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活性型変異Rasによって誘導されるオートファジー介在性抗原提示機構の解明
活性型K-ras変異が誘導するオートファジーと、それに依存した抗原提示機構を検討した。K-rasの変異を持たない不死化した正常細胞株に活性型K-ras変異(G12V)遺伝子を導入したところ、高活性オートファジーが誘導された。それに伴い、オートファジーを介したCTLエピトープが生成されるようになった。これらのことから、K-rasの変異を持ち、高活性オートファジーが働いている膵臓癌においては、抗原提示機構としてその過程を利用していることが推測された。このことからがん免疫において新たな抗原提示機構の可能性が示唆された。K-ras遺伝子の活性型変異と恒常的高活性オートファジーの誘導およびエピトープ産生の関連を明らかにするために、本年度は正常細胞株を用いて検討した。K-ras遺伝子の活性型変異を持たない正常細胞株として、ヒト正常乳腺上皮細胞(MCF10A)を用いた。K-ras遺伝子の活性型変異(12番目のグリシンがバリンに変換される変異;G12V)遺伝子をレトロウイルスベクターを用いて安定発現細胞を作製し、ウェスタンブロット法にてrasの発現を確認した。次にこの細胞におけるオートファジーレベルをマーカーであるLC3の免疫染色法にて確認したところ、活性型変異k-ras遺伝子の導入細胞において顕著に高活性のオートファゴソームが観察された。また細胞傷害性Tリンパ球への抗原提示を解析するためにエピトープを提示するHLA-A24遺伝子をレンチウイルスベクターにて導入し、発現細胞を陽性画分をセレクションして得た。さらにこの細胞の抗原提示能を検討するために、ピューロマイシン感受性アミノペプチダーゼ(PSA)を抗原とし、オートファジー依存性かつHLA-A24拘束性エピトープを認識するCTLクローンと共培養して、特異的に認識した時に産生されるIFN-γを測定して検討した。その結果、活性型k-ras遺伝子導入細胞においてのみCTLクローンによるIFN-γの産生が増加していた。以上のことから、活性型K-ras遺伝子の変異→高活性オートファジー→PSAエピトープの産生という過程が検証できた。膵癌発生過程における活性型K-ras遺伝子変異と恒常性オートファジー亢進、その結果生じるPSAエピトープの提示を検討するために、本年度はヒト正常膵管上皮細胞を用いて、K-ras遺伝子の活性型変異導入、およびHLA-A24遺伝子の導入細胞を作製して、恒常的オートファジー依存性エピトープの産生を検討することを目的とした。ところが、ヒト正常乳腺上皮細胞(MCF10A)で成功した実験技術を用いてもヒト正常膵管上皮細胞においてK-ras遺伝子変異体導入による効果を検討することができなかった。これは不死化した正常細胞であるMCF10Aとは異なり、本来の正常細胞由来のヒト正常膵管上皮細胞において、K-ras遺伝子変異によりoncogene-induced senescense(OIS)が生じてしてまったためであると推測された。これは正常細胞においてしばしば見られる共通の現象で、発癌因子によって細胞老化が誘導され、正常細胞であるために発癌防御機構が働いたことに起因すると考えられる。このため、癌抑制遺伝子であるp53の発現抑制や癌遺伝子であるc-mycの強制発現によりOISを回避する必要が生じた。そこでK-ras変異遺伝子導入に伴わせて、p53の発現抑制およびc-myc遺伝子の強制発現を行うことを検討したところ、結果としてOISを回避することができた。しかしながら、この細胞においてはK-ras変異遺伝子導入細胞においてオートファジーの恒常的活性化は見られず、そのため、PSAエピトープの抗原提示も観察できなかった。膵臓癌発生過程における活性型K-ras遺伝子変異と恒常性オートファジー亢進と、その結果生じるPSAエピトープの抗原提示を検討するために、本年度はヒト正常膵管上皮細胞を用いて恒常的オートファジー依存性エピトープの産生を検討するとともに、膵臓癌細胞株におけるPSAエピトープの抗原提示機構の解析を行うことを目的とした。昨年度は正常細胞にK-ras遺伝子変異を導入した際にoncogene-induced senescence (OIS)が生じてしまい、その後の検討ができなかった。通常の膵臓癌発生過程を参考に癌抑制遺伝子であるp53の発現抑制や、癌遺伝子であるc-mycの強制発現によりOISを回避できたものの、オートファジーの恒常的活性化が見られなかった。そこで今年度はp53遺伝子、c-myc遺伝子、K-ras遺伝子の導入の順番を様々に変えて検討した。昨年度と同様にオートファジーの恒常的活性化は見られなかった。このことから、検討した因子以外にも膵臓癌においてオートファジーが活性化するのに必要な因子が存在することが示唆された。活性型K-ras変異が誘導するオートファジーと、それに依存した抗原提示機構を検討した。K-rasの変異を持たない不死化した正常細胞株に活性型K-ras変異(G12V)遺伝子を導入したところ、高活性オートファジーが誘導された。それに伴い、オートファジーを介したCTLエピトープが生成されるようになった。これらのことから、K-rasの変異を持ち、高活性オートファジーが働いている膵臓癌においては、抗原提示機構としてその過程を利用していることが推測された。このことからがん免疫において新たな抗原提示機構の可能性が示唆された。ヒト正常膵管上皮細胞を用いて、K-ras遺伝子の活性型変異体を導入したところoncogene-induced senescens(OIS)が生じてしてまった。
KAKENHI-PROJECT-25871227
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25871227
活性型変異Rasによって誘導されるオートファジー介在性抗原提示機構の解明
これを回避するために様々な工夫を行ってOISを回避することには成功したが、目的であるオートファジーの誘導は引き起こせなかった。OIS回避のために時間がとられた上に、結果としてオートファジーを誘導できなかったのでその先の結果が得られなかった。このため研究計画に比べてやや遅れていると判断した。腫瘍免疫学ヒト正常膵管上皮細胞を用いる系はひとまず中止して、成功しているMCF10A細胞の系で従来予定していたK-rasおよびオートファジー関連シグナル伝達の解析を行うことで一定の結果を得る予定である。本研究はK-ras遺伝子の活性型変異と恒常的高活性オートファジーの誘導およびエピトープ産生の関連を明らかにすることを目標としている。初年度では研究計画として正常細胞の細胞株であるMCF10A細胞を用いて検討することを予定していた。最初に他のグループがすでにMCF10A細胞においてK-ras活性化型変異遺伝子導入により高活性のオートファジーが誘導されることを報告しているがそれが追試できた。次にK-ras活性化型変異遺伝子導入時にのみオートファジー依存性エピトープが産生されることが明らかとなった。以上のことから予定していた研究計画の検討を行って結果を得ることができたため順調に進展していると判断した。今年度は旅費を他の研究費から支出したため、予定より余った。一部物品費として使用したが、未使用金は次年度へ繰り越した。本年度、ヒト正常乳腺上皮細胞(MCF10A)において、K-ras遺伝子の活性型変異導入、およびHLA-A24遺伝子の導入細胞の作製して、恒常的オートファジーの観察およびオートファジー依存性エピトープの産生を観察することができた。膵癌では多くの腫瘍でK-ras活性型変異を有し、オートファジーの亢進も観察される。このため正常の膵臓細胞や膵管細胞で同様の現象が観察できるか検討する。また、この現象の分子基盤を明らかにするための実験へと移行していきたいと考えている。具体的にはK-ras遺伝子下流のシグナル伝達の解析およびオートファジーに関連するシグナル伝達を解析する予定である。最終年度に効率よい研究を行うために使用する予定である。今年度は旅費を他の研究費から支出したため、予定より余ったため次年度へ繰り越した。より良い抗体の購入のため、必要な抗体を複数購入し検討するために使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-25871227
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25871227
柔軟なデュアル構造を有する超広帯域エレクトレットコンデンサセンサの開発
マイクロギャップを有するフレキシブルエレクトレットコンデンサセンサ(フレキシブルECS)の製作を行った。その結果,折りたたみ可能な柔軟性を有するECSを製作できた。製作したECSは,心音の測定,植物のキャビテーションに伴う超音波AEを検出が可能で,広帯域の加速度も測定できた。さらに,素子を2枚積層したデュアルセンサを製作した。このデュアルセンサから得られる送受信波形の振幅と重心周波数を用いて,軟質材料の硬さを測定することができた。これらの結果から,目的に応じて素子の形状や構造を調節することで,1 Hzから100 kHzまでの超広帯域の振動に対応したフレキシブルECSを開発できると考えられる。極薄フッ素樹脂(PFA)フィルムにAl電極を溶着により取付け,コロナ放電によりエレクトレット化したフィルムとインクジェットプリンティングによりシリカ凝集体の微細パターニングギャップを形成したフィルムを積層して,フレキシブルECS素子を作製した。そして,ECS素子を2枚積層したデュアルセンサを製作し,片方を送信子,もう片方を受信子として使用することでセンサの送受信特性を測定することで,センサに負荷された圧力と,センサを接着した物体の硬さを同時測定することを試みた。その結果,センサに負荷された圧力の増加に伴い,送受信波形強度が低下する一方で,エラストマーからアクリル樹脂までの軟質材料の硬さであれば,硬さの増加に伴い,送受信波形の重心周波数が低下することが明らかとなった。この結果を用いて,指などでセンサを軟質材料に押し付けるだけで,押付力と軟質材料の硬さを同時測定することが可能となることを示すことができた。このセンサーは,軟質材料の硬さ測定だけでなく触覚センサーとしても応用できるのではないかと期待される。次に,ECS素子をギャップを介して2枚配置することで超音波センサーとしてギャップ間の音速を測定し,音速からガス濃度を計測することを試みた。その結果,ギャップ50mmで,空気から水素へ雰囲気を置換しても超音波を送受信することができ,音速の水素濃度依存性を示すことができた。このセンサーはギャップを10mm程度まで狭めることができることから,小型で応答速度の高いガス濃度センサーとしての応用が期待される。マイクロギャップを有するフレキシブルエレクトレットコンデンサセンサ(フレキシブルECS)の製作を行った。その結果,折りたたみ可能な柔軟性を有するECSを製作できた。製作したECSは,心音の測定,植物のキャビテーションに伴う超音波AEを検出が可能で,広帯域の加速度も測定できた。さらに,素子を2枚積層したデュアルセンサを製作した。このデュアルセンサから得られる送受信波形の振幅と重心周波数を用いて,軟質材料の硬さを測定することができた。これらの結果から,目的に応じて素子の形状や構造を調節することで,1 Hzから100 kHzまでの超広帯域の振動に対応したフレキシブルECSを開発できると考えられる。極薄フッ素樹脂(PFA)フィルムにAl電極を蒸着又は溶着により取付け,コロナ放電によりエレクトレット化したフィルムとインクジェットプリンティングによりシリカ凝集体の微細パターニングギャップを形成したフィルムを積層して,フレキシブルECS素子を作製した。そして、作製したフレキシブルECSについて,市販の広帯域加速度センサともにAl板の振動測定を行い、その性能を評価した。その結果、1Hz10kHzにおいて市販のセンサーと同等以上の感度を有することが明らかとなり、安価でフレキシブルな加速度センサーとしての可能性を示すことができた。次に、このフレキシブルECSを用いて音響測定を行ったところ、110kHzの平均感度は-60 dB(0 dB=1 V/Pa)であった。これは市販のマイクロフォンより低感度ではあったが、加速度だけでなく音響も測定できることが明らかとなった。さらに、同じフレキシブルECSを用いて、心音の測定を行ったところ、明瞭に心音を検出できることが分かった。また、両面テープを用いることで強固に人体に取り付け可能であったことから、従来の体導音センサーと比較して取り付けやすく、安価なセンサーとして実用化できる可能性が高まった。次に、フレキシブルECSのエレクトレット電位、各種フィルムの厚さ、素子面積について検討を行った。その結果、素子の静電容量(素子面積とフィルム厚さ)が、フレキシブルECSの性能に最も強く影響があることが分かり,フッ素樹脂層を極力薄くすることが今後の課題となった。また,取り付けやすさについて検討を行ったところ,柔軟性は十分であったがテープで接着後に取り外すときなどの折れ曲がりでフィうるむ積層間が浮き上がる場合があり,接着層の導入などによる過度のギャップの変形の抑制が課題となった。フレキシブルECS素子を2枚積層したデュアルセンサーを製作し,ミニトマト茎部および葉部での送受信測定を行い,水ポテンシャルとの相関を調べた。その結果,水ポテンシャルの低下に伴い,送受信波形の出力および周波数成分が変化することが明らかとなった。これは,植物茎及び葉が水ポテンシャルの低下により硬さが増加することを反映したものと考えられる。この成果により,デュアルセンサーを用いることで,従来の手法より簡便でかつ非破壊的に水ポテンシャルの変動をモニタリングする技術へと発展させることが期待される。次に,絶縁性及び導電性PTFEディスパージョンをスピンコーティングすることで厚さ10ミクロン以下の極薄エレクトレットの作成を試みた。その結果,厚さ5ミクロンのエレクトレットを得ることができたが,常温においても表面電荷が徐々に減衰していった。このため,長期間使用可能なエレクトレットとするためにエレクトレット層の緻密化,分子量の調整,電極との密着性などについて改善する必要がある。非破壊評価
KAKENHI-PROJECT-24500196
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24500196
柔軟なデュアル構造を有する超広帯域エレクトレットコンデンサセンサの開発
ECS素子を積層してデュアルセンサとすることで,振動だけでなく圧力や硬さを測定できることを明らかにできた。このセンサにより従来の軟質材料の硬さ測定に用いられるデュロメータより小型で応答速度の高いセンシングが可能となった。さらに,当初の目的以外に超音波の送受信によるガス濃度センサーとしての可能性も示すことができた。一方,植物の発泡音測定については,現状では実施の見通しが立っておらず,今後の課題として残った。素子を折りたたみ,PPフィルムで保護されたフレキシブルECSを製作し,それを用いた生体信号および各種力学情報を計測することができた。一方で,植物の発泡音測定までを行う時間が無く,これについては来年度以降に実施する予定である。従来型センサとの比較として,市販の加速度センサとの比較を行い,同等の性能でありながら安価でフレキシブルなセンサとしての可能性を示すことができた。一方,心音などの測定は電子聴診器などの市販の機器を購入する予算が無かったため実施できなかった。エレクトレットの表面電位,フィルムの厚さ,電極の厚さと材質をパラメータとして性能の改善を試み,フッ素樹脂層の厚さが最も重要なパラメータであることが分かった。微細パターンニングの形状,パッケージの方法などについては今後の課題として残った。フレキシブルECS素子を2枚積層したデュアルセンサーを利用して植物茎部の硬さ測定を行い,水ポテンシャルとの関係を明らかにし,非破壊での水ポテンシャル測定法の開発を試みる。また,PTFEディスパージョンとカーボンブラックを用いて,極薄のエレクトレットフィルムを製作し,極薄ECS素子の加速度,音響,振動,圧力,超音波センサとしての性能評価を行い,さらなる小型化が可能か検討する。フレキシブルECS素子を2枚積層する事によって複数の力学信号を測定可能なデュアル構造ECSを作製する。そして,金属や樹脂の板に取付け,加振機,スピーカー,圧力チャンバーを用いて,音響,振動,加速度,圧力などを測定し,性能評価を行う。さらに,従来型センサと性能比較を行い,エレクトレットの表面電位,フィルムの厚さ,電極の厚さと材質,微細パターンニングの形状,パッケージの方法をパラメータとして性能の最適化を行う。該当なし
KAKENHI-PROJECT-24500196
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24500196
タイにおける寄生虫による胆管癌の発症の分子疫学的研究
タイ肝吸虫は主にタイ東北部を中心に分布し胆管癌をもたらす。慢性感染および炎症は極めて重要な発がん因子である。炎症条件下では炎症細胞などから活性窒素種が生成され、8-ニトログアニンなどの変異誘発性DNA損傷塩基を生成して発がんをもたらすと考えられる。我々は抗8-ニトログアニン抗体を作成して免疫組織染色を行い、タイ肝吸虫感染ハムスターの肝内胆管上皮で8-ニトログアニンが顕著に生成されることを世界に先駆けて解明した(BBRC 2003,Nitric Oxide 2004,Carcinogenesis 2004)。抗寄生虫薬投与により、8-ニトログアニン生成は抑制された(Int.J.Cancer in press)。さらに我々はタイの肝内胆管癌患者における分子疫学的研究を行い、8-ニトログアニン生成が癌の浸潤と相関するという注目すべき知見を得た(World J.Gastroenterol.2005)。タイ肝吸虫感染者や胆管癌患者の尿中の酸化的DNA損傷塩基である8-oxodG量は健常人に比して有意に高く、抗寄生虫薬により減少した。またマクロファージ培養細胞を用いて、タイ肝吸虫抗原がTLR2を介して炎症反応を起こすことを解明した(Int.J.Parasitol.2005)。我々はこの分子疫学的研究によりタイ肝吸虫による胆管癌の発症機構を解明し、さらに広汎な要因による炎症関連発がんの分子機構の解明への基盤を確立した。我々はH.pylori感染胃炎患者の胃腺上皮(BBRC 2004)、慢性C型肝炎患者の肝細胞(J.Hepatol.2005)、口腔前癌状態の患者の口腔粘膜(Cancer Sci.2005,Nitric Oxide 2006)で、8-ニトログアニンが生成されることを明らかにした。炎症性腸疾患動物モデルでは大腸粘膜上皮でも8-ニトログアニンが生成された(Cancer Sci.2005)。我々は本課題において、炎症関連発がんでは病因に関わらず発がん好発部位に8-ニトログアニンが生成されるという共通の機構を提唱し、発がんリスクおよび癌患者の予後を評価する新規バイオマーカーとなりうることを示した。タイ肝吸虫は主にタイ東北部を中心に分布し胆管癌をもたらす。慢性感染および炎症は極めて重要な発がん因子である。炎症条件下では炎症細胞などから活性窒素種が生成され、8-ニトログアニンなどの変異誘発性DNA損傷塩基を生成して発がんをもたらすと考えられる。我々は抗8-ニトログアニン抗体を作成して免疫組織染色を行い、タイ肝吸虫感染ハムスターの肝内胆管上皮で8-ニトログアニンが顕著に生成されることを世界に先駆けて解明した(BBRC 2003,Nitric Oxide 2004,Carcinogenesis 2004)。抗寄生虫薬投与により、8-ニトログアニン生成は抑制された(Int.J.Cancer in press)。さらに我々はタイの肝内胆管癌患者における分子疫学的研究を行い、8-ニトログアニン生成が癌の浸潤と相関するという注目すべき知見を得た(World J.Gastroenterol.2005)。タイ肝吸虫感染者や胆管癌患者の尿中の酸化的DNA損傷塩基である8-oxodG量は健常人に比して有意に高く、抗寄生虫薬により減少した。またマクロファージ培養細胞を用いて、タイ肝吸虫抗原がTLR2を介して炎症反応を起こすことを解明した(Int.J.Parasitol.2005)。我々はこの分子疫学的研究によりタイ肝吸虫による胆管癌の発症機構を解明し、さらに広汎な要因による炎症関連発がんの分子機構の解明への基盤を確立した。我々はH.pylori感染胃炎患者の胃腺上皮(BBRC 2004)、慢性C型肝炎患者の肝細胞(J.Hepatol.2005)、口腔前癌状態の患者の口腔粘膜(Cancer Sci.2005,Nitric Oxide 2006)で、8-ニトログアニンが生成されることを明らかにした。炎症性腸疾患動物モデルでは大腸粘膜上皮でも8-ニトログアニンが生成された(Cancer Sci.2005)。我々は本課題において、炎症関連発がんでは病因に関わらず発がん好発部位に8-ニトログアニンが生成されるという共通の機構を提唱し、発がんリスクおよび癌患者の予後を評価する新規バイオマーカーとなりうることを示した。タイ国においては、寄生虫、特にタイ肝吸虫の感染率が胆管癌の発生率とよく相関し、国際がん研究機関IARCはタイ肝吸虫感染はヒトに対して発がん性が有る(Group1)と評価している。本研究は、タイ肝吸虫感染が発がんの好発臓器に強い炎症を生じることに注目し、炎症部位で活性化されるマクロファージおよび好酸球などから生成される一酸化窒素(NO)およびスーパーオキサイド(O_2^-)が発がんにどのような役割を果たすかを明らかにする。(1)タイ肝吸虫を感染させて飼育したハムスターから、肝臓などの臓器を摘出して免疫組織染色および電気化学検出器付HPLCにより、iNOS、8-nitrodG、8-oxodG、ニトロチロシン等を解析し、炎症像との関係を検討した。8-oxodG生成は好酸球浸潤に一致して、感染後21日目にピークが認められた。血清NO量、iNOSの発現および8-nitrodGの生成は単核球浸潤に一致して、感染後21日目にピークが認められた。
KAKENHI-PROJECT-15406027
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15406027
タイにおける寄生虫による胆管癌の発症の分子疫学的研究
8-nitrodG、8-oxodGは、ともに漸減したが感染後60日目でも検出され、炎症を介した発がんへの関与が示唆された(BBRC,309,567,2003)。(2)ニトロチロシンは炎症のバイオマーカーとして、種々の炎症性疾患や感染の組織や血清中に検出されている。また、NOに曝露されたMutatec tumorのヒストンでは、チロシンがニトロ化されていることが報告されている。P450 reductase存在下ににおいてニトロチロシンは、ニトロ還元を受け、再酸化する際にO_2^-を生じ、金属イオンの存在下でDNAを酸化的に損傷することを見い出した。ヒストンペプチド中のニトロチロシンはDNA近傍にあり、炎症関連発がんのひとつの要因であることが示唆された(BBRC,316,123,2004)。タイ肝吸虫はタイ東北部を中心に分布し、その地域では胆管癌の発症が多発している。慢性感染および炎症は極めて重要な発がん因子である。炎症条件下では炎症細胞などから活性窒素種が生成され、8-ニトログアニンのようなニトロ化DNA損傷塩基を生成して発がんをもたらすと考えられる。我々は極めて高感度で特異性の高い抗8-ニトログアニン抗体を作成し(Nitric Oxide 2004)、免疫組織染色を行った結果、タイ肝吸虫を慢性感染させたハムスターの肝内胆管上皮細胞で8-ニトログアニン生成が経時的に増加し、反復感染で増強することを明らかにした(Carcinogenesis 2004)。誘導性NO合成酵素(iNOS)の胆管上皮細胞における発現も同様に、慢性および反復感染では強くなった。さらに我々はタイの肝内胆管癌患者において、8-ニトログアニンが癌組織では非癌組織より多く生成されることが判明した。HIF-1αは癌組織でiNOSと同じ部位に発現し、両者の相互活性化が持続的なDNA損傷をもたらすと考えられた。さらに、8-ニトログアニン生成は癌の神経浸潤と有意に相関し、癌の悪性化に重要な役割を果たす可能性が示唆された(World J.Gastroenterol., in press)。また我々は、本研究に関連した炎症関連発がんにおける重要な知見として、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎患者の胃腺上皮細胞および(BBRC 2004)。慢性C型肝炎患者の肝細胞で、8-ニトログアニンが強く生成されることを明らかにした(J.Hepatol. in press)。炎症性腸疾患動物モデルにおいても、大腸粘膜の上皮細胞で8-ニトログアニンが生成された(Cancer Sci. in press)。以上の結果から異なる病因においても発がんに先駆けて8-ニトログアニンが生成され、早期に炎症関連発がんリスクを評価できる新規バイオマーカーとなりうることが示された。タイ肝吸虫は主にタイ東北部を中心に分布し、胆管癌をもたらす。慢性感染および炎症は極めて重要な発がん因子である。炎症条件下では炎症細胞などから活性窒素種が生成され、8-ニトログアニンなどの変異誘発性DNA損傷塩基を生成して発がんをもたらすと考えられる。我々はニトロ化ストレスによるDNA損傷の乗り越え修復が突然変異に関わる可能性を示した(Cancer Res.2006)。タイ肝吸虫感染ハムスターの肝内胆管上皮では8-ニトログアニンが顕著に生成され、抗寄生虫薬投与によりその生成が抑制されることを明らかにした(Int.J.Cancer in press)。
KAKENHI-PROJECT-15406027
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15406027
光電界電離過程を利用した新しい広帯域波長可変軟X線コヒーレント光の発生
本研究では、高強度レーザーにより希ガスを励起することにより真空紫外光を初めて観測し、その諸特性に新しい知見を得た。また紫外光と可視光の超短レーザーパルスを制御することによりアルカリハライド分子の解離を制御することに初めて成功した。これらの結果は将来的にX線コヒーレント光を発生させるための重要な基礎データとなることが期待できる。本実験で用いたレーザー集光強度(10^<14>-10^<15>Wcm^<-2>)では、希ガスと超短パルス高出力レーザーとを相互作用させた結果,多価イオンからの発光は観測されなかった。しかし、真空紫外域におけるAr^*_2ならびにそのプレカーサであるAr^*の発光スペクトルを初めて観測した。さらに、Ar^*_2発光強度の励起レーザー集光強度依存性からArが高強度レーザーによりトンネル電離されていることがADK理論との比較よりわかった。また、励起レーザーの偏光状態を変えたところ、理論的な初期電子温度分布は大きく異なるにもかかわらずエキシマ発光強度は変化しなかった。これは電子生成直後の速いconductivecoollingにより電子温度が急速に冷却されていることに起因している。これらの結果から、初期状態プラズマの電子温度、電子密度、励起エネルギー密度等の各種パラメータに関しては電子ビーム励起法と遜色ないことがわかった。励起長の増加のためには中空ファイバーを用いる方法が考えられるが、高強度レーザーの伝搬にかかわる問題を解決していく必要がある。また媒質への電子の十分な供給方法として超短パルスレーザーのパルス列による媒質の励起形態等も考えられる。超短パルスレーザーによる分子の制御の観点から、紫外域と可視域の二色の超短パルスレーザーによるアルカリハライド分子のコヒーレント制御に関する基礎的な知見を得た。紫外レーザーにより励起され、解離する分子を可視域のフェムト秒レーザーの照射により、分子の生成、解離に関わる過程の積極的な制御を行うことに成功した。本研究では、高強度レーザーにより希ガスを励起することにより真空紫外光を初めて観測し、その諸特性に新しい知見を得た。また紫外光と可視光の超短レーザーパルスを制御することによりアルカリハライド分子の解離を制御することに初めて成功した。これらの結果は将来的にX線コヒーレント光を発生させるための重要な基礎データとなることが期待できる。本実験で用いたレーザー集光強度(10^<14>-10^<15>Wcm^<-2>)では、希ガスと超短パルス高出力レーザーとを相互作用させた結果,多価イオンからの発光は観測されなかった。しかし、真空紫外域におけるAr^*_2ならびにそのプレカーサであるAr^*の発光スペクトルを初めて観測した。さらに、Ar^*_2発光強度の励起レーザー集光強度依存性からArが高強度レーザーによりトンネル電離されていることがADK理論との比較よりわかった。また、励起レーザーの偏光状態を変えたところ、理論的な初期電子温度分布は大きく異なるにもかかわらずエキシマ発光強度は変化しなかった。これは電子生成直後の速いconductivecoollingにより電子温度が急速に冷却されていることに起因している。これらの結果から、初期状態プラズマの電子温度、電子密度、励起エネルギー密度等の各種パラメータに関しては電子ビーム励起法と遜色ないことがわかった。励起長の増加のためには中空ファイバーを用いる方法が考えられるが、高強度レーザーの伝搬にかかわる問題を解決していく必要がある。また媒質への電子の十分な供給方法として超短パルスレーザーのパルス列による媒質の励起形態等も考えられる。超短パルスレーザーによる分子の制御の観点から、紫外域と可視域の二色の超短パルスレーザーによるアルカリハライド分子のコヒーレント制御に関する基礎的な知見を得た。紫外レーザーにより励起され、解離する分子を可視域のフェムト秒レーザーの照射により、分子の生成、解離に関わる過程の積極的な制御を行うことに成功した。本研究では、高強度レーザーによる希ガスの光電界電離により観測された短波長発光の発生機構についての新しい知見が得られた。希ガスと超短パルス高出力レーザーとを相互作用させたその結果、以下のことが新たにわかった。(1)Arと高出力レーザーとを相互作用させることによりAr_2*エキシマ発光を初めて観測することに成功した。(2)本実験で用いたレーザー集光強度(10^<14>-10^<15>Wcm^<-2>)ではAr_2*ならびにそのプレカーサであるAr*のみの発光スペクトルが得られ、多価イオンからの発光は観測されなかった。(3)Ar_2*発光強度の励起レーザー集光強度依存性からArが高強度レーザーによりトンネル電離されていることがADK理論との比較よりわかった。(5)エキシマ生成が偏光状態に依存しないとすると、例えば円偏光励起レーザーを用いることにより同軸方向からの高次高調波の影響を排除でき横方向からと同様なコントラスト比の高いエキシマ発光を得ることが出来る。本実験で得られた結果から、初期状態プラズマの電子温度、電子密度に関しては希ガスエキシマの既存の生成法である電子ビーム励起法と遜色ないことがわかった。励起体積の増加のためには中空ファイバを用いる等高強度レーザーの伝搬にかかわる問題をクリアしていく必要があるだろう。また、媒質への電子の十分な供給方法として超短パルスレーザーのパルス列による励起等も考えられる。平成10年度には下記の点を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-09450033
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09450033
光電界電離過程を利用した新しい広帯域波長可変軟X線コヒーレント光の発生
(1)長短パルス高出力レーザーシステムの高性能化現有の長短パルス固体レーザーシステムに新たにレーザー用光学系を付加することで複数の光パルスを遅延発生させ遅延時間を数百数千フェムト秒で任意に変えることができるようにした。さらに、偏光板やレンズを組み入れることで任意の偏光状態や集光強度を得ることが各パルス毎にできるようになった。(2)多価イオン生成に関する基礎データの取得多価イオン生成を長短パルスレーザーによる光電界電離法により行った。理論的に予想される多価イオンの価数、また自由電子のエネルギー分布と、前述のレーザーを用いて種々の変更状態やレーザー強度を変化させたときの実験値とを比較した結果、大部分において良い一致が得られたため、コヒーレントX線発生のための多機能光源の開発の確認および基礎データの取得が可能となった。(3)高強度レーザー照射による軟X線を測定した。照射ターゲットおよびレーザー光条件の変更により数nm数十nmの軟X線を発生することに成功した。コヒーレント光は得られなかったものの微小体積内に高密度の多価イオンを生成することに成功したため、本方式の技術的な改良によりコヒーレント軟X線を発生させる可能性が高いことを示した。
KAKENHI-PROJECT-09450033
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CMPーシアル酸修飾酵素の構造と機能に関する研究
Oーアセチル転移酵素に焦点を絞り、この遺伝子のクロ-ニングを試みた。本酵素遺伝子のクロ-ニングには二つの方法が考えられた。一つは酵素を精製後、そのアミノ酸配列を基にクロ-ニングする方法であり、もう一つはOーアセチル化糖鎖に対する特異モノクロ-ナル抗体を作製して直接発現クロ-ニング法を用いる方法である。初年度、以下の実験を行った。(1)Oーアセチル転移酵素の精製:上記ヒトメラノ-マ細胞株を材料にして本酵素の局在を検討したところ、ミクロゾ-ム分画に約85%、サイトゾ-ル分画に約15%の活性が検出された。この結果は、本酵素はゴルジ-酵素であることを示した。(2)抗OーアセチルーGD3特異モノクロ-ナル抗体の作製:ヒトメラノ-マ細胞株よりOーAcーGD3を精製後マウスに免疫し、常法に従いOーAcーGD3特異マウスモノクロ-ナル抗体産生ハイブリド-マ株を樹立した。本抗体はlgM(κ)でOーAcーGD3と特異的に反応し、その他のガングリオシドや中性糖脂質とは全く反応しなっかった。メラノ-マ細胞株との反応性を解析したところ、ある種のヒトメラノ-マ細胞株に大量に発現されていることが判明した。以上の結果に基づき、直接発現クロ-ニング法を採用することにした。次年度、宿主細胞の候補であるCOS1細胞とCOP5細胞の糖脂質の発現を本研究部門で樹立された多数の抗ガングリオシド・モノクロ-ナル抗体を用いて解析した。その結果、これら細胞にはOーアセチル化ガングリオシドGD3を発現していないことが判明した。更に、COS1細胞はGM3、GD3を発現していたので、この細胞は宿主細胞に適当と判断された。次にメラノ-マ細胞よりmRNAを抽出し、CDM8ベクタ-に組み込んだcDNAライブラリ-を作製した。COS1細胞に発現させ、パンニング法で発現陽性細胞をスクリ-ニングしている。現在のところ、未だ安定したクロ-ンを得ていない。Oーアセチル転移酵素に焦点を絞り、この遺伝子のクロ-ニングを試みた。本酵素遺伝子のクロ-ニングには二つの方法が考えられた。一つは酵素を精製後、そのアミノ酸配列を基にクロ-ニングする方法であり、もう一つはOーアセチル化糖鎖に対する特異モノクロ-ナル抗体を作製して直接発現クロ-ニング法を用いる方法である。初年度、以下の実験を行った。(1)Oーアセチル転移酵素の精製:上記ヒトメラノ-マ細胞株を材料にして本酵素の局在を検討したところ、ミクロゾ-ム分画に約85%、サイトゾ-ル分画に約15%の活性が検出された。この結果は、本酵素はゴルジ-酵素であることを示した。(2)抗OーアセチルーGD3特異モノクロ-ナル抗体の作製:ヒトメラノ-マ細胞株よりOーAcーGD3を精製後マウスに免疫し、常法に従いOーAcーGD3特異マウスモノクロ-ナル抗体産生ハイブリド-マ株を樹立した。本抗体はlgM(κ)でOーAcーGD3と特異的に反応し、その他のガングリオシドや中性糖脂質とは全く反応しなっかった。メラノ-マ細胞株との反応性を解析したところ、ある種のヒトメラノ-マ細胞株に大量に発現されていることが判明した。以上の結果に基づき、直接発現クロ-ニング法を採用することにした。次年度、宿主細胞の候補であるCOS1細胞とCOP5細胞の糖脂質の発現を本研究部門で樹立された多数の抗ガングリオシド・モノクロ-ナル抗体を用いて解析した。その結果、これら細胞にはOーアセチル化ガングリオシドGD3を発現していないことが判明した。更に、COS1細胞はGM3、GD3を発現していたので、この細胞は宿主細胞に適当と判断された。次にメラノ-マ細胞よりmRNAを抽出し、CDM8ベクタ-に組み込んだcDNAライブラリ-を作製した。COS1細胞に発現させ、パンニング法で発現陽性細胞をスクリ-ニングしている。現在のところ、未だ安定したクロ-ンを得ていない。Oーアセチル転移酵素効伝子のクロ-ニングには二つの方法が考えられる。一つはOーアセチル化糖鎖に対する特異モノクロ-ナル抗体を作製して直接発現クロ-ニング法を用いる方法であり、もう一つは酵素を精製後、そのアミノ酸配列を基にクロ-ニングする方法である。本年度はどちらの方法がより優れているかを決定するために以下の実験を行った。1、抗OーアセチルーGD3特異モノクロ-ナル抗体の作製。ヒトメラノ-マ細胞株よりOーAcーGD3を精製後マウスに免疫し、常法に従いOーAcーGD3特異マウスモノクロ-ナル抗体産生ハイブリド-マ株を樹立した。本抗体はIgMでOーAcーGD3と特異的に反応し、その他のガングリオシドや中性糖脂質とは全く反応しなかった。11種類のメラノ-マ細胞株との反応性を解析したところ、ある種のヒトメラノ-マ細胞株に大量に発現されていることが判明した。2、Oーアセチル転移酵素の精製。上記ヒトメラノ-マ細胞株を材料にして本酵素の局在を検討したところ、ミクロゾ-ム分画に約85%、サイトゾ-ル分画に約15%の活性が検出された。
KAKENHI-PROJECT-02680147
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CMPーシアル酸修飾酵素の構造と機能に関する研究
この結果は、本酵素もゴルジ-酵素の一つであることを示した。ゴルジ-には多数の糖転移酵素が存在している。近年、糖蛋白質の糖鎖に関して酵素を抽出・精製する方法で数種の酵素の遺伝子がクロ-ニングされている。しかし、糖脂質のそれに関しては酵素の可溶化が困難であり、本法では未だに成功した例がない。以上の結果に基ずき、直接発現クロ-ニング法を採用することにした。現在、メラノ-マ細胞株よりmRNAを抽出しcDNAライブラリ-を作製している。CMPーシアル酸修飾酵素の1つである0ーアセチル転移酵素に焦点を絞り、この遺伝子のクロ-ニングを行っている。方法は、昨年度の検討結果より、抗0ーAcーGD3モノクロ-ナル抗体を用いる直接発現クロ-ニング法と決定された。次の段階として、宿主細胞の候補であるCOS1細胞とCOP5細胞の糖脂質の発現を本研究部門で樹立された多数の抗ガングリオシド・モノクロ-ム抗体を用いて解析した。その結果、これら細胞には多種のガングリオシドを発現しているが、0ーアセチル化ガングリオシドGD3を発現していないことが判明した。更に、COS1細胞はGM3、GD3を発現しているので、この細胞は宿主細胞に適当と判断された。昨年度報告したように、0ーAcーGD3を大量に発現しているヒトメラノ-マ細胞株を既に見にだしているので、この細胞よりmRNAを抽出し、CDM8ベクタ-に組み込んだcDNAライブラリ-を作製した。COS1細胞に発現させ、パンニング法で陽性細胞をスクリ-ニングしている。現在のところ、未だ安定したクロ-ンを得ていない。糖転移酵素の遺伝子クロ-ニングは、糖蛋白の糖鎖に関して既に数種類報告され、臓器特異性の決定に関与するプロモ-タ領域の遺伝子等の解析も進んでいる。一方、糖脂質の糖鎖に関しては、殆ど報告されていない。この理由は、本酵素活性が低く、本酵素の精製が極めて困難であることによる。しかしながら、最近、直接発現クロ-ニング法によりGalNAc転移酵素がクロ-ニングされた。この事は、本方法が糖脂質の糖鎖に関与する酵素のクロ-ニングにも有用であることを明確に示した。今後、この方法により多数の糖転移酵素が短時間でクロ-ニングされると期待される。
KAKENHI-PROJECT-02680147
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大学のプロジェクト型学習と非公式な学生の独自活動を繋ぐ学習環境のデザイン
