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水車出願文書・水力発電出願文書の網羅的検索とその歴史地理学的考証
2石川県のほか東京・京都・宮城・福島・栃木など,かつて文書検索を行った諸府県の例では,水車設置の許認可権は知事にあった。そのため,すべての府県において文書管理は本庁の責任下にあるものと予測してきた。しかし、埼玉県では,明治24年8月の県令でもって水車設置の許認可権は郡役所に付託されており,また神奈川県では,明治37年3月の県令でもって,主要河川関連分だけを本庁扱いとし、他は郡役所の取扱いとしている。このような経緯もあって県当局による文書管理は疎かになったとみえ、埼玉県立文書館の関連文書は24年以後皆無となり,神奈川県立公文書館では,足柄上・津久井・高座の郡役所関係簿冊の中に,多少の関連文書を見るのみである。3水車の絶対数が他県を圧して多かった長野・岐阜・山梨・新潟の諸県では,同様に本庁の許認可業務が郡役所に分散されたものとみえ,水車設置出願文書はまとまった形で残存していない。4新潟県立文書館には水力発電出願文書が多数所蔵されているが、その中には水車場を転用しての計画いわば小水力発電関連の出願文書が,大正期昭和初期にかけて12通見出される。佐賀県立図書館には出願文書とは異質の,明治7年に長崎海軍出張所の依頼によって佐賀県が調査した,海軍向けに微発可能な精米水車場関係の一件書類が所蔵されており,目下その内容を分析中である。1平成9年度には山形(県史編さん室)、静岡(県史編さん室)、三重(県史編さん室)、千葉(県文書館)、長崎(県立長崎図書館)、広島(県立図書館)、岡山(県立図書館)、山口(県文書館)、宮崎(県立図書館)などで関係資料の検索を行った。2長崎県では明治18、3843年の合わせて7ヶ年分の水車造設廃業関連簿冊が現存し、限られた年数ながらも県全域の水車存廃の状況が明らかとなった。例えば、東彼杵群での陶石土粉砕用水車、南高来群での木蝋原料櫨実粉砕用水車の存在や、佐世保鎮守府の軍用水道敷設計画によって廃止される水車の宿命など、何れも長崎県の風土性を反映した興味深い事実である。3山形県では明治22大正13年の西村山群『土木一途』簿冊24点によって、僅かに西村山群に限り水車築設廃止状況が判明する。その用途は、概して明治期は製糸用、大正期は精米用である。4山口県に関しては、唯一、大正15昭和11年の簿冊『水車建設廃止一件』1点が現存するのみである。5その他の県においては水車設置出願・廃止届出規則が存在し、その書式も定められていながら、残念ながら文書の現物を探し出すには至らなかった。6宮崎県には多数の水力発電出願文書が保存されていて、特に大正期の電源開発の状況解明に極めて有用である。
KAKENHI-PROJECT-07458021
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07458021
訴訟上の和解における手続的規整の研究
訴訟手続において、裁判所の判決ではなく当事者の合意に基づく紛争解決を推進するのが、近時の世界的な潮流である。その代表的な方法が、判決を担当する裁判官の仲介・説得にかかる訴訟上の和解勧試であり、わが国でも盛んに行なわれている。現行法上、裁判所にはいつでも和解勧試をする裁量が与えられているが、特に最近では、弁論兼和解手続により、和解勧試と原則的な口頭弁論の境界線が不明確となり当事者への手続保障の点で問題が生じている。しかし他方で、このような和解的手続への柔軟な移行を含む積極的な訴訟運営が、訴訟の迅速化・効率化に資するものであって、実務的な要請の強いことも、無視できない。本研究では、このような手続の流動化・柔軟化傾向が、本来当事者間での自律的な交渉過程として構築されるべき和解手続への裁判所の無限定なパタ-ナリズムを許す虞れがあると考え、訴訟指揮に何らかの準則を設けるべきとの問題関心から、主としてわが国とアメリカ合衆国連邦裁判所における和解手続への裁判所の介入態様について研究を進めた。他方、当事者サイドの紛争解決ニーズを分析するために、裁判所と直接的に連携するADR(調停・仲裁)や裁判所外ADR(弁護士会主宰の仲裁センター)における手続のあり方について、各地の弁護士との意見交換を行ないリサーチに務めた。また、アメリカでは、主として訴訟の迅速化のために、訴訟手続内で判決担当裁判官以外の者が行なう仲裁・調停や略式陪審(Summary Jury Trial)といった手続が勧奨されているが、その際の裁判所の行為規範と、裁判所の介入態様のもたらす和解結果の無効可能性について提出された多くの議論・判例についても収拾を進めてきた。現時点では、これらの情報を整理・分析して一定の方向を見出そうとしている途上であるが、従来和解手続をめぐる裁判所の手続裁量を統一的に捉える視点が無かったことに鑑み、慎重な考察を加えた上で、近々に研究実績として公表する予定である。訴訟手続において、裁判所の判決ではなく当事者の合意に基づく紛争解決を推進するのが、近時の世界的な潮流である。その代表的な方法が、判決を担当する裁判官の仲介・説得にかかる訴訟上の和解勧試であり、わが国でも盛んに行なわれている。現行法上、裁判所にはいつでも和解勧試をする裁量が与えられているが、特に最近では、弁論兼和解手続により、和解勧試と原則的な口頭弁論の境界線が不明確となり当事者への手続保障の点で問題が生じている。