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山東・江蘇地域出土漢代画像石の図像と地域性
平成21年度に実施した研究の成果物としては、『美術史研究』第47冊(早稲田大学美術史学会、2009年12月)に投稿、査読の上採択された論文「江蘇省徐州市銅山県苗山漢墓墓門画像石再考」がある。これは、徐州地域の漢代画像石の代表作例である銅山県苗山漢墓墓門画像石を取り上げ、その全面的な図像解釈を通して、漢代の行政区画で言う「徐州」地域における、獣頭の天候神像という地域的な特殊な図像表現と、その来源として想定される、徐州羽山における熊身の神・鯀に対する独自の信仰について論じたものである。そもそも本研究は、漢代画像石にあらわされる図像の中で、特定の地域にのみ集中して分布する図像には、地域的な特殊な社会的状況、もしくは信仰の形態が反映されていたことを実証し、画像石を地域史研究の資料として活用することを主眼としていたわけであるが、これまでの研究が主に図像主題そのものに焦点を当てたものであったのに対し、上掲論文で行った論究は、そのような地域社会における特殊な状況が、図像表現のレベルにまで影響を及ぼしていた可能性を指摘するものである。その意味で上掲論文は、所期の研究目的を、一層深いレベルで達成し得たものと考える。地域的特殊性を考える上では、同一地域内の状況を詳細に観察することと同じく、他地域との比較の視点が絶対不可欠である。そのため今年度は、主要な画像石の出土地である河南省鄭州市・南陽市、四川省成都市・都江堰市に足を運び、フィールドワークを行った。現地では、本研究内の一つのテーマとして新たに取り上げることとした風伯・雨師図像をあらわす作例について調査を行い、詳細な観察の結果、新たに論文の主題となし得る着想を得た。平成20年度に実施した研究の成果物としては、2008年11月刊行の『中国考古学』第8号に投稿、査読の上採択された論文「胡漢交戦図の分布とその歴史的背景-漢代画像石を中心として-」がある。これは博士学位請求論文の一章を構成する予定のものである。「胡漢交戦図」は漢代画像石の画題として有名なものであるが、その分布が山東・江蘇地域に集中する事実は従来ほとんど注目されず、えびすを打ち破り天下が安寧になるという普遍的願望をあらわしたものとされてきた。しかし山東・江蘇地域は、特に前漢時代の後半期においては辺境警備兵の供給地であったことが近年の研究で明らかにされており、その意味では当該地域の人々が、えびすを打ち破り兵役から解放される願望を、他の地域に抜きん出て強く持っていたことが推測される。このように図像主題の分布状況に対する分析から、漢代における地域的な固有の事情と、図像主題の発生・流行という現象との因果関係が明らかとなる。これは申請者の提示した、画像石の図像を死者のためのもの=死生観の表象として捉えるのみならず、生者が生者の思惑、つまり造形の主体者自身の事情や願望を投影してあらわしたものと見倣し、そこに図像主題の地理的分布状況を勘案することにより、画像石の図像を地域史研究のための資料として活用する方法論を構築するという研究目的とも合致する成果である。以上の研究成果に伴い、今年度のフィールドワークは対象地域を漢代における北方辺境地域へと変更して実施し、甘粛省敦煌市近辺における漢代の辺境警備施設遺址の視察や、図像的に山東・江蘇地域との関連を見出せる陝西省綏徳県等における画像石の調査を行った。平成21年度に実施した研究の成果物としては、『美術史研究』第47冊(早稲田大学美術史学会、2009年12月)に投稿、査読の上採択された論文「江蘇省徐州市銅山県苗山漢墓墓門画像石再考」がある。これは、徐州地域の漢代画像石の代表作例である銅山県苗山漢墓墓門画像石を取り上げ、その全面的な図像解釈を通して、漢代の行政区画で言う「徐州」地域における、獣頭の天候神像という地域的な特殊な図像表現と、その来源として想定される、徐州羽山における熊身の神・鯀に対する独自の信仰について論じたものである。そもそも本研究は、漢代画像石にあらわされる図像の中で、特定の地域にのみ集中して分布する図像には、地域的な特殊な社会的状況、もしくは信仰の形態が反映されていたことを実証し、画像石を地域史研究の資料として活用することを主眼としていたわけであるが、これまでの研究が主に図像主題そのものに焦点を当てたものであったのに対し、上掲論文で行った論究は、そのような地域社会における特殊な状況が、図像表現のレベルにまで影響を及ぼしていた可能性を指摘するものである。その意味で上掲論文は、所期の研究目的を、一層深いレベルで達成し得たものと考える。地域的特殊性を考える上では、同一地域内の状況を詳細に観察することと同じく、他地域との比較の視点が絶対不可欠である。そのため今年度は、主要な画像石の出土地である河南省鄭州市・南陽市、四川省成都市・都江堰市に足を運び、フィールドワークを行った。現地では、本研究内の一つのテーマとして新たに取り上げることとした風伯・雨師図像をあらわす作例について調査を行い、詳細な観察の結果、新たに論文の主題となし得る着想を得た。
KAKENHI-PROJECT-08J06101
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J06101
病原菌の感染した植物における二次代謝産物の行方-細胞壁の関与を中心に-
イネ科植物のエンバクとモデル植物のシロイヌナズナで二次代謝産物の代謝的運命を調べた.エンバクでは,ファイトアレキシンであるアベナンスラミド類が細胞壁画分に取り込まれていることが判明していたが,その過程を詳細に知るため,アベナンスラミド類に由来する代謝物の構造解析を行った.その結果,ペルオキシダーゼの作用によって生じるデヒドロダイマーが複数存在することがわかった.構造を解析したところ,いずれもこれまでに見いだされたことがない新たな炭素骨格をもった化合物であった.これらの化合物がアベナンスラミド類が細胞壁に取り込まれるユニットになっているものと想定された.一方,シロイヌナズナでは,アブラナ科黒すす病菌Alternaria brassicicolaが感染すると細胞壁に結合型のインドール-3-カルボン酸(ICA)が増加ことを見いだした.さらに,その生合成経路について検討を加えた.まず,A.brassicicolaの接種と同時に重水素で標識したトリプトファンを投与し,ICAへの取り込みを調べた.標識は効率よく取り込まれたことから,ICAはトリプトファンからde novo合成されていることがわかった.次に,シロイヌナズナにおいてトリプトファン代謝に変異を持つ系統にA.brassicicolaを接種してICAの蓄積量を調べた.トリプトファンから合成されるシロイヌナズナのファイトアレキシンを欠損するpad3ではICAが多量に蓄積していることが判明した.この結果は,ICAはカマレキシンを経て生合成されるのではないことを証明すると同時に,おそらくICAの生合成経路がカマレキシン合成経路の上流で分岐していることを強く示唆するものであった.イネ科植物のエンバクとモデル植物のシロイヌナズナで二次代謝産物の代謝的運命を調べた.エンバクでは,ファイトアレキシンであるアベナンスラミド類が細胞壁画分に取り込まれていることが判明していたが,その過程を詳細に知るため,アベナンスラミド類に由来する代謝物の構造解析を行った.その結果,ペルオキシダーゼの作用によって生じるデヒドロダイマーが複数存在することがわかった.構造を解析したところ,いずれもこれまでに見いだされたことがない新たな炭素骨格をもった化合物であった.これらの化合物がアベナンスラミド類が細胞壁に取り込まれるユニットになっているものと想定された.一方,シロイヌナズナでは,アブラナ科黒すす病菌Alternaria brassicicolaが感染すると細胞壁に結合型のインドール-3-カルボン酸(ICA)が増加ことを見いだした.さらに,その生合成経路について検討を加えた.まず,A.brassicicolaの接種と同時に重水素で標識したトリプトファンを投与し,ICAへの取り込みを調べた.標識は効率よく取り込まれたことから,ICAはトリプトファンからde novo合成されていることがわかった.次に,シロイヌナズナにおいてトリプトファン代謝に変異を持つ系統にA.brassicicolaを接種してICAの蓄積量を調べた.トリプトファンから合成されるシロイヌナズナのファイトアレキシンを欠損するpad3ではICAが多量に蓄積していることが判明した.この結果は,ICAはカマレキシンを経て生合成されるのではないことを証明すると同時に,おそらくICAの生合成経路がカマレキシン合成経路の上流で分岐していることを強く示唆するものであった.植物は病原菌の感染を受けると様々な防御応答を発現する.特にファイトアレキシンなど抗菌性化合物の生産や蓄積に関わる二次代謝は大きく変動する.植物はあらかじめ様々な二次代謝産物を蓄積しているが,あるものは病原菌の感染をうけると増大し,あるものは減少する.病原菌の感染時に減少する化合物の中には細胞壁に取り込まれて,その強化に関わっているものもある.このような二次代謝産物を同定するために,モデル植物であるシロイヌナズナの二次代謝産物の分析を行い.その構造を解析した.シロイヌナズナの種子を無菌的にMS培地上に播種し,2週間後の植物体を地上部と地下部に分けて,メタノールで抽出した.得られた抽出物を逆相系のカラムクロマトグラフィーによって分画した.得られた画分から分取HPLCによって主要なピークを精製した.さらに精製したピークをLC/MSおよびNMRスペクトルによって分析し,その化学構造を決定した.地上部からは,3種のインドールグルコシノレート,2種のフェニルプロパノイド,3種のフラボノイド配糖体を得た.一方,地下部からは地上部において同定した化合物に加え,2種のフェニルプロパノイドと1種のフラボノイドを同定した.これらの化合物を標品としてのHPLCでの分析定量方法を確立した.この方法を用いて,病原菌が感染したシロイヌナズナにおける化合物の蓄積量の変動を調べた.これらの化合物のほとんどが感染を受けた葉で減少する傾向を示した.これは,これらの化合物が細胞壁に取り込まれている可能性を示唆する.また,シロイヌナズナのファイトアレキシンであるカマレキシンを化学合成によって調製し,これを標品として分析を行った.カマレキシンは接種後顕著に誘導された.今後,これらの化合物の細胞壁への取り込みを明らかにするため,細胞壁画分の抽出法の検討と分析を行う.昨年度に行った可溶性画分の分析に加え,今年度は細胞壁画分の分析を行った.病原菌として,アブラナ科植物すす病菌をもちいた.PSA培地に植菌し,2週間培養を行い、胞子を形成させた.胞子の懸濁液を播種後4週間のロゼット葉に接種し2496時間培養した.
KAKENHI-PROJECT-17580095
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17580095
病原菌の感染した植物における二次代謝産物の行方-細胞壁の関与を中心に-
これをメタノールで抽出し,可溶性画分を得た.抽出残査をさらにアセトンと水で連続的に抽出を繰り返し,得られた残査を細胞壁画分とした.これを最終的に3N水酸化カリウムで抽出し,細胞壁に結合したフェノール性物質を含む画分を得た.この画分を1N塩酸で酸性にしたあと,酢酸エチルで抽出し,ODSカラムを用いた逆相HPLCで分析した.その結果,病原菌を接種した葉から得られた細胞壁にのみ特異的に蓄積する化合物を見いだした.この化合物を分取HPLCで精製し,1H NMRやMS, UVスペクトルを測定した.その結果,この化合物はインドール-3-カルボン酸と同定することができた.さらに,HPLC上でインドール-3-カルボン酸を同じ保持時間に溶出した.この化合物は病原菌の接種後速やかに蓄積し,接種後72時間で蓄積量が最大となった.また,細胞壁画分からは検出できなかった.このように病原菌の感染時に特異的に細胞壁に蓄積する化合物はこれまでにあまり知られていない.昨年までの分析から可溶性画分に存在するインドール化合物がさらに代謝されている可能性が示唆されていたが,インドール-3-カルボン酸の蓄積はこれを裏付けるものであった.今後,インドール化合物の合成に関連した突然変異体を利用して,その生合成経路の解明を行う.モデル植物のシロイヌナズナとイネ科植物のエンバクにおいて二次代謝産物の代謝的運命を調べた.昨年度の研究で,シロイヌナズナではアブラナ科黒すす病菌(Alternaria brassicicola)が感染すると,細胞壁に結合したインドール-3-カルボン酸が増加ことを見いだしていた.そこで,その生合成経路を明らかにする実験を行った.まず,A. brassicicolaの接種と同時に安定同位元素で標識したトリプトファン(Trp)を投与し、インドール3-カルボン酸(ICA)への取り込みを調べた.標識は効率よく取り込まれたことから,ICAはTrpからde novo合成されていることがわかった.次に,Trp代謝に変異を持つ系統にA. brassicicolaを接種してICAの蓄積量を調べた.Trpから合成されるファイトアレキシン,カマレキシンを欠損するpad3では,野生型と比較してICAを多量に蓄積した.この結果は,ICAはカマレキシンを経て生合成されるのではないことを証明すると同時に,おそらくICAの生合成経路がカマレキシン合成経路の上流で分岐していることを強く示唆するものであった.一方,イネ科植物のエンバクでは,ファイトアレキシンであるアベナンスラミド類が細胞壁画分に取り込まれていることが判明していたが,その過程を詳しく解析するため,アベナンスラミドに由来する代謝物の構造解析を行った.その結果、アベナンスラミドBのデヒドロダイマーが複数存在することがわかった.その構造を解析したところ,いずれもこれまでに見いだされたことがない炭素骨格をもったリグナナミドであった.これらの化合物は,アベナンスラミド類が細胞壁に取り込まれる際のユニットになっているものと想定された.
KAKENHI-PROJECT-17580095
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17580095
全地球史解読PartII
本研究を要約すると以下のようになる。(1)一連の記載研究と精密分析(論文数;丸山32、磯崎9、中嶋8、圦本8)。(3)P/T境界の精密解析(磯崎:掘削試料;6)と化石(太古代1、原生代末1、古生代末5)の記載。(4)35.6億年前(世界最古生命化石)のSIMSスポット分析(δ^<13>C)と化石の認定基準(圦本、発表準備中)。(5)化石認定の新しい指標の開発と応用(中嶋;1、実験結果と認定の新基準(古細菌か真性細菌か)の提案図については投稿準備中)。以上の成果は、これまでの地球史標準モデルを更に精密化し、誕生後徐々に冷却してきた地球システムが起こす物理的必燃として説明しうるが、新たな原因として、銀河内部で起きた3回のスターバーストとの緊密な関係が浮かび上がってきた。これらは日本のみならず世界最前線の研究を更にリードするものである。これらは、地球惑星科学の中の諸分野へ大きな影響を与えるが、地球惑星科学以外の分野である天文学、ゲノム生物学、分子生物学、生命進化学、更に気象学にも大きな影響を与えるだろう。本研究を要約すると以下のようになる。(1)一連の記載研究と精密分析(論文数;丸山32、磯崎9、中嶋8、圦本8)。(3)P/T境界の精密解析(磯崎:掘削試料;6)と化石(太古代1、原生代末1、古生代末5)の記載。(4)35.6億年前(世界最古生命化石)のSIMSスポット分析(δ^<13>C)と化石の認定基準(圦本、発表準備中)。(5)化石認定の新しい指標の開発と応用(中嶋;1、実験結果と認定の新基準(古細菌か真性細菌か)の提案図については投稿準備中)。以上の成果は、これまでの地球史標準モデルを更に精密化し、誕生後徐々に冷却してきた地球システムが起こす物理的必燃として説明しうるが、新たな原因として、銀河内部で起きた3回のスターバーストとの緊密な関係が浮かび上がってきた。これらは日本のみならず世界最前線の研究を更にリードするものである。これらは、地球惑星科学の中の諸分野へ大きな影響を与えるが、地球惑星科学以外の分野である天文学、ゲノム生物学、分子生物学、生命進化学、更に気象学にも大きな影響を与えるだろう。本年度は年次計画に沿って、西オーストラリア地域の3530億年前と27億年前の微化石含有試料の精密サンプリング及びその棲息環境解析の為の地質調査と試料の収集を行った。一方で、既に収集済みの試料から、新たな微化石を発見・記載した。微化石の年代は世界最古の36億年を示した。SIMSによるスポット炭素同位体の分析から、微化石の棲息環境が有光層(水深100m以浅)にもかかわらず、酸素発生型光合成特有の酵素を利用しない、別のタイプであることが判明した。太古代の大気の酸素環境を反映する指標になる可能性が指摘され、注目を浴びつつあるパイライトの硫黄同位体比の非質量依存性の研究を推進する為に、研究協力者が米国カーネギー研究所に出張して、測定を行った。太古代海洋地殻の海洋底変成作用の解析から、当時の大気・海洋組成の定量分析を進めてきたが、本年度は炭酸塩岩化した海洋地殻の沈み込みによってマントルへ固定された炭素の量の計算を行った。その結果、冥王代には膨大な量の炭素が原始大気に存在した為に、地球史初期の6億年は地球に海洋が存在しなかった可能性が浮上した。地球誕生後6億年の間、大気から炭素が選択的にマントルに除去され、40億年前に海洋が誕生し、プレート運動が始まった。一方、最近6億年は逆に、水がマントルへと逆流しているという、地球史を通じて炭素と水の逆の挙動が明らかになってきた。ロシア・アルタイ地域の試料の室内分析から、全球凍結直後、約6億年前の巨大海洋内部に発達した海山頂部の礁性石灰岩から当時の表層・生命環境が明らかになってきた。当時の温暖な古環境、リン酸塩殻をもった化石の存在を確認した。Sr同位体年代は6.01億年であった。世界の巨大河川の川砂ジルコンの年代頻度分布曲線の徹底的解析は順調に進行中である。既に5000個程度の分析が終了し、原生代の中・後期に約80%の大陸が成長するという新しい考えを支持するパターンを示している。研究実施計画に従って研究を進め、以下の成果を得た。(1)英国と南中国の地質調査と資料収集を行った。収集した試料数は約1200で、それらは全て既に薄片化され、顕鏡し、鉱物組み合わせの同定作業が終わり、変成鉱物の化学分析を始めた。野外調査の結果、世界の標準とされてきた、英国のダルラデイアン変成帯は厚さ2km程度の薄い板状体で、上位と下位をそれぞれ正断層、逆断層で区切られ、構造的中位に最高変成度を持つ地質体であることが判明した。上位と下位の地質体はほぼ非変成であるが下位の地質体に低圧型接触変成作用を与えている。アングルシー島他の調査から、英国は衝突型造山帯の他に、付加体を特徴とする太平洋型造山帯が2個存在することを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-15104008
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15104008
全地球史解読PartII
英国の主体は原生代最末期から古生代前期にかけて、2回の太平洋型造山運動と1回の衝突型造山運動でできたことが判明した。これらの成果は2005年度の合同学会を皮切りに継続的に発表、論文化を進める予定である。(2)28-27億年前の西オーストラリアの洪水玄武岩の岩石学的記載が終わり、REEの分析を進めている。同時に文献学から、この時期の洪水玄武岩が世界の30個の太古代の地塊の90%に噴出していることを突き止めた。つまり全球的な洪水玄武岩の噴出を示唆している。8-5億年前の沈み込み帯深部の温度構造を広域変成岩の温度・圧力・年代のコンパイルから再検討し、成果を論文化した(丸山ほか)。(3)地球史を通した表層環境変化を微量元素の分析を通じて進めてきたが、本年度の成果として、中国のP/T境界掘削および原生代末の全球凍結直後の礁性石灰岩(ロシア)の記録を磯崎が論文化した。(4)生命化石は、31億年前(西オーストラリア)の保存良好な微化石の記載(上野ほか)、その微化石の二次元組成図(伊規須ほか)、36.7億年前の世界最古の浅海光合成化石(?)の記載と炭素同位体分析(圦本ほか)を行い、一部は論文化され、一部は準備中である。1992年以来、継続的に進めてきた、全地球史解読試料に基づいて、(1)横軸46年史研究、(2)地球史上の最重要特異点の精密研究、の2点を報告する。(1)世界の主要河川32の川砂ジルコンのU-Pb年代頻度分布研究は北米と南米を終え、本年度は北米のジルコンのεHfからリサイクル率を見積もり、論文化した。現在、南アジアとアフリカの主要河川のU-Pb年代測定がほぼ収束し、論文化を進めている。深海と浅海の炭酸塩岩試料から当時の酸素濃度を定量的に復元する溶液熱力学モデルを開発し、表層環境酸素濃度変遷モデルを作った(投稿中)。また、35億年前の中央海嶺でのメタン菌によるメタン生成機構を明らかにした。現在、次の要素、海水の化学組成各要素(例えば、塩分濃度やリンなど)の定量解析へと発展中である。(2)地球史を大きく変えた時代、27-28億年前、7-6億年前、2.5億年前の研究状況は次の通り。28-27億年前の表層環境解析は、永年継続して進めて来た西オーストラリア地域の古環境復元論文が印刷された。この時期に噴出した洪水玄武岩の地質と岩石学に基づき、同時に文献学から、28-27億年前にほぼ全球を約2000m覆った洪水玄武岩の活動を推定した。7-6億年前の全球凍結問題については以下の通り。プレート収束地域の温度推定に基づいて、全球凍結を引き起こした原因と解凍機構のシナリオの論文を発表した。更に中国の掘削試料を使って、全球凍結直後の表層環境を定量的に解読する為に、δ13C炭酸塩岩、δ13C黒色頁岩、δ88Sr炭酸塩:岩、δ180炭酸塩岩、の同位体柱状図計画を進め、既に60余のデータがでている。同様の分析をP/T境界で磯崎が推進し、一部を論文化した。初期生命の同定や代謝反応に関して、中嶋と圦本の指導の下に院生が研究を推進し、論文投稿中である。地質調査と掘削:南中国地域の750-500Maの時代の地質学的記録は地球生命史の中の重要な事変の記録を残している。生物が大型多細胞化し、カンブリア紀の爆発的な生命進化を導いた表層環境と生物の記録が非変成・非変形の大陸棚堆積物に残されている。昨年度(南中国山峡地域)に引き続き、新たに2箇所の掘削を進め、約500mの連続試料を回収した。表層環境:昨年度行われた南中国長江中流三峡地区の掘削試料750mの炭酸塩岩について、δ^<13>C、δ^<18>O、Sr^<87>/Sr^<86>及びSr^<88>同位体を系統的に測定した。
KAKENHI-PROJECT-15104008
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15104008
擬微分作用素とシュレディンガ-方程式
本研究は、フーリエ解析の基本的な研究課題の一つである擬微分作用素論を数理物理学の基本的な問題であるシュレディンガー方程式の研究に応用しようというものである。擬微分作用素論は偏微分方程式の研究の基本的な手段であり、この理論を用いた多くの偏微分方程式関連の研究がある。本研究は擬微分作用素論を用いて、シュレディンガー作用素のスペクトル理論の研究を行うことさらに初期値問題としての基本解の表示法などの研究に応用することを目指している。擬微分作用素理論においては、L^2空間やL^p空間での作用素として、擬微分作用素をコンパクトな作用素に分解しコンパクト性を利用して擬微分作用素な様々な性質を示す方法が近年盛んに研究されているが、本研究においてもそのような手法を用いて擬微分作用素論を研究しシュレディンガー作用素のスペクトル理論に応用することを試みている。本研究は、多くの研究分担者を有する大きなプロジェクトであり、話題として扱う範囲も非常に広いものである。分担者がそれぞれに多くの研究集会に参加しまた研究発表を行った。また、昨年度に続いてドイツ・ポツダム大学のシュローエ教授やイエナ大学のトリーベル教授を招待しレビューを受け、あるいは研究課題に関連した研究について講演会を持つなど、幅広い研究交流を行った。さらにはアメリカのジョージア工科大学のハイル助教授を大阪大学に招待しレビューを受けたが、同助教授は擬微分作用素をWigner Distributionを用いて表現しmodulation space上での作用について研究しているもので、この研究は本研究の遂行に大きな役割を果たした。また、シュローエ教授の研究の中で、よく知られた擬微分作用素のクラスについてそのスペクトルのL^Pでの不変性について述べたものは、我々の目指すクラス(磁場を持った量子化ハミルトニアン)のスペクトルの研究には有効なものであり、この関連の成果を得ている(発表準備中)。本研究は、フーリエ解析の基本的な研究課題の一つである擬微分作用素論を数理物理学の基本的な問題であるシュレディンガー方程式の研究に応用しようというものである。擬微分作用素論は偏微分方程式の研究の基本的な手段であり、この理論を用いた多くの偏微分方程式関連の研究がある。本研究は擬微分作用素論を用いて、シュレディンガー作用素のスペクトル理論の研究を行うことさらに初期値問題としての基本解の表示法などの研究に応用することを目指している。擬微分作用素理論においては、L^2空間やL^p空間での作用素として、擬微分作用素をコンパクトな作用素に分解しコンパクト性を利用して擬微分作用素な様々な性質を示す方法が近年盛んに研究されているが、本研究においてもそのような手法を用いて擬微分作用素論を研究しシュレディンガー作用素のスペクトル理論に応用することを試みている。本研究は、多くの研究分担者を有する大きなプロジェクトであり、話題として扱う範囲も非常に広いものである。分担者がそれぞれに多くの研究集会に参加しまた研究発表を行った。また、昨年度に続いてドイツ・ポツダム大学のシュローエ教授やイエナ大学のトリーベル教授を招待しレビューを受け、あるいは研究課題に関連した研究について講演会を持つなど、幅広い研究交流を行った。さらにはアメリカのジョージア工科大学のハイル助教授を大阪大学に招待しレビューを受けたが、同助教授は擬微分作用素をWigner Distributionを用いて表現しmodulation space上での作用について研究しているもので、この研究は本研究の遂行に大きな役割を果たした。また、シュローエ教授の研究の中で、よく知られた擬微分作用素のクラスについてそのスペクトルのL^Pでの不変性について述べたものは、我々の目指すクラス(磁場を持った量子化ハミルトニアン)のスペクトルの研究には有効なものであり、この関連の成果を得ている(発表準備中)。本研究は、フーリエ解析の基本的な話題の一つである擬微分作用素論を数理物理学の最も基本的な問題でもあるシュレディンガー方程式の様々な研究に応用しようというものである。擬微分作用素論は偏微分方程式の研究にはもはや欠かせないものであり、この理論を用いた多くの偏微分方程式関連の研究がある。本研究においては、とくにシュレディンガー作用素のスペクトル理論や初期値問題としての基本解の表示法などに応用することを目指している。擬微分作用素理論においては,L^2空間やL^p空間での作用素として、擬微分作用素をコンパクトな作用素に分解しコンパクト性を利用して擬微分作用素な様々な性質を示す方法が近年盛んに研究されているが、本研究においてもそのような手法を用いて擬微分作用素論を研究しそれをシュレディンガー作用素のスペクトル理論に応用することを試みている。本研究は、多くの研究分担者を有する大きなプロジェクトであり、話題として扱う範囲も非常に広いものである。このことを考慮し、ドイツ・ポツダム大学のシュルツェ教授を大阪大学に招待して研究プロジェクトに関連したワークショップを開催し数多くの研究発表を行うことでレビューを受け、あるいは同氏の研究課題であるsingularityを持つ多様体上での擬微分作用素の代数に関連した研究について講演会を持つなど、幅広い研究交流を行った。また、これに先立って擬微分作用素論の権威の一人であるカナダ・オタワ大学のヴァイアンク-ル教授を大阪大学に招待し擬微分作用素に関するレビューを受けた。同教授の日本における講演は、擬微分作用素のコンパクト作用素への分解に関するものであり、この話題が本研究課題のシュレディンガー作用素の研究に直接に有効である事を期待している。本研究は、フーリエ解析の基本的な研究課題の一つである擬微分作用素論を数理物理学の基本的な問題であるシュレディンガー方程式の研究に応用しようというものである。擬微分作用素論は偏微分方程式の研究の基本的な手段であり、この理論を用いた多くの偏微分方程式関連の研究がある。
KAKENHI-PROJECT-09440060
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09440060
擬微分作用素とシュレディンガ-方程式
本研究は擬微分作用素論を用いて、シュレディンガー作用素のスペクトル理論の研究を行うことさらに初期値問題としての基本解の表示法などの研究に応用することを目指している。擬微分作用素理論においては、L^2空間やL_p空間での作用素として、擬微分作用素をコンパクトな作用素に分解しコンパクト性を利用して擬微分作用素な様々な性質を示す方法が近年盛んに研究されているが、本研究においてもそのような手法を用いて擬微分作用素論を研究しシュレディンガー作用素のスペクトル理論に応用することを試みている。本研究は、多くの研究分担者を有する大きなプロジェクトであり、話題として扱う範囲も非常に広いものである。分担者がそれぞれに多くの研究集会に参加しまた研究発表を行った。また、昨年度に続いてドイツ・ポツダム大学のシュローエ教授やイエナ大学のトリーベル教授を招待しレビューを受け、あるいは研究課題に関連した研究について講演会を持つなど、幅広い研究交流を行った。さらにはアメリカのジョージア工科大学のハイル助教授を大阪大学に招待しレビューを受けたが、同助教授は擬微分作用素をWigner Distributionを用いて表現しmodulationspace上での作用について研究しているもので、この研究は本研究の遂行に大きな役割を果たした。また、シュローエ教授の研究の中で、よく知られた擬微分作用素のクラスについてそのスペクトルのL_pでの不変性について述べたものは、我々の目指すクラス(磁場を持った量子化ハミルトニアン)のスペクトルの研究には有効なものであり、この関連の成果を得ている(発表準備中)。
KAKENHI-PROJECT-09440060
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09440060
骨髄細胞コレステロール代謝調節によるインスリン抵抗性・脂肪肝制御機構の解明
単球・マクロファージ等の免疫細胞は2型糖尿病や脂肪肝/NASHの病態形成に密接に関連する。骨髄細胞(単球・マクロファージと好中球)特異的にHMG-CoA還元酵素(HMGCR)を除去したマウス(LysM-Hmgcr)では、動脈硬化、インスリン抵抗性および脂肪肝の改善が確認された。マクロファージ機能の変化、インスリン抵抗性と脂肪肝の改善をもたらす機序の解明を目指す。単球・マクロファージのコレステロール代謝とインスリン抵抗性・脂肪肝との関係が明らかになれば、ここを標的にした新しい治療法の開発につながる可能性がある。単球・マクロファージ等の免疫細胞は2型糖尿病や脂肪肝/NASHの病態形成に密接に関連する。骨髄細胞(単球・マクロファージと好中球)特異的にHMG-CoA還元酵素(HMGCR)を除去したマウス(LysM-Hmgcr)では、動脈硬化、インスリン抵抗性および脂肪肝の改善が確認された。マクロファージ機能の変化、インスリン抵抗性と脂肪肝の改善をもたらす機序の解明を目指す。単球・マクロファージのコレステロール代謝とインスリン抵抗性・脂肪肝との関係が明らかになれば、ここを標的にした新しい治療法の開発につながる可能性がある。
KAKENHI-PROJECT-19H03712
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H03712
破骨細胞由来新規骨髄腫増殖促進因子の同定と同因子を標的とした治療法の開発
多発性骨髄腫は進行性の広範な骨破壊をきたし、骨折や高カルシウム血症を併発する予後不良の疾患である。本症における骨破壊は、骨髄腫細胞により破骨細胞の形成・機能が促進しもたらされるが、この様にして形成・活性化された破骨細胞が骨髄腫細胞との接触を介し破骨細胞からのIL-6産生を亢進すると共に骨髄腫細胞の増殖を促進することが明らかになった。この骨髄腫細胞の増殖促進はIL-6の作用を阻害しても部分的にしか抑制されなかったことよりIL-6以外の増殖促進因子の存在が示唆された。その因子の候補の一つとして破骨細胞から多量に分泌される細胞外マトリックス蛋白であるオステオポンチン(OPN)が考えられた。強力な骨吸収抑制薬であるビスフォスフォネートは、直接的なアポトーシスの誘導による抗腫瘍効果を示さない治療投与時の低い血中濃度レベルにおいて骨片上の破骨細胞の形成・機能を著明に抑制し、さらに骨片上の破骨細胞による骨髄腫細胞の増殖促進を完全に抑制した。従って、骨吸収の抑制は単に骨病変の進行防止のみならず、破骨細胞の障害を介して骨髄腫細胞自体の増殖を抑制しうる可能性が示唆された。さらに、OPNは血管新生促進作用も有しており、破骨細胞はOPNを介し血管新生を促進することも示された。興味深いことに破骨細胞由来のOPNは骨髄腫細胞由来VEGFと協調的に作用し血管新生を促進した。従って、骨髄腫細胞により誘導される破骨細胞は、骨破壊を来すのみならず、直接あるいは血管新生の促進を介し骨髄腫の進展も促進する可能性が示唆された。以上の結果より、骨髄腫細胞と破骨細胞は、骨髄内で相互に増殖、活性化を促進することにより、骨破壊性病変を進行させつつ腫瘍増殖を促進するという悪循環を形成していると考えられる。多発性骨髄腫は進行性の広範な骨破壊をきたし、骨折や高カルシウム血症を併発する予後不良の疾患である。本症における骨破壊は、骨髄腫細胞により破骨細胞の形成・機能が促進しもたらされるが、この様にして形成・活性化された破骨細胞が骨髄腫細胞との接触を介し破骨細胞からのIL-6産生を亢進すると共に骨髄腫細胞の増殖を促進することが明らかになった。この骨髄腫細胞の増殖促進はIL-6の作用を阻害しても部分的にしか抑制されなかったことよりIL-6以外の増殖促進因子の存在が示唆された。その因子の候補の一つとして破骨細胞から多量に分泌される細胞外マトリックス蛋白であるオステオポンチン(OPN)が考えられた。強力な骨吸収抑制薬であるビスフォスフォネートは、直接的なアポトーシスの誘導による抗腫瘍効果を示さない治療投与時の低い血中濃度レベルにおいて骨片上の破骨細胞の形成・機能を著明に抑制し、さらに骨片上の破骨細胞による骨髄腫細胞の増殖促進を完全に抑制した。従って、骨吸収の抑制は単に骨病変の進行防止のみならず、破骨細胞の障害を介して骨髄腫細胞自体の増殖を抑制しうる可能性が示唆された。さらに、OPNは血管新生促進作用も有しており、破骨細胞はOPNを介し血管新生を促進することも示された。興味深いことに破骨細胞由来のOPNは骨髄腫細胞由来VEGFと協調的に作用し血管新生を促進した。従って、骨髄腫細胞により誘導される破骨細胞は、骨破壊を来すのみならず、直接あるいは血管新生の促進を介し骨髄腫の進展も促進する可能性が示唆された。以上の結果より、骨髄腫細胞と破骨細胞は、骨髄内で相互に増殖、活性化を促進することにより、骨破壊性病変を進行させつつ腫瘍増殖を促進するという悪循環を形成していると考えられる。【結果】1.末梢血単核細胞にM-CSF、sRANKLを添加し破骨細胞(OC)を形成した。骨髄腫(MM)細胞株OPC、U266、RPMI8226の増殖はOCの共存により骨髄間質細胞の共存に比べより著明に促進された。マウス前破骨細胞株C7も同様の促進活性を示した。2.OCによるMM細胞の増殖促進は抗IL-6抗体、抗αvβ3 integrin抗体で部分的に、また両者の接触の阻害によりほぼ完全に抑制された。3.OCは極めて多量にosteopontin(OPN)を産生し(6880+/-250ng/10^5 cells for 3 days)、また全てのMM細胞株はVEGFを構成的に産生していた。血管形成は、OPN、VEGFの添加でそれぞれ1.3、1.5倍に、両者の同時添加で2.0倍に促進した。また、OC培養上清(CM)はMM細胞株CMと同程度(1.5倍)に、両者の共培養のCMは2-2.5倍に血管形成を促進した。共培養のCMによる血管形成促進活性は抗αVβ3integrin抗体、抗VEGF抗体の同時添加で消失した。【考察】OCは骨髄間質細胞に比べ効率よくMM細胞の生存、増殖を促進する。この促進活性はマウスOCによってももたらされ、マウスIL-6はヒト細胞には作用し得ないことより、IL-6以外のMM細胞の接触により産生が亢進するOC由来のMM増殖因子の存在が示唆された。また、MM細胞のみならずOCも血管新生を促進する。さらに、OC由来OPN-とMM細胞由来VEGFが協調的に血管新生を促進することが示された。
KAKENHI-PROJECT-15591010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15591010
破骨細胞由来新規骨髄腫増殖促進因子の同定と同因子を標的とした治療法の開発
従って、MM細胞により誘導されるOCは、骨破壊を来すのみならず、直接あるいは血管新生の促進を介し間接的にMMの進展を促進する可能性が示唆された。骨破壊性病変の近傍では骨髄腫細胞の増殖は活発であることから、骨髄腫細胞により誘導された破骨細胞が骨髄腫骨髄微小環境の主要な構成要素として骨髄腫細胞の生存、増殖に好適な環境を提供している可能性が考えられる。ヒト末梢血単核細胞から形成した破骨細胞は、間質細胞に比べ遙かに効率よく骨髄腫細胞の生存、増殖を支持でき、doxorubicinによる骨髄腫細胞の細胞死を抑制した。破骨細胞と骨髄腫細胞の共培養により破骨細胞からのIL-6およびオステオポンチン産生ははともに増加した。しかし、両細胞間の接触を阻害するとIL-6およびオステオポンチン濃度は破骨細胞単独培養のレベルにまで低下するとともに骨髄腫細胞の増殖促進も消失した。骨髄腫細胞はオステオポンチンの受容体であるαVβ3 integrin、CD44およびVLA-4を発現しており、αVβ3 integrinおよびVLA-4に対する阻害抗体の添加は破骨細胞による骨髄腫細胞の増殖の促進を抑制した。また、ビスフォスフォネートは骨髄腫細胞の増殖抑制をきたさない濃度で骨片上の破骨細胞の形成・機能を著明に抑制すると同時に骨片上の破骨細胞による骨髄腫細胞の増殖促進を完全に抑制した。さらに、破骨細胞由来のオステオポンチンは骨髄腫細胞由来VEGFと協調的に作用し血管新生を促進するとともに、血管内皮のアポトーシスを抑制した。以上の結果より、骨髄腫細胞、破骨細胞と血管内皮は、骨髄内で相互に増殖、活性化を促進することにより、骨破壊性病変を進行させつつ腫瘍増殖を促進するという悪循環を形成していると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-15591010
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シュート重力屈性反応における刺激伝達の分子機構 オミクス研究からの展開
本研究は、これまでに得た様々な変異体をツールとして、オミクス的アプローチを用いるとともに、我々が構築した重力感受細胞の生細胞イメージング系を駆使し、重力感受とそれに引き続いて起こるシグナル変換・細胞間シグナル伝達の分子機構の解明を目的とした.DNAオリゴマイクロアレイを用いて,重力刺激前後で発現変化を示す遺伝子を見いだし、重力屈性反応との関連を探るとともに分子マーカーとしての利用を試みた.また、同様にアレイを用いて変異体感での発現遺伝子の比較を行った.その結果,重力屈性に関与する新奇遺伝子の単離に成功した.加えて、変異体の表現型からシグナリングに関与することが予想された遺伝子の解析を行った.その結果,重力受容において予想以上に複雑な制御機構があることを見いだした.本研究は、これまでに得た様々な変異体をツールとして、オミクス的アプローチを用いるとともに、我々が構築した重力感受細胞の生細胞イメージング系を駆使し、重力感受とそれに引き続いて起こるシグナル変換・細胞間シグナル伝達の分子機構の解明を目的とした.DNAオリゴマイクロアレイを用いて,重力刺激前後で発現変化を示す遺伝子を見いだし、重力屈性反応との関連を探るとともに分子マーカーとしての利用を試みた.また、同様にアレイを用いて変異体感での発現遺伝子の比較を行った.その結果,重力屈性に関与する新奇遺伝子の単離に成功した.加えて、変異体の表現型からシグナリングに関与することが予想された遺伝子の解析を行った.その結果,重力受容において予想以上に複雑な制御機構があることを見いだした.本研究課題では、これまでに得た様々な変異体をツールとして、オミクス的アプローチ並びに我々が構築した重力感受細胞の生細胞イメージング系を駆使し、重力感受に引き続いて起こるシグナル変換・細胞間シグナル伝達の分子機構の解明を目的としている。今年度は次のような研究を行った。1)花茎重力屈性変異体sgr5は弱い重力屈性を示す。その原因遺伝子は、C2H2-type zincfinger proteinであること、また核局在することからおそらく転写因子であろうと考えられる。更に、SGR5は重力感受細胞である内皮細胞で機能すること、固定試料での観察から内皮細胞内のアミロプラストはほぼ重力方向に沈降していることを示した。以上の結果をまとめ、論文発表を行った。2)sgr9変異体もまた弱い重力屈性を示す変異体で、その原因遺伝子はRING fingerdomainを有するタンパク質であった。SGR9は主に重力感受組織(根冠および胚軸・花茎の内皮細胞)で発現すること、アミロプラストの周辺に局在することを示した。sgr9変異体とsgr5変異体の二重変異体は重力屈性能を完全に失うことが判った。それぞれの単独変異体の解析結果も合わせて、SGR5及びSGR9はおそらく遺伝学的には独立の経路で、アミロプラスト沈降及び動態に関与することを示した。3)重力刺激により転写が誘導される遺伝子の探索を、マイクロアレイにより行った。その結果、これまでに得られていたIAA5遺伝子に加え、少なくとも2遺伝子が確実に重力刺激後30分で発現上昇する遺伝子が得られた。また、重力刺激後5分という早期で発現上昇が見られる遺伝子も得られており、今後変異体での発現パターンと比較する予定である。本研究課題では、これまでに得た様々な変異体をツールとして、オミクス的アプローチ並びに我々が構築した重力感受細胞の生細胞イメージング系を駆使し、重力感受に引き続いて起こるシグナル変換・細胞間シグナル伝達の分子機構の解明を目的としている。今年度は次のような研究を行った。1)sgr9変異体は弱い重力屈性を示す変異体で、その原因遺伝子はRING finger domainを有するタンパク質である。SGR9蛋白質は相同性及び代謝回転の早さから、タンパク分解に関わるE3リガーゼである可能性が考えられた。保存されたアミノ酸に変異を入れたところ、SGR9蛋白質は検出可能となり、また変異蛋白質は重力屈性に関して優勢阻害効果を示すことが明らかになった。3)重力感受細胞(内皮細胞)が正常に形成出来ない3つの突然変異体を用い、マイクロアレイにて野生型植物よりも発現量の低下している遺伝子を探索した。3つの変異体に共通して発現量の低い遺伝子が約50個見つかり、SGR5がこの中に含まれていたことから、この探索方法で新奇の重力屈性関連遺伝子が抽出出来ている可能性が示唆された。これら候補遺伝子の一部についてT-DNA挿入変異体の表現型を確認したところ、少なくとも1系統について重力屈性異常を示した。この遺伝子は機能未知とアノテーションされていることから、新奇重力屈性関連遺伝子であると考えられる。本研究課題では、これまでに得た様々な変異体をツールとして、オミクス的アプローチ並びに我々が構築した重力感受細胞の生細胞イメージング系を駆使し、重力感受に引き続いて起こるシグナル変換・細胞間シグナル伝達の分子機構の解明を目的としている。今年度は次のような研究を行った。重力感受細胞(内皮細胞)が正常に形成出来ない3つの突然変異体に、共通して発現量が低下した遺伝子(Down-regulated Genes in Eall;DGE)約30個について、入手可能なT-DNA挿入変異体の表現型解析を行った。DGE1のT-DNA挿入変異体において、花茎重力屈性に弱いながら異常が認められた。DGE1は、イネにおいて地上部の重力屈性への関与が示唆されているLAZY1と低いながら相同性を示す。花茎における発現組織は内皮細胞を含んでいた。
KAKENHI-PROJECT-18370019
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18370019
シュート重力屈性反応における刺激伝達の分子機構 オミクス研究からの展開
従って,期待通り重力受容細胞内で発現し、重力屈性に関与する新奇遺伝子を単離できた。DGE遺伝子中で、最もeal1における発現量の減少率が大きかったDGE2/AtADF9は、actin depolymerization factor(ADF)/cofilinファミリーに属するタンパク質をコードする。これまでの研究からアミロプラスト動態制御にはアミロプラスト周辺のアクチンが関与することを見いだしており、DGE2/AtADF9の重力受容への関与が推察された。DGE/AtPRA1,F1のT-DNA挿入変異体は、単独では目立った表現型が認められなかった。しかし、sgr5との二重変異体の重力屈性能は5gr5単独変異体よりも明らかに弱いことが分かった。この事実は、DGE3/AtPRA1,F1も新奇重力屈性関連遺伝子である可能性を示唆している。
KAKENHI-PROJECT-18370019
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18370019
パノラマX線画像による口腔診断プロファイリング
パノラマX線画像には患者の歯、顎顔面、および全身の健康状態に関する多くの情報が内包されている。本研究の第一段階では、匿名化処理を施した多数症例のパノラマ画像を収集し、歯科医師が成長発育と加齢、解剖形態の特徴や大きさ、疾病の有無と程度、全身疾患に関連する画像所見などのカテゴリーごとにクラス分類し、症例(患者)の健康状態に関するプロファイルを取得する。続いて、プロファイル取得済みパノラマ画像のデータベースを教師とし、人工知能の画像認識によりパノラマ画像を自動的にプロファイリング(推理・分析)するシステムを確立する。さらにパノラマ画像による顎顔面の健康プロファイリングの臨床応用を検討する。パノラマX線画像には患者の歯、顎顔面、および全身の健康状態に関する多くの情報が内包されている。本研究の第一段階では、匿名化処理を施した多数症例のパノラマ画像を収集し、歯科医師が成長発育と加齢、解剖形態の特徴や大きさ、疾病の有無と程度、全身疾患に関連する画像所見などのカテゴリーごとにクラス分類し、症例(患者)の健康状態に関するプロファイルを取得する。続いて、プロファイル取得済みパノラマ画像のデータベースを教師とし、人工知能の画像認識によりパノラマ画像を自動的にプロファイリング(推理・分析)するシステムを確立する。さらにパノラマ画像による顎顔面の健康プロファイリングの臨床応用を検討する。
KAKENHI-PROJECT-19K10347
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K10347
ヒト腺癌のリスク評価に普遍的に関連するムチン抗原の特定
ヒトの様々な腫瘍におけるムチンの発現様式を検索し、生命予後を含む様々な臨床病理学的因子との関連性について検討することにより、MUC1(汎膜結合ムチン)は予後不良因子、MUC2(腸型分泌ムチン)は予後良好因子であり、さらに、MUC4(気道型膜結合ムチン)は膵胆管系癌や肺癌における普遍的な予後不良因子であることを俯瞰的に総括することができた。これらのムチン発現の分子機構については、予後良好因子であるMUC2の遺伝子発現機構を解明した昨年度につづき、今年度は、予後不良因子であるMUC1遺伝子が、MUC1プロモーター領域においてエピジェネティックに制御されていることを、ヒト癌細胞株を用いて明らかにした。もともとMUC1の発現が低い膵癌細胞のPANC1と乳癌細胞のMDA-MB-453における5-aza-2'-deoxycytidine(5-azadC)とtrichostatinA(TSA)の処理によるMUC1mRNAの発現の変化を検討したところ、主として5-azadC処理によりMUC1mRNAの発現がみられるようになった。さらに、膵臓癌・乳癌・大腸癌細胞株の中から、MUC1陽性4株・陰性4株を選出し、各々の細胞株に対するMUC1プロモーター領域のDNAメチル化状態を、DNAメチル化定量解析システムMassARRAY^(R)「EpiTYPER^TM」を用いて検討した結果、転写開始付近におけるCpGのメチル化状態がMUC1発現状態に相関していた。更に、クロマチン免疫沈降法を用いたMUC1プロモーターにおけるヒストンH3-K9修飾状態の検討においても、MUC1発現への関与が示唆された。これらの結果から、MUC1発現制御にはDNAメチル化とヒストンH3-K9修飾の双方が影響している可能性が明らかとなった。MUC4についても同様の検索を行ったところ、もともとMUC4の発現が低い膵癌細胞のPANC1と乳癌細胞のMDA-MB-453において、5-azadCとTSAの処理により、MUC4mRNAの発現がみられるようになり、MUC4の発現にもDNAメチル化やヒストン修飾が関連している可能性が示された。我々は、MUC4(気管支型膜結合ムチン)の発現が、膵胆管系の癌(浸潤性膵管癌、腫瘤形成型肝内胆管癌、肝外胆管癌)に共通した予後不良因子であることを明らかにしてきたが、肺腺癌においても予後不良因子となるか否かを検討した。3cm以下の小さな原発性肺腺癌185例の検討で、MUC4の発現は間質浸潤や血管浸潤に関連し、術後再発や生存率低下にも関わる予後不良因子であることが判明し、MUC4の発現は、臓器を越えた普遍的な予後不良因子である可能性が示された。一方、不良な予後と関連する病理組織所見とされているmicropapillary pattern(MPP)の癌に占める割合が高い肺腺癌患者においては、リンパ管侵襲やリンパ節転移の頻度が有意に高く、再発率が高く、生存率が低いことが判明した。そのMPP表面部分にはMUC1が強く発現しており、我々が、消化器癌において予後不良因子であることを確立してきたMUC1が、肺腺癌においてもMPPと関連した予後不良因子である可能性が示された。なお、MPPの割合が高い肺腺癌でもsurfactant apoproteinA(SP-A)がMUClよりも強く発現すると予後が良く、SP-Aが予後良好因子であることも示唆された。様々の癌で予後良好因子であるMUC2の遺伝子発現機構を解明するために、MUC2遺伝子プロモーター領域のDNAメチル化やピストン修飾状態を解析できるmethylation specificPCR(MSP)プライマーを作製した。膵胆管系腫瘍の組織標本からマイクロディセクション法により採取したMUC2の発現が陽性と陰性の細胞からDNAを抽出してMSPを行ったところ、実際のMUC2発現状況と一致する結果も得られ、ヒト腫瘍組織においても、MUC2の発現にDNAメチル化やピストン修飾状態が関与している可能性が示された。さらに、MUC2遺伝子に対する3種類のsiRNAを設計し、siRNA発現ベクターを構築後、ヒト膵癌細胞株BxPC-3(MUC2陽性)にリポフェクション法を用いて導入し、トランジェントにMUC2をノックダウンさせることに成功した。ヒトの様々な腫瘍におけるムチンの発現様式を検索し、生命予後を含む様々な臨床病理学的因子との関連性について検討することにより、MUC1(汎膜結合ムチン)は予後不良因子、MUC2(腸型分泌ムチン)は予後良好因子であり、さらに、MUC4(気道型膜結合ムチン)は膵胆管系癌や肺癌における普遍的な予後不良因子であることを俯瞰的に総括することができた。これらのムチン発現の分子機構については、予後良好因子であるMUC2の遺伝子発現機構を解明した昨年度につづき、今年度は、予後不良因子であるMUC1遺伝子が、MUC1プロモーター領域においてエピジェネティックに制御されていることを、ヒト癌細胞株を用いて明らかにした。もともとMUC1の発現が低い膵癌細胞のPANC1と乳癌細胞のMDA-MB-453における5-aza-2'-deoxycytidine(5-azadC)とtrichostatinA(TSA)の処理によるMUC1mRNAの発現の変化を検討したところ、主として5-azadC処理によりMUC1mRNAの発現がみられるようになった。
