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オートファジーにおける膜の起源:オルガネラバイオジェネシスの解明
2)Atg14Lを接触点に集合させるSyntaxin17が、Atg14Lと結合していることを示した。Syntaxin17をノックダウンすると、Atg14Lは接触点ではない他の場所で集合しそこで隔離膜は形成されるが、閉じてオートファゴソームにならない。従って接触点では隔離膜閉鎖に必要なものが供給されているものと思われる。以上の成果は、2013年3月にnature誌に掲載された。Atg14Lの点状集合を制御している分子の同定に早くも成功した。しかも、そのSyntaxin17もミトコンドリア・小胞体接触サイトにAtg14Lと共に点状集合しており、オートファゴソームのバイオジェネシスについて、大枠となるモデルを作ることが出来た。このモデルは分野に非常に大きなインパクトをもち、初年度に大金星をあげたといえる。25年度が最終年度であるため、記入しない。これまで誰も成しえなかった3つのオルガネラの同時撮影(シャッターの切り替えを伴わない)を可能にする顕微鏡システムを開発し、オートファゴソームが実際に小胞体-ミトコンドリア接触点で形成されていることを、ライブ映像として捉えることに成功した。オートファジー分野のみならず細胞生物学にパラダイムシフトをもたらす発見である。有力な統合的モデルを構築できたので、今後はその証明とデテールの解明に力を注ぐ。極めてpromisingはプロジェクトとなった。電子線トモグラフィーは、顕微鏡や試料作成装置のセットアップに時間がかかり開始が遅れていたが、漸く稼働し始めデータもとれつつあるので、今後が期待できる。25年度が最終年度であるため、記入しない。残された1年間を有効に使い、詳細な分子機構の解析やゴルジ体の関与などの残された課題の追求を行いたい。
KAKENHI-PROJECT-23247034
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23247034
周産期領域におけるPTH-related peptide発現とその調節機構
1)PTHr-Pの妊娠週数別推移:妊娠週数別に検体の採取を行った。つまり、妊娠各週ごとの母体血ならびに分娩時(満期産例、早産例)の母体血、臍帯血を採取し、遠心分離、-20°C凍結保存した。更に、卵膜は羊膜、絨毛膜、脱落膜に分け、胎盤も細切し、熱処理後ホモジナイズし、その遠心上清を分取、-20°Cに凍結保存した。現在、正常妊娠週例が20例あり、妊娠中毒症例、子宮内発育不全例がそれぞれ5例ずつ集ったところでPTHr-Pアッセイの予定である。2)培養実験:患者の同意下に手術後、子宮筋の一部を実験にした。採取した子宮筋をハサミで細切し、collagenase,DNaseを用いて約1時間37°Cで酵素処理した細胞をフィルターを通して更に分別した。子宮筋細胞を直径10cmのシャーレでDMEM;F12(10%FCS)下に約10日2週間培養し、confluentとした。この子宮筋細胞の初代培養を用いて、コントロール群、エストロゲン添加群(E^210_<-8>)、プロゲステロン添加群(MPA、0.2muM)、E_2+MPA群に分け、培養上清を凍結保存した。更に細胞はGITで変性後、CsC1を用いて超遠心法にてtotal RNAを回収した。回収量は、100180mug total RNAで、Northern analysisには十分と思われた。現在、PTHr-P probe(oligo probe)を準備中であり、今後hybridizationし、PTHr-P mRNAの誘導あるいは抑制の有無を観察する予定である。また、エンドセリン、プロスタグランディン等の添加実験も進行中である1)PTHr-Pの妊娠週数別推移:妊娠週数別に検体の採取を行った。つまり、妊娠各週ごとの母体血ならびに分娩時(満期産例、早産例)の母体血、臍帯血を採取し、遠心分離、-20°C凍結保存した。更に、卵膜は羊膜、絨毛膜、脱落膜に分け、胎盤も細切し、熱処理後ホモジナイズし、その遠心上清を分取、-20°Cに凍結保存した。現在、正常妊娠週例が20例あり、妊娠中毒症例、子宮内発育不全例がそれぞれ5例ずつ集ったところでPTHr-Pアッセイの予定である。2)培養実験:患者の同意下に手術後、子宮筋の一部を実験にした。採取した子宮筋をハサミで細切し、collagenase,DNaseを用いて約1時間37°Cで酵素処理した細胞をフィルターを通して更に分別した。子宮筋細胞を直径10cmのシャーレでDMEM;F12(10%FCS)下に約10日2週間培養し、confluentとした。この子宮筋細胞の初代培養を用いて、コントロール群、エストロゲン添加群(E^210_<-8>)、プロゲステロン添加群(MPA、0.2muM)、E_2+MPA群に分け、培養上清を凍結保存した。更に細胞はGITで変性後、CsC1を用いて超遠心法にてtotal RNAを回収した。回収量は、100180mug total RNAで、Northern analysisには十分と思われた。現在、PTHr-P probe(oligo probe)を準備中であり、今後hybridizationし、PTHr-P mRNAの誘導あるいは抑制の有無を観察する予定である。また、エンドセリン、プロスタグランディン等の添加実験も進行中である
KAKENHI-PROJECT-05771261
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05771261
肥満による心房細動発症機序の解明
内臓脂肪蓄積型肥満による心房細動の発症メカニズムとして心房に対する容量および圧負荷に伴うリモデリング・交感神経の活性化・組織の炎症などの様々な因子の影響が考えられ、本研究は、高脂肪食肥満モデルでは心房細動の誘発率と誘発時間が有意に延長し、心房の有効不応期が有意に短縮され、血清中・内臓脂肪中のアディポサイトカイン、カルシウム調節因子であるp-CAMKII, p-SERCA, p-RYR,が高脂肪食肥満モデル有意に増加しており、高脂肪食肥満モデルは、カルシウムハンドリングの変化が、メタボリックシンドロームでAFを促進する催不整脈性基質の形成に関与している可能性があることを確認した。本研究は、高脂肪食ラットモデルにおける心房細動のメカニズムを検証することを目的とし、肥満モデル動物における心房リモデリングに、NAD+依存性脱アセチル化酵素であるsirtuin-1(SIRT1)が鍵分子として関与し、その発現・活性の低下がエネルギー代謝や炎症、カルシウム調節機構に変化をもたらすことで心房細動の起こりやすい基質が形成されているという仮説を立証し、さらにその知見に基づいた心房細動の新たな予防的治療法の開発を目指して計画した。高脂肪食投与による肥満ラットモデル動物を用いて電気生理検査・心房細動誘発試験を行い、肥満に基づくin vivoでの電気生理学的変化、病理組織評価を行った。また心房における哺乳類サーチュイン関連因子、カルシウム調節因子の遺伝子・タンパク発現を評価した。健常ラットおよび肥満ラットにおける心房単離心筋を用いて、カルシウムイメージングを行った。結果、高脂肪食肥満モデルでは心房細動の誘発率と誘発時間が有意に延長し、電気生理検査では、心房の有効不応期が有意に短縮されていることが分かった。病理学所見では、線維化が高脂肪食肥満モデルで著しく進んでおり、血清中・内臓脂肪中のアディポサイトカイン、カルシウム調節因子であるp-CAMKII, p-SERCA, p-RYR,が高脂肪食肥満モデル有意に増加しており、高脂肪食肥満モデルは、カルシウムハンドリングの変化が、メタボリックシンドロームでAFを促進する催不整脈性基質の形成に関与している可能性があることを確認した。しかし、今回の実験でNAD+依存性脱アセチル化酵素であるsirtuin-1の変化は認めず、さらに、sirtuin-1がカルシウム調節機構との直接関連は確認できなかった。内臓脂肪蓄積型肥満による心房細動の発症メカニズムとして心房に対する容量および圧負荷に伴うリモデリング・交感神経の活性化・組織の炎症などの様々な因子の影響が考えられ、本研究は、高脂肪食肥満モデルでは心房細動の誘発率と誘発時間が有意に延長し、心房の有効不応期が有意に短縮され、血清中・内臓脂肪中のアディポサイトカイン、カルシウム調節因子であるp-CAMKII, p-SERCA, p-RYR,が高脂肪食肥満モデル有意に増加しており、高脂肪食肥満モデルは、カルシウムハンドリングの変化が、メタボリックシンドロームでAFを促進する催不整脈性基質の形成に関与している可能性があることを確認した。本研究は、肥満が心房細動の発症にどのように関わっているのかは不明であることから、肥満モデル動物における心房リモデリングに、NAD+依存性脱アセチル化酵素であるsirtuin-1(SIRT1)が鍵分子として関与し、その発現・活性の低下がエネルギー代謝や炎症、カルシウム調節機構に変化をもたらすことで心房細動の起こりやすい基質が形成されているという仮説を立証し、さらにその知見に基づいた心房細動の新たな予防的治療法の開発を目指して計画した。平成24年度には高脂肪食投与による肥満ラットモデル動物を用いて電気生理検査・心房細動誘発試験を行い、肥満に基づくin vivoでの電気生理学的変化、病理組織評価を行った。また心房における哺乳類サーチュイン関連因子、カルシウム調節因子の遺伝子・タンパク発現を評価した。健常ラットおよび肥満ラットにおける心房単離心筋を用いて、カルシウムイメージングを行った。結果、高脂肪食肥満モデルでは心房細動の誘発率と誘発時間が有意に延長し、電気生理検査では、心房の有効不応期が有意に短縮されていることが分かった。病理学所見では、線維化が高脂肪食肥満モデルで著しく進んでおり、血清中・内臓脂肪中のアディポサイトカイン、カルシウム調節因子であるp-CAMKII, p-SERCA, p-RYR,が高脂肪食肥満モデル有意に増加しており、高脂肪食肥満モデルは、カルシウムハンドリングの変化が、メタボリックシンドロームでAFを促進する催不整脈性基質の形成に関与している可能性があることを確認した。しかし、今回の実験でNAD+依存性脱アセチル化酵素であるsirtuin-1の変化は認めず、さらに、sirtuin-1がカルシウム調節機構との直接関連は確認できなかった。これまでの結果から、高脂肪食肥満モデルは、心房細動の起こりやすい基質が形成されていて、その原因としては、心房の有効不応期が有意に短縮され、関連のカルシウム調節因子が高脂肪食肥満モデル有意に増加しており、肥満は、メタボリックシンドロームなどの原因でAFの重要な危険院であることを、実験的に証明した。しかし、当初予測していたNAD+依存性脱アセチル化酵素であるsirtuin-1とAFとの関連は今回の実験で認められなかった。今後、オメガ3脂肪酸とエネルギー代謝や炎症、カルシウム調節機構との関連をし調べ、さらに、オメガ3脂肪酸であるDHA, EPAの投与し、効果を調べる。
KAKENHI-PROJECT-24790736
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24790736
肥満による心房細動発症機序の解明
平成25年度は、引き続き高脂肪食動物モデルにオメガ3脂肪酸を与えて、心房細動につながる炎症、または、カルシウム調整異常などの軽減効果を解析する予定である。モデル動物としてラットとマウス2種類を用いる。通常食群、高脂肪食群、高脂肪食群+DHA群、高脂肪食群+EPA群,高脂肪食群+DHA+ EPA群の4群に分ける。またob/obマウス(6週齢、オス)も同様に、野生型マウス(対照群)、ob/obマウス無治療群、ob/obマウス+resveratorol群に分ける。実験開始前と12週後に、体重測定および小動物用CTにて内臓脂肪量・心外膜周囲脂肪量を評価する。また心エコーにて左心機能や左房径を評価する。経静脈的に電極カテーテルを心房に挿入し、電気生理検査を行う。心房細動誘発率、心房細動持続時間、心房有効不応期などをin vivoで測定する。テレメトリー心電図を装着し、覚醒下での自然発生的な期外収縮や心房細動の発生を調べる。また、血清中・内臓脂肪中のアディポサイトカイン(adiponectin、leptin、MCP(monocyte chemotactic protein)-1など)をELISA法で測定する。オメガ3関連因子、およびカルシウム調節関連分子(L型カルシウムチャネル、心筋リアノジン受容体、ホスホランバンなど)の遺伝子・タンパク発現・およびリン酸化タンパクの発現を、real-time RT-PCR法・Western blottingにより解析する。続いて、それぞれから心房筋を単離し、蛍光カルシウム指示薬Fluo-3を添加し、共焦点レーザー顕微鏡にてカルシウムスパークを測定する。初代心房培養細胞(またはHL-1心房筋細胞)に脂質負荷を行い、脂質関連ペプチドを添加した際の細胞内カルシウム動態について、同様に測定する。平成24年度に予定していた実体顕微鏡は他の研究室の好意で譲ってもらい、テレメトリー心電図システムは実験の内容と進行が一部変更になってしまい、購入を平成25年度に見送りしたため、予定していた約80万は平成25年度に繰り越しとした。平成25年度は次年度使用額と平成25年度申請額(直接経費)約230万の使用を予定している。平成25年度は心電図解析システム150万、遺伝子・タンパク解析試薬、電気生理用器具・試薬(電極カテ・パッチ試薬)、チューブなどの実験用品、実験動物、実験動物の飼育費など、消耗品として80万を計上する。
KAKENHI-PROJECT-24790736
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24790736
プロトン輸送性ピロホスファターゼの作動機構の結晶学的解明
プロトン輸送性ピロホスファターゼは、ピロ燐酸を分解し、プロトンを輸送する膜タンパク質である。植物に広く分布し、真正細菌や古細菌の一部、マラリア原虫等の原生動物にも存在する。一方、ヒトを含む高等動物には存在しない。本研究では、植物の液胞膜に由来するタンパク質を対象として、X線結晶解析による構造解析を行なった。その結果、ピロ燐酸のアナログ物質の中で最も強い阻害活性をもつ化合物を結合した状態の構造決定に成功した。プロトン輸送性ピロホスファターゼは、ピロ燐酸を分解し、プロトンを輸送する膜タンパク質である。植物に広く分布し、真正細菌や古細菌の一部、マラリア原虫等の原生動物にも存在する。一方、ヒトを含む高等動物には存在しない。本研究では、植物の液胞膜に由来するタンパク質を対象として、X線結晶解析による構造解析を行なった。その結果、ピロ燐酸のアナログ物質の中で最も強い阻害活性をもつ化合物を結合した状態の構造決定に成功した。プロトン輸送性ピロホスファターゼ(H^+-PPase)はピロリン酸(PP_i)を分解し、H^+を能動輸送する膜蛋白質である。H^+-PPaseは植物、藻類、真正細菌や古細菌の一部、マラリア原虫などの寄生性原生動物に存在する。H^+-PPaseは高等植物の液胞膜において、液胞型ATPase(V-ATPase)と共に、液胞膜の二次能動輸送体にH^+駆動力を供給し、液胞を中心とした植物の物質輸送と蓄積を支える重要な一次能動輸送体である。その構造は分子量約8万の単一ポリペプチドがホモ2量体を形成し、それぞれのサブユニットが16本の膜貫通ヘリックスを含むと考えられる。アミノ酸配列からは、H^+-PPaseとこれまでに立体構造が明らかにされた蛋白質との間に構造類似性はほとんど見られない。可溶性無機ピロホスファターゼで保存された基質結合モチーフの類似配列がわずかに見いだされるのみである。本研究は、H^+-PPaseの作動機構の理解を目指し、X線結晶解析によって原子構造を明らかにすることを目的としている。平成22年度において、高等植物のH^+-PPaseの基質アナログ存在下における構造決定に成功した。その結果、新規構造であり、16本のヘリックスを含む単量体がホモ二量体を形成していることが確認された。また、膜を貫通するヘリックスは当初予想していたよりも遙かに長く、細胞質側まで伸び、基質アナログを結合していた。現在では基質アナログを加えていないものについても結晶が得られている。今後は基質アナログ存在下以外の状態での構造決定を目指す。プロトン輸送性ピロホスファターゼ(H+-PPase)は、ピロ燐酸(PP-1)を分解し、H+を能動輸送する膜蛋白質である。植物や藻類、真正細菌や古細菌の一部、マラリア原虫などの寄生性原生動物に存在する。高等植物におけるH+-PPaseは主に液胞膜に局在し、液胞型ATPase(V-ATPase)と共に液胞内腔の酸性化を行い、液胞膜の二次能動輸送体にH+駆動力を供給する。そのため、液胞における物質輸送と蓄積機能を支える重要な一次能動輸送体と言える。また最近では、細胞代謝の副産物として生じるPPi分解においても主要な役割を果たしていることが明らかにされている。その分子構造は分子量約8万の単一ポリペプチドがホモ2量体を形成し、単量体は16本の膜貫通ヘリックスを含む。本研究はH+-PPaseの作動機構の理解を目指し、X線結晶解析による原子構造の決定を目的とした。平成22年度では高等植物に由来するH+-PPaseの基質アナログ存在下における構造決定に成功した。膜貫通ヘリックスは当初予想していたよりも遙かに長く、細胞質側まで伸び、基質アナログを結合していた。一方で、作動機構を理解するためには異なる生理状態における構造比較も必要となる。平成23年度はこれまでとは異なる基質アナログを結合した状態、あるいは基質アナログを加えない状態での構造決定を目指した。結晶化条件を検討したところ、それぞれについてX線結晶解析に適用可能な結晶を得ることができた。異なる基質アナログを結合した状態の構造比較からは、プロトン輸送を行うために必要な構造変化の一端が垣間見えた。今後は、SPring-8における測定を通じて基質アナログを加えない状態の結晶化条件を最適化し、高分解能化を目指す必要がある。
KAKENHI-PROJECT-22770098
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22770098
肺がんとエストロゲン-癌局所でのホルモン産生と作用機序の解明-
ヒト肺癌でのE2レベルは腫瘍部位で非腫瘍部位よりも高い濃度で認められ、種々の方法で検討した結果腫瘍細胞でアロマターゼの発現が認められた。次に肺癌培養細胞の検討で肺癌組織内でのE2濃度で有意に細胞増殖を刺激され、種々の受容体拮抗剤でその増殖は抑制された。肺癌における腫瘍内アロマターゼは腫瘍細胞で発現しているERβと有意の相関を示し、特に腺癌ではアロマターゼ及びSTSを中心とした合成酵素により腫瘍局所でエストロゲンが合成され腫瘍細胞核のERβを介して作用している事が考えられた。ヒト肺癌でのE2レベルは腫瘍部位で非腫瘍部位よりも高い濃度で認められ、種々の方法で検討した結果腫瘍細胞でアロマターゼの発現が認められた。次に肺癌培養細胞の検討で肺癌組織内でのE2濃度で有意に細胞増殖を刺激され、種々の受容体拮抗剤でその増殖は抑制された。肺癌における腫瘍内アロマターゼは腫瘍細胞で発現しているERβと有意の相関を示し、特に腺癌ではアロマターゼ及びSTSを中心とした合成酵素により腫瘍局所でエストロゲンが合成され腫瘍細胞核のERβを介して作用している事が考えられた。1.肺癌腫瘍組織内エストロゲン濃度の検索:外科手術的に摘出された肺癌組織60例における腫瘍内estradiol(E2)濃度を腫瘍部、非腫瘍部総計120検体で液体クロマトグラフィー・タンデム型質量分析(LC-MS/MS)法を用いて測定した。E2レベルは男女を問わず腫瘍部位で非腫瘍部よりも有意に高い結果を示し、腫瘍部,非腫瘍部いずれも男性が女性より高値であった.実際の腫瘍組織内E2濃度は乳癌組織の1/10程度であるが,腫瘍部/非腫瘍部のEの比率は約2倍程度と乳癌組織とほぼ同様であった.E2濃度と肺癌細胞でのエストロゲン受容体(ER)α及びβの発現動態の間に有意の相関関係は認められなかったが、ERα陽性,ERβ陽性いずれの肺癌においても,組織内E2濃度は最大腫瘍径,Ki-67 Llと正の相関を認めた.この関係はER陰性のものでは認めなかった.以上の結果より乳腺組織と比較して合成されるホルモンの絶対量は少ないものの,ヒト肺癌組織でもE2の局所合成が行われている可能性が示唆された.2。エストロゲンの肺癌細胞の細胞増殖への影響:ヒト肺癌組織内で合成されるエストロゲンが実際の肺癌細胞の増殖動態にどのような影響を与えているのかを肺癌の培養細胞を用いて検討した。ERα,ERβをtransfectionさせた細胞を用いた検討では肺癌組織内におけるE2濃度に相当するE2 10100pMにおいて,有意に細胞増殖を刺激し、エストロゲン受容体の特異的拮抗剤であるlCl化合物により抑制された.肺癌組織におけるERα,βの発現は、そのいずれを介してもE2による細胞増殖促進に関与している可能性がつよく示唆された.更に10100pMのE2による細胞増殖促進は1μMのTamoxifen,およびRaloxifenにより抑制され、SERMs(selective estrogen receptor modulators)の肺癌治療への応用も示唆される結果となった。1、肺癌組織におけるエストロゲン合成酵素aromataseの局在性の検討2、肺癌培養細胞株におけるaromatase依存性増殖の検討昨年までの検討でaromataseの発現が認められたLK87を本検討では使用した。LK87にtestosterone単独(1pMから1nM:公比10)、testosteron十5mM flutamide(androgen受容体阻害剤)、testosteron+5mMflutamide+10nM letrozole(aromatase阻害剤)をそれぞれ添加し、72時間後に(3)と同様に細胞増殖を評価した。Testosteroneに対する反応性では、101000pM Testosteroneの添加によって溶媒対照と比較して有意な細胞増殖の抑制が確認された。LK87においてはandrogen受容体が発現(定量的PCR)していることを確認しており、この増殖抑制効果はandrogenとしての直接作用と考えられた。また、testosteron十flutamide添加によって、1pM testosteroh添加からLK87の細胞増殖が認められた。さらにこのandrogen受容体阻害状況下でのtestosteroneによる細胞増殖作用は、aromatase阻害剤(letrozole)によって抑制された今まで行なってきた肺癌においてのエストロゲンを含む性ステロイドホルモン作用の総合的な解析の一環として今年度は硫酸化型estrogenを脱硫酸化しestrogenに転換するestrogen合成酵素の1つであるSteroid sulfatase(STS)及び逆にestrogenの硫酸抱合を触媒することで、不活性型estrogenに変換しているestrogen sulfotransferase(EST)に注目して今年度は解析を進めた。ヒト非小細胞肺癌症例59例におけるSTS/ESTの免疫組織化学法による解析の結果、肺癌細胞のみに陽性所見が得られ、陽性率35.6%だった。非腫瘍部では明らかなSTS発現の局在は確認できなかった。次に定量PCR法による発現確認を行ったが、腫瘍部と非腫瘍部とでSTSの発現レベルは同程度であり)、免疫組織化学法との結果と異なっていた。この発現がみられたSTS promoterのスプライシング変異を解析したところ、乳癌特異的に発現しており、酵素活性が高いと考えられている1a promoterの発現が腫瘍部のみで確認できた。一方非、腫瘍部では主に1a promoterが発現していた。
KAKENHI-PROJECT-18390109
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18390109
肺がんとエストロゲン-癌局所でのホルモン産生と作用機序の解明-
一方、ESTの肺癌組織における発現解析では、免疫組織化学では4例のみ発現が認められ、定量的PCRの結果においてもほとんどの症例で検出できなかった。非小細胞肺癌のSTS発現における間質細胞共存下の影響を更に検討したが、非小細胞肺癌細胞LK87と肺線維芽細胞LK002Sとを共培養した結果、単独培養に比べてLK87の細胞数が増加していた。さらにLK87のSTSmRNAが増加していた事も認めた。
KAKENHI-PROJECT-18390109
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18390109
ディジタルホログラム技術を融合した大容量ホログラフィックメモリシステムの研究
本研究の目的は,ディジタルホログラム技術を導入したホログラフィックメモリシステムを構築し,光波の振幅・位相の両方を活用することにより,大容量化を達成することである.本年度の研究では,昨年度に考案した,機械的な走査機構が不要な多層記録,ナイキストサイズの限界を超えて微小領域にホログラムを記録する超解像記録,2つの高密度記録技術それぞれに,振幅・位相多値記録技術の導入による大容量化を図り,それらの有用性を数値解析・実験により検証した.その結果,多層記録では,振幅2値・位相4値の多値情報を少なくとも3層に記録・再生可能であることを実証した.また,超解像記録では,振幅2値・位相2値の多値情報をナイキストサイズ以下の微小領域に記録・再生可能であることを実証した.以上の結果から,大容量化を達成するためには,位相情報の積極的な活用が有効であるということを示したとともに,本研究で提案するディジタルホログラム技術を導入したホログラフィックメモリシステムを用いれば,外乱に堅牢で小型・簡易な光学系により,振幅・位相情報の記録・再生が可能であることを実証した.さらなる大容量化の進展を目的とし,光波の振幅・位相に加えて,光波の偏光を活用することを検討した.位相ホログラムを用いた光波の振幅・位相・偏光の制御技術を考案し,偏光ホログラフィの理論に基づいて多次元情報の記録・再生が可能であることを実験的に実証した.さらに,偏光分布を空間的に制御することにより,ピクセル間干渉のノイズ成分の除去が可能という知見が得られた.28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。大容量ホログラフィックメモリの開発を目的とし,ディジタルホログラム技術を導入した光学系の構築,新規のデータ記録手法を実現してきた.具体的には,(1)光波の振幅・位相を情報とする多値記録,(2)機械的動作が不要な多層記録,(3)極小領域にデータを記録する超解像記録,の3つを実験により実証した.以下に(1)から(3)の項目毎に研究成果の概要を示す.(1)光波の振幅・位相を情報とする多値記録:ディジタルホログラフィの光生成・検出技術をホログラフィックメモリに導入することにより,従来システムと同等の大きさの光学系を用いて,光波の振幅・位相をデータとして扱うことに成功した.さらに,本システムを用いて,振幅2値,位相4値の多値信号を誤りなく記録・再生することに成功した.(2)機械的動作が不要な多層記録:ディジタルホログラムの3次元の光波生成技術を応用することにより,空間光変調器の電子的な制御のみで多層記録が実現できること実験により実証した.さらに,本手法の層選択性は,一般的な多層記録法と等価であることをシミュレーションにより明らかにし,レンズの開口数を大きくすることにより,データ層の数を向上可能であることを示した.(3)極小領域にデータを記録する超解像記録:従来のホログラフィックメモリでは,記録面積の縮小に限界がある.本研究では,この限界を打破するために,開口により除去されたデータの情報を復元する超解像ホログラフィックメモリを提案した.原理確認実験により,本手法を用いることで高密度なデータ記録が可能であることを実証した.以上のように,本研究ではディジタルホログラフィ技術を応用することにより,従来のホログラフィックメモリを超える高密度記録および記録性能の向上が可能であることを明らかにしてきた.今後も光の3次元情報を活用した記録手法・信号処理技術の開発が期待される.当初の予定通り,ディジタルホログラム技術を導入したホログラフィックメモリシステムを構築することに成功し,多値記録,多層記録,超解像記録それぞれの有用性を実験により実証した.これらの成果をとりまとめ学術論文および国際学会にて発表している.さらに,中国・アイルランドでの滞在研究を通して,ディジタルホログラフィを用いた偏光分布の制御技術,位相計測技術に関する研究成果を出すことができ,これらをホログラフィックメモリに応用することを検証している.以上から,現在までの到達度は,当初の研究以上に進展していると考えている.本研究の目的は,ディジタルホログラム技術を導入したホログラフィックメモリシステムを構築し,光波の振幅・位相の両方を活用することにより,大容量化を達成することである.本年度の研究では,昨年度に考案した,機械的な走査機構が不要な多層記録,ナイキストサイズの限界を超えて微小領域にホログラムを記録する超解像記録,2つの高密度記録技術それぞれに,振幅・位相多値記録技術の導入による大容量化を図り,それらの有用性を数値解析・実験により検証した.その結果,多層記録では,振幅2値・位相4値の多値情報を少なくとも3層に記録・再生可能であることを実証した.また,超解像記録では,振幅2値・位相2値の多値情報をナイキストサイズ以下の微小領域に記録・再生可能であることを実証した.以上の結果から,大容量化を達成するためには,位相情報の積極的な活用が有効であるということを示したとともに,本研究で提案するディジタルホログラム技術を導入したホログラフィックメモリシステムを用いれば,外乱に堅牢で小型・簡易な光学系により,振幅・位相情報の記録・再生が可能であることを実証した.さらなる大容量化の進展を目的とし,光波の振幅・位相に加えて,光波の偏光を活用することを検討した.
KAKENHI-PROJECT-15J11996
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J11996
ディジタルホログラム技術を融合した大容量ホログラフィックメモリシステムの研究
位相ホログラムを用いた光波の振幅・位相・偏光の制御技術を考案し,偏光ホログラフィの理論に基づいて多次元情報の記録・再生が可能であることを実験的に実証した.さらに,偏光分布を空間的に制御することにより,ピクセル間干渉のノイズ成分の除去が可能という知見が得られた.今後は,多値記録,多層記録,超解像記録それぞれの技術を用いた場合の記録容量向上率を精査し,大容量ホログラフィックメモリの実現に大きく寄与する記録手法を明らかにする.さらに,上述の3つの技術を統合することを検討し,大容量化を図る.また,これまで多値記録に関する研究では光波の振幅・位相のみを情報として扱ってきたが,今後の研究では偏光ホログラフィを導入し,光波の振幅・位相・偏光を情報とする超多値記録技術の研究開発に取り組む.28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15J11996
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J11996
雇用の多様化・流動化と市場における公正確保
本研究「雇用の多様化・流動化と市場における公正の確保-新たな法規範と紛争処理システムの模索-」は、平成1112年度の2年間にわたって、今後さらに進展が予想される雇用の多様化・流動化など雇用システムの変化に対応して、雇用システムをささえる雇用保障に関する法規範、および労働条件の調整問題を規律する法規範について比較法的視点から考察を加えるとともに、その法規範の適用場面である紛争処理システム、とりわけ雇用の多様化・流動化によって重要性を増す労使紛争処理システムについて検討し、21世紀のあるべき雇用システム構築に向けて、いくつかの具体的な提言を行ったものである。平成11年度は、研究対象国も幅広に上記課題について検討を行い、12年度は、その中でより具体的な示唆の得られる国について検討を深めた。最終的には次のような内容の研究成果をまとめた。「はじめに」で本研究の全体像を素描した後、第一章でアメリカ、ドイツ、日本の雇用システムの現状と変化について分析し、それぞれの雇用システムが外部労働市場機能をどのように取り入れ、あるいは、コンロトールしているのかを明らかにした。第二章では、雇用システムに内的柔軟性をもたらす労働条件の調整・変更問題について、労働市場に委ねた処理と、紛争処理機関を利用した処理があり得、それらをどのように雇用システムに取り入れるかという課題を提示している。そして、解雇の規制に対応して、効率的に機能する紛争処理機関の存在の重要性を指摘した。第三章では、雇用の多様化・流動化によって重要性を増す労使紛争処理システムについて、裁判所や行政機関による紛争処理の現状を概観し、裁判所が今後果たすべき役割を分析し、さらに、司法改革制度の動きにも対応して、労働事件について労使参与委員の制度を導入すること等を提言した。第四章では、こうした紛争処理システム再編の問題を個別企業における紛争処理機能の低下と企業外における紛争処理の必要の増大という視点から、比較法的議論に載せるべく英文で敷衍した。「さいごに」は、全体のまとめである。本研究「雇用の多様化・流動化と市場における公正の確保-新たな法規範と紛争処理システムの模索-」は、平成1112年度の2年間にわたって、今後さらに進展が予想される雇用の多様化・流動化など雇用システムの変化に対応して、雇用システムをささえる雇用保障に関する法規範、および労働条件の調整問題を規律する法規範について比較法的視点から考察を加えるとともに、その法規範の適用場面である紛争処理システム、とりわけ雇用の多様化・流動化によって重要性を増す労使紛争処理システムについて検討し、21世紀のあるべき雇用システム構築に向けて、いくつかの具体的な提言を行ったものである。平成11年度は、研究対象国も幅広に上記課題について検討を行い、12年度は、その中でより具体的な示唆の得られる国について検討を深めた。最終的には次のような内容の研究成果をまとめた。「はじめに」で本研究の全体像を素描した後、第一章でアメリカ、ドイツ、日本の雇用システムの現状と変化について分析し、それぞれの雇用システムが外部労働市場機能をどのように取り入れ、あるいは、コンロトールしているのかを明らかにした。第二章では、雇用システムに内的柔軟性をもたらす労働条件の調整・変更問題について、労働市場に委ねた処理と、紛争処理機関を利用した処理があり得、それらをどのように雇用システムに取り入れるかという課題を提示している。そして、解雇の規制に対応して、効率的に機能する紛争処理機関の存在の重要性を指摘した。第三章では、雇用の多様化・流動化によって重要性を増す労使紛争処理システムについて、裁判所や行政機関による紛争処理の現状を概観し、裁判所が今後果たすべき役割を分析し、さらに、司法改革制度の動きにも対応して、労働事件について労使参与委員の制度を導入すること等を提言した。第四章では、こうした紛争処理システム再編の問題を個別企業における紛争処理機能の低下と企業外における紛争処理の必要の増大という視点から、比較法的議論に載せるべく英文で敷衍した。「さいごに」は、全体のまとめである。本研究「雇用の多様化・流動化と市場における公正の確保ー新たな法規範と紛争処理システムの模索ー」は、今後さらに進展が予想される雇用の多様化・流動化に伴って生ずる様々な課題に対して、新たな法規範の定立と新たな紛争処理システムの構築という二つの視角から取り組むものである。本年度は、「雇用の多様化・流動化」に関する比較法的検討と裁判例分析を通じた課題の洗い出しと我が国における検討課題の整理を、また、「市場における公正の確保」に関しては、個別雇用関係に関する紛争について労働市場に委ねた処理、外部の紛争処理機関による処理、そして企業内の紛争処理機関による処理の文献研究を中心に行った。(1)まず、雇用の多様化・流動化に関しては、先進諸国とくに、アメリカ、ドイツ、フランス、オランダなどにおける規制緩和、とりわけ派遣労働や有期契約についての動向について、文献研究および来日研究者からのインタビュー等を行った。また、雇用流動化については、ドイツの解雇法制の最新展開(96年改正と98年改正)やアメリカにおける随意的雇用の判例法による制限法理の展開等について、分析を行った(主として荒木が担当)。(2)他方、市場における公正の確保に関しては、個別紛争処理システムに関して、企業外紛争初志制度として、ドイツの労働裁判所やイギリスの労働審判所、助言斡旋仲裁局などの雇用関係事件を専属的に処理する特別裁判所や行政機関などについて文献研究を行い、また、企業内紛争処理制度については、ドイツの事業所委員会やフランスの企業委員会、従業員代表などについて文献研究を行った。同時に日本における労働委員会の制度変更による個別紛争処理などの具体的提案についても検討を行った(主として菅野が担当)。
KAKENHI-PROJECT-11620056
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雇用の多様化・流動化と市場における公正確保
本研究「雇用の多様化・流動化と市場における公正の確保-新たな法規範と紛争処理システムの模索-」は、今後さらに進展が予想される雇用の多様化・流動化など雇用システムの変化に対応して、雇用システムをささえる雇用保障に関する法規範、および労働条件の調整問題を規律する法規範について比較法的視点から考察を加えるとともに、その法規範の適用場面である紛争処理システム、とりわけ雇用の多様化・流動化によって重要性を増す労使紛争処理システムについて検討し、21世紀のあるべき雇用システム構築に向けて、いくつかの具体的な提言を行うものである。具体的には、「はじめに」で本研究の全体像を素描した後、第一章でアメリカ、ドイツ、日本の雇用システムの現状と変化について分析し、それぞれの雇用システムが外部労働市場機能をどのように取り入れ、あるいは、コンロトールしているのかを明らかにする。第二章では、雇用システムに内的柔軟性をもたらす労働条件の調整・変更問題について、労働市場に委ねた処理と、紛争処理機関を利用した処理があり得、それらをどのように雇用システムに取り入れるかという課題を提示する。そして、解雇の規制に対応して、効率的に機能する紛争処理機関の存在の重要性を指摘する。第三章では、雇用の多様化・流動化によって重要性を増す労使紛争処理システムについて、裁判所や行政機関による紛争処理の現状を概観し、裁判所が今後果たすべき役割を分析し、さらに、司法改革制度の動きにも対応して、労働事件について労使参与委員の制度を導入すること等を提言する。第四章では、こうした紛争処理システム再編の問題を個別企業における紛争処理機能の低下と企業外における紛争処理の必要の増大という視点から、比較法的議論に載せるべく英文で敷桁する。「さいごに」で、全体のまとめを行う。
KAKENHI-PROJECT-11620056
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地域包括ケアシステムが遠距離介護に与える影響についての研究
2018年度には、調査地域である山口市における地域包括ケアシステムの構築過程および実施状況を明らかにするための聞き取り調査をする予定にしていた。当初の計画通り、基幹型の地域包括支援センターのケアマネジャーと市内で入院施設を有する二つの大きな病院の地域連携部門の専門職ならびに、長年にわたり地域包括ケアシステムの構築に携わってきた病院の事務局長に対する聞き取り調査を実施した。それにより、1調査地域における地域包括ケアシステムの構築の経緯と、2現時点での地域包括ケア側の対応として、遠距離介護者に対する特別の対応は備えていないという現状と、3実際の高齢者ケアの場面において専門職が認識する、遠距離介護の実践者(別居子)の特徴や、いくつかの困難性を抽出することができた。また、聞き取り調査を進める中で、地域包括ケアシステムの理念(地域における高齢者の生活の一体的支援)に近い運用を地域でおこなう方策として、現時点では、あくまでも専門職の個人的スキルに頼っているという状況が見えてきた。今後は、まず、実際の遠距離介護者への聞き取り調査に移行し、遠距離介護者側から見た地域包括ケアシステムや専門職への接合状況を分析する。そのとき、利用されている地域内の福祉資源の把握をおこない、それらの資源がどのようにつながっているのかについては、ネットワーク分析を試みる。そのための方法論については、2018年度までに文献研究を進めているので、2019年度にはネットワーク分析をテキストマイニングを利用しておこなうことを検討している。当初、計画していた通りに調査と研究が進んでいるため。12018年度に聞き取り調査をした内容を論文にまとめる。2ネットワーク分析についての準備を進める。3新たに、遠距離介護の実践者への聞き取り調査をおこない、地域包括ケアシステムやその他の地域資源への接合(情報収集や利用開始)状況について、分析をおこなう。2018年度には、調査地域である山口市における地域包括ケアシステムの構築過程および実施状況を明らかにするための聞き取り調査をする予定にしていた。当初の計画通り、基幹型の地域包括支援センターのケアマネジャーと市内で入院施設を有する二つの大きな病院の地域連携部門の専門職ならびに、長年にわたり地域包括ケアシステムの構築に携わってきた病院の事務局長に対する聞き取り調査を実施した。それにより、1調査地域における地域包括ケアシステムの構築の経緯と、2現時点での地域包括ケア側の対応として、遠距離介護者に対する特別の対応は備えていないという現状と、3実際の高齢者ケアの場面において専門職が認識する、遠距離介護の実践者(別居子)の特徴や、いくつかの困難性を抽出することができた。また、聞き取り調査を進める中で、地域包括ケアシステムの理念(地域における高齢者の生活の一体的支援)に近い運用を地域でおこなう方策として、現時点では、あくまでも専門職の個人的スキルに頼っているという状況が見えてきた。今後は、まず、実際の遠距離介護者への聞き取り調査に移行し、遠距離介護者側から見た地域包括ケアシステムや専門職への接合状況を分析する。そのとき、利用されている地域内の福祉資源の把握をおこない、それらの資源がどのようにつながっているのかについては、ネットワーク分析を試みる。そのための方法論については、2018年度までに文献研究を進めているので、2019年度にはネットワーク分析をテキストマイニングを利用しておこなうことを検討している。当初、計画していた通りに調査と研究が進んでいるため。12018年度に聞き取り調査をした内容を論文にまとめる。2ネットワーク分析についての準備を進める。3新たに、遠距離介護の実践者への聞き取り調査をおこない、地域包括ケアシステムやその他の地域資源への接合(情報収集や利用開始)状況について、分析をおこなう。
KAKENHI-PROJECT-18K02062
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K02062
学士課程卒業者の高齢者看護実践能力育成に関する研究
本研究の目的は、昨年度までの研究で作成した「高齢者看護の実践能力を高める教育支援方法」を療養型医療施設および介護老人保健施設に適用できるように検討することである。療養型医療施設1施設、介護老人保健施設1施設において、看護部門の教育担当者と検討した。検討内容を類似性に基づき分類した結果、教育支援方法の適用には、まずは教育支援システムの構築に向けた課題を整理する必要があることが明らかになった。療養型医療施設における教育支援システムの構築に向けた課題として、新任期教育、継続教育、就業支援の3つの点から検討が必要であることが明らかになった。具体的には、新任期教育として【看護基礎教育課程で修得した看護実践能力を活かす教育支援プログラムの整備】、継続教育として【療養型医療施設における継続教育プログラム、教育支援体制、充実・強化が必要なケアの検討】【職員間の連携・協働を促進する組織づくり】、就業支援として【適性、志向性をふまえた看護学生への就業支援】【社会の人々に対する療養型医療施設の就職に関する適切な知識の普及】が挙げられた。介護老人保健施設における教育支援システムの構築に向けた課題として、新任期の教育支援、現在の継続教育に関する課題が挙げられた。新任期の教育支援として【プリセプターの教育を含む新任期の看護師の教育支援プログラムの作成】、現在の継続教育に関する課題として【現行の看護職・介護職の継続教育プログラム、教育目標の検討】【クリニカルラダーにおける評価(内容・方法)の妥当性の検討】【看護研究への取り組みの強化】【職員全員で教育に取り組む組織づくり】が挙げられた。以上より、新任期の教育支援方法の適用には、上記の課題に取り組むこと、特に継続教育上の課題を同時に検討する必要性があることが示された。本研究の目的は、学士課程卒業者が高齢者看護の実践能力を高めながら発展するにあたり、ジェネラリストとして修得した看護実践能力を基盤に、自ら研鑚しその能力を高めていくために特に支援が必要とされる新任期(13年)の教育支援方法(時期・内容・方法)を明らかにすることである。具体的には、社会の人々が看護実践能力を修得した看護職者による援助を求めている看護活動の場の一つとして高齢者ケア施設における教育支援を素材とする。一般病院の看護経験を重視し卒業直後の就業が少なかった従来の就業スタイルを見直し、学士課程卒業者の高齢者看護の実践能力を明らかにした上で、その能力を高めるために、特に支援が必要とされる新任期の教育支援方法(時期・内容・方法)を考案する。高齢者看護の実践能力については、これまで明らかにされていなかったことから、平成19年度は、研究の第一段階として、高齢者看護の実践能力を構成する項目作成を試みた。国内外の文献を検討した結果、関連する3つの文献を基に、高齢者看護の実践能力を示す122の小項目が導かれた。小項目を類似した内容ごとに、分類・整理し、31の中項目と11の大項目が作成された。学士課程卒業直後に高齢者ケア施設に就業した看護師6名に高齢者看護の実践能力の31の中項目に沿って個別インタビューを行い、その修得内容、修得プロセス、受けた教育支援を明らかにした。平成20年度は、この結果を基に、新任期の教育支援方法(時期・内容・方法)を考案する予定である。本研究の目的は、学士課程卒業者の高齢者看護の実践能力を明らかにした上で、新任期においてその能力を高める教育支援方法を検討することである。平成19年度は学士課程卒業者がジェネラリストとして修得した看護実践能力を基盤に自ら研鑽し、高齢者看護の実践能力を高めるための教育支援方法を明らかにするために、まずは内外の文献を検討し、高齢者看護の実践能力の項目作成(大項目12、中項目31、小項目122)を試みた。平成20年度は、平成19年度に作成した高齢者看護の実践能力を構成する項目のうち中項目について、卒業直後に高齢者ケア施設に就業した新任期の看護師6名の高齢者看護の実践能力の修得状況を調査した。また、高齢者ケア施設の教育責任者3名の教育支援の状況に付いても調査し、これらを合わせて高齢者看護の実践能力を高めるための教育支援方法の試案を作成した。次に、作成した教育支援方法の試案を高齢者ケア施設の教育責任者2名との意見交換や新任期の看護師1名の実践の状況を基に検討・修正し、教育責任者の確認を経て、教育支援方法を作成した。作成した教育支援方法は、《教育支援の方針》《教育支援の方法》《教育支援方法の使い方》、各大項目ごとに示した〈中項目〉〈各年次別の到達レベル〉〈教育支援の内容・方法〉〈1年の看護師の課題〉で構成された。高齢者看護の実践能力の項目は、教育支援方法に効果的に用いる観点から再検討し、大項目は「認知症の高齢者の看護」と「家族への援助」を加えて10に、中項目32、小項目121に修正した。平成21年度は、これらの教育支援方法をさらに精選させ、施設の状況をふまえた新任期の教育支援プログラムの開発を行なう予定である。本研究の目的は、昨年度までの研究で作成した「高齢者看護の実践能力を高める教育支援方法」を療養型医療施設および介護老人保健施設に適用できるように検討することである。療養型医療施設1施設、介護老人保健施設1施設において、看護部門の教育担当者と検討した。検討内容を類似性に基づき分類した結果、教育支援方法の適用には、まずは教育支援システムの構築に向けた課題を整理する必要があることが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-19659610
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19659610
学士課程卒業者の高齢者看護実践能力育成に関する研究
療養型医療施設における教育支援システムの構築に向けた課題として、新任期教育、継続教育、就業支援の3つの点から検討が必要であることが明らかになった。具体的には、新任期教育として【看護基礎教育課程で修得した看護実践能力を活かす教育支援プログラムの整備】、継続教育として【療養型医療施設における継続教育プログラム、教育支援体制、充実・強化が必要なケアの検討】【職員間の連携・協働を促進する組織づくり】、就業支援として【適性、志向性をふまえた看護学生への就業支援】【社会の人々に対する療養型医療施設の就職に関する適切な知識の普及】が挙げられた。介護老人保健施設における教育支援システムの構築に向けた課題として、新任期の教育支援、現在の継続教育に関する課題が挙げられた。新任期の教育支援として【プリセプターの教育を含む新任期の看護師の教育支援プログラムの作成】、現在の継続教育に関する課題として【現行の看護職・介護職の継続教育プログラム、教育目標の検討】【クリニカルラダーにおける評価(内容・方法)の妥当性の検討】【看護研究への取り組みの強化】【職員全員で教育に取り組む組織づくり】が挙げられた。以上より、新任期の教育支援方法の適用には、上記の課題に取り組むこと、特に継続教育上の課題を同時に検討する必要性があることが示された。
KAKENHI-PROJECT-19659610
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19659610
近接場発光制御による単一色素分子のナノの分解能イメージング
近接場光学顕微鏡による単一蛍光分子の高分解能検出のためには,従来の近接場ファイバプローブに対する性能改善が最も重要な課題であった.そこで本研究では,主にテーパー構造の設計・最適化による蛍光集光効率向上と良質な金属微小開口を実現するための作製手法の確立を目指した.テーパー構造に関しては,二段階プローブが最適構造であることを提案し,さらに計算機シミュレーションを取り入れることによって,細かな構造パラメータの最適化を試みた.一方,開口作製に関しては,観察試料基板に対して先端を押し付けるという原始的ではあるが,理にかなった方法を採用した.これにより,開口が小さく,真円状でかつ開口面が平坦な理想的プローブが実現された.このようにして準備したプローブを使用し,単一蛍光分子検出に取り組んだ.試料としては石英基板表面に色素分子Cy5.5を分散させたものを観察した.プローブにヘリウムネオンレーザ光を導入し,開口を通して色素分子に照射する.分子からの蛍光を再び開口を通して集光し,アバランシェフォトダイオードでフォトンカウンティング検出する.ピエゾ素子を使って試料を走査することにより二次元画像を取得した結果,一つの蛍光分子を1530nmの高分解能でイメージングすることに成功した.特に開口径が30nmであるにもかかわらず15nmの分解能が得られることが何度かあった.このような超分解能のメカニズムとしては,開口金属と蛍光分子との間のエネルギー移動などが考えられる.もしこのメカニズムが実際に寄与しているとすると,最終的には数nmの分解能も達成可能である.近接場光学顕微鏡(NSOM)を用いた高分解能による単一分子蛍光検出を試み,以下のような成果を得た.NSOMの心臓部である光ファイバプローブについては,(1)化学エッチングによる二段階テーパー化,(2)試料基板への押し付けによる金属化プローブ先端への開口作製,の2点を工夫した.(1)に関しては,光励起ならびに蛍光検出において金属化テーパー部での強い吸収やカットオフによる光損失を最低限に抑え,高い検出感度を得るためにおこなった.(2)については,色素分子(Cy5.5)を分散させた試料基板ヘプローブ先端を直接押し付けることにより,作製された開口と色素分子が近接場領域まで十分に接近できるよう配慮した結果である.またここでは,真円状,かつ鋭いエッジをもつ開口が得られるなどの副次的効果も確認された.このようなプローブを開発することにより,単一色素分子からの蛍光を1530nmという極めて高い空間分解能で検出することが可能になった.これは,励起波長633nmと比較して,その1/201/40に相当し,従来の報告を遙かに凌ぐものである.また蛍光検出効率に関しても,プローブ開口での直接集光により,高倍率対物レンズによる場合と比較して1桁近い感度向上を確認した.特に分解能に関しては,色素分子と金属開口部との無輻射エネルギー移動をそのメカニズムとすることにより,プローブ先端の光スポットサイズよりもむしろ,物理的な開口サイズで決まる性能が得られた.また,この技術を生体分子観察へと応用するためのプローブ改良を検討すると同時に,その予備実験を開始した.近接場光学顕微鏡による単一蛍光分子の高分解能検出のためには,従来の近接場ファイバプローブに対する性能改善が最も重要な課題であった.そこで本研究では,主にテーパー構造の設計・最適化による蛍光集光効率向上と良質な金属微小開口を実現するための作製手法の確立を目指した.テーパー構造に関しては,二段階プローブが最適構造であることを提案し,さらに計算機シミュレーションを取り入れることによって,細かな構造パラメータの最適化を試みた.一方,開口作製に関しては,観察試料基板に対して先端を押し付けるという原始的ではあるが,理にかなった方法を採用した.これにより,開口が小さく,真円状でかつ開口面が平坦な理想的プローブが実現された.このようにして準備したプローブを使用し,単一蛍光分子検出に取り組んだ.試料としては石英基板表面に色素分子Cy5.5を分散させたものを観察した.プローブにヘリウムネオンレーザ光を導入し,開口を通して色素分子に照射する.分子からの蛍光を再び開口を通して集光し,アバランシェフォトダイオードでフォトンカウンティング検出する.ピエゾ素子を使って試料を走査することにより二次元画像を取得した結果,一つの蛍光分子を1530nmの高分解能でイメージングすることに成功した.特に開口径が30nmであるにもかかわらず15nmの分解能が得られることが何度かあった.このような超分解能のメカニズムとしては,開口金属と蛍光分子との間のエネルギー移動などが考えられる.もしこのメカニズムが実際に寄与しているとすると,最終的には数nmの分解能も達成可能である.
