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数値空力音響解析による航空機エンジン騒音の伝播に関する研究 | 本研究の目的は,直交格子に基づく騒音伝播解析ソルバーを構築し,実際の航空機に近い状態でエンジンから発生する騒音の伝播を流れ場も含めて解析することである.本年度は,構築したソルバーでの低騒音航空機形態の最適化,乱流騒音解析手法の高度化,フラップ,スラットなどの高揚力装置を展開させた航空機に対する騒音伝播解析の三つを行った.まず,構築したソルバーでの低騒音航空機形態の最適化を行った.対象とした低騒音航空機形態はエンジンナセルを主翼上面に取り付けたOver-the-Wing Nacelle形態であり,これに関する設計探査は昨年度行っている.今年度は,巡航時における揚抗比の最大化,ナセル単体の抵抗の最小化,機体下方における騒音の最小化を目的として最適化を行った.その結果,昨年度よりも最適なナセル位置の探査に成功した.最後に,昨年度まで構築していた騒音伝播解析ソルバーを用いて,実機におけるファン騒音機体搭載効果解析技術の開発と検証を行った.ソルバーの大規模並列化への対応を行うことで約11億点の格子点での解析を実現した.27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。本研究の目的は,直交格子に基づく騒音伝播解析ソルバーを構築し,実際の航空機に近い状態でエンジンから発生する騒音の伝播を流れ場も含めて解析することである.去年度までの研究では,境界埋め込み法を用いて,複雑形状周りの騒音伝播を高精度に解析できるソルバーを構築し,実験値や他の計算結果と比較することでその有用性を示した,本年度はこれを発展させ,構築した騒音伝播解析ソルバーに,オイラー方程式ソルバーによって得られる流れ場の物理量を取り入れ,流れ場のある状態での騒音伝播の解析を行った.そのために以下のことを行った.まず,オイラー方程式ソルバーによる流れ場の解析では,エンジン流れの流入境界条件を設定する必要がある.従来の境界埋め込み法による解析では,物体かそれ以外かしか判定できないため,一つの境界条件しか設定できなかったが,本研究ではこれを発展させ,あらかじめ入力する物体境界データにフラグを設定することにより,壁面における境界条件の場合分けを可能にした.これにより,流入流れ場のあるエンジンナセルの流れ場解析が可能となった.次に,騒音伝播解析ソルバーにおいて,境界埋め込み法を用いて流れ場のある騒音伝播解析を行った例は少なく,境界における流れ場の取り扱いなどは不明瞭であった.いくつかの壁面境界条件の取り扱いを試行した結果,壁面において滑り壁境界条件を設定するために,壁面内部まで流れ場を再計算することで,安定かつ高精度に解析することが可能であることが明らかになった.最終的に,ファン面においてマッハ数0.27の流入流れ場のあるナセルから発生するファン騒音を解析し,遠方場における音圧レベルを実験値や他の計算結果と比較した.本ソルバーにより得られた計算結果は実験値と良好に一致し,本研究において構築した流れ場のある騒音伝播解析手法の有効性が示された.去年度までの研究では,境界埋め込み法を用いて,複雑形状周りの騒音伝播を高精度,実用的に解析できる基盤ソルバーを構築したため,本年度はこの基盤ソルバーを中心に発展させ,乱流騒音解析手法の検証,低騒音航空機形態の解析を行った.前年度構築した乱流騒音解析手法の検証を行った.構築した解析手法はStochastic Noise Generation and Radiationモデルと言い,流れ場の解析と,乱流騒音源の発生,発生した騒音の伝播を分離して解析する.最初に,合成渦法により乱流場を発生させ,直接数値解析により得られた乱流場の特性値と比較することにより,その有用性を確認した.この際,従来用いられてきた乱流場発生手法と今回提案した手法を比較し,解析精度,計算時間を比較した.その結果,提案手法は他の従来手法よりも高精度に直接数値解析の結果を模擬しており,また,計算時間を従来手法よりも約30%低減することが確認できた.低騒音航空機形態としてOver-the-Wing Nacelle形態においてエンジン騒音遮蔽効果と空力性能の向上を目的とした解析や設計探査を行った.まず,翼上面にエンジンナセルを取り付けた航空機形態の騒音低減に対する有効性を示すために,サウサンプトン大学において行われた無響室内での実験条件を再現した数値解析を行った.いくつかのナセル位置における翼下面での騒音遮蔽量を解析し,周波数帯ごとに騒音遮蔽特性を実験値と比較した.次に,ナセル前後位置,上下位置を変数として,応答局面手法を用いた設計探査を行った.騒音遮蔽効果の最大化と空力性能の最大化はトレードオフの関係にあり,ナセルと翼を近づけるほど騒音遮蔽量は増大するが,空力性能に関しては翼よりも後方にナセルを配置することにより,ナセルと翼の間の高速な流れ場が発生し翼に効果的に推力が発生することが分かった.本研究の目的は,直交格子に基づく騒音伝播解析ソルバーを構築し,実際の航空機に近い状態でエンジンから発生する騒音の伝播を流れ場も含めて解析することである.本年度は,構築したソルバーでの低騒音航空機形態の最適化,乱流騒音解析手法の高度化,フラップ,スラットなどの高揚力装置を展開させた航空機に対する騒音伝播解析の三つを行った.まず,構築したソルバーでの低騒音航空機形態の最適化を行った.対象とした低騒音航空機形態はエンジンナセルを主翼上面に取り付けたOver-the-Wing Nacelle | KAKENHI-PROJECT-13J09225 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13J09225 |
数値空力音響解析による航空機エンジン騒音の伝播に関する研究 | 形態であり,これに関する設計探査は昨年度行っている.今年度は,巡航時における揚抗比の最大化,ナセル単体の抵抗の最小化,機体下方における騒音の最小化を目的として最適化を行った.その結果,昨年度よりも最適なナセル位置の探査に成功した.最後に,昨年度まで構築していた騒音伝播解析ソルバーを用いて,実機におけるファン騒音機体搭載効果解析技術の開発と検証を行った.ソルバーの大規模並列化への対応を行うことで約11億点の格子点での解析を実現した.当初計画していた研究項目に対して,本年度はおおむね100%達成することができた.構築したソルバーでの解析は安定してきており,並列化,大規模化もすでに達成されている.解析精度に関しても新しい手法を提案することにより,精度向上を行った.構築したソルバーを用いて,従来より予定されていた発展的な研究にも着手しており,着実に研究が進んできることを実感できている.27年度が最終年度であるため、記入しない。次年度は,今年度進めていた低騒音航空機形態の設計探査をさらに進め,新しい航空機形態を提案する予定である.この設計探査は,ひとつのケースを計算するのに大きな計算コストを必要とするため,他の研究者と連携して,学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点公募型共同研究などに応募し,計算資源を確保することにより対応する.また,東北大学サイバーサイエンスセンターと共同研究を結ぶことによりセンター所有の最新型ベクトルコンピュータSXーACEを割引料金で使用できる.当初計画していた研究項目に対して,本年度は70パーセント程度の進捗であった.研究の遅れた主な原因としては,解析ソルバーの構築に時間がかかったことと,大規模な計算格子を用いた解析にソルバーが対応していなかったことである.本年度はこれらの課題への対応に時間が割かれていたが,それでも70パーセント程度の進捗を達成することができたため,研究はおおむね順調に進展していると言える.27年度が最終年度であるため、記入しない。次年度は,ジェット騒音の解析手法の構築を行う.構築する解析手法はStochastic Noise Generation and Radiation (SNGR)モデルと言い,流れ場の解析と,乱流騒音源の発生,発生した騒音の伝播を分離して解析する.物体付近の境界層流れ場を正確に解析するために,既存の非構造格子ソルバーを用いて流れ場を解析し,合成渦法により騒音源を発生させ,騒音解析ソルバーにより発生した騒音の伝播を解析する.合成渦法は主にLarge Eddy Simulationにおける流入境界条件として用いられており,騒音源の発生に用いられている例はない.したがってまず,合成渦法により乱流場を発生させ,直接数値解析により得られた乱流場の特性値と比較することにより,その有用性を確認する,次に,単純な噴流に対してSNGRモデルを適用し,騒音の発生とその発生メカニズムを確認する.最後に, SNGRモデルをジェット騒音に適用することにより,解析精度を確認する予定である. | KAKENHI-PROJECT-13J09225 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13J09225 |
カテコールアミン心筋障害におけるコネキシン43の関与 | 心交感神経活性の亢進は、心筋収縮不全や心筋傷害といったカテコールアミン心筋障害を引き起こす。本研究では、カテコールアミンの過剰分泌や虚血によって引き起こされると考えられている収縮帯壊死がギャップ結合を介して伝播する機序を解明した。ギャップ結合を構成するコネキシン43が虚血により介在板で増加し、ギャップ結合を介した細胞間情報伝達を活性化することにより、収縮帯壊死がこの活性化したギャップ結合を介して伝播していた。心交感神経活性の亢進は、心筋収縮不全や心筋傷害といったカテコールアミン心筋障害を引き起こす。本研究では、カテコールアミンの過剰分泌や虚血によって引き起こされると考えられている収縮帯壊死がギャップ結合を介して伝播する機序を解明した。ギャップ結合を構成するコネキシン43が虚血により介在板で増加し、ギャップ結合を介した細胞間情報伝達を活性化することにより、収縮帯壊死がこの活性化したギャップ結合を介して伝播していた。心交感神経活性の亢進は、心筋収縮不全や心筋傷害といったカテコールアミン心筋障害を引き起こす。カテコールアミンの過剰分泌や虚血によって引き起こされると考えられている収縮帯壊死は心臓突然死の重要な指標である。この収縮帯壊死は心筋細胞の介在板を介して広がるように観察されることから、Gap junctions(GJs)が関与しているとの仮説があるが、未だin vivoで立証されていない。このことから、今年度はラット冠状動脈結紮モデルを用いて、心GJの主要構成タンパクであるコネキシン43(Cx43)と収縮帯壊死の伝播の関係を中心に検討を行い、以下のような結果を得た。1.虚血30分で虚血領域のCx43は非虚血領域のそれと比較して2-3倍に上昇する。3.虚血30分後再灌流を行うと、収縮帯が虚血領域の中間層に広がり、再灌流5分後には虚血領域の約30%を占めるが、再灌流の直前にGJsのブロッカーであるcarbenoxolone(CBX)を1分間静脈投与すると、その収縮帯の広がりは1/3に狭小化した。4.収縮帯壊死はその後の心筋梗塞巣の進展に深く関わっていると考えられている。そこで、再灌流6時間後の梗塞サイズをTTC染色で比較すると、PBS投与群(対照群)の梗塞サイズは虚血領域の約60%を占めたが、CBX投与群は約40%にとどまっていた。以上のように、本研究は収縮帯壊死の伝播にGJsが関与していることをin vivoで初めて明らかにした。GJICが虚血領域でのみ活性化し、収縮帯壊死の伝播を亢進していることは、収縮帯壊死が虚血領域にのみ集簇して観察される現象を説明し得る。心交感神経活性の亢進は、心筋収縮不全や心筋傷害といったカテコールアミン心筋障害を引き起こす。本研究では、カテコールアミンの過剰分泌や虚血によって引き起こされると考えられている収縮帯壊死がギャップ結合を介して伝播する機序を解明した。1.ギャップ結合を介した収縮帯壊死の伝播の機序についてラットの冠状動脈結紮モデルにおいて、虚血30分でギャップ結合を構成するコネキシン43が介在板で増加し、ギャップ結合を介した細胞間情報伝達が亢進する結果、虚血再灌流後の収縮帯壊死が虚血領域に伝播していくことを明らかにした。2.虚血によるギャップ結合でのコネキシン43の増加の機序について虚血30分後の心筋ホモジネートの細胞分画を行い、コネキシン43の分布を調べた結果、リン酸化されたコネキシン43が細胞膜に移行していることが明らかになった。このとき、ミトコンドリア内のコネキシン43量が低下していることから、ミトコンドリアのコネキシン43が細胞膜に移行しているのではないかと考え、さらに研究を進めている。3.ギャップ結合を介した再灌流時心筋傷害の機序について虚血30分後再灌流を行うと、カルシウム依存的プロテアーゼで細胞骨格の破綻をもたらすカルパインが心筋で活性化していた。再灌流前に、ギャップ結合の阻害剤を投与して細胞間情報伝達を抑制すると、このカルパインの活性化が阻害されたことから、ギャップ結合がカルパインを介した再灌流時心筋傷害に関与することが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-19790443 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19790443 |
フタル酸エステル類への胎児期および学童期曝露が第二次性徴初来に与える影響解明 | フタル酸エステル類はプラスチック製品の可塑剤として添加される物質で、内分泌かく乱作用が懸念される。しかし、疫学研究で胎児期曝露による児の第二次性徴発来への影響に関する報告はほとんどなかった。本研究では胎児期DEHP曝露と児の第二次性徴発来への影響に、出生時の性ホルモンが介在するかを検討した。北海道スタディ札幌コ-ホートに参加する児から、第二次性徴に関して150件(45.6%)の回答を得た。胎児期のフタル酸エステルDEHP曝露が高いと男児の第二次性徴発来を有意に遅らせることが明らかになった。一方、その影響は出生時の性ホルモンを介在しておらず、メカニズムの背景には性ホルモン以外の要因が示唆された。「環境と子どもの健康に関する北海道スタディ:札幌コーホート」には母児514組が登録している。フタル酸エステルへの胎児期曝露による性腺機能への影響として、最も使用量の多いDEHP(di(2-ethylhexyl)phthalate)について、測定済みの母体血中フタル酸エステル類代謝物濃度の代謝物MEHPと出生時の性ホルモン濃度への影響を検討した。男児では母体血中MEHP濃度と性ステロイドホルモンのうち、プロゲステロン(P4)とテストステロン(T)/エストラジオール(E2)比とは負の相関を示し、MEHP濃度を四分位にしたモデルでも、濃度が高い群でプロゲステロンは有意に減少して量-影響関係を示した。一方、DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)とは正の相関を示したが、四分位のモデルでは量ー影響関係の傾向は示したものの統計学的有意ではなかった。In vitroでDEHP曝露が多いと、17α-hydroxylase-17、20-desmolase、3βHSDおよびアロマターゼの発現量が減少しステロイド代謝が阻害され、E2減少に先立ちP4、アンドロステネジオン、T産生が減少することが報告されているが(Hannon et al.,2015)、ヒトの胎児期曝露でも児の性ホルモンに類似の影響が見られた。また、男児で、MEHP濃度と精巣のライディッヒ細胞から分泌されるInsulin-like factor 3(INSL3)、およびセルトリ細胞から分泌されるInhibin B濃度と負の相関を示し、MEHP濃度を四分位にしたモデルでも濃度が高い群でInhibin BとINSL3は有意に減少した。ヒトのDEHP胎児期曝露は、ライディッヒ細胞とセルトリ細胞の分化や増殖への影響が示唆された。平成27年度には、DEHP曝露が第二次性徴発来に及ぼす影響を検討する。可塑剤として使用されるフタル酸エステル類は、内分泌かく乱作用が懸念される合成化学物質である。動物実験では雄の生殖器系への有害作用が知られているが、ヒトへの胎児期曝露による性腺機能への影響に関する報告は限られている。フタル酸エステル類の生体内半減期は十数時間と早いが、日々恒常的に曝露されていることが問題となる。ヒトでは、胎児期の曝露による男児の性ホルモンや肛門性器間距離への影響が指摘されている一方、横断研究では女児の第二次性徴早期発来の報告があるが、第二次性徴発来まで前向きに検討した報告はほとんどない。本研究では、出生コホート「北海道スタディ札幌コホート」を用いて、フタル酸エステル類の中で最も多用されるDEHPの胎児期および生後の曝露評価を行い、児の性腺機能および第二次性徴発来への影響を検討する。平成27年度は、胎児期曝露による性腺機能への影響として母体血中DEHP代謝物と臍帯血中の副腎アンドロゲン(DHEAとアンドロステネジオン)、糖質コルチコイド(コルチゾールとコルチゾン)への影響を解析した。共変量で調整後もMEHP濃度はDHEAと正の相関、糖質コルチコイドとは負の相関を示した。さらに、コルチゾール/コルチゾン比、コルチゾール/DHEA比、糖質コルチコイド/副腎アンドロゲン比のいずれとも有意な負の相関を示した。加えて、第二次性徴発来の指標となる小学生入学以降の毎年の身長と体重、タナー分類に基づく第二次性徴発来の指標として男女の陰毛、女児の乳房成長、初潮の有無に関する調査票を、コホート参加者のうち追跡可能な母児329人に発送した。これまでに、123人の調査票および108人の尿を収集した。平成28年度は収集した尿中のフタル酸エステル類代謝物濃度を測定し、生後の曝露評価を実施する。本研究で行う第二次性徴発来調査では、子どもの陰毛や乳房発達等のデリケートな内容を質問するため倫理面において慎重な調査推進が求められた。そこで、調査開始に先立ち、子ども宛に調査への理解と協力を促す小冊子の作成・配布を実施したため、平成26年度に予定していた調査票の発送開始が平成27年度に遅れた。このため、引き続き平成28年度も調査票と曝露評価に用いる尿の発送・収集とフタル酸エステル類の分析を行う。可塑剤として使用されるフタル酸エステル類は、内分泌かく乱作用が懸念さる合成化学物質である。動物実験では雄の生殖器系への有害作用が知られている。 | KAKENHI-PROJECT-26670321 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26670321 |
フタル酸エステル類への胎児期および学童期曝露が第二次性徴初来に与える影響解明 | ヒトでは、胎児期曝露による男児の性ホルモンや肛門性器間距離への影響、横断研究で女児の第二次性徴早期発来の報告があるが、胎児期曝露から第二次性徴発来まで検討した報告はほとんどない。本研究では、フタル酸エステル類DEHPの母体血中濃度と、児の性ホルモンおよび第二次性徴発来(以下発来)への影響を検討した。札幌コホートの9-14歳329名に第二次性徴発来調査票を送付した。男児では身長の急伸、Tanner分類を基に陰毛発毛と声変わり、女児では乳房発育、陰毛発毛、初経のうち、いずれかの開始を発来とした。回答を得た147人のうち、男児59人(80%)、女児57人(92%)が発来しており、その平均±SD月齢は男児137.7±10.6、女児127.2±12.2だった。男児は、母体血中MEHP濃度が2.71乗になると発来時期は7.0カ月遅延した。女児ではMEHP曝露と発来時期との関連はなかった。男児においては、臍帯血中のAndrostenedione濃度が2.71倍になると、発来時期が11.3カ月、女児ではプロラクチン濃度が2.71倍になると発来時期が10.6カ月早まった。いずれのホルモンもMEHPから発来への介在要因として統計学的有意な関連は得られなかった。男児ではMEHP曝露による発来時期の遅れがみられたが、出生時の性ホルモン以外の要因による影響と考えられた。しかし、MEHP濃度、性ホルモン濃度、発来のデータが揃うサンプル数は男児では25人、女児では31人と少なく、十分な統計学的パワーが得られなかった可能性もある。本研究では、第二次性徴発来調査と共に児の尿を収集しており、今後尿中フタル酸エステル類代謝物濃度を測定し、生後の曝露による影響も検討する。フタル酸エステル類はプラスチック製品の可塑剤として添加される物質で、内分泌かく乱作用が懸念される。しかし、疫学研究で胎児期曝露による児の第二次性徴発来への影響に関する報告はほとんどなかった。本研究では胎児期DEHP曝露と児の第二次性徴発来への影響に、出生時の性ホルモンが介在するかを検討した。北海道スタディ札幌コ-ホートに参加する児から、第二次性徴に関して150件(45.6%)の回答を得た。胎児期のフタル酸エステルDEHP曝露が高いと男児の第二次性徴発来を有意に遅らせることが明らかになった。一方、その影響は出生時の性ホルモンを介在しておらず、メカニズムの背景には性ホルモン以外の要因が示唆された。本研究では、児の第二次性徴発来について、調査に参加している児に調査票を配布して身長・体重およびTanner分類で評価する予定である。Tanner分類は思春期の発来について外性器の発達段階をもとにしているため、思春期の児に対して陰茎増大、陰毛発生、乳房発達などのデリケートな内容を問う必要がある。既に英国の出生コーホートでは調査参加者にTanner分類に関する自記式調査票を行っている実績があり、これらの調査を参考に調査票の準備を進めてきた。一方、北海道スタディではこれまでは保護者へのインフォームドコンセントを得ていたが、思春期の児を対象にした本研究では、子ども自身が調査票に記入したり、保護者と相談のうえで調査票に回答をする可能性がある。そこで、子どもを対象とした「インフォームド・アセント」の実施についても議論をおこない、倫理面において慎重な調査推進を検討する必要があった。このため平成26年度に実施予定であった調査票の発送が平成27年度になり、結果として達成度がやや遅れている。 | KAKENHI-PROJECT-26670321 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26670321 |
特殊緑化空間における野生の生き物の生息に関する基礎的研究 | 本研究は、高層建築物の屋上緑化部および壁面緑化部を対象として、昆虫類や鳥類生息状況を把握するとともに、それらの緑化部の環境状態との関連性について言及を試み、今後の屋上や壁面緑化部の整備や維持・管理手法について、野生の生き物の生息面から考察することを主な目的とした。そこで、東京都および横浜市内において10箇所の調査対象地を選定し、昆虫類および鳥類の生息実態調査を実施した。このうち昆虫類については6箇所において実施し、全体で8目28科37種269個体の昆虫類が確認された。全調査を通して垂直方向に移動力の弱い地表性の昆虫類を除き、10階程度の高さは昆虫類の移動にとって可能であるものと考えられる。また、多様な植物の植栽や薬剤散布等の管理が限定された環境状態での昆虫類の種類数や個体数は、他に比較して多く、緑化方法や維持管理方法によっては、昆虫類の生息は十分可能であるものと考える。一方、鳥類調査については9箇所において実施し、全体で2目11科14種の鳥類が確認された。全調査を通してみると、10階程度の高さにおいても周辺に生息している鳥類が飛来していることが把握された。しかし、飛来した個体の多くは一時的に緑化部を利用しており、その生息空間は広範囲にわたるものと考える。したがって、緑化部を緑の「点」として捉え、周辺の公園緑地などとのネットワークを整備することで、「面」としての生息空間を創出することにつながるものと考える。以上のように、高密化した市街地の代表的構造物である建築物と野生の生き物の共生や多様性の保全を目指した際に、建築物の屋上や壁面部の整備に関して、ビオトープとして機能付けた緑化は、その有効な一手法であるものと考えられ、生き物の生息を見込んだ整備目標や内容の明確化が望まれる。また、維持・管理にあたっても、生き物の生息空間を考慮した機能区分による対応が必要である。本研究は、高層建築物の屋上緑化部および壁面緑化部を対象として、昆虫類や鳥類生息状況を把握するとともに、それらの緑化部の環境状態との関連性について言及を試み、今後の屋上や壁面緑化部の整備や維持・管理手法について、野生の生き物の生息面から考察することを主な目的とした。そこで、東京都および横浜市内において10箇所の調査対象地を選定し、昆虫類および鳥類の生息実態調査を実施した。このうち昆虫類については6箇所において実施し、全体で8目28科37種269個体の昆虫類が確認された。全調査を通して垂直方向に移動力の弱い地表性の昆虫類を除き、10階程度の高さは昆虫類の移動にとって可能であるものと考えられる。また、多様な植物の植栽や薬剤散布等の管理が限定された環境状態での昆虫類の種類数や個体数は、他に比較して多く、緑化方法や維持管理方法によっては、昆虫類の生息は十分可能であるものと考える。一方、鳥類調査については9箇所において実施し、全体で2目11科14種の鳥類が確認された。全調査を通してみると、10階程度の高さにおいても周辺に生息している鳥類が飛来していることが把握された。しかし、飛来した個体の多くは一時的に緑化部を利用しており、その生息空間は広範囲にわたるものと考える。したがって、緑化部を緑の「点」として捉え、周辺の公園緑地などとのネットワークを整備することで、「面」としての生息空間を創出することにつながるものと考える。以上のように、高密化した市街地の代表的構造物である建築物と野生の生き物の共生や多様性の保全を目指した際に、建築物の屋上や壁面部の整備に関して、ビオトープとして機能付けた緑化は、その有効な一手法であるものと考えられ、生き物の生息を見込んだ整備目標や内容の明確化が望まれる。また、維持・管理にあたっても、生き物の生息空間を考慮した機能区分による対応が必要である。特殊緑化空間(屋上緑化部)における野生の生き物に関する生息調査は、東京都および横浜市において選定した建築物の7階10階に位置する屋上緑化部を対象に、昆虫類については4箇所、鳥類については7箇所において、平成6年5月平成7年1月を中心に実施した。その結果、昆虫類については、見つけ取り法で8目19科301個体、ベイトトラップ法で1目2科30個体を確認した。確認された昆虫類の多くは、鱗翅目や蜻蛉目など比較的飛翔能力を有する昆虫類が中心であり、通常地上でみられるような地表性の腐肉食性・糞食性昆虫類は、自然性の高い1箇所を除いて生息を確認できず、生態系の単純化が認められた。また、調査を通して、除草、殺虫剤散布による管理や限られた植栽樹種等が、昆虫類の生息に影響を与えていることも把握された。さらに、ミカンの鉢植による誘引法では、全ての調査地において、アゲハチョウが飛来・産卵したことにより、このような昆虫の生息を見込んだ植栽計画の重要性が指摘される。つぎに、鳥類については、ドバト、スズメ、ヒヨドリ等のいわゆる「都市鳥」を中心に、プロットセンサス法により3目11科13種2、124個体が確認された。特に、ドバトやスズメの出現率が高く、単純な鳥相が構成されているものの、13種中10種は採餌行動がみられ、屋上緑化部を生息空間の一部として利用していることが把握された。 | KAKENHI-PROJECT-06660042 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06660042 |
特殊緑化空間における野生の生き物の生息に関する基礎的研究 | また、個体数の多かった7種について屋上での利用場所をみると、樹木を中心とした4種、草地・裸地を中心とした1種、全てを利用した1種および人工構造物を中心とした1種に大別され、樹木や芝生等による緑化が、鳥類の生息拡大にあたって有効であることが指摘される。今後、さらに壁面緑化部における生息調査や周辺緑地間との移動等について調査することにより、特殊緑化空間と野生の生き物の生息について、多角的な視点からの検討が可能になるものと考える。本研究は、高層建築物の壁面緑化部を対象に、昆虫類や鳥類の生息状況を把握するとともに、それらの緑化部の環境状態との関連性について言及を試み、今後の整備や維持・管理手法について、野生の生き物の生息面から考察すること。また、屋上緑化部を対象に、周辺公園緑地間における鳥類の移動を把握し、屋上緑化部の整備に際しての鳥類生息からみた基礎的データの把握を主な目的とした。そこで、東京都および横浜市内において、壁面緑化部を有する3箇所の建築物を選定し、昆虫類および鳥類の生息実態調査を実施した。また、鳥類の移動に関する調査に関しては、屋上緑化部を有する建築物を1箇所選定し調査を実施した。以上のうち昆虫類は、見取り調査、ベイトトラップ調査および誘引調査を2箇所において実施したが、緑化に使用れている植物がツル性植物に限られており、植食性の昆虫類には不適当な生息環境となっていることや植え升が小面積であることなどにより、全体で5目6科7種13個体の昆虫類が確認されたにとどまった。しかしながら、壁面緑化部沿いのバルコニーに設置した調査木には、アゲハチョウが飛来・産卵したことなどから、昆虫類の誘引を目的とした植栽樹種の検討が、今後必要であるものと指摘される。一方、鳥類については2箇所において定点観察を実施したが、2箇所の壁面緑化部および周辺において観察された種類は8種類のみであり、直接利用したのは4種類のみであった。また、周辺において観察された鳥類も非常に限られており、鳥類による壁面緑化部の利用は総じて少ないものと推察される。したがって、鳥類と食餌植物との関係を重視した植栽樹種の選定や周辺における公園緑地とのネットワークの検討が、今後重要であるものと考える。また、鳥類の移動については、定点観察および追跡調査を実施した結果、一部の種類の鳥類生息においては屋上緑化部が有効に利用されていることが把握された。 | KAKENHI-PROJECT-06660042 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06660042 |
福島県いわき市における幼児の発達支援と保護者支援に関する臨床的研究 | 前年度までに実施した福島県いわき市内の発達支援事業所、社会福祉法人、子育て支援、特別支援学校、支援級の職員と保護者からのヒアリングを継続した。最終年度の研究の纏めとして、特に震災直後から市内の乳幼児の発達を支えてきた臨床の最前線にいる保育士、看護師、心理職からこの震災後7年間の推移や子どもたちの変化について感じていることなどをそれぞれの専門性の「語り」として収集、整理した。また同時に保育士・幼稚園教諭養成への希求・要望として、地域の子育てに関する喫緊の課題として感じていることはなにがあるか、保育者をはじめとする専門職の仕事に付加されてきた役割などについても聞き取りを行った。1震災後の子育ての中で一番感じたことは、未曽有の震災故に、そして過去、日本人が経験したことのなかった有形無形の不安のもとで、目の前にある事象を誰もがひたむきに行っていくことしかできなかったこと。2特に子どもにとってはコミュニティや大人、家庭が変化する(せざるを得ない)状況下にあって、情緒の安定と安心、「自分たちが生きていること」についての確証のようなものを如何に守り、育てていくかが最優先であったこと。そしてそれは保護者、大人に対しても同様に言えることであったこと。3震災後、保育所や幼稚園で気になる子や所謂落ち着きのない子が目付くようになったと言われることもあったが、その実際を辿ると保護者の不安、震災による家庭内の不安定な状況が潜在していたこと、4障碍児の受け入れ等に合っても利用児者の移動や受け入れの変更・変容などで、子どもたちのなかに「変化」が見られたことは間違いない。5その他等について幅広く聞き取ることができた。その成果は淑徳大学短期大学部紀要(2本))、高等教育研報告書(研究ノート)などに発表し、『震災後の保育者養成と発達支援に関する報告書』として取りまとめた。いわき市内の保育所、幼稚園、子育て広場等、障碍児施設など十三園の保育士、教諭、支援担当者らから直接ヒアリングを行った。本年度はとりわけいわき市内で震災直後から避難地域からの移転者、その保護者と乳幼児の支援を行ってきたNPO法人の代表と看護師(DMATの看護師でもある)より、震災後の保護者と乳幼児、特に気になる子の顕在化や直面する問題の推移に関しての概略、大きな流れについて聞き取った。1震災後の気になる子の増加は単なる「イメージ」ではないこと、2避難地区からの流入、人口移動と生活・親の心身の安定とそれは関係あること、3現実的に対応している臨床的事例、震災以前に比べて増加もしくは新規に生じてきた課題等、詳細にヒアリングのデータを集めることができた。また、支援している側の苦悩と負担の増加、現実として対応している案件の数字なども収集できた。発表、論文等の成果としては数字やヒアリングデータの可視化、文章化が観まだ十分とは言えず内容の精査が必要でもあるため、次年度の論文化・活字化にも継続するが、「「主体性」と思考を育む震災後の保育士養成への試みー養成課程における科目編成とルーブリックの可能性ー」橋浦孝明との共著(いわき短期大学紀要)、「幼小連携を意識した新たな教育課程に関する現状と課題ー養成校からみたコンピテンシーベースの新学力・子ども観による評価可能性ー」(淑徳大学短期大学部紀要第五十六号)の二つの論文において、震災後の保育士養成の要であると(筆者が)考えてきた「主体・能動性」「思考」をより機能させる地域の保育士養成カリキュラムの編成と現実に合わせた教授内容の理論化について、ルーブリックやパフォーマンス評価という新規の評価構築の視点からその可能性について言及した。(同内容は全国保育士養成協議会第55回研究大会にて発表)地域の変容が子どもたちに及ぼすであろう影響も見えてきた。当初、15園(人)のヒアリング予定であったが、本年度で13園(人)のヒアリングを実施できた。予定より2園少ないが内容的には補足・追加の聞き取りも行うことができ、充実した内容となっている。また、想定外に深い内容のヒアリングができ、また当初の仮説を相当のレベルと範囲で裏付けるような内容、数字、個別の事例が出てきたことで次年度の研究の具体的方向性が明確となった。敢えて言えば、ヒアリング内容の活字化が未達成の部分もあり、該当部分のテキスト化を速やかに進めることが次年度の第一の課題でもあるが、1震災直後からの幼児野の発達・保護者が抱える不安に関する問題の変化・推移、2現時点で実際に起こっている事象・事例、3コミュニティの変化とそれに伴う子ども・保護者の不安の顕在化という予想していた事案(仮設)もヒアリングとNPO法人から提供された利用実数等のデータから整理できる状況にある。また、今年度ヒアリングを行ったいわき市内の保育所、幼稚園、障碍児通園施設の教職員、保育士の語りからも復興の名のもとに薄れゆくものと相対的に浸透しつつある発達や育ちの面における事後の影響、震災後に不安視されていた事案の顕在化と潜在化など、当初の予想以上に具体的で、細かい事例を聞き取ることもでき、新たな「語り」のデータとして蓄積できている。29年度は、地域のNPO子育てサポートの継続ヒアリング、市内の保育所、発達支援に従事する保育士と市内の障がい児・者の福祉施設に勤務する職員や支援員から追加、補足的なヒアリングから始め8名から聞き取りを行った。 | KAKENHI-PROJECT-16K12389 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K12389 |
福島県いわき市における幼児の発達支援と保護者支援に関する臨床的研究 | そこでは1震災直後5年までの間と6年目までの間に生じてきた子どもの心理的安定面における変化、2震災直後からコミュニティや生活基盤の変化に伴う保護者の不安、3こどもと保護者を支援する側としての保育士、施設職員等、対人支援の専門職の職務内容の変化と推移に関して新規の状況、継続的な課題と言える内容を聴き取ることができた。(上記内容については淑徳大学短期大学部紀要にて2編投稿、発表)例えば、震災後の5年間で放射線等見えない影響や後遺症を気にかけ意識する保護者、生活基盤の変容と親戚や知人(場合によっては配偶者・親子)の関係性の変化が積み重なり、保護者の方の心身面の不調や負担が顕在化してきたこと、2震災直後に誕生した子どもたちが小学生に上がる中で、不安定な家庭環境に転園・引越し等を余儀なくされたことの影響からか「落ち着きのない」子ども、思い切り遊べない子どもの姿などが見られるようになってきたこと、3復興と再生、絆という言葉を支えに支援に取り組んできた保育士・職員等支援する側のなかで、業務の集中や偏りと相俟って、一時的なバーンアウトのような(事態の改善がみられるところと深刻化していくこととの狭間で)気力低下もヒアリングの内容に表れている。同時に、震災後半年で避難所から始まった地域子育てサポートの取り組みの実際とスタッフの業務内容、利用者の実態などから新規の支援の展開として多世代型(障がい児、親支援、高齢者含む)交流と支援広場の機能・需要の拡大と役割の変化についても、地域の子育てと親支援の実態として語りによる調査を進め、7年目を迎え従来とは異なる子どもの心身の変化も明らかになった。当初の予定としての保育所、幼稚園、障がい児等の施設、子育てサポートに実際に勤める保育士や支援員15名近くからこの数年の、子育て支援の実際の変化と子どもの様子、保護者の不安や発達上の悩みなどについて、たくさんの従来とは異なる「語り」を集めることができている。また、新規の課題、新しい子どもの変化に慎重に向きあっている市内NPOの子育てサポートによる「多世代交流の広場」の運営と実際から、震災後の6年間の対応事例や現時点での利用状況なども、事例を含めて聞き取ることができており、最終年度にクライアントとしての保護者の数名からヒアリングを行うということも想定されてきている。施設の職員からも震災後の利用児・者の実際と状況、職員の対応と保護者への相談業務や不安の軽減、施設の維持と復興、再生に関しても職員不足の臨床の現況と併せて、ヒアリングなどを進める中で、その実際を徐々に整理していく段階に進んでいる。現時点で過去の推移と課題、保護者および子どもの実際についても整理されたヒアリングがすすんでおり、支援者側からみた個別の事例や保護者自身の経験を併せることで、本研究の目的である「震災後の発達支援・保護者支援の現状と課題」とこの数年で浮上してきた新規の課題についても、医療的なケアや乳幼児健診の場で近年特にみられるようになってきた傾向や子どもの発達的な変化についても少しずつ明らかにできる目途が立っている。前年度までに実施した福島県いわき市内の発達支援事業所、社会福祉法人、子育て支援、特別支援学校、支援級の職員と保護者からのヒアリングを継続した。最終年度の研究の纏めとして、特に震災直後から市内の乳幼児の発達を支えてきた臨床の最前線にいる保育士、看護師、心理職からこの震災後7年間の推移や子どもたちの変化について感じていることなどをそれぞれの専門性の「語り」として収集、整理した。また同時に保育士・幼稚園教諭養成への希求・要望として、地域の子育てに関する喫緊の課題として感じていることはなにがあるか、保育者をはじめとする専門職の仕事に付加されてきた役割などについても聞き取りを行った。 | KAKENHI-PROJECT-16K12389 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K12389 |
わが国農業・農村のダイナミズムと政策評価:ミクロデータによる実証研究 | 本研究の目的は、これまで蓄積されてきた農林水産統計の個票データを用いて、1わが国農業・農村の動態や農家家計の変貌、すなわち、農業・農村のダイナミズムを明らかにするとともに、2ミクロ計量経済学の手法により、農業政策の評価を定量的に行うことである。本年度は、「農林業センサス」、「農業経営統計調査」、「集落営農実態調査」や「復興定点観測調査」などの個票データを用いて、主に以下の点を明らかにした。第一に、昨年度に引き続き、「農業経営統計調査」の個票パネルデータによって、農業補助金の地代への影響を検討した。その結果、北海道では、補助金が地代に転化する現象はみられるものの、その影響はアメリカを対象とした先行研究に比して、軽微であることがわかった。わが国では、補助金の地代化は構造政策上の重大な問題とは考えにくい。第二に、「集落営農実態調査」の個票データによって、集落営農への農地集積条件を検討した。その結果、滋賀県に限定した分析ではあるものの、区画整理率などの圃場条件、集落の立地や寄合回数が農地集積と関係していることがわかった。第三に、「復興定点観測調査」の個票データによって、東日本大震災被災農家の世代間復興格差を検討した。その結果、震災から2年が経過した段階でも、その被害は生産活動に持続的な影響を及ぼしていたことや、その影響は高齢農家で強く残った可能性が示唆された。また、分析過程において、本データが深刻なサンプルセレクションバイアスを伴うこともわかった。第四に、「農林業センサス」の個票パネルデータによって、稲作単一経営のトップ経営体を対象に、その販売経路の特徴等を整理し、消費者への直接販売が農産物販売額にもたらした効果を検討した。その結果、消費者への直接販売(直販)の実施率が低下傾向にあることや、直販が家族経営体において農産物販売額を高める効果をもたらしたことがわかった。年度内に研究会を4回開催し、各研究者の研究成果の報告や進捗チェックを行うことにより、ほぼ当初の計画通り研究を推進することができた。また、得られた成果の一部を学会の特別セッションや関連学会において発表するとともに、国際的学術雑誌などで公表を図った。さらに、上記の研究実績の概要で述べた研究結果以外にも、研究成果の公表に向けて着実に研究が展開されていると考える。次年度は、本年度に得られた成果の一部を学会の特別セッションなどで発表するとともに、得られた成果を学術雑誌等に投稿し、公表を図る。また、これまでに得られた成果を学術図書としてとりまとめるための検討を進める。なお、本年度は昨年度に引き続き、主に「農林業センサス」の個票データをはじめとするミクロデータを用いて、政策評価や農村・農家行動のダイナミズムを明らかにする。具体的には、「集落営農実態調査」の個票データを用いた集落営農の効率性の計測や、「農林業センサス」個票パネルデータ等を用いた法人化のインパクト評価に取り組むとともに、ゾーニング規制が農業構造に及ぼした影響の解明などを試みる。また、得られた知見は、学会大会での発表や学術雑誌等への投稿、さらには学術図書を通じて公表を図る。本研究の目的は、これまで蓄積されてきた農林水産統計、具体的には「農林業センサス」、「農業経営統計調査」、「集落営農実態調査」、「米及び麦類の生産費調査」や「復興定点観測調査」の個票データを用いて、1わが国農業・農村の動態や農家家計の変貌、すなわち、農業・農村のダイナミズムを明らかにするとともに、2ミクロ計量経済学の手法により、農業政策の評価を定量的に行うことである。本年度は、主に「農林業センサス」や「農業経営統計調査」の個票データを用いて、暫定的ながら、以下の点を明らかにした。第一に、「農業経営統計調査」の個票パネルデータを用いて、農業補助金の地代ならびに経営規模拡大への影響について検討した。その結果、補助金が地代に転化する現象(補助金の地代化)はわずかにみられるものの、その影響は軽微であること、また、補助金が経営規模拡大を牽引していることを表すエビデンスを得ることができた。第二に、「農林業センサス」の個票パネルデータを用いて、中山間地域等直接支払制度が農業構造に及ぼした影響について検討した。その結果、制度参加集落の農家では借入の増加を通じて、経営規模が拡大しており、こうした動きは大規模農家ほど明確に表れているものの、全サンプルでは当該制度の規模拡大への効果は小さいことがわかった。第三に、「農林業センサス」の個票データを用いて、稲作単一経営のトップ経営体に着目して、その特徴と動態を整理した。その結果、トップ経営体は、他の経営体よりも借地化と法人化が進展していることや、トップ経営体の経営規模の成長速度は他の経営体よりも速く、とりわけ雇用法人経営について、このことがあてはまることなどがわかった。年度内に研究会を複数回開催し、各研究者の研究成果の報告や進捗チェックを行うことにより、当初の計画通り研究を推進することができた。また、上記の研究実績の概要で述べた研究結果以外にも、「集落営農実態調査」や「復興定点観測調査」の個票データを用いた分析についても推進しており、研究成果の公表に向けて着実に研究が展開されていると考える。 | KAKENHI-PROJECT-17H03881 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H03881 |
わが国農業・農村のダイナミズムと政策評価:ミクロデータによる実証研究 | 本研究の目的は、これまで蓄積されてきた農林水産統計の個票データを用いて、1わが国農業・農村の動態や農家家計の変貌、すなわち、農業・農村のダイナミズムを明らかにするとともに、2ミクロ計量経済学の手法により、農業政策の評価を定量的に行うことである。本年度は、「農林業センサス」、「農業経営統計調査」、「集落営農実態調査」や「復興定点観測調査」などの個票データを用いて、主に以下の点を明らかにした。第一に、昨年度に引き続き、「農業経営統計調査」の個票パネルデータによって、農業補助金の地代への影響を検討した。その結果、北海道では、補助金が地代に転化する現象はみられるものの、その影響はアメリカを対象とした先行研究に比して、軽微であることがわかった。わが国では、補助金の地代化は構造政策上の重大な問題とは考えにくい。第二に、「集落営農実態調査」の個票データによって、集落営農への農地集積条件を検討した。その結果、滋賀県に限定した分析ではあるものの、区画整理率などの圃場条件、集落の立地や寄合回数が農地集積と関係していることがわかった。第三に、「復興定点観測調査」の個票データによって、東日本大震災被災農家の世代間復興格差を検討した。その結果、震災から2年が経過した段階でも、その被害は生産活動に持続的な影響を及ぼしていたことや、その影響は高齢農家で強く残った可能性が示唆された。また、分析過程において、本データが深刻なサンプルセレクションバイアスを伴うこともわかった。第四に、「農林業センサス」の個票パネルデータによって、稲作単一経営のトップ経営体を対象に、その販売経路の特徴等を整理し、消費者への直接販売が農産物販売額にもたらした効果を検討した。その結果、消費者への直接販売(直販)の実施率が低下傾向にあることや、直販が家族経営体において農産物販売額を高める効果をもたらしたことがわかった。年度内に研究会を4回開催し、各研究者の研究成果の報告や進捗チェックを行うことにより、ほぼ当初の計画通り研究を推進することができた。また、得られた成果の一部を学会の特別セッションや関連学会において発表するとともに、国際的学術雑誌などで公表を図った。さらに、上記の研究実績の概要で述べた研究結果以外にも、研究成果の公表に向けて着実に研究が展開されていると考える。次年度は、本年度に得られた成果の一部を学会の特別セッションにおいて発表するとともに、得られた成果を学術雑誌等に投稿し、公表を図る。また、本年度に引き続き、主に「集落営農実態調査」や「復興定点観測調査」の個票データを用いて、政策評価や農村・農家行動のダイナミズムを明らかにする。具体的には、「集落営農実態調査」に「農林業センサス」の個票をマッチングさせたパネルデータを用いて、集落営農への支援にいなかる政策が有効であったかを評価するとともに、集落営農の効率性の計測を通じて、非効率性の要因や政策が効率性に及ぼす影響などを検討する。また、「復興定点観測調査」と「農林業センサス」個票のマッチングデータを用いて、世代間での震災からの復興格差などを検討する予定である。なお、得られた知見は、学会発表や学術雑誌への投稿等を通じて公表を図る。次年度は、本年度に得られた成果の一部を学会の特別セッションなどで発表するとともに、得られた成果を学術雑誌等に投稿し、公表を図る。また、これまでに得られた成果を学術図書としてとりまとめるための検討を進める。なお、本年度は昨年度に引き続き、主に「農林業センサス」の個票データをはじめとするミクロデータを用いて、政策評価や農村・農家行動のダイナミズムを明らかにする。 | KAKENHI-PROJECT-17H03881 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H03881 |
ヒト肝3α-ヒドロキシステロイド脱水素酵素の胆汁酸結合能と酵素学的検討 | ヒト肝よりの3α-hydroxysteroid dehydrogenase(3α-HSD)の精製は以下のように行った。なお、各精製過程においては、各カラムフラクションにつき、OD_<280>、3α-HSDおよびdihydrodiol dehydrogenase(DDH)活性とリトコール酸(LC)の結合を測定した。臓器提供者の肝臓から33%ホモジェネートを作成し、100、000gで超遠心しサイトゾールを得た。これをSephadexG75 superfineカラム(5x100cm)にかけ、3α-HSDとDDH活性を有するY'分画(分子量30,000-40,000)を得た。これをAffigel blueカラムにかけ、燐酸バッファーによるgradientにより溶出したところ、2つのLC結合ピークが認められ、最初のピークにはDDH活性のピークが、2つのLC結合ピークの間には3α-HSD活性のピークが認められた。Affigel blueの3α-HSD活性を含む分画をPBE74によるクロマトフォーカシングで分離すると、pH6.0、5.7および5.4に3つの3α-HSDとDDH活性を有するピークが認められた。なお、LC結合はこれらのピークには認められず、より高いpHに3つのピークとして溶出され、そのうちの最も高い結合ピークはbile acid binderと考えられた。これら3つの3α-HSDピークをhydroxyapatite-HPLCでさらに精製するとSDS-PAGE上、すべて分子量36,000の単一バンドを示す蛋白が得られた。各種胆汁酸を基質としてこれらの酵素のenzyme kineticsを検討すると、3つの酵素とも見かけ上のKmはケノデオキシコール酸で1μM、コール酸で40μM程度であり、ラット肝3α-HSDと同程度であった。以上の結果から、ラット肝と異なり、ヒト肝では3α-HSDはbile acid binderとは別に存在し、酵素学的性格はラットに類似するものの胆汁酸結合のは持たず、ヒト肝内での胆汁酸の輸送にはbile acid binderが重要な役割を持つものと考えらた。ヒト肝よりの3α-hydroxysteroid dehydrogenase(3α-HSD)の精製は以下のように行った。なお、各精製過程においては、各カラムフラクションにつき、OD_<280>、3α-HSDおよびdihydrodiol dehydrogenase(DDH)活性とリトコール酸(LC)の結合を測定した。臓器提供者の肝臓から33%ホモジェネートを作成し、100、000gで超遠心しサイトゾールを得た。これをSephadexG75 superfineカラム(5x100cm)にかけ、3α-HSDとDDH活性を有するY'分画(分子量30,000-40,000)を得た。これをAffigel blueカラムにかけ、燐酸バッファーによるgradientにより溶出したところ、2つのLC結合ピークが認められ、最初のピークにはDDH活性のピークが、2つのLC結合ピークの間には3α-HSD活性のピークが認められた。Affigel blueの3α-HSD活性を含む分画をPBE74によるクロマトフォーカシングで分離すると、pH6.0、5.7および5.4に3つの3α-HSDとDDH活性を有するピークが認められた。なお、LC結合はこれらのピークには認められず、より高いpHに3つのピークとして溶出され、そのうちの最も高い結合ピークはbile acid binderと考えられた。これら3つの3α-HSDピークをhydroxyapatite-HPLCでさらに精製するとSDS-PAGE上、すべて分子量36,000の単一バンドを示す蛋白が得られた。各種胆汁酸を基質としてこれらの酵素のenzyme kineticsを検討すると、3つの酵素とも見かけ上のKmはケノデオキシコール酸で1μM、コール酸で40μM程度であり、ラット肝3α-HSDと同程度であった。以上の結果から、ラット肝と異なり、ヒト肝では3α-HSDはbile acid binderとは別に存在し、酵素学的性格はラットに類似するものの胆汁酸結合のは持たず、ヒト肝内での胆汁酸の輸送にはbile acid binderが重要な役割を持つものと考えらた。 | KAKENHI-PROJECT-04670444 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04670444 |
