの分位で大きいかを推定した。得られた結果は以下の通りである。第1に、Oaxaca-Blinder分解によると、震災から17年という長期の後にも男性労働者の平均賃金に対して震災は負の影響を与えていた。第2に、DFL分解によると、震災は中賃金男性の賃金を引き下げていた。第3に、Machado-Mata-Melly分解によると、震災は中賃金男性の賃金を5.08.6%引き下げ、高賃金女性の賃金を8.313.8%引き下げていた。次に、個票データを用いて学校教育の収益率を推定し、その収益率が賃金分布の各分位によってどの程度異なるのかを分位点回帰により明らかにした。暫定的に得られた結果は以下の通りである。賃金の低分位よりも高分位において教育の収益率は大きく、現行の学校教育は欧米諸国と同程度に賃金格差を拡大させていると言える。特に低賃金層における収益率は経時的に低下する傾向があることが確認された。2012年の個票データを用いて、1995年の阪神淡路大震災が17年後の賃金分布にどのような影響を与えたのかを実証的に明らかにした。具体的には、Machado and Mata(2005)の改良版の手法により、被災者と非被災者の賃金分布の差を二つのグループの属性の差の部分と震災の影響の部分に分解し、震災の影響の部分が賃金分布のどの分位で大きいかを推定した。そして、被災前の属性の違いで影響が異なるかも分析を行う。得られた結論は次の通りである。第1に、Blinder-Oaxaca分解によると、震災から17年という長期の後にも男性労働者の平均賃金に対して震災は負の影響を与えていた。第2に、DFL分解によると、震災は中賃金男性の賃金を引き下げていた。第3に、Machado-Mata-Melly分解によると、震災は中賃金男性の賃金を5.08.6%引き下げ、高賃金女性の賃金を8.313.8%引き下げた。次に、個票データを用いて学校教育の収益率を推定し、その収益率が賃金分布の各分位によってどの程度異なるのかを分位点回帰により明らかにした。得られた結果は以下の通りである。賃金の低分位よりも高分位において教育の収益率は大きく、現行の学校教育は欧米諸国と同程度に賃金格差を拡大させていると言える。特に低賃金層における収益率は経時的に低下する傾向があることが確認された。これらの分析結果について研究会で発表し、論文を作成、改訂した。予定通りに、「分位点回帰を用いた学校教育の収益率の推定」と「阪神淡路大震災が賃金分布に与えた影響についての推定」の両方についての実証分析を完了した上で、研究会で発表した。後者についてはディスカッション・ペーパーにもしている。学校教育の収益率が賃金分布の各分位によってどの程度異なるのかを確認することを目的とした論文と阪神淡路大震災が17年を経て賃金分布に与えている影響を推定することを目的とした論文についての改訂を行った。前者の論文においては、個票データを用いて学校教育の収益率を推定し、その収益率が賃金分布の各分位によってどの程度異なるのかを分位点回帰により明らかにした。得られた結果は以下の通りである。賃金の低分位よりも高分位において教育の収益率は大きく、現行の学校教育は欧米諸国と同程度に賃金格差を拡大させていると言える。特に低賃金層における収益率は経時的に低下する傾向があることが確認された。後者の論文においては、2012年の個票データを用いて、1995年の阪神淡路大震災が17年後の賃金分布にどのような影響を与えたのかを実証的に明らかにした。具体的には、Machado and Mata(2005)の改良版の手法により、被災者と非被災者の賃金分布の差を二つのグループの属性の差の部分と震災の影響の部分に分解し、震災の影響の部分が賃金分布のどの分位で大きいかを推定した。そして、被災前の属性の違いで影響が異なるかも分析を行う。得られた結論は次の通りである。第1に、Blinder-Oaxaca分解によると、震災から17年という長期の後にも男性労働者の平均賃金に対して震災は負の影響を与えていた。第2に、DFL分解によると、震災は中賃金男性の賃金を引き下げていた。
KAKENHI-PROJECT-26380382
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26380382
教育と震災が賃金分布に与える影響に関するミクロ計量分析
第3に、Machado-Mata-Melly分解によると、震災は中賃金男性の賃金を5.08.6%引き下げ、高賃金女性の賃金を8.313.8%引き下げた。所属大学に変更があり、前任校と新任校の教育活動に多くの時間を割かざるを得なかったことと家族の事情のために研究の進捗が遅れた。人的資本を蓄積させる要因と蓄積を阻害する要因を特定し、その程度を厳密に計測することは、労働生産性、経済成長、賃金格差等を考える上で重要であり、労働市場政策、教育政策の議論のためにも重要である。本研究では蓄積の要因として学校教育を、阻害の要因として震災を取り上げ、それらが賃金に与える影響を計測した。研究の特徴は、賃金への平均的な効果のみでなく、賃金分布のどの部分にどの程度の影響を与えるのかを計測することである。学校教育の影響の分析では、個票データを用いて学校教育の収益率を推定し、その収益率が賃金分布の各分位によってどの程度異なるのかを明らかにした。得られた結果は、賃金の低分位よりも高分位において教育の収益率は大きく、現行の学校教育は欧米諸国と同程度に賃金格差を拡大させていると言える。特に低賃金層における収益率は経時的に低下する傾向があることが確認された。震災の影響の分析では、2012年の個票データを用いて、1995年の阪神淡路大震災が17年後の賃金分布にどのような影響を与えたのかを実証的に明らかにした。具体的には、Machado and Mata(2005)の改良版の手法により、被災者と非被災者の賃金分布の差を二つのグループの属性の差の部分と震災の影響の部分に分解し、震災の影響の部分が賃金分布のどの分位で大きいかを推定した。そして、被災前の属性の違いで影響が異なるかも分析を行う。得られた結論は次の通りである。第1に、Blinder-Oaxaca分解によると、震災から17年という長期の後にも男性労働者の平均賃金に対して震災は負の影響を与えていた。第2に、DFL分解によると、震災は中賃金男性の賃金を引き下げていた。第3に、Machado-Mata-Melly分解によると、震災は中賃金男性の賃金を5.08.6%引き下げ、高賃金女性の賃金を8.313.8%引き下げた。本研究では学校教育と震災が賃金分布に与える影響を実証的に分析した。学校教育の影響について得られた結果は、賃金分布の低分位よりも高分位において学校教育の影響が大きいということである。1995年の阪神淡路大震災が17年後の賃金分布に与えた影響については次の通りである。第1に、Blinder-Oaxaca分解によると、男性労働者の平均賃金に対して震災は負の影響を与えていた。第2に、DFL分解によると、震災は中賃金男性の賃金を引き下げていた。第3に、MMM分解によると、震災は中賃金男性の賃金を5.08.6%引き下げ、高賃金女性の賃金を8.313.8%引き下げた。予定通りに「分位点回帰を用いた学校教育の収益率の推定」と「阪神淡路大震災が賃金分布に与えた影響についての推定」の両方についての実証分析を実施し、後者についてはディスカッション・ペーパーとしてまとめ、研究会などでも発表した。論文としてまとめた「阪神淡路大震災が賃金分布に与えた影響についての推定」については国際学術雑誌に投稿し、「分位点回帰を用いた学校教育の収益率の推定」については研究会で受けたコメントを元に論文としてまとめ、国際学術雑誌に投稿する。本来であれば2016年度が最終年度であり、論文をまとめて投稿する予定であった。
KAKENHI-PROJECT-26380382
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放射光・核共鳴吸収を利用した元素選択的3D原子配列測定法の開発
SPring-8 BL09XUにおいて、57Feの共鳴エネルギー14.4keVのX線をヘマタイト結晶(alpha-Fe2O3)に入射させ、電子散乱起源の蛍光X線のホログラムパターンと、寿命100nsの57Feによる核共鳴起源の遅延蛍光X線によるホログラムパターンの2種類を取得した。その結果、遅延蛍光X線によるホログラムは、コッセル線を持つ蛍光X線によるホログラムとは異なるパターンを持つことがわかった。研究代表者はホログラフィー手法を応用した新たな3D原子配列測定法を研究する。この方法は、核共鳴散乱と放射光とホログラムを組み合わせた方法である。これは今迄の測定法とは異なり、原子の化学状態も明らかにする可能性があるという特徴を持つ。原子の化学状態が得られることから、物性の機能発現メカニズムの情報も明らかにできる可能性があると期待される。メスバウアー効果を利用した物性測定では、共鳴ガンマ線を共鳴吸収する原子核の状態と同時に、この原子核周辺の電子状態や、この原子に隣接する同種・異種原子の状態を明らかにできると期待される。結晶試料への入射ガンマ線の方位を走査して、メスバウアー効果により発生するX線の2次元強度分布を取得すればガンマ線ホログラムとなる。この新たな3D原子配列測定法の樹立の為には、測定系を整備し、解析手法も確立する必要がある。研究代表者は既に57Feを使用して予備実験を行ったが、現有のシステムでは検出効率が低く、高精度のデータが取得できなかった。そこで、本研究では新たな測定システムの構築を行った。57Feを含む結晶試料にパルス状の放射光X線を照射し、試料を回転させながら、高速APD検出器でX線の強度変化を測定し、ホログラムを得た。その結果、放射光核共鳴散乱法を利用した、蛍光X線ホログラムとは別のパターンを持つガンマ線ホログラムの取得ができた。このガンマ線ホログラムには、ホログラム振動より大きなモジュレーションが載っていた。SPring-8 BL09XUにおいて、57Feの共鳴エネルギー14.4keVのX線をヘマタイト結晶(alpha-Fe2O3)に入射させ、電子散乱起源の蛍光X線のホログラムパターンと、寿命100nsの57Feによる核共鳴起源の遅延蛍光X線によるホログラムパターンの2種類を取得した。その結果、遅延蛍光X線によるホログラムは、コッセル線を持つ蛍光X線によるホログラムとは異なるパターンを持つことがわかった。材料の原子構造解析は精力的に研究されている分野である。既に研究されている分野ではあるが、研究代表者はホログラフィー手法を応用した新たな3D原子配列測定法を研究する。この方法は、核共鳴散乱と放射光とホログラムを組み合わせた方法である。これは今迄の測定法とは異なり、原子の化学状態も明らかにする可能性があるという特徴を持つ。原子の化学状態が得られることから、物性の機能発現メカニズムの情報も明らかにできる可能性があると期待される。この新たな3D原子配列測定法の樹立の為には、測定系を整備し、解析手法も確立する必要がある。研究代表者は既に57Feを使用して予備実験を行ったが、現有のシステムでは検出効率が低く、高精度のデータが取得できなかった。そこで、本研究では新たな測定システムの構築を行い、測定・解析手法の完成を目指す。メスバウアー効果を利用した物性測定では、共鳴γ線を共鳴吸収する原子核の状態と同時に、この原子核周辺の電子状態や、この原子に隣接する同種・異種原子の状態を明らかにできると期待される。結晶試料への入射γ線の方位を走査して、メスバウアー効果により発生するX線の2次元強度分布を取得すればγ線ホログラムとなる。そこで、研究代表者は、研究の第一ステップとして、基本測定セットアップの構築を行った。57Feを含む結晶試料にパルス状の放射光X線を照射し、試料を回転させながら、高速APD検出器でX線の強度変化を測定し、ホログラムを得た。その結果、放射光核共鳴散乱法を利用した、蛍光X線ホログラムとは別のパターンを持つγ線ホログラムの取得ができた可能性が高いと考えている。ホログラフィー手法を応用した新たな3D原子配列測定法を研究した。この方法は、放射光核共鳴散乱とホログラムを組み合わせた方法である。これは今迄の測定法とは異なり、原子の化学状態も明らかにできる可能性があるという特徴を持つので、物性の機能発現メカニズムの情報も明らかにできる可能性があると期待される。メスバウアー効果を利用する本手法では、共鳴γ線を共鳴吸収する原子核の状態と同時に、この原子核周辺の電子状態や、この原子に隣接する同種・異種原子の状態も明らかにできると期待される。結晶試料への入射γ線の方位を走査して、メスバウアー効果により発生する内部転換電子を起源とする、遅延蛍光X線の2次元強度分布を取得すればγ線ホログラムとなる。検出効率が高く、高精度のデータが取得できる新たな測定システムの構築を行った。57Feを含む結晶試料(へマタイト結晶)にパルス状の放射光X線を照射し、試料を回転させながら、高速APD検出器でX線の強度変化を測定し、ホログラムデータを得た。γ線ホログラムデータには、同時に取得した蛍光X線ホログラム(結晶情報取得可)とは別のパターンが見られた。
KAKENHI-PROJECT-24540341
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24540341
放射光・核共鳴吸収を利用した元素選択的3D原子配列測定法の開発
γ線ホログラムデータには、ホログラム振動よりも大きな、ホログラムとは別起源と考えられる大きな4回対称のモジュレーション「4φ成分」が含まれていた。測定系の非対称性などを除くために数回に渡って実験セットアップを変えて測定したが、このモジュレーションは必ず再現した。このモジュレーションには物理的な発現機構が存在していると考えられる。この4φ成分は、放射光特有の入射X線の高いエネルギー分解能(meV)や偏光特性に起因すると考えても、また試料の結晶対称性(3回対称)に起因すると考えても説明ができない。M1遷移でも説明できない。メスバウアー効果の厚み効果と放射光の偏光特性で考えても、対称性がある4φ成分は説明できない可能性がある。物性材料研究・新規測定手法開発基礎となる、基本測定セットアップの構築を行ない、放射光核共鳴散乱法を利用した、蛍光X線ホログラムとは別のパターンを持つガンマ線ホログラムの取得ができた。このガンマ線ホログラムにのっている、ホログラム振動より大きなモジュレーションに関して、物理素過程の検討を行っている。基礎となる、基本測定セットアップの構築を行なえた。さらにこれらを用いて、放射光核共鳴散乱法を利用した、蛍光X線ホログラムとは別のパターンを持つγ線ホログラムの取得ができたと考えている。また、この取得したγ線ホログラムは、統計が少ないものの解析することができると考えている。今後は(1)と(2)の各パートに分けて研究を進める。(1)ガンマ線ホログラムの物理素過程の理論研究。(2)より高精度のデータ取得を目指すための計測系の開発。今後は(1)と(2)の各パートに分けて研究を進める。(1)γ線ホログラムの物理素過程の理論研究およびγ線ホログラムの3次元像再生の理論研究。(2)より高精度のデータ取得を目指すための計測系の開発:12。1多素子高速APD検出器のR&Dと、エネルギーと時間の分離計測法のR&Dを行う。そして、得られるホログラムとそこから再構成される3D原子配列の定量比較を行い、最適な方法を改良する。2高速ディスクリミネーター・高速カウンター・高速ステージコントローラー・高速データ取得プログラムなどを組み合わせ、ロジックやハードの改良も含め、統合システムとしての高速・高性能化を行う。同時に、多チャンネル高速同時計測システムの構築も行う。なお、時間枠のタイミングはSPring-8のRF信号から作成して利用する。高速検出システムの作成に特に時間がかかるため。予算が許す範囲内で、プライオリティ順に高速検出部(素子・ステージ)の作成などを行う。予算が許す範囲で、[1]検出部の高度化と、[2]高速カウンターモジュールや高速ステージコントローラーモジュールの改良を、プライオリティ順に行う。25年度への繰越金が発生した状況および使用計画。1・2は本計画遂行のための両輪であり、高度な性能が必要であるがゆえに開発が難しい。予算が限られている中、1と2共にできるだけより良い物を開発・作成するためには、検討と作成にさらなる時間をかけて作成する方が良いとの判断により、25年度に繰り越した。今年度は、1ないしは2のどちらかの開発を先行して行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-24540341
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二級水酸基のラセミ化を完全に防止する新規還元的脱硫法の開発
還元的脱硫反応に通常用いられるラネーニッケルの最大の欠点は二級水酸基のラセミ化を起こすことである。これはラネーニッケルによる還元的脱硫反応を不斉合成に用いる場合に深刻な問題点となっていた。我々はこの問題点の解決法に取り組み、当初の目的をほぼ達成することができた。光学活性メルカプトアルコールを用いたα,β-不飽和カルボニル化合物の光学活性二級アルコールへの新規な高選択的不斉Tandem Michael-MPV反応(J.Am.Chem.Soc.に発表)を開発する過程において、ラネーニッケル(W2)-次亜リン酸組合せ反応剤による新規還元的脱硫反応を開発することができた(Tetrahedron Lett.に発表)。この新規脱硫反応を精査検討し、本反応剤はアリール基、アラルキル基、アシル基等のイオウラジカルを安定化することのできる置換基を有するチオエーテル、スルホキシドの還元的脱硫反応に使用でき、基質に含まれる光学活性二級アルコールの立体配置を完全に保持することができる、反応時間は短時間(30分)で完了し、高収率(75-93%)である、等の特徴を有していることを明らかにし、本論文としてTetrahedronに発表した。また、本反応剤はベンジルエーテル存在下、アリールあるいはベンジルチオエーテルのみを還元的脱硫することができる、α,β-不飽和カルボニル化合物に適用すると基質によっては高選択的に飽和ケトン或いは二級アルコールに還元することができる、飽和ケトンとα,β-不飽和カルボニル基が共存する基質ではα,β-不飽和カルボニル基の二重結合だけを選択的に還元することができる、等の特徴を有していることも明らかにした(投稿準備中)。以上、開発した新規還元的脱硫反応はイオウ原子の特性を活用する不斉合成にとって価値があり、有用であると云える。還元的脱硫反応に通常用いられるラネーニッケルの最大の欠点は二級水酸基のラセミ化を起こすことである。これはラネーニッケルによる還元的脱硫反応を不斉合成に用いる場合に深刻な問題点となっていた。我々はこの問題点の解決法に取り組み、当初の目的をほぼ達成することができた。光学活性メルカプトアルコールを用いたα,β-不飽和カルボニル化合物の光学活性二級アルコールへの新規な高選択的不斉Tandem Michael-MPV反応(J.Am.Chem.Soc.に発表)を開発する過程において、ラネーニッケル(W2)-次亜リン酸組合せ反応剤による新規還元的脱硫反応を開発することができた(Tetrahedron Lett.に発表)。この新規脱硫反応を精査検討し、本反応剤はアリール基、アラルキル基、アシル基等のイオウラジカルを安定化することのできる置換基を有するチオエーテル、スルホキシドの還元的脱硫反応に使用でき、基質に含まれる光学活性二級アルコールの立体配置を完全に保持することができる、反応時間は短時間(30分)で完了し、高収率(75-93%)である、等の特徴を有していることを明らかにし、本論文としてTetrahedronに発表した。また、本反応剤はベンジルエーテル存在下、アリールあるいはベンジルチオエーテルのみを還元的脱硫することができる、α,β-不飽和カルボニル化合物に適用すると基質によっては高選択的に飽和ケトン或いは二級アルコールに還元することができる、飽和ケトンとα,β-不飽和カルボニル基が共存する基質ではα,β-不飽和カルボニル基の二重結合だけを選択的に還元することができる、等の特徴を有していることも明らかにした(投稿準備中)。以上、開発した新規還元的脱硫反応はイオウ原子の特性を活用する不斉合成にとって価値があり、有用であると云える。還元的脱硫反応には通常ラネ-ニッケルが用いられているが、最大の欠点は二級水酸基のラセミ化が起こることである。これはラネ-ニッケルによる還元的脱硫反応を不斉合成に用いる場合に深刻な問題点である。我々はα,β-不飽和カルボニル化合物の光学活性二級アルコールへの新規不斉還元法として光学活性メルカプトアルコールを用いた高選択的不斉Tandem Michael-MPV反応(J.Am.Chem.Soc.に発表)を開発する過程において、生成物(光学活性3-ヒドロキシチオエーテル類)のアルコールの光学純度を完全に保持できる還元的脱硫反応が必要になり、ラネ-ニッケルの上記の欠点を克服することのできるラネ-ニッケル(W2)-次亜リン酸組合せ反応剤による新規還元的脱硫反応を開発することができた(Tetrahedron Lett.に発表)。この新規還元的脱硫反応のScope and Limitationsを精査検討し、以下の特徴を有していることを明らかにし本論文としてTetrahedronに発表した。1)本反応剤はアリール基、アラルキル基、アシル基等のイオウラジカルを安定化することのできる置換基を有するチオエーテル、スルホキシドの還元的脱硫反応に使用でき、基質に含まれる光学活性二級アルコールに立体配置を完全に保持することができる。2)反応時間は短時間(30分)で完了し、高収率(75-93%)である。3)本反応剤はスルホン誘導体には反応しない。4)酢酸緩衝液のpHは5.2が最適である。5)本反応剤はベンジルエーテル存在下、アリールあるいはベンジルチオエーテルのみを還元的脱硫することができる。以上、開発した新規還元的脱硫反応はイオウ原子の特性を活用する不斉合成にとって価値あるものであり、次年度も引き続き研究する。
KAKENHI-PROJECT-09672178
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09672178
二級水酸基のラセミ化を完全に防止する新規還元的脱硫法の開発
還元的脱硫反応に通常用いられるラネーニッケルの最大の欠点は二級水酸基のラセミ化を起こすことである。これはラネーニッケルによる還元的脱硫反応を不斉合成に用いる場合に深刻な問題点となっていた。我々はこの問題の解決法に取り組み、前年度において当初の目的を達成することができた。すなわち、光学活性メルカプトアルコールを用いたα,β-不飽和カルボニル化合物の光学活性二級アルコールへの新規な高選択的不斉Tandem Michael-MPV反応(J.Am.Chem.Soc.に発表)を開発する過程において、ラネーニッケル(W2)-次亜リン酸組合せ反応剤による新規還元的脱硫反応を開発することができた(Tetrahedron Lett.に発表)。この新規脱硫反応を精査検討し、本反応剤はアリール基、アラルキル基、アシル基等のイオウラジカルを安定化することのできる置換基を有するチオエーテル、スルホキシドの還元的脱硫反応に使用でき、基質に含まれる光学活性二級アルコールの立体配置を完全に保持することができる、反応時間は短時間(30分)で完了し、高収率(75-93%)である、等の特徴を有していることを明らかにし、本論文としてTetrahedronに発表した。開発した新規還元的脱硫反応はイオウ原子の特性を活用する不斉合成にとって価値があり、有用であると云える。本年度は、本反応剤の脱硫反応以外の還元剤としての特徴を探索し、α,β-不飽和カルボニル化合物に適用すると基質によっては高選択的に飽和ケトン或いは二級アルコールに還元することができる、飽和ケトンとα,β-不飽和カルボニル基が共存する基質ではα,β-不飽和カルボニル基の二重結合だけを選択的に還元することができる、等の特徴を有していることも明らかにした(投稿準備中)。
KAKENHI-PROJECT-09672178
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09672178
高齢者関連施設での疥癬感染の実態調査と伝播防止に関する研究
1.神奈川県内の高齢者関連施設での疥癬感染実態が把握された。1995-1999年の5年間の高齢者関連施設の73.3%にあたる77施設で計227件(1施設あたり2.95件)の疥癬感染が起きていた。り患者の約90%は長期入所者で,発生の85%が特養ホームと特定許可病院で発生し,療養型病床群では発生が少なかったが,り患者数は老健施設の5.7人にくらべ4.7倍高かった。調査した5年間で,発生施設数,発生件数,1発生あたりのり患者数は減少傾向にあった。神奈川県の高齢者関連施設での疥癬の流行の多くが単独発生化・頻発化していたが,療養型病床群では大型化していた。2.高齢者関連施設への疥癬ダニの侵入経路,施設内伝播および疥癬発生時の対応が解析された。施設内流行の原因は,85%が施設間のピンポン感染であり,残りは施設を短期利用した高齢者だった。施設内伝播はADL5の寝たきり高齢者が多く感染したことから,介助員の手指あるいは衣服を介した接触伝播で広がっていると推定された。疥癬が発生した施設の半数では,発疹の発見ならびに診断の遅れが原因で,流行が拡大していた。3.高齢者関連施設に対して流行防止策を提示し,発生があった施設での直接指導をおこなった。2の解析により,疥癬の流行防止策(発疹の早期発見,著効薬であるγBHCによる早期治療,標準防止策の徹底)を提示した。さらに,施設員(看護師,ヘルパー)に対し,講習会を通じて啓蒙活動をおこなった。4.在宅要介護者および在宅療養者の疥癬実態を調べた。訪問看護する訪問看護ステーションを通じ在宅者の疥癬感染実態を調べた。施設の25.3%で49件の発生(1施設あたり1.4人)があり,疥癬発症率は65才以上の高齢者率が高い地域ほど高い傾向があった。感染者の60%が76-85才,ADL4-5,痴呆の高齢者だった。感染者の17%が訪問施設員,家族,他業種の訪問員に感染させていた。感染原因の40%は,ショーショートスティで短期に利用した高齢者関連施設だった。在宅者が疥癬に感染すると,87.5%が利用している訪問サービスが中断されていた(1在宅者あたり平均2業種)。今後,在宅者の疥癬の早期発見ならびにγBHCによる早期治療をはかるとともに,各種訪問サービス業種員に対する疥癬対応・感染予防教育をすすめる必要性があるとおもわれた。1.神奈川県内の高齢者関連施設での疥癬感染実態が把握された。1995-1999年の5年間の高齢者関連施設の73.3%にあたる77施設で計227件(1施設あたり2.95件)の疥癬感染が起きていた。り患者の約90%は長期入所者で,発生の85%が特養ホームと特定許可病院で発生し,療養型病床群では発生が少なかったが,り患者数は老健施設の5.7人にくらべ4.7倍高かった。調査した5年間で,発生施設数,発生件数,1発生あたりのり患者数は減少傾向にあった。神奈川県の高齢者関連施設での疥癬の流行の多くが単独発生化・頻発化していたが,療養型病床群では大型化していた。2.高齢者関連施設への疥癬ダニの侵入経路,施設内伝播および疥癬発生時の対応が解析された。施設内流行の原因は,85%が施設間のピンポン感染であり,残りは施設を短期利用した高齢者だった。施設内伝播はADL5の寝たきり高齢者が多く感染したことから,介助員の手指あるいは衣服を介した接触伝播で広がっていると推定された。疥癬が発生した施設の半数では,発疹の発見ならびに診断の遅れが原因で,流行が拡大していた。3.高齢者関連施設に対して流行防止策を提示し,発生があった施設での直接指導をおこなった。2の解析により,疥癬の流行防止策(発疹の早期発見,著効薬であるγBHCによる早期治療,標準防止策の徹底)を提示した。さらに,施設員(看護師,ヘルパー)に対し,講習会を通じて啓蒙活動をおこなった。4.在宅要介護者および在宅療養者の疥癬実態を調べた。訪問看護する訪問看護ステーションを通じ在宅者の疥癬感染実態を調べた。施設の25.3%で49件の発生(1施設あたり1.4人)があり,疥癬発症率は65才以上の高齢者率が高い地域ほど高い傾向があった。感染者の60%が76-85才,ADL4-5,痴呆の高齢者だった。感染者の17%が訪問施設員,家族,他業種の訪問員に感染させていた。感染原因の40%は,ショーショートスティで短期に利用した高齢者関連施設だった。在宅者が疥癬に感染すると,87.5%が利用している訪問サービスが中断されていた(1在宅者あたり平均2業種)。今後,在宅者の疥癬の早期発見ならびにγBHCによる早期治療をはかるとともに,各種訪問サービス業種員に対する疥癬対応・感染予防教育をすすめる必要性があるとおもわれた。H13年度本補助金によって以下の成果がえられた。
KAKENHI-PROJECT-13672537
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13672537
高齢者関連施設での疥癬感染の実態調査と伝播防止に関する研究
1.高齢者関連施設での疥癬流行実態が把握できた。1995年から1999年までの5年間に神奈川県内の全施設の73.3%にあたる77施設で計227件(1施設あたり2.95件)の疥癬の流行があった。り患者の88.2%が長期入所者で,発生の85%が特養ホームと特定許可病院で発生し,療養型病床群では発生は少なかったが1施設あたりのり患者数は26.75人と老健施設の5.7人に比べ4.7倍高かった。発生施設数,発生件数,り患者数は96年から99年まで有意に増加していたが,発生1件あたりのり患者数は減少傾向にあった。これらのことは,神奈川県での疥癬発生の多くが単独発生化・頻発化しているが,いくつかの施設(療養型病床群)ではいまだ発生があり集団発生が起きていることをしめしていた。2.疥癬ダニの施設内への侵入経路と施設内伝播が解析された。疥癬ダニの侵入経路は77の陽性施設のうち65施設で他施設や他病院からのもち込みによるもので,発生の多くは施設間のピンポン感染であることをしめした。このことは全施設で的確な防疫対策を講じれば,疥癬流行を押さえ込むことができる可能性をしめしている。さらに,疥癬ダニの施設内伝播を疫学的に解析した。われわれは疥癬ダニが高齢者の介護時に,介助者の衣類・手指を介して伝播することをあきらかにしていた。すなわち,ADL5の「寝たきり老人」に感染者が多かった。今回の調査でも同様な結果がえられ,疥癬が接触感染である再現性がみられた。このことは介助者への感染管理教育が重要であることをしめしている。3.感染者が出た場合,各施設はどのように対応したかが分析された。この分析は疥癬の施設内流行があった施設で,発生が単独化あるいは集団化した要因を調べ,流行があった際に現場でどのような対応をすべきかを考察するためになされた。疥癬の重症度が高いほど,また疥癬を疑ってから確定診断に至るまでの期間が長いほど,集団化する傾向があった。疥癬流行があった施設では,手洗いなど衛生教育の不徹底,ならびに入所時の疥癬チェックの不十分あるなどが有意に高かった。H14年度本補助金で以下の成果が得られた。1.在宅要介護者と在宅医療者の疥癬感染実態を調べた。在宅者の疥癬感染実態を知るために、神奈川県内の231ヶ所の訪問看護ステーションに対してアンケート調査をおこなった。その結果、回答が得られた138施設のうち35施設(25.3%)で、2000年4月から2002年3月までの2年間に、それぞれ26件(27人)と20件(22人)の疥癬感染の存在を確認した(1施設1.4人)。うち両年度ともに疥癬を経験した施設が8ヶ所あった。感染者はそれぞれの地域の訪問対象者数に関係し、感染者の60%が、76-85歳の年齢層で、かつADL(Activity of dairy life)5とADL4の高齢者だった。さらに痴呆症状をもつものが66%と高かった。また、感染者35人のうち6件では本人以外の医療者・家族が感染し、担当施設が翻弄させられている様子が伺えた。2.感染者がでた施設ではどのような対応がされたが分析された。在宅者が医師によって疥癬と確定されると、担当訪問看護ステーションでは自己や他への感染を防ぐために、ほぼ的確な処置がなされていた。感染を知った時点から1日以内にケアプランに関わる他の施設(入浴サービス・訪問介護・デイサービス・ショートスティなど)に連絡されており、看護時には消毒・ゴム手袋やエプロンを使用するなどの感染防止策がなされていた。3.在宅者が疥癬感染によってこうむった不利益が調べられた。通常、在宅要介護者や在宅医療者はケアプランに従って複数のサービスの提供を受けている。しかし、疥癬の発症によって、87.5%の感染者で複数のサービスが中断されていた(1人平均1.95件)。
KAKENHI-PROJECT-13672537
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13672537
テル・タバン出土楔形文字文書による紀元前2千年紀ハブル川流域の歴史研究