しかし他方で、このような和解的手続への柔軟な移行を含む積極的な訴訟運営が、訴訟の迅速化・効率化に資するものであって、実務的な要請の強いことも、無視できない。本研究では、このような手続の流動化・柔軟化傾向が、本来当事者間での自律的な交渉過程として構築されるべき和解手続への裁判所の無限定なパタ-ナリズムを許す虞れがあると考え、訴訟指揮に何らかの準則を設けるべきとの問題関心から、主としてわが国とアメリカ合衆国連邦裁判所における和解手続への裁判所の介入態様について研究を進めた。他方、当事者サイドの紛争解決ニーズを分析するために、裁判所と直接的に連携するADR(調停・仲裁)や裁判所外ADR(弁護士会主宰の仲裁センター)における手続のあり方について、各地の弁護士との意見交換を行ないリサーチに務めた。また、アメリカでは、主として訴訟の迅速化のために、訴訟手続内で判決担当裁判官以外の者が行なう仲裁・調停や略式陪審(Summary Jury Trial)といった手続が勧奨されているが、その際の裁判所の行為規範と、裁判所の介入態様のもたらす和解結果の無効可能性について提出された多くの議論・判例についても収拾を進めてきた。現時点では、これらの情報を整理・分析して一定の方向を見出そうとしている途上であるが、従来和解手続をめぐる裁判所の手続裁量を統一的に捉える視点が無かったことに鑑み、慎重な考察を加えた上で、近々に研究実績として公表する予定である。
KAKENHI-PROJECT-07720028
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07720028
1990年代以降の日本の就業・失業構造の変化に関する実証分析
家計と企業という経済のミクロ的側面と、景気と労働市場というマクロ的側面から、1990年代以降の日本の失業率上昇の要因を実証的に検証した.その結果、失業率の上昇と高位での持続の原因は、労働需給のミスマッチ拡大などの労働市場の構造的要因よりも、失業に対する景気の影響が長期化したことにあることを示した.その理由として、不況期における不安定な雇用形態(非正規雇用)の拡大とその階層固定化が重要であることを示唆する結果が、ミクロデータを利用した多様な観点からの実証分析から得られた.家計と企業という経済のミクロ的側面と、景気と労働市場というマクロ的側面から、1990年代以降の日本の失業率上昇の要因を実証的に検証した.その結果、失業率の上昇と高位での持続の原因は、労働需給のミスマッチ拡大などの労働市場の構造的要因よりも、失業に対する景気の影響が長期化したことにあることを示した.その理由として、不況期における不安定な雇用形態(非正規雇用)の拡大とその階層固定化が重要であることを示唆する結果が、ミクロデータを利用した多様な観点からの実証分析から得られた.2000年代の雇用変動に関し、2001年から2002年に、かつて経験したことがないほど大規模な既存の雇用機会の消失があったこと、2002年以降、雇用状況は急速に回復したが、新たな雇用創出の拡大はみられず、ほとんどが人員調整プロセスの完了による雇用消失幅の削減によってもたらされたことを示した。その意味で2000年代半ばの雇用回復は、雇用調整を通じた一時的なものであると考えられる。少子高齢化と雇用の問題に関し、1990年代の不況下で、中高年既雇用者の雇用を保障するため新規採用の需要が縮小し、若年の雇用機会が減少したことを確認した。また、高齢化が失業率を引き下げる効果は1990年代までは小さかったが、近年拡大傾向にあることを示した。一方、少子化に関する労働市場の影響を、セックス頻度と就業状況に着目して分析し、セックス頻度は、無業状態にある若者ほど少なくなる他、就業者であっても、労働環境の悪化が少子化をもたらす一因となっているという示唆を得た。若年無業の増加に関し、ニートとよばれる無業者には、若年のなかでも就業による期待収益率が相対的に低い層(長期無業経験者など)ほどなりやすい傾向があることを発見した。高所得世帯に属する若年ほどニート状態を選択しやすいという所得効果が近年は弱まり、低所得世帯から就業希望表明しない若者が増えるなど、貧困世帯の増大も若年無業の増加と連関していることも明らかとした。さらに、若年労働市場の地域間格差がライフイベントの格差にどのような影響を及ぼすかを検討し、フリーターの多い地域では結婚年齢や子どもを持つ時期が遅くなることを示した。出身地が勤労所得にもたらす影響の分析により、勤労所得は、地方出身者で都市部に居住している者が最も高いことを示した。この理由は、地方の社会的・経済的に余裕のある家庭の子弟が都市部に出てきやすいことによる。1990年代以降の日本の矢業率上昇の要因についての広範な研究展望を行うとともに、マクロデータおよびミクロデータを利用した実証分析を行った。マクロ的観点からの分析では、1990年代以降の持続的な失業率上昇には、労働需給のミスマッチや労働力再配分が果たした役割は限定的であると考えられること、及び、失業に対する景気の影響が長期間にわたるようになったことが失業率上昇にとって重要であると考えられることを示した。