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鎖骨頭蓋異形成症の骨代謝異常の解明に向けたRunx2の機械的刺激応答機構の解析 | 鎖骨頭蓋異形成症は、Runx2遺伝子変異を原因とした遺伝性疾患であり、歯の移動遅延が認められることから矯正歯科治療が非常に困難であるが適切な治療法は確立されていない。歯に矯正力を負荷すると、歯槽骨内の骨細胞が機械的刺激を感知し、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成が生じ、歯の移動が開始される。Runx2は、骨形成に必須の転写因子であり、機械的刺激応答機構にも関与していることが示唆されているが、鎖骨頭蓋異形成症の分子レベルでの歯の移動遅延の原因は未だ解明されていない。本研究では、鎖骨頭蓋異形成症における歯の移動時の骨組織に生じる機械的刺激応答機構を解明することを目的に、同症の病態モデルであるRunx2ヘテロ欠損マウスを用いて実験的歯の移動ならびに初代培養細胞を使用したin vivo, in vitroでの分子メカニズムの解析を行う。本年度は、野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウスの上顎切歯に、直径0.012インチのニッケル・チタン製ワイヤーを装着し、10gの荷重で上顎右側第一臼歯を口蓋側へ移動させた。実験的歯の移動開始から0,3,7,10,14,21日後に野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウスにおける歯の移動量を計測するとともに、上顎骨を摘出後、水平断連続切片を作成した。その結果、歯の移動距離は、両群ともに3,7日で増加したが、両群間に有意差は認められなかった。しかしながら、Runx2ヘテロ欠損マウスは野生型マウスに比べ、歯の移動開始10から21日後に減少し、歯の移動が遅延していた。また、実験的歯の移動時の圧迫側では、Runx2ヘテロ欠損マウス群で野生型マウスに比べてTRAP陽性破骨細胞数が減少し、牽引側では、Runx2ヘテロ欠損マウス群において類骨の低形成が認められた。野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウスを用いた実験的歯の移動モデルを確立し、経時的な実験的歯の移動量を測定することができた。さらに、野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウスから実験的歯の移動後の上顎骨の組織切片を作成し、実験的歯の移動時の圧迫側、牽引側の組織学的解析を行うことができた。野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウスを用いた実験的歯の移動モデルから得られた上顎骨組織切片を用い、両群における歯の移動時の骨リモデリング様相をより詳細に検討する。さらに、野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウスから初代培養細胞を単離し、細胞の増殖・分化に対する機械的刺激応答性の違いをin vitroにて検討する。鎖骨頭蓋異形成症は、Runx2遺伝子変異を原因とした遺伝性疾患であり、歯の移動遅延が認められることから矯正歯科治療が非常に困難であるが適切な治療法は確立されていない。歯に矯正力を負荷すると、歯槽骨内の骨細胞が機械的刺激を感知し、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成が生じ、歯の移動が開始される。Runx2は、骨形成に必須の転写因子であり、機械的刺激応答機構にも関与していることが示唆されているが、鎖骨頭蓋異形成症の分子レベルでの歯の移動遅延の原因は未だ解明されていない。本研究では、鎖骨頭蓋異形成症における歯の移動時の骨組織に生じる機械的刺激応答機構を解明することを目的に、同症の病態モデルであるRunx2ヘテロ欠損マウスを用いて実験的歯の移動ならびに初代培養細胞を使用したin vivo, in vitroでの分子メカニズムの解析を行う。本年度は、野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウスの上顎切歯に、直径0.012インチのニッケル・チタン製ワイヤーを装着し、10gの荷重で上顎右側第一臼歯を口蓋側へ移動させた。実験的歯の移動開始から0,3,7,10,14,21日後に野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウスにおける歯の移動量を計測するとともに、上顎骨を摘出後、水平断連続切片を作成した。その結果、歯の移動距離は、両群ともに3,7日で増加したが、両群間に有意差は認められなかった。しかしながら、Runx2ヘテロ欠損マウスは野生型マウスに比べ、歯の移動開始10から21日後に減少し、歯の移動が遅延していた。また、実験的歯の移動時の圧迫側では、Runx2ヘテロ欠損マウス群で野生型マウスに比べてTRAP陽性破骨細胞数が減少し、牽引側では、Runx2ヘテロ欠損マウス群において類骨の低形成が認められた。野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウスを用いた実験的歯の移動モデルを確立し、経時的な実験的歯の移動量を測定することができた。さらに、野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウスから実験的歯の移動後の上顎骨の組織切片を作成し、実験的歯の移動時の圧迫側、牽引側の組織学的解析を行うことができた。野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウスを用いた実験的歯の移動モデルから得られた上顎骨組織切片を用い、両群における歯の移動時の骨リモデリング様相をより詳細に検討する。さらに、野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウスから初代培養細胞を単離し、細胞の増殖・分化に対する機械的刺激応答性の違いをin vitroにて検討する。 | KAKENHI-PROJECT-18K09827 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K09827 |
鎖骨頭蓋異形成症の骨代謝異常の解明に向けたRunx2の機械的刺激応答機構の解析 | 本年度は、野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウスを用いたin vivoでの実験を中心に計画し、実験的歯の移動モデルの作成、組織学的解析を行うことができたが、免疫組織学的解析やin vitroでの初代培養細胞の単離を行うことができなかった。次年度以降に、本年度に得られた組織切片を用いた免疫組織学的検索や野生型およびRunx2ヘテロ欠損マウスから初代培養細胞を単離し、in vitroの系を用いた実験を行う。 | KAKENHI-PROJECT-18K09827 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K09827 |
ヒーリング効果を利用した単結晶内部における高速イオンドーピング | 試料内部のクラックが、熱処理により表面の原子を取り込みながら回復する現象は、クラックヒーリングと呼ばれる。フェムト秒レーザーは、パルス幅が非常に短いレーザーであり、固体内部の目的位置にクラックを形成出来る。本研究では、フェムト秒レーザーでクラックを導入したサファイアを用い、サファイア表面から内部に伸びるクラック領域への遷移金属イオンのドーピングを試みた。サファイアの延性-脆性遷移温度である1300°C以上においてクラックヒーリングが促進されることが分かった。又、元素分析からTi, Cr, Coのいずれにおいてもクラックに沿った金属イオンの拡散が可能であることを確認した。サファイヤを始めとする透明単結晶内部に、各種イオンを局所領域に高速ドーピングする技術開発を行う。フェムト秒レーザーを用いてナノクラックの形成方向を人工的に制御する技術と、熱処理によりクラックが元の単結晶に回復するクラックヒーリング現象を利用する。結晶表面には、ドーピングしたい薄膜等を塗布し、ヒーリング時に伴う表面拡散を利用して高速ドーピングを行う。クラックが消滅すると同時に、目的イオンがバルク表面から高速拡散を起こすため、本来絶縁体である単結晶に発光特性や導電性を付与でき、バルク全体の性質を大きく制御することができる。r面を断面にもつ直方体状のサファイヤ単結晶(5×5×30 mm3)を試料として用い、フェムト秒レーザーを集光照射した。ちょうど断面を横切るような形で照射し、3mm程度のクラックラインを作製した。作製したサンプルは、大気中で加熱処理を行った。金属酸化物で作製したペレットにクラックを導入したサファイアサンプルを埋め込み、アニール処理でサクラック領域への金属イオンの拡散を試みた。金属酸化物は、Cr2O3、Ti2O3、CoOを選択した。アニール後、表面に残った金属酸化物をダイヤモンドスラリーで研磨し除去した。偏光顕微鏡、ラマン分光器による測定の結果、サファイアの延性-脆性遷移温度である1300°C以上においてクラックヒーリングが促進されることが分かった。拡散処理を行ったサンプルについてEPMAを用いて元素分析を行った結果、Ti, Cr, Coのいずれにおいてもクラックに沿った金属イオンの拡散が確認され、表面からの内部への拡散深さは100μm程度であった。この値は格子拡散と比べると著しく大きなものであり、ヒーリング時に起こる表面拡散が高速な拡散の駆動力であると考えられる。また発光スペクトルを測定したところ、Ti3+、Cr3+に帰属されるピークが確認された。サファイア単結晶(5×5×30 mm3)を拡散経路作製用の試料として用いた。閾値以上の強度を有するフェムト秒レーザー光をサファイヤ内部に集光照射し、結晶内部にクラックを誘起させた。まず、サファイアのr面に対してフェムト秒レーザーを集光し、レーザー入射方向に対して垂直方向にスキャンし、照射部と平行にクラックを発生させた。(レーザー照射条件:1kHz、スキャン長さ3mm、対物レンズ50×、NA0.8)そして、結晶表面から内部にかけてクラックラインを人為的に形成し、金属イオンの拡散経路を作製した。照射したサンプルをダイヤモンドカッターにより厚さ3mm程度に切断し、ダイヤモンドスラリーで表面を研磨した。金属酸化物で作製したペレットにクラックを導入したサファイアサンプルを埋め込み、アニール処理でクラック領域への金属イオンの拡散を試みた。金属酸化物は、Cr2O3、Ti2O3、CoOを選択した。アニール後、表面に残った金属酸化物は再びダイヤモンドスラリーで研磨し除去した。EPMAを用いてクラックに拡散した金属イオン分布の状態を確認した。試料内部のクラックが、熱処理により表面の原子を取り込みながら回復する現象は、クラックヒーリングと呼ばれる。フェムト秒レーザーは、パルス幅が非常に短いレーザーであり、固体内部の目的位置にクラックを形成出来る。本研究では、フェムト秒レーザーでクラックを導入したサファイアを用い、サファイア表面から内部に伸びるクラック領域への遷移金属イオンのドーピングを試みた。サファイアの延性-脆性遷移温度である1300°C以上においてクラックヒーリングが促進されることが分かった。又、元素分析からTi, Cr, Coのいずれにおいてもクラックに沿った金属イオンの拡散が可能であることを確認した。a面(1120)、c面(0001)、m面(1010)を断面にもつ直方体状のサファイヤ単結晶を購入し、フェムト秒レーザーを集光照射した。ちょうど断面を横切るような形で照射し、3mm程度のクラックラインを作製した。作製したサンプルは、大気中、Arフロー中、真空中で加熱した。加熱温度は、10001200°Cの間で制御した。大気中で加熱した場合は、クラックはほぼ回復したが、還元雰囲気や真空雰囲気中では回復しなかった。これは、クラック周囲の原子がサンプル周囲に存在するガスとの交換反応により回復していることを示している。次に、表面にFeやTi膜をスパッタ法を用いて作製し、周囲をFe2O3やTi2O5粒子で覆うように成形体を作製した。そして、大気中または還元雰囲気中で加熱し、クラック領域へのイオンドーピングを試みた。Feは、クラック内部の深い領域まで拡散することを顕微鏡観察により確認した。Tiに関しては、周囲を覆う酸化物セラミックスのTi価数により、拡散状態が大きく変化することが分かった。Tiは、サファイヤ内部では3価の状態でのみ存在することを発光スペクトルから確認した。 | KAKENHI-PROJECT-23760639 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23760639 |
ヒーリング効果を利用した単結晶内部における高速イオンドーピング | 前年度に得られた結果を元に、これまで利用してこなかったr面を断面に持つサンプルを用いてクラックの形成を行い、金属イオンのドーピング処理を行った。r面に形成したクラックにおいても、良好な結果が得られた。Cr, Ti以外のCoを用いて同様の操作を行った結果、同じく高速拡散することが分かった。クラックヒーリングが多くのイオンドープの拡散に利用できるという結果が得られており、研究は順調に進んでいると判断した。研究目標でも掲げていた、クラックの進展挙動とヒーリング効果の制御に関しては、大筋ほぼ完了している。アニールの雰囲気によりクラックの回復度合いに違いがあることが分かり、イオンの拡散挙動にも大きく影響を与える可能性があることが分かった。TEMによる観察結果からは、アニールにより転位などの格子欠陥が、若干ではあるが回復領域に残存している様子を確認した。又、アニール時にサンプルを囲う酸化物の違い(つまり、ドーピング用イオンの価数)が、クラックに入り込み拡散するプロセスにおいて影響を与えることを確認した。つまり、チタンに関して言えば、4価よりも3価の状態の方がサファイヤ内部の拡散には適していることが分かった。拡散種であるイオンの価数が、クラックヒーリングの進行にも影響を与えるという指針も得られており、研究は順調に進んでいると判断した。サファイヤのような結晶だけでなく、比較のためガラスのような非晶質材料に対してもクラックヒーリングの有無を確認する。現在までサファイヤの異なった面に対してクラックヒーリングの挙動について検討を加えてきたが、結晶構造の違いに関してはまだ理解が十分でない。また、ガラスの高温アニールにおける挙動がヒーリングに与える影響も調べることが可能であるため、本年度は非晶質材料へ対象を広げて研究を進めていく予定である。昨年度までに得られた指針を基に、異なる基板内部にもクラックを形成し、基板に適応した条件でアニール処理を行うことで、クラックヒーリングの状態を確認する。又、回復状態に関してはFE-SEMやEDXに留まらず、TEMを利用した原子レベルにおける解析まで進めていく予定である。サファイヤの場合は、クラックヒーリングが誘起される温度が12001300°C程度と非常に高温であり、拡散種として使用できるイオン種が限定される。より低い温度でヒーリングが可能な基板の探索を行うと共に、拡散種として用いるイオンについても検討を加える。現在、導電率の高いイオン種の拡散を考えており、クラックヒーリングを用いた導電性回路の作製へと応用を図る。基板に関しては、SiCや耐熱性のポリマーの利用も今後考慮していく予定である。非晶質材料におけるヒーリング効果を確認するための、アルカリガラス、無アルカリガラス、溶融石英基板を購入する。そして、レーザー照射によりクラックを発生させた領域のアニールによる回復状態を確認する。又、クラック回復領域の表面状態を確認するため、外部の分析会社に依頼して表面分析を行うための費用に充足する。前年度に行った内容に関して論文としてまとめ、海外雑誌に投稿するための投稿費用と国際会議の参加費として使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-23760639 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23760639 |
総合型地域スポーツクラブと運動部への追跡調査による生涯スポーツ社会構築の可能性 | 平成2023年度に同じ総合型地域スポーツクラブを追跡し((1)(2))、平成20年度小学5年生と平成23年度中学2年生を同じ地域で捕捉した((3))。(1)成人追跡調査は平成20年度1034人、21年度1006人、22年度1119人、(2)子ども追跡調査は平成20年度278人、21年度263人、22年度233人、(3)平成20年度小5生507名と平成23年度中2生447名を対象とし、クラブや学年を対象とする縦断的手法の有効性がスポーツ参与の詳細な分析を通じて明らかとなった。生涯スポーツ社会構築に向けての基礎研究となる本研究では、総合型地域スポーツクラブ、運動部に参加する成人男女、小学生、中学生、高校生への縦断的な追跡調査を通じて、(1)総合型地域スポーツクラブ事業展開と地域住民のスポーツ実践の関連性を検証する、(2)総合型地域スポーツクラブ事業と学校運動部の複合的なプログラム展開が子どものスポーツ・キャリアに及ぼす影響を明らかとする(スポーツ離れの実態と体力低下の連関など)、その上で、(3)生涯スポーツ社会の実現に向けた地域におけるスポーツ環境の整備充実方策モデルのフィードバック・フィードフォワード・システムを実証的に検討することを目的とする。平成2023年度に同じ総合型地域スポーツクラブを追跡し((1)(2))、平成20年度小学5年生と平成23年度中学2年生を同じ地域で捕捉した((3))。(1)成人追跡調査は平成20年度1034人、21年度1006人、22年度1119人、(2)子ども追跡調査は平成20年度278人、21年度263人、22年度233人、(3)平成20年度小5生507名と平成23年度中2生447名を対象とし、クラブや学年を対象とする縦断的手法の有効性がスポーツ参与の詳細な分析を通じて明らかとなった。生涯スポーツ社会構築に向けて、当該地域で展開されるスポーツ・プログラムへのモニタリング調査を通じて、(1)運動・スポーツ実施状況、スポーツ施設利用状況、学校運動部やスポーツ少年団との連携状況、中高年齢者や障害者のスポーツ参加状況など、地域住民のスポーツ動向を的確に把握すること、(2)彼らの運動・スポーツへのニーズを社会資本の効率的な応答の範囲で即応できるスポーツ政策やスポーツ・プログラムを提供できるシステムを構築することが必要である。成人から小中高校生のスポーツ参与に関する実態調査を初年度に実施した。回収状況は、山形県鶴岡市・7総合型地域スポーツクラブ(587件回収/1169件配布=50.2%)、神奈川県鎌倉市内16小学校5年(508/570=89.1%)/9中学校2年(279/360=77.5% ;計787/930=84.6%)、神奈川県体育センター・32総合型地域スポーツクラブ940世帯(子ども調査401件回収=42.7% ;保護者調査393件回収=41.8%)、SSF笹川スポーツ財団スポーツエイド事業・23総合型地域スポーツクラブ(子ども調査(278/300=92.7%) ;成人調査(443/500=88.6%)、合計子ども調査(1466/2170=67.56%)、成人調査(1030/1669=61.71%)となった。調査項目は、個々の調査には独自の設問を準備するが、子ども調査と成人調査ともに共通する項目は、(1)個人的属性、(2)過去1年間の運動・スポーツ実施状況、(3)定期的な運動・スポーツ実施状況、(4)運動・スポーツ実施希望状況、(5)運動・スポーツへの態度などである。併行して、子ども調査に関連する就学前児の運動・スポーツの状況に関する内外の調査をまとめて報告した。平成21年度以降の追跡的調査によって、その変動を出生コーホート会析とスポーツ・キャリア分析によって同定する計画である。生涯スポーツ社会構築に向けて、当該地域で展開されるスポーツ・プログラムへのモニタリング調査を通じて、(1)運動・スポーツ実施状況、スポーツ施設利用状況、学校運動部やスポーツ少年団との連携状況、中高年齢者や障害者のスポーツ参加状況など、地域住民のスポーツ動向を的確に把握すること、(2)彼らの運動・スポーツへのニーズを社会資本の効率的な応答の範囲で即応できるスポーツ政策やスポーツ・プログラムを提供できるシステムを構築することが必要である。成人から小中高校生のスポーツ参与に関する実態調査を初年度に実施した。回収状況は、山形県鶴岡市・7総合型地域スポーツクラブ(615件回収/2030件配布=30.3%)、SSF笹川スポーツ財団スポーツエイド事業・22総合型地域スポーツクラブ(子ども調査(273/280=97.5%);成人調査(378/475=79.5%))であった。2年目調査実施に向けて、初年度の調査機関・地点別(山形県鶴岡市、SSF笹川スポーツ財団、神奈川県体育センター、鎌倉市)調査概要と運動・スポーツ種目別実施/希望の相関図から構成される報告書を作成した。4年間の追跡調査となる項目は、(1)個人的属性、(2)過去1年間の運動・スポーツ実施状況、(3)定期的な運動・スポーツ実施状況、(4)運動・スポーツ実施希望状況、(5)運動・スポーツへの態度などである。併行して、子ども調査に関連する就学前児の運動・スポーツの状況に関する内外の調査をまとめて報告した。平成22年度以降の追跡的調査によって、その変動を出生コーホート分析とスポーツ・キャリア分析によって同定する計画である。 | KAKENHI-PROJECT-20500539 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20500539 |
総合型地域スポーツクラブと運動部への追跡調査による生涯スポーツ社会構築の可能性 | 生涯スポーツ社会構築に向けて、当該地域で展開されるスポーツ・プログラムへのモニタリング調査を通じて、(1)運動・スポーツ実施状況、スポーツ施設利用状況、学校運動部やスポーツ少年団との連携状況、中高年齢者や障害者のスポーツ参加状況など、地域住民のスポーツ動向を的確に把握すること、(2)彼らの運動・スポーツへのニーズを社会資本の効率的な応答の範囲で即応できるスポーツ政策やスポーツ・プログラムを提供できるシステムを構築することが必要である。成人から小中高校生のスポーツ参与に関する実態調査を初年度に引き続き実施した。回収状況は、山形県鶴岡市・7総合型地域スポーツクラブ(730件回収/2030件配布=35.96%)、SSF笹川スポーツ財団スポーツエイド事業・22総合型地域スポーツクラブ(子ども調査(233/280=83.21%);成人調査(389/475=81.89%))であった。子どものスポーツ参加モデルを横断的な分析の視点より検証し、日本体育学会にて口頭発表し、本研究調査への援用を試論した。4年間の追跡調査となる項目は、(1)個人的属性、(2)過去1年間の運動・スポーツ実施状況、(3)定期的な運動・スポーツ実施状況、(4)運動・スポーツ実施希望状況、(5)運動・スポーツへの態度などである。併行して、子ども調査に関連する就学前児の運動・スポーツの状況に関する内外の調査をまとめて報告した。平成23年度以降の追跡的、調査によって、その変動を出生コーホート分析とスポーツ・キャリア分析によって同定する計画である。平成20年度から平成23年度の3カ年の追跡調査は、山形県鶴岡市総合型地域スポーツクラブならびにSSF笹川スポーツ財団によるスポーツエイド事業の総合型地域スポーツクラブを対象とした。(1)成人調査における各年度の対象者は、山形県鶴岡市では平成20年度591人、平成21年度628人、平成22年度730人、合計1949人、SSF笹川スポーツ財団・スポーツエイド事業では平成20年度443人、平成21年度378人、平成22年度389人、合計1210人である。(2)子ども調査における各年度の対象者は、SSF笹川スポーツ財団・スポーツエイド事業では平成20年度278人、平成21年度263人、平成22年度233人、合計774人である。また、神奈川県鎌倉市では、市立小学校16校5年生と市立中学校9校2年生を対象に平成20年度と平成23年度に追跡調査を実施した。(3)平成20年度小学5年生507名、中学2年生276名、平成23年度小学5年生487名、中学2年生447名であった。本研究が試行するコーホート的分析では、平成20年度小学5年生が平成23年度中学2年生に進学する同じコーホートとなる。(4)これらの追跡的調査を相対的に評価するとともに、総合型地域スポーツクラブのあり方を補完的把握するために、平成20年度では神奈川県内総合型地域スポーツクラブに加入する親子を対象に405名より総合型地域スポーツクラブへの評価を含めて、運動・スポーツ参与状況を把握した。 | KAKENHI-PROJECT-20500539 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20500539 |
教員の資質獲得,キャリア・ステージと生涯研修計画 | 本調査では平成3年にはワシントン州立大学,州立サン・ディエゴ大学,ヴァンダビルト大学,オハイオ州立大学,及びコロンビア大学の5大学,また,平成4年にはワシントン州立大学,ヴァンダビルト大学,ウィスコンシン州立大学オークレア及びマディソン校,サウス・カロライナ州立大学の4大学,並びに全米教育大学協会(AACTE)の機関においてアメリカの大学における教員の教育,特に学部卒業後の様々な段階での現職教員教育について調査した。州立サン・ディエゴ大学及びヴァンダビルト大学においては,大学と教育委員会等の協力による初任者研修の在り方・方法・内容等について調査し,他の大学等においては,大学院の修士及び博士課程における現職教員教育のあり方・研究指導体制・テーマ等について調査し,更に,シアトル,オークレア等では大学院終了者の教育委員会等教育行政及び学校現場での受入れの在り方についても調査した。その結果,大学と教育委員会等の教育行政の側では現職教員の教育・研修における役割が異なり,それぞれが異なる立場でそれぞれの特徴を生かし,協力できる体制を作り上げることが肝要であり,日本においても早急にそのような体系のもとに現職教員の生涯研修体制を作り上げる事が焦眉の急であることが明らかとなった。ワシントン州,特にシアトル地区においては大学と教育委員会等の教育行政側との間に緊密な協力関係が保たれ,大学は大学院において現職教員を受け入れている他に,大学内に地域教育委員会との共催でピュジェット・サウンド現職研修センター(PUPDC)を設置し,初任者から熟達教員までの生涯にわたる職業的キャリアの発展に協力し,定期的な研究会の開催等を通して教員の研究指導を行いつつ,教育実践研究の推進を行っている。モデル中学校では大学教官,中学校の指導教員及び現職の大学院学生とがチームを組織し,初任教員の実践的諸問題の解決指導を行いつつ,教員初任者段階における資質獲得の経緯について研究を進めている。州立サン・ディエゴ大学ではカリフォルニア州との共同での初任者研修を実施しているが,ここでは初任教員に対し週1回その週で最も最大と思われる事柄を報告させ(Critical Insident Writing),その問題の解決を指導しつつ,初任教員にとって重要と思われている事柄の追跡調査を続け,これらの教員にどのような指導を行うべきかの研究を行っている。因みにカリフォルニア州では初任教員就職後1年以内に職を放棄する者が平均して20%以上であったが,この指導を行うようになって,その数は1/10以下になったという。ウィスコンシン大学では公立学校の教員の研修の協力を行っているが,他の州と同様,教員は就職後5年以内の一定期間に30単位以上の現職研修を大学及び教育委員会独自の科目を取得することとされており,そのことが給与体系に組み込まれている。大学院の場合には,修士課程・博士課程のそれぞれで異なるが,終了者にはランクの上の給与体系が保証されており,教員は自主的に大学での単位を取得し,それぞれのプランに従って独自の研修を行い,学位を取得している。このことはすべての州で1980年代に実施されている。特に修士課程は夜間等のパートタイム制度の導入により,すでに全教員の3040%は修士の学位を取得していると云われている。ホルムス委員会の報告"Tomorrow's Teachers"によれば,教員は5年以内に修士を取得しないと,今後教員免許が生涯更新できないようにすることが勧告されており,アメリカではこのようにして,大学院における現職教育は生涯研修体系の中に組み入れられることとなった。アメリカの大学院における現職教員の研究・教育の内容を見ると,実践的項目が多く,特に博士課程においては教育界における最近の問題点についてのテーマが多く,理科の博士課程においては1986年の"Science ForAll Amerikan"を中心にK-12(幼稚園から高校3年までの教育課程全体)にかかる総合的教育課程の開発を研究テーマとしているものが目立った。これらの博士研究の完成までには約10年を要すると云われており,当該教員は最低1年の全日課程を含むパートタイムの課程で研究を続め,修了後は地域の教育課程専門職等として学校,地域全体の指導に当たることとなる由である。本調査では平成3年にはワシントン州立大学,州立サン・ディエゴ大学,ヴァンダビルト大学,オハイオ州立大学,及びコロンビア大学の5大学,また,平成4年にはワシントン州立大学,ヴァンダビルト大学,ウィスコンシン州立大学オークレア及びマディソン校,サウス・カロライナ州立大学の4大学,並びに全米教育大学協会(AACTE)の機関においてアメリカの大学における教員の教育,特に学部卒業後の様々な段階での現職教員教育について調査した。州立サン・ディエゴ大学及びヴァンダビルト大学においては,大学と教育委員会等の協力による初任者研修の在り方・方法・内容等について調査し,他の大学等においては,大学院の修士及び博士課程における現職教員教育のあり方・研究指導体制・テーマ等について調査し,更に,シアトル,オークレア等では大学院終了者の教育委員会等教育行政及び学校現場での受入れの在り方についても調査した。その結果,大学と教育委員会等の教育行政の側では現職教員の教育・研修における役割が異なり,それぞれが異なる立場でそれぞれの特徴を生かし,協力できる体制を作り上げることが肝要であり,日本においても早急にそのような体系のもとに現職教員の生涯研修体制を作り上げる事が焦眉の急であることが明らかとなった。ワシントン州,特にシアトル地区においては大学と教育委員会等の教育行政側との間に緊密な協力関係が保たれ,大学は大学院において現職教員を受け入れている他に,大学内に地域教育委員会との共催でピュジェット・サウンド現職研修センター(PUPDC)を設置し,初任者から熟達教員までの生涯にわたる職業的キャリアの発展に協力し,定期的な研究会の開催等を通して教員の研究指導を行いつつ,教育実践研究の推進を行っている。 | KAKENHI-PROJECT-03045032 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03045032 |
教員の資質獲得,キャリア・ステージと生涯研修計画 | モデル中学校では大学教官,中学校の指導教員及び現職の大学院学生とがチームを組織し,初任教員の実践的諸問題の解決指導を行いつつ,教員初任者段階における資質獲得の経緯について研究を進めている。州立サン・ディエゴ大学ではカリフォルニア州との共同での初任者研修を実施しているが,ここでは初任教員に対し週1回その週で最も最大と思われる事柄を報告させ(Critical Insident Writing),その問題の解決を指導しつつ,初任教員にとって重要と思われている事柄の追跡調査を続け,これらの教員にどのような指導を行うべきかの研究を行っている。因みにカリフォルニア州では初任教員就職後1年以内に職を放棄する者が平均して20%以上であったが,この指導を行うようになって,その数は1/10以下になったという。ウィスコンシン大学では公立学校の教員の研修の協力を行っているが,他の州と同様,教員は就職後5年以内の一定期間に30単位以上の現職研修を大学及び教育委員会独自の科目を取得することとされており,そのことが給与体系に組み込まれている。大学院の場合には,修士課程・博士課程のそれぞれで異なるが,終了者にはランクの上の給与体系が保証されており,教員は自主的に大学での単位を取得し,それぞれのプランに従って独自の研修を行い,学位を取得している。このことはすべての州で1980年代に実施されている。特に修士課程は夜間等のパートタイム制度の導入により,すでに全教員の3040%は修士の学位を取得していると云われている。ホルムス委員会の報告"Tomorrow's Teachers"によれば,教員は5年以内に修士を取得しないと,今後教員免許が生涯更新できないようにすることが勧告されており,アメリカではこのようにして,大学院における現職教育は生涯研修体系の中に組み入れられることとなった。アメリカの大学院における現職教員の研究・教育の内容を見ると,実践的項目が多く,特に博士課程においては教育界における最近の問題点についてのテーマが多く,理科の博士課程においては1986年の"Science ForAll Amerikan"を中心にK-12(幼稚園から高校3年までの教育課程全体)にかかる総合的教育課程の開発を研究テーマとしているものが目立った。これらの博士研究の完成までには約10年を要すると云われており,当該教員は最低1年の全日課程を含むパートタイムの課程で研究を続め,修了後は地域の教育課程専門職等として学校,地域全体の指導に当たることとなる由である。本研究では,教員初任者の段階から熟達教員にいたるライフ・コ-スの中で,発展的に資質を獲得してゆく段階を追跡し,それぞれの段階に相応しい教育・援助の方途を模索し,現職教員の生涯研修体系を確立することを目的としているが,本年度は学部段階から初任者研修への継続的指導の在り方と,大学院博士課程での研究教育の在り方とを中心として,日米の比較を行いつつ,現職教員の継続教育における大学の役割を研究・調査した。 | KAKENHI-PROJECT-03045032 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03045032 |
炎症性腸疾患病変形成における腹腔内細胞交通とTGFスーパーファミリー分子の役割 | 本研究は、消化管炎症に対する応答としての腹腔内細胞交通と、それらの細胞の産生する分子の役割を明らかにすることを目的とした。1炎症局所に動員される細胞の同定:マウスに、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)を注腸して炎症を誘導すると、漿膜側に凝集したのはマクロファージ(MΦ)であった。2急性腸炎誘導後の腹腔内の細胞構成の変化:炎症誘導後、成熟腹腔MΦが消失し未熟血球系細胞が増加した。3動員される細胞の由来:ナイーブマウスから腹腔MΦ細胞を分離し、同種マウスに移植するとTNBS腸炎誘導後大腸炎症局所、特に穿孔潰瘍の部分に細胞凝集塊を作るが、腸管壁内へ浸潤することはなかった。4細胞動員機序の解明:炎症局所の漿膜側に動員された細胞のケモカイン及びその受容体遺伝子発現を解析したところCCR8の発現が強く亢進していた。LPS刺激により、CCLI及びTGFスーパーファミリー分子アクチビンの高い分泌が腹腔MΦに見られた。これらの事から自己分泌したケモカインに対する受容体を高発現する事により、腹腔内マクロファージは傷害の起こった部位に凝集すると考えられた。5 MΦ凝集のivvitro実験系の確立:マウス中皮細胞を単層培養し、更に腹腔MΦを加えて混合培養した。ここにCCLI及び炎症性サイトカインを加えると中皮細胞を巻き込んだ細胞塊を形成した。これは抗CCLI抗体により抑制された。6 In vivoにおける阻害実験:腸炎による腹腔MΦの大腸への付着と病変部での凝集は、抗CCLI中和抗体投与群で強く阻害された。腹腔MΦの中皮細胞を巻き込んだ細胞塊形成は、消化管穿孔や外科侵襲など、ストレスが体の深部に及んだ時の防御機構として有効に作用していると考えられる。今後CCLI/CCR8の阻害剤の開発により、過剰な炎症の抑制や、癒着等の腹膜病変の予防が可能であると考えでいる。本研究は、消化管炎症に対する応答としての腹腔内細胞交通と、それらの細胞の産生する分子の役割を明らかにすることを目的とした。1炎症局所に動員される細胞の同定:マウスに、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)を注腸して炎症を誘導すると、漿膜側に凝集したのはマクロファージ(MΦ)であった。2急性腸炎誘導後の腹腔内の細胞構成の変化:炎症誘導後、成熟腹腔MΦが消失し未熟血球系細胞が増加した。3動員される細胞の由来:ナイーブマウスから腹腔MΦ細胞を分離し、同種マウスに移植するとTNBS腸炎誘導後大腸炎症局所、特に穿孔潰瘍の部分に細胞凝集塊を作るが、腸管壁内へ浸潤することはなかった。4細胞動員機序の解明:炎症局所の漿膜側に動員された細胞のケモカイン及びその受容体遺伝子発現を解析したところCCR8の発現が強く亢進していた。LPS刺激により、CCLI及びTGFスーパーファミリー分子アクチビンの高い分泌が腹腔MΦに見られた。これらの事から自己分泌したケモカインに対する受容体を高発現する事により、腹腔内マクロファージは傷害の起こった部位に凝集すると考えられた。5 MΦ凝集のivvitro実験系の確立:マウス中皮細胞を単層培養し、更に腹腔MΦを加えて混合培養した。ここにCCLI及び炎症性サイトカインを加えると中皮細胞を巻き込んだ細胞塊を形成した。これは抗CCLI抗体により抑制された。6 In vivoにおける阻害実験:腸炎による腹腔MΦの大腸への付着と病変部での凝集は、抗CCLI中和抗体投与群で強く阻害された。腹腔MΦの中皮細胞を巻き込んだ細胞塊形成は、消化管穿孔や外科侵襲など、ストレスが体の深部に及んだ時の防御機構として有効に作用していると考えられる。今後CCLI/CCR8の阻害剤の開発により、過剰な炎症の抑制や、癒着等の腹膜病変の予防が可能であると考えでいる。1炎症局所に動員される細胞の同定マウスにトリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)を注腸して穿孔を伴った全層性潰瘍を誘導し、局所の粘膜固有層、粘膜下層、潰瘍底、漿膜側に浸潤する細胞を同定した。免疫組織化学による細胞の同定:穿孔を伴った全層性潰瘍を誘導後、局所の凍結切片を作製して、マクロファージマーカーCD11b,F4/80及びケモカイン受容体CCR8に対する抗体等で染色した結果、漿膜側にマクロファージの際某凝集の起こっていることが明らかになった。これらのマクロファージはCCR8陽性であった。好中球、Tリンパ球も浸潤が見られたが、マクロファージのように漿膜側に凝集塊を作ることはなかった。2急性潰瘍誘導後の末梢血及び腹腔内の細胞構成と活性化状態の変化炎症を誘導したとき動員される細胞を同定する手段の一つとして、末梢血、腹腔内のマクロファージ、樹状細胞、リンパ球、好中球などの細胞構成とそれぞれのサブセットについて、炎症誘導前後で比較した。この結果F4/80陽性CD11b強陽性の成熟腹腔マクロファージは腹腔内浮遊細胞からは消失し、Gr-1陽性の好中球及びCD11b^<int>Gr-1^<int>の未熟血球系細胞が増加した。3細胞交通の解析-動員される細胞の由来の解明 | KAKENHI-PROJECT-17590693 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17590693 |
炎症性腸疾患病変形成における腹腔内細胞交通とTGFスーパーファミリー分子の役割 | 細胞交通の解析のためには、ナイーブマウスから細胞を分離し、これを蛍光ラベルして、別の同種マウスに移植し、TNBS腸炎誘導後の動きを組織切片状で検出した。Single cellレベルで検出するためには輝度が高く、退色しにくい蛍光量子ドット(Quantum Dot, QD)ラベル法を用いる。QDラベルした腹腔マクロファージは腹腔に戻すと、大腸炎症局所、特に穿孔潰瘍の部分に細胞凝集塊を作るが、腸管へ機内へ浸潤することはなかった。これに対して、骨髄由来マクロファージは腸管粘膜固有層、漿膜など炎症部位にびまん性に分布した。本研究は、消化管炎症に対する応答としての腹腔内細胞交通と、それらの細胞の産生する分子の役割を明らかにすることを目的とした。さらに、その制御によって腸間膜を巻き込んだ異常な消化管組織再構築を予防し、炎症性腸疾患新規治療法の開発を目指す。1細胞動員機序の解明:炎症局所の漿膜側に動員された細胞のケモカイン及びその受容体遺伝子発現を解析したところCCR8の発現が強く亢進していた。LPS刺激により、CCL1及びTGFスーパーファミリー分子アクチビンの高い分泌が腹腔MΦに見られた。これらの事から自己分泌したケモカインに対する受容体を高発現する事により、腹腔内マクロファージは傷害の起こった部位に凝集すると考えられた。2 MΦ凝集のin vitro実験系の確立:マウス中皮細胞を単層培養し、更に腹腔MΦを加えて混合培養した。ここにCCLI及び炎症性サイトカインを加えると中皮細胞を巻き込んだ細胞塊を形成した。これは抗CCL1抗体により抑制された。3 In vivoにおける阻害実験:腸炎による腹腔MΦの大腸への付着と病変部での凝集は、抗CCL1中和抗体投与群で強く阻害された。腹腔MΦの中皮細胞を巻き込んだ細胞塊形成は、消化管穿孔や外科侵襲など、ストレスが体の深部に及んだ時の防御機構として有効に作用していると考えられる。今後CCL1/CCR8の阻害剤の開発により、過剰な炎症の抑制や、癒着等の腹膜病変の予防が可能であると考えている。 | KAKENHI-PROJECT-17590693 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17590693 |
百日咳菌のアデニレート・サイクレース遺伝子のクローニングと貧食細胞障害活性の発現 | 百日咳I推菌のAdenylate Cyclase(以下ACase)Toxinは基本形として3つのドメインのComplexとして存在するが,その分子多形性のゆえに,まだ精製法も確立しておらず,その蛋白化学的実態についてはよく分っていない.本研究は,その実態を遺伝子レベルから解析するために, ACase遺伝子moietyのクローニングで開始された.(1)大腸菌や酵母のACase遺伝子のClsntng Strategyを応用すべく,まず大腸菌X1776株よりACase欠損変異株(cya)を分離した.この菌株はlactase, Mannitolなどの各種の糖発酵能やflagella形成などcAMP依存性の遺伝子が発現しない.(2)百日咳菌東浜株の染色体DNAの酵素分解物をpBR322につなぎ,大腸菌cya変異株にTransformし, lactose^+,mannitol^+の株を分離したが,同時にmotilityなど他のcAMP依存性遺伝子も発現しており, 8.1Kbの雑種プラスミドを保有していた.これを別の大腸菌のACase欠失変異株(ΔCya)に導入すると多重欠損の形質が同時に回復した.(3)作成した物理地図に従って,酵素分解により,各種欠失変異遺伝子を作成して大腸菌のΔCya株に導入し, ACase遺伝子のcAMP依存性パラメータの発現を指標にしてACase遺伝子の局在を調べた所, 3.7Kbの挿入断片の2.6Kb領域部分に局在することが確認された.(4)大腸菌のACase遺伝子断片をプローブにしてSouthern Hylirtdizationを行なった結果,百日咳菌の3.7Kb断片と弱いながらHyluidizeする事が確認され,両菌種のACase間に弱いながらホモロジーのある可能性が示唆された.(5)大腸菌に於ける高発現系を構築する情報を得る目的で3.7Kb断片よりKilosequence法で得られる多数の欠失変異DNAをDideoxy法によりsequencingし,現在,一応3.7Kbの1本の構造につながったが,なお数ヶ所の未確定配列領域が残っており,最後の詰めを行なっている.百日咳I推菌のAdenylate Cyclase(以下ACase)Toxinは基本形として3つのドメインのComplexとして存在するが,その分子多形性のゆえに,まだ精製法も確立しておらず,その蛋白化学的実態についてはよく分っていない.本研究は,その実態を遺伝子レベルから解析するために, ACase遺伝子moietyのクローニングで開始された.(1)大腸菌や酵母のACase遺伝子のClsntng Strategyを応用すべく,まず大腸菌X1776株よりACase欠損変異株(cya)を分離した.この菌株はlactase, Mannitolなどの各種の糖発酵能やflagella形成などcAMP依存性の遺伝子が発現しない.(2)百日咳菌東浜株の染色体DNAの酵素分解物をpBR322につなぎ,大腸菌cya変異株にTransformし, lactose^+,mannitol^+の株を分離したが,同時にmotilityなど他のcAMP依存性遺伝子も発現しており, 8.1Kbの雑種プラスミドを保有していた.これを別の大腸菌のACase欠失変異株(ΔCya)に導入すると多重欠損の形質が同時に回復した.(3)作成した物理地図に従って,酵素分解により,各種欠失変異遺伝子を作成して大腸菌のΔCya株に導入し, ACase遺伝子のcAMP依存性パラメータの発現を指標にしてACase遺伝子の局在を調べた所, 3.7Kbの挿入断片の2.6Kb領域部分に局在することが確認された.(4)大腸菌のACase遺伝子断片をプローブにしてSouthern Hylirtdizationを行なった結果,百日咳菌の3.7Kb断片と弱いながらHyluidizeする事が確認され,両菌種のACase間に弱いながらホモロジーのある可能性が示唆された.(5)大腸菌に於ける高発現系を構築する情報を得る目的で3.7Kb断片よりKilosequence法で得られる多数の欠失変異DNAをDideoxy法によりsequencingし,現在,一応3.7Kbの1本の構造につながったが,なお数ヶ所の未確定配列領域が残っており,最後の詰めを行なっている.百日咳菌のAdenylate Cyclase(以下Acaseと略す)は、未知蛋白成分と結合し、ACase Complexになると、標的細胞に侵入し、短時間で細胞内cAMPレベルを異常に上げ、細胞の生理機能を阻害することにより、百日咳菌の病原因子の1つとして働く。最近、このACase ComplexはACase毒素あるいは細胞侵入性ACoseと称され、部分精製が試みられている。本研究は、このACase Complexを遺伝子レベルで解析し、その実体を明らかにすることを当初の目的とし、既に約3.9KbのACase遺伝子MoietyをpBR322ベクターに挿入して大腸菌中にクローニングした。しかし、この遺伝子は大腸菌中で極めて発現が弱いので、初年度は百日咳菌のACaseを高収量に発現する大腸菌の系を確立することに重点をおいた。(1)まず挿入断片を部分分解して作成したサブクローンのACaseの発現を解析し、ほぼ挿入断片の中央部分にACase遺伝子が存在している事を確認した。(2)既に全塩基配列が決まっている大腸菌のACaseと百日咳菌の挿入断片を、それぞれプローブにしてサザーン・ハイブリによる解析の結果、百日咳菌と大腸菌各株のACase遺伝子は、互いにホモロジーが余りない事が推定された。 | KAKENHI-PROJECT-61570206 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61570206 |
百日咳菌のアデニレート・サイクレース遺伝子のクローニングと貧食細胞障害活性の発現 | (3)挿入断片を異なる数種類の発現ベクターにつなぎ換え、大腸菌のACase欠失変異株中で発現を誘導し、Competition Immunoassay法でACase活性を定量したが検出できなかった。百日咳菌のACaseはカルモジュリンで数百倍に活性化されるので、次にカルモジュリン存在下に、ACase活性を定量する。(4)現在は、挿入断片中にACase遺伝子のOpen Readirg Frameが存在する事を確認する事と、転写および翻訳の調節領域などを含む部位の塩基配列の改変などを通して、効率の良い発現系を確立するため、挿入断片から小断片を順次欠失させるキロシークェンス法で分離したサブクローンを用い;dideoxy法で塩基配列を決定しつつある。 | KAKENHI-PROJECT-61570206 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61570206 |