自然流産におけるエピジェネティックな原因と染色体・DNA微細欠失の解明 | 染色体異常を伴わない自然流産の原因として、エピジェネティックな異常、微細欠失、染色体構築異常等が如何に関わっているかを検討した。X染色体の不活性化を制御するXIST遺伝子の活性をRNA-FISHで測定したところ、FISHシグナルが見られないかそれが極めて弱い細胞の比率が高い検体が存在した。これらの検体の培養細胞によるX染色体のDNA複製パターンを解析した結果、不活性化X染色体のDNA後期複製を認めない細胞の頻度がかなり高く、X染色体不活性化が不完全なケースが存在していると考えられた。この結果は、X不活性化の異常が自然流産の原因として関わっている可能性が強く示唆する。これらの検体でXIST遺伝子の特定構造のPCR解析では異常は検出されなかった。解析をさらに進めるために、異常を示した検体の培養細胞からX染色体不活性化異常を示す細胞クローンの分離を図ったが、これまで得たクローンの中にはRNA-FISHシグナル等の異常は認められなかった。一方、300例以上の自然流産について全常染色体の360のマイクロサテライトの多型解析などで微細欠失を調査し、これまで常染色体にいくつかの欠失を認めた。また、Xが1個の46,XYと45,Xの症例において、X染色体の35マイクロサテライトの多型パターンを分析し、同様に欠失を認めた。これらの欠失部分の構造を明らかにするためにBACクローンを用いて解析を進めた。de novoの均衡型転座を有する自然流産の切断点遺伝子の解析を実施したが、今までのところ切断点遺伝子の特定には到達できていない。サザンブロット等によりX染色体上の遺伝子のメチレーションの異常の検出を試みたが、その異常を示す証拠は得られなかった。マイクロサテライト多型解析で新たに片親性ダイソミーを検出した。またその過程で、片親性トリソミー14を見つけたが、これは世界で最初の発見である。染色体異常を伴わない自然流産の原因として、エピジェネティックな異常、微細欠失、染色体構築異常等が如何に関わっているかを検討した。X染色体の不活性化を制御するXIST遺伝子の活性をRNA-FISHで測定したところ、FISHシグナルが見られないかそれが極めて弱い細胞の比率が高い検体が存在した。これらの検体の培養細胞によるX染色体のDNA複製パターンを解析した結果、不活性化X染色体のDNA後期複製を認めない細胞の頻度がかなり高く、X染色体不活性化が不完全なケースが存在していると考えられた。この結果は、X不活性化の異常が自然流産の原因として関わっている可能性が強く示唆する。これらの検体でXIST遺伝子の特定構造のPCR解析では異常は検出されなかった。解析をさらに進めるために、異常を示した検体の培養細胞からX染色体不活性化異常を示す細胞クローンの分離を図ったが、これまで得たクローンの中にはRNA-FISHシグナル等の異常は認められなかった。一方、300例以上の自然流産について全常染色体の360のマイクロサテライトの多型解析などで微細欠失を調査し、これまで常染色体にいくつかの欠失を認めた。また、Xが1個の46,XYと45,Xの症例において、X染色体の35マイクロサテライトの多型パターンを分析し、同様に欠失を認めた。これらの欠失部分の構造を明らかにするためにBACクローンを用いて解析を進めた。de novoの均衡型転座を有する自然流産の切断点遺伝子の解析を実施したが、今までのところ切断点遺伝子の特定には到達できていない。サザンブロット等によりX染色体上の遺伝子のメチレーションの異常の検出を試みたが、その異常を示す証拠は得られなかった。マイクロサテライト多型解析で新たに片親性ダイソミーを検出した。またその過程で、片親性トリソミー14を見つけたが、これは世界で最初の発見である。本研究では、染色体異常を伴わない原因不明の自然流産について、X染色体の不活性化の異常やインプリントの異常など、種々のエピジェネティックな異常の関与を解明し、さらに染色体の微細欠失の関与について明らかにすることを目的にしている。今年度はX染色体の不活性化の異常を検出するために、XIST遺伝子の特定領域のFISHプローブを作製し、この遺伝子の活性をRNA-FISHにより検出する方法の確立を図った。この方法はX不活性化異常を定量的に分析する方法として有用性がある。さらに、X染色体上の2遺伝子を用いてメチル化非感受性・感受性制限酵素を用いたサザンブロット等によりメチレーションの異常の検出方法を検討した。これらの方法を確立し、原因不明の自然流産の絨毛細胞標本を用いて、X不活性化異常の有無について解析を進めてきた。異常が検出された場合にはクローニングにより異常細胞を分離し、さらに詳細な解析を行う予定である。また、マイクロアレイ-CGH法によるX染色体上の微細欠失の解析を行うための準備を進めた。微細欠失の予備的情報を得るために、多数のマイクロサテライトの多型解析により、そのマイクロサテライトを含む領域の欠失の有無を調査した。これまでX染色体及び常染色体に欠失を示唆する情報が得られている。一方、de novoの均衡型構造異常を有する自然流産の症例について、その構造異常の切断点遺伝子の特定を図った。平成16年度は染色体7と12の均衡転座を有する症例について切断点を特定するためにBAC FISHを行うとともに、類似の転座切断点の情報を収集した。 | KAKENHI-PROJECT-16390481 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16390481 |
自然流産におけるエピジェネティックな原因と染色体・DNA微細欠失の解明 | これらの検体の収集及び解析は、文部科学省等三省合同による「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」等を遵守して実施した。染色体異常を伴わない自然流産の原因として、エピジェネティックな異常と染色体微細欠失の関与を検討した。(1)X染色体の不活性化を制御するXIST遺伝子の活性をRNA-FISHで測定したところ、FISHシグナルが全体的に弱い検体やシグナルが極めて弱い細胞の比率が高い検体などを認めた。また、それらの検体の培養細胞によるX染色体のDNA複製パターンを解析した結果、一方のX染色体のDNA複製遅延を認めない細胞頻度が高いものがあった。この結果は、X染色体不活性化異常が自然流産の原因として関わっている可能性を示唆する。また、これらの検体でXIST遺伝子の特定領域の構造についてPCRで解析を試みたが、異常は検出されなかった。解析を進めるためにこれら検体の培養細胞からX染色体不活性化異常細胞のクローニングを図ったが、これまで分離したクローンにはRNA-FISHシグナルの異常は認められなかった。(2)多数のマイクロサテライトの多型解析などにより、染色体微細欠失(各マイクロサテライトのプライマーで挟む領域)を調査した。これまでに常染色体及びX染色体の8箇所に欠失を認めた。de novoの染色体7と12の均衡型転座を有する自然流産で切断点遺伝子の解析を実施したが、特定遺伝子の欠失には繋がっていない。また自然流産に見られる転座切断点の情報を収集したが、共通する切断点をもつ症例はまだ限られる。(3)メチル化感受性制限酵素などを用いたサザンブロット等によりX染色体上の遺伝子のメチレーションの異常の検出を試みたが、異常を示唆する検体は得られなかった。なお、これらの検体の収集及び解析においては、文部科学省等三省合同による「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」等を遵守した。 | KAKENHI-PROJECT-16390481 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16390481 |
ニューロン・グリア実時間同時イメージングによる脊髄神経可塑性の解析 | 本研究では、痛覚過敏モデル動物を用いて脊髄後角におけるグリア細胞の形態および数の変化、神経興奮へのグリア細胞の作用、グリア細胞の活動性の変化について、特にグリア細胞に存在するP2X受容体の1つであるP2X_4受容体に注目して実験を行った。実験の結果、グリア細胞で形態の肥大化、数の増加が見られた。また、ノーマルラットに比べて、P2X_4受容体を介したカルシウムシグナルがより多くのグリア細胞で見られ、より活性化されていることがわかった。また、グリア細胞の活動の抑制やP2X_4受容体の阻害は、神経興奮を減少させた。本研究では、痛覚過敏モデル動物を用いて脊髄後角におけるグリア細胞の形態および数の変化、神経興奮へのグリア細胞の作用、グリア細胞の活動性の変化について、特にグリア細胞に存在するP2X受容体の1つであるP2X_4受容体に注目して実験を行った。実験の結果、グリア細胞で形態の肥大化、数の増加が見られた。また、ノーマルラットに比べて、P2X_4受容体を介したカルシウムシグナルがより多くのグリア細胞で見られ、より活性化されていることがわかった。また、グリア細胞の活動の抑制やP2X_4受容体の阻害は、神経興奮を減少させた。目的神経可塑性の1つである脊髄後角での中枢性感作は、炎症や神経損傷によって引き起こされる痛覚過敏やアロディニアのメカニズムと考えられている。また、近年、脊髄後角におけるグリア細胞が、これらの痛みに直接的に関与していることが示唆されている。本研究では、脊髄後角での中枢性感作へのグリア細胞の関与について、炎症性疼痛と、神経因性疼痛の2種類のモデルラットを用いて調べることを目的とした。方法炎症性疼痛ラットは、フロインドアジュバンドを後肢の足裏に注射することによって作成し、神経因性疼痛ラットは、坐骨神経の中の第5腰髄神経のみを結紮し、末梢側で切断することによって作成した。これらのラットの脊髄後角の神経興奮は、電位感受性色素を用いた光イメージングによって解析した。また、免疫染色によってグリア細胞の形態変化および、p38MAKのリン酸化を可視化した。実験結果実験の結果、どちらの疼痛ラットもvon Freyfilamentによる触刺激に対する痛み行動の閾値の低下を示した。また、後根への単発刺激によって起きる脊髄後角での神経興奮は、ノーマルラットに比べて増大していた。また、ミクログリア抑制剤であるminocyclineは、ノーマル、炎症性疼痛、神経因性疼痛のすべてのラットの神経興奮を抑制したが、特に、神経因性疼痛ラットで顕著であった。非選択的ATP受容体阻害薬であるsuraminは、炎症性疼痛、神経因性疼痛ラットのどちらの神経興奮も抑制したが、特異的P2X1,2,3,5受容体拮抗薬PPADSは、炎症性疼痛ラットの神経興奮を著明に抑制した。また、PPADS投与後の特異的P2X1,2,3,4受容体拮抗薬TNP-ATPの投与では、神経因性疼痛ラットの神経興奮のみが著明に抑制された。したがって、炎症性疼痛の神経興奮の増大にはP2X4受容体以外のATP受容体が関与しており、神経因性疼痛の神経興奮の増大にはP2X4受容体が関与していると考えられる。また、p38MAPキナーゼの阻害薬であるSB203580は、すべてのラットにおける神経興奮を抑制したが、特に、神経因性疼痛ラットで顕著であった。これらの結果を、免疫染色によって検証した結果、神経因性疼痛ラットの脊髄にのみ、ミクログリアの形態変化およびp38MAPキナーゼのリン酸化の増大が見られた。これらの結果は、炎症性疼痛と、神経因性疼痛では、どちらも脊髄後角で感作が起こるが、そのメカニズムは異なり、ミクログリアは、特に神経因性疼痛に大きく関わっていることを示唆する。今後、これらの疼痛ラットの脊髄ミクログリアのATP刺激によるカルシウム応答を〓神経可塑性の1つである脊髄後角での中枢性感作は、炎症や神経損傷によって引き起こされる痛覚過敏やアロディニアのメカニズムと考えられている。また、近年、脊髄後角におけるグリア細胞が、これらの痛みに直接的に関与していることが示唆されている。本研究では、脊髄後角での中枢性感作へのグリア細胞の関与について、炎症性疼痛と、神経因性疼痛の2種類のモデルラットを用いて調べることを目的とした。実験の結果、ミクログリア抑制剤であるminocyclineは、ノーマル、炎症性疼痛、神経因性疼痛のすべてのラットの神経興奮を抑制したが、特に、神経因性疼痛ラットで顕著であった。非選択的ATP受容体阻害薬であるsuraminは、炎症性疼痛、神経因性疼痛ラットのどちらの神経興奮も抑制したが、特異的P2X1, 2, 3, 5受容体拮抗薬PPADSは、炎症性疼痛ラットの神経興奮を著明に抑制した。また、PPADS投与後の特異的P2X1, 2, 3, 4受容体拮抗薬TNP-ATPの投与では、神経因性疼痛ラットの神経興奮のみが著明に抑制された。したがって、炎症性疼痛の神経興奮の増大にはP2X4受容体以外のATP受容体が関与しており、神経因性疼痛の神経興奮の増大にはP2X4受容体が関与していると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-20700348 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20700348 |
ニューロン・グリア実時間同時イメージングによる脊髄神経可塑性の解析 | また、p38MAPキナーゼの阻害薬であるSB203580は、すべてのラットにおける神経興奮を抑制したが、特に、神経因性疼痛ラットで顕著であった。これらの結果を、免疫染色によって検証した結果、神経因性疼痛ラットの脊髄にのみ、ミクログリアの形態変化およびp38MAPキナーゼのリン酸化の増大が見られた。また、ノーマルラットに比べて、P2X_4受容体を介したカルシウムシグナルがより多くのグリア細胞で見られ、より活性化されていることがわかった。これらの結果は、痛覚過敏が、脊髄後角内のグリア細胞にP2X_4を介した可塑的変化が起き、その変化が神経興奮を促進させるために起こることを示唆する。 | KAKENHI-PROJECT-20700348 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20700348 |
牛呼吸器病症候群における複数病原体感染による重症化機序の解明 | 牛呼吸器症候群の実態を明らかにするために、牛呼吸器由来上皮細胞株の樹立に取り組んだ。牛呼吸器上皮細胞モデルの作製を試みた。宮崎県食肉検査処理場から健康牛(黒毛牛N=3)から喉頭、気管支、肺胞器官を入手し、気管上皮、気管支上皮、肺胞上皮細胞の初代培養系を作製した。これらの細胞は、継代4代目で95%以上が上皮細胞であることを上皮細胞特異的蛋白質パンサイトケラチンの発現量を測定することにより確認した。また20代目まで細胞生存性に影響なく継代することを確認した。これらの上皮細胞に牛RSウイルスを感染させると、感染5日目において下部気道由来の気管支上皮細胞(8.14 log10/ml)、肺胞上皮細胞(8.15 log10/ml)におけるウイルス増殖性は、上部気道由来の気管上皮細胞(7.34 log10/ml)よりも有意に高くなった(p < 0.05)。また細胞変性効果に関しては、気管上皮細胞では観察できなかったが、肺胞上皮細胞においては顕著な合胞体の形成がみられた。また肺胞上皮細胞における炎症性サイトカインmRNA(IL-1、IL-6)の発現は、気管上皮細胞よりも有意に高かった。これらのBRSV感染呼吸器由来上皮細胞におけるPasteurella multocida細菌の付着性について検討した。下部気道由来の気管支上皮細胞、肺胞上皮細胞においては、ウイルス感染日数に依存して、P. multocidaの付着性亢進が確認できた。これに対して、上部気道由来の気管上皮細胞においては、ウイルス感染日数が経過するにつれてP. multocidaの付着性が減少するという相反する結果が得られた。以上の結果より、牛の上部気道由来上皮細胞と下部気道由来上皮細胞においてはBRSV感受性、およびBRSV感染後の二次感染を想定したP. multocidaの付着性に大きな違いがあることを明らかにした。当初の予定通り、H30年度に健康牛由来呼吸器器官より、喉頭、気管支、肺胞器官に由来する気管上皮、気管支上皮、肺胞上皮細胞の培養細胞の樹立に成功した。また、これらの細胞列を用いたBRSV感染性および二次感染を想定したP. multocidaの付着性についても評価することに成功した。この結果より、上部気道と下部気道における上皮細胞における病原体感受性が異なることを明らかにすることができた。今年度樹立したそれぞれの細胞列が、牛呼吸器症候群に関連する病原体の病原性解析を行うためには非常に重要なツールであることを意味する。しかしながら、BRSV感染に誘導されるP. multocidaの付着増強因子の同定に至っていない。BRSV感染牛呼吸器上皮細胞において、細胞側の細菌接着因子(ICAM-1、PAF受容体など)の発現レベルを測定し、ウイルス感染による細菌接着因子発現の影響を明らかにする。誘導調節を受ける接着因子、サイトカインの発現誘導に関わる各種情報伝達転写因子の発現をmRNA、ウエスタンブロットにより測定し、ウイルス感染を基盤とした細菌感染の重症化経路を明らかにする。また細胞障害性亢進が確認できた場合には、アポトーシス誘導経路の関与、タイトジャンクション発現への影響を、ウエスタンブロット、mRNAの発現により評価する。混合感染により誘導される転写因子が同定できれば、それらの転写因子遺伝子プロモーター組み換え発光系プラスミドを作製し、病原体の各種タンパク質遺伝子発現プラスミドと共発現させることにより、直接的な転写因子活性を証明する。これにより、重症化機序に関わる病原因子を同定することを目指す。牛呼吸器症候群(BRDC)の実態を明らかにするために、牛呼吸器スワブにおけるBRDC関連病原体遺伝子の検出を試みた。さらに呼吸器上皮細胞を用いたウイルスと細菌の複合感染モデルを作成し、ウイルス感染が及ぼす細菌付着性への影響を調べた。牛呼吸器スワブ101検体においてRT-PCR/PCRにより牛RSウイルス(BRSV)、牛ウイルス性下痢ウイルス、牛パラインフルエンザ3型、牛ヘルペスウイルス1型、Pasteurella multocida、Mannheimiahaemolytica、Histophilussomni、Mycoplasma bovisの遺伝子検出を行った。また、ヒト呼吸器上皮細胞A5492にウイルスを感染させた後、細菌を処理し、細胞表面の細菌付着性を評価した。BRDC病原体遺伝子陽性率は81%であり、陽性検体中の57%から2種以上の病原体遺伝子が検出できた。2種類以上の病原体遺伝子が検出された検体において、ウイルスと細菌の組み合わせが49%を占めた。これらのウイルスと細菌の複合検出検体の組み合わせとしては、BRSVとP. multocidaの組み合わせが多くみられた。しかしながら、病原体の分離は成功しなかった。BRSV先行感染した呼吸器上皮細胞においてP. multocida付着性を調べたところ、BRSVの感染により、P. multocidaの細胞付着率が有意に増加した(p<0.005)。ウイルスと細菌の複合検出率が高く、BRDCには単独ではなく複数の病原体が関与し、ウイルスと細菌による複合感染が高頻度で起きていた。呼吸器上皮細胞へのBRSVの先行感染が、P. multocidaの付着を増強していることが明らかになった。当初の予定では、H29年度に、牛呼吸器症候群に関連する病原体の汚染状況を、新規複合診断方法うにより明らかにする予定であった。食肉衛生検査所、農場、大学附属農場における検体採集が順調に進み、その調査が予定より早く進行した。 | KAKENHI-PROJECT-17K08080 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K08080 |
牛呼吸器病症候群における複数病原体感染による重症化機序の解明 | 本来なら本研究で開発すべき牛呼吸器症候群に対する複合診断方法が、他研究機関より牛呼吸器症候群に対する複合診断開発が行われてしまったために(Kishimoto et al., JVMS, 2018)、我々は、コンベンショナルPCRを用いた解析を行った。この開発時間を利用して、H30年度に予定していたウイルスの先行感染による細菌の上皮細胞付着性への影響を調べることに着手できた。その結果よりBRSVの先行感染が、パスツレラ菌の上位細胞付着性を増強し、同時に炎症性サイトカイン誘導性を活性化することがわかり、ウイルスと細菌の複合感染が重症化に関連している可能性を指摘することができた。牛呼吸器症候群の実態を明らかにするために、牛呼吸器由来上皮細胞株の樹立に取り組んだ。牛呼吸器上皮細胞モデルの作製を試みた。宮崎県食肉検査処理場から健康牛(黒毛牛N=3)から喉頭、気管支、肺胞器官を入手し、気管上皮、気管支上皮、肺胞上皮細胞の初代培養系を作製した。これらの細胞は、継代4代目で95%以上が上皮細胞であることを上皮細胞特異的蛋白質パンサイトケラチンの発現量を測定することにより確認した。また20代目まで細胞生存性に影響なく継代することを確認した。これらの上皮細胞に牛RSウイルスを感染させると、感染5日目において下部気道由来の気管支上皮細胞(8.14 log10/ml)、肺胞上皮細胞(8.15 log10/ml)におけるウイルス増殖性は、上部気道由来の気管上皮細胞(7.34 log10/ml)よりも有意に高くなった(p < 0.05)。また細胞変性効果に関しては、気管上皮細胞では観察できなかったが、肺胞上皮細胞においては顕著な合胞体の形成がみられた。また肺胞上皮細胞における炎症性サイトカインmRNA(IL-1、IL-6)の発現は、気管上皮細胞よりも有意に高かった。これらのBRSV感染呼吸器由来上皮細胞におけるPasteurella multocida細菌の付着性について検討した。下部気道由来の気管支上皮細胞、肺胞上皮細胞においては、ウイルス感染日数に依存して、P. multocidaの付着性亢進が確認できた。これに対して、上部気道由来の気管上皮細胞においては、ウイルス感染日数が経過するにつれてP. multocidaの付着性が減少するという相反する結果が得られた。以上の結果より、牛の上部気道由来上皮細胞と下部気道由来上皮細胞においてはBRSV感受性、およびBRSV感染後の二次感染を想定したP. multocidaの付着性に大きな違いがあることを明らかにした。当初の予定通り、H30年度に健康牛由来呼吸器器官より、喉頭、気管支、肺胞器官に由来する気管上皮、気管支上皮、肺胞上皮細胞の培養細胞の樹立に成功した。また、これらの細胞列を用いたBRSV感染性および二次感染を想定したP. multocidaの付着性についても評価することに成功した。この結果より、上部気道と下部気道における上皮細胞における病原体感受性が異なることを明らかにすることができた。今年度樹立したそれぞれの細胞列が、牛呼吸器症候群に関連する病原体の病原性解析を行うためには非常に重要なツールであることを意味する。 | KAKENHI-PROJECT-17K08080 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K08080 |
分子イメージングPET核種を用いた頭部外傷における脳虚血の検出 | 重症頭部外傷患者における^<18> F-フルオロミソニダゾール(FMISO)を用いた陽電子断層撮影(PET)検査では挫傷部周辺に低酸素領域は確認できなかった。その後、FMISO-PETを用いて脳梗塞と脳腫瘍症例において低酸素領域の検出を試みた。急性期脳梗塞症例では、全例にMRI拡散強調画像での高信号の周辺にFMISO集積領域を認め、その領域の一部は後日梗塞巣へ移行した。また悪性神経膠腫において全例に低酸素領域を認め、その体積はメチオニン-PETでの活動性腫瘍体積と有意な相関関係を認めた。重症頭部外傷患者における^<18> F-フルオロミソニダゾール(FMISO)を用いた陽電子断層撮影(PET)検査では挫傷部周辺に低酸素領域は確認できなかった。その後、FMISO-PETを用いて脳梗塞と脳腫瘍症例において低酸素領域の検出を試みた。急性期脳梗塞症例では、全例にMRI拡散強調画像での高信号の周辺にFMISO集積領域を認め、その領域の一部は後日梗塞巣へ移行した。また悪性神経膠腫において全例に低酸素領域を認め、その体積はメチオニン-PETでの活動性腫瘍体積と有意な相関関係を認めた。【研究の意義】中枢性ベンゾジアゼピン受容体を定量的に測定できるPET分子イメージングトレーサである11C-フルマゼニル(11C-FMZ)を用いたPET検査を応用した頭部外傷後の高次脳機能障害の病態解明のための研究を平成21年度に実施した。当初の計画では18F-ミソニダゾールを用いた頭部外傷急性期に脳虚血の研究を初年度に進める予定であり症例の蓄積中であるが、急性期に測定が困難で十分な症例が得られないため、慢性期の神経細胞脱落と高次脳機能障害に関する研究を主に行った。【具体的内容】データベース作成のための正常被験者は、男性9名、女性10名の19名(平均年齢24.9±4.0歳、2235歳)であった。また患者群として重症頭部外傷後に高次脳機能障害を後遺した男性4名、女性3名の7名(平均年齢24.6±6.3歳、1936歳)で、原因となった頭部外傷は、びまん性軸索損傷5名、脳挫傷1名、急性硬膜下血腫1名であった。脳挫傷の症例を除いて形態学的画像診断では強い局所性脳損傷は確認されなかった。PET検査は、11C-FMZ静注後60分間のダイナミック撮影を行い、撮像開始後2040分間の画像を収集しbinding potential(BP)画像を作成した。【結果】正常被験者では比較的均一なBP画像が得られ、統計学的画像解析のためのデータベースが得られた。脳挫傷症例では損傷部に一致してFMZ BPの低下が認められた。また他の症例においては、形態学的画像診断では明らかな損傷を認めなかった前頭葉内側(前部帯状回)、前頭葉眼窩面などに共通してFMZ BPの低下が検出された。【結論】正常被検者19名を対象に統計学的画像解析のための正常データベースの構築を行った。頭部外傷に伴う高次脳機能障害患者においてFMZ-PETを施行することにより、形態学的画像診断では異常を認めない部位にも大脳皮質神経細胞脱落が確認された。【具体的内容】急性期のPET検査は、脳挫傷を認めた22名(男性16名、女性6名)を対象とした。また脳内微小透析法(MD)による局所脳代謝と生化学的パラメータの測定は、重症頭部外傷例8名(全例男性)を対象とした。検査は、(1)脳循環代謝測定は、^<15>Oガス吸入法により脳血流量(CBF)、脳酸素代謝率(CMRO_2)、脳酸素摂取率(OEF)を定量的に測定し画像化した。(2)低酸素領域の検出には、FMISOを用いて有意な集積部位を描出した。(3)MDは、プローブを局所性脳損傷では脳挫傷周辺部に留置して1時間毎に連続測定を行った。結果として、(1)脳挫傷周辺部におけるCBFは対側大脳皮質に比較して約89%と軽度の低下であったが、CMRO_2、OEFはそれぞれ約67%、75%と強度に低下しており脳挫傷周辺部において脳血流障害に比して強い脳酸素代謝の障害が認められた(相対的贅沢灌流状態)。(2)今回検討した症例には、脳挫傷周辺部に明らかな低酸素部位は同定できなかった。(3)脳挫傷周辺に留置したプローブからの測定で、乳酸/ピルビン酸比が上昇した症例があった。【意義】脳挫傷周辺ではいわゆる相対的な贅沢灌流状態が、急性期のみならず亜急性期まで持続することが明らかとなった。またFMISOを用いたPET検査により脳挫傷周辺部では明らかな低酸素領域は確認できなかったが、MDでは乳酸/ピルビン酸比が上昇した症例があった。以上の結果から、脳挫傷周辺部にはペナンブラと考えられる低酸素領域は存在せず、急性期から亜急性期にかけて脳血流は改善傾向を示すが、脳酸素代謝障害が長く続くことが明らかとなった。MDで認められた乳酸/ピルビン酸比の上昇は脳虚血以外の要因があると考えられた。【重要性】PETによる研究を積み重ねていくことで頭部外傷に伴う二次的脳損傷に及ぼす脳虚血や低酸素の存在の有無を明らかにすることができると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-21591845 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21591845 |
分子イメージングPET核種を用いた頭部外傷における脳虚血の検出 | 平成22年度の研究で重症頭部外傷患者において^<18>F-fluoromisonidazole(FMISO)を用いた陽電子断層撮影(PET)検査を施行し脳挫傷周辺部での低酸素領域の検出を試みたが、明らかなFMISOが集積亢進を示す低酸素領域は確認できなかった。そのため平成23年度の研究では、FMISO-PETを用いて脳梗塞と脳腫瘍症例においての低酸素領域の検出を試みた。脳梗塞における対象症例は、虚血性脳血管障害の診断、治療の目的で当院に入院しFMISO-PET検査を施行した10例(男性6名、女性4名、平均年齢60.5±19.2歳、27-82歳)である。脳梗塞発症2日以内の急性期に施行した症例は3例、発症3週間以内の亜急性期に施行した症例は3例であり、残りの4例は慢性期の脳梗塞症例である。結果は、急性期症例(発症3040時間)では全例にMRI拡散強調画像での高信号の周辺にFMISO集積領域を認め、その領域の一部は後日梗塞巣へ移行した。亜急性期症例の1例(発症7日後)にもFMISO集積領域を認めたが、その後の脳梗塞巣の拡大はなかった。一方脳腫瘍における対象症例は、病理学的に膠芽腫と診断され、術前にFMISOとアミノ酸代謝を評価するメチオニン(MET)を用いたPET検査を施行した10例(男性7名、女性3名、平均年齢57.8±12.7歳、27-72歳)である。全例に低酸素領域を認め、その体積はMET-PETでの活動性腫瘍体積と有意な相関(r=0.94,P<0.01)関係を認めた。また低酸素領域の体積は、造影MRIで求めた腫瘍体積と同等であった。結論:脳外傷患者においてはFMISOで集積亢進を示す低酸素領域は確認できなかったが、虚血性脳血管障害では発症急性期の症例、悪性脳腫瘍(膠芽腫)では全例に低酸素領域を認めた。低酸素状態は、脳梗塞の進展や悪性脳腫瘍の治療抵抗性に重要な役割を有していると考えられている。FMISOを用いたPET検査を応用することで種々の脳疾患において非侵襲的に低酸素領域を描出することが可能であった。 | KAKENHI-PROJECT-21591845 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21591845 |
新型焼結ダイヤモンドを用いた多アンビル型装置による超高圧発生と鉱物合成法の開発 | 本研究では、新型焼結ダイヤモンド(ADC)の超高圧装置への適用を目的とした試験的研究をおこなた。ADCを一辺9.5mmの立方体に加工し、MA6-8型装置の第二段アンビルとして用い、各種性質のテストをおこなうとともに高温高圧下での合成実験や相転移実験を試みた。更にはADCの特徴を生かし、高温高圧下でのX線回折その場実験のためのシステムを開発した。1.ADC立方体の電気抵抗率やX線に対する透過率、また実際にアンビルとして使用した場合の強度等についての試験をおこなった。この結果、ADCは従来のこの種の製品に比べて非常に高いX線透過率を示した。一方、電気抵抗率も相対的に高いことがわかった。また、強度の点でも高圧装置用のアンビルとして十分実用的であることが明らかになった。2.ADCアンビルの特徴を生かし、"ハイブリッドアンビルシステム"を考案し、比較的容易に30GPa領域での高温高圧実験が可能になった。このシステムを用いて、いくつかのケイ酸塩試料の合成・相転移実験をおこない、このシステムの超高圧下での鉱物合成装置としての有用性を確認した。3.上記のシステムを用いてX線その場観察用のセルを開発した。これを用いて高エネルギー物理学研究所の放射光X線を利用し、26GPa・1200度C程度の条件下でのX線回折をおこなった。この結果、このシステムがこのような目的に極めて有効であることがわかった。このシステムを用いた実験により、ケイ酸塩のアモルファス化に関する従来知られていない興味ある結果が得られている。本研究では、新型焼結ダイヤモンド(ADC)の超高圧装置への適用を目的とした試験的研究をおこなた。ADCを一辺9.5mmの立方体に加工し、MA6-8型装置の第二段アンビルとして用い、各種性質のテストをおこなうとともに高温高圧下での合成実験や相転移実験を試みた。更にはADCの特徴を生かし、高温高圧下でのX線回折その場実験のためのシステムを開発した。1.ADC立方体の電気抵抗率やX線に対する透過率、また実際にアンビルとして使用した場合の強度等についての試験をおこなった。この結果、ADCは従来のこの種の製品に比べて非常に高いX線透過率を示した。一方、電気抵抗率も相対的に高いことがわかった。また、強度の点でも高圧装置用のアンビルとして十分実用的であることが明らかになった。2.ADCアンビルの特徴を生かし、"ハイブリッドアンビルシステム"を考案し、比較的容易に30GPa領域での高温高圧実験が可能になった。このシステムを用いて、いくつかのケイ酸塩試料の合成・相転移実験をおこない、このシステムの超高圧下での鉱物合成装置としての有用性を確認した。3.上記のシステムを用いてX線その場観察用のセルを開発した。これを用いて高エネルギー物理学研究所の放射光X線を利用し、26GPa・1200度C程度の条件下でのX線回折をおこなった。この結果、このシステムがこのような目的に極めて有効であることがわかった。このシステムを用いた実験により、ケイ酸塩のアモルファス化に関する従来知られていない興味ある結果が得られている。本年度は新型焼結ダイヤモンド(ADC)の基本的性質の測定とともに、これを多アンビル型装置の第2段アンビルに導入し、高圧発生試験および合成実験を試みた。またWCアンビルを用いた予備実験もおこない、この際愛媛大学の高圧装置にフレームの補強等の改良を加えた。本年度得られた結果と今後の課題について以下に示す。(1)ADCは従来の代表的焼結ダイヤモンド素材であるSYNDIE等に比べ、圧倒的にX線透過率が良いことがわかった。従ってX線その場観察用のアンビルとして実用的であり、今後放射光等を利用した高圧X線回折への応用に向け基礎的実験をおこなう予定である。(2)ADCは放電加工により十分精度よい加工が可能であり、従来品に比べ有利であることがわかった。ただし電気伝導率はSYNDIEに比べ約1桁小さく、ヒーターへのリードとしての使用は困難であることがわかった。従ってアンビルを電極としない加熱システムの構築が必要である。(3)(2)の制約から、第2段アンビルの半数(4個)をWCとし、残りをADCとするハイブリッドシステムを考案、実用化した。これにより、約30GPa、1500°C程度の合成実験が可能になった。現在更にセルの改良によりより広範な条件での安定な実験をめざしている。(4)ADCを用いて圧力発生試験をおこなった。この結果多アンビル装置において40GPa程度の圧力発生が可能であることがわかった。30GPa領域での当初の数回の実験ではADCアンビルに特に破損はみられなかった。しかしその後のくり返し使用により、一部のアンビルにクラックの発生が認められるようになった。従ってADCの強度に関し、これを実用的に用いるためには更に系統的なテストが必要である。本年度は昨年度におけるADCの性能評価および多アンビル型装置のフレーム、加圧制御装置の改良に基づき、以下のような実験をおこなった。尚、ADCの製造、供給が不安定であり、来年度はこれとともに他社の製品も用いて比較検討する予定である。(1)昨年度開発したハイブリッドアンビルシステムを用いて高温発生・測温セルの改良をおこない、30GPa、1500°C領域の安定発生が可能になった。 | KAKENHI-PROJECT-04554033 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04554033 |
新型焼結ダイヤモンドを用いた多アンビル型装置による超高圧発生と鉱物合成法の開発 | これにより超高圧下での相転移・紘物合成実験が従来より高い圧力のもと可能になった。(2)(1)に基づき、オリピン、パイロライト、パイロープ等の鉱物およびアントル構成物質の30GPa領域での合成・相転移実験をおこなった。しかし、特に1500°C程度の実験の後、いくつかのADCアンビルにクラックが認められた。本加熱システムではヒーターに大電流(7200A)が流れるため、アンビル付近の温度も上がりクラックの原因になっている可能性もある。ランニングコストを考えると加熱システム等に更に改良を要する。(3)上記の実験は物性研のDIA型多アンビル装置を用いておこなっている。この装置は第一段アンビルの表面アラインメントが良いがあまり一般的でない。そこで一般に普及しているMA8型のガイドブロックシステムを用いたADCのシステムテストをおこなった。このためにガイドブロックとADCアンピルの間に中間的なWCスペーサーを用いているが、現在のところ加圧途中でブローアウトが起こり、ルーチン的に使用するのは困難なようである。現在さらにこのスペーサーの形状を変えてテストを続行中である。本年度はこれまでのADCを用いた高温高圧発生セルを改良し、X線回折用のセルの試作をおこなった。このセルに、本研究で開発したハイブリッドアンビルシステムを用いて、高温高圧X線回折その場観察システムを構築した。このシステムを高エネルギー物理学研究所放射光実験施設に持ちこみ、DIA型プレス(MAX90)を用いたMA6-8型装置としてX線その場観察をおこなった。白色光にSSDを用いたエネルギー分散法によりX線回折実験をおこない、試料に混ぜたAu粉末の格子定数変化から発生圧力を見積った。この結果TEL=1.5mmを用いたシステムでプレス荷重300トンで約26-276Paの圧力発生が確認された。試料としては天然の蛇紋石を用い、そのアモルファス化と高温高圧安定相についての検討をおこなった。上記の圧力のもと、温度上昇の過程でアモルファス化の観察および結晶化の過程の観察に成功し、最終的には1200°Cで均一時間の加熱に成功した。実験後のアンビルには損傷もみられず本システムのこのような高温高圧X線その場観察実験における有用性が明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-04554033 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04554033 |
Microcystin分解性細菌の新たなる可能性の追究 | 前年度、microcystin分解細菌B-9株の加水分解特性を明らかにするために、次世代シークエンサーのPacBio RSを用いてB-9株の全ゲノムの塩基配列を決定した。その結果、従来知られていた3種の加水分解酵素(MlrAC)とトランスポーターであるMlrDに加えて新たな加水分解酵素(MlrEF)とアミノ酸トランスポーターの存在が明らかとなった。本年度、新たに見出された加水分解酵素MlrEおよびアミノ酸トランスポーターの機能を明らかにするため、以下の実験を実施した。まず、MlrEの機能を確認するためにL-アミノ酸から構成されるジからオクタペプチドを用いてその分解およびEDTA、PMSFによる阻害挙動を観察した。その結果、ジおよびトリペプチドまではMlrE単独で、そしてテトラペプチド以上ではMlrCとMlrEの協働で行われることが確認された。したがって、B-9株におけるMlrEはペプチド類の加水分解の最終過程、すなわちアミノ酸の生成に関与していることになる。一方、アミノ酸トランスポーターの存在および機能を確認するため、L-Trp、L-Phe、D-Trp、D-PheおよびAddaの取り込み実験を行った。その結果、取り込みは、調査したアミノ酸においてはLおよびDアミノ酸とも同等であり、EDTAおよびPMSFによりほぼ同等に阻害された。また、beta-アミノ酸で20炭素原子を有するAddaを取り込むことから基質特異性が広いことが推測された。今回の結果は、MC分解性微生物でアミノ酸トランスポーターの存在が明らかとなった初めて例である。今後、D-aminoacylaseとされるMlrFの機能およびアミノ酸トランスポーターとMlrDによるペプチド類やアミノ酸の取り込み状況を明らかにしなければならない。当研究室では、B-9株による各種ペプチド性化合物の分解挙動から湖沼生態系におけるその存在意義の解明を最終目的とし、B-9株の機能とともに貧栄養湖における栄養獲得挙動を明らかにしている。本研究では加水分解に関与する加水分解酵素MlrA, MlrB, MlrCおよびトランスポーターであるMlrDの遺伝子配列の決定、さらに遺伝子に基づくリコンビナントタンパク質の作成と酵素阻害剤の有無によるB-9による各種ペプチド類の分解挙動をHPLCおよびLC/MSで観察した。B-9株が有するMlrA、MlrB、MlrCおよびMlrDをコードするそれぞれ遺伝子の塩基配列を解読するためにゲノムDNAを抽出し、PCR法により各遺伝子のクローニングを行った。現在まで、mlrADの塩基配列はそれぞれ1011 bp、1212 bp、1450 bp、1275 bpが決定されたが、mlrCは末端部位が不完全でおり、mlrBの全長が1626 bpと報告があることから、決定されたmlrBの長さは不完全な配列であると考えられる。新たな加水分解酵素MlrEの存在およびアミノ酸までの最終過程を明らかにするため、発色団を有するL-アミノ酸ペプチド類の分解挙動を調べた。いずれのペプチドも速やかに分解され、EDTAやPMSFの阻害実験でも、加水分解が進行することが確認された。一方、加水分解されたアミノ酸は消失せず、蓄積することから、アミノ酸に至る最終過程には新たなプロテアーゼ、MlrEがLーアミノ酸を認識して分解すること、および分解されたアミノ酸が蓄積することからアミノ酸を細胞内に取り込むアミノ酸トランスポーターが存在し、それが阻害されることを示している。この結果、B-9株にはオリゴペプチドトランスポーターであるMlrDだけではなく、アミノ酸トランスポーターも存在することが示唆された。本研究は、酵素阻害剤の有無によるB-9による各種ペプチド類の分解挙動をHPLCおよびLC/MSで観察する機器分析的アプローチおよび加水分解に関与する酵素MlrA, MlrB, MlrCおよびトランスポーターであるMlrDの遺伝子配列の決定およびそれに基づくリコンビナントタンパク質を作成する分子生物学的アプローチから構成されている。前者の研究では、ペプチド類化合物を基質とし、microcystin分解性細菌B-9株との分解挙動については、良好な結果が得られていることから予定通り進行すると考えられている。後者の研究では、mlrADの塩基配列はそれぞれ1011 bp、1212 bp、1450 bp、1275 bpが決定されたが、mlrCは末端部位が不完全でおり、mlrBの全長が1626 bpと報告があることから、決定されたmlrBの長さは不完全な配列で、mlr遺伝子に関する情報は少なく、また、遺伝子がクラスターとして存在し、両方とも末端の部位に位置しているため、完全な配列を得るには至っていない。当研究室では、microcystin分解性細菌B-9株を環境中のペプチド性有害物質の浄化に適用し、その際に必要となる分解特性を詳細に理解することおよびその分解挙動に基づき貧栄養湖における分解性細菌の「栄養獲得」作戦の解明を行うことを最終目的としている。本研究では、B-9株が含有する3種の加水分解酵素(MlrAC)とトランスポーターであるMlrD、および新たな加水分解酵素(MlrE)の機能を明らかにするため、分子生物学的アプローチ(次世代シークエンサー)と機器分析アプローチ(HPLCおよびLC/MS)による実験を行った。B-9株が有する3種の加水分解酵素(MlrAC)とトランスポーターであるMlrDの遺伝子はクラスターとして存在しており、今までPCRクローニング法により不完全な塩基配列が解読されたが、今回は次世代シークエンサーのPacBio RSを用いてB-9株の全ゲノムの塩基配列を測定した。現在までにmlrクラスターが確認され、それぞれmlrADの塩基配列は969 bp、1626 bp、1497 bp、1212 bpと決定ある。 | KAKENHI-PROJECT-16K08356 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K08356 |
Microcystin分解性細菌の新たなる可能性の追究 | また、2種の新たな加水分解酵素(MlrEおよびMlrF)の塩基配列1218bp、1491 bpも併せて確認された。新たに見出された加水分解酵素MlrEの機能を明らかにするため、発色団を有するL-アミノ酸からなるジオクタペプチドの分解挙動を調べた。阻害剤の有無に関わらず、ペプチド類は加水分解が円滑に進行する一方、阻害剤添加した場合、ペンタペプチドまでは、加水分解が進行したが、ヘキサからオクタペプチドまでのペプチド類は残り続けた。したがって、ペンタペプチドまでの加水分解はMlrEが関与するが、ヘキサペプチド以上は他の加水分解酵素も関与すると考察された。また、阻害剤を添加した場合、分解されたアミノ酸が残存し続けたことからアミノ酸トランスポーターの存在が示唆され、MlrDとの機能の識別化が必要となった。本研究では、microcystin分解性細菌B-9による各種ペプチド類の化合物の分解挙動をHPLCおよびLC/MSで分析する機器分析的アプローチと加水分解に関与する酵素類およびトランスポーターの塩基配列の決定、それに基づくリコンビナントタンパク質を作成する分子生物学的アプローチから構成されている。機器分析的アプローチでは、ジオクタペプチドを基質とし、B-9との分解挙動や新たなアミノ酸トランスポーターなどの発見があり、ほぼ予定通り進行している。一方、分子生物的アプローチでは本課題を開始して以来1年半の間、mlr遺伝子クラスターの塩基配列が完全に解読するに至らず、前年度末になり次世代シークエンサーを用いてB-9の全ゲノムおよびmlr遺伝子クラスターの塩基配列が解読された。したがって、リコンビナントタンパク質の調製には至っていない。前年度、microcystin分解細菌B-9株の加水分解特性を明らかにするために、次世代シークエンサーのPacBio RSを用いてB-9株の全ゲノムの塩基配列を決定した。その結果、従来知られていた3種の加水分解酵素(MlrAC)とトランスポーターであるMlrDに加えて新たな加水分解酵素(MlrEF)とアミノ酸トランスポーターの存在が明らかとなった。本年度、新たに見出された加水分解酵素MlrEおよびアミノ酸トランスポーターの機能を明らかにするため、以下の実験を実施した。まず、MlrEの機能を確認するためにL-アミノ酸から構成されるジからオクタペプチドを用いてその分解およびEDTA、PMSFによる阻害挙動を観察した。その結果、ジおよびトリペプチドまではMlrE単独で、そしてテトラペプチド以上ではMlrCとMlrEの協働で行われることが確認された。したがって、B-9株におけるMlrEはペプチド類の加水分解の最終過程、すなわちアミノ酸の生成に関与していることになる。一方、アミノ酸トランスポーターの存在および機能を確認するため、L-Trp、L-Phe、D-Trp、D-PheおよびAddaの取り込み実験を行った。その結果、取り込みは、調査したアミノ酸においてはLおよびDアミノ酸とも同等であり、EDTAおよびPMSFによりほぼ同等に阻害された。 | KAKENHI-PROJECT-16K08356 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K08356 |
ラット顎舌骨筋神経の感覚線維の中枢投射の検討 | 顎舌骨筋に分布する顎舌骨筋枝(顎舌骨筋神経)の中枢側切断端にhorseradish peroxidase(HRP)を注入し、顎舌骨筋筋紡錘を支配する一次求心線維の起始細胞の分布様相を観察した。実際には生後8-10週のWistar系雌ラットを用いた。チオペンタール腹腔内麻酔の後、保温パッド上に固定した。手術用顕微鏡下で下顎骨内面に沿ってオトガイ下部から顎下部に至る皮膚切開を加え、下顎臼歯部付近で下顎骨内面から顎下部へ走行する顎舌骨筋神経の本幹を確認し、同神経の技である顎舌骨筋枝を可及的に末梢側へ追求した。次に顎舌骨筋枝を切断し、その中枢側切断端を5%KCI溶液を満たした先端直径100muの微小ガラス管で吸引した。その後、KCI溶液を20%HPR(3M KCI,0.05Mトリス緩衝液)で置換することにより、1-2時間神経切断端をHRP溶液に浸潤させた。動物を24時間生存させた後、2%グルタールアルデヒド-1%パラホラムアルデヒド-0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)にて潅流固定を行い、直ちに脳幹を摘出した。摘出した脳幹は30%sugar-0.1Mリン酸緩衝液中に24-48時間浸潤させた後、厚さ60muの凍結連続切片を作製した。HRPの反応はTMB法を用い、光学顕微鏡によりHRP陽性細胞の出現部位の検索を行った。その結果、実験に供した21例で三叉神経中脳路核と三叉神経運動核の腹内側部にHRP陽性細胞で認めた。なお三叉神経中脳路核におけるHRP陽性細胞の数は1検体に1-3個で、分布部位は吻尾側的に中央部だった。すなわち顎舌骨筋筋紡錘は三叉神経中脳路核由来の一次求心線維に支配されることが確認された。顎舌骨筋に分布する顎舌骨筋枝(顎舌骨筋神経)の中枢側切断端にhorseradish peroxidase(HRP)を注入し、顎舌骨筋筋紡錘を支配する一次求心線維の起始細胞の分布様相を観察した。実際には生後8-10週のWistar系雌ラットを用いた。チオペンタール腹腔内麻酔の後、保温パッド上に固定した。手術用顕微鏡下で下顎骨内面に沿ってオトガイ下部から顎下部に至る皮膚切開を加え、下顎臼歯部付近で下顎骨内面から顎下部へ走行する顎舌骨筋神経の本幹を確認し、同神経の技である顎舌骨筋枝を可及的に末梢側へ追求した。次に顎舌骨筋枝を切断し、その中枢側切断端を5%KCI溶液を満たした先端直径100muの微小ガラス管で吸引した。その後、KCI溶液を20%HPR(3M KCI,0.05Mトリス緩衝液)で置換することにより、1-2時間神経切断端をHRP溶液に浸潤させた。動物を24時間生存させた後、2%グルタールアルデヒド-1%パラホラムアルデヒド-0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)にて潅流固定を行い、直ちに脳幹を摘出した。摘出した脳幹は30%sugar-0.1Mリン酸緩衝液中に24-48時間浸潤させた後、厚さ60muの凍結連続切片を作製した。HRPの反応はTMB法を用い、光学顕微鏡によりHRP陽性細胞の出現部位の検索を行った。その結果、実験に供した21例で三叉神経中脳路核と三叉神経運動核の腹内側部にHRP陽性細胞で認めた。なお三叉神経中脳路核におけるHRP陽性細胞の数は1検体に1-3個で、分布部位は吻尾側的に中央部だった。すなわち顎舌骨筋筋紡錘は三叉神経中脳路核由来の一次求心線維に支配されることが確認された。 | KAKENHI-PROJECT-05771836 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05771836 |