また、労働力フローに着目し、景気の悪化が就業から失業へのフローを増大させるが、影響はそれに留まらず、失業への流入と失業からの流出のすべてのフローを長期間増加させることを通じて、失業率が上昇したと考えられることも示した。さらに、ベヴァリッジ曲線の情報を用いたNAIRU(インフレを加速しない失業率)の新しい推計方法も提案した。なお、次年度には、失業率を高める要因としての賃金の硬直性を取り上げるが、賃金研究の一環として、福利厚生と賃金の関連性を追求した展望も行った。ミクロ的観点からの分析では、まず、就職活動を断念した無業者(ニート)について、就業構造基本調査の個票データから、実証分析した。その結果、低学歴、女性、年長無業者など、就業に伴う期待収益率の低いグループほどニートになりやすいことを示した。また、かつては高所得世帯の若者ほどニートになりやすい所得効果が観察されたが、所得効果は2000年代に弱まり、むしろ貧困世帯にある低学歴者ほどニートになる傾向が強まっていることを指摘した。さらに、学校卒業時の失業率の高まりが労働者の賃金や雇用に及ぼすマイナスの影響(いわゆる世代効果)について分析を行い、とくに男性低学歴層において、世代効果が深刻であるという結論を得た。加えて、東京大学社会科学研究所による中小企業パネルデータを活用し、中小企業の雇用調整と資金調達に関する予備的分析を行った。本研究の目的は、日本の失業率が1990年代以降急上昇した原因を、家計・企業などのミクロ的側面と景気などのマクロ的側面双方から探るための包括的実証研究を行うことであった。マクロ的側面からの分析は前年度までにほぼ終了し、持続的失業率上昇には、労働需給のミスマッチや労働力再配分が果たした役割は限定的であり、失業に対する景気の影響が長期間に及ぶ構造の発生が重要であったことを示した。先行研究の展望や本研究の前年度までの成果から、失業の持続性が高まった要因として、非正規労働などの不安定な雇用形態の拡大が重要であることが示唆されたため、今年度は、ミクロ的側面から、労働者の雇用形態の転換に関連する実証分析をさらに進めた。
KAKENHI-PROJECT-18330047
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18330047
1990年代以降の日本の就業・失業構造の変化に関する実証分析
具体的には、ミクロ経済データ(「就業構造基本調査」、「労働力調査」など)を利用した分析によって、前職が非正規雇用だった離職者について正規雇用への移行を規定する要因を分析し、1、失業率の低い地域ほど移行が容易となること、2、専門性に基づく個別の労働需要の強さが正規雇用への移行を左右すること、3、非正規雇用としての離職前の同一企業での継続就業経験が正規雇用の機会の獲得を有利にすることを示した。また、若年労働者について、労働力状態を、就業・非就業のほか、正規雇用・非正規雇用ならびに失業・非労働力などに区分し、各状態間の移行に対して、調査年と学卒年の有効求人倍率水準がもたらした影響が、学歴および性別によって大きく異なることを示した。本研究では、1990年代以降の失業率上昇の要因について、関連するこれまでの数多の研究成果を総括し、統一的観点から独自の実証分析を重ねることによって、一定の結論を得ることができたと考える。
KAKENHI-PROJECT-18330047
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18330047
レプチン抵抗性によるメタボリックシンドロームの病態解明〜小胞体ストレスの関与〜
肥満は生活習慣病の主要な危険因子であり、その発症・進展機構の解明と有力な治療法の開発は臨床医学の見地からも重要な課題である。本研究の結果、肥満に関わるとされる「レプチン抵抗性」の原因として小胞体ストレスの関与を新たに見出した。さらにその原因物質としてホモシステイン、またその分子機構として、protein tyrosine phosphatase 1B (PTP1B)と言うタンパク質が関与している可能性を見出した。以上、本研究の結果、肥満の新しいメカニズムが明らかになり、さらに、小胞体ストレスを標的とした薬物が今までにない新しいタイプの治療薬になる可能性が示唆された。肥満は生活習慣病の主要な危険因子であり、その発症・進展機構の解明と有力な治療法の開発は臨床医学の見地からも重要な課題である。本研究の結果、肥満に関わるとされる「レプチン抵抗性」の原因として小胞体ストレスの関与を新たに見出した。さらにその原因物質としてホモシステイン、またその分子機構として、protein tyrosine phosphatase 1B (PTP1B)と言うタンパク質が関与している可能性を見出した。以上、本研究の結果、肥満の新しいメカニズムが明らかになり、さらに、小胞体ストレスを標的とした薬物が今までにない新しいタイプの治療薬になる可能性が示唆された。肥満は糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化症といった生活習慣病すなわちメタボリツクシンドロームの主要な危険因子であり、肥満の発症・進展機構の解明と有力な治療法の開発は臨床医学の見地からもきわめて重要かつ急務の課題である。レプチン抵抗性改善薬は、肥満及びそれにともなう生活習慣病の治療に有効であると考えられ、現在世界の様々な研究機関で勢力的に研究が行われている。