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アミロイドペプチドの凝集を規格化した細胞アッセイシステムの構築 | ただ2年目へ向け本法の問題点なども分かり始めてきたので、それらを解決すべく本システムの改良を行う必要がある。以上より、当初予定していた研究内容から多少の変更はあったものの、成果は確実に得られており、1年目は、2年目もほぼ当初の計画通り進められる程度の進展具合であることから、「おおむね順調に進展している」と判断した。生体高分子工学以下の3つを2年目に行う予定である。1.構築できたシステムの更なる改良1年目は光照射による遊離法を用いたが更なる効率化、簡便化などを目指し、別法を用いることを模索する。また、樹脂の導入率を下げることによる、合成時の純度向上と、ペプチド遊離時の効率化も模索する。2.本システムを用いた細胞培養と細胞毒性評価細胞毒性を有するペプチドを固定化したプレートでの培養は通常培養と同じように細胞が生育することがこれまでの我々の知見で明らかになっているが、アミロイドペプチドを固定化したプレートでも通常培養と同様の培養が可能であるか、固定化ペプチドの毒性評価測定をを行う。以上が問題なく行えれば、そこでペプチドを遊離させ、オリゴマー化・線維化を誘起して、細胞への影響を調べる。ペプチド遊離前後の生細胞数を調べることにより細胞毒性評価を行う。3.本装置を用いたアミロイドβペプチドの細胞近傍挙動解析本システムが有効であるかを示すために、代表的なアミロイドペプチドであるアルツハイマー病の原因物質と言われているアミロイドβペプチドを題材に、実際に固定化、細胞培養、凝集を行い、細胞への影響を調べていく。まず、比較的測定しやすい、細胞毒性実験を行う。これまでに最適化された固定化法、細胞培養法、光照射法を採用し、遊離後の細胞生存率を求め毒性を評価する。次に、細胞近傍での挙動解析を試みる。まず観察が可能となるよう、ペプチドに蛍光色素を導入したペプチドを合成し、これを固定化する。細胞培養などで毒性がないことを確認後、光照射し、共焦点顕微鏡を用いることで、これらペプチドの細胞導入具合や細胞膜吸着具合などをリアルタイムで観察する。また、遊離ペプチド濃度を確認することで、細胞導入・吸着量を見積もる。以上を試みることで、実際に本装置によって簡便に一連の細胞アッセイが可能であるかを評価し、本課題をまとめていきたい。次年度においては、進捗状況も概ね順調であることから、新しい機器の購入により当初2年間の予定通り物品費を使用したい。また、成果発表も積極的に行うために、旅費を当初2年間の予定額通り使用したい。 | KAKENHI-PROJECT-26750375 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26750375 |
国際刑事裁判所規程の侵略犯罪関連規定の総合的研究 | 国際刑事裁判所(ICC)規程の2010年締約国カンパラ会議決議で採択された侵略犯罪に関する規定を包括的に分析し、侵略犯罪の定義、構成要件、管轄権行使条件、安保理事会の統制の範囲、個人の刑事責任の形態、及び国の協力義務その他における問題点を抽出した。こうした条約の精密な文理解釈の他、ICCが侵略犯罪を裁くということが国際の平和及び安全の維持に関する安保理事会の権限とどう関係するのかも見た。この検討は、日本が侵略犯罪に関する規定を受諾するか否かを判断する際の基礎的な知見を提供するものであって、本科研関係論文は外務防衛当局の他、国会の審議においても有用な資料となろう。国際刑事裁判所(ICC)規程の2010年締約国カンパラ会議決議で採択された侵略犯罪に関する規定を包括的に分析し、侵略犯罪の定義、構成要件、管轄権行使条件、安保理事会の統制の範囲、個人の刑事責任の形態、及び国の協力義務その他における問題点を抽出した。こうした条約の精密な文理解釈の他、ICCが侵略犯罪を裁くということが国際の平和及び安全の維持に関する安保理事会の権限とどう関係するのかも見た。この検討は、日本が侵略犯罪に関する規定を受諾するか否かを判断する際の基礎的な知見を提供するものであって、本科研関係論文は外務防衛当局の他、国会の審議においても有用な資料となろう。2011(平成23)年度には、研究会を実施し、国際刑事裁判所規程の侵略犯罪に関する改正規定について、カンパラ検討会議での改正採択の条約法上の問題、及び改正手続の問題を中心に検討を加えた。これは、改正規定とその改正手続が複維を極めているため、実質的内容の検討に入る前にこうした改正そのものの問題を精査する必要があるからである。特に改正発効の規定と手順については、諸国の見解に大きな相違があり、これは、管轄権行使条件のような実質的内容にも大きな影響を与える。これらの問題については、カンパラ規程検討会議に出席した本科研研究代表者ど外務省担当官、及びその部分に特に関心を持つ研究分担者によって研究会で報告がなされた。これらのいわば基礎的部分の検討を行った後、2011年度の末ころから徐々に実質的部分の検討にも入り、侵略犯罪について国際刑事裁判所が管轄権行使を行う条件について精密な条文解釈に入った。これが2012年度も継続され、さらに、侵略行為及び侵略犯罪の定義の精査に向かう。本研究は、国際刑事裁判所(ICC)規程の侵略犯罪関連規定の総合的な検討であるが、2013年度は、特に、個人責任、安保理事会との関係、及び刑法の一般原則との関係について研究会における議論が深化した。個人責任については、侵略犯罪が一定の指導者集団でなされることとの関係について検討された。安保理事会との関係に関しては、その国連憲章上の権限とICCがどのようにかかわるのかが焦点となった。ICC規程第3部の刑法の一般原則と侵略犯罪の関係については、一事不再理のような原則がICCと国家の裁判所のようないわば垂直的な関係でどう認識されるかが研究された。本研究は、2013年度で第3年目を終了した。すでに総論的検討を過ぎ、第3年目にあっては上記のような各論的な研究が順次すすめられた。また、本年度にあっては、2013年10月の国際法学会(静岡県立コンベンションセンターで開催)において本科研グループが公募グループ報告を行い、座長、報告者の大部分を本科研グループから出したことも特筆される。さらに2013年11月には、オランダから研究者(ライデン大学ヘリック教授)を招聘し、侵略犯罪関連事項について、東京及び京都で研究会を開催した。この招聘外国研究者の研究報告は、本件研究課題の検討に有益であったとともに、日本の若手院生の聴講も多数あったので彼らにも刺激になる機会を設けることができた点でも意義があった。2014年度は、研究のそうまとめに入り、日本がICC規程の侵略犯罪関連規定を受諾する場合の様々の問題もあつかい、研究成果刊行作業も行うところ、それ以前に検討すべき重要論点を、補完性原則と協力義務の部分を除き、2013年度までに大体は扱うことができた。国際刑事裁判所規程の2010年改正により挿入された侵略犯罪関係条文について、2011年度は基本的な研究を実施した。すなわち、歴史的展開や概念の検討である。これを受けて、2012年度にあっては、より個別的な問題の検討に入った。管轄権行使条件、国家による侵略行為の定義、国家による侵略行為に関与する個人の侵略犯罪の定義、国家の行為への個人の関与の形態、国連安保理事会と国際刑事裁判所の関係、安保理事会による付託、及び、国際刑事裁判所規程の刑法総則規定の分析がそれである。かかる個別的な問題の検討は、諸外国も実施しているところ、日本政府としてもその動向を注視しているドイツの検討に関して、その中心となっているケルン大学のクレス教授を日本に招聘して研究会を2012年度に開いた。これは、本科研における最初の本格的な外国人研究者招聘研究会であったが、そこでは、個別的論点に関する双方の解釈の相違を含め有益な議論がなされた。加えて、研究分担者や研究協力者ではないが、日本外務省国際法課員が研究会に参加しており、侵略犯罪関連条文を加えられた国際刑事裁判所規程改正を日本が受諾するかの政策的判断の基礎的な材料を彼らはこの研究会から得ている。 | KAKENHI-PROJECT-23243008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23243008 |
国際刑事裁判所規程の侵略犯罪関連規定の総合的研究 | 本科研研究は、完全な学理的研究ではなく、実務に一定の影響を与えてきたといえるが、2012年度の個別的論点研究は、その前年の歴史的展開等の研究に比し、一層、実務に大きな影響を与えると考えられる。実際、本研究では、国家による侵略行為の一形態と、日米安全保障条約に基づく日本の行為の関係について本研究が提起した問題は、早晩、国会での取り上げられるような重要な問題である。こうして、昨年よりもより具体的な研究となったこと、諸外国の研究者の招聘によりより知見が双方にとって深まったこと、及び、一層実務的な影響力を持つようになったことが2012年度の実績の概要及び特徴である。2014年度は本基盤研究Aの最終年度で、隔月開催という高い頻度で研究会を東京方面及び関西方面で開催した。本科研主題である国際刑事裁判所(ICC)規程上の侵略犯罪の問題は、定義、管轄権行使、刑法の一般原則、規程締約国の協力義務その他の問題に分けられるが、2014年度はその全てにわたり総まとめの討議を行うことができた。侵略犯罪の定義については、国家の侵略行為の定義についてさらに議論が行われ、その上で指導者犯罪ともいわれる侵略犯罪の人的範囲、行為類型などか分析された。侵略犯罪に対するICCの管轄権行使に関しては、いわゆる積極と消極の解釈が最大の争点となった。分離解釈上は消極解釈が妥当とされながらも何故に積極解釈がありうるのか、まさにその背景を探ることが侵略犯罪の問題の中心に迫ることにもなるので研究会構成員の熱心な討議の対象になった。刑法の一般原則は、指導者犯罪であることが規程第3部とどのように関係してくるのか、そして、国内立法も行うとしたらどのような構成にするのかが議論された。この他、協力義務に関しては、侵略犯罪改正を受諾しない国の対ICC協力義務の範囲が特に問題となった。さらにICCカンパラ会議における規程改正条文の採択方式が条約法からみてどう評価されるかも重要な問題として認識された。研究成果に関しては、2014年9月の国際法学会研究大会全体会合で本科研の研究代表と研究分担者が報告を行い、さらに本科研発足以来密接に協力してきたドイツの研究者の報告も加えて、侵略犯罪に関する充実した議論が行われた。こうした共同研究がまとまって国際法学会で報告の機会を得たのは異例のことでもあって、本科研が優れた成果を上げたことを示している。これらの報告は、国際法外交雑誌に掲載予定であり、また英語化して単行本とする計画も進んでいる。このように最終年度にふさわしい成果があったといえる。26年度が最終年度であるため、記入しない。国際法26年度が最終年度であるため、記入しない。研究それ自体は順調に進展し、予定通りの研究会を東京、関西の両地区で実施した。但し、一部の条文解釈にまだ詰め切れない点が残った。この箇所は、2012年度に持ち越しつつ、規程改正の実質的部分の検討と並行して行うことになる。2013年度までに、検討すべき重要論点、すなわち、侵略犯罪の定義、管轄権行使条件、関係国の同意の必要性、安保理事会の侵略行為認定権限との関係、一事不再理を含む刑法の一般原則の適用問題その他を大体において分析することに成功した。これらの一部はすでに2013年度の学会報告でも公表され、内外学界への貢献の観点からも目標を達した。さらに、通例の研究会に加えて、外国研究者招請の研究会も開催できた。これらでは、多数の大学院生並びに外務省及び防衛省等の本件担当官も参加し、学界及び実務関係者にも有益な研究の機会を付与することができた。 | KAKENHI-PROJECT-23243008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23243008 |
高頻度時系列分析によるリスク評価への応用研究 | 金融市場の日中取引を記録した高頻度データから計算される日次実現ボラティリティのバイアスや株式市場が閉まっている時間帯に対処をすることで、オプション価格付けの精度が向上する可能性を明らかにした。また、ボラティリティ自体が変動する不確実性に対するボラティリティリスクプレミアムを実現ボラティリティに基づき算出することによって、このプレミアムがクレジットスプレッドなどに対して望ましい予測力を持つ可能性をもつことが判明した。平成24年度では、平成23年度に執筆した2つの論文について以下の拡張をおこない研究をより包括的なものとした。第一に、高頻度データから計算されるRealized variance (以降、RV)とオプションデータから計算されるModel-free implied varianceを用いて、日経225株価指数のVariance risk premium(以降、VRP)を算出した。今年度では新たに、このVRPと日次データから計算したRVを用いたVRPの金融資産に対する予測力について検討した。第二に、RVを日経225オプション価格付け応用した昨年度の論文の拡張として、新たにRVに含まれるジャンプを考慮した場合とそうでない場合でパフォーマンスを比較した。研究期間全体を通じて、本研究では高頻度データを用いて算出される洗練されたリスク指標の計算方法と応用についてサーベイ(展望)を行った後、実際に日本市場に応用した研究を行ってきた。まず、高頻度データの情報を利用した日経225株価指数の月次VRPの方が、日次データの情報までを利用した月次VRPに比べて、クレジット・スプレッドや景気動向指数CIに対してより望ましい高い予測力をもつ可能性を明らかにした。また、RVをオプション価格付けに応用する際には、市場のミクロ構造に起因するマイクロストラクチャー・ノイズを考慮したRVと市場が閉まっている時間帯を考慮したRVを用いた方が、両者を考慮しないRVや日次データをベースとしたARCH型オプション価格付けモデルに比べて、パフォーマンスが改善する可能性を明らかにした。これらの結果は高頻度データの情報をうまく利用することによって、日次や月次レベルでのリスク評価とその応用問題に対しても有用となる可能性を示唆するものである。金融市場の日中取引を記録した高頻度データから計算される日次実現ボラティリティのバイアスや株式市場が閉まっている時間帯に対処をすることで、オプション価格付けの精度が向上する可能性を明らかにした。また、ボラティリティ自体が変動する不確実性に対するボラティリティリスクプレミアムを実現ボラティリティに基づき算出することによって、このプレミアムがクレジットスプレッドなどに対して望ましい予測力を持つ可能性をもつことが判明した。平成23年度では、主に以下の3点についての研究をおこなった。第一に、高頻度データから計算されるRealized variance (以降、RV)と大阪大学金融保険センターのVXJ indexに代表されるModel-free implied varianceを用いて、日経225株価指数のVariance risk premium(以降、VRP)を算出した。VRPはforwardlookingな変数であるので、金融資産等に対して予測力を持つか否かについて検証をおこなった。その結果、日経225株価指数のVRPは日経225株価収益率、クレジット・スプレッド、景気動向指数CIに対して、統計的に有意な予測力を持つことが明らかとなった。研究成果は国際会議等で報告を行い、現在は査読付き論文誌への投稿中である。第二に、RVを日経225オプションの価格付けに応用する研究について様々な改訂を行った。これまで得られた結果は、市場のミクロ構造に起因するマイクロストラクチャー・ノイズと市場が閉まっている時間帯を考慮したRVをモデル化した場合、両者を考慮しないRVの時系列モデルやARCH型モデルに比べて、より望ましいパフォーマンスを持つということである。現在は査読付き論文誌に投稿し、引き続き論文の改訂中を行っている。第三に、RVの計測手法は多岐に及ぶ。そこで、最適な時間間隔に基づいたRV、サブサンプリング法によるRV、カーネル法によるRV、スケーリング法によるRVの具体的な計算法や、RVをリスクマネジメントへ応用した研究、今後の研究課題についてまとめたサーベイ論文を執筆した。高頻度データ・時系列分析によるリスクマネジメントに関連するトピックスの1つとして、モデルに依存しないボラティリティの推定量であるRealized varianceとImplied varianceを使って算出されるVariance risk premium(以降、VRP)は近年盛んに研究が進められている変数である。しかしながら、日本市場にVRPを応用した分析はこれまでほとんどなされていなかったと思われる。本研究では、日本市場におけるVRPの実証分析を行い、現段階でいくつかの結論を導き出すことができたと考えられる。今後はこの研究についてさらなる拡張をする次第である。昨年度から進めている日経225株価指数のVariance risk premium(以降、VRP)を算出し、金融資産等に対して予測力を持つか否かについて検証をおこなった実証研究を拡張する。具体的には、マーケット単位のVRPだけではなく、個別銘柄単位でのVRPを算出し、それらがマーケット単位のVRPと共に、将来の金融資産に対してどれくらいの予測力を持つかについて検証を行う予定である。本研究では新たに、個別銘柄ごとの高頻度データからRealized varianceを、株券オプション価格からModel-free implied varianceを推定し、個別銘柄単位でのVRPについて分析を試みる。分析にあたり1年分の高頻度データとデータを保存・加工・分析するための備品を購入する予定である。また、研究成果を報告するための旅費として使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-23730301 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23730301 |
研究成果の日本語による受信発信の支援を目指したニーズ調査とリソース開発 | 国内外の日本語学習者および母語話者の大学生・大学院生,その指導者の学術的受信発信技能向上の支援方法充実のために以下を行った:人文科学・社会科学・工学の9分野270編の日本語学術論文の構造の分析;人文・社会科学系論文における引用を解釈に活用する談話展開の分析;学術語彙習得過程を調査するテストの開発と母語話者・非母語話者への実施;海外の日本語教員・国内の留学生等へのインビューによるニーズ調査。同時に、パネルディスカッションを通じて問題を分析・共有し,アカデミック・ジャパニーズ教育の中核的意義は広く洗練された視野を獲得し学術的追求の意義を認識する得難い機会を与えることであることを確認した。平成23年度には,目的Iの論文・レポートの構造分析において,既有データの分析を継続して問題のあぶり出しを行い,特に文学・教育学分野の論文コーパスを拡充した。さらに,3月の専門日本語教育学会等において分析結果を報告し,同時に研究集会を開催し,進捗状況を確認しあい,分担体制を整理した。看護分野の論文読解・作成支援教材を作成した。目的IIのニーズ調査については,情報収集・文献調査を通じて調査の枠組みと調査項目を設定した。プレ調査として国内の専門教員,海外の日本語教員,国内の留学生,帰国留学生等に対してインタビューを行い,データを文字化して,グループ別に分析に着手した。さらにグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)による質的分析の手法についての研究会を実施し,各グループで手法を共有しつつ,インフォーマントのニーズ・困難点の抽出を進めている。海外の現場でも,探索段階のインタビュー調査に着手した。既にいくつかの調査グループでは,中間段階の学会発表を準備中である。目的IIIのネットワーク構築に関しては,過去に培った海外の日本語教育人脈の中から本共同研究への賛同者(海外の日本語教育従事者)を2月上旬に東京海洋大学および東北大学での研究討論会に招聘し,研究計画に関する議論を行ったほか,同時に相互の情報交換や他の機関も含めた情報収集・資料収集を進め,得た情報の文字化も行った。研究討論会での話し合いの成果は,今までになく多岐にわたり,特に海外の現場の現状を知ることにつながり,今後の調査項目の詳細化に大いに反映されている。また,福岡・仙台・室蘭の分担者の所属機関においても,海外・国内の協力者を招聘して日本語教育現場の情報を共有し合い,ネットワーキングを強化した。既に24年度のパネル共同開催に向けて準備に入っている。このほか,国内の情報関連学会や研究討論会において,教育手法の発表を行った。国内外の日本語学習者および母語話者の大学生・大学院生,その指導者の学術的受信発信技能向上の支援方法充実のために以下を行った:人文科学・社会科学・工学の9分野270編の日本語学術論文の構造の分析;人文・社会科学系論文における引用を解釈に活用する談話展開の分析;学術語彙習得過程を調査するテストの開発と母語話者・非母語話者への実施;海外の日本語教員・国内の留学生等へのインビューによるニーズ調査。同時に、パネルディスカッションを通じて問題を分析・共有し,アカデミック・ジャパニーズ教育の中核的意義は広く洗練された視野を獲得し学術的追求の意義を認識する得難い機会を与えることであることを確認した。目的Iの論文・レポートの構造分析において,佐藤ら(2013)では,人文・社会・工学系論文270本の構造型を調べた結果,文学・社会学・政治/経済/経営学の論文には資料の引用・解釈によって論述を展開する「資料分析型」論文が,それぞれ90.0%,53.3%,66.7%と多かったことを報告している。このことから,人文社会科学系論文指導には,その引用・解釈構造を究明することが喫緊の課題であるとし,この結果から,資料分析型論文における引用から解釈に至る引用文・解釈文の多様性について,実際の論文のコーパスデータにもとづく研究を進め,学会口頭発表(山本ら,2014.3)として報告を行い,分析の詳細化を進めている。目的IIのニーズ調査については,現地日本語教育関係者に対するインタビュー調査を行った。具体的には,中国国内やロシア国内の大学の日本語教育専攻で教える複数のノンネイティブ日本語教師に対して,卒論や卒業研究発表の指導に関する半構造化インタビューを行い,その結果の一部を研究会ポスター発表(大島,2014.2)として報告した。また,母語話者大学院生の作文自己訂正についての報告(山路ら2014.2)や,書き言葉習得の経年変化についての報告等を発表し(山路ら,2013),教授・支援のニーズを検討した。目的IIIのネットワーク構築に関しては,中国上海での「2013年度日本語教育と日本学研究国際シンポジウム」に参加してワークショップを開催したほか,ノボシビルスク国立教育大学において「日本語による学術的文章作成及び指導法」と題して現地のロシア人大学教員及び日本人日本語教師,ロシア人大学生・大学院生に向けて情報発信し,現地参加者との意見交換と教育手法の共有を行った。これらの情報共有の成果は,海外協力者との共著で「アカデミック・ジャパニーズ教育の中核的意義」として論考をまとめた(因ほか,2013)。平成24年度には,目的Iの論文・レポートの構造分析において,人文科学・社会科学・工学の9分野14学会誌計270編の日本語学術論文の構造分析を行い,中間章の4類型を抽出して,学会誌に研究論文として発表した。さらに,人文・社会科学系論文における引用から解釈への談話展開の構成要素を分析し,25年3月の専門日本語教育学会において報告を行った。これらの成果を受けて,特に,人文・社会科学系の論文の分析の新課題を設定し,分析を継続している。 | KAKENHI-PROJECT-23320104 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23320104 |
研究成果の日本語による受信発信の支援を目指したニーズ調査とリソース開発 | 同時に書き言葉表現習得に関する調査も続行している。目的IIのニーズ調査については,国内の専門教員,海外の日本語教員,国内の留学生(特に理系),卒業生等に対してインタビューを行い,対象グループ別に分析を進め,その成果を8月の日本語教育国際学会等で発表した。これらの成果から浮かび上がった諸課題について,引き続き質的分析を行なっている。目的IIIのネットワーク構築に関しては,海外の大学の日本語教育従事者(中国・韓国・ロシア)を8月の国際学会に招聘し,パネルディスカッションを開催して,問題の分析と共有を行った。これらの情報・意見交換から得られた知見をもとに,国内外で日本語によるレポートや論文の読解・作成指導にあたる教授者にむけた情報提供の内容を精査し,平成25年度5月に中国国内の日本学の学会において提供する予定のワークショップ型の研修の設計を行った。このほか,研究成果にもとづく教材開発を行い,国内の関連学会や研究会においてアカデミック・ジャパニーズの教育手法の発表を行った。本研究では,目的I.レポート・論文作成支援を目的としたレポート・論文の構造分析,目的II.国内外における日本語を研究の受信発信に用いる層のニーズに関する質的調査の実施,目的III.日本語学術文献の書き手・読み手・教師支援のための教材や教育手法のリソース開発と,ワークショップを中心とした国内外における参加型研修の実施,支援ネットワークの構築を目指した。(1)目的Iについては,おもに,1人文科学・社会科学・工学の9分野14学会誌計270編の日本語学術論文の構造分析を行い,論文の中間章の構造における「実験/調査型」「資料分析型」「理論型」「複合型」の4類型を抽出し,分野による出現頻度の違いについて明らかにした。2人文・社会科学系論文における引用から解釈への談話展開の構成要素の分析を行い,「資料分析型論文」において「中立的引用文」「解釈的引用文」「引用解釈的叙述文」「解釈文」の4種が独自の機能を果たし,論理展開パターンを構成していることを明らかにした。3N1とN2の書き言葉表現習得に関する調査を行った。(2)目的IIについては,海外の日本語教員,留学生,卒業生等に対するインタビューを実施し,海外日本語教師において留学時の論文執筆経験が帰国後の論文執筆指導に与える影響について指摘したほか,海外日本語教師(中国・ロシア)からのアカデミック・ジャパニーズ教育への支援に関するニーズの存在等について確認した。(3)目的IIIについては,パネルディスカッションを通じた問題の分析と共有,意見交換,ワークショップ型の研修,実践報告を行い,指導者に対する情報共有を図ってきた。さらに,国内外の実践状況と担当者の認識をもとに,アカデミック・ジャパニーズ教育の中核的意義として,学術的追究を行う中で広く洗練された視野の獲得を促す言語技能を養成することの重要性を指摘した。26年度が最終年度であるため、記入しない。日本語教育26年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-23320104 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23320104 |
対人インタラクションにおけるロボットの行動ポリシーの情動感応的知的プランナー | 人間の情動状態や情動的なニーズを表す社会的シグナルを解釈するための情動感応的ファジィ認知モデル(ASFCM)の研究開発,実世界のノイズや人間のふるまいや態度の内面にある潜在的な変数を考慮に入れて効果的な意思決定と行動を高信頼に行うことを可能にする確率理論の枠組みの確立を試みた.急速にその重要性が認識されるようになってきたクラウドソーシングの活用に焦点を当てた.クラウドソーシングプラットフォームの品質制御とデータセットの有用性を高めるために,スパムタイプの類型化と,応答時間や応答系列などに関する作業者の挙動特性の体系的な分析法の構築を行った. Baidu Crowdsourcing Platform(BCP)の分析を行い,作業者とプロジェクトの間の相互作用についての知見に基づいて,不正行為検出のためのルールの作成とシステム化を行い,不正データを検出・排除できるようにした. BCPデータを用いて,クラウドソーシングタスクに参加するユーザの経歴データから因果関係を推定する手法の開発を行った,因果的な要因を順序付けて,最重要なものが優先される手法を開発した.ファジィ認知地図(FCM)を2型ファジィ集合に拡張して,環境的な要因とそれによるユーザ情動の間の因果関係をファジィイベントの正規化された確率空間の共通集合として記述できるようにした. FCMの学習アルゴリズムの設計も行った.自動的な情動アノテーションの精度を高めるために,ユーザとクラウドソーシングプラットフォームのインタラクションにおいて発生するタスク順序のモデル化に取り組み,位置依存モデル(PSM)を提案した.タスク順序とその品質の関連があることを定量的に明らかにすることにより,情動アノテーションの品質を顕著に高められることを明らかにした.成果を取りまとめて,現在論文の取りまとめと投稿を行っている.本研究課題は,平成26年度で廃止のため,記入しない.本研究課題は,平成26年度で廃止のため,記入しない.本研究では,人間からの非明示的な社会的シグナルを解読し,人間との緊密な共同作業を効率的かつ確実に遂行することのできるロボット実現のための基礎理論構築とプロトタイプの実装・評価を行う.人間の情動状態や情動的なニーズを表す社会的シグナルのセンシングとそれに基づくロボットの行動ポリシーのプランニングのためのファジィ・確率理論の枠組みの実現に焦点を当てる.本年度は,円滑な人間-ロボットインタラクションを実現するために必要となる,Fuzzy Cognitive Models(FCMs)に基づく情動検出モデルを構築するときのトレーニング例として使うことのできる標準的な情動データセットの構築法の実現に取り組んだ.標準的な情動データセットを構築するときの効率と精度を向上するため,本研究室でこれまで開発してきた開放型インタラクション分析環境IMADEと没入型インタラクション環境ICIEのプラットフォームを用いて得られるユーザの姿勢・動きのデータをクラウドソーシングによって分析するというアプローチをとる.データ構築の際にアノテータの主観的な判断の質にあまり影響を受けない方法論について検討した.この方法は,アノテータたちの評価とGround truthの間の相関をあらかじめ計算しておき,トレーニングで用いる質問・回答の属性と複数のアノテーションを統合して信頼性の高い推定値を得ることを狙ったものであり,実装と評価を終えて,論文草稿をまとめている.社会的シグナルを抽出し,解析することにより,ユーザの性動状態を効果的かつ高精度に推定する手法を実現するため,情動認知モデル(Affect-Cognition Model, ACM)の構築に集中した取り組みを行った.相互作用系に内在するランダム性(人間の振る舞いの予測困難性)と曖昧性(表現と経験に関連付けられた本質的な個体差)を同時に考慮に入れて社会的シグナルを抽出するという問題を解くには,正解データを大量に収集し,その統計的性質を調べることが基本となる.比較的研究歴史の浅い人間・ロボットインタラクションでは,この問題について深い分析を行うことは困難であったので,人間・コンピュータインタラクションにおいて長い研究の歴史のある情報検索分野における質問一応答の関連性を深く分析することとした.特に,研究事例が多数集積するWeb検索分野について現状を調査したところ,アノテータの手作業により作り出すほうが有効であることがわかった.データ構築の際のアノテータ間の主観的な判断の差異による品質低下を最小するので,アノテータの評価とGround truthの間の相関をあらかじめ計算しておき,トレーニングで用いる質問・回答の属性と複数のアノテーションを統合することで信頼性の高い推定値を求めるというアプローチをとることとした.品質の低い多数のアノテータと,品質の高い少数のアノテータの判断を統合したときの回答の品質低下を回避するために, AIJのもつ統計的性質の分析を行い,品質の悪いアノテータのデータを確率的手法で系統的に除去することにより品質のよい正解データコーパスを構築する手法を考案し,人手で点検する手間を省けるようにした.Baidu社の共同研究者の収集したデータを用いた評価実験を行い,本手法の有効性を実験的に確認した.さらに,ここで問題となる低品質回答の同定と実時間除去についても検討した。人間の情動状態や情動的なニーズを表す社会的シグナルを解釈するための情動感応的ファジィ認知モデル(ASFCM)の研究開発,実世界のノイズや人間のふるまいや態度の内面にある潜在的な変数を考慮に入れて効果的な意思決定と行動を高信頼に行うことを可能にする確率理論の枠組みの確立を試みた.急速にその重要性が認識されるようになってきたクラウドソーシングの活用に焦点を当てた. | KAKENHI-PROJECT-12F02350 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12F02350 |
対人インタラクションにおけるロボットの行動ポリシーの情動感応的知的プランナー | クラウドソーシングプラットフォームの品質制御とデータセットの有用性を高めるために,スパムタイプの類型化と,応答時間や応答系列などに関する作業者の挙動特性の体系的な分析法の構築を行った. Baidu Crowdsourcing Platform(BCP)の分析を行い,作業者とプロジェクトの間の相互作用についての知見に基づいて,不正行為検出のためのルールの作成とシステム化を行い,不正データを検出・排除できるようにした. BCPデータを用いて,クラウドソーシングタスクに参加するユーザの経歴データから因果関係を推定する手法の開発を行った,因果的な要因を順序付けて,最重要なものが優先される手法を開発した.ファジィ認知地図(FCM)を2型ファジィ集合に拡張して,環境的な要因とそれによるユーザ情動の間の因果関係をファジィイベントの正規化された確率空間の共通集合として記述できるようにした. FCMの学習アルゴリズムの設計も行った.自動的な情動アノテーションの精度を高めるために,ユーザとクラウドソーシングプラットフォームのインタラクションにおいて発生するタスク順序のモデル化に取り組み,位置依存モデル(PSM)を提案した.タスク順序とその品質の関連があることを定量的に明らかにすることにより,情動アノテーションの品質を顕著に高められることを明らかにした.成果を取りまとめて,現在論文の取りまとめと投稿を行っている.本研究課題は,平成26年度で廃止のため,記入しない.本研究課題は,平成26年度で廃止のため,記入しない.当初計画したように,本研究の基盤となる手法を確立し,実験で有効性も確かめられ,論文草稿も執筆したので,当初の目的は概ね達成されたと判断した.平成24年度に本研究推進上の有望な課題として新たに浮上したクラウドソーシング利用したモデル構築手法を軌道に乗せるためには,品質保証が最優先課題であったが,データ構築の際にアノテータの主観的な判断の質にあまり影響を受けない方法論の開発と評価ができた点が大きな成果である.成果を取りまとめた論文がデータマイニングのトップカンファレンスであるICDMに採択されたことは意義が大きい。当初の計画に従って,FCMに基づく2型ファジィ集合を構築し,人間・ロボットインタラクションにおいてユーザの感情の推定ができるようにする.人間・ロボットインタラクションにおけるユーザの情動の応答と,環境の間の因果性を定義し,記述することにより,人間・ロボットインタラクションに内在するランダム性とファジィ概念を同時に扱うための統一された枠組みの構築を行う.また,FCMの実装にも取り掛かり,論文として取りまとめる.これまでの研究においてクラウドソーシングによるモデル構築手法が本研究の目標達成のために大変有効であることが判明したので,残りの期間では,クラウドソーシングによるモデル構築手法に集中して,その品質をさらに高めることとした.成功のための要件となる,クラウドソーシングにおける回答品質が極度に低い回答者の回答の有効な排除方法などに焦点をあてた研究を進める。 | KAKENHI-PROJECT-12F02350 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12F02350 |
訂正報告書データベースの構築とその経済的意義の研究 | 2004年から2008年における公表済み財務諸表の訂正についてデータベースを構築し、その傾向を分析した。その結果、訂正が発生する財務諸表の箇所が広範囲であり、この期間における訂正件数が急増していることが分かった。イベントスタディは、訂正の公表が全体的にマイナスのインパクトを有しているとともに、とくに、利益の減額訂正について強いマイナスを示した。訂正を抑制するガバナンス要因として、もっとも影響が強かったのは、当該企業の元経理部長が監査役となっていることであった。2004年から2008年における公表済み財務諸表の訂正についてデータベースを構築し、その傾向を分析した。その結果、訂正が発生する財務諸表の箇所が広範囲であり、この期間における訂正件数が急増していることが分かった。イベントスタディは、訂正の公表が全体的にマイナスのインパクトを有しているとともに、とくに、利益の減額訂正について強いマイナスを示した。訂正を抑制するガバナンス要因として、もっとも影響が強かったのは、当該企業の元経理部長が監査役となっていることであった。本年度は,データベースの作成と研究論文のサーベイを行った。前者については,金融庁のEDINETを利用することによって2003年から2006年に提出された訂正報告書に関するデータベースを作成した。訂正報告書を読むことによって,会社名,株式コード,提出日,有価証券報告書の目次にもとついてどの部分で訂正が生じているのかを識別できるデータベースを作成した。2003年についてはEDINETが本格稼働していないために件数は多くないがその後は急増していること,西武鉄道事件を契機に実施された有価証券報告書の点検による件数め増大のみならず,その後も継続的に提出件数が高水準で推移していることがわかった。今後予定されている内部統制監査に対応することからの影響が大きいものとみられる。そのような中,とくに,会計情報についての訂正(財務諸表本体の数値および注記における訂正)も相当程度の件数が存在しており,その内容をさらに詳細にデータベース化しつつある。さらに,これと並行して,東京証券取引所が提供している適時開示情報データベース(TDnet)を利用して,決算短信における訂正についてもチェックにとりかかっている。後者については,これらのデータベースを分析する際の分析視点を整理するために,米国における財務諸表の修正再表示(restatement)に関連する研究をサーベイし,現在,サーベイ論文を執筆中である。とくに,財務諸表の訂正公表に対する株式市場の反応および訂正を公表した企業におけるガバナンスの特徴が訂正報告書の経済的機能をを分析するための重要な分析視点であることを確認した。なお,研究のサーベイと日本における財務諸表の修正に関する現在までの知見を,早稲田大学オープンリサーチセンター主催のセミナーにおいて報告した。本年度は、東京証券取引所が提供する適時開示情報データベース(TDnet)を利用して、2004年から2007年において決算短信の公表後にその内容を訂正している企業のサンプルをおよそ3,000件程度収集し、データベースを作成した。そして、その傾向を分析するとともに、訂正情報に対する株式市場の反応について検討した。その結果、西武鉄道事件の発生、証券取引所による決算発表の早期化要求、内部統制監査の導入などの要因を背景として、この期間において決算短信の訂正が急増していること、決算短信公表直後の監査によって訂正事項が発見されることが多いこと、訂正の急増は本則市場と新興市場の区別なく同様なこの傾向であること、業種についても広がりがあり、特定業種にとくに集中しているわけではないこと、訂正箇所も多様であることなどの一般的な傾向を明らかにすることができた。さらに、訂正情報の公表に対する株式市場の反応を分析したところ、株式市場は訂正情報について統計的に有意にマイナスの反応をしていることが判明した。また、利益情報の訂正をしたサンプルについて、訂正規模と株式市場の反応との関係を分析したところ、そのマイナスの反応が強いものであるとともに、訂正規模が大きいほど株式市場の反応が大きいという結果が得られた。以上のような分析から、決算短信の訂正情報は、株式市場において重要な情報であり、投資家はこの情報を意思決定に利用しているということがわかった。これらは、これまでわが国では注目されてこなかった決算情報に関する訂正情報の重要性を明らかにするものであり、次年度に実施する、さらに、詳細な分析の基礎をなすものである。2004年から2008年における上場企業における公表済み財務諸表の訂正を、東京証券取引所の適時開示システムに登録された情報から抽出してデータベースを構築した。当該データベースには、のべ2,093社による3,603件の訂正が含まれている。当該データベースを利用して訂正の実態を検討したところ、主な傾向として、2004年以降、訂正が急増していること、訂正が生じる財務諸表の箇所は広範で財務諸表本体のみならず注記情報においても多く発生していることなどがわかった。訂正の公表を行った場合の株価への影響を分析したところ、全体としては公表日およびその翌日における超過株式収益率は統計的に有意にマイナスの値となった。詳細に分析したところ、訂正した企業が本則市場に上場しており、かつ、利益を減額する訂正情報を公表した場合において強いマイナスの株価効果を確認することができた。また、訂正の可能性が生じた場合の開示情報において、訂正金額が明確でない場合に非常に強いマイナスとなることが明らかとなった。さらに、利益訂正の発生確率に影響を及ぼすガバナンス要因について分析した。その結果、利益の減額訂正については、監査役に会計専門性があること(とくに、元経理部長であること)が訂正の発生確率を統計的に有意に減少させていることが判明した。 | KAKENHI-PROJECT-19530420 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19530420 |
訂正報告書データベースの構築とその経済的意義の研究 | これに対して、増額訂正については、取締役および監査役の両社における会計専門性(とくに、元経理部長であること)がともに重要であることがわかった。これらは、社外の税理士や会計士が取締役や監査役となることが、利益訂正に限ってみた場合には、有効ではないことを示している。さらに、これらの分析によって、社外監査役や社外取締役の存在が、利益訂正の発生確率に影響していないことも明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-19530420 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19530420 |
中学から大学まで一貫した精神保健教育の開発:双生児を核とした縦断データ解析 | 思春期から青年期は精神疾患の好発年代であるが、わが国の教育システムではこの年代は中学、高校、大学と区分されており、その間で連携した精神疾患への予防対応は極めて不十分である。本研究では中高大と一貫した精神保健教育の開発を最終目標に、中高から卒業後までの縦断研究の為の調査を実施した。中高の年齢で睡眠習慣を含む様々な生活習慣、抑うつ等の精神症状、希死念慮、いじめ被害等について毎年の調査を受けている卒業生(主に大学生)、約450人(その約2割が双生児ペア)を対象に現在の生活習慣、精神的健康等に関する調査を郵送法で実施、約150人から協力が得られた。現在、双生児ペア比較を含めた縦断解析を進めている。思春期から青年期にかけては精神疾患の好発年齢が始まりかつ年代である。近年の研究によれば成人の精神疾患罹患者のうち半数は14歳までに、4分の3は24歳までに発症することが示されており、この年代における精神疾患発症予防は、国全体にとって大きな課題である。海外ではこの年代における精神疾患リテラシー向上並びに予防のための教育プログラムが盛んに行われているが、わが国ではこれが極めて不十分な状態である。またわが国の教育システムではこの年代は、中学、高校、大学と別々のレベルに区分されているが、精神疾患への対応に関する各レベル間の連絡は、全校レベルの対応は勿論、各事例の対応でもシステムが未整備であり、整備に必要な研究データも不足している。実際に大学での発症・悪化が高校以前や浪人時代の生活習慣に関連していたり、以前の再発であることも多く、中学・高校から大学までの一貫した精神保健対策は極めて重要な課題である。本研究はその第一歩として、中高大と一貫した精神保健教育の開発を目的に、中高生の段階で我々が精神保健調査を実施している学校の卒業生を対象に、卒業後の生活状況と適応、健康状態について中高でのデータと合わせた縦断解析を行うための調査を実施した。なおこのような縦断調査は我々の知る限り海外でも稀である。具体的な研究実施は次の通りである。まず中高の年齢で、睡眠習慣を含む様々な生活習慣、抑うつ症状、自傷・希死念慮、いじめとその被害等について毎年の調査を受けている卒業生(主に大学生)、450人余り(その約2割が双生児ペア)を対象に、現在の生活習慣、精神的健康状態等に関する調査を、質問を送付して回答を求めた。その結果約150人から協力が得られ、現在中高時代の回答と結合して、双生児ペア比較を含めた縦断解析を進めている。なお中高時代を含めいずれの調査票でも研究者には個人の特定が不可能な学籍番号を記入してもらい、匿名のまま各人の回答の連結を可能とした。思春期から青年期は精神疾患の好発年代であるが、わが国の教育システムではこの年代は中学、高校、大学と区分されており、その間で連携した精神疾患への予防対応は極めて不十分である。本研究では中高大と一貫した精神保健教育の開発を最終目標に、中高から卒業後までの縦断研究の為の調査を実施した。中高の年齢で睡眠習慣を含む様々な生活習慣、抑うつ等の精神症状、希死念慮、いじめ被害等について毎年の調査を受けている卒業生(主に大学生)、約450人(その約2割が双生児ペア)を対象に現在の生活習慣、精神的健康等に関する調査を郵送法で実施、約150人から協力が得られた。現在、双生児ペア比較を含めた縦断解析を進めている。本研究は、ある中高一貫校の卒業生で大学生の年代を対象に、生活状況や適応状況を質問紙で調査し、在校中に行った精神保健調査やその他の健康調査、体力調査などのデータと合わせて解析することで、精神的健康を維持するために必要な要因についての要因を中高から大学にいたるまで検討し、中高から大学まで一貫して行うべき健康教育の在り方を明らかにし、その試案を作成することを目的として実施している。平成24年度は、卒業生に実施する質問紙の作成、中高在校中のデータの電子化作業、同窓会との連絡による調査準備、倫理委員会への申請(承認済み)などを進めた。これをもとに平成25年度前半に卒業生調査の実施と解析を進め、後半には試案作りを行う予定である。これと同時に、中高データの縦断解析も行っており、就寝時刻がその後の精神的健康度(不安・抑うつ)に有意に影響すること、また一卵性双生児ペアの解析から(対象校では、毎年双生児枠での入学が一定数行われている)、遺伝的背景が同じであっても、睡眠時間や就寝時刻は不安・抑うつを有意に説明できることが明らかとなった。これまで、一般者でも睡眠時間などの睡眠習慣と不安・抑うつとの間に相関のあることは複数の研究で観察されてきたが、その因果関係(どちらが原因で、どちらが結果か?あるいは擬似的な相関にすぎないのか?)については明らかでなかった。本研究の今年度の解析は、貴重な縦断データを解析することで、その問題に答えを与えたという点で、きわめて重要な解析であると考えられる。調査を開始するにあたって必要な同窓会との連絡・返事が遅れがちなため、現時点に関する質問紙調査の発送などがこれからとなっている。卒業生の現時点での生活習慣、適応、精神的健康状態に関する質問紙調査を、郵送法にて実施。得られたデータを在校時(中高生時点)のデータと合わせて縦断的に解析し、卒業後の適応と精神的健康に関連する諸要因を明らかにする。それをもとに、中学・高校・大学と一貫した精神的健康のための健康教育の試案を作成する。 | KAKENHI-PROJECT-24650419 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24650419 |