KAKENHI-PROJECT-11875018
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11875018
指定管理者制度における公共スポーツ施設のベンチマーキングに関する研究
2003年9月、財政支出の削減とサービス水準の向上を目的に「地方自治法」が改正された。その結果、すべての地方自治体は遅くとも2006年9月までに、公共スポーツ施設にも「指定管理者制度」を導入しなければならなくなった。この研究の目的は、ベンチマーキングとして日本における「指定管理者制度」の導入前後における常勤雇用者数の変化を明らかにすることである。制度導入前のデータは2005年3月に、導入後は2007年9月に収集した。2005年と2007年の両年に完全回答したのは333施設であった。常勤雇用者数の平均値は、指定管理者制度導入前よりも有意に増加した。NPM(New Public Management)理論のもと、行政への民間企業型経営手法の導入が我が国でも進められている。その一つである「指定管理者制度」が2006年度から本格的に施行されたが、指定管理者による管理運営の適切な評価基準が我が国では十分に議論されているとは言えない現状にある。以上を踏まえ、本研究では我が国における公共スポーツ施設のベンチマーキング指標を確立するとともに、公共スポーツ施設の管理運営のモニタリングシステムの確立、地理情報システム(GIS)による分析結果も加味した公共スポーツ施設の管理運営に関するベンチマーキングサービスの実現を目的とする。2003年9月、財政支出の削減とサービス水準の向上を目的に「地方自治法」が改正された。その結果、すべての地方自治体は遅くとも2006年9月までに、公共スポーツ施設にも「指定管理者制度」を導入しなければならなくなった。この研究の目的は、ベンチマーキングとして日本における「指定管理者制度」の導入前後における常勤雇用者数の変化を明らかにすることである。制度導入前のデータは2005年3月に、導入後は2007年9月に収集した。2005年と2007年の両年に完全回答したのは333施設であった。常勤雇用者数の平均値は、指定管理者制度導入前よりも有意に増加した。本研究が目指している具体的な成果は、わが国における公共スポーツ施設の管理運営におけるVFM (Value for Money)評価指標の精査・確立と、公共スポーツ施設のモニタリングシステムの確立、モニタリングを踏まえた、経営改善のためのベンチマーキングサービスの確立である。本研究代表者による過去の研究(萌芽研究15650138、基盤B15300225)の継続と、その際に得られた成果やデータを活用し、4年度(1821年度)にわたって実施する。本年度は、本格的な調査を実施する来年度以降のための準備期問として、情報収集と調査分析に力を注いだ。まず、6月から7月にかけて、本研究の先進国であるイギリスを訪問し、公共スポーツ施設のベンチマーキングサービスを共同で構築しているスポーツイングランドとシェフィールド・ハーラム大学の現地調査を実施した。研究者らにインタビュー調査を行い、現在のシステムの利用状況のほか、課題や問題点など包括的に話を聞きだすことができたその他、東京体育館や外部機関とともに自主的な研究会を設置し、現場担当者から率直な意見を集約することができた。今年度蓄積することができた成果をもとに、来年度はわが国にある全ての公共スポーツ施設を対象としたアンケート調査に取り組む計画である。また、秋からは研究代表者が1年間イギリスに滞在し、現地事例の研究をさらに掘り下げていくとともに、日本で実施したアンケート結果とイギリスのデータとの比較研究についても取り組んでいくことを目論んでいる。1.公共スポーツ施設全国調査の実施財団法人日本体育施設協会の協力を得て、全国の公共スポーツ施設を対象にインターネット上に専用の調査サイトを構築し、アンケート調査を実施した。2006年9月の指定管理者制度の施行を受け、施設の管理・運営についての現状を把握することを本調査の目的とし、施設の管理運営形態から保有する設備、利用者数、職員数、収支など約30の質問項目を設けた。この調査では、対象施設を体育館、陸上競技場、野球場、球技場、庭球場、多目的グラウンド、プール、トレーニング場に限定し、同協会会員リストに加え、国内すべての地方自治体やその外郭団体等が設置しているホームページをもとに調査台帳を作成した。その結果、合計19,051施設に対して調査依頼状を送付した。ホームページでの回答入力に際し、各施設に固有のID番号、パスワードを用意し、記載した回答が他の施設から見られることのないよう留意した。また、ホームページでの回答ができない施設に対しては、紙面による調査票を別途用意し送付を行った。回収数は2,291、回収率は12.0%であった。2.イギリス等における現地調査9月より研究代表者はイギリスシェフィールド市に滞在しスポーツ施設の経営評価の研究に従事している。イギリス国内の先進施設の調査やロンドン市での公共スポーツ施設ベンチマーキングサービスの地方自治体向けの評価方法についてのセミナーなどに参加している。また、欧州スポーツマネジメント学会にも参加し、スポーツ施設経営の最新情報を入手した。1.公共スポーツ施設全国調査の集計・分析19年度に実施した調査の未回答施設のうち、我が国を代表すると考えられる施設を再度選定し、追加調査を実施。公共スポーツ施設の管理運営に関する重要な定量データの蓄積を行うとともに、得られた結果を分析し、報告書にまとめた。我が国では指定管理者制度が2006年に完全施行されたが、調査の結果、管理運営主体においては、単一型スポーツ施設の約6割が未だに直営施設であることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-18300213
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18300213
指定管理者制度における公共スポーツ施設のベンチマーキングに関する研究
経営効率性を測るため、利用者1人当たりの運営費(総支出)を算出したところ、全体平均では13,530円であったが、複数の施設を保有している複合型施設(総合体育館など)では2,035円となり、複合型施設の方が効率的な経営が行われているという結果となった。施設の収益性を測るために、利用都1人当たりの職員数を算出したところ、こちらも複合型施設の方が収益性が高いという結果となった。また、調査結果の一部を用い、「公共スポーツ施設全国MAP」(WEB上)の公開準備を行った。施設別、地域別の検索システムを有し、国民への情報提供サイトとして、翌年度以降、本格的に運用開始する。2.地理情報システム(GIS)ソフトの試験運用GISソフトウェアを用い、スポーツ施設を中心とする商圏内の人口分布、所得水準、家計調査によって得られる各種指標の分析を実施した。3.イギリスでの現地調査、台湾研究者のヒアリング調査19年度9月より、研究代表者は本研究の先進事例であるイギリスにて1年間滞在し、現地での最新事例の調査に当たった。また、イギリスの事例を参考として台湾でも同様の取り組みが行われたことから、その担当者へのヒアリング調査を実施した。我が国の公共スポーツ施設の管理運営の客観的な評価システムの試験運用を来年度から本格化させていくが、現地調査やヒアリング調査を通じて重要な知見を得ることができた。地方自治法改正にともなう、指定管理者制度による雇用創出、自治体補助金の縮減、利用者満足度の向上などの各種インパクト分析することを計画した。具体的には全国の公共スポーツ施設へのWebアンケート調査結果のデータの精度を高めるために、データトリミングを行い、それを用いて、指定管理者制度の導入後による常勤雇用者数の変化を分析した。その結果、以前は地方自治体が直営していたスポーツ施設は、指定管理者に移行したことにより、常勤雇用者数が有意に増加したことがわかった。つまり、指定管理者制度は常勤雇用者数を増大させるインパクトがあることがわかった。一方で、自治体直営のままであったり、従前は管理委託制度であった施設が指定管理者に移行した場合は、常勤雇用者数に変化がないことも明らかとなった。また、事例研究として、指定管理者制度の導入による、スポーツ実施者の利用満足度の変化を分析した。同様に、スポーツ観戦者の施設サービスに対する満足度の変化を分析した。いずれも、指定管理者制度の導入後は、満足度が有意に改善することが明らかとなった。これらについては、以下の論文を執筆し投稿した。・間野義之、庄子博人、本目えみ:2009,公共スポーツ施設の指定管理者制度導入前後の利用者満足度の変化-A体育館を対象とした事例研究-,スポーツ産業学研究,Vol.19, pp223-229.間野義之、庄子博人:2010,指定管理者制度導入によるスタジアムのサービス・クオリティの変化」-Aスタジアムの観戦者を対象とした事例研究-,スポーツ産業学研究,Vol.20, pp143-159.間野義之、庄子博人、飯島沙織、本目えみ:2010、指定管理者制度の導入が公共スポーツ施設の常勤雇用者数に与える影響,スポーツ産業学研究(印刷中)
KAKENHI-PROJECT-18300213
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リーマン面の正則族とタイヒミュラー空間
種数gの閉リーマン面Rから種数g′,(2≦g′≦g),の閉リーマン面Sへの非定数正則写像全体をHol(R,S)とし、その個数を♯Hol(R,S)と書く。de Franchisの定理により、♯Hol(R,S)は有限になることが知られているが、本研究ではその個数を具体的に評価することを考察した。得られた主要結果は次のもので、論文[1]として発表の予定である。主定理.種数g,g′にのみ依存する正の定数Mが存在して、が成立する。しかも、このMは具体的に求められるものである。証明法は、タイヒミュラー空間、Klein群、双曲幾何、複素解析を用いて双曲的面積を評価するものであり、この方法は、(g,n),2g-2+n>0型の開リーマン面の場合にも適用できる。また、これはSeveriの定理、関数体におけるMordell予想(Grauert & Maninの定理)、Shafarevich予想(Parshin & Arakelovの定理)においても、その対象物の個数を具体的に与えることができものであり、それらの諸結果の論文を執筆中である。種数gの閉リーマン面Rから種数g′,(2≦g′≦g),の閉リーマン面Sへの非定数正則写像全体をHol(R,S)とし、その個数を♯Hol(R,S)と書く。de Franchisの定理により、♯Hol(R,S)は有限になることが知られているが、本研究ではその個数を具体的に評価することを考察した。得られた主要結果は次のもので、論文[1]として発表の予定である。主定理.種数g,g′にのみ依存する正の定数Mが存在して、が成立する。しかも、このMは具体的に求められるものである。証明法は、タイヒミュラー空間、Klein群、双曲幾何、複素解析を用いて双曲的面積を評価するものであり、この方法は、(g,n),2g-2+n>0型の開リーマン面の場合にも適用できる。また、これはSeveriの定理、関数体におけるMordell予想(Grauert & Maninの定理)、Shafarevich予想(Parshin & Arakelovの定理)においても、その対象物の個数を具体的に与えることができものであり、それらの諸結果の論文を執筆中である。
KAKENHI-PROJECT-07210270
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07210270
社会的な規範/価値観の共有による社会形成に関与する脳神経基盤のfMRIによる解明
社会集団の共有価値観としての「社会規範槻範)」は、その集団に属する個々人の行動原理として内在化され、集団・社会の形成や維持に大きな役割を果たしている。規範が集団内で共有され、個人の意思決定・行動を規定していく過程の神経基盤を順次明らかにする為に、平成25年度は前年までに明らかにした「規範の重要度(=価値)の大きさの処理」に関わる脳活動領域の知見および「説得による規範の変化過程」に関わる脳活動領域の知見を統合し、規範を通じた社会形成の神経基盤に関する包括的な学術研究としてまとめることを目指した。ある社会の中で規範は常に固定されたものではない。特定の規範に対する個人の態度は、対人間、あるいはメディアを通じた説得的コミュニケーションを通じて肯定的にも否定的にも変化し、結果として環境保護運動の高まりや人種差別的ルールの撤廃といった大きな規範変化をもたらしてきた。本研究ではMRIスキャナ内で説得的メッセ一ジを提示して被験者の規範に対する態度を変化させ、その過程に特異的な脳領域を、機能的MRIを用いた脳機能イメージングの手法にて同定した。また、この過程に規範に対する態度自体を表象する領域がどう関わっているのかも明らかにすることを目指した。結果として、説得による規範に対する態度変化の過程は、説得一般に関わる左背外側前頭前野、前頭前野内側部などの領域に加えて、これまで社会認知や道徳判断への関与が示唆されてきた両側の側頭極、側頭頭頂連合部等の領域が必要とされる特殊な過程であることが明らかになった。さらに、説得により規範に対する態度が否定的に変化する場合には、上記の領域に加えて左側の中側頭回、縁上回領域が特異的に関与することが明らかになった。またこの2つの領域の内、左縁上回は説得による規範変化の過程の中で、説得されたことによって変化する規範に対する態度そのものを表象していることを明らかにした。平成25年度は申請計画どおりに、研究テーマである「社会的な規範/価値観の共有による社会形成に関与する脳神経基盤」において、採用年度1年目・2年目に明らかにしてきた「規範の重要度(=価値)の大小の処理に関わる脳活動領域」「説得による社会規範の変化過程に関わる脳活動領域」の知見を統合し、平成25年6月には第36回日本神経科学大会にて口頭演題として選出され発表した。また、同成果を学術論文としてまとめ、現在PNAS誌に投稿予定である(英文校正中)。申請研究は極めて順調に遂行されたと判断される。上記のように、本研究の成果を学術論文として国際学会誌に発表する予定である。社会的な集団の中で共有される価値観としての「社会規範」は、個人の行動原理として内在化され、集団・社会の形成や維持に大きな役割を果たす。この、「社会規範」が集団内で共有され、個人の意思決定・行動を規定していく過程の神経基盤を順次明らかにしていく為、平成23年度は「社会規範による個人の意思決定の神経基盤」の核となる、「規範の重要度(=価値)の大きさの処理」に関わる脳領域の同定を目指した。本研究では、様々な場面での「規範的」行動の主観的な価値・重要度を被験者に判断させ、その大小に対応して活動を変化させる脳領域を、機能的MRIを用いた脳機能イメージング手法で同定した。27人の右利き健常被験者が実験に参加した。被験者にはMRI装置内で、次々に提示される「規範的行動」の順守を示す記述(例:映画館では静かにするetc.)に対して、自分がどの程度賛同するかを8段階のボタン押しで回答してもらい、その際の脳活動を計測した。統制課題として、規範的要素のない一般的な「信念」(例:血液型で性格が決まるetc.)に対する賛同の度合いを問う条件も同様に行った。結果として、「規範的行動」「信念」のような抽象的な価値の重要度の大小処理に共通して関連する脳領域として、両側の尾状核・淡蒼球の大脳基底核、視床、中脳、前頭前野内側部、中・下前頭回、縁上回、小脳、および右の中・下側頭回領域を同定した。また、「規範的行動」特異的に価値の重要度を処理する領域として左楔前部/後部帯状回、両側縁上/右中心後回を同定した。社会的な集団の中で共有される価値観としての「社会規範」は、その集団に属する個々人の行動原理として内在化され、集団・社会の形成や維持に大きな役割を果たす。この、「社会規範」が集団内で共有され、個人の意思決定・行動を規定していく過程の神経基盤を順次明らかにする為に、平成24年度は「説得による社会規範の変化過程」に関わる脳活動領域の同定を目指した。ある社会の中で「社会規範」は流動的である。ある「社会規範」に対する個人の態度は、対人間、あるいはメディアを通じた説得的コミュニケーションを通じて肯定的にも否定的にも変化し、結果として環境保護運動の高まりや人種差別的ルールの撤廃といった大きな社会規範の変化をもたらす。本研究ではMRIスキャナ内で説得的メッセージを提示して被験者の社会規範に対する態度を変化させ、その過程に特異的な脳領域を、機能的MRIを用いた脳機能イメージングの手法にて同定した。また、この過程に社会規範に対する態度自体を表象する領域がどう関わるのかも明らかにすることを目指した。実験では27人の被験者に説得的メッセージを提示して被験者の社会規範に対する態度を肯定的あるいは否定的に変化させ、その際の脳活動を計測した。
KAKENHI-PROJECT-11J05219
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J05219
社会的な規範/価値観の共有による社会形成に関与する脳神経基盤のfMRIによる解明
また、説得の対象になったものを含む様々な社会規範に対する被験者の態度を説得の前後で測定し、説得による態度変化の度合いを測定するとともに、その際の脳活動を計測して態度自体の表象に関わる脳領域を同定した。結果、説得による社会規範に対する態度変化の過程に特異的な脳領域として、両側の前頭前野内側部、背外側前頭前野、下前頭回、側頭極、側頭頭頂連合部、楔前部を同定した。また、説得により社会規範に対する態度が否定的に変化する過程に特異的な領域として、左側の中側頭回を同定した。また、左側の側頭頭頂連合部が、態度表象の脳領域のうち、社会的規範の説得特異的に関わる領域として同定した。社会集団の共有価値観としての「社会規範槻範)」は、その集団に属する個々人の行動原理として内在化され、集団・社会の形成や維持に大きな役割を果たしている。規範が集団内で共有され、個人の意思決定・行動を規定していく過程の神経基盤を順次明らかにする為に、平成25年度は前年までに明らかにした「規範の重要度(=価値)の大きさの処理」に関わる脳活動領域の知見および「説得による規範の変化過程」に関わる脳活動領域の知見を統合し、規範を通じた社会形成の神経基盤に関する包括的な学術研究としてまとめることを目指した。ある社会の中で規範は常に固定されたものではない。特定の規範に対する個人の態度は、対人間、あるいはメディアを通じた説得的コミュニケーションを通じて肯定的にも否定的にも変化し、結果として環境保護運動の高まりや人種差別的ルールの撤廃といった大きな規範変化をもたらしてきた。本研究ではMRIスキャナ内で説得的メッセ一ジを提示して被験者の規範に対する態度を変化させ、その過程に特異的な脳領域を、機能的MRIを用いた脳機能イメージングの手法にて同定した。また、この過程に規範に対する態度自体を表象する領域がどう関わっているのかも明らかにすることを目指した。結果として、説得による規範に対する態度変化の過程は、説得一般に関わる左背外側前頭前野、前頭前野内側部などの領域に加えて、これまで社会認知や道徳判断への関与が示唆されてきた両側の側頭極、側頭頭頂連合部等の領域が必要とされる特殊な過程であることが明らかになった。さらに、説得により規範に対する態度が否定的に変化する場合には、上記の領域に加えて左側の中側頭回、縁上回領域が特異的に関与することが明らかになった。またこの2つの領域の内、左縁上回は説得による規範変化の過程の中で、説得されたことによって変化する規範に対する態度そのものを表象していることを明らかにした。平成23年度は、申請計画どおりに機能的MRI実験の計画・実験・データ解析を行い、研究テーマである「社会的な規範/価値観の共有による社会形成に関与する脳神経基盤」のうち、「社会規範による個人の意思決定の神経基盤」の核となる規範の重要度(=価値)の大小の処理に関わる脳活動領域を明らかにした。この発見は当該分野の発展において大きな進歩となる知見であり、10月に同成果を国際学会で発表する予定である。また国際学術誌への投稿・発表も準備中である。既に、申請計画で2年目に予定されていた実験計画の一部にも着手しており、申請研究は順調に遂行されていると判断する。平成24年度は、申請計画どおりに研究を進め、研究テーマである「社会的な規範1価値観の共有による社会形成に関与する脳神経基盤」のうち、「価値観の共有が集団内コミュニケーションを介して個人の意思決定に影響する過程の神経基盤」の核となる、「説得による社会規範の変化過程」に関わる脳活動領域を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-11J05219
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フランス16世紀前半の架空譚における建築描写の研究
近年、ルネサンス期の建築描写に国際的な関心が寄せられている。当時の先進国イタリアの影響を積極的に受け入れたフランス16世紀前半の架空譚を中心に、フィクションとしての建築描写が果たした政治・思想的役割を、文学研究の側から探っていく。この作業を通して、俗語フランス文学における建築描写の萌芽から16世紀後半の流行へと至るメカニズムを、文学史の流れの中で捉えることを試みたい。近年、ルネサンス期の建築描写に国際的な関心が寄せられている。当時の先進国イタリアの影響を積極的に受け入れたフランス16世紀前半の架空譚を中心に、フィクションとしての建築描写が果たした政治・思想的役割を、文学研究の側から探っていく。この作業を通して、俗語フランス文学における建築描写の萌芽から16世紀後半の流行へと至るメカニズムを、文学史の流れの中で捉えることを試みたい。
KAKENHI-PROJECT-19K00504
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K00504
細胞内リン脂質の代謝調節と輸送に関する研究
1)リン脂質の代謝調節機構に関する研究哺乳動物細胞においてホスファチジルセリン(PS)は、2種類のPS合成酵素(1と2)により生合成され、これら酵素の活性はPSによるフィードバック制御により調節されている。この制御は、酵素の発現調節ではなく、PSの共存によって合成酵素の活性そのものが阻害される様式であり、PS合成酵素が直接あるいは間接的に細胞内のPS量を感知し、その必要に応じてPSを合成するものと考えられている。しかし現在、PS合成酵素の触媒機構と活性制御機構の詳細は不明であり、その解明を本研究の目的とし、以下に述べる研究成果を得た。(1)PS合成酵素2をほぼ単一に精製することに成功した。精製酵素の性状解析により、同酵素の活性はPSが触媒部位とは異なる、制御部位に結合することにより抑制されることが示唆された。(2)66種のアラニン置換変異型PS合成酵素1を系統的に作成し、その性状解析から、酵素活性に重要なアミノ酸残基8個と活性制御に重要なアミノ酸残基6個を同定することができた。(3)さらに、PS合成酵素1は、小胞体膜を10回貫通する膜内在性酵素であり、アラニン置換変異で同定した活性に重要なアミノ酸残基8個はすべて小胞体膜脂質二重層の中央から内腔側に配置され、活性制御に重要なアミノ酸残基6個はすべて小胞体膜の細胞質側に配置されることが示唆された。2)リン脂質の細胞内輸送に関する研究(1)PSの小胞体からミトコンドリアへの輸送に関与する哺乳動物細胞の新規タンパク質MSBP1を同定することに成功した。(2)酵母からPSの細胞内輸送に損傷を有する変異株の候補を約40種分離することに成功した。1)リン脂質の代謝調節機構に関する研究哺乳動物細胞においてホスファチジルセリン(PS)は、2種類のPS合成酵素(1と2)により生合成され、これら酵素の活性はPSによるフィードバック制御により調節されている。この制御は、酵素の発現調節ではなく、PSの共存によって合成酵素の活性そのものが阻害される様式であり、PS合成酵素が直接あるいは間接的に細胞内のPS量を感知し、その必要に応じてPSを合成するものと考えられている。しかし現在、PS合成酵素の触媒機構と活性制御機構の詳細は不明であり、その解明を本研究の目的とし、以下に述べる研究成果を得た。(1)PS合成酵素2をほぼ単一に精製することに成功した。精製酵素の性状解析により、同酵素の活性はPSが触媒部位とは異なる、制御部位に結合することにより抑制されることが示唆された。(2)66種のアラニン置換変異型PS合成酵素1を系統的に作成し、その性状解析から、酵素活性に重要なアミノ酸残基8個と活性制御に重要なアミノ酸残基6個を同定することができた。(3)さらに、PS合成酵素1は、小胞体膜を10回貫通する膜内在性酵素であり、アラニン置換変異で同定した活性に重要なアミノ酸残基8個はすべて小胞体膜脂質二重層の中央から内腔側に配置され、活性制御に重要なアミノ酸残基6個はすべて小胞体膜の細胞質側に配置されることが示唆された。2)リン脂質の細胞内輸送に関する研究(1)PSの小胞体からミトコンドリアへの輸送に関与する哺乳動物細胞の新規タンパク質MSBP1を同定することに成功した。(2)酵母からPSの細胞内輸送に損傷を有する変異株の候補を約40種分離することに成功した。生体膜の基本骨格であるリン脂質二重層は様々なリン脂質分子から構成されており、形質膜や細胞内の各オルガネラ膜がそれぞれ固有の機能を発現するためには、それら生体膜のリン脂質の量と組成が正常に維持されている必要があるものと推定される。しかしながら現在、生体膜リン脂質の量と組成の制御の基盤となる機構は不明であり、また各リン脂質分子の生合成調節機構もほとんど理解されていない。我々は以前、動物細胞の主要リン脂質の一つであるホスファチジルセリン(PS)の生合成が、PSによるフィードバックコントロールを受けることを見いだした。さらに、このコントロールは、PS合成酵素遺伝子の転写や翻訳レベルでのコントロールではなく、PSによるPS合成酵素活性のコントロールによることも明らかにした。このPSによるPS合成酵素活性の制御機構には現在不明な点が多く存在し、PSがPS合成酵素と直接相互作用するのか、あるいは制御を仲介する何らかの因子が存在するのかも不明である。そこで我々は、PSによるPS合成酵素活性の制御機構を精製酵素を用いて解析することを目的に、同酵素の精製を試みた。酵素の精製は、FLAGとHAペプチドを連結した組み換え型のPS合成酵素2をCHO細胞において発現させ、それらペプチドに対する抗体を用いたアフィニティーカラムクロマトグラフィーにより行った。その結果、同酵素をSDS-PAGE上でほぼ単一バンドになるまで活性を保ったまま精製することに成功した。さらに、精製酵素の活性が外因性のPSにより阻害されることを明らかにした。従って、PS合成酵素とPSの直接の相互作用が、細胞内のPS量を正常に維持するために重要であることが示唆された。哺乳動物細胞において、ホスファチジルセリン(PS)は、既存のリン脂質ホスファチジルコリン(PC)或いはホスファチジルエタノールアミン(PE)と遊離セリンの塩基交換反応により生合成され、PS合成酵素I(PSS I)及びII(PSS II)がこれら反応をそれぞれ触媒する。この塩基交換反応はPSによって翻訳後のフィードバックコントロールを受けることがわかっているが、その仕組みは明らかでない。
KAKENHI-PROJECT-14380341
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14380341
細胞内リン脂質の代謝調節と輸送に関する研究
両酵素のcDNAがクローニングされ、互いに約30%のホモロジーを有し、ともに疎水性が高く、恐らく膜を複数回貫通する膜内在性蛋白であることが判明したが、他の既知のタンパク質との類似性が見い出されず、アミノ酸配列比較によるモチーフ或いはドメイン構造などの情報は得られない。そこで、PSS Iの活性、或いはPS合成調節に関わるアミノ酸残基を探索する目的で、二つの酵素に共通する66の極性アミノ酸残基を逐次アラニンに置換したPSS IをCHO-K1細胞に過剰発現させ、インタクト細胞におけるPS合成調節の変化と細胞抽出液中の塩基交換活性の変化を調べた。その結果、R95,H97,C189,R262,Q266,R336をそれぞれアラニンで置換すると、PS合成調節に異常を生じ、Y111,D166,R184,R323,E364,K370を置換すると蛋白の発現に著しい低下がみられ、H172,E197,E200,N209,E212,D216,D221,N226の置換では発現した蛋白のセリン塩基交換活性は著しく失われていた。また、N209,K308のアラニンへの置換は、セリン塩基交換反応を低下させるが、コリン及びエタノールアミン塩基交換反応にはあまり影響しないことが明らかとなった。これらの結果を基に、PS合成酵素の活性部位及び調節部位の解明、またPS合成調節機構についてさらに解析を進めていきたい。ホスファチジルセリン(PS)生合成のフィードバック制御機構に関する研究膜内在性(マルチスパン型)であり、その精製が非常に困難であった動物細胞のPS合成酵素-2を世界に先駆けて精製することに成功した。精製酵素を用いた酵素速度論的解析から、PSがPS合成酵素2の触媒部位とは異なる部位(制御部位)に直接結合し、同酵素の活性を阻害することを明らかにした。従って、この制御部位が、細胞内のPS量を検知するセンサーとしての機能を有し、PSの恒常性維持に重要な役割を担うことが示唆された。さらにPS合成酵素の構造に関して、PS合成酵素1と2の両者が小胞体膜を10回貫通し、そのN末端とC末端がいずれも小胞体の細胞質側に露出していることを示唆する結果を得た。リン脂質の細胞内輸送機構に関する研究リン脂質の細胞内輸送機構を解明する目的で、リン脂質の種々のオルガネラ間輸送に特異的な欠損を有する変異株の分離を試みた。その結果、遺伝学的解析が容易な酵母から目的の変異株を分離する方法を確立することに成功し、その方法を用いることによりPSの小胞体からミトコンドリアへの輸送に損傷を有する酵母変異株の候補を約40株、PSの小胞体からゴルジ体への輸送に損傷を有する酵母変異株の候補を約10株、ホスファチジルエタノールアミン(PE)のミトコンドリアから小胞体への輸送に損傷を有する酵母変異株の候補を4株、PEのゴルジ体から小胞体への輸送に損傷を有する酵母変異株の候補を1株、分離することに成功した。1.ホスファチジルセリン(PS)の生合成と代謝調節に関する研究PS合成酵素1の部分精製を行い、その性状解析から、次の2つの知見を得ることができた。(1)哺乳動物細胞におけるPS合成は、既存のリン脂質(PCあるいはPE)のコリンあるいはエタノールアミン部分と遊離のセリンの交換により行われる。
KAKENHI-PROJECT-14380341
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ゲノムのワードプロセシング技術の新展開-酵母染色体任意領域重複技術の開発
産業酵母の有用形質には染色体の部分異数性が重要であることが明らかになってきた。こうした部分異数性と有用表現型との関係を明らかにするため,任意領域の重複を自在に作り出すゲノム工学技術(PCDup法と命名)を開発した。PCDup法により、16本の染色体の全てについて,200kb毎の重複(62領域)を作成することを試みた。その結果,53領域について重複株を得る事ができた。さらに53株について表現型を調べた。その結果、高温や酸に対して耐性が見られる株もあった。重複領域内の遺伝子の単独過剰発現ではそうした表現型は報告されていないので、それらの表現型は重複領域内複数遺伝子の同時重複によると考えられた。産業酵母の有用形質には染色体の部分異数性が重要であることが明らかになってきた。こうした部分異数性と有用表現型との関係を明らかにするため,任意領域の重複を自在に作り出すゲノム工学技術(PCDup法と命名)を開発した。PCDup法により、16本の染色体の全てについて,200kb毎の重複(62領域)を作成することを試みた。その結果,53領域について重複株を得る事ができた。さらに53株について表現型を調べた。その結果、高温や酸に対して耐性が見られる株もあった。重複領域内の遺伝子の単独過剰発現ではそうした表現型は報告されていないので、それらの表現型は重複領域内複数遺伝子の同時重複によると考えられた。産業酵母では、異数性、特に部分重複が有用形質に関係することが明らかになってきた。こうした事実から、染色体の任意領域が重複した異数体を自在に作り出す技術は、これまでに、産業酵母の育種や、ゲノムの網羅的機能解析に有用と考えられる。しかし、いずれの生物種においても開発されていない。そこで、本研究では、出芽酵母における新規のゲノム工学技術として、任意の染色体領域を簡便に重複させる技術(PCDup法と命名)の開発と応用を目指す。PcDup法では、まず、i)重複させる領域の両端400bp程度を相同組換え標的部位として、それぞれPCRで増幅する。次に、ii)オーバーラップPCRにより、2つの標的断片のそれぞれと、別途増幅した選択マーカー、CEN4、テロメアシード配列を持つ断片を融合する。iii)調製した2種類のPCR断片を用いて酵母の形質転換を行う。本年度は、様々な染色体上の50kb150kbの重複に成功した。さらに長い領域が重複できるか否かについて試みた結果、300kbまでの長さについては重複体を得ることができた。次に、本技術を有用菌株の育種やゲノムの機能解析へ応用するため、染色体全領域にわたり200kbずつ重複染色体を保持する重複株タイリングシリーズの作製を試みた。これまでに、XV番、VII番、XII番、XI番、V番染色体について目的とする重複株を得ることができた。続いて、得られた重複株について育種に重要な表現型の解析を行った。その結果、高温、酸への耐性変化が見られる重複株もあった。それらの領域内にある遺伝子の単独過剰発現では、そうした表現型は報告されていない。従って、こうした表現型の変化は重複領域内の複数の遺伝子が同時に増幅されたことに起因すると予想された。これらの結果より、PCDup法は、育種への応用だけでなく、ゲノム機能の解析技術としても有用であることが明らかとなった。産業酵母の有用形質には,染色体部分領域の重複が重要であることが明らかになってきた。こうした部分異数性と(有用)表現型との関係を明らかにするためには,染色体任意領域の重複を自在に作り出すゲノム工学技術(PCDup法と命名)が必要である。いずれの生物種においても開発されていなかったこうした技術を昨年度までに開発し,PCDup法によって、期待通り,部分重複が可能であることを実証した。そこで,本年度は,16本の染色体の全てについて,200kb毎の重複(合計64領域)を作成することを目指した。その結果,重複を試みた42領域のうち39領域について重複株を得る事ができた。興味深いことに,42領域のうち3領域については重複株が得られなかった。これらの領域については,その領域全体の重複が致死性を引き起こす可能性を考え、200kbの領域を50kbずつわけた時に重複が可能かどうか実験を行っている。続いて、得られた重複株について表現型の解析を行った。その結果、高温、酸への耐性変化が見られる株もあった。それらの領域内にある遺伝子の単独過剰発現では、そうした表現型は報告されていないので,こうした表現型は重複領域内の複数遺伝子の同時重複に起因すると考えている。次に、複数部位のワンステップ同時分断技術の開発を目指した。昨年度までにいくつかの方法を検討したが,同時分断を引き起こすことはできなかった。そこで,近年開発されたRNAガイドにより二重鎖切断を可能とするCRISPR/Casゲノム編集技術を取り入れることにした。CRISPR/Casにより二重鎖切断を誘導した条件で染色体分断を行ったところ、100倍以上形質転換効率が向上し,ゲノム上の独立した2か所での同時分断を引き起こすことに成功した。産業酵母の有用形質には,染色体部分領域の重複が重要であることが明らかになってきた。こうした部分異数性と(有用)表現型との関係を明らかにするためには,染色体任意領域の重複を自在に作り出すゲノム工学技術が必要である。
KAKENHI-PROJECT-24380048
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24380048
ゲノムのワードプロセシング技術の新展開-酵母染色体任意領域重複技術の開発
申請者らは、昨年度までに、この技術(PCDup法と命名)を開発し、16本の染色体の全てについて,200kb毎の重複(合計62領域)を作成する研究を進めてきた。その結果,62領域のうち53領域について重複株を得る事ができた。重複株が得られなかった9領域について、200kb領域を任意に50kb領域に分け重複を試みた結果、7領域については、50kb領域のひとつが重複できず、残りの2領域については、4つの50kbの全てが重複可能であった。これらの結果より、7領域のそれぞれにおいて重複できない50kbの領域については、その領域内に、同時にコピー数が2コピーに増加すると合成致死を引き起こす遺伝子ペアがある可能性が示唆された。また残りの2領域については、4つの50kbの領域のいずれかの組合わせにおいて、同時にコピー数が2コピーに増加すると合成致死を引き起こす遺伝子ペアがある可能性が示唆された。さらに、全53株について表現型の解析を行った。その結果、多くの重複株はストレス感受性を示すものの、高温や酸に対して耐性が見られる株もあった。重複領域内の遺伝子の単独過剰発現では、そうした表現型は報告されていないので、こうした表現型は重複領域内複数遺伝子の同時重複に起因すると考えている。次に、ゲノムの改変をスピードアップするため、複数部位のワンステップ同時分断を目指す研究を開始し、近年開発されたCRISPR/Casゲノム編集技術を、申請者らが開発したPCS法に融合することにより、異なる染色体上、および同一染色体上の2カ所について同時分断が可能であることを明らかした。26年度が最終年度であるため、記入しない。酵母遺伝学,ゲノム機能工学26年度が最終年度であるため、記入しない。開発を目指した新しいゲノム工学技術(PCDup法)が期待通りに有効に機能したため。PCDup法が確立したので,ゲノム全体にわたる200kbの領域の重複は時間の問題であったが,それが予想通り進展したこと。および,染色体の複数部位同時分断にCRISPR/Casゲノム編集技術を取り入れ,成功したことが順調に進展したと判断できる理由である。26年度が最終年度であるため、記入しない。当初の計画に従い、全ゲノムに渡る染色体部分領域重複株の構築を完成する。これが完成すれば、全ての重複株の表現型をできるだけ多く調べる。表現型の変化が見られたものについては、また、これと平行して、「染色体複数部位のワンステップ同時分断技術の開発」を目指す。このため、PCDup法に、CRSPR-Cas9システムを導入し、その有効性を検討する。当初の計画に従い、64領域全てについて,全ゲノムに渡る染色体部分領域重複株の構築を完成する。200kbの大きさで重複ができない領域については、100kb,あるいは50kbずつにわけて重複を作成する。これが完成すれば、全ての重複株の表現型をできるだけ多く調べる。これは,当初の研究推進方策と変わりが無い。CRSPR-Cas9システムを導入したことにより,異なる染色体上の複数部位の同時分断に成功したが、同一染色体上の複数部位でも可能かどうかを検討し、PCDup技術の拡張を図る。
KAKENHI-PROJECT-24380048
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ゲノムDNAメチル化はスギの表現型多様性にどのように寄与するか?