プロジェクト型学習における学内外のSNSの活用実態を調査し、Facebookなどの一般のSNS普及前後での利用の変容を分析した。学内SNSでは投稿の頻度が少ない代わりに内省的な長めの文章の投稿が見られたこと、Facebookでは投稿頻度やコメント数は圧倒的に多いものの内省的な投稿はあまり見られないことなどが明らかになった。これらオンラインでの活動を探求の共同体フレームワークに基いて分析し、認知的存在感につながる活動そのものに対する指導だけではなく、グループ間の関係に影響する社会的存在感の向上にむけた支援を行い、教授的存在感を高めていく必要のあることが示唆された。前年度調査で明らかにした学内外のSNSの活用特性を論文としてまとめ、査読付き国際論文誌に投稿し、受理・掲載された。ここで得られた知見を踏まえ、公式な学習だけでなく、非公式な学習を誘発することを目指した学習環境を新たにデザインした。前年度と同様のプロジェクト型学習(PBL: Project Based Learning)を継続するとともに、範囲を広げてゼミ、フィールドワークといった活動においてもこうした学習環境を活用し、活動プロセスを公式・非公式に蓄積しつつ、学習成果向上を目指したeポートフォリオを作成する取り組みに着手した。eポートフォリオ作成に際しては、先行研究調査も踏まえ、(1)公式・非公式な学習・活動の過程の記録を主に自分用として蓄積する段階と、(2)外部に見せることも念頭に置きつつ、振り返りの促進のために整理・編集する段階とに分けて考えることとした。蓄積する段階では、学内外のSNSへの投稿だけでなく、活動の過程で作成される成果物・中間成果物を効率的に記録させるためのガイドラインを検討・整備した。一般的に、各種活動で発生している学びを学生が個人で認識することは難しく、第三者の支援が必要と言われているため、学生が主に自分用として蓄積する記録に関しても、教員や他の学生が適切な範囲で参照できるよう、クラウド環境を活用することとした。本年度は、10名程度の学生と、上記実践に取り組んだ。記録の量・質には個人差が見られたため、多くを記録していた1名を対象とし、試行的に記録の再編集に取り組み、一連の流れについて考察した。多くの成果物を時系列に並べることでこれまでには実感しにくかった自分自身の成長を感じることができる等、限られた事例ではあるが、一定の効果を期待できるものであったと考えている。プロジェクト型学習における学内外のSNSの活用実態を調査し、Facebookなどの一般のSNS普及前後での利用の変容を分析した。学内SNSでは投稿の頻度が少ない代わりに内省的な長めの文章の投稿が見られたこと、Facebookでは投稿頻度やコメント数は圧倒的に多いものの内省的な投稿はあまり見られないことなどが明らかになった。これらオンラインでの活動を探求の共同体フレームワークに基いて分析し、認知的存在感につながる活動そのものに対する指導だけではなく、グループ間の関係に影響する社会的存在感の向上にむけた支援を行い、教授的存在感を高めていく必要のあることが示唆された。大学における正規科目として実践しているプロジェクト型学習(PBL: Project-based Learning)実施期間中に、学生が学外ソーシャルネットワーキングサイト(SNS)をどのように活用しているか、その実態調査を行った。近年、学生の多くが利用しているFacebook、および、Mixiを対象とした。また、学内SNSの利用状況の経年的な変化についての分析も行った。複数の協力者からデータを収集の上、活用の実態を分析し、アンケート調査・分析結果とともに、PBLとの連携方法を検討する際の基礎とすることを目指した。分析の結果、PBLにおけるSNSのフォーマルな活動は継続的に行われているものの、インフォーマルな投稿は減少傾向にあり、FacebookやMixiなどの外部SNSに移行していることがうかがわれた。また、そのインフォーマルな投稿が、学内SNSに投稿されていたものと、外部SNSに投稿されるものとでは、大きく2つの点で異なることに着眼した。具体的には、<(1)外部SNSでは、学内SNSで行われていたよりもはるかに頻繁なやり取りが行われている。(2)一方で、外部SNSへの投稿内容はシンプルで短いものがほとんどであり、学内SNSにおいてみられた、PBLに関する自らの(長い)投稿はほとんど見られない。>ということである。先行研究等より、(1)は、PBLに取り組む学生同士、お互いの状況を日常を含めて共有することで、協働作業において有効に作用するであろうと分析した。(2)で減少した投稿は、体験型の学習時に重要とされるリフレクション(振り返り)を、より深く着実に行うために有効と思われるものであった。これら現状分析を踏まえ、学内外のSNSを活用した学習環境デザインについての考察を行った。前年度には、正課で行われるプロジェクト型学習(PBL: Project Based Learning)を継続的に実践する中で得られた知見から、学生同士の自発的な学習(非公式な学習)を誘発することを意図した学習環境をデザインし、ゼミやフィールドワークなどの活動においても、同環境を活用すべく準備を行った。ゼミ・フィールドワークでは、少人数で学生の主体的な取り組みがより求められるという側面もあるため、教員による支援に依存せず、学生(協働学習相手の他校学生を含む)間の相互支援(ピアサポート)により、学習成果を深めていくことを狙いの1つとした。デザインした学習環境および活用のためのガイドラインに従い、学生たちが自律的に取り組みながらオンライン協働作業のプロセスを蓄積し、これらデータを用いて学生個々人が自らのポートフォリオをまとめあげるという一連の活動を一定レベルで実施することができたと考えている。
KAKENHI-PROJECT-24501223
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大学のプロジェクト型学習と非公式な学生の独自活動を繋ぐ学習環境のデザイン
作成されたeポートフォリオの相互評価や改訂をすることで、学習成果を高めていくことに活用できることが期待され、今後は、制作後の活動にも焦点をあてていく必要があると思われる。本年度の実践から、今後は、グループの状況や学生の個性に応じた教員の支援の必要性も示唆された。協働学習の実践時には、学生間のオンラインコミュニケーションの状況には質的な違いがあり、目的に向けて着実な活動は行われているものの、議論が表面的なものに留まっていると思われるグループが見受けられた。これらの活動状況の違いを分析したところ、活動内容そのものよりも、オンラインで協働すべきグループメンバーとの関係構築の段階で課題があるという仮説を持つに至った。本研究を通じて見出された新たな課題であり、関連分野の先行研究による知見も踏まえて、詳細な理由と取りうる対策について今後も検討していきたいと考えている。教育工学各種学習・活動状況を記録する被験者(学生)と実践の場面を確保し、概ね計画に従って実践を進めることができたため。実践的な研究であるため、ソーシャルメディアをとりまく環境の変化などを受けて、調査対象・調査方法を流動的に考えていく必要がある。しかし、ここまでの研究は実態把握が中心であるため、研究計画遂行上の流動性も少なく、順調に進行している。25年度、10名程度の学生を対象に行ったクラウド環境を活用した各種記録の蓄積、また、たくさんの蓄積からの試行的なeポートフォリオ作成の結果を踏まえて、適切なデータ管理やそのデータを活用した振り返りの促進手法についての知見を重ねる。実践に取り組む学生には、データ管理や振り返り支援の方法を教員からあらかじめ提示し、継続してeポートフォリオ作成に取り組ませる。この際、友人同士で振り返りを支援する活動(ピアサポート)も取り入れる。これにより、自分自身では気づきにくいと言われる、非公式な活動の中で発生している学びの自覚を促し、かつ、学生に対しての教員による個別の支援だけでは限界があった多くの学生への広がりを実現することを目指す。教員による支援とピアサポートの特徴については、実践・活動の場面を観察やインタビュー調査などにより、質的に詳細な分析を行う。学習面で意図したような効果が得られたかどうかに関しては、ルーブリックを整備するなどして客観的な評価となるように留意する。以上のような取り組みにより、実体験・活動のプロセスの記録方法と、それらを活用した振り返り支援の方法、人的な体制(学生間のピアサポートなど)も含めたガイドラインを成果物として完成させる。ガイドラインが有効に活用できると思われる各種活動(学生が正課授業外で行うボランティア活動など)への適用も試み、汎用的なガイドラインとすることを目指す。PBLの実践と、そこでの学内外のSNS活用状況と調査・分析結果を踏まえて検討した改良版の授業デザインに基づき、継続してPBLを実践する。
KAKENHI-PROJECT-24501223
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糸状菌の鉄ホメオスタシスに関わる転写制御因子HapXの機能解析
(1)部分欠失変異HapXをゲルシフト法にて解析したところ、N末端の17アミノ酸からなる部分がHapB/C/E複合体との相互作用に重要であることが強く示唆された。(2) in vivo解析の結果、HapXの機能には上記17アミノ酸が重要であることが示された。(3) C末端部分のリコンビナントタンパク質を調製することに成功した。分光学的解析から鉄硫黄クラスターを含むことが示唆された。(4) TAPタグを融合したHapXを発現する系を構築し、温和な条件でHapXを精製したところ、HapXと相互作用している因子がいくつか検出された。1)HapB/C/EとHapXとの相互作用の解析:推定相互作用ドメインを欠くような部分欠失変異HapXや同ドメイン内に変異を有するリコンビナントタンパク質を作製した。変異HapXとHapB/C/E複合体とのin vitroでの相互作用をゲルシフト解析により確認するために必要となるアッセイ系の構築を行った。非アイソトープの系でゲルシフトアッセイが可能となった。HapXとの相互作用解析についてはH26年度も継続して行う。さらに、変異HapXをHapX欠失株に導入して鉄の欠乏条件下で解析したところ、推定相互作用ドメインに変異を導入すると、HapXの機能がほとんど無くなることが明らかとなり、in vivoでのHapB/C/E相互作用ドメインの重要性が示された。2)C末端のシステインに富む領域に着目した鉄硫黄クラスターの存在の証明:大腸菌を用い、リコンビナントタンパク質をmgオーダーで調製することに成功した。分光学的にこのリコンビナントタンパク質を解析したところ、鉄硫黄クラスタータンパク質様の吸収スペクトルを示すことができた。さらに、酸化状態、還元状態におけるスペクトルの比較解析はH26年度でも引き続き継続する。4)鉄関連遺伝子プロモータ領域に対するエピジェネティック解析:鉄関連遺伝子プロモータ領域に対するChIPアッセイについては、現在検討中であり、H26年度に継続して計画を遂行する予定である。1)HapB/C/Eとの推定相互作用ドメインに着目し、HapB/C/EとHapXとの相互作用を分子レべルで詳細に解析する:平成25年度の解析に引き続き、HapB/C/EとHapXとの相互作用を分子レべルで詳細に解析をおこなった。DNAとの相互作用解析であるゲルモビリティーシフトアッセイを改良したスーパーシフトアッセイを確立した.これにより、非アイソトープ系にて高感度で相互作用を解析できるようになった。これにより、推定相互作用ドメインが、HapXとHapB/C/Eとの相互作用に重要な働きをしていることが明らかとなった.2)鉄硫黄クラスター領域内のシステイン残基の機能を解析する:鉄硫黄クラスター領域内のシステイン残基に変異を導入した変異株をいくつか取得することができた。得られた変異株の解析を引き続き、平成27年度に継続して解析する。3)HapXと相互作用するタンパク質を同定する:平成25年度の解析に引き続き、HapXと相互作用している因子をTOF-MASS等の質量分析器で解析した。CDC28の相同タンパク質を始め、いくつかの相互作用候補タンパク質が検出された。平成27年度も引き続き解析を進める。4)鉄関連遺伝子プロモータ領域に対するChIPアッセイを行い、ヒストンの修飾状態を調べる:チトクロムc遺伝子プロモータ解析の結果、このプロモータを対象にChIPアッセイを行なうことが適当であるとの結論に至った。平成27年度において、野生株、hapX欠失株、hapX過剰発現株を対象に、チトクロムc遺伝子プロモータ領域のヒストンの修飾状態をChIPアッセイによって解析する。1)HapB/C/EとHapXの相互作用の解析:蛍光プローブを使用した非アイソトープのゲルシフト解析法を確立し、HapB/C/EとHapXの相互作用を鋭敏に検出することに成功した。また、N末端に存在する菌類において配列が高度に保存されたドメインを欠くような部分欠失変異HapXをリコンビナントタンパク質して調製することに成功した。これらの変異HapXを用いて蛍光ゲルシフト解析を行なったところ、このN末ドメインを欠くとHapB/C/EとHapXの相互作用が見られなくなることから、同ドメインがHapXのHapB/C/Eとの相互作用に関与することが明らかとなった。また、これらの変異HapXを糸状菌において発現させin vivoでの解析を行なったところ、HapXの機能がほとんど見られなくなることから、同ドメインのin vivoでの重要性も確認された。2)C末端のシステインリッチドメインに着目した解析:大腸菌を用い、同ドメインをmgオーダーで取得することに成功した。分光学的に解析を行なったところ、鉄硫黄クラスターに特有の吸収スペクトルが確認できた。システイン残基を改変した変異タンパク質をいくつか取得し、吸収スペクトルを測定したところ、吸収スペクトルの減少しているものが得られた。現在、詳細な解析を進めている。3)HapXと相互作用するタンパク質の同定:HapXにTAPタグ(Tandem Affinity Purification Tag)を融合し、糸状菌内で発現させる系を確立した。温和な条件でHapXを精製したところ、HapXと相互作用しているタンパク質がいくつか検出された。これらのタンパク質をTOF-MASSにて解析したところ、興味深いタンパク質がいくつか同定された。現在、それら因子の欠失株の作製等、詳細な解析を進めている。
KAKENHI-PROJECT-25450116
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25450116
糸状菌の鉄ホメオスタシスに関わる転写制御因子HapXの機能解析
(1)部分欠失変異HapXをゲルシフト法にて解析したところ、N末端の17アミノ酸からなる部分がHapB/C/E複合体との相互作用に重要であることが強く示唆された。(2) in vivo解析の結果、HapXの機能には上記17アミノ酸が重要であることが示された。(3) C末端部分のリコンビナントタンパク質を調製することに成功した。分光学的解析から鉄硫黄クラスターを含むことが示唆された。(4) TAPタグを融合したHapXを発現する系を構築し、温和な条件でHapXを精製したところ、HapXと相互作用している因子がいくつか検出された。1)から4)の各項目について順調に解析が進んでいる.平成27年度の研究が順調に進むことにより、当初の目的がほぼ達成されると評価できる。応用微生物学1)の相互作用解析はほぼ終了した。2)取得した変異株の解析を進めるため、順調に計画は遂行できると考えている.3)すでに相互作用タンパク質の候補が見出されているので、計画を進めるのみである.4)研究を進めるべき対象が定まったので、解析を進めるのみである.解析方法についても共同研究者が熟知しているので、問題はない.計画通りに順調に研究は進展している。H26年度も継続して研究を遂行する実験がほとんどであるので、計画に従って、粛々と研究を遂行する予定である。ほぼ、想定した計画通りに研究は進展している。相互作用ドメインの解析については、当初想定したin vitro解析の結果のみでなく、in vivoでの解析にまで踏み込んで結果を出すことも可能な状況になってきた。本課題終了後の研究の展開に役立つことを見据え、研究を遂行したい。無理に文具などの廉価な消耗品を購入する以外に残額を0にすることが困難であったため、残額の有効利用のために次年度使用額が生じた。必要な試薬などの消耗品の購入に充てることで有効利用する。
KAKENHI-PROJECT-25450116
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プラズマ オン チップ
本研究では、1細胞に対して低温大気圧プラズマを照射し、細胞の活性状態を制御することを目的としている。そこで、プラズマ技術とマイクロ電子機械システム(MEMS)技術を駆使して、1細胞へのプラズマ照射を実現するマイクロデバイスPlasma-on-Chipを作製した。このデバイスは、プラズマ活性種が細胞培養マイクロウェル底面に作られた貫通孔を通って、ウェル内の細胞に供給される構造になっている。生体試料としてChlorella細胞にプラズマを照射したところ、Chlorella細胞が発する蛍光の強度が減少した。プラズマ中の活性酸素種等が、Chlorella細胞の活性度に影響を与えたと考えられる。患者に低温大気圧プラズマを照射することで、皮膚疾患などで症状の改善を目的とした研究が報告されている。この「プラズマ医療」の本質は、プラズマ中の活性種と被照射部表面との物理・化学反応にある。従来のプラズマ医療は皮膚疾患・外傷治療を目的とした、広い領域への処置であった。プラズマ医療を微視的に考えると、プラズマと組織の反応を制御するために、プラズマと細胞1個への反応の理解が必要である。本研究ではMEMS技術を駆使し、1細胞よりも小さな領域へのプラズマ照射を実現して細胞活性状態や分化を制御し、細胞1個のレベルからのテーラーメード医療への道を切り拓くことを目的としている。本年度は、液中に保持されている細胞にプラズマを照射するためのデバイス「プラズマオンチップ」の試作を行った。MEMS技術を用いて、シリコン基板に小さなウェル構造を作製する。そのウェルの底部にスルーホールを設け、その背面に低温大気圧プラズマを発生させるための微小電極対を作製した。ウェルに細胞を含む液体を注ぐと、液体は表面張力によってウェルの中に保持される。ウェル構造の背面に作製した電極部でプラズマを発生させると、生成した反応活性種がスルーホールそして気液界面を通って、細胞へ到達する仕組みになっている。バイオ試料として、近年エネルギー源として着目されているChlorellaを用いた。Chlorellaは培養が比較的容易であり、扱いやすい。プラズマオンチップのウェル部にChlorellaを含む溶液を注ぎ、ウェル背面の電極部にHeガスを吹き付け、電極間に高電圧を印加してプラズマを発生させた。このプラズマ照射処理の有無と、Chlorellaが出す蛍光強度との相関を調べたところ、プラズマ照射によってChlorellaからの蛍光強度が減少した。患者に低温大気圧プラズマを照射することで、皮膚疾患などで症状の改善を目的とした研究が報告されている。「プラズマ医療」と呼ばれる分野である。従来のプラズマ医療は、皮膚疾患・外傷治療を目的とした、広い領域への処置であった。プラズマと生体組織の反応を制御するためには細胞1個のレベルでの反応の理解が必要である。本研究ではマイクロ電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems: MEMS)技術を駆使し、1細胞よりも小さな領域へのプラズマを照射することが出来るマイクロデバイス「プラズマオンチップ」を作製する。そのプラズマオンチップを用いて、プラズマ照射した際の細胞の応答反応を調べる。そして、細胞の応答反応の理解に基づいて、細胞の活性状態や細胞の分化を制御することを目的としている。2015年度は、まず、前年度までに試作したプラズマオンチップの改良を進めた。プラズマ生成部のマイクロ電極構造を改良することで、デバイスの連続運転時間の5倍以上に延長することが出来た。続いて、生体試料として、酵母を用いて、プラズマ照射実験を行った。しかしながら、プラズマ照射後の酵母には、外見上の大きな変化は見られなかった。前年度の実験では、プラズマ照射によってChlorella細胞が発する蛍光の強度が減少したことを考えると、酵母はプラズマ照射に対する耐性があると考えられる。本研究の期間では、1細胞にプラズマを照射することができる「プラズマオンチップ」の開発と生体細胞試料に対するプラズマ照射を行った。本手法は、プラズマと細胞の相互作用を直接的に理解する情報を生み出すものといえる。今後の一層の発展が期待できる。本研究では、1細胞に対して低温大気圧プラズマを照射し、細胞の活性状態を制御することを目的としている。そこで、プラズマ技術とマイクロ電子機械システム(MEMS)技術を駆使して、1細胞へのプラズマ照射を実現するマイクロデバイスPlasma-on-Chipを作製した。このデバイスは、プラズマ活性種が細胞培養マイクロウェル底面に作られた貫通孔を通って、ウェル内の細胞に供給される構造になっている。生体試料としてChlorella細胞にプラズマを照射したところ、Chlorella細胞が発する蛍光の強度が減少した。プラズマ中の活性酸素種等が、Chlorella細胞の活性度に影響を与えたと考えられる。プラズマオンチップデバイスを試作し、発光分光法を用いてプラズマ中に生成した反応活性種を調べた。印加電圧および供給するHeガスの流量を変えて、反応活性種の生成量が多くなる条件を見出した。クロレラを用いたバイオ試料へのプラズマ照射試験でも、プラズマ照射の有無による違いが見出されている。これまでに国際会議ISPlasma2015、国内会議2015年春季応用物理学会で成果発表をしている。ナノバイオテクノロジー、プラズマ、MEMS2015年度はデバイスの改良とバイオ試料への照射試験を推進する。デバイスの改良としては、特に耐久性の向上を進める。バイオ試料への照射試験として、Chlorellaに加えて、大腸菌への照射も試みる予定である。消耗品の中に、消費スピードが緩やかに済んだものがあったため。主として物品費として使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-26600130
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26600130
高選択性抗真菌剤開発を目的とする真菌ステロール脱メチル化酵素の構造解析
アゾール系抗真菌剤は、真菌のP450(14DM)を阻害してその効力を発揮する.したがって,アゾール系抗真菌剤は,動物のP450に影響を与えずに真菌のP450(14DM)を阻害するという選択性を持つことが望ましい.本研究は,アゾール系抗真菌剤に選択性を与えるために有効な構造を推定するべく,P450(14DM)の基質認識に関係する構造を解析することを目的としたものであり,その成果は以下に要約できる.(1)真菌のP450(14DM)は,基質であるラノステロールの3β水酸基,Δ8ステロールの骨格構造,およびステロール側鎖末端部分に対して構造特異的な認識を示す.(2)基質は,ステロール環をピロールCとヘム鉄の上におき,側鎖をピロールAに近接して存在するアミノ酸側鎖上に乗りあげさせた形で真菌P450(14DM)の活性中心に結合する.(3)ラットのP450(14DM)は,真菌のP450(14DM)と基本的に同じ様式で基質と結合すると考えられるが,側鎖末端部分に対する認識において明瞭な差違を示した.以上の知見は,P450(14DM)のステロール側鎖末端認識部位と相互作用するアゾール化合物は,真菌のP450(14DM)に対して選択性を示す可能性を示唆する.この可能性を確認するため,ステロール側鎖に相当するゲラニル基を有するアゾール化合物とその誘導体の酵母とラットのP450(14DM)に対する阻害作用を比較し,以下の知見を得た.(4)ゲラニル基を有する化合物は予期したとおり,側鎖認識部位に結合し,強い阻害作用を発揮した.(5)ゲラニル基を長さの異なるイソプレノイド基に置換した場合に見られる阻害力の低下は,酵母よりラットのP450(14DM)の方が顕著であった.(6)ラットの7-エトキシクマリン脱エチル化P450に対する阻害作用には,上記誘導体間での差があまり認められず,その阻害作用も弱いものであった.以上の知見は,P450(14DM)の側鎖認識部位と構造特異的に相互作用するアゾール化合物は,真菌の酵素に対する選択性を示す可能性を示唆する.アゾール系抗真菌剤は、真菌のP450(14DM)を阻害してその効力を発揮する.したがって,アゾール系抗真菌剤は,動物のP450に影響を与えずに真菌のP450(14DM)を阻害するという選択性を持つことが望ましい.本研究は,アゾール系抗真菌剤に選択性を与えるために有効な構造を推定するべく,P450(14DM)の基質認識に関係する構造を解析することを目的としたものであり,その成果は以下に要約できる.(1)真菌のP450(14DM)は,基質であるラノステロールの3β水酸基,Δ8ステロールの骨格構造,およびステロール側鎖末端部分に対して構造特異的な認識を示す.(2)基質は,ステロール環をピロールCとヘム鉄の上におき,側鎖をピロールAに近接して存在するアミノ酸側鎖上に乗りあげさせた形で真菌P450(14DM)の活性中心に結合する.(3)ラットのP450(14DM)は,真菌のP450(14DM)と基本的に同じ様式で基質と結合すると考えられるが,側鎖末端部分に対する認識において明瞭な差違を示した.以上の知見は,P450(14DM)のステロール側鎖末端認識部位と相互作用するアゾール化合物は,真菌のP450(14DM)に対して選択性を示す可能性を示唆する.この可能性を確認するため,ステロール側鎖に相当するゲラニル基を有するアゾール化合物とその誘導体の酵母とラットのP450(14DM)に対する阻害作用を比較し,以下の知見を得た.(4)ゲラニル基を有する化合物は予期したとおり,側鎖認識部位に結合し,強い阻害作用を発揮した.(5)ゲラニル基を長さの異なるイソプレノイド基に置換した場合に見られる阻害力の低下は,酵母よりラットのP450(14DM)の方が顕著であった.(6)ラットの7-エトキシクマリン脱エチル化P450に対する阻害作用には,上記誘導体間での差があまり認められず,その阻害作用も弱いものであった.以上の知見は,P450(14DM)の側鎖認識部位と構造特異的に相互作用するアゾール化合物は,真菌の酵素に対する選択性を示す可能性を示唆する.酵母のラノステロ-ル14ー脱メチル化酵素をモデルとして、基質であるラノステロ-ルの側鎖部分に置換基を導入した誘導体との相互作用を解析し、以下の成果を得た。すなわち、酵母の酵素は基質側鎖末端部分の構造変化に敏感であり、24位の二重結合を飽和しただけで基質の親和性が著しく低下した。しかし、24位にメチレンを導入した誘導体は本来の基質であるラノステロ-ルに匹敵する活性を有していた。この事実は、24ーメチレンジヒドロラノステロ-ルが糸状菌の14ー脱メチル化酵素に対する天然の基質であることと関連して興味深い。また、上記の結果を動物の14ー脱メチル化酵素と比較するため、ラット肝臓ミクロゾ-ムの酵素を用いて同様の実験を行ったところ、酵母の酵素とは逆に、24位の二重結合の飽和による活性の低下より、24位へのメチレンの導入による活性低下が著しかった。
KAKENHI-PROJECT-03671075
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高選択性抗真菌剤開発を目的とする真菌ステロール脱メチル化酵素の構造解析
この結果は、真菌と動物の14ー脱メチル化酵素が基質側鎖末端の構造に対して異なる認識性を有する、すなわち、側鎖末端と相互作用する基質結合部位の構造が真菌と動物の酵素では異なっていることを示すものである。酵母の14ー脱メチル化酵素に対して高い親和性を示すために必要なアゾ-ル系抗真菌剤の構造に関する情報を蓄積する目的で、立体異性体を持つアゾ-ル化合物や置換基の構造を系統的に変化させたアゾ-ル誘導体を選び、それらによる酵素活性阻害の強さを解析した。解析に用いた化合物は、パクロブトラゾ-ル、AFKーシリ-ズ(花王)、SSFー109(シオノギ)などであったが、いずれの化合物においても酵母の14ー脱メチル化酵素の阻害には立体選択性が認められた。これらの知見は、アゾ-ル誘導体が酵素に高い親和性を示すためには、アゾ-ル基と疎水性置換基の幾何学的な配置が酵素のヘム鉄と基質結合部位の空間配置に一致することが必要であるという我々の仮説を支持するものである。前年度の研究で明らかにされた,真菌と動物のラノステロール14α脱メチル化酵素(P450(14DM))がステロール側鎖の構造に対して異なる特異性を示すという事実を基に,この部分に結合すると考えられる構造を有するアゾール化合物について,真菌とラットのP450(14DM)に対する反応性を精製酵素を用いて検討した。ラットから精製したP450(14DM)を得る方法はいまだ確立されていないので,この研究の目的に叶うラットのP450(14DM)を精製する方法を開発した。また,この目的に叶う構造を有するアゾール化合物としては,花王株式会社が合成している一連のイミダゾール誘導体の中から,ラノステロールの側鎖と基本的に同一の構造であるゲラニル基を持つAFK-108およびゲラニル基をプレニルおよびファルネシル基で置換した誘導体(AFK-122およびAFK-110)を選んだ。これらの化合物について,酵母およびラットから精製したP450(14DM)に対する阻害効果を詳細に比較検討し,以下の知見を得た。(1)酵母およびラットのP450(14DM)は共にゲラニル基を持つAFK-108によってもっとも強い阻害を受けた。この事実は,AFK-108のゲラニル基がP450(14DM)の基質結合部位のうちステロール側鎖を認識する部位に結合する可能性を強く示唆するものである。(2)ゲラニル基以外のイソプレノイドを持つAFK-110,122に関しては,酵母とラットのP450(14DM)に対する反応性が異なり,酵母のP450(14DM)はこれらの化合物によっても低濃度で阻害されるのに対して,ラットのP450(14DM)はこれらの化合物に対する感受性が著しく低かった。この事実は,酵母とラットのP450(14DM)がステロール側鎖の構造に対して異なる特異性を示すという前年度の知見に一致するものであり,この部分に結合するような構造を持つアゾール化合物の中には真菌と動物のP450(14DM)に対する親和性を異にするものが存在することを示すものである。前年度までの研究によって,真菌と動物のステロール14alpha脱メチル化酵素の間で基質ステロールの側鎖を認識する部位に相違があり,この部分と相互作用する構造を有するアゾール化合物が両者の酵素に対して異なる親和性を示すことを明らかにした。本年度はこの知見を基にして,アゾール系化合物の構造とP450に対する選択性の関係をより広範囲にわたって検討した。我々は既に肝臓ミクロゾームの薬物代謝に関与するP450は分子種によってアゾール系抗真菌剤に対する感受性が異なり,7-エトキシクマリンの脱エチル化反応を触媒する分子種のひとつがケトコナゾールなど一般に用いられているアゾール化合物に比較的高い感受性を示すことを見出だしていた。そこで,この活性をモデルに選び,前年度に用いたと同じイソプレノイド置換基を有する一連のイミダゾール化合物の構造と阻害活性の関係を解析した。
KAKENHI-PROJECT-03671075
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幹細胞の未分化状態維持機構の解析
胚性幹細胞(ES細胞)は、白血病阻害因子(LIF)の存在下においては、未分化状態を維持して増殖する。この時のES細胞の憎殖速度は他の細胞に比べて非常に速く、そのdoubling timeは約8時間である。一方、培地からLIFを除去すると、ES細胞の増殖速度が低下し、それとともに分化が誘導される。LIFの存在、非存在下でのES細胞の細胞周期を調べたところ、LIF存在下では全周期の30%程度の長さであったG1期が、LIF非存在下では50%ぐらいにまで伸びていた。このことから、ES細胞においては、LIFのシグナル伝達系の下流にES細胞の細胞周期を制御する因子が存在する可能性が考えられた。そこで、本研究ではそのような細胞周期制御因子の同定を試みた。まずマイクロアレイやRT-PCR法を用いることによって、LIF除去の際にその発現量が変動する細胞周期関連分子を探索した。その結果、LIF除去によって発現量が減少するものとして、cyclin E1やcyclin D1,Chk1を見い出した。一方、逆に発現レベルが上昇するものとしては、Cip1,14-3-3σ,cyclin G1,cyclin G2を見い出した。さらにCip1に関しては、強制発現させることによってLIF存在下でもES細胞のG1期を伸ばすごとが可能であることも見い出した。このことはLIFがCip1の発現を抑制することによってES細胞のG1期を短くしている可能性を示唆する。また興味深いことにLIF除去によって発現が上昇する4つの分子のうち、3つの分子がp53の標的分子である。そのためLIFがp53の発現量を制御してこれらの分子の発現を制御している可能性が考えられたが、LIF除去に伴うp53 mRNAの増加は観察されなかった。このことから、LIFが転写ではなく、翻訳後修飾を誘導することによってp53タンパク質の活性制御を行っている可能性が考えられた。胚性幹細胞(ES細胞)は体内に存在する様々な細胞に分化できる能力をもつため、再生医療の材料としての利用が期待されている。しかし、実際にES細胞の医療への応用を考えた場合には、「いかにして材料となるES細胞を効率良く増やすか」という点が重要な問題となってくる。そこで本研究ではES細胞の増殖機構を分子レベルで明らかにすることを目的として実験を進めた。ES細胞は白血病阻害因子(LIF)の存在下で培養することによって未分化状態を維持することが可能となり、約8時間で1回分裂する。しかしLIFを除くと、ES細胞の分化が開始され、それに伴いES細胞の増殖速度が低下する。このことから、LIFの下流に未分化状態を維持し増殖を促進する因子が存在する可能性が考えられる。そこでそのような因子を見い出すために本研究ではDNAマイクロアレイを用いた解析を行った。LIF存在化で3日間培養したES細胞と、LIF非存在下で6日間培養したES細胞からcDNAを調製し、両者の間で発現量が異なる遺伝子を検索した。その結果、CKS-2、p38-2G4、cdc25B、cyclinD、cyclinE、Chk1といった細胞周期関連遺伝子がLIF存在下で培養した場合に多く発現していることが判明した。さらにcdc25B、cyclin Eに関しては、RT-PCR解析やNorhtern blot解析より、LIFによって発現が誘導されることが明らかとなった。現在、これらの遺伝子のES細胞の増殖における役割を解析中である。胚性幹細胞(ES細胞)は、白血病阻害因子(LIF)の存在下においては、未分化状態を維持して増殖する。この時のES細胞の憎殖速度は他の細胞に比べて非常に速く、そのdoubling timeは約8時間である。一方、培地からLIFを除去すると、ES細胞の増殖速度が低下し、それとともに分化が誘導される。LIFの存在、非存在下でのES細胞の細胞周期を調べたところ、LIF存在下では全周期の30%程度の長さであったG1期が、LIF非存在下では50%ぐらいにまで伸びていた。このことから、ES細胞においては、LIFのシグナル伝達系の下流にES細胞の細胞周期を制御する因子が存在する可能性が考えられた。そこで、本研究ではそのような細胞周期制御因子の同定を試みた。まずマイクロアレイやRT-PCR法を用いることによって、LIF除去の際にその発現量が変動する細胞周期関連分子を探索した。その結果、LIF除去によって発現量が減少するものとして、cyclin E1やcyclin D1,Chk1を見い出した。一方、逆に発現レベルが上昇するものとしては、Cip1,14-3-3σ,cyclin G1,cyclin G2を見い出した。さらにCip1に関しては、強制発現させることによってLIF存在下でもES細胞のG1期を伸ばすごとが可能であることも見い出した。このことはLIFがCip1の発現を抑制することによってES細胞のG1期を短くしている可能性を示唆する。また興味深いことにLIF除去によって発現が上昇する4つの分子のうち、3つの分子がp53の標的分子である。そのためLIFがp53の発現量を制御してこれらの分子の発現を制御している可能性が考えられたが、LIF除去に伴うp53 mRNAの増加は観察されなかった。このことから、LIFが転写ではなく、翻訳後修飾を誘導することによってp53タンパク質の活性制御を行っている可能性が考えられた。
KAKENHI-PROJECT-14033216
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非可換岩澤理論における局所理論の研究
岩澤理論といつのは,イテアル類群等の代数的な対象とゼータ関数の特殊値等の解析的な対象との関係をp進的に研究する理論である.岩澤理論においてはこれまで有理数体Qのp進円分拡大体の塔等,Galois群が可換群となるGalois拡大の塔について,拡大体達のイデアル類群と,そのGalois拡大のGalois群の表現でひねる事で得られるゼータ関数の特殊値をp進補間するp進ゼータ関数との間の関係が研究されてきた.非可換岩澤理論とは,Galois群が可換とは限らない場合に一般化して,代数側の対象と解析側の対象の関係を研究する理論である.本研究ではこの非可換岩澤理論の中でも局所理論を主に扱っている.円分拡大の可換岩澤理論において局所理論であるColeman巾級数の理論を用いて,局所単数の逆系から岩澤群環への写像を得る理論は重要であった.筆者は非可換拡大の場合にも,この理論に相当する写像の存在とその特徴づけを与える予想を以前にたて,これを部分的に証明する理論を得た.この予想をより詳しく述べると,p進Lie群GをGalois群とするQpの拡大体の塔で,ある条件を満たすものについて,その単数群のノルム逆系の群からK_1(Zp[[G]]_S)への写像である条件で特徴付けられるものが存在するという予想である.ここにZp[[G]]_SはZp[[G]]のある局所化である.2009年度はこの予想を支持する結果を,購入したパソコンを用いて論文に著し,投稿をした.更に,この予想をpで良通常であるGalois表現に対し,一般化する予想の定式化をほぼ得,これに対し,上記の結果に相当する結果が得られる事をほぼ示した(予想と結果について,最終確認をしている段階である).これらの内容について,国内の数論研究者と研究打合せ等を行った.岩澤理論とは,イデアル類群等の代数的な対象とゼータ関数という解析的な対象との関係をp進的に研究する理論である.岩澤理論ではこれまで有理数体Qのp進円分拡大体の塔等の可換Galois拡大の塔について,拡大体達のイデアル類群と,そのGalois拡大のGalois群の表現でひねったゼータ関数の特殊値をp進補間して得られるp進ゼータ関数との間の関係が研究されてきた.非可換岩澤理論とは,研究の対象を可換Galois拡大とは限らない場合(非可換拡大)に一般化する事を目指す理論である.本研究ではこの非可換岩澤理論の中でも局所理論を主題として扱っている.円分拡大の可換岩澤理論において局所理論であるColeman巾級数の理論は重要であった.筆者は非可換拡大の場合にも, Coleman巾級数に相当する写像の存在とその特徴づけを与える予想を以前にたてた. p進Lie群GをGalois群とするQpの拡大体の塔である条件を満たすものについて,その単数群のノルム逆系の群からK_1(Zp[[G]]_S)への写像,ここにZp[[G]]_SはZp[[G]]のある局所化で,ある条件で特徴付けられるものが存在するという予想である. 2008年度はこの予想を完全に証明する事はできなかったがこの予想を支持する結果を証明した.具体的には筆者が存在を予想した写像と, Artin表現によってもたらされるK_1(Zp[[G]]_S)からQpの代数閉包への写像との合成で,考えている単数群のノルム逆系からQpの代数閉包へ写像が与えられる.あるArtin表現の族に対し,この写像の像のp進付値の様子が予想を支持する振る舞いをする事を証明した.可換岩澤理論の場合と同様,局所理論は非可換岩澤理論においてそれ自体重要で,更に(大域)非可換岩澤理論へも示唆を与える事と思われる. 2008年度は上記の結果についての発表も国際研究集会にて行った.岩澤理論といつのは,イテアル類群等の代数的な対象とゼータ関数の特殊値等の解析的な対象との関係をp進的に研究する理論である.岩澤理論においてはこれまで有理数体Qのp進円分拡大体の塔等,Galois群が可換群となるGalois拡大の塔について,拡大体達のイデアル類群と,そのGalois拡大のGalois群の表現でひねる事で得られるゼータ関数の特殊値をp進補間するp進ゼータ関数との間の関係が研究されてきた.非可換岩澤理論とは,Galois群が可換とは限らない場合に一般化して,代数側の対象と解析側の対象の関係を研究する理論である.本研究ではこの非可換岩澤理論の中でも局所理論を主に扱っている.円分拡大の可換岩澤理論において局所理論であるColeman巾級数の理論を用いて,局所単数の逆系から岩澤群環への写像を得る理論は重要であった.筆者は非可換拡大の場合にも,この理論に相当する写像の存在とその特徴づけを与える予想を以前にたて,これを部分的に証明する理論を得た.この予想をより詳しく述べると,p進Lie群GをGalois群とするQpの拡大体の塔で,ある条件を満たすものについて,その単数群のノルム逆系の群からK_1(Zp[[G]]_S)への写像である条件で特徴付けられるものが存在するという予想である.
KAKENHI-PROJECT-20740023
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20740023
非可換岩澤理論における局所理論の研究
ここにZp[[G]]_SはZp[[G]]のある局所化である.2009年度はこの予想を支持する結果を,購入したパソコンを用いて論文に著し,投稿をした.更に,この予想をpで良通常であるGalois表現に対し,一般化する予想の定式化をほぼ得,これに対し,上記の結果に相当する結果が得られる事をほぼ示した(予想と結果について,最終確認をしている段階である).これらの内容について,国内の数論研究者と研究打合せ等を行った.