中学から大学まで一貫した精神保健教育の開発:双生児を核とした縦断データ解析 | 卒業生への調査の実施(人件費、調査用紙印刷、郵送、謝金、入力)に大半の費用を使うこととなる。そのほかには、参考書籍、成果発表のための費用(旅費、出版費用)、健康教育用パンフレットの印刷費用などに用いる。 | KAKENHI-PROJECT-24650419 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24650419 |
ZnTe系材料を用いた高効率欠損領域LEDの開発 | ZnTeをベースとした材料系(Zn_(1-x)Mg_xTe)を用いて高効率欠損波長領域におけるLEDの性能向上を実現した。エピタキシャル成長用基板の品質向上やエピタキシャル成長膜の平坦化、高品質化が実現できた。特にド-ピング量、アニ-ル処理条件の最適化により、高キャリア密度や発光効率向上が達成できた。更に、A1濃度制御技術の開発や光取り出し構造の最適化などが果され、ダブルヘテロ構造を用いたLEDの作製により、基本特性が掌握できた。ZnTeをベースとした材料系(Zn_(1-x)Mg_xTe)を用いて高効率欠損波長領域におけるLEDの性能向上を実現した。エピタキシャル成長用基板の品質向上やエピタキシャル成長膜の平坦化、高品質化が実現できた。特にド-ピング量、アニ-ル処理条件の最適化により、高キャリア密度や発光効率向上が達成できた。更に、A1濃度制御技術の開発や光取り出し構造の最適化などが果され、ダブルヘテロ構造を用いたLEDの作製により、基本特性が掌握できた。本研究ではZnTeをベースとした材料系で既に開発したLEDの高輝度化のための要素基盤技術を結集すると共に、主としてエピタキシャル膜の平坦化、高品質化、ナノレベルでの拡散制御層平坦化およびそれに伴い生じる光取り出し構造の最適化などを実施することにより、LEDの性能向上を目指た。本年度の得られた成果の概要は以下の通りである。1.LEDの高輝度化のための要素基盤技術の結集とp型エピタキシャル成長膜Zn_<1-x>Mg_xTe、ZnTeの平坦化、高品質化これまでのデバイス化技術を結集し、有機金属気相成長法用の高品質なエピタキシャル成長基板Zn_<1-x>Mg_xTeを供給すると共に基板面方位についても検討した。また、p型エピタキシャル成長膜の平坦化、高品質化を目指した。その結果、(100)、(111)Te面で成長膜の平坦化が実現でき、またドーピング量の最適化と適度なアニール処理により高キャリア密度や発光効率向上が達成された。2.LEDの高輝度化に不可欠な拡散制御層のナノレベル制御、n型Zn_<1-x>Mg_xTeエピタキシャル成長、加工、光取り出し構造の研究開発などについて良質なn形層を得るために拡散制御層のナノレベル制御とn型Zn_<1-x>Mg_xTeエピタキシャル成長の2つの異なる手法を追求した。前者において、エピタキシャル成長膜中の拡散濃度分布を制御するためA1拡散制御層の厚さを変えた実験を試みた。後者においては有機金属気相成長法によるA1のドーピングを探求した。また、デバイス化のため、研磨とドライエッチングを組み合わせた薄膜化技術を開発した。その結果、光取り出し効率が向上できた。本研究ではZnTe系材料によるLEDの高輝度化のために、主として、エピタキシャル成長用Zn_<1-x>Mg_xTe基板の品質向上、Zn_<1-x>Mg_xTeエピタキシャル膜の平坦化、高品質化並びに拡散制御層のナノレベル制御などの項目について前年度の成果を発展させた。本年度で得られた主たる成果の概要は、以下の通りである。1.エピタキシャル成長用Zn_<l-x>Mg_xTe基板の品質向上:x線ロッキング曲線の半値全幅が60arcsec程度の良好なエピタキシャル成長用基板Zn_<1-x>Mg_xTeを作製でき、前年度よりも結晶品質が向上できた。また、種々のMg組成xに対してドープしたPのアクセプタ準位などを決定し、材料設計のための有用なデータを明らかにできた。2.エピタキシャル成長膜Zn_<1-x>Mg_xTeの平坦化、高品質化:前年度を発展させて、種々のMg組成xに対してドーピング量、アニール処理条件の最適化により高キャリア密度や発光効率向上が達成された。また、成長条件の探求およびコヒーレント成長に対応する膜厚レベルの達成により、良好な物性を有しかつ平滑なエピタキシャル成長膜を実現し、ダブルヘテロ構造を作製できた。3.拡散制御層のナノレベル制御と発光メカニズムに着眼したLEDの性能向上拡散制御層の材料をも考慮して拡散制御層の作製条件とLEDの諸特性との関係を検討した。更に、LED諸特性の実験データを用いてLEDの発光メカニズムを検討することにより、良質なn形層を得るために必要なエピタキシャル成長膜中の拡散濃度を把握すると共にその制御技術が確立できた。また、2で作製したダブルヘテロ構造を用いたLEDの作製も試み、基本特性が掌握できた。 | KAKENHI-PROJECT-19560318 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19560318 |
パウダーフローポリッシング法の提案と歯ブラシ法に代わる口腔内清掃システムへの適用 | 本研究の最終目的は過去数世紀にもわたって全世界で使用されてきた歯ブラシを用いた口腔清掃を一新し,容易で効果的な口腔内清掃システムを開発することにある.本年度は,昨年度に試作したパウダーフローポリッシング(PFP)装置を用いて,その加工特性(除去特性)について実験的に検討した.本PFP法は,研磨粒子による工作物垂直方向への作用力が微小であるため,工作物に与えるダメージが小さい.さらに研磨砥粒の水車方向への速度が大きいため,能率的に材料除去ができる.また,現存する噴射加工では噴射砥粒と除去された材料は空間中に放出されるため,それらの回収工程が必要であったのに対し,PFP法ではそれらが管内から放出されることがないため,回収工程が必要ない,等の特徴を有する.加工実験には,研磨粒子として植物の繊維を造粒した口腔用結晶性セルロース(メジアン径33μm)を用いた.これは化学的に安定で多量に摂取しても人体に対して全く危害がない.また歯面に付着した歯垢を模擬し,ガラス板に塗布した油性塗料を使用した.加工結果は,除去領域の面積(以下,加工面積と記す)と最大深さ(以下,加工深さと記す)で評価した.その結果,加工時間,平均流速,チューブ押し込み量が増えるほど加工面積,加工深さが増加することがわかった.このことより,本PFP法を用いた清掃システムは,口腔内においても十分な歯垢除去能力を有することが明らかになった.本研究の最終目的は過去数世紀にもわたって全世界で使用されてきた歯ブラシを用いた口腔清掃を一新し,容易で効果的な口腔内清掃システムを開発することにある.そのため最初に,研磨粒子を高速で運動させ,粒子の飛散がほとんどないパウダーフローポリッシング装置を製作しなければならない.そしてPFP法の基本的な加工特性と,口腔内清掃に適用した場合のプラークの除去特性,歯面に与える影響を調べる。次に,口腔内清掃装置専用のマウスピースを試作し,除去特性への影響を検討する.本年度は本研究で使用する口腔用パウダーフローポリッシング装置を設計,試作した.研磨粒子としては,申請者らが開発した口腔用結晶性セルロースを使用する.これは植物の繊維を造粒したものであり,化学的に安定で多量に摂取しても人体に対して全く為害性がない.医薬品や食品の添加剤としても使用されているものである.またこの研磨粒子を供給する方法として次の2つを検討した。一つは申請者がすでに開発したアブレイシブジェット加工用微量供給装置を用いる方法,もう一つは微粒子用流動床を使用する方法である.その結果,流動床を使用する方法の装置を試作した.しかし,装置を樹脂製で製作したため,摩擦帯電の影響が大きく,放電することが確認された.現在その対策を行っているところである.来年度は,装置の改良後に,実際の歯面清掃実験を行う予定である.本研究の最終目的は過去数世紀にもわたって全世界で使用されてきた歯ブラシを用いた口腔清掃を一新し,容易で効果的な口腔内清掃システムを開発することにある.本年度は,昨年度に試作したパウダーフローポリッシング(PFP)装置を用いて,その加工特性(除去特性)について実験的に検討した.本PFP法は,研磨粒子による工作物垂直方向への作用力が微小であるため,工作物に与えるダメージが小さい.さらに研磨砥粒の水車方向への速度が大きいため,能率的に材料除去ができる.また,現存する噴射加工では噴射砥粒と除去された材料は空間中に放出されるため,それらの回収工程が必要であったのに対し,PFP法ではそれらが管内から放出されることがないため,回収工程が必要ない,等の特徴を有する.加工実験には,研磨粒子として植物の繊維を造粒した口腔用結晶性セルロース(メジアン径33μm)を用いた.これは化学的に安定で多量に摂取しても人体に対して全く危害がない.また歯面に付着した歯垢を模擬し,ガラス板に塗布した油性塗料を使用した.加工結果は,除去領域の面積(以下,加工面積と記す)と最大深さ(以下,加工深さと記す)で評価した.その結果,加工時間,平均流速,チューブ押し込み量が増えるほど加工面積,加工深さが増加することがわかった.このことより,本PFP法を用いた清掃システムは,口腔内においても十分な歯垢除去能力を有することが明らかになった. | KAKENHI-PROJECT-14655049 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14655049 |
真核生物におけるDNA複製複合体の分子構築と機能解析 | 酵母および哺乳動物細胞を用いて真核生物におけるDNA複製複合体の分子構築とその作用機序を解明するために、以下の4つの方向から研究を進めてきた。1.分裂酵母のRfc3:我々が最近開発に成功した重差分化法という新たな技術を用いて数多くクローン化した分裂酵母の減数分裂前DNA合成開始制御に関わる遺伝子群の中に、出芽酵母のReplication Factor Cの3番目のサブユニット(Rfc3)に酷似した構造を持つ遺伝子が見つかった。その機能解析をした結果、この遺伝子はmitosisにおけるDNA複製に重要な働きをしているRfc3そのものであることが示唆された。このRfcはDNA複製のみでなく、DNA複製チェックポイントやDNA傷害チェックポイントにも密接に絡んでいることが分かったので、それらの点について詳しく解析した。2.哺乳動物細胞E2FのS期開始制御機構:哺乳動物細胞のG1/S期での転写誘導に重要な役割を果たすE2F蛋白質について、その制御機構を解析した。特にDNA複製開始制御に関わるHsMCM遺伝子の転写制御機構を詳しく解析した。3.哺乳動物のMCM/Pl蛋白質:哺乳動物細胞のDNA複製開始制御に関わる碓類のHsMcm2-7蛋白質に対して作製した抗体や、バキュロウイルス系を用いて純化したHsMCM蛋白質を用いて、免沈や電顕などによりHsMcm2-7複合体全体の構造と機能を解析した。4.出芽酵母のNiklのS期開始制御:発現がG1/S期でピークを持つ細胞周期性振動を繰り返すNIKIは、G2/M期遷移の制御のみでなく、S期開始制御も行うことを我々は新たに見出したので、その分子制御機構を詳しく解析した。酵母および哺乳動物細胞を用いて真核生物におけるDNA複製複合体の分子構築とその作用機序を解明するために、以下の4つの方向から研究を進めてきた。1.分裂酵母のRfc3:我々が最近開発に成功した重差分化法という新たな技術を用いて数多くクローン化した分裂酵母の減数分裂前DNA合成開始制御に関わる遺伝子群の中に、出芽酵母のReplication Factor Cの3番目のサブユニット(Rfc3)に酷似した構造を持つ遺伝子が見つかった。その機能解析をした結果、この遺伝子はmitosisにおけるDNA複製に重要な働きをしているRfc3そのものであることが示唆された。このRfcはDNA複製のみでなく、DNA複製チェックポイントやDNA傷害チェックポイントにも密接に絡んでいることが分かったので、それらの点について詳しく解析した。2.哺乳動物細胞E2FのS期開始制御機構:哺乳動物細胞のG1/S期での転写誘導に重要な役割を果たすE2F蛋白質について、その制御機構を解析した。特にDNA複製開始制御に関わるHsMCM遺伝子の転写制御機構を詳しく解析した。3.哺乳動物のMCM/Pl蛋白質:哺乳動物細胞のDNA複製開始制御に関わる碓類のHsMcm2-7蛋白質に対して作製した抗体や、バキュロウイルス系を用いて純化したHsMCM蛋白質を用いて、免沈や電顕などによりHsMcm2-7複合体全体の構造と機能を解析した。4.出芽酵母のNiklのS期開始制御:発現がG1/S期でピークを持つ細胞周期性振動を繰り返すNIKIは、G2/M期遷移の制御のみでなく、S期開始制御も行うことを我々は新たに見出したので、その分子制御機構を詳しく解析した。 | KAKENHI-PROJECT-10162208 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10162208 |
極低放射能技術の最先端宇宙素粒子研究への応用 | 本研究では、本領域「地下宇宙」が成功するために優先して進めるべき次の4つのテーマを、他の計画研究班と連携しながら進める。1.世界初の中性子バックグラウンドの体系的理解(計画研究A02、B01、B02班と連携)2.水やキセノンガス中からのラドン除去(計画研究A01、B01、B02、C01班と連携)3.低バックグラウンド材料の選定(計画研究A01、A02、B01、B02、C01、D02班と連携)4.データベースを用いた測定結果の国内外への発信本研究では、本領域「地下宇宙」が成功するために優先して進めるべき次の4つのテーマを、他の計画研究班と連携しながら進める。1.世界初の中性子バックグラウンドの体系的理解(計画研究A02、B01、B02班と連携)2.水やキセノンガス中からのラドン除去(計画研究A01、B01、B02、C01班と連携)3.低バックグラウンド材料の選定(計画研究A01、A02、B01、B02、C01、D02班と連携)4.データベースを用いた測定結果の国内外への発信 | KAKENHI-PLANNED-19H05808 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-19H05808 |
ヌードマウス移植固型腫瘍に対するインターロイキン2の抗腫癌効果 | ヒト固型腫瘍の発育,増殖に会するインターロイキン2の抗腫瘍効果をヌードマウスをモデル動物として検討することを目的として本研究を開始した.無菌的に手術的に摘出されたヒト固型腫瘍し主に乳癌)をヌードマウスの背部皮下に移植し,継代移植可能なものを選出することから研究に着手したが,継代移植可能な腫瘍がなかなか得られず,ヌードマウスの死亡率も高度であった.これには当施設に於いては完全な無菌室が使用できず,そのために細菌汚染による死亡が多いものと考えられた.以上の事情によりヌードマウスの使用を断念し,モデル動物をラットに変更して化学発癌の初期におけるインターロイチン2の抗発癌作用を検討することに研究を変更した.現在,ウィスター系ラット40匹を用いて, 1群:無処置群10匹, 2群:ジメチルヒドラジン20mg/kg,週1回投与16週,及びインターロイキン皮下注1回/日, 16週, 3群:ジメチルヒドラジン20mg/kg週1回投与16週及び,インターロイキン2皮下注, 9週目より1回/日8週間, 4群:ジメチルヒドラジン20mg/kg週1回投与, 16週のスケジュールで化学発癌に対するインターロイキン2の効果を検討中である.実験終了時まで結果が分らないため現時点では結果を示すことはできないが,ジメチルヒドラジン投与によりラットの大腸に高率に発癌がみられることより,第2群及び3群のラットで発癌率の低下が認められれば,発癌の初期の時点に於て,インターロイキン2が,その発癌の抑制作用を有することが示唆されるではないかと考えている.また実験終了時には種々の免疫学的アッセイ及び病理組織学的検討を加える予定である.ヒト固型腫瘍の発育,増殖に会するインターロイキン2の抗腫瘍効果をヌードマウスをモデル動物として検討することを目的として本研究を開始した.無菌的に手術的に摘出されたヒト固型腫瘍し主に乳癌)をヌードマウスの背部皮下に移植し,継代移植可能なものを選出することから研究に着手したが,継代移植可能な腫瘍がなかなか得られず,ヌードマウスの死亡率も高度であった.これには当施設に於いては完全な無菌室が使用できず,そのために細菌汚染による死亡が多いものと考えられた.以上の事情によりヌードマウスの使用を断念し,モデル動物をラットに変更して化学発癌の初期におけるインターロイチン2の抗発癌作用を検討することに研究を変更した.現在,ウィスター系ラット40匹を用いて, 1群:無処置群10匹, 2群:ジメチルヒドラジン20mg/kg,週1回投与16週,及びインターロイキン皮下注1回/日, 16週, 3群:ジメチルヒドラジン20mg/kg週1回投与16週及び,インターロイキン2皮下注, 9週目より1回/日8週間, 4群:ジメチルヒドラジン20mg/kg週1回投与, 16週のスケジュールで化学発癌に対するインターロイキン2の効果を検討中である.実験終了時まで結果が分らないため現時点では結果を示すことはできないが,ジメチルヒドラジン投与によりラットの大腸に高率に発癌がみられることより,第2群及び3群のラットで発癌率の低下が認められれば,発癌の初期の時点に於て,インターロイキン2が,その発癌の抑制作用を有することが示唆されるではないかと考えている.また実験終了時には種々の免疫学的アッセイ及び病理組織学的検討を加える予定である. | KAKENHI-PROJECT-62570598 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62570598 |
酵母の多様なチトクロームP450遺伝子を利用する炭化水素鎖末端酸化化合物の生産 | 本研究計画では、申請者らの単離した炭化水素鎖を酸化する酵母の多様なチトクロームP450の遺伝子を必要に応じてその還元酵素とともに、異種酵母あるいは細胞壁の安定なコリネ型細菌に導入し、長鎖ジカルボン酸(DCA)を含む末端酸化炭化水素鎖化合物の新しい生産系を確立することを目的とした。Saccharomyces cerevisiae YPH500株をはじめとする標準的酵母宿主に、GAL1遺伝子あるいはADH1のプロモーターの下流にCandida maltosaの各種チトクロームP450ALK(以下P450ALK)をコードするALK遺伝子を繋いだYEpプラスミド(pYPR-ALK1他)を導入した。これは既に、ALK1、ALK2、ALK3、ALK5、ALK7、ALK8について完成した。この結果、それぞれの遺伝子産物の気質特異性が明らかになり、Alk1pはn-alkaneにのみ作用し、Alk3pはn-alkaneと脂肪酸の両方に、しかしよりn-alkaneをよく酸化し、Alk5pはn-alkaneと脂肪酸両方でもより脂肪酸に、Alk7pとAlk8pはn-alkaneはほとんど酸化せず、専ら脂肪酸のω酸化を行うことが明らかになった。従って、それぞれの基質特異性を利用すれば、DCAの生産が効率よく行われるものと考えられた。一方,Yarrowia lipolyticaの8種のチトクロームP450ALKについて遺伝子ヌクレオチド配列から構造を推定したところ、それらは新たなCYP52サブファミリーをなす事が明らかとなった。うち、Alk1pがn-decaneの酸化に最も重要であった。Alk2pはヘキサデカンの酸化にある程度働くことも明らかになった。残念ながら、新たなDCA生産菌の構築は達成困難であったが、各種P450ALKにつき、利用できる可能性を示すことができ、ある程度の成果を得ることができた。本研究計画では、申請者らの単離した炭化水素鎖を酸化する酵母の多様なチトクロームP450の遺伝子を必要に応じてその還元酵素とともに、異種酵母あるいは細胞壁の安定なコリネ型細菌に導入し、長鎖ジカルボン酸(DCA)を含む末端酸化炭化水素鎖化合物の新しい生産系を確立することを目的とした。Saccharomyces cerevisiae YPH500株をはじめとする標準的酵母宿主に、GAL1遺伝子あるいはADH1のプロモーターの下流にCandida maltosaの各種チトクロームP450ALK(以下P450ALK)をコードするALK遺伝子を繋いだYEpプラスミド(pYPR-ALK1他)を導入した。これは既に、ALK1、ALK2、ALK3、ALK5、ALK7、ALK8について完成した。この結果、それぞれの遺伝子産物の気質特異性が明らかになり、Alk1pはn-alkaneにのみ作用し、Alk3pはn-alkaneと脂肪酸の両方に、しかしよりn-alkaneをよく酸化し、Alk5pはn-alkaneと脂肪酸両方でもより脂肪酸に、Alk7pとAlk8pはn-alkaneはほとんど酸化せず、専ら脂肪酸のω酸化を行うことが明らかになった。従って、それぞれの基質特異性を利用すれば、DCAの生産が効率よく行われるものと考えられた。一方,Yarrowia lipolyticaの8種のチトクロームP450ALKについて遺伝子ヌクレオチド配列から構造を推定したところ、それらは新たなCYP52サブファミリーをなす事が明らかとなった。うち、Alk1pがn-decaneの酸化に最も重要であった。Alk2pはヘキサデカンの酸化にある程度働くことも明らかになった。残念ながら、新たなDCA生産菌の構築は達成困難であったが、各種P450ALKにつき、利用できる可能性を示すことができ、ある程度の成果を得ることができた。本研究計画では、申請者らの単離した炭化水素鎖を酸化する酵母の多様なチトクロームP450の遺伝子を必要に応じてその還元酵素とともに、異種酵母あるいは細胞壁の安定なコリネ型細菌に導入し、長鎖ジカルボン酸を含む末端酸化炭化水素鎖化合物の新しい生産系を確立することを目的とする。本年度の計画ではSaccharomyces cerevisiaeYPH500株をはじめとする標準的酵母宿主に、GAL1遺伝子あるいはADH1のプロモーターの下流にCandida maltosaの各種チトクロームP450ALK(以下P450ALK)をコードするALK遺伝子を繋いだYEpプラスミド(pYPR-ALK1他)を導入する。これは既に,ALK1,ALK2,ALK3,ALK5,ALK7,ALK8について完成した。一方,Yarrowia lipolyticaの8種のチトクロームP450ALKについても同様のものを作成中である。また、P450ALKの還元酵素遺伝子についても、C.maltosa由来のもの及びYarrowia lipolytica由来のもののそれぞれについてクローン化したものについて、P450ALKとの共発現系を作成し、S.cerevisiae株に導入する計画であった。これは既にSchunckらのグループで同種のものが作製されているので入手を検討している。また,最近工業用ジカルボン酸生産菌はC.maltosaの一種であることが判明し,この高生産菌のP450ALK生産を調べたところ,いくつかのP450遺伝子について高い発現が見られた。その発現機構を調べ,ジカルボン酸生産への寄与を検討中である。 | KAKENHI-PROJECT-10556015 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10556015 |
酵母の多様なチトクロームP450遺伝子を利用する炭化水素鎖末端酸化化合物の生産 | 本研究計画では、申請者らの単離した炭化水素鎖を酸化する酵母の多様なチトクロームP450の遺伝子を必要に応じてその還元酵素とともに、異種酵母あるいは細胞壁の安定なコリネ型細菌に導入し、長鎖ジカルボン酸を含む末端酸化炭化水素鎖化合物の新しい生産系を確立することを目的とする。本年度はSaccharomyces cerevisiaeYPH500株をはじめとする標準的酵母宿主に、GAL1遺伝子あるいはADH1のプロモーターの下流にCandida maltosaの各種チトクロームP450ALK(以下P450ALK)をコードとするALK遺伝子を繋いだYEpプラスミド(pYPR-ALK1他)を導入した。これは既に、ALK1、ALK2、ALK3、ALK5、ALK7、ALK8について完成した。この結果、それぞれの遺伝子産物の気質特異性が明らかになり、Alk1pはn-alkaneにのみ作用し、Alk3pはn-alkaneと脂肪酸の両方に、しかしよりn-alkaneをよく酸化し、Alk5pはn-alkaneと脂肪酸両方でもより脂肪酸に、Alk7pとAlk8pはn-alkaneはほとんど酸化せず、専ら脂肪酸のω酸化を行うことが明らかになった。従って、それぞれの基質特異性を利用すれば、ジカルボン酸の生産が効率よく行われるものと考えられた。一方、Yarrowia lipolyticaの8種のチトクロームP450ALKについて遺伝子ヌクレオチド配列から構造を推定したところ、それらは新たなCYP52サブファミリーをなす事が明らかとなった。うち、Alk1pがn-decaneの酸化に最も重要であった。 | KAKENHI-PROJECT-10556015 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10556015 |
小学校におけるプログラミング教育のためのカリキュラムの開発 | 本年度は、小学校におけるプログラミング学習のカリキュラムの作成と教材の開発を行い、小学校における試行実験を行う予定であった。情報科学・情報工学の視点からの理想的な学習内容、学習方法及び評価点については完成した。しかし、これらを学校側の視点から見た場合、受け入れ可能であるのか、実現可能であるのかを試行実験などの結果を検討したうえで提案しなければ、実際に小学校の授業としての試行実験をお願いすることは難しいと判断した。そこで、本年度は昨年度から実施している本研究で提案している学習内容が小学校の各学年で実施可能かどうかの試行実験の追加実施を行い、それらの結果を小学校の教員に提示して、意見聴取をすることに重点を置いて研究を行った。試行実験として、小学校1・2年生を対象として3回、小学校3・4年生を対象として1回、小学校5・6年生を対象として1回実施した。これらの結果から学年区分の見直しが必要であること、学年区分ごとに適した端末やプログラミング言語などについての知見を得ることができた。更にこれらの知見に対して、12月から2月にかけて、小学校のプログラミングに関する研究授業に訪問した際に聞き取り調査を行ったり、教員向けの研修会などで試行実験についての結果を発表したりすることで、参加者からの感想や意見を収集することを行った。その結果、学修成果の評価方法については、学校教員からの共感を概ね得ることができた。また、カリキュラムについても、学年ごとの学習目標や学習内容について、意見を聴取した結果、学校のICT環境の整備に応じたカリキュラムモデルの提示と、学校でのICT環境の整備目標との関係についても具体的に示す必要性が分かり、一覧表の制作を年度末から実施し、次年度初めにも完成する予定である。本年度は研究協力者による小学校の特定のクラスでの実証実験を行う予定であったが、研究実績の概要でも述べた通り、より小学校での実施を受け入れやすくするために、学校教員からの意見聴取なども実施して、より現実的なカリキュラムの作成を目指し、小学校以下外の場での試行実験を行い、その結果をもって全体の完成度を上げることに重点を置いた。試行実験は、予定通り実施したが、更なる試行実験の必要性も判明した。しかし、試行実験は、対象となる児童の募集、場所、教材等の確保に時間がかかるため、次年度以降も引き続き実施する予定である。小学校での実証実験については、本年度の試行実験を基にした学校教員への意見聴取などの結果から、より現実的なカリキュラムを開発することができたため、次年度には特定のクラスによる実証実験に加えて、学校全体での取り組みとして受け入れてもらえる小学校を確保することができた。また更に、その小学校とは2020年度以降に予定していた、より高度な内容のカリキュラムについても、前倒しして開発及び実証実験を実施することで計画を進めている。したがって、本年度の計画に対する進捗はやや遅れているものの、次年度では一部前倒しで研究計画を実施する予定であり、次年度では全体として予定通りの進捗となることが期待される。小学校以外の場での試行実験に対しては、本年度までの結果から更に実験を行うことで確認が必要な学習内容や、学修教材、教育方法があることが判明したため、引き続き小学校以外の場での試行実験を実施する。これにより、全体の研究成果の向上を図る。教材については、試作品は完成したため、これらを次年度の試行実験・実証実験で使用して、次年度中の完成を目指す。小学校での実証実験としては、特定のクラスで実施するものとして3校、学校全体として実施するものとして1校を確保したため、今年度までの成果を基に、実証実験を開始し、学校教員と協力して分析・評価までを実施する。本年度は、試作したカリキュラムや試行実験の結果については、学校教員からの意見聴取を最重要視したため、学術論文や学会等での成果発表は行わず、学校での研究発表や教員研修の場での発表、書籍による成果発表などに重点を置いてきた。しかし、学術分野での発表も重要であるため、次年度は学術雑誌や国内外での学会において、研究成果を発表し、学術的な評価を得るようにするとともに、Webサイトなどを通じた学校教員向け情報発信を行っていく。これまでに収集・調査した英国の教科「Computing」の情報をもとに,小学校学習指導要領で示された、「プログラミングを体験しながら,コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動」で修得するスキルに着目してカリキュラムの設計を行った。このカリキュラムに基づき、小学校低学年向けのプログラムと高学年向けの学習プログラムを設計した。設計した学習プログラムの内、低学年向けプログラムを小学校1年生15名、2年生10名に対して平成29年8月に実施した。プログラムは共通した活動課題に対して、体験(アンプラグド)とプログラミングの両方を体験させることにより、コンピュータを使うことの利点を学ばせた。この実践については西日本新聞などでも取り上げられるなど反響が高かった。また、学会でも報告をしたところ、学習内容や配布資料に関する問い合わせが小学校からあり、資料の提供を行った。平成29年10月に教科「Computing」が導入されてから4年目となる英国の小学校3校、教育委員会、企業などを訪問し調査を行った。今回訪問した小学校の内、2校英国内でも先進的に教科「Computing」に取り組んでいる学校で、使用されているハードウエアが以前から変わってきている点や、他の授業でのプログラミング体験学習が良い効果を上げている点などの情報を収集することができ、参考になった。また、もう1校は後進的な学校で、その原因や問題点、今後の展望などの聞き取り調査を行うことができ、先進的な2校と対比することができ、参考になった。 | KAKENHI-PROJECT-17K00993 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K00993 |
小学校におけるプログラミング教育のためのカリキュラムの開発 | また、教育委員会への訪問では、これまでの教材開発などに重点を置いていた対応から、教員研修の充実に重点を置き始めている様子が見られて、わが国での導入に対して参考となる情報を収集することができた。平成29年度の計画で、実施できなかったものは、小学校高学年向けの試行実験のみである。これは、当初実施を予定してはいたものの、実施先との日程調整がつかなかったことが主な原因である。尚、この平成29年度に実施されなかった高学年向け試行実験については、平成30年7月に実施することが確定している。本年度は、小学校におけるプログラミング学習のカリキュラムの作成と教材の開発を行い、小学校における試行実験を行う予定であった。情報科学・情報工学の視点からの理想的な学習内容、学習方法及び評価点については完成した。しかし、これらを学校側の視点から見た場合、受け入れ可能であるのか、実現可能であるのかを試行実験などの結果を検討したうえで提案しなければ、実際に小学校の授業としての試行実験をお願いすることは難しいと判断した。そこで、本年度は昨年度から実施している本研究で提案している学習内容が小学校の各学年で実施可能かどうかの試行実験の追加実施を行い、それらの結果を小学校の教員に提示して、意見聴取をすることに重点を置いて研究を行った。試行実験として、小学校1・2年生を対象として3回、小学校3・4年生を対象として1回、小学校5・6年生を対象として1回実施した。これらの結果から学年区分の見直しが必要であること、学年区分ごとに適した端末やプログラミング言語などについての知見を得ることができた。更にこれらの知見に対して、12月から2月にかけて、小学校のプログラミングに関する研究授業に訪問した際に聞き取り調査を行ったり、教員向けの研修会などで試行実験についての結果を発表したりすることで、参加者からの感想や意見を収集することを行った。その結果、学修成果の評価方法については、学校教員からの共感を概ね得ることができた。また、カリキュラムについても、学年ごとの学習目標や学習内容について、意見を聴取した結果、学校のICT環境の整備に応じたカリキュラムモデルの提示と、学校でのICT環境の整備目標との関係についても具体的に示す必要性が分かり、一覧表の制作を年度末から実施し、次年度初めにも完成する予定である。本年度は研究協力者による小学校の特定のクラスでの実証実験を行う予定であったが、研究実績の概要でも述べた通り、より小学校での実施を受け入れやすくするために、学校教員からの意見聴取なども実施して、より現実的なカリキュラムの作成を目指し、小学校以下外の場での試行実験を行い、その結果をもって全体の完成度を上げることに重点を置いた。試行実験は、予定通り実施したが、更なる試行実験の必要性も判明した。しかし、試行実験は、対象となる児童の募集、場所、教材等の確保に時間がかかるため、次年度以降も引き続き実施する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-17K00993 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K00993 |
数学科におけるプロセス能力の形成的アセスメントに関する研究 | 本研究の目的は,数学科において,真正な現実画面の問題とルーブリックを作成し,問題を解決するプロセスに焦点を当て,形成的アセスメントとして授業で活用し,その有効性を実証的に示すことである。そのために,現実場面の問題を扱いながらプロセス能力の育成に焦点を当てた教材であるイギリスのデジタル教材「Bowland Maths.」や「Core Maths」に着目し,その中から日本の文脈に合わせて開発できる教材をいくつか選んだ。また,「Bowland Maths.」のケーススタディで育成されたプロセス能力を評価するために提供されている「Assessment Task(評価課題)」の中から日本の文脈に合わせて開発できる教材をいくつか選び,ルーブリックの有効性を分析した。イギリスで形成的アセスメントを取り入れた授業を実践されている先生方と形成的アセスメントを取り入れた授業の在り方について検討した。形成的アセスメントの方法として以下の方法が有効であることがわかった。一つ目は,自力解決をさせたあと,ルーブリックを与え自己評価させ,その後,グループで,ルーブリックをもとに相互評価させ解決方法を改善させる方法。二つ目は,自力解決をさせたあと,プリントを回収し教師がルーブリックをもとに改善の方針に当たるコメントを生徒にフィードバックし,その後,生徒に自らの解決方法を改善させる方法。これらの方法を課題に応じて実践することで,個々のプロセス能力が徐々に向上していくことがわかった。また,「Bowland Maths.」が始めた,生徒の数学的問題解決能力を測り,その伸長を1年間かけてモニターすることを目的とする調査の日本における実践を行い,イギリスでの調査結果と比較をし,イギリスの研究会において、日本の中学生にみられる特徴について報告した。本研究の目的は,数学科において,真正な現実画面の問題とルーブリックを作成し,問題を解決するプロセスに焦点を当て,形成的アセスメントとして授業で活用し,その有効性を実証的に示すことである。そのために,現実場面の問題を扱いながらプロセス能力の育成に焦点を当てた教材であるイギリスのデジタル教材「Bowland Maths.」や「Core Maths」に着目し,その中から日本の文脈に合わせて開発できる教材をいくつか選んだ。また,「Bowland Maths.」のケーススタディで育成されたプロセス能力を評価するために提供されている「Assessment Task(評価課題)」の中から日本の文脈に合わせて開発できる教材をいくつか選び,ルーブリックの有効性を分析した。イギリスで形成的アセスメントを取り入れた授業を実践されている先生方と形成的アセスメントを取り入れた授業の在り方について検討した。形成的アセスメントの方法として以下の方法が有効であることがわかった。一つ目は,自力解決をさせたあと,ルーブリックを与え自己評価させ,その後,グループで,ルーブリックをもとに相互評価させ解決方法を改善させる方法。二つ目は,自力解決をさせたあと,プリントを回収し教師がルーブリックをもとに改善の方針に当たるコメントを生徒にフィードバックし,その後,生徒に自らの解決方法を改善させる方法。これらの方法を課題に応じて実践することで,個々のプロセス能力が徐々に向上していくことがわかった。また,「Bowland Maths.」が始めた,生徒の数学的問題解決能力を測り,その伸長を1年間かけてモニターすることを目的とする調査の日本における実践を行い,イギリスでの調査結果と比較をし,イギリスの研究会において、日本の中学生にみられる特徴について報告した。 | KAKENHI-PROJECT-16H00166 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H00166 |
新規フォトニクスガラス材料探索のためのコンピュータ支援システムの開発 | 今までになかった材料を新規に合成していくことは重要なことである。近年、スーパーコンピュータが並列処理機能をもてるようになったことで、その性能は著しく向上し、材料設計にコンピュータシミュレーションを用いて効率化をはかることは、ほぼ確実になってきている。本年度は対象を光機能性材料として非常に有望なニューガラスを用い、コンピュータシミュレーションにより、光機能性を発現する組成探索を行なうことを目的としている。得られた成果は次の通りである。1.長波長光を短波長光に変換する赤外-可視変換ガラスは、光ディスクの高密度化をはかる上で重要になると思われる。それは波長が半分になると読み取り面積が4倍となるので4倍の記録密度をもつことになるからである。これまで種々のガラスが試行錯誤的に作製され、その赤外可視変換効率を調べていくという研究がなされてきたが、その効率はきわめて悪かった。これは、入射赤外光が非輻射緩和するといった熱エネルギー変換をしてしまうからである。そこで非輻射緩和をしないような組成探索シミュレーションを行なった。その結果、酸化物<フッ化物<塩化物<臭化物<ヨウ化物の順で非輻射損失が少なくなることが分かった。そこで塩化物ガラスを作製すると、その変換効率は1%にも達する赤外-可視変換ガラスを作ることができた。2.光ディスクの記録密度を上げるもう一つの方法は、波長多重性を利用して、データを読み取ることである。これをホールバーニングとよぶが、そのためには、蛍光線幅が広いことが必要である。そのために希上類イオンを種々のガラス組成の中へドープしたシミュレーションを行ない、アルカリホウ酸塩ガラスが最もその線幅が広いことが分かった。又、そのレーザー照射により室温でホールが形成されることも分かり、実用化への期待が大きくなっている。今までになかった材料を新規に合成していくことは重要なことである。近年、スーパーコンピュータが並列処理機能をもてるようになったことで、その性能は著しく向上し、材料設計にコンピュータシミュレーションを用いて効率化をはかることは、ほぼ確実になってきている。本年度は対象を光機能性材料として非常に有望なニューガラスを用い、コンピュータシミュレーションにより、光機能性を発現する組成探索を行なうことを目的としている。得られた成果は次の通りである。1.長波長光を短波長光に変換する赤外-可視変換ガラスは、光ディスクの高密度化をはかる上で重要になると思われる。それは波長が半分になると読み取り面積が4倍となるので4倍の記録密度をもつことになるからである。これまで種々のガラスが試行錯誤的に作製され、その赤外可視変換効率を調べていくという研究がなされてきたが、その効率はきわめて悪かった。これは、入射赤外光が非輻射緩和するといった熱エネルギー変換をしてしまうからである。そこで非輻射緩和をしないような組成探索シミュレーションを行なった。その結果、酸化物<フッ化物<塩化物<臭化物<ヨウ化物の順で非輻射損失が少なくなることが分かった。そこで塩化物ガラスを作製すると、その変換効率は1%にも達する赤外-可視変換ガラスを作ることができた。2.光ディスクの記録密度を上げるもう一つの方法は、波長多重性を利用して、データを読み取ることである。これをホールバーニングとよぶが、そのためには、蛍光線幅が広いことが必要である。そのために希上類イオンを種々のガラス組成の中へドープしたシミュレーションを行ない、アルカリホウ酸塩ガラスが最もその線幅が広いことが分かった。又、そのレーザー照射により室温でホールが形成されることも分かり、実用化への期待が大きくなっている。 | KAKENHI-PROJECT-04650701 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04650701 |
低酸素に着眼した関節リウマチにおける骨破壊の分子機構の解明と治療への応用 | 関節リウマチは滑膜炎を主体に関節破壊を引き起こし、破骨細胞による骨破壊はその直接的な原因である。関節リウマチの滑膜組織においては細胞増殖の亢進、炎症細胞の浸潤に伴い酸素需要が増大し、低酸素状態である。低酸素下では破骨細胞分化が促進されることが知られているが詳細な機序は不明である。低酸素下破骨細胞分化促進を制御する因子を同定し、関節リウマチの骨破壊機構の解明と新たな治療法を探索すべく実験を行った。健常人ボランティアから得た末梢血からフィコールにて末梢血単核球を分離、磁気抗体ビーズを使用してCD14陽性細胞に対してポジティブセレクションを行った。M-CSFを加えて破骨前駆細胞を作成した。申請者が低酸素下破骨細胞分化に関わる分子の探索を行うために行ったRNAシーケンスの結果、破骨細胞分化に関わると予測された転写分子33個のうち、これまでに破骨細胞分化における役割が同定されていないものの1つについて注目した。リアルタイムPCRにて、低酸素刺激あるいはRANKL刺激による破骨前駆細胞におけるmRNAレベルでの変化は認めなかった。しかし、免疫染色を施行したところ、破骨前駆細胞においてこの転写因子は、通常大気下では細胞質、核内に均等に存在するのに対し、低酸素下でRANKL刺激を行うとでは核内に移行することを発見した。これは低酸素およびRANKL刺激下でこの転写因子の活性化を示唆する所見であると考えられた。現在siRNAを用いたノックダウンを行い、この転写因子の役割を解析している。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。関節リウマチは滑膜炎を主体に関節破壊を引き起こし、破骨細胞による骨破壊はその直接的な原因である。関節リウマチの滑膜組織においては細胞増殖の亢進、炎症細胞の浸潤に伴い酸素需要が増大し、低酸素状態である。低酸素下では破骨細胞分化が促進されることが知られているが詳細な機序は不明である。低酸素下破骨細胞分化促進を制御する因子を同定し、関節リウマチの骨破壊機構の解明と新たな治療法を探索すべく実験を行った。健常人ボランティアから得た末梢血からフィコールにて末梢血単核球を分離、磁気抗体ビーズを使用してCD14陽性細胞に対してポジティブセレクションを行った。M-CSFを加えて破骨前駆細胞を作成した。申請者が低酸素下破骨細胞分化に関わる分子の探索を行うために行ったRNAシーケンスの結果、破骨細胞分化に関わると予測された転写分子33個のうち、これまでに破骨細胞分化における役割が同定されていないものの1つについて注目した。リアルタイムPCRにて、低酸素刺激あるいはRANKL刺激による破骨前駆細胞におけるmRNAレベルでの変化は認めなかった。しかし、免疫染色を施行したところ、破骨前駆細胞においてこの転写因子は、通常大気下では細胞質、核内に均等に存在するのに対し、低酸素下でRANKL刺激を行うとでは核内に移行することを発見した。これは低酸素およびRANKL刺激下でこの転写因子の活性化を示唆する所見であると考えられた。現在siRNAを用いたノックダウンを行い、この転写因子の役割を解析している。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-17H06816 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H06816 |