KAKENHI-PROJECT-18014024
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18014024
ヒト腺癌のリスク評価に普遍的に関連するムチン抗原の特定
さらに、膵臓癌・乳癌・大腸癌細胞株の中から、MUC1陽性4株・陰性4株を選出し、各々の細胞株に対するMUC1プロモーター領域のDNAメチル化状態を、DNAメチル化定量解析システムMassARRAY^(R)「EpiTYPER^TM」を用いて検討した結果、転写開始付近におけるCpGのメチル化状態がMUC1発現状態に相関していた。更に、クロマチン免疫沈降法を用いたMUC1プロモーターにおけるヒストンH3-K9修飾状態の検討においても、MUC1発現への関与が示唆された。これらの結果から、MUC1発現制御にはDNAメチル化とヒストンH3-K9修飾の双方が影響している可能性が明らかとなった。MUC4についても同様の検索を行ったところ、もともとMUC4の発現が低い膵癌細胞のPANC1と乳癌細胞のMDA-MB-453において、5-azadCとTSAの処理により、MUC4mRNAの発現がみられるようになり、MUC4の発現にもDNAメチル化やヒストン修飾が関連している可能性が示された。
KAKENHI-PROJECT-18014024
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18014024
時系列解析による合理的バブルの検証
昨今の金融データの分析には、分散不均一かつ系列相関のあるモデルが必要とされ、そのようなモデルの検定はいまだ未開発である。研究代表者は、かばん検定を含むM検定のクラスで母数を推定した場合の検定方法を開発した。それは、Kiefer, Vogelsang, and Bunzel (2000, Econometrica) (KVBと略す)の提案した手法のM検定への拡張である。この検定は漸近分散行列の一致推定量を使う必要がなく、なおかつ未知の系列相関や未知の分散不均一にロバストな検定となっている。応用として、我々はラグランジマルチプライヤー検定や一般化モーメント法の識別過剰鑑定やハウスマンの検定の例を考えた。昨今の金融データの分析には、分散不均一かつ系列相関のあるモデルが必要とされ、そのようなモデルの検定はいまだ未開発である。研究代表者は、かばん検定を含むM検定のクラスで母数を推定した場合の検定方法を開発した。それは、Kiefer, Vogelsang, and Bunzel (2000, Econometrica) (KVBと略す)の提案した手法のM検定への拡張である。この検定は漸近分散行列の一致推定量を使う必要がなく、なおかつ未知の系列相関や未知の分散不均一にロバストな検定となっている。応用として、我々はラグランジマルチプライヤー検定や一般化モーメント法の識別過剰鑑定やハウスマンの検定の例を考えた。研究の目的は,国内外株式市場の代表的株価指数について、合理的バブルが発生していたかどうか時系列解析の手法を用いて検証することにある。昨年度までは,同研究課題名で,スタートアップで研究費をいただき,TOPIXにより1990年初頭に崩壊した,株式・土地バブルにおいて,合理的バブルが検出できることを発見した。そしてその発生期間,景気循環と整合性がとれていることを確認し,ディスカッションペーパーにまとめている本年度は1) sup型,inf型,range型,rolling型ADF検定統計量の検出力の評価を行い,sup型のADF検定統計量の検出力が高いことをシミュレーション実験より求めた.この検出力は,様々な想定される合理的バブルのDGPにより確認した。この成果はディスカッションペーパーにまとめている.2) (実際には構造変化が起こっているのであろうが、理論上の簡単化のため)構造変化が起きていないと仮定して,自己回帰モデルの誤差項の仮定を弱め,未知の平均と初期値をもつモデルの推定問題を考えた。一部は,冬に広島経済大学の研究集会と関西計量研究集会で発表している。3)かばん検定統計量によるモデルのあてはまりの良さを調べる検定の理論構築を行った。ここでモデルは、2)と同様のものである.4) 2)と3)の結果をTOPIXに当てはめて検証したところ,モデルのあてはまりはよいものの、バブル期とそれ以前とで、分散不均一の構造変化が認められるという結果が得られた。これは今後の研究を発展させる意味でよい課題となった。先行研究は2,3ある。たとえばしかしながら、このような時系列データの研究はいまだ技術上の未解決部分が多い。さらに、一般に金融時系列データの非線形構造は未知で複雑である。そのため構造すべてを解明しようとせず、未知のままで解析しようというこの研究領域は研究意義が深い。今年度の研究は、上記2文献の手法より、統計的に有効な手法を提案している。研究の目的は、国内外株式市場の代表的株価指数について、合理的バブルが発生していたかどうか時系列解析の手法を用いて検証することにある。すでに合理的バブルの検証をTOPIXで行ったので、学術論文としてまとめるとともに、より高度な仮定(weakw hite noise, WWNと以下略。ならびに構造変化)の解決が、この研究テーマの追求となる。そのため、これら仮定の下での自己回帰(AR)モデルの推定問題、モデルの識別性の問題、予測問題、モデルの当てはまりの良さの検定統計量の構築、AR(1)パラメータの検定の問題、誤差項がIIDではなくWWNの場合の問題への拡張、が最新の研究目的となる。平成23年度は、昨年度から引き続いた多次元のARモデルにおいて誤差項がWWNである場合の仮説検定問題の理論・実用上の検証に加え、多次元の構造的自己回帰移動平均(ARMA)モデルにまでモデルを拡張した。このモデルも誤差項がWWNで議論している。このモデルは、多次元モデルにしばしばおこる母数が増えすぎて実用上推定困難となる問題を解決するために母数に非線形制約を与えたモデルでかなりの時系列モデルを含んでいる。この拡張した結果はワーキングペーパーとしてまとめ、すでに多次元のARモデルの場合で投稿していた論文の修正版として再提出した。幸い年度末に国際誌に採択されたので、来年度には発表される予定である。また、この研究の続きとして、M検定への拡張や、(検定統計量の構築の実用上困難とされる)ある確率ベクトルのロングランバリアンスを推定しないですむ検定統計量の開発を思いついたので、来年度にかけて実施している。主に誤差項が独立かつ同一分布(independetly and identically distributed, i.i.d.)ではなく、無相関(weak white noise)の統計的推測問題を研究した。具体的応用として、自己相関関数の漸近分布がロングランバリアンスに依存するため検定の実行が困難になることが知られている。そのため、これを改良すべく従来の2次形式表現での検定統計量の行列部分をロングランバリアンスとキャンセルできるような検定統計量を考えた。最終年度の研究成果は次のとおりである。この検定はロバストM検定というより広いクラスの検定で統一的に議論できることが分かった。
KAKENHI-PROJECT-21730175
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21730175
時系列解析による合理的バブルの検証
そこで、現状のロバストM検定を改良する3つの検定を提案した。また応用例として、ラグランジマルチプライヤー検定、かばん検定、GMM over-identified restriction検定、Hausmanの検定を求めた。これにより、提案する検定は様々な統計の分野で応用可能であることが示せたので、当初の計画よりより貢献度の高い研究ができたと思われる。研究の主要成果は2012年12月のEC2カンファレンスで発表し、この検定の世界的権威と意見を交換することができた。さらに論文を改良を加え2013年前半には投稿する予定である。年に1本程度査読付きの国際誌に掲載されれば(1)とカウントしてよい(自分なりの最良点)と思っていたが、2,3年に1本程度が自分のペースのようなので(2)とした。原因は職場の異動による環境適応時間が必要だったことが大きい。しかし、コンスタントに最新の研究のアイデアが常に浮かび、結果に結びついているのでその点は評価できる。24年度が最終年度であるため、記入しない。自分がやっている研究は本や論文やデータが入手でき、PCとノートがあれば事足りる学問なので、さほど研究資金は必要ないように思う。研究費もEメールなど廉価な情報交換機気がある中、さほど旅費も必要ない。なので必要なのは時間をなるべく割いて地道な研究を進めること。また、シミュレーションのプログラムなど(失礼ながら)誰でもできる作業を共同研究者に回すなどの工夫が必要だと思うが、1から10まで自分でやりたい主義なので思いのほか時間がかかっている。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-21730175
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21730175
グローバリゼーション下における空間経済システムと貿易・環境・地域政策の分析
本研究では,正の輸送費を伴う農業財,国際間賃金格差,外国での生産に関わる追加的コスト等を明示的に考え,標準的な空間経済モデルを拡張・分析し,各種貿易・環境・地域政策の分析を行った.具体的には,貿易自由化政策,保護貿易政策(関税政策,非関税政策),現地資本規制,資源開発政策,排出税等の税制政策といった政策が,企業立地や賃金,地域厚生,およびそれらの格差に与える影響について分析した.今年度は前年度に構築したモデルを応用して,地域経済,環境政策および貿易政策への応用を中心に研究を遂行した.具体的には,輸送費と産業内競争度の異なる複数の産業が存在する二地域経済を考え,輸送費や通勤費が低下する中で産業立地がどのように変化するかを理論的に明らかにした.この研究成果については,Annals of Regional Science誌に発表した.また,同様のフレームを用いて,国税が産業の立地に与える影響について,従量税と従価税という課税方式,地域間均等配分と地域内均等配分という配分方式ごとに,どのように異なってくるのかを理論的に明らかにした.この研究成果については,日本経済学会およびPapers in Regional Science誌(掲載決定)に発表した.一方,環境政策に関しては,排出税の導入が産業立地および地域間格差に与える影響について,排出の削減行動を考慮した上で,理論的分析を行った.この研究成果については二件の国際会議において発表を行い,現在投稿論文を準備している段階である.最後に,貿易政策に関しては,貿易相手国(途上国)における現地資本規制(Local Equity Requirements; LERs)の緩和が,自国の経済成長や厚生に与える影響を分析した.その結果,1LERsの緩和は他国へのFDIを増加させ,成長率をU字型に変化させること,2LERsを活用することで他国は利潤を確保することができるが,LERsを十分に緩和させることは他国の厚生を高めることに寄与する,ということが明らかになった.この結果については,一件の国際会議において発表を行い,現在投稿論文を準備している段階である.本研究課題の計画に従って,今年度は(1)基本モデルの構築とその性質の吟味,および(2)その貿易政策への適用を中心に研究を遂行した.具体的には,農業財の交易費用,および地域間賃金格差を考慮したNEGタイプの二地域(国)一般均衡モデルを構築し,その均衡の性質を明らかにした.まず,一生産要素(労働)のケースについて,交易費用と企業立地・貿易パターン・厚生との関係を明らかにし,既存研究とは異なり交易費用の低下(自由貿易政策)が必ずしも大国への集積や利益をもたらすわけではないことを明らかにした.この研究成果については,Journal of the Japanese and International Economies誌に発表した.一方,資本を加えた二生産要素のケースについても,交易費用と企業立地・貿易パターン・厚生との関係を明らかにし,資本の移動可能性が自国市場効果(home market effect)に本質的に関わること,一生産要素の場合と同じように交易費用の低下が必ずしも大国への利益をもたらすわけではないことを明らかにした.これらについては,Canadian Journal of Economics誌,およびEconomic Theory誌(掲載決定)に発表した.最後に,この二生産要素のモデルを用いて,一方的な貿易保護(unilateral protection)がもたらす影響について分析を行った.これも先行研究とは異なり,そのような保護政策が自国の物価指数を低下させるかどうか(price-lowering effect),自国の厚生を高めるかどうか(welfare-improving effect)については,貿易財の代替の弾力性の大きさに依存することが明らかになった.この結果については,三件の国際会議において発表を行い,現在投稿論文を準備している段階である.今年度も空間経済モデルを応用して,地域経済および貿易政策への応用を中心に研究を遂行した.まず,地域経済への応用については,労働を投入し,収穫一定技術によって地域固有の資源財を生産する資源産業と,労働および資源財を投入し、収穫逓増技術によって企業ごとに差別化された工業財を生産する工業部門からなる二地域・二部門経済を考え,輸送費が低下する中で産業立地や地域の厚生がどのように変化するかを分析した.その結果,工業立地や厚生の意味でオランダ病が発生する条件を理論的に明らかにした.この研究成果については,Resource and Energy Economics誌に発表した.また,貿易政策に関しては,貿易相手国(途上国)における現地資本規制(Local Equity Requirements; LERs)の緩和が,自国の経済成長や厚生に与える影響を分析した.その結果,1LERsの緩和は他国へのFDIを増加させ,成長率をU字型に変化させること,2LERsを活用することで他国は利潤を確保することができるが,LERsを十分に緩和させることは他国の厚生を高めることに寄与する,ということが明らかになった.この成果については,Japanese Economic Review誌に発表した(掲載決定).その他貿易政策に関しては,二国・一部門・二要素のモデルを用いて,国際間を移動可能な資本がある場合に二国の関税率および厚生水準がどのように決まるかについても分析を行った.その結果,差別化財部門がより資本集約的になると,均衡関税率は低下し,厚生損失率が小さくなることが分かった.この結果については,3つの国際会議と1つの国内学会において発表し,現在専門誌への投稿にむけて準備中の段階である.今年度も空間経済モデルを応用して,貿易政策および国際格差への応用を中心に研究を遂行した.まず,貿易政策への応用については,二国・一財・二要素(労働,資本)のモデルを用いて,一方的な貿易保護(unilateral protection)がもたらす影響について分析を行った.
KAKENHI-PROJECT-24530303
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グローバリゼーション下における空間経済システムと貿易・環境・地域政策の分析
その結果,先行研究とは異なり,そのような保護政策が自国の物価指数を低下させるかどうか(price-lowering effect),自国の厚生を高めるかどうか(welfare-improving effect)については,貿易財の代替の弾力性の大きさに依存することが明らかになった.具体的には,代替の弾力性が2以上であれば,先行研究で言われているようなprice-lowering effectもwelfare-improving effectも発現しないことが明らかになった.この成果については,International Review of Economics and Finance誌に発表した.一方,国際格差に関しては,労働供給を内生化した二国・一部門・二要素のモデルを用いて,国の人口規模が賃金,所得,企業シェア,厚生などにどのような影響を与えるか(自国市場効果)について分析を行った.その結果,消費者のlove of varietyが強い場合には,大国において賃金や所得が低くなったり,厚生が低くなったりする場合があることが示された.これは先行研究では得られていない新しい結果である.この結果については,4つの国際会議と1つの国内学会,2つの国内セミナーにおいて発表し,現在専門誌への投稿にむけて準備中の段階である.本研究では,正の輸送費を伴う農業財,国際間賃金格差,外国での生産に関わる追加的コスト等を明示的に考え,標準的な空間経済モデルを拡張・分析し,各種貿易・環境・地域政策の分析を行った.具体的には,貿易自由化政策,保護貿易政策(関税政策,非関税政策),現地資本規制,資源開発政策,排出税等の税制政策といった政策が,企業立地や賃金,地域厚生,およびそれらの格差に与える影響について分析した.「研究実績の概要」についても記したように,本研究課題の計画に従って,地域経済,貿易政策の理論分析を,空間経済モデルを応用して行い,二本の論文を学術専門誌に刊行することができた(うち一本は掲載決定).したがって,おおむね順調に進展していると考えられる.空間経済学,都市・地域経済学,国際経済学今後も本研究課題の計画に従って,貿易政策,環境政策,地域政策への応用を中心に研究を実施する.次年度は労働供給を内生化した場合に,グローバル化が産業立地や厚生にどのような影響を与えるかについて理論的に分析する.また,これまでに得られている理論分析結果についての実証を行うため,データの整備を一層進め,基礎的なデータ分析から行っていく.そしてその研究成果を国内外の学会・研究会で発表し,学術専門誌への投稿を順次進めていく.「研究実績の概要」についても記したように,本研究課題の計画に従って,地域経済,環境政策,貿易政策の理論分析を前年度に構築したモデルを応用して行い,二本の論文を学術専門誌に刊行することができた(うち一本は掲載決定).
KAKENHI-PROJECT-24530303
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RAS関連蛋白質を分子標的とした白血病治療法の開発
われわれは平成1516年度科学研究費基盤(C)(2)を受け、RAS関連蛋白質を分子標的とした白血病の開発に従事し以下のことを明らかにした。1)骨粗しょう症治療薬として開発された第3世代ビスフォスフォネート、ゾレドロン酸(ZOL)は抗白血病作用を有し、さらにAbl特異的チロシンキナーゼ阻害剤イマチニブの作用を相乗的に増強する。2)ZOLの抗腫瘍作用はp53非依存性であり、多剤耐性に関与するP糖蛋白による影響を受けない。ZOLは多剤耐性となった難治性白血病にも有効な薬剤となりうることを示唆した。3)ZOLはシタラビンの効果も相乗的に増強した。これらの薬剤の併用において、同時併用より、ZOL→抗がん剤の順番に投与するほうが併用効果に優れていた。4)ZOLのみならず、もう一つの第3世代BPであるYM529にもZOLと同等の抗白血病効果があり、NOD/SCIDマウスに移植した患者新鮮白血病細胞にも効果を示した。5)ZOLおよびYM529は白血病だけでなく肺がんおよび腎がん細胞株に対しても抗腫瘍効果を示した。肺癌においてZOLはパクリタキセルと、また腎癌においてYM529はインターフェロンαの作用を増強した。前立腺がん細胞株に対してBPsは抗腫瘍効果を示すが、RASの活性化が阻害されるためではなく、RAS以外のRAS関連蛋白の活性化阻害による。6)ZOLは直接的な抗腫瘍効果だけでなく、γδT細胞を介した免疫細胞性抗腫瘍効果を有する。われわれの報告を基盤としてイギリスおよびドイツで、イマチニブに対する効果不十分症例を対象に、イマチニブ+ZOLの臨床試験が開始された。このように本研究はトランスレーショナル・リサーチへの移行という当初の目的を一部達したと考えられる。現在本邦においても、本研究から得られた多くの知見をもとに、イマチニブ+ZOLの臨床試験の準備中である。われわれは平成1516年度科学研究費基盤(C)(2)を受け、RAS関連蛋白質を分子標的とした白血病の開発に従事し以下のことを明らかにした。1)骨粗しょう症治療薬として開発された第3世代ビスフォスフォネート、ゾレドロン酸(ZOL)は抗白血病作用を有し、さらにAbl特異的チロシンキナーゼ阻害剤イマチニブの作用を相乗的に増強する。2)ZOLの抗腫瘍作用はp53非依存性であり、多剤耐性に関与するP糖蛋白による影響を受けない。ZOLは多剤耐性となった難治性白血病にも有効な薬剤となりうることを示唆した。3)ZOLはシタラビンの効果も相乗的に増強した。これらの薬剤の併用において、同時併用より、ZOL→抗がん剤の順番に投与するほうが併用効果に優れていた。4)ZOLのみならず、もう一つの第3世代BPであるYM529にもZOLと同等の抗白血病効果があり、NOD/SCIDマウスに移植した患者新鮮白血病細胞にも効果を示した。5)ZOLおよびYM529は白血病だけでなく肺がんおよび腎がん細胞株に対しても抗腫瘍効果を示した。肺癌においてZOLはパクリタキセルと、また腎癌においてYM529はインターフェロンαの作用を増強した。前立腺がん細胞株に対してBPsは抗腫瘍効果を示すが、RASの活性化が阻害されるためではなく、RAS以外のRAS関連蛋白の活性化阻害による。6)ZOLは直接的な抗腫瘍効果だけでなく、γδT細胞を介した免疫細胞性抗腫瘍効果を有する。われわれの報告を基盤としてイギリスおよびドイツで、イマチニブに対する効果不十分症例を対象に、イマチニブ+ZOLの臨床試験が開始された。このように本研究はトランスレーショナル・リサーチへの移行という当初の目的を一部達したと考えられる。現在本邦においても、本研究から得られた多くの知見をもとに、イマチニブ+ZOLの臨床試験の準備中である。我々は、平成15年度科学研究補助金を受け、Ras関連蛋白を不活化する第3世代ビスフォスフォネート、Zoledronate(ZOL)の、単剤での抗白血病作用とPhiladelphia染色体(Ph^+)陽性白血病に対するABL特異的チロシンキナーゼ阻害剤imatinib(グリベック)および各種抗がん剤との併用効果について検討した。in vitroにおいて、ZOLは白血病細胞株のRASおよびRapのプレニル化を抑制し、G_1期からG_2/M期に広くアポトーシスを誘導することにより検討したすべてのヒト白血病細胞株の増殖を抑制し、さらにZOL+imatinibはBCR/ABLとRas関連のシグナルを同時にブロックすることでin vitroにおいて著名な相乗効果を示した。in vivoにおいても、ZOLは単剤でも効果を認め、またZOL+imatinibはそれぞれの単剤での効果と比較しても有意差をもって生存期間を延長した。無治療群は全例移植後12週で死亡したが、ZOL+imatinib群では移植後40週でも骨髄、肝脾に白血病細胞を認めなかった(Kuroda et al.,Blood2003)。またZOLは、シタラビン、ダウノマイシン、ハイドレキシアなどの抗がん剤の抗白血病作用を相乗相加的に増強すること(Kimura et al.,Int J Hematol2004)、またZOLの作用はp53非依存性であることも明らかにした(Kuroda et al.,Cancer Sci2004)。
KAKENHI-PROJECT-15591005
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RAS関連蛋白質を分子標的とした白血病治療法の開発
これら我々の結果を踏まえ、H15年12月よりイギリスにおいて慢性骨髄性白血病患者に対するimatinib+ZOL併用療法の臨床治験が開始され、本研究がトランスレーショナル・リサーチとして大きな貢献をした。以上のように平成16年度の研究によってBPsの多彩な抗腫瘍効果が明らかとなり、現在欧米で進行中のBPsの抗腫瘍剤としての臨床治験に重要な基礎的根拠を示すことに寄与した。
KAKENHI-PROJECT-15591005
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乳児重症型先天性筋疾患児の「わかっていそう」を明らかにする教育的支援の在り方
本研究の目的は乳児期発症重症型先天性筋疾患児に対する、意思表出手段の獲得のための支援に留まらない系統的な教育的支援の在り様を検討することとである。そのために、(1)質問紙調査により全国の当該疾患の児童生徒に対する教育の現状及び担任らの意識を明らかにすること、(2)保護者への面接調査により、当該疾患児の育ちのプロセスに関する知見を蓄積すること、(3)継続的な教育的係わり合いの実践資料を蓄積し、その実相を明らかにすることである。本年度は(3)に関して、筆者自身の実践(事例1)を継続するとともに福島県立須賀川支援学校に在籍する児童(事例2)への指導に関して担任教員らと協働的な取り組みを進めた。事例1ではタブレットを用いた本人主体のコミュニケーションが確立され、漢字や数等これまで学校で学んでいない内容の学習に着手した。その後、学校でも漢字の指導が導入される等の変容も示された。事例2では、発声や表情変化、僅かな手指の動き等本児の意思表出とみられる行動の意味の確定を進めるとともに、児童がより随意的に操作可能な身体部位や動き、及び支援機器の選定を進めてきた。事例2については筆者自身による訪問は5回程度と少なかったが、担任教諭らの授業実践に関する検討を重ねてきている。(1)の目的に関しては、本年度は対象とすべき学校等の選別を行い、質問紙の作成に着手した。(2)の目的に関してはこれまでに筆者が係わってきた事例の保護者から同意を得て一時例について面接調査を実施した。特別支援学校入学後早い段階で担任教師とのやりとりにおいて明確な「Yes」のサインが確立され、僅かな指の動きを用いたスイッチ操作による活動などが展開されたものの、担任の変更等により必ずしも一貫した指導が行われたとは言い難く、子どもの表出(サインやスイッチ操作)の不確実さによる教師の側の受け止めの違いといった難しさが示された。研究計画書においては、(1)の目的に対応する質問紙調査を本年度に実施予定であったが、対象となる学校や個人の特定などにおいて時間を要したため、質問紙を作成したにとどまっている。質問紙調査については、令和元年度中に実施する予定である。(2)及び(3)の目的に関しては、上述の通り、それぞれにデータ収集を進めてきており、概ね計画通りに進んでいると言える。(3)に関しては、事例1に関する研究成果は令和元年度の学会(日本特殊教育学会)において発表する予定である。令和元年度は、(1)に関して、質問紙調査の実施及び分析を行うとともに、(2)に関してはさらに対象者を増やして、今回対象としている様相の子どもたちのコミュニケーションや学習に関する育ちのプロセスについて、さらに知見の蓄積に努める。面接調査の結果については、質的研究手法を用いて整理を行う。(3)については、現時点では2事例のみであるが、同じ診断面でも状態像や学習状況等は極めて大きな違いがある。今後さらに対象事例を増やし、当該の子どもたちの教育的支援について更なる実践資料の収集が必要であると考える。今後も、須賀川支援学校をはじめとする学校等他機関への依頼を行っていく予定である。事例1については、今後も筆者自身が継続的に訪問し、年数十回のデータ収集を行う予定である。事例2については、昨年からの担任教師の授業実践に関するデータ収集とその分析に加え、今後筆者自身が対象児と係わる機会についても設定を依頼しているところであり、筆者自身の教育的支援の在り様についてもさらに分析を行っていく予定である。本研究の目的は乳児期発症重症型先天性筋疾患児に対する、意思表出手段の獲得のための支援に留まらない系統的な教育的支援の在り様を検討することとである。そのために、(1)質問紙調査により全国の当該疾患の児童生徒に対する教育の現状及び担任らの意識を明らかにすること、(2)保護者への面接調査により、当該疾患児の育ちのプロセスに関する知見を蓄積すること、(3)継続的な教育的係わり合いの実践資料を蓄積し、その実相を明らかにすることである。本年度は(3)に関して、筆者自身の実践(事例1)を継続するとともに福島県立須賀川支援学校に在籍する児童(事例2)への指導に関して担任教員らと協働的な取り組みを進めた。事例1ではタブレットを用いた本人主体のコミュニケーションが確立され、漢字や数等これまで学校で学んでいない内容の学習に着手した。その後、学校でも漢字の指導が導入される等の変容も示された。事例2では、発声や表情変化、僅かな手指の動き等本児の意思表出とみられる行動の意味の確定を進めるとともに、児童がより随意的に操作可能な身体部位や動き、及び支援機器の選定を進めてきた。事例2については筆者自身による訪問は5回程度と少なかったが、担任教諭らの授業実践に関する検討を重ねてきている。(1)の目的に関しては、本年度は対象とすべき学校等の選別を行い、質問紙の作成に着手した。(2)の目的に関してはこれまでに筆者が係わってきた事例の保護者から同意を得て一時例について面接調査を実施した。特別支援学校入学後早い段階で担任教師とのやりとりにおいて明確な「Yes」のサインが確立され、僅かな指の動きを用いたスイッチ操作による活動などが展開されたものの、担任の変更等により必ずしも一貫した指導が行われたとは言い難く、子どもの表出(サインやスイッチ操作)の不確実さによる教師の側の受け止めの違いといった難しさが示された。
KAKENHI-PROJECT-18K13206
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K13206
乳児重症型先天性筋疾患児の「わかっていそう」を明らかにする教育的支援の在り方
研究計画書においては、(1)の目的に対応する質問紙調査を本年度に実施予定であったが、対象となる学校や個人の特定などにおいて時間を要したため、質問紙を作成したにとどまっている。質問紙調査については、令和元年度中に実施する予定である。(2)及び(3)の目的に関しては、上述の通り、それぞれにデータ収集を進めてきており、概ね計画通りに進んでいると言える。(3)に関しては、事例1に関する研究成果は令和元年度の学会(日本特殊教育学会)において発表する予定である。令和元年度は、(1)に関して、質問紙調査の実施及び分析を行うとともに、(2)に関してはさらに対象者を増やして、今回対象としている様相の子どもたちのコミュニケーションや学習に関する育ちのプロセスについて、さらに知見の蓄積に努める。面接調査の結果については、質的研究手法を用いて整理を行う。(3)については、現時点では2事例のみであるが、同じ診断面でも状態像や学習状況等は極めて大きな違いがある。今後さらに対象事例を増やし、当該の子どもたちの教育的支援について更なる実践資料の収集が必要であると考える。今後も、須賀川支援学校をはじめとする学校等他機関への依頼を行っていく予定である。事例1については、今後も筆者自身が継続的に訪問し、年数十回のデータ収集を行う予定である。事例2については、昨年からの担任教師の授業実践に関するデータ収集とその分析に加え、今後筆者自身が対象児と係わる機会についても設定を依頼しているところであり、筆者自身の教育的支援の在り様についてもさらに分析を行っていく予定である。本年度質問紙調査を実施することができず、関連する調査用紙や封筒の代金、印刷費などが残額として生じることとなった。次年度、ずれ込んで質問紙調査を行う予定であり、その際にそれらの費用として使用する。
KAKENHI-PROJECT-18K13206
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介護老人保健施設における糖尿病チーム医療・介護モデルの開発
本研究の目的は、老健施設に入所する糖尿病要介護高齢者に対する適切な治療および生活援助を提供するために、看護師を中心とした糖尿病チーム医療・介護モデルを開発することにある。A県内の老健施設の施設長を対象に質問紙調査を行ったところ、31施設から回答が寄せられ、入所者のうち、糖尿病は14.5%を占め、HbA1c測定の実施率は51.9%であり、それも3ヵ月に1度、ないしそれ以下であった。治療法は、経口糖尿病薬が51.0%、インスリン療法は12.2%であった。糖尿病について相談できる専門医がある施設は61.5%に止まり、保険制度や管理指針など、課題も明らかになった。また、糖尿病支援の困難性を感じている医療スタッフは70.4%であり、特に認知症がある場合はさらに困難性が高まり、チーム医療の必要性を感じているスタッフが多かった。一方、老健施設に長期入所する高齢者へのインタビューから、対象者が糖尿病とともに生きてきた人生を理解するとともに、糖尿病の療養における希望を失ってはいないことを理解するなど、対象者を全人的に捉える必要性が示唆された。老健施設における多職種による関わりの現状について、医療スタッフへの質問紙調査では、「合併症への関わり」、「退院に向けての関わり」、「糖尿病をもって生きる思いへの関わり」、「食事療法への関わり」、「目標とする血糖値への関わり」、「運動療法への関わり」の6因子構造が確認された。また、多職種間でのカンファレンスや診療記録の共有も限られていた。各職種で因子得点が異なることから、専門性に応じた関わりが示唆された一方、他の職種の関わり方が参考になる場合もあると考えられた。以上の結果を踏まえて、老健施設において糖尿病をもつ高齢者のチーム医療に利用できるWebシステムを考案し、製作した。本Webシステムはタブレット端末を用いたチーム医療の実践への応用が可能である。本研究の目的は、介護老人保健施設(以下、老健施設)に入所する糖尿病要介護高齢者に対する適切な治療および生活援助を提供するために、看護師を中心とした糖尿病チーム医療・介護モデルを開発することにある。今年度は老健施設における糖尿病高齢者の実態把握と課題の明確化をはかるため、第1段階として、老健施設における入所者の状況と糖尿病管理の実態の把握を行った。老健施設の入所者はもともと在宅復帰をめざす目的で入所すると規定されているが、実際は在宅復帰できない高齢者が多い。また、包括医療のため、糖尿病管理のための検査や薬物治療が十分に実施できない状況にある。実際、診療を担当する医療側の考え方や態勢から、著しい高血糖の予防や薬物による低血糖に対する注意は払われているものの、糖尿病の慢性合併症の把握は不十分で関心も希薄で、糖尿病看護に特化したケアは不足している。高齢者に対しては、脳血管疾患や心疾患といった生命に直結する疾病や日々の看護ケアに影響する認知症に対する関心は高いものの、自己管理が必要な糖尿病に関するケアに対する意識は不足している。これらの状況を把握しながら、研究者間で老健施設における糖尿病管理に関する文献クリティークを行い、ディスカッションを行いながら研究課題の明確化をはかった。その結果、研究の方向性として高齢者を全人的視点からとらえ、常にクライアントを中心に据える視点の重要性が確認され、慢性期看護における「病みの軌跡理論」や「セルフケア不足理論」が高齢者にも適応されるべきであるという視点を導きだすことができた。この点を1つの研究課題に据え、研究計画を作成し、倫理委員会に申請したところ承認された。本研究の目的は、介護老人保健施設(以下、老健施設)に入所する糖尿病要介護高齢者に対する適切な治療および生活援助を提供するために、看護師を中心とした糖尿病チーム医療・介護モデルを開発することにある。初年度は老健施設における糖尿病高齢者の実態把握と課題の明確化をはかるため、老健施設における入所者の状況と糖尿病管理の実態の把握を行い、研究者間で老健施設における糖尿病管理に関する文献クリティークを行い、ディスカッションを行った。その結果、研究の方向性として高齢者を全人的視点からとらえ、常にクライアントを中心に据える視点の重要性が確認された。そこで、2年目である本年度は、慢性期看護における「病みの軌跡理論」を用いて、介護施設入所者が糖尿病とともに生きてきた人生をどのように捉え、今後どのように糖尿病と向き合って行こうと考えているかを対象者の語りから明らかにすることを目的に研究を行った。糖尿病をもち長期に施設入所する高齢者を対象とし、インタビュー逐語録から語りの内容を損なわずに、病みの軌跡モデルを用いて、管理に影響する条件、編みなおし、軌跡の予想を抽出し、軌跡の局面を位置づけ、対象者の病みの軌跡を比較し、事例毎に固有の軌跡を明らかにした。全事例とも、過去の生活習慣と糖尿病の合併症の因果関係を理解し、糖尿病に関心を抱き、今後は予防行動をとろうとしていた。一方で、人生を振り返った時、自分がとってきた生活行動を必ずしも後悔しているわけではなかった。高齢者は信念や価値観から過去の経験を意味づけし、希望を持ちながら糖尿病とともに生きていることが示唆され、これらのことを踏まえた看護援助が必要であることが明らかになった。本研究の初年度、第1段階は、「特定の老健施設における糖尿病高齢者の実態把握と課題の明確化」であった。特定の老健施設の承諾を得て、糖尿病認定看護師の資格を持つ研究協力者とともに同施設の高齢者の実態を把握した。
KAKENHI-PROJECT-26463450
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26463450
介護老人保健施設における糖尿病チーム医療・介護モデルの開発
そして、2年目の本年度は事例へのインタビューを通して、老健施設入所者が捉える自身の糖尿病とともに生きる人生に対する思いを明らかにし、看護援助の方向性を見出した。また、学会発表を予定しているが、学術雑誌への論文投稿までには至っていない。また、特定の老健施設ではなく、他施設を対象とした糖尿病管理の実態把握のためのアンケート調査も遅れている。本研究の目的は、老健施設に入所する糖尿病要介護高齢者に対する適切な治療および生活援助を提供するために、看護師を中心とした糖尿病チーム医療・介護モデルを開発することにある。初年度は、特定の老健施設を選び、入所者の状況と糖尿病管理の実態の把握を行い、研究担当者間で検討会を行った。その結果、まずは糖尿病をもつ高齢者を全人的に捉えるとともに、クライアントの思いを受け止め、ニードを据える視点の重要性が確認された。そこで2年目には、5例の老健施設入所者を対象に、糖尿病とともに生きてきた人生をどのように捉え、今後どのように糖尿病と向き合って行こうと考えているかを明らかにすることを目的にインタビューを行い、質的に分析した。全事例とも、過去の生活習慣と糖尿病の合併症の因果関係を理解し、糖尿病に関心を抱き、今後は予防行動をとろうとしていた。高齢者は自身の信念や価値観から過去の経験を意味づけしながら糖尿病とともに生きているという高齢者ならではの捉え方が示唆された。3年目の本年度は、糖尿病チーム医療・介護モデルの考案を目的として、糖尿病県内の70施設の看護師、医師、介護福祉士など多職種を対象に質問紙調査を行った。調査内容は、施設概要と糖尿病療養指導に関する管理状況17項目で「全くない」「良くある」の4段階評定であった。対象施設の回収率は44.3%で、看護職、介護福祉士、医師、栄養士など総計279名から回答が得られた。その結果、各職種はそれぞれの専門性を認識しながら関わっている状況が判明し、それと同時に職種に特徴的な、極端に関わりの少ない点もあることが判明した。老健施設の各職種は、チーム医療を明確に認識し、有機的に相互の関係を深化させることで、より実践的な質の高い支援ができる可能性のあることが示唆された。本研究の初年度、第1段階は、「特定の老健施設における糖尿病高齢者の実態把握と課題の明確化」であった。特定の老健施設の承諾を得て、糖尿病認定看護師の資格を持つ研究協力者とともに同施設の高齢者の実態を把握した。そして、2年目には事例へのインタビューを通して、老健施設入所者が捉える自身の糖尿病とともに生きる人生に対する思いを明らかにし、看護援助の方向性を見出した。現在、学会発表を予定し、学術雑誌への論文投稿を準備中である。また、3年目の本年度は、県内の老健施設を対象とした糖尿病管理の実態把握のためのアンケート調査を行った。現在、結果の解析中であるが、学会発表も予定している。本研究の目的は、老健施設に入所する糖尿病要介護高齢者に対する適切な治療および生活援助を提供するために、看護師を中心とした糖尿病チーム医療・介護モデルを開発することにある。初年度は、特定の老健施設を選び、入所者の状況と糖尿病管理の実態の把握を行い、研究担当者間で検討会を行った。その結果、まずは糖尿病をもつ高齢者を全人的に捉えるとともに、クライアントの思いを受け止め、ニードを据える視点の重要性が確認された。
KAKENHI-PROJECT-26463450
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26463450
ヘムは如何に壊れるのか-結晶構造に基づくヘムオキシゲナーゼの触媒機構の解明-
ヘムオキシゲナーゼ(HO)は生理的ヘム分解を担う酵素で、基質ヘムが補酵素として機能し、酸素を活性化して自身を分解する反応(ヘム→α-ヒドロキシヘム→ベルドヘム→ビリベルジン)を触媒する。HOの生理機能として、酸化ストレスに対する生体防御機構およびCOを介する情報伝達機構への関与が注目されている。我々はこれまでにHOの結晶構造に基づき、ヘム結合による誘導適合および酸素活性化機構についてのモデルを提唱してきた。本研究では、以下のこと明らかにした。1.HOの活性酸素種であるferric hydroperoxide(Fe^<3+>-OOH)のモデル化合物として、ヒドロキシルアミンが有用であることを示した。2.電子供与体であるNADPH-シトクロムP450還元酵素(CPR)からHOへの電子伝達経路の特定を目的として、CPRとHOとの相互作用を表面プラズモン共鳴により解析したところ、NADP(H)の存在により両酵素の結合が増強することが判明した。HOのアミノ酸残基の変異体を作製し、CPRとの相互作用および酵素活性、ヘムの還元速度などを検討したところ、CPRからの電子伝達に重要な残基(K149,R185)を特定できた。このことは、HO-CPRドッキングモデル計算によっても支持された。3.研究者間で論争のあったα-ヒドロキシヘム/ベルドヘム変換過程(第2ステップ)の電子要求性を明らかにするため、厳密な嫌気条件下、酸化型Fe^<3+>-および還元型Fe^<2+>-α-ヒドロキシヘム-HO複合体を調製し、酸素との反応をストップト・フロー実験により速度論的に解析した。その結果、酸素添加によってFe^<3+>-α-ヒドロキシヘムはFe^<3+>-ベルドヘムに、Fe^<2+>-α-ヒドロキシヘムはFe^<2+>-ベルドヘムにそれぞれ転換することがわかった。前者はπ-中性ラジカル体を反応種とする既知の経路であったが、後者は新規の経路で、815nmに特徴的な吸収をもつ中間体(815-nm species)が存在することを見出した。ヘムオキシゲナーゼ(HO)は生理的ヘム分解を担う酵素で、基質ヘムが補酵素として機能し、酸素を活性化して自身を分解する反応(ヘム→α-ヒドロキシヘム→ベルドヘム→ビリベルジン)を触媒する。HOの生理機能として、酸化ストレスに対する生体防御機構およびCOを介する情報伝達機構への関与が注目されている。我々はこれまでにHOの結晶構造に基づき、ヘム結合による誘導適合および酸素活性化機構についてのモデルを提唱してきた。本研究では、以下のこと明らかにした。1.HOの活性酸素種であるferric hydroperoxide(Fe^<3+>-OOH)のモデル化合物として、ヒドロキシルアミンが有用であることを示した。2.電子供与体であるNADPH-シトクロムP450還元酵素(CPR)からHOへの電子伝達経路の特定を目的として、CPRとHOとの相互作用を表面プラズモン共鳴により解析したところ、NADP(H)の存在により両酵素の結合が増強することが判明した。HOのアミノ酸残基の変異体を作製し、CPRとの相互作用および酵素活性、ヘムの還元速度などを検討したところ、CPRからの電子伝達に重要な残基(K149,R185)を特定できた。このことは、HO-CPRドッキングモデル計算によっても支持された。3.研究者間で論争のあったα-ヒドロキシヘム/ベルドヘム変換過程(第2ステップ)の電子要求性を明らかにするため、厳密な嫌気条件下、酸化型Fe^<3+>-および還元型Fe^<2+>-α-ヒドロキシヘム-HO複合体を調製し、酸素との反応をストップト・フロー実験により速度論的に解析した。その結果、酸素添加によってFe^<3+>-α-ヒドロキシヘムはFe^<3+>-ベルドヘムに、Fe^<2+>-α-ヒドロキシヘムはFe^<2+>-ベルドヘムにそれぞれ転換することがわかった。前者はπ-中性ラジカル体を反応種とする既知の経路であったが、後者は新規の経路で、815nmに特徴的な吸収をもつ中間体(815-nm species)が存在することを見出した。ヘムオキシゲナーゼ(HO)は生理的ヘム分解を担う酵素で、基質ヘムが補酵素として機能し、酸素を活性化して自身を分解する反応(ヘム→α-ヒドロキシヘム→ベルドヘム→ビリベルジン)を触媒する。HOの生理機能として、酸化ストレスに対する生体防御機構およびCOを介する情報伝達機構への関与が注目されている。我々はこれまでにHOの結晶構造に基づき、ヘム結合による誘導適合および酸素活性化機構についてのモデルを提唱してきた。また、電子・酸素滴定法を用いてHO反応中間過程における電子要求性の有無を明らかにしてきた。本研究では、酸素活性化モデルの構築を目的とし、HOの活性酸素種であるferric hydroperoxide(Fe^<3+>-OOH)と類似の構造をもつモデル化合物としてヒドロキシルアミンおよびヒドラジンを用いて、ヘム-HO複合体への結合性を検討した。その結果、これらはヘムに対し1対1の割合で結合し、解離定数はそれぞれ9.8mMと1.9mMであった。これらの結合はpH依存性を示すことから、中性状態で結合していることが示唆された。また、電子スピン共鳴測定より、ヘムに結合したヒドロキシルアミンの一部はFe^<3+>-OOHと同様の低スピンシグナルをもつことが観測された。
KAKENHI-PROJECT-15550155
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ヘムは如何に壊れるのか-結晶構造に基づくヘムオキシゲナーゼの触媒機構の解明-
これにより、非常に反応性が高く解析困難であったFe^<3+>-OOHの性質をこのモデルを用いて解明できる可能性が示唆された。また、本研究では電子供与体であるNADPH-シトクロムP450還元酵素からHOへの電子伝達経路の特定も行った。すなわち、HOの結晶構造から電子伝達に重要と想定されるアミノ酸残基の変異体を作製し、その酵素活性および還元速度の違いを検討することで、HOと還元酵素との会合に必要な残基を特定した。また、HOと還元酵素との相互作用を表面プラズモン共鳴により解析し、その結果をまとめた論文を投稿準備中である。ヘムオキシゲナーゼ(HO)は生理的ヘム分解を担う酵素で、基質ヘムが補酵素として機能し、酸素を活性化して自身を分解する反応(ヘム→α-ヒドロキシヘム→ベルドヘム→ビリベルジン)を触媒する。HOの生理機能として、酸化ストレスに対する生体防御機構およびCOを介する情報伝達機構への関与が注目されている。我々はこれまでにHOの結晶構造に基づき、ヘム結合による誘導適合および酸素活性化機構についてのモデルを提唱してきた。また、電子・酸素滴定法を用いてHO反応中間過程における電子要求性の有無を明らかにしてきた。本研究では、HOの活性酸素種であるferric hydroperoxide(Fe^<3+>-OOH)のモデル化合物として、ヒドロキシルアミンが有用であることを示した。また、電子供与体であるNADPH-シトクロムP450還元酵素(CPR)からHOへの電子伝達経路の特定を目的として、まずCPRとHOとの相互作用を表面プラズモン共鳴により解析したところ、NADP(H)の存在により両酵素の結合が増強することが判明した。さらに、HOのアミノ酸残基の変異体を作製し、CPRとの相互作用および酵素活性、ヘムの還元速度などを検討したところ、CPRからの電子伝達に重要な残基(K149,R185)を特定できた。また、HO-CPRドッキングモデルを計算したところ、これらの残基はCPR中のNADP(H)やFMNに近接していることが推測され、HOでは電子がヘムの遠位側から供給されることが示唆された。P450ではヘム近位側からの電子伝達経路が知られており、この違いがHOとP450の酸素活性化機構の違いを反映している可能性がある。さらに、HO反応中間過程の解明のため、HO・ベルドヘム複合体の結晶化を嫌気条件下で行い、現在解析中である。ヘムオキシゲナーゼ(HO)は生理的ヘム分解を担う酵素で、基質ヘムが補酵素として機能し、酸素を活性化して自身を分解する反応(ヘム→α-ヒドロキシヘム→ベルドヘム→ビリベルジン)を触媒する。HOの生理機能として、酸化ストレスに対する生体防御機構およびCOを介する情報伝達機構への関与が注目されている。我々はこれまでにHOの結晶構造に基づき、ヘム結合による誘導適合および酸素活性化機構についてのモデルを提唱してきた。また、電子・酸素滴定法および電子スピン共鳴法を用いてHO反応中間過程における電子要求性の有無を明らかにしてきた。しかし、COが遊離する過程の電子要求性、すなわち酸素と反応するα-ヒドロキシヘムのヘム鉄の酸化状態を巡っては依然として研究者間で見解の相違がある。そこで、厳密な嫌気条件下、酸化型Fe^<3+>-および還元型Fe^<2+>-α-ヒドロキシヘム-HO複合体を調製し、酸素との反応をストップト・フロー実験により速度論的に解析した。