3系統ラットを用いた非アルコール性脂肪性肝炎進展メカニズムに関する研究 | 高脂肪・コレステロール飼料(HFC)負荷により、肝炎・線維化に進展するラット(SHRSP5/Dmcr)及びその系統元と比較することにより、肝炎・線維化進展メカニズムの解析を行った。特に、コレステロールの異化産物である胆汁酸に着目し、解析した。その結果、胆管側へ胆汁酸を排出する輸送体の発現低下により、肝臓内に胆汁酸(ケノデオキシコール酸)が蓄積し、壊死・線維化へ進展することが示唆された。さらに、胆汁酸の解毒(水溶性化)に関与するルクロン酸抱合の活性低下及びそれらを制御している核内受容体の発現低下により、肝臓内の胆汁酸排泄遅延をもたらすことが示唆された。3系統のラットのうち、脳梗塞易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP)は対照群である飼料(SP)で、脳梗塞発症の頻度が8週間摂取では高く、対照群の数に支障をきたすことになった。そのため、トラブル対策として、SHRSPの系統元で、WKYが系統元となる高血圧自然発症ラット(SHR)を用いた実験を追加で行った。そこでSHRSP5/Dmcr、SHR、WKYの肝臓サンプルを用いて、コレステロール及び異化産物である胆汁酸代謝に関連のある蛋白の測定をWestern Blot法で測定した。その結果、血圧が正常なWKYでは、コレステロールから胆汁酸異化の律側酵素であるCyp7a1の発現が、対照群・HFC群ともに非常に少ないことが判明し、線維化が認められなかったWKYと線維化が認められたSHR以降の違いの可能性として高血圧の関与が考えられた。高脂肪・高コレステロール飼料(HFC)を8週間摂取した3系統ラット(SHRSP5/Dmcr, SHR, WKY)の肝臓サンプルを用いて、コレステロール及び以下産物である胆汁酸大社に関連のある蛋白をWestern Blot法で昨年度より引き続き測定。先行研究により、肝臓病理所見で肝線維化は背側部(後腹膜側)に密になる局在が認められており、今回の実験では腹側部側の肝臓部位と背側部側の肝臓部位を分けて解析をした。その結果ほとんどの上記蛋白発現において差は認められなかった。SHRSP5/Dmcrでは、先行研究で胆汁酸の排泄遅延が認められたが、胆管側側への排泄輸送蛋白のBSEPの発現は線維化が認められなかったWKYでも発現の低下を示していた。また胆汁酸の排泄遅延で発現が増加する血中側胆汁酸輸送体MRP3はSHRSP5/Dmcrで顕著に認められ、SHRでも若干検出されたが、線維化が認められなかったWKYでは検出されなかった。以上のことから、胆汁酸の排泄遅延と線維化重度進展に大きく関連があることが示唆された。高脂肪・コレステロール飼料(HFC)負荷により、肝炎線維化に進展するラット(SHRSP5/Dmcr)及びその系統元と比較することにより、肝炎・線維化進展メカニズムの解析を行った。特にコレステロールの異化産物である胆汁酸に着目し、解析した。SHRSP5/Dmcr及びその系統元SHRSP、SHR、WKYを用いて解析しているが、SHRSPは対照群で脳梗塞を多数発症したため、まず、1) SHRSP5/DmcrとSHRSPの解析。次に、SHRを新たに追加し、2) SHRSP5/Dmcr、SHR、WKYの解析を行った。1)肝線維化面積はSHRSP5/Dmcr 22%、SHRSP 7%と有意な差を認めた。胆汁酸関連蛋白の発現では、SHRSP5/Dmcrでは、胆汁酸の解毒に関与するUGT活性(グルクロン酸抱合)及びその制御核内受容体であるPXR、CARの発現が低下していた。さらにUGTのアイソフォームのmRNAの発現解析(UGT1A1,1A3,1a6,2b4,2b7)を今年度は行い、1次胆汁酸であるケノデオキシコール酸(CDCA)を基質とするUGT1A3の発現低下と活性が一致した。そのため、肝臓内に胆汁酸(CDCA)の蓄積をもたらしたことが、壊死・線維化進展に重要であることが示唆された。2)肝線維化面積は、SHRSP5/Dmcrが約22%、SHRが約7%、WKYが1%未満であった。SHRでは、SHRSPと同程度の線維化が認められたが、線維化密集部位付近の広範な壊死層などは一切認められず、肝細胞のバルーニング、大脂肪滴なども少なかった。3系統間では、Cyp7a1及び7b1について、WKYとSHR,SHRSP5/Dmcr間で大きな発現の違いが認められた。WKYは性状血圧ラットに対し、その他の系統ラットは高血圧ラットであることから、高血圧と肝線維化進展との関連を今後の検討課題とした。高脂肪・コレステロール飼料(HFC)負荷により、肝炎・線維化に進展するラット(SHRSP5/Dmcr)及びその系統元と比較することにより、肝炎・線維化進展メカニズムの解析を行った。特に、コレステロールの異化産物である胆汁酸に着目し、解析した。その結果、胆管側へ胆汁酸を排出する輸送体の発現低下により、肝臓内に胆汁酸(ケノデオキシコール酸)が蓄積し、壊死・線維化へ進展することが示唆された。さらに、胆汁酸の解毒(水溶性化)に関与するルクロン酸抱合の活性低下及びそれらを制御している核内受容体の発現低下により、肝臓内の胆汁酸排泄遅延をもたらすことが示唆された。2015年1月より、藤田保健衛生大学医学部に異動し、実験を行う準備に時間がかかったため。 | KAKENHI-PROJECT-25460797 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25460797 |
3系統ラットを用いた非アルコール性脂肪性肝炎進展メカニズムに関する研究 | 衛生学今年度に測定予定であったmRNAの測定をまだ行っていないため、順次測定していく(RNAは抽出済み)。線維化を認めなかったWKYにおいて発現がほとんど認められなかったCyp7a1に関して、プロモーター領域のメチル化解析(エピジェネティクス解析)を行い、肝線維化進展との関連を解析していく予定である。また、共同研究の肝臓内胆汁酸測定については、現在測定法の開発中であり、開発出来次第順次測定していく。当初使用予定であったSHRSPにおいて、コントロール飼料であるSP摂取により予想以上に脳梗塞が発症したため、追加実験が必要になり、それを補うためにもう1系統のSHRを追加したため。藤田保健衛生大学に異動となり、必要な物品の納期が間に合わなかったため今年度は、追加実験が必要であったため、一部の蛋白のみWestern Blot法で測定した。今後は、未測定の蛋白測定のみならず、肝臓内脂質測定、mRNAも測定していく予定である。さらに、肝臓内及び血清の胆汁酸測定を研究協力者の名古屋大学・院・医・法医学講座において、測定する予定である。また、今年度の新規発見としてのCyp7a1発現と高血圧との関連についての解析として、降圧薬を用いた追加実験を行うかどうかも検討していく。予定通り、エピジェネティクス解析、遺伝子発現解析、キット類などの購入などを行う蛋白解析に必要な抗体の納期が間に合わなかったため。予定通り、蛋白・遺伝子解析を行うための試薬代やLC/MSによる胆汁酸測定の標準品の購入などを行う。 | KAKENHI-PROJECT-25460797 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25460797 |
核融合実験装置の黒鉛炉壁中に蓄積された水素の分析ならびに水素除去手法の開発 | 現在建設が予定されている国際熱核融合実験炉(ITER)では、炉内に堆積した炭素再堆積層への多量のトリチウム蓄積が懸念されている。炭素再堆積層への水素同位体蓄積挙動は炉壁温度などの運転条件によって大きく変化することが予想されるが、現在のところ、ITERの炉壁温度である450K以上の高い炉壁温度における炭素再堆積及びそこへの水素同位体蓄積についてのデータはほとんど得られていない。そこで本研究では、573Kと高い炉壁温度で運転されたJT-60及びJT-60Uの炭素再堆積層への水素同位体(軽水素(H)及び重水素(D))蓄積量を昇温脱離法(TDS)で測定し、炉壁温度が水素同位体蓄積挙動に与える影響について考察した。また、炭素再堆積層中に蓄積された水素同位体を除去する手法としてレーザー誘起脱離(LID)法を取り上げ、水素同位体蓄積手法として用いる場合の最適なレーザー光照射条件について検討した。実験の結果、プラズマ放電時にプラズマの熱負荷が大きかったために、炭素再堆積層の温度が最高で800K程度にまで上昇した領域では、炭素再堆積層中水素同位体濃度が低く((H+D)/C=0.02)なり、プラズマの熱負荷が小さく、炭素再堆積層があまり上昇しなかった(約600K)領域では水素同位体濃度が高く((H+D)/C=0.13)なった。これらの濃度は、再堆積層の最高到達温度における黒鉛への飽和水素同位体蓄積濃度に相当する。以上のことより、たとえ炭素再堆積層が堆積したとしても、プラズマ放電中に一時的にでも炭素再堆積層の温度を上昇させることができれば、そこへの水素同位体蓄積量が大幅に減少させることができることが強く示唆された。また、炭素再堆積層表面が急激に昇華・損耗(アブレーション)するような条件でレーザー光を照射すれば、蓄積されていた水素同位体のほぼ全量を除去できることが明らかとなった。現在建設が予定されている国際熱核融合実験炉(ITER)では、炉内に堆積した炭素再堆積層への多量のトリチウム蓄積が懸念されている。炭素再堆積層への水素同位体蓄積挙動は炉壁温度などの運転条件によって大きく変化することが予想されるが、現在のところ、ITERの炉壁温度である450K以上の高い炉壁温度における炭素再堆積及びそこへの水素同位体蓄積についてのデータはほとんど得られていない。そこで本研究では、573Kと高い炉壁温度で運転されたJT-60及びJT-60Uの炭素再堆積層への水素同位体(軽水素(H)及び重水素(D))蓄積量を昇温脱離法(TDS)で測定し、炉壁温度が水素同位体蓄積挙動に与える影響について考察した。また、炭素再堆積層中に蓄積された水素同位体を除去する手法としてレーザー誘起脱離(LID)法を取り上げ、水素同位体蓄積手法として用いる場合の最適なレーザー光照射条件について検討した。実験の結果、プラズマ放電時にプラズマの熱負荷が大きかったために、炭素再堆積層の温度が最高で800K程度にまで上昇した領域では、炭素再堆積層中水素同位体濃度が低く((H+D)/C=0.02)なり、プラズマの熱負荷が小さく、炭素再堆積層があまり上昇しなかった(約600K)領域では水素同位体濃度が高く((H+D)/C=0.13)なった。これらの濃度は、再堆積層の最高到達温度における黒鉛への飽和水素同位体蓄積濃度に相当する。以上のことより、たとえ炭素再堆積層が堆積したとしても、プラズマ放電中に一時的にでも炭素再堆積層の温度を上昇させることができれば、そこへの水素同位体蓄積量が大幅に減少させることができることが強く示唆された。また、炭素再堆積層表面が急激に昇華・損耗(アブレーション)するような条件でレーザー光を照射すれば、蓄積されていた水素同位体のほぼ全量を除去できることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-05J52592 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05J52592 |
fosB遺伝子の選択的スプライシング産物による脳機能制御機構の解明 | 様々な脳ストレスを受けたマウスでは海馬においてAP-1転写因子のサブユニットをコードするfosB遺伝子の発現が顕著に誘導される。fosB遺伝子は選択的なスプライシングにより2つの成熟mRNA (fosBと・fosB)を産生し、様々な脳ストレスに対する応答に関与している。fosB遺伝子を完全に欠損するマウスと2つのmRNAの一方のみを発現するマウスを用いた解析から2つのfosB mRNA産物が多様な遺伝子の発現制御を介して海馬歯状回における成体脳神経新生を制御し、てんかんやうつ様行動を抑制することが明らかになった。Fosb遺伝子産物については,全長タイプのFosb mRNAからFOSB/vFOSBが翻訳され,エクソン4の1部を欠くΔFosb mRNAからはΔFOSB/Δ2ΔFOSBが翻訳されることがin vitroで報告されている。本年度は,まず昨年度樹立したΔFosb mRNA欠損マウスの解析から,Fosb mRNAがFOSBとvFOSBをコードすることをin vivoで証明した。Fosb遺伝子完全欠損マウスでは海馬歯状回における神経新生が顕著に低下しているが,Fosb mRNA欠損マウスの解析から海馬における神経新生はFOSB/vFOSBを欠損した状態,すなわちFOSB/Δ2ΔFOSBのみ発現する状態で定常状態の神経新生が野生型マウスよりもわずかながら上昇する事が明らかになった。一方,カイニン酸投与により誘導される神経新生は野生型マウスとFosb mRNA欠損マウスの中間レベルであった。以上の結果は定常状態の神経新生は主としてΔFOSB/Δ2ΔFOSBで制御され,ストレス誘発時の神経新生にはFOSB/vFOSBが強く関与することを示している。Fosb遺伝子完全欠損マウスでは,カイニン酸投与後の新生神経細胞の海馬門への移動が増加していたが,Fosb mRNA欠損マウスでは逆に野生型マウスよりも有意に低下していた。Fosb遺伝子完全欠損マウスは,うつ様行動と老化とともにてんかんを自然発症し,海馬歯状回分子層の構造異常を呈するが,Fosb mRNA欠損マウスではこれらの表現型が全て見られないことから,ΔFOSB/Δ2ΔFOSBがうつ様行動とてんかん発症を抑制し,かつ新生神経細胞の海馬歯状回分子層への移動と正常な神経回路形成に寄与することを示している。さらにカイニン酸投与時のミクログリオーシスと補体応答がFOSB/vFOSBによって制御されることを明らかにした。様々な脳ストレスを受けたマウスでは海馬においてAP-1転写因子のサブユニットをコードするfosB遺伝子の発現が顕著に誘導される。fosB遺伝子は選択的なスプライシングにより2つの成熟mRNA (fosBと・fosB)を産生し、様々な脳ストレスに対する応答に関与している。fosB遺伝子を完全に欠損するマウスと2つのmRNAの一方のみを発現するマウスを用いた解析から2つのfosB mRNA産物が多様な遺伝子の発現制御を介して海馬歯状回における成体脳神経新生を制御し、てんかんやうつ様行動を抑制することが明らかになった。研究代表者は、選択的なスプライシングによりFosBとΔFosB蛋白質をコードするfosB遺伝子を完全に欠損するマウスにおいて、13週齢以降80週齢までに約80%以上のマウスがてんかん発作を繰り返し起こすことを見出した。またfosB完全欠損マウスでは10週齢でカイニン酸を投与した場合、発作の程度は野生型マウスとほとんど差を認めなかったが、海馬歯状回におけるBrdU陽性細胞の出現が顕著に低下していた。さらに、fosB完全欠損マウスは強制水泳試験において顕著な遊泳時間の低下を認め、うつ病の症状を呈する可能性が示唆された。平成23年度は、これらの結果を踏まえて、(1)fosB遺伝子完全欠損マウス、(2)FosB欠損マウス、(3)野生型マウスを用いて以下の成果を挙げた。【てんかん発作の脳波による解析】海馬と大脳皮質に電極を穿刺し脳波を測定することによりfosB遺伝子完全欠損マウスが自然発生的に海馬をてんかん焦点として皮質に展開する側頭葉てんかん発作を示すことが明らかになった。【海馬の構造異常の解析】50週齢前後のマウス脳の病理解析により、fosB遺伝子完全欠損マウスのみが海馬歯状回の分子層の希薄化すなわち海馬硬化を呈し、さらに一部は分子層の走行の異常を呈することが明らかになった。てんかん発作歴のあるものは特に歯状回分子層の走行異常が顕著であった。【うつ様の行動解析】3日連続の強制水泳試験の結果、fosB遺伝子完全欠損マウス>FosB欠損マウス>野生型マウスの順に遊泳時間の短縮が顕著であった。【遺伝子発現プロファイルの解析】海馬RNAのマイクロアレイ解析から,fosB完全欠損マウスでは神経新生の促進,うつとてんかんの抑制に関わる遺伝子(Gal,Trh, Vgfなど)の発現が有意に減少している事が明らかになった。当初の計画に加えてFosBタンパク質がさまざまな脳ストレスに対する抵抗性を獲得するのに必須であることを明らかにし、さらにΔFosBによる行動感作に拮抗することを見出し、Biological Psychiatry誌に発表した。ΔFosB欠損マウスの樹立に成功したので、現在C57BL/6Jへ迅速戻し交配を進めている。平成24年度にはこのマウスを含めた比較解析が可能になる。当初予定していた、4系統のマウス、(1) fosB遺伝子完全欠損マウス,(2) FosB欠損マウス, | KAKENHI-PROJECT-23657116 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23657116 |
fosB遺伝子の選択的スプライシング産物による脳機能制御機構の解明 | (3)ΔFosB欠損マウス,(4)野生型マウスが全て用意できたことから、うつ病及びてんかんの発症と神経新生の低下の原因となるfosB遺伝子産物の特定が可能になったので、計画どおりに研究を推進する。また、脳から神経細胞、アストロサイト、ミクログリアを単離してRNAを精製し、脳細胞の種類別にマイクロアレイ解析を進め、それぞれのfosB遺伝子産物によって発現が制御される標的遺伝子の同定も進める計画である。新しく樹立したΔFosB欠損マウスの迅速戻し交配を進め、他の3系統と同じくC57BL/6Jバックグランドに純化し、実験に必要なマウスを繁殖するための費用として60万円、4系統のマウスから神経細胞、アストロサイト、ミクログリアを分離し、マイクロアレイによる遺伝子発現プロファイリングを行う経費として50万円、試薬代として48万円を予定している。論文の英語校正及び投稿料として40万円を計上している。 | KAKENHI-PROJECT-23657116 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23657116 |
高品質半導体ダイヤモンドを用いた高温動作パワースイッチングデバイスの研究 | 高温動作が可能な耐環境ダイヤモンドパワーデバイスの実現のため、スイッチングデバイスの開発を行った。材料パラメータを用いた解析モデルからプレーナ型MESFETおよび縦型MOSFETの動作特性を計算し、200-300°Cで特性変動のない素子が実現可能であることを求めた。プレーナ型MESFETを試作し、発表時で世界最高性能である1.5kVの絶縁破壊電圧を得た。デバイスの高出力化のためコンタクト層へのp+選択成長およびイオン注入層の適用を試み、ドレイン電流の大型化が可能であることが分かった。SiO2を相関絶縁膜に用いたインターコネクト技術を開発し、30mmまでのゲート幅拡大が可能となった。高温動作可能なダイヤモンド高出力FETを目標とした4か年計画の第1年目である平成24年度は、以下の研究を行った。(1)ダイヤモンドスイッチングデバイス性能予測:はじめにデバイス動作モデルの構築のため、材料基本パラメータについて検討を行った。まず、ドーピング濃度と移動度、および移動度の温度依存性モデルを構築した。キャリア飽和速度に到達しないことを前提とし、移動度のキャリア濃度と温度の依存性実験データへのフィッティングによる経験的モデルとした。これにより、室温から400°Cまでの温度範囲でダイヤモンドドリフト層チャネルの特性予測を行うことが可能となった。さらに、上記モデルを用いて平成25年度の研究内容である基本デバイス方程式の構築を前倒しして行った。基本方程式として、まずはディープディプレション型2次元モデルによる閾値電圧解析および最大動作電流解析を行った。構造解析では閾値を一定としてエピタキシャル成長ドリフト層のドーピング濃度およびエビ膜厚の解析を行った。各ドーピング濃度、エビ膜厚における最大ドレイン電流の温度依存性について解析を行い、動作温度に応じて最適ドーピング濃度およびエピ膜厚の組み合わせがあることを確認した。さらに、1A以上の大電流動作に必要なフィンガー構造について検討を行っている。本研究内容を用いて学会発表の予定である。(2)ダイヤモンドスイッチングデバイス要素技術開発:要素技術開発のため、設備拡充を行った。高品質フィールドプレート形成のためイオン化ガス流量制御ユニットを導入した。また厚膜Al203フィールドプレート構造を縦型ショットキーダイオードに組み込み、FETのゲート構造に適用可能な高耐圧ダイオードを実現した。本研究による成果は学会および論文で報告した。(3)ダイヤモンド高温パワーデバイス試作:ソースメジャーユニットを購入し3端子測定を可能とした。高温動作可能なダイヤモンド高出力FETを目標とした4か年計画の第2年目である平成25年度は、以下の研究を行った。(1)ダイヤモンドスイッチングデバイス性能予測:平成24年度に行った材料基本パラメータを用いて、ダイヤモンドディープディプレション動作プレーナ型MESFETの動作モデルを構築した。動作モデルにはグラジュアルチャネル近似、ロングチャネル近似、移動度一定近似を組み込み、さらに寄生抵抗成分の影響を組み込んで解析モデルを構築した。閾値電圧を10、20Vとした場合のFET最大電流値を求め、それぞれ10、100A動作を必要とした場合の必要ゲート幅について設計を行った。また、横型デバイスにおけるセルピッチからチップ面積を求め、必要欠陥密度やウェハ面積、ウェハ単価について検討を行った。(2)ダイヤモンドスイッチングデバイス要素技術開発:要素技術開発のため、設備拡充を行った。エピ成長時の不純物制御(窒素取り込み低減)を行うため、エピタキシャル成長用マイクロ波プラズマCVD装置に高真空ゲートバルブを導入した。エピ成長時の不純物取り込み、成長レートを計算し、平成24年度に行ったチャネルへの必要ドーピング濃度に対して成長条件を確定した。エピタキシャル成長膜の欠陥について検討を行い、デバイスとエッチピット欠陥の相関を評価した。本研究による成果は学会および論文で報告した。(3)ダイヤモンド高温パワーデバイス試作:プレーナ型MESFET試作のためのプロセスフローを構築した。リフトオフによるTi/Auオーミック接合(EB蒸着)、リフトオフによるPtショットキー接合の形成を行い、構造を試作した。高温動作可能なダイヤモンド高出力FETを目標とした4か年計画の第3年目である平成26年度は、以下の研究を行った。(1)ダイヤモンドスイッチングデバイス性能予測:平成24、25年度に行った材料基本パラメータを用いたダイヤモンドディープディプレション動作プレーナ型MESFETの動作モデルをベースに、高温動作時の性能限界と特性の温度依存性を求めた。また、高温での応用を前提に、200300°Cの範囲で動作が一定となる素子構造の理論設計値を求めた。また、試作MESFETの寄生抵抗成分を評価し、設計との誤差を評価した。(2)ダイヤモンドスイッチングデバイス要素技術開発:上記試作素子の寄生抵抗解析により、600V級素子ではコンタクト抵抗が大きな寄生抵抗成分となることを解析し、コンタクト抵抗の低減に向けて取り組みを行った。低抵抗化にはpー層上にイオン注入もしくは選択成長により局所的に極薄のp+層を形成する方法を用いた。評価にはcTLM法を用い、接触抵抗を評価した。選択成長、イオン注入のいずれにおいても、pー層上に形成したソース・ドレインオーミックコンタクトよりも低抵抗であることを示したが、pー/p+界面にも接触抵抗が存在することが分かった。本研究による成果は学会および論文で報告する予定である。(3)ダイヤモンド高温パワーデバイス試作:縦型ダイヤモンドFET構造を作製するプロセスを完成させるため、エッチング手法とエッチング後のCVD成長について試験を行った。 | KAKENHI-PROJECT-24360113 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24360113 |
高品質半導体ダイヤモンドを用いた高温動作パワースイッチングデバイスの研究 | エッチング時には円形もしくは角丸型構造とした設計がCVD成長による安定面形成により(100)もしくは(111)面が優先的に形成されることがわかった。またSEM観察により、接合界面において異常成長が発生していることがわかった。高温動作が可能なダイヤモンド高出力FETの実現を目標とした4か年計画の第4年目である平成27年度は、以下の研究を行った。(1)ダイヤモンドスイッチングデバイス性能予測:試作したディープディプレション型MESFETに対して、閾値電圧から求めたドリフト層ドーピング濃度および設計値を用いてTCADによるシミュレーションを行った。この結果、1.5kVの破壊電圧に対してゲート電極のドレイン端には10MV/cm以上の最大電界が印加されていることが予想された。また、一般に用いられているアバランシェパラメータを用いると、シミュレーションによるブレークダウン電圧は実験的に得られているブレークダウン電圧よりも小さいことが分かった。高耐電圧化にはFPなどのゲート電界緩和構造が必要である。(2)ダイヤモンドスイッチングデバイス要素技術開発:高出力化のためゲート幅の大型化を行った。まずドレイン電極をAuワイヤでボンディング接続する方法を行い、9.4mmまでゲート幅を拡張する方法をテストした。ソース・ドレインコンタクト下には選択成長によるp+層を形成し、コンタクト抵抗の低抵抗化を行った。さらに、Al2O3およびSiO2を層間膜として同じ面積で30mm以上までのゲート幅拡張をテストした。この手法ではゲート幅効率は0.15m/cm2であり、さらなる大型化には縦型構造が必要である。(3)ダイヤモンド高温パワーデバイス試作:試作した9.4mmゲート幅素子にて150°Cにて最大ドレイン電流が得られ、28mAまでの実電流を得た。高温動作が可能な耐環境ダイヤモンドパワーデバイスの実現のため、スイッチングデバイスの開発を行った。材料パラメータを用いた解析モデルからプレーナ型MESFETおよび縦型MOSFETの動作特性を計算し、200-300°Cで特性変動のない素子が実現可能であることを求めた。プレーナ型MESFETを試作し、発表時で世界最高性能である1.5kVの絶縁破壊電圧を得た。デバイスの高出力化のためコンタクト層へのp+選択成長およびイオン注入層の適用を試み、ドレイン電流の大型化が可能であることが分かった。SiO2を相関絶縁膜に用いたインターコネクト技術を開発し、30mmまでのゲート幅拡大が可能となった。FETの試作に成功し、トップデータを実現し、IEEE Electron Device Letter誌への論文発表および応用物理学会、ダイヤモンドシンポジウム、SBDDへの学会発表を行った。 | KAKENHI-PROJECT-24360113 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24360113 |
生体触媒の選択的制御による物質生産 | 薬用人参毛状根によるグリチルレチン酸の変換反応においては、3種の新規物質を含む計6種の変換物が得られた。特徴的な変換反応としてはグルコースの6位に選択的にマロニル化が進行し、マロニルグルコースおよびマロニルソホロースの配糖体が変換物とし得られた。変換物のうち2種の配糖体に甘草の甘味物質グリチルリチンと同程度の甘味を認めた。また、生薬『センソ』の強心活性成分であるレジブフォゲニンの変換反応においては、4種の新変換物が得られ、薬用人参毛状根は、ステロイド骨格に対して1βおよび5β位に立体選択的に水酸基を導入すると共に、3位水酸基に対してのみ配糖化反応を行った。また、モノテルペン類に対して強い水酸化および配糖化能を有するツキヌキユ-カリによるレジブフォゲニンの変換反応では配糖化反応はほとんど進行せず5β位にのみ立体選択的に水酸基が導入されたmarinobufaginが選択的に生成した。生体触媒を利用した物質生産に関しては、ウド培養細胞によるアントシアニンおよび黄耆毛状根によるサポニンの生産研究を行った。ウド培養細胞に関しては、乾燥重量当たり、13%のアントシアニン含量を有する株の作出に成功した。一方、黄耆毛状根に関しては、毛状根の中でサポニン含量の高いA.me C-2株をB5培地にて大量培養し、これよりagroastragaloside I,II,III,IVと命名する4種の新規トリテルペン配糖体を含む12種を単離した。A.me C-2株と生薬黄耆より得られる配糖体画分は、TLCおよびHPLCにおいて同様なパターンを示した。一方、糖質分解酵素を用いた糖転移反応による強心配糖体の合成およびエステル加水分解酵素を利用したアシル化アントシアニンの合成に関しては、現時点では成功していない。薬用人参毛状根によるグリチルレチン酸の変換反応においては、3種の新規物質を含む計6種の変換物が得られた。特徴的な変換反応としてはグルコースの6位に選択的にマロニル化が進行し、マロニルグルコースおよびマロニルソホロースの配糖体が変換物とし得られた。変換物のうち2種の配糖体に甘草の甘味物質グリチルリチンと同程度の甘味を認めた。また、生薬『センソ』の強心活性成分であるレジブフォゲニンの変換反応においては、4種の新変換物が得られ、薬用人参毛状根は、ステロイド骨格に対して1βおよび5β位に立体選択的に水酸基を導入すると共に、3位水酸基に対してのみ配糖化反応を行った。また、モノテルペン類に対して強い水酸化および配糖化能を有するツキヌキユ-カリによるレジブフォゲニンの変換反応では配糖化反応はほとんど進行せず5β位にのみ立体選択的に水酸基が導入されたmarinobufaginが選択的に生成した。生体触媒を利用した物質生産に関しては、ウド培養細胞によるアントシアニンおよび黄耆毛状根によるサポニンの生産研究を行った。ウド培養細胞に関しては、乾燥重量当たり、13%のアントシアニン含量を有する株の作出に成功した。一方、黄耆毛状根に関しては、毛状根の中でサポニン含量の高いA.me C-2株をB5培地にて大量培養し、これよりagroastragaloside I,II,III,IVと命名する4種の新規トリテルペン配糖体を含む12種を単離した。A.me C-2株と生薬黄耆より得られる配糖体画分は、TLCおよびHPLCにおいて同様なパターンを示した。一方、糖質分解酵素を用いた糖転移反応による強心配糖体の合成およびエステル加水分解酵素を利用したアシル化アントシアニンの合成に関しては、現時点では成功していない。薬用人参毛状根によるグリチルレチン酸の変換反応においては、3種の新規物質を含む計6種の変換物が得られ、3位水酸基の配糖化によるエーテル型配糖体の生成および30位カルボキシル基への配糖化によるエステル型配糖体の生成が確認された。特徴的な変換反応としてはマロニル化が進行し、マロニルグルコースおよびマロニルソホロースの配糖体が変換物とし得られた。変換物のうちエーテル型配糖体2種に甘草の甘味物質グリチルリチンと同程度の甘味を認めた。また、薬用人参毛状根を用いた生薬『センソ』の強心活性成分であるレジブフォゲニンの変換反応においては、当初期待した通り4種の新変換物が得られ、薬用人参毛状根は、ステロイド骨格に対して1betaおよび5beta位に立体選択的に水酸基を導入すると共に、3位水酸基に対してのみ配糖化反応を行った。この4種の変換物には、強心活性があると期待される。ウド培養細胞からは、2種のアントシアニンを単離・構造解析した。また、培養条件の化学的調節によりアントシアニンの高生産条件を見いだし、乾燥重量当たり、13%の含量を有する株の作出に成功した。さらに選択的変換反応を行う目的で、新たに培養細胞・器官系を約10系統確立し、これらを用いて、グリチルレチン酸、ステビオール等の変換反応を検討中である。一方、糖質分解酵素を用いた糖転移反応による強心配糖体の合成は、現時点では成功していない。現在、我々の用いている酵素では分子サイズの小さい化合物しか糖転移反応は成功していない。 | KAKENHI-PROJECT-05671765 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671765 |
生体触媒の選択的制御による物質生産 | 前年度において、薬用人参毛状根を用いた生薬『センソ』の強心活性成分であるレジブフォゲニンの変換反応では、4種の新変換物が得られ、薬用人参毛状根は、ステロイド骨格に対して1βおよび5β位に立体選択的に水酸基を導入すると共に、3位水酸基に対してのみ配糖化反応を行うことが明かになっている。今回は、モノテルペン類に対して強い水酸化および配糖化能を有するツキヌキユ-カリを用いてレジブフォゲニンの変換反応を試みた。その結果、今回の実験条件では、ツキヌキユ-カリでは配糖化反応はほとんど進行せず5β位にのみ立体選択的に水酸基が導入されたmarinobufaginが選択的に生成した。生体触媒を利用した物質生産研究の一環として、Agrobacterium rhizogenesにより形質転換して得られた黄耆毛状根によるサポニン類(astragaloside)の生産研究を行った。種々の培養条件下、毛状根の成長もよく、サポニン含量の高いA.meC-2株をB5培地にて大量培養し、これを用いてサポニン成分の構造研究を行った。その結果、agroastragalosideI,II,III,IVと命名する4種の新規トリテルペン配糖体と8種のastragaloside類を単離した。今回構造解析に用いたA.meC-2株と生薬黄耆より得られる配糖体画分は、TLCおよびHPLCにおいて同様なパターンを示していた。この事から、黄耆毛状根と生薬黄耆の薬理学的同等性が明らかになれば、黄耆毛状根は生薬黄耆の代用品として用い得ると考えられる。エステル加水分解酵素を利用したアシル化アントシアニンの合成に関しては、acceptorとしてcyanin、donnerとしてchlorogenic acid,sinapoylglucose、enzymeとしてはtannase,chlorogenic acid esteraseを用いて種々アシル化反応を試みたがいずれの条件においても、アシル化アントシアニンを得ることが出来なかった。 | KAKENHI-PROJECT-05671765 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671765 |
分泌型,非分泌型精液中の精漿蛋白質(α⊆-SGP)の定量 | ヒト精漿からABO血液型物質【α_2】-Seminoglycoprotein(仮称、【α_2】-SGP)を分離・精製し、これをウサギにAdjuvant免疫して抗【α_2】-SGP血清を作製した。この抗血清を用い、30例のA型精液について【α_2】-SGPの含有量と分泌型,非分泌型との関係を科研費購入の電気泳動装置を使用して検討した。まず、30例のA型精液について、分泌型,非分泌型の別と、全蛋白質量との関係を調べたところ、総蛋白質量が0.13.5mg/mlで非分泌型と判定されたグループ(22例)と、総蛋白質量が6.38.9mg/mlで非分泌型と判定されたグループ(5例)と、更に総蛋白質量が6.37.9mg/mlで分泌型と判定されたグループ(3例)とに大別することができた。次に、分泌型,非分泌型と判定された8例の精液について、AB型血清,AB型赤血球でよく吸収した抗【α_2】-SGP血清を用いて【α_2】-SGPの含有量をロケット免疫電気泳動で測定したところ、分泌型と判定された精液では1.75.6mg/ml、非分泌型と判定された精液では明確な沈降線の形成を認めず、分泌型と非分泌型の精液とにおいて【α_2】-SGPの含有量にかなりの差があることが判明した。これは、【α_2】-SGPの多寡と分泌型,非分泌型との関連性を示唆する成績である。次に抗【α_2】-SGP血清を用いて、各分泌液ならびに各臓器についてロケット免疫電気泳動とPAP法とを行って、【α_2】-SGPの局在を検したところ、精嚢,顎下腺,舌下腺,耳下腺,乳腺に【α_2】-SGPの局在を確認することができた。しかし、胃,腸粘膜などには局在は認められなかった。このことは、【α_2】-SGPと胃粘膜に存在するABO式血液型物質とでは、その蛋白質部分の構造に相違があることを示唆しており、今後それぞれの蛋白部分の化学構造を含めて検討を要する課題である。ヒト精漿からABO血液型物質【α_2】-Seminoglycoprotein(仮称、【α_2】-SGP)を分離・精製し、これをウサギにAdjuvant免疫して抗【α_2】-SGP血清を作製した。この抗血清を用い、30例のA型精液について【α_2】-SGPの含有量と分泌型,非分泌型との関係を科研費購入の電気泳動装置を使用して検討した。まず、30例のA型精液について、分泌型,非分泌型の別と、全蛋白質量との関係を調べたところ、総蛋白質量が0.13.5mg/mlで非分泌型と判定されたグループ(22例)と、総蛋白質量が6.38.9mg/mlで非分泌型と判定されたグループ(5例)と、更に総蛋白質量が6.37.9mg/mlで分泌型と判定されたグループ(3例)とに大別することができた。次に、分泌型,非分泌型と判定された8例の精液について、AB型血清,AB型赤血球でよく吸収した抗【α_2】-SGP血清を用いて【α_2】-SGPの含有量をロケット免疫電気泳動で測定したところ、分泌型と判定された精液では1.75.6mg/ml、非分泌型と判定された精液では明確な沈降線の形成を認めず、分泌型と非分泌型の精液とにおいて【α_2】-SGPの含有量にかなりの差があることが判明した。これは、【α_2】-SGPの多寡と分泌型,非分泌型との関連性を示唆する成績である。次に抗【α_2】-SGP血清を用いて、各分泌液ならびに各臓器についてロケット免疫電気泳動とPAP法とを行って、【α_2】-SGPの局在を検したところ、精嚢,顎下腺,舌下腺,耳下腺,乳腺に【α_2】-SGPの局在を確認することができた。しかし、胃,腸粘膜などには局在は認められなかった。このことは、【α_2】-SGPと胃粘膜に存在するABO式血液型物質とでは、その蛋白質部分の構造に相違があることを示唆しており、今後それぞれの蛋白部分の化学構造を含めて検討を要する課題である。 | KAKENHI-PROJECT-61570296 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61570296 |
数学教育におけるリテラシーについてのシステミック・アプローチによる総合的研究 | 数学的リテラシーについて、その研究の動向と特質、理論的な位置付け、構成要素、個人の様相、カリキュラム、教師のあり方、社会での保持・発展について論じた。そこでは、数学的リテラシーの特性として、人間の生涯を視野におくこと、現在における自己実現と未来のための準備、多様な文化を総合すること、という3つの重要な視点を示した。そして、数学的リテラシーは、特に我が国の高等学校の数学教育を再考する上で鍵となることを指摘した。数学的リテラシーについて、その研究の動向と特質、理論的な位置付け、構成要素、個人の様相、カリキュラム、教師のあり方、社会での保持・発展について論じた。そこでは、数学的リテラシーの特性として、人間の生涯を視野におくこと、現在における自己実現と未来のための準備、多様な文化を総合すること、という3つの重要な視点を示した。そして、数学的リテラシーは、特に我が国の高等学校の数学教育を再考する上で鍵となることを指摘した。数学的リテラシーの数学教育学に立った概念化と構成要素を日本・諸外国の数学教育学の文献を基に検討した。その結果、数学的リテラシーは、数学化された社会において、教養から識字、智の変化と全体的に変化するとともに、文化的知識から批判的能力へと変化し、数学の知識面から方法面へと変化してきていることが確認された。また、背景となる数学教育の目的を考えるには、将来の社会像、人間観、数学観が必要であることが示された。数学的リテラシーを考える構成要素は、日・米・PISAなどの先行研究の分析から、数学の本質と特徴、内容、方法からなることが明らかにされた。そこでは、リテラシーとしての能力面の重視や、自己評価能力も含められることが論じられた。さらに、数学的リテラシーの育成方法の研究方法として、教室に基づく研究と質的な研究の重要性が確認された。さらに、フィンランドやオランダというPISA調査で数学的リテラシーで好成果を挙げた国を分析した。これらの国々では、子どもと数学が離れていない要因として、社会全体が数学学習を大切にしていること、そして、大学入試がなく高大接続が円滑に進められていうることなどが指摘された。わが国の状況についても、PISA、知識と活用などから検討された。さらに、社会における数学的リテラシーの保持・発展の方法を明らかにするために、科学博物館やサイエンスカフェの実践を検討した。その結果、科学的リテラシーについては、社会に積極的に普及が図られており、そこでは科学コミュニケーションのあり方が中心的な課題であることが分かった。数学的リテラシーについて、第1年次に続き、数学教育学の文献や実践研究の結果をもとに検討した。その結果、数学的リテラシーの構成要素として、モニター・自己評価・コントロールなどのメタ認知能力や、局所的とともに大局的論証能力が注目され、数学的リテラシーを育成する上での、数学の概念理解と能力形成の均衡の必要性、問題解決における予想や比較の重要性が検討された。また、メタ認知研究における質問紙調査法が数学的リテラシーの研究法としても有効であることや、図形指導において、数学的リテラシーを人間形成的・実用的・文化的の3つの教育的価値から考えられることが示された。さらに、算数の授業実践で、数学的リテラシーにつながる意思決定能力や話し合いながら考える力などの算数の力が育成できそうなことが示され、このような従来もあったと思われる授業を数学的リテラシーというより包括的な概念で捉え直して新たな方向性を見出そうとするところに意義があることが確認された。また、人間科学・社会科学の立場から、人間はチンパンジーであるがその社会性に大きな特徴があり、外部記憶装置を持つことも特徴であると説明され、そして、一般の人が人間科学・社会科学のリテラシーを持つとは、自然や人間・社会を時間軸という視座から理解することだと確認された。さらに、数学的リテラシーについて、数学の本質・概念・能力・活用事例からなる4元モデルが提案され、また、日本社会における教養概念の変化について検討された。これらに基づいて、次年度に向けて、次の6つの視点;数学教育学における数学的リテラシーの概念化、数学的リテラシーの構成要素の構成、個人の生涯の数学的リテラシーのモデルの考案、学校における数学的リテラシーの育成のためのカリキュラムの構成、数学的リテラシーを育成する上での教師のあり方の考察、社会における数学的リテラシー育成の考察、から検討を始めた。数学的リテラシーについて、第2年次に続き、6つの視点から検討した。(1)数学教育学における数学的リテラシーの概念化については、「科学とは」ということが科学と非科学とを区別する基準を考える「線引き問題」をもとに考察され、「数学とは」ということが数学の歴史、数学の応用、数学の認識の仕方などから考察された。また、数学観についても無謬主義と可謬主義の2つの考え方から考察された。さらに、数学教育学のあり方にも言及された。(2)数学的リテラシーの構成要素の構成については、科学技術の智プロジェクトの数理科学専門部会報告書の検討をもとに考察されるとともに、現代社会の必要性から考察された。特に、批判的思考の重要性が認められた。また、現代社会の必要性から数学的リテラシーの構成要素が論じられた。(3)個人の生涯の数学的リテラシーのモデルの考案については、それぞれの年齢段階で読む本や文書を数学的リテラシーの観点から分析することにした。また、児童・生徒を対象にした数学的リテラシーの調査問題を作成して、同じ問題に対する反応の違いを分析することにした。(4)学校における数学的リテラシーの育成のためのカリキュラムの構成については、数学を学ぶ意義を実感させる指導が論じられた。 | KAKENHI-PROJECT-20300262 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20300262 |
数学教育におけるリテラシーについてのシステミック・アプローチによる総合的研究 | また、数学的リテラシーを育成するカリキュラムの枠組みも検討された。さらに、小学校における算数の力の育成を目指した授業について検討を行い,第6学年での「単位当たりの量」「比例配分」などの授業を実施し、検討した。(5)数学的リテラシーを育成する上での教師のあり方の考察については、数学教師に対する調査結果をもとに教師のあり方が考察された。そして、数学的リテラシーの育成に関して,日本数学教育学会論文発表会での調査結果をもとに、高等学校教師を対象とした調査が実施された。(6)社会における数学的リテラシー育成の考察については、社会で一般人が数学的リテラシーを保持・発展させる枠組みについて、ビジネスでの数学力などが議論された。そして、3年間の議論をまとめて報告書を作成した。 | KAKENHI-PROJECT-20300262 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20300262 |
中性子散乱法による空間反転対称性の破れた超伝導体の特異電子状態の研究 | 空間反転対称性の破れた超伝導体に期待される『ヘリカル磁束相の検証』を目的とする研究に挑戦した。単結晶育成、結晶評価、磁化測定を経て、LaNiC2の中性子小角散乱実験による磁束格子の観測に挑んだが、磁気ブラッグ散乱を観測することはできなかった。その原因を追求し、より良質の結晶を得るため、理化学研究所の創発物性研究センターの協力の下、チョクラルスキー法、レーザーフローティングゾーン法による単結晶育成、EDX測定による結晶評価等を実施した。結果、結晶の成長速度を0.3mm/h程度にするとより均一で磁束のピン留めが弱い結晶を育成できることがわかった。平成29年度に中性子小角散乱の再実験を予定している。空間反転対称性の破れた超伝導体の特徴は、従来型の超伝導体で電子対がパウリの原理からスピン一重項か三重項どちらか一方の状態しかとれないのに対し、「両者が混成した新しい量子状態が実現すること」、さらに第2種超伝導体の場合、渦糸のまわりの渦電流により渦巻き型の磁気モーメントが誘起される「ヘリカル渦糸状態と呼ばれる特異な磁束状態が発生すること」の2点である。ヘリカル渦糸状態では、ゼーマン効果によりフェルミ面の重心のシフトが起こり、クーパーペアがズレのベクトルをqとして、kと-k+qの電子間で形成されるが、これは強いパウリ常磁性効果によりフェルミ面の重心がずれるために実現するFulde-Ferrell-Larkin- Ovchinnikov(FFLO)状態と同様の状態であり、超伝導の秩序変数が空間変調した渦糸状態の出現が期待される。しかも、FFLO状態が低温+強磁場という極限領域でしか実現しないのに対し、ヘリカル磁束相は超伝導転移温度以下のすべての磁束状態で実現する。このことは、FFLO相の実証実験では不可能であった磁束格子の散乱強度が強い低温+弱磁場領域での実験が可能であることを意図する。これまでにヘリカル磁束相の観測成功例は存在しない。そこで、我々は空間反転対称性の破れた超伝導体について『ヘリカル磁束相の初観測』と『その特徴の解明』を目的とする研究を開始、平成26年度は、良質な単結晶試料育成条件の確立および中性子小角回折実験を計画した。しかし、12月に予定していたドイツミュンヘンのHeinz Maier-Leibnitz Zentrumの中性子小角散乱装置SANSーIを利用した実験が、冷凍機の故障のため直前にキャンセルとなった。そこで磁化測定装置や抵抗・比熱測定装置、および、ラウエ回折装置を使った作成試料の検定や、また、より高質な単結晶試料育成条件の探索等を行うにとどまった。空間反転対称性の破れた超伝導体は、1スピン一重項と三重項状態の混成が可能となること、また第2種超伝導体の場合は、さらに、2ヘリカル渦糸状態と呼ばれる、渦電流により渦糸のまわりに渦巻き型の磁気モーメントが誘起される特異な磁束状態が発生すること、を特徴とする。特に、ヘリカル渦糸状態は、強いパウリ常磁性効果を持つ超伝導体に実現するFulde-Ferrell-Larkin- Ovchinnikov(FFLO)状態と同様、超伝導の秩序変数が空間変調した渦糸状態であり、その点でも注目度が高い。しかし、これまでにヘリカル磁束相の観測成功例は存在しない。これに対し、我々は空間反転対称性の破れた超伝導体について『ヘリカル磁束相の初観測』と『その特徴の解明』を目的とする研究を行っている。平成27年度は、LaNiC2にターゲットを絞り、フローティングゾーン法による単結晶試料の育成、磁化測定による超伝導特性の観測を経て、中性子小角回折実験によるヘリカル磁束相観測の基となる混合相における基本磁束格子の観測に挑戦した。中性子実験の施設は、ドイツミュンヘンのHeinz Maier-Leibnitz Zentrumの中性子小角散乱装置SANSーIである。結果、磁束格子からの明確な磁気ブラッグ散乱は観測されなかった。この結果の原因についての考察は次のコラムで述べるが、平成28年度はこの考察に基づき、研究方針を再構築し、研究推進を実行する予定である。磁束格子からの明確な磁気ブラッグ散乱が観測されなかった理由として、磁化測定で超伝導転移が明確に観測される単結晶試料であるが空間反転対称性の破れた物質としての結晶の完成度が低く磁束格子に乱れが生じ中性子磁気ブラッグ散乱が起こらなかった、あるいは、そもそも論としてこの物質の超伝導特性の一つである磁場侵入長が長いことでコヒーレンスな磁束格子は存在しているが磁気散乱強度が極端に弱く装置の測定限界を超えていたことが考えられる。これに対して、人間ができる対策は1つ。空間反転対称性の破れた物質としての結晶のモザイクの完成度を極限まで整え、それを持って再び中性子回折実験に挑戦をすることである。平成28年度はこれを実行することを計画している。空間反転対称性の破れた超伝導体は、1スピン一重項と三重項状態の混成が可能となること、また第2種超伝導体の場合は、さらに、2ヘリカル渦糸状態と呼ばれる、渦電流により渦糸のまわりに渦巻き型の磁気モーメントが誘起される特異な磁束状態が発生すること、を特徴とする。特に、ヘリカル渦糸状態は、強いパウリ常磁性効果を持つ超伝導体に実現するFulde-Ferrell-Larkin- Ovchinnikov(FFLO)状態と同様、超伝導の秩序変数が空間変調した渦糸状態であり、その点でも注目度が高いが、過去において観測実証例は存在しない。 | KAKENHI-PROJECT-26400351 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26400351 |