2005年以降の国士舘大学によるテル・タバン遺跡(シリア北東部)発掘調査で出土した約480点の楔形文字文書を研究し、前2千年紀のタバトゥム/タベトゥ市(現テル・タバン遺跡)とその周辺の歴史と文化を解明することが本研究の目的である。文書断片の保存修復をへて、文書研究を進めた結果、(1)同市は、前18世紀後半、ユーフラテス中流域の王権(テルカ市あるいはその近郊)の政治的影響を強く受け、前15-14世紀からは「マリの地の王」を名乗る在地の王朝が統治したこと、また(2)同市は、周辺の強力な国家の動向に政治的に対応しながら、ローカルな文化を一定の水準で維持していたことが明らかになった。2005年以降の国士舘大学によるテル・タバン遺跡(シリア北東部)発掘調査で出土した約480点の楔形文字文書を研究し、前2千年紀のタバトゥム/タベトゥ市(現テル・タバン遺跡)とその周辺の歴史と文化を解明することが本研究の目的である。文書断片の保存修復をへて、文書研究を進めた結果、(1)同市は、前18世紀後半、ユーフラテス中流域の王権(テルカ市あるいはその近郊)の政治的影響を強く受け、前15-14世紀からは「マリの地の王」を名乗る在地の王朝が統治したこと、また(2)同市は、周辺の強力な国家の動向に政治的に対応しながら、ローカルな文化を一定の水準で維持していたことが明らかになった。シリア北東部ハブル川中流域に位置するテル・タバン遺跡において2005年以来行われている国士舘大学の発掘調査により出土した480点以上の楔形文字文書の文献学的・歴史学的研究が本研究の目的である。本研究は、これら文書を同遺跡から今後さらに出土する楔形文字史料とともに系統的に研究し、古代のタバトゥム/タベトゥ市(現テル・タバン遺跡)とその周辺の歴史と文化を明らかにしようとするものである。2010年8月10月に行われた今年度の調査においては、2005年に出土し、まだ保存修復の済んでいない中期アッシリア時代と古バビロニア時代の粘土板断片をダマスカス博物館から借り出し、ハッサケのテル・タバン遺跡調査キャンプにおいて、日本とシリアの保存処理技術者が共同でこれらの資料の保存修復を行った。これを受けて、文書研究班が、未整理だった粘土板断片に整理番号を付け、多くの粘土板断片を接合することで粘土板の復元を行い、文書解読にむけた資料の整理・記録・復元の作業が大きく前進した。これと同時に今年度新たに出土した計14点の楔形文字史料(円筒形碑文断片1点、土製釘片1点、焼成レンガ片12点)の詳細を記録し、写真撮影、ハンドコピー作成、ならびに解読作業をおこなった。また、これまでの文書研究の成果の一部を山田と柴田が国内外の学会・研究会において発表した。これにより、古バビロニア時代から中期アッシリア時代のタバトゥム/タベトゥの地政学的状況ならびに王統に関する新たな知見が学界に示された。また、タバトゥム/タベトゥは、古バビロニア時代にバビロンのハンムラビによって破壊されたユーフラテスの中心都市マリの文化的伝統を暦(特に月名)、祭儀、度量衡、書記伝統等において多様な形で継承していったという新たな研究成果も公にされた。シリア北東部ハブル川中流域に位置するテル・タバン遺跡において2005年以来行われてきた国士舘大学の発掘調査により出土した480点以上の襖形文字文書の文献学的・歴史学的研究が本研究の目的である。本研究は、これら文書を同遺跡から新たに出土する楔形文字史料とともに系統的に研究し、古代のタバトゥム/タベトゥ市(現テル・タバン遺跡)とその周辺の歴史と文化を明らかにすることを目的としてきた。当初の予定では2011年8月10月に行われるテル・タバンにおける発掘調査に山田と柴田が参加して、新たに出土する襖形文字資料を記録するとともにダマスカス博物館に所蔵される前年度までに出土した文字資料の保存強化、解読、研究に取り組む予定であったが、シリア国内における治安の悪化のためにこの計画は中止となった。そこで、すでに記録整理した写真、ハンドコピー等の資料をもとにテル・タバン出土資料の解読と研究を進めることに力を注ぐことにし、山田と柴田が、ドイツ、ハイデルベルクに長期滞在し、ハイデルベルク大学のアッシリア学専門図書館を用いて集中的な文献学的研究を行った。研究の進展と並行して、これまでの文書研究の成果の一部を山田と柴田が国内外の学会・研究会(国際アッシリア学会[ローマ])、ハイデルベルク大学、ミュンヘン大学、筑波大学)において発表すると同時に、古バビロニア時代から中期アッシリア時代のタバトゥム/タベトゥの地政学的状況、王統、暦(特に月名)、祭儀、度量衡、書記伝統等についてテル・タバン文書がもたらす新たな知見に基づき山田と柴田が複数の論文にまとめた。これらの論文の重要な論点は以下の通り。:(1)テル・タバンとその周辺地域は前18世紀後半から前15世紀頃まで、ほぼ一貫してユーフラテス中流域の政治的中心(テルカ市近郊)の政治的影響を強く受け、宗教文化的伝統(暦におけるマリの伝統)ならびに書記伝統(いわゆるハナ文書の伝統)においても、多くの点でユーフラテス中流域の政治的中心と連なっていた。
KAKENHI-PROJECT-22320137
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テル・タバン出土楔形文字文書による紀元前2千年紀ハブル川流域の歴史研究
(2)こうした伝統文化を維持したタバトゥム/タベトゥ地域には、前15・14世紀以降「マリの地の王たち」の王朝が創設されるが、この王朝は当初考えられていたようにアッシリア起源ではなく、ローカルな王朝であることが、王朝初期の王名(フリ語)から明らかである。シリア北東部ハブル川中流域に位置するテル・タバン遺跡において2005年以来行われてきた国士舘大学の発掘調査により出土した480点以上の楔形文字文書の文献学的・歴史学的研究が本研究の目的である。2011年以来のシリア国内の治安悪化にともない、シリア国内の発掘キャンプや博物館における文字史料の保存、解読、研究の計画は、実施不可能な状態が続いているが、すでに記録整理した写真、ハンドコピー等の資料をもとにテル・タバン出土資料の解読と研究を進めた。研究の進展と並行して、これまでの文書研究の成果の一部を山田と柴田が国内外の学会・研究会において発表した。山田の発表内容は、特に古バビロニア時代の学校文書にみる当該期のテル・タバンにおける書記教育の諸相について、柴田の発表内容は、中期アッシリア時代のタベトゥ市の国家行政と宗主国アッシリアとの関係等を論じるものである。また、沼本(連携研究者)・柴田・山田の共著論文として、前2千年紀を通じたテル・タバンの物質文化の変遷と文字史料から得られるデータを対比して検討した論文を公刊した。この論文は、テル・タバンでは、前2千年紀を通じ、大きな断絶なしに居住が続き、ローカルな文化的・社会的伝統が継続していたことを明らかにしている。さらに、古バビロニア期のテル・タバン出土文書と内容的に深くかかわるテルカ(テル・アシャラ)出土文書の一部が、O. Rouaultによって出版されたが、山田は、このRouaultの出版の書評論文を準備した(ドイツの学術誌Zeitschrift Assyriologieに近刊)。また、テル・タバン周辺の考古学的調査の最新の動向を把握するため、イラク・クルド自治区ならびにイギリスから3名の研究者を招聘し、10月24日に筑波大学東京キャンパスにて近年のクルディスタン地域での調査についての講演会を開催した。シリア北東部ハブル川中流域に位置するテル・タバン遺跡において2005年以来行われてきた国士舘大学の発掘調査により出土した480点以上の楔形文字文書の文献学的・歴史学的研究が本研究事業の目的である。本研究事業は、これらの文書を同遺跡から新たに出土する楔形文字文書史料とともに系統的に研究し、古代のタバトゥム・タベトゥ市(前テル・タバン遺跡)とその周辺の歴史と文化を明らかにすべく進められてきた。残念ながら、2011年からのシリア国内の治安の悪化にともない、テル・タバン発掘キャンプとダマスカス博物館における文字資料の保存、解読、研究の計画は現在中断しているが、すでに記録整理した写真、ハンドコピー等の資料を基にテル・タバン出土資料の解読と研究を進めている。シリアでの調査研究に代えて、山田がミュンヘンへ、柴田がハイデルベルクへそれぞれ長期(12か月)渡航し、それぞれアッシリア学の専門図書館を利用して集中してテル・タバン文書の文献学的研究を推進した。シリア北東部ハブル川流域に位置するテル・タバン遺跡において20052010年に行われた国士舘大学の発掘調査によって出土した各種楔形文字文書の文献学的・歴史学的研究が本研究の主目的である。2011年以来のシリア国内の治安悪化に伴い、シリアにおいて文字史料を直接検分しての研究は実施不可能であるが、すでに記録整理した写真、ハンドコピー等をもとにテル・タバン出土資料の研究を実施している。平成26年度は、特にテル・タバン出土の前2千年紀前半(古バビロニア時代)の学校文書(音節文字表と度量衡変換表)の研究を山田(研究代表者)が、前2千年紀後半(中アッシリア時代)の行政文書・書簡等における書体研究を柴田(研究分担者)が集中的に進めた。
KAKENHI-PROJECT-22320137
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PTHの骨形成頂進作用に及ぼすメカニカルストレスの影響
副甲状腺ホルモン(PTH)は骨代謝において、骨吸収と骨形成の2面性を示すホルモンである。すなわちPTHを連続的に投与すると骨吸収が誘導され、間欠的に投与すると骨形成が誘導される。しかし、そのメカニズムは明らかになっていない。我々はこれまで、メカニカルストレスをマウス骨細胞から確立されたMLO-Y4A2細胞に負荷すると副甲状腺ホルモン受容体(PTHR)のmRNAが誘導されることを見いだしていた。そこで、メカニカルストレスによるPTHRの発現とシグナル伝達の仕組みを解析するために、PTHRを可視化することを試みた。マウスのPTHR翻訳領域全長を含むcDNAをPCRによってクローニングし、クロンテック社のEGFPベクター(おわんクラゲの蛍光蛋白質GFPを発現するベクター)、pEGFP-N1(N末に融合する蛋白のcDNAを導入)およびpEGFP-C3(C末に融合する蛋白のcDNAを導入)につなぎ込み、PTHRとEGFPの融合蛋白発現ベクターを構築した。この融合蛋白発現ベクターをマウス骨芽細胞株MC3T3-E1細胞にリポフェクション法にて導入し、ネオマイシンによって安定的発現株の分離を試みた結果、強い蛍光が観察される細胞は、付着せず浮遊した状態になった。これはPTHRが多量に発現したために、過剰なシグナルが細胞内に伝達されたため、細胞死を起こしたのではないかと考えられた。更に、ネオマイシンによる選択を行ったところ、蛍光が観察されないが生き残る細胞が得られた。この細胞からtotal RNAを抽出し、RT-PCRによって融合蛋白のmRNAの発現の確認を行ったところ、両ベクターを導入した細胞からmRNAの発現が確認され、融合蛋白を安定的に発現している細胞が得られた。この細胞を使って、メカニカルストレスの影響を検討している。副甲状腺ホルモン(PTH)は骨代謝において、骨吸収と骨形成の2面性を示すホルモンである。すなわちPTHを連続的に投与すると骨吸収が誘導され、間欠的に投与すると骨形成が誘導される。しかし、そのメカニズムは明らかになっていない。我々はこれまで、メカニカルストレスをマウス骨細胞から確立されたMLO-Y4A2細胞に負荷すると副甲状腺ホルモン受容体(PTHR)のmRNAが誘導されることを見いだしていた。そこで、メカニカルストレスによるPTHRの発現とシグナル伝達の仕組みを解析するために、PTHRを可視化することを試みた。マウスのPTHR翻訳領域全長を含むcDNAをPCRによってクローニングし、クロンテック社のEGFPベクター(おわんクラゲの蛍光蛋白質GFPを発現するベクター)、pEGFP-N1(N末に融合する蛋白のcDNAを導入)およびpEGFP-C3(C末に融合する蛋白のcDNAを導入)につなぎ込み、PTHRとEGFPの融合蛋白発現ベクターを構築した。この融合蛋白発現ベクターをマウス骨芽細胞株MC3T3-E1細胞にリポフェクション法にて導入し、ネオマイシンによって安定的発現株の分離を試みた結果、強い蛍光が観察される細胞は、付着せず浮遊した状態になった。これはPTHRが多量に発現したために、過剰なシグナルが細胞内に伝達されたため、細胞死を起こしたのではないかと考えられた。更に、ネオマイシンによる選択を行ったところ、蛍光が観察されないが生き残る細胞が得られた。この細胞からtotal RNAを抽出し、RT-PCRによって融合蛋白のmRNAの発現の確認を行ったところ、両ベクターを導入した細胞からmRNAの発現が確認され、融合蛋白を安定的に発現している細胞が得られた。この細胞を使って、メカニカルストレスの影響を検討している。マウス骨芽細胞株MC3T3-E1を60mm dish上(αMEM中,10%FBS存在下)で4日間培養後、CO_2 incubator中で低速度制御遠心機を用いて、メカニカルストレスの一つとして重力負荷を行った。重力負荷は2xg,3xg,5xg,7xg,10xgを1分間の停止を含んで15分間連続的に負荷した。ストレス負荷後、total RNAをそれぞれ抽出し、RT-PCR法にてPTH受容体(PTHR)のmRNAの発現量を検討した。7xg,10xgなどの比較的強い重力ストレスを負荷した場合、PTHRのmRNAの発現量は低下した。2xg,3xgなどの比較的弱い重力を負荷した場合、mRNAの発現量に変化は見られなかった。コントロールとして行った実験では、cyclooxygenase mRNAの発現量が重力に応じて増加し、GAPDH mRNAの変化は見られないことを確認した。この結果は我々が振盪機を用いてシェアストレスを負荷した以前の実験結果と異なるものであった。これらの結果はPTHRのmRNAの発現量レベルが負荷環境によって微妙にコントロールされていることを示すものであり、PTHの連続投与と間歇投与の違いに反映されるものである。次に、PTHRの蛋白レベルでの動態を検討するために、PTHRとGreen Fluorescent Protein (GFP)と連結した発現PlasmidとFLAGエピトープと連結した発現plasmidを構築した。現在、これらのPlasmidをMC3T3-E1細胞およびプライマリー骨芽細胞、骨細胞様株MLO-Y4-A2細胞に導入し、メカニカルストレス(重力負荷)によるPTHRの脱感作への効果を検討している。副甲状腺ホルモン(PTH)は骨代謝において、骨吸収と骨形成の2面性を示すホルモンである。すなわちPTHを連続的に投与すると骨吸収が誘導され、間欠的に投与すると骨形成が誘導される。
KAKENHI-PROJECT-15591974
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15591974
PTHの骨形成頂進作用に及ぼすメカニカルストレスの影響
しかし、そのメカニズムは明らかになっていない。我々はこれまで、メカニカルストレスをマウス骨細胞から確立されたMLO-Y4A2細胞に負荷すると副甲状腺ホルモン受容体(PTHR)のmRNAが誘導されることを見いだしていた。そこで、メカニカルストレスによるPTHRの発現とシグナル伝達の仕組みを解析するために、PTHRを可視化することを試みた。マウスのPTHR翻訳領域全長を含むcDNAをPCRによってクローニングし、クロンテック社のEGFPベクター(おわんクラゲの蛍光蛋白質GFPを発現するベクター)、pEGFP-N1(N末に融合する蛋白のcDNAを導入)およびpEGFP-C3(C末に融合する蛋白のcDNAを導入)につなぎ込み、PTHRとEGFPの融合蛋白発現ベクターを構築した。この融合蛋白発現ベクターをマウス骨芽細胞株MC3T3-E1細胞にリポフェクション法にて導入し、ネオマイシンによって安定的発現株の分離を試みた結果、強い蛍光が観察される細胞は、付着せず浮遊した状態になった。これはPTHRが多量に発現したために、過剰なシグナルが細胞内に伝達されたため、細胞死を起こしたのではないかと考えられた。更に、ネオマイシンによる選択を行ったところ、蛍光が観察されないが生き残る細胞が得られた。この細胞からtotal RNAを抽出し、RT-PCRによって融合蛋白のmRNAの発現の確認を行ったところ、両ベクターを導入した細胞からmRNAの発現が確認され、融合蛋白を安定的に発現している細胞が得られた。この細胞を使って、メカニカルストレスの影響を検討している。
KAKENHI-PROJECT-15591974
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放電による発光の時間分解分光測光装置の試作
プラズマの時間分解分光装置を試作した。得られた成果は次の通りである。(1)ディジタル論理回路によるパルス制御回路と高速パワーMOSFETをスイッチング素子とした出力回路から構成されたパルス電源を時間分解分光装置に導入した。パルス幅、パルス間隔、パルス電流の可変制御は従来のパルス電源においても実現されていたが、本電源は集積回路素子を用いてコンパクト化され、かつその機能の拡張強化が容易に行われる点に特色がある。また半導体素子で実現できる最高速のスイッチング性能を具備している点も誇れる性能である。(2)パワーMOSFETをはしめてプラズマ発生用パルス電源に適用して、立上がり時間、立下り時間ともに<1μSの制御された電力パルスを出力した。小出力プラズマを発生させるには小容量素子を用い、大出力プラズマを発生させるには大容量素子を用いるなど適切な素子の選択が必要なることを明らかにした。以上の成果は電気学会論文誌(平成元年6月号)に掲載予定。(3)パルス放電プラズマからの放射をボックスカー・インテグレータを用いて1時間分解分光の実験を遂行した。水銀アルゴンパルス放電プラズマの特定時刻のスペクトルを取得し、主要スペクトル線の波形を再現することができた。このらうな実験結果が得られたことは本試作装置がプラズマ中の反応、粒子の衝突素過程を解明する診断装置として利用されることを実証したと考えられる。この成果は電気学会論文誌(平成元年6月号)に掲載される予定。(4)パルス放電で作られる反応中間体等を吸光実験で検出する目的をもって同期遅延パルス発生回路を設計、これを現有パルス電源に付加して機能の拡張強化を図った。従来の閃光分解分光に匹敵する斬新な装置になり、産業界への貢献も大きいものと確信している。プラズマの時間分解分光装置を試作した。得られた成果は次の通りである。(1)ディジタル論理回路によるパルス制御回路と高速パワーMOSFETをスイッチング素子とした出力回路から構成されたパルス電源を時間分解分光装置に導入した。パルス幅、パルス間隔、パルス電流の可変制御は従来のパルス電源においても実現されていたが、本電源は集積回路素子を用いてコンパクト化され、かつその機能の拡張強化が容易に行われる点に特色がある。また半導体素子で実現できる最高速のスイッチング性能を具備している点も誇れる性能である。(2)パワーMOSFETをはしめてプラズマ発生用パルス電源に適用して、立上がり時間、立下り時間ともに<1μSの制御された電力パルスを出力した。小出力プラズマを発生させるには小容量素子を用い、大出力プラズマを発生させるには大容量素子を用いるなど適切な素子の選択が必要なることを明らかにした。以上の成果は電気学会論文誌(平成元年6月号)に掲載予定。(3)パルス放電プラズマからの放射をボックスカー・インテグレータを用いて1時間分解分光の実験を遂行した。水銀アルゴンパルス放電プラズマの特定時刻のスペクトルを取得し、主要スペクトル線の波形を再現することができた。このらうな実験結果が得られたことは本試作装置がプラズマ中の反応、粒子の衝突素過程を解明する診断装置として利用されることを実証したと考えられる。この成果は電気学会論文誌(平成元年6月号)に掲載される予定。(4)パルス放電で作られる反応中間体等を吸光実験で検出する目的をもって同期遅延パルス発生回路を設計、これを現有パルス電源に付加して機能の拡張強化を図った。従来の閃光分解分光に匹敵する斬新な装置になり、産業界への貢献も大きいものと確信している。1時間分解分光測光装置用のパルス電源を試作しつつあり、昭和62年3月末完了の予定である。これに先立つブレッドボードの実験では同期式アプダウン4ビットバイナリカウンタ74193を中心とするIC群を用いて、パルスのオン時間、オフ時間を任意に設定できるゲートパルス発生回路を開発した。さらにこのゲートパルスによりパワーMOSFET2SK312を多数個並列駆動(12本)する出力回路方式を採り、半導体素子で実現できる最高速のスイッチングを実現し、またパルス電流を制御できる方式を開発した。この予備実験のパルス電源はパルス電流10120A(12段切換)、パルス幅0.18μS(20段切換)、デューティファクタ0.520%(20段切換)の性能を持ち、試作の成果を今春の物理学会プラズマ分科会で発表する予定である。2放電回路のパルスエネルギーの伝送には一束のシールド線の外部導体にもパルス電流を流して回路の浮遊インダクタンスを低減する方法を検討した。MOSFET2SK312のドレイン・ソース間にsnubberを接続し、ターンオフ時に発生するスパイク電圧、これに引続く振動を抑制することによりパルス波形の改善を試み、0.1μS幅のパルスを出力し、放電することができた。この結果は1とあわせて物理学会で報告する。MITの10MHz、100W級のものに比べてはるかに大電力パルス電源が実現される見込みであるが、このためには新しいsnubberの開発が必要である。現在実験中である。3このパルス電源の目途がつき、時間分解分光測光の実験に着手できる段階に達し、稀ガス、水銀放電管の放電特性、分光特性の実験を開始した。(1)稀ガス・水銀放電管の放電特性(緩和現象の解明)62/262/8(2)稀ガス・水銀放電管の分光特性62/562/9(3)プラズマ発生装置の試作62/862/10の予定で進める。
KAKENHI-PROJECT-61850171
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放電による発光の時間分解分光測光装置の試作
放電による発光の時間分解分光装置の試作を最終的にまとめるため、時間分解分光の実験に重点を置き、データを取得した。また、パルス電源の機能拡張、強化のため、同期遅延パルス発生器を設計、付加した。(1)時間分解分光すでにパルス放電の各時刻におけるスペクトルを取得しているが、アフターグローの再結合スペクトルを解析した。水銀ーアルゴン混合気体では水銀分子イオンが関与する解離再結合が主体をなしていること、この再結合により6^3D,7^3D......等の約15の特定状態に遷移すること、各状態への遷移の割合は定まっていること等アフターグロープラズマの中を進行する素過程に関するデータを取得できることを確めた。またMgO窓つきキセノン放電管をパルス放電し、同様に手法を適用して時間分解スペクトルと主要スペクトル線の波形に関するデータを取得している。(2)パルス放電で作られる反応中間体の決定が重要である。このため吸収スペクトル測定用の第2光源を励起する同期遅延パルス発生回路を設計、これを現有パルス電源に付加して機能強化を図った。(1)遅延時間設定およびパルス幅設定には直列接続同期カウンタを用い、(2)パルス幅設定には直列接続コンパレータを用い、(3)信号伝達段数の多い経路には高速タイプのIC(74F)を使用する等の新規技術を導入した回路である。パルス放電による時間分解分光装置としては本来の発光分光に加えて吸光分光も可能となり,閃光分光法に匹敵する斬新な装置となる。なおパルス電源の改良、水銀プラズマの時間分解分光の測定結果は物理学会、電気学会、プラズマ研究会で発表したほか、電気学会論文誌に2篇掲載される予定である(平成元年6月号予定)。
KAKENHI-PROJECT-61850171
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61850171
広域成長管理計画のもとでの計画評価に関する研究
本研究では、広域レベルの成長管理体系における総合的な計画評価システムについて調査を実施した。今後、日本は急激な人口減少化社会を迎えるわけであり、その対策として社会のすべての面での厳格な需要予測、需要管理に基づく社会システムの運用が必要といわれている。都市計画についても、人口予測値をどのように推計し、計画に位置付け、評価するかが厳しく問われており、その点が本研究によって確認できた。環境評価では、計画体系と環境評価システムとの連携を調査し、従来の環境影響評価のあり方も含めて、環境評価と計画制度との関連が検証できた。本研究では、広域レベルの成長管理体系における総合的な計画評価システムについて調査を実施した。今後、日本は急激な人口減少化社会を迎えるわけであり、その対策として社会のすべての面での厳格な需要予測、需要管理に基づく社会システムの運用が必要といわれている。都市計画についても、人口予測値をどのように推計し、計画に位置付け、評価するかが厳しく問われており、その点が本研究によって確認できた。環境評価では、計画体系と環境評価システムとの連携を調査し、従来の環境影響評価のあり方も含めて、環境評価と計画制度との関連が検証できた。本年度は、以下の2箇所において現地調査を実施した:1)米国ニュージャージー州(西浦)、2)米国ワシントン州(平)。調査で収集した資料やヒアリング結果を基に、以下の3つの観点から分析を進めている。3つの観点とは、総合性、人口予測値、環境評価である。総合性とは、計画評価システムの全体的なフレームワークを検証することである。計画制度における位置付け、評価手法、評価項目、公共参画のしくみなど、計画評価システム全体の有効性を検証する。人口予測値では、計画策定における人口推計値の取り扱いについて検証するものである。成長管理は需要管理型の都市政策である。今後、日本は急激な人口減少化社会を迎えるわけてあり、その対策として社会のすべての面での厳格な需要予測、需要管理に基づく社会システムの運用が必要といわれている。都市計画についても、人口予測値をどのように推計し、計画に位置付け、評価するかが厳しく問われてくる。環境評価では、計画体系と環境評価システムとの連携を調査する。環境への影響評価を実施し、それを計画段階で取り込むことが理想であるが、現実は環境影響評価が後追い的になってきている。しかし近年では、戦略的環境アセスメント(Strategic Environmental Assessment : SEA)が導入されるようになり、計画段階から環境へのインパクトを緩和する目的で計画変更を伴う措置が講じられるしくみが広がりつつある。米国の州成長管理では、直接的にはSEAと称してはいないが、州によってはSEA的なしくみを既に導入しているところもある。従来の環境影響評価のあり方も含めて、環境評価と計画制度との関連を検証する。17年度の成果については、18年度に開かれる学会での発表、査読付き論文集への投稿を行う。本年度は、人口予測値の観点から広域成長管理制度を検視した。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」(平成14年1月推計)によると、目本全体の人口は、平成18(2006)年に1億2,774万人でピークに達した後、長期の減少過程に入る。東京圏は最後まで人口が増加すると考えられるが、それでも、2010年から2015年の間にピークを迎えることが予測され、近い将来に人口増加から人口減少に転ずることが容易に予測できる。これまで、多くの市町村では人口増加が継続する前提で総合計画をはじめとして住宅マスタープランなどの各種計画を立案、実施している。しかし、現実には人口減少による中心市街地の衰退、空き家や放棄地の増加が目立ち始めている。このような状況に対して、広域レベルでの適切な人口予測に基づくバランスの取れた地域の成長管理計画が求められる。事例としたワシントン州は、州機関であるOffice of Financial Management(OFM)が郡レベルの人口推計(20年)を行い、その値を郡が管轄内の白治体に配分するという仕組みをとっている。更に、州計画目標に整合する形で各白治体計画の策定が義務付けられており、州という広域レベルでバランスの取れた持続可能な成長をめざして計画体系が運用されている。調査では、運用から10年近くなる人口配分システムが、実際に地域成長管理という目標を達成したのかどうかの実態調査を行った。学術論文として投稿した。また、オレゴン州、メリーランド州への調査を実施した。両州は、広城的成長管理政策を早い時期から導入してる州である。特に、メリーランド州はスマートグロース政策を早くから導入してきており、環境に配慮した持続可能な成長を目指してきている。両州については、州計画運用における課題と人口問題の取り扱いをヒアリング調査した。本研究では,広域レベルの成長管理体系における総合的な計画評価システムについて調査を実施した。成長管理とは,無秩序に広がる市街化をコントロールし,コンパクトなまちづくりをめざす都市政策である。1970年代に米国の自治体で導入され,現在では州計画や地域計画など広域レベルで成長管理計画が導入されてきている。本研究では,広域成長管理である州計画を対象として,広域レベルでの計画評価システムを調査した。本研究で取り上げる成長管理は,広域調整に基づく計画策定を実施してきている例であり,広く公共の利益を確保する計画策定および評価のしくみは我国の都市計画の対して貴重な示唆を与えるものと期待される。本年度は,事例対象州として,バーモント州に加えて,ニュージャージー州,ジョージア州や関係するその他の州を含めて調査を行った。
KAKENHI-PROJECT-17560563
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広域成長管理計画のもとでの計画評価に関する研究
環境への影響,公共サービス水準への影響,自然景観,歴史保全地域への影響等,幅広く環境評価を行い,広域レベルでの成長管理を実施してきている州を対象とした。調査では,計画制度と環境評価の連携がどのように運用されているのか,土地利用計画の実効性と財産権の問題をどのように解決しているのか,広域レベルの計画策定にかかわる合意形成の仕組みの課題は何か,などに関して実態調査を行った。その結果を,3本の論文にまとめた。本年度の成果としてまとめたのは,オレゴン州の土地利用計画に関する事例と,ニュージャージー州の広域計画における合意形成システムの評価に関するものである。ジョージア州やバーモント州については,継続研究として位置づけ,来年度中に論文としてまとめる計画である。最終年度である本年度は、以下の3つのことを実施した。1)過去3年間のフォローアツプ調査特にメリーランド州の農地保全政策を通じて成長管理システム評価に関するヒアリング調査を実施した。ワシントンDCの北に位置するメリーランド州は、1977年に全米で初めて農地保全政策を導入した。1997年に、同政策はスマート・グロース政策(メリーランド州の成長管理政策の名称)の重要な政策の柱として位置づけられ、課題はあるものの、政策を発展させながら成果を挙げつつある。本年度は、大都市近郊のメリーランド州で実施されている農地等の保全政策の発展を、都市化との関係も視野に入れながら、行政担当者へのインタビュー調査を実施し、政策の問題点を明らかにした。2)これまでの研究成果発表都市計画学会学術論文集に、以下の2本の論文(査読付)が掲載された。・「都市開発と都市基盤整備の同時性実現をめぐる問題について」、日本都市計画学会都市計画論文集No.43-3 2008, pp. 313-318・「米国メリーランド州の農地等保全政策の発展と問題点について」、日本都市計画学会都市計画論文集No.43-3 2008, pp.361-3663)これまでの研究成果のとりまとめ17年度、18年度、19年度の総括として、広域成長管理にみる計画評価システムの実態と課題をまとめ、広域レベルでのバランスの取れた持続可能な成長管理システムを検討した。
KAKENHI-PROJECT-17560563
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微粒子を含む液の凝固における電気二重層力の作用とその効果を利用した透明な氷の作製
平成16年度は,微粒子を含む液体の凝固における電場付与の効果を明らかにするとともに,表面電位の異なる粒子を混合させた微粒子群を含む液体の凝固における掃き出し・捕捉挙動を取り扱い,凝固に伴う微粒子の掃き出し・捕捉挙動に及ぼす表面電位の影響について検討した.さらに,微粒子の掃き出し現象の応用として,液体中に溶存している気泡も液体中の微小粒子と考えることが可能であり,凝固に伴う溶存気泡の掃き出し・捕捉挙動についても検討した.具体的な検討事項を以下に示す.1.凝固における微粒子の掃き出し・捕捉現象に及ぼす電場付与の効果を実験的に取り扱い,微粒子の掃き出し・捕捉挙動を電場方向,凝固速度および粒子径と関係づけて明らかにした.2.蒸留水中で負に帯電するシリカ粒子-水系および正に帯電するアルミナ粒子-水系の一方向凝固実験を行い,両者の比較により,粒子の表面電位が粒子の掃き出し・捕捉現象に大きく影響を与えることを実験的に明らかにした.3.蒸留水中で負に帯電するシリカ粒子と正に帯電するアルミナ粒子を混合させた粒子群-水系の沈降実験および一方向凝固実験を行い,粒子の混合による表面電位の変化が粒子の掃き出し・捕捉挙動に大きく影響を与えることを実験的に明らかにした.さらに,シリカ,アルミナ混合粒子の臨界凝固速度がアルミナ粒子の粒子径に大きく依存することを実験的に明らかにした.4.気泡を含む液体の一方向性凝固実験を行い,気泡の掃き出し・捕捉現象を,凝固方向,凝固速度および溶存気泡の溶解度と関係づけて実験的に明らかにするとともに,気泡と凝固表面の間に働く電気二重層力,分子間相互作用を表すHamaker定数にLifshitz理論を適用したvan der Waals力,粘性抵抗力,重力を加えたモデルにより粒子の掃き出し限界となる凝固速度を理論的に明らかにし,合わせて実験結果と比較検討した.平成15年度は,凝固時に生じる微粒子の掃き出し・捕捉現象に及ぼす電気二重層力に着目して理論的・実験的に検討を進めた.具体的には,ガラス粒子およびガラス粒子よりも高い表面電位を有するベントナイト粒子を用いて掃き出し・捕捉挙動実験を行い,掃き出し・捕捉挙動に及ぼす粒子表面電位の影響について検討した.また,電場付与による微粒子の掃き出し・捕捉の制御の可能性についても検討した.さらには,液体中に溶存している気泡も液体中の微小粒子と考えることが可能であり,溶存気泡の掃き出し・捕捉挙動についても検討した.以下に検討事項を示す。1.ガラス粒子-水系の一方向凝固実験を行い,粒子の掃き出しおよび捕捉現象を凝固速度および粒子径と関係づけて検討した.2.凝固時に生じる微粒子の掃き出し・捕捉の挙動を,Poisson-Boltzmann方程式から電気二重層斥力,分子間相互作用を表すHamaker定数にLifshitz理論を適用してvan der Waals力を求め,さらには,粘性抵抗力,重力を加えたモデルにより粒子の掃き出し限界となる凝固速度を理論的に明らかにし,合わせて実験結果と比較検討した.3.表面電位が高い性質を持つベントナイト粒子を用いて凝固時における掃き出し・捕捉実験を行い,ガラス粒子との比較検討を行った.4.電場付与による微粒子の掃き出し・捕捉挙動の制御の可能性を考え,電場付与時における液体中の微粒子沈降実験および掃き出し・捕捉実験を行い,電場付与による効果について検討した.5.気泡を含む液体の一方向性凝固実験を行い,気泡の掃き出し・捕捉現象を凝固速度,気泡径,凝固方向,および溶存気泡濃度と関係づけて検討した.平成16年度は,微粒子を含む液体の凝固における電場付与の効果を明らかにするとともに,表面電位の異なる粒子を混合させた微粒子群を含む液体の凝固における掃き出し・捕捉挙動を取り扱い,凝固に伴う微粒子の掃き出し・捕捉挙動に及ぼす表面電位の影響について検討した.さらに,微粒子の掃き出し現象の応用として,液体中に溶存している気泡も液体中の微小粒子と考えることが可能であり,凝固に伴う溶存気泡の掃き出し・捕捉挙動についても検討した.具体的な検討事項を以下に示す.1.凝固における微粒子の掃き出し・捕捉現象に及ぼす電場付与の効果を実験的に取り扱い,微粒子の掃き出し・捕捉挙動を電場方向,凝固速度および粒子径と関係づけて明らかにした.2.蒸留水中で負に帯電するシリカ粒子-水系および正に帯電するアルミナ粒子-水系の一方向凝固実験を行い,両者の比較により,粒子の表面電位が粒子の掃き出し・捕捉現象に大きく影響を与えることを実験的に明らかにした.3.蒸留水中で負に帯電するシリカ粒子と正に帯電するアルミナ粒子を混合させた粒子群-水系の沈降実験および一方向凝固実験を行い,粒子の混合による表面電位の変化が粒子の掃き出し・捕捉挙動に大きく影響を与えることを実験的に明らかにした.
KAKENHI-PROJECT-15760130
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15760130
微粒子を含む液の凝固における電気二重層力の作用とその効果を利用した透明な氷の作製
さらに,シリカ,アルミナ混合粒子の臨界凝固速度がアルミナ粒子の粒子径に大きく依存することを実験的に明らかにした.4.気泡を含む液体の一方向性凝固実験を行い,気泡の掃き出し・捕捉現象を,凝固方向,凝固速度および溶存気泡の溶解度と関係づけて実験的に明らかにするとともに,気泡と凝固表面の間に働く電気二重層力,分子間相互作用を表すHamaker定数にLifshitz理論を適用したvan der Waals力,粘性抵抗力,重力を加えたモデルにより粒子の掃き出し限界となる凝固速度を理論的に明らかにし,合わせて実験結果と比較検討した.