離散極値構造の研究 | 互いにt点で交差する集合族の測度の積の最大値に関する研究をSang June Lee氏、Mark Siggers氏とおこない、交差族に関するAhlswede--Khachatrianの定理を拡張した。最大値とそれを達成する唯一の構造(極値構造)を決定し、測度の積が最大値に近い場合には、対応する集合族も極値構造に近いこと、すなわち、安定性があることも示した。さらに交差族が二つであることに特有の構造が生じることも明らかにした。結果については論文にまとめ、現在投稿中である。n点集合のa点部分集合族とb点部分集合族が互いに交差するとき、そのサイズの積の最大値が一点を固定する集合族で達成されるためのa,bの条件について考察した。これは、nが2a以上、2b以上の場合にはErdos--Ko--Radoの定理の自然な拡張になることが知られているが、nが小さい場合については未知である。対応する測度版での考察からa,bに関する必要十分条件の予想を立て、その一部について証明した。多重交差族のサイズ評価に関連して得られるある不等式について研究し、加藤満生氏、小須田雅氏と検討した。これはn変数の多項式間の不等式であるが、計算機実験をおこなった結果nが小さいところでは正しいことを確かめた。画像処理に関する文献収集、予備実験等をおこなった。極値集合論の教科書は基本的な結果の新しい証明や、最近の研究成果なども盛り込みつつ、予定通りに出版することができた。また二つの交差する集合族に関して、期待されていた結果や、新しい知見を得ることができ、これまでのところ研究は概ね順調に進んでいる。極値組合せ論に現れるさまざまな問題について、組合せ論的な手法、代数的な手法、確率論的な手法などを適宜用い、さらにこれらの手法を複合的に利用する可能性も追求しながら問題の解決をはかる、という目標にしたがってこれまで通りに研究を続ける。今年度は前年度に引き続きSang June Lee氏とMark Siggers氏との共同研究のとりまとめ、正則化の手法についての整理、再検討を行うほか、これらと並行して応用に関する情報収集等も行いたい。互いにt点で交差する集合族の測度の積の最大値に関する研究をSang June Lee氏、Mark Siggers氏とおこない、交差族に関するAhlswede--Khachatrianの定理を拡張した。最大値とそれを達成する唯一の構造(極値構造)を決定し、測度の積が最大値に近い場合には、対応する集合族も極値構造に近いこと、すなわち、安定性があることも示した。さらに交差族が二つであることに特有の構造が生じることも明らかにした。結果については論文にまとめ、現在投稿中である。n点集合のa点部分集合族とb点部分集合族が互いに交差するとき、そのサイズの積の最大値が一点を固定する集合族で達成されるためのa,bの条件について考察した。これは、nが2a以上、2b以上の場合にはErdos--Ko--Radoの定理の自然な拡張になることが知られているが、nが小さい場合については未知である。対応する測度版での考察からa,bに関する必要十分条件の予想を立て、その一部について証明した。多重交差族のサイズ評価に関連して得られるある不等式について研究し、加藤満生氏、小須田雅氏と検討した。これはn変数の多項式間の不等式であるが、計算機実験をおこなった結果nが小さいところでは正しいことを確かめた。画像処理に関する文献収集、予備実験等をおこなった。極値集合論の教科書は基本的な結果の新しい証明や、最近の研究成果なども盛り込みつつ、予定通りに出版することができた。また二つの交差する集合族に関して、期待されていた結果や、新しい知見を得ることができ、これまでのところ研究は概ね順調に進んでいる。極値組合せ論に現れるさまざまな問題について、組合せ論的な手法、代数的な手法、確率論的な手法などを適宜用い、さらにこれらの手法を複合的に利用する可能性も追求しながら問題の解決をはかる、という目標にしたがってこれまで通りに研究を続ける。今年度は前年度に引き続きSang June Lee氏とMark Siggers氏との共同研究のとりまとめ、正則化の手法についての整理、再検討を行うほか、これらと並行して応用に関する情報収集等も行いたい。学内業務の都合で予定していた国際学会への出席をとりやめたため残額が生じた。次年度の旅費として利用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18K03399 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K03399 |
リボキシゲナーゼ活性操作による豆腐の食味の向上と多様化を図る新育種法の開発 | リポキシゲナーゼ(L1,L2,L3)活性は、寒冷地生産の品種が,暖地生産の品種の比べ高い傾向を示した。新丹波黒のpH9でのリポキシゲナーゼ活性(L1)が低い形質は遺伝的支配によることを示した。欠失変異の塩基配列を利用してマーカーの開発を行った。L3のプロモーター領域の変異を利用してL3欠失型検出用と野生型検出用として使える2組のDNAマーカーを開発した。また,L2欠失型の判別は構造遺伝子のSNPを用いてDNAマーカーを開発した。普通品種スズユタカ(L123)、ゆめゆたか(L1)、関東102(L2)、九州119(L3)、いちひめ(全欠)の破砕に伴うオキシリピン代謝について検討した。どの品種でも酸化脂質は遊離脂肪酸画分よりグリセロ脂質画分に多く見いだされた。生成した酸化脂質量は関東102で最も多く、ゆめゆたかといちひめで最も低かった。生しぼり豆腐は加熱しぼり豆腐よりもこく味、甘味が有意に強く感じられた。香気成分のhexanoic acidは生しぼり豆腐で有意に多く存在していた。Lox活性作用によって生成するhexanoic acidは豆腐特有のこく味(風味)に寄与する主要な成分であり甘味も増強することが示唆された。大豆を高温・高湿条件下で保存すると、hexanal、hexanoic acid、maltolの生成量が増加することが認められ、豆腐の味質に影響することが示唆された。以上の結果から、リポキシゲナーゼ反応由来の脂質酸化生成物が豆腐のこく味、甘味に寄与する成分であり、本酵素活性を制御することにより豆腐の味質を多様化できることを示した。今後、リポキシゲナーゼ欠失品種と普通品種とのブレンドや部分欠失性を利用した応用研究が必要であろう。リポキシゲナーゼ(L1,L2,L3)活性は、寒冷地生産の品種が,暖地生産の品種の比べ高い傾向を示した。新丹波黒のpH9でのリポキシゲナーゼ活性(L1)が低い形質は遺伝的支配によることを示した。欠失変異の塩基配列を利用してマーカーの開発を行った。L3のプロモーター領域の変異を利用してL3欠失型検出用と野生型検出用として使える2組のDNAマーカーを開発した。また,L2欠失型の判別は構造遺伝子のSNPを用いてDNAマーカーを開発した。普通品種スズユタカ(L123)、ゆめゆたか(L1)、関東102(L2)、九州119(L3)、いちひめ(全欠)の破砕に伴うオキシリピン代謝について検討した。どの品種でも酸化脂質は遊離脂肪酸画分よりグリセロ脂質画分に多く見いだされた。生成した酸化脂質量は関東102で最も多く、ゆめゆたかといちひめで最も低かった。生しぼり豆腐は加熱しぼり豆腐よりもこく味、甘味が有意に強く感じられた。香気成分のhexanoic acidは生しぼり豆腐で有意に多く存在していた。Lox活性作用によって生成するhexanoic acidは豆腐特有のこく味(風味)に寄与する主要な成分であり甘味も増強することが示唆された。大豆を高温・高湿条件下で保存すると、hexanal、hexanoic acid、maltolの生成量が増加することが認められ、豆腐の味質に影響することが示唆された。以上の結果から、リポキシゲナーゼ反応由来の脂質酸化生成物が豆腐のこく味、甘味に寄与する成分であり、本酵素活性を制御することにより豆腐の味質を多様化できることを示した。今後、リポキシゲナーゼ欠失品種と普通品種とのブレンドや部分欠失性を利用した応用研究が必要であろう。つくば市の作物研究所,北大農学部等で増殖した平成15年度産の多数の大豆品種を対象にリポキシゲナーゼイソ酵素(Lox-1,Lox-2,Lox-3)活性を分析し、Lox-1活性,Lox-2+Lox-3活性が部分的に低下した品種を複数認めた.逆に,コントロールとした普通品種スズユタカよりイソ酵素活性が大幅に増大した品種を複数認めた.本酵素活性,特にLox-2活性は栽培・収穫・保存条件で変化することが知られており,これらの活性差が遺伝的であるかの確認を行っている.また,当初の研究実施計画にはないが,大豆脂質の脂肪酸組成の変異検索を実施し,リポキシゲナーゼの基質となるリノール酸含有率が大幅に低下し,基質とならないオレイン酸含有率が大幅に向上した変異大豆品種を複数認めた.豆腐の風味に寄与する香気成分の生成に及ぼすリポキシゲナーゼアイソザイムの影響について検討した.つくば産のスズユタカ系統の大豆5種[(スズユタカ(Lox-1,Lox-2,Lox-3全有)、ゆめゆたか(Lox-1有)、関東102号(Lox-2有)、九州119号(Lox-3有)、いちひめ(全欠)]から調製した豆腐の香気成分を調べたところ、スズユタカと関東102号(香気の高いグループ)とゆめゆたか、九州119号及びいちひめ(香気の低いグループ)に分かれた.この結果は、Lox-2が豆腐の風味生成に寄与することを示唆した.また,全有と全欠系統の脂肪酸酸化物組成の違いを分析し、その組成に明らかな違いを認めた,現在、各成分の構造決定、また定量を進めている.フレーバー生成に寄与するリポキシゲナーゼ変異体は単離されているが,それ以外の変異による揮発成分組成変異体は知られていない. | KAKENHI-PROJECT-15380009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15380009 |
リボキシゲナーゼ活性操作による豆腐の食味の向上と多様化を図る新育種法の開発 | そこで,1000種のダイズについて種子破砕時に生成されるフレーバー成分の組成に関する変異体のスクリーニングを行っている.フレーバー成分は固相マイクロ抽出法により分析し,これまでに150種の解析を終え,数種の興味深い変異体を同定した.昨年リポキシゲナーゼ(Lox-1,Lox-2,Lox-3)活性が部分的に低下した品種(エンレイ、すずおとめ、新丹波黒)を認め、今夏、北大圃場内でハウス栽培した。新丹波黒のLox-1活性は、普通品種の1/3程度、Lox-2・Lox-3活性は1/2程度と低いことが確認できた。しかし、エンレイ、すずおとめの活性は、普通品種とほぼ同程度であった。豆腐の風味に及ぼすLox活性の影響を調べるために、15年度産の114品種のLox活性を測定し、この中から活性の高い4品種と低い4品種を選抜した。これらの大豆から調製した豆腐の香気成分量は活性の高い大豆ほど多いという結果は得られなかった。一方、温暖地で栽培された大豆ほどhexanoic acid等の香気成分量が多かったことから、大豆の収穫・保存温度等が香気成分生成に大きく影響すると推察した。生成した脂質過酸化物が豆腐加工時に熱分解を受け、一部は揮発性物質へと変化し、また、一部はアミノ酸等と結合し、種々の呈味成分を生成する可能性がある。そこで、スズユタカ(Lox-1,Lox-2,Lox-3有)、ゆめゆたか(Lox-1有)、関東102号(Lox-2有)、九州119号(Lox-3有)、いちひめ(Lox欠)より磨砕液を調製し、過酸化脂質量を定量した。その結果、関東102号が最も多くの酸化脂質を生成し、Lox-2が酸化脂質生成に大きく貢献すること、また、遊離脂肪酸の酸化物に比べ、グリセロ脂質酸化物が多く、Lox-2はトリアシルグリセロールを直接酸化することが明らかとなった。また一部はヒドロキシ基に還元後、さらに酸化されてカルボニル基へと変換されていた。ゆめゆたか、いちひめでは酸化脂質の生成量が検出限界以下に抑えられていた。こうした酸化脂質生成物の質・量の差が豆腐のこくの違いを反映するのであろう。今後は豆腐の風味の多様化を図るために、Lox組成および活性との関係解明を進めるとともに、Lox選抜のためにDNAマーカーを開発する。昨年確認したリポキシゲナーゼ(Lox)活性が低下した新丹波黒とタマホマレの交雑F_1をガラス温室にて養成し,F_2種子を採種した。F_2種子114粒の酵素活性はほぼ両親の活性範囲に分布し,新丹波黒と同程度の活性を示す低活性種子を認めた。Lox-3のプロモーター領域の変異を利用してLox-3欠失型検出用と野生型検出用として使える2組のDNAマーカーを開発した。また,Lox-2欠失については構造遺伝子の1596番目の塩基の変異を利用して、Lox-2欠失型の検出用DNAマーカーを開発した。豆腐の風味に及ぼすLox活性の影響を調べるために,生しぼりと加熱しぼり豆腐の官能評価及び呈味・香気成分の比較分析を行った。生しぼり豆腐は加熱しぼり豆腐よりもこく味、甘味が有意に強く感じられた。豆腐の甘味成分である遊離糖、不快味成分であるイソフラボンの各量は両豆腐間で差がなかったが,香気成分のhexanoic acidは生しぼり豆腐で有意に多く存在していた。Lox活性作用によって生成するhexanoic acidは豆腐特有のこく味(風味)に寄与する主要な成分であり、甘味も増強する可能性が示唆された。豆腐の風味に関与する揮発性、および不揮発性化合物の生成機構について調査した。 | KAKENHI-PROJECT-15380009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15380009 |
腎疾患におけるオートファジー・リソゾーム系の病態への関与 | AutophagyとApoptosisが急性腎障害(AKI)で観察される事を我々は報告しているが、その情報伝達系と病態での役割は不明な点が多い。この研究では尿細管においてAutophagyとMitophagyおよびリソゾーム系が病態の調整に関与するかを検討した。ラットAKIモデルで、BNIP3は近位尿細管細胞で発現が増加した。BNIP3の遺伝子導入はAutophagosomeをミトコンドリアにおいて増加させ、AutophagyとMitophagyを誘導し、さらにApoptosisも亢進させた。BNIP3は酸化ストレスにより尿細管細胞で誘導され、AutophagyとMitophagyを誘導し、AKIの病態における重要な働きが示唆された。AutophagyとApoptosisが急性腎障害(AKI)で観察される事を我々は報告しているが、その情報伝達系と病態での役割は不明な点が多い。この研究では尿細管においてAutophagyとMitophagyおよびリソゾーム系が病態の調整に関与するかを検討した。ラットAKIモデルで、BNIP3は近位尿細管細胞で発現が増加した。BNIP3の遺伝子導入はAutophagosomeをミトコンドリアにおいて増加させ、AutophagyとMitophagyを誘導し、さらにApoptosisも亢進させた。BNIP3は酸化ストレスにより尿細管細胞で誘導され、AutophagyとMitophagyを誘導し、AKIの病態における重要な働きが示唆された。現在、末期腎不全により、透析療法に至っている患者数は、全国で28万人を越え、今後、糖尿病性腎症の増加、高齢化も加わり、さらに患者数の増加が予想され抜本的対策が急務である。腎障害には、大きく分けて糖尿病などの慢性的な腎障害と、急性腎障害のように数時間でおこるものがある。慢性腎障害時にはストレスにより酸化した蛋白の分解・清浄化の障害が働いていると考えられ、定常的に機能しているオートファジーの低下による異常蛋白の蓄積と細胞障害が病態に関与している可能性がある。また虚血などによる急性腎不全では、細胞は栄養飢餓状態になり、急速に誘導されるオートファジーの病態への関与が考えられる。しかしながら腎臓病の病態におけるオートファジーの役割については不明であるが、申請者らは、急性腎障害時にオートファジーが、アポトーシスに先行して近位尿細管で起こる事を発表した。すなわちLC3プロモーターにGFPを結合したトランスジェニックマウスの実験系を用いて急性腎障害でのマクロオートファジーを確認し、誘導的オートファジーの急性の腎疾患に関する実験を行い報告した。LC3プロモーターにGFPを結合したプラスミドを安定導入した、腎尿細管細胞を樹立した。さらに申請者らは、特にオートファジー・リソゾーム系について近年のタンパク分解系の分子機構の解明の細胞生物学的研究の発展をふまえて、腎疾患の病態への関与、解明を目指して実験系も確立しつつある。本年度(平成22年度)は、マクロオートファジーに関連した蛋白質のLC3等の動向を腎疾患モデル動物や培養細胞系を用い、Western blotや組織学的検索を通じて検討する。またLC3蛋白にGFPを融合したトランスジェニックマウスやLC3プロモーターにGFPを結合したプラスミドを安定導入した、腎メサンギウム細胞、ポドサイト、腎尿細管細胞を樹立する。東京医科歯科大学の水島昇先生との共同研究としてトランスジェニックマウス(Mizushima N., Mol Biol Cell 2004)、LC3-GFPプラスミドを供与して頂いており、今後も御指導を頂く。これらの実験系を用いてin vivo及びin vitroでの慢性腎障害モデルやネフローゼモデルマウスでのマクロオートファジー及びシャペロン介在性オートファジーの働きを検討する。同様の実験系を用いて急性腎障害でのマクロオートファジーを確認し、誘導的オートファジーの急性の腎疾患に関する実験を行なう。また申請者は、既にPI3Kgammaが欠損したPI3K-Akt pathwayが抑制されたノックアウトマウススとLC3蛋白にGFPを融合したトランスジェニックマウスを交配させる事より、Akt pathwayの抑制がある場合とない場合で、慢性腎障害モデルあるいは、急性腎障害モデルでのオートファジーの関与をGFP-LC3を用いて検出できるin vivoのシステムを作成しつつある。上記内容を学会発表し、下記の論文で発表をした。本年度(平成23年度)は、腎疾患におけるオートファジー・リソゾーム系の病態への関与を更に検討するため、マクロオートファジーに関連した蛋白質のLC3等の動向を腎疾患モデル動物や培養細胞系を用い、Western blotや組織学的検索を通じて検討した。またLC3蛋白にGFPを融合したトランスジェニックマウスやLC3プロモーターにGFPを結合したプラスミドを安定導入した、腎メサンギウム細胞、ポドサイト、腎尿細管細胞を樹立する。東京医科歯科大学の水島昇先生との共同研究としてトランスジェニックマウス(Mizushima N., Mol Biol Cell 2004)、LC3-GFPプラスミドを供与して頂いており、今後も御指導を頂く。これらの実験系を用いてin vivo及びin vitroでの慢性腎障害モデルやネフローゼモデルマウスでのマクロオートファジー及びシャペロン介在性オートファジーの働きを検討する。同様の実験系を用いて急性腎障害でのマクロオートファジーを確認し、誘導的オートファジーの急性の腎疾患に関する実験を行なった。 | KAKENHI-PROJECT-21659214 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21659214 |
腎疾患におけるオートファジー・リソゾーム系の病態への関与 | また申請者は、既にPI3Kgammaが欠損したPI3K-Akt pathwayが抑制されたノックアウトマウスとLC3蛋白にGFPを融合したトランスジェニックマウスを交配させる事より、Akt pathwayの抑制がある場合とない場合で、慢性腎障害モデルあるいは、急性腎障害モデルでのオートファジーの関与をGFP-LC3を用いて検出できるin vivoのシステムを作成しつつある。上記内容を学会発表し、下記の論文で発表をした。 | KAKENHI-PROJECT-21659214 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21659214 |
A compact coherent x-ray source development using relativistic high-order harmonics from laser-gas jet interactions | 解析的手法及びマルチパラメトリックPICシミュレーションを用いて、高強度レーザーによって高濃度プラズマ中に形成される特異点が放出する高次高調波生成について研究する。適合するプラズマプロフィールを用いて、高次高調波生成のコントロールが可能であることを示すことができる。それによって非常に効率の良いパラメータ領域を見出した。最近の実験で、J-KARENレーザーによる高次高調波の発生源が点状であることが観測されたが、このことを、専用シミュレーションによって説明することができた。解析的手法及びマルチパラメトリックPICシミュレーションを用いて、高強度レーザーによって高濃度プラズマ中に形成される特異点が放出する高次高調波生成について研究する。適合するプラズマプロフィールを用いて、高次高調波生成のコントロールが可能であることを示すことができる。それによって非常に効率の良いパラメータ領域を見出した。最近の実験で、J-KARENレーザーによる高次高調波の発生源が点状であることが観測されたが、このことを、専用シミュレーションによって説明することができた。数物系科学 | KAKENHI-PROJECT-25390135 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25390135 |
PETによる腫瘍画像化を目的とした分子標的放射性薬剤の開発 | AC7700((Z)-N-[2-methoxy-5-[2-(3',4',5'-trimethoxyphenyl)vinyl]pheny]-L-serineamide hydrochloride)は,チューブリン重合阻害剤のコンブレタスタチンA4誘導体で,腫瘍血管特異的に作用し,強力に腫瘍血流を減少させる効果を示す.AC7700は,抗がん剤として現在欧米でフェーズIの臨床試験が行われており,日本でも臨床試験が予定されている.本研究では,将来的にPETにより臨床でAC7700の薬物動態研究,治療効果判定などに利用することを目的として,[^<11>C]AC7700の開発を行った.まず,AC7700を[^<11>C]CH3で標識するための前駆体として,AC7700の5'-OCH3基をOH基に変換し,そしてセリン骨格のOH基およびNH2基をそれぞれTHP基,Boc基で保護した化合物を新規に合成した.この前駆体を用いて,アセトン中(室温)で,NaOH(2eq)を加え,[^<11>C]CH3OTfによりメチル化反応を行った.続いて,4MHCl/ジオキサン(100eq)を加えて70-80°Cに加熱してTHPおよびBocの脱保護を行った.そして最終的に,逆相HPLCにより目的とする[^<11>C]AC7700の精製を試みた.結果として,構造異性化の起きたE-体の[^<11>C]AC7700も生成も見られたものの,平均43%(3352%)で目的とする[^<11>C]AC7700を標識合成することに成功した.全標識合成時間は約28分,放射化学的純度は99%,比放射能は2.8Ci/μmol(0.454.0Ci/μmol,EOS)となった.この結果から,本研究において,[^<11>C]AC7700の実用的標識合成法が確立されたといえる.以上の成果を踏まえ,今後はこの[^<11>C]AC7700を用いた生物学的評価の研究を進める予定である.マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は,癌の浸潤・転移や腫瘍血管新生に深く関与している細胞外基質分解酵素であり,次世代型抗癌剤開発の重要な分子標的となっている.本研究では,陽電子放出核種のフッ素18標識MMP阻害剤の開発を行い,MMPを標的とするPET用腫瘍イメージング剤としての有用性を検討した.本研究では,フッ素を有するMMP阻害剤として(2R)-2-[4-(6-fluorohex-1-ynyl)-benzenesulfonylamino]-3-methylbutyric acid(SAV03)を新規に設計・合成した.この化合物は,MMP-2に対してIC_<50>値として1.9μMの阻害効果を示した.次に,担癌マウス(Ehrlich皮下移植)に[^<18>F]SAV03を尾静脈投与し,一定時間後における腫瘍組織および各種臓器への集積率を求め,その体内分布を調べた.投与30分後での腫瘍への集積率は,心臓,肺,脾臓,筋肉に比べて,約2.5から4.3倍という高い値になったが,小腸,肝臓へは腫瘍と比べてそれぞれ約20倍と10倍の高い集積率となった.一方,[^<18>F]SAV03のメチルエステル体([^<18>F]SAV03M)をプロドラッグ的に利用したところ,肝臓への集積率は半減し,投与120分後での腫瘍への集積率は,心臓,肺,脾臓,筋肉の集積率に対して,それぞれ7.6,6.6,7.8,14倍という高い値を示した.さらに全身オートラジオグラフィーを行ったところ,[^<18>F]SAV03Mは腫瘍特異的な集積性を示し,画像的に腫瘍を検出することができた.以上の結果から,[^<18>F]SAV03MはMMPを標的とするPET用腫瘍イメージング剤として利用できる可能性が示唆された.今後は,[^<18>F]SAV03Mの集積性とMMPの発現・活性度との関連性を明らかにしていく必要がある.AC7700((Z)-N-[2-methoxy-5-[2-(3',4',5'-trimethoxyphenyl)vinyl]pheny]-L-serineamide hydrochloride)は,チューブリン重合阻害剤のコンブレタスタチンA4誘導体で,腫瘍血管特異的に作用し,強力に腫瘍血流を減少させる効果を示す.AC7700は,抗がん剤として現在欧米でフェーズIの臨床試験が行われており,日本でも臨床試験が予定されている.本研究では,将来的にPETにより臨床でAC7700の薬物動態研究,治療効果判定などに利用することを目的として,[^<11>C]AC7700の開発を行った.まず,AC7700を[^<11>C]CH3で標識するための前駆体として,AC7700の5'-OCH3基をOH基に変換し,そしてセリン骨格のOH基およびNH2基をそれぞれTHP基,Boc基で保護した化合物を新規に合成した.この前駆体を用いて,アセトン中(室温)で,NaOH(2eq)を加え,[^<11>C]CH3OTfによりメチル化反応を行った. | KAKENHI-PROJECT-02J10380 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02J10380 |
PETによる腫瘍画像化を目的とした分子標的放射性薬剤の開発 | 続いて,4MHCl/ジオキサン(100eq)を加えて70-80°Cに加熱してTHPおよびBocの脱保護を行った.そして最終的に,逆相HPLCにより目的とする[^<11>C]AC7700の精製を試みた.結果として,構造異性化の起きたE-体の[^<11>C]AC7700も生成も見られたものの,平均43%(3352%)で目的とする[^<11>C]AC7700を標識合成することに成功した.全標識合成時間は約28分,放射化学的純度は99%,比放射能は2.8Ci/μmol(0.454.0Ci/μmol,EOS)となった.この結果から,本研究において,[^<11>C]AC7700の実用的標識合成法が確立されたといえる.以上の成果を踏まえ,今後はこの[^<11>C]AC7700を用いた生物学的評価の研究を進める予定である. | KAKENHI-PROJECT-02J10380 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02J10380 |
内分泌細胞におけるDiminuto遺伝子の発現調節とその翻訳産物の機能 | 我々は、Diminuto遺伝子を、コルチゾル産生副腎腺腫において発現が増大する遺伝子の一つとしてクローニングした。その発現が減弱している正常副腎組織では細胞のアポトーシスが認められた。この結果からDiminutoの発現がアポトーシスの抑制を介して腺腫の発症に重要な役割を果たしていることが示唆された。最近、Diminutoが、コレステロール生合成系の最終段階Ianosterolからコレステロールへの合成を司る酵素の1つ3β-hydroxysterol-Δ24-reductase (DHCR24)であることが示された。したがって、Diminutoはコレステロール生合成系の酵素であるとともに、1細胞のアポトーシスにも関与する多機能蛋白質であることが示唆されるが、その機能の詳細は不明である。そこで、本研究ではDiminuto-/-マウス(dim-/-)の胎児繊維芽細胞(mouse embryonicfibroblasts, MEF)を用いて、Diminuto遺伝子の喪失が細胞の増殖やアポトーシスに及ぼす影響を検討した。dim+/-は正常に発育し交配可能であるが、dim-/-はそのほとんどが出生直後に死亡した。そこでdim+/-同士を交配し、胎齢14、15日の胎児から、野生型(wild type, WT)、ホモ(dim-/-)のMEFを作成した。10%FBS存在下ではWT-MEFとdim-/-MEFの増殖に顕著な差異を認めなかったが、血清非存在下では培養後9時間以内にdim-/-MEFにおいて細胞死の著明な増加が観察された。この細胞死はDNAの断片化を伴っており、血清除去がdim-/-MEFのアポトーシスを引き起こすことが示唆された。この血清除去によるアポトーシスは、インスリン添加あるいはcyclodextrinを用いたコレステロールの培養液中への添加により、抑制された。こうした結果から、血清除去により細胞外からのコレステロール供給が遮断されると、自身の生合成経路を持たないdim-/-MEFにおいては、細胞内のコレステロールが不足し、それに伴ってインスリン作用が減弱し、アポトーシスが誘導されると考えられた。現在このdim-/-MEFに見られたインスリン作用不全の分子機序を検討している。我々は、Diminuto遺伝子を、コルチゾル産生副腎腺腫において発現が増大する遺伝子の一つとしてクローニングした。その発現が減弱している正常副腎組織では細胞のアポトーシスが認められた。この結果からDiminutoの発現がアポトーシスの抑制を介して腺腫の発症に重要な役割を果たしていることが示唆された。最近、Diminutoが、コレステロール生合成系の最終段階Ianosterolからコレステロールへの合成を司る酵素の1つ3β-hydroxysterol-Δ24-reductase (DHCR24)であることが示された。したがって、Diminutoはコレステロール生合成系の酵素であるとともに、1細胞のアポトーシスにも関与する多機能蛋白質であることが示唆されるが、その機能の詳細は不明である。そこで、本研究ではDiminuto-/-マウス(dim-/-)の胎児繊維芽細胞(mouse embryonicfibroblasts, MEF)を用いて、Diminuto遺伝子の喪失が細胞の増殖やアポトーシスに及ぼす影響を検討した。dim+/-は正常に発育し交配可能であるが、dim-/-はそのほとんどが出生直後に死亡した。そこでdim+/-同士を交配し、胎齢14、15日の胎児から、野生型(wild type, WT)、ホモ(dim-/-)のMEFを作成した。10%FBS存在下ではWT-MEFとdim-/-MEFの増殖に顕著な差異を認めなかったが、血清非存在下では培養後9時間以内にdim-/-MEFにおいて細胞死の著明な増加が観察された。この細胞死はDNAの断片化を伴っており、血清除去がdim-/-MEFのアポトーシスを引き起こすことが示唆された。この血清除去によるアポトーシスは、インスリン添加あるいはcyclodextrinを用いたコレステロールの培養液中への添加により、抑制された。こうした結果から、血清除去により細胞外からのコレステロール供給が遮断されると、自身の生合成経路を持たないdim-/-MEFにおいては、細胞内のコレステロールが不足し、それに伴ってインスリン作用が減弱し、アポトーシスが誘導されると考えられた。現在このdim-/-MEFに見られたインスリン作用不全の分子機序を検討している。我々は、コルチゾル産生副腎腺腫において発現が増大する遺伝子をRepresentational Difference Analysis法を用いてスクリーニングし、植物DiminutoのヒトホモログhDiminutoをクローニングした。更に、hDiminuto遺伝子の発現が内分泌細胞においてホルモンやサイトカインあるいは細胞の腫瘍化により調節されていること、またその高発現がanti-apoptoticに働くことを示してきた。こうした結果から、hDiminutoが内分泌細胞において極めて重要な働きを果たしていると考えられるが、その機能は不明な点が多い。そこで、未知のhDiminutoの機能を探る端緒として、酵母two hybrid systemを用いて、hDiminuto蛋白と結合する蛋白の同定を試みた。Matchmaker two hybrid system 3(米国Clontech社)を用い、baitとしてhDiminutoを用いて、pretransformed human cDNA library(Clontech社)の1.6x10^7個のcloneをスクリーニングし、hDiminuto蛋白と結合する蛋白を発現すると考えられる52個の酵母clone得た。このcloneをX-α-Gal添加培地で青色/白色選別を行い、青色を呈したcloneからプラスミドを精製し、塩基配列を決定した。 | KAKENHI-PROJECT-14571062 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14571062 |
内分泌細胞におけるDiminuto遺伝子の発現調節とその翻訳産物の機能 | この配列をBlast Searchにより検索すると、3つのcloneはミトコンアドリアの酵素に関係する蛋白のcDNAの配列と一致した。またcAMPを介する細胞内シグナル伝達系に存在する蛋白や機能不明な蛋白のcDNAの配列と一致した。hDiminutoはステロイド/コレステロール合成に関与する酵素である可能性とapoptosisを抑制する可能性が示唆されている。ミトコンアドリアはステロイド合成やapoptosisの制御に重要な細胞内オルガネラであり、現在、同定した蛋白とhDiminutoの相互作用を更に詳細に検討している>我々は、Diminuto遺伝子を、コルチゾル産生副腎腺腫において発現が増大する遺伝子の一つとしてクローニングした。その発現が減弱している正常副腎組織では細胞のアポトーシスが認められた。この結果からDiminutoの発現がアポトーシスの抑制を介して腺腫の発症に重要な役割を果たしていることが示唆された。最近、Diminutoが、コレステロール生合成系の最終段階Ianosterolからコレステロールへの合成を司る酵素の1つ3β-hydroxysterol-Δ^<24>-reductase (DHCR24)であることが示された。したがって、Diminutoはコレステロール生合成系の酵素であるとともに、細胞のアポトーシスにも関与する多機能蛋白質であることが示唆されるが、その機能の詳細は不明である。そこで、本研究ではDiminuto^<-/->マウス(dim^<-/->)の胎児繊維芽細胞(mouse embryonicfibroblasts, MEF)を用いて、Diminuto遺伝子の喪失が細胞の増殖やアポトーシスに及ぼす影響を検討した。dim^<+/->は正常に発育し交配可能であるが、dim^<-/->はそのほとんどが出生直後に死亡した。そこでdim^<+/->同士を交配し、胎齢14、15日の胎児から、野生型(wild type, WT)、ホモ(dim^<-/->)のMEFを作成した。10%FBS存在下ではWT-MEFとdim^<-/->-MEFの増殖に顕著な差異を認めなかったが、血清非存在下では培養後9時間以内にdim^<-/->-MEFにおいて細胞死の著明な増加が観察された。この細胞死はDNAの断片化を伴っており、血清除去がdim^<-/->-MEFのアポトーシスを引き起こすことが示唆された。この血清除去によるアポトーシスは、インスリン添加あるいはcyclodextrinを用いたコレステロールの培養液中への添加により、抑制された。 | KAKENHI-PROJECT-14571062 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14571062 |
上部マントル・下部地殻捕獲岩の再結晶組織の解析による温度・歪み履歴の解明 | 西南日本の地下深部における温度構造の変化や変形作用の過程を明らかにすることを目的として、玄武岩中の捕獲岩における再結晶組織の解析を試みた。研究地域として岡山県中部および北西部を選び、捕獲岩を採取し、光学顕微鏡、電子顕微鏡、EPMAによって再結晶相の同定と分析を行った。その結果次のことが明らかになった。1.初生斜方輝石は、かんらん石、単斜輝石、スピネル、アルカリ長石から成る反応縁を持つ。2.初生藍晶石の周囲には、コランダム、斜長石、アルカリ長石、スピネルが生成している。3.初生ざくろ石は、かんらん石、スピネル、斜長石から成るシンプレクタイトに分解している。4.初生単斜輝石は、局所的に再結晶単斜輝石に置換されており、再結晶単斜輝石の光学的方位は定向性を持つ。上記1.と2.は明らかに等化学的反応生成物ではなく、捕獲岩と玄武岩質マグマとの反応によって生じたものと考えられる。また3.は捕獲岩の閉じた系での反応によって説明可能であるが、温度上昇か圧力低下、あるいはその両方が必要であり、捕獲岩がマグマに取り込まれて以降の現象であると考えられる。一方4.は等化学的再結晶であり、生成物が定向性を有することは地下深部における変形作用を示唆している。さらに初生単斜輝石が離溶斜方輝石を持つのに対し、再結晶単斜輝石にはそれが欠如していることから、変形作用は岩石固結後の冷却時の現象であると推定される。以上のように、捕獲岩における再結晶作用は、捕獲岩がマグマに取り込まれる以前と以降の現象に分けることができる。そして捕獲以前の再結晶作用は岩石冷却時の現象であり、高温下における岩石の変形、歪みの過程を解明する上で重要である。今後その定量的解析を進めていく予定である。西南日本の地下深部における温度構造の変化や変形作用の過程を明らかにすることを目的として、玄武岩中の捕獲岩における再結晶組織の解析を試みた。研究地域として岡山県中部および北西部を選び、捕獲岩を採取し、光学顕微鏡、電子顕微鏡、EPMAによって再結晶相の同定と分析を行った。その結果次のことが明らかになった。1.初生斜方輝石は、かんらん石、単斜輝石、スピネル、アルカリ長石から成る反応縁を持つ。2.初生藍晶石の周囲には、コランダム、斜長石、アルカリ長石、スピネルが生成している。3.初生ざくろ石は、かんらん石、スピネル、斜長石から成るシンプレクタイトに分解している。4.初生単斜輝石は、局所的に再結晶単斜輝石に置換されており、再結晶単斜輝石の光学的方位は定向性を持つ。上記1.と2.は明らかに等化学的反応生成物ではなく、捕獲岩と玄武岩質マグマとの反応によって生じたものと考えられる。また3.は捕獲岩の閉じた系での反応によって説明可能であるが、温度上昇か圧力低下、あるいはその両方が必要であり、捕獲岩がマグマに取り込まれて以降の現象であると考えられる。一方4.は等化学的再結晶であり、生成物が定向性を有することは地下深部における変形作用を示唆している。さらに初生単斜輝石が離溶斜方輝石を持つのに対し、再結晶単斜輝石にはそれが欠如していることから、変形作用は岩石固結後の冷却時の現象であると推定される。以上のように、捕獲岩における再結晶作用は、捕獲岩がマグマに取り込まれる以前と以降の現象に分けることができる。そして捕獲以前の再結晶作用は岩石冷却時の現象であり、高温下における岩石の変形、歪みの過程を解明する上で重要である。今後その定量的解析を進めていく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-05740335 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05740335 |
共役ヘテロクムレン型活性分子の生成法の開発研究 | ケテンはヘテロクムレンの一つであり,極めて高い反応性をもっている.著者らは1,3-ジオキシン-4-オン類を加熱すると定量的にケテン体を生成することを見い出している.本研究ではこの手法でケテンを生成させ,これを合成化学的に利用する研究を行った.1.一連の2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-ジオキシン-4-オン体を合成し,これらをリパーゼ触媒下,酢酸ビニルを用いたトランスエステル化反応に付し,光学活性な2-ヒドロキシメチルジオキシノン体を合成した.次いで,ヒドロキシメチル基に不飽和カルボン酸を縮合させて得られる不飽和エステルを分子内光2+2付加反応に付し,シクロブタノール体の位置,立体およびエナンチオ制御合成を達成した.2.ビスアシルケテンの分子内4+2付加反応により,二つのメチル基がポリメチレンで架橋されたデヒドロ酢酸誘導体を合成した.これをアンモニアおよびメチルアミンと加熱して2,6-架橋ピリジン誘導体を合成する方法を見い出した.本法は分子認識化学で重要なピリジノファン体の合成法として優れている.3.前記2の手法を用いて,ピリジノファン型12-crown-4の初めての合成に成功した.すなわち,市販の3,6,9-trioxaundecanedioic acidにMeldrum酸を縮合させてbis(acylated Meldrum's acid)を合成した.これを沸騰クロロベンゼン中加熱すると生成するビスアシルケテンが分子内で4+2付加反応を行い,デヒドロ酢酸の二つのメチル基がジエチレングリコール単位で架橋されたヘテロファンが一挙に合成できた.これをアンモニアと加熱し,ピリジノファン型12-crown-4の合成に成功した.イソシアナート,ケテン等のへテロクムレン体は特異な反応性を示すことから,合成及び理論化学両面で注目されてきた.しかし,これらのへテロクムレン誘導体は極めて高い反応性をもつため,それらの合成,単離が困難であった.我々は6員環状化合物の熱あるいは光化学的環開裂反応によるヘテロクムレン誘導体の生成法並びにそれらの合成化学的利用方法を研究し,以下の成果を挙げた.1.二分子の4-オキソ-1,3-ジオキシンの6位,あるいは5位をメチレン基あるいはオリゴエチレングリコール単位で結合したビスジオキシノン体を加熱することにより,対応するビスアシルケテンを定量的に生成させることに成功した.2.スペーサーで結合されたビスアシルケテンは自動的に分子内4+2付加環化してシクロファン誘導体を効率良く生成した.3.この手法で合成したシクロファンを活用して,高い分子認識機能をもつ大環状化合物を開発した.すなわち,シクロファン自身の面性不斉をキラルアミンの光学分割剤に活用できた.また,不斉Lewis酸触媒並びに面性不斉4-ジメチルアミノピリジンを合成できた.4.ビスアシルケテンと二官能性求核試薬との分子間1:1付加により,大環状化合物を効率良く合成できた.さらに,ビスアシルケテンの分子間付加反応を活用し,ビスウラシルなどの複素環化合物を極めて容易に合成する方法も開発した.5.Meludrum酸,その含窒素同属体である1,3-オキサジン4,6-ジオン体も加熱により分解し,対応するケテン類を生成することを見い出した.ケテンはヘテロクムレンの一つであり,極めて高い反応性をもっている.著者らは1,3-ジオキシン-4-オン類を加熱すると定量的にケテン体を生成することを見い出している.本研究ではこの手法でケテンを生成させ,これを合成化学的に利用する研究を行った.1.一連の2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-ジオキシン-4-オン体を合成し,これらをリパーゼ触媒下,酢酸ビニルを用いたトランスエステル化反応に付し,光学活性な2-ヒドロキシメチルジオキシノン体を合成した.次いで,ヒドロキシメチル基に不飽和カルボン酸を縮合させて得られる不飽和エステルを分子内光2+2付加反応に付し,シクロブタノール体の位置,立体およびエナンチオ制御合成を達成した.2.ビスアシルケテンの分子内4+2付加反応により,二つのメチル基がポリメチレンで架橋されたデヒドロ酢酸誘導体を合成した.これをアンモニアおよびメチルアミンと加熱して2,6-架橋ピリジン誘導体を合成する方法を見い出した.本法は分子認識化学で重要なピリジノファン体の合成法として優れている.3.前記2の手法を用いて,ピリジノファン型12-crown-4の初めての合成に成功した.すなわち,市販の3,6,9-trioxaundecanedioic acidにMeldrum酸を縮合させてbis(acylated Meldrum's acid)を合成した.これを沸騰クロロベンゼン中加熱すると生成するビスアシルケテンが分子内で4+2付加反応を行い,デヒドロ酢酸の二つのメチル基がジエチレングリコール単位で架橋されたヘテロファンが一挙に合成できた.これをアンモニアと加熱し,ピリジノファン型12-crown-4の合成に成功した.ケテン等のヘテロクムレン体は特異な反応性を示すことから,合成及び理論化学両面で注目されてきた.しかし,ヘテロクムレン誘導体は極めて高い反応性をもつため,それらの合成,は困難であった.我々は6員環状化合物の熱あるいは光化学的環開裂反応によるヘテロクムレン誘導体の生成法並びにそれらの合成化学的 | KAKENHI-PROJECT-12470484 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12470484 |
共役ヘテロクムレン型活性分子の生成法の開発研究 | 利用方法を研究し,以下の成果を挙げた.1.二分子の4-オキソ-1,3-ジオキシンの5位または6位をスペーサーで結合したケテン先駆体の合成法を確立した.この先駆体を沸騰ブロモベンゼン中加熱することにより,対応するビスアシルケテンを定量的に生成させることに成功した.オリゴメチレン基で結合されたビスアシルケテン体は自動的に分子内4+2付加環化してα-ピロン型シクロファン誘導体を効率良く生成した.この手法で合成されたシクロファンの環変換を活用して,ピリジノファン体などの分子認識機能をもつ大環状化合物を容易な合成法を開発した.また,面性不斉をもっピリジノファン型4-ジメチルアミノピリジンを初めて合成することに成功した.2.ビスアシルケテンと二官能性求核試薬(1,2-ジオール,ジアミンなど)との分子間1:1付加により,大環状化合物を効率良く合成する手法を開拓した.さらに,ビスアシルケテンの分子間付加反応を活用し,ビスウラシルなどの生物あるいは化学機能性複素環化合物を極めて容易に合成する方法を開発した.3.Meludrum酸の加熱によりケテン体を生成させる方法を見い出した.この手法で生成するケテン中間体を活用し,歪みの大きいアンサ型化合物を効率良く合成する手法を開拓した. | KAKENHI-PROJECT-12470484 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12470484 |