中性子散乱法による空間反転対称性の破れた超伝導体の特異電子状態の研究 | これに対し、我々は『ヘリカル磁束相の初観測』と『その特徴の解明』を目的とする研究を行っている。平成26年度は、空間変転対称性の破れた超伝導体の内、LaNiC2について、フローティングゾーン法による単結晶試料の育成、磁化測定による超伝導特性の観測を行った。さらに、中性子小角回折実験による混合相の磁束格子の観測を予定していたが、機器のトラブルにより次年度に延期となった。その後、平成27年度中に、中性子小角散乱実験を実行したが、周期的磁束格子の存在を示唆する磁気ブラッグ散乱は観測されなかった。これに対し、結晶の質の向上のため、平成28年度は、理化学研究所の創発物性研究センターの協力を得て、テトラアーク炉を用いたチョクラルスキー法、レーザーFZを用いたフローティングゾーン法による単結晶試料の育成を行い、EDX測定による結晶評価等を実施した。結果、結晶の成長速度を極端に落とした場合(0.30.4mm/h)により均一な単結晶試料が育成されることがわかったが、それでもなおLaCまたはLaC2が針状に析出していることがわかった。平成29年度は、さらに成長速度を落とした場合の結晶作成と評価、および、オークリッジ国立研究所での中性子小角散乱の再実験を予定している。空間反転対称性の破れた超伝導体に期待される『ヘリカル磁束相の検証』を目的とする研究に挑戦した。単結晶育成、結晶評価、磁化測定を経て、LaNiC2の中性子小角散乱実験による磁束格子の観測に挑んだが、磁気ブラッグ散乱を観測することはできなかった。その原因を追求し、より良質の結晶を得るため、理化学研究所の創発物性研究センターの協力の下、チョクラルスキー法、レーザーフローティングゾーン法による単結晶育成、EDX測定による結晶評価等を実施した。結果、結晶の成長速度を0.3mm/h程度にするとより均一で磁束のピン留めが弱い結晶を育成できることがわかった。平成29年度に中性子小角散乱の再実験を予定している。平成28年度は、空間反転のモザイクを極限まで整えたLaNiC2の単結晶試料の作成から研究に再挑戦する。具体的には、これまで「明確な超伝導転移を示す単結晶試料を作成する」と言うレベルではLaNiC2の単結晶育成は他の物質と比較して容易であるが、ある特定の方向に空間反転対称性が敗れるという結晶構造の不安定を抱えていることを鑑み、その完成度を上げるために、1結晶成長の速度を一桁落とし1mm/h以下にする、また、さらに不純物を減らすために2原材料の純度を一桁あげるなどの対策を行う。その後、できた試料について、磁化・電気抵抗・比熱等の基礎物理量の測定とX線よる結晶性の確認を行い、改善が確認されれば中性子回折実験を行う。物性実験、中性子散乱平成27年度は、平成26年度に実施予定であった中性子小角散乱実験を行い「空間反転対称性の破れた超伝導体における磁束格子観測」に挑戦、また、超格子反射の観測による「ヘリカル磁束相の存在実証」に挑戦します。また、CePt3Si、あるいは、LaNiC2の単結晶試料について、磁気的揺らぎの存在とその揺らぎの超伝導の発現機構への寄与について中性子非弾性散乱法を用いた研究を開始します。また、これらについて得られた研究成果を国内国際学会等で随時発表し、論文発表へとまとめていきます。一方で、単結晶作成が困難とされるLi2(Pd,Pt)3Bの試料作成についても継続的に挑戦します。 | KAKENHI-PROJECT-26400351 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26400351 |
鋼材の綿状加熱板曲げ加工の合理化に関する研究 | 鋼材の線状加熱板曲げ加工における加熱条件と角変形量の関係ならびに角変形の生成機構を明らかにするために,一連の実験研究と有限要素法による理論解析を行って,以下に述べるような研究成果を得た.1.板厚12, 16, 19mmの三種類の鋼板を使用して,アセチレン流量と加熱速度を変え計29通りの線状加熱実験を行い,鋼板の温度分布ならびに角変形量を計測した.温度計測値と有限要素法による非定常熱伝導解析結果を比較して,酸素アセチレン炎による鋼板加熱時の熱流束分布は2つのガウス分布の重ね合わせで近似できることを示し,酸素アセチレン炎の熱効率とアセチレン流量,鋼板の板厚および加熱速度の関係を表わす図表を作成し,有限要素法による2次元非定常熱伝導解析プログラムを用いて加熱線に垂直な板の横断面内の任意時刻における任意の点の温度の計算を可能にした.2.角変形量の実測値を整理して,加熱条件から角変形量を推定する近似式を求めた.この近似式による角変形の推定値は,本研究の実験範囲内ではほぼ±20%以内で実測値と一致した.3.加熱線の中央で加熱後方に単位長さを有する加熱線に垂直な板の横断面について,有限要素法による2次元熱断塑性解析を行い過渡変位ならびに残留変位の計算値と実測値を比較検討した.その結果,移動する熱源の前方に存在する低温域による変形拘束が角変形の生成に極めて重要な役割りを果たしており,熱源が考える断面を通過して数秒経過するまで板の裏面のすべての節点の垂直変位を拘束しその後これを解除することによって,少なくとも板厚が12mmの場合には角変形のシミュレーション解析がほぼ可能であること,線状加熱による角変形は主として温度上昇過程で板の表面側に生じる圧縮塑性変形と主として温度降下過程で板の裏面側に生じる引張塑性変形の重量効果によるものであることなど,線状加熱加工に関する重要な知見を得ることができた.鋼材の線状加熱板曲げ加工における加熱条件と角変形量の関係ならびに角変形の生成機構を明らかにするために,一連の実験研究と有限要素法による理論解析を行って,以下に述べるような研究成果を得た.1.板厚12, 16, 19mmの三種類の鋼板を使用して,アセチレン流量と加熱速度を変え計29通りの線状加熱実験を行い,鋼板の温度分布ならびに角変形量を計測した.温度計測値と有限要素法による非定常熱伝導解析結果を比較して,酸素アセチレン炎による鋼板加熱時の熱流束分布は2つのガウス分布の重ね合わせで近似できることを示し,酸素アセチレン炎の熱効率とアセチレン流量,鋼板の板厚および加熱速度の関係を表わす図表を作成し,有限要素法による2次元非定常熱伝導解析プログラムを用いて加熱線に垂直な板の横断面内の任意時刻における任意の点の温度の計算を可能にした.2.角変形量の実測値を整理して,加熱条件から角変形量を推定する近似式を求めた.この近似式による角変形の推定値は,本研究の実験範囲内ではほぼ±20%以内で実測値と一致した.3.加熱線の中央で加熱後方に単位長さを有する加熱線に垂直な板の横断面について,有限要素法による2次元熱断塑性解析を行い過渡変位ならびに残留変位の計算値と実測値を比較検討した.その結果,移動する熱源の前方に存在する低温域による変形拘束が角変形の生成に極めて重要な役割りを果たしており,熱源が考える断面を通過して数秒経過するまで板の裏面のすべての節点の垂直変位を拘束しその後これを解除することによって,少なくとも板厚が12mmの場合には角変形のシミュレーション解析がほぼ可能であること,線状加熱による角変形は主として温度上昇過程で板の表面側に生じる圧縮塑性変形と主として温度降下過程で板の裏面側に生じる引張塑性変形の重量効果によるものであることなど,線状加熱加工に関する重要な知見を得ることができた.船体の曲面を構成する鋼板の成型加工や溶接による変形の矯正にガス炎による線状加熱加工が広く用いられているが、これに関する解析的な研究は極めて少なく作業は専ら経験的な判断に依存して行われているのが現状である。本研究では、まずガス炎による鋼板加熱時の加熱条件と温度分布ならびに変形量の関係を実験的に調査して現象を支配する要因の影響を明らかにし、次に有限要素法による2次元熱弾塑性解析を行って加熱条件と塑性ひずみ分布ならびに変形量との関係を検討した。ガス炎による鋼板加熱時の温度分布を解析的に求めるには、ガス炎の熱量分布や熱効率を推定する必要がある。鋼板の板厚を12,16,19mm,アセチレン流量を1648l1min,加熱速度を0.251.00cm/secの範囲で変えた実験を行い、温度計測結果から熱源の熱量分布と熱効率を推定した結果、次のようなことが明らかになった。(1)ガス炎による鋼板加熱時の熱量分布は2種類のガウス分布の重ね合わせで近似的に表わされ、両者の熱量比はガス流量にほぼ無関係に一定である。(2)熱効率は、アセチレン流量、鋼板の板厚、加熱速度などによって4469%の範囲で著しく変化するが、実験結果を用いて推定することが可能である。(3)熱源の熱量分布範囲はほぼアセチレン流量のみで決まる。(4)上記の実験結果を用いて計算により求めた温度分布はかなり良く実験値と一致した。 | KAKENHI-PROJECT-61550315 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61550315 |
鋼材の綿状加熱板曲げ加工の合理化に関する研究 | 移動熱源による加熱時の鋼板の変形は本質的には3次元問題となるが、加熱線に垂直な板の横断面内の2次元熱弾塑性問題として有限要素法により加熱条件と塑性ひずみならびに変形量との関係を調査した結果、加熱の初期に生じる加熱面側に凸となるような角変形を拘束すれば近似的に現象の取扱いが可能であり、およそ450°C以上となる温度範囲に2%の固有ひずみが存在すると仮定すれば変形量をほぼ予測できることがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-61550315 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61550315 |
局在電磁場と分子系の空間的インタープレイによる光反応制御の理論 | 金属ナノギャップ中に生じる局在電磁場と分子波動の空間的インタープレイをフルに取り入れたグループ独自の理論手法で、ナノギャップにより単一分子レベルで禁制遷移やサイト選択励起が可能になること、分子ー金属結合系の固有状態制御により金属エネルギー透過やエネルギー凝集など特異な微視的エネルギーフローが生じることなどを明らかにした。またナノギャップでの輻射力により単分子運動制御が可能であることを明らかにした。本課題では、金属ナノギャップ等に局在した光電場と分子或いは量子ドットを対等な立場で取り扱う理論的手法により「光-分子強結合場」における光学応答の様相を解明する。具体的には以下の4項目を中心に研究を行う。(1)ナノ空間構造を持つ局在光電場と分子系波動関数の特異な空間相関に基づく分子状態制御の可能性を解明する。(2)局在光電場による化学反応場形成手段としての輻射力による分子運動制御の可能性を明らかにする。(3)局在した光電場が誘起する分子励起状態が、ナノ分極配向構造を持つ分子集合系においてどのように伝達するかを解明する。(4)量子相関を持つ光が光ー分子強結合場でどのように発生し、どのように分子系と相互作用するかを明らかにする。金属ナノギャップ中に生じる局在電磁場と分子波動の空間的インタープレイをフルに取り入れたグループ独自の理論手法で、ナノギャップにより単一分子レベルで禁制遷移やサイト選択励起が可能になること、分子ー金属結合系の固有状態制御により金属エネルギー透過やエネルギー凝集など特異な微視的エネルギーフローが生じることなどを明らかにした。またナノギャップでの輻射力により単分子運動制御が可能であることを明らかにした。19年度は以下の研究成果を得た。1)金属ナノギャップ中分子の光学禁制遷移の可能性検討金属ナノギャップ中で局在した電磁場下にタイマー分子が配置された場合の光学応答を計算し,ギャップより離れた場所では光学許容(双極子的)遷移のみが起こるのに対し,ナノギャップ近傍では光学禁制(非双極子)遷移が許容遷移と同程度の強度でおこる事が明らかになった。またその程度はナノギャップと分子タイマーの相対位置やタイマーの配向に敏感に依存する事を突き止めた。2)高効率もつれ合い光子対生成の理論相関光子対による化学反応を効率的に起こすために高効率にもつれ合い光子対が生成する機構を探り,共振器中に閉じ込められた光子と励起子分子が強く相互作用する場合に格段に効率が上昇する事を突き止めた。特にこの機構は半導体薄膜などを用いたデバイス実装を考える際に,効率を得るための有効な機構である事を示す事が出来た。3)キラル分子の円偏光レーザーによる輻射力の理論ポルフィリンタイマーを例にとり,エナンチオマーに対する左右円偏光の輻射力の差を理論的に評価し,常温による均一幅の増大や分子配向のランダムネスを考慮に入れても,輻射力によりエナンチオマー分離が可能である事を明らかにした。4)円環状分子配列構造のエネルギー移動の理論光合成アンテナ分子LH2の集合系におけるエネルギー移動効率を理論的に評価した。集合分子が分子間双極子相互作用でコヒーレントな励起状態を形成すると仮定した場合,円環状分子間の相互作用が大きく,状態密度が広いエネルギー領域に広がる状態ほど,効率的にエネルギー移動を起こす事を明らかにした。(1)光電磁場,物質波動関数双方の空間構造のインタープレイを考慮し、金属ナノギャップ近辺に配置された分子ダイマーの光学応答を調べた。結果として、ナノギャップ周辺での分子からの散乱光強度を見た場合、ナノギャップ近辺の増強電場から離れた場所では許容遷移による散乱電磁場強度に比べて禁制遷移のそれは無視できるのに対し、ナノギャップ近傍にある場合には両方が同程度の寄与を示すことなどが明らかになった。(2)赤色光合成細菌中に存在し、エネルギーの捕集と伝達を担う田2(辺縁アンテナ)間の励起エネルギー移動の機構を、局在光電磁場による励起の観点から調べた。その結果、B850ringの各準位の間で、エネルギー移動に対する寄与に大きな差があることを見出した。従来、エネルギー移動は輻射寿命が長いと考えられている最低励起状態(禁制準位)を介して起こるという推測や、最もトランスファーが強い準位(許容準位)が支配的であるという説などがあるが、準位間の緩和や、準位内での位相緩和等を考慮に入れた場合、これらの両方が有意な寄与をなす可能性を示唆する結果が得られた。(3)分子の共鳴光学応答を利用した輻射力による分子運動制御に関連して以下の成果が得られた。[1]キラル分子に対する円偏光照射によりエナンチオマーを選択的に運動制御可能であることが分かった。ポルフィリン分子やらせん状分子に対する計算を行い、非接触な運動制御であることを活かした応答の積算効果による有意な選択制御の可能性を示すことが出来た。[2]カーボンナノチューブの励起子準位に共鳴する光が誘起する輻射力により室温条件下でも極めて有意にサイズ選択的なトラップが可能であることを示した。[3]共鳴進行波中での力学的多粒子相関を検討した結果、多粒子系の分極相関を制御することによって負の散逸力が発生することを明らかにした。(1)光電磁場,物質波動関数双方の空間構造のインタープレイを考慮し、金属ナノギャップ近辺に配置された分子会合体の光学応答を調べた。 | KAKENHI-PLANNED-19049014 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-19049014 |
局在電磁場と分子系の空間的インタープレイによる光反応制御の理論 | 会合体は通常の光学許容モードの他、光学禁制なモードを有するが、ナノギャップ近辺では配置の条件により全てのモードが同程度の大きさで励起されることが分かった。さらにこれらのモードを、周波数毎に適当に位相を制御されたパルスで励起すればサイト選択的な励起が可能であることが明らかになった。これはナノギャッププラズモンによる光局在化をさらに越えた局所励起が可能であることを示している。また、ナノギャップモードよりスペクトル幅が狭い分子とギャップモードが相互作用した際、金属での吸収が抑制され、ほとんどのエネルギーが分子に凝集する条件があることが分かった。これは金属アンテナでの散逸を抑えて高効率なエネルギー利用を行うための新たなデバイス構造設計に示唆を与える結果である。(2)赤色光合成細菌中に存在し、エネルギーの捕集と伝達を担うLH2(辺縁アンテナ)間の励起エネルギー移動の機構を、局在光電磁場による励起の観点から調べている。21年度は、その円環構造が、生態系における揺らぎを前提にしたときに孤立した色素分子が配置されるより圧倒的にエネルギ移動効率において有利であることが明らかになった。特に孤立した色素分子系の場合にはエネルギー移動に対して「不規則性による遮閉効果」が存在することが分かり、円環構造を形成することに依る等方性の獲得とキャリア数の抑制が「不規則性による遮閉効果」を回避する上で重要な要素であることが明らかになった。(3)分子軌道計算による波動関数を用いてナノギャップ近傍での単分子に働く輻射力を評価した結果、禁制準位、許容準位共に、それぞれの波動関数の空間構造に応じた配向選択的な力を生み出すことが分かった。23年度は以下の成果があった。[1]金属ナノギャップ試料を用いて量子ドット、分子の捕捉実験を行うグループと共同で実験結果を解析し、共著論文として発表した。ギャップでの分子補足の可能性を通して光-分子強結合場を形成させる技術の可能性を示す成果である。[2]触媒反応における金属構造からの距離依存性について最適条件を示す興味深い結果が実験グループにより得られたが、プラズモン、分子、光の全てを自己無撞着に扱う理論手法によって良く再現できることが分かった。局在電場を化学反応に用いる際の最適条件を明らかにした成果である。[3]ナノギャップにあるカーボンナノチューブの単一分子ラマン分光を行う実験グループにより、通常の選択則では説明できない特異な信号が報告された。本グループでは分子の波動関数まで考慮に入れたギャップ-分子結合系の自己無撞着な計算により、実際に禁制遷移が起こっていることを明らかにした。単分子での禁制遷移がナノギャップで可能であることを始めて示した成果である。[4]ギャッププラズモンと量子ドット(分子)が適当な結合条件を満たしたときに金属を光励起しているにもかかわらず、金属での吸収が抑制されエネルギーがドットに集中する現象(超エネルギー凝集)を理論的に明らかにした。この現象は、補助系(今の場合は金属アンテナ)と結合したナノ構造における光学応答の新しい可能性を示しており、光-分子強結合場設計の自由度を拡張すると期待される | KAKENHI-PLANNED-19049014 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-19049014 |
VR を用いた4次元空間の可視化と複素力学系 | 今年度は、京都大学理学部の数学者である稲生啓行氏、九州大学マス・フォア・インダストリ研究所の数学者である鍛治静雄氏、東京大学情報理工学研究科のVR研究者である廣瀬通孝氏、松本啓吾氏、小川奈美氏とともに、4次元空間における回転運動をvirtual realityを用いて直感的に理解するためのデモ"Polyvision: 4D space manipulation system using VR"を作成した。4次元空間における回転は6自由度あり、3次元における回転の3自由度に比べても自由度が高く、非常にコントロールが困難であることが知られている。今回のデモは、バーチャル空間において(超立方体、射影曲面、ポイント・クラウド、ジュリア集合など)様々な4次元空間内のオブジェクトをxyz-, yzw-, zwx-, xyw-空間にそれぞれパースペクティブ射影し、それらをコントローラで3次元回転したものを元の4次元オブジェクトに反映させるというものである。このデバイスは4次元対象物を様々な方向から眺めることを可能にし、例えば射影曲面などの部分多様体についてはそれらの大域的トポロジーを、ポイント・クラウドとしてはそれらのデータセットとしての分離性・非分離性を、ジュリア集合など力学系の不変集合についてはそれらのフラクタル的性質の構造を、それぞれ直感的に理解することを可能にすると期待される。当初の予定では、研究期間の初年度は4次元可視化のためのアルゴリズムの設計などに費やす予定であり、デモの作成は第2年度以降にあると思われていた。しかしまず4次元での回転運動に特化したデモが作成可能であることが判明したため、初年度にデモが完成するという予想外の進展があった。4次元空間における回転運動のデモは完成したものの、本来の「両眼視差」と「運動視差」を用いて4次元対象物を可視化する計画はまだそのデモのデザインが絞り込めていない。今後はこの方向性を推し進めたい。特に問題なのは、2つの視差を同時に提示すると運動視差による奥行き感が両眼視差のそれに比べて弱くなってしまう点にあり、コンピュータグラフィクスの技術を用いて運動視差を強調するデモ設計を行っていきたい。今年度は、京都大学理学部の数学者である稲生啓行氏、九州大学マス・フォア・インダストリ研究所の数学者である鍛治静雄氏、東京大学情報理工学研究科のVR研究者である廣瀬通孝氏、松本啓吾氏、小川奈美氏とともに、4次元空間における回転運動をvirtual realityを用いて直感的に理解するためのデモ"Polyvision: 4D space manipulation system using VR"を作成した。4次元空間における回転は6自由度あり、3次元における回転の3自由度に比べても自由度が高く、非常にコントロールが困難であることが知られている。今回のデモは、バーチャル空間において(超立方体、射影曲面、ポイント・クラウド、ジュリア集合など)様々な4次元空間内のオブジェクトをxyz-, yzw-, zwx-, xyw-空間にそれぞれパースペクティブ射影し、それらをコントローラで3次元回転したものを元の4次元オブジェクトに反映させるというものである。このデバイスは4次元対象物を様々な方向から眺めることを可能にし、例えば射影曲面などの部分多様体についてはそれらの大域的トポロジーを、ポイント・クラウドとしてはそれらのデータセットとしての分離性・非分離性を、ジュリア集合など力学系の不変集合についてはそれらのフラクタル的性質の構造を、それぞれ直感的に理解することを可能にすると期待される。当初の予定では、研究期間の初年度は4次元可視化のためのアルゴリズムの設計などに費やす予定であり、デモの作成は第2年度以降にあると思われていた。しかしまず4次元での回転運動に特化したデモが作成可能であることが判明したため、初年度にデモが完成するという予想外の進展があった。4次元空間における回転運動のデモは完成したものの、本来の「両眼視差」と「運動視差」を用いて4次元対象物を可視化する計画はまだそのデモのデザインが絞り込めていない。今後はこの方向性を推し進めたい。特に問題なのは、2つの視差を同時に提示すると運動視差による奥行き感が両眼視差のそれに比べて弱くなってしまう点にあり、コンピュータグラフィクスの技術を用いて運動視差を強調するデモ設計を行っていきたい。当初は初年度に行われる海外でのコンピュータグラフィックスの国際会議に参加予定であったが、日程が合わず参加を断念した。そこでこの差額は翌年度にアメリカあるいはカナダで開催されるコンピュータグラフィックスの国際会議に参加するための海外旅費に充てる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18K18722 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K18722 |
超階層化を実現する無機半導体ハイブリッド共役ポリマーの創成 | 無機半導体と有機共役系分子が有する優れた特性をあわせ持つ次世代材料を創成するために、フラーレン、ポリチオフェンをもとに自己組織性を有する共役系分子を合成した。これと、金属ハライドとのハイブリッド化を試み、目的とする分子レベルでハイブリッド化された複合材料の合成に成功した。さらに、それらの特性と超階層性について調査した。無機半導体と有機共役系分子が有する優れた特性をあわせ持つ次世代材料を創成するために、フラーレン、ポリチオフェンをもとに自己組織性を有する共役系分子を合成した。これと、金属ハライドとのハイブリッド化を試み、目的とする分子レベルでハイブリッド化された複合材料の合成に成功した。さらに、それらの特性と超階層性について調査した。本研究では、無機半導体が有する優れた機能と実用性を継承し、これに共役ポリマーが有する多様性と柔軟性を付加することで、本領域が意図する革新機能を有する次世代材料を生み出すことを目的とする。分子構造の設計だけに止まらずに、共役ポリマーの設計の際に組織性、融合性を加味する。具体的には、共役ポリマーに単分散化、両親媒性化を施すことで、高組織性と超階層性を付与する。本年度の研究成果を下記に示す。1.超階層構造を実現する共役ポリマーと共役リガンドの合成本年度は、フラーレン骨格を有する共役リガンドとオリゴチオフェン骨格を有する共役リガンドの分子設計を行い、実際に合成を試みた。収率は低いものの目的の化合物が、純度よく得られた。さらに、このリガンドに水素結合性相互作用を付与するために、アミノ基やアンモニウム基を導入した。2.次元制御材料の開発上記の共役リガンドと無機半導体を分子レベルで複合化した有機無機ハイブリッド次元制御材料を得るために、共役リガンドと無機半導体であるハロゲン化鉛による反応を行った。その結果、共役有機層と半導体無機層が、層状に積み重なった超階層構造体が得られた。その構造解析をX線回折、AFM観察により行った。さらに、これらの材料の初期的な物性を調べるために、紫外・可視吸収や蛍光測定を行った。実現した超階層構造により、励起子吸収が観察され量子閉じ込め効果が見出された。さらに、有機層の共役成分を増加させると、無機層から有機層へのエネルギー移動が観察された。次元制御材料の開発平成17年度に開発したアミン基、アンモニウム基を有するフラーレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体と鉛ハライドを用いて、スピンコート法による無機・有機ハイブリッド材料を作成した。その結果、いずれの共役リガンを用いても良好な2次元量子井戸構造を形成することが分かった。さらに、高分子電解質とスルホン化フラーレン誘導体による超微粒子または0次元量子ドット構造の形成を試みた。ナノオーダーの超微粒子の作成が可能であり、特異な自己組織性や凝集構造が確認でき、超階層化が可能であることが示唆された。フラーレン誘導体の凝集により0次元性は観察されないが、機能触媒としての利用に期待できることがわかった。光学活性基を用いたポリチオフェンの合成光学活性基(S-、R-、ラセミ体)を有するポリチオフェン誘導体の合成に成功した。各ポリマーの基本物性、電気的特性、光学特性、ソルバトクロミズム、発光特性の評価を行った。R体の発光量子収率が最も高く、ラセミ体、R体と続いた。現在のところ、その原因は明らかになっていない。それぞれのポリチオフェン誘導体で基本特性はほとんど変わらないが、光学活性のあるなし、またはR体とS体では凝集構造が異なることが予想される。これらの光学活性基による超階層構造の違いを明確にするために、各ポリチオフェン誘導体のLangmuir-Blodgett膜の作製と水面上での凝集過程の観察を行った。シーケンス制御したポリチオフェン誘導体の合成光学活性置換チオフェンと無置換チオフェンの配列を制御することで、ホモポリマーより高い自己組織性や超階層性を得ること目的に、シーケンス制御したポリチオフェン誘導体の合成を行った。ナノストラクチャーの構築18年度までは超階層構造の構築法として、スピンコート法を用いてきたが、共役リガンドの難溶性により、その薄膜形成に制限があった。19年度は超階層構造の構築法として、Langmuir-Blodgett法やこれまでに本研究グループが開発したSelf-Assembly法、さらにはSelf-lntercalation法を用いて、開発した有機・無機ハイブリッド次元制御材料の薄膜化、および組織体形成の検討を試みた。さらなるナノストラクチャーの構築を目指して、フラーレン誘導体配位子の分子設計を行い、長鎖アルキル基を有する新たな誘導体を合成し、超階層構造の構築を行った。従来の材料と比較すると溶解性が向上し、上述のようなLB法やSelf-Assembly法を用いずに、2次元層状構造を有する均一な超薄膜が得られた。応用検討購入したソーラーシュミレーターを用い、得られたハイブリッド材料の光導電性、光電変換能について解析を行った。アルキルアミンと無機半導体による量子閉じ込め構造を有する薄膜では、光導電性は観察されなかった。一方、上述のフラーレン誘導体配位子を用いたハイブリッド薄膜は光導電性を示すことがわかった。以上より、有機薄膜太陽電池の応用への可能性を見出した。・応用検討光学活性基を有するポリチオフェンーフルオレン共重合体poly{ | KAKENHI-PROJECT-17067016 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17067016 |
超階層化を実現する無機半導体ハイブリッド共役ポリマーの創成 | 9, 9'-dihexylfluorene-alt-(3-[2-((S)-(+)-1-methyloctyloxy)ethyl]thiophene)}(PHF-alt-MOET)を合成し、その超階層性と物性の検討を行った。良・貧混合溶媒中で、PHF-alt-MOETは会合性を示し、超階層構造に由来する負のコットン効果を示した。この現象は、チオフェンユニットの長さに依存し、無置換のチオフェン環を一つ導入したpoly{9, 9'-dihexylfluorene-alt-(3-[2-((S)-(+)-1-methyloctyloxy)ethyl]-2, 2' hithiophene)}(PHF-alt-MOET-T)では正のコットン効果が観察され、主鎖のらせん構造がこの階層性を決定していることがわかった。PHF-alt-MOET膜は液晶性を示し、熱処理により分子の配向性が変化することが観察された。一方、PHF-alt-MOETT膜では同様の挙動は観察されず、主鎖の剛直性と有効共役長が長いことがわかった。PHF-alt-MOETの溶液系における円二色性発光の測定では、発光極大が484nm付近に観察され、通常のPLスペクトルの発光極大(460nm)に近い値を示した。さらに、100nmのPHF-alt-MOETスピンコート膜を220°C、1分間熱処理し、そのCPL測定を行った。熱処理後は、CPLスペクトル強度、g因子ともに急激に増大し、特にg因子は-0.31にまで達した。この値から右円偏光と左円偏光の比を算出すると約1 : 0.732であり、約30%右円偏光優位の発光になっていることがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-17067016 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17067016 |
アクセサリー細胞の免疫応答始動および関節機構 | Tリンパ球による免疫応答は,アクセサリー細胞(A細胞)と総称される非Tリンパ球性のIa抗原陽性細胞の存在なしには指導しない.我々のこれまでの研究によると,静止期T細胞を活性化し得るA細胞は樹状細胞(DC)に限られるが,活性化されて芽球化したT細胞はIa陽性マクロファージ(Mφ)やB細胞によっても刺激され得ること, MφはDC数が少なくて免疫応答が低いときにそれを高め,逆に高い免疫応答を抑制する調節機構をもっていることなど明らかになった.この二年間,更に研究を進め,下記のような結果を得た.1.MφのIa抗原発現はIFN-γによって誘導され, IFN-α, βによって抑制される.幼若マウスMφはIFN-βを自然状態で産生し, IFN-γによる自らのIa発現を抑制している.2.老化に伴って免疫能力は低下するが,樹状細胞の機能低下は系統差が認められ,必ずしも免疫老化の傾向を平行関係にはない.3.混合白血球反応(MLR)や一次抗体応答の場合と同様に,免疫T細胞の抗原特異的二次増殖応答においても, DCがA細胞であり, Mφは調節細胞である.4.上記応答やNLRでのMφによる増強作用は, Mφの分泌するIL-1とGM-CSFに依存していて,それらは単独でも作用するが,相乗効果が著しい.5.レクチンに対するT細胞増殖応答では, DCに比べれば活性は低いが, MφもA細胞として働く.また, Mφは4と同様に増強作用を示し,それら因子の標的はT細胞でなくてDCであることも4と同じである.6.Mφをノンラミニダーゼで処理し, IL-2存在下でCD8^+4^-細胞と培養すると, CD4^+ヘルパーT細胞非存在下でCTLへと分化する.Tリンパ球による免疫応答は,アクセサリー細胞(A細胞)と総称される非Tリンパ球性のIa抗原陽性細胞の存在なしには指導しない.我々のこれまでの研究によると,静止期T細胞を活性化し得るA細胞は樹状細胞(DC)に限られるが,活性化されて芽球化したT細胞はIa陽性マクロファージ(Mφ)やB細胞によっても刺激され得ること, MφはDC数が少なくて免疫応答が低いときにそれを高め,逆に高い免疫応答を抑制する調節機構をもっていることなど明らかになった.この二年間,更に研究を進め,下記のような結果を得た.1.MφのIa抗原発現はIFN-γによって誘導され, IFN-α, βによって抑制される.幼若マウスMφはIFN-βを自然状態で産生し, IFN-γによる自らのIa発現を抑制している.2.老化に伴って免疫能力は低下するが,樹状細胞の機能低下は系統差が認められ,必ずしも免疫老化の傾向を平行関係にはない.3.混合白血球反応(MLR)や一次抗体応答の場合と同様に,免疫T細胞の抗原特異的二次増殖応答においても, DCがA細胞であり, Mφは調節細胞である.4.上記応答やNLRでのMφによる増強作用は, Mφの分泌するIL-1とGM-CSFに依存していて,それらは単独でも作用するが,相乗効果が著しい.5.レクチンに対するT細胞増殖応答では, DCに比べれば活性は低いが, MφもA細胞として働く.また, Mφは4と同様に増強作用を示し,それら因子の標的はT細胞でなくてDCであることも4と同じである.6.Mφをノンラミニダーゼで処理し, IL-2存在下でCD8^+4^-細胞と培養すると, CD4^+ヘルパーT細胞非存在下でCTLへと分化する.今年度は、免疫記憶T細胞の抗原特異的増殖応答と、マイトゲンの一つであるCon【A_(12)】よるT細胞の抗原非特異的増殖応答におけるアクセサリー細胞(A細胞)の実体と役割について検討した。前者においては、一般にマクロファージ(Mφ)が抗原提示性A細胞であると考えられており、事実、これまでの方法でT細胞を調整した場合には、Mφと抗原の存在下で増殖を開始する。しかし、T細胞を更に精製して調製し、ごくわずかに混在するIa陽性細胞を除くと、MφによるT細胞増殖誘起は認められなくなることから、Mφは自律的A細胞でないことがわかった。種々検討の結果、A細胞の実体は樹状細胞(DC)であり、MφはDCが少数のためにT細胞応答が低い場合に、Mφ由来のインターロイキン1(IL1)の作用によって応答を高めるように働き、一方、DCが多数あったり、少数のDCとMφの協同作用によってT細胞増殖がすでに高いときには、それに更に加えられたMφは増殖を抑制するように作用するので、MφはA細胞そのものではないが、免疫応答の重要な調節細胞であることが明確になった。ConAに対する非特異的T細胞増殖応答においてもA細胞の存在は必須であるが、この場合には抗原特異的応答とは異なり、DCもMφもA細胞になり得る。ただし、その活性はDCの方が著しく高い。MφのA細胞活性はMφ由来のIL1によって代替可能である。しかし、その代替効果はMφのA細胞活性のレベルにとどまり、DCの高いA細胞活性を代替できないので、DCの作用はMφと異った面をもっていることが推察される。このことは、DCとMφをパラホルムアルテヒドで固定した場合に明らかである。すなわち固定によって、DCのA細胞活性は残存するのに対し、Mφのそれは完全に消失してしまう。 | KAKENHI-PROJECT-61480157 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61480157 |
アクセサリー細胞の免疫応答始動および関節機構 | 今後の問題は、上述のA細胞の作用機構を更に分子論的に検討することである。 | KAKENHI-PROJECT-61480157 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61480157 |
組織組み替え実験による前立腺肥大症の発生メカニズム解析 | 【主題1】ラット前立腺の基底上皮細胞由来培養細胞株NRP152へTGFa発現レトロウィルスベクターLZRSを導入し、TGFa過発現NRP152細胞を作製した。NRP152細胞におけるTGFaの過発現は、その受容体EGFRの発現量には影響しないものの、ARおよびERK1/2の意な発現減少を確認した。TGFaの過発現で細胞間接着が高まる傾向が認められたものの、継代を重ねる毎に対照群と何ら変わりなく、さらに細胞増殖の速度にも違いを認めなかった。免疫不全ヌードマウスの腎被膜下へ移植したTGFa過発現NRP152細胞ではCK14発現が確認された。対照細胞ではCK14発現が消失したため、TGFaの過発現が、細胞内シグナルを変化させ、NRP152細胞が有する基底上皮細胞の特徴を維持する可能性が示唆された。なお、本細胞をラット胎児泌尿生殖洞間充織細胞と組み合わせ、前立腺構造の再構築を試みたが、病理組織学的な検討に至る結果は得られなかった。【主題2】前立腺肥大症治療においてα1遮断剤は、長期投与により治療効果が減退する。我々は、α1遮断剤治療が前立腺の組織構築に及ぼす影響、とくに前立腺間質の構成成分に注目して組織学的検討を行った。生検施行例のうち非内服群21例とα1遮断剤内服群24例、そして術前α1遮断剤により治療された肥大症患者23例の手術組織についてマッソントリクローム染色を施行し、間質におけるコラーゲン線維と平滑筋の比率を算出した。間質の70%以上を線維が占める高値群は非内服群が4/21例(19.0%)であることに対して、α1遮断剤内服群(生検)で16/24例(66.7%)、手術症例では11/23例(52.2%)に認められ、α1遮断剤の内服により線維の占拠率が高い症例が多数、存在することが明らかとなった。ゼノグラフトモデルにおいては、タムスロシン投与により間質におけるコラーゲン線維の質的および量的な増大傾向が認められる症例(4/11例)が確認された。以上より、α1遮断剤はα1受容体シグナルを遮断することで間質細胞の分化に関与している可能性が示唆された。【主題1】ラット前立腺の基底上皮細胞由来培養細胞株NRP152へTGFa発現レトロウィルスベクターLZRSを導入し、TGFa過発現NRP152細胞を作製した。NRP152細胞におけるTGFaの過発現は、その受容体EGFRの発現量には影響しないものの、ARおよびERK1/2の意な発現減少を確認した。TGFaの過発現で細胞間接着が高まる傾向が認められたものの、継代を重ねる毎に対照群と何ら変わりなく、さらに細胞増殖の速度にも違いを認めなかった。免疫不全ヌードマウスの腎被膜下へ移植したTGFa過発現NRP152細胞ではCK14発現が確認された。対照細胞ではCK14発現が消失したため、TGFaの過発現が、細胞内シグナルを変化させ、NRP152細胞が有する基底上皮細胞の特徴を維持する可能性が示唆された。なお、本細胞をラット胎児泌尿生殖洞間充織細胞と組み合わせ、前立腺構造の再構築を試みたが、病理組織学的な検討に至る結果は得られなかった。【主題2】前立腺肥大症治療においてα1遮断剤は、長期投与により治療効果が減退する。我々は、α1遮断剤治療が前立腺の組織構築に及ぼす影響、とくに前立腺間質の構成成分に注目して組織学的検討を行った。生検施行例のうち非内服群21例とα1遮断剤内服群24例、そして術前α1遮断剤により治療された肥大症患者23例の手術組織についてマッソントリクローム染色を施行し、間質におけるコラーゲン線維と平滑筋の比率を算出した。間質の70%以上を線維が占める高値群は非内服群が4/21例(19.0%)であることに対して、α1遮断剤内服群(生検)で16/24例(66.7%)、手術症例では11/23例(52.2%)に認められ、α1遮断剤の内服により線維の占拠率が高い症例が多数、存在することが明らかとなった。ゼノグラフトモデルにおいては、タムスロシン投与により間質におけるコラーゲン線維の質的および量的な増大傾向が認められる症例(4/11例)が確認された。以上より、α1遮断剤はα1受容体シグナルを遮断することで間質細胞の分化に関与している可能性が示唆された。TGFα発現レトロウィルスベクター導入ラット前立腺基底上皮細胞由来培養細胞株NRP152の生化学的特性の解析ラット前立腺の基底上皮細胞由来培養細胞株NRP152へTGFα発現レトロウィルスベクターLZRSを導入し、TGFα過発現NRP152細胞を作製した。本年度は、in vitroおよびin vivoにおける生化学的特性を評価した。まず、RTPCRにより、NRP152細胞におけるTGFαの過発現を確認した。TGFαの受容体であるEGFRの発現量は、TGFαの過発現による影響を受けなかった。次に、ウェスタンブロッティング法にて、TGFα過発現NRP152細胞におけるアンドロゲン受容体およびERK1/2の有意な発現減少を確認した。一方、基底上皮細胞のマーカーであるサイトケラチン14(CK14)の発現に差は認められなかった。 | KAKENHI-PROJECT-18591748 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18591748 |
組織組み替え実験による前立腺肥大症の発生メカニズム解析 | 細胞形態の観察において、TGFαの過発現で細胞間接着が高まる傾向が認められたものの、継代を重ねる毎に対照群と何ら変わりなく、さらに細胞増殖の速度にも違いを認めなかった。次に、免疫不全ヌードマウスの腎被膜下へ移植したTGFα過発現NRP152細胞ではCK14発現が確認された。TGFαを過発現していない対照細胞ではCK14発現が消失したため、TGFαの過発現が、細胞内シグナルを変化させ、NRP152細胞が有する基底上皮細胞の特徴を維持する可能性が示唆された。前立腺肥大症治療の第一選択はα1遮断剤であるが,一定の有効性を認めるものの,長期投与により治療効果が減退することが知られている。我々は,α1遮断剤治療が前立腺の組織構築に及ぼす影響,とくに前立腺間質の線維化に注目して組織学的検討を加えた。本研究では生検施行例のうち無投薬群21例とα1遮断剤服用群24例,そして術前α1遮断剤により治療された肥大症患者23例の手術組織についてマッソントリクローム染色を施行し,間質における平滑筋細胞と線維組織の比率をコンピュータにて画像解析した。また,ゼノグラフトモデルとして,11症例の手術組織をテストステロン(10mg)を補充した免疫不全SCIDマウスの腎被膜下へ移植し,α1遮断剤投与(7日間)による間質の組織構築の変化について同様の画像解析を施行した。画像解析により,間質の70%以上を線維が占める高度線維化は無投薬群が4/21例(19.0%),α1遮断剤服用群(生検)で16/24例(66.7%),手術症例では11/23例(52.2%)に認められ,α1遮断剤の服用により間質の線維化は有意に増加することが明らかとなった。一方,筋:線維の比率と,肥大症の組織型(腺優位型,間質優位型,混合型)との間に関連性は認めなかった。ゼノグラフトモデルにおいては,タムスロシンの投与により間質におけるコラーゲン線維の質的および量的な増大傾向が認められる症例(4/11例)が確認された。以上より,α1遮断剤は前立腺間質の線維化を誘導することが示唆され,α1受容体は間質細胞の分化に関与している可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-18591748 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18591748 |
トリテルペンを創薬テンプレートとしたデュアルメカニズムの抗HIV薬創製研究 | ベツリン酸をリードとした抗HIV薬の創製研究により発見された,強力な抗HIV活性を示すHIV成熟阻害作用をメカニズムとするbevirimat及びベツリン誘導体をテンプレートとし,耐性HIVにも効果を示すベツリン酸及びベツリン誘導体創製を目的に研究を行った。ベツリンと逆転写阻害分子であるAZTをつなぐリンカーがエステラーゼで切断されることを期待して化合物,及びbevirimatとAZTの5'以外で縮合したハイブリッド化合物をデザイン,合成し,抗HIV活性評価を行った結果,強力な抗HIV活性を見出した。本結果にもとづき,さらに関連誘導体の合成と抗HIV活性評価を展開している。薬剤耐性HIVに対しても効果のある抗HIVリードの探索を目的として,本研究グループがこれまでの研究により発見した強力な抗HIVトリテルペン誘導体に逆転写酵素分子であるAZTを縮合させた化合物合成とその活性評価を実施した。これまでの研究で,betulinやbetulinic acidの3位にdimethyl succinyl, dimethyl glutaryl, glutaryl等を導入する化学的修飾が抗HIV活性を上昇させることが明らかになっている。特に3',3'-dimethylsuccinyl-betulinic acid (bevirimat)は,HIV成熟阻害作用を示すfirst-in-classの抗HIV化合物であり,AIDS治療薬としての臨床試験が実施された化合物である。一方,HIV逆転写酵素分子が容易に遊離されることを期待して、アミノ酸を構造中に含むリンカーをデザインし,本年度はまず,betulin誘導体の合成を行った。Betulinの3位にこれらジカルボン酸を導入後,28位に上記デザインのリンカーを介してHIV逆転写酵素阻害剤分子のAZTを導入した誘導体を合成した。合成した化合物の抗HIV活性を評価したところ,bevirimatよりも強力な抗HIV活性を示す化合物が見出された。また,数種の化合物にbevirimatと同定度の抗HIV活性が認められた。本年度は,3位の各種エステルを有する3-O-acylbetulin誘導体を構造中にアミノ酸を含むリンカーを介してAZTと縮合させた化合物の合成を行った。合成した化合物の抗HIV活性を評価したところ,bevirimatよりも強力な抗HIV活性を示す化合物が見出され,また,数種の化合物がbevirimatと同定度の抗HIV活性を示した点において,評価できる成果があげられていると判断できる。薬剤耐性HIVに対しても効果のある抗HIVリードの探索を目的として,本研究グループがこれまでの研究により発見した強力な抗HIVトリテルペン誘導体に逆転写酵素分子であるAZTを縮合させた化合物合成とその活性評価を実施した。これまでの研究で,betulinやbetulinic acidの3位にdimethyl succinyl, dimethyl glutaryl, glutaryl等を導入する化学的修飾が抗HIV活性を上昇させることが明らかになっている。特に3',3'-dimethylsuccinyl-betulinic acid (bevirimat)は,HIV成熟阻害作用を示すfirst-in-classの抗HIV化合物であり,AIDS治療薬としての臨床試験が実施された化合物である。前年度は、アミノ酸を構造中に含むリンカーをデザインし,betulin誘導体とのconjugateを合成し,抗HIV活性評価を行い,bevirimatよりも強い抗HIV活性を示す化合物を見出した。しかし,これまでの誘導体はAZTのリン酸化部位を縮合に利用していた点に改善できる可能性があると考え,3-O-acylbetulinic acid誘導体と逆転写酵素阻害剤であるAZTとの縮合部位をAZTの5'以外の位置で結合させた2タイプのconjugateをデザインし,化合物の合成を行った。合成した化合物の抗HIV活性を評価したところ,bevirimat及びAZTよりも強力な抗HIV活性を示す化合物が見出された。本化合物の抗HIV活性は,前年度に見出した化合物よりも協力であった。この結果をもとに,関連の化合物合成をさらに検討している。本年度は,3位に各種エステルを有する3-O-acylbetulinic acid誘導体と逆転写酵素阻害剤であるAZTとの縮合部位をAZTの5'以外の位置で結合させた2タイプのconjugateをデザインし,化合物の合成を行った。合成した化合物の抗HIV活性を評価したところ, bevirimat及びAZTよりも強力な抗HIV活性を示す化合物が見出された点において,評価できる成果があげられていると判断できる。薬剤耐性HIVに対しても効果のある抗HIV薬リードの探索を目的として,本研究グループがこれまでの研究により発見した強力な抗HIVトリテルペン誘導体に逆転写酵素分子であるAZTを縮合させた化合物合成とその活性評価を実施した。これまでの研究で,ベツリン酸やベツリンの3位にdimethyl succinyl, dimethyl glutaryl, glutaryl等を導入する化学的修飾が抗HIV活性を上昇させることが明らかになっている。特に3-O-(3',3'-dimethylsuccinyl)-betulinic acid (bevirimat)は,HIV成熟阻害作用を示すfirst-in-classの抗HIV化合物であり,AIDS治療薬としての臨床試験が実施された化合物である。前年度は、3-O-acylbetulinic acid誘導体と逆転写酵素阻害剤であるAZTとの縮合部位をAZTの5'以外の位置で結合させた2タイプのconjugateをデザインし,化合物の合成を行ったところ,bevirimat及びAZTよりも強力な抗HIV活性を示す化合物が見出された。 | KAKENHI-PROJECT-15K07998 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K07998 |