KAKENHI-PROJECT-20740023
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20740023
疎水化DNAニ重らせん鎖の配向固定化フィルムの作製
本研究は、DNA-脂質複合体を有機溶媒からキャストしてフィルムを作製し、一方向に延伸することにより、二重らせん鎖を一方向に配向固定化したフィルムを作製することを目的として行い、以下の成果を得た。1)サケ精子由来のDNA(分子量約200万)を超音波照射により分子量10万くらいの長さに切断した。DNA中のリン酸アニオンと等モルのカチオン性脂質を加えて、DNA-脂質複合体ポリイオンコンプレックスの沈殿として得た。2)これをクロロホルムなどの有機溶媒に溶解して、現有の高速液体クロマトグラムに設備備品として購入した送液ポンプを接続してDNA-脂質複合体を精製した。円偏光二色性CDスペクトルや500MHz-NMRスペクトル(いずれも現有の設備)などから有機溶媒中でも二重らせん構造を形成していることを確認した。3)これをガラス板上にキャストしてフィルムを得た。このフィルムは水に不溶で自立性となったので、基板からはがして一方向に延伸した。X線回折によりフィルム中での塩基間距離が4.8nmであり、二重らせん鎖間の距離や配両方向なども決定した。二重らせん鎖の配向は偏光紫外吸収スペクトルの二色性比から2.4の異方性があり、DNA鎖は二重らせんを保持したまま延伸方向に配向していることがわかった。本研究は、DNA-脂質複合体を有機溶媒からキャストしてフィルムを作製し、一方向に延伸することにより、二重らせん鎖を一方向に配向固定化したフィルムを作製することを目的として行い、以下の成果を得た。1)サケ精子由来のDNA(分子量約200万)を超音波照射により分子量10万くらいの長さに切断した。DNA中のリン酸アニオンと等モルのカチオン性脂質を加えて、DNA-脂質複合体ポリイオンコンプレックスの沈殿として得た。2)これをクロロホルムなどの有機溶媒に溶解して、現有の高速液体クロマトグラムに設備備品として購入した送液ポンプを接続してDNA-脂質複合体を精製した。円偏光二色性CDスペクトルや500MHz-NMRスペクトル(いずれも現有の設備)などから有機溶媒中でも二重らせん構造を形成していることを確認した。3)これをガラス板上にキャストしてフィルムを得た。このフィルムは水に不溶で自立性となったので、基板からはがして一方向に延伸した。X線回折によりフィルム中での塩基間距離が4.8nmであり、二重らせん鎖間の距離や配両方向なども決定した。二重らせん鎖の配向は偏光紫外吸収スペクトルの二色性比から2.4の異方性があり、DNA鎖は二重らせんを保持したまま延伸方向に配向していることがわかった。本研究は、DNA-脂質複合体を有機溶媒からキャストしてフィルムを作製し、一方向に延伸することにより、二重らせん鎖を一方向に配向固定化したフィルムを作製することを目的として行い、以下の成果を得た。1)サケ精子由来のDNA(分子量約200万)を超音波照射により分子量10万くらいの長さに切断した。DNA中のリン酸アニオンと等モルのカチオン性脂質を加えて、DNA-脂質複合体ポリイオンコンプレックスの沈殿として得た。2)これをクロロホルムなどの有機溶媒に溶解して、現有の高速液体クロマトグラムに設備備品として購入した送液ポンプを接続してDNA-脂質複合体を精製した。円偏光二色性CDスペクトルや500MHz-NMRスペクトル(いずれも現有の設備)などから有機溶媒中でも二重らせん構造を形成していることを確認した。3)これをガラス板上にキャストしてフィルムを得た。このフィルムは水に不溶で自立性となったので、基板からはがして一方向に延伸した。X線回折によりフィルム中での塩基間距離が4.8nmであり、二重らせん鎖間の距離や配向方向なども決定した。二重らせん鎖の配向は偏光紫外吸収スペクトルの二色性比から2.4の異方性があり、DNA鎖は二重らせんを保持したまま延伸方向に配向していることがわかった。本研究は、DNA-脂質複合体を有機溶媒からキャストしてフィルムを作製し、一方向に延伸することにより、二重らせん鎖を一方向に配向固定化したフィルムを作製することを目的として行い、以下の成果を得た。1)サケ精子由来のDNA(分子量約200万)を超音波照射により分子量10万くらいの長さに切断した。DNA中のリン酸アニオンと等モルのカチオン性脂質を加えて、DNA-脂質複合体ポリイオンコンプレックスの沈澱として得た。2)これをクロロホルムなどの有機溶媒に溶解して、設備備品として購入した送液ポンプを現有の高速液体クロマトグラムに接続してDNA-脂質複合体を精製した。円偏光二色性CDスペクトルや500MHz-NMRスペクトル(いずれも現有の設備)などから有機溶媒中でも二重らせん構造を形成していることを確認した。3)これをガラス板上にキャストしてフィルムを得た。このフィルムは水に不溶で自立性となったので、基板からはがして一方向に延伸した。X線回折によりフィルム中での塩素間距離が4.8nmであり、二重らせん鎖間の距離や配向方向なども決定した。二重らせん鎖の配向偏光紫外吸収スペクトルの二色性比から2.4の異方性があり、DNA鎖は二重らせんを保持したまま延伸方向に配向していることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-08455437
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末梢血中核酸を用いたゲノム統合解析による難治性肝癌の治療反応機構の解明
近年、脂肪肝など非ウイルス性の背景を持つ肝癌が急増しているがそれらの病態に関わる癌ゲノム要因の詳細は不明であり、また全身化学療法の選択肢が多様化する中で治療反応性の規定因子の解明が求められている。本研究では、特殊な病態の肝癌や分子標的治療効果に関与するゲノム要因を解明するために、1血漿中の微量核酸を用いた癌関連遺伝子変異の探索、その結果と臨床情報の対比に基づき2肝癌の病態および3全身化学療法の治療反応性を規定するゲノム要因を同定する。さらに、見出したゲノム異常の機能解明のため4ヒトiPS細胞由来肝細胞を用いて機能解析を行い、精密医療に向けた知的基盤形成を目指す。近年、脂肪肝など非ウイルス性の背景を持つ肝癌が急増しているがそれらの病態に関わる癌ゲノム要因の詳細は不明であり、また全身化学療法の選択肢が多様化する中で治療反応性の規定因子の解明が求められている。本研究では、特殊な病態の肝癌や分子標的治療効果に関与するゲノム要因を解明するために、1血漿中の微量核酸を用いた癌関連遺伝子変異の探索、その結果と臨床情報の対比に基づき2肝癌の病態および3全身化学療法の治療反応性を規定するゲノム要因を同定する。さらに、見出したゲノム異常の機能解明のため4ヒトiPS細胞由来肝細胞を用いて機能解析を行い、精密医療に向けた知的基盤形成を目指す。
KAKENHI-PROJECT-19K17392
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K17392
前立腺癌再燃時に関与する遺伝子の同定と遺伝子治療
5週齢SCIDmouse背部皮下両側に前立腺癌細胞株LNCaP 1.O×10^6を50%matrigelとともにそれぞれinoculate。腫瘍が増大したmouseから一方の腫瘍を摘出し、subline化した(LN-Pre)。その後、mouseをcastrationし、そのうち再び増大した腫瘍を摘出し、新たなsublineを樹立(LN-REC0)。LN-REC0をcastrationしたSCID mouseにinoculate。増大した腫瘍を摘出し、低アンドロゲン環境下においても腫瘍増殖を認める新しい前立腺癌細胞株(LN-REC4)を樹立した。この細胞株を用いてin vitro, in vivoにおいて、増殖速度、細胞特性につき検討した。新しく樹立した細胞株LN-REC4はin vitroではアンドロゲン感受性を保持していた。しかし、in vivoにおいては、castrationしたmouseでは造腫瘍能、増殖速度とも親株LNCaP、LN-Preと比較して速く、再燃前立腺癌の良いモデルであると考えられた。また、同時に前立腺癌の再燃に関与する遺伝子として、可能性のあるものをmedline等で調べたところ、Cyclooxygenase-2(COX-2)の関与が考えられた。このため、COX-2の発現に乏しいLNCaP細胞でCOX-2を強制発現させ、COX-2の機能を調べた。COX-2はLNCaP細胞の増殖をin vitro, in vivoにおいても促進した。また、血管新生に関与する遺伝子のう右VEGFの発現を亢進させていた。5週齢SCIDmouse背部皮下両側に前立腺癌細胞株LNCaP 1.O×10^6を50%matrigelとともにそれぞれinoculate。腫瘍が増大したmouseから一方の腫瘍を摘出し、subline化した(LN-Pre)。その後、mouseをcastrationし、そのうち再び増大した腫瘍を摘出し、新たなsublineを樹立(LN-REC0)。LN-REC0をcastrationしたSCID mouseにinoculate。増大した腫瘍を摘出し、低アンドロゲン環境下においても腫瘍増殖を認める新しい前立腺癌細胞株(LN-REC4)を樹立した。この細胞株を用いてin vitro, in vivoにおいて、増殖速度、細胞特性につき検討した。新しく樹立した細胞株LN-REC4はin vitroではアンドロゲン感受性を保持していた。しかし、in vivoにおいては、castrationしたmouseでは造腫瘍能、増殖速度とも親株LNCaP、LN-Preと比較して速く、再燃前立腺癌の良いモデルであると考えられた。また、同時に前立腺癌の再燃に関与する遺伝子として、可能性のあるものをmedline等で調べたところ、Cyclooxygenase-2(COX-2)の関与が考えられた。このため、COX-2の発現に乏しいLNCaP細胞でCOX-2を強制発現させ、COX-2の機能を調べた。COX-2はLNCaP細胞の増殖をin vitro, in vivoにおいても促進した。また、血管新生に関与する遺伝子のう右VEGFの発現を亢進させていた。アンドロゲン感受性前立腺癌培養細胞LNCaPを100万個matrigelとともにオスSCIDマウスの背部に2カ所接種し、癌細胞の発育を観察した。約2ヵ月経過してその2ヵ所の部位で癌細胞の発育が観察された。一方の癌細胞を摘出し、それから再び、primary cultureを行い、新たなcell lineを樹立した(LN-Pre)。LN-Preはin vitroにおいてLNCaPと同様にandrogenによって増殖が促進された。その後、castrationを行い、残された腫瘍が一度縮小して再増殖したものを摘出し、それから新たにprimary cultureを行い、新たなcell lineを樹立した(LN-REC0)。このLN-REC0は前立腺癌再燃モデルと考えられたが、さらに本当に再燃するかどうかを確認するために、in vitroで増殖を確認したが、やはり、LNCaPと同様にandrogenで増殖が促進された。このため、再びLN-REC0をcastrationしたオスSCIDマウスの背部にmatnigelとともに接種し、腫瘍の増殖を確認した。このcell lineはcastrationしたオスSCIDマウスでも造腫瘍能を保持していた。念のため、できた3個の腫瘍を摘出し、praimary cultureを行い、3種類のcell lineを樹立した(LN-REC2,3,4)。現在、これらcell lineのcharacterをin vitro, in vivoにおいて確認中である。5週齢SCIDmouse背部皮下両側に前立腺癌細胞株LNCaP 1.0×10^6を50%matrigelとともにそれぞれinoculate。腫瘍が増大したmouseから一方の腫瘍を摘出し、subline化した(LN-Pre)。その後、mouseをcastrationし、そのうち再び増大した腫瘍を摘出し、新たなsublineを樹立(LN-REC0)。LN-REC0をcastrationしたSCID mouseにinoculate。増大した腫瘍を摘出し、低アンドロゲン環境下においても腫瘍増殖を認める新しい前立腺癌細胞株(LN-REC4)を樹立した。この細胞株を用いてin vitro, in vivoにおいて、増殖速度、細胞特性につき検討した。新しく樹立した細胞株LN-REC4はin vitroではアンドロゲン感受性を保持していた。しかし、in vivoにおいては、castrationしたmouseでは造腫瘍能、増殖速度とも親株LNCaP、LN-Preと比較して速く、再燃前立腺癌の良いモデルであると考えられた。また、同時に前立腺癌の再燃に関与する遺伝子として、可能性のあるものをmedline等で調べたところ、Cyclooxygenase-2 (COX-2)の関与が考えられた。
KAKENHI-PROJECT-13671640
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13671640
前立腺癌再燃時に関与する遺伝子の同定と遺伝子治療
このため、COX-2の発現に乏しいLNCaP細胞でCOX-2を強制発現させ、COX-2の機能を調べた。COX-2はLNCaP細胞の増殖をin vitro, in vivoにおいても促進した。また、血管新生に関与する遺伝子のうちVEGFの発現を亢進させていた。
KAKENHI-PROJECT-13671640
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科学ワークステーションの構成
平成6年度はいくつかの自然科学分野の研究者をたずね、彼らとの議論とインタビューを通じて、科学研究の現場における多種多様な情報処理と管理について観察と問題点の検討を進めてきた。このなかで、特徴的なことは、情報処理過程の節目のところで、紙による記録や転記、または記憶に頼るなど、情報保存の観点からみて非常に弱い還がしばしば存在することで、これが情報処理過程としての科学研究の質と能率を強く軛している可能性がある。また最近の記憶装置の大容量化と低価格化によって、個人レベルでも大量の情報を自己の計算機内に保有することが可能となり、実際にGB(ギガバイト、10の9乗文字)オーダーのデータを蓄積することができるようになってきたことにともない、人手によるその管理には限界が見えはじめている。このような点をふまえ、とくに研究者個人の情報管理については、現在研究者たちが置かれている情報環境からの円滑で速やかな移行のできる新しい情報システムの構築についてはこれを優先的に進めていく必要性を認めた。平成6年度はいくつかの自然科学分野の研究者をたずね、彼らとの議論とインタビューを通じて、科学研究の現場における多種多様な情報処理と管理について観察と問題点の検討を進めてきた。このなかで、特徴的なことは、情報処理過程の節目のところで、紙による記録や転記、または記憶に頼るなど、情報保存の観点からみて非常に弱い還がしばしば存在することで、これが情報処理過程としての科学研究の質と能率を強く軛している可能性がある。また最近の記憶装置の大容量化と低価格化によって、個人レベルでも大量の情報を自己の計算機内に保有することが可能となり、実際にGB(ギガバイト、10の9乗文字)オーダーのデータを蓄積することができるようになってきたことにともない、人手によるその管理には限界が見えはじめている。このような点をふまえ、とくに研究者個人の情報管理については、現在研究者たちが置かれている情報環境からの円滑で速やかな移行のできる新しい情報システムの構築についてはこれを優先的に進めていく必要性を認めた。
KAKENHI-PROJECT-06680371
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06680371
マツ枯れに関わる環境諸因子・複合作用系の研究
マツ枯れ被害の沈静化が困難な理由の一つに、この疾病が多くの生物要素の相互関係から成立する複雑な系であることがあげられる。本研究では、この複雑な系に影響する環境要因のなかから、酸性雨と菌根共生をとりあげ、これらが本病の流行の動向をどのように支配するのかを研究した。酸性雨は本病の誘因として働き、本病の進展を促進すると想定して仕事をはじめたが、その作用は複雑で、その酸性度により、本病を促進する場合もあれば、むしろ抑制的に働くことがあることを明らかにした。その作用点を明らかにすべく、発芽数ヶ月という小さな実生マツ苗を用いて、何段階かの密度に調整した病原線虫を接種し、その後の病徴の進展を評価するという手法で、病徴進展度を初期線虫密度と接種後の経過時間からもとめた負荷の関数として解析することができた。この解析法により、これまで雑然と見えた結果は、マツ樹側の耐性限界と病原体側の病原力という二つのパラメーターで整理することができるようになり、それぞれ侵入抵抗や増殖力といった現象と関連づけて評価することができた。また、本病が萎凋病の一種である点から、発病・枯死過程を研究しているが、そのメカニズムの一つとして、木部柔細胞からの物質の漏出→ピットメンブレンへの物質の沈着→キャビテーションの発生→水分通導不全という仮説を補強する組織化学的知見を得ることに成功した。さらに、水分ストレスが発病・枯死に深く関わることから、菌根共生を水分ストレスとの関係で研究し、菌根相が水分条件に応じて動的に変化し、マツ樹への養水分補給機能をまかなっていることが示唆される結果を得た。これらの結果をとりまとめ、すでに4つの報文として公表しているほか、現在投稿中の成果もある。マツ枯れ被害の沈静化が困難な理由の一つに、この疾病が多くの生物要素の相互関係から成立する複雑な系であることがあげられる。本研究では、この複雑な系に影響する環境要因のなかから、酸性雨と菌根共生をとりあげ、これらが本病の流行の動向をどのように支配するのかを研究した。酸性雨は本病の誘因として働き、本病の進展を促進すると想定して仕事をはじめたが、その作用は複雑で、その酸性度により、本病を促進する場合もあれば、むしろ抑制的に働くことがあることを明らかにした。その作用点を明らかにすべく、発芽数ヶ月という小さな実生マツ苗を用いて、何段階かの密度に調整した病原線虫を接種し、その後の病徴の進展を評価するという手法で、病徴進展度を初期線虫密度と接種後の経過時間からもとめた負荷の関数として解析することができた。この解析法により、これまで雑然と見えた結果は、マツ樹側の耐性限界と病原体側の病原力という二つのパラメーターで整理することができるようになり、それぞれ侵入抵抗や増殖力といった現象と関連づけて評価することができた。また、本病が萎凋病の一種である点から、発病・枯死過程を研究しているが、そのメカニズムの一つとして、木部柔細胞からの物質の漏出→ピットメンブレンへの物質の沈着→キャビテーションの発生→水分通導不全という仮説を補強する組織化学的知見を得ることに成功した。さらに、水分ストレスが発病・枯死に深く関わることから、菌根共生を水分ストレスとの関係で研究し、菌根相が水分条件に応じて動的に変化し、マツ樹への養水分補給機能をまかなっていることが示唆される結果を得た。これらの結果をとりまとめ、すでに4つの報文として公表しているほか、現在投稿中の成果もある。これまでに、2つの実験を実施した。一つは海岸砂地土壌と内陸山地土壌を室内に持ち帰り、その中に生息する菌根菌を比較するため、これらをそれぞれ一定量入れた鉢に、アカマツとクロマツの無菌実生を併せ植え込み、これら実生苗に形成される菌根を顕微鏡下で比較検討した。この際、菌根形成に及ぼす水分ストレスの影響を調べるため、潅水条件を3段階に設定して、この点についても比較した。実験の結果、海岸砂地土壌と内陸山地土壌の間では、形成される菌根相に大きな違いがあったが、アカマツとクロマツの間にはそれほど顕著な菌根相め違いはなかった。水分条件は、菌根形成に顕著に影響し、水分ストレスが大きい場合には、菌根形成は阻害された。しかし、水分ストレス条件下でも少数の菌根が形成され、それらは概ね外部菌系を発達させたタイプの菌根であった。このように,水分ストレスに適応したタイプの菌根が選択的に形成されることにより、寄主マツ類は乾燥条伴下でも生息できるものと考えられる。二つ目の実験として、酸性雨に被曝させた実生マツ苗に対するマツノザイセンチュウの接種試験を実施した。ただし、この実験では線虫接種密度を3段階に変えることにより、その後の、マツ苗の発病過程、マツ苗中での線虫の増殖過程を定量的に比較解析した。得られた結果は興味深いもので,酸性雨は、病原線虫の侵入に対する寄主側抵抗を促進する一方で、いったん侵入した線虫の増殖を促進するという二面性を示し、環境因子としての役割の複雑さが明らかになった。マツ枯れ被害の沈静化が困難な理由の一つに、この疾病が多くの生物要素の相互関係から成立する複雑な系であることがあげられる。本研究では、この複雑な系に影響する環境要因のなかから、酸性雨と菌根共生をとりあげ、これらが本病の流行の動向をどのように支配するのかを研究した。
KAKENHI-PROJECT-12460069
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12460069
マツ枯れに関わる環境諸因子・複合作用系の研究
酸性雨は本病の誘因として働き、本病の進展を促進すると想定して仕事をはじめたが、その作用は複雑で、その酸性度により、本病を促進する場合もあれば、むしろ抑制的に働くことがあることを明らかにした。その作用点を明らかにすべく、発芽数ヶ月という小さな実生マツ苗を用いて、何段階かの密度に調整した病原線虫を接種し、その後の病徴の進展を評価するという手法で、病徴進展度を初期線虫密度と接種後の経過時間からもとめた負荷の関数として解析することができた。この解析法により、これまで雑然と見えた結果は、マツ樹側の耐性限界と病原体側の病原力という二つのパラメーターで整理することができるようになり、それぞれ侵入抵抗や増殖力といった現象と関連づけて評価することができた。また、本病が萎凋病の一種である点から、発病・枯死過程を研究しているが、そのメカニズムの一つとして、木部柔細胞からの物質の漏出→ピットメンブレンへの物質の沈着→キャビテーションの発生→水分通導不全という仮説を補強する組織化学的知見を得ることに成功した。さらに、水分ストレスが発病・枯死に深く関わることから、菌根共生を水分ストレスとの関係で研究し、菌根相が水分条件に応じて動的に変化し、マツ樹への養水分補給機能をまかなっていることが示唆される結果を得た。これらの結果をとりまとめ、すでに4つの報文として公表しているほか、現在投稿中の成果もある。
KAKENHI-PROJECT-12460069
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12460069
周辺視における空間注意勾配の研究
周辺視が受けもつ視野の範囲は、中心視の占める範囲と比較すると著しく広い空間領域にわたっている。そのため、周辺視と中心視は、それぞれ役割の異なる2様の情報処理を行っていると思われる。つまり、両者は空間的注意の広がりや密度において異なる2つの視覚系を成していると考えられる。空間的注意の注意の勾配が全視野にわたって等質であるという説と、勾配には平担部と急激に変化する局所部が認められるという非等質説が相拮抗し論争を呼んでいる。この論争はみかけ上等質にみえる注意勾配も、実際は両視覚系に対応した注意メカニズムの拮抗関係によって決るのではないかというのが筆者の仮説である。本研究の目的は、従って、注意の配分量は視野の空間的広がりとトレードオフの関係にあり、空間的注意の勾配も両視覚系への配分への関与に比例すると想定し、これを実験的に確認することにある。反応の指標としてターゲット(赤色の光刺激)への検出反応時間を測定した。ターゲットの出現(確率的に変動)に先立ち、キュー(手がかり)用の緑色光刺激が呈示される。キューの呈示位置は周辺視野上の任意の位置であり、キューは空間的注意の勾配を変化させる役割をもつ。もし、キューが右端に、ターゲットが左端に呈示されれば、ターゲットへの反応時間は遅れることになる。逆に両者の空間位置が近接していれば反応時間は速くなることになる。実験データは次の事実を明らかにし、仮説は一部支持された。(1)空間的注意の勾配はキューの呈示される周辺視野を中心としてローカルな2次元的勾配をもつ。(2)勾配の傾きは水平経線上の左右の位置で非対称型を成す。周辺視が受けもつ視野の範囲は、中心視の占める範囲と比較すると著しく広い空間領域にわたっている。そのため、周辺視と中心視は、それぞれ役割の異なる2様の情報処理を行っていると思われる。つまり、両者は空間的注意の広がりや密度において異なる2つの視覚系を成していると考えられる。空間的注意の注意の勾配が全視野にわたって等質であるという説と、勾配には平担部と急激に変化する局所部が認められるという非等質説が相拮抗し論争を呼んでいる。この論争はみかけ上等質にみえる注意勾配も、実際は両視覚系に対応した注意メカニズムの拮抗関係によって決るのではないかというのが筆者の仮説である。本研究の目的は、従って、注意の配分量は視野の空間的広がりとトレードオフの関係にあり、空間的注意の勾配も両視覚系への配分への関与に比例すると想定し、これを実験的に確認することにある。反応の指標としてターゲット(赤色の光刺激)への検出反応時間を測定した。ターゲットの出現(確率的に変動)に先立ち、キュー(手がかり)用の緑色光刺激が呈示される。キューの呈示位置は周辺視野上の任意の位置であり、キューは空間的注意の勾配を変化させる役割をもつ。もし、キューが右端に、ターゲットが左端に呈示されれば、ターゲットへの反応時間は遅れることになる。逆に両者の空間位置が近接していれば反応時間は速くなることになる。実験データは次の事実を明らかにし、仮説は一部支持された。(1)空間的注意の勾配はキューの呈示される周辺視野を中心としてローカルな2次元的勾配をもつ。(2)勾配の傾きは水平経線上の左右の位置で非対称型を成す。
KAKENHI-PROJECT-63510055
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63510055
三世代調査による時系列自然遊び・自然資源GISデータベース構築と環境教材の開発
本研究は、1.北海道における三世代(子世代・親世代・祖父母世代)への調査を通じて各世代の幼少期における自然遊びの実態と自然資源(資源とその空間情報)をGISデータベース化し、都市化の進行とともに消失した自然遊び・遊び空間とその対象である自然資源を時系列に可視化する、2.自然資源を活用した遊び・遊び場の消失の原因・理由を考察した環境教材を開発し、自然遊びの再現を通じた生物多様性配慮型の都市環境づくりに寄与する、の2点を目的に調査・研究を実施した。初年度の2016年は自然体験に関する文献、既存研究の整理と北欧における自然科学分野の教材収集、先進事例調査、GIS分野の研究者訪問・ディスカッションを行った。2年目となる2017年度は祖父母世代への調査を計画していたが、勤務先が変更となったことから計画の見直しを行い、先に調査協力が得られた小学生児童(子世代)と保護者(親世代)を対象とした外遊び・遊び場に関する調査を行った。調査の結果、子世代では外遊びの場として都市公園がもっとも多く見られたものの、住宅地に隣接する都市近郊林において虫取りなど自然を対象とする遊びが一定数見られた。また保護者の幼少期における外遊び頻度と、子世代の外遊び頻度には一定の関係性が見られた(なお勤務先は同一市町村(札幌市)内での変更であり、研究対象地の条件の大きな変更はなかった)。3年目(最終年度)となる2018年度は、幼少期から調査対象地域に居住する祖父母世代を対象に幼少期の遊びに関する調査を行い、過去における自然資源の実態と遊びとの関わりについて分析を行った。その後、研究成果を学会支部大会において発表をした。現在、研究成果をまとめて学術論文を執筆しており、今年度中に関連する学会への査読付き論文の投稿を行う。H28年度に計画していた先進事例視察として、アアルト大学(フィンランド共和国)准教授Marketta Kytta氏(都市計画学)を訪問し、子どもの遊び環境と自然に関する意識の世代間調査結果に関する意見交換を行った。ヘルシンキ中心市街地の市民(高齢者、成人、こどもの三世代)を対象として、地域資源として重要と考える要素に関する調査を行った結果、高齢者と成人では自然要素を重要な資源として指摘する比率が高くみられたのに対し、こどもでは資源として重要と指摘する比率が高齢者や成人と比較して40%未満と著しく少ない結果であった。森と湖の国と言われるフィンランドにおいても、日本と同様にこどもの自然環境に対する意識や関心が大人と比較して低くなっていることが確認された。また外出の自由度に関する国際比較に関する研究結果として、フィンランドでは子どもが外出する際の自由度がきわめて高い(行き先を自ら決定し、自分一人で外出する)状況であるのに対し、日本では外出の自由度が低い(行き先を自分一人で決定できず、一人で外出する機会が少ない)状況であるとの報告を受け、子どもが外出する際の安全確保など社会状況の際が大きく影響しているのではないか、との意見交換を行った。またクオッパヌミ基礎学校(Kuoppanummi koulukeskus)を訪問し、理科や総合学習の授業方法について視察を行ったほか、フィンランドの小学校理科教科書(自然・環境分野)を資料として購入した。H28年度はフィンランドの小学校視察、研究者との意見交換等を行い、これを踏まえてH29年度に予定している調査実施に向けた対象候補地の検討を行った。条件として研究機関からのアクセスがよいこと、三世代(祖父母世代、親世代、子世代)の調査対象者が一定数以上居住している地域であること、都市地域でありながら一定規模の樹林地など自然性が豊かなエリアに近接し、自然資源へのアクセスが比較的容易であることなどを考慮し、対象候補地を札幌市手稲区金山地区に絞り込み、空間条件の整理を行った。また小学校や近隣組織などをはじめとする関係機関への調査依頼準備を行った。2年目にあたる平成29年度は、具体的な対象地を選定し二世代(子世代、親世代)を対象に自然環境に対する意識、ならびに屋外での自然体験活動に関するアンケート調査を実施した。札幌市内でも特に日常生活圏に豊かな自然地域が隣接する、南区常盤地域において小学校の協力のもと調査を実施した。調査の結果、4年生62名、5年生46名、6年生48名の合計156名(ならびに同数の親)から回答を得た。こどもの屋外における遊び場としては、市街地内の都市公園がもっとも多く見られたものの、市街地周辺の樹林地等を活用した日常的な遊び活動が確認された。またクワガタムシ等の虫取り遊びが多くの児童の生活の中で日常的に行われていること、リスやシカなど野生生物を日常生活の中で観察した経験を多くの児童が持っていることが明らかとなった。さらに親世代の自然活動に対する意識やこどもの頃の自然を対象とした遊びについて調査した結果をまとめたところ、幼少期こ自然を対象とした遊びを豊富に経験しており、自然環境に関する一定の知識・経験を有する世帯が多いこと、また休日には親子でキャンプに出かけるなど自然を対象とした活動を子世代と共有していることが明らかとなった。すなわち、親世代の自然活動に対する意識の高さに加え、日常生活圏において森林や河川など自然地域へのアクセスが容易であり、野生生物などを身近に観察できる環境にあることが、自然環境に対する意識涵養と自然活動の促進に寄与している実態が明らかとなった。以上の研究成果について平成30年度上半期に学術論文にまとめ、論文投稿する予定である。研究1年目から2年目にかけて研究代表者の勤務先が変更になったことから、主な調査対象地を札幌市手稲区から研究機関の所在地である札幌市南区に変更した。
KAKENHI-PROJECT-16K01877
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K01877
三世代調査による時系列自然遊び・自然資源GISデータベース構築と環境教材の開発
しかしながら南区も札幌市内10区の中で最大面積の森林地域を有するなど、自然地域がきわめて豊かなフィールドであり、むしろ本研究活動の対象地としてよりふさわしい場所であると言える。勤務先の異動後、当該地域において開校からの存続年数が長く児童数が極端に少数でない(調査対象として一定の児童数を有する)小学校を候補として抽出し、その中で研究機関に近い所在地の小学校に協力依頼を行い快諾が得られたことから、おおむね当初計画していたスケジュールと遜色なく研究活動を進めることができている。本研究は、1.北海道における三世代(子世代・親世代・祖父母世代)への調査を通じて各世代の幼少期における自然遊びの実態と自然資源(資源とその空間情報)をGISデータベース化し、都市化の進行とともに消失した自然遊び・遊び空間とその対象である自然資源を時系列に可視化する、2.自然資源を活用した遊び・遊び場の消失の原因・理由を考察した環境教材を開発し、自然遊びの再現を通じた生物多様性配慮型の都市環境づくりに寄与する、の2点を目的に調査・研究を実施した。初年度の2016年は自然体験に関する文献、既存研究の整理と北欧における自然科学分野の教材収集、先進事例調査、GIS分野の研究者訪問・ディスカッションを行った。2年目となる2017年度は祖父母世代への調査を計画していたが、勤務先が変更となったことから計画の見直しを行い、先に調査協力が得られた小学生児童(子世代)と保護者(親世代)を対象とした外遊び・遊び場に関する調査を行った。調査の結果、子世代では外遊びの場として都市公園がもっとも多く見られたものの、住宅地に隣接する都市近郊林において虫取りなど自然を対象とする遊びが一定数見られた。また保護者の幼少期における外遊び頻度と、子世代の外遊び頻度には一定の関係性が見られた(なお勤務先は同一市町村(札幌市)内での変更であり、研究対象地の条件の大きな変更はなかった)。3年目(最終年度)となる2018年度は、幼少期から調査対象地域に居住する祖父母世代を対象に幼少期の遊びに関する調査を行い、過去における自然資源の実態と遊びとの関わりについて分析を行った。その後、研究成果を学会支部大会において発表をした。現在、研究成果をまとめて学術論文を執筆しており、今年度中に関連する学会への査読付き論文の投稿を行う。H29年度から研究代表者の所属機関が北海道科学大学(札幌市手稲区)から札幌市立大学(札幌市南区)に変更となったことから、H29年度実施予定の調査対象地を当初予定していた札幌市手稲区金山地区のほか、研究機関からのアクセスがよい札幌市南区石山地区を候補地とし、両地区のいずれか(もしくは2地区の両方)を調査対象地として調査実施することを検討している。当初の研究計画においては、ある特定の対象地を固定して空間の時系列変化を把握するとともに、子世代、親世代、祖父母世代への幼少期の自然活動に関する調査を行い、空間の変遷と自然活動の変化がどのように連動的に変化してきたのかを明らかにする計画であった。しかしながら親世代への調査の結果、多くの世帯が居住年数が短く、幼少期から現在まで対象地に住み続けている親世代が少ない状況であることが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-16K01877
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K01877
生理機能への影響を孝慮した高齢者の快適な住宅温熱環境設定のための実験的研究
本研究は高齢者において、1)生理・心理機能の変動を指標とした寒冷暴露後の暖房や暑熱暴露後の冷房の快適条件を求める研究と2)生理・心理反応から寝室の快適な温熱条件を求める研究の2つから成り立っている。1)寒冷暴露後の暖房や暑熱暴露後の冷房の快適温度条件6373歳の女子高齢者8名(高齢群)と1927女子若年者9名(若年群)を対象に、寒冷および暑熱曝露後の快適温度を被検者が快適となるように室温を制御する方法で調査した。高齢者の暑熱および常温暴露後の快適温度条件は若年者と異ならないものの(2425°C)、寒冷暴露後では高齢者はやや高い温度を好む傾向にあり、時間経過に伴っても変化が無かった。また、高齢者では快適とする範囲は大きく、温熱環境を正確に把握できない場合も見られた。これらの結果は、高齢者の居住温熱環境の設定、改善には高齢者以外の関与が不可欠である場合があることを示唆するものである。2)生理・心理反応に基づく寝室の快適な温熱条件高齢者の睡眠に及ぼす室温の影響を調べるため、年齢6782歳の高齢者20名の睡眠中の体動を冬季(12月)と夏期(78月)において、各被検者の住居で測定した。同事に室温、寝床内温度を測定した。夏季においては、年齢2021歳の若年者20名についても同様の測定を行った。睡眠中の体動と室温との関係について検討し、以下の結果を得た。1)測定期間中の室温は冬季8°C、夏季28°C前後であり、両季節ともは睡眠に好適とされる温度範囲外であった。2)寝床内温度は、夏季は室温と正の相関関係にあり、室温よりやや高い値であった。一方、冬季は電気毛布等の使用により、1040°Cの間の広い範囲に分布していた。3)夏季での体動数は高齢者において若年者より有意に高い値であった。4)高齢者の冬季での体動数は夏季より有意に低い値であった。5)夏季での体動数は室温と有意な正の相関関係にあり、特に高齢者では室温26°C付近で体動数が増加する傾向にあった。一方、若年者では高齢者よりやや高い室温で体動数は増加した。以上より、高齢者では睡眠は快適とされる環境温度域においても、若年者と比較し体動が多く、さらに夏季の睡眠において体動数が増加する環境温度は高齢者で低く、高温環境は高齢者の睡眠により強い影響を与えていることが示唆された。本研究は高齢者において、1)生理・心理機能の変動を指標とした寒冷暴露後の暖房や暑熱暴露後の冷房の快適条件を求める研究と2)生理・心理反応から寝室の快適な温熱条件を求める研究の2つから成り立っている。1)寒冷暴露後の暖房や暑熱暴露後の冷房の快適温度条件6373歳の女子高齢者8名(高齢群)と1927女子若年者9名(若年群)を対象に、寒冷および暑熱曝露後の快適温度を被検者が快適となるように室温を制御する方法で調査した。高齢者の暑熱および常温暴露後の快適温度条件は若年者と異ならないものの(2425°C)、寒冷暴露後では高齢者はやや高い温度を好む傾向にあり、時間経過に伴っても変化が無かった。また、高齢者では快適とする範囲は大きく、温熱環境を正確に把握できない場合も見られた。これらの結果は、高齢者の居住温熱環境の設定、改善には高齢者以外の関与が不可欠である場合があることを示唆するものである。2)生理・心理反応に基づく寝室の快適な温熱条件高齢者の睡眠に及ぼす室温の影響を調べるため、年齢6782歳の高齢者20名の睡眠中の体動を冬季(12月)と夏期(78月)において、各被検者の住居で測定した。同事に室温、寝床内温度を測定した。夏季においては、年齢2021歳の若年者20名についても同様の測定を行った。睡眠中の体動と室温との関係について検討し、以下の結果を得た。1)測定期間中の室温は冬季8°C、夏季28°C前後であり、両季節ともは睡眠に好適とされる温度範囲外であった。2)寝床内温度は、夏季は室温と正の相関関係にあり、室温よりやや高い値であった。一方、冬季は電気毛布等の使用により、1040°Cの間の広い範囲に分布していた。3)夏季での体動数は高齢者において若年者より有意に高い値であった。4)高齢者の冬季での体動数は夏季より有意に低い値であった。5)夏季での体動数は室温と有意な正の相関関係にあり、特に高齢者では室温26°C付近で体動数が増加する傾向にあった。一方、若年者では高齢者よりやや高い室温で体動数は増加した。以上より、高齢者では睡眠は快適とされる環境温度域においても、若年者と比較し体動が多く、さらに夏季の睡眠において体動数が増加する環境温度は高齢者で低く、高温環境は高齢者の睡眠により強い影響を与えていることが示唆された。本年度は以下の調査、実験研究を行った。1.暑熱曝露後の快適な冷房条件設定値の検討国立公衆衛生院内の隣接した2つの人工気候室を使用し、以下の方法により暑熱曝露後の快適な冷房条件設定値を検討した。健康な大学生と高齢者(6373才)
KAKENHI-PROJECT-03650481
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03650481
生理機能への影響を孝慮した高齢者の快適な住宅温熱環境設定のための実験的研究
各10名を被検者とし、予め高温条件(35°C)に30分間曝露後に、室内の気温を被検者自身が自由に調節可能な人工気候室に2時間滞在させ、その間の室温調節の頻度,室温変化の大きさを測定した。同時に,皮膚温、直腸温、心拍数、血圧等の生理反応を連続記録した。以上より、夏季における暑熱曝露後の快適温度選択行動に及ぼす年齢差の影響について検討し、以下の結果を得た。快適とした室温は高温曝露後では低下する傾向にあり、特に高齢者では23.0°C(平均値)と若年者の25.2°Cより高かった。一方、高温曝露が無い場合では高齢者24.7°C、若年者25.5°Cと差は小さかった。2.寒冷時の寝室の快適な温熱環境の検討実際の住居で睡眠中の体動(睡眠深度と関係)、寝床内温湿度、室温・気湿を測定した。被検者は大学生と高齢者(6681才)各15名であった。また、各被検者に就床時刻、起床時刻、寝つき・熟睡の程度等についてアンケ-ト調査を行った。高齢者では寝室の暖房が十分ではなく、5°C以下の例もみられた。しかし、これらの例では電気毛布等の使用がなされており、寝床内温度は高い傾向にあった。現在寝床内温度、寝室の温度と体動との関係について検討中である。本年度は、以下の2つの実験研究を実施した。1.寒冷曝露後の快適な暖房条件設定値の検討6373歳の女子高齢者8名(高齢群)と1927の女子若年者9名(若年群)を対象に、寒冷曝露後の快適温度を被検者が快適となるように室温を制御する方法で調査した。実験は、常温室(気温25°C)に10分間、その後、30分間、常温(25°C)もしくは寒冷(10°C)に曝露させ、再び常温室に戻り90分間滞在させた。その間、室温の制御を手元のスイッチで行わせた。実験期間中、暑くて不快を感じた時にスイッチを逆の方向へ倒したときの室温(最高温度)、寒くて不快を感じた時にスイッチを逆の方向へ倒したときの室温(最低温度)が記録され、最高と最低温度の中央値を快適温度と定義し、高齢者の快適温度が若年者と比較検討され、以下の結果が得られた。1)中央温度は、常温曝露後、高齢群は25.7±1.1°C(平均値±標準偏差)、若年者は25.9±0.9°C、寒冷曝露後、高齢者は27.5±2.9°C、若年者は26.0±1.5°C、若年者では曝露条件間でほとんど差が認められなかったが、高齢者では高い温度を快適とした。2)高齢者では最低温度、最高温度、中央温度すべてにおいて、個人差が大きかった。2.暑熱時(夏季)の寝室の快適な温熱環境の検討高齢者の睡眠に及ぼす室温の影響を調べるため、6782歳の高齢者20名と2021歳の若年者20名の睡眠の体動を夏期に(78月)において、各被検者の住居で測定した。同時に室温、寝床内温度を測定した。睡眠中の体動と室温との関係について検討し、以下の結果を得た。1)測定期間中の室温は28°C前後であり、睡眠に好適とされる温度範囲外であった。2)寝床内温度は、室温と正の相関関係にあり、室温よりやや高い値であった。3)体動数は高齢鋳において若年者より有意に高い値であった。4)体動数は室温と有意な正の相関関係にあり、特に高齢者では室温26°C付近で体動数が増加する傾向にあった。一方、若年者では高齢者よりやや高い室温で体動数は増加した。
KAKENHI-PROJECT-03650481
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税制の公共選択に関する理論的・実証的研究
本研究の目的は、現実の税制が政治過程を通じてなされる集合的意思決定の場で、いかに選択されるのかを公共選択論(Public Choice)の枠組みの中で理論的・実証的に解明することである。昭和60年度は、必要文献リストに基づき未入手の図書・資料を入手した後に研究整理を進めて、租税の正統的な経済分析との対比において公共選択論による租税分析の特徴を明らかにし理論的な研究の草稿をまとめた。加えてこの草稿をもとに、慶應の公共選択研究者グループと議論する研究会を開催し、改善点等のコメントをもらった。昭和61年度においては、上記の理論研究草稿を完成論文にする努力を行なうと同時に、種々の多変量解析による実証的研究を実施した。理論的研究の成果は、すでに「現代租税理論の展望」と「税制の公共選択分析」として発表した。他方、多変量解析による実証的研究については、種々の計測を実施し相当程度の取拾選択を行なうことができた。この実証研究の成果は、さらに改良を加えて、昭和62年度中に「公共選択論からみた物品税構造の実証分析(仮題)」として『城西経済学会誌』に発表する予定である。今後の本研究の展開に関する具体的計画としては、昭和62年度城西大学海外派遣研究員(現在申請中)として昭和62年8月より1年間、1986年ノーベル経済学賞を受賞したBuchanan教授が中核となるThe Center for Studyof Public Choice George Mason University,FairfaxVA,USAに客員研究員として留学し、本研究成果をもって共同研究等を活発に行ない、これを一層発展深化させることを計画している。この留学計画を実際に企画できるようになったこと自体も、本研究の大きな具体的成果のひとつであり、ここに謝意を表する次第である。本研究の目的は、現実の税制が政治過程を通じてなされる集合的意思決定の場で、いかに選択されるのかを公共選択論(Public Choice)の枠組みの中で理論的・実証的に解明することである。昭和60年度は、必要文献リストに基づき未入手の図書・資料を入手した後に研究整理を進めて、租税の正統的な経済分析との対比において公共選択論による租税分析の特徴を明らかにし理論的な研究の草稿をまとめた。加えてこの草稿をもとに、慶應の公共選択研究者グループと議論する研究会を開催し、改善点等のコメントをもらった。昭和61年度においては、上記の理論研究草稿を完成論文にする努力を行なうと同時に、種々の多変量解析による実証的研究を実施した。理論的研究の成果は、すでに「現代租税理論の展望」と「税制の公共選択分析」として発表した。他方、多変量解析による実証的研究については、種々の計測を実施し相当程度の取拾選択を行なうことができた。この実証研究の成果は、さらに改良を加えて、昭和62年度中に「公共選択論からみた物品税構造の実証分析(仮題)」として『城西経済学会誌』に発表する予定である。今後の本研究の展開に関する具体的計画としては、昭和62年度城西大学海外派遣研究員(現在申請中)として昭和62年8月より1年間、1986年ノーベル経済学賞を受賞したBuchanan教授が中核となるThe Center for Studyof Public Choice George Mason University,FairfaxVA,USAに客員研究員として留学し、本研究成果をもって共同研究等を活発に行ない、これを一層発展深化させることを計画している。この留学計画を実際に企画できるようになったこと自体も、本研究の大きな具体的成果のひとつであり、ここに謝意を表する次第である。
KAKENHI-PROJECT-60530053
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外的ストレスにおけるCHOP依存的な細胞死の分子基盤
小胞体ストレスは遺伝子変異やタンパク質の修飾異常等により、小胞体内に異常タンパク質が蓄積することによりおこる。小胞体ストレスにより誘導される細胞のアポトーシスは神経変性疾患や糖尿病の原因となっていることが近年明らかになっている。申請者らは小胞体ストレス時に発現誘導され、アポトーシスの関与が知られている転写因子CHOPの機能解析を進めており、その過程で、ショウジョウバエにおけるキナーゼ様分子TribblesのヒトでのホモログTRB3が小胞体ストレスにより発現誘導され、小胞体ストレスで誘導されるCHOP及びATF4依存的にTRB3プロモーターの活性を増加させることがわかった。生合成されたTRB3はCHOP及びATF4の転写活性を抑制し、ネガティブ・フィードバック機構が存在することを見出した。さらに、TRB3の過剰発現は小胞体ストレスによる細胞死を増強させ、逆にTRB3のノックダウンは細胞死を減少させた。さらに、CHOPとTRB3間の機能的関連性を検討したところ、免疫沈降法によりTRB3がCHOPと細胞内で結合していることが明らかにとなった。TRB3の過剰発現によるCHOP依存性転写活性化の抑制はタンパク分解非依存的であった。また、TRB3発現はCHOPのダイマー形成能やDNA結合能にも影響を与えなかった。しかし、TRB3はCHOPの転写活性化ドメインを介して結合し、CHOPにおける転写共役因子p300との結合領域がTRB3結合領域とオーバーラップしていた。さらに、TRB3の過剰発現によりCHOPのp300との結合は顕著に阻害された。以上の結果より、TRB3はCHOPのp300結合ドメインに対する細胞内アンタゴニストとして機能し、CHOPの転写を抑制することが示唆された。また、ATF4はTRB3の過剰発現によりその安定性の低下が確認されたとともに、CHOPと同様の制御機構により、転写活性が低下していたものと思われる。特に、ATF4の下流には生存に必要な標的がいくつか知られていることから、TRB3によるATF4転写活性の阻害が小胞体ストレスに伴うアポトーシスに大きく貢献している可能性が考えられた。小胞体ストレスは遺伝子変異やタンパク質の修飾異常等により、小胞体内に異常タンパク質が蓄積することによりおこる。小胞体ストレスにより誘導される細胞のアポトーシスは神経変性疾患や糖尿病の原因となっていることが近年明らかになっている。申請者らは小胞体ストレス時に発現誘導され、アポトーシスの関与が知られている転写因子CHOPの機能解析を進めており、その過程で、ショウジョウバエにおけるキナーゼ様分子TribblesのヒトでのホモログTRB3が小胞体ストレスにより発現誘導され、小胞体ストレスで誘導されるCHOP及びATF4依存的にTRB3プロモーターの活性を増加させることがわかった。生合成されたTRB3はCHOP及びATF4の転写活性を抑制し、ネガティブ・フィードバック機構が存在することを見出した。さらに、TRB3の過剰発現は小胞体ストレスによる細胞死を増強させ、逆にTRB3のノックダウンは細胞死を減少させた。さらに、CHOPとTRB3間の機能的関連性を検討したところ、免疫沈降法によりTRB3がCHOPと細胞内で結合していることが明らかにとなった。TRB3の過剰発現によるCHOP依存性転写活性化の抑制はタンパク分解非依存的であった。また、TRB3発現はCHOPのダイマー形成能やDNA結合能にも影響を与えなかった。しかし、TRB3はCHOPの転写活性化ドメインを介して結合し、CHOPにおける転写共役因子p300との結合領域がTRB3結合領域とオーバーラップしていた。さらに、TRB3の過剰発現によりCHOPのp300との結合は顕著に阻害された。以上の結果より、TRB3はCHOPのp300結合ドメインに対する細胞内アンタゴニストとして機能し、CHOPの転写を抑制することが示唆された。また、ATF4はTRB3の過剰発現によりその安定性の低下が確認されたとともに、CHOPと同様の制御機構により、転写活性が低下していたものと思われる。特に、ATF4の下流には生存に必要な標的がいくつか知られていることから、TRB3によるATF4転写活性の阻害が小胞体ストレスに伴うアポトーシスに大きく貢献している可能性が考えられた。小胞体ストレスは遺伝子変異やタンパク質の修飾異常等により、小胞体内に異常タンパク質が蓄積することによりおこる。小胞体ストレスにより誘導される細胞のアポトーシスは神経変性疾患や糖尿病の原因となっていることが近年明らかになっている。申請者らは小胞体ストレス時に発現誘導され、アポトーシスの関与が知られている転写因子CHOPの機能解析を進めており、その渦程で、ショウジョウバエにおけるキナーゼ様分子TribblesのヒトでのホモログTRB3が小胞体ストレスにより発現誘導され、CHOPの転写活性を抑制することを見出した。今回、このTRB3の発現誘導機構や機能解析を詳細に解析し、また、TRB3発現による小胞体ストレスによる細胞死への影響も検討した。TRB3プロモーターを含んだレポーター遺伝子を作製し、小胞体ストレス応答領域を決定した。この領域には、CHOP binding siteとATF/CRE siteが重複した部位が存在し、CHOPやATF4の過剰発現によりTRB3プロモーター活性は増強し、CHOPとATF4の共発現させたところ、CHOPとATF4はTRB3プロモーターの活性を相乗的に増加させた。RNAiにより、CHOPやATF4をノックダウンさせると、いずれも小胞体ストレスによるTRB3の発現誘導は抑制された。
KAKENHI-PROJECT-16590057
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16590057
外的ストレスにおけるCHOP依存的な細胞死の分子基盤
また、TRB3はCHOPのみでなく、ATF4の活性をも抑制した。さらに、TRB3の過剰発現は小胞体ストレスによる細胞死を増強させ、逆にTRB3のノックダウンは細胞死を減少させた。以上のことから、TRB3は小胞体ストレス時にATF4やCHOPの発現を介して発現誘導され、これらの転写活性を抑制することにより、ネガティブ・フィードバック的に自身の発現を制御していることが明らかとなった。また、TRB3はおそらくこの機構とは異なった機序によりアポトーシスを誘導することが明らかとなった。小胞体ストレスは遺伝子変異やタンパク質の修飾異常等により、小胞体内に異常タンパク質が蓄積することによりおこる。小胞体ストレスにより誘導される細胞のアポトーシスは神経変性疾患や糖尿病の原因となっていることが近年明らかになっている。申請者らは小胞体ストレス時に発現誘導され、アポトーシスの関与が知られている転写因子CHOPの機能解析を進めており、その過程で、ショウジョウバエにおけるキナーゼ様分子TribblesのヒトでのホモログTRB3が小胞体ストレスにより発現誘導され、小胞体ストレスで誘導されるCHOP及びATF4依存的にTRB3プロモーターの活性を増加させることがわかった。生合成されたTRB3はCHOP及びATF4の転写活性を抑制し、ネガティブ・フィードバック機構が存在することを見出した。さらに、TRB3の過剰発現は小胞体ストレスによる細胞死を増強させ、逆にTRB3のノックダウンは細胞死を減少させた。さらに、CHOPとTRB3間の機能的関連性を検討したところ、免疫沈降法によりTRB3がCHOPと細胞内で結合していることが明らかにとなった。TRB3の過剰発現によるCHOP依存性転写活性化の抑制はタンパク分解非依存的であった。また、TRB3発現はCHOPのダイマー形成能やDNA結合能にも影響を与えなかった。しかし、TRB3はCHOPの転写活性化ドメインを介して結合し、CHOPにおける転写共役因子p300との結合領域がTRB3結合領域とオーバーラップしていた。さらに、TRB3の過剰発現によりCHOPのp300との結合は顕著に阻害された。以上の結果より、TRB3はCHOPのp300結合ドメインに対する細胞内アンタゴニストとして機能し、CHOPの転写を抑制することが示唆された。また、ATF4はTRB3の過剰発現によりその安定性の低下が確認されたとともに、CHOPと同様の制御機構により、転写活性が低下していたものと思われる。特に、ATF4の下流には生存に必要な標的がいくつか知られていることから、TRB3によるATF4転写活性の阻害が小胞体ストレスに伴うアポトーシスに大きく貢献している可能性が考えられた。
KAKENHI-PROJECT-16590057
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16590057
ユーザ誘引のための複数仮想エージェントビヘイビアによる集団状況生成モデル
本研究課題では、複数の仮想エージェントがユーザを取り巻きながら様々な行動をとることで、(1)集団行動等の社会的状況においてユーザの行動を誘発したり変容させたりする同調行動の誘発、および、(2)それ対するユーザの解釈がそれぞれ起こることによる社会的作用について議論し、ユーザの周辺環境に溶け込むように配置した複数仮想エージェントのビヘイビア変化等に基づく共通フレームワークを設計する。具体的シーンとして教室や自宅(e-learning)などの学習環境、自宅における日常的タスクなどの生活環境、屋外における歩行状況などの屋外移動環境を対象とした被験者実験等により効果と有用性を検証する。本研究課題では、複数の仮想エージェントがユーザを取り巻きながら様々な行動をとることで、(1)集団行動等の社会的状況においてユーザの行動を誘発したり変容させたりする同調行動の誘発、および、(2)それ対するユーザの解釈がそれぞれ起こることによる社会的作用について議論し、ユーザの周辺環境に溶け込むように配置した複数仮想エージェントのビヘイビア変化等に基づく共通フレームワークを設計する。具体的シーンとして教室や自宅(e-learning)などの学習環境、自宅における日常的タスクなどの生活環境、屋外における歩行状況などの屋外移動環境を対象とした被験者実験等により効果と有用性を検証する。
KAKENHI-PROJECT-19K12090
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K12090
軟性裏層材の長期使用が無歯顎顎堤に及ぼす影響について
研究1長期使用型軟性裏装材の臨床研究は少なく,使用に関する明確な根拠は少ない。そこで,臨床現場における,軟性裏装材使用に関する根拠の一端を検索することを目的として研究を立案した。日本大学松戸歯学部付属歯科病院に来院した歯顎患者から,選択基準を満たした患者をサンプリングし,28名を被験者とした。デザインは2期型クロスオーバー法による無作為割付臨床試験である。通法の義歯治療および,上顎は通法義歯,下顎は軟性裏装義歯の治療を介入として行った。層別化ブロックランダム法を用い,通法義歯から軟性裏装材使用義歯(軟性義歯)へ移行する群と,その逆の2群に割付を行った。検討項目は咀嚼値、調整回数、満足度そして義歯への嗜好の四項目とした。本研究から以下の結果が得られた。1.調整完了から2,3か月目では,軟性裏装義歯の咀嚼値は通法義歯より高かった。2.軟性裏装義歯の調整回数は通法義歯の調整回数より少なかった。3.通法義歯と軟性裏装義歯間の満足度に差は認められなかった。4.72%(18/25)の被験者が軟性裏装義歯を選択した。研究2研究1の結果を受け、軟性裏装材の使用が総義歯装着者の咀嚼機能に及ぼす影響について検討する目的で研究を立案した。研究1と同じデザインを用い、通法義歯と軟性義歯を装着した10名の被験者の咀嚼機能評価を行った。評価項目として咀嚼運動時の咀嚼筋筋電図、最大かみしめ時の咀嚼筋筋電図ならびに下顎切歯点運動の比較を行い以下の結論を得た。咀嚼筋前期における咬合相時間は通法義歯より軟性義歯が長いことが明らかになったが、それ以外の評価項目には差が認められなかった。無作為割付臨床試験の結果、長期使用型軟性裏装材の臨床応用は効果的であることが示された。研究1長期使用型軟性裏装材の臨床研究は少なく,使用に関する明確な根拠は少ない。そこで,臨床現場における,軟性裏装材使用に関する根拠の一端を検索することを目的として研究を立案した。日本大学松戸歯学部付属歯科病院に来院した歯顎患者から,選択基準を満たした患者をサンプリングし,28名を被験者とした。デザインは2期型クロスオーバー法による無作為割付臨床試験である。通法の義歯治療および,上顎は通法義歯,下顎は軟性裏装義歯の治療を介入として行った。層別化ブロックランダム法を用い,通法義歯から軟性裏装材使用義歯(軟性義歯)へ移行する群と,その逆の2群に割付を行った。検討項目は咀嚼値、調整回数、満足度そして義歯への嗜好の四項目とした。本研究から以下の結果が得られた。1.調整完了から2,3か月目では,軟性裏装義歯の咀嚼値は通法義歯より高かった。2.軟性裏装義歯の調整回数は通法義歯の調整回数より少なかった。3.通法義歯と軟性裏装義歯間の満足度に差は認められなかった。4.72%(18/25)の被験者が軟性裏装義歯を選択した。研究2研究1の結果を受け、軟性裏装材の使用が総義歯装着者の咀嚼機能に及ぼす影響について検討する目的で研究を立案した。研究1と同じデザインを用い、通法義歯と軟性義歯を装着した10名の被験者の咀嚼機能評価を行った。評価項目として咀嚼運動時の咀嚼筋筋電図、最大かみしめ時の咀嚼筋筋電図ならびに下顎切歯点運動の比較を行い以下の結論を得た。咀嚼筋前期における咬合相時間は通法義歯より軟性義歯が長いことが明らかになったが、それ以外の評価項目には差が認められなかった。無作為割付臨床試験の結果、長期使用型軟性裏装材の臨床応用は効果的であることが示された。作成した研究プロトコールをもとに予備調査を行い、研究計画に若干の変更を加えた。軟性レジンの効果を総合的に判定するためには、当初計画した、顎堤の変化に及ぼす影響のみでなく、咀嚼に及ぼす影響や、患者の主観的評価である満足度に及ぼす影響を同時に測定する必要があると思われる。よって、測定項目を増やし、以下の項目へと変更した。1:咀嚼への影響についてManlyの方法を参考に、ピーナッツによる咀嚼能力の判定を行い、客観的評価の基準とする。2:患者の満足度に及ぼす影響について総合的満足度および咀嚼、発音、清掃性、安定、維持、快適性、審美性のサブスケールをビジュアルアナログスケール(VAS)により測定し定量化をする。3:顎堤粘膜の変化および骨吸収の経時的変化の測定Wicalの方法に準じて骨吸収量の変化を定量するともに粘膜面の変化を視診により記録する。13の測定項目を効率よく測定するため研究デザインに変更を加えた。
KAKENHI-PROJECT-11671953
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11671953
軟性裏層材の長期使用が無歯顎顎堤に及ぼす影響について
研究デザイン軟性レジン群と通法群の無作為化パラレル試験単独のデザインからクロスオーバー試験終了後パラレル試験へ移行するかたちとした。咀嚼能力および満足度への影響を調べるためまず、クロスオーバー試験を行う、このデザインは同一被験者が両方の義歯を体験するため、両者を比較しながら満足度を測定できる利点がある。しかしながら、顎堤の変化を前向きに調査するためにはこのデザインでは無理があるため、満足度と咀嚼能率の試験が終了後、パラレル試験へと移行するかたちとした。研究の進行状況現在クロスオーバー試験にて満足度および咀嚼能率試験を行い、データを収集中である。軟性レジンの効果を総合的に判定するため、患者の主観的評価である満足度、咀嚼に及ぼす影響、顎堤の変化に及ぼす影響を無作為割付臨床試験を用い定量を試みている。1:割付状況について現在までに割付を行った患者21名軟性レジンから通法レジン群への割付患者12名、通法レジンから軟性レジン群への割付患者9名で割付後ドロップアウトした患者2名を含む。2:クロスオーバー試験について割付後クロスオーバー試験が完了した患者は4名で、軟性レジンから通法レジン群への割付患者1名、通法レジンから軟性レジン群への割付患者3名である。3:結果についてクロスオーバー試験を完了した患者が4名と少ないため統計的手法を用いた解析を行っていない。そこで、今回は4名の患者からの傾向のみを報告する。(1)咀嚼への影響についてManlyの方法を参考に、ピーナッツによる咀嚼能力の判定を行ったところ、いずれの患者においても軟性レジンを使用した方が咀嚼能率が高かった。(2)患者の満足度に及ぼす影響について二つの義歯を直接比較させ、総合的満足度および咀嚼、発音、清掃性、安定、維持、快適性、審美性の満足度をビジュアルアナログスケール(VAS)により測定したところ、軟性レジンの方がわずかに満足度が高い。しかしながら今後使いたい義歯はどちらかと質問したところ、全員が軟性レジンを選択した。この点に関しては、今後被験者数が増えてこないと検討が加えられないものと思われる。13年度中に主要検討項目である総合的満足度の必要サンプル数の算定を行い、クロスオーバー試験の終了時期を検討する予定である。長期使用型の軟性裏装材の総義歯患者に対する影響について調査する目的で平成11年から平成13年まで患者のサンプリング及び無作為割付を行ってきた.現在までの所2期クロスオーバー試験を完了した験者数は22名であり,新義歯の調整完了前に3名,1期目に1名そして2期目に3名が脱落し,6名が現在臨床試験を継続中である.現在までの被験者数は28名であるが,主要検討項目に設定している咀嚼値,満足度,患者の義歯に対する嗜好性そして調整回数について中間解析を行ってみると傾向は明らかとなり,今後被験者のサンプリングの必要性はなく研究の打ち切りを行う時期に到達したものと考えられる.中間解析で得られた結論について述べる.1.旧義歯に対し両新義歯は高い咀嚼値を示した.2.調整完了1ヶ月後では両新義歯の咀嚼値に差は認められないが,2ヶ月後,3ヶ月後の軟性義歯の咀嚼値は通法義歯より高い値を示した.3.通法義歯と軟性義歯との調整回数に差は認められなかった.4.新義歯の装着順序が結果に影響する時期効果が認められ,クロスオーバ試験は一方向のみでは不十分であり双方向に行うべきであることが示唆された.5.患者の義歯に対する満足度旧義歯に対して両新義歯の満足度は有意に高い値を示したが,通法義歯と軟性義歯の間に有意差は認められなかった.6.患者の義歯に対する嗜好最終的に軟性義歯を選択した患者は19名中16名,通法義歯を選択した患者は3名であり,患者は軟性義歯を好むことが示唆された.本研究結果については第107回日本補綴学会にて発表を行う予定である.今後は顎堤への影響について検討していく計画である.平成12年から平成14年までサンプリングを行い,中間解析を行ったところ,結論を述べるのに十分なサンプルサイズを得たことが判明した.そこで,平成14年度は研究のまとめに入り,104補綴学会にて結果の一部を発表し,現在論文投稿中である.