メタファー的検索の定式化とそのHTML文書検索への応用 | テキストコンテンツに対する構造汎化手法を、HTML文書のメタファー的検索(GのようなAを探す問題)のために必要な技法に拡張し、アルゴリズムの高速化を行った。具体的には、(1)タグとテキストコンテンツからなるHTML文書に対する構造汎化を定めるために、テキスト部分の概念グラフをノードに、HTMLタグをロールとみなしたHTML概念グラフを新たに導入し、昨年度与えた極大類比構成アルゴリズムをHTML概念グラフの極大類比を求めるものに拡張した。(2)次に、メタファー的なHTML文書検索方式として、一つの比較的に抽象的なHTML文書を検索の目的文書Aとし、比喩的例示を与えるGとしては、複数の例示文書群を与えるとする。その前提のもとに、例示文書群の汎化でAの具体化になっているものを求めることにより、Aであって、かつ、例示文書の共通性質を持つ、最も極大なもの(極大類比)を算出する方式を策定した。極大類比に包摂されるものを検索質問「GのようなA」にヒットさせる。さらに、Aとテキスト中の語彙の包摂関係が電子化辞書の品質に大きく依存する問題点を解消するために、実際にはAと概念的に近いA'で所与の例示文書群の汎化を抑制するアルゴリズムに改良した。(3)構造汎化の計算量の問題を克服するために、評価関数のもとに、最大評価値を持つ極大類比のみを高速に算出するアルゴリズムを実装し、その有効性を検証した。(3)の手法を(2)に組み込んだものは、タグ数およびテキストコンテンツが50文程度のものに対しては、3秒程度で計算が終了し、比較的に小規模のHTML文書群の処理方式としては十分に有効であることを確かめた。テキストコンテンツに対する構造汎化手法を、HTML文書のメタファー的検索(GのようなAを探す問題)のために必要な技法に拡張し、アルゴリズムの高速化を行った。具体的には、(1)タグとテキストコンテンツからなるHTML文書に対する構造汎化を定めるために、テキスト部分の概念グラフをノードに、HTMLタグをロールとみなしたHTML概念グラフを新たに導入し、昨年度与えた極大類比構成アルゴリズムをHTML概念グラフの極大類比を求めるものに拡張した。(2)次に、メタファー的なHTML文書検索方式として、一つの比較的に抽象的なHTML文書を検索の目的文書Aとし、比喩的例示を与えるGとしては、複数の例示文書群を与えるとする。その前提のもとに、例示文書群の汎化でAの具体化になっているものを求めることにより、Aであって、かつ、例示文書の共通性質を持つ、最も極大なもの(極大類比)を算出する方式を策定した。極大類比に包摂されるものを検索質問「GのようなA」にヒットさせる。さらに、Aとテキスト中の語彙の包摂関係が電子化辞書の品質に大きく依存する問題点を解消するために、実際にはAと概念的に近いA'で所与の例示文書群の汎化を抑制するアルゴリズムに改良した。(3)構造汎化の計算量の問題を克服するために、評価関数のもとに、最大評価値を持つ極大類比のみを高速に算出するアルゴリズムを実装し、その有効性を検証した。(3)の手法を(2)に組み込んだものは、タグ数およびテキストコンテンツが50文程度のものに対しては、3秒程度で計算が終了し、比較的に小規模のHTML文書群の処理方式としては十分に有効であることを確かめた。通常の検索は、質問式を与え、質問式を満たすものを検索する。いわゆる類似検索にしても、項をその類似項に置換えたものに広げる効果しか持っていない。このやり方は、リコールの増大には寄与するが、プレシジョンの低下につながりかねない。これは、広げ方が大きなほど、いわゆる「検索ゴミ」がヒットするからに他ならない。こうした問題点を考慮し、本年度は、類似検索に変わる方式として、メタファー的検索の一つの定式化を与え、その実験を行った。これは、状況を記述した式Qと状況式Qにより満たされる性質記述を表わすゴール式Gの両者を与え、ゴール式Qと類似な状況式Q'で、ゴール式Gを同じように説明できるものを探す問題である。状況式Qを類似性で広げると同時に、「ゴールGを同じように説明できる」強い類似性を持つ状況のみに限定する効果を持つ。定式化は、状況記述もゴールも共に、概念ノードとロール関係からなる概念グラフで記述している。したがって、ゴールも状況記述も単独の検索質問式となりえる。また、可能なゴール記述と状況記述が単一な空間内(実際には記述の束空間)に配置されているので、ゴールもしくは状況記述が不適切であった場合に、例えば、それらの兄弟ゴールや兄弟状況に変化させて検索し直す、などの問題が容易に扱える利点がある。現時点で達成されたことは、上記の定式化と、汎化のメカニズムを併用したアルゴリズムの設計と実装、およびその実験である。実験は未だ小規模であるが、HTML文書から抽出した概念グラフを対象データとした場合の対応策として、ロール制約の種類を追加し、可能な解をさらに縛りこむことを検討している。本研究では、検索対象であるHTML文書Dを演繹データベースとみなすことにより、内包述語で記述されたゴールGをDが持つビューや事実から推論できるときに、DはGを満たすと定義し、他のD'でGを同様に説明できるときに限り、D'はGに照らしてDと類似していると定める。こうした文書間の強類似性は、タグ付き文書としての構造的類似性と、テキストコンテンツ間の意味的類似性の両者を扱うことができる。本年度では、特に、テキストコンテンツの類似性に特化した研究を行った。 | KAKENHI-PROJECT-13480086 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13480086 |
メタファー的検索の定式化とそのHTML文書検索への応用 | テキストコンテンツを索引語の集合とみなす立場では、演繹データベースに文ベクトル間の類似性測度を内包述語化して扱う従来研究と同じになることから、各テキストが持つ言語構造をできるだけ反映できる類似性判定手法を与えた。具体的には、(1)まず、形態素解析と格解析の結果導出できる概念グラフの時系列データとして、各テキストコンテンツを表現し、(2)テキスト間の類似性を、共通したより抽象的なイベントの系列(一般には部分列)として捉え、(3)過度の抽象化を抑制し、計算論的に高速にしかも意味的にもある程度の妥当性を保証させる目的で、汎化限界と呼ばれるパラメータを与え、単調性の性質に基づいて有効な枝刈り探索を実現するボトムアップ探索アルゴリズムを設計・実装・評価した。その結果、25個程度のグラフ系列からなるテキストの場合は1分以内に、また、50個程度の概念グラフ系列からなるテキストの場合は10分程度で、共通な汎化イベント列を算出できることを確認した。前年度に与えた、テキストコンテンツに対する構造汎化手法を、HTML文書のメタファー的検索(GのようなAを探す問題)のために必要な技法に拡張し、アルゴリズムの高速化を行った。具体的には、(1)タグとテキストコンテンツからなるHTML文書に対する構造汎化を定めるために、テキスト部分の概念グラフをノードに、HTMLタグをロールとみなしたHTML概念グラフを新たに導入し、昨年度与えた極大類比構成アルゴリズムをHTML概念グラフの極大類比を求めるものに拡張した。(2)次に、メタファー的なHTML文書検索方式として、一つの比較的に抽象的なHTML文書を検索の目的文書Aとし、比喩的例示を与えるGとしては、複数の例示文書群を与えるとする。その前提のもとに、例示文書群の汎化でAの具体化になっているものを求めることにより、Aであって、かつ、例示文書の共通性質を持つ、最も極大なもの(極大類比)を算出する方式を策定した。極大類比に包摂されるものを検索質問「GのようなA」にヒットさせる。さらに、Aとテキスト中の語彙の包摂関係が電子化辞書の品質に大きく依存する問題点を解消するために、実際にはAと概念的に近いA'で所与の例示文書群の汎化を抑制するアルゴリズムに改良した。(3)構造汎化の計算量の問題を克服するために、評価関数のもとに、最大評価値を持つ極大類比のみを高速に算出するアルゴリズムを実装し、その有効性を検証した。(3)の手法を(2)に組み込んだものは、タグ数およびテキストコンテンツが50文程度のものに対しては、3秒程度で計算が終了し、比較的に小規模のHTML文書群の処理方式としては十分に有効であることを確かめた。 | KAKENHI-PROJECT-13480086 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13480086 |
転写因子Bach2の標的遺伝子の機能的検証 | 免疫担当細胞であるBリンパ球は、外来抗原により活性化されると抗体を分泌する形質細胞へ最終分化を遂げる。その過程でIgM型抗体から他のIgG型抗体へアイソタイプが変換されるクラススイッチで抗原処理に多様性を生み出す。しかし、その過程での転写調節機構は不明であった。本研究では、転写因子Bach2を中心とした遺伝子制御ネットワークが、Bリンパ球がクラススイッチするのに重要であることを見いだした。免疫担当細胞であるBリンパ球は、外来抗原により活性化されると抗体を分泌する形質細胞へ最終分化を遂げる。その過程でIgM型抗体から他のIgG型抗体へアイソタイプが変換されるクラススイッチで抗原処理に多様性を生み出す。しかし、その過程での転写調節機構は不明であった。本研究では、転写因子Bach2を中心とした遺伝子制御ネットワークが、Bリンパ球がクラススイッチするのに重要であることを見いだした。Bach2ノックアウトマウスは、B細胞の活性化応答のなかでもクラススイッチ応答や体細胞突然変異の導入などの胚中心応答に障害がある。また、我々は転写因子Blimp-1をBach2の直接標的遺伝子として同定した。Blimp-1は、形質細胞分化を促進する一方で、胚中心応答に抑制的である可能性が示唆されている。そこで、Bach2ノックアウトB細胞での脱抑制的に高いBlimp-1遺伝子の発現が胚中心応答障害の原因かを検証するために、Bach2・Blimp-1ダブルノックアウト(DD)マウスを作成し、解析をおこなった。先ず、同マウスの脾臓B細胞の初代培養実験系でクラススイッチを検討した。その結果、Bach2ノックアウトB細胞では、クラススイッチしたB細胞が誘導されないのに対し、DDマウス由来のB細胞からはスイッチしたB細胞が誘導された。このとき、クラススイッチに必須の酵素AIDの遺伝子発現の障害が救済されることをあきらかにした。これらの結果は、B細胞活性化応答後のBlimp-1遺伝子の発現が、Bach2によって抑制されることがB細胞のクラススイッチ応答の実行には必須であることを示唆している。しかしながら、Bach2ノックアウトB細胞でみられるB細胞分化の障害は、DDマウスのB細胞では回復しないことから、Blimp-1以外のBach2標的遺伝子には、B細胞で重要な役割をする遺伝子が含まれることを示唆しており、引き続き標的遺伝子の探索と検証をおこなっている。Bach2ノックアウトマウスは、B細胞の活性化応答のなかでもクラススイッチDNA組換えや体細胞突然変異の導入などの胚中心応答に障害がある。また、我々は転写因子Blimp-1をBach2の直接標的遺伝子として同定した。Blimp-1は、形質細胞分化を促進する一方で、胚中心応答に抑制的である可能性が示唆されている。そこで、Bach2ノックアウトB細胞での脱抑制的に高いBlimp-1遺伝子の発現が、胚中心応答障害の原因なのかを検証するために、Bach2およびBlimp-1ダブルノックアウト(DD)マウスを作成し、解析をおこなった。同マウスの脾臓B細胞を用いて、初代培養系でLPSやサイトカインによりクラススイッチを誘導した。その結果、Bach2ノックアウトB細胞では、クラススイッチしたB細胞が誘導されないのに対し、DDマウス由来のB細胞からはスイッチしたB細胞が誘導された。このとき、クラススイッチに必須の酵素AIDの遺伝子発現の障害が救済されることを明らかにした。さらに、クラススイッチ過程では、Bach2がBlimp-1遺伝子の発現を抑制し、Blimp-1による転写因子Pax5の遺伝子の転写抑制を阻止することが、Pax5によってAID遺伝子が活性化されて発現するために必要であることを示した。従って、B細胞の活性化応答では、クラススイッチするB細胞への分化、形質細胞へ分化するB細胞の運命決定を制御する遺伝子ネットワークを明らかにした。そこで、Bach2は、形質細胞分化の遺伝子ネットワークを抑止し、クラススイッチ応答を制御する遺伝子ネットワークへの切り換えるために重要な役割を担うことを示した。 | KAKENHI-PROJECT-19790202 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19790202 |
非侵襲な手法を用いた生体評価パラメータの総合と応用化 | 【目的】本研究では高齢化が進むなか、寝たきりや痴呆の予防を目的として、非侵襲で非観血な方法で測定する骨密度が骨折危険度・身体活動低下度の予測指標となり得る可能性を探るため、身体状況の異なる施設の高齢者の骨密度およびADL,介護度などの身体状況を詳細に検討した.【方法】老人福祉センターに通所し、グランドゴルフ部に所属している6286歳の47名、介護老人福祉施設に入所している71102歳の88名を対象とした。骨密度は超音波骨密度測定機InsightA1000(Lunar社)による踵骨部位のStiffnesss値および年齢補正を行なった同年比較%値を骨密度指標とした。ADL、生活習慣、病歴等問診表による調査を実施した。特養では要介護度、食事形態、障害老人日常生活自立度、痴呆性老人日常生活自立度、骨折等についてのパラメーターを調査した。【結果および考察】AD上と骨密度間に相関関係が見られ(r=0.53、p<0.001)、ADLが高いほど骨密度が高かった。要介護度が高いほど骨密度が低く(r=-0.34、p<0.002)、食事形態が軟食になるほど骨密度は低くなった(r=-0.317、p<0.005)。歩行状態(r=-0.531、p<0.001)、障害老人日常生活自立度(r=-0.526、p<0.001)でも自立から寝たきりへと状態が進むにつれて骨密度が低下した。痴呆性老人目常生活自立度、骨折経験、骨折回数、骨折時期の違いによる骨密度には有意な相関はなかった。以上のことより骨密度は現時点での身体活動度をよく反映し、障害老人日常生活自立度や歩行状態についても相関があったことから、骨密度が身体活動低下度の指標、寝たきりの予測指標となる可能性が示唆された。ヒトの健康を阻害あるいは亢進する因子の複合的な影響を解明するため、運動・ストレス・栄養代謝等を複合的に統合した健康評価法を確立することを目的とする.これまでエネルギー代謝、血糖・血圧調節など食品がもつ生体調節機能の科学実証、メカニズムの解明を非観血・非侵襲によるヒト実験系で行ってきたが今年度は呼吸循環器系のパラメータとして心拍出量が有効か検討を進めた。1.方法------用いた拍出量計(Biotex製)はインピーダンス法を原理とした非侵襲なものであり,本来心疾患患者を対象としたものであるため,ストレスや栄養代謝,運動による微妙な心拍出量の変化を補足できるかどうか,トウガラシ(0.2g)をメルクマールとし,安静,運動時における変化をモニターし,呼吸循環器系に影響を与える呼吸数,酸素消費量,心拍も同時に測定を行った.2.被験者------21-22才の健康な男子5名を被験者し,トウガラシ摂取と摂取なしのコントロールについて,安静時2時間,および運動時(安静30分,エルゴメーター120W運動30分,回復30分)の測定を行った.3.結果-----安静時には様々な試行錯誤の結果,比較的安定した測定値が得られ,トウガラシ摂取時には1回拍出量はコントロールより有意に低下し,呼吸商,酸素消費量の上昇などの変化を補足することが確認できた,心拍出量の変化を非侵襲法であるインピーダンス式心拍出量計で測定可能であり,また食品の影響なども十分捕足できる事を確認した,しかしながら,'運動時での結果はインピーダンスと心拍のうまく同期した状態では測定できず,運動時,今回は自転車こぎの運動からおこる体動が原因と考えられ,運動時に特に変化が大きいと推察できる心拍出量の測定には運動法や測定方法についてさらに検討が必要であることことが明らかとなった.1.非侵襲な手法による酸素運搬能の評価【目的】摂取食品が運動時の心拍(HR)に及ぼす影響を評価するために、HRの変動要因である酸素運搬能、酸素利用能等のうち、酸素運搬能の指標である心拍出量(CO)増加量(一回拍出量(SV)とH_Rで規定される)に注目し、心臓ポンプ機能評価システム確立を目的として、被験者、運動負荷、食品(トウガラシ)の量の違いによる心臓ポンプ機能の応答について検討した。【結果】被験者の運動能力の違い:鍛錬者のCOはSVとHRの両者により増加、非鍛錬者ではSVの増加はなく、HRによる増加が主であった。運動負荷:相対的に負荷を揃えた75%HRmaxのCO増加は鍛錬者、非鍛錬者ともにSV増加は限界に達し、HRに依存した。摂取トウガラシ量の影響:トウガラシ嗜好性の高いものはコントロールに比べ、有意にSVを増加、HRを減少させ、低いものは有意にHRを増加、SVを減少させた。2.非侵襲な骨密度測定による寝たきり度の評価【結果】介護高齢者のADLと骨密度間に相関関係が見られ(r=0.53、p<0.001)ADLが高いほど骨密度が高かった。要介護度が高いほど骨密度が低く(r=-0.34、p<0.002)、食事形態が軟食になるほど骨密度は低くなった(r=-0.317、p<0.005)。 | KAKENHI-PROJECT-14658030 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14658030 |
非侵襲な手法を用いた生体評価パラメータの総合と応用化 | 歩行状態(r=,0531、p<0.001)と障害老人日常生活自立度(r=-0.526、p<0.001)でも自立から寝たきりへと状態が進むにつれて骨密度が低下した。痴呆性老人日常生活自立度、骨折経験、骨折回数、骨折時期の違いによる骨密度には有意な相関はなかった。骨密度は現時点での身体活動度をよく反映し、障害老人日常生活自立度や歩行状態についても相関があったことから、骨密度が身体活動低下度の指標、寝たきりの予測指標となる可能性や介護現場や高齢者の日常において骨折の予防につながる可能性が示唆された。【目的】本研究では高齢化が進むなか、寝たきりや痴呆の予防を目的として、非侵襲で非観血な方法で測定する骨密度が骨折危険度・身体活動低下度の予測指標となり得る可能性を探るため、身体状況の異なる施設の高齢者の骨密度およびADL,介護度などの身体状況を詳細に検討した.【方法】老人福祉センターに通所し、グランドゴルフ部に所属している6286歳の47名、介護老人福祉施設に入所している71102歳の88名を対象とした。骨密度は超音波骨密度測定機InsightA1000(Lunar社)による踵骨部位のStiffnesss値および年齢補正を行なった同年比較%値を骨密度指標とした。ADL、生活習慣、病歴等問診表による調査を実施した。特養では要介護度、食事形態、障害老人日常生活自立度、痴呆性老人日常生活自立度、骨折等についてのパラメーターを調査した。【結果および考察】AD上と骨密度間に相関関係が見られ(r=0.53、p<0.001)、ADLが高いほど骨密度が高かった。要介護度が高いほど骨密度が低く(r=-0.34、p<0.002)、食事形態が軟食になるほど骨密度は低くなった(r=-0.317、p<0.005)。歩行状態(r=-0.531、p<0.001)、障害老人日常生活自立度(r=-0.526、p<0.001)でも自立から寝たきりへと状態が進むにつれて骨密度が低下した。痴呆性老人目常生活自立度、骨折経験、骨折回数、骨折時期の違いによる骨密度には有意な相関はなかった。以上のことより骨密度は現時点での身体活動度をよく反映し、障害老人日常生活自立度や歩行状態についても相関があったことから、骨密度が身体活動低下度の指標、寝たきりの予測指標となる可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-14658030 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14658030 |
唾液腺の脂肪酸を共有結合したタンパク質の生理的意義 | 高等動物細胞における外来情報伝達機構の概要が明らかになりつつあるが、この機構の一部に脂肪酸化タンパク質(acylated protein;AP)の関与の可能性が指摘されている。そこでラットだ液腺細胞をモデル系としてAPの脂肪酸鎖およびタンパク質の両面から検討することによってその生理的機能を明らかにしようと試みた。ところでAPの脂肪酸鎖は生体膜リン脂質(PL)脂肪酸鎖と共通のアシルCoaから導入されることから、高純度に精製した各種オルガネラ標品の各膜リン脂質脂肪酸鎖組成を検討したところ、それぞれのオルガネラおよび各リン脂質に特徴的な差異が見られた。さらに得られた分泌顆粒画分はin vitro系で形質膜との間に特異的な相互作用を認め、開放分泌観察のモデル系としても使用可能であることが明らかになった。一方、生体膜からのAP抽出のため、各種界面活性剤を検討したところ、非イオン性界面活性剤、中でもTriton X-114を用いたphase separation法が効果的である示唆を得た。この方法で耳下腺細胞の各オルガネラ膜タンパク質中の脂肪酸組成を検討したところ、パルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸含量か高く、生体膜PLの脂肪酸鎖組成と異なっていた。そこで、アシルCoA前駆体である遊離脂肪酸(FFA)の分析と、だ液分泌刺激時のその動的変化を検討したところ、APの脂肪酸鎖組成とは大きく異なり、APへの脂肪酸導入時には非常に厳密な基質特異性が存在することが示唆された。APの機能を検索する目的で、フェニレフリンおよびホルボールエステル(PMA)によるだ液分泌刺激時のAPタンパク質部分、及び脂肪酸鎖の動的変化を標識脂肪酸を導入した細胞を用いて検討した。しかしながら、用いた実験条件下では膜タンパク質側および脂肪酸鎖側の両者とも刺激による変化は観察されなかった。今後はAPの単離・精製を進め、生化学的、物理化学的特性を明確にするとともに、機能の検索をし、APの生理的意義を解明する。高等動物細胞における外来情報伝達機構の概要が明らかになりつつあるが、この機構の一部に脂肪酸化タンパク質(acylated protein;AP)の関与の可能性が指摘されている。そこでラットだ液腺細胞をモデル系としてAPの脂肪酸鎖およびタンパク質の両面から検討することによってその生理的機能を明らかにしようと試みた。ところでAPの脂肪酸鎖は生体膜リン脂質(PL)脂肪酸鎖と共通のアシルCoaから導入されることから、高純度に精製した各種オルガネラ標品の各膜リン脂質脂肪酸鎖組成を検討したところ、それぞれのオルガネラおよび各リン脂質に特徴的な差異が見られた。さらに得られた分泌顆粒画分はin vitro系で形質膜との間に特異的な相互作用を認め、開放分泌観察のモデル系としても使用可能であることが明らかになった。一方、生体膜からのAP抽出のため、各種界面活性剤を検討したところ、非イオン性界面活性剤、中でもTriton X-114を用いたphase separation法が効果的である示唆を得た。この方法で耳下腺細胞の各オルガネラ膜タンパク質中の脂肪酸組成を検討したところ、パルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸含量か高く、生体膜PLの脂肪酸鎖組成と異なっていた。そこで、アシルCoA前駆体である遊離脂肪酸(FFA)の分析と、だ液分泌刺激時のその動的変化を検討したところ、APの脂肪酸鎖組成とは大きく異なり、APへの脂肪酸導入時には非常に厳密な基質特異性が存在することが示唆された。APの機能を検索する目的で、フェニレフリンおよびホルボールエステル(PMA)によるだ液分泌刺激時のAPタンパク質部分、及び脂肪酸鎖の動的変化を標識脂肪酸を導入した細胞を用いて検討した。しかしながら、用いた実験条件下では膜タンパク質側および脂肪酸鎖側の両者とも刺激による変化は観察されなかった。今後はAPの単離・精製を進め、生化学的、物理化学的特性を明確にするとともに、機能の検索をし、APの生理的意義を解明する。唾液腺細胞中の脂肪酸化蛋白質(acylated protein:AP)の細胞内局在性を明確にするために高純度の形質膜画分や各種オルガネラの分画法を検討した.その結果,ホモジナイズした耳下腺細胞では庶糖及びPercoll密度勾配遠沈法による分画で,代表的な局在酵素の活性発現の特性観察から供試し得る画分が得られた.このうちの分泌顆粒はin vitro系では形質膜との間に特異的な相互作用を認め,開放分泌観察のモデル系としても使用可能であることを明らかにした.本顆粒の膜脂質組成はミクロソーム由来のものなどと比較して明らかに特異的であり,ホスファテジルエタノールアミン含量の外にリゾ燐脂質含量がたかく,電子スピン共鳴法による膜流動性の観察結果もこれら組成の特性と相関する物性を示した.APの生化学的特性を検討する目的から,各種試料でアシル基を標的とした抽出法を検索し,非イオン性界面活性剤のTriton Xー114を用いるphase separation法が効果的であり,これによって分画したAPのアシル基の確認と,蛋白質部分の電泳的特性が明らかになりつつあるが,精製を進めることにより,所謂,アンカー物質の特性,並びに膜機能と相関した蛋白質燐酸化酵素活性の関与について検討が進行中である.主要唾液腺の膜燐脂質構成脂肪酸の特性比較は既に完了した. | KAKENHI-PROJECT-62480384 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62480384 |
唾液腺の脂肪酸を共有結合したタンパク質の生理的意義 | 一方, AP生合成の基質となるアシル基については各種アシルーCoAを基質とし,アシル基転移反応に係る酵素系の検索を行い,本酵素系の各唾液腺における活性発現の特性の外,薬理的な唾液分泌刺激を行うと特有の性性変動を認めることを明らかにした.以上のように,現在進行中の実験を含めて引き続き来年度はこれらの成果を基礎とし,機能と相関したAPの細胞内動態を標識した脂肪酸あるいは酢酸のレベルから追求していく.今回の主要機器であるラジオガスアナライザーは目的とするがガクロマトグラフィーとの接続に技術的な問題があったが,既に解決した.細胞外からの各種刺激の受容並びに細胞内伝達機構の概要が明らかにされつつあるが、この機構の一部にはユニークなタクパク質(脂肪酸化タンパク質、acylated protein;AP)の関与の可能性が指摘されている。このタンパク質の脂肪酸組成は特徴的で、アシルCoAを共通の脂肪酸鎖供与体とするリン脂質(PL)脂肪酸組成と大きく異なっている。そこで、唾液腺細胞をモデル系としてこのAPを検索し、タンパク質及び脂肪酸の両面から検討することによって、その生理的機能を明らかにしようと試みた。生体膜からのAP抽出のため各種界面活性剤を検討したとこめむ、非イオン性界面活性剤、中でもTritonX-114を用いた相分離分画抽出法が有効である示唆を得た。ところで、ラット耳下腺細胞の生体膜タンパク質中の脂肪酸組成をミトコンドリア、ミクロソーム画分で分析するとパルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸が含量が高く、中でもこの傾向はミトコンドリア画分で著明であった。この結果は我々が明らかにしている各種生体膜PLと大きく異なっていた。そこで、AP,PLの両脂肪酸鎖供与体の全駆体である遊離脂肪酸(FFA)の分析と、唾液分泌刺激時のその動的変化を検討したところ、PLの場合はある程度FFA組成を反映しているものの、APとは大きく異なり、APへの脂肪酸導入時いは非常に厳密な気質特異性が存在することが示唆された。唾液腺細胞を用いてAPの機能を検索するには、唾液分泌刺激時のAPタンパク質部分、及び脂肪酸鎖の動的変化を観察することが有効である。そこで標識脂肪酸を取り込ませた細胞をフェニレフリン及びホルボールエステル(PMA)で刺激し、膜タンパク質組成の変動を検討した。しかしながら、用いた実験条件下ではタンパク質側及び脂肪酸鎖側の両者とも刺激による変化は観察されなかった。今後はAPの単離・精製を進め、生化学的、物理化学的特性を明らかにすると共に、機能の検索をし、APの生理的意義を解明する。 | KAKENHI-PROJECT-62480384 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62480384 |
共生による新規性創出の遺伝子基盤の解明 | 本研究ではアブラムシとその細胞内共生細菌をモデルに用いて、共生による新規性創出の遺伝子基盤の解明を目指した。次世代シーケンシングなどの新技術を用いた探索の結果、宿主昆虫が共生器官で大量に発現する新規の分泌ペプチド群を発見しBCRファミリーと命名した。あるBCRは細菌の増殖に影響を与えることもわかった。BCRはアブラムシ類のみが持つ遺伝子群であるが、宿主が共生細菌を制御するためにアブラムシの系統で特異的に進化した遺伝子かもしれない。本研究ではアブラムシとその細胞内共生細菌をモデルに用いて、共生による新規性創出の遺伝子基盤の解明を目指した。次世代シーケンシングなどの新技術を用いた探索の結果、宿主昆虫が共生器官で大量に発現する新規の分泌ペプチド群を発見しBCRファミリーと命名した。あるBCRは細菌の増殖に影響を与えることもわかった。BCRはアブラムシ類のみが持つ遺伝子群であるが、宿主が共生細菌を制御するためにアブラムシの系統で特異的に進化した遺伝子かもしれない。「共生」は生物が新規機能を獲得する上で重要な役割を果たしているが、その新規性創出の遺伝子基盤はほとんどわかっていない。本研究では「共生による新規性創出は、異種間相互作用による遺伝子ネットワークの進化の結果である」という仮説を提唱し、昆虫=微生物の共生系、特にアブラムシとその細胞内共生細菌Buchneraの絶対共生系をモデルに用いて検証する。進化発生学の理論に立脚し、新規性創出のキーとなる転写因子・シグナル分子及びそれら標的遺伝子を同定することが目的である。すでにトランスクリプトーム解析により共生器官で多数のアブラムシ特異的遺伝子、新規の分泌タンパク質が高発現していることを確認していた。今年度これら新規分泌タンパク質10種類以上のmRNA発現パターンをin situ hybridizationで調べた。その結果、すべての分泌タンパク質が同一の時空間摘発現パターンを示すことが明らかになった。つまり、胚発生におけるstage7と呼ばれるcellular blastodermに相当する時期--興味深いことにこの時期に共生細菌が母から胚に感染する-に共生器官原基の予定核の近傍で発現を開始し、以降、共生器官でのみ特異的に高レベルで発現する。さらに、分子進化的解析を行ったところ、これらの新規分泌タンパク質はお互い一時配列はあまり似ていないが、システイン残基が多い点等似た特徴を共有することがわかった。この分子は、宿主から分泌され共生細菌へターゲッティングされると予想しており、来年度以降検証する。偶然にも、システインリッチな分泌タンパク質がマメ科植物=根粒菌の共生に重要な役割を果たしていることが、本年度報告され(Van de Velde 2010, Science)、彼らとの交流も開始したところである。「共生」は生物が新規機能を獲得する上で重要な役割を果たしているが、その新規性創出の遺伝子基盤はほとんどわかっていない。本研究では「共生による新規性創出は、異種間相互作用による遺伝子ネットワークの進化の結果である」という仮説を提唱し、昆虫=微生物の共生系、特にアブラムシとその細胞内共生細菌Buchneraの絶対共生系をモデルに用いて検証する。進化発生学の理論に立脚し、新規性創出のキーとなる転写因子・シグナル分子及びそれら標的遺伝子を同定することが目的である。平成23年度は、「共生器官に発現するアブラムシ特異的分泌タンパク質の機能解析」において大きな進展があった。すでにトランスクリプトーム解析により共生器官で多数のアブラムシ特異的遺伝子、新規の分泌タンパク質が高発現していること、10以上の遺伝子のmRNA発現パターンをin situ hybridizationで検討済みであった。H23年度にはこれらを追試、データ・整理を行い、これらの新規分泌タンパク質をBCRと命名し、論文としてまとめた(論文投稿中)。さらに、BCR遺伝子のタンパク質レベルの機能解析に向けて、HisタグをつけたBCRリコンビナントタンパク質の大腸菌や酵母での大量発現系を試みた。多数のジスルフィド結合をもつためか、標準的な大腸菌の大量発現系はうまくいかなかったが、プロトコールを工夫することにより1つのBCRでは発現と精製に成功した。また、Pichia酵母の系ではほとんどのBCRで大量発現が可能となりそうな予備実験結果が得られており、来年度の研究の進展が期待できる。BCRは根粒菌のNCRとの構造的・機能的類似性を見いだし、植物研究者との共同研究も開始した。またアブラムシ=Buchneraの共生に関する総説論文を発表した。「共生」は生物が新規機能を獲得する上で重要な役割を果たしているが、その新規性創出の遺伝子基盤はほとんどわかっていない。本研究では、昆虫=微生物の共生系、特にアブラムシとその細胞内共生細菌Buchneraの絶対共生系をモデルに、新規性創出のキーとなる分子を同定することが目的である。本年度は、新規性創出のキーとなる分子として、新規分泌たんぱく質BCRを同定し論文発表することができた(Shigenobu & Stern, 2013, Proc Roy Soc B)。次世代シークエンサーを使った共生器官のトランスクリプトーム解析により共生器官に選択的に発現する遺伝子を探索し、アブラムシ特異的な新規分泌タンパク質ファミリーを発見し、それらのmRNAが共生器官特異的に発現することを明らかにした。これらは、100アミノ酸残基以下の短いペプチドをコードし、分泌シグナルをN末に持ち、C末側にシステインを6個もしくは8個持つ特徴的な一次構造持っており、BCR遺伝子群と命名した。さらに、BCR遺伝子の機能解析に向けてBCRリコンビナントタンパク質の発現と精製を試みた。試行錯誤の上、酵母の大量発現系を利用することにより、いくつかのBCRの発現と精製に成功した。 | KAKENHI-PROJECT-22687018 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22687018 |
共生による新規性創出の遺伝子基盤の解明 | 1つのBCRについてはこれを抗原に抗体を作成した。またあるBCRを大腸菌に添加したところ細胞膜の透過性を変化させる活性があることが明らかになった。システインリッチ分泌ペプチドは動植物に広く見られ、コミュニケーションや異種間相互作用に関わっている。例えばマメ科植物タルウマゴヤシの根粒の内部では400以上のシステインリッチ短ペプチドが組織特異的に発現し、これらの一部は共生細菌の内部まで運ばれて共生の確立と維持に必要である。アブラムシの共生系でも同様な共生システムの制御がBCRを介して成されているのではないかと考えられる。2つの小課題のうち「共生器官に発現するアブラムシ特異的分泌タンパク質の機能解析」については、計画以上に進展している一方で「転写因子D11の制御する遺伝子ネットワークの解明」が実験技術上の困難がありやや遅れているので、総合的に判断して「(2)おおむね順調に進展している」とした。24年度が最終年度であるため、記入しない。2つの小課題のうち「共生器官に発現するアブラムシ特異的分泌タンパク質の機能解析」については、大量発現系の構築に成功したので精製タンパク質を利用したin vitroアッセイや抗体を利用した研究を進める。「転写因子D11の制御する遺伝子ネットワークの解明」は次世代シークエンサー実験の技術上の困難があり計画よりやや遅れていたが、申請者は他の研究課題でChIP-seqのノウハウを共同研究者から得る機会を得たので、その情報をとりいれて実験系を再構築する。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22687018 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22687018 |
SUMOリガーゼPIAS/Sizファミリーのドメイン構造と分子認識機構の解明 | SUMO化翻訳後修飾は被修飾タンパク質の分子認識様式を変化させて広範な細胞機能の制御にかかわっている。SUMO化修飾に必要な3種類の酵素(E1,E2,E3)のうち、標的タンパク質の識別において中心的な役割を果すE3はSUMO化反応で最も重要な酵素といえる。本研究では、動・植物および酵母のRING型SUMOリガーゼE3であるPIAS/SizファミリーのSAPドメインとPHDフィンガーの構造と機能を解析した。SUMO化翻訳後修飾は被修飾タンパク質の分子認識様式を変化させて広範な細胞機能の制御にかかわっている。SUMO化修飾に必要な3種類の酵素(E1,E2,E3)のうち、標的タンパク質の識別において中心的な役割を果すE3はSUMO化反応で最も重要な酵素といえる。本研究では、動・植物および酵母のRING型SUMOリガーゼE3であるPIAS/SizファミリーのSAPドメインとPHDフィンガーの構造と機能を解析した。本研究は、動・植物および酵母のRING型SUMOリーガーゼE3であるPIAS/Sizファミリーの作用機構を構浩生物学的見地から解明することを目指し、本年度は以下の研究を行った。1.酵母およびイネSiz1のN末端SAPドメインの立体構造決定とDNA認識機構の解析溶液NMR法を用いて立体構造を決定した。イネのSAPはヒトPIAS1のSAPと同様に、4本のヘリックスで構成されるバンドル構造を形成するのに対して、酵母のSAP構造は5本のヘリックスで形成され、イネやヒトのSAPにはないヘリッソクスα5がα2及びα4と相互作用するために、DNA結合に関与するα2ヘリックスの空間配置が変化レていることを見出した。ゲルシフトアッセイとNMR滴定実験によりDNA結合能と結合様式を解析し、酵母のSAPはイネやヒトのSAPよりもDNA結合の特異性が高いことを明らかにした。2.イネSiz1のPHDフィンガーの立体構造決定とメチル化ヒストン結合能の解析PIAS/Sizファミリーのうち植物のSizに固有のPHD)フィンガーの機能を明らかにするために、溶液NMR法を用いて立体構造を決定した。さらに、NMR滴定実験から、イネSiz1のPHDは4位のリシンがメチル化されたヒストンH3(H4K4me3)に結合することが明らかになった。H3K4のメチル化率が低下するにつれて、PHDの結合能も低下していき、非修飾ピストンH3にはほとんど結合しない。また、このPHDはヒストンH3の9位、27位、36位めリシンやピストンH4の20位のリシンがトリメチル化されたペブチドフラグメントには結合せず、H3K4me3にのみ特異的に結合する。本研究は、動・植物および酵母のRING型SUMOリガーゼE3であるPIAS/Sizファミリーの作用機構を構造生物学的見地から解明することを目指し、本年度は以下の研究を行った。1.酵母およびイネSiz1のN末端SAPドメインの立体構造解析とDNA認識機構の解析前年度に得られた結果をもとに、SAPドメインの構造とDNA認識機構における生物種特異性と普遍性を明らかにして論文を作成し、PROTEINSに受理された。2.イネSiz1のPHDフィンガーの立体構造決定とメチル化ヒストン結合の解析PIAS/Sizファミリーのうち植物のSizに固有のPHDフィンガーの機能を明らかにする目的で、前年度に引き続いて溶液NMR法による構造機能解析を行った。本年度は、4位のリシンがトリメチル化されたヒストンH3(H3K4me3)とPHD複合体の立体構造モデルを構築するとともに、複合体形成における2位アルギニンのメチル化の影響を検討し、PHDは4位と2位がともにメチル化されたH3R2me2aK4me3に対してより高い結合能を示すことを見出した。これは、既報のPHDではH3K4me3の2位アルギニンがメチル化されると結合能が失われるとの結果とは逆の結果である。そこで、H3R2me2aを用いて同様の相互作用解析を行ったところ、イネSiz1のPHDはH3R2me2aに結合すること、さらには、その結合能はH3K4me3への結合よりも高いことが明らかになった。アルギニンがメチル化されたヒストンを認識する構造モチーフはこれまでに報告例がなく、今回のイネSiz1のPHDが初めてである。本研究は、動・植物および酵母のRING型SUMOリガーゼE3であるPIAS/Sizファミリーの作用機構を構造生物学的見地から解明することを目指し、本年度は以下の研究を行った。1.植物のRING型SUMOリガーゼSiz1のPHDフィンガーのメチル化ヒストン認識機構の解明前年度には、PIAS/Sizファミリーのうち植物のSizに固有のPHDフィンガーがヒストンH3の4位のリシンがトリメチル化されたH3K4me3のみならず、2位のアルギニンがジメチル化されたH3R2me2aにも結合することを見出した。本年度は、PHDのE3R2me2a認識残基を特定してPHD-H3R2me2a複合体のモデル構造を構築した。さらに、2種の点変異PHD(Q110AとE112A)のH3R2me2a結合能が天然型PHDの50%程度に低下することを明らかにし、H3R2me2a結合におけるQ110とE112の機能的重要性を検証した。 | KAKENHI-PROJECT-19570115 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19570115 |
SUMOリガーゼPIAS/Sizファミリーのドメイン構造と分子認識機構の解明 | 本年度までの成果を総合的に勘案すると、植物のSiz1はSAPドメインのDNA結合とPHDのR2またはK4がメチル化されたH3への結合を介してクロマチンを認識し、その構造と機能を調節している可能性が示唆される。2.植物のRING型SUMOリガーゼSiz1のPHDフィンガーとSUMO結合酵素E2の相互作用解析ごく最近、シロイヌナズナのSUMO結合酵素E2がSiz1を介してSUMO化されることが報告され、この反応においてはSiz1の典型的なE2認識ドメインと想定されるSP-RINGとPHDがそれぞれE2を1分子ずつリクルートしてE2がSUMO化されるモデルが提唱された。そこで、このモデルを構造生物学的見地から検証するために、溶液NMR法によるPHDとE2の分子間相互作用解析を行ったが有意な相互作用は検出されなかった。Siz1を介したE2のSUMO化反応経路については再考が必要である。 | KAKENHI-PROJECT-19570115 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19570115 |
阻害剤をプローブとするアロマターゼ反応メカニズムの解析 | いまだ不明な点のあるアロマターゼ反応メカニズムの解明を目的として、アロマターゼ活性中心部位での阻害剤・基質との結合にみられる多様性をふまえ、阻害剤を有効にプローブとして用い、以下の成果を得た。1.天然基質ADならびにDHEAの3-デオキシ体1と2について、それぞれの19-oxo体5と6の立体選択的NaB^2H_4またはNaB^3H_4還元により[19,19-^2H_2]19-hydroxy体3と4または[19R-^3H]19-ols3と4とその異性体[19S-^3H]体を合成した。2.[19,19-^2H_2]-19-Hydroxy体3と4をヒト胎盤ミクロゾームとともにNADPH存在下インキュベート。19-oxo体5と6への変換をGC-MSにて分析した。このとき、非標識基質3と4からの5と6への変換と比較し、19-hydroxy体→19-oxo体への変換にアイソトープ効果の全くないことをまず明らかにした。3.ついで、[19R-^3H]-と[19S-^3H]19-ols3と4を前述同様インキュベートし、アロマターゼ反応により遊離する^3H_2Oと^3HCOOHを測定した。その結果、19-hydroxy体→19-oxo体への変換では、より有効な基質である19-hydroxy-3-deoxyDHEA(4)で19-hydroxyADの場合と同じに19-pro-R水素が立体選択的に、一方、より強力な阻害剤19-hydroxy-3-deoxyAD(3)では、pro-R:pro-S=75:25の選択性で脱離することが証明された。また、C(10)-C(19)結合の切断反応も同定された。4.一方、化合物1と2の4位置換体によるアロマターゼ阻害の様相を明らかにするとともに、2α-置換ADや2,4,や6-置換エストロゲンのアロマターゼ阻害の構造活性相関を明らかにし、新たなアロマターゼ活性中心部位空間構造を構築することができた。いまだ不明な点のあるアロマターゼ反応メカニズムの解明を目的として、アロマターゼ活性中心部位での阻害剤・基質との結合にみられる多様性をふまえ、阻害剤を有効にプローブとして用い、以下の成果を得た。1.天然基質ADならびにDHEAの3-デオキシ体1と2について、それぞれの19-oxo体5と6の立体選択的NaB^2H_4またはNaB^3H_4還元により[19,19-^2H_2]19-hydroxy体3と4または[19R-^3H]19-ols3と4とその異性体[19S-^3H]体を合成した。2.[19,19-^2H_2]-19-Hydroxy体3と4をヒト胎盤ミクロゾームとともにNADPH存在下インキュベート。19-oxo体5と6への変換をGC-MSにて分析した。このとき、非標識基質3と4からの5と6への変換と比較し、19-hydroxy体→19-oxo体への変換にアイソトープ効果の全くないことをまず明らかにした。3.ついで、[19R-^3H]-と[19S-^3H]19-ols3と4を前述同様インキュベートし、アロマターゼ反応により遊離する^3H_2Oと^3HCOOHを測定した。その結果、19-hydroxy体→19-oxo体への変換では、より有効な基質である19-hydroxy-3-deoxyDHEA(4)で19-hydroxyADの場合と同じに19-pro-R水素が立体選択的に、一方、より強力な阻害剤19-hydroxy-3-deoxyAD(3)では、pro-R:pro-S=75:25の選択性で脱離することが証明された。また、C(10)-C(19)結合の切断反応も同定された。4.一方、化合物1と2の4位置換体によるアロマターゼ阻害の様相を明らかにするとともに、2α-置換ADや2,4,や6-置換エストロゲンのアロマターゼ阻害の構造活性相関を明らかにし、新たなアロマターゼ活性中心部位空間構造を構築することができた。1.ADならびにその3β-hydroxy-5-ene異性体(DHEA)を出発原料とし3-deoxyAD(1)とその5-ene異性体(2)の19-hydroxy体(3と4)と19-oxo体(5と6)をそれぞれ化学的に合成した。次いで,この19-oxo体をNaB^3H_4との還元反応に付し、[19R/19S-^3H]標識19-hydroxy体3と4をそれぞれ得た。これら^3H標識体は、TLCやHPLCで精製後、逆同位体希釈法により同定した。それぞれの比放射活性は、HPLCでの吸光度と放射活性から求めたところ、前者では0.61mCi/mmol、後者では、0.55mCi/mmolであった。これら標識体の19位立体化学は、立体化学既知のADとDHEAの[19S-^2H]19-hydroxy体を標準品の[19S-^2H] | KAKENHI-PROJECT-15590066 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15590066 |
阻害剤をプローブとするアロマターゼ反応メカニズムの解析 | 化合物3と4へ誘導し、3-deoxy-19-oxo体5と6を同様に重水素化試薬で還元したものと、これら標準品との^1H-NMR解析から求めた。その結果、化合物5ではR:S=10:90、他は30:70と判明した。2.得られた[19S-^3H]19-hydroxy体(3と4)を[^3H]19-oxo体(5と6)に酸化後、非標識NaBH_4還元に付し、19位立体化学の逆転した[19R-^3H]化合物(3と4)を得た。3.[19R-^3H]ならびに[19S-^3H]19-hydroxy体(3と4)をヒト胎盤ミクロゾームとともにNADPH存在下インキュベートし、放出される^3H_2Oと酸性物質を、酸性またはアルカリ性条件下凍結乾燥することにより分画した。まず、酸性物質画分の^3HCOOHについて、9-methylanthranyl esterへ誘導化し逆同位体希釈法により同定した。1.[19-^3H]19-hydroxy-3-deoxyステロイドの19-oxo体への変換過程における19位の立体選択性を検討するためには、そのアイソトープ効果の有無を確認することが必須であることが判明した。そのため、まず、[19,19-^2H_2]19-hydroxy-3-deoxyステロイドを合成した。すなわち、19-oxo-3-deoxyandrostenedioneとその5-ene異性体を限定量のNaB^2H_4で還元し、それぞれ[19-^2H]19-hydroxy体に変換した。ついで、これらをPCD酸化とNaB^2H_4に順次付し、目的とする[19,19-^2H_2]19-olsを得た。ついで、これらを非標識体と1:1の混合物とし、ヒト胎盤ミクロゾームとともにNADPH存在下インキュベートし19-oxo体への変換における重水素アイソトープ効果を、19-oxo体の生成と残存基質のアイソトープ比によりGC-MSを用いて分析した。その結果、この変換にはアイソトープ効果の無いことを明らかにし、[1β-^3H]標識体を用いる立体化学の解析が可能であることを立証した。2.Δ^1-ADの19-methylと19-halogeno(Cl,Br,I)体を合成し、それらのアロマターゼ阻害活性を検討した。その結果、これらはK_i値が30-600nMの拮抗阻害剤であった。この中では、19-methyl体が最も強力な阻害活性を示し(K_i:30-40nM)、19-I体のK_i値は390-600nMと大きなものであった。また、19-Cl体は不可逆的阻害剤(K_I870nM,k_<inact>0.038min^<-1>)の特性を示すとともに、GC-MS分析の結果、アロマターゼの基質となりestrogenに変換されることが判明し、アロマターゼ反応機構解明に重要な知見が得られた。1.前々年度で合成した[19-pro-R-^3H]ならびに[19-pro-S-^3H]19-hydroxy-3-deoxy-4-eneステロイドならびにそれらの5-ene異性体を、ヒト胎盤ミクロゾームとともにNADPH存在下インキュベートし、放出される^3H_2Oと^3HCOOHを分画した。まず、生成する^3HCOOHの同定はジアゾ化反応により生成する9-hydroxymethylanthranylformateへと誘導後、逆同位体希釈法により行った。この^3H_2Oと^3HCOOHの放出は、インキュベーション時間15minまで、一方、ミクロゾーム蛋白は500μgまで直線的に増加した。この初速度条件下、これらの放出は、基質ADと阻害剤4-OHADの添加により効率的に抑制された。このことから、アロマターゼ触媒によるC(10)-C(19)結合の切断反応も明確となった。つぎに、初速度条件下[19-pro-R-^3H]ならびに[19-pro-S-^3H]体からの^3H_20と^3HCOOH | KAKENHI-PROJECT-15590066 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15590066 |