致死的でない高温ストレスを前もって与えることで個体が高温により強くなる、「耐暑性」の獲得が針葉樹を含む樹木でも報告されている。本研究では、耐暑性誘導処理や由来する地域がエピジェネティックな制御を介して高温ストレス反応に関わる遺伝子発現に影響を及ぼすかを、スギで明らかにすることを目指した。気象データの主成分分析で4クラスタに分けられる7集団から、発芽率のよい22母樹を選んで15ブロックにランダムに種子を播種した。暗期8時間(16°C)、明期16時間(25°C)で発芽を行い、ほぼ全ての実生で本葉が展開した時点で半分の実生について暗条件下で38°C・3時間の耐暑性誘導処理を2日間行った。耐暑性誘導処理終了から24時間後に実生のサンプリンクを行い、さらに24時間経過後全ての個体に45°C・2時間の高温ストレスを与えた。高温ストレス後に針葉の葉色が変化した実生の割合は耐暑性誘導処理なしのサンプルで大きかったが、有意な差ではなかった。高温ストレス終了後25°Cに戻し、1時間後及び24時間後にサンプリングを行った。計3回のサンプリングでは、耐暑性誘導処理あり・なし及び4つの気象条件の異なるクラスタを考慮した8グループから各2個体、計16個体からRNAを抽出した。このうち、各時点において8個体、計24個体について次世代シーケンサーでRNA-Seq解析を行った。総計423,735,176リード、約41Gbpのデータが得られた。24個体をプールしたデータと既存のスギ遺伝子情報により参照配列を構築した。まず他植物で高温ストレス応答制御の鍵となる転写因子ファミリーのスギホモログついて発現レベルを比較したところ、気象によるクラスタや耐暑性誘導処理による明瞭な差はなかった。しかし高温ストレス処理後に最も高い発現を示したことから、スギでも他の植物と同様の高温ストレス応答経路が機能していると考えられた。本研究は、スギの環境適応に関連する表現型の多様性に対し、ゲノムDNAのメチル化等によるエピジェネティック(後天的)な遺伝子発現制御がどの程度寄与するかを解明する目的で行っている。自然条件下で年変動が大きくかつ実験的制御の行いやすいこと、温暖化の影響に対する知見が期待できることから、スギの実生を用いて気温(特に高温ストレス)による遺伝子制御の変化を対象として解析を進めている。高温ストレス応答が由来する地域によって異なるかを考慮するため、北海道から九州までの13集団から110母樹を選んだ。発芽条件を検討するため、各母樹から12種子を水分条件がより均一に近いとされるロックウール培地にランダムに播種した。人工気象器を用いて暗期8時間と明期16時間のサイクルで発芽及び高温ストレスの試験を行った。発芽は1暗期16°C-明期25°C(標準条件)、2暗期21°C-明期30°C(高温条件)の2種類で行った。全体の発芽率は両条件とも30日後に約20%であり、母樹により大きく異なった(0-83%)。発芽率の温度条件による違いは全体、集団毎とも有意ではなかった。母樹の由来する集団は気象データの主成分分析の結果に基づきさらに6つのクラスタに分けられるが、発芽に要する日数はクラスタ間で、標準条件及び高温条件ともに有意に差があった(p<0.05)。発芽に要する日数は標準条件と高温条件間で母樹によって変動が認められたが、気象条件によるクラスタの影響は有意ではなかった。また、25°Cで発芽させた母樹について、実生の子葉がほとんど展開した時点で暗期28°C-明期38°Cの高温ストレス条件下へ移し、遺伝子発現の変化を解析するための経時的なサンプルを得た。シロイヌナズナで高温ストレス応答の鍵となる遺伝子について、スギのホモログ遺伝子(cjHsfA1)の塩基配列を得た。致死的でない高温ストレスを前もって与えることで個体が高温により強くなる、「耐暑性」の獲得が針葉樹を含む樹木でも報告されている。本研究では、耐暑性誘導処理や由来する地域がエピジェネティックな制御を介して高温ストレス反応に関わる遺伝子発現に影響を及ぼすかを、スギで明らかにすることを目指した。気象データの主成分分析で4クラスタに分けられる7集団から、発芽率のよい22母樹を選んで15ブロックにランダムに種子を播種した。暗期8時間(16°C)、明期16時間(25°C)で発芽を行い、ほぼ全ての実生で本葉が展開した時点で半分の実生について暗条件下で38°C・3時間の耐暑性誘導処理を2日間行った。耐暑性誘導処理終了から24時間後に実生のサンプリンクを行い、さらに24時間経過後全ての個体に45°C・2時間の高温ストレスを与えた。高温ストレス後に針葉の葉色が変化した実生の割合は耐暑性誘導処理なしのサンプルで大きかったが、有意な差ではなかった。高温ストレス終了後25°Cに戻し、1時間後及び24時間後にサンプリングを行った。計3回のサンプリングでは、耐暑性誘導処理あり・なし及び4つの気象条件の異なるクラスタを考慮した8グループから各2個体、計16個体からRNAを抽出した。このうち、各時点において8個体、計24個体について次世代シーケンサーでRNA-Seq解析を行った。総計423,735,176リード、約41Gbpのデータが得られた。24個体をプールしたデータと既存のスギ遺伝子情報により参照配列を構築した。
KAKENHI-PROJECT-25660128
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ゲノムDNAメチル化はスギの表現型多様性にどのように寄与するか?
まず他植物で高温ストレス応答制御の鍵となる転写因子ファミリーのスギホモログついて発現レベルを比較したところ、気象によるクラスタや耐暑性誘導処理による明瞭な差はなかった。しかし高温ストレス処理後に最も高い発現を示したことから、スギでも他の植物と同様の高温ストレス応答経路が機能していると考えられた。気象条件の異なる地域に由来するスギの種子を用い、一定の発芽条件下では発芽特性が由来する地域によって異なることを明らかにできた。また、高温ストレスによる遺伝子誘導を調べるためのサンプリングを行うことができた。植物育成機器の故障により次世代シーケンサーによる発現遺伝子プロファイルの解析は次年度に持ち越しとなったが、概ね順調に進展している。まず、高温ストレス下におけるcjHsfA1の発現の経時的な変化をおさえる。また、38°Cの高温処理では20日後も生残している実生個体がほとんどだったため、45°Cでの高温ストレスによる実生個体及びcjHsfA1遺伝子発現の変化について調べる。これらの結果に基づいて、高温ストレスにさらされた異なる地域及び発芽条件の個体からRNAを経時的にサンプリングし、次世代シーケンサーで解析を行う。高温ストレスへの発現応答に対する種子の産地・発芽温度の影響が有意であった遺伝子の情報を得て、メチル化の関与について解析する。また、必要に応じてゲノム全体のメチル化についても解析を行い、ゲノム全体の塩基多型及びメチル化多型と遺伝子発現パターンの統計解析を行う。植物を育成する機器の故障により実験計画に遅れが生じ、当該年度の予算のほとんどを使用する予定であった次世代シーケンサーによる受託解析を次年度に行うことにしたため。次世代シーケンサーによる受託解析を本年度において行う予定である。解析結果に基づき次世代シーケンサーの解析を行うサンプル数を増やす必要が生じた場合や受託解析の価格の変動等、やむを得ない場合においては翌年度分として請求した助成金の一部を合わせて使用する。それ以外の助成金については、当初の計画書の予定にしたがって、遺伝子発現実験やゲノムDNA解析に使用する。
KAKENHI-PROJECT-25660128
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ニュートリノの質量行列とCPの破れの研究
次の課題の研究を行った。(1)ニュートリノ系でのCPの破れの研究低エネルギーでニュートリノ振動実験から決めることの出来るディラックCP位相と、高エネルギーでの例えばレプジェネシスで現れるCPを破る位相(マヨラナ位相)との間の関係を調べた。特に高エネルギーでのニュートリノ混合がbi-maximal混合である場合ついて、繰り込み群を用いて、これらの位相の関係を調べ、模型がすべての実験を再現できることを示した。また他の実験で得られる量である、二重ベータ崩壊での有効質量V_<13>の大きさ等を調べた。レプトン数を破る過程である、μ→e+γなどの分岐比を計算した。(2)クォーク系やレプトン系でのCPを破る位相を一元的に記述する模型の可能性を検討している。(3)レプトン数を破る過程の研究一般的な相互作用を仮定し、次のプロセスが起こる頻度を計算した。μ^-+原子核→μ^++原子核μ^-+原子核→e^++原子核本研究では、主に次の点について研究をおこなった。1.ニュートリノ混合におけるCPの破れ2.ニュートリノ混合におけるTの破れの研究3.ニュートリノ振動実験や二重ベータ崩壊実験の解釈4.宇宙におけるニュートリノの役割高杉は、ニュートリノ混合におけるCPの破れの位相の予言を可能にするニュートリノの質量行列をZ_3対称性に基づいて導出した。この模型では、ミューとタウニュートリノの間の大きな混合と90度のCPの破れの位相を予言することを示した。さらに、この模型の量子補正による安定性を議論した。さらに、このような考えをクオークに拡張し、クオーク混合とニュートリノ混合でのCPの破れの位相を同時に予言する質量項を考察している。最近、ニュートリノ工場実験でのTの破れについて、ニュートリノの通過する物質(マントル)の影響について考察した。特に、物質の密度の変動がどのようにTの破れについて影響を与えるかを研究した。田中は、ダークマターが超粒子である可能性を考察し、どのように観測するかを議論した。末松は、左巻きだけでなく軽い右巻きのニュートリノが存在する場合のニュートリノ振動を考察し、また、ステライル・ニュートリノをもつ統一模型を研究している。福山は、ニュートリノ振動実験のデータを二重ベータ崩壊などのレプトン数を破る過程と関連づけることにより、ニュートリノの混合行列と質量にに強い制限が与えられることを示した。この結果を基に、SO(10)の模型でクオークとレプトンの質量行列を考察た。また、ニュートリノと宇宙との関わり、特にガンマー線バーストにおけるニュートリノの役割や、ニュートリノへの強い重力のおよぼす効果について考察した。私どもの研究は以下の通りである。1.ニュートリノの質量行列の研究を行った。特に、(a)CPの破れの位相δを予言する模型の構築した。(b)ニュートリノの質量行列を統一理論から提案した。(c)ニュートリノとクオークや荷電レプトンも併せて質量の統一的な理解を得るために、SO(10)大統一理論に基づいて、ニュートリノの質量の行列を構築した。(d)ステライル・ニュートリノの研究を行った。2.ベータ崩壊や二重ベータとニュートリノ振動実験を総合的に解析し、ニュートリノの混合行列や質量について考察した。3.レプトン数非保存過程の研究、特にの過程の理論的研究を行った。4.ニュートリノ工場でのCPの破れの位相の検出の可能性を研究した。特に、Tの破れの非対称性の測定は、地球物質の効果が少なく、位相の検出には最も適していることを示した。次のような課題について研究を行った。(1)ニュートリノの質量行列とCPの破れ3世代ニュートリノ系では、CPを破る位相は、1つのディラック位相δと2つのマヨラナ位相がある。高エネルギーではV_<13>=0でδ=0である質量行列について、低エネルギーでどのような大きさのV_<13>とδが繰り込み群の効果で現れるか調べ、質量が近似的に縮退しているとき、実験で観測できる程度の大きさが現れることを示した。高エネルギーでのマヨラナ位相は、レプトジェネシスを起こすCPを破る位相と関係しており、全ての位相が統一的に理解できる可能性を示した。(2)二重β崩壊から得られるニュートリノの有効質量<m_ν>がニュートリノ混合とCPの破れに関係しているかを研究した。特にマヨラナ位相とニュートリノの質量の関係を調べた。(3)大統一理論から、ニュートリノの質量行列を調べた。(4)マヨラナの性質を探る過程を研究した。特に、レプトン数が破れる過程であるの寿命を調べた。次の課題の研究を行った。(1)ニュートリノ系でのCPの破れの研究低エネルギーでニュートリノ振動実験から決めることの出来るディラックCP位相と、高エネルギーでの例えばレプジェネシスで現れるCPを破る位相(マヨラナ位相)との間の関係を調べた。特に高エネルギーでのニュートリノ混合がbi-maximal混合である場合ついて、繰り込み群を用いて、これらの位相の関係を調べ、模型がすべての実験を再現できることを示した。また他の実験で得られる量である、二重ベータ崩壊での有効質量V_<13>の大きさ等を調べた。レプトン数を破る過程である、μ→e+γなどの分岐比を計算した。(2)クォーク系やレプトン系でのCPを破る位相を一元的に記述する模型の可能性を検討している。(3)レプトン数を破る過程の研究
KAKENHI-PROJECT-12047218
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ニュートリノの質量行列とCPの破れの研究
一般的な相互作用を仮定し、次のプロセスが起こる頻度を計算した。μ^-+原子核→μ^++原子核μ^-+原子核→e^++原子核
KAKENHI-PROJECT-12047218
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インターネットによる地球規模の自然環境要因と動物行動のリアルタイム測定と解析
地球上の多くの生物は、日光の周期に同調した約24時間のリズム(概日リズム)を持つことが確かめられている。また、海洋にいる生物は潮汐サイクルに適応した概潮汐リズムを持つとされ、このリズムへの適応は、海岸で生息する動物にとって必要不可欠なものであると考えられる。本研究の目的は、対象動物を複数の環境因子が変化する場所に設置して実験を行う装置の開発である。今年度は、潮汐に合せた行動が確認されているミナミコメツキガニについて、自然環境下で観察する装置、すなわち温度、湿度、気圧、照度などの環境変化のデータを屋外で計測できる装置を開発した。さらに、概潮汐リズムは潮汐サイクルも同調因子となる可能性があるため、干潮、満潮時間にあわせて、飼育している水槽の水位を変える装置を開発した。この装置を用いた水槽と用いない水槽の2つを用意して、ミナミコメツキガニの行動を観察した。また、背景差分法とAND演算によって、ミナミコメツキガニの行動を自動的に検出するための画像処理手法も開発し、目視データとの比較によりその有効性を検証した。これにより、インターネットによる接続環境があれば、地点によらずデータを取得することができる。実際に山口大学と琉球大学にこの装置を設置して、1分間隔でこれら温度、湿度、気圧、照度といった環境データとカニの匹数を取得して、行動解析を行い、ミナミコメツキガニの行動が潮汐の影響を受けること、及び概日時計を持つ可能性があることを示すことができた。当初はマウスなどの哺乳類のみについて研究を行う予定であったが、概日リズムとは別の概潮汐リズムをもつミナミコメツキガニについても実験装置の開発と行動データ取得をおこなった。その結果、ミナミコメツキガニの概潮汐リズムは、潮の満ち引きの影響を受けることに合わせて、まだ明らかにされていない、概日リズムをもつことの可能性についても示すことができた。また、山口大学と琉球大学の2地点に実際に装置を設置し、同時にデータを取得して、動物行動の比較を行うことのできるシステムをほぼ完成することができた。画像処理については、光の加減によるカニの検出への影響の処理に不十分な点があり、課題として残された。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展したと判断できる。温度、湿度、気圧、照度の環境要因を動物の行動と同時に計測する装置は完成したが、動物の行動を自動計測するための画像処置については、まだ改善の余地がある。今後はこの問題の解決に取り組む。この装置の開発により、温度、湿度、照度、気圧といった環境データとカニの行動引数のデータを自動的に大量に取得できるようになったので、今後は、このデータに対して機械学習の手法を適用して、新しい知見を見出すなど、これまでの生物リズムの研究とは違うデータサイエンス的な研究を実施することがテーマとして挙げられる。また、鳥類や魚類の行動計測などにも本研究の手法が適用できるような装置の開発も今後の研究課題として挙げられる。本研究の目的は,対象生物を研究目的にかなう環境に置き,複合的要因を同時に測定して,インターネットで伝送できる装置を開発することである.装置には,活動データを取得できる赤外線センサ,環境データを取得するため温度,湿度,気圧,照度センサを実装した.開発した装置は北海道旭川市に設置し,ハムスターの観測による実証実験を行った.夜間はセンサからの値が正しく取得できていることが確認できたが,昼間は日光の影響を受け,照度センサの値が測定範囲を超えるなどの不具合が発生した.さらに,赤外線センサが日光からの赤外線の影響を受け反応するため,動物の行動を正確に測定できない問題も生じた.そこで,これらの問題への対策として,照度センサについては,センサの変更や配置の工夫を行い,解決することができた.日光の赤外線については,加速度センサを併用することで,その影響を排除することを試みた.以上の対策を施して改良した装置を沖縄県那覇市に設置し、北海道に設置した装置による計測データと比較検討するためのデータを取得した。当初の計画では、平成28年度では動物の行動を計測する装置の開発までを行う予定であり、複数地点での同時計測は平成29年度の作業をされていた。しかし、実際には作業がこれ以上進み、北海道と沖縄の2地点に装置を設置し、行動の多地点計測まで行うことができた。このため、予算の前倒し執行も行った。本研究の目的は、対象生物を調査目的にかなう環境に置き、多要因を同時に測定して、インターネットで伝送できる装置を開発することである。このため、行動データを取得のための赤外線センサ、環境データを取得するため温度、湿度、気圧、照度センサを実装した装置を作成し、ハムスターを使って行動計測を行った。夜間は赤外線センサからの値が正しく取得できていることが確認できたが、昼間は強い日光により、照度センサの値が測定範囲を超える等の不具合が発生した。さらに、赤外線センサが日光に反応するため,動物の行動を正確に測定できない問題も生じた。そこで、これらへの対策として、照度センサについては,センサの変更や配置などの見直しを行い、日光の赤外線については、加速度センサを併用することで、その影響を排除した。北海道と沖縄の2地点での測定期間が重なる平成29年3月30日4月8日について、日照時間と行動量のデータを比較した。この期間は春分の日から間もなくのため、2地点の日照時間の差はあまりなく、照度データの測定差は最大29分であった。
KAKENHI-PROJECT-16K14776
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インターネットによる地球規模の自然環境要因と動物行動のリアルタイム測定と解析
この状況下では、同一日における2地点のハムスターの行動量の違いは殆ど見られないはずであり、実際のところ、取得したデータからそのような違いを見出すことはできなかった。そこで、冬季から春季に至る日長が増加する期間において、山口と沖縄に置いた2つのハムスターの行動データを、温度、湿度、気圧などの環境データの関係とともに取得した。遠隔地の動物行動をリアルタイムモニタリングする実験系を構築するために、前年度は山口県から遠く高緯度に位置する北海道においてハムスターを飼育し、その自発行動をモニタリングすることに成功した。本年度は国内でのさらなる検討を実施した。すなわち、ハムスターの行動に対する緯度の影響を比較する目的で、沖縄県にて昨年度と同様の測定を実施した。分担者は、現地の研究者との打ち合わせや、装置のセットアップの一部とハムスターの測定環境の整備を担当した。得られたデータより、測定は成功したものを結論づけることができる。ハムスターに加えて、沖縄地方に生息するミナミコメツキガニを対象とした研究も開始した。ミナミコメツキガニは、潮汐リズムに同調した時計を体内に持っており、日長リズムとの関係を調査することは非常に興味のある課題である。現在、その装置の開発を行っているところであり、哺乳類に加えて甲殻類まで研究の対象を拡大している。地球上の多くの生物は、日光の周期に同調した約24時間のリズム(概日リズム)を持つことが確かめられている。また、海洋にいる生物は潮汐サイクルに適応した概潮汐リズムを持つとされ、このリズムへの適応は、海岸で生息する動物にとって必要不可欠なものであると考えられる。本研究の目的は、対象動物を複数の環境因子が変化する場所に設置して実験を行う装置の開発である。今年度は、潮汐に合せた行動が確認されているミナミコメツキガニについて、自然環境下で観察する装置、すなわち温度、湿度、気圧、照度などの環境変化のデータを屋外で計測できる装置を開発した。さらに、概潮汐リズムは潮汐サイクルも同調因子となる可能性があるため、干潮、満潮時間にあわせて、飼育している水槽の水位を変える装置を開発した。この装置を用いた水槽と用いない水槽の2つを用意して、ミナミコメツキガニの行動を観察した。また、背景差分法とAND演算によって、ミナミコメツキガニの行動を自動的に検出するための画像処理手法も開発し、目視データとの比較によりその有効性を検証した。これにより、インターネットによる接続環境があれば、地点によらずデータを取得することができる。実際に山口大学と琉球大学にこの装置を設置して、1分間隔でこれら温度、湿度、気圧、照度といった環境データとカニの匹数を取得して、行動解析を行い、ミナミコメツキガニの行動が潮汐の影響を受けること、及び概日時計を持つ可能性があることを示すことができた。当初はマウスなどの哺乳類のみについて研究を行う予定であったが、概日リズムとは別の概潮汐リズムをもつミナミコメツキガニについても実験装置の開発と行動データ取得をおこなった。その結果、ミナミコメツキガニの概潮汐リズムは、潮の満ち引きの影響を受けることに合わせて、まだ明らかにされていない、概日リズムをもつことの可能性についても示すことができた。また、山口大学と琉球大学の2地点に実際に装置を設置し、同時にデータを取得して、動物行動の比較を行うことのできるシステムをほぼ完成することができた。
KAKENHI-PROJECT-16K14776
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化学合成を応用した内分泌および神経調節ペプチドの生体内調節機構の解析に関する研究
本研究は昨年度に引き続き、新しく見出された内分泌・神経調節ペプチド、ならびにそれらの前駆体の化学構造に関する情報に基づき、各種ペプチドを計画的に化学合成しさらに合成ペプチドを用いて特異抗血清の作製、ならびに特異ラジオイムノアッセイ系の確立を行うことにより、内分泌および神経調節ペプチドの生体内調節機構の解析を可能にし、一連の内分泌:神経調節ペプチドに共通する基礎的概念の樹立を目ざしている。本年度は遺伝子構造解析により推定された内分泌:神経調節ペプチド前駆体のアミノ酸配列に基づき、ヒトオキシントモデュリン、ラットPHI、ヒトGRP、ヒトCRF、NPYおよびそれに関連する各種ペプチドの化学合成、ならびに新しい調節ペプチドとして、ガラニン、ニュ-Dキニン類とそれらの関連ペプチドの化学合成を行った。本合成研究では、さきに確立した合成プログラムに準じ、ペプチド自動合成装置(バイオシステム社)を用いた。また、上記の各種合成ペプチドを免疫抗原として用い、特異抗体の作製を合目的な計画に基づき実施した。ガラニンについては、世界で初めて単クローン抗体の作製に成功した。上記合成ペプチドおよび特異抗体を用い、それぞれのペプチドに特異的なラジオイムノアッセイ系を確立した。さらに、本研究の合成調節ペプチドおよび関連ペプチド、特異抗体、ならびに特異ラジオイムノアッセイを応用し、神経芽細胞腫におけるVIP前駆体のプロセシング、膵と腸管におけるプログルカゴンのプロセシングを明らかにし、ついで、産生する調節ペプチドの生理的意義を解析した。各種神経ペプチドについては、膵潅流系を用い、インスリン放出作用を指標として検討した結果、それらの細胞内伝達機序の差が明らかに認められ、特にカラニンが特異的にインスリン分泌を抑制することを証明した。さらに各種のCCK誘導体を用いて、CCK受容体の特性を検討し、その受容体の部位特異性を証明した。本研究は昨年度に引き続き、新しく見出された内分泌・神経調節ペプチド、ならびにそれらの前駆体の化学構造に関する情報に基づき、各種ペプチドを計画的に化学合成しさらに合成ペプチドを用いて特異抗血清の作製、ならびに特異ラジオイムノアッセイ系の確立を行うことにより、内分泌および神経調節ペプチドの生体内調節機構の解析を可能にし、一連の内分泌:神経調節ペプチドに共通する基礎的概念の樹立を目ざしている。本年度は遺伝子構造解析により推定された内分泌:神経調節ペプチド前駆体のアミノ酸配列に基づき、ヒトオキシントモデュリン、ラットPHI、ヒトGRP、ヒトCRF、NPYおよびそれに関連する各種ペプチドの化学合成、ならびに新しい調節ペプチドとして、ガラニン、ニュ-Dキニン類とそれらの関連ペプチドの化学合成を行った。本合成研究では、さきに確立した合成プログラムに準じ、ペプチド自動合成装置(バイオシステム社)を用いた。また、上記の各種合成ペプチドを免疫抗原として用い、特異抗体の作製を合目的な計画に基づき実施した。ガラニンについては、世界で初めて単クローン抗体の作製に成功した。上記合成ペプチドおよび特異抗体を用い、それぞれのペプチドに特異的なラジオイムノアッセイ系を確立した。さらに、本研究の合成調節ペプチドおよび関連ペプチド、特異抗体、ならびに特異ラジオイムノアッセイを応用し、神経芽細胞腫におけるVIP前駆体のプロセシング、膵と腸管におけるプログルカゴンのプロセシングを明らかにし、ついで、産生する調節ペプチドの生理的意義を解析した。各種神経ペプチドについては、膵潅流系を用い、インスリン放出作用を指標として検討した結果、それらの細胞内伝達機序の差が明らかに認められ、特にカラニンが特異的にインスリン分泌を抑制することを証明した。さらに各種のCCK誘導体を用いて、CCK受容体の特性を検討し、その受容体の部位特異性を証明した。
KAKENHI-PROJECT-60229002
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60229002
細胞周期関連蛋白質リン酸化酵素の終末分化神経細胞における機能解析
サイクリン依存性キナーゼ(CDK)は、細胞分裂において中心的な役割を担っているが、ある種のCDK相同性キナーゼは、終末分化し、分裂停止した神経細胞にも高発現している。本研究では、このようなキナーゼの一つPCTAIREの機能解析を通じて、終末分化した神経細胞で発現しているCDK相同性キナーゼの機能を明らかにすることを目的とした。まず、ラットcDNAライブラリーからPCTAIRE1,2,3をクローニングした。本研究によってはじめて一つの生物種よりPCTAIREファミリー全てがクローニングされたことによってPCTAIREファミリーの系統的解析が可能となった。PCTAIRE1,2,3ともに脳で発現しており特にPCTAIRE2は脳特異的に発現していた。脳の発生過程における発現は、分裂の盛んな胎生期ではほとんど発現しておらず、神経細胞が分裂を停止した生後に高発現していた。脳特異的に発現しているPCTAIRE2ついてさらに解析を進めた結果、PCTAIRE2は、グリア細胞よりもニューロンに発現していた。免疫沈降によってPCTAIRE2を回収しヒストンH1キナーゼ活性を測定したところ、セリンとスレオニン残基をリン酸化し、その活性には活性化因子が必要であることが示唆された。これらの結果からPCTAIRE2は終末分化したニューロン特異的に存在するセリン/スレオニンキナーゼであると考えられる。さらにPCTAIRE2結合因子を酵母two-hybridシステムによって検索した結果、PCTAIRE2のN末端のに強く結合する新規分子を同定し、Tudor Repeat Associator with PCTAIRE2(Trap)と名ずけた。Trapは一次構造上ショウジョウバエの正常な胚発生に必要なTudorと部分的に相同性を示す領域が5回繰り返し構造をとっていた。TrapとPCTAIRE2の結合は融合蛋白質を用いたpull down assayや免疫沈降法によって確認した。両者の結合の生理的重要性を明らかにするために、発現パターンと細胞内局在に相関があるか検討した。Trapは、脳と精巣に多く発現しており、胎生期では発現が少なく生後にかけて増加しており、PCTAIRE2の発現パターンと類似していた。両者ともニューロンでは、細胞質に局在しており、COS7細胞ではミトコンドリアに局在していた。さらにラット脳の分画から神経細胞でもミトコンドリアの表層に局在することが示唆された。脳内での分布は、大脳皮質の第V層、小脳では分子層と顆粒細胞層にPCTAIRE2とTrapが、共発現していた。以上の結果から、PCTAIRE2とTrapの結合は生理的に重要な結合であると考えられる。サイクリン依存性キナーゼ(CDK)は、細胞分裂において中心的な役割を担っているが、ある種のCDK相同性キナーゼは、終末分化し、分裂停止した神経細胞にも高発現している。本研究では、このようなキナーゼの一つPCTAIREの機能解析を通じて、終末分化した神経細胞で発現しているCDK相同性キナーゼの機能を明らかにすることを目的とした。まず、ラットcDNAライブラリーからPCTAIRE1,2,3をクローニングした。本研究によってはじめて一つの生物種よりPCTAIREファミリー全てがクローニングされたことによってPCTAIREファミリーの系統的解析が可能となった。PCTAIRE1,2,3ともに脳で発現しており特にPCTAIRE2は脳特異的に発現していた。脳の発生過程における発現は、分裂の盛んな胎生期ではほとんど発現しておらず、神経細胞が分裂を停止した生後に高発現していた。脳特異的に発現しているPCTAIRE2ついてさらに解析を進めた結果、PCTAIRE2は、グリア細胞よりもニューロンに発現していた。免疫沈降によってPCTAIRE2を回収しヒストンH1キナーゼ活性を測定したところ、セリンとスレオニン残基をリン酸化し、その活性には活性化因子が必要であることが示唆された。これらの結果からPCTAIRE2は終末分化したニューロン特異的に存在するセリン/スレオニンキナーゼであると考えられる。さらにPCTAIRE2結合因子を酵母two-hybridシステムによって検索した結果、PCTAIRE2のN末端のに強く結合する新規分子を同定し、Tudor Repeat Associator with PCTAIRE2(Trap)と名ずけた。Trapは一次構造上ショウジョウバエの正常な胚発生に必要なTudorと部分的に相同性を示す領域が5回繰り返し構造をとっていた。TrapとPCTAIRE2の結合は融合蛋白質を用いたpull down assayや免疫沈降法によって確認した。両者の結合の生理的重要性を明らかにするために、発現パターンと細胞内局在に相関があるか検討した。Trapは、脳と精巣に多く発現しており、胎生期では発現が少なく生後にかけて増加しており、PCTAIRE2の発現パターンと類似していた。両者ともニューロンでは、細胞質に局在しており、COS7細胞ではミトコンドリアに局在していた。さらにラット脳の分画から神経細胞でもミトコンドリアの表層に局在することが示唆された。脳内での分布は、大脳皮質の第V層、小脳では分子層と顆粒細胞層にPCTAIRE2とTrapが、共発現していた。以上の結果から、PCTAIRE2とTrapの結合は生理的に重要な結合であると考えられる。サイクリン依存性キナーゼ(CDK)は、細胞分裂において中心的6投割を担っているが、ある種のCDK相同性キナーゼは、終末分化し、分裂停止した神経細胞にも高発現している。
KAKENHI-PROJECT-10480169
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10480169
細胞周期関連蛋白質リン酸化酵素の終末分化神経細胞における機能解析
本研究では、このようなキナーゼの一つPCTAIREの機能解析を通じて、終末分化した神経細胞で発現しているCDK相同性キナーゼの機能を明らかにすることを目的とした。まず、ラットcDNAライブラリーからPCTAIREl,2,3をクローニングした。本研究によってはじめて一つの生物種よりPCTAIREファミリー全てがクローニングされたことによってPCTAIREファミリーの系統的解析が可能となった。PCTAIRE1,2,3ともに脳で発現しており特にPCTAIRE2は脳特異的に発現していた。脳の発生過程における発現は、分裂の盛んな胎生期ではほとんど発現しておらず、神経細胞が分裂を停止した生後に高発現していた。脳特異的に発現しているPCTAIRE2ついてさらに解析を進めた結果、PCITAIRE2は、グリア細胞よりもニューロンに発現していた。免疫沈降によってPCTAIRE2を回収しヒストンHlキナーゼ活性を測定したところ、セリンとスレオニン残基をリン酸化し、その活性には活性化因子が必要であることが示唆された。これらの結果からPCTAIRE2は終末分化したニューロン特異的に存在するセリン/スレオニンキナーゼであると考えられる。さらにPCTAIRE2結合因子を酵母two-hybridシステムによって検索した結果、PCTAIRE2のN末端のに強く結合する新規分子を同定し、Tudor Repeat Associator with PCTAIRE2(Trap)と名ずけた。Trapは一次構造上ショウジョウバエの正常な胚発生に必要なTudorと部分的に相同性を示す領域が5回繰り返し構造をとっていた。TrapとPCTAIRE2の結合は融合蛋白質を用いたpull down assayや免疫沈降法によって確認した。両者の結合の生理的重要性を明らかにするために、発現パターンと細胞内局在に相関があるか検討した。Trapは、脳と精巣に多く発現しており、胎生期では発現が少なく生後にかけて増加しており、PCTAIRE2の発現パターンと類似していた。両者ともニューロンでは、細胞質に局在しており、COS7細胞ではミトコンドリアに局在していた。さらにラット脳の分画から神経細胞でもミトコンドリアの表層に局在することが示唆された。脳内での分布は、大脳皮質の第V層、小脳では分子層と顆粒細胞層にPCTAIRE2とTrapが、共発現していた。以上の結果から、PCTAIRE2とTrapの結合は生理的に重要な結合であると考えられる。サイクリン依存性キナーゼ(CDK)は、細胞分裂において中心的な役割を担っているが、ある種のCDK相同性キナーゼは、終末分化し、分裂停止した神経細胞にも高発現している。本研究では、このようなキナーゼの一つPCTAIREの機能解析を通じて、終末分化した神経細胞で発現しているCDK相同性キナーゼの機能を明らかにすることを目的とした。まず、ラットcDNAライブラリーからPCTAIRE1,2,3をクローニングした。本研究によってはじめて一つの生物種よりPCTAIREファミリー全てがクローニングされたことによってPCTAIREファミリーの系統的解析が可能となった。
KAKENHI-PROJECT-10480169
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自然突然変異の発生と抑制の制御機構
大腸菌染色体複製開始領域oriCを含むプラスミドDNAを鋳型として、精製した複製タンパク質による試験管内ローリングサークル型DNA複製系を構築した。この系を利用して、rpsL遺伝子を標的遺伝子としてDNA複製に起因する突然変異の解析を行なった。複製産物中のrpsL^-変異の頻度は鋳型DNA中に最初から存在するrpsL^-変異の頻度の約70倍に上昇しており、in vitroでの複製反応に起因する突然変異を初めて検出することに成功した。この時の変異頻度から複製エラーの発生率は約3.0X10^<-7>/bp/複製と推定された。また、検出された変異の塩基配列レベルでの解析から、複製エラーに起因する変異は1塩基フレームシフトが最も多く、これらの大部分は同一塩基の繰り返し配列上で多発することが判明した。2塩基の繰り返し配列では、2塩基のフレームシフトの発生も観察された。大きな欠失や重複、さらに配列置換変異も複製エラーに起因することが示された。様々な証拠から、in vitro系で発生した塩基置換の大部分は鋳型DNAおよび基質ヌクレオチド中のグアニン残基が酸化されて生じる8-oxo-グアニンによるミスペアが原因であると結論された。大腸菌のミスマッチ修復欠損変異株を用いたin vivoでの解析結果から、今回見いだした複製エラーの内、1塩基フレームシフトと塩基置換の大部分はミスマッチ修復機構により修正されていることが明らかにされた。本研究の目的は、DNAポリメラーゼによる複製エラーの種類と発生頻度ならびに塩基配列特異性を明らかにし、細胞が持つ自然突然変異を抑制する機能の分子機構を解明することである。本年度は、試験管内DNA複製系を用いた生化学的解析に焦点をしぼって研究を行ない、以下の結果を得た。1.大腸菌染色体複製開始領域oriCを含むプラスミドDNAを鋳型として、精製した複製タンパク質による試験管内ローリングサークル型DNA複製系を構築した。この系を利用して、大腸菌のrpsL遺伝子を標的遺伝子としてDNA複製に起因する突然変異の解析を行なった。鋳型DNA中に最初から存在するrpsL変異の頻度は3.8×10^<-6>であるのに対し、複製産物中の変異頻度は1.0×10^<-4>に上昇しており、このin vitro系を用いた詳細な解析結果から、検出された突然変異はin vitroでの複製反応に起因することが明らかにされた。2.in vitroDNA複製系で独立に生じた多数のrpsL変異の解析から、複製エラーに起因する変異は1塩基フレームシフトが最も多く、全体の62%を占めることが判明した。塩基置換変異は全体の25%であり、2塩基のフレームシフトの発生も観察された。様々な証拠から、in vitro系で発生した塩基置換は鋳型DNAおよび基質ヌクレオチド中のグアニン残基が酸化されて生じる8-oxo-グアニンによるミスペアが原因であると結論された。一方、1塩基フレームシフトはdA/dT残基が46個続く配列中でdAあるいはdTが1個付加するものが最も高頻度に発生し、その頻度はストレッチの長さに依存していた。様々な証拠から、今回用いたDNAポリメラーゼである大腸菌DNA pol IIIはdTストレッチを鋳型とする時にdATPの濃度に依存して鋳型上をスリップすることが示唆された(dTストレッチスリップモデル)。大腸菌染色体複製開始領域oriCを含むプラスミドDNAを鋳型として、精製した複製タンパク質による試験管内ローリングサークル型DNA複製系を構築した。この系を利用して、rpsL遺伝子を標的遺伝子としてDNA複製に起因する突然変異の解析を行なった。複製産物中のrpsL^-変異の頻度は鋳型DNA中に最初から存在するrpsL^-変異の頻度の約70倍に上昇しており、in vitroでの複製反応に起因する突然変異を初めて検出することに成功した。この時の変異頻度から複製エラーの発生率は約3.0X10^<-7>/bp/複製と推定された。また、検出された変異の塩基配列レベルでの解析から、複製エラーに起因する変異は1塩基フレームシフトが最も多く、これらの大部分は同一塩基の繰り返し配列上で多発することが判明した。2塩基の繰り返し配列では、2塩基のフレームシフトの発生も観察された。大きな欠失や重複、さらに配列置換変異も複製エラーに起因することが示された。様々な証拠から、in vitro系で発生した塩基置換の大部分は鋳型DNAおよび基質ヌクレオチド中のグアニン残基が酸化されて生じる8-oxo-グアニンによるミスペアが原因であると結論された。大腸菌のミスマッチ修復欠損変異株を用いたin vivoでの解析結果から、今回見いだした複製エラーの内、1塩基フレームシフトと塩基置換の大部分はミスマッチ修復機構により修正されていることが明らかにされた。
KAKENHI-PROJECT-06280203
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06280203
胆汁うつ滞におけるradixinの役割
胆汁うっ滞multidrug resistance protein 2(mrp2)の局在変化と密接に関連することが知られている。細胞骨格と細胞膜蛋白のceosslinkerであるradixinはリン酸化により活性化され、mrp2の局在・発現に不可欠であると考えられているが、胆汁うっ滞におけるradixinの意義は明らかでない。そこで本研究ではestradiol投与(intrahepatic cholestasis)および胆管結紮(extrahepatic cholestasis)により作成した胆汁うっ滞ラット肝におけるmrp2の局在変化におけるradixinの意義を検討した。mrp2、radixinの局在・発現は免疫蛍光染色および共焦点レーザー顕微鏡にて検討し、Scion lmageを用いて解析した。各種胆汁うっ滞ラット肝において、mrp2はtight junction蛋白であるZO-1の外側すなわち幹細胞内にも観察され、mrp2の局在変化が確認された。各種胆汁うっ滞ラット肝では細胆管側膜におけるmrp2とradixinの局在は一部で解離し、mrp2はradixinの局在変化が高度であった部位で消失していた。Scion lmageを用いた検討では、mrp2およびradixinの蛍光は正常肝では毛細胆管側膜に集簇していたのに対し、各種胆汁うっ滞ラット肝では毛細胆管側膜のみならず肝細胞内にも検出された。さらに、リン酸化radixinの発現は正常ラット肝に比し各種胆汁うっ滞ラット肝で著明に低下していた。以上の結果より、各種胆汁うっ滞ラット肝で認められたリン酸化rasizinの発現低下は、rasixinのcrosslinker機能の低下に繋がり、mrp2と細胞骨格のcrosslinkが絶たれることにより、mrp2の局在変化ひいては発現変化に至ものと考えられた。胆汁うっ滞multidrug resistance protein 2(mrp2)の局在変化と密接に関連することが知られている。細胞骨格と細胞膜蛋白のceosslinkerであるradixinはリン酸化により活性化され、mrp2の局在・発現に不可欠であると考えられているが、胆汁うっ滞におけるradixinの意義は明らかでない。そこで本研究ではestradiol投与(intrahepatic cholestasis)および胆管結紮(extrahepatic cholestasis)により作成した胆汁うっ滞ラット肝におけるmrp2の局在変化におけるradixinの意義を検討した。mrp2、radixinの局在・発現は免疫蛍光染色および共焦点レーザー顕微鏡にて検討し、Scion lmageを用いて解析した。各種胆汁うっ滞ラット肝において、mrp2はtight junction蛋白であるZO-1の外側すなわち幹細胞内にも観察され、mrp2の局在変化が確認された。各種胆汁うっ滞ラット肝では細胆管側膜におけるmrp2とradixinの局在は一部で解離し、mrp2はradixinの局在変化が高度であった部位で消失していた。Scion lmageを用いた検討では、mrp2およびradixinの蛍光は正常肝では毛細胆管側膜に集簇していたのに対し、各種胆汁うっ滞ラット肝では毛細胆管側膜のみならず肝細胞内にも検出された。さらに、リン酸化radixinの発現は正常ラット肝に比し各種胆汁うっ滞ラット肝で著明に低下していた。以上の結果より、各種胆汁うっ滞ラット肝で認められたリン酸化rasizinの発現低下は、rasixinのcrosslinker機能の低下に繋がり、mrp2と細胞骨格のcrosslinkが絶たれることにより、mrp2の局在変化ひいては発現変化に至ものと考えられた。radixin細胞骨格であるactinfilamentと細胞膜蛋白のcrosslinkerであり、細胞膜蛋白の局在に必須の蛋白質である。radixin欠損マウスがmultidrug resistance protein 2 (mrp2)の消失とともに黄疸をきたすことからmrp2の局在・発現にはradixinが不可欠と考えられるが、胆汁うっ滞におけるradixinの意義は明らかでない。そこで胆管結紮により胆汁うっ滞ラットを作成し、肝臓におけるmrp2、radixinの局在・発現の変化を検討した。mrp2、radixinの発現はimmunoblot法にて、mr2、radixin、actinfilamentの局在はtight junction蛋白であるZO-1を指標として免疫蛍光染色および共焦点レーザー顕微鏡にて検討した。さらに遺伝的mrp2欠損ラット肝においても同様の検討を加えた。肝臓におけるmrp2の発現は胆管結紮後経時的に減少したのに対し、radixinの発現は胆管結紮前後のいずれの時期においても差異を認めなかった。胆管結紮後、actinfilamentの局在は変わらなかったが、radixinは細胆管側膜からtight junction側に移動しmrp2は細胆管側膜から肝細胞内へと局在変化が観察された。さらに胆管結紮ラット肝では細胆管側膜におけるmrp2とradixinの局在は解離し、mrp2はradixinの局在変化が高度であった部位で消失していた。一方、遺伝的mrp2欠損ラット肝の細胆管側膜におけるradixinの染色性は正常肝と変わらず、mrp2の欠損はradixinの発現および局在に影響しないと考えられた。以上の結果より、胆管結紮ラット肝におけるradixinの局在変化は、actinfilamentとmrp2のcrosslinkを絶つことによりmrp2の局在変化および発現低下につながる可能性が示唆された。radixinはリン酸化により活性化されactin
KAKENHI-PROJECT-17590669
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17590669
胆汁うつ滞におけるradixinの役割
filamentと細胞膜蛋白のcrosslinkerとして作用することが知られている。そこで今後は、radixinのリン酸化に注目して胆汁うっ滞におけるradixinおよびmrp2の局在変化の機序を検討する予定である。radixinは細胞骨格であるactinfilamentと細胞膜蛋白のcrosslinkerであり、細胞膜蛋白の局在に必須の蛋白質である。radixin欠損マウスがmultidrug resistance protein 2(mrp2)の消失とともに黄疸をきたすことからmrp2の局在・発現にはradixinが不可欠と考えられるが、胆汁うっ滞におけるradixinの意義は明らかでない。そこで本研究ではestradiol投与(intrahepatic cholestasis)および胆管結紮(extrahepatic cholestasis)により作成した胆汁うっ滞ラット肝におけるmrp2、radixinの局在・発現の変化を検討することにより、胆汁うっ滞におけるradixinの意義を明らかにした。mrp2、radixinの発現はimmunoblot法にて、局在はtight junction蛋白であるZO-1を指標として免疫蛍光染色および共焦点レーザー顕微鏡にて検討した。さらに遺伝的mrp2欠損ラット肝においても同様の検討を加えた。肝臓におけるmrp2の発現は胆管結紮後経時的に減少したのに対し、radixinの発現は胆管結紮前後のいずれの時期においても差異を認めなかった。各種胆汁うっ滞ラット肝において、mrp2およびradixinの局在は細胆管側膜から肝細胞内へと変化した。また胆汁うっ滞ラット肝では細胆管側膜におけるmrp2とradixinの局在は解離し、mrp2はradixinの局在変化が高度であった部位で消失していた。さらに、radixinの活性型であるリン酸化radixinの発現は各種胆汁うっ滞ラット肝で低下していた。なお、遺伝的mrp2欠損ラット肝の細胆管側膜におけるradixinの染色性は正常肝と変わらず、mrp2の欠損はradixinの発現および局在に影響しないと考えられた。以上の結果より、各種胆汁うっ滞ラット肝で認められたリン酸化radixinの発現低下は、radixinのcrosslinker機能の低下に繋がり、mrp2とactinfilamentのcrosslinkが絶たれることによりmrp2の局在変化ひいては発現低下に至るものと考えられた。
KAKENHI-PROJECT-17590669
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17590669
集団式潜在連想テストを用いた中学生の「偽自分嫌い」の検出と教育実践への活用
研究代表者らが潜在意識測定方法として開発した「集団式潜在連想テスト」(Mori, Uchida & Imada, 2008)を活用した先行研究から、「数学」に対する潜在意識と自己報告型アンケートによる意識調査の結果が異なる「偽数学嫌い」の生徒が20%以上も存在し、これらの生徒への働きかけで成績が改善することが報告されている(CogSci2014)。そこで、本研究では集団式潜在連想テストと自己報告型アンケートを併用することで、「偽自分嫌い」の生徒を検出し、教育実践への方策を新たな視点から探ることを目的とした。中学1年生213名(男子103名、女子110名)に、「自分」に関する集団式潜在連想テスト及びアンケート調査を実施した。検出及び分析方法は、「偽数学嫌い」に関する先行研究と同様に行った。また、比較対象のために「学校」に関する調査も同時に行った。調査の結果、「自分」に対する肯定的な潜在意識を持ちながら、アンケート調査では「自分が嫌い」と回答を「偽装」した生徒が55名(男子25名、女子30名)いた。4人に1人は「自分嫌い」を「偽装」しているのである。同時に実施した「学校」に対する調査では、23名(男子14名、女子9名)が「学校嫌い」を「偽装」していた。2群の母比率の差の検定を行ったところ、「偽自分嫌い」生徒の比率(25.8%)が「偽学校嫌い」生徒の比率(10.8%)よりも有意に高くなった(検定量3.7404, p=0.0002)。また、同様の手法で検出した「偽数学嫌い」の生徒(512名中103名)と比較しても、「偽自分嫌い」生徒の比率が、「偽数学嫌い」生徒の比率(20.1%)よりも高い傾向がみられた(検定量1.6947, p=0.0901)。「偽数学嫌い」の生徒は、偽装していない生徒よりも数学の成績が良くないことから、テスト成績が良くない理由のために「数学嫌い」を「偽装」していると考えられた(内田・守, 2015)。今後の課題として、「自分嫌い」を「偽装」する要因について、成績などの諸要因との関係を明らかにすることで、新たな教育方法の可能性を探りたい。研究代表者らが潜在意識測定方法として開発した「集団式潜在連想テスト」(Mori, Uchida & Imada, 2008)を活用した先行研究から、「数学」に対する潜在意識と自己報告型アンケートによる意識調査の結果が異なる「偽数学嫌い」の生徒が20%以上も存在し、これらの生徒への働きかけで成績が改善することが報告されている(CogSci2014)。そこで、本研究では集団式潜在連想テストと自己報告型アンケートを併用することで、「偽自分嫌い」の生徒を検出し、教育実践への方策を新たな視点から探ることを目的とした。中学1年生213名(男子103名、女子110名)に、「自分」に関する集団式潜在連想テスト及びアンケート調査を実施した。検出及び分析方法は、「偽数学嫌い」に関する先行研究と同様に行った。また、比較対象のために「学校」に関する調査も同時に行った。調査の結果、「自分」に対する肯定的な潜在意識を持ちながら、アンケート調査では「自分が嫌い」と回答を「偽装」した生徒が55名(男子25名、女子30名)いた。4人に1人は「自分嫌い」を「偽装」しているのである。同時に実施した「学校」に対する調査では、23名(男子14名、女子9名)が「学校嫌い」を「偽装」していた。2群の母比率の差の検定を行ったところ、「偽自分嫌い」生徒の比率(25.8%)が「偽学校嫌い」生徒の比率(10.8%)よりも有意に高くなった(検定量3.7404, p=0.0002)。また、同様の手法で検出した「偽数学嫌い」の生徒(512名中103名)と比較しても、「偽自分嫌い」生徒の比率が、「偽数学嫌い」生徒の比率(20.1%)よりも高い傾向がみられた(検定量1.6947, p=0.0901)。「偽数学嫌い」の生徒は、偽装していない生徒よりも数学の成績が良くないことから、テスト成績が良くない理由のために「数学嫌い」を「偽装」していると考えられた(内田・守, 2015)。今後の課題として、「自分嫌い」を「偽装」する要因について、成績などの諸要因との関係を明らかにすることで、新たな教育方法の可能性を探りたい。
KAKENHI-PROJECT-15H00061
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H00061
レーザーアブレーションに対する細胞応答のリアルタイムCARSイメージング
多焦点コヒーレントアンチストークスラマン散乱顕微鏡とレーザーアブレーション法を組み合わせ,レーザー光による遠隔的な刺激に対する試料の応答をリアルタイム・無染色に観測可能なシステムを構築した.アブレーション用レーザー光は,観測システムとは独立にその照射位置をコンピュータ制御可能である.開発した装置を,生細胞の細胞膜破壊に対する応答観測,ならびにレーザー放射圧による結晶化プロセスの観測へ応用した多焦点コヒーレントアンチストークスラマン散乱顕微鏡とレーザーアブレーション法を組み合わせ,レーザー光による遠隔的な刺激に対する試料の応答をリアルタイム・無染色に観測可能なシステムを構築した.アブレーション用レーザー光は,観測システムとは独立にその照射位置をコンピュータ制御可能である.開発した装置を,生細胞の細胞膜破壊に対する応答観測,ならびにレーザー放射圧による結晶化プロセスの観測へ応用した多焦点コヒーレシトアンチストークスラマン散乱(CARS)顕微鏡とレーザーアブレーション法を組み合わせ,生細胞の細胞膜の破壊とその修復過程のリアルタイム観測を行った.細胞内脂質を可視化する2840cm^<-1>で観測すると,細胞膜が破壊された後に,アブレーション光集光スポット付近でCARS光強度が上昇することが観測された.培養液中のCaイオンを取り除いた場合,このような信号の上昇は見られず,逆に信号が低下したスポットが観測された.Caイオンは毒性が高いため,細胞質中の小胞がCaイオンの流入に伴い傷口を塞ぐように集まり,各々融合することでCaイオンの流入を防ぐことが知られているが,この信号上昇は細胞質中の小胞が集まることによるものであると考えられる.また,数十秒かけてこの信号上昇は減衰することも観測されたが,これは小胞が融合することによるものと考えられるまた,多焦点CARS顕微鏡による観測と単焦点顕微鏡たよる観測のどちらが細胞への影響が大きいか実験的に検討した.多焦点による並列励起・観測により,同一CARS光信号を得るためには,多焦点CARS顕微鏡は単焦点顕微鏡に比べて,1スポット当たりの励起光強度を小さくすることができるが,総投入光パワーは逆に大きくなる.そこで,同一CARS信号が期待できる条件で細胞への光ダメージ比較実験を行った.この結果,多焦点CARS顕微鏡が単焦点CARS顕微鏡に比べて光ダメージが少ない傾向が得られた.今後,よりデータを蓄積し,多焦点CARS顕微鏡の優位性を確証するレーザーマニュピレーション,レーザーアブレーションを狙った箇所に照射するために,照射位置を面内方向はガルバノミラー対によって,光軸方向は電動ステージ上に置いたレンズによってコンピュータ制御し,アブレーション用のレーザー光の強度を弱め,共焦点光学系により細胞の形状を観測してから狙った位置に高強度のレーザー光を照射できるようなシステムの設計を行った.超短パルスレーザーのモードロッカーを制御することで,フォムト秒レーザーとCWレーザーに切り替え可能なものとした.高速波長可変多焦点CARS顕微鏡の開発を行い,100ms程度で60nm(800cm-1)の波長走査が可能なシステムを構築した/また,脂肪細胞を用いて,マイクロレンズアレイによってその脂肪分布を30msで十分イメージング可能なことを確認した.培養液中の脂質を重水素化したもので細胞を培養し,エンドサイトーシスによって細胞内に重水素化した培養液を取り込ませ,重水素化した培養液を含む小胞の観察を行った.CD2伸縮振動は2100cm-1付近に現れ,これを観測することで小胞の動きを可視化できた.また,CARSと色素の二光子蛍光を同時に観測できるシステムに改造し,マルチモーダル観測することが可能となった.今後,高精度にレーザー光によって細胞を刺激しその応答を観測する.また,細胞だけでなく,光放射圧によって形成されるタンパク質結晶の形成過程観測等へ応用していく.前年度開発した,レーザーマニュピレーションあるいはレーザーアブレーション用のレーザービームを狙った箇所に照射しながら,コヒーレントアンチストークスラマン散乱(CARS)信号を高速に取得可能なシステムを用いて,光放射圧によって形成される結晶の形成過程観測を行った.試料には,尿素飽和溶液を用い,CN伸縮振動1000 cm-1の観測を行った.結晶化用レーザー光には,CWチタンサファイアレーザー(800 nm, 900 mW, CW)を用い,透過光およびCARSイメージのリアルタイム観測を行った.既に形成された結晶付近にレーザー光を集光したところ,結晶の成長よりもむしろ結晶の消失が観測された.これは照射レーザー光の吸収による温度上昇の影響であると思われる.そこで,溶媒には重水を用い,結晶化用レーザー光を溶液-ガラス界面(ガラスは試料セル)に集光したところ,集光約50秒後, CARS光強度の急激な上昇と,約100秒間に渡る緩やかな上昇が観測された.この変化は透過光強度には現れず,光放射圧による分子濃度上昇が観測された結果であると推察することができる.またレーザー照射7分に,約3分間に渡る大きなCARS光の上昇と,透過光強度の減少が見られた.CARS光強度変化は矩形的であり,急激なCARS光変化が観測された.動画には焦点付近に移動してくる様子は見られなかったため,集光点以外で形成された微結晶がトラップされた可能性は低く,放射圧による結晶核形成とその成長の様子が観測されたものと考えられる.反射共焦点を観測し,かつ光軸方向まで独立に集光位置を移動することが可能な光学系の構築に時間を要したものの,高速波長走査レーザーの開発,細胞培養系が確立され,概ね順調に進展している.24年度が最終年度であるため、記入しない。本年度は最終年度であるため,アプリケーションの開拓へ力を入れたい.