Kobayashi-Hitchin correspondence and Donaldson-Tian-Yau conjecture on generalized complex geometry | 一般化されたケーラー幾何学において,一般化された接続Dは通常の接続とEnd (E)値TMのセクションVに分解される.このような微分作用素にたいしては共変微分の合成DDとして曲率を構成しようとすると,微分作用素となり,テンソルにならない.しかし,多様体上にd-closedな非退化スピノルψがある場合は,この非退化スピノルを使い,一般化された接続に関してモーメント写像の観点から新たに"曲率"に相当する概念を導入することができる.すると,モーメント写像の枠組みが自然に適用され,一般化された接続に対してアインシュタイン・エルミート条件が得られ,そのモジュライ空間はモーメント写像による有限次元のケーラー商として得られる.さて,通常のケーラー幾何学において,多重安定なベクトル束とアインシュタイン・エルミート計量の存在との同値性(Kobayashi-Hitcihn対応)は良く知られている.この小林・ヒッチン対応を一般化されたケーラー多様体上のベクトル束の場合に拡張することは自然な問題である.本年度は一般化されたケーラー多様体上の一般化された正則ベクトル束にたいしてKobayashi-Hitchin対応を示すことに成功した.この結果は論文にまとめてArziv上に投稿した.arXiv:1903.07425, Kobayashi-Hitchin correspondence of generalized holomorphic vector bundles overgeneralized Kahlermanifolds of symplectic typeこの研究計画において、当初の目標としていた、一般化されたケーラー多様体上のベクトル束に関する小林-ヒッチン対応を示すことに成功した.この結果はモーメント写像の枠組みを用いた一般化された正則ベクトル束の幾何学、特に、アインシュタイン・エルミート計量の定義が適切であることを示している.今後は、一般化された正則ベクトル束のモジュライ空間の研究に進む.特に、複素曲面上のポアソン・モジュールは対数的な極をもつ平坦接続と密接に関係しており、D-moduleの研究とも関連し、研究が展開していく可能性を感じている.また、ケーラー幾何学におけるDonaldson-Tian-Yau予想の一般化されたケーラー多様体への拡張を目指して、トーリックの場合に様々な実験的な考察を行う予定である.特に、トーリック複素曲面(実4次元)の場合は、具体的に一般化されたケーラー多様体の構造をトーラス作用に関するモーメント写像などを使い、書き下すことが出来る.これらの具体例を見ると、理論を今後どのように発展させるべきか、非自明な対象であるかなど、様々な知見が得られる.例えば、一般化されたスカラー曲率を筆者は導入したが、トーリック複素曲面の場合に、一般化されたスカラー曲率は通常のリーマン計量のレビ・チビタ接続のスカラー曲率とも違うし、チャーン接続のスカラー曲率とも異なっていることが、観察され、全く新し数学的な対象であることが確認される.数理物理の超重力理論において一般化されたケーラー幾何学が研究されており、そこに現われる一般化されたスカラー曲率には、類似性が見られる.一般化されたケーラー幾何学において,一般化された接続Dは通常の接続とEnd (E)値TMのセクションVに分解される.このような微分作用素にたいしては共変微分の合成DDとして曲率を構成しようとすると,微分作用素となり,テンソルにならない.しかし,多様体上にd-closedな非退化スピノルψがある場合は,この非退化スピノルを使い,一般化された接続に関してモーメント写像の観点から新たに"曲率"に相当する概念を導入することができる.すると,モーメント写像の枠組みが自然に適用され,一般化された接続に対してアインシュタイン・エルミート条件が得られ,そのモジュライ空間はモーメント写像による有限次元のケーラー商として得られる.さて,通常のケーラー幾何学において,多重安定なベクトル束とアインシュタイン・エルミート計量の存在との同値性(Kobayashi-Hitcihn対応)は良く知られている.この小林・ヒッチン対応を一般化されたケーラー多様体上のベクトル束の場合に拡張することは自然な問題である.本年度は一般化されたケーラー多様体上の一般化された正則ベクトル束にたいしてKobayashi-Hitchin対応を示すことに成功した.この結果は論文にまとめてArziv上に投稿した.arXiv:1903.07425, Kobayashi-Hitchin correspondence of generalized holomorphic vector bundles overgeneralized Kahlermanifolds of symplectic typeこの研究計画において、当初の目標としていた、一般化されたケーラー多様体上のベクトル束に関する小林-ヒッチン対応を示すことに成功した.この結果はモーメント写像の枠組みを用いた一般化された正則ベクトル束の幾何学、特に、アインシュタイン・エルミート計量の定義が適切であることを示している.今後は、一般化された正則ベクトル束のモジュライ空間の研究に進む.特に、複素曲面上のポアソン・モジュールは対数的な極をもつ平坦接続と密接に関係しており、D-moduleの研究とも関連し、研究が展開していく可能性を感じている.また、ケーラー幾何学におけるDonaldson-Tian-Yau予想の一般化されたケーラー多様体への拡張を目指して、トーリックの場合に様々な実験的な考察を行う予定である.特に、トーリック複素曲面(実4次元)の場合は、具体的に一般化されたケーラー多様体の構造をトーラス作用に関するモーメント写像などを使い、書き下すことが出来る.これらの具体例を見ると、理論を今後どのように発展させるべきか、非自明な対象であるかなど、様々な知見が得られる. | KAKENHI-PROJECT-18H01120 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H01120 |
Kobayashi-Hitchin correspondence and Donaldson-Tian-Yau conjecture on generalized complex geometry | 例えば、一般化されたスカラー曲率を筆者は導入したが、トーリック複素曲面の場合に、一般化されたスカラー曲率は通常のリーマン計量のレビ・チビタ接続のスカラー曲率とも違うし、チャーン接続のスカラー曲率とも異なっていることが、観察され、全く新し数学的な対象であることが確認される.数理物理の超重力理論において一般化されたケーラー幾何学が研究されており、そこに現われる一般化されたスカラー曲率には、類似性が見られる. | KAKENHI-PROJECT-18H01120 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H01120 |
異機種端末に適応した個人化ビデオの自動生成 | 複数撮影視点からの情報統合により、高精度な追跡や映像解析ができるほか、映像の表現方式にも高い自由度を与えた。我々はスポーツテレビ及び映像監視システムを応用事例とし、語義上の内容選択、時間軸上の要約及び空間軸上の画面構成の三つ階層から、異機種端末に適応した個人化ビデオの自動生成を検討した。追跡された対象を群相互作用により個体群に分ける。個体群の間に閲覧対象を遷移し、配信内容を選択する。更に、ユーザーの好みと端末の性能に対する最適な再生速度及び画面構成を自動的に決定する。研究期間中で特許一点、論文誌論文五篇、解説論文一篇、国際会議論文十一篇(全査読付き)を発表し、展示会に二回出展した。平成24年4月から一年間において、実施した研究の進展及び成果をまとめて報告させていただく。知的監視システムを応用例と想定し、複数のカメラ入力からの映像情報を効率的に閲覧するために、異種端末向け個人化ビデオ内容の自動生成手法を考えてきた。主に、追跡、事象理解、個人化内容の自動生成及び統合システムの試作を中心に、以下の内容が実施された(プロジェクトのHP http://www.jaist.ac.jp/project/prime-proj/を参照):1)関連文脈情報の収集手法。人物追跡、動作認識、事件検出及び自由視点合成に関する手法を検討した。動作している人間を安定的に追跡するため、部分軌跡の教師なしクラスタリングによる非剛体運動物体の自動追跡手法がICIP2012に発表された。骨格情報に基づく動作認識手法はRIVF2012及びISSPIT2012で発表された。集団の相互作用の自動検出による事件検出手法はICASSP2013に採用された。動作認識及び自由視点合成の後続進展はICIP2013に投稿され、事件検出手法の最新結果はIEEE Ro-man 2013に投稿された。2)個人化内容の自動生成手法。内容の自動切捨てに適応早送り機能を加えることで、指定再生時間内で最大限に事件記述の完全性を保持できるため、監視映像の要約に適している。関連要約手法はINTETAIN2013と論文誌IEEE-TMMに投稿された。カメラワークの自主決定と物語の自動要約を同時に考慮した生成手法はICIP2013に投稿された。3)システム開発及び社会貢献。個人化内容の自動生成を実現できた原型システムを試作し、実時間処理できるように最適化を行った。関連技術およびシステムに関する特許は出願された。平成25年8月に「イノベーション・ジャパン2013大学見本市」での出展も申請中である。多視点撮影環境における複数視点からの情報統合により、人物間のオクルージョンによる曖昧さを抑え、高精度な追跡や映像解析ができるほか、映像の表現方式にも高い自由度を与えた。我々はスポーツテレビ放送及び映像監視システムを応用事例とし、異機種端末に適応した個人化ビデオの自動生成を検討した。特に、「語義上の構成ー時間軸上の要約ー空間軸上のカメラワークの自主決定」の順に個人化ビデオを階層的に構成する手法を提案した。複数監視対象を追跡し、群相互作用(持続的空間接近として定義)により個体群にグループ分け、個体群の間に閲覧対象を遷移する関係図を構築し、閲覧条件に関連性の最も高い遷移経路を算出して閲覧内容を構成する。さらに、各ユーザーの好み、端末の解像度及び性能に対する最適な再生速度及び画面構成を自動的に決定し、内容配信を個人化する。研究期間中で特許一点(申請中)、論文誌論文三篇、解説論文一篇、国際会議論文十一篇(全査読付き)を発表し、展示会に二回出展した(プロジェクトのHP[1]に参照)。最終年度には主に以下の内容を実施した:1.論文発表。内容の自動切捨てに適応早送り機能を加えた要約手法を提案し、関連論文がIEEE TMMに発表された。人物追跡、動作認識、事件検出などの手法も論文誌Fundamenta Informaticae及び国際会議ICASSP2013,VCIP2013などで発表した。2.システム開発及び社会貢献。個人化内容の自動生成を実現できた原型システムを試作し、実時間処理できるように最適化を行った。イノベーション・ジャパン2013に出展し、デモで本研究の目的及び成果を紹介した。研究成果をまとめて紹介する解説論文も発表した。複数撮影視点からの情報統合により、高精度な追跡や映像解析ができるほか、映像の表現方式にも高い自由度を与えた。我々はスポーツテレビ及び映像監視システムを応用事例とし、語義上の内容選択、時間軸上の要約及び空間軸上の画面構成の三つ階層から、異機種端末に適応した個人化ビデオの自動生成を検討した。追跡された対象を群相互作用により個体群に分ける。個体群の間に閲覧対象を遷移し、配信内容を選択する。更に、ユーザーの好みと端末の性能に対する最適な再生速度及び画面構成を自動的に決定する。研究期間中で特許一点、論文誌論文五篇、解説論文一篇、国際会議論文十一篇(全査読付き)を発表し、展示会に二回出展した。平成23年4月からの一年間において、実施した研究の進展及び成果をまとめて報告させていただく。研究計画調書に書いた通り、最初の一年間には、既存のビデオデータベースに基づき、カメラ視点の自動決定、ビデオの自動要約、及び関連文脈情報の自動抽出技術に集中し、研究を進めてきた(プロジェクトのHP[1]に参照)。主に、以下の内容が実施された:1カメラ視点の自動決定手法。 | KAKENHI-PROJECT-23700110 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23700110 |
異機種端末に適応した個人化ビデオの自動生成 | APIDISに提案されたカメラの選択基準を更に改良し、複数カメラ間の関係を考慮した新基準値が提案された。新基準値を用いたカメラの自動決定手法はIEEE-TMM論文誌に掲載された。2自動要約手法。内容の自動切捨てに適応早送り機能を加えた要約手法を提案した。再生時間を更に圧縮することにより、同じ再生時間で最大限に事件記述の完全性を保持するができた。関連論文はICME2011に発表された。3関連文脈情報の収集手法。人物追跡、動作認識、事件検出及び自由視点合成に関する手法を検討した。動作している人間を安定的に追跡するため、部分軌跡の教師なしクラスタリングによる非剛体運動物体の自動追跡手法がICIP2012に採用された。動作認識するため、ノイズに頑健な三次元再構築手法がAPSIPAASC 2011に発表され、骨格情報に基づく動作認識手法はRIVF2012で発表された。前景と背景を分離して自由視点画像を合成する手法がISM2012で発表された。集団の相互作用の自動検出による事件検出手法も投稿準備中である。4システム開発及び社会貢献。実時間処理に目指して、計算サーバーを購入した。最適化の検討及び関連した開発が進められている。11月に北陸技術交流テクノフェア2011に出展し、本研究プロジェクトの目的及び関連成果を紹介した。[1] http://www.jaist.ac.jp/project/prime-proj/研究計画に従い、最初二年間にはカメラワークの自動決定とビデオ内容の自動要約に集中し、研究をおおむね順調に進展している。1)方法論の検討に関する進展状況。文脈情報を収集するため、提案された人物追跡及び事件検出手法は、実験用の多視点撮影環境において、それぞれ95%及び80%の精度を得た。この結果は既に個人化ビデオの自動生成手法の検証目的に要求される精度に達していると考えられる。一年目にカメラワークの自動決定を中心的に検討し、二年目にはビデオ内容の自動要約を中心的に検討した。関連する研究結果も論文誌に投稿された。システム全体の枠組に関する論文も既に投稿され、関連特許も出願済みである。計画とおりに、三年目は全体の統合および関連技術の最適化に着目する。2)システム開発および実験に関する進展状況。個人化内容の自動生成の基本枠組を築いて、原型システムも試作した。自動要約手法及びカメラワークの自動計画について、それぞれ主観評価を行い、提案手法の有効性を示した。両方を統合した生成結果に対する主観評価は現在準備中である。最終年度には主に原型システムの続き改良、主観評価の実施、関連論文の投稿と成果のまとめ、及び出展などによる意見収集を中心に研究を進もうとする。研究計画に従い、初年度にはカメラワークの自動決定とビデオ内容の自動要約に集中し、研究をおおむね順調に進展している。1研究の進展状況により、一部のタスクの実行順番が調整された。個人化ビデオの主観評価は平成23年に計画されたが、平成24年度に延期して行われることになった。 | KAKENHI-PROJECT-23700110 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23700110 |
自治体による健康・医療・介護ビッグデータ活用に関する研究 | 現在進められている『データヘルス改革』によって、健康・医療・介護のビッグデータが連結されることにより、大規模な健康・医療・介護の分野を有機的に連結したICTインフラが、2020年度から世界で初めて稼動される。これによって、全国の自治体では健康・医療・介護ビッグデータを連結させた分析を行うことが必要となるが、その具体的な方法の提示や、地域での実現可能性の調査については、これまでに行われていない。本研究では、自治体による医療・介護・健康情報のビッグデータ分析を支援すること、および健康づくり施策実践を支援することを目的とする。現在進められている『データヘルス改革』によって、健康・医療・介護のビッグデータが連結されることにより、大規模な健康・医療・介護の分野を有機的に連結したICTインフラが、2020年度から世界で初めて稼動される。これによって、全国の自治体では健康・医療・介護ビッグデータを連結させた分析を行うことが必要となるが、その具体的な方法の提示や、地域での実現可能性の調査については、これまでに行われていない。本研究では、自治体による医療・介護・健康情報のビッグデータ分析を支援すること、および健康づくり施策実践を支援することを目的とする。 | KAKENHI-PROJECT-19K19374 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K19374 |
p53依存性老化シグナル活性化による生活習慣病発症機序の解明 | 肥満や糖尿病、心不全といった生活習慣病は加齢とともに増加する。その病態生理の共通項として、慢性炎症や代謝不全などが重要である。細胞老化という現象は、当初は培養細胞で観察されたが、加齢とともに老化細胞が臓器に蓄積することがわかってきた。p53は細胞老化を制御する最も重要な分子であるが、今回の我々の研究によって、様々な加齢関連疾患、例えば糖尿病や血管老化、心不全の発症・進展に関与していることが明らかとなった。肥満や糖尿病、心不全といった生活習慣病は加齢とともに増加する。その病態生理の共通項として、慢性炎症や代謝不全などが重要である。細胞老化という現象は、当初は培養細胞で観察されたが、加齢とともに老化細胞が臓器に蓄積することがわかってきた。p53は細胞老化を制御する最も重要な分子であるが、今回の我々の研究によって、様々な加齢関連疾患、例えば糖尿病や血管老化、心不全の発症・進展に関与していることが明らかとなった。加齢に伴って、糖尿病や動脈硬化、高血圧などの生活習慣病の罹患率が増加し、その結果、虚血性心疾患や脳卒中の発症の基盤病態となっている。しかし、加齢がどのようにしてこれらの疾患を増加させるのかについては明らかとなっていない。通常ヒト正常体細胞は、ある一定回数の分裂増殖後、細胞老化とよばれる分裂停止状態となる。本研究では、加齢に伴って生じる組織における老化細胞の集積、あるいは、p53依存性細胞老化シグナルの活性化が、寿命や加齢関連疾患の病態生理に関与する可能性があるという仮説を証明することを目的とする。これまで我々は、血管内皮細胞においてテロメアの機能不全を誘導すると、p53依存性細胞老化シグナル活性化とともにNO合成の低下や炎症性分子発現の亢進といった内皮機能障害が誘導されること、ヒト動脈硬化巣においてp53/p21の活性化や老化した血管細胞の集積が認められること、動脈硬化モデルマウスにおいて、p53/p21を欠失させることによって、動脈硬化の形成が抑制されることなどを報告してきた。平成24年度には、血管内皮特異的p53欠失マウスに加えて、血管内皮特異的p53活性化マウスの樹立に成功した。これらのマウスモデルの血管内皮機能を見てみると、高カロリー食負荷に伴う血管拡張機能の低下は、p53欠失により改善していること、逆にp53活性化によって拡張機能低下が認められることがわかった。さらに、高カロリー食負荷に伴う血管新生能の低下に関しても、p53欠失により改善していること、逆にp53活性化によって血管新生能の低下が認められることも明らかとした。これらの結果により、加齢や過食に伴う血管機能の低下には、p53依存性細胞老化シグナルの活性化が重要であることが示唆された。加齢に伴って、糖尿病や動脈硬化、高血圧などの生活習慣病の罹患率が増加し、その結果、虚血性心疾患や脳卒中の発症の基盤病態となっている。しかし、加齢がどのようにしてこれらの疾患を増加させるのかについては明らかとなっていない。通常ヒト正常体細胞は、ある一定回数の分裂増殖後、細胞老化とよばれる分裂停止状態となる。本研究では、加齢に伴って生じる組織における老化細胞の集積、あるいは、p53依存性細胞老化シグナルの活性化が、寿命や加齢関連疾患の病態生理に関与する可能性があるという仮説を証明することを目的とする。これまで我々は、血管内皮細胞においてテロメアの機能不全を誘導すると、p53依存性細胞老化シグナル活性化とともにNO合成の低下や炎症性分子発現の亢進といった内皮機能障害が誘導されること、ヒト動脈硬化巣においてp53/p21の活性化や老化した血管細胞の集積が認められること、動脈硬化モデルマウスにおいて、p53/p21を欠失させることによって、動脈硬化の形成が抑制されることなどを報告してきた。平成24年度には、血管内皮特異的p53欠失マウスに加えて、血管内皮特異的p53活性化マウスの樹立に成功し、平成25年度にその解析を進めた。まず我々は、高カロリー食によって血管内皮細胞におけるp53老化シグナルが活性化することを見いだした。p53老化シグナル活性化により内皮由来の一酸化窒素の産生が低下すること、さらに一酸化窒素によるミトコンドリア合成が骨格筋で低下しエネルギー消費が低下することを明らかにした。その低下は内臓脂肪の蓄積と炎症を惹起することによって、インスリン抵抗性を悪化させていた。これらの変化は、血管内皮特異的p53欠失によって改善し、血管内皮特異的p53活性化によって増悪傾向を認めたことから、血管における老化シグナルの重要性が確認された。加齢に伴って、糖尿病や動脈硬化、高血圧などの生活習慣病の罹患率が増加し、その結果、虚血性心疾患や脳卒中の発症の基盤病態となっている。しかし、加齢がどのようにしてこれらの疾患を増加させるのかについては明らかとなっていない。通常ヒト正常体細胞は、ある一定回数の分裂増殖後、細胞老化とよばれる分裂停止状態となる。本研究では、加齢に伴って生じる組織における老化細胞の集積、あるいは、p53依存性細胞老化シグナルの活性化が、寿命や加齢関連疾患の病態生理に関与する可能性があるという仮説を証明することを目的とする。 | KAKENHI-PROJECT-24390195 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24390195 |
p53依存性老化シグナル活性化による生活習慣病発症機序の解明 | これまで我々は、血管内皮細胞においてテロメアの機能不全を誘導すると、p53依存性細胞老化シグナル活性化とともにNO合成の低下や炎症性分子発現の亢進といった内皮機能障害が誘導されること、ヒト動脈硬化巣においてp53/p21の活性化や老化した血管細胞の集積が認められること、動脈硬化モデルマウスにおいて、p53/p21を欠失させることによって、動脈硬化の形成が抑制されることなどを報告してきた。平成24年度には、血管内皮特異的p53欠失マウスに加えて、血管内皮特異的p53活性化マウスの樹立に成功し、平成25年度にその解析を進めたところ、高カロリー食によって血管内皮細胞におけるp53老化シグナルが活性化されること、p53老化シグナル活性化により内皮由来の一酸化窒素の産生が低下すること、さらに一酸化窒素によるミトコンドリア合成が骨格筋で低下しエネルギー消費の低下や肥満の増悪がもたらされることを明らかにした。さらに平成26年度には、不全心においても血管内皮細胞におけるp53老化シグナルが活性化されること、p53老化シグナル活性化により血管炎症が惹起され心機能が低下することを明らかにした。以上の結果より、肥満や心不全において、血管内皮細胞のp53老化シグナル活性化の重要性が示唆された。26年度が最終年度であるため、記入しない。循環器内科26年度が最終年度であるため、記入しない。血管内皮特異的p53欠失マウスに加えて、血管内皮特異的p53活性化マウスの樹立に成功しており、その解析も順調に進んでいるから。血管内皮特異的p53欠失マウスに加えて、血管内皮特異的p53活性化マウスの樹立に成功し、その解析が進んでいる。それらの解析の結果、血管内皮細胞におけるp53老化シグナルの糖尿病に対する重要性が明らかになっており、研究計画は順調に進展していると考えられる。26年度が最終年度であるため、記入しない。血管内皮特異的p53欠失マウスや血管内皮特異的p53活性化マウスを用いて、血管老化と代謝制御についても検証していくとともに、細胞老化システムを用いた細胞機能障害の発症機序の解明をすすめる。血管内皮特異的p53欠失マウスや血管内皮特異的p53活性化マウスを用いて、糖代謝に対する血管内皮p53老化シグナルの関与について、さらに分子機序を解明するとともに、心不全や動脈硬化などの病態における意義についても検証していく。26年度が最終年度であるため、記入しない。平成24年度に所属機関が異動となったため、使用計画に変更が生じた。遺伝子改変マウスモデル等の実験資源の移設を進めるとともに、上記の目標に基づいて、消耗品や試薬費等を中心に予算の使用を進める予定である。様々な遺伝子改変マウスの確立には成功したが、そのコロニーの増大については予定より時間がかかったため、マウス実験関連の経費がやや抑えられたため。平成26年度に向かってはマウスの交配も順調に進んでおり、当初の計画通り、マウス関連実験を進めていく。 | KAKENHI-PROJECT-24390195 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24390195 |
リッチ流方程式の解の挙動についての研究 | R.Hamiltonによって導入されたリッチ流と呼ばれる、多様体上のリーマン計量に対する発展型偏微分方程式が本研究の主対象である。G.Perelmanによる幾何化予想の解決にも用いられたリッチ流はリーマン幾何学における強力な手法の一つとして注目を集めた。Perelman以後の大きな結果の一つとして、閉多様体上の曲率作用素が正のリーマン計量を初期値とするリッチ流は適当な拡大リスケールの後、正定曲率計量に収束する、というBohm-Wilkingにする球面定理がある。この結果を受け、本研究において代表者は閉多様体上の第二種曲率作用素が正のリーマン計量を初期値とする。この結果はこれまでに知られている第二種曲率作用素が正の多様体に関する結果の全てをその系として含む。この結果は研究集会で発表した。またリッチ流の研究と並行して、今年度はAlexandrov空間の幾何学の研究においても進展が見られた。Alexandrov空間の理論は幾何化予想の証明において、リッチ流とともに重要な役割を果たす。Alexandrov空間は距離の三角不等式の他に、その曲率がある定数以上であるという曲率条件を意味する幾つかの不等式を満たす。代表者はそれらの不等式の等号成立の場合について調べ剛性定理を証明した。さらにここで対象にしているAlexandrov空間は、従来の研究と違い、有限次元性や局所コンパクト性を仮定しておらず、剛性定理の証明においてそのような空間のこれまでに知られていない性質も明らかした。この結果については研究集会等で発表し、論文として投稿した。リッチ流方程式の解の挙動をより良く理解するという当初の研究目的に沿って研究を行っている。リッチ流は今後もリーマン幾何学における強力な道具であり続けると期待される。そのために本年度は研究実施計画に合わせ、リッチ流の下でのリーマン幾何学的不変量の振る舞いを調べた。特に従来の解析的な手法では困難な部分に、幾何的な手法でアプローチすることを考えた。その成果として、有界非負リッチ曲率を持つ一般次元完備リッチ流のもとで、その漸近体積商が時刻によらず一定であることを示すことが出来た。これはハミルトンらによって得られていた結果を拡張したものである。証明はグロモフのプレコンパクト性定理とチーガー・コールディングの体積連続性定理という、従来にない幾何学的な手法により得られた。同様の議論により、有界非負曲率の仮定の下では、リッチ流は非コンパクト多様体の無限遠点での様子を変えないことが分かる。また前年度に得られていた、「全曲率が存在して有限なリーマン計量を初期値に持つ曲面上の完備曲率有界リッチ流の下で、全曲率および全絶対曲率はそれぞれ一定および単調非増加である」という結果の証明を整理した。証明では塩濱の全曲率の表現公式を用いて、全曲率の代わりに漸近的面積商の振る舞いをみることに帰着させた。この結果はリッチ流による非コンパクト曲面の一意化など、2次元のリッチ流の更なる理解への手がかりとなると期待される。これらの結果を合わせて論文として投稿し、査読の後、受理された。本年度は主に一般次元のリッチ流の古代解について研究した。リッチ流の古代解とは過去に無限時間存在するリッチ流方程式の解のことである。古代解の理解はリッチ流の特異点解析において重要である。特に幾何学的な方面からアプローチするため、注目したのはPerelmanによって発見された簡約体積という量である。簡約体積はリッチ流に対して定義される量で、時刻に関して単調非減少であることが示されている。この単調性から古代解に対してその極限値が考えられ、その値を漸近簡約体積と名付けた。漸近簡約体積は古代解の重要な情報を含んでいると期待される。まず始めに、漸近簡約体積がガウシアンソリトンの値に十分近いリッチ流の古代解はガウスソリトンである、というリッチ流のギャップ定理を示した。この結果はリッチ曲率平坦リーマン多様体をリッチ流の停留点という特別な場合とみなすと、先のAndersonの結果を拡張していることが分かる。またこのギャップ定理を縮小リッチソリトンに適用することで、最近のCarrillo-Niの予想を肯定的に解決することが出来た。同時に、簡約体積の単調性はある仮定の下、超リッチ流にも拡張されることにも気付いた。これらの結果は論文にまとめ、Communication in Analysis and Geometryに投稿し受理された。続いて、Ecker-Ilmanen-Ni-Toppingによって発見された別の単調な量と、その簡約体積との関係について調べた。そしてリッチ流の古代解に対して、その漸近極限は漸近簡約体積に等しいことが証明された。この結果は現在論文として投稿準備中である。R.Hamiltonによって導入されたリッチ流と呼ばれる、多様体上のリーマン計量に対する発展型偏微分方程式が本研究の主対象である。G.Perelmanによる幾何化予想の解決にも用いられたリッチ流はリーマン幾何学における強力な手法の一つとして注目を集めた。Perelman以後の大きな結果の一つとして、閉多様体上の曲率作用素が正のリーマン計量を初期値とするリッチ流は適当な拡大リスケールの後、正定曲率計量に収束する、というBohm-Wilkingにする球面定理がある。この結果を受け、本研究において代表者は閉多様体上の第二種曲率作用素が正のリーマン計量を初期値とする。この結果はこれまでに知られている第二種曲率作用素が正の多様体に関する結果の全てをその系として含む。この結果は研究集会で発表した。 | KAKENHI-PROJECT-07J09377 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07J09377 |
リッチ流方程式の解の挙動についての研究 | またリッチ流の研究と並行して、今年度はAlexandrov空間の幾何学の研究においても進展が見られた。Alexandrov空間の理論は幾何化予想の証明において、リッチ流とともに重要な役割を果たす。Alexandrov空間は距離の三角不等式の他に、その曲率がある定数以上であるという曲率条件を意味する幾つかの不等式を満たす。代表者はそれらの不等式の等号成立の場合について調べ剛性定理を証明した。さらにここで対象にしているAlexandrov空間は、従来の研究と違い、有限次元性や局所コンパクト性を仮定しておらず、剛性定理の証明においてそのような空間のこれまでに知られていない性質も明らかした。この結果については研究集会等で発表し、論文として投稿した。 | KAKENHI-PROJECT-07J09377 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07J09377 |
体育授業と学級経営の関係についての実証的研究 | 本研究の目的は,体育授業と学級経営の関係を明らかにすることであった.東北および関東圏内の公立小学校36年生964名を対象として,体育授業態度評価と学級集団意識調査票を用いて,年間を通して両者の関係がどのように推移するかを調査分析した.分析の結果,子どもの体育授業態度評価と学級集団意識の間には有意な正の相関関係が認められ,この関係は年間を通じて持続する傾向にあることが確かめられた.また体育授業を中核に学級経営を展開している教師のクラスを対象にした参与観察から,教師が体育授業を中核にしてどのような学級経営を展開しているのかについての具体的事実を把握することができた.また研究主題に関連する研究として,学級集団を肯定的にすることをめざした体育授業実践,体育授業中に生じる「もめごと」についての分析,教師と子どもの意識の「ズレ」についての調査研究も行った.これらの研究から,(1)子どもたちの仲間関係を肯定的にすることを意図した教材を適用し,それに応じた教師の相互作用を行うことによって,子どもたちの仲間意識が肯定的に変容するという事実,(2)体育授業中,ルールや役割に関して生じる「もめごと」は,当人同士の話し合いや仲間・教師の介入によってその場で多くが解決するけれども,情意や人間関係に起因する「もめごと」は,その場で解決することが少ないということ,(3)1学期よりも2学期の方が,教師と子どもの意識の「ズレ」が大きくなる傾向があること,さらに担任の教職経験年数が長い方が「ズレ」が大きくなっていたことなどが明らかになった.これらの研究により,体育授業と学級経営の関係の具体像を確かめることができ,同時に,体育授業を中核によりよい学級経営を展開するために求められる要件の一端についても明らかにすることができた.平成16年度は,体育授業と学級経営の関係性を把握するため,東北および関東圏内の小学校児童約1,000名を対象に調査研究を実施した.調査には,高橋ら(1995)が開発した「体育授業態度評価票」と日野ら(2000)が開発した「学級集団意識調査票」を適用し,これらの回答から体育授業と学級経営の関係を明らかにしようとした.調査対象は教師や学校・学級の属性にかかわらずランダムに選定した.なお本研究では,学級集団意識調査票の回答による子どもの学級集団に対する意識を学級経営の実態を示す指標としてとらえた.分析の結果,1学期段階における体育授業態度評価と学級集団意識調査の得点の相関値は両者の「総合評価」間で.555であり,中程度の有意な相関関係が認められた.2学期段階におけるこの値は.547であった.このことから,(1)一般的なクラスにおける体育授業と学級経営の間には中程度の有意な相関関係があること,(2)その関係は,学期間を通じて大きな変容が見られないことなどが結果として明らかになった.しかし一方で,「体育授業を見れば学級経営の様子がよくわかる」「体育授業を中心に学級経営を展開する」といった学校現場から聞かれる経験的な仮説の信頼性妥当性を確かめるため,体育授業を中心に学級経営をしている2学級を意図的に抽出して事例的に同様の調査を実施することにした.その結果,両者の関係は学期の進行あるいは単元の進行とともに強くなる傾向が認められ,なかでも体育授業で「できる」ようになることと学級集団での「人間関係」が,一般的なクラスに比較して強く影響し合っている事実が確かめられた.現在は,3学期段階での関係性を調査分析中である.次年度も,同様の調査を実施するとともに,特に「技能的な成果の保障と子どもどうしの人間関係を肯定的にすることを視野に入れた実験的実践」を行い,体育授業が学級経営に対して具体的にどのように貢献するのか,さらに具体的に検討する予定である.本研究の目的は,体育授業と学級経営の関係を明らかにすることであった.東北および関東圏内の公立小学校36年生964名を対象として,体育授業態度評価と学級集団意識調査票を用いて,年間を通して両者の関係がどのように推移するかを調査分析した.分析の結果,子どもの体育授業態度評価と学級集団意識の間には有意な正の相関関係が認められ,この関係は年間を通じて持続する傾向にあることが確かめられた.また体育授業を中核に学級経営を展開している教師のクラスを対象にした参与観察から,教師が体育授業を中核にしてどのような学級経営を展開しているのかについての具体的事実を把握することができた.また研究主題に関連する研究として,学級集団を肯定的にすることをめざした体育授業実践,体育授業中に生じる「もめごと」についての分析,教師と子どもの意識の「ズレ」についての調査研究も行った.これらの研究から,(1)子どもたちの仲間関係を肯定的にすることを意図した教材を適用し,それに応じた教師の相互作用を行うことによって,子どもたちの仲間意識が肯定的に変容するという事実,(2)体育授業中,ルールや役割に関して生じる「もめごと」は,当人同士の話し合いや仲間・教師の介入によってその場で多くが解決するけれども,情意や人間関係に起因する「もめごと」は,その場で解決することが少ないということ,(3)1学期よりも2学期の方が,教師と子どもの意識の「ズレ」が大きくなる傾向があること,さらに担任の教職経験年数が長い方が「ズレ」が大きくなっていたことなどが明らかになった.これらの研究により,体育授業と学級経営の関係の具体像を確かめることができ,同時に,体育授業を中核によりよい学級経営を展開するために求められる要件の一端についても明らかにすることができた. | KAKENHI-PROJECT-16700443 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16700443 |
地方拠点都市の中心市街地における居住空間イメージの形成研究 | 本研究は居住人口の空洞化が著しい北海道内の地方拠点都市の中心市街地において、居住空間イメージを提示し、中心市街地の活性化方策の一部を明らかにしたものである。まず、中心市街地の未利用地の計画条件を明らかにした。北海道内地方拠点都市の中心市街地は殖民区画に基づいて、間口5間奥行20間程度の規模の敷地割りがされている。小規模な敷地が23区画集まって中心市街地に空閑地ができていることを明らかにした。つぎに、それらの空閑地を含んで街区を整備するときの課題を3点明らかにした。1つ目は、駐車場の確保である。地方都市の中心市街地としては比較的容積が高い街区のネット容積率120%の場合、必要な駐車場面積は街区の45%にも達する。2つ目は、街区内の雪処理を軽減するための建築物の配置である。その方策として、(1)街路から集合住宅に入る敷地内の人と車の動線を一本化して短くし、除雪が必要な面積を減らすこと。(2)排雪せずに雪を堆積できる堆積スペースを確保すること。(3)大雪時の雪処理のために融雪槽を設置するスペースを確保することである。3つ目は、親しみのある通りをつくるために、街路沿いに中層の集合住宅を配置し、生活の表情が通りにでるようにすることである。同時に、店舗併用の集合住宅を計画する。最後に、次の7つの空間整備の条件から,まちなか居住の空間整備イメージを街区レベルで明らかにした。(1)街区は基本的に中層住宅で構成する。(2)短冊状の細長い敷地を前と奥とで使い分ける。(3)短冊状敷地の前部に歩行空間を確保し、小さな公共空間をつくる。(4)生活の表情が出るよう住戸の開口部を中通りに向け、親しみのある通りをつくる。(5)短冊状敷地の奥側には駐車場を通りから隠れるように配置する。(6)雪を堆積できるスペースをつくる。(7)建築物の屋根は雪を堆積できるよう陸屋根とする。本研究は平成1011年度の2カ年にわたるものである。北海道内の拠点都市を対象とし、中心市街地および周辺地域の居住実態および居住者の意向を把握した。対象都市の中心市街地は、バブル景気以降居住人口が減り、特に木造の一戸建て住宅や木造賃貸アパートが減少している問題点があげられる。中心市街地の居住人口の減少は、商店街の購買人口の低下など、中心市街地の活気の停滞を招いていると考えられている。中心市街地では高齢者など、郊外では住みづらい世帯が居住する需要が比較的高い。国勢調査(1995)によると各都市とも中心市街地に近い地域で、単身高齢者や高齢夫婦世帯の割合が高い。それらの世帯の多くは、木造賃貸アパートなど住居費の安い賃貸住宅に住んでいる。本研究では、それら木造賃貸アパートに入居する高齢世帯とアパート所有者にアンケート調査を行った。入居者は買い物のしやすさや家賃の安さが気に入って住み続けている世帯が多く、住宅の質よりも地区の生活利便性を重視している。また、簡易な介護サービスなどを求めている世帯は多い。所有者も高齢の世帯が多く、僅かな家賃を老後の生活保障として考えており、経営意欲はきわめて低い。これらの結果から、本研究では中心市街地の居住環境整備として2つの方向性を見いだした。一つは老朽化した木造賃貸アパートを高齢者向けのグループホームとして活用する方向である。アパートを妖修して共用の食事室を設けるなど、食事と簡易なサービスが伴う賃貸住宅へと転用することで、高齢者の需要に対応することができる。もう一つは民間活力による公共住宅の整備である。中心市街地を対象に借上型公営住宅を重点的に供給するなど、高齢者など生活弱者が中心市街地周辺に居住できる居住環境整備が求められる。平成11年度は、これらの現状分析と市街地整備の方向性にもとづいて、中心市街地における居住像を明確にする。本研究は居住人口の空洞化が著しい北海道内の地方拠点都市の中心市街地において、居住空間イメージを提示し、中心市街地の活性化方策の一部を明らかにしたものである。まず、中心市街地の未利用地の計画条件を明らかにした。北海道内地方拠点都市の中心市街地は殖民区画に基づいて、間口5間奥行20間程度の規模の敷地割りがされている。小規模な敷地が23区画集まって中心市街地に空閑地ができていることを明らかにした。つぎに、それらの空閑地を含んで街区を整備するときの課題を3点明らかにした。1つ目は、駐車場の確保である。地方都市の中心市街地としては比較的容積が高い街区のネット容積率120%の場合、必要な駐車場面積は街区の45%にも達する。2つ目は、街区内の雪処理を軽減するための建築物の配置である。その方策として、(1)街路から集合住宅に入る敷地内の人と車の動線を一本化して短くし、除雪が必要な面積を減らすこと。(2)排雪せずに雪を堆積できる堆積スペースを確保すること。(3)大雪時の雪処理のために融雪槽を設置するスペースを確保することである。3つ目は、親しみのある通りをつくるために、街路沿いに中層の集合住宅を配置し、生活の表情が通りにでるようにすることである。同時に、店舗併用の集合住宅を計画する。最後に、次の7つの空間整備の条件から,まちなか居住の空間整備イメージを街区レベルで明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-10750446 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10750446 |
地方拠点都市の中心市街地における居住空間イメージの形成研究 | (1)街区は基本的に中層住宅で構成する。(2)短冊状の細長い敷地を前と奥とで使い分ける。(3)短冊状敷地の前部に歩行空間を確保し、小さな公共空間をつくる。(4)生活の表情が出るよう住戸の開口部を中通りに向け、親しみのある通りをつくる。(5)短冊状敷地の奥側には駐車場を通りから隠れるように配置する。(6)雪を堆積できるスペースをつくる。(7)建築物の屋根は雪を堆積できるよう陸屋根とする。 | KAKENHI-PROJECT-10750446 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10750446 |
地域ケアにおける看護連携ガイドラインの作成-外来と在宅ケア機関に焦点を当てて- | 患者の療養に関連する各機関間の看護職の連携についての実態把握を行い、連携促進に向けた提言を行うことを目的として研究を行った。院内の部門間の連携を構築するためには、看護管理者が継続看護の必要性を認識し、在宅医療の知識がある中心メンバーを選出し、病院全体を巻き込む必要があること、規模の大きいステーションは病院での退院支援にも積極的に関われていること、退院支援看護師のいる病院では積極的な連携が行われている事、難治性の慢性疾患においては、外来での相談室の設置、外来から地域の保健師や訪問看護ステーションに情報を伝達することなどが必要であることがわかった。患者の療養に関連する各機関間の看護職の連携についての実態把握を行い、連携促進に向けた提言を行うことを目的として研究を行った。院内の部門間の連携を構築するためには、看護管理者が継続看護の必要性を認識し、在宅医療の知識がある中心メンバーを選出し、病院全体を巻き込む必要があること、規模の大きいステーションは病院での退院支援にも積極的に関われていること、退院支援看護師のいる病院では積極的な連携が行われている事、難治性の慢性疾患においては、外来での相談室の設置、外来から地域の保健師や訪問看護ステーションに情報を伝達することなどが必要であることがわかった。1.文献検討:「看護」and(「連携」or「継続ケア」or「多機関医療協力システム」)and(「外来」or「訪問」のキーワードで、国内の文献検討を行った。その結果、[and「訪問」]で528件、[and「外来」]で287件の文献がヒットし、中でも看看連携に直接関連する文献89本を精読した。論文記載内容は、「システム整備」「個別支援」「その他」に大別された。さらに「システム整備」に関する26本を検討した結果、看看連携のシステム整備の方法は「組織の改善」「場の設定」「ツール開発」に、また、連携の範囲は「機関内」「機関間」「地域全体」に分けられることが分かった。2.ヒアリング:1の文献検討の結果を踏まえ、「システム整備」に先進的に取り組んでいる機関へのヒアリング調査を行った。その結果、各機関に共通していたのは、「連携システムの構築に至った経緯」「連携システムを構築するためのプロセス」「連携システムが病院全体に普及した要因」「連携システム構築後の効果」であった。連携システムを構築するためには、看護管理者が継続看護の必要性を認識し、在宅医療の知識がある他部門の看護職を含めた中心メンバーを選出し、病院全体を巻き込んでシステム構築に取り組む必要があり、その結果、病院全体の看護師の継続看護への意識が高まり、看看連携が円滑となる風土の形成や看護の質の向上に繋がったと考えられた。3.実態調査:1,2の結果を踏まえ、全国の病院における看看連携の実態調査を行うため、そのプレテストを近隣の退院支援看護師に対して行い、本調査における調査票の設計を行った。今年は、訪問看護ステーションと病院や他機関との連携に焦点を当てて、実態調査を行った。全国訪問看護事業協会に加盟する約3500箇所の訪問看護ステーションに調査票を送付し、1188箇所から回答を得た。入院患者の情報共有のための定期的な病院の訪問を行っているのが468箇所(39.4%)で、具体的には、病棟の定期的なラウンドが219箇所、入院中の患者に関する病院内での会議への定期参加が171箇所、入院中の患者に関する病棟カンファレンスへの定期参加が145箇所などであった。また、病院の退院支援担当者としての業務を行っていると回答したステーションが295箇所(24.8%)あったが、殆どは病院から退院支援の依頼が寄せられたのを受けて実施していた。学習会等へのステーションとしての継続的な参加については、訪問看護ステーションの協議会等が開催する学習会・事例検討会への参加が813箇所(68.4%)、近隣のステーション同士の学習会・事例検討会への参加が600箇所(50.5%)、行政が主催する学習会・事例検討会への参加が585箇所(49.2%)、地域の多職種からなる協議会等が開催する学習会・事例検討会への参加が515箇所(43.4%)、病院が主催する学習会・事例検討会への参加が507箇所(42.7%)であった。また、訪問看護ステーションの協議会等による学習会・事例検討会で役割を担っているのが405箇所(34.1%)、地域の多職種からなる協議会等による学習会・事例検討会で役割を担っているのが282箇所(23.7%)、近隣のステーション同士の学習会・事例検討会を主催しているのが233箇所(19.6%)と、積極的に役割を担っているステーションも3割以上を占めていた。以上の結果を病院との連携、および、地域全体での看護職間の連携がより円滑に行われるようなガイドライン作成に生かしていく予定である。【退院支援の全国調査】平成22年4,月に、全国の100床以上の一般病床を持つ全病院2600箇所に対し、退院支援に関する質問紙調査を行い、913病院から有効回答を得た(有効回答率35.1%)。 | KAKENHI-PROJECT-20390569 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20390569 |