高アンモニア耐性微細藻類による環境水中の栄養塩負荷削減・リン回収システムの研究 | アンモニア耐性の高い微細藻類を利用して、人為的発生源から排出される高負荷リンおよびアンモニアを除去すると同時にリン資源を回収するシステムの構築に向けた基礎科学研究を行うことを目的とする。本研究ではまず、生物多様性の高い熱帯・温帯域から現地藻株を確立し、アンモニア耐性の高い微細藻類の探索を行う。アンモニア耐性藻類株から、細胞内リン蓄積能を有する高性能な藻株のスクリーニングを行い、選定した高性能藻株を対象にリン蓄積率に及ぼす環境因子の影響を総合的に明らかにする。最後に、リン蓄積能が最大となる環境条件下で実廃水からの栄養塩除去・リン回収の有用性評価実験を行う。アンモニア耐性の高い微細藻類を利用して、人為的発生源から排出される高負荷リンおよびアンモニアを除去すると同時にリン資源を回収するシステムの構築に向けた基礎科学研究を行うことを目的とする。本研究ではまず、生物多様性の高い熱帯・温帯域から現地藻株を確立し、アンモニア耐性の高い微細藻類の探索を行う。アンモニア耐性藻類株から、細胞内リン蓄積能を有する高性能な藻株のスクリーニングを行い、選定した高性能藻株を対象にリン蓄積率に及ぼす環境因子の影響を総合的に明らかにする。最後に、リン蓄積能が最大となる環境条件下で実廃水からの栄養塩除去・リン回収の有用性評価実験を行う。 | KAKENHI-PROJECT-19K15892 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K15892 |
RNAウイルスの進化的脆弱性に関する研究 | ウイルス粒子の最外殻を構成する外被蛋白質は、宿主免疫との攻防に曝され、常時変化する。その際、ウイルスの存続に必須の蛋白質機能を維持する必要があり、無秩序な変化は許されない。しかし、変化の秩序を司る原理はほとんどわかっていない。本研究では、この制御原理の解明を目的とした。研究成果は、ウイルスの高度可変蛋白質の進化上の弱点や進化の方向性のより良い理解に繋がり、感染症対策研究の基盤を提供する。(1)ノロウイルスカプシドの変化の秩序:公共データベース由来のカプシド全長配列(n=930)のアライメントより相互相関行列を構築し、ランダム行列理論によりノイズを除去することで、“必然的に"共変異している部位(セクタ)を推定した。カプシドには4つのセクタが存在し、カプシドの機能領域(血液型抗原結合部位周辺、および二量体境界面)に位置することがわかった。セクタにはエピトープが含まれることから、抗体の標的となるアミノ酸残基は、機能的ネットワークを構成し、他の特定部位と共変異する必要があることがわかった。(2)ヒト免疫不全ウイルスエンベロープgp120の変化の秩序:Gp120の全長構造モデルを構築し、分子動力学計算によりアミノ酸残基の溶液中の揺らぎの相互相関行列を構築し、ランダム行列理論によりノイズを除去することで、“必然的に"連動する部位(セクタ)を推定した。Gp120には3つのセクタが存在し、機能領域を連結する未報告のアロステリックパスが存在することがわかった。以上、数理科学の理論とコンピュータ科学を取り入れて、蛋白質の機能を維持しながら秩序だった変化を行うためのアミノ酸ネットワークを包括的に予測した。今後、セクタの生物学的機能を実験で、物理化学的機能をコンピュータ科学で検証する予定でいる。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。数学・物理学の理論、及び計算科学や情報科学の手法を用いて易変異性RNAウイルスの変化の制約や未知の機能部位を明らかにし、進化上の弱点を特定することを目的とする。平成25年度(研究初年度)は、ノロウイルスの粒子表面に存在する可変性構造蛋白質(カプシド)に働く変化の制約を検証した。ノロウイルス全国流行株の全ゲノム情報を収集し、ゲノムと蛋白質の経時変化を調べた。その結果、ゲノム配列や他の構造蛋白質は年々多様性が増大する一方で、カプシドはほとんど変化しないことを見出した。さらにハミング距離を調べることで、カプシドの高度可変部位にも強い変化の制約が働くことを示した。さらにランダム行列理論を用いて必然的に共変異するアミノ酸群が存在することを明らかにし、単独の変異を許容しないアミノ酸残基ネットワークが存在することを示した。以上の結果から、一部のウイルス株が勝利者(全国流行株)となると、その後はカプシドの変化が必然的に強く抑制されることがわかった。流行株カプシドの優れた構造・機能(免疫逃避能や宿主指向性)を維持するためと考えられる。カプシドは抗体の主要標的であることを勘案すると、ノロウイルス流行株は免疫学的制御が可能と考えられる。実際に、この流行株は数年間流行した後に衰退した。カプシドが変化できないため、この株への集団免疫が強化されるに従い、感染感受性の宿主が減少したためと考えられる。これらの発見は、一般に高度可変とされるノロウイルス粒子表面蛋白質にも、自然界では強い変化の制約が働くことを世界で初めて明らかにしたもので、新しい視点でのウイルス学研究の創成につながる。また、流行株の免疫学的弱点を示唆するもので、ウイルスとヒトとの攻防を理解し、ノロウイルス感染症の制御法を論理的に開発するための基盤情報となる。ウイルス粒子の最外殻を構成する外被蛋白質は、宿主免疫との攻防に曝され、常時変化する。その際、ウイルスの存続に必須の蛋白質機能を維持する必要があり、無秩序な変化は許されない。しかし、変化の秩序を司る原理はほとんどわかっていない。本研究では、この制御原理の解明を目的とした。研究成果は、ウイルスの高度可変蛋白質の進化上の弱点や進化の方向性のより良い理解に繋がり、感染症対策研究の基盤を提供する。(1)ノロウイルスカプシドの変化の秩序:公共データベース由来のカプシド全長配列(n=930)のアライメントより相互相関行列を構築し、ランダム行列理論によりノイズを除去することで、“必然的に"共変異している部位(セクタ)を推定した。カプシドには4つのセクタが存在し、カプシドの機能領域(血液型抗原結合部位周辺、および二量体境界面)に位置することがわかった。セクタにはエピトープが含まれることから、抗体の標的となるアミノ酸残基は、機能的ネットワークを構成し、他の特定部位と共変異する必要があることがわかった。(2)ヒト免疫不全ウイルスエンベロープgp120の変化の秩序:Gp120の全長構造モデルを構築し、分子動力学計算によりアミノ酸残基の溶液中の揺らぎの相互相関行列を構築し、ランダム行列理論によりノイズを除去することで、“必然的に"連動する部位(セクタ)を推定した。Gp120には3つのセクタが存在し、機能領域を連結する未報告のアロステリックパスが存在することがわかった。以上、数理科学の理論とコンピュータ科学を取り入れて、蛋白質の機能を維持しながら秩序だった変化を行うためのアミノ酸ネットワークを包括的に予測した。 | KAKENHI-PUBLICLY-25115519 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25115519 |
RNAウイルスの進化的脆弱性に関する研究 | 今後、セクタの生物学的機能を実験で、物理化学的機能をコンピュータ科学で検証する予定でいる。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。1.当初の予定どおり、数学、計算科学、情報科学の解析手法を取り入れながら研究を進め、一般には高度可変とされるノロウイルス粒子表面の構造蛋白質に、自然界において強い変化の制約が働くことを立証できた。成果は国内外の学会で発表し、論文にまとめて投稿した(審査中)。学際的なアプローチを取り入れることで、ノロウイルス蛋白質の構造・機能・進化の研究に新しい視点を導入したと考えている。2.当初の計画には無かったが、領域内の共同研究を進めた。我々の研究を通じて強化される数学、計算科学、情報科学の解析基盤を領域内の他の研究グループに利用してもらうことにより、領域内の研究推進への貢献を目指した。俣野研究グループ(霊長類動物モデル)と共同研究を実施し、ウイルス変異の包括的解析(次世代シークエンサーの使用と解析)を支援し、ウイルスの変異蛋白質の構造特性情報を提供した(J. Virol. 88:3598-3604, 2014)。また、連携研究者とも共同研究を実施し、ウイルス蛋白質の構造特性情報を提供した(J. Virol.87:11447-11461, 2013, J Virol. 87:5424-36, 2013)。初年度研究で、ウイルス粒子表面の可変性蛋白質にも強い変化の制約が働くことが明らかになった。そこで平成26年度以降は、変化の制約を司る要因について解析を進め、当初の研究目的(進化上の弱点の検証)の達成をめざす。平成26年は、(1) -(5)を進める。(1)公共データベース等の大容量アミノ酸配列情報を基に相互相関行列を構築し、共変異する部位を包括的に抽出する。(2)蛋白質立体構造の分子動力学計算情報を基に揺らぎの相互相関行列を構築し、溶液中で連動して揺らぐ部位を包括的に抽出する。(3)ランダム行列理論を用いて偶然による見かけの相関を排除する。(4)固有ベクトル成分の分析により、必然性をもって共変異する、あるいは揺らぐアミノ酸群(セクター)を同定する。これらは、蛋白質の機能的ネットワークを形成し、進化の方向性を司る部位で、進化の制約の要因になる。(5)情報科学の手法を用いてセクターの可変性を調べる。(6)変異導入解析等を用いてセクターの生物学的役割を調べる。(7)分子動力学法を用いてセクターの構造学的役割を調べる。以上により、ウイルスの粒子表面蛋白質について、セクターの有無、並びにセクターの構造、機能、可変性の情報を収集する。それらの情報を用いて、ウイルスに固有の生存戦略を維持するために「必然的に」変化しにくい蛋白質領域の存在を検証する。一方で、引き続き領域内の共同研究を推進し、我々の研究グループの汎用性の高い解析プラットフォームを他の研究グループに利用してもらうことにより、領域内の研究推進への貢献を目指す。 | KAKENHI-PUBLICLY-25115519 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25115519 |
結び目と3次元多様体の量子トポロジー | 結び目のKashaev不変量と双曲体積を関連づける体積予想は、量子トポロジーと双曲幾何を結びつける懸案の予想であり、最近15年間世界的にこの分野の中心的な話題となってきた。本研究の目標は、体積予想を多くの結び目について解決し、Kashaev不変量の漸近展開として得られるべき級数を新しい結び目不変量として研究することである。これにより、量子トポロジーと双曲幾何を融合する新しい研究テーマが創出されることが期待される。また、3次元多様体の量子不変量の漸近展開に双曲体積が現れることを主張する「3次元多様体の体積予想」も近年定式化されており、8の字結び目を整数係数手術して得られる3次元双曲多様体に対してこの予想が成立することを筆者は証明して、論文を執筆した。また、漸近展開の準古典極限の項にはReidemeister torionが現れることが観察され、いくつかの例に対してそれを証明して、論文を執筆した。計画していた国際会議と研究集会は、予定通りに開催され、十分な成果を挙げた。Kashaev不変量と量子不変量の漸近展開の研究も、予定通りに遂行中である。今年度も、国際会議と研究集会を開催する予定であり、準備をすすめている。Kashaev不変量と量子不変量の漸近展開についての研究もすすめる予定である。結び目のKashaev不変量と双曲体積を関連づける体積予想は、量子トポロジーと双曲幾何を結びつける懸案の予想であり、最近15年間世界的にこの分野の中心的な話題となってきた。本研究の目標は、体積予想を多くの結び目について解決し、Kashaev不変量の漸近展開として得られるべき級数を新しい結び目不変量として研究することである。これにより、量子トポロジーと双曲幾何を融合する新しい研究テーマが創出されることが期待される。また、3次元多様体の量子不変量の漸近展開に双曲体積が現れることを主張する「3次元多様体の体積予想」も近年定式化され、これについての研究もすすめた。とくに、漸近展開の準古典極限の項にはReidemeister torionが現れることが観察され、いくつかの例に対してそれを証明した。計画していた国際会議と研究集会は、予定通りに開催され、十分な成果を挙げた。Kashaev不変量の漸近展開の研究も、予定通りに遂行中である。結び目のKashaev不変量と双曲体積を関連づける体積予想は、量子トポロジーと双曲幾何を結びつける懸案の予想であり、最近15年間世界的にこの分野の中心的な話題となってきた。本研究の目標は、体積予想を多くの結び目について解決し、Kashaev不変量の漸近展開として得られるべき級数を新しい結び目不変量として研究することである。これにより、量子トポロジーと双曲幾何を融合する新しい研究テーマが創出されることが期待される。また、3次元多様体の量子不変量の漸近展開に双曲体積が現れることを主張する「3次元多様体の体積予想」も近年定式化されており、8の字結び目を整数係数手術して得られる3次元双曲多様体に対してこの予想が成立することを筆者は証明して、論文を執筆した。また、漸近展開の準古典極限の項にはReidemeister torionが現れることが観察され、いくつかの例に対してそれを証明して、論文を執筆した。計画していた国際会議と研究集会は、予定通りに開催され、十分な成果を挙げた。Kashaev不変量と量子不変量の漸近展開の研究も、予定通りに遂行中である。今年度も、国際会議と研究集会を開催する予定であり、準備をすすめている。Kashaev不変量の漸近展開についての研究もすすめる予定である。今年度も、国際会議と研究集会を開催する予定であり、準備をすすめている。Kashaev不変量と量子不変量の漸近展開についての研究もすすめる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-16H02145 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H02145 |
吸着脂肪族ケトン・アルデヒドの光化学反応における固体表面の効果 | 前年度までの研究成果を踏まえ,今年度は吸着媒としての多孔性バイコールに微小量のNi酸化物を担持,その上に吸着したケトンの光化学反応性を検討した.バイコール上にNi酸化物を担持させると, Niイオン担持量の増加とともにケトンの光分解反応の収率が著しく増大し,極大を経てその後減少することが解った.このことは,微量のNi酸化物をバイコールに担持することにより,ケトンの光化学反応性が向上することを示すものである.Ni酸化物担持バイコールでは,ケトンの吸着後も表面OH基のIR吸収の変化は見られなかった.一方,四配位Ni^<2+>イオンのC-T吸収がケトンの吸着量の増加とともに減少し,代わって六配位のNi^<2+>イオンに基づく新たな吸収が出現することが解った.担持したNi^<2+>イオンの量を増加させた時の四配位Ni^<2+>イオンのUV吸収強度の変化は,ケトンの光分解収率の変化と同様の変化を示し,光分解収率の増加が四配位Ni^<2+>イオンの濃度と良い対応関係にあることが明らかになった.ケトンのリン光スペクトルとその励起スペクトルの波長域には,バイコールだけの場合と比較して大差は認められなかった.一方,リン光の収率は大きく変化し, Ni酸化物を担持したバイコール上に吸着した場合には,ケトンのリン光収率が著しく増大することが解った.リン光の減衰から求めた励起三重項の寿命は, Ni酸化物を担持していないバイコール上のものと比較し約10倍長くなることが解った.以上の結果を考慮すると, Ni酸化物を担持したバイコール上ではケトンは選択的に四配位Ni^<2+>イオン上に配位子と吸着し,このような孤立した状況下では光励起により生成するケトン励起三重項の失活は起こり難く,寿命が長くなりその結果光分解反応の収率の向上が見られるものと考えられる.このように吸着媒表面を化学的に修飾することにより,その上に吸着した化合物の光化学反応性が向上することが解った.前年度までの研究成果を踏まえ,今年度は吸着媒としての多孔性バイコールに微小量のNi酸化物を担持,その上に吸着したケトンの光化学反応性を検討した.バイコール上にNi酸化物を担持させると, Niイオン担持量の増加とともにケトンの光分解反応の収率が著しく増大し,極大を経てその後減少することが解った.このことは,微量のNi酸化物をバイコールに担持することにより,ケトンの光化学反応性が向上することを示すものである.Ni酸化物担持バイコールでは,ケトンの吸着後も表面OH基のIR吸収の変化は見られなかった.一方,四配位Ni^<2+>イオンのC-T吸収がケトンの吸着量の増加とともに減少し,代わって六配位のNi^<2+>イオンに基づく新たな吸収が出現することが解った.担持したNi^<2+>イオンの量を増加させた時の四配位Ni^<2+>イオンのUV吸収強度の変化は,ケトンの光分解収率の変化と同様の変化を示し,光分解収率の増加が四配位Ni^<2+>イオンの濃度と良い対応関係にあることが明らかになった.ケトンのリン光スペクトルとその励起スペクトルの波長域には,バイコールだけの場合と比較して大差は認められなかった.一方,リン光の収率は大きく変化し, Ni酸化物を担持したバイコール上に吸着した場合には,ケトンのリン光収率が著しく増大することが解った.リン光の減衰から求めた励起三重項の寿命は, Ni酸化物を担持していないバイコール上のものと比較し約10倍長くなることが解った.以上の結果を考慮すると, Ni酸化物を担持したバイコール上ではケトンは選択的に四配位Ni^<2+>イオン上に配位子と吸着し,このような孤立した状況下では光励起により生成するケトン励起三重項の失活は起こり難く,寿命が長くなりその結果光分解反応の収率の向上が見られるものと考えられる.このように吸着媒表面を化学的に修飾することにより,その上に吸着した化合物の光化学反応性が向上することが解った. | KAKENHI-PROJECT-62213028 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62213028 |
脱窒細菌の産出する新種のアズリンのX線構造解析と生体内電子伝達機構の解明 | 脱窒菌Achromobacter xylosoxidans NCIB11015の産出する電子伝達タンパク質アズリンは菌体内にただ1種類のみその存在がしられていたが、X線構造解析によって2種のアズリンが存在することを明らかとした。従来法で精製したが、種結晶化法を用いたため、2種のうちただ1種のみが結晶化したと考えられる。2.5Å分解能でのX線構造解析の結果、得られた電子密度は以前報告されていたアミノ酸配列と一致しないことから、本結晶が新種のアズリンの結晶であること、またその構造情報を新知見としていち早く論文投稿したが、その後英国Montfort大学のDr.S.Hasnainらのグループが我々と同一のタンパク質を使って1.9Å分解能での構造を発表した。しかし、報告された銅イオンの配位構造は、ステラシアニン以外のすべてのブルー銅タンパク質の配位子であるメチオニンが配位しておらず、我々の解析結果とは異なってた。現在我々も1.8Å分解能までのデータ収集を行い、より精度の高い構造精密化を進めている。また、アズリン1についても世界で初めて結晶化に成功した。X線回折実験を行い、この結晶は空間群がC2の単斜晶系に属し、格子定数もa=130.3,b=54.2,c=75.0Åであることがわかった。分子置換法による構造解析にも成功し、非対称単位中に存在する4分子の配向を決定することにも成功し、現在2.5Å分解能での精密化を進めている。これらは両アズリンの構造精密化を進めた後、合わせて論文報告を行う予定である。また、同じ脱窒菌に属するAchromobacter xylosoxidans GIFU1051についても新種のアズリンが存在する可能性が示唆されたため、GIFU由来の亜硝酸還元酵素およびアズリンを精製した。精製方法を検討した結果、本菌体からも新種のアズリンが精製された。同一菌体内に種類の異なるアズリンが存在することが発見されたのは、C1資化性菌Methylomonas J、脱窒菌Achomobactere xylosoxidans NCIBに次いで3種目となった。これら亜硝酸還元酵素、アズリン1.、アズリン2は本年度すべて結晶化に成功し、現在、それぞれ2.0Å、2.5Å、2.0Å分解能での構造解析を進めている。脱窒菌Achromobacter xylosoxidans NCIB11015の産出する電子伝達タンパク質アズリンは菌体内にただ1種類のみその存在がしられていたが、X線構造解析によって2種のアズリンが存在することを明らかとした。従来法で精製したが、種結晶化法を用いたため、2種のうちただ1種のみが結晶化したと考えられる。2.5Å分解能でのX線構造解析の結果、得られた電子密度は以前報告されていたアミノ酸配列と一致しないことから、本結晶が新種のアズリンの結晶であること、またその構造情報を新知見としていち早く論文投稿したが、その後英国Montfort大学のDr.S.Hasnainらのグループが我々と同一のタンパク質を使って1.9Å分解能での構造を発表した。しかし、報告された銅イオンの配位構造は、ステラシアニン以外のすべてのブルー銅タンパク質の配位子であるメチオニンが配位しておらず、我々の解析結果とは異なってた。現在我々も1.8Å分解能までのデータ収集を行い、より精度の高い構造精密化を進めている。また、アズリン1についても世界で初めて結晶化に成功した。X線回折実験を行い、この結晶は空間群がC2の単斜晶系に属し、格子定数もa=130.3,b=54.2,c=75.0Åであることがわかった。分子置換法による構造解析にも成功し、非対称単位中に存在する4分子の配向を決定することにも成功し、現在2.5Å分解能での精密化を進めている。これらは両アズリンの構造精密化を進めた後、合わせて論文報告を行う予定である。また、同じ脱窒菌に属するAchromobacter xylosoxidans GIFU1051についても新種のアズリンが存在する可能性が示唆されたため、GIFU由来の亜硝酸還元酵素およびアズリンを精製した。精製方法を検討した結果、本菌体からも新種のアズリンが精製された。同一菌体内に種類の異なるアズリンが存在することが発見されたのは、C1資化性菌Methylomonas J、脱窒菌Achomobactere xylosoxidans NCIBに次いで3種目となった。これら亜硝酸還元酵素、アズリン1.、アズリン2は本年度すべて結晶化に成功し、現在、それぞれ2.0Å、2.5Å、2.0Å分解能での構造解析を進めている。 | KAKENHI-PROJECT-07780572 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07780572 |
ダブルケア(育児と介護)を夫婦協働で行う「コ=ケアラー」モデルの開発 | 日本において少子高齢化とともに出産の高齢化が進み、親の介護と未就学児の育児が同時に進行する「ダブルケア」を行う者が増加している。本研究の目的は、ダブルケア(育児と介護)を行う夫婦の、とりわけ男性側の主体性を高める要因を検討し、夫婦協同のもと育児や介護を行う「コ=ケアラー」モデルの開発を行うことである。方法としてインタビューによる質的調査で夫婦協働のメリットや男性の主体性を高める要因を明らかにし、モデルの概要を創り上げ、量的調査によりモデルの検証を行い「コ=ケアラー」モデルを開発する。ダブルケアに対応し、夫婦の関係性も保ちつつ育児や介護により離職せずに夫婦が望む人生を送るための示唆を得る。日本において少子高齢化とともに出産の高齢化が進み、親の介護と未就学児の育児が同時に進行する「ダブルケア」を行う者が増加している。本研究の目的は、ダブルケア(育児と介護)を行う夫婦の、とりわけ男性側の主体性を高める要因を検討し、夫婦協同のもと育児や介護を行う「コ=ケアラー」モデルの開発を行うことである。方法としてインタビューによる質的調査で夫婦協働のメリットや男性の主体性を高める要因を明らかにし、モデルの概要を創り上げ、量的調査によりモデルの検証を行い「コ=ケアラー」モデルを開発する。ダブルケアに対応し、夫婦の関係性も保ちつつ育児や介護により離職せずに夫婦が望む人生を送るための示唆を得る。 | KAKENHI-PROJECT-19K11098 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K11098 |
新しい電力計測技術の開発 | 交流電圧標準と交流電流標準を導くサーマルコンバータを用いて、交流電力標準を構築した。現在、交流電力の国家標準は、電圧標準、電流標準、位相標準の個別の国家標準の組み立て量である。この方法では、校正された交流電圧計、交流電圧計、位相計が基準器として用いられるため、電力標準の高精度化や範囲拡張が難しい。サーマルコンバータは、電圧範囲1 mV1000 V、電流範囲1 mA100 A、周波数範囲10 Hzから1 MHzまでの任意の交流電圧及び交流電流標準の基準器として用いられており、交流電力標準として用いた場合、範囲拡張が容易となる。サーマルコンバータは経年変化も小さく、不確かさ改善やメンテナンスなどの労力の削減につながる。本研究では、電力標準の基準器として用いることができるサーマルコンバータの開発と範囲拡張が可能な電力測定システムの開発を行った。サーマルコンバータの作製については、電圧入力が10 Vまで、周波数範囲10 Hz1 kHz、電流は0.1 A、10 Hz1 kHzまで印加可能なサーマルコンバータを開発した。開発したサーマルコンバータのヒータ抵抗は、熱伝導率の高い窒化アルミ基板上に作製しており、温度変化の低減やヒータ抵抗の温度係数の改善などにより、電圧と電流とも60 Hzの周波数で、不確かさが20%改善した。また、開発した電力測定システムにおいて、電圧及び電流はサーマルコンバータを参照して校正された値を出力する。電圧と電流の位相は多相発信器の信号を参照として任意に調整することが可能である。このシステムにおいて、10 V、0.1 A、及び100 V、5 A、周波数は60 Hzの力率1の電力校正システムを構築した。値の確認のため、市販のデジタル電力計を仲介器として国家標準との比較を行い、新しく開発した電力測定システムと国家標準の校正結果は良い一致が得られた。計量標準において、交流電力標準を新しい原理で構築することを研究の目的とする。現在、交流電力の国家標準を最も精度良く確立できる方法は、電圧標準、電流標準、位相標準の個別の国家標準を組み合わせて実現する方法である。この方法は、各標準により校正されたデジタルの交流電圧計や位相計を用いて電力標準を確立しているが、デジタル機器が基準となるため、温度などの外乱の影響や経年変化により、高精度化に限界がある。また、現在の方法では、100V、5A、50 Hzの決まった値の電力の校正は可能であるが、20 V、3A, 600Hzのような中途半端な電力の基準を実現するのは手間がかかる。範囲の拡張において、50 Hzや60 Hz以外の拡張する周波数の交流電圧や交流電流の標準が必要であり、電力の国家標準において、1 kHz以上の校正を供給している国は極めて少ない。サーマルコンバータを用いた物理現象の原理に基づいた電力基準器を開発することで、電圧や周波数の拡張が容易になり、高精度化も期待できる。これまで、サーマルコンバータと呼ばれる熱-電気変換素子は、交流電圧標準と交流電流標準の基準として用いられてきた。従来のサーマルコンバータは印加できる電圧範囲が限られ、壊れ易いため、サーマルコンバータを用いた電力標準への応用研究は実績が乏しかった。本研究で開発するサーマルコンバータは、ヒータ薄膜を、熱電対とは別の熱伝導率の高い窒化アルミ基板に作製することにより、耐電圧を改善し、電圧範囲を従来の1 Vから10 Vまで拡張する。また、ヒータ抵抗値や熱的な時定数を適切に選ぶことで、50 Hzから10 kHzまでの周波数特性を改善する。サーマルコンバータを用いることで、交流電力標準の高精度化や範囲拡張が容易になり、再生可能エネルギーを利用した電力の取引や無線電力伝送技術の開発に貢献できるものである。今年度は初年度であり、サーマルコンバータのプロトタイプの作製と電力計測システムの開発に着手することが計画であった。サーマルコンバータの作製については、入力が10 Vと0.1 Aまで印加可能なサーマルコンバータを開発した。サーマルコンバータは、直流と交流の電気エネルギーを熱エネルギーに変換して比較するが、100 Hz以下の低周波では、ヒータの温度が入力交流電圧・電流の周波数変化に追随する熱リップルにより、正確な温度測定が難しくなる。また、ヒータ抵抗値の温度依存の影響でも不確かさが大きくなる。低周波範囲の交流電圧測定の不確かさ改善を行うため、ヒータ抵抗の温度係数を10 ppm以下に改善し、熱リップルの影響を小さくできる熱的時定数のサーマルコンバータを開発した。結果として、10 V, 50 Hzの交流電圧の交直差の不確かさは従来の12 ppmから4 ppmに改善した。この結果は、28年度の電気学会全国大会で発表を行った。サーマルコンバータを電力基準器とした新しい電力標準を評価するため、現在の電力計測システムと比較評価するための準備を行った。現在の電力の国家標準においては、デジタル電力計に入力される交流電圧と電流を校正して、電力標準が求められている。このため、交流電圧と交流電流が校正できるシステムの開発を行った。交流電圧については、電圧用サーマルコンバータを用いて電圧計を校正するシステムを構築した。交流電流は交流シャント抵抗と交流電圧を基準として求めているため、シャント抵抗の電圧の計測で必要となる低電圧交流電圧標準の高精度化を行った。結果として、低電圧範囲の不確かさを約2割改善し、高精度の交流電流評価が可能となった。この結果については、精密電気計測の国際学会(CPEM)で発表した。また、同内容を査読付き英文誌に投稿し、アクセプトされており、2017年度に掲載予定である。 | KAKENHI-PROJECT-16K06404 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K06404 |
新しい電力計測技術の開発 | 交流電圧標準と交流電流標準を導くサーマルコンバータを用いて、交流電力標準を構築することを研究の目的としている。現在の交流電力標準は組み立て量であるため、100V、5A、50 Hzの決まった値の電力の校正は可能であるが、65 V、4A, 600Hzのような中途半端な電力の基準を実現するのは難しく、不確かさも大きくなる。サーマルコンバータを用いることによって、電圧、電流範囲や周波数範囲の拡張が容易になり、不確かさも改善可能である。また、経変変化が小さいメリットもあり、メンテナンスなどの労力の削減につながる。今年度は、サーマルコンバータを基準器として用いたときの不確かさ評価とサーマルコンバータの開発を行った。現在の電力の国家標準との比較の目的で、電圧は100 V、電流は5 Aの測定システムの開発と不確かさ評価を行った。サーマルコンバータ素子とレンジ抵抗器を組み合わることで、任意の電圧と周波数の交流電圧標準が可能となり、また範囲拡張も容易となることから、100 V用の薄膜型レンジ抵抗器とレンジ抵抗器専用の100 Ωのサーマルコンバータ素子を開発し、不確かさ評価を行った。薄膜型レンジ抵抗器は、現在のところ、我々のグループのみで作成可能であり、電圧依存が従来より小さく、また周波数特性も小さい。この結果については、2018年の7月に開催される精密電気計測の国際学会(CPEM)で発表する予定である。5 A用のサーマルコンバータについても開発を行い、5 A、50 Hz 1 kHZの周波数範囲で不確かさ評価を行った。サーマルコンバータの開発に加えて、電力計測システムの開発も進めた。位相の精密測定に関しては、電圧と電流の位相をロックインアンプで測定するシステムを開発した。力率1を実現するため、位相の調整が必要であり、交流電圧と交流電流発生器の同期をとるシステムの開発を行った今年度は、新しい電力標準器用のサーマルコンバータの開発と電力標準測定システムの準備を進めた。国家標準と電力量を比較する目的で、100 Vの電圧と5Aの電流用のサーマルコンバータの設計と開発、評価を行った。100 V用のサーマルコンバータの設計では、抵抗値、抵抗形状、浮遊容量、誘電損失などのパラメータをモデル化して、周波数特性の解析を行い、サーマルコンバータの開発に反映させた。100 V用のサーマルコンバータはサーマルコンバータ素子とレンジ抵抗器で構成されており、レンジ抵抗器の性能が不確かさの主な要因となるため、新しい薄膜型レンジ抵抗器を作製した。開発した薄膜型レンジ抵抗器は、従来と比べ電圧依存が改善され、周波数特性も50 Hz- 1 kHzで2 ppm以内と小さい。これにより、従来の電力標準では校正が難しかった80 V、600 Hzなどの任意の電圧、周波数での校正が可能となる。新しいレンジ抵抗器の開発は国際学会(CPEM)で7月に発表予定である。電流についても5 A用のサーマルコンバータを開発し、50 Hz- 1 kHzの不確かさ評価を行った。 | KAKENHI-PROJECT-16K06404 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K06404 |
撥水性固体表面の不均一性が静的・動的濡れ性に及ぼす影響の実験的解明 | 本研究ではnmレベル及びμmレベルの物理的・化学的不均一が擬水性能に与える影響を明らかにすることを目的とした。意図的に(1)物理的不均一性、(2)化学的不均一性を付与したパターンコーティングを作製し、パターンサイズ、液滴サイズを系統的に変化させることで各項目の濡れ性への影響の検討を行った。(1)周期性の乏しい表面粗さ形状を有し、表面粗さが異なる2種類の超撥水性コーティングを作成し、それらの表面上で、水滴の蒸発過程での濡れ状態の転移(撥水性固体-液体界面での空気の含有量の変化)を詳細に観察した。各コーティングの表面形状から平均凹凸間隔と平均凹凸高さを見積り、これらを用いて濡れ状態の転移が起こる液滴径を算出したところ、実測値に近い値となることを示した。この結果から、濡れ状態の安定性を評価・比較する上で有効であることが明らかとなった。また、外部環境の変化に伴う濡れ状態の観察において、シランの分子長が濡れ状態の転移に影響を与えることを明らかとした。(2)撥水性シランを用いて分子レベルの平滑性を有したコーティングを作製し、これに対してフォトリソグラフィー法により化学的不均一部位としての親水性領域を規則的に配置した表面を作製し、これらの上で水滴の転落角と転落速度を測定した。パターンの大きさを相似的に変化させた場合、パターンサイズが大きいほど転落角が大きくなることを確認した。したがって、パターンサイズが大きいほど液滴は転落開始しづらいという傾向が明らかとなった。一方、転落速度はパターンサイズが大きいほど大きくなった。これらの結果から、液滴移動開始時と液滴移動時で表面欠陥は異なる影響を及ぼすことが実験的に明らかとなった。さらに、同様の傾向が物理モデルによる計算と流動シミュレーションからも確認された。本研究ではnmレベル及びμmレベルの物理的・化学的不均一が撥水性能に与える影響を明らかにすることを目的としている。意図的に(1)物理的不均一性、(2)化学的不均一性を付与したパターンコーティングを作製し、パターンサイズ、液滴サイズを系統的に変化させることで各項目の濡れ性への影響の検討を行っている。(1)各種固体表面にセラミックス球状粒子をランダムに堆積させたのち、援水コーティングを施すことで、nmオーダーの物理的粗さを有した超撥水性コーティングの作製に成功した。施す撥水性コーティングの種類を変化させ、固体表面の濡れ性を制御することで、濡れモード転移現象の検討を実施した。その結果、表面の濡れ性の違いにより、結露状態での濡れモード転移現象に違いがあることが明らかとなった。今後は微小液滴(ナノリットルオーダー)蒸発過程における濡れモード転移現象の表面粗さサイズ依存性を検討する予定である。(2)固体表面に撥水性コーティングを形成した後、真空紫外光(172nm)とフォトマスクを用いてコーティングの一部をエッチングする方法により、親水部を含有する撥水性パターンコーティングを4種類作製した。これらのコーティング上での水滴転落挙動を観察し、表面欠陥サイズが液滴の移動に及ぼす影響を検討した。その結果、液滴移動開始時と液滴移動時で表面欠陥は異なる影響を及ぼすことが明らかとなった。今後は計算科学的解析・流動シミュレーションを用いて、これらの現象のモデル化に取り組む予定である。本研究ではnmレベル及びμmレベルの物理的・化学的不均一が擬水性能に与える影響を明らかにすることを目的とした。意図的に(1)物理的不均一性、(2)化学的不均一性を付与したパターンコーティングを作製し、パターンサイズ、液滴サイズを系統的に変化させることで各項目の濡れ性への影響の検討を行った。(1)周期性の乏しい表面粗さ形状を有し、表面粗さが異なる2種類の超撥水性コーティングを作成し、それらの表面上で、水滴の蒸発過程での濡れ状態の転移(撥水性固体-液体界面での空気の含有量の変化)を詳細に観察した。各コーティングの表面形状から平均凹凸間隔と平均凹凸高さを見積り、これらを用いて濡れ状態の転移が起こる液滴径を算出したところ、実測値に近い値となることを示した。この結果から、濡れ状態の安定性を評価・比較する上で有効であることが明らかとなった。また、外部環境の変化に伴う濡れ状態の観察において、シランの分子長が濡れ状態の転移に影響を与えることを明らかとした。(2)撥水性シランを用いて分子レベルの平滑性を有したコーティングを作製し、これに対してフォトリソグラフィー法により化学的不均一部位としての親水性領域を規則的に配置した表面を作製し、これらの上で水滴の転落角と転落速度を測定した。パターンの大きさを相似的に変化させた場合、パターンサイズが大きいほど転落角が大きくなることを確認した。したがって、パターンサイズが大きいほど液滴は転落開始しづらいという傾向が明らかとなった。一方、転落速度はパターンサイズが大きいほど大きくなった。これらの結果から、液滴移動開始時と液滴移動時で表面欠陥は異なる影響を及ぼすことが実験的に明らかとなった。さらに、同様の傾向が物理モデルによる計算と流動シミュレーションからも確認された。 | KAKENHI-PROJECT-10J08538 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J08538 |
対数的スムース退化上の混合ホッジ構造の研究 | 対数的スムース退化の一典型例である、ログ・デフォメーションの相対対数的ドラーム・コホモロジー群上に、自然な「積」および「トレース射」を構成した。さらに、これらが混合ホッジ構造の「偏極」を与えることを証明した。ここで「偏極」とは、ウエイト・フィルトレーションの各次数化上で個別に定まるものではなく、コホモロジー群全体で定義され各次数化上ではモノドロミー作用と上手く両立するような双線形形式のことである。対数的スムース退化の一典型例である、ログ・デフォメーションの相対対数的ドラーム・コホモロジー群上に、自然な「積」および「トレース射」を構成した。さらに、これらが混合ホッジ構造の「偏極」を与えることを証明した。ここで「偏極」とは、ウエイト・フィルトレーションの各次数化上で個別に定まるものではなく、コホモロジー群全体で定義され各次数化上ではモノドロミー作用と上手く両立するような双線形形式のことである。対数的スムース退化の一典型例である、ログデフォメーションの相対対数的ドラーム複体のコホモロジー群上のモノドロミー作用について考察を進める中で、コホモロジー群上の「偏極」を構成することが、対数的ホッジ構造の研究とも相俟って、重要であることを見出すに至った。ここで偏極とは、スティーンブリンク・ズッカーが定義した、ウェイトフィルトレーションの各次数化上に個別に定まるものを指すのではなく、各次数化上ではモノドロミーの作用と上手く両立するような、コホモロジー群全体の上に定まる双線形形式のことである。(この意味での偏極は、カタニ・カプラン・シュミット等がベキ零軌道定理に関連して用いている。)そこで、このような偏極を構成するための第一段階として、ログデフォメーションの相対対数的ドラームコホモロジー複体上に「積構造」を定め、これが各次数化上では、既約成分であるコンパクト複素多様体のコホモロジー群における積から導かれるものと一致することを証明した。その際、スティーンブリンクによって構成された混合ホッジ複体と、単体的手法によって構成された混合ホッジ複体の間に自然な同型が存在することを明らかにした。そこで、最高次数のコホモロジー群からのトレース射を見出すことが次の課題となるが、これについても、然るべき候補を発見することに成功した。この候補がトレース射として期待される性質をもつかどうかを調べることが、次の課題である。平成20年度からの継続として、対数的スムース退化の典型例であるログデフォメーションの相対対数的ドラームコホモロジー群上に「偏極」を構成することに取り組んだ。平成20年度の研究により、ログデフォメーションの相対対数的ドラーム複体上に「積構造」が定まることが示されており、次に取り組むべきは、最高次数のドラームコホモロジー群からのトレース射を見出すことであった。そのためには、ウェイトフィルトレーションから定まるスペクトル列のE_1-項から積分によって与えられる射が、E_2-項からの射に降下することを確かめれば良いことが、既に昨年度の研究によって示されていたが、平成21年度には、この「降下」を示すために、上記スペクトル列のE_1-項の間の射をギシン射と制限射を用いて記述した上で、積分とこれらの射との間に成り立つ関係式を正確に計算することに取り組んだ。その結果、従来からの単体的手法に改良を加えることによって、この計算をより正確に、しかも見通し良く実行することができることを見出し、最終的に然るべきトレース射を構成することに成功した。(この成果の一端を京都大学数理解析研究所で行われた研究集会「高次元代数幾何の周辺」において発表する機会を得た。)平成20年度・21年度の研究により、ログデフォメーションの相対対数的ドラームコホモロジー群上に「偏極」を構成するためのデータである「積」と「トレース射」を構成することができた。従って、これらのデータがまさしく「偏極」を定めるものであることを確かめることが来年度の最初の課題となる。本年度は、まず、前年度までの研究で得られていた「積」および「トレース射」が、ログデフォメーションの相対対数的ドラーム・コホモロジー群上に「偏極」を定めることの証明に取り組んだ。その結果、齋藤盛彦氏や、ギレン・ナヴァロ-アスナール氏等による先行結果を参照することにより、上記「積」および「トレース射」が、実際に「偏極」を与えていることを証明することができた。さらにその系として、ログデフォーメションの相対対数的ドラーム・コホモロジー群が、標準対数的点(スタンダードログポイント)上に、(偏極可能な)対数的ホッジ構造の変動を引き起こすことを示した。現在これらの結果について論文を執筆中である。また、近く京都大学数理解析研究所から出版されるRIMS Kokyuroku BessatsuB24「Higher Dimensional Algebraic Geometry」の中にその要約が掲載される予定である。今後、ログデフォメーションの一般化である対数的スムース退化に対して、この結果を拡張することにが、研究を進展させる手掛りになるものと考えている。一方、年度当初に第2の研究課題として挙げていた、被約でない対数的スムース退化の相対対数的ドラーム複体の考察については、時間の制約のため目立った成果を得ることができなかった。巡回被覆を用いて、モノドロミー作用がべき単の場合へ帰着する方法を始めとして、幾つかの手掛りは得られており、今後の研究課題としたい。 | KAKENHI-PROJECT-20540054 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20540054 |
化学蒸着法によるゼオライト外表面酸点の不活性化 | シリカ化学蒸着はゼオライト触媒の形状選択性を高める修飾方法として広く用いられている。ゼオライトにシリカ蒸着を行うと、ゼオライト内部の酸性質は変えずに、細孔入口径の制御および外表面酸点の不活性化が可能である。しかし、工業的に多く使われているY型ゼオライトへの応用については、大きいシラン化剤分子であるテトラメトキシシランが細孔内に入るという報告があるのみである。Y型ゼオライト触媒の触媒特性を高める方法として脱アルミニウムする方法があり、この方法で調製したY型ゼオライトは熱安定性が増すことが知られている。そこで本研究では、Y型ゼオライトを脱アルミニウムし、アルミニウム濃度が異なるY型ゼオライトを調製しシリカ蒸着を行い、細孔入口径の制御を試みた。シリカ蒸着の際、シラン化剤が触媒の外表面だけに存在するか、または細孔の中まで入るかを調べるため、窒素吸着による表面積の変化とIRによる触媒の酸性水酸基の変化を調べた。また、シリカ蒸着による触媒の細孔入口径の変化を調べるため、1,3,5-トリイソプロピルベンゼンの吸着実験をマイクロバランスを備えた真空装置で行った。その結果、アルミニウム濃度が多いY型ではシラン化剤の蒸着により細孔が閉鎖されるに対して、脱アルミニウムしたY型ではシラン化剤の蒸着により細孔の入口径が制御できることを見出した。この触媒を用いて、2-イソプロピルナフタレンのイソプロピル化反応を行い、多環芳香族反応においての触媒性能を調べた結果、2,6-ジイソプロピルナフタレンの選択性が向上することがわかった。さらに、この触媒は優れたクラッキング触媒(FCC触媒)としても期待できる。シリカ化学蒸着はゼオライト触媒の形状選択性を高める修飾方法として広く用いられている。ゼオライトにシリカ蒸着を行うと、ゼオライト内部の酸性質は変えずに、細孔入口径の制御および外表面酸点の不活性化が可能である。しかし、工業的に多く使われているY型ゼオライトへの応用については、大きいシラン化剤分子であるテトラメトキシシランが細孔内に入るという報告があるのみである。Y型ゼオライト触媒の触媒特性を高める方法として脱アルミニウムする方法があり、この方法で調製したY型ゼオライトは熱安定性が増すことが知られている。そこで本研究では、Y型ゼオライトを脱アルミニウムし、アルミニウム濃度が異なるY型ゼオライトを調製しシリカ蒸着を行い、細孔入口径の制御を試みた。シリカ蒸着の際、シラン化剤が触媒の外表面だけに存在するか、または細孔の中まで入るかを調べるため、窒素吸着による表面積の変化とIRによる触媒の酸性水酸基の変化を調べた。また、シリカ蒸着による触媒の細孔入口径の変化を調べるため、1,3,5-トリイソプロピルベンゼンの吸着実験をマイクロバランスを備えた真空装置で行った。その結果、アルミニウム濃度が多いY型ではシラン化剤の蒸着により細孔が閉鎖されるに対して、脱アルミニウムしたY型ではシラン化剤の蒸着により細孔の入口径が制御できることを見出した。この触媒を用いて、2-イソプロピルナフタレンのイソプロピル化反応を行い、多環芳香族反応においての触媒性能を調べた結果、2,6-ジイソプロピルナフタレンの選択性が向上することがわかった。さらに、この触媒は優れたクラッキング触媒(FCC触媒)としても期待できる。 | KAKENHI-PROJECT-07750865 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07750865 |
S.mutansの蛋白質抗原におけるT細胞エピトープおよびアグレトープの解析 | う蝕発症に重要に関わるS.mutansの菌体表層蛋白質抗原(PAc)は、う蝕用ワクチンの候補として注目されている。そこで申請者は、このPAcを用いてより最小単位で免疫原性の強く安全性の高いうう蝕用ワクチンを開発することを目的とし実験を行った。PAc遺伝子工学的手法を用いて7つに分割しその断片中に存在するT細胞エピトープの解析を行なった。その結果アラニンの豊富な繰り返し領域を含むPAc-2フラグメントに、多数のT細胞エピトープが存在していることが認められた。アラニンの豊富な繰り返し領域はう蝕発症の起点となるS.mutansの歯への付着に関わっているという他のグループによる報告もあることから、この領域をカバーするアミノ酸残基4個をオーバーラップしたアミノ酸残基19個のペプチドを合成し、その合成ペプチドに存在するT細胞エピトープの検討を行なった。PAcの自然抗体を有する被験者由来の末梢血単核細胞と合成ペプチドを用いてT細胞の増殖実験を行なうと、PAc(アミノ酸残基番号,196-214),PAc(211-229),PAc(241-259),PAc(301-319),PAc(407-425)の5つのペプチドにおいてT細胞の増殖活性が認められた。5つのペプチドのアミノ酸配列の共通性を検討すると、Y-AKL--YQ、NAAN-A-YQ、NA-AKAAY--AVAANの3つの共通アミノ認められた。よって合成ペプチドにはこの共通アミノ酸配列を含んだT細胞エピトープが存在していることが示唆された。また同時にこの共通アミノ酸配列を含むアグレトープも存在していることが示唆された。このようなT細胞エピトープとアグレトープおよび申請者より解析中であるB細胞エピトープを含めてアミノ酸配列を設計することにより、目的としたより最小単位で免疫原性の高く安全性の高いう蝕用ワクチンを開発することができる。今後より詳細な検討のために、この共通アミノ酸配列を含んだペプチドを合成し、T細胞エピトープとアグレトープの解析を行う予定である。う蝕発症に重要に関わるS.mutansの菌体表層蛋白質抗原(PAc)は、う蝕用ワクチンの候補として注目されている。そこで申請者は、このPAcを用いてより最小単位で免疫原性の強く安全性の高いうう蝕用ワクチンを開発することを目的とし実験を行った。PAc遺伝子工学的手法を用いて7つに分割しその断片中に存在するT細胞エピトープの解析を行なった。その結果アラニンの豊富な繰り返し領域を含むPAc-2フラグメントに、多数のT細胞エピトープが存在していることが認められた。アラニンの豊富な繰り返し領域はう蝕発症の起点となるS.mutansの歯への付着に関わっているという他のグループによる報告もあることから、この領域をカバーするアミノ酸残基4個をオーバーラップしたアミノ酸残基19個のペプチドを合成し、その合成ペプチドに存在するT細胞エピトープの検討を行なった。PAcの自然抗体を有する被験者由来の末梢血単核細胞と合成ペプチドを用いてT細胞の増殖実験を行なうと、PAc(アミノ酸残基番号,196-214),PAc(211-229),PAc(241-259),PAc(301-319),PAc(407-425)の5つのペプチドにおいてT細胞の増殖活性が認められた。5つのペプチドのアミノ酸配列の共通性を検討すると、Y-AKL--YQ、NAAN-A-YQ、NA-AKAAY--AVAANの3つの共通アミノ認められた。よって合成ペプチドにはこの共通アミノ酸配列を含んだT細胞エピトープが存在していることが示唆された。また同時にこの共通アミノ酸配列を含むアグレトープも存在していることが示唆された。このようなT細胞エピトープとアグレトープおよび申請者より解析中であるB細胞エピトープを含めてアミノ酸配列を設計することにより、目的としたより最小単位で免疫原性の高く安全性の高いう蝕用ワクチンを開発することができる。今後より詳細な検討のために、この共通アミノ酸配列を含んだペプチドを合成し、T細胞エピトープとアグレトープの解析を行う予定である。 | KAKENHI-PROJECT-05771537 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05771537 |