KAKENHI-PROJECT-11671953
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紙・パルプ製造プロセスにおける省エネルギー
1.クラフト蒸解と酸素酸化精製の連続化:蒸解廃液排出後、蒸解釜中でパルプ付着廃液を80°Cの高温水で35倍に希釈置換洗浄後、排出するパルプを120°Cでそのまま酸素酸化精製に連続化した場合、Mg【SO_4】等を添加することにより、従来法より高収率で同等以上の紙力を持つものが得られ、少し低下する白色度も晒段で十分回復できた。2.省エネルギーを目的とした叩解助剤の研究:叩解助剤の効果と化学構造との関係を明らかにし、これに基づきリグニンスルホン酸にアミノ基を導入して助剤効果を試験した結果、高分子量区分が望ましく、過度のスルホン基は有害であった。動力を10%減少させえるものを得たが、更に検討中でありクラフトリグニンからの調製も試験中。3.古紙の劣化とその対策:リサイクルによるパルプ繊維の劣化を速度論的に研究し、アルキル炭酸マグネシウムの劣化防止効果を明らかにした。またリサイクルによる細胞壁の亀裂は填剤の吸蔵を起こす一方吸液性が高まり高速印字用に適することを示した。4.古紙循環再利用システムのモデル化とエネルギー評価:各種のパルプ原料の混合により各種の紙をつくるとして、製造エネルギー,混入率,質的特性等を示すP次元ベクトルを導入、生産セクターの数式モデルを立てた。総エネルギー使用量を評価関数としてこれを最小にする最適解を線形不等式より求め実績値と比較し、現状のエネルギー評価を行なった。5.古紙中の溶融型接着剤の除去法に関する研究:水-トルエン9対1の混合液中で、パルプ濃度4.3%,60°C,5分の攪拌処理によって接着剤の98%(コントロール85%)を除去できた。トルエンは静置により直ちに二相分離し循環使用できる。更に処理後のパルプ洗浄法の考案により抄紙工程に送るパルプスラリー中のトルエンを完全に除去回収できた。1.クラフト蒸解と酸素酸化精製の連続化:蒸解廃液排出後、蒸解釜中でパルプ付着廃液を80°Cの高温水で35倍に希釈置換洗浄後、排出するパルプを120°Cでそのまま酸素酸化精製に連続化した場合、Mg【SO_4】等を添加することにより、従来法より高収率で同等以上の紙力を持つものが得られ、少し低下する白色度も晒段で十分回復できた。2.省エネルギーを目的とした叩解助剤の研究:叩解助剤の効果と化学構造との関係を明らかにし、これに基づきリグニンスルホン酸にアミノ基を導入して助剤効果を試験した結果、高分子量区分が望ましく、過度のスルホン基は有害であった。動力を10%減少させえるものを得たが、更に検討中でありクラフトリグニンからの調製も試験中。3.古紙の劣化とその対策:リサイクルによるパルプ繊維の劣化を速度論的に研究し、アルキル炭酸マグネシウムの劣化防止効果を明らかにした。またリサイクルによる細胞壁の亀裂は填剤の吸蔵を起こす一方吸液性が高まり高速印字用に適することを示した。4.古紙循環再利用システムのモデル化とエネルギー評価:各種のパルプ原料の混合により各種の紙をつくるとして、製造エネルギー,混入率,質的特性等を示すP次元ベクトルを導入、生産セクターの数式モデルを立てた。総エネルギー使用量を評価関数としてこれを最小にする最適解を線形不等式より求め実績値と比較し、現状のエネルギー評価を行なった。5.古紙中の溶融型接着剤の除去法に関する研究:水-トルエン9対1の混合液中で、パルプ濃度4.3%,60°C,5分の攪拌処理によって接着剤の98%(コントロール85%)を除去できた。トルエンは静置により直ちに二相分離し循環使用できる。更に処理後のパルプ洗浄法の考案により抄紙工程に送るパルプスラリー中のトルエンを完全に除去回収できた。
KAKENHI-PROJECT-60040003
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減災に向けた災害関係者のネットワーク構造に関する基礎的研究
本研究は、今後も頻発化が予想される豪雨災害を対象に、災害関係者の関係構造に着目し、そのネットワークの有り様と特性を各人の「つながり」という観点から微視的に捉え、災害関係者で形成される災害情報授受の構造的な仕組みを明らかにすることを目的とする。結果、平成21年中国・九州北部豪雨災害において甚大な被害を受けた防府市を対象に、(1)防府市役所における災害対応者で形成された初動対応における関係構造と、(2)防府市内で甚大な被害を受けた被災自治会における自治会長から見た被災者の関係構造について、ネットワーク分析及びヒヤリング等によって、微視的な関係構造を導くとともに一部担当者や自治会長に過剰負荷がかかる現実を定量的、定性的に明らかにした。本研究は、今後も頻発化が予想される豪雨災害を対象に、災害関係者の関係構造に着目し、そのネットワークの有り様と特性を各人の「つながり」という観点から微視的に捉え、災害関係者で形成される災害情報授受の構造的な仕組みを明らかにすることを目的とする。結果、平成21年中国・九州北部豪雨災害において甚大な被害を受けた防府市を対象に、(1)防府市役所における災害対応者で形成された初動対応における関係構造と、(2)防府市内で甚大な被害を受けた被災自治会における自治会長から見た被災者の関係構造について、ネットワーク分析及びヒヤリング等によって、微視的な関係構造を導くとともに一部担当者や自治会長に過剰負荷がかかる現実を定量的、定性的に明らかにした。本研究は,今後も頻発が予測される豪雨災害を対象に,災害関係者(災害対応者+被災(見込)者)の関係構造に着目し,そのネットワークのあり様と特性を各人の「つながり」という観点から微視的に捉え,災害関係者で形成される災害情報授受の構造的な仕組みを明らかにすることで,早期復興と被害軽減を目指す減災に向けた諸活動の指針づくりや組織体制づくりのあり方について,基礎的な知見を得ることを試みるものである。以上を踏まえ,研究期間内では以下の三つの具体的な目的を据えている。(1)災害対応者の災害情報授受に関する関係構造の記述と特性の導出(2)被災(見込)者のパーソナル・ネットワークに関する関係構造の記述と特性の導出(3)災害対応者と被災(見込)者の相互ネットワークに関する構造特性の導出と提言初年度は,主に(1)について平成21年山口・九州北部豪雨において多大な被害を受けた防府市を対象に実施した。具体的には,まず市職員に対してアンケート調査を悉皆で行い(有効回答数548件(73.8%)),発災後2週間で主に連絡を取り合った者をあげ,各災害対応者をノード,情報伝達をリンクとし,災害対応における情報伝達を有向グラフで表した。リンク数の高いノード,中心性の高いノードの振舞いから,グラフの特徴を読み解き,樹状構造のみにおさまらない災害対応組織の情報伝達ネットワークの構造の大要を明らかにした。さらに,要となったリンク数の多い市職員約30名に対してヒヤリングを実施し,情報伝達の構造的特性と情報伝達経路についてより詳細に明らかにした。本研究は,今後も頻発が予測される豪雨災害を対象に,災害関係者(災害対応者+被災(見込)者)の関係構造に着目し,そのネットワークのあり様と特性を各人の「つながり」という観点から微視的に捉え,災害関係者で形成される災害情報授受の構造的な仕組みを明らかにすることで,早期復興と被害軽減を目指す減災に向けた諸活動の指針づくりや組織体制づくりのあり方について,基礎的な知見を得ることを試みるものである。つまり,これまで巨視的な樹状構造のみで捉えられていた自治体・住民自治における災害対応組織に加え,現実での樹状構造に収まらない構造,及び他の災害関係組織・期間と野相互関係までを微視的に捉え,きめ細かな災害対応方針の確立と組織づくりへの貢献を目指すものである。以上を踏まえ,研究期間内では以下の三つの具体的な目的を据えている。(1)災害対応者の災害情報授受に関する関係構造の記述と特性の導出(2)被災(見込)者のパーソナル・ネットワークに関する関係構造の記述と特性の導出(3)災害対応者と被災(見込)者の相互ネットワークに関する構造特性の導出と提言次年度にあたる平成23年度は,主に(2)について平成21年山口・九州北部豪雨において多大な被害を受けた防府市を対象に実施した。具体的には,(1)で得られた災害対応者の情報伝達ネットワークの中で出現した被災者ノードの特定と連絡内容の把握,及び防府市内で被害が甚大であった地区の自治会内における被災後の活動内容と災害情報伝達構造についてヒヤリング調査をもとに求めた。結果,災害対応と被災現場を結ぶ上で要となる災害対応者と被災者との連絡系統(避難勧告,災害状況,避難所対応,住民の要望,復興作業等)は,主に避難所配置職員と自治会長によって機能しており自治会長が行政と住民の橋渡し的役割を果たしていること,自治会内の活動は,自治会長単独活動型,組織的活動型,行政依存型の3つに暫定的に分類されることが推測された。また,自主防災組織としての住民自治機能は,発災時には連絡網でしか機能していない実態も明らかになった。本研究は、今後も頻発化が予想される豪雨災害を対象に、災害関係者(=災害対応者+被災者)の関係構造に着目し、そのネットワークの有り様と特性を各人の「つながり」という観点から微視的に捉え、災害関係者で形成される災害情報授受の構造的な仕組みを明らかにするものである。
KAKENHI-PROJECT-22760464
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22760464
減災に向けた災害関係者のネットワーク構造に関する基礎的研究
研究の対象は、平成21年中国・九州北部豪雨災害において甚大な被害を受けた防府市である。研究実施内容は、1防府市役所における災害対応者で形成された初動対応における関係構造の解明、2防府市内で甚大な被害を受けた被災自治会における自治会長から見た被災者の関係構造の解明、に大きくわけられ、まとめとして災害対応者と被災者の連関性を考察している。1では、まず全市役所職員に対し初動対応期における業務において特に連絡を取った人を5名以内であげてもらうといったアンケート(有効回答数73.8%(548/600件))、及び出現数の高い担当者への具体的な対応状況や連絡内容に関するヒヤリングを実施した。これらの結果で得られた各担当者のつながりをソシオマトリクスにて整理し、一担当者をノード、連絡の授受のつながりをリンクとして初動対応期における情報伝達のネットワーク図を作図した。さらに、中心性分析(次数中心性・近接中心性・媒介中心性)を行い、特に総務系担当者に過剰負荷がかかっていることなど定量的に構造の特性を明らかにした。2では、被害の大きかった2地区9自治体の自治会長等へのヒヤリングをもとに、復興初動期の現場活動内容を整理するとともに、連絡・恊働的に活動した他組織を洗い出した。結果、被災規模や自治会規模などにより自治会復旧復興活動の方針が概ね単独活動型、組織活動型、行政依存型に分類できることが明らかになった。以上をもとに、災害関係者で形成される復興初動期の関係構造図を示すとともに、復興初動期におけるネットワーク上の脆弱性を指摘した。当初の研究計画どおりに概ね進んでいることによる。24年度が最終年度であるため、記入しない。最終年度は,以下に示す研究期間内の目的である(3)について実施する。方策としては,過去二年間で実施した(1)・(2)の研究成果の再整理及び分析の精緻化を旨とする。一部変更の可能性として,本研究が比較的順調に進展していることもあり,本研究当初では研究対象として予測できなかった:東日本大震災を含めて当該研究の検証を試みたい。なお,申請者は東日本大震災発生より,主に岩手県陸前高田市気仙町へ赴き,当該研究実施の可能性を検討している。(1)災害対応者の災害情報授受に関する関係構造の記述と特性の導出(2)被災(見込)者のパーソナル・ネットワークに関する関係構造の記述と特性の導出(3)災害対応者と被災(見込)者の相互ネットワークに関する構造特性の導出と提言24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22760464
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22760464
家畜卵母細胞の成熟能力獲得過程におけるMAPキナーゼ活性化機構の変化とその誘導
本研究では,家畜の卵巣から採取した卵母細胞を用いて,成熟能力を持たない発育途上の卵母細胞が,発育過程でどのようにMAPキナーゼを活性化する機構を確立していくのかをCdc2キナーゼと合わせて検討した。また,卵母細胞に成熟能力を獲得させる培養法についても検討した。1.ブタ卵巣から種々の発育段階にある卵母細胞を採取して成熟培養し,各卵母細胞のCdc2キナーゼおよびMAPキナーゼの変化を調べた。発育を完了した卵母細胞では,両キナーゼが活性化されたが,減数分裂を再開しない発育途上の卵母細胞では両キナーゼとも活性化されず,また,第一減数分裂中期で停止する卵母細胞では,Cdc2キナーゼは活性化されたが,MAPキナーゼの活性化は不完全であった。成熟能力を持たない卵母、細胞では,Cdc2キナーゼのcyclin B1サブユニットは合成されるが,Cdc2サブユニットの抑制的リン酸化により,活性化が起こらないことが示唆された。2.発育を完了したブタ卵母細胞では,活性型のMAPキナーゼは第一減数分裂の凝縮した染色体の周辺に認められ,分裂後期から終期にかけては紡錘体の中央部へと移動した。MAPキナーゼを阻害すると染色体の分離が阻害され,MAPキナーゼは,第一減数分裂から第二減数分裂への移行に関わると考えられた。3.減数分裂再開能力を持たない発育途上のブタ卵母細胞をコラーゲンゲルに包埋し,FSHとヒポキサンチンを添加した培養液中で7日間培養し,発育させたのち成熟培養した。ヒポキサンチン添加培養液中で発育した一部の卵母細胞は第二減数分裂中期へと成熟した。同様なヒポキサンチンの作用は,発育途上のウシ卵母細胞を用いた実験においても認められた。4.第一減数分裂中期で停止する発育途上のブタ卵母細胞をタンパク質フォスファターゼ1/2Aの阻害剤で処理すると,卵母細胞のMAPキナーゼが活性され,一部の卵母細胞は第二減数分裂中期へと成熟した。本研究では,家畜の卵巣から採取した卵母細胞を用いて,成熟能力を持たない発育途上の卵母細胞が,発育過程でどのようにMAPキナーゼを活性化する機構を確立していくのかをCdc2キナーゼと合わせて検討した。また,卵母細胞に成熟能力を獲得させる培養法についても検討した。1.ブタ卵巣から種々の発育段階にある卵母細胞を採取して成熟培養し,各卵母細胞のCdc2キナーゼおよびMAPキナーゼの変化を調べた。発育を完了した卵母細胞では,両キナーゼが活性化されたが,減数分裂を再開しない発育途上の卵母細胞では両キナーゼとも活性化されず,また,第一減数分裂中期で停止する卵母細胞では,Cdc2キナーゼは活性化されたが,MAPキナーゼの活性化は不完全であった。成熟能力を持たない卵母、細胞では,Cdc2キナーゼのcyclin B1サブユニットは合成されるが,Cdc2サブユニットの抑制的リン酸化により,活性化が起こらないことが示唆された。2.発育を完了したブタ卵母細胞では,活性型のMAPキナーゼは第一減数分裂の凝縮した染色体の周辺に認められ,分裂後期から終期にかけては紡錘体の中央部へと移動した。MAPキナーゼを阻害すると染色体の分離が阻害され,MAPキナーゼは,第一減数分裂から第二減数分裂への移行に関わると考えられた。3.減数分裂再開能力を持たない発育途上のブタ卵母細胞をコラーゲンゲルに包埋し,FSHとヒポキサンチンを添加した培養液中で7日間培養し,発育させたのち成熟培養した。ヒポキサンチン添加培養液中で発育した一部の卵母細胞は第二減数分裂中期へと成熟した。同様なヒポキサンチンの作用は,発育途上のウシ卵母細胞を用いた実験においても認められた。4.第一減数分裂中期で停止する発育途上のブタ卵母細胞をタンパク質フォスファターゼ1/2Aの阻害剤で処理すると,卵母細胞のMAPキナーゼが活性され,一部の卵母細胞は第二減数分裂中期へと成熟した。ブタ卵巣の直径0.5,1.5および46mmの3種の卵胞から採取した,直径105μm(減数分裂再開能を持たない),110μm(第一減数分裂中期まで減数分裂を進めることができる)および120μm(第二減数分裂中期へと成熟可能)の卵母細胞を培養し,以下の結果を得た。1.各発育段階にある卵母細胞のCdc2キナーゼおよびMAPキナーゼの変化を,ウエスタンブロッティングおよび[^<32>P]γ-ATPを用いたキナーゼ活性測定によって調べた。発育を完了した卵母細胞では,成熟過程で両キナーゼが活性化されたが,減数分裂を再開しない発育途上の卵母細胞では両キナーゼとも活性化されず,また,第一減数分裂中期で停止する卵母細胞では,Cdc2キナーゼは活性化されるもののMAPキナーゼの活性化は不完全であった。ウエスタンブロットでは,各発育段階の卵母細胞のMAPキナーゼは活性化と平行したリン酸化型への変化を示したが,成熟能力を持たない卵母細胞においてさえ,成熟能力を持つ卵母細胞と同様にCdc2キナーゼの制御
KAKENHI-PROJECT-12660255
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12660255
家畜卵母細胞の成熟能力獲得過程におけるMAPキナーゼ活性化機構の変化とその誘導
サブユニットであるcyclin B1が合成され,この段階の卵母細胞には触媒サブユニットのCdc2の抑制的リン酸化による不活性化機構が存在し,Cdc2キナーゼの活性化とそれに引き続く減数分裂の再開が抑制されることが示唆された。2.第二減数分裂中期へ成熟する直径120μmの卵母細胞では,活性型のMAPキナーゼは第一減数分裂の凝縮した染色体の周辺に認められ,第一減数分裂後期から終期にかけて紡錘体の中央部へと移動した。また,第一減数分裂中期の活性化したMAPキナーゼをU0126で阻害すると,染色体の分離が阻害された。これらの結果から,MAPキナーゼは,第一減数分裂から第二減数分裂への移行に強く関わっていると考えられた。ブタ卵巣から直径0.51.0mm,1.5mmおよび45mm3種の卵胞を採取し,それぞれの卵胞から減数分裂再開能力のない直径100μmの卵母細胞,第一減数分裂中期まで減数分裂を進めることができる直径110μmの卵母細胞および第二減数分裂中期へと成熟可能な直径120μmの卵母細胞を取りだし,以下の実験を実施した。1.発育を完了した卵母細胞では,成熟過程でCdc2キナーゼおよびMAPキナーゼ(ERK1およびERK2)がともに活性化されるが,第一減数分裂中期で停止する卵母細胞ではCdc2キナーゼは活性化されるもののMAPキナーゼの活性化は不完全であったことから,両卵母細胞におけるMAPキナーゼファミリーメンバーのp38MAPキナーゼおよびp90^<RSK>の存在と活性化について調べた。p38MAPキナーゼおよびp90^<RSK>はいずれの卵母細胞にも存在した。また,p90^<RSK>の活性化はいずれの卵母細胞においてもERKと同様な時間経過で起こった。2.第一減数分裂中期で停止する卵母細胞を含む卵母細胞-顆粒膜細胞複合体をヒポキサンチン添加培養液中で減数分裂を休止させた状態で2日間前培養したのち体外成熟を誘起したが,第二減数分裂中への成熟は誘導できなかった。3.減数分裂再開能力のない直径100μmの卵母細胞を含むコラーゲンゲルに包埋し,10ng/mlFSHと2mMヒポキサンチンを添加した培養液中で7日間培養した。ヒポキサンチン添加の有無に関わらず,約45%の卵母細胞は生存しており,平均直径は発育完了時の大きさである120μmへと増加した。また,卵母細胞はいずれも卵核胞期のままであった。体外で発育した卵母細胞を成熟培養したところ,ヒポキサンチン添加培養液中で発育した卵母細胞では減数分裂を再開する卵母細胞数は有意に増加し,また一部の卵母細胞は第二減数分裂中期へと成熟した。ブタ卵巣から直径0.51.0mm,1.5mmおよび45mmの3種の卵胞を採取し,それぞれの卵胞から減数分裂再開能力のない直径100μmの卵母細胞,第一減数分裂中期まで減数分裂を進めることができる直径110μmの卵母細胞および第二減数分裂中期へと成熟可能な直径120μmの卵母細胞を取り出して培養し,以下の結果を得た。1)減数分裂再開能力のない直径100μmの卵母細胞を含むコラーゲンゲルに包埋し,10ng/ml FSHと2mMヒポキサンチンを添加した培養液中で7日間培養した。ヒポキサンチン添加の有無に関わらず,約半数の卵母細胞は生存しており,平均直径は発育完了時の大きさの120μmへと増加した。また,卵母細胞はいずれも卵核胞期のままであった。体外で発育させた卵母細胞を成熟培養したところ,ヒポキサンチン添加培養液中で発育した卵母細胞では減数分裂を再開する卵母細胞数は有意に増加し,また一部の卵母細胞は第二減数分裂中期へと成熟した。2)直径120μmの発育を完了した卵母細胞をタンパク質フォスファターゼ1/2Aの阻害剤であるオカダ酸あるいはカリキュリンAで処理すると,Cdc2キナーゼの活性化が起こらないまま急速にMAPキナーゼ活性が上昇すること,また,培養6時間後には第一減数分裂中期様の核相へと移行することが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-12660255
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12660255
細胞の増殖・分化を制御する新しい情報伝達系としてのスフィンゴ脂質代謝回転
スフィンゴ脂質全体の変動を薄層プレート上で定量的に解析できる系を開発した。ヒト急性前骨髄球性白血病細胞株HL-60細胞のスフィンゴ脂質の各スポットのセラミド分子種分析の解析を行なったところ、(1)スフィンゴ糖脂質(GSLs),スフィンゴミエリン(SM)とも構成セラミド分子種は同じで、それぞれに特異的な分子種はない,(2)de novo合成において、優先的に用いられるセラミド分子には、GSLs,SMでそれぞれ特徴がある(GSLsでは、脂肪酸が24:0,22:0,24:1のもので、SMでは脂肪酸が16:0のもの)ことが明らかとなった。HL-60細胞のホルボールエステル、TPAによる分化誘導では、SMの変動に伴ったセラミドの量的変化は認められず、TPAのdoseに依存して応答を示すのは特定ガングリオシド(G_<M3>)の合成反応であった。ヒト上皮性悪性腫瘍培養細胞株のin vitroでの分化誘導現象早期においても特徴的な変動を示したのはガングリオシド合成系で、ネオラクト系ガングリオシドの合成抑制およびガングリオ系ガングリオシドG_<M3>の生合成の亢進が観察された。SMの変化は観察されなかった。このガングリオシド合成変化を実現するガングリオシド生合成調節物質で上記細胞株を処置したところ、分化・アポトーシスが誘導された。ガングリオシドのde novo合成変化は明瞭な形態学的変化に先駆けて起こった。C2セラミド(N-acetyl sphingosine)には分化誘導活性は認められなかった。以上の結果より、がん細胞の分化には、特定ガングリオシドパターン変化が必須であることが強く示唆された。また、posttranscriptionalなレベルでのガングリオシド発現調節が、がん細胞の分化誘導剤開発の有力なターゲットになるうる可能性が示された。スフィンゴ脂質全体の変動を薄層プレート上で定量的に解析できる系を開発した。ヒト急性前骨髄球性白血病細胞株HL-60細胞のスフィンゴ脂質の各スポットのセラミド分子種分析の解析を行なったところ、(1)スフィンゴ糖脂質(GSLs),スフィンゴミエリン(SM)とも構成セラミド分子種は同じで、それぞれに特異的な分子種はない,(2)de novo合成において、優先的に用いられるセラミド分子には、GSLs,SMでそれぞれ特徴がある(GSLsでは、脂肪酸が24:0,22:0,24:1のもので、SMでは脂肪酸が16:0のもの)ことが明らかとなった。HL-60細胞のホルボールエステル、TPAによる分化誘導では、SMの変動に伴ったセラミドの量的変化は認められず、TPAのdoseに依存して応答を示すのは特定ガングリオシド(G_<M3>)の合成反応であった。ヒト上皮性悪性腫瘍培養細胞株のin vitroでの分化誘導現象早期においても特徴的な変動を示したのはガングリオシド合成系で、ネオラクト系ガングリオシドの合成抑制およびガングリオ系ガングリオシドG_<M3>の生合成の亢進が観察された。SMの変化は観察されなかった。このガングリオシド合成変化を実現するガングリオシド生合成調節物質で上記細胞株を処置したところ、分化・アポトーシスが誘導された。ガングリオシドのde novo合成変化は明瞭な形態学的変化に先駆けて起こった。C2セラミド(N-acetyl sphingosine)には分化誘導活性は認められなかった。以上の結果より、がん細胞の分化には、特定ガングリオシドパターン変化が必須であることが強く示唆された。また、posttranscriptionalなレベルでのガングリオシド発現調節が、がん細胞の分化誘導剤開発の有力なターゲットになるうる可能性が示された。スフィンゴ脂質代謝はスフィンゴミエリン(SM)系、スフィンゴ糖脂質(GSL)系とも刺激に応答して変動し、その代謝中間物質や代謝産物に様々な生物活性があることから、シグナル伝達系を形成している可能性が報告されている。しかし、SM系とGSL系の変動を総合的に解析した研究はなされておらず、活性代謝中間物質である、スフィンゴイド(セラミドやスフィンゴシン及びそれらの誘導体)がどちらの経路から生成してくるのか不明のままであった。またスフィンゴイドだけでなく特定糖鎖構造のGSLにも生物活性がある。そこで、シグナル伝達系としてのスフィンゴ脂質代謝系の全体像を把握するために、スフィンゴ脂質全体を1枚の薄層プレート上で定量的に分析できる系を開発した。この方法の確立によりSM系とGSL系の変動を同時に定量的に観察することが初めて可能となった。この方法を用いてヒト急性前骨髄球性白血病細胞株HL-60細胞のフォルボールエステルTPAによる分化誘導刺激時のスフィンゴ脂質代謝を解析したところ、Kolesnicksらにより提唱されている。“SM経路"におけるSMの変動に伴ったセラミドの量的変化は認められず、刺激に応答するのは特定ガングリオシド(G_<M3>)分子の合成反応であることが判明した。さらに重要なことに、この際にグリコシル化を受けるセラミドは、SMの代謝に関与するセラミド分子種とは異なることが明らかとなり、セラミドの代謝がSM系とGSL系で異なることが判明した。前年度までにスフィンゴ脂質全体の変動を薄層プレート上で定量的に解析できる系を開発した。この系では、スフィンゴ糖脂質(GSLs)、スフィンゴミエリン(SM)とも上下ふたつのスポットに分離される。
KAKENHI-PROJECT-05671847
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671847
細胞の増殖・分化を制御する新しい情報伝達系としてのスフィンゴ脂質代謝回転
本年度は、ヒト急性前骨髄球性白血病細胞株HL-60細胞のスフィンゴ脂質の各スポットのセラミド分子種分析を中心に解析を行なった。その結果、スフィンゴ糖脂質(GSLs)、スフィンゴミエリン(SM)とも上下のスポットを構成しているセラミドの長鎖塩基は、d18:1sphingenineで、脂肪酸は、上のスポットが24:0,22:0,24:1で、下のスポットは、16:0であった。このことから、(1)GSLs,SMとも構成セラミド分子種は同じで、それぞれに特異的な分子種はない(2)de novo合成において、優先的に用いられるセラミド分子には、GSLs,SMでそれぞれ特徴がある(GSLsでは、脂肪酸が24:0,22:0,24:1のもので、SMでは脂肪酸が16:0のもの)ことが明らかとなった。特に、(1)の知見は重要で、C2セラミド(N-acetyl sphingosine)の活性をもってSM由来のセラミドの活性を論じている、Kolesnicksらの“SM経路"はセラミドの由来をはっきりさせない限り妥当ではないないことが判明した。なお、HL-60細胞のホルボールエステル、TPAによる分化誘導刺激では、SMの変動に伴ったセラミドの量的変化は認められずTPAのdoseに依存して応答を示すのは特定ガングリオシド(GM3)の合成反応であることが明らかになっている。本プロジェクトで独自に開発した、スフィンゴ脂質全体の代謝変動を同時に定量分析できる系を用いて、前年度に引き続いてヒト上皮性悪性腫瘍(食道扁平上皮癌および大腸腺癌)培養細胞株のin vitroでの分化誘導現象早期におけるスフィンゴ脂質のde novo合成変化を解析した。その結果、ヒト急性前骨髄球性白血病細胞株HL-60細胞の分化誘導現象におけるのと同様、特徴的な変動を示したのはスフィンゴ糖脂質、特にガングリオシド合成系で、ネオラクト系ガングリオシドの合成制御およびガングリオ系ガングリオシドG_<M3>の生合成の亢進が観察された。スフィンゴミエリンの変化は観察されなかった。さらに、このガングリオシド合成変化を実現するガングリオシド生合成調節物質で上記細胞株を処置したところ、分化・アポトーシスが誘導された。ガングリオシドのde novo合成変化は明瞭な形態学的変化に先駆けて起こった。ヒト上皮性悪性腫瘍細胞株の分化誘導活性を有するガングリオシド代謝調節物質は、上記のオガングリオシド合成変化を引き起すものに限られることが判明した。一方、C2セラミド(N-acetyl sphingosine)には分化誘導活性は認められなかった。ガングリオシド代謝調節物質による、がん細胞の分化誘導はヒト神経膠芽腫細胞株でも認められた。以上の結果より、がん細胞の分化には、特定ガングリオシドパターン変化が必須であることが強く示唆された。また、post-transcriptionalなレベルでのガングリオシド発現調節が、がん細胞の分化誘導剤開発の有力なターゲットになりうる可能性が示された。
KAKENHI-PROJECT-05671847
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671847
ミリ波サブミリ波観測による銀河スケールの星形成と銀河進化の研究
(1)私は、銀河の形成や進化、および銀河と宇宙大規模構造との関係の理解を目標に、国立天文台アステ望遠鏡を用いて遠方(過去)の大質量爆発的星形成銀河(サブミリ波銀河)の観測を、主に国立天文台、米国マサチューセッツ大学、メキシコ国立天文学・光学・電子工学研究所との共同研究を推進してきた。下記2件の発見を報告・議論するために、本年度、査読月論文1件、国内学会1件の発表のほかに、米国メリーランド大学、ハーバード・スミソニアン天体物理学研究所、マサチューセッツ大学でのコロキウム発表と研究打合せを行った。■ミリ波連続波観測による遠方宇宙のサブミリ波銀河の探査:現在の宇宙構造形成論では、宇宙質量の大部分を占める暗黒質の分布は、バリオンの降着率が高い箇所、すなわち大質量星形成銀河でトレースされる可能性が高い。私はサブミリ波望遠鏡「アステ」に搭載されたAzTECミリ波カメラ「アステック」による遠方銀河団候補領域(赤方偏移3.1)のこれまでにない広域深探査を行い、30個の大質量星形成銀河、およびこれらの銀河の"密集(clustering)"の発見に世界で初めて成功した。これは暗黒物質分布を的確に捕捉している可能性を示唆するものであり、本成果は英国科学雑誌Natureに受理された(2009年5月発行予定)。■サブミリ波干渉計によるサブミリ波銀河対応天体の検出:サブミリ波銀河は可視光での観測がきわめて難しく、またサブミリ波という波長の特性上その位置決定精度が低く、これらがサブミリ波銀河研究を大きく遅滞させていた。そこで私はサブミリ波干渉計(ハワイ)を用いて上記探査で発見されたサブミリ波銀河のひとつの位置を高い精度で決定した。その結果、可視光線や近赤外線でまったく検出されないきわめて「赤い」銀河であることがわかった。この発見は、これまで紫外線-近赤外線でのみ推定されてきた宇宙星形成史の見直しを迫る重大なものである。(2)私は、大気に阻まれやすいミリ波サブミリ波帯での宇宙電波の測定精度改善を意図した、183GHz大気モニタ用小型電波望遠鏡の開発を行ってきた。平成19年度までに電波望遠鏡を南米チリのアステ望遠鏡サイト(標高4800m)に設置を完了していたが、本年度そのモニタの無人自動遠隔運用を開始することに成功した。現在モニタはウェブを介して日本側に提供されており、またアタカマー帯に望遠鏡を有する各国の電波天文学コミュニティへの情報提供を行っている。1.私は、銀河の形成や進化の理解を目標に、各時代の星形成銀河に対して、星形成と深い関連がある星間物質の観測を野辺山ミリ波干渉計で行った。(1)近傍衝突銀河5天体に対して高密度分子ガスのサーベイを行い、解析が完了した1天体についてガス集中箇所と星形成活動の関連性を精査することでHCN/HCO^+輝線強度比を用いた銀河スケールの星形成年齢推定法を提案した[田村他(2007),準備中]。(2)遠方(赤方偏移2-3,約百億年前の宇宙)の爆発的星形成銀河に対して一酸化炭素分子と中性炭素原子探査を行い、星間物質モデルに基づくガスの物理状態診断をしたところ、超巨大ブラックホール(SMBH)を持つ銀河には強い紫外線輻射環境下に置かれた高密度ガスが存在することが判明した。これはSMBHやその母銀河の成長にこのガスが大きく寄与していることを示す[田村他(2007),準備中]。(3)赤外線光度の非常に大きい特異銀河MIPS-J1428(赤方偏移1.3,88億年前の宇宙)に太陽質量の一千億倍もの大量の分子ガスを発見した。これにより本銀河は急激な成長途上にある若い大銀河であることが判明した[lono, Tamura, et al. (2006)]。本結果は国立天文台記者発表を経て、2006年12月25日付の全国新聞各紙に掲載された。2.私は、大気に阻まれやすいミリ波サブミリ波帯での宇宙電波の測定精度改善を意図した、大気モニタ用小型電波望遠鏡の開発を行っている。これまでに受信システムの交換・改良を行い、各種試験において設計目標の達成を確認した。さらに制御システムの構築を完了し、2007年23月に野辺山宇宙電波観測所において実際の大気測定試験(波長1.5mm)を各種実行し、大気透過率の高精度測定・大気水蒸気の非一様性の検出・丸一日程度の無人遠隔運用試験に成功した(ファーストライト=初受光)。1.私は、銀河の形成や進化の理解を目標に、近傍や遠法(過去)の大規模星形成銀河に対して、星形成と深く関連する星間物質(サスト、分子ガス)の観測を行った【ミリ波連続波観測による遠方宇宙の大規模星形成銀河の探査】現在の宇宙構造形成論では、宇宙質量の大部分を占める案黒物質の分布は、バリオンの降着率が高い個所=大質量星形成銀河でトレースされる可能性が高い。私はASTEサブミリ波望遠鏡に搭載されたAzTECミリ波カメラによる遠方銀河団候補領域(赤方偏移3.1)のこれまでにない広域深探査を行い、30個の大質量星形成銀河、およびこれらの銀河の"密集(clustering)"の発見に世界で始めて成功した。これは暗黒物質分布を的確に捕捉している可能性を示唆するものである(田村他、準備中)。【ミリ波分光観測による近傍宇宙の衝突銀河の星形成活動の研究】上記の大規模星形成の形成は、複数の銀河の衝突合体現象で引き起こされうる。
KAKENHI-PROJECT-06J11375
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J11375
ミリ波サブミリ波観測による銀河スケールの星形成と銀河進化の研究
私は野辺山ミリ波干渉計を用いて近傍の衝突合体銀河の高密度分子ガス(HCN,HCO+分子輝線)の分布を調べることで可視光では観測されない大規模な星形成活動を検出し、分子ガスの物理状態(温度、密度)を特定することに成功した(今西他、200;田村他、準備中)。2.【絶対強度較正実験用小型電波望遠鏡の開発と本格運用】私は、大気に阻まれやすいミリ波サブミリ波帯での宇宙電波の測定制度改善を意図した、183GHz大気モニタ用小電波望遠鏡の開発を行っている。国内での最終調整、輸出作業を経て、07年11月にアタカマ砂漠(チリ、標高4800m)における設置、初受光をおこなった。08年3月に大気透過率モニタとしての定常的な自動無人遠隔運用を開始めした。現在モニタはウエブを介して日本側に提供されており、今後アタカマー一帯に望遠鏡を有する各国の電波天文学コミュニテイへの情報提供を開始する。(1)私は、銀河の形成や進化、および銀河と宇宙大規模構造との関係の理解を目標に、国立天文台アステ望遠鏡を用いて遠方(過去)の大質量爆発的星形成銀河(サブミリ波銀河)の観測を、主に国立天文台、米国マサチューセッツ大学、メキシコ国立天文学・光学・電子工学研究所との共同研究を推進してきた。下記2件の発見を報告・議論するために、本年度、査読月論文1件、国内学会1件の発表のほかに、米国メリーランド大学、ハーバード・スミソニアン天体物理学研究所、マサチューセッツ大学でのコロキウム発表と研究打合せを行った。■ミリ波連続波観測による遠方宇宙のサブミリ波銀河の探査:現在の宇宙構造形成論では、宇宙質量の大部分を占める暗黒質の分布は、バリオンの降着率が高い箇所、すなわち大質量星形成銀河でトレースされる可能性が高い。私はサブミリ波望遠鏡「アステ」に搭載されたAzTECミリ波カメラ「アステック」による遠方銀河団候補領域(赤方偏移3.1)のこれまでにない広域深探査を行い、30個の大質量星形成銀河、およびこれらの銀河の"密集(clustering)"の発見に世界で初めて成功した。これは暗黒物質分布を的確に捕捉している可能性を示唆するものであり、本成果は英国科学雑誌Natureに受理された(2009年5月発行予定)。■サブミリ波干渉計によるサブミリ波銀河対応天体の検出:サブミリ波銀河は可視光での観測がきわめて難しく、またサブミリ波という波長の特性上その位置決定精度が低く、これらがサブミリ波銀河研究を大きく遅滞させていた。そこで私はサブミリ波干渉計(ハワイ)を用いて上記探査で発見されたサブミリ波銀河のひとつの位置を高い精度で決定した。その結果、可視光線や近赤外線でまったく検出されないきわめて「赤い」銀河であることがわかった。この発見は、これまで紫外線-近赤外線でのみ推定されてきた宇宙星形成史の見直しを迫る重大なものである。(2)私は、大気に阻まれやすいミリ波サブミリ波帯での宇宙電波の測定精度改善を意図した、183GHz大気モニタ用小型電波望遠鏡の開発を行ってきた。平成19年度までに電波望遠鏡を南米チリのアステ望遠鏡サイト(標高4800m)に設置を完了していたが、本年度そのモニタの無人自動遠隔運用を開始することに成功した。現在モニタはウェブを介して日本側に提供されており、またアタカマー帯に望遠鏡を有する各国の電波天文学コミュニティへの情報提供を行っている。
KAKENHI-PROJECT-06J11375
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J11375
偽遺伝子は偽者か?
non-coding RNAでも偽遺伝子の研究は、機能しないものとみなされあまり研究が進んでこなかった。しかしながら最近、特定の偽遺伝子が癌で増幅していたり欠失していたりすることが報告されており、なんらかの機能が示唆される。申請者は次世代シーケンサーによるRNA-Seqのデータを解析することにより、プロセス型(レトロトランスポゾン型)偽遺伝子の多くが親遺伝子(祖先遺伝子)の発現と相関することをみいだした。近年microRNA(miRNA)やlncRNA(long non-coding RNA)などのnon-coding RNA(非コードRNA)の研究はかなり進み、機能が明らかになりつつある。それに比べ同じnon-coding RNAでも偽遺伝子の研究は、機能しないものとみなされあまり研究が進んでこなかった。しかしながら最近、特定の偽遺伝子が癌で増幅していたり欠失していたりすることが報告されており、なんらかの機能が示唆される。申請者は次世代シーケンサーによるRNA-Seqのデータを解析することにより、プロセス型(レトロトランスポゾン型)偽遺伝子の多くが親遺伝子(祖先遺伝子)の発現と相関することをみいだした。この研究では、この偽遺伝子と親遺伝子の干渉現象のメカニズムを明らかにするとともに、偽遺伝子の機能についても明らかにする。申請者らは24匹のマウス白色脂肪のRNAを次世代シーケンサーを用いて解析(RNA-Seq)し、301個の偽遺伝子で発現を認めた。そのうちレトロトランスポゾンの逆転写酵素によってDNA配列がゲノム内に挿入されて作られる、いわゆるプロセス型偽遺伝子156個について、その親(祖先)遺伝子との発現がどのような関係にあるかを調べた。その結果、興味深いことに親遺伝子との相関係数はランダムに選んだ遺伝子とくらべて優位に高い(P=1.8 x 10-5)ことがわかった。偽遺伝子と親遺伝子の転写調節領域が異なることを考えると、偽遺伝子と親遺伝子のRNA間の干渉作用が考えられる。興味深いことに癌抑制遺伝子PTENの偽遺伝子であるPTENP1を強制発現するとPTEN RNAを安定化し癌抑制効果があることが報告されている。この効果はPTEN3'UTRをターゲットとするmiRNAの効果をPTENP1強制発現により弱めることによる。申請者らのデータはこのようなmiRNAを介した偽遺伝子と親遺伝子の干渉作用が多くの偽遺伝子でおこっていることを示唆する。non-coding RNAでも偽遺伝子の研究は、機能しないものとみなされあまり研究が進んでこなかった。しかしながら最近、特定の偽遺伝子が癌で増幅していたり欠失していたりすることが報告されており、なんらかの機能が示唆される。申請者は次世代シーケンサーによるRNA-Seqのデータを解析することにより、プロセス型(レトロトランスポゾン型)偽遺伝子の多くが親遺伝子(祖先遺伝子)の発現と相関することをみいだした。エピジェネティクス
KAKENHI-PROJECT-15K14432
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K14432
超微粉末を活用した高性能Ni基焼結超合金の開発に関する研究
本研究では、超微粒希土類元素添加による高性能Ni基焼結超合金の開発を最終目標として、下記の3項目について検討した。(a)超微粒希土類金属および合金の製造方法を確立する。(b)超微粒希土類金属および合金の添加による焼結性および合金組織に及ぼす影響を明らかにする。(c)上記のようにして添加した希土類元素が、合金高温耐酸化性および高温強度に及ぼす影響を明確にする。上記の項目について、以下の結果を得た。(a)アーク溶解蒸発法によって、希土類金属および合金超微粉末の製造について検討した結果、希土類金属を含むNi合金(例へばLa-Ni合金)は、Ar-【H_2】雰囲気下でアーク溶解することによって、比較的容易に製造できた。収率をさらに向上させるためには、捕集装置および方法を改良する必要はあるが、希土類金属を含む合金の超微粒子は、将来種々の応用が期待されるので、さらに詳細に検討する計画である。希土類金属単体の超微粒子を得るには、酸化防止のために、他の方法例へば真空蒸発急冷法が適することがわかった。(b)希土類金属を含むNi超微粒子の添加によって、低温での焼結性が著しく向上することが明らかになったので、希土類元素の組織への影響と関連して、今後詳細に検討する計画である。(c)希土類金属を含むNi合金超微粒子を微量添加することによって、Ni基焼結超合金の高温耐酸化性が著しく改善されることが明らかとなった。一方、高温強度に及ぼす影響については、上記の焼結温度および合金組織など影響を及ぼす因子が多いため、明確な結論を得るに至らなかったので、今後継続して検討する。本研究では、超微粒希土類元素添加による高性能Ni基焼結超合金の開発を最終目標として、下記の3項目について検討した。(a)超微粒希土類金属および合金の製造方法を確立する。(b)超微粒希土類金属および合金の添加による焼結性および合金組織に及ぼす影響を明らかにする。(c)上記のようにして添加した希土類元素が、合金高温耐酸化性および高温強度に及ぼす影響を明確にする。上記の項目について、以下の結果を得た。(a)アーク溶解蒸発法によって、希土類金属および合金超微粉末の製造について検討した結果、希土類金属を含むNi合金(例へばLa-Ni合金)は、Ar-【H_2】雰囲気下でアーク溶解することによって、比較的容易に製造できた。収率をさらに向上させるためには、捕集装置および方法を改良する必要はあるが、希土類金属を含む合金の超微粒子は、将来種々の応用が期待されるので、さらに詳細に検討する計画である。希土類金属単体の超微粒子を得るには、酸化防止のために、他の方法例へば真空蒸発急冷法が適することがわかった。(b)希土類金属を含むNi超微粒子の添加によって、低温での焼結性が著しく向上することが明らかになったので、希土類元素の組織への影響と関連して、今後詳細に検討する計画である。(c)希土類金属を含むNi合金超微粒子を微量添加することによって、Ni基焼結超合金の高温耐酸化性が著しく改善されることが明らかとなった。一方、高温強度に及ぼす影響については、上記の焼結温度および合金組織など影響を及ぼす因子が多いため、明確な結論を得るに至らなかったので、今後継続して検討する。
KAKENHI-PROJECT-61550513
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61550513
説明文における読者の誤解を避ける表現上の工夫に関する実証的研究
この研究では, (1)論理的内容を自然言語で表現したテキストを読む際の情報処理過程を,主として「誤解」の発生という面から分析し, (2)テキストの作成については,誤解を避ける表現をするための,あるいは,誤解を避けるために例示をしたり注解をしたりする際の一般的原則を明らかにし, (3)読み手については,読み手にみずからの読解過程をチェックするようにさせたり,誤解を防ぐようにさせるうえで,どのような方法がどの程度の効果をもつかを明らかにすることを目的として諸種の調査をおこなった.(1)説明の不完全さを発見させる課題:マークマンが小学生に対しておこなった調査(ゲームについて不完全な説明をしたときの子供の反応を調べる)を参考にして,各種の説明について,説明の不完全さや冗長さを指摘させる課題にたいする小学生や成人の反応を調査した.幾何の問題やパズル問題の説明について問題の難易度を統制することは困難だが,傾向として,これらの説明は,ゲーム説明にくらべて説明の不完全さを指摘することや不必要な情報を指摘することが困難なようである.(2)対立する観点や立場の相違の理解についての調査:どのような立場が存在して,それらがどのような関係にあるかがわかっていれば,読み手は情報の位置づけがしやすくなるし,書き手は整理した説明ができる.ジェイコブソン編の「プロアンドコン」から対立する意見や考えかたを選んで,どれとどれが対立するのか,どれとどれが同類なのかを判断させたが,この種の課題は困難なようだ.思想上の地図(枠組み)をもたないことは,抽象的な議論の理解を困難にする.歴史観について述べたエッセイの読解においてもそのことが示された.この研究では, (1)論理的内容を自然言語で表現したテキストを読む際の情報処理過程を,主として「誤解」の発生という面から分析し, (2)テキストの作成については,誤解を避ける表現をするための,あるいは,誤解を避けるために例示をしたり注解をしたりする際の一般的原則を明らかにし, (3)読み手については,読み手にみずからの読解過程をチェックするようにさせたり,誤解を防ぐようにさせるうえで,どのような方法がどの程度の効果をもつかを明らかにすることを目的として諸種の調査をおこなった.(1)説明の不完全さを発見させる課題:マークマンが小学生に対しておこなった調査(ゲームについて不完全な説明をしたときの子供の反応を調べる)を参考にして,各種の説明について,説明の不完全さや冗長さを指摘させる課題にたいする小学生や成人の反応を調査した.幾何の問題やパズル問題の説明について問題の難易度を統制することは困難だが,傾向として,これらの説明は,ゲーム説明にくらべて説明の不完全さを指摘することや不必要な情報を指摘することが困難なようである.(2)対立する観点や立場の相違の理解についての調査:どのような立場が存在して,それらがどのような関係にあるかがわかっていれば,読み手は情報の位置づけがしやすくなるし,書き手は整理した説明ができる.ジェイコブソン編の「プロアンドコン」から対立する意見や考えかたを選んで,どれとどれが対立するのか,どれとどれが同類なのかを判断させたが,この種の課題は困難なようだ.思想上の地図(枠組み)をもたないことは,抽象的な議論の理解を困難にする.歴史観について述べたエッセイの読解においてもそのことが示された.