地域ケアにおける看護連携ガイドラインの作成-外来と在宅ケア機関に焦点を当てて- | 退院支援の専門部署がある病院は669病院(72.2%)、在宅ケア機関と連携して退院支援を行っている病院は396病院(42.8%)であり、両方を行っているところが297病院(32.1%)、専門部署のみが372病院(40.2%)、在宅ケア機関との連携のみが99病院(10.7%)であった。設置主体が国や公的機関の病院で部署を有するところが多く、医療法人ではいずれもしていないところ、在宅ケア機関と連携しているところが多かった。部署を有するところでは病床数が多く、在院日数が短く、DPC病院が多かった。在宅ケア機関との連携による退院支援は、併設施設・機関を有するところで多かった。部署を有する病院では、後期高齢者退院調整加算・退院時共同指導料について、部署のない病院より算定している病院が多かった(いずれもp<0.001)。ロジスティック回帰分析の結果、後期高齢者退院調整加算ではDPC病院であることと退院支援部署があることが、退院時共同指導料2では病床数が多いことと退院支援部署があることが、それぞれ関連していた。【神経難病患者に対する医療者間の連携に関する調査】平成22年夏秋に、3か所の病院において、ALS患者の胃瘻造設に関する医療者間や患者・医療者間のコミュニケーションに関する調査を行った。ALS患者が診断を受けてから、治療法を選択するまでの間に、医療者としては外来医師しかコミュニケーションできていない実態が明らかになり、外来での相談室の設置、外来看護の充実、外来から地域の保健師や訪問看護ステーションに情報を伝達することなどが必要であることがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-20390569 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20390569 |
分化型甲状腺癌に対する放射性ヨウ素内用療法の超早期治療効果予測 | 本研究では、最新のSPECT/CT装置および最新の解析ソフトウェアを用いることによって病変集積を正確に定量化する方法を開発し、I-131内用療法後の治療効果の超早期予測が可能かどうかを明らかにする。対象患者においてI-131内用療法後の病変集積の定量化を行い、I-131内用療法後の治療効果と比較を行い、内用療法後画像の定量化をおこなうことで治療効果の超早期予測が可能かどうかを検討する。本研究では、最新のSPECT/CT装置および最新の解析ソフトウェアを用いることによって病変集積を正確に定量化する方法を開発し、I-131内用療法後の治療効果の超早期予測が可能かどうかを明らかにする。対象患者においてI-131内用療法後の病変集積の定量化を行い、I-131内用療法後の治療効果と比較を行い、内用療法後画像の定量化をおこなうことで治療効果の超早期予測が可能かどうかを検討する。 | KAKENHI-PROJECT-19K08169 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K08169 |
妊娠・育児期に良質な睡眠を得るためのプログラム作成にむけて | 本研究では,妊娠・育児期に良質な睡眠を得るために,妊娠期の生活や身体活動量、心理面と睡眠健康との関連を検討することを目的としている。本年度は,睡眠健康と精神・心理面との関連,母親役割準備行動,自己管理能力等について,妊婦31名(初産婦22名,経産婦9名;平均年齢31.4±4.0歳)を対象に検討した.その結果,不安に関しては,夜間睡眠や日中覚醒の満足度に関連が高く,寝つきや早朝覚醒,起床時の眠気といった睡眠の諸問題に関する自己評価とも関連を認めた.また,睡眠の良好な者は不良な者に比べ有意に不安が小さく,睡眠健康を脅かす要因の中で睡眠維持障害関連と睡眠随伴症状関連,起床困難関連が不安に影響を及ぼしていることが明らかとなった.また,抑うつ性は,特に睡眠維持障害関連や入眠障害関連の影響を受けることがわかった.また,妊娠中のセルフケア動機づけや胎児への感情は睡眠の質に影響した.すなわち,胎児や妊娠経過に対する肯定的な感情を高揚させることで睡眠の質の改善が期待されること,また外発的な動機づけの高い妊婦に対しては睡眠の質のさらなる悪化が懸念されることが示唆された.さらに,自己管理能力の高い者ほど全般的な睡眠健康が良好であり,睡眠が良好な者は不良な者に比べ,"情報収集"と"問題の明確化"に関する能力を有していた.妊娠中に生理的,物理的におこる睡眠の質の変化に対して自己管理能力を向上させたり、適切な活用を指導することにより,睡眠健康の維持増進が可能であると示唆された.本研究では,妊娠・育児期に良質な睡眠を得るために,妊娠期の生活や身体活動量と睡眠健康との関連を検討することを目的としている.本年度は,妊婦の睡眠健康とライフスタイルに焦点をあて,妊婦31名を対象に,妊婦検診時に口頭及び書面で依頼を行ったのち,アンケート調査を実施した.また,その中から,同意の得られた4名に対し,主観的評価だけでなく,1週間の身体活動量計(ライフコーダーとアクティグラフ)の装着により日中の活動と終夜睡眠・覚醒状況を検討した.妊娠期の睡眠の実態としては,中途覚醒や早朝覚醒など睡眠維持の障害が著しく,日中の居眠りも多いことがわかった.また,寝起きにかかる時間は個人差が大きく,睡眠習慣も不規則などの特徴が定量的にも明らかとなった.起床時刻が規則的な者ほど睡眠維持に関する問題も少なかった.さらに,睡眠が良好な者の活動率は,14時頃が低く,18時頃に高いことが確認され,午後から夕方の活動量と睡眠が関連することがわかった.これらから,妊娠期において睡眠・覚醒の質の改善には,睡眠の規則性を整えること,日中の活動や休息のバランスを考慮したアプローチの重要性が示唆された.次年度は,睡眠健康と精神・心理面との関連,母親役割準備行動,自己管理能力等について検討を行っていく予定である.本研究では,妊娠・育児期に良質な睡眠を得るために,妊娠期の生活や身体活動量、心理面と睡眠健康との関連を検討することを目的としている。本年度は,睡眠健康と精神・心理面との関連,母親役割準備行動,自己管理能力等について,妊婦31名(初産婦22名,経産婦9名;平均年齢31.4±4.0歳)を対象に検討した.その結果,不安に関しては,夜間睡眠や日中覚醒の満足度に関連が高く,寝つきや早朝覚醒,起床時の眠気といった睡眠の諸問題に関する自己評価とも関連を認めた.また,睡眠の良好な者は不良な者に比べ有意に不安が小さく,睡眠健康を脅かす要因の中で睡眠維持障害関連と睡眠随伴症状関連,起床困難関連が不安に影響を及ぼしていることが明らかとなった.また,抑うつ性は,特に睡眠維持障害関連や入眠障害関連の影響を受けることがわかった.また,妊娠中のセルフケア動機づけや胎児への感情は睡眠の質に影響した.すなわち,胎児や妊娠経過に対する肯定的な感情を高揚させることで睡眠の質の改善が期待されること,また外発的な動機づけの高い妊婦に対しては睡眠の質のさらなる悪化が懸念されることが示唆された.さらに,自己管理能力の高い者ほど全般的な睡眠健康が良好であり,睡眠が良好な者は不良な者に比べ,"情報収集"と"問題の明確化"に関する能力を有していた.妊娠中に生理的,物理的におこる睡眠の質の変化に対して自己管理能力を向上させたり、適切な活用を指導することにより,睡眠健康の維持増進が可能であると示唆された. | KAKENHI-PROJECT-17791639 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17791639 |
がん免疫病態の個体差の解明とその制御による個別化がん治療の開発 | 各種ヒトがんで、腫瘍組織遺伝子発現解析や免疫染色解析を継続し、それぞれ免疫サブタイプを同定し、各サブタイプの機序とその制御法について検討した。大腸がんでは、MSIタイプをさらに分類するがん細胞マーカーやプロテアーゼを同定、CD8+T細胞腫瘍浸潤が低いサブタイプとして、βカテニンシグナル亢進タイプ、エネルギー糖・脂肪酸代謝亢進タイプを同定し、それぞれ、マウス腫瘍モデルでβカテニン抑制剤や代謝調節剤とPD-1抗体の併用効果を示した。悪性中皮腫や肝がんで、腫瘍浸潤T細胞高値サブタイプを同定した。また肝がんのT細胞低値タイプとして、βカテニンシグナル亢進タイプや幹細胞様タイプを同定し、それぞれシグナル阻害剤やGPC3-CARTでの治療可能性を示した。肺がんでは、GPC1-CARTを作製し、マウス腫瘍モデルで強力な抗腫瘍効果と抗PD-1抗体併用による治療効果の増強を示した。マウス腫瘍モデルを用いて、免疫細胞やがん細胞に作用し、PD-1抗体と相乗効果を示す化合物や抗体を複数同定した。その中には、代謝調節剤として、解糖系やミトコンドリアなどのエネルギー代謝調節剤、脂肪酸やコレステロールやアミノ酸の代謝酵素の阻害剤が見いだされ、がん微小環境では、各種代謝異常が免疫抑制病態を構築しており、免疫治療標的となることを明らかにした。また樹状細胞活性化を介してCD8+T細胞を有意に活性化させる複数のヒト腸内細菌を同定し、免疫チェックポイント阻害薬との併用による抗腫瘍効果増強を明らかにした。ヒト抗腫瘍免疫系をin vivoで解析するために、マウスMHCクラスIとII遺伝子欠損NOG(NOD/SCID/c-γKO)、ヒト腫瘍関連マクロファージを解析できるヒトIL6遺伝子導入NOG、ヒトT細胞やNK細胞を解析できるヒトIL2, IL15遺伝子導入NOGマウスを作製し、ヒト免疫細胞の解析に用いた。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。肺癌や子宮頸癌など各種ヒトがんの腫瘍検体を倫理委員会承認後に収集して、各種T細胞浸潤をパラフィン切片の免疫染色で検討したところ、個人差が大きいことが判明した。また、各種T細胞浸潤と手術・化学療法・放射線治療後の予後とに、T細胞の種類により、正と負の有意な相関が認められ、腫瘍内T細胞浸潤という免疫状態が、腫瘍内T細胞浸潤がその治療効果と相関することが報告されているPD-1/PD-L1阻害療法などのがん免疫療法だけでなく、広くがん治療において臨床的意義をもつ可能性が示唆された。T細胞浸潤の個人差の原因を解明するために、肺癌や子宮頸癌などの腫瘍組織のcDNAマイクロアレイ解析を開始した。さらに肺癌や子宮頸癌など各種がんで、腫瘍浸潤T細胞の機能を検討するために、in vitroで培養して増殖したT細胞のがん細胞や腫瘍抗原の認識の評価を開始した。肺癌では、単純なIL2を用いたin vitro培養法や免疫不全マウスへの移植だけでは、がん細胞を認識するT細胞の確認はできていないが、子宮頸癌ではがん細胞で発現が残っているHPVタンパクを認識するT細胞を検出することができ、子宮頸癌では、がん関連ウィルス抗原を認識するT細胞が患者予後に関与する可能性が示された。研究代表者が所有する既存薬も含む化合物ライブラリーを用いて、がん特異的T細胞のがん細胞認識によるサイトカイン産生、およびヒト末梢血リンパ球からのウィルス特異的T細胞誘導を指標としたスクリーニング系を用いて、それらを増強する化合物の同定を試み、複数の候補化合物を見いだした。既知の薬剤の中には、マウス腫瘍モデルへの投与により、がん細胞からの免疫抑制分子の産生抑制や、担がん生体で増える免疫抑制性細胞の阻害等の機序を介して、体内での抗腫瘍T細胞誘導を増強する薬剤が確認され、今後複合的がん免疫療法に有用である可能性が示唆された。大腸がん手術検体を用いて、網羅的遺伝子発現解析を行ったところ、明確なサブセットに分類でき、術後予後と相関することが明らかとなった。T細胞応答が相対的に強い3サブセットが同定され、そのうちの一つは術後予後が最も良く、DNAミスマッチ修復酵素hMLH1発現が有意に低いマイクロサテライト(MSI)不安定性がんであることが示唆された。このサブセットは抗PD-1抗体治療への反応が極めて高いことが臨床試験で明らかになっている。2番目にT細胞応答が高いサブセットは、やはり術後予後は良いが、hMLH1発現は正常で、抗PD-1抗体が奏効しない可能性が報告されているが、PD-1よりも他の免疫チェックポイント分子の発現が高く、そのうちの一つは抗腫瘍T細胞の抑制作用が確認された。そこで、当該免疫チェックポイント分子に対する抗体の作製を開始し、次年度にマウスモデルでのin vivo作用の検討を予定している。卵巣がんでは、T細胞浸潤が予後と相関することが報告されている漿液性卵巣がんとは異なり、明細胞卵巣がんではT細胞浸潤が有意に低いことが判明した。明細胞卵巣がんはNF-kB依存性に炎症性サイトカインを高産生し、T細胞応答を抑制する可能性が考えられた。ヒト明細胞卵巣がん細胞を免疫不全マウスに移植すると樹状細胞機能が抑制されるが、NF-kB阻害性低分子化合物の投与により樹状細胞機能は回復した。 | KAKENHI-PROJECT-26221005 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26221005 |
がん免疫病態の個体差の解明とその制御による個別化がん治療の開発 | さらにマウス腫瘍モデルを用いたin vivo実験により、NF-kB阻害化合物は抗腫瘍T細胞の誘導を増強し、PD-1/PD-L1阻害剤との併用で高い抗腫瘍効果を示すことが明らかになり、将来、卵巣がんの免疫療法に利用できる可能性が示された。以上より、本年度は大腸がんと卵巣がんは免疫学的にサブセットに分類できること、サブセットごとに適切な免疫制御の可能性が示された。本年度は、大腸がんの網羅的遺伝子発現解析、および卵巣がんの免疫染色解析により、T細胞浸潤状態などにより免疫学的にサブセット分類できること、それぞれのサブセットに対して、適切な免疫制御が必要である可能性を明らかにすることができた。大腸がんでは2つのサブセットで、異なる免疫チェックポイント阻害剤が有用できる可能性が示された。そのうちの一つでは、新規免疫チェックポイント分子に対する阻害による新規治療の可能性が見いだされ、その検討のために、当該分子に対するモノクローナル抗体の作製を開始した。卵巣がんでは、組織型によってT細胞応答・T細胞腫瘍浸潤が異なること、その原因の一つとして、NF-kB活性化などのがん細胞遺伝子異常が関与する可能性が示された。またNF-kB阻害化合物が免疫制御に有効である可能性が示され、ヒトがん細胞移植マウスモデルとマウス腫瘍モデルでそのin vivo効果、特にPD-1/PD-L1阻害との併用効果が確認された。したがって、前年度の結果と合わせて、複数のがん種において、治療前の免疫状態、特にT細胞の誘導・腫瘍浸潤状態には個人差が存在し、免疫学的にサブセット分類されること、それががん治療に関与すること、サブセットごとに適切な免疫制御の必要性と可能性が示された。すなわち、がん免疫病態の個人差に基づくprecision medicineによる個別化治療、特に免疫チェックポイント阻害を中心とした複合的な治療が重要であることを具体的に提示することができた。今までの研究成果に基づいたモノクローナル抗体の作製や免疫調節性低分子化合物の作用の検討も進んでいる。今後、免疫病態の個人差と治療との関係のより詳細な解析、さらにその原因の追究が必要であるが、現時点では当初の目的に向けて、研究は順調に進捗しており、ほぼ満足できる達成度であると考えている。ヒト大腸がんではTGF-βも関与する間葉系がん微小環境(TME)優位のサブタイプを同定し、術後予後が最も悪いこと、また大腸がんでは進行とともにTGF-β, VEGF,腫瘍関連マクロファージ(TAM)、制御性T細胞(Treg)等が関与する免疫抑制が増強してCD8+T細胞の腫瘍浸潤と逆相関することを見いだした。そこでTGF-b遺伝子導入大腸がんを用いたマウスモデルを用いて同様なTMEを構築し、免疫制御を試みたところ、ケモカイン受容体阻害剤がTAMを減少させ、PD-1抗体との併用で強い腫瘍退縮効果を示すことを見いだした。ヒト肺がんでは、喫煙者が多い扁平上皮がんではCD8+T細胞と術後良好とに正の相関が認められたが、非喫煙腺がんでは、CD8+T細胞浸潤は予後不良と相関することを明らかにした。網羅的遺伝子解析とマルチカラー免疫染色解析により、制御性・機能不全CD8+T細胞の存在が示され、またがん細胞が産生するIL13などのサイトカインがカスケード的にTAMやTregを誘導する可能性が示され、非喫煙肺腺がんで免疫療法が効きにくい原因となることが示された。 | KAKENHI-PROJECT-26221005 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26221005 |
中央地方間の権力変化に関する多国間比較研究 | 本研究では、中央地方間の権力移譲について、中間レベルの政府に注目して、多国間比較から解明することを目指している。上記の目的を達成するため、本年度は、研究分担者の退職に伴う研究組織の再構築を行い、各分担者の担当内容を再確認した。それを踏まえて、分担者の研究状況の把握と研究全体の整合性の確保を目的に、9月に第1回研究会を実施した。第1回研究会では、担当している各国の政府間関係における権力移譲の現状についての報告を行った。その結果、各国の権力移譲の方向性の違いがどのような要因から生じているのかを検討することが重要な課題として提示された。そこで出た課題を解消し、研究成果を公表するために海外学会での報告に応募をすることとし、研究分担者を中心としたパネルを企画し、2019年6月に開催されるカナダ政治学会に応募を行った。無事に応募が採択されたために、翌年度海外学会報告を行う予定である。この学会報告によって、より広い視野から研究全体についてのコメントを受けることができるのとともに、海外に向けて研究成果を発信することができる。この学会報告の採択にともない、学会報告の内容を確認するため、3月に第2回研究会を実施した。その中では、各自の報告内容を確認するとともに、研究全体の整合性を達成するためにどのようなことが必要であるのかについて検討を行った。これらの研究会を踏まえ、研究計画全体の整合性を図るとともに、今後の研究の推進方策について検討を加えることができた。前年度に研究分担者1名が退職したことに伴い、研究組織と研究計画の見直しを迫られた。研究目的を達成するために、分担する国を見直すなど必要な修正を行った。また、本年度は2回の研究会を実施し、研究全体の整合性を図るとともに、海外学会でのパネル報告が採択されるなど一定の成果を得た。研究の最終年度を迎えるのにあたって、海外学会での報告を行うなど、研究成果の取りまとめを行う予定である。また、各自の分担に関して、必要な資料収集を行うなど、引き続き研究の完成に向けて各分担者が研究を推進する。本研究では、中央地方間の権力移譲について、中間レベルの政府に注目して、多国間比較から解明することを目指している。上記の目的を達成するため、本年度は、研究分担者の退職に伴う研究組織の再構築を行い、各分担者の担当内容を再確認した。それを踏まえて、分担者の研究状況の把握と研究全体の整合性の確保を目的に、9月に第1回研究会を実施した。第1回研究会では、担当している各国の政府間関係における権力移譲の現状についての報告を行った。その結果、各国の権力移譲の方向性の違いがどのような要因から生じているのかを検討することが重要な課題として提示された。そこで出た課題を解消し、研究成果を公表するために海外学会での報告に応募をすることとし、研究分担者を中心としたパネルを企画し、2019年6月に開催されるカナダ政治学会に応募を行った。無事に応募が採択されたために、翌年度海外学会報告を行う予定である。この学会報告によって、より広い視野から研究全体についてのコメントを受けることができるのとともに、海外に向けて研究成果を発信することができる。この学会報告の採択にともない、学会報告の内容を確認するため、3月に第2回研究会を実施した。その中では、各自の報告内容を確認するとともに、研究全体の整合性を達成するためにどのようなことが必要であるのかについて検討を行った。これらの研究会を踏まえ、研究計画全体の整合性を図るとともに、今後の研究の推進方策について検討を加えることができた。前年度に研究分担者1名が退職したことに伴い、研究組織と研究計画の見直しを迫られた。研究目的を達成するために、分担する国を見直すなど必要な修正を行った。また、本年度は2回の研究会を実施し、研究全体の整合性を図るとともに、海外学会でのパネル報告が採択されるなど一定の成果を得た。本研究は、多国間比較により中央政府、中間政府、基礎自治体間の権力移動の現状とその要因を解明することを目的としている。本年度は、先行研究の収集、分析対象の現状把握を行い、研究全体の枠組み構築に当たった。そのため、1各分担者がそれぞれの研究対象国を訪問して資料収集を行った。その中では、フランスを訪問して現地の研究者へのヒアリングを行った他、ヨーロッパ政治研究学会における研究動向の把握など、海外における政府間関係に関する研究動向の把握を行った。それに加えて、各分担国における中間政府への権限移譲を含めた地方制度改革の現状について研究を進めた。2以上の資料収集の成果について、メールなどを用いて適宜研究組織全体で情報共有を図った。以上の結果として、フランスにおける中間政府への権力移譲の現状について一定の情報を得た。また、比較政治学における政府間関係理論の研究動向についても把握することができた。さらに、ドイツ、イギリス、オセアニアにおける、中間政府の役割についての資料を一定程度収集することができた。これらの成果によって、今後の研究においては、各国における中間政府への権限移譲の現状把握に注力すること、それがどのような要因から生じているのかという側面に加えて、中間政府への権力移譲がどのような政策的帰結を生んでいるのかということの検討という両方向から研究を進めていくこととした。さらに、研究組織を再構築する必要性が生じたため、翌年度に可能であれば複数回研究会を開催し、研究組織全体の見直しと各自の研究分担の整理を行うことを確認した。年度途中で研究分担者が退職したことにより、研究組織の再編成を迫られた。 | KAKENHI-PROJECT-17H02480 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H02480 |
中央地方間の権力変化に関する多国間比較研究 | そのため、研究計画の見直しを行う必要が生じ、当初予定していた研究会を開催できなかった。また、一部の海外でのヒアリング等について、先方の事情で翌年度に繰り越す必要が生じた。一方で、研究担当者はそれぞれの担当事例について研究を進めており、研究に致命的な影響を与えるような大きな遅れには至っていない。研究の最終年度を迎えるのにあたって、海外学会での報告を行うなど、研究成果の取りまとめを行う予定である。また、各自の分担に関して、必要な資料収集を行うなど、引き続き研究の完成に向けて各分担者が研究を推進する。研究組織を再編成し、翌年度以降の研究体制を整える必要が生じたが、引き続き各自の分担研究を推進する。全体の整合性を図るために、研究会を複数回実施するほか、学会等での報告に応募するなど、研究成果の発信を開始する。 | KAKENHI-PROJECT-17H02480 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H02480 |
葉の向背軸形成におけるGABA代謝経路の役割の解析 | 葉の発生における向背軸方向の極性の形成は、葉の形態形成や光合成などを最適にするために重要であると考えられている。私は、向背軸方向の極性の堅牢さ(robustness)に異常を示す突然変異体enf1の解析を通して、GABA代謝経路がこの極性の形成に重要な役割を果たしていることを明らかにしていた。本年度は、1)ENF1遺伝子の発現解析、2)GABAT1遺伝子の機能解析、3)コハク酸セミアルデヒド(SSA)の機能解析、をおこなった。ENF1遺伝子の発現は茎頂分裂組織から離れた葉原基や茎において強い発現が見られた。このことからENF1の基質であるSSAが茎頂分裂組織に多く蓄積していると考えられた。また、SSAの合成酵素であるGABATの機能欠損変異体gabat1において、向背軸方向の極性を調べたところ、背軸側化が起こっていることが見出された。enf1 gabat1二重変異体の解析から、ENF1とGABAT1との間に遺伝学的相互作用が見出されたことから、これらの変異体の原因は同一の因子の作用によるものと考えられた。そこで、私はGABAT1によって合成され、ENF1によって分解を受ける化合物SSAが向背軸方向の極性形成に関わっているのではないかという作業仮説を立て以下の実験をおこなった。葉原基形成時に外からSSAを投与したときの向背軸極性への影響を観察した。すると、低頻度ではあるもののSSAの投与により向背軸極性に異常に由来すると考えられる葉の発生異常が観察された。以上のことから、GABA代謝経路はSSAを介して向背軸方向の極性の形成に関与していることが示された。私は、植物の地上部の器官初期発生のメカニズムを明らかにすることが最終的な目標として研究をおこなってきた。私は本研究員を始める段階で既にGABA代謝経路に含まれる酵素をコードするENF1遺伝子が葉の向背軸形成に関わることを明らかにしていた。代謝経路の形態形成への関与は、何らかの形態形成に関わる植物ホルモン様の化合物の代謝が異常になり、それによって形態形成の調節をおこなっていると考えられる。しかしながら、ENF1は一次代謝に関わると考えられており、その代謝経路には既知の植物ホルモン等は含まれていない。すなわち、ENF1がいかにして葉の向背軸形成に関わっているかを明らかにすることで、植物の形態形成に関わる新規の植物ホルモン様物質の同定に至ることができると考えている。本年度は、1)enf1変異体と野生型とを用いて比較メタボローム解析を行う、2)enf1変異体と野生型とを用いて比較トランスクリプトーム解析を行う、3)enf1変異体の抑圧変異体の単離、という主に3つの解析をおこなってきた。中でも、enf1変異体と野生型とを用いて比較メタボローム解析では、以下の結果が得られた。野生型と変異体とで量が変化していた化合物を詳しく見ると、変異体で減少していたものの中にクエン酸回路の化合物が多く含まれていた。一方、変異体で増加していたものにはアミノ酸類が多く含まれていた。さらに、ENF1遺伝子がGABA代謝経路の最後の段階の酵素をコードしており、この酵素によってGABA代謝経路の化合物からクエン酸回路の化合物へと変換されることを考え合わせると、特に茎頂部においてアミノ酸類はGABA代謝経路を介してクエン酸回路へと流れ込んでおり、ENF1はそこに関わっていると考えられた。葉の発生における向背軸方向の極性の形成は、葉の形態形成や光合成などを最適にするために重要であると考えられている。私は、向背軸方向の極性の堅牢さ(robustness)に異常を示す突然変異体enf1の解析を通して、GABA代謝経路がこの極性の形成に重要な役割を果たしていることを明らかにしていた。本年度は、1)ENF1遺伝子の発現解析、2)GABAT1遺伝子の機能解析、3)コハク酸セミアルデヒド(SSA)の機能解析、をおこなった。ENF1遺伝子の発現は茎頂分裂組織から離れた葉原基や茎において強い発現が見られた。このことからENF1の基質であるSSAが茎頂分裂組織に多く蓄積していると考えられた。また、SSAの合成酵素であるGABATの機能欠損変異体gabat1において、向背軸方向の極性を調べたところ、背軸側化が起こっていることが見出された。enf1 gabat1二重変異体の解析から、ENF1とGABAT1との間に遺伝学的相互作用が見出されたことから、これらの変異体の原因は同一の因子の作用によるものと考えられた。そこで、私はGABAT1によって合成され、ENF1によって分解を受ける化合物SSAが向背軸方向の極性形成に関わっているのではないかという作業仮説を立て以下の実験をおこなった。葉原基形成時に外からSSAを投与したときの向背軸極性への影響を観察した。すると、低頻度ではあるもののSSAの投与により向背軸極性に異常に由来すると考えられる葉の発生異常が観察された。以上のことから、GABA代謝経路はSSAを介して向背軸方向の極性の形成に関与していることが示された。 | KAKENHI-PROJECT-08J02221 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J02221 |
フィロウイルスの宿主域を決定する因子の探索および疫学調査 | ヤエヤマオオコウモリ由来の細胞株であるFBKT1細胞はエボラウイルスに対しては感受性を示すが、マールブルグウイルスはFBKT1細胞に感染性を示さないことが先の研究結果から判明している。そこでFBKT1細胞を抗原としてモノクローナル抗体を作出し、エボラウイルスの感染を阻害する抗体(すなわちFBKT1細胞に発現するレセプターに対する抗体)の作出を試みたが、目的のモノクローナル抗体を得ることはできなかった。次にフィロウイルスの細胞侵入過程において膜融合に関与するレセプター分子であるNPC1をFBKT1細胞に恒常発現させたところ、エボラウイルスにおいては感染性に大きな変化が見られなかったが、マールブルグウイルスにおいては顕著に感染性が増強した。他にもフィロウイルスの細胞吸着に関与するレセプター分子であるTim-1やC型レクチンを恒常発現させたFBKT1細胞を用いて実験を行ったがいずれの場合も感染性に顕著な変化は見られなかった。このことからFBKT1細胞におけるフィロウイルスの感染性の差には膜融合に関わるレセプターであるNPC1の関与が示唆された。そこでNPC1とフィロウイルスの糖タンパク質GPとの直接的な結合を評価するため、ELISAを基礎とした実験系の確立を行った。この実験系により今後のNPC1とGPの親和性を定量的に検査することが可能になると思われる。海外でサンプリングされたコウモリから抽出されたRNAサンプルに対してフィロウイルスの遺伝子の検出を試みた。新規フィロウイルスであるLloviu virusも含む現在知られているすべてのフィロウイルスの遺伝子を検出することが可能なプライマーを設計し、遺伝子検出に用いたが、いずれのサンプルからもフィロウイルス遺伝子は検出されなかった。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。ヤエヤマオオコウモリ由来の細胞株であるFBKT1細胞はエボラウイルスに対しては感受性を示すが、マールブルグウイルスはFBKT1細胞に感染性を示さないことが先の研究結果から判明している。そこでFBKT1細胞を抗原としてモノクローナル抗体を作出し、エボラウイルスの感染を阻害する抗体(すなわちFBKT1細胞に発現するレセプターに対する抗体)の作出を試みたが、目的のモノクローナル抗体を得ることはできなかった。次にフィロウイルスの細胞侵入過程において膜融合に関与するレセプター分子であるNPC1をFBKT1細胞に恒常発現させたところ、エボラウイルスにおいては感染性に大きな変化が見られなかったが、マールブルグウイルスにおいては顕著に感染性が増強した。他にもフィロウイルスの細胞吸着に関与するレセプター分子であるTim-1やC型レクチンを恒常発現させたFBKT1細胞を用いて実験を行ったがいずれの場合も感染性に顕著な変化は見られなかった。このことからFBKT1細胞におけるフィロウイルスの感染性の差には膜融合に関わるレセプターであるNPC1の関与が示唆された。そこでNPC1とフィロウイルスの糖タンパク質GPとの直接的な結合を評価するため、ELISAを基礎とした実験系の確立を行った。この実験系により今後のNPC1とGPの親和性を定量的に検査することが可能になると思われる。海外でサンプリングされたコウモリから抽出されたRNAサンプルに対してフィロウイルスの遺伝子の検出を試みた。新規フィロウイルスであるLloviu virusも含む現在知られているすべてのフィロウイルスの遺伝子を検出することが可能なプライマーを設計し、遺伝子検出に用いたが、いずれのサンプルからもフィロウイルス遺伝子は検出されなかった。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-16H06600 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H06600 |
昆虫の休眠における脱皮ホルモンの役割の解明 | 脱皮ホルモン濃度が低い状態で維持されることが各種の昆虫の幼虫期および蛹期の休眠の維持に必要だということはよく知られているが、これらの虫の休眠を誘導する内分泌シグナルについてはよく分かっていない。そこで、幼虫期に休眠するオオワタノメイガを使って、休眠誘導における脱皮ホルモンの役割を調べた。まず、昆虫病原性糸状菌である緑きょう病菌から脱皮ホルモン22位酸化酵素(Ecdysteroid-22-oxidase : E22O)を精製・単離し、E22Oを使って昆虫体内の脱皮ホルモン濃度を下げる(血液中の活性型脱皮ホルモンを不活性化する)技術を開発した。オオワタノメイガの非休眠幼虫にE22Oを注射したところ、ワンダリング後何も食べず数ヶ月間生き続けた。また、E22O処理虫では低温(5°C)への耐性が増し、一定期間低温においた後に通常の温度に戻すと成長を再開した。これらの成長、生存特性は短日処理により休眠を誘導した幼虫のものと変わらなかったことから、オオワタノメイガの非休眠幼虫にE22Oを注射することにより休眠が誘導されたものと結論した。この結果は、脱皮ホルモン濃度の低下が昆虫の休眠を誘導する内分泌的刺激になりうることをはじめて示したものである。脱皮ホルモン濃度が低い状態で維持されることが各種の昆虫の幼虫期および蛹期の休眠の維持に必要だということはよく知られているが、これらの虫の休眠を誘導する内分泌シグナルについてはよく分かっていない。そこで、幼虫期に休眠するオオワタノメイガを使って、休眠誘導における脱皮ホルモンの役割を調べた。まず、昆虫病原性糸状菌である緑きょう病菌から脱皮ホルモン22位酸化酵素(Ecdysteroid-22-oxidase : E22O)を精製・単離し、E22Oを使って昆虫体内の脱皮ホルモン濃度を下げる(血液中の活性型脱皮ホルモンを不活性化する)技術を開発した。オオワタノメイガの非休眠幼虫にE22Oを注射したところ、ワンダリング後何も食べず数ヶ月間生き続けた。また、E22O処理虫では低温(5°C)への耐性が増し、一定期間低温においた後に通常の温度に戻すと成長を再開した。これらの成長、生存特性は短日処理により休眠を誘導した幼虫のものと変わらなかったことから、オオワタノメイガの非休眠幼虫にE22Oを注射することにより休眠が誘導されたものと結論した。この結果は、脱皮ホルモン濃度の低下が昆虫の休眠を誘導する内分泌的刺激になりうることをはじめて示したものである。本研究の目的は、昆虫の休眠における脱皮ホルモンの役割を解明することである。初年度は、計画通り休眠ステージの異なる数種の昆虫に脱皮ホルモン分解酵素タンパク質を注射もしく脱皮ホルモン分解酵素遺伝子を発現させて、休眠が誘導できるかどうかを調べた。老熟幼虫で休眠するオオワタノメイガでは、老熟直後の非休眠幼虫に脱皮ホルモン分解酵素タンパク質を注射することにより蛹化が強く抑制された。この脱皮ホルモン分解酵素処理虫を低温(5°C)に1ヶ月以上おいてから通常の飼育温度に戻すと一斉に蛹化、さらに羽化したことから、脱皮ホルモン分解酵素処理により休眠時と同様の生理状態になっていたことが強く示唆された。今まで、幼虫休眠においては幼若ホルモンの関与を示す結果は数多く報告されているが、脱皮ホルモンの役割はよくわかっていなかった。このことから、脱皮ホルモン濃度が下がるもしくは上昇しないという脱皮ホルモン濃度の推移がきっかけとなって休眠が誘導されることを示した本結果の独創性は非常に高いと考えている。なお、脱皮ホルモン分解酵素遺伝子を発現させた場合には低温処理後もほとんど蛹化がおこらなかったことから、タンパク質の注射に比べて影響がより長期にわたって持続し、そのために低温処理をした場合でも休眠から醒めなかった可能性が考えられる。オオワタノメイガの他には、チャイロコメノゴミムシダマシ、ハスモンヨトウなど数種の昆虫で脱皮ホルモン分解酵素タンパク質を注射したが、休眠は誘導されなかった。さらに種類を広げて、脱皮ホルモン分解酵素処理により昆虫の休眠が誘導されることの一般性を検証する必要がある。本研究の目的は、昆虫の休眠における脱皮ホルモンの役割を解明することである。昨年度は、オオワタノメイガの非休眠幼虫に対して、緑きょう病菌から同定した脱皮ホルモン分解酵素の組換えタンパク質を注射すると、(1)通常の温度で成長が停止する、(2)低温(4°C)への耐性が増す、(3)一定期間低温においた後に通常の温度に戻すと成長が再開される、という生理状態の変化が見られることから、脱皮ホルモン不活性化酵素処理により休眠と同様の生理状態が誘導されたものと推測した。本年度は、この可能性を検証するため、飼育条件を調整することにより得た休眠虫と非休眠虫で同様の解析を行い、また、休眠虫と非休眠虫の血液中の脱皮ホルモン濃度を比較した。25°C長日(16時間明、8時間暗)条件で飼育して得た非休眠虫を低温下におくと1ヶ月以内に全ての虫が死亡したが、17°C短日(8時間明、16時間暗)条件で飼育して得た休眠虫では低温下でもほぼ全ての個体が1ヶ月以上生存した。 | KAKENHI-PROJECT-21580070 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21580070 |
昆虫の休眠における脱皮ホルモンの役割の解明 | さらに、低温下で1ヶ月おいた休眠虫を通常の温度に戻すと成長が再開された。このように、脱皮ホルモン処理した非休眠虫の低温への応答は、休眠虫のものと同一であることが確認できた。さらに、休眠虫と非休眠虫の血液中の総脱皮ホルモン濃度をRIA法により測定したところ、非休眠幼虫では老熟後急増し蛹化直前に600ng/ml程度に増加したが、休眠幼虫では老熟幼虫になっても数10ng/ml程度のまま1ヶ月以上にわたって増加することはなかった。以上の結果から、非休眠虫と休眠虫とでは、実際に血中脱皮ホルモン濃度が大きく異なることも確かめられた。以上、当初計画にある生理学的解析を順調に進めることができた。多くの昆虫は、光周期や温度などの環境条件の変化を受容して、様々なホルモンの分泌量を調節することにより休眠に入るが、なかでも脱皮ホルモンが関与することを示す報告が多い。そのような種では、休眠状態でホルモン濃度が低く、休眠虫に対する脱皮ホルモンの注射により休眠を打破できることから、脱皮ホルモン濃度の低下が休眠の誘導や維持に重要だと示唆されてきた。しかし、これまでは脱皮ホルモン濃度を人為的に下げる方法がなかったため、直接証明することはできていない。応募者らは最近、昆虫病原性糸状菌の1種から強力な脱皮ホルモン分解酵素を単離し、この酵素を使って様々な昆虫の脱皮ホルモン濃度を下げることに成功している。そこで、本研究では、この酵素を利用して、昆虫の様々なタイプの休眠における脱皮ホルモンの役割を解明する。昨年度までの2年間の解析で、オオワタノメイガの非休眠幼虫に対して、脱皮ホルモン分解酵素の組換タンパク質を注射すると、(1)通常の温度で成長が停止する、(2)低温(4°C)への耐性が増す、(3)一定期間低温においた後に通常の温度に戻すと成長が再開される、という休眠と酷似した生理状態へ変化させることができることがわかった。本年度はこれらの生理状態の変化の中で、特に(2)の低温耐性を増強させる生化学、分子生物学的機構を明らかにするために、様々な昆虫で低温耐性に関係することが知られているheat shock protein遺伝子のうちから、hsp70、hsc70、Hsp96遺伝子をクローニングし、通常の非休眠幼虫、休眠幼虫、人為的に休眠を誘導した幼虫の間でそれらのmRNAの発現を比較した。しかし予想に反して、休眠の有無により有意な差は認められず、これらの遺伝子が低温耐性増強に関与していないことがわかった。また、数種類の昆虫に脱皮ホルモン分解酵素を注射したが、休眠は誘導できなかった。このことから、脱皮ホルモン濃度低下により休眠誘導が一般的に見られる現象でないことが示された。 | KAKENHI-PROJECT-21580070 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21580070 |
局所麻酔薬の神経線維傷害機序と神経線維再生に関する研究 | 腰部脊髄くも膜下に投与された局所麻酔薬による神経毒性の機序にグルタミン酸毒性が関与している可能性がある。本研究では1)テトラカイン以外の局所麻酔薬で同じような現象が見られるか、2)局所麻酔薬のpHを上昇させることでグルタミン酸濃度がさらに上昇し、神経毒性が増強されるか、3)グルタミン酸受容体の一つであるAMPA受容体拮抗薬のYM872でテトラカインの神経毒性が軽減されるかを検討した。あらかじめ腰部脊髄くも膜下にマイクロダイアリシスプローベと薬物注入用カテーテルを埋め込んだ家兎を用いた。腰部脊髄くも膜下に局所麻酔薬を投与し、腰部脊髄のくも膜下マイクロダイアリシスにより脳脊髄液中のグルタミン酸濃度を測定し、1週間後の神経学的所見と組織学的所見を検討した。テトラカイン(2%)、リドカイン(10%)、ブピバカイン(2%)、ロピバカイン(2%)のくも膜下投与により、脳脊髄液中のグルタミン酸濃度はそれぞれ、10倍、6倍、5倍、2.5倍に上昇した。神経障害はリドカイン>テトラカイン>ブピバカイン>ロピバカインの順に悪かった。5%リドカインに重炭酸ナトリウムを加えpHを5.5から6.8に上昇させると、グルタミン酸濃度上昇は2倍から5倍に増加し、神経障害も増悪した。YM872をあらかじめくも膜下に投与しておいても、テトラカインによるグルタミン酸濃度上昇には影響を与えなかったが、感覚・運動機能障害を軽減する傾向がみられ、組織学的検討では運動神経細胞のchromatolysis変性を軽減した。以上より、高濃度局所麻酔薬を腰部脊髄くも膜下に投与すると脳脊髄液中のグルタミン酸濃度が上昇し、グルタミン酸濃度上昇が大きいほど神経毒性も強い傾向にあることが判明した。また、局所麻酔薬の神経毒性の機序に一部グルタミン酸毒性が関与していることが明らかとなった。腰部脊髄くも膜下に投与された局所麻酔薬による神経毒性の機序にグルタミン酸毒性が関与している可能性がある。本研究では1)テトラカイン以外の局所麻酔薬で同じような現象が見られるか、2)局所麻酔薬のpHを上昇させることでグルタミン酸濃度がさらに上昇し、神経毒性が増強されるか、3)グルタミン酸受容体の一つであるAMPA受容体拮抗薬のYM872でテトラカインの神経毒性が軽減されるかを検討した。あらかじめ腰部脊髄くも膜下にマイクロダイアリシスプローベと薬物注入用カテーテルを埋め込んだ家兎を用いた。腰部脊髄くも膜下に局所麻酔薬を投与し、腰部脊髄のくも膜下マイクロダイアリシスにより脳脊髄液中のグルタミン酸濃度を測定し、1週間後の神経学的所見と組織学的所見を検討した。テトラカイン(2%)、リドカイン(10%)、ブピバカイン(2%)、ロピバカイン(2%)のくも膜下投与により、脳脊髄液中のグルタミン酸濃度はそれぞれ、10倍、6倍、5倍、2.5倍に上昇した。神経障害はリドカイン>テトラカイン>ブピバカイン>ロピバカインの順に悪かった。5%リドカインに重炭酸ナトリウムを加えpHを5.5から6.8に上昇させると、グルタミン酸濃度上昇は2倍から5倍に増加し、神経障害も増悪した。YM872をあらかじめくも膜下に投与しておいても、テトラカインによるグルタミン酸濃度上昇には影響を与えなかったが、感覚・運動機能障害を軽減する傾向がみられ、組織学的検討では運動神経細胞のchromatolysis変性を軽減した。以上より、高濃度局所麻酔薬を腰部脊髄くも膜下に投与すると脳脊髄液中のグルタミン酸濃度が上昇し、グルタミン酸濃度上昇が大きいほど神経毒性も強い傾向にあることが判明した。また、局所麻酔薬の神経毒性の機序に一部グルタミン酸毒性が関与していることが明らかとなった。腰部脊髄くも膜下に投与された局所麻酔薬による神経毒性の機序にグルタミン酸毒性が関与している可能性がある。細胞外液中に増加したグルタミン酸は乏突起細胞(脊髄内での髄鞘を形成)のAMPA受容体(グルタミン酸受容体の一つ)を介して乏突起細胞に傷害を与えると推測される。本年度の研究では、AMPA受容体拮抗薬がテトラカインによる神経毒性を軽減できるか否かの検討を行った。あらかじめ腰部脊髄くも膜下に薬物注入用カテーテルを埋め込んだ家兎を用いた。1)AMPA受容体拮抗薬の投与量を決定するための研究意識下の家兎の腰部くも膜下にYM872(AMPA受容体拮抗薬)を10μg、30μg、100μg、300μg(各n=3)投与した。YM872は用量依存性に感覚・運動神経共に遮断した。300μg群では神経遮断レベルは尾から前足まで達し、作用時間も平均2時間30分であった。腰部脊髄くも膜下にテトラカインを投与した場合、脳脊髄液中のグルタミン酸濃度が高値を示すのは投与後60分以内なので、YM872を投与した30分後にテトラカインを投与するのがよいと思われた。2)YM872の前投与がテトラカインの神経毒性を軽減するか否かに関する研究イソフルランによる全身麻酔下の家兎の腰部脊髄くも膜下にYM872を300μgまたは生理食塩水を投与した。 | KAKENHI-PROJECT-13671585 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13671585 |