トリテルペンを創薬テンプレートとしたデュアルメカニズムの抗HIV薬創製研究 | 本年度は,一昨年度に実施したベツリン誘導体にアミノ酸を構造中に含むリンカーを介して結合したconjugateの合成と,抗HIV活性評価を行った研究結果にさらにデータを加えることを目的として,トリテルペン部分がベツリンからベツリン酸に置き換わったconjugate類の合成を検討した。また,得られた化合物の抗HIV活性を以前に合成した誘導体と比較し,構造活性相関に関する考察を検討することを目的として研究を行った。ベツリン酸をリードとした抗HIV薬の創製研究により発見された,強力な抗HIV活性を示すHIV成熟阻害作用をメカニズムとするbevirimat及びベツリン誘導体をテンプレートとし,耐性HIVにも効果を示すベツリン酸及びベツリン誘導体創製を目的に研究を行った。ベツリンと逆転写阻害分子であるAZTをつなぐリンカーがエステラーゼで切断されることを期待して化合物,及びbevirimatとAZTの5'以外で縮合したハイブリッド化合物をデザイン,合成し,抗HIV活性評価を行った結果,強力な抗HIV活性を見出した。本結果にもとづき,さらに関連誘導体の合成と抗HIV活性評価を展開している。本年度合成した誘導体に対応するbetulinic acid誘導体の合成を行い,トリテルペン部分の構造による活性の違いを検討する計画である。また,AZTの異なる部分でトリテルペン分子と縮合した誘導体の設計と化合物合成を検討を進める計画である。昨年度の研究で得られたbetulin誘導体に対応するbetulin酸誘導体の合成を行っており,両者の活性の比較を行う。また,本年度の研究で見出されたbetulin酸誘導体については,メカニズムの検討を共同研究者に依頼するとともに,本化合物をモデルにして,関連化合物の合成を行い,さらに活性の強い化合物の発見を目指す。本年度は,旅費として使用を予定していた予算の使用額に差が生じた。次年度に物品費として使用し,円滑な研究遂行につとめる。 | KAKENHI-PROJECT-15K07998 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K07998 |
新しいカテゴリ-に属する下痢原性大腸菌の病原論と分子遺伝学 | ヒトに下痢を惹起する下痢原性大腸菌は、腸管病原性大腸菌(EPEC),腸管毒素原性大腸菌,腸管侵襲性大腸徴,腸管出血性大腸徴,腸管凝集粘着性大腸菌(EAggEC)の5つのカテゴリ-に大別されている。このうち,EPECとEAggECはHEpー2細胞あるいはHeLa細胞への粘着様式で分類される。本研究では、タイと中南米で下痢症患者から分離された大腸菌について、HeLa細胞,プラスチック,ヒト小腸粘膜への粘着様式を走査電顕によって解析し、再分類を試みた。そのうちの数群についてはプラスミドと粘着遺伝子解析を行い、PCRによるDNA診断法を検討した。ClassIEPEC:既報の如くHeLa細胞上でmicrocolonyを作る一群は、プラスチックに粘着するものと粘着しないものに区別された。いずれもヒト小腸粘膜の絨毛には強い塗着性を示したが,回腸のパイエル板M細胞には親和性を示さなかった。EAggEC:既報の如くHeLa細胞上で凝集した粘着を示す一群は、Baudryら(1990)のDNAprobeで陽性を示すものと陰性結果をかえるものに区別された。上記のDNAprobe陽性株も、本研究で作製したヘマグルチニン遺伝子解析用PCR系で調べると中南米株とタイ株に分けられた。いずれも、プラスチックとM細胞に強い粘着性を示した。新しい病原体(候補)の特定を急いでいる。ヒトに下痢を惹起する下痢原性大腸菌は、腸管病原性大腸菌(EPEC),腸管毒素原性大腸菌,腸管侵襲性大腸徴,腸管出血性大腸徴,腸管凝集粘着性大腸菌(EAggEC)の5つのカテゴリ-に大別されている。このうち,EPECとEAggECはHEpー2細胞あるいはHeLa細胞への粘着様式で分類される。本研究では、タイと中南米で下痢症患者から分離された大腸菌について、HeLa細胞,プラスチック,ヒト小腸粘膜への粘着様式を走査電顕によって解析し、再分類を試みた。そのうちの数群についてはプラスミドと粘着遺伝子解析を行い、PCRによるDNA診断法を検討した。ClassIEPEC:既報の如くHeLa細胞上でmicrocolonyを作る一群は、プラスチックに粘着するものと粘着しないものに区別された。いずれもヒト小腸粘膜の絨毛には強い塗着性を示したが,回腸のパイエル板M細胞には親和性を示さなかった。EAggEC:既報の如くHeLa細胞上で凝集した粘着を示す一群は、Baudryら(1990)のDNAprobeで陽性を示すものと陰性結果をかえるものに区別された。上記のDNAprobe陽性株も、本研究で作製したヘマグルチニン遺伝子解析用PCR系で調べると中南米株とタイ株に分けられた。いずれも、プラスチックとM細胞に強い粘着性を示した。新しい病原体(候補)の特定を急いでいる。 | KAKENHI-PROJECT-03670223 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03670223 |
HIV-1感染急性期におけるVprと制御性T細胞の機能解明 | 生体内HIV-1増殖におけるVprの役割を解明することを目的として、Vpr欠損HIV-1と野生型HIV-1(JR-CSF株)をそれぞれヒト化マウスに接種した。Vpr欠損HIV-1の増殖効率は、野生型HIV-1に比して有意に低かった。また、急性期(感染後1-3週齢)の野生型HIV-1感染マウスでは、Tregにおける効率的なウイルス増殖とTregの枯渇が観察されたのに対し、Vpr欠損HIV-1感染マウスではそれらが観察されなかった。以上の結果から、急性期において、HIV-1はTregを効率的な自己増幅の場として利用していること、そして、VprによってTregの枯渇と免疫活性化が惹起されることが示唆された。HIV-1感染病態を再現できる新たな動物モデルを確立するために、重度免疫不全マウスであるNOGマウスにヒトCD34陽性造血幹細胞を移植し、ヒト造血能を1年以上維持できる"ヒト化マウス"を作出した。ヒト化マウスはHIV-1増殖を30週以上維持し、血中CD4T細胞の漸進的減少に代表されるHIV-1の感染病態を再現した。HIV-1は、構造・機能タンパク質に加え、Vif, Vpu, Vpr, Nefという4つのタンパク質("ウイルス因子")をコードしている。これまでの研究から、VprはアポトーシスとG2期での細胞周期停止(G2 arrest)を惹起することが明らかとなっている。しかしながら、適切な動物モデルがなかったため、生体内のHIV-1増殖過程における"ウイルス因子"の役割については明らかとなっていなかった。生体内HIV-1増殖におけるVprの役割を解明することを目的として、Vpr欠損HIV-1と野生型HIV-1(JR-CSF株)をそれぞれヒト化マウスに接種した。Vpr欠損HIV-1の増殖効率は、野生型HIV-1に比して有意に低かった。また、急性期(感染後1-3週齢)の野生型HIV-1感染マウスでは、Tregにおける効率的なウイルス増殖とTregの枯渇が観察されたのに対し、Vpr欠損HIV-1感染マウスではそれらが観察されなかった。これらの事象は、顕著なアポトーシスとG2arrestが野生型HIV-1感染Tregでは誘導されるのに対し、Vpr欠損HIV-1感染Tregではそれらが誘導されないことに起因していると考えられた。以上の結果から、急性期において、HIV-1はTregを効率的な自己増幅の場として利用していること、そして、VprによってTregの枯渇と免疫活性化が惹起されることが示唆された(Sato et al., manuscript in revision)。生体内HIV-1増殖におけるVprの役割を解明することを目的として、Vpr欠損HIV-1と野生型HIV-1(JR-CSF株)をそれぞれヒト化マウスに接種した。Vpr欠損HIV-1の増殖効率は、野生型HIV-1に比して有意に低かった。また、急性期(感染後1-3週齢)の野生型HIV-1感染マウスでは、Tregにおける効率的なウイルス増殖とTregの枯渇が観察されたのに対し、Vpr欠損HIV-1感染マウスではそれらが観察されなかった。以上の結果から、急性期において、HIV-1はTregを効率的な自己増幅の場として利用していること、そして、VprによってTregの枯渇と免疫活性化が惹起されることが示唆された。申請者はこれまで、ヒト化マウスモデルを用い、HIV-1感染急性期においてTregが枯渇すること、TregのHIV-1感受性が高いこと、そしてそれらがウイルス因子Vprに依存的であることを見出している。本年度は、特に研究計画2、3に則し、感染急性期におけるTregとVprによるHIV-1増殖亢進メカニズムの解明と、VprによるTregの枯渇促進メカニズムを解明を目的とした研究を実施した。これまでの研究から、Vprには細胞周期をG2/M期で停止させる機能(G2/M arrest)とアポトーシスを惹起する機能があることが明らかとなっている(Andersen et al, Exp Mol Pathol, 2008)。そこで、感染後1週の野生型およびVpr欠損HIV-1感染マウスの脾臓からヒト細胞を回収し、Tn, Tm, Treg各サブセットを分画する抗体と抗HIV-1 p24抗体で染色する。さらに、細胞のゲノムDNAをHoechst染色し、各サブセットのHIV-1感染細胞,非感染細胞の細胞周期をflow cytometry法により解析した。また、各サブセットのアポトーシスのレベルを、活性化caspase-3に対する抗体を用いて染色した。その結果、非感染Treg、Vpr欠損HIV-1感染Tregに比して、野生型HIV-1感染TregではG2 arrestおよびアポトーシスの頻度が有意に高いことが明らかとなった。さらに、申請者は、別のHIV-1アクセサリータンパク質であるVpuの生体内HIV-1増殖における解析も行い、Vpuが生体内HIV-1増殖を促進する役割を発揮することを明らかにした。本年度は、特に研究計画2「感染急性期におけるTregとVprによるHIV-1増殖亢進メカニズムの解明」と、研究計画3「VprによるTregの枯渇促進メカニズムを解明」に則した実験を行い、当初の想定と合致する結果を得ることができた。これらは当初、研究2年目終了時の達成を目標としたものであり、当初の計画以上に順調に研究が進展していることを表している。また、研究の幅を広げるために、別のHIV-1アクセサリータンパク質の生体内 | KAKENHI-PROJECT-23790500 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23790500 |
HIV-1感染急性期におけるVprと制御性T細胞の機能解明 | ウイルス増殖における機能解析に関する研究も展開し、開始1年で実験・解析を完了、論文化することに成功した。さらに、これまで得られた結果について精力的に国内外の学術集会で発表を行い、また、活発な情報交換を行った。研究計画1「感染急性期においてTregがHIV-1のamplifierとなっている可能性の追求」に特に傾注し、実験を行う。具体的には、可溶性IL-2とにジフテリア毒素の融合タンパク質(denileukin diftitox [DD])の投与により、人為的に生体内Tregを除去させる(Morse etal,Blood, 2008)。Tregが感染急性期におけるHIV-1 amplifierとなっていることを多角的に検証するために、DDを投与してTregを消失させたヒト化マウスにHIV-1を接種し、感染後2,4,7日における血漿中ウイルス量をreal-time RT-PCR法により定量する。コントロールとして、PBSを投与したマウスでも同様の実験を行う。そして、DDを用いたTregの消失により、同時期における血漿中ウイルス量が低下するか否かを評価し、感染急性期のHIV-1増殖におけるTregの役割を明らかにする。また、前年度の海外学術集会で得られた情報を基に、さらに詳細な研究を行う。具体的には、VprによるTregの枯渇によって免疫活性化が惹起される可能性について、活性化マーカーであるHLA-DR、CD38、CD69などを指標として評価を行う。ヒト化マウスを用いた実験を継続して実施するため、マウス購入費・維持費、ヒト造血幹細胞の購入費として使用する。また、DDを用いた実験を行うため、DDの購入費として使用する。そして、これまで得られた研究成果を学術論文として発表するための諸経費(論文校正、投稿料、掲載料、など)として使用する。 | KAKENHI-PROJECT-23790500 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23790500 |
殷周時代の葬制研究‐副葬品配置の分析から‐ | 本研究は夏・殷・西周時代を中心に、副葬された青銅礼器・武器の様相を分析し、当時の葬制(礼制)を明らかにすることを目的としている。平成24年度の研究成果について、以下の3点にまとめる。1、国内調査における研究成果:泉屋博古館(京都本館)・黒川古文化研究所・寧楽美術館蔵の殷周春秋戦国時代及び漢代の青銅器の調査(写真撮影、拓本採取、法量計測)を行った。主に青銅礼器と青銅武器を対象とし、各器種のデータを収集するとともに、製作技術や使用法の観点から分析を進めた。2、国外(中国)調査における研究成果:昨年度に引き続き青銅武器の毀兵行為の分析をテーマに、中国北京、山西省を中心に調査を行った。北京では国家博物館・首都博物館において琉璃河燕国墓地、宝鶏石鼓山墓地出土青銅器の実見・写真撮影を行った。山西省では山西省考古研究所・侯馬考古工作站に赴き、天馬-曲村墓地、横水墓地出土青銅器を中心に調査を行った。3、博士論文について:博士論文『西周時代の礼制と葬制ー青銅礼器・武器の副葬行為に関する研究ー』が昨年度までの成果及び本年度の主たる研究成果である。本論の目的は青銅礼器及び青銅武器の副葬行為から西周時代の「葬制」及び上位概念である「礼制」について検討していくことである。西周時代の葬制の伝播・展開・拡散のモデルを構築し、夏代から殷代にかけての青銅礼器葬制を被葬者の個人的権威を反映させる段階である「人」への副葬と位置付け、西周時代の規格化された葬制を「墓」への副葬と呼び、その差異を明らかにした。また、青銅礼器銘文における祭祀・儀礼から導かれる「礼制」の変化と副葬配置の変化は対応しており、西周前・中期は周王との関係性を重視した「公」の副葬、西周後期は諸侯国の貴族階級の個を重視した「私」の副葬であると結論付けた。平成24年度の主な成果である博士論文について、学位を取得したという意味において計画を達成できたと考えている。また、国内外における青銅器調査についても各研究機関と順調に連携した研究活動を行うことができた。ただし当初の計画として長江流域の殷周墓の資料調査を行う予定であったが、日中関係の情勢に配慮し、回数及び行き先を変更したことについて課題が残った。平成24年度で特別研究員の任期が終了するが、可能な限り国内外の青銅器調査を継続し、長江流域の殷周墓の資料収集及び調査を行なっていく。また、博士論文の内容を逐次学会及び論文において発表していく予定である。本研究は、西周時代を中心に副葬された青銅器の様相を分析し、当時の葬制(礼制)を明らかにすることを目的としている。平成23年度の研究成果について、以下の3点にまとめる。1、国内調査における研究成果:泉屋博古館(京都本館)蔵の青銅器の調査、主に西周時代の青銅器の調査を行なった。西周時代の前・中・後期それぞれの組成、形状等の詳細な観察により、時期ごとの性格を把握した。モノからみる形態の変化は、当時の使用法(祭祀儀礼)と密接な関係があり、その解明は西周礼制の理解につながる。2、国外(中国)調査における研究成果:殷周関連遺跡の実地調査及び各省考古研究所・博物館での青銅器資料調査と題し、計2回の調査を行なった。黄河中流域の各遺跡、研究所、博物館で調査を行ない、各地の青銅礼器、青銅武器の形態及び埋葬時の状況を分析した。成果の一部として「弓魚国葬制研究-対外関系分析」と題し、論文を発表している。また、北京大学サックラー芸術与考古博物館において、西周時代にみられる毀兵副葬の重要な資料である、天馬-曲村遺跡出土青銅戈の実測・写真撮影を行った。この研究成果については来年度に論文として投稿予定である。3、学会発表について:主に国外調査の成果(前年次を含む)を日本中国考古学会関東部会において発表した。陳西省岐山県鳳鳳山(周公廟)遺跡の調査状況を中心に、現地での最新の実地調査を紹介した。大型建築址及び大型墓群を中心とした墓葬分布の在り方から、西周王朝の重要拠点の空間認識への理解を深めた。日本中国考古学2011年度大会では、テーマ発表「モノの拡散」において、「西周時代後期における青銅礼器葬制の変化と拡散」と題し、口頭を行なった。国内外での青銅器調査により、モノ(副葬品)からコト(葬制)を見出す方法論を確立し、西周時代における葬制の拡散拠点の変化を明らかにしたことに重要な意義がある。本研究は夏・殷・西周時代を中心に、副葬された青銅礼器・武器の様相を分析し、当時の葬制(礼制)を明らかにすることを目的としている。平成24年度の研究成果について、以下の3点にまとめる。1、国内調査における研究成果:泉屋博古館(京都本館)・黒川古文化研究所・寧楽美術館蔵の殷周春秋戦国時代及び漢代の青銅器の調査(写真撮影、拓本採取、法量計測)を行った。主に青銅礼器と青銅武器を対象とし、各器種のデータを収集するとともに、製作技術や使用法の観点から分析を進めた。2、国外(中国)調査における研究成果:昨年度に引き続き青銅武器の毀兵行為の分析をテーマに、中国北京、山西省を中心に調査を行った。 | KAKENHI-PROJECT-11J04010 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J04010 |
殷周時代の葬制研究‐副葬品配置の分析から‐ | 北京では国家博物館・首都博物館において琉璃河燕国墓地、宝鶏石鼓山墓地出土青銅器の実見・写真撮影を行った。山西省では山西省考古研究所・侯馬考古工作站に赴き、天馬-曲村墓地、横水墓地出土青銅器を中心に調査を行った。3、博士論文について:博士論文『西周時代の礼制と葬制ー青銅礼器・武器の副葬行為に関する研究ー』が昨年度までの成果及び本年度の主たる研究成果である。本論の目的は青銅礼器及び青銅武器の副葬行為から西周時代の「葬制」及び上位概念である「礼制」について検討していくことである。西周時代の葬制の伝播・展開・拡散のモデルを構築し、夏代から殷代にかけての青銅礼器葬制を被葬者の個人的権威を反映させる段階である「人」への副葬と位置付け、西周時代の規格化された葬制を「墓」への副葬と呼び、その差異を明らかにした。また、青銅礼器銘文における祭祀・儀礼から導かれる「礼制」の変化と副葬配置の変化は対応しており、西周前・中期は周王との関係性を重視した「公」の副葬、西周後期は諸侯国の貴族階級の個を重視した「私」の副葬であると結論付けた。国内調査(泉屋博古館)で、青銅器の詳細な観察・分析を行えたことは、調査技術の向上とともに、後の中国での円滑な青銅器調査、及び良好な関係性を築くことにつながった。計2回の国外調査(中国)では、遺跡調査をはじめ、各研究機関と順調に連携した研究活動が行えた。また、中国で論文発表をしたことは、今後の国外調査にもつながる、本年次の研究活動及び成果を日本中国考古学会において計3回発表し、有意義な研究交流が行えた。以上のことから、当初の計画とほぼ同等の成果が挙げられたと自己評価する。平成24年度の主な成果である博士論文について、学位を取得したという意味において計画を達成できたと考えている。また、国内外における青銅器調査についても各研究機関と順調に連携した研究活動を行うことができた。ただし当初の計画として長江流域の殷周墓の資料調査を行う予定であったが、日中関係の情勢に配慮し、回数及び行き先を変更したことについて課題が残った。平成24年度は、主に博士論文殷周時代の葬制研究-副葬品配置の分析から-」(仮題)の執筆を中心に研究活動を行っていく。前年度に引き続き、泉屋博古館を中心とした国内での青銅器調査、及び黄河中流域を中心に中国での実地調査を行う予定である。また、前年度の調査結果の一部を「西周時代後期葬制研究-黄河中流域における葬制の変化と拡散-」(仮)、「西周時代青銅戈研究-毀兵副葬研究の問題点-」(仮)等の論文を投稿予定である。平成24年度で特別研究員の任期が終了するが、可能な限り国内外の青銅器調査を継続し、長江流域の殷周墓の資料収集及び調査を行なっていく。また、博士論文の内容を逐次学会及び論文において発表していく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-11J04010 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J04010 |
抗Fas抗体眼内投与による実験的自己免疫性ぶどう膜炎の発症期における抑制 | 網膜特異抗原であるInterphotoreceptorretinoid-binding protein(IRBP)を完全フロインドアジュバンド(CFA)とともにB10.Aマウスに免疫するとT細胞を主体とした自己免疫性ぶどう膜網膜炎(Experimental autoimmune uveoretinitis;EAU)が発症する。EAUは、活性化したIRBP反応性T細胞の眼内浸潤により発症すると考えられるため、本研究で我々は、Fas receptorと結合して、Fas receptorを発現している細胞にアポトーシスを誘導する抗Fas抗体を眼の前房内に局所投与することにより眼内の活性化T細胞にアポトーシスを起こさせ、EAUをその発症期で抑制できるかどうかについて検討を行った。抗Fas抗体のアイソタイプコントロール抗体を前房投与されたマウス群と比較して、抗Fas抗体を投与されたマウス群では、EAUの重症度の抑制がみられ、免疫組織化学染色により、より多くの眼内浸潤リンパ球のアポトーシスが確認された。また、抗Fas抗体を投与されたマウス群においては、抗体投与を行っていない対側の眼においてもEAUの抑制がみられたことにより、その脾細胞のIRBPに対するT細胞増殖反応、IFN-γ合成能をさらに解析した。その結果、アイソタイプコントロール抗体を投与したコントロール群と比較して、IRBPに対するT細胞増殖反応に変化はみられなかったが、IFN-γ合成能は強く抑制されており、眼内に投与された抗Fas抗体が全身性にIRBP反応性IFN-γ合成T細胞のアポトーシスを誘導していたことが示唆された。網膜に存在する臓器特異的抗原、Interphotoreceptorretinoid-bindirlg protein(IRBP)を完全フロインドアジュバンド(CFA)とともにB10Aマウスに免疫すると、免疫後2週目より自己免疫性ぶどう膜網膜炎(Experimental autoimmune uveoretinitis;EAU)が発症する。今回我々は、Fas抗原を介して細胞死(apoptosis)を誘導する抗Fas抗体をIRBP免疫後3週目のB10Aマウスに投与し、そのIRBPに対するリンパ節T細胞増殖反応、lFN-γ合成能、およびEAU重症度について検討を行った。その結果、IRBP免疫後に抗Fas抗体を投与されたB10Aマウスでは、コントロール抗体を投与されたマウスに比べて、IRBPに対するT細胞増殖反応、およびlFN-γ合成能が著明に低下していることを認めた。また、組織学的検索により、EAUの重症度も明らかに軽症化していた。次に、IRBP免疫後5週目、抗体投与後2週目のB10Aマウスに、IRBPまたは卵白アルブミン(Ovalbumine;OVA)を再免疫し、その2週後にIRBPおよびOVAに対するT細胞増殖反応を検討したところ、OVAに対するT細胞増殖反応は、抗Fas抗体を投与されたマウス、コントロール抗体を投与されたマウス間で有意差はみられなかったが、IRBPに対するT細胞増殖反応は、コントロール抗体を投与されたマウスに比べて抗IRBP抗体を投与されたマウスにおいては有意に減弱していた。これらのことより、IRBP免疫後に活性化されたIRBP反応性T細胞が、抗Fas抗体投与により特異的にapoptosisに陥り、その結果EAUの抑制がみられたと考えられる。網膜特異抗原であるInterphotoreceptorretinoid-binding protein(IRBP)を完全フロインドアジュバンド(CFA)とともにB10.Aマウスに免疫するとT細胞を主体とした自己免疫性ぶどう膜網膜炎(Experimental autoimmune uveoretinitis;EAU)が発症する。EAUは、活性化したIRBP反応性T細胞の眼内浸潤により発症すると考えられるため、本研究で我々は、Fas receptorと結合して、Fas receptorを発現している細胞にアポトーシスを誘導する抗Fas抗体を眼の前房内に局所投与することにより眼内の活性化T細胞にアポトーシスを起こさせ、EAUをその発症期で抑制できるかどうかについて検討を行った。抗Fas抗体のアイソタイプコントロール抗体を前房投与されたマウス群と比較して、抗Fas抗体を投与されたマウス群では、EAUの重症度の抑制がみられ、免疫組織化学染色により、より多くの眼内浸潤リンパ球のアポトーシスが確認された。また、抗Fas抗体を投与されたマウス群においては、抗体投与を行っていない対側の眼においてもEAUの抑制がみられたことにより、その脾細胞のIRBPに対するT細胞増殖反応、IFN-γ合成能をさらに解析した。その結果、アイソタイプコントロール抗体を投与したコントロール群と比較して、IRBPに対するT細胞増殖反応に変化はみられなかったが、IFN-γ合成能は強く抑制されており、眼内に投与された抗Fas抗体が全身性にIRBP反応性IFN-γ合成T細胞のアポトーシスを誘導していたことが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-10770958 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10770958 |
ショウジョウバエ中枢ニューロンの性決定に果たす細胞間相互作用の役割の解明 | 本研究では、ニューロンの神経突起の形態的な性差の形成におけるニューロンを取り巻く「性環境」の果たす役割に着目して解析を進めた。平成27年度においては、前年度に引き続き、ニューロンが雌の投射様式を獲得するために周囲に「雌の環境」が必要である可能性を検討した。そのために周囲の脳細胞はそのままに、雌に性転換した状態にあたる、fruitless (fru)の機能を喪失した細胞クローンを雄の脳内にモザイク法によって作出する実験を行った。この雌に性転換されたmcALaニューロンの神経突起形態について詳細な観察を行ったところ、雄特異的な突起の形成は認められなかった。これは、周囲の細胞が雄のままであるならば、細胞クローンのみを雌化した場合でも、雄型の形態を維持しているという当初の予想に反する結果であった。同時に、この結果から、mcALaニューロンの雄特異的な神経突起の形成には、mcALaニューロン自身でFruが発現することが必要とされることが示唆された。これらの作業と並行して、引き続き細胞間相互作用に関与する脳細胞の解明を行った。脳細胞の解明においては、モザイク法によりtransformer (tra)の機能を雌の少数の脳細胞で喪失させることにより、その細胞だけを雄に性転換させた。これまでの実験においては、mcALa, mALニューロンといった個々のニューロンの形態に着目していたが、本年度では、一部のニューロン集団を雄化した際にそれに呼応してmcALa及びmALニューロンに雄特有の突起が形成されるかどうかということに重点をおいて解析を進めた。その結果、mcALaニューロンが他のfruitless(fru)発現ニューロンと同時に雄化された場合に、不完全な形態ではあるものの雄特異的な神経突起を形成することがあった。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。本研究では、ショウジョウバエ中枢ニューロンの神経突起の形態的な性差の形成におけるニューロンを取り巻く「性環境」の果たす役割に着目して解析を進める。MARCM法によりtransformer (tra)の機能を選択的に雌の少数の脳細胞で喪失させることにより、その細胞だけを雄に性転換させた。それらの細胞をGFP標識し、抗GFP抗体とneuropile特異抗体を用いた二重蛍光染色をした後、共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析した。一部のニューロン集団を雄化した際にそれに呼応してmcALa及びmALニューロンに雄特有の突起が形成されるかどうかということに重点をおいて網羅的に解析を進めた。その結果、mcALaニューロンが同時に雄化された際に不完全な形態ではあるものの雄特異的な神経突起を形成する少なくとも3つのfruitless(fru)発現ニューロン群を同定した。また、mALニューロンについても、左右脳半球のmALニューロンが同時に雄化した場合、片側のみが雄化された場合と比べ、神経投射がより雄の様式に近づくことを明らかにした。これらの結果を受けて、相互作用するニューロン群の一方のみを雄化し、他方のニューロン群の投射パターンへの影響を検証するために、GAL4/UASシステムとは別の遺伝子強制発現系を用いたモザイク法を新規に確立した。この新規モザイク法を用いて脳内の一部のニューロン群をRFPで選択的に標識したところ、各脳に13つのニューロン群が形成された。本研究では、ニューロンの神経突起の形態的な性差の形成におけるニューロンを取り巻く「性環境」の果たす役割に着目して解析を進めた。平成27年度においては、前年度に引き続き、ニューロンが雌の投射様式を獲得するために周囲に「雌の環境」が必要である可能性を検討した。そのために周囲の脳細胞はそのままに、雌に性転換した状態にあたる、fruitless (fru)の機能を喪失した細胞クローンを雄の脳内にモザイク法によって作出する実験を行った。この雌に性転換されたmcALaニューロンの神経突起形態について詳細な観察を行ったところ、雄特異的な突起の形成は認められなかった。これは、周囲の細胞が雄のままであるならば、細胞クローンのみを雌化した場合でも、雄型の形態を維持しているという当初の予想に反する結果であった。同時に、この結果から、mcALaニューロンの雄特異的な神経突起の形成には、mcALaニューロン自身でFruが発現することが必要とされることが示唆された。これらの作業と並行して、引き続き細胞間相互作用に関与する脳細胞の解明を行った。脳細胞の解明においては、モザイク法によりtransformer (tra)の機能を雌の少数の脳細胞で喪失させることにより、その細胞だけを雄に性転換させた。これまでの実験においては、mcALa, mALニューロンといった個々のニューロンの形態に着目していたが、本年度では、一部のニューロン集団を雄化した際にそれに呼応してmcALa及びmALニューロンに雄特有の突起が形成されるかどうかということに重点をおいて解析を進めた。その結果、mcALaニューロンが他のfruitless(fru)発現ニューロンと同時に雄化された場合に、不完全な形態ではあるものの雄特異的な神経突起を形成することがあった。26年度の研究においては、mcALaニューロンの雄特異的な神経突起の形成を誘導している可能性のあるfru発現ニューロン集団を数種同定できた。 | KAKENHI-PROJECT-14J02877 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J02877 |
ショウジョウバエ中枢ニューロンの性決定に果たす細胞間相互作用の役割の解明 | しかし、当初予定していた周囲の脳細胞はそのままに、雌に性転換した状態にあたる、fruの機能を喪失した細胞クローンを雄の脳内にモザイク法によって作出する実験が、実験に用いる系統バエに不具合が生じたことにより思うように進めることができなかった。この実験は、本研究の重要な課題でもある、ショウジョウバエ中枢ニューロンの神経突起の形態的な性差の形成におけるニューロンを取り巻く「性環境」の果たす役割を解明する上で重要な実験であるので、優先的に進めていかなければならない。GAL4/UASシステムとは別の強制遺伝子発現系を用いたモザイク法を新規に確立することができたので、相互作用するニューロン群の一方のみを雄化し、他方のニューロン群の投射パターンへの影響を検証することが可能となった。27年度が最終年度であるため、記入しない。26年度の研究により、mcALaニューロンの雄特異的な神経突起の形成を誘導している可能性のあるニューロン群が一部特定されてきているので、今後の方針として、新規のモザイク法を用いてこれらのニューロンが雄化した際にmcALaニューロンの形態に与える影響を解析していく。また、雄化された異なるニューロン群を異なる色で標識するために、これまでの手法にBrainbowを取り入れ、「作用する側」と「作用される側」のニューロンを明確に区別して形態を計測する。また、一連の相互作用する相手となる脳細胞を解明する実験と同時に、突起形成における細胞間相互作用を担う分子機構を解明するための実験を実施する。ショウジョウバエにおいては、シグナル分子やそれらのレセプターに関与する遺伝子は同定されており、その突然変異やRNAi発現により機能阻害が可能である。モザイク法とは異なる狙ったニューロン群のみを操作することのできる発現部位限定法を用いて同定されたシグナル分子やレセプターの機能阻害を引き起こし、mcALaニューロンの雄特異的な神経突起の形成に対する影響を検証していく。27年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-14J02877 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J02877 |
未分化脂肪幹細胞の移植による軟骨内骨化を介した骨形成法と新しい骨再生療法への応用 | 従来の幹細胞を用いた骨再生療法は、血流不足に起因する移植組織の壊死を起こすことがあり、適用できる骨欠損の大きさに限界がある。そこで低酸素・低栄養環境に対して抵抗性をもつ軟骨を移植して軟骨内骨化を誘導する骨再生法が注目されている。しかしながら、移植に用いる軟骨を体外で作製するのには、多大なコストと労力がかかる。新しい骨再生法の開発を目指して本研究は、未分化脂肪幹細胞を移植することにより生体内での自発的な軟骨内骨化を誘導する方法の確立を目的とする。従来の幹細胞を用いた骨再生療法は、血流不足に起因する移植組織の壊死を起こすことがあり、適用できる骨欠損の大きさに限界がある。そこで低酸素・低栄養環境に対して抵抗性をもつ軟骨を移植して軟骨内骨化を誘導する骨再生法が注目されている。しかしながら、移植に用いる軟骨を体外で作製するのには、多大なコストと労力がかかる。新しい骨再生法の開発を目指して本研究は、未分化脂肪幹細胞を移植することにより生体内での自発的な軟骨内骨化を誘導する方法の確立を目的とする。 | KAKENHI-PROJECT-19K10259 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K10259 |
各種水質汚染物質の魚類好中球に対する免疫毒性評価と分子生物学的解析 | (1)ティラピアの鰾好中球に調整した塩化カドミウムを曝露し、ザイモサンを加えて貪食率を求めた。さらに好中球の活性酸素産生量についても測定した。また、メダカ、ゼブラフィッシュにおける暴露の影響を病原微生物を用いた感染実験で評価した。非曝露区では、3時間後の細胞生残率は98%であった。2x10^<-4>、2x10^<-5>、2x10^<-6>Mの濃度では86%、95%、96%であり、生残率の有意な低下が認められた。死細胞には核が断片化した像が多数認められた。貪食率は2x10^<-4>区で有意に低下した。また、活性酸素産生量は、非曝露区に対して3つの区いずれも10%ほど低下が認められたが、有意な差は認められなかった。メダカ、ゼブラフィッシュに対して1x10^<-4>Mの72時間曝露試験後にE. tardaによる感染実験を行ったが、非曝露区との間に有意な死亡率の低下は認められなかった。(2)孵化4日後のティラピア稚魚を排水基準および環境基準値の塩化カドミウムまたはクロム(III)に96時間曝露し、E. tardaに浸漬感染させ死亡する時間を調べた。カドミウムの環境基準区(0.01ppm)及びクロム(III)の排水基準(2.0ppm)と環境基準区(0.2ppm)において、対照区とほぼ同じ時間で死亡し、鰓上皮細胞の核濃縮の頻度、抗E. tarda免疫染色の陽性反応も同程度であった。カドミウムの排水基準においては、非感染区で試験水の影響と思われる死亡が見られた。これらのことから、カドミウムの環境基準及びクロム(III)の排水基準と環境基準は、免疫毒性が低いと評価された。本研究で化学物質のin vivo暴露による魚体への影響の評価にあたっての方向性を示せた。(1)ティラピアの鰾好中球に調整した塩化カドミウムを曝露し、ザイモサンを加えて貪食率を求めた。さらに好中球の活性酸素産生量についても測定した。また、メダカ、ゼブラフィッシュにおける暴露の影響を病原微生物を用いた感染実験で評価した。非曝露区では、3時間後の細胞生残率は98%であった。2x10^<-4>、2x10^<-5>、2x10^<-6>Mの濃度では86%、95%、96%であり、生残率の有意な低下が認められた。死細胞には核が断片化した像が多数認められた。貪食率は2x10^<-4>区で有意に低下した。また、活性酸素産生量は、非曝露区に対して3つの区いずれも10%ほど低下が認められたが、有意な差は認められなかった。メダカ、ゼブラフィッシュに対して1x10^<-4>Mの72時間曝露試験後にE. tardaによる感染実験を行ったが、非曝露区との間に有意な死亡率の低下は認められなかった。(2)孵化4日後のティラピア稚魚を排水基準および環境基準値の塩化カドミウムまたはクロム(III)に96時間曝露し、E. tardaに浸漬感染させ死亡する時間を調べた。カドミウムの環境基準区(0.01ppm)及びクロム(III)の排水基準(2.0ppm)と環境基準区(0.2ppm)において、対照区とほぼ同じ時間で死亡し、鰓上皮細胞の核濃縮の頻度、抗E. tarda免疫染色の陽性反応も同程度であった。カドミウムの排水基準においては、非感染区で試験水の影響と思われる死亡が見られた。これらのことから、カドミウムの環境基準及びクロム(III)の排水基準と環境基準は、免疫毒性が低いと評価された。本研究で化学物質のin vivo暴露による魚体への影響の評価にあたっての方向性を示せた。産業排水や地下水に含まれる化学物質は魚類の生存に与える影響要因として危惧されている。そこで、重金属(塩化カドミウム)のティラピア好中球に対する免疫毒性試験を行い、生存にあたえる影響をin vitroで調べた。さらに、メダカ、ゼブラフィッシュを用いてin vivoにおける影響を病原微生物を用いた感染実験で評価を試みた。ティラピア好中球は鰾から採取し、2x10^6細胞/mlに調整した。これに2x10^<-4>(-4区)、2x10^<-5>、(-5区)、2x10^<-6>M(-6区)に調整した塩化カドミウムをそれぞれ75μlずつ加えて3時間25°Cで曝露した。その後に生死細胞数を数え、塩化カドミウムの毒性について検討した。さらに0.25mg/mlに調整したザイモサンを加え、1時間後の貪食率を求めた。また、曝露後にPBSで洗浄した細胞の活性酸素産生量についても、CLA、PMA添加後に測定した。非曝露区では、3時間後の生残率は98%であったのに対し、-4区、-5区、-6区では86%、95%、96%であり、非曝露区と-4区の間には有意な生残率の低下が認められた。死細胞を顕微鏡観察したところ、核が断片化した像が多数認められた。 | KAKENHI-PROJECT-17380116 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17380116 |
各種水質汚染物質の魚類好中球に対する免疫毒性評価と分子生物学的解析 | 貪食率は非曝露区、-4区、-5区、-6区で95%、20%、88%、95%であり、-4区で塩化カドミウムの曝露は有意に貪食率を低下させることが明らかとなった。また、活性酸素産生量は、非曝露区に対して3つの区いずれも10%ほど低下が認められたが、有意な差は認められなかった。メダカおよびゼブラフィッシュに対して塩化カドミウム(1x10^<-4>M)の72時間曝露試験後にEdwardsiella tardaによる感染実験を行ったが、非曝露区との間に有意な死亡率の低下は認められなかった。今後、感染手法の検討および強病原性株による感染実験を行い、最適な手法を確立する予定である。一般的に稚魚は化学物質に対して成魚よりも敏感であり、免疫毒性に対しても強い影響が見られることが予想される。そのため自然界に排出された化学物質は稚魚の資源に影響を与え、そのことが個体群の減少を招くことが考えられる。そこで、稚魚に対しカドミウムおよびクロム(III)を曝露させて、以下の実験を行った。孵化後4日のティラピア稚魚(約8mg)を排水基準および環境基準値のカドミウムまたはクロム(III)に96時間曝露し、その後E.tarda 1.0x10^6cfu/mlに調整した薄い培地(1%トリプトン、0.85%NaCl)に浸漬感染させ、死亡する時間を調べた。実験魚は死亡後直ちに固定し、HE染色、抗E.tarda免疫組織化学反応、アポトーシス検出のためのTUNEL染色を行った。カドミウムの環境基準区(0.01ppm)及びクロム(III)の排水基準(2.0ppm)と環境基準区(0.2ppm)において、対照区とほぼ同じ時間で死亡し、紙上皮細胞の核濃縮の頻度、抗E.tarda免疫組織化学染色の陽性反応も同程度であった。カドミウムの排水基準(0.1ppm)においては、E.tarda negtiveの試験区で、試験水の影響と思われる死亡が見られた。これらのことから、カドミウムの環境基準及びクロム(III)の排水基準と環境基準は、免疫毒性が低いと評価された。本研究では化学物質in vivo暴露による魚体への影響の評価にあたって研究の方向性を示せた。19年度は、非致死的な影響として食欲に注目し、食欲の変化から化学物質のコイに対する影響を評価できるかどうかを検討した。化学物質はカドミウムを用い、3つの試験区、対照区、1/10LC50区(10.54mg/L)、1/2LC50(5.27mg/L)を設定し、48時間暴露した。暴露前、暴露期間中と期間後における摂餌回数を比較して、カドミウムによる摂餌の影響を調べた。さらに、食欲に関係するホルモンNeuropeptide Y(NPY)、Leptinl,2のmRNAの発現量をリアルタイムPCRで定量し、カドミウム暴露の影響を考察した。また、鰓、味蕾の組織切片を作製して、暴露による組織学的な変化を観察した。3つの試験区いずれにおいても、暴露前、中、後における摂餌回数には、大きな増減は認められなかった。同様に、NPY、Leptinl,2のmRNA量にも目立った増減は認められなかった。病理組織学的検討を行ったところ、鰓には1/10LC50区、1/2LC50区で呼吸上皮の細胞核が崩壊する壊死と核の腫大が認められた。一方、味蕾は対照区との違いは認められなかった。コイでは、カドミウムの半数致死濃度の半分の濃度においてさえも、摂餌回数に変化が無かったこと、食欲に関係する遺伝子の発現量に変化が見られなかったこと、味蕾に病理組織学的な変化が認められなかったことから、影響はほとんど無いことが示唆された。自発摂餌を用いた毒性評価は、検討の余地があると考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-17380116 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17380116 |
神経と免疫応答に関する研究-リンパ節内神経線維の免疫応答における役割- | (1)Wistar rat顎下リンパ節は,片側各4個認められ,大きさや形態が異なっている.前回までは,神経染色および抗NEP抗体による免疫染色で門部に分布する神経束を報告した.今回4個のリンパ節の内,最も大きいリンパ節を用いてリンパ節内神経を電顕的に観察した.a.リンパ節門部,被膜部の神経門部において脈管系と同じ結合組織中に神経束が見られた.中枢側からの神経束で最大のものは,それぞれperineural sheathに囲まれた2つの束が隣接して走行していた.それらの束は各々6本の有髄線維と16本の無髄線維を含むシュワン細胞の単位が3個から成り立っていた.やがて分離して2つの神経束として走行した.異なる切片において観察される神経束での最多の有髄線維は6本がであったことから,このリンパ節に至る最大の神経束と考えられた.その他には有髄線維を4本,3本,2本,1本と無髄線維を含む神経束がはっきりとしたperineural sheathを持って認められた.大経のリンパ管周囲に近接した神経終末がラット腸間膜リンパ節で報告されているが,現在検索中である.b.髄質部,皮質部の神経髄索に分布する小動脈周囲に,無髄線維だけからなる神経束が認められた.血管壁との関係は,間に細網細胞の突起が見られ,近接したものはまだ見つかっていない.無髄線維のみの神経束はperineural sheathを欠き,基底膜様構造で包まれていた.これらは終末構造に至る部分と思われるが,有芯あるいは無芯小胞の識別可能な神経終末とはまだ言い切れない.もう少し追跡して観察したい.Wistar系ラット顎下リンパ節を用いて,リンパ節における神経分布についての検索をまず行った.1.成熟ラットにおける観察8-10週齢ラット下顎のリンパ節(Superficial cervical lymph nodes)は,左右の大唾液腺腺門近くに片側大小3-4個近接して間接される.いずれも二次小節胚中心であった.これらのリンパ節は,結合組織により緩く固定されていて,その結合組織に神経,血管,リンパ管などが分布している.神経線維は神経染色陽性,免疫組織染色一抗NFPおよび抗S-100蛋白共に陽性で,血管周囲や門部から髄質にかけての輸出管周囲結合組織に明瞭に認められた.またリンパ節は周囲を被膜で覆われていて,その被膜中にも細い神経束が認められた.(神経染色陽性,免疫組織染色一抗NFPおよび抗S-100蛋白共に陽性)リンパ節の門部から髄質部に分布する神経線維の微細構造は,リンパ節の横断面を用いて観察した.門部の横断面において観察された最大の神経束は,6本の有髄線維と,数本の無髄線維のみからなる2つの小区間からなるものであった.このほかの神経束は,有髄線維1-3本の他に無髄線維からなっていた.この無髄線維のみの小区間は多様で,十数本の大小さまざまな径からなるものや,数本の無髄線維のものなどがあった.これらの神経線維の機能的な面についてはまだ確認していない.2.リンパ節の神経の成長発育について」胎生14,16,18日目および生後1カ月までの標本製作を終了していて,現在神経染色や神経組織関連の抗体(抗NFP,抗NSE,抗S-100蛋白に加えて神経の成長発育関連に関わるGAP43など)による免疫組織化学を行っている.検索.1ラット成獣(10週齢、雄)において顎下腺・舌下腺周囲のリンパ節の解剖学的検索を行った。Superficialcervicallymph nodesは唾液腺の外側部から上部にかけて血管に沿って長径8mm前後のリンパ節が1個、他は5mmから2mmのものが3個、合計片側4個存在した。リンパ節周囲に到る神経線維は血管周囲から分岐していた。検索.2下顎リンパ節の個体発生は胎生14日、16日、18日、生後0日について検索した。ラット胎生期のリンパ組織の出現を検索するに当たって胸腺の出現と顎下腺の出現を目安にした。顎下腺原基となる上皮の陥入及び腺構造は胎生16日から観察された。胸腺は胎生16日に初めて観察された。胸腺は胸骨の上前面に紡錘形でかなり太い神経束と血管が隣接していた。胸腺を構成する細胞としてヘマトキシリンに濃染する円形の核を持つリンパ球と思われる細胞が主に存在した。胎生18日になると、顎下腺後外方部分にリンパ節が出現した。リンパ節は顎下腺や血管周囲の疎性結合組織にヘマトキシリン濃染の核をもつ細胞集団として観察され、動脈からの毛細血管が門部に入り、血液の供給も活発であった。NFP免疫染色によると、周囲の動脈と静脈の間の結合組織にNFP陽性神経束が検出された。また分岐した血管にそって細いNFP陽性線維が認められた。しかしこの腺維については非常に弱陽性であるため他の方法による検出を考えている。その他に胎生18日では前後の頚部に多数のリンパ節と思われる細胞集団が認められた。いずれも血管周囲にいくつか群をなして分布していた。生後0日では、胎生末期に比較してこれらのリンパ組織は容積が大きくなっていた。 | KAKENHI-PROJECT-09877347 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09877347 |