KAKENHI-PROJECT-15760130
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韓国における地域社会の変容と住民自治に関する研究
本研究の目的は、60年代以降における地域社会の変容を「都市型社会」の成立という視角から検討し、韓国における住民自治の可能性を探ることにある。第1章では、1960年代以降の韓国の都市化過程を、まず、その基礎となる政府の国土開発計画とその実績を日本との対比で検討した。ついで、そうした開発と産業発展に伴う都市化の過程を検討し、韓国社会が、90年代の中盤に至って、奥田道大の規定する「都市化社会」の最終局面、つまり、「都市型社会」の戸口にあって、大都市ソウルの衰退化がはじまろうとしている局面にあることを明らかにした。第2章では、そうした社会変化を前提として韓国における地方自治制度の展開を検討した。まず、解放後の地方自治制度の成立、停止、そして91年の復活に至る過程をたどり、韓国地方自治制度の特徴と課題を概観した。さらに、91年の地方議会選挙と98年の地方団体長および議会選挙の事例研究を通して、韓国の地方自治制度の定着化とその問題点について検討した。第3章は、90年代における韓国の住民自治の具体的な在りようを済州島の事例を通して検討した。ここでは、第1章で検討した中央主導の開発が地域社会に及ぼした影響を明らかにし、これに対する80年代以降の住民運動の特徴を検討した。その上で、90年代以降の韓国社会の住民自治をめぐる状況と課題を、済州島における住民自治の到達点に照らして検討した。本研究の目的は、60年代以降における地域社会の変容を「都市型社会」の成立という視角から検討し、韓国における住民自治の可能性を探ることにある。第1章では、1960年代以降の韓国の都市化過程を、まず、その基礎となる政府の国土開発計画とその実績を日本との対比で検討した。ついで、そうした開発と産業発展に伴う都市化の過程を検討し、韓国社会が、90年代の中盤に至って、奥田道大の規定する「都市化社会」の最終局面、つまり、「都市型社会」の戸口にあって、大都市ソウルの衰退化がはじまろうとしている局面にあることを明らかにした。第2章では、そうした社会変化を前提として韓国における地方自治制度の展開を検討した。まず、解放後の地方自治制度の成立、停止、そして91年の復活に至る過程をたどり、韓国地方自治制度の特徴と課題を概観した。さらに、91年の地方議会選挙と98年の地方団体長および議会選挙の事例研究を通して、韓国の地方自治制度の定着化とその問題点について検討した。第3章は、90年代における韓国の住民自治の具体的な在りようを済州島の事例を通して検討した。ここでは、第1章で検討した中央主導の開発が地域社会に及ぼした影響を明らかにし、これに対する80年代以降の住民運動の特徴を検討した。その上で、90年代以降の韓国社会の住民自治をめぐる状況と課題を、済州島における住民自治の到達点に照らして検討した。本研究の目的は、60年代以降の韓国における地域社会の変容を「都市型社会」の成立という視角から検討し、主として、日本との対比で韓国における住民自治の可能性を探ることにあったが、本年度は、その準備作業として、(1)戦後日本の地域社会の変容と自治体改革の経験の整理、(2)韓国の地方自治制度の変遷、(3)韓国の社会変動に関連する統計の整理などをおこなった。そうした作業の結果、本年度において確認しえたことは以下の通りである。まず、農業人口比率を中心とする松下圭一氏の「都市型社会」についての基準に即して言うと、韓国社会はおよそ60年代後半以降、「都市型社会」への「移行期」に入り80年代後半にいたってその「成立」をみた、という点を確認しえた。1991年における地方議会選挙の30年ぶりの再開、及び95年の地方団体長選挙の実施は、住民自治をめぐるそうした基礎条件を反映したものといえる。他方で、本年度の研究を通して、韓国の住民自体をめぐるマイナス要因も浮かびあがった。自治体によるチェック機能を欠いたまま進展した極端な中央政府主導の工業化は、自治体の中央依存的な体質と、都市と農村、首都圏と地方圏の間の不均衡を想像以上に拡大していた。さらに、これらの不均衡が、一般に指摘される、特定地域に偏った開発方式だけではなく、巨大企業内部の各機能の立地選択と都市の階層構造との相互作用にも関係していることが明らかになった。次年度では、以上の成果を前提に、いくつかの都市を具体的に韓国の地域構造の変化に対応する住民意識の変化を探り、研究論文としてまとめたい。本研究の目的は、60年代以降の韓国における地域社会の変容を「都市型社会」の成立という視覚から検討し、主として、日本との対比で韓国における住民自治の可能性を探ることにあった。こうした、研究課題にそくして96年度には(1)戦後日本の地域社会の変容と自治体改革の経験の整理、(2)韓国の地方自治制度の変遷(3)韓国の社会変動に関連する統計の整理などをおこない、97年度には60年代以降の中央政府レベルの工業化政策が韓国の地域社会の変動に与えた影響を、京機道・富川市、慶尚南道・釜山市、済州道・済州市などいくつかの象徴的な都市を事例に検討した。
KAKENHI-PROJECT-08620067
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08620067
韓国における地域社会の変容と住民自治に関する研究
これらの研究を通して、およそ(1)韓国社会はおよそ60年代後半以降、「都市型社会」への「移行期」に入り80年代後半にいたってその「成立」をみたこと、(2)にもかかわらず、この間の極端な中央政府主導の工業化による都市間の構造的な較差の進展が、住民自治の成長の重大な阻害要因となっていること、(3)さらにそうした都市間の較差や住民自治の立ち遅れが、市民社会の側の住民運動や投票行動に見られる、中央指向的な利益表出のあり方にも深く関連していること、などが明らかとなった。都市間の較差は、大都市ソウルに対する地方都市という関係はもとより、労働力の移動や金融や商品・情報流通などを介したソウルとの関係の仕方による地方都市間の較差としても現れる。こうした中央との関係を軸とする周辺都市の類型論をふまえ、2年間の研究成果を1998年度中に論文として仕上げたい。
KAKENHI-PROJECT-08620067
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紛争解決におけるマクロ公正と公正世界信念
本研究では、一般市民のマクロ公正感と公正世界信念が、公共事業紛争に対する一般市民のとらえ方におよぼす効果を検討した。公共事業紛争を解決するうえでは、紛争当事者だけでなく一般市民の意向を考慮することが必要である。とくに一般市民が、紛争当事者の利害関心をどのように知覚するかは、一般市民の公共事業への賛否を規定するとともに、紛争解決を方向づけると考えられる。この仮説は、2回のウェブ調査によって検討され、部分的に支持された。平成24年度の前半部分は、他の作業と並行して、第1回質問紙調査で得られたデータのさらなる統計的分析を進める予定であった。得られたデータから、紛争当事者への利害関心認知や公共事業政策評価、紛争解決手続きの選好といった変数間の関連や、これらに対する先行要因を明らかにするという分析方針を当初立てたが、新たに割り振られた学内業務等により、データ分析のための時間が思うようにとれなかった。一方、公正世界信念に関する文献の検討を行い、この分野の研究動向を把握することができた。公正世界信念の実験研究は、無辜の被害者が生じる状況を作り出し、それへの非難によって人々が公正世界信念を維持もしくは正当化することを明らかにしていく手法が主であった。「世の中は公正な世界であり、よいことをした人は報われ、悪いことをした人は処罰される」という公正世界信念の含意を、効果的な合意形成手続きの模索という観点から理論的に捉え直す必要性を感じた。また公正世界信念の文献研究を進めるなかで、類似概念のシステム正当化や相補的世界観とマクロ公正感との関連も視野に入れるべきだとの認識を得た。さらに、平成24年度の後半は、合意形成手続きのひとつとして交渉に関して、これまでの交渉研究を概観してまとめ、複数の研究者とともに研究書を出版した。交渉研究を、個人差に注目したアプローチ、動機づけに注目したアプローチ、認知的アプローチから分類し、それぞれのアプローチにおける研究動向を把握することができた。公共事業に対する肯定的評価がマクロ公正感に規定され、またこの関係が公正世界信念による調整を受けているかどうか検討するため、全国10都道府県に在住する20歳以上の有権者2,700人(男女各1,350人)を対象に、2014年3月にウェブ調査を行った。平均年齢は44.8歳(SD = 14.0)であった。回答者は、現状の公共事業、マクロ公正感、ミクロ公正感、一般的公正世界信念などの各質問項目に対し、自分の考えにどれくらいあてはまるかを1点(全くそう思わない)から6点(強くそう思う)で評価した。データ分析では、まずマクロ公正感とミクロ公正感の4項目、一般的公正世界信念の6項目について、それぞれ因子分析を行った。公正感については、マクロ公正とミクロ公正に対応する2因子が、一般的公正世界信念については1因子が得られたため、それぞれの項目平均値を尺度得点とした。次に、公共事業への評価に関する2項目の項目平均値を従属変数とした階層的重回帰分析を行った。人口統計学的変数(年齢、性別、年収、学歴)のみを投入したモデル1では、いずれの変数も有意ではなかった。マクロ公正感とミクロ公正感、一般的公正世界信念を、それぞれ中心化して投入したモデル2では、マクロ公正感と一般的公正世界信念が公共事業への支持を高めた。モデル3では、一般的公正世界信念とマクロ公正感、一般的公正世界信念とミクロ公正感の2つの交互作用項を投入した。その結果、マクロ公正感と一般的公正世界信念の各主効果および交互作用が有意となったため単純傾斜分析を行ったところ、一般的公正世界信念を強くもつ人においてのみ、マクロ公正感が高いほど現状の公共事業への支持も強いことが示された。このことから公共事業への支持を規定する要因の1つがマクロ公正感であるとともに、この過程が一般的公正世界信念の強弱によって調整されていることが示唆された。本研究では、一般市民のマクロ公正感と公正世界信念が、公共事業紛争に対する一般市民のとらえ方におよぼす効果を検討した。公共事業紛争を解決するうえでは、紛争当事者だけでなく一般市民の意向を考慮することが必要である。とくに一般市民が、紛争当事者の利害関心をどのように知覚するかは、一般市民の公共事業への賛否を規定するとともに、紛争解決を方向づけると考えられる。この仮説は、2回のウェブ調査によって検討され、部分的に支持された。公共事業をめぐる行政と住民の利害対立を、一般市民がマイクロ公正関心とマクロ公正関心の不一致の観点から認知しているかどうか、また公正世界信念の喚起がマクロ公正判断を促進するかどうか実証的に検討するために、ウェブ調査を行った。調査対象者はネットモニターを使用し、北海道、宮城県、東京都、新潟県、岐阜県、大阪府、広島県、愛媛県、福岡県、沖縄県に在住の20歳以上の男女とした。質問紙は4つの部分から構成され各部分の質問項目の概要は次の通りである。質問Aでは、公正世界信念、システム正当化認知、ミクロ公正感、メゾ公正感、マクロ公正感を6件法でたずねた。質問Bでは、居住地域と国への同一性の程度を評価させた。質問Cでは、公共事業紛争の特徴に関する評価を行ってもらった。ここでは、公共事業をめぐる行政と地域住民の対立にはどのような特徴が含まれているか、これまで指摘されてきた紛争構造の認知次元(福野, 2009; Gelfand, Nishii, Dyer, Holcombe, Ohbuchi, & Fukuno, 2001; Pinkley, 1990)をもとに項目を作成した。
KAKENHI-PROJECT-23530810
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23530810
紛争解決におけるマクロ公正と公正世界信念
質問Dでは、第三者の視点から紛争当事者の利害関心を評価してもらった。その際、Brickman et al. (1981)の指摘した3つのマクロ公正原理を公共事業紛争に則して項目化する。3つのマクロ公正原理とは、最小化原理(minimum principle)、下位集団原理(subgroup principle)、平均化原理(average principle)である。今年度は調査実施が年度末になってしまったため、この調査データの本格的な分析は次年度に行う予定である。今年度の主要な目標であった調査データの分析が十分ではなかったため、やや遅れていると考えられるが、文献研究がある程度進み、今後の研究展開に関して新たな視点を得るとともに、データ分析の追加的な指針を発見することができた。今年度の主要な目標であった調査実施は実現出来たので、おおむね順調と考えられるが、実施時期が年度末までずれ込んでしまったため、データ分析は十分にできなかった。次年度使用予定の研究費が生じた理由としては、今年度はデータ分析が遅れてしまったため、このデータをもとにした学会発表の準備ができず、発表旅費が十分に使用できなかったことが挙げられる。次年度は、第2回目の質問紙調査の実施を予定しているが、上の予算的余裕を考え、調査の規模を拡大することも視野に入れる。次年度使用予定の研究費が生じた理由としては、今年度は、調査実施時期が年度末までずれ込んでしまったため、このデータをもとにした学会発表の準備ができず、発表旅費が使用できなかったことが挙げられる。次年度は、実験室実験の実施を予定しているが、上の予算的余裕を考え、実験の規模を拡大することも視野に入れる。また当初の予定では調査実施を予定していないものの、データ分析の結果、興味深い知見が得られた場合には、第2回の調査を前倒しで実施することも検討したい。平成25年度の前半部分は、他の作業と並行して、第1回質問紙調査で得られたデータのさらなる統計的分析を進める。分析結果をもとに、平成25年度後半は第2回目の質問紙調査を行い、紛争解決過程における公正世界信念とマクロ公正感の関係を検討する。平成24年度の前半部分は、他の作業と並行して、第1回質問紙調査で得られたデータのさらなる統計的分析を進める。分析では、紛争当事者への利害関心認知や公共事業政策評価、紛争解決手続きの選好といった変数間の関連や、これらに対する先行要因を明らかにすることをめざす。分析結果をもとに、平成24年度後半は実験室実験を行い、紛争解決過程における公正世界信念とマクロ公正感の関係を検討する。
KAKENHI-PROJECT-23530810
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23530810
放射線全脳照射後のマウス大脳における血管消失・血管新生のライブイメージング
成体マウス全脳にX線照射することで急性に血管透過性の亢進が誘導された。血管透過性の亢進とは反対に脳内の血管内皮細胞成長因子VEGFの量は低下した。また、大脳皮質において活性化ミクログリアが顕著に増加し、血管内皮細胞特異的に発現する密着結合タンパク質claudin-5の発現が低下した。遺伝子改変マウス(Flk1-GFP/Flt1-tdsRed BAC Tg)へのX線照射は、脳微小血管におけるGFP陽性の血管内皮細胞の割合を増加させた。二光子顕微鏡を用いたTgマウス大脳のライブ観察により、血管内皮細胞のFlt1およびFlk1の発現度合を反映した明瞭な脳血管像が得られた。放射線照射後の大脳における血管消失・血管新生を詳細に解析し、血液脳関門が障害されて血管透過性の亢進した病的血管の性質を明らかにすることを目的とする。平成27年度は下記の実績が得られた。Flk1-GFP/Flt1-tdsRed BACトランスジェニックマウスの大脳皮質を二光子顕微鏡により観察することで、血管内皮細胞における血管内皮細胞増殖因子VEGFの受容体VEGFR1およびVEGFR2の発現度合いを反映した脳血管を明瞭にライブ観察できることを確認した。野生型マウスに放射線を全脳照射(60Gy、単回照射)して血管内皮細胞の増殖低下やアポトーシスによる血管密度の変化を解析した。放射線照射マウスの大脳の凍結切片を用いたTUNEL染色により、照射0.5日後には脳微小血管内皮細胞のアポトーシスが認められた。血管密度は照射1日後には対照(未照射)群に比べて低下したが、照射7日後には対照群と同程度まで回復した。血管透過性を評価するため、放射線照射後のマウスにエバンスブルーを投与して脳血管からの漏出を解析した。照射0.5日、1日後のエバンスブルーの漏出は対照群に比べて有意な変化を認めなかったが、照射7日、14日後には対照群の5倍程度の漏出が認められ、血管透過性が亢進していることを確認した。放射線照射後の大脳における血管消失・血管新生は照射後の比較的早い時期に認められる現象であり、新生血管は透過性が亢進した病的状態であることが示唆された。また、放射線照射後のマウス大脳においてミクログリアの活性化が認められたことから、放射線照射後の大脳における血管消失・血管新生を明らかにする上で活性型ミクログリアから分泌される炎症性因子による効果を考慮すべきであることが示唆された。本来であれば、Flk1-GFP/Flt1-tdsRed BACトランスジェニックマウスに放射線を照射し、照射後のマウス大脳皮質における病的血管を二光子顕微鏡によりライブ観察する予定であった。しかしながら、トランスジェニックマウスの繁殖効率が予想以上に悪く、解析に要する十分な個体数を確保できず、これを用いた実験を計画したペースで進めることができなかった。それ故、当初の予定より実験が遅れた。正常脳組織における放射線障害のメカニズムを明らかにすることを目的として、マウス大脳への放射線照射後に生じる急性期障害について検討した。Flk1-GFP/Flt1-tdsRed BACトランスジェニックマウス(Tgマウス)の大脳にX線60Gyを上方から照射して照射後7, 14, 28日後に脳切片を作成、大脳皮質(体性感覚野)における血管密度について非照射群と比較した。血管内皮細胞は血管内皮細胞増殖因子VEGFの受容体VEGFR1(Flt1)を強く発現することから、Tgマウスでは全ての血管がDsRed陽性として観察され、血管密度が解析された。Tgマウス大脳皮質の血管密度は、照射7, 14日後では非照射群と変わらないが、照射28日後では非照射群に比べ約10%の低下が認められた。野生型ICRマウス大脳にX線60Gyを上方から照射し、照射後7日目までの脳組織採取を行った。これら組織を用いて、脳組織内におけるVEGFの発現量、ミクログリアの形態変化、血液脳関門(BBB)のバリア機能に関与しているタンパク質の局在量および発現量を調べた。非照射群に比べて照射群の脳組織では、照射後0.57日にかけてミクログリアの活性化が認められた。また、大脳皮質における血管内皮細胞特異的に発現するタイトジャンクション(TJ)タンパク質Claudin-5の局在を調べたところ、非照射では血管壁に局在しているのに対して、照射後0.57日の組織ではその局在が認められなかった。一方、VEGFの発現量は照射後37日では減少していた。X線照射による脳における急性期障害の一つとして、BBBの破綻が示された。その機序は、血管透過性亢進因子として知られているVEGFの関与は少なく、X線照射により活性化したミクログリアが大きく関与していることが示唆された。成体マウス全脳にX線照射することで急性に血管透過性の亢進が誘導された。血管透過性の亢進とは反対に脳内の血管内皮細胞成長因子VEGFの量は低下した。また、大脳皮質において活性化ミクログリアが顕著に増加し、血管内皮細胞特異的に発現する密着結合タンパク質claudin-5の発現が低下した。
KAKENHI-PROJECT-15K15448
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放射線全脳照射後のマウス大脳における血管消失・血管新生のライブイメージング
遺伝子改変マウス(Flk1-GFP/Flt1-tdsRed BAC Tg)へのX線照射は、脳微小血管におけるGFP陽性の血管内皮細胞の割合を増加させた。二光子顕微鏡を用いたTgマウス大脳のライブ観察により、血管内皮細胞のFlt1およびFlk1の発現度合を反映した明瞭な脳血管像が得られた。Flk1-GFP/Flt1-tdsRed BACトランスジェニックマウスを用いて、放射線照射後のマウス大脳皮質の血管消失・血管新生を二光子顕微鏡によりライブ観察する。VEGFR2(GFP)を高発現する血管内皮細胞とVEGFR1(DsRed)を高発現する血管内皮細胞について、血管新生イベントにおけるこれら細胞の形態、存在割合、分布、運動性などを解析する。コントロールと比較して、放射線照射後にみられる病的血管新生における血管内皮細胞の動態を明らかにする。血管内皮細胞におけるVEGFR1/VEGFR2の発現の消長を解析し、病的血管新生におけるこれらの受容体の役割について考察する。放射線照射したマウス(野生型およびトランスジェニック)大脳における血管新生関連因子について組織化学解析、遺伝子発現解析、タンパク発現解析を行う。また、ミクログリア活性化阻害薬であるミノサイクリンをマウスに投与した時の放射線照射後の大脳における血管消失・血管新生を解析する。これらの結果から、病的血管新生の分子メカニズムについての知見を得る。神経科学実験に供するトランスジェニックマウスの繁殖効率が予想以上に悪く、年度末近くまで十分な個体数を確保できなかった。このため、動物の繁殖に関わる経費(動物実験施設利用料)およびトランスジェニックマウスを用いた実験に関わる経費が当初の見積額よりも低額となり、次年度使用額が生じた。実験に供するトランスジェニックマウスの十分な個体数を得るために、当初の計画よりもやや多めに個体数を維持することとし、これに関わる経費(動物実験施設利用料)として使用する。また、平成27年度の研究により示唆された放射線照射後の大脳における炎症性ミクログリアからの分泌因子が病的血管新生へ与える影響を検討するための試薬(抗体、生化学実験試薬、遺伝子実験試薬など)の経費として使用する。
KAKENHI-PROJECT-15K15448
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河川水温変動シミュレーションを用いた全国の淡水魚類に関する自然再生支援システム
流域管理を考える上で、気候変動が河川生態系に与える影響は深刻な問題である。しかし水生生物が被る直接的な影響は、主に河川水温度の上昇によってもたらされる。そして水温の上昇は、気候変動のみならず人為的な流域の構造的変化によって強く影響を受ける。我々は釧路川と全国を対象とし、分布型の降雨流出モデルを用い、土地利用変化が河川水温の変化と淡水魚類の生息地に与える影響に関して研究を行った。主たる成果は以下の3点である。1)2050年を想定した流域の土地利用変化予測とGIS化。2)数値モデルを用いた年間流況および水温変動の再現。3)土地利用変化と気候変動が河川水温の変動及び生息適地に与える影響の空間的評価。研究2年目のH24年度においては、研究対象流域である北海道釧路川流域において、主にGISデータベース構築(生物情報と流域基盤情報)及びそれらのデータを入力条件とした水文モデル=分布型降雨流出モデルの開発を開始し、各水文パラメータの調整を図った後、初期稼働を確認した。モデルのテストランは2011年2012年とし、水位・流量・水温の再現計算を行った。1.水生生物の生息情報のGIS化については、釧路川流域における水辺の国勢調査データを基に最新版まで整理した。過去からの調査位置をポイントデータとし、その地点の属性情報として、生物種の確認情報を入力した。2.流域基盤GISデータについては、国土交通省の国土数値情報・水文水環境情報・環境省公共用水域水質データを基に、空間情報と属性値データを整理した。H24年度では、新たに河岸の詳細形状を表現可能なポイントデータを整備し、個別ID番号を用いて、将来的な生物生息情報等の位置登録を可能とした。3.河川水温データ(対象流域(北海道釧路川)において水温ロガーを設置し、観測データをGISデータとして整理した。全観測地点は合計約40地点であり,最長14ヶ月のデータを取得し現在も記録継続中である。GISデータフォーマットは全てESRI社のArcGISで使用可能なShpファイルとし,属性情報はMs Accessによってリレーショナル可能な物とした。またさらに上記データを活用して水温推定モデルの作成に着手し、2011年度観測データを用いてモデルの初期稼働を確認した。研究3年目のH24年度では、対象流域である北海道釧路川流域において、GISデータベースの構築を進めるとともに、そのデータを入力条件とした水文モデル(分布型降雨流出モデル)のパラメータフィッティングと精度向上を試みた。現地観測については河川水温モニタリングを継続し、データセット拡充(長期化)を進めた。計算は2011年2012年とし、水位・流量・水温の再現を行った。今年度はさらに将来予測シナリオとして、気温・降水量において各条件を設定し、その影響評価を開始した。主な実績としては次の3点である。1.水生生物の生息情報のデジタル化については、既存生物データ(水辺の国勢調査データ等)に加え、流域圏の釣り人が報告する釣果データを2013年度分まで整理した。2.河川水温モニタリングにおいては継続的にデータロガーの回収・再設置を行い、連続的な観測データをGISデータとして整理した。全観測地点は合計約40地点であり,現在も記録継続中である。3.再現計算におけるシナリオは、気温上昇が2012年と比較して+2°C、+3°C、+4°Cの条件。降雨量については2012ベースに対して115%の増加を設定した。研究所年度であるH23においては、主に次のGISデータベースの構築を実施した。1.魚類の生息地情報(研究対象流域の北海道釧路川流域における水辺の国勢調査データを基に最新版まで整理)2.流域構造に関する基盤データ(温度推定を可能とする水文物理モデルの境界条件として使用。国土交通省の国土数値情報・水文水環境情報・環境省公共用水域水質データを基に属性データを整理)3.河川水温データ(対象流域(北海道釧路川)において水温ロガーを設置し、観測データをGISデータとして整理した。(全観測地点は40地点,最長14ヶ月のデータを取得予定)。GISデータフォーマットは全てESRI社のArcGISで使用可能なShpファイルとし,属性情報はMs Accessによってリレーショナル可能な物とした。またさらに上記データを活用して水温推定モデルの作成に着手し、2010年度観測データを用いてモデルの初期稼働を確認した。研究4年目のH26年度では、対象流域である北海道釧路川流域において、全ての水温モニタリング地点における現地観測データを含むデータベースを構築した。また流域土地利用に関するGISデータの拡充を図るとともに、各データを入力条件とした水文モデル(分布型降雨流出モデル)のパラメータフィッティングと実測データとの検証を試みた。現地観測については水生生物の生息情報の整理と共に現地の魚類関連の専門家を対象に聞き取り調査を行い、流域における生態系サービス間の軋轢について情報を整理した。河川水温の再現計算に関しては、データセット拡充(長期化)を進めた。最終年度にあたる今年度は、研究全体の総括を進めるとともに将来の気候変動シナリオを含む気温・降水量条件を設定し、その影響評価を開始する。主な実績としては次の3点である。1.河川水温モニタリングにおいては継続的にデータロガーの回収・再設置を行い、連続的な観測データをGISデータとして整理した。全観測地点は合計約40地点であり,現在も記録継続中である。
KAKENHI-PROJECT-23510037
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河川水温変動シミュレーションを用いた全国の淡水魚類に関する自然再生支援システム
2.再現計算におけるシナリオは、気温上昇が2012年と比較して+2°C、+3°C、+4°Cの条件。降雨量については2012ベースに対して115%の増加を設定した。最終年度のH27年度では、北海道釧路川流域において、全水温モニタリング地点におけるGISデータベースを完成しモデルインプットデータとした。また気温上昇と降雨量増加シナリオを基にGISデータを拡充し、分布型降雨流出モデルのパラメータ調整を行うとともに実測データとの検証を試みた。特にこれまでに多くの計算時間を要していた各流入支流の計算を統合化し、流域全際の再現を可能とした。河川水温の再現に関しては、研究全体の総括を進めるとともに将来の気候変動シナリオを含む気温・降水量条件を設定してその影響評価を行った。主な実績としては次の3点である。1.将来的な河川水温上昇シナリオに関して2012年と比較して+2°C・+3°C・+4°Cの温暖化条件、降雨量については2012ベースに対して105%・110%・115%の増加を設定して再現計算を行い水温上昇の予測を可能とした。3.シミュレーションの結果、年間を通じて+4°Cの気温上昇を条件とした場合、特に6月後半の時期に最大で2.5度程度の水温上昇が見込まれた。また降水量増加に関しては流量の増加は見られるものの、水温上昇に関しては抑制の効果があることが見いだせた。本研究の成果の一部を利用し、継続的な地域研究「科研費基盤C、グリーンインフラの利用による汚濁負荷削減を目的とした耕作放棄地の再生システム」をスタートさせた。流域管理を考える上で、気候変動が河川生態系に与える影響は深刻な問題である。しかし水生生物が被る直接的な影響は、主に河川水温度の上昇によってもたらされる。そして水温の上昇は、気候変動のみならず人為的な流域の構造的変化によって強く影響を受ける。我々は釧路川と全国を対象とし、分布型の降雨流出モデルを用い、土地利用変化が河川水温の変化と淡水魚類の生息地に与える影響に関して研究を行った。主たる成果は以下の3点である。1)2050年を想定した流域の土地利用変化予測とGIS化。2)数値モデルを用いた年間流況および水温変動の再現。3)土地利用変化と気候変動が河川水温の変動及び生息適地に与える影響の空間的評価。今年度は水位安定期に水温ロガーの回収を終えることが出来、また観測機器の流亡等も少なかったために比較的充実したデータセットを得ることが出来た。回収率は概ね80%程度であった。水文モデルの開発も順調に進み、精度の向上とともに、各種の将来シナリオを組み込んだ再現計算を開始する事が出来た。今年度の課題としては、再現計算の時間が長くかかるため支流を限定して計算するという形を取らざるを得なかったが予測値のばらつきはほぼ想定内であった。今後より長期的な観測データの利用によって予測精度の向上が期待できと考えている。最終的な研究の総括の段階では、更なるモデル推定精度向上のため、土地利用データの高度化・降雨郷土条件の多様化等を含め年間流況解析さらに進める方針である。また水生生物の生息地評価モデルとの連携を目指している。流域生態系の保全と再生
KAKENHI-PROJECT-23510037
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表面吸着相における超臨界流体の微細構造とダイナミックスに関する基礎研究
超臨界流体の関与するプロセスは、流体バルクだけではなく吸着層での挙動が重要な役割を果たす。しかし、超臨界流体自身に関する研究に比べ、吸着相における超臨界流体の構造とダイナミックに関する研究は極めて少ない。そこで本研究では分子動力学(MD)法とコンピュータグラフィックスを用いて、表面吸着相における超臨界流体の微細構造とダイナミックスについて検討を行なった。固体表面からの超臨界抽出過程における超臨界流体の役割を明らかにするために、まず流体が存在しない場合について固体表面からの吸着分子の脱離素過程について検討した。温度が低い場合は、吸着種は固体表面上で熱振動はできたが、表面から脱離することはなかった。温度が高くなると、固体表面での2次元的な拡散が可能になった。さらに温度を上げると表面からの脱離が観察されたが、この時、吸着種自体の熱運動に加えて、固体表面原子の熱運動が大きく関与していることがわかった。超臨界流体の存在下では、固体表面からの吸着種の脱離(すなわち、超臨界抽出)が低温でも著しく促進された。その時、超臨界流体は流体層だけではなく表面吸着相にも存在するが、両者は激しく入れ替わることも認められた。より実在的な系へのMD法の適用の可能性を検討する目的で、ミクロ-メソ2元細孔固体のミクロ細孔中に存在する吸着種の抽出過程のシミュレーションを行った。臨界点より低温、低圧の場合には吸着種は細孔表面から抽出されることはなかったが、流体が超臨界状態にある時は、吸着種がミクロ細孔からメソ細孔中に抽出された。このようにMD法は超臨界抽出など表面吸着相がかかわる超臨界抽出プロセスの原子レベルでの理解において有用であり、今後さらに多様かつ具体的な課題への適用が期待される。超臨界流体の関与するプロセスは、流体バルクだけではなく吸着層での挙動が重要な役割を果たす。しかし、超臨界流体自身に関する研究に比べ、吸着相における超臨界流体の構造とダイナミックに関する研究は極めて少ない。そこで本研究では分子動力学(MD)法とコンピュータグラフィックスを用いて、表面吸着相における超臨界流体の微細構造とダイナミックスについて検討を行なった。固体表面からの超臨界抽出過程における超臨界流体の役割を明らかにするために、まず流体が存在しない場合について固体表面からの吸着分子の脱離素過程について検討した。温度が低い場合は、吸着種は固体表面上で熱振動はできたが、表面から脱離することはなかった。温度が高くなると、固体表面での2次元的な拡散が可能になった。さらに温度を上げると表面からの脱離が観察されたが、この時、吸着種自体の熱運動に加えて、固体表面原子の熱運動が大きく関与していることがわかった。超臨界流体の存在下では、固体表面からの吸着種の脱離(すなわち、超臨界抽出)が低温でも著しく促進された。その時、超臨界流体は流体層だけではなく表面吸着相にも存在するが、両者は激しく入れ替わることも認められた。より実在的な系へのMD法の適用の可能性を検討する目的で、ミクロ-メソ2元細孔固体のミクロ細孔中に存在する吸着種の抽出過程のシミュレーションを行った。臨界点より低温、低圧の場合には吸着種は細孔表面から抽出されることはなかったが、流体が超臨界状態にある時は、吸着種がミクロ細孔からメソ細孔中に抽出された。このようにMD法は超臨界抽出など表面吸着相がかかわる超臨界抽出プロセスの原子レベルでの理解において有用であり、今後さらに多様かつ具体的な課題への適用が期待される。
KAKENHI-PROJECT-04238209
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04238209
運動機能特性に適応した在宅福祉機器の個別設計シミュレータの開発
・基本部位動作中における筋力、骨格構造支持力および運動領域の解析:運動解析を行うための各種筋力や骨格支持力の算出方法を検討した。これには新たに開発した逐次二次計画法による最適値探索を利用し、拮抗筋と協力筋の分離、および起始位置の探索が従来法(Lagrange未定乗数法)に比べて容易かつ高精度となった.・使用目的に応じた力学モデルのアセンブリング:解析対象に合わせた人間モデル作成のために、基本部位モデルのアセンブリング手法を検討した。・協調動作における各種筋力と骨格構造支持力の解析:複数アセンブリングした力学モデルの協調動作力学制御則を検討する。これには、三次元動作測定、筋電位測定による計測データを基に、力学モデルを構築する手法を開発した.・エンドエフェクタに負荷を加えたときの動作解析:人体モデルの適用解析として、機器の基本的操作における動作予測を行う。三次元動作測定結果と比較検討し、解析精度の向上を計った。解析結果の検証には体幹筋の筋電位測定を行った.・福祉機器の三次元モデリング:対象福祉機器の基本三次元モデルを作成した。同一仮想空間内に福祉機器モデルと人体モデルを配置した.対象福祉機器に、車椅子と移乗介護リフトとした.・動作シミュレーションと福祉機器設計:人体モデルの動作シミュレーションを行い、力学解析に基づき、リーチテストや動作域の確認、機器の構造解析を行った.また同時に機器の構造解析を行い、機器設計上の改良点等を整理した。・基本部位動作中における筋力、骨格構造支持力および運動領域の解析:運動解析を行うための各種筋力や骨格支持力の算出方法を検討した。これには新たに開発した逐次二次計画法による最適値探索を利用し、拮抗筋と協力筋の分離、および起始位置の探索が従来法(Lagrange未定乗数法)に比べて容易かつ高精度となった.・使用目的に応じた力学モデルのアセンブリング:解析対象に合わせた人間モデル作成のために、基本部位モデルのアセンブリング手法を検討した。・協調動作における各種筋力と骨格構造支持力の解析:複数アセンブリングした力学モデルの協調動作力学制御則を検討する。これには、三次元動作測定、筋電位測定による計測データを基に、力学モデルを構築する手法を開発した.・エンドエフェクタに負荷を加えたときの動作解析:人体モデルの適用解析として、機器の基本的操作における動作予測を行う。三次元動作測定結果と比較検討し、解析精度の向上を計った。解析結果の検証には体幹筋の筋電位測定を行った.・福祉機器の三次元モデリング:対象福祉機器の基本三次元モデルを作成した。同一仮想空間内に福祉機器モデルと人体モデルを配置した.対象福祉機器に、車椅子と移乗介護リフトとした.・動作シミュレーションと福祉機器設計:人体モデルの動作シミュレーションを行い、力学解析に基づき、リーチテストや動作域の確認、機器の構造解析を行った.また同時に機器の構造解析を行い、機器設計上の改良点等を整理した。本研究の目的は、計算力学と仮想現実空間表現手法を用いて、人間と機器との力学的インターフェースのシミュレーション手法を確立し、高齢者や身障者の多様な運動能力に対応した要求福祉機器の個別設計システムを開発することである.本年度は、以下に示す力学モデルの構築に関する基礎研究プロセスを実施した.1.上肢、下肢、体幹などの基本部位それぞれの力学モデリーング:グラフィック・ワークステーション(所有)により上肢の解剖学的形状をモデリングした。それには、関節や各種骨格筋等の運動学的要素が付加されている.2.基本部位の三次元動作測定:購入した6自由度空間座標計測装置により、健常被験者における基本部位の動作測定を行い、上記モデルによる運動解析の検証を行った。3.基本部位動作中における筋力、骨格構造支持力および運動領域の解析:詳細な運動解析を行うための各種筋力や骨格支持力の算出方法を検討した。これには我々が提案しているLagrange未定乗数法による最適値探索手法を利用した。解析は、肘関節の屈曲・伸展運動、前腕関節の回旋運動を行い、運動中に支配的に作用する筋群とその筋力を求めた.その成果は、学会誌に掲載された.4.福祉機器の三次元モデリング:代表的な福祉機器として、電動車椅子を取りあげ、その機構モデルを作成した.そして、さまざまな路面状態(乾燥路、圧雪路、凍結路)を想定した走行シミュレーション手法を開発した.電動車椅子走行性の評価には、車輪と路面のスリップ度によった.本成果は、学会誌に掲載された.本研究の目的は、計算力学と仮想現実空間表現手法を用いて、人間と機器との力学的インターフェースのシミュレーション手法を確立し、高齢者や身障者の多様な運動能力に対応した要求福祉機器の個別設計システムを開発することである.本年度は、人体モデルの構築に関するシステム研究プロセスを実施した.1)上肢、下肢、体幹などの基本部位それぞれの力学モデリング:基本運動部位の解剖学的形状をモデリングする手法を検討した.2)基本部位の三次元動作測定:6自由度空間座標計測装置により、健常被験者における基本部位の動作測定を行い、上記モデルによる運動解析の検証を行った.3)基本部位動作中における筋力、骨格構造支持力および運動領域の解析:詳細な運動解析を行うための各種筋力や骨格支持力の算出方法を検討した.これには我々が提案しているLagrange未定乗数法による最適値探索を利用した.その臨床的応用例として、Steindler法による上肢筋移行術の数値解析を行った.4)使用目的に応じた力学モデルのアセンブリング:解析対象に合わせた人間モデル作成のために、基本部位モデルのアセンブリング手法を検討した.
KAKENHI-PROJECT-09555050
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運動機能特性に適応した在宅福祉機器の個別設計シミュレータの開発
5)協調動作における各種筋力と骨格構造支持力の解析:複数アセンブリングした力学モデルの協調動作力学制御則を検討した.そして、三次元動作測定による計測データを基に、力学モデルを構築した.6)エンドエフェクタに負荷を加えたときの動作解析:人体モデルの適用解析として、移乗介護機器の基本的操作における動作解析を行った.機器の操作は、手指の把持力と動作が重要である。精度良く測定するため、申請のサイバーグローブを用いた.・基本部位動作中における筋力、骨格構造支持力および運動領域の解析:運動解析を行うための各種筋力や骨格支持力の算出方法を検討した.これには新たに開発した逐次二次計画法による最適値探索を利用し、拮抗筋と協力筋の分離、および起始位置の探索が従来法に比べて容易かつ高精度となった.・使用目的に応じた力学モデルのアセンブリング:解析対象に合わせた人間モデル作成のために、基本部位モデルのアセンブリング手法を検討した.・協調動作における各種筋力と骨格構造支持力の解析:複数アセンブリングした力学モデルの協調動作力学制御則を検討する.これには、三次元動作測定、筋電位測定による計測データを基に、力学モデルを構築する手法を開発した.・エンドエフェクタに負荷を加えたときの動作解析:人体モデルの適用解析として、機器の基本的操作における動作予測を行う.三次元動作測定結果と比較検討し、解析精度の向上を計った.解析結果の検証には体幹筋の筋電位測定を行った.・福祉機器の三次元モデリング:対象福祉機器の基本三次元モデルを作成した.同一仮想空間内に福祉機器モデルと人体モデルを配置した.対象福祉機器に、車椅子と移乗介護リフトとした.・動作シミュレーションと福祉機器設計:人体モデルの動作シミュレーションを行い、力学解析に基づき、リーチテストや動作域の確認、機器の構造解析を行った.また同時に機器の構造解析を行い、機器設計上の改良点等を整理した.