農薬パラコートの生体内解毒機構の研究 | 13年度の研究成果より,マウスにおいてパラコート(PQ)解毒系として,肝臓の薬物代謝系酵素(NADPH-cytochrome P450 reductaseおよびCYP3A,2B)が働いていることがin vivo実験で明らかとなった。そこで,本年度はPQ代謝経路がどの様に関わっているかを更に詳細に明らかにするため,マウス肝ホモジネートよりポストミトコンドリア画分,ミクロソーム画分およびサイトゾルを調製し,in vitroでのPQ代謝活性を測定した。マウス肝ホモジネートをPQとNADPHとともに反応させると,PQが減少し,代謝中間体であるparaquat-monopyridone(PM)が生成した。CYP3A阻害剤であるtroleandomycinはPQの減少を抑制し,PMを増加させた。また,PMはミクロソーム画分ではなくサイトゾルで生成していた。フェニトインによってマウス肝のCYP3Aおよび2Bを誘導すると,ポストミトコンドリア画分でのPM生成が減少したが,サイトゾルでは変化が見られなかった。これらの結果より,PQはサイトゾルでPMとなった後,小胞体薬物代謝酵素系によって水酸化解毒されることが明らかとなった。これまでに我々はPQ毒性発現がミトコンドリアにおけるフリーラジカル生成によるものであること,細胞膜透過性フリーラジカルスカベンジャーが毒性を抑制することを明らかにしている。そこで次に,リファンピシンやフェニトイン処理によってCYPを誘導したマウスにPQを投与し,引き続きフリーラジカルスカベンジャーであるα-トコフェロール(α-T)を繰り返し静注投与した。その結果,PQ単独投与では生存率が40%だったのに対し,CYP誘導とα-T投与によって100%にまで回復した。以上のことから,PQ中毒においてCYP誘導とα-T投与が有効な治療となりうることが強く示唆された。パラコート(PQ)解毒に対する薬物代謝酵素系の関与を明らかにするため,マウスにシトクロムP450(CYP)誘導剤,または,抑制・阻害剤を投与した後,PQ(50mg/kg)を投与してその生存率を測定した.薬剤処理しないマウスの7日後の生存率は41%であったが,CYP誘導剤であるフェニトイン,フェノバルビタールおよびリファンピシン投与マウスではそれぞれ88,64,69%と有意に上昇した.フェニトインは肝ミクロゾーム中のNADPH-シトクロムP450リダクターゼ(CPR),CYP3A,CYP2B,CYP2C活性および蛋白量を3-4倍に増加させた.フェノバルビタールとリファンピシンはCPRに加えてCYP2BとCYP3Aをそれぞれ増加させた.3-メチルコランスレン処理では酵素活性,生存率共に変化は見られなかった.一方,CYP合成阻害剤である塩化コバルトおよびCYP活性阻害剤であるSKF525-A処理したマウスでは5日目に全てのマウスが死亡した.塩化コバルト処理により,肝ミクロゾーム中のCYP活性,酵素量は減少していた.また,CYP3A阻害剤であるトロルアンドマイシン処理により生存率が12%に減少した.以上のことから,マウスにおいて薬物代謝酵素系は,従来より定説となっていたPQ毒性機構に関与しているのではなく,むしろPQ解毒系として働いていることが明らかとなった.現在,マウス肝臓ホモジネートのsubfractionを用いて,パラコート代謝産物の測定を行っており,来年度はパラコート解毒機構の更に詳細な解析を行う予定である.13年度の研究成果より,マウスにおいてパラコート(PQ)解毒系として,肝臓の薬物代謝系酵素(NADPH-cytochrome P450 reductaseおよびCYP3A,2B)が働いていることがin vivo実験で明らかとなった。そこで,本年度はPQ代謝経路がどの様に関わっているかを更に詳細に明らかにするため,マウス肝ホモジネートよりポストミトコンドリア画分,ミクロソーム画分およびサイトゾルを調製し,in vitroでのPQ代謝活性を測定した。マウス肝ホモジネートをPQとNADPHとともに反応させると,PQが減少し,代謝中間体であるparaquat-monopyridone(PM)が生成した。CYP3A阻害剤であるtroleandomycinはPQの減少を抑制し,PMを増加させた。また,PMはミクロソーム画分ではなくサイトゾルで生成していた。フェニトインによってマウス肝のCYP3Aおよび2Bを誘導すると,ポストミトコンドリア画分でのPM生成が減少したが,サイトゾルでは変化が見られなかった。これらの結果より,PQはサイトゾルでPMとなった後,小胞体薬物代謝酵素系によって水酸化解毒されることが明らかとなった。これまでに我々はPQ毒性発現がミトコンドリアにおけるフリーラジカル生成によるものであること,細胞膜透過性フリーラジカルスカベンジャーが毒性を抑制することを明らかにしている。そこで次に,リファンピシンやフェニトイン処理によってCYPを誘導したマウスにPQを投与し,引き続きフリーラジカルスカベンジャーであるα-トコフェロール(α-T)を繰り返し静注投与した。その結果,PQ単独投与では生存率が40%だったのに対し,CYP誘導とα-T投与によって100%にまで回復した。以上のことから,PQ中毒においてCYP誘導とα-T投与が有効な治療となりうることが強く示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-13770861 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13770861 |
凍結乾燥法を基盤とした幹細胞製剤化技術の構築 | 本研究では、非侵襲的な肺胞幹細胞移植の実現を目指して、幹細胞の吸入製剤化技術の構築を行い、製剤の有効性および安全性を明らかにすることを目的として研究を行った。肺胞再生治療法が確立できれば、治療法のないCOPDや難治性の肺線維症の根治、手術後の肺再建が可能となり多くの患者の命を救う革新的な再生治療技術となる。申請者は、世界に先駆け、PI3K阻害剤などがヒト肺胞上皮幹細胞を効率的に分化誘導し肺胞再生効果を有するという新規の知見を発見した。本研究では、重篤な肺胞破壊病変の再生を可能とする非侵襲的な肺胞幹細胞移植の実現を目指して、凍結乾燥法を基盤としたヒト肺胞幹細胞の凍結乾燥吸入製剤を開発を行った。本研究では、非侵襲的な肺胞幹細胞移植の実現を目指して、肺胞幹細胞の凍結乾燥技術および幹細胞の吸入製剤化技術の構築を行い、製剤の有効性および安全性を明らかにすることを目的として研究を行った。肺胞再生治療法が確立できれば、治療法のない慢性閉塞性肺疾患(COPD)や難治性の肺線維症の根治、外科的手術後の肺再建が可能となり多くの患者の命を救う革新的な再生治療技術となる。申請者は、COPDの根治的治療法の確立を目指して、破壊された肺胞の再生を作用点とする新規化合物の探索を行った。その結果、世界に先駆け、合成レチノイドAm80やPI3K阻害剤などがヒト肺胞上皮幹細胞を効率的に分化誘導し肺胞再生効果を有するという新規の知見を発見した。軽度の肺胞破壊モデルでは発見した分化誘導剤が肺胞の再生を誘導する優れた効果を示したが、完全に肺胞構造が破壊された重症例では分化誘導剤の投与のみでは肺胞再生効果が不十分であり治癒には至らなかった。一方で、幹細胞を肺に直接移植すると顕著な肺胞の修復が確認されているが、非侵襲的に肺胞幹細胞を移植する製剤は存在しない。本研究では、重篤な肺胞破壊病変の再生を可能とする非侵襲的な肺胞幹細胞移植の実現を目指して、当研究室の山下教授が開発した凍結乾燥法を基盤とした粉末吸入システム(世界72ヶ国で特許取得済み、(2010))を用いたヒト肺胞幹細胞の凍結乾燥吸入製剤を開発を行った。今年度は以下の項目を予定しており、すべての項目において順調に研究が進んでいる。一部の添加剤の検討は予定以上に多くの物質を評価することが出来、予定以上に進んでいる。新規の凍結装置を用いた検討においては、機器の導入時期が予定より1、2カ月遅れたため予定より遅れて検討を始めたが、概ね予定通りの研究が進展している。【本年度の検討項目】I.ガラス化、医療用CASおよび段階的乾燥法を利用した肺胞幹細胞の凍結乾燥技術を確立した。既に樹立済みのヒト肺胞上皮幹細胞をガラス化溶液(0.5Mトレハロース、45%エチレングリコールを含む)で培養し、緩慢もしくは急速凍結を行った。凍結1週間後に恒温槽にて融解し、幹細胞培養液にて培養開始後からの継時的な細胞生存率をMTTアッセイにより評価した。さらに特殊なCAS発生装置を使って細胞の中にある水分子を振動させ細胞壁や細胞膜を安定に凍結することが可能な医療用CAS:Cell Alive System(現有機器)を用いて肺胞幹細胞に最適な凍結速度と振動を検討し幹細胞の凍結技術を検討した。II.当研究室の特許技術を基盤とした肺胞幹細胞の粉末吸入製剤を構築した。疎水性アミノ酸であるフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリンを各バイアルに0.11mg添加し医療用CASと棚方凍結乾燥機(現有機器)にて凍結乾燥にて行った。吸入剤の性能は米国薬局方に準じた試験装置MSLI(現有機器)で肺分布を示す5μm以下の微粒子割合により判定した。本研究では、非侵襲的な肺胞幹細胞移植の実現を目指して、幹細胞の吸入製剤化技術の構築を行い、製剤の有効性および安全性を明らかにすることを目的として研究を行った。肺胞再生治療法が確立できれば、治療法のないCOPDや難治性の肺線維症の根治、手術後の肺再建が可能となり多くの患者の命を救う革新的な再生治療技術となる。申請者は、世界に先駆け、PI3K阻害剤などがヒト肺胞上皮幹細胞を効率的に分化誘導し肺胞再生効果を有するという新規の知見を発見した。本研究では、重篤な肺胞破壊病変の再生を可能とする非侵襲的な肺胞幹細胞移植の実現を目指して、凍結乾燥法を基盤としたヒト肺胞幹細胞の凍結乾燥吸入製剤を開発を行った。組織の効率的な再生治療法が確立できれば、治療法のない難治性疾患や外科手術後の組織再建が可能となり、多くの患者の命を救う革新的な医療技術となる。現在、幹細胞を移植する方法は、侵襲的な外科治療が主であり、今後、再生治療が広く普及するためには、非侵襲的な幹細胞の移植技術の開発が急務の課題である。そのため、既存の再生治療材料の概念にとらわれない治療材料の開発を進めていかなければならない。本研究では、このような課題を解決するため、幹細胞の性質の理解と、非侵襲的な再生治療細胞材料の開発、そして臨床応用に向けた安全性および有効性の評価を進めている。幹細胞の性質を理解した細胞製剤の開発を進めるため、幹細胞の周辺環境に着目した。 | KAKENHI-PROJECT-15K14944 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K14944 |
凍結乾燥法を基盤とした幹細胞製剤化技術の構築 | 幹細胞の組織を修復する力は、幹細胞周辺の細胞群やサイトカイン、分泌物質などにより直接的または間接的に調整されていることを明らかにしている。特に、細胞外マトリックスと呼ばれる細胞の足場を構成する分子群は、幹細胞の特性の維持に重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、幹細胞製剤の作製に成功し、製剤の有効性、安全性の評価結果が得られた。特に、安全性の評価においては、短期における毒性は確認されず、また長期にわたる発がん性の評価を行っているが、現在のところ、発がん性において問題は確認されていない。今後は、組織の線維化などへの影響を引き続き確認する。これらの知見は、将来、非侵襲的な再生治療を実現するための基盤になると期待される。当初予定していた計画は完了し、論文発表などの成果発表も順調に進展している。加えて、作製した製剤に関して、安全性の評価が予定以上に進展しており、長期の毒性についても解明が進んでいる。今後は特性の異なる様々な幹細胞に対して、本研究で同定した添加剤や凍結および乾燥方法が有用であるか評価を行うことで本研究の実用化の範囲を広げることを目標に研究を行う。そのため、幹細胞移植の研究を行う国内外の共同研究機関と連携して研究を進めていくことを計画している。更に研究成果を広く社会に還元するため、研究業績としての論文発表や学会発表だけでなく、臨床応用を目指した産学連携への発展を目指し関連企業等への情報提供を進める予定である。再生治療今後は、引き続き、研究成果の発表を推進していく。国内外での学会発表を予定している。本年度末に投稿中の論文のリバイスの為に消耗品代および英文校正費用を計上していたが、論文の審査に時間がかかっており、論文リバイスの為の予算を来年度初めに繰り越す必要が生じたため。補助事業に関する研究成果の発表を次年度に延期したため。論文のリバイスの試薬として有機溶媒等の消耗品代を4612円使用する。論文のリバイス後の英文校正費用として40000円を使用する。次年度に延期した学会に参加するために使用する。 | KAKENHI-PROJECT-15K14944 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K14944 |
近赤外分光測定法を用いた、新生児の視覚機能の発達に関する研究 | 新生児の視機能の他覚的評価を近赤外分光法(functional near-infrared spectroscopy: fNIRS)を用い測定した。同時に異なった色(赤、青)、強さ(10または100cd/m2)の光刺激を用い、対光反射を測定し、さらに皮膚電極型網膜電図(ERG)を用い、fNIRS結果と照合し、その精度を確認した。fNIRSによる結果は他の機器を用いた結果とほぼ同様の所見を示した。さらに健常児のみならず視覚異常を有する児の検査結果も臨床所見と一致した。しかし検査毎に異なる結果が生じた症例もあり、現時点ではfNIRSの結果のみから視機能を断定せず、総合的に判断することが進められる。新生児の非侵襲的視機能評価測定目的にて、近赤外分光測定法(Functional Near-infrared Spectroscopy: fNIRS)を用い新生児の視機能を評価した。26年度は3年計画の初年度で、測定の基礎、すなわち、fNIRSにより光刺激後、安定した測定結果を得ることが出来るかを最重要課題とした。具体的には1測定部位(脳表の部位とプローブの数)、2光刺激条件(刺激色、強さ)、3新生児の条件(毛髪、体動、啼泣等)を確立すべく測定、研究を行った。対象は北里大学の新生児特定集中治療室(Neonatal Intensive Care Unit: NICU)に入院している新生児である。毛髪量や啼泣状態の程度は様々でもあり、全てを対象に測定を試みた。fNIRS装置にはPocketNIRS(ダイナセンス社)を用いた。本機器は従来型のfNIRS装置と異なり、コンパクト、軽量、易移動性であり、プローブ数も2つに限られており、送受光部が鋭利でないため装着時間は短い。そのため、NICUなどの日々の臨床現場でも手軽に測定することが可能である。非鎮静下で閉瞼状態の新生児に対し、半暗室下において視覚刺激を行った。視覚刺激には赤色(635nm)・青色(470nm)の光刺激(250cd/m2)、及び診察時に使用する双眼倒像鏡の光源を用いた。赤色及び青色の光刺激には赤外線電子瞳孔計に搭載されている光刺激プログラムを用いた。視覚刺激時間は10秒間とした。測定部位は対象が新生児であるため、国際10-20法などに従って明確な視覚野の位置を確認すると時間がかかり、その間に新生児が啼泣し測定が困難になることから、短時間で容易に視覚野の位置を確認することができる後頭結節の両側に1つずつプローブを設置した。新生児の非侵襲的視機能評価測定目的にて、近赤外分光法(Functional Near-infrared Spectroscopy : fNIRS)を用い、新生児の視機能を評価した。昨年度我々が使用したfNIRS装置(Pocket NIRS Duo,ダイナセンス社)はプローブが平坦であり、毛髪の多い新生児を対象に測定不能、また体動に大きく影響され測定不能な症例が散見された。本年度は新たにfNIRS装置の開発を行い、プローブの改良を試みた。新たに開発したfNIRS装置は昨年度使用したPocket NIRS Duoと同様に、新生児特定集中治療室(Neonatal Intensive Care Unit: NICU)に直接持ち込めるよう、コンパクト、軽量、易移動性であるものとした。Pocket NIRSは1つのプローブの1つの送光部につき1つの受光部であるが、我々の開発した装置は1つのプローブの1つの送光部につき4つの受光部を搭載した(プローブ数は2つである)。これにより、1回の測定で合計8つの波形を算出できるため、結果の信頼性の向上に繋がると考えられる。また、プローブをスポンジ構造にし、衝撃を吸収し体動に耐え易く、またどの新生児の後頭部にもフィットするような構造とした。更に、送光部及び受光部はやや突起させた形状とし、これにより毛髪を掻き分けることができると考えられる。さらに昨年度は光刺激には倒像鏡の光源を用いたが、光量を定量的に詳細にコントロールすることができないため、本年度はより低侵襲目的に段階的に光量をコントロール可能なLEDライトを閉瞼下で眼瞼皮膚に照射し、新開発のfNIRS装置と一体型とした。そのため無侵襲化が可能となり啼泣を避けて、食後に測定を試みた。視覚刺激時間は昨年度と同様、10秒間とした。その結果昨年以上に安定した波形を得ることが可能となった(達成度の項参照)。北里大学病院NICUに入院中で同意の得られた新生児8名(平均胎生週数39.9±2.5週)に対し、新たに開発したfNIRS装置を用いて視覚刺激を行った際の酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビン濃度変化を測定した。被験者8名中5名において、光刺激を与えた際に有意な酸素化ヘモグロビン濃度の上昇が認められた。また、特記すべきことにその5名中2名は有意な脱酸素化ヘモグロビン濃度の減少も認められた。他の3名は啼泣にて、測定中の体動が大きい為安定した波形を得ることができなかった。しかし日時を変えた2回目の測定にてほぼ安定した結果が得られた。以上の結果より、新たに開発したfNIRS装置を用いてベットサイドでの新生児の視機能を簡便に低侵襲、他覚的に評価することが可能となった。 | KAKENHI-PROJECT-26462647 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26462647 |
近赤外分光測定法を用いた、新生児の視覚機能の発達に関する研究 | プローブをスポンジ構造、また送光部及び受光部を突起させた構造としたため、どの新生児の頭にもフィットさせることができ、またある程度新生児の毛髪を掻き分けることができた。また、光量を定量的に詳細にコントロールすることができるLEDライトを光源として用いたため、異なる被験者間においても一定の安定した条件下で測定をすることができた。また無侵襲の状態での計測が可能となったため、授乳後に測定を行うことが可能となり、昨年度と比較して、測定前及び測定中に啼泣する割合を減少させることができた。現在まで達成した内容は、「近赤外分光法を用いた新生児の他覚的視機能検査の試み(第2報)」のタイトルで、第51回日本眼光学学会総会にて発表を行った。また、眼科の学術論文誌であるあたらしい眼科に「近赤外分光法を用いた新生児の他覚的視機能検査」のタイトルで、提出、受理された。小児の視機能は感受性期内に発達するため、早期より視機能異常を発見、治療することは非常に重要である。新生児は自覚的応答ができないため、視機能を評価するにはpreferential looking法やoptokinetic nystagmus法などの他覚的手法が用いられてきた。その中で、視覚反応を脳から直接捉える装置としてvisual evoked potential (VEP)がある。しかしながら、VEPは僅かな体動や静電気などのノイズの影響を受けやすく、またベッドサイドでの測定は困難である。今回、新生児用fNIRS装置、また異なった色刺激による記録が可能な赤外線電子瞳孔計を用い、新生児の他覚的視機能検査を試みた。fNIRSのプローブは後頭結節を基準に左右両側3cmの位置に設置した。波形安定後、光刺激を10秒間与え、光刺激1秒前から光刺激5秒後までの合計16秒間、酸素化及び脱酸素化ヘモグロビン(Hb)濃度変化を測定した。全測定者(40例)のうち5例の症例でそれぞれの被験者は光刺激を与えた際に左右両側共に有意な酸素化Hb濃度の上昇を認めた(p<0.01)。尚、2例の被験者は光刺激を与えた際に有意な脱酸素化Hb濃度の減少を認めた(p<0.01)。さらに健常な新生児(25例)では赤色光刺激は反応しないものの青色光刺激ではすべての症例でその反応が確認され、fNIRSとともに簡便な評価法として確認できた。新生児の視機能の他覚的評価を近赤外分光法(functional near-infrared spectroscopy: fNIRS)を用い測定した。同時に異なった色(赤、青)、強さ(10または100cd/m2)の光刺激を用い、対光反射を測定し、さらに皮膚電極型網膜電図(ERG)を用い、fNIRS結果と照合し、その精度を確認した。fNIRSによる結果は他の機器を用いた結果とほぼ同様の所見を示した。さらに健常児のみならず視覚異常を有する児の検査結果も臨床所見と一致した。しかし検査毎に異なる結果が生じた症例もあり、現時点ではfNIRSの結果のみから視機能を断定せず、総合的に判断することが進められる。赤色および青色光刺激に対する酸素化ヘモグロビン濃度及び脱酸素化ヘモグロビン濃度変化は観察されなかった。これは、閉瞼状態の新生児に対し赤外線電子瞳孔計での250cd/m2の光刺激を行っても、光量が足りないため十分な刺激が網膜に達しなかったことが原因であると考えられる。倒像鏡の光源による光刺激では測定例14例中2例においては左右両半球共に有意な酸素化ヘモグロビン濃度の上昇及び脱酸素化ヘモグロビン濃度の減少を認めた。 | KAKENHI-PROJECT-26462647 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26462647 |
成人型呼吸窮迫症候群の成因究明とサーファクタント補充療法の応用 | 1.噴霧吸入によるサーファクタント投与実験:前年度までの研究でサーファクタントの分散液を2ml/kgあて気道内に注入すると、成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)の症状が好転することを確認した。そこで、今年度は、噴霧吸入法による投与の効果を検討した。(1)肺洗淨ラット:肺洗淨によりサーファクタントを洗い出し、100%酸素による人工呼吸下でも、動脈血酸素分圧(PaO_2)が100mmHg以下のラットを作成した。このラットに、補充療法用サーファクタント(金沢大学で作成したSurfactant CK)を1時間噴霧吸入させたところ、PaO_2が350mmHg(mean)以上に上昇し、肺コンプライアンが24%増加した(P<0.05)。(2)エンドトキシン投与ラット:大腸菌由来のエンドトキシンを50mg/kgあて、ラットの気道に注入しARDSを発症させた。このラットに、Surfactant CKを噴霧吸入させると、PaO_2は106mmHg(mean)から300mmHg以上になった(P<0.05)。また、コンプライアンスや胸部レントゲン所見も有意に好転した。以上の結果から、噴霧吸入でサーファクタントを投与しても、治療効果が得られると結論された。噴霧吸入法は、注入法に比べて、効果が若干劣るものの、安全性の面で勝れていると判定された。2.肺サーファクタントの脂質構成に関する検討(合成製剤の開発):ディパルミトイールレシチン(DPL)、不飽和レシチン(u-L)、ホスファテイジールグリセロール(PG)の3者を種々に組合せ、それに肺サーファクタントのアポ蛋白(SP-BとSP-C)を加えた。これらの試料を、自己の肺サーファクタントが欠如しているウサギ末熟胎仔に投与して換気量を測定した。その結果、u-Lを含む試料を投与した動物の換気量は、含まない場合の約1.5倍であった(P<0.05)。u-Lは、肺サーファクタントの活性を増強する重要な因子であると判定された。1.噴霧吸入によるサーファクタント投与実験:前年度までの研究でサーファクタントの分散液を2ml/kgあて気道内に注入すると、成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)の症状が好転することを確認した。そこで、今年度は、噴霧吸入法による投与の効果を検討した。(1)肺洗淨ラット:肺洗淨によりサーファクタントを洗い出し、100%酸素による人工呼吸下でも、動脈血酸素分圧(PaO_2)が100mmHg以下のラットを作成した。このラットに、補充療法用サーファクタント(金沢大学で作成したSurfactant CK)を1時間噴霧吸入させたところ、PaO_2が350mmHg(mean)以上に上昇し、肺コンプライアンが24%増加した(P<0.05)。(2)エンドトキシン投与ラット:大腸菌由来のエンドトキシンを50mg/kgあて、ラットの気道に注入しARDSを発症させた。このラットに、Surfactant CKを噴霧吸入させると、PaO_2は106mmHg(mean)から300mmHg以上になった(P<0.05)。また、コンプライアンスや胸部レントゲン所見も有意に好転した。以上の結果から、噴霧吸入でサーファクタントを投与しても、治療効果が得られると結論された。噴霧吸入法は、注入法に比べて、効果が若干劣るものの、安全性の面で勝れていると判定された。2.肺サーファクタントの脂質構成に関する検討(合成製剤の開発):ディパルミトイールレシチン(DPL)、不飽和レシチン(u-L)、ホスファテイジールグリセロール(PG)の3者を種々に組合せ、それに肺サーファクタントのアポ蛋白(SP-BとSP-C)を加えた。これらの試料を、自己の肺サーファクタントが欠如しているウサギ末熟胎仔に投与して換気量を測定した。その結果、u-Lを含む試料を投与した動物の換気量は、含まない場合の約1.5倍であった(P<0.05)。u-Lは、肺サーファクタントの活性を増強する重要な因子であると判定された。1.成熟ウサギの気道内に塩酸を注入し、成人型呼吸窮迫症(ARDS)様症状を発症させたうえ、金沢大学で開発した補充療法用サ-ファクタント(Surfactant CK)を投与した。その結果、血液ガス所見、生存率、肺組織所見などが好転し、ARDSに対するサ-ファクタント補充療法の有効性が強く示唆された。2.自己の肺サ-ファクタントが欠如しているウサギ未熟胎仔に対し、段階的に濃度を変えたサ-ファクタントを補充し、換気力学や肺組織像を系統的に調査した。その結果、サ-ファクタントの濃度がある一定の値以下になると、生理学的作用が急激に消失する現象を見い出し、生理的臨界濃度という新らしい概念を提唱した。3.肺サ-ファクタントのアポ蛋白に対するモノクロ-ナル抗体を、ウサギの肺に注入したところ、ARDSに酷似した症状や肺組織像がみられた。この結果は、ARDSの成因に、サ-ファクタントの不活化が関与していることを裏付けるものと考えられた。4.酸素中毒でARDS様症状を呈しているウサギの肺水腫液中には、肺サ-ファクタントの活性を阻害する物質が存在することを確認した。 | KAKENHI-PROJECT-02454352 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02454352 |
成人型呼吸窮迫症候群の成因究明とサーファクタント補充療法の応用 | ウサギ未熟胎仔を用いた生物学的評価系で、肺機能障害が出現する阻害物質とサ-ファクタントの量の比を求め、ARDSに対する補充療法の基礎的資料を貯積した。1.純酸素により人工呼吸されているラット(n=40)に対し、380ー500ppmの塩素ガスを210秒間吸入させた。その結果、動脈血酸素分圧(PaO_2)は500mmHg前後から100mmHg以下に低下し、呼吸窮迫症候群(ARDS)様の症状を呈した。半数のラット(n=20)に対し、金沢大学で開発したサ-ファクタント(Surfactant CK)を経気道的に補充したところ、PaO_2は253【.+ー.】130mmHg(P<0.05)に回復し、60%の動物は140分以上生存した。一方、サ-ファクタントを補充しなかった対照ラット(n=20)のPaO_2は100mmHg以下で推移し、140分後の生存率は20%以下(P<0.05)になった。以上より、塩素ガス吸入後のARDS様状態に対し、サ-ファクタント補充療法は治療効果を示すと結論された。2.肺サ-ファクタントの構成成分であるアポ蛋白質(SPーAおよびSPーB)をモノクロ-ナル抗体により選択的に遮断し、その際の肺サ-ファクタントの生理活性の変化を、ウサギ未熟胎仔を用いて検討した。その結果、SPーAはサ-ファクタントの活性にあまり関与していないことが判明した。一方、SPーBが遮断されると、サ-ファクタントの活性は消失することが明らかになった。したがって、補充療用サ-ファクタント中のSPーBは不可欠な因子の1つであり、抗原性のないヒト肺由来のSPーBを入手する研究が、今後必要であると結論された。3.11名の喘息患者を、サ-ファクタント吸入群(n=6)と対照群(n=5)に分け、サ-ファクタント吸入群には10mgの補充療法用サ-ファクタント(容量=10ml)を吸入させ、対照群には僞似薬(生理食塩水)を吸入させた。サ-ファクタント群では、自覚症状が改善し、1秒率が27%、分時最大換気量が33%増加した。対照群では、これらの改善が見られず、両群の差は有意(P<0.05)であった。サ-ファクタント補充療法は、気道の閉塞を防止し、喘息発作にも有効であると結論された。1.噴霧吸入によるサーファクタント投与実験:前年度までの研究で、サーファクタントの分散液を2ml/kgあて気道内に注入すると、成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)の症状が好転することを確認した。そこで、今年度は、噴霧吸入法による投与の効果を検討した。(1)肺洗淨ラット:肺洗淨によりサーファクタントを洗い出し、100%酸素による人工呼吸下でも、動脈血酸素分圧(PaO_2)が100mmHg以下のラットを作成した。このラットに、補充療法用サーファクタント(金沢大学で作成したSurfactant CK)を1時間噴霧吸入させたところ、PaO_2が350mmHg(mean)以上に上昇し、肺コンプライアンが24%増加した(P<0.05)。(2)エンドトキシン投与ラット:大腸菌由来のエンドトキシンを50mg/kgあて、ラットの気道に注入しARDSを発症させた。このラットに、Surfactant CKを噴霧吸入させると、PaO_2は106mmHg(mean)から300mmHg以上になった(P<0.05)。また、コンプライアンスや胸部レントゲン所見も有意に好転した。以上の結果から、噴霧吸入でサーファクタントを投与しても、治療効果が得られると結論された。噴霧吸入法は、注入法に比べて、効果が若干劣るものの、安全性の面で勝れていると判定された。2.肺サーファクタントの脂質構成に関する検討 | KAKENHI-PROJECT-02454352 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02454352 |
タンパク質を構成要素とする超分子型自己集合系の構築と高次機能の創出 | 本研究では、タンパク質を機能ユニットとする超分子型自己集合系の構築により創発する新たな機能性を追求している。昨年度までの成果を発展させ、以下の項目について基礎検討を実施した。まず、キチンを固相基質とする酵素分解系の構築に取り組み、西洋ワサビペルオキシダーゼによる組換えキチナーゼの超分子化と、トランスグルタミナーゼによる超分子集合体へのキチン結合能の後付けを組み合わせることで、固相基質を効果的に分解可能な人工酵素系の構築が可能なことを明らかにした。この過程において、タンパク質を超分子化する新たな生体触媒の探索も実施し、ラッカーゼによる組換えタンパク質の部位特異的多量体化と異種タンパク質集合体の調製に成功し、その成果を学術論文2編に纏めた。次に、昨年度特許出願に至ったトランスグルタミナーゼによるタンパク質の部位特異的脂質修飾法について検討を進め、疎水性部の構造の違いにより細胞との相互作用が異なることを明らかにすると共に、培養細胞の表面を蛍光タンパク質で修飾することに成功した。これらの成果を学術論文2編に纏めた。最後に、分担研究者の若林博士との協働の下、ペプチド自己集合系の後付け修飾を試みた。即ち、酵素の基質となるペプチドに自己集合性を付与し、これが形成する超分子集合体の表面を蛍光タンパク質で修飾することに成功した。また、部分変性させた天然タンパク質と相互作用可能な糖鎖からなる自己集合型ナノ粒子の調製法を確立し、疎水性の高い薬物をガン細胞にデリバリーするキャリアとして利用可能なことを示した。以上の成果を学術論文2編に纏めた。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。初年度の検討においては、構成ユニットとなる各種タンパク質の調製と、その空間的な配置を可能にする足場分子との融合について検討した。前者において、タンパク質自己集合体を構成するタンパク質ユニット間での協奏効果の発現を志向したバイオマス分解酵素ユニットの調製と、実バイオマスの分解における協奏性の発現について検討した。さらに、連携研究者の九州大学農学研究院日下部教授の協力を仰ぎ、カイコによる組換えタンパク質生産システムを利用して、免疫系細胞の増殖に寄与する組換えサイトカインへの基質ペプチドタグの導入、タグ選択的な部位特異的小分子導入を達成した。後者については、分担研究者の若林博士の協力を仰ぎ、合成高分子への人工リガンド分子の導入と、組換えタンパク質に導入されたタグ選択的な部位特異的修飾を通した一次元タンパク質集合系の設計について検討した。対象タンパク質として抗体結合タンパク質と酵素の融合タンパク質を選択し、抗原の高感度検出系をモデルとして、機能性組換えタンパク質の集合化による検出感度の向上についての概念実証を完了した。また、基質認識分子ユニットとして核酸アプタマーを導入した人工糖質加水分解酵素の設計についても基礎検討を実施し、塩濃度に応じて活性がスイッチする人工セルラーゼの調製に成功した。以上の成果を、学術論文3編に纏めた。さらに、本研究の更なる発展に向け、タンパク質架橋酵素そのもののタンパク質工学的機能改変も遂行し、新規概念に基づく架橋活性の向上を達成し、特許出願に至った。本研究では、タンパク質を機能ユニットとする超分子型自己集合系の構築により創発する新たな機能性を追求することを目標としている。具体的には、酵素反応を用いた独自のタンパク質修飾技術を用いて、リガンド分子が部位特異的に導入された生体分子ユニットを設計し、生体分子間に特異的な相互作用を人工的に導入することで、分子ユニットが自発的に組み上がる機能性タンパク質自己集合系の構築を第一目標としている。初年度の検討においては、当初目標に掲げた全ての項目について基礎検討を実施し、今後の展開に資する各種材料の準備ができた。また、合成高分子との融合による新たな機能の創発について、概念実証試験を実施することができた。以上の成果から、初年度の研究については概ね順調に進展していると判断した。昨年度の実績に基づき、天然のセルロース系バイオマス分解酵素システムを範とした固相基質の分解について検討した。異なる酵素ユニットとして、エンド型キシラナーゼと分岐鎖を切断するアラビノフラノシダーゼを選択し、人工ヘミセルロソームの調製を試みた。その際、ペプチド-タンパク質間での選択的共有結合形成を促進するSpyCather-SpyTagシステムを採用することで、2種酵素のモル比を制御可能な新たな足場分子の設計に成功した。さらに本系の発展型として、抗体結合ドメインと酵素の組み合わせからなる固相免疫測定系を構築し、本足場分子の汎用性を確認した。また、分岐型ビオチンをリンカーとする酵素集合系の構築において、キチンを基質とする酵素システムからなる人工キチナーゼ系の構築にも取り組んだ。また、細胞表層に存在する膜タンパク質を認識可能なタンパク質集合系の構築を試みた。具体的には、ガン細胞膜上の特定のタンパク質を認識する核酸アプタマーを分子ユニットとして導入した人工バイオプローブ分子の設計を試み、ガン細胞を選択的に染色可能な核酸-蛍光タンパク質コンジュゲート型プローブ分子の調製に成功した。また、連携研究者の九州大学農学研究院日下部教授の協力を仰ぎ、カイコによる組換えタンパク質生産システムを利用して、シグナル増幅用酵素ユニットとして、組換え西洋ワサビペルオキシダーゼの発現とトランスグルタミナーゼ基質ペプチドタグの導入、タグ選択的なビオチン化によるシグナル増幅に成功した。さらに、水溶液中で自己集合化するタンパク質からなるナノ粒子の簡便調製法も確立した。以上の成果を、学術論文4編に纏めた。さらに、本研究の更なる発展に向け、トランスグルタミナーゼによるタンパク質の部位 | KAKENHI-PROJECT-16H04581 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H04581 |
タンパク質を構成要素とする超分子型自己集合系の構築と高次機能の創出 | 特異的脂質修飾系の確立も遂行し、簡便・迅速な脂質ラベル化を達成し、特許出願に至った。本研究では、タンパク質を機能ユニットとする超分子型自己集合系の構築により創発する新たな機能性を追求している。具体的には、酵素反応を用いた独自のタンパク質修飾技術に立脚し、生体由来界面において目的とする高次機能を発現する超分子型人工タンパク質集合系を創出することを目標として、基礎検討を遂行した。その結果、当初目標に掲げた全ての項目について基礎検討を実施し、それぞれの成果を学術論文4編に纏めることができ、1編の総説の依頼を受けた。異種タンパク質固定化用の新規足場分子、核酸アプタマーを認識部位とするプローブ分子、タンパク質と糖質からなるナノ粒子など、特徴的な成果物を創出できた。また、脂質分子とタンパク質の融合による新たな機能の創発に関して、一般的に困難とされる脂質修飾タンパク質の簡便調製法の確立に成功した。以上の結果から、本年度の研究についても順調に遂行できたものと判断した。本研究では、タンパク質を機能ユニットとする超分子型自己集合系の構築により創発する新たな機能性を追求している。昨年度までの成果を発展させ、以下の項目について基礎検討を実施した。まず、キチンを固相基質とする酵素分解系の構築に取り組み、西洋ワサビペルオキシダーゼによる組換えキチナーゼの超分子化と、トランスグルタミナーゼによる超分子集合体へのキチン結合能の後付けを組み合わせることで、固相基質を効果的に分解可能な人工酵素系の構築が可能なことを明らかにした。この過程において、タンパク質を超分子化する新たな生体触媒の探索も実施し、ラッカーゼによる組換えタンパク質の部位特異的多量体化と異種タンパク質集合体の調製に成功し、その成果を学術論文2編に纏めた。次に、昨年度特許出願に至ったトランスグルタミナーゼによるタンパク質の部位特異的脂質修飾法について検討を進め、疎水性部の構造の違いにより細胞との相互作用が異なることを明らかにすると共に、培養細胞の表面を蛍光タンパク質で修飾することに成功した。これらの成果を学術論文2編に纏めた。最後に、分担研究者の若林博士との協働の下、ペプチド自己集合系の後付け修飾を試みた。即ち、酵素の基質となるペプチドに自己集合性を付与し、これが形成する超分子集合体の表面を蛍光タンパク質で修飾することに成功した。また、部分変性させた天然タンパク質と相互作用可能な糖鎖からなる自己集合型ナノ粒子の調製法を確立し、疎水性の高い薬物をガン細胞にデリバリーするキャリアとして利用可能なことを示した。以上の成果を学術論文2編に纏めた。次年度は、主として以下の3点について基礎検討を実施する。1)高機能性タンパク質ユニットの調製:機能ユニットとなるタンパク質について、対象タンパク質のレパートリーを拡大する。 | KAKENHI-PROJECT-16H04581 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H04581 |
江戸時代における人口分析システムの開発 | 本研究では、17世紀末から19世紀中期までの期間に、原則として集落単位に毎年作成されていた「宗門改帳(しゅうもんあらためちょう)」と総称されていた古文書を原史料として、史料読解から人口学的指標算出に至る研究過程をできるかぎり自動化する人口分析システムの構築を目標としている。本年度は、人口分析システムを開発するための第1段階として、陸奥国会津郡小松川村(現在は、福島県南会津郡下郷村に所属する。)の「宗門家別人別改書上帳」(寛政4(1792)年から慶応2(1866)年)を入力史料として、「宗門改帳」古文書画像データベースを構築した。本データベースは、マイクロソフト社のACCESSをDBMSとして構築されている。ア)個人情報(データ数:7148)、イ)世帯情報(データ数:1724)、ウ)古文書画像情報(データ数:1724)、エ)史料書誌情報(データ数:75)の4つのテーブルから構成されている。利用者は、ア)、イ)の文字データとウ)の古文書画像データを、同一画面上で検索、表示することができる。したがって、データベース利用者が、文字データに誤読の疑いを抱いた場合、あるいは原史料の文字のレイアウト、筆跡、印形といった文字データとして登録することのできない画像情報を参照したい場合にも、データベース構築者の研究過程を再現、批判できる環境を整備することができた。さらに、史料読解から文字データ入力までの作業過程の効率化を図るために、年齢を表記した漢数字を対象として、古文書文字の自動認識に関する実験を開始した。3層のニューラルネットのバックプロパゲーション法を用いて、16種類の古文書文字(一、壱、二、弐、三、参、四、五、六、七、八、九、十、拾、廿、ツ)を学習させ、「宗門改帳」古文書画像データベースから152文字を採字して、判別実験を行った。認識率は、約34%であった。本研究では、17世紀末から19世紀中期までの期間に、原則として集落単位に毎年作成されていた「宗門改帳(しゅうもんあらためちょう)」と総称されていた古文書を原史料として、史料読解から人口学的指標算出に至る研究過程をできるかぎり自動化する人口分析システムの構築を目標としている。本年度は、人口分析システムを開発するための第1段階として、陸奥国会津郡小松川村(現在は、福島県南会津郡下郷村に所属する。)の「宗門家別人別改書上帳」(寛政4(1792)年から慶応2(1866)年)を入力史料として、「宗門改帳」古文書画像データベースを構築した。本データベースは、マイクロソフト社のACCESSをDBMSとして構築されている。ア)個人情報(データ数:7148)、イ)世帯情報(データ数:1724)、ウ)古文書画像情報(データ数:1724)、エ)史料書誌情報(データ数:75)の4つのテーブルから構成されている。利用者は、ア)、イ)の文字データとウ)の古文書画像データを、同一画面上で検索、表示することができる。したがって、データベース利用者が、文字データに誤読の疑いを抱いた場合、あるいは原史料の文字のレイアウト、筆跡、印形といった文字データとして登録することのできない画像情報を参照したい場合にも、データベース構築者の研究過程を再現、批判できる環境を整備することができた。さらに、史料読解から文字データ入力までの作業過程の効率化を図るために、年齢を表記した漢数字を対象として、古文書文字の自動認識に関する実験を開始した。3層のニューラルネットのバックプロパゲーション法を用いて、16種類の古文書文字(一、壱、二、弐、三、参、四、五、六、七、八、九、十、拾、廿、ツ)を学習させ、「宗門改帳」古文書画像データベースから152文字を採字して、判別実験を行った。認識率は、約34%であった。 | KAKENHI-PROJECT-08207231 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08207231 |
非平衡性および渦度の効果を取り入れたSGSモデルの開発と検証 | 本研究の目標は、渦粘性に非平衡性と渦度の効果を取り入れてスマゴリンスキーモデルや一方程式モデルなどのSGSモデルを改良し、一様等方性乱流、乱流混合層、チャネル乱流の計算を行いモデルの検証を行うことである。今年度は通常のスマゴリンスキーモデルを用いて乱流混合層の計算を行い、平均速度や乱流エネルギー、レイノルズ応力などの統計量の空間分布を求めた。また乱流混合層の計算コードを元にチャネル乱流のコードを作成した。本研究で扱う乱流混合層は時間発展型であるので、計算結果は初期の速度場に依存する。初期の速度場を平均速度だけでなく乱流エネルギーやそのスペクトルを指定することによって、実験で見られるような混合層の発展速度や乱流統計量の自己相似的な分布を得ることができた。また理論的に導出した非平衡効果の表式はそのままでは不安定であることがわかり、パデ近似を導入することによりモデルの修正を行った。さらに、渦度の効果に関してはスマゴリンスキー型の0方程式モデルよりも一方程式モデルがよいことが理論的に示唆された。そこで一方程式モデルを使って大気境界層乱流の計算を行い、0方程式モデルと一方程式モデルの比較を行った。大気境界層のように浮力の効果が重要な乱流場では一方程式モデルが適切であることが示された。今後は改良したスマゴリンスキーモデルや一方程式モデルを用いて乱流混合層、チャネル乱流の計算を行い、乱流統計量を求めて、今年度に得られた結果と比較する予定である。本研究の目標は、渦粘性に非平衡性と渦度の効果を取り入れてスマゴリンスキーモデルや一方程式モデルなどのSGSモデルを改良し、一様等方性乱流、乱流混合層、チャネル乱流の計算を行いモデルの検証を行うことである。今年度は通常のスマゴリンスキーモデルを用いて乱流混合層の計算を行い、平均速度や乱流エネルギー、レイノルズ応力などの統計量の空間分布を求めた。また乱流混合層の計算コードを元にチャネル乱流のコードを作成した。本研究で扱う乱流混合層は時間発展型であるので、計算結果は初期の速度場に依存する。初期の速度場を平均速度だけでなく乱流エネルギーやそのスペクトルを指定することによって、実験で見られるような混合層の発展速度や乱流統計量の自己相似的な分布を得ることができた。また理論的に導出した非平衡効果の表式はそのままでは不安定であることがわかり、パデ近似を導入することによりモデルの修正を行った。さらに、渦度の効果に関してはスマゴリンスキー型の0方程式モデルよりも一方程式モデルがよいことが理論的に示唆された。そこで一方程式モデルを使って大気境界層乱流の計算を行い、0方程式モデルと一方程式モデルの比較を行った。大気境界層のように浮力の効果が重要な乱流場では一方程式モデルが適切であることが示された。今後は改良したスマゴリンスキーモデルや一方程式モデルを用いて乱流混合層、チャネル乱流の計算を行い、乱流統計量を求めて、今年度に得られた結果と比較する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-06231204 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06231204 |