KAKENHI-PROJECT-22360027
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22360027
レーザーアブレーションに対する細胞応答のリアルタイムCARSイメージング
特に,レーザーマニュピレーションを行うことが可能となるために,完全な細胞膜や組織の破壊を行った際の反応を観測するだけでなく,レーザーマニュピレーションにより微小な粒子を細胞膜に擦りつけたり,引っ張ったりすることで起きる,細胞膜の硬化や,細胞内へCa2+の流入時の細胞膜の応答について観測を行う.また,光圧による分子集合の様子のリアルタイムCARS観測だけでなく,SHG同時観測による結晶化の進行について研究を行いたい.24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22360027
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22360027
ナノポアトラップ法を用いた単一ウイルス粒子識別法の創成
本研究では、低アスペクト比ナノポアセンサーを応用発展させ、電気的に1個のナノ粒子や生体分子をナノ細孔中にトラップ/脱トラップさせる技術を新規に開発するとともに、ナノ細孔中に捕捉した単一ウイルス粒子のインピーダンス計測を行い、その電気容量や電気伝導率による1粒子識別の実証を目的した。ナノポアトラップ法による単一粒子の表面電荷状態の識別を実証することに成功した。さらに、埋込み電極対を用いた横方向電流計測では、単一粒子のトラップに起因した電極表面の電気二重層の変化によるものと考えられる過渡的な電流応答を観測することができた。本研究では、低アスペクト比ナノポアセンサーを応用発展させ、電気的に1個のナノ粒子や生体分子をナノ細孔中にトラップ/脱トラップさせる技術を新規に開発するとともに、ナノ細孔中に捕捉した単一ウイルス粒子のインピーダンス計測を行い、その電気容量や電気伝導率による1粒子識別の実証を目的した。ナノポアトラップ法による単一粒子の表面電荷状態の識別を実証することに成功した。さらに、埋込み電極対を用いた横方向電流計測では、単一粒子のトラップに起因した電極表面の電気二重層の変化によるものと考えられる過渡的な電流応答を観測することができた。本研究では、低アスペクト比ナノポアセンサーを応用発展させ、電気的に1個のナノ粒子や生体分子をナノ細孔中にトラップ/脱トラップさせる技術を新規に開発することを目的とした。また、この手法を駆使することで、ゲーティングナノポア構造を用いてナノ細孔中に捕捉した単一ウイルス粒子のインピーダンス計測を行い、その電気容量や電気伝導率による1粒子識別を実証することで、分子の体積以外の情報を得ることができる新しいナノポアセンシング技術を創成することを目指した。低アスペクト比構造を有するナノポアを用いて、当該ナノポアの直径より小さい粒径を有するポリスチレン粒子のトラップ現象を、ポアを通るイオン電流計測を通して調べた。その結果、ポアに単一粒子が電気泳動的に補足されたことを示唆するイオン電流の減少が観測された。また、このナノポアトラップ法を応用し、異なる表面修飾が施されたポリスチレン粒子(粒径は同じ)について単一粒子トラップ測定を行い、その時に現れるイオン電流の減少量を指標として、ポリスチレン粒子の表面電荷密度の違いを識別することが可能であることを明らかにした。さらに、ナノポアにナノ電極対を組み込んだデバイスを作製し、当該ナノ電極間に生じるイオン電流を測定したところ、ナノポアトラップ法により単一ナノ粒子が捕捉されると同時に、ナノ電極間の電流が過渡応答を示した。これは、トラップされたナノ粒子によって、ナノ電極表面近傍に形成された電気二重層の状態が変化したことに起因する現象であると考えられる。以上のように、ナノポアトラップ法を基盤とした検体の体積以外の情報を得ることができる新しいナノポアセンシング技術を創成することに成功した。
KAKENHI-PROJECT-25600061
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25600061
近代日本の「経済大国化」に関する基礎的研究―大正期を中心に―
今年度は、本研究の最初の年度であるため、基礎的な調査を重点的に実施した。第一に、日本国内での史料調査を行った。第一次世界大戦は日本の政治経済に大きな変化を迫ったが、それに積極的に対応しようとした政治勢力や地域に関する史料を収集した。具体的には、国立国会図書館憲政資料室で政治家や官僚の一次史料、北九州市立自然史・歴史博物館で安川敬一郎と松本健次郎の史料、福井県文書館で大戦期の福井県に関する史料を調査した。第二に、第一次世界大戦後における日本の政治経済的変化を、東アジアに大きな利害をもっていた諸外国がどのように捉えていたのかに関する検討を行った。なかでも、イギリスの動向に注目し、イギリス国立公文書館では内閣やイギリス外務省(Foreign Office)、HSBC Archives in Londonではロンドン、香港、上海における香港上海銀行に経済活動に関する調査を行うとともに、収集した史料の分析をした。日本経済の変化やそれにともなう日本の対外経済進出の活発化をイギリス側がどのように見ていたのかに関する検討を行った。以上のような調査をもとに、第一に、第一次世界大戦を契機に、日本側では経済面だけではなく、思想面(特に日中関係に関するもの)、国際関係的側面でも大きな変化が見られるようになったこと、第二に、そうした日本の変化にイギリスを中心とする欧米諸国も注意を払っていたことを明らかにした。第一に、国内はもとより、海外での調査を行うなど史料調査を重点的に行った。日英両国の外務省や金融機関、日本の政治家や官僚に関する史料を収集することができた。ただし、イギリスの政治家や外務省以外の官僚組織、その他アメリカの史料調査にまでは手を広げることができなかった。第二に、収集した史料の分析を行うなど研究成果を出しつつあると同時に、次年度以降の作業方針をより明確にすることができた。第三に、研究会などで研究成果を発表する場を設け、本研究の成果や今後の作業方針を検討した。その際、日本近現代史のみならず、隣接諸分野の研究者にも積極的にコメントをいただくことができた。第一に、引き続き国内外で史料調査を行う。特に、今年度の課題となったイギリスやアメリカでの調査が必要である。イギリスでは、イギリス国立公文書館で外交文書のほか財務省関係の史料を、アメリカでは、アメリカ国立公文書館で国務省関係の史料やハーバード大学でモルガン商会に関する史料を調査する予定である。第二に、今年度と次年度に収集した史料の分析を行う。第一次世界大戦を契機とした諸分野における日本の変化を検討すると同時に、こうした日本の変化を諸外国、特にイギリス、アメリカ、中国などがどのように捉えていたのかを一次史料に基づきながら考察する。第三に、研究成果の発信、特に、海外の学会での発表である。すでに国内の学会や研究会で報告することが予定されており、国外での報告についても、申請中である。今年度は、本研究の最初の年度であるため、基礎的な調査を重点的に実施した。第一に、日本国内での史料調査を行った。第一次世界大戦は日本の政治経済に大きな変化を迫ったが、それに積極的に対応しようとした政治勢力や地域に関する史料を収集した。具体的には、国立国会図書館憲政資料室で政治家や官僚の一次史料、北九州市立自然史・歴史博物館で安川敬一郎と松本健次郎の史料、福井県文書館で大戦期の福井県に関する史料を調査した。第二に、第一次世界大戦後における日本の政治経済的変化を、東アジアに大きな利害をもっていた諸外国がどのように捉えていたのかに関する検討を行った。なかでも、イギリスの動向に注目し、イギリス国立公文書館では内閣やイギリス外務省(Foreign Office)、HSBC Archives in Londonではロンドン、香港、上海における香港上海銀行に経済活動に関する調査を行うとともに、収集した史料の分析をした。日本経済の変化やそれにともなう日本の対外経済進出の活発化をイギリス側がどのように見ていたのかに関する検討を行った。以上のような調査をもとに、第一に、第一次世界大戦を契機に、日本側では経済面だけではなく、思想面(特に日中関係に関するもの)、国際関係的側面でも大きな変化が見られるようになったこと、第二に、そうした日本の変化にイギリスを中心とする欧米諸国も注意を払っていたことを明らかにした。第一に、国内はもとより、海外での調査を行うなど史料調査を重点的に行った。日英両国の外務省や金融機関、日本の政治家や官僚に関する史料を収集することができた。ただし、イギリスの政治家や外務省以外の官僚組織、その他アメリカの史料調査にまでは手を広げることができなかった。第二に、収集した史料の分析を行うなど研究成果を出しつつあると同時に、次年度以降の作業方針をより明確にすることができた。第三に、研究会などで研究成果を発表する場を設け、本研究の成果や今後の作業方針を検討した。その際、日本近現代史のみならず、隣接諸分野の研究者にも積極的にコメントをいただくことができた。第一に、引き続き国内外で史料調査を行う。特に、今年度の課題となったイギリスやアメリカでの調査が必要である。イギリスでは、イギリス国立公文書館で外交文書のほか財務省関係の史料を、アメリカでは、アメリカ国立公文書館で国務省関係の史料やハーバード大学でモルガン商会に関する史料を調査する予定である。第二に、今年度と次年度に収集した史料の分析を行う。第一次世界大戦を契機とした諸分野における日本の変化を検討すると同時に、こうした日本の変化を諸外国、特にイギリス、アメリカ、中国などがどのように捉えていたのかを一次史料に基づきながら考察する。第三に、研究成果の発信、特に、海外の学会での発表である。
KAKENHI-PROJECT-18K12500
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K12500
近代日本の「経済大国化」に関する基礎的研究―大正期を中心に―
すでに国内の学会や研究会で報告することが予定されており、国外での報告についても、申請中である。
KAKENHI-PROJECT-18K12500
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K12500
地方小都市における最先端ITを用いた認知症トータルケアネットワークシステムの構築
本研究は、研究者らが開発を進めてきた最先端最高水準の遠隔ケアシステム(登録商標名:Salus Vision、通称サラス)を用いて、認知症予防から終末期ケアに至るまでの、高齢者への質の高いケアを保証する地域包括型の認知症トータルケアネットワークシステム(認知症TNS)の構築を目的とする。平成29年度繰越金と平成30年度の研究は主として以下のとおりである。1.平成29年度繰越金による研究実績1サラスのバージョンアップ等に伴う運用マニュアルの作成2サラスと連動した、IoTによる認知症高齢者の見守り(非カメラ、非接触型のドップラー(24GHzマイクロ波)センサによるモニタリングシステム)とVital Data収集システムの開発2.平成30年度の研究実績1研究対象過疎地域で認知症の在宅医療、老健施設運営等に取り組んでいる県立の基幹病院と協働で、サラスと連動した認知症の予防と早期発見システム(SalusTalk)の開発を昨年に引き続き行った。2クラウド型多職種連携システム「サラス-エイル」よる運用が可能な、iPhone/スマートフォンのカメラを活用した褥瘡早期診断法(Salus-Smart SEDBS(Smart System for Early Detection of Bed Sore ))の開発改良を昨年に引き続き行った。3「サラス」と連動する、特定健診受診者のフォローアップ用クラウド型情報解析・閲覧システムである「サラスーフォシュク(Salus-FoSSHCH):Follow-up System for Specific Health Checkup)」の開発改良を昨年に引き続き行った。4中国における認知症TNS等の導入の可能性について、揚州大学看護学院と昨年に引き続き取り組んだ。本研究は4年間(平成28年度平成31年度)で成果をあげることを目指しており、今年度(平成30年度)までに、本研究の目標達成に必要な機器の開発改良が概ね終了した。来年度は国内外で実証試験を行いながら、機器とシステムの開発改良を同時並行的に進める予定である。この研究の成果の一部は既に学会等で発表しており、今後の認知症予防・早期発見、褥瘡予防・早期発見だけでなく、IOTやAIを活用した地域包括ケアシステム構築の一助となるものと考える。今年度までの具体的な成果は以下のとおりである。3サラスと連動した認知症の予防と早期発見システム(SalusTalk)の開発4サラスと連動したIoTによる認知症高齢者の見守り(非カメラ、非接触型のドップラー(24GHzマイクロ波)センサによるモニタリングシステム)とVital Data収集システムの開発2019年度は、これまでに開発した機器とシステムの実証試験を国内外で繰り返し行いながら、機器とシステムの開発改良を同時並行的に進める予定である。加えて、AIによる認知症予防・早期発見と褥瘡予防・早期発見システムの構築とその評価、認知症の誘因となる生活習慣病等特定健診受診者のフォローアップ態勢の確立、最先端・簡易・安価な、非カメラ・非接触型のドップラー(24GHzマイクロ波)センサによるモニタリングによる認知症高齢者の離床探知とVital Data(体温、脈拍、血圧、心拍数)収集と解析システムの開発、IOTやAIを活用した認知症の地域包括ケアシステムの構築等を通して、認知症の人々とその家族介護者に対する効果的な支援の在り方を探究する。本研究は、研究者らが開発を進めてきた最先端最高水準の遠隔ケアシステム(登録商標名:Salus Vision、通称サラス)を用いて、今後、特に過疎・高齢化・社会資源不足等に直面することが予想される地方小都市(人口10万人未満)における認知症予防から終末期ケアに至るまでの、高齢者への質の高いケアを保証する地域包括型の認知症トータルケアネットワークシステム(認知症TNS)の構築を目的とする。平成28年度は、主として研究環境の構築を目途して以下の活動研究を行った。1)研究対象自治体の関係部署(健康福祉)、地域包括ケアステーション、(精神科)病院、訪看ST、老健施設等への協力依頼を行った。3)認知症には生活習慣病が誘因となっていることが多く、特定健診データや問診票等を活用した効果的なフォローアップ態勢の構築が課題となっている。そこで、研究者らが開発してきた、次世代型遠隔ケアシステム「サラス」を利活用してクラウド型情報解析・閲覧システムを構築し、特定健診受診者のフォローアップ等に活用することとした。そのための試作ソフト(サラスーフォシュク(Salus-FoSSHCH):Follow-up System for Specific Health Checkup)を開発した。本研究は4年間(平成28年度平成31年度)で成果をあげることを目指しており、今年度は、主として研究環境の構築を目途していた。幸い、研究対象自治体の関係部署(健康福祉)、地域包括ケアステーション、(精神科)病院、訪看ST、老健施設等の協力を得ることが可能となったこと、クラウド型多職種連携システム「サラス-エイル」よる運用が可能な褥瘡早期診断装置(Salus-Smart SEDBS(Smart System for Early Detection of Bed Sore ))の開発を行ったこと、認知症の誘因となる生活習慣病等特定健診受診者のフォローアップのための試作ソフト(サラスーフォシュク(Salus-FoSSHCH):Follow-up System for Specific Health Checkup)を開発したこと等、来年度に繋がる成果が得られた。本研究は、研究者らが開発を進めてきた最先端最高水準の遠隔ケアシステム(登録商標名:Salus Vision、通称サラス)を用いて、認知症予防から終末期ケアに至るまでの、高齢者への質の高いケアを保証する地域包括型の認知症トータルケアネットワークシステム(認知症TNS)の構築を目的とする。
KAKENHI-PROJECT-16H02698
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H02698
地方小都市における最先端ITを用いた認知症トータルケアネットワークシステムの構築
平成29年度繰越金と平成30年度の研究は主として以下のとおりである。1.平成29年度繰越金による研究実績1サラスのバージョンアップ等に伴う運用マニュアルの作成2サラスと連動した、IoTによる認知症高齢者の見守り(非カメラ、非接触型のドップラー(24GHzマイクロ波)センサによるモニタリングシステム)とVital Data収集システムの開発2.平成30年度の研究実績1研究対象過疎地域で認知症の在宅医療、老健施設運営等に取り組んでいる県立の基幹病院と協働で、サラスと連動した認知症の予防と早期発見システム(SalusTalk)の開発を昨年に引き続き行った。2クラウド型多職種連携システム「サラス-エイル」よる運用が可能な、iPhone/スマートフォンのカメラを活用した褥瘡早期診断法(Salus-Smart SEDBS(Smart System for Early Detection of Bed Sore ))の開発改良を昨年に引き続き行った。3「サラス」と連動する、特定健診受診者のフォローアップ用クラウド型情報解析・閲覧システムである「サラスーフォシュク(Salus-FoSSHCH):Follow-up System for Specific Health Checkup)」の開発改良を昨年に引き続き行った。4中国における認知症TNS等の導入の可能性について、揚州大学看護学院と昨年に引き続き取り組んだ。本研究は4年間(平成28年度平成31年度)で成果をあげることを目指しており、今年度(平成30年度)までに、本研究の目標達成に必要な機器の開発改良が概ね終了した。来年度は国内外で実証試験を行いながら、機器とシステムの開発改良を同時並行的に進める予定である。この研究の成果の一部は既に学会等で発表しており、今後の認知症予防・早期発見、褥瘡予防・早期発見だけでなく、IOTやAIを活用した地域包括ケアシステム構築の一助となるものと考える。今年度までの具体的な成果は以下のとおりである。3サラスと連動した認知症の予防と早期発見システム(SalusTalk)の開発4サラスと連動したIoTによる認知症高齢者の見守り(非カメラ、非接触型のドップラー(24GHzマイクロ波)センサによるモニタリングシステム)とVital Data収集システムの開発本研究は、研究者らが開発を進めてきた最先端最高水準の遠隔ケアシステム(登録商標名:Salus Vision、通称サラス)を用いて、今後、特に過疎・高齢化・社会資源不足等に直面することが予想される地方小都市(人口10万人未満)における認知症予防から終末期ケアに至るまでの、高齢者への質の高いケアを保証する地域包括型の認知症トータルケアネットワークシステム(認知症TNS)の構築を目的とする。平成29年度に行った研究は以下のとおりである。
KAKENHI-PROJECT-16H02698
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H02698
プロモータートラップを用いたT細胞活性化に伴って誘導される遺伝子の検索
<背景と目的>本研究は、マーカー遺伝子がランダムに挿入されたプロモータートラップ細胞ライブラリーを用いて、未知遺伝子も含め、特定の発現パターンを示す遺伝子群を網羅的に解析することを目的とする。具体的には、T細胞をモデルとしてGFP、或いはβ-Geoをマーカーとしたプロモータートラップ細胞ライブラリーを構築し、様々なT細胞抗原受容体(TCR)刺激に伴って発現が上昇する遺伝子(群)を探索する。以上の解析により方法論を確率し、広く様々な細胞への応用をはかる。また、得られた細胞クローンをさらに刺激の種類、時間、免疫抑制剤の有無で比較し、特異的に誘導される遺伝子のパターンを明らかにする。すなわち、多様なT細胞応答を規定する遺伝子発現パターンを網羅的に解析するのみならず、既知遺伝子だけでなく、未知遺伝子をも対象としたクラスター解析の方法論確立を目的としたものである。<検討結果>1)GFP、blastcidine deaminase-Geoをレポーターとしたレトロウイルストラップベクターを構築し、実際にトラップベクターとして機能することを確認した。2)TCR刺激に対して死を起こさない抗原特異的T細胞ハイブリドーマ2B4PTを樹立し、この細胞を用いてT細胞トラップライブラリーを構築した。3)T細胞トラップライブラリーより、抗TCR抗体刺激に応答してレポーター遺伝子の発現が有意に上昇するクローンを、GFPを指標としたcell sorting、β-Geoを用いた薬剤耐性能により取得した。それらの応答クローンより、RACE法を用いてトラップされた遺伝子を単離した。単離された遺伝子はそれぞれ、known4個、unknown3個であり、何れもこれまでTCR下流での誘導が報告されていないものであった。<考察>本法で用いたトラップベクターを用いることで、これまでTCR刺激による誘導が報告されていない遺伝子、特に転写、翻訳に関わる因子を効率よく同定できることが判明した。今後このトラップ細胞ライブラリーのサイズを拡大し、刺激の差異によって発現が変化する遺伝子を網羅的に探索していく予定である。<背景と目的>本研究は、マーカー遺伝子がランダムに挿入されたプロモータートラップ細胞ライブラリーを用いて、未知遺伝子も含め、特定の発現パターンを示す遺伝子群を網羅的に解析することを目的とする。具体的には、T細胞をモデルとしてGFP、或いはβ-Geoをマーカーとしたプロモータートラップ細胞ライブラリーを構築し、様々なT細胞抗原受容体(TCR)刺激に伴って発現が上昇する遺伝子(群)を探索する。以上の解析により方法論を確率し、広く様々な細胞への応用をはかる。また、得られた細胞クローンをさらに刺激の種類、時間、免疫抑制剤の有無で比較し、特異的に誘導される遺伝子のパターンを明らかにする。すなわち、多様なT細胞応答を規定する遺伝子発現パターンを網羅的に解析するのみならず、既知遺伝子だけでなく、未知遺伝子をも対象としたクラスター解析の方法論確立を目的としたものである。<検討結果>1)GFP、blastcidine deaminase-Geoをレポーターとしたレトロウイルストラップベクターを構築し、実際にトラップベクターとして機能することを確認した。2)TCR刺激に対して死を起こさない抗原特異的T細胞ハイブリドーマ2B4PTを樹立し、この細胞を用いてT細胞トラップライブラリーを構築した。3)T細胞トラップライブラリーより、抗TCR抗体刺激に応答してレポーター遺伝子の発現が有意に上昇するクローンを、GFPを指標としたcell sorting、β-Geoを用いた薬剤耐性能により取得した。それらの応答クローンより、RACE法を用いてトラップされた遺伝子を単離した。単離された遺伝子はそれぞれ、known4個、unknown3個であり、何れもこれまでTCR下流での誘導が報告されていないものであった。<考察>本法で用いたトラップベクターを用いることで、これまでTCR刺激による誘導が報告されていない遺伝子、特に転写、翻訳に関わる因子を効率よく同定できることが判明した。今後このトラップ細胞ライブラリーのサイズを拡大し、刺激の差異によって発現が変化する遺伝子を網羅的に探索していく予定である。
KAKENHI-PROJECT-13206010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13206010
単一試行脳波を利用したサイレントスピーチ認識システム-連続音声認識への拡張-
以前の科研費(基盤研究(C)サイレントスピーチBCI、平成23年度25年度)では、頭皮脳波を利用したsilent speech Brain-Computer Interface in Japanese(SSBCIJ)において、個々のサイレント母音とサイレントなひらがな2文字のdecodingにとどまっていた。本研究では、健常者において、日本語で、サイレントの3文字以上から成る単語および文節のdecodingを可能にするアルゴリズムの開発と、患者(脊髄性筋萎縮症I型)への適用を目指した、real-time SSBCIJシステムの設計を検討した。脳波を利用したサイレントスピーチ認識システム(SSRS)において、SS時の脳波から、発話時の脳波と同じ成分(運動準備電位、BP)を発見した(世界初)。BPに注目すれば、他のタスクによるBCIの開発が可能。頭皮脳波からサイレント母音の認識に成功(健常者10名で認識率100%)。頭皮脳波からサイレント子音の認識に成功。母音認識器と子音認識器の組み合わせにより、将来、すべてのサイレントひらがな50音を認識できる。ロボットや車椅子などの機械操作に加えて、障害者や高齢者との意思疎通が可能。サイレントシーズン認識において、当初、「はる」と「なつ」のみだったが、残り「あき」、「ふゆ」も含めて、認識率がそれぞれ91%、89%、75%、100%に到達した。将来の目標システム、サイレントスピーチ(SS)時に計測される脳波から、real timeでSSの内容を解読して、日本語で表示するreal-time SSBCIJ(silent speech Brain-Computer Interface in Japanese)の中で、脳波から心の声を解読するために必要な、脳波と音声情報の関係を記述する学習モデルを構築中である。この学習モデルは、認知心理学で知られているself-monitoring(Indefrey and Levelt, 2004)(自身の発話およびサイレントスピーチを知覚・認知することができる)に注目し、この現象を説明し得る生理・心理モデルの一つ、HSFC(hierarchical state feedback control)モデル(Hickok, 2012)のアナロジーから、RNN(recurrent neural network)を採用している。従来から知られているRNNは、1Elman network(Elman, 1990)、2Time-delay neural network(Waibel ela., 1989)、3ESN(echo state network)(Jaeger and Haas, 2004)などである。今年度は、1のElman networkを採用し、ひらがな1文字のdecodingに挑戦した。その際、脳波は、将来の実用化を考慮して、4チャネルのドライ電極で計測され、音声情報は、生の音声信号およびそのスペクトログラムを利用した。その結果、3種類(「あ」、「だ」、「ぱ」)のひらがな1文字の認識率は偶然に比べて有意に高かった。まだ文字数は少ないが、当初の連続2文字に比べて、今年度の学習モデルは、ひらがな50音すべてを網羅する能力を秘めており、実用化がかなり見えてきた研究成果になっている。頭皮脳波を利用して、健常者でサイレント母音のdecoding、患者でサイレント単語および音節のdecodingを試みた。患者のdecodingでは、EEG template matchingを試みた。EEG templateとは、日本語の各拍に対応する100-ms EEGである。27個の音節から成る文章を患者がサイレントスピーチした時の脳波のdecodingを行った。その結果、27個中19個の音節が少なくとも1つの拍を正しく抽出できた。健常者の脳波電極位置はF3、F5、F7、FC5とした。認識率は平均でFC5が最も良かった。このFC5において、母音の中で"あ"が最も高かった。認識率は5-fold cross validationを採用した。尚、患者の結果については倫理的な観点でここには記載出来ない。以前の科研費(基盤研究(C)サイレントスピーチBCI、平成23年度25年度)では、頭皮脳波を利用したsilent speech Brain-Computer Interface in Japanese(SSBCIJ)において、個々のサイレント母音とサイレントなひらがな2文字のdecodingにとどまっていた。本研究では、健常者において、日本語で、サイレントの3文字以上から成る単語および文節のdecodingを可能にするアルゴリズムの開発と、患者(脊髄性筋萎縮症I型)への適用を目指した、real-time SSBCIJシステムの設計を検討した。日本語ひらがなを構成するすべてのサイレント子音の認識に挑戦。実用化の観点から、あらかじめ何がサイレントスピーチされたか分からない場合の認識、音声信号データベースの活用を試みる。学習アルゴリズムとして、deep learningなどの応用を検討する。SSBCIJの学習モデルとして、他のRNN、特に、Time-delay neural networkとESNを利用する。更に、脳波データのreal time処理の方法を検討する。そのために、健常者の脳波データ(発話とサイレントスピーチ)を大量に収集する。生体情報工学
KAKENHI-PROJECT-15K00276
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K00276
保護した隣接ジオールによる不斉空間構築と不斉合成への活用
鎖状アリリック化合物として基質Z-(TBDMSO)CHCH(TBDMSO)-R^1)C=XR^2R^3(1)を設計した。本基質は構造単位,-(TBDMSO)C^*HC^*H(TBDMSO)-,をコントローラーとし,これによって基底状態の立体配座を制御しようとするものである。その結果,それに連結する置換基(R^1)C=XR^2R^3のジアステレオ面が極めて高い選択性で区別可能となる。本研究ではこの新しい鎖状立体制御戦略を立体選択的窒素官能基導入法に展開し以下の成果を得た。(1)置換基-(R^1)C=XR^2R^3を-HC=CHCOOEtとした基質に対して種々のニトロンを反応させたところ,親双極子剤すなわち基質の炭素・炭素二重結合のジアステレオ面は完全に区別されることが判明した。(2)置換基-(R^1)C-XR^2R^3を-HC=N^+(O^-)Bnとした基質に対して種々のα,β-不飽和エステルを反応させたところ,1,3-双極子剤の炭素・窒素二重結合のジアステレオ面は完全に区別されることが判明した。(1),(2)の結果はアミノポリオールの絶対配置制御合成法が開発されたことを意味し,今後シアル酸誘導体の合成に応用する。(3)置換基-(R^1)C=XR^2R^3を-HC=N^+(O^-)Bn,置換基Zを-HC=CHCH_2OBnとした基質の分子内環化付加反応を行ったところこれまでに未知の反応経路,すなわちビシクロ[3.2.0]型の反応が進行した。得られたイソキサゾリジン環の環元的切断を行ったところ高収率で光学活性シクロブチルアミン誘導体に導かれた。この結果,新しい光学活性シクロブチルアミンの合成法が完成された。鎖状アリリック化合物として基質Z-(TBDMSO)CHCH(TBDMSO)-R^1)C=XR^2R^3(1)を設計した。本基質は構造単位,-(TBDMSO)C^*HC^*H(TBDMSO)-,をコントローラーとし,これによって基底状態の立体配座を制御しようとするものである。その結果,それに連結する置換基(R^1)C=XR^2R^3のジアステレオ面が極めて高い選択性で区別可能となる。本研究ではこの新しい鎖状立体制御戦略を立体選択的窒素官能基導入法に展開し以下の成果を得た。(1)置換基-(R^1)C=XR^2R^3を-HC=CHCOOEtとした基質に対して種々のニトロンを反応させたところ,親双極子剤すなわち基質の炭素・炭素二重結合のジアステレオ面は完全に区別されることが判明した。(2)置換基-(R^1)C-XR^2R^3を-HC=N^+(O^-)Bnとした基質に対して種々のα,β-不飽和エステルを反応させたところ,1,3-双極子剤の炭素・窒素二重結合のジアステレオ面は完全に区別されることが判明した。(1),(2)の結果はアミノポリオールの絶対配置制御合成法が開発されたことを意味し,今後シアル酸誘導体の合成に応用する。(3)置換基-(R^1)C=XR^2R^3を-HC=N^+(O^-)Bn,置換基Zを-HC=CHCH_2OBnとした基質の分子内環化付加反応を行ったところこれまでに未知の反応経路,すなわちビシクロ[3.2.0]型の反応が進行した。得られたイソキサゾリジン環の環元的切断を行ったところ高収率で光学活性シクロブチルアミン誘導体に導かれた。この結果,新しい光学活性シクロブチルアミンの合成法が完成された。
KAKENHI-PROJECT-05234218
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05234218
企業都市における,住宅需給構造の特性について(北九州市八幡を中心として)
北九州市八幡地区は、明治以後鉄鋼業を中心に発展した都市である。素材型都市として古くから社宅を大量につくってきた。しかし昭和35年以後ILOの勧告や企業合理化・国際化、それに労働者の要求とも相まって「持ち家」政策が推進された。それでも現在17000戸(昭和59年調査)の社宅が残っており、大都市のなかでも特異な状況の基にある。本研究では社宅の変化や住み替状況、対象となる民間の住宅市場を通して企業都市における住宅需給構造の特性を考察しようとするものである。本報告は次の2部から構成されている。第【I】部は企業都市北九州市における社宅の変遷を、アンケート調査及び実態調査を通じて考察したものであるこれは下記の3編からなる。(1).北九州市における企業の所有または管理する住宅の動向について(2).八幡地区における鉄鋼業の給与住宅について(3).八幡地区における化学工業の給与住宅について次に第【II】部としては、社宅から持ち家指向を受けとめる北九州市の民間分譲住宅市場の解明と、住み替の対象となる住宅供給公社(旧住宅協会)を取り上げ、入居申込調査を行った。これは下記の4編からなる。(1).北九州市住宅供給公社の分譲住宅申込にみる、社宅からの住み替について(2).公社分譲住宅の類型化について(3).公社分譲住宅申し込書にみる社宅階層の特徴について(4).北九州都市圏における住宅立地動向の特性について以上の各編の内第【I】部(1)及び(2)と第【II】部(1)については、別紙の機関においてその重旨を発表した。残る各編の内第【II】部(2)(3)(4)は一応のまとまりができたので、その要旨を附加した。残る一編については昭和62年度中に取りまとめ発表する予定である。北九州市八幡地区は、明治以後鉄鋼業を中心に発展した都市である。素材型都市として古くから社宅を大量につくってきた。しかし昭和35年以後ILOの勧告や企業合理化・国際化、それに労働者の要求とも相まって「持ち家」政策が推進された。それでも現在17000戸(昭和59年調査)の社宅が残っており、大都市のなかでも特異な状況の基にある。本研究では社宅の変化や住み替状況、対象となる民間の住宅市場を通して企業都市における住宅需給構造の特性を考察しようとするものである。本報告は次の2部から構成されている。第【I】部は企業都市北九州市における社宅の変遷を、アンケート調査及び実態調査を通じて考察したものであるこれは下記の3編からなる。(1).北九州市における企業の所有または管理する住宅の動向について(2).八幡地区における鉄鋼業の給与住宅について(3).八幡地区における化学工業の給与住宅について次に第【II】部としては、社宅から持ち家指向を受けとめる北九州市の民間分譲住宅市場の解明と、住み替の対象となる住宅供給公社(旧住宅協会)を取り上げ、入居申込調査を行った。これは下記の4編からなる。(1).北九州市住宅供給公社の分譲住宅申込にみる、社宅からの住み替について(2).公社分譲住宅の類型化について(3).公社分譲住宅申し込書にみる社宅階層の特徴について(4).北九州都市圏における住宅立地動向の特性について以上の各編の内第【I】部(1)及び(2)と第【II】部(1)については、別紙の機関においてその重旨を発表した。残る各編の内第【II】部(2)(3)(4)は一応のまとまりができたので、その要旨を附加した。残る一編については昭和62年度中に取りまとめ発表する予定である。
KAKENHI-PROJECT-59550403
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-59550403
エイジングドミノ理論に基づくフレイルの病態解明と治療法の探索
フレイルの基盤を成す臓器老化の過程には階層構造が存在することが想定され、その構造を明らかにすることで、フレイルと老年症候群の予防や治療戦略へつなげることが本研究の目的である。研究の結果、血管をフレイル関連臓器の上流臓器と捉えた階層構造を示し、その機序に慢性炎症を軸とした炎症波及・拡大が寄与することを明らかにした。具体的には、自然老化マウスや老化促進マウスを用いた検討により、血管炎症の誘導が脳・神経や骨格筋の加齢変化と機能低下を加速することがわかった。また血管炎症がIL-6などの血中炎症性サイトカインを上昇させることで炎症制御機構の破綻を介した下流臓器への炎症波及・拡大機序が明らかになった。加齢に伴う臓器老化の階層構造について老化マウスや疾患マウスを用いて検討した。特に筋骨格系と脳神経系の階層関係に注目し、自然老化の若齢(23ヶ月)、中齢(12ヶ月)、老齢(24ヶ月)のマウスを用いて行動観察を行った。運動能力や筋力についてはロータロッド試験、グリップストレングステストを用いて評価、また、学習能力についてはモリス水迷路試験で評価を行った。その結果、運動能力や筋力は若齢に比べ、中齢と老齢マウスにおいて低下しているのに対して、学習能力は老齢マウスのみ低下していることが分かった。これらの結果から身体的フレイルと精神的フレイルは関連していること、さらに身体的フレイルから精神的なフレイルへと段階的に進行することが明らかになった。また、臓器老化の階層構造に関して、血管老化が脳神経系の老化に影響を及ぼす上流関係であるかを検討した。具体的には老化促進マウスであるSAMP8マウスに大動脈瘤の血管病態モデルを組み合わせると対照マウスであるSAMR1マウスに比べて、認知機能が著明に低下した。この階層関係を説明する機序機序として、大動脈瘤が炎症を主体とする病態であることから、慢性炎症が機序になりうる可能性が高い。さらに、性ホルモンが臓器老化や老化の連鎖を阻止する中核因子であるかについても検討した。精巣摘出処置を行った野生型マウスに大動脈瘤の血管病態モデルを組み合わせるとテストストロン低下に伴い大動脈瘤の形成と進行が著明に惹起されることが明らかになり、性ホルモンの血管老化抑制作用が示された。血管病変にマクロファージの浸潤が認められることやマクロファージのIL-6発現が上昇していることから性ホルモンの低下が炎症を惹起することが明らかになった。整えた研究実施体制のもと、自然老化や老化促進マウスの確保および調達が円滑であったことやマウスの疾患誘導が安定した手技で行われたことが臓器別の専門家による適切な評価や解析につながった。平成28年度は自然老化マウス(オス、若齢:23ヶ月、中齢:12ヶ月、老齢:24ヶ月)を用いて、フレイル関連臓器の加齢変化および機能低下を継時的に検討した。具体的に骨格筋と海馬の加齢変化を形態学的、病理組織学的に評価した結果、骨格筋においては、加齢に伴い筋線維数の低下とともに筋線維の間質拡大や脂肪化が進行することが分かった。海馬においては加齢に伴う神経細胞数の低下とIBA1とMHCII二重陽性の活性化ミクログリア数が増加することが明らかになった。さらに、運動能力および筋力(ロータロッド試験、グリップストレングステスト)を評価したところ、中齢、老齢マウスで有意な低下が認められた。一方、学習能力(モリス水迷路試験)の評価では老齢マウスのみで低下が認められることから、筋骨格系のフレイルから脳・神経系のフレイルへ段階的にフレイルが進行することが明らかになった。また、血管炎症は血管老化の重要な要因であり、心血管疾患の発症・進行のみならずフレイル関連臓器の老化や機能低下に重要な役割をすることが想定される。本研究では大動脈瘤のマウスモデルを用いて、血管炎症が筋骨格系のフレイル及び脳・神経系のフレイルに及ぼす影響を検討した。具体的に若齢と中齢マウスで大動脈瘤を誘導し、運動能力および筋力(ロータロッド試験、グリップストレングステスト)、学習能力(モリス水迷路試験)を評価した結果、若齢マウスにおいては大動脈瘤の誘導により、運動能力および筋力がsham処置マウスに比べて有意に低下した。しかし、学習能力については有意な差は認められなかった。一方、中齢マウスの大動脈瘤誘導群ではsham処置マウスに比べて運動能力および筋力と学習能力いずれも有意な低下が認められることから、血管炎症による老化が筋骨格系のフレイルおよび脳・神経系のフレイルを加速する上流関係にあることが示された。フレイルの基盤を成す臓器老化の過程には階層構造が存在することが想定され、その階層構造を明らかにすることで、フレイルと老年症候群の予防・治療の開発へつなげることが本研究の目的である。特に加齢に伴う炎症制御機構の破綻が血管、神経、筋・骨などのフレイル関連臓器への炎症反応の波及・拡大に寄与する仮説のもと、臓器老化の階層構造の解明を追求する。今までの検討により筋、神経などのフレイル関連臓器の加齢変化を形態学的、病理組織学的な評価することができた。さらに、フレイル関連臓器の機能低下を継時的に観察することで筋骨格系から脳神経系へとフレイルが段階的に進行する構造が明らかになった。また、血管老化が筋骨格系および脳神経系のフレイルを加速することが明らかになり、その機序としては慢性炎症が関わることを突き詰めた。
KAKENHI-PROJECT-15H04800
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エイジングドミノ理論に基づくフレイルの病態解明と治療法の探索
今後はフレイル関連臓器に局在する炎症性細胞の形質や炎症性サイトカイン分泌の特徴、SASPを中心に炎症反応の波及・拡大の機序を検討し、フレイルの階層構造を説明できる中核因子を明らかにすることを目指す。平成29年度は、昨年度まで自然老化マウス(C57BL6J、23ヶ月齢、12ヶ月齢、24ヶ月齢)や認知機能障害を呈する老化促進マウスSAM(senescence accelerated mouse) P8を用いて明らかにした脳・神経の加齢変化や血管炎症による老化促進作用を踏まえて、血管炎症が脳・神経老化および機能低下を促進する機序を追求した。具体的には、作用機序として炎症制御機構の破綻を介した炎症の波及や拡大を想定し、加齢や血管炎症による血中炎症性サイトカインの変動を探索した。その結果、SAMP8マウスに血管炎症を誘導するとsham処置群に比べて、血中IL-6やGM-CSFが上昇することが分かった。また自然老化マウスにおいても、加齢に伴い血中IL-6やGM-CSFが増加傾向であることを明らかにした。さらにSAMP8マウスにおいては血中IL-6の濃度と学習能力(quadrant time)が負の相関関係にあることも分かり、血管炎症による血中IL-6やGM-CSFの上昇が脳・神経の炎症や老化に関わる可能性が示唆された。我々が以前報告した血管炎症による血中マクロファージ数の増加やGM-CSFがマクロファージから分泌される結果を踏まえると、血管炎症から脳・神経の炎症・老化への作用には血中炎症性サイトカインによる直接的な作用とともに、マクロファージをはじめとする炎症性細胞の活性化を介した間接的な作用、またマクロファージとミクログリアとの相互作用も関与する可能性が示唆された。フレイルの基盤を成す臓器老化の過程には階層構造が存在することが想定され、その構造を明らかにすることで、フレイルと老年症候群の予防や治療戦略へつなげることが本研究の目的である。研究の結果、血管をフレイル関連臓器の上流臓器と捉えた階層構造を示し、その機序に慢性炎症を軸とした炎症波及・拡大が寄与することを明らかにした。具体的には、自然老化マウスや老化促進マウスを用いた検討により、血管炎症の誘導が脳・神経や骨格筋の加齢変化と機能低下を加速することがわかった。また血管炎症がIL-6などの血中炎症性サイトカインを上昇させることで炎症制御機構の破綻を介した下流臓器への炎症波及・拡大機序が明らかになった。今後は臓器老化の連関および階層構造の詳細について、中核因子として想定される慢性炎症や性ホルモン、抗老化遺伝子Sirt1を中心に分子機序の解明を追究する。本年度はフレイル関連臓器における階層構造の機序解明を追求する。特に炎症制御機構の破綻に注目して、炎症反応の波及・拡大に寄与する炎症性細胞の形質および役割を明らかにする。筋骨格系から脳神経系への階層関係については、加齢に伴う骨格筋への炎症性細胞の浸潤やその形質を形態学的、病理組織学的に評価し、筋由来の炎症性サイトカインやマイオカイン、SASPの特定を試みる。さらに神経細胞の老化や機能不全に骨格筋由来の因子が直接、あるいは炎症性細胞を介して間接的に影響を与えるかについて検討する。血管老化を上流とした臓器老化の階層関係については、血管内に浸潤してきた炎症性細胞の形質を特定し、その役割を明らかにする。昨年度までの結果ではIL-6を中心とした炎症反応の惹起が血管の老化形質を誘導することが分かった。