神経と免疫応答に関する研究-リンパ節内神経線維の免疫応答における役割- | 多数存在する類似形態の組織がすべてリンパ組織であるかどうか、現在リンパ球(T cell抗体による免疫染色など)の同定を行っている。(1)Wistar rat顎下リンパ節は,片側各4個認められ,大きさや形態が異なっている.前回までは,神経染色および抗NEP抗体による免疫染色で門部に分布する神経束を報告した.今回4個のリンパ節の内,最も大きいリンパ節を用いてリンパ節内神経を電顕的に観察した.a.リンパ節門部,被膜部の神経門部において脈管系と同じ結合組織中に神経束が見られた.中枢側からの神経束で最大のものは,それぞれperineural sheathに囲まれた2つの束が隣接して走行していた.それらの束は各々6本の有髄線維と16本の無髄線維を含むシュワン細胞の単位が3個から成り立っていた.やがて分離して2つの神経束として走行した.異なる切片において観察される神経束での最多の有髄線維は6本がであったことから,このリンパ節に至る最大の神経束と考えられた.その他には有髄線維を4本,3本,2本,1本と無髄線維を含む神経束がはっきりとしたperineural sheathを持って認められた.大経のリンパ管周囲に近接した神経終末がラット腸間膜リンパ節で報告されているが,現在検索中である.b.髄質部,皮質部の神経髄索に分布する小動脈周囲に,無髄線維だけからなる神経束が認められた.血管壁との関係は,間に細網細胞の突起が見られ,近接したものはまだ見つかっていない.無髄線維のみの神経束はperineural sheathを欠き,基底膜様構造で包まれていた.これらは終末構造に至る部分と思われるが,有芯あるいは無芯小胞の識別可能な神経終末とはまだ言い切れない.もう少し追跡して観察したい. | KAKENHI-PROJECT-09877347 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09877347 |
共生微生物によるガソリン様燃料の生産 | 沖縄の土壌から低炭素数のものを含む炭化水素類を生産する真菌(酵母F-6株、カビK-38株)を分離した。F-6株とK-38株の育種、培養条件の検討を行った後、食品廃棄物を利用して3Lジャーファーメンターで共生させて連続培養を行ったところ、炭化水素類を1.3g/Lのレベルで回収できた。生産された炭化水素は、トリオレイン、オレイン酸並びに炭素数15程度の炭化水素等であった。得られた炭化水素類は、そのまま又はメチル化して燃焼できバイオ燃料としての利用が可能であった。炭化水素類を生成する微生物として分離した赤色の酵母Rhodosporidium属(F-6株)と白色のカビMortierella属(K-38株)について液体振とう培養(30°C、135rpm、7日間)を行い、菌体内の脂質の生産量と培養液中(菌体外)への炭化水素類の生産量の比較を行った。F-6株では、培養液250ml中の湿潤状態の菌体重量は31.9g、凍結乾燥後の菌体重量は1.4gであり、クロロホルム:メタノール=2:1で2回抽出した炭化水素類量は、乾燥菌体内で25.6mg/g、培養液上清中(菌体外)で0.03mg/mlであった。また、K-38株では、培養液250ml中の湿潤状態の菌体重量は21.5g、凍結乾燥後の菌体重量は2.6gであり、抽出した炭化水素類量は、乾燥菌体内で62.4mg/g、培養液上清中(菌体外)で0.41mg/mlであった。これにより、菌体内への炭化水素類の蓄積が主体であることが判明した。3Lジャーファーメンターにて、F-6株とK-38株を同時に混合通気培養したところ、乾燥菌体内炭化水素類量を80.9mg/gまで向上させることができた。新規スクリーニングでは、乾燥菌体当たり72.0mg/gの炭化水素類を生産する細菌Y-99株を得た。また、衝撃波を用いたF-6株とK-38株の炭化水素類の抽出法を検討した結果、衝撃波処理(3.1kv)を10回行うことで、無処理の1.4倍まで抽出量を向上できた。食品廃棄物を利用した場合の炭化水素類の生産をF-6株とK38株を用いて検討した。ご飯5%および合挽きミンチ1%を添加した培地にF-6株とK38株を接種したが発酵は進まなかった。3Lジャーファーメンターに培地を入れ、黒麹菌を3日間1vvmで通気して糖化を行った後にF-6株とK38株を混合培養した結果、良好な発酵が認められた。発酵液の90%を採取し、残りにご飯および合挽きミンチの黒麹菌による糖化液を再度添加することを3回まで繰り返し、連続培養が出来ることが確認できた。連続培養で総計480gの湿潤菌体が得られた。湿潤菌体を爆破レンジ(3500V)で爆破した後に凍結乾燥したところ、乾燥菌体32.1gが得られた。クロロホルム-メタノール液で乾燥菌体から抽出することで炭化水素類10.7gを回収することができた。得られた炭化水素類をNaOH飽和メタノールでメチル化したものは着火すると燃焼しバイオ燃料として利用が可能と判断された。沖縄の土壌から低炭素数のものを含む炭化水素類を生産する真菌(酵母F-6株、カビK-38株)を分離した。F-6株とK-38株の育種、培養条件の検討を行った後、食品廃棄物を利用して3Lジャーファーメンターで共生させて連続培養を行ったところ、炭化水素類を1.3g/Lのレベルで回収できた。生産された炭化水素は、トリオレイン、オレイン酸並びに炭素数15程度の炭化水素等であった。得られた炭化水素類は、そのまま又はメチル化して燃焼できバイオ燃料としての利用が可能であった。炭化水素類を生成する微生物として分離した細菌(F-6株)とカビ(K-38株)について培養条件を検討した結果、F-6株は酵母エキスを含む培地(pH5、30°C)で、K-38株はポテト抽出液を含む培地(pH7、30°C)で良好に増殖することが確認された。これらの菌株の菌体RNAを用い同定した結果、F-6株はRhodosporidium属、K-38株はMortierella属と推定された。これらを2週間振とう培養(30°C、135rpm)した結果、F-6株は赤色に懸濁し、K-38株は液体培地内で球状菌体を多数形成した。これらの培養液を遠心分離して菌体と上清に分離した。この時の培養液100ml中の菌体重量(湿潤状態)は、F-6株は4.41g、K-38株は6.09gであった。炭化水素類の抽出方法としては、分離した菌体を凍結乾燥させ、超音波破砕機により菌体を破壊し、エーテルを用いて菌体から油分を抽出した。エバポレーターを用いてエーテルを蒸発させて油分を得た。同様に上清を濃縮して、上清に含まれる油分を抽出した。その後、TLC(Silica gel 60 F254)を用いて、それぞれの油分の種類を確認した。 | KAKENHI-PROJECT-23656609 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23656609 |
共生微生物によるガソリン様燃料の生産 | これらの油分の収率は、F-6株乾燥菌体量0.49gからは12mg(対乾燥菌体収量2.4%)、固化培養液0.76gからは9mgの油分が抽出された。一方、K-38株乾燥菌体量0.56gからは70mg(対乾燥菌体収量12.5%)、固化培養液0.82gからは32mgの油分が抽出された。これらの油分についてTLC分析した結果、ステロール類、複数の脂肪酸、炭化水素類が確認された。現在、F-6株とK-38株との混合培養、精度を上げたTLC分析、ガスクロ分析を進めている。中規模培養まで実施できたが、時間的な制約で廃棄物の利用の検討ができなかった。培養条件の検討に時間を取り、油分の分析がTLC分析までとなった。生産性の向上については、時間的な制約により実施が遅れた。微生物の炭化水素類の種類確認とその生産性向上を図り、廃棄物を利用した連続培養法の確立を行う。生産された炭化水素類の簡易精製法を検討する。さらに、燃焼の予備実験として化学修飾法の検討を行い、燃焼を確認し、本研究の実用性を評価する。炭化水素類の生産性の向上を図り、また、混合培養についても検討を進める。また、新たなスクリーニング株についても炭化水素類の生産性を測定する。微生物が利用できる産業廃棄物について検討を進める。さらに、微生物が生産した炭化水素類の分析をGCMSを用いて推進する。研究に用いる物品費35万円、学会参加費10万円、文献図書費5万円を予定している。次年度への研究費約17万円のうち約10万円は3月末の農芸化学会大会参加で使用し年度末時点で未清算となっており、7万円は培地等が未購入となっていた。今後、研究に用いる物品費として37万円、学会参加など旅費として15万円、文献図書費として5万円を計画している。 | KAKENHI-PROJECT-23656609 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23656609 |
リアルタイムストロンチウム90検出器の開発 | 福島第一原発事故では90Srを含んだ汚染水の漏出が続いている。90Srは高エネルギーβ線を出し、生体内でCaのように骨に沈着する。γ線を放出しないため測定が困難で、JIS規格の計測法では4週間程度必要である。我々は屈折率1.05のシリカエアロゲルを使ったチェレンコフカウンターで、1.2MeV以上のβ線に反応し低エネルギーβ線やγ線にほとんど反応しない90Sr測定器を開発した。有効面積300平方cmの試作品は1分の計測時間で表面汚染密度を0.1Bq/平方cmの精度で測定できる。この測定器は大型化が容易で、1平方mの装置なら10分の計測で排水の体積汚染密度を10Bq/リットルで測定できる。福島第一原発事故では90Srを含んだ汚染水の漏出が続いている。90Srは高エネルギーβ線を出し、生体内でCaのように骨に沈着する。γ線を放出しないため測定が困難で、JIS規格の計測法では4週間程度必要である。我々は屈折率1.05のシリカエアロゲルを使ったチェレンコフカウンターで、1.2MeV以上のβ線に反応し低エネルギーβ線やγ線にほとんど反応しない90Sr測定器を開発した。有効面積300平方cmの試作品は1分の計測時間で表面汚染密度を0.1Bq/平方cmの精度で測定できる。この測定器は大型化が容易で、1平方mの装置なら10分の計測で排水の体積汚染密度を10Bq/リットルで測定できる。福島第一原子力発電所事故では大量の放射性物質が環境中に放出し、汚染水の漏洩の形で現在も放出が続いている。事故当初は131Iによる被爆が、現在は137Csと134Csからのγ線による外部被爆が問題となっているが、今後は海産物中の90Srからの内部被爆が問題となるかもしれない。90Srはγ線を放出しないため通常のサーベイメーターなどでは測定できない。JIS規格の計測法では標準1ヶ月必要で、事故現場での復旧作業の安全確保のための汚染濃度測定や現在自粛が続いている福島県沖漁業の再開に不可欠な食品中の汚染検査には使えない。本研究では1.2MeV以下のβ線やγ線には感度がなく1.2MeV以上のβ線のみに感度がある放射線計数装置として、屈折率1.048のシリカエアロゲル、直径0.2mmの波長変換ファイバーのシート、小型高性能の光電子増倍管を用いたしきい値型チェレンコフカウンターを開発した。本研究で製作した検出器は有効面積が10cm×30cmで、90Srの感度が0.12%、137Csに対する感度が0.00013%、雑音頻度が0.012Hzであった。この検出器で一様な汚染のある表面汚染濃度の測定下限は、137Csが90Srの100倍の濃度で存在するような過酷な環境でも、わずか1分間の計測時間で0,1Bq/平方cmである。またこの検出器は大面積化が容易な構造をしており、もし1平方m程度のものを製作すれば、食品や排水中の90Sr検出下限は、137Cs濃度が90Srの10倍の環境で、10分程度の計測時間で10Bq/リットルが推定できる。さらに宇宙線μ粒子事象を除去するためのシンチレーションカウンターを加えたり、試料をあらかじめ100°C以上に加熱して計測の邪魔になる水分を除去するなどの対策を加えれば、測定下限0.1Bq/リットルにも到達できる可能性がある。 | KAKENHI-PROJECT-25610049 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25610049 |
Naチャネルの細胞膜発現調節:サブユニットmRNA変動と細胞内輸送・局在化機構 | Naチャネルの細胞膜発現の調節機構を解明するために、発生学的に神経堤に由来するウシ副腎髄質クロマフィン細胞を用いて、(i)細胞膜Naチャネル量を変動させる細胞内外の因子を同定し、さらに、(ii)その際のNaチャネルのサブユニットmRNAレベルの変動と細胞内輸送・局在化機構を解析し以下の結果を得た。1.Protein kinase C(PKC)による調節:(1)PKC-αの活性化は、Naチャネルの細胞膜表面からのインターナリゼーションを促進することにより、細胞膜Naチャネル量を低下させた。(2)PKC-εの活性化は、Naチャネルα-サブユニットmRNAレベルを低下させ、β_1-サブユニットmRNAレベルを上昇させた。(3)α-サブユニットmRNAレベルの低下は、その遺伝子転写率の低下によるものではなく、mRNA崩壊率の亢進に由来した。(4)PKC-αおよび-εの効果は、蛋白合成に依存していた。2.Mitogen-activated protein kinase(MAPK)による調節:培養ウシ副腎髄質クロマフィン細胞では、恒常的にMAPK(ERK1,ERK2)が活性化されており、PD98059(MAPKKの阻害剤)によってその活性化を抑制すると、細胞膜Naチャネル量が著しく増加した(12時間で、約1.5倍)。この時、Naチャネルのα-およびβ_1-サブユニットmRNAレベルは不変であった。3.神経保護薬による変動:リルゾール、NS-7[4-(4-fluorophenyl)-2-methyl-6-(5-piperidinopentyloxy)pyrimidine hydrochloride]は、Naチャネルα-サブユニットのドメインIトランスメンブレン・セグメント6に結合し,Naチャネル開孔を阻害し、その結果、Caチャネル開孔、カテコールアミン分泌を低下させた。長期処置によって、リルゾールはNaチャネル量を変動させないが、NS-7は増加させた。4.イムノフィリンリガンドによる変動:免疫抑制薬であるサイクロスポリンAおよびFK506は、イムノフィリンを介して、Naチャネルのインターナリゼーションを抑制することにより、細胞膜Naチャネル量を増加させた。Naチャネルの細胞膜発現の調節機構を解明するために、発生学的に神経堤に由来するウシ副腎髄質クロマフィン細胞を用いて、(i)細胞膜Naチャネル量を変動させる細胞内外の因子を同定し、さらに、(ii)その際のNaチャネルのサブユニットmRNAレベルの変動と細胞内輸送・局在化機構を解析し以下の結果を得た。1. Protein kinase C(PKC)による調節:チメレアトキシン(conventional PKCの活性薬)、Go6976(conventional PKCの阻害薬)、フォルボールエステル、ブレフエルジンA(ADP ribosylation factor-1阻害薬)などを用いた。(1)PKC-αの活性化は、Naチャネルの細胞膜表面からのendocytosisを促進した。(2)PKC-εの活性化は、Naチャネルα-サブユニットmRNAレベルを低下させ、β_I-サブユニットmRNAレベルを上昇させた。(3)α-サブユニットmRNAレベルの低下は、その遺伝子転写率の低下によるものではなく、mRNA崩壊率の亢進に由来した。(4)PKC-αおよび-εの効果は、蛋白合成に依存していた。2. Mitogen-activated protein kinase(MAPK)による調節:培養ウシ副腎髄質クロマフィン細胞では、恒常的にMAPK(ERK1,ERK2)が活性化されており、PD98059(MAPKKの阻害剤)によってその活性化を抑制すると、細胞膜Naチャネル量が著しく増加した(12時間で、約1.5倍)。この時、Naチャネルのα-および、β_I-サブユニットmRNAレベルは不変であった。3.細胞内[Ca]_iによる調節:A23187(Caイオノフォア)および、タプシガルギン(小胞体Ca-ATPase阻害薬)による[Ca]_iの持続的上昇は、細胞膜Naチャネル量、α-およびβ_I-サブユニットmRNAレベルを低下させた。2,5-di-(t-busyl)-1,4-benzohydroquinone(DBHQ)による一過性[Ca]_i上昇は、効果がなかった。4.神経保護薬による調節:リルゾール、NS-7[4(4-fluorophenyl)-2-methyl-6-(5-piperidinpentyloxy)pyrimidine hydrochloride]は、Naチャネルα-サブユニットのドメインIトランスメンブレン・セグメント6に結合し,Naチャネル開孔を阻害し、その結果、Caチャネル開孔、カテコールアミン分泌を低下させた。長期処置によって、リルゾールはNaチャネル量を変動させないが、NS-7は増加させた。Naチャネルの細胞膜発現の調節機構を解明するために、発生学的に神経堤に由来するウシ副腎髄質クロマフィン細胞を用いて、(i)細胞膜Naチャネル量を変動させる細胞内外の因子を同定し、さらに、(ii)その際のNaチャネルのサブユニットmRNAレベルの変動と細胞内輸送・局在化機構を解析し以下の結果を得た。1.Protein kinase C(PKC)による調節:(1)PKC-αの活性化は、Naチャネルの細胞膜表面からのインターナリゼーションを促進することにより、細胞膜Naチャネル量を低下させた。(2)PKC-εの活性化は、Naチャネルα-サブユニットmRNAレベルを低下させ、β_1-サブユニットmRNAレベルを上昇させた。(3)α-サブユニットmRNAレベルの低下は、その遺伝子転写率の低下によるものではなく、mRNA崩壊率の亢進に由来した。 | KAKENHI-PROJECT-10770043 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10770043 |
Naチャネルの細胞膜発現調節:サブユニットmRNA変動と細胞内輸送・局在化機構 | (4)PKC-αおよび-εの効果は、蛋白合成に依存していた。2.Mitogen-activated protein kinase(MAPK)による調節:培養ウシ副腎髄質クロマフィン細胞では、恒常的にMAPK(ERK1,ERK2)が活性化されており、PD98059(MAPKKの阻害剤)によってその活性化を抑制すると、細胞膜Naチャネル量が著しく増加した(12時間で、約1.5倍)。この時、Naチャネルのα-およびβ_1-サブユニットmRNAレベルは不変であった。3.神経保護薬による変動:リルゾール、NS-7[4-(4-fluorophenyl)-2-methyl-6-(5-piperidinopentyloxy)pyrimidine hydrochloride]は、Naチャネルα-サブユニットのドメインIトランスメンブレン・セグメント6に結合し,Naチャネル開孔を阻害し、その結果、Caチャネル開孔、カテコールアミン分泌を低下させた。長期処置によって、リルゾールはNaチャネル量を変動させないが、NS-7は増加させた。4.イムノフィリンリガンドによる変動:免疫抑制薬であるサイクロスポリンAおよびFK506は、イムノフィリンを介して、Naチャネルのインターナリゼーションを抑制することにより、細胞膜Naチャネル量を増加させた。 | KAKENHI-PROJECT-10770043 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10770043 |
ダイアンソウイルスのRNA複製機構 | 本研究では、Red clover necrotic mosaic virus(RCNMV)の翻訳、複製および感染機構を解析し、以下の研究成果を得た。1)RCNMVのゲノムRNA1とRNA2の5'末端にはキャップ構造が存在せず、ウイルスタンパク質はキャップ非依存的に翻訳された。RNA1のキャップ非依存性翻訳には3'非翻訳領域(3'-UTR)に存在するステムループ(SL)構造が重要であった。一方、RNA2の翻訳機構はRNA1と異なり、翻訳にはRNA1のコードする複製酵素成分タンパク質(p27とp88)を必要とし、RNA2の複製とリンクしていた。2)RNA2の複製には5'-UTRと3'-UTR以外に、RNA2のORF内に存在するSL構造が重要であった。また、このSLは、RNA1にコードされる外被タンパク質の発現でも重要な役割を果たし、それにはループの配列以外に構造そのものが重要であることが分かった。3)RNA1は、RNAサイレンシング抑制活性を持ち、その活性には複製酵素成分タンパク質(p27とp88)とマイナス鎖合成の鋳型となりえるRCNMV RNAを必要とした。このことから、RCNMV RNA合成機構とRNAサイレンシング機構に関連性が示唆され、これらの機構に共通因子を利用している可能性が強く示唆された。RCNMVRNA複製酵素複合体の宿主因子およびRNAサイレンシング装置構成因子の同定が期待される。以上のように、RCNMVは翻訳、RNA複製、RNAサイレンシングに関わる宿主因子を巧みに利用して遺伝子発現制御を行うとともに、植物のウイルス抵抗性を抑制していることが明らかとなった。また、これらの結果は、真核生物の新たな翻訳制御機構の解明にもつながると考えられる。本研究では、Red clover necrotic mosaic virus(RCNMV)の翻訳、複製および感染機構を解析し、以下の研究成果を得た。1)RCNMVのゲノムRNA1とRNA2の5'末端にはキャップ構造が存在せず、ウイルスタンパク質はキャップ非依存的に翻訳された。RNA1のキャップ非依存性翻訳には3'非翻訳領域(3'-UTR)に存在するステムループ(SL)構造が重要であった。一方、RNA2の翻訳機構はRNA1と異なり、翻訳にはRNA1のコードする複製酵素成分タンパク質(p27とp88)を必要とし、RNA2の複製とリンクしていた。2)RNA2の複製には5'-UTRと3'-UTR以外に、RNA2のORF内に存在するSL構造が重要であった。また、このSLは、RNA1にコードされる外被タンパク質の発現でも重要な役割を果たし、それにはループの配列以外に構造そのものが重要であることが分かった。3)RNA1は、RNAサイレンシング抑制活性を持ち、その活性には複製酵素成分タンパク質(p27とp88)とマイナス鎖合成の鋳型となりえるRCNMV RNAを必要とした。このことから、RCNMV RNA合成機構とRNAサイレンシング機構に関連性が示唆され、これらの機構に共通因子を利用している可能性が強く示唆された。RCNMVRNA複製酵素複合体の宿主因子およびRNAサイレンシング装置構成因子の同定が期待される。以上のように、RCNMVは翻訳、RNA複製、RNAサイレンシングに関わる宿主因子を巧みに利用して遺伝子発現制御を行うとともに、植物のウイルス抵抗性を抑制していることが明らかとなった。また、これらの結果は、真核生物の新たな翻訳制御機構の解明にもつながると考えられる。レッドクローバーネクロティックモザイクダイアンソウイルス(RCNMV)は、2分節のプラスセンスRNAをゲノムとする植物ウイルスである。本研究では、1)RCNMV RNA1の翻訳・複製に関与するRNAシス因子(塩基配列と構造)の解析、2)RCNMV RNA2の複製に関与するORF内に存在するシス因子(塩基配列と構造)の解析、3)ゲノムRNA、のin vitro複製系の構築、4)ウイルスタンパク質27kDと88kDタンパク質の複製における機能解析を行っている。成果の概要:1)RCNMV-カナダ株の温度感受性(17°Cでは宿主植物に全身感染できるが、22°Cでは接種葉にも感染できない)が一細胞レベルでのRNA複製過程にあることを明らかにした。温度感受性を示さないオーストラリア株とカナダ株の間で作成したリコンビナントウイルス及びキメラウイルスの解析から、カナダ株の温度感受性は、ゲノムRNA1の3'非翻訳領域が関与していること、また、温度感受性は一塩基の違いによっても変化することを明らかにした。さらに、RCNMVRNA1の3'UTRはポリAに比べmRNAの翻訳活性を数十倍高めること、また、キャップ要求性を著しく低下させることを明らかにした。2)RNA2ORFの3端側領域にRNA2の複製に必要なシス配列が存在することを明らかにした。3)ウイルス感染葉から鋳型依存性で、かつ高い活性を持つ感染特異的可溶性:RNA合成酵素を得ることに成功した。特に注目すべき成果は、RCNMVがキャップ非依存性の翻訳機構を持ち、翻訳過程が温度感受性に関与する要因の1つである可能性を示したことである。平成14年度の成果概要:以下のことを明らかにした。1)RCNMVのゲノムRNA1と2いずれの5'末端にもキャップ構造が存在しないこと、そして、RNA1の3'非翻訳領域(3'-UTR)、その中の66塩基中含まれるステムループ領域がキャップ非依存性の翻訳に重要である。2)RNA2のキャップ非依存性の翻訳はRNA2とRNA1の複製とリンクしている。 | KAKENHI-PROJECT-13306005 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13306005 |
ダイアンソウイルスのRNA複製機構 | 3)RNA2の複製には5'-UTRと3'-UTR以外に、RNA2に存在するORFの3端側領域33塩基のシス配列が必要である。又、この領域は、RNA1からのサブゲノムRNAの転写には影響しないが、サプゲノムRNAからのタンパク質翻訳に影響する。4)BY2培養細胞から液胞を除いた細胞抽出液(北大の石川らの方法)を用い、RCNMVのタンパク質とRNAが合成されることを確認した。5)RCNMV感染ササゲプロトプラストでp27を特異的に検出できる抗体を作製した。特に注目すべき成果は、RCNMV RNA2キャップ非依存性の翻訳活性が、RNA2と物理的に相互作用することが分かっているRNA1の複製と関係していることを示したこと、また、RNA2の複製に必要な因子がサブゲノムRNAの翻訳活性と関係していることを明らかにしたことである。これらの結果は、RNA-RNA分子間相互作用が翻訳に重要な役割を果たしていることを示唆するものであり、真核生物新たな翻訳制御機構の解明につながると考えられる。これらの結果は、J. Virol.に投稿中である。平成15年度の成果の概要:(1)RCNMVRNA2は、複製に必要なシス因子をタンパク質コード領域に持ち、その領域のステムループ構造(SL)が不可欠であることを明らかにした。また、本SLは、RNA1との相互作用を介して外被タンパク質発現に関与するSLであったが、RNA2の複製とRNA分子間相互作用はお互いに独立していた。(2)RNA2のキャップ非依存性翻訳は、RNA1のコードする複製酵素成分タンパク質を必要とし、同時にRNA2自身がプラス鎖RNA合成に必要なシス因子を備えていることが重要であることを明らかにした。(3)RCNMVのRNA1がRNAサイレンシングサプレッサーをコードしていること、さらに、サプレッサーである複製酵素成分タンパク質は、タンパク質として存在するだけではサプレッサー機能を持たないが、機能発現には複製酵素複合体を形成する必要があることが示唆された。成果で特に注目すべき点:(1)複製酵素成分タンパク質のサイレンシングサプレッサーとしての機能発現には複製酵素複合体形成の必要性が示唆されたことから、RNA複製装置とRNAサイレンシング装置成分との間に何らかの関係がある可能性が強く示唆された。(2)RNA2の翻訳機構解析からウイルスRNA複製機構と翻訳機構が密接に関連していることが分かった。これらの結果は、一細胞でのRNAウイルスの翻訳・複製機構のさらなる進展に繋がるとともに、ウイルスの植物体での全身感染機構および植物のウイルス抵抗性機構の研究にも重要な情報を提示し、その解明の糸口なると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-13306005 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13306005 |
原爆被爆者における緑内障と網膜細動脈硬化との関連 | 20072008年に広島・長崎放射線影響研究所において行った、原爆被爆者の緑内障調査の全データを解析した結果、原爆被爆者において、正常眼圧緑内障と被爆線量には有意な正の相関を認めることがわかった。正常眼圧緑内障の発症メカニズムはいまだ不明であるが、循環障害の関与が疑われている。そこで、眼局所の循環障害に関連すると考えられる網膜細動脈硬化と、被爆線量との関連を調べたが、有意な相関を認めなかった。20072008年に広島・長崎放射線影響研究所において行った、原爆被爆者の緑内障調査の全データを解析した結果、原爆被爆者において、正常眼圧緑内障と被爆線量には有意な正の相関を認めることがわかった。正常眼圧緑内障の発症メカニズムはいまだ不明であるが、循環障害の関与が疑われている。そこで、眼局所の循環障害に関連すると考えられる網膜細動脈硬化と、被爆線量との関連を調べたが、有意な相関を認めなかった。平成1920年に、広島・長崎放射線影響研究所において原爆被爆者の緑内障調査を行ったが、平成19年4月の時点で診断が終了した対象者の予備的解析において、正常眼圧緑内障と被爆線量に有意な相関が見られることが判明した。正常眼圧緑内障は、発症因子として、循環障害など眼圧非依存因子が関与している可能性が多く報告されているが、現時点では発症メカニズムの完全な解明には至っていない。我々は、過去の調査において、眼局所の循環障害に関運すると考えられる網膜細動脈硬化が、原爆被爆者において、被爆線量との有意な相関を認めた点に注目し、原爆被爆者の緑内障と網膜細動脈硬化との関連を調べることとした。まず,被爆者の緑内障調査は平成20年に終了したため、全対象者の解析をすすめた結果、やはり正常眼圧緑内障と被爆線量には有意な相関を認めることがわかった。この結果は、放射線被爆と緑内障発症との関連を検討する上では、今後非常に重要な意味をもつ結果であると考える。次に網膜細動脈硬化の判定を行うことになったが、検者間での相違をなくすため、調査時に撮影した全ての眼底写真を、1名の連携研究者が,1999年にHubbardらが報告した判定方法にもとづいて判定を行うこととした。この判定万法は、眼底写真解析用ソフトを用いて非常に細かい変化を判定する必要があるため、連携研究者は、過去にこの方法を用いて数々の大規模疫学調査を行ってきたFundus Photograph Reading Centerで、全写真の判定を行う準備をすすめていった。平成21年度は、平成1920年に広島・長崎放射線影響研究所において行った、原爆被爆者の緑内障調査の全てのデータ解析をすすめていった結果、予備的解析の結果と同様、正常眼圧緑内障と被爆線量には有意な正の相関を認めることがわかった。このような結果は、今までにまったく報告が無く、放射線被爆が緑内障の発症に関連があるかもしれないという意味で、世界的にも非常に注目すべき結果であると考える。正常眼圧緑内障は、発症因子として、循環障害など眼圧非依存因子が関与している可能性が従来報告されているが、現時点では発症メカニズムの完全な解明には至っていない。我々は、過去の原爆被爆者調査において、眼局所の循環障害に関連すると考えられる網膜細動脈硬化が、被爆線量との有意な相関を認めた点に注目し、原爆被爆者の緑内障と網膜細動脈硬化との関連を調べることとした。検者間での相違をなくすため、調査時に撮影した全ての眼底写真を、1名の連携研究者が、1999年にHubbardらが報告した判定方法にもとづいて判定を行うこととした。連携研究者は、過去にこの方法を用いて数々の大規模疫学調査を行ってきたFundus PhotographReading Centerに、眼底写真データを持ち込み、全写真の判定を行いながらデータのまとめに取り組んでいるところである。全ての写真の判定が終了した時点で、データを解析し、結果を発表予定にしたいと考えている。 | KAKENHI-PROJECT-20791254 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20791254 |
成層圏の大気の運動をシミュレーションする回転円筒水槽実験 | 成層圏の大気現象は理論的に又は数値シミュレーションで調べられてきたが、より具体的にこれらの基礎となる力学的構造を知るには実験室での再現実験も有効である。本研究の目的は、従来の大気大循環を再現する回転円筒水槽実験において、回転円筒水槽の下層で対流圏に当たる波動流を生成し上層で成層圏に当たる安定成層を作り、波動流の上方への伝播を調べたり、成層圏周極渦に当たる密閉性の強い渦の生成を試みることである。我々は円筒水槽(水深1315cm)の底の厚さ3cmの層に半径方向の温度差を与えて波動流を生成し、水面を暖めることにより5cm以上の上層は温度が高さとともに上昇する安定成層を作ることに成功した。今回の科学研究費補助金による研究では、(1)下層の対流層で生成された傾圧波動の渦度は、準地衡風的渦度方程式に従い、上層の成層に指数的に減衰しながら浸透すること、(2)下層の対流層で安定した軸対称流や傾圧波動が生成されるためには、上層が強い成層状態になっていることが必要であることが示された。特に(2)の成果を実際の大気に適用すると、オゾン層が紫外線を吸収して上層の大気が成層圏を作っていることが、対流圏に安定した大気循環が生成するために不可欠であることを意味する。本研究課題の成果(1)については論文にまとめられ、Experiments in Fluidsに掲載決定され、成果(2)については、Journal of Atmospheric Scienceに投稿中である。成層圏の大気現象は理論的に又は数値シミュレーションで調べられてきたが、より具体的にこれらの基礎となる力学的構造を知るには実験室での再現実験も有効である。本研究の目的は、従来の大気大循環を再現する回転円筒水槽実験において、回転円筒水槽の下層で対流圏に当たる波動流を生成し上層で成層圏に当たる安定成層を作り、波動流の上方への伝播を調べたり、成層圏周極渦に当たる密閉性の強い渦の生成を試みることである。我々は円筒水槽(水深1315cm)の底の厚さ3cmの層に半径方向の温度差を与えて波動流を生成し、水面を暖めることにより5cm以上の上層は温度が高さとともに上昇する安定成層を作ることに成功した。今回の科学研究費補助金による研究では、(1)下層の対流層で生成された傾圧波動の渦度は、準地衡風的渦度方程式に従い、上層の成層に指数的に減衰しながら浸透すること、(2)下層の対流層で安定した軸対称流や傾圧波動が生成されるためには、上層が強い成層状態になっていることが必要であることが示された。特に(2)の成果を実際の大気に適用すると、オゾン層が紫外線を吸収して上層の大気が成層圏を作っていることが、対流圏に安定した大気循環が生成するために不可欠であることを意味する。本研究課題の成果(1)については論文にまとめられ、Experiments in Fluidsに掲載決定され、成果(2)については、Journal of Atmospheric Scienceに投稿中である。中緯度対流圏のロスビー波を円現する従来の回転円筒水槽実験で、底から水深の20%にあたる高さにのみ半径方向に温度差を与え、さらに観測水の水面を暖めることで下層に対流圏にあたるロスビー波の流れ、上層に成層圏にあたるハドレー流の流れを作ることに成功した。本年度は、ドリフトする対流圏波動が成層圏への浸透によりどのような影響をもたらすかを基礎的に調べる実験をした。成層圏における流れの解析には、準地衡風的渦度方程式が使われるが、この方程式によれば、成層への波動の浸透は指数的に減衰し、減衰の速さは波数が大きいほど早い。第一に、これを検証する実験をし、極めて良い精度でこのことが成り立つことを確かめた(Tajima et al.,Exp. Fluidsに発表予定)。第二に、波数4について流速、内外壁の温度差などの詳細な観測をした。その結果、(1)成層へ浸透した波動流は、極側にあたる内壁が外壁よりも暖かくなるように半径方向の温度差を生成すること、(2)波動流の位相速度が平均水平流と一致する臨界層付近では、平均水平流の減衰が弱まること、(3)臨界層のすぐ上には回転方向と逆に流れ、臨界層の下の波動とは位置が半波長ずれた波動が表れること等を発見した(Tajima et al.,J.Atmos. Sci.に投稿中)。特に、(1)の結果は、結果的には、成層圏突然昇温と似た現象と言える。これらの実験は、テキサス大学Center for Nonlinear Dynamicsの回転水槽実験グループを10日間訪問し、我々の実験について講演・議論し、準地衡風的渦度方程式に基づく数値解析をした。オックスフォード大学のRead教授を20日間訪問し、我々の実験に重要なベータ効果を取り入れた実験について議論すると共に、波動流の成層への浸透における臨界層での現象について議論し、上記(3)の結論を得た。韓国公州大学校自然科学大学大気科学科の蘇教授のグループを4日間訪間して、我々が計画している実験について講演し、共同実験を進める議論をした。成層圏の大気現象は理論的に又は数値シミュレーションで調べられてきたが、より具体的にこれらの基礎となる力学的構造を知るには実験室での再現実験も有効である。 | KAKENHI-PROJECT-13640442 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13640442 |
成層圏の大気の運動をシミュレーションする回転円筒水槽実験 | 本研究の目的は、従来の大気大循環を再現する回転円筒水槽実験において、回転円筒水槽の下層で対流圏に当たる波動流を生成し上層で成層圏に当たる安定成層を作り、波動流の上方への伝播を調べたり、成層圏周極渦に当たる密閉性の強い渦の生成を試みることである。我々は円筒水槽(水深1315cm)の底の厚さ3cmの層に半径方向の温度差を与えて波動流を生成し、水面を暖めることにより5cm以上の上層は温度が高さとともに上昇する安定成層を作ることに成功した。本年度は、上層における半径方向の内外壁の温度差、子午面の温度分布、円周方向の流速を測定した。その結果、半径方向の内外壁の温度差は下層で対流を生成するために加えた温度差とは反対で、温度は内壁で高く外壁で低い。円周方向の流速は上層で高さとともに減衰する。温度差と流速の高さ変化は温度風の関係にあることを、子午面の温度分布の測定によって正確に示した。また、水面を暖めないで上層を成層状態にしないと、下層の対流層には安定した軸対称流や波動流が生じないことを示した。これらの結果を総合すると、上層で半径方向の温度差が下層と反対になっているのは、温度風の関係から上層での流れが高さとともに減衰していることを示し、そのために下層の対流層で安定した軸対称流や傾圧波動が生成される。従って、下層の対流層で安定した軸対称流や傾注波動が生成されるためには、上層が強い成層状態になっていることが必要であることが示された。この結論を実際の大気に適用すると、オゾン層が紫外線を吸収して上層の大気が成層圏を作っていることが、対流圏に安定した大気循環が生成するために不可欠であることを意味する。成果は論文にまとめ、Journal of Atmospheric Scienceに投稿中である。 | KAKENHI-PROJECT-13640442 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13640442 |
輸血製剤への応用を目指したネコ多能性幹細胞の培養および血液分化技術の開発 | ES細胞とiPS細胞をネコで作製し、それを血液細胞へ分化させることを目的として、以下の成果を得た。1ピエゾマイクロマニピュレーターを用いた顕微授精でネコ胚盤胞期胚を作製し、ネコES細胞コロニーの作製に成功した。2ネコLIFを大腸菌で作製し、その機能を確認した。3ネコ胎子線維芽細胞にレトロウイルスを用いてOct3/4、Sox2、Klf4およびc-Mycの4遺伝子を導入し、ネコiPS様細胞株の樹立に成功した。4ネコ体細胞にセンダイウイルスを用いて初期化遺伝子を導入し、ネコiPS様細胞株コロニーの作製に成功した。5ネコiPS様細胞からマクロファージと赤芽球系の血液細胞へ分化させることができた。ES細胞(胚性幹細胞)とiPS細胞(人工多能性幹細胞)をネコで作製し、これらを血液細胞に分化させるために、本年度は以下の研究成果を得た。1.顕微授精からのネコES細胞株の樹立ネコ未成熟卵子と精子を用いてピエゾマイクロマニピュレーターで顕微授精を行った。各種条件を検討することで、ピエゾマイクロマニピュレーターを用いた顕微授精によって、効率的に胚盤胞期胚を作成することに成功した。さらに、胚盤胞期胚からネコES細胞の初代コロニーを得ることに成功している。2.ネコiPS細胞から血液前駆細胞の分化誘導昨年度に樹立に成功したネコiPS細胞株を用いて、血液細胞への分化を試みた。すなわち、ネコiPS細胞を浮遊培養し、これらの細胞を分化させることで胚様の形態をした細胞塊(胚様体)を作製した。次に胚様体を各種サイトカインを用いて培養したところ、コロニーアッセイ法において赤芽球性前駆細胞であるBFU-Eに形態が類似したコロニーが確認された。以上のことから、作製したネコiPS細胞が血液系細胞に分化することを証明した。ES細胞とiPS細胞をネコで作製し、それを血液細胞へ分化させることを目的として、以下の成果を得た。1ピエゾマイクロマニピュレーターを用いた顕微授精でネコ胚盤胞期胚を作製し、ネコES細胞コロニーの作製に成功した。2ネコLIFを大腸菌で作製し、その機能を確認した。3ネコ胎子線維芽細胞にレトロウイルスを用いてOct3/4、Sox2、Klf4およびc-Mycの4遺伝子を導入し、ネコiPS様細胞株の樹立に成功した。4ネコ体細胞にセンダイウイルスを用いて初期化遺伝子を導入し、ネコiPS様細胞株コロニーの作製に成功した。5ネコiPS様細胞からマクロファージと赤芽球系の血液細胞へ分化させることができた。ES細胞(胚性幹細胞)とiPS細胞(人工多能性幹細胞)をネコで作製するために、本年度は以下の研究成果を得た。1.顕微授精からのネコES細胞株の樹立未受精卵子と精子を用いて体外受精を行った。培養時の酸素濃度を20%と5%に調節して、体外成熟、体外培養を行い比較検討を行った。その結果、体外成熟では20%、体外培養では5%の酸素濃度が適した培養環境であることがわかり、胚盤胞期胚が多く得られた。次に、ピエゾマイクロマニピュレーターを用いた顕微授精を行ったところ、顕微授精を用いても胚盤胞期胚まで成長することが明らかとなった。これらの結果より、ES細胞株樹立に必要な受精卵を大量に作製する準備が整った。2.ネコiPS細胞株の樹立ネコ胎子線維芽細胞にレトロウイルスを用いてマウスOct3/4、Sox2、Klf4およびc-Mycの4遺伝子を導入した。その後、ウシ胎子血清(FBS)添加ヒトES培地で培養したところ、45継代以上維持が可能なネコiPS様細胞株が得られた。樹立した細胞株はヒトiPS細胞と類似した形態を示した。また、未分化マーカーを発現し、継代数の多いものでは導入遺伝子は検出されず、すべての継代数でNanog遺伝子は検出された。さらに各胚葉のマーカーに陽性を示す細胞へ分化した。核型は2n=38 XY型を示し、長期継代後も正常であった。3.ネコLIFの作製:クローニングにより609 bpのcDNAを得た。成熟タンパク質に相当する配列は540 bpであり、ヒトLIFアミノ酸配列と90%が一致した。SDS-PAGEにより目的タンパク質の予想分子量である70 kDa付近にバンドを確認した。さらにThrombinによりタグ配列を除去し、ネコLIFの予想分子量である20 kDaのタンパク質を分離した。作製したネコLIFはマウスES細胞の未分化性を維持し、TF-1細胞の増殖を促進した。ES細胞(胚性幹細胞)とiPS細胞(人工多能性幹細胞)をネコで作製し、これらを血液細胞へ分化誘導させるために、本年度は以下の研究成果を得た。1.顕微授精からのネコES細胞株の樹立:本研究室で作製したネコ組換LIFを用いてネコ未成熟卵子を培養したとろ、成熟率が増加することが分かった。また、前年度までにネコ未成熟卵子と精巣上体精子を用いてピエゾマイクロマニピュレーターで顕微授精を行い、胚盤胞期胚を効率的に作製できることが確認されたため、本年度はより未成熟な精子細胞である精巣内精子および伸長精子細胞を用いた顕微授精を行った。 | KAKENHI-PROJECT-24780311 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24780311 |
輸血製剤への応用を目指したネコ多能性幹細胞の培養および血液分化技術の開発 | その結果、これらの精子細胞を用いて胚盤胞期胚を作製することに成功した。2.ネコiPS細胞株の樹立:ネコ胎子線維芽細胞に遺伝子挿入のないセンダイウイルスベクターを用いてヒトOct3/4、Sox2、Klf4およびc-Mycの4遺伝子を導入した。その後、ウシ胎子血清(FBS)添加ヒトES培地で培養したところ、初代コロニーが複数確認された。これらのコロニーのうち20継代以上維持が可能な細胞株が得られた。3.ネコiPS細胞から血液細胞への分化誘導:本研究室でレトロウイルスベクターを用いて樹立したネコiPS細胞株から、血液細胞への分化誘導を試みた。ネコiPS細胞を浮遊培養し、胚様の形態をした細胞塊(胚様体)を作製した。その後、エリスロポエチンなどの各種サイトカインを用いて培養したところ、コロニーアッセイ法において赤芽球性前駆細胞であるBFU-Eに形態が類似したコロニーが確認された。これらのコロニーから細胞を分離・染色し、形態的な確認を行ったところ、多くのマクロファージ様細胞と少量の赤芽球様細胞が観察された。以上のことから、作製したネコiPS細胞から血液細胞であるマクロファージおよび赤芽球へ分化することが示された。獣医学研究の目的として、平成25年度はネコ多能性幹細胞を樹立し、これらの細胞を血液細胞へ分化誘導することを目指してきた。その結果、1顕微授精からのネコES細胞株の樹立に関しては、ピエゾを用いた顕微授精によって効果的に胚盤胞期胚の作製が可能となり、ネコES細胞のコロニーが得られている。さらに、2昨年度に樹立したネコiPS細胞を浮遊培養することで、胚様体を作製した。これらの胚様体を種々のサイトカインを添加して培養したところ、コロニーアッセイ法において赤芽球性前駆細胞であるBFU-Eと思われるコロニーが確認された。以上のことから目的に対しておおむね順調に進展していると判断した。研究の目的として、平成24年度はネコ多能性幹細胞の樹立を目指していた。その結果、1顕微授精からのネコES細胞株の樹立に関しては、顕微授精によってES細胞株の樹立に必要な胚盤胞期胚の作製が可能となり、さらに、2ネコiPS細胞株の樹立に関しては、45代以上継代が可能であったネコiPS細胞株を樹立できたことから、目的の大部分を達成できており、現在までのところ、順調に研究は進展していると考えられる。iPS細胞は、細胞株によって特性が異なることが示されており、血液系の細胞に分化しやすい株としにくい株があると考えられる。そのため、研究を推進するためには、複数の細胞株が樹立されていることが望ましい。また、iPS細胞とES細胞は非常に類似した特性を持っていることが知られており、ネコES細胞を樹立し解析する必要がある。以上のことから、ネコiPS細胞およびES細胞株の樹立を今後も積極的に取り組む必要がある。さらに、ネコiPS細胞から赤芽球性前駆細胞を作製することに成功しているが、今後、この細胞を赤血球まで効果的に分化させるプロトコールを確立する必要がある。赤血球への分化にはエリスロポエチンなどのサイトカインが重要な働きをしていることが知られており、これらのサイトカインの組み合わせや濃度などを詳細に解析することで研究が進んでいくと考えている。今回、ネコiPS細胞株が樹立できたが、研究を推進するためには、多くの細胞株が樹立されていることが望ましい。そのため、さらなるiPS細胞株の樹立をめざし、さらにネコES細胞株の樹立研究も推進する。 | KAKENHI-PROJECT-24780311 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24780311 |