離島の子どもの身体観・健康観・医療観と医療環境とのかかわりに関する人類学的研究 | 北海道利尻島と沖縄県波照間島では、本土の医療を好んで受診するという「離島医療離れ」が見られる。これら離島社会における子どもの身体観・健康観・医療観は親世代のそれとは大きく変わらないが、祖父母世代と親世代との間には明らかな違いが見られた。その連続性/不連続性が生じる要因には、親を含む移住者の増加による価値観の多元化や、伝統儀礼の衰退・復興等の社会構造の変化がある。「離島医療離れ」が子どもの身体と健康にもたらしている現象には、都市部の医療に依存するがゆえに起こる受診の遅延や抑制、それにともなって生じている子どもの身体状況の格差がある。本年度は研究期間の2年目となり、申請時の研究目的と実施計画にそって、北海道利尻島と沖縄県波照間島における子どもの健康状態、子どもと親世代の身体観・健康観・医療観に関する調査を行なった。具体的には、(1)利尻島と波照間島の学童期の子ども(小学生児童)の健康状態を把握するために、小学校の養護教諭にインタビューを行い、保健室を利用する児童の主訴や学校保健において日頃気をつけている事を聞き取った。(2)両島の小学校に通う児童のうち、同意を得られた児童とその保護者を対象に身体観・健康観・医療観に関するインタビュー調査を行った。(3)小学生児童が通う学校の保健体育や総合学習の時間の参与観察を行なった。(3)利尻島では、小学生児童とその保護者を対象としてアンケート調査を実施した。調査項目は、生活環境、家族背景(既往歴含む)、予防接種、課外活動、口腔保健、食、遊び、運動及び心の健康の9項目である。(4)学生児童が通う学校の保健体育や総合学習の時間の参与観察を行なった。(5)島の伝統的な医療のあり方を理解するために、両島の高齢者に昔の病気予防や病気治療に関するインタビューを行った。(6)離島における子どもの健康と医療に関する文献のレビューを行った。レビューでは、Meta-ethnographyという手法を用いて、PsycINFO, PubMedにおいて2007年以後の文献から、「こども」「認識」「身体」「健康」「病気」「医療」の語句をもとに、文献検索を行なった。離島における医療資源の探求及び離島医療のあり方についての検討を次のとおり行なった。第一に、離島社会の医療環境の現地調査を行ない、利尻島と波照間島それぞれの医療施設の概要と各施設で働く医師、看護師、保健師の人数、勤務体制及び勤続年数について施設の責任者にインタビューを行った。同意が得られた医師、看護師、助産師、保健師にもこれまでの経歴や子どもの健康と離島医療に対する考えを聞いた。第二に、島民の健康維持や病気治療に現代医療とは別の立場から何らかの福祉的な役割を果たしているとされる職能者(祈祷師、薬草師、接骨師など)の活動の有無を調査した。第三に、島民の日常的な保健行動、家庭配置薬や売薬、健康器具や健康食品の利用について調べた。この3つの調査の結果をふまえて、何が各離島の医療資源となり得るかを考察した結果、両島において、それは現代医療に限定されていることが明らかになった。平成2324年度に行った子どもと親世代の身体観・健康観・医療観の調査も継続した。養護教諭とのインタビューも実施し、学校生活における児童のようすを把握した。平成2324年度の調査結果、および今年度の調査で明らかになったことをふまえて、地域の医療資源を活用しながら、いかなる医療環境を整えることが可能かを検討した。成果は日本とアメリカにおいて、学会の口頭発表を通じて公表した。平成26年度以降は、日本の離島で生活する子どもたちが、自分や他者の身体・健康・医療に関する知識と行動パターンを獲得していく過程を、子どもを取り巻く社会・文化的環境や、離島の医療環境との相関において明らかにすることにしている。北海道利尻島と沖縄県波照間島では、本土の医療を好んで受診するという「離島医療離れ」が見られる。これら離島社会における子どもの身体観・健康観・医療観は親世代のそれとは大きく変わらないが、祖父母世代と親世代との間には明らかな違いが見られた。その連続性/不連続性が生じる要因には、親を含む移住者の増加による価値観の多元化や、伝統儀礼の衰退・復興等の社会構造の変化がある。「離島医療離れ」が子どもの身体と健康にもたらしている現象には、都市部の医療に依存するがゆえに起こる受診の遅延や抑制、それにともなって生じている子どもの身体状況の格差がある。本研究では、「離島医療離れ」が生じている離島社会における子どもの身体観・健康観・医療観と親世代のそれとの比較を通じて、その連続性/不連続性とそうした現象が生じる要因、及び、「離島医療離れ」が子どもの身体と健康にもたらしている現象を明らかにする。本年度は初年度であるため、平成23年6月に札幌医科大学倫理委員会に研究実施計画の審査申請を行い、平成23年10月に承認を受けた。平成23年11月に研究代表者、研究連携者、研究協力者が集まり、研究内容、研究計画、方法論について事前の打ち合わせを行った。平成24年2月に北海道利尻島と沖縄県波照間島を調査地として、各島の社会の実態や文化の様相に関して、文献調査とフィールドワークを行った。具体的には、(1)各島における家族・親族関係、生態と環境、生業と経済活動、土着の信仰と新興宗教の影響、禁忌や儀礼(誕生儀礼・成人儀礼・死者儀礼)、伝統医療や民間医療について、島民に対するインタビューや島の歴史を綴った書物の解読などによって調査した。 | KAKENHI-PROJECT-23601016 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23601016 |
離島の子どもの身体観・健康観・医療観と医療環境とのかかわりに関する人類学的研究 | また、(2)「危険な場所」「食べてはいけないもの」「触れてはいけない動植物」などの禁忌、病気やケガの対処法、島の医療や医療者について高齢者に聞き取りし、(3)両島の社会と文化に関する文献を収集した。本年度の調査内容はほぼ計画通り行われ、順調に進展している。しかし、前年度同様、各島における島民や子どもたちの身体観、健康観、医療観の諸相を具体的に明らかにするところまでは達成できなかった。また、フォトボイスは参与観察、インタビュー、アンケート調査に予想以上の時間がかかり、実施できなかった。各島の学童期の子どもと親世代の身体観・健康観・医療観にかかわる調査結果を比較考察し、さらに2島の調査結果を対比することに関しては、まだ十分に達成できていないが、国立民族学博物館共同研究において研究代表者と研究分担者の2名が調査結果の一部を発表し、それぞれの知見を比較する機会を得た。初年度の調査内容はほぼ計画通り行われ、順調に進展している。しかし、2島における島民の身体観や健康観や医療観の諸相を具体的に明らかにするところまでは達成できなかった。その主な理由は、フィールドワークという方法論が医科系大学ではまれであり、倫理委員会における倫理的手続きの合意に時間を要し、承認が遅れ、調査の開始が遅れたためである。次年度は最終年度である。そのため、離島社会の医療環境の調査を行い、これまでの調査結果を離島における小児医療のあり方の検討につなげる。具体的には、利尻島と波照間島それぞれの医療施設の概要と各施設で働く医師、看護師、保健師の人数、勤務体制及び勤続年数について施設の責任者にインタビューを行う。島民の健康維持や病気治療に現代医療とは別の立場から役割を果たしているとされる職能者(祈祷師、薬草師、接骨師など)を対象にインタビューを行い、子どもの健康と離島医療に対する考えを聞く。各島の社会の実態や文化の様相に関しても継続して調査する。また、フォトボイスを含む、こどもを中心とする研究手法を調査の方法論に加える。これらの調査をもとに明らかになったことをふまえて、島の子どもの視点から、いかなる医療環境を整えることが可能かを検討する。波照間島では5月に小学校教職員と保護者に対する説明会を行い、調査の同意を得て、小学校における参与観察と児童に対するインタビュー調査を開始する。利尻島では4月に小学校の学校長にこれまでの調査の結果を報告し、今年度の調査日程を詰め、8月に小学生児童、保護者、その他の島民に対するインタビュー調査ができるように事前準備を進める。利尻島と波照間島における医療環境の調査のための旅費、謝金、その他諸経費。文献調査のための文献購入費・コピー費。専門家インタビュー対象者に対する謝金。データ管理のための物品費・消耗品、メンバー間の打ち合わせ会議のための旅費などを予定している。次年度使用額について、波照間島では今年度予定していたが実施できなかった戸別訪問時に使用するアンケート調査、利尻島では調査が行えていない3校におけるアンケート調査およびインタビュー調査に使用する予定である。さらに研究協力者の西谷氏の協力を得て、高齢者に対するインタビューも次年度に繰り越して進めていく。倫理委員会における倫理的手続きの合意に時間を要し、承認が遅れ、調査の開始が遅れたため、残額が生じた。 | KAKENHI-PROJECT-23601016 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23601016 |
要介護高齢者家族に対する支援のアウトカム評価に関する研究 | 要介護高齢者家族に対する支援のアウトカム評価への活用を目指して、在宅介護しながらの生活安定状況を測定する尺度の開発を行った。グラウンデッド・セオリー法を用いた要介護高齢者を在宅介護する家族の生活安定構造の理論化、それを前提とした尺度原案作成、内容妥当性・表面妥当性の検討による暫定尺度の作成を経て、本調査による本尺度の再構成および信頼性・妥当性の検討を行った。その結果、5因子32項目から成る要介護高齢者を在宅介護しながらの家族生活の安定状況を掌握する本尺度が再構成され、因子妥当性、臨床的妥当性、内的整合性による信頼性が以下の通り確認された。すなわち、本調査による探索的因子分析で抽出された5因子は、先だって明らかにした介護家族の生活安定講造に関する具体理論から導き出された仮の6下位尺度とは様相を異とするものであった。しかし、5因子はその内容から具体理論の柱であった<家族内ニーズ競合状態>と<生活のルチン化状態>と対応関係にあることが推察され、本尺度の一定程度の因子妥当性は確認された。また、生活安定度得点および下位尺度得点と関連する要因について検討した結果、それぞれの要因による生活安定度得点と下位尺度得点の結果は既存の知見や在宅介護の現状と対応させて解釈可能であり、本尺度の臨床妥当性は確保されているものと考えられた。各下位尺度のクロンバックα係数はすべて0.7以上であり本尺度の内的整合性が確認された。介護生活習熟度、介護家族の絆度、介護家族の協力体制、介護サービスの使いこなし度、介護生活ゆとり度という5つの下位尺度から構成される本尺度は、要介護高齢者を在宅介護する家族の状況をより具体的に掌握でき、さらに各下位尺度得点のあり方から、各家族への支援の方向性を見いだせるという点で意義を持つ。今回本尺度の因子妥当性、臨床的妥当性が確認されたが、より多角的な妥当性を備えた尺度への洗練が今後の課題である。要介護高齢者家族に対する支援のアウトカム評価への活用を目指して、在宅介護しながらの生活安定状況を測定する尺度の開発を行った。グラウンデッド・セオリー法を用いた要介護高齢者を在宅介護する家族の生活安定構造の理論化、それを前提とした尺度原案作成、内容妥当性・表面妥当性の検討による暫定尺度の作成を経て、本調査による本尺度の再構成および信頼性・妥当性の検討を行った。その結果、5因子32項目から成る要介護高齢者を在宅介護しながらの家族生活の安定状況を掌握する本尺度が再構成され、因子妥当性、臨床的妥当性、内的整合性による信頼性が以下の通り確認された。すなわち、本調査による探索的因子分析で抽出された5因子は、先だって明らかにした介護家族の生活安定講造に関する具体理論から導き出された仮の6下位尺度とは様相を異とするものであった。しかし、5因子はその内容から具体理論の柱であった<家族内ニーズ競合状態>と<生活のルチン化状態>と対応関係にあることが推察され、本尺度の一定程度の因子妥当性は確認された。また、生活安定度得点および下位尺度得点と関連する要因について検討した結果、それぞれの要因による生活安定度得点と下位尺度得点の結果は既存の知見や在宅介護の現状と対応させて解釈可能であり、本尺度の臨床妥当性は確保されているものと考えられた。各下位尺度のクロンバックα係数はすべて0.7以上であり本尺度の内的整合性が確認された。介護生活習熟度、介護家族の絆度、介護家族の協力体制、介護サービスの使いこなし度、介護生活ゆとり度という5つの下位尺度から構成される本尺度は、要介護高齢者を在宅介護する家族の状況をより具体的に掌握でき、さらに各下位尺度得点のあり方から、各家族への支援の方向性を見いだせるという点で意義を持つ。今回本尺度の因子妥当性、臨床的妥当性が確認されたが、より多角的な妥当性を備えた尺度への洗練が今後の課題である。1.研究目的本研究は3年間の研究期間に一連の行程を経て、要介護高齢者家族に対する支援のアウトカムを評価するために、在宅介護しながらの家族生活の安定状況を測定する尺度の開発を目的とする。その内、本年度は要介護高齢者を在宅介護しながらの家族生活の安定構造を質的帰納的に明らかにし、尺度原案作成のための基礎資料を得ることを目的とした。2.研究方法社会学領域で開発された研究方法のひとつで、今日看護学領域でも多く用いられているグラウンデッド・セオリー法による、質的帰納的研究デザインをとった。グラウンデッド・セオリー法は、質的記述的データから、特定領域における現象の構造化を目指す研究手法であり、この手法を用いることにより、要介護高齢者を在宅介護しながらの家族生活の安定構造を明確化し、尺度原案作成のための基礎資料を得ることを目指す。3.研究の経緯(10月26日現在)要介護高齢者が在宅療養する家族を、1大学病院在宅医療支援・推進部より紹介を受けた。対象となった家族は合計8家族であった。各家族より、家族全体の状況が見渡せている成員1名以上に半構成的面接を行い、その内容をデータとした。また、8家族に行った面接中、4家族については家庭訪問にて行い、在宅介護状況を参加観察した。この参加観察の内容についてもフィールドノートに記載し、データとした。4.今後の方向性 | KAKENHI-PROJECT-16592226 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16592226 |
要介護高齢者家族に対する支援のアウトカム評価に関する研究 | 平成17年4月より追加的にデータ収集を行うとともに、分析を進め、要介護高齢者を在宅介護しながらの家族生活の安定構造を明らかにする予定である。また、その結果と文献検討により、演繹的・帰納的に尺度原案の作成に取りかかる。I.研究目的要介護高齢者家族に対する支援のアウトカムを評価する指標開発のための基礎的研究として、要介護高齢者を在宅介護している家族の生活安定構造を質的帰納的に明らかにすることを目的とした。II.研究方法1.研究参加家族と情報提供者要介護高齢者を在宅介護する合計18家族を研究参加家族とし、各参加家族の中で家族全体の状況が見渡せている成員1名以上を情報提供者とした。2.データ収集および分析方法平成16年5月下旬平成16年11月、平成17年9月平成18年2月までの約12ヶ月間に、各家族の情報提供者に対し、研究参加家族の自宅または医療機関にて1数回の半構成的面接を行った。また自宅で面接を行った5家族の家庭内での介護状況を参加観察した。得られたデータをグラウンデッド・セオリー法で定式化された方法に準じて分析した。3.倫理的配慮本研究は倫理委員会の承認を経て行った。家族には本研究の目的および方法について書面をもって説明するとともに、研究への参加は自由意志であること、得られた情報はすべて匿名として研究の目的以外には使用しないこと、研究に関する書類やテープ類は厳重に管理し研究後は消却処分すること、研究結果は情報提供者の希望により郵送にて開示することを保証した上で家族代表者と同意書を交わした。III.結果考察データ分析の結果、要介護高齢者を在宅介護している家族生活の安定は<家族内ニーズ競合の最小化>と<生活のルーチン化>という2つの軸を中心として構造化された。家族生活は<家族内ニーズの競合>が最も小さく、<生活のルーチン化>が最も進んだ状態が、最も安定した状態であった。家族生活の安定状態は、「高齢者の体調と身体機能の変化」と、その変化に伴って生じる「家族構成の変化」、「家族員の体調変化」、および「外部サービスの利用」を契機として不安定状態へと傾くが、家族の「リスク・マネジメント・パターンの取り込み」や「外部サービスの家族文化への統合化」、「家族役割分担の仕切り直し」により安定状態を回復することが明らかとなった。I.研究目的本年度の研究は、要介護高齢者家族に対する支援のアウトカムを評価する指標開発のための第2段階に相当する。その研究目的は、第1段階として平成1617年度に行った研究結果と文献検討から、在宅介護を継続しながらの家族生活安定尺度の原案を作成し、洗練することである。II.研究方法および結果1)原案作成平成1617年度の研究結果と文献検討に基づいて、演繹的、帰納的に在宅介護を継続しながらの家族生活安定の下位尺度とそれに含まれる質問項目を抽出し、合計76項目から成る尺度原案を作成した。2)内的妥当性および表面妥当性の検討(1)方法:老年看護、在宅看護、あるいは家族看護に精通した研究者および実践家、合計13名より、尺度全体と、各項目が概念と一致しているか、尺度の明瞭性について評価を得た。(2)結果:上記の評価を参考に尺度原案に修正を加えた。3)表面妥当性の検討および下位尺度の反応分布の検討と項目分析(1)方法:首都圏の訪問看護ステーション9カ所に対して、24家族への調査票配布を依頼した。家族には、調査票への回答と、尺度の答えやすさ、答えにくさ、明瞭性について評価を依頼した。 | KAKENHI-PROJECT-16592226 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16592226 |
弾性歪,界面歪拘束系におけるエピタキシャル成長メカニズムの理論的,実験的解析 | Sp^3混成軌道を有しボンドエネルギ-が12eVと大きなZnOの界面での拘束を把握するために,まずエピタキシ-の影響のないガラス基板上で薄膜自身の配向性(SelfーTexture)を評価した。界面での拘束がないために配向する面(基板に対して平行な面)は表面自由エネルギ-の小さい方が有利である,計算によって(0001)に対して0.099ev/A^2,(11_20)に対して0.123eV/A^2,(10_10)に対して0.209eV/A^2となり,平衡状態でエピタキシ-の影響がなければ(0001)が優先配当することになる。実際平衡状態で(0001)が,非平衡状態を制御することによってSelfーTextureを(0001),(11_20),(10_10)と変化させることに成功した。これらの結果をもとに,エピタキシャル方位が[0001]であるが,ミスフィットが18%と大きな(0001)サフアイア基板上でガラス上の(0001)配向膜を得るのと同じ条件で良好なエピタキシャル膜が得られたが,界面の拘束力を成長層の方位分布で緩和する成長モ-ドと格子定数分布で緩和する成長モ-ドの2種類あることを見い出した。一方,(0001)以外の方位を有するZnOエピタキシャル膜を得るにはガラス基板上で(0001)以外の配向を得る条件であることを見い出し,新たに(100)MgO上で(10_10)エピタキシャル膜を得ることに成功した。また,ZnOは(0001)以外の単結晶膜では弾性定数の面内異方性によって成長中の応力緩和機構に異方性が生ずる。これらの界面拘束の異方性を応力の測定によって評価した。結合に方向性がなく強いイオン結合性を有するLiNbO_3は基板からの拘束力を受けやすいためにZnOなどと比べてエピタキシャル成長させることは比較的容易であるが,その方位を変化させるのは容易でない。今回,界面エネルギ-とアニオン/カチオン比を考慮することによって,方位制御を可能にした。Sp^3混成軌道を有しボンドエネルギ-が12eVと大きなZnOの界面での拘束を把握するために,まずエピタキシ-の影響のないガラス基板上で薄膜自身の配向性(SelfーTexture)を評価した。界面での拘束がないために配向する面(基板に対して平行な面)は表面自由エネルギ-の小さい方が有利である,計算によって(0001)に対して0.099ev/A^2,(11_20)に対して0.123eV/A^2,(10_10)に対して0.209eV/A^2となり,平衡状態でエピタキシ-の影響がなければ(0001)が優先配当することになる。実際平衡状態で(0001)が,非平衡状態を制御することによってSelfーTextureを(0001),(11_20),(10_10)と変化させることに成功した。これらの結果をもとに,エピタキシャル方位が[0001]であるが,ミスフィットが18%と大きな(0001)サフアイア基板上でガラス上の(0001)配向膜を得るのと同じ条件で良好なエピタキシャル膜が得られたが,界面の拘束力を成長層の方位分布で緩和する成長モ-ドと格子定数分布で緩和する成長モ-ドの2種類あることを見い出した。一方,(0001)以外の方位を有するZnOエピタキシャル膜を得るにはガラス基板上で(0001)以外の配向を得る条件であることを見い出し,新たに(100)MgO上で(10_10)エピタキシャル膜を得ることに成功した。また,ZnOは(0001)以外の単結晶膜では弾性定数の面内異方性によって成長中の応力緩和機構に異方性が生ずる。これらの界面拘束の異方性を応力の測定によって評価した。結合に方向性がなく強いイオン結合性を有するLiNbO_3は基板からの拘束力を受けやすいためにZnOなどと比べてエピタキシャル成長させることは比較的容易であるが,その方位を変化させるのは容易でない。今回,界面エネルギ-とアニオン/カチオン比を考慮することによって,方位制御を可能にした。 | KAKENHI-PROJECT-03243226 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03243226 |
新規不斉触媒を用いた水中での触媒的不斉合成反応の開発 | エノラートを用いる炭素-炭素結合生成反応は有機化学の最も基本的な反応であり、これまでに触媒的反応を含め数多く報告されている。しかしながら、一般には求核剤の活性化のためには等量の金属を用いることが多く、系中において触媒的に求核剤を活性化させる、いわゆる直接的求核付加反応の報告例は少ない。それら報告例においても、カルボニル基のα位に電子吸引性基が置換した化合物がもっぱら用いられており、基質一般性に課題が残されている。当研究室ではα位にアルキル基が置換したスルホニルイミデートを求核剤として用いると触媒量の塩基(三級アミン)により系中にてスルホニルイミデートが活性化され、イミンへの付加反応が円滑に進行することを報告していた。反応生成物のスルホニリルイミデートは、水和反応や還元反応により容易に対応するエステルやアルデヒドへと変換することができるため、有用性は高い。本研究では、スルホニルイミデートのさらなる可能性を探求すべく、金属塩基を触媒として用い反応を検討した。金属塩基を用いる利点としては、金属の持つ特異なルイス酸性により反応が促進されることが期待できること、不斉反応へと展開する際種々のリガンドを簡便にスクリーニングできること等が挙げられる。種々の検討の結果、アルカリ土類金属のアルコキシド塩を用いると、反応が円滑に進行し、目的付加体を高収率で与えることを見いだした。さらに、溶媒等の反応条件を最適化し、スルホニルイミデートの構造を修飾することにより、これまで得られなかった高いsyn選択性が発現することを見いだし、本反応の一般性をさらに広げることが出来た。またキラルリガンドを用いることで触媒的不斉反応への展開も行い、最高57%鏡像体過剰率で目的物を得ることができた。エノラートを用いる炭素-炭素結合生成反応は有機化学の最も基本的な反応であり、これまでに触媒的反応を含め数多く報告されている。しかしながら、一般には求核剤の活性化のためには等量の金属を用いることが多く、系中において触媒的に求核剤を活性化させる、いわゆる直接的求核付加反応の報告例は少ない。それら報告例においても、カルボニル基のα位に電子吸引性基が置換した化合物がもっぱら用いられており、基質一般性に課題が残されている。当研究室ではα位にアルキル基が置換したスルポニルイミデートを求核剤として用いると触媒量の塩基(三級アミン)により系中にてスルホニルイミデートが活性化され、イミンへの付加反応が円滑に進行することを報告していた。反応生成物のスルホニリルイミデートは、水和反応や還元反応により容易に対応するエステルやアルデヒドへと変換することができるため、有用性は高い。本研究では、スルポニルイミデートのさらなる可能性を探求すべく、金属塩基を触媒として用い反応を検討した。金属塩基を用いる利点としては、金属の持つ特異なルイス酸性により反応が促進されることが期待できること、不斉反応へと展開する際種々のリガンドを簡便にスクリーニングできること等が挙げられる。種々の検討の結果、アルカリ土類金属のアルコキシド塩を用いると、反応が円滑に進行し、目的付加体を高収率で与えることを見いだした。さらに、溶媒等の反応条件を最適化し、スルホニルイミデートの構造を修飾することにより、これまで得られなかった高いsyn選択性が発現することを見いだし、本反応の一般性をさらに広げることが出来た。エノラートを用いる炭素-炭素結合生成反応は有機化学の最も基本的な反応であり、これまでに触媒的反応を含め数多く報告されている。しかしながら、一般には求核剤の活性化のためには等量の金属を用いることが多く、系中において触媒的に求核剤を活性化させる、いわゆる直接的求核付加反応の報告例は少ない。それら報告例においても、カルボニル基のα位に電子吸引性基が置換した化合物がもっぱら用いられており、基質一般性に課題が残されている。当研究室ではα位にアルキル基が置換したスルホニルイミデートを求核剤として用いると触媒量の塩基(三級アミン)により系中にてスルホニルイミデートが活性化され、イミンへの付加反応が円滑に進行することを報告していた。反応生成物のスルホニリルイミデートは、水和反応や還元反応により容易に対応するエステルやアルデヒドへと変換することができるため、有用性は高い。本研究では、スルホニルイミデートのさらなる可能性を探求すべく、金属塩基を触媒として用い反応を検討した。金属塩基を用いる利点としては、金属の持つ特異なルイス酸性により反応が促進されることが期待できること、不斉反応へと展開する際種々のリガンドを簡便にスクリーニングできること等が挙げられる。種々の検討の結果、アルカリ土類金属のアルコキシド塩を用いると、反応が円滑に進行し、目的付加体を高収率で与えることを見いだした。さらに、溶媒等の反応条件を最適化し、スルホニルイミデートの構造を修飾することにより、これまで得られなかった高いsyn選択性が発現することを見いだし、本反応の一般性をさらに広げることが出来た。またキラルリガンドを用いることで触媒的不斉反応への展開も行い、最高57%鏡像体過剰率で目的物を得ることができた。 | KAKENHI-PROJECT-07F07190 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07F07190 |
電気二重層トランジスタによる銅酸化物の電界誘起超伝導転移 | 本研究は、電界効果トランジスタ(FET)の一種である電気二重層トランジスタ(EDLT)を用いて、銅酸化物の表面に超伝導転移を可能にするほど高濃度に電荷キャリアを静電的にドープすることを目的としている。電気二重層トランジスタは電界効果トランジスタで用いられる固体絶縁層の代わりに電解液を用いてゲート電圧を印加する。すると、電解液と試料の界面にイオンの層と、それによって誘起された反対符号の電荷の層が生じる。これは電気二重層とよばれ、電気二重層トランジスタでは、この現象を利用してキャリアをドープする。前年度の研究で、電解液としてイオン液体を用いることが有効であることが分かったが、さらにキャリア濃度を増加させる必要があることも明らかにされた。そこで、今年度はイオン液体を最適化するために、様々なイオン液体の電気二重層静電容量を電気化学インピーダンス法により測定し、また、分子動力学計算によるシミュレーションも行い、これらを合わせて解析を行った。その結果、イオン液体の分子構造と電気二重層静電容量の間に系統的な相関があることが実験的に明らかにされ、シミュレーションによってもその傾向が再現された。これにより得られる知見は、銅酸化物の電気二重層トランジスタにおける高濃度キャリア蓄積のみならず、電気二重層による蓄電デバイスである、電気二重層キャパシタ(ウルトラキャパシタ、スーパーキャパシタとも呼ばれる)の高性能化の指針にもなる重要な成果である。銅酸化物高温超伝導体の母物質である、ネオジウム銅酸化物(Nd_2CuO_4)の薄膜を活性層に用いて電気二重層トランジスタを作製し、キャリア(電子)密度の制御を試みた。電気二重層トランジスタは、電界効果トランジスタの一種で、電解液を通してゲート電圧を印加する。電解液としては、これまで高分子電解液を用いてきたが、本研究でイオン液体を用いることにより、より高密度にキャリアを蓄積できることが分かった。そこで、イオン液体を用いてデバイスを作製したところ、n型の電界効果トランジスタ動作がみられ、Kd_2CuO_4の抵抗を連続的かつ可逆的に制御することに成功した。ゲート電圧を印加した試料の抵抗の温度依存性を測定したところ、ゲート電圧によりキャリアを蓄積すると、抵抗の温度依存性の減少が見られたが、絶縁体から金属への電子相転移は見られなかった。キャリア密度を見積もるためにホール効果測定を行ったところ、キャリアが最表面のCuO_21層に集中していると仮定すると、金属転移するのに十分なキャリア密度が蓄積されていることが分かった。実際には、試料表面から数層にキャリアが分布していると考えられるため、さらなるキャリア密度の増加が必要である。しかし、キャリア密度増加のために、より大きなゲート電圧を印加すると試料表面に不可逆的な電気化学反応を生じてしまうことが明らかとなった。以上、今年度の研究により、ネオジウム銅酸化物の電気二重層トランジスタの動作に成功し、蓄積されるキャリア密度を測定することができた。これにより、試料表面に高濃度にキャリアを蓄積できる電気二重層トランジスタの手法が銅酸化物へも適用できることが示された。また、金属・超伝導への電子相転移のためには試料表面の電気化学反応の抑制が必要であることも明らかとなった。本研究は、電界効果トランジスタ(FET)の一種である電気二重層トランジスタ(EDLT)を用いて、銅酸化物の表面に超伝導転移を可能にするほど高濃度に電荷キャリアを静電的にドープすることを目的としている。電気二重層トランジスタは電界効果トランジスタで用いられる固体絶縁層の代わりに電解液を用いてゲート電圧を印加する。すると、電解液と試料の界面にイオンの層と、それによって誘起された反対符号の電荷の層が生じる。これは電気二重層とよばれ、電気二重層トランジスタでは、この現象を利用してキャリアをドープする。前年度の研究で、電解液としてイオン液体を用いることが有効であることが分かったが、さらにキャリア濃度を増加させる必要があることも明らかにされた。そこで、今年度はイオン液体を最適化するために、様々なイオン液体の電気二重層静電容量を電気化学インピーダンス法により測定し、また、分子動力学計算によるシミュレーションも行い、これらを合わせて解析を行った。その結果、イオン液体の分子構造と電気二重層静電容量の間に系統的な相関があることが実験的に明らかにされ、シミュレーションによってもその傾向が再現された。これにより得られる知見は、銅酸化物の電気二重層トランジスタにおける高濃度キャリア蓄積のみならず、電気二重層による蓄電デバイスである、電気二重層キャパシタ(ウルトラキャパシタ、スーパーキャパシタとも呼ばれる)の高性能化の指針にもなる重要な成果である。 | KAKENHI-PROJECT-21654046 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21654046 |
ラン藻による炭酸ガスからの抗酸化物の生産とその作用の相乗効果の検討 | 本研究は地球温暖化対策技術の要素技術の一つとして注目されている微細藻類の光合成能の活用方策に対して、そのCO_2固定化後の収穫した藻の有効利用法を研究するために、ラン藻からの抗酸化物質の生産に対する基礎的検討を目的とした。まず、代表者らの既往の研究成果と文献調査によりカルチャーコレクション等から入手可能な約50種のラン藻株の中から抗酸化物質の探索源としてAnabaena variabilis等4種のラン藻を選んだ。光合成用バイオリアクターを用いてCO_2のみを炭酸源とした培養を行い、藻細胞を増殖させた。各藻細胞から種々の溶媒による粗抽出物を得て、米国NIHの方法によるガン細胞に対する細胞増殖抑制効果を検定した。その結果、いずれの藻からもクロロホルム抽出物が最も活性が高いことが確認できた。そこで、そこで、さらにそれらの粗抽出物をHPLCによって分画を行い、各画分について活性の検討を行い、最も活性の発現に寄与していると考えられる成分の構造の同定を試みた(論文準備中)。本研究では、最終的に完全な1成分まで活性化合物を探求するのではなく、混合物のまま抗酸化物質として利用したいと考えているので、活性候補化合物が2種共存する場合の相乗効果についても今後検討する予定である。本研究は地球温暖化対策技術の要素技術の一つとして注目されている微細藻類の光合成能の活用方策に対して、そのCO_2固定化後の収穫した藻の有効利用法を研究するために、ラン藻からの抗酸化物質の生産に対する基礎的検討を目的とした。まず、代表者らの既往の研究成果と文献調査によりカルチャーコレクション等から入手可能な約50種のラン藻株の中から抗酸化物質の探索源としてAnabaena variabilis等4種のラン藻を選んだ。光合成用バイオリアクターを用いてCO_2のみを炭酸源とした培養を行い、藻細胞を増殖させた。各藻細胞から種々の溶媒による粗抽出物を得て、米国NIHの方法によるガン細胞に対する細胞増殖抑制効果を検定した。その結果、いずれの藻からもクロロホルム抽出物が最も活性が高いことが確認できた。そこで、そこで、さらにそれらの粗抽出物をHPLCによって分画を行い、各画分について活性の検討を行い、最も活性の発現に寄与していると考えられる成分の構造の同定を試みた(論文準備中)。本研究では、最終的に完全な1成分まで活性化合物を探求するのではなく、混合物のまま抗酸化物質として利用したいと考えているので、活性候補化合物が2種共存する場合の相乗効果についても今後検討する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-08650905 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08650905 |
静止期造血幹細胞のニッチ操作による新規移植療法の開発 | 造血幹細胞移植は広く用いられているが、放射線や大量化学療法の副作用を回避するためには、造血幹細胞を高率に生着させる必要がある。成体骨髄では、造血幹細胞は静止期を維持しており、幹細胞の微小環境ニッチとの相互作用が重要である。本研究では、造血幹細胞-ニッチ間相互作用を阻害することにより、骨髄非破壊的方法による骨髄移植を行い、Mpl受容体の中和抗体やインターフェロンアルファによりニッチを骨髄非破壊的に操作することが可能であることを示した。これらの分子は新規移植療法の発展につながる可能性があり、従来の移植に伴う副作用を回避できる可能性がある。造血幹細胞移植は広く用いられているが、放射線や大量化学療法の副作用を回避するためには、造血幹細胞を高率に生着させる必要がある。成体骨髄では、造血幹細胞は静止期を維持しており、幹細胞の微小環境ニッチとの相互作用が重要である。本研究では、造血幹細胞-ニッチ間相互作用を阻害することにより、骨髄非破壊的方法による骨髄移植を行い、Mpl受容体の中和抗体やインターフェロンアルファによりニッチを骨髄非破壊的に操作することが可能であることを示した。これらの分子は新規移植療法の発展につながる可能性があり、従来の移植に伴う副作用を回避できる可能性がある。成体骨髄では、造血幹細胞は定常状態で静止期を維持している。血液細胞が枯渇すると細胞周期は活性化し、自己複製および分化・増殖が行われる。造血幹細胞が静止期を維持するためには、幹細胞の微小環境ニッチとの相互作用が重要である。本年度は、造血幹細胞-ニッチ間相互作用を阻害することにより、骨髄非破壊的方法による骨髄移植を試みた。骨芽細胞ニッチ、造血幹細胞がそれぞれ発現するトロンボポエチン(Thpo)、Mp1受容体を介したシグナルは、造血幹細胞の静止期維持に重要である。Mp1中和抗体(AMM2)をday -6に、低用量の5-FUをday -2にそれぞれ投与し、day0に放射線照射を用いずにLSK 10^4個の移植を行うと、ドナー細胞による骨髄再構築(5.8±0.7%)がみられた。この結果は、Thpo/Mp1シグナルの抑制により幹細胞の細胞周期が活性化し、続けて投与した5-FUが活性化されたレシピエント幹細胞を排除することで、ドナー由来骨髄細胞の生着を可能にした機構によると考えられる。また、インターフェロンアルファ(IFNα)は、一過性に静止期造血幹細胞の細胞周期を活性化した。野生型レシピエントマウスにday -3およびday -1にpoly(I:C)を、day0に5-FUを投与し、day 3にドナー由来骨髄細胞を放射線照射なしに移植すると、ドナー由来骨髄細胞が生着し、リンパ球系および骨髄球系の再構築を得た(Sato T et al.Nature Medicine 2009)。この結果から、IFNαの刺激により幹細胞の細胞周期が活性化し、ドナー骨髄細胞が生着可能なニソチが創られたことが考えられる。以上の結果は、抗体や薬物によるニッチ操作を行う骨髄非破壊的前処置でも移植が可能であることを示している。これらの新規移植療法の発展により、従来の移植に伴う放射線照射や大量化学療法による副作用を回避できる可能性がある。造血幹細胞移植は広く用いられているものの、放射線や大量化学療法が必須であり、これらの副作用を回避するためには、造血幹細胞を高率に生着させる必要がある。造血幹細胞は、支持細胞や細胞外マトリクスによって形成される微小環境、ニッチにより静止期が維持され、一個体における生涯の造血を行っている。本研究では、申請者がこれまでに明らかとしたMpl受容体/トロンボポエチンなどのニッチシグナルを制御することによって、静止期造血幹細胞の新規移植療法を開発することを目的としている。蛋白は翻訳後修飾されるが、なかでも蛋白のリン酸化は、細胞内のシグナル伝達を制御することが知られている。造血幹細胞やニッチ支持細胞の静止、活性化にも蛋白のリン酸化による制御が深く関与することが推測されるため、研究代表者は造血幹細胞からのリン酸化プロテオミクス解析を試みた。リン酸化ペプチドが細胞からどの程度回収できるかを検討するため、K562細胞株を用いて、リン酸化ペプチドの同定数を検討した。細胞由来の蛋白100μgから、単回の質量分析計測定で数百のリン酸化ペプチドを同定することができ、合計20回の測定からは4,550のリン酸化サイト、1,901のリン酸化蛋白を同定することができた。これらのリン酸化情報をSTRINGデータベースで解析すると、蛋白同士の相互作用、シグナル伝達を網羅的に知ることが可能であった。マウスから100μgの造血幹細胞やニッチ支持細胞を準備することは難しいため、今後、解析可能蛋白量を微小化する技術の発展が不可欠である。また、臍帯血などのヒト由来造血幹細胞は、充分な細胞数を確保することができるため、今後のリン酸化プロテオーム解析に適している。これらから得られたリン酸化情報は、リン酸化を標的とした新規移植療法の開発につながると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-21791003 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21791003 |
任意材料基板上への結晶シリコンの低温・高速成膜に関する研究 | 昨年度に設計・製作した均熱型基板加熱ステージを用いて、原料ガス(SiH_4)とともに使用する不活性ガスの種類およびH_2濃度、プラズマへの投入電力、基板温度を変化させ、それらパラメータとシリコン薄膜の結晶性・結晶粒径との相関関係を系統的に検討した。その結果、500°C以下の低温においても、プラズマへの投入電力を適切に設定するとともに、H_2/SiH_4比を十分に大きくすることによって、大粒径(粒径:約1mm)の多結晶Si薄膜をガラス基板上に高速形成可能であることが明らかになった。一方、得られた多結晶Si薄膜の成長様式について検討した。6X線回折によって膜の配向特性を評価したところ、H_2/SiH_4比が十分に大きい場合には(220)面が主に見られた。これは、Siの成長速度とプラズマ中の原子状水素によるエッチング速度を考慮すると、(110)面が最も成長しやすいためである。また、基板界面付近では、微結晶粒あるいはアモルファス相が観察された。これらのことから、膜の成長様式としては、まず基板上に高密度なSiの結晶核が形成され、それが柱状成長する過程で(110)配向の結晶粒が優勢になるものと考えられる。本年度までの結果からは、大粒径多結晶Si薄膜を得るためには膜厚を厚く(1mm以上)しなければならず、結果として膜厚が薄い段階で結晶粒径を拡大するには至らなかった。しかし、現在、膜成長初期におけるシリコンの核密度の制御方法に関じて基礎的な検討を行うとともに、粒界の制御技術の開発も進めており、移動度の大きな多結晶Si薄膜の低温・高速形成の見通しを得ている。大気圧プラズマCVD法により結晶シリコン薄膜を低温・高速形成する上で、大気圧中においても基板全体の温度を均一に保持することは極めて重要である。そこで、均熱型基板加熱ステージの設計・製作を行った。そして、製作したステージを現有の大気圧プラズマCVD装置に取り付け、その動作確認および熱分布測定などの性能評価を行った。その結果、高温(700°C)においても、基板面内温度の誤差は±10°C以下であり、結晶シリコンの成膜研究の再現性を確保する上で十分な性能であることが確認できた。次に、設計・製作した均熱型基板加熱ステージを用いて、原料ガス(SiH_4)とともに使用する不活性ガスの種類およびH_2濃度、プラズマヘの投入電力、基板温度を変化させ、それらパラメータとシリコン薄膜の結晶性・結晶粒径との相関関係を系統的に検討した。その結果、500°C以下の低温においても、プラズマヘの投入電力を適切に設定するとともに、H_2/SiH_4比を十分に大きくすることによって、大粒径(粒径:約1μm)の多結晶Si薄膜をガラス基板上に高速形成可能であることが明らかになった。通常結晶シリコンは、基板温度を高温に加熱しなければ成長しないが、本研究で用いる大気圧プラズマは、従来の低圧プラズマに比べて桁違いに高密度なプラズマであるため、大気圧プラズマ中の不活性ガス(He, Arなど)やH_2ガスの中性ラジカル・ガス分子のもつ電子エネルギー・運動エネルギーが、膜の構造緩和およぴ結晶化を促進したものと考えられる。ただし、現段階では、大粒径多結晶Si薄膜を得るためには膜厚を厚く(1μm以上)しなけれぱならず、今後さらなる薄膜化を進めるためには、膜成長初期におけるシリコンの核密度の制御方法に関して詳細に検討することが重要である。昨年度に設計・製作した均熱型基板加熱ステージを用いて、原料ガス(SiH_4)とともに使用する不活性ガスの種類およびH_2濃度、プラズマへの投入電力、基板温度を変化させ、それらパラメータとシリコン薄膜の結晶性・結晶粒径との相関関係を系統的に検討した。その結果、500°C以下の低温においても、プラズマへの投入電力を適切に設定するとともに、H_2/SiH_4比を十分に大きくすることによって、大粒径(粒径:約1mm)の多結晶Si薄膜をガラス基板上に高速形成可能であることが明らかになった。一方、得られた多結晶Si薄膜の成長様式について検討した。6X線回折によって膜の配向特性を評価したところ、H_2/SiH_4比が十分に大きい場合には(220)面が主に見られた。これは、Siの成長速度とプラズマ中の原子状水素によるエッチング速度を考慮すると、(110)面が最も成長しやすいためである。また、基板界面付近では、微結晶粒あるいはアモルファス相が観察された。これらのことから、膜の成長様式としては、まず基板上に高密度なSiの結晶核が形成され、それが柱状成長する過程で(110)配向の結晶粒が優勢になるものと考えられる。本年度までの結果からは、大粒径多結晶Si薄膜を得るためには膜厚を厚く(1mm以上)しなければならず、結果として膜厚が薄い段階で結晶粒径を拡大するには至らなかった。しかし、現在、膜成長初期におけるシリコンの核密度の制御方法に関じて基礎的な検討を行うとともに、粒界の制御技術の開発も進めており、移動度の大きな多結晶Si薄膜の低温・高速形成の見通しを得ている。 | KAKENHI-PROJECT-13750097 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13750097 |
多変量正規母集団からの不完全標本による母数関数推定 | 完全データが与えられた場合の多変量正規分布の母数推定論は、多変量解析の多くの書物において取り上げられている題材である。本研究では、主に不完全データもしくはミッシング(結測)のあるデータを含む場合の統計解析法について研究し、つぎの結果を得た。(1)2つの多変量正規分布にしたがう完全データから松下の類似度の最尤推定法および制限付き最尤法を利用する推定法について調べ、3つの偏り修正法の比較を行った(Minami and Shimizu, 1999)。本研究の結果は不完全データに対して発展する余地が残されている。(2)2地点降雨量の積モーメントと共分散のしきい値法による推定について調べた(Hossain and Shimizu, 1999)。降雨量データは、レーダにより降雨量を推定する状況を考えると、あるダイナミックレンジ内のデータから分布のパラメータを推測せざるを得ないという意味で不完全なデータである。しきい値法はそのような不利な状況を軽減する方法の一つと考えられる。(4)つくばで得られた地上ライダー雲底データについて分布の検討した(Takagiwa et al., to appear)。雲の鉛直分布は、もし下層に光学的に厚い雲があると地上ライダーからのデータはミッシングを含む構造になっていると考えられるので、衛生ライダーデータによる今後の検討が必要である。完全データが与えられた場合の多変量正規分布の母数推定論は、多変量解析の多くの書物において取り上げられている題材である。本研究では、主に不完全データもしくはミッシング(結測)のあるデータを含む場合の統計解析法について研究し、つぎの結果を得た。(1)2つの多変量正規分布にしたがう完全データから松下の類似度の最尤推定法および制限付き最尤法を利用する推定法について調べ、3つの偏り修正法の比較を行った(Minami and Shimizu, 1999)。本研究の結果は不完全データに対して発展する余地が残されている。(2)2地点降雨量の積モーメントと共分散のしきい値法による推定について調べた(Hossain and Shimizu, 1999)。降雨量データは、レーダにより降雨量を推定する状況を考えると、あるダイナミックレンジ内のデータから分布のパラメータを推測せざるを得ないという意味で不完全なデータである。しきい値法はそのような不利な状況を軽減する方法の一つと考えられる。(4)つくばで得られた地上ライダー雲底データについて分布の検討した(Takagiwa et al., to appear)。雲の鉛直分布は、もし下層に光学的に厚い雲があると地上ライダーからのデータはミッシングを含む構造になっていると考えられるので、衛生ライダーデータによる今後の検討が必要である。完全データが与えられた場合の多変量正規分布の母数推定論は,多変量解析の多くの書物において取り上げられている題材である。本研究では、主に不完全データもしくはミッシング(欠測)のあるデータを含む場合の統計解析法について研究し,つぎの結果を得た。(1)2変量正規分布の多標本問題において,各クラス内の平均,分散が等しくない場合に,共通関数係数の最犬推定および制限付き最犬推定について扱い,欠測を含むデータからの推定量の漸近分散を求め漸近分散安定化変換を構成した。結果は,もちろん,完全データの場合を含む。また,シミュレーションにより共通相関係数の最犬推定値および制限付き最犬推定値の挙動を調べた。不完全データの使用により,最犬推定法および制限付き最犬推定法の双方とも,推定値の平均2乗誤差を減少させる。減少の程度は,共通相関係数の絶対値が大きいとき,もしくは組標本の大きさが小さいとき,大きい。(2)2つの多変量正規分布からの完全データから分布の類似性尺度としての松下の類似の最犬推定法および制限付き最犬推定を利用する推定法について述べ,さらに偏り修正法について調べた。この研究は,不完全データの場合への予備的研究として位置づけられるものである。次年度に,不完全データの場合に松下類似度の最犬推定および制限付き最犬推定を利用する推定法について調べる予定である。(3)その他として,介護休業制度を利用して働く女性の生活の質,WHOQOL法を用いてのがん患者のフィールド研究,多変量逆三項分布を含むLagrange分布族の構成,Lagrange分布族とある極限形としての逆ガウス型分布との関係について調べた。完全データが与えられた場合の多変量正規分布の母数推定論は,多変量解析の多くの書物において取り上げられている題材である。本研究では,主に不完全データもしくはミッシング(欠測)のあるデータを含む場合の統計解析法について研究し,つぎの結果を得た。(1)2つの多変量正規分布にしたがう完全データから松下の類似度の最尤推定法および制限付き最尤法を利用する推定法について調べ,3つの偏り修正法の比較を行った(Minami and Shimizu,1999)。本研究の結果は不完全データに対して発展する余地が残されている。(2)2地点降雨量の積モーメントと共分散のしきい値法による推定について調べた(Hossain and Shimizu,1999)。降雨量データは,レーダにより降雨量を推定する状況を考えると,あるダイナミックレンジ内のデータから分布のパラメータを推測せざるを得ないという意味で不完全なデータである。しきい値法はそのような不利な状況を軽減する方法の一つと考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-10680320 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10680320 |
多変量正規母集団からの不完全標本による母数関数推定 | (4)つくばで得られた地上ライダー雲底データについて分布の適合を検討した(Takagiwa et al.to appear).雲の鉛直分布は,もし下層に光学的に厚い雲があると地上ライダーからのデータはミッシングを含む構造になっていると考えられるので,衛星ライダーデータによる今後の検討が必要である。 | KAKENHI-PROJECT-10680320 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10680320 |