しかしながら、レプチン抵抗性を標的とした有効な治療薬はいまだほとんど見いだされていない。そこで私達は、小胞体ストレスという点に着目し、レプチン抵抗性の原因を明らかにし、有効な薬物の探索を行っている。レプチンによるSTAT3および各種シグナル伝達系の活性化および遺伝子誘導に対する小胞体ストレスの影響について検討を行った結果、小胞体ストレスがレプチン抵抗性を誘発している可能性を示唆するデータを得た。さらに、細胞内の活性化メチルサイクルにおいて生成されるホモシステインが小胞体ストレスを誘発し、レプチン抵抗性を惹起する可能性がin vivo実験系において示された。さらに、アデノシンもレプチンシグナルを抑制することが明らかとなり、さらにアデノシンとホモシステインが相乗的にレプチンシグナルを抑制することが示唆された。このようなデータの結果を踏まえ、最終年度となる来年度は、小胞体ストレスによるレプチン抵抗性のより詳細な分子メカニズムを明らかにする予定である。肥満は糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化症といった生活習慣病すなわちメタボリックシンドロームの主要な危険因子であり、肥満の発症・進展機構の解明と有力な治療法の開発は臨床医学の見地からもきわめて重要かつ急務の課題である。レプチン抵抗性改善薬は、肥満及びそれにともなう生活習慣病の治療に有効であると考えられ、現在世界の様々な研究機関で勢力的に研究が行われている。しかしながら、レプチン抵抗性を標的とした有効な治療薬はいまだほとんど見いだされていない。そこで私達は、小胞体ストレスという点に着目し、レプチンと抵抗性の原因を明らかにし、有効な薬物の探索を行っている。本研究の検討の結果、小胞体ストレスを惹起させた条件下で、レプチンシグナルであるSTAT 3のリン酸化が抑制され、それはケミカルシャペロン処理により改善されることを見出した。そこで次にそのメカニズム解明のため、レプチン抵抗性関連因子として知られているsuppressors of cytokine signaling 3(SOCS 3)とprotein tyrosine phosphatase 1B(PTP1B)に着目して検討を行った。その結果、小胞体ストレス誘発下において、SOCC 3の発現量には変化はみられなかった。一方で、PTP1Bの活性を阻害することで、小胞体ストレスによるレプチン抵抗性の改善がみられた。以上の結果から、小胞体ストレスによるレプチン抵抗性には、SOCS 3は関与しておらず、PTP1Bが関与していることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-19790059
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19790059
垂直磁化膜を用いたスピン波パケットの長距離伝送と次世代データ転送バスへの応用
本年度は、垂直磁気異方性を有するYIG膜に対してスピン波パケット伝送実験を行った。さらに、マイクロマグネティクス計算により、パケット群速度の垂直磁気異方性エネルギー依存性、およびパケット振幅の減衰特性について調べた。(1)強磁性共鳴スペクトルを測定し、その線幅よりYIG膜のダンピング定数を見積もったところ、0.09程度であった。また、試料振動型磁力計を用いて測定した飽和磁化、および磁気異方性エネルギーを用いて、マイクロマグネティクス計算によりスピン波パケットの振幅減衰特性を調べた。その結果、ダンピング定数0.09のYIG膜の場合、振幅が1/eに減衰する距離が1μm(磁気異方性等価磁界H_kが1 kOeのとき)であり、H_kの増加に伴って減少することがわかった。(2)スピン波励起コイルとスピン波検出コイルの距離が減衰長以下の素子を作成し、スピン波パケットの検出を試みた。その結果、YIG膜内に励起したスピン波パケットからの誘導信号を検出することに成功した。ただし、YIG膜の飽和磁化が小さいため、誘導信号強度が非常に小さかった。スピン波伝送デバイスでは、読み出し信号強度の増加が動作速度の高速化につながる。したがって、実デバイス化に向けて、さらに飽和磁化の大きな垂直磁化膜を伝送線路として用いる必要がある。(3)マイクロマグネティクス計算により、スピン波伝送路として面内磁化膜と垂直磁化膜を用いた場合の伝播速度を比較した。静磁場表面波が励起される面内磁化膜の場合、バイアス磁界により磁化の復元力が増加すると群速度が減少する。これに対し、垂直磁化膜では静磁場前方体積波が励起されるため、スピン波パケットの群速度が磁気異方性エネルギーの増大に伴い単調増加し、H_k=4kOeで8μm/nsに達する。以上より、高速動作の観点から垂直磁化膜がスピン波パケットの伝送線路に適していることがわかった。本年度は、スピン波伝送バスに用いる垂直磁化膜の強磁性共鳴特性を測定を行い、スピン波の減衰長を左右するダンピング定数を調べた。さらに、垂直磁化膜パターンのスピン波伝送実験を行う予備実験として、NiFe合金を伝送路とするスピン波伝送素子を試作し、スピン波生成と検出に用いるヘアピン型配線パターンの形状の最適化を図った。以下に、本研究で得られた知見を列記する。(1)マグネトロンスパッタ装置を用いて、垂直磁気異方性を示すCo/NiおよびCo/Pd多層膜を作製した。