KAKENHI-PROJECT-09555050
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09555050
第2のFAK族キナーゼ、CAKβ、のカドヘリンを介するシグナル受容における役割
私達は、FAK分子族に属する第2のタンパク質チロシンキナーゼをクローン化し、これを細胞接着キナーゼβ(CAKβ)と命名した。CAKβをアデノウイルスベクターを用いてcDNAから大量発現すると、細胞の接着性が低下し、細胞の形態が変化した。CAKβに共役するシグナル伝達路を明らかにするために、CAKβC-ドメインをプローベに用いてcDNAライブラリーをスクリーニングし、CAKβ結合タンパク質(CBP-1)のcDNAをクローン化した。CBP-1は、Hic-5のヒトホモログである事が明らかになった。Hic-5は焦点接着に局在した。Hic-5のアミノ酸配列は、焦点接着局在タンパク質であるパキシリンに最も近縁であった。Hic-5とパキシリンは、そのNドメインがCAKβおよびFAKのCドメイン後半部分と特異的に結合した。抗Hic-5抗体を用いて、WFB細胞抽出液からHic-5を免疫沈降すると、CAKβが共沈した。WFB細胞におけるCAKβのチロシンリン酸化は、血清、リゾホスファチジン酸(LPA)、エンドセリンなどによる刺激、および高浸透圧刺激で亢進するが、これらCAKβを活性化する刺激でHic-5のチロシンリン酸化も亢進した。Hic-5とCAKβとの結合は、Hic-5のチロシンリン酸化に重要であることを示唆する結果が得られた。tet系やアデノウイルスベクターを用いCAKβ、Hic-5およびこれらの変異体を過剰発現し、上流及び下流シグナル伝達路を検討している。Hic-5とパキシリンとは共に焦点接着に局在するが、その機能は異なっている可能性が強く、今後の研究により、Hic-5の機能を明らかにする必要がある。私達は、FAK分子族に属する第2のタンパク質チロシンキナーゼCAKβをクローン化により同定し研究している。今年度の研究により、次の事が明らかになった。1,ラット臓器・組織におけるCAKβの発現を免疫組織化学とin situ hydbidizationにより検討した所、CAKβが微絨毛、繊毛、軸索に多く発現していた。2,種々の培養細胞株を用いて、CAKβの細胞内局在性を免疫細胞化学により検討した所、CAKβは上皮系細胞の細胞相互接触部位の表面膜に沿って存在する他、微小管およびミクロフィラメントと弱く結合して細胞質に多く存在した。3,CAKβに結合するタンパク質のcDNAを発現ライブラリーのscreeningにより検索し、CAKβC末端ドメインに結合するタンパク質CBP-1を同定した。CBP-1は焦点接着に局在する新規のタンパク質であり、そのNドメインでCAKβに結合する。CBP-1を免疫沈降するとCAKβが共沈した。CAKβのC末端ドメインに対する単クローン抗体で免疫染色することにより,CAKβの一部が焦点接着に存在することを明らかにした。4,CBP-1はチロシン残基のリン酸化を受けるタンパク質であった。このチロシンリン酸化は、CAKβと同様に、リゾホスファチジン酸、エンドセリンなどによる細胞の刺激に伴い亢進し、また、細胞を高浸透圧にさらすと亢進した。CAKβがCBP-1をチロシンリン酸化する可能性を検討している。5,CAKβを免疫沈降すると、抗(Pan)カドヘリン抗体で染まるタンパク質の共沈が認められたが、α-、β-、あるいはγ-カテニンは共沈しなかった。超音波ホモジナイザーは、培養細胞や大腸菌を破砕してタンパク質を抽出する目的に使用した。私達は、FAK分子族に属する第2のタンパク質チロシンキナーゼをクローン化し、これを細胞接着キナーゼβ(CAKβ)と命名した。CAKβをアデノウイルスベクターを用いてcDNAから大量発現すると、細胞の接着性が低下し、細胞の形態が変化した。CAKβに共役するシグナル伝達路を明らかにするために、CAKβC-ドメインをプローベに用いてcDNAライブラリーをスクリーニングし、CAKβ結合タンパク質(CBP-1)のcDNAをクローン化した。CBP-1は、Hic-5のヒトホモログである事が明らかになった。Hic-5は焦点接着に局在した。Hic-5のアミノ酸配列は、焦点接着局在タンパク質であるパキシリンに最も近縁であった。Hic-5とパキシリンは、そのNドメインがCAKβおよびFAKのCドメイン後半部分と特異的に結合した。抗Hic-5抗体を用いて、WFB細胞抽出液からHic-5を免疫沈降すると、CAKβが共沈した。WFB細胞におけるCAKβのチロシンリン酸化は、血清、リゾホスファチジン酸(LPA)、エンドセリンなどによる刺激、および高浸透圧刺激で亢進するが、これらCAKβを活性化する刺激でHic-5のチロシンリン酸化も亢進した。Hic-5とCAKβとの結合は、Hic-5のチロシンリン酸化に重要であることを示唆する結果が得られた。tet系やアデノウイルスベクターを用いCAKβ、Hic-5およびこれらの変異体を過剰発現し、上流及び下流シグナル伝達路を検討している。Hic-5とパキシリンとは共に焦点接着に局在するが、その機能は異なっている可能性が強く、今後の研究により、Hic-5の機能を明らかにする必要がある。
KAKENHI-PROJECT-08878127
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免疫抑制薬による脳保護作用の解明と小児期脳障害に対するその治療的応用に関する研究
ラットにおける、カイニン酸投与によるけいれんモデルを確立した。カイニン酸の腹腔内投与法では、用量依存的に痙攣の強度は増した。そしてその傾向は成獣ラットと同様に、幼若ラットでも認めた。カイニン酸の投与から経時的に脳組織を採取し、検討を加えた。病理学的検討では、海馬の神経細胞の脱落が認められた。さらにその後には海馬顆粒細胞の発芽を認めた。さらに採取組織からmRNAとタンパク質をそれぞれ抽出、精製し、RT-PCR法とwestern blotting法により種々の分子の経時的な発現の変化を検討した。一酸化窒素合成酵素、Bcl-2、Badや、さらにc-fosやc-junなどの最初期遺伝子の発現の一過性増加を認めた。イムノフィリン、カルシニューリン、カルモジュリン、グルタミン酸受容体(NMDA型、AMPA型、KA型)の変化については、現在データを集積中である。カルシニューリン阻害薬の投与に関してはCyAは分子量が大きく、中枢神経系への到達がFK506に比して不十分であることから後者でin vivo投与を、また両者でin vitro投与を行った場合の上記分子の、経時的変化についても現在データを集積している。さらに今後は、海馬標本における長期増幅現象や長期抑圧現象の誘導における変化をパッチクランプ法を用いて検討する予定。また、脳虚血モデルも頚動脈疎血法により作成した。このモデルにおける、上記分子の経時的検討に関しては、現在データを集積中である。ラットにおける、カイニン酸投与によるけいれんモデルを確立した。カイニン酸の腹腔内投与法では、用量依存的に痙攣の強度は増した。そしてその傾向は成獣ラットと同様に、幼若ラットでも認めた。カイニン酸の投与から経時的に脳組織を採取し、検討を加えた。病理学的検討では、海馬の神経細胞の脱落が認められた。さらにその後には海馬顆粒細胞の発芽を認めた。さらに採取組織からmRNAとタンパク質をそれぞれ抽出、精製し、RT-PCR法とwestern blotting法により種々の分子の経時的な発現の変化を検討した。一酸化窒素合成酵素、Bcl-2、Badや、さらにc-fosやc-junなどの最初期遺伝子の発現の一過性増加を認めた。イムノフィリン、カルシニューリン、カルモジュリン、グルタミン酸受容体(NMDA型、AMPA型、KA型)の変化については、現在データを集積中である。カルシニューリン阻害薬の投与に関してはCyAは分子量が大きく、中枢神経系への到達がFK506に比して不十分であることから後者でin vivo投与を、また両者でin vitro投与を行った場合の上記分子の、経時的変化についても現在データを集積している。さらに今後は、海馬標本における長期増幅現象や長期抑圧現象の誘導における変化をパッチクランプ法を用いて検討する予定。また、脳虚血モデルも頚動脈疎血法により作成した。このモデルにおける、上記分子の経時的検討に関しては、現在データを集積中である。
KAKENHI-PROJECT-14770352
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ナノスケールの遍歴電子磁性-電子移動を伴う光磁気特性の解明-
ナノチューブ状ハロゲン架橋白金錯体の物性研究を実験グループと連携して推進し、その類稀な混合原子価基底状態を同定し,さらには角柱形状特有の半金属電荷密度波状態の存在を予言した。単なる実験解釈に止まらず,物質設計に及んで積極的提言を行い,4角柱状,3本螺旋状白金錯化合物の合成につながった。環式炭化水素高分子ポリアセンに,一方通行の光誘起相転移を発見した。エネルギーの縮退したシス・トランス型構造異性状態は,光学吸収特性を異にするため,これはフォトクロミック・デバイスへの応用に道を開くものである。さらに単分子環状磁性体の磁場有機レベル交差現象に対する核スピン格子緩和理論を構築した。クロミウム8核錯体のプロトン核磁気共鳴実験観測における懸案を解決した。分子磁性体の磁気励起・緩和及び"低次元金属錯体の光学応答"の研究を踏まえて、そのそれぞれで培った着想と磨いた方法論を融合し、新たな分野横断的萌芽研究『ナノスケールの遍歴電子磁性』を立ち上げる。分子磁性の舞台キャストに"電荷自由度"を迎え入れるために、錯体化学研究と連携し分子設計はもとより、光やドーピングなどさまざまな物理的・化学的演出を試みる。化学と物理,実験と理論が連携して、遷移金属化合物あるいは共役高分子に、光が演出する新奇電子物性を探究してゆく。ナノチューブ状ハロゲン架橋白金錯体の物性研究を実験グループと連携して推進し、その類稀な混合原子価基底状態を同定し,さらには角柱形状特有の半金属電荷密度波状態の存在を予言した。単なる実験解釈に止まらず,物質設計に及んで積極的提言を行い,4角柱状,3本螺旋状白金錯化合物の合成につながった。環式炭化水素高分子ポリアセンに,一方通行の光誘起相転移を発見した。エネルギーの縮退したシス・トランス型構造異性状態は,光学吸収特性を異にするため,これはフォトクロミック・デバイスへの応用に道を開くものである。さらに単分子環状磁性体の磁場有機レベル交差現象に対する核スピン格子緩和理論を構築した。クロミウム8核錯体のプロトン核磁気共鳴実験観測における懸案を解決した。ハロゲン架橋白金錯体の線形・非線形光学応答に対する系統的理論構築が進んでいる。1)複核白金鎖A_4[Pt_2(P_2O_5H_2)_4X]・nH_2O(A=NH_4,Na, K, ...;X=Cl, Br, I), Pt_2(CH_3CS_2)_4Iに観られる2種類の電化密度波基底状態を光学励起し,これに伴う非線形格子緩和を実時間ダイナミクス・シミュレーションにより追跡した。特にソリトン対形成機構を詳細に解明し,スピンあるいは電荷の選択的輸送可能性について論じた。2)梯子型白金2重鎖鎖間架橋配位子の異なる2種類の梯子型白金錯体: (C_8H_6N_4)[Pt(C_2H_8N_2)Cl]_2Cl(ClO_4)_3・H_2O, (C_10H_8N_2)[Pt(C_4H_13N_3)Br]_2Br_4・2H_2Oの光学伝導度スペクトルを計算し,これを実験観測と照らし,双方の対照的基底状態及びその発現機構を解明した。3)4角柱白金チューブ次年度に向けて,ナノチューブ状遷移金属錯体の電荷及びスピン密度波状態の群論解析を開始した。活況を呈するカーボン・ナノチューブ研究の一方,金属ベースの遍歴ナノチューブは知る限り例がなく,その電子・格子物性は興味深い。九州大学の錯体化学研究室は白金錯体鎖をチューブ状に成形することにし,これと連携しながら,今後新奇な電子相・磁性相を開拓してゆく。一方,有機高分子ポリアセンの光学応答の計算も進めている。半世紀近くに渡り議論の錯綜する2つの縮退Peierls相=シス・トランス結合交替相について,光学的判別法を提案した。ナノチューブ状ハロゲン架橋白金錯体の物性研究において、格段の進展があった。京大理・北川教授(錯体化学)、阪大基礎工・若林准教授等(X線構造解析)、東大工・岡本教授(光学観測)等と共同研究を展開し、表記物質の基底状態電子相を解明した。光学伝導度スペクトルの理論・実験比較、X線散漫散乱スペクトル解析を通して、基底状態には2種の混合原子価相が混在することを突き止めた。2)3角柱白金錯体次いで3角柱型類似物質の混合原子価相についても、群論を駆使して系統的に解明した。合成・実験に先行する形での理論研究であるが、不均質電荷密度波状態、部分金属電荷密度波状態等、フラストレーション幾何学構造に起因するユニークな電子相を発見した。錯体化学グループでは、当該物質合成を目指した研究が進められている。一方、共役系高分子ポリアセンの光物性研究にも踏み出した。ポリアセンには、構造異性にあたる2つのPeierls歪み状態が存在する。これらはエネルギーが縮退するものの光学的には異性を示すことは、研究初年度に示したところである。時間異存Hartree-Fock法を用いて、両状態間の光誘起相転移の可能性を直接シミュレートしたところ、『一方通行』に似たユニークな相転移現象の可能性が指摘された。プロジェクト発足以来3年を経て、4角柱ナノチューブ状ハロゲン架橋白金錯体の合成・測定・理論共同研究が結実し、Nature Materials(2010年発表インパクト・ファクター29.5)に掲載されることとなった。
KAKENHI-PROJECT-20540327
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ナノスケールの遍歴電子磁性-電子移動を伴う光磁気特性の解明-
京大理・北川教授(錯体化学)、阪大基礎工・若林准教授(X線構造解析)、東大工・岡本教授(光学観測)等と共同で、新規ハロゲン架橋白金錯体[Pt(C_2H_8N_2)(C_<10>H_8N_2)I]_4(NO_3)_8の物性解明を進め、この物質が○類希な遷移金属ベースのナノチューブを形成し、○水分子の吸蔵特性を持ち、○混合原子価白金による新奇電荷密度波状態を形成することを解明した。筆者は特に、光学伝導度スペクトルのピーク起源解明に理論計算をもって貢献し、基底状態電荷密度波が、チューブ形状に特有な2次元Eu表現に属するものであることを突き止めた。一方、シアノ架橋銅モリブデン化合物Cu_2[Mo(CN)_8]の光誘起磁性について、新規の理論研究を開始した。この物質は東大理・大越教授・錯体化学研究室の手になるものであり、波長の違う可視光を照射することにより、オン・オフ可逆の光誘起磁性体であることが知られている。しかし、その磁化増幅・減衰機構について、一切の物理的・微視的解釈は得られておらず、トライ・アンド・エラーの物質合成研究が先行するのみである。筆者は、まず群論を用いて可能な基底状態磁気秩序を精査し、精巧な相図を描いて物質パラメタを特定し、さらに時間依存ハートリィ・フォック法を用いて光照射後の磁化ダイナミクスを計算した。光照射時間(励起密度)、印加磁場、誘起磁化最大値の間に成り立つ非線形な関係について、定量的な知見が得られつつあり、課題最終年度に"非線形な"研究の深化・発展が期待される。研究最終年度を迎える中で、シアノ架橋銅モリブデン化合物Cu2[Mo(CN)8]の光誘起磁性解明に向けて、新規の理論研究を開始した。この物質は東大理・大越教授・錯体化学研究室の手になるものであり、波長の違う可視光を照射することにより、オン・オフ可逆の光誘起磁性体であることが知られている。しかし、その磁化増幅・減衰機構について、一切の物理的・微視的解釈は得られておらず、トライ・アンド・エラーの物質合成研究が先行するのみである。昨年度まで1次元玩具模型を用いた助走研究を進めてきたが、光照射による磁化発現を定性的に確認できたものの、磁化立ち上がり時間、誘起磁化量、双方向スウィッチング等、1次元の範囲内では定性定量的に再現できない現実も明らかになった。そこで物質の結晶構造を精確に反映する、群解析、基底状態相図、光誘起磁化ダイナミクスという一連の理論研究を企画した。当該8配位モリブデン錯体は四方逆プリズム型でD4d対称性をもつが、その集合体である銅モリブデン化合物の対称性はC4hである。錯イオン単体では複数回転軸をもつ一方、反転対称性が無い。化合物としては、回転対象性は単一軸に低下するが反転対称性をもつようになる。モリブデンを解したd電子ホッピングは螺旋的"捩れた"パスを取ることになり、これが遍歴性に重要な影響を及ぼす。群解析により、3種類の磁性不変部分群、数値的に4種類の異なる磁性相が得られた。これと常磁性無秩序相が競合する興味深い相図が得られた。CuをFeに置換した類似物質も存在し、両者は光活性/不活性と性質を異にする。これはd電子バンド・フィリングの違いからくるものと思われ、現在対応する数値計算を急いでいる。基底状態相図完成の暁には、時間依存ハートリィ・フォック法を用いて、磁化ダイナミクスの計算に歩を進める。これは萌芽的新たな研究課題であり、新規基盤研究を申請している。
KAKENHI-PROJECT-20540327
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20540327
上皮間葉転換(EMT)を指標とした新規腫瘍診断法の構築
本研究では、上皮間葉転換(EMT)誘導に着目し、様々な固形癌で、明確な診断基準となる腫瘍組織・血清を用いた新規診断法を確立することを目指し、以下の研究を行った。1.有用な血清診断バイオマーカーを開発するために、血清中のタンパク質を直接網羅的に解析する、新たな血清プロテオーム解析法(DIA法)の開発を行った。その結果、1,598種類のタンパク質情報を含む独自のヒト血清スペクトルライブラリを構築し、世界に例を見ない規模で高濃度から低濃度の血清タンパク質を迅速に定量解析できる技術を開発した。その結果、1検体当たり3時間程度の測定時間で1000種類のタンパク質を同定でき、従来法では検出できなかった低濃度タンパク質(290 pg/mL)の発現変動も検出できるようになった。2. 1.で開発した方法を用いて、リンパ節転移が多い患者と転移がない胃癌患者の門脈血の血清プロテオーム比較定量解析を実施した。その結果、リンパ節転移が多い患者の血清中で発現量が増加しているタンパク質を49種類検出した。その中には、RNASE1、IGFBP4などの癌関連分子の他、EMTとの関連が示唆されているタンパク質が含まれていた。3.先の研究で見出したEMT関連タンパク質の発現を抑制した場合に、癌細胞の遊走能が低下することがわかった。また、プロテオーム解析の結果、発現抑制細胞では細胞接着に関連するタンパク質の発現量が増加する傾向があることがわかった。そこで、癌細胞のEMT誘導に関連して発現量が減少するE-cadherin量をイムノブロット法で調べたところ、発現抑制細胞では有意に増加することがわかった。また、リン酸化プロテオーム解析の結果から、TGF-β刺激時に発現抑制細胞は通常の癌細胞とは全く異なるリン酸化状態を示すことが明らかとなった。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。本研究では、上皮間葉転換(EMT)誘導に着目し、様々な固形癌で、明確な診断基準となる腫瘍組織・血清を用いた新規診断法を確立することを目指している。そために、本年度は、以下の研究を行った。1.申請者らが見出したEMTに関係し、早期肺腺癌の予後とも関連がある1種類のタンパク質およびそのリン酸化に着目し、血清中での定量解析技術を検討した。その結果、血清中タンパク質濃度が低く、免疫沈降法とウエスタンブロッティング法を組み合わせた方法でのみ検出可能であることがわかった。また、このタンパク質は様々な翻訳後修飾を受け、複数のタンパク質フォームとして存在していること、健常者においても一部フォームは強く発現していることが明らかになった。また、大腸癌および胃癌組織を用いて、患者毎に癌部と非癌部、予後良好と不良群に分けて検討を行ったが、組織においても複数のフォームが確認され、さらには個人差が大きいことがわかった。2.申請者らが見出したEMTに関係する2種類のチロシンキナーゼ型レセプターについては、TGFβ刺激によりリガンド量が増加した結果、これらタンパク質のリン酸化が亢進する可能性が示唆された。3.質量分析装置を用いたプロテオーム解析により、大腸癌および胃癌患者組織を用いて新たな診断マーカー候補タンパク質の探索を行った。その結果、新たなEMT関連タンパク質を見出すことができた。4.血清を用いた、新たなプロテオーム解析法の開発を遂行中である。本研究では、近年申請者らが見出したEMT誘導に関係し、早期肺腺癌の予後とも関連がある4種類のタンパク質リン酸化に着目した新規腫瘍診断法の確立を目指した研究を遂行している。しかし、様々な検討を行った結果、診断法確立には、当初予定よりも多くの時間を要することがわかった。そこで、これらタンパク質に着目した腫瘍診断法の確立と並行して、各タンパク質およびそのリン酸化が関与するEMT誘導メカニズムを明らかにし、その関連タンパク質群も新たな診断バイオマーカーとして活用する研究に着手した。また、本研究では、様々な固形癌の患者血清および組織などの、貴重な臨床検体を幅広く収集している。そこで、これら臨床検体を用いて、より明確な腫瘍診断基準となる、新たなEMT関連タンパク質を探索するプロテオーム解析研究にも着手し、EMT誘導との関連性や診断バイオマーカーとしての有用性の検討を開始している。本研究では、上皮間葉転換(EMT)誘導に着目し、様々な固形癌で、明確な診断基準となる腫瘍組織・血清を用いた新規診断法を確立することを目指し、以下の研究を行った。1.有用な血清診断バイオマーカーを開発するために、血清中のタンパク質を直接網羅的に解析する、新たな血清プロテオーム解析法(DIA法)の開発を行った。その結果、1,598種類のタンパク質情報を含む独自のヒト血清スペクトルライブラリを構築し、世界に例を見ない規模で高濃度から低濃度の血清タンパク質を迅速に定量解析できる技術を開発した。その結果、1検体当たり3時間程度の測定時間で1000種類のタンパク質を同定でき、従来法では検出できなかった低濃度タンパク質(290 pg/mL)の発現変動も検出できるようになった。2. 1.で開発した方法を用いて、リンパ節転移が多い患者と転移がない胃癌患者の門脈血の血清プロテオーム比較定量解析を実施した。その結果、リンパ節転移が多い患者の血清中で発現量が増加しているタンパク質を49種類検出した。
KAKENHI-PROJECT-16H05230
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H05230
上皮間葉転換(EMT)を指標とした新規腫瘍診断法の構築
その中には、RNASE1、IGFBP4などの癌関連分子の他、EMTとの関連が示唆されているタンパク質が含まれていた。3.先の研究で見出したEMT関連タンパク質の発現を抑制した場合に、癌細胞の遊走能が低下することがわかった。また、プロテオーム解析の結果、発現抑制細胞では細胞接着に関連するタンパク質の発現量が増加する傾向があることがわかった。そこで、癌細胞のEMT誘導に関連して発現量が減少するE-cadherin量をイムノブロット法で調べたところ、発現抑制細胞では有意に増加することがわかった。また、リン酸化プロテオーム解析の結果から、TGF-β刺激時に発現抑制細胞は通常の癌細胞とは全く異なるリン酸化状態を示すことが明らかとなった。本研究では、上皮間葉転換(EMT)誘導に着目し、様々な固形癌で、明確な診断基準となる腫瘍組織・血清を用いた新規診断法を確立することを目指し、以下の研究を行った。1.血清診断バイオマーカーとしての有用性を検討するために、昨年度までに条件検討した測定法にて、EMT誘導関連タンパク質の血清中の濃度を調べた。胃癌、大腸癌、膵臓癌、肺癌患者血清や健常者血清を用いた結果、個人差が大きく、健常者での数値が高いなど血清診断バイオマーカーとしては利用できないことが判明した。2.癌患者の予後診断が可能な、有用な血清診断バイオマーカーを開発するために、血清中のタンパク質を直接網羅的に解析する、新たな血清プロテオーム解析法(DIA法)の開発を行った。今年度は、その準備として、様々な分画法を活用して、血清中に含まれるタンパク質に由来するペプチドの質量データを蓄積した標準ヒト血清タンパク質スペクトルライブラリの構築を行った。3.大腸癌組織と近接正常粘膜組織を用いたリン酸化プロテオーム解析により、癌部に特異的に高発現するリン酸化ペプチドを7種類見出した。その中で、EMTとの関連が示唆されている1種類のタンパク質について、mRNA発現解析をRT-PCRにより行った。その結果、mRNAレベルでも近接正常組織と比較して大腸癌組織において有意に高発現(p<0.001)していた。したがって、大腸癌組織において、このタンパク質が特異的に高発現していると考えられた。今年度、近年申請者らが見出したEMT誘導に関係し、早期肺腺癌の予後とも関連がある4種類のタンパク質を用いた新規血清腫瘍診断法の確立が困難であることがわかった。しかし、本研究で幅広く収集した様々な固形癌の患者血清および組織などの貴重な臨床検体を用いて、新たなEMT関連タンパク質の探索研究を実施し、より明確な腫瘍診断基準となる新規癌診断バイオマーカー候補を見出した。また、新たな血清プロテオーム解析法の開発は、順調に開発が進んでいる。したがって、本研究は、若干の方向転換を余儀なくされているが、新たな成果が順調に得られており、現時点で大きな障壁は見られない。研究は、若干の方向転換を余儀なくされているが、申請者らが見出したEMT関連性タンパク質やそのリン酸化に着目した研究では、新たな成果が順調に得られている。また、臨床検体を用いたプロテオーム解析による新たなEMT関連タンパク質探索研究についても順調に進んでおり、現時点で大きな障壁は見られない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-16H05230
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H05230
新たなメラトニンの作用の発見と新規の抗肥満の開発に向けた基礎的検討
本研究では、睡眠覚醒などの生体リズムの調節、種々のホルモン分泌や脂肪代謝、糖代謝、発癌抑制、免疫調節など多彩な作用を有するメラトニンが持つ抗肥満作用を明らかにすることを目的としている。ICR雌マウスを用い、10週齢から43週齢までの間、メラトニン水(100g/ml)をコントロール群には水道水を飲水投与して8カ月にわたる長期のメラトニン投与が、加齢に伴う内臓脂肪の蓄積や体重増加を予防できるか、摂取食餌量に変化があるのかを検討した。さらに、体内ではどのような変化が起きているのか、メラトニン投与後のマウス肝臓における様々な代謝への影響をメタボローム解析にて検討した。マウス1匹あたりの1日の摂取食餌量は、平均でコントロールが5.1g、メラトニンで5.2gと食餌量に変化はなかった。体重においては、メラトニン群において減少傾向にあるが有意な差は出なかった。さらに、コントロール群9匹、メラトニン群10匹に対し、動物実験用3DマイクロX線CTを用い、横隔膜の下から足の付け根までの体脂肪率、内臓脂肪率、皮下脂肪率を算出したが、有意な差は無かった。肝臓おけるメタボローム解析は、主分析解析ではメラトニン群とコントロール群では明らかな相違を認めた。各代謝経路の結果としては、総してメラトニン投与群が代謝産物量は低い傾向を認めた。解糖系では、ピルビン酸合成阻害に因るPEPの増加、乳酸合成の低下及びTCA回路の不活化を認めた。また、アミノ酸類の低下や、核酸合成の低下等も認めた。メラトニンの抗肥満効果を明らかにすることを目的とした研究であるが、メラトニン投与群とコントロール群では体重増加や内臓脂肪の蓄積に有意差を認めなかったことは、当初の予測とは異なる結果であった。しかし、メタボローム解析では多種の代謝経路にメラトニンが影響を与えていることが明らかになっており、体重増加や内臓脂肪の蓄積以外の抗肥満効果が明らかになる可能性がある。今後は、メタボローム解析結果をさらに検討することで、メラトニンの抗肥満効果を明らかにしたい。また、脂肪組織中の炎症生サイトカイン濃度やアディポサイトカイン濃度を測定し、さらには寿命延長因子(S6キナーゼのリン酸化レベル、ヒストン脱アセチル化酵素であるSilent information regulator(SiR2)とサーチュイン(SIRT-7))の発現の検討も行い、メラトニンの抗肥満効果のメカニズムを解明する。本研究では、睡眠覚醒などの生体リズムの調節、種々のホルモン分泌や脂肪代謝、糖代謝、発癌抑制、免疫調節など多彩な作用を有するメラトニンが持つ抗肥満作用を明らかにすることを目的としている。ICR雌マウスを用い、10週齢から43週齢までの間、メラトニン水(100g/ml)をコントロール群には水道水を飲水投与して8カ月にわたる長期のメラトニン投与が、加齢に伴う内臓脂肪の蓄積や体重増加を予防できるか、摂取食餌量に変化があるのかを検討した。さらに、体内ではどのような変化が起きているのか、メラトニン投与後のマウス肝臓における様々な代謝への影響をメタボローム解析にて検討した。マウス1匹あたりの1日の摂取食餌量は、平均でコントロールが5.1g、メラトニンで5.2gと食餌量に変化はなかった。体重においては、メラトニン群において減少傾向にあるが有意な差は出なかった。さらに、コントロール群9匹、メラトニン群10匹に対し、動物実験用3DマイクロX線CTを用い、横隔膜の下から足の付け根までの体脂肪率、内臓脂肪率、皮下脂肪率を算出したが、有意な差は無かった。肝臓おけるメタボローム解析は、主分析解析ではメラトニン群とコントロール群では明らかな相違を認めた。各代謝経路の結果としては、総してメラトニン投与群が代謝産物量は低い傾向を認めた。解糖系では、ピルビン酸合成阻害に因るPEPの増加、乳酸合成の低下及びTCA回路の不活化を認めた。また、アミノ酸類の低下や、核酸合成の低下等も認めた。メラトニンの抗肥満効果を明らかにすることを目的とした研究であるが、メラトニン投与群とコントロール群では体重増加や内臓脂肪の蓄積に有意差を認めなかったことは、当初の予測とは異なる結果であった。しかし、メタボローム解析では多種の代謝経路にメラトニンが影響を与えていることが明らかになっており、体重増加や内臓脂肪の蓄積以外の抗肥満効果が明らかになる可能性がある。今後は、メタボローム解析結果をさらに検討することで、メラトニンの抗肥満効果を明らかにしたい。また、脂肪組織中の炎症生サイトカイン濃度やアディポサイトカイン濃度を測定し、さらには寿命延長因子(S6キナーゼのリン酸化レベル、ヒストン脱アセチル化酵素であるSilent information regulator(SiR2)とサーチュイン(SIRT-7))の発現の検討も行い、メラトニンの抗肥満効果のメカニズムを解明する。
KAKENHI-PROJECT-18K16801
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K16801
ロイコ色素材料を用いた低線量γ線検出システムの開発
本年度は、γ線照射に対して耐性の弱かったフェノチアジン色素に替わる色素骨格として、フェノキサジン系色素を用いる系について検討した。3,7-ビスジエチルアミノ-5-フェノチアジンの10位の窒素にo-ニトロベンジルオキシカルボニル部位を有する化合物(1)をフェノチアジン系色素を合成したのと類似の方法で合成し、γ線照射実験を行った。その結果、化合物1のアセトニトリル溶液(1x10^<-4>M)は、40Gyの照射により、目視で無色透明から青色に発色することが確認できた。この結果で工業的所有権を申請した(時田澄男,太刀川達也,"フェノキサジン系化合物及び放射線検出方法",特願2002-84898)。さらに、同様にフェノキサジン骨格を色素骨格とし、保護基部分の異なる誘導体を種々合成すべく、新しい合成に取り組んだ。色素の還元体に酸ハロゲン化物や、ギ酸エステルを作用させ、直接保護基を導入する方法により、新規フェノキサジン系色素化合物を容易に合成できることがわかった。ここで合成された2,2,2-トリクロロエチルオキシカルボニル基を有する化合物(2)は、高いγ線感受性を示し、化合物1の4分の1程度の照射線量(10Gy)から目視で青色の着色を確認した。また、色素の還元体に4分の1当量のトリホスゲンを作用させることにより、トリクロロメチルオキシカルボニル基を有する化合物(3)が合成できることがわかり、化合物3も高いγ線感受性を示した。ここで示した新規合成法と合成した色素前駆体の放射線感受性について工業的所有権を申請中であり、学会発表を予定している。色素骨格に多種の誘導体が存在するインドフェノールやインドアニリン系を用いた化合物についても検討を行った。色素骨格のγ線照射に対する安定性は、インドアニリン系色素やインドナフトール系色素で異なることがわかった。P-トルエンスルホニル基で保護したインドナフトール系発色色素(4)はγ線照射により発色することが確認されたが、その色素体のγ線に対する堅牢性は、フェノキサジン系色素より低いことがわかった。本年度は、色素骨格としてフェノチアジン系色素を用いる系について検討した。すなわち、3,7-ビスジメチルアミノ-5-フェノチアジンの10位の窒素にo-ニトロベンジルオキシカルボニル部位を有する化合物(1)、及び、t-ブトキシカルボニル部位を有する化合物(2)を合成し、その光・酸・放射線による発色挙動を調査した。ロイコ色素を放射線検出に用いる利点は、一段階で発色するため、発色条件の検討が比較的容易であり、また、試料の調製や製品の作成に対する手間が少ないことである。フェノチアジン系色素の合成は、メチレンブルー(3)を出発原料にトルエン・水の混合溶媒中、亜ジチオン酸ナトリウムで還元した後、トリホスゲンを用いてクロロホルミル化し、o-ニトロベンジルオキシ基、t-ブトキシ基を保護基として導入することにより行った。それぞれ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離し、アルコール溶媒から再結晶することにより、二種類のフェノチアジン系ロイコ色素1,2を得ることができた。紫外光照射実験では、それぞれのアセトニトリル溶液に、100Wの高圧水銀灯を照射することにより、脱保護反応により生成する3の吸収に相当する655nmでの吸光度の増加を確認した。また、p-トルエンスルホン酸を用いた酸添加実験については、ジメチルスルホキシド中、70°Cで、1では初期段階でわずかに吸光度が増加したものの経時変化をほとんど示さなかったのに対し、2は時間の経過に応じて655nmの吸光度が増加していくことを確認した。よって、ロイコ色素2より1の方が、放射線感応性色素に相応しいことがわかった。γ線照射実験は、1,2とも目視で確認できるような強さではないが、吸収線量に応じて、3の吸収に相当する655nmにおける吸収極大がわずかに増加していることが確認できた。また、より短波長の450-500nm付近に大きな吸収強度の増大が見られ、400Gyの吸収線量を与える照射から溶液が黄色に着色している様子が目視によって確認できた。色素骨格にイオウ原子を含んでいることから、C-S結合が照射で解裂し易いと考え、フェノキサジン系色素の合成を検討している。本年度は、γ線照射に対して耐性の弱かったフェノチアジン色素に替わる色素骨格として、フェノキサジン系色素を用いる系について検討した。3,7-ビスジエチルアミノ-5-フェノチアジンの10位の窒素にo-ニトロベンジルオキシカルボニル部位を有する化合物(1)をフェノチアジン系色素を合成したのと類似の方法で合成し、γ線照射実験を行った。その結果、化合物1のアセトニトリル溶液(1x10^<-4>M)は、40Gyの照射により、目視で無色透明から青色に発色することが確認できた。この結果で工業的所有権を申請した(時田澄男,太刀川達也,"フェノキサジン系化合物及び放射線検出方法",特願2002-84898)。さらに、同様にフェノキサジン骨格を色素骨格とし、保護基部分の異なる誘導体を種々合成すべく、新しい合成に取り組んだ。
KAKENHI-PROJECT-13750783
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13750783
ロイコ色素材料を用いた低線量γ線検出システムの開発
色素の還元体に酸ハロゲン化物や、ギ酸エステルを作用させ、直接保護基を導入する方法により、新規フェノキサジン系色素化合物を容易に合成できることがわかった。ここで合成された2,2,2-トリクロロエチルオキシカルボニル基を有する化合物(2)は、高いγ線感受性を示し、化合物1の4分の1程度の照射線量(10Gy)から目視で青色の着色を確認した。また、色素の還元体に4分の1当量のトリホスゲンを作用させることにより、トリクロロメチルオキシカルボニル基を有する化合物(3)が合成できることがわかり、化合物3も高いγ線感受性を示した。ここで示した新規合成法と合成した色素前駆体の放射線感受性について工業的所有権を申請中であり、学会発表を予定している。色素骨格に多種の誘導体が存在するインドフェノールやインドアニリン系を用いた化合物についても検討を行った。色素骨格のγ線照射に対する安定性は、インドアニリン系色素やインドナフトール系色素で異なることがわかった。P-トルエンスルホニル基で保護したインドナフトール系発色色素(4)はγ線照射により発色することが確認されたが、その色素体のγ線に対する堅牢性は、フェノキサジン系色素より低いことがわかった。
KAKENHI-PROJECT-13750783
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13750783
咀嚼による脳内神経伝達物質の活性化発現機序に関する神経内分泌学的研究