KAKENHI-PROJECT-15550155
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光学活性な新規ピリジノホスフィンの開発と触媒的不斉合成への応用
平成11年度では当初計画に従い,昨年度に合成した種々の新規ピリジノホスフィン-パラジウム錯体を用いて,不斉アリル化反応における基質の適用範囲の拡大について検討した。昨年度までの研究により,1,3-ジフェニル-2-プロペニアセテートのように,1,3位にかさ高い置換基を持つ基質では97%eeと高い不斉収率が得られているが,1-メチル-2-ブテニルアセテートのように立体的に小さな基質では最高78%eeまでしか得られていない。この不斉収率は,P-N型不斉配位子を用いる室温での値としてはこれまでで最高の不斉収率であるが,なお改善の余地がある。そこで,まず反応条件を検討して不斉収率の向上を目指すことにした。種々の溶媒や塩基について検討したところ,水素化ナトリウムを塩基として,アセトニトリル中15-crown-5の存在下で反応を行うことにより,82%eeの不斉収率を得ることが出来た。なお,15-crown-5を添加しない場合は,反応性,化学収率,不斉収率の全てが低下した。次に,この条件で反応温度を下げたところ,-15°Cで88%eeまで向上させることが出来たが,化学収率が温度の低下に伴って極端に低下し,基質が反応条件で分解することが示唆された。そこで,基質の脱離基をアセテートから脱離能の低いカーボネートに変えて反応を行った。カーボネートの種類について検討したところ,フェニルカーボネートを用いた時に室温で83%eeと高い不斉収率が得られた。しかもこの条件では反応性も高く,-25°Cまで反応温度を下げたところ良好な化学収率とともに(85%yield),93%eeとこれまでの全ての不斉配位子の中で最も高い不斉収率を達成することに成功した。これらの成果は論文及び学会に報告した。平成十年度では当初計画に従い,まず今回開発を計画した新規ピリジノホスフィン配位子の一般的合成法の検討を行った。2-クロロシクロペンテノピリジン及び2-クロロシクロヘキセノピリジンを出発原料に用いて,サレン錯体を用いた不斉エポキシ化を鍵反応とすることにより,光学活性な各種2-クロロピリジン誘導体を合成した。得られた光学活性な2-クロロピリジン誘導体をパラジウム触媒の存在下,2-ヒドロキシフェニルホウ酸とクロスカップリングを行い,光学活性なピリジノフェノール誘導体を合成した。これ以後は常法に従って官能基変換を行い,目的の光学活性なピリジノホスフィン配位子を合成することが出来た。得られた各種ピリジノホスフィン配位子を用いて,まずパラジウム錯体を触媒とした不斉アリル化反応を行い,その不斉誘起能について検討した。その結果,1,3-ジフェニルアリル化合物の不斉アリル化では97%eeと期待通り高い不斉収率が得られ,これまでの不斉配位子と同等の高い不斉誘起能を持つことが分かった。また,1,3-ジメチルアリル化合物の不斉アリル化では,これまでのP,N-型配位子では最高71%eeであったのに対して,78%eeとこれまでで最高の不斉収率が得られた。この基質は反応性が低く,従来のP,N-型配位子では反応時間が4日かかっていたが,今回開発したピリジノホスフィン配位子ではわずか100分で反応が終了しているのは特筆すべきことである。これは当初の期待通り,ベンゼン環と共役したピリジン環のπ-受容性によりπ-アリル錯体の反応性が上がっていることに基づくと考えられる。今後,更に不斉中心上の置換基効果・電子効果や反応条件等を詳細に検討して,不斉収率の向上を目指す予定である。なお,これらの成果は現在投稿準備中である。平成11年度では当初計画に従い,昨年度に合成した種々の新規ピリジノホスフィン-パラジウム錯体を用いて,不斉アリル化反応における基質の適用範囲の拡大について検討した。昨年度までの研究により,1,3-ジフェニル-2-プロペニアセテートのように,1,3位にかさ高い置換基を持つ基質では97%eeと高い不斉収率が得られているが,1-メチル-2-ブテニルアセテートのように立体的に小さな基質では最高78%eeまでしか得られていない。この不斉収率は,P-N型不斉配位子を用いる室温での値としてはこれまでで最高の不斉収率であるが,なお改善の余地がある。そこで,まず反応条件を検討して不斉収率の向上を目指すことにした。種々の溶媒や塩基について検討したところ,水素化ナトリウムを塩基として,アセトニトリル中15-crown-5の存在下で反応を行うことにより,82%eeの不斉収率を得ることが出来た。なお,15-crown-5を添加しない場合は,反応性,化学収率,不斉収率の全てが低下した。次に,この条件で反応温度を下げたところ,-15°Cで88%eeまで向上させることが出来たが,化学収率が温度の低下に伴って極端に低下し,基質が反応条件で分解することが示唆された。そこで,基質の脱離基をアセテートから脱離能の低いカーボネートに変えて反応を行った。カーボネートの種類について検討したところ,フェニルカーボネートを用いた時に室温で83%eeと高い不斉収率が得られた。
KAKENHI-PROJECT-10740338
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10740338
光学活性な新規ピリジノホスフィンの開発と触媒的不斉合成への応用
しかもこの条件では反応性も高く,-25°Cまで反応温度を下げたところ良好な化学収率とともに(85%yield),93%eeとこれまでの全ての不斉配位子の中で最も高い不斉収率を達成することに成功した。これらの成果は論文及び学会に報告した。
KAKENHI-PROJECT-10740338
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アジア地域における伝統家具調度類の歴史的変遷-東アジア地域を対象とする比較考察-
日本の伝統家具調度類に関しては、高位の人々の生活、儀礼のために必要とされていた道具の構成とその歴史的変遷について、明治期雛形本を新たに対象に加えて分析した。結果、道具の種類、構成、寸法、材料、形態などの特徴を明らかにするとともに、素材としてのガラスの多用や意匠上の色付けの指示に関する記述を明らかにして、明治時代の家具調度類の意匠的あるいは技術的な指示として特徴的であることを指摘した。また、明治時代の家具調度類の雛形本の記述では、近世以前を踏襲した和の道具(例:曲ろく・硯箱・鏡台等)と、西洋から維新後に導入した家具(テーブル・椅子・寝台等)、さらにもとは西洋家具でないものの明治時代に新たに日本人の生活にとりいれられたと考えられる家具(ハイラズ・シッポク台)などが認められ、和洋の道具家具が混在する様相が明らかになった。中国および韓国の伝統家具調度類については書籍資料を中心に16-19世紀の貴族住宅における建築室内の意匠と目的に応じて場面ごとに使用される家具調度類に関する情報収集を行った。中国および韓国の伝統家具調度類については書籍資料を中心に16-19世紀の貴族住宅における室内意匠と使用される家具調度類の構成に関する情報収集を行った。日本の伝統家具調度類の構成と歴史的変遷および設計製作技術については、これまでに行った近世以前の伝統家具調度類に関する建築史料(建築書系道具雛形)の分析考察に加え、明治期の生活用具あるいは商用具の構成について明治期雛形本史料を対象に分析を行った。結果、道具の種類、構成、寸法、材料、形態などの特徴を明らかにするとともに、ガラスを多く使用することや、色付けの指示に関する記述がみられ、明治時代の意匠的あるいは技術的な指示として特徴的であることを指摘した。また『和洋家具雛形』に記載される伝統家具調度類の構成においては、機能的には家什具・商工具・飲食具などが挙げられる。具体的にみると近世以前を踏襲した和の道具(例:曲ろく・硯箱・鏡台等)と、西洋から導入したと考えられる家具(テーブル・椅子・寝台等)、さらにもとは西洋家具でないものの明治時代に新たに日本人の生活に取り入れられたと考えられる家具(例:ハイラズ・シッポク台)などが認められ、和洋の道具家具が混在する様相がうかがえる。日本の伝統家具調度類に関しては、高位の人々の生活、儀礼のために必要とされていた道具の構成とその歴史的変遷について、明治期雛形本を新たに対象に加えて分析した。結果、道具の種類、構成、寸法、材料、形態などの特徴を明らかにするとともに、素材としてのガラスの多用や意匠上の色付けの指示に関する記述を明らかにして、明治時代の家具調度類の意匠的あるいは技術的な指示として特徴的であることを指摘した。また、明治時代の家具調度類の雛形本の記述では、近世以前を踏襲した和の道具(例:曲ろく・硯箱・鏡台等)と、西洋から維新後に導入した家具(テーブル・椅子・寝台等)、さらにもとは西洋家具でないものの明治時代に新たに日本人の生活にとりいれられたと考えられる家具(ハイラズ・シッポク台)などが認められ、和洋の道具家具が混在する様相が明らかになった。中国および韓国の伝統家具調度類については書籍資料を中心に16-19世紀の貴族住宅における建築室内の意匠と目的に応じて場面ごとに使用される家具調度類に関する情報収集を行った。おおむね順調に情報収集を行い、分析の過程にある。研究成果については適宜、日本建築学会、日本インテリア学会、日本生活文化史学会、archtheo:theory of architecture国際会議で発表していく予定である。データの分析と比較を行い、日本の伝統建築における室内意匠の特徴と東アジアの住宅の室内意匠との共通点と差異を明らかにするとともに、気候風土に根ざした伝統家具調度類の変遷について考察する。中国東南部およびタイにおいて調査を予定していたが当該地域の社会的混乱等の時事的状況から25年度内の現地調査を行うことがなかった。東アジア地域において適宜情報収集を行い準備が整い次第追加調査を行う。データ分析については技術補佐員を配置して滞りなく行い、復元的考察は代表者が行う。
KAKENHI-PROJECT-25511004
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25511004
共生微細藻類の生産する長鎖ポリオール化合物の共生現象における役割の解明
海洋生物の共生藻由来の長鎖ポリオール化合物の自然界における役割・機能・存在意義はほとんど解明されていない。本研究では新たな長鎖ポリオール化合物の探索を基盤とした研究を実施し、それらの生物活性の測定と生体内局在の解析を通じ、生物学的機能と共生現象における役割の解明を目的とした研究を行った。その結果、シンビオスピロール類を始めとして複数の新たな長鎖ポリオール化合物を単離、構造決定し、それらが有する特有の生物活性を見出した。さらに、シンビオスピロール類の構造活性相関についての知見を得て作製したポリクローナル抗体を活用して、生産渦鞭毛藻における局在解析を試みた。海洋生物の共生藻由来の長鎖ポリオール化合物の自然界における役割・機能・存在意義はほとんど解明されていない。本研究では新たな長鎖ポリオール化合物の探索を基盤とした研究を実施し、それらの生物活性の測定と生体内局在の解析を通じ、生物学的機能と共生現象における役割の解明を目的とした研究を行った。その結果、シンビオスピロール類を始めとして複数の新たな長鎖ポリオール化合物を単離、構造決定し、それらが有する特有の生物活性を見出した。さらに、シンビオスピロール類の構造活性相関についての知見を得て作製したポリクローナル抗体を活用して、生産渦鞭毛藻における局在解析を試みた。海洋動物の共生渦鞭毛藻由来の長鎖ポリオール化合物の自然界における役割・機能・存在意義がほとんど解明されていない。本研究では新たな長鎖ポリオール化合物を探索し、これまでに得られている長鎖ポリオール化合物を含め、それらの生物活性の測定と生体内局在の解析を通じ、共生現象における役割を解析することを目的とした研究を行った。沖縄県産のヒラムシより分離した渦鞭毛藻Symbiodinium sp.よりこれまでに得た長鎖ポリオール化合物シンビオジノライドについて、分解反応を行うことで得られた化合物について生物活性(溶血活性)の評価を行い、シンビオジノライドが示す活性との比較を行い、活性発現に必要な部分構造の推定を行った。また、沖縄県産のアカボシツバメガイの共生渦鞭毛藻Durinskia sp.より新たに長鎖ポリオール化合物デュリンスキオールBを単離しその構造を決定した。また、渦鞭毛藻Symbiodinium sp.より分子量1,207の新規長鎖ポリオール化合物シンビオスピロールA,B,Cを単離し構造を決定した。さらに、シンビオスピロールAについて種々の生物活性試験を行い、シンビオスピロールAがプロテインキナーゼCに対する阻害活性を有することを見出した。シンビオスピロールAの生産生物内での局在解析を行うために必要なポリクローナル抗体をウサギを免疫動物として作製し、その抗体価をELISA法により確認した。さらに、結合分子の解明に向けて有効なプローブになりうる、シンビオスピロールAの末端にカルボキシル基を導入した誘導体を合成した。なお、本補助金で吸光マイクロプレートリーダー(日本バイオラッドラボラトリーズモデル680)の購入を計画していたが、名古屋大学農学部で同一機器が使用可能であったため購入しなかった。沖縄県産のヒラムシより分離した渦鞭毛藻Symbiodinium sp.より昨年度単離した新規長鎖ポリオール化合物群シンビオスピロールA,B,CについてプロテインキナーゼCに対する阻害活性の評価を行い、シンビオスピロールA及びCに同等の活性が見出されたもののシンビオスピロールBは他の類縁体よりも活性が弱いことを見出した。この結果からシンビオスピロール類によるPKC阻害活性に必要な構造と部位を明らかにすることができ、今後のさらなる作用機構の解明に役立つ知見を得ることができた。さらに、昨年度作製したシンビオスピロールAのポリクローナル抗体を用い蛍光顕微鏡による渦鞭毛藻内での局在解析を行うための条件検討を行い、局在解析に蛍光抗体法を用いることが有効であることを見出した。生産生物内での長鎖ポリオール化合物の生合成部位、機能部位を明らかにするための新たな手法の確立につながる知見を得た。また、同一渦鞭毛藻Symbiodinium sp.よりこれまでに得た長鎖ポリオール化合物シンビオジノライドについてモルモット回腸を用いた評価を行い、シンビオジノライドがN型カルシウムチャンネルを標的分子としてチャネル開口活性を示すことを解明した。本成果により誘導体の機能評価を行う上での新たな評価指標を得ることができた。また、渦鞭毛藻から新規分子の探索を試み、渦鞭毛藻Amphidiniumsp.より新たに単離したポリオール化合物シンビオポリオールの構造を決定し、本化合物が血管内皮細胞における細胞接着分子VCAM-1の発現阻害活性を示すことを見出した。他にも未同定種渦鞭毛藻よりヒドラジド構造を有する新規低分子化合物ディノヒドラジド類を単離した。これまでに渦鞭毛藻より得られた他の化合物に比べて分子量が小さく、本化合物が長鎖ポリオール化合物の断片を構成する化合物である可能性が示唆されたため、長鎖ポリオール分子の生合成経路及び機能の解明に役立つ新たな化合物を得ることができた。主に共生系で生息する藻類が生産する二次代謝産物を対象として、その共生系での役割・機能の解明を目指した研究に着手した。昨年に引き続き、沖縄県産のヒラムシに共生する渦鞭毛藻より単離した新規長鎖ポリオール化合物シンビオスピロールAのポリクローナル抗体を用い蛍光顕微鏡による渦鞭毛藻内局在部位の解析を試みた。
KAKENHI-PROJECT-20611006
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20611006
共生微細藻類の生産する長鎖ポリオール化合物の共生現象における役割の解明
さらに、このポリクローナル抗体を用いたシンビオスピロール結合分子の解析の条件検討も試みた。また、沖縄県石垣市米原地区で採集した藍藻Lyngbya sp.より新規環状ペプチド、リングビアシクラミドを単離し構造を決定し、本化合物がマウス黒色腫B16細胞に対する強力な細胞毒性を有することを見出した。また、ヒト子宮頸癌HeLaS3細胞に対する選択的な増殖抑制活性を有するサンプルのスクリーニングを試み、沖縄県石垣市平久保地区で採集した種未同定の藍藻より新規チアゾール系化合物を単離し構造を解明した。また、沖縄県糸満市大度地区で採集した藍藻Leptolyngbya sp.より新規22員環マクロリド配糖体を、微量含まれる3種の類縁体とともに単離しその構造を明らかにした。さらに、生物活性の解析により本化合物がアクチン脱重合活性及び腫瘍細胞に対するアポトーシス誘導活性を有することを見出した。本解析結果を踏まえ、アクチン脱重合物質であるアプリロニンA及びミカロライドBについても同様の評価を試み、腫瘍細胞へのアポトーシス誘導活性を有することを見出した。また、新たな生物活性の評価系として抗酸化作用に関連するメラニン生成阻害活性の測定系を構築し、その有用性を植物サンプルから活性物質の抽出を試みることで確認した。本アッセイ系を共生藻抽出物のサンプルにも応用し生物活性の測定に役立てた。
KAKENHI-PROJECT-20611006
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20611006
MRI及び近赤外計測法を用いた脳賦活時の脳循環代謝量測定法の確立
本研究の目的は、磁気共鳴イメージング装置(Magnetic Resonance Imaging,MRI)、及び光トポグラフィー装置を組み合わせることにより、脳賦活時の脳血流量、脳酸素代謝量、脳血液量を高空間分解能・高時間分解能で同時かつ定量的に測定可能なシステムを開発し、これを大脳生理学及び臨床医学に応用することである。平成18年度平成19年度にかけて実施した様々な実験を通し、脳血流量及び脳酸素代謝量を求める方法論に関して確立できた。また、平成17年度に実施した基礎実験における課題として、(a)脳血液量をいかに精度よく測定するか、(b)同時測定を行う場合に異なるモダリティー間のデータ統合の精度の一層の向上、(c)個々の測定値の安定的な取得等があったが、これらに関しても平成18年度平成19年度にかけて実験を行い解決を図った。平成19年度は、平成18年度に引き続き機能的MRIを用いた脳血流量及び脳酸素代謝量の測定実験を実施した。特にVASO法を用いた脳血液量の測定に関して平成18年度に実施した種々の実験にて測定方法を確立した。具体的には、3TMRIのシステムの安定的な稼働、血液酸素化レベル測定シーケンス(BOLD法)及び脳血流量測定シーケンス(FAIR法)と両者の同時収集シーケンス(QUIPSS)の開発、さらに視覚刺激装置及び二酸化炭素負荷装置の安定的なモニタリングを確保しつつ、VASO法による脳血流量測定法の収集法の開発及び改良を継続して行った。平成19年度は、BOLD法及びVASO法による生理学的負荷(視覚刺激)及び二酸化炭素負荷時の時間応答曲線の安定的に収集に関する実験をボランティアを用いて施行し、さらに、これに加えて拡散強調画像によって脳の活動を計測する手法に関しても検討を行った。また、平成19度は、最終年度に当たるためこれまでの成果を学会発表及び論文として公表した。本研究の目的は、磁気共鳴イメージング装置(Magnetic Resonance Imaging,MRI)、及び光トポグラフィー装置を組み合わせることにより、脳賦活時の脳血流量、脳酸素代謝量、脳血液量を高空間分解能・高時間分解能で同時かつ定量的に測定可能なシステムを開発し、これを大脳生理学及び臨床医学に応用することである。平成18年度平成19年度にかけて実施した様々な実験を通し、脳血流量及び脳酸素代謝量を求める方法論に関して確立できた。また、平成17年度に実施した基礎実験における課題として、(a)脳血液量をいかに精度よく測定するか、(b)同時測定を行う場合に異なるモダリティー間のデータ統合の精度の一層の向上、(c)個々の測定値の安定的な取得等があったが、これらに関しても平成18年度平成19年度にかけて実験を行い解決を図った。平成19年度は、平成18年度に引き続き機能的MRIを用いた脳血流量及び脳酸素代謝量の測定実験を実施した。特にVASO法を用いた脳血液量の測定に関して平成18年度に実施した種々の実験にて測定方法を確立した。具体的には、3TMRIのシステムの安定的な稼働、血液酸素化レベル測定シーケンス(BOLD法)及び脳血流量測定シーケンス(FAIR法)と両者の同時収集シーケンス(QUIPSS)の開発、さらに視覚刺激装置及び二酸化炭素負荷装置の安定的なモニタリングを確保しつつ、VASO法による脳血流量測定法の収集法の開発及び改良を継続して行った。平成19年度は、BOLD法及びVASO法による生理学的負荷(視覚刺激)及び二酸化炭素負荷時の時間応答曲線の安定的に収集に関する実験をボランティアを用いて施行し、さらに、これに加えて拡散強調画像によって脳の活動を計測する手法に関しても検討を行った。また、平成19度は、最終年度に当たるためこれまでの成果を学会発表及び論文として公表した。本研究の目的は、磁気共鳴イメージング装置(Magnetic Resonance Imaging, MRI)、及び光トポグラフィー装置を組み合わせることにより、脳賦活時の脳血流量、脳酸素代謝量、脳血液量を高空間分解能・高時間分解能で同時かつ定量的に測定可能なシステムを開発し、これを大脳生理学及び臨床医学に応用することである。過去数年間にわたる様々な実験を通し、脳血流量及び脳酸素代謝量を求める方法論に関してはかなり確立してきた。当面の課題として、(a)脳血液量をどのような方法で求めるか、(b)同時測定を行う場合に異なるモダリティー間のデータをいかに精度良く統合するか、(c)個々の測定値をいかに安定的に取得できるようにするかを計画している。平成17年度は、機能的MRIを用いた脳血流量及び脳酸素代謝量の測定実験、VASO法を用いた脳血液量の測定実験、MRI装置と光トポグラフィー装置と組み合わせた脳血液量の測定実験を個別に行い、各測定法の妥当性を検討し、さらに手技の改良を行うことを目標においた。実際には、3TMRIのシステムの立ち上げ、血液酸素化レベル測定シーケンス(BOLD法)及び脳血流量測定シーケンス(FAIR法)と両者の同時収集シーケンス(QUIPSS)の確立、さらに視覚刺激装置及び二酸化炭素負荷装置のセットアップとそのモニタリング方法を検証し、その上でVASO法による脳血流量測定法の安定的収集法を約半年かけて行った。後半は、BOLD法及びVASO法による生理学的負荷(視覚刺激)及び二酸化炭素負荷時の時間応答曲線を安定的に収集することにつとめた。ほぼセットアップが終わり18年度からはボランティアを使いデータ収集を行っていきたいと考えている。
KAKENHI-PROJECT-17591307
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MRI及び近赤外計測法を用いた脳賦活時の脳循環代謝量測定法の確立
本研究の目的は、磁気共鳴イメージング装置(Magnetic Resonance Imaging, MRI)、及び光トポグラフィー装置を組み合わせることにより、脳賦活時の脳血流量、脳酸素代謝量、脳血液量を高空間分解能・高時間分解能で同時かつ定量的に測定可能なシステムを開発し、これを大脳生理学及び臨床医学に応用することである。平成17年度平成18年度にかけて実施した様々な実験を通し、脳血流量及び脳酸素代謝量を求める方法論に関してはほぼ確立してきた。さらに残る課題として、(a)脳血液量をいかに精度よく測定するか、(b)同時測定を行う場合に異なるモダリティー間のデータ統合の精度の一層の向上、(c)個々の測定値の安定的な取得を目標に平成18年度平成19年度にかけて行っている。平成18年度は、平成17年度に引き続き機能的MRIを用いた脳血流量及び脳酸素代謝量の測定実験を実施した。特にVASO法を用いた脳血液量の測定に関して平成18年度に実施した種々の実験にて測定方法を確立した。具体的には、3TMRIのシステムの安定的な稼働、血液酸素化レベル測定シーケンス(BOLD法)及び脳血流量測定シーケンス(FAIR法)と両者の同時収集シーケンス(QUIPSS)の開発、さらに視覚刺激装置及び二酸化炭素負荷装置の安定的なモニタリングを確保しつつ、VASO法による脳血流量測定法の収集法の開発及び改良を継続して行った。平成18年度前半は、BOLD法及びVASO法による生理学的負荷(視覚刺激)及び二酸化炭素負荷時の時間応答曲線の安定的に収集に関する実験をボランティアを用いて施行し、後半は、これに加えて拡散強調画像によって脳の活動を計測する手法に関しても検討を行ってきた。今年度は、最終年度に当たるためこれまでの成果を論文化して発表していく予定である。本研究の目的は、磁気共鳴イメージング装置(Magnetic Resonance Imaging, MRI)、及び光トポグラフィー装置を組み合わせることにより、脳賦活時の脳血流量、脳酸素代謝量、脳血液量を高空間分解能・高時間分解能で同時かつ定量的に測定可能なシステムを開発し、これを大脳生理学及び臨床医学に応用することである。平成18年度平成19年度にかけて実施した様々な実験を通し、脳血流量及び脳酸素代謝量を求める方法論に関して確立できた。また、前年度のからの課題として、(a)脳血液量をいかに精度よく測定するか、(b)同時測定を行う場合に異なるモダリティー間のデータ統合の精度の一層の向上、(c)個々の測定値の安定的な取得に関しても平成18年度平成19年度にかけて実験を行った。平成19年度は、平成18年度に引き続き機能的MRIを用いた脳血流量及び脳酸素代謝量の測定実験を実施した。特にVASO法を用いた脳血液量の測定に関して平成18年度に実施した種々の実験にて測定方法を確立した。具体的には、3TMRIのシステムの安定的な稼働、血液酸素化レベル測定シーケンス(BOLD法)及び脳血流量測定シーケンス(FAIR法)と両者の同時収集シーケンス(QUIPSS)の開発、さらに視覚刺激装置及び二酸化炭素負荷装置の安定的なモニタリングを確保しつつ、VASO法による脳血流量測定法の収集法の開発及び改良を継続して行った。
KAKENHI-PROJECT-17591307
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疾患特異的iPS細胞を用いた心筋症の病態解明、創薬研究
前年度までに、10名の健常者、30名の家族性心筋症患者からiPS細胞を作成し、効率よく心筋細胞を作成する独自の手法を開発した。本年度はこれらを用いて疾患特異的表現型の探索をすすめた。1拡張型心筋症(DCM)患者iPS由来心筋細胞の表現型解析既知の遺伝子変異(LMNA)を有する家族性拡張型心筋症の患者からiPS細胞を作成し、心筋細胞を誘導して解析を行った。DCMは心筋の収縮力低下を特徴とする症候群であり、そのような表現型異常がiPS由来心筋細胞でも認められるかを確認するため、高速カメラを用いて心筋細胞の動きを定量するSI8000(SONY社ライブセルイメージングシステム)を利用して細胞収縮・弛緩のパラメーターを評価した。健常株とDCM株とを比較したところ、細胞収縮速度・弛緩速度は予想外にDCM心筋の方が健常心筋よりも大きいことが判明した。一方、アドレナリン受容体刺激剤isoproterenolを長時間作用させて比較したところ、健常心筋では収縮速度、弛緩速度がやや増大したのに対し、DCM心筋の方はこれらのパラメーターは減少するという反応性の違いが見られた。2iPS由来心筋細胞の電気生理的特性の測定カルシウム感受性色素、膜電位感受性色素を用いてiPS由来心筋細胞のカルシウムトランジェントおよび膜電位を測定するプロトコルを確立した。まず複数のドナー、クローン由来の健常iPS由来心筋細胞を用いて細胞の電気生理特性を検証したところ、由来となるドナー、クローンが異なった場合にiPS由来心筋細胞の拍動数や活動電位持続時、イオンチャネル阻害剤に対する応答に有意な差が生じることが判明した。ベースラインの状態のパラメーター(拍動数など)によって実験に使用するiPS由来心筋細胞を適切に選別することにより、これらの薬剤応答のクローン間差が軽減することが明らかになった。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。(I) iPS細胞から安定して大量に心筋細胞を得る技術の開発複数クローンの心筋分化誘導を可能とする心筋分化誘導方法の開:iPS細胞から作成した胚様体を浮遊培養する方法を基に、使用する低分子化合物の最適化を行うによって、10^8スケールのiPS細胞からほぼ同様のスケールの心筋細胞を得るプロトコルを確立することに成功し、単一ロットでの大量心筋細胞生産が可能となった。分化誘導初期の外的なWntシグナルの活性化は心筋分化に促進的に作用することが知られていたが、(1)Wntシグナル活性化剤の濃度、(2)投与期間が分化効率に大きな影響を与えることを見出した。Wnt活性化剤の濃度と投与期間を変化させて心筋分化誘導を行い、分化初期の特定の内胚葉遺伝子の発現上昇が最終的な心筋分化効率とよく相関することを見出した。(II)疾患iPS細胞の作成とその表現型解析1肥大型心筋症患者iPS細胞由来心筋細胞を用いた薬剤スクリーニング:本年度中に予定通り家族性心筋症患者30名からiPS細胞を作製した。iPS細胞から分化誘導した心筋細胞をプレートに播種して染色し、細胞面積を測定した結果、肥大型心筋症患者iPS細胞由来心筋細胞は健常者iPS細胞由来心筋細胞よりも有意に細胞面積が大きいことが判明した。市販の化合物ライブラリー約800種類を肥大型心筋症iPS細胞由来心筋細胞に作用させ、細胞面積を縮小させる効果をもつ化合物を複数見出した。現在その機序の解明に向けて、薬剤投与後の遺伝子発現変化や細胞の生理的機能の変化を解析中である。2iPS細胞由来心筋細胞の生理的表現型の解析:カルシウム感受性色素、膜電位感受性色素を用いてiPS細胞由来心筋細胞のカルシウムトランジェントおよび膜電位を測定するプロトコルを確立した。心筋細胞に活動電位時間に影響を与える薬剤を投与し、生体で予想される薬理反応が再現されることを確認した。当初の予定通り、心筋症患者30名からのiPS細胞樹立を行った。さらに、iPS細胞の心筋分化誘導方法を検討し、効率的で再現性高い心筋分化誘導方法を開発することができた。結果、健常者クローン10クローン程度、また疾患患者クローン10クローン程度を用いて心筋分化誘導することが可能となっており、今後の再現性高い表現型解析、創薬スクリーニングの基盤となる体制を築くことができた。年度後半は疾患特異的iPS細胞由来心筋細胞を用い、既報の通り、肥大型心筋症患者から誘導した心筋細胞の細胞面積が大きいことを確認している。実際に市販の化合物ライブラリーで行ったプレスクリーニングでは、マウスの心肥大モデルで心肥大退縮効果が報告されている化合物がヒットしており、我々の構築したスクリーング系の妥当性が示唆される。ただし年度当初予定していた心筋細胞のサブタイプごとの分化誘導は、データの再現性を確認している段階であり、その機序の探索までには進めていない。以上により、これまでは疾患特異的iPS細胞を用いたスクリーニング実験体制の構築に見通しがついたという点である程度は順調な進展があったと考えている。前年度までに、10名の健常者、30名の家族性心筋症患者からiPS細胞を作成し、効率よく心筋細胞を作成する独自の手法を開発した。本年度はこれらを用いて疾患特異的表現型の探索をすすめた。1拡張型心筋症(DCM)患者iPS由来心筋細胞の表現型
KAKENHI-PROJECT-15J05349
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疾患特異的iPS細胞を用いた心筋症の病態解明、創薬研究
解析既知の遺伝子変異(LMNA)を有する家族性拡張型心筋症の患者からiPS細胞を作成し、心筋細胞を誘導して解析を行った。DCMは心筋の収縮力低下を特徴とする症候群であり、そのような表現型異常がiPS由来心筋細胞でも認められるかを確認するため、高速カメラを用いて心筋細胞の動きを定量するSI8000(SONY社ライブセルイメージングシステム)を利用して細胞収縮・弛緩のパラメーターを評価した。健常株とDCM株とを比較したところ、細胞収縮速度・弛緩速度は予想外にDCM心筋の方が健常心筋よりも大きいことが判明した。一方、アドレナリン受容体刺激剤isoproterenolを長時間作用させて比較したところ、健常心筋では収縮速度、弛緩速度がやや増大したのに対し、DCM心筋の方はこれらのパラメーターは減少するという反応性の違いが見られた。2iPS由来心筋細胞の電気生理的特性の測定カルシウム感受性色素、膜電位感受性色素を用いてiPS由来心筋細胞のカルシウムトランジェントおよび膜電位を測定するプロトコルを確立した。まず複数のドナー、クローン由来の健常iPS由来心筋細胞を用いて細胞の電気生理特性を検証したところ、由来となるドナー、クローンが異なった場合にiPS由来心筋細胞の拍動数や活動電位持続時、イオンチャネル阻害剤に対する応答に有意な差が生じることが判明した。ベースラインの状態のパラメーター(拍動数など)によって実験に使用するiPS由来心筋細胞を適切に選別することにより、これらの薬剤応答のクローン間差が軽減することが明らかになった。向上に努める。分化誘導した細胞への非心筋細胞混入が、実験再現性を低下させると考えられ、分化誘導した細胞集団から心筋細胞のみを精製する技術を開発中である。現在iPS細胞由来心筋細胞の生理的表現型(細胞膜電位、カルシウムトランジェント)を測定する実験を行っているが、心筋細胞精製後にもiPS細胞由来心筋細胞の生理的特性は由来となる個体ごと、クローンごと、分化誘導回ごとによって大きく異なっている。現在、iPS細胞由来心筋細胞の生理的表現型にどの程度の個体間差があるかを検討しており、個体感差を維持したままクローン間差や分化誘導回による差をなるべく小さくする実験手法を探索中である。これによってよりS/N比の高い、心筋症患者特異的な表現型を見出すことを目的とする。疾患患者に特異的な生理的表現型が見出された場合、再度新規の化合物スクリーニングを試みる見込みである。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15J05349
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自然エネルギー利用を想定したアンモニアの常温電解合成法の開発
アンモニア合成の報告例があり、燃料電池研究で十分に使用実績のあるNafionを電解質膜および接着剤(イオノマー・バインダー)として燃料電池と同様の膜電極接合体(MEA)を作成し、水素または水から生成した水素イオン(液相)と窒素(気相)からアンモニアの合成を検討した。Nafion膜と市販の燃料電池用電極シートを用いてMEAを作成し、硝酸イオンを含む溶液と水素ガスを装置内の各電極部に供給して電解実験を行った。電解実験におけるセル内部の条件を想定したサイクリックボルタモグラム測定より、条件にもよるが-0.4V-1.0V vs.RHEの電位において、水素生成が主反応とならない還元反応が生じているという結果が得られた。これは実際の反応において印加電圧0.8Vにおいて最も硝酸イオンの減少が顕著であった点に符合するため、観察された還元電流が硝酸の反応に用いられたと考えられる。硝酸電解の条件を種々変化させて実施したところ、硝酸還元の電解効率は84%まで向上したが、アンモニアの生成効率は最大で3%と低く、生成したアンモニアが窒素または硝酸イオンに酸化されている可能性を示唆している。窒素・水素ガスを供給した反応系はアンモニア生成が確認されているため、窒素ー水素ガスを用いた反応系を用いて、同様のMEAによる電解反応を検討する。窒素ー水素ガスを供給した系を実施するための装置に問題があり、サブプランであった電解液ーガス供給系における実験を先行して実施した。どちらも電極部分の構造はほとんど同じであり、研究の進捗自体に問題はないが、装置の修理対応が遅れており、本来の目的であるガス系における実験が遅れている。装置が本来の目的(燃料電池評価装置)として動作することは確認済であり、速やかに目的の系に移行することで当初の目的は達成可能と考えられる。膜電極接合体(MEA)による電解実験には問題はないため、市販電極に変わる触媒金属担持電極の作成と、水素および窒素ガスを供給するガス供給系における実験を進める。また、研究報告のあるイオン液体やチタン系触媒に関する調査を進め、本系への適用を検討する。アンモニア合成の報告例があり、燃料電池研究で十分に使用実績のあるNafionを電解質膜および接着剤(イオノマー・バインダー)として燃料電池と同様の膜電極接合体(MEA)を作成し、水素または水から生成した水素イオン(液相)と窒素(気相)からアンモニアの合成を検討した。Nafion膜と市販の燃料電池用電極シートを用いてMEAを作成し、硝酸イオンを含む溶液と水素ガスを装置内の各電極部に供給して電解実験を行った。事前のLSV測定より、+0.4V vsRHE近傍にて硝酸イオンの還元反応が生じることが確認された。そこでpH7.8、硝酸イオン濃度1.0×10^(-4) mol/Lの溶液を1.0 ml/minで系内に供給し、電解実験を行った。溶液は循環させ、循環後の溶液中の硝酸濃度およびアンモニア濃度を測定した。その結果、印加電位を+に振ることで硝酸イオンの減少量は増加し、+0.8Vの印加電位において、硝酸イオンは約20%減少することが確認された。アンモニアは検出されなかった。改修を行った本装置による電解については問題ないことが示された。アンモニアが検出されていないのは、電極に白金電極を使用しているため、水素生成および硝酸還元による窒素生成が優先されているためと考えられる。窒素・水素ガスを供給した反応系はアンモニア生成が確認されているため、ガス供給系への移行を速やかに行い、MEAの作製条件によるMEAの構造への影響と、アンモニア生成効率への影響を解析し、MEA内部における物質移動等の観点からのメカニズム解析を検討する予定である。ガス供給系を目的とした装置改修が遅れたため、サブプランであった電解液ーガス供給系における実験を先行して実施した。どちらも電極部分の構造はほとんど同じであるため、燃料電池評価装置を改修して電解装置として行った実験において、電解装置として問題なく動作していることが確認されたため、大きな問題はないと考えられる。また、硝酸イオンおよびアンモニアの検出についても問題なく行われた。暫定的に使用した白金電極はアンモニア生成には不利であることは既存研究より判明しているため、結果については予想された範囲内である。アンモニア合成の報告例があり、燃料電池研究で十分に使用実績のあるNafionを電解質膜および接着剤(イオノマー・バインダー)として燃料電池と同様の膜電極接合体(MEA)を作成し、水素または水から生成した水素イオン(液相)と窒素(気相)からアンモニアの合成を検討した。Nafion膜と市販の燃料電池用電極シートを用いてMEAを作成し、硝酸イオンを含む溶液と水素ガスを装置内の各電極部に供給して電解実験を行った。電解実験におけるセル内部の条件を想定したサイクリックボルタモグラム測定より、条件にもよるが-0.4V-1.0V vs.RHEの電位において、水素生成が主反応とならない還元反応が生じているという結果が得られた。これは実際の反応において印加電圧0.8Vにおいて最も硝酸イオンの減少が顕著であった点に符合するため、観察された還元電流が硝酸の反応に用いられたと考えられる。硝酸電解の条件を種々変化させて実施したところ、硝酸還元の電解効率は84%まで向上したが、アンモニアの生成効率は最大で3%と低く、生成したアンモニアが窒素または硝酸イオンに酸化されている可能性を示唆している。窒素・水素ガスを供給した反応系はアンモニア生成が確認されているため、窒素ー水素ガスを用いた反応系を用いて、同様のMEAによる電解反応を検討する。
KAKENHI-PROJECT-17K07029
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K07029
自然エネルギー利用を想定したアンモニアの常温電解合成法の開発
窒素ー水素ガスを供給した系を実施するための装置に問題があり、サブプランであった電解液ーガス供給系における実験を先行して実施した。どちらも電極部分の構造はほとんど同じであり、研究の進捗自体に問題はないが、装置の修理対応が遅れており、本来の目的であるガス系における実験が遅れている。装置が本来の目的(燃料電池評価装置)として動作することは確認済であり、速やかに目的の系に移行することで当初の目的は達成可能と考えられる。膜電極接合体(MEA)による電解実験には問題はないため、市販電極に変わる触媒金属担持電極の作成と、水素および窒素ガスを供給するガス供給系における実験を進める。また、研究報告のあるイオン液体やチタン系触媒に関する調査を進め、本系への適用を検討する。膜電極接合体(MEA)による電解実験には問題はないため、市販電極に変わる触媒金属担持電極の作成と、水素および窒素ガスを供給するガス供給系における実験を進める。また、研究報告のあるイオン液体やチタン系触媒に関する調査を進め、本系への適用を検討する。交付決定額が予定額より少なかったため、購入予定としていたイオンクロマトグラフィーの購入を見直し、吸光光度法による定量に変更した。その際に汎用性のある簡易測定器を選定したため、次年度使用額が生じた。この変更に伴い、測定時に専用の試薬が必要となるため、生じた次年度使用額は測定時に必要となる試薬購入費に充てる。実験に使用する装置が正常に動作せず、その対応に時間を要した。そのため、実験が遅延したことにより消耗品等の購入量が少なくなり、次年度使用額が生じた。生じた次年度使用額は実施予定だった実験に使用する。
KAKENHI-PROJECT-17K07029
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脳弓下器官へ入る神経の起始,神経化学物質と標的特異性に関する形態学的解析
脳弓下器官への入力神経について,脳弓下器官へ投射する神経の起始領域およびそれに含まれる神経化学物質,脳弓下器官へ投射する神経の標的構造およびその神経終末が持つ神経化学物質,の各項目を明らかにするために,順行性および逆行性標識法と免疫組織化学とを組み合わせて研究を進めてきた.この研究の基礎となる脳弓下器官に存在する神経終末の種類とその標的要素についての研究では,アミン性終末・コリン性終末・多種の神経ペプタイド免疫陽性終末が見られ,このうちセロトニン,Met-エンケファリン8(mE8),ガラニン(GAL),ニューロテンシン,LHRH免疫陽性終末は脳弓下器官の神経細胞体や樹状突起にシナプスをしていたほか,血管周囲やグリア細胞にも隣接していることを明らかにした.神経化学物質を含む投射路の起始領域を調べた実験では,mE8が前腹側室周囲核,前腹背側周囲核,視索前野および視床下部の室周囲部,正中視索前核,視床下部背内側核,視床下部弓状核,内側脚傍核,孤束核から,GALが内側視索前核,室傍刻小細胞性内側核,視床下部の室周囲部,視床下部背内側核,視床下部弓状核から,ボンベシンが室傍核小細胞性内側核,吻側延髄腹外側部からニューロペプタイドYが視床下部弓状核,孤束核,延髄腹外側部から,コリン性ニューロンが内側中隔核や対角体核から投射していることを明らかにした.正中視索前核は多くの投射を持ち,脳弓下器官では神経細胞体や樹状突起にシナプスをしていたほか,血管周囲やグリア細胞にも隣接してした.主要な投射先である室傍核へ投射する脳弓下器官の神経細胞と,脳弓下器官への多くの投射が見られる正中視索前核,脚傍核,縫線核などからの投射線維との関係についての研究は大変興味深いものであり,今後の検討課題と考えている.脳弓下器官への入力神経について,脳弓下器官へ投射する神経の起始領域およびそれに含まれる神経化学物質,脳弓下器官へ投射する神経の標的構造およびその神経終末が持つ神経化学物質,の各項目を明らかにするために,順行性および逆行性標識法と免疫組織化学とを組み合わせて研究を進めてきた.この研究の基礎となる脳弓下器官に存在する神経終末の種類とその標的要素についての研究では,アミン性終末・コリン性終末・多種の神経ペプタイド免疫陽性終末が見られ,このうちセロトニン,Met-エンケファリン8(mE8),ガラニン(GAL),ニューロテンシン,LHRH免疫陽性終末は脳弓下器官の神経細胞体や樹状突起にシナプスをしていたほか,血管周囲やグリア細胞にも隣接していることを明らかにした.神経化学物質を含む投射路の起始領域を調べた実験では,mE8が前腹側室周囲核,前腹背側周囲核,視索前野および視床下部の室周囲部,正中視索前核,視床下部背内側核,視床下部弓状核,内側脚傍核,孤束核から,GALが内側視索前核,室傍刻小細胞性内側核,視床下部の室周囲部,視床下部背内側核,視床下部弓状核から,ボンベシンが室傍核小細胞性内側核,吻側延髄腹外側部からニューロペプタイドYが視床下部弓状核,孤束核,延髄腹外側部から,コリン性ニューロンが内側中隔核や対角体核から投射していることを明らかにした.正中視索前核は多くの投射を持ち,脳弓下器官では神経細胞体や樹状突起にシナプスをしていたほか,血管周囲やグリア細胞にも隣接してした.主要な投射先である室傍核へ投射する脳弓下器官の神経細胞と,脳弓下器官への多くの投射が見られる正中視索前核,脚傍核,縫線核などからの投射線維との関係についての研究は大変興味深いものであり,今後の検討課題と考えている.脳弓下器官への入力神経について,(1)脳弓下器官へ投射する神経の起始領域,(2)その投射ニューロンに含まれる神経化学物質,(3)同定された起始領域から脳弓下器官へ投射する神経の標的構造,(4)その神経終末が持つ神経化学物質,(5)神経終末の標的が神経要素ならば,その脳弓下器官ニューロンの支配領域,について,本年度は(1)から(4)を重点的に行う計画であった.(1)について,脳弓下器官への逆行性トレーサ注入後,視索前域から延髄までの広い範囲にわたり多くの領域に標識細胞が見られた.これら起始領域と脳弓下器官における免疫陽性反応を比較したのち,次年度以降に(2)を行う.(3)および(4)について,起始領域のひとつである正中視索前核に順行性トレーサを注入し電子顕微鏡観察すると,入力神経終末は脳弓下器官の神経細胞体や樹状突起にシナプスをしていたほか,血管周囲やグリア細胞にも隣接していた.また,LHRH, neurotensin免疫陽性終末も,各要素に対して同様の配置関係にあった.結果の一部は,第108回日本解剖学会総会,第26回日本神経科学学会,3rd International Society for Autonomic Neuroscienceで発表予定である.脳弓下器官への入力神経について,(1)脳弓下器官へ投射する神経の起始領域,(2)
KAKENHI-PROJECT-14580771
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14580771
脳弓下器官へ入る神経の起始,神経化学物質と標的特異性に関する形態学的解析
その投射ニューロンに含まれる神経化学物質,(3)同定された起始領域から脳弓下器官へ投射する神経の標的構造,(4)その神経終末が持つ神経化学物質,(5)神経終末の標的が神経要素ならば,その脳弓下器官ニューロンの支配領域,の各項目を明らかにすることにより研究を進めている.昨年度および本年度は,この研究の基礎となる脳弓下器官に存在する神経終末の種類や(1),(2),(3),(4)の一部についての結果を得た.脳弓下器官にはアミン性終末・アセチルコリン性終末・多種の神経ペプタイド免疫陽性終末が存在しており,このうちLHRHやneurotensin免疫陽性終末は脳弓下器官の神経細胞体や樹状突起にシナプスをしていた.また脳弓下器官は中枢神経系の多くの部位から投射を受けており,そのうち正中視索前核からの投射線維は,同様に神経細胞体や樹状突起にシナプスをしていたほか,血管周囲やグリア細胞にも隣接していた.さらに,内側中隔核や対角体核のアセチルコリン性神経細胞の一部が脳弓下器官に投射していた.来年度は,(1)から(4)についてさらに対象を増やして研究を進めるとともに,(5)についての解析も行う.脳弓下器官への入力神経について,脳弓下器官へ投射する神経の起始領域およびそれに含まれる神経化学物質,脳弓下器官へ投射する神経の標的構造およびその神経終末が持つ神経化学物質,標的となる脳弓下器官ニューロンの支配領域,の各項目を明らかにすることにより研究を進めてきた.昨年度までに,この研究の基礎となる脳弓下器官に存在する神経終末の種類や,上記各項目について部分的に結果を得た。脳弓下器官にはアミン性終末・コリン性終末・多種の神経ペプタイド免疫陽性終末が見られ,このうちLHRHやneuorotensin免疫陽性終末は脳弓下器官の神経細胞体や樹状突起にシナプスをしていた.また,内側中隔核や対角体核のアセチルコリン性神経細胞の一部,弓状核,青斑核,孤束核,延髄腹外側部のneuropeptide Y免疫陽性神経細胞の一部が脳弓下器官に投射していた。今年度は起姶領域について,さらに知見を得た.Bombesin免疫陽性終末は青斑核,延髄腹外側部から,galanin免疫陽性終末は視索前域・視床下部の室周囲部,内側視索前核,背内側核,弓状核,青斑核などから投射しており,これは来年度の日本解剖学会総会および日本神経科学学会で発表する.Substance P, Met-enkephalin 8, somatostatin, neurotensinについても今後詳細を検討し学会あるいは学術雑誌に発表する.上に述べたように,脳弓下器官へ投射する神経細胞は脳の全般に見られるが,密集して見られたのは正中視索前核だけであった.その投射線維は神経細胞体や樹状突起にシナプスをしていたほか,血管周囲やグリア細胞にも隣接していることを昨年度までに明らかにしていた.脳弓下器官からの主要な投射先である室傍核へ投射する神経細胞と正中視索前核からの投射線維との関係を調べたが,両者間のシナプスはこれまで見いだされなかった.この両者の関係は,これとは異なる起始領域と投射先とを持つ神経間の関係と共に,今後の検討課題と考えている.