次に、電子線リソグラフィー装置を用いて、垂直磁化膜パターン上にマイクロ波伝送用コプレーナ線路を作成し、ネットワークアナライザFMR分光測定を行った。FMRスペクトルの線幅からダンピング定数(スピン系に作用する摩擦の大きさを表すパラメータ)を測定した結果、Co/Niが0.10.2、Co/Pdが0.060.08となり、Co/Pdの方がスピン波の長距離伝送に適していることがわかった。(2)ガラス基板上にダンピング定数が0.01以下のNiFe合金薄膜パターンを形成し、その上に誘電体層を介して非対称ヘアピン導体パターンを2つ作製した。ヘアピン導体の一方はパルス信号発生器に、他方は20GHzサンプリングオシロスコープに接続した。局所パルス磁界により誘起されたスピン波の伝播を誘導法により実時間観察することに成功した。また、マイクロマグネティクス計算によるスピン波伝送シミュレーションを行い、スピン波バス動作においてノイズ信号となる直接歳差運動項をヘアピン導体の形状非対称化により抑制できることを明らかにした。本年度は、垂直磁気異方性を有するYIG膜に対してスピン波パケット伝送実験を行った。さらに、マイクロマグネティクス計算により、パケット群速度の垂直磁気異方性エネルギー依存性、およびパケット振幅の減衰特性について調べた。(1)強磁性共鳴スペクトルを測定し、その線幅よりYIG膜のダンピング定数を見積もったところ、0.09程度であった。また、試料振動型磁力計を用いて測定した飽和磁化、および磁気異方性エネルギーを用いて、マイクロマグネティクス計算によりスピン波パケットの振幅減衰特性を調べた。その結果、ダンピング定数0.09のYIG膜の場合、振幅が1/eに減衰する距離が1μm(磁気異方性等価磁界H_kが1 kOeのとき)であり、H_kの増加に伴って減少することがわかった。(2)スピン波励起コイルとスピン波検出コイルの距離が減衰長以下の素子を作成し、スピン波パケットの検出を試みた。その結果、YIG膜内に励起したスピン波パケットからの誘導信号を検出することに成功した。ただし、YIG膜の飽和磁化が小さいため、誘導信号強度が非常に小さかった。スピン波伝送デバイスでは、読み出し信号強度の増加が動作速度の高速化につながる。したがって、実デバイス化に向けて、さらに飽和磁化の大きな垂直磁化膜を伝送線路として用いる必要がある。(3)マイクロマグネティクス計算により、スピン波伝送路として面内磁化膜と垂直磁化膜を用いた場合の伝播速度を比較した。静磁場表面波が励起される面内磁化膜の場合、バイアス磁界により磁化の復元力が増加すると群速度が減少する。これに対し、垂直磁化膜では静磁場前方体積波が励起されるため、スピン波パケットの群速度が磁気異方性エネルギーの増大に伴い単調増加し、H_k=4kOeで8μm/nsに達する。
KAKENHI-PROJECT-20656057
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20656057
垂直磁化膜を用いたスピン波パケットの長距離伝送と次世代データ転送バスへの応用
以上より、高速動作の観点から垂直磁化膜がスピン波パケットの伝送線路に適していることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-20656057
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20656057
材料劣化が生じたコンクリート構造物の構造性能評価に関する技術学術体系の構築
鉄筋腐食、アルカリシリカ反応、凍害などにより劣化した鉄筋コンクリート構造物、プレストレストコンクリート構造物の耐荷性能について、室内試験、実構造物の載荷試験、非線形有限要素解析により検討した。構造物中の材料の劣化が構造物の耐荷性能に及ぼす影響に関する実験事実とそのメカニズムについて、多くの新しい知見を得た。劣化した既存構造物の残存性能を現地調査と数値解析により推定する方法を提案した。鉄筋腐食、アルカリシリカ反応、凍害などにより劣化した鉄筋コンクリート構造物、プレストレストコンクリート構造物の耐荷性能について、室内試験、実構造物の載荷試験、非線形有限要素解析により検討した。構造物中の材料の劣化が構造物の耐荷性能に及ぼす影響に関する実験事実とそのメカニズムについて、多くの新しい知見を得た。劣化した既存構造物の残存性能を現地調査と数値解析により推定する方法を提案した。鉄筋腐食に代表される材料劣化が生じたコンクリート構造物の構造性能の評価について、土木学会における331委員会をベースに研究代表者、分担者らが過去5年間にわたって進めてきた実験的研究、解析手法の検討をさらに推進、発展、高度化するとともに、得られた要素技術、研究成果の体系化を進めることを目的に研究を進めている。平成21年度の実績は以下である。1)新潟県の日本海沿岸において80年間供用され、解体撤去された実際の鉄筋コンクリート橋の桁を実験室内で破壊させるまで載荷試験し、塩害劣化した実構造物の構造性能に関する知見を取得した。劣化の著しい桁は鉄筋腐食量から推定されるよりも耐力が低下していた。その原因は、断面補修した引張鉄筋の継手部分が再劣化することにより、その鉄筋が引張力を負担しなくなったためであることを明らかにした。現在、その再現実験に取り組んでいる。