局所麻酔薬の神経線維傷害機序と神経線維再生に関する研究 | 30分後にくも膜下にテトラカイン1%または2%液を0.3mL投与した。以下の4群に分けた:YM872+1%テトラカイン、生理食塩水+1%テトラカイン、YM872+2%テトラカイン、生理食塩水+2%テトラカイン。家兎を麻酔から覚醒させ、7日後に神経学的所見を調べ、脊髄を灌流固定してHE染色にて組織学的検討を行った。現在のところYM872は後肢運動機能を改善する傾向にあるが、感覚障害の軽減作用はないようである。例数を重ねてゆく予定である。また、TUNEL染色により乏突起細胞がアポトーシスを生じているか否か、また電子顕微鏡を用いて、局所麻酔薬による神経障害の生じやすい脆弱部位を特定する研究等を、さらには神経線維変性後の再生に関する研究を来年度に行う予定である。腰部脊髄くも膜下に投与された局所麻酔薬による神経毒性の機序にグルタミン酸毒性が関与している可能性がある。本年度の研究では、1)テトラカイン以外の局所麻酔薬で同じような現象がみられるか、2)局所麻酔薬のpHを変化させることで局所麻酔薬の神経毒性が増強されるか検討を行った。あらかじめ腰部脊髄くも膜下に薬物注入用カテーテルを埋め込んだ家兎を用いた。1)テトラカイン、リドカイン、ブピパカイン、ロピバカインの神経毒性の差:家兎の腰部脊髄くも膜下にテトラカイン(T)、リドカイン(L)、ブピパカイン(B)、ロピパカイン(R)、NaCl(各n=6)を投与し、腰部脊髄くも膜下microdialysis法により脳脊髄液(CSF)中のグルタミン叢濃度を測定し、7日後に神経学的・組織学的検討を行った。CSF中のグルタミン駿濃度は、Tで10倍、Lで6倍、Bで5倍、Rで2.5倍に上昇したが、NaClでは上昇はみられなかった。神経学的所見はLが最も悪かった。後索の空胞化はL=T>B>Rであった。T投与後にCFS中のグルタミン酸濃度が上昇することを報告してきたが、この現象は局所麻酔薬に共通した現象であることが明かとなった。2)局所麻酔薬のpHの影響:家兎の腰部脊髄くも膜下に5%リドカイン(L:pH【approximately equal】5.56)、5%L+0.03mEq NaHC03(LL:pH【approximately equal】6.80)、5%L+0.07mEq NaHC03(LH:pH【approximately equal】6.84)(各n=6)を投与し、腰部脊髄くも膜下microdialysis法により脳脊髄液(CSF)中のグルタミン酸濃度を測定し、7日後に神経学的、組織学的検討を行った。CSF中のグルタミン酸濃度は、Lで2倍、LLで5倍、LHで6倍に上昇した。神経学的所見には明らかな有意差は認められなかったが、後索の空胞化はpHを上昇させることで有意に増悪した。局所麻酔薬のpHを上昇させることで局所麻酔薬の神経毒性は増強することが示唆された。TUNEL染色により乏突起細胞がアポトーシスを生じているか否か、また電子顕微鏡を用いて、局所麻酔薬による神経障害の生じやすい脆弱部位を特定する研究等は現在進行中である。神経線維変性後の再生に関する研究は電子顕微鏡による観察終了後に予定している。 | KAKENHI-PROJECT-13671585 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13671585 |
バイオミメティックブロック共重合体を用いた3次元可視光メタマテリアルの創製 | 可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)重合を用いて、ポリビニルカテコール(PVCa)をブロックとして持つジブロックおよびトリブロック共重合体の合成に初めて成功した。ジブロック共重合体をテンプレートに磁性ナノ粒子と銀ナノ粒子を段階的に導入・還元することにより配列させる事に成功した。本フィルムはプラズモン吸収波長において特徴的な磁気光学特性を示した。以上の結果から、バイオミメティックブロック共重合体を用いることで、新たなメタマテリアル作製手法が得られることを実証した。カテコール基含有モノマーの前駆体であるジメトキシスチレンとスチレンを可逆的付加開裂連鎖移動(Reversible Addition-Fragmentation Transfer, RAFT)重合を用いて重合し、ポリ(ジメトキシスチレン-ブロック-スチレン)共重合体を得た。種々の共重合比を持つブロック共重合体を合成した。三臭化ホウ素を用いて脱保護を行い、ポリジメトキシスチレンをポリビニルカテコールに変換を行った。得られたブロック共重合体のテトラヒドロフラン溶液あるいはトルエン/メタノール混合溶液を基板上にキャスト製膜した。X線小角散乱(SAXS)により、周期構造を測定したところ、テトラヒドロフラン溶液からキャスト製膜したフィルム内部には、基板に平行なラメラ相が形成されていることが示唆された。また、四酸化オスミウムによりポリビニルカテコール相を染色した後、内部の相分離構造を透過型電子顕微鏡で観察を行ったところ、基板に対して平行なラメラ相や球状のドメインが形成されていることが明らかとなった。ラメラ状の相分離構造を形成したポリ(ビニルカテコール-ブロック-スチレン)共重合体フィルムを硝酸銀水溶液に510分浸漬したところ、透明なフィルムが次第に褐色に変色した。紫外-可視分光によりフィルムの光吸収を測定したところ、銀ナノ粒子の形成を示唆するプラズモン吸収に相当する吸収帯が観察された。内部に形成された相分離構造を元のフィルムと同様の手法で観察を行ったところ、ポリビニルカテコール相に選択的に数ナノメートル程度の銀ナノ粒子が形成されることを見いだした。以上の結果から、カテコール基を含むバイオミメティックブロック共重合体の合成に成功し、ポリビニルカテコール相に選択的に金属ナノ粒子が形成されることが明らかとなった。また、コロイド結晶を鋳型としたポリビニルアルコール逆オパールを作製した。年次計画によれば、今年度は(1)バイオミメティックカテコール含有ブロック共重合体の合成、(2)コロイド集積体の形成、および(3)包埋・鋳型粒子除去による逆オパールの形成を目標とした。進捗に記した通り、本年度はバイオミメティックカテコール含有ブロック共重合体の合成に成功し、コロイド結晶を鋳型としたポリビニルアルコール逆オパールの作製にも成功している。以上の結果から今年度の達成目標は十分達成しており、計画に付いてはおおむね順調に進展していると言える。一方で、得られたバイオミメティックカテコール含有ブロック共重合体はメタマテリアル以外にも、弱酸性のカテコールを側鎖に持つブロック共重合体のラメラ相を持つフィルムのプロトン伝導率は1/100000 S/cm程度であったのに対し、ラメラ相を形成したフィルム中に銀ナノ粒子を導入した場合、プロトン伝導性が10倍に上昇する現象を見いだした。本成果は新しいポリマープロトン伝導体の設計指針を示している。また、リガンド交換などにより磁性粒子を本ポリマーで被覆すると、最表面がポリスチレンとなるポリマー被覆磁性ナノ粒子が得られ、本ポリマー被覆磁性ナノ粒子は多様なポリマー材料に混和させる事が可能であることを明らかとした。フィルムだけでなくポリマー微粒子中にポリマー被覆磁性ナノ粒子を導入する事にも成功した。これらの成果を基に論文3報(出版済み2報、印刷中1報、国際共著論文1報)を報告している。このような展開は当初の計画では予測していない結果であり、当初の計画をを大幅に上回る成果である。可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)重合を用いて、ポリジメトキシスチレンをブロックとして持つジブロック共重合体、およびトリブロック共重合体の合成に成功し、臭化ホウ素による脱保護により、ポリビニルカテコール(PVCa)をブロックとして持ち、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を他のブロックとして持つトリブロック共重合体の合成に初めて成功した。さらに、本トリブロック共重合体は、電子顕微鏡による相分離構造の断面観察結果と小角X線散乱の測定結果から、PMMAマトリクス中でPSがシリンダー構造を形成し、PVCa相がシリンダーを覆うように形成されたコアシェル型シリンダー(CSC)相を形成すること、この相分離構造を鋳型として、銀ナノ粒子の配列が得られること、10の-4乗S/cm程度のプロトン伝導性を示すことが明らかとなった。銀ナノ粒子はナノサイズで筒状の配列構造を形成するため、プラズモニックメタマテリアルへの応用が期待される。また、ジブロック共重合体をテンプレートに磁性ナノ粒子と銀ナノ粒子を段階的に導入・還元することにより配列させ、磁気光学効果の一種であるKerr回転角をプラズモンによって増強することに成功した。これは、磁性ナノ粒子である酸化鉄ナノ粒子と、還元によって得られた銀ナノ粒子が同じPVCa相に共存することによって初めて成された成果であり、銀ナノ粒子の局在プラズモン共鳴による電磁場の増強効果によるものと考えられる。以上の結果から、バイオミメティックブロック共重合体を用いることで、新たなメタマテリアル作製手法が得られることを実証した。 | KAKENHI-PROJECT-16K14071 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K14071 |
バイオミメティックブロック共重合体を用いた3次元可視光メタマテリアルの創製 | 可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)重合を用いて、ポリビニルカテコール(PVCa)をブロックとして持つジブロックおよびトリブロック共重合体の合成に初めて成功した。ジブロック共重合体をテンプレートに磁性ナノ粒子と銀ナノ粒子を段階的に導入・還元することにより配列させる事に成功した。本フィルムはプラズモン吸収波長において特徴的な磁気光学特性を示した。以上の結果から、バイオミメティックブロック共重合体を用いることで、新たなメタマテリアル作製手法が得られることを実証した。次年度は以下の項目について検討を行う。ブロック共重合体の配向制御:昨年度合成したバイオミメティックブロック共重合体を有機溶媒に溶かし、作製した逆オパールへキャスト製膜することにより導入する。ブロック共重合体を溶解し、鋳型の逆オパールを溶解しない溶媒の船底、およびキャスト製膜の際の雰囲気・温度を制御することで、均一にブロック共重合体を空孔中に導入する。金属ナノ粒子アレイの形成:可視光に共振周波数を持つ金属共振器を作製するためには、可視光においてプラズモン吸収を持つ金属が最適である。そこで銀あるいは金イオン溶液に(4)で作製したブロック共重合体集積体を浸漬し、銀あるいは金ナノ粒子のIn Situ合成を行う。作製したナノ粒子の構造は現有のTEMとエネルギー分散型X線分光器(EDS)を用いて測定を行い、イオン濃度、浸漬時間などを変えることによるナノ粒子のサイズ・構造・配列に与える影響を検討する。光学特性評価:作製した金属ナノ粒子アレイの光学物性は、現有の分光エリプソメータおよび申請の偏光子を取り付けた可視分光光度計により複素屈折率を測定する。ブロック共重合体の相分離構造は集積の過程で特に外場を与えなければ配向しない。従って形成された金属ナノ粒子アレイは等方的な構造を持っているため、角度依存性の無い、メタマテリアル物性の発現が期待される。光学物性と現有のマルチシミュレーションソフトウェア(COMSOL)によるシミュレーションを行い、ナノ粒子アレイにおける電磁場の状態について、実験結果と理論値との相関を明らかとする。高分子化学 | KAKENHI-PROJECT-16K14071 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K14071 |
公務の民主的正統性に対する調整の観点からの職務命令に対する意見具申に関する検討 | 本研究は、民主的正統性の観点からの統制が求められる公務員制度において、民主的正統性の過剰に対抗するための一つの手段として、上司の職務命令に対する職員の意見具申の仕組みにつき、表現の自由を中心とする憲法上の人権規定との関係での位置づけの可能性及び内部通報制度の利用可能性と限界を、包括的公務員制度を採用している点で我が国と共通の制度基盤を持つアメリカ合衆国と対比しつつ、検討するものである。本研究は、民主的正統性の観点からの統制が求められる公務員制度において、民主的正統性の過剰に対抗するための一つの手段として、上司の職務命令に対する職員の意見具申の仕組みにつき、表現の自由を中心とする憲法上の人権規定との関係での位置づけの可能性及び内部通報制度の利用可能性と限界を、包括的公務員制度を採用している点で我が国と共通の制度基盤を持つアメリカ合衆国と対比しつつ、検討するものである。 | KAKENHI-PROJECT-19K01302 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K01302 |
認知機能関連遺伝子同定と機能解析 | MR患者28症例のコピー数異常領域検出を行い、3症例は、既知の症候群、6症例12領域について未知のコピー数異常を見いだした。知能指数IQの差が顕著な一卵性双生児を用いた遺伝子発現プロファイリング解析で、それぞれの双子のIQが低い方の検体で、炎症性サイトカインの発現が上昇する傾向にあることが明らかになった。MR患者28症例のコピー数異常領域検出を行い、3症例は、既知の症候群、6症例12領域について未知のコピー数異常を見いだした。知能指数IQの差が顕著な一卵性双生児を用いた遺伝子発現プロファイリング解析で、それぞれの双子のIQが低い方の検体で、炎症性サイトカインの発現が上昇する傾向にあることが明らかになった。本年度は、認知機能の異常である精神発達遅滞について解析を行った。精神発達遅滞(MR)の原因は多岐にわたるが、詳細な検査でも原因を特定できない症例も多い。近年、そういった症例の中に通常の染色体検査では検出し得ない微細なゲノムコピー数の異常を持つ例が含まれていることが報告されている。我々はAffymetrix社の500K SNPチップを用いてMR患者28症例のコピー数異常領域検出を開始した。解析はGEMCA(Genotyping microarray based CNV analysis)にて行い、1症例当たり、最多26箇所、最少4箇所、平均13箇所のコピー数変化領域が検出できた。これらのうち、データベースを参照し、既報告である領域を除外し、対象とする候補領域を16領域(10症例)に絞り込んだ。次に定量PCRでコピー数変化の検討を行ったところ、全ての領域でコピー数変化が確認できた。そのうち3症例は、既知の症候群(Sotos症候群,22q11.2欠失症候群,Potocki-Lupski症候群)、1症例は既知の欠失であった。残りの6症例12領域について、日本人正常50例での多型性の検討を行い、正常例で認めないことを確認した。我々はこれらの領域について、患者家族のコピー数変化の検索、遺伝子の発現等の詳細な解析を進めている。本年度は、IQ差の顕著な一卵性双生児を用いた網羅的遺伝子発現・DNAメチル化解析を行った。認知機能は多因子形質であり、遺伝要因と環境要因の影響を受けることが明らかになっている。一部の一卵性双生児では兄弟間に顕著な知的レベルの不一致が認められる。この現象は、一卵性双生児間における認知機能関連遺伝子のエピジェネティックな相違やゲノムのde novo変異の存在を示唆している。認知機能に関するエピジェネティックな要因の同定を目指し、IQ差の顕著な一卵性双生児6組12検体のリンパ芽球由来RNAを用いてAffymetrix HG U133 plus 2.0 arrayによる遺伝子発現プロファイリング解析を行なった。アレイから得られた発現値は兄弟毎にRobust Multichip Average methodで補正し、Gene Set Enrichment Analysisによって兄弟間で有意に発現の変動が見られる遺伝子群を抽出した。結果、それぞれの双子のIQが低い方の検体で、炎症性サイトカインの発現が上昇する傾向にあることが明らかになった。また、遺伝子発現とDNAメチル化の関連を調べるため、リンパ球由来ゲノムを用いて網羅的DNAメチル化解析を行なった。マイクロアレイにはAffymetrix Human Promoter 1.0R arrayを使用した。アレイのデータはquantile normalizationによって補正し、wilcoxon signed-rank testによって兄弟間のメチル化状態に顕著な違いが見られる領域を候補メチル化領域として抽出した。これらの領域のメチル化状態をより定量的なbisulfite genomic sequencingで確認したが、双子の兄弟間に有意な差は見られなかった。今後はパラメトリック解析による兄弟間のメチル化変動領域の同定を目指す。本年度は以下の研究を行った。(1)知能指数IQの差が顕著な不一致一卵性双生児を用いた解析:昨年度に引き続き、新たなIQ不一致一卵性双生児11組の網羅的遺伝子発現・DNAメチル化解析を行った。リンパ芽球からRNAを抽出し、Affymetrix GeneChip Human Gene 1.0ST Arrayと、Partek Genomics Suiteデータ解析ソフトウェアを用いた遺伝子発現プロファイリング解析を行っている。現在のところ新たな不一致一卵性双生児にて兄弟間で有意に発現の変動が見られる遺伝子は同定できていない。また、リンパ球由来DNAを用いて網羅的DNAメチル化解析を行なった。解析には、Affymetrix GeneChip Human Promoter 1.0R ArrayとModel based Analysis of Tiling-arrays (MAT)データ解析ソフトウェアを用い、兄弟間のメチル化状態に顕著な違いが見られる領域を候補メチル化領域として抽出した。これらの領域のメチル化状態をより定量的なbisulfite genomic sequencingで確認した。現在のところ、いくつかの遺伝子が同定されている。そのうちの1遺伝子については、すでにコンディショナルノックアウトマウス作製用のES細胞がバンクに登録されており、当該マウス作成を計画している。(2)マウスの行動解析による得点化と遺伝子発現解析:すでに得られているマウス41匹の行動解析データを主成分分析したところ、寄与率は予想よりも小さいが、g因子と考えられる成分が抽出された。これらマウスの海馬由来のRNAを抽出し、Affymetrix GeneChip Mouse Genome 430 2.0 Arrayを用いて遺伝子発現データを得た。 | KAKENHI-PROJECT-20390099 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20390099 |
多様体の構造とその上の写像の研究 | 多様体の構造とねの上の写像について以下の様な結果が得られた。居駒は擬等角写像による対応と、これを考察する次元の関係のなかで、次元に関係する性質および関係しない性質をしらべ、若干の結果をえたが、なお継中である。森は、尾形は一定な正則断面曲〓をキクケーラー多様体の中のケーラー角度一定な極小曲面の分類を目標に研究を行った。その結果とにガウス曲率をケーラー角度でピンチングした場合の分類を与え、系としてns7の時はケーラー角度が一定ならば、ガウス曲率も一定になるということの証明が得られた。高橋は原点で正則な解析関係を係政にもつ微分方程式の演算方法(則演算と積分)を作った。多様体の構造とねの上の写像について以下の様な結果が得られた。居駒は擬等角写像による対応と、これを考察する次元の関係のなかで、次元に関係する性質および関係しない性質をしらべ、若干の結果をえたが、なお継中である。森は、尾形は一定な正則断面曲〓をキクケーラー多様体の中のケーラー角度一定な極小曲面の分類を目標に研究を行った。その結果とにガウス曲率をケーラー角度でピンチングした場合の分類を与え、系としてns7の時はケーラー角度が一定ならば、ガウス曲率も一定になるということの証明が得られた。高橋は原点で正則な解析関係を係政にもつ微分方程式の演算方法(則演算と積分)を作った。 | KAKENHI-PROJECT-63540091 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63540091 |
保育時間と保育内容の関連についての実践史的研究 | (1)初年度・第2年度に行った資史料の内容と収集方法について検討を継続した。その結果,(a)保育者の保育時間・内容意識を1つの代表値・モデルで捉えることはできない。(b)「延長保育」は園を単位とした実践であり,職員の多様な意識の対立と合意とを含みこんで,園ごとに多彩な展開をみせることが予想される。(c)しかも,園としての保育内容意識の変容は障害児保育や異年齢保育などとも関連がある。(d)保育内容意識の変容には,相当の年数の積み上げが必要なので,1つの園の実践に焦点を当てた長期的検討が必要である。(e)この作業を他の園についても行うことによって,保育内容意識の多彩な展開に迫ることができる,ということがみえてきた。(2)長時間保育を切り開いてきた園の保育史を語りうる人物から聞き取るという方法の有効性がますます明らかになり,第2年度に引き続き,聞き取り調査を行った。特に,1960年以降,東京都東久留米市において長時間保育実施をリードし,「暮らしの保育」という観点を打ち出してきた保育士(複数)にも聞き取り調査を実施した。また,近年の質的研究で注目されている「語り」,インタビュー,「オーラル・ヒストリー」等についても検討し,聞き取りという方法の妥当性について検討を深めた。(3)以上の研究成果を,日本保育学会(2007年5月)で発表し,静岡大学教育学部の研究紀要に投稿した。また,『保育学研究』(日本保育学会,第46巻第1号,2008年8月発行予定)に投稿し受理された。さらに,研究の最終年度に当たり,研究成果報告書(保育時間と保育内容に関連に関する実践史的研究)を作成した。(1)先行研究の収集・検討について/長時間・夜間保育の先行研究を参考にして、国内外に所在する関係文献の調査・収集を行った。関連して、保育・福祉先進国スウェーデンの保育時間の実態について、当該分野の研究者に聞き取りを行い資料提供を受けた。以上の作業の成果の一端については論稿を執筆済で、来年度中に共著書として刊行する予定である。(2)保育実践記録論について/歴史的評価の高い文献、及び今日注目されている文献の検討を行った。その際、保育をより広く福祉・ケア実践として捉え、寄宿舎における生活支援実践記録論や医療ソーシャルワーカーの実践記録論についても検討した。さらに、保育実践(史)研究は、今日的な課題となっている「質的研究」とも関連が深いことに注目し、「質的研究」法の原理と方法、生命誌研究、内発的発展論なども検討に加えた。(3)史料収集について/1970年以降、保育時間の延長に伴って登場した独特の保育内容意識(短時間「教育」主義)について史料収集をすすめた。現場点で収集できたものはあまり多くはない。それはなぜかということについて史料論・実践記録論として検討するとともに、当時、保育時間の延長に関わった関係者にたいする聞き取り調査を実施した。短時間「教育」主義とは異なる保育内容意識もあったことが確認できた。また、資史料作成・保存の難しさ(保存場所の確保、資史料の価値認識、記録作成能力と経験年数、職員配置と記録の条件など)について一定の知見を得ることができた。同時に、個人の記憶ではなく、当時同一の保育所・自治体の職員にたいする一種のグループインタビューのような方法(を用いた史料収集)が有効かもしれないという着眼も得た。(4)まとめについて/以上の研究成果を、2006年5月に開催される日本保育学会で発表する。史料論、短時間「教育」主義とは異なる保育内容意識についてもまとめてみたい。(1)引き続き、長時間・夜間保育に関して国内外に所在する関係文献の調査・収集を行った。(2)初年度行った資史料の収集と検討を継続した。まず、保育関係団体の研究誌・機関誌によって保育者の保育時間意識をとらえるという当初の方法の有効性と限界が見えてきた。また、今の段階で、保育時間・内容意識を何か1つのモデルで括ることはできないこと。保育時間・内容意識は保育団体、地域、園、個人で多様であり、その1つ1つに即して史料(実践記録)を収集検討する必要があることがわかった。とはいえ、そういう史料はあまりみつからなかった。保存状況が良くなかったこともあるが、そもそも長時間保育実践に関する記録があまり書かれていないようであり、それはなぜかというところに保育時間・内容意識を探る1つの鍵がありそうであった。(3)長時間保育は園を単位とした長期的実践として生成・発展することからすると、長時間保育を切り開いてきた園の保育史を語りうる人物から聞き取るという方法の有効性がますます明らかになり、当初の計画通り聞き取り調査を行った。特に、1960年以降、長時間保育実践のよりよいあり方を模索してきた埼玉県鳩ヶ谷市の公立保育園に勤務していた保育士への聞きとり調査を複数回行った。また、その過程で、東京都東久留米市において長時間保育実施をリードし、「暮らしの保育」という観点を打ち出してきた保育士にも、予備的な聞き取り調査を実施した。聞き取りを記録に起こし、その内容の検討を進めると共に、近年の質的研究で注目されている「語り」や聞き取りという方法、あるいはインタビューや「オーラル・ヒストリー」等についても検討し、聞き取りという方法の妥当性について吟味を行った。(4)以上の研究成果の一部を、2006年5月に開催された日本保育学会で発表すると共に、公刊した著作において現時点で得られた知見のいったんを示した。 | KAKENHI-PROJECT-17653096 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17653096 |
保育時間と保育内容の関連についての実践史的研究 | (1)初年度・第2年度に行った資史料の内容と収集方法について検討を継続した。その結果,(a)保育者の保育時間・内容意識を1つの代表値・モデルで捉えることはできない。(b)「延長保育」は園を単位とした実践であり,職員の多様な意識の対立と合意とを含みこんで,園ごとに多彩な展開をみせることが予想される。(c)しかも,園としての保育内容意識の変容は障害児保育や異年齢保育などとも関連がある。(d)保育内容意識の変容には,相当の年数の積み上げが必要なので,1つの園の実践に焦点を当てた長期的検討が必要である。(e)この作業を他の園についても行うことによって,保育内容意識の多彩な展開に迫ることができる,ということがみえてきた。(2)長時間保育を切り開いてきた園の保育史を語りうる人物から聞き取るという方法の有効性がますます明らかになり,第2年度に引き続き,聞き取り調査を行った。特に,1960年以降,東京都東久留米市において長時間保育実施をリードし,「暮らしの保育」という観点を打ち出してきた保育士(複数)にも聞き取り調査を実施した。また,近年の質的研究で注目されている「語り」,インタビュー,「オーラル・ヒストリー」等についても検討し,聞き取りという方法の妥当性について検討を深めた。(3)以上の研究成果を,日本保育学会(2007年5月)で発表し,静岡大学教育学部の研究紀要に投稿した。また,『保育学研究』(日本保育学会,第46巻第1号,2008年8月発行予定)に投稿し受理された。さらに,研究の最終年度に当たり,研究成果報告書(保育時間と保育内容に関連に関する実践史的研究)を作成した。 | KAKENHI-PROJECT-17653096 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17653096 |
琵琶湖生態系の変動の鍵を握る大型植物プランクトンに関する研究 | 琵琶湖北湖では、かつての植物プランクトンの明瞭な季節変動パターンは崩れ、Staurastrumなどの大型の緑藻類が卓越的に出現している。本研究では、卓越している大型緑藻から始まる食物連鎖について検討し、大型緑藻の卓越が琵琶湖の生物群集に与える影響を評価した。培養実験の結果、大型緑藻は他の種に比べて動物プランクトンに捕食されにくいことが明らかとなった(Oecologia誌掲載)。この結果から、大型緑藻は、植物プランクトンー動物プランクトンー魚という生食連鎖には乗らないことが示唆された。一方、野外調査から、大型緑藻の死亡率と水生菌類(ツボカビ)の寄生率との間には有意な正の相関関係が得られ、大型緑藻の死亡には水生菌類(ツボカビ)が関与している事が明らかとなった(Verh. Internat. Verein. Limnol.誌掲載)。これらの結果は、大型緑藻は菌類を介して食物網に参入していることを示唆するものである。次に大型緑藻が菌類の寄生を通じてどのように食物網に参入しているのかを具体的に明らかにするためには、菌類が食物網のどこに組み込まれるかについて検討する必要がある。これまで湖沼の水生菌類についての研究はほとんどなされておらず、知見はきわめて少ない。また、水生菌類の計数、同定・単離培養方法も確立されていない。そこで、植物プランクトンに寄生する菌類(ツボカビ)の専門家のいるオランダの研究室に4月より渡航し、研究に最低限必要な水生菌類の単離培養と計数法の確立を試みた。方法の確立は7月に成功し、その成果をふまえ室内実験を行った。実験の結果、水生菌類は動物プランクトンに捕食されることが明らかとなり、大型緑藻-菌類-動物プランクトンという食物連鎖の存在が強く示唆された。今後は、今回発見した新しい食物連鎖の構造について、より詳細に解析する予定である。琵琶湖北湖では、かつての植物プランクトンの明瞭な季節変動パターンは崩れ、Staurastrumなどの大型の緑藻類が卓越的に出現している。本研究では、卓越している大型緑藻から始まる食物連鎖について検討し、大型緑藻の卓越が琵琶湖の生物群集に与える影響を評価した。培養実験の結果、大型緑藻は他の種に比べて動物プランクトンに捕食されにくいことが明らかとなった(Oecologia誌掲載)。この結果から、大型緑藻は、植物プランクトンー動物プランクトンー魚という生食連鎖には乗らないことが示唆された。一方、野外調査から、大型緑藻の死亡率と水生菌類(ツボカビ)の寄生率との間には有意な正の相関関係が得られ、大型緑藻の死亡には水生菌類(ツボカビ)が関与している事が明らかとなった(Verh. Internat. Verein. Limnol.誌掲載)。これらの結果は、大型緑藻は菌類を介して食物網に参入していることを示唆するものである。次に大型緑藻が菌類の寄生を通じてどのように食物網に参入しているのかを具体的に明らかにするためには、菌類が食物網のどこに組み込まれるかについて検討する必要がある。これまで湖沼の水生菌類についての研究はほとんどなされておらず、知見はきわめて少ない。また、水生菌類の計数、同定・単離培養方法も確立されていない。そこで、植物プランクトンに寄生する菌類(ツボカビ)の専門家のいるオランダの研究室に4月より渡航し、研究に最低限必要な水生菌類の単離培養と計数法の確立を試みた。方法の確立は7月に成功し、その成果をふまえ室内実験を行った。実験の結果、水生菌類は動物プランクトンに捕食されることが明らかとなり、大型緑藻-菌類-動物プランクトンという食物連鎖の存在が強く示唆された。今後は、今回発見した新しい食物連鎖の構造について、より詳細に解析する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-01J03298 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01J03298 |
刺激応答性フリースタンディングゲル粒子の創製 | 本研究では,膨潤溶剤にはイミダゾリウム系イオン液体(IL)を,感温性複合ゲル粒子の2つのベースポリマーには,ILに感温性を示すポリメタクリル酸フェニルエチルと,温度に依らずILに溶解するポリメタクリル酸メチルからなる,温度によって内包したILが両ポリマー相を移動することによって体積相転移を発現する複合ゲル粒子の創製を検討した。この際,雪だるま状の複合粒子を作製するために,ベースポリマーの親水化及び光重合の導入を行った。その結果,膨潤溶媒の存在に依らず,含有したILにより,水分散下,大気中,真空中においても,温度応答性よく体積相転移挙動を示す新規な複合ゲル粒子を作製することに成功した。本年度は,昨年度に選択されたベースポリマーとイオン液体からなる体積相転移ゲルとリザーバーポリマーとの複合化を行い,自立型ゲル粒子の作製とその温度応答性挙動の検討を行った。溶剤としてイオン液体を含有した体積相転移ゲル粒子をシードとして,リザーバーポリマーのシード重合を行った。ポリマー相をより凸に相分離させるために,より親水性の高いポリマー相がイオン液体を含有したゲル粒子を作製する熱力学的アプローチと,通常の熱重合よりも重合速度の大きい光重合の導入を試みる速度論的アプローチを併せて行った系において,両粒子があたかも雪だるまのように点接着するような状態で複合化された。さらにこの雪だるま状粒子は,水分散状態,及び乾燥状態(大気中,真空中)においても,温度に応じてイオン液体が両ポリマー相を行き来し,その形状を変形させ,本研究で目的とした自立型刺激応答性ゲル粒子が作製されたことを確認した。また,体積相転移ゲル粒子自体を粒子型乳化剤として膨潤溶媒(例えばイオン液体)を安定化させたPickeringエマルション型(ラズベリー状)フリースタンディングゲル粒子について検討した。まず大きさの揃った体積相転移ゲル粒子を懸濁重合を用いて作製した。続いて,それらによって安定化されたIL滴のピッカリングエマルションの作製をホモジナイザーを用いて試みたが,ILと親和性が高いゲル収縮粒子は滴内に取り込まれてしまった。検討を繰り返した結果,ILを系中に少しずつ添加していくことで,安定なピッカリングエマルションが形成された。表面を被覆するゲル粒子が加えたILを全て吸収できるような添加量の設定を行ったが,ゲル粒子がILを吸収した量は非常にわずかであった。ゲル粒子単独では温度に応じてILを吸収/放出することを確認しているので,ピッカリング状にしたときの膨潤挙動について,更に詳細を検討する必要性が明らかとなった。本研究では,膨潤溶剤にはイミダゾリウム系イオン液体(IL)を,感温性複合ゲル粒子の2つのベースポリマーには,ILに感温性を示すポリメタクリル酸フェニルエチルと,温度に依らずILに溶解するポリメタクリル酸メチルからなる,温度によって内包したILが両ポリマー相を移動することによって体積相転移を発現する複合ゲル粒子の創製を検討した。この際,雪だるま状の複合粒子を作製するために,ベースポリマーの親水化及び光重合の導入を行った。その結果,膨潤溶媒の存在に依らず,含有したILにより,水分散下,大気中,真空中においても,温度応答性よく体積相転移挙動を示す新規な複合ゲル粒子を作製することに成功した。24年度は,イミダゾリウム系イオン液体系における低温膨潤ー高温収縮のLCST型体積相転移現象を示すポリマーに焦点を当て,感温性ゲル粒子のベースポリマーの探索,イオン液体含有ゲル粒子の作製について検討を行った。メタクリル酸エステル系モノマーの単独重合体及びその共重合体を中心に,各種イミダゾリウム系イオン液体の組み合わせを検討した結果,適切な疎水性度および温度応答性の観点から,ベースポリマーにはポリフェニルエチルメタクリレートベースの共重合体(PPhEMA)を,イオン液体には1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホン)アミド([Bmim][TFSA],以下IL)を選択した。それらを用いて,懸濁重合によるゲル粒子の作製を行い,得られた粒子の分散状態及び乾燥状態での温度応答性挙動を温度制御下,光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡を用いて観察した。得られたPPhEMAゲル粒子は水媒体中において,昇温すると60 ̊C付近においてポリマーとILが相分離し始め,80 ̊Cにて完全に分離した。続いて,降温すると再びILにて速やかに膨潤した。さらに,相分離するLCSTは水媒体中(60 ̊C)の方がIL中(98 ̊C)よりも大幅に低下した。この現象はゲル粒子内への水の侵入が原因の一つと考えられた。乾燥状態においてポリマーと相分離したイオン液体が粒子から離れ出てしまわないように,リザーバーの役割をするポリマーと複合化するために,作成したゲル粒子を用いて他成分(メタクリル酸メチル,PMMA)をシード重合したところ,異なる体積相転移挙動を示す2種類のポリマーから成るゲル粒子が作製された。得られた複合ゲル粒子は,分散状態及び乾燥状態のどちらの場合においても,粒子外にイオン液体が漏れ出すことなく,温度に応答して形状変化を示した。得られた複合ゲル粒子はPPhEMA相とPMMA相に明瞭に相分離しており,室温から加熱すると,LCST以上でPPhEMA相は収縮し,PMMA相がさらに膨潤する様子が観察された。また,乾燥状態においてもILの漏れだしもなく,温度に応答し繰り返し形状変化を示したことから,作製した複合ゲル粒子はILが粒子内を移動することで形状変化を示すことが認められた。 | KAKENHI-PROJECT-24656393 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24656393 |
刺激応答性フリースタンディングゲル粒子の創製 | しかしながら,その形状変化の程度は期待より小さかった。より大きく形状変化を示す複合ゲル粒子の作製には,重合時にMMAで膨潤したシード粒子がポリマー相とIL+MMA相として雪だるま状に相分離し,IL側で優先的にMMAのシード重合が進行することが望まれる。25年度はその改善を行う。1熱力学的アプローチ:ポリマー相をより凸に相分離させるために,VTに代わり,親水性の高いMAAを用いてP(PhEMA-MAA)ゲル粒子を作製する2速度論的アプローチ:光重合の導入:MMA膨潤シード粒子はLCST以上で一旦ポリマー相とIL+MMA相に完全に相分離するものの,10分以内にIL中のMMAがポリマー相に再分配した。そのため,光重合を用いて,MMAが再分配される前に,重合を完結させることを試みる。2年目は,初年度に選択されたベースポリマーとイオン液体からなる体積相転移ゲルもしくはカプセル粒子を用いて,リザーバーポリマーとの複合化を行い,フリースタンディングゲル粒子の作製とその温度応答性挙動の検討を行ない,その応用に関しても次のように試みる。○雪だるま型フリースタンディングゲル粒子の作製とその温度応答性挙動:刺激応答性ゲル粒子をシードとして,リザーバーポリマーのシード重合を行う。初年度に明らかとなった問題点の改善を行ない,両ポリマーとイオン液体の相溶性を調整し,両粒子があたかも雪だるまのように点接着するような状態での複合化を目標にする。○階層構造化による刺激応答性材料の検討:上記で得られた粒子を媒体除去により集積させることにより,マクロな高分子/イオン液体複合ゲル材料を作製・検討する。この様なゲルは真空状態および高温においても機能するアクチュエータへの応用が期待される。○Pickeringエマルション型フリースタンディングゲル粒子:体積相転移ゲル粒子自体を粒子型乳化剤として膨潤溶媒(例えばイオン液体)を安定化させたPickeringエマルションについて検討する。この方法は,単分散な体積相転移ゲル粒子を予め作製しておけば膨潤溶媒滴のサイズをコントロールするだけで容易にゲル粒子/イオン液体比を制御することができる。また,Pickeringエマルションを作製時に脱膨潤状態で作製してその後膨潤させることにより,ゲル粒子同士が融着することにより強固なシェル層が容易に調整できることが期待される。主に,ゲル粒子の作製に必要な重合用ガラス器具類,モノマー及びイオン液体などの試薬に使用する。また,成果発表旅費(国内及び国外)および論文投稿のための英語校閲費などの使途を予定している。研究の進捗状況によっては,週数時間程度の研究補助員の雇用及び,大型分析装置の使用料などへの拠出がある。 | KAKENHI-PROJECT-24656393 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24656393 |
無血清培養を可能にするTissue Engineering用マトリクスの開発 | (1)スルホン化ポリ(γ-グルタミン酸)の生物学的活性の検討昨年度までに確立した合成法によって調製したスルホン化ポリ(γ-グルタミン酸)を用いて生物学的活性(抗血栓性と細胞増殖促進効果)を検討した。抗血栓性については、ヘパリンと比較すると非常に弱い活性を有していた。これは抗凝固剤としての利用は不適であるが、創傷部位への投与を行っても凝固を阻害せず、硫酸基の存在によって増殖因子活性化を行える可能性を示している。細胞増殖促進効果に関しては、ヘパリンと同等の活性をゆうしていることを明らかにした。他の硫酸化・スルホン化高分子と比較すると、検討した中で最も高い活性を有していることが明らかになった。(1)機能性ポリ(γ-グルタミン酸)を用いた無血清培養系の基礎検討スルホン化ポリ(γ-グルタミン酸)を用いた無血清培養系の開発のための基礎検討を行った。添加する増殖因子としてbFGFを用いることで、血清添加系にほぼ匹敵する無血清培養が可能であることを示した。これにより、無血清および血清存在下のいずれに於いても活性が認められ、生分解性増殖促進剤としての機能が期待できた。(2)スルホン化ポリ(γ-グルタミン酸)ハイドロゲルの調製とその評価再生医療に用いる際には、生体内で長時間増殖因子を活性化する機能が必要である。ポリ(γ-グルタミン酸)ハイドロゲルの調製法について検討し、スルホン化ポリ(γ-グルタミン酸)を混合することで、bFGF活性能を有するハイドロゲルを得ることが出来た。(1)スルホン化ポリ(γ-グルタミン酸)の生物学的活性の検討昨年度までに確立した合成法によって調製したスルホン化ポリ(γ-グルタミン酸)を用いて生物学的活性(抗血栓性と細胞増殖促進効果)を検討した。抗血栓性については、ヘパリンと比較すると非常に弱い活性を有していた。これは抗凝固剤としての利用は不適であるが、創傷部位への投与を行っても凝固を阻害せず、硫酸基の存在によって増殖因子活性化を行える可能性を示している。細胞増殖促進効果に関しては、ヘパリンと同等の活性をゆうしていることを明らかにした。他の硫酸化・スルホン化高分子と比較すると、検討した中で最も高い活性を有していることが明らかになった。(1)機能性ポリ(γ-グルタミン酸)を用いた無血清培養系の基礎検討スルホン化ポリ(γ-グルタミン酸)を用いた無血清培養系の開発のための基礎検討を行った。添加する増殖因子としてbFGFを用いることで、血清添加系にほぼ匹敵する無血清培養が可能であることを示した。これにより、無血清および血清存在下のいずれに於いても活性が認められ、生分解性増殖促進剤としての機能が期待できた。(2)スルホン化ポリ(γ-グルタミン酸)ハイドロゲルの調製とその評価再生医療に用いる際には、生体内で長時間増殖因子を活性化する機能が必要である。ポリ(γ-グルタミン酸)ハイドロゲルの調製法について検討し、スルホン化ポリ(γ-グルタミン酸)を混合することで、bFGF活性能を有するハイドロゲルを得ることが出来た。Tissue Engineeringにおいてできる限り動物由来の物質の利用を人工物で代替するために、無血清下で、かつ最小限のタンパク質の利用で生体外組織再構築を行うシステムの開発を試みた。軟組織マトリクスの再構築を目的とし、生分解性高分子であるポリγグルタミン酸の側鎖を化学修飾して硫酸基を導入した。硫酸基は成長因子の結合サイトとしてでなく、カチオン性の生分解性高分子であるキトサンとのコンプレックス形成も可能にする。(1)機能性γ-ポリグルタミン酸の大量合成γ-ポリグルタミン酸(γ-PGA)の側鎖の官能基を修飾して機能を付与する。具体的には分解性を制御するための疎水性官能基導入、増殖因子の結合・活性化のための硫酸基導入およびマトリクス形成のための重合性官能基導入である。疎水性官能基としてベンジル基の導入を行い、ほぼ目的とする導入率および大量処理方法が得られた。硫酸基導入については、合成および導入率のある程度の制御は達成できたが、副生成物の除去に問題があるため、合成系の見直しおよび硫酸基導入反応の変更の検討を行っている。(2)平板マトリクスの調製目的とする培養マトリクスの調製のために、平板マトリクスを作成して複合化技術を検討する。平板マトリクスの作成にはキトサンと硫酸化γ-PGAの交互吸着を行う。まず、条件設定のためにキトサンと硫酸化デキストランを用い、交互吸着法を行い、超薄ポリイオンコンプレックス膜が得られた。これの表面特性解析を行い、キトサン表面と硫酸化デキストラン表面で電荷、および細胞接着性の異なることが分かった。γPGAとの交互吸着を行い、膜が得られている。(3)培養システムの構築市販の灌流型バイオリアクター(小型)を改造して3次元培養システムの製作を行っている。Tissue Engineeringにおいてできる限り動物由来の物質の利用を人工物で代替するために、無血清下で、かつ最小限のタンパク質の利用で生体外組織再構築を行うシステムの開発を試みた。軟組織マトリクスの再構築を目的とし、生分解性高分子であるγ-ポリグルタミン酸の側鎖を化学修飾して硫酸基を導入した。 | KAKENHI-PROJECT-11558111 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11558111 |