KAKENHI-PROJECT-14580771
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ベンゾジアゼピンによる感染症予後悪化機構の解明
TSPOシグナルを介してベンゾジアゼピンが免疫抑制作用を発揮することを培養細胞であるTHP-1細胞を用いて解析を行った。LPSでTHP-1を刺激するとIL-6やIFN-gammaを産生し、CD86といった表面抗原の発現も増加する。ここにベンゾジアゼピンの代表であるミダゾラムを作用させるとLPSによるこれらの分子の発現の抑制が起こる。ミダゾラムの抑制作用にミダゾラムの作用分子のTSPOとGABAのどちらが関わっているのかを探索する目的で、LPSによるTHP-1の活性化作用に対する複数のTSPOリガンドとGABAリガンドの影響を評価した。GABAリガンドではこの抑制作用が発生しないのに対して複数のTSPOリガンドでLPSによるTHP-1細胞の活性化の抑制作用が認められた。このことからベンゾジアゼピンの抑制作用にはどちらかといえばTSPOが関わっていることが示唆された。次にミダゾラムの作用にTSPOが関わっていることを解析するために遺伝学的アプローチを行った。すなわちTSPOの発現を減少させたTHP-1細胞の作成とTSPOの発現を増加させたTHP-1細胞を作成してこれらの細胞に対して同様の実験系を用いて解析を行った。THP-1にTSPOのsiRNAを導入しtSPOの発現を抑制した細胞でミダゾラムの作用を解析したところミダゾラムの抑制作用は損なわれた。次にTSPOを過剰発現したTHP-1細胞を作成するとミダゾラムの効果は増幅された。これらの結果からミダゾラムのLPSによるTHP-1細胞の活性化の抑制作用はTSPOが関わっていることが示されたベンゾジアゼピン系薬物のTSPO (translocator protein)を介したシグナル伝達の生体内での意義を検討するために各種TSPOリガンドに対する免疫系の応答を解析した。TSPOリガンドとしてEtifoxineとFGIN1-27に対する樹状細胞の免疫応答を解析した。対象としてマウスの骨髄からGM-CSFを用いて誘導する樹状細胞(以下BMDCと略)を用いて実験を行なった。BMDCのLPSによる成熟分化過程に対するこれら2種類のTSPOリガンドの影響を評価した。通常はBMDCはLPSによって細胞状のCD80, CD86といった副刺激分子や組織適合抗原複合体の発現を上昇させ、さらにTh1を誘導するサイトカインであるインターロイキン12の分泌が亢進する。これらの過程がEtifoxineやFGIN1-27といったTSPOリガンドの存在によって抑制されることが示された。これはすなわちTSPOリガンドは樹状細胞の分化成熟を抑制したことを示唆している。次にこれらの変化の動物個体レベルの免疫応答に対する影響を調べるために、樹状細胞の投与によって生じる接触過敏症モデルを用いて評価した。このモデルはハプテンを取り込ませた樹状細胞をマウスを投与しマウスを感作させ、同じ抗原性を持つハプテンで誘発すると耳介が腫脹するモデルである。樹状細胞の分化成熟過程でTSPOリガンドを存在させておくと、樹状細胞の投与によって生じる接触過敏症の症状は軽減された。このモデルはTh1による免疫応答が解明されていることから、本研究の結果はTSPOリガンドは樹状細胞の成熟分化を抑制しTh1型の免疫応答の発生を抑制することが強く示唆された本研究の仮説は、TSPOは免疫系の活性化のnegative regilatorであって免疫系の活性化に対して負の制御因子である、というものであった。本年度ベンゾジアゼピン系薬物の動物個体レベルへの影響を解析し、複数の薬物で同様の結果をえたことは、TSPOの免疫系における役割に関する仮説が正しいことを強く示唆している生体内でのtransloctor protein (TSPO)の作用の解析を目的として、免疫系で重要な制御細胞である樹状細胞への影響と、免疫疾患モデルである接触性過敏症に対するTSPOリガンドの効果の検証を行った。TSPOリガンドはEtifoxine (以下ETXと略)を用いた。樹状細胞にETXを作用させると樹状細胞の成熟と活性化が抑制された。LPSによる樹状細胞での副刺激分子の発現上昇やTh1を誘導するサイトカインであるIL-12の分泌増加がETXによって抑制された。次にETXによって変化した樹状細胞によるリンパ球の活性化への影響を評価した。樹状細胞によるリンパ球の増殖刺激能とリンパ球のTh1への分化刺激能をリンパ球からのIFN-γの産生によって評価した。ETXは樹状細胞によるリンパ球の活性化とTh1への分化を抑制した。次にこのETXによる樹状細胞の形質変化が動物個体レベルでの免疫応答に影響を与えるのか否かを樹状細胞の投与によって生じる接触過敏反応によって評価した。ハプテンを取り込ませた樹状細胞によって動物を免疫した後、皮膚に同じパプテンをチャレンジすると接触過敏症が誘導される。免疫する樹状細胞をあらかじめETXで処理しておくと接触過敏反応の発生が抑制された。これらの結果はTSPOリガンドであるETXは樹状細胞の成熟を抑制し、樹状細胞によるリンパ球のTh1への分化刺激能を抑制し、樹状細胞の形質変化は動物個体レベルでの免疫応答にも影響を与えることがしめされた。次にETXの炎症モデルへの治療効果を接触過敏症モデルを用いて検証した。ハプテンを皮膚に塗布しその数日後に皮膚に同じハプテンを投与すると皮膚は浮腫を呈するのが接触過敏症モデルである。ハプテンによる感作時にETXを全身投与すると接触過敏症の発症を防止できた。
KAKENHI-PROJECT-16K10958
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ベンゾジアゼピンによる感染症予後悪化機構の解明
この結果はETXの免疫疾患の制御への応用の可能性を示唆するTranslocator protein (TSPO)の生体内での作用をTSPOリガンドを用いて免疫担当細胞およびそれらによって生じるin vitroでの免疫応答、加えて免疫疾患モデルを用いて動物個体レベルで観察される免疫応答によって評価を行っている。これらからTSPOリガンドはTh型の免疫応答の誘導を抑制する可能性が示唆されている。Th1型の免疫応答は感染症における免疫防御の一部を担っており、TSPOリガンドがこの応答を抑制する可能性は感染症におけるTSPOひいてはベンゾジアゼピン系の影響の可能性を示唆している。本研究課題で目的としている感染症におけるベンゾジアゼピンによる免疫悪化作用の根底にあると考えているTSPOを介した免疫系への抑制作用の一端を明らかにしつつあると考えているTSPOシグナルを介してベンゾジアゼピンが免疫抑制作用を発揮することを培養細胞であるTHP-1細胞を用いて解析を行った。LPSでTHP-1を刺激するとIL-6やIFN-gammaを産生し、CD86といった表面抗原の発現も増加する。ここにベンゾジアゼピンの代表であるミダゾラムを作用させるとLPSによるこれらの分子の発現の抑制が起こる。ミダゾラムの抑制作用にミダゾラムの作用分子のTSPOとGABAのどちらが関わっているのかを探索する目的で、LPSによるTHP-1の活性化作用に対する複数のTSPOリガンドとGABAリガンドの影響を評価した。GABAリガンドではこの抑制作用が発生しないのに対して複数のTSPOリガンドでLPSによるTHP-1細胞の活性化の抑制作用が認められた。このことからベンゾジアゼピンの抑制作用にはどちらかといえばTSPOが関わっていることが示唆された。次にミダゾラムの作用にTSPOが関わっていることを解析するために遺伝学的アプローチを行った。すなわちTSPOの発現を減少させたTHP-1細胞の作成とTSPOの発現を増加させたTHP-1細胞を作成してこれらの細胞に対して同様の実験系を用いて解析を行った。THP-1にTSPOのsiRNAを導入しtSPOの発現を抑制した細胞でミダゾラムの作用を解析したところミダゾラムの抑制作用は損なわれた。次にTSPOを過剰発現したTHP-1細胞を作成するとミダゾラムの効果は増幅された。これらの結果からミダゾラムのLPSによるTHP-1細胞の活性化の抑制作用はTSPOが関わっていることが示された本年度は樹状細胞の投与によって生じる接触過敏症モデルのTSPOリガンドによる抑制することができた。まずこの抑制過程の解析を詳細に行う。耳介局所に生じている免疫応答を対照群とTSPOリガンド処理群の間で比較する。まず局所のリンパ節のリンパ球の活性化の状況を比較検討する。さらに耳介に生じているTh1型免疫応答の程度をRT-PCRを用いて検討する複数のTSPOリガンドで樹状細胞への作用を確認しさらに接触過敏症を抑制できるのかを確認する。複数のリガンドで同様の結果が得れれればTSPOの意義がより確認される。またTSPOリガンドの投与の接触過敏症モデルへの効果の原因をモデルのより詳細な解析を通じて追求する予定である。
KAKENHI-PROJECT-16K10958
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垂直的制限規制の理論的基礎の解明
垂直的制限とりわけ垂直的非価格制限に対する規制基準は独占禁止法の規制の中でも複雑でわかりにくい分野であった。EUと米国のようにまったく対立的な規制を行っている例があり、それらの法域内でもいまだ議論は収斂していない。にもかかわらず、近時これに該当する新たな慣行が増加しており、それにどう対処するのか不透明な状況がある。これまでの規制のわかりにくさは、垂直的非価格制限が競争を害する作用機序(Theory of harm)を単に市場閉鎖型と価格維持型に分類するだけで、その内容を詳細に分析しないことにあった。本研究はこれを詳しく分析することを目的とする。わが国の法律家では、市場閉鎖の評価を残存する取引先の存在にもっぱら注目するという1970年台まで有力だった立場が今なお影響力をもっている。しかし、これだけで反競争効果が根拠づけられないことはよく知られている。本研究では競争者や参入者のコストの引き上げにより競争的抑制を低下させる点に規制根拠があることを示し、それが可能になるための理論的条件を検討した。また、従来の主要事例の多くはそれら諸条件を充たした事案であることを確認した。他方、代替的な取引先の存否を形式的に判断しただけのケースでは過剰規制・過小規制の問題が発生していることも確認した。さらに、市場閉鎖型のバリエーションとして競争相手の競争インセンティブを低下させることにより、競争的抑制を低下させる理論的的条件を明らかにし、これまでの事案を確認した。価格維持型については、これは競争回避の問題であることを指摘したのち、協調促進的慣行、競争回避コミットメントの問題、競争緩和(双方的競争インセンティブ低下)といた作用機序が認められることを指摘した。その上で、伝統的にブランド内競争の制限として規制されながら、学説が規制根拠を説明できなかった事例を理論的に正当化した。垂直的価格制限について市場画定なしで反競争効果の判断が可能であるとしている、わが国独禁法及びEU競争法の先例等を素材に、その根拠を検討した。EU法では目的における制限という条文上の根拠を持つが、その判断の実質はブランド内価格競争の強い制限が協調促進のみならず、競争の緩和をもたらすという点にある。これは、わが国でブランド内価格競争の直接的制限が価格維持効果を持つという論拠に対応する。これに対して、米国ではブランド内競争制限効果は川上企業にとってはそれ自体としては不利益であり、ブランド間価格競争を向上させる目的がないと合理的でないという立場から、この効果を軽視する主張が有力である。しかし、ブランド間価格競争を向上させずに価格維持効果が有利となる場合が広範に存在することを、特に川下企業がマルチブランドであるケースなどから明らかにした。以上の分析から、いわゆる再販のみならず、低価格販売を理由とする取引先制限などの従来の流通・取引慣行ガイドラインの立場が支持されることを示した。その上で例外的にブランド間競争を促進する場合に、どのような比較衡量をすれば良いのかを検討し、流通・取引慣行ガイドラインの改訂作業で明示されたブランド間競争の促進の体系的な整序を試みた。その上、これに二重限界化問題の解消も含まれるか否かについて検討した。これを否定する学説がガイドライン及び公取実務の誤読に起因することを明らかにした。また、流通・取引慣行について近時問題となっているプラットフォーム事業のような伝統的なサプライチェーンでは補足困難な業態の事業においてどのような形で価格維持効果が発生するのかについての予備的研究も行った。本年度に予定していた課題についての解明は行い、筆者も参画した流通・取引慣行ガイドラインの改訂にかかわる公取委の研究会でも研究成果の一部を示すことにより、今後の実務に一定の影響を与えた。さらに、これらの研究会参加を通じて、流通・取引慣行の現在の焦点がデジタルオンライン市場、特にプラットフォーム産業にあることを確認し、当初予定より広がった研究テーマの存在を見出した。その上で、プラットフォーム産業の分析の準備作業としてそこでの市場画定の在り方について、武田邦宣大阪大学教授との共著論文で検討を加えた。プラットフォーム市場における市場画定の解明はわが国でははじめての取り組みであり、予想以上の成果を実現できそうである。垂直的非価格制限の反競争効果は競争回避型と競争排除型に分かれる。競争排除型は排他条件付取引を典型とする「市場閉鎖」によって反競争効果をもたらすものである。市場閉鎖とは顧客・原材料供給者などの自己の取引相手をいわば囲い込み、競争者に利用できないにすることにより、市場アクセスを制限することにより競争的制約を低下させる効果であるが、かつてはある程度量的に規模が大きければ当然にこれが認められるという立場も有力であった。他方、1970年代を境に取引相手のインセンティブを考慮するとそのような効果は存在し得ないというシカゴ学派の批判が有力化した。その後の理論的展開は川上市場と川下市場の戦略的な相互作用や市場環境、排他戦略の効果、拘束の程度などについての様々な前提条件で反競争効果が様々な形で現れることが明らかになった。本年度の研究では、まずこれらの経済理論を網羅的にサーベイし、理論が指摘する様々な要因は具体的なケースで競争者ないし潜在的な競争者へのインパクト、簡単に言えば費用上の不利益を押しつけることができるか否かについての評価や、不利益を押しつけることが反競争的な利益をもたらす環境であるか否か、すなわち排除の能力とインセンティブを見る際の各種要因として整理可能であることを示した。その上で、欧米及びわが国の規制例を検討した。
KAKENHI-PROJECT-16K03344
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垂直的制限規制の理論的基礎の解明
それらの規制例では各要素の総合考慮がなされているため、それらがどのような理路的な機序で説明されたかを明示しないものが少なくない。しかし、具体的な事件ではそれらの理論と整合的に理解できる可能性が高く、上述の評価の道筋を規制の基準の前提としての、Theory of harmとして提示できることを明らかにした。また、このプロセスでわが国では十分には主題化されなかった「競争の緩和」と表現される反競争効果の特殊性とその発生機序の分類を行った。当初予定ではブランド内競争制限の問題は最終年度の課題であったが、本年度既に取りかかった「競争の緩和」の問題はこれを理解する枠組みとして有効なものであるというが分かり、最終年度の課題のかなりの部分を既に進めることができた。垂直的制限とりわけ垂直的非価格制限に対する規制基準は独占禁止法の規制の中でも複雑でわかりにくい分野であった。EUと米国のようにまったく対立的な規制を行っている例があり、それらの法域内でもいまだ議論は収斂していない。にもかかわらず、近時これに該当する新たな慣行が増加しており、それにどう対処するのか不透明な状況がある。これまでの規制のわかりにくさは、垂直的非価格制限が競争を害する作用機序(Theory of harm)を単に市場閉鎖型と価格維持型に分類するだけで、その内容を詳細に分析しないことにあった。本研究はこれを詳しく分析することを目的とする。わが国の法律家では、市場閉鎖の評価を残存する取引先の存在にもっぱら注目するという1970年台まで有力だった立場が今なお影響力をもっている。しかし、これだけで反競争効果が根拠づけられないことはよく知られている。本研究では競争者や参入者のコストの引き上げにより競争的抑制を低下させる点に規制根拠があることを示し、それが可能になるための理論的条件を検討した。また、従来の主要事例の多くはそれら諸条件を充たした事案であることを確認した。他方、代替的な取引先の存否を形式的に判断しただけのケースでは過剰規制・過小規制の問題が発生していることも確認した。さらに、市場閉鎖型のバリエーションとして競争相手の競争インセンティブを低下させることにより、競争的抑制を低下させる理論的的条件を明らかにし、これまでの事案を確認した。価格維持型については、これは競争回避の問題であることを指摘したのち、協調促進的慣行、競争回避コミットメントの問題、競争緩和(双方的競争インセンティブ低下)といた作用機序が認められることを指摘した。その上で、伝統的にブランド内競争の制限として規制されながら、学説が規制根拠を説明できなかった事例を理論的に正当化した。本年度は当初予定通り、垂直的非価格制限における反競争効果の解明を市場閉鎖効果を中心に行う予定である。筆者も参加した昨年度の流通・取引慣行ガイドラインの検討作業で、市場閉鎖効果についての判断枠組が従来よりも精緻なものとなった。しかし、判断枠組みの比較法的考察や、基本的な枠組みで捉えにくい事例の位置づけ、さらにその理論的根拠はかならずしも明らかではない。
KAKENHI-PROJECT-16K03344
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K03344
PGKとHUMARA assayを用いた、異型成母斑におけるクローナリティーの検討
初年度(平成11年度)の研究実績HUMARAassayにおいて,小型ゲルで泳動後,ナイロンメンブレンにブロッティングすることなくゲルを直接染色するという簡便な方法を確立した.新しい方法:PCR産物を10%アクリルアミド(アクリルアミド:ビスアクリルアミド=19:1)で電気泳動し,SYBR Gold(Molecular Probes,Oregon)を用いてゲルを染色後,波長254nmの紫外線照射下撮影する.平成12年度の研究実績方法:PGK assayとHUMARAassayを用いてこれまでクローナリティーの検討がなされていない,スピッツ母斑,青色母斑および異型性母斑について検索した.結果:*スピッツ母斑と青色母斑は,ポリクローナルであった.*異型性母斑は,モノクローナルであった.考察:異型性母斑は当初,悪性黒色腫の前癌状態として報告されたが,最近では通常型母斑の一型であるに過ぎず,悪性化とは無関係であると見なされている.今回,異型性母斑がモノクローナルであったという事実は,異型性母斑が通常の母斑のごとく奇形的疾患ではなく,腫瘍性疾患であることを示唆しうる.この結果は,悪性黒色腫の癌化過程を解明する上で,重要なインパクトを与えると考える.目的:PGK assayとHUMARAassayを利用して,異形成母斑のクローナリティーを解明する.これまでHUMARAassayは,大型アクリルアミドゲルで電気泳動後,DNAをナイロン膜へ転写し化学発光で検出するという煩雑な方法を用いていた.そこでまず本年度は,小型ゲルで泳動後,ゲルを直接染色するという簡便な方法の導入を検討した.方法:電気泳動装置として,ミニゲル電気泳動装置を使用した.HUMARAPCR産物を10%アクリルアミド(アクリルアミド:ビスアクリルアミド=19:1)で電気泳動し、エチジウムブロマイドあるいはSYBR Gold(Molecular Probes,0regon)を用いてゲルを染色後、波長365nmあるいは254nmの紫外線照射下、ポラロイド撮影して検出感度を比較した。結果:10%アクリルアミドゲルで分離できたパンドは、SYBR Goldを用いて染色後、波長254nmで検出する方法を用いることにより最も感度の高い結果が得られた.考察:今回確立できたミニゲル電気泳動装置を用いた簡便なHUMARAassayは、従来法と比較してクローナリティーの検索を非常に容易にした.平成12年度研究計画:異形成母斑によるクローナリティーの検索を今回の条件下で行う.さらに先天性巨大色素性母斑やSpitz母斑などの境界病変あるいは前癌病変と現在みなされている色素性皮膚疾患についてもPGK assayとともに今回確立できたHUMRA assayを用いて,クローナリティーの検索を行う予定である.初年度(平成11年度)の研究実績HUMARAassayにおいて,小型ゲルで泳動後,ナイロンメンブレンにブロッティングすることなくゲルを直接染色するという簡便な方法を確立した.新しい方法:PCR産物を10%アクリルアミド(アクリルアミド:ビスアクリルアミド=19:1)で電気泳動し,SYBR Gold(Molecular Probes,Oregon)を用いてゲルを染色後,波長254nmの紫外線照射下撮影する.平成12年度の研究実績方法:PGK assayとHUMARAassayを用いてこれまでクローナリティーの検討がなされていない,スピッツ母斑,青色母斑および異型性母斑について検索した.結果:*スピッツ母斑と青色母斑は,ポリクローナルであった.*異型性母斑は,モノクローナルであった.考察:異型性母斑は当初,悪性黒色腫の前癌状態として報告されたが,最近では通常型母斑の一型であるに過ぎず,悪性化とは無関係であると見なされている.今回,異型性母斑がモノクローナルであったという事実は,異型性母斑が通常の母斑のごとく奇形的疾患ではなく,腫瘍性疾患であることを示唆しうる.この結果は,悪性黒色腫の癌化過程を解明する上で,重要なインパクトを与えると考える.
KAKENHI-PROJECT-11770102
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11770102
手指の機能障害患者の義歯着脱を容易にする装置の開発
手指の機能障害患者においては、一般に義歯を装着することは可能だが、外すことが困難である場合が多い。そこで、本研究では、(1)「義歯を容易に取り外すことのみを目的とした装置」と(2)「義歯の取付けと取り外し(着脱)を容易にする装置」、とに分けて作成を試みた。方法としては、義歯の取り外しが上手く出来ない患青に、義歯を装着した状態で印象採得を行い、義歯装着時の口腔内と同じ状態の模型を作製し、その模型上で、義歯を簡便に着脱出来る装置の開発を行った。(1)義歯を容易に取り外すことのみを目的とした装置の開発模型上の義歯に数箇所の取り外し用フックを付け、フックは患者の口腔内を傷付けないように、歯科用のボールクラスプを使用した。それぞれのフックを牽引し、どの程度の力で義歯が模型上から外れるかを計測し、フックを付ける最適な場所を選択し、ついで、そのフックに簡単に力が加えられるように歯科用コバルトクロム製の鉤線を曲げ、その鉤線を患者の手指の大きさに調整した。患者の手指に付けた鉤線と義歯に付けたフック〓より、義歯を外せるような装置を作成した。(2)義歯の着脱を容易にする装置の開発義歯の形態に合わせ、歯科用アクリルレジンを用いてその義歯を覆う形のもの(部品A)を作製した。部品Aには患者が把持出来る形態の柄を付与し、義歯を覆う部分には、歯科用ボールクラスプで作製したフックを数箇所付け、それに対応する義歯の部分にフックが掛かるレール状の溝を作った。模型上で最適なフックの数、強さを検討した後、義歯を覆つたレジンの上面に対側の噛み合せの圧痕を付け、患者が噛み締めることにより義歯が装着出来る装置を作成した。また、取り外し時には装置を義歯の上に乗せ、噛み締めることにより、装置のフックに義歯が引っかかり外せるように調整した。手指の機能障害患者においては、一般に義歯を装着することは可能だが、外すことが困難である場合が多い。そこで、本研究では、(1)「義歯を容易に取り外すことのみを目的とした装置」と(2)「義歯の取付けと取り外し(着脱)を容易にする装置」、とに分けて作成を試みた。方法としては、義歯の取り外しが上手く出来ない患青に、義歯を装着した状態で印象採得を行い、義歯装着時の口腔内と同じ状態の模型を作製し、その模型上で、義歯を簡便に着脱出来る装置の開発を行った。(1)義歯を容易に取り外すことのみを目的とした装置の開発模型上の義歯に数箇所の取り外し用フックを付け、フックは患者の口腔内を傷付けないように、歯科用のボールクラスプを使用した。それぞれのフックを牽引し、どの程度の力で義歯が模型上から外れるかを計測し、フックを付ける最適な場所を選択し、ついで、そのフックに簡単に力が加えられるように歯科用コバルトクロム製の鉤線を曲げ、その鉤線を患者の手指の大きさに調整した。患者の手指に付けた鉤線と義歯に付けたフック〓より、義歯を外せるような装置を作成した。(2)義歯の着脱を容易にする装置の開発義歯の形態に合わせ、歯科用アクリルレジンを用いてその義歯を覆う形のもの(部品A)を作製した。部品Aには患者が把持出来る形態の柄を付与し、義歯を覆う部分には、歯科用ボールクラスプで作製したフックを数箇所付け、それに対応する義歯の部分にフックが掛かるレール状の溝を作った。模型上で最適なフックの数、強さを検討した後、義歯を覆つたレジンの上面に対側の噛み合せの圧痕を付け、患者が噛み締めることにより義歯が装着出来る装置を作成した。また、取り外し時には装置を義歯の上に乗せ、噛み締めることにより、装置のフックに義歯が引っかかり外せるように調整した。
KAKENHI-PROJECT-20931011
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20931011
超音速ジェット・多光子イオン化レーザー分光法による金属錯体の電子励起状態の研究
金属錯体の気相における光化学反応は、溶媒効果等の周辺環境の影響がないため、錯体固有の性質に基づく反応を理解するうえで極めて重要である。本研究では以上の点を念頭に、近年急速に発展した超音速ジェット・レーザー多光子イオン化分光法を用いて、気相における遷移金属錯体の電子励起状態からの光化学反応を研究することを目的とした。1. Cr(III)アセチルアセトナト錯体のレーザー光分解。金属カルボニル錯体をレーザー光分解すると配位子が段階的に脱離して、最終的には金属原子にまで分解することは古くから研究され現在でも活発な議論がある。本研究では中心金属が酸化数を有して結合した錯体において、同様な光分解機構が存在するか否かを観測することを試みた。その結果、Cr(III)アセチルアセトナイト錯体は極めて効率よくCr原子にまで分解することを見出した。更に2つの独立な波長可変色素レーザーを用いる多光子解離多光子イオン化法を用いて、錯体からCr原子が生成するに必要な分解エネルギーしきい値を正確に求めることができ、光分解についてCr原子生成が錯体の2光子許容励起状態から全リガンドが一挙に脱離するという直接分解機構を提唱し、学会等で口頭発表すると共に、Chem.Phys.誌に発表した。2.第一遷移金属元素のアセチルアセトナト錯体のレーザー光分解。中心金属がCr(III)の場合と同様な光分解が他の遷移金属元素の場合にも起こるかどうかを知る目的で、Sc,Co,Fe,Ni,Mn,Cn,を中心金属とする錯体の場合について多光子解離多光子イオン化法を応用した。その結果、Cr(III)の場合と同様な直接分解機構を示す錯体はCu(II)錯体だけであり、他の錯体の場合はすべて中心金属に分解するより先に錯体のイオン化やフラグメンテーションが起こる機構であるとの結果を得た。これらの分解機構の統一的考察を発表予定である。金属錯体の気相における光化学反応は、溶媒効果等の周辺環境の影響がないため、錯体固有の性質に基づく反応を理解するうえで極めて重要である。本研究では以上の点を念頭に、近年急速に発展した超音速ジェット・レーザー多光子イオン化分光法を用いて、気相における遷移金属錯体の電子励起状態からの光化学反応を研究することを目的とした。1. Cr(III)アセチルアセトナト錯体のレーザー光分解。金属カルボニル錯体をレーザー光分解すると配位子が段階的に脱離して、最終的には金属原子にまで分解することは古くから研究され現在でも活発な議論がある。本研究では中心金属が酸化数を有して結合した錯体において、同様な光分解機構が存在するか否かを観測することを試みた。その結果、Cr(III)アセチルアセトナイト錯体は極めて効率よくCr原子にまで分解することを見出した。更に2つの独立な波長可変色素レーザーを用いる多光子解離多光子イオン化法を用いて、錯体からCr原子が生成するに必要な分解エネルギーしきい値を正確に求めることができ、光分解についてCr原子生成が錯体の2光子許容励起状態から全リガンドが一挙に脱離するという直接分解機構を提唱し、学会等で口頭発表すると共に、Chem.Phys.誌に発表した。2.第一遷移金属元素のアセチルアセトナト錯体のレーザー光分解。中心金属がCr(III)の場合と同様な光分解が他の遷移金属元素の場合にも起こるかどうかを知る目的で、Sc,Co,Fe,Ni,Mn,Cn,を中心金属とする錯体の場合について多光子解離多光子イオン化法を応用した。その結果、Cr(III)の場合と同様な直接分解機構を示す錯体はCu(II)錯体だけであり、他の錯体の場合はすべて中心金属に分解するより先に錯体のイオン化やフラグメンテーションが起こる機構であるとの結果を得た。これらの分解機構の統一的考察を発表予定である。
KAKENHI-PROJECT-63540363
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63540363
難治性尿路上皮癌に対するフェロトーシス誘導による新規治療戦略
フェロトーシスは、2012年に鉄依存的な活性酸素種と過酸化した脂質の蓄積によって細胞死をきたす新規の細胞死の機序として報告され、癌細胞においてもシスチン・グルタミン酸トランスポーター、鉄代謝、メバロン酸経路、脂肪酸代謝との連絡が報告されている。さらに、治療に抵抗性をきたした状態においてフェロトーシス感受性が上昇するとが明らかとなっており、短期間で多数の研究成果が集積されている現状から、フェロトーシスへの関心が非常に高いことが示唆される。一方、尿路上皮癌では、フェロトーシスに関して我々が調べた限りでは検討がなされておらず、本課題は全く新しい視点からのアプローチと考えられる。フェロトーシスは、2012年に鉄依存的な活性酸素種と過酸化した脂質の蓄積によって細胞死をきたす新規の細胞死の機序として報告され、癌細胞においてもシスチン・グルタミン酸トランスポーター、鉄代謝、メバロン酸経路、脂肪酸代謝との連絡が報告されている。さらに、治療に抵抗性をきたした状態においてフェロトーシス感受性が上昇するとが明らかとなっており、短期間で多数の研究成果が集積されている現状から、フェロトーシスへの関心が非常に高いことが示唆される。一方、尿路上皮癌では、フェロトーシスに関して我々が調べた限りでは検討がなされておらず、本課題は全く新しい視点からのアプローチと考えられる。
KAKENHI-PROJECT-19K18599
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K18599
科学コミュニケーション技法に基づく技術者安全教育プログラムの開発
本研究の目的は、科学教育(科学コミュニケーション)研究と産業心理学の知見の融合により、安全に関するAttitudeの涵養を目的とした技術者教育プログラムを開発することである。初年度である平成30年度は、(1)自然災害・産業事故・公害・紛争といった幅広いカテゴリーについて、継承すべき「事故や災害の記憶」について、文献調査およびインタビュー調査を実施した。(2)加えて、科学教育、特に科学コミュニケーション分野における対話型プログラム事例を網羅的に収集し、その目的や対象者、テーマとしての適用範囲などの観点から、分類・整理を行った。(3)その上で、科学コミュニケーション分野において培われてきた対話型プログラムの安全教育への適用可能性とその諸条件について検討する事例検討研究会を実施した。研究会参加者には、社会インフラ企業(社会的に重大な事故を引きおこした企業を含む)において、安全研修などに従事する実務家を含み、産業現場での具体的展開を念頭においた議論を行った。加えて、原子力発電所運転責任者を対象としたプログラムのプロトタイプ開発を行い、21名を対象に本格実施した。本プログラムを体験した参加者の評価は概ね好評であった。また同時に、改善点についての情報収集もできたため、これらを踏まえてプログラムを再改良する予定である。また、関連する研究成果の発表を学会等で行うとともに、産業分野における講演・研修活動を通じて、プログラム開発に対する現場からのフィードバックを多数得ることができた。当初の計画通り、(1)文献調査・インタビュー調査、(2)科学教育分野における対話型プログラム事例の収集と整理、(3)事例検討研究会を実施し、科学教育(科学コミュニケーション)研究と産業心理学の知見の融合に関する議論および、安全に関するAttitudeの涵養を目的とした技術者教育プログラムの開発に着手することができた。特に原子力発電分野については、予定より先行してのプログラム開発と実施が可能となり、参加者フィードバックをえることができたため、さらなるプログラム改良が可能となった。このことなどから、研究は全体として順調に進展しているものと考えている。引き続き、対話プログラムの素材を収集すると同時に、科学教育、特に科学コミュニケーション分野における対話型プログラムを網羅的に収集し、その目的や対象者、テーマとしての適用範囲などの観点から、分類・整理を行う。その上で、先行する原子力発電所の事例以外にも対話型プログラムを開発し、プロトタイプを申請者および分担者がネットワークを持つ産業界等での安全研修などで試行する。31年度に新規のプロトタイプを開発・試行し、フィードバックを受ける。加えて、科学コミュニケーション分野において培われてきた対話型プログラムを安全教育へ適用するための諸条件について検討する事例検討研究会を、平成31年度も引き続き実施する。本研究の目的は、科学教育(科学コミュニケーション)研究と産業心理学の知見の融合により、安全に関するAttitudeの涵養を目的とした技術者教育プログラムを開発することである。初年度である平成30年度は、(1)自然災害・産業事故・公害・紛争といった幅広いカテゴリーについて、継承すべき「事故や災害の記憶」について、文献調査およびインタビュー調査を実施した。(2)加えて、科学教育、特に科学コミュニケーション分野における対話型プログラム事例を網羅的に収集し、その目的や対象者、テーマとしての適用範囲などの観点から、分類・整理を行った。(3)その上で、科学コミュニケーション分野において培われてきた対話型プログラムの安全教育への適用可能性とその諸条件について検討する事例検討研究会を実施した。研究会参加者には、社会インフラ企業(社会的に重大な事故を引きおこした企業を含む)において、安全研修などに従事する実務家を含み、産業現場での具体的展開を念頭においた議論を行った。加えて、原子力発電所運転責任者を対象としたプログラムのプロトタイプ開発を行い、21名を対象に本格実施した。本プログラムを体験した参加者の評価は概ね好評であった。また同時に、改善点についての情報収集もできたため、これらを踏まえてプログラムを再改良する予定である。また、関連する研究成果の発表を学会等で行うとともに、産業分野における講演・研修活動を通じて、プログラム開発に対する現場からのフィードバックを多数得ることができた。当初の計画通り、(1)文献調査・インタビュー調査、(2)科学教育分野における対話型プログラム事例の収集と整理、(3)事例検討研究会を実施し、科学教育(科学コミュニケーション)研究と産業心理学の知見の融合に関する議論および、安全に関するAttitudeの涵養を目的とした技術者教育プログラムの開発に着手することができた。特に原子力発電分野については、予定より先行してのプログラム開発と実施が可能となり、参加者フィードバックをえることができたため、さらなるプログラム改良が可能となった。このことなどから、研究は全体として順調に進展しているものと考えている。引き続き、対話プログラムの素材を収集すると同時に、科学教育、特に科学コミュニケーション分野における対話型プログラムを網羅的に収集し、その目的や対象者、テーマとしての適用範囲などの観点から、分類・整理を行う。その上で、先行する原子力発電所の事例以外にも対話型プログラムを開発し、プロトタイプを申請者および分担者がネットワークを持つ産業界等での安全研修などで試行する。31年度に新規のプロトタイプを開発・試行し、フィードバックを受ける。加えて、科学コミュニケーション分野において培われてきた対話型プログラムを安全教育へ適用するための諸条件について検討する事例検討研究会を、平成31年度も引き続き実施する。プロトタイプ開発において、外部機関の協力を得ることができたため実施経費(会場費や旅費)について、削減することが可能となった。加えて、必要な資料などがインタビュー対象者・組織からの寄贈で入手できたため、文献複写費などを抑えることができた。
KAKENHI-PROJECT-18K02935
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K02935
科学コミュニケーション技法に基づく技術者安全教育プログラムの開発
当該予算については、平成31年度に文献調査およびインタビュー調査を拡充することで使用予定である。具体的には、当初予定予定の範疇外であった、海外での調査を実施する予定である。
KAKENHI-PROJECT-18K02935
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生物発光・蛍光ライブイメージングによる短周期生物時計の機能の解明
筋芽細胞株C2C12の筋分化モデル系において、生物発光・蛍光レポーターの同時計測を1細胞レベルで行い、筋分化・細胞周期の進行下における転写因子ダイナミクスの詳細を明らかにすることを試みた。その結果、筋芽細胞株C2C12において蛍光・発光イメージング可能な実験系を確立できたが、分化誘導過程における短周期ダイナミクスに顕著な変化は見られなかった。現在、初代培養系での観察を行っているところである。一方で、研究の過程において近赤外蛍光タンパクによる細胞周期の可視化に成功した。また、短周期ダイナミクスを人工的に制御できる系を確立した。細胞周期の進行を可視化する蛍光レポーターと、転写因子の短周期ダイナミクスを可視化する発光レポーターを構築した。細胞周期はFucci(mVenus-hGem)を用いることでS/G2期を蛍光で可視化し、転写因子のプロモーター下流に不安定化ルシフェラーゼを繋げることで、転写活性と細胞周期進行の同時リアルタイム観察が可能になった。さらに、新たに近赤外蛍光タンパク質のiRFPを用いた細胞周期プローブの開発にも成功した。現在、これらのレポーターを同時に発現する安定発現株を樹立し、ライブイメージング観察を行なっているところである。また、神経幹細胞の多分化能と細胞分化制御において、分化運命決定因子が周期的に発現していることが重要であることを発見した。この知見をもとに、マウスの神経幹細胞の増殖と神経細胞への分化を光照射によって人工的に制御する技術を開発した。この成果は学術論文としてScience誌に掲載された。筋芽細胞株C2C12の筋分化モデル系において、生物発光・蛍光レポーターの同時計測を1細胞レベルで行い、筋分化・細胞周期の進行下における転写因子ダイナミクスの詳細を明らかにすることを試みた。その結果、筋芽細胞株C2C12において蛍光・発光イメージング可能な実験系を確立できたが、分化誘導過程における短周期ダイナミクスに顕著な変化は見られなかった。現在、初代培養系での観察を行っているところである。一方で、研究の過程において近赤外蛍光タンパクによる細胞周期の可視化に成功した。また、短周期ダイナミクスを人工的に制御できる系を確立した。本研究では、細胞周期や分化の進行過程において、短時間周期(24時間)の生物時計が形成する遺伝子発現ネットワークの動態を解明し、その生物学的意義を明らかにすることを目的とする。特に、短周期生物時計Hes1によって制御される転写因子群に注目し、蛍光レポーターによって細胞周期や筋分化の進行状況もモニターすると同時に、生物発光レポーターを用いて転写活性の時系列変化を1細胞レベルで明らかにする。本年度の研究では、細胞周期及び筋分化誘導過程の進行を可視化する蛍光レポーターと、転写因子の短周期ダイナミクスを可視化する発光レポーターを構築し、1細胞ライブイメージングを行うための基盤技術を整えた。まず、筋分化の進行過程についてはMyogeninプロモーター下流にVenusを繋げることで筋分化スイッチがONになるタイミングを可視化することに成功した。また、近赤外蛍光タンパクのiRFPにFucci技術を適用することで、細胞周期の進行過程を近赤外蛍光で可視化することに成功した。これにより、蛍光3色(YFPとRFPとiRFP)と発光1色の4チャネルの細胞動態の情報をライブイメージングすることが可能になった。さらに、Hes1、Cdkn1a(p21)、Gadd45g、Dll1などといった因子のプロモーター下流に不安定化ルシフェラーゼを繋げることで、転写活性のリアルタイム観察が可能になった。現在、これらのレポーターを同時に発現する安定発現株を樹立し、そのライブイメージング観察を行なっているところである。ポストゲノムの時代になり、遺伝子の同定を中心とした研究から、遺伝子間の相互作用ネットワークのダイナミクスの理解が重要な研究課題となりつつある。これまで、細胞周期や代謝回路、概日時計を始めとしたネットワークのダイナミクスが詳細に研究されてきており、最近では、哺乳動物細胞における24時間周期の短周期生物時計が次々と見つかっている。しかし、複数のネットワークが1個の細胞内でどのように共存しているのか、短時間から長時間スケールの情報がどのように統合・処理されているのか、そのダイナミクスの全体像と情報処理のメカニズムはよくわかっていない。そこで、筋芽細胞株C2C12の筋分化モデル系において、生物発光・蛍光レポーターの同時計測を1細胞レベルで行い、筋分化・細胞周期の進行下における転写因子ダイナミクスの詳細を明らかにすることを試みた。筋分化でONになるプロモーター下流に蛍光タンパク質遺伝子を連結し、筋分化のON/OFFを可視化しつつ短周期生物時計のダイナミクスを計測・比較した。その結果、筋芽細胞株C2C12において蛍光・発光イメージング可能な実験系を確立できたが、分化誘導過程における短周期ダイナミクスに顕著な変化は見られなかった。現在、初代培養系での観察を行っているところである。一方で、研究の過程において近赤外蛍光タンパクによる細胞周期の可視化に成功した。また、短周期ダイナミクスを人工的に制御できる系を確立した。生物物理学学術論文を発表できたため。本研究では、蛍光レポーターによって細胞周期や筋分化の進行状況もモニターすると同時に、生物発光レポーターを用いて転写活性の時系列変化を1細胞レベルで明らかにすることを目標としている。本年度は特に蛍光レポーターの開発に関して、筋分化の蛍光レポーター技術を確立しただけでなく、近赤外蛍光タンパクによって細胞周期レポーターの可能性を大きく拡げることができ、次年度以降で計画していたライブイメージング観察を実施するための基盤を確立できた。
KAKENHI-PROJECT-24700293
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24700293
生物発光・蛍光ライブイメージングによる短周期生物時計の機能の解明
転写活性についてもレポーターによるリアルタイム観察が可能になっており、おおむね順調に進展していると考えている。転写レポーターと蛍光プローブによるレポーター系が構築できたので、樹立した安定発現株を用いてライブイメージング観察を行っていく予定である。初年度の研究により、蛍光レポーターと生物発光レポーターによって、細胞周期や筋分化の進行と同時に転写活性の時系列変化を1細胞レベルでライブイメージング観察を実施するための基盤技術を確立できた。今後は、これらの技術を用いたレポーターを安定に発現する細胞株を樹立しつつ、同時にライブイメージングも行う予定である。学会発表の旅費などで当初の計画と異なる支出となったが、概ね計画通りの使用額である。本研究では、主に培養細胞を用いた実験的研究を行なう。そのため、培養実験用の器具・試薬や、生化学実験用の試薬・器具などのために使用する。また、研究を広く発信する目的から、学会発表なども積極的に行なう予定であり、その旅費としても利用する。次年度においても、主に培養細胞を用いた実験的研究を行なう。そのため、培養実験用の器具・試薬や、生化学実験用の試薬・器具などを購入するために研究費を使用する。また、研究を広く発信する目的から、学会発表なども積極的に行なう予定である。
KAKENHI-PROJECT-24700293
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24700293
局在電子波束による動的化学結合理論