2)土木学会331委員会において行ったベンチマークテストをもとに、研究分担者の各研究機関において、劣化を導入したRC供試体の構造性能を調べるいくつかの実験を開始した。3)本科学研究費により新規に導入した耐候性試験装置を用いて、実験室内において自然環境に近い鉄筋腐食を導入する試験を開始した。4)新潟県の日本海沿岸で供用され、解体撤去されたプレテンション桁を実験室に搬入し、劣化状況の調査と載荷試験の準備を進めている。5)土木学会331委員会から本科学研究費による一連の研究の概要と成果を、いくつかの国際会議において発表するため、参加申し込みを行い、論文を投稿した。平成22年度に発表を行う予定である。鉄筋腐食に代表される材料劣化が生じたコンクリート構造物の構造性能の評価について、土木学会における331委員会をベースに研究代表者、分担者らが過去5年間にわたって進めてきた実験的研究、解析手法の検討をさらに推進、発展、高度化するとともに、得られた要素技術、研究成果の体系化を進めることを目的に研究を進めている。平成22年度の実績は以下である。1)新潟県の日本海沿岸において供用され、解体撤去されたプレテンションプレストレストコンクリート橋の桁を実験室内で破壊させるまで載荷試験し、塩害による緊張材腐食が耐荷性能に及ぼす影響を検討した。桁断面における平均腐食量により、その断面での残存プレストレスおよび曲げ耐力を算定できることを明らかにした。現在、その力学モデルを構築するために、小型供試体を用いた室内実験を実施している。2)本科学研究費により導入した耐候性試験装置を用いて、実験室内において自然環境に近い鉄筋腐食を導入する試験を継続している。3)土木学会331委員会において行ったベンチマークテストをもとに、研究分担者の各研究機関において、劣化を導入したRC供試体の構造性能を調べるいくつかの実験を実施した。4)地方において市町村が管理している小規模橋梁の劣化状況と維持管理の実態を把握するために、新潟県における市町村のアンケート、ヒアリング、実地調査を行った。5)平成21年度に実施した、新潟県の日本海沿岸で80年間供用され解体撤去された鉄筋コンクリート橋の載荷試験において、断面修復後の鉄筋継手部の腐食が耐荷性能の著しい低下を招いた実験結果を、供試体を用いた実験により再現することに成功した。6)土木学会331委員会から本科学研究費による一連の研究の概要と成果を、いくつかの国際会議において発表し、海外の研究者と意見交換を行った。本研究は、鉄筋腐食に代表される材料劣化が生じたコンクリート構造物の構造性能の評価について、実験的研究、解析手法の検討を推進するとともに、得られた要素技術、研究成果の体系化を目的に行った。平成23年度には以下の成果を得た。1)鉄筋が腐食したRC実橋の載荷試験で見られた断面修復後の再腐食による継手部分の破壊を室内実験により再現し、腐食による主筋の定着不良が部材の構造性能を著しく損なうことを明らかにした。2)プレテンションPC実橋の載荷試験と供試体を用いた室内試験を行い、プレテンション緊張材の腐食は、プレストレスロスと鋼材の負担引張力の低下と、腐食ひび割れによるコンクリートの見かけの曲げ強度の低下を引き起こすことを明らかにした。3)電食により鋼材を腐食させたポストテンション方式PCはり試験体の曲げ載荷実験を行い、シースの腐食に伴う付着劣化とPC鋼材の腐食が耐荷性状に及ぼす影響について明らかにした。また、非線形数値解析により、耐荷メカニズムを詳細に分析した。4)融雪剤の影響により著しい鋼材腐食が生じたPC床版橋について有限要素法を用いて構造性能の評価を行い、上部工全体系では構造の冗長性や劣化桁の偏在が構造性能に影響を及ぼすことを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-21246072
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21246072
材料劣化が生じたコンクリート構造物の構造性能評価に関する技術学術体系の構築
5)鉄筋腐食を生じたRC曲げ部材のかぶりのはつり調査位置で鉄筋径を直接測定することを想定し、得られた数点の鉄筋径から部材中の引張主筋の断面積の分布特性を推定して曲げ耐荷力を算定する手法を提案し、曲げ耐荷力の実験値を安全側に評価できることを示した.6)腐食の空間的なばらつきの参考データとすることを目的とし、日本海沿岸で約10年間空気中に暴露された鉄筋の形状を3Dスキャナで測定した。この結果、水の存在によって腐食の程度は大きく異なり、腐食生成物によって鉄筋の太さが2倍前後にまで膨張する場合があることを確認した。
KAKENHI-PROJECT-21246072
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心筋細胞シグナル伝達系におけるPI代謝の意義