KAKENHI-PROJECT-15H04800
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ターミナルフラワー等花器分化に関する遺伝子の構造と機能及び普遍性に関する研究
シロイヌナズナの茎頂の生長点の機能の維持に関与しているとされる遺伝子TFL1の内部または近傍にアグロバクテリウムに由来するT-DNAが挿入されることによって生じたと考えられるターミナルフラワー突然変異体ともとの野生型植物を素材にして研究を行った。T-DNAおよび5SrDNAをプローブとする染色体の蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)では、T-DNAは第5染色体の先端にT-DNAのシグナルが観察され、連鎖地図上のTFL1の位置と矛盾しない結果が得られた。次に、回収されたT-DNAに近接するDNA領域の断片をプローブとして野生型植物のゲノムDNAライブラリーから選択された15kbのDNAクローン内部のTFL1を含むと推定される8kbの塩基配列を決定し、ORFおよびプロモーターの検索を行った。その結果、この領域には、5′側にTFL1以外の遺伝子のORFと推定されるもののほか、TFL1を構成する4個のORFが推定された。その最も5′側の推定ORFはATGで始まり、またその上流にTATAボックスと思われる配列が存在したので、第1エクソンと考えられた。また、この推定第1エクソンの5′端から、上流に存在する上記の別の遺伝子までの距離は約2.5kbであり、この中に推定TFL1遺伝子のプロモーターが存在すると考えられる。この推定TFL1遺伝子の全長を知るため、cDNAライブラリーおよびポリ(A)RNAを鋳型とし、ゲノムDNAの一部の配列またはベクターの配列に基くプライマーとポリTプライマーを用いてPCRを行った結果、転写される領域は約700bpと推定された。データベースによるホモロジー検索では、この遺伝子と似た配列をもつ遺伝子は見当たらなかった。シロイヌナズナの茎頂の生長点の機能の維持に関与しているとされる遺伝子TFL1の内部または近傍にアグロバクテリウムに由来するT-DNAが挿入されることによって生じたと考えられるターミナルフラワー突然変異体ともとの野生型植物を素材にして研究を行った。T-DNAおよび5SrDNAをプローブとする染色体の蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)では、T-DNAは第5染色体の先端にT-DNAのシグナルが観察され、連鎖地図上のTFL1の位置と矛盾しない結果が得られた。次に、回収されたT-DNAに近接するDNA領域の断片をプローブとして野生型植物のゲノムDNAライブラリーから選択された15kbのDNAクローン内部のTFL1を含むと推定される8kbの塩基配列を決定し、ORFおよびプロモーターの検索を行った。その結果、この領域には、5′側にTFL1以外の遺伝子のORFと推定されるもののほか、TFL1を構成する4個のORFが推定された。その最も5′側の推定ORFはATGで始まり、またその上流にTATAボックスと思われる配列が存在したので、第1エクソンと考えられた。また、この推定第1エクソンの5′端から、上流に存在する上記の別の遺伝子までの距離は約2.5kbであり、この中に推定TFL1遺伝子のプロモーターが存在すると考えられる。この推定TFL1遺伝子の全長を知るため、cDNAライブラリーおよびポリ(A)RNAを鋳型とし、ゲノムDNAの一部の配列またはベクターの配列に基くプライマーとポリTプライマーを用いてPCRを行った結果、転写される領域は約700bpと推定された。データベースによるホモロジー検索では、この遺伝子と似た配列をもつ遺伝子は見当たらなかった。
KAKENHI-PROJECT-07281211
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07281211
対人コミュニケーションの状況的・関係的モデルの比較文化的研究-自己認識を中心に
本研究は対人コミュニケーション・スタイルの「比較文化研究において、個人主義・集団主義などの文化理論によって予想された結果が得られないことに着眼した。その原因は、文化と行動の間には様々な重要な介入変数が存在し、本研究では相互作用状況と相互作用相手との関係性の諸条件と、こうした条件における自己をどのようにコミュニケーターは認識するのかを取り上げた。状況要因として、競争性・協調性、関係性要因として親密性と地位格差に着目し、さらに自己認識として文化的自己観および自意識の効果を、比較文化的に検討した。比較対象を日本、中国、アメリカ、カナダの4か国とし、一連の研究を行った。本研究は対人コミュニケーション・スタイルの「比較文化研究において、個人主義・集団主義などの文化理論によって予想された結果が得られないことに着眼した。その原因は、文化と行動の間には様々な重要な介入変数が存在し、本研究では相互作用状況と相互作用相手との関係性の諸条件と、こうした条件における自己をどのようにコミュニケーターは認識するのかを取り上げた。状況要因として、競争性・協調性、関係性要因として親密性と地位格差に着目し、さらに自己認識として文化的自己観および自意識の効果を、比較文化的に検討した。比較対象を日本、中国、アメリカ、カナダの4か国とし、一連の研究を行った。本年度は、対人コミュニケーション方略の選好を予測するモデルを検証するため、日米においてデータ収集を実施した。調査法を用いて、合わせて326名の参加者からデータを収集。その結果、モデルの変数間の関係は概ね確認され、文化、親密性、地位格差、状況が方略の選好を、自己認識を介して影響することがわかった。特に、アメリカ人は日本人よりも直接的な方略を好む一方、日本人は婉曲的な方略、第三者介入など、間接的な方略を好む傾向がうかがえた。相互作用相手の親密性に関しては、アメリカ人は直接的方略に対してはより大きな親密・疎遠の違いをみせている一方、間接的な方略に関しては、文化の違いが確認されていない。地位格差に関しては、直接的方略に限定して、日本人のほうがアメリカ人よりも強く影響を受けていた。状況に関しては、日本人よりもアメリカ人のほうが、一概に一貫した方略の選好をみせており、日本人のほうが状況に影響されやすいパターンが明らかになった。介入変数として、自己観がもっとも影響力があり、特に文化によるこの影響力の違いはうかがえなかった。要するに、どの文化でも相互協調的、相互独立的自己観は方略の選好を影響しているといえる。本年度の調査で得られた結果は、これまでもたれてきた単純なステレオタイプ、すなわち日本人は間接的、アメリカ人は直接的、を否定する結果であり、相手や状況によって、日本人もアメリカ人も方略の選好を変えることがいえる。なお、本年度中に中国およびカナダのデータは収集できるに至らなかったが、次年度に調査を実施する予定である。本年度は、昨年の大学生を対象とした文化比較から、社会人を対象として、日米のコミュニケーション・スタイルの比較を行った。これまでの日米比較研究におけるアノマリーの原因として、学生のサンプルによるバイアスがあげられているが、このことをさらに追究するため、学生対社会人の比較を、比較文化的な視点から実施する。昨年度実施した研究1のモデルの適合性を、日米各国において学生と社会人でどのように異なるのかを検証した。研究2でも、状況や関係性のプライミングを十分に行い、これらの変数における文化の違いを検討した。その結果、学生のサンプルにおけるコミュニケーション・スタイルの日米差は、社会人で同様の違いは確認できず、むしろ学生のサンプル同士および社会人のサンプル同士が類似していることがわかった。具体的には、学生は社会人よりも文化にかかわらず、より間接的なコミュニケーションを好み、社会人はより直接的なコミュニケーションを選好していた。また、日本人学生を対象に、対人葛藤の潜在化についての検討も行った。親密性と地位格差を変数とし、葛藤の潜在化の男女差を検討を実施した結果性差が確認され、女子の方がより潜在化しやすい一方、男子は顕在化しがちであった。一般的に、葛藤の潜在化は低親密および高地位の相手に対して行なわれやすいことも明確になった。なお、次年度に繰り越した研究費の実績は、シンガポールに於ける国際コミュニケーション学会大会において研究協力者のPeter Lee氏と投稿論文および今後の研究の打ち合わせであった。本年度は、対人コミュニケーション・スタイルが相手や状況によって、いかに異なるのかを、社会的関係性モデリング(SRM)を用いて検討した。人びとのコミュニケーション・スタイルはどの程度個人の特性的なものであるのか、それとも相手によって促されるものなのか、それとも特定の関係性に限定されるのかについて検討した。当初は比較文化的な検討を予定していたが、研究実施困難のことから、国内でのデータ収集に限定した。6人一組としたグループ単位で、6グループによるデータ収集を実現できたが、各グループメンバーは、お互いのコミュニケーション行動を評定し、ラウンドロビン・デザインによる分析を実施した。その結果、予想していたように、コミュニケーション・スキルは個人の特性であるよりも、相手によってそのレベルが異なることが明らかにされた。つまり、「関係性効果」の重要性が示された。その他に、対人葛藤状況における潜在的・顕在的方略の選好に対する関係性の要因の影響(親密性および地位格差)について、対人コンピテンスの観点から調べた。
KAKENHI-PROJECT-20530567
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対人コミュニケーションの状況的・関係的モデルの比較文化的研究-自己認識を中心に
また、本研究に関するシンポジウムを企画・運営し、国際コミュニケーション学会(International Communication Association)東京大会では「アジアのコミュニケーション」について、全米コミュニケーション学会(National Communication Association)においては「トヨタ自動車のリコール問題における直接性・間接性のコミュニケーションの問題」についてのシンポジウムを実施した。
KAKENHI-PROJECT-20530567
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複雑乱流場のラージ・エディ・シミュレーションにおける数値計算法の安定性と解析精度
複雑な乱流場の解析手段としてラージ・エディ・シミュレーション(LES)が統計平均モデルに比べて近似の一般性は高い解析方法として注目されているが、工学一般の問題へ拡張するには多くの研究課題を残しており、特に、数値的安定性と計算精度をいかに満足させるかがLES実用化に当たっての共通の課題となっている。LES実用化の観点からはSGSモデルと数値誤差の効果を同時に考慮した最適化が求められ、乱流現象の特性を保存しながら数値的な安定性を保証できる計算法の構築と、数値誤差を前提としたSGSモデルの再評価が必要となる。本研究では特に非圧縮性乱流のLESで指摘されるいくつかの課題を検討して問題点の解明を試みるとともに、LES数値解析法の改良と検証を行った。本研究では、1)ダイナミックSGSモデルの定式化に関する数値検証、2)DNSデータから抽出される微細組織渦に着目したSGSモデルの適合性の検討、3)乱流LESにおける流入変動の影響を軸対称バーナ燃焼流れに適用検討について昨年度に引き続き研究を進めるとともに、4)LESの数値解における不安定な数値振動を局所的に検出、抑制する計算手法を提案して剥離流れを伴う基礎的な流れ問題についての数値検証を示した。また、これらのLES非定常解析法の応用としては、スプレー混相乱流のLES解析、燃焼器の予混合火炎およびバーナ拡散火炎のLES解析、脈動を伴う脳動脈血流の非定常解析などの解析事例において適用性を確認した。複雑な乱流場の解析手段としてラージ・エディ・シミュレーション(LES)が統計平均モデルに比べて近似の一般性は高い解析方法として注目されているが、工学一般の問題へ拡張するには多くの研究課題を残しており、特に、数値的安定性と計算精度をいかに満足させるかがLES実用化に当たっての共通の課題となっている。LES実用化の観点からはSGSモデルと数値誤差の効果を同時に考慮した最適化が求められ、乱流現象の特性を保存しながら数値的な安定性を保証できる計算法の構築と、数値誤差を前提としたSGSモデルの再評価が必要となる。本研究では特に非圧縮性乱流のLESで指摘されるいくつかの課題を検討して問題点の解明を試みるとともに、LES数値解析法の改良と検証を行った。本研究では、1)ダイナミックSGSモデルの定式化に関する数値検証、2)DNSデータから抽出される微細組織渦に着目したSGSモデルの適合性の検討、3)乱流LESにおける流入変動の影響を軸対称バーナ燃焼流れに適用検討について昨年度に引き続き研究を進めるとともに、4)LESの数値解における不安定な数値振動を局所的に検出、抑制する計算手法を提案して剥離流れを伴う基礎的な流れ問題についての数値検証を示した。また、これらのLES非定常解析法の応用としては、スプレー混相乱流のLES解析、燃焼器の予混合火炎およびバーナ拡散火炎のLES解析、脈動を伴う脳動脈血流の非定常解析などの解析事例において適用性を確認した。LES実用化の観点からはSGSモデルと数値誤差の効果を同時に考慮した最適化が求められる。そこで、乱流現象の特性を保存しながら数値的な安定性を保証できる計算法の構築と、数値誤差を前提としたSGSモデルの再評価について検討した。今年度は特に、以下に挙げる着想から理論的検討を進め、数値誤差とSGSモデルの関連に着目した基礎的な数値検証から予備的な評価を行た。1)差分法や有限要素法にょるダイナミックSGSモデルの定式化に関して、差分誤差の影響を受けにくい修正モデルとして格子フィルタ幅を陽に含まないSGS応力定式を提案し、チャンネルなどの基礎的流れにおいてパラメータ依存性などの数値検証を行った。2)DNSデータから抽出される微細組織渦に着目して空間フィルタにより選別される構造を一様等方乱流場DNS対して解析し、SGSモデルの適合性を検討した。3)乱流LESの数値不安定を解消するための陽的な高次空間フィルタリング法を最適化し、それを一般座標系格子LESに採用して実用検証例を示した。4)乱流LESにおける流入変動の影響を軸対称バーナ流れにおいて検討し、適切な不安定モードの導入方法を提案した。軸対象および2次元壁衝突噴流DNSに適用し渦構造への影響を調べた。これらのLES非定常解析法の応用としては、粒子混相乱流のLES解析、燃焼器の予混合火炎およびバーナ拡散火炎のLES解析、脈動を伴う脳動脈血流の非定常解析などの解析事例において適用性を確認した。複雑な乱流場の解析手段としてラージ・エディ・シミュレーション(LES)が統計平均モデルに比べて近似の一般性は高い解析方法として注目されているが、工学一般の問題へ拡張するには多くの研究課題を残しており、特に、数値的安定性と計算精度をいかに満足させるかがLES実用化に当たっての共通の課題となっている。LES実用化の観点からはSGSモデルと数値誤差の効果を同時に考慮した最適化が求められ、乱流現象の特性を保存しながら数値的な安定性を保証できる計算法の構築と、数値誤差を前提としたSGSモデルの再評価が必要となる。本研究では特に非圧縮性乱流のLESで指摘されるいくつかの課題を検討して問題点の解明を試みるとともに、LES数値解析法の改良と検証を行った。今年度は、1)ダイナミックSGSモデルの定式化に関する数値検証、2)DNSデータから抽出される微細組織渦に着目したSGSモデルの適合性の検討、3)乱流LESにおける流入変動の影響を軸対称バーナ燃焼流れに適用検討について昨年度に引き続き研究を進めるとともに、4)LESの数値解における不安定な数値振動を局所的に検出、抑制する計算手法を提案して剥離流れを伴う基礎的な流れ問題についての数値検証を示した。
KAKENHI-PROJECT-13650168
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13650168
複雑乱流場のラージ・エディ・シミュレーションにおける数値計算法の安定性と解析精度
また、これらのLES非定常解析法の応用としては、スプレー混相乱流のLES解析、燃焼器の予混合火炎およびバーナ拡散火炎のLES解析、脈動を伴う脳動脈血流の非定常解析などの解析事例において適用性を確認した。
KAKENHI-PROJECT-13650168
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13650168
イネの障害型冷害発生機構の生理学的解析
1.障害型冷害研究の焦点イネの障害型冷害に関するこれまでの研究を概括し,障害型冷害の発生機構を生理学的に解明するためには,窒素施肥から不受精発生までの因果関係の連鎖に関して,葯中の花粉数に注目して解析を進める必要があることを明らかにした.2.花粉数の品種間差異耐冷性の階級により分類された品種・系統の花粉数は,平均値では耐冷性が強い階級ほど多かったが,それぞれの階級内で2つのグループに分かれる傾向を示した.これは,花粉数以外についての遺伝因子の関与を示唆している.3.相対的根量の意義栽培条件を変えて根と地上部との量的関係が異なる材料を作り,根量と不受精発生との関係を解析した.その結果,危険期冷温処理区の受精率が根/葉茎穂比あるいは根/穎花数比と高い相関を示した.このことは,地上部あるいは穎花数に対する相対的な根量が耐冷性に重要な意味を持っていることを示唆している.4.栽培条件による花粉数の変動多窒素条件で栽培すると花粉数が減少するが,りん酸の多施用によりその減少程度を軽減し,その結果,危険期における冷温による不受精の発生も軽減できることを明らかにした.また,低日照条件で花粉数が減少することを明らかにした.5.植物ホルモンの影響ジベレリン及びサイトカイニンが危険期の冷温による不受精の発生を助長することを明らかにした.1.障害型冷害研究の焦点イネの障害型冷害に関するこれまでの研究を概括し,障害型冷害の発生機構を生理学的に解明するためには,窒素施肥から不受精発生までの因果関係の連鎖に関して,葯中の花粉数に注目して解析を進める必要があることを明らかにした.2.花粉数の品種間差異耐冷性の階級により分類された品種・系統の花粉数は,平均値では耐冷性が強い階級ほど多かったが,それぞれの階級内で2つのグループに分かれる傾向を示した.これは,花粉数以外についての遺伝因子の関与を示唆している.3.相対的根量の意義栽培条件を変えて根と地上部との量的関係が異なる材料を作り,根量と不受精発生との関係を解析した.その結果,危険期冷温処理区の受精率が根/葉茎穂比あるいは根/穎花数比と高い相関を示した.このことは,地上部あるいは穎花数に対する相対的な根量が耐冷性に重要な意味を持っていることを示唆している.4.栽培条件による花粉数の変動多窒素条件で栽培すると花粉数が減少するが,りん酸の多施用によりその減少程度を軽減し,その結果,危険期における冷温による不受精の発生も軽減できることを明らかにした.また,低日照条件で花粉数が減少することを明らかにした.5.植物ホルモンの影響ジベレリン及びサイトカイニンが危険期の冷温による不受精の発生を助長することを明らかにした.1品種・栽培条件などによる花粉数の変動正常な条件下で栽培された東北・北海道の品種・系統について,葯当たりの分化小胞子数と充実花粉数の間及び葯長と充実花粉数の間に非常に高い相関がある結果を得た.2冷温処理による不受精の発生と花粉数の変動耐冷性が異なる品種・系統グループの花粉数は,平均値では耐冷性が強いグループほど多かった.しかし,それぞれのグループ内において変異があり2つのサブグループに分かれる傾向が見られた.このことから,花粉数以外に耐冷性に関与する1-2の因子があることが推定された.3根の生理的活性と花粉数の変動施肥量及び土壌の水分条件(湛水,畑)を変えて根と地上部の量的関係が異なる材料を作り,根量と不受精との関係を解析した.多肥条件では生育が旺盛であるが乾物重の根/葉茎穂比は低くなった.また,根/穎花数比も低くなった.多肥条件では冷害危険期の冷温による不受精発生が多く,受精率と根/葉茎穂比及び根/穎花数比との間に高い相関が見られた.このことは,イネの障害型冷害の耐冷性に関して,地上部あるいは穎花数に対する相対的根量が重要な意味を持つことを示唆している.4植物ホルモンと花粉数の変動植物ホルモン処理実験及びサイトカイニンが合成される根の切除処理実験では,はっきりした結果が得られなかった.1.穎花内及び穂内における花粉数(葯長)の変動1穎花内の6葯間及び1穂内の上位・下位枝梗間において花粉数と葯長が高い相関を示すことを確認し,これに基づき,花粉数の代わりに葯長を用いて変動を追跡した.1穎花内では,外穎側の左右2本の葯が短くそれ以外の4本の葯が長い傾向があった.同一1次枝梗上では上部に着生している葯ほど短く,また,上位枝梗と下位枝梗とでは上位枝梗の葯が短かったが,それらの変動の程度には品種による差が見られた.2.窒素及びりん酸施肥による花粉数の変動多窒素条件で栽培すると花粉数が減少することを確認した.さらに,多窒素条件下においては,りん酸を多く施用することにより多窒素による花粉数の減少を軽減し,その結果,冷害危険期における冷温による不受精の発生も軽減できることを明らかにした.3.低日照条件下における花粉数の変動遮光栽培により花粉数が減少することを明らかにした.
KAKENHI-PROJECT-10460008
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10460008
イネの障害型冷害発生機構の生理学的解析
4.植物ホルモンの投与による冷温処理区受精率の変動ジベレリン及びゼアチンの投与により,冷温処理区の受精率は減少傾向を示した.この受精率の減少は,少肥区よりも多肥区で著しく,ゼアチンよりもジベレリンの影響が大きかった.また,上位枝梗あるいは1次枝梗で影響が大きく,特に,多肥区1次枝梗のジベレリン十ゼアチン区では顕著に低下した.
KAKENHI-PROJECT-10460008
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病原性遺伝子制御因子LeuOによるゲノム転写包括制御機構の解明
大腸菌病原性遺伝子制御因子と推定されている転写因子LeuOについては、先に我々はサルファ剤をはじめとする多剤耐性遺伝子群の制御を発見した。今回、LeuOによるゲノム発現制御機構の全体像の解明を目的とし、LeuO支配下遺伝子群を網羅するためにGenomic SELEX実験を実施したところ、ゲノム上140カ所以上のLeuO認識結合配列を同定し、125の新規支配下遺伝子群の同定に成功した。その結果、LeuOが繊毛遺伝子群などのバイオフィルム形成遺伝子群の発現を制御していることが明らかとなり、病原性発揮に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。大腸菌病原性遺伝子制御因子と推定されている転写因子LeuOについては、先に我々はサルファ剤をはじめとする多剤耐性遺伝子群の制御を発見した。今回、LeuOによるゲノム発現制御機構の全体像の解明を目的とし、LeuO支配下遺伝子群を網羅するためにGenomic SELEX実験を実施したところ、ゲノム上140カ所以上のLeuO認識結合配列を同定し、125の新規支配下遺伝子群の同定に成功した。その結果、LeuOが繊毛遺伝子群などのバイオフィルム形成遺伝子群の発現を制御していることが明らかとなり、病原性発揮に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。大腸菌病原性遺伝子制御因子LeuOによるゲノム発現制御機構の解明を目的にGenomic SELEX実験を行ったところ、LeuOのゲノム上結合領域を12ヵ所同定し、従来指摘されていた機能既知遺伝子yjjP-yjjQ間領域を除く11ヵ所が新規であった。これらの領域への結合はゲルシフトアッセイにより確認された。新たに同定したLeuO結合領域は、薬剤耐性やバイオフィルム形成に関与する遺伝子群の転写レベルを決定するプロモーター領域であった。この結果は、LeuOの潜在的な制御を示し、その多くに病原性細菌の病原性の発揮に重要な遺伝子群が含まれていた。そこでLeuOによる、支配下遺伝子群への転写制御機構の解析を行った。2009年度は特に、薬剤耐性遺伝子群について研究を実施した。ノーザンブロッティング解析により、LeuOによる支配下遺伝子群への転写レベルへの制御を解析した結果、3つの薬剤耐性遺伝子オペロンを活性化していることが明らかとなった。またPhenotype Microarrayシステムを用いて、LeuOが生育阻害剤への耐性に与える影響を観察したところ、LeuOの発現により複数の薬剤への抵抗性が上昇することが分かった。さらに個々の支配下遺伝子の欠損株を用いて薬剤耐性への機能解析を行ったところ、機能未知であったyjcRQPオペロンがサルファ剤への耐性遺伝子であることが同定され、この遺伝子群をsdsRQP(sulfa drug sensitivity determinant)へと改名することを提案した。これらの研究成果は、細菌における薬剤耐性獲得やバイオフィルム形成などの病原性微生物が持つ病原性発現機構の普遍的分子メカニズムの理解に役立つであろう。大腸菌病原性遺伝子制御因子LeuOによるゲノム発現制御機構の解明のために、ゲノム上の結合領域を同定する目的でGenomic SELEX実験を実施した。これまではGenomic SELEXで得られたDNA断片はクローニング・シークエンシング(SELEX-clos法)によって解析されていたが、この方法では転写因子との親和性が低いターゲットを同定する事が困難であった。そこで本年度は、Genomic SELEXのDNA断片の解析にタイリングアレイ(SELEX-chip法)を用いることで、簡便にかつ網羅的にDNA断片を解析する手法の確立を試みた。システムの確立のために、転写因子の機能が良く理解されており、結合認識配列が決定されている転写因子CraおよびCRPを解析した。この二つの転写因子は大腸菌炭素源代謝のグローバルレギュレーターとして知られている。SELEX-chip法で解析を行ったところ、Craは既知結合領域数23カ所に対して新規結合領域を144カ所、CRPについては既知結合領域数170カ所に対して179カ所もの新規結合領域を同定する事に成功した。これらの新規ターゲットには転写因子の結合認識配列が保存されていた。また、新規に同定された推定支配下遺伝子群への制御機構の解析を行ったところ、実際に制御していることが確認され、炭素源代謝における新たな役割が提案された。これらの結果から、SELEX-chip法の有効性が確認されたので、LeuOの解析に応用した。その結果、既知結合領域数15カ所に対して新規結合領域が125カ所も同定された。結合領域を解析したところ、外来性遺伝子群の包括抑制因子であるH-NSの結合領域と重複していたため、LeuOがゲノム上の広域においてH-NSの抑制化を解除している可能性が示唆された。新規支配下遺伝子群にはバイオフィルム形成に関与する繊毛や外膜タンパク質をコードする遺伝子が多く存在しており、転写制御解析から、実際にこれらの遺伝子群がLeuOおよびH-NSによって遺伝子発現制御がおこなわれていることを同定した。
KAKENHI-PROJECT-21710198
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21710198
トウモロコシ幼葉鞘におけるインドール酢酸合成細胞の特定と細胞内局在に関する研究
1)抗IAA抗体によるIAAの免疫組織科学法の確立昨年度までの研究報告にもあったように、トウモロコシ幼葉鞘では重力刺激後にIAA偏差分布が形成され、またIAA合成部位である先端部ではNPAやBFAなどのIAA輸送阻害剤の処理によりIAAの蓄積が観察されることがわかっている。IAA合成部位である幼葉鞘先端において免疫組織科学的手法によりIAA合成細胞を特定するためには、まず使用する抗体のIAAに対する特異性を調べ、先に述べたような実際のIAA量の変化を検出できるようにするための技術開発が必要である。まず、IAA抗体シグナルは微弱であるため、アルカリフォスファターゼ結合型の二次抗体を用いたシグナル増幅法を用いることで、小さなシグナルを確実に検出することを考えた。そしてIAA抗体(mouse ; monoclonal antibody)の組織化学的検出における特異性を、二次抗体のシグナルの強さとGC-MSによるIAA定量値を比較することで検討を加えた。その結果、本IAA抗体は結合型IAAを認識せず、IAAを特異的に認識し得ることがわかった。2)幼葉鞘におけるIAAの分布とNPAによるIAAの蓄積部位幼葉鞘におけるIAAの分布を詳細に観察したところ、IAAは主に内表皮を中心に分布しており、また外表皮にも存在していることが示された。幼葉鞘先端2mm以内で最もIAA合成活性が強い部位を特定するため、NPAによりIAAが特に蓄積する部位を特定することを試みた。GC-MSの結果と同じく0.5-1.5mmの部位で強いシグナルが得られた。これらより、この領域にIAAを最も活発に合成する細胞(群)が存在することが示唆された。インドール酢酸(IAA)の合成経路を特定するために、トウモロコシとイネの幼葉鞘を用いて幼葉鞘におけるIAAの局在の可視化と、輸送経路の特定、IAA合成遺伝子の候補の探索を試みた。トウモロコシ幼葉鞘先端でIAAが合成されていることが近年明らかとなりつつある。そこでまず、IAA輸送タンパクであるPINの局在を免疫組織化学を用いて解析した。幼葉鞘においてPINは、先端約0-3mmでは細胞膜全体に分布しており、先端から3mmより基部では主に細胞膜の基部側に局在していることが明らかとなった。これより、IAAは先端では様々な方向へ、先端より3mm以下では基部方向へ輸送されていることがわかった。次に幼葉鞘先端のどの部位でIAAが合成されているかをIAAの抗体染色を用いて明らかにすることを試みた。まずIAA抗体のIAAへの特異性であるが、組織からIAAを拡散させるとシグナルは観察されないこと、IAAを与えた組織からはシグナルが得られることなどから、IAA抗体がIAAを特異的に認識していることが考えられた。しかし、未だ内在性のIAA組織に生じるIAAの濃度差などを検出できるに至っておらずシグナル増幅等のさらなる検討が必要である。イネはモデル植物として広く研究に用いられておりゲノム情報も充実している。そこで、イネ幼葉鞘先端でもIAAが合成されているのかを調べ、イネ幼葉鞘先端に特異的に発現している遺伝子を調べた。GC-MSによるIAA定量実験によりイネ幼葉鞘先端約1.5mmで特にIAAが合成されていることがわかった。次に、マイクロアレイにより先端と基部で発現している遺伝子を調べたところ、先端で基部より3-3.5倍以上高く発現している遺伝子を835同定した。現在、IAA合成量の変化を伴った生理現象を利用し、さらなる解析を進めている。本研究は、IAAの合成経路を特定するためにトウモロコシ幼葉鞘先端の系を用いてIAAを可視化しIAA合成細胞を特定することを最終目標としている。そのためには、GC-MSを用いたIAA定量、重力屈曲などのIAA量の変化を伴う生理現象における幼葉鞘先端からのIAAの役割を明らかにすることや抗IAA抗体による組織内IAAの検出法の確立を試みていくことが重要である。これまで、幼葉鞘先端でIAAが合成されており、そのIAAは基部方向へ輸送されることが明らかとされてきた。そこで、幼葉鞘先端で合成され基部方向へ輸送されているIAAが重力屈曲における役割を調べた。幼葉鞘に重力刺激を与えると、約60分後に重力屈曲が観察され始める。重力刺激後のIAA偏差分布をGC-MSを用いてIAAを定量したところ、屈曲が観察される前に顕著なIAA偏差分布が確認された。またこの時、幼葉鞘において細胞伸長に関わっているとさるZmSAUR2がIAA分布に伴って発現を変化させていることがわかった。さらに、auxin受容体TIR1/AFBs阻害剤を処理すると、ZmSAUR2の発現が抑制され、同時に重力屈曲も阻害されることがわかった。以上より、トウモロコシ幼葉鞘先端で合成されて基部方向へ輸送されるIAAが偏差分布を形成し、auxin受容体TIR1/AFBを介したIAA誘導性遺伝子の発現調節を経ることで重力屈曲を引き起こされていることが明らかとなった。次にIAA合成細胞の特定であるが、そのためには先に述べたようなIAA量の変化を検出できる技術開発が必要である。極めて高濃度の抗体処理を行うと非特異的なシグナルが観察されることがわかってきた。そこで、低濃度の抗体処理により効果的に検出するために、まず既存の方法にあったIAAの固定方法について再検討を加えた。今後は二次抗体によるシグナル増幅などを検討する予定である。
KAKENHI-PROJECT-07J07171
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07J07171
トウモロコシ幼葉鞘におけるインドール酢酸合成細胞の特定と細胞内局在に関する研究
1)抗IAA抗体によるIAAの免疫組織科学法の確立昨年度までの研究報告にもあったように、トウモロコシ幼葉鞘では重力刺激後にIAA偏差分布が形成され、またIAA合成部位である先端部ではNPAやBFAなどのIAA輸送阻害剤の処理によりIAAの蓄積が観察されることがわかっている。IAA合成部位である幼葉鞘先端において免疫組織科学的手法によりIAA合成細胞を特定するためには、まず使用する抗体のIAAに対する特異性を調べ、先に述べたような実際のIAA量の変化を検出できるようにするための技術開発が必要である。まず、IAA抗体シグナルは微弱であるため、アルカリフォスファターゼ結合型の二次抗体を用いたシグナル増幅法を用いることで、小さなシグナルを確実に検出することを考えた。そしてIAA抗体(mouse ; monoclonal antibody)の組織化学的検出における特異性を、二次抗体のシグナルの強さとGC-MSによるIAA定量値を比較することで検討を加えた。その結果、本IAA抗体は結合型IAAを認識せず、IAAを特異的に認識し得ることがわかった。2)幼葉鞘におけるIAAの分布とNPAによるIAAの蓄積部位幼葉鞘におけるIAAの分布を詳細に観察したところ、IAAは主に内表皮を中心に分布しており、また外表皮にも存在していることが示された。幼葉鞘先端2mm以内で最もIAA合成活性が強い部位を特定するため、NPAによりIAAが特に蓄積する部位を特定することを試みた。GC-MSの結果と同じく0.5-1.5mmの部位で強いシグナルが得られた。これらより、この領域にIAAを最も活発に合成する細胞(群)が存在することが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-07J07171
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07J07171
リンパドレナージによる免疫能活性化を利用した浮腫予防セルフケアに関する基礎的研究
本研究の目的は、がん治療に伴うリンパ浮腫の発症予防のためのリンパドレナージの効果を明らかにすることである。本年度は、事前調査として、健康な人へリンパドレナージを行うことによる身体面の変化や効果を明らかにすることを行った。健康な人へのリンパドレナージの実施とは、対象者1名に対し、30分の臥床の場合と30分のリンパドレナージの2回の介入を行った。なお、対象者は立ち仕事の時間が長い看護師とし、日勤8時間就労後に介入を行った。その結果、臥床だけでも下肢の周囲径は減少したが、リンパドレナージを実施した方が浮腫は改善しやすいことが確認できた。特に臥床だけでは、鼠径部と膝関節など関節部分の周囲径は大きくなるか、浮腫がある状況で不変であったが、リンパドレナージを実施した場合の関節部分の浮腫は軽減していた。結果から、健康な人であっても就労などにより浮腫が起こることから、その軽減対策として臥床だけでなく、関節部分のドレナージを加えて行うことが効果的であることを明らかにした。特に、立ち仕事が多い職業の方々は、就労後の浮腫により疼痛や疲労感を訴えることが多いことから、リンパドレナージを行うことにより、迅速な症状緩和が可能となあることが示唆された。立ち仕事の方々にとって、下肢の症状緩和の方法を明らかにすることは、就労時の症状を予防するだけでなく、仕事を継続できるという生活支援の方法になるという考えから、本研究の実施は労働者への就労支援としても貢献できると考えている。今後は、リンパドレナージの安全性も確認できたことから、がん治療後のリンパ浮腫の発症予防への効果を明らかにすると同時に、上述したように「がんサバイバー」の方々の就労支援へつながるような研究を継続することを計画している。本研究は、当初、がん治療に伴う続発性リンパ浮腫の発症リスクがある患者を対象としてリンパドレナージの効果を明らかにすることを目的としていた。だが、既存研究の精査と臨床上の実際を考慮した結果、リンパドレナージの実施による影響と安全性の確認を行うことによりより精度の高いドレナージの方法を提案できると考え、まずは健康な人の就労後のむくみを対象としてリンパドレナージを実施することとなった。評価方法としては、リンパドレナージだけでなく、対照群として臥床の場合を追加し、その両者の変化を観察し、同時に身体面の安全性を確認することとしたことから、当初の計画より進度が遅れることとなった。本研究の今後の計画については、健康な人の就労後の浮腫に対するリンパドレナージの効果と安全性が確認できたことから、対象者をがん治療後のリンパ浮腫発症リスクがある方に対して活性酸素・フリーラジカルを測定し、浮腫自体だけでなく、浮腫の発症へ大きく影響する感染予防など免疫能を測定することを実施する。本研究の最終的な目的は、用手リンパドレナージを用いて免疫能を活性化し、その結果浮腫予防のためのセルフケア方法として患者がドレナージを実施できるようにすることである。最終目的達成のために、まずは用手リンパドレナージが及ぼす影響や効果を明らかにすることを行った。また、用手リンパドレナージ以外の方法として臥床や下肢挙上など簡便な方法があることから、第一段階としては臥床時と用手リンパドレナージ実施という2つの介入方法を用いた結果を明らかにすることとした。同様に、今後用手リンパドレナージを広げていくためには臥床時の効果よりも優位となる点を明確にする必要性があったことから、臥床と用手ドレナージによる介入結果を比較することとした。以上の過程を実施した結果、臥床だけでは鼠径部と膝窩の浮腫は改善できないことが明らかになった。この理由は、関節部分の特徴が推測でき、例えば屈曲する機会が多いことから脈管系も屈折しスムーズなリンパ流や血流が確保できにくいこと、また臥床による脈管系の循環の促進から鼠径や膝窩に集合しているリンパ節の働きが追い付かない状況があり、関節部分のリンパ節の役割の低下から特にリンパ流の滞りがあるのではないかと予測した。一方で、用手リンパドレナージを用いた場合は、下肢全体の周囲系が減少するなど、明らかに用手リンパドレナージを用いることの効果を得ることができた。さらにこの研究過程を通して用手リンパドレナージの安全性も確認することができた。その他、本研究で用いた評価方法である周囲系および体組成の測定、体表面の温度などの有用性も確認できた。研究計画の段階では、初年度から用手リンパドレナージを用いて患者を対象として介入する予定であった。だが、既存研究では、既に浮腫を発症している患者への用手リンパドレナージを用いる有用性は言われているものの、その効果のメカニズムは明確ではなかった。また浮腫の軽減や予防を行うだけであれば民間療法など他の方法も考えられることから、用手リンパドレナージは安全かつ効果的な技術であると言える信頼できるデータを得るためには、用手リンパドレナージの効果を客観的に評価し安全性を確認しなければならないと考えた。そのため、当初の計画の実施の前に、健康な人に対する臥床と用手リンパドレナージの効果を比較したり、皮膚温や体組成、体重や循環動態の変化など基礎的データを得ることを行った。したがって進捗状況はやや遅れている状況と評価した。本研究の目的は、がん治療に伴うリンパ浮腫の発症予防のためのリンパドレナージの効果を明らかにすることである。
KAKENHI-PROJECT-17K12250
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K12250
リンパドレナージによる免疫能活性化を利用した浮腫予防セルフケアに関する基礎的研究
本年度は、事前調査として、健康な人へリンパドレナージを行うことによる身体面の変化や効果を明らかにすることを行った。健康な人へのリンパドレナージの実施とは、対象者1名に対し、30分の臥床の場合と30分のリンパドレナージの2回の介入を行った。なお、対象者は立ち仕事の時間が長い看護師とし、日勤8時間就労後に介入を行った。その結果、臥床だけでも下肢の周囲径は減少したが、リンパドレナージを実施した方が浮腫は改善しやすいことが確認できた。特に臥床だけでは、鼠径部と膝関節など関節部分の周囲径は大きくなるか、浮腫がある状況で不変であったが、リンパドレナージを実施した場合の関節部分の浮腫は軽減していた。結果から、健康な人であっても就労などにより浮腫が起こることから、その軽減対策として臥床だけでなく、関節部分のドレナージを加えて行うことが効果的であることを明らかにした。特に、立ち仕事が多い職業の方々は、就労後の浮腫により疼痛や疲労感を訴えることが多いことから、リンパドレナージを行うことにより、迅速な症状緩和が可能となあることが示唆された。立ち仕事の方々にとって、下肢の症状緩和の方法を明らかにすることは、就労時の症状を予防するだけでなく、仕事を継続できるという生活支援の方法になるという考えから、本研究の実施は労働者への就労支援としても貢献できると考えている。今後は、リンパドレナージの安全性も確認できたことから、がん治療後のリンパ浮腫の発症予防への効果を明らかにすると同時に、上述したように「がんサバイバー」の方々の就労支援へつながるような研究を継続することを計画している。本研究は、当初、がん治療に伴う続発性リンパ浮腫の発症リスクがある患者を対象としてリンパドレナージの効果を明らかにすることを目的としていた。だが、既存研究の精査と臨床上の実際を考慮した結果、リンパドレナージの実施による影響と安全性の確認を行うことによりより精度の高いドレナージの方法を提案できると考え、まずは健康な人の就労後のむくみを対象としてリンパドレナージを実施することとなった。評価方法としては、リンパドレナージだけでなく、対照群として臥床の場合を追加し、その両者の変化を観察し、同時に身体面の安全性を確認することとしたことから、当初の計画より進度が遅れることとなった。用手リンパドレナージの効果および効果のメカニズム、そして用手リンパドレナージの効果と安全性の確認のための測定項目の適切性は確認できた。今後は、続発性リンパ浮腫の発症リスクがある患者を対象に用手リンパドレナージを行ってもらうように患者教育を実施する。その評価として、計画した観察項目を測定し、さらには免疫能の変化を観察し、生体指標を基礎データとして分析することを予定している。本研究の今後の計画については、健康な人の就労後の浮腫に対するリンパドレナージの効果と安全性が確認できたことから、対象者をがん治療後のリンパ浮腫発症リスクがある方に対して活性酸素・フリーラジカルを測定し、浮腫自体だけでなく、浮腫の発症へ大きく影響する感染予防など免疫能を測定することを実施する。本年度は、計画を見直しまた結果の信頼性を高めるために介入方法である用手リンパドレナージの効果と安全性の確認を追加した。この過程を通して介入方法の基礎データを得ることができた。このような研究過程を追加したことから、用手リンパドレナージの免疫能に関する研究の実施ができなかった。
KAKENHI-PROJECT-17K12250
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K12250
わが国の早期教育志向に関する歴史的検討