絶対送粉共生系の寄生者の寄主転換機構の解明 | (1)試料のサンプリング:奄美大島、沖縄島、慶良間諸島、久米島、宮古島、台湾において野外調査を行い、イヌビワとハマイヌビワから遺伝子解析や形態観察に用いるキバラコバチSycoscapteridea sp.試料を採取すると同時に、各植物種の植物体上でのキバラコバチの産卵行動を観察した。その成果と過去のデータより、イヌビワとハマイヌビワ、および共生関係にある送粉コバチの正確な分布域と、キバラコバチの各寄主を利用する地理的な範囲が判明した。また、分子系統解析に用いる外群として、同属の近縁種を採取した。(2)分子系統解析:日本と台湾のイヌビワとハマイヌビワから得られたキバラコバチ73個体において、ミトコンドリアのCOI、COII、Cytbの部分配列を決定し、最尤法により系統解析を行った。これにより、日本と台湾の個体群間における系統関係や異なる植物種から得られた個体間の関係が判明した。(3)外部形態の観察:日本と台湾のイヌビワとハマイヌビワから得られたキバラコバチ87個体において、頭部、胸部、腹部、産卵管の長さを計測し、体サイズに対する産卵管の長さを調べた。また、走査型電子顕微鏡を用いて、産卵管の先端構造や感覚器、触角の感覚子の形質状態を観察した。これにより、日本と台湾の個体群間における形態的な差や異なる植物種から得られた個体間での形態差を把握することができた。以上により、寄主転換による種分化の初期段階における寄生蜂の遺伝的、形態的な変異・分化の程度をある程度把握することができた。遺伝子解析用の試料収集はほぼ完了しており、結果を示すのに十分な系統樹も得られている。形態観察用の試料は追加収集する必要があるが、おおむねの結果は現段階で得られており、試料を追加したとしても結果自体に大きな影響は与えず、データの精度や量の向上が今後の主な目的になると考えている。そのため、本研究課題は、順調に進展していると判断した。今後は、キバラコバチの形態観察用の試料を追加採取すると同時に、寄主植物認識に関する操作実験と解析を行う。寄主の探索には、植物が発する匂い物質を手がかりにしていると考えられるため、まずイチジク各種の花嚢の匂い成分分析を行う。また、Y字管を用いた植物の選択実験により、キバラコバチがどの植物種をどの程度選択するのか調べる。さらに、異なるイチジクから採取されたキバラコバチの寄主認識に関わる遺伝子発現の解析を行う予定である。(1)試料のサンプリング:奄美大島、沖縄島、慶良間諸島、久米島、宮古島、台湾において野外調査を行い、イヌビワとハマイヌビワから遺伝子解析や形態観察に用いるキバラコバチSycoscapteridea sp.試料を採取すると同時に、各植物種の植物体上でのキバラコバチの産卵行動を観察した。その成果と過去のデータより、イヌビワとハマイヌビワ、および共生関係にある送粉コバチの正確な分布域と、キバラコバチの各寄主を利用する地理的な範囲が判明した。また、分子系統解析に用いる外群として、同属の近縁種を採取した。(2)分子系統解析:日本と台湾のイヌビワとハマイヌビワから得られたキバラコバチ73個体において、ミトコンドリアのCOI、COII、Cytbの部分配列を決定し、最尤法により系統解析を行った。これにより、日本と台湾の個体群間における系統関係や異なる植物種から得られた個体間の関係が判明した。(3)外部形態の観察:日本と台湾のイヌビワとハマイヌビワから得られたキバラコバチ87個体において、頭部、胸部、腹部、産卵管の長さを計測し、体サイズに対する産卵管の長さを調べた。また、走査型電子顕微鏡を用いて、産卵管の先端構造や感覚器、触角の感覚子の形質状態を観察した。これにより、日本と台湾の個体群間における形態的な差や異なる植物種から得られた個体間での形態差を把握することができた。以上により、寄主転換による種分化の初期段階における寄生蜂の遺伝的、形態的な変異・分化の程度をある程度把握することができた。遺伝子解析用の試料収集はほぼ完了しており、結果を示すのに十分な系統樹も得られている。形態観察用の試料は追加収集する必要があるが、おおむねの結果は現段階で得られており、試料を追加したとしても結果自体に大きな影響は与えず、データの精度や量の向上が今後の主な目的になると考えている。そのため、本研究課題は、順調に進展していると判断した。今後は、キバラコバチの形態観察用の試料を追加採取すると同時に、寄主植物認識に関する操作実験と解析を行う。寄主の探索には、植物が発する匂い物質を手がかりにしていると考えられるため、まずイチジク各種の花嚢の匂い成分分析を行う。また、Y字管を用いた植物の選択実験により、キバラコバチがどの植物種をどの程度選択するのか調べる。さらに、異なるイチジクから採取されたキバラコバチの寄主認識に関わる遺伝子発現の解析を行う予定である。海外調査において台風など天候の影響により、予定より交通費の出費があった。そのため、物品費を減らして調整したが、わずかな差額が残ってしまった。非常に小額であるため、次年度の計画への影響はほぼ無いと思われるが、物品費に充てる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18K14773 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K14773 |
戦前期日本における治療教育の理論と実践に関する研究 | 今年度は、前年度からの資料収集および整理等の基礎作業をもとに分析を行い、以下のような研究成果をあげた。(1)精神科医が実施した感化院入所児童調査の目的・方法論・調査結果、および調査結果に基づく提言などの整理およびそれらの分析を実施した。その結果、初期(1900年代)の個別具体的な感化院入所児童の実態把握から、大正デモクラシー期(とりわけ1920年代前半)においては不良・非行少年が発生する社会構造そのものの分析をも試みるという質的転換を迎えたことを解明した。また、これは、精神医学研究における社会精神医学的視点の萌芽の一斑を示していることを明らかにした。(2)戦前期に知的障害児や精神病的児童等のために特別学級を開設した施設の実態調査。『神経学雑誌』『精神衛生』『感化教育』『児童保護』等の雑誌、および感化院(現:児童自立支援施設)の記念誌や沿革史誌などを収集・整理した。その結果、国立武蔵野学院、愛知学園、明石学園、波多学院、大阪修徳学院、広島修養院など特別学級開設の事実があることを確認した。また、それらの感化院での特別学級開設の時期は1920年代前半から高揚し、小学校での特別学級開設状況と酷似している点を明らかにした。そして、感化院内特別学級開設の要因は、a)感化教育向上のための「能力別」指導実施、b)内務省所管の感化教育の小学校化(義務教育化)志向、にあることを解明した。(3)1920年代より特殊教育振興に尽力した川本宇之介の「都市教育」論において、治療教育的見地からの公衆衛生問題への着眼が看取されることを明らかにした。これらの研究成果をもとに別紙(裏)のような研究発表を行った。今年度は、「研究フィールドの設定」、および歴史研究の前提となる障害者の教育と福祉をめぐる現代的課題の整理を行った。1.史資料分析のための理論的枠組みを設定。(1)精神科医が実施した感化院入所児童調査の目的・方法論・調査結果、および調査結果に基づく提言などの整理を実施した。その結果、初期(1900年代)の個別具体的な感化院入所児童の実態把握から、大正デモクラシー期(とりわけ1920年代前半)においては不良・非行少年が発生する社会構造そのものの分析をも試みるという質的転換を迎えたことを明らかにした。(2)戦前期に知的障害児や精神病的児童等のために特別学級を開設した施設の実態調査。『神経学雑誌』『精神衛生』『感化教育』『児童保護』等の雑誌、および感化院(現:児童自立支援施設)の記念誌や沿革史誌などを収集・整理した。その結果、国立武蔵野学院、愛知学園、明石学園、波多学院、大阪修徳学院、広島修養院など特別学級開設の事実があることを確認した。2.障害者をめぐる医療・教育・福祉・労働領域の連携に関する考察。本研究の前提になる、障害者をめぐる諸領域の連携に関する考察を行った。その結果、障害者本人および家族、職場、医療機関などの結節点として障害者青年学級が機能している点、および障害者の学習権保障が生活や健康等の保障を成り立たせることでもある点、を解明した。この成果は、『障害者問題研究』2001年第1号に掲載決定。3.分析の開始と仮説の提示。現在、今年度の研究成果をもとにして、日本特殊教育学会『特殊教育学研究』への投稿準備をすすめている。今年度は、前年度からの資料収集および整理等の基礎作業をもとに分析を行い、以下のような研究成果をあげた。(1)精神科医が実施した感化院入所児童調査の目的・方法論・調査結果、および調査結果に基づく提言などの整理およびそれらの分析を実施した。その結果、初期(1900年代)の個別具体的な感化院入所児童の実態把握から、大正デモクラシー期(とりわけ1920年代前半)においては不良・非行少年が発生する社会構造そのものの分析をも試みるという質的転換を迎えたことを解明した。また、これは、精神医学研究における社会精神医学的視点の萌芽の一斑を示していることを明らかにした。(2)戦前期に知的障害児や精神病的児童等のために特別学級を開設した施設の実態調査。『神経学雑誌』『精神衛生』『感化教育』『児童保護』等の雑誌、および感化院(現:児童自立支援施設)の記念誌や沿革史誌などを収集・整理した。その結果、国立武蔵野学院、愛知学園、明石学園、波多学院、大阪修徳学院、広島修養院など特別学級開設の事実があることを確認した。また、それらの感化院での特別学級開設の時期は1920年代前半から高揚し、小学校での特別学級開設状況と酷似している点を明らかにした。そして、感化院内特別学級開設の要因は、a)感化教育向上のための「能力別」指導実施、b)内務省所管の感化教育の小学校化(義務教育化)志向、にあることを解明した。(3)1920年代より特殊教育振興に尽力した川本宇之介の「都市教育」論において、治療教育的見地からの公衆衛生問題への着眼が看取されることを明らかにした。これらの研究成果をもとに別紙(裏)のような研究発表を行った。 | KAKENHI-PROJECT-12710146 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12710146 |
アルギン酸によるストロンチウムおよびセシウムの排泄促進効果とメカニズムの検討 | ラットを用いた実験で、アルギン酸のナトリウム塩(Na-Alg)はすでに知られているストロンチウム(Sr)の吸収抑制効果だけでなく排泄促進効果も有すること、またカルシウム塩(Ca-Alg)には、Srだけでなくセシウム(Cs)に関しても効果があることが示唆された。更に試験管内でNa-Algによる各種金属イオンの吸着しやすさを検討したところ、イオン半径がある一定領域の金属との結合定数が高く、その最適半径は価数によって異なる傾向が見られた。イオン化傾向との相関性は観察されなかった。アルギン酸は様々な有害金属の吸収抑制・排泄促進に利用可能であると考えられた。アルギン酸(alginic acid:Alg)はこれまでにもストロンチウム(Sr)の吸収抑制作用が報告されてきたが、その多くは過剰摂取が懸念されるナトリウム塩(Na-Alg)における検討である。そこで我々はラットを用いてカルシウム塩(Ca-Alg)でも検討を行い、Ca-AlgにはSrだけでなくセシウム(Cs)に対しても吸収抑制効果があることを見出した25年度は、ラットを用いてCa-AlgのSrおよびCsの排泄促進効果ならびに安全性を検討した。まず、AlgのSrおよびCs排泄促進効果を検討した。その結果、ラットを用いたin vivo実験系にて、Na-Algはすでに明らかになっていたSrの吸収抑制効果のみならず、体外への排泄促進効果も有することが示された。一方Ca-Algには、SrだけでなくCsに関しても吸収抑制効果および排泄促進効果があることが確認された。以上より、Algはカルシウム塩の方がより有用であることが示された。次に、Algの安全性を検討した。すなわちラットを用いたin vivo実験系にて、Na-AlgおよびCa-Alg投与群における生化学的検査および病理検査を行った。その結果、今回用いた投与量(10%を餌に配合)においてはNa-Algでは腎へのミネラルの沈着が認められたが、Ca-Algにはそのような病理所見はみられなかった。以上より、安全性の面からもAlgはカルシウム塩の方がより有用であることが示された。現在、金属イオン取り込みに対する最適条件およびメカニズムを検討中である。Algのもつ陽イオン交換能には原子価によりその交換性に差があるという報告がある。また我々の研究においてもSrとCsのAlgへの親和性に差が見られたことから,Algに取り込まれる原子の性質には特徴があるものと推定し、Algと各種金属イオンの親和性を検討している。現在までに、Algとの親和性の高い方からSr>Na>Cs>Caとなることが推測された。これはイオン化傾向とは異なる。さらに金属イオンの種類を増やし、検討を継続する。アルギン酸(alginic acid :Alg)はこれまでにもストロンチウム(Sr)の人体に対する吸収抑制作用が報告されてきたが、その多くは過剰摂取が懸念されるナトリウム塩(Na-Alg)における検討であった。そこで我々はラットを用いてカルシウム塩(Ca-Alg)でも検討を行い、Ca-AlgにはSrだけでなくセシウム(Cs)に対しても吸収抑制効果があることを見出した。昨年度は、ラットを用いたin vivo実験系にて、Na-Algはすでに明らかになっていたSrの吸収抑制効果のみならず、体外への排泄促進効果も有することが示された。一方Ca-Algには、SrだけでなくCsに関しても吸収抑制効果および排泄促進効果があることが示唆された。以上より、AlgはCa塩の方がより有用であることが示された。また安全性の面からもAlgはCa塩の方がより有用であることが示された。今年度は、各種金属イオンとの親和性とその傾向を検討した。Algのもつ陽イオン交換能には原子価によりその親和性に差があるという報告がある。また我々の研究においてもSrとCsのAlgへの親和性に差が見られたことから,Algに取り込まれる金属原子には特徴的な性質があるものと推定し、Algと各種金属イオンの親和性を検討した。測定金属は、価数やイオン半径が様々なものになるように留意しつつ、ヒトにおいて中毒を引き起す有害重金属等から選択した。現在のところ、イオン半径がある一定領域の金属との親和性が高い傾向が見られおり、その最適半径は価数によって異なる傾向が見られた。またイオン化傾向との相関性は観察されなかった。そのため、同じ金属原子で価数の異なるものを用いた検討を継続する。さらに測定対象を有害金属等からレアアースにまで広げて検討を継続する。昨年度までに、ラットを用いたin vivo実験系にて、アルギン酸(alginic acid :Alg)のナトリウム塩(Na-Alg)はストロンチウム(Sr)の吸収抑制・排泄促進効果を有すること、カルシウム塩(Ca-Alg)には、Srだけでなくセシウム(Cs)に関しても効果があることを示した。更にin vitro実験系にてNa-Algによる各種金属イオンの吸着を検討したところ、金属によって差が見られたことを報告した。今年度は更に有害重金属やレアアースを追加して検討した。得られた結果から算出した結合定数は、Sr>Pb>Tb>Dy>Ca>Cd>Mg>Fe(II)>Fe(III)>Co>Al>Ni>Cs>Cu>Ag>Li>Kとなった。イオン半径がある一定領域の金属との結合定数が高く、その最適半径は価数によって異なる傾向が見られた。結合定数は、2価>3価>>1価となる傾向が見られた。イオン化傾向との相関性は観察されなかった。 | KAKENHI-PROJECT-25560062 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25560062 |
アルギン酸によるストロンチウムおよびセシウムの排泄促進効果とメカニズムの検討 | このことから、アルギン酸の金属イオン吸着メカニズムは、その価数およびイオン半径に影響され、最適イオン半径は価数によって異なることが示唆された。同時に、in vivo実験系でNa-AlgがSrの吸収抑制・排泄促進効果を示し、Csにはその効果を示さなかったことは、結合定数がSr>>Csであることから、またCa-AlgがSrの吸収抑制・排泄促進効果を示したことは、結合定数がSr>Caであることから説明できた。一方で、Ca-AlgがCsに対しても効果を示したことに関しては結合定数のみでは説明できない。別の実験において、Na-Algはより粘性の高い高分子の方が胆汁酸吸着力が高いというデータがあり、粘性の違いも効果に差を与えると考えられる。Ca-Algは化学的な結合ではなく、ゲル化による粘性の上昇に伴う物理的な吸着によってCsに対する効果を発揮した可能性が考えられる。ラットを用いた実験で、アルギン酸のナトリウム塩(Na-Alg)はすでに知られているストロンチウム(Sr)の吸収抑制効果だけでなく排泄促進効果も有すること、またカルシウム塩(Ca-Alg)には、Srだけでなくセシウム(Cs)に関しても効果があることが示唆された。更に試験管内でNa-Algによる各種金属イオンの吸着しやすさを検討したところ、イオン半径がある一定領域の金属との結合定数が高く、その最適半径は価数によって異なる傾向が見られた。イオン化傾向との相関性は観察されなかった。アルギン酸は様々な有害金属の吸収抑制・排泄促進に利用可能であると考えられた。ラットにおけるCa-AlgによるSrおよびCsの吸収抑制・排泄促進効果と、in vitroにおけるNa-AlgとSrおよびCsとの親和性について、学会発表(アルギン酸による重金属の吸収抑制および排泄促進作用とそのメカニズムの検討、P-176、第41回日本毒性学会学術年会、神戸)を行った。8月にはひらめきときめきサイエンスにも採択され、高校生を対象にAlgを用いた実験を実施し、科学の面白さを伝えることができた。各種金属との親和性に関しては、価数により、それぞれ異なる最適イオン半径の存在が示唆された。またイオン化傾向とは相関性が見られなかった。現在のところ、価数およびイオン半径の影響が大きく、イオン化傾向はあまり影響しないことが示唆されている。そこで、同じ元素で価数のことなるもの(鉄など)を用いて、Algとの親和性の違いを検討し、親和性を左右する要素についてさらに検討していく。またこれらの結果を学会発表するため、第42回日本毒性学会学術年会にエントリーし、採択されている(演題:アルギン酸による重金属吸着作用の解析)。さらにこれらの結果を論文化する予定である。臨床試験に関しては、資金繰りの関係から単独での実施は難しい状況であるが、別の研究テーマにおいて同時実施が可能と考えられる臨床試験の計画が進んでいることから、実施できる方向で準備を進めている。薬剤学ラットにおいてSrおよびCsの排泄促進効果が示されたため、その排泄促進効果を臨床試験にて検証するための資金繰りの検討と同時に代替法の検討をしている。代替法としては他の臨床試験と同時に実施する等、実施可能な方法を模索している。 | KAKENHI-PROJECT-25560062 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25560062 |
「おもてなし」に対する海外消費者の態度に関する研究 ー米・中・台 地域を中心に- | 本研究では、日本の歴史・文化に基づく日本特有の「おもてなし」概念に着目し、その海外展開戦略を検討する。具体的には、本研究の目的は3つある。第1に、「おもてなし」概念やそれを構成する要素を明示する。第2に、日本企業の主な進出先であると考えられるアメリカ・中国・台湾の消費者が、日本の「おもてなし」をどう捉え、どのような要素に特に注目・期待しているかを明らかにする。第3に、「おもてなし」の海外展開戦略を立てる際に依拠する枠組みの構築を試みる。本研究は2つの調査方法、1質問票調査および2インタビュー調査を用いる。本研究では、日本の歴史・文化に基づく日本特有の「おもてなし」概念に着目し、その海外展開戦略を検討する。具体的には、本研究の目的は3つある。第1に、「おもてなし」概念やそれを構成する要素を明示する。第2に、日本企業の主な進出先であると考えられるアメリカ・中国・台湾の消費者が、日本の「おもてなし」をどう捉え、どのような要素に特に注目・期待しているかを明らかにする。第3に、「おもてなし」の海外展開戦略を立てる際に依拠する枠組みの構築を試みる。本研究は2つの調査方法、1質問票調査および2インタビュー調査を用いる。 | KAKENHI-PROJECT-19K12589 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K12589 |
核の初期化における胎盤特異的インプリント遺伝子の役割に関する研究 | GIは、胎盤を有する哺乳類に特有な現象で、胎盤形成にその生物学的必要性が指摘されている。これまでに網羅的な胎盤特異的GI遺伝子の検索を行い、10種類の遺伝子を同定することに成功した。また、胎盤肥大を特徴とする体細胞クローンマウスの胎盤は、2種類のGI遺伝子がインプリント異常を示すことを発見した。本研究では、エピジェネティックな分子機構とシグナル伝達経路について解析した。その結果、これらの領域を制御するdifferentiallymethylatedregionを見出した。またクローン胚の胎盤では、このDMRが失われ、それに伴う遺伝子の過剰発現が胎盤過形成の一因となる可能性が示された。ゲノムインプリンティングは胎盤を有する哺乳類に特有な現象であり、この機構によってアレル特異的発現を示すインプリント遺伝子は胎盤形成において重要な役割を果たしていると考えられる。現在100種類以上のインプリント遺伝子が知られているが、本研究では申請者らが過去に報告した10種類の胎盤特異的インプリント遺伝子の胎盤形成における役割を解析する。本年度ではまず胎盤特異的インプリント遺伝子の発現量及びSNPを用いたアレル特異的発現パターンを解析し、10種類中8種類の遺伝子(Sfmbt2, Tfpi2, Ppp1r9a, Ascl2, Tspan32, Tssc4, Ano1, Gab1, Slc22a3)について胎盤と同様のアレル特異的発現を確認した。次にこれらの遺伝子のうちAno1, Sfmbt2, Gab1についてアレル特異的DNAメチル化及びヒストン修飾を解析した。バイサルファイトシーケンス解析により、TS細胞においてGab1に母由来アレルのみがメチル化されるDMR(differentially methylated region)が存在することがわかった。Ano1及びSfmbt2のプロモーター領域は両アレルとも低メチル化状態にあった。またChIP解析により、Ano1はH3K4me2, H3K4me3の母由来アレル特異的修飾が、Gab1, Sfmbt2はH3K9me2の母由来アレル特異的修飾及び、H3K4me3の父由来アレル特異的修飾が見られた。このことは、これらの胎盤特異的インプリント遺伝子がDNAメチル化だけでなくヒストン修飾によってアレル特異的発現がインプリントされる可能性を示唆している。ゲノムインプリンティングは哺乳類特有の現象であり、この機構によってアレル特異的発現を示す遺伝子をインプリント遺伝子と呼ぶ。進化的に哺乳類の胎盤の獲得とゲノムインプリンティング機構の確立には密接な関連があるとされ、インプリント遺伝子は胎盤形成において重要な役割を果たしていると考えられる。本研究では、現在同定されている100種類以上のインプリント遺伝子の中から、申請者らが過去に報告した10種類の胎盤特異的インプリント遺伝子のインプリント確立機構と、胎盤形成における役割を解析する。昨年度までに既知の胎盤特異的インプリント遺伝子のアレル特異的発現パターンと、それらのエピジェネティック修飾(DNAメチル化、ヒストン修飾)を解析した。その結果、Gab1には母由来アレルのみがメチル化されるDMR(differentially methylated region)が存在したが、Ano1、Sfmbt2のプロモーター領域は両アレルとも低メチル化状態にあり、DMRの存在は確認できなかった。一方Gab1、Ano1、Sfmbt2はそれぞれアレル特異的ヒストン修飾が見られ、これらの胎盤特異的インプリントがDNAメチル化だけでなくヒストン修飾によって確立する可能性が示唆された。本年度では胎盤におけるDNAメチル化非依存的なインプリントをより詳細に解析するため、新規メチル化酵素Dnmt3a/Dnmt3bノックアウトマウスを用い、ノックアウト卵由来の胚の遺伝子発現をRNA-seqによって網羅的に解析した。このノックアウトマウスは卵子形成過程においてDNAメチル化インプリントが確立しない。しかしノックアウト卵由来の胚はGab1、Sfmbt2のアレル特異的発現が維持されていた。この結果は胎盤のゲノムインプリンティング機構にDNAメチル化に依存しないメカニズムが存在する可能性をさらに強固なものとする。本年度は新規メチル化酵素Dnmt3a/Dnmt3bノックアウトマウスを用い、ノックアウト卵由来の胚の遺伝子発現をRNA-seqによって網羅的に解析した。この結果ノックアウト卵由来の胚体外組織はGab1、Sfmbt2のアレル特異的発現が維持されていることが示され、胎盤のゲノムインプリンティング機構にDNAメチル化に依存しないメカニズムが存在する可能性をさらに強固なものとする知見が得られた。ゲノムインプリンティングは胎盤を有する哺乳類に特有な現象であり、この機構によってアレル特異的発現を示すインプリント遺伝子は胎盤形成において重要な役割を果たしていると考えられる。現在100種類以上のインプリント遺伝子が知られているが、本研究では申請者らが過去に報告した10種類の胎盤特異的インプリント遺伝子の胎盤形成における役割を解析する。これまでに、胎盤特異的インプリントの遺伝子の発現量及びSNPを用いたアレル特異的発現パターンを解析し、10種類中8種類の遺伝子(Sfmbt2, Tfpi2, Ppp1r9a, Ascl2, Tspan32, Tssc4, Ano1, Gab1, Slc22a3)について胎盤と同様のアレル特異的発現を確認した。次にこれらの遺伝子のうちAno1, Sfmbt2, Gab1についてアレル特異的DNAメチル化及びヒストン修飾を解析した。 | KAKENHI-PROJECT-26870036 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26870036 |
核の初期化における胎盤特異的インプリント遺伝子の役割に関する研究 | バイサルファイトシーケンス解析により、TS細胞においてGab1に母由来アレルのみがメチル化されるDMR(differentially methylated region)が存在することが分かった。Ano1及びSfmbt2のプロモーター領域は両アレルとも低メチル化状態にあった。またChIP解析により、Ano1はH3K4me2, H3K4me3の母由来アレル特異的修飾が、Gab1, Sfmbt2はH3K9me2の母由来アレル特異的修飾及び、H3K4me3の父由来アレル特異的修飾が見られた。このことは、これらの胎盤特異的インプリント遺伝子がDNAメチル化だけでなくヒストン修飾によってアレル特異的発現がインプリントされる可能性を示唆している。最終年度は、クローン胚胎盤における胎盤インプリントの保持及びヒトへの保存性がないことを確認した。GIは、胎盤を有する哺乳類に特有な現象で、胎盤形成にその生物学的必要性が指摘されている。これまでに網羅的な胎盤特異的GI遺伝子の検索を行い、10種類の遺伝子を同定することに成功した。また、胎盤肥大を特徴とする体細胞クローンマウスの胎盤は、2種類のGI遺伝子がインプリント異常を示すことを発見した。本研究では、エピジェネティックな分子機構とシグナル伝達経路について解析した。その結果、これらの領域を制御するdifferentiallymethylatedregionを見出した。またクローン胚の胎盤では、このDMRが失われ、それに伴う遺伝子の過剰発現が胎盤過形成の一因となる可能性が示された。胎盤特異的インプリント遺伝子のアレル特異的発現をTS細胞において確認することができた。また、これらのエピジェネティック修飾を解析することにより、胎盤のゲノムインプリンティング確立機構について新たな知見が得られた。次年度はGab1のDMRの配列解析から、胎盤のDNAメチル化依存的なインプリント確立機構についてさらに詳細な調査を行い、胎盤特異的ゲノムインプリンティングのDNA依存的・非依存的機構の双方について包括的に解析する。また体細胞クローンマウスを用い、胎盤特異的インプリントの発現変動とそれらが体細胞クローンの胎盤形成にどのような影響を与えるのかについて解析する。分子生物学次年度は体細胞クローンマウスを用い、胎盤特異的インプリント遺伝子の発現変動とそれらが体細胞クローンの胎盤形成にどのような影響を与えるのかについて解析する。また胎盤特異的インプリント遺伝子がどのようなシグナル伝達経路を介して胎盤形成に寄与しているかについて解析する。 | KAKENHI-PROJECT-26870036 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26870036 |
磁束と電流が独立に制御できるかご形モータの開発 | 1.研究の準備状況と目的本研究の最終目標は、かご形誘導モータの一次巻線を、直流モータと同様に、界磁巻線と負荷巻線に分離し、磁束と電流が独立に制御できる新構造のかご形モータを開発することにある。0.4kWの試作機によりモータの磁束と電流が独立に制御できる可能性は得ていたものの、電動機の構造解析、設計手法の確立、可変速運転を含めた電動機の基礎特性の把握など、多くの研究課題を残していた。そこで、本研究では、これら基礎的事項の解明を目的に、以下の研究を実施した。2.研究の実施概要及び成果0.4kW試作機を、商用電源および助成金により購入した可変周波数電源で運転し、以下の動作実験を実施した。また、これらの実験結果を踏まえて、本モータの構造解析、設計手法についても検討し、以下のことを明らかにした。(1)商用電源および購入した可変周波数電源を用いて、磁束と電流を制御しながらモータの定速および可変速運転特性について検討した。その結果、本モータは、従来のかご形誘導モータと類似の回転子構造を持ちながら、同期モータと同様な運転特性を有することがわかった。また、試作モータは始動から運転まで円滑に動作し、固定子に設けた界磁巻線により広範囲に力率が制御できることが判明した。さらに、可変周波数電源による可変速運転特性も良好で、従来のかご形誘導モータとは異なり、すべりがなく周波数に応じて一定スピードで回転できることも確認した。(2)上記(1)の詳細な実験結果を踏まえて、本モータの固定子および回転子の最適な巻線構造、回路接続、設計手法などについて検討した。その結果、固定子に設けた界磁巻線の磁極数の組み合わせが悪いと、回転軸に異常な電磁力が働き、軸偏心の原因になることがわかった。そこで、このような問題が起きない一般的なモータの構成法についても検討し、本モータの基本的な設計指針を得ることができた。1.研究の準備状況と目的本研究の最終目標は、かご形誘導モータの一次巻線を、直流モータと同様に、界磁巻線と負荷巻線に分離し、磁束と電流が独立に制御できる新構造のかご形モータを開発することにある。0.4kWの試作機によりモータの磁束と電流が独立に制御できる可能性は得ていたものの、電動機の構造解析、設計手法の確立、可変速運転を含めた電動機の基礎特性の把握など、多くの研究課題を残していた。そこで、本研究では、これら基礎的事項の解明を目的に、以下の研究を実施した。2.研究の実施概要及び成果0.4kW試作機を、商用電源および助成金により購入した可変周波数電源で運転し、以下の動作実験を実施した。また、これらの実験結果を踏まえて、本モータの構造解析、設計手法についても検討し、以下のことを明らかにした。(1)商用電源および購入した可変周波数電源を用いて、磁束と電流を制御しながらモータの定速および可変速運転特性について検討した。その結果、本モータは、従来のかご形誘導モータと類似の回転子構造を持ちながら、同期モータと同様な運転特性を有することがわかった。また、試作モータは始動から運転まで円滑に動作し、固定子に設けた界磁巻線により広範囲に力率が制御できることが判明した。さらに、可変周波数電源による可変速運転特性も良好で、従来のかご形誘導モータとは異なり、すべりがなく周波数に応じて一定スピードで回転できることも確認した。(2)上記(1)の詳細な実験結果を踏まえて、本モータの固定子および回転子の最適な巻線構造、回路接続、設計手法などについて検討した。その結果、固定子に設けた界磁巻線の磁極数の組み合わせが悪いと、回転軸に異常な電磁力が働き、軸偏心の原因になることがわかった。そこで、このような問題が起きない一般的なモータの構成法についても検討し、本モータの基本的な設計指針を得ることができた。 | KAKENHI-PROJECT-06750291 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06750291 |
陽炎ビブリオの病原因子遺伝子発現の調節機構 | 腸炎ビブリオの重要な病原因子である耐熱性溶血毒(TDH)をコ-ドする遺伝子(tdh)の発現を促進する調節因子(VpーToxR)を解析した。VpーToxRをコ-ドする遺伝子(VpーtoxR)はコレラ菌の病原因子発現調節因子(ToxR)の遺伝子と52%の相同性を有しており、推定アミノ酸配列も類似し、特に発現調節に関与すると推定される領域およびtransmembrane領域と考えられる部分では非常に強い売似性が認められた。大腸菌中で、クロ-ン化したtdh遺伝子とVpーtoxR遺伝子を共存させた系で、VpーToxRがtdh遺伝子(tdh1tdh4の中で特にtdh2およびtdh4)の発現を促進することを確認した。またtdh2遺伝子について、コ-ドン領域上流144bp付近の塩基配列がVpーToxRによる発現促進において重要な役割を果たしていることが明らかになった。ただし、ゲルシフト法によってVpーToxRの結合能を調べたところ、VpーToxRはコ-ドン領域のすぐ上流(68bpまで)に結合することを示唆する成績が得られ、さらに上流(144bp近付)の塩基配列は、結合したVpーToxRとの間の何らかの相互作用によってtdh2遺伝子の発現促進に関与しているのではないかと考えられた。VpーtoxR遺伝子プロ-ブを作製し、これを用いたハイブリダイゼ-ション試験により、この遺伝子はほとんどの腸炎ビブリオ菌株に存在することを明らかにした。AQ3815株を用いて、VpーtoxR遺伝子を特異的に不活化したisegenic変異株を作製した。この変異株と野生株との比較によって、VpーToxRによるtdh遺伝子の発現促進は、KPブロス中で菌を発育させた場合に特に顕著で、発現促進作用は転写レベル(mRNA)でおこっていることを聖らかにした。腸炎ビブリオの重要な病原因子である耐熱性溶血毒(TDH)をコ-ドする遺伝子(tdh)の発現を促進する調節因子(VpーToxR)を解析した。VpーToxRをコ-ドする遺伝子(VpーtoxR)はコレラ菌の病原因子発現調節因子(ToxR)の遺伝子と52%の相同性を有しており、推定アミノ酸配列も類似し、特に発現調節に関与すると推定される領域およびtransmembrane領域と考えられる部分では非常に強い売似性が認められた。大腸菌中で、クロ-ン化したtdh遺伝子とVpーtoxR遺伝子を共存させた系で、VpーToxRがtdh遺伝子(tdh1tdh4の中で特にtdh2およびtdh4)の発現を促進することを確認した。またtdh2遺伝子について、コ-ドン領域上流144bp付近の塩基配列がVpーToxRによる発現促進において重要な役割を果たしていることが明らかになった。ただし、ゲルシフト法によってVpーToxRの結合能を調べたところ、VpーToxRはコ-ドン領域のすぐ上流(68bpまで)に結合することを示唆する成績が得られ、さらに上流(144bp近付)の塩基配列は、結合したVpーToxRとの間の何らかの相互作用によってtdh2遺伝子の発現促進に関与しているのではないかと考えられた。VpーtoxR遺伝子プロ-ブを作製し、これを用いたハイブリダイゼ-ション試験により、この遺伝子はほとんどの腸炎ビブリオ菌株に存在することを明らかにした。AQ3815株を用いて、VpーtoxR遺伝子を特異的に不活化したisegenic変異株を作製した。この変異株と野生株との比較によって、VpーToxRによるtdh遺伝子の発現促進は、KPブロス中で菌を発育させた場合に特に顕著で、発現促進作用は転写レベル(mRNA)でおこっていることを聖らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-03807024 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03807024 |
妊孕性の保持を含めた婦人科機能温存・低侵襲治療を支援する最新MR機能画像診断 | 子宮動態について2方向での評価による長所・短所を明かにした。またその自動評価についてJunctional Zone及び筋層内収縮の評価が可能となりつつある。非造影の手法を用いた子宮動脈の描出は既報と合致していることから、その描出の信頼性の高いことを示した。子宮頚癌について、術前化学療法の治療効果は拡散強調・灌流画像よりも腫瘍サイズと相関のあることを示し、また長期予後については、扁平上皮癌において治療前ADC値との相関を認めた。子宮動態について2方向での評価による長所・短所を明かにした。またその自動評価についてJunctional Zone及び筋層内収縮の評価が可能となりつつある。非造影の手法を用いた子宮動脈の描出は既報と合致していることから、その描出の信頼性の高いことを示した。子宮頚癌について、術前化学療法の治療効果は拡散強調・灌流画像よりも腫瘍サイズと相関のあることを示し、また長期予後については、扁平上皮癌において治療前ADC値との相関を認めた。本研究の目的は、研究者のシネMRによる動態の解析、及び拡散強調画像・テンソル画像を用いた機能評価と構築の可視化という2つのアプローチにより1.子宮筋腫核出術前後の子宮動態・構造の評価を非侵襲的に得るMR画像診断手法を開発し、術後の温存子宮の機能回復や、妊孕性に関連した子宮動態・構造の評価をめざす。2.機能温存・低侵襲手術において、病変の血流、血管支配や癒着などの詳細情報を非侵襲的に得るためのMR画像手法を開発する。3.女性骨盤悪性腫瘍において正確な病変進展評価が可能な画像診断法の開発及び臨床症例との比較検討を行うことである。特に初年度は機能MR技術の開発として、子宮の3次元シネMR画像、拡散強調・テンソル画像、非造影MRAngiography撮像法の確立、および解析に用いるプログラムの開発に重点を置いた。まず、3次元での画像取得を直接試みるのは技術的に困難があったため、前段階として、従来の矢状断の撮像法と直行する冠状断での蠕動評価を行った。その解析は現在進行中であるが、矢状断よりも優れた点がみられている。自動解析プログラムについては、junctional zoneの解析についてはほぼ完成したプログラムができ、学会発表も行ったが、引き続き手法を改良しており、論文を投稿予定である。加えて、Junctional zoneから筋層に向かう蠕動については自動化が難しいことから、別個に半自動化解析法を開発した。非造影MR画像の撮像法開発はH24年度進展がみられた。撮像シーケンスの改良・最適化により、血管描出に最適な撮像法およびパラメーターが判明してきている。また、理論的にこれらの最適パラメーターをsimulateする手法についても開発を行っており、シーケンス改良・開発時間の大幅な短縮が可能となった。拡散テンソル画像については、撮像・解析法を工夫し健常ボランティアでの子宮筋層構築の描出に成功、疾患への応用及び詳細な解析への基礎を作った。本研究の3本柱は、1、子宮の動態評価2、骨盤内臓器の血管、血流評価3、拡散強調画像(DWI)による女性骨盤悪性腫瘍の治療効果、予後予測であった。これに対し、下記のような業績が得られた。子宮蠕動については評価断面を矢状断一断面から冠状断を加えての評価することにより、より詳細な蠕動の観察と考察が可能となった。子宮の動きが卵管方向へと向かっていることが画像的にも示されたことになる。今後、三次元蠕動解析へ進むにあたり重要な情報となった。また、蠕動に対する抗コリン剤の影響に関する研究では、その蠕動の抑制効果は、腸管蠕動の抑制効果よりもが短時間で弱いことが明らかにされた。子宮筋腫症例において、月経周期を同一に揃えた上で健常者と比較検討した結果、筋腫症例では健常者に比べて蠕動が弱いことが示された。上記、蠕動解析は現段階では視覚評価にて行っているが、自動解析ソフトの解析も昨年度に引き続いて継続し、結果につき検討中である。子宮頸癌の術前化学療法の治療効果判定に関しては、潅流画像、拡散強調像、形態画像の比較評価を行い、結果的に形態画像が最も治療効果を反映していることが明らかとなった。日常臨床において簡便な手法の信頼性が高いことは臨床的に有益であると考えられる。子宮動脈については、その最適な描出手法を確立した。更に、同手法を用いて閉経前後での描出の比較を行い、既報のドップラー超音波と同様の結果が得られ、本手法の信頼性の高いことが示された。本内容の論文は投稿中である。拡散テンソル画像については、健常者における描出が可能となったので、筋腫患者での適応へ進んだ。現在この結果に関し解析中である。拡散強調像の一環である、Diffusion Kurtosis Imaging(DKI)についても子宮体癌に対してその有用性の検討を開始しており、結果は現在解析中である。本研究は、子宮の動態評価、骨盤内臓器の血管・血流評価、拡散強調画像(DWI)による女性骨盤悪性腫瘍の治療効果、予後予測を柱として進めた。1,子宮蠕動については、閉経前後の変化をMRIで認識される内層筋層Junctional zone(JZ)の厚さとの関連について検討を行った。 | KAKENHI-PROJECT-24390291 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24390291 |
妊孕性の保持を含めた婦人科機能温存・低侵襲治療を支援する最新MR機能画像診断 | 蠕動は閉経後に有意に低下し、JZは厚さが薄くなる傾向が認められたが、閉経前・後各々において、JZの厚さと蠕動の間には相関関係は認められず、直接的な関連性は低いことが示され、子宮のJZは蠕動以外の働きも担っている可能性を示唆した。3,月経周期に伴う子宮内膜の変化について疾患群との比較検討を行った。結果、子宮内膜の厚さのみで正常内膜、殊に黄体期内膜と疾患内膜をMRI画像上鑑別することは困難であることがわかった。内膜信号については、その鑑別の要素となりうるが、overwrapは多いため、内膜信号の不均一性をとらえる必要を示し、画像による鑑別能の向上に貢献した。4,子宮頸癌の長期予後予測について、拡散強調画像から得られるADC値との相関を検討した。治療前のADC平均は、event free survival(EFS)と有意な相関が認められたが、overall survivalとの相関は認められなかった。多変量解析では、扁平上皮癌の患者においては、ADC平均は、FIGOstageやリンパ節転移等と同様に、独立した予後予測のbiomarkerであることが示され、画像から得られる定量値が、今後の治療予後予測に貢献しうることを示した。26年度が最終年度であるため、記入しない。画像診断学26年度が最終年度であるため、記入しない。初年度としては、おおむね予定通り順調に成果を上げている。3次元撮像の実現においては、やや困難がみられたが、他の自動化プログラム開発、非造影MRAngiography、拡散テンソル画像の解析プログラム開発については、上述の通りほぼ予定通りの結果が得られている。ただし、これらは特にH24年度後半での成果が多いため、学会等での発表はH25年度にずれ込む結果となった。全体として、概ね予定通り順調に成果を上げている。蠕動については、多くの結果を示しており、現在、次の三次元描出の段階へ移行している。また、拡散強調画像、テンソル画像の両者とも現在、結果をまとめている段階ではあるが、次段階の研究も同時進行中である。今年度の業績としては結果のまとめに時間を要する内容が多く、次年度以降になると考えている。26年度が最終年度であるため、記入しない。子宮シネMR画像の撮像法改善については、3次元撮影の開発につき更なる取り組みを重ねる。また3次元撮影が困難な場合でも冠状断撮影で子宮筋腫をはじめとした患者の子宮の評価で新たな情報を得ることを試みる。自動解析は成果発表とともに疾患に応用する。非造影MRAも技術の改善と疾患への応用を図り、ASLによる潅流情報とあわせた検討にもとりくむ。拡散テンソル画像については、他撮像法での子宮層構造との対比や筋腫疾患での変化についての検討を行う。子宮蠕動については、三次元四次元撮影法の確立のためにMR装置の専門家と協議を重ねていく予定である。自動解析は、現状ソフトの改良を進めつつ、正常子宮から疾患子宮への応用へも進める。拡散テンソル画像では、筋腫以外の疾患への応用を視野に入れて症例の蓄積を進める。DWIに関しては、これまで10年以上にわたって蓄積されたデータの解析も進めていく予定である。26年度が最終年度であるため、記入しない。上記のように研究をすすめていくが、初年度後半の学会等での発表もあわせてH25年度に行う予定であるため、学会関係の旅費等、および研究成果をまとめるための援助をうけるための人件費を繰り越す形で計上している。 | KAKENHI-PROJECT-24390291 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24390291 |
未来を指向する推論モデルによる音楽表現のデザイン | この研究では、音楽情動を定量的に扱うため、対称性認知バイアスを用いたシステムと、情報エントロピーの多寡を制御するシステムを開発した。前者は、音楽的期待感を二つの事象間に生じる因果関係とその推論として捉え、既存の旋律の音高の遷移確率に緩い対称性モデルを適応した。後者は、音楽構造の生成を、情報エントロピーを基盤とし、音楽的出来事の生起の可能性の確定度を制御可能にしたシステムである。これらの研究成果を国際会議および国内学会にて発表した。また、これらの研究の諸段階において得られた知見や制作したモデルを、実際の電子音響音楽作品の作曲に逐次適用し、国内外におけるコンサートで発表した。本研究は、音楽を連続する二つの事象間に生じる因果関係の推論としてその構造を極限まで単純化して捉え、その事象間の遷移確率に認知バイアスの数理モデルである「緩い対称性」を適用し、音楽を聴取する際に聴き手が抱く,次に訪れる音楽的情景についての期待感の「実現/裏切り」を予期的情動に関する認知モデルとして明示的に扱い,その認知モデルによる音楽構造の自動生成システムの開発とそのシステムによる音楽作品の制作を行うものである.平成25年度の研究では、メロディ生成過程におけるプロトタイプそのものの生成を目指し,1)プロトタイプとなるモデルの生成システムの開発,2)エントロピーの多寡による電子音響音楽作品の制作と上演,3)最終的な完成作品のシステムの設計・表現概念の構築を行った.上記3つの視点による研究推進の目的は、本研究における音楽生成モデルがプロトタイプそのものを生成させることを目指しているため,エントロピーに基づくリズム構造の生成モデルの開発により教師なし学習として実装可能であることに着目したためである.また,その研究プランから着想を得,作曲家である研究代表者が、エントロピーの多寡によって楽曲全体が構成されている電子音楽作品を作曲し、パリおよび東京にて演奏・上演を行った.また,本研究の最終的な目的である,期待感を生成させる表現ツールの完成に向け,音楽生成段階から上演形態にいたるまでのプロセスを一貫したモデルとしてデザインするために,マルチスピーカーシステムによる表現空間に関する調査研究に着手した.今後,このシステムが作り出す音楽構造と聴き手の認知構造との関係を数値化するための準備を行っており,申請の研究計画におおむね合致している.作曲家は,聴き手が抱くであろう期待感の連続を経験に基づいて勘案しながら作曲している.聴き手は,その作曲者の意図に基づき,次に立ち現れる音楽的状況に対して期待感を抱きながら音楽を聴取する.本研究課題では,音楽を,次に立ち現れる音楽的状況に対する期待感の連続として扱う.その期待感は,すでに聴取済みの音楽的状況をもとに,次に立ち現れる音楽的状況に対する推論ととらえることができる.その音楽聴取時にはたらく推論の結果に対して,正しかったのか,間違っていたのか,また,それぞれが快・不快いずれだったのか,という評価を聴き手は下す.その評価を定量的に扱うことで,人間の未来に対する期待感を軸とする音楽生成モデルを作り出すことが可能となる.そして,そのモデルを用いて生成された結果を音楽作品として提示することが本研究課題の目的である.一方,そのモデルから生成された結果が,単なる音の素材の集合なのか,明確な音楽作品なのか,という判断については,それらがもつ構造のみから判断が下されるとはいいきれず,生成された結果に,音楽作品としての価値を添えるための戦略実践も考慮する必要があるだろう.音楽作品に関する価値の形成は,人間の社会活動によって,その楽曲とは別の社会戦略の場で形成されている可能性を排除できないからである.音楽情動は,このようにミクロなレベルでは期待感の連続あるいは未来に対する推論として捉えることが可能であり,マクロなレベルではその価値の社会構築の実践として捉えることも可能となる.人間の推論を定量的に扱う音楽生成モデルは,未来をいかに描き出すことができるのかという,ミクロ・マクロ双方のレベルを横断しながら,私たちの音楽的な営みに関する新たなデザインの提案といえるだろう.音楽は次に訪れる音楽的状況に対する期待感の連続と捉えることができる。その期待感の連続は、音楽聴取時に実際に聴くことができる側面の背後にある抽象化された構造と捉えることができる。その期待感の連続を音楽情動として定量的に取り扱うために、本研究では、音楽を連続する二つの事象間に生じる因果推論としてその構造を極限まで単純化して取り扱い、その因果関係を提示するためのプロトタイプモデルを生成するために、情報エントロピーの多寡によって音の経時的な発音タイミングと音程要素の組み合わせを生成可能なモデルを構築した。これらの知見に基づき3つの電子音響音楽作品を作曲した。これらの作品は、制作したモデルの、研究年度にそった段階的な作曲プロセスへの応用という位置付けである。最終年度には、作曲プロセスをモデルにゆだねた楽曲『Metrix2016』を作曲した。これらの作品は、音楽と音楽ではないものの間範疇性をもったものであるという点が共通した概念である。本システムでは、エントロピーの多寡を調整することによって、音楽的な状態から非音楽的な状態を作り出すことができる。そして、そのモデルは、経時的な音楽構造のみならず、音楽が音楽として在るべき要素の生成というより広汎な理論形成の基礎となり得ると考えられる。今後は、音楽生成モデルを構築するにあたって、モデルによって生成された結果と作曲家が作曲した結果との間にある隔たりをどのように小さくしていくかということが課題として残された。この課題は、音楽と音楽ではないものの間範疇性をどのように明示可能なのかということとも捉えることができる。 | KAKENHI-PROJECT-25350029 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25350029 |