KAKENHI-PROJECT-62210018
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62210018
地球内核条件での鉄合金の音速測定による内核の化学組成の解明
地球最深部に位置する内核の化学組成の推定には、高温高圧実験で決定される鉄合金の音速データと地震波速度の観測値の比較が有効である。しかし、実際の地球内核に相当する温度圧力条件(5000-6000 K・330-364 GPa)における鉄合金の音速測定は、技術的困難さゆえ実現されていない。内核の組成の議論には、低い温度圧力下での音速データの外挿値が用いられているが、この外挿値と実際のそれとは大きく異なる可能性がある。そこで本研究では、近年注目が集まるフェムト秒パルスレーザーpump-probe法を改良し、実際の内核の温度圧力条件における鉄合金の音速測定を行うことで、内核の組成に強い制約を与えることを目的とする。既存の光学システムを用いた地球内核温度圧力条件での鉄合金の音速測定では、取得する音響シグナルの信号対雑音比(S/N比)が悪くなることが予想される。そこで平成30年度に、既存の光学システムのアップデートを行った。これにより、シグナルのS/N比が以前よりも飛躍的に向上し、内核条件における音速測定の実現可能性が高まった。また、地球内核の構成物質である六方最密充填(hcp)構造の鉄合金には、音速の異方性の存在が示唆されている。したがって、内核物質の音速測定では異方性を考慮した測定を行うことが望ましいと判断し、純鉄の単結晶を出発物質とした実験を行うことにした。試料の納品に時間を要したため、平成30年度中に実験を行うことができなかったが、副次的に下部マントルの主要構成鉱物bridgmaniteの音速を室温下で70 GPaまで測定した。得られた結果から少なくとも深さ1500 kmまでの下部マントルは上部マントルと似た化学組成を持つことが示唆された。下部マントルの化学組成の制約は、内核の組成の解明にも繋がりうる。これらの成果について、3件の学会発表を行い、うち1件で優秀発表賞を受賞した。平成30年度の成果として、1既存の光学システムのアップデート、2下部マントル主要鉱物bridgmaniteの音速測定の2点があげられる。計画にある地球内核圧力条件での鉄合金の音速測定には至らなかったが、既存の光学システムのアップデートを行ったことにより、本研究課題のゴールである内核条件での音速測定の実現に向けた大きな技術的進展があったといえる。また、副次的にbridgmaniteの音速測定を行い、下部マントルの化学組成にも制約を与えることができた。この成果は、内核の化学組成の解明にも繋がる。以上から、総合的に判断して、おおむね順調に進行していると考える。測定の精密化を目指した光学システムのアップデートの大部分が完了したと考える。今後はさらに、高倍率集光レンズを導入し、試料サイズがより小さくなることが予想される超高圧下での測定にも対応する。一方、1500 Kを超えるような高温下での実験の際に測温に用いる分光器も組み込む。平成30年度に購入した純鉄単結晶が納品され次第、内核の異方性も考慮した音速測定を行う予定である。地球最深部に位置する内核の化学組成の推定には、高温高圧実験で決定される鉄合金の音速データと地震波速度の観測値の比較が有効である。しかし、実際の地球内核に相当する温度圧力条件(5000-6000 K・330-364 GPa)における鉄合金の音速測定は、技術的困難さゆえ実現されていない。内核の組成の議論には、低い温度圧力下での音速データの外挿値が用いられているが、この外挿値と実際のそれとは大きく異なる可能性がある。そこで本研究では、近年注目が集まるフェムト秒パルスレーザーpump-probe法を改良し、実際の内核の温度圧力条件における鉄合金の音速測定を行うことで、内核の組成に強い制約を与えることを目的とする。既存の光学システムを用いた地球内核温度圧力条件での鉄合金の音速測定では、取得する音響シグナルの信号対雑音比(S/N比)が悪くなることが予想される。そこで平成30年度に、既存の光学システムのアップデートを行った。これにより、シグナルのS/N比が以前よりも飛躍的に向上し、内核条件における音速測定の実現可能性が高まった。また、地球内核の構成物質である六方最密充填(hcp)構造の鉄合金には、音速の異方性の存在が示唆されている。したがって、内核物質の音速測定では異方性を考慮した測定を行うことが望ましいと判断し、純鉄の単結晶を出発物質とした実験を行うことにした。試料の納品に時間を要したため、平成30年度中に実験を行うことができなかったが、副次的に下部マントルの主要構成鉱物bridgmaniteの音速を室温下で70 GPaまで測定した。得られた結果から少なくとも深さ1500 kmまでの下部マントルは上部マントルと似た化学組成を持つことが示唆された。下部マントルの化学組成の制約は、内核の組成の解明にも繋がりうる。これらの成果について、3件の学会発表を行い、うち1件で優秀発表賞を受賞した。平成30年度の成果として、1既存の光学システムのアップデート、2下部マントル主要鉱物bridgmaniteの音速測定の2点があげられる。計画にある地球内核圧力条件での鉄合金の音速測定には至らなかったが、既存の光学システムのアップデートを行ったことにより、本研究課題のゴールである内核条件での音速測定の実現に向けた大きな技術的進展があったといえる。
KAKENHI-PROJECT-18J21664
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地球内核条件での鉄合金の音速測定による内核の化学組成の解明
また、副次的にbridgmaniteの音速測定を行い、下部マントルの化学組成にも制約を与えることができた。この成果は、内核の化学組成の解明にも繋がる。以上から、総合的に判断して、おおむね順調に進行していると考える。測定の精密化を目指した光学システムのアップデートの大部分が完了したと考える。今後はさらに、高倍率集光レンズを導入し、試料サイズがより小さくなることが予想される超高圧下での測定にも対応する。一方、1500 Kを超えるような高温下での実験の際に測温に用いる分光器も組み込む。平成30年度に購入した純鉄単結晶が納品され次第、内核の異方性も考慮した音速測定を行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-18J21664
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離島と都市部の保育園新入園児における保育場面への移行に関する縦断研究
保育園は地域における重要なアロマザリング(母親以外による養育)の場であり,保育園への入園は子どもにとって生まれて初めて家庭から離れてアロマザーのもとに長時間身を置く体験である。その移行は親子関係のみならず,子どもの地域適応を考える貴重な場面である。本研究は,アロマザリングの発達した離島(沖縄県宮古郡多良間村)と都市部(東京都及び埼玉県)における新入園の場面を連日行動観察し,あわせて顔面皮膚温から分離時の子どものストレスを測定することによって,子どもの場面移行における適応過程を比較しようとするものである。保育園は地域における重要なアロマザリング(母親以外による養育)の場であり,保育園への入園は子どもにとって生まれて初めて家庭から離れてアロマザーのもとに長時間身を置く体験である。その移行は親子関係のみならず,子どもの地域適応を考える貴重な場面である。本研究は,アロマザリングの発達した離島(沖縄県宮古郡多良間村)と都市部(東京都及び埼玉県)における新入園の場面を連日行動観察し,あわせて顔面皮膚温から分離時の子どものストレスを測定することによって,子どもの場面移行における適応過程を比較しようとするものである。
KAKENHI-PROJECT-19K21789
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ハワイにおける日本人漁業の発展と日米関係の変遷
本研究は、一九世紀後半から始まり、今日においてもハワイの水産業界に多大な影響力を及ぼしている、ハワイの日本人漁業について、主に社会史的な観点から明らかにした。特に、プランテーションにおいて従属的な立場に置かれていた日本人移民が、なぜ漁業を中核とする水産業界では主導的な立場に立てたのか、日本の漁村文化がハワイにおいてどのように変遷したのか、戦時中における漁業の実態と戦後における復興の様子、さらに戦後の大きな政治的経済的変遷の中で、漁業がどのように変容したのか、といった観点について、解明することができた。これらの研究成果は、『海の民のハワイ』(人文書院)をはじめとする著作にまとめられた。本研究は、1930年代から第二次大戦中、また戦後の冷戦期初期における、アメリカ合衆国並びにハワイ準州政府が行ったハワイの日本人漁業政策の解明を目的としている。本研究は3年間をかけて行われる予定であるが、初年度である平成27年度において、報告者は主にアメリカ合衆国国立公文書館ならびにハワイ州立公文書館における一次資料の収集を行った。国立公文書館では、所蔵する米連邦政府労働省、内務省、陸軍情報部の資料を収集、分析を行った。その結果、1930年代から太平洋戦争中における連邦政府並びに軍部の対日本人漁業政策の諸相を明らかにすることが出来た。とりわけ連邦政府内内務省とハワイ準州政府が戦前、日本人漁業を積極的に保護、育成しようとしていた様子を伝える資料を発見したことは、ハワイの日本人移民政策についての従来の学会の見解に新たな地平を拓くものである。一方、ハワイ州立公文書館においても、1920年代から30年代にかけてハワイ在住日本人漁民が所有していた船舶の登記簿を入手することが出来た。これらの資料から、1920年代から40年年代にかけて日本人漁民が保有していた漁船の名前、性能、所有者の名前と居住地を明らかにすることが出来た。またこれらの資料から、漁船のみならず、当時ハワイ諸島各地に散在していた日本人漁業会社や漁業組合の所在値や活動についても新たな知見を加えることが出来たため、戦前から戦時中におけるハワイの日本人漁業の実態解明に大きく貢献することができた。これらの調査研究の成果の一部は、報告者によって査読つき研究論文にまとめた上で、学会でも報告された。また本研究のフィールド調査対象地でもある山口県周防大島町並びにホノルルにおける一般向けの講演においても、研究成果の一部が披露された。平成27年度は、一次資料の収集において当初予定していた以上の成果を上げることが出来たことに加え、論文などの研究業績においても、地域漁業学会賞の受賞につながる成果を上げることが出来た。本年度は前年度に引き続き、ハワイにおける水産業の発達と日米関係についての一次資料収集を日本、アメリカ両国にて行った。特にアメリカ合衆国公文書記録管理局が所蔵する、ハワイ準州や米連邦政府による、ハワイならびにその近海の漁業調査関連資料や、戦前から戦後にかけて米連邦捜査局(FBI)が行っていた「ハワイ金刀比羅神社」関連の調査報告などの資料の発掘は大きな成果である。これらの一次資料から、戦前、日本人漁民が訴えていた米連邦政府主導の漁業調査の必要性を、ハワイ準州農林行政委員会やポインデクスター準州知事も認識し、第二次世界大戦中から戦後直後にかけて、連邦政府による太平洋漁業調査法案の可決へ向けて連邦議会に働きかけていたことが明かになった。また「ハワイ金刀比羅神社」関連資料によって、FBIが開戦前から同神社を始め、アメリカ国内に存在する神社を調査し、日本帝国の手先機関としての認識を持っていたこと、それによって戦後、ハワイ金刀比羅神社の資産が米司法省によって没収されたことが分かった。さらにこの資料は単なるハワイの日本人水産業のみならず、連合国総司令部(GHQ/SCAP)の占領下に置かれていた日本において発令された「神道指令」との関連性が指摘できるなど、今後の日米関係の研究にも新たな視点を加えるものである。これらの研究成果の一部を、筆者はマイグレーション研究会例会(12月3日於同志社大学)にて報告した。また現在執筆中である単著『海の民のハワイーハワイの水産業を開拓した日本人の社会史』(人文書院より刊行予定)や、次年度に行う国際学会での研究報告においても、これらの研究成果が反映される予定である。本年度は、当初予定していなかった、冷戦初期におけるハワイ並びに日本の漁業と米連邦政府の漁業政策に関する一次資料や、同じく冷戦初期におけるハワイ金刀比羅神社の資産没収事件に関する一次資料の発掘を行うことが出来た。これによって20世紀初頭から大戦中だけでなく、戦時中から戦後初期にかけてのハワイの水産業と日米関係に関する新たな知見を得ることが出来た。またこれらの研究成果を盛り込んだ単著の執筆も順調に進んでいる。研究代表者は、科研費を用いて、ハワイにおける近代的な日系漁業の歴史的展開について、おもに一九世紀後半から第二次世界大戦期、戦後の漁業復興期を経て現在に至る時期にかけて検証してきた、その結果、ハワイ諸島各地で形成された日本人漁村の場所及び規模、漁船の操業拠点や漁撈に実態について明らかにすることができた。さらに、大戦中における漁船の没収や漁撈制限など一連の政策や、日系人以外の民族による漁撈の実態についても解明することができた。上記の著書は、日本の海の民(海を生活の拠り所とする人々)がハワイの海に進出し、現地における水産業を起ちあげ、発展させた様子について、社会史的な観点から描いている。
KAKENHI-PROJECT-15K02963
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K02963
ハワイにおける日本人漁業の発展と日米関係の変遷
従来のプランテーション体験を基軸とする日系ハワイ移民研究と異なり、本研究が明らかにした日本の海の民の体験は、二〇世紀初頭以降、業界において一貫して強いリーダーシップを発揮しつつ、現地の白人政財界を味方に取り込んだ上で、時には「海からの排日」を強要する大統領側からの圧力に対抗した点や、漁獲物流通・加工の分野及び漁村の社会生活において女性が大きな役割を果たした点などの特徴を持つ。また戦時中における漁船の没収や関係者の強制収容による水産業の逼塞や、戦後の復興過程における沖縄との結びつきの強化に触れつつ、ハワイに持ち込まれた日本の海の文化が今日も大きな影響力を保持している点も明らかにした。このように、本研究は大きな成果を上げることが出来た。本研究は、一九世紀後半から始まり、今日においてもハワイの水産業界に多大な影響力を及ぼしている、ハワイの日本人漁業について、主に社会史的な観点から明らかにした。特に、プランテーションにおいて従属的な立場に置かれていた日本人移民が、なぜ漁業を中核とする水産業界では主導的な立場に立てたのか、日本の漁村文化がハワイにおいてどのように変遷したのか、戦時中における漁業の実態と戦後における復興の様子、さらに戦後の大きな政治的経済的変遷の中で、漁業がどのように変容したのか、といった観点について、解明することができた。これらの研究成果は、『海の民のハワイ』(人文書院)をはじめとする著作にまとめられた。今後も、平成27年度の研究成果を踏まえ、更なる資料の補足調査、国際学会への参加を活発に行うことによって、新たな知見を加える。また論文、著書の執筆も精力的に行い、国民への研究成果の還元へと務める予定である。研究の最終年度となる平成29年度は、これまでの研究の総仕上げとして、引き続き国内外における資料収集の補足調査を行う。また本研究課題をまとめた単著の刊行に向けて、執筆作業を行う予定である。アメリカ研究書籍の購入時期が年度末になったため会計処理が間に合わず、次年度の使用に回すこととした。会計処理が年度末にならぬよう、計画的な予算執行を行う。平成29年12月下旬までに具体的な会計処理の手続きを行う。
KAKENHI-PROJECT-15K02963
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ISYNA1による細胞内ミオイノシトール合成制御からの腎細胞癌抑制機序の解明
ヒト腎癌細胞株およびマウス腎癌細胞株での検討:腎癌細胞株においてISYNA1発現が細胞増殖抑制効果を持つことを検証するため、ヒト腎癌細胞株ACHN、CAKIおよびマウス腎癌細胞RENCAにおけるISYNA1発現をReal time PCR法およびWestern blot法にて解析する。さらにISYNA1発現を安定して変化させるため、Teton/Tet-offシステムを用いたshRNAを作成する。作成したshRNAを組み込んだヒト腎癌細胞株およびマウス腎癌細胞株を作成する。作成した腎癌細胞株を用いて、ISYNA1の発現と細胞増殖能の変化をReal time PCR法およびWestern blot法、MTTアッセイ、BrdUアッセイにて解析する。前年度は、ヒト腎癌細胞株におけるISYNA1発現と細胞増殖シグナルに関してWestern blot法よる解析を行った。遺伝子強制発現用プラスミドを用いた遺伝子発現調整用プラスミドの作成段階で予定通り作成が進まなかったため。遺伝子定常発現用のプラスミド作成方法について修正を行い、作成次第細胞株での発現機能解析を行う。ヒト腎癌細胞株およびマウス腎癌細胞株での検討:腎癌細胞株においてISYNA1発現が細胞増殖抑制効果を持つことを検証するため、ヒト腎癌細胞株ACHN、CAKIおよびマウス腎癌細胞RENCAにおけるISYNA1発現をReal time PCR法およびWestern blot法にて解析する。さらにISYNA1発現を安定して変化させるため、Tet-on/Tet-offシステムを用いたshRNAを作成する。作成したshRNAを組み込んだヒト腎癌細胞株およびマウス腎癌細胞株を作成する。作成した腎癌細胞株を用いて、ISYNA1の発現と細胞増殖能の変化をReal time PCR法およびWestern blot法、MTTアッセイ、BrdUアッセイにて解析する。ISYNA1発現と分子標的薬への反応性の検討:作成した腎癌細胞株を用いて、ISYNA1発現と分子標的薬投与時の細胞増殖抑制効果についてReal time PCR法およびWestern blot法、MTTアッセイ、BrdUアッセイを用いて検討する。前年度は、ヒト腎癌細胞株におけるISYNA1発現をReal time PCR法およびWestern blot法にて解析を行った。遺伝子定常発現用の細胞株に使用するプラスミドの作成段階で予定通り作成が進まなかったため。ヒト腎癌細胞株およびマウス腎癌細胞株での検討:腎癌細胞株においてISYNA1発現が細胞増殖抑制効果を持つことを検証するため、ヒト腎癌細胞株ACHN、CAKIおよびマウス腎癌細胞RENCAにおけるISYNA1発現をReal time PCR法およびWestern blot法にて解析する。さらにISYNA1発現を安定して変化させるため、Teton/Tet-offシステムを用いたshRNAを作成する。作成したshRNAを組み込んだヒト腎癌細胞株およびマウス腎癌細胞株を作成する。作成した腎癌細胞株を用いて、ISYNA1の発現と細胞増殖能の変化をReal time PCR法およびWestern blot法、MTTアッセイ、BrdUアッセイにて解析する。前年度は、ヒト腎癌細胞株におけるISYNA1発現と細胞増殖シグナルに関してWestern blot法よる解析を行った。遺伝子強制発現用プラスミドを用いた遺伝子発現調整用プラスミドの作成段階で予定通り作成が進まなかったため。遺伝子定常発現用のプラスミド作成方法について修正を行い、作成次第細胞株での発現機能解析を行う。遺伝子定常発現用のプラスミド作成方法について修正を行い、作成次第細胞株での発現機能解析を行う。各種抗体や試薬の購入などが追加で必要となるため、物品費購入に充てます。各種抗体や試薬の購入などが追加で必要となるため、物品費購入に充てます。
KAKENHI-PROJECT-17K16803
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実験的歯の移動時における中枢神経系に対する鎮痛剤の影響
歯科矯正学的歯の移動は,痛みや不快感を引き起こす。歯に矯正力を加えると,歯根膜内に炎症反応が起こり疼痛に関与しうる物質が放出される。ところで,前早期遺伝子c-fosは,核タンパクFosを誘導する。シナプスの活性化後の脳におけるFosの誘導は,ニューロンに特異的であり,c-fosの活性化は,脳におけるニューロンの経路を調べる指標として用いられることが報告されている。そこで,我々は,脳におけるc-fos発現に対する実験的歯の移動の影響を,Fosに対する免疫組織化学を実施することにより調べた。ラットの片側上顎臼歯間に歯科矯正用エラスティックモデュールを挿入した。実験的歯の移動開始24時間後,Fos免疫陽性ニューロンが,侵害情報の伝達路を含むと考えられている三叉神経脊髄路核亜核およびlateral parabrachial nucleusに出現した。また、実験的歯の移動後、実験群のラットの前脳群のラットの前脳において,扁桃中心核,視床下部の室傍核および視床の室傍核にFos免疫陽性ニューロンの発現が認められた。ところで、N-methyl-D-asparate(NMDA)受容体は、疼痛の生ずる過程で多面的な働きを持つことが知られている。そこで、我々は、実験的歯の移動時におけるNMDA受容体の拮抗薬であるMK-801の影響を調べた。歯の移動開始前にMK-801を投与すると、実験的歯の移動開始24時間後に認められた扁桃中心核,視床下部の室傍核および視床の室傍核のFos免疫陽性ニューロンの発現が抑制される傾向が認められた。これらの結果から、本実験系は、三叉神経の支配領域における疼痛の中枢神経に対する影響を調べるうえで、有用な系であることが示唆された。歯科矯正学的歯の移動は,痛みや不快感を引き起こす。歯に矯正力を加えると,歯根膜内に炎症反応が起こり疼痛に関与しうる物質が放出される。ところで,前早期遺伝子c-fosは,核タンパクFosを誘導する。シナプスの活性化後の脳におけるFosの誘導は,ニューロンに特異的であり,c-fosの活性化は,脳におけるニューロンの経路を調べる指標として用いられることが報告されている。そこで,我々は,脳におけるc-fos発現に対する実験的歯の移動の影響を,Fosに対する免疫組織化学を実施することにより調べた。ラットの片側上顎臼歯間に歯科矯正用エラスティックモデュールを挿入した。実験的歯の移動開始24時間後,Fos免疫陽性ニューロンが,侵害情報の伝達路を含むと考えられている三叉神経脊髄路核亜核およびlateral parabrachial nucleusに出現した。また、実験的歯の移動後、実験群のラットの前脳群のラットの前脳において,扁桃中心核,視床下部の室傍核および視床の室傍核にFos免疫陽性ニューロンの発現が認められた。ところで、N-methyl-D-asparate(NMDA)受容体は、疼痛の生ずる過程で多面的な働きを持つことが知られている。そこで、我々は、実験的歯の移動時におけるNMDA受容体の拮抗薬であるMK-801の影響を調べた。歯の移動開始前にMK-801を投与すると、実験的歯の移動開始24時間後に認められた扁桃中心核,視床下部の室傍核および視床の室傍核のFos免疫陽性ニューロンの発現が抑制される傾向が認められた。これらの結果から、本実験系は、三叉神経の支配領域における疼痛の中枢神経に対する影響を調べるうえで、有用な系であることが示唆された。実験には,ウィスター系雄性成熟ラット(180200グラム)を用いた.ラットを実験群と対照群の2群に分け,実験群のラットには,浅麻酔下において,Waldoらの方法に従い、片側上顎第1臼歯と第2臼歯の間に歯科矯正用エラスティックモデュールを挿入し,歯の移動を行い,その影響を比較検討した.一定時間が経過した後,麻酔下で0.9%NaCl生理食塩水および4%パラホルムアルデヒドを含むリン酸緩衝溶液で灌流固定を行い,脳を摘出した.それぞれのラットの脳を2日間4%パラホルムアルデヒドで後固定した後,常温下でマイクロスライサーを用いて30μmの薄切切片を作製した.脳切片をトリトンXを含む緩衝溶液で洗浄した後,神経活動のマーカーとなりうる初期発現遺伝子c-fosの抗体を用いて免疫組織化学的染色を行い、その切片を光学顕微鏡にて検鏡し,さらに写真撮影を行い比較検討した.その結果,実験群のラット前脳では,歯の移動開始24時間後に、扁桃核,視床の室傍核および視床下部の室傍核にc-fosタンパクの発現が認められた.これらの結果から,ラットの歯を実験的に移動させることにより,中枢神経系に影響を及ぼすことが示唆された.そこで今後は,実験的歯の移動と同時に鎮痛剤であるイブプロフェンやアセタミノフェンを腹腔注射し、c-fosタンパクの発現を免疫組織化学的に比較検討することにより,中枢神経系に対する鎮痛剤の影響を比較検討する予定である.歯科矯正学的歯の移動は,痛みや不快感を引き起こす。歯に矯正力を加えると,歯根膜内に炎症反応が起こり疼痛に関与しうる物質が放出される。ところで,前早期遺伝子c-fosは,核タンパクFosを誘導する。シナプスの活性化後の脳におけるFosの誘導は,ニューロンに特異的であり,c-fosの活性化は,脳におけるニューロンの経路を調べる指標として用いられることが報告されている。
KAKENHI-PROJECT-10671935
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10671935
実験的歯の移動時における中枢神経系に対する鎮痛剤の影響
そこで,我々は,脳におけるc-fos発現に対する実験的歯の移動の影響を,Fosに対する免疫組織化学を実施することにより調べた。ラットの片側上顎臼歯間に歯科矯正用エラスティックモデュールを挿入した。実験的歯の移動開始24時間後,Fos免疫陽性ニューロンが,侵害情報の伝達路を含むと考えられている三叉神経脊髄路核亜核およびlateral parabrachial nucleusに出現した。また、実験的歯の移動後、実験群のラットの前脳において,扁桃中心核,視床下部の室傍核および視床の室傍核にFos免疫陽性ニューロンの発現が認められた。ところで、N-methyl-D-asparate(NMDA)受容体は、疼痛の生ずる過程で多面的な働きを持つことが知られている。そこで、我々は、実験的歯の移動時におけるNMDA受容体の拮抗薬であるMK-801の影響を調べた。歯の移動開始前にMK-801を投与すると、実験的歯の移動開始24時間後に認められた扁桃中心核,視床下部の室傍核および視床の室傍核のFos免疫陽性ニューロンの発現が抑制される傾向が認められた。これらの結果から、本実験系は、三叉神経の支配領域における疼痛の中枢神経に対する影響を調べるうえで、有用な系であることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-10671935
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ビブリオ感染症における新規病原因子としての逆転写酵素とcDNA産物の役割
細菌逆転写酵素は,msDNA (multicopy single-stranded DNA)と呼ばれるRNA-DNA複合体の合成に必須の酵素である。msDNA合成に必要な染色体領域は,逆転写酵素遺伝子(ret)を含むオペロンを構成しており,レトロン(retron)と呼ばれている。Vibrio choleraeでは,流行病であるコレラの原因となる血清型01および0139にのみレトロンが存在しており,それ以外の血清型株ではこれまでのところ見つかっていない。このことは,V.choleraeの病原性発現と逆転写酵素やレトロンの機能との間に何らかの関係があることを示唆している。本研究では,逆転写酵素とmsDNAの機能を明らかにするために,まずV.cholerae 0139株を親株としてret遺伝子欠失株を作製し,解析を行った。ディファレンシャル・ディスプレイ法を利用して親株とret欠失変異株との間で発現量の異なる遺伝子を調べたところ,これまでにret変異株においてcatalase/peroxidase遺伝子とnitrogen regulatory proteinP_<II>遺伝子の発現量の低下が認められた。catalase/peroxidaseは,細胞内の有毒な過酸化物を除去する働きがあり,またnitrogen regulatory protein P_<II>は,窒素利用能を制御している。これらはともにコレラ菌の成育に有利に機能すると考えられることからret欠損変異による両遺伝子の発現量低下は,逆転写酵素あるいはmsDNAによる遺伝子発現制御を推測させる。さらに,コレラ菌msDNAのDNAステム部分にはミスマッチがなく,転写制御因子を吸着するデコイ核酸の機能を持っている可能性が考えられた。そこで,コレラ菌由来のmsDNA-Vc95をプローブとするゲルシフト法によってコレラ菌総タンパク質中にmsDNA結合タンパク質を検索したところ,少なくとも2種類のmsDNA結合タンパク質の存在が明らかになった。今後さらにこれらの結合タンパク質とret変異株で発現量が変化する遺伝子との関連性を調べる必要がある。細菌逆転写酵素は,msDNA (multicopy single-stranded DNA)と呼ばれるRNA-DNA複合体の合成に必須の酵素である。msDNA合成に必要な染色体領域は,逆転写酵素遺伝子(ret)を含むオペロンを構成しており,レトロン(retron)と呼ばれている。Vibrio choleraeでは,流行病であるコレラの原因となる血清型01および0139にのみレトロンが存在しており,それ以外の血清型株ではこれまでのところ見つかっていない。このことは,V.choleraeの病原性発現と逆転写酵素やレトロンの機能との間に何らかの関係があることを示唆している。本研究では,逆転写酵素とmsDNAの機能を明らかにするために,まずV.cholerae 0139株を親株としてret遺伝子欠失株を作製し,解析を行った。ディファレンシャル・ディスプレイ法を利用して親株とret欠失変異株との間で発現量の異なる遺伝子を調べたところ,これまでにret変異株においてcatalase/peroxidase遺伝子とnitrogen regulatory proteinP_<II>遺伝子の発現量の低下が認められた。catalase/peroxidaseは,細胞内の有毒な過酸化物を除去する働きがあり,またnitrogen regulatory protein P_<II>は,窒素利用能を制御している。これらはともにコレラ菌の成育に有利に機能すると考えられることからret欠損変異による両遺伝子の発現量低下は,逆転写酵素あるいはmsDNAによる遺伝子発現制御を推測させる。さらに,コレラ菌msDNAのDNAステム部分にはミスマッチがなく,転写制御因子を吸着するデコイ核酸の機能を持っている可能性が考えられた。そこで,コレラ菌由来のmsDNA-Vc95をプローブとするゲルシフト法によってコレラ菌総タンパク質中にmsDNA結合タンパク質を検索したところ,少なくとも2種類のmsDNA結合タンパク質の存在が明らかになった。今後さらにこれらの結合タンパク質とret変異株で発現量が変化する遺伝子との関連性を調べる必要がある。細菌逆転写酵素は,msDNA(multicopy single-stranded DNA)と呼ばれるRNA-DNA複合体の合成に必須の酵素である。msDNA合成に必要な染色体領域は,逆転写酵素遺伝子(ret)を含むオペロンを構成しており,レトロン(retron)と呼ばれている。Vibrio choleraeでは,流行病であるコレラの原因となる血清型01および0139にのみレトロンが存在しており,それ以外の血清型株ではこれまでのところ見つかっていない。このことは,V. choleraeの病原性発現と逆転写酵素やレトロンの機能との間に何らかの関係があることを示唆している。本研究では,V. cholerae 0139株を用いてret遺伝子の欠失株を作製して,種々の方法で欠失株の性質を調べた。まず,suicide vectorを用いてアンピシリン耐性遺伝子をret遺伝子に挿入することにより欠失株を作成した。この欠失株と野生株(親株)を種々の培地で成育させ違いを調べた。V. cholerae 0139株においてコレラ毒素の産生を誘導する培地であるAKI培地と1.5%NaClを含むLB培地とで親株と欠失株の成育を比較したところ,親株はLB培地の方の成育が良かったのに対してret遺伝子欠失株ではほとんど同じかむしろAKI培地の方の成育が良かった。また,NaClを加えないLB培地での成育を比較したところ欠失株の成育が親株に比べて若干悪いことがわかった。特にこの培養条件では親株でmsDNAの合成量が増加するため逆転写酵素の機能と何らかの関係があるのではないかと考えている。
KAKENHI-PROJECT-13670273
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13670273
ビブリオ感染症における新規病原因子としての逆転写酵素とcDNA産物の役割
さらに,現在ディファレンシャル・ディスプレイ法を利用して親株と欠失株との間で発現量の異なる遺伝子を検索している。現段階でいくつかの候補となる遺伝子が得られており,詳細な解析を進めているところである。細菌逆転写酵素は,msDNA(multicopy single-stranded DNA)と呼ばれるRNA-DNA複合体の合成に必須の酵素である。msDNA合成に必要な染色体領域は,逆転写酵素遺伝子(ret)を含むオペロンを構成しており,レトロン(retron)と呼ばれている。Vibrio choleraeでは,流行病であるコレラの原因となる血清型01および0139にのみレトロンが存在しており,それ以外の血清型株ではこれまでのところ見つかっていない。このことは,V.choleraeの病原性発現と逆転写酵素やレトロンの機能との間に何らかの関係があることを示唆している。本研究では,逆転写酵素とmsDNAの機能を明らかにするために,研究代表者らの作製したV.cholerae 0139株のret遺伝子欠失株TSC-11を用いて,解析を行った。ディファレンシャル・ディスプレイ法を利用して親株とret欠失変異株との間で発現量の異なる遺伝子を調べたところ,これまでにret変異株においてcatalase/peroxidase遺伝子とnitrogen regulatory proteinP_<II>遺伝子の発現量の低下が認められた。catalase/peroxidaseは,細胞内の有毒な過酸化物を除去する働きがあり,またnitrogen regulatory protein P_<II>は,窒素利用能を制御している。これらはともにコレラ菌の成育に有利に機能すると考えられることからret欠損変異による両遺伝子の発現量低下は,逆転写酵素あるいはmsDNAによる遺伝子発現制御を推測させる。さらに,コレラ菌msDNAのDNAステム部分にはミスマッチがなく,転写制御因子を吸着するデコイ核酸の機能を持っている可能性が考えられた。そこで,コレラ菌由来のmsDNA-Vc95をプローブとするゲルシフト法によってコレラ菌総タンパク質中にmsDNA結合タンパク質を検索したところ,少なくとも2種類のmsDNA結合タンパク質の存在が明らかになった。今後さらにこれらの結合タンパク質とret変異株で発現量が変化する遺伝子との関連性を調べる必要がある。
KAKENHI-PROJECT-13670273
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機械学習に基づく適応的な搬送計画作成システムの開発
生産,物流あるいは旅客サービス・システムなどの計画・運用における問題として搬送計画問題を取り上げ,この問題に対して包括的なモデルの構築,および現実的な要件を考慮した解法構成を行いました.具体的には,搬送計画問題に対してVehicle Routing Problem(VRP)およびPickup and Delivery Problem(PDP)の枠組みで数理モデルを構築した上で,これらの問題の基本的な性質をふまえて,問題の分解構造に着目した新たな分散型メタヒューリスティック解法を構築しました.その際には,擬似焼き鈍し法や遺伝アルゴリズムといったメタヒューリスティクスの適用を陽にふまえた解法の構築を行いました.この解法により,100個以上の搬送物を有した,より大規模な問題に対して効果的に良質な解を獲得できることを確認しました.さらには,AGVを用いた搬送計画システムを取り上げ,AGVの走行経路を自律分散的に獲得するための方法として,AGV同士の衝突時における交渉に着目し,交渉ルールを自動的に獲得するためにGenetic-Based Machine Learningを適用しました.この方法により,リアルタイムに計画作成が可能となり,計算機実験により,10台以上のAGVが同時に稼働する搬送システムにおいても,個々のAGVの搬送時間をあまり悪化させないような走行経路を獲得できることを確認しました.これらの成果については,すでに国内(4件),国外(3件)の学会報告を行いました.さらには,国内の論文誌に1件を投稿・掲載,1件を投稿しました.機械学習に基づく適応的な搬送計画作成の方法論を構築するにあたり,動的経路作成および機械学習手法に関する従来研究を調査し,研究の位置づけを明確にしました.その上で,搬送計画問題に対して,Pickup and Delivery問題(PDP)の枠組みで数理モデル化を行い,問題を整理・分類すると共に,機械学習に基づく解法構成についての基礎的な検討を進めています.まず,1年目は,PDPを静的な枠組みで捉えた上で,整数計画モデルを構築しました.その際には,許容時間内に良好な解を得るための手法である遺伝アルゴリズムの適用に留意し,異なる観点から2種類のモデルを構築しました.さらには,これらのモデルを踏まえた解法の設計を行いました.以上の研究により,PDPの基本となる性質が明らかになると共に,より現実的な規模の問題に対し,構成した解法によって従来手法よりも優れた結果が得られることが示されました.さらに,PDPの基本的な性質を踏まえて,さらに問題の分解構造に着目した新たな解法の構築を検討しました.その際には,局所探索法や遺伝アルゴリズムといったメタヒューリスティクスの適用を陽に踏まえた解法の構築を行いました.その結果,より制約の強い(複雑な)問題に対しても,効率的に解が得られることが確認されました.現在,ここで得られた成果を基に,良好な初期経路計画を立てた上で,動的な環境にも適応的に対応可能なシステム構築を検討しております.生産,物流あるいは旅客サービス・システムなどの計画・運用における問題として搬送計画問題を取り上げ,この問題に対して包括的なモデルの構築,および現実的な要件を考慮した解法構成を行いました.具体的には,搬送計画問題に対してVehicle Routing Problem(VRP)およびPickup and Delivery Problem(PDP)の枠組みで数理モデルを構築した上で,これらの問題の基本的な性質をふまえて,問題の分解構造に着目した新たな分散型メタヒューリスティック解法を構築しました.その際には,擬似焼き鈍し法や遺伝アルゴリズムといったメタヒューリスティクスの適用を陽にふまえた解法の構築を行いました.この解法により,100個以上の搬送物を有した,より大規模な問題に対して効果的に良質な解を獲得できることを確認しました.さらには,AGVを用いた搬送計画システムを取り上げ,AGVの走行経路を自律分散的に獲得するための方法として,AGV同士の衝突時における交渉に着目し,交渉ルールを自動的に獲得するためにGenetic-Based Machine Learningを適用しました.この方法により,リアルタイムに計画作成が可能となり,計算機実験により,10台以上のAGVが同時に稼働する搬送システムにおいても,個々のAGVの搬送時間をあまり悪化させないような走行経路を獲得できることを確認しました.これらの成果については,すでに国内(4件),国外(3件)の学会報告を行いました.さらには,国内の論文誌に1件を投稿・掲載,1件を投稿しました.