分子内の電子は、空間に広がった量子的な波として記述するのが、約80年間の標準だった。しかし、その延長で時間変化を記述するための理論は未だ確立していない。本研究では、空間的に局在した電子波束を活用した新理論を提案し、その有効性を検証した。特に、強いレーザー光パルスを分子に照射することで電子運動が誘起され、そこから放射される高周波数の光スペクトルが、簡便に精度良く記述できることが示された。これは、化学結合の動的側面についての新しい描像を切り拓くものである。本研究課題の目的は、局在電子波束に立脚した新しい動的化学結合理論の確立を目指し、近似の検討と応用計算による検証を進めることにある。中心位置が浮動し、幅も可変な電子波束を、原子価結合理論によりスピン結合させたモデルが、静的なポテンシャルエネルギー面を精度良く記述することは以前に見いだしている。本課題では、これを時間依存ダイナミクスに拡張する。また、核波束と融合させることにより、断熱近似を超えた化学結合理論を構築する。これを、強光子場中の分子ダイナミクス、水素貯蔵金属における水素拡散などに応用し、電子と核の量子動力学的結合の様相を解析する。平成26年度は、主として次の2項目で進展があった。(1)核・電子波束分子動力学法による液体および固体水素のシミュレーション(2)量子・準量子混合動力学法と確率過程量子による相関効果核波束によって凝縮系のシミュレーションを行なうだけでも、現代的に挑戦的な課題である。(1)では、電子波束の時間発展は陽には追わず、核波束に断熱的に追随させ、分子間相互作用を計算するために用いた。これにより、分散相互作用を取り入れた非経験的なモデルによる液体および固体水素の量子波束動力学シミュレーションを初めて実現した。拡散係数が実験値をよく再現することを確認した上で、より詳細な分子描像を得るための種々の解析を行った。(2)においては、平均場近似を超えた核と電子の相関効果を取り入れるための理論を構築した。ポイントは、確率過程量子化を活用して、粒子間相関効果を取り入れた点にある。プラチナ表面への酸素分子の衝突散乱の2次元モデルに適用し、非断熱遷移を記述するための精度を検証した。将来的には、量子部分を電子波束で表す。これにより、運動方程式の複雑化を回避しつつ、核と電子の相関効果を取り入れる。本研究課題の目的は、局在電子波束による新しい動的化学結合論の確立を目指し、近似の検討と応用計算による検証を推進することにある。基盤となるのは、局在電子波束を原子価結合理論によりスピン結合させた独自のモデルである。この波束は、中心位置が浮動し幅も可変であるという自由度を持つために、1電子あたり1波束の最小基底でありながら、高精度の基底状態ポテンシャルエネルギー面を与える。本課題では、これを時間依存ダイナミクスに拡張する。また、電子波束と核波束を融合させることにより、断熱近似を超えた化学結合理論を構築する。これを、強光子場中の分子ダイナミクス、水素貯蔵金属クラスター中の水素拡散などに応用し、電子と核の量子動力学的結合の様相を解析する。平成27年度は、主として次の3項目で進展があった。(1)局在電子波束による電子励起状態の計算手法の開発、(2)核・電子波束分子動力学法による低温液体および固体水素の量子シミュレーション、(3)金属クラスター中の水素拡散の量子シミュレーションへ向けたポテンシャルモデルの開発。(1)では、通常の配置間相互作用法ではなく、運動方程式法に近いアイデアで、局在電子波束の運動を量子化することから励起エネルギーを求めることを試みた。ダイナミクスを単純化した計算でありながら、正確な励起ポテンシャル曲線が得られた。(2)では、昨年度に開発した新しいシミュレーション手法を、固体水素と過冷却水素に応用した。(3)では、新しいモデルを開発する準備段階として、標準的な量子化学計算により金属クラスター中の水素拡散のポテンシャルエネルギー面を計算した。上記の研究業績欄に示した(1)について1報、(2)について2報の査読付き原著論文を発表したという意味で、研究の進捗は順調である。特に、(1)については、局在電子波束の運動を量子化することで励起エネルギーを求めるという非常に新しいアイデアであり、半信半疑で始めながらも予想以上に正確な結果が得られた。下記の研究発表欄に示した国際会議の招待講演でも大きな反響があった。(2)については、昨年度に開発した量子シミュレーション手法の応用を広く進めたもので、着実な進展があった。(3)は、今後、独自のモデルを作成する際の参照とするものだが、それだけでも論文になり得るような興味深く新しい結果が得られた。本研究の目的は、局在電子波束による新しい動的化学結合理論の確立を目指し、近似方法の検討と応用計算による検証を推進することにある。基盤となるのは、局在電子波束を原子価結合理論によりスピン結合させた独自のモデルである。この波束は、中心位置が浮動し、幅も可変であるという自由度を持つ。これにより、一電子あたり一波束の最小基底でありながら、高精度の基底状態ポテンシャルエネルギー面を与える。本課題では、この理論を時間依存ダイナミクスに拡張する。また、電子波束と原子核波束を融合させることにより、断熱近似を超えた化学結合理論を構築する。この手法を、強光子場中の分子ダイナミクス、水素貯蔵金属クラスター中の水素拡散などに応用し、電子と原子核の量子動力学的結合の様相を解析する。
KAKENHI-PROJECT-26620007
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26620007
局在電子波束による動的化学結合理論
平成28年度は、主として次の2項目で進展があった。(1)局在電子波束ダイナミクス計算に基づく高調波発生スペクトルの計算、(2)金属クラスター中の水素拡散の量子シミュレーションに向けたポテンシャルモデルの開発。(1)では、平均場近似に相当する一電子ダイナミクス計算によって、高調波発生スペクトルを良い近似で得ることができた。ただしこれは、量子干渉を完全には取り入れていない近似ダイナミクス計算であり、そのために高調波発生スペクトルにおけるプラトーとカットオフを十分には記述していなかった。今後の研究方針として、量子干渉効果を取り入れる近似手法が必要であることが判明した。(2)では、スピンフリップ時間依存密度汎関数法の精度を、波動関数理論計算と比較しながら検討し、後者では計算困難な大規模クラスターでの水素拡散障壁超えのポテンシャルエネルギー面を計算した。これは、局在電子波束によるモデルポテンシャル開発の参照データとなる。上記の研究実績概要に示した(1)については、国際学術誌の原子価結合理論に関する特集号への寄稿を招待され、高調波発生スペクトルに関する新しい結果を発表した。(2)は、今後の局在電子波束に基づくモデルポテンシャルを開発するのための参照データを与えるものだが、それ(スピンフリップ時間依存密度汎関数法による計算結果)単独でも学術論文になり得るものである。本研究の目的は、局在電子波束による新しい動的化学結合理論の確立を目指し、近似方法の検討と応用計算による検証を推進することにある。基盤となるのは、局在電子波束を原子価結合理論によりスピン結合させた独自のモデルである。この波束は、中心位置が浮動し、幅も可変であるという自由度を持つ。これにより、一電子あたり一波束の最小基底でありながら、高精度の基底状態ポテンシャルエネルギー面を与える。本課題では、この理論を時間依存ダイナミクスに拡張した。また、電子波束と原子核波束を融合させることにより、断熱近似を超えた化学結合理論を構築しつつある。この手法を、強光子場中の分子ダイナミクス、水素貯蔵金属クラスター中の水素拡散などに応用し、電子と原子核の量子動力学的結合の様相を解析する。平成29年度は、主として次の2項目で進展があった。(1)局在電子波束ダイナミクス計算に基づく高調波発生スペクトルの計算、(2)金属クラスター中の水素拡散の量子シミュレーションに向けたポテンシャルモデルの開発。(1)では、平均場近似に相当する一電子計算によって、各電子波束の中心位置の変位に沿ったポテンシャルエネルギー面を構築し、その上で数値的に厳密な量子ダイナミクス計算を行った。その結果、局在波束の準量子的ダイナミクス計算(昨年度実行)では記述できなかった高調波発生スペクトルのプラトーとカットオフを再現することができた。(2)では、PdクラスターとRh-Ag合金クラスターを比較しながら、多配置自己無撞着波動関数計算によって水素拡散の障壁超えポテンシャルエネルギー面を計算し、量子動力学シミュレーションのためのモデルポテンシャルを構築した。分子内の電子は、空間に広がった量子的な波として記述するのが、約80年間の標準だった。
KAKENHI-PROJECT-26620007
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26620007
葉緑体型ATP合成酵素の活性調節機構を構造の側面から理解する
葉緑体型ATP合成酵素の部分複合体であるα3β3γに存在する挿入配列とε阻害の関係を構造生物学的側面から理解するために、α3β3γεのX線結晶構造解析に取り組んだ。これまで、結晶化に適した変異α3β3γεの作成に成功し、結晶を得ることができたが、高分解能のデータはまだ得られていない。また、葉緑体型ATP合成酵素の活性制御に重要な挿入配列がどのように遠く離れた触媒部位であるβサブユニットに影響しているかを生化学的手法により検証し、γサブユニット上のN末端およびC末端のα-ヘリックスのコイルドコイル構造の相対的なズレが、挿入配列による活性制御効果をβサブユニットに伝達している可能性が示唆された。ATP合成酵素の部分複合体である葉緑体型α3β3γでは挿入配列により内在性の阻害サブユニットであるεによる活性制御(ε阻害)が非常に強く発現される。挿入配列とε阻害の関係を明らかにするために、εサブユニットにより阻害された構造をとっているα3β3γの構造解析を目指した。初年度(23年度)は、タグを利用しないα3β3γの精製法を確立し、4つの異なる結晶化条件を決定した。24年度は、実験室レベルの回折実験を行ったが、もっともよい分解能を与える結晶で6.5オングストローム程度であった。次に、得られている結晶を用いて、放射光施設で回折実験を行った。しかし、放射光施設のビームでも、分解能の向上は見られなかった。分解能を向上させるため、結晶を浸す溶液の沈殿剤等の濃度を上げることで結晶から水分子を除き、分解能を向上させる方法(脱水操作)を試みた。今のところ分解能の向上は見られていない。ATP合成酵素の部分複合体である葉緑体型α3β3γでは挿入配列により内在性の阻害サブユニットであるεによる活性制御(ε阻害)が非常に強く発現される。挿入配列とε阻害の関係を明らかにするために、εサブユニットにより阻害された構造をとっているα3β3γεの構造解析を目指した。初年度(23年度)は、タグを利用しないα3β3γεの精製法を確立し、4つの異なる結晶化条件を決定した。24年度は、実験室レベルの回折実験を行ったが、挿入配列とεサブユニットの相互作用の詳細を議論できるだけの分解能ではなかった。分解能を向上させるため、結晶を浸す溶液の沈殿剤等の濃度を上げることで結晶から水分子を除き、分解能を向上させる方法(脱水操作)なども試みた。牛ミトコンドリアや大腸菌由来のα3β3γ複合体では、αサブユニットのN末端数十アミノ酸はひも状になっている。そこで、25年度は、このひも状の部分を切断した変異体を作製・精製し、結晶化条件の最適化を行った。上記の研究計画と並行して、葉緑体型ATP合成酵素の活性制御を生化学的視点から理解することを目指し、変異体を用いた生化学実験を行った。葉緑体型ATP合成酵素の活性制御に重要な挿入配列は触媒部位であるβサブユニットから遠く離れた部位にあり、直接影響を与えるようには見えない。触媒部位サブユニットと直接相互作用するのは、γサブユニットにあるN末端およびC末端のαヘリックスのコイルドコイル構造であるので、これらのαヘリックスが相対的にずれることで、活性に変化が生じるのではないかと推定した。この仮説を検証するため、αヘリックスにCysを導入し、S-S架橋をかける実験を行い、架橋により酵素活性が大きく上昇する変異体を見いだした。葉緑体型ATP合成酵素の部分複合体であるα3β3γに存在する挿入配列とε阻害の関係を構造生物学的側面から理解するために、α3β3γεのX線結晶構造解析に取り組んだ。これまで、結晶化に適した変異α3β3γεの作成に成功し、結晶を得ることができたが、高分解能のデータはまだ得られていない。また、葉緑体型ATP合成酵素の活性制御に重要な挿入配列がどのように遠く離れた触媒部位であるβサブユニットに影響しているかを生化学的手法により検証し、γサブユニット上のN末端およびC末端のα-ヘリックスのコイルドコイル構造の相対的なズレが、挿入配列による活性制御効果をβサブユニットに伝達している可能性が示唆された。ATP合成酵素の部分複合体である葉緑体型α3β3γでは挿入配列により内在性の阻害サブユニットであるεによる活性制御(ε阻害)が非常に強く発現される。挿入配列とε阻害の関係を明らかにするために、εサブユニットにより阻害された構造をとっているα3β3γの構造解析を目指した。初年度(23年度)は、構造解析に必要な変異体の作成およびその精製法の確立を行った。これまでATP合成酵素の研究では、α3β3γεは精製を容易にするためヒスチジンタグを導入してきたが、付加したタグがタンパク質の結晶化に影響を与える可能性が高い。そこで、精製後にヒスチジンタグを取り除くためのトロンビン切断サイトをタグとタンパク質の間に導入したα3β3γεを用意した。十分なタンパク質試料を調製した後に、結晶化ロボット・結晶化キットを用いて初期スクリーニングを実施し結晶化条件を探ったが、良好な結晶化条件は見つからなかった。トロンビンによるタグの除去が不完全な場合、α3β3γε分子が不均一な集団となり、これが結晶化に影響する可能性が考えられた。そこで、タグを利用しないα3β3γεの精製法を確立し、再度、初期スクリーニングを実施したところ、結晶化タンパク質を得ることができた。
KAKENHI-PROJECT-23570159
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23570159
葉緑体型ATP合成酵素の活性調節機構を構造の側面から理解する
タンパク質の結晶化は、さまざまな結晶化条件を、試行錯誤しながら行うのが一般的であるため、当初の計画以上に早く進む場合もあるが、計画が大幅に遅れる場合も多い。初年度(23年度)は、計画通りに研究が進んでいると思われたが、24年度は計画通りに研究が進んでいるとは言い難い。最適な結晶化条件の探索と同時に、結晶化に適した変異α3β3γ複合体の作成も必要であると考えられる。本研究課題の申請時に掲げた平成23年度の研究計画は、タンパク質の変異体の作成、結晶化条件の探索であったが、変異体の作成およびその精製条件を確立することができた。また、タンパク質の結晶化は、さまざまな結晶化条件を、試行錯誤しながら行うのが一般的であるため、当初の計画以上に早く進む場合もあるが、大幅に遅れる場合も多い。研究着手1年目にしてある程度の大きさの結晶ができる条件を見つけ出したことは、十分に計画通りに研究が進んでいるといってよいと思われる。牛ミトコンドリアや大腸菌由来のα3β3γ複合体では、αサブユニットのN末端数十アミノ酸はひも状になっている。このひも状の部分を切断することで、分子のパッキングが良くなり、分解能が向上すると考えられる。そこで、ひも状のアミノ酸配列を欠損させた変異体を作製・精製し、結晶化条件の最適化を行う。平成23年度は、α3β3γεの結晶化条件を見出したが、結晶の大きさがまだ十分ではないため、今後は結晶化条件の精密化を行いX線構造解析を行う。また、挿入配列の有無による複合体分子の構造の違いを比較することで、εサブユニットによる阻害状態を構造面から理解する。そのため、挿入配列を欠損した変異α3β3γεを調製し、平成23年度に行ったα3β3γεの結晶化と同様に、結晶化ロボット・結晶化キットを用い初期スクリーニングを実施し、結晶化条件を探り構造解析を実施する。次年度(平成25年度)は、結晶化に適した変異体の作製に必要な遺伝子実験試薬およびタンパク質精製に必要な生化学実験試薬、カラム樹脂の購入に使用する。また、放射光施設や学会などへの旅費も計上する。次年度の研究費は、主にα3β3γεおよび挿入配列を欠損した変異α3β3γεの精製に必要な生化学実験試薬、器具、結晶化スクリーニングキット、結晶化用プレートに使用する予定である。また、精製の効率を上げるために、高速遠心機用ロータも購入する予定である。
KAKENHI-PROJECT-23570159
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強誘電体プローブメモリに関する研究
現在最も世界で記録デバイスとして使用されているHDDや、CD,DVDといった光学ディスク記録に代表されるメディア上記録再生ヘッドが走査する記録ドライブはデータの信頼性を高めたり、高S/Nレートでのデータ再生を行うために記録ヘッドが常にトラック列中央を走査する位置制御機構が設けられている(サーボ・トラッキング法)。一方で強誘電体記録方式には現在まで有効なサーボ・トラッキング法の報告例は少ない。今回微小な記録ビットからなるトラック列を高精度にトラッキングするため、初めにシステムを構成する走査型プローブ顕微鏡のピエゾステージおよび強誘電体の分極方向を判別する走査型非線形誘電率顕微鏡(SNDM)の周波数特性(伝達関数)を実測および回帰分析において求めた。有効に機能する補償器としてKanazawa UNIV.のAndoらが提唱する動的PID法を用いることにした。動的PID法とは、補償器への入力信号の大きさによってPID補償器の比例ゲイン、積分ゲイン微分ゲインの大きさが変わる補償法である。この動的PID法のメリットとしてSNDMに重畳するノイズによる記録再生ヘッド位置の誤制御を抑止できること、また周期分極構造からなるサーボマークが記録再生ヘッドの走査方向に対して厳密に直線状に配向できず、ドメインバンダリに多少のガタつきが存在する場合においても記録再生ヘッドを目標とする位置近傍に近づけることができるということが挙げられる。これらの系を用いて記録ビットが64×64点の多数点からなり複雑に配列されたいわゆる実データに関して記録密度1Tbit/inch^2のトラッキングデータ記録再生実験を行った。得られた結果に対してビット誤り率(BER)を評価した。この時のBERは2.0×10^<-3>と計算された。次にサーボ領域におけるエラー信号(SNDMからの出力電圧)について解析した。SNDMにはノイズが重畳するため、エラー信号が厳密な意味で0Vになることはないが、時間の経過と共にエラー信号が0Vに近づくこと、時間が十分に経過したのちSNDMが実情もちうるノイズ出力とほぼ同程度だったため、記録再生ヘッドの自動制御が有効に機能したと考えられる。位置精度を大きく見積もったとしても、目標値から約2nm_<pp>程度の精度を有していることが分かった。また今回構成した系において±5nm程度は補償可能であることが分かった。さらにこの時ステージに入力される電圧信号データを計算機上で先に求めたステージの伝達関数に入力することで実際には観察することのできないステージの動きについてシミュレーションを行い確認したところ、ステージは所望の動きをしていることが分かった。平成19年度は強誘電体記録方式におけるサーボ・トラッキング法によるデータの記録再生に関する研究と強誘電体高密度記録に関する研究を行った。サーボ・トラッキング法に関する研究では、ディジタルシグナルプロセッサーを既存の走査型非線形顕微鏡(SNDM)を応用したデータ記録再生システムと複合的に併せることにより、ヘッド-記録ビット列の相対位置を自動制御で補正する、より実用上のデバイスに近いシステムを設計した。サーボ・トラッキング技術は、強誘電体記録デバイスの実用化のために要求されるものの一つに挙げられるため、本研究の達成は応用の点から有効であると思われる。また、現在の系の精度と、問題点を明確にすることで今後更なる位置精度を実現することも可能であると思われる。続いて強誘電体高密度記録に関する研究を行った。この研究を行うにあたり、既存の装置に改造を施し、ドリフトが極めて少ないSNDMの開発に取り組んだ。この記録再生装置を用い、Tbpsiの記録におけるドット消去実験を行った。これにより強誘電体記録では初めて、Tbpsi級の高密度記録で、初めてデータの再書き込みが可能であることが証明された。さらに高密度実データ記録に関する研究を行った。現在までに報告されている強誘電体記録における高密度実データ記録の記録密度は、1Tbpsiだったが、今回の研究ではその300%の伸びに相当する3Tbpsiの記録に成功した。これにより、これにより、強誘電体記録デバイスが次世代の記録デバイスになりうるという見通しが立った。平成20年度における研究は、19年度に引き続き強誘電体超高密度記録(接触型、カンチレバー方式))に関する研究と、非接触状態制御下での高密度記録(非接触型、プローブ方式)に関する研究を行った。以下それぞれ詳細を述べる。接触型カンチレバー記録再生方式19年度に開発した熱ドリフト、時間ドリフトが極めて少ない走査型非線形誘電率顕微鏡(SNDM)を用いて、記録媒体には、30nmに薄片化した一致溶融組成LiTaO_3(CLT)単結晶を用い、強誘電体高密度記録に関する研究を行った。探針の最適化及び媒体への外部印加電圧に関して、記録、再生それぞれについて最適化を施すことによって、多数点において4Tbit/inch^2の高密度記録に成功した。これは現在一般的なパーソナルコンピュータに搭載されている磁気記録方式を応用したハードディスクドライブ(HDD)の最高記録密度が500Gbit/inch^2程度であることを考慮すると、約8倍程度の高密度記録を達成したことになる。また数十点程度の少数点での単純な記録においては世界最高レベルの6Tbit/inch^2にも成功した。非接触型プローブ記録再生方式実際の記録デバイスに必要とされる、記録再生ヘッドと記録媒体が非接触状態下での記録再生実験を行った。まず、探針径が非常に先鋭なプローブを作製した。その後NC-SNDM法を用い、非接触状態を維持したまま記録再生の実験を行った。結果として1Tbit/inch^2の記録再生に成功した。
KAKENHI-PROJECT-07J10446
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強誘電体プローブメモリに関する研究
これにより、非接触状況下の記録再生においてもTbit/inch^2を超える記録が可能であるということが分かった。現在最も世界で記録デバイスとして使用されているHDDや、CD,DVDといった光学ディスク記録に代表されるメディア上記録再生ヘッドが走査する記録ドライブはデータの信頼性を高めたり、高S/Nレートでのデータ再生を行うために記録ヘッドが常にトラック列中央を走査する位置制御機構が設けられている(サーボ・トラッキング法)。一方で強誘電体記録方式には現在まで有効なサーボ・トラッキング法の報告例は少ない。今回微小な記録ビットからなるトラック列を高精度にトラッキングするため、初めにシステムを構成する走査型プローブ顕微鏡のピエゾステージおよび強誘電体の分極方向を判別する走査型非線形誘電率顕微鏡(SNDM)の周波数特性(伝達関数)を実測および回帰分析において求めた。有効に機能する補償器としてKanazawa UNIV.のAndoらが提唱する動的PID法を用いることにした。動的PID法とは、補償器への入力信号の大きさによってPID補償器の比例ゲイン、積分ゲイン微分ゲインの大きさが変わる補償法である。この動的PID法のメリットとしてSNDMに重畳するノイズによる記録再生ヘッド位置の誤制御を抑止できること、また周期分極構造からなるサーボマークが記録再生ヘッドの走査方向に対して厳密に直線状に配向できず、ドメインバンダリに多少のガタつきが存在する場合においても記録再生ヘッドを目標とする位置近傍に近づけることができるということが挙げられる。これらの系を用いて記録ビットが64×64点の多数点からなり複雑に配列されたいわゆる実データに関して記録密度1Tbit/inch^2のトラッキングデータ記録再生実験を行った。得られた結果に対してビット誤り率(BER)を評価した。この時のBERは2.0×10^<-3>と計算された。次にサーボ領域におけるエラー信号(SNDMからの出力電圧)について解析した。SNDMにはノイズが重畳するため、エラー信号が厳密な意味で0Vになることはないが、時間の経過と共にエラー信号が0Vに近づくこと、時間が十分に経過したのちSNDMが実情もちうるノイズ出力とほぼ同程度だったため、記録再生ヘッドの自動制御が有効に機能したと考えられる。位置精度を大きく見積もったとしても、目標値から約2nm_<pp>程度の精度を有していることが分かった。また今回構成した系において±5nm程度は補償可能であることが分かった。さらにこの時ステージに入力される電圧信号データを計算機上で先に求めたステージの伝達関数に入力することで実際には観察することのできないステージの動きについてシミュレーションを行い確認したところ、ステージは所望の動きをしていることが分かった。
KAKENHI-PROJECT-07J10446
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学習機能を付加した自動栽培管理システムの開発
栽培管理に対する熱意と研究心の違いによって,農家の生産性に大きな開きが生じている.熱意と研究心に富む栽培者は,いわゆる篤農家といわれる農家であるが,栽培管理のために多くの労働時間をさくことを余儀なくされている.そこで,本研究では栽培管理の省力化のためのシステム開発を目的とする.栽培管理は極めて個別的な行為であると考えられる.なぜなら,栽培者は,栽培地の地下水位や気候条件などの局地的条件に適した栽培法を採用していると考えられるからである.これらの個別性を考慮して栽培の自動化を図るには,普遍的なアルゴリズムでは不十分と考えられる.そこで,本研究では,栽培者の栽培方法あるいは原則(栽培管理ルールと呼ぶ)を,実際の栽培場面での,気象条件などの栽培管理を規定する条件(外部条件と呼ぶ)と栽培管理行為を自動計測し,そのなかから栽培管理ルールを抽出し,その後,そのルールによって栽培管理を自動的に行うシステムの開発を目指す.栽培者は,外部条件の物理的計測によって栽培管理を行っているというよりも,目で見,肌で感じた条件によって行っている.したがって,ルールを学習する段階では,この皮膚感覚に伴うあいまいさが混入してくる.また,栽培管理は人間による行為であるから,必ずしもルール通りななされるとはかぎらない.このようなノイズも学習段階に混入してくる.最終的システムでは,あいまいさやノイズを扱える必要がある.本研究では,あいまいさやノイズを扱えるアルゴリズムの開発を目指したが,完成はしなかった. AREアルゴリズムと名付けた学習アルゴリズムを開発し,栽培管理の多くの場面で,栽培管理行為を100%再現できることを確めた.今後, AREアルゴリズムを,あいまいさやノイズを扱えるように拡張することが必要である.栽培管理に対する熱意と研究心の違いによって,農家の生産性に大きな開きが生じている.熱意と研究心に富む栽培者は,いわゆる篤農家といわれる農家であるが,栽培管理のために多くの労働時間をさくことを余儀なくされている.そこで,本研究では栽培管理の省力化のためのシステム開発を目的とする.栽培管理は極めて個別的な行為であると考えられる.なぜなら,栽培者は,栽培地の地下水位や気候条件などの局地的条件に適した栽培法を採用していると考えられるからである.これらの個別性を考慮して栽培の自動化を図るには,普遍的なアルゴリズムでは不十分と考えられる.そこで,本研究では,栽培者の栽培方法あるいは原則(栽培管理ルールと呼ぶ)を,実際の栽培場面での,気象条件などの栽培管理を規定する条件(外部条件と呼ぶ)と栽培管理行為を自動計測し,そのなかから栽培管理ルールを抽出し,その後,そのルールによって栽培管理を自動的に行うシステムの開発を目指す.栽培者は,外部条件の物理的計測によって栽培管理を行っているというよりも,目で見,肌で感じた条件によって行っている.したがって,ルールを学習する段階では,この皮膚感覚に伴うあいまいさが混入してくる.また,栽培管理は人間による行為であるから,必ずしもルール通りななされるとはかぎらない.このようなノイズも学習段階に混入してくる.最終的システムでは,あいまいさやノイズを扱える必要がある.本研究では,あいまいさやノイズを扱えるアルゴリズムの開発を目指したが,完成はしなかった. AREアルゴリズムと名付けた学習アルゴリズムを開発し,栽培管理の多くの場面で,栽培管理行為を100%再現できることを確めた.今後, AREアルゴリズムを,あいまいさやノイズを扱えるように拡張することが必要である.農家の作物管理には、経験や勘に頼っている部分が多くある。また、そのような方法で実績をあげている農家も多い。一方、施設園芸を中心にして、作物管理のためにコンピューの導入が進められている。温室内部環境のコンピュータ制御は、すでに多くの実績をあげており、省力化に大きく貢献しているといえよう。今後の日本農業の将来を考えると、省力化を中心としたコンピュータによる自動化は、さらに進展するものと思われる。農家の経験や勘に基づく管理は、主に作物の状態や気象等を目でみ、肌で感じて行われていると考えられる。本研究の最終目標は、個々の農家の温室管理の原則をコンピュータに移植し、管理の自動化を行うシステムを開発することである。そのためには、農家の行っている判断、決定等の原則を、実際の管理の場面から抽出する必要がある。それらの原則は、数式では表現できないものであろう。本研究では、そのための知識工学の一分野である帰納的推論の方法を適用する。本年度は、主に帰納的推論のソフトウェアの開発と取組んだ。農家の行動は機械のように正確なものでなく、多くの"雑音"を含んでいると考えられる。多くの"雑音"の中から原則を抽出する帰納的推論に関する研究事例は極めて少ない。そこで、有効な帰納的推論の方法に関して、試行錯誤的に試験した。そのなかから、本研究の目的に適した方法に関して、知見が集積されつつある。また、開発したソフオウェアの検証用の水耕栽培装置を完成した。今後は、ソフトウェアに改良を加え、作製した水耕栽培装置を使用して、実際の場面で実証試験を行う予定である。実証試験を通じて明らかとなったソフトウェアの改良点を改良し。より完成度の高いものに近づけることが可能となろう。
KAKENHI-PROJECT-61560286
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61560286
土粒子構造・エネルギーの観点による地盤の液状化強度評価手法の構築
近年高まる大型地震の発生に際し,より高精度かつ合理的な液状化強度予測法の開発が求められている.本研究では既往の研究において限られた条件下で示されている,地盤の密度と構造のそれぞれが液状化強度や変形特性,せん断波度Vsに及ぼす影響を,高精度の試験機を用いて詳細に検討する予定である.また,現行のN値を利用した液状化判定法にVsの影響を考慮した補正式を提案し,現行の液状化リスク評価との比較を行い,精度の検証を行う.具体的にはVs計測可能な貫入試験用大型土槽を製作し,異なる地盤作製法や初期載荷履歴を与えた地盤模型での貫入試験により,Vsが反映する土粒子構造の違いがN値に及ぼす影響を調べる.近年高まる大型地震の発生に際し,より高精度かつ合理的な液状化強度予測法の開発が求められている.本研究では既往の研究において限られた条件下で示されている,地盤の密度と構造のそれぞれが液状化強度や変形特性,せん断波度Vsに及ぼす影響を,高精度の試験機を用いて詳細に検討する予定である.また,現行のN値を利用した液状化判定法にVsの影響を考慮した補正式を提案し,現行の液状化リスク評価との比較を行い,精度の検証を行う.具体的にはVs計測可能な貫入試験用大型土槽を製作し,異なる地盤作製法や初期載荷履歴を与えた地盤模型での貫入試験により,Vsが反映する土粒子構造の違いがN値に及ぼす影響を調べる.
KAKENHI-PROJECT-19J12349
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19J12349
ディジタル受信機を用いたパッシブレーダーによるプラズマバブル広域監視法の研究開発
パッシブレーダー技術を用いて短波放送波の伝播距離を測定する装置を、ディジタルソフトウェア受信機を利用して開発した。開発した装置を用いて豪州から赤道を越えて日本へ伝播する短波放送波の伝播遅延から伝播距離を測定し、同時に方向探査装置によりその到来方向を測定する実験を行った。伝播距離と到来方向の同時測定により、プラズマバブルの位置推定精度を高め、その発生を広域で効率的に監視することができる見通しを得た。パッシブレーダー技術を用いて短波放送波の伝播距離を測定する装置を、ディジタルソフトウェア受信機を利用して開発した。開発した装置を用いて豪州から赤道を越えて日本へ伝播する短波放送波の伝播遅延から伝播距離を測定し、同時に方向探査装置によりその到来方向を測定する実験を行った。伝播距離と到来方向の同時測定により、プラズマバブルの位置推定精度を高め、その発生を広域で効率的に監視することができる見通しを得た。プラズマバブルの広域監視を効率的に行うため、パッシブレーダー技術を用いた短波電波距離測定装置を、ディジタル受信機を用いて開発した。ディジタル受信機には米国Ettus Research社のUSRP(Universal Software Radio Peripheral)を用い、制御・データ記録用PCで動作する観測ソフトウェアをオープンソースのGnuRadioソフトウェアをもとに開発した。受信機間で時刻同期したデータを取得するため、短波帯アンテナからの信号と同時にGPS受信機の1秒毎の時刻パルス信号を同時に受信し記録するシステムを開発した。装置の動作、性能試験のために、国内短波放送局(ラジオNIKKEI、送信所:千葉県長柄町)を用いて、電子航法研究所(東京都調布市)と京都大学生存研研究所(京都府宇治市)の間で伝播距離差測定実験を行った。観測実験は2010年3月18日29日の間行われた。得られた距離差は、両地点とも電離圏を経由して伝播したものとすると、情報通信研究機構によるイオノゾンデ観測(周波数ごとの電離圏反射高度を観測)から推定される距離差とよく一致した。また、測定の精度は約5kmであった。これらのことから、開発した装置は正常に動作し、本来の目的である豪州・日本間の短波伝播距離測定に十分な性能を有していることが分かった。この結果により、2010年度以降に予定されている、本装置を中心としたプラズマバブルの観測実験を行うことが可能となった。平成21年度に行った国内放送局を用いた実験結果に基づき、短波赤道横断伝播のディジタル受信システムの改良と、データ解析ソフトウェアの開発を行った。平成22年10月13日17日に、第1回のRadio Australia放送波を用いた短波赤道横断伝播観測実験を行った。伝播距離を測定するために、受信システムの一方をRadio Australia送信所が設置されている豪州・ビクトリア州Sheppartonに設置し、基準となるRadio Australia放送波信号を取得するとともに、他方の受信システムを情報通信研究機構・大洗方向探査施設に設置し磁気赤道を越えて伝播するRadio Australia放送波を同時受信した。さらに大洗方向探査施設でRadio Australia放送波の到来方向測定を同時実験として行った。受信ソフトウェアに不具合が発生したため伝播距離の測定は残念ながら失敗となったが、電波到来方向探査の結果では多くのプラズマバブルの発生が検出された。この結果に基づき、不具合の原因を究明し受信システムの改修を行い、より安定して動作するシステムに改良した。改良したシステムを用いて第2回の短波赤道横断伝播観測実験を平成23年3月後半に実施する予定であったが、東日本大震災により大洗方向探査施設が被災したため平成23年度に延期した。平成23年4月に大洗方向探査施設が復旧したため、平成23年4月1417日に第2回Radio Australia放送波を用いた短波赤道横断伝播観測実験を行った。本実験では伝播距離測定、電波到来方向探査ともに成功し、プラズマバブル発生時のデータ取得に成功した。平成22年度に行った第1回のRadio Australia放送波を用いた短波赤道横断伝播観測実験における不具合を解消するための改良を施した観測システムを用い、プラズマバブル発生季にあたる平成23年4月1417日と平成23年10月2023日に第2、3回の短波赤道横断伝播観測実験を行った。第1回実験と同様に、伝播距離を測定するために、受信システムの一方をRadio Australia送信所が設置されている豪州・ビクトリア州Sheppartonに設置し、基準となるRadio Australia放送波信号を取得するとともに、他方の受信システムを情報通信研究機構・大洗方向探査施設に設置し磁気赤道を越えて伝播するRadio Australia放送波を同時受信した。さらに大洗方向探査施設でRadio Australia放送波の到来方向測定を同時実験として行った。プラズマバブルの発生により大洗におけるRadio Australia電波の到来方向が大きく西へ変化するのに伴って伝播距離が大きく増大し、その後プラズマバブルの東進に伴い大洗で観測されたRadio Australia電波の到来方向が南西から南へ変化するに従い伝播距離が徐々に減少するという様子が捉えられた。これらの結果から、短波赤道横断伝播の到来方向測定に伝播距離測定を加えることにより、プラズマバブルの位置推定精度向上の可能性を示唆する結果が得られたと言える。第2回短波赤道横断伝播観測実験まで結果をまとめ、平成23年8月に国際学会(国際電波科学連合(URSI)2011年総会・科学シンポジウム)において学会発表を行った。発表では、内容について好評を得るととともに、観測精度向上のための将来的なシステムの改良に関する示唆を得ることができた。これまでの結果をまとめた論文を国際論文誌に投稿する準備を進めている。
KAKENHI-PROJECT-21740357
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21740357
血管新生抑制作用を有する抗酸化成分によるメタボリックシンドローム発症予防の検討
本研究では、抗酸化作用を有する食品成分であるカロテノイド・ポリフェノール類から血管新生抑制作用を示すものを新たに見出し、その作用機序について血管内皮細胞を用いて明らかにした。更に、それらの成分が、血管内皮細胞に対して保護的に作用することや肥満に繋がる幹細胞からの脂肪細胞分化を抑制することを見出した。これらの成果から、抗酸化作用と血管新生抑制作用を有する食品成分は、メタボリックシンドローム発症予防に有効であることが示唆された。本研究では、抗酸化作用を有する食品成分であるカロテノイド・ポリフェノール類から血管新生抑制作用を示すものを新たに見出し、その作用機序について血管内皮細胞を用いて明らかにした。更に、それらの成分が、血管内皮細胞に対して保護的に作用することや肥満に繋がる幹細胞からの脂肪細胞分化を抑制することを見出した。これらの成果から、抗酸化作用と血管新生抑制作用を有する食品成分は、メタボリックシンドローム発症予防に有効であることが示唆された。近年、食生活の変化や交通機関の発達により、摂取エネルギー過多と運動不足により肥満が増加している。肥満による糖尿病、高血圧、高脂症などと共に、これらの疾病が重複するメタボリックシンドロームが深刻化している。メタボリックシンドロームを予防するには、その要因となる糖尿病や高脂症、更には肥満予防が重要である。肥満予防機能を有する食品成分として、血管新生抑制作用を有する成分が注目されている。そこで、高血糖状態による活性酸素障害も予防し、肥満抑制にも繋がる可能性を有する食品成分について検討した。ポリフェノール・カロテノイド類は強い高酸化作用を持つことから、活性酸素障害から細胞を守る物質として注目されている。しかし、血管新生抑制作用を有するカロテノイドについては報告が極めて少ない。そこで、カロテノイドについてラット動脈片を用いた血管新生測定系でスクリーニングした。その結果、昆布、ヒジキ、ワカメといった褐藻類に含まれるフコキサンチンに強い血管新生抑制作用を見出した。フコキサンチンの代謝物であるフコキサンチノールにも同様に血管新生抑制作用があることも見出した。フコキサンチンの血管新生抑制作用機序についてヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞(HUVEC)を用いて検討した。フコキサンチンは、HUVECの増殖と再構成基底膜状での管腔形成を阻害することにより血管新生を抑制することが示された。また、マウス胚性幹細胞(ES)細胞からの血管形成と脂肪細胞分化への影響を検討したところ、ES細胞からの血管形成と脂肪細胞分化を抑制することが明らかとなった。以上の結果から、強い高酸化作用を有するフコキサンチンは肥満予防やメタボリックシンドロームの発症に予防的に作用する可能性が示唆された。なお、フコキサンチンによる肥満予防は動物実験による報告があるが、血管新生抑制作用による可能性を示したのは、本研究が最初である。現代の食生活および慢性的な運動不足により肥満が幼児から成ムに至るまで増加し、生活習慣病の要因として大きな社会問題となっている。また、糖尿病、高血圧、高脂血症といった生活習慣病を併発するメタボリックシンドロームも誘発することから、肥満予防への取り組みは急務である。本研究では、肥満予防とメタボリックシンドローム発症予防に有用な食品成分の探索、作用機序解明、新規機能の可能性について検討を行った。茶カテキンは抗酸化作用と血管新生抑制作用を有することが知られている。茶カテキンの内、最も強い血管新生抑制作用を有するのはエピガロカテキンガレートである。茶カテキン類の機能向上を目的として、エピカテキンに脂肪酸を結合させた誘導体を合成し験討した。その結果、エピカテキン-脂肪酸誘導体はエピカテキン単体よりも強い血管新生抑制作用を示した。また、結合する脂肪酸のアシル鎖が長鎖になる程、血管新生抑制作用は高まった。近年、ビタミンB6に抗酸化作用があることが判明している。しかも、ビタミンB6には血管新生抑制作用や糖尿病合併症(網膜症および腎症)予防効果も示され、ビタミン類め新規機能が注目されている。そこで、ビタミンB6による糖尿病合併症予防効果の作用機序解明を目的に、糖尿病合併症発症に関わる主要な遺伝子群の発現に対するビタミンB6の影響について検討した。その結果、生体防御機構に関連する遣伝子の発現を高めることが示唆された。この結果は、ビダミンB6による糖尿病合併症予防機序に関しそ新しい知見を与えるものである。これらの結果を踏まえ、最終年度となる来年度はより高機能な食品成分の探索、作用機序解明、ビタミンの新規機能解明などを進め、メタボリックシンドローム廃症予防に役立つ食品成分研究を多面的に進めたい。高血圧や糖尿病など複数の生活習慣病を併発するメタボリックシンドロームが大きな社会問題となっている。多くの生活習慣病が酸化ストレスや血管新生によって悪化することから、本研究では抗酸化作用及び血管新生抑制作用を有する食品成分によるメタボリックシンドローム発症予防の可能性を検討した。糖尿病や動脈硬化では、活性酸素や酸化LDLが病態に関与している。従って、抗酸化成分が血管新生抑制作用を有していれば、メタボリックシンドロームの進行を予防できる可能性が高い。そこで、抗酸化成分の血管新生抑制作用を検討し、新たにカルノシン酸に血管新生抑制作用を見出した。また、本成分による糖尿病合併症予防効果について検討したところ、新規作用機序の可性が示唆された。ビタミン類の生活習慣病予防効果について近年見直されてきていることから、ビタミンK類の血管新生抑制作用について検討した。その結果、ビタミンK3及びその誘導体に血管新生抑制作用を見出した。
KAKENHI-PROJECT-18700608
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血管新生抑制作用を有する抗酸化成分によるメタボリックシンドローム発症予防の検討
ビタミンK1は動脈硬化を悪化させる可能性が示唆されていることから、他のビタミンK類に血管新生抑制作用を見出したことは、ビタミンKの利用に関して重要な知見となる。メタボリックシンドローム予防の一つとして、過度の肥満を防ぐことが重要である。肥満予防に血管新生抑制作用を有する茶カテキンが有効であることが知られているが、その作用機序には未だ不明な点が多い。茶カテキンの抗肥満作用として、脂肪組織に多い幹細胞や脂肪前駆細胞から脂肪細胞への分化にも影響を与えている可能性がある。そこで、マウス胚性幹細胞(ES細胞)を用いて検討した結果、茶カテキン存在下で幹細胞から分化した脂肪細胞は脂肪代謝が高まっている可能性が遺伝子発現解析から示唆された。以上、抗酸化作用と血管新生抑制作用を有する食品成分はメタボリックシンドローム発症予防に有用である可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-18700608
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マメ科作物生産に及ぼすミャンマーの根粒菌と放線菌エンドファイトの評価
ミャンマーでは換金作物である各種マメ科植物の増産を目的に,国をあげて取り組んでいる.そこで,我々は持続的農業を可能にする生物的窒素固定と成長促進効果を利用したバイオ肥料の開発を目指し,ミャンマー各地のマメ科作物の栽培地域の土壌から根粒菌を分離し,最終的に生物肥料の製造につながる根粒菌を選抜し,選抜した根粒菌と植物成長促進効果のある放線菌を用いた生物肥料の開発のための基礎データを得ることを目的とする.このためのに,分離した根粒菌の種の同定と窒素固定能力の評価を行い,それぞれのマメ科植物に対し窒素固定能力の高い根粒菌を選抜するとともに植物成長促進効果の高い放線菌との共接種の影響を評価する.ミャンマーでは換金作物である各種マメ科植物の増産を目的に,国をあげて取り組んでいる.そこで,我々は持続的農業を可能にする生物的窒素固定と成長促進効果を利用したバイオ肥料の開発を目指し,ミャンマー各地のマメ科作物の栽培地域の土壌から根粒菌を分離し,最終的に生物肥料の製造につながる根粒菌を選抜し,選抜した根粒菌と植物成長促進効果のある放線菌を用いた生物肥料の開発のための基礎データを得ることを目的とする.このためのに,分離した根粒菌の種の同定と窒素固定能力の評価を行い,それぞれのマメ科植物に対し窒素固定能力の高い根粒菌を選抜するとともに植物成長促進効果の高い放線菌との共接種の影響を評価する.