本研究によって得られた知見を以下に示す。咀嚼がラット学習能力に与える影響について実験を行い、考察を加えた。(1)通常の固形飼料で飼育したラット(以下、固形飼料ラット)、液体栄養で飼育したラット(以下、液体飼料ラット)、頚静脈にカニューレを挿入し頚静脈に高カロリー輸液を送り飼育したラット(以下、頚静脈ラット)および胃にカニューレを挿入し胃に液体栄養を送り飼育したラット(以下、胃ラット)でHebb and Williams迷路学習法を行ったところ、固形飼料ラットは液体飼料ラットより有意に錯誤回数が少なかった。また、液体飼料ラットは頚静脈ラット、胃ラットより有意に錯誤回数が少なかった。頚静脈ラットと胃ラットの錯誤回数に有意差はなかった。(2)上記と同様の4群のラット視床下部(室傍核、弓状核)のニューロペプタイドY(以下、NPY)濃度を測定したところ、固形飼料ラットは液体飼料ラットより有意にNPY濃度が高かった。また、液体飼料ラットは頚静脈ラット、胃ラットより有意にNPY濃度が高かった。頚静脈ラットと胃ラットのNPY濃度に有意差はなかった。以上(1)(2)の結果より、口腔から栄養を摂取することは、ラットの学習能力の発達にとって重要であり、さらに口腔から摂取する場合も、咀嚼の有無が学習能力にとって重要であることが示唆された。また、このメカニズムには脳内神経伝達物質NPYが関与していることが示唆された。本研究によって得られた知見を以下に示す。咀嚼がラット学習能力に与える影響について実験を行い、考察を加えた。(1)通常の固形飼料で飼育したラット(以下、固形飼料ラット)、液体栄養で飼育したラット(以下、液体飼料ラット)、頚静脈にカニューレを挿入し頚静脈に高カロリー輸液を送り飼育したラット(以下、頚静脈ラット)および胃にカニューレを挿入し胃に液体栄養を送り飼育したラット(以下、胃ラット)でHebb and Williams迷路学習法を行ったところ、固形飼料ラットは液体飼料ラットより有意に錯誤回数が少なかった。また、液体飼料ラットは頚静脈ラット、胃ラットより有意に錯誤回数が少なかった。頚静脈ラットと胃ラットの錯誤回数に有意差はなかった。(2)上記と同様の4群のラット視床下部(室傍核、弓状核)のニューロペプタイドY(以下、NPY)濃度を測定したところ、固形飼料ラットは液体飼料ラットより有意にNPY濃度が高かった。また、液体飼料ラットは頚静脈ラット、胃ラットより有意にNPY濃度が高かった。頚静脈ラットと胃ラットのNPY濃度に有意差はなかった。以上(1)(2)の結果より、口腔から栄養を摂取することは、ラットの学習能力の発達にとって重要であり、さらに口腔から摂取する場合も、咀嚼の有無が学習能力にとって重要であることが示唆された。また、このメカニズムには脳内神経伝達物質NPYが関与していることが示唆された。現在までに得られた知見を以下に示す。(1)通常のラット(コントロール)・無歯顎ラットの2群に分け、迷路学習実験を行うことにより、咀嚼がラット学習能力に与える影響について調べたところ、コントロールに比較して、無歯顎ラットは有意に学習能力が劣っていた。(2)上記2群のラットに分け、視床下部のニューロベプタイドY濃度(記憶に関与することで知られる脳内神経伝達物質である。)を測定し、咀嚼が脳内神経伝達物質に与える影響について調べた。その結果、コントロールに比較して無歯顎ラットは有意に視床下部ニューロペプタイドY濃度が低かった。(3)直接餌を与えず、胃にカニューレを挿入し、高カロリー栄養輸液を与えたラットは、コントロールに比較して、迷路学習実験において有意に学習能力が劣っていた。しかし上記の実験を進めていくにあたり、以下の問題点が存在することがわかってきた。(1)迷路実験の再現性に疑問が残る。迷路実験の結果はその動物の性格・くせに大きく影響され、運動能力の高い動物は良い結果を出しやすい傾向がある。(2)通常のラットと無歯顎ラットでは栄養状態が異なり、その違いが運動能力の差を生じ、結果的に迷路実験で異なった成績を出す可能性があり、迷路実験の結果の解釈には注意を要する。(3)迷路実験では、学習後の記憶の強さ(どのくらい記憶が持続するか)を評価しにくい。以上の研究成果と問題点をふまえ、時間生物学を応用した新しい方法を次年度に開発したい。生体リズムにおける「同調」と「フリーラン」という概念はそれぞれ「学習」と「記憶」に対応する、という考え方は時間生物学において定説となっている。時間生物学的な考え方を学習・記憶効果の評価方法として応用することにより、上記3点の問題点を解消できると研究代表者は考えている。本研究によって得られた知見を以下に示す。咀嚼がラット学習能力に与える影響について実験を行い、考察を加えた。(1)通常の固形飼料で飼育したラット(以下、固形飼料ラット)、液体栄養で飼育したラット(以下,液体飼料ラット)、頚静脈にカニューレを挿入し頚静脈に高カロリー輪液を送り飼育したラット(以下頚静脈ラット)および胃にカニューレを挿入し胃に液体栄養を送り飼育したラット(以下、胃ラット)でHebb and Williams迷路学習法を行ったところ,固形飼料ラットは液体飼料ラットより有意に錯誤回数が少なかった。また、液体飼料ラットは頚静脈ラット、胃ラットより有意に錯誤回数が少なかった。頚静脈ラットと胃ラットの錯誤回数に有意差はなかった。
KAKENHI-PROJECT-10671920
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10671920
咀嚼による脳内神経伝達物質の活性化発現機序に関する神経内分泌学的研究
2)上記と同様の4群のラット視床下部(室傍核、弓状核)のニューロペプタイドY(以下、NPY)濃度を測定したところ、固形飼料ラットは液体飼料ラットより有意にNPY濃度が高かった。また、液体飼料ラットは頚静脈ラット、胃ラットより有意にNPY濃度が高かった。頚静脈ラットと胃ラットのNPY濃度に有意差はなかった。以上(1)(2)の結果より、口腔から栄養を摂取することは、ラットの学習能力の発達にとって重要であり、さらに口腔から摂取する場合も、咀嚼の有無が学習能力にとって重要であることが示唆された。このメカニズムには脳内神経伝達物質NPYが関与していることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-10671920
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10671920
顎顔面形態形成における高分子非コードRNA:Evf2の機能とその分子基盤の解明
我々は、エンドセリン-1(ET-1)/ET-A受容体(ETAR/Ednra)シグナルが第1鰓弓では下顎のアイデンティティーを決定することを示してきたが、下顎の上顎化が見られるEdnra-/-にEvf2を発現させると、下顎歯槽骨遠位部と切歯の低形成が増強した。これは、Ednra-/-で僅かに残存していたHAND2の発現消失に起因していると考えられた。また、ET-1/ETARシグナルの主要な核転写因子でHAND2の発現に関わるDlx5/6、Dlx5/6のエンハンサー、Evf2は相互にポジティブフィードバックループを形成していることをin vivo, in vitroで示した。その作用メカニズムの一つとして、mI56iエンハンサーの一部のCpGのメチル化が関与している可能性が示唆された。さらに鰓弓のマイクロアレイの結果からパラスペックル蛋白のPSPC1に注目した。PSPC1はEvf2と複合体を形成することができ、in vitroではDlx5/6のエンハンサーを介して転写活性に作用し、強制発現系においてEvf2がパラスペックルの局在を変化させることを見いだした。これらによりEvf2が生体内でも、核内でパラスペックル蛋白に直接または間接的に結合して、転写調節などの機能に関与する可能性が示唆された。また、ETARevf2/-;Dlx5/6+/-のダブルへテロマウスが、予想に反して新生児期に呼吸不全にて死亡することを見いだした。病態的組織学的には新生児呼吸窮迫症候群様であり、サーファクタント蛋白やサーファクタント脂質の産生•分泌とETAR/Dlx5Dlx6/Evf2の関係を検索中である。Evf2は、生体においては正常発生•発達においては顕著な作用が見られないにもかかわらず、異常発生•病態時に作用が検出された。これはlong noncoding RNAの性質の一面を示唆するものと考えた。25年度が最終年度であるため、記入しない。25年度が最終年度であるため、記入しない。我々は、エンドセリン-1(ET-1)/ET-A受容体(ETAR/Ednra)シグナルが第1鰓弓では下顎のアイデンティティーを決定することを示してきたが、下顎の上顎化が見られるEdnra-/-にEvf2を発現させると、下顎歯槽骨遠位部と切歯の低形成が増強した。これは、Ednra-/-で僅かに残存していたHAND2の発現消失に起因していると考えられた。また、ET-1/ETARシグナルの主要な核転写因子でHAND2の発現に関わるDlx5/6、Dlx5/6のエンハンサー、Evf2は相互にポジティブフィードバックループを形成していることをin vivo, in vitroで示した。その作用メカニズムの一つとして、mI56iエンハンサーの一部のCpGのメチル化が関与している可能性が示唆された。さらに鰓弓のマイクロアレイの結果からパラスペックル蛋白のPSPC1に注目した。PSPC1はEvf2と複合体を形成することができ、in vitroではDlx5/6のエンハンサーを介して転写活性に作用し、強制発現系においてEvf2がパラスペックルの局在を変化させることを見いだした。これらによりEvf2が生体内でも、核内でパラスペックル蛋白に直接または間接的に結合して、転写調節などの機能に関与する可能性が示唆された。また、ETARevf2/-;Dlx5/6+/-のダブルへテロマウスが、予想に反して新生児期に呼吸不全にて死亡することを見いだした。病態的組織学的には新生児呼吸窮迫症候群様であり、サーファクタント蛋白やサーファクタント脂質の産生•分泌とETAR/Dlx5Dlx6/Evf2の関係を検索中である。Evf2は、生体においては正常発生•発達においては顕著な作用が見られないにもかかわらず、異常発生•病態時に作用が検出された。これはlong noncoding RNAの性質の一面を示唆するものと考えた。申請者はこれまで、エンドセリン-1(ET-1)がET-A受容体(ETAR)を介して、頭頚部の形態形成において神経堤細胞の運命決定を制御する因子として働き、特に第1鰓弓では下顎のアイデンティティーを決定することを、マウス発生工学的研究によって示してきた。本研究課題では、noncoding RNAのEvf2が、ET-1/ETARシグナルに関わる分子基盤の解明を目的とした。核転写因子Dlx5,Dlx6は、顎顔面形成においてET-1/ETARシグナル下に存在するが、Evf2はこのDlx5,Dlx6のエンハンサーであるmI56i領域に作用して発現を亢進させることをEvf2ノックインマウスの鰓弓とP19細胞を用いて示すことができた。同様の系で、Evf2は核転写因子HAND2に対して抑制的に働くことを示したが、これはEvf2KIマウスで、ETARKOマウスに比べさらに下顎の切歯が低形成になった原因と考えられた。また、野生型(WT)、ETARKO、Evf2KIの鰓弓のマイクロアレイを用いてEvf2に関わる新たな因子をスクリーニングし、パラスペックル蛋白のPSPC1に着目した。過剰発現の細胞系で、PSPC1蛋白とEvf2 mRNAは核内で一部重なる、または接する状態を呈していたため、Evf2と複合体を形成していることが既に知られているDlx蛋白群とPSPC1との関係を免疫沈降法にて検討したところ、3者が複合体を形成している可能性が示唆された。
KAKENHI-PUBLICLY-24115705
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-24115705
顎顔面形態形成における高分子非コードRNA:Evf2の機能とその分子基盤の解明
また、Evf2によるエピジェネティック修飾に関しては、mI56iエンハンサーのDNAメチル化はWTとETARKOの鰓弓で変化がなかったため、ヒストン修飾を検討しているが、10.5日胚の鰓弓のみのChIP assayの系を立ち上げることができ、現在解析中である。下顎の形態形成に必要な因子に対するEvf2の調節に関しては、Evf2とDlx5、Dlx6、HAND2の関係をin vivo、in vitroでの検討し、最終的なデータをまとめることができ、現在投稿準備中である。また、Evf2による遺伝子発現調節の分子メカニズムにおいては、Dlx2のみならずDlx5,Dlx6とEvf2が協調してエンハンサーに作用している傍証が得られているので、次はRNA pull-downの系をさらに調整して非特異的な反応をできるだけ抑え、RNAと蛋白の直接結合の有無をはっきりさせる必要がある。Evf2によるエピジェネティック修飾に関しては、10.5日胚の鰓弓のみのChIP assayは、培養細胞と違い細胞数に限りがあるので困難を伴ったが、assay系を立ち上げることができ、現在解析中である。さらに、PSPC1蛋白とEvf2とのエンハンサーに対する協調作用が見られつつあるが、パラスペックルは転写やRNAプロセッシングに関わる蛋白が局在していると考えられるので、Evf2の作用機序として転写に関わる研究の一つの方向性を示すことができた。Evf2がDlx5やDlx6とエンハンサーを介して遺伝子発現調節に関わっていることが示されたので、PSPC1を含めたさらなる分子メカニズムを明らかにしていく。また、プロモーター領域に対する作用についても、詳細にLuciferase assayを重ねた上で、転写開始複合体の一部に組み込まれているか検討したい。一方、Evf2とDlx5,Dlx6の関係をin vivoで検討している中で、偶然にEvf2KIヘテロかつDlx5/6KOヘテロのマウスが生後1ー2日で肺の異常(または腸管の異常)で死亡することを見いだした。この要因として、Dlx5/6 +/-, ETAR+/-, Evf2異所性発現の3要因があるのでEvf2の貢献度を慎重に見極めつつ、Evf2の生体内での作用を検討していく。25年度が最終年度であるため、記入しない。25年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-24115705
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-24115705
多機能計測と細胞機能操作による視交叉上核の光同調メカニズムの解明
哺乳類の概日リズムの中枢は脳の視床下部にある視交叉上核に存在し、網膜より直接の神経投射を受け、外界の光環境情報を統合し、最終的に睡眠/覚醒などの24時間の生理機能を制御する。概日リズム中枢は、自律振動と光同調の機能を持つ事が必須条件である。これ迄の申請者の光計測により、細胞内カルシウムや膜電位の概日リズムを可視化することで、神経回路レベルでの概日リズムの自律振動の仕組みを解明してきた。さらに本年度は、視交叉上核の主な出力投射先である室傍核と傍室傍核領域に細胞内カルシウムのウルトラディアンリズムを報告した。このように概日リズムおよびウルトラディアンの自律振動メカニズムが明らかになってきた一方で、生理機能を外界環境に同調させる光同調の仕組みの多くは未だ不明である。本研究課題では特に、光計測により神経活動や概日リズム変動を捉えつつ、視交叉上核の神経回路に摂動を与え、光同調の仕組みを解明することを目的に研究を行っている。本年度は特に、マウス生体内の脳深部からの光計測と細胞機能の操作を行うための要素技術の確立を目指して基礎的な条件検討を行った。まず成獣マウスの脳深部に遺伝子コード型カルシウムセンサーを組み込んだアデノ随伴ウイルスを感染・発現させる最適な方法(尾静脈注射と頭蓋内注射)を検討した。次にマウスの頭部に装着可能な小型LED、CMOSセンサー、GRINレンズなどからなる小型顕微鏡を作成して動作の確認を行った。また防音/遮光/換気の機能が備わった簡易型アイソレーションキャビネットを設計し、赤外線センサーによるマウス自発行動の自動測定システムを構築して動作確認を行った。前年度までに、培養スライスでの実験系において細胞種特異的に蛍光センサーおよび光遺伝学ツールを発現させ、光により細胞機能の計測/操作が可能な実験系を構築した。さらに本年度は、マウス成獣の生体内からの計測と制御を行うための基盤技術の確立を目指して実験条件の最適化を行った。構築した小型顕微鏡は正常に作動したものの、数日週に渡る長期計測を行うためには顕微鏡本体の耐久性や安定性の大幅な向上と、測定プログラムの改良が必要である。また脳深部の目的領域のみにアデノ随伴ウイルスを感染させる必要があるが、成功率が未だ低いために更なる実験技術の向上が必要である。生体内計測と細胞操作の研究は海外の有力ラボも精力的に進めていることから、戦略的に研究を進めて行く必要がある。in vitro、in vivoの実験条件をさらに最適化して、長期間の実験が可能な実験系の耐久性/安定性の向上を目指す。さらに本研究提案を基盤とした海外ラボとの共同研究提案(国際共同研究強化(A))とも連携して研究を戦略的に進めて行く。哺乳類の概日リズムの中枢は脳の視交叉上核に存在し、網膜より直接の神経投射を受け、外界の光環境情報を統合し、最終的に睡眠/覚醒などの24時間の生理機能を制御する。概日リズム中枢は[自律振動]と[光同調]の機能を持つ事が必須条件として知られる。これ迄の申請者の光計測により、時計遺伝子発現/細胞内カルシウム/膜電位の概日リズムを可視化することで、神経回路レベルでの[自律振動]の仕組みを解明してきた。しかし生理機能を外界環境に同調させる[光同調]の仕組みの多くは不明である。本研究課題では、光受容タンパク質を用いて細胞内機能を時空間的に自在に制御し、培養組織上で光入力を再現し、光計測により神経活動や概日リズム変動を捉え、視交叉上核の神経回路での光同調の仕組みを解明することを目的に研究を行っている。生後5日齢の仔マウスより視交叉上核スライス切片を作成し、培養後7日後にアデノ随伴ウイルス溶液をスライス上に添加し、遺伝子コード型カルシウムプローブおよび光受容タンパク質を感染発現させた。十分量のタンパク質の発現が見られる感染後10ー14日後より、ニポウディスク共焦点と高感度CCDカメラからなるタイムラプスシステムにて光計測を試みた。特にCre-LoxP細胞特異的遺伝子組み換え法を用いて、視交叉上核の神経回路の網膜投射領域に光受容タンパク質を感染発現させることを試み、細胞種限定的な発現が可能であること、また光照射により細胞内カルシウム濃度の制御が可能であることを確認した。アデノ随伴ウイルスによる光受容タンパク質の発現法を確立し、視交叉上核の神経回路の網膜投射領域に光受容タンパク質を発現させた。また光照射により細胞内カルシウム濃度の制御が可能であることを確認した。初年度の主たる目的を達成することが出来た為、概ね順調と判断した。哺乳類の概日リズムの中枢は脳の視床下部にある視交叉上核に存在し、網膜より直接の神経投射を受け、外界の光環境情報を統合し、最終的に睡眠/覚醒などの24時間の生理機能を制御する。概日リズム中枢は、自律振動と光同調の機能を持つ事が必須条件である。これ迄の申請者の光計測により、細胞内カルシウムや膜電位の概日リズムを可視化することで、神経回路レベルでの概日リズムの自律振動の仕組みを解明してきた。さらに本年度は、視交叉上核の主な出力投射先である室傍核と傍室傍核領域に細胞内カルシウムのウルトラディアンリズムを報告した。このように概日リズムおよびウルトラディアンの自律振動メカニズムが明らかになってきた一方で、生理機能を外界環境に同調させる光同調の仕組みの多くは未だ不明である。
KAKENHI-PROJECT-17K08561
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K08561
多機能計測と細胞機能操作による視交叉上核の光同調メカニズムの解明
本研究課題では特に、光計測により神経活動や概日リズム変動を捉えつつ、視交叉上核の神経回路に摂動を与え、光同調の仕組みを解明することを目的に研究を行っている。本年度は特に、マウス生体内の脳深部からの光計測と細胞機能の操作を行うための要素技術の確立を目指して基礎的な条件検討を行った。まず成獣マウスの脳深部に遺伝子コード型カルシウムセンサーを組み込んだアデノ随伴ウイルスを感染・発現させる最適な方法(尾静脈注射と頭蓋内注射)を検討した。次にマウスの頭部に装着可能な小型LED、CMOSセンサー、GRINレンズなどからなる小型顕微鏡を作成して動作の確認を行った。また防音/遮光/換気の機能が備わった簡易型アイソレーションキャビネットを設計し、赤外線センサーによるマウス自発行動の自動測定システムを構築して動作確認を行った。前年度までに、培養スライスでの実験系において細胞種特異的に蛍光センサーおよび光遺伝学ツールを発現させ、光により細胞機能の計測/操作が可能な実験系を構築した。さらに本年度は、マウス成獣の生体内からの計測と制御を行うための基盤技術の確立を目指して実験条件の最適化を行った。構築した小型顕微鏡は正常に作動したものの、数日週に渡る長期計測を行うためには顕微鏡本体の耐久性や安定性の大幅な向上と、測定プログラムの改良が必要である。また脳深部の目的領域のみにアデノ随伴ウイルスを感染させる必要があるが、成功率が未だ低いために更なる実験技術の向上が必要である。生体内計測と細胞操作の研究は海外の有力ラボも精力的に進めていることから、戦略的に研究を進めて行く必要がある。細胞内カルシウムの光イメージング計測により、網膜投射部位であるVIP細胞に光受容タンンパク質を発現させ、光照射によりカルシウム変化を捉え、他の領域の細胞への波及効果を観察する。特にVIP細胞は、視交叉上核神経回路内ではアルギニンバソプレッシン産生細胞[AVP細胞]に軸索投射を伸ばし、さらに視交叉上核の領域外[室傍核、傍室傍核]へと神経投射して、睡眠覚醒や体温調節などの中枢領域へと情報が伝搬すると考えられている。特に、視交叉上核神経回路内での情報伝搬の様子を詳細に捉えることを試みる。in vitro、in vivoの実験条件をさらに最適化して、長期間の実験が可能な実験系の耐久性/安定性の向上を目指す。さらに本研究提案を基盤とした海外ラボとの共同研究提案(国際共同研究強化(A))とも連携して研究を戦略的に進めて行く。経費節約により生じた未使用額は、研究を加速する為の動物購入経費、飼育経費、論文出版に関する費用に支出する。経費節約により未使用額が生じた。研究を加速する為の動物購入経費、飼育経費、論文出版に関する費用に支出する。
KAKENHI-PROJECT-17K08561
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揮発性麻酔薬のターゲットとしてのカリウムチャネルとその分子機構
Kチャネルの共通部分のみを持つチャネルを対象とした。KcsAチャネル1分子電流記録から、酸性pHでほぼ100%の開口率であり、pKa5.2、Hill係数2.2であった。さらに、pH4.0,5.25,5.5の開時間と閉時間を解析した。開時間は1成分あり、pHによる変化はなかった。閉時間は3成分あり、pHが高くなるにつれて遅い成分が増えた。次に、揮発性麻酔薬を用いた脂質平面膜法の確立を試みた。脂質平面膜にKチャネルを埋め込み、電流記録を行った後、アクリル板で完全に密閉できた。1)揮発性麻酔薬を用いた脂質平面膜測定法の確立揮発性麻酔薬を使用する前に、2,2,2-トリフルオロエタノール(以下TFE)を投与し、その効果を明らかにした。TFEは、CF3基を有する最も単純なアルコールで、液体の状態で存在しており、揮発性麻酔薬の重要な原料である。揮発性麻酔薬を投与する前のカリウムチャネルの開口率は、1%以下であった。TFEを濃度依存性に投与していくと、1%TFE投与では、カリウムチャネルの開口率は1%以下であったが、2%TFE投与では、カリウムチャネルの開口率は約10%、3%TFE投与では、カリウムチャネルの開口率は約60%であった。この結果から、TFE濃度依存性にカリウムチャネルを活性化させることを明らかにした。これは、静止膜電位を安定化させ、麻酔作用を引き起こすことにつながる。さらにTFEはチャネル分子への直接作用ではなく、リン脂質に溶け込んでチャネルを開口させていることも分かった。この結果を基に、実際に脂質平面膜上で揮発性麻酔薬をカリウムチャネルに結合させる方法を試みた。まずは、脂質平面膜にカリウムチャネルを埋め込み、カリウムチャネルの電流記録ができることを確認した。テフロンチェンバーを覆うことができる、透明のアクリル板を作成し、それをかぶせた。あらかじめ穴をあけてホースを通したところから揮発性麻酔薬を投与した。水中ガス測定モニターを用いて、揮発性麻酔薬の濃度を測定できた。Kチャネルの共通部分のみを持つチャネルを対象とした。KcsAチャネル1分子電流記録から、酸性pHでほぼ100%の開口率であり、pKa5.2、Hill係数2.2であった。さらに、pH4.0,5.25,5.5の開時間と閉時間を解析した。開時間は1成分あり、pHによる変化はなかった。閉時間は3成分あり、pHが高くなるにつれて遅い成分が増えた。次に、揮発性麻酔薬を用いた脂質平面膜法の確立を試みた。脂質平面膜にKチャネルを埋め込み、電流記録を行った後、アクリル板で完全に密閉できた。<脂質平面膜における単一チャネル電流記録と解析>カリウムチャネルには2種類のゲート(フィルタゲートとへリックスゲート)が直列に存在し、単一チャネル電流記録でみるゲーティング現象はどちらのゲートで起こっている現象かわからないため、片方のゲートを開放して、もう片方のゲートの開閉を観察するため、KcsAカリウムチャネルのフィルタゲートが開いたまま固定されている変異体であるE71AKcsAカリウムチャネルを作成した。E71A変異体では、フィルターが開いたままで固定されるため、ゲートのpHによる変化を電流記録し、解析した。酸性では(pH3-4)、開確率はほぼ100%であった。pHが5付近では開確率は50%となり、pH7.5では開確率は0%であった。(pKa=5.5,Hill係数2.2)単一チャネル電流記録から解析した開時間のヒストグラムと閉時間のヒストグラムから時定数を求めた。pH4.0では開時間は398ms、閉時間は0.3ms,1.78ms,31msであった。pH5.25では開時間は281ms、閉時間は0.16ms,50ms,562msであった。pH4.0では開時間は339ms、閉時間は0.25ms,15.8ms,1259msであった。これは、pHを上昇させていくと、開こうとする時間はゆっくりした成分が存在していることが分かった。変異体の作成と、その変異体を用いた単一チャネル電流記録とゲートの解析についてはほぼできている。今後は、この解析を基に、実際に麻酔薬を投与し、カリウムチャネルのゲートの挙動について検討したい。まずは、脂質平面膜に静脈麻酔薬を濃度を変化させて投与し、それらがゲートの挙動に影響するか観察する。そのためには、細胞外側からなのか、細胞質側からなのかを判断するためにも細胞外と細胞質側からそれぞれ麻酔薬を投与してみる。それから濃度を変化させて、ゲートの挙動を明らかにする。その後、揮発性麻酔薬を用いて、濃度を変化させてゲート挙動を明らかにする。脂質平面膜法で使用する、ガラス(50-100μmの穴を開けたもの)の購入や、カリウムチャンネルタンパク質を作成するための遺伝子工学試薬・培地類の購入に研究費を使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-23791691
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ウエルシュ菌産生壊死毒素(NetB)による鶏壊死性腸炎発症メカニズムの解明
昨年度から引き続き、ウエルシュ菌による鶏クロストリジウム・パーフリンゲンス感染症(鶏壊死性腸炎)の病原因子であるNetBの細胞致死活性に影響する感受性細胞側分子の特定を行った。NetBは鶏由来細胞にのみ毒性を発揮するため、NetB感受性細胞である鶏肝癌由来細胞(LMH)の細胞膜分子に対するモノクローナル抗体の作製およびLC-MS解析することにより、NetBの毒性発現に関わる感受性細胞側分子の特定を試みた。LMH細胞膜を免疫したマウス脾臓細胞を用いて常法によりハイブリドーマを作製した。NetBの細胞致死活性を抑制するモノクローナル抗体2株を得た。これらモノクローナル抗体とLMH細胞膜をウエスタンブロッティングにより反応させたところいずれも90 kDa付近に特異的なバンドが検出された。そこで、この分子をNetB細胞致死活性に関連する分子と判断し、外部機関のLC-MS/MSデータベースにより解析を行った。解析の結果、上位にヒットした分子より細胞膜上に存在すると考えられる分子を選別した。選別した分子は、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質大サブユニットおよびニワトリトランスフェリン受容体タンパク質の2分子であった。選択した2分子が鳥類細胞に特異的に発現する分子であるかを調べるため、ホモロジー検索により鳥類と哺乳動物間におけるアミノ酸配列の比較を行った。その結果、トランスフェリン受容体タンパク質において、鳥類と各種哺乳類間での相同性がより低い結果となった、トランスフェリン受容体は小腸で発現しており、NetBが病原性を発現する臓器であることから、鶏トランスフェリン受容体はNetBの細胞致死活性に関わる分子である可能性が示唆された。1.NetB受容体の特定NetBに対する唯一の感受性細胞であるニワトリ肝癌由来LMH細胞をマウスに免疫し、抗LMH細胞抗体を作製した。免疫蛍光染色により抗LMH細胞はLMH細胞膜との強い結合が確認されたが、非感受性細胞であるイヌ由来MDCK細胞およびサル由来Vero細胞に対する反応は確認されなかった。さらに、抗LMH細胞抗体はNetBのLMH細胞に対する細胞致死活性を有意に阻害した。以上の結果からNetBの毒素活性における種特異性は細胞への結合能に関連しており、ニワトリにおいて特異的に発現している細胞膜上の分子が受容体である可能性が示唆された。NetBに対する受容体を特定するためにNetBと反応させたLMH細胞を可溶化後、抗NetB抗体で免疫沈降した。可溶化分画を二次元電気泳動により展開後、銀染色しNetBと反応させていないLMH細胞の免疫沈降パターンと出現したスポットを比較した。複数のスポットがNetBと反応した場合にのみ検出された。そのスポットについて液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)を用いて解析し、分子の特定を試みた。解析データをデータベースと照合した結果、該当する分子は特定されなかった。2.オリゴマー形成から細胞致死に関わる細胞側分子の役割NetBの結合やオリゴマー形成への細胞膜上のコレステロールの関与を解析するため、LMH細胞をメチルーβーシクロデキストリンで処理し、細胞膜上のコレステロールを除去した。Triton X-114で可溶化し、ショ糖密度勾配超遠心にて分画後、抗NetB抗体を用いてイムノブロッティングを行った。その結果、NetBのモノマー分子とオリゴマー分子は同一画分に存在していた。結果、細胞膜上のコレステロールはNetBのオリゴマー形成には関与しないことが明らかとなった。ほ乳類由来細胞株に対してNetBの結合が確認されなかったことは、NetBの細胞致死活性や赤血球溶血活性でみられる結果と一致した。したがって、NetBの毒素活性が有する鳥類に限定した高い種特異性は細胞に結合する際の受容体分子に依存していることが明らかとなった。NetBと結合するLMH細胞上の分子は免疫沈降と二次元電気泳動により数種類の分子まで絞り込むことができたが、LC/MS解析では明らかにすることができなかった。この理由として、LC/MSのデータベースにおいて登録されている鳥類(ニワトリ)由来分子はヒトやマウスなどの実験動物由来分子に比べてかなり少ないのが現状であり、今回の解析結果がデータベース上に登録されていない分子のものである可能性が考えられる。孔形成毒素の中にはコレステロールを受容体とするものやコレステロールと相互作用してラフト領域でオリゴマーを形成する毒素が多数存在する。今回の研究において、NetBはコレステロールの関与なしに細胞に結合し、さらに非ラフト領域でオリゴマーを形成した。これらの結果からNetBは標的細胞への結合からオリゴマー形成までの一連の分子動態を細胞膜のコレステロールの関与なしに、一貫して非ラフト領域でたどることが明らかとなった。昨年度実施した二次元電気泳動およびLC-MSによるNetBの細胞致死活性に影響する感受性細胞側分子の特定においてLC-MSデータベース上に該当する分子が存在しなかった。この理由として、LC-MSデータベース上に鳥類とりわけニワトリに関するデータが非常に少ないことが考えられる。LMH細胞をマウスに免疫して得られた抗体がNetBの細胞致死活性を阻害することから、抗体中にはNetB受容体あるいはNetBの細胞致死作用を阻害する細胞側分子を認識する抗体が含まれていることを示している。そこで、今年度はLMC細胞あるいはLMH細胞膜をマウスに免疫することにより、NetBの細胞致死活性を阻害するモノクローナル抗体を作製し、その抗体を用いて特定分子を単離することを試みた。
KAKENHI-PROJECT-16K08026
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K08026
ウエルシュ菌産生壊死毒素(NetB)による鶏壊死性腸炎発症メカニズムの解明
LMH細胞単体またはLMH細胞膜を免疫原としてマウスに56回免疫後、脾臓細胞から抽出したリンパ球を用いて常法によりハイブリドーマを作製した。スクリーニングはLMH細胞膜を固相化したELISA法および単層培養したLMH細胞にハイブリドーマ培養上清を反応後、NetBを添加し、致死活性をMTT法により測定した。LMH細胞膜と反応し、さらにNetBの細胞致死活性が減少したクローンを選別した。3回限界希釈法によるクローニングが終了した6クローンについてウエスタンブロッティングにより細胞膜上の反応分子を調べた結果、1クローンについて特異的分子を検出することができた。さらに、現在、陽性ハイブリドーマを作製している。細胞膜上のセラミドはスフィンゴミエリナーゼの代謝更新によって細胞膜上に蓄積する脂質である。スフィンゴミエリナーゼの作用を阻害する阻害剤であるGW4869を用いてセラミドのNetB細胞致死活性への関与について解析した。その結果、阻害剤添加によりNetBの細胞致死活性の減少が確認された。NetBの細胞致死活性を抑制するモノクローナル抗体を得るために3回細胞融合を実施し、3回目にようやく陽性クローンを得ることができた。分子の特定については現在、ウエスタンブロッティングによりバンドの検出が可能なモノクローナル抗体は1クローンに限られている。ウエスタンブロッティングにより特異分子と反応する複数のモノクローナル抗体を得なければ目的の分子特定には至らないと考えている。したがって、さらに陽性クローンを得る必要がある。オリゴマー形成から細胞致死に関わる細胞側分子の役割については、LMH細胞膜上のセラミドがNetBの細胞致死作用に関与していることを証明したが、どのように関与しているのかを証明するまでに至らなかった。オリゴマー形成あるいは孔形成のいずれの段階にセラミドが関与しているのかを解析する必要がある。昨年度から引き続き、ウエルシュ菌による鶏クロストリジウム・パーフリンゲンス感染症(鶏壊死性腸炎)の病原因子であるNetBの細胞致死活性に影響する感受性細胞側分子の特定を行った。NetBは鶏由来細胞にのみ毒性を発揮するため、NetB感受性細胞である鶏肝癌由来細胞(LMH)の細胞膜分子に対するモノクローナル抗体の作製およびLC-MS解析することにより、NetBの毒性発現に関わる感受性細胞側分子の特定を試みた。LMH細胞膜を免疫したマウス脾臓細胞を用いて常法によりハイブリドーマを作製した。NetBの細胞致死活性を抑制するモノクローナル抗体2株を得た。これらモノクローナル抗体とLMH細胞膜をウエスタンブロッティングにより反応させたところいずれも90 kDa付近に特異的なバンドが検出された。そこで、この分子をNetB細胞致死活性に関連する分子と判断し、外部機関のLC-MS/MSデータベースにより解析を行った。解析の結果、上位にヒットした分子より細胞膜上に存在すると考えられる分子を選別した。選別した分子は、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質大サブユニットおよびニワトリトランスフェリン受容体タンパク質の2分子であった。選択した
KAKENHI-PROJECT-16K08026
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K08026
自治体会計への企業会計的手法の導入の実態調査研究
近年、各自治体への企業会計手法の導入が進んでいるが、その実効性が疑問視される背景を、自治体による会計情報の公開の意義や、公開のインセンティブという観点から考察した。その結果、自治体会計改革の後発事例(他の先駆的自治体の後追い的に改革を行ったもの)は、自治体としての正当性確保のための同型化と解釈でき、先駆的事例では、よくいわれるような財政危機はなく、首長のリーダーシップが大きく影響していたことが明らかとなった近年、各自治体への企業会計手法の導入が進んでいるが、その実効性が疑問視される背景を、自治体による会計情報の公開の意義や、公開のインセンティブという観点から考察した。その結果、自治体会計改革の後発事例(他の先駆的自治体の後追い的に改革を行ったもの)は、自治体としての正当性確保のための同型化と解釈でき、先駆的事例では、よくいわれるような財政危機はなく、首長のリーダーシップが大きく影響していたことが明らかとなった近年、地方自治体の財政改革の一環として,企業会計方式の導入が数々の自治体において検討および実施されてきていることは周知のとおりである。国の内外を問わず、地方自治体が開示する財務情報の利用者として、市民や国民が想定されており、財務報告の目的として公的説明責任(につながる受託責任の明確化)が掲げられている。自治体が公的説明責任をはたすことによって、行政担当者に対する規律づけが期待されているのである。ところが、アメリカのように市民や国民が納税者としての立場を明確に意識して行政サービスの善し悪しに常に高い関心を寄せているような状況がないわが国においては、そのような規律づけが期待通りになされるとは考えにくいといわざるをえない。すなわち、行政担当者によるモラル・ハザードをコントロールする手段として、とりわけモニタリングの手段として自治体の財務報告が想定されているのであるが、わが国には納税者として声を上げるということが通常おこなわれていないために、財務報告がモニタリングのために用いられないという問題点をはらんでいるのである。このような納税者の意識を急激に変革することは容易ではないため、財務報告を用いたインセンティブ契約をおこないモラル・ハザードをコントロールすることを模索するほうがよいと考えられる。たとえば財務報告を用いたインセンティブ契約の例として、行政サービスの成果に連動した報酬制度・昇進制度を設計することがあげられる。総務省によれば,地方自治体による財務報告の目的として,意思決定に有用な情報の提供と公的説明責任とが措定されている。まず意思決定に有用な情報の提供について,第1の利用者として想定されている市民が投票の際に自治体の財務報告にもとづいて意思決定をおこなうという前提に問題なしとしない。まな,納税をもって,市民による資金提供とみなす点にも無理がある。また公的説明責任についても,総務省が想定するような行政コスト計算書では,コスト(インプット)情報を明らかにするにすぎず,説明の責任は果たしているものの受託した資源の効率的な利用についての説明は十分であるとは言い難い。さらには,市民は地方自治体に委託した資金の使途についてほとんど無関心であり,その使途について自治体にクレームをつけるということは通常考えにくく,たんに財務情報を公表するだけではパブリック・ガバナンスは期待できない。上述の問題にもかかわらず,近年,自治体において会計改革が積極的に進められてきている意義は何なのであろうか。この点を考察するのに有効な視点を与えてくれるのが,制度化パースペクティブである。すなわち,企業会計手法の導入は地方自治体にとって正当性の確保のための1つの手段なのである。会計手法を改革することによって,地方自治体は財政再建に積極的な姿勢を示し,健全な組織であると見なされようと努力しているのである。さらに,地方自治体の会計改革は強制的同型化とみなすことができる。多くの報告書や基準は総務省や内閣といった権威から分表されたものであり,地方自治体における会計改革は,これらの報告書や基準によって方向づけられているためである。そして,自治体が参考にすべきモデルとして公表された総務省方式は,企業会計手法の導入という方向性とは裏腹に複式簿記の導入を強制するものではなく,「分離」とみなすことが可能である。自治体会計改革の契機について, 1つの特徴として,自治体の長による強力なリーダーシップがあったことがあげられる。中には,営利企業での勤務経験のある者や,あるいは公認会計士試験の受験をめざした経験のある者が自治体の長となり,自治体会計の改革を強力に指示したという背景が伺える。もう1つ先駆的自治体に共通する特徴として,近年の多くの自治体における会計改革の背景には自治体の財政危機があるといわれているが,先駆的な自治体はむしろ財政の危機的な状況はなく,財政危機の打開が動機とはなっていなかったことがあげられる。また,誰に対する公開なのかという点では,意見が分かれたが,議会あるいは市民一般という意見が比較的多かった。ただし,議会に対する公開であっても市民一般に対する公開であっても,会計情報は多くの資料のなかの1つに過ぎず,会計情報が取り立てて注目されることはないようである。先駆的な自治体において企業会計手法を導入することによって,自治体経営にどのような変化が生じたかという点について,際立った変化を見出すことはできなかった。担当部署の職員は会計改革に積極的であっても,それが他の部署の職員にまで大きな変化を及ぼしたとか,あるいは市民(や県民)の関心をひきつけたといった事例は見られなかった。なかには担当部署の職員のコスト意識の改善に役立っているというところもあった。