移動境界を有する流れ現象の有限要素解析に関する研究 | 本研究は,自然現象や工学プロセスに多く見られる移動界面を有する流れ現象のための有限要素スキームの数学解析を目的として,平成12年度から平成14年度の3ヵ年にわたり行われた.平成12年度は,ヘビサイド作用素H(・)を使って擬密度関数とその有限要素近似解の正値の1次元ボレル測度の差のL^p(Ω)-ノルム評価(ただし,p【greater than or equal】1)を考察することにより,2流体問題の有限要素解の近似界面の収束性を示した.具体的には,擬密度関数の有限要素近似にk次要素を用いた場合に,界面の収束はO(h^<2k/3p>)であることを示すことができた.さらに研究協力者の藤間昌一氏による数値実験で,上記の結果は数値的に実証された.平成13年度は,ヘビサイド作用素の代わりに正則化ヘビサイド関数を導入することにより,従来の仮定を必要することなく,擬密度関数の有限要素近似解の収束性のみの仮定の下で,近似界面のよりシャープな誤差評価を得た.この結果,擬密度関数の有限要素近似にP1-要素あるいはP1 iso P2-要素を用いた場合に,界面の収束はO(h^<1/2>)であることを示すことができた.また,この結果は数値実験により実証された.平成14年度は2流体問題に対する有限要素スキームの数理解析として,新たな弱定式化を考察することにより,質量保存性を有する有限要素スキームの開発を行った.本研究では,フラックス汎関数によるラグランジェ未定乗数を用いたナヴィエ・ストークス方程式に対する混合型の変分定式化を考察し,定常問題およびその近似問題の解の存在と一意性について証明し,近似問題の誤差評価を得た,非定常問題への応用および,本手法による数値実験については今後の課題である.本研究は,自然現象や工学プロセスに多く見られる移動界面を有する流れ現象のための有限要素スキームの数学解析を目的として,平成12年度から平成14年度の3ヵ年にわたり行われた.平成12年度は,ヘビサイド作用素H(・)を使って擬密度関数とその有限要素近似解の正値の1次元ボレル測度の差のL^p(Ω)-ノルム評価(ただし,p【greater than or equal】1)を考察することにより,2流体問題の有限要素解の近似界面の収束性を示した.具体的には,擬密度関数の有限要素近似にk次要素を用いた場合に,界面の収束はO(h^<2k/3p>)であることを示すことができた.さらに研究協力者の藤間昌一氏による数値実験で,上記の結果は数値的に実証された.平成13年度は,ヘビサイド作用素の代わりに正則化ヘビサイド関数を導入することにより,従来の仮定を必要することなく,擬密度関数の有限要素近似解の収束性のみの仮定の下で,近似界面のよりシャープな誤差評価を得た.この結果,擬密度関数の有限要素近似にP1-要素あるいはP1 iso P2-要素を用いた場合に,界面の収束はO(h^<1/2>)であることを示すことができた.また,この結果は数値実験により実証された.平成14年度は2流体問題に対する有限要素スキームの数理解析として,新たな弱定式化を考察することにより,質量保存性を有する有限要素スキームの開発を行った.本研究では,フラックス汎関数によるラグランジェ未定乗数を用いたナヴィエ・ストークス方程式に対する混合型の変分定式化を考察し,定常問題およびその近似問題の解の存在と一意性について証明し,近似問題の誤差評価を得た,非定常問題への応用および,本手法による数値実験については今後の課題である.平成12年度は,(i)近似界面の誤差評価と収束性および(ii)並列アルゴリズムの構築と数値実験を目的として実施した.(i)については,2流体問題の数値解析において重要なテーマの一つである界面の数値的な再現と近似界面の収束性等の数学的理論付けについて研究を実施した.我々の数理モデルでは界面は移流方程式の解である擬密度関数のの0レベルセットで定義されるので,界面の収束性等の直接的議論は一般に難しい.そこで本研究では,ヘビサイド作用素H(・)を使って擬密度関数とその有限要素近似解の正値の1次元ボレル測度の差のL^p(Ω)-ノルム評価(ただし,p【greater than or equal】1)を考察した.その結果,界面の急激な変化がなくかつ,擬密度関数の有限要素近似解の収束性の仮定の下で,上記の評価が得られることを明らかにした.次に,上記結果の十分条件の一つである擬密度関数の有限要素近似解の収束性について,"純"移流方程式に対する陰的オイラー有限要素スキームの場合の収束性を示した.以上の結果から,擬密度関数の有限要素近似にk次要素を用いた場合に,界面の収束はO(h^<2k/3p>)であることを示すことができた.これに関連して,研究協力者である茨城大学理学部助教授の藤間昌一氏は,新たにベンチマークテスト問題を提案し,その数値実験を通して上記の結果を数値的に実証した.しかしながら,Navier-Stokes方程式の有限要素スキームと移流方程式の有限要素スキームをカップリングした全体スキームの数学解析等については今後の課題として残った.一方,(ii)並列アルゴリズムの構築と数値実験については,今年度新たに購入したSMP型並列コンピュータ「VT-alpha6 SW」および並列化プリプロセッサ「DIGITAL KAP for DEC FORTRAN」を用いて自動並列化の性能評価を行い,上記アルゴリズムの並列化の準備を行うにとどまった. | KAKENHI-PROJECT-12640110 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12640110 |
移動境界を有する流れ現象の有限要素解析に関する研究 | ここでは,平成12年度から平成14年度の3ヶ年にわたる基盤研究(C)(2)『移動界面を有する流れ現象の有限要素解析に関する研究』のうち,平成13年度に行われた研究実績について報告する.平成13年度は,(i)近似界面の誤差評価と収束性の改善と近似界面の収束オーダーの数値的検証および(ii)有限要素スキームの数理解析を目的として実施した.(i)については,平成12年度の研究で得られた近似界面の誤差評価および収束オーダーを改善した。これまでの結果では,ヘビサイド作用素H(・)を使って擬密度関数とその有限要素近似解の正値の1次元ボレル測度の差のL^p(Ω)-ノルム評価(ただし,p【greater than or equal】1)を考察した.その際,物理的にあまり意味のない仮定を要請していた.今年度の研究では,正則化ヘビサイド関数を導入することにより,従来の仮定を必要することなく,擬密度関数の有限要素近似解の収束性のみの仮定の下で,近似界面の誤差評価を得ることに成功した.この正則化ヘビサイド関数を用いることは,2流体問題の界面を有限幅と捉えることに対応しており,この正則化ヘビサイド関数は我々の提案した2流体問題に対する有限要素スキームにおいて密度および粘性係数を決定するのに用いられており、近似界面の誤差評価にこれを用いることは妥当性があると思われる.この結果,擬密度関数の有限要素近似にP1-要素あるいはP1 iso P2-要素を用いた場合に,界面の収束はO(h^<1/2>)であることを示すことができた.さらに研究協力者である茨城大学理学部助教授の藤間昌一氏は,咋年度提案したベンチマークテスト問題で数値実験行い,上記の結果を数値的に実証した.一方,(ii)の有限要素スキームの数理解析については,これまで用いていたSimpler法に代わり分数段射影法(fractional step projection method)を用いたスキームを構築し,安定性について示すことができたが,同スキームの収束性については今後の課題として残った.平成14年度は2流体問題に対する有限要素スキームの数理解析として,主としてスキームの質量保存性について考察した.一般に非圧縮,immiscibleの2流体の数理モデルにおいては,非圧縮性条件から各流体の質量は保存されなければならない.しかしながら,これまでの研究で開発してきた我々の有限要素スキームでは,質量保存性を厳密には有していないことが,いくつかの数値実験の結果から明らかとなった.そこで本研究では,2流体問題に対する新たな弱定式化を考察することにより,質量保存性を有する有限要素スキームの開発を行った.界面をオイラー的に捉える本手法においては,一般に界面の決定方程式である移流方程式に対して,高精度近似スキームあるいは高精度上流型スキームを適用し,界面をシャープに捉えることにより質量保存性を実現することが考えられる.しかしながら,本研究では,界面を通過するフラックスの損失が0であればいいことに注目し,対象方程式を移流方程式ではなく,むしろナヴィエ・ストークス方程式として,フラックス汎関数によるラグランジェ未定乗数を用いた混合型の変分定式化を考察した.特に今年度は,この変分定式化の数学的正当性を示すために,定常問題およびその近似問題の解の存在と一意性について証明し,近似問題の誤差評価を得た.非定常問題への応用および,本手法による数値実験については今後の課題である。 | KAKENHI-PROJECT-12640110 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12640110 |
抗カルジオリピン抗体の膠原病閉塞性血管病変発症に関する役割の研究 | 抗カルジオリピン抗体に代表される抗リン脂質抗体の出現と、多彩な動・静脈血栓症、習慣流産、血小板減少との関係が注目され、抗リン脂質抗体症候群と呼ばれる様になった。本症候群は、全身性エリテマトーデス(SLE)に代表される膠原病患者に最も多く認められるが、必ずしも特定の膠原病としての臨床所見を呈さない患者にも、一定の頻度で出現する。抗リン脂質抗体症候群に認められる代表的な自己抗体は、抗カルジオリピン抗体とループスアンチコアグラントであるが、本研究者は、抗カルジオリピン抗体と膠原病患者の閉塞性血管病変との関係につき解析した。その結果、当該年度の研究で以下の点が明らかになった。(1)抗カルジオリピン抗体の測定には、血清中の糖蛋白であるβ_2-グリコプロテインI(β_2-GPI)の存在が必須であること。(2)β_2-GPIは分子量5万の糖蛋白であり、スシ構造と呼ばれる特有な形態をしており、カルジオリピンに代表される陰性荷電を持つリン脂質と結合する性質を有すること。(3)抗カルジオリピン抗体は、直接カルジオリピンを認識するのではなく、カルジオリピンと結合した結果、構造変化したβ_2-GPIそのものを認識すること。(4)抗カルジオリピン抗体の測定系の固相に酸素原子(カルボン酸)を導入することによって、抗原としてのカルジオリピンの存在なしに、抗カルジオリピン抗体が測定できたこと。以上の事実から、抗カルジオリピン抗体は、陰性荷電のリン脂質もしくは、酸素原子と結合し、構造変化したβ_2-GPI上に出現してくる自己抗原を認識すると結論した。抗カルジオリピン抗体に代表される抗リン脂質抗体の出現と、多彩な動・静脈血栓症、習慣流産、血小板減少との関係が注目され、抗リン脂質抗体症候群と呼ばれる様になった。本症候群は、全身性エリテマトーデス(SLE)に代表される膠原病患者に最も多く認められるが、必ずしも特定の膠原病としての臨床所見を呈さない患者にも、一定の頻度で出現する。抗リン脂質抗体症候群に認められる代表的な自己抗体は、抗カルジオリピン抗体とループスアンチコアグラントであるが、本研究者は、抗カルジオリピン抗体と膠原病患者の閉塞性血管病変との関係につき解析した。その結果、当該年度の研究で以下の点が明らかになった。(1)抗カルジオリピン抗体の測定には、血清中の糖蛋白であるβ_2-グリコプロテインI(β_2-GPI)の存在が必須であること。(2)β_2-GPIは分子量5万の糖蛋白であり、スシ構造と呼ばれる特有な形態をしており、カルジオリピンに代表される陰性荷電を持つリン脂質と結合する性質を有すること。(3)抗カルジオリピン抗体は、直接カルジオリピンを認識するのではなく、カルジオリピンと結合した結果、構造変化したβ_2-GPIそのものを認識すること。(4)抗カルジオリピン抗体の測定系の固相に酸素原子(カルボン酸)を導入することによって、抗原としてのカルジオリピンの存在なしに、抗カルジオリピン抗体が測定できたこと。以上の事実から、抗カルジオリピン抗体は、陰性荷電のリン脂質もしくは、酸素原子と結合し、構造変化したβ_2-GPI上に出現してくる自己抗原を認識すると結論した。抗リン脂質抗体症候群由来の抗カルジオリピン抗体の、カルジオリピンに対する反応性は、血清蛋白であるβ_2ーグリコプロテインI(β_2-GPI)の存在下に、はじめて認められる。しかし、抗体の対応抗原が構造変化したβ_2-GPI上に存在しているのか、又は、β_2-GPIとカルジオリピンの複合体上に存在しているのかは、不明であった。我々は、抗カルジオリピン抗体の固相化β_2-GPIに対する反応性を、通常のポリスチレンプレートと放射線照射により酸素原子を導入したポリスチレンプレートを用いて検討した。その結果、従来の方法(カルジオリピンーEIA)でβ_2-GPI依存的な結合が認められる抗カルジオリピン抗体は、固相プレートに導入された酸素原子濃度に依存的に固相化β_2-GPIに結合した。しかし、通常の固相化プレート上のβ_2-GPIには結合しなかった。抗カルジオリピン抗体は、疎水性固相表面で酸素原子と相互作用し、構造変化したβ_2-GPIを認識していると思われる。抗カルジオリピン抗体の存在と血栓形成傾向の関係が明らかになり、同抗体の対応抗原が血中のβ_2-GPIであることも解明された。“いわゆる抗カルジオリピン抗体"の反応が、抗原としてのカルジオリピンの存在なしにも再現出来るという事実は、抗リン脂質抗体症候群に認められる閉塞性血管病変の発症機序を考える上にも、また自己抗体としての抗カルジオリピン抗体の産生機構を解明するためにも、重要な示唆を与えると思われる。抗カルジオリピン抗体に代表される抗リン脂質抗体の出現と、多彩な動・静脈血栓症、習慣流産、血小板減少との関係が注目され、抗リン脂質抗体症候群と呼ばれる様になった。本症候群は、全身性エリテマトーデス(SLE)に代表される膠原病患者に最も多く認められるが、必ずしも特定の膠原病としての臨床所見を呈さない患者にも、一定の頻度で出現する。 | KAKENHI-PROJECT-04670370 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04670370 |
抗カルジオリピン抗体の膠原病閉塞性血管病変発症に関する役割の研究 | 抗リン脂質抗体症候群に認められる代表的な自己抗体は、抗カルジオリピン抗体とループスアンチコアグラントであるが、本研究者は、抗カルジオリピン抗体と膠原病患者の閉塞性血管病変との関係につき解析した。その結果、当該年度の研究で以下の点が明らかになった。(1)抗カルジオリピン抗体の測定には、血清中の糖蛋白であるβ2-グリコプロテインI(β2-GPI)の存在が必須であること。(2)β2-GPIは分子量5万の糖蛋白であり、スシ構造と呼ばれる特有な形態をしており、カルジオリピンに代表される陰性荷電を持つリン脂質と結合する性質を有すること。(3)抗カルジオリピン抗体は、直接カルジオリピンを認識するのではなく、カルジオリピンと結合した結果、構造変化したβ2-GPIそのものを認識すること。(4)抗カルジオリピン抗体の測定系の固相に酵素原子(カルボン酸)を導入することによって、抗原としてのカルジオリピンの存在なしに、抗カルジオリピン抗体が測定出来たこと。以上の事実から、抗カルジオリピン抗体は、陰性荷電のリン脂質もしくは、酸素原子と結合し、構造変化したβ2-GPI上に出現してくる自己抗原を認識すると結論した。 | KAKENHI-PROJECT-04670370 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04670370 |
宇宙閉鎖環境の酸素供給システム -微小重力下における藍藻類育成環境の形成- | 宇宙ステーションなど閉鎖系環境の酸素供給システム開発を目的として、微小重力下における低遠心力場を利用した藍藻類育成環境の創成の可能性を検討した。微小重力環境を作り出すために北海道工業技術研究所(高さ10m,HNIRl)及び(株)地下無重力実験センター(高さ500m,JAMIC)を使用した。HNIRIとJAMICの落下塔は微小重力時間がそれぞれ約1.2秒(g_Z/g_0<10^<-3>G)、約10秒(g_Z/g_0<10^<-4>G)である。HNIRl落下塔用の実験装置の寸法は600D×425W×910Hである。JAMIC落下塔用の実験装置の寸法は870D×425W×918H及び425D×425W×918Hである。円筒容器の内径及び容積は0.0550.13m、8.5×10^<-5>1.3×10^<-3>m^3である。8ミリビデオカメラを容器側方に固定し、落下中の気液界面形状の変化を観察、記録した。落下時刻をテープに記録するため、キャラクタージェネレーターを使用した。アクリル樹脂製円筒容器に水を入れ、容器ごと回転させることにより、微小重力下にある回転容器内の水ー空気系に容器壁基準で10^<-1>G程度の低遠心力場を与えた。回転容器内の気液系の界面形状を観察、記録した。気液界面形状に及ぼす容器内径、容器回転速度、液量率(液体積/容器容積)、液粘度、表面張力の影響を検討した。藍藻類育成環境として望ましい気液流動状態は中空回転液体層の形成である。すなわち、(1)回転容器中心部に気体が存在し容器壁全面と液体が接触していること、また、(2)上蓋及び底面中央部には液体に濡れていない気固接触面があることである。中空回転液体層形成の可能/不可能が明確に分けられる形成マップを作製した。形成マップにより微小重力下における中空回転液体層形成がWeber数と液量率によって決定できる。形成マップから最適条件はWe=8,V_L/V_T=0.80であった。この条件は動力消費即ち容器回転速度が最小となる。容器を固定し、通気エネルギーを利用して中空回転液体層の形成も試みた。宇宙ステーションなど閉鎖系環境の酸素供給システム開発を目的として、微小重力下における低遠心力場を利用した藍藻類育成環境の創成の可能性を検討した。微小重力環境を作り出すために北海道工業技術研究所(高さ10m,HNIRl)及び(株)地下無重力実験センター(高さ500m,JAMIC)を使用した。HNIRIとJAMICの落下塔は微小重力時間がそれぞれ約1.2秒(g_Z/g_0<10^<-3>G)、約10秒(g_Z/g_0<10^<-4>G)である。HNIRl落下塔用の実験装置の寸法は600D×425W×910Hである。JAMIC落下塔用の実験装置の寸法は870D×425W×918H及び425D×425W×918Hである。円筒容器の内径及び容積は0.0550.13m、8.5×10^<-5>1.3×10^<-3>m^3である。8ミリビデオカメラを容器側方に固定し、落下中の気液界面形状の変化を観察、記録した。落下時刻をテープに記録するため、キャラクタージェネレーターを使用した。アクリル樹脂製円筒容器に水を入れ、容器ごと回転させることにより、微小重力下にある回転容器内の水ー空気系に容器壁基準で10^<-1>G程度の低遠心力場を与えた。回転容器内の気液系の界面形状を観察、記録した。気液界面形状に及ぼす容器内径、容器回転速度、液量率(液体積/容器容積)、液粘度、表面張力の影響を検討した。藍藻類育成環境として望ましい気液流動状態は中空回転液体層の形成である。すなわち、(1)回転容器中心部に気体が存在し容器壁全面と液体が接触していること、また、(2)上蓋及び底面中央部には液体に濡れていない気固接触面があることである。中空回転液体層形成の可能/不可能が明確に分けられる形成マップを作製した。形成マップにより微小重力下における中空回転液体層形成がWeber数と液量率によって決定できる。形成マップから最適条件はWe=8,V_L/V_T=0.80であった。この条件は動力消費即ち容器回転速度が最小となる。容器を固定し、通気エネルギーを利用して中空回転液体層の形成も試みた。微小重力下において低遠心力により形成した中空回転液体中に外周部からガスを吹き込み、生成する気泡の分散状態と流動速度並びに中空液体の内周部における気泡の液からの分離に及ぼす回転速度、内周部の大きさ、ガス吹き込み方法の影響を実験的に検討した。実験実施状況:鉛直に置かれた円筒型回転容器内に、軸中心部がガスの中空回転液層を微小重力下で形成させておき、外周部から回転中心に向かってガスを吹込む。気泡の生成から破裂に至る経時変化を容器の側方と上方の2方向から2台のビデオカメラで撮影することに成功した。 | KAKENHI-PROJECT-08651084 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08651084 |
宇宙閉鎖環境の酸素供給システム -微小重力下における藍藻類育成環境の形成- | 吹込用ガスは当初予定の「使い捨てボンベ入り空気」に変えて、小形ガスボンベに窒素を充填して用いた。小形ガスボンベ、減圧弁、電磁弁、流量計等、ガス導入装置およびCCDカメラ等の動作は多機能制御ユニットで制御した。微小重力場を作るための落下実験は、北海道上砂川の(株)地下無重力実験センター(μG時間:10秒)で6回および北海道工業技術研究所(μG時間:1.2秒)で14回実施した。実験結果:中空回転液体層が形成される0.15G以上では、1G下と同様吹込まれた気体は気泡群となり気液界面に至って破裂し、「ガス吹込みによる中空回転液体層の形成」の可能性が示された。しかし、1G下と比べμG下では気泡径が著しく大きくなり、気液界面に於ける気泡の寿命が長くなる傾向が認められた。また、気泡の破裂は近傍の気泡の破裂に誘発された。平成9年度:実際の培養ではリアクターを回転せず固定することが望ましい。そこで、容器を固定し通気エネルギーを利用して、「ガス吹込みによる中空回転液体層の形成」を試みる。1.研究の目的:前年度は微小重力下で円筒型リアクターを回転させることにより遠心力を生じさせ、中空回転液体に外部からガスを吹き込み、生成する気泡の液からの分離に必要なGの下限を検討した。実際の培養ではリアクターを回転せず固定することが望ましい。そこで、本年度は通気エネルギーを利用して、中空回転液体層の形成を試みた。すなわち、微小重力下において、円筒容器中の液相にガスを連続的に吹き込み、回転中心部においてガスを分離排出する中空回転液体層の形成条件を検討した。2.実験実施状況:固定したアクリル製縦型円筒容器内に水を入れておき、容器外の外周部から内部へ接線方向45度の角度でガスを噴射した。容器の外側と上方の2方向から2台のビデオカメラで液の回転流動状態、気泡の挙動等を地上1G下および微小重力下で観察・記録した。前年度に製作した落下用実験装置を、円筒容器とガス導入部分等を一部改装して、本年度も使用した。微小重力場を作るための落下実験は、(株)地下無重力実験センター(μG時間:10秒)で2回、北海道工業技術研究所(μG時間:1.2秒)で17回実施した。3.実験結果:あらかじめ地上実験で求めた「ガス噴射流量」と「液回転速度」との関係は、微小重力下においてもほぼ同様であることが明らかとなった。微小重力下において、ガス流量が比較的大きく、仕込み液体積が適当な場合、中空回転液体層の形成が認められた。4.平成10年度:省エネルギーを考慮すると、如何に小さなガス流量によって中空回転液体層を形成させるかが課題をなる。そこで、中空回転液体層形成に及ぼす容器と液体との濡れ性の影響を検討する。1.班究の目的:平成8年度は、微小重力下で円筒型リアクターを回転させることにより遠心力を生じさせ、中空回転液体層形成に必要なGの下限を明らかにした。平成9年度は、容器を固定し、通気エネルギーを利用して中空回転液体層の形成を試みた。すなわち、微小重力下において、円筒容器中の液相にガスを連続的に吹込み、中空回転液体層の形成条件を検討した。省エネルギーを考慮すると、如何に小さなガス流量によって中空回転液体層を形成させるかが課題となる。そこで、本年度は中空回転液体層形成の難易に及ぼす容器と液体との濡れ性の影響を検討した。2.実験実施状況:底面、上蓋をテフロン被覆したアクリル製縦型円筒容器を製作し、容器回転方式及び容器固定ガス吹込み方式で、平成8年度、9年度と同様、液の回転流動状態、気泡の挙動等を微小重力下で観察、記録し、底面、上蓋の濡れ性(水との接触角:アクリル67-74、テフロン94-126)の影響を検討した。微小重力落下実験は、(株)地下無重力実験センターで1回、北海道工業技術研究所で11回実施した。 | KAKENHI-PROJECT-08651084 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08651084 |
骨髄由来抑制細胞による制御性T/B細胞誘導を用いた移植免疫寛容誘導に関する研究 | 臓器移植領域において細胞性拒絶は免疫抑制剤の発展とともに良好に制御が可能となっている。しかし、特に抗体関連拒絶については現在でも制御は不十分であり臨床臓器移植において長期生着を阻む最大の問題となっており、その制御が非常に重要な課題となっている。骨髄由来抑制細胞Myeloid-derived suppressor cells (MDSCs)は制御性T細胞(Tregs)、制御性B細胞(Bregs)を誘導する能力を有し、臓器移植において制御不十分な拒絶反応に重要な役割を果たす可能性がある。本研究ではMDSCsのBregs/Tregs誘導効果による免疫寛容誘導法を考案する。臓器移植領域において細胞性拒絶は免疫抑制剤の発展とともに良好に制御が可能となっている。しかし、特に抗体関連拒絶については現在でも制御は不十分であり臨床臓器移植において長期生着を阻む最大の問題となっており、その制御が非常に重要な課題となっている。骨髄由来抑制細胞Myeloid-derived suppressor cells (MDSCs)は制御性T細胞(Tregs)、制御性B細胞(Bregs)を誘導する能力を有し、臓器移植において制御不十分な拒絶反応に重要な役割を果たす可能性がある。本研究ではMDSCsのBregs/Tregs誘導効果による免疫寛容誘導法を考案する。 | KAKENHI-PROJECT-19K18066 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K18066 |
地球表面を境界とするメディア間の水と物質の鉛直移動特性の解明 | 本研究を通じて担当項目について研究を行った成果を以下に示す.・村岡:都市域の土地利用条件による相違について着目し降雨と揚水の関係,低水特性の変貌に関する解明を行った.・中辻:(1)大阪湾における貧酸素化の実態と貧酸素水塊の形成過程を解明した.(2)東京湾における青潮の発生機構と吹送密度流との関連性について,現地観測と数値実験から検討した.・石井:地下水面から不飽和土壌に揮散する有機塩素化合物ガス量と地下水流速との関連性,不飽和土壌帯中での揮散ガスの挙動を定性的に表現するための要因,地下水からの揮散量に与える要因について実験的に検討し,揮散量を適切に見積もることで不飽和土壌中における揮散ガスの挙動を検討した.・禰津:複雑な開水路複断面流れの3次元乱流構造を高精度なレーザー流速計により実験的に解明し,乱れの非等方性,流れの中での2次流の生成に関わる現象を明らかにした.・道奥:貯水池において2カ年に渡り水温変動の周日観測を実施し,対流の構造,日成層の発達・混合過程,表層・躍層面における内部波の影響,逆転水温層の挙動等を明らかにした.・福島:屋外実験池に生物・化学的に不活性なガスを投入することにより,水-大気間のガス移動を測定した.この手法を屋外実験池,霞ヶ浦,琵琶湖に適用し,物質循環,生物代謝活性の評価に利用した.・福原:蒸発・乾燥に伴う砂層カラム中の塩分濃縮と集積過程を求め,熱・水分連成解析および物質保存則によりある程度再現出来た.更に4極塩分濃度センサーを開発し,これを実用化した.・端野:降雨遮断タンクモデルおよびヒートパルス蒸散モデルを徳島県白川谷森林試験流域での観測データへ適用し,蒸発量および蒸散量のいずれも良好な精度で再現できた.本研究を通じて担当項目について研究を行った成果を以下に示す.・村岡:都市域の土地利用条件による相違について着目し降雨と揚水の関係,低水特性の変貌に関する解明を行った.・中辻:(1)大阪湾における貧酸素化の実態と貧酸素水塊の形成過程を解明した.(2)東京湾における青潮の発生機構と吹送密度流との関連性について,現地観測と数値実験から検討した.・石井:地下水面から不飽和土壌に揮散する有機塩素化合物ガス量と地下水流速との関連性,不飽和土壌帯中での揮散ガスの挙動を定性的に表現するための要因,地下水からの揮散量に与える要因について実験的に検討し,揮散量を適切に見積もることで不飽和土壌中における揮散ガスの挙動を検討した.・禰津:複雑な開水路複断面流れの3次元乱流構造を高精度なレーザー流速計により実験的に解明し,乱れの非等方性,流れの中での2次流の生成に関わる現象を明らかにした.・道奥:貯水池において2カ年に渡り水温変動の周日観測を実施し,対流の構造,日成層の発達・混合過程,表層・躍層面における内部波の影響,逆転水温層の挙動等を明らかにした.・福島:屋外実験池に生物・化学的に不活性なガスを投入することにより,水-大気間のガス移動を測定した.この手法を屋外実験池,霞ヶ浦,琵琶湖に適用し,物質循環,生物代謝活性の評価に利用した.・福原:蒸発・乾燥に伴う砂層カラム中の塩分濃縮と集積過程を求め,熱・水分連成解析および物質保存則によりある程度再現出来た.更に4極塩分濃度センサーを開発し,これを実用化した.・端野:降雨遮断タンクモデルおよびヒートパルス蒸散モデルを徳島県白川谷森林試験流域での観測データへ適用し,蒸発量および蒸散量のいずれも良好な精度で再現できた.本年度は、下記の項目について分担研究を行った.・村岡:都市の拡大に伴う水環境が非自然的な水環境を有することから,降雨・浸透・蒸発の各過程が市街地の土地利用毎にどのような相違が存在しているかをまとめた.・中辻:沿岸海域で生ずる貧酸素水塊のような水環境の悪化現象を海表面を通じての光・熱・運動量の変換に基づく鉛直1次元熱収支モデルを構築し,東京湾・江田島湾等の観測地と検証した.・禰津:水流の底面近傍領域および水深増加領域の詳細な乱流計測に基づき,乱流特性量の時間変化・せん断応力特性・自由水面の時間変化による影響等について理論的・実験的考察を行った.・道奥:高濃度の電解質物質を含み上層よりも高温の貧酸素水塊が1年中底層に滞留する貯水池で水質の定期観測を行い,逆転水温層の形成要因と水質成分との関係を模索した.同時に,多点水温計を試作し,貯水池で周日連続水温を行って水面-大気境界面間の熱移動量と微細水温変動量の関連性を明らかにした.・福島:屋外実験池において各種のボックスを設け,酸素,二酸化炭素,水温の連続観測を行い,その結果をもとに池面でのそれらのフラックスを算定した.また,このフラックスを風速などを用いてモデル化した.・福原:地表面と大気間の熱水分移動に及ぼす風の影響について風速と水蒸気輸送バルク係数および熱伝導係数の関係を実験的に求めた.不飽和砂層中の塩分移動については,4極法塩分濃度センサーを開発した.・ | KAKENHI-PROJECT-06302049 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06302049 |
地球表面を境界とするメディア間の水と物質の鉛直移動特性の解明 | 石井:地下水汚染物質および揮散ガスが,地下水から土壌へ・土壌から地表面を通じて大気へ移動していく現象を室内不飽和帯モデルを用いて実験的に研究をおこなった.・端野:降雨遮断タンクモデルを雨量・気象観測データに適用して遮断蒸発量の推定と遮断蒸発過程に関する解析を行った.その結果,推定蒸発量は現地雨量観測データの水収支から得られる蒸発量とほぼ一致した.また,雨量強度と蒸発強度との関係や降雨継続時間と降雨中蒸発量との関係も良好に再現できた.本年度は下記の項目について分担研究を行った.・村岡:土地利用条件による相違について着目し,降雨・浸透・蒸発の過程による水分の移動を捉え,短期的・長期的な影響がどこにどの様に表れるかに付いてまとめた.・中辻:貧酸素水塊のような水域の環境への影響の大きい項目について,鉛直1次元熱収支モデルを用いて大阪湾等の実測値と比較検討し,その社会的な影響度についてまとめた.・石井:流下する地下水から不飽和土壌へのVOCの移動を地下水濃度変化により,また,不飽和土壌中でのVOCガスの移動に与える要因について気相部分でのガス濃度抽出により実験的にその特性を解明した.・禰津:自由水面を持ち高水敷を有する複雑な開水路複断面流れの3次元乱流構造を実験的に解明し,その実験値のデータベースを確立し,流れの3次元乱流構造と水面近傍の渦の挙動を明らかにした.・道奥:底層部が高温で溶存物質濃度が高い貯水池における現地観測を継続した.水面での熱交換に伴う池内流動構造を明らかにするため,サーミスターチェーンを用いた集中観測を実施し,水温構造とその変動に関するデータ解析を行い,水面熱交換にともなう組織構造・内部波動を抽出した.・福島:屋外実験池に生物・化学的に不活性なガスを投入し,経時的にその濃度変化を調べ,水-大気間のガス移動速度を測定し,予測されるガス移動速度と比較検討した.また,生物代謝特性とガス移動速度を推測した.・福原:不飽和土壌中の塩分移動,特に蒸発に伴う塩分濃縮と集積過程をサンプリングすることなしに追跡するために,4極塩分濃度センサーを開発した.どうセンサーにより得られる濃度は電気伝導度と体積含水率により表現できる.・端野:ヒートパルス速度を利用した蒸散量推定モデルを用いて土壌水分が減少した際の蒸散抑制作用に関する解析を行った.現地観測データにモデルを適用し,実蒸散量と蒸散係数との関係が線形的減少であることが分かった. | KAKENHI-PROJECT-06302049 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06302049 |
心筋虚血再灌流後の好気的代謝復活による心筋傷害:二酸化炭素産生とカルシウム過負荷 | 心筋虚血再灌流の過程ではCl-/HCO3-交換の関与が重要な役割を果たしている。血液心筋保護を用いた開心術における心筋細胞および赤血球CO2の移動(HCO3-としてCl-/HCO3-交換による細胞外排出)を検討した。開心術症例を対象とし大動脈遮断解除時の冠静脈洞液を採取した。赤血球のみのイオン移動を推定するため、in-vitroで無O2高CO2灌流下における血液心筋保護液のイオン濃度を測定した。血液心筋保護法では大動脈遮断中でも好気的代謝が残存しCO2が産生されるが、CO2が赤血球内緩衝系でHCO3-に変化後、Cl-/HCO3-交換系を介し赤血球外に排出され心筋細胞緩衝系に影響している。開心術中心停止による心筋虚血再灌流傷害の主病態は再灌流時細胞内Ca2+過負荷であり、その原因は虚血中の細胞内アシドーシス(H+産生)がNa+/H+交換によるNa+流入、さらにNa+/Ca2+交換を介するCa2+流入を来すとされている。「再灌流時の好気的代謝復活による急激なCO2産生がmMオーダーのH+産生を生じさせ、Na+/H+交換を介するNa+流入を生じさせ、細胞内Ca過負荷に至る」という仮説を立て、新しい心筋保護法の開発に資するため、再灌流時好気的代謝中のNa+濃度測定と関連機能蛋白定量によって心筋傷害メカニズムを明らかにすることを目的とした。今までは開心術中の血液心筋保護液注入中に冠静脈洞からサンプルを採取し、酸素含量、Na+濃度、K+濃度、Cl-濃度、HCO3-濃度、pHを測定し、再灌流時の酸素化時にイオン移動を示唆する所見が得られるかどうか検討した結果、酸素消費とともにNa+増大、K+低下、Cl-低下、HCO3-濃度不変、pH低下が認められイオン移動の存在が強く示唆された。またラット摘出潅流心モデルではNa+/H+交換抑制薬であるアミロライドが虚血後の再酸素化時(無酸素再灌流後の酸素化灌流)に投与されると心筋保護的に働くことから、Na+/H+交換が好奇的代謝の復活の際にイオン移動に大きくかかわっていることが判明した。平成24年度はラット摘出潅流心モデルを用いて再灌流時におけるNa+/HCO3-共輸送の関与を検討した。再灌流時の緩衝液を重炭酸液からHEPES緩衝液に変更しても心筋保護的な作用が得られなかったことから、Na+/HCO3-共輸送が好奇的代謝の復活の際のイオン移動にかかわっていないことが示唆された。<背景>開心術における心筋虚血再灌流傷害の病態は細胞内Ca2+過負荷であり、大動脈遮断中(虚血中)の細胞内アシドーシス(H+産生)がNa+/H+交換によるNa+流入とNa+/Ca2+交換を介するCa2+流入と関連する。また大動脈遮断中にも残存酸素を利用した好気的代謝で低O2とCO2貯留が生じている。細胞内CO2は拡散によって、またはH+とHCO3-としてそれぞれNa+/H+交換とCl-/HCO3-交換によって細胞外に排出される。酸素化血液心筋保護液(OBC)使用時の冠静脈洞(CS)液のイオン濃度を評価した。<方法>開心術症例を対象とし大動脈遮断解除(OBC再灌流)時のCS液を採取した。CS液のイオン濃度は心筋細胞膜と赤血球膜における細胞内外のイオン移動が同時に関与するため、赤血球のみのイオン移動も別箇に考慮する必要がある。そのため虚血に暴露された赤血球のみのイオン移動を推定するため、in-vitroで無O2高CO2灌流下(虚血シミュレーション)における血液心筋保護液のイオン濃度を測定した。<結果>CS液のCl-濃度は虚血前(正常O2正常CO2)のCS液では変化なく、大動脈遮断解除時(OBC再灌流)のCS液では有意に低下し(心筋+赤血球)、虚血シミュレーション(赤血球のみ)でも有意な低下を示し、大動脈遮断中のCl-/HCO3-交換の関与が示唆された。またCS液のHCO3-濃度は虚血前(正常O2正常CO2)のCS液ではわずかに上昇しており、大動脈遮断解除時(OBC再灌流)のCS液では濃度の変化がなく(心筋+赤血球)、虚血シミュレーション(赤血球のみ)では有意な上昇を示した。<結論>心筋虚血再灌流の過程ではCl-/HCO3-交換の関与が重要な役割を果たしている。血液心筋保護法では大動脈遮断中でも好気的代謝が残存しCO2が産生されるが、CO2が赤血球内緩衝系でHCO3-に変化後、Cl-/HCO3-交換系を介し赤血球外に排出され心筋細胞内緩衝系に影響している可能性が示唆された。心筋虚血再灌流の過程ではCl-/HCO3-交換の関与が重要な役割を果たしている。血液心筋保護を用いた開心術における心筋細胞および赤血球CO2の移動(HCO3-としてCl-/HCO3-交換による細胞外排出)を検討した。開心術症例を対象とし大動脈遮断解除時の冠静脈洞液を採取した。 | KAKENHI-PROJECT-23592023 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23592023 |
心筋虚血再灌流後の好気的代謝復活による心筋傷害:二酸化炭素産生とカルシウム過負荷 | 赤血球のみのイオン移動を推定するため、in-vitroで無O2高CO2灌流下における血液心筋保護液のイオン濃度を測定した。血液心筋保護法では大動脈遮断中でも好気的代謝が残存しCO2が産生されるが、CO2が赤血球内緩衝系でHCO3-に変化後、Cl-/HCO3-交換系を介し赤血球外に排出され心筋細胞緩衝系に影響している。開心術中心停止による心筋虚血再灌流傷害の主病態は再灌流時細胞内Ca2+過負荷であり、その原因は虚血中の細胞内アシドーシス(H+産生)がNa+/H+交換によるNa+流入、さらにNa+/Ca2+交換を介するCa2+流入を来すとされている。しかし虚血中にはNa+/H+交換は抑制されており、H+濃度は1μM程度(pH=6)と低く、再灌流時にNa+/H+交換を介して過負荷に至るようなmMオーダーのNa+流入を引き起こすことは考えにくい。「再灌流時の好気的代謝復活による急激なCO2産生がmMオーダーのH+産生を生じさせ、Na+/H+交換を介するNa+流入を生じさせ、細胞内Ca過負荷に至る」という仮説を立て、新しい心筋保護法の開発に資するため、再灌流時好気的代謝中のNa+濃度測定と関連機能蛋白定量によって心筋傷害メカニズムを明らかにすることを目的とした。具体的目標の一つ目は「ラット摘出灌流心モデルにおいて虚血再灌流モデルを作成し、虚血中および再灌流時における細胞内イオン濃度を検討する」であった。この検討の前に開心術中の血液心筋保護液注入中に冠静脈洞からサンプルを採取し、酸素含量、Na+濃度、K+濃度、Cl-濃度、HCO3-濃度、pHを測定し、再灌流時の酸素化時にイオン移動を示唆する所見が得られるかどうか検討した。結果は酸素消費とともにNa+増大、K+低下、Cl-低下、HCO3-濃度不変、pH低下が認められイオン移動の存在が強く示唆された。また具体的目標の二つ目は「Na+/H+交換の関与に関しNa+/H+交換抑制薬を用いて検討する」であった。ラット摘出潅流心モデルではNa+/H+交換抑制訳である、アミロライドが虚血後の再酸素化時(無酸素再灌流後の酸素化灌流)に投与されると心筋保護的に働くことから、Na+/H+交換が好奇的代謝の復活の際にイオン移動に大きくかかわっていることが判明した。細胞内イオン濃度測定装置を用いて虚血再潅流中の細胞内イオン濃度(Na+、Ca2+、pH)を評価可能にすることが、平成23、24年度の目標の一つであったが、精度的に測定法に困難な点がある。細胞内イオン濃度測定装置を用いて虚血再潅流中の細胞内イオン濃度(Na+、Ca2+、pH)を評価可能にすることが、平成23年度の目標の一つであったが、精度的に測定法に困難な点があり、現在、解決策を検討中である。1.好気的代謝の関与に関し好気的代謝抑制(ミトコンドリア抑制)薬を用いて検討する。ラット摘出灌流心モデルにおいてミトコンドリア抑制のための代謝阻害薬、低酸素によって再灌流中の細胞内Na+濃度、細胞内Ca2+濃度、細胞内pHがどのような影響を受けるかを、細胞内イオン濃度測定装置を用いて評価する。またCO2電極を用いて組織CO2分圧を測定する。2.Na+イオン輸送系(Na+/K+ポンプ、Na+/Ca2+交換、Na+/HCO3-共輸送、Na+チャネル)の関与を検討する。ラット摘出灌流心モデルにおいて他のNa+イオン輸送系を阻害する薬剤を用いて再灌流中の細胞内Na+濃度、細胞内Ca2+濃度、細胞内pHがどのような影響を受けるかを、細胞内イオン濃度測定装置を用いて評価する。またCO2電極を用いて組織CO2分圧を測定する。3.再灌流中のcarbonic anhydrase活性、Na+/H+交換機構蛋白の発現と活性を検討する。ラット摘出灌流心モデルにおいて再灌流中にcarbonic anhydraseが関与する反応(CO2+H2O→HCO3-+H+)においてcarbonic anhydrase活性とNa+/H+交換機構活性の関連性を分子生物学的に検討する。 | KAKENHI-PROJECT-23592023 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23592023 |
昭和戦前期農村郷土教育における村内教育体制とカリキュラム改造構想の展開 | 本研究では、昭和戦前期の農村郷土教育における「カリキュラム改造」と「村内教育体制構築」について、郷土教育連盟、県学務行政、師範学校、同附属小学校、農村小学校の取組を明らかにした。地域事例として、秋田県を取り上げた。郷土教育連盟、県学務行政、師範学校、同附属小学校は、郷土研究、各科「郷土化」等の「カリキュラム改造」に力点をおいた郷土教育を展開した。それに対して、農村小学校は村社会の二重性を踏まえた「村内教育体制構築」を目指して、村の秩序を維持し、村を発展させていける人材の育成にその主眼をおいていた。本研究では、昭和戦前期の農村郷土教育における「カリキュラム改造」と「村内教育体制構築」について、郷土教育連盟、県学務行政、師範学校、同附属小学校、農村小学校の取組を明らかにした。地域事例として、秋田県を取り上げた。郷土教育連盟、県学務行政、師範学校、同附属小学校は、郷土研究、各科「郷土化」等の「カリキュラム改造」に力点をおいた郷土教育を展開した。それに対して、農村小学校は村社会の二重性を踏まえた「村内教育体制構築」を目指して、村の秩序を維持し、村を発展させていける人材の育成にその主眼をおいていた。本研究は、昭和戦前期の郷土教育論及び実践を農村の持つ二重性に着目し、「村内教育体制構築」と「カリキュラム改造」の構想という二つの視角から明らかにすることである。当時の師範学校、同附属小学校、県学務課、連盟、文部省は、農村小学校において展開された郷土教育実践をどのようにとらえ、いかなる農村郷土教育を模索していたのか。これまでの筆者の研究は、学校教育行政の最末端機関である小学校を横並びに検討するものであった。本研究では、師範学校、同附属小学校、県学務課、連盟、文部省を取りあげて、県レベルあるいは国レベルでの検討を通して、その郷土教育論の浸透過程、農村小学校の受容と独自性について分析することを設定している。第1年度においては、主として秋田県を事例に師範学校と同附属小学校の農村郷土教育論とそれに基づく実践を、「村内教育体制構築」と「カリキュラム改造」の構築に関する観点から分析した。具体的には、すでに調査した秋田県西目小学校の実践との関わり・比較を検討するため、秋田県師範学校、同附属小学校、同第二代用附属小学校、秋田県女子師範学校、同附属小学校、同第二代用附属小学校、及び秋田県学務課を研究対象とした。その結果、秋田県における郷土教育では、県学務行政・師範学校が、郷土研究、各科郷土化等の「カリキュラム改造」に主眼をおいたのに対し、農村に位置する西目小学校は村内教育体制の構築に力点をおいていたことを明らかにした。上記の研究成果については、日本社会科教育学会第57回大会において報告を行った。本研究は、昭和戦前期の郷土教育、とりわけ農村で展開された郷土教育について農村の持つ二重性に着目し、「村内教育体制構築」と「カリキュラム改造」の構想という二つの視角から明らかにすることである。これまでの昭和戦前期における郷土教育の研究では、体制側の教育政策とそれに対抗した民間教育運動という構図で研究がおこなわれてきたため、文部省、師範学校、連盟などの理論的指導者、そうした指導者に評価され取り上げられた師範学校附属小学校と都市部の小学校が先行研究の主要な検討対象となってきた。郷土教育は農村において熱烈に歓迎されたといわれているにもかかわらず、その農村で展開された実践は見落とされ、検討されても中央の教育論の受容・浸透ととらえられてきた。農村において郷土教育を担った小学校教員の多くは、小学校内の教育だけでなく実業補習学校・青年訓練所・青年学校の教員を兼任していた。さらには地域住民に対する社会教育を担うことも求められていた。そうした当時の状況を考えると、小学校教員は郷土教育を単に小学校内だけの実践とはとらえていなかったことが明らかとなってきた。第2年度においては、第1年度目に明らかにした師範学校、同附属小学校、県学務当局と同様に、半官半民の教育団体である郷土教育連盟においても「カリキュラム改造」に力点がおかれ、農村小学校の「村内教育体制」構築を目指した郷土教育とは異なる展開をしていたことを検討した。農村小学校は、村内の教育体制を構築することによって全村民を対象に郷土教育を行い、村の抱える課題を解決し、よりよい村社会を創造しようとしていた。郷土教育連盟はそうした農村小学校の動きを理解しながらも、学校教育制度内における「カリキュラム改造」によって郷土教育を展開しようとしていた。そのため、農村小学校の目指した郷土教育に十分こたえる取組とはなりえなかったのである。 | KAKENHI-PROJECT-19730482 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19730482 |
状態空間モデルによる家計行動規範の定量化とイベント・スタディによる要因分析 | 本研究は、状態空間モデルを用いて家計の選好を表す潜在的変数を推定し、その歴史的変動の検討や地域比較分析を試みることを企図としている。このような分析は地域による公債負担に関する期待形成の違いを明らかにすることである。とりわけ、状態空間モデルの適用により、家計行動のディープ・パラメタの時系列変動を捉えることが可能であり、地域の経済環境の変化や政府の経済政策が家計の期待形成や選好のあり方に及ぼす影響を経時的に理解することができる。ディープ・パラメタの計測結果も概ね良好であり、いくつかの論文において成果を報告することができた。ディープ・パラメターの時変推定に用いるデータ・セットは既存統計を活用したが、地域別統計については電子データ(家計調査、全国消費実態調査、全国物価統計調査など)の購入を行った。状態空間モデルの推定には初期値の与え方が重要となるが、この点についてもいくつかの代替的なパターンを試しており、推定結果の頑健性は高いと考えられる。このように時変推定した消費関数のパラメターの変化について説明要因となり得るイベントを探索した。また、歴史的イベントを表すダミー変数セットの更新を行った。この作業は中途であり、次年度以降に継続する必要がある。このようにして得られたディープ・パラメターの時系列的変化に対して、イベント・スタディを適用しているが、まだ説明力は十分とは言えない。イベント・スタディにおける説明力の向上を期して、歴史的イベントの拡充、状態空間モデルの推定精度の向上などは重要な課題である。技術的な改善点やデータセットの更新については概ね計画が練られており、近日中に計画を達成できるものと予想される。生まれ年、年齢、性、地域といった属性別の推定を行うことは次の課題となる。属性別のイベント・スタディも進行中である。行動規範の決定要因(イベント)について、属性による異質性が明らかとなれば、家計行動に関わる将来予測、政策効果の分析に限らず、マーケティング分野や投票行動分析など隣接他分野への応用も可能となるだろう。本研究は、状態空間モデルを用いて家計の選好を表す潜在的変数を推定し、その歴史的変動の検討や地域比較分析を試みることを企図としている。このような分析は地域による公債負担に関する期待形成の違いを明らかにすることである。とりわけ、状態空間モデルの適用により、家計行動のディープ・パラメタの時系列変動を捉えることが可能であり、地域の経済環境の変化や政府の経済政策が家計の期待形成や選好のあり方に及ぼす影響を経時的に理解することができる。ディープ・パラメタの計測結果も概ね良好であり、いくつかの論文において成果を報告することができた。消費関数のパラメターを時変推定し、その推移の幅が経済理論と整合的になることを確認した。言い換えると、ディープ・パラメターの変化を経済学的に解釈したわけである。今後も理論モデルの改良によって推定する方程式の精度を高めていく必要はあるが、基本的な準備は整ったと言える。生まれ年、年齢、性、地域といった属性別の推定を行うことも重要な課題となる。注目すべき属性として、ほかにも学歴、職業、収入など、多くの視点が考えられる。どのような属性についてグループ化して推定を行うかは検討の余地がある。このパートも理論モデルと推定作業の反復作業が必要であり、一定の時間を要する。ディープ・パラメターの時変推定に用いるデータ・セットは既存統計を活用したが、地域別統計については電子データ(家計調査、全国消費実態調査、全国物価統計調査など)の購入を行った。また、状態空間モデルの推定については、手法の進展が著しいため、最新の計量経済分析ソフトウェアを購入した。推定作業と並行して歴史的イベントを表すダミー変数セットの作成を行った。この作業は中途であり、次年度以降に継続する必要がある。このようにして得られたディープ・パラメターの時系列的変化に対して、イベント・スタディを適用することで、さまざまな歴史的イベントが家計行動規範に及ぼす影響を明らかにすることができる。この分析によって、政治的・社会的要因が経済活動に及ぼす影響を定量的に検証することが可能となり、国や地域による家計行動の異質性(同質性)を理解するための足がかりとなることが期待される。属性別のイベント・スタディも重要な成果をもたらすはずである。行動規範の決定要因(イベント)について、属性による異質性が明らかとなれば、家計行動に関わる将来予測、政策効果の分析に限らず、マーケティング分野や投票行動分析など隣接他分野への応用も可能となる。本研究は、まず状態空間モデルによってディープ・パラメターの変化を定量化し、次にイベント・スタディによってその変化と特定のイベントを関連付け、家計の行動規範の決定要因を明らかにすることを目的にしている。前年度までの作業によって得られたディープ・パラメターとイベント・データを用いて、集計された家計行動のイベント・スタディを行い、ディープ・パラメターの変動要因を明らかにした。また、ディープ・パラメターの時変推定についても更新作業を行った。これらの分析を通じて,より説明力の高い関数型を特定化することができた。さらに,ディープ・パラメターとイベントのデータ・セットを用いて、属性別で家計行動規範のイベント・スタディを行い、各属性のディープ・パラメターの変動要因を特定化した。方法論は集計された家計のケースと同様であり、前段階の分析結果が大いに活用された。とりわけ,イベントとして消費税の増税が行われたことは,本研究にとってたいへん幸運であった。家計にとって重要なイベントと考えられる消費税の変化によりディープ・パラメターがどのように変動するのかを詳細に検討することが可能になったからである。 | KAKENHI-PROJECT-24653049 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24653049 |