未来を指向する推論モデルによる音楽表現のデザイン | その境界領域は聴き手によって可変的である可能性があり、今後は、このモデルによってその境界領域を調整することで、熟練した聴き手を満足させることができるより複雑性の高い楽曲を生成することができると考えられる。この研究では、音楽情動を定量的に扱うため、対称性認知バイアスを用いたシステムと、情報エントロピーの多寡を制御するシステムを開発した。前者は、音楽的期待感を二つの事象間に生じる因果関係とその推論として捉え、既存の旋律の音高の遷移確率に緩い対称性モデルを適応した。後者は、音楽構造の生成を、情報エントロピーを基盤とし、音楽的出来事の生起の可能性の確定度を制御可能にしたシステムである。これらの研究成果を国際会議および国内学会にて発表した。また、これらの研究の諸段階において得られた知見や制作したモデルを、実際の電子音響音楽作品の作曲に逐次適用し、国内外におけるコンサートで発表した。平成26年度は,実験に基づく期待感の実証データの取得と,完成のイメージとなる楽曲の制作を平行して実践を行った.実証データの取得については,本研究課題でデザインする音楽生成モデルにおけるプロトタイプサウンドシーケンスを生み出すシステムを, 1)情報エントロピーを基盤としたシステムとして実現していくためのシステム構築と実験の反復と, 2)電子音楽を構成する数秒間の断片の偶発的な並べ替えによる印象評価実験の二つの実験を柱として進めた.実験実証によるデータに基づく楽曲制作というプロセスを,楽曲制作と実証データを平行して進めるという手法は当初の実践方法から若干の変更があるものの,全体としてのプロセスおよび目指す完成形について,おおむね合致していると考えられる.作曲,サウンド・アート,サウンド・デザイン,コンピュータ音楽平成27年度は,実験基づく実証データから得られた生成モデルを楽曲を生成するシステムに反映させる.それにより,本研究課題でデザインするモデルおよびその結果として生み出される楽曲が、単なる実験データが可超化されたものでも、作曲家が自らの創意で創り出されたものでもない、その奏者(システムの操作者)の期待感を反映しながら楽曲の構造が生み出される楽曲作品として成立させることを目指す。平成25年度の研究では,プロトタイプとなるメロディを生成するシステムの基礎としてエントロピーの多寡に着目し,その概念に基づく電子音響音楽作品の制作を行った.今後このシステムによって生成可能となるメロディのリズム構造と,人間の認知構造の関係を調査し定量化することで,システムの発展を目指す.そのため,本研究は申請書に記載した計画とほぼ一致している.本研究課題および本研究課題において作曲した作品の双方を社会に向けて公開するための演奏会場選定および機材運搬費などの費用が当初よりも増額する可能性が生じたため、最終年度に向けて留保した。今後は,本研究で開発しているシステムが生成する音楽構造が,聴き手の期待感を反映したものとなっているかどうかについての認知実験を行う.また,そのシステムを実際の音楽表現ツールとして完成させるための,インターフェイスデザインの開発に着手する.次年度使用については、主に会場賃借量、機材運搬費、印刷費を予定している。 | KAKENHI-PROJECT-25350029 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25350029 |
転換期の林業・森林管理における担い手企業の労働編成と教育訓練の現状と将来展望 | 1990年代以降における林業労働市場の構造変化は、これまで個別事業体の経営課題の一つに過ぎなかった林業労働力の確保・育成を社会的な課題として認識させる契機となった。本研究では、北海道を事例地に、こうした時代状況における林業事業体の教育訓練をめぐる現状と課題を明らかにし、今後の林業労働対策の展開方向を考察した。検討結果は次の通りである。第1に、林業事業体を対象としたアンケート調査から、各種研修の利用水準は事業体規模に依存すること、下請け業者の教育訓練に対する発注事業体の無関心、労働力確保・育成における事業体間の協業化の動き--などが明らかとなった。第2に、事例調査から、北海道有林の請負事業体の場合、道有林主導の協業化は労働者養成の共同化を促す契機になっていること、森林組合の多くは請負事業体に事業実行を依存しているが、請負事業体の教育訓練に関して森林組合は具体的支援をほとんど行っていないことが確かめられた。林業労働対策には、経営規模や、事業実行上の地位によって教育機会に恵まれない事業体とその労働者を公的領域に意図的に取り込むことが必要だと結論付けた。これらの結果を、第55回日本森林学会北海道支部大会(2006年11月13日)で、「基幹林業労働力の育成政策とその到達点」と題して発表した。また、この報告に基づいて作成した「グリーンマイスター研修の到達点と新しい課題」が『日本森林学会北海道支部論文集55』に掲載予定となっている。このような研究成果をまとめて、学位論文を作成し北海道大学に提出した。論文題名は「1990年代以降の林業・森林管理における人材育成システムの再編に関する実証的研究」である。1990年代以降における林業労働市場の構造変化は、これまで個別事業体の経営課題の一つに過ぎなかった林業労働力の確保・育成を社会的な課題として認識させる契機となった。本研究では、北海道を事例地に、こうした時代状況における林業事業体の教育訓練をめぐる現状と課題を明らかにし、今後の林業労働対策の展開方向を考察した。検討結果は次の通りである。第1に、林業事業体を対象としたアンケート調査から、各種研修の利用水準は事業体規模に依存すること、下請け業者の教育訓練に対する発注事業体の無関心、労働力確保・育成における事業体間の協業化の動き--などが明らかとなった。第2に、事例調査から、北海道有林の請負事業体の場合、道有林主導の協業化は労働者養成の共同化を促す契機になっていること、森林組合の多くは請負事業体に事業実行を依存しているが、請負事業体の教育訓練に関して森林組合は具体的支援をほとんど行っていないことが確かめられた。林業労働対策には、経営規模や、事業実行上の地位によって教育機会に恵まれない事業体とその労働者を公的領域に意図的に取り込むことが必要だと結論付けた。これらの結果を、第55回日本森林学会北海道支部大会(2006年11月13日)で、「基幹林業労働力の育成政策とその到達点」と題して発表した。また、この報告に基づいて作成した「グリーンマイスター研修の到達点と新しい課題」が『日本森林学会北海道支部論文集55』に掲載予定となっている。このような研究成果をまとめて、学位論文を作成し北海道大学に提出した。論文題名は「1990年代以降の林業・森林管理における人材育成システムの再編に関する実証的研究」である。 | KAKENHI-PROJECT-06J04346 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J04346 |
薬物受容体機構の生理と病態 | 本研究では、諸種の臓器組織、またサブタイプを含めた各種受容体を取り上げ、その生理機能を明らかにする一方、受容体作働薬の連用時や諸臓器の病変に伴う機能変化を検討することを目的として研究を進めた。本研究班において得られた主要な研究成果は、下記の通りである。1)薬物受容体の拮抗薬又は作働薬に対する長期曝露は、受容体の過感作又は脱感作を惹起するが、この場合セカンドメッセンジャ-系の変化は必ずしも受容体結合能と平行するものではないこと。2)心筋の虚血・再潅流障害に対する薬物の保護効果に関して重要な薬理作用は、膜安定化作用であること。3)動脈硬化症の発症の初期における血管平滑筋細胞の増殖は重要な病変であるが、これらの変化には血管のα_1アドレナリン受容体のカテコ-ルアミンによる刺激が重要な意味を持つこと。4)モルヒネ連用時にみられる耐性の抑制には、アドレナリン神経遮断薬、カッパー受容体刺激薬、Caチャンネル拮抗薬の併用が有効であること。5)カリウムチャンネルは薬物受容体としての性質を有し、カリウムチャンネル開口薬は、トロンボキサンA_2受容体を介するIP_3によるCa遊離を選択的に抑制すること。6)中枢内ド-パミンD_1受容体はド-パミンの過剰放出が起った時に作働し、D_2受容体刺激によるド-パミンの抑制作用を増強するものであること。7)平滑筋に存在するアドレナリン受容体は加齢の影響を受け易いが、アセチルコリン受容体は加齢による変化を受け難いこと。8)冠動脈に存在するβ受容体は主としてβ_1型であること。9)脳動脈拡張はNOとこれにより活性化されるcGMPにより媒介されていること。10)エンドセリンー3は節後性にはCa^<2+>依存性K^+チャネルの活性化、シナプス前性にはトロンボキサンA_2の産生を増強し、神経筋伝達を抑制すること。11)視床下部の視索上核、室傍核にはサブスタンスP受容体、オピオイド受容体が存在していること。薬物受容体の生理と病態について総合的な研究を行い、下記の成績を得た。1)脳内ムスカリン受容体における過感作状態の発現機序を検討したところ、受容体結合は増加しているに抱らず、G蛋白とホスフォリパ-ゼCの機能的共軛は低下し、従ってPI代謝はむしろ低下を示すこと(栗山)。2)プロプラノロ-ルの心虚血時における心筋保護作用はβ受容体を介するものではなく、本剤の膜安定化作用によると考えられること(安孫子)。3)血管平滑筋の増殖はα1受容体刺激により増加し、逆にβ2受容体刺激により低下すること(加藤)。4)β受容体アンタゴニストはモルヒネに対する耐性を抑制することが、禁断症状は出現することから、モルヒネに対する耐性と依存に異なった機序により出現すると考えられること(金戸)。5)カリウムチャンネルは薬物受容体としての機能を持つ可能性があり、その解明のためにカリウムチャンネルへの結合性の高いリガンドの開発が必要であること(平)。6)線条体のシナプスにはD_1及びD_2受容体がともに存在し、しかもD_2受容体は興奮作用を、またD_1受容体は抑制作用を示すこと(高折)。7)モルモット気管支平滑筋では、α2受容体を介してプロスラグランデインの生成増加が起こるが、この過程は加齢に伴ない、機能低下を来たすこと(高柳)。8)ヒト冠状動脈ではB_1受容体がその収縮及び弛緩に関与していること(戸田)。9)動物のアクビ行動及びプロラクチン分泌は、低濃度のD_2アゴニスト刺激により増強され、一方オキシトシン分泌は、高濃度のD_2アゴニスト存在下で増加すること(古川)。10)視索上核のバゾプレシンニュ-ロンはサブスタンスPにより機能的調節を受けていること(松田)。11)臨床的にアルツハイマ-病を診断された患者の脳においても通常高齢者にみられる病理学的変化がみられるので、アルツハイマ-病の薬理学的研究の前に病理学的確定診断を行う必要があること(土橋)。これらの成果を基盤として、さらに詳細な研究を進める予定である。本研究では、諸種の臓器組織、またサブタイプを含めた各種受容体を取り上げ、その生理機能を明らかにする一方、受容体作働薬の連用時や諸臓器の病変に伴う機能変化を検討することを目的として研究を進めた。本研究班において得られた主要な研究成果は、下記の通りである。1)薬物受容体の拮抗薬又は作働薬に対する長期曝露は、受容体の過感作又は脱感作を惹起するが、この場合セカンドメッセンジャ-系の変化は必ずしも受容体結合能と平行するものではないこと。2)心筋の虚血・再潅流障害に対する薬物の保護効果に関して重要な薬理作用は、膜安定化作用であること。3)動脈硬化症の発症の初期における血管平滑筋細胞の増殖は重要な病変であるが、これらの変化には血管のα_1アドレナリン受容体のカテコ-ルアミンによる刺激が重要な意味を持つこと。4)モルヒネ連用時にみられる耐性の抑制には、アドレナリン神経遮断薬、カッパー受容体刺激薬、Caチャンネル拮抗薬の併用が有効であること。 | KAKENHI-PROJECT-01304028 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01304028 |
薬物受容体機構の生理と病態 | 5)カリウムチャンネルは薬物受容体としての性質を有し、カリウムチャンネル開口薬は、トロンボキサンA_2受容体を介するIP_3によるCa遊離を選択的に抑制すること。6)中枢内ド-パミンD_1受容体はド-パミンの過剰放出が起った時に作働し、D_2受容体刺激によるド-パミンの抑制作用を増強するものであること。7)平滑筋に存在するアドレナリン受容体は加齢の影響を受け易いが、アセチルコリン受容体は加齢による変化を受け難いこと。8)冠動脈に存在するβ受容体は主としてβ_1型であること。9)脳動脈拡張はNOとこれにより活性化されるcGMPにより媒介されていること。10)エンドセリンー3は節後性にはCa^<2+>依存性K^+チャネルの活性化、シナプス前性にはトロンボキサンA_2の産生を増強し、神経筋伝達を抑制すること。11)視床下部の視索上核、室傍核にはサブスタンスP受容体、オピオイド受容体が存在していること。各種臓器組織に分布する薬物受容体の機能とその病態に伴う変化について、多角的な検討を進めた。その研究成果の大要は下記の通りである。1)初代培養神経細胞をβー受容体遮断薬に長期間曝露した場合、βー受容体数の著増を来すが、この場合本受容体に共軛するcAMP生成系やG蛋白にも機能亢進が生じ、βー受容体機構に過感作状態が生じること。2)加齢に伴う気管支のニコチンに対する反応性の低下は、アセチルコリン受容体機構の変化により遊離量の減少が重要な意義を持つこと。3)心虚血を招来させると遊離脂肪酸が心筋内に畜積するが、この畜積はβー受容体の変化に起因するものではないこと。4)内皮細胞から遊離される一酸化窒素/EDRFはDNA合成の抑制を介して血管平滑筋の増殖に対して抑制作用を示すこと。5)フェンタニ-ルはオピオイド受容体を介して、視床下部の体液調節中枢(視床上核、室傍核)を活性化し、抗利尿作用を発現させること。6)K受容体を介するモルヒネ耐性形成阻害作用は脊髄レベルでの作用が重要であり、アドレナリン作働薬による抑制はK受容体とは異なる事。7)Kチャンネル開口薬によるagonist収縮の抑制作用は膜電位を過分極にすることで、Lー型Caチャンネルを抑制すること。8)平滑筋細胞には受容体依存性のATP遊離機構が存在し、ATP由来のアデンシンがP_1受容体を介して神経伝達調節を行うこと。9)腹側被蓋野DAニュ-ロンはD_2受容体を介して、Kコンダクタンスの増大により神経活動の抑制を起こすこと。10)非アドレナリン性非コリン性血管拡張神経刺激による脳動脈弛緩反応には、一酸化窒素を介するcycric GMPの産生が重要であること。11)老人脳において機能的側面での異常を解析するには、ニュ-ロンの脱落は目立たないが痴呆症状が高度である脳の方が有用であること。諸臓器に分布する薬物受容体の生理と病態について検討し、下記の成績と結論を得た。1)ムスカリン受容体やGABA_A受容体に脱感作あるいは過感作状態が生じた場合には、これに対応したセカンドメッセンジャ-やmRNAの変化が隨伴して生じる。2)老人や高度の心不全による虚血心筋の治療に、lーcisーdiltiazemが有効である。3)培養副腎髓質クロマフィン細胞は、受容体刺激に伴うイノシト-ル燐酸代謝の研究に有用な系である。4)モルヒネ耐性形成機構において、Ca拮抗薬の阻害作用がみられること。5)カルシウムチャンネル開口薬は、細胞や組織を明らかにCa拮抗薬とは異なった機構で安定化する作用を持ち、血管拡張薬として有用な薬物であること。6)ド-パミン含有細胞においてDー1受容体はド-パミンの過剰放出が起った時に作動し、その抑制効果を増強する役割を果たしていること。 | KAKENHI-PROJECT-01304028 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01304028 |
「一つの中国」コンセンサスと「平和統一」の連関ー中国の対台湾政策に関する実証研究 | 本研究は、中国が諸外国の関係において台湾問題をめぐる「一つの中国」コンセンサスを形成し、それに伴い対台湾政策を「武力解放」から「平和統一」へと転換させる過程を論じる国際政治史研究である。本研究の軸となるのは、西側諸国との関係のなかでも最も重要視された米国との国交正常化交渉を、中国外交の視点から再検討することである。しかし、そのことにとどまらず、中国と主要な西側諸国との国交正常化交渉と対米交渉の相互連関についてもさらに考察を深めていく必要がある。また、この時代の中国外交文書が公開される見通しが全く立たない状況下においては、米国よりも先に中国と国交正常化をした旧西側諸国の外交文書から、中国が対米交渉を頂点とする一連の西側諸国との台湾問題をめぐる交渉をどのように進めようとしていたのかを読み解く方法も有効なのではないかと考えている。こうした理解に基づき、平成30年度は当該時期の米国の対中政策に関する外交文書を読み続けることと並行して、西側諸国と中国の交渉についても分析を続けた。そのうち、中国とカナダの国交正常化交渉および米中接近との関連についての論文を公刊した。また、スタンフォード大学フーバー研究所のアーカイブとニクソン大統領図書館を訪れ、文革期及びその前後の中国内部文書、台湾の国民党幹部や情報機関による中国大陸関係の文書、ニクソン政権の中国・台湾との交渉の前提となる調査文書などを収集した。上記のような活動に加え、平成30年度に力を入れたのは、「『一つの中国』原則形成の国際政治史」という題目で、上記の研究の全体像に関する研究報告を行い、日本、中国、台湾の研究者たちと意見交換を行うという活動であった。一連の活動を通じて、収集した文書を読み解き、まとめる際の視点や、全体の研究をまとめる上での課題などについて、新たな知見を数多く得た。平成30年度の活動を通じて、平成27年度から28年度にかけて取得した育児休暇とその前後の遅れは、概ね取り戻すことができた。中国での史料調査やインタビューは昨今の情勢に鑑みて見送ったが、中国の大学を訪問し、同じく戦後史を研究する複数の研究者と意見交換をすることはできた。また、アメリカでの史料調査や台湾での史料調査は、それぞれ時間に余裕を持たせて実現でき、多くの有用な史料を手に入れることができた。また、上記の史料調査と合わせて、現地での研究報告、セミナーへの参加、現地研究者との意見交換などを複数行うことができた。ただし、昨年度から引き続き、インタビューの進捗状況は芳しくないため、次年度はこの課題に力を入れて取り組みたい。本課題は、中国の政治外交史を軸としながら、中国の公刊史料、米中関係に関する米国公開公文書、関係者へのインタビューなどを利用しつつ、中国の「平和統一」提起の過程を考証するものである。しかし、中国における研究環境が改善する見通しが立たない状況においては、これに対応する台湾側の認識や政策の変化についても研究し、最終的には米中台関係史のアプローチで「平和統一」の時代がおとずれる背景を描くべきではないかという問題意識をもつに至った。上記のような研究を進めるには、現在残された研究期間と予算では不十分であるため、所属機関とも相談した上で、国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)に本課題を基課題とする発展的な課題を申請し、採択され、平成30年度末からこれを開始した。そのため、令和元年度は本研究課題終了後に渡米することを前提に、中国・台湾での史料調査とインタビューに力を入れたいと考えている。本研究は、中華人民共和国(以下、中国)が諸外国の関係において台湾問題をめぐる「一つの中国」コンセンサスを形成し、それに伴い対台湾政策を「武力(平和)解放」から「平和統一」へと転換させる過程を論じる国際政治史研究である。本研究は、1970年代から80年代にかけて、中国が西側諸国との外交関係を回復し、国際的な地位を向上させるなかで、相手国の「一つの中国」への関与をどのように獲得したのかを考証する。そのうえで、そのような関与を獲得したことと、台湾に対する政策が「解放」から「平和統一」へと転換したこととの因果関係について論じたいと考えている。本研究においては、長期的な試みである当該時期の中国政治・外交史史料の開拓を継続しつつ、短期的には、「一つの中国」コンセンサスの形成過程と、その過程が中国の対台湾政策におよぼした影響に関する事例研究を積み重ねようとしている。そのために、1)中国における史料開拓と、2)マルチ・アーカイバル・アプローチによる中国と関係各国の交渉に関する実証分析を並行して行い、最終的には3)「一つの中国」コンセンサスと「平和統一」政策への影響を検討するというアプローチで研究を進める。平成27年度は米中国交正常化交渉における台湾問題について、米国の公文書を中心に、台湾や西側諸国で公開された新史料によって新たに発見できる事柄の整理に着手した。そのうえで、1)米中国交正常化交渉を中心とする中国と西側諸国との交渉、2)当時の中国共産党内の権力関係、3)1973年に再開された対台湾統一戦線工作の展開の三者がどのように連関していたのかに関する分析も行いはじめた。平成27年度後半は産休と育休を取得することとなり、研究活動を一時中断せざるを得なくなった。また、本研究計画に関しては、研究期間の延長と、それに伴う計画の変更を行った。そのため、本来この年度に予定するはずであった海外での史料調査などは平成28年度以降に延期し、本年度は文献や史料集の情報を整理する程度しか作業を進められなかった。 | KAKENHI-PROJECT-15K17006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K17006 |
「一つの中国」コンセンサスと「平和統一」の連関ー中国の対台湾政策に関する実証研究 | 本研究は、中華人民共和国(以下、中国)が諸外国の関係において台湾問題をめぐる「一つの中国」コンセンサスを形成し、それに伴い対台湾政策を「武力(平和)解放」から「平和統一」へと転換させる過程を論じる国際政治史研究である。本研究は、1970年代から80年代にかけて、中国が西側諸国との外交関係を回復し、国際的な地位を向上させるなかで、相手国の「一つの中国」への関与をどのように獲得したのかを考証する。そのうえで、そのような関与を獲得したことと、台湾に対する政策が「解放」から「平和統一」へと転換したこととの因果関係について論じたいと考えている。本研究の軸となるのは、西側諸国との関係のなかでも最も重要視された米国との国交正常化交渉を、中国外交の視点から再検討することである。研究期間の延長に伴い、米中国交正常化交渉における台湾問題について、従来の計画では単年度で行う予定であった研究を平成28年度後半から平成29年度にかけて行うこととした。平成28年度は、まず、米中国交正常化交渉について、米国の公文書を中心に既存の文献および資料の精読や情報整理を行った。そして、台湾や旧西側諸国で公開された新史料によって新たに発見できる事柄を整理した。さらに、米中国交正常化交渉、中国共産党内の権力関係、1973年に再開された対台湾統一戦線工作の3つがどのように連関していたのかについて、分析に着手した。これらに加えて、次年度以降に行うインタビューに向けて、対象の絞り込みを始めた。平成27年度末まで取得予定であった育児休暇を、平成28年8月まで延長した。そのため、本来予定していた中国、台湾、アメリカ等での史料調査やインタビューを行うことができなかった。また、既に入手した史料についても、それらを分析し、論文にまとめるのが遅れている。このような状況に鑑み、本研究計画に関しては、研究期間をさらに1年延長した。本研究は、中華人民共和国(以下、中国)が諸外国の関係において台湾問題をめぐる「一つの中国」コンセンサスを形成し、それに伴い対台湾政策を「武力(平和)解放」から「平和統一」へと転換させる過程を論じる国際政治史研究である。本研究は、1970年代から80年代にかけて、中国が西側諸国との外交関係を回復し、国際的な地位を向上させるなかで、相手国の「一つの中国」への関与をどのように獲得したのかを考証する。そのうえで、そのような関与を獲得したことと、台湾に対する政策が「解放」から「平和統一」へと転換したこととの因果関係について論じたいと考えている。本研究の軸となるのは、西側諸国との関係のなかでも最も重要視された米国との国交正常化交渉を、中国外交の視点から再検討することである。しかし、そのことにとどまらず、中国と主要な西側諸国との国交正常化交渉と対米交渉の相互連関についてもさらに考察を深めていく必要があることに気づいた。また、この時代の中国外交文書が公開される見通しが全く立たない状況下においては、米国よりも先に中国と国交正常化をした旧西側諸国の外交文書から、中国が対米交渉を頂点とする一連の西側諸国との台湾問題をめぐる交渉をどのように進めようとしていたのかを読み解く方法も有効なのではないかと考えるに至った。 | KAKENHI-PROJECT-15K17006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K17006 |
遷移金属表面上の触媒CO酸化におけるエネルギー分配ダイナミクス | 気相反応の反応ダイナミクスでは生成分子の振動・回転状態を角度分解で測定しポテンシャル曲面を調べる研究が多くされてきた。表面反応では技術的な問題によりその様な試みは光・電子励起脱離において僅かに報告例があるのみで脱離角依存性は観測されず、熱反応においては試み自体が皆無であった。本研究により表面熱反応の代表であるCO酸化反応の生成CO_2の振動・回転状態を赤外発光分光により角度分解で測定する装置を作製し、測定に初めて成功し、顕著な角度依存性を見出した。この装置では同時に脱離角分布の測定も可能である。本実験では2枚のスリットを通過したあとの生成CO_2からの発光を検出する。角度分解しない測定に比べ微弱な信号強度がさらに3桁下がり、生成CO_2が一回も散乱されないことが必要があるため困難である。そこで試料と円錐型第一スリットの距離を4mmに抑え4本の超音速分子線源でCOと酸素を斜めから試料に照射した。高い排気性能を実現し、検出領域を冷却板で完全に囲うなどの改良を行った。さらに小型の高温CO_2漏れ出し分子線源を作製し、1200KのCO_2分子線を生成CO_2と同じように拡散させ、この発光強度を参照として生成CO_2の非対称振動温度と屈曲・対称伸縮振動温度を分離して求めた。700KのPd(111)では脱離角が0度から30度に増加と平均振動温度は2300Kから1600Kに減少し、回転温度は350Kから1100Kに増加した。非対称伸縮振動温度は1300Kから1600Kに増加した。溝を持つ600KのPd(110)1×1では溝平行面では平均振動と回転温度は1500Kと1000Kで一定であるが溝垂直ではそれぞれ300Kと450Kに減少した。Pd(110)1×2では溝平行でどちらも数百K減少し、溝垂直ではどちらも数百K増加した。1×1では遷移構造がが溝平行、1×2では溝垂直面内で傾いていると推察した。気相反応の反応ダイナミクスでは生成分子の振動・回転状態を角度分解で測定しポテンシャル曲面を調べる研究が多くされてきた。表面反応では技術的な問題によりその様な試みは光・電子励起脱離において僅かに報告例があるのみで脱離角依存性は観測されず、熱反応においては試み自体が皆無であった。本研究により表面熱反応の代表であるCO酸化反応の生成CO_2の振動・回転状態を赤外発光分光により角度分解で測定する装置を作製し、測定に初めて成功し、顕著な角度依存性を見出した。この装置では同時に脱離角分布の測定も可能である。本実験では2枚のスリットを通過したあとの生成CO_2からの発光を検出する。角度分解しない測定に比べ微弱な信号強度がさらに3桁下がり、生成CO_2が一回も散乱されないことが必要があるため困難である。そこで試料と円錐型第一スリットの距離を4mmに抑え4本の超音速分子線源でCOと酸素を斜めから試料に照射した。高い排気性能を実現し、検出領域を冷却板で完全に囲うなどの改良を行った。さらに小型の高温CO_2漏れ出し分子線源を作製し、1200KのCO_2分子線を生成CO_2と同じように拡散させ、この発光強度を参照として生成CO_2の非対称振動温度と屈曲・対称伸縮振動温度を分離して求めた。700KのPd(111)では脱離角が0度から30度に増加と平均振動温度は2300Kから1600Kに減少し、回転温度は350Kから1100Kに増加した。非対称伸縮振動温度は1300Kから1600Kに増加した。溝を持つ600KのPd(110)1×1では溝平行面では平均振動と回転温度は1500Kと1000Kで一定であるが溝垂直ではそれぞれ300Kと450Kに減少した。Pd(110)1×2では溝平行でどちらも数百K減少し、溝垂直ではどちらも数百K増加した。1×1では遷移構造がが溝平行、1×2では溝垂直面内で傾いていると推察した。触媒反応における生成物の振動・回転エネルギーは遷移状態の構造や脱離ポテンシャルに関する情報を含む。これを各脱離角ごとに測定すれば、さらに多次元的な情報を得ることができると期待される。赤外発光分光を用いた生成CO_2の内部エネルギーは25年前から行われてきたが、角度分解測定は実現されていなかった。その理由として角度分解測定では微弱な信号がさらに3桁さがること、さらに試料表面から検出点まで長い距離が必要でその間で生成CO_2が散乱されないようにする必要がある等、測定が非常に困難であることが挙げられる。今回の基盤研究(B)の援助により、このような生成CO_2の角度分解赤外発光測定を目的とした装置の主に真空排気系および光学系の改良を行い、Pd表面を用いてこの測定に初めて成功した。装置は2枚のスリットにより仕切られた反応室、コリメーション室、分光室からなり、それぞれ独立にターボポンプを新たに取り付けて排気するようにした。表面で生成したCO_2は2枚のスリットを通過したあとその発光を分光室中のCaF_2レンズで集光し、FT-IRで検出する。新たに金コート凹面鏡をレンズ焦点付近に設置し、周辺を冷却板で囲い、微弱信号の感度を上げた。 | KAKENHI-PROJECT-17350002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17350002 |
遷移金属表面上の触媒CO酸化におけるエネルギー分配ダイナミクス | 分光室には四重極質量分析器を新たに取り付け、生成CO_2の脱離角分布も同時に測定することができるようにした。Pd多結晶では生成CO_2の脱離はほぼCOS^6θにしたがって表面垂直に指向した。一方、振動・回転温度は角度の増加にともない増大することを見出した。またPd(111)上では振動温度はほぼ一定であるが、回転温度は角度とともに増加した。CO_2の並進温度は通常脱離角が指向角からずれると減少することが知られている。本結果はCO_2の脱離に際して脱離ポテンシャルの立体的形状を反映して反応熱の並進・振動・回転エネルギーへの分配が脱離角とともに変化することを示唆する。気相反応の反応ダイナミクスでは生成分子の振動・回転状態を角度分解で測定しポテンシャル曲面を調べる研究が多くされてきた。表面反応では技術的な問題によりその様な試みは光・電子励起脱離において僅かに報告例があるのみで脱離角依存性は観測されず、熱反応においては試み自体が皆無であった。本研究により表面熱反応の代表であるCO酸化反応の生成CO_2の振動・回転状態を赤外発光分光により角度分解で測定する装置を作製し、測定に初めて成功し、顕著な角度依存性を見出した。この装置では同時に脱離角分布の測定も可能である。本実験では2枚のスリットを通過したあとの生成CO_2からの発光を検出する。角度分解しない測定に比べ微弱な信号強度がさらに3桁下がり、生成CO_2が一回も散乱されないことが必要があるため困難である。そこで試料と円錐型第一スリットの距離を4mmに抑え4本の超音速分子線源でCOと酸素を斜めから試料に照射した。高い排気性能を実現し、検出領域を冷却板で完全に囲うなどの改良を行った。さらに小型の高温CO_2漏れ出し分子線源を作製し、1200KのCO_2分子線を生成CO_2と同じように拡散させ、この発光強度を参照として生成CO_2の非対称振動温度と屈曲・対称伸縮振動温度を分離して求めた。700KのPd(111)では脱離角が0度から30度に増加と平均振動温度は2300Kから1600Kに減少し、回転温度は350Kから1100Kに増加した。非対称伸縮振動温度は1300Kから1600Kに増加した。溝を持つ600KのPd(110)1×1では溝平行面では平均振動と回転温度は1500Kと1000Kで一定であるが溝垂直ではそれぞれ300Kと450Kに減少した。Pd(110)1×2では溝平行でどちらも数百K減少し、溝垂直ではどちらも数百K増加した。1×1では遷移構造がが溝平行、1×2では溝垂直面内で傾いていると推察した。 | KAKENHI-PROJECT-17350002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17350002 |
X染色体不活化不安定性と胃粘膜発癌 | 1999年度、T16H×H253マウスに胃発癌モデルであるメチルニトロソウレアを投与したが、残念なことに胃に癌はできていなかった。メチルニトロソウレア入りの飲用水の交換をより頻回に行う必要性があると考えられた。2000年10月より、再度、メチルニトロソウレア水の投与を開始した。今回は隔日に飲用水を交換した。現在、胃癌発生を待っている状況である。一方、H253マウスの胃に慢性の炎症を起こさせることによるクローナリテイの変化を観察した。我々は以前にヒト胃粘膜腸上皮化生においてはポリクローナルな腺管の割合が増加することを発見し、報告している。腸上皮化生はヒト胃粘膜に慢性の炎症が起こると発生する、または、老化現象のひとつと考えられている。マウスの胃に腸上皮化生を作る試みは数々為されているが、いまだ成功していない。しかし、大原らはラットの胃を水酸化ナトリウム溶液で洗浄することにより、腸上皮化生を作成している。マウスの胃に同様の処置を施しても腸上皮化生は発生しないことは以前に実験済みであるが、慢性の炎症を起こさせる意味で、今回、この処置をH253マウスに施した。結果としては、再生してきた腺管は形態的には正常胃腺管であるが、ポリクローナルな腺管が増加していた。また、正常胃粘膜には存在するモノクローナルバッチのサイズが縮小していることがわかった。さらに、H253マウスにドライアイスアセトンを用いた潰瘍モデルを施し、胃潰瘍修復過程で胃腺管のクローナリテイがどのように変化するかを観察した。胃潰瘍修復過程においては、周囲の残存腺管が融合し、偽足を延ばすような形で粘膜欠損部を覆うことが観察された。この際、隣接する腺管がクローナルオリジンの異なる腺管であった場合、融合して形成された偽足はポリクローナルを呈した。このことより、潰瘍修復過程に3いても、ポリクローナルな腺管が増加する可能性が示唆された。T16H×H253マウスに胃発癌モデルであるメチルニトロソウレアを投与したが、残念なことに胃に癌はできていなかった。メチルニトロソウレア入りの飲用水の交換をより頻回に行う必要性があると考えられた。一方、H253マウスの胃に慢性の炎症を起こさせることによるクローナリテイの変化を観察した。我々は以前にヒト胃粘膜腸上皮化生においてはポリクローナルな腺管の割合が増加することを発見し、報告している。腸上皮化生はヒト胃粘膜に慢性の炎症が起こると発生する、または、老化現象のひとつと考えられている。マウスの胃に腸上皮化生を作る試みは数々為されているが、いまだ成功していない。しかし、大原らはラットの胃を水酸化ナトリウム溶液で洗浄することにより、腸上皮化生を作成している。マウスの胃に同様の処理を施しても腸上皮化生は発生しないことは以前に実験済みであるが、慢性の炎症を起こさせる意味で、今回、この処理をH253マウスに施した。結果としては、再生してきた腺管は形態的には正常胃腺管であるが、ポリクローナルは腺管が増加していた。また、正常胃粘膜には存在するモノクローナルバッチのサイズが縮小していることがわかった。今後は、水酸化ナトリウムによる胃洗浄後の胃腺管クローナリテイの経時的変化を詳細に解析することにより、胃粘膜における慢性炎症の影響を観察する予定である。1999年度、T16H×H253マウスに胃発癌モデルであるメチルニトロソウレアを投与したが、残念なことに胃に癌はできていなかった。メチルニトロソウレア入りの飲用水の交換をより頻回に行う必要性があると考えられた。2000年10月より、再度、メチルニトロソウレア水の投与を開始した。今回は隔日に飲用水を交換した。現在、胃癌発生を待っている状況である。一方、H253マウスの胃に慢性の炎症を起こさせることによるクローナリテイの変化を観察した。我々は以前にヒト胃粘膜腸上皮化生においてはポリクローナルな腺管の割合が増加することを発見し、報告している。腸上皮化生はヒト胃粘膜に慢性の炎症が起こると発生する、または、老化現象のひとつと考えられている。マウスの胃に腸上皮化生を作る試みは数々為されているが、いまだ成功していない。しかし、大原らはラットの胃を水酸化ナトリウム溶液で洗浄することにより、腸上皮化生を作成している。マウスの胃に同様の処置を施しても腸上皮化生は発生しないことは以前に実験済みであるが、慢性の炎症を起こさせる意味で、今回、この処置をH253マウスに施した。結果としては、再生してきた腺管は形態的には正常胃腺管であるが、ポリクローナルな腺管が増加していた。また、正常胃粘膜には存在するモノクローナルバッチのサイズが縮小していることがわかった。さらに、H253マウスにドライアイスアセトンを用いた潰瘍モデルを施し、胃潰瘍修復過程で胃腺管のクローナリテイがどのように変化するかを観察した。胃潰瘍修復過程においては、周囲の残存腺管が融合し、偽足を延ばすような形で粘膜欠損部を覆うことが観察された。 | KAKENHI-PROJECT-11770690 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11770690 |
X染色体不活化不安定性と胃粘膜発癌 | この際、隣接する腺管がクローナルオリジンの異なる腺管であった場合、融合して形成された偽足はポリクローナルを呈した。このことより、潰瘍修復過程に3いても、ポリクローナルな腺管が増加する可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-11770690 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11770690 |
環境ストレスにおける中枢性カルシウム代謝調節機構の役割 | 視床下部外側野(LHA)および腹内側核(VMH)に迷走神経胃枝を介するカルシウム低下機構が存在し、特に後者がストレス性低カルシウム血症を引き起こす。室傍核には迷走神経副甲状腺枝を介するカルシウム低下機構が存在し、VMHと拮抗的な関係がある。この視床下部カルシウム代謝調節機構の生理学的意義を明らかにするため、学習記憶などの高次機能との関連を調べた。また性分化とカルシウム代謝調節機構および学習記憶機構との関係も検討した。その結果、以下の点が明らかになった。1)LHA電気刺激およびLHAが産生する摂食促進物質オレキシンの側脳室投与は不安情動には影響せずに、回避学習の促進、侵害受容の抑制、空間学習および長期増強の抑制を引き起こした。2)ストレス負荷で細胞死が起こる海馬にブドウ糖を微量投与すると、空間学習が促進した。この効果はaFGF受容体(FGFR1)抗体の前処置で減弱する傾向があり、aFGFがブドウ糖依存性学習促進機構に関与することを見出した。また、オライド・ラクトン系摂食抑制物質である2-buten-4-olideもaFGFを介して空間学習を促進した。3)カルシウム低下因子であるコレシストキニンのCCK-A受容体欠損動物であるOLETFラットならびにレプチン受容体異常があり骨代謝異常を示すZuckerラットおよびdb/dbマウスは空間学習及び海馬長期増強の障害があり、後者ではさらにカルモジュリンキナーぜII活性の低下およびNMDA受容体のMg依存性消失によるカルシウム信号系の異常を示した。4)拘束ストレスは脳内インターロイキン1β(IL-1β)mRNAの発現を促し、IL-1βはノルアドレナリンの放出を促す。環境内分泌撹乱化学物質のビスフェノールA及びトリブチルスズは回避学習や迷路学習の性差を消失させ、さらにノルアドレナリンニューロンが局在する青斑核の性分化を障害した。視床下部外側野(LHA)および腹内側核(VMH)に迷走神経胃枝を介するカルシウム低下機構が存在し、特に後者がストレス性低カルシウム血症を引き起こす。室傍核には迷走神経副甲状腺枝を介するカルシウム低下機構が存在し、VMHと拮抗的な関係がある。この視床下部カルシウム代謝調節機構の生理学的意義を明らかにするため、学習記憶などの高次機能との関連を調べた。また性分化とカルシウム代謝調節機構および学習記憶機構との関係も検討した。その結果、以下の点が明らかになった。1)LHA電気刺激およびLHAが産生する摂食促進物質オレキシンの側脳室投与は不安情動には影響せずに、回避学習の促進、侵害受容の抑制、空間学習および長期増強の抑制を引き起こした。2)ストレス負荷で細胞死が起こる海馬にブドウ糖を微量投与すると、空間学習が促進した。この効果はaFGF受容体(FGFR1)抗体の前処置で減弱する傾向があり、aFGFがブドウ糖依存性学習促進機構に関与することを見出した。また、オライド・ラクトン系摂食抑制物質である2-buten-4-olideもaFGFを介して空間学習を促進した。3)カルシウム低下因子であるコレシストキニンのCCK-A受容体欠損動物であるOLETFラットならびにレプチン受容体異常があり骨代謝異常を示すZuckerラットおよびdb/dbマウスは空間学習及び海馬長期増強の障害があり、後者ではさらにカルモジュリンキナーぜII活性の低下およびNMDA受容体のMg依存性消失によるカルシウム信号系の異常を示した。4)拘束ストレスは脳内インターロイキン1β(IL-1β)mRNAの発現を促し、IL-1βはノルアドレナリンの放出を促す。環境内分泌撹乱化学物質のビスフェノールA及びトリブチルスズは回避学習や迷路学習の性差を消失させ、さらにノルアドレナリンニューロンが局在する青斑核の性分化を障害した。目的)環境ストレスで誘発される低カルシウム(Ca)血症の中枢機序とその信号分子を解明し、中枢カルシウム低下機構及びCa低下因子の生理学的意義を明らかにすることを目的に、本年度は1)ストレス応答の中枢メディエーターとしてのカテコラミン-サイトカインネットワークの解析、2)Ca低下信号分子の候補であるオレキシン及びコレシストキニンの生理作用を、神経行動学的に検討した。結果)1.カテコラミン-サイトカインネットワークの解析:1)ストレス時に中枢および末梢の広範な領域でノルアドレナリンの放出が促進するが、拘束ストレス誘発性低Ca血症はノルアドレナリンα受容体遮断薬のフェノキシベンザミンの腹腔内投与で抑制された。2)拘束ストレス時に腸管や肝臓でリポポリサッカライド(LPS)およびインターロイキン(IL)-6が増加した。その反応の少なくとも一部にノルアドレナリン系が関与した。3)拘束ストレス時に胃で血小板活性化因子(PAF)が増加するが、PAFは非常に強力な末梢Ca低下因子であった。4)拘束ストレス時に前頭前野でノルアドレナリンの放出が著明に促進し、また前頭前野や視床下部でインターロイキン-1β(IL-1β)mRNAの発現が亢進した。5)ノルアドレナリン放出に及ぼすインターロイキン-1β(IL-1β)の局所作用を調べると、IL-lβの前頭前野局所投与はグルタミン酸の放出促進を介してノルアドレナリン放出を2相性に促進し、第2相の反応にはプロスタノイドおよび一酸化窒素(NO)も関与していることが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-10470017 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10470017 |
環境ストレスにおける中枢性カルシウム代謝調節機構の役割 | 2. Ca低下因子の生理学的意義:中枢性Ca低下因子の候補としてTRH、オレキシンならびにコレシストキニン(CCK)が想定されている。オレキシンは活動性を促進し、モリス水迷路による空間学習を阻害した。コレシストキニン受容体Aノックアウトラットもモリス水迷路による空間学習が阻害されていることを見い出しており、Ca代謝調節系との機能連関を解析中である。これまでの研究で視床下部外側野(LHA)および腹内側核に胃迷走神経を介するカルシウム低下機構が存在することを明らかにしている。またこれらの調節機構およびそのストレス応答の少なくとも一部に性差が認められる。この視床下部カルシウム代謝調節機構の生理学的意義を明らかにするため、学習記憶などの高次機能との関連を調べた。また性分化とカルシウム代謝調節機構および学習記憶機構との関係も検討した。1)細胞レベルにおける学習記憶過程で、細胞内へのカルシウムの流入が引き金になることが知られている。本研究で、ネコLHA電気刺激が瞬目反射の古典的条件付けを著明に促進することを見い出した。LHA電気刺激が血漿カルシウムレベルを低下させることをすでに見い出しているので、細胞外から細胞内へのカルシウムの移行をLHA電気刺激が促進している可能性があり、検討する必要がある。2)LHAニューロンの一部はオレキシンを産生している。オレキシンを側脳室に投与すると受動的回避学習を促進し、空間学習を抑制した。海馬スライス標本における長期増強も抑制した。また、一般活動性や探索行動を促進する作用も示した。3)低カルシウム血症誘発因子であるコレシストキニン(CCK)は情動や学習機能にも影響を及ぼす。CCKA受容体欠損ラッットであるOLETFラットの学習機能を調べると、空間学習障害と受動的回避学習の促進が認められた。4)ストレスやウレタンによる低カルシウム血症は雌ラットでより強く発現する。LHAはカルシウム代謝だけでなくカリウム代謝も調節しており、さらに雌ラットは雄に比べ血漿カリウム濃度が低いことを見い出した。外来性環境化学因子のトリブチルスズを胎生期から慢性に投与すると、一般活動性や探索行動の性差が消失し、血漿カリウム濃度の性差が減弱あるいは消失した。これまでの研究で視床下部外側野(LHA)および腹内側核に胃迷走神経を介するカルシウム低下機構が存在することを明らかにしている。またこれらの調節機構およびそのストレス応答の少なくとも一部に性差が認められる。この視床下部カルシウム代謝調節機構の生理学的意義を明らかにするため、学習記憶などの高次機能との関連を調べた。また性分化とカルシウム代謝調節機構および学習記憶機構との関係も検討した。1)LHA電気刺激およびLHAが産生する摂食促進物質のオレキシンの側脳室投与は回避学習を促進するが、侵害受容を抑制することを見い出した。不安情動には影響を与えなかった。海馬の長期増強を抑制するが、長期抑圧やpaired puls facilitationには影響がないことを明らかにした。2)海馬にブドウ糖を微量投与すると、空間学習が促進した。この効果はaFGF受容体(FGFR1)抗体の前処置で減弱する傾向があり、aFGFがブドウ糖依存性学習促進機構に関与することを見出した。 | KAKENHI-PROJECT-10470017 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10470017 |