KAKENHI-PROJECT-18730293
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18730293
視細胞死の機構の詳細な解明とその阻止
我々はゼブラフィッシュ視細胞変異体ovlを用いて、この変異体における視細胞死がフォトトランスダクションと関連すること、視細胞死のシグナルはトランデューシンの位置でアデニリルシクラーゼと連結し、下流の視細胞死のシグナルに伝播されることを示した。また、ヒトロドプシン変異体モデルを作成し、この系や色素変性モデルマウスにおいても同系が視細胞死に関連していることをしめし、この系が新たな治療ターゲットになることを示した。我々はゼブラフィッシュ視細胞変異体ovlを用いて、この変異体における視細胞死がフォトトランスダクションと関連すること、視細胞死のシグナルはトランデューシンの位置でアデニリルシクラーゼと連結し、下流の視細胞死のシグナルに伝播されることを示した。また、ヒトロドプシン変異体モデルを作成し、この系や色素変性モデルマウスにおいても同系が視細胞死に関連していることをしめし、この系が新たな治療ターゲットになることを示した。計画に基づき我々が開発した視細胞の強制発現系を用いて、ヒトロドプシンの各変異体、Q344X、P23H、G106R、G188R、K296E、T4R、N15S、L88P、S334Xのトランスジェニックゼブラフィッシュを得ている。このうちG106R以下は本邦において現有する網膜色素変性患者に認められる変異である(パーソナルコミュニケーション)これらの変異体の表現型を解析するとその重症度に差はあるものの、基本的には視細胞死を引き起こしていると考えられた。つまり、ヒト網膜色素変性のモデルとして来年度以降の研究に使用できると考えられた。またQ344Xに関しては、視細胞死が光感受性を示すこと、トランスデューシンの発現を抑制すると視細胞死を抑制できるが、ホスホジエステラーゼの発現を阻害しても視細胞死を抑制できないことより、以前より我々が検討してきた変異体ovlと同様の視細胞死のメカニズムが働いていると考えられた。現在、他の変異体でのこの系の関与を検討している。我々は視細胞死に小胞体ストレスが関与しているとの予想の元に小胞体ストレスを生体でモニターできる魚を開発した。これはXBP-1のスプライシングを利用し、小胞体ストレスがかかると上記スプライシングによりVenusの読み枠がずれVenusが発現されるというものである。これと開発したロドプシンQ344X、さらに、ENU誘導し細胞変異体であるovlを掛け合わせたが、残念ながらこれら変異体の視細胞において有意に小胞体ストレスが上昇しているという知見は得られなかった。これは、RT-PCRを用いたSite-Specifcスプライシングのモニターでも同様の結果であった。ヒトロドプシン変異体、Q344X, P23H, G106R, K296E, T4R, N15S, S344Xについて、ラインを得たうえ、その表現型解析を行った。まず、Rh1:EGFPトランスジェニックを掛け合わすことにより、桿体細胞を可視化し、その数を検討した。これにおいて、受精後二週間において視細胞の数は野生型にに比べ有意に減少していた。また、ヒト表現型において重症であるといわれているQ344X, S344Xにおいては他のラインに比して減少率が高く、ヒト表現型を良く再現していると考えられた(Q344Xにて64.9%の減少、p<0.01)。また、この現象はTUNEL解析によってアポトーシスによるものであることを確認している。つまり、これらトランスジェニックは野生型に比してTUNEL陽性細胞が外顆粒層のみで増加していた。また、ヒト野生型ロドプシンのトランスジェニック体ではこのような視細胞の数の減少や、TUNEL陽性細胞の増加は認めなかった。また、Q344Xにおいて、野生型において視細胞死を引き起こさない通常の光刺激を遮断すると、視細胞死は有意に減少した。また、フォトトランスダクションの構成分子であるトランスデューシンを発現抑制すると視細胞死は抑制されたが、次の段階のフォスフォジエステラーゼを発現抑制しても視細胞死は抑制されず、むしろ増強した。したがって、この視細胞死のシグナルがトランスデューシンの位置を通過していることが示された本年度においては昨年度において作成したヒトロドプシン変異体トランスジェニック魚、Q344X,P23H、K296E,T4R,N15S,S344Xについて詳細な表現型解析を行った。これによれば、これらの魚は誕生後早いものでは5日目ごろより視細胞の減少を認め、これはTUNEL解析よりアポトーシスによるものであった。これより、これらのトランスジェニック体はヒト網膜色素変性のモデルとして使用できると考えられる。また、ヒト表現型と同じくQ344X,S344XなどClass Iに属する変異では表現型が深刻で、欧米に多いClass IIに属する。P23Hでは表現型が軽いことが確認できた。また、S344X,Q344XをもちいてTcris薬剤セットをもちいてスクリーニングを行っている。また、これらの魚においては臨床的にも効果が議論されているビタミンA,Eなどの薬剤は視細胞死の阻止に影響を与えなかった。計画書に記載している新たなレポーターについてはロッド細胞に強制発現させたが、残念ながら、容易に検出できる系では検出限界以下でハイスループットスクリーニングには使用できないと判断した。また、これらの強制発現型の開発により、視細胞において容易に外来遺伝子を発現させることが可能となり、この系をもちいて、異所性フォトトランスダクションと視細胞死の関連について検討を行った。
KAKENHI-PROJECT-21592229
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視細胞死の機構の詳細な解明とその阻止
特に本来外節に発現のないアデニルシクラーゼを視細胞において外節に強制発現させることによりアデニルシクラーゼの異所性発現が視細胞死を促進することを証明し、学術雑誌に掲載された。
KAKENHI-PROJECT-21592229
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分子集合体の高次組織と機能の研究とその推進
物質としての最少単位である分子の集合状態に着目して、そこに全く新しい構造・物性・更に反応特性を見出さんとして計画立案し、3ヶ年にわたって実行した特定研究である。その成果は、本特定研究を実行したものとして満足すべき成果をあげ得た。多くのすぐれた業績の中から代表例を選び、各班について列挙すれば下記の通りである。(1)第一班に於ては、(BEDT-TTF)に代表される電子供与体の利用によって、有機超伝導体が確立され、その研究の中心に日本の研究集団を位置づけることが出来た。また、その構造の多様性から取扱いのむつかしいポリアセチレンの配向性向上の研究(液晶利用による)も次々世代に発展することを期待し得る。(2)第二班では、黒燐の層間化合物の作成の成功は特記に値し、また、グラファイト層間化合物(【KC_8】;Tc=0.151K,Rb【C_8】;Tc=0.026K)の正確な超伝導性の発見は、新しい超伝導体理論の出現を導くことが期待されるのみでなく、超低温(mK)化学の道を開くものと期待している。(3)第三班の包接化合物については、シクロデキストリン(CD)を中核とし、その化学修飾分子による各種包接化合物がつくられ、その包接空間の変化に応じて、その機能を調節できる正に分子設計のモデルを組あげ、この分野の世界の中心となる所まで成長させることが出来た。(4)第四班のミセル、累積膜層の研究は目をみはるものがある。中でも逆ミセル中の可溶化水中での酵素の活性を、その高次構造に結びつけて理解している研究、更に化学反応によってつくり出される磁性体(【Fe_3】【O_4】)の超微粒子は、磁性流体の出現を導いている。(5)第五班では理論、実験の合体をめざす本班に於ては、やはり"有機強磁性体への接近"を主張しなくてはならない。そして、その最も実現の可能性の高い研究とされてい。これらはいづれも、これから発展の道を加速されつつ進むと信じる。物質としての最少単位である分子の集合状態に着目して、そこに全く新しい構造・物性・更に反応特性を見出さんとして計画立案し、3ヶ年にわたって実行した特定研究である。その成果は、本特定研究を実行したものとして満足すべき成果をあげ得た。多くのすぐれた業績の中から代表例を選び、各班について列挙すれば下記の通りである。(1)第一班に於ては、(BEDT-TTF)に代表される電子供与体の利用によって、有機超伝導体が確立され、その研究の中心に日本の研究集団を位置づけることが出来た。また、その構造の多様性から取扱いのむつかしいポリアセチレンの配向性向上の研究(液晶利用による)も次々世代に発展することを期待し得る。(2)第二班では、黒燐の層間化合物の作成の成功は特記に値し、また、グラファイト層間化合物(【KC_8】;Tc=0.151K,Rb【C_8】;Tc=0.026K)の正確な超伝導性の発見は、新しい超伝導体理論の出現を導くことが期待されるのみでなく、超低温(mK)化学の道を開くものと期待している。(3)第三班の包接化合物については、シクロデキストリン(CD)を中核とし、その化学修飾分子による各種包接化合物がつくられ、その包接空間の変化に応じて、その機能を調節できる正に分子設計のモデルを組あげ、この分野の世界の中心となる所まで成長させることが出来た。(4)第四班のミセル、累積膜層の研究は目をみはるものがある。中でも逆ミセル中の可溶化水中での酵素の活性を、その高次構造に結びつけて理解している研究、更に化学反応によってつくり出される磁性体(【Fe_3】【O_4】)の超微粒子は、磁性流体の出現を導いている。(5)第五班では理論、実験の合体をめざす本班に於ては、やはり"有機強磁性体への接近"を主張しなくてはならない。そして、その最も実現の可能性の高い研究とされてい。これらはいづれも、これから発展の道を加速されつつ進むと信じる。
KAKENHI-PROJECT-60104006
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アンダーソン型ヘテロポリ酸を用いたMo-V-M複合酸化物触媒の水熱合成と物質形成
アンダーソン型ヘテロポリモリブデン酸および硫酸バナジルを水熱合成して得られる結晶性Mo-V-M-O系複合酸化物触媒としてMo-V-Al-O、Mo-V-Ga-O、Mo-V-Sb-O、Mo-V-Te-Oが得られた。これらの触媒はいずれも針状結晶であるが、粉末X線回折の結果、針状結晶の軸方向には非常に類似した構造である一方、断面の結晶構造がAl,Ga型とSb,Te型の2つに大別できることが分かった。1.種々の試行によりAl,Ga型の構造をもつ触媒ではトリエチルアミン塩酸塩を水熱合成溶液に添加することにより、触媒結晶の結晶化を促進できることが見出された。2.低級アルカンの酸化反応これら各種Mo-V-M-O触媒についてエタンの酸化反応試みたところ、いずれの触媒も高活性を示したが、粉砕処理を施すことによりさらにエタン転化率が増加し、CO_x選択率の減少することが分かった。これは針状結晶断面が低級アルカンの部分酸化に有効な活性面であるためと考えられる。一方Al,Ga型とSb,Te型の2つのグループで比較すると、生成物分布に違いが見られた。反応温度340°においてMo-V-Al-O,Mo-V-Ga-Oでは7080%のエチレン選択率、410%の酢酸選択率を与えたのに対し、Mo-V-Sb-O,Mo-V-Te-Oでは約90%のエチレン選択率を示し、酢酸はほとんど得られなかった。このことから針状結晶断面の構造がエタン酸化反応に大きく影響していることが分かった。またトリエチルアミン塩酸塩の添加効果についてMo-V-Al-O触媒についてエタン酸化反応を行なったところ、更に酢酸選択率、エチレン選択率が向上することが分かり、針状結晶断面の結晶化により部分酸化に適した表面構造が形成されたと考えられる。ヘテロ元素としてAl,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Znなどを含んだAnderson型ヘテロポリ酸とVOSO_4の混合溶液を水熱合成することにより各種Mo-V-M複合酸化物を得た。さらにGa,Sb,Teを酸化物あるいは硫酸塩の形で(NH_4)_6Mo_7O_<24>溶液に反応させ、Anderson型ヘテロポリ酸を経由せずに、VOSO_4の混合溶液を加えて水熱合成し、Mo-V-M複合酸化物を得た。これらはいずれも暗紫色の固体であり、XRD分析により2θ=22°に鋭いピークを持つ結晶であった。ヘテロ元素あるいは添加金属元素Mについて、それ以外にシャープなピークを持つサンプルはまだ得られていないが、Al,Ga,Sb,Teについてはシャープなピークが現れるものを得ることが出来た。Al,Ga系では2θ=4.8,8.9°に特徴的な2本のピーク、そしてSb,Te系では2θ=6.5,7.8,9.0°に特徴的な3本のピークが現れ、ピークパターンとしては2種類に分類することが出来た。そこでMo-V-Al複合酸化物及びMo-V-Sb複合酸化物について、それぞれSEMを用いて分析したところ、いずれも針状結晶であり、これらの針状結晶を細かく見るといずれも更に細い針状結晶を束ねたような構造であることが分かった。これらの相違点としては、Mo-V-Al複合酸化物の針状結晶の側面は比較的凹凸の少ない曲面であるのに対し、Mo-V-Sb複合酸化物では、側面方向に板状結晶が張り出したような構造で、断面としてはかなり凹凸の大きな不定形となっていた。これらのことからMo-V-Al複合酸化物とMo-V-Sb複合酸化物は針状結晶の軸方向には類似した結晶性を持つが、軸に垂直な方向については異なる結晶性を持つと推測される。アンダーソン型ヘテロポリモリブデン酸および硫酸バナジルを水熱合成して得られる結晶性Mo-V-M-O系複合酸化物触媒としてMo-V-Al-O、Mo-V-Ga-O、Mo-V-Sb-O、Mo-V-Te-Oが得られた。これらの触媒はいずれも針状結晶であるが、粉末X線回折の結果、針状結晶の軸方向には非常に類似した構造である一方、断面の結晶構造がAl,Ga型とSb,Te型の2つに大別できることが分かった。1.種々の試行によりAl,Ga型の構造をもつ触媒ではトリエチルアミン塩酸塩を水熱合成溶液に添加することにより、触媒結晶の結晶化を促進できることが見出された。2.低級アルカンの酸化反応これら各種Mo-V-M-O触媒についてエタンの酸化反応試みたところ、いずれの触媒も高活性を示したが、粉砕処理を施すことによりさらにエタン転化率が増加し、CO_x選択率の減少することが分かった。これは針状結晶断面が低級アルカンの部分酸化に有効な活性面であるためと考えられる。一方Al,Ga型とSb,Te型の2つのグループで比較すると、生成物分布に違いが見られた。反応温度340°においてMo-V-Al-O,Mo-V-Ga-Oでは7080%のエチレン選択率、410%の酢酸選択率を与えたのに対し、Mo-V-Sb-O,Mo-V-Te-Oでは約90%のエチレン選択率を示し、酢酸はほとんど得られなかった。このことから針状結晶断面の構造がエタン酸化反応に大きく影響していることが分かった。
KAKENHI-PROJECT-11750679
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11750679
アンダーソン型ヘテロポリ酸を用いたMo-V-M複合酸化物触媒の水熱合成と物質形成
またトリエチルアミン塩酸塩の添加効果についてMo-V-Al-O触媒についてエタン酸化反応を行なったところ、更に酢酸選択率、エチレン選択率が向上することが分かり、針状結晶断面の結晶化により部分酸化に適した表面構造が形成されたと考えられる。
KAKENHI-PROJECT-11750679
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縁起・地誌・俳書をめぐる天狗説話の享受と展開
本年は、これまで行ってきた中世期の天狗説話研究をふまえ、中世から近世へ展開する過渡期へ焦点をあて、ひろく怪異説話の展開に焦点をあてた基礎的研究を行った。愛宕山の寺社縁起とかかわって作られた古浄瑠璃「あたごの本地」本文の注釈を進め、考察を行った。本文は『古浄瑠璃正本集』所収本文を利用した。また戦国期の逸話とともに怪異譚を収録した『義残後覚』を対象とした研究会も発足し、中心的に活動した。天狗説話の受容、展開について、国立民族学博物館『月刊みんぱく』(2018年4月)に文章を発表、京阪神エルマガジン社『関西の神社をめぐる本』(2018年12月)に取材協力した。東アジア恠異学会第120回定例研究会(2018年11月10日)において口頭発表を行った。その他、同志社大学良心館コモンズカフェ(2019年1月16日)において講演を行った。古代、中世の怪異説話について「妖怪・怪異・異界ー中世説話集を事例にー」東アジア恠異学会編『怪異学の地平』(臨川書店、2018年12月)を発表した。また怪異説話と近世期の地誌、俳諧書との関連について「狐火伝承と誹諧」『朱』62(伏見稲荷大社宣揚部、2019年3月)を発表した。怪異説話にもとづいた絵巻の受容、展開について、2018年4月21日に国際日本文化研究センターにおいて、2019年3月6日から8日までチェスター・ビーティー・ライブラリィ(アイルランド、ダブリン)において、『大江山絵巻』その他の調査を行った。その成果として、2019年3月7日にチェスター・ビーティー・ライブラリィにおいて口頭発表を行った。また、「まんが訳酒天童子繪巻」「まんが訳道成寺縁起」の古典監修を担当し、現代語訳、解説を担当した。この成果はKADOKAWA運営のウェブ漫画コンテンツ『ComicWalker』に無料公開され、メディアにも多く取り上げられた。受け入れ機関である京都精華大学堤研究室を中心に研究会を開催し、芸能文化や宗教民族にかかわる様々な知見を得ることができた。またアイルランド・チェスター・ビーティー・ライブラリィへの調査研究など海外に所蔵される絵巻資料を視野に入れたひろい知見から研究を進めた。国際日本文化研究センターによる機関拠点型研究プロジェクト「大衆文化の通時的・国際的研究による新しい日本像の創出」にかかわり、研究成果を一般に公開した。今年度は近世期における天狗説話研究の基礎として、中世との過渡期に注目し、問題点を整理することができた。また天狗説話以外の怪異伝承、説話に注目することで、誹諧や絵巻などに展開する問題意識をひろく持ち、今後の研究計画に大きな指針を持った。地誌、俳諧書を用いた具体的な作業は今後も行う必要があり、次年度以降に継続する。今年度予定していたホノルルアカデミー・オブ・アーツ(アメリカ、ハワイ州)への調査は、日程調整のため実施できなかったため、次年度以降に計画したい。本年は、これまで行ってきた中世期の天狗説話研究をふまえ、中世から近世へ展開する過渡期へ焦点をあて、ひろく怪異説話の展開に焦点をあてた基礎的研究を行った。愛宕山の寺社縁起とかかわって作られた古浄瑠璃「あたごの本地」本文の注釈を進め、考察を行った。本文は『古浄瑠璃正本集』所収本文を利用した。また戦国期の逸話とともに怪異譚を収録した『義残後覚』を対象とした研究会も発足し、中心的に活動した。天狗説話の受容、展開について、国立民族学博物館『月刊みんぱく』(2018年4月)に文章を発表、京阪神エルマガジン社『関西の神社をめぐる本』(2018年12月)に取材協力した。東アジア恠異学会第120回定例研究会(2018年11月10日)において口頭発表を行った。その他、同志社大学良心館コモンズカフェ(2019年1月16日)において講演を行った。古代、中世の怪異説話について「妖怪・怪異・異界ー中世説話集を事例にー」東アジア恠異学会編『怪異学の地平』(臨川書店、2018年12月)を発表した。また怪異説話と近世期の地誌、俳諧書との関連について「狐火伝承と誹諧」『朱』62(伏見稲荷大社宣揚部、2019年3月)を発表した。怪異説話にもとづいた絵巻の受容、展開について、2018年4月21日に国際日本文化研究センターにおいて、2019年3月6日から8日までチェスター・ビーティー・ライブラリィ(アイルランド、ダブリン)において、『大江山絵巻』その他の調査を行った。その成果として、2019年3月7日にチェスター・ビーティー・ライブラリィにおいて口頭発表を行った。また、「まんが訳酒天童子繪巻」「まんが訳道成寺縁起」の古典監修を担当し、現代語訳、解説を担当した。この成果はKADOKAWA運営のウェブ漫画コンテンツ『ComicWalker』に無料公開され、メディアにも多く取り上げられた。受け入れ機関である京都精華大学堤研究室を中心に研究会を開催し、芸能文化や宗教民族にかかわる様々な知見を得ることができた。またアイルランド・チェスター・ビーティー・ライブラリィへの調査研究など海外に所蔵される絵巻資料を視野に入れたひろい知見から研究を進めた。
KAKENHI-PROJECT-18J01514
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J01514
縁起・地誌・俳書をめぐる天狗説話の享受と展開
国際日本文化研究センターによる機関拠点型研究プロジェクト「大衆文化の通時的・国際的研究による新しい日本像の創出」にかかわり、研究成果を一般に公開した。今年度は近世期における天狗説話研究の基礎として、中世との過渡期に注目し、問題点を整理することができた。また天狗説話以外の怪異伝承、説話に注目することで、誹諧や絵巻などに展開する問題意識をひろく持ち、今後の研究計画に大きな指針を持った。地誌、俳諧書を用いた具体的な作業は今後も行う必要があり、次年度以降に継続する。今年度予定していたホノルルアカデミー・オブ・アーツ(アメリカ、ハワイ州)への調査は、日程調整のため実施できなかったため、次年度以降に計画したい。古典監修、現代語訳を担当。
KAKENHI-PROJECT-18J01514
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J01514
現職教員再教育における批判的読解力(及びその指導力)速成のためのカリキュラム開発
本研究の主要な成果は、以下の二点に分けられる。1)上記研究課題に係る教員講習用テキストの作成。これは、教員自身の批判的読解力を訓練するためのものと、生徒の批判的読解力を訓練するためのものとの二種類を準備した。2)研究成果を広く社会に発信するため、研究内容を平易に書き直し、一般書(新書)としてまとめた。(現在、刊行準備中である。)本研究の主要な成果は、以下の二点に分けられる。1)上記研究課題に係る教員講習用テキストの作成。これは、教員自身の批判的読解力を訓練するためのものと、生徒の批判的読解力を訓練するためのものとの二種類を準備した。2)研究成果を広く社会に発信するため、研究内容を平易に書き直し、一般書(新書)としてまとめた。(現在、刊行準備中である。)本研究は、平成19、20年度の2年計画で、現職教員及び教員志望者(主として国語)の批判的読解力(及びその指導力)を速成するための方法を開発し、それにもとづくカリキュラム・教材資料集を作成することを目的とする。具体的手段としては、Informal Logic(非形式論理学)のNegative Approach(否定的方法)を援用し発展させ、主として現職教員再教育の場で、また従として教員養成の場で、(国語)教員に必要な批判的読解力(及びその指導力)を短期間で効率よく育成するための理論・方法として構築する。平成19年度の実績としては、1)アメリカの高等教育でもっとも利用されているDouglas WaltonのInformal Logicでの枠組みを基本とし、非形式論理学の教科書・研究書約70種類を比較検討して、6課程のカリキュラムモデルを暫定的に設定(カリキュラムは教員研修・教員養成用のテキスト〈取捨選択により、10・15・30時間の訓練が可能〉のかたちで具体化する)。2)各課程の理論的構築及び理論を説明するための具体的例文の採取と作成。(理論編の原稿は現在第3課程まで終了)3)研究協力者(現職教員10名)とともに、上記理論の教材化の検討(課程ごとに、「初等1」「初等2」「中等1」「中等2」の4種類の教材と解説書を作成する)。4)勤務校での演習、現職教員向けのサマー・セミナー、放送大学での対面授業で、暫定的に作成した教材を用いて試行的トレーニングを実施。等の成果が得られた。本研究は、平成19、20年度の2年計画で、現職教員及び教員志望者(主として国語)の批判的読解力(及びその指導力)を速成するための方法を開発し、それにもとづくカリキュラム・教材資料集を作成することを目的とする。具体的手段としては、Informal Logic(非形式論理学)のNegative Approach(否定的方法)を援用し発展させ、主として現職教員再教育の場で、また従として教員養成の場で、(国語)教員に必要な批判的読解力(及びその指導力)を短期間で効率よく育成するための理論・方法として構築する。平成20年度の実績としては、1)教員研修用テキストの原稿完成。以下の生徒指導用ワークシートと合わせ、21年度の教員免許状更新講習テキストとして冊子化予定。2)研究協力者(現職教員)による、生徒指導用のためのワークシートと指導者用の解説原稿完成。3)研究成果を社会に発信するため、上記(1)テキストの内容から材料を借り、一般向け図書(新書・光文社・7月刊行予定)の原稿完成。4)上記(2)のワークシートにもとづき、研究協力者の勤務校で実験授業の実施(DVD撮影)。5)上記成果にもとづく、教員免許状更新講習予備講習、各種団体の依頼による講演・講話等の実施。等の成果が得られた。
KAKENHI-PROJECT-19530780
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19530780
新金融取引の認識・測定・開示に関する基礎研究
本研究は、実物経済から金融経済への移行を背景に、先物・オプション・スワップ等の新金融取引を対象として、その認識・測定・開示に関する会計問題の総合的解明と珪論展開を図ろうとするものである。本研究の結果得られた主な知見は、およそ次のとおりである。(1)新金融取引の認識について、新金融取引の多くは未履行契約をなし、会計上の取引とは考えられないというのが従来の会計基準の立均であった。しかしながら、これらの取引は一定の条件のもとで理論的には貸借対照表能力をもつ。(2)新金融取引と時価評価会計について、取引市均の是備・拡充化に伴い、長期的には、「意思決定有用性-時価評価会計」が可能になり、かつ、ますます望ましいものになるかもしれない。(3)新金融取引とヘッジ会計について、「経済的実質主義-意思決定有用性」を強調する立場から、このようなヘッジングの取引事態を一層的確に財務諸表上で反映するヘッジ会計の確立が図られなければならない。企業のヘッジ取引の構造が未だ十分に解明されていない現在、弾力的かつ包括的ヘッジ・モデルとの併用が検討されるべきである。(4)新金融取引と情報開示について、新金融取引に係る開示の中で利害関係者に最も関心ある情報は損失リスクに関する情報である。この均合、リスクそれ自体に係る情報とともに、リスク・コントロールに関する情報が等しく重要になる。以上の研究結果を踏まえ、新金融取引に関する会計基準の制度化にあたっては、漸進的かつプラグマチックな制度変革によって推進すべきことが主張される。本研究は、実物経済から金融経済への移行を背景に、先物・オプション・スワップ等の新金融取引を対象として、その認識・測定・開示に関する会計問題の総合的解明と珪論展開を図ろうとするものである。本研究の結果得られた主な知見は、およそ次のとおりである。(1)新金融取引の認識について、新金融取引の多くは未履行契約をなし、会計上の取引とは考えられないというのが従来の会計基準の立均であった。しかしながら、これらの取引は一定の条件のもとで理論的には貸借対照表能力をもつ。(2)新金融取引と時価評価会計について、取引市均の是備・拡充化に伴い、長期的には、「意思決定有用性-時価評価会計」が可能になり、かつ、ますます望ましいものになるかもしれない。(3)新金融取引とヘッジ会計について、「経済的実質主義-意思決定有用性」を強調する立場から、このようなヘッジングの取引事態を一層的確に財務諸表上で反映するヘッジ会計の確立が図られなければならない。企業のヘッジ取引の構造が未だ十分に解明されていない現在、弾力的かつ包括的ヘッジ・モデルとの併用が検討されるべきである。(4)新金融取引と情報開示について、新金融取引に係る開示の中で利害関係者に最も関心ある情報は損失リスクに関する情報である。この均合、リスクそれ自体に係る情報とともに、リスク・コントロールに関する情報が等しく重要になる。以上の研究結果を踏まえ、新金融取引に関する会計基準の制度化にあたっては、漸進的かつプラグマチックな制度変革によって推進すべきことが主張される。平成5年度においては、新金融取引についての基本的問題点を浮き彫りにするために、広く国内外の関連文献の収集・分析を行った。具体的成果は、次のとおりである。1.新金融取引の代表的取引形態の1つであるスワップ取引を対象として、その認識・測定・開示に係る諸問題の考察を行った。2.新金融取引の開示に関して、特にリスクの観点から概念的フレームワークの構築を行い、新金融取引全般にわたる開示の理論的基礎を提示した。3.新金融商品の会計基準に関して、オーストラリア公開草案第59号「金融商品の会計基準」(1993年3月)を採り上げ、国際会計基準委員会の公開草案第40号(E40)との比較のもとで、その特徴と問題点とを検討した。これらはいずれも当初の課題である。新金融取引に関する理論的基盤の構築に向けての研究成果を示すものであり、平成6年度では、これらの研究成果を踏まえて、オプション取引,複合金融取引,先物・先渡取引等、その範囲を拡充し、内容的に一層深化させていく予定である。平成6年度においては、金融取引における実質優先主義をキ-・コンセプトとしてその理論的展開を図ることを主たる課題としてきた。「複合金融商品の会計」では、負債と資本の2つの特性をもった金融商品について会計上どのように認識し、処理するかの問題に対して、最も古典的な複合金融商品の典型例をなす転換社債に焦点を置き、転換社債の会計方法として3つの代替的方法の特徴と問題点を明示するとともに、いずれの方法を選択するかは取引形態のいずれの側面に焦点を置くかに基礎づけられるべきであり、取引の実態に即した処理方法に焦点づけられるべきことを明らかにした。また,金融資産証券化の会計では、金融資産の証券化取引において、資産の譲渡人と譲受人との間に分割された便益とリスクとを会計上どのように取り扱うべきか、証券化による便益・リスクをいかにして的確に把握し、その経済的実質を会計上で適切に反映するかについて考察を行った。結論的には、証券化のような複雑な取引については、従来のように「オフバランス(売却処理)」か「オンバランス(金融処理)」か二者択一的に把握することには無理があるとの認識を示すことにした。この他にも、新金融取引をめぐる会計問題について解明すべき課題と論点とを整理し、最終年度(平成7年度)の研究課題を提示した。
KAKENHI-PROJECT-05630088
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05630088
新金融取引の認識・測定・開示に関する基礎研究
本研究は、実物経済から金融経済への移行を背景に、先物・オプション・スケップ等の新金融取引を対象として、その認識・測定・開示に関する会計問題の統合的解明と理論展開を図ろうとするものである。本研究の結果得られた主な知見は、およそ次のとおりである。(1)新金融取引の認識について、それらの多くは未励行契約をなし、会計上の取引とは考えてないという従来の会計基準の立場に対して、これらの新金融取引は一定の単庄・負債の認識条件のもとで理論的には認識・計上を行い、したがって、貸借対照応能力をもつこと。(2)新金融取引と時価評価会計について、取引市物の整備・拡充性に伴い、含み格差を明らかにし、取引事態の明瞭表示の観点から、時価評価の導入が可能になり、かつ、一層望ましいこと。(3)新金融取引とヘッジ会計について、ヘッジ取引の事態を一層明確かつ的確に財務報告において反省するためには、ヘッジ会計の導入が不可欠になり、そのための取引の構造の解明と会計基準の整備が急物であること。(4)新金融取引と情報開示について、とくに、デリバティブの控失リスクに関する開示とともにリスク・コントロールに関する記述的情報の拡充性が強調させること。以上の研究成果を踏まえ、新金融取引の認識・測定・開示のための会計基準の所存的か、漸進的かつプラグマチックな方法で推進すべきと思われる。
KAKENHI-PROJECT-05630088
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静的データ依存関係に基づく命令ステアリング方式に関する研究
現在のマイクロプロセッサは,複数の命令を並列実行することで,高速処理を実現している.本研究では,プログラムを機械語に翻訳する際に,実行速度に重要な影響を与える命令を予め抽出(静的データ依存の解析)しておき,実際にプログラムを実行するときには,簡単な処理(命令ステアリング)だけで済むようにすることで,従来方式よりも高効率な処理を実現する.研究期間内に行なった評価では,静的ステアリングでも従来方式と変わらない性能が得られることを示した.現在のマイクロプロセッサは,複数の命令を並列実行することで,高速処理を実現している.本研究では,プログラムを機械語に翻訳する際に,実行速度に重要な影響を与える命令を予め抽出(静的データ依存の解析)しておき,実際にプログラムを実行するときには,簡単な処理(命令ステアリング)だけで済むようにすることで,従来方式よりも高効率な処理を実現する.研究期間内に行なった評価では,静的ステアリングでも従来方式と変わらない性能が得られることを示した.本研究では,コンパイル時の静的解析結果を実行時の動的命令ステアリングに活用することを考えている.今年度は,静的データ依存解析を行なうために,コンパイルされた命令コードを基本ブロック毎に解析するポストコンパイルツールを開発した.このツールは,静的なクリティカルパス予測に基づく付加情報を命令コード中に埋め込むことができる.具体的には,命令が基本ブロック内でのクリティカルパスに含まれているかどうかの情報を各命令コードに付加するものである.付加情報を命令ステアリングに利用できるように,SimpleScalarベースのクラスタ化プロセッサシミュレータを改良した.このシミュレータを用いて,静的データ依存解析に基づく命令ステアリング手法の評価を行った,代表的な動的命令ステアリング手法であるAdvanced RMBS (ARMBS)との比較から,静的データ依存解析による命令ステアリング方式は,ほぼ同等のIPCを達成できることを示した.今回の評価に用いた静的データ依存解析によるステアリング方式は,極めて単純なものであるにもかかわらず,ベンチマークによってはARMBSよりも高いIPCを達成している.これは,静的データ依存解析が命令ステアリングに有効であることを示しており,方式のさらなる改良によりクラスタ化プロセッサの性能を10%程度改善できることを意味している,静的データ解析により,動的ステアリング機構のハードウェアを大幅に削減することも可能になることから,今後の低電力プロセッサヘの応用も期待できる.本研究では,コンパイル時に静的に解析したクリティカルパス情報を用いて,実行時の命令ステアリングを効率化しようとしている.本年度の研究では,静的クリティカルパス情報を用いて動的にステアリングを行なう方式について,通信回数および演算器待ちサイクル数の観点から考察を行なった。静的方式でも,クリティカルパスを指標とすることで,通信回数と演算器の負荷均衡のトレードオフ点をかなりの精度で見つけられることが示された.昨年度までの研究で,クリティカルパスに含まれない命令の取り扱いが問題となっていたが,クリティカルパス内の命令と同一演算器を使う場合を除く戦略と組み合わせることで,限定的ながら,性能を改善できる場合があることが分かった.また,動的情報を全く使用せず,コンパイル時にステアリングまで行なってしまう完全静的方式についての評価を行なった.基本的に動的方式に劣るものの,アプリケーションによっては,動的方式に迫るIPCを達成できる場合や,静的+動的方式に勝る性能を発揮する場合も見出された.コンパイル時に判断できる材料のうち,ごく限られた部分だけを用いていることから,うまく材料を組み合わせていけば,完全静的ステアリング方式でも,動的方式に匹敵する性能を発揮できる可能性があり,スーパースカラ方式に代わる新しいプロセッサ構成方式への道が見えてきている.マルチコアプロセッサ向けのシミュレーション環境として,SimpleScalarの替わりにValgrindを使用することを検討した.Valgrindは,SimpleScalarよりも100倍以上高速なシミュレーションを可能にする一方で,パラメタ可変範囲が狭く,これ以上の評価には,他の方式が必要となることが判明した.本研究では,コンパイル時に静的に解析したクリティカルパス情報を用いて,実行時の命令ステアリングを効率化しようとしている。昨年度までの研究では,動的情報を全く使用せず,コンパイル時にステアリングまで行なってしまう完全静的方式についての評価を行なっていた.動的情報と静的情報を組み合わせたハイブリッド方式と完全静的方式の比較を行なうためには,マルチコアプロセッサの評価環境が必要となる.本年度の研究では,SimpleScalarやValgrindの代わりにSimicsシミュレータを基盤とした性能評価環境の整備を行なった.Simicsシミュレータは,仮想マシンを組み合わせて,マルチコアプロセッサの評価環境を構築できることが最大の特徴である.現在,Simicsの実行環境が整い,評価を開始したところである.一方で,マルチコア化されたプロセッサの応用として,コンピュータグラフィクスのレイトレーシング法の高速化について,研究論文をまとめた.従来は,光線を角錐で,物体を直方体でグループ化する手法が一般的だったが,この高速化手法では,光線を平面で,物体を球体でグループ化する.これにより,各グループをマルチコアの各コアに割り当て,適切にスケジューリングすることで高速化を実現することができる.物体と光線との交差判定アルゴリズムにも工夫を凝らし,準実時間でのレイトレーシング画像生成が可能になることを示した.今後,コンパイラの改良により,ユーザによるアプリケーションの手直しなしに,計算の高速化が可能になると考えている.