状態空間モデルによる家計行動規範の定量化とイベント・スタディによる要因分析 | 分析結果によると,消費税増税は家計の期待形成に甚大な影響を及ぼしていると考えられる。また,所得階層別に見ると,その影響は階層毎に大きく異なっている可能性がある。この結果は概ねロバストと考えられるが,現在急ピッチで最終確認を行っているところである。公共経済学家計の消費・貯蓄行動についてモデルを特定化し、状態空間モデルを適用してディープ・パラメターの経時的変化を明らかにした。この推定によって、一般には安定的と考えられているディープ・パラメターが経時的に変動する可能性を示した。家計行動に関係があると思われる歴史的イベント(例:オイルショック、バブル崩壊など)について整理し、ダミー変数化されたデータ・セットを作成した。推定されたディープ・パラメターの変化と歴史的イベントデータを突き合わせ、イベント・スタディによって検討し、その時間的変動要因を明らかにする段階にも達した。残る課題は説明力の向上である。家計の消費・貯蓄行動についてモデルを特定化し、状態空間モデルを適用してディープ・パラメターの経時的変化を明らかにした。また、集計データに加えて、生まれ年や年齢、性、居住地域などの属性別にも推定を行い、属性による変化の違いを明らかにした。この推定によって、一般には安定的と考えられているディープ・パラメターが経時的に変動する可能性を示した。また、その変動要因として家計の行動規範を考える点に本研究の斬新さがある。このようなアプローチにより標準的な経済モデルに行動経済学の知見を取り込むことが可能となった。家計行動に関係があると思われる歴史的イベント(例:オイルショック、バブル崩壊など)について整理し、ダミー変数化されたデータ・セットを作成することについては作業が完了していない。推定されたディープ・パラメターの変化をイベント・スタディによって検討し、その時間的変動要因を明らかにすることも今後の課題である。イベント・データを拡充し、モデルの説明力向上を企図する。データのアップデートに対して、モデルの説明力が頑健か否かも検討課題である。学会発表、論文発表についても検討する。推定作業と並行して、歴史的イベントを表すダミー変数セットの作成を行う。新聞記事検索や既存のデータベース検索によって主要なイベントは網羅できると考えられるが、古いイベントについては参考資料のコピー作業が必要になる可能性がある。また、研究代表者が取捨選択したイベントについて、ダミー変数化を施して表計算ソフトの形式で入力作業を行うことが必要となる。次に、初年度に得られたディープ・パラメターを用いて、集計された家計行動のイベント・スタディを行い、ディープ・パラメターの変動要因を明らかにする。分析の成否は、高い説明力を有するイベントを探し出せるか否かにかかっている。故に、初年度に作成したデータ・セットに加えて、説明力向上のためにイベントの追加や更新が必要となる可能性が高い。 | KAKENHI-PROJECT-24653049 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24653049 |
光・電子機能を有する高分子液晶複合材料の開発 | 液晶性を発現する高分子として主鎖形高分子液晶、側鎖型高分子液晶に大きく2つに分類できる。種々の機能性基を導入するには側鎖型高分子液晶が容易であり、本研究では、液晶性を発現するメソゲンとしてシアノビフェニル基を用い、側鎖とメソゲン基の間のスペーサーとしてヘキサメチレンから成るアクリレート系側鎖型高分子液晶に、光および電子機能性基としてビピリジン基を有するモノマーを共重合させた。ビピリンジン基を有するコモノマーはp-クロロメチルスチレンにN-プロピルビピリジニウムブロミドを反応することで合成した。シアノビフェニルを側鎖に有するホモポリマーは液晶相としてスメクチック相、ネマチック相を示した。このホモポリマーにビピリジン化合物を単にドープした時にはわずか1mol%のドープ量においても相分離が起こり、均一な液晶状態を得ることができなかった。ビピリジンコモノマーをシアノビフェニルコモノマーと共重合したところ、シアノビフェニルのホモポリマーで観察されたスメクチック相が消失し、液晶相としてネマチック相のみが発現した。この高分子液晶のネマチック相から等方相への相転移温度は分子量、ビピリジン基の共重合量などに大きく依存することが明らかとなった。液晶性を発現する高分子として主鎖形高分子液晶、側鎖型高分子液晶に大きく2つに分類できる。種々の機能性基を導入するには側鎖型高分子液晶が容易であり、本研究では、液晶性を発現するメソゲンとしてシアノビフェニル基を用い、側鎖とメソゲン基の間のスペーサーとしてヘキサメチレンから成るアクリレート系側鎖型高分子液晶に、光および電子機能性基としてビピリジン基を有するモノマーを共重合させた。ビピリンジン基を有するコモノマーはp-クロロメチルスチレンにN-プロピルビピリジニウムブロミドを反応することで合成した。シアノビフェニルを側鎖に有するホモポリマーは液晶相としてスメクチック相、ネマチック相を示した。このホモポリマーにビピリジン化合物を単にドープした時にはわずか1mol%のドープ量においても相分離が起こり、均一な液晶状態を得ることができなかった。ビピリジンコモノマーをシアノビフェニルコモノマーと共重合したところ、シアノビフェニルのホモポリマーで観察されたスメクチック相が消失し、液晶相としてネマチック相のみが発現した。この高分子液晶のネマチック相から等方相への相転移温度は分子量、ビピリジン基の共重合量などに大きく依存することが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-05750789 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05750789 |
東京湾水系の水域変化に関する歴史自然地理学的研究 | 本研究は、首都東京の基盤を構成する東京湾岸および、そこへ流入する江戸川(古利根川)・荒川などの河川と、その流域である東京低地の先史・歴史時代の水域環境の変化を解明することを目的として行なった。本研究では微地形分布をもとに、既住の地図から江戸時代以降の地形の人工改変を求め、考古・歴史資料もあわせて検討し、最近2000年間の東京低地の地形・水域環境の復原を試みた。そして、縄文海進以降の東京低地の水域と地形の変遷を、1)古墳・奈良時代、2)中世、3)江戸時代後期、4)現代というように時代ごとに地図で示した。1)古墳時代頃には東京低地の中央部に海域が残っていた。周囲の微高地には集落が立地し、墳墓などもつくられた。2)中世の東京低地は利根川下流平野として武蔵・下総国境地帯をなし、沼沢地やラグ-ンが随所にみられる未開発の低湿地帯であった。3)近世以降、利根川・荒川水系の瀬替え、海岸の千拓、運河の整備、低湿地の開発などが大規模に行なわれるようになった。4)現代の東京低地は「近代化」の結果、放水路の開削、埋立地の拡大、ゼロメ-トル地帯の出現などの地形・水域の人工改変が大きなウエ-トを占めるようになった。その反面、用排水路網や運河などは縮小された。東京低地では縄文時代以降現代に至るまで河川・海域などの水域環境は常に変化し続けてきた。地形・水域を変化させる主体は、海水準変化や利根川水系の河道変遷などの自然的要因から、近年の人為によるものへと急速に交代した。今後も環境の変化と人類の生活との対応が考慮されるべきであろう。本研究は、首都東京の基盤を構成する東京湾岸および、そこへ流入する江戸川(古利根川)・荒川などの河川と、その流域である東京低地の先史・歴史時代の水域環境の変化を解明することを目的として行なった。本研究では微地形分布をもとに、既住の地図から江戸時代以降の地形の人工改変を求め、考古・歴史資料もあわせて検討し、最近2000年間の東京低地の地形・水域環境の復原を試みた。そして、縄文海進以降の東京低地の水域と地形の変遷を、1)古墳・奈良時代、2)中世、3)江戸時代後期、4)現代というように時代ごとに地図で示した。1)古墳時代頃には東京低地の中央部に海域が残っていた。周囲の微高地には集落が立地し、墳墓などもつくられた。2)中世の東京低地は利根川下流平野として武蔵・下総国境地帯をなし、沼沢地やラグ-ンが随所にみられる未開発の低湿地帯であった。3)近世以降、利根川・荒川水系の瀬替え、海岸の千拓、運河の整備、低湿地の開発などが大規模に行なわれるようになった。4)現代の東京低地は「近代化」の結果、放水路の開削、埋立地の拡大、ゼロメ-トル地帯の出現などの地形・水域の人工改変が大きなウエ-トを占めるようになった。その反面、用排水路網や運河などは縮小された。東京低地では縄文時代以降現代に至るまで河川・海域などの水域環境は常に変化し続けてきた。地形・水域を変化させる主体は、海水準変化や利根川水系の河道変遷などの自然的要因から、近年の人為によるものへと急速に交代した。今後も環境の変化と人類の生活との対応が考慮されるべきであろう。 | KAKENHI-PROJECT-03227217 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03227217 |
沈降域における沖積層の発達様式 | 沈降域における沖積層の発達様式を検討するために,第四紀後期における沈降速度が国内最大級の越後平野南東部において掘削されたボーリングコア堆積物を高精度に解析した.掘削地点は能代川が形成する扇状地の末端に位置しており,海性堆積物と比べ研究例の少ない,内陸部における河川性堆積物の沈降への応答を検討するのに適している.ボーリングコア堆積物は,新潟県五泉市中野地区の標高10mの地点において,二重管コアパックサンプラーを掘削され,コア長は40mである.コア堆積物は半裁したのち,肉眼と軟エックス線写真を用いて岩相と生物化石相を詳細に観察し,コア堆積物から採取した合計13試料の植物遺体についてAMS、法により放射性炭素年代を測定した.コア堆積物は,下位より氾濫原性砂泥互層(深度:3722m),河川チャネル性砂層(深度:2215m),塩水湿地性泥層(深度:159m),現世河川性堆積物(深度9m地表面)に区分される.採取した植物遺体は96105400calBPの放射性炭素年代値を示しており,地表面を1950calBPと仮定した場合,上記堆積物の堆積速度はそれぞれ0.68m/100yr,1.81m/100yr,0.19m/100yr,>0.02m/100yrである.コアサイトにおける堆積環境は氾濫原性堆積物(約10000年前)から塩水湿地性堆積物(約7000年前)にかけて上方深海化しており,堆積速度や河川勾配も塩水湿地性堆積物の堆積開始時期から鈍化・低下している.コアサイトにおけるこれら堆積相・堆積速度・河川勾配の垂直変化は完新世における海水準変動とおおよそ対応していると考えられる.また,堆積曲線と海水準変動曲線との対比から完新世における5m以上の累積沈降が指摘できる.急速に堆積した河川チャネル性砂層は地震や洪水に伴うイベント堆積物である可能性がある.沈降域における沖積層の発達様式を検討するために,第四紀後期における沈降速度が国内最大級の越後平野南東部において掘削されたボーリングコア堆積物を高精度に解析した.掘削地点は能代川が形成する扇状地の末端に位置しており,海性堆積物と比べ研究例の少ない,内陸部における河川性堆積物の沈降への応答を検討するのに適している.ボーリングコア堆積物は,新潟県五泉市中野地区の標高10mの地点において,二重管コアパックサンプラーを掘削され,コア長は40mである.コア堆積物は半裁したのち,肉眼と軟エックス線写真を用いて岩相と生物化石相を詳細に観察し,コア堆積物から採取した合計13試料の植物遺体についてAMS、法により放射性炭素年代を測定した.コア堆積物は,下位より氾濫原性砂泥互層(深度:3722m),河川チャネル性砂層(深度:2215m),塩水湿地性泥層(深度:159m),現世河川性堆積物(深度9m地表面)に区分される.採取した植物遺体は96105400calBPの放射性炭素年代値を示しており,地表面を1950calBPと仮定した場合,上記堆積物の堆積速度はそれぞれ0.68m/100yr,1.81m/100yr,0.19m/100yr,>0.02m/100yrである.コアサイトにおける堆積環境は氾濫原性堆積物(約10000年前)から塩水湿地性堆積物(約7000年前)にかけて上方深海化しており,堆積速度や河川勾配も塩水湿地性堆積物の堆積開始時期から鈍化・低下している.コアサイトにおけるこれら堆積相・堆積速度・河川勾配の垂直変化は完新世における海水準変動とおおよそ対応していると考えられる.また,堆積曲線と海水準変動曲線との対比から完新世における5m以上の累積沈降が指摘できる.急速に堆積した河川チャネル性砂層は地震や洪水に伴うイベント堆積物である可能性がある. | KAKENHI-PROJECT-04J02644 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04J02644 |
地区レベルの環境計画のための住民意向反映手法に関する研究 | 地区レベルでの環境計画は、居住環境に対する住民の評価や計画参加意欲を的確にとらえ、住民参加を通して行う必要がある。本年度はまず昨年度提案した住民の環境保全行動の行動モデルにもとづき調査結果を分析した。また、住民への情報提供方法を提案するために住民の意識や評価の変動過程に着目して繰返しアンケート調査を行った。さらに、昨年度のスライド写真を用いた街並評価手法の妥当性と限界について実験を行った。1)居住環境計画のための住民参加システムの持つべき条件の整理環境保全行動のメカニズムを明らかにするため、住民属性との関係について調査した。さらに実際の環境計画対象地区での地域住民の環境保全行動をみるために、不燃化まちづくり計画対象地区での調査を行った。これらの調査により、居住環境計画における住民参加システムは、どの地区にも一様なものが存在するのではなく住民の居住環境保全行動のメカニズムが十分考慮されなければならないことがわかった。2)住民意識の変動過程に関する調査環境計画を進めるにあたって、計画内容、実施方法、および計画の評価方法等を住民が学習する必要があるとき、どんな形で住民に情報を与えたらよいかについて一連の実験を行った。この結果、住民に情報を「構造化された情報」の形で与えた方が理解の深まることが示された。また、行政は専門家、住民とのシンポジウムのような会議形式での情報交流を積極的に行うことによって、住民の街づくりへの参加意欲を増大させることができる。3)定量的評価手法の改善点抽出のための手法比較の予備実験スライドを用いた10点法による評価において一次元尺度評価の可能性、およびこの方法の限界ついて検討した。一次元評価の可能性は一対比較法による評価結果の矛盾数の検討により可能であると結論できた。スライド写真評価の限界については、評価主体によって評価能力の差が生じるので評価主体選択の必要性があることがわかった。地区レベルでの環境計画は、居住環境に対する住民の評価や計画参加意欲を的確にとらえ、住民参加を通して行う必要がある。本年度はまず昨年度提案した住民の環境保全行動の行動モデルにもとづき調査結果を分析した。また、住民への情報提供方法を提案するために住民の意識や評価の変動過程に着目して繰返しアンケート調査を行った。さらに、昨年度のスライド写真を用いた街並評価手法の妥当性と限界について実験を行った。1)居住環境計画のための住民参加システムの持つべき条件の整理環境保全行動のメカニズムを明らかにするため、住民属性との関係について調査した。さらに実際の環境計画対象地区での地域住民の環境保全行動をみるために、不燃化まちづくり計画対象地区での調査を行った。これらの調査により、居住環境計画における住民参加システムは、どの地区にも一様なものが存在するのではなく住民の居住環境保全行動のメカニズムが十分考慮されなければならないことがわかった。2)住民意識の変動過程に関する調査環境計画を進めるにあたって、計画内容、実施方法、および計画の評価方法等を住民が学習する必要があるとき、どんな形で住民に情報を与えたらよいかについて一連の実験を行った。この結果、住民に情報を「構造化された情報」の形で与えた方が理解の深まることが示された。また、行政は専門家、住民とのシンポジウムのような会議形式での情報交流を積極的に行うことによって、住民の街づくりへの参加意欲を増大させることができる。3)定量的評価手法の改善点抽出のための手法比較の予備実験スライドを用いた10点法による評価において一次元尺度評価の可能性、およびこの方法の限界ついて検討した。一次元評価の可能性は一対比較法による評価結果の矛盾数の検討により可能であると結論できた。スライド写真評価の限界については、評価主体によって評価能力の差が生じるので評価主体選択の必要性があることがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-60035022 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60035022 |
沖縄近代文学の総合的研究 | 「沖縄近代文学の総合的研究」の課題で, 62,63, 64年度の三ヶ年にわたって明治・大正・昭和期に発刊された新聞・雑誌資料の収集,整理を当初計画し申請したが, 62年度一年に限っての研究助成補助しか許可されなかったことにより,当初の課題を変更,一年間で成果可能な課題「戦後沖縄文学の出発」に研究目標をしぼった.沖縄は,地上戦によって壊滅し,さらに異民族の統治下に置かれるという特殊な状況の現出によって混乱期がかなり長く続くが,その中でいち早く復活したのが出版ジャーナリズムであったことは本土と同じであり,昭和20年7月には『うるま新報』が刊行されている.8月15日の終戦を迎えないうちに沖縄はすでに占領下におかれていたことをそれをよく示すものであったが,同紙に24年頃から「心音」欄が設けられ,また沖縄文芸家協会設立の動き等もあり,にわかに文芸活動が活気を帯びてくる.しかし,戦後の表現活動は,「心音」欄が設けられたことによって始まるのではなく,すでに捕虜収容所内で発刊された『沖縄新聞』にみられる短歌・俳句などがあったが,それは主に,他府県出身の兵士たちの表現になるものであった.『うるま新報』の発刊によって,その後さまざまな出版ジャーナリズムが勢いをとり戻し始め,その主なものに『うるま春秋』『月刊タイムス』等がみられる.それらの雑誌は,懸賞作品募集等を積極的に行ない,戦後の沖縄文学の復活に重要な役割りを果たすものとなっていく.また二誌に掲載された山城正忠の「香扇抄」,太田良博「黒ダイヤ」等は,沖縄の戦後文学の出発を告げた重要な作品として取り上げることができる.それらは極めて戦後的特色の濃い作品であるだけでなく,大家の復活と,新人の登場という,時代の推移をまざまざと語るものともなっている.その時期を沖縄戦後文学の第一期出発期としてみることが出来る.「沖縄近代文学の総合的研究」の課題で, 62,63, 64年度の三ヶ年にわたって明治・大正・昭和期に発刊された新聞・雑誌資料の収集,整理を当初計画し申請したが, 62年度一年に限っての研究助成補助しか許可されなかったことにより,当初の課題を変更,一年間で成果可能な課題「戦後沖縄文学の出発」に研究目標をしぼった.沖縄は,地上戦によって壊滅し,さらに異民族の統治下に置かれるという特殊な状況の現出によって混乱期がかなり長く続くが,その中でいち早く復活したのが出版ジャーナリズムであったことは本土と同じであり,昭和20年7月には『うるま新報』が刊行されている.8月15日の終戦を迎えないうちに沖縄はすでに占領下におかれていたことをそれをよく示すものであったが,同紙に24年頃から「心音」欄が設けられ,また沖縄文芸家協会設立の動き等もあり,にわかに文芸活動が活気を帯びてくる.しかし,戦後の表現活動は,「心音」欄が設けられたことによって始まるのではなく,すでに捕虜収容所内で発刊された『沖縄新聞』にみられる短歌・俳句などがあったが,それは主に,他府県出身の兵士たちの表現になるものであった.『うるま新報』の発刊によって,その後さまざまな出版ジャーナリズムが勢いをとり戻し始め,その主なものに『うるま春秋』『月刊タイムス』等がみられる.それらの雑誌は,懸賞作品募集等を積極的に行ない,戦後の沖縄文学の復活に重要な役割りを果たすものとなっていく.また二誌に掲載された山城正忠の「香扇抄」,太田良博「黒ダイヤ」等は,沖縄の戦後文学の出発を告げた重要な作品として取り上げることができる.それらは極めて戦後的特色の濃い作品であるだけでなく,大家の復活と,新人の登場という,時代の推移をまざまざと語るものともなっている.その時期を沖縄戦後文学の第一期出発期としてみることが出来る. | KAKENHI-PROJECT-62510239 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62510239 |
超伝導砥粒を用いた磁気援用選択加工技術に関する研究 | 本研究では超伝導によるマイスナー効果やピンニングヒ効果のより永久磁石を空中にトラップし,磁気浮上工具による加工法を考案した.本研究は,申請時に提案した超伝導粉体を磁場中にフィールドクールで磁化させ,超伝導粉体を磁場により加速させてサンドブラスト加工をする手法を想定していた.しかしながらワークを液体窒素に冷却する制約から,逆に磁石を浮上させれば常温で加工可能である点に注目し,本手法の着想を得た.この磁気浮上工具が利用可能であれば工具の干渉自体が低減可能となり,中空加工などへの応用が期待できる.ここでは磁気浮上工具を回転および並行運動させるために永久磁石の極性の最適化を行なった.本研究の目的は超伝導物質を超伝導コイルの中で冷却し着磁させることで生じる強磁力を援用した研磨微粒子とし,ナノレベルでの3次元微細構造を実現することである.これらの技術を確立するため,本年度はピンニング効果を利用した超伝導加工法を新規に考案し,これらの加工法に関する理論的考察や簡易実験装置による切削性能評価を行なった.その結果,ピン二ング効果により加工工具を空中でトラップし,回転および振動させることにより,銅基板により切削痕が確認することができた.具体的な内容としては下記のとおりである.超伝導加工法に関して,本研究では大きく2つの方法を考案した.1つ目の方法としては加工工具としての超伝導粒子の下部に電磁石などの巨大磁石を設置したあと,フィールドクールで超伝導微粒子を磁化させ,電磁石による磁界で超伝導微粒子をトラップし運動させることを特徴としている.この手法では加工部分を超伝導臨界温度以下に冷却を維持させる必要があるものの電磁石による磁界を変化させることにより,トラップされた超伝導微粒子の運動を制御することが可能である.一方,2つ目の方法は加工工具としては磁石粒子を用い,その下部に超伝導バルクを設置することを特徴としている.磁石粒子の運動は,超伝導バルク自体を回転,振動させることにより加工を行う.この方法では電磁石のように磁界を変化させることは困難であるが,常温で加工できることを特長としている.本研究では後者の常温での加工可能であることに着眼し,磁場勾配による力に関する理論的な解析を行うとともに,こられの計算結果を参考に実際に簡易加工装置を製作し,原理検証をおこなった.加工用微粒子しては切削性能を向上させるため,磁性粒子の外周部にダイヤモンド粒子を固定したシェル構造を採用している.現在,銅板により切削加工の原理検証を行い,特許の出願手続きを進めている.本研究の目的は超伝導物質を超伝導コイル中で冷却し着磁し,強磁力を援用により微粒子の運動を制御することで,ナノレベルでの3次元微細構造を実現させることである.そのため,当初に考案した電磁石上に超伝導微粒子を空中に保持した状態で超伝導転移温度以下に冷却する方式と超伝導バルク上に磁性微粒子を空中で一定の位置で保持させることを特徴とする2つの方式を考案した.前者の方式では加工雰囲気が液体窒素温度であることや超伝導粒子の粒子径を小さくした際の保持力が低下により,加工材料や加工寸法の制約や微細化による加工効率の低下が課題となった.一方,後者の方式では常温で加工が可能であることが最大のメリットである.したがって,本研究では加工材料や加工寸法の制約や加工液などの併用も考慮し,後者の方式を採用した.実施内容としては昨年度より専用の簡易加工装置を製作し,原理検証を行った.その結果,工具を保持した磁性体を超伝導バルクにより浮上させ,超伝導バルクにより磁性体を回転や振動運動を行うことで,従来加工技術では困難とされてきた中空加工が実現可能となった.具体的には金型製作で使用される発泡スチロール中に磁性体工具を水平方向や垂直方向に運動させることで,磁性体の運動軌跡を反映した中空加工を行った.ここでは磁場勾配による解析結果から,磁性体における極性の配置が重要であることを確認した.さらに本研究では複数の磁性微粒子を浮上させた状態で,磁性微粒子間の磁力により引力や反発をさせることで,超伝導バルクからの保持力以外の力を併用することも想定している.今後の研究としては,実際に磁場勾配と磁性微粒子の関係から磁性微粒子の運動形態と実験における効果を引き続き検証により磁性体の運動制御技術の確立や,より高い保持力が可能な超伝導物質を適用することで,3次元加工を中空かつ微細で実現可能な新規技術へと発展させていきたい.当初の計画において超伝導物質を工具として想定していたが,常温で切削および研磨が可能な磁性体を浮上させる方式へ変更した.本研究において,おおむね順調に進展していると判断した点については,当初の計画では超伝導微粒子を磁場勾配により運動制御を行うことで3次元かつ微細加工を実現可能にする内容であったが,研究過程で磁性体を超伝導バルクにより空中に保持させ,回転および振動運動により加工を行う方式を考案し,従来では工具の干渉などにより困難とされてきた3次元の中空加工が常温で実現可能になった点を考慮した.ここでは超伝導バルクの回転運動や振動運動により磁性体を追従させること特徴としているが,その際磁性体の磁極配置が重要となる.ここでは研究分担者の小田部氏により,磁性磁場勾配の理論的な解析を行うことで,磁極の配列に関する検討を行った.そのため,磁性体が十分に加工可能な駆動力を発生することが可能となった. | KAKENHI-PROJECT-26630029 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26630029 |
超伝導砥粒を用いた磁気援用選択加工技術に関する研究 | ただし,磁性体粒子の運動における加工時に発生する力の影響など当初想定できなかった課題もあるため,超伝導援用加工技術を基盤技術へ発展させるには今後引き続き加工条件に対する磁性体および磁性微粒子の制御方法に関しては研究を進めていく必要がある.また,昨年度より加工工具としては磁性体上にセラミック砥粒を保持したシェル構造や切削刃を保持した切削工具を採用してきた.その他にも,ポリシングパッドに研削用および化学的機械的研磨用(CMP)用の加工液を用いた表面研磨に関する評価も行った.ここでは,現時点では十分な考察までは至っていないものの加工液を用いることにより,複雑な形状に対する表面研磨への可能性が示唆されている.そのため,当初の計画とは変更はあるもの3次元複雑形状に対する表面研磨技術への道筋をつけることができた.本研究では,当初申請時に考案した超伝導粉体をフィールドクールで磁化し,磁場により粉体を加速させブラスト加工により金属表面を選択的に加工する手法を想定していた.ここでは加工対象物を液体窒素に冷却する必要もあり,用途も限定的であったが,研究を進展させる間にマイスナー効果やピンニング効果などの超伝導現象を利用した磁気浮上工具による加工法を考案した.本手法の特徴としては,超伝導バルクにより空中トラップした磁石を超伝導体とともに回転及び並行させることにより常温で加工を行なうことや,工具の干渉を低減が可能であるため中空加工への適用が期待できる.研究の内容としては,加工に必要な力(ピンニング効果によって発生する力.以下保持力とする)と工具形状の関係について検討するため,研磨技術に適用可能な保持力の計測を行い,研削実験を行った.超伝導バルクとしては,YBCOを用いた.保持力を考察するにあたり,鉛直方向,水平方向,回転軸方向の力に分け,それぞれの力を引力,復元力,駆動力と定義し,磁石のトラップの高さと力の関係について評価した.ここでは実験で得られた測定結果と磁気勾配によるシミュレーションの計算結果を比較検討も行なった.ここで得られた傾向としては,超伝導現象による反発力が最も高く,超伝導バルクと磁石の距離が近いほど増加する.また,引力,復元力,そして駆動力に関しては,距離の増加とともに大きくなり,ある一定以上の距離では定常状態となる.そして,それ以上間隔を大きくするとトラップから開放される.そのため,超伝導援用加工法の適用には,超伝導バルクと磁石との間隔を維持させる必要がある.現在,専用の工具を作製し,研削加工の性能評価を実施している.ここでは,40番のやすりとSuba600の2層構造の工具を考案し,アルミ板,銅板に関する実証評価を行なっている.本研究では超伝導によるマイスナー効果やピンニングヒ効果のより永久磁石を空中にトラップし,磁気浮上工具による加工法を考案した.本研究は,申請時に提案した超伝導粉体を磁場中にフィールドクールで磁化させ,超伝導粉体を磁場により加速させてサンドブラスト加工をする手法を想定していた.しかしながらワークを液体窒素に冷却する制約から,逆に磁石を浮上させれば常温で加工可能である点に注目し,本手法の着想を得た.この磁気浮上工具が利用可能であれば工具の干渉自体が低減可能となり,中空加工などへの応用が期待できる.ここでは磁気浮上工具を回転および並行運動させるために永久磁石の極性の最適化を行なった.現在までの達成度としては,一部研究方針に変更はあったもののおおむね予定通り進捗している. | KAKENHI-PROJECT-26630029 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26630029 |
「ポスト冷戦時代に於ける米国の国連平和維持活動政策の変貌:最近の3つの地域紛争を中心にして」 | 本研究においては、米ソ冷戦の終結及び米国のヘゲモニ-の動揺という国際的文脈の中で、冷戦時代副次的重要性した持たなかった国連平和維持活動(以下、PKO)が米国の安全保障・外交政策の中でいかなる位置を占めるに至ったのかといった問題を3つの地域紛争を中心に取り上げて考察している。周知の通り、米国がポスト冷戦時代の地域紛争解決のために国連を積極的に活用しようとのスタンスを米国が初めて示したのは、1990年の湾岸戦争においてであった。これ以降、ガリ事務総長の『平和への課題』と米国の積極的コミットメントを背景にしてPKOはその数、規模、予算、任務において飛躍的発展を遂げることになる。クリントン政権でも、"人道的介入"をスローガンにしたソマリア内戦における大規模な軍事行動、旧ユ-ゴスラビア内戦におけるNATOを中心とした強硬姿勢に代表されるように、PKO重視の外交理念は継承されていくように思われた。しかしながら、わずか数年の間にPKOの持つ地域紛争解決能力の持つ限界が徐々に明らかになる一方で、PKO関連経費が飛躍的に増大し、米国人要員の犠牲者の数も増加するという諸事情により、米国はPKO任務半ばのソマリアからの米国部隊を撤退させ、同国会議でも「PKO支出削減法案」が提出されるといった具合に、自らのPKOに対するコミットメントの"選択性"を徐々に明確化していくことになる。これにより、ガリ事務総長の野心的な平和維持構想は大きな修正を余儀無くされるに至るのである。本研究においては、米ソ冷戦の終結及び米国のヘゲモニ-の動揺という国際的文脈の中で、冷戦時代副次的重要性した持たなかった国連平和維持活動(以下、PKO)が米国の安全保障・外交政策の中でいかなる位置を占めるに至ったのかといった問題を3つの地域紛争を中心に取り上げて考察している。周知の通り、米国がポスト冷戦時代の地域紛争解決のために国連を積極的に活用しようとのスタンスを米国が初めて示したのは、1990年の湾岸戦争においてであった。これ以降、ガリ事務総長の『平和への課題』と米国の積極的コミットメントを背景にしてPKOはその数、規模、予算、任務において飛躍的発展を遂げることになる。クリントン政権でも、"人道的介入"をスローガンにしたソマリア内戦における大規模な軍事行動、旧ユ-ゴスラビア内戦におけるNATOを中心とした強硬姿勢に代表されるように、PKO重視の外交理念は継承されていくように思われた。しかしながら、わずか数年の間にPKOの持つ地域紛争解決能力の持つ限界が徐々に明らかになる一方で、PKO関連経費が飛躍的に増大し、米国人要員の犠牲者の数も増加するという諸事情により、米国はPKO任務半ばのソマリアからの米国部隊を撤退させ、同国会議でも「PKO支出削減法案」が提出されるといった具合に、自らのPKOに対するコミットメントの"選択性"を徐々に明確化していくことになる。これにより、ガリ事務総長の野心的な平和維持構想は大きな修正を余儀無くされるに至るのである。 | KAKENHI-PROJECT-06720053 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06720053 |
抗がん剤結合PIポリアミドによる抗腫瘍効果の高い放射線増感剤の開発 | 本研究では、核DNAに配列特異的に結合する性質を持つPIポリアミド分子に対し、既存の抗がん剤であるアルキル化剤chlorambucil (ChB)や白金製剤cisplatinの類似白金錯体(Pt)を結合したPIP-ChBおよびPIP-Ptを合成し、放射線照射による核DNA損傷を低濃度で効率的に増強させる放射線増感剤の開発を試みる。さらに腫瘍細胞におけるゲノム増幅が報告されている癌遺伝子のDNA配列を認識するPIP-ChBやPIP-Ptを設計し、増幅細胞株でより強力に放射線増感効果を示すか検討する。既に放射線増感効果が知られている抗がん剤cisplatin類似化合物である白金錯体(Pt)をPIポリアミドに結合させたPIP-Ptも同様に複数合成しており、その作用を検討している。PIP-ChBやPIP-Ptを摂取させた培養腫瘍細胞にX線を照射して放射線増感効果を検証している。合成した各PIP-ChB、PIP-Ptを1pMから10nMの範囲で腫瘍細胞に投与し24時間後に1Gyから10Gyの範囲のX線を照射している。X線照射は日立X線照射装置(MBR-1520R-3)を用いて行っている。放射線増感効果はWST法による細胞生存率の評価とColony formation assayによるコロニー形成能力の評価により確認している。確認するタイミングはX線照射後24時間から2週間まで継続的に細胞状態を観察し最適なタイミングを検討中である。化合物非投与群を陰性コントロールとし、加えて既存の抗がん剤chlorambucilやcisplatinそのものの放射線増感効果と比較している。用いる細胞株は臨床の現場で一般的に放射線治療が行われているヒト子宮頸癌や乳癌、肺癌由来の腫瘍細胞株を用いている。合成した各PIP-ChB、PIP-Ptを1pMから10nMの範囲で腫瘍細胞に投与し1Gyから10Gyの範囲のX線を照射している。X線照射は日立X線照射装置(MBR-1520R-3)を用いて行っている。放射線増感効果はWST法による細胞生存率の評価とColony formation assayによるコロニー形成能力の評価により確認している。化合物非投与群を陰性コントロールとし、加えて既存の抗がん剤chlorambucilやcisplatinそのものの放射線増感効果と比較している。用いる細胞株は臨床の現場で一般的に放射線治療が行われているヒト子宮頸癌や乳癌、肺癌由来の腫瘍細胞株を用いている。既存の抗がん剤cisplatinの希釈溶媒である生理食塩水でPIP-Ptが希釈されずcisplatinとPIP-Ptで希釈溶媒が異なり放射線増感効果の比較条件を検討中である。具体的な希釈溶媒の候補としてDimethyl sulfoxide(DMSO)が挙げられるがDMSOそのものに細胞毒性があることとDMSOでcisplatinが失活する可能性があり希釈条件を検討中である。希釈溶媒の候補であるDMSOでPIP-Ptは容易に希釈されることを確認した。一方cisplatinを失活させないDMSOの濃度や希釈後の保存期間について検討中である。DMSO以外にも数種類の希釈溶媒を用意しcisplatinの放射線増感効果を最も確認できた希釈溶媒を使用する予定である。さらに既に合成済みのPIP-ChB、PIP-Ptに加え、PIポリアミドの配列を変化させたPIP-ChB、PIP-Ptを合成中である。合成はペプチド合成機PSSM8を用いて行い、HPLCによる精製、質量分析機による分子量の確認後、実験に用いる。既に放射線増感効果が知られている抗がん剤シスプラチン類似化合物である白金錯体(Pt)をPIポリアミドに結合させたPIP-Ptを2種類合成しその作用を検討している。水酸基が結合した31-HというPIP-Ptとメチル基が結合した31-MeというPIP-Ptおよびシスプラチンを子宮頸癌細胞株HeLaに投与して放射線増感効果を検討している。PIP-Ptおよびシスプラチンを1pMから10nMの範囲でHeLa細胞に投与した後に1Gyから10Gyの範囲のX線を照射している。X線照射は日立X線照射装置(MBR-1520R-3)を用いて行っている。放射線増感効果はWST法による細胞生存率の評価とColony formation assayによるコロニー形成能力の評価により確認している。またPIP-Ptおよびシスプラチンの増殖抑制効果を検討するために先に1Gyから10Gyの範囲でHeLa細胞にX線を照射しその後1pMから10nMの範囲でPIP-Ptおよびシスプラチンを投与してWST法による細胞生存率の評価とColony formation assayによるコロニー形成能力の評価を行っている。現在はPIP-Ptの最も効果的なX線照射とのタイミングについてPIP-Pt投与前日から投与翌日2日後3日後にX線照射を行い検討している。またX線照射からWST法による細胞生存率の評価までのタイミングについてX線照射翌日2日後3日後にWST法を行い検討している。今後はシスプラチン同様に核DNA損傷を誘発する抗がん剤のアルキル化剤chlorambucilの結合したPIポリアミドPIP-ChBについても同様の実験を行う予定である。コントロールとしての既に放射線増感効果が知られている抗がん剤シスプラチンの放射線増感効果の最も効果的な腫瘍細胞への投与量と投与とX線照射のタイミングが確立されていない。シスプラチンを1pMから10nMの範囲でHeLa細胞に投与した後に1Gyから10Gyの範囲のX線を照射している。 | KAKENHI-PROJECT-17K16488 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K16488 |
抗がん剤結合PIポリアミドによる抗腫瘍効果の高い放射線増感剤の開発 | 放射線増感効果はWST法による細胞生存率の評価とColony formation assayによるコロニー形成能力の評価により確認している。1Gyから10GyのX線の照射のみによる細胞生存率の低下は確認されている。シスプラチン投与によりX線照射なしでも細胞生存率の低下は確認されている。そこでシスプラチンの投与量を減らしそれのみでは細胞生存率が低下しないがシスプラチン投与とX線照射により細胞生存率が低下する投与量と投与とX線照射のタイミングを検討中である。本研究では、核DNAに配列特異的に結合する性質を持つPIポリアミド分子に対し、既存の抗がん剤であるアルキル化剤chlorambucil (ChB)や白金製剤cisplatinの類似白金錯体(Pt)を結合したPIP-ChBおよびPIP-Ptを合成し、放射線照射による核DNA損傷を低濃度で効率的に増強させる放射線増感剤の開発を試みる。さらに腫瘍細胞におけるゲノム増幅が報告されている癌遺伝子のDNA配列を認識するPIP-ChBやPIP-Ptを設計し、増幅細胞株でより強力に放射線増感効果を示すか検討する。既に放射線増感効果が知られている抗がん剤cisplatin類似化合物である白金錯体(Pt)をPIポリアミドに結合させたPIP-Ptも同様に複数合成しており、その作用を検討している。PIP-ChBやPIP-Ptを摂取させた培養腫瘍細胞にX線を照射して放射線増感効果を検証している。合成した各PIP-ChB、PIP-Ptを1pMから10nMの範囲で腫瘍細胞に投与し24時間後に1Gyから10Gyの範囲のX線を照射している。X線照射は日立X線照射装置(MBR-1520R-3)を用いて行っている。放射線増感効果はWST法による細胞生存率の評価とColony formation assayによるコロニー形成能力の評価により確認している。確認するタイミングはX線照射後24時間から2週間まで継続的に細胞状態を観察し最適なタイミングを検討中である。化合物非投与群を陰性コントロールとし、加えて既存の抗がん剤chlorambucilやcisplatinそのものの放射線増感効果と比較している。用いる細胞株は臨床の現場で一般的に放射線治療が行われているヒト子宮頸癌や乳癌、肺癌由来の腫瘍細胞株を用いている。合成した各PIP-ChB、PIP-Ptを1pMから10nMの範囲で腫瘍細胞に投与し1Gyから10Gyの範囲のX線を照射している。X線照射は日立X線照射装置(MBR-1520R-3)を用いて行っている。放射線増感効果はWST法による細胞生存率の評価とColony formation assayによるコロニー形成能力の評価により確認している。化合物非投与群を陰性コントロールとし、加えて既存の抗がん剤chlorambucilやcisplatinそのものの放射線増感効果と比較している。用いる細胞株は臨床の現場で一般的に放射線治療が行われているヒト子宮頸癌や乳癌、肺癌由来の腫瘍細胞株を用いている。既存の抗がん剤cisplatinの希釈溶媒である生理食塩水でPIP-Ptが希釈されずcisplatinとPIP-Ptで希釈溶媒が異なり放射線増感効果の比較条件を検討中である。 | KAKENHI-PROJECT-17K16488 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K16488 |
短時間測定法による過冷却液体中のイオン反応の研究 | (1).過冷却液体におけるイオンのトンネル反応エタノ-ル中にベンゼンを添加し、電子線又は〓線を照射するとベンゼンアニオンが生成し、C_6H^-_6+C_2H_5OH→C_6H_7+C_2H_5O^-反応が起る。このプロトン移行反応は77Kで1μs以内の短時間内に起こることがパルス放射線分解法でわかった。一方C_2D_5OD(又はC_2H_5oD)を溶媒にすると77Kでは100μs後でも反応は起らない。しかし〓線照射後ESR測定をすると重水素化エタノ-ルの場合も反応が起っていることが確認された。以上の結果より、この反応の同位体効果は77Kで100倍以上である。この著しい同位体効果はトンネル効果によって反応が起るとして理論的に説明することが出来た。これまでイオン一分子反応は気相で研究され、活性化エネルギ-がなく従って同位体効果やトンネル効果は関与しないと思われていたが、低温過冷却液体中ではこの反応に48kcal/molの反応障壁があり、トンネル効果によって反応が起ることを初めて示唆した。(2).過冷却液体中のイオンの拡散挙動種々のエ-テルやアルコ-ル中に溶質を添加し、放射線照射によりアニオンやラジカルを作り、それらの拡散減衰速度の温度依存性を調べた。その結果、拡散減衰速度は簡単なアレニウス式では表わすことは出来ず、活性化エネルギ-は温度に著しく依存しDoolittle型の式で表わされることが判明した。(3).均一2相系の反応凍結生細胞に放射線照射するとOHラジカルが生成する。これまで、細胞の放射線影響では、OHラジカルの反応が重要であると思われていた。今回のOHラジカルと細胞中の有機物との反応を調べた。OHラジカルは細胞中で有機物と反応しないことが明らかになった。(1).過冷却液体におけるイオンのトンネル反応エタノ-ル中にベンゼンを添加し、電子線又は〓線を照射するとベンゼンアニオンが生成し、C_6H^-_6+C_2H_5OH→C_6H_7+C_2H_5O^-反応が起る。このプロトン移行反応は77Kで1μs以内の短時間内に起こることがパルス放射線分解法でわかった。一方C_2D_5OD(又はC_2H_5oD)を溶媒にすると77Kでは100μs後でも反応は起らない。しかし〓線照射後ESR測定をすると重水素化エタノ-ルの場合も反応が起っていることが確認された。以上の結果より、この反応の同位体効果は77Kで100倍以上である。この著しい同位体効果はトンネル効果によって反応が起るとして理論的に説明することが出来た。これまでイオン一分子反応は気相で研究され、活性化エネルギ-がなく従って同位体効果やトンネル効果は関与しないと思われていたが、低温過冷却液体中ではこの反応に48kcal/molの反応障壁があり、トンネル効果によって反応が起ることを初めて示唆した。(2).過冷却液体中のイオンの拡散挙動種々のエ-テルやアルコ-ル中に溶質を添加し、放射線照射によりアニオンやラジカルを作り、それらの拡散減衰速度の温度依存性を調べた。その結果、拡散減衰速度は簡単なアレニウス式では表わすことは出来ず、活性化エネルギ-は温度に著しく依存しDoolittle型の式で表わされることが判明した。(3).均一2相系の反応凍結生細胞に放射線照射するとOHラジカルが生成する。これまで、細胞の放射線影響では、OHラジカルの反応が重要であると思われていた。今回のOHラジカルと細胞中の有機物との反応を調べた。OHラジカルは細胞中で有機物と反応しないことが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-03231210 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03231210 |
アミロイドペプチドの凝集を規格化した細胞アッセイシステムの構築 | 高齢化社会に突入した我が国において、アミロイド病の原因物質といわれるアミロイドペプチド・タンパク質(アミロイド)に関する研究は、各方面で重要になってきている。アミロイドは自己で集合した凝集体が毒性を示したり、線維などのナノ構造体を形成したりするため、凝集体に関する研究が数多く行われている。しかしながら、凝集体の形成条件が各研究で異なっているのが現状で、アミロイド研究の進展を妨げている。本研究では、従来の手法では難しかったアミロイドの凝集プロトコルを規格化することで、いつでも誰でも同条件で、物理化学的アッセイや細胞アッセイが行えるシステムの構築を行った。高齢化社会に突入した我が国において、アミロイド病の原因物質といわれるアミロイドペプチド・タンパク質(アミロイド)に関する研究は、治療や診断といった分野はもちろん、ナノスケールの繊維や凝集体を形成することに着目したナノ材料分野など、各方面で重要になってくる。しかし、現在においてもアミロイド研究は遅々として進展しておらず、その最大の理由として、凝集体の形成条件が各研究で異なることが挙げられる。そこで本研究では、従来の手法では難しかったこれらアミロイドの凝集プロトコルを規格化することで、いつでも誰でも同条件で、物理化学的アッセイや細胞アッセイなどが行えるシステムの構築を目指す。今年度は、ペプチド合成樹脂を担体として用いた本系の構築を試みることにした。ペプチド合成樹脂を用いることにより、樹脂に直接ペプチド合成を高純度に行うことにより、固定化作業を経ずに樹脂にモノマーのまま、アミロイドを固定化することが可能となる。こうすることで、比較的難しい精製ステップを省けるほか、固定化時の凝集の懸念もなくなる。本系がうまくいくかどうか検討するために、比較的扱いやすい、アミロイドβペプチドの部分配列をモデルとして用いた。また樹脂からの切断が可能となる光切断リンカーをペプチドと樹脂間リンカーとして用い、固相合成によるペプチドの固定化とモノマー化、そして、光照射によるペプチド遊離による凝集開始が可能であるか各種実験を行った。ペプチド合成の最適化を行い、ある程度高純度にペプチドを樹脂上に配置することに成功した。次に、最適な光照射条件の検討を行った。その後、既存のモノマー化法(DMSO法)との比較を行った。その結果、既存のモノマー化法に比べて、簡便にかつ、確実にモノマー化が行えていることが判明し、さらに、モノマー化剤などが測定系に混入することなく、凝集反応が行えることがわかった。高齢化社会に突入した我が国において、アミロイド病の原因物質といわれるアミロイドペプチド・タンパク質に関する研究は、治療や診断といった分野はもちろん、ナノスケールの線維や凝集体を形成することに着目したナノ材料分野など、各方面で重要になってきている。しかし、現在においてもアミロイド研究は遅々として進展しておらず、その最大の理由として、凝集体の形成条件が各研究で異なることが挙げられる。そこで本研究では、従来の手法では難しかったこれらペプチド・タンパク質の凝集プロトコルを規格化することで、いつでも誰でも、同条件で、物理化学的アッセイや特に細胞アッセイなどが行えるシステムの構築を目指している。平成27年度は引き続きペプチド合成樹脂を担体として用いた本システムの構築を試みることにした。ペプチド合成樹脂を用いることにより、樹脂に直接、ペプチド合成を高純度に行うことにより、固定化作業を経ずに、樹脂にモノマーのまま、アミロイドを固定化することが可能となる。こうすることで、比較的難しい精製ステップを省けるほか、固定化の際の凝集の懸念もなくなる。本システムがうまくいくかどうか様々な条件を検討するために、比較的扱いやすい、アミロイドβペプチドの部分配列をモデルとして用いることにした。今回は比較的簡便に樹脂からの切断が可能となる塩基性切断樹脂を用いた。固相合成によるペプチドの樹脂上での固定化とモノマー化を行った結果、ある程度、高純度にペプチドを樹脂上に配置することが可能であった。次に、細胞アッセイが行えるよう、ペプチド樹脂自体の毒性評価を行った。その結果、毒性のあるペプチドを有する樹脂でも目立った毒性は見られなかった。さらに、高効率かつ正確に樹脂から遊離させたペプチドの細胞毒性を評価できる手法の確立も試みた。高齢化社会に突入した我が国において、アミロイド病の原因物質といわれるアミロイドペプチド・タンパク質(アミロイド)に関する研究は、各方面で重要になってきている。アミロイドは自己で集合した凝集体が毒性を示したり、線維などのナノ構造体を形成したりするため、凝集体に関する研究が数多く行われている。しかしながら、凝集体の形成条件が各研究で異なっているのが現状で、アミロイド研究の進展を妨げている。本研究では、従来の手法では難しかったアミロイドの凝集プロトコルを規格化することで、いつでも誰でも同条件で、物理化学的アッセイや細胞アッセイが行えるシステムの構築を行った。当初の予定とは異なりガラス基板ではなく、より簡便に操作もしやすい固相合成用樹脂を担体に使用するなどの予定の変更があったものの、それでも1年間で本コンセプトの有用性が証明された。既存の方法よりも確実、簡便にモノマー化できることが判明したほか、光照射によるペプチドの線維化開始も比較的短時間で行うことができ、凝集時間を実験ごとに揃えることも可能であることが示唆できた。また、線維化実験も既存の方法よりも簡便に確実に再現性良く行えることもわかった。以上の成果は、複数の学会で発表を行えたほか、本研究に関連する総説も執筆し現在発行中、また関連研究の原著論文も投稿中であり、当初予想していたものよりも多くの成果が得られた。 | KAKENHI-PROJECT-26750375 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26750375 |
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