本研究では、わが国における早期教育志向とその背景にある子ども観・教育観の問題について歴史的な検討を行い、以下の二編の論文にまとめた。1.「『無垢なる子ども』という思想-キンダーガルテンとその受容をめぐって-」わが国の早期教育志向は、最近になって現われたものではなく、古くは近世の子育て書に「胎教」や「先入主」の教えという形で根付いており、その影響は明治期の幼稚園教育にも及んだ。幼稚園はフレーベルによって教え込みを排した子どもの自己発達を援助する機関として創設されたが、それを受容した日本では反対に教え込み教育が展開されたのである。本稿では、幼稚園の日本的受容の問題について、その受容の背景にあった近世の伝統的な子どもを白紙イメージで捉える子ども観や幼児期の教育がその人の一生を左右するという「先入主」的教育観の存在を明らかにし、そうした子ども観・教育観が一方では幼稚園の必要性を人々に認識させつつも、他方で明治期の幼稚園を教師主導の教え込みに偏らせることにつながっていったことを指摘した。2.「教育玩具のパラドックス-近代日本における玩具への教育的まなざしをめぐって-」明治末から大正期にかけての都市新中間層の増大は、子どもの教育への関心を増大させ、今日の早期教育ブームに通じる状況も現出した。そうしたなかで、子どもの遊びを教育的に捉える傾向が強まり、教育玩具の流行がみられるようになるが、本稿では、こうした教育玩具ブームを社会史的手法を用いて検討し、大正期における早期教育ブームの実態と新中間層の教育意識の解明を行った。そして、新中間層の人々が学業や能力によって生活を切り拓かなければならない存在者であり、それは学歴主義の出現という社会状況とあいまって、子どもの早期からの教育の関心となって現われていたことを指摘した。本研究では、わが国における早期教育志向とその背景にある子ども観・教育観の問題について歴史的な検討を行い、以下の二編の論文にまとめた。1.「『無垢なる子ども』という思想-キンダーガルテンとその受容をめぐって-」わが国の早期教育志向は、最近になって現われたものではなく、古くは近世の子育て書に「胎教」や「先入主」の教えという形で根付いており、その影響は明治期の幼稚園教育にも及んだ。幼稚園はフレーベルによって教え込みを排した子どもの自己発達を援助する機関として創設されたが、それを受容した日本では反対に教え込み教育が展開されたのである。本稿では、幼稚園の日本的受容の問題について、その受容の背景にあった近世の伝統的な子どもを白紙イメージで捉える子ども観や幼児期の教育がその人の一生を左右するという「先入主」的教育観の存在を明らかにし、そうした子ども観・教育観が一方では幼稚園の必要性を人々に認識させつつも、他方で明治期の幼稚園を教師主導の教え込みに偏らせることにつながっていったことを指摘した。2.「教育玩具のパラドックス-近代日本における玩具への教育的まなざしをめぐって-」明治末から大正期にかけての都市新中間層の増大は、子どもの教育への関心を増大させ、今日の早期教育ブームに通じる状況も現出した。そうしたなかで、子どもの遊びを教育的に捉える傾向が強まり、教育玩具の流行がみられるようになるが、本稿では、こうした教育玩具ブームを社会史的手法を用いて検討し、大正期における早期教育ブームの実態と新中間層の教育意識の解明を行った。そして、新中間層の人々が学業や能力によって生活を切り拓かなければならない存在者であり、それは学歴主義の出現という社会状況とあいまって、子どもの早期からの教育の関心となって現われていたことを指摘した。
KAKENHI-PROJECT-06710163
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06710163
新たに同定した小脳歩行誘発野による歩行運動分節の並列・集中制御機序
実験動物としては中枢無傷ネコおよび直立足歩行運動を学習したニホンサルを用い,次の研究成果を得た。(1)中枢無傷ネコの小脳歩行誘発野に微小電極を刺入・固定し,手術操作などからネコが十分に回復したことを確認した後,この部位を矩形波パルスを用いて連続刺激した。この部を200Hzでの刺激頻度で刺激すると,ネコは四足歩行運動を開始した。50μAから150μAに刺激強度をステップ状に増強すると,歩行運動が誘発されるまでの潜時は次第に短縮した。小脳歩行誘発野を微小破壊すると,ネコは注意深い歩行運動を開始したが,左右前・後肢の協調ができず,歩行方向を変えようとする際にしばしば転倒した。これらの成績は小脳歩行誘発野を通過する多重の上行性および下行性室頂核遠心路が,頭部・体幹・左右前後肢など数多くの運動分節の協調活動,すなわち歩行運動の発現・制御に重要な役割を果たしていることを示している。(2)トレッドミル上での直立二足歩行運動を学習したニホンサルを用いて,直寸足歩行,四足歩行のそれぞれの運動課題に対してtask-specificにニューロン活動を増強する脳部位をPET法を用いて同定した。この結果,小脳,運動野,視覚野など複数領域においてニューロン活動が増強することが明かとなった。直立足歩行時には運動野と視覚野が,そして四足歩行時には小脳がより有意にニューロ活動を増強していることも観察できた。これらの研究成果から,小脳室頂核が運動分節の多重並列制御中枢として機能し歩行運動を発動するための中枢として機能しているばかりでなく,姿勢と歩行運動の統合中枢としても機能しているという新しい作業仮説を提出することができた。実験動物としては中枢無傷ネコおよび直立足歩行運動を学習したニホンサルを用い,次の研究成果を得た。(1)中枢無傷ネコの小脳歩行誘発野に微小電極を刺入・固定し,手術操作などからネコが十分に回復したことを確認した後,この部位を矩形波パルスを用いて連続刺激した。この部を200Hzでの刺激頻度で刺激すると,ネコは四足歩行運動を開始した。50μAから150μAに刺激強度をステップ状に増強すると,歩行運動が誘発されるまでの潜時は次第に短縮した。小脳歩行誘発野を微小破壊すると,ネコは注意深い歩行運動を開始したが,左右前・後肢の協調ができず,歩行方向を変えようとする際にしばしば転倒した。これらの成績は小脳歩行誘発野を通過する多重の上行性および下行性室頂核遠心路が,頭部・体幹・左右前後肢など数多くの運動分節の協調活動,すなわち歩行運動の発現・制御に重要な役割を果たしていることを示している。(2)トレッドミル上での直立二足歩行運動を学習したニホンサルを用いて,直寸足歩行,四足歩行のそれぞれの運動課題に対してtask-specificにニューロン活動を増強する脳部位をPET法を用いて同定した。この結果,小脳,運動野,視覚野など複数領域においてニューロン活動が増強することが明かとなった。直立足歩行時には運動野と視覚野が,そして四足歩行時には小脳がより有意にニューロ活動を増強していることも観察できた。これらの研究成果から,小脳室頂核が運動分節の多重並列制御中枢として機能し歩行運動を発動するための中枢として機能しているばかりでなく,姿勢と歩行運動の統合中枢としても機能しているという新しい作業仮説を提出することができた。私共が同定したネコの小脳歩行誘発野は左右の室頂核から始まり室頂核遠心路が交叉するフック束hook bundleの中央部に相当する。このフック束内を上行性の室頂核視床路線維、および下行性の室頂核網様体路、室頂核前庭路、室頂核・上丘・網様体路に加えて室頂核脊髄路線維が通過する。すなわち小脳歩行誘発野に加えた微小電気刺激は機能の異なる上行性・下行性の5つの遠心路を同時にかつ左右両側性に活動させることになる。本研究から次の2つの重要な研究成果と推論が生まれた。1;室頂核網様体路と網様体脊髄路細胞そして室頂核前庭路と前庭脊髄路細胞との間には単シナプス性で強い興奮性のシナプス接続のあることを神経生理学的に明らかにした。この強力なシナプス接続様式はこれら2つの運動下行路が室頂核から始まる歩行運動信号を脊髄に伝達し、歩行運動の発動・制御に重要な役割を果たしていることを示唆する。2;小脳歩行誘発野に特有な歩行誘発機能を解析するため、中枢無傷・無拘束ネコの小脳歩行誘発野を電気的に微小破壊し、破壊後にみられるネコの行動変化を観察した。小脳歩行誘発野破壊ネコは破壊前にくらべて、頭部・体幹そして四肢の動きを協調させる歩行運動、例えば歩行中の方位変化などに際して歩行運動をスムーズに変換することが困難となった。また歩行中の四肢の位置を決める際に著しく注意深い行動をとった。上記の結果から小脳歩行誘発野すなわち左右の室頂核は網様体脊髄路そして前庭脊髄路など運動下行路の起始細胞群を活動させるとともに、室頂核・上丘・網様体路や室頂核脊髄路を作動させて体幹や四肢に対する頭部の位置を決め、俊敏な歩行運動の発動・制御にかかわること、室頂核遠心路の切断によって運動下行路を作動できない場合に、ネコは大脳皮質などから始まる新たな歩行発動信号によって運動下行路を作動させ歩行運動をすると考えられる。本年度は除脳ネコ
KAKENHI-PROJECT-12480247
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新たに同定した小脳歩行誘発野による歩行運動分節の並列・集中制御機序
歩行標本で同定できた小脳歩行誘発野(室頂核)が,無拘束の状態で流れベルト上を四足および直立二足歩行するニホンサルモデルにおいても歩行の制御に重要な役割を果たしているかの疑問に答えることを目的として研究を進めた。そのため浜松ホトニクス(株)中央研究所の研究協力を得て,positron emission tomography PET法を用い,歩行中に糖代謝レベルが増大する脳領域を同定した。小脳に注目すると,サルの四足歩行時には虫部,傍虫部,小脳半球のいずれの領域においても糖代謝レベルは有意に増大した。同一サルの直立二足歩行時には小脳正中の虫部領域のみが有意に糖代謝レベルを増大した。さらに直立二足歩行時には一次視覚野,運動野,補足運動野領域でも四足歩行時に比較して糖代謝レベルの強い増大が観察できた。神経解剖学的に小脳虫部はその腹側に位置している室頂核と相互の間で強いつながりをもっている。PET法では室頂核における糖代謝レベルの増大を直接的には測定できないが,小脳正中部における糖代謝レベルの増大は、室頂核のニューロン活動が四足・直立二足いずれの場合にも増強したことを推定させる。直立二足歩行時にのみ小脳正中部のみで糖代謝が増大したこと,さらに室頂核からは同側性および交叉性を含めて脳幹から始まる運動下行路起始細胞群に強い並列した投射があること,さらに室頂核からは室頂核視床路および視床皮質路を介して大脳皮質の感覚運動野そして補足運動野に投射のあることなどを考え合わせると,私たちがネコで同定した小脳歩行誘発野(室頂核)は直立二足歩行時における頭部・体幹・左右の前肢・後肢など数多くの運動分節の動きを統合的に制御するというすでに提出した作業仮説を支持する。本研究から得られた研究成績は小脳虫部そして高次の運動野が歩行制御中枢として重要な役割を果たしていることを推定させる。
KAKENHI-PROJECT-12480247
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ヨーロッパ辺境地域における文化の政治が表象する社会空間
グローバリゼーションの中での地域社会の変容を論じる分野において、ヨーロッパの境界地域を対象に、地域文化の越境性と境界性を分析した。具体的にはルーマニア-モルドバ、スペイン-モロッコ-ジブラルタル、ポーランド-カリーニングラード-リトアニアというEUの境界が引かれている国家間の現地調査を行った。それぞれの国の文化が時代ごとの政治的立場において意図的に選択され、隣接する国との差異化を図りつつ、経済的、とりわけ観光で利益を得るためにヨーロッパにつながる文化を表象していることがわかった。また、EUの国境警備は年々厳しくなっており、それぞれの地域で暮す人にとって不利益をもたらす様相もみられた。当初の計画通り2回の研究会と1回の現地調査を行った。第一回目の研究会では3年間の研究課題と目的について認識を共有した。第二回目の研究会では、研究課題である「文化の政治が表象する社会空間」の概念の先行研究の一つとしてSaskia Sassen,2006, Territory, Authority, Rights: From Medieval to Global Assemblages, Princeton University Press(=2011,『領土・権威・諸権利ーグローバリゼーション・スタディーズの現在』伊藤茂訳,明石書店)を各章分担し、研究協力者を含めた7人で検討した。領土は権威によって確定し、現在進行中のグローバリゼーションは実は富を蓄積した国家と企業の脱ナショナル化過程であることが指摘されている。歴史学的には粗い分析ではあるが、調査における権威と権利の交渉過程について示唆に富むものと確認された。現地調査は平成27年2月10日から16日にモルドヴァ・キシナウ、ルーマニア・ヤシとブカレストにおいて、中島崇文氏のコーディネートで定松文、小森宏美、佐野直子、中力えりで遂行した。得られた知見は以下のとおり。119世紀から20世紀初頭のルーマニア国家建設において、歴史的には民族や文化の多様と混成を内実としながら、ハンガリー、ロシア、トルコ、スラブとの差異化を図る対外関係から、ローマ字表記選択、ローマ起源への依拠、フランスへの政治的権威づけ国民国家形成の手法の参照が選択されたこと。2モルドヴァの歴史的な民族多様性、人工的国家建設の経緯、ヨーロッパとロシアの狭間の地政学リスクによる1つの政治的選択を行うことの難しさ。3ルーマニア、モルドヴァの言語と国民の海外流出という共通性の一方で、ルーマニアのEU加盟とモルドヴァに対するロシアの貿易制裁が経済格差となっていること。27年度はヨーロッパ辺境における文化の政治化を実証的検証するために、2回の研究会、1回の現地調査を行い、共催はしていないが本研究課題の成果の一部としてヨーロッパ各国・地域における中等教育の社会科教育の比較公開講演(早稲田大学教育総合研究所主催「変動期ヨーロッパの社会科教育ー多様性と統合ー」7月4日)を行い、書籍にまとめた。現地調査(12月22日-1月3日)ポルトガル(リスボン)、スペイン(マラガ、アルヘシラス、セウタ)、モロッコ(タンジェ)、イギリス(ジブラルタル)では、1ギリシャ神話等の「ヨーロッパ」起源を遺跡に残し、ムーア人の支配期やアラブ人の支配期の痕跡と今も継承される「遺産」を観光資源として利用しつつ、宗教による差異を差別的境界構築の資源として利用しない日常の混成文化の様相、2セウタとジブラルタルにおける領有権と要塞設置から、西地中海の文化の政治が先鋭化する際の要件について再考察の必要性、3地中海を超える難民・移民とヨーロッパの緊張関係の取り締まりの強化と出入国管理の一部民営化と支配の代行業ともとれる「フロンティア」への加圧の側面が確認された。今回の現地調査によって時間と空間における権力作用を先行研究でさらに検討する必要性を確認した。現地調査と研究成果の公開等ほぼ計画通りに進んでいるが、2015年のヨーロッパへの難民・移民の移動およびテロ事件を受けて、計画当初想定されていた移動の自由は、より制限され、厳格な国境政策と各国間の軋轢が増している。こうした状況の変化により、文化の政治化がもたらす境界の概念により強力な政治権力の作用する緊張時の分析因子を検討せざるを得なくなった。理論的検討を踏まえてオープンアクセス版を今年度、さらなる書籍化に関しては来年度が事実の検証を考慮するならば妥当となる。EUあるいはヨーロッパの境界と文化の政治に関して研究会と現地調査を行い、最終報告書をまとめている。研究会では昨年度のアルへシラス、セウタ、ジブラルタル調査の知見の検討と最終報告書で参照する先行研究の分析、検討を行った(8月9日学習院女子大学)。現地調査は3月にポーランド(ワルシャワ、グダンスク)、ロシア(カリーニングラード)、リトアニア(ヴィリニュス)を陸路で横断し、戦勝国における集合的記憶の形成、政治的・経済的状況の変化に応じた残すべき文化の記憶の変化、国境における権力作用など以下3点の知見を得た。1)グダンスクとカリーニングラードは、第二次世界大戦のナチスドイツとソ連との激しい攻防のあった地であり、戦後からソ連時代にはプロイセン時代の通りの名前、建物は消され、特にカリーニングラードにおいては戦車や要塞博物館など戦勝の記念碑や実物が48箇所に点在することが歴史学者であるコーチャショフ教授の案内とともに確認された。2)一方で、グダンスクとカリーニングラードはかつての自由都市やプロイセンにおける産業や交易の繁栄したダンチィヒ、ケーニヒスベルクでもあり、東西対立が緩和された現在ではかつての街の風景の復元が計画され、進められている。世界遺産の登録、2018年のサッカーW杯などグローバル基準での文化の価値が記憶すべき街の表象にも影響を与えている。
KAKENHI-PROJECT-26380715
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ヨーロッパ辺境地域における文化の政治が表象する社会空間
カリーニングラードのリゾート地開発はロシア各地からの買い手もあり、大規模に行われている。シェンゲン・ビザの獲得の可能性、EUでの子どもの教育のチャンスがあることなど、西と対峙する軍港だけではなく西への窓口として機能している。3)東西対立時のような厳しさはないもの、ポーランド・ロシア国境及びロシア・リトアニア国境での検問は厳重であり、特に列車で移動において車内でのパスポートと質問の検分は緊張のある境界であることが確認された。グローバリゼーションの中での地域社会の変容を論じる分野において、ヨーロッパの境界地域を対象に、地域文化の越境性と境界性を分析した。具体的にはルーマニア-モルドバ、スペイン-モロッコ-ジブラルタル、ポーランド-カリーニングラード-リトアニアというEUの境界が引かれている国家間の現地調査を行った。それぞれの国の文化が時代ごとの政治的立場において意図的に選択され、隣接する国との差異化を図りつつ、経済的、とりわけ観光で利益を得るためにヨーロッパにつながる文化を表象していることがわかった。また、EUの国境警備は年々厳しくなっており、それぞれの地域で暮す人にとって不利益をもたらす様相もみられた。当初の計画通り、研究会の実施、EU内とEU域外の境界を形成する文化の政治についてモルドヴァを中心に現地調査を含めた検証ができている。その知見についてはまだ論文等にできていないが、それを平成27年度の課題としたい。本年度は、2回の研究会と1回の現地調査を予定している。第1回研究会は8月上旬に27年度の現地調査の課題である西地中海における領有をめぐる文化的差異の政治化とその先鋭化の歴史的検証、現在の移民・難民のインパクトと境界線に与える影響等の文献資料による検討会を行う。現地調査は北の境界についてカリーニングラードーエストアの文化の差異とその政治化を検証する。時期については、5月中にメール会議で検討し、8月下旬ー9月、2月の時期を予定している。第2回研究会は本格的な成果の公開について、出版助成等を検討しつつ、議論を行う。最終報告書を恵泉女学園大学のHPにおいて掲載予定社会学研究会は5月31日に研究分担者の昨年度の調査による知見のまとめと当該年度の調査計画を決め、新たな理論的文献の先行研究を行う。8月あるいは9月は実証的研究の他の事例として、海に面したヨーロッパの辺境(ガリシア、マルタ、ポルトガルなど)の地域研究の知識提供を外部に依頼し、これまでに得た知見との整合性を確かめる。現地調査は平成26年度の調査対象地域とは異なる地域において行う(エストニアあるいはポルトガル)。調査地の選定は海外危機管理情報を精査したうえで行う。モルドヴァにおけるロシアとの関係とエストニアにおけるロシアとの関係の違い、海を隔て経済的にモロッコや南米市場を意識しつつどのような空間的実践よって差異化を行っているのか、それはEUの統合過程でどのような変節を経てきたのか。最前線ではどのような文化の政治が行われているのか現地調査し、検討する。2月の調査の現地調査において、燃料サーチャージ等を含めた旅費が比較的安価に抑えられたことで予算よりも少ない支出となった。
KAKENHI-PROJECT-26380715
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理想的HRTを求めて-エストロゲン全身投与、黄体ホルモン経膣投与法の基礎的研究
(女性)ホルモン補充療法(HRT)において、卵胞ホルモンに併用する黄体ホルモンについてよりよい投与法が望まれていた。今回我々はプロゲステロン(P)膣錠を作成し、投与・検討を行った。A :以下の3種類の薬剤を作成した。H-15 : P注50mgとホスコH15 1.2gより。E-85 :同注50mgとウイテプゾールE-85 : 1.32gより。RE : P試薬50mgとホスコH-15 : 1.2gより各々作成した。B :単回投与試験:子宮摘出予定の患者13名に対しH-15(2名)、E-85(7名)、RE(4名)、各々1錠を子宮摘出前に挿入し、投与前、および投与後の血清中P濃度、および摘出子宮の筋層内、内膜内P濃度を測定した。血清中P濃度は、2、あるいは4時間後に最高値を示した。筋層内、内膜内濃度は各々の患者における最高血中濃度の0.675.93倍、0.5317.5(平均5.9)培であった。C.頻回投与: 17名においてHRTに際してP膣錠を投与した(周期投与: 16名、68周期、連続投与: 1名)。H-15(4名、4周期)は柔らかすぎ、使用に難があった。E-85(12名、25周期)は十分な硬さを有していた。RE(10名、45周期)の使用感は好評であった。周期投与症例において、3周期において出血がみられず、また膣錠終了前に出血が開始したものが25周期においてみられた。出血の持続は4±1日で、出血量は中等度のものが多かった。子宮内膜への影響を経膣超音波、子宮内膜組織検査おいて行ったところ、概ね黄体ホルモンの影響が示唆された。副作用についてみると、帯下感、外陰部不快感はH-15において多く、E-85においても一部みられたが、REにおいては少なかった。うつなどの全身症状はMPAに少なく、重篤な副作用もなかった。以上よりプロゲステロン膣錠は実地においても有用であると考えられた。今後膣錠のプロゲステロン含有量を低下させ、血中にほとんど出現しないで子宮内膜にのみ移行し十分に働きかける膣錠を作成していきたい。(女性)ホルモン補充療法(HRT)において、卵胞ホルモンに併用する黄体ホルモンについてよりよい投与法が望まれていた。今回我々はプロゲステロン(P)膣錠を作成し、投与・検討を行った。A :以下の3種類の薬剤を作成した。H-15 : P注50mgとホスコH15 1.2gより。E-85 :同注50mgとウイテプゾールE-85 : 1.32gより。RE : P試薬50mgとホスコH-15 : 1.2gより各々作成した。B :単回投与試験:子宮摘出予定の患者13名に対しH-15(2名)、E-85(7名)、RE(4名)、各々1錠を子宮摘出前に挿入し、投与前、および投与後の血清中P濃度、および摘出子宮の筋層内、内膜内P濃度を測定した。血清中P濃度は、2、あるいは4時間後に最高値を示した。筋層内、内膜内濃度は各々の患者における最高血中濃度の0.675.93倍、0.5317.5(平均5.9)培であった。C.頻回投与: 17名においてHRTに際してP膣錠を投与した(周期投与: 16名、68周期、連続投与: 1名)。H-15(4名、4周期)は柔らかすぎ、使用に難があった。E-85(12名、25周期)は十分な硬さを有していた。RE(10名、45周期)の使用感は好評であった。周期投与症例において、3周期において出血がみられず、また膣錠終了前に出血が開始したものが25周期においてみられた。出血の持続は4±1日で、出血量は中等度のものが多かった。子宮内膜への影響を経膣超音波、子宮内膜組織検査おいて行ったところ、概ね黄体ホルモンの影響が示唆された。副作用についてみると、帯下感、外陰部不快感はH-15において多く、E-85においても一部みられたが、REにおいては少なかった。うつなどの全身症状はMPAに少なく、重篤な副作用もなかった。以上よりプロゲステロン膣錠は実地においても有用であると考えられた。今後膣錠のプロゲステロン含有量を低下させ、血中にほとんど出現しないで子宮内膜にのみ移行し十分に働きかける膣錠を作成していきたい。子宮を有する患者に対しHRTを長期間行う際、卵胞ホルモンに加え、子宮体癌予防、性器出血の予防の目的で、黄体ホルモンを併用する。後者の新しい投与法として、プロゲステロン(P)腟錠を検討した。1, P腟錠の作成E85:同注50mgとウイテプゾールE-85:1.32gより2,単回投与試験:子宮全摘術予定の患者計9名に対し説明、同意文書を得た上、2名にはEl5を、7名にはE85各々1錠を子宮摘出前に挿入した。
KAKENHI-PROJECT-10671564
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理想的HRTを求めて-エストロゲン全身投与、黄体ホルモン経膣投与法の基礎的研究
うち、閉経後のもの1名と、GnRHアゴニストにより偽閉経療法中のもの7名における投与前、および投与2/4/8/24時間後の血清中濃度は0.32/4.53/3.57/3.02/l.39ng/ml(平均)であった。筋層内P濃度は2-54ng/g(範囲)で、最高血清中濃度の0.63-5.93倍であった。このことから腟錠投与により、血中濃度は2ないし8時間後に最高となり、Pは子宮へ良好に移行することがわかった。3,頻回投与:11名に同意文書を得た上でHRT周期計34周期に投与した。9名はMPAを含むHRTをうけた既応があり、うち7名はMPA服用中にうつ状態などの副作用を訴えていた。腟錠は28日中10日間投与を原則とした。H-15(4周期)においては融点が低すぎたため柔らかく、使用に難があった。E-85(15周期)においては硬さは十分であったが、帯下などの不快感がみられた。RE(15周期)の使用感は好評であった。10日間の投与終了前に出血が開始したものも見られたが、多くは投与終了後1日か6日後に開始し、3-10日持続した。うつなどの全身症状はMPAに比し少なく、HRTにおけるP腟錠使用は有用であった。(女性)ホルモン補充療法(HRT)において、卵胞ホルモンに併用する黄体ホルモンについてよりよい投与法が望まれていた。今回我々はプロゲステロン(P)膣錠を作成し、投与・検討を行った。A:以下の3種類の薬剤を作成した。H-15:P注50mgとホスコH15 1.2gより。E-85:同注50mgとウイテプゾールE-85:1.32gより。RE:P試薬50mgとホスコH-15:1.2gより各々作成した。B:単回投与試験:子宮摘出予定の患者13名に対しH-15(2名)、E-85(7名)、RE(4名)、各々1錠を子宮摘出前に挿入し、投与前、および投与後の血清中P濃度、および摘出子宮の筋層内、内膜内P濃度を測定した。血清中P濃度は、2、あるいは4時間後に最高値を示した。筋層内、内膜内濃度は各々の患者における最高血中濃度の0.675.93倍、0.5317.5(平均5.9)倍であった。C:頻回投与:17名においてHRTに際しP膣錠を投与した(周期投与:16名、68周期、連続投与:1名)。H-15(4名、4周期)は柔らかすぎ、使用に難があった。E-85(12名、25周期)は十分な硬さを有していた。RE(10名、45周期)の使用感は好評であった。周期投与症例において、3周期においては出血がみられず、また膣錠終了前に出血が開始したものが25周期においてみられた。出血の持続は4±1日で、出血量は中等度のものが多かった。子宮内膜への影響を経膣超音波、子宮内膜組織検査おいて行ったところ、概ね黄体ホルモンの影響が示唆された。副作用についてみると、帯下感、外陰部不快感はH-15において多く、E-85においても一部みられたが、REにおいては少なかった。うつなどの全身症状はMPAに比し少なく、重篤な副作用もなかった。以上よりプロゲステロン膣錠は実地においても有用であると考えられた。今後膣錠のプロゲステロン含有量を低下させ、血中にほとんど出現しないで子宮内膜にのみ移行し十分に働きかける膣錠を作成していきたい。
KAKENHI-PROJECT-10671564
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鉄酸化細菌で発見した新規水銀気化酵素の解析及び水銀除去への利用
申請者が自然界から単離した高度水銀耐性鉄酸化細菌Acidithiobacillus ferrooxidans MON-1株は、水銀に耐性な従属栄養細菌で存在が知られている水銀還元酵素(MerA)を持つとともに、2価鉄を電子供与体にする新規な水銀還元気化酵素活性を持っていた。解析の結果、本来鉄酸化酵素の末端酸化酵素として機能しているcytochrome oxidase(COase)が、還元型cytochrome cあるいは2価鉄を電子供与体にしてHg^<2+>をHg^0に還元することが明らかとなった。今回、下記の課題I、及びIIに関して検討し、明らかになった点を報告する。鉄細菌も含め細菌のCOaseは、3種類のサブユニット(α-、β-、γ-subunits)から構成されている。これまで、どのサブユニットが塩化水銀の還元気化に関与しているかについては明らかにされていない。今回MON-1株よりCOaseを精製単離した後、SDSを用いて各subunitsに解離し、更に、Sephadex G-100カラムクロマトグラフィー操作を2回繰り返す事によりα-及びβ-subunitsを単離できた。γ-subunitは分子量が小さくSephadex G-100の操作では単離できなかった。α-subunitは単独でCOase活性を示したが、β-subunitはCOase活性を示さなかった。また、α-subunitは、塩化第二水銀に対して弱い水銀還元気化活性を示したが、β-subunitは示さなかった。4μgのα-subunitによる水銀還元気化活性は、6μgのβ-subunitの添加によって4.8倍に増加した。以上の結果より、MON-1株由来COaseによる水銀の還元気化活性はα-及びβ-subunitsの"協同作業"によって行われている、と結論した。課題II.固定化MON-1株洗浄細胞を用いての水銀還元気化の最適化水銀耐性鉄酸化細菌MON-1株の洗浄細胞を水銀のバイオレメディエーションに利用するため、MON-1株細胞の固定化を試みた。20日間電気培養して得たMON-1株細胞を0.5%, 1.0%, 1.5%のアルギン酸ソーダ水溶液に懸濁後、塩化カルシュウム水溶液中に滴下することによって、直径3mmの球形固定化ゲルを得た。固定化菌体の鉄酸化活性は0.5%、1.0%、1.5%アルギン酸固定化菌体で、それぞれ3.2, 2.8, 2.4μmol Fe^<2+>oxidized・min^<-1>・mg protein^<-1>であった。固定化菌体の鉄酸化活性は5回の再使用によってもほぼ変化はなかったが6回以上の再使用では少しずつ低下し、10回の再使用では最初の60%の活性を示した。鉄酸化酵素活性の高さが直接水銀還元気化活性に関わっているので、今回得た固定化MON-1株細胞を用いて水銀の気化活性を検討する予定である。申請者が自然界から単離した高度水銀耐性鉄酸化細菌Acidithiobacillus ferrooxidans MON-1株は、水銀に耐性な従属栄養細菌で存在が知られている水銀還元酵素(MerA)を持つとともに、2価鉄を電子供与体にする新規な水銀還元気化酵素活性を持っていた。解析の結果、本来鉄酸化酵素の末端酸化酵素として機能しているcytochrome oxidase(COase)が、還元型cytochrome cあるいは2価鉄を電子供与体にしてHg^<2+>をHg^0に還元することが明らかとなった。今回、下記の課題I、及びIIに関して検討し、明らかになった点を報告する。鉄細菌も含め細菌のCOaseは、3種類のサブユニット(α-、β-、γ-subunits)から構成されている。これまで、どのサブユニットが塩化水銀の還元気化に関与しているかについては明らかにされていない。今回MON-1株よりCOaseを精製単離した後、SDSを用いて各subunitsに解離し、更に、Sephadex G-100カラムクロマトグラフィー操作を2回繰り返す事によりα-及びβ-subunitsを単離できた。γ-subunitは分子量が小さくSephadex G-100の操作では単離できなかった。α-subunitは単独でCOase活性を示したが、β-subunitはCOase活性を示さなかった。また、α-subunitは、塩化第二水銀に対して弱い水銀還元気化活性を示したが、β-subunitは示さなかった。4μgのα-subunitによる水銀還元気化活性は、6μgのβ-subunitの添加によって4.8倍に増加した。以上の結果より、MON-1株由来COaseによる水銀の還元気化活性はα-及びβ-subunitsの"協同作業"によって行われている、と結論した。課題II.固定化MON-1株洗浄細胞を用いての水銀還元気化の最適化水銀耐性鉄酸化細菌MON-1株の洗浄細胞を水銀のバイオレメディエーションに利用するため、MON-1株細胞の固定化を試みた。20日間電気培養して得たMON-1株細胞を0.5%, 1.0%, 1.5%のアルギン酸ソーダ水溶液に懸濁後、塩化カルシュウム水溶液中に滴下することによって、直径3mmの球形固定化ゲルを得た。固定化菌体の鉄酸化活性は0.5%、1.0%、1.5%
KAKENHI-PROJECT-26925025
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鉄酸化細菌で発見した新規水銀気化酵素の解析及び水銀除去への利用
アルギン酸固定化菌体で、それぞれ3.2, 2.8, 2.4μmol Fe^<2+>oxidized・min^<-1>・mg protein^<-1>であった。固定化菌体の鉄酸化活性は5回の再使用によってもほぼ変化はなかったが6回以上の再使用では少しずつ低下し、10回の再使用では最初の60%の活性を示した。鉄酸化酵素活性の高さが直接水銀還元気化活性に関わっているので、今回得た固定化MON-1株細胞を用いて水銀の気化活性を検討する予定である。
KAKENHI-PROJECT-26925025
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モデル多細胞生物発生の遺伝子システムの全体像解明と計算機モデル化
1)モデル多細胞生物発生の遺伝子システムの全体像解明と計算機モデル化・EST配列12万本からエキソン・イントロン構造を確定した12000遺伝子についてwhole mount in situハイブリダイゼーションによる発現パターン解析をおこないクラスタリング解析により共通制御候補遺伝子群を同定した。NEXTDB<http://nematode.lab.nig.ac.jp>で公開し、これをもとにした共同研究を世界中で進めた。・初期発生の細胞配置パターンがC.elegansとは異なる近縁線虫Diploscapter sp.についてcDNAライブラリーを構築し、EST約7万本から約10,000種に分類でき、約5,800種についてC.elegans, C.briggsaeとのオルソログが見出された。初期発生に重要な遺伝子をそろえるために、薄い(1X)ホールゲノムショットガンシーケンシングをおこない、追加約1,000のホモログを得た。発現パターンについてC.elegansとの比較を進めている。・細胞の形状を力学モデルによって構成した胚発生シミュレータ(原腸陥入期の26細胞期まで)を構築し、中心体の動きなどをより正確に再現するような条件を求めた。2)生物発生のコンピュータシミュレーション・模様形成遺伝子のひとつレオパードをクローン化した。線虫C.elegansを用いて、構造、発現、機能、進化研究をいわば四位一体で進め、発生の遺伝子システムの全貌解明さらには発生の計算機モデル化をめざして研究を進めた。(1)構造:完全長cDNAライブラリー(オリゴキャップ法、東大医科研菅野ラボとの共同研究)を含め、合計9662種のcDNAを同定した。Thierry-Mieg CNRS,FRANCE)との共同研究でゲノムシーケンシス(100Mb)を利用したin silicoマッピングをおこない、エキソン/イントロンの対応付けを行うことにより、11543遺伝子構造を確定した。多数のalternativesplicingパターンや,イントロン中の逆向き遺伝子の存在などを見つけてきた。最小のエキソンは9べースであった。(2)発現:whole mount in situハイブリダイゼーションを進め、胚発生期については10ステージ、後胚発生期については4ステージについてそれぞれ典型的な試料を含む画像を保存してデータベース化すると共に、発現パターンのアノテーションをつけた。ハイブリダイゼーションは約7000遺伝子終了し、アノテーションが終了した約5,000遺伝子について発現パターンのクラスター分析を行い、各細胞系譜での発現順を決定し、発現制御シグナルの推定をおこなった。(3)機能:線虫では受精後の極初期に細胞運命決定が起こるが、この過程に重要な働きをする様々なクラスの母性発現遺伝子群(表現型は受精後進行停止、雌性前核の異常、核配置の異常、分裂パターンの異常、割球形態の異常など)を同定した。これらはすべて発現パターンのみに基づいて絞ってきたものであり、多くが新規遺伝子やホモロジーからは初期発生との関連を想定できないものであった。(4)計算機モデル化:4D画像のCG化のために得た発生パターンの座標データを用いて、細胞膜と細胞質の動力学コンピュータモデルを4細胞期まで構築した。さまざまなパラメータを設定し、細胞分裂・配置の動力学シミュレーションをおこなった。1)モデル多細胞生物発生の遺伝子システムの全体像解明と計算機モデル化・EST配列12万本からエキソン・イントロン構造を確定した12000遺伝子についてwhole mount in situハイブリダイゼーションによる発現パターン解析をおこないクラスタリング解析により共通制御候補遺伝子群を同定した。NEXTDB<http://nematode.lab.nig.ac.jp>で公開し、これをもとにした共同研究を世界中で進めた。・初期発生の細胞配置パターンがC.elegansとは異なる近縁線虫Diploscapter sp.についてcDNAライブラリーを構築し、EST約7万本から約10,000種に分類でき、約5,800種についてC.elegans, C.briggsaeとのオルソログが見出された。初期発生に重要な遺伝子をそろえるために、薄い(1X)ホールゲノムショットガンシーケンシングをおこない、追加約1,000のホモログを得た。発現パターンについてC.elegansとの比較を進めている。・細胞の形状を力学モデルによって構成した胚発生シミュレータ(原腸陥入期の26細胞期まで)を構築し、中心体の動きなどをより正確に再現するような条件を求めた。2)生物発生のコンピュータシミュレーション・模様形成遺伝子のひとつレオパードをクローン化した。発生の遺伝子システムの全貌解明を何らかの系でやりとげるため、受精卵から成虫(959体細胞)の全細胞系譜がわかっており、全ゲノムDNA配列が多細胞生物で最初に決定された線虫C.elegansを用いて、構造、発現、機能、進化研究をいわば四位一体で進め、この結果を逐次統合し、発生の遺伝子システムの解明をおこなうことを目的とした。さらには発生の計算機モデル化をめざした。1)cDNAプロジェクトから分類同定した約1万種のcDNAのうち9000種についてwhole mount in situハイブリダイゼーションによる発現パターン解析を終えた。これらはNEXTDB<http://nematode.lab.nig.ac.jp>で公開した。発現パターンのアノテーションづけを詳細におこなった。2)発現パターンに基づくRNAi解析を進めた。母性発現遺伝子のうち、「2細胞期から原腸陥入開始期までにその発現が消失あるいは局在する遺伝子群」に注目した結果、65%という高率で表現型が見られ、重要遺伝子が濃縮されたことを示した。
KAKENHI-PROJECT-12202003
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モデル多細胞生物発生の遺伝子システムの全体像解明と計算機モデル化
強いF1胚致死を示す61遺伝子について4D顕微鏡で詳細に調べた結果、受精/最終減数分裂から8細胞期までの時系列での異常に分類できた。そのうち最も早期の異常である「受精後分裂なし」は主としてプロテアソーム遺伝子であった。3)発現パターンのクラスタリング解析をおこなった。約7000遺伝子のデータは因子分析で時間軸と空間軸にそって54クラスターに分類され、さらにウォード法で詳細なクラスタリング解析をおこなった。これらの遺伝子群について上流配列を切り出し、共通モチーフ探索をおこなった。4)Diploscapter sp.について4D解析を行った結果、4細胞期に1直線上に並ぶことを見いだした。C.elegansでは配置異常に相当するものである。5)細胞の形状を力学モデルによって構成し,細胞分裂にともない細胞配置が決定される現象を再現するシミュレータを構築した。発生の遺伝子システムの全貌解明のため、受精卵から成虫(959体細胞)の全細胞系譜と全ゲノムDNA配列が明らかにされている線虫C. elegansを用いて、構造、発現、機能、進化研究をいわば四位一体で進めた。1)EST配列12万本をゲノム配列と,比較し、約1万遺伝子のエキソン・イントロン構造を確定した。選択的スプライシングの結果、遺伝子あたり平均1.7のmRNA種、1.4のタンパク質種ができることを見いだした。また、新たなスプライスリーダーをSL12まで8種見つけた。分類同定した約1万種のcDNAについてwhole mount in situハイブリダイゼーションによる発現パターン解析をおこない、NEXTDB<http://nematode.lab.nig.ac.jp>で公開した。発現パターンのアノテーションづけを詳細におこない、発現パターンの類似度の検索エンジン、SearchEXを開発した。2)発現パターンのクラスタリング解析をおこない、同一クラスタ遺伝子の5'上流にモチーフ候補を見いだした。5)細胞の形状を力学モデルによって構成し,細胞分裂にともない細胞配置が決定される現象を再現するシミュレータを構築し、8細胞期までの解析をおこなった。6)ゼブラフィッシュの皮膚における色素細胞の存在様態の詳しい解析をおこない、melanophoreとxanthophoreの2種類の色素が共存している細胞の存在を確認した。7)皮膚に縞模様が形成される変異マウス(TWマウス)のパターン形成原理を解析した。8)鳥の羽にはいろいろなパターンがあるが、反応拡散の原理から説明できることを示した。(1)モデル多細胞生物発生の遺伝子システムの全体像解明と計算機モデル化(担当:小原)1)EST
KAKENHI-PROJECT-12202003
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文脈に基づいたアプローチによる粒子の量概念の育成プログラムの開発と評価