KAKENHI-PROJECT-17760327
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デザイン力を鍛えるグループワークの創造性評価指標の研究
デザイン思考によるグループワークを規範としたイノベーションデザインによる問題発見型のグループワークにおいて創造性評価を行う方法を考案し,検証・改善を行った.評価方法開発においては,個人の行動変容モデルを基盤に,創造的な行為を中心とした態度と意欲の変容をとらえ,習慣化する過程も範疇とした変容プロセスのモデル化をおこなった.モデルに準拠し,段階別の評価ができるように改良した.また,グループの他者評価を行い,質的分析を実施した.結果,自己評価のほうが精度が高いことが示唆された.さらに,第3者による評価や客観評価(行動や会話の分析)と対照し,グループワークの創造性について,プロセス重視の総合的評価方法を確立すべく検討を重ねた.従来グループワークの評価はアンケートによるものか成果物に対するものが多かったが,本研究の成果が教育実践評価の有益な知見となると見込まれる。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。本研究は、創造的問題解決におけるグループワーク効果において指摘されているジレンマ、すなわち個人の創造性がグループの創造性を上回ると報告されている問題を解くために、グループワークとは何かという本質の解明と、それを踏まえてデザイン力を鍛えるグループワーク評価方法の提案を行うことを目的としている。そのために様々なグループワークを調査し、その特長をより明確にし、デザイン課題によるグループワークでの創造性発現の仕組みをとらえることを目指した。実際の教育実践を通してこそ実施できる研究であるため、北陸先端科学技術大学院大学でおこなっているグループワークによるアクティブラーニングや、デザイン思考を取り入れたイノベーションデザイン教育を事例として、大学院等の教育におけるグループワークでのアイデア生成の過程をとらえ、どのような評価指標や評価フィードバックの方法が適切であるか、議論を重ねた。mini-cを起点としたアイデア生成過程のプロセスを体系化し、創造的な成果に結びつく要因を探った。グループワークのコレクションにも取組み、国内の事例のみならず、アメリカ合衆国、ヨーロッパ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、インド等の教育実践事例を収集し、プログラム開発者にインタヴューし、グループワークをファシリテートする方法や評価方法、フィードバックの仕方を調べ、体系化を目指した。また、評価方法の検討を重ね、特に独創性への寄与に焦点をあて、グループワークの調査・分析を行った。併せて、得られた結果を反映したルーブリックによる自己評価方法の試行もおこなった。これを基に他者評価フィードバックの効果を検討する段階である。デザイン力を鍛えるために何が必要かという問いに対し、相互主観性等の共創におけるモチベーション形成の特長をとらえて議論するに至った点は、当初の計画を上回るものであった。また、mini-cを起点としたアイデア生成過程のプロセスを体系化し、何がより創造的な成果に結びつくのか、その要因を探った。結果、自己変容プロセスとしてとらえることで、これまで曖昧であったグループワークの枠組みを個人の行動変化としてより明確にとらえることに成功した。以上の成果は国際会議の発表論文として採択された。また、調査研究として実際に行われているヨーロッパやシンガポールの共創的グループワークの事例を収集し、インタヴューによる深掘りをしたことで、グループワークにより鍛えられる力の整理をすることができ、グループワークの体系化が順調に進んだ。評価方法の提案においては、実装に至っており、実際の高等教育現場で用いられているが、まだ改善の余地が残されており、2017年度の課題として取り組む計画である。現代社会で活躍するために様々な側面で創造性が求められているが、なかでも他者との協働によるグループワークでの創造性がイノベーション創出に結びつくと期待されている。「デザイン思考」が高等教育のみならず、社会や産業からも注目されている所以である。しかし、その活動をどう評価すればよいのかについては、曖昧なままである。本研究は、グループワークでのデザイン力の強化とそのリーダーシップを発揮できる人財の育成を目指して実施されている高等教育におけるデザイン思考やワークショップでの創造的実践をどのように評価すべきかという問題を提起し、その手法を提案することを目的としている。そのために、ルーブリックによる尺度評価を参照した自己評価および他者評価の方法を検討した。昨年度までの研究成果を基盤に、グループワークを実践し、その評価を行うとともに、国内外の関連する研究を調査し、考察を行った。日本デザイン学会や認知科学会での研究発表、および、国際会議での研究発表とワークショップを行って開発した評価法の普及に努めた。グループワークを主とした高等教育カリキュラムに向けた「イノベーションデザイン論」を提唱し、日本デザイン学会誌の特集号を刊行した。国際会議では基調講演も行い、グループにより創造性についての総合的論考を行った。その成果の一部について、国際ジャーナルに掲載し、また、T. Lubartら創造性に関する第一線の研究者らとともに書籍の章としてSpringerより出版した。デザイン思考は現在様々な分野で注目を集めているが、具体的にどのようなプロセスであり、どのように評価すべきかが問題であったが、本研究の成果により、その問題の解決に一歩近づいたと言える。行動観察や談話解析においては、最新技術を導入し、合理化を進めるなど、将来的な普及に向けて開発を重ねた。「デザイン力」として総合される実践的な創造性をとらえ、その評価方法を構築するために、関連する手法を精査し、体系的に議論・検討を重ねた。また、今日の目覚ましい情報技術の展開に注目し、センサリング技術等、最新のテクノロジーを駆使した行動変容を捉える方法も合わせて検討した。申請時には未開発であった技術も普及の一歩手前まで発展しており、本研究での接合も可能性が見込まれる。
KAKENHI-PROJECT-16H03015
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デザイン力を鍛えるグループワークの創造性評価指標の研究
グループワークの評価について、国際的に著名な研究者と国際会議等でディスカッションする機会を得ることができ、検討を重ねることで、より使いやすく合理的な方法として将来普及する見込みが高まっている。また、mini-cという、これまでは議論することが困難であった創造性発現の前段階についても本研究の独自性としての意義が明確になった。mini-cについての研究を国内外で発表したことにより、外部からの協力者を得ることができ、調査分析が予定より早く進み、専門的学術誌に論文が掲載されるに至っており、当初の計画より6か月程度早い進捗である。デザイン思考によるグループワークを規範としたイノベーションデザインによる問題発見型のグループワークにおいて創造性評価を行う方法を考案し,検証・改善を行った.評価方法開発においては,個人の行動変容モデルを基盤に,創造的な行為を中心とした態度と意欲の変容をとらえ,習慣化する過程も範疇とした変容プロセスのモデル化をおこなった.モデルに準拠し,段階別の評価ができるように改良した.また,グループの他者評価を行い,質的分析を実施した.結果,自己評価のほうが精度が高いことが示唆された.さらに,第3者による評価や客観評価(行動や会話の分析)と対照し,グループワークの創造性について,プロセス重視の総合的評価方法を確立すべく検討を重ねた.従来グループワークの評価はアンケートによるものか成果物に対するものが多かったが,本研究の成果が教育実践評価の有益な知見となると見込まれる。これまでにグループワークの創造性について、文献調査や調査研究を経て、体系的な理解を深めてきた。また、個人の創造性とグループの創造性の相違点を明確化し、その評価方法についても議論を重ねてきた。今後は、グループワークの事例の数と種類を増やし、より完成度の高い体系化を図る計画である。また、mini-cを起点としたアイデア生成プロセスとデザイン思考のニーズ指向の創造的問題解決の合理的接点を見出すことを目標に、デザイン課題によるグループワークの分析に努め、より具体的なコミュニケーション分析により優れたアクティブラーニングのカリキュラム開発につながるヒントを見出すことや独創性を重視しながらもチームワーク力を高める、より高度な行動変容過程を明らかにしていくことに挑戦する。本研究の成果は、国際的な学術コミュニティで積極的に発信していく予定である。当初の計画どおり順調に研究が進んでおり、実践を重ねることで精度が高くなっている。さらに文献研究からの知見が強化されたことで、適応範囲も広がっている。プロセス評価とプロダクト評価の軸を明確に区分することにも成功し、評価手法の構造も整理された。今後の方針として、特に海外事例との対応を進める所存である。
KAKENHI-PROJECT-16H03015
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再生骨材とフライアッシュを組み合わせたコンクリート構造物のリサイクル技術の開発
石炭火力発電所からの産業副産物であるフライアッシュ(FA)と、解体コンクリートからの再生骨材を用いた構造物のリサイクル技術を研究した。研究ではFAを混和した再生骨材コンクリートを構造物に使用するための基礎性能を知ることを目的に、3つの課題の解決に取り組んだ。1つ目はコンクリートの老朽化の目安を知るために耐久性能を把握した。2つ目はFAや再生骨材を用いたときの力学性能の変化を把握した。3つ目は実際の構造物を設計するために数値解析手法を確立した。フライアッシュ(FA)を混和した再生骨材コンクリートを構造物のリサイクルに利用する手法の開発を目的に、3つの課題の解決に取り組んでいる。課題は1耐久性向上の確認、2力学性能の把握と構成則の確立、3構造設計手法の確立である。1耐久性向上の確認:FAを混和した再生骨材コンクリートを用いて、塩分浸透試験(電気泳動法)、表面吸水量試験(土木研究所法)、アルカリシリカ反応(ASR)膨張率試験(デンマーク法)を実施した。試験にあたり原コンクリートを製作し、破砕後にふるい分けをすることで粒径525mmの再生粗骨材とした。実験は粗骨材を普通骨材と再生骨材の2種類、水結合材比W/Bを45%と55%の2水準、FA添加量を0、15、25%の3水準とした9ケースで実施した。その結果、FAを添加した再生骨材コンクリートの塩分浸透性抵抗性は、材齢の経過とともに改善した。また、6時間吸水量と塩分の拡散係数の相関は一部のケースでのみ確認できた。再生骨材の膨張量は普通骨材の値に比べて大きかったが、FAを添加することで膨張量を抑えることができた。課題として、電気泳動法による塩分浸透試験の結果にばらつきが大きいこと、ASRの抑制効果の詳細分析が挙げられた。2力学性能の把握と構成則の確立:課題1と同様の混和条件に加えて、短繊維を混入した供試体を用意し、3つの試験(圧縮破壊試験、曲げ試験、拘束ひび割れ試験)を行い、材料特性とひび割れ抵抗性の把握と材料構成則の確立を実施する項目である。圧縮破壊試験を実施し、FA混和による圧縮強度や破壊挙動の改善効果を明らかにした。また、切欠きを有するはりの曲げ試験を実施し、データ整理を行っている。3構造設計手法の確立:課題2の材料構成則を導入した構造解析を実施し、混和条件による耐荷力や変形性能の違いを検討する項目であり、解析の準備を進めている。フライアッシュ(FA)を混和した再生骨材コンクリートを構造物のリサイクルに利用する手法の開発を目的に、3つの課題の解決に取り組んでいる。課題は(1)耐久性向上の確認、(2)力学性能の把握と構成則の確立、(3)構造設計手法の確立である。(1)耐久性向上の確認:FAを混和した再生骨材コンクリートを用いて、H25年度に1塩分浸透試験(電気泳動法)、2表面吸水量試験(土木研究所法)、3アルカリシリカ反応(ASR)膨張率試験(デンマーク法)を実施した。その結果、FAを添加した再生骨材コンクリートの塩分浸透抵抗性は、材齢の経過とともに改善した。また、FAを添加することで再生骨材コンクリートのASR膨張量を抑えることができた。課題として、電気泳動法による塩分浸透試験の結果にばらつきが大きかったことが挙げられた。H26年度はこの課題解決のために4浸漬法による塩分浸透試験を実施しており、浸漬期間3ヶ月の試験が終了した。その結果から、FA添加により再生骨材コンクリートの塩分浸透抵抗性の改善が確認できている。(2)力学性能の把握と構成則の確立:課題(1)と同様の混和条件に加えて、短繊維を混入した供試体を用意し、H25年度に1圧縮破壊実験を実施し、FA混和による圧縮強度や破壊挙動の改善効果を明らかにした。H26年度には2切欠きを有するはりの曲げ試験を実施し、引張軟化曲線を算出した。また、3拘束ひび割れ試験を実施し、ひび割れ抵抗性を評価した。加えて、4乾燥収縮試験を実施して、試験のひずみ履歴を土木学会の算定式で粗骨材の吸水率を考慮することで推定できた。(3)構造設計手法の確立:課題(2)の材料構成則を導入した構造解析を実施し、混和条件による耐荷力や変形性能の違いを検討する項目である。引張軟化モデルと乾燥収縮ひずみ式を導入した拘束ひび割れ試験のモデル解析を実施し、ひび割れ幅がおおむね一致した。フライアッシュ(FA)を混和した再生骨材コンクリートを構造物のリサイクルに利用する手法の開発を目的に、3つの課題の解決に取り組んでいる。課題は(1)耐久性向上の確認、(2)力学性能の把握と構成則の確立、(3)構造設計手法の確立である。(1)耐久性向上の確認:FAを混和した再生骨材コンクリートを用いて、H25年度に1塩分浸透試験(電気泳動法)、2表面吸水量試験(土木研究所法)、3アルカリシリカ反応(ASR)膨張率試験(デンマーク法)を実施した。その結果、FAを添加した再生骨材コンクリートの塩分浸透抵抗性は、材齢の経過とともに改善した。また、FAを添加することで再生骨材コンクリートのASR膨張量を抑えることができた。H26H27年度は1のバラつきが大きかった課題の解決のために4浸漬法による塩分浸透試験を実施した。
KAKENHI-PROJECT-25420461
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25420461
再生骨材とフライアッシュを組み合わせたコンクリート構造物のリサイクル技術の開発
その結果から、FA添加により再生骨材コンクリートの塩分浸透抵抗性の改善を確認した。(2)力学性能の把握と構成則の確立:課題(1)と同様の混和条件に加えて、短繊維を混入した供試体を用意し、H25年度に1圧縮破壊実験を実施し、FA混和による圧縮強度や破壊挙動の改善効果を明らかにした。H26年度には2切欠きを有するはりの曲げ試験を実施し、引張軟化曲線を算出した。また、3拘束ひび割れ試験を実施し、ひび割れ抵抗性を評価した。加えて、4乾燥収縮試験を実施して、試験のひずみ履歴を土木学会の算定式で粗骨材の吸水率を考慮することで推定できた。H27年度には1圧縮破壊実験の追加実験を行い、圧縮破壊を受けるコンクリートの応力軟化モデルを構築した。(3)構造設計手法の確立:課題(2)の材料構成則を導入した構造解析を実施し、混和条件による耐荷力や変形性能の違いを検討する項目である。引張軟化モデルと乾燥収縮ひずみ式を導入した拘束ひび割れ試験のモデル解析を実施し、ひび割れ幅がおおむね一致した。石炭火力発電所からの産業副産物であるフライアッシュ(FA)と、解体コンクリートからの再生骨材を用いた構造物のリサイクル技術を研究した。研究ではFAを混和した再生骨材コンクリートを構造物に使用するための基礎性能を知ることを目的に、3つの課題の解決に取り組んだ。1つ目はコンクリートの老朽化の目安を知るために耐久性能を把握した。2つ目はFAや再生骨材を用いたときの力学性能の変化を把握した。3つ目は実際の構造物を設計するために数値解析手法を確立した。実施項目(1)および(2)における実験項目は当初計画どおりに進展している。しかし、実設計に適用するための精度向上には実験の追加が必要であると考えて「おおむね順調に進展している」と評価した。(全体の達成度:68%)(1)耐久性向上の確認(達成度80%×割合0.4):今年度までに計画していた3つの実験を終了し、FA混和が塩分浸透抵抗性とASR膨張抑止性の改善に与える影響を確認し、当初計画通りに進展している。精度向上のために、追加実験を実施または計画しており、塩分浸透抵抗性では電気泳動法に代えて浸漬法での実験を継続している。ASR膨張抑止性では結果の検証ならびに現象の理解を目的に、追加試験を実施する。(2)力学性能の把握と構成則の確立(80%×0.3):今年度までに計画していた4つの実験を終了し、その定量評価や構成則検討を行っており、当初計画どおりに進展している。圧縮軟化モデルの精度向上のために、圧縮破壊実験の追加を計画している。(3)構造設計手法の確立(40%×0.3):引張軟化モデルを用いて拘束ひび割れ試験のモデル解析を実施した。加えて、通常コンクリートを想定した鉄筋コンクリートの試験体モデルや梁モデルの解析を実施した。コンクリート工学今後の研究(27年度)として、当初計画通りに3つの研究課題を行う予定である。(1)耐久性向上の確認:塩分浸透抵抗性について、電気泳動法ではばらつきが大きいことが課題であったため、浸漬法で追加試験を行っており、浸漬期間6ヶ月の塩分分析を実施する。また、ASR膨張抑制について、これまでに各パラメータ1体で良好な結果が得られたため、影響要因を精査するためのパラメータを設定して追加試験を行う。最後にFAを添加した再生骨材コンクリートの耐久性設計に関して提案を行う。
KAKENHI-PROJECT-25420461
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25420461
脳内老化制御における酸化ストレスバイオマーカーの確立と抗酸化食品因子による予防
1.免疫組織化学的解析法による脳内酸化ストレス傷害の解析を行うために、好中球のミエロペルオキシダーゼ(MPO)由来のOCI-によるA-beta-amyloid(Aβタンパク質)のハロゲン化修飾物を得ることに成功し、化学的な解析に成功した。2.ドーパミンと脂質ヒドロペルオキシドとの反応で生成したアミド型構造を有するドーパミン修飾付加体の化学的な解析を行い、LC-MSおよびLC-MS/MSによる質量分析およびNMRによる構造決定に成功した。また、これらのドーパミン修飾付加体についてin vitroおよびラットの脳からLC-MS/MSを用いた検出法を確立し、ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Yを用いたドーパミン修飾付加体の毒性評価を核染色により行った結果、2つのドーパミン修飾付加体において、特に強力な細胞毒性を示すことが明らかとなった。3.抗体チップの作製と検出系の確立を目的に、脳内における炎症反応など、新しい「酸化ストレス」バイオマーカーに特異的なモノクローナル抗体を集約的に集め、アゾポリマーを基板とするスライドへのインプリンティングの検討を行った。その結果、最大160スポットのモノクローナル抗体の搭載に成功し、μlオーダーで血液や尿、唾液などの素材で解析できる「抗体チップ」の作製の基盤的な研究を行った。4.老化制御食品の開発を目的に、酵母老化関連遺伝子Sir2の活性の制御に関して、クルクミンやアントシアニン、レモンフラボノイドなどの抗酸化食品因子による老化制御の可能性の検討を行った。その結果、クルクミンの生体内代謝物であるテトラヒドロクルクミンに強力な老化制御作用が明らかになったので、現在、分子レベルでの作用の解明を進めており、今後、その結果を基に哺乳類老化モデルに対する効果を検証する予定である。1.免疫組織化学的解析法による脳内酸化ストレス傷害の解析を行うために、好中球のミエロペルオキシダーゼ(MPO)由来のOCI-によるA-beta-amyloid(Aβタンパク質)のハロゲン化修飾物を得ることに成功し、化学的な解析に成功した。2.ドーパミンと脂質ヒドロペルオキシドとの反応で生成したアミド型構造を有するドーパミン修飾付加体の化学的な解析を行い、LC-MSおよびLC-MS/MSによる質量分析およびNMRによる構造決定に成功した。また、これらのドーパミン修飾付加体についてin vitroおよびラットの脳からLC-MS/MSを用いた検出法を確立し、ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Yを用いたドーパミン修飾付加体の毒性評価を核染色により行った結果、2つのドーパミン修飾付加体において、特に強力な細胞毒性を示すことが明らかとなった。3.抗体チップの作製と検出系の確立を目的に、脳内における炎症反応など、新しい「酸化ストレス」バイオマーカーに特異的なモノクローナル抗体を集約的に集め、アゾポリマーを基板とするスライドへのインプリンティングの検討を行った。その結果、最大160スポットのモノクローナル抗体の搭載に成功し、μlオーダーで血液や尿、唾液などの素材で解析できる「抗体チップ」の作製の基盤的な研究を行った。4.老化制御食品の開発を目的に、酵母老化関連遺伝子Sir2の活性の制御に関して、クルクミンやアントシアニン、レモンフラボノイドなどの抗酸化食品因子による老化制御の可能性の検討を行った。その結果、クルクミンの生体内代謝物であるテトラヒドロクルクミンに強力な老化制御作用が明らかになったので、現在、分子レベルでの作用の解明を進めており、今後、その結果を基に哺乳類老化モデルに対する効果を検証する予定である。脳内老化に基づいた酸化ストレスに対する新規バイオマーカーの探索を行い、それらをプローブとした評価法を構築して分子レベルにおける酸化ストレス傷害発現機構の解明と予防の評価法確立のため、免疫化学的なアプローチを中心にマーカーの特異的微量定量法を確立し、酸素ラジカルにより誘導される生物ラジカル反応、特に生体内脂質過酸化反応の動的解析を行うことを目的として研究を行った。特に、脳内に多く存在し、記憶や視覚に必須なDHAやアラキドン酸などの多価不飽和脂肪酸を対象に脳内酸化ストレスバイオマーカーとなりうるPRLやSULやHELなどの新規な酸化修飾化合物の構造を明らかにし、LC-MS/MSによる測定法の確立と共にモノクローナル抗体の作製に成功し、ラットの脳内で、老化に伴い増加することを明らかにした。さらに、過剰な炎症反応の結果生じるタンパク質やDNAのニトロ化やハロゲン化反応にも着目し、特に、新しいハロゲン化チロシンやデオキシシチジンに特異的なモノクローナル抗体の作成に成功した。そこで、これらの抗体を用いて、パーキンソン病やアルツハイマー病患者の脳脊髄液を採取し、パーキンソン病に関してはα-synuclein(αSyn)、アルツハイマー病に関してはβ-amyloid(Aβ)タンパク質中でもこれらの新規な酸化修飾物が検出されることを見出し、現在、これらマーカーが疾病の活動度や病期とどのような関連をもつかを明らかとし、発症予防さらなる臨床応用可能な治療マーカーの同定を目指している。さらに、脳内酸化傷害や黒質ドパミン神経細胞の細胞死を防御する食品機能因子を開発することを目標に、ハーブ、スパイス中の抗酸化食品因子を用いてヒトレベルでの効能評価を目的として検討を行い、ゴマリグナンの生体内代謝物であるセサミノールカテコール化合物の抗酸化的防御機構について新たな知見を得ている。1.免疫組織化学的解析法による脳内酸化ストレス傷害の解析を行うために、好中球のミエロペルオキシダーゼ(MPO)由来のOCl-によるA-beta-amyloid(Aβタンパク質)のハロゲン化修飾物を得ることに成功し、化学的な解析に成功した。
KAKENHI-PROJECT-16208013
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脳内老化制御における酸化ストレスバイオマーカーの確立と抗酸化食品因子による予防
2.ドーパミンと脂質ヒドロペルオキシドとの反応で生成したアミド型構造を有するドーパミン修飾付加体の化学的な解析を行い、LC-MSおよびLC-MS/MSによる質量分析およびNMRによる構造決定に成功した。また、これらのドーパミン修飾付加体についてin vitroおよびラットの脳からLC-MS/MSを用いた検出法を確立し、ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Yを用いたドーパミン修飾付加体の毒性評価を核染色により行った結果、2つのドーパミン修飾付加体において、特に強力な細胞毒性を示すことが明らかとなった。3.抗体チップの作製と検出系の確立を目的に、脳内における炎症反応など、新しい「酸化ストレス」バイオマーカーに特異的なモノクローナル抗体を集約的に集め、アゾポリマーを基板とするスライドへのインプリンティングの検討を行った。その結果、最大160スポットのモノクローナル抗体の搭載に成功し、μlオーダーで血液や尿、唾液などの素材で解析できる「抗体チップ」の作製の基盤的な研究を行った。4.老化制御食品の開発を目的に、酵母老化関連遺伝子Sir2の活性の制御に関して、クルクミンやアントシアニン、レモンフラボノイドなどの抗酸化食品因子による老化制御の可能性の検討を行った。その結果、クルクミンの生体内代謝物であるテトラヒドロクルクミンに強力な老化制御作用が明らかになったので、現在、分子レベルでの作用の解明を進めており、今後、その結果を基に哺乳類老化モデルに対する効果を検証する予定である。
KAKENHI-PROJECT-16208013
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16208013
進化的に保存された新規な蛋白質合成阻害蛋白質PSPの生理機能解明
ラット肝臓過塩素酸可溶性蛋白質(L-PSP)は無細胞蛋白質合成系において蛋白質合成を阻害する蛋白質であるが、その作用機序は明らかでない。本研究は、PSPがユニークなリボヌクレアーゼであること、またリボヌクレアーゼ活性が翻訳阻害に関与している可能性を示したものである。ウサギ網状赤血球へ6.2μMのPSPを加えると殆ど完全に蛋白質合成が抑制された。蛋白質合成阻害のキネッテイックスは、翻訳開始反応を阻害するヘミンコントロールド阻害因子とは異なっていた。L-PSPはmRNAの鋳型活性に直接影響を及ぼすことから、L-PSPの蛋白質合成阻害活性はPSPが持つリボヌクレアーゼ活性に依存すると思われた。またPSPはチクロヘキシミド存在下でポリゾーム破壊を誘導した。これらの効果は、遺伝子組換えPSPを用いても観察された。[α-^<32>P]UTPで標識したmRNAをPSPとインキュベート後薄層クロマトグラフィーで展開した結果、Ap,Gp,UpならびにGpが観察されPSPがリボヌクレアーゼであることが直接証明された。放射標識された5S rRNAを基質としてRNA分解の特異性を検討した結果、1本鎖のRNA鎖を特異的に分解することが明らかにされた。PSPのアミノ酸配列にはヒスチジン残基が観察されないことからPSPはユニークなリボヌクレアーゼであると思われる。ラット肝臓過塩素酸可溶性蛋白質(L-PSP)は無細胞蛋白質合成系において蛋白質合成を阻害する蛋白質であるが、その作用機序は明らかでない。本研究は、PSPがユニークなリボヌクレアーゼであること、またリボヌクレアーゼ活性が翻訳阻害に関与している可能性を示したものである。ウサギ網状赤血球へ6.2μMのPSPを加えると殆ど完全に蛋白質合成が抑制された。蛋白質合成阻害のキネッテイックスは、翻訳開始反応を阻害するヘミンコントロールド阻害因子とは異なっていた。L-PSPはmRNAの鋳型活性に直接影響を及ぼすことから、L-PSPの蛋白質合成阻害活性はPSPが持つリボヌクレアーゼ活性に依存すると思われた。またPSPはチクロヘキシミド存在下でポリゾーム破壊を誘導した。これらの効果は、遺伝子組換えPSPを用いても観察された。[α-^<32>P]UTPで標識したmRNAをPSPとインキュベート後薄層クロマトグラフィーで展開した結果、Ap,Gp,UpならびにGpが観察されPSPがリボヌクレアーゼであることが直接証明された。放射標識された5S rRNAを基質としてRNA分解の特異性を検討した結果、1本鎖のRNA鎖を特異的に分解することが明らかにされた。PSPのアミノ酸配列にはヒスチジン残基が観察されないことからPSPはユニークなリボヌクレアーゼであると思われる。申請者らは、ラット肝臓細胞質画分から蛋白質合成阻害活性を有する新規な蛋白質を発見した。分子量14000の本蛋白質は、組織特異的に発現しており、肝臓の結合織と腎臓の近位尿細管において特異的に発現している。ラットPSPが報告された後、ヒトや他の生物種においてPSP様蛋白質が存在することが相次いで報告された。またホモロジー検索からPSP遺伝子は大腸菌からヒトに至る広範囲の生物種において高度に保存されており、PSPの細胞内における生理学的重要性が指摘されている。本研究では、PSPによる蛋白質合成阻害の分子機構ならびに生理的意義を明らかにすることを目的とする。本年度は、特にPSPの大腸菌における発現系の開発について検討した。クローニングによって得られたPSP cDNAからPCRによってopen reading frameを含む領域を増幅させた。増幅させた断片をpGEX4T-1ベクターに挿入し、PSPをグルタチオントランスフェラーゼ融合蛋白質として発現させる系を開発した。組換え大腸菌を培養した後、遺伝子組換えPSPをグルタチオンのアフィニテイーカラムによって精製した。精製組換えPSPの蛋白質合成阻害活性を、ウサギ網状赤血球の無細胞蛋白質合成系を用いて検討した結果、authentic PSPの蛋白金合成阻害活性より低いが、0.1μMのIC_<50>を示した。ラット肝臓過塩素酸可溶性蛋白質(L-PSP)は無細胞蛋白質合成系において蛋白質合成を阻害する蛋白質であるが、その作用機序は明らかでない。本研究はPSPがユニークなリボヌクレアーゼであること、またリボヌクレアーゼ活性が翻訳阻害に関与している可能性を示したものである。ウサギ網状赤血球へ6.2μMのPSPを加えると殆ど完全に蛋白質合成が抑制された。蛋白質合成阻害のキネッテイックスは、翻訳開始反応を阻害するヘミンコントロールド阻害因子とは異なっていた。L-PSPはmRNAの鋳型活性に直接影響を及ぼすことから、L-PSPの蛋白質合成阻害活性はPSPが持つリボヌクレアーゼ活性に依存すると思われた。またPSPはチクロヘキシミド存在下でポリゾーム破壊を誘導した。これらの効果は、遺伝子組換えPSPを用いても観察された。[α-^<32>P]UTPで標識したmRNAをPSPとインキュベート後薄層クロマトグラフィーで展開した結果、Ap,Gp,UpならびにGpが観察されPSPがリボヌクレアーゼであることが直接証明された。放射標識された5S rRNAを基質としてRNA分解の特異性を検討した結果、1本鎖のRNA鎖を特異的に分解することが明らかにされた。
KAKENHI-PROJECT-10680614
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10680614
進化的に保存された新規な蛋白質合成阻害蛋白質PSPの生理機能解明
PSPのアミノ酸配列にはヒスチジン残基が観察されないことからPSPはユニークなリボヌクレアーゼであると思われる。
KAKENHI-PROJECT-10680614
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10680614
戦争権限の立法的統制の研究
本研究では、主に連邦議会による立法的統制に着目してその手法を明らかにすることを目的とする。合衆国憲法の戦争権限に関する規定に単純に依拠しても問題は解決することができず、憲法規定の不明確さや権力分立原理の不明確さから議論は混迷している。戦争権限がしばしば法的問題としてよりは、政治的調整として取り扱われてきたことに注意し、政治的慣行等にも目を向け、一般的に広く取りあげられている1973年戦争権限法に限らず予算、軍備管理、国政調査権といった様々な手法に着目する。本研究では、主に連邦議会による立法的統制に着目してその手法を明らかにすることを目的とする。合衆国憲法の戦争権限に関する規定に単純に依拠しても問題は解決することができず、憲法規定の不明確さや権力分立原理の不明確さから議論は混迷している。戦争権限がしばしば法的問題としてよりは、政治的調整として取り扱われてきたことに注意し、政治的慣行等にも目を向け、一般的に広く取りあげられている1973年戦争権限法に限らず予算、軍備管理、国政調査権といった様々な手法に着目する。
KAKENHI-PROJECT-19K23162
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K23162
疾患モデル動物の体系的遺伝子発現解析による創薬標的分子の同定
ゲノム科学の登場により生命科学、特に医学研究のスタイルが大きく変わった。論理的発展としては、ゲノム→トランスクリプトーム→プロテオーム、という道筋は明らかであり、各相の探索解析法の開発が行われてきているが、遺伝子機能を体系的に"ゲノムスケール"で解析する標準的アプローチを欠いている。近年ゲノムテクノロジーの進展により,発現変動している遺伝子群を微量サンプルで解析できる革新技術としてマイクロアレイ法やDNAチップ等のトランスクリプトーム・スキャニングが登場した。本研究ではその遺伝子情報が未だ充実していない動物モデルの各臓器別標準化cDNAライブラリーを作成し、このライブラリーを高密度に配置した臓器別標準cDNAライブラリーDNAチップを作成し、モデル疾患における病態遺伝子発現の解析と既存の薬物治療により変動する発現遺伝子群を絞り込むことを目的とした。このチップを用いて疾患動物モデルで遺伝子発現の変動をモニター解析し、病態関連遺伝子群、治療関連遺伝子群を絞り上げを実施し病態生理上の意義を検討した。例として、ラット糸球体基底膜を抗原とするウサギ抗血清をラットに投与することにより,ラット糸球体腎炎モデルを作製した。糸球体腎炎の誘発は,ラットに上記の腎炎誘発用の抗血清投与液を静脈内投与することにより行い、ラット腎臓標準化cDNAマイクロアレイチップを用いて,ラット糸球体腎炎モデルの腎臓組織において発現量が変動する遺伝子、腎臓組織における発現変動遺伝子を解析した。その結果、腎疾患の病態形成,病状の悪化や治療のターゲットに関連する可能性の極めて高い遺伝子群を見出すことができた。以上のことから、この方法論は病態解析、創薬ターゲットの絞り込みに有効な方法論であることが明かとなった。ゲノム科学の登場により生命科学、特に医学研究のスタイルが大きく変わった。論理的発展としては、ゲノム→トランスクリプトーム→プロテオーム、という道筋は明らかであり、各相の探索解析法の開発が行われてきているが、遺伝子機能を体系的に"ゲノムスケール"で解析する標準的アプローチを欠いている。近年ゲノムテクノロジーの進展により,発現変動している遺伝子群を微量サンプルで解析できる革新技術としてマイクロアレイ法やDNAチップ等のトランスクリプトーム・スキャニングが登場した。本研究ではその遺伝子情報が未だ充実していない動物モデルの各臓器別標準化cDNAライブラリーを作成し、このライブラリーを高密度に配置した臓器別標準cDNAライブラリーDNAチップを作成し、モデル疾患における病態遺伝子発現の解析と既存の薬物治療により変動する発現遺伝子群を絞り込むことを目的とした。このチップを用いて疾患動物モデルで遺伝子発現の変動をモニター解析し、病態関連遺伝子群、治療関連遺伝子群を絞り上げを実施し病態生理上の意義を検討した。例として、ラット糸球体基底膜を抗原とするウサギ抗血清をラットに投与することにより,ラット糸球体腎炎モデルを作製した。糸球体腎炎の誘発は,ラットに上記の腎炎誘発用の抗血清投与液を静脈内投与することにより行い、ラット腎臓標準化cDNAマイクロアレイチップを用いて,ラット糸球体腎炎モデルの腎臓組織において発現量が変動する遺伝子、腎臓組織における発現変動遺伝子を解析した。その結果、腎疾患の病態形成,病状の悪化や治療のターゲットに関連する可能性の極めて高い遺伝子群を見出すことができた。以上のことから、この方法論は病態解析、創薬ターゲットの絞り込みに有効な方法論であることが明かとなった。ゲノムテクノロジーの進展により、微量検体で発現変動している遺伝子群を解析する技術革新としてマイクロアレイ法やDNAチップが登場した。特に、その経済性、網羅性の点からマイクロアレイ法は現在飛躍的にその普及性をのばしており、その応用はヒト及びマウス等のゲノムプロジェクトより得られつつある遺伝子情報と相まって、今後遺伝子機能解析の最有力な技術となることが期待されている。一方、薬理学において疾患モデル動物として薬効評価に従来より用いられてきている動物モデルはラット、モルモット、ウサギが主であり、その遺伝子解析はヒト、マウスと比して著しく遅れており、遺伝子情報に乏しい。このような背景の疾患動物モデルにおける体系的かつ網羅的な遺伝子発現解析が可能となれば、従来より蓄積されているこれら疾患モデル動物を用いた膨大な生理、生化学薬理データを遺伝子変動と関連して有効に活用でき、そのもたらす効果は計り知れないものがある。このような背景のもと、本研究ではその遺伝子情報が未だ充実していない動物モデル(ラット、モルモット)の各臓器別標準化cDNAライブラリーを作成し、このライブラリーを高密度に配置した臓器別標準cDNAライブラリーDNAチップを用い、数種のモデル疾患(腎炎、腎結石、肺繊維症、高血圧、糖尿病など)における病態遺伝子発現の解析を目的とした。本年度はラット腎臓標準化cDNAマイクロアレイチップを用いてラット糸球体腎炎モデル、腎結石モデル等を対象として解析し、腎疾患の病態形成,病状の悪や治療のターゲットに関連する可能性の極めて高い遺伝子群を見出すことができた。本研究により作製したラット腎臓標準化cDNAマイクロアレイチップは、腎疾患の病状の悪化、あるいは改善に関する遺伝子を見出すために有用であると考えられる。疾患に関与する遺伝子が明らかになれば、それをターゲットとしたゲノム創薬がスタートできることから、本研究の意義は大きい。本研究ではその遺伝子情報が未だ充実していない動物モデル(ラット、モルモット)の各臓器別標準化cDNAライブラリーを作成し、このライブラリーを高密度に配置した臓器別標準cDNAライブラリーDNAチップを作成し、モデル疾患における病態遺伝子発現の解析と既存の薬物治療により変動する発現遺伝子群を絞り込むことを目的とした。具体的計画には、初年度マイクロアレイによる標準化cDNAチップの作成方法の確立を、2年度を用いて病態動物モデルを解析する。初年度、ラット、マウスの各臓器より標準化cDNAライブラリーを作製した。作成された各臓器の標準化ライブラリーの内約数万クローンをチップ化する事により、各臓器において発現する全遺伝子群をカタログ化したチップを作成した。
KAKENHI-PROJECT-14370039
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14370039
疾患モデル動物の体系的遺伝子発現解析による創薬標的分子の同定
このチップを用いて疾患動物モデルで遺伝子発現の変動をモニター解析し、病態関連遺伝子群、治療関連遺伝子群を絞り上げを実施し病態生理上の意義を検討した。具体的にはラット糸球体基底膜を抗原とするウサギ抗血清をラットに投与することにより,ラット糸球体腎炎モデルを作製した。糸球体腎炎の誘発は,ラットに上記の腎炎誘発用の抗血清投与液を静脈内投与することにより行い、同時に糸球体腎炎マーカーとしては,尿蛋白および血中クレアチニン濃度、並びに病理組織を測定し、モデル作製の成否について確認した。このモデルでラット腎臓標準化cDNAマイクロアレイチップを用いて,ラット糸球体腎炎モデルの腎臓組織において発現量が変動する遺伝子、腎臓組織における発現変動遺伝子を解析した。その結果、腎疾患の病態形成,病状の悪化や治療のターゲットに関連する可能性の極めて高い遺伝子群を見出すことができた。以上のことから、この方法論は病態解析、創薬ターゲットの絞り込みに有効な方法論であことが明かとなった。
KAKENHI-PROJECT-14370039
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14370039
データマイニング手法を用いた不良シジミ貝分類システムの構築
島根県の特産であるシジミは,全て出荷前に手作業による選別がなされている.この選別作業の負担を軽減するために,不良シジミ貝を判別して自動選別する装置の開発が地域社会において期待されている.本研究では,シジミ貝をぶつけた際に発生する音を周波数分析することにより特徴ベクトルを抽出した後,データマイニング手法により不良シジミ貝を分類するシステムを構築する.具体的には,いくつかの分類手法について性能評価を行い,不良シジミ貝の分類に対して最も適した分類モデルを構築することを第一の目的とする.また,構築された分類モデルおよび操作しやすいユーザインタフェースを組み込んだ判定システムのプロトタイプを開発することを第二の目的とする.本年度は,本研究の第二目的である「判定システムのプロトタイプの構築」に重点を置きつつ,分類手法としてサポートベクターマシン(SVM)についても性能評価を実施した.その結果,1)今回の対象データに対しては,昨年度に実装した多層ニューラルネットワーク(MLP)による手法が最も優れており約95%の判別精度が得られること,2)次いでSVM,k-最近傍識別法(k-NN),決定木学習の順で判別精度が高く,いずれの手法においても88%以上という比較的高い判別精度が得られること,などを確認することができた.また,上記の分類手法を組み込み,グラフィカル・ユーザインタフェースを備えた不良シジミ貝判別ソフトウェアのプロトタイプシステムを開発した.これらの成果をまとめた論文を日本知能情報ファジィ学会誌に投稿し,掲載決定となった.島根県の特産であるシジミは,全て出荷前に手作業による選別がなされている.この選別作業の負担を軽減するために,不良シジミ貝を判別して自動選別する装置の開発が地域社会において期待されている.本研究では,シジミ貝をぶつけた際に発生する音を周波数分析することにより特徴ベクトルを抽出した後,データマイニング手法により不良シジミ貝を分類するシステムを構築する.具体的には,いくつかの分類手法について性能評価を行い,不良シジミ貝の分類に対して最も適した分類モデルを構築することを第一の目的とする.また,構築された分類モデルおよび操作しやすいユーザインタフェースを組み込んだ判定システムのプロトタイプを開発することを第二の目的とする.本年度は,本研究の第一目的である「高精度の分類モデルの構築」に向けて,専門家である漁業者が判定付けしたシジミ貝の音響データを多数集めて事例データベースを準備した後,分類手法として,決定木による方法,k-Nearest-Neighbors法(k-NN),多層ニューラルネットワーク(MLP),線形判別分析(LDA)を実装し,各手法について性能評価を実施した.その結果,1)今回の対象データに対しては,MLPによる手法が最も優れており約95%の判別精度が得られること,2)他のいずれの手法においても約90%以上という高い判別精度が得られること,などを確認することができた.これらの成果に関しては,SICE-ICASE International Joint Conference 2006および電気学会電子・情報・システム部門大会において成果発表を行なった.さらに,本研究の第二目的である「プロトタイプ判定システムの構築」に向けて,上記の分類手法の一部を組み込み,グラフィカルなユーザインタフェースを備えた判定ソフトウェアのプロトタイプシステムを開発した.島根県の特産であるシジミは,全て出荷前に手作業による選別がなされている.この選別作業の負担を軽減するために,不良シジミ貝を判別して自動選別する装置の開発が地域社会において期待されている.本研究では,シジミ貝をぶつけた際に発生する音を周波数分析することにより特徴ベクトルを抽出した後,データマイニング手法により不良シジミ貝を分類するシステムを構築する.具体的には,いくつかの分類手法について性能評価を行い,不良シジミ貝の分類に対して最も適した分類モデルを構築することを第一の目的とする.また,構築された分類モデルおよび操作しやすいユーザインタフェースを組み込んだ判定システムのプロトタイプを開発することを第二の目的とする.本年度は,本研究の第二目的である「判定システムのプロトタイプの構築」に重点を置きつつ,分類手法としてサポートベクターマシン(SVM)についても性能評価を実施した.その結果,1)今回の対象データに対しては,昨年度に実装した多層ニューラルネットワーク(MLP)による手法が最も優れており約95%の判別精度が得られること,2)次いでSVM,k-最近傍識別法(k-NN),決定木学習の順で判別精度が高く,いずれの手法においても88%以上という比較的高い判別精度が得られること,などを確認することができた.また,上記の分類手法を組み込み,グラフィカル・ユーザインタフェースを備えた不良シジミ貝判別ソフトウェアのプロトタイプシステムを開発した.これらの成果をまとめた論文を日本知能情報ファジィ学会誌に投稿し,掲載決定となった.