心筋細胞における細胞膜7回貫通型受容体[心筋細胞α_1受容体,アンジオテンシン(AT)受容体,エンドセリン(ET)受容体]刺激は,PI加水分解によりIP_3とDAGを生成する。これらの異なった受容体刺激効果は共通のシグナル伝達系を介して機能調節を行なっているが,これらの受容体刺激による膜イオンチャネル,細胞内カルシウム,心筋細胞収縮機能調節の異同の有無は知られていない。そのシグナル伝達系の意義を確立するために,無キズの細胞系をもちいて,受容体(そのサブタイプと異なった伝達系への共役),イオンチャネル,収縮機能の各レベルで受容体刺激およびその選択的遮断薬を用いて分析し,以下のような結果を得た。(1)メトキサミンは,心筋細胞α_1受容体刺激によるPI加水分解促進と陽性変力作用の解離を引き起こす。この作用は,PI代謝促進以降の情報伝達過程出起こり,α_<1A>受容体を介していることが明らかにされた。この抑制性調節は,α_1-のみならず,ET受容体を介する陽性変力作用に対しても発揮され,受容体間のクロストークの可能性を示唆する。(2)AT受容体にはAT_1およびAT_2サブタイプが存在するが,両受容体はラット,モルモット,フェレット,ウサギ,イヌなどの哺乳類心室筋に分布している。これら全ての動物種でPI代謝促進が起こるが,陽性変力作用はウサギのみで観察される。これらのデータは,種差の原因はPI代謝促進以降の過程にあることを示唆すると共に,PI情報伝達系の複合性を示すものである。(3)ET受容体サブタイプの同定をウサギ心室筋をもちいて行なったが,心筋ET受容体サブタイプの薬理学的性状は,平滑筋・内皮細胞などの組織におけるものとは,顕著に異なることが明らかにされた。心筋細胞における細胞膜7回貫通型受容体[心筋細胞α_1受容体,アンジオテンシン(AT)受容体,エンドセリン(ET)受容体]刺激は,PI加水分解によりIP_3とDAGを生成する。これらの異なった受容体刺激効果は共通のシグナル伝達系を介して機能調節を行なっているが,これらの受容体刺激による膜イオンチャネル,細胞内カルシウム,心筋細胞収縮機能調節の異同の有無は知られていない。そのシグナル伝達系の意義を確立するために,無キズの細胞系をもちいて,受容体(そのサブタイプと異なった伝達系への共役),イオンチャネル,収縮機能の各レベルで受容体刺激およびその選択的遮断薬を用いて分析し,以下のような結果を得た。(1)メトキサミンは,心筋細胞α_1受容体刺激によるPI加水分解促進と陽性変力作用の解離を引き起こす。この作用は,PI代謝促進以降の情報伝達過程出起こり,α_<1A>受容体を介していることが明らかにされた。この抑制性調節は,α_1-のみならず,ET受容体を介する陽性変力作用に対しても発揮され,受容体間のクロストークの可能性を示唆する。(2)AT受容体にはAT_1およびAT_2サブタイプが存在するが,両受容体はラット,モルモット,フェレット,ウサギ,イヌなどの哺乳類心室筋に分布している。これら全ての動物種でPI代謝促進が起こるが,陽性変力作用はウサギのみで観察される。これらのデータは,種差の原因はPI代謝促進以降の過程にあることを示唆すると共に,PI情報伝達系の複合性を示すものである。(3)ET受容体サブタイプの同定をウサギ心室筋をもちいて行なったが,心筋ET受容体サブタイプの薬理学的性状は,平滑筋・内皮細胞などの組織におけるものとは,顕著に異なることが明らかにされた。
KAKENHI-PROJECT-06274201
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相互通信可能な複数移動ロボットの幾何学的性質による協調パスプランニング
本研究では、複数の移動ロボットが同一の空間を自由に動き回るときのパスプランニングアルゴリズムについて考察した。一般に、このようなとき、それらの移動ロボットのうちのいくつかはお互いに衝突し合いデッドロックを発生させる。そこでまず、このアルゴリズムには、種々のデッドロックを分解するメカニズムが要求される。また、それには、各々の移動ロボットがゴールへ確実に到達するメカニズムも必要となる。そこで我々は、移動ロボットはお互いに通信しながら意志を伝えあえるとし、これにより形成される協調運動がそのデッドロックフリー特性を保証するコミニュケーションベーストパスプランニングアルゴリズムを考えた。このアルゴリズムは、そのような協調動作により、前述の2つの重要なメカニズムを持つことに成功している。まず、このアルゴリズムでは、移動ロボットは衝突しない限りゴールへ直進し、ゴールへ単調に接近する。次に、いくつかの移動ロボットがお互いに衝突し合ってデッドロックが生じたとき、その一部を静止させたうえで、残りにその周囲を辿らせる。このとき、デッドロックに参入したところよりもゴールへ接近したところから、移動ロボットはそれを離脱する。これにより、静止障害物のみを対象としたセンサベーストパスプランニングアルゴリズムをデッドロックフリーにするために用いられる十分条件『静止障害物と衝突した移動ロボットは、その点よりもゴールに近い点から離れると、最終的にそのゴールに到達できる』が、このアルゴリズムのデッドロックフリー特性をも保証する。すなわち、協調運動により静止させられたデッドロックの一部の周囲から、残りの移動ロボットが十分条件を満足するように離脱することが繰り返えされると、この静止部分が徐々に無くなり、それらのゴールへの到達が保証される。尚、このアルゴリズムの有効性は、いくつかのケースでグラフィックスシミュレーションにより確認されている。本研究では、複数の移動ロボットが同一の空間を自由に動き回るときのパスプランニングアルゴリズムについて考察した。一般に、このようなとき、それらの移動ロボットのうちのいくつかはお互いに衝突し合いデッドロックを発生させる。