無血清培養を可能にするTissue Engineering用マトリクスの開発 | 硫酸基は成長因子の結合サイトとしてでなく、カチオン性の生分解性高分子(キトサンなど)とのコンプレックス形成も可能にする。また血液抗凝固活性も有すると期待される。(1)機能性γ-ポリグルタミン酸の新しい調整法と特性解析γ-ポリグルタミン酸(γ-PGA)の側鎖に硫酸基を導入した。前年度では副生成物の除去の問題点があったため、今回新たな修飾法を開発した。結合させる硫酸基を有する化合物としてアミノメチルプロパンスルホン酸(タウリン)を用い、縮合剤を用いた一段階反応で硫酸化γPGAを調製した。副生成物の除去についても問題なく、新しい合成法として有用であると考えられる。反応時間や濃度を変化させることで1080%程度の置換率のものが調製できた。γPGAは高分子電解質でかつ生分解性であるため、分子量測定について現在検討中である。(2)生物学的活性の検討調製した硫酸化γ-PGAを用いて生物学的活性(抗血栓性と細胞増殖促進効果)を検討した。抗血栓性については、ヘパリンと比較すると非常に弱い活性を有していた。これは抗凝固剤としての利用は不適であるが、創傷部位への投与を行っても凝固を阻害せず、硫酸基の存在によって増殖因子活性化を行える可能性を示している。また、細胞増殖促進効果に関しても、無血清および血清存在下で活性が認められ、生分解性増殖促進剤としての機能が期待できた。(3)培養システムの構築灌流型バイオリアクターに組み込むための反応条件について調査・検討を行った。Tissue Engineeringにおいてできる限り動物由来の物質の利用を人工物で代替するために、無血清で、かつ最小限のタンパク質の利用で生体外組織再構築を行うシステムの開発を試みた。軟組織マトリクスの再構築を目的とし、生分解性高分子であるγ-ポリグルタミン酸の側鎖を化学修飾して硫酸基を導入した。硫酸基は成長因子の結合サイトとしてでなく、カチオン性の生分解性高分子(キトサンなど)とのコンプレックス形成も可能にする。また血液抗凝固活性も有すると期待される。(1)機能性γ-ポリグルタミン酸の新しい調整法と特性解析γ-ポリグルタミン酸(γ-PGA)の側鎖に硫酸基を導入した。前年度までに新規な修飾法としてアミノメチルプロパンスルホン酸(タウリン)結合法を開発した。本年度は本法を用いて合成した硫酸化γ-PGAの特性について評価した。反応時間や濃度を変化させて1080%程度の置換率のものを調製し、分子量測定、分解性を検討した。分子量については高分子電解質特有の性質を示し、詳細な同定は詰め切れていないが、出発物質からは1/31/8程度に低下していることが示唆された。これは反応が進むにつれて溶解性が向上し、周辺pHの影響で分解しているものと考えられた。(2)生物学的活性の検討調製した硫酸化γ-PGAを用いて生物学的活性(抗血栓性と細胞増殖促進効果)を検討した。抗血栓性については、ヘパリンと比較すると活性は非常に弱かったが、細胞増殖促進効果に関してはヘパリンに匹敵する活性を有する分画が存在することを見いだした。無血清培養の検討においても、ヘパリンよりも優れた活性が認められ、生分解性増殖促進剤としての機能が期待できた。(3)培養システムの構築灌流型バイオリアクターに組み込むための反応条件について調査・検討を行ったが、高い溶解性のため安定に組み込むことは困難であった。 | KAKENHI-PROJECT-11558111 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11558111 |
微小循環調節における小動静脈相互依存性とその病態生理学的意義に関する研究 | ラットの挙睾筋の小静脈に極細カテーテルを挿入し、小動静脈の分離環流をおこなった。小静脈の環流液の組成を変化させた際の動脈径および静脈径の変化を、今回補助金により購入したCCDカメラで経時的に撮影し、録画した。録画結果をビデオプリンタで印刷し、血管径を定量評価した。エピネフリン投与では、投与直後より、併走する小動脈の収縮を認めた。アデノシン投与では、投与後約30分で、末梢領域から血管収縮が始まり、中枢側は拡張した。時間を経るに従い、収縮部位は中枢側に移行した。この反応は可逆的であったが、血管径が元の状態に戻るまでに数時間を要した。従来の組織環流モデルでは、挙睾筋の小動脈はアデノシンにより拡張すると考えられていたが、今回の小静脈環流モデルでは、小動脈の収縮が認められ、現在、その原因について、アデノシンの局所投与と組織環流による投与との作用の違いについて検討中である。アデノシンは低酸素状態の組織で産生されることが知られており、今後、脳血管障害や冠血管障害の病態生理の理解に、これらの知見が役立てられる可能性がある。併走血管における血管調節機構を調べる目的で、小静脈の環流液の酸素分圧、炭酸ガス分圧、水素イオン濃度と、生理的範囲内で変化させてみた。その結果、静脈系の変化は、動脈系に影響を与えてはいなかった。次に血管と組織との間の酸素の移動について、ヘモグロビンの酸素飽和度を分光することにより検討した。その結果、小動脈から毛細血管にかけて、酸素は血管内から組織に移行し、逆に細静脈から小静脈にかけて酸素は組織から血管内に戻っており、この傾向は、低酸素血症のときに著しかった。この酸素の移動状態は、低酸素時の血管調節機構を理解する上で重要と考えた。また、さらに、魚の浮袋にある奇網を用いて、併走血管における物質移動の検討もあわせておこなった。ラットの挙睾筋の小静脈に極細カテーテルを挿入し、小動静脈の分離環流をおこなった。小静脈の環流液の組成を変化させた際の動脈径および静脈径の変化を、今回補助金により購入したCCDカメラで経時的に撮影し、録画した。録画結果をビデオプリンタで印刷し、血管径を定量評価した。エピネフリン投与では、投与直後より、併走する小動脈の収縮を認めた。アデノシン投与では、投与後約30分で、末梢領域から血管収縮が始まり、中枢側は拡張した。時間を経るに従い、収縮部位は中枢側に移行した。この反応は可逆的であったが、血管径が元の状態に戻るまでに数時間を要した。従来の組織環流モデルでは、挙睾筋の小動脈はアデノシンにより拡張すると考えられていたが、今回の小静脈環流モデルでは、小動脈の収縮が認められ、現在、その原因について、アデノシンの局所投与と組織環流による投与との作用の違いについて検討中である。アデノシンは低酸素状態の組織で産生されることが知られており、今後、脳血管障害や冠血管障害の病態生理の理解に、これらの知見が役立てられる可能性がある。併走血管における血管調節機構を調べる目的で、小静脈の環流液の酸素分圧、炭酸ガス分圧、水素イオン濃度と、生理的範囲内で変化させてみた。その結果、静脈系の変化は、動脈系に影響を与えてはいなかった。次に血管と組織との間の酸素の移動について、ヘモグロビンの酸素飽和度を分光することにより検討した。その結果、小動脈から毛細血管にかけて、酸素は血管内から組織に移行し、逆に細静脈から小静脈にかけて酸素は組織から血管内に戻っており、この傾向は、低酸素血症のときに著しかった。この酸素の移動状態は、低酸素時の血管調節機構を理解する上で重要と考えた。また、さらに、魚の浮袋にある奇網を用いて、併走血管における物質移動の検討もあわせておこなった。 | KAKENHI-PROJECT-04807046 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04807046 |
教師集団としての超越主義者:19世紀米国知識人にみる協働の教師教育の思想 | 本研究課題では、19世紀米国の超越主義者たちを、教師の研究交流集団という観点から再考することを通し、個々の教育実践-思想家としての超越主義研究に加え、喚起(provocation)という相互触発としての教育関係の研究への端緒を得ると共に、近年の教師教育研究において議論が活発化している、教師間の協働・学び合いといった課題への示唆を得ることを目的とする。その際、エマソンやソローといった代表的超越主義者が教育実践-思想をめぐりどのような知的交流を展開したのかについて、当時の米国において知的交流の拠点となっていた書物回覧所(circulating library)での教育実践を検討の手がかりとする。本研究課題では、19世紀米国の超越主義者たちを、教師の研究交流集団という観点から再考することを通し、個々の教育実践-思想家としての超越主義研究に加え、喚起(provocation)という相互触発としての教育関係の研究への端緒を得ると共に、近年の教師教育研究において議論が活発化している、教師間の協働・学び合いといった課題への示唆を得ることを目的とする。その際、エマソンやソローといった代表的超越主義者が教育実践-思想をめぐりどのような知的交流を展開したのかについて、当時の米国において知的交流の拠点となっていた書物回覧所(circulating library)での教育実践を検討の手がかりとする。 | KAKENHI-PROJECT-19K02393 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K02393 |
肺高血圧症の病因・病態の解明 | 1)わが国の肺高血圧症に関して剖検例の疫学的検討を行い、いわゆる叢状病変型が多いことを明らかにした。この点は欧米諸国とは著しく異なる点である。また、膠原病関連肺高血圧症として欧米においては強皮症の一型であるCREST症候群が多いとされているが、わが国では全身性エリテマトーデスと混合性結合組織病との合併が多いことも明らかとなった。2)人体病理学的検討では肺筋型動脈中膜肥厚、内膜肥厚、叢状病変、血栓などは肺高血圧症評価に際して有力な指標であるが、肺血鉄症を始めとして他の所見は必ずしも必発ではないことも明らかとなった。肺高血圧症を合併する膠原病に認められる肺血管炎は必ずしも肺高血圧症に続発するものではなく、基礎疾患との関連も考慮すべきものと思われた。3)反復性肺血栓塞栓症はわが国においては稀な疾患と考えられるが、微小血栓と思われる症例が存在することを指摘した。4)Monocrotaline(MCT)によって誘発される肺高血圧症を用いて肺高血圧症の成因について解析を加えた。とくにセロトニンに注目し、5-HT_2受容体拮抗薬であるDV-7028を用いmonocrotalineによって傷害された内皮細胞に粘着した血小板由来のセロトニンがmonocrotaline肺高血圧症で重要な役割を演じていることを明らかにした。ヒトの肺高血圧症に関しても血小板あるいはセロトニンの作用を充分考慮すべきものと思われる。また、EDRF、PGl_2なども反応することが明らかとなり、肺高血圧症の成立と進展には他の要因も関与するものと理解された。1)わが国の肺高血圧症に関して剖検例の疫学的検討を行い、いわゆる叢状病変型が多いことを明らかにした。この点は欧米諸国とは著しく異なる点である。また、膠原病関連肺高血圧症として欧米においては強皮症の一型であるCREST症候群が多いとされているが、わが国では全身性エリテマトーデスと混合性結合組織病との合併が多いことも明らかとなった。2)人体病理学的検討では肺筋型動脈中膜肥厚、内膜肥厚、叢状病変、血栓などは肺高血圧症評価に際して有力な指標であるが、肺血鉄症を始めとして他の所見は必ずしも必発ではないことも明らかとなった。肺高血圧症を合併する膠原病に認められる肺血管炎は必ずしも肺高血圧症に続発するものではなく、基礎疾患との関連も考慮すべきものと思われた。3)反復性肺血栓塞栓症はわが国においては稀な疾患と考えられるが、微小血栓と思われる症例が存在することを指摘した。4)Monocrotaline(MCT)によって誘発される肺高血圧症を用いて肺高血圧症の成因について解析を加えた。とくにセロトニンに注目し、5-HT_2受容体拮抗薬であるDV-7028を用いmonocrotalineによって傷害された内皮細胞に粘着した血小板由来のセロトニンがmonocrotaline肺高血圧症で重要な役割を演じていることを明らかにした。ヒトの肺高血圧症に関しても血小板あるいはセロトニンの作用を充分考慮すべきものと思われる。また、EDRF、PGl_2なども反応することが明らかとなり、肺高血圧症の成立と進展には他の要因も関与するものと理解された。1)人体病理学的検討として肺高血圧症の肺血管病変に関し形態計測を含めた詳細な病理形態学的検索を行った結果、以下の結論を得た。1.我が国では原発性肺高血圧症の中では叢状病変型が極めて多い。2.叢状病変型肺高血圧症は中膜肥厚、叢状病変を特徴とするが、内膜肥厚は症例による差が著しい。3.急速に進行する原発性肺高血圧症の中に叢状病変の認められない筋型肺動脈末梢側の平滑筋増生を主体とする症例がある。4.肺静脈閉塞症の中に、肺動脈領域の血管炎・拡張性病変の認められる症例がある。5.反復性肺血栓塞栓症の中にin situ thrombosisとすべき例と血栓塞栓症とすべき例がある。6.わが国では膠原病に合併する肺高血圧症の中では混合性結合組織病(MCTD)と全身性エリテマトーデス(SLE)が多い。7.MCTDに膠状病変と間質性肺線維症の両者を併有する症例がある。8.SLEの中に肺静脈閉塞症が見られた。9.SLEの肺血管内皮細胞にtubulo-reticular structureが見いだされた。10.肺高血圧症を合併する強皮症の中に肺線維症を伴わず膠状病変を有する症例がある。11.肝疾患と合併する肺高血圧症の中には、膠原病で結節性再生性過形成と肺高血圧症を有する症例がある。2)実験病理学的には、血小板由来の重要な血管収縮物質である5-HT(セロトニン)の肺高血圧症における意義を明らかにするために選択的5-HT_2受容体拮抗薬(DV-7028)のモノクロタリン誘発肺高血圧症に対する効果を検討した。DV-7028連続経口投与はモノクロタリン投与ラットの肺動脈圧上昇、右室肥大ならびに筋型肺動脈中膜肥厚の程度を有意に抑制した。DV-7028の5-HT誘発血管収縮抑制作用は、in vivoにおけるモノクロタリン誘発肺高血圧症の抑制に関与すると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-05404022 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05404022 |
肺高血圧症の病因・病態の解明 | 以上の結果から、肺血管内皮細胞障害により毛細血管領域に粘着した血小板より放出された5-HTのモノクロタリン誘発肺高血圧症の成立、進展における役割が明らかになった。人体病理学的検討として、原発性肺高血圧症の剖検例の肺を用い、三次元画像処理システム(OZ,Rise)を使用した肺動脈系の立体的再構築を行い、以下の所見が得られた。1)Plexiform lesionおよび線維性内膜肥厚の多くは、外径100150μmの分枝に生じており、また母枝から分枝した直後から生じていた。特に、plexiform lesionは母枝より垂直方向へ分枝する枝に好発していた。2)plexiform lesion末梢側には壁の薄い内腔の拡張した動脈が認められた。その一部は細気管支壁周囲に達していた。3)病変部を経ずに末梢域に到達可能な血流ルートはごくわずかであった。実験病理学的検討として、5-HTと並ぶ強力な血管収縮物質であり、5-HTに対する肺血管反応性を亢進させる作用も知られているエンドセリン-1(ET-1)に着目した。高感度サンドイッチエンザイムイムノアッセイ法によりモノクロタリン(MCT)投与ラット血漿中並びに肺組織中ET-1濃度の経時的定量を行ったところ、MCT投与ラットでは血漿中・肺組織中いずれにおいてもET-1濃度の有意な上昇を認めた。ET-1は心不全に伴って上昇するが、本実験系では、ET-1濃度は心不全の指標である右室拡張期圧よりも平均肺動脈圧および右室肥大の程度とよく相関した。これにより、ET-1の肺動脈5-HT収縮促進作用や血管平滑筋増生作用が、肺高血圧症に対し病因的意義を有する可能性が示唆された。モノクロタリン(MCT)誘発肺高血圧症(PH)の初期変化は肺血管内皮細胞障害とされるが、PH進展のメカニズムは明らかにされていない。本年度は、内皮細胞から放出される血管弛緩因子(EDRF、PGI_2)が病態に果たす意義を調べるため以下の検討を行った。MCT投与ラットを用いて潅流肺標本を作成し、内皮細胞機能の指標として潅流液中セロトニン(5-HT)取り込み率を求め、潅流液中へのEDRF、PGI_2放出量を測定した。結果はMCT投与1日後、5-HT取り込み率は対照群に比し有意に低下したが、1週後に有意に回復し、2週後に対照群レベルに戻った。回復時、修復された内皮細胞からのEDRF放出量は増大し、PGI_2放出量は減少する傾向を認めた。この結果より、肺動脈圧上昇に伴いEDRF放出量は二次的に増大して代償性に働き、遷延するPGI_2放出低下がPHの促進因子になると考えられた。一方、血管壁構造蛋白であるエラスチンは動脈の弾性を左右することが知られており、PHにおいてはその機能異常が生じていると推察される。そこで実験的PHの肺におけるエラスチンにつき、mRNAレベルでの異常の有無につき検討を行った。上記の様に肺高血圧ラットを作成、肺組織よりRNAを抽出、template cDNAを作成した。ラットトロポエラスチンcDNA(全長約2600bp)を約500bpずつ7つの領域に分け、それぞれにつきプライマーを設定、template cDNAをPCR法にて増幅し、アガロース電気泳動にて対照と比較検討した。現在のところMCT投与ラットと対照ラットとの間に明らかな差異は認められていないが、splicing異常などにつき検索を続けている。 | KAKENHI-PROJECT-05404022 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05404022 |
極低温におけるμSR法の研究 | 本年度は今まで計画していた(1)金属中のμ+量子拡散(2)量子液体固体中のμ^+粒子の研究の外に(3)新発見物質高温酸化物超伝導体(YBa_2Cu_3Ox)をμ^+SR法で研究した. μ^+SR法は,酸化物超伝導体の磁気的側面の研究に最適であることがわかり,本研究がめざすμSR法の新しい可能性開拓の目的を十分に達成することができた.以下研究経過を簡単に記述する.(1)金属結晶中のμ+の量子拡散昨年度にひきつづき,微粒子薄膜を用いμ^+拡散係数を直接測定する新方法の確立をめざしている.今年度は, 3000A2F2(コードで入力)粒径のAl微粒子を作製, KEK-BDOMでμ^+SR実験を行う.室温では十分早く微粒子表面に達することを確認.この方法を薄膜に適用,精密測定を行うため超高真空蒸着装置を製作中であるが,本年度は,真空排気系を購入10-10torrの真空を達成.きれいた薄膜作製準備がととのった.(2)μ^+-量子の液体・量子固体系の研究西田,北原が中心となり, μ+が固体水素,液体ヘリウム中でとりうる可能性のある形態を検討し, (H_2μ^+), (Heμ^+)分子等の量子化学計算法を開発.その形状,分子回転準位を決定まもなく発表予定. μ^+5R実験結果の理論予測を行った.(3)酸化物超伝導体のμ^+SR法による研究東工大グループ中心に,東大物性研,教養,核研,中間子施設,カナダTRIUMFグループと共同研究. 90K級酸化物超伝導体YBa_2Cu_3O_x系の磁気的性質をμ^+SR法で研究した.超伝導体相に接する絶縁体相が強い反強磁性を示すことを世界で初めて発見.酸化物超伝導体の超伝導発現機構に磁性が重要な役割をもつことを指摘.これら結果は,既に二つの国際会議で報告, 5編の論文として発表され注目をあびた.本年度は今まで計画していた(1)金属中のμ+量子拡散(2)量子液体固体中のμ^+粒子の研究の外に(3)新発見物質高温酸化物超伝導体(YBa_2Cu_3Ox)をμ^+SR法で研究した. μ^+SR法は,酸化物超伝導体の磁気的側面の研究に最適であることがわかり,本研究がめざすμSR法の新しい可能性開拓の目的を十分に達成することができた.以下研究経過を簡単に記述する.(1)金属結晶中のμ+の量子拡散昨年度にひきつづき,微粒子薄膜を用いμ^+拡散係数を直接測定する新方法の確立をめざしている.今年度は, 3000A2F2(コードで入力)粒径のAl微粒子を作製, KEK-BDOMでμ^+SR実験を行う.室温では十分早く微粒子表面に達することを確認.この方法を薄膜に適用,精密測定を行うため超高真空蒸着装置を製作中であるが,本年度は,真空排気系を購入10-10torrの真空を達成.きれいた薄膜作製準備がととのった.(2)μ^+-量子の液体・量子固体系の研究西田,北原が中心となり, μ+が固体水素,液体ヘリウム中でとりうる可能性のある形態を検討し, (H_2μ^+), (Heμ^+)分子等の量子化学計算法を開発.その形状,分子回転準位を決定まもなく発表予定. μ^+5R実験結果の理論予測を行った.(3)酸化物超伝導体のμ^+SR法による研究東工大グループ中心に,東大物性研,教養,核研,中間子施設,カナダTRIUMFグループと共同研究. 90K級酸化物超伝導体YBa_2Cu_3O_x系の磁気的性質をμ^+SR法で研究した.超伝導体相に接する絶縁体相が強い反強磁性を示すことを世界で初めて発見.酸化物超伝導体の超伝導発現機構に磁性が重要な役割をもつことを指摘.これら結果は,既に二つの国際会議で報告, 5編の論文として発表され注目をあびた. | KAKENHI-PROJECT-62112009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62112009 |
水の粗視化ポテンシャルで探索する液液転移のメカニズム | 水は密度最大温度など通常の液体には存在しない異常な性質を示す。水の異常性は低温で水素結合によって四面体構造を形成することに起因すると考えられるが、水素結合ネットワークだけで液相としての水の異常性を定量的に解明するには至っていない。約20年前に実験で低温高圧の条件下で密度の異なる2種類のアモルファス氷が発見されたことにより、液相としての水の異常性を統一的に説明する理論として低密度水と高密度水に相分離する第二の臨界点が存在するという液液相転移仮説が提唱され、現在その存否について論争の真っ只中にある。本研究では水分子を回転剛体子として扱うTIP4Pなどのモデルではなく、水の四面体構造を粗視化し、水5量体をひとつの相互作用点として扱った、単成分・球対称ポテンシャルであるcore-softenedポテンシャルを用いて、液液相転移と水的異常性について解析をおこなった。特に拡散係数、粘性係数から動力学異常性を、熱力学積分法によって得られた過剰エントロピーから熱力学異常性を解析した。その結果、それらの物理量の密度依存性に異常性があり、p-T相図上で低温側から高温側に向かって、密度最大温度、粘性係数、拡散係数、過剰エントロピーの順でドーム型領域として広がることを見出した。この異常領域の階層的な構造は、水剛体回転子モデルの分子動力学シミュレーションの結果と整合することがわかった。さらに、Rosenfeld式と呼ばれるスケーリング手法を用いて、輸送係数と過剰エントロピーの異常性を関連付けた。熱力学関係式から密度異常性と過剰エントロピー異常性が直接関係することから、p-T相図上における階層的な異常領域の出現が相互に結び付くことを明らかにした。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。異常液体の代表物質である水では、その密度が4°Cで最大となり温度低下とともに減少する。それ以外にも比熱や圧縮率など熱力学性質や拡散係数といった動力学性質、構造エントロピーにも異常性が見られる。これら水の異常性は特に低温で過冷却された状態で顕著となる。低温で隣接する水分子同士が水素結合によって四面体構造を作りやすいという構造的な性質に起因して異常性がもたらされると考えられるが、それだけでは全ての異常性を説明することはできないとされる。一方で、低温で低密度と高密度の2つの液相に相分離する臨界点が存在するという液液臨界点仮説が現在盛んに研究されている。しかしながら液液転移が存在すると考えられる過冷却領域は水が自発的に結晶化してしまう領域であり、実験で直接観測することができない。したがってシミュレーションによって液液転移の存在を検証する研究が有効な手段となる。水の水素結合を粗視化した単成分・球対称なcore-softenedポテンシャルによって液液転移が起こることが明らかになりつつあり、水の液液転移の本質に迫ろうとするのが本研究課題の目指すところである。特にcore-softenedポテンシャルのひとつに分類されるFermi-Jaglaポテンシャルを用いて分子シミュレーションをおこない、熱力学および動力学の異常性について調べたところ、圧力-温度相図上に液液転移点を出発点として密度、粘性係数、拡散係数、構造エントロピーの順番で異常性が階層的に存在していた。このような階層的に発生する異常性は水でも見られており、core-softenedポテンシャルが水の異常性を再現するミニマムモデルであることを見出している。水型液体の液液転移を再現する粗視化モデルであるFermi-Jaglaポテンシャルに対して分子シミュレーションをおこない、密度、拡散係数、粘性率、過剰エントロピーの密度・温度依存性を定量化した。相図上で熱力学的および動力学的な異常性を特徴付けると、液液転移点を出発点として階層性を成していることを明らかにする結果を得ている。またシリコン、ゲルマニウムなど他の異常液体と共通したものであることを明らかにしている。これらの成果について現在投稿論文を執筆中である。水は密度最大温度など通常の液体には存在しない異常な性質を示す。水の異常性は低温で水素結合によって四面体構造を形成することに起因すると考えられるが、水素結合ネットワークだけで液相としての水の異常性を定量的に解明するには至っていない。約20年前に実験で低温高圧の条件下で密度の異なる2種類のアモルファス氷が発見されたことにより、液相としての水の異常性を統一的に説明する理論として低密度水と高密度水に相分離する第二の臨界点が存在するという液液相転移仮説が提唱され、現在その存否について論争の真っ只中にある。本研究では水分子を回転剛体子として扱うTIP4Pなどのモデルではなく、水の四面体構造を粗視化し、水5量体をひとつの相互作用点として扱った、単成分・球対称ポテンシャルであるcore-softenedポテンシャルを用いて、液液相転移と水的異常性について解析をおこなった。特に拡散係数、粘性係数から動力学異常性を、熱力学積分法によって得られた過剰エントロピーから熱力学異常性を解析した。その結果、それらの物理量の密度依存性に異常性があり、p-T相図上で低温側から高温側に向かって、密度最大温度、粘性係数、拡散係数、過剰エントロピーの順でドーム型領域として広がることを見出した。この異常領域の階層的な構造は、水剛体回転子モデルの分子動力学シミュレーションの結果と整合することがわかった。さらに、Rosenfeld式と呼ばれるスケーリング手法を用いて、輸送係数と過剰エントロピーの異常性を関連付けた。 | KAKENHI-PUBLICLY-16H00829 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-16H00829 |
水の粗視化ポテンシャルで探索する液液転移のメカニズム | 熱力学関係式から密度異常性と過剰エントロピー異常性が直接関係することから、p-T相図上における階層的な異常領域の出現が相互に結び付くことを明らかにした。これまでの研究によって、core-softenedポテンシャルと呼ばれるモデル群のひとつであるFermi-Jaglaモデルが水型液体の液液転移とそれに伴う異常性を説明しうるモデルであることがわかった。しかしながら、ポテンシャルを決める長さスケール、エネルギースケールのわずかな違いによって、液液転移点と液液共存線の傾きが劇的に変わることが予想され、これを本年度の研究によって明らかにすることを目指す。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-16H00829 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-16H00829 |
都市空間における女性の商品化-米軍基地周辺遊興街の社会・歴史地理- | 戦後,沖縄県内や本土につくられた米軍基地・施設周辺に現れた遊興街を対象に,女性の性が消費される空間がつくり出されていったプロセスを,社会地理学的および歴史地理学的な視点から追究した。また,売春や基地関連施設をめぐる地域住民の反応や活動の展開についても明らかにした。女性の性を消費する空間形成のプロセスや,そこに反映された諸力を明らかにするという研究の目的は,ほぼ達成されたと言える。地理学で従来タブー視されてきた性に関わる空間の解明に挑んだことで,日本でのフェミニスト地理学の発展に意義ある成果を残せたものと確信する。都市の特定地区に女性を「商品化」する空間が存在してきたことを問題視し,ジェンダー関係をはじめ,さまざまな権力関係が都市空間においてどのように作用し,それらの諸関係がいかに都市空間に刻まれ,また,そこに出現するのかを検証することが,本研究全体の具体的な目的である。研究対象には米軍基地周辺の遊興街を選定し,女性が「商品化」される空間がどのようにつくりだされたのかを,社会・歴史地理的な視点から明らかにしつつ,基地や売春をめぐる住民運動の展開にも注目する。以上の研究目的のもと,各研究分担者の役割・課題は次のようなものである。(1)米軍基地周辺遊興街の成立過程にみるジェンダー等の権力関係の解明(吉田)(2)軍事基地および軍事演習場をめぐる地域住民の反対運動(中島)(3)近世・近代の都市空間における遊廓に起因する赤線地区・青線地区(集団的売春街)成立の歴史地理(加藤)(4)米軍基地周辺遊興空間の消費と観光の関係性(神田)(5)ジェンダー関係が投影された都市空間の分析(影山)戦後,沖縄県内や本土につくられた米軍基地・施設周辺に現れた遊興街を対象に,女性の性が消費される空間がつくり出されていったプロセスを,社会地理学的および歴史地理学的な視点から追究した。また,売春や基地関連施設をめぐる地域住民の反応や活動の展開についても明らかにした。女性の性を消費する空間形成のプロセスや,そこに反映された諸力を明らかにするという研究の目的は,ほぼ達成されたと言える。地理学で従来タブー視されてきた性に関わる空間の解明に挑んだことで,日本でのフェミニスト地理学の発展に意義ある成果を残せたものと確信する。都市の特定地区に女性を「商品化する」空間が存在してきたことに着眼し、ジェンダーをはじめとする権力の諸関係が都市空間においてどのように作用し、そうした権力関係がいかにして都市空間に刻まれ、また同時に、そこに映し出されているのかを検証することが、本研究の目的である。具体的な研究対象を米軍基地周辺の遊興街とし、その社会・歴史地理を明らかにすることからアプローチした。本年度はまず、本研究の基盤となった平成1517年度科学研究費補助金による沖縄県内の米軍基地周辺の遊興街に関する研究を体系的にまとめるため、研究代表者の吉田を中心に沖縄県沖縄市の旧特飲街について、関連文献や資料に漏れがないよう最終段階の収集・調査を行い、二度の学会発表を行った。次いで、沖縄以外の事例に取り組むため、本研究のメンバーは、それぞれ以下のような研究活動を行った。研究分担者の影山と加藤は、国内における次の研究対象地域を選定した。加藤は、米軍占領下の東京都内を中心に、RAA(占領軍慰安施設)の形成、およびRAA廃止後の売春街の形成について関連資料の収集を行った。影山は、売春廃止運動の展開を神奈川県横須賀市の米軍基地やその周辺の売春街に着目し、次年度以降実施する現地での聞き取り調査の準備をした。一方、神田は、海外における米軍基地周辺の遊興街の事例について調査を始めた。日本と同様、東アジアの軍事拠点とされる韓国における米軍基地周辺の遊興街や「基地村」に関連する資料を、ソウル大学図書館を中心に収集した。また、日本による朝鮮半島統治時代の遊廓の存在を示唆する資料も一部入手した。中島は、米軍基地や軍事演習場をめぐる反対運動の観点から、沖縄県内の普天間飛行場の辺野古沖移転計画にともなって問題化した自然保護運動の展開について、論文を発表した。吉田は、戦後の一時期、朝鮮戦争から帰休する米兵の余暇施設として奈良市内に設置された「奈良RRセンター」に関する資料を奈良県立図書情報館で収集し、論文公表の準備に入った。都市の特定地区に女性を「商品化」する空間が存在してきたことを問題視し,ジェンダー関係をはじめ,さまざまな権力関係が都市空間においてどのように作用し,それらの諸関係がいかに都市空間に刻まれ,また,そこに出現するのかを検証することが,本研究全体の目的である。研究対象には米軍基地周辺の遊興街を選定し,そうした地区に女性が「商品化」される空間がどのようにつくりだされたのかを,社会・歴史地理的な視点から明らかにしつつ,そうした地区での基地や売春をめぐる住民運動の展開にも注目する。上記の本研究全体の目的を踏まえ,本年度は,昨年度まで調査をしてきた沖縄に加え,米軍基地が置かれている佐世保と横須賀<主な分担者:吉田・影山>,また,終戦直後にRAA(占領軍慰安施設)がいくつも設置された東京都を中心とする首都圏<加藤・神田>,さらに,朝鮮戦争から一時帰休する米兵に休息とレクリエーションを提供する施設であった奈良RRC<吉田>に関して,それぞれ現地での観察や研究関連資料の収集,ならびに聞き取り調査を行い,基地と遊興街の歴史地理を明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-19320133 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19320133 |
都市空間における女性の商品化-米軍基地周辺遊興街の社会・歴史地理- | 加えて,米軍基地や演習施設の存在をめぐる草の根反対運動<中島>,遊興街からの売春婦の締出しを掲げた住民運動や売春防止法成立前後における基地周辺遊興街のポリティクス<影山>といった観点からも,研究を進めた。上にあげた本年度の研究成果の一端は,経済地理学会中部支部例会,IGC(International Geographical Congress),国際社会学会で口頭発表した。さらに,共著刊行の図書にも研究の成果が収録された。加えて,本研究の成果を公表するwebページの作成も行った。都市の特定地区に女性を「商品化」する空間が存在してきたことを問題視し,ジェンダー関係をはじめ,さまざまな権力関係が都市空間においてどのように作用し,それらの諸関係がいかに都市空間に刻まれ,また,そこに出現するのかを検証することが,本研究全体の目的である。研究対象には米軍基地周辺の遊興街を選定し,女性が「商品化」される空間がどのようにつくりだされたのかを,社会・歴史地理的な視点から明らかにしつつ,基地や売春をめぐる住民運動の展開にも注目する。上記の本研究全体の目的を踏まえ,本年度は以下のような研究成果を得た。吉田は,金武町(沖縄県)を事例に米軍基地周辺歓楽街の形成とその変容を明らかにし,研究成果をまとめた。また,呉市と岩国市で現地調査を行い,基地周辺歓楽街の形成および売春への行政の対応に関する資料を得た。中島は,名護市辺野古の米軍海上基地建設予定地を事例に研究を行っており,反対運動の歴史的過程や現状を明らかにしつつ,基地建設予定地周辺の環境保護をめぐる反対運動と地域住民との関係を明らかにした。加藤は,本研究の主題である権力関係の解明にとって近代的な都市空間編成における遊廓の位置づけを明確にすることが,戦後への展開も含めて必要となることから,近代以降に重点を移して調査・研究を続けている。さらに,米軍統治下における沖縄を事例に,基地周辺歓楽街の分析から,軍政府・民政府の施策・方針の特徴を明らかにし,本土とは異なる空間の生産過程があることを確認するに至った。神田は,遊興空間の消費と観光の関係性について米軍との関係に注目して検討しており,ソウル,那覇市,白浜町(和歌山県),横須賀市で現地調査を行った。特に米軍駐留前後の変化に焦点を当て,その状況を確認した。以上の研究活動の結果,本年度の成果として,雑誌論文1(研究報告),学会発表4(国際学会1,国内の学会3),図書1(単著)を得た。戦後,沖縄県内や本土につくられた米軍基地の周辺に現れた遊興街を対象に,女性の性が消費される空間がどのようにつくりだされたか社会・歴史地理的な視点から明らかにしつつ,基地や売春をめぐる住民運動の展開にも注目した。取組みの具体的な観点と,その成果は以下のとおり。1)基地周辺遊興街の成立過程にみるジェンダー等の権力関係⇒基地の周辺に歓楽街がつくられるに至った社会・政治的背景や遊興街形成のプロセス,またそこで自らの性を売らざるをえなかった女性たちと兵士,地域住民,行政との関係性を,当時の地方紙から情報収集し,明らかにした。2)軍事基地・演習場をめぐる地域住民の反対運動⇒軍事暴力と地域住民の生活世界の関係を明らかにすることを通じて,軍事基地・演習場がもたらす生活世界の軍事化の様態を明らかにした。また,地域住民が生活世界の軍事化から離脱しうる事例(活動)も見つけた。 | KAKENHI-PROJECT-19320133 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19320133 |
頭頸部癌シグナル伝達ネットワークの解明 | 各種癌においてその増殖に関わるシグナル伝達機構が徐々に明らかとなり、そのパスウェイの制御が癌治療に応用されている。我々はゲノム・プロテオーム解析を軸にしたバイオインフォマティクス技術を駆使して、上皮間葉移行に対応した癌増殖シグナル伝達およびそのシグナル伝達系相互のクロストークに関連した分子群を同定してきた。頭頸部癌では上皮成長因子受容体(EGFR)パスウエイが重要な増殖のシグナル伝達であるが、その阻害剤であるセツキシマブの効果がEGFR及びそのリガンドの発現によって異なることが分かった。このリガンドの作用を減弱することで、セツキシマブの作用を増強するだけでなく、耐性化の克服も期待できる。現在我々は上顎癌検体を用いての、マイクロRNA解析を行なっている。癌組織の他に、癌化機構の解明を試みることもあり、比較的サンプルが豊富なinverted papillomaの検体を用いてその発現比を比べている。当該年度は、シグナル伝達制御に関連が予想される分子群を用いて各種シグナル伝達に関連する分子との関連を免疫沈降法にて確認しRNA干渉、遺伝子組み込みによる当該分子の機能解析をおこなった。これに用いる分子は先のmicroarrayや2次元電気泳動法から得られたデータから取捨選択し選択した。これにより実際に分子間の相互作用が証明されるまた追加サンプルによるタンパク質発現再現性の確認と域値の設定、及びこれまでに20以上の10倍以上の発現差を認めたマイクロRNAを同定し、これらがターゲットとする遺伝子の発現の変化を検体を免疫染色して詳細に検討をおこなった。現在使用されている各種抗腫瘍薬との併用による相乗効果の検討、新たな分子標的治療としての有効性を検討、当該分子のシグナル伝達、上皮間葉移行などに与える影響等の機能を評価し、これらの成果を昨年トロントで開かれたAnnual meeting of American Head and Neck Societyで発表している他、本年3月に行われた第二回アジア癌学会でも口頭発表に選ばれ、発表している次年度も引き続きゲノム・トランスクリプトームレベルでの発現を検討し、臨床応用に向けより敏感度、特異度が高く簡易な検査法を確立する予定である。背景:各種癌においてその増殖に関わるシグナル伝達機構が徐々に明らかとなり、そのパスウェイの制御が癌治療に応用されて各シグナル系に応じた分子標的薬が開発されてきている。セツキシマブは既に欧米では頭頸部癌治療における分子標的薬として標準的な薬剤として認知され、本邦においても頭頸部癌における臨床治験が始まっている。しかし、他の抗腫瘍薬と同様に長期投与において耐性化することも明らかとなってきた。今回我々はEGFRのリガンドの発現とセツキシマブ感受性への影響と、さらにこれらのリガンドをターゲットとするmicroRNA発現を検討した。方法:セツキシマブ高感受性頭頸部癌細胞株SCC1とその耐性クローンである1Cc8を用いて、各リガンドの発現とセツキシマブ耐性への影響を比較した。結論:セツキシマブの耐性化にはリガンドが強く関与しており、またこのリガンド発現の制御にmicroRNAが関与していた。リガンドの発現はセツキシマブ感受性のマーカーとして有用と考えられ、さらにはmicroRNAを分子標的とした治療は、頭頸部癌治療における新たなブレイクスルーとなることが期待される。各種癌においてその増殖に関わるシグナル伝達機構が徐々に明らかとなり、そのパスウェイの制御が癌治療に応用されている。我々はゲノム・プロテオーム解析を軸にしたバイオインフォマティクス技術を駆使して、上皮間葉移行に対応した癌増殖シグナル伝達およびそのシグナル伝達系相互のクロストークに関連した分子群を同定してきた。頭頸部癌では上皮成長因子受容体(EGFR)パスウエイが重要な増殖のシグナル伝達であるが、その阻害剤であるセツキシマブの効果がEGFR及びそのリガンドの発現によって異なることが分かった。このリガンドの作用を減弱することで、セツキシマブの作用を増強するだけでなく、耐性化の克服も期待できる。1.頭頸部正常扁平上皮および癌組織からのDNA,RNAタンパク質抽出生検、手術で得られた検体を凍結保存し、-20度の状態で凍結切片を作製する。これをヘマトキシリン・エオジン染色後、病理医により光学顕微鏡下にその組織型を確認する。さらに連続切片をヘマトキシリン染色のみ行いLasermicrodissection法を用いて当該組織のみを採取し、DNA, mRNA,タンパク質をそれぞれ抽出する。また同一組織から異なる癌蜂巣を個別に抽出した。現在のとこと抽出したRNAからマイクロRNAの網羅的解析を行なっている。2.マイクロRNAの発現比較がん組織と前がん組織であるinverted papillomaのマイクロRNA解析では大きな発現差のある多数のマイクロRNAが同定され、またこれらが、発がんに関与するp53、RB経路にあるPTENやP21を制御することがわかった。現在は頭頸部癌細胞株を用いてこれらのマイクロRNAが実際にPTENやP21の発現を制御しているかどうかについてトランスフェクションにて当該するマイクロRNAを組み込みコントロールとの比較でそのタンパク質レベルでの発現を比較している。3.免疫染色法による当該分子のタンパク質発現更には10例を超える上顎癌の手術標本における当該分子の発現を、おもに免疫染色法で比較している。候補遺伝子のなかでエストロゲンレセプターは残念ながら癌とその前癌病変では発現差を認めなかったものの、PTENやP21では大きな発現差を示している。サンプルの品質が思った以上に悪いものがあり、予定のサンプル解析が進まなかった分があるものの、良いRNAサンプルが抽出出来たものに関しては予定通りの解析が進んでいる。 | KAKENHI-PROJECT-23592517 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23592517 |
頭頸部癌シグナル伝達ネットワークの解明 | 結果についてはまだ追試が必要な段階ではあるが、すでに学会発表を済ませており、今後はデータの確認などを終えたうえで、論文とする準備がある。当初の計画ではプロテオーム、ゲノム解析を先に考えていたものの、まずはマイクロRNAの解析を行なっている。マイクロRNAは種類は600程と少ないものの、大きな発現差を持ったものを多数同定できた。これにトランスクリプトーム解析の結果を加えて更に解析を加速させている。更にマイクロRNAがターゲットとする分子の発現をRNA,タンパク質それぞれにおいてその変化を確認する。実際に癌細胞株を用いて発現の変化と薬剤感受性の変化が相関するかどうか、実際の臨床に応用出来るような基礎データをまとめる引き続き抽出したサンプルからのトランスクリプトーム解析を続けていき、マイクロRNAの発現差との整合性と見つけていく予定である。得られた結果からは頭頸部癌細胞株を用い、当該分子の発現量の変化に伴うシグナル伝達に関する分子の発現・及び活性の変化を定量する。当該分子のシグナル伝達、上皮間葉移行などに与える影響等の機能を評価する。膨大な量のデータをバイオインフォマティクスアプローチにより解析する。従来の多変量解析のほか、階層的クラスター分析、機械学習法、自己組織化写像法を用いて検体の組織特異性、臨床的背景に応じて変化する分子を遺伝子、タンパク質レベルで層別化する。またここから得られた遺伝子発現をPathway Assist等のソフトウエアを利用して分子の相互関係を明らかにし、シグナル伝達機構に関連が報告された遺伝子群の発現を解析する。抽出したmRNAはcDNAmicroarrayチップを用いてその発現を数値化する。チップにはAffymetrix社のマイクロアレイチップサンプル用を使用予定。またRNA抽出キット(プロテオーム解析試薬等)も購入予定である。研究成果は国内、海外(トロント)の学会で発表をおこなう。未使用額については、当初、初年度に予定していた海外研究機関への検査委託費、及び試薬、解析処理に必要な専用ソフトなどの消耗品の購入に充てる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-23592517 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23592517 |