KAKENHI-PROJECT-19F18079
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熱帯林における林冠植物の種多様性と人為撹乱のインパクト
着生植物をはじめとする林冠植物は熱帯林において多様かつ豊富であるにもかかわらず、森林が急速に減少する東南アジア熱帯においては林冠植物に関する研究事例が少なく、林冠植物群集の保全に向けたデータを集めることが急務となっている。主要な調査地であるドイインタノン国立公園(タイ)において雨期に現地調査を実施した。林内での空間分布を記録した維管束着生植物32種を対象として葉を採取し、形質を測定した。これまでに得られたデータを用いて、熱帯林内の着生植物の空間分布がどのように規定されているのかを解析した。林内のハビタット構造(空間的・構造的特徴)は微気象と強く相関していたために、着生植物の空間分布とハビタット構造との関係性に着目して解析を行った。着生植物の種ごとの空間分布は重複していたが、ハビタット構造の変異にともなって出現する種の生活形(葉の常落性と生育型)が推移することを明らかにした。一方で、種の葉形質は常落性によって異なり、常緑種は葉の光合成能力よりも構造にコストをかけるが、落葉種ではその反対の傾向があった。また、生活形ごとの空間分布と葉形質の間には連関性があることを示した。これらの研究成果をまとめた原著論文を国際誌に投稿準備中である。6月に京都で開催された日本熱帯生態学会においては林内の光環境によって生育する着生植物の種が異なるという研究成果を発表した。また、3月に仙台にて開催された日本生態学会では着生植物の空間分布とハビタット構造の関係性を解析した結果をまとめて発表した。両発表において発表賞を獲得した。中国雲南省のシーサンパンナ熱帯植物園において開催された林冠研究ワークショップに参加した。関連分野の研究者との議論を通じて研究の進展や研究者ネットワークの拡大につながった。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。着生植物をはじめとする林冠植物の多様さと豊富さは熱帯林における特徴であるが、森林が急速に減少する東南アジア熱帯においては林冠植物に関する研究事例が少なく、林冠植物群集の保全に向けたデータを集めることが急務となっている。本年度は、主要な調査地であるドイインタノン国立公園(タイ)では雨期と乾期に1回ずつ合計2度の現地調査を行い、森林内における林冠植物の空間分布を記録するとともに林冠内部の微気象を明らかにするために気温と相対湿度、光環境を林内の多点で測定した。これまでの解析から、同じ林分内でも主に上層部に出現する林冠植物種はサイズが大きい樹木上に偏って出現する一方で下層部に出現する種は樹木サイズにかかわらず均等に出現する傾向が見られた。さらに、谷部と尾根部の林分を比較すると出現する林冠植物の種構成が異なるだけでなく、両方に出現する種に関しても出現の頻度や位置が異なることが明らかとなった。このような林分単位での林冠植物の空間分布を扱った研究は少なく、これまでの結果は貴重な成果である。今後は微気象や生育場所の特徴(枝の位置、太さ、角度など)を合わせて解析することで林冠植物の空間分布を規定する要因を考察する。以上の内容について論文を執筆中であり、今後論文の投稿と学会発表を行う。また、その他の調査地であるランビルヒルズ国立公園(マレーシア)と屋久島(鹿児島県)をそれぞれ初めて訪れ、現地の研究施設の確認と林冠植物の種多様性に関する予備調査を実施した。7月にケアンズ(オーストラリア)にて開催された国際学会ATBC2014にてドイインタノン国立公園の林分における林冠植物の空間分布に関する研究発表を行った。また、3月に鹿児島にて開催された日本生態学会において、企画者の一人としてツリークライミングを手法として用いた生態学研究に関する企画集会を計画・実施し、集会内で発表も行った。着生植物をはじめとする林冠植物は熱帯林において多様かつ豊富であるにもかかわらず、森林が急速に減少する東南アジア熱帯においては林冠植物に関する研究事例が少なく、林冠植物群集の保全に向けたデータを集めることが急務となっている。主要な調査地であるドイインタノン国立公園(タイ)において雨期に現地調査を実施した。林内での空間分布を記録した維管束着生植物32種を対象として葉を採取し、形質を測定した。これまでに得られたデータを用いて、熱帯林内の着生植物の空間分布がどのように規定されているのかを解析した。林内のハビタット構造(空間的・構造的特徴)は微気象と強く相関していたために、着生植物の空間分布とハビタット構造との関係性に着目して解析を行った。着生植物の種ごとの空間分布は重複していたが、ハビタット構造の変異にともなって出現する種の生活形(葉の常落性と生育型)が推移することを明らかにした。一方で、種の葉形質は常落性によって異なり、常緑種は葉の光合成能力よりも構造にコストをかけるが、落葉種ではその反対の傾向があった。また、生活形ごとの空間分布と葉形質の間には連関性があることを示した。これらの研究成果をまとめた原著論文を国際誌に投稿準備中である。6月に京都で開催された日本熱帯生態学会においては林内の光環境によって生育する着生植物の種が異なるという研究成果を発表した。また、3月に仙台にて開催された日本生態学会では着生植物の空間分布とハビタット構造の関係性を解析した結果をまとめて発表した。両発表において発表賞を獲得した。
KAKENHI-PROJECT-14J01551
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J01551
熱帯林における林冠植物の種多様性と人為撹乱のインパクト
中国雲南省のシーサンパンナ熱帯植物園において開催された林冠研究ワークショップに参加した。関連分野の研究者との議論を通じて研究の進展や研究者ネットワークの拡大につながった。主要な調査地であるドイインタノン国立公園における必要なデータは一部を除いて本年度で取り終えることができた。また、ランビルヒルズ国立公園においても新たに調査を実施することができた。これらに関してはデータ分析も開始していることから、計画通り順調に進んでいる。本来の計画であればインドネシアのグヌンハリムン国立公園において調査を開始する予定であったが、調査許可取得の問題で本年度は調査を行うことができなかった。しかしながら、その代わりに屋久島において調査を実施することができたため、異なる調査地でのデータが得られた。また、本年度に屋久島で調査を実施できたことから、次年度にグヌンハリムン国立公園での調査に時間を費やすことができると考えられる。以上より、研究計画に一部の変更があったもののおおむね順調に進んでいると言える。27年度が最終年度であるため、記入しない。これまで研究がおおむね順調に進展していることから、今後も当初の研究計画通りに研究を推進する。サケラート環境センター(タイ)において現地調査を実施するとともに、本年度現地調査を実施できなかったグヌンハリムン国立公園においても調査を行う。これまでのデータと合わせて解析を進め、得られた結果をまとめて東南アジアにおける種多様性を明らかにするとともに、人為撹乱がそれらに与えるインパクトを評価する。以上の内容について、論文を執筆し国際学術誌へ投稿し、学会発表も行う。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-14J01551
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脳神経スパイク時系列データ解析に向けた統計解析手法の構築
脳の構成単位である神経細胞の情報伝達はスパイク(神経発火)によって行われている.しかし,どのような形式でスパイク時系列に情報が符号化されているのかについては,いまだ明らかにされていない.そこで我々はスパイク時系列を特徴づける統計量について理論的な考察を行った.スパイク時系列の特徴としてまず挙げられるのが発火率(発火頻度)であり,それにある程度の情報が符号化されていることは広く認識されている.しかし,スパイク時系列は発火率だけで表されるわけではなく,それ以外の性質によっても特徴づけることができるだろう.発火率以外の特徴量としては以前からスパイク問間隔のバラつきの程度を表す「不規則性」が注目されていた.ここで発火率はスパイク間間隔分布の平均値(の逆数)として明確に定義されるのに対し,不規則性はスパイク間間隔分布のばらつきを表す量として経験的に考えられてきた量であり,どのような意味や利点をもつのかについては分かっていなかった.そこで,これらの統計量の関係を情報理論的な観点から捉え直すこととした.我々はスパイク間間隔分布を特徴付ける統計量の内,平均値(発火率)に情報幾何的に直交する統計量を求めた.情報幾何的に直交していれば推定の際に独立した情報を得ることができ,統計量の組の選び方として効率的であるといえる.そのような望ましい統計量を求めた結果,条件を満たすものは対数平均値のみであることを明らかにした.対数平均値は意味として不規則性と対応しており,そのため今回の結果は不規則性を対数平均値として再定義することを提案するものである.この研究成果は学術論文誌Journal of Computational Neuroscienceに掲載された.脳の構成単位である神経細胞の情報伝達はスパイク(神経発火)によって行われている。しかし、スパイク時系列を解析するための手法は確立されておらず、どのような形式でスパイク時系列に情報が符号化されているかについては、いまだ明らかにされていない。そこで我々は、ベイズ推定の手法を用いて、神経スパイク時系列の統計解析を行っている。スパイク時系列の特徴としてまず挙げられるのが発火率(発火頻度)であり、それにある程度の情報が符号化されていることは広く認知されている。だが、他にも注目を集めている特徴として、発火パターンの不規則けが挙げられる。この不規則性(特にその時間変化)においては、これまでアドホックな解析手法しか考案されておらず、厳密に議論することが難しかった。我々は当該年度の研究により、一試行のスパイク時系列から発火率と不規則性の時間変動を同時に推定可能な新しい方法を確立した。さらに、この解析手法を実験データに当てはめ、不規則性の時間変化の程度がV1,MTといった大脳皮質とLGNといった視床で大きく異なることを示した。これは皮質と視床でニューラルネットワークの構造が異なることを示唆するものである。脳の構成単位である神経細胞の情報伝達はスパイク(神経発火)によって行われている.しかし,どのような形式でスパイク時系列に情報が符号化されているのかについては,いまだ明らかにされていない.そこで我々はスパイク時系列を特徴づける統計量について理論的な考察を行った.スパイク時系列の特徴としてまず挙げられるのが発火率(発火頻度)であり,それにある程度の情報が符号化されていることは広く認識されている.しかし,スパイク時系列は発火率だけで表されるわけではなく,それ以外の性質によっても特徴づけることができるだろう.発火率以外の特徴量としては以前からスパイク問間隔のバラつきの程度を表す「不規則性」が注目されていた.ここで発火率はスパイク間間隔分布の平均値(の逆数)として明確に定義されるのに対し,不規則性はスパイク間間隔分布のばらつきを表す量として経験的に考えられてきた量であり,どのような意味や利点をもつのかについては分かっていなかった.そこで,これらの統計量の関係を情報理論的な観点から捉え直すこととした.我々はスパイク間間隔分布を特徴付ける統計量の内,平均値(発火率)に情報幾何的に直交する統計量を求めた.情報幾何的に直交していれば推定の際に独立した情報を得ることができ,統計量の組の選び方として効率的であるといえる.そのような望ましい統計量を求めた結果,条件を満たすものは対数平均値のみであることを明らかにした.対数平均値は意味として不規則性と対応しており,そのため今回の結果は不規則性を対数平均値として再定義することを提案するものである.この研究成果は学術論文誌Journal of Computational Neuroscienceに掲載された.
KAKENHI-PROJECT-08J00958
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J00958
17世紀フランスにおけるイエズス会の挿絵本と絵画の関係についての総合的研究
代表者である、木村が、イエズス会と版画家ブリオとイエズス会図像、並びにオウィディウス挿絵の関係。一方で、画家フィリップ・ド・シャンパーニュと版画家、ヴィーリクスとの関係を研究し、デジタル・アーカイヴ研究も平行して行い、年度内に成果を得た。これらを基礎にして、平成22年度中に、当該テーマについての、海外調査を含めた研究の総括的な論文を、共同研究者、また、連携研究者が執筆する予定である。代表者である、木村が、イエズス会と版画家ブリオとイエズス会図像、並びにオウィディウス挿絵の関係。一方で、画家フィリップ・ド・シャンパーニュと版画家、ヴィーリクスとの関係を研究し、デジタル・アーカイヴ研究も平行して行い、年度内に成果を得た。これらを基礎にして、平成22年度中に、当該テーマについての、海外調査を含めた研究の総括的な論文を、共同研究者、また、連携研究者が執筆する予定である。本年度は、イエズス会の図像形成についての基礎研究を開始した。しかしながら、イエズス会における人文主義には、その図像形成上で、西洋の神話図像が深い関わりを持っている。その意味から、研究代表者をはじめとして共同研究者、並びに、研究協力者全員が、日仏美術学会シンポジウム「オウィディウス・挿絵・アーカイブ...デジタル時代の図像学を考える」(2007年9月29日(土))において、研究発表を行った。この内容は、当該研究テーマの基礎となる前回の科学研究費による図像分析の成果発表を公開の学会シンポジウムで行ったものである。各自の発表テーマは、上記の学会発表の欄に列記してある。一方で、木村は、2007年10月29日から11月6日まで、ミュンヘン、パリ、ロンドンへ出張し、中央美術研究所、フランス国立図書館、ワールブルグ研究所で調査を行った。また、2008年3月14日20日には、ニューヨークで「プッサンと自然」展(メトロポリタン美術館)を調査した。安室は、主に、東京を中心に当該テーマに関する挿絵本の調査と、図像資料を収集した。小野崎は、国内を中心に、古典古代研究等に関する基礎研究を行った。栗田は、2008年3月3日から10日までニューヨークに研究出張した。主に「プッサンと自然」展を綿密に調査し、関連資料を収集した。研究協力者である新畑は、2008年3月16日22日、パリに出張し、当該テーマに関する作品の基礎調査を行った。同じように、鯨井は、東京に出張し、印刷博物館での写本調査、並びに、アイコンクラス(Iconclass)研究を行った。木村は、版画家、ブリオlsaak Briotについての調査研究をパリの国立図書館で行った。ブリオは、オウィディウス『変身物語』の挿絵版画を制作しているが、一方で、イエズス会系の図像版画も多く手がけていることが判明した。今後の研究の方向性が見えた。連携研究者の安室は、(1)武蔵大学図書館および国立西洋美術館研究資料センター出張、(2)日仏会館図書室および印刷博物館出張、(3)慶応大学図書館および国立西洋美術館特別展「ルーヴル美術館展17世紀ヨーロッパ絵画」出張。以上の機関で、オヴィディウスを主題としたフランス絵画の展覧会カタログ等を閲覧図像資料の調査・収集。またイエズス挿絵本の出版史、版画技法についての展示を観覧。対抗宗教改革期の図像について汎ヨーロッパ的に調査、収集。この成果の一部を、2009年5月の美術史学会全国大会で発表予定している。{木村}フィリップ・ド・シャンパーニュが、17世紀半ばに制作した、祭壇画《煉獄の魂》の分析に集中した。先ず、作品分析のために、トゥールーズのオーギュスタン美術館に収蔵されている当該作品、一方で、パリのルーヴル美術館、リール美術館、ロンドンのウォーレス・コレクション収蔵の宗教絵画の分析を行った。関連版画の調査では、パリのフランス国立図書館版画室にあるヴィーリクスの作品調査、並びに、文献調査は、フランス国立古文書館で調査を行った。成果は、紀要論文の執筆、学会での発表となった。{栗田}パリのルーヴル美術館資料室等で資料収集調査を行った。併せて派生する研究の紹介論文、派生する問題の研究論文を執筆した。{安室}資料調査・作品実見等を目的とした国内訪問先は以下の通り:2009年5月、美術史学会第62回全国大会(京都大学)にて研究成果の一部を口頭発表した。2010年2月、愛知県芸術文化センター・アートライブラリーおよび名古屋大学図書館にて文献調査。3月、京都大学図書館にて文献調査。また、研究成果の一部を個別論文として刊行した。{小野崎}主に、イエズス会を創始した、イグナチウス・ロヨラの著作、及書簡を取り上げそれらの中に見られる「創造力を重視する姿勢」を注目し直し、創始者に有されたこのような姿勢とと、後に使われた挿絵使用との結びつきを見いだそうと試みた。こうした内在的、教義的な理由の分析に集中した。
KAKENHI-PROJECT-19520112
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19520112
青枯病菌の導管内移動能力と側根誘導現象の解析
青枯病菌と宿主の相互作用を解析するために、in plantaで青枯病菌の動態をイメージングにより解析する実験系を確立した。細胞壁分解酵素が青枯病菌の移動能力に関係することを確認した。さらに解析を進めるために、ナス科植物のモデルとしてタバコ培養細胞BY-2と青枯病菌の相互作用に着目した。病害応答遺伝子の発現等を調べた結果、BY-2細胞は青枯病菌の宿主のモデルとして機能する事が示された。この相互作用におけるエフェクターの役割を調べるためにpRSSを改変し、大腸菌とのシャトルベクターであるpRES-TGを構築した。pRES-TGを利用してpopABCのプロモーターの発現を解析した。青枯病菌の感染プロセスの研究において、(1)青枯病菌がトマトの芽生えに側根を誘導する現象、(2)青枯病菌耐性の品種においては、菌の導管内での移動か抑制される現象を見出しており、本研究ではこれらの現象の解析を目標としている。23年度において、主に(2)の項目について研究を行い、青枯病菌の細胞壁分解酵素(CWDE)のうち、セルロースを分解するエンドグルカナーゼ破壊株をGFPで標識した株をトマト芽生えに感染させ、菌の動態を蛍光顕微鏡によりリアルタイムで解析した。その結果、主根と側根の境界、および主根と茎の境界において、菌の移動が遅延・停止する現象を確認した。青枯病菌の植物体内における増殖・移動に関与するCWDEの機能解析を推進するにはモデル実験系が必要であると考え、タバコ培養細胞BY-2を利用した「青枯病菌感染モデル系の構築」を中心に24年度の研究を行った。まず、BY-2細胞に対して青枯病菌が誘引されるかを検討した。カルス化したBY-2細胞に対して、青枯病菌が誘引される事を確認した。次に、BY-2細胞と青枯病菌野生株(MAFF 106611)、あるいはEgl破壊株を混合し、BY-2細胞への吸着を解析した。蛍光顕微鏡による観察の結果、Egl破壊株は野生株に比べBY-2細胞への吸着が有意に低下していた。これより、Eglが青枯病菌感染の初期段階である植物細胞への吸着に深く関わっていることが、細胞レベルで示された。続いて、病害応答に関係するタバコの遺伝子(EREBP、PR-1、PR-4)の発現を定量PCRにより解析した。タバコに対して親和性の株と、非親和性の株とでは感染時に異なる発現パターンが誘導され、遺伝子発現レベルでもBY-2細胞が青枯病菌感染モデルとして利用可能なことが示された。現在、BY-2への感染系でのエフェクターの発現を解析中である。青枯病菌の感染プロセスの研究において、青枯病菌耐性の品種では菌の導管内での移動が抑制される現象を見出している。青枯病菌の植物体内における増殖・移動には、III型effectorやCWDE(細胞壁分解酵素)が関与していると考えられるが、それらの機能解析を推進するには、よりシンプルなモデル実験系が必要であると考えられた。そこで、タバコ培養細胞BY-2を利用した「青枯病菌感染モデル系の構築」に関する研究を24年度に継続して25年度にも実施した。(1)青枯病菌の病原性に対して、BY-2細胞が反応を引き起こすことの確認実験を24年度に継続して行った。MAFF106611株だけでなく、タバコに病原性を持つC-319株でもBY-2細胞に滴下した時に褐変を誘因することが観察され、BY-2細胞の有用性が確認された。(2)BY-2細胞を感染のモデル系として確立するには、感染過程におけるIII型effector等の発現・局在をGFPによるリアルタイムモニタリングで解析する必要がある。解析にはゲノムへの組換えよりも迅速・簡便な青枯病菌の形質転換系が望ましい。藤江らは青枯病菌に感染する線状ファージのゲノムを改変して、抗生物質による選択圧が存在しない状況でも安定に保持されるプラスミド(pRSS)を開発し、研究に利用してきた。H25年度においては、このプラスミドを大腸菌とのシャトルベクターに改変する事に成功し、研究の迅速な推進が可能になった(pRES-TG)。次いで、pRES-TGを利用して青枯病菌の代表的なIII型effecterであるpopABCオペロンの発現解析を行った。その結果、このオペロンのプロモーターはCPG培地等の富栄養の条件では発現が抑制されるが、導管内の条件に近い最小培地では発現が誘導されることが確認された。青枯病菌と宿主の相互作用を解析するために、in plantaで青枯病菌の動態をイメージングにより解析する実験系を確立した。細胞壁分解酵素が青枯病菌の移動能力に関係することを確認した。さらに解析を進めるために、ナス科植物のモデルとしてタバコ培養細胞BY-2と青枯病菌の相互作用に着目した。病害応答遺伝子の発現等を調べた結果、BY-2細胞は青枯病菌の宿主のモデルとして機能する事が示された。この相互作用におけるエフェクターの役割を調べるためにpRSSを改変し、大腸菌とのシャトルベクターであるpRES-TGを構築した。pRES-TGを利用してpopABCのプロモーターの発現を解析した。ナス科作物などに感染する青枯病菌(Ralstonia solanacearum)は、根等から植物体内に侵入し導管を伝わって全身に蔓延し、植物を枯死させる。
KAKENHI-PROJECT-23570079
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23570079
青枯病菌の導管内移動能力と側根誘導現象の解析
感染プロセスの研究過程において、(1)青枯病菌がトマトの芽生えに側根を誘導する現象、(2)青枯病菌耐性の品種においては、菌の導管内での移動が抑制される現象を見いだしており、本研究においてはこれらの現象の解析を目標としている。23年度においては、主に(2)の項目について研究を行った。青枯病菌が植物に侵入感染する過程においては、植物の細胞壁を分解する能力が重要である。青枯病菌ゲノムにコードされる細胞壁分解酵素(CWDE)のうち、セルロースを分解するエンドグルカナーゼに着目して研究を行った。エンドグルカナーゼ破壊株をGFPで安定に標識した株を作製し、トマト芽生えに感染させ、蛍光顕微鏡で菌の感染・増殖の進行をリアルタイムでモニタリングする系を完成させた。菌の植物体内における動態のリアルタイム解析を高感度CCDカメラにより行った結果、主根と側根の境界、および主根と茎の境界において、菌の移動が遅延・停止する現象を確認した。この現象には、CWDEが関与していると考えられた。破壊株においては、(1)virulence、(2)植物体内での移動速度、(3)増殖速度、(4)菌体外多糖の分泌の低下という、4つの指標の低下が確認された。破壊株に野生型遺伝子を相補した株では、指標の低下が抑圧された。また、青枯病菌をトマトの芽生えに感染させると、根から増殖した菌体が漏れだす現象が見られるが、エンドグルカナーゼ破壊株を感染させた場合では、菌体が漏れだす頻度が明らかに低下していた。これらの23年度の研究成果により、青枯病菌の持つCWDEのうちエンドグルカナーゼは、宿主植物体内での菌の移動・増殖において重要な役割を果たすことが確認された。(1)青枯病菌の感染による側根誘導現象(茎からも発根する)に関与する青枯病菌側のファクターの解析:この研究項目については、今後さらに研究を加速する必要がある。当初計画においては、青枯病菌の持つtype III effecterを網羅的に取得し、その発現を解析する予定であったが、24年度までは、研究推進の優先度を考慮して(2)の項目に重点をおいて研究を遂行した。25年度では新たに研究チームに加わった学生と共に、当初予定の解析を詳細に実施する。(2)青枯病菌に耐性のトマト品種において、菌が導管内を移動する能力が抑制される機構の解明:この項目については、おおむね予定通り研究が進行している。24年度までに、野生株及び、egl(エンドグルカナーゼ)破壊株を蛍光標識し、植物体内への青枯病菌の侵入と植物体内での移動の様式をリアルタイムモニタリンクで比較した結果、エンドグルカナーゼが菌の移動・増殖において重要な役割を果たす事を観察した。さらに、主根と側根の接合部付近において、菌体の進行が抑制されることから、何らかの物理的な障壁の存在を推察した。(3)モデル実験系の確立: 24年度までにタバコ培養細胞を利用した青枯病菌感染実験系を確立した。(1)で取得するeffecterの細胞間で移行の解析、CWDE欠失青枯病菌株の病原性解析等に応用し、全体の研究を推進する。(1)青枯病菌の感染による側根誘導現象(茎からも発根する)に関与する青枯病菌側のファクターの解析。この研究項目については、今後さらに研究を加速する必要がある。当初計画においては、青枯病菌の持つtypeIII effecterを網羅的に取得し、その発現を解析する予定であったが、23年度においては、研究推進の優先度を考慮して(2)の項目に重点をおいて研究を遂行した。
KAKENHI-PROJECT-23570079
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原始星雲中での鉱物生成に関する実験的研究
1.オリビンの(100)面に沿う面欠陥の再生実験TSFZ法により、Fa-Fo固溶体のうちFa_<100>、Fa_<90>、Fa_<80>、Fa_<70>、Fa_<60>の単結晶を育成した。各組成の単結晶から厚さ約15μmの(010)面の薄膜を作成し、300゚C、0.1Kbar、HMの条件で、HCl1N、NaOH1Nの水溶液を用いた水熱変質実験を行った。酸性溶液では、オリビンの(001)面に、アルカリ性溶液では100)面に平行に面状析出物が析出した。面状析出物は酸性溶液中ではヘマタイトとアモルファスシリカで構成され、アルカリ性溶液中ではライフ-ナイトとヘマタイトから構成される。これらの結果はオリビンが水熱変質をうける時の陽イオン溶出メカニズムで説明した。実験結果は、Cコンドライトの変質がアルカシ性環境のもとであったことを意味している。鉱物学会で講演し、Physics and Chemistry of Mineralsに発表した。2.a軸方向に伸びるウイスカー状エンスタタイトの再生実験水素圧25mmHg、凝縮温度1150゚Cで10分間基盤に凝縮させる条件で、わずかではあるが、a軸方向に伸びるウイスカーが生成することが分かった。これより高温では凝縮せず、低温ではc軸方向に伸びるウイスカーだけになる。過飽和度が高い(高温)と成長速度の遅いa軸方向の成長も可能であるが、過飽和度が低い(低温)と成長速度の速いc軸方向のエンスタタイトしか成長しないためと考えられる。これらには転移双晶が見られるので生成時にはプロトエンスタタイトであったと考えられる。惑星間塵で見つかったa軸に伸びるウイスカーは転移双晶のないクライノエンスタタイドであったことから、今回の実験で得られたものは惑星間塵で見られたものとは生成条件が違っていると考えられる。1.オリビンの(100)面に沿う面欠陥の再生実験TSFZ法により、Fa-Fo固溶体のうちFa_<100>、Fa_<90>、Fa_<80>、Fa_<70>、Fa_<60>の単結晶を育成した。各組成の単結晶から厚さ約15μmの(010)面の薄膜を作成し、300゚C、0.1Kbar、HMの条件で、HCl1N、NaOH1Nの水溶液を用いた水熱変質実験を行った。酸性溶液では、オリビンの(001)面に、アルカリ性溶液では100)面に平行に面状析出物が析出した。面状析出物は酸性溶液中ではヘマタイトとアモルファスシリカで構成され、アルカリ性溶液中ではライフ-ナイトとヘマタイトから構成される。これらの結果はオリビンが水熱変質をうける時の陽イオン溶出メカニズムで説明した。実験結果は、Cコンドライトの変質がアルカシ性環境のもとであったことを意味している。鉱物学会で講演し、Physics and Chemistry of Mineralsに発表した。2.a軸方向に伸びるウイスカー状エンスタタイトの再生実験水素圧25mmHg、凝縮温度1150゚Cで10分間基盤に凝縮させる条件で、わずかではあるが、a軸方向に伸びるウイスカーが生成することが分かった。これより高温では凝縮せず、低温ではc軸方向に伸びるウイスカーだけになる。過飽和度が高い(高温)と成長速度の遅いa軸方向の成長も可能であるが、過飽和度が低い(低温)と成長速度の速いc軸方向のエンスタタイトしか成長しないためと考えられる。これらには転移双晶が見られるので生成時にはプロトエンスタタイトであったと考えられる。惑星間塵で見つかったa軸に伸びるウイスカーは転移双晶のないクライノエンスタタイドであったことから、今回の実験で得られたものは惑星間塵で見られたものとは生成条件が違っていると考えられる。1.オリビンの(100)面に沿う面欠陥の再生実験赤外線集中加熱単結晶製造装置を用いてTSFZ法により、Fa-Fo固溶体のうちFa_<100>、Fa_<90>、Fa_<70>の単結晶を育成した。各組成の単結晶から厚さ約15μmの(010)面の薄膜を作成し、水熱合成装置を用いて変質実験を行った。300°C、0.1Kbar、HMの条件で、HC11N、NaOH1Nの水溶液を用いた。結果として酸性溶液では、どの組成においてもオリビンの(001)面に平行に面状析出物が析出した。一方アルカリ性溶液では、Fa_<70>において(100)面に、Fa_<90>においては(102),(104),(1012),(001)に平行に面状析出物が析出した。面状析出物は酸性溶液中ではヘマタイトとアモルファスシリカで構成され、アルカリ性溶液中ではライフ-ナイトとヘマタイトから構成される。これらの結果はオリビンが水熱変質をうける時の陽イオン溶出メカニズムで説明される。2.a軸方向に伸びるウイスカー状エンスタタイトの再生実験蒸着物質を凝縮させるために下部に取り付けたモリブデン基盤の温度を精度よくコントロールできるように、蒸着装置を改良した。
KAKENHI-PROJECT-07640642
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原始星雲中での鉱物生成に関する実験的研究
輝石組成を上部に取り付けたタングステンバスケットで蒸発させた試料をX線粉末回折法と透過型電子顕微鏡で解析した。数多くの条件を検討した結果、水素圧25mmHg、凝縮温度1150°Cで10分間下部基盤に凝縮させる条件で、a軸方向に伸びるウイスカー状エンスタタイトが10%程度生成することが分かった。残りの生成物はc軸方向に伸びるウイスカー状エンスタタイトが40%程度、ウイスカー状フォーステライトおよび未同定鉱物が50%程度であった。1.オリビンの(100)面に沿う面欠陥の再生実験TSFZ法により、Fa-Fo固溶体のうちFa_<100>、Fa_<90>、Fa_<80>、Fa_<70>、Fa_<60>の単結晶を育成した。各組成の単結晶から厚さ約15μmの(010)面の薄膜を作成し、300°C、0.1Kbar、HMの条件で、HCl1N、NaOH1Nの水溶液を用いた水熱変質実験を行った。酸性溶液では、オリビンの(001)面に、アルカリ性溶液では100)面に平行に面状析出物が析出した。面状析出物は酸性溶液中ではヘマタイトとアモルファスシリカで構成され、アルカリ性溶液中ではライフ-ナイトとヘマタイトから構成される。これらの結果はオリビンが水熱変質をうける時の陽イオン溶出メカニズムで説明した。実験結果は、Cコンドライトの変質がアルカリ性環境のもとであったこと意味している。鉱物学会で講演し、Physics.and Chemistry of Mineralsに発表した。2.a軸方向に伸びるウイスカー状エンスタタイトの再生実験水素圧25mmHg、凝縮温度1150°Cで10分間基盤に凝縮させる条件で、わずかではあるが、a軸方向に伸びるウイスカーが生成することが分かった。これより高温では凝縮せず、低温ではc軸方向に伸びるウイスカーだけになる。過飽和度が高い(高温)と成長速度の遅いa軸方向の成長も可能であるが、過飽和度が低い(低温)と成長速度の速いc軸方向のエンスタタイトしか成長しないためと考えられる。これらには転移双晶が見られるので生成時にはプロトエンスタタイトであったと考えられる。惑星間塵で見つかったa軸に伸びるウイスカーは転移双晶のないクライノエンスタタイトであったことから、今回の実験で得られたものは惑星間塵で見られたものとは生成条件が違っていると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-07640642
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新古典主義を通してユルスナールを読む――20世紀フランス文学史再考の試み
戦間期のフランス文学における古典回帰の包括的な理解、それによるマルグリット・ユルスナールの作品の再解釈、20世紀フランス文学史の再考を目的とした本研究において、今年度は雑誌『新フランス評論』NRFの戦間期に出版された号、および、これらと同時代のユルスナールの作品を調査した。平成28年7月29日8月27日におこなった第一次調査と平成29年3月6日3月19日の第三次調査には科学研究費補助金を用い、平成28年12月16日30日の第二次調査の経費は研究遂行経費として計上した。『新フランス評論』に関しては、プルースト没後、追悼特集を契機として文学作品における散文に関する考察が多く掲載されていることに着目し、Stephanie Smadjaの研究書、『フランスにおける新しい散文ー1920年代初頭における叙述的散文についての研究』(La nouvelle prose francaise ; Etude sur laprose narrative au debut des annees 1920, PUB, 2013,フランス語アクサン記号は省略)を参考にしながら、この時代において「作家の文体」と「時代の文体」がどのように相互作用しているのかという問題について検討した。作家が新しい文体を模索する過程で、常にその文体と伝統的・規範的文体との距離が意識されるため、おのおのの作家がいかに古典を受容しているかというその諸相を明らかにすることの重要性が浮き彫りになった。また、戦間期に出版された、ユルスナールの中篇小説集『東方綺譚』と散文詩集『火』が、単行本として出版される前にさまざまな雑誌に掲載されたオリジナル版をマイクロフィルムで閲覧した。単行本で出版されている版と比較すると、作家自身の記述に反していくつかの興味深い相違点が見つかった。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。戦間期のフランス文学における古典回帰の包括的な理解、それによるマルグリット・ユルスナールの作品の再解釈、20世紀フランス文学史の再考を目的とした本研究において、今年度は雑誌『新フランス評論』NRFの戦間期に出版された号、および、これらと同時代のユルスナールの作品を調査した。平成28年7月29日8月27日におこなった第一次調査と平成29年3月6日3月19日の第三次調査には科学研究費補助金を用い、平成28年12月16日30日の第二次調査の経費は研究遂行経費として計上した。『新フランス評論』に関しては、プルースト没後、追悼特集を契機として文学作品における散文に関する考察が多く掲載されていることに着目し、Stephanie Smadjaの研究書、『フランスにおける新しい散文ー1920年代初頭における叙述的散文についての研究』(La nouvelle prose francaise ; Etude sur laprose narrative au debut des annees 1920, PUB, 2013,フランス語アクサン記号は省略)を参考にしながら、この時代において「作家の文体」と「時代の文体」がどのように相互作用しているのかという問題について検討した。作家が新しい文体を模索する過程で、常にその文体と伝統的・規範的文体との距離が意識されるため、おのおのの作家がいかに古典を受容しているかというその諸相を明らかにすることの重要性が浮き彫りになった。また、戦間期に出版された、ユルスナールの中篇小説集『東方綺譚』と散文詩集『火』が、単行本として出版される前にさまざまな雑誌に掲載されたオリジナル版をマイクロフィルムで閲覧した。単行本で出版されている版と比較すると、作家自身の記述に反していくつかの興味深い相違点が見つかった。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-16J07164
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J07164
男性不妊における凍結保存精液の応用
1液体チッソ上記凍結簡易化を目的とする凍結用浮台を開発した。凍結等浮台は高さ3.0cmの発泡スチロール枠の上面にアルミプレートを張ったものであり、適当量の液体チッソを入れた発泡スチロール製凍結槽内に浮かべた。チューブを浮台上面に横置にして載せて凍結を行ない、約5分後凍結したチューブを液体チッソ中に落下させて凍結を完了する。2一般に細胞の凍結保存では凍結保護剤の細胞浸透を図るため、保護剤と細胞を混合した後平衡化時間を設けるが、本研究で用いたKS-11精子保存液中では平衡化時間は1分間が最も高い蘇生率を与えた。KS-11精子保存液中のグリセリンの高浸透圧が非凍結時にはむしろ精子に対して障害的に作用した。phosphodiesterase阻害剤pentoxifylline(PXF)添加により精子に対する高低浸透圧負荷が引き起こす精子生存率の低下を軽減し得ることを見い出した。3逆行性射精においては、排尿後、膀胱を温生食で洗浄し、さらに精子培養液を膀胱内に注入して射精を行い、逆行した精液を回収する。精子は尿に対して感受性が高く、射精に手間取り、尿が膀胱内に再流入すると精子運動率が低下する。5.0mM PXFの添加により尿の毒性を軽減することが可能であり、無添加では運動性をほぼ失う尿混入率60%においてもPXFを添加すると約20%の運動率を保持しており、運動速度においても同様な傾向を認めた。4頻回授精は推定排卵日周辺に複数回授精することにより受精のチャンスを増やそうとするものであるが、精液性状が不良な症例において禁欲期間をおかずに連続的に射精すると精液性状の低下が著しくて実施困難な場合が多い。精子凍結保存法を用いると1排卵周期に充分間隔をあけて数回採取が可能であり、頻回授精が容易となった。1液体チッソ上記凍結簡易化を目的とする凍結用浮台を開発した。凍結等浮台は高さ3.0cmの発泡スチロール枠の上面にアルミプレートを張ったものであり、適当量の液体チッソを入れた発泡スチロール製凍結槽内に浮かべた。チューブを浮台上面に横置にして載せて凍結を行ない、約5分後凍結したチューブを液体チッソ中に落下させて凍結を完了する。2一般に細胞の凍結保存では凍結保護剤の細胞浸透を図るため、保護剤と細胞を混合した後平衡化時間を設けるが、本研究で用いたKS-11精子保存液中では平衡化時間は1分間が最も高い蘇生率を与えた。KS-11精子保存液中のグリセリンの高浸透圧が非凍結時にはむしろ精子に対して障害的に作用した。phosphodiesterase阻害剤pentoxifylline(PXF)添加により精子に対する高低浸透圧負荷が引き起こす精子生存率の低下を軽減し得ることを見い出した。3逆行性射精においては、排尿後、膀胱を温生食で洗浄し、さらに精子培養液を膀胱内に注入して射精を行い、逆行した精液を回収する。精子は尿に対して感受性が高く、射精に手間取り、尿が膀胱内に再流入すると精子運動率が低下する。5.0mM PXFの添加により尿の毒性を軽減することが可能であり、無添加では運動性をほぼ失う尿混入率60%においてもPXFを添加すると約20%の運動率を保持しており、運動速度においても同様な傾向を認めた。4頻回授精は推定排卵日周辺に複数回授精することにより受精のチャンスを増やそうとするものであるが、精液性状が不良な症例において禁欲期間をおかずに連続的に射精すると精液性状の低下が著しくて実施困難な場合が多い。精子凍結保存法を用いると1排卵周期に充分間隔をあけて数回採取が可能であり、頻回授精が容易となった。男性不妊のうち人工精液瘤造設例、射精障害例、性交障害例、逆行性射精例および制癌剤投与予定者などでは人工受精に際して採精が困難である場合が多く、しかも採取機会も少ない。不妊治療においては排卵は1周期に1度であるのに対して精液は随時採取できるが、その保存が困難であるため排卵時以外に得られた精液は無効であった。そこで精液の凍結保存を試みることとした。今までの凍結保存法には種々の欠点があったためその改良に努めた。まず凍結中の精子を保護する目的で精子を十分洗浄濃縮した後に新しく開発したKS-II精子保存液を使用した。次に日常診療に頻用するために凍結手順の簡易化と低コスト化をはかった。すなわち発泡スチロール容器に液体チッソを注ぎ凍結用チューブを液面上3cmに静置し、5分間で凍結が完了するのをまって液体チッソタンク中に移し精子を凍結備蓄した。さらに精子の代謝賦活の意味でペントキシフィリンを添加した。この方法によって人工精液瘤造設例、射精障害例、逆行性射精例のそれぞれで人工受精により妊娠が成立した。今後はこのような特殊症例だけでなく一般の男性不妊例とくに乏精子・精子無力症例にこの方法を応用するつもりである。また種々の薬剤添加を試みるとともに先体反応をおこす能力のある精子など質の高い精子を選択的に採取する方法を開発して凍結保存法と合わせて不妊治療に応用したいと考える。1.凍結前に精子Phosphodi est erase阻害剤ペントキシフィリン、細胞浸透性cAMP誘導体ジブチルcAMPと短時間培養し、細胞内cAMP濃度を上昇させた後に凍結保存を行うことにより凍結融解後の精子蘇生率を向上させることができた。
KAKENHI-PROJECT-05671338
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671338
男性不妊における凍結保存精液の応用
精子凍結保存液に凍害防止剤として添加されるグリセリンは凍結時には不可欠であるが、非凍結時にはその高浸透圧は精子に有害であり、本研究で用いたKS-ll精子保存液(12%グリセリン含有)と精子を混合後、1分以内に凍結を開始すると高い蘇生率が得られ、また融解後は速やかに凍結保護剤を洗浄除去すべきであった。2.逆行性射精例においては、膀胱中の尿による精子生存性の低下を避けるため、事前に膀胱洗浄を行い、培養液約50mlを注入した後に射精させた。しかし射精にてまどり膀胱中に尿が再流入すると精子生存性の低下を認め、培養液中に1.0mMペントキシフィリンを添加することにより精子の尿に対する抵抗性を強化し得た。3.閉塞性無精子症例に対して人工精液瘤を造設し、週に2回程度穿刺して貯留した精子を回収、凍結保存することにより人工的な授精に必要な精子を確保し得た。しかし症例により融解後の精子蘇生率に大きな差を認めた。
KAKENHI-PROJECT-05671338
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671338
視床下部におけるSIRT1のエネルギー代謝制御機構の解明
NAD+依存性のタンパク脱アセチル化酵素であるSirt1は、インスリン感受性・代謝を制御することが報告されていたが、中枢性代謝制御への役割は未解明だった。そこで、Sirt1が視床下部で食欲を調節するか検討した。その結果、Sirt1は視床下部で摂食行動を制御する部位に発現しており、食事性の調節を受けることが分かった。また、視床下部内側基底部でのSirt1の強制発現が食欲を亢進させる神経ペプチドAgRPの発現を抑制し、食欲と体重増加を抑制することが分かった。NAD+依存性のタンパク脱アセチル化酵素であるSirt1は、インスリン感受性・代謝を制御することが報告されていたが、中枢性代謝制御への役割は未解明だった。そこで、Sirt1が視床下部で食欲を調節するか検討した。その結果、Sirt1は視床下部で摂食行動を制御する部位に発現しており、食事性の調節を受けることが分かった。また、視床下部内側基底部でのSirt1の強制発現が食欲を亢進させる神経ペプチドAgRPの発現を抑制し、食欲と体重増加を抑制することが分かった。本研究課題においては、脱アセチル化酵素Sirt1の視床下部におけるエネルギー代謝制御機構における役割をin vitroおよびin vivoの系を用いて検討し、以下のようなデーターを取得した。(1)組織蛍光免疫染色にて、視床下部Pomc, AgrpニューロンにおけるStrt1発現を確認。(2)絶食・再摂食の系を用いて、視床下部Sirt1タンパク量が、再摂食により増加することを確認。この際、Sirtl mRNAのレベルに変化はなかった。(3)細胞培養系でSirt1がユビキチン化されることを免疫沈降を用いたウェスタンブロット法にて確認。(4)Agrp及びPomcプロモーターを用いたルシフェラーゼアッセイにより、Sirt1はインスリンと共役的に作用してAgrpプロモーターの活性を抑制すること、そしてこの効果は、核内滞留型FoxO1変異体存在下では抑制されるが、FoxO1アセチル化変異体存在下では観察されることを確認。(5)Sirt1を発現するアデノウィルスをマウスの視床下部にマイクロインジェクションし、摂食行動・体重変化への影響を現在検討中である。現時点では、Sirt1注入群にて、摂食量が増える傾向があり、体重増加率が優位に増加するというデーターを取得している。以上より、Sirt1は摂食行動を制御する重要な視床下部神経核に発現しており、摂食行動に伴いそのタンパク量が変化することが分かった。また、Sirt1は摂食行動を制御するペプチド性神経性伝達物質であるAgrpの発現をインスリンシグナルを介して制御することが分かった。そして、Sirt1の強制発現は、摂食行動・体重への影響があることが分かった。NAD+依存性のタンパク脱アセチル化酵素であるSirt1は、FoxO1などの基質の脱アセチルを介してインスリン感受性・代謝を制御することが報告されているが、Sirt1の中枢性代謝制御への役割は未解明である。そこで、Sirt1が視床下部で摂食行動・エネルギー代謝制御機構を調節するというかどうかを検討した。その結果、以下の点が明らかとなった。(1)Sirt1は視床下部でAgrp及びPomc陽性ニューロンで発現している。(2)Sirt1の視床下部におけるタンパク量は、絶食後の再摂食で増加する。この変化はRNAレベルでは見られない。(3)Sirt1は視床下部および視床下部培養細胞N41においてユビキチン修飾を受け、プロテオソーム阻害剤存在下でタンパク量が増加する。(4)マウスの視床下部内側基底部へのSirt1発現ウイルスのmicro-injectionによるSirt1の強制発現は、核内滞留型Foxo1による摂食過剰・体重増加を有意に抑制する。(5)Sirt1は摂食促進性神経ペプチドをコードするAgrpプロモーターの活性を抑制し、AgRPの発現を抑制する。この効果にはSirt1酵素活性が必須である。また、核内滞留型Foxo1によって亢進したAgrpプロモーターの活性をSirt1は抑制する。なお、Sirt1はPomcプロモーター活性には影響を及ぼさない。以上より、栄養素もしくは成長因子等の食事性の変化が視床下部に伝わり、その結果としてSirt1タンパク量が増加し、摂食促進性神経ペプチドAgRPの発現を抑制して、摂食の停止が起こるメカニズムが示唆されるということを解明した。