KAKENHI-PROJECT-20500046
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ヘリコバクター・ピロリにおける胃粘膜上皮細胞増殖因子の探究
【研究の目的】【研究実施計画】3.蛍光タンパク発現ベクターによるCagYの細胞内発現と局在の検討。【研究成果】H. pylori野生株感染で著しく認められたAGS細胞の伸長形態変化は、ΔcagY感染では認められなかったのに対して、ΔcagA感染では、弱いながらも有意な形態変化が確認され、伸長形態変化誘導にCagYの関与が示唆された。また、菌体内CagA免疫染色にて、ΔcagY株におけるCagA分子量に差異があることを再現性持って確認した。これらのことから菌体内のCagA分子量はCagYタンパクに依存することが示唆され、CagYは病原因子CagAに働きかける重要な役割を持つタンパク質としての新しい知見となる成果が得られた。一方、CagYの細胞内発現と局在を検討するために蛍光タンパク発現ベクターへの導入を繰り返し試みたが発現には至らなかった。本検討からCagYは病原因子CagAとの相互関係を有する重要な因子である可能性が示唆された。【研究の目的】【研究実施計画】3.蛍光タンパク発現ベクターによるCagYの細胞内発現と局在の検討。【研究成果】H. pylori野生株感染で著しく認められたAGS細胞の伸長形態変化は、ΔcagY感染では認められなかったのに対して、ΔcagA感染では、弱いながらも有意な形態変化が確認され、伸長形態変化誘導にCagYの関与が示唆された。また、菌体内CagA免疫染色にて、ΔcagY株におけるCagA分子量に差異があることを再現性持って確認した。これらのことから菌体内のCagA分子量はCagYタンパクに依存することが示唆され、CagYは病原因子CagAに働きかける重要な役割を持つタンパク質としての新しい知見となる成果が得られた。一方、CagYの細胞内発現と局在を検討するために蛍光タンパク発現ベクターへの導入を繰り返し試みたが発現には至らなかった。本検討からCagYは病原因子CagAとの相互関係を有する重要な因子である可能性が示唆された。【目的】本研究では、H.pyloriの外来性遺伝子群cagPAIにコードされる病原因子CagAと、それらの輸送に関わるIV型分泌装置構成タンパク質CagYの役割に焦点を絞り、胃粘膜上皮細胞増殖因子の探究を目的とし、細胞の形質的・生化学的変化の確認を行った。【方法】液体培養2、6、12及び18時間後のH.pylori野生株、cagYノックアウト変異株(ΔcagY)、cagAノックアウト変異株(ΔcagA)を用いて、抗生物質(-)を16及び18時間、FCS(-)を2、5、6及び16時間に条件を変えて培養したヒト胃上皮細胞由来AGS細胞へ感染させ、細胞の形態変化を検討した。また、それぞれの菌体CagAを免疫染色し、定性的解析を行った。【結果】いずれの条件の感染実験でも、野生株感染のAGS細胞に伸長形態変化が認められた。中でも、18時間培養の野生株を抗生物質(-)18時間・FCS(-)2時間培地で培養した細胞に感染させると、46時間後に細胞の著しい伸長形態変化(ハミングバード様)が確認できた。しかし、同じ条件でのΔcagY感染では、細胞のハミングバードは観察されず未感染コントロール細胞との違いは確認できなかった。ところが、ΔcagA感染では、一部の細胞に伸長形態変化が確認できた。他方、野性株、ΔcagY、ΔcagAの菌体内CagA免疫染色像から、ΔcagYのCagAに低分子化が認められている。【結論】IV型分泌機構の構成タンパク質CagYをノックアウトしたΔcagY感染実験でAGS細胞の有意な形態変化がないにもかかわらず、病原性毒素CagAのノックアウト株・ΔcagAで、弱いながらも有意な形態変化が観察されたことは、CagYの新たな機能を解明する上で重要な知見が得られた。また、ΔcagYでCagAの低分子化が認められたことから、CagYの新機能解明の手がかりが得られた。【研究の目的】本研究は、Helicobacter pylori(ピロリ菌)の外来性遺伝子群cagPAIにコードされる病原因子CagAと、それらの輸送に関わるIV型分泌装置構成タンパク質CagYの役割に焦点を絞り、胃粘膜上皮細胞増殖因子を探究するため、前年度の研究によりcagY遺伝子ノックアウト変異株(ΔcagY)でCagAタンパク(CagA)の低分子化が示唆されたことから、本年度はCagAの低分子化について再確認をするとともに、CagYタンパク(CagY)の細胞内発現と局在の検討を目的とした。【研究実施計画】1.CagAの低分子化についての再確認をする。2.蛍光タンパク発現ベクターによるCagYの細胞内発現と局在を検討する。【研究成果】CagAの低分子化について再確認をするために作製を試みた他の臨床分離株のΔcagYΔcagAは形質転換体作製途中で目的外の遺伝子変異が入ってしまい、完全な変異株の作製には至らなかった。そこで、既存の野生株とそのΔcagY、ΔcagAについて、DNA鑑定などで応用され複数のプライマーによって確認可能なRAPD-PCR法を試みた。
KAKENHI-PROJECT-18590673
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18590673
ヘリコバクター・ピロリにおける胃粘膜上皮細胞増殖因子の探究
その結果、同株の変異体と確認でき、さらにそれぞれのCagA免疫染色像から、再度、CagAに低分子化現象が認められた。これらのことからCagAの分子量はCagYタンパクに依存することが示唆され、CagYは病原因子CagAに働きかける重要な役割を持つタンパク質としての新しい知見となる成果が得られた。一方、CagYの細胞内発現と局在を検討するために蛍光タンパク発現ベクターへの導入を繰り返し試みたが発現には至らなかった。今後、過去の遺伝子解析データを含む本研究結果をもとに抗CagY抗体を作製し、ピロリ菌感染後のAGS細胞におけるCagA・CagYの局在を確認し、胃粘膜上皮細胞増殖因子としての関連について考察していきたいと考える。
KAKENHI-PROJECT-18590673
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18590673
イオンチャネルと細胞の代謝
イオンチャネルの開閉については,従来主として膜電位依存性および伝達物質による制御の面から研究が進められて来たが,チャネル開閉機構が細胞内Ca^<2+>の影響を受けることが明らかにされ,更にATPおよびH^+の作用を受けることが明らかにされるに到って,チャネルの機能と細胞の代謝状態との関係を解明する途が開けた.本研究では,胚細胞から神経細胞にいたる種々の細胞についてチャネルの性質を詳しく調べる一方,実験方法の開発も行われ,数々の新知見が得られた.研究進行の過程において研究会を2度開催し,班員間の情報交換の場とすると共に,この分野に関心を持つ研究者にも広く参加を呼びかけ,研究者層の拡大をも図った.この研究において得られた主な知見および実験方法は次の通りである.単離した心筋細胞の中央部にオイル間隙を作り、細胞の一部を切断して細胞内潅流を行うと共に、膜電位固定をも行う方法を確立した。この方法によって細胞内液の組成を迅速に変えることが可能となったので、今後の発展が期待される。Ca依存性Kチャネルについては、Fura2の蛍光を指標として細胞内Ca^<2+>濃度を測定する方法をパッチクランプ法と併用することにより精細な研究が進められ、Ca依存性Kチャネルが3種類に分類されうることが明らかにされた。細胞内Ca^<2+>濃度とCl電流との関係についても注目すべき結果が得られた。即ち、イカ巨大神経線維において細胞内Ca^<2+>濃度を10^<-10>M程度まで下げると、Cl^-透過性が増大し、カエル後根神経節ニュ-ロンではGABAによって誘発されるCl^-電流が細胞内Ca^2+D1濃度の上昇によって抑制されることが見出された。また、マウス膵島β細胞では、細胞内Ca^2+濃度低下の際に見られる脱分極時には主としてCl^-が内向き電流を運んでいることが明らかとなった。神経系の分化・増殖の面でも、胚植物半球前方割球がNaチャネルを誘導することが証明された。イオンチャネルの開閉については,従来主として膜電位依存性および伝達物質による制御の面から研究が進められて来たが,チャネル開閉機構が細胞内Ca^<2+>の影響を受けることが明らかにされ,更にATPおよびH^+の作用を受けることが明らかにされるに到って,チャネルの機能と細胞の代謝状態との関係を解明する途が開けた.本研究では,胚細胞から神経細胞にいたる種々の細胞についてチャネルの性質を詳しく調べる一方,実験方法の開発も行われ,数々の新知見が得られた.研究進行の過程において研究会を2度開催し,班員間の情報交換の場とすると共に,この分野に関心を持つ研究者にも広く参加を呼びかけ,研究者層の拡大をも図った.この研究において得られた主な知見および実験方法は次の通りである.単離した心筋細胞の中央部にオイル間隙を作り、細胞の一部を切断して細胞内潅流を行うと共に、膜電位固定をも行う方法を確立した。この方法によって細胞内液の組成を迅速に変えることが可能となったので、今後の発展が期待される。Ca依存性Kチャネルについては、Fura2の蛍光を指標として細胞内Ca^<2+>濃度を測定する方法をパッチクランプ法と併用することにより精細な研究が進められ、Ca依存性Kチャネルが3種類に分類されうることが明らかにされた。細胞内Ca^<2+>濃度とCl電流との関係についても注目すべき結果が得られた。即ち、イカ巨大神経線維において細胞内Ca^<2+>濃度を10^<-10>M程度まで下げると、Cl^-透過性が増大し、カエル後根神経節ニュ-ロンではGABAによって誘発されるCl^-電流が細胞内Ca^2+D1濃度の上昇によって抑制されることが見出された。また、マウス膵島β細胞では、細胞内Ca^2+濃度低下の際に見られる脱分極時には主としてCl^-が内向き電流を運んでいることが明らかとなった。神経系の分化・増殖の面でも、胚植物半球前方割球がNaチャネルを誘導することが証明された。昭和61年8月28日から3日間にわたり大津市に於て班会議を開催した。この班会議での報告の概要は次の通りである。1.イオンチャネル開閉の分子機構に関して:口径の大きいマイクロピペットを用いる新らしいパッチクランプ法(井上),ゲート機構に関係する活性物質の結合部位間に負の協同現象が見られること(瀬山),チャネル蛋白分子のコンフォーメーションの変化は旋光分散の変化として捉えられること(渡辺),P物質はシナプス前線維に作用して活動電位発生を介しないグルタミン酸放出を起すこと(竹内),イセエビ歩脚神経筋接合部ではグルタミン酸はシナプス前線維の【K^+】透過性を上昇させ、この作用はGTP結合蛋白を介するものであること(川合),家兎および蛙について、それぞれ交感神経節細胞のムスカリン性受容体は多様なイオンチャネルを支配していること(小林,久場)が報告された。また更に副交感神経節細胞ではアドレナリンがNa/K輸送の制御に関与している可能性が示された(赤須)。2.イオンチャネルの機能に及ぼす細胞内【Ca^(2+)】
KAKENHI-PROJECT-61304031
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61304031
イオンチャネルと細胞の代謝
ならびに細胞内代謝産物の影響に関して:イカ巨大神経線維では細胞内【Ca^(2+)】がNaチャネルもKチャネルも閉塞すること(山岸),心筋の内向き整流電流はゲート機構を有するチャネルを流れ、このチャネルは細胞内【Mg^(2+)】によって閉塞される(野間),モルモット盲腸紐平滑筋の【Ca^(2+)】感受性Kチャネルでは【K^+】と【Na^+】との間に干渉が見られ(富田)、膵β細胞では陽イオンを互に殆んど区別しないイオンチャネルが存在すること(北里)が報告された。3.チャネル蛋白の細胞内輸送に関して:ホヤ4細胞胚のNaチャネルの分化はアクチノマイシンDで抑制される(高橋),また特定の伝達物質に感受性を持つ細胞のみを選択的に取除く方法(福田)が報告された。
KAKENHI-PROJECT-61304031
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61304031
「保護する責任」と体制転換の緊張関係-既存政府の国際的正統性の観点から-
保護する責任と体制転換の緊張関係を既存政府の正統性の観点から考察するという本研究の大きな問題意識に基づき、2018年8月、「保護する責任と体制転換のジレンマに関する一考察ーリビア紛争におけるカダフィ政権の政府性をめぐってー」と題する論文を『国際法外交雑誌』第117巻第2号、135頁-163頁に公表した。2018年11月10日、京都大学にて開催された国際法研究会において、「シリア紛争初期・中期におけるアサド政権の政府性ー重大な人権侵害を行う既存政府の実効性及び正統性喪失の意味合いー」と題する報告を行った。本報告に対して研究会の先生方からいただいた根本的なコメントや質問は、その後の研究を進める上で大変有益なものであった。そして、本報告に対するこれらのコメントや質問を踏まえて、とくにリビア紛争とシリア紛争の比較検討という観点から、「政府承認論の最近の展開ー「シリア人民の正統な代表」としての「シリア国民連合」の承認の意味合いー」と題する論文を執筆した。本論文は、2019年9月に、『安藤仁介先生追悼論文集』(仮称)に掲載される予定である。現在は、ベネズエラ紛争における政府承認など、関連する近年の実行に関する検討を始めるために、資料を収集している段階である。また、保護する責任と体制転換のジレンマをめぐっては、常任理事国の対立が依然として大きく、度々拒否権が投じられている。この点に着目し、重大な人権侵害が生じている状況での拒否権行使のあり方、行使抑制の基準も模索していきたい。本研究の着想に至った「アラブの春」における体制転換の実行のなかでも、リビア紛争とシリア紛争についてそれぞれ論文を執筆することができた。今後も、関連する実行を丹念に分析していきたい。ベネズエラをはじめ政府承認に関する近年の実行を検討することによって、保護する責任と体制転換のジレンマの意味合いを明らかにしていきたい。また、2017年11月にイギリスで報告した英語のペーパーを加筆修正し、積極的に海外のジャーナルに投稿していきたい。保護する責任と体制転換の緊張関係を既存政府の正統性の観点から考察するという本研究の大きな問題意識に基づき、2018年8月、「保護する責任と体制転換のジレンマに関する一考察ーリビア紛争におけるカダフィ政権の政府性をめぐってー」と題する論文を『国際法外交雑誌』第117巻第2号、135頁-163頁に公表した。2018年11月10日、京都大学にて開催された国際法研究会において、「シリア紛争初期・中期におけるアサド政権の政府性ー重大な人権侵害を行う既存政府の実効性及び正統性喪失の意味合いー」と題する報告を行った。本報告に対して研究会の先生方からいただいた根本的なコメントや質問は、その後の研究を進める上で大変有益なものであった。そして、本報告に対するこれらのコメントや質問を踏まえて、とくにリビア紛争とシリア紛争の比較検討という観点から、「政府承認論の最近の展開ー「シリア人民の正統な代表」としての「シリア国民連合」の承認の意味合いー」と題する論文を執筆した。本論文は、2019年9月に、『安藤仁介先生追悼論文集』(仮称)に掲載される予定である。現在は、ベネズエラ紛争における政府承認など、関連する近年の実行に関する検討を始めるために、資料を収集している段階である。また、保護する責任と体制転換のジレンマをめぐっては、常任理事国の対立が依然として大きく、度々拒否権が投じられている。この点に着目し、重大な人権侵害が生じている状況での拒否権行使のあり方、行使抑制の基準も模索していきたい。本研究の着想に至った「アラブの春」における体制転換の実行のなかでも、リビア紛争とシリア紛争についてそれぞれ論文を執筆することができた。今後も、関連する実行を丹念に分析していきたい。ベネズエラをはじめ政府承認に関する近年の実行を検討することによって、保護する責任と体制転換のジレンマの意味合いを明らかにしていきたい。また、2017年11月にイギリスで報告した英語のペーパーを加筆修正し、積極的に海外のジャーナルに投稿していきたい。本年度は、安藤仁介先生追悼論文集に掲載予定のシリアに関する論文の執筆に集中していたために、国連や各国の公文書館に赴き、資料を収集する時間を取ることが出来なかった。次年度は、関連する実行の1次資料を収集するために、アメリカ、イギリスなどに赴く際に、相当額の旅費が必要で有ると考えている。
KAKENHI-PROJECT-18K12648
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K12648
ガンマ線領域での磁気光学効果測定と金属物性への応用
メスバウアー分光は原子核のガンマ線による無反跳共鳴吸収の観測を行うものであり、その測定から原子核のエネルギー準位を、例えば、最も典型的なメスバウアー共鳴核である^<57>Feの場合は10^<-9>eVのオーダーで極めて精密に超分解能で測定することができる。従って、10-7eVのオーダーである電子系と核との超微細相互作用の詳細を調べることができ、電子系の情報すなわち核をプローブとした物質の微視的な電子状態を調べることがこの方法を用いて行うことができる。特に、局所磁性の測定が超微細磁場から可能であり、高温酸化物超伝導体や準結晶、金属人工格子、ナノメートルスケールの金属微粒子などの新規な物質の物性、特にそれらの示す磁気的性質を明らかにすることができた。さらにメスバウアー分光は物質中での核準位を正確に測定するため、標準線源と標準吸収体の中間にガンマ線を透過させる透過体を配置させ、その屈折率を時間的に変化させ、ガンマ線の位相を時間的に変化させれば、その位相の時間変化は正確にガンマ線のエネルギー変調として観測することができる。この場合は正確なガンマ線の周波数測定のために縮重した核からの非偏光ガンマ線を線源とし吸収体としても縮重した核を用いるが、磁気双極子相互作用で縮重の解けた核から放射されるガンマ線はその磁場と伝播の方向に依存して偏光している。従って、これらの偏光ガンマ線源を用いれば逆に対象物質の磁気構造や伝播過程での偏光面の回転、すなわち、ファラデー回転などの測定を行うことができ、可視光の波長領域で数多く行なわれている光学測定を金属・合金薄膜について遂行することができる。これらのことから、本研究では位相変調メスバウアー分光や偏光ガンマ線源を用いた研究、さらに直線偏光である放射光を用いた核共鳴散乱などを行い、金属・合金中を伝播する電磁波の応答から金属物性を調べることが可能になった。メスバウアー分光は原子核のガンマ線による無反跳共鳴吸収の観測を行うものであり、その測定から原子核のエネルギー準位を、例えば、最も典型的なメスバウアー共鳴核である^<57>Feの場合は10^<-9>eVのオーダーで極めて精密に超分解能で測定することができる。従って、10-7eVのオーダーである電子系と核との超微細相互作用の詳細を調べることができ、電子系の情報すなわち核をプローブとした物質の微視的な電子状態を調べることがこの方法を用いて行うことができる。特に、局所磁性の測定が超微細磁場から可能であり、高温酸化物超伝導体や準結晶、金属人工格子、ナノメートルスケールの金属微粒子などの新規な物質の物性、特にそれらの示す磁気的性質を明らかにすることができた。さらにメスバウアー分光は物質中での核準位を正確に測定するため、標準線源と標準吸収体の中間にガンマ線を透過させる透過体を配置させ、その屈折率を時間的に変化させ、ガンマ線の位相を時間的に変化させれば、その位相の時間変化は正確にガンマ線のエネルギー変調として観測することができる。この場合は正確なガンマ線の周波数測定のために縮重した核からの非偏光ガンマ線を線源とし吸収体としても縮重した核を用いるが、磁気双極子相互作用で縮重の解けた核から放射されるガンマ線はその磁場と伝播の方向に依存して偏光している。従って、これらの偏光ガンマ線源を用いれば逆に対象物質の磁気構造や伝播過程での偏光面の回転、すなわち、ファラデー回転などの測定を行うことができ、可視光の波長領域で数多く行なわれている光学測定を金属・合金薄膜について遂行することができる。これらのことから、本研究では位相変調メスバウアー分光や偏光ガンマ線源を用いた研究、さらに直線偏光である放射光を用いた核共鳴散乱などを行い、金属・合金中を伝播する電磁波の応答から金属物性を調べることが可能になった。本研究の目的は超高真空スパッタ装置を用いて金属人工格子磁性体や非平衡合金磁性体膜を作製し、それらの微視的な金属物性を核物性研究手段の一つとしてよく知られているメスバウアー分光法を従来の方法とは異なった新しい手法から明らかにすることにある。金属人工格子やナノメートルスケールの組織を有した新しい金属・合金薄膜について直線偏光あるいは円偏光ガンマ線源を用いて行い、物質との応答、即ち、ガンマ線領域での磁気光学効果を測定しその応用を計る。具体的な目的事項としては・超高真空スパッタ装置を用いた金属人工格子磁性体や非平衡合金磁性体膜の作製・偏光γ線源の調整・直線偏光γ線源による磁性体磁気構造の決定・円偏光γ線源による超微細磁場の符号決定・ファラデー効果及び磁気2重反射の測定と応用・偏光γ線源を用いた内部転換電子メスバウアー分光・放射光をガンマ線源とした磁気光学効果の測定等を予定している。本年度は超高真空スパッタ装置の立ち上げと中古品ではあるが超高真空電子ビーム蒸着装置の立ち上げを行った。超高真空電子ビーム装置ではFe/Hf金属人工格子の作製を行い、その磁気的性質を測定した。超高真空スパッタ装置を用いては窒素ガス雰囲気中での成膜から新しいFeN膜を作製することができ、その構造及び磁気的性質など物性をX線回折、SQUID磁化測定及びメスバウアー分光測定から探索中である。
KAKENHI-PROJECT-09305042
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ガンマ線領域での磁気光学効果測定と金属物性への応用
さらに液体急冷Nd-Fe-B-X合金の構造及び磁気的性質をSQUID磁化測定及びメスバウアー分光測定から明らかにした。さらにアモルファスCoFeSiB合金膜の核共鳴前方散乱実験をSPring-8BL09XUビームラインで成功さすことができ、放射光の直線偏光を用いた測定を行った。超高真空スパッタ装置を用いて金属人工格子磁性体や非平衡合金磁性体膜を作製し、それらの微視的な金属物性を核物性研究手段の一つとしてよく知られているメスバウアー分光法を従来の方法とは異なった新しい手法、すなわち直線偏光あるいは円偏光ガンマ線源を用いて行い、物質との応答、即ち、ガンマ線領域での磁気光学効果を測定しその応用を計ることを目的として本研究課題を開始した。具体的には、偏光γ線源の調整・直線偏光γ線源による磁性体磁気構造の決定・円偏光γ線源による超微細磁場の符号決定・ファラデー効果及び磁気2重反射の測定と応用・偏光γ線源を用いた内部転換電子メスバウアー分光・放射光をガンマ線源とした磁気光学効果の測定等を目的としているが、本年度は前年度に引き続き以下の項目を遂行した。(1)超高真空スパッタ装置を用いた磁性薄膜FeNの作製、超高真空電子ビーム蒸着法を用いてFe/Hf金属人工格子の作製(2)偏光ガンマ線源の調整、強磁性体であるα-Fe中にドープされた25mCi^<57>Co線源をアイソトープ協会より購入し永久磁石を装着した線源ホルダーを用いて偏光ガンマ線源とした。同じように標準吸収体であるα-Fe膜を永久磁石を用いて磁化した標準試料ホルダーも作製しこのホルダーは線源磁化と吸収体であるα-Fe磁化の相対角度を任意に変えれるようにした。本研究は、超高真空スパッタ装置を用いて金属人工格子磁性体や非平衡合金磁性体膜を作製し、それらの微視的な金属物性を核物性研究手段の一つとしてよく知られているメスバウア一分光法を従来の方法とは異なった新しい手法から明らかにすることにある。金属人工格子やナノメートルスケールの組織を有した新しい金属・合金薄膜について直線偏光あるいは円偏光ガンマ線源を用いて行い、物質との応答、即ち、ガンマ線領域での磁気光学効果を測定しその応用を計り、超高真空スパッタ装置を用いた金属人工格子磁性体や非平衡合金磁性体膜の作製・偏光γ線源の調整・直線偏光γ線源による磁性体磁気構造の決定・円偏光γ線源による超微細磁場の符号決定・ファラデー効果及び磁気2重反射の測定と応用・偏光γ線源を用いた内部転換電子メスバウアー分光・放射光をガンマ線源とした磁気光学効果の測定等を予定して研究を遂行し、研究課題は以下の項目について進行中である。・超高真空スパッタ装置を用いた磁性薄膜の作製・偏光γ線源の調整・直線偏光γ線による磁性体磁気構造の決定・ファラデー効果および磁気2重反射の測定偏光γ線による測定は継続中であるが、購入したヘリコン・スパッタ装置を用いて新しいFe-N薄膜の作製に成功し、その磁性を測定した。成膜条件の詳細を調べ基板温度・Ar/N2ガス分圧比などが大きく影響することが判明した。さらにペロブスカイト型鉄酸化物に注目し7Tまでの強磁場下メスバウアー分光測定を行い、Sr_3Fe_2O_7やSr_<2/3>La_<1/3>FeO_3などのスピン構造を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-09305042
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リラクサ-の基礎機能に関する共同研究
鉛を含むペロブスカイト酸化物のBサイトを、価数の異なる2種類の原子で置き換えた構造Pb(B'B")03をもつ誘電体は、特異な誘電的性質を示す。誘電率は非常に大きくしかもプロードで。低周波において特徴的な分散を示す。この系は特徴的な緩和過程に名をとって、リラクサ-と呼ばれている。小型積層コンデンサ、圧電素子などへの応用に熱い目が注がれている。B',B"の組み合わせによって種類は沢山あるが、代表的なものはPMNと呼ばれているPb(Mg1/3Nb2/3)03である。PMNセラミックスを用いた中性子線回折とそのRietveld解析(RIETAN-94)を行った。実験は原子力研究所JRR3号炉T1-3施設を用いた。解析の結果は次のとおり。(1)Pb原子はペロブスカイト構造の理想的なAサイトから大きくくずれ球面上に分布し、一方O原子は{100}面からシフトしてリング上に分布する不規則構造をとる。(2)低温になるにつれて、この立方晶不規則構造の中に、{111}方向に原子がシフトした極性菱面体相が発達する。しかし10Kにおいても菱面体相は全体の26%を占めるに過ぎない。(3)この事実は、PMN焼結体からの光第2高調波発生からも確認された。この場合には、セラミックス特有の粒界による散乱で第2高調波は非干渉的となり、強度は第2高調波を発生する極性領域の体積に比例する。(4)PMNに電場を印加することによって、結晶全体を強誘電相することができる。しかしこの現象は、試料の履歴に強く依存する。電場を印加しないで試料を冷却する(ZFC)場合、低温で電場を印加しそのまま温度をあげる(FH/ZFC)場合、電場を加えて温度を下降させる(FC)場合、電場を0にし温度を上昇させる(ZFH/FC)場合では複屈折の挙動は著しく変化する。これはスピングラスに見られる現象と類似している。さらに温度一定にして、電場を印加して複屈折の時間変化をみる。低温では非常に長い時間をかけて複屈折が上昇していく過程が見られた。鉛を含むペロブスカイト酸化物のBサイトを、価数の異なる2種類の原子で置き換えた構造Pb(B'B")03をもつ誘電体は、特異な誘電的性質を示す。誘電率は非常に大きくしかもプロードで。低周波において特徴的な分散を示す。この系は特徴的な緩和過程に名をとって、リラクサ-と呼ばれている。小型積層コンデンサ、圧電素子などへの応用に熱い目が注がれている。B',B"の組み合わせによって種類は沢山あるが、代表的なものはPMNと呼ばれているPb(Mg1/3Nb2/3)03である。PMNセラミックスを用いた中性子線回折とそのRietveld解析(RIETAN-94)を行った。実験は原子力研究所JRR3号炉T1-3施設を用いた。解析の結果は次のとおり。(1)Pb原子はペロブスカイト構造の理想的なAサイトから大きくくずれ球面上に分布し、一方O原子は{100}面からシフトしてリング上に分布する不規則構造をとる。(2)低温になるにつれて、この立方晶不規則構造の中に、{111}方向に原子がシフトした極性菱面体相が発達する。しかし10Kにおいても菱面体相は全体の26%を占めるに過ぎない。(3)この事実は、PMN焼結体からの光第2高調波発生からも確認された。この場合には、セラミックス特有の粒界による散乱で第2高調波は非干渉的となり、強度は第2高調波を発生する極性領域の体積に比例する。(4)PMNに電場を印加することによって、結晶全体を強誘電相することができる。しかしこの現象は、試料の履歴に強く依存する。電場を印加しないで試料を冷却する(ZFC)場合、低温で電場を印加しそのまま温度をあげる(FH/ZFC)場合、電場を加えて温度を下降させる(FC)場合、電場を0にし温度を上昇させる(ZFH/FC)場合では複屈折の挙動は著しく変化する。これはスピングラスに見られる現象と類似している。さらに温度一定にして、電場を印加して複屈折の時間変化をみる。低温では非常に長い時間をかけて複屈折が上昇していく過程が見られた。1.なぜリラクサ-か鉛を含むペロブスカイト酸化物のBサイトを、価数の異なる2種類の原子で置き換えた構造Pb(B'B")03をもつ誘電体は、特異な誘電的性質を示す。誘電率は非常に大きくしかもブロードで、低周波において特徴的な分散を示す。この系は特徴的な緩和過程に名をとって、リラクサ-と呼ばれている。小型積層コンデンサ、圧電素子などへの応用に熱い目が注がれている。B'B"の組み合わせによって種類は沢山あるが、代表的なものはPMNと呼ばれているPb(Mg1/3Nb2/3)03である。PMNの場合には、数万に達する誘電率が室温付近で最大となるが、電気分極の長距離的な発達は見られず、10Kまで平均の結晶構造は立方晶のまま、光学的にも等方的である。
KAKENHI-PROJECT-08044096
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リラクサ-の基礎機能に関する共同研究
このような性質はセラミックスのみならず単結晶でも発現する。この系は価数、イオン半径の異なる2種類の原子が同じサイトに入ることによるフラストレーション系であり、スピングラスに見られる履歴現象、長時間緩和現象などが発生する。種々の相互作用が関与する1種の"複雑系"と見ることもできる。2.結晶構造の特徴PMNセラミックスを用いた中性子線回折とそのRietveld解析(RIETAN-94)を行った。実験は原子力研究所JRR3号炉1-3施設を用いた。解析の結果は次のとおり。(1)Pb原子はペロブスカイト構造の理想的なAサイトから大きくずれ球面上に分布し、一方O原子は{100}面からシフトしてリング上に分布する不規則構造をとる。(2)低温になるにつれて、この立方晶不規則構造の中に、{111}方向に原子がシフトした極性菱面体相が発達する。しかし10Kにおいても菱面体相は全体の26%を占めるに過ぎない。この事実は、PMN焼結体からの光第2高調波発生からも確認された。この場合には、セラミックス特有の粒界による散乱で第2高調波は非干渉的となり、強度は第2高調波を発生する極性領域の体積に比例する。電子線回折では(1/2.1/2,1/2)の超格子反射が観測された。この超格子反射の暗視野像をみると、約3nmのクラスターが観察され、これはMgとNb原子の1:1秩序が起因であると言われている。この超格子反射は温度変化を持たない。3.電場印加効果PMNに電場を印加することによって、結晶全体を強誘電相にすることができる。しかしこの現象は、試料の履歴に強く依存する。電場を印加しないで試料を冷却する(ZFC)場合、低温で電場を印加しそのまま温度をあげる(FH/ZFC)場合、電場を加えて温度を下降させる(FC)場合、電場を0にし温度を上昇させる(ZFH/FC)場合では複屈折の挙動は著しく変化する。これはスピングラスに見られる現象と類似している。さらに温度一定にして、電場を印加して複屈折の時間変化をみる。低温では非常に長い時間をかけて複屈折が上昇していく過程が見られる。
KAKENHI-PROJECT-08044096
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アモルファス炭素系薄膜の科学
本研究では、次の班編成により研究参加者の専門領域を分けた。【合成班】主に気相合成法を中心に原料、プラズマ励起、イオン衝撃がアモルファス炭素系膜の構造・特性・性能をどのように制御するか、これまでの研究成果をまとめ、整理する。【構造班】「ダイヤモンドライク」の根拠を明確にする。ダイヤモンドライク以外のアモルファス炭素系膜の構造分類を行う。【特性班】アモルファス炭素系膜の特性を硬さにこだわることなく調査する。例えば表面反応を学術的に定義しそれを生体反応などを考察する武器とする。【性能班】アモルファス炭素系膜の先端的応用例を分類する。膜の表面官能基を設計することで量子物理学、生体化学とのマッチングを整理する。【総括班】以上4班の班長と有識者からなる。第1回総括班会議ならびに第1回研究会を7月23日(金)に東京工業大学百年記念館第一会議室で行った。総括班メンバーを中心に7件の発表を行った。この研究会の中で、研究会参加研究者の有する資源を共有し、アモルファス炭素系薄膜の合成、構造評価、特性評価ならびに性能評価を統一的に行うことが今後のアモルファス炭素系薄膜の科学を進める上で重要であると結論した。さらに11月29日(月)30日(火)には産業技術総合研究所(つくば)にて開催されたダイヤモンドシンポジウムでは、本研究参加研究者により30件におよぶ講演が行われた。研究会参加研究者の有する資源について、それを利用した具体的な成果とともに発表された。会期中に第2回総括班会議がおこなわれ、第2回研究会の内容確認が行われた。第2回研究会は平成17年1月21日(金)22日(土)に那覇市オーガストイン久茂地で行われた。招待講演2件と本研究参加研究者による12件の研究紹介が行われ、来年度に向けての研究手法の検討が行われた。本研究では、次の班編成により研究参加者の専門領域を分けた。【合成班】主に気相合成法を中心に原料、プラズマ励起、イオン衝撃がアモルファス炭素系膜の構造・特性・性能をどのように制御するか、これまでの研究成果をまとめ、整理する。【構造班】「ダイヤモンドライク」の根拠を明確にする。ダイヤモンドライク以外のアモルファス炭素系膜の構造分類を行う。【特性班】アモルファス炭素系膜の特性を硬さにこだわることなく調査する。例えば表面反応を学術的に定義しそれを生体反応などを考察する武器とする。【性能班】アモルファス炭素系膜の先端的応用例を分類する。膜の表面官能基を設計することで量子物理学、生体化学とのマッチングを整理する。【総括班】以上4班の班長と有識者からなる。第1回総括班会議ならびに第1回研究会を7月23日(金)に東京工業大学百年記念館第一会議室で行った。総括班メンバーを中心に7件の発表を行った。この研究会の中で、研究会参加研究者の有する資源を共有し、アモルファス炭素系薄膜の合成、構造評価、特性評価ならびに性能評価を統一的に行うことが今後のアモルファス炭素系薄膜の科学を進める上で重要であると結論した。さらに11月29日(月)30日(火)には産業技術総合研究所(つくば)にて開催されたダイヤモンドシンポジウムでは、本研究参加研究者により30件におよぶ講演が行われた。研究会参加研究者の有する資源について、それを利用した具体的な成果とともに発表された。会期中に第2回総括班会議がおこなわれ、第2回研究会の内容確認が行われた。第2回研究会は平成17年1月21日(金)22日(土)に那覇市オーガストイン久茂地で行われた。招待講演2件と本研究参加研究者による12件の研究紹介が行われ、来年度に向けての研究手法の検討が行われた。