KAKENHI-PROJECT-18760297
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18760297
エンタングルメントを用いた強相関トポロジカル量子相の研究
エンタングルメントなどを用いた低次元の強相関トポロジカル相の研究を行った。まず、行列積波動関数や場の理論、数値計算などを用いた複合的アプローチにより、SU(N)フェルミオン系などにおける一次元の対称性に護られたトポロジカル相(SPT相)の性質を精密に調べ、非局所秩序変数の有効性を示した。また、一次元磁性体の強磁場磁化プラトーにおいてもSPT相が存在すること、また、その幾何学的位相との関係を明らかにした。次に、強磁場中において、2次元量子磁性体がスピン液体を示す可能性について研究した。具体的には、カゴメ格子上の異方的ハイゼンベルグ模型の3つのプラトーについて数値的に詳細な解析を行った。平成24年度の研究において、フランスの共同研究者と見いだした1次元冷却原子系のトポロジカル相の性質の研究を続行した。まず、冷却原子(フェルミオン)の相互作用が非常に大きい強相関の極限における有効ハミルトニアンを導出し、冷却原子の交換相互作用の符号が鍵であり、その符号によって異なるトポロジカル相が出現すること、また核スピン多重項の数Nによってその性質が全く異なることを明らかにした。これは、異なるトポロジカル相を冷却原子で実現する際に重要である。最近、群コホモロジーの方法によって、相互作用のある系におけるトポロジカル相のクラスを分類することがある程度可能になってきている。そこで、次に我々は、冷却原子系のトポロジカル相の性質を調べ、いかなるトポロジカルクラスに属するかを同定するために、エンタングルメントスペクトラムを調べた。エンタングルメントスペクトラムは波動関数の性質だけを用いて計算されるものであり、波動関数の非局所的性質と密接に結びついているトポロジカル相の性質を調べる上で大変有効であることが明らかになりつつある。我々はinfinite-time-evolving block decimation(iTEBD)法を用いて無限系に対してこれを計算し、トポロジカルクラスを決定することに成功した。トポロジカル相は通常、局所的秩序パラメータによって特徴づけることができないとされているが、もし、比較的簡単な構造を持つ非局所的秩序パラメータで特徴づける(検出する)ことができれば、理論的にも、実験的にも大変魅力的である。我々は、従来知られてきたstring order parameterと呼ばれるものを拡張することでそれが可能であり、また、それらの秩序パラメータがエンタングルメントスペクトラムと密接に関係していることを示した。エンタングルメントなどを用いた低次元の強相関トポロジカル相の研究を行った。まず、行列積波動関数や場の理論、数値計算などを用いた複合的アプローチにより、SU(N)フェルミオン系などにおける一次元の対称性に護られたトポロジカル相(SPT相)の性質を精密に調べ、非局所秩序変数の有効性を示した。また、一次元磁性体の強磁場磁化プラトーにおいてもSPT相が存在すること、また、その幾何学的位相との関係を明らかにした。次に、強磁場中において、2次元量子磁性体がスピン液体を示す可能性について研究した。具体的には、カゴメ格子上の異方的ハイゼンベルグ模型の3つのプラトーについて数値的に詳細な解析を行った。二次元量子系の競合量子相に対する統一的有効理論の構築:「contractor renormaliza tion(CORE)」と呼ばれる実空間くりこみ的な手法に基づいて、低次元量子磁性体におけるエキゾチックな量子相の大域的相構造の問題に取り組んだ。特に、5月6月にToulouse Paul-Sabatier大学に滞在した際に共同研究を進めた。その基礎部分に関する論文をPhysical Review B誌に発表した。強磁場中のスピン液体磁化プラトー状態に関する研究:2012年5月6月にフランスToulouseに滞在した際に、Capponi氏、Plat氏らと数値計算を援用した共同研究を開始し、スピン液体相を含むいくつかの相の構造を明らかにした。2012年度中に主な計算をほぼ終了し、2013年度5月にPlat氏が基礎物理学研究所に滞在する際に完成させる予定である。一次元の強相関トポロジカル相の研究:フランスのグループと共同で、一次元光格子中のアルカリ土類冷却原子気体の相図を調べた。この系は系のパラメータを調整することなくSU(N)(Nはアルカリ土類原子の核スピンの大きさで決まる)という高い対称性を実現できることが知られているが、この系のMott絶縁相の中に、非自明なトポロジカルな性質を持つものがあることを明らかにした。また、そのエンタングルメントの性質を調べた。ホールドープされた一次元トポロジカルスピン系の性質:香川高専(現Stanford大)の長谷部氏と共同で、ある種のトポロジカルな性質を持つ一次元スピン系にホールを注入した際に、そのトポロジカルな性質、エンタングルメントがどのような影響を受けるかを調べた。また、string秩序と呼ばれる非局所的な秩序の存在とエンタングルメントの構造が密接に関係していることを明らかにした。Lecheminant氏をはじめとするフランスのグループと共同で、一次元冷却アルカリ土類フェルミ原子気体の有効模型である2軌道SU(N)ハバード模型の基底状態を、ボゾン化、強結合展開、数値計算などを用いて詳細に調べ、格子点あたりN個のフェルミオンがある場合の相図を完成させた。また、本課題の前年度までの研究でわかっていた一次元トポロジカルモット絶縁相の領域を正確に決定し、その性質を議論した(Physical Review Bに出版済)。
KAKENHI-PROJECT-24540402
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24540402
エンタングルメントを用いた強相関トポロジカル量子相の研究
さらに、エンタングルメントを用いてそのトポロジカルな性質を精密に議論し、トポロジカル相の実験での検出への第一歩として、非局所秩序パラメータの有効性を議論した(Physical Review Bに投稿予定)。次に、強磁場中で実現するスピン液体相を調べるために、Toulouse大のグループと共同でカゴメ格子上の磁場中異方的ハイゼンベルグ模型の基底状態を調べた。異方性の強い極限でこの模型は3つの磁化プラトーを示すが、それらの基底状態の性質は実効的に、磁化の値により拘束条件の異なる量子ダイマー模型で記述される。量子ダイマー模型に対する過去の研究から、磁化0と1/3のプラトーはそれぞれ、スピン液体、スピン結晶(超格子構造を持つ秩序状態)であることが結論されるが、磁化1/6の場合は関係する先行研究が一切ないため、量子モンテカルロ法を用いて数値的に詳細に調べた。この結果、磁化1/6のプラトーはストライプ状の超構造を持つ秩序状態であることがわかった。また、模型に第3近接相互作用を入れて拡張することにより、スピン液体プラトーに到達できる可能性も示唆された(Physical Review Bに投稿予定)。さらに、一次元の対称性に護られたトポロジカル相が強磁場中のプラトーにも現れることを示した(Physical Review Bに出版済)。量子磁性、低次元系の物性理論申請時に挙げた研究課題のうち、一次元系のトポロジカル相の研究については、フランスのグループ、および、研究代表者の所属する基礎物理学研究所の学生である谷本氏との共同研究により、その相構造、トポロジカルな性質に関する理解が非常に深まってきており、まもなくその成果をまとめた論文2篇を投稿予定である。昨年度に発表した論文と併せて、このプロジェクトについては、ほぼ完成に近いと言える。2次元の磁場中スピン液体の研究については、堀田知佐氏、ハンガリーのPenc氏と共同研究を開始し、ある程度の結果が得られているが、まだ現在進行中である。課題のひとつである「二次元量子系の競合量子相に対する統一的有効理論の構築」に関しては、実際に数値的に調べていく過程でいくつか想定したなかった困難があることがわかり、基礎部分の結果は発表したものの研究の完成には至っていない。また、スピン液体のプロジェクトに関しては、進捗状況は順調であり、まもなく結果がまとまる予定である。これに加えて、一次元の強相関系のトポロジカル相の研究に関して、予想していなかった興味深い結果がいくつか得られ、今後の展開が期待される。現在、研究の最終段階に入りつつある一次元冷却原子系のトポロジカル相のプロジェクトを完成させ、結果を公表する。また、2次元系における磁場中スピン液体のプロジェクトであるが、最近、2次元におけるテンソル積波動関数の知見を生かしたアプローチへの着想を得たので、その方向で新展開を目指す。さらに、トポロジカル相における、乱れの効果の研究をスタートさせる。まず、5月から6月にかけて京大基礎物理学研究所に滞在するPlat氏と強磁場中のスピン液体のプロジェクトの完成を目指す。
KAKENHI-PROJECT-24540402
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24540402
1930~1960年代における化粧文化の実態
まず,株式会社コーセーから借用しているPR誌『カトレア』,『BEAUTY』,『beauty profile』,『PRECIOUS BEAUTY』のスキャニングとデータベース化を終えた。同じくコーセーから借用している『週刊粧業』や『日本商業』,『東京商報』,「東京小売商報』についても写真撮影を進めているが,まだ相当量の未撮影分がある。また,資生堂で撮影済の企業文化誌『花椿』については,1990年までのデータベース化を終えた。資生堂やカネボウ,コーセーの企業PR誌については,例年ほど収集できなかった。その代わり,株式会社ポーラのPR誌『エクセル』と『ポーラ美容新聞』の存在を確認し,入手することができた。資生堂やコーセーがおもに都市部で販売活動を展開したのに対し,ポーラや中山太陽堂は地方に拠点を置いた。化粧品の全国的な普及を調査するには,地方における化粧文化の浸透に目を向ける必要があり,この意味でポーラの資料の発見は大きな意味があった。これに関連して,ポーラ化粧文化情報センターの資料閲覧室でも,資料の所在状況を確認した。また,古い化粧品のコレクターとの関係が広がっており,商品や広告類の現物と接する機会が増えている。これらには,社史やPR誌では知ることのできない情報が数多く含まれている。今年度は,中山太陽堂(クラブ)や平尾賛平商店(レート),久保政吉商店(ウテナ),伊東胡蝶園(パピリオ),高橋東洋堂(アイデアル),資生堂などの商品を収集できた。クラブコスメチックスや資生堂企業資料館,紅ミュージアムの企画展示は,いずれも予定通り見学をした。わずかながら,カネボウ化粧品のホームページにも協力できた。平成31年度は石鹸と化粧品に関する特集展示を開催するので,それに向けた調査と資料収集を進めていきたい。研究の初年度に大きな怪我をして,週2回の通院を余儀なくされたことが,現在も尾を引いている。週2回のリハビリは今も続いているが,日常生活にはとくに大きな支障のない状態まで回復している。株式会社コーセーから借用した資料の撮影とスキャニング,データベース化に,当初想定していた以上の多大な時間がかかっている。これは,ヒモで固く綴じられている古くて劣化の進んでいる業界新聞を撮影する際に,慎重を要することと,綴じ合わせの部分がうまく撮影できないことによる。また,データベース化においても,資生堂の『花椿』と合わせて,起用されているモデルの名前や紹介されている商品名の確認に時間がかかっている。日本粧業会の所蔵資料については,担当者と連絡をとり,閲覧希望リストを提出することになっているため,同会のホームページで公開されている資料の確認を進めている。『東京小間物商報』や『東京小間物化粧品商報』,『日本粧業』といった業界新聞のPDFの印刷許可申請をおこなう予定である。一方で,現物の商品やPR誌,広告類の収集は比較的順調である。とくに,化粧品はパッケージのデザインや能書,化粧法の解説など,業界誌や業界新聞には掲載されていない情報が重要であるため,今年度もこれらの資料収集を進めていきたい。また,各メーカーとのお付き合いも概ね順調である。各社の企画展示や所属先の国立歴史民俗博物館での展示,資料収集の場などを使って,情報交換をおこなっている。令和元年度は,国立歴史民俗博物館の第4展示室特集展示「石鹸と化粧品の近現代史」(展示代表者:青木隆浩,12月3日5月6日)を開催する予定のため,過去の商品や広告類,PR誌などさらなる資料の収集と整理,原稿の執筆等の必要な作業を進めていきたい。また,統計データの収集と整理をおこない,対象とする時代における主要な化粧品と石鹸の消費傾向を明らかにしたい。株式会社コーセーから借用している資料の撮影・スキャンは,今年度で済ませ,データベース化をする予定である。また,資生堂の企業文化誌『花椿』のデータベースを校正しつつ,すでに撮影を済ませてあるカネボウ化粧品のPR誌『QUEEN」と『BELL』のデータベース化を進めていく。ただし,『BELL』は1970年代前半までしか撮影していないため,今後も重点的に資料収集を進めていく。その他,『東京小間物商報』や『東京小間物化粧品商報』,『日本粧業』などの業界新聞や業界誌についても継続的に収集を進めていく。各メーカーに対しては,展示や資料収集の機会などを通じて,お付き合いをしていきたい。令和元年度は,すでに株式会社クラブコスメチックスの企画展示「昭和メイクの移ろいー白粉からファンデーションへー」を見学し,展示担当者よりかつて化粧品メーカーとして全国最大手であった中山太陽堂とその後継のクラブコスメチックス,関連会社のマリークワントの商品の歴史について説明を受けた。今後は,資生堂企業資料館での企画展示見学やポーラ化粧文化情報センターでの調査,紅ミュージアムでの常設展示リニューアル見学を予定している。可能であれば,コーセーで高橋東洋堂や平尾賛平商店の調査を依頼したい。高橋東洋堂は,コーセーの創業者が戦時中まで務めていた会社であり,平尾賛平商店はその取引先で,かつて業界2位であった。本研究課題は,おもに1930年代から1930年代にかけての化粧文化について,その実態を探るものである。大正時代までの日本では,洗顔と水性のバニシングクリームによるスキンケアをした後に,薄く白粉を塗るのが日常の一般的な化粧法であった。
KAKENHI-PROJECT-17K03307
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1930~1960年代における化粧文化の実態
ところが,大正末期にハリウッド映画が人気を博し,昭和初期からアメリカ映画女優のメイクをまねたモダンガールが出現すると,都市部を中心に少しずつメイクが普及していった。ただし,その流行期間は短く,第二次世界大戦による「ぜいたくは敵だ」というスローガンや化粧品に対する高額な物品税の導入などにより,メイクの流行は去っていった。本研究課題は,その背景にある社会的・経済的条件とそれらによって変化していった化粧に対する道徳観・価値観の変化を取り上げ,さらに戦時・戦後期に化粧離れが進んだ後,1960年代に再び化粧が人々の生活に定着する様子を明らかにするものである。この目的に対し,平成29年度はすでに企業から借用している業界紙やPR誌をスキャンもしくは撮影・整理し,かつ同業者のPR誌や広告,社史,商品を購入しつつ,リスト化していった。また,それらが作り出された背景を探るために,『化学工業統計年報』などの基本的な統計データを収集して,分析をおこなった。さらに,各社の歴史的な動向を把握するため,クラブコスメティックス文化資料室や伊勢半の紅ミュージアムで,展示担当者の解説をうかがいながら,企画展示を見学した。研究代表者の青木が,平成29年2月に腰と膝を痛め,さらに同年6月初旬の通勤中に自転車をぶつけられて肋骨2本の骨折と頚椎捻挫の重傷を負ったため,一時パソコン入力や筆記が困難になった。その後も腰と膝の状態が長く回復しなかったため,長距離の出張や長時間にわたる写真撮影を控えた。このため,研究課題の遂行開始が遅くなり,かつ調査内容に大きな制限が生じた。その一方で,企業から借用した資料のスキャニングや写真撮影,新たな資料収集など,できることから作業を始めていった。それでも,その分量が膨大であることと,資料の紙質が悪く,取り扱いに慎重を要するため,借用・収集した分をすべてデータ化することができなかった。なお,資料収集については,平尾賛平商店(レート)や久保政吉商店(ウテナ),伊東胡蝶園(パピリオ)など,戦前の大手企業に関するものがあまり進んでいない。業界紙の『週刊日本商業新聞』の所在も探しているが,まだ見つかっていない。それらについては,業界団体の日本粧業会への調査依頼がケガのためにできていないこともあって遅れているので,できるだけ早く対処したい。まず,株式会社コーセーから借用しているPR誌『カトレア』,『BEAUTY』,『beauty profile』,『PRECIOUS BEAUTY』のスキャニングとデータベース化を終えた。同じくコーセーから借用している『週刊粧業』や『日本商業』,『東京商報』,「東京小売商報』についても写真撮影を進めているが,まだ相当量の未撮影分がある。また,資生堂で撮影済の企業文化誌『花椿』については,1990年までのデータベース化を終えた。資生堂やカネボウ,コーセーの企業PR誌については,例年ほど収集できなかった。その代わり,株式会社ポーラのPR誌『エクセル』と『ポーラ美容新聞』の存在を確認し,入手することができた。資生堂やコーセーがおもに都市部で販売活動を展開したのに対し,ポーラや中山太陽堂は地方に拠点を置いた。化粧品の全国的な普及を調査するには,地方における化粧文化の浸透に目を向ける必要があり,この意味でポーラの資料の発見は大きな意味があった。これに関連して,ポーラ化粧文化情報センターの資料閲覧室でも,資料の所在状況を確認した。
KAKENHI-PROJECT-17K03307
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HIV-1特異的CTLによる逃避変異体の選択機序の解明
本研究はHIV-1特異的CTLによる逃避変異体の選択機序を明らかにするため、HLA-B51拘束性Po1283-8特異的CTLによるHIV-1逃避変異体の選択機序の解明を行った。同じHLA-B51にも関わらず、選択されるPo1283変異体に違いが見られる日本と中国のコホートに注目し、それぞれのコホートで誘導されているHLA-B51拘束性Po1283-8特異的CTLの機能を比較した。感染細胞を用いた^<51>Crリリースアッセイでは中国のコホート由来のCTLは日本のコホート由来のCTLに比べ野生型および8V感染細胞に対する認識能は低かった。またHIV-1感染CD4陽性T細胞とCTLの共培養を行いCTLのウイルス増殖抑制能を測定した結果、中国のコホート由来のCTLは日本のコホート由来のCTLに比べると野生型と8Vのどちらに対してもウイルス増殖抑制能が低かった。これらのことから日本と中国のコホートで誘導されているPo1283-8特異的CTLは異なった性質を持っているのではないかと考えられた。今回得られた結果からこれらのコホート間のHIV-1変異体の選択の違いにCTLの機能が関与していることが示唆され、このことは逃避変異体の選択機序の解明に有益な情報となった。また、日本人由来のCTLの機能を詳細に解析したところ、日本人血友病患者のHLA-B^*51:01陽性長期未発症者で見られたPo1283-8V変異体を選択しているPo1283-8特異的CTLを同定することができた。さらに8V選択後にはこの変異体をより効果的に認識できるPo1283-8特異的CTLが誘導されていることが分かり、8V選択後にはこのようなCTLがHIV-1増殖抑制に機能し、長期的なHIV-1増殖抑制に貢献していることが新たに分かった。本研究はHIV-1特異的CTLによる逃避変異体の選択機序を明らかにするため、HLA-B51拘束性Pol283-8特異的CTLによるHIV-1逃避変異体の選択機序の解明を行っている。同じHLA-B51にも関わらず、選択されるPol283変異体に違いが見られる日本と中国のコホートに注目し、それぞれのコホートで誘導されているHLA-B51拘束性Pol283-8特異的CTLの機能を比較した。各コホートのHIV-1感染者から樹立されたPol283-8特異的CTLクローンのHIV-1増殖抑制能を測定した。どちらのコホート由来のCTLもPol283-8T,-8L変異体の増殖を抑制することができず、これらの変異体に対するCTLの機能に大きな違いは見られなかった。一方、日本由来のCTLが野生型、Pol283-8V変異体に対して強い増殖抑制能を示したのに対し、中国由来のCTLは野生型、特にPol283-8V変異体に対する増殖抑制能は日本由来のCTLと比較してかなり低いことが分かった。この結果から、日本と中国のコホートで誘導されているPol283-8特異的CTLは機能的に異なった性質を持ち、この性質の違いがコホート間で異なったPol283-8変異体の選択を引き起こしているのではないかと考えられる。今回得られた結果よりHIV-1変異体の選択にCTLの機能が関与していることが示唆され、選択機序を解明する上で有用な情報となった。また、日本由来のCTLの機能を詳細に解析したところ、HLA-B*5101陽性の長期未発症者ではPol283-8V変異体をPol283-8特異的CTLよりもより効果的に認識できるCTLが誘導されていることが分かった。このことは、HLA-B*5101陽性患者の長期未発症機構の一つとして重要であると考えられる。本研究はHIV-1特異的CTLによる逃避変異体の選択機序を明らかにするため、HLA-B51拘束性Po1283-8特異的CTLによるHIV-1逃避変異体の選択機序の解明を行った。同じHLA-B51にも関わらず、選択されるPo1283変異体に違いが見られる日本と中国のコホートに注目し、それぞれのコホートで誘導されているHLA-B51拘束性Po1283-8特異的CTLの機能を比較した。感染細胞を用いた^<51>Crリリースアッセイでは中国のコホート由来のCTLは日本のコホート由来のCTLに比べ野生型および8V感染細胞に対する認識能は低かった。またHIV-1感染CD4陽性T細胞とCTLの共培養を行いCTLのウイルス増殖抑制能を測定した結果、中国のコホート由来のCTLは日本のコホート由来のCTLに比べると野生型と8Vのどちらに対してもウイルス増殖抑制能が低かった。これらのことから日本と中国のコホートで誘導されているPo1283-8特異的CTLは異なった性質を持っているのではないかと考えられた。今回得られた結果からこれらのコホート間のHIV-1変異体の選択の違いにCTLの機能が関与していることが示唆され、このことは逃避変異体の選択機序の解明に有益な情報となった。
KAKENHI-PROJECT-10J56531
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HIV-1特異的CTLによる逃避変異体の選択機序の解明
また、日本人由来のCTLの機能を詳細に解析したところ、日本人血友病患者のHLA-B^*51:01陽性長期未発症者で見られたPo1283-8V変異体を選択しているPo1283-8特異的CTLを同定することができた。さらに8V選択後にはこの変異体をより効果的に認識できるPo1283-8特異的CTLが誘導されていることが分かり、8V選択後にはこのようなCTLがHIV-1増殖抑制に機能し、長期的なHIV-1増殖抑制に貢献していることが新たに分かった。
KAKENHI-PROJECT-10J56531
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原因不明習慣流産の妊娠産物およびカップルを対象とした原因遺伝子の探索
原因不明の難治性習慣流産の患者とその両親の6家系を解析対象としてアレイ解析を実施し,コピー数変化(10kb以下)を49箇所検出した(表1)。このうち流産の原因となり得るような遺伝子が位置している6箇所を選別して(表2),リアルタイムPCRによりコピー数変化を再検証した。その結果6箇所中2箇所について真のコピー数変化であることが明らかになった(図16)。ひとつは家系3で検出した8p23.1上における47kbの欠失であった。この領域は複数の論文でCNV(Copy Number Variation)領域の報告があり,難治性習慣流産とは関係がないと判断した。またもうひとつは家系6で検出した4q22.2上における100kbの欠失であった。この領域にはglutamate receptor delta-2(GRID2)という遺伝子が位置していが,この遺伝子は興奮性神経伝達に関与しているものの,発生には関与しておらず,この領域のコピー数減少についても難治性習慣流産とは関係がないと結論づけた。原因不明の難治性習慣流産の患者とその両親の6家系を解析対象としてアレイ解析を実施し,コピー数変化(10kb以下)を49箇所検出した(表1)。このうち流産の原因となり得るような遺伝子が位置している6箇所を選別して(表2),リアルタイムPCRによりコピー数変化を再検証した。その結果6箇所中2箇所について真のコピー数変化であることが明らかになった(図16)。ひとつは家系3で検出した8p23.1上における47kbの欠失であった。この領域は複数の論文でCNV(Copy Number Variation)領域の報告があり,難治性習慣流産とは関係がないと判断した。またもうひとつは家系6で検出した4q22.2上における100kbの欠失であった。この領域にはglutamate receptor delta-2(GRID2)という遺伝子が位置していが,この遺伝子は興奮性神経伝達に関与しているものの,発生には関与しておらず,この領域のコピー数減少についても難治性習慣流産とは関係がないと結論づけた。難治性習慣性流産をおこす母親とその両親の6家系について末梢血白血球より抽出したDNAを対象として、Affymetrix社Genome-Wide Human SNP 6.0アレイを用いて(平均プローブ間距離約3kb)ゲノムコピー数を解析した。なお、解析はGenotyping consoleソフトウェアを使用し、refferenceとして日本人正常コントロール45人を用いた。我々はfalse positiveが除外可能であり、かつ微細なコピー数異常を検出するために最低5つ以上のプローブが含まれる10kb以上のコピー数変化を解析対象領域とし、各症例の母親で約40600箇所のコピー数変化を検出した。このうち疾患とは関連性がなく、正常人でコピー数変化が報告されている既知のコピー数多型を除外し、かつde novoのCNVまたは父由来CNVに限定して候補領域を検索するとのべ49箇所検出した。父由来のCNVを解析対象とした理由は、男性の場合には何ら問題ないが、女性でこれを受け継いだ場合に、このCNVが原因で妊娠継続が困難になる可能性を考慮する必要があるからである。さらに遺伝子機能等が個体発生に関連する可能性があるとされる6箇所に限定された。その中には細胞周期に関連する遺伝子やノックアウトマウスでは個体発生に影響するという遺伝子なども含まれている。今後real-time PCRによるコピー数検証作業等の原因遺伝子探索を行う予定である。難治性習慣性流産をおこす母親とその両親の6家系について末梢血白血球より抽出したDNAを対象として、Affymetrix社Genome-Wide Human SNP 6.0アレイを用いて(平均プローブ間距離約3kb)ゲノムコピー数を解析した。得られたデータのうち疾患とは関連性がなく、正常人でコピー数変化が報告されている既知のコピー数多型を除外し,かつde novoのコピー数変化または父由来のコピー数変化に限定して候補領域を検索するとのべ49箇所検出した。父由来のコピー数変化を解析対象とした理由は,男性の場合には何ら問題ないが,女性でこれを受け継いだ場合にコピー数変化が原因で妊娠継続が困難になる可能性を考慮する必要があるからである。さらに遺伝子機能等が個体発生に関連する可能性があるとされる6箇所に限定された。この6箇所についてアレイで検出されたコピー数変化領域が擬陽性ではなく,真のコピー数変化であることを検証するためにリアルタイムPCRを実施した。リアルタイムPCRはアレイで検出した欠失・重複領域内にプライマーを2箇所デザインしてその両方でアレイのコピー数変化と一致したものを真のコピー数変化とする。その結果6箇所中2箇所について真のコピー数変化と確認した。ひとつは家系3で検出した8p23.1上における47kbのコピー数減少だが,この領域は複数の論文でCopy Number Variation領域と報告があり,難治性習慣流産とは関係がないと我々は判断した。またもうひとつは家系6で検出した4q22.2上における100kbのコピー数減少で,この領域にはglutamate receptor delta-2(GRID2)という遺伝子が位置していた。この遺伝子は興奮性神経伝達に関与しているものの,発生には関与しておらず,この領域のコピー数減少についても難治性習慣流産とは関係がないと我々は結論づけた。
KAKENHI-PROJECT-21791565
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拡大モデル法による口唇の微小血管の血流制御機構の解明
目的:毛細血管の拡大モデルに類似血流を流し、実際の生体血流と比較し、検討して拡大時の係数を得ること。方法:1.ヒト口唇の血管計のアクリル樹脂鋳型標本を作成し、走査型電子顕微鏡にて標本を撮影した。2.再度本標本を包埋1μmの連続切片とし、ヒト口唇粘膜の毛細血管系の単位分について1000倍の拡大模型を作成した。3.一方、本研究費補助金により購入した装置により、ヒト口唇粘膜における血流をちょうさしつつある。4.この1000倍の毛細血管の拡大模型に類似血流を流し、やはり本研究補助金により購入したレーザドップラー血流装置により拡大モデルの流量を測定した。新知見:その結果を生体の実際の流量と同等になるまで調整していた、その結果モデル毛細血管の最先端で生体と同一流量を得るにはポンプ圧が実際の生体における局所圧より100-500倍と大きな差を示した。考察と問題点:今後、このポンプ圧と血管圧の差が何に基づくかをさらに追求し、さらに実際の圧に近づくことである。結論:本研究において拡大時の係数を得ることができたが、その値が大きく、何分初めてのことで比較するものがなく、さらに追試が必要であることを認めた。目的:毛細血管の拡大モデルに類似血流を流し、実際の生体血流と比較し、検討して拡大時の係数を得ること。方法:1.ヒト口唇の血管計のアクリル樹脂鋳型標本を作成し、走査型電子顕微鏡にて標本を撮影した。2.再度本標本を包埋1μmの連続切片とし、ヒト口唇粘膜の毛細血管系の単位分について1000倍の拡大模型を作成した。3.一方、本研究費補助金により購入した装置により、ヒト口唇粘膜における血流をちょうさしつつある。4.この1000倍の毛細血管の拡大模型に類似血流を流し、やはり本研究補助金により購入したレーザドップラー血流装置により拡大モデルの流量を測定した。新知見:その結果を生体の実際の流量と同等になるまで調整していた、その結果モデル毛細血管の最先端で生体と同一流量を得るにはポンプ圧が実際の生体における局所圧より100-500倍と大きな差を示した。考察と問題点:今後、このポンプ圧と血管圧の差が何に基づくかをさらに追求し、さらに実際の圧に近づくことである。結論:本研究において拡大時の係数を得ることができたが、その値が大きく、何分初めてのことで比較するものがなく、さらに追試が必要であることを認めた。
KAKENHI-PROJECT-06671824
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06671824
糸状菌転写因子結合配列の網羅的解析とエンジニアリング
ビーズディスプレイ法は、DNAライブラリーをマイクロビーズ上に高集積に構築する手法である。この手法を用いてランダムDNAライブラリー及びゲノムライブラリーを用いて糸状菌転写因子AmyRの結合配列の解析を行い、AmyR結合モチーフの抽出及び種々の新規AmyR結合配列の獲得に成功した。さらに、このビーズディスプレイ法とリガーゼリボザイムを用いたプロモーター活性ハイスループット解析法を確立した。ビーズディスプレイ法は、DNAライブラリーをマイクロビーズ上に高集積に構築する手法である。この手法を用いてランダムDNAライブラリー及びゲノムライブラリーを用いて糸状菌転写因子AmyRの結合配列の解析を行い、AmyR結合モチーフの抽出及び種々の新規AmyR結合配列の獲得に成功した。さらに、このビーズディスプレイ法とリガーゼリボザイムを用いたプロモーター活性ハイスループット解析法を確立した。本研究課題では、W/OエマルジョンPCRを利用したビーズディスプレイシステム用い、糸状菌由来の転写因子結合配列の大規模ライブラリースクリーニングを行い、糸状菌転写因子新規結合配列の獲得、改変プロモーターの創製を試み、バイオプロセス改変による有用物質の高効率生産への応用を目指す。まず、糸状菌、Aspergillus nidulans由来転写因子AmyRを用いたスクリーニング系の確立を行った。塩基配列をN(A,T,GもしくはC)x22としたランダムDNAライブラリーを作製し、上記W/OエマルジョンPCRを用いてランダムDNAビーズライブラリーを調製した。転写因子AmyR溶液及び蛍光標識抗体をこのビーズライブラリーに加え、転写因子を介した蛍光複合体[ビーズ-結合DNA-転写因子-蛍光標識抗体]を形成させ、高い蛍光強度を保持するビーズ複合体をセルソーターを用いて回収する操作を計5ラウンド行った。その結果、5ラウンド後においてAmyR結合コンセンサス配列、CGGN8CGGが多数(109クローン中19クローン)確認された。現在、これら獲得クローンの評価を行っている。また、酵母由来転写因子Gal4を用いて無細胞蛋白質合成系による転写因子結合部位スクリーニング系の確立を試み、ビーズ-Gal4結合DNA-in vitro発現Gal4-蛍光標識抗体の蛍光複合体形成に成功した。さらに、このビーズディスプレイ法を用いたプロモーター活性選別法の開発を行い、T7プロモーター活性を指標としたスクリーニング系の確立に成功した。今後、上記手法を組み合わせ、糸状菌ゲノムライブラリーもしくはランダムDNAライブラリーを用いた種々の転写因子結合配列のゲノムワイドスクリーニング、バイオプロセス改変による有用物質の高効率生産への応用を試みる。本研究課題では、W/OエマルジョンPCRを利用したビーズディスプレイシステム用い、糸状菌由来の転写因子結合配列の大規模ライブラリースクリーニングを行い、糸状菌転写因子新規結合配列の獲得、改変プロモーターの創製を試み、バイオプロセス改変による有用物質の高効率生産への応用を目指す。22年度に行った糸状菌Aspergll nidulans由来転写因子AmyRとランダムDNAライブラリーを用いたスクリーニングより得られた各クローンの評価を行った。その結果、AmyRに対し結合活性を示したクローンは強い結合親和性を示す5配列(グループI)と弱い結合親和性を示す10配列(グループII)に分類された。各グループに対しDNA配列アライメントを行ったところ、グループIにおいて結合モチーフ、(-5'-CGGNNNTTTNTCGG-3')が確認された。このモチーフは、2つのCGGトリプレット間にチミンが高頻度に保存されており、以前の研究において提起されていた新規AmyR結合モチーフと合致していた。グループIIにおいてはAmyRの結合に必須とされるCGGトリプレットモチーフが確認された。これらの結果をまとめてBiosci. Biotechnol. Biochem.に投稿し、掲載許可を得た。また、A.nidulansゲノムライブラリーを作製し、ビーズディスプレイ法によりA-nidulansゲノムライブラリーをマイクロビーズ上に構築することに成功した。このライブラリーを用いてAmyR結合部位のゲノムマッピングを行う。さらに、22年度に確立したビーズディスプレイ法を用いたプロモーター活性選別法に関する結果をまとめ、現在論文投稿中である。今後、上記手法及び得られる知見を組み合わせ、転写因子結合配列のゲノムワイドスクリーニング、バイオプロセス改変による有用物質の高効率生産への応用を試みる。本研究課題では、W/OエマルジョンPCRを利用したビーズディスプレイシステム用い、糸状菌由来の転写因子結合配列の大規模ライブラリースクリーニングを行い、糸状菌転写因子新規結合配列の獲得、改変プロモーターの創製を試み、バイオプロセス改変による有用物質の高効率生産への応用を目指した。22-23年度に行った糸状菌Aspergillus nidulans由来転写因子AmyRとランダムDNAライブラリーを用いたスクリーニングより確立したノウハウを基にA. nidulansゲノムライブラリーを用いたAmyR結合部位のゲノムワイドスクリーニングを行った。その結果、未知の結合部位を多数同定することに成功した。なかでも、UDP-グルコースピロホスホリラーゼプロモーター領域を含むクローンSL5は、AmyRに対して非常に高い結合活性を示した。そこで、このSL5についてさらに詳細な解析を行ったところ、このクローンは既知のAmyR結合モチーフCGGN8CGG及びCGGN8AGG配列を共に保有し、後者に優先的に結合することが確認された。さらにリアルタイムPCRを用いてUDP-グルコースピロホスホリラーゼ遺伝子の発現量を解析したところ、AmyR欠損株においてその発現量の減少が確認され、A. nidulans中でAmyRがこの遺伝子の発現を正に制御していたことが示唆された。これらの結果をまとめ、論文投稿を行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-22760605
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糸状菌転写因子結合配列の網羅的解析とエンジニアリング
今後、今回選択されたAmyR結合能を示すプロモーター配列のさらなる解析を行い、AmyRの転写制御機構の解明を試みるとともに、得られた知見を基にした改変プロモーターの構築を行い、糸状菌バイオプロセス改変による糖代謝能改良法の確立を行う。当初の実験計画ではモデル糸状菌をA. nidulans、モデル転写因子としてAmyRをそれぞれ用いて本系の確立を行った上で種々の転写因子、及び産業利用が期待される糸状菌A. oryzaeバイオプロセス改変を試みる予定であったが、現時点ではまだA. nidulans-AmyRでのみしか検討を行えていない。しかしながら、本研究は順調に推移しており、一層のスピードアップを図れば当初の目的を達成することは不可能ではないと考えられる。24年度が最終年度であるため、記入しない。・糸状菌A.nidulansゲノムライブラリーを用いた転写因子結合部位の同定既に構築が完了しているA.nidulansゲノムビーズライブラリーを用いてAmyRの結合DNAのスクリーニングを行う。獲得された配列解析を行い、得られた配列情報を基に用いたAmyRがどの遺伝子制御に関与しているか、特定する。また、AmyR以外の糸状菌転写因子を用いた糸状菌転写因子結合配列の解析を可能な限り行い、網羅的解析に基づいた転写因子-DNA相互作用ネットワークの構築を試みる。・無細胞蛋白質合成系を用いた糸状菌転写因子発現条件の検討本スクリーニング系の問題点として活性型転写因子の発現の難しさが挙げられる。そこで活性化型転写因子の高効率発現及びさらなるハイスループット化を目指すため、無細胞蛋白質合成系によるA.nidulans転写因子の活性型発現条件の最適化を試みる。具体的には、上記AmyRをモデル転写因子として、反応温度、フォールディングを促進する因子の付加などの検討を行う。・活性型プロモーターハイスループットスクリーニング法の確立と応用申請者らによって確立されたプロモーター活性スクリーニング法のさらなる効率化を試みる。具体的には本手法においてレポーターとして用いるリガーゼリボザイムの最適化を行い、プロモーターデザインの基盤技術確立を行う。・糸状菌バイオプロセスデザイン上記の検討より得られた知見、要素技術を基にA.nidulansゲノムに対してAmyRによる発現制御及びデンプン代謝に関与する遺伝子のプロモーター領域の改変を行う。具体的には、可溶性デンプンの分解能の向上を試みる。この一連の手法を確立することにより、転写因子結合部位の網羅的解析に基づいたバイオプロセスデザインが可能となる。
KAKENHI-PROJECT-22760605
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22760605
パラメータ化計算に関する未解決問題の調査と探求による計算複雑さ解明
本研究は,アルゴリズムの設計や解析,計算複雑さの理論などの分野で近年急速な進歩を見せるパラメータ化計算と,その枠組みのもとで,計算複雑さの上下界を明らかにする固定パラメータアルゴリズムやパラメータ化計算複雑さ理論を対象にしている.この際,歴史的にも未解決問題へのアプローチが分野発展の原動力となっている事実に鑑み,パラメータ化計算分野において提示される未解決問題に着目し,幅広い調査や整理とともに,過去の研究で自身が得た未解決問題との間に有機的な関連を見出し,そのような問題を解決することで,計算複雑さのクラスを分離する状況証拠を積み重ねて,困難さの原因に対する知見を獲得する.これらと並行し,さまざまな離散最適化問題に対する具体的な固定パラメータアルゴリズムや高速厳密アルゴリズムを設計することも同時に行う.これらを通じて,P=NP?問題の解決への側面からの貢献を目指す.このような目標のもとで,本研究計画申請期間を通して,平面的有向グラフにおける最長路問題に対する劣指数時間アルゴリズム,辺グラフ枝削除問題に対する高速固定パラメータアルゴリズム,PSPACE完全であることが知られている二人ゲームKaylesなどに対する未解決もんだいなどを幅広く調査した.それらの中で,部分問題としてグラフ描画を含む紙折り問題や,幾何学的な問題,あるいはグラフアルゴリズム分野で基礎的な問題である支配点集合問題などに対して効率的なアルゴリズムを設計することに成功した.28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。本研究は,アルゴリズム設計・解析や計算複雑さの分野で近年急速な進展を見せるパラメータ化計算の枠組みのもとで,計算複雑さの上下界を明らかにする固定パラメータアルゴリズムやパラメータ化計算複雑さ理論を対象としている.この際,歴史的にも未解決問題へのアプローチが分野発展の原動力となっている事実に鑑み,パラメータ化計算分野において提示される未解決問題に着目し,幅広い調査や整理とともに過去の研究で自身が得た未解決問題との間に有機的な関連を見出し,そのような問題を解決することで計算複雑さを分離する状況証拠を積み重ねて困難さの原因に対する知見を獲得する.これらと並行し,さまざまな離散最適化問題に対する具体的な固定パラメータアルゴリズムや高速厳密アルトリズムを設計することも同時に行う.これらを通じて,P=NP?問題の解決への側面からの貢献を目指す.このような目標のもと初年度は,平面的有向グラフにおける最長路問題に対する劣指数時間アルゴリズム,編グラフ枝削除問題に対する高速固定パラメータアルゴリズム,PSPACE完全であることが知られている2人ゲームKaylesなどに対する未解決問題を幅広く調査した.一方,部分問題としてグラフ描画を含む紙折り問題や,幾何的な問題に対して具体的に効率的なアルゴリズムを設計することに成功した.本研究は,アルゴリズム設計・解析や計算複雑さの分野で近年急速な進展を見せるパラメータ化計算の枠組みのもとで,計算複雑さの上下界を明らかにする固定パラメータアルゴリズムやパラメータ化計算複雑さ理論を対象とし,当該分野で提示される未解決問題に着目し,幅広い調査や整理とともに過去の研究で自身が得た未解決問題との間に有機的な関連を見出し,そのような問題を解決することで計算複雑さを分離する状況証拠を積み重ねて困難さの原因に対する知見を獲得することや,さまざまな具体的な離散最適化問題に対する固定パラメータアルゴリズムや高速厳密アルトリズムを設計することを目標としているが,初年度はさまざま未解決問題に対する調査を行うことができたとともに,紙折り問題など具体的な問題に対して効率的なアルゴリズムを設計することに成功したため.本研究は,アルゴリズムの設計や解析,計算複雑さの理論などの分野で近年急速な進歩を見せるパラメータ化計算と,その枠組みのもとで,計算複雑さの上下界を明らかにする固定パラメータアルゴリズムやパラメータ化計算複雑さ理論を対象にしている.この際,歴史的にも未解決問題へのアプローチが分野発展の原動力となっている事実に鑑み,パラメータ化計算分野において提示される未解決問題に着目し,幅広い調査や整理とともに,過去の研究で自身が得た未解決問題との間に有機的な関連を見出し,そのような問題を解決することで,計算複雑さのクラスを分離する状況証拠を積み重ねて,困難さの原因に対する知見を獲得する.これらと並行し,さまざまな離散最適化問題に対する具体的な固定パラメータアルゴリズムや高速厳密アルゴリズムを設計することも同時に行う.これらを通じて,P=NP?問題の解決への側面からの貢献を目指す.このような目標のもとで,本研究計画申請期間を通して,平面的有向グラフにおける最長路問題に対する劣指数時間アルゴリズム,辺グラフ枝削除問題に対する高速固定パラメータアルゴリズム,PSPACE完全であることが知られている二人ゲームKaylesなどに対する未解決もんだいなどを幅広く調査した.それらの中で,部分問題としてグラフ描画を含む紙折り問題や,幾何学的な問題,あるいはグラフアルゴリズム分野で基礎的な問題である支配点集合問題などに対して効率的なアルゴリズムを設計することに成功した.最終年度である二年度目は,初年度に引き続き次々と生み出される未解決問題を精力的に調査し理解する.それとともに,これまでに調査した未解決問題の中からその重要さの観点から問題を厳選し,それらを具体的な対象として固定パラメータアルゴリズムや高速厳密アルトリズムを設計することを目標とする.これらの中には,グラフアルゴリズムの分野できわめて重要な問題であり,アルゴリズム設計・解析の画期的な新手法を次々と生み出す,この分野を牽引する原動力的な計算問題の一つとなっている,グラフにおける最長路やハミルトン性を扱う予定である.28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-15H00853
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-15H00853
新規葉酸代謝拮抗薬における皮疹出現のリスク因子の解明と予防対策の検討
新規葉酸代謝拮抗薬であるペメトレキセド(PEM)は肺癌や悪性胸膜中皮腫において主要な抗癌剤の一つであるが、PEM投与後に皮疹が高頻度に出現することが知られている。現在、皮疹予防として、デキサメタゾン(DEX)を1日8mg、3日間の高用量のステロイド投与が推奨されているが、高用量のステロイドは高血糖や精神障害など短期間でも様々な副作用を発現する。これまで皮疹発現のリスク因子や、ステロイドの予防効果を統計的に証明した報告はない。そこで、当院呼吸器・膠原病内科において2009年4月から2014年3月までの間に初回PEM治療が施行された患者を対象としてレトロスペクティブに調査を行った。対象患者134名中32名(23.9%)に皮疹が出現していた。皮疹予防効果を示すPEM投与後2日目、3日目(day2-3)のDEX量のカットオフ値は1.5mg/日であり、Day2-3に1.5mg/日以上のDEXが投与された患者では皮疹出現率が有意に減少していた(17.8% vs. 39.4%)。また、day2-3に1.5mg/日以上6mg/日未満のDEXが投与された患者と6mg/日以上の高用量のDEXが投与された患者の皮疹出現率は、それぞれ17.1%、16.7%と投与量依存のステロイドの皮疹予防効果は認めなかった。また、PEMの皮疹出現に関与する因子を検討した結果、患者背景などの関与は認められなかったが、皮疹が出現した患者群では好中球減少症の発現率が高いことが見出された。PEMによる皮疹の発現頻度は高いものの皮疹が出現しやすい患者を予測することは難しいため、PEM投与時には皮疹予防目的にステロイドの追加投与を検討する必要がある。その投与量として、day2-3に1.5mg/日以上が必要であるが、現在推奨されているほどの高用量は必要ないことが示唆された。新規葉酸代謝拮抗薬であるペメトレキセド(PEM)は肺癌や悪性胸膜中皮腫において主要な抗癌剤の一つであるが、PEM投与後に皮疹が高頻度に出現することが知られている。現在、皮疹予防として、デキサメタゾン(DEX)を1日8mg、3日間の高用量のステロイド投与が推奨されているが、高用量のステロイドは高血糖や精神障害など短期間でも様々な副作用を発現する。これまで皮疹発現のリスク因子や、ステロイドの予防効果を統計的に証明した報告はない。そこで、当院呼吸器・膠原病内科において2009年4月から2014年3月までの間に初回PEM治療が施行された患者を対象としてレトロスペクティブに調査を行った。対象患者134名中32名(23.9%)に皮疹が出現していた。皮疹予防効果を示すPEM投与後2日目、3日目(day2-3)のDEX量のカットオフ値は1.5mg/日であり、Day2-3に1.5mg/日以上のDEXが投与された患者では皮疹出現率が有意に減少していた(17.8% vs. 39.4%)。また、day2-3に1.5mg/日以上6mg/日未満のDEXが投与された患者と6mg/日以上の高用量のDEXが投与された患者の皮疹出現率は、それぞれ17.1%、16.7%と投与量依存のステロイドの皮疹予防効果は認めなかった。また、PEMの皮疹出現に関与する因子を検討した結果、患者背景などの関与は認められなかったが、皮疹が出現した患者群では好中球減少症の発現率が高いことが見出された。PEMによる皮疹の発現頻度は高いものの皮疹が出現しやすい患者を予測することは難しいため、PEM投与時には皮疹予防目的にステロイドの追加投与を検討する必要がある。その投与量として、day2-3に1.5mg/日以上が必要であるが、現在推奨されているほどの高用量は必要ないことが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-16H00538
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H00538
脳磁図によるヒト高次排尿調節機構の研究
脳磁図は、頭皮外から脳内磁界の3次元的局在を正確に推定できる非侵襲的検査法で、脳内電流変化の空間的分解能と時間的分解能に優れた非侵襲的検査法であるが、現在まで泌尿生殖器領域で脳磁図を応用した報告は見られない。今回、我々は排尿に関連する大脳皮質機能の解明を目的として、陰茎背神経(DPN)の電気刺激による体性感覚誘発磁界(SEF)を測定した。66チャンネルヘルメット型脳磁界計を用い、5例の健康成人男子ボランティアに対し、片側DPN電気刺激時のSEF記録し、正中神経(MN)、後脛骨神経(PTN)刺激時のSEFと比較検討した。さらに、各神経刺激時の頭皮上磁界分布の検討、信号源推定をおこない、各神経の大脳皮質における一次感覚野の局在について検討を加えた。DPN、MN、PTN、いずれのSEFにおいてもその磁気強度のピークを同定可能であった。各神経刺激時のSEFにおける頂点潜時を比較検討したところ、MN、PTNと比較してDPNの潜時が延長していた(p<0.001)。頂点潜時での振幅は、MN、PTNと比較してDPN-SEFが低値(p<0.001)であった。頂点潜時における頭皮上磁界分布は、DPNにおいてもMN、PTNと同様に、単一電流双極子パターンを認めた。さらに、DPN-SEFの頭皮上磁界分布の中心は、ほぼ正中に存在し、かつ陰茎の対側に偏位していた。これは、刺激側の対側の大脳皮質に神経細胞の興奮が起こっていることを示し、なおかつ、大脳半球間裂に面していることを示唆する。信号源推定では、DPN-SEFでは、刺激側と反対側の大脳半球で、MN、PTNよりも内側に信号源が推定された。本研究により、はじめてDPN-SEFが測定でき、一次感覚野の同定が可能であったことは、排尿機能や性機能に代表される、泌尿生殖器の大脳支配の解明への第一歩として、今後、脳磁図が有用な手段となりうることを示すものである。脳磁図は、頭皮外から脳内磁界の3次元的局在を正確に推定できる非侵襲的検査法で、脳内電流変化の空間的分解能と時間的分解能に優れた非侵襲的検査法であるが、現在まで泌尿生殖器領域で脳磁図を応用した報告は見られない。今回、我々は排尿に関連する大脳皮質機能の解明を目的として、陰茎背神経(DPN)の電気刺激による体性感覚誘発磁界(SEF)を測定した。66チャンネルヘルメット型脳磁界計を用い、5例の健康成人男子ボランティアに対し、片側DPN電気刺激時のSEF記録し、正中神経(MN)、後脛骨神経(PTN)刺激時のSEFと比較検討した。さらに、各神経刺激時の頭皮上磁界分布の検討、信号源推定をおこない、各神経の大脳皮質における一次感覚野の局在について検討を加えた。DPN、MN、PTN、いずれのSEFにおいてもその磁気強度のピークを同定可能であった。各神経刺激時のSEFにおける頂点潜時を比較検討したところ、MN、PTNと比較してDPNの潜時が延長していた(p<0.001)。頂点潜時での振幅は、MN、PTNと比較してDPN-SEFが低値(p<0.001)であった。頂点潜時における頭皮上磁界分布は、DPNにおいてもMN、PTNと同様に、単一電流双極子パターンを認めた。さらに、DPN-SEFの頭皮上磁界分布の中心は、ほぼ正中に存在し、かつ陰茎の対側に偏位していた。これは、刺激側の対側の大脳皮質に神経細胞の興奮が起こっていることを示し、なおかつ、大脳半球間裂に面していることを示唆する。信号源推定では、DPN-SEFでは、刺激側と反対側の大脳半球で、MN、PTNよりも内側に信号源が推定された。本研究により、はじめてDPN-SEFが測定でき、一次感覚野の同定が可能であったことは、排尿機能や性機能に代表される、泌尿生殖器の大脳支配の解明への第一歩として、今後、脳磁図が有用な手段となりうることを示すものである。