学習指導要領に粒子の柱が導入され,系統的な粒子概念の重要性が示された。粒子の量概念の中核の物質量は高校生にとって非常に難しい。これらの改善策を検討するために,文脈を基盤としたアプローチの代表としてドイツのChemie im Kontextプロジェクトの特質を明らかにした。また,中学生の粒子を量として捉える学習が十分でない現状を明らかにした。一部の粒子の量の学習により,他に転移する示唆を得た。これ元に,物質量の学習プログラムを開発・試行したが成果は十分でなかった。これより,文脈と概念からなる中等教育化学プログラムの開発が必要であることが明らかになった。最新の文脈に基づくアプローチであるドイツのCHemie im Kontextプロジェクトの報告書等の文献調査による問題点を現地調査で明らかにした結果に基づき,日本における実践の問題点を分析した。その結果,日本において学習指導要領の関係もあり,内容的にはそのままでは実践不可能であるため,分析したテキストと要素的に類似性が高い小学校6年生「もののもえ方」を対象として,共生的戦略といわれる教師教育の方針およびその具体的な方法であるSETを利用して試行授業を試みた。そのために,当初予定していた内容を変更した。また,SETは理科教科教育専門家(研究代表)現場教員(附属小学校教師)マネージャー(研究代表指導学生)としてメンバーを構成し,授業デザイン,教材開発,評価問題開発等を実施した。その結果,全体的には現場教師も新しい教育法を理解しやすく,学習者(児童)の感想等の質的な評価は良かった。しかし,認知面および情意面の量的な評価は明確な結果はでず,評価方法の課題があった。最新の文脈に基づくアプローチによる化学(独国Chemie im Kontext)の開発過程・手法を以下のように明らかにした。Chemie im Kontextプロジェクトで開発された代表的な教科書を2冊を翻訳し,本プロジェクトの最終報告書などを詳細に分析した。その上に,本プロジェクトの中心となっているキール大学付設IPNを訪問し,開発の中心者であるパーヒマン主席教授と実践責任者であるステイン研究員と面会し文献調査の裏付けと確認をした。さらに,本プロジェクトの実践現場であるギムナジウムの授業を参観した。その結果,本プロジェクトが英国ソルターズプロジェクトの影響を強く受けてはいるが,独国独自で理論的な背景やスタンダードやコンピテンシーなどとの関連,中等前期および後期の教科書の開発,これに沿う教師教育方法の開発などがされ総合的な教育改革のプロジェクトとなっていることが明らかになった。また,独国における本プロジェクトは終了し,この成果を活かしNAVIといわれる総合理科的な教科の開発やsetとよばれる現職教員研修システムなどさらなる改革に進んでいることも明らかになった。上記のことから,日本との文脈的な違いなどはあまり感じられず日本でもほとんど問題なく活用できる感触を得た。また,本研究の最終目的である粒子の量概念については,独国でも同様な課題を持っており,現時点では解決しておらず,著者らと共同研究をしたいとの申し出を受けた。本研究の目的は,新学習指導要領における柱の一つ「粒子」の量概念を系統的に育成できるプログラムの開発とその評価である。「粒子」の量概念は高校時に学習するモル概念につながる非常に大切な基礎概念である。実施計画に基づき,当該年度に実施した研究の成果は以下のようである。(1)プログラム開発:「粒子」の量概念の育成は,実験のみに頼る方法では難しいと判断したため,context(文脈)を含む多様な方法で進めることが重要であると考えた。そのため,前年度に引き続き,ドイツのChemie im Kontextプロジェクトを文献及び現地調査によりcotext based learnig of scoenceの最新の方法論や実践現状等を明らかにした。これに基づき日本における問題点を整理・分析した。その結果,訳出したテキストの日本における使用は,context(文脈)が異なるため難しいが,本プロジェクトが構成している要素の組み合わせにより日本におけるプログラムの開発が十分可能であることを明らかにした。現在までに,小学校用「燃焼」教材等を開発・実践し分析を進めた。また,本研究の最終的な目的である,中学校・高校用「粒子の量概念」教材も開発が進み,複数のテキストを開発した。(2)プログラム評価:小学校用「燃焼」教材等では,現場教師の新しい教材に対しての理科も進み,学習者の質的な変容が明らかになった。しかし,認知面,情意面の評価における量的な変容は明確にならず,評価問題の改善が必要であった。中学校・高校用「粒子の量概念」教材を評価すべく,実践の準備を進めるとともに,評価問題を作成している。以下の3点のような研究実績があった。1.ドイツにおける文脈を基盤とした学習の現状を明らかにした。(1)Chemie im Kontextプロジェクトは,中等教育化学の質的改善を目的として文脈と基礎概念との関係と多様な授業形態をもつ後期中等教育版と,教育スタンダードとの関係を重視した前期中等教育版があり,本研究の基盤をなすものになった。(2)教育スタンダード・化学はコンピテンシー指向し,課題事例が文脈で表現され,コンピテンシー領域と要求領域との関係が参考になった。2.粒子量概念及びプレモル概念の獲得の現状を明らかにした。モル概念を学習する前の高校1年生,また中学生において現教育課程の粒子の系統性の指導もあり教科書には絵の記載があるが生徒自身は粒子の量概念が不足していることが明らかになった。3.粒子量概念(モル概念)獲得のための3次元の文脈を基盤とした教材を開発した。
KAKENHI-PROJECT-24501113
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文脈に基づいたアプローチによる粒子の量概念の育成プログラムの開発と評価
3次元の文脈とは,個と物質量,質量と物質量,体積と物質量にそれぞれ対応するものである。例えば,個と物質量及び質量と物質量の関係では,紙の製造,卸からエンドユーザーにおける計測の文脈が有効である。学習指導要領に粒子の柱が導入され,系統的な粒子概念の重要性が示された。粒子の量概念の中核の物質量は高校生にとって非常に難しい。これらの改善策を検討するために,文脈を基盤としたアプローチの代表としてドイツのChemie im Kontextプロジェクトの特質を明らかにした。また,中学生の粒子を量として捉える学習が十分でない現状を明らかにした。一部の粒子の量の学習により,他に転移する示唆を得た。これ元に,物質量の学習プログラムを開発・試行したが成果は十分でなかった。これより,文脈と概念からなる中等教育化学プログラムの開発が必要であることが明らかになった。本研究課題は,研究期間3年のうち2年で先行研究の調査,まとめ及びこれに基づいたプログラム(教材,実験,評価問題等)を開発した。3年目に開発したプログラムを実践,評価する予定であった。ところが,急に研究代表者の在外研究(ドイツ・キール大学附設自然科学教育研究所IPN)が決まったため,プログラムの実施が非常に難しくなったため,1年間の補助事業期間の延長を行った。プログラムの実践及び評価をする準備は進んでいるため,半期のうちに遅れは取り戻せる予定である。科学教育(1)調査方法の改善:中学校・高校用「粒子の量概念」教材を評価すべく,実践の準備を進めるとともに,認知面,情意面で量的な変容を捉えることができる評価問題を作成している。(2)開発プログラムの実践,評価,公開をする。(3)本研究のまとめてして,Chimie im Konextプロジェクトおよび日本における可能性等についての論文をまとめ,公開する。(1)プログラム開発:ドイツのCHemie im Kontextプロジェクトの報告書および現地調査より明らかになったことにより日本における実践の問題点を分析した。その結果,訳出したテキストをそのまま使うことは不可能であるが,要素の組み合わせにより実践が可能であることが明確になった。そこで,要素的に類似性が高い小学校6年生「もののもえ方」を対象として,研究対象を変更して1)児童用テキスト2)指導者用資料3)実験を開発した。また,共生的戦略の実践型であるSETを研究代表,指導学生,付属小学校教師で組み,予備実践をした。(2)評価問題の開発:上記の実践を評価すべく評価方法を作成した。全体的には現場教師も新しい教育法を理解しやすく,学習者(児童)の感想等の質的な評価は良かった。しかし,認知面および情意面の量的な評価は明確な結果はでなかったので,特に理科に対しての好感度や理解度の自己評価方法の検討を行い,方法論の検討をした。(3)成果学会発表:雑誌論文として2報,学会発表として6報を発表した。
KAKENHI-PROJECT-24501113
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地域住民とともにおこなう認知症進行予防と支援に関する研究
研究計画に基づき、過疎高齢化の進む2地域(A町とB町)を調査対象とした。本研究では、町全体が認知症にやさしい町になることで、認知症をもつ住民の症状進行が抑制されるという仮説を証明するための研究であり、初年度の住民の認知機能評価が基礎となる。A町においては、町により集落ごとにおこなわれるミニ健診で、認知症健診をおこない、Mini Mental State Examination (MMSE)による認知機能評価は、町立病院でおこなった。ただし、健診受診率が予想外に低かったため十分には調査できていないと考えられるため、次年度には地域の介護サービス事業所の協力を得て、デイサービスに参加している高齢者や地域で開催されている高齢者サロン、認知症カフェで認知症相談会をおこなうとともに認知症健診をおこなう。また、認知機能評価の一部としてのDASC21は、町が住民に行なうアンケートに含めたため、6割程度回収できた。不十分なぶんは、デイサービスなどの協力を得て、今年度も引き続き調査をおこなう。また、B町においては、町開催の住民健診で、認知機能の把握をおこなった。しかし、DASC21に関しては、健診会場で本人に回答してもらったため、認知機能低下の有無により、信頼性に欠けると考えられ、次年度は住民アンケートでDASC21をおこない、家族などの周囲の人に回答してもらう予定である。A町においては、住民に対して認知症講演会をおこなうとともに、認知症介護家族の座談会を開催し、住民の認知症に対する啓蒙活動をおこなった。また、A町では月23回認知症カフェを開催している。また、幸福度が高いといわれるブータンの地域において、認知症をもつ人がどのように受け入れられ、ケアされているのかを調査するために、ブータンの地域2か所に滞在し、また他に3か所の地域の診療所を訪問した。B町では、毎年行なっている健診だったため、比較的予定通り住民の調査がおこなえたが、A町においては、初めての試みだったため、健診受診率が予想外に低かったため、不十分だと思われる。B町においては、地域で行なわれているミニ健診だけでは、不十分だと考えられたため、介護サービス事業所、また地域で開催されている高齢者カフェにおいて、認知機能評価をおこなう。A町では、DASC21を本人ではなく、家族など周囲の人からの情報を得る。A町において、認知症に対する理解を深める活動を引き続きおこなう。このため、当初の計画よりも住民の認知機能評価にやや遅れがあるが、上記対策により、研究を進める。研究計画に基づき、過疎高齢化の進む2地域(A町とB町)を調査対象とした。本研究では、町全体が認知症にやさしい町になることで、認知症をもつ住民の症状進行が抑制されるという仮説を証明するための研究であり、初年度の住民の認知機能評価が基礎となる。A町においては、町により集落ごとにおこなわれるミニ健診で、認知症健診をおこない、Mini Mental State Examination (MMSE)による認知機能評価は、町立病院でおこなった。ただし、健診受診率が予想外に低かったため十分には調査できていないと考えられるため、次年度には地域の介護サービス事業所の協力を得て、デイサービスに参加している高齢者や地域で開催されている高齢者サロン、認知症カフェで認知症相談会をおこなうとともに認知症健診をおこなう。また、認知機能評価の一部としてのDASC21は、町が住民に行なうアンケートに含めたため、6割程度回収できた。不十分なぶんは、デイサービスなどの協力を得て、今年度も引き続き調査をおこなう。また、B町においては、町開催の住民健診で、認知機能の把握をおこなった。しかし、DASC21に関しては、健診会場で本人に回答してもらったため、認知機能低下の有無により、信頼性に欠けると考えられ、次年度は住民アンケートでDASC21をおこない、家族などの周囲の人に回答してもらう予定である。A町においては、住民に対して認知症講演会をおこなうとともに、認知症介護家族の座談会を開催し、住民の認知症に対する啓蒙活動をおこなった。また、A町では月23回認知症カフェを開催している。また、幸福度が高いといわれるブータンの地域において、認知症をもつ人がどのように受け入れられ、ケアされているのかを調査するために、ブータンの地域2か所に滞在し、また他に3か所の地域の診療所を訪問した。B町では、毎年行なっている健診だったため、比較的予定通り住民の調査がおこなえたが、A町においては、初めての試みだったため、健診受診率が予想外に低かったため、不十分だと思われる。B町においては、地域で行なわれているミニ健診だけでは、不十分だと考えられたため、介護サービス事業所、また地域で開催されている高齢者カフェにおいて、認知機能評価をおこなう。A町では、DASC21を本人ではなく、家族など周囲の人からの情報を得る。A町において、認知症に対する理解を深める活動を引き続きおこなう。このため、当初の計画よりも住民の認知機能評価にやや遅れがあるが、上記対策により、研究を進める。A町とB町への旅費と検査用紙・印刷費用として使う予定である。
KAKENHI-PROJECT-18K10537
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K10537
マイクロ流体デバイスによる非侵襲的細胞周期同調法の開発
申請者が開発したマイクロ流体デバイスによるサイズ分離を基にした細胞周期同調を中心に研究を行った。その結果、流路内壁のアルブミン処理によりG0/G1期細胞の回収効率を90%以上に、G2/M期細胞の回収効率を50%以上に向上させることに成功した。また、細胞周期ごとの接着性を利用した細胞分離法を考案し、マイクロ流路では分離効率が低いG2/M期やS期の細胞も効率よく回収できることを見出した。細胞周期を制御し、細胞の状態を同調させることは、クローン化技術や遺伝子治療、細胞治療などにおいてきわめて重要なプロセスとなっている。しかし、現在用いられている方法は培養液中の栄養を減らす方法や薬剤を用いて強制的に細胞周期を同調させる方法であり、DNAの損傷や細胞死を引き起こすことが報告されている。本研究ではこれらの課題を克服するために、マイクロ流体デバイスを用いた細胞の分離を実現し、細胞にダメージを与えることなく、細胞周期を同調させることのできる新しい手法の創出を目標としている。本年度は、G1期細胞の高い同調率を実現することを目指し、細胞サイズの詳細な測定を行った。モデルケースとして使用したマウス胎児繊維芽細胞NIH3T3およびマウス骨芽細胞MC3T3-E1細胞のサイズは、両者とも10um34umに分布し、G1期細胞のサイズは1415umであった。ついで、デバイスの基材として用いるPDMSへの細胞の非特異吸着を抑制するために、PDMS表面のコーティングについて検討した。アルブミン、ポリエチレングリーコル(PEG)を検討した結果、細胞の非特異吸着を抑制するためには、37°Cで1時間のアルブミン処理で十分であることを明らかにした。さらに、ビニール製粘着テープを利用して簡易型マイクロデバイスの作成について検討した。この結果、カッティングプロッタを用いることにより、最小500um径のマイクロ流路を作製可能であることが明らかになった。しかしながら、この方法は現在までのところ解像度が悪く改良の余地が多く残されている。本研究では、マイクロデバイスを用いた細胞の分離を実現し、細胞にダメージを与えることなく、細胞周期を同調させることのできる新しい手法の創出を目標としている。本年度はまずG1期細胞の分離効率の向上について検討した。昨年度までに見出したPDMS基材のコーティング条件に従い処理したデバイスを用いることで、G1期細胞に関して90%以上の効率で再現性良く分離する条件を確立した。またこの結果より、サイズ分離の効率はデバイス表面におけるタンパク質や細胞などの非特異吸着によるわずかな圧力変化に影響されることが明らかになった。ついで、S期の細胞を選択的に回収することを目標とした。細胞周期におけるS期はDNA合成の段階であり、細胞のサイズはG1よりもわずかに異なると考えられるため、まず細胞サイズの正確な計測を行った。モデルケースとして使用したマウス胎児線維芽細胞NIH3T3のG1期細胞のサイズは1415umであったのに対し、S期細胞のサイズは1718umであった。これを精確に分離することを目指し、Zweifach-Fung effectを利用したデバイスを設計し、分離能の検証を行っている。マイクロ流体デバイスによるサイズ分離では十分に対応できないことも予測されるため、流体デバイス以外の分離方法に関しても検討を行った。本年度は、細胞周期に伴う細胞の接着性の差を利用した分離が可能かどうかの検討を行った。その結果、細胞の接着性は細胞周期ごとに大きく異なり、とくにM期細胞の分離に有効である可能性を見出した。これは増殖活性や遊走活性に関連したものであると考えられる。細胞周期の同調による細胞の均質化は、クローン技術や遺伝子治療、細胞治療において重要なプロセスとなっている。しかし、現在用いられている方法は、培養液中の栄養を減らし飢餓状態にさらす方法や薬剤を用いて強制的に細胞周期を同調させる方法であり、DNAの損傷によるガン化やアポトーシスを引き起こす懸念がある。本研究では、これらの課題を克服するために、マイクロ流体デバイスを用いた細胞の分離を実現し、細胞にダメージを与えることなく、細胞周期を同調させることのできる新しい手法の創出を目標としている。昨年度までに、DNA合成準備期のG1期細胞では平均して93%の回収を実現した。また、従来の血清飢餓培養法によりG1期に同調させた細胞を通常培養に戻し、細胞周期と細胞サイズとの関係を調べたところ、G1期とS期では数ミクロンの違いしかないことを明らかにした。本年度は、まずDNA合成期であるS期細胞の分離を目指して実験を進めた。マイクロ流路を利用し、分離を試みたところ、回収された細胞のうちS期細胞が占める割合は最高でも38%にとどまり、S期のみを選択的に取り出すことは困難であるとの結論に至った。ついで、分裂期にあるG2/M期の細胞の分離を検討した。G2/M期細胞のサイズ分布はG1期細胞およびS期細胞とは大きく異なる。この場合も流路内壁のコーティングの効果が顕著に現われ、コーティングしていない場合には回収した細胞のうち20%程度だった回収率が、アルブミンコーティングによって50%まで向上させることに成功した。申請者が開発したマイクロ流体デバイスによるサイズ分離を基にした細胞周期同調を中心に研究を行った。その結果、流路内壁のアルブミン処理によりG0/G1期細胞の回収効率を90%以上に、G2/M期細胞の回収効率を50%以上に向上させることに成功した。
KAKENHI-PROJECT-25820397
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マイクロ流体デバイスによる非侵襲的細胞周期同調法の開発
また、細胞周期ごとの接着性を利用した細胞分離法を考案し、マイクロ流路では分離効率が低いG2/M期やS期の細胞も効率よく回収できることを見出した。G1期の細胞の分離能に関して90%以上の効率で安定に分離する手法を確立した。また、S期およびM期分離のための検討と同時に新しいデバイスの設計に着手しており、研究は当初計画通り進展している。生体材料学G1期細胞とS期細胞のサイズ分離は厳密な制御を必要であるため、精確な流体シミュレーションなどを行い、デバイスの詳細を検討する。また、流体デバイスによるサイズ分離では対応できないことも考えられるため、細胞周期ごとの接着性の違いを利用したG1期とS期、およびM期の分離も試みる。とくに基材の表面粗さを変化させることで細胞の接着性が影響されることを見出しており、これについて詳しく検討を行う。加えて、スコッチテープを利用したマイクロデバイスにおいて細胞の培養を行い、細胞評価用デバイスとして利用できることを実証する。G1期の細胞の高効率分離のための検討と同時に新しいデバイスの設計に着手しており、研究は当初計画どおり進展している。平成25年度の検討から得られた条件をG1期細胞の分離に反映させ、分離効率への影響を詳細に検討する。同時にG1期以外にS期同調にも対応可能な細胞周期同調を目指す。細胞周期におけるS期はDNA合成の段階であり、細胞のサイズはG1よりもわずかに異なるだけであることが予想される。このため、G1期とS期の完全な分離は難易度が高いが、デバイス内の流路径および流速を詳細に検討することで、高い効率の分離を実現し、S期同調を実現する。また、簡易型マイクロデバイスの作成方法を最適化し、細胞評価用マイクロデバイスとして使用できることを実証する。1.当初、計上していた超低温フリーザを協力関係にある研究者が購入し、それを使用することができるようになったため購入する必要がなくなった。2.実験プロトコルを見直し、試薬・消耗品等を効率的に使用することが可能になった。デバイスの分離能や細胞の状態を検出するために不足している物品である顕微鏡および分光光度計購入の一部に充てる。
KAKENHI-PROJECT-25820397
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気相クラスターの液相注入法の開発と反応・集積過程の探究
原子分子クラスターを構成要素とする結晶など、組織的な構造を持つクラスター集積体の創製を狙いとして、気相金属クラスターの液相への注入法の開発と液相を構成する溶媒分子との反応研究を行った。具体的には、(1)金属クラスターを溶媒分子クラスターで捕獲する実験装置の開発、(2)真空中の液滴発生・捕捉法の開発、(3)溶媒性分子雰囲気下での反応研究に取り組んだ。主な成果として、金、銀、アルミニウムのクラスターの溶媒和構造形成や錯合体形成において特徴的な反応過程を見出した。さらに、真空中の液滴の蒸発冷却過程を時間を追って観察し、液相から固相への相転移現象の解析に成功した。原子分子クラスターを構成要素とする結晶など、組織的な構造を持つクラスター集積体の創製を狙いとして、気相金属クラスターの液相への注入法の開発と液相を構成する溶媒分子との反応研究を行った。具体的には、(1)金属クラスターを溶媒分子クラスターで捕獲する実験装置の開発、(2)真空中の液滴発生・捕捉法の開発、(3)溶媒性分子雰囲気下での反応研究に取り組んだ。主な成果として、金、銀、アルミニウムのクラスターの溶媒和構造形成や錯合体形成において特徴的な反応過程を見出した。さらに、真空中の液滴の蒸発冷却過程を時間を追って観察し、液相から固相への相転移現象の解析に成功した。原子分子クラスターを構成要素とする結晶など、クラスター集積体の創製を目的として、気相クラスターの反応・集積過程の物理化学研究を開始した。とりわけ、特異な物性を活かした材料化が期待される金属元素のクラスターに着目し、気相中で生成した金属クラスターを液相溶媒に注入し組織化させる独自の実験手段「気相クラスター液相注入法」の開発と、これら金属クラスターの液相中反応ダイナミクスの解明を目指している。研究初年度の本年は、実験装置の開発と既存装置を用いた予備実験を推進した。実験装置の開発では、金属クラスターの生成・搬送装置の基本設計を練り、設計図面の準備ならびに真空排気系や実験制御用エレクトロニクス部分の構築を進めた。また、液相溶媒となる液滴の生成に関して、その生成試験をまず大気中で行い、直径50ミクロン程度の水滴が再現性の良く生成される様子を画像観測して確認した。一方で、クラスターの液相注入の初期過程に関して、金属クラスターの溶媒和を念頭に実験を行った。具体的には、サイズ選別された金属クラスターをイオントラップに捕捉し、窒素分子や水分子が逐次的に吸着する過程と、引き続く反応を調べた。主な成果として、銀クラスターAg_<N^+>への窒素分子の吸着過程について、特に6,7量体がN_2との親和性が高いことを見出した。高い光増感作用が注目されるこれら銀クラスターを、凝集せず分散させる可能性を示す結果と言える。一方、アルミニウムクラスターAl_<N^+>と水分子との反応では、9,13量体などは、単に水分子が吸着し、水中に分散されると予想された一方で、10,11量体などでは酸化物Al_<N^+>が選択的に生成され、水素発生が示唆された。負イオン種Al_N^-では異なる反応機構での水素発生が報告されており、アルミニウムクラスターのサイズや電子状態で水からの水素発生反応の制御が可能であると結論づけた。研究実施計画に沿って、以下の研究を推進した。1.金属クラスターの溶媒和過程と反応過程:昨年度に続き、金属クラスターと簡単な分子との相互作用による溶媒和過程と反応過程に関する実験を継続した。本年度は、通常は全く不活性な金クラスターに特に着目し、酸素分子および一酸化炭素分子の吸着過程を調べた。これらの分子はそもそも金表面にも金クラスターにも吸着しないが、ひとたび水分子が金クラスターに付着すると、これらの分子が吸着され活性が発現する。すなわち、溶媒分子の化学的効果によって金クラスターが活性化される現象を見出した。この成果をまとめて原著論文として発表した。これらは、気相金属クラスターを水など溶媒中での反応研究に展開する足がかりとなる成果である。2.気相クラスターの液相注入実験装置の製作と立ち上げ:昨年度までに設計・製作した新たな真空実験装置について、金属クラスターイオン源、質量選別計、イオントラップの動作試験を行い、目的の金属クラスターを高強度に発生、搬送するイオン光学系を組み上げた。溶媒分子クラスター源の準備も完了し、イオントラップに蓄積した金属クラスターを水クラスターで捕獲する実験に進む。3.液滴の真空への導入と赤外光による融解・蒸発実験:昨年度までに、真空中に直径約50ミクロンの水液滴を生成する実験に成功した。本年度は、その水滴が凍結する過程をレーザー光を用いて観察した。具体的には、直線偏光したレーザー光を液滴に照射し、散乱光の偏光状態を測定した。水滴が凍結すると表面の凹凸で偏光が乱れるが、液体状態では直線偏光が維持される。測定の結果、発生後10 msまでは液体状態を保つことが明らかになり、理論的な考察でもその妥当性が示された。研究実施計画に沿って、以下を中心に研究を推進した。1.クラスターの溶媒和過程:昨年度に開始した金属クラスターの溶媒和過程に関する実験を継続した。特に、アルミニウムクラスター正イオンの水和過程において、水分子との反応による水素発生について、その活性化機構に衝突時の内部エネルギーが深く関与していることを見出し、反応の促進と抑制を制御できることを実証した。
KAKENHI-PROJECT-23245006
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気相クラスターの液相注入法の開発と反応・集積過程の探究
これらの成果をまとめて原著論文を発表した。さらに多数の水分子と少数の酸素分子とが関与して、アルミニウム酸化物を核とする水和物が安定な生成物として生成されることを突き止めた。2.気相クラスターの液相注入実験装置の製作:昨年度に設計した新たな真空実験装置についてその製作を進め、金属クラスターイオン源、質量選別計、溶媒分子クラスター源を組み上げた。さらに、クラスターイオン源の調整を迅速に行うために、従来の四重極質量分析計と相補的な、飛行時間型質量分析計を製作した。動作試験の結果、質量スペクトルの高速測定が可能となり、その有用性を確認した。3.液滴の真空への導入と赤外光による蒸発実験:昨年度に直径約50ミクロンの水滴を大気中で生成したことに引き続き、本年度は、これを0.01気圧程度の真空中に生成することに成功した。真空中で発生した金属クラスターを、真空環境を保ったまま液滴に注入する新しい実験技術の開発に向けて、大きく前進した。さらに、液滴発生ノズルに印加する電圧パルス波形を調節して、液滴の大きさを50100ミクロンの範囲で制御できるようになった。赤外光照射については、液滴をトラップするなどして、比較的弱い強度で長い照射時間で溶媒を徐々に蒸発させる方針で進めることが適切と確認した。研究実施計画に沿って、以下の研究を推進した。1.水和を伴う金属クラスターの反応過程:水からの水素発生や水素貯蔵材料として注目されるアルミニウムについて、その正イオンクラスターに着目した。昨年度までに、多数の水分子と少数の酸素分子とが関与して、アルミニウム酸化物を核とする安定な水和物が生成されることを見出した。本年度は、この生成過程について、反応素過程を一段階ずつ追跡し、反応経路を突き止めた。その結果、この安定化学種が、天然に遍在するアルミニウム化合物(ボーキサイト)と同じ組成の物質であり、アルミニウム2原子を核とした酸化、水和を経て生成することを明らかにした。この成果をまとめて、原著論文を発表した。2.金属クラスターの溶媒注入実験:昨年度までに設計、製作を終えた金属クラスター捕捉装置に分子クラスター発生部を加え、金属クラスターの溶媒和を念頭に、捕捉したクラスターに分子ビームを照射する実験を開始した。まず、銀クラスターに水分子ビームを照射し、110量体で銀クラスターに水分子が吸着する様子を捉えた。現状では、まだ複数の水分子の吸着は見られないが、金属クラスターの溶媒への注入に向けて実験が進展した。3.液滴の真空中での捕捉と相転移過程の観察:昨年度までに真空中での液滴発生に成功した。しかしながら、液滴は10 m/sもの速度で飛行し、観測時間が10 ms程度までに制限されるために、凝固点の比較的高い水液滴についても、凍結までを追跡することはできなかった。本年度は、液滴を真空中に捕捉するイオントラップの開発を進め、蒸発冷却過程の長時間観察を行った。その結果、水液滴は30 ms程度で凍結が確認された。一方、蒸気圧の低いエチレングリコールは50秒後にも液相を保っていた。このように比較的容易に真空中に保持できる液滴を見出し、真空中での液体利用に向けて重要な成果を上げた。26年度が最終年度であるため、記入しない。ナノ物質科学26年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-23245006
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イモリ型の臓器再生を可能にする体細胞リプログラミング因子の解明と医学への展開
本研究の目的は、「ヒトの体細胞にイモリ型のリプログラミングを惹起する因子の解明に挑む」とともに「イモリの利用を医学の様々な分野に浸透させる」ことにより、イモリ型の臓器再生に向けた現実的な工程表を完成させることである。そのために、以下の3つの項目を同時に進めた。1.イモリの再生系と対比するためのマウスの瘢痕治癒系の開発を進めた。具体的には、1)骨格筋追跡用の遺伝子改変マウスについて、解析のための最適条件を決定した。また、成体マウスの肢を対象に、切断から瘢痕治癒までの過程を解析する新たな実験系の開発に着手した。2)網膜色素上皮(RPE)追跡用の遺伝子改変マウスについて、作製の最終段階に到達した。また、成体マウスの眼を対象に、網膜剥離から増殖膜形成までの過程を解析する新たな実験系を確立した。2.イモリの解析用リソースの整備を進めた。具体的には、1)骨格筋とRPEを追跡する遺伝子改変イモリを量産した。また、生産をより効率化するための新規な遺伝子改変技術を開発した。さらに、single-cell解析に向けて、細胞の収集技術の開発を進めた。2)アカハライモリのオミックスデータベースの構築を進めた。特に、一般公開済みの包括的トランスクリプトームデータベースに検索機能を付与し、刷新した。また、single-cell解析用のレファレンス・ゲノムデータベースを構築するため、long readのシーケンサーを新たに導入し、ゲノムシーケンスを開始した。3.イモリの医学分野への導入を進めた。具体的には、イモリ型の臓器再生フォーラムに所属する形成外科学の研究室を中心に、皮膚や顎、肢など様々な臓器の再生について、イモリとヒト(医学的知見)の比較研究を開始した。特に、成体イモリの解析から、イモリの再生に関して一般常識化した概念を再検証する必要性が出てきた。成体マウスの肢切断-創傷治癒モデルの作製がやや遅れている。理由は、担当している研究分担者(形成外科学)が、イモリの臓器再生の凄さに惹かれ、そちらに多くの時間を費やしたことによる。しかし、これは上記の項目3の進行に大きく貢献した。RPE追跡マウスの作製が若干遅れている。理由は、ドライバーマウスの作製に利用するマウス2系統のうちの1系統を、当初はNBRPから入手する予定であったが、これがかなわず、急遽このプロジェクトで作製しなければならなくなったためである(より高機能な異なるデザインのマウスを作製した)。アカハライモリのオミックスデータベースの構築が若干遅れている。理由は、イモリのゲノムが大きく(約37Gbp)、解析に時間がかかるためである。本研究では最終的に、イモリの再生過程とマウスの瘢痕治癒過程における細胞の遺伝子発現やその制御の違いを、単一細胞レベルで比較解析する計画である。そのために、マイクロ流路を組み合わせた最先端のsingle-cellオミックス解析技術は強力である。この技術を適用するために、レファレンス・ゲノムデータベースは必須である。当初は、研究分担者(医学分野の研究者)がマウスの解析を中心に進める方針であったが、イモリを比較対象として導入する中で、興味の中心がイモリの再生メカニズムに移ってしまった。「イモリの利用を医学の様々な分野に浸透させる」ことも本研究の目的であることから、この意味では成功していると言える。しかしこれでは、マウスの解析が遅れてしまう。そこで次年度は、研究分担者の技術的支援を受けながら、マウスの実験系を研究代表者に集約する。これによりマウスの実験を加速させる(研究分担者によるイモリ研究の勢いはそのままに)。アカハライモリのゲノム解析についても、新学術領域研究・先進ゲノム支援の協力(H30年度採択)を得ながら、さらに推進する方針である。本研究の目的は、「ヒトの体細胞にイモリ型のリプログラミングを惹起する因子の解明に挑む」とともに「イモリの利用を医学の様々な分野に浸透させる」ことにより、イモリ型の臓器再生に向けた現実的な工程表を完成させることである。そのために、以下の3つの項目を同時に進めた。1.イモリの再生系と対比するためのマウスの瘢痕治癒系の開発を進めた。具体的には、1)骨格筋追跡用の遺伝子改変マウスについて、解析のための最適条件を決定した。また、成体マウスの肢を対象に、切断から瘢痕治癒までの過程を解析する新たな実験系の開発に着手した。2)網膜色素上皮(RPE)追跡用の遺伝子改変マウスについて、作製の最終段階に到達した。また、成体マウスの眼を対象に、網膜剥離から増殖膜形成までの過程を解析する新たな実験系を確立した。2.イモリの解析用リソースの整備を進めた。具体的には、1)骨格筋とRPEを追跡する遺伝子改変イモリを量産した。また、生産をより効率化するための新規な遺伝子改変技術を開発した。さらに、single-cell解析に向けて、細胞の収集技術の開発を進めた。2)アカハライモリのオミックスデータベースの構築を進めた。特に、一般公開済みの包括的トランスクリプトームデータベースに検索機能を付与し、刷新した。また、single-cell解析用のレファレンス・ゲノムデータベースを構築するため、long readのシーケンサーを新たに導入し、ゲノムシーケンスを開始した。3.イモリの医学分野への導入を進めた。
KAKENHI-PROJECT-18H04061
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イモリ型の臓器再生を可能にする体細胞リプログラミング因子の解明と医学への展開
具体的には、イモリ型の臓器再生フォーラムに所属する形成外科学の研究室を中心に、皮膚や顎、肢など様々な臓器の再生について、イモリとヒト(医学的知見)の比較研究を開始した。特に、成体イモリの解析から、イモリの再生に関して一般常識化した概念を再検証する必要性が出てきた。成体マウスの肢切断-創傷治癒モデルの作製がやや遅れている。理由は、担当している研究分担者(形成外科学)が、イモリの臓器再生の凄さに惹かれ、そちらに多くの時間を費やしたことによる。しかし、これは上記の項目3の進行に大きく貢献した。RPE追跡マウスの作製が若干遅れている。理由は、ドライバーマウスの作製に利用するマウス2系統のうちの1系統を、当初はNBRPから入手する予定であったが、これがかなわず、急遽このプロジェクトで作製しなければならなくなったためである(より高機能な異なるデザインのマウスを作製した)。アカハライモリのオミックスデータベースの構築が若干遅れている。理由は、イモリのゲノムが大きく(約37Gbp)、解析に時間がかかるためである。本研究では最終的に、イモリの再生過程とマウスの瘢痕治癒過程における細胞の遺伝子発現やその制御の違いを、単一細胞レベルで比較解析する計画である。そのために、マイクロ流路を組み合わせた最先端のsingle-cellオミックス解析技術は強力である。この技術を適用するために、レファレンス・ゲノムデータベースは必須である。当初は、研究分担者(医学分野の研究者)がマウスの解析を中心に進める方針であったが、イモリを比較対象として導入する中で、興味の中心がイモリの再生メカニズムに移ってしまった。「イモリの利用を医学の様々な分野に浸透させる」ことも本研究の目的であることから、この意味では成功していると言える。しかしこれでは、マウスの解析が遅れてしまう。そこで次年度は、研究分担者の技術的支援を受けながら、マウスの実験系を研究代表者に集約する。これによりマウスの実験を加速させる(研究分担者によるイモリ研究の勢いはそのままに)。アカハライモリのゲノム解析についても、新学術領域研究・先進ゲノム支援の協力(H30年度採択)を得ながら、さらに推進する方針である。
KAKENHI-PROJECT-18H04061
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大学生の学力多様化時代における初年次物理教育の授業内ICT学習支援
これまで用紙を用いて大学初年次物理学の基礎知識定着に学習効果を上げてきた「確認テスト」を携帯情報端末からアクセス可能なフリーウェアの学習管理システムMoodleに移植するとともに、Moodleの機能を活用した「振り返り」も可能とした。このシステムを本学の初年次物理学の授業で使用して、紙ベースとの学習効果の違いをプレテスト・ポストテストに基づいて詳細に検討し学習効果が向上することを確認した。さらに、100人規模のクラスで毎週サーバーに蓄積された膨大なテキストデータをテキストマイニング分析することで、学習成果が顕著な学習分野とそうでない分野の学習に臨む学生の認知の違いを見出すことができた。平成25年度の研究計画にもとづいて研究を進め,以下の成果を得た.(1)確認テストの特性について検討を進めた.その中で,固有値曲線が分析条件を満たしていないテストがいくつかあった.これらのテスト問題については,受験者のテストデータの積み重ねが十分ではない可能性があるので,テストデータをさらに蓄積する必要がある.(2)学修管理システムmoodle上に,これまで紙およびマークカードで実施してきた確認テストを移植した.物理学Iは22回分,物理学IIは24回分という相当な数の確認テストが対象であったが,計画通りこれら全てをWeb上で実施できるようにした.これにより,学生が確認テストを実施するごとにリアルタイムで採点結果がデジタルデータとして蓄積できるようになった.システム構築が順調に進んだため,一部の受講学生の協力を得て実際の授業でもこのシステムの操作性などを3回試験運用し,システムの改善点を確認した.試験運用では携帯情報端末を数種類利用したが,もっとも重要な性能の違いは電池の持ち時間であることが分かった.この点ではiPadの性能が他機種を大きく上回っていることが分かった.(3)確認テストの採点結果をリアルタイムで確認しながら,受講学生がコメントを入力し,教員がコメントして学生の「振り返り」を支援する機能を構築した.これについても,数名の受講学生の協力を得て試行することができた.(4)研究成果を情報発信するためのホームページの構築を進めフレームは完成し,現在はコンテンツの作成を進めている.ホームページの構築は研究成果の公開に向け平成26年度も継続して実施する.また研究結果の公開としては,このほかに平成25年度の研究成果を第69回日本物理学会年次大会において,講演題目「大学初年次物理教育における基礎知識定着の工夫」として報告した.また関連する研究成果を本学紀要論文として報告した.平成26年度の研究計画にもとづいて研究を進めた結果,以下に述べる成果が得られた.(1)平成25年度の実績として,moodleをベースに構築している本学の学習管理システム上に構築した確認テストを実際の授業で使用した.前期開講の「物理学I」では履修者149人,後期開講の「物理学II」では履修者84人に対して,毎回の授業でiPadからアクセスして実施した.ただし,これらの学生の内,iPadの割り当てがない学生には,従来通り,マークカードを用いて実施した.これら2科目で合計すると,iPadでの実施対象者は173人,マークカードでの実施対象者は60人である.毎回の授業で実施したので,確認テスト結果と「振り返り」について,膨大なデータが蓄積された.(2)今回構築した「振り返り」機能を含むmoodle上の確認テストと,従来のマークカードによる確認テストの実施結果を分析した結果,「物理学I」については前者が後者よりも有効であることが学期末テストの結果から確認された.しかし,「物理学II」については,両者の間に著しい差は認められなかった.この結果の検討については,最後に述べる物理学会での研究報告で発表した.(3)毎回実施した確認テストの自分の結果を見ながら受講生が入力した「振り返り」のテキストデータについては,テキストマイニングソフトウェアを用いて,クラスター分析等による検討を進めている.これについては,平成27年度も引き続き分析を進める.(4)確認テストの特性分析については,平成25年度は確認テスト実施結果のデータ数が少なかったため十分な分析ができなかったが,平成26年度に膨大なデータが蓄積されたので,引き続き分析を進める.(5)研究成果を公開するホームページについては,コンテンツの作成を継続している.研究成果の公表としては,この他に,第70回日本物理学会年次大会において報告した.平成27年度の研究計画にもとづいて研究を進めた結果,以下に述べる成果が得られた.(1)平成25年度に,moodleをベースに本学の学習管理システム上に構築した確認テストを継続して授業で使用し,テスト結果および振り返りのデータを蓄積した.平成26年度の実績(前期開講「物理学I」は履修者149人,後期開講「物理学II」は履修者84人)に加え,平成27年度は,前期開講「物理学I」で履修者117人,後期開講「物理学II」で履修者89人のデータが蓄積された.これらのデータについて,テキストマイニングソフトウェアを用いて,クラスター分析等による計量テキスト分析を行った.この分析の独創的な点は,各学期に実施しているプレテスト・ポストテストの比較による規格化ゲインの大小と計量テキスト分析を組み合わせた点である.毎週行った確認テストの振り返り文書のテキストデータについて定量的な計量分析を行うことで,学生が記述した振り返り記述の特徴的な単語を抽出し,それらの単語を含む元の振り返り文章を定性的に確認するという方法である.この分析により,プレテスト・ポストテストの学習分野ごとの学生の意識について,検討すべき問題点を見出す手法を確立した.この結果については,第71回日本物理学会年次大会において報告し,一定の評価を得た.
KAKENHI-PROJECT-25350291
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25350291
大学生の学力多様化時代における初年次物理教育の授業内ICT学習支援
(2)数学の基礎知識と物理学学習成果との関連に注目し,moodle上に基礎的な数学力を測るテスト問題を作成し,基礎的な数学の授業時間外での自主学習を促す動機づけとして実施した.これにより,数学力の影響が特に大きい物理学Iの学期末試験の結果が向上しため,この方法は有効な手段である考えられるが,さらなる検証が必要である.(3)研究成果を公開するホームページを公開した.(4)これまでの研究成果を国際学会で発表し,proceedingsとして公表した.これまで用紙を用いて大学初年次物理学の基礎知識定着に学習効果を上げてきた「確認テスト」を携帯情報端末からアクセス可能なフリーウェアの学習管理システムMoodleに移植するとともに、Moodleの機能を活用した「振り返り」も可能とした。このシステムを本学の初年次物理学の授業で使用して、紙ベースとの学習効果の違いをプレテスト・ポストテストに基づいて詳細に検討し学習効果が向上することを確認した。さらに、100人規模のクラスで毎週サーバーに蓄積された膨大なテキストデータをテキストマイニング分析することで、学習成果が顕著な学習分野とそうでない分野の学習に臨む学生の認知の違いを見出すことができた。平成26年度の研究内容は,上記「研究実績の概要」にまとめた(1)(5)の5項目である.各項目については,順調に推移したものとそうでないものがあるが,全体としては概ね計画通りに進展した.以下にこれらの各項目の達成度を自己点検する.(1)確認テスト結果と「振り返り」について,膨大なデータが蓄積されたので,新しいシステムによる学習効果を分析することができるようになった.(2)新しいシステムによる確認テスト結果と従来のマークカード方式の2つのグループでの学習効果について,分析を進めることができた.(3)学習者が入力した「振り返り」データのテキスト分析を進めているが,まだ分析は終了していない.これについては平成27年度も継続する.(4)確認テストのテスト特性分析については,データの集積にとどまった.分析については,平成27年度に実施する.(5)研究成果公開のホームページについては,コンテンツの作成が終了していないので,平成27年度に継続する.また,学会での成果公表は,計画通り進めることができた.ただし,論文発表ができなかったので,これは平成27年度に行う.なお,平成26年度は,本研究の学習支援型授業モデルが有効な学生の学力範囲については平成27年度に検討を開始する予定である.ソフトマター物理学平成26年度の研究がおおむね順調に進行したので,平成27年度についても計画通りに研究を進める.具体的には,以下の検討を進める.(1)確認テスト結果と「振り返り」の分析を継続する.(2)学習者が入力した「振り返り」データのテキスト分析を進める.(3)確認テストの特性分析を進め,確認テスト問題の改善が必要かどうか検討する.(4)本研究で検討している学習支援型授業モデルが有効な学生の学力範囲を明らかにするための検討を行う.