KAKENHI-PROJECT-16636019
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鯨類の妊娠に特異的なタンパクに関する免疫生化学的および分子生物学的研究
本研究は鯨類における繁殖生理機構の解明および鯨類において臨床例のない妊娠特異タンパクの繁殖管理への応用を目的としている。具体的には胎児由来のalpha-fetoprotein (AFP)および胎盤由来のpregnancy-associated glycoprotein (PAG)に着目し、本年度はスジイルカAFP測定系の確立を行い、血清中のAFP量を調べるとともにAFP mRNAの発現性状を解析した。一方PAGについてはcDNAクローニングを行い、一次構造の解明を行った。胎児血清中のAFP濃度は胎児の発育に伴い濃度が減少する傾向が見られ、妊娠雌血清については妊娠中期に高値を示す傾向がみられた。さらにリアルタイム定量RT-PCRを用いて胎児および妊娠雌の各器官の測定を行ったところ、胎児肝臓において高レベルの発現が認められた。また胎児肝臓および胎児胎盤における同mRNAの妊娠進行に伴う変化を調べたところ、肝臓では発育にともない減少する傾向がみられたが、胎盤ではほとんど発現がみられなかった。以上により妊娠期間中のイルカ類において、AFPの由来は主に胎児肝臓であることが明らかとなった。また妊娠雌におけるAFPの血中レベルとその変動が明らかとなり、妊娠成立・維持の指標とする際に必要な基礎的知見が得られた。一方胎盤組織よりPAGのクローニングを行った結果、6種類のクローンが確認され、得られた同塩基配列は397-404個のアミノ酸翻訳領域から構成されていた。同アミノ酸配列は他の陸上哺乳類PAGと高い相同性を示したことより本種のPAGをコードしていると考えられ、鯨類で初めて遺伝子レベルでのPAGの存在があきらかとなった。AFPおよびPAGに関する基礎知見の集積は未知なる鯨類の繁殖生理学を理解する上で重要で意義深く、これら分子を鯨類の飼育・生態管理へ応用する際に必要不可欠な成果である。本研究は鯨類における繁殖生理機構の解明および鯨類において臨床例のない妊娠特異タンパクの繁殖管理への応用を目的としている。具体的には胎児由来のalpha-fetoprotein(AFP)および胎盤由来のpregnancy-associated glycoprotein(PAG)に着目し、本年度はスジイルカAFP蛋白の精製・同定並びにcDNAクローニング、さらにPAGを含む胎盤由来妊娠特異タンパクの検索およびcDNAクローニングを行った。AFPの精製は胎児血清を抗ヒトAFP血清および抗スジイルカ雄血清(a-male)を結合したアフィニティーカラム並びにSuperdex200ゲル濾過カラムに供して行った。精製品の分子量はゲル濾過で78kDa、SDS-PAGEで68kDaでありこれらの分子量およびN末端シーケンスにおいて得られたアミノ酸配列は他動物と高い相同性を示した。得られたスジイルカAFP cDNA塩基配列は610個のアミノ酸翻訳領域から構成され、同配列は他の陸上哺乳類と80%以上の相同性を示した。以上の結果よりスジイルカのAFPがタンパクおよび遺伝子レベルで同定され、海棲哺乳類で初めてAFPの存在を明らかにした。次に妊娠各期の胎盤組織より作製した抽出液をa-maleアフィ二ティーカラムに供し、2つのPass fraction(Pass1,Pass2)に対する抗体を作製した。Western blottingにおいてPass2に対する抗体は妊娠雌血清に特異的な成分と反応し、胎盤由来妊娠関連血清タンパクの存在が示唆された。また胎盤組織よりPAG cDNAの部分配列が得られ、本種におけるPAGの存在が示唆された。AFPおよびPAGに関する基礎知見の集積は未知なる鯨類の繁殖生理学を理解する上で重要で意義深く、これら分子を鯨類の飼育・生態管理へ応用する際に必要不可欠な成果である。本研究は鯨類における繁殖生理機構の解明および鯨類において臨床例のない妊娠特異タンパクの繁殖管理への応用を目的としている。具体的には胎児由来のalpha-fetoprotein (AFP)および胎盤由来のpregnancy-associated glycoprotein (PAG)に着目し、本年度はスジイルカAFP測定系の確立を行い、血清中のAFP量を調べるとともにAFP mRNAの発現性状を解析した。一方PAGについてはcDNAクローニングを行い、一次構造の解明を行った。胎児血清中のAFP濃度は胎児の発育に伴い濃度が減少する傾向が見られ、妊娠雌血清については妊娠中期に高値を示す傾向がみられた。さらにリアルタイム定量RT-PCRを用いて胎児および妊娠雌の各器官の測定を行ったところ、胎児肝臓において高レベルの発現が認められた。また胎児肝臓および胎児胎盤における同mRNAの妊娠進行に伴う変化を調べたところ、肝臓では発育にともない減少する傾向がみられたが、胎盤ではほとんど発現がみられなかった。以上により妊娠期間中のイルカ類において、AFPの由来は主に胎児肝臓であることが明らかとなった。また妊娠雌におけるAFPの血中レベルとその変動が明らかとなり、妊娠成立・維持の指標とする際に必要な基礎的知見が得られた。一方胎盤組織よりPAGのクローニングを行った結果、6種類のクローンが確認され、得られた同塩基配列は397-404個のアミノ酸翻訳領域から構成されていた。同アミノ酸配列は他の陸上哺乳類PAGと高い相同性を示したことより本種のPAGをコードしていると考えられ、鯨類で初めて遺伝子レベルでのPAGの存在があきらかとなった。AFPおよびPAGに関する基礎知見の集積は未知なる鯨類の繁殖生理学を理解する上で重要で意義深く、これら分子を鯨類の飼育・生態管理へ応用する際に必要不可欠な成果である。
KAKENHI-PROJECT-09J01649
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J01649
金属錯体と半導体を融合した高機能二酸化炭素還元光触媒の開発
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-16F16336
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16F16336
新規酸化物プロトニクス材料の創成とその物性評価
本研究では,特にプロトン伝導型固体酸化物燃料電池のためのプロトン-電子(ホール)混合伝導性を有する新規酸化物カソード材料開発の方向性を検討する.特に両性サイトパーコレーション伝導に着目し,プロトン伝導性マトリックスと電子(ホール)伝導性マトリックスの固溶体を作製することによりプロトン-電子(ホール)混合伝導性を発現させる.これまで,プロトン伝導性マトリックスであるBaZrO3とホール伝導性マトリックスであるBaPrO3が広い範囲でペロブスカイト構造の固溶体(BaZr1-xPrxO3)を形成することに着目し,検討を進めてきた.平成23年度においては,前年度までに高温X線回折測定により示唆された相転移挙動について更に詳細に検討するため,高温Raman分光測定を行った.Pr濃度が高い組成においてはバンド間遷移に起因すると考えられる蛍光による妨害が見られたが,この問題は長波長レーザーを用いることにより避ける事が可能であった.高温Raman測定の結果から,高温X線回折により観測された相転移(体心斜方晶→単純斜方晶→菱面体晶→立方晶)に対応すると考えられるスペクトル変化が観測された.特に,Ramanスペクトルは結晶構造変化に鋭敏に依存し,従来のX線回折法と比較して上記の相転移温度をより精密に決定できることがわかった.また,高温における結晶相を温度・組成の関数として系統的に検討する事により,室温における結晶系を含めた相関係の包括的な描像を把握する事が可能であり,両性サイトパーコレーション伝導に基づくBaZrO3-BaPrO3系プロトン-ホール混合伝導体開発のための重要な知見を得た.本年度は,これまでに報告されてきたプロトニクス材料酸化物のみならず,固体酸,高分子材料をも含めて幅広く調査を行い,新規酸化物の方向性を検討することを目的とし,主に文献調査を行った.その結果,これまでの多くの研究が高いプロトン伝導性を追求してきたこと,それに反して水素分離膜やプロトン伝導体を用いた固体酸化物型燃料電池(SOFC)で必要となるプロトン-電子(ホール)混合伝導体に関する研究がほとんど行われていないこと,そのために電子伝導性にマスクされた高いプロトン移動度を有する物質群を見逃してきた可能性があることを指摘した.以上の調査からプロトン-電子混合伝導体の開発を目的とすることにした.また,これを実現する方法として,(1)プロトン伝導と電子伝導をになう2種類のイオンの形成する酸素多面体ネットワーク上で両性サイトパーコレーション伝導により実現させる方法と,(2)電子伝導を有するナノ粒子の表面にプロトン活性を誘起させてナノコンポジット体で電子伝導とプロトン伝導ネットワークを形成するナノコンポジット法,の2種類の可能性を見いだした.前者では,両性パーコレーションを実現できる物質系としてBaZrO_3(プロトンマトリックス)-BaPrO_3(電子伝導性ネットワーク形成)系が相互溶解度が高く,必要なパーコレーション閾値を満たすことがわかった.また後者では,ナノ粒子表面ならびに界面に存在するOH基および吸着水による界面プロトン伝導性を電子伝導性酸化物ナノ粉末で実現する方法であり,表面のプロトン活性を誘起する化学ドーパントによる修飾について検討することとした.本研究では特にプロトン伝導型固体酸化物燃料電池のためのプロトン-電子(ホール)混合伝導性を有する新規酸化物カソード材料開発の方向性を検討する.特に,プロトン-電子混合伝導性を両性サイトパーコレーション伝導により実現させる.平成22年度においては,主にバルクでのプロトン-電子混合伝導性を有する酸化物材料に関する基本的電気化学特性について検討を行った.プロトン伝導性を有するBaZrO_3系とホール伝導性が支配的なBaPrO_3系が広い範囲でペロブスカイト構造の固溶体(BaZr_<1-x>Pr_xO_3)を形成することを利用して,ZrおよびPr酸素八面体ネットワークによるサイトパーコレーション型のプロトン-ホール両立性伝導を実現させることを試みた.まず実験に先立って,Pr^<3+>/^<4+>の混合原子価を有するイオンをB-サイトに含む系におけるH2_O及びO_2の化学ポテンシャルをインデックスとして3次元の欠陥濃度を描いた(SSPC-15において発表).次に,高温粉末X線回折によりBaZrO_3-BaPrO_3系の相転移を観察し,Pr組成と温度の関数として相図の概略図を作成した.BaPrO_3では低温で2種類の斜方晶から菱面体晶,立方晶へと相転移が起こるが,X線回折パターンにおける変化は非常に小さいため高温Raman分光測定による予備測定を行い,より精密な評価が可能であることを確認した.また.高エネルギー加速器研究機構(KEK)フォトンファクトリーにおいて,軟X線吸収分光ならびに共鳴光電子分光測定によるBaZr_<1-x>PrxO_3系固溶体の電子構造観察を行った.本研究では,特にプロトン伝導型固体酸化物燃料電池のためのプロトン-電子(ホール)混合伝導性を有する新規酸化物カソード材料開発の方向性を検討する.特に両性サイトパーコレーション伝導に着目し,プロトン伝導性マトリックスと電子(ホール)伝導性マトリックスの固溶体を作製することによりプロトン-電子(ホール)混合伝導性を発現させる.これまで,プロトン伝導性マトリックスであるBaZrO3とホール伝導性マトリックスであるBaPrO3が広い範囲でペロブスカイト構造の固溶体(BaZr1-xPrxO3)を形成することに着目し,検討を進めてきた.
KAKENHI-PROJECT-09F09792
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09F09792
新規酸化物プロトニクス材料の創成とその物性評価
平成23年度においては,前年度までに高温X線回折測定により示唆された相転移挙動について更に詳細に検討するため,高温Raman分光測定を行った.Pr濃度が高い組成においてはバンド間遷移に起因すると考えられる蛍光による妨害が見られたが,この問題は長波長レーザーを用いることにより避ける事が可能であった.高温Raman測定の結果から,高温X線回折により観測された相転移(体心斜方晶→単純斜方晶→菱面体晶→立方晶)に対応すると考えられるスペクトル変化が観測された.特に,Ramanスペクトルは結晶構造変化に鋭敏に依存し,従来のX線回折法と比較して上記の相転移温度をより精密に決定できることがわかった.また,高温における結晶相を温度・組成の関数として系統的に検討する事により,室温における結晶系を含めた相関係の包括的な描像を把握する事が可能であり,両性サイトパーコレーション伝導に基づくBaZrO3-BaPrO3系プロトン-ホール混合伝導体開発のための重要な知見を得た.
KAKENHI-PROJECT-09F09792
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知的障害児の体力トレーニングの方法と効果
知的障害児の体力発達は低い水準にとどまるのが一般的であるが、ある私立養護学校において、高等部3年生の生徒全員がフルマラソンを完走できる水準の体力を身につけている。本研はこの生徒たちの体力の水準を明らかにすること、この生徒たちがどのようなトレーニングを行ったのか、その内容を分析することである。トレーニングの内容は、週6日間、5kmのランニングである。ランニングは個人のペースで走り、仲間との競走も自由な状態となっていた。ランニング中の心拍数は平均150拍/分で、最後の1kmは165180拍/分という高水準の負荷となっていた。これに加えて週3回の体育を行っている。体育においては、柔軟性、筋力、平行性の運動が中心となっていた。運動負荷の面からみて特筆すべき強度をもったプログラムではなかったが、きついことや、くるしいことを強要するとパニックを起こして抵抗することが多い障害児に対して指導者の指導上の配慮は大きいものであった。年間にわたって市民、県民レベルで行われる競技会に出場し、次の大会への出場を動機づけにして、練習を行っていた。一般の人の中で上位に入ることが本人の社会参加意欲や自信につながるというサイクルが形成されていた。体力水準の診断テストの結果、筋力、持久力、瞬発力、平衡性、敏捷性、柔軟性の全ての項目において対象の養護学校は他の養護学校より有意に高い水準にあることが明らかとなった。特に、全身持久力においては、一般の高等学校生徒の平均値を上回る水準であった。知的障害児の体力発達は低い水準にとどまるのが一般的であるが、ある私立養護学校において、高等部3年生の生徒全員がフルマラソンを完走できる水準の体力を身につけている。本研はこの生徒たちの体力の水準を明らかにすること、この生徒たちがどのようなトレーニングを行ったのか、その内容を分析することである。トレーニングの内容は、週6日間、5kmのランニングである。ランニングは個人のペースで走り、仲間との競走も自由な状態となっていた。ランニング中の心拍数は平均150拍/分で、最後の1kmは165180拍/分という高水準の負荷となっていた。これに加えて週3回の体育を行っている。体育においては、柔軟性、筋力、平行性の運動が中心となっていた。運動負荷の面からみて特筆すべき強度をもったプログラムではなかったが、きついことや、くるしいことを強要するとパニックを起こして抵抗することが多い障害児に対して指導者の指導上の配慮は大きいものであった。年間にわたって市民、県民レベルで行われる競技会に出場し、次の大会への出場を動機づけにして、練習を行っていた。一般の人の中で上位に入ることが本人の社会参加意欲や自信につながるというサイクルが形成されていた。体力水準の診断テストの結果、筋力、持久力、瞬発力、平衡性、敏捷性、柔軟性の全ての項目において対象の養護学校は他の養護学校より有意に高い水準にあることが明らかとなった。特に、全身持久力においては、一般の高等学校生徒の平均値を上回る水準であった。知的障害児(精神薄弱児)の体力・運動能力は健常児のそれに比して大きく遅れがあることが知られている状況の中で、年間にわたって毎朝走トレーニングを行っているA養護学校がある。本研究はA養護学における走トレーニングが生徒の体力発達にどのような影響を与えているかを明らかにすることを目的とする。対象児は養護学校中等部・高等部生徒男女計52名である。対照群の生徒は、トレーニングは行わず通常の教育活動を行っている養護学校の生徒である。体力測定の内容は、形態、筋力、瞬発力、敏捷性、平衡性、柔軟性、持久力(最大酸素摂取量を含む)である。また、その走トレーニングが、どの程度の負荷になっているかについて心拍数を指標に評価することにした。体力測定の結果、身長、体重などの形態面に関しては、一般の養護学校の生徒との間に差はみられなかったが、皮下脂肪厚においてはA養護学校生徒が有意に低い値を示し、いわゆる肥満児はいないという状況であった。握力、背筋力においても、また自動車エルゴメーターパワーテストや立ち幅跳びなどの瞬発力においても、また平衡性、持久力においてもA養護学校が他の養護学校生徒より高い値を示し、体力の全般にわたって高い水準を示した。ただし、中学1年生においては、走力以外の項目においてはほとんど同じ水準を示した。中学1年生は、小学校の6年間は他の養護学校に在籍しており、走トレーニングは行っていなかった。それがA養護学校中学部への進学によって、トレニングを開始したことになる。これらの生徒の体力がこれ以降どのように変化するかを次年度追跡することも本研究の目的の一つとなっている。体力測定の結果、持久力についてはA養護学校は他の養護学校に比して得に顕著な発達を示し、例えば持久走においては、非障害児の平均値を上回る生徒が半数以上みられなど、トレーニングが有酸素的機能の向上に有効であることがうかがわれた。知的障害児の体力発達は低い水準にとどまるのが一般的であるが、ある私立養護学校において、高等部3年生の生徒全員がフルマラソンを完走できる水準の体力を身につけている。この生徒の多くは重度の知的障害児である。本研究の第一の目的は、この生徒たちがどのようなトレーニングを行ったか、その内容を分析することである。第二の目的は、生徒たちの高度の走力の背景にある体力の水準を明らかにすることである。
KAKENHI-PROJECT-08458021
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08458021
知的障害児の体力トレーニングの方法と効果
トレーニングの内容は、早朝(日曜を除く)5kmのランニングが中心であった。ランニングは個人のペースで走り、仲間との競争も自由な状態となっていた。ランニング中の心拍数は150拍/分前後で、最後の1kmは165180拍/分という高水準の負荷となっていた。これに加えて週3回の体育を行っている。体育においては、柔軟性、上肢筋力、背筋力、跳力の運動が中心となっていた。運動負荷の面からみて特筆すべき強度をもったプログラムではなかったが、きついことや、くるしいことを強要するとパニックを起こして抵抗することが多い障害児に対して指導者の指導上の配慮は大きいものであった。年間にわたって市民、県民レベルで行われる競技会に出場し、次の大会への出場を動機づけにして、練習を行っていた。一般の人の中で上位に入ることが本人の社会参加意欲や自信」につながるというサイクルが形成されていた。体力水準の診断テストの結果、筋力、持久力、瞬発力、平衡性、敏捷性、柔軟性の全ての項目において対象の養護学校は他の養護学校より有意に高い水準にあることが明らかとなった。特に、全身持久力においては、一般の高等学校生徒の平均値を上回る水準であった。ただし、また形態発育の面でも姿勢の異常や肥満の出現率は有意に低い状態であった。
KAKENHI-PROJECT-08458021
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08458021
小児小腸組織から樹立する上皮オルガノイドの組織構築能解析
本研究では新生児・乳幼児の小腸組織、しかも組織ダメージを受け外科切除された小腸組織から、ヒト腸上皮オルガノイドを作成する技術確立を目指す。さらに、ヒト腸上皮オルガノイドを免疫不全マウスへ移植し、オルガノイドが保持する組織構築能を検証したい。小腸切除に起因する短腸症候群に対し、切除小腸から単離した小腸上皮幹細胞に由来するオルガノイドを小腸機能再生に利用する画期的治療の基礎技術として重要と考える。本研究では新生児・乳幼児の小腸組織、しかも組織ダメージを受け外科切除された小腸組織から、ヒト腸上皮オルガノイドを作成する技術確立を目指す。さらに、ヒト腸上皮オルガノイドを免疫不全マウスへ移植し、オルガノイドが保持する組織構築能を検証したい。小腸切除に起因する短腸症候群に対し、切除小腸から単離した小腸上皮幹細胞に由来するオルガノイドを小腸機能再生に利用する画期的治療の基礎技術として重要と考える。
KAKENHI-PROJECT-19K09083
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K09083
カテコラミン誘発性心室頻拍(CPVT)におけるリアノジン受容体異常の機序解明
心筋筋小胞体のCa2+(Ca)放出チャネルである心筋型リアノジン受容体(RyR2)は、カテコラミン誘発性心室頻拍(CPVT)の原因遺伝子の1つであり、CPVTは致死性不整脈により突然死する疾患であるが、決定的に有効な薬物療法はない。CPVTの発症機序として、カテコラミン誘発性にRyR2からカルモジュリン(CaM)が解離することにより、RyR2の構造変化を介して拡張期にRyR2から異常なCa放出(Caリーク)を生じ、致死性不整脈を引き起こすことを報告した。今回、N末端、中央、C末端に各々変異を有するCPVTノックイン(KI)マウスを用い、Caリークの発症メカニズムの差異を明らかにし、点突然変異部位に応じたオーダメイド薬物治療の開発を目指す。N末端: R176Q-KI、中央:R2474S-KI、C末端: R4496C-KIマウスの単離心筋細胞をサポニン処理し、ドメイン連関障害、F-FKBP12.6のRyR2に対する結合親和性、CaMのRyR2に対する結合親和性を評価した。カテコラミン負荷時(cAMPによるPKAのリン酸化)、野生型では、FKBP12.6-RyR2結合親和性、CaM-RyR2の結合親和性は不変だった。R176Q-KI、R2474S-KI、R4496C-KIにおいても、FKBP12.6-RyR2結合親和性は不変であった。カテコラミン負荷時、R176Q-KI、R2474S-KIにおいて、CaM-RyR2の結合親和性は低下したが、R4496C-KIにおいては、CaM-RyR2の結合親和性は不変であった。また、R4496C-KIにおいて、ドメイン連関障害もなく、CaM-RyR2の結合親和性は低下せずにCaリークを生じていた。ドメイン連関を是正するダントロレンはR4496C-KIには無効であり、Caリークを抑制しなかった。N末端: R176Q-KI、中央:R2474S-KI、C末端: R4496C-KIマウスの単離心筋細胞をサポニン処理し、ドメイン連関障害、F-FKBP12.6のRyR2に対する結合親和性、CaMのRyR2に対する結合親和性を評価は、おおむね順調に進展しているが、評価不十分な部分がある。具体的には、R2474S-KIにおいて、カテコラミン負荷(cAMPによるPKAのリン酸化)により、CaM-RyR2の結合親和性は低下したが、ドメイン連関障害の評価が不十分である。カテコラミン負荷によりドメイン連関は障害され、ダントロレンがドメイン連関障害を是正しうるかを、サポニン処理した単離心筋細胞でF-DPc10の結合速度を測定しドメイン連関障害を評価する必要がある。サポニン処理したR4496C-KI単離心筋細胞において、カテコラミン負荷時に、Ca spark頻度が増加し、ダントロレンはCa spark頻度を減少させないpreliminaryなデータが得られているが、個体数を増やして再評価する必要がある。RyR2を安定化させるCPVT治療薬の候補として、ダントロレン、K201、CaMの結合親和性を強める化合物、マグネシウムなどを考えている。N末端アミノ酸(AA)601-620に結合するダントロレンは、ドメイン連関障害を是正し、CaMのRyR2に対する親和性を強めるため、N末端と中央ドメインのCPVTには有効であるが、C末端型CPVTのR4496Cには無効である可能性が示唆された。その機序として、カテコラミン誘発性にRyR2からCaMが解離せず、RyR2の構造変化を介さずにCaリークを生じていると考えられる。今後は、C末端型CPVTに最適な治療薬を見つけ出せるような研究を進めていく。心筋筋小胞体のCa2+(Ca)放出チャネルである心筋型リアノジン受容体(RyR2)は、カテコラミン誘発性心室頻拍(CPVT)の原因遺伝子の1つであり、CPVTは致死性不整脈により突然死する疾患であるが、決定的に有効な薬物療法はない。CPVTの発症機序として、カテコラミン誘発性にRyR2からカルモジュリン(CaM)が解離することにより、RyR2の構造変化を介して拡張期にRyR2から異常なCa放出(Caリーク)を生じ、致死性不整脈を引き起こすことを報告した。今回、N末端、中央、C末端に各々変異を有するCPVTノックイン(KI)マウスを用い、Caリークの発症メカニズムの差異を明らかにし、点突然変異部位に応じたオーダメイド薬物治療の開発を目指す。N末端: R176Q-KI、中央:R2474S-KI、C末端: R4496C-KIマウスの単離心筋細胞をサポニン処理し、ドメイン連関障害、F-FKBP12.6のRyR2に対する結合親和性、CaMのRyR2に対する結合親和性を評価した。カテコラミン負荷時(cAMPによるPKAのリン酸化)、野生型では、FKBP12.6-RyR2結合親和性、CaM-RyR2の結合親和性は不変だった。R176Q-KI、R2474S-KI、R4496C-KIにおいても、FKBP12.6-RyR2結合親和性は不変であった。
KAKENHI-PROJECT-18K15849
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K15849
カテコラミン誘発性心室頻拍(CPVT)におけるリアノジン受容体異常の機序解明
カテコラミン負荷時、R176Q-KI、R2474S-KIにおいて、CaM-RyR2の結合親和性は低下したが、R4496C-KIにおいては、CaM-RyR2の結合親和性は不変であった。また、R4496C-KIにおいて、ドメイン連関障害もなく、CaM-RyR2の結合親和性は低下せずにCaリークを生じていた。ドメイン連関を是正するダントロレンはR4496C-KIには無効であり、Caリークを抑制しなかった。N末端: R176Q-KI、中央:R2474S-KI、C末端: R4496C-KIマウスの単離心筋細胞をサポニン処理し、ドメイン連関障害、F-FKBP12.6のRyR2に対する結合親和性、CaMのRyR2に対する結合親和性を評価は、おおむね順調に進展しているが、評価不十分な部分がある。具体的には、R2474S-KIにおいて、カテコラミン負荷(cAMPによるPKAのリン酸化)により、CaM-RyR2の結合親和性は低下したが、ドメイン連関障害の評価が不十分である。カテコラミン負荷によりドメイン連関は障害され、ダントロレンがドメイン連関障害を是正しうるかを、サポニン処理した単離心筋細胞でF-DPc10の結合速度を測定しドメイン連関障害を評価する必要がある。サポニン処理したR4496C-KI単離心筋細胞において、カテコラミン負荷時に、Ca spark頻度が増加し、ダントロレンはCa spark頻度を減少させないpreliminaryなデータが得られているが、個体数を増やして再評価する必要がある。RyR2を安定化させるCPVT治療薬の候補として、ダントロレン、K201、CaMの結合親和性を強める化合物、マグネシウムなどを考えている。N末端アミノ酸(AA)601-620に結合するダントロレンは、ドメイン連関障害を是正し、CaMのRyR2に対する親和性を強めるため、N末端と中央ドメインのCPVTには有効であるが、C末端型CPVTのR4496Cには無効である可能性が示唆された。その機序として、カテコラミン誘発性にRyR2からCaMが解離せず、RyR2の構造変化を介さずにCaリークを生じていると考えられる。今後は、C末端型CPVTに最適な治療薬を見つけ出せるような研究を進めていく。平成30年度購入予定であった蛍光ペプチドやペプチドの残薬があり、平成30年度は購入を見送ったため、457805円の未使用額が生じた。しかし、残薬が少ないため、令和元年度は購入する必要があり、令和元年度は物品費用が予算より大きくなることが見込まれ、この未使用額は令和元年度の実験試薬の購入に充てる。
KAKENHI-PROJECT-18K15849
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K15849
関節間協調に着目した歩行のコツの発見
生体は高い身体自由度を活用することで運動タスクを臨機応変に達成することができる。例えば、手先を目標位置に動かす際,肘関節の伸展が不十分であっても手首関節等運動で補うことで運動を達成できる。本研究では,成人, 10才児、ニホンザル,受動歩行器の二足歩行においてこのような関節間協調(関節間シナジー)が如何に活用されているかを調べた。その結果,二足歩行における関節間シナジーの活用の仕方は進化と学習により変化していること,また,関節間シナジーの生成に身体の物理構造が寄与していることが明らかになった。生体は高い身体自由度を活用することで運動タスクを臨機応変に達成することができる。例えば、手先を目標位置に動かす際,肘関節の伸展が不十分であっても手首関節等運動で補うことで運動を達成できる。本研究では,成人, 10才児、ニホンザル,受動歩行器の二足歩行においてこのような関節間協調(関節間シナジー)が如何に活用されているかを調べた。その結果,二足歩行における関節間シナジーの活用の仕方は進化と学習により変化していること,また,関節間シナジーの生成に身体の物理構造が寄与していることが明らかになった。生体は高い身体自由度を活用することで運動タスクを臨機応変に達成することができる。例えば、運動中にある関節の伸展が不十分であっても他の関節運動でそれを補うことにより目的の運動タスクを実現できる。本研究では、成人、子ども(10才)、ニホンザルの二足歩行の運動計測データに対してUCM解析を行うことによって、このような関節間協調(関節間シナジー)が歩行中のどの様なタイミングにどのように活用されているかを調べ、その比較検討を行った。その結果以下の点が明らかになってきた。20代の健康な成人の歩行においては、脚を前に振り出す際の足先が最も床と近付く瞬間に、その足先の高さを調節する関節間協調が強く働いていることがわかった。このことは,関節間協調がつまずきを防ぐために活用されている事を示唆する。また、立脚相終期の両脚支持期においては、腰の位置を調笛する関節間協調が強く働いていることがわかった。このことは、歩行の安定化を図るために関節間協調を活用して両脚支持期に体幹の姿勢を調節していることを示唆する。子どもやニホンザルの二足歩行においては、足の振り出し時のつまずきを防ぐ関節間協調は成人と同様に観察されたが、両脚支持期において腰の位置を調節する関節間協調は被験者によって観察されない場合もあった。このことは学習や成長もしくは進化の過程で歩行の制御戦略が変化している可能性を示唆する。次年度以降はより被験者数を増やすことで初年度に得られた知見の検証を進めていく予定である。生体は高い身体自由度を活用することで運動タスクを臨機応変に達成することができる。例えば、運動中にある関節の伸展が不十分であっても他の関節運動でそれを補うことにより目的の運動タスクを実現できる。本研究では,(1)前年度に引き続き成人および子ども(10才)の前進歩行、ニホンザルの二足歩行の運動計測データに対してUCM解析を行うことによって、このような関節間協調(関節間シナジー)が歩行中のどの様なタイミングにどのように活用されているかを調べ、その比較検討を行った。また、今年度は成人の後進歩行についても同様の調査を行った。(2)さらに歩行中に観察される関節間協調が神経系の働きによるものか、それとも筋骨格系の物理的要因によるものかを探るための予備的実験を行った。(1)に関しては、これまでに20代の成人の前進歩行においては、脚を前に振り出す際の足先が最も床と近付く瞬間に,その足先の高さを調節する関節間協調が強く働き、立脚相終期の両脚支持期においては、腰の位置を調節する関節間協調が強く働くことを示してきた。今年度新たに計測した被験者についてもこれらの特徴は共通して観察された。前者はつまづきを防ぐ上で、後者は体幹位置を調節して転倒を防ぐ上で重要な機能をもつと考えられる。また、この前者の関節間協調については、成人の後進歩行および子どもやニホンザルの二足歩行においても観察されるが、後者については被験者によって観察されない場合もあることを確認した。このことは学習や成長もしくは進化の過程で歩行の制御戦略が変化している可能性を示唆する。(2)については、歩行中の筋電位解析と、受動歩行器における関節間協調を調べることで、ヒトの歩行中の関節間協調の一部は神経系の働きによるものであり、一部は身体の物理的構造に起因するものであることを示唆する結果を得た。ヒトの歩行中の関節軌道に着目すると一歩毎にばらつきがあるが,たとえば足先を振り出すときに躓きが起きやすい瞬間など,転倒防止に重要と思われる瞬間においては,各関節軌道のばらつきが相殺しあって足先位置のばらつきは抑えられていることを申請者はこれまでの研究で示してきた。本年度は前年度までに引き続き,成人、子どもの二足歩行の運動計測データに対してUCM解析を行い、上記のような関節間シナジーが歩行中のどの様なタイミングにどのように活用されているかを調べた。その結果は,小学1年生の児童では成人に比べて歩行周期全体にわたって弱い関節間シナジーが働くが,成長とともに関節間シナジーの時間変化に強いコントラストが生じていくことを示唆するものであった。
KAKENHI-PROJECT-22500526
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22500526