KAKENHI-PROJECT-20790637
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20790637
トーラス写像の周期点の位相不変量
トーラス等のコンパクト有向曲面上の同相写像で,恒等写像とイソトピックなものについて考察した。この写像の周期点の位相的性質について,不動点指数および組ひも不変量の2種の位相不変量を用いて調べ,特に不動点について以下の成果を得た。1.不動点全体の集合に組ひも不変量を用いて,ある関係が導入できることを示し,さらに,それが同値関係となることを証明した。2.不動点類の不動点指数は位相不変であることを証明した。この不変性は,与えられた写像の不動点の不動点指数を求めるための一つの手段を与えるものとして有用である。3.同値類の不動点指数は1以下であることを示した。4.3で得た不動点に関する制限条件を用いて,不動点の同値類が2個以上の不動点を含むならば,それら不動点のうち少なくとも1個は不安定であることを示した。この結果は,不動点の不安定性を不動点全体の位相的性質から導いたものであり,安定性の問題と写像の大域的な位相的性質との関連を与えている。5.不安定な不動点を含む同値類全体の個数は,同値類全体の個数の半分から曲面の種数を引いた値よりも大きいことを証明した。なお,35の結果はいずれも,1つの例外的な場合を除く。6.1つの元しか含まない同値類が存在し,さらにその元の不動点指数が1であるならば,写像の位相エントロピーは正値を取ることを示した。これは,不動点の位相幾何的性質が,写像の力学系的性質の一つであるカオス性と関連があることを示している。トーラス上の向きを保つ同相写像の不動点に関する2種の位相不変量(不動点指数,組ひも不変量)について考察し,以下の成果を得た。1.不動点全体の集合に組ひも不変量を用いて同値関係が導入できることを示し,すべての同値類の不動点指数は常に1以下であることを示した。2.不動点類の不動点指数は位相不変であること,すなわち,写像を連続変形して不動点全体の組ひも不変量が同一である写像に変形されたとき,各不動点類の不動点指数は変化しないことを証明した。3.1つの元しか含まない同値類が存在し,さらにその元の不動点指数が1であるならば,写像の位相エントロピーは正値を取ることを示した。これは,不動点の位相幾何的性質が,写像の重要な力学系的性質の一つであるカオス性と関連があることを示している。4.不動点の同値類が2個以上の不動点を含むならば,それら不動点の内・少なくとも1個は不安定不動点であることを示した。5.4の結果は,不安定不動点を含む同値類の個数はある程度多いことを示唆しているが,実際,不安定な元を含む同値類全体の個数は,そうでない同値類全体の個数より大きことが証明できた。なお,以上の結果は,トーラス以外の曲面にも拡張可能であると考える。トーラス等のコンパクト有向曲面上の同相写像で,恒等写像とイソトピックなものについて考察した。この写像の周期点の位相的性質について,不動点指数および組ひも不変量の2種の位相不変量を用いて調べ,特に不動点について以下の成果を得た。1.不動点全体の集合に組ひも不変量を用いて,ある関係が導入できることを示し,さらに,それが同値関係となることを証明した。2.不動点類の不動点指数は位相不変であることを証明した。この不変性は,与えられた写像の不動点の不動点指数を求めるための一つの手段を与えるものとして有用である。3.同値類の不動点指数は1以下であることを示した。4.3で得た不動点に関する制限条件を用いて,不動点の同値類が2個以上の不動点を含むならば,それら不動点のうち少なくとも1個は不安定であることを示した。この結果は,不動点の不安定性を不動点全体の位相的性質から導いたものであり,安定性の問題と写像の大域的な位相的性質との関連を与えている。5.不安定な不動点を含む同値類全体の個数は,同値類全体の個数の半分から曲面の種数を引いた値よりも大きいことを証明した。なお,35の結果はいずれも,1つの例外的な場合を除く。6.1つの元しか含まない同値類が存在し,さらにその元の不動点指数が1であるならば,写像の位相エントロピーは正値を取ることを示した。これは,不動点の位相幾何的性質が,写像の力学系的性質の一つであるカオス性と関連があることを示している。昨年度,トーラス上の向きを保つ同相写像の不動点に関して得た結果を一般の曲面に拡張することができた。具体的には,不動点に関する2種の位相不変量(不動点指数,組ひも不変量)について考察し,以下の成果を得た。1.不動点全体の集合に組ひも不変量を用いて同値関係が導入できることを示し,すべての同値類の不動点指数は常に1以下であることを示した。2.不動点類の不動点指数は位相不変であること,すなわち,写像を連続変形して不動点全体の組ひも不変量が同一である写像に変形されたとき,各不動点類の不動点指数は変化しないことを証明した。3.1つの元しか含まない同値類が存在し,さらにその元の不動点指数が1であるならば,写像の位相エントロピーは正値を取ることを示した。これは,不動点の位相幾何的性質が,写像の重要な力学系的性質の一つであるカオス性と関連があることを示している。
KAKENHI-PROJECT-13640079
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13640079
トーラス写像の周期点の位相不変量
4.不動点の同値類が2個以上の不動点を含むならば,それら不動点の内,少なくとも1個は不安定不動点であることを示した。5.4の結果は,不安定不動点を含む同値類の個数はある程度多いことを示唆しているが,実際,不安定な元を含む同値類全体の個数は,そうでない同値類全体の個数から曲面の種数を引いたものより大きいことが証明できた。
KAKENHI-PROJECT-13640079
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13640079
口腔癌膜脂質と同組織のリポソーム・抗EGF受容体抗体複合体のターゲッティング療法
腫瘍組織型の違いによる抗癌剤の有効性の相違を検討するため、無血清培養の条件下に偏平上皮癌細胞(SCC)と唾液腺由来細胞(SAC)を用いて各種の抗癌剤に対する感受性の相違について検索した。この条件下ではSCCはSACに比べて親水性のcisplatin(CDDP)とpaclitaxel(TXL)に対して抵抗性を示した。一方,疎水性のadriamycin(ADM)やpeplomycin(PEP)はSACに比較してSCCに対して強い殺細胞作用を示した。そこで薬剤の能動輸送を決定すると考えられる膜透過性を検討するため,それぞれの細胞膜の脂質組成を分析した。その結果,SCCでは膜脂質の70%以上がphospholipidであり,残りはcholesterolであった。一方,SACでは80%以上がneutral lipidで,残りはphospholipidで占められていた。SACのneutral lipidの上昇は細胞膜の流動性の低下を招き,CDDPの細胞内濃度の上昇をきたしたものと考えられた。しかしSCCの膜脂質はphospholipidの割合が高いため膜の流動性はSACに比べて高く,ADMやPEPに対する感受性が高くなったものと考えられた。この結果から,抗癌剤の感受性を決定する因子として膜の脂質組織の相違が考えられた。そこでSCCの細胞膜脂質と同組織の脂質からなる抗癌剤封入リポソームを作成し,培養細胞に作用させた。その結果,抗癌剤単独処理に比べて抗癌剤封入リポソームはSCCに対して殺細胞効果の増強を示したが,SACに対しては抗癌剤単独処理とも差がなかった。またSCCやSACにおいて上皮成長因子(EGF)受容体が過剰発現していることから,EGF受容体に対するモノクロナール抗体(12-93)を作製し,抗癌剤封入リポソームにアビチン・ビオチン法を用いて本抗体を結合させ培養細胞に対する抗腫瘍効果について検討した。その結果, SCCおよびSACに対して抗癌剤封入リポソームに比較して高い抗腫瘍効果を有していることが示唆された。腫瘍組織型の違いによる抗癌剤の有効性の相違を検討するため、無血清培養の条件下に偏平上皮癌細胞(SCC)と唾液腺由来細胞(SAC)を用いて各種の抗癌剤に対する感受性の相違について検索した。この条件下ではSCCはSACに比べて親水性のcisplatin(CDDP)とpaclitaxel(TXL)に対して抵抗性を示した。一方,疎水性のadriamycin(ADM)やpeplomycin(PEP)はSACに比較してSCCに対して強い殺細胞作用を示した。そこで薬剤の能動輸送を決定すると考えられる膜透過性を検討するため,それぞれの細胞膜の脂質組成を分析した。その結果,SCCでは膜脂質の70%以上がphospholipidであり,残りはcholesterolであった。一方,SACでは80%以上がneutral lipidで,残りはphospholipidで占められていた。SACのneutral lipidの上昇は細胞膜の流動性の低下を招き,CDDPの細胞内濃度の上昇をきたしたものと考えられた。しかしSCCの膜脂質はphospholipidの割合が高いため膜の流動性はSACに比べて高く,ADMやPEPに対する感受性が高くなったものと考えられた。この結果から,抗癌剤の感受性を決定する因子として膜の脂質組織の相違が考えられた。そこでSCCの細胞膜脂質と同組織の脂質からなる抗癌剤封入リポソームを作成し,培養細胞に作用させた。その結果,抗癌剤単独処理に比べて抗癌剤封入リポソームはSCCに対して殺細胞効果の増強を示したが,SACに対しては抗癌剤単独処理とも差がなかった。またSCCやSACにおいて上皮成長因子(EGF)受容体が過剰発現していることから,EGF受容体に対するモノクロナール抗体(12-93)を作製し,抗癌剤封入リポソームにアビチン・ビオチン法を用いて本抗体を結合させ培養細胞に対する抗腫瘍効果について検討した。その結果, SCCおよびSACに対して抗癌剤封入リポソームに比較して高い抗腫瘍効果を有していることが示唆された。癌化学療法において抗癌剤や腫瘍組織型の違いにより有効性が異なることは臨床の場において経験することである。我々は無血清培養の条件下に扁平上皮癌細胞(SCC)と唾液腺由来細胞(SAC)を用いて各種の抗癌剤に対する感受性の相違について検討した。この条件下ではSCCはSACに比べて親水性のcisplatin(CDDP)に対して抵抗性を示した。一方,疎水性のadriamycin(ADM)やpeplomycin(PEP)はSACに比較してSCCに対して強い殺細胞作用を示した。そこで薬剤の能動輸送を決定すると考えられる膜透過性を検討するため,それぞれの細胞膜の脂質組成を分析した。その結果,SCCでは膜脂質の70%以上がphospholipidであり,残りはcholesterolであった。一方,SACでは80%以上がneutral lipidで,残りはphospholipidで占められていた。SACのneutral lipidの上昇は細胞膜の流動性の低下を招き,CDDPの細胞内濃度の上昇をきたしたものと考えられた。しかしSCCの膜脂質はphospholipidの割合が高いため膜の流動性はSACに比べて高く,ADMやPEPに対する感受性が高くなったものと考えられた。この結果から,抗癌剤の感受性を決定する因子として膜の脂質組成の相違が考えられた。そこでSCCの細胞膜脂質と同組成の脂質からなる抗癌剤封入リポソームを作成し,培養細胞に作用させた。
KAKENHI-PROJECT-10557191
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10557191
口腔癌膜脂質と同組織のリポソーム・抗EGF受容体抗体複合体のターゲッティング療法
その結果,抗癌剤単独処理に比べて抗癌剤封入リポソームはSCCに対して殺細胞効果の増強を示したが,SACに対しては抗癌剤単独処理とも差がなかった。またSCCやSACにおいて上皮成長因子(EGF)受容体が過剰発現していることから,EGF受容体に対するモノクロナール抗体(12-93)を作製し,抗癌剤封入リポソームにアビチン・ビオチン法を用いて本抗体を結合させ培養細胞に対する抗腫瘍効果について検討した。その結果,SCCおよびSACに対して抗癌剤封入リポソームに比較して高い抗腫瘍効果を有している可能性が示唆された。腫瘍組織型の違いによる抗癌剤の有効性の相違を検討するため、無血清培養の条件下に扁平上皮癌細胞(SCC)と唾液腺由来細胞(SAC)を用いて各種の抗癌剤に対する感受性の相違について検索した。この条件下ではSCCはSACに比べて親水性のcisplatin(CDDP)とpaclitaxel(TXL)に対して抵抗性を示した。一方,疎水性のadriamycin(ADM)やpeplomycin(PEP)はSACに比較してSCCに対して強い殺細胞作用を示した。そこで薬剤の能動輸送を決定すると考えられる膜透過性を検討するため,それぞれの細胞膜の脂質組成を分析した。その結果,SCCでは膜脂質の70%以上がphospholipidであり,残りはcholesterolであった。一方,SACでは80%以上がneutral lipidで,残りはphospholipidで占められていた。SACのneutral lipidの上昇は細胞膜の流動性の低下を招き,CDDPの細胞内濃度の上昇をきたしたものと考えられた。しかしSCCの膜脂質はphospholipidの割合が高いため膜の流動性はSACに比べて高く,ADMやPEPに対する感受性が高くなったものと考えられた。この結果から,抗癌剤の感受性を決定する因子として膜の脂質組成の相違が考えられた。そこでSCCの細胞膜脂質と同組成の脂質からなる抗癌剤封入リポソームを作成し,培養細胞に作用させた。その結果,抗癌剤単独処理に比べて抗癌剤封入リポソームはSCCに対して殺細胞効果の増強を示したが,SACに対しては抗癌剤単独処理とも差がなかった。またSCCやSACにおいて上皮成長因子(EGF)受容体が過剰発現していることから,EGF受容体に対するモノクロナール抗体(12-93)を作製し,抗癌剤封入リポソームにアビチン・ビオチン法を用いて本抗体を結合させ培養細胞に対する抗腫瘍効果について検討した。その結果,SCCおよびSACに対して抗癌剤封入リポソームに比較して高い抗腫瘍効果を有していることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-10557191
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ゲノム安定性の向上によりがん・生活習慣病を予防するゲノムディフェンダーの具現化
本研究は、ゲノム不安定化を軽減する食品および食品成分を発見し作用機序を解明することを目的として行うものである。種々の疾病や老化にはDNA損傷やDNA修飾、染色体構造変化や遺伝子突然変異などのゲノム不安定化による遺伝子機能不全が密接に関与していると考えられている。このようなゲノム不安定化を抑制することで遺伝子機能不全を未然に防ぎがん・生活習慣病を予防するという視点からの健康寿命延伸に取り組む。平成30年度は、食品として利用されていないが機能性成分を含有している可能性が期待できる新規の海藻由来抽出物(数種)についてゲノム安定化活性を有するかどうか、その予備試験として抽出物そのものの細胞毒性および遺伝毒性(小核形成)をヒトリンパ芽球由来培養細胞株(TK6細胞)を用いて分析した。その結果、細胞毒性および遺伝毒性の増加が確認されなかった抽出物があった一方、陽性対象として使用したメチルメタンスルホン酸と同程度の高い毒性を有している抽出物もあった。毒性が確認されなかった抽出物については今後、ゲノム不安定化誘発因子(過酸化水素など)との複合処理によりその影響を軽減できるかどうか確認する。一方、強い毒性が確認された抽出物についてはゲノムディフェンダーとしてではなく、新規抗がん剤としての利用が期待されることから、今後、がん細胞増殖抑制活性などの分析を実施していく予定である。また、これまでに報告してきたカシス抽出物のゲノム安定化活性の作用成分を明らかにするために、カシス抽出物に含まれるアントシアニン4種について過酸化水素による細胞毒性および遺伝毒性(小核形成)の軽減効果を分析した。その結果、4種全てで細胞毒性の軽減が確認された一方、遺伝毒性の軽減効果は3種類で確認された。この結果よりカシス抽出物のゲノム安定化活性にはカシスアントシアニン3種が関与している可能性が示唆された。本研究は、ゲノム不安定化を軽減する食品および食品成分を発見し作用機序を解明することを目的としており、平成30年度は新たな素材から得た抽出物のヒト細胞への細胞毒性・遺伝毒性の確認、ゲノム安定化活性の機能性成分の同定などを行うことを計画していた。そこで平成29年度に新たに得た抽出物の細胞毒性・遺伝毒性の分析を実施した。細胞毒性・遺伝毒性が確認されなかった抽出部については計画通りゲノム安定化活性の分析を進める予定である。一方、抽出物の中には強い遺伝毒性を示すものが見出されたが、本抽出物については当初の研究計画で想定していた通り、抗がん剤としての可能性などゲノムディフェンダー以外の利用方法の検討に展開していく。また、これまでにゲノム安定化活性が確認されているカシス抽出物についてアントシアニン別での活性評価に継続して取り組むことで、4種類のアントシアニンにゲノム安定化活性の差異があることを確認したことなどから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。平成31年度は平成30年度の研究成果をもとに、新規抽出物のゲノム安定化活性を評価するとともに、遺伝毒性が確認された抽出物についてはがん細胞増殖抑制活性分析などにより新規機能性物質としての可能性を検討する。ゲノム安定化活性は過酸化水素により生じる細胞毒性・遺伝毒性に対する抑制効果をTK6細胞を用いて確認する。また、がん細胞増殖抑制活性については死亡率が増加している大腸がん細胞(DLD-1など)に対する活性を中心に分析する。既に過酸化水素に対してゲノム安定化活性を有することを報告しているカシス抽出物およびカシスアントシアニンについては、新たに紫外線によるゲノム不安定化に対する効果を明らかにする。出芽酵母を用いた過去の研究では紫外線により生じる遺伝子突然変異をカシス抽出物が軽減することを明らかにしていることから、ヒト培養細胞においてもその活性が見出されることが期待される。また、ゲノム安定化活性の作用機構を明らかにするために、p53などDNA修復や細胞周期調節に関連するタンパク質の発現解析についてwestern blottingや細胞免疫染色による分析を試みる。本研究は、ゲノム不安定化を軽減する食品および食品成分を発見し作用機序を解明することを目的として行うものである。種々の疾病や老化にはDNA損傷やDNA修飾、染色体構造変化や遺伝子突然変異などのゲノム不安定化による遺伝子機能不全が密接に関与していると考えられている。このようなゲノム不安定化を抑制することで遺伝子機能不全を未然に防ぎがん・生活習慣病を予防するという視点からの健康寿命延伸に取り組む。平成29年度はまず新たな素材から成分の抽出を行った。今年度は食品だけではなく、食品として利用されていないが機能性成分を含有している可能性が期待できる木材や海藻を中心に計20種の素材から抽出した。今後、これらの抽出物についてヒト培養細胞を用いたゲノム安定化活性を有するかどうか、小核試験や遺伝子突然変異試験により確認する予定である。ゲノム安定化を有する食品(ゲノムディフェンダー食品)として摂取する場合、毒性の有無は非常に重要であることから、細胞毒性についても分析する必要がある。これまでに得ている沖縄県産植物のエタノール抽出物8種についてヒトリンパ芽球由来培養細胞株(TK6細胞)を用いて細胞毒性ならびに遺伝毒性(小核形成)について確認したところ、有意な毒性は検出されなかった。今後、ゲノム不安定化誘発因子との複合処理によりその影響を軽減できるかどうか確認していく。化学物質の中にはDNA損傷を誘発しないが発がん性を有する「非変異原性発がん物質」に分類されているが、その発がん機構が明らかになっていないものがある。このような化合物の作用機構を解明するとともに、その影響を如何に軽減するかも重要である。
KAKENHI-PROJECT-17K18317
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18317
ゲノム安定性の向上によりがん・生活習慣病を予防するゲノムディフェンダーの具現化
そこで非変異原性発がん物質1種のTK6に対するゲノム不安定化誘発を分析したところ、小核形成および遺伝子突然変異誘発が確認され、この影響を抗酸化物質との複合処理により低下することができることを発見した。本研究は、ゲノム不安定化を軽減する食品および食品成分を発見し作用機序を解明することを目的としており、平成29年度は新たな素材からの抽出物の調整、ヒト細胞への細胞毒性の確認、抽出物のゲノム不安定化誘発能の有無、ゲノム不安定化誘発因子に対する抽出物の抑制活性評価を行うことを計画していた。平成29年度は新たな素材20種類から抽出物を調整することできたこと、数種類の抽出物の細胞毒性の分析を実施していること、これまでにゲノムディフェンダー活性が確認されているカシス抽出物についてアントシアニン別での活性評価に取り組んでいること、また非変異原性発がん物質に対する抗酸化物質の効果について発見していることなどから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。本研究は、ゲノム不安定化を軽減する食品および食品成分を発見し作用機序を解明することを目的として行うものである。種々の疾病や老化にはDNA損傷やDNA修飾、染色体構造変化や遺伝子突然変異などのゲノム不安定化による遺伝子機能不全が密接に関与していると考えられている。このようなゲノム不安定化を抑制することで遺伝子機能不全を未然に防ぎがん・生活習慣病を予防するという視点からの健康寿命延伸に取り組む。平成30年度は、食品として利用されていないが機能性成分を含有している可能性が期待できる新規の海藻由来抽出物(数種)についてゲノム安定化活性を有するかどうか、その予備試験として抽出物そのものの細胞毒性および遺伝毒性(小核形成)をヒトリンパ芽球由来培養細胞株(TK6細胞)を用いて分析した。その結果、細胞毒性および遺伝毒性の増加が確認されなかった抽出物があった一方、陽性対象として使用したメチルメタンスルホン酸と同程度の高い毒性を有している抽出物もあった。毒性が確認されなかった抽出物については今後、ゲノム不安定化誘発因子(過酸化水素など)との複合処理によりその影響を軽減できるかどうか確認する。一方、強い毒性が確認された抽出物についてはゲノムディフェンダーとしてではなく、新規抗がん剤としての利用が期待されることから、今後、がん細胞増殖抑制活性などの分析を実施していく予定である。また、これまでに報告してきたカシス抽出物のゲノム安定化活性の作用成分を明らかにするために、カシス抽出物に含まれるアントシアニン4種について過酸化水素による細胞毒性および遺伝毒性(小核形成)の軽減効果を分析した。その結果、4種全てで細胞毒性の軽減が確認された一方、遺伝毒性の軽減効果は3種類で確認された。この結果よりカシス抽出物のゲノム安定化活性にはカシスアントシアニン3種が関与している可能性が示唆された。本研究は、ゲノム不安定化を軽減する食品および食品成分を発見し作用機序を解明することを目的としており、平成30年度は新たな素材から得た抽出物のヒト細胞への細胞毒性・遺伝毒性の確認、ゲノム安定化活性の機能性成分の同定などを行うことを計画していた。
KAKENHI-PROJECT-17K18317
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18317
中年・高齢者を対象とした椅子立ち上がり動作時の地面反力による下肢筋力評価法の開発
研究課題「中年・高齢者を対象とした椅子立ち上がり動作時の地面反力による下肢筋力評価法の開発」に向け、第1年度より開発を進めている普及型機器やプログラムを用い、次の研究活動をおこない、成果を上げた。まず、宮城県石巻市における大橋メンズクラブへ、本評価システムの導入をおこなった。大橋メンズクラブは、仮設大橋団地に居住する男性を対象とした、石巻市が主催するサークル活動である。月2回の開催頻度で、1回の開催時間は90120分間である。サークルに参加する度に本機器を用いた測定をおこなうこととした。ラジオ体操、ダンベル体操、ロコモ体操(オリジナル体操)などに取り組むとともに、活動量計を配付し日々の歩数を増やす働きかけをおこない、下肢筋機能の向上を目指した。その結果、最大値体重比変数(床を踏み込む力の最大値)において、8ヵ月間で有意な向上が見られた。本評価を定期的におこなうことにより、下肢筋機能の向上を把握する、ならびに向上に寄与することが示唆された。また、本評価を活用した取り組みは、男性中年・高齢者のクラブ参加や身体活動意欲の増進に好影響を与えることを確認した。また、要支援・要介護認定を受けた58名の虚弱高齢者を対象とし、立ち上がり動作の違いによる地面反力への影響を検討した。自身が最も立ち上がりやすい方法(A.何もつかまらない、B.膝に手をつく、C.座面に手をつく、D.前方の机に手をつく)で立ち上がるよう求めたところ、A: 11名、B: 12名、C: 7名、D: 28名となり、机に手をついた立ち上がりをおこなった者が最も多かった。要支援・要介護高齢者の地面反力指標は自立高齢者よりも顕著に低い値(9.865.1%↓)を示し、本評価法が身体の虚弱化に伴う下肢機能の低下を反映しうることが示唆された。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。1.椅子立ち上がり動作時の地面反力を、より簡便に測定評価することを可能とする普及型機器の開発これまでの試作機をベースとし、測定直後に変化率変数および最大値変数が自動算出されるアプリケーションソフトを付加し、結果のフィードバックを円滑化した。さらに、測定姿勢や動作手順を教示する音声ガイド機能を付加した。測定者による被測定者への口頭説明事項が大幅に短縮されたため、本評価システムをより容易に使用できるようになった。また、教示内容が統一されることにより、測定者間の誤差混入の危険性を最小化することに寄与した。2.普及型機器を用いた測定の、評価基準値の作成地域在住高齢者430名(男210名、女220名、73.6±5.1歳)のデータを基に、性・年代(65-69歳、70-74歳、75-79歳、80歳以上)別に、平均値+1.5標準偏差(SD)、+0.5 SD、-0.5 SD、-1.5 SDを境界値として5段階評価基準値を作成した。これに伴い、測定者ならびに被測定者のいずれに対しても、本測定結果の解釈を促すことに寄与した。3.地域の要介護化予防の現場における、普及型機器の活用法の検討宮城県石巻市における大橋メンズクラブへ、本評価システムの導入をおこなった。大橋メンズクラブは、仮設大橋団地に居住する男性を対象とした、石巻市が主催するサークル活動である。2013年7月以降、サークルに参加する度に本機器を用いた測定をおこなうこととした。月2回の開催頻度で、1回の開催時間は90120分間である。ラジオ体操、ダンベル体操、ロコモ体操(オリジナル体操)などに取り組むとともに、活動量計を配付し日々の歩数を増やす働きかけをおこない、下肢筋機能の向上を目指した。推移の仕方に個人差は見られるものの、およそ4ヵ月間で変化率変数および最大値変数とも、約5%の向上が見られることが確認された。研究課題「中年・高齢者を対象とした椅子立ち上がり動作時の地面反力による下肢筋力評価法の開発」に向け、第1年度より開発を進めている普及型機器やプログラムを用い、次の研究活動をおこない、成果を上げた。まず、宮城県石巻市における大橋メンズクラブへ、本評価システムの導入をおこなった。大橋メンズクラブは、仮設大橋団地に居住する男性を対象とした、石巻市が主催するサークル活動である。月2回の開催頻度で、1回の開催時間は90120分間である。サークルに参加する度に本機器を用いた測定をおこなうこととした。ラジオ体操、ダンベル体操、ロコモ体操(オリジナル体操)などに取り組むとともに、活動量計を配付し日々の歩数を増やす働きかけをおこない、下肢筋機能の向上を目指した。その結果、最大値体重比変数(床を踏み込む力の最大値)において、8ヵ月間で有意な向上が見られた。本評価を定期的におこなうことにより、下肢筋機能の向上を把握する、ならびに向上に寄与することが示唆された。また、本評価を活用した取り組みは、男性中年・高齢者のクラブ参加や身体活動意欲の増進に好影響を与えることを確認した。また、要支援・要介護認定を受けた58名の虚弱高齢者を対象とし、立ち上がり動作の違いによる地面反力への影響を検討した。
KAKENHI-PROJECT-13J00010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13J00010
中年・高齢者を対象とした椅子立ち上がり動作時の地面反力による下肢筋力評価法の開発
自身が最も立ち上がりやすい方法(A.何もつかまらない、B.膝に手をつく、C.座面に手をつく、D.前方の机に手をつく)で立ち上がるよう求めたところ、A: 11名、B: 12名、C: 7名、D: 28名となり、机に手をついた立ち上がりをおこなった者が最も多かった。要支援・要介護高齢者の地面反力指標は自立高齢者よりも顕著に低い値(9.865.1%↓)を示し、本評価法が身体の虚弱化に伴う下肢機能の低下を反映しうることが示唆された。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。平成25年度は、普及型機器の開発・改良が順調に進み、本測定評価法の一般化へと歩みを進めることができた。また、本機器を要介護化予防の現場へと導入を図りデータの収集を開始したことも、本研究課題の解決に向けた大きな一歩となった。ただし、研究成果の公表が学会発表に限られ、論文化できなかった点には課題が残る。平成26年度の主な課題は次の2点である。・これまでは、健康度が比較的高い地域在住高齢者を対象とした検証が中心であったが、今後は身体的な虚弱が進行している高齢者(要支援、要介護認定を受けている者)を対象とした本評価システムの適用可能性を検証する。・地域住民へ開発中の試作機を貸与し、地域における運動サークル内での活用や、その後のユーザビリティ評価をおこなう。これにより、より一層操作性を高めた普及型機器への発展を目指す。
KAKENHI-PROJECT-13J00010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13J00010
樹状細胞機能の理解に基づく腫瘍特異的免疫誘導法の開発
樹状細胞機能をさらに深く検討し、その結果を利用すれば、よりよい癌免疫療法の開発のための糸口が見出せるのではないかと考えられる。そこで本研究においては、これまで集積してきた知見を利用して下記の検討を進めた。まず、樹状細胞の分泌するサイトカインの一つであるIL-23の抗腫瘍効果を、IVE法を用いて、マウス皮下腫瘍モデルならびに肺転移モデルにおいて検討した。その結果、IL-23-IVEは有意の抗腫瘍効果を持ち、治療されたマウスにおいてはTh1型の強い抗腫瘍免疫反応の惹起されていることが判明した。また、OK432およびPGE2を併用した刺激を用いて成熟誘導された樹状細胞の有用性に関して検討した。その結果、マウスin vivo可移植腫瘍モデルにおいて、OK-432+PGE2により刺激された樹状細胞を腫瘍内投与すると、抗腫瘍効果があり、同時に全身的免疫反応も誘導できることが判明した。さらに、生体内の樹状細胞を有効に利用する方法として、生体内で末梢臓器へ大量の樹状細胞を動員できるFlt3-LのIVEを用いた検討も進めた。その結果、Flt3-LのIVEにより、生体内の樹状細胞の数量と機能を、培養系を用いることなく制御できることを確認した。現在、この方法をペプチドならびにDNAプラスミドを用いたワクチン療法を併用することにより、各々の効果増強が可能か否かを検討中である。以上の結果より、上述の3手法により強い抗腫瘍獲得免疫を誘導することが可能であることが確認され、更に基礎研究を進あることにより、これらを近い将来臨床応用できる可能性が示唆された。樹状細胞機能をさらに深く検討し、その結果を利用すれば、よりよい癌免疫療法の開発のための糸口が見出せるのではないかと考えられる。そこで本研究においては、これまで集積してきた知見を利用して下記の検討を進めた。まず、樹状細胞の分泌するサイトカインの一つであるIL-23の抗腫瘍効果を、IVE法を用いて、マウス皮下腫瘍モデルならびに肺転移モデルにおいて検討した。その結果、IL-23-IVEは有意の抗腫瘍効果を持ち、治療されたマウスにおいてはTh1型の強い抗腫瘍免疫反応の惹起されていることが判明した。また、OK432およびPGE2を併用した刺激を用いて成熟誘導された樹状細胞の有用性に関して検討した。その結果、マウスin vivo可移植腫瘍モデルにおいて、OK-432+PGE2により刺激された樹状細胞を腫瘍内投与すると、抗腫瘍効果があり、同時に全身的免疫反応も誘導できることが判明した。さらに、生体内の樹状細胞を有効に利用する方法として、生体内で末梢臓器へ大量の樹状細胞を動員できるFlt3-LのIVEを用いた検討も進めた。その結果、Flt3-LのIVEにより、生体内の樹状細胞の数量と機能を、培養系を用いることなく制御できることを確認した。現在、この方法をペプチドならびにDNAプラスミドを用いたワクチン療法を併用することにより、各々の効果増強が可能か否かを検討中である。以上の結果より、上述の3手法により強い抗腫瘍獲得免疫を誘導することが可能であることが確認され、更に基礎研究を進あることにより、これらを近い将来臨床応用できる可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-17016025
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17016025
MDS/AMLの多段階発症・進展機構における、AML1遺伝子変異の役割解明
骨髄異形成症候群(MDS)の発症や骨髄増殖性疾患(MPD)の白血病化に関わる遺伝子異常として、AML1遺伝子点突然変異を発見した。ヒト造血幹細胞を用いてAML1変異体の役割を解析し、MDS発症の主原因となること、MPDから白血病化していく原因となっていることを見出した。さらにAML1変異体と他の遺伝子異常を共に造血幹細胞に発現させることにより、MDS発症機構を明らかにした。骨髄異形成症候群(MDS)の発症や骨髄増殖性疾患(MPD)の白血病化に関わる遺伝子異常として、AML1遺伝子点突然変異を発見した。ヒト造血幹細胞を用いてAML1変異体の役割を解析し、MDS発症の主原因となること、MPDから白血病化していく原因となっていることを見出した。さらにAML1変異体と他の遺伝子異常を共に造血幹細胞に発現させることにより、MDS発症機構を明らかにした。骨髄異形成症候群/骨髄増殖性疾患(MDS/MPD)では、高頻度に白血病への進展が見られ、この分子メカニズムの一端をAML1遺伝子の点突然変異が担っている。本研究では、AML1点突然変異および協調する他の遺伝子異常を共に造血幹細胞に発現させて、MDS/MPDからの白血病化の分子機構を明らかにすることを目的としている。本年度は、AML1変異体および協調遺伝子変異体を組み込んだウイルスベクターを構築してヒト造血幹細胞に導入し、それぞれの幹細胞でin vitroでの増殖反応およびコロニー形成能などを検討した。まずAML1点変異および野生型、AML1-MTG8、SHP2変異、c-kit変異、JAK2変異、N-RAS変異、BMI-1、EVI-1などのcDNAを作製し、造血幹細胞にAML1変異体を導入するためのレトロウイルスベクタープラスミドpMXsに組み込んだ。これらには実験系によりFLAG、HAなどのタグやGFP、DsRedなどの蛍光、あるいはneo、puroなどの耐生遺伝子を付加した。まずマウス造血幹細胞にAML1点変異体を導入して移植する実験系では、長期観察期間中に高率に白血病の発症を認めた。これはレトロウイルスによる遺伝子導入の際にセカンドヒットとなる遺伝子(Evi1など)に組み込まれるためで、これらのマウスではEvi1の発現が亢進しており、実際にAML1変異体とEvi1を同時に導入して移植すると、白血病の発生は早くなった。次にヒト臍帯血由来造血幹細胞にAML1点変異を導入したところ、変異の種類により全く異なる増殖形態をとることが判明し、それぞれの変異を有する患者症例の臨床病態に一致していた。D171N変異体は、分化がブロックされて増殖も細胞死もしない状態となったため、他の遺伝子異常の獲得が必要と考えられた。一方S291fsX300変異体は、CD34陽性細胞が増加していったことから、変異体自体増殖能を持っていると考えられた。以上の結果を学会・論文等で報告した。来年度は引き続き協調遺伝子異常との共発現による造血幹細胞の動態を解析する。骨髄異形成症候群/骨髄増殖性疾患(MDS/MPD)では、高頻度に白血病への進展が見られ、この分子メカニズムの一端をAML1遺伝子の点突然変異が担っている。本研究では、AML1点突然変異および協調する他の遺伝子異常を共に造血幹細胞に発現させて、MDS/MPDからの白血病化の分子機構を明らかにすることを目的としている。本年度は、昨年度に引き続きAML1変異体および協調遺伝子変異体を組み込んだウイルスベクターをヒト造血幹細胞に導入し、共発現による造血幹細胞の動態をin vitroでの増殖反応およびコロニー形成能などで解析した。まずAML1点変異を導入した造血幹細胞の遺伝子プロファイルを作成し、BMI-1の発現が変異体のタイプにより異なることを見いだした。D171N変異体では発現低下、S291fsX300変異体では発現亢進していることから、造血幹細胞培養実験の結果はBMI-1の発現が影響していると予測された。ところが患者サンプルでは、D171Nタイプの症例でBMI-1の著しい発現亢進が認められたことから、付加的にBMI-1発現が誘導されたと考えられた。そこでD171N変異体およびBMI-1を段階的に共発現させたところ、増殖能が付加され、MDS病態を再現できた。次にJAK2変異を有するMPD患者のCD34陽性細胞にAML1点変異を導入した。するとコントロールと比較して幼弱細胞の増加や自己再生能の亢進が認められ、AML1変異体がMPD患者の白血病化開始因子であることが示唆された。以上のヒト造血幹細胞を用いた検討結果は学会・論文等で報告し、一部は現在投稿中である。
KAKENHI-PROJECT-19591114
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19591114
リンパ管静脈吻合術後変化の3次元的解析
近年のマイクロサージャリー技術の発達により、リンパ管静脈吻合術(以下:LVA)が広く普及して来ている。LVAは浮腫の治療効果に加えて蜂窩織炎の予防効果も期待されることから多くの施設でリンパ浮腫の外科的治療の中心となっている。一方、LVAに関しては、手術の適応・吻合数・吻合様式・吻合部位など術式に関する詳細が施設毎に大きく異なり、標準的な様式が定まっていない。この為、LVA術後の浮腫軽減効果や蜂窩織炎予防効果の発現機序など、術式に関する根本的な部分にも不明点が多い。これらの現状を踏まえ、我々は201516年度の科学研究費補助金を用いた研究により、簡易的なLVAの動物実験モデルを作成し、LVA術後組織学的変化について検討を行った。この結果、吻合部内膜下組織の内腔への露出が吻合部閉塞の主要原因であることを解明した。一方、LVAにおいてはリンパ管と静脈の吻合様式が各種報告されており、どの吻合様式が最も生理的で長期間吻合部の開存を保つことが可能かに関して、一定の見解が得られていない。一方、これらの吻合様式を比較する際に、術者の技術的な要因を排除するためには、先行研究の様な組織学的検討が必須である。しかしながら、過去に検討を行った端々吻合術以外の吻合様式においては、1断面で吻合全体を含む標本を作製することが出来ず、光学顕微鏡や透過型電子顕微鏡による観察は困難であった。今回、過去の経験を踏まえ、走査型電子顕微鏡による経時的な吻合部の3次元的変化の組織学的検討を行うこととした。今年度はラットにおけるリンパ管、静脈の結合織分解酵素の作成を行った。リンパ管静脈吻合術後の3次元解析を行う前提条件として、リンパ管及び静脈周囲に存在する結合織を分解する酵素の作成が必須である。リンパ管と静脈という異なる2種類の脈管及びその周囲の結合織を対象としており、最適な成分及び濃度の同定が困難であるため。最適な結合織分解酵素の同定が終了した後に、LVA術後のリンパ管及び静脈の組織学的検討に移る予定である。また、これまでの実験成果も含めて明らかになった知見を学会にて報告していく予定である。近年のマイクロサージャリー技術の発達により、リンパ管静脈吻合術(以下:LVA)が広く普及して来ている。LVAはリンパ液の生理的な還流が可能なること、非常に低侵襲な術式であること、浮腫症状の改善に加えて蜂窩織炎の予防効果も期待されることなどから多くの施設でリンパ浮腫の外科的治療の第一選択の術式となっている。一方、LVAに関しては、手術の適応・吻合数・吻合様式・吻合部位など術式に関する詳細が施設毎に大きく異なり、スタンダードな様式が無い。この為、LVA術後の浮腫軽減や蜂窩織炎の発症予防の発現機序や術後リンパ管と静脈の吻合部の組織学的な変化など、術式に関する根本的な部分にも不明点が多い。これらの現状を踏まえ、我々は201516年度の科学研究費補助金を用いた研究により、簡易的なLVAの動物実験モデルを作成し、LVA術後組織学的変化の詳細について検討を行った。この結果、吻合部内膜下組織の内腔への露出が吻合部閉塞の主要原因であることを解明した。一方、LVAにおいてはリンパ管と静脈の吻合様式が各種報告されており、どの吻合様式が最も生理的で長期間吻合部の開存を保つことが可能かに関して、一定の見解が得られていない。この為、国内でLVAの手術数が多い代表的な施設間でも手術の様式は全く異なり、各施設で様々な方法でLVAが行われている。一方、これらの吻合様式を比較する際に、術者の技術的な要素を排除するためには、先行研究の様な組織学的検討が必須である。しかしながら、過去に検討を行った端々吻合術以外の吻合様式においては、1断面で吻合全体を含む標本を作製することが出来ず、光学顕微鏡や透過型電子顕微鏡による観察は困難であった。今回、過去の経験を踏まえ、走査型電子顕微鏡による経時的な吻合部の3次元的変化の組織学的検討を行うこととした。今年度はラットにおけるリンパ管、静脈の結合織分解酵素の作成を行った。リンパ管静脈吻合術後の3次元解析を行う前提条件として、リンパ管及び静脈周囲に存在する結合織を分解する酵素の作成が必須である。この場合、結合織を分解しつつリンパ管及び静脈に影響を与えない成分、濃度の調整が必要となるが、この成分の同定を行っている段階である。近年のマイクロサージャリー技術の発達により、リンパ管静脈吻合術(以下:LVA)が広く普及して来ている。LVAは浮腫の治療効果に加えて蜂窩織炎の予防効果も期待されることから多くの施設でリンパ浮腫の外科的治療の中心となっている。一方、LVAに関しては、手術の適応・吻合数・吻合様式・吻合部位など術式に関する詳細が施設毎に大きく異なり、標準的な様式が定まっていない。この為、LVA術後の浮腫軽減効果や蜂窩織炎予防効果の発現機序など、術式に関する根本的な部分にも不明点が多い。これらの現状を踏まえ、我々は201516年度の科学研究費補助金を用いた研究により、簡易的なLVAの動物実験モデルを作成し、LVA術後組織学的変化について検討を行った。この結果、吻合部内膜下組織の内腔への露出が吻合部閉塞の主要原因であることを解明した。
KAKENHI-PROJECT-17K17016
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K17016
リンパ管静脈吻合術後変化の3次元的解析
一方、LVAにおいてはリンパ管と静脈の吻合様式が各種報告されており、どの吻合様式が最も生理的で長期間吻合部の開存を保つことが可能かに関して、一定の見解が得られていない。一方、これらの吻合様式を比較する際に、術者の技術的な要因を排除するためには、先行研究の様な組織学的検討が必須である。しかしながら、過去に検討を行った端々吻合術以外の吻合様式においては、1断面で吻合全体を含む標本を作製することが出来ず、光学顕微鏡や透過型電子顕微鏡による観察は困難であった。今回、過去の経験を踏まえ、走査型電子顕微鏡による経時的な吻合部の3次元的変化の組織学的検討を行うこととした。今年度はラットにおけるリンパ管、静脈の結合織分解酵素の作成を行った。リンパ管静脈吻合術後の3次元解析を行う前提条件として、リンパ管及び静脈周囲に存在する結合織を分解する酵素の作成が必須である。リンパ管と静脈という異なる2種類の脈管及びその周囲の結合織を対象としており、最適な成分及び濃度の同定が困難であるため。今後は、これまでの実験成果も含めて明らかになった知見を学会にて報告していく予定である。最適な結合織分解酵素の同定が終了した後に、LVA術後のリンパ管及び静脈の組織学的検討に移る予定である。また、これまでの実験成果も含めて明らかになった知見を学会にて報告していく予定である。今年度に使用したラットが予想よりも少なかったため。また、今後は必要に応じて組織分解に必要な酵素や走査型電子顕微鏡の使用に必要な物品の購入に充てる予定である。研究代表者のその他の業務の多忙により、当初の研究計画より研究可能な時間が少なくなってしまい、研究計画に遅延が生じたため。研究期間の延長に伴い、2018年度に使用予定であった使用額の一部を2019年度に使用予定である。
KAKENHI-PROJECT-17K17016
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情報通信ビルシステムのための統合安全監視ICチップの開発と応用