「家庭レジリエンス」概念の実証的研究によるより機能的な家族援助実践への提言 | 1.平成14年度の作成した家族レジリエンス尺度(Family Resilience Inventory,FRI)の調査・分析を下に、平成15年度家族心理学学会第21会大会において「家族レジリエンスの家族支援の臨床的応用に向けて」の口頭発表を行った。これについては「家族支援に有用であると思われる家族レジリエンス概念を用いた家族機能尺度の作成」という原稿にまとめた(掲載は未定)。2.平成14年度に行った「家族の危機と回復」についての聞き取り調査の分析を進め、「家族レジリエンス尺度作成に向けて」『関西福祉科学大学紀要』Vo17(2004,3月刊行予定)に発表した。3.平成15年12月に、中途障害者とその家埠から聞き取り調査を行い、家族の持つ家族レジリエンスが働くため、医療ソーシャルワーカ」や支援システムの充実が不可欠であることが考察された。4.FRIは臨床に使用されることを目的としている。今日、家族療法においても、社会福祉方法論においてもナラティヴアプローチがもはやメインストリームとなっている感もある。自記式調査であれ、聞きとり調査であれ、家族員が家族の危機的状況を新たに思い起こし、「語る」ことは極めて臨床的な行為である。ゆえに、家族レジリエンス尺度の自己活用の可能性が示唆された。5.調査の対象者が「家族」を語るときの家族は、対象者の時系列的に異なる複数の「家族」であったり、その故に、同じ家族からの同時の聞き取り調査であっても、その対象とする「家族」は異なっている場合がある。また、絶えず変化生成する家族システムの特徴からも、家族の「今、ここ」での資源としての有用性に焦点化することに意義があるのではないかと考察された。6.本家族レジリエンス概念は、従来のコーピング概念や家族ホメオスタシス概念と混同されやすいが、家族は個人と同様に家族内の相互作用のみならず、外部システムとの相互作用も含めて動き、家族レジリエンスは外部システムからの刺激によっても促進されるものである。ゆえに、単に家族解体を避けるためというよりも、一層機能的なシステムとなるためには、家族レジリエンスが働くための外部システムやその相互作用に注目すべきである。家族レジリエンス概念を盛り込んだ新たな支援システム作りについて一層調査、研究を深めたい。1.調査研究について研究初年度である平成13年度は「家族が危機的状況を乗り越えるための要因」と題する質問紙調査を行い、以下の成果を得た。(1)「家族危機」と認識される状況の報告が少なく、家族は、とりわけ一般的な家族周期上の危機を家族危機と認識するまでもなく乗り越えている。(2)「家族危機」と想定されるような状況の回復に当たっては、専門家や家族以外の誰かから援助を受けずに家族で解決したという回答が多く、まずは、家族のみで回復しようとしていることが明らかになった。(3)これらの結果から鑑みて、専門的な援助を必要とするような「家族危機」的な状況の多くが、家族レジリエンスによって回避されているのではないかという仮説が検証された。これらの結果に基づいて、平成14年度以降は「家族危機」的状況を明確化できるスケールを作成し、そのスケールに基づいて、家族レジリエンスを促進する要因を抽出する予定である。2.先行研究の分析について個人・家族レジリエンスに着目した援助理論を概観し、以下の認識を新たにした。(1)社会福祉においては、0.ランクの意思心理学を端緒として、コンピテンス・アプローチ,ストレングス・アプローチ等において、すでに個人の自然の回復力を信じ、それを促進する援助を目指すスタイルが登場しており、それが今日のエンパワーメント・アプローチに繋がっている。(2)家族療法の文脈において、家族レジリエンスは、家族ホメオスタシス、家族のオートポイエシス等の言葉で説明されており、かつ今日では古典的と言われるスタイルの家族療法においても、機能的なコミューケーション過程が家族の自律的な問題解決過程であり、そのゆえに効果的なコミュニケーションによって家族レジリエンスが活性化する援助となるべく論議がなされてきた。(3)近年の社会構成主義による解決志向型ソーシャルワークにおいて、T.アンデルセン、H.アンダーソン、F.ワルシュ、M.ホワイト等が、それぞれクライエントの自律性、家族レジリエンスの有効性に着目している。今後は、それらとソーシャルケースワークとの相互影響過程をより明確にして行く予定である。1.平成12年度に行った「家族の危機と回復」についての大学学部学生対象の自記式調査の結果を再分析し、璃巣期における家族の危機意識の分析を行った。2.個人において、とくに児童期に育まれるとされるレジリエンスの要因に再び注目し、個人のレジリエンスと家族レジリエンスの関連について、考察した。3.1.と2.から得た知見を「家族レジリエンスの臨床的応用に向けて」『関西福祉科学大学紀要』Vol6(2003,3月)において発表した。4.家族レジリエンス尺度作成の予備調査としてWalshが"Strengthen Family Resilience"(1998)において家族レジリエンスの特長として挙げた3分類項目を基にして、9要素44項目の質問項目(Family Resilience Inventory, FRI)を作成し、大学学部学生対象の自記式調査を行った。家族レジリエンス尺度を検討するものとして、FACESKGII-子ども版(立木,1990)およびSCI(ラザラス式ストレスコーピングインベントリー、日本健康心理学研究所)を用いた。 | KAKENHI-PROJECT-13871031 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13871031 |
「家庭レジリエンス」概念の実証的研究によるより機能的な家族援助実践への提言 | 結果はFRIの妥当性を表わすものであったが、より広範な年齢層への調査のために今後質問項目が、より日本的に汎化しやすいものとなるよう再検討する必要があることが考察された。家族レジリエンスとFRIの予備調査の結果分析に関しては平成14年度家族心理学学会第20会大会で口頭発表予定である。5.「家族の危機と回復」について、3名の中年女性への聞き取り調査を行った。3名より「聞き取りの語りの後で気分が楽になった」とのフィードバックを得ており、今後のFRIの項目との整合性を分析し、「語り」の回復力と合わせた今後の聞き取り調査に向けての質問内容、質問形式について、考察した。その結果は「社会福祉学」に投稿予定である。1.平成14年度の作成した家族レジリエンス尺度(Family Resilience Inventory,FRI)の調査・分析を下に、平成15年度家族心理学学会第21会大会において「家族レジリエンスの家族支援の臨床的応用に向けて」の口頭発表を行った。これについては「家族支援に有用であると思われる家族レジリエンス概念を用いた家族機能尺度の作成」という原稿にまとめた(掲載は未定)。2.平成14年度に行った「家族の危機と回復」についての聞き取り調査の分析を進め、「家族レジリエンス尺度作成に向けて」『関西福祉科学大学紀要』Vo17(2004,3月刊行予定)に発表した。3.平成15年12月に、中途障害者とその家埠から聞き取り調査を行い、家族の持つ家族レジリエンスが働くため、医療ソーシャルワーカ」や支援システムの充実が不可欠であることが考察された。4.FRIは臨床に使用されることを目的としている。今日、家族療法においても、社会福祉方法論においてもナラティヴアプローチがもはやメインストリームとなっている感もある。自記式調査であれ、聞きとり調査であれ、家族員が家族の危機的状況を新たに思い起こし、「語る」ことは極めて臨床的な行為である。ゆえに、家族レジリエンス尺度の自己活用の可能性が示唆された。5.調査の対象者が「家族」を語るときの家族は、対象者の時系列的に異なる複数の「家族」であったり、その故に、同じ家族からの同時の聞き取り調査であっても、その対象とする「家族」は異なっている場合がある。また、絶えず変化生成する家族システムの特徴からも、家族の「今、ここ」での資源としての有用性に焦点化することに意義があるのではないかと考察された。6.本家族レジリエンス概念は、従来のコーピング概念や家族ホメオスタシス概念と混同されやすいが、家族は個人と同様に家族内の相互作用のみならず、外部システムとの相互作用も含めて動き、家族レジリエンスは外部システムからの刺激によっても促進されるものである。ゆえに、単に家族解体を避けるためというよりも、一層機能的なシステムとなるためには、家族レジリエンスが働くための外部システムやその相互作用に注目すべきである。家族レジリエンス概念を盛り込んだ新たな支援システム作りについて一層調査、研究を深めたい。 | KAKENHI-PROJECT-13871031 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13871031 |
類似多形をもつ複酸化物セラミックスの特定結晶形薄膜の生成 | 緩和型誘電体であるPb(Mg_<1/3>Nb_<2/3>)O_3(PMN)および強誘電体であるPb(Zr, Ti)O_3(PZT)薄膜は現在精力的に研究が進められている。これらのペロブスカイト型化合物薄膜作製上の共通の問題点として、常誘電体のパイロクロア型化合物が生成し易いという間題点がある。本研究では類似多形であるペロブスカイト型化合物とパイロクロア型化合物が存在する系においてペロブスカイト型化合物を選択的に安定化させた薄膜を作製するための指導原理を検討した。薄膜はPt/IrO_2/SiO_2/Si基板上に作成した。PMN薄膜はPLD法で、PZT薄膜はMOCVD法作成した。その結果、PMN薄膜については、基板上に直接成膜を行ったところ、パイロクロア型化合物の単相薄膜となり、ペロブスカイト型化合物は全く生成しなかった。ところが、基板上に単位格子1数層分という極めて薄いBaTi03シード層を導入したところ、パイロクロア型化合物の生成は完全に抑制され、単相のペロブスカイト型化合物が生成することが明らかになった(基板温度:600°C)。PZT薄膜についてはシード層の導入なしでも基板温度を600°C以上とすると単相のペロブスカイ型化合物が生成したが,基板温度を400°Cまで低下させるとパイロクロア型化合物のみが生成する。ところが、基板上に単位格子1数層分という極めて薄いSrTiO_3シ一ド層を導入したところ、ペロブスカイト型化合物の単相薄膜が得られることを見いだした。さらに、この方法により、M0CVD法ではPZTの結晶化温度を350°Cまで低温化三せることが可能となった。一方、SrTiO_3シード層の膜厚を数十層分と大きくすると、逆にペロブスカイト型化合物の結晶性は著しく低下することが明らかになった。このことは、ペロブスカイト構造の安定化には単にSrTiO_3が必要というわけではなく、微構造や表面エネルギーが重要であることを示唆している。Pb(Mg_<1/3>Nb_<2/3>)O_3(PMN)は緩和型強誘電体(リラクサー)は巨大な誘電定数をもつことが知られ、その薄膜化は重要な技術となっている。しかし、PMNは組成のわずかな変化でパイロクロア型構造が優先的に生成する。この構造は常誘電体である。このような場合にペロブスカイト構造を生成させることが不可欠である。Si基板上にペロブスカイト構造を育成させるにはインターフェースとなるバッファー層が必要である。本研究ではBaTiO_3をバッファー層に用いた。わずか7.2nmの極薄膜のBaTiO_3が存在するだけでペロブスカイト型PMNの成膜に成功した。成膜はパルスレーザーデポジション(PLD)法で、基板はPt/Ti/SiO_2/Si、基板温度は500600°C、酸素分圧は1.8x10^<-1>Torr.PMNの格子定数はバッファー層のBaTiO_3の膜厚が7.2nmから厚くなると急激に増加し、数+nmの厚さで一定になる。一方、BaTiO_3バッファー層が一定厚さの時、PMNの格子定数はPMNの膜厚と共に単調に増加した。次にPLD法を用いて蛍石型構造にペロブスカイト構造を積層させる方法について研究した。Si(001)基板上にYSZ/CeO_2をエピタキシャル成長させた後、ペロブスカイト構造のSrTiO_3の(001)面を成長させることを試みた。その結果、SrOを約0.5nmの厚さでCeO_2の上にバッファー層として導入することにより、SrTiO_3の(001)面をエピタキシャル成長させることに成功した。このメカニズムをクーロンポテンシャルの観点から考察した。緩和型誘電体であるPb(Mg_<1/3>Nb_<2/3>)O_3(PMN)および強誘電体であるPb(Zr, Ti)O_3(PZT)薄膜は現在精力的に研究が進められている。これらのペロブスカイト型化合物薄膜作製上の共通の問題点として、常誘電体のパイロクロア型化合物が生成し易いという間題点がある。本研究では類似多形であるペロブスカイト型化合物とパイロクロア型化合物が存在する系においてペロブスカイト型化合物を選択的に安定化させた薄膜を作製するための指導原理を検討した。薄膜はPt/IrO_2/SiO_2/Si基板上に作成した。PMN薄膜はPLD法で、PZT薄膜はMOCVD法作成した。その結果、PMN薄膜については、基板上に直接成膜を行ったところ、パイロクロア型化合物の単相薄膜となり、ペロブスカイト型化合物は全く生成しなかった。ところが、基板上に単位格子1数層分という極めて薄いBaTi03シード層を導入したところ、パイロクロア型化合物の生成は完全に抑制され、単相のペロブスカイト型化合物が生成することが明らかになった(基板温度:600°C)。 | KAKENHI-PROJECT-12875121 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12875121 |
類似多形をもつ複酸化物セラミックスの特定結晶形薄膜の生成 | PZT薄膜についてはシード層の導入なしでも基板温度を600°C以上とすると単相のペロブスカイ型化合物が生成したが,基板温度を400°Cまで低下させるとパイロクロア型化合物のみが生成する。ところが、基板上に単位格子1数層分という極めて薄いSrTiO_3シ一ド層を導入したところ、ペロブスカイト型化合物の単相薄膜が得られることを見いだした。さらに、この方法により、M0CVD法ではPZTの結晶化温度を350°Cまで低温化三せることが可能となった。一方、SrTiO_3シード層の膜厚を数十層分と大きくすると、逆にペロブスカイト型化合物の結晶性は著しく低下することが明らかになった。このことは、ペロブスカイト構造の安定化には単にSrTiO_3が必要というわけではなく、微構造や表面エネルギーが重要であることを示唆している。 | KAKENHI-PROJECT-12875121 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12875121 |
ブファリンによるヒト癌細胞におけるアポトーシスの誘導機構に関する研究 | 我々は漢方薬として用いられているセンソ中のブファリンがヒト癌細胞に対してアポトーシス誘導能をもつことを見い出し、それにともなうアポトーシス関連遺伝子の変化や分子レベルでのアポトーシス誘導機構についての解析を行った。本研究によって以下の(1)-(2)を明らかにした。(1)アポトーシス関連遺伝子の解析アポトーシスの誘導や抑制に積極的に関与していると考えられる遺伝子(myc、bcl-2)とブファリンによって誘導されるアポトーシスの関係をノーザンブロットにより解析したところ、ブファリン処理によってこれらの両遺伝子の発現はアポトーシスの誘導とともに減少した。ヒト白血球細胞U937に発現ベクターを用いてbc12遺伝子の強制発現を行った株では、ブファリンによるアポトーシス誘導の優位な抑制が見られた。(2)アポトーシスの誘導に関与する新しい遺伝子のクローニングブファリンにより特異的に誘導される遺伝子群のクローニングをデイファレンシャルデイスプレイ法を用いておこなった。現在いくつかの遺伝子のクローニングに成功しており今後これらの遺伝子の解析を進めていきたいと考えている。我々は漢方薬として用いられているセンソ中のブファリンがヒト癌細胞に対してアポトーシス誘導能をもつことを見い出し、それにともなうアポトーシス関連遺伝子の変化や分子レベルでのアポトーシス誘導機構についての解析を行った。本研究によって以下の(1)-(2)を明らかにした。(1)アポトーシス関連遺伝子の解析アポトーシスの誘導や抑制に積極的に関与していると考えられる遺伝子(myc、bcl-2)とブファリンによって誘導されるアポトーシスの関係をノーザンブロットにより解析したところ、ブファリン処理によってこれらの両遺伝子の発現はアポトーシスの誘導とともに減少した。ヒト白血球細胞U937に発現ベクターを用いてbc12遺伝子の強制発現を行った株では、ブファリンによるアポトーシス誘導の優位な抑制が見られた。(2)アポトーシスの誘導に関与する新しい遺伝子のクローニングブファリンにより特異的に誘導される遺伝子群のクローニングをデイファレンシャルデイスプレイ法を用いておこなった。現在いくつかの遺伝子のクローニングに成功しており今後これらの遺伝子の解析を進めていきたいと考えている。 | KAKENHI-PROJECT-07772222 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07772222 |
c-kit抗体MTK1を用いたヒト造血幹細胞の単離と遺伝子導入細胞としての的確性 | 1.抗c-kit (CD117)抗体の作成:ヒト巨核芽急性白血病細胞株M-MOKをBalbcマウスに免疫することによりヒトc-kitに特異性を有する2単クローン抗体、MTK1とMTK2を作成した。2. MTK1抗体による骨髄コロニー形成細胞の濃縮:抗CD34抗体と免疫磁気ビーズ法により、CD34陽性細胞の分離法を確立したあとで、MTK1抗体と免疫磁気ビーズを組み合わせて造血幹細胞の濃縮を試みた。CFU-GMとBFU-Eで検討した結果、c-kit抗体でもコロニー形成細胞の濃縮が可能なことが、明らかになった。3.白血病細胞と白血病細胞株でのc-kitの発現:c-kitは骨髄性白血病細胞の約70%に発現していた。樹立細胞株では4株中4株の巨核芽球性白血病細胞株に優位に発現が認められた。4.骨髄及び臍帯血CD34陽性細胞へのIL-2Rγ鎖の発現:CD34陽性細胞の約40%にIL-2Rγ鎖が存在した。FACSortによりCD34 (+) IL-2Rγ鎖(+)分画とCD34 (+) IL-2Rγ鎖(-)分画に分離すると後者により多いBFU-Eが観察された。5. GM-CSF依存性白血病細胞株M-MOKへのbcr/abl導入実験:造血幹細胞への遺伝子導入の予備実験として、エレクトロポレーション法によりM-MOKにbcr/ablを導入し得た。しかしこのことによりM-MOKをGM-CSF非依存性へと変換することは出来なかった。ヒト造血幹細胞へ遺伝子を導入するためには、標的細胞についてもベクターについても、解決すべき問題点が山積みされているように思われた。1.抗c-kit (CD117)抗体の作成:ヒト巨核芽急性白血病細胞株M-MOKをBalbcマウスに免疫することによりヒトc-kitに特異性を有する2単クローン抗体、MTK1とMTK2を作成した。2. MTK1抗体による骨髄コロニー形成細胞の濃縮:抗CD34抗体と免疫磁気ビーズ法により、CD34陽性細胞の分離法を確立したあとで、MTK1抗体と免疫磁気ビーズを組み合わせて造血幹細胞の濃縮を試みた。CFU-GMとBFU-Eで検討した結果、c-kit抗体でもコロニー形成細胞の濃縮が可能なことが、明らかになった。3.白血病細胞と白血病細胞株でのc-kitの発現:c-kitは骨髄性白血病細胞の約70%に発現していた。樹立細胞株では4株中4株の巨核芽球性白血病細胞株に優位に発現が認められた。4.骨髄及び臍帯血CD34陽性細胞へのIL-2Rγ鎖の発現:CD34陽性細胞の約40%にIL-2Rγ鎖が存在した。FACSortによりCD34 (+) IL-2Rγ鎖(+)分画とCD34 (+) IL-2Rγ鎖(-)分画に分離すると後者により多いBFU-Eが観察された。5. GM-CSF依存性白血病細胞株M-MOKへのbcr/abl導入実験:造血幹細胞への遺伝子導入の予備実験として、エレクトロポレーション法によりM-MOKにbcr/ablを導入し得た。しかしこのことによりM-MOKをGM-CSF非依存性へと変換することは出来なかった。ヒト造血幹細胞へ遺伝子を導入するためには、標的細胞についてもベクターについても、解決すべき問題点が山積みされているように思われた。1)ヒト造血幹細胞の単離:骨髄あるいは臍帯血由来単核球分画より、二次抗体結合免疫磁気ビーズと抗CD34抗体の組み合わせにより、造血幹細胞分画を得た。骨髄由来単核球分画を用いた場合CD34陽性細胞の純度は84.5±6.0%、臍帯血由来単核球分画を用いた場合のそれは82.3±13.0%であった。IL-2レセプターγ鎖(IL-2Rγ)はIL-2のみならずIL-4、IL-7、IL-9、IL-15にも共通のシグナル伝達分子である。IL-2Rγの造血系への関与を検討するためにCD34陽性細胞でのIL-2Rγの発現を調べた。骨髄由来CD34陽性細胞では38.5±10.5%(n=6)、臍帯血由来CD34陽性細胞で35.5±12.8%(n=11)にIL-2Rγの発現が認められた。FACSortを用いてCD34(+)IL-2Rγ(+)とCD34(+)IL-2Rγ(-)の2分画にsort後、CFU-GMとBFU-Eアッセイを行い、それぞれの分画の造血幹細胞の症状について調べた。その結果CD34(+)IL-2Rγ(-)の分画には、既に赤血球系にコミットしたより未分化な赤血球系前駆細胞の存在が予想された。造血幹細胞への遺伝子導入:リポフェクチン法とエレクトロポレーション法によりヒト白血病細胞株にbcr/abl遺伝子を導入した。G418にて選択すると、遺伝子移入細胞は1-5x10^4に一個程度は一過性にbcr/ablを発現し、最終的には1-5x10^5に一個程度の効率で安定したトランスフェクタントを得ることが出来た。トランスフェクタントはG418共存下で継代培養を続けないと、容易に導入遺伝子を失う傾向にあった。 | KAKENHI-PROJECT-06454295 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06454295 |
c-kit抗体MTK1を用いたヒト造血幹細胞の単離と遺伝子導入細胞としての的確性 | 今後トランスフェクションのみならず、より効率の良いAAVおよびレトロウイルスベクター系の開発をさらに進展させる必要があると思われた。1.抗c-kit(CD117)抗体の作成:ヒト巨核芽急性白血病細胞株M-MOKをBalb/cマウスに免疫することによりヒトc-kitに特異性を有する2単クローン抗体、MTK1とMTK2を作成した。2.MTK1抗体による骨髄コロニー形成細胞の濃縮:抗CD34抗体と免疫磁気ビーズ法により、CD34陽性細胞の分離法を確立したあとで、MTK1抗体と免疫磁気ビーズを組み合わせて造血幹細胞の濃縮を試みた。CFU-GMとBFU-Eで検討した結果、c-kit抗体でもコロニー形成細胞の濃縮が可能なことが、明らかになった。3.白血病細胞と白血病細胞株でのc-kitの発現:c-kitは骨髄性白血病細胞の約70%に発現していた。樹立細胞株では4株中4株の巨核芽球性白血病細胞株に優位に発現が認められた。4.骨髄及び臍帯血CD34陽性細胞へのIL-2Rγ鎖の発現:CD34陽性細胞の約40%にIL-2Rγ鎖が存在した。FACSortによりCD34(+)IL-2Rγ鎖(+)分画とCD34(+)IL-2Rγ鎖(-)分画に分離すると後者により多いBFU-Eが観察された。GM-CSF依存性白血病細胞株M-MOKへのbcr/abl導入実験:造血幹細胞への遺伝子導入の予備実験として、エレクトロポレーション法によりM-MOKにbcr/ablを導入し得た。しかしこのことによりM-MOKをGM-CSF非依存性へと変換することは出来なかった。ヒト造血幹細胞へ遺伝子を導入するためには、標的細胞についてもベクターについても、解決すべき問題点が山積みされているように思われた。 | KAKENHI-PROJECT-06454295 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06454295 |
重度知的障害の染色体転座部位に局在するPLEKHA5の機能解析 | 昨年までの研究において、PLEKHA5が重度知的障害の症例の染色体転座部位に局在することを明らかにした。PLEKHA5が本症の病因遺伝子であることが示唆された。本年度は、PLEKHA5の脳神経細胞における役割と、PLEKHA5の異常による本症の病態を明らかにする目的で、以下の研究を行った。1)マウス海馬初代神経培養細胞におけるPlekha5の発現抑制の影響マウスPlekha5の発現を抑制するsiRNAを産生する発現ベクター(pSUPER-Plekha5)を作製し、胎生17.5日(E17.5)のマウス海馬初代神経培養細胞に導入し、16、24、48、72時間後と5日後に生存細胞数を測定した。Plekha5の発現が抑制された神経細胞では、コントロールに比較して顕著な生存細胞数の減少(72時間後にコントロールの約20%)が見られた。さらに生存していた細胞の形態を解析したところ、Plekha5を発現抑制した神経細胞では、コントロールに比較して細胞体の長径よりも短い神経突起を持つ神経細胞の割合が顕著に高くなっていた(コントロール細胞:7.5%、Plekha5発現抑制細胞:44.5%)。Plekha5はPHドメインを持ち、フォスファチジルイノシトールリン脂質(PIP)に結合することが予想される。Plekha5蛋白質のPIP結合特異性を明らかにするために、まず完全長の同遺伝子のcDNAの単離を行った。マウスcDNAライブラリーよりPCR法を用いてPlekha5 cDNAを増幅した。その結果、多くのスプライシングヴァリアントが同定されたが、最終的に本研究中にNCBIデータベースにおいて新しく発表となった完全長のcDNA(3810bp、1270アミノ酸をコード)を単離した。昨年までの本研究において、染色体6q16と12p12に相互転座が見られる重度知的障害の症例の12p12の転座断点部位に、PLEKHA5遺伝子が局在することを明らかにし、PLEKHA5が本症の病因遺伝子である可能性を示唆した。そこでPLEKHA5の脳神経細胞における役割と、PLEKHA5の異常による本症の病態を明らかにする目的で、本年度は以下の研究を行った。(1)PLEKHA5はフォスファチジルイノシトールリン酸(PIP)と結合するPHドメインを持つ約127.5kDaの蛋白質をコードしている。PLEKHA5蛋白質のPIP結合特異性を明らかにするためにHis-tag、Flag-tag融合蛋白質を発現するベクターを作製し、293細胞に導入して融合蛋白質を発現させた。同蛋白質を用いてPIP結合を調べたが、Tagが非特異的にPIPに結合し解析不能であった。(2)PLEKHA5タンパク質の細胞内在を調べるために、GFP融合PLEKHA5蛋白質を発現するベクターを作製した。このベクターを293細胞に導入し、GFPの蛍光を観察した結果、核以外の細胞質全体にGFPの蛍光が認められた。(3)PLEKHA5に特異的なsiRNAを発現するベクターを作製した。神経細胞のモデルであるNeuro2a細胞にRetinoic acidを投与して神経突起を誘導させ、siRNAによるPLEKHA5の神経突起伸長への影響を調べた。PLEKHA5の発現抑制により神経突起の伸長が抑制され、神経突起伸長に同蛋白質が重要な役割をしていると考えられた。昨年までの研究において、PLEKHA5が重度知的障害の症例の染色体転座部位に局在することを明らかにした。PLEKHA5が本症の病因遺伝子であることが示唆された。本年度は、PLEKHA5の脳神経細胞における役割と、PLEKHA5の異常による本症の病態を明らかにする目的で、以下の研究を行った。1)マウス海馬初代神経培養細胞におけるPlekha5の発現抑制の影響マウスPlekha5の発現を抑制するsiRNAを産生する発現ベクター(pSUPER-Plekha5)を作製し、胎生17.5日(E17.5)のマウス海馬初代神経培養細胞に導入し、16、24、48、72時間後と5日後に生存細胞数を測定した。Plekha5の発現が抑制された神経細胞では、コントロールに比較して顕著な生存細胞数の減少(72時間後にコントロールの約20%)が見られた。さらに生存していた細胞の形態を解析したところ、Plekha5を発現抑制した神経細胞では、コントロールに比較して細胞体の長径よりも短い神経突起を持つ神経細胞の割合が顕著に高くなっていた(コントロール細胞:7.5%、Plekha5発現抑制細胞:44.5%)。Plekha5はPHドメインを持ち、フォスファチジルイノシトールリン脂質(PIP)に結合することが予想される。Plekha5蛋白質のPIP結合特異性を明らかにするために、まず完全長の同遺伝子のcDNAの単離を行った。マウスcDNAライブラリーよりPCR法を用いてPlekha5 cDNAを増幅した。その結果、多くのスプライシングヴァリアントが同定されたが、最終的に本研究中にNCBIデータベースにおいて新しく発表となった完全長のcDNA(3810bp、1270アミノ酸をコード)を単離した。 | KAKENHI-PROJECT-17790087 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17790087 |
情動、動き、行為、意識性の総合的生体情報研究 | 春木・鈴木・石井(1991)では大学生における姿勢の現状を調査で、姿勢の形状とうつ傾向に何らかの関係が推測され、鈴木、春木(1992)では、駆幹と顔の角度を変化させると気分が変化することが指摘された。本研究では姿勢を含めた「からだ」の状態・イメージ・動作や姿勢などの自己評価と意識性との関係、歩行の仕方と意識性との関係について、上記の結果と同様の関係が得られるかを調べた。「からだ」に対するイメージ調査では、調査対象を大学生としたため、自分の「からだ」に対して敏感で、若々しく、生き生きした、動きのある、明るいイメージをもっていた。「からだ」からのメッセージに対しては、不調感、痛みについては女性の方が敏感で、緊張感については、男性の方が敏感であると評価していた。また、うつ尺度と「からだ」に対する意識性との関係では、従来の研究同様、うつ傾向が高いほど、下を向き、姿勢に対する評価もnegativeであった。さらに、うつ傾向と「肩を落とす」「肩身が狭い」「背水の陣である」などのからだ言葉に対する評価との相関が認められた。この関係を解明するために、この「からだ言葉」と意識性との関係について詳細な分析が今後の課題である。歩行については、男女大学生に、うつ尺度、外股か内股か、歩く速度、他者からの歩き方についての評価などに関する歩行の調査を実施。その中から、自分の歩き方について、外股あるいは内股で歩いていると評価しているものを抽出し、実験の対象とした。普段の歩き方で歩行後、外股のものは内股に、内股のものは外股に変えて歩き、そのときの気分を意識性評定尺度に5段階で評定。歩行スタイルの変化によって意識性が変化することがわかり、躯幹と顔の角度変化と意識性の関係で得られた結果を支持するものであった。春木・鈴木・石井(1991)では大学生における姿勢の現状を調査で、姿勢の形状とうつ傾向に何らかの関係が推測され、鈴木、春木(1992)では、駆幹と顔の角度を変化させると気分が変化することが指摘された。本研究では姿勢を含めた「からだ」の状態・イメージ・動作や姿勢などの自己評価と意識性との関係、歩行の仕方と意識性との関係について、上記の結果と同様の関係が得られるかを調べた。「からだ」に対するイメージ調査では、調査対象を大学生としたため、自分の「からだ」に対して敏感で、若々しく、生き生きした、動きのある、明るいイメージをもっていた。「からだ」からのメッセージに対しては、不調感、痛みについては女性の方が敏感で、緊張感については、男性の方が敏感であると評価していた。また、うつ尺度と「からだ」に対する意識性との関係では、従来の研究同様、うつ傾向が高いほど、下を向き、姿勢に対する評価もnegativeであった。さらに、うつ傾向と「肩を落とす」「肩身が狭い」「背水の陣である」などのからだ言葉に対する評価との相関が認められた。この関係を解明するために、この「からだ言葉」と意識性との関係について詳細な分析が今後の課題である。歩行については、男女大学生に、うつ尺度、外股か内股か、歩く速度、他者からの歩き方についての評価などに関する歩行の調査を実施。その中から、自分の歩き方について、外股あるいは内股で歩いていると評価しているものを抽出し、実験の対象とした。普段の歩き方で歩行後、外股のものは内股に、内股のものは外股に変えて歩き、そのときの気分を意識性評定尺度に5段階で評定。歩行スタイルの変化によって意識性が変化することがわかり、躯幹と顔の角度変化と意識性の関係で得られた結果を支持するものであった。 | KAKENHI-PROJECT-05610074 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05610074 |
医療応用を目指したインテリジェント微小分析チップシステムに関する研究 | 前年度までの研究において、試作チップの詳細な性能評価を行った結果、血液検査チップとしての有効性が証明されたが、更なる改良の余地が見出された。そこで今年度は、この点を考慮した設計変更を行い、さらなる特性向上を目指した改良型のチップを設計、試作、評価した。改良型のチップには複数の吸光光度測定センサが集積化されており、これらを組み合わせることで参照溶液の不要化を実現した。これによりチップの使用方法が大幅に簡略化され、実用を目指すうえで大きな利点となる。さらに前年度中に検討済みの搭載要素である同期検出機構について詳細な回路設計、シミュレーションを行い、チップ内に集積化した。また、従来チップでは手作業によっていた溶液前処理をチップ内で行う為、溶液温度制御機構を備えた2溶液混合-反応流路をチップ内に形成した。上記特徴を持つマイクロチップの作製には、MOS集積回路とMEMS要素の一体化という特殊技術が必須である。そこで、豊橋技術科学大学の半導体研究設備を活用し、また前年度までに蓄積したチップ作製プロセス技術をベースにして、今回設計したチップに適合するようにプロセスを変更し、チップの作製に成功した。作製チップの特性評価を行ったところ、MOS集積回路は設計どおりに動作し、同期検出機構は良好な雑音除去特性を示した。またセンサ部分の評価においては、参照溶液の不要化を実現したことを実験的に明らかにした。直線性評価、ダイナミックレンジ評価において、試作チップが血液検査用として十分な特性を持っていることが明らかになったが、測定再現性についてはより詳細な測定および検討が必要である。本研究では「医療応用を目指したインテリジェント微小分析チップシステム」の実現を目指し、「センサ」、「微小流体技術」、「CMOS集積回路」といったアプローチによって研究を進めた。前年度までの研究で開発し、実績のあるヘモグロビン量センサの基本原理を踏襲し、より高感度高分解能化を図るため、性能を決める受光素子を大幅に変更した。設計段階において素子構造の見直し並びに、不純物濃度の最適化を図り、プロセスシミュレーション等によってデバイス特性を議論した。その後、豊橋技術科学大学固体機能デバイス研究施設を利用して実際に素子の試作を行った。改良した受光素子は、作製プロセス最適化などを含めた各種改良の相乗効果により、従来組み込んでいた受光素子と比較して暗電流の大幅な低減、感度の向上が確認できた。これにより高いS/N比での信号検出が可能になった。この事はより低濃度のヘモグロビン量がより正確に測定可能になったことを意味する。また信号処理回路として、目的の信号成分のみを増幅するロックインアンプについて検討を行った。開発中のマイクロチップに集積化することを想定して回路の基本構成を検討し、より高度な信号処理をチップ内で実現するシステムへと発展させるのに必要な知見を得た。また、かねてから問題となっていた試作チップの評価については、流体を取り扱うチップの評価に適した測定環境の構築を行った。これにより測定に必要な時間が大幅に短縮され、簡便かつ正確な評価が可能になった。前年度までの研究において、より高感度、高分解能化を図るため、性能を決める受光素子を大幅に変更した。改良した受光素子は、作製プロセス最適化などを含めた各種改良の相乗効果により、従来組み込んでいた受光素子と比較して暗電流の大幅な低減、感度の向上が確認できた。これにより高いS/N比での信号検出が可能になった。この事はより低濃度領域での血液検査がより正確に測定可能になったことを意味する。前年度までは安全上の問題などにより擬似血液を用いて作製したチップの性能評価を行ってきたが、チップが実用化に近づいたことを踏まえ本年度は、本物の血液サンプルを用いて、作製チップの詳細な性能評価を行った。その結果、人間の正常域を含む広い測定範囲において、大変良好な直線性が確認できた。またその再現性は十二分に満足できるものであり、血液検査チップとしての有効性が証明された。繰り返し測定に対する耐久性の測定においても満足できる結果が得られたが、その過程で更なる改良の余地を見出すことに成功した。上記測定と同時に、最終目標とするインテリジェント微小分析チップには欠かすことのできない、CMOS信号処理回路、周辺インタフェース回路などについても前年度に引き続き検討を行った。高機能、高性能化に向けた回路的なアプローチは本研究の特色の1つであり、独自性の強いものである。来年度に試作を予定している次期チップへの搭載要素を決定する段階まで到達することができ、今後詳細な回路設計に入る段階である。また、上記測定で得られた新しい知見より、システム全体の構成を改良することでより簡便かつ高性能なチップを構成できる予測が得られた。この改良案についても、次期試作で盛り込むべく、現在鋭意検討中である。前年度までの研究において、試作チップの詳細な性能評価を行った結果、血液検査チップとしての有効性が証明されたが、更なる改良の余地が見出された。そこで今年度は、この点を考慮した設計変更を行い、さらなる特性向上を目指した改良型のチップを設計、試作、評価した。改良型のチップには複数の吸光光度測定センサが集積化されており、これらを組み合わせることで参照溶液の不要化を実現した。これによりチップの使用方法が大幅に簡略化され、実用を目指すうえで大きな利点となる。さらに前年度中に検討済みの搭載要素である同期検出機構について詳細な回路設計、シミュレーションを行い、チップ内に集積化した。 | KAKENHI-PROJECT-03J50501 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03J50501 |
医療応用を目指したインテリジェント微小分析チップシステムに関する研究 | また、従来チップでは手作業によっていた溶液前処理をチップ内で行う為、溶液温度制御機構を備えた2溶液混合-反応流路をチップ内に形成した。上記特徴を持つマイクロチップの作製には、MOS集積回路とMEMS要素の一体化という特殊技術が必須である。そこで、豊橋技術科学大学の半導体研究設備を活用し、また前年度までに蓄積したチップ作製プロセス技術をベースにして、今回設計したチップに適合するようにプロセスを変更し、チップの作製に成功した。作製チップの特性評価を行ったところ、MOS集積回路は設計どおりに動作し、同期検出機構は良好な雑音除去特性を示した。またセンサ部分の評価においては、参照溶液の不要化を実現したことを実験的に明らかにした。直線性評価、ダイナミックレンジ評価において、試作チップが血液検査用として十分な特性を持っていることが明らかになったが、測定再現性についてはより詳細な測定および検討が必要である。 | KAKENHI-PROJECT-03J50501 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03J50501 |
ロマン主義的批評-Fr.シュレーゲルとシューマンを手掛りとする超分野的批判の試み | 本年度は、Fr.シュレーゲルのイロニーおよびアラベスク概念に関する論考を二本提出している。第一のものはティークの『長靴を履いた牡猫』をロマン的イロニーとの連関のうちに分析した「エルゴンなきパレルゴン-ティークの『牡猫』における"イロニー"」(『シェリング論集第5集』)である。ドイツ文学批評史がこれまで、『牡猫』をロマン的イロニーが駆使された典型的作品とみなし、それをいわば定式のように語ってきた一方で、当のシュレーゲルが一言足りともそのような言説を残していない-この事実は従来見逃されてきたか、あるいは意図的に等閑に付されてきた-この矛盾を論述の起点とし、原因を解明しようと試みたものである。「自己創造と自己破壊の絶え間ない交代」というシュレーゲル自身のイロニー定義に鑑みるとき、このディアレクティークの成立に不可欠である自己創造のモメントが『牡猫』に欠けているという仮説を提起し、作品分析を通じてこれを証明している。ロマン的イロニー理解における一つの歴史的な誤解を指摘したものである。第二の論考は「Fr.シュレーゲルのアラベスク概念解明のために-セルバンテスとスターンを中心として」(『詩・言語』第64号)である。批評を内在させる芸術作品において、イロニーは自己批判的、自己破壊的な契機を、アラベスクは種々の諸要素をつなぎとめる構築的契機を担い、両者は一対のものとして、いわば理論を内包する混沌たるロマン主義芸術作品を成立させる不可欠の要素となっているにもかかわらず、その一翼を担うアラベスクの究明は、従来の研究においてなおざりにされてきた。本論考はあえてドイツ文学の域を超え、シュレーゲルがアラベスク的と批評したセルバンテスとスターンの作品の中から、『ドン・キホーテ』『トリストラム・シャンディ』を分析対象として取り上げ、両作品に通底する作品構成に着目しつつ、アラベスク概念の解明を試みたものである。本研究はFr.シュレーゲル及びR.シューマンを中心的研究対象として、ドイツ・ロマン主義に内在する二つの問題-第一にロマン主義的芸術批評、そして第二に、その芸術批評を媒体とする、文学と音楽の、美学理論上、実作上の影響関係-を、超ジャンル的視座より解明しようとするものである。本年度はシュレーゲルの批評理論分析を主要な研究課題とし、その成果を「イロニーの原理-ロマン主義芸術試論」(「詩・言語」第61号)として発表した。本論はまずシュレーゲルの批評理論のうちで、イロニーが止揚対象とする「詩言語における制約」を二つに分類し、「第一の制約」が「言葉の意味内容」であることを示す。そして「第二の制約」の見極めに際して、本稿は、従来のイロニー研究では(イロニーを客観的原理であると主張する場合であれ、主観的原理であると主張する場合であれ)芸術家の「主観性」として一つにまとめられていたものを、「経験的主観性」(一般的語法での主観性に相当)と「美的主観性」(普遍妥当性を有するものであり、シュレーゲルの術語ではゲニウスに相当する。その要請は、芸術作品において芸術の理念が自らを開示しようという働きに一致する)に二分し、この区分のもとに改めてシュレーゲルの理論を分析した結果、イロニーを要請する真の主体が「美的主観性」であること、そしてイロニーとは芸術創作における「経験的主観性」の関与を否定し(その手段は、「経験的主観性」の創作した一構成部分への、矛盾する構成部分の対置。つまり作品内への内在的破壊要素の導入)、芸術作品を客観化し、理念へと高次化させる手段であることを導き出した。芸術家の「経験的主観性」-詩芸術における第二の制約-は詩芸術のみならず音楽を含む諸芸術の制約でもあるため、本論は、ロマン的イロニーが音楽芸術に応用される為の理論的前提を提示する研究としての意義をも持つ。本年度は、Fr.シュレーゲルのイロニーおよびアラベスク概念に関する論考を二本提出している。第一のものはティークの『長靴を履いた牡猫』をロマン的イロニーとの連関のうちに分析した「エルゴンなきパレルゴン-ティークの『牡猫』における"イロニー"」(『シェリング論集第5集』)である。ドイツ文学批評史がこれまで、『牡猫』をロマン的イロニーが駆使された典型的作品とみなし、それをいわば定式のように語ってきた一方で、当のシュレーゲルが一言足りともそのような言説を残していない-この事実は従来見逃されてきたか、あるいは意図的に等閑に付されてきた-この矛盾を論述の起点とし、原因を解明しようと試みたものである。「自己創造と自己破壊の絶え間ない交代」というシュレーゲル自身のイロニー定義に鑑みるとき、このディアレクティークの成立に不可欠である自己創造のモメントが『牡猫』に欠けているという仮説を提起し、作品分析を通じてこれを証明している。ロマン的イロニー理解における一つの歴史的な誤解を指摘したものである。第二の論考は「Fr.シュレーゲルのアラベスク概念解明のために-セルバンテスとスターンを中心として」(『詩・言語』第64号)である。 | KAKENHI-PROJECT-04J10449 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04J10449 |
ロマン主義的批評-Fr.シュレーゲルとシューマンを手掛りとする超分野的批判の試み | 批評を内在させる芸術作品において、イロニーは自己批判的、自己破壊的な契機を、アラベスクは種々の諸要素をつなぎとめる構築的契機を担い、両者は一対のものとして、いわば理論を内包する混沌たるロマン主義芸術作品を成立させる不可欠の要素となっているにもかかわらず、その一翼を担うアラベスクの究明は、従来の研究においてなおざりにされてきた。本論考はあえてドイツ文学の域を超え、シュレーゲルがアラベスク的と批評したセルバンテスとスターンの作品の中から、『ドン・キホーテ』『トリストラム・シャンディ』を分析対象として取り上げ、両作品に通底する作品構成に着目しつつ、アラベスク概念の解明を試みたものである。 | KAKENHI-PROJECT-04J10449 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04J10449 |
拡散テンソル画像による神経筋疾患の非侵襲的病勢評価方法確立 | 正常骨格筋とミオパチー部の拡散テンソルパラメータを比較するとfractional anisotropyは約38%の低下、λ1は約59%、λ2は約69%、λ3は約79%の増加を認めた。この結果、拡散テンソル画像はミオパチー病変の同定に有用と考えられた。しかし、装置によってパラメータ値に30%程度の差が認められるので、絶対値の比較や病変の閾値設定には注意が必要である。正常骨格筋とミオパチー部の拡散テンソルパラメータを比較するとfractional anisotropyは約38%の低下、λ1は約59%、λ2は約69%、λ3は約79%の増加を認めた。この結果、拡散テンソル画像はミオパチー病変の同定に有用と考えられた。しかし、装置によってパラメータ値に30%程度の差が認められるので、絶対値の比較や病変の閾値設定には注意が必要である。正常ボランティアの下腿前脛骨筋・腓腹筋内側頭・ヒラメ筋の拡散テンソルパラメータを計測した。Natural positionでは、前脛骨筋のfractional anisotropyは0.289±0.029,λ1は2.19±0.144,λ2は1.48±0.095,λ3は1.27±0.092、腓腹筋内側頭のfractional anisotropyは0.242±0.029,λ1は1.95±0.036,λ2は1.47±0.128,λ3は1.24±0.083、ヒラメ筋のfractional anisotropyは0.233±0.017,λ1は2.04±0.127,λ2は1.52±0.074,λ3は1.28±0.091であった。Positioningによってテンソルパラメータに差が生じることが分かったので、患者での撮像時には注意が必要である。ミオパチー患者の骨格筋病変部と正常と考えられる対照骨格筋のdiffusiontensor imagingを施行し、以下の結果を得た。Fractional anisotropy:に関しては、病変部は0.34±0.12(0-0.584)、正常部は0.554±0.149(0.281-0.891)であった。病変が進行してしまうとdiffusion tensor解析に十分な画質の画像を撮像することが困難な症例が多くなってしまう。装置の計算アルゴリズムの問題と思われるが、本来ありえないマイナス数値が計算結果として表示されてしまうことがまれに生じる。25年度が最終年度であるため、記入しない。研究施設の移動に伴って基礎データの検討から始めることになり多少時間はかかっているが、本年度、Philips社のMRI導入が決まっており今後は順調に遂行可能と考えている。昨年11月以降所属組織が変わったため、MRI装置が他社製になってしまった。コントロールから再度データを取り直す必要がある。同時に、研究組織に新たなメンバー(神経内科医・MRIに熟達した放射線技師等)を加えて組織を再編する必要がある。25年度が最終年度であるため、記入しない。本年度、新たにPhilips社のMRI装置導入後に、基礎・臨床データを計測予定である。昨年度の計測結果で、うっ血状態でDTI parametersの有意な低下を認めた。現在この解釈に向けた新たな研究を考案中であるが、過去にこの様なデータの発表はなく新たな研究の端緒となる可能性が期待される。 | KAKENHI-PROJECT-22591341 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22591341 |
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