KAKENHI-PROJECT-07671704
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07671704
認知・言語能力の発達におけるプロソディーの役割…神経心理学的研究…
1)幼児の認知・言語の獲得過程について。郵政省総合研究所関西先端センター知的機構研究室の協力を得て、神戸外大内に、C.T.Bestらのschemeに沿って、habituation/dishabituation procedureが実行できる装置を設置した。一方、神戸市須磨区・西区各保健所の協力を得て、約90人の生後612ヶ月の幼児を被験者として、1993年8月中旬から実験を開始した。a)現在は、実験方法の信憑性を検証しながら、/w//y/をcontrolとして使って/l/と/r/の弁別のパターンを追っている。これまでに次のような成果が得られた。イ)68ヶ月児は/l/と/r/の区別ができるのに、912ヶ月児になるとできなくなり、両音の知覚反応にいつて両者間に有意差が検出された。2)言語獲得の神経心理学的機序について何故1)のようなことが起こるのかについて神経心理学的にその原因を探ることは容易ではない。1)の/l/と/r/の弁別実験をやみくもに言語障害患者を対象に行うのは得策でない。そこで、研究者らのこれまでに蓄積された知見を整理し、音声言語認識と生成のメカニズムを、脳梁離断患者や純粋語〓患者のtiming controlのメカニズムを探ることによって、でき得る限り明らかにし、幼児の音声知覚の様態の変化を探る指標とした。ここで明らかとなったことは、1)聴解・発話単位の特定化性格、2)その生成の過程の明確化、3)リズム処理にはholisticとanalyticな2つの機構があり、これは神経心理学的に異なる処理機能を備えている、4)この2つの処理機構が音声言語処理に果たす役割、5)echoic memoryのメカニズムなどである。これは『話しことばの認識と生成』(神戸外大)やInternational Journal of Psycholinguisticsに発表された。1)幼児の認知・言語の獲得過程について。郵政省総合研究所関西先端センター知的機構研究室の協力を得て、神戸外大内に、C.T.Bestらのschemeに沿って、habituation/dishabituation procedureが実行できる装置を設置した。一方、神戸市須磨区・西区各保健所の協力を得て、約90人の生後612ヶ月の幼児を被験者として、1993年8月中旬から実験を開始した。a)現在は、実験方法の信憑性を検証しながら、/w//y/をcontrolとして使って/l/と/r/の弁別のパターンを追っている。これまでに次のような成果が得られた。イ)68ヶ月児は/l/と/r/の区別ができるのに、912ヶ月児になるとできなくなり、両音の知覚反応にいつて両者間に有意差が検出された。2)言語獲得の神経心理学的機序について何故1)のようなことが起こるのかについて神経心理学的にその原因を探ることは容易ではない。1)の/l/と/r/の弁別実験をやみくもに言語障害患者を対象に行うのは得策でない。そこで、研究者らのこれまでに蓄積された知見を整理し、音声言語認識と生成のメカニズムを、脳梁離断患者や純粋語〓患者のtiming controlのメカニズムを探ることによって、でき得る限り明らかにし、幼児の音声知覚の様態の変化を探る指標とした。ここで明らかとなったことは、1)聴解・発話単位の特定化性格、2)その生成の過程の明確化、3)リズム処理にはholisticとanalyticな2つの機構があり、これは神経心理学的に異なる処理機能を備えている、4)この2つの処理機構が音声言語処理に果たす役割、5)echoic memoryのメカニズムなどである。これは『話しことばの認識と生成』(神戸外大)やInternational Journal of Psycholinguisticsに発表された。
KAKENHI-PROJECT-05206110
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05206110
超機能性合成オリゴヌクレオチドによる特定遺伝子の転写制御法の開発
一般に、三重鎖核酸の形成は標的二重鎖DNAがホモプリン-ホモピリミジン配列の場合に限定され、これがアンチジーン法の一般化・実用化を大きく妨げている.申請者らは、これまでにアンチジーン法によるDNAレベルでの遺伝子発現制御に向けた新しい核酸類縁体2'-O,4'-C-methylene bridged nucleic acid(2',4'-BNA)の合成に成功している。今回、このBNAの標的DNAに対する三重鎖形成能を詳細に評価したところ、BNAが極めて高い三重鎖形成能を有すること、その三重鎖形成は配列特異的であること等の興味深い知見が得られた。さらに、このBNAに新たな核酸塩基を導入し、これまでは極めて困難とされてきたCG塩基対をHoogsteen型水素結合にて認識可能かどうかという点について検討を進めた。合成した新規BNA類縁体については、各種スペクトル解析(NMR、X線結晶解析)によって、その糖部立体配座が厳密にN型に固定化されていることを確認した。さらに、これら新規BNA類はアミダイト化した後、DNA合成機を用いオリゴヌクレオチドへ導入した。新規BNAを含むオリゴヌクレオチド類について、その三重鎖形成能をTm測定により評価したところ、三重鎖形成が困難であるとされている中性条件下においても、CG塩基対を極めて効果的に認識し、安定な三重鎖核酸を形成し得ることを見出した。本結果は今後のアンチジーン法の開発研究にとって非常に重要な意味を持つものである。一般に、三重鎖核酸の形成は標的二重鎖DNAがホモプリン-ホモピリミジン配列の場合に限定され、これがアンチジーン法の一般化・実用化を大きく妨げている.現在世界中でこの問題を解決すべく様々なムクレオシド類縁体の開発が繰り広げられているがまだ決定打にかけているのが現状である.申請者らは、アンチジーン法によるDNAレベルでの遺伝子を任意に制御するための新しいヌクレオシド類縁体、すなわちこれまでは極めて困難とされてきたCG塩基対、TA塩基対をHoogsteen型水素結合にて認識可能なヌクレオシド類縁体の開発を目的とし、糖部立体配座を厳密にN型に固定化したC-ヌクレオシト類を各種設計した.リボース或いはグルコースを出発原料としこれらの合成を検討したところ、目的とするC-ヌクレオシド類の効率的合成経路の開拓に成功した.これらC-ヌクレオシド類の各種スペクトル解析(NMR、X線結晶解析等)によって、その糖部立体配座がN型に固定化されていることを確認した.さらに、得られたC-ヌクレオシド類はアミダイト化した後、DNA合成機を用いオリゴヌクレオチドへ導入可能であった.今回合成に成功した各種オリゴヌクレオチド類について、その三重鎖形成能をTm測定により評価したところ、3重鎖形成が困難であるとされている中性条件下においても、CG塩基対を効果的に認識し、安定な三重鎖核酸を形成しうることを見出した.本結果は今後のアンチジーン法に関する研究にとって大きな意義を有するものであると考えられる.一般に、三重鎖核酸の形成は標的二重鎖DNAがホモプリン-ホモピリミジン配列の場合に限定され、これがアンチジーン法の一般化・実用化を大きく妨げている.申請者らは、これまでにアンチジーン法によるDNAレベルでの遺伝子発現制御に向けた新しい核酸類縁体2'-O,4'-C-methylene bridged nucleic acid(2',4'-BNA)の合成に成功している。今回、このBNAの標的DNAに対する三重鎖形成能を詳細に評価したところ、BNAが極めて高い三重鎖形成能を有すること、その三重鎖形成は配列特異的であること等の興味深い知見が得られた。さらに、このBNAに新たな核酸塩基を導入し、これまでは極めて困難とされてきたCG塩基対をHoogsteen型水素結合にて認識可能かどうかという点について検討を進めた。合成した新規BNA類縁体については、各種スペクトル解析(NMR、X線結晶解析)によって、その糖部立体配座が厳密にN型に固定化されていることを確認した。さらに、これら新規BNA類はアミダイト化した後、DNA合成機を用いオリゴヌクレオチドへ導入した。新規BNAを含むオリゴヌクレオチド類について、その三重鎖形成能をTm測定により評価したところ、三重鎖形成が困難であるとされている中性条件下においても、CG塩基対を極めて効果的に認識し、安定な三重鎖核酸を形成し得ることを見出した。本結果は今後のアンチジーン法の開発研究にとって非常に重要な意味を持つものである。
KAKENHI-PROJECT-11877395
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11877395
水素修飾グラフェンにおける巨大スピン軌道相互作用の検証
グラフェンは水素で修飾して対称性を破ることで、素のグラフェンと比べて100倍以上もの巨大なスピン軌道相互作用が得られることが示唆されている。そこで本研究では水素化グラフェンにおける巨大なスピン軌道相互作用の検証とこれを用いたスピントロニクスデバイス実現を目指し、スピン注入素子の作成と逆スピンホール効果の検出を行った。その結果、水素化グラフェン素子の作成に成功し、その素子特性から先行研究よりは小さいものの水素化によって確かにスピン軌道相互作用が増大していることを確認した。グラフェンを水素で修飾することによってスピン軌道相互作用が増大することを明らかにするため、水素修飾グラフェンを用いてスピントロニクスデバイスを作成し、スピン軌道相互作用に起因したピンホール・逆スピンホール効果によるスピン流・電流変換現象の観測、およびスピン軌道相互作用によるShubnikov-de Haas振動の変調の観測を目指した。スピントロニクスデバイスは機械剥離グラフェンおよびCVDグラフェンを用いて作成し、グラフェンの水素修飾にはHSQを用いた。その結果、水素修飾グラフェンに強磁性体を用いて純スピン流を注入すると、それに直交する方向に起電力が生じており、さらに面内磁場を印加することで、その起電力がスピン歳差運動を反映した振動を示すことを発見した。このような起電力は水素修飾をしていないグラフェンを用いた素子では観測されなかったことから、水素修飾によってスピン軌道相互作用が増大し、逆スピンホール効果が生じた証拠であると考えることができる。一方、グラフェンへの水素修飾の量を変えることでスピン軌道相互作用の強度を変えることができるかどうかを調べたが、水素修飾量を増やすことでグラフェンの伝導度が急激に減少し、逆スピンホール効果は観測出来なかった。また水素修飾グラフェンではどのような水素修飾量においてもShubnikov-de Haas振動は観測できなかった。これはHSQを用いた水素修飾ではSiO2が表面に残留し、それがグラフェンの電子状態を変えたためではないかと考えられる。スピントロニクスデバイスを用いて逆スピンホール効果を観測し、スピン軌道相互作用が増大している証拠を得ることができた。一方で、水素修飾プロセスにおけるグラフェンの損傷が大きいため素子の歩留まりが極めて悪く、スピンホール角を含めた様々な物理量を算出する所までは至っていない。またHSQの塗布と残留するSiO2によるグラフェンの性能の劣化が大きくデバイス作成の障害となっている。グラフェンは軽元素である炭素のみで構成されており、さらにきわめて高い対称性を持つことからスピン軌道相互作用が小さい。しかしながら近年修飾によって電子構造を変化させたり、物理的な変形や積層によって対称性を破ることで、スピン軌道相互作用を導入できることが知られてきた。2013年には最も軽い元素である水素によってグラフェンの100倍以上のである2.5meVというという巨大なスピン軌道相互作用の導入に成功したという驚くべき報告がなされたが、これは電気伝導度のみでの検証であり、スピン軌道相互作用によるスピン変換現象や操作の報告されていなかった。そこで本研究では強磁性体を用いて水素修飾グラフェンにスピン注入を行い、スピン軌道相互作用によるスピン電流変換現象やスピン操作を通じて水素修飾グラフェン内のスピン軌道相互作用増大現象の実証とデバイス化に取り組んできた。その結果、グラフェン中を流れる純スピン流と直交する方向に有限の電圧が生じることを明らかにした。またこの電圧が外部磁場を印加することで振動し、その周期が伝播する電子スピンの歳差運動と対応することから、スピン流による起電力であることを示した。これによってグラフェン内で、増大したスピン軌道相互作用による逆スピンホール効果が生じていることを実証した。さらに解析から面直のラッシュバスピン軌道相互作用によって面内方向の有効磁場が生じていることも明らかにした。また、グラフェンに限らずいくつかの原子層では細孔によって強磁性になることが明らかとなってきており、細孔をあけることで生じるエッジ強磁性を利用して強磁性元素を使用しないスピン注入素子の作成に取り組んできた。特に黒リンでは細孔構造と酸素終端により水素終端グラフェンの100倍もの磁化が生じることが明らかになった。グラフェンは水素で修飾して対称性を破ることで、素のグラフェンと比べて100倍以上もの巨大なスピン軌道相互作用が得られることが示唆されている。そこで本研究では水素化グラフェンにおける巨大なスピン軌道相互作用の検証とこれを用いたスピントロニクスデバイス実現を目指し、スピン注入素子の作成と逆スピンホール効果の検出を行った。その結果、水素化グラフェン素子の作成に成功し、その素子特性から先行研究よりは小さいものの水素化によって確かにスピン軌道相互作用が増大していることを確認した。HSQによる水素修飾では残留するSiO2がグラフェンの性能の劣化の大きな要因であると考えられる。そのため、SiO2の影響を避ける方法としてHSQ濃度の調整し、さらに超薄膜によるグラフェンの表面保護や、化学薬品による残留物の除去することでグラフェンの性能を維持できるかを調べる。またHSQ以外の方法で水素修飾することでもスピン軌道相互作用が得られないかを調べ、十分なスピンコヒーレンス長を持つ水素修飾グラフェンを実現しスピン干渉素子を実現する。物性実験物品の納期が遅れたため納期の遅れた物品は4月購入予定
KAKENHI-PROJECT-15K17676
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K17676
マトリックス中のナノ細孔設計による中空空間の高効率機能化
中空空間をもつ新規ナノ材料の開発として、分子鋳型法や有機・無機ナノ複合化、ゾルゲル法などの技術を融合した物質の移動や伝達の可能な中空マトリックスの合成を試みた。一般に中空空間は固いマトリックスによって外部との接触が遮断された非効率的空間であり、識別や運送可能なマトリックスの設計は、中空材料の新しい可能性を生み出す鍵となる。平成18年度においては、マトリックス中へのホスト化合物を用いた分子認識サイトの導入と分子認識機能の検討を行った。具体的には、まず、鋳型となる有機分子をシクロデキストリン(CD)ホストとともに錯体を形成し、この錯体を金属アルコキシドと交互に積層化し、薄膜を作成した。次いでこの鋳型分子を除去することで金属酸化物マトリックス中に特定のボスト分子をアンカーとした鋳型分子の形を作成した(Biosens. Bioelectron.,22,388,2006)。この方法の特徴は、ホスト化合物をナノレベルのマトリックス中に導入でき、従って拡散性と分子認識能力の高い製膜プロセスが達成できることである。しかしながら、この製膜プロセスの短所として、マトリックスとなる金属アルコキシドの吸着に有機溶剤を用いるため、CD中に導入された鋳型分子の脱離の恐れがある。このような問題を解決するために、金属マトリックスの作成プロセスに気相表面ゾルゲル法を導入することを検討した。その他生体分子による製膜プロセスを試み、安定・均一な製膜や薄膜の機能化に有効であることが実証された(Chem. Lett.,35,990,2006)。さらに本研究では、抗アドレナリン薬として用いられているpropranololの光学異性体を持ち、スピンコーティングによる分子鋳型法を検討した。また、膜厚の制御や加熱処理を検討し、鋳型分子の吸着特性を調べたところ、ほぼ100%に近いキラル認識が可能であることが確認された(Proceedings of IEEE Sensors2006,1249,2006)。現在、これらの技術を利用した機能性中空粒子の合成を進行中である。中空構造を材料とする一番大きな魅力は、その空間であるが、一般にその空間は固いマトリックスによって外部との接触が遮断された非効率的空間という欠点をもつ。本研究では、その3次元空間を化学反応の新しい場として用いるための手法として、物質の移動や伝達の可能な中空マトリックスの開発を目的とした。まず、平成17年度においては、マトリックス中のナノ細孔のサイズ制御に関する最適条件を検討した。具体的には、ナノ細孔の作成法として、(1)鋳型となる有機分子を金属アルコキシドモノマーと適切な比率で複合化し、その混合物を用いて薄膜を作成した後、次いでこの鋳型分子を除去することで金属酸化物マトリックス中に鋳型分子の形を作る(Chem.Lett.,34(12),1686,2005)、(2)表面ゾル-ゲル法により金属酸化物/ポリマー複合薄膜を形成し、プラズマ法を用いて鋳型となるポリマー分子を除去することで金属酸化物マトリックス中にナノ細孔を作成する方法を試みた。方法(1)の特徴として、マトリックスとなる金属アルコキシドと鋳型分子の濃度比を変えることで鋳型分子の細孔を精密に制御することができ、場合によってはタンパク質などの巨大分子の固定化にも応用可能である。方法(2)は、小分子を鋳型とする方法(1)に比べ、正確な分子細孔を作ることはできないが、ポリマー自身の慣性半径によって異なったナノ細孔を作成することができる。ポリアクリル酸(PAA)を用いた場合とポリビニルアルコール(PVA)を用いた場合の膜厚に関連した吸着挙動について調べたところ、PVA膜ではフラーレン(直径:1nm)、cyt.c(直径:約3nm)などに対して吸着量の定量的増加を示すが、PAA膜ではそのような相関が得られないことが分かった。このような吸着挙動は、本研究で用いたポリマーの慣性半径に由来するものであることが実測のポリマーのサイズから明らかとなった。平成18年度においては、平成17年度において検討した実験条件をベースに多孔性中空粒子の合成およびその機能化に取り組む。中空空間をもつ新規ナノ材料の開発として、分子鋳型法や有機・無機ナノ複合化、ゾルゲル法などの技術を融合した物質の移動や伝達の可能な中空マトリックスの合成を試みた。一般に中空空間は固いマトリックスによって外部との接触が遮断された非効率的空間であり、識別や運送可能なマトリックスの設計は、中空材料の新しい可能性を生み出す鍵となる。平成18年度においては、マトリックス中へのホスト化合物を用いた分子認識サイトの導入と分子認識機能の検討を行った。具体的には、まず、鋳型となる有機分子をシクロデキストリン(CD)ホストとともに錯体を形成し、この錯体を金属アルコキシドと交互に積層化し、薄膜を作成した。次いでこの鋳型分子を除去することで金属酸化物マトリックス中に特定のボスト分子をアンカーとした鋳型分子の形を作成した(Biosens. Bioelectron.,22,388,2006)。この方法の特徴は、ホスト化合物をナノレベルのマトリックス中に導入でき、従って拡散性と分子認識能力の高い製膜プロセスが達成できることである。しかしながら、この製膜プロセスの短所として、マトリックスとなる金属アルコキシドの吸着に有機溶剤を用いるため、CD中に導入された鋳型分子の脱離の恐れがある。
KAKENHI-PROJECT-17651075
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マトリックス中のナノ細孔設計による中空空間の高効率機能化
このような問題を解決するために、金属マトリックスの作成プロセスに気相表面ゾルゲル法を導入することを検討した。その他生体分子による製膜プロセスを試み、安定・均一な製膜や薄膜の機能化に有効であることが実証された(Chem. Lett.,35,990,2006)。さらに本研究では、抗アドレナリン薬として用いられているpropranololの光学異性体を持ち、スピンコーティングによる分子鋳型法を検討した。また、膜厚の制御や加熱処理を検討し、鋳型分子の吸着特性を調べたところ、ほぼ100%に近いキラル認識が可能であることが確認された(Proceedings of IEEE Sensors2006,1249,2006)。現在、これらの技術を利用した機能性中空粒子の合成を進行中である。
KAKENHI-PROJECT-17651075
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授業可視化プラットフォームの構築
CMS/ LMS(授業支援ツール)の学生活動ログを可視化、分析するためのシステムについて、必要な機能を検討し、「授業可視化プラットフォームVisP」として提案した。提案したシステムについて、オープンソースLMSのMoodleのブロックモジュールとして実装した。可視化手法を、統計解析ソフトRのスクリプトで記述し、システムにモジュールとして組み込む手法を提案した。また、授業可視化の手法について実際の授業データやSNSデータに基づいて開発を行った。CMS/ LMS(授業支援ツール)の学生活動ログを可視化、分析するためのシステムについて、必要な機能を検討し、「授業可視化プラットフォームVisP」として提案した。提案したシステムについて、オープンソースLMSのMoodleのブロックモジュールとして実装した。可視化手法を、統計解析ソフトRのスクリプトで記述し、システムにモジュールとして組み込む手法を提案した。また、授業可視化の手法について実際の授業データやSNSデータに基づいて開発を行った。本年度は、授業可視化プラットフォームの完成をめざして仕様の検討と実装を行なった。検討のなかで、セキュリティに関する問題があきらかになった。可視化モジュールは本システムの利用者が自由に作成してインストールする事ができるものである。セキュリティの問題とは、可視化モジュールの作成者が、モジュール内に組み込むPHPスクリプトを通してシステムが持つすべてのデータにアクセスできてしまう事である。当初の設計では、PHPで記述するものになっていたたえ、データベースのアクセスに可視化プラットフォーム管理者と同等の権限を持って行なうことになってしまう。これを回避するため、テータベースにアクセスしてデータを抽出する部分は授業可視化プラットフォームが行い、可視化モジュールの中からは行なえなくする必要がある。検討の結果、オープンソースのデータ解析言語であるRと組み合わせて、可視化モジュール部分をRのスクリプトとして作成する方針でシステムの再設計を行なった。これにより、データ抽出部分とはまったく独立の形で可視化モジュールを作成する事が可能となる。また、モジュール開発の際にも手元のRでデバッグを行なえるようになり簡便に開発環境が構築できる。それに加えてRの豊富なグラフイックライブラリおよびグラフィックAPIが利用できるようになり、さまざまな可視化モジュールの開発がより少ない手順で行なえるようになる。この方針に従い、システムの再設計を行なった。再設計の詳細について国際学会で発表し平成21年度末現在実装を進行中である。昨年度セキュリティ問題が発覚したことを受け、慎重に再設計ならびに実装をすすめている。実装にはオープンソースのコース管理システムMoodle1.9ならびに統計パッケージのRを利用し、Moodle 1.9のモジュールとして、本システム(授業可視化システム)の開発をしている。本システムの実装は大きくデータベースモジュール、可視化モジュールのハンドリング、ならびに可視化モジュールそのものにわけられる。データベースモジュールに関しては、コース管理システムのBlackboard Learning System CE8とMooldeのデータベースに対応する形で実装をした。現在、可視化モジュールのハンドリング部分を作成している。まだ完成には至っていないが、内部的な動作の検証をおこない、ユーザインタフェースの詳細な部分を作り込んで行く段階である。可視化モジュール、すなわち授業の可視化そのものに関しては、アイデア段階のものもふくめていくつかのものを試験的に作成している。コース管理システムへのログイン情報、オンラインテストの点数を主な素材としていくつかの可視化を試すと同時に、文献、他の研究者の活用状況を調査している段階である。この部分に関し、特に掲示板データ等のネットワークを使った可視化に関して共同研究者が成果発表を行った。これらの研究ではコース管理システムの掲示板データだけでなく、SNS(ソーシャルネットワークシステム)の交友関係を元にしたネットワークの分析も行っており、本研究課題で開発するシステムのSNSへの拡張のための準備になっている。本研究の目的は、CMS(コース・マネージメント・システム/授業運営支援システム)から発生する大量の学習データの可視化を日常の授業で利用可能とするための授業可視化プラットフォームを構築し、プラットフォームを共有する教員間の情報共有を促進することである。そのため、オープンソースのコース管理システムであるmoodleのブロックモジュールとして、本可視化プラットフォームを作成した。可視化のエンジンとしてはこれもオープンソースのデータ解析言語であるRを用いた。本システムの主な開発部分は、LMSからのデータ輸入を行うデータベースモジュールと、可視化モジュールを管理する部分である。可視化モジュールは、Rのスクリプトとして作成するが、本システムでは、Moodleのデータベースに蓄積した学習データを、セキュリティを考慮してアクセス可能な部分だけを抽出、Rスクリプトで取り扱える形に変換して可視化モジュールへ渡す部分を作成した。教員間の情報共有を促進するためのコミュニティ作りに関しては、まだシステムが公開できる段階に至っていないために、大きくは進んでいないが、教育データ分析に関する研究会の開催などが共同研究者を中心として進みつつある。可視化モジュール、すなわち授業の可視化そのものに関しては、いくつかのものを作成した。コース管理システムへのログイン情報、オンラインテストの点数、掲示板データ可視化のモジュールを作成した。また、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)の交友関係を元にしたネットワークの分析も行った。
KAKENHI-PROJECT-21500900
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AED普及にともなう学校救急の変貌と体制作り
AED普及による校内研修体制構築の必要条件を探り、今後の教職員の救急救命処置対応における研修の方向性を見出すため実態調査及び実技研修を行った。その結果、効果が得られる研修方法は(1)定期的に繰り返し行う実技の練習、(2)AED・CPRの仕組みを理解できる教材、(3)自分自身の技量が把握できる教材の活用であった。その上で最新の医学情報に基づくあらゆる場面を想定した実践的研修が重要であることがわかった。したがって、今後これらの内容を組み入れた実践力をつける研修プログラムを構築することが急務であることが明らかになった。AED普及による校内研修体制構築の必要条件を探り、今後の教職員の救急救命処置対応における研修の方向性を見出すため実態調査及び実技研修を行った。その結果、効果が得られる研修方法は(1)定期的に繰り返し行う実技の練習、(2)AED・CPRの仕組みを理解できる教材、(3)自分自身の技量が把握できる教材の活用であった。その上で最新の医学情報に基づくあらゆる場面を想定した実践的研修が重要であることがわかった。したがって、今後これらの内容を組み入れた実践力をつける研修プログラムを構築することが急務であることが明らかになった。1AEDの普及による校内研修体制の現状を把握し、救急処置技能研修の方向性の基礎データを得る目的で、A県に勤務する小・中学校の養護教諭を対象に調査を行った。その結果、以下の知見が得られた。(1)実際にAEDを使用したことがあると答えた者は、2.0%であった。(2)研修を設定している学校は、79.7%であり、内容は心肺蘇生法が95.0%・AED92.9%であった。(3)開催頻度は、定期的に年1回が72.7%、指導者は消防士(82.7%)が一番多かった。(4)今迄受けた研修会の方法は、実技の研修が一番多く99.3%を占めていた。(5)救急処置研修において効果がある研修内容は、実技の練習(98.0%)が多く、次いで何回も練習(77,7%)、講義(75.1%)、少人数での研修(71.4%)であった。(6)研修の実施により効果が見られる(教職員の救急体制への意識の変化)理由は、職員の積極的態度や危機管理意識の高まり、水泳学習時における実践化、また、技術の定着、校内協力体制の構築が挙げられた。(6)AEDを含む研修に望むことは、内容については実践場面を想定した演習、方法は専門家による反復練習、目標としては教職員自身の実践化、また、基礎・最新理論の習得、対象の拡大、AEDの貸し出し等であった。2教育学部学生を対象に救急処置研修会を実施した。今回の調査・研修会で、研修の実態を把握することができた。次年度は得られた結果を活かし、具体的に救急処置技能研修プログラムを作成していきたい。AEDの普及により、救急処置に関する校内研修や指導者研修の内容も変化してきている。昨年度の実態調査の結果において、研修内容の希望は、実践面を想定した演習や基礎・最新理論の習得であった。そこで、「CPR・AED学習キット」による実践、また、現在救急処置研修では音声による指示操作が中心であるが、今回の研修では、心電図の波形(心室細動・心停止等)がコントロールでき、それに対応できるAED操作を実習できる「ミニアンとレサシアンモジュラーシステムCPR-モデル」を教材として使用した研修プログラムを企画し、研修を行った。研修対象は、現職養護教諭124名養成機関教員5名その他4名また、中学生25名(総合的な学習)である。参加者の研修への評価では、「波形が出るAEDは、AEDの意味が理解できた」「学習キット」を実際に扱いパットの貼り方や部位が確認できた」「児童生徒の教材として学習キットは適している」「実際体験したことで、自分自身を振り返ることができ、また、繰り返し行う研修が重要であることが確認できた」等の意見を得た。また、中学生の認識では、心停止の状態でもAEDは有効であると理解していた生徒もおり、今回使用した学習教材は、有効であったことが窺えた。AEDの普及に伴う研修の啓発活動が目覚しい現状において、救急処置研修の意味や根拠そして学習教材についても検討し、開発していくことの必要性が示唆された。AEDの普及により、救急救命処置に対する研修はその内容も変化し、また啓発活動も目覚しい。本研究の実態調査より研修内容は、実践面を想定した演習や最新の理論の習得を希望する者が多数を占めている。また、対象別(中学生・現職養護教諭・養成に関わる教員)に実技を中心に行った研修においても、繰り返し学び習得する意義が得られた。そこで、今年度は学校現場において救急救命処置の中心となる役割を担う教育学部養護教諭養成課程の学生(1年生・4年生)を対象に実際に「CPR・AED学習キット」を用いた演習「レサシアン/モジュラーシステム/CPR-Dモデル」を用いた学習を行った。その結果、今迄救急救命の学習を受けているものは、高校の保健体育の授業で受けている者が多く、運転免許証取得時、また、4年生は大学の研修で学んだものが多数占めた。その内容は、1年生は、レサシアンを活用しての学習内容であり、実際にAEDの操作を学んだ者は数名であったが、4年生はAEDの操作も含めての学習内容であった。
KAKENHI-PROJECT-21500647
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21500647
AED普及にともなう学校救急の変貌と体制作り
実習後の評価の問いである「学生の間に身につけておきたい救急処置能力」では、初めて学ぶ者が多い1年生は"正しく行える""正しい知識""状況に応じた対応"、4年生では"状況を判断し、迅速に冷静に動ける""正しく使える"であった。養成の教育では、医学面のカリキュラムと整合させた系統的な学習を行うことが重要であることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-21500647
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21500647
特異的ヘテロ原子サイトを有する革新的ゼオライトの計算機支援合成
ゼオライトは結晶性多孔質アルミノケイ酸塩であり、その高い比表面積、水熱安定性、固体酸性などの特性から、触媒、吸着剤、イオン交換剤として広く用いられている。骨格構造中における、AlやZnなどのヘテロ原子の位置は、ゼオライトの物理化学的特性の根幹であり、その制御はゼオライト合成の究極の目標の1つと言える。本研究では、計算機化学により設計した有機構造規定剤を用いることで、Al原子を有するゼオライトの結晶化経路をエンジニアし、Al原子位置の制御されたゼオライトを合成した。また、Alだけでなく、新規ジンコシリケートゼオライトの合成にも成功した。ゼオライトは結晶性多孔質アルミノケイ酸塩であり、その高い比表面積、水熱安定性、固体酸性などの特性から、触媒、吸着剤、イオン交換剤として広く用いられている。骨格構造中における、AlやZnなどのヘテロ原子の位置は、ゼオライトの物理化学的特性の根幹であり、その制御はゼオライト合成の究極の目標の1つと言える。本研究では、計算機化学により設計した有機構造規定剤を用いることで、Al原子を有するゼオライトの結晶化経路をエンジニアし、Al原子位置の制御されたゼオライトを合成した。また、Alだけでなく、新規ジンコシリケートゼオライトの合成にも成功した。材料化学、化学工学
KAKENHI-PROJECT-16K18284
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K18284
若手小学校教師の熟達への学習プロセスの分析と実践への応用
教師の熟達化に関する研究は,昨今の社会的背景や要請から鑑みても,意義があり時宜を得た研究であると言える。本研究では,小学校教師の経験からの学習に着目し,インタビュー調査,質問紙調査,授業分析,授業研究会の分析を行った。本研究では,単なる人と人,人とモノとの相互行為を経験とすることを越えて,活動がどのように変容しネットワークとして組織されていくか、その道筋を経験と定義した。そして経験学習を捉える枠組みとして,経験を観想的経験と活動的経験に二分し,認知的痕跡論(Cussins,1992,1993)に基づき分析を行った。調査対象校(横浜市立小学校)1校の担任教師全員に依頼し実施したインタビュー調査,質問紙調査の言説分析,ネットワーク分析を行った。さらに初任・若手小学校教師を中心に1年間授業を観察し,認知的痕跡として教授手法の一つであるリボイシングを含むやり取りを抽出し,教師段階の特徴を描き出し比較した。また,対象校の重点研究会の研究授業と授業研究会を観察し,分析を行った。授業研究会は,議論の主要なテーマと頻出する言葉を認知的痕跡とし,カテゴリ化し,その変遷を追跡することで痕跡のネットワークを描き出した。同時に研究会の参加構造についても分析し,それがとのような経験を象らせることになるか考察した。また,これは観察した授業のビデオを見せながら筆者が意見を述べる形式で参加する,デザイン実践であった。その結果,都合の良い関係の切り結び方だけでなく,役職・役割を媒介として職員間のネットワークが形成されていた。また,授業研究会は義務的参加といった硬く構造化きれているが故に,表面的で浅い経験としかなり得ない一方で,参加者全員に共通の経験を象らせることができるという特徴があった。今後,それぞれの研究を再編成し,国外を含めたジャーナルなどを通して研究成果を公表したり,実践への参加を通して改善に活用したりしていく予定である。対象フィールドである横浜市内の小学校ヘボランティアとして実践に参加することを通し、定期的(週23日)にフィールド・ワークを行った。具体的な調査方法は、新任教師2名を中心に授業を観察・ビデオ録画した。また、夏期休業中には自由記述式質問紙調査とインタビュー調査を了解いただいた担任教師全員に実施した。フィールド・ワークと並行して、経験および経験からの学習概念について文献調査を進めた。研究会などを関催して、経験概念の精緻化と分析枠組みとしての有用性を検対した。経験からの学習は従来、回顧的(語りや省察等)に扱われ、学習は経験がトリガーとなり引き起こされるという意味で、経験と学習は相互に不可分であるとされてきた。つまり、経験が学習に先んじて存在し、学習が後続するという固定的で文脈独立的な見方がされてきた。そして経験と学習(event and lesson)構造のセットを抽出することが目指されてきた(たとえば、松尾,2006;金井,2002;金井・古野,2001;Kolb,1984;Kolb&Kolb,2005:谷口;2006など)。しかし分析の結果、経験が所与で固定的に学習に先んじて存在するのではなく(したがって経験が学習を先導するのではなく)、経験と学習は相互に構成し合い、経験と学習は実践を語る、省察するという実践の中でその都度的に相互に(再)構成し合っていると考えられた。また、Cussins(1992)の認知的形跡(cognitive trails)論とこの経験概念を融合することで、実践語りの形跡を同定し追跡することで経験および経験からの学習を詳らかにできる分析装置となると考えられた。教師の熟達化に関する研究は,昨今の社会的背景や要請から鑑みても,意義があり時宜を得た研究であると言える。本研究では,小学校教師の経験からの学習に着目し,インタビュー調査,質問紙調査,授業分析,授業研究会の分析を行った。本研究では,単なる人と人,人とモノとの相互行為を経験とすることを越えて,活動がどのように変容しネットワークとして組織されていくか、その道筋を経験と定義した。そして経験学習を捉える枠組みとして,経験を観想的経験と活動的経験に二分し,認知的痕跡論(Cussins,1992,1993)に基づき分析を行った。調査対象校(横浜市立小学校)1校の担任教師全員に依頼し実施したインタビュー調査,質問紙調査の言説分析,ネットワーク分析を行った。さらに初任・若手小学校教師を中心に1年間授業を観察し,認知的痕跡として教授手法の一つであるリボイシングを含むやり取りを抽出し,教師段階の特徴を描き出し比較した。また,対象校の重点研究会の研究授業と授業研究会を観察し,分析を行った。授業研究会は,議論の主要なテーマと頻出する言葉を認知的痕跡とし,カテゴリ化し,その変遷を追跡することで痕跡のネットワークを描き出した。同時に研究会の参加構造についても分析し,それがとのような経験を象らせることになるか考察した。また,これは観察した授業のビデオを見せながら筆者が意見を述べる形式で参加する,デザイン実践であった。その結果,都合の良い関係の切り結び方だけでなく,役職・役割を媒介として職員間のネットワークが形成されていた。また,授業研究会は義務的参加といった硬く構造化きれているが故に,表面的で浅い経験としかなり得ない一方で,参加者全員に共通の経験を象らせることができるという特徴があった。
KAKENHI-PROJECT-08J00994
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J00994
若手小学校教師の熟達への学習プロセスの分析と実践への応用
今後,それぞれの研究を再編成し,国外を含めたジャーナルなどを通して研究成果を公表したり,実践への参加を通して改善に活用したりしていく予定である。
KAKENHI-PROJECT-08J00994
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J00994
隕石の超高精度Mo同位体分析による地球の水の起源に関する研究
研究初年度はMo同位体分析法の開発を行った。まず、プレソーラー粒子を含む隕石を完全分解する手法の開発を行った。研究代表者はこれまで、隕石を完全分解する手法として、試料にフッ化水素酸・硝酸・硫酸を加え、高圧分解装置(DAB-2)で250 °Cに加熱する手法を開発し、NdやSrの同位体分析に適用してきた。本手法の問題点は、DABの耐圧容器(SUS316Ti)にMoが23%程度含まれているため、分解時に試料がMo汚染を受けてしまうことである。そこで、耐圧容器内にセットする試料容器(テフロン製)を二重にすることで、問題解決を試みた。その結果、Mo汚染の程度は軽減されたが、依然数10 ngのMoが混入し、本分解法がMo同位体分析には適さないことが判明した。一方、TIMSを用いたMo同位体分析法に関しては、従来のStatic法ではなく、検出器の経年劣化をキャンセル可能なDynamic法による測定法を開発した。Dynamic法を適用した結果、Mo同位体比の精度が数倍向上した。例えば95Mo/96Mo比に関し、Static法では繰り返し再現性50 ppm程度であったものが、Dynamic法では12 ppmとなった。これにより、隕石に見られるごくわずかなMo同位体比の変動を検出することが可能となった。分析技術の開発においては、若干の遅れが生じている。これは、試料の分解に高圧分解法が適用できないとの結論に至るまで、数多くの実験を試みたためである。また、連携研究者が一般企業に就職し、研究上の協力が得られなくなったことも遅延の原因の一つである。様々な工夫を凝らしたが、最終的にどうしても容器からのMo混入を防ぐことができなかった。一方、TIMSによるMo同位体分析法に関しては、Dynamic法を用いることにより、予想以上の精度向上を達成することができた。今後、試料分解法の開発がすすめば、隕石の高精度Mo同位体比データを逐次獲得することが可能になる。研究2年次は、隕石の完全分解法として、アルカリ融解法を適用する。アルカリ融解法では使用する融剤から微量元素が汚染するため、分解した試料のSrやBa同位体分析は不可能となるが、Mo, Ru, REEなどの同位体分析を実施する上では問題ない。同時に、Mo化学分離法の確立を行う。Moの化学分離はイオン交換法により行う。基本的な分離法は既に確立済みだが、隕石の完全分解でアルカリ融剤を用いるため、それらを除去するための新たな分離工程を確立する必要がある。分離には陰イオン交換樹脂を用いる予定である。一方、隕石試料の分析では炭素質コンドライト、および分化隕石、特に小惑星ベスタ由来のHED隕石の分析を行う。HED隕石はプレソーラー粒子を含まないため、完全分解法を適用する必要はない。なお、連携研究者が不在である点に関しては、Mo同位体分析を研究テーマとする研究室の学生と協力しながら補う。隕石のMo同位体組成を基に、研究計画班と議論を行い、原始地球への小天体の衝突と元素供給プロセス、およびレイトベニア仮説を検証する。研究初年度はMo同位体分析法の開発を行った。まず、プレソーラー粒子を含む隕石を完全分解する手法の開発を行った。研究代表者はこれまで、隕石を完全分解する手法として、試料にフッ化水素酸・硝酸・硫酸を加え、高圧分解装置(DAB-2)で250 °Cに加熱する手法を開発し、NdやSrの同位体分析に適用してきた。本手法の問題点は、DABの耐圧容器(SUS316Ti)にMoが23%程度含まれているため、分解時に試料がMo汚染を受けてしまうことである。そこで、耐圧容器内にセットする試料容器(テフロン製)を二重にすることで、問題解決を試みた。その結果、Mo汚染の程度は軽減されたが、依然数10 ngのMoが混入し、本分解法がMo同位体分析には適さないことが判明した。一方、TIMSを用いたMo同位体分析法に関しては、従来のStatic法ではなく、検出器の経年劣化をキャンセル可能なDynamic法による測定法を開発した。Dynamic法を適用した結果、Mo同位体比の精度が数倍向上した。例えば95Mo/96Mo比に関し、Static法では繰り返し再現性50 ppm程度であったものが、Dynamic法では12 ppmとなった。これにより、隕石に見られるごくわずかなMo同位体比の変動を検出することが可能となった。分析技術の開発においては、若干の遅れが生じている。これは、試料の分解に高圧分解法が適用できないとの結論に至るまで、数多くの実験を試みたためである。また、連携研究者が一般企業に就職し、研究上の協力が得られなくなったことも遅延の原因の一つである。様々な工夫を凝らしたが、最終的にどうしても容器からのMo混入を防ぐことができなかった。一方、TIMSによるMo同位体分析法に関しては、Dynamic法を用いることにより、予想以上の精度向上を達成することができた。今後、試料分解法の開発がすすめば、隕石の高精度Mo同位体比データを逐次獲得することが可能になる。研究2年次は、隕石の完全分解法として、アルカリ融解法を適用する。アルカリ融解法では使用する融剤から微量元素が汚染するため、分解した試料のSrやBa同位体分析は不可能となるが、Mo, Ru, REEなどの同位体分析を実施する上では問題ない。
KAKENHI-PUBLICLY-18H04457
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-18H04457
隕石の超高精度Mo同位体分析による地球の水の起源に関する研究
同時に、Mo化学分離法の確立を行う。Moの化学分離はイオン交換法により行う。基本的な分離法は既に確立済みだが、隕石の完全分解でアルカリ融剤を用いるため、それらを除去するための新たな分離工程を確立する必要がある。分離には陰イオン交換樹脂を用いる予定である。一方、隕石試料の分析では炭素質コンドライト、および分化隕石、特に小惑星ベスタ由来のHED隕石の分析を行う。HED隕石はプレソーラー粒子を含まないため、完全分解法を適用する必要はない。なお、連携研究者が不在である点に関しては、Mo同位体分析を研究テーマとする研究室の学生と協力しながら補う。隕石のMo同位体組成を基に、研究計画班と議論を行い、原始地球への小天体の衝突と元素供給プロセス、およびレイトベニア仮説を検証する。
KAKENHI-PUBLICLY-18H04457
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-18H04457
オートファジーにおける膜の起源:オルガネラバイオジェネシスの解明
細胞内の分解システムであるオートファジーは、発生・分化から、発がん・神経変性疾患・感染症等の抑制まで多岐に亘る機能を持つ。オートファジーを遂行する膜で出来た構造体オートファゴソームがどこで作られているのかが、40年来論争の的となってきた。今回我々は、オートファゴソームがミトコンドリアと小胞体の接触点で形成されることを発見した。永年の謎が解けると共に、オートファジーを制御して疾患を治療する方法の開発に役立つ情報が得られたことになる。細胞内の分解システムであるオートファジーは、発生・分化から、発がん・神経変性疾患・感染症等の抑制まで多岐に亘る機能を持つ。オートファジーを遂行する膜で出来た構造体オートファゴソームがどこで作られているのかが、40年来論争の的となってきた。今回我々は、オートファゴソームがミトコンドリアと小胞体の接触点で形成されることを発見した。永年の謎が解けると共に、オートファジーを制御して疾患を治療する方法の開発に役立つ情報が得られたことになる。オートファジーを遂行する膜オルガネラであるオートファゴソームは、他のオルガネラとは異なり常に新たに形成されるが、どこからそれが現れるのか40年来論争の的となってきた。本研究計画では、応募者が最近見いだした小胞体のオートファゴソーム形成への関与を手がかりに集中的かつ統合的な解析を展開し、オートファジー分野における最大の謎「膜の起源」問題について最終的な決着をつけることを目的としている。初年度である平成23年度は、交付申請書に記載の2つの計画を実施し各々について以下の成果を得た。1)Atg14Lの小胞体上での点状集合に必要な分子としてSyntaxin17を同定した(大阪大学歯学部天野敦雄教授らとの共同研究)。Syntaxin17は小胞体に局在するSNAREfamilyの膜タンパク質で、これまで機能ははっきりしていなかった。我々は、Syntaxin17がAtg14Lの上流に位置し、Atg14Lの点状集合に必須であることを見出した。またSyntaxin17もオートファジー誘導時に、Atg14Lと同じ場所に集合することを明らかにした。また、電子線トモグラフィーによる揺りかご構造の詳細な検討を行い、構造の近傍にミトコンドリアが存在することを突き止めた。2)上記Syntaxin17が、Atg14Lと共にミトコンドリア・小胞体接触サイトに点状集合することが判明した。さらに、接触サイトの形成に必要なPACS2のノックダウンによって、両者の点状集合が阻害され、かつオートファゴソームも形成されなくなることを示した。以上の知見から、Syntaxin17と共にAtg14Lがミトコンドリア・小胞体接触サイトに集合するとそこでオートファゴソームが形成されるというモデルを考えている。細胞内大規模分解システム・オートファジーは、発生・分化から、がん・神経変性・感染症等の抑制まで多岐に亘る機能を持つ。オートファジーを遂行する膜オルガネラであるオートファゴソームは、他のオルガネラとは異なり常に新たに形成されるが、どこからそれが現れるのか40年来論争の的となってきた。本研究では、応募者が最近見いだした小胞体のオートファゴソーム形成への関与を手がかりに集中的かつ統合的な解析を展開し、オートファジー分野における最大の謎「膜の起源」問題について最終的な決着をつけることを目的とした。平成24年度に、オートファゴソームが小胞体ーミトコンドリア接触点で形成されているという決定的な証拠を得て目的をほぼ達成したので、平成25年度はさらなる解析を行った。その結果、以下の成果を得た。オートファゴソーム形成に必要な膜タンパク質Atg9は、普段はゴルジ体に局在し必要に応じて一過性にオートファゴソーム膜に現れるので、輸送小胞により何かを運んでいる可能性がある。輸送シグナルと思われる配列に変異を導入してAtg9-KO細胞に発現させると、野生型のようにオートファジーを回復できないことが判明したので、その変異Atg9を用いて詳細な解析を行った結果、Atg9が再循環エンドソームを経由することがオートファゴソーム形成に必要であることが判明した。本研究の全ての結果を総合すると、オートファゴソーム形成には、少なくとも3つのオルガネラ、小胞体、ミトコンドリア、再循環エンドソームが関わることが結論される。オートファジーを遂行する膜オルガネラであるオートファゴソームは、他のオルガネラとは異なり常に新たに形成されるが、どこからそれが現れるのか40年来論争の的となってきた。本研究計画では、応募者が最近見いだした小胞体のオートファゴソーム形成への関与を手がかりに集中的かつ統合的な解析を展開し、オートファジー分野における最大の謎「膜の起源」問題について最終的な決着をつけることを目的としている。今年度は以下の如く分野のブレイクスルーとなる画期的な成果を得ることができた。1)これまで世界的にも前例が無いレーザー蛍光顕微鏡による3色同時撮影システムを構築し、小胞体とミトコンドリアがダイナミックに接触する様子をライブ観察で捉え、その接触点でオートファゴソームが形成される様子を動画撮影することに成功した。オートファゴソームの生成と接触点の関係を直接観察した画期的な成果である。さらには画像のデジタル処理により形成を定量化し、また形成途上のオートファゴソームが常に小胞体上にあるのに対し、ミトコンドリアに対しては接触と僅かな解離を繰り返していることも明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-23247034
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23247034