設計・作成したディジタル制御電源システムの基本特性を明らかにした。また,高周波スイッチングノイズを発生する電源部とノイズに対して敏感な映像信号を扱う画像処理回路を同一の基板上に置いた場合を考慮し,電源が発するノイズの影響を最小限に抑えるための方式を提案した。さらに,煙の認識を的確に行う方式を提案した。以上のことからスイッチング電源のディジタル制御機能と煙検知の画像処理機能を共に備えた統合安全監視ICチップ製造のための十分な知見を得ることが出来た。設計・作成したディジタル制御電源システムの基本特性を明らかにした。また,高周波スイッチングノイズを発生する電源部とノイズに対して敏感な映像信号を扱う画像処理回路を同一の基板上に置いた場合を考慮し,電源が発するノイズの影響を最小限に抑えるための方式を提案した。さらに,煙の認識を的確に行う方式を提案した。以上のことからスイッチング電源のディジタル制御機能と煙検知の画像処理機能を共に備えた統合安全監視ICチップ製造のための十分な知見を得ることが出来た。(1)電源の制御と監視機能をもち,また,大脳の視覚系構造の画像処理機能を併せ持つICチップ設計のための最適な回路構成,回路パラメータ設定等の指針および応用を含めた適用範囲を検討した。(2)(1)の電源の監視機能の情報収集として調査研究を行った。具体的にはl平成18年12月1日から2日まで米国のカルフォルニア州モハベ市の大規模風車サイトのモハベサイトとMountain View(MV)サイトを見学し,遠隔制御・操作の実態を調査した。(3)(1)に基づいた新しい監視・制御アルゴリズムを実現する回路を特定用途向き集積回路ASICにより設計するための基本的な機能を設計した。(4)火災,侵入者検知等の画像解析の検討を行い,各種の方式の比較を行い,組み合わせることにより認識率の向上を図った。(5)監視対象である電源シミュレータの構築を行うためのデータの収集およびモデル化を行った。提案するICは,監視機能のみでなく,ディジタル制御の機能を備えている。このディジタル制御の方式の検討を行い,VCO方式が有効であることを確認した。また,通信プロトコルの検討を行い,今後も継続して検討することにした。(1)平成18年度で得られた結果を基に、ASICを用いた電源システムおよび画像処理システムの構築を検討した。また、シミュレーション実験により動作させるためのプログラムを作成することにより評価システムを構築した。検討にあたっては、高周波スイッチングノイズを発生する電源部とノイズに対して敏感な映像信号を扱う画像処理回路を同一の基板上に置き、しかも一つのASICで信号を入出力するということを考慮に入れた。ノイズに対しては、予期せぬ問題点が発生することが十分に考えられるが、映像信号を早い時点でディジタル化することにより、電源が発するノイズの影響を最小限に抑える工夫を検討した。また、電源からのノイズでA/D変換器が誤動作することを避けるために、積分動作方式のA/D変換器を工夫により高速動作させることを検討し良好な結果を得た。(2)提案しているシステムを用いて、電源の短絡故障時の動作解析、火災を想定した煙の画像認識等の動作確認を行った。(3)平成18年度で得られた結果を基にディジタル制御機能を付加した回路を設計し、その過渡特性の動作解析を行い、性能を評価し、実用に耐えうる良好な結果を得た。(1)平成18,19年度で得られた結果を基に,設計・作成したASICを用いた電源システムの基本特性を明らかにした。また,動作プログラムの評価システムを確立した。高周波スイッチングノイズを発生する電源部とノイズに対して敏感な映像信号を扱う画像処理回路を同一の基板上に置いた場合を考慮し,電源が発するノイズの影響を最小限に抑えるための方式について検討した。...研究代表者:黒川,研究分担者:谷内(パワーデバイス,電池の専門家),西田(電力変換器の専門家),研究協力者:阿部(IC設計の専門家)(2)試作したシステムの電源の短絡故障時の動作解析を行い,特性を明らかにした。...研究代表者:黒川,研究分担者:谷内(パワーデバイス,電池の専門家),西田(電力変換器の専門家)(3)さらに,平成18,19年度で得られた結果を基にディジタル制御回路にあった通信機能の仕様を検討した。...研究代表者:黒川,研究協力者:江藤(通信プロトコルの専門家)(4)これまでの成果をさらに発展させ,煙の認識を的確に行う方式を提案した。本研究では,テクスチャ特徴を用いた類似度を時系列として累積したもの(累積類似度)による煙検出手法を提案する。一定時間間隔の映像から移動領域を抽出し,テクスチャ解析により煙との類似度を算出,時間的累積により,一般環境下での安定した煙検出を行っている。...研究代表者:黒川(5)これまでの研究成果を国際会議,学術雑誌で発表した。...研究代表者:黒川,研究分担者:谷内(パワーデバイス,電池の専門家),西田(電力変換器の専門家)
KAKENHI-PROJECT-18310117
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18310117
情報化と情報行動
1.生活領域における情報行動の変化(橋元、吉井、三上他)東京都民を対象に実施したパネル調査を詳細に分析し、また職場での情報行動調査との関連をみた。その結果、人々の情報行動パターンは依然テレビ視聴などが中心であまり大きな変化が生じてないが、ワープロ利用行動などにおいては30代を中心に変化がみられること、職場での機器接触と自宅での情報機器所有率が極めて高い相関を示し、職場での情報環境が家庭に大きな影響を及ぼしていること等が実証された。また学生調査からは、学生のワープロ・パソコン所有も学校での情報教育から直接的な影響を受けていることが示された。さらに94年度「職場のコンピュータ利用調査」を実施し現在分析中である。2.情報化と言語行動の変化(荻野)筑波大学の学生を対象に電話のかけ方について調査を実施した。その結果、(1)学生は遠距離通話は実家程度しかせず、大変限定された通話行動をしていること、(2)電話の通話時間については特に個人ごとに大きな差があること、(3)パソコン通信をやっている人は、通話パターンが極めて特異であること、(4)留守番電話の影響で結果的に1秒程度の「短い通話」がかなり多くなっている、等のことが明らかになった。人間と計算機とのコミュニケーションに関する研究(白井他)初年度から前年度までに得られた理論的および実験的考察をもとに、マシンを介した人間間のコミュニケーション、およびマシンと人間との間のコミュニケーションに関するモデル構築を試みた。特に計算機の対話ツールを用いた場合と、電話等のメディアによる対話実験の場合とを比較し、計算機と人間とのよりよいコミュニケーションを実現するための問題点と発展性について考察を行った。初年度は東京都住民を対象として日常生活での情報行動の実態を調査したが、女性の職場進出、通勤時間の増加などに伴い、家庭での滞在時間が減少していることもふまえて、本年度、情報行動班(橋元他)では、職場における情報行動に関する調査を実施した。中でもとくに、今後の一般市民のコミュニケーション・ツールとして大きな可能性を潜めたパソコン通信に焦点をあて、先進的に電子メイルを導入している23社を対象にその現状や将来性に関するヒアリングを実施し、さらにそのうち18社の社員545名に対してアンケート調査を行なった。ヒアリングとアンケート調査の結果、電子メイルシステムが有効に活用されるには、(1)利用者が一定数(critical mass)を越えていること、(2)端末が一人一台に近いハード環境にあること、(3)上司を始め、職場の雰囲気が利用に積極的であること、(4)フォーマルな利用に限らず、インフォーマルな利用も比較的自由であること、(5)キーボード操作能力の高さが電子メール利用頻度と正の相関をもつこと、(6)電子メイル導入の効果として、ファックスの利用や会議回数が減少したこと等の知見が見いだされた。コミュニケーションにおける記号媒体の変化を探る言語行動班(荻野)では、初年度のプリテストに続き、684名を対象として、ワープロ利用と日本語表記変化に関するアンケート調査を実施した。人間にとって情報機器との最適インターフェイスモデルを考察するマン・マシーン・インターフェイス班(白井他)では、人間と計算機との交流における状況依存性に関し、リアルタイム・非対面・文字による対話形態であるtalk形式の対話形態で、どのような会話が行われるかを実験してその分析を行い、対面対話との比較・検討を行った。さらに、情報化社会における人間行動へのネガティブな影響を探る社会的脆弱性班(広井他)では、初年度に続き災害時の情報システムダウン問題の分析に加え、情報化に伴って、予想に反し増加しつつある紙量消費および処理の実態について実態調査を実施した。1.家庭における情報行動の変化(橋元他)家庭生活における情報化進展の状況を実証的に検証することを目的とする情報行動チームでは、1991年の東京都住民調査の回答者を対象にパネル調査を実施した(N=450)。その結果、衛星放送受信装置やビデオカメラ、ファクシミリなど一部の情報機器の普及で伸びがみられるものの、パソコンをはじめ多くの情報機器の伸びは停滞していること、人々の情報行動パターンは依然テレビ視聴などオールドメディアを中心としたもので、2年間の間にほとんど変化が生じていないこと、情報社会に対する意識はむしろ保守化する傾向にあることなどが明らかになった。情報文化の未成熟、家庭での自由行動時間の短さ等がその背景に考えられる。2.情報化と言語行動の変化(荻野)荻野は、1993年には、留守番電話の利用に関するアンケート調査を行った(N=446)。その結果、学生は、応答メッセージを頻繁に入れ替え、いろいろ工夫して「遊ぶ」傾向があるが、社会人は入れ替えせずにいつもマジメなメッセージを使うこと、等が明らかになり、留守番電話の普及による、かける側優位から受ける側優位への変化が裏付けされた。3.人間と計算機とのコミュニケーションに関する研究(白井他)白井チームでは、昨年度に引き続き、人間と計算機との円滑なコミュニケーションを実現するための基礎研究を行った。具体的には、人間と計算機とが対話をすすめながら、プログラムの構築やデバッグを行うPrologのプログラム作成ツール(PIN)を試作した。1.生活領域における情報行動の変化(橋元、吉井、三上他)東京都民を対象に実施したパネル調査を詳細に分析し、また職場での情報行動調査との関連をみた。その結果、人々の情報行動パターンは依然テレビ視聴などが中心であまり大きな変化が生じてないが、ワープロ利用行動などにおいては30代を中心に変化がみられること、職場での機器接触と自宅での情報機器所有率が極めて高い相関を示し、職場での情報環境が家庭に大きな影響を及ぼしていること等が実証された。
KAKENHI-PROJECT-04211108
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情報化と情報行動
また学生調査からは、学生のワープロ・パソコン所有も学校での情報教育から直接的な影響を受けていることが示された。さらに94年度「職場のコンピュータ利用調査」を実施し現在分析中である。2.情報化と言語行動の変化(荻野)筑波大学の学生を対象に電話のかけ方について調査を実施した。その結果、(1)学生は遠距離通話は実家程度しかせず、大変限定された通話行動をしていること、(2)電話の通話時間については特に個人ごとに大きな差があること、(3)パソコン通信をやっている人は、通話パターンが極めて特異であること、(4)留守番電話の影響で結果的に1秒程度の「短い通話」がかなり多くなっている、等のことが明らかになった。人間と計算機とのコミュニケーションに関する研究(白井他)初年度から前年度までに得られた理論的および実験的考察をもとに、マシンを介した人間間のコミュニケーション、およびマシンと人間との間のコミュニケーションに関するモデル構築を試みた。特に計算機の対話ツールを用いた場合と、電話等のメディアによる対話実験の場合とを比較し、計算機と人間とのよりよいコミュニケーションを実現するための問題点と発展性について考察を行った。
KAKENHI-PROJECT-04211108
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交流ピンチ力を利用した溶融金属中介在物の除去に関する研究
溶融金属中に交流電流を印加すると溶融金属を圧縮する向きにピンチ力が発生する。このピンチ力により溶融金属中に懸濁する非導電性の非金属介在物粒子を溶融金属から搾り出すことができる。本研究ではこの機構を介在物除去に応用するための基礎的知見を得ることを目的として以下のような実験的検討を行った。1.交流電磁気力場における非導電性粒子の運動:一様な交流電磁気力場で粒子に作用する泳動力を求めるためにまず交流電磁石を作成した。この電磁石はコアの径10cm、ギャップ3cmで、最大0.18Tを発生する性能を有する。サーチコイルを用いてギャップ内の磁束密度分布を測定したところ、6cm角の領域で均一な磁界を得ることができた。このギャップ内に幅5mm、高さ20mm、銅電極間距離30mmの電解質セルを設置し、セル幅方向に磁束が印加できるようにした。セル内にKCl水溶液を満たし、銅電極間に磁束と位相を一致させた交流電流を流した。電解質中にポリスチレン球形粒子を投入し、その粒子が液中で静止するようにセル電流を調整し、その時の実効電磁気力を求めた。その電磁気力はポリスチレン粒子径がセル幅の1/5以下の場合に直流電磁気力の理論値とよく一致した。本実験によって既往の理論値が交流の場合にも適用できることが初めて明らかにされた。2.液体金属への交流電流印加法の検討:液体金属に電流を印加する方法として誘導電流印加法を採用した。一次電流50A、最大二次電流4000Aのトランスにより水銀環状路への誘導電流印加実験を行った。その結果、95%程度の高い電流変換効率が得られ、本介在物除去法の実現の可能性が確かめられた。溶融金属中に交流電流を印加すると溶融金属を圧縮する向きにピンチ力が発生する。このピンチ力により溶融金属中に懸濁する非導電性の非金属介在物粒子を溶融金属から搾り出すことができる。本研究ではこの機構を介在物除去に応用するための基礎的知見を得ることを目的として以下のような実験的検討を行った。1.交流電磁気力場における非導電性粒子の運動:一様な交流電磁気力場で粒子に作用する泳動力を求めるためにまず交流電磁石を作成した。この電磁石はコアの径10cm、ギャップ3cmで、最大0.18Tを発生する性能を有する。サーチコイルを用いてギャップ内の磁束密度分布を測定したところ、6cm角の領域で均一な磁界を得ることができた。このギャップ内に幅5mm、高さ20mm、銅電極間距離30mmの電解質セルを設置し、セル幅方向に磁束が印加できるようにした。セル内にKCl水溶液を満たし、銅電極間に磁束と位相を一致させた交流電流を流した。電解質中にポリスチレン球形粒子を投入し、その粒子が液中で静止するようにセル電流を調整し、その時の実効電磁気力を求めた。その電磁気力はポリスチレン粒子径がセル幅の1/5以下の場合に直流電磁気力の理論値とよく一致した。本実験によって既往の理論値が交流の場合にも適用できることが初めて明らかにされた。2.液体金属への交流電流印加法の検討:液体金属に電流を印加する方法として誘導電流印加法を採用した。一次電流50A、最大二次電流4000Aのトランスにより水銀環状路への誘導電流印加実験を行った。その結果、95%程度の高い電流変換効率が得られ、本介在物除去法の実現の可能性が確かめられた。
KAKENHI-PROJECT-05650723
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05650723
ラット臼歯モデルでの抜歯窩への後方臼歯の矯正移動と歯根吸収の制御
本研究では、ラット第一臼歯抜歯窩への後方臼歯の近心移動モデルにおいて、矯正力の特性(荷重の大きさと負荷方向、作用期間と間隔)を規格化する上でステンレス製コイルスプリングからNiTi製コイルスプリングへの転換、動物口腔内でのコイルスプリングの装着・脱着操作を可能とする可撤式矯正装置の開発を行った。NiTi可撤式矯正装置を装着した実験動物例では、最長14日間の観察期間を通して動物口腔内で安定に維持される耐久性をもつことが確かめられた。また、歯の形態的要素(歯根形状と表面積)と矯正移動様式(移動距離と方向、歯軸傾斜の有無、歯根吸収の発症部位と程度)との関連を明らかにする上で、非破壊的な解析方法としてFCT立体構築法を導入した。μCT立体構築では、歯根・歯根膜・歯槽骨を分画することにより、歯の植立状態を直視観察できるとともに、歯軸傾斜と歯根表面積、歯根吸収窩と歯根表面での圧迫領域の同定、骨塩量と骨梁連結性の定量解析も可能となった。矯正力の特性と臼歯移動様式との関連性については、異なるコイルスプリング(10g、25g、40g荷重)を用いた実験を遂行し、相同な負荷条件下では臼歯移動様式の再現性も高いことが確かめられた。第二臼歯に負荷した矯正力は槽間中隔を隔てて第三臼歯の近心移動をともなうことと、第二・第三臼歯の近心側歯根膜腔で硝子化と破骨細胞の集積をきたしており、槽間中隔の骨壁は破骨細胞の吸収活性により菲薄化することが確かめられた。矯正力の持続負荷による臼歯の近心移動後に矯正力を撤去あるいは非荷重のコイルスプリング装着(保定処置)にともなう組織応答も検証した。最後に、歯根吸収の発症・防止機序の解明に向けて、体内埋入型ポンプを用いたビスフォスフォネートの全身持続投与下での矯正移動様式について検討した。これらの研究成果については、国内外での学会報告とともに論文発表を続けている。本研究では、ラット第一臼歯抜歯窩への後方臼歯の近心移動モデルにおいて、矯正力の特性(荷重の大きさと負荷方向、作用期間と間隔)を規格化する上でステンレス製コイルスプリングからNiTi製コイルスプリングへの転換、動物口腔内でのコイルスプリングの装着・脱着操作を可能とする可撤式矯正装置の開発を行った。NiTi可撤式矯正装置を装着した実験動物例では、最長14日間の観察期間を通して動物口腔内で安定に維持される耐久性をもつことが確かめられた。また、歯の形態的要素(歯根形状と表面積)と矯正移動様式(移動距離と方向、歯軸傾斜の有無、歯根吸収の発症部位と程度)との関連を明らかにする上で、非破壊的な解析方法としてFCT立体構築法を導入した。μCT立体構築では、歯根・歯根膜・歯槽骨を分画することにより、歯の植立状態を直視観察できるとともに、歯軸傾斜と歯根表面積、歯根吸収窩と歯根表面での圧迫領域の同定、骨塩量と骨梁連結性の定量解析も可能となった。矯正力の特性と臼歯移動様式との関連性については、異なるコイルスプリング(10g、25g、40g荷重)を用いた実験を遂行し、相同な負荷条件下では臼歯移動様式の再現性も高いことが確かめられた。第二臼歯に負荷した矯正力は槽間中隔を隔てて第三臼歯の近心移動をともなうことと、第二・第三臼歯の近心側歯根膜腔で硝子化と破骨細胞の集積をきたしており、槽間中隔の骨壁は破骨細胞の吸収活性により菲薄化することが確かめられた。矯正力の持続負荷による臼歯の近心移動後に矯正力を撤去あるいは非荷重のコイルスプリング装着(保定処置)にともなう組織応答も検証した。最後に、歯根吸収の発症・防止機序の解明に向けて、体内埋入型ポンプを用いたビスフォスフォネートの全身持続投与下での矯正移動様式について検討した。これらの研究成果については、国内外での学会報告とともに論文発表を続けている。歯の移動と保定を目指した歯科矯正治療においては、大きさと方向を定めた矯正力を歯冠部に負荷することにより、歯槽骨の可塑性と力学的負荷に対する適応能を活用している。本研究では、抜歯窩への矯正移動モデルにおいて、全身・局所状態の変動と歯の矯正処置との関連を明らかにする。初年度にあたり、当初の実験計画に沿ってラット上顎臼歯を対象として、第一臼歯を抜歯後に第二臼歯の抜歯窩への近心移動モデルを確立した。実験には雄性SD系ラット(5週齢、実験開始時の体重125g前後)を使用し、一次処置として両側上顎第一臼歯を抜歯し、矯正装置の固定源となる上顎切歯を顎骨へピン止め固定した。抜歯窩の治癒観察のために5日間の日数をおいて、左側抜歯窩後方に位置する第二臼歯にコイルスプリングを設置し、近心への牽引力40gを負荷した(移動側)。反対側の同名臼歯(対照側)には荷重なしに矯正装置を設置した。3日ないし10日間の移動期間を置いて実験動物を灌流固定により屠殺し、移動側と対照側の臼歯試料のμCT像を撮影、その後に組織観察のための脱灰薄切標本を作製した。
KAKENHI-PROJECT-15390640
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15390640
ラット臼歯モデルでの抜歯窩への後方臼歯の矯正移動と歯根吸収の制御
移動歯と周囲歯槽骨の立体構築像の観察に基づき、歯根膜の狭窄やアンキローシスを随伴しない歯体移動群と、圧迫側での歯根膜狭窄が顕著な傾斜移動群とに判別できた。歯体移動を示した第二臼歯でのμCT立体構築像に基づく形態計測から、近心移動距離0.28(±0.10)mmであり、槽内中隔部での骨改造が進行していたが、歯根膜腔の狭窄やアンキローシスを伴っていないことを確かめた。また、μCT法による非破壊的な3次元形態観察では、臼歯と周囲組織(歯根膜と歯槽骨)とを分離する手法も確立した。以上の実験系ならびに観察手法を拡張して、次年度では体内埋入型浸透圧ポンプにより持続的に生理活性因子を供給した条件下での歯の矯正移動実験を開始する。本年度では、矯正力の大きさと持続的な負荷を実現するために、形状記憶能をもつNiTiのコイルスプリングを用いた矯正装置の開発を行った。従来のステンレス製のコイルスプリングでは初期荷重は規定できるが、歯の移動にともない矯正力が減衰する制約を伴っていた。実験には40g、25g、15gを負荷するNiTiスプリングを使用し、負荷期間を任意に設定できるようにラット口腔内で着脱可能な装置を考案した。実験モデルは当初の計画に沿ってラット上顎臼歯を対象として、第1臼歯を抜歯後に第2臼歯を抜歯窩へ近心移動させた。今回の着脱可能な矯正装置を装着した実験動物30匹において、最長14日間の実験期間においてNiTiスプリングが破損あるいは自然脱落をきたしたのは1例にとどまり、他の実験例では実験終了時にも設定荷重が持続的に負荷されていることが確かめられた。臼歯の近心移動距離に関しても、従来の矯正力減衰をともなう装置を使用した場合(7-14日間40g荷重で平均0.3mmの移動)に比べて、25gあるいは15gの低荷重群でも1mmを越える大きな値が得られていた。この矯正装置の改良とともに、歯の移動にともなう歯槽骨改造を3次元的に解析する方法として、μCT撮影とその後の脱灰組織切片からの立体構築法について確立した。特に、脱灰薄切標本については破骨細胞を染めるTRAP酵素組織化学(破骨細胞系譜は赤色で識別できる)と骨基質を青紫で染めるアザン染色の二重染色法を開発した。使用している画像解析システムでは、これらのRGB色調に基づく組織要素の分離抽出が可能であり、単核・多核のTRAP陽性細胞と骨表面との空間配置を動画観察し、細胞分布について形態計測することができる。以上の実験系ならびに観察手法の改良を踏まえて、次年度では体内埋入型浸透圧ポンプにより持続的に生理活性因子を供給した条件下での歯の矯正移動実験を開始する。本年度では、前年度に考案したNiTiコイルスプリング可撤式矯正装置を使用して、3種類のコイルスプリング(10g、25g、40g荷重)によるラット第一臼歯抜歯窩への後方臼歯の近心移動を調べた。臼歯移動様式と顎骨・歯槽骨の構造変化については、μCT立体構築法と脱灰後の組織観察により解析した。今回のNiTi可撤式矯正装置を装着した実験動物例(40個体)では、最長14日間の観察期間に矯正装置の脱落・破損は5例にとどまり、相同な負荷条件下では臼歯移動様式の再現性も高いことが確かめられた。10g低荷重・10日間持続負荷の条件下では、第二臼歯は高頻度で歯体移動しており、近心根は抜歯窩内に達することを確かめた。25gと40g持続荷重群も設定したが、移動歯の歯軸傾斜と歯根吸収は矯正力の大きさに依存して増強され、40g持続荷重により第二臼歯は強度の傾斜移動によって歯槽窩から挺出状態に陥った。10g低荷重群での歯体移動においても、第二臼歯に負荷した矯正力は槽間中隔を隔てて第三臼歯の近心移動をともなうことと、第二・第三臼歯の近心側歯根膜腔で硝子化と破骨細胞の集積をきたしており、槽間中隔の骨壁は破骨細胞の吸収活性により菲薄化することが確かめられた。
KAKENHI-PROJECT-15390640
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伝統的水産食品の風味に及ぼす脂質成分の影響
魚に含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸の生理作用が明らかになり、魚やそれを加工した水産食品が再評価されている一方で、多価不飽和脂肪酸は加工や貯蔵中に変化を起こしやすいことも明らかになってきている。本研究では、まず、魚を加工あるいは調理する間にその脂質がどのように変化するかを調べた。その結果、魚を煮干しや開き干しにすることで、脂質の酸化が進み、多価不飽和脂肪酸が減少し、さらに、脂質酸化は味や香りなどの風味に対しても大きな影響を及ぼすことが明らかになった。次に、なれずしについて成分分析と官能試験を行い、その成分の風味に及ぼす影響を明らかにするための基礎データを得た。なれずしは、生魚の保存性を高め、独特の風味を付加した食品であるが、カルシウムを中心とした栄養価も期待される食品であることがわかった。すなわち、カルシウム含量が高いうえにリン含量との比が理想範囲にあり、カルシウムの有用な供給源になると判断された。なれずしの脂質を抽出し、酸化の程度を調べたところ、製造過程でほとんど変化のないことが明らかになった。さらに、脂質を薄層クロマトグラフィーで分画し、高速液体クロマトグラフィーで分析した結果、脂肪酸組成は、生さばや塩さばとほぼ同じであったが、脂質クラスごとの脂肪酸組成は、なれずし製造中に変化が起こっており、なれずしの独特の味、香り、風味に大きく関与していると考えられた。なれずしの揮発性成分をSPMEに吸着させ、GCMSにより分析したところ、30-50種類以上の成分が検出された。揮発温度を変化させることで検出される揮発性成分に変化が見られたことから、口中に含む前後でわれわれの感じる風味に変化が起こることも予想された。嗜好テストでは、酸味と塩味が特に好まれなかったが、なれずしを食べた経験のある人ほど嗜好性が高く、生臭みは好まないが、独特の香りを好む傾向がみられた。魚に含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸の生理作用が明らかになり、魚やそれを加工した水産食品が再評価されている一方で、多価不飽和脂肪酸は加工や貯蔵中に変化を起こしやすいことも明らかになってきている。本研究では、まず、魚を加工あるいは調理する間にその脂質がどのように変化するかを調べた。その結果、魚を煮干しや開き干しにすることで、脂質の酸化が進み、多価不飽和脂肪酸が減少し、さらに、脂質酸化は味や香りなどの風味に対しても大きな影響を及ぼすことが明らかになった。次に、なれずしについて成分分析と官能試験を行い、その成分の風味に及ぼす影響を明らかにするための基礎データを得た。なれずしは、生魚の保存性を高め、独特の風味を付加した食品であるが、カルシウムを中心とした栄養価も期待される食品であることがわかった。すなわち、カルシウム含量が高いうえにリン含量との比が理想範囲にあり、カルシウムの有用な供給源になると判断された。なれずしの脂質を抽出し、酸化の程度を調べたところ、製造過程でほとんど変化のないことが明らかになった。さらに、脂質を薄層クロマトグラフィーで分画し、高速液体クロマトグラフィーで分析した結果、脂肪酸組成は、生さばや塩さばとほぼ同じであったが、脂質クラスごとの脂肪酸組成は、なれずし製造中に変化が起こっており、なれずしの独特の味、香り、風味に大きく関与していると考えられた。なれずしの揮発性成分をSPMEに吸着させ、GCMSにより分析したところ、30-50種類以上の成分が検出された。揮発温度を変化させることで検出される揮発性成分に変化が見られたことから、口中に含む前後でわれわれの感じる風味に変化が起こることも予想された。嗜好テストでは、酸味と塩味が特に好まれなかったが、なれずしを食べた経験のある人ほど嗜好性が高く、生臭みは好まないが、独特の香りを好む傾向がみられた。魚に含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸の生理作用が明らかになり、魚やそれを加工した水産加工食品が再評価されている。しかし、食品中の脂質、特に多価不飽和脂肪酸は加工や貯蔵中に変化を起こしやすい。本研究では、まず、魚を加工あるいは調理する間にその脂質がどのように変化するかを調べた。その結果、魚を煮干しや開き干しにすることで、脂質の酸化が進み、多価不飽和脂肪酸が減少することが明らかになった。また、このような水産加工食品の場合、保存による脂質酸化がはやく進行することも認められた。さらに、脂質酸化は、味や香りなどの風味に対しても大きな影響を及ぼしていた。次に、アジア諸国で古くから用いられている水産加工品であるなれずしについて成分分析と官能試験を行い、その成分の風味に及ぼす影響を明らかにするための基礎データを得た。なれずしは、生魚の保存性を高め、独特の風味を付加した食品であるが、カルシウムを中心とした栄養価も期待される食品であることがわかった。すなわち、カルシウム含量が高いうえにリン含量との比が理想範囲にあり、カルシウムの有用な供給源になると判断された。なれずしの脂質を抽出し、酸化の程度を調べたところ、製造過程でほとんど変化のないことが明らかになった。さらに、脂質を薄層クロマトグラフィーで分画し、高速液体クロマトグラフィーで分析した。脂質全体の脂肪酸組成は、生さばや塩さばとほぼ同じであったが、脂質クラスごとの脂肪酸組成は、なれずし製造中に変化が起こっており、なれずしの独特の味、香り、風味に大きく関与していると考えられた。
KAKENHI-PROJECT-13680148
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伝統的水産食品の風味に及ぼす脂質成分の影響
嗜好テストでは、酸味と塩味が特に好まれなかったが、なれずしを食べた経験のある人ほど嗜好性が高く、生臭みは好まないが、独特の香りを好む傾向がみられた。今後は、漬け込み中の脂質を中心とした成分の変化をさらに詳細に分析し、風味との関係を明らかにしていく予定である。魚に含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸の生理作用が明らかになり、魚やそれを加工した水産加工食品が再評価されている一方で、多価不飽和脂肪酸は加工や貯蔵中に変化を起こしやすいことも明らかになってきている。本研究では、まず、魚を加工あるいは調理する間にその脂質がどのように変化するかを調べた。その結果、魚を煮干しや開き干しにすることで、脂質の酸化が進み、多価不飽和脂肪酸が減少し、さらに、脂質酸化は味や香りなどの風味に対しても大きな影響を及ぼすことが明らかになった。次に、なれずしについて成分分析と官能試験を行い、その成分の風味に及ぼす影響を明らかにするための基礎データを得た。なれずしは、生魚の保存性を高め、独特の風味を付加した食品であるが、カルシウムを中心とした栄養価も期待される食品であることがわかった。すなわち、カルシウム含量が高いうえにリン含量との比が理想範囲にあり、カルシウムの有用な供給源になると判断された。なれずしの脂質を抽出し、酸化の程度を調べたところ、製造過程でほとんど変化のないことが明らかになった。さらに、脂質を薄層クロマトグラフィーで分画し、高速液体クロマトグラフィーで分析した結果、脂肪酸組成は、生さばや塩さばとほぼ同じであったが、脂質クラスごとの脂肪酸組成は、なれずし製造中に変化が起こっており、なれずしの独特の味、香り、風味に大きく関与していると考えられた。なれずしの揮発性成分をSPMEに吸着させ、GCMSにより分析したところ、30-50種類以上の成分が検出された。揮発温度を変化させることで検出される揮発性成分に変化が見られたことから、口中に含む前後でわれわれの感じる風味に変化が起こることも予想された。嗜好テストでは、酸味と塩味が特に好まれなかったが、なれずしを食べた経験のある人ほど嗜好性が高く、生臭みは好まないが、独特の香りを好む傾向がみられた。
KAKENHI-PROJECT-13680148
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硝酸の酸素同位体異常を用いた森林窪素循環の把握
硝酸の窒素酸素同位体比測定を土壌培養実験において行い、特に硝化について検討を行った。硝酸の酸素同位体異常の測定は、N20のN2と02への還元の際に汚染が生じるため、異常値の値が過小評価されてしまう問題が解決できず、残念ながらトレーサーとして用いることが出来なかった。一方、硝酸、亜硝酸については、窒素、酸素の同位体比が自然存在比及びトレーサーレベルで比較的容易に測定することが可能となり、特に亜硝酸については重水で酸素をラベルするごとで、その挙動を詳細に追跡するごとが可能となった。これによって、土壌硝酸の亜硝酸との交換が、トレーサー測定によって明らかになった。このことは、土壌中で活発に硝酸と亜硝酸が生成消費を繰り返していることを示唆しており、硝酸のトレーサー測定結果の解釈が単純でないことを示唆している。現在pHや塩濃度(2M KCIや0.5M K2SO4)がどのようにこの測定結果に影響を及ぼしているか検討中である。本年度は、東京工業大学から東京農工大学への異動があり、硝酸酸素同位体比異常の測定は、現在新たな研究室で立ち上げている状況である。東工大で利用していた機器の一部が農工大では存在しないため、異なる手法での試料処理が必要であり、現在その手法の精度について確認中である。一方で、四重極質量分析計を用いた、微量硝酸のトレーサー測定については、現在予備測定が行える状況まで進展した。硝酸を15Nでラベルした硝酸を脱窒菌によって一酸化二窒素に変換することで、非常に容易に15N含有量を安価な四重極質量分析計で測定できることが判明しただけでなく、180でラベルした硝酸についても、m/z=46をモニターすることで測定が十分可能であることが判明した。これにより現在モデル土壌を用いて硝酸の15Nと180がどのように変化するか予備実験を行っている。しかし、現在国内で15Nと180の両方をラベルした硝酸について供給が滞っていることがネックになっている。そのため、重水と15Nでラベルされた亜硝酸を用いて、ラベルされた亜硝酸を作成することで対応することを検討している。また、硝酸の15N、180データを解析するためのシミュレーションを現在作成中である。シミュレーションに必要なパラメーターとしてもっとも不確実である亜硝酸と水との酸素原子交換速度については、現在室内実験で速度測定を行っており、このパラメーターを用いてシミュレーションをチューニングした上で、森林土壌での亜硝酸の消失についてH19年度初めに予備調査を行う予定である。硝酸の窒素酸素同位体比測定を土壌培養実験において行い、特に硝化について検討を行った。硝酸の酸素同位体異常の測定は、N20のN2と02への還元の際に汚染が生じるため、異常値の値が過小評価されてしまう問題が解決できず、残念ながらトレーサーとして用いることが出来なかった。一方、硝酸、亜硝酸については、窒素、酸素の同位体比が自然存在比及びトレーサーレベルで比較的容易に測定することが可能となり、特に亜硝酸については重水で酸素をラベルするごとで、その挙動を詳細に追跡するごとが可能となった。これによって、土壌硝酸の亜硝酸との交換が、トレーサー測定によって明らかになった。このことは、土壌中で活発に硝酸と亜硝酸が生成消費を繰り返していることを示唆しており、硝酸のトレーサー測定結果の解釈が単純でないことを示唆している。現在pHや塩濃度(2M KCIや0.5M K2SO4)がどのようにこの測定結果に影響を及ぼしているか検討中である。
KAKENHI-PROJECT-18780112
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18780112
石炭の水素化熱分解特性と揮発性成分のその場接触改質
せきたんの急速熱分解による揮発分の収率の増加、水素化熱分解過程における効率的な脱硫とそれによる燃料のクリ-ン化、さらに、揮発分のより有用な生成物への改質という観点から、本研究においては、以下の3項目につき検討し、下記のような実績を得た。(1)石炭の急速熱分解特性粒子落下型急速熱分解装置により、常圧水素気流中、平均昇温速度600K/s、最高温度960°Cの条件下で7種類の石炭につき熱分解を行ない、通常の工業分析により得られる揮発分の1.1倍から2.0倍の揮発分が得られること、熱分解初期における揮発分放出速度定数と内部表面積の増加率は比例関係にあることを見出した。(2)石炭の急速熱分解反応における形態別硫黄の挙動上記熱分解時における各種形態別硫黄の挙動を調べ、その速度過程の詳細を検討した。すなわち、硫黄含量及び形態の異なる上記7種の生誕についての結果より、石炭の急速水素化熱分解処理は特に有機硫黄の脱硫に適していること、また、揮発分放出速度の大きい石炭ほどタ-ル及びガス中への有機硫黄の移行速度が大きく、特に、タ-ルへの移行速度が揮発分放出速度とともに直線的に増加することを明らかにした。3.石炭揮発性成分のその場接触改質大同炭等数種の石炭につき、常圧流通型熱天秤反応装置を用いて、水素気流中、10K/minの低速昇温下600°Cまで昇温したとき生成する低温揮発性成分を、直ちに独自に温度制御した触媒層に導いて“その場"接触改質を行い、BTX等の液状成分の生成状況を調べ、モンモリロナイトを基体とするチタニア架橋粘土層間化合物を用いたときのBTXの収率は触媒/石炭比に対し単調に増加し、触媒量の多い所ではほぼHYゼオライトに匹敵する触媒活性を持つこと、かつ、この触媒上でのコ-ク析出をかなり低く抑え得ることを明らかにした。せきたんの急速熱分解による揮発分の収率の増加、水素化熱分解過程における効率的な脱硫とそれによる燃料のクリ-ン化、さらに、揮発分のより有用な生成物への改質という観点から、本研究においては、以下の3項目につき検討し、下記のような実績を得た。(1)石炭の急速熱分解特性粒子落下型急速熱分解装置により、常圧水素気流中、平均昇温速度600K/s、最高温度960°Cの条件下で7種類の石炭につき熱分解を行ない、通常の工業分析により得られる揮発分の1.1倍から2.0倍の揮発分が得られること、熱分解初期における揮発分放出速度定数と内部表面積の増加率は比例関係にあることを見出した。(2)石炭の急速熱分解反応における形態別硫黄の挙動上記熱分解時における各種形態別硫黄の挙動を調べ、その速度過程の詳細を検討した。すなわち、硫黄含量及び形態の異なる上記7種の生誕についての結果より、石炭の急速水素化熱分解処理は特に有機硫黄の脱硫に適していること、また、揮発分放出速度の大きい石炭ほどタ-ル及びガス中への有機硫黄の移行速度が大きく、特に、タ-ルへの移行速度が揮発分放出速度とともに直線的に増加することを明らかにした。3.石炭揮発性成分のその場接触改質大同炭等数種の石炭につき、常圧流通型熱天秤反応装置を用いて、水素気流中、10K/minの低速昇温下600°Cまで昇温したとき生成する低温揮発性成分を、直ちに独自に温度制御した触媒層に導いて“その場"接触改質を行い、BTX等の液状成分の生成状況を調べ、モンモリロナイトを基体とするチタニア架橋粘土層間化合物を用いたときのBTXの収率は触媒/石炭比に対し単調に増加し、触媒量の多い所ではほぼHYゼオライトに匹敵する触媒活性を持つこと、かつ、この触媒上でのコ-ク析出をかなり低く抑え得ることを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-01603506
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生体を「鋳型」とする生体内機能性分子の鋳型有機合成と展開
報告者はこれまでに、生体内分子相互作用を選択的に制御する方法として、鋳型となるタンパク質に相互作用する分子構造を鋳型から有機合成化学的に写し取る「鋳型誘起合成」を開発し、細胞内シグナル伝達を選択的に阻害するペプチド分子の創製に成功している。本研究課題では、本法を組織上あるいは動物内のタンパク質においても汎用的に利用できる方法とすることを大きな目的としており、昨年度までにアルギニンに対して様々なアミンや共役アルデヒドを連続して作用させることで、天然物であるアゲラジンをアルギニン側鎖上に導入できることを見出した。そこで、今年度は本法において合成したアゲラジン-アルギニン複合体の生物活性について詳細に検討を行ったところ、既知のアゲラジン誘導体では全く報告されていない顕著な神経分化促進活性を持つことが分かった。また、既知のアゲラジン誘導体においては神経分化を抑制するキナーゼDyrk1Aを阻害することが知られているが、この複合体ではこのDyrk1Aに対する阻害活性を全く示さなかった。この結果から、複合体は他のキナーゼを阻害するかもしくはエピジェネティックスを制御している可能性が示唆された。さらに、本合成法を用いてアゲラジン誘導体の迅速なライブラリー合成を行い、それらの神経分化活性についても検討した結果、p-フルオロフェニル基を持つ誘導体において神経分化を抑制することも見出すことができた。これまでの結果から本合成法はタンパク質にも適応可能であると考えられ、今後はアゲラジン骨格をベースとして鋳型誘起合成を実施することで、未解明のターゲットタンパク質に選択的なリガンドの創成や、さらにはそのリガンドを用いることによって神経分化の促進および抑制を制御することができると期待される。また、生体内のアルデヒドを利用することで組織上、動物内において直接的に鋳型分子の創成することができると考えられる。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。報告者はこれまでに、生体内分子相互作用を選択的に制御する方法として、鋳型となるタンパク質に相互作用する分子構造を鋳型から有機合成化学的に写し取る「鋳型誘起合成」を開発し、細胞内シグナル伝達に関わるタンパク質・タンパク質相互作用を選択的に阻害するペプチド分子の創製に成功している。本研究課題では、本法を組織上、あるいは動物内においても汎用的に利用できる方法とすることを大きな目的としているが、まずは生体分子混在系でも利用できる新たな結合形成反応の開発を行った。すなわち、(i)これまでに報告者が見出している共役イミン化合物の新奇な[4+4】反応を活用し、生成するジアザビシクロオクタン誘導体をリン酸基や各種金属の配位構造として利用する方法と、[iD予備実験で見出したアルギニン側鎖のグアニジン基への共役アルデヒドのイミン形成に続く5-endo型共役環化反応を利用する方法の2つを計画した。本年度では特に後者の反応について集中的に検討を行った。すなわち、タンパク質中のアルギニン残基が脂質代謝物である共役アルデヒドにより翻訳後修飾を受け、2-アミノイミダゾール化されることが報告されている。そこで、この反応を用いれば生体内でもアルギニンを標的官能基として、.様々な構造のライブラリー構築を行うことが可能となり、目的とする鋳型誘起合成に用いることができると期待した。種々検討の結果、アルギニン残基に対して、フマルアルデヒド酸メチルを作用させることにより、温和な条件下で2ーアミノイミダゾール誘導体を7090%の収率で得ることができた。さらに、この反応系内に様々なアミンや置換アルデヒドを続けて作用することにより、最初に得られる2ーアミノイミダゾール誘導体に対して様々な官能基変換や構造変換を行うことが可能となった。このように、アルギニン側鎖のグアニジン官能基に対して構造多様性を有するヘテロ環化合物を構築することに成功し、組織上や動物内での鋳型誘起合成に向けた基礎反応を確立することができた。報告者はこれまでに、生体内分子相互作用を選択的に制御する万法として、鋳型となるタンパク質に相互作用する分子構造を鋳型から有機合成化学的に写し取る「鋳型誘起合成」を開発し、細胞内シグナル伝達に関わるタンパク質・タンパク質相互作用を選択的に阻害するペプチド分子の創製に成功している。本研究課題では、本法を組織上、あるいは動物内においても汎用的に利用できる方法とすることを大きな目的としており、昨年度においては生体分子混在系でも利用できる新たな結合形成反応の開発を行った結果、アルギニン側鎖のグアニジンおよびアリールグアニジンに対して、共役アルデヒドを作用させることで温和な条件下で2ーアミノイミダゾール誘導体を合成できることを見出した。また、この反応系内に様々なアミンや置換アルデヒドを続けて作用することにより、最初に得られる2ーアミノイミダゾール誘導体に対して様々な官能基変換や構造変換を達成した。そこで、今年度ではこの2ーアミノイミダゾール合成法を用いてアルギニン側鎖のグアニジン官能基に対して顕著な血管新生阻害活性をもっ天然物であるアゲラジンの導入を試みた。その結果、保護アルギニンに対して、フマルジアルデヒドを作用させ、2一アミノイミダゾール環を構築後、ワンポットにて塩化アンモニウム、ピリジンアルデヒドを作用させたところ天然物構造の導入に成功した。アゲラジンはMMP (Matrix Metalloprotease)の阻害により血管新生阻害を示すことから、今後はMMPを鋳型とする鋳型誘起合成を実施することで、MMPをより効率的に阻害するアゲラジン-タンパク質複合体を見出すことができると期待できる。
KAKENHI-PROJECT-12J01286
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J01286
生体を「鋳型」とする生体内機能性分子の鋳型有機合成と展開
一方で、ジニトロフェニルグアニジンに対して、アルギニンと同様のワンポット反応を行い、最後にチオリシスによって、アリール基を除去することによって天然物であるアゲラジンAの全合成にも成功した。報告者はこれまでに、生体内分子相互作用を選択的に制御する方法として、鋳型となるタンパク質に相互作用する分子構造を鋳型から有機合成化学的に写し取る「鋳型誘起合成」を開発し、細胞内シグナル伝達を選択的に阻害するペプチド分子の創製に成功している。本研究課題では、本法を組織上あるいは動物内のタンパク質においても汎用的に利用できる方法とすることを大きな目的としており、昨年度までにアルギニンに対して様々なアミンや共役アルデヒドを連続して作用させることで、天然物であるアゲラジンをアルギニン側鎖上に導入できることを見出した。そこで、今年度は本法において合成したアゲラジン-アルギニン複合体の生物活性について詳細に検討を行ったところ、既知のアゲラジン誘導体では全く報告されていない顕著な神経分化促進活性を持つことが分かった。また、既知のアゲラジン誘導体においては神経分化を抑制するキナーゼDyrk1Aを阻害することが知られているが、この複合体ではこのDyrk1Aに対する阻害活性を全く示さなかった。この結果から、複合体は他のキナーゼを阻害するかもしくはエピジェネティックスを制御している可能性が示唆された。さらに、本合成法を用いてアゲラジン誘導体の迅速なライブラリー合成を行い、それらの神経分化活性についても検討した結果、p-フルオロフェニル基を持つ誘導体において神経分化を抑制することも見出すことができた。これまでの結果から本合成法はタンパク質にも適応可能であると考えられ、今後はアゲラジン骨格をベースとして鋳型誘起合成を実施することで、未解明のターゲットタンパク質に選択的なリガンドの創成や、さらにはそのリガンドを用いることによって神経分化の促進および抑制を制御することができると期待される。また、生体内のアルデヒドを利用することで組織上、動物内において直接的に鋳型分子の創成することができると考えられる。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。本年度では、申請書に記した研究計画通りに、以前報告者が活用した自己活性化クリック反応に代わる新たな分子構造構築反応を確立した。本法では、臓器上や生体内でのタンパク質に対して様々な構造を持つアミンやアルデヒドを作用させることにより、アルギニン選択的に構造多様性のある分子群を構築することができる。すなわち、鋳型に強く相互作用する分子を生体内でのアルギニン残基上に構築できることが期待できる。以上の成果より、研究はおおむね順調に進展していると考える。本年度では、昨年度見出した新たな結合形成反応である2ーアミノイミダゾール合成法を用いて、アルギニン側鎖上に天然物構造を導入することに成功した。今後は、ペプチドやタンパク質のアルギニン側鎖に導入した天然物構造に鋳型を認識させることで、MMPを鋳型とした鋳型誘起合成が行えることが期待できる。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると考える。今後は、先に報告者が見いだした共役イミン化合物の新奇な[4+4]
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