日本企業の取締役会の運営と社外取締役の役割 | 本研究は社外取締役が企業価値を高めるプロセスを解明するために、取締役会の運営と社外取締役の実効性の関係に焦点を当てる。具体的には、(1)取締役会の運営の実態、(2)社外取締役の役割、(3)取締役会の機能を高めるためにどのような運営に効果があるか、を明らかにする。取締役会の運営に関する調査(運営状況調査)を13社(鹿島建設、武田薬品工業、資生堂、JXTGホールディングス、ブリヂストン、AGC(旭硝子から社名変更)、日立製作所、三菱重工業、三菱商事、東京海上ホールディングス、三井不動産、東日本旅客鉄道、ANAホールディングス)に依頼し、平成29年4月から平成30年3月までの取締役会についてのデータを集めた。データの内容は、取締役会の議題数、議題の種類、資料の頁数、所要時間、説明・審議における発言者と回数、議案の内容である。平成30年6月9月にこれらのデータを集計・分析し、9月12月に各社に全体の分析結果と比較した報告書を提出した。なお、アンケート調査の開始時(2017年48月)、及び終了後(2018年912月)に13社の事務局へのインタビューも行った。これらの分析結果をまとめた論文は『旬刊商事法務』(2196号)に掲載され、海外のジャーナルにも投稿中である。研究発表は、ファイナンス学会、International Society of Corporate Governanceを予定している。また、本研究の成果を含む単著『現代コーポレートガバナンス』(日本経済新聞出版社)も2018年11月に刊行された。現在、第二段階の社外取締役及び経営者及びへのインタビューも進めている。日本企業の社外取締役及び経営者のインタビューは17人(全体の3分の1程度)終了した。現在、海外企業の社外取締役のインタビューの準備も行っており、2019年7月以降実施する予定である。取締役会の運営に関する調査(運営状況調査)は平成30年12月を目途として分析を行う予定であったが、12月までに分析及び各社への報告を完了した。平成30年11月、31年4月に成果の発表も行った。2019年度は、社外取締役の役割を明らかにするインタビュー調査と研究成果の発表に注力する。日本企業の社外取締役、経営者のインタビューは17件(全体のおよそ3分の1)を終えたが、残りの3分の2、海外の社外取締役のインタビュー調査は7月以降に行いたい。そのインタビュー結果と第一段階の取締役会運営状況調査の結果を統合して、社外取締役の役割について立体的、包括的に分析する論文を書きたい。更に、研究成果の発表も並行して進める。本研究は社外取締役が企業価値を高めるプロセスを解明するために、取締役会の運営と社外取締役の実効性の関係に焦点を当てる。具体的には、(1)取締役会の運営の実態、(2)社外取締役の役割、(3)取締役会の機能を高めるためにどのような運営が効果があるか、を明らかにする。取締役会の運営に関する調査(運営状況調査)を13社(鹿島、武田薬品工業、資生堂、JXTGホールディングス、ブリヂストン、旭硝子、日立製作所、三菱重工、三菱商事、東京海上ホールディングス、三井不動産、東日本旅客鉄道、ANAホールディングス)に依頼し、平成29年4月から平成30年3月までの1年間に開催された取締役会についてのデータを集めた。データの内容は、取締役会の議題数、議題の種類(審議と報告の別、法定と任意の別)、資料の頁数、所要時間(説明と審議に分けて測定)、説明における発言回数(社内取締役、社内役員、社外などに分類)、審議における発言回数(社内取締役、社外取締役、社内監査役、社外監査役などに分類)、議案の内容(決算、人事・組織・報酬、経営方針・経営計画、個別事業・機能別戦略、設備投資、M&Aおよび新規事業、売却・撤退・減損、制度規則、株式・株主関連、コーポレート・ガバナンス、ファイナンスなど18項目に分類)である。今後、これらのデータの集計・分析を行う予定である。これと並行して、社外取締役の役割に関する国内外の先行研究のレビュー、参考になりそうな研究についての調査を進めた。平成30年1月に米国のハーバード・ビジネス・スクールを訪問し、Jay Lorsch, Lynn Paine, Suraj Srinivasan教授らと面談し、本研究について説明し、助言を求めると同時に、米国企業の取締役会に関する調査、社外取締役へのインタビュー調査などについて意見交換した。取締役会の運営に関する調査(運営状況調査)について、業種、制度設計(監査役会設置会社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社)、会社の形態(持株会社か否か)に配慮して13社を選んで依頼し、協力を得ることができた。1年間の取締役会に関するデータがほぼすべて集まったので、平成30年12月を目途として分析を行う予定である。本研究は社外取締役が企業価値を高めるプロセスを解明するために、取締役会の運営と社外取締役の実効性の関係に焦点を当てる。具体的には、(1)取締役会の運営の実態、(2)社外取締役の役割、(3)取締役会の機能を高めるためにどのような運営に効果があるか、を明らかにする。取締役会の運営に関する調査(運営状況調査)を13社(鹿島建設、武田薬品工業、資生堂、JXTGホールディングス、ブリヂストン、AGC(旭硝子から社名変更)、日立製作所、三菱重工業、三菱商事、東京海上ホールディングス、三井不動産、東日本旅客鉄道、ANAホールディングス)に依頼し、平成29年4月から平成30年3月までの取締役会についてのデータを集めた。データの内容は、取締役会の議題数、議題の種類、資料の頁数、所要時間、説明・審議における発言者と回数、議案の内容である。 | KAKENHI-PROJECT-17K03868 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K03868 |
日本企業の取締役会の運営と社外取締役の役割 | 平成30年6月9月にこれらのデータを集計・分析し、9月12月に各社に全体の分析結果と比較した報告書を提出した。なお、アンケート調査の開始時(2017年48月)、及び終了後(2018年912月)に13社の事務局へのインタビューも行った。これらの分析結果をまとめた論文は『旬刊商事法務』(2196号)に掲載され、海外のジャーナルにも投稿中である。研究発表は、ファイナンス学会、International Society of Corporate Governanceを予定している。また、本研究の成果を含む単著『現代コーポレートガバナンス』(日本経済新聞出版社)も2018年11月に刊行された。現在、第二段階の社外取締役及び経営者及びへのインタビューも進めている。日本企業の社外取締役及び経営者のインタビューは17人(全体の3分の1程度)終了した。現在、海外企業の社外取締役のインタビューの準備も行っており、2019年7月以降実施する予定である。取締役会の運営に関する調査(運営状況調査)は平成30年12月を目途として分析を行う予定であったが、12月までに分析及び各社への報告を完了した。平成30年11月、31年4月に成果の発表も行った。取締役会の運営に関する調査(運営状況調査)の集計・分析を進め、13社の取締役会で何に関してどのような議論が行われているかを解明する。並行して、社外取締役の役割を明らかにするインタビュー調査の準備を始める。先行研究の調査手法を研究し、日本企業の社外取締役、社長を対象としたインタビュー調査に着手する。米国企業の社外取締役を対象としたインタビュー調査については、ハーバード・ビジネス・スクールの研究者の助言を得ながら検討する。2019年度は、社外取締役の役割を明らかにするインタビュー調査と研究成果の発表に注力する。日本企業の社外取締役、経営者のインタビューは17件(全体のおよそ3分の1)を終えたが、残りの3分の2、海外の社外取締役のインタビュー調査は7月以降に行いたい。そのインタビュー結果と第一段階の取締役会運営状況調査の結果を統合して、社外取締役の役割について立体的、包括的に分析する論文を書きたい。更に、研究成果の発表も並行して進める。平成29年度は、米国への出張の際、コストセービングにより当初の予定よりも旅費が少なくなった。次年度は、インタビュー調査のための旅費、取締役会運営調査結果の分析の謝金などに使用する予定である。平成30年度はコストセービングにより、物品費、謝金等ともに当初の予定よりも少なくなった。次年度はインタビュー調査のための旅費や研究発表のための経費に使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-17K03868 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K03868 |
ヒドロシランを反応剤とする複素環化合物とカルボニル化合物との触媒的カップリング | 前年度の本報告書でも述べたように、複素環化合物に収率よく、選択的に置換基を導入する反応の開発は重要な課題の一つである。現在までに様々な導入法が開発されているが、多くの場合、複素環上の水素をいったん他の元素に置き換え、その後置換基を導入する、といった方法が採用されている。一方、水素を直接置換する方法も幾つか知られているが、収率、選択性ともに満足な結果が得られていないのが現状である。本研究では、イリジウム錯体を触媒に用い、ヒドロシランを反応剤として用いることにより、イミダゾール類の2位の水素を他の元素に置き換えることなく、直接イミダゾールとアルデヒドとをカップリングさせる反応をについて研究を行っている。本年度は前年度に得られた知見をもとに、用いる基質の適応範囲についての検討を行った。まずアルデヒド以外のカルボニル化合物について実験を行ったが、単純ケトン類では全く目的生成物が得られなかったが、カルボニル基に直接電子吸引基が置換したケトン(例えばα-ケトエステル)では低収率ながら目的生成物が得られた。またインシアネート類を用いた時も生成物が得られ、特にアルキルイソシアネート類では中程度の収率でカップリング生成物が得られた。しかしエステル、アミド、イミン、酸無水物では反応は全く進行しなかった。次に複素環化合物についての検討を行った。多置換イミダゾール類でも反応が進行することが確認された。このことは本反応がイミダゾール環を含む化合物の効率的合成に利用できる可能性がある。しかしチアゾール環やオキサゾール環など多の複素環化合物では全く反応は進行しなかった。複素環化合物は数多くの医薬、農薬等に含まれている重要な化合物群の1つであり、複素環上に収率良く、選択的に置換基を導入する反応の開発はそれらを合成するためにも非常に重要である。現在までに様々な導入法が開発されているが、多くの場合、複素環上の水素をいったん他の元素に置き換え、その後置換基を導入する、といった方法が採用されている。一方、水素を直接置換する反応も幾つか知られているが、収率、選択性共に満足な結果が得られていないのが現状である。本研究では、イリジウム錯体を触媒に用い、ヒドロシランを反応剤として用いることにより、イミダゾールの2位の水素を他の元素に置換することなく、直接イミダゾールとアルデヒドとをカップリングさせる反応を見いだした。本研究では、まず上記反応の反応条件を決定した。遷移金属錯体触媒としてはイリジウムカルボニル錯体が最もよく、他の錯体ではほとんど触媒活性を示さなかった。また本反応ではアセチレンジカルボン酸ジメチルの添加が必須であり、添加しない場合は副反応が多く進行した。ヒドロシランはケイ素上の置換基が小さいほどよく、ジエチルメチルシランが適当であった。かさ高い置換基を有するヒドロシランでは反応は非常に遅くなるか、または全く進行しなくなった。種々のアルデヒドについて検討したところ、エステル基、シアノ基、アセタール基等様々な官能基を有するアルデヒドを用いても反応はアルデヒド部分でのみ進行した。またいくつかのN-置換イミダゾールでも反応は効率良く進行することがわかった。前年度の本報告書でも述べたように、複素環化合物に収率よく、選択的に置換基を導入する反応の開発は重要な課題の一つである。現在までに様々な導入法が開発されているが、多くの場合、複素環上の水素をいったん他の元素に置き換え、その後置換基を導入する、といった方法が採用されている。一方、水素を直接置換する方法も幾つか知られているが、収率、選択性ともに満足な結果が得られていないのが現状である。本研究では、イリジウム錯体を触媒に用い、ヒドロシランを反応剤として用いることにより、イミダゾール類の2位の水素を他の元素に置き換えることなく、直接イミダゾールとアルデヒドとをカップリングさせる反応をについて研究を行っている。本年度は前年度に得られた知見をもとに、用いる基質の適応範囲についての検討を行った。まずアルデヒド以外のカルボニル化合物について実験を行ったが、単純ケトン類では全く目的生成物が得られなかったが、カルボニル基に直接電子吸引基が置換したケトン(例えばα-ケトエステル)では低収率ながら目的生成物が得られた。またインシアネート類を用いた時も生成物が得られ、特にアルキルイソシアネート類では中程度の収率でカップリング生成物が得られた。しかしエステル、アミド、イミン、酸無水物では反応は全く進行しなかった。次に複素環化合物についての検討を行った。多置換イミダゾール類でも反応が進行することが確認された。このことは本反応がイミダゾール環を含む化合物の効率的合成に利用できる可能性がある。しかしチアゾール環やオキサゾール環など多の複素環化合物では全く反応は進行しなかった。 | KAKENHI-PROJECT-09750952 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09750952 |
共在感覚を生じる看取りケア学習法の開発および看取りケアの質評価 | 本研究は、学習者が看取りケア場面に対して共在感覚を持つことができる看取りケア教材・学習方法の開発と看取りケアの質に与える影響の検証を最終目的としている。本年度は、初年度計画として、1看取りケア学習法の開発に関わる情報収集を目的に、研究者がこれまでに開発したペルソナ映像教育を用いた学習会の開催を実施した。対象は、東京都近郊と愛知県内の特別養護老人ホームの職員のうち、看取りケアが未経験である人とした。方法:対象地区の特別養護老人ホームへ看取りケア学習会への参加を呼びかけ、参加希望者を募り、2018年5月と7月に各1日の研修を実施した。対象者へは研修参加の条件として、事前にペルソナ映像教育による学習を条件とした。研究者が開設するHPから映像教材を視聴し、事前送付している課題を実施してくることがその学習である。事前学習を実施せずに研修に来場した人へは、会場において同様のペルソナ映像教材が視聴できるように準備を行い、視聴後に研修への参加を行った。研修は、グループセッションの形式で行い、同じ条件の学習レディネスを持つ参加者が研究者らが計画したプログラムに沿ってディスカッションをする学習会として進行した。研究者らは、各グループのファシリテーターとして介入し、学習の進行を促した。本研究で開発を狙いとする「共在感覚」の育成に必要な学習ツールとして、同じ体験と同じ学習ステップを踏むことが有効であるか、確認することを一つの課題としていたが、同じ教材を使った同じ体験と学習により、職場や経験年数、職種が異なるグループにおいてもディスカッションするテーマに沿った進行ができることが確認できた。しかし、2018年度の学習会の詳細なデータ分析がまだ滞っており、計画がやや遅れている。2年目は、本データ分析を行うとともに具体的な教材作成に入る予定である。本年度は、2018年5月と7月に実施した看取りケア学習のディスカッション後の結果分析を踏まえて、「共在感覚」を育成する教材開発のデザインを企画するところまで進行したいと考えていたが、大学教員の本務の一つである学部の実習指導の進行において他教員のフォローアップ、実習施設での感染症患者発生(疥癬2回、インフルエンザ流行)の影響を受け学生の実習体制の組み直しや学生への感染予防対策の実施など通常外の対応を要する出来事が数回起きた。結果として補習実習の実施を要するなど、本研究を実施する時間の確保ができなかった。また、研究者本人も感染症に罹患し、休暇取得後の復帰による大学業務の多忙さ、体力の不足により本研究を遂行することができなかった。更に、2018年度の後半に本研究チームメンバーが厚生労働省の老人保健事業推進費等補助金を取得したことを受け、その業務を優先して協力したことも本研究の進行の遅れに影響した。本年度は、研究メンバーが1名職場を異動するが、教材開発にかかる日数を含めた年間計画を立てて調整を行い実施する予定であり、研究メンバーからも本件について同意を得ている。秋には、国際学会発表での発表も決定しており、本研究テーマについて諸外国の事情を情報収集できる機会にも恵まれている。一方、大学教育の本務体制に課題が2019年4月から生じている。大学教育の業務において職員1名が休職しており、かつ人員補充がない。休職は当面継続の様相であり、この教員が実施する予定の演習や実習の科目責任者が本研究代表者である。そのため、演習や実習にかかる準備・運営の負担がすべて本研究者一人にかかっている現状と今後も続く状況が回避できない。研究を計画通りに遂行ために、対策の一つとして人員を確保するための申請と書類作成を実施しているが、人員不足の影響は免れることができないと予測され、現段階では進行の先行きは不透明である。本研究は、学習者が看取りケア場面に対して共在感覚を持つことができる看取りケア教材・学習方法の開発と看取りケアの質に与える影響の検証を最終目的としている。本年度は、初年度計画として、1看取りケア学習法の開発に関わる情報収集を目的に、研究者がこれまでに開発したペルソナ映像教育を用いた学習会の開催を実施した。対象は、東京都近郊と愛知県内の特別養護老人ホームの職員のうち、看取りケアが未経験である人とした。方法:対象地区の特別養護老人ホームへ看取りケア学習会への参加を呼びかけ、参加希望者を募り、2018年5月と7月に各1日の研修を実施した。対象者へは研修参加の条件として、事前にペルソナ映像教育による学習を条件とした。研究者が開設するHPから映像教材を視聴し、事前送付している課題を実施してくることがその学習である。事前学習を実施せずに研修に来場した人へは、会場において同様のペルソナ映像教材が視聴できるように準備を行い、視聴後に研修への参加を行った。研修は、グループセッションの形式で行い、同じ条件の学習レディネスを持つ参加者が研究者らが計画したプログラムに沿ってディスカッションをする学習会として進行した。研究者らは、各グループのファシリテーターとして介入し、学習の進行を促した。本研究で開発を狙いとする「共在感覚」の育成に必要な学習ツールとして、同じ体験と同じ学習ステップを踏むことが有効であるか、確認することを一つの課題としていたが、同じ教材を使った同じ体験と学習により、職場や経験年数、職種が異なるグループにおいてもディスカッションするテーマに沿った進行ができることが確認できた。しかし、2018年度の学習会の詳細なデータ分析がまだ滞っており、計画がやや遅れている。2年目は、本データ分析を行うとともに具体的な教材作成に入る予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18K10576 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K10576 |
共在感覚を生じる看取りケア学習法の開発および看取りケアの質評価 | 本年度は、2018年5月と7月に実施した看取りケア学習のディスカッション後の結果分析を踏まえて、「共在感覚」を育成する教材開発のデザインを企画するところまで進行したいと考えていたが、大学教員の本務の一つである学部の実習指導の進行において他教員のフォローアップ、実習施設での感染症患者発生(疥癬2回、インフルエンザ流行)の影響を受け学生の実習体制の組み直しや学生への感染予防対策の実施など通常外の対応を要する出来事が数回起きた。結果として補習実習の実施を要するなど、本研究を実施する時間の確保ができなかった。また、研究者本人も感染症に罹患し、休暇取得後の復帰による大学業務の多忙さ、体力の不足により本研究を遂行することができなかった。更に、2018年度の後半に本研究チームメンバーが厚生労働省の老人保健事業推進費等補助金を取得したことを受け、その業務を優先して協力したことも本研究の進行の遅れに影響した。本年度は、研究メンバーが1名職場を異動するが、教材開発にかかる日数を含めた年間計画を立てて調整を行い実施する予定であり、研究メンバーからも本件について同意を得ている。秋には、国際学会発表での発表も決定しており、本研究テーマについて諸外国の事情を情報収集できる機会にも恵まれている。一方、大学教育の本務体制に課題が2019年4月から生じている。大学教育の業務において職員1名が休職しており、かつ人員補充がない。休職は当面継続の様相であり、この教員が実施する予定の演習や実習の科目責任者が本研究代表者である。そのため、演習や実習にかかる準備・運営の負担がすべて本研究者一人にかかっている現状と今後も続く状況が回避できない。研究を計画通りに遂行ために、対策の一つとして人員を確保するための申請と書類作成を実施しているが、人員不足の影響は免れることができないと予測され、現段階では進行の先行きは不透明である。本年度は、研究計画の遅れ欄に記載した理由により「共在感覚」を学習するための教材開発の実施までに至らなかった。本予算は、主に教材作成用の予算であり、その分を次年度の使用として教材開発に使用する予定である。使用したペルソナ映像教育の教材を公開している。 | KAKENHI-PROJECT-18K10576 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K10576 |
稲作経済・政策の国際比較研究ー米輸出国の米国とタイの稲作の生産費・経営形態・金融・流通及び政策の経済分析ー | 日本の稲作経済の現段階における根本問題は.いかにして国民に主食である米を安価に安定的に供給し.日本の食糧安全保障を効率的に維持するかにある.この問題は米の生産.流通.金融.政策と自然資源の賦存量とその保全管理の5分野に根本的に関係している.またこの問題は.米を重要な輸出品とする.または.米を主食とする世界の.多数の国々の上記5分野における現状と将来にも深く関係している.本研究は.これら5分野を.世界の2大米輸出国である米国とタイ国を対象にして.農家経済分析学.農業会計学を含む広義の農業経営経済学的方法とその他ミクロ及びマクロ経済学的方法により.日本との比較の視点から総合的に研究し.上記根本問題の解決に学術的に貢献することを目的とする.本年度は米国で本調査を行った.本年度の研究により1980年代に米国のコメ経済・政策が激変してきたこと.およびそれが1986年4月よりの国際コメ摩擦の原因になっていることが明らかになった.米国のコメ政策は1980年代にその保護率を急速に高めたが.80年代には世界コメの過剰化が進行しており国際米価は低落を続けた.そのため米国のコメ輸出は急速に国際競争力を失い世界コメ市場での米国のシェアーが減少した.それに対して特にタイ国が.そのコメ輸出制限政策をゆるめるという適切な政策により同シェアーを急速に伸ばし世界最大の輸出国になった.米国のコメ輸出の減少と国内高米価のため80年代に1986年にかけて米国に過剰米が急速に累積した.この多量の累積過剰米が.1986年4月からの米国のコメ・ダンピング輸出による世界コメ戦争の勃発の原因であり.1986年9月の米国の対日コメ市場開放要求の原因でもある.米国のコメ政策は.また80年代になって.急速なコメ個別経営の分割とコメ生産効率の低下の原因にもなっている.米国のコメの流通は.精米段階の寡占と米国の消費者のコメと米価に対する注意度の低下のため.寡占的非効率性がある可能性が高い.しかしコメの消費はかなりの速度で増大している.水と土は米国のコメ生産にとってかなりのボトルネックになっている.今後はこれらの知見をさらに深め.日米コメ摩擦の解消の方向を探りたい.日本の稲作経済の現段階における根本問題は.いかにして国民に主食である米を安価に安定的に供給し.日本の食糧安全保障を効率的に維持するかにある.この問題は米の生産.流通.金融.政策と自然資源の賦存量とその保全管理の5分野に根本的に関係している.またこの問題は.米を重要な輸出品とする.または.米を主食とする世界の.多数の国々の上記5分野における現状と将来にも深く関係している.本研究は.これら5分野を.世界の2大米輸出国である米国とタイ国を対象にして.農家経済分析学.農業会計学を含む広義の農業経営経済学的方法とその他ミクロ及びマクロ経済学的方法により.日本との比較の視点から総合的に研究し.上記根本問題の解決に学術的に貢献することを目的とする.本年度は米国で本調査を行った.本年度の研究により1980年代に米国のコメ経済・政策が激変してきたこと.およびそれが1986年4月よりの国際コメ摩擦の原因になっていることが明らかになった.米国のコメ政策は1980年代にその保護率を急速に高めたが.80年代には世界コメの過剰化が進行しており国際米価は低落を続けた.そのため米国のコメ輸出は急速に国際競争力を失い世界コメ市場での米国のシェアーが減少した.それに対して特にタイ国が.そのコメ輸出制限政策をゆるめるという適切な政策により同シェアーを急速に伸ばし世界最大の輸出国になった.米国のコメ輸出の減少と国内高米価のため80年代に1986年にかけて米国に過剰米が急速に累積した.この多量の累積過剰米が.1986年4月からの米国のコメ・ダンピング輸出による世界コメ戦争の勃発の原因であり.1986年9月の米国の対日コメ市場開放要求の原因でもある.米国のコメ政策は.また80年代になって.急速なコメ個別経営の分割とコメ生産効率の低下の原因にもなっている.米国のコメの流通は.精米段階の寡占と米国の消費者のコメと米価に対する注意度の低下のため.寡占的非効率性がある可能性が高い.しかしコメの消費はかなりの速度で増大している.水と土は米国のコメ生産にとってかなりのボトルネックになっている.今後はこれらの知見をさらに深め.日米コメ摩擦の解消の方向を探りたい. | KAKENHI-PROJECT-62041046 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62041046 |
防衛的悲観主義のメカニズムの解明とその臨床的応用 | 防衛的悲観主義者は,学業達成場面において高い成績をおさめることから適応的であると考えられている。しかし,対人場面やスポーツ場面といった別の異なる領域について検討は十分におこなわれていない。そこで本研究では,学業達成場面を対象としたJDPI(荒木, 2008)と同じ因子構造を目指し,スピーチ,友人関係および健康に関する各場面における項目を作成して調査をおこなった。その結果, JDPIと同様の4因子構造となったのはスピーチ場面であることが明らかとなった1.研究計画の概要Norem and Cantor(1986)は,以下に示す特徴を持つ学生の存在を指摘し、防衛的悲観主義の概念を提唱した.(1)過去の学業成績が優れているにもかかわらず,学業達成場面において常に非現実的に低い期待しか持たない.2)失敗や最悪の事態を想定してあれこれ考え込み,不安が非常に高い.(3)その一方で優れた成績を維持している.これまでは悲観的思考や態度は精神的健康に対して否定的な影響を与えるものとして認識されていたが,Noremらはこの防衛的悲観主義を肯定的なものとして考えている点で興味深い概念である.本研究代表者は,平成15,17,18年度の科学研究費若手研究(B)(防衛的悲観主義に関する日本人への適用可能性の検討)において日本人大学生を対象に学業達成場面における防衛的悲観主義の程度を測定する防衛的悲観主義尺を新たに開発した.この研究をふまえ,本研究では学業達成場面およびそれと異なる領域について防衛的悲観主義に関する検討をおこない,防衛的悲観主義のメカニズムを総合的に解明することを目的とした.防衛的悲観主義者は,学業達成場面において高い成績をおさめることから適応的であると考えられている。しかし,対人場面やスポーツ場面といった別の異なる領域について検討は十分におこなわれていない。そこで本研究では,学業達成場面を対象としたJDPI(荒木, 2008)と同じ因子構造を目指し,スピーチ,友人関係および健康に関する各場面における項目を作成して調査をおこなった。その結果, JDPIと同様の4因子構造となったのはスピーチ場面であることが明らかとなった本研究課題の初年度として,本研究課題の軸となる防衛的悲観主義尺度に関して,その妥当性および信頼性を向上させる研究を進めることを計画し,実行した。具体的には,防衛的悲観主義尺度を用いて実施した調査研究および実験研究から得られたデータに関して,統計パッケージSPSS14.0およびAMOS5.0を用いてより統合的かつ詳細な分析を行った。防衛的悲観主義尺度を開発し,その信頼性および妥当性を検討した結果を査読付き学術論文として投稿し,学術雑誌「心理学研究」に「日本人大学生を対象とした学業達成場面における防衛的悲観主義の検討」というタイトルで論文が掲載された。この論文では,日本人大学生を対象に,学業達成場面における防衛的悲観主義について,真の悲観主義者と防衛的悲観主義者を弁別する尺度(JDPI)を作成した結果を公表した。研究1では695名の大学生を対象に調査を実施した。因子分析の結果, JDPIは24項目, 4因子構造(悲観,過去の成績,肯定的熟考,努力)となった。研究2では695名の大学生を対象に, JDPI,テスト対処方略尺度,および,状態-特性不安尺度について回答してもらった。その結果, JDPIの高い内的一貫性および再検査信頼性が認められた。防衛的悲観主義者および方略的楽観主義者は,真の悲観主義者に比べ,積極的方略をより多く,回避的方略をより少なく採用していた。また,防衛的悲観主義者および真の悲観主義者は,方略的楽観主義者と比べ,楽観的思考方略をより少なく採用しており,状態不安の程度はより高かった。これらの結果からJDPIの高い構成概念妥当性が確認された。また,図書の執筆として,「自己心理学3健康心理学・臨床心理学へのアプローチ」(塩崎万里・岡田努(編)金子書房)の分担執筆「第8章青年期における悲観・楽観主義」,p.135-151.)を担当し,防衛的悲観主義の概念および防衛的悲観全義尺度の概説をおこなった。本研究課題の二年度として,本研究課題の軸となる防衛的悲観主義尺度の妥当性および信頼性を向上させる研究を実行した。具体的には,荒木(2008)の作成した学業達成場面の防衛的悲観主義尺度(JDPI)を用いて,全回答者をJDPIの下位尺度の組み合わせによって認知的対処方略の異なるパターンに分類し,そしてそれらの認知的対処方略のパターンの違いによって帰属スタイルに差があるかどうかについて検討した。日本人大学生220名を対象に調査を実施し,JDPIと併せて,成田・佐藤(2005)の領域別帰属スタイル尺度について回答してもらった。得られたデータに関して,統計パッケージSPSS14.0および'AMOS5.0を用いてより統合的かつ詳細な分析を行った。その結果,JDPIの因子構造は荒木(2008)の結果と同じ4因子構造となった。また全回答者に対してグループ内平均連結法によるクラスタ分析をおこなった結果,JDPIの下位尺度の組み合わせによって認知的対処方略の異なるパターンが3つ抽出され,荒木(2008)における下位尺度得点の組み合わせと一致した。これらの結果から,JDPIの高い内的一貫性および再検査信頼性が認められた。また,方略的楽観主義者および真の悲観主義者群は失敗の原因をより内的に帰属する傾向がうかがえた。本研究で用いた領域別帰属スタイル | KAKENHI-PROJECT-19730426 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19730426 |
防衛的悲観主義のメカニズムの解明とその臨床的応用 | 尺度では,ネガティブな原因帰属についての帰属スタイルのみ査定されたことから,今後は成功などポジティブな出来事の原因帰属過程についても検討する必要がある。この研究結果については,北陸心理学会第44回大会において「防衛的悲観主義者の帰属スタイルに関する検討」という題目で口頭発表をおこなって報告し,北陸心理学会第44回大会発表論文集の3536頁において発表論文が掲載された。また,図書の執筆として,「心・理・学」(松川順子(編)ナカニシヤ出版)の分担執筆「第11章燃え尽き症候群と学習性無力感-臨床心理学」,p.182-194.)を担当し,防衛的悲観主義概念の概説をおこなった。本研究課題の三年目として,日本人大学生を対象に学業達成場面以外の諸場面における防衛的悲観主義を査定する尺度の作成をおこない,日本人における防衛的悲観主義のメカニズムを解明する知見を蓄積した。学業達成場面に限定して防衛的悲観主義の程度を査定するJDPIと同じ因子構造を目指し,スピーチ,友人関係および健康に関する各場面における防衛的悲観主義を査定する項目を収集して調査をおこなった結果,JDPIと同様の4因子構造となったのはスピーチ場面のみであった。本研究で収集した項目では,友人関係および健康に関する防衛的悲観主義の程度を査定できる尺度は作成することができなかった。今後,友人関係および健康に関する場面について過去の成功経験が多いと思われる調査協力者を対象に再度検討する必要がある。スピーチ場面に関しては学業達成場面と同様の4因子構造であることが明らかとなった。学業達成場面とスピーチ場面との関連性や独立性について今後検討をおこなっていく必要がある。日本人大学生を対象に学業達成場面における防衛的悲観主義を査定する尺度を用いて実験および調査研究を実施し,日本人における防衛的悲観主義のメカニズムを解明する知見を蓄積した。具体的には、Norem&Illingworth(1993)と同様の手続きを採用して集団形式で実験をおこない、防衛的悲観主義の実験パラダイムの妥当性について検討をおこなった。国立大学に所属する大学生195名を対象に、荒木(2008)の作成した防衛的悲観主義尺度、防衛的悲観主義の受容度、多次元的完全主義認知尺度、状態不安尺度、PANASへの回答をした後、対処方略の操作をおこない、算数問題を実施した。方略的楽観主義群および防衛的悲観主義群における算数課題の遂行成績について分散分析をおこなった結果、有意な主効果や交互作用はいずれもみられなかった。Norem & Illingworth(1993)の追試は失敗したことから、防衛的悲観主義の実験パラダイムにおいて採用されている算数問題は認知的対処方略を扱う課題としては不適当である可能性が示唆された。防衛的悲観主義という認知的対処方略を発揮できるような実験課題を開発することが今後必要である。また、防衛的悲観主義群は、方略的楽観主義群と比べると、状態不安が高いこと、ネガティブ感情が強いこと、ポジティブ感情が弱いことが示された。この研究結果については,富山大学で開催された北陸心理学会第46回大会において「集団実験による防衛的悲観主義の検討」という題目で口頭発表をおこなって報告し,北陸心理学会第46回大会発表論文集の2021頁において発表論文が掲載された。 | KAKENHI-PROJECT-19730426 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19730426 |
非線形非凸型ネットワーク計画問題の効率的解法に関する研究 | この研究では,非凸関数を含むネットワーク上の最適化問題に対して効率的に大域的最適解を生成するいくつかのアルゴリズムを提案した.その主な結果は以下の通りである:(1)通常の2端子ネットワーク上で総輸送費用と総流量とを最適化する問題を考察し,2つの値の積を最適化する方法を提案した.目的関数は準凹型となるが,大域的最適解を準多項式時間で,ε近似解であれば多項式時間で算出することに成功した.(2)Hitchkcock型輸送問題で,供給点の中の高々3つが製品を凹型の費用関数で生産する工場と想定し,最適な生産-輸送計画を求めるアルゴリズムを設計した.実行可能解を生成した後,最小費用流問題を解くのと同様な手続きで大域的最適解が準多項時間で得られることを示した.(3)(2)のアルゴリズムを手続きとして用い,最大流問題に逆凸型の制約条件が追加された問題を解くアルゴリズムを設計した.2分探索で最適解の候補を求めた後,その大域的な最適性を(2)のアルゴリズムで確認することにより,大域的最適解が準多項式時間で求められることを示した.以上のアルゴリズムはいずれも問題のもつ低ランク(準)凹性を利用しており,理論的にも計算機上でも効率のよいことが確認された.この問題の特種構造を一般化し,次の結果を得ることができた:(4)ある種の多目的凸計画問題を1目的の非凸計画問題に帰着させることが可能なことを示し,その大域的最適解を求める外部近似アルゴリズムを設計した.計算実験によって目的関数の数が5まで場合にアルゴリズムの有効性を確認した.この研究では,非凸関数を含むネットワーク上の最適化問題に対して効率的に大域的最適解を生成するいくつかのアルゴリズムを提案した.その主な結果は以下の通りである:(1)通常の2端子ネットワーク上で総輸送費用と総流量とを最適化する問題を考察し,2つの値の積を最適化する方法を提案した.目的関数は準凹型となるが,大域的最適解を準多項式時間で,ε近似解であれば多項式時間で算出することに成功した.(2)Hitchkcock型輸送問題で,供給点の中の高々3つが製品を凹型の費用関数で生産する工場と想定し,最適な生産-輸送計画を求めるアルゴリズムを設計した.実行可能解を生成した後,最小費用流問題を解くのと同様な手続きで大域的最適解が準多項時間で得られることを示した.(3)(2)のアルゴリズムを手続きとして用い,最大流問題に逆凸型の制約条件が追加された問題を解くアルゴリズムを設計した.2分探索で最適解の候補を求めた後,その大域的な最適性を(2)のアルゴリズムで確認することにより,大域的最適解が準多項式時間で求められることを示した.以上のアルゴリズムはいずれも問題のもつ低ランク(準)凹性を利用しており,理論的にも計算機上でも効率のよいことが確認された.この問題の特種構造を一般化し,次の結果を得ることができた:(4)ある種の多目的凸計画問題を1目的の非凸計画問題に帰着させることが可能なことを示し,その大域的最適解を求める外部近似アルゴリズムを設計した.計算実験によって目的関数の数が5まで場合にアルゴリズムの有効性を確認した.最適化問題の中でもネットワーク流問題は,問題を定義する関数がすべて線形関数であり,またネットワーク構造を効果的に利用できることから,比較的易しく解ける問題クラスとして知られている.ところが問題の線形性は,本来規模の経済の働きなどによって非凸型であるべきものを近似した結果にすぎず,より精密なモデル化では非凸性の現れることが希でない.本研究では,現実の問題を定式化した場合,非凸型に作用する変数の数は線形に作用する変数の数に比べて極めて少ない点に着目し,いくつかの非凸型ネットワーク流問題に対して効率的に大域的最適解を生成するアルゴリズムを提案した.その具体的な例は以下の通りである:(1)Hitchcock型輸送問題で,供給点の中の2つが輸送すべき製品の生産拠点である場合を考察し,凹型の生産費用と線形の輸送費用の総和を最小化する準多項式時間アルゴリズムを設計した.生産拠点の数は2つに固定されているものの,供給点の数まで固定していた従来の方法より一般化された問題を解くことが可能となった.(2)ネットワーク上で総流量と輸送費用とを同時に最適化するネットワーク流問題を考察し,2つの値の積を最適化する方法を提案した.準凹型である線形乗法関数の最小化問題として定式化されるが,その大域的最適解を準多項式時間で,ε近似解であれば多項式時間で算出することに成功した.(3)最大流問題において,2つの流出口を流れの生産拠点と捉え,凹型生産費用と線形輸送費用の総和が一定予算を越えないように制約を追加した場合の考察を行った.生産費用の凹性によって問題は逆凸計画問題となるが,(1)のアルゴリズムを手続きとして多項式回だけ適用すれば,その大域的最適解は準多項式時間で算出できることを示した.線形関数のみによって定式化される通常のネットワーク流問題は,そのネットワーク構造を効果的に利用できることから,比較的に易しい最適化問題として知られている. | KAKENHI-PROJECT-07680447 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07680447 |
非線形非凸型ネットワーク計画問題の効率的解法に関する研究 | しかし、規模の経済などを考慮し,より精密なモデル化を行なうと非線形・非凸性の現れることが稀でなく,多数の局所最適解の中から大域的に最適な解を見つけだすことは困難である.本研究では,非線形に作用する変数が現実の問題には相対的に少ない点を着目し,非線形非凸型ネットワーク流問題の大域的最適解を効率的に生成するアルゴリズムの提案を行なった.(1)輸送問題の供給点の中で2つ,または3つが輸送される製品の生産拠点である場合を考慮し,凹型生産費用と線形の輸送費用の総和を最小化する準多項式時間アルゴリズムを設計した.供給点の総数まで限定した従来の解法より一般化された問題を解くことが可能となり,また計算実験も良好な結果を収めた.(2)最大流問題の2つの流出口を流れの生産拠点と捉え,生産費用と輸送費用の総和が一定額を越えない制約を加えた場合の考察を行なった.生産費用の凹性によって逆凸計画問題に定式化されるが,(1)のアルゴリズムを手続きとして用いることで,大域的最適解が準多項式時間で得られることを示した.(3)ネットワーク上で総流量と輸送費用とを同時に最適化する2目的ネットワーク流問題を考察し,2つの値の積を最適化する方法を提案した.定式化された問題の目的関数は準凹型となるが、その大域的最適解は準多項式時間で,また最適解ならば多項式時間で算出することに成功した.(4)(2)で考察した2目的最適化を一般化し,凸集合上で複数の凸関数を最適化する多目的最適化問題を非凸型最適化問題に帰着させ,その大域的最適解を生成するアルゴリズムを設計した.計算実験では目的関数が5つの場合まで良好な結果を収めた. | KAKENHI-PROJECT-07680447 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07680447 |
ガス検出器における陽イオン検出で目指す稀事象探索のブレークスルー | キセノンガスによるタイムプロジェクションチェンバー(TPC)検出器において、陽イオンを検出する新しい手法を開発する研究を進めている。キセノンガスTPCは高いエネルギー分解能を持つことが可能な検出器であるが、信号に用いる電離電子の拡散が大きいため位置分解能は高くない。電離電子とともに生成される陽イオンはドリフト中の拡散が小さいと予想される。陽イオンの検出法が確立されれば、暗黒物質やニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊崩壊探索に応用可能な、エネルギー分解能に加え空間分解能においても秀でたタイムプロジェクションチェンバーの実現へとつながる。本研究では、負電圧を印加したワイヤ電極に陽イオンが到達した際に放出される二次電子が電場により逆方向に加速されキセノンガスと衝突し脱励起光を発生するという過程を用いて陽イオンを検出することを目指す。前年度、陽イオンによる信号を初観測することが目標に簡易セットアップの構築をしたが、信号は観測されなかった。本年度は、文献の調査を進め電極の材質としてタングステンを採用した。タングステンの仕事関数は、キセノンのイオン化エネルギーに比べて非常に小さいため、電極でのキセノンイオンの中性化の際にオージェ過程によって電子が放出されると期待される。電場の有限要素法計算を行い電極構造の改良も行い、タングステン電極を用いて1気圧のキセノン中で測定を行った所、陽イオンによると思われる信号を観測した。希ガス検出器中での陽イオンによる信号の観測は、世界で成功した例がなく、実現するまでに、電極材質、電極構造などの問題の解決をしなければならなかった。陽イオンによると思われる信号の観測に成功したので、気圧、電圧、電極材質などの系統的な測定を行い、検出器への応用に必要な基礎データを収集する。特に二次電子放出率の高いと予想される酸化マグネシウム膜を蒸着したモリブデン電極の測定を行う。また、位置情報を取り出すために多チャンネル化も行う。キセノンガスによるタイムプロジェクションチェンバー(TPC)検出器において、陽イオンを検出する新しい手法を開発する研究を進めている。キセノンガスTPCは高いエネルギー分解能を持つことが可能な検出器であるが、信号に用いる電離電子の拡散が大きいため位置分解能は高くない。電離電子とともに生成される陽イオンはドリフト中の拡散が小さいと予想される。陽イオンの検出法が確立されれば、暗黒物質やニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊崩壊探索に応用可能な、エネルギー分解能に加え空間分解能においても秀でたタイムプロジェクションチェンバーの実現へとつながる。本研究では陽イオンの検出に、負電圧を印加したワイヤ電極に陽イオンが到達した際に放出される二次電子が電場により逆方向に加速されキセノンガスと衝突し脱励起光を発生するという過程を用いる。まず、陽イオンによる信号を初観測することが目標に簡易セットアップの構築をした。ワイヤ電極の直径と必要とされる電圧の関係を調査し、また有限要素法による電場計算を行い、直径30ミクロンの金メッキタングステンワイヤに3kVの電圧を付加することとした。ワイヤが電場から受ける力を考慮し、ワイヤに適切なテンションをかけて固定している。アルファ線源、接地電極、ワイヤ電極、ガス容器、光電子増倍管、ガス系統、高電圧電源等からなる測定装置を製作した。キセノンガスの脱励起光は、波長170 nmの真空紫外光のため光電子増倍管は真空紫外光に感度があり、また低アウトガスの実績のあるものを用いている。現座、この簡易セットアップによる測定を開始した所である。ガス系統に用いる特殊なバルブの納期が5か月と予想外に長かったことが一因である。セットアップ完了後、1,2回目の測定を行った所、まだ信号が見えていない。光電子増倍管に付加している電圧が電場を歪めている可能性があるため、その対応を行っている。キセノンガスによるタイムプロジェクションチェンバー(TPC)検出器において、陽イオンを検出する新しい手法を開発する研究を進めている。キセノンガスTPCは高いエネルギー分解能を持つことが可能な検出器であるが、信号に用いる電離電子の拡散が大きいため位置分解能は高くない。電離電子とともに生成される陽イオンはドリフト中の拡散が小さいと予想される。陽イオンの検出法が確立されれば、暗黒物質やニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊崩壊探索に応用可能な、エネルギー分解能に加え空間分解能においても秀でたタイムプロジェクションチェンバーの実現へとつながる。本研究では、負電圧を印加したワイヤ電極に陽イオンが到達した際に放出される二次電子が電場により逆方向に加速されキセノンガスと衝突し脱励起光を発生するという過程を用いて陽イオンを検出することを目指す。前年度、陽イオンによる信号を初観測することが目標に簡易セットアップの構築をしたが、信号は観測されなかった。本年度は、文献の調査を進め電極の材質としてタングステンを採用した。タングステンの仕事関数は、キセノンのイオン化エネルギーに比べて非常に小さいため、電極でのキセノンイオンの中性化の際にオージェ過程によって電子が放出されると期待される。電場の有限要素法計算を行い電極構造の改良も行い、タングステン電極を用いて1気圧のキセノン中で測定を行った所、陽イオンによると思われる信号を観測した。希ガス検出器中での陽イオンによる信号の観測は、世界で成功した例がなく、実現するまでに、電極材質、電極構造などの問題の解決をしなければならなかった。現在、陽イオンによる信号が見えていない原因を突き止める。 | KAKENHI-PROJECT-17K18777 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18777 |
ガス検出器における陽イオン検出で目指す稀事象探索のブレークスルー | 光電子増倍管からの電場の遮蔽、ワイヤの固定法の改良、別素材のワイヤでの試験などを行う予定である。その後、当初の予定通り、陽イオンのドリフト速度や二次電子放出効率などの基礎的な物理量の測定へと進む。陽イオンによると思われる信号の観測に成功したので、気圧、電圧、電極材質などの系統的な測定を行い、検出器への応用に必要な基礎データを収集する。特に二次電子放出率の高いと予想される酸化マグネシウム膜を蒸着したモリブデン電極の測定を行う。また、位置情報を取り出すために多チャンネル化も行う。簡易セットアップで陽イオンの信号を検出できることを確認した後、本格的な実験セットアップを製作する予定であった。しかし、7欄に記載したように、簡易セットアップによる陽イオン検出の最初の原理検証でまだ試行錯誤を行っており、本格的な実験セットアップの製作に進めていない。今年度は、この原理検証の本実験セットアップの製作および当初予定の多チャンネル、マルチワイヤの検出器を製作で予算を使用する予定である。7欄に記述したように、陽イオンの信号を検出するまでに試行錯誤を重ねたため。H31年度は、酸化マグネシウム蒸着モリブデン電極の測定と、多チャンネル化を進める。そのため電極の製作および光素子の購入に予算を使用する計画である。 | KAKENHI-PROJECT-17K18777 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18777 |
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