KAKENHI-PROJECT-25350291
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日本固有の社会関係資本の概念と測定尺度の検討―子育て・教育問題の社会学的研究
本調査は、小学生の子どもを持つ親の社会関係資本の実態を明らかにするのが目的で、都内の社会経済状況の異なる二つの区から対象校2校を選定し、保護者・教員に対するインタビュー調査を実施した。保護者は教員や他の保護者やコミュニティと、どのような関係性を構築し、その関係性からどのような情報や信頼関係や規範を得ているのか。親はそれらのネットワークや資源を、子どもの教育にどのような場面でどのように活用しているのか。また親の所有する社会関係資本とその活用のあり方は、親の社会経済的状況により異なるのかを明らかにした。本調査は、小学生の子どもを持つ親の社会的関係(つながり)がどのように構築され、それらのネットワークを通して得られた資源を親がどのように子育て・子どもの教育に活用しているのかを把握することにより、近年問題視されている家庭や地域の絆の弱体化、子育ての孤立化、家庭の教育力の低下などの問題に対して、処方箋を得ることを目的とする。本年度は、対象校を社会経済状況の基準から選定し、各学校を訪問し、校長と打合せを行い、研究の目的・設計・方法を説明した。3つの公立小学校に断られ、4校目で承諾を得て、2月に開始したが、部分実施にとどまった。さらに5校目で承諾を得て、校長、PTA会長の協力を得て、教員1名及び保護者5名のインタビューを実施することができた。保護者は適宜フォローアップインタビューも行った。学校と保護者、保護者同士の関係、学校と地域の関係性がどのように構築され、それらのネットワークを通して得られた資源を親がどのように子育て、子どもの教育に活用しているかを聞きとった。インタビューはすべてテープ起こしを行い、分析を開始した。また、対象校の区で、子育て支援やつながりを構築する立場にある行政や専門家(小児科、民生委員など)を整理し、関係者リストを作成し、インタビューのアポを入れた。また、同様の研究を過去に実施しているSuet-Ling Pong教授が6月に来日したため、研究構想に関して助言を受けた。本調査の課題は、以下の三点である。1.保護者の学校参加や子育てネットワークなどの場では、どのようなつながり(社会的関係)が構築されているのか。そこで、どのような資源(情報、信頼関係、規範)が生成されているのか。親はそれらの資源を子どもの教育にどのように活用しているのか。2.親の社会関係資本の質、親の社会関係資本の子どもの教育達成への影響力は、家庭の経済的・文化的資本により異なるか。3.日本社会の現実を踏まえて、日本では、社会関係資本という概念はどのように定義され、どのような尺度(質問項目)で計測されるべきか。都内の社会経済状況の異なる二つの区から、対象校2校を選定した。恵まれた地域に立地する学校、厳しい地域に立地する学校、それぞれ5名の保護者を対象にインタビューを実施した。個別インタビューをとおして、親が他の保護者や、学校や、コミュニティとどのような機会を利用してつながりを構築しているのか、何故様々な活動あるいはグループに参加するのか・しないのか、そのつながりから得られた資源に対してどのような意味づけをしているのか、それらの資源をどのように子育てや子どもの教育に活用しようと意図しているのかを聞きとった。関係性を多面的に捉えるために、学校教員や、地域と学校を結ぶ役割の地域コーディネーターや、行政で子育て支援を行っている担当者のインタビューも実施した。インタビューデータは「構築される関係」およびそこから得られる「資源」の「質の多面性」および「その活用のメカニズム」という観点で分析を行った。本調査は、小学生の子どもを持つ親の社会関係資本の実態を明らかにするのが目的で、都内の社会経済状況の異なる二つの区から対象校2校を選定し、保護者・教員に対するインタビュー調査を実施した。保護者は教員や他の保護者やコミュニティと、どのような関係性を構築し、その関係性からどのような情報や信頼関係や規範を得ているのか。親はそれらのネットワークや資源を、子どもの教育にどのような場面でどのように活用しているのか。また親の所有する社会関係資本とその活用のあり方は、親の社会経済的状況により異なるのかを明らかにした。米国と日本における社会関係資本と教育達成に関する量的調査のレビューを行い、社会関係資本の概念・視角・操作的定義・測定尺度(質問項目)、分析枠組みを比較した。米国においても、社会関係資本には「決定版」といえる尺度がないが、教育社会学の領域における実証研究では、以下のような論点が議論されてきた。第一点目は、社会関係資本の定義は、集合的な資源として捉えるよりも、個人が活用する資源と捉えるべきではないかという点である。二点目は、社会関係資本の尺度として、つながりの密度(構造)ではなく、つながりから得られる資源(中味)を計測する必要があるのではないかという点である。例えば、前者の尺度には、「親の友人の数」、「学校行事に参加した回数」などが含まれるが、後者の尺度には、「進路に関する情報」、「子どもをほかの親に預ける」などが含まれる。三点目は、社会関係資本と教育の関係を実証する際には、資源が学校教育と適合するか否かの視点が欠如しているという点である。例えば、母親と祖母の間の信頼関係が強くても、祖母が「女子には教育は必要でない」という意識であれば、その信頼関係は、子どもの学力に何ら正の影響を及ぼさない。米国の量的調査の蓄積で議論されてきた事項を整理することにより、日本における社会関係資本の定義と尺度化を考える際に考慮すべき点が明確になった。
KAKENHI-PROJECT-23531111
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日本固有の社会関係資本の概念と測定尺度の検討―子育て・教育問題の社会学的研究
質的調査のサンプリングの準備として、東京都各地域の社会経済指標に関する統計データを収集、整理した。それを基に、二つの区を選定し、各地域それぞれ対象校を一校選定した。依頼文書、説明資料を作成し、対象校を訪問し、校長先生、教頭先生と打ち合わせを行った。第一候補の対象校に調査協力を断られたため、新たに対象校を選定しなおした。対象校の選定に、予想以上に時間を要したため。センシティブな保護者がいるため、保護者の選定、保護者のインタビューは避けたい、また教員にこれ以上負担をかけたくないという理由から、4校で調査を断られたたため。また調査を実施した学校でも、校長の異動があり、説明に時間を要した。研究対象校の選定に時間がかかったこと。また研究対象校の承諾を得るのに時間がかかったこと。対象校(校長、PTA会長)の協力を得ながら研究を進める。テープ起こしは業者に委託する。教育社会学者DouglasWillms教授は、カナダで同様の社会関係資本の研究を行っているので、プロジェクトの進捗を共有するともに、比較の視点を入れて議論を行う。5月末に来日予定。(1)A校のデータ分析:2012度末にインタビューを実施したA校のデータ分析を行う。適宜、追加インタビューを行う。以下の研究課題に基づき、データを分析する。保護者の学校参加や子育てネットワークなどの場では、どのようなつながり(社会的関係)が構築されているのか。そこで、どのような資源(情報、信頼関係、規範)が生成されているのか。親はそれらの資源を子どもの教育にどのように活用しているのか。(2)区の家庭教育支援チームと打合せを行い、区の子育てサポートリーダーや小児科医などの専門家にインタビューを行う。どのようなネットワークやリソースの提供が意図されているのか、利用状況などを聞きとり、上記データ分析を補完する。(3)B校・C校・D校の選定・データコレクション:ネットワークを通して対象校を選定し、各学校を訪問し、校長と打合せを行い、研究の目的・設計・方法を説明、協力が得られる学校を対象校と定める。教員1名と保護者510名にインタビューを行う。インタビューはすべてテープに録音し、テープ起こしを行う。(4)A校・B校・C校、D校のデータ統合:4校のデータを統合した上で、以下の研究課題に基づき、データを分析する。1親の社会関係資本の質、親の社会関係資本の子どもの教育達成への影響力は、家庭の経済的・文化的資本により異なるか。2日本社会の現実を踏まえて、日本では、社会関係資本という概念はどのように定義され、どのような尺度(質問項目)で計測されるべきか。対象校の調査協力の承諾を得られるように、学校の負担を減らす。具体的には、非参与観察は行わなず、インタビューを中心に行う。インタビューを行う際には、参加する親に、本研究ではプライバシーの侵害にならないよう細心の注意を払うこと、また本研究に参加する意義(学校や親の現状を分析することにより、学校と親の連携の在り方や、家庭内教育の改善策を考えるきっかけとなること)を強調する。テープ起こしは業者に委託するため、その他費用として使用する。
KAKENHI-PROJECT-23531111
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非線形ナノ振動分光技術の開発研究
分子性ナノ結晶(アデニン:20x20x5nm^3)の近接場ラマンスペクトルにおいて特定のラマンバンドの強度、振動数が時間的に変動する、通常のラマン散乱あるいは表面増強ラマン散乱とは異なる非線形な現象を見出した。具体的には、無電解メッキ法によりチップ先端に銀コートした原子間力顕微鏡用カンチレバーをコンタクトモードで操作し、チップ先端をナノ結晶の一点に留めおき、10分間、スペクトルが変化する様子を連続的に観察した(観察波数領域:5001500cm^<-1>)。その結果、アデニン分子に帰属された多くのラマンバンドでそれらピーク強度が時間的に大きく変化していることを観察した。時系列的には、はじめ数個のピーク(728、1330cm^<-1>等)しか観察されなかったが(050秒)、突然多くのピークが出現し(5080秒、250550秒)、そのほとんどが再び消失する(80250秒、550600秒)ことが繰り返して観察された。また、観察されたラマンバンドの多くで、ピーク振動数が最大で10cm^<-1>の幅で変動し、中にはピークが分裂する現象も観察することができた。これら現象は銀ナノチップ直下のアデニン分子の銀に対する吸着状態が熱ゆらぎなどの要因により時間変動しているためと考えられる。そこで、密度汎関数法を用いて入射電場に対する振動モードの解析を行い、実験結果と比較したところ、銀チップに化学的に吸着する分子の配向状態が近接場ラマンスペクトルに影響を与えることが示唆された。本手法を用いることで、ナノスケールで分子の識別を行えるだけではなく、分子の吸着状態をも高感度に観察できることが示された。また、金属チップ先端の金属原子と分子間の化学的吸着状態のダイナミクスを観察する手法を新たに考案し、観察システムの構築も行った。無電解メッキ法を用いて、銀イオンを還元することで探針先端に球形状の銀ナノ粒子を生成する方法を新たに検討した。その結果、銀イオン濃度、pH等をパラメーターとすることで、銀ナノ粒子径を自由に制御できることを確かめた。効率的に局在プラズモンを励起する粒径サイズに最適化したことで、高い増強度を有するナノ探針を再現性高く作製できることを示した。また、進相軸が異なる4枚の1/2波長板を組み合わせた位相板を用いることで、ナノ探針に照射する光の偏光方向を制御する方法を考案し、局在プラズモンを励起する偏光成分だけを供給する照明光学系を構成した。さらに、レーザーパルスに同期して、コヒーレントアンチストークスラマン散乱光のフォトン数を検出するゲーティング機構を取り入れ、暗電流の低減を図った。この際、アバランシェフォトダイオードの最大カウントレートを考慮し、EOモジュレーターによりあらかじめチタンサファイアレーザーパルス数を制御した上で、ゲーティングを行った。また、パルス数を低減することで、試料に対するダメージも軽減されることも確かめた。開発した装置を用い、分子数数十個(サブゼプトモル10^<-22>mol)という極微量のDNA塩基分子の検出を試みた。具体的には、アデニン(A)塩基を100個含む合成DNA(poly-d(A)_<100>)とグアニン(G)塩基分子30個を含む合成DNA(poly-d(G)_<30>))の近接場ナノラマンスペクトルを測定した。アデニンに特徴的な五員環伸縮の振動モードのピークを1337cm^<-1>と1384cm^<-1>に、グアニンに特徴的な五員環・六員環伸縮の振動モードのピークを1375cm<-1>と1480cm<-1>に観察した。これらの結果から、分子数数十個レベルの検出感度でDNA塩基分子種を識別、分析できることを示した。分子性ナノ結晶(アデニン:20x20x5nm^3)の近接場ラマンスペクトルにおいて特定のラマンバンドの強度、振動数が時間的に変動する、通常のラマン散乱あるいは表面増強ラマン散乱とは異なる非線形な現象を見出した。具体的には、無電解メッキ法によりチップ先端に銀コートした原子間力顕微鏡用カンチレバーをコンタクトモードで操作し、チップ先端をナノ結晶の一点に留めおき、10分間、スペクトルが変化する様子を連続的に観察した(観察波数領域:5001500cm^<-1>)。その結果、アデニン分子に帰属された多くのラマンバンドでそれらピーク強度が時間的に大きく変化していることを観察した。時系列的には、はじめ数個のピーク(728、1330cm^<-1>等)しか観察されなかったが(050秒)、突然多くのピークが出現し(5080秒、250550秒)、そのほとんどが再び消失する(80250秒、550600秒)ことが繰り返して観察された。また、観察されたラマンバンドの多くで、ピーク振動数が最大で10cm^<-1>の幅で変動し、中にはピークが分裂する現象も観察することができた。これら現象は銀ナノチップ直下のアデニン分子の銀に対する吸着状態が熱ゆらぎなどの要因により時間変動しているためと考えられる。そこで、密度汎関数法を用いて入射電場に対する振動モードの解析を行い、実験結果と比較したところ、銀チップに化学的に吸着する分子の配向状態が近接場ラマンスペクトルに影響を与えることが示唆された。本手法を用いることで、ナノスケールで分子の識別を行えるだけではなく、分子の吸着状態をも高感度に観察できることが示された。
KAKENHI-PROJECT-17034034
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17034034
非線形ナノ振動分光技術の開発研究
また、金属チップ先端の金属原子と分子間の化学的吸着状態のダイナミクスを観察する手法を新たに考案し、観察システムの構築も行った。
KAKENHI-PROJECT-17034034
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17034034
プログラム理解に基づいた知的なエラー検出に関する研究
プログラミング入門教育における演習で、学習者はシステムからのエラーメッセージを参考にプログラミング・デバッグを行う。しかし、現状のエラーメッセージはプログラム言語の文法をもとに作られるため、学習者にとって、必ずしも分かりやすいものではない。本研究では、学習者の意図を推測するために、人間の教師が行うようなプログラムの字下げ(インデンテーション)情報を積極的に利用したプログラム理解を行い、それに基づいて学習者の誤りを検出するシステムを作成した。本システムはアトム作成部・ブロック作成部・センテンス作成部・エラーアドバイス出力部から構成されている。学習者の作成したプログラムをアトム作成部で処理の最小単位(アトム)に分割する。それをブロック作成部で連接・選択・反復の組合せで構造化した後、センテンス作成部で文に構成する。処理はプロダクションルールを用いる。それらの過程で抽出された誤りをエラーアドバイス出力部で適切なメッセージにして出力する。本研究の成果は次のとおりである。(1)プログラムを解析する教師の知識をルールで表現しているが、そのルールを再検討し、33個に強化した。(2)プロダクションシステムで実現することにより、現状のコンパイラでは検出できなかった誤りを指摘できた。(3)実際の演習環境である汎用計算機(富士通M1600)上に移植した。また、今後の課題として次のものがある。(1)実際の演習環境での使用と評価、(2)学習者の理解モデルの構成、(3)他のプログラム言語への対応。本補助金で購入したビデオカメラ等により、学習者のプログラミング過程を記録し、学習者の理解モデルの構成を試みている。プログラミング入門教育における演習で、学習者はシステムからのエラーメッセージを参考にプログラミング・デバッグを行う。しかし、現状のエラーメッセージはプログラム言語の文法をもとに作られるため、学習者にとって、必ずしも分かりやすいものではない。本研究では、学習者の意図を推測するために、人間の教師が行うようなプログラムの字下げ(インデンテーション)情報を積極的に利用したプログラム理解を行い、それに基づいて学習者の誤りを検出するシステムを作成した。本システムはアトム作成部・ブロック作成部・センテンス作成部・エラーアドバイス出力部から構成されている。学習者の作成したプログラムをアトム作成部で処理の最小単位(アトム)に分割する。それをブロック作成部で連接・選択・反復の組合せで構造化した後、センテンス作成部で文に構成する。処理はプロダクションルールを用いる。それらの過程で抽出された誤りをエラーアドバイス出力部で適切なメッセージにして出力する。本研究の成果は次のとおりである。(1)プログラムを解析する教師の知識をルールで表現しているが、そのルールを再検討し、33個に強化した。(2)プロダクションシステムで実現することにより、現状のコンパイラでは検出できなかった誤りを指摘できた。(3)実際の演習環境である汎用計算機(富士通M1600)上に移植した。また、今後の課題として次のものがある。(1)実際の演習環境での使用と評価、(2)学習者の理解モデルの構成、(3)他のプログラム言語への対応。本補助金で購入したビデオカメラ等により、学習者のプログラミング過程を記録し、学習者の理解モデルの構成を試みている。
KAKENHI-PROJECT-05780177
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05780177
LHC実験での高速飛跡トリガーシステムの新規開発研究
本研究開発は、ATLAS/LHC実験での高速飛跡トリガー(FTK)システムの開発をすすめ、雑音事象が非常に多い環境下でも有意義な物理データを高速かつ効率よく収集(トリガー)することが目的である。そのために事象中にあるPt>1GeV/cの全ての飛跡の再構成を少なくとも100μs以下で行うことが望まれる。開発で最も重要なパラメータの一つが実行処理時間であり、瞬間ルミノシティー3×10^<34>cm^<-2>s^<-1>、インプットレート100KHzで運転しても、高分解能かつデッドタイムを作らないようなシステム構成が必要である。その点で、本年度はまずそれぞれの段階のVME(9U)ボードスペックを考慮し、シミュレーションデータを用いてシステムを最適化した。それにより、2009年初めの段階でのスペック・構造では、要請をクリアできないことを示し、共同研究機関であるピサ大学・シカゴ大学でも行われているエレクトロニクス開発に対する大きなフィードバックを行った。その結果、最終的に提案しているデザインでは実行時間は平均約24μ秒で処理が可能なことがわかった。また3月には、ハードウェアデザイン(2つの構造を提案中であり、双方とも実行時間の要求を満たしていることを確認)や物理パフォーマンス、実行時間や予算概算など全ての情報を含んだ93ページにも及ぶTechnical Proposalを完成させ、ATLAS実験グループに提出、現在鋭意レビュー中である。今後は、より現実的にVMEボードを開発すること、またこのシステムの挿入による物理成果を主眼に開発を進める。本研究開発は、ATLAS/LHC実験での高速飛跡トリガー(FTK)システムの開発をすすめ、雑音事象が非常に多い環境下でも有意義な物理データを高速かつ効率よく収集(トリガー)することが目的である。そのために事象中にあるPt>1GeV/cの全ての飛跡の再構成を少なくとも100μs以下で行うことが望まれる。開発で最も重要なパラメータの一つが実行処理時間であり、瞬間ルミノシティー3×10^<34>cm^<-2>s^<-1>、インプットレート100KHzで運転しても、高分解能かつデッドタイムを作らないようなシステム構成が必要である。その点で、本年度はまずそれぞれの段階のVME(9U)ボードスペックを考慮し、シミュレーションデータを用いてシステムを最適化した。それにより、2009年初めの段階でのスペック・構造では、要請をクリアできないことを示し、共同研究機関であるピサ大学・シカゴ大学でも行われているエレクトロニクス開発に対する大きなフィードバックを行った。その結果、最終的に提案しているデザインでは実行時間は平均約24μ秒で処理が可能なことがわかった。また3月には、ハードウェアデザイン(2つの構造を提案中であり、双方とも実行時間の要求を満たしていることを確認)や物理パフォーマンス、実行時間や予算概算など全ての情報を含んだ93ページにも及ぶTechnical Proposalを完成させ、ATLAS実験グループに提出、現在鋭意レビュー中である。今後は、より現実的にVMEボードを開発すること、またこのシステムの挿入による物理成果を主眼に開発を進める。
KAKENHI-PROJECT-21840048
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日本語声調史上における声点の受容のされ方と日本人のアクセント観についての研究
前年度に引き続き、日本漢字音について、どのような声点が記入されているか、その背後にはどのような事情が存在するかの解明を目指した。今年度は漢音資料については『論語』『本朝文粋』の数種類の古写本を、呉音資料については貞享版『補忘記』を研究の対象とし、性質を異にするそれぞれの資料における声点のあり方について考察した。まず『論語』と『本朝文粋』は、両者とも漢音資料として括ることが可能であるが、正格漢文と日本漢文という違いがあり、漢音声調についても性質に差が存することが予想された。複数の写本について調査を行った今年度の研究により、本文上の同じ箇所に記入された声点の差異が後者の方が多いこと、そこに現れた差異は日本語化に起因するものが少なくなく、従って日本漢音にあっても声調の日本語化が見られることなど明らかにした。このように、漢音読の訓点資料という点で共通していても、資料の性質により漢音声調の内実は様々であることが判明した。次に『補忘記』については、論議の場において実際に用いられた抑揚は、声点で示された音調と密接な関係を有しており、記入者が以前指摘した呉音声調変化の延長線上にあるという結論を導き出した。このような呉音声調の変化は、かつては声点を変化させることによって対応していたものだが、補忘記では全体の抑揚を表示する符号(節博士)によって表示している。日本語のアクセント体系が変化したことにより、単字の字音声調の組み合わせという把握から漢語全体の抑揚へとアクセントの把握が変化したことなどが考えられるのであり、声点アクセントとの関係の変化という新たな検討課題が浮かび上がった。本研究は、文献資料において「声点」がどのような変遷をたどったか解明し、ひいては日本人のアクセント観も射程に入れることを目指しているが、これは日本語アクセント史全体に関わるテーマであり、ともすれば論点が拡散してしまうことも危惧されたことから、科研費受給中の研究内容としては、日本漢字音にひとまず的を絞ることとした。「声点」そのものが本来は漢字の声調を示す符号であったこと、および漢語と和語とでは、前者の研究の層が薄いことなどから、まず漢字音・漢語に付せられた声点について、そのあり方の研究を進める必要があると判断したことによる。今年度は中世の訓点資料における字音点に注目し、資料・加点者によりどのような差異が存するか、という観点から研究を行った。具体的成果としては、六地蔵寺本『文鏡秘府論』について、仮名音注の検討も併せ、『日本語学論集』第3号に研究成果を公表し、従来研究が行われてきた図書寮本とは異なった声調体系が反映している可能性を導き出した。『文鏡秘府論』とは、従来本による訓法の差が小さいとされてきた資料であるが、そのような資料であっても声調体系に違いが存することは意外であり、他の資料の場合でも、同様の現象が想定されるところである。翌年度以降の研究課題として、同じ資料について、加点者の位相(僧侶か博士家の学者か、どの系統に属しているか、など)が異なると声調体系や声点差声位置にどのような違いが表れるか、また資料の性質(漢籍か、仏典か、日本漢文か、など)によって事情が異なるか否か、そもそも字音の声点とは日常的な漢語のアクセントを反映したものであるのかどうかなど、多角的な視点からの考察が必要であるという見通しを得た。前年度に引き続き、日本漢字音について、どのような声点が記入されているか、その背後にはどのような事情が存在するかの解明を目指した。今年度は漢音資料については『論語』『本朝文粋』の数種類の古写本を、呉音資料については貞享版『補忘記』を研究の対象とし、性質を異にするそれぞれの資料における声点のあり方について考察した。まず『論語』と『本朝文粋』は、両者とも漢音資料として括ることが可能であるが、正格漢文と日本漢文という違いがあり、漢音声調についても性質に差が存することが予想された。複数の写本について調査を行った今年度の研究により、本文上の同じ箇所に記入された声点の差異が後者の方が多いこと、そこに現れた差異は日本語化に起因するものが少なくなく、従って日本漢音にあっても声調の日本語化が見られることなど明らかにした。このように、漢音読の訓点資料という点で共通していても、資料の性質により漢音声調の内実は様々であることが判明した。次に『補忘記』については、論議の場において実際に用いられた抑揚は、声点で示された音調と密接な関係を有しており、記入者が以前指摘した呉音声調変化の延長線上にあるという結論を導き出した。このような呉音声調の変化は、かつては声点を変化させることによって対応していたものだが、補忘記では全体の抑揚を表示する符号(節博士)によって表示している。日本語のアクセント体系が変化したことにより、単字の字音声調の組み合わせという把握から漢語全体の抑揚へとアクセントの把握が変化したことなどが考えられるのであり、声点アクセントとの関係の変化という新たな検討課題が浮かび上がった。
KAKENHI-PROJECT-06J10648
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骨吸収抑制薬aminobisphosphonates(ABP)による免疫担当細胞増殖の機序および本薬物の免疫応答に対する効果
(2)サイトカインとセロトニンおよびヒスタミンとの関連性に関する総説(英国雑誌General Pharmacologyおよび邦文誌蛋白質核酸酵素)の中で、ヒスタミンと免疫担当細胞(顆粒球、マクロファージ、破骨細胞)の増殖との関連性について、これまでの研究成果を基に解説。(3)グラム陽性細菌由来のペプチドグリカンとタイプIIコラーゲンをマウスに併用投与するとリューマチ様の関節炎を発症する。このペプチドグリカンがアミノBPと同様にHDCを誘導することを発見し、論文を発表(Microbiol Immunol)。(4)HDCが誘導される細胞は、造血組織では顆粒球、マクロファージ、破骨細胞などの前駆細胞であり、非造血細胞では血管内皮細胞であることを示唆する結果を得た(投稿中)。(5)アミノBPは上記のリューマチモデルにおいてその症状を悪化するが、HDC誘導活性のない非アミノBPは症状をむしろ改善することを発見(論文作成中)。(6)アミノBPはサイトカインのIL-1によるHDC誘導を増強し、また、Mac-2陽性の活性化マクロファージを増加することを発見(骨代謝学会で発表)。(7)アミノBPは上記のリューマチモデルにおいて、おそらくマクロファージの関与する骨の破壊をもたらすことを発見(骨代謝学会で発表)。(8)アミノBPは造血組織の脾臓に、IL-1mRNAを増加し、GM-CSFmRNAは増加しないことを発見(未発表)。(9)アミノBPはマウスでの癌転移モデル実験において癌の転移/増殖を抑制せず、むしろ、促進する結果を得て、現在なお検討中。(2)サイトカインとセロトニンおよびヒスタミンとの関連性に関する総説(英国雑誌General Pharmacologyおよび邦文誌蛋白質核酸酵素)の中で、ヒスタミンと免疫担当細胞(顆粒球、マクロファージ、破骨細胞)の増殖との関連性について、これまでの研究成果を基に解説。(3)グラム陽性細菌由来のペプチドグリカンとタイプIIコラーゲンをマウスに併用投与するとリューマチ様の関節炎を発症する。このペプチドグリカンがアミノBPと同様にHDCを誘導することを発見し、論文を発表(Microbiol Immunol)。(4)HDCが誘導される細胞は、造血組織では顆粒球、マクロファージ、破骨細胞などの前駆細胞であり、非造血細胞では血管内皮細胞であることを示唆する結果を得た(投稿中)。(5)アミノBPは上記のリューマチモデルにおいてその症状を悪化するが、HDC誘導活性のない非アミノBPは症状をむしろ改善することを発見(論文作成中)。(6)アミノBPはサイトカインのIL-1によるHDC誘導を増強し、また、Mac-2陽性の活性化マクロファージを増加することを発見(骨代謝学会で発表)。(7)アミノBPは上記のリューマチモデルにおいて、おそらくマクロファージの関与する骨の破壊をもたらすことを発見(骨代謝学会で発表)。(8)アミノBPは造血組織の脾臓に、IL-1mRNAを増加し、GM-CSFmRNAは増加しないことを発見(未発表)。(9)アミノBPはマウスでの癌転移モデル実験において癌の転移/増殖を抑制せず、むしろ、促進する結果を得て、現在なお検討中。
KAKENHI-PROJECT-05671567
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671567
シクロパラフェニレンの自在官能基化を駆使したチューブ構造の構築と応用
昨年度から引き続き、シクロパラフェニレン(以下CPPと略す)の自在官能基化法の確立を目指した。具体的には、CPPのベンゼン環に複数のクロムを配位させ、そこに強塩基を作用させることで、クロムが配位したベンゼン環のみ官能基化させようと試みた。複数のクロムを配位させるには、クロムヘキサカルボニル錯体よりも反応性の高い基質が必要であると考え、配位不飽和である12電子クロムトリカルボニル錯体を系中で発生させ、そこにCPPを作用させることでCPPマルチクロム錯体の合成、続く官能基化を試みた。様々な反応条件を検討した結果、CPPの複数箇所の官能基化は困難であると判断し、別の方法で官能基化CPPの合成を目指した。これまでに報告されているCPPの合成法は主に二つに分けられる。一つは折れ曲がりユニットとしてシクロヘキサジエンまたはシクロヘキサンを有するマクロサイクルの芳香族化、もう一方は、白金を角にもつマクロサイクルの還元的脱離である。前者は合成するCPPのサイズを正確に制御できるというメリットの一方で、合成に多段階を要する、というデメリットがある。後者ではCPPを迅速に合成できるものの、高価な白金を大量に必要とするため、大スケールでの実験には多額の研究費が必要となってしまう。そこで、白金のような高価な金属試薬を必要としない、安価なCPPの合成法を確立し、さらにそれを官能基化CPPの合成への応用を目指した。様々な合成法を模索した結果、最終的に既存のCPP合成法の問題点を解決し得る新たな合成法を見出した。本手法は白金のような高価な金属を必要とせず、市販の試薬からワンポットでCPPを合成できるという点で非常に優れている。また、本手法を用いれば、対称性の高い置換CPPも合成可能となると期待できる。即ち、本研究では当初予定していた方法とは異なるものの、官能基化CPPの合成手法への手がかりを掴んだ。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。シクロパラフェニレン(CPP)は、カーボンナノチューブの最短フラグメントとして古くから注目されてきたが、その合成は2008年に達成されたばかりであり、近年、漸くサイズ選択的合成が可能となった。しかし、CPPの官能基化に関してはほとんど研究が進んでいないため、本研究では、CPPの自在官能基化法を確立し、さらにCPPの新たな応用研究を行うことを目的とした。本年度は、まずCPPの自在官能基化法の確立を目指し、CPPと各種クロム錯体との反応を検討した。CPPに様々な配位不飽和クロム錯体を作用させた後、プロトン引き抜き、官能基の導入を試みたが、複数の官能基が導入されたCPPを得るには至らなかった。しかしながら、申請書作成時には予期していなかった、全く新しいCPPの応用研究を展開することができた。湾曲パラフェニレンのHOMOが高い準位にあるので、CPPにアクセプターを組み込むことで、全く新しい環状ドナーアクセプター分子の創製が可能となるのではないかと考えた。そこで、アントラキノン含有カーボンナノリングを合成し、さらにそのアントラキノン部位をより強力なアクセプターである、テトラシアノアントラキノジメタンへと誘導した。これらのカーボンナノリングは、溶解させる溶媒の極性に依存して、その蛍光色を緑から赤色へと変化させた。このようなソルバトフルオロクロミズム特性をもつカーボンナノリングは初めての例である。理論計算を行ったところ、HOMOは湾曲パラフェニレン部位に、LUMOはアクセプター部位にそれぞれ局在化していることから、これらの分子はドナーアクセプター型カーボンナノリングといえる。当初の目的である、CPPの自在官能基化法の確立に至っていないが、初めてのドナーアクセプター型カーボンナノリングを合成し、そのソルバトフルオロクロミズム特性を明らかにした。それらの成果に関して、国内及び国際学会においてポスター発表を行い、さらに国際誌に論文を発表するに至った。以上より、研究は当初の予定とは若干異なるものの、CPPの新たな応用研究を展開できたことから、おおむね順調に進展していると判断した。昨年度から引き続き、シクロパラフェニレン(以下CPPと略す)の自在官能基化法の確立を目指した。具体的には、CPPのベンゼン環に複数のクロムを配位させ、そこに強塩基を作用させることで、クロムが配位したベンゼン環のみ官能基化させようと試みた。複数のクロムを配位させるには、クロムヘキサカルボニル錯体よりも反応性の高い基質が必要であると考え、配位不飽和である12電子クロムトリカルボニル錯体を系中で発生させ、そこにCPPを作用させることでCPPマルチクロム錯体の合成、続く官能基化を試みた。様々な反応条件を検討した結果、CPPの複数箇所の官能基化は困難であると判断し、別の方法で官能基化CPPの合成を目指した。これまでに報告されているCPPの合成法は主に二つに分けられる。一つは折れ曲がりユニットとしてシクロヘキサジエンまたはシクロヘキサンを有するマクロサイクルの芳香族化、もう一方は、白金を角にもつマクロサイクルの還元的脱離である。前者は合成するCPPのサイズを正確に制御できるというメリットの一方で、合成に多段階を要する、というデメリットがある。後者ではCPPを迅速に合成できるものの、高価な白金を大量に必要とするため、大スケールでの実験には多額の研究費が必要となってしまう。
KAKENHI-PROJECT-15J10802
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J10802
シクロパラフェニレンの自在官能基化を駆使したチューブ構造の構築と応用
そこで、白金のような高価な金属試薬を必要としない、安価なCPPの合成法を確立し、さらにそれを官能基化CPPの合成への応用を目指した。様々な合成法を模索した結果、最終的に既存のCPP合成法の問題点を解決し得る新たな合成法を見出した。本手法は白金のような高価な金属を必要とせず、市販の試薬からワンポットでCPPを合成できるという点で非常に優れている。また、本手法を用いれば、対称性の高い置換CPPも合成可能となると期待できる。即ち、本研究では当初予定していた方法とは異なるものの、官能基化CPPの合成手法への手がかりを掴んだ。今後もCPPの官能基化法の開発を最優先課題として研究を行う。当初の戦略であった、クロム錯体を利用するCPPの自在官能基化法の確立は困難であることから、別の方法でCPPの官能基化法を開発していく。さらに、官能基の種類に応じて様々な応用研究(例えばチューブ構造の構築など)を展開させる。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15J10802
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J10802
アロステリックおよび転写調節による代謝ネットワークの制御に関する研究
代謝系は生体内で必要とされる化合物やエネルギーを生成したり、不要物を分解して再利用したりするために細胞内で働くシステムであり、全ての生物に必須の機能である。代謝系は外界からの刺激など環境の変化に素早く応答する必要があり、また、必要な化化合物を必要なだけ合成するために、細胞内の低分子化合物による制御機構を進化させてきた。本研究では、代謝系が制御されている仕組みを、低分子による制御を中心に、ネットワーク解析手法を用いて明らかにすることを目的としている。本年度は、主にアロステリック制御と競合制御、フィードバックとフィードフォワード、阻害と活性化についてネットワークという観点から大腸菌の代謝系を解析した。その結果、制御に関わるループの長さは活性化制御に比べ阻害制御の方がかなり短いことが分かった。しかしながら、アロステリック制御と競合制御についてはループの長さに関する有意な差は見られなかった。また、阻害制御にはフィードバックループが、活性化制御にはフィードフォワードループが、それぞれよく使われる傾向があった。これらの結果は、代謝系全体におけるフィードバック制御とフィードフォワード制御の使われ方を反映していると考えられる。本年度はさらに転写制御と代謝制御との関連を調べるために、オペロン構造と代謝のループ構造との関連を解析した。その結果、オペロンを構成している遺伝子の方がそれ以外の遺伝子に比べ、低分子化合物による制御を受けている傾向が観察された。しかしながら、転写制御と代謝制御の間には明らかな相関は見られなかった。代謝ネットワークにおけるアロステリック制御を解析するために、今年度はまず酵素に対する小分子阻害剤・活性剤に関する情報をBRENDAデータベースから抽出した。この部分の信頼性が今後の解析に大きく影響を与えるので、特に生物種ごとに実験で報告されている情報かどうかを判断基準として自動で抽出するプログラムを作成した。さらに、抽出したデータをmySQLでWebインタフェースを通して検策できるようにした。これにより対象生物種を増やすことができるようになったので、当初予定していた大腸菌に加え、酵母、ヒト、マラリア原虫の情報をデータベース化した。それぞれに対して、解析に十分耐えうると思われる1000以上の制御関係を抽出することができた。このデータをネットワークとして解析したところ、いずれの生物種においてもスケールフリー構造を観測することができた。スケールフリーの指数に関しては生物種により若干の違いが見えたが、その違いが有意かどうかは現時点では不明である。また、クラスタリング係数を計算した結果、ネットワークにおける階層性は観測できなかった。今後さらに生物種を増やすことにより、この傾向が一般的なものかどうかを示すことができると考えられる。各生物種における制御分子について具体的に調べてみると、大腸菌や酵母では解糖系・クレブス回路といったエネルギー生成パスウェイに関わっている分子が多く、ヒトではcAMPやリン脂質などのシグナル分子が多いことが見えてきた。このことは単細胞生物と多細胞生物に対する進化圧の違いを表していると考えられる(単細胞生物では外界の環境変化により敏感であり、多細胞生物では近隣の細胞との相互作用に敏感であるはずである)。ATPは全ての生物種において最も多く使われる制御分子であった。一方、NADやNADPは代謝系ではATPと同じような働きも持つにもかかわらず、制御分子としての関与はATPよりはるかに少ないことが分かった。ATPがリン酸基を渡すのに対し、NADなどはプロトンを渡すので、この化学変化の大きさの違いが酵素の認識に影響を与えているのかもしれない。制御分子として利用される化学構造の違いは今後より詳細に調べる予定である。昨年度に引き続き、低分子化合物による制御が代謝ネットワークに与える影響を解析している。昨年度抽出して解析に利用したBRENDAのデータに加え、今年度はEcoCycの情報も抽出した。これまでに、代謝制御ネットワークの全体的なトポロジーが、代謝ネットワークと同様にスケールフリーかつ階層的なネットワークの性質を持つことを示し、それらの性質が生物種間で保存されていることを明らかにしてきた。一方で、局所的には生物種間の違いが存在することも示した。今年度は、低分子化合物の構造(原子同士の共有結合で表現される2次元構造)が代謝制御ネットワークに及ぼす影響を解析するために、化合物間で構造の類似度を計算し、化合物の構造が制御因子として適しているかどうかを決定するための重要な要因となっていることを示した。また、制御因子となっている化合物を、機能的に相関のある酵素群を制御する機能モジュールに分割するために、化合物の構造を利用する方法を示した。さらに、ネットワークモチーフの解析を行い、代謝流量の制御を補助するフィードバックループが存在することを明らかにした。その中では、生成物合成の阻害による短距離のフィードバックループが重要である。ただし、長距離のアロステリック効果も存在する。現在、化学量論的な情報を考慮した代謝ネットワークとそれに対する制御システムとの相関を明らかにするために、引き続きネットワーク構造の解析を進めている。また、遺伝子制御のネットワーク構造をアロステリック制御のネットワーク構造と比較する予定である。代謝系は生体内で必要とされる化合物やエネルギーを生成したり、不要物を分解して再利用したりするために細胞内で働くシステムであり、全ての生物に必須の機能である。代謝系は外界からの刺激など環境の変化に素早く応答する必要があり、また、必要な化化合物を必要なだけ合成するために、細胞内の低分子化合物による制御機構を進化させてきた。本研究では、代謝系が制御されている仕組みを、低分子による制御を中心に、ネットワーク解析手法を用いて明らかにすることを目的としている。
KAKENHI-PROJECT-05F05439
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05F05439
アロステリックおよび転写調節による代謝ネットワークの制御に関する研究
本年度は、主にアロステリック制御と競合制御、フィードバックとフィードフォワード、阻害と活性化についてネットワークという観点から大腸菌の代謝系を解析した。その結果、制御に関わるループの長さは活性化制御に比べ阻害制御の方がかなり短いことが分かった。しかしながら、アロステリック制御と競合制御についてはループの長さに関する有意な差は見られなかった。また、阻害制御にはフィードバックループが、活性化制御にはフィードフォワードループが、それぞれよく使われる傾向があった。これらの結果は、代謝系全体におけるフィードバック制御とフィードフォワード制御の使われ方を反映していると考えられる。本年度はさらに転写制御と代謝制御との関連を調べるために、オペロン構造と代謝のループ構造との関連を解析した。その結果、オペロンを構成している遺伝子の方がそれ以外の遺伝子に比べ、低分子化合物による制御を受けている傾向が観察された。しかしながら、転写制御と代謝制御の間には明らかな相関は見られなかった。
KAKENHI-PROJECT-05F05439
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05F05439
日本の科学工業経営における技術変化と技術管理
有効な技術管理のためには技術変化の態様をまず明らかにする必要がある。その技術変化の態様については産業により相違があることが本研究で明らかとなった。本研究では、日本の塗料工業および製薬業における技術変化についてそれぞれ数社の詳細な事例研究をすることによって、これらの多品種ロット生産を特性とする精密科学工業における技術変化の道筋が、合衆国自動車工業を経験的基礎とした技術変化モデルや、同質製品を大量に生産する素材型化学工業における技術変化のそれと相違することが明らかになった。加工組立産業のモデルでは、産業成熟とともに製品の標準化・製法の自動化・生産の大規模化・製品革新から製法革新への重点の移行・画期的革新から漸進的革新への移行が進むとされており、素材型化学工業の研究では、加工組立産業の場合と比べて産業ライフサイクルの速い段階で同様の移行が進むとされているのに対し、精密化学工業では、こうした移行があまり進展せず、一定段階でとどまり、製品革新や画期的革新が以前と重視されつづけていた。このようなことから、産業の技術変化を考える際には、化学やバイオテクノロジーをコアとするプロセス型工業のなのか物理的加工をコアとする加工組立型工業なのかというような技術特性への配慮、小品種大ロット生産で許されるのか多品種小ロット生産が要求されるのかという市場特性への配慮、さらには製薬業のように特定の制度がいかに関わっているのかというような点への配慮が必要であることが明らかとなった。有効な技術管理のためには技術変化の態様をまず明らかにする必要がある。その技術変化の態様については産業により相違があることが本研究で明らかとなった。本研究では、日本の塗料工業および製薬業における技術変化についてそれぞれ数社の詳細な事例研究をすることによって、これらの多品種ロット生産を特性とする精密科学工業における技術変化の道筋が、合衆国自動車工業を経験的基礎とした技術変化モデルや、同質製品を大量に生産する素材型化学工業における技術変化のそれと相違することが明らかになった。加工組立産業のモデルでは、産業成熟とともに製品の標準化・製法の自動化・生産の大規模化・製品革新から製法革新への重点の移行・画期的革新から漸進的革新への移行が進むとされており、素材型化学工業の研究では、加工組立産業の場合と比べて産業ライフサイクルの速い段階で同様の移行が進むとされているのに対し、精密化学工業では、こうした移行があまり進展せず、一定段階でとどまり、製品革新や画期的革新が以前と重視されつづけていた。このようなことから、産業の技術変化を考える際には、化学やバイオテクノロジーをコアとするプロセス型工業のなのか物理的加工をコアとする加工組立型工業なのかというような技術特性への配慮、小品種大ロット生産で許されるのか多品種小ロット生産が要求されるのかという市場特性への配慮、さらには製薬業のように特定の制度がいかに関わっているのかというような点への配慮が必要であることが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-07730065
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07730065
脳磁図による脳機能画像法を用いたアスペルガー症候群の社会機能障害の神経基盤の研究
アスペルガー症候群は、自閉症スペクトラムの一角をなす発達障害の一群である。最近、複数の重大犯罪に本症候群の患者がかかわったと判断されて社会問題となる一方、本症候群の病態が誤解される恐れが指摘されるなど、本症候群の病態を科学的に解明し、治療・介入・教育方法を確立することが急務となっている。本研究では、アスペルガー症候群の中心症状である社会性の障害の神経基盤を、脳内の複数の領域が関わる神経ネットワークの障害として捉え、本症候群の病態メカニズムを明らかにするために、本症候群に特徴的な高次機能障害に関連するMirror Neuron課題(模倣、感情の伝達や共有などの情動・認知能力に関連する課題)を用いて、我々が独自に開発してきた脳磁図の空間フィルタ解析による脳機能画像法により、脳内の各領域の健常群との神経活動の差異とともに、脳内神経ネットワーク全体の障害を時間・空間的に検討することかできた。MEGのSAMを用いたpost-movement ERS研究によって、成人Asperger disorder患者におけるMirror neuronsystemの障害を捉えられる可能性が示唆された。アスペルガー症候群は、自閉症スペクトラムの一角をなす発達障害の一群である。最近、複数の重大犯罪に本症候群の患者がかかわったと判断されて社会問題となる一方、本症候群の病態が誤解される恐れが指摘されるなど、本症候群の病態を科学的に解明し、治療・介入・教育方法を確立することが急務となっている。本研究では、アスペルガー症候群の中心症状である社会性の障害の神経基盤を、脳内の複数の領域が関わる神経ネットワークの障害として捉え、本症候群の病態メカニズムを明らかにするために、本症候群に特徴的な高次機能障害に関連するMirror Neuron課題(模倣、感情の伝達や共有などの情動・認知能力に関連する課題)を用いて、我々が独自に開発してきた脳磁図の空間フィルタ解析による脳機能画像法により、脳内の各領域の健常群との神経活動の差異とともに、脳内神経ネットワーク全体の障害を時間・空間的に検討することかできた。MEGのSAMを用いたpost-movement ERS研究によって、成人Asperger disorder患者におけるMirror neuronsystemの障害を捉えられる可能性が示唆された。本研究は、アスペルガー障害の中心症状である社会性の障害の神経基盤を脳内の複数の領域が関わる神経ネットワークの障害として捉え、本症候群の病態メカニズムを明らかにすることを目指している。初年度は、他者の動きを認識する過程(Mirror neuron system ; MNS)で生じる脳内の神経活動を、脳磁図の空間フィルタ解析を用いて推定、検討した。平成16年度の主な研究実績は下記のとおりである。1)健常被験者10名を用い、2つの刺激条件、即ち(1)他人が小さな物品を扱っているのを観察する(観察条件)、(2)他人が扱ったように実際に物品を扱う(実行条件)、での事象関連脱同期(event-related desynchronization ; ERD)を検討した。β帯域(15-30Hz)では運動実行/観察時ともに、感覚運動野で(実行時は左=右、観察時は左>右)でERDが推定された。α帯域(8-15Hz)では運動実行/観察時ともにERD出現率はβ帯域よりも少ないが、観察時に左の上側頭回でERDが半数例で推定された。健常被験者では、他者の行動の認知の際に、上側頭回を経由する視覚的な情報過程と同時に、感覚運動野や頭頂葉などから構成されるMNSが活動していることが示唆された。2)アスペルガー障害患者7名に対し、上記と同様のMEG測定、解析をおこなった。患者群では健常被験者に比して、運動観察時に感覚運動野におけるERDの出現が少ない傾向があり、上前頭回、上側頭回、頭頂領域でのERDの出現率に健常群とは異なる傾向を認めた。運動観察時のERDはMNSに関連した1次運動野近傍の神経活動を意味することより、患者群ではMNSに障害が存在する可能性が示唆される。また患者群では他人の行動を観察する際に、異なるストラテジーを用いている可能性が示唆された。本研究では、アスペルガー症候群の中心症状である社会性の障害の神経基盤を、脳内の複数の領域が関わる神経ネットワークの障害として捉え、本症候群に特徴的な高次機能障害に関連する課題・感覚刺激を負荷し、脳磁図の空間フィルタ解析により脳機能画像を作成し、脳内の各領域の健常群との神経活動の差異とともに、脳内神経ネットワーク全体の障害を時間・空間的に視覚化することを目指している。研究の最終年度である平成17年度の主な研究実績は下記のとおりである。2)脳磁図(MEG)の空間フィルタ解析を用いて、Stroop課題の刺激提示から回答までの短時間の神経ネットワークの振る舞いを時間窓200msの高い時間分解能で機能画像化する方法を開発するとともに、健常群、統合失調症の幻聴群、非幻聴群の3群での振る舞いの差異について検討した。前頭前野背外側部DLPFC(dorsolateral prefrontal cortex)での活動が、健常群では左優位に両側性に、幻聴群では右優位、非幻聴群では左優位となることから、左のDLPFCの機能不全と幻聴の発生の関連性が示唆されるとともに、統合失調症群においても入力-組織制御-出力という脳内神経ネットワーク上の基本的な情報処理過程の流れは保たれていることが示された。
KAKENHI-PROJECT-16591131
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16591131
脳磁図による脳機能画像法を用いたアスペルガー症候群の社会機能障害の神経基盤の研究
3)発症時に妄想状態を呈したてんかん精神病の患者2名について、妄想状態と治癒後の妄想症状がない状態に行った脳磁図測定からSAM-Kurtosis法を用いて解析し、妄想状態に関連した脳内の活動部位を右縁上回を含む右頭頂葉付近に推定した。
KAKENHI-PROJECT-16591131
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16591131