そこでまず、このアルゴリズムには、種々のデッドロックを分解するメカニズムが要求される。また、それには、各々の移動ロボットがゴールへ確実に到達するメカニズムも必要となる。そこで我々は、移動ロボットはお互いに通信しながら意志を伝えあえるとし、これにより形成される協調運動がそのデッドロックフリー特性を保証するコミニュケーションベーストパスプランニングアルゴリズムを考えた。このアルゴリズムは、そのような協調動作により、前述の2つの重要なメカニズムを持つことに成功している。まず、このアルゴリズムでは、移動ロボットは衝突しない限りゴールへ直進し、ゴールへ単調に接近する。次に、いくつかの移動ロボットがお互いに衝突し合ってデッドロックが生じたとき、その一部を静止させたうえで、残りにその周囲を辿らせる。このとき、デッドロックに参入したところよりもゴールへ接近したところから、移動ロボットはそれを離脱する。これにより、静止障害物のみを対象としたセンサベーストパスプランニングアルゴリズムをデッドロックフリーにするために用いられる十分条件『静止障害物と衝突した移動ロボットは、その点よりもゴールに近い点から離れると、最終的にそのゴールに到達できる』が、このアルゴリズムのデッドロックフリー特性をも保証する。すなわち、協調運動により静止させられたデッドロックの一部の周囲から、残りの移動ロボットが十分条件を満足するように離脱することが繰り返えされると、この静止部分が徐々に無くなり、それらのゴールへの到達が保証される。尚、このアルゴリズムの有効性は、いくつかのケースでグラフィックスシミュレーションにより確認されている。
KAKENHI-PROJECT-05750246
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05750246
光分岐・合流導波路の低損失構成法
本研究では、将来大量に必要になると考えられる分岐・合流素子を低損失かつ、安価に作製するための基礎的研究を行った。まず、モード変換型素子の設計理論をモード結合理論に基づいて一般的に検討し、モード変換部の一般的構成条件を見いだした。次に、この構成条件をY分岐導波路の低損失構成法に応用し、分岐の具体的な構成法を提案した。そして、スラブ導波路モデルを用いることにより、このように設計したモード変換型Y分岐導波路では、分流あるいは合流のいずれの目的に用いても、直線状Y分岐よりも伝送損失が軽減できることを示した。そこで、数値シミュレーション結果に基づいて、一回の作製実験で、角度および分岐形状の異なる26本のY分岐が同時に作製できるような拡散用マスクパターンを設計・試作した。このマスクパターンを用いることにより、ソーダライムガラス中に銀イオンを拡散させ3次元導波路である拡散型チャンネル導波路のY分岐を作製した。その結果、モード変換型Y分岐導波路では、分流あるいは合流のいずれの目的に用いても、その伝送損失が導波モードの等価屈折率に依存する、即ち、モード変換部の長さに依存していることが確認でき、設計理論の正当性を確認した。そして、モード変換部の長さが適切に選ばれた場合には、直線状Y分岐合流導波路に比べて低損失であることを実験的に示した。現段階では、2モード導波路のY分岐について、最適の構成条件が存在することは実験的に確かめられた。しかし、単一モード導波路のY分岐では、直線状Y分岐導波路に比べて低損失であることを実験的に示すことはできたが、最適の構成条件が存在することはまだ確認できていない。現在、これまでと同じ設計理論に基づいた新しい露光用マスクパターンを作製中である。この新しいマスクパターンによって、今年度中には単一モード光ファイバとの整合性に優れた分岐・合流素子を実現できるものと予想している。本研究では、将来大量に必要になると考えられる分岐・合流素子を低損失かつ、安価に作製するための基礎的研究を行った。まず、モード変換型素子の設計理論をモード結合理論に基づいて一般的に検討し、モード変換部の一般的構成条件を見いだした。次に、この構成条件をY分岐導波路の低損失構成法に応用し、分岐の具体的な構成法を提案した。そして、スラブ導波路モデルを用いることにより、このように設計したモード変換型Y分岐導波路では、分流あるいは合流のいずれの目的に用いても、直線状Y分岐よりも伝送損失が軽減できることを示した。そこで、数値シミュレーション結果に基づいて、一回の作製実験で、角度および分岐形状の異なる26本のY分岐が同時に作製できるような拡散用マスクパターンを設計・試作した。このマスクパターンを用いることにより、ソーダライムガラス中に銀イオンを拡散させ3次元導波路である拡散型チャンネル導波路のY分岐を作製した。その結果、モード変換型Y分岐導波路では、分流あるいは合流のいずれの目的に用いても、その伝送損失が導波モードの等価屈折率に依存する、即ち、モード変換部の長さに依存していることが確認でき、設計理論の正当性を確認した。そして、モード変換部の長さが適切に選ばれた場合には、直線状Y分岐合流導波路に比べて低損失であることを実験的に示した。現段階では、2モード導波路のY分岐について、最適の構成条件が存在することは実験的に確かめられた。しかし、単一モード導波路のY分岐では、直線状Y分岐導波路に比べて低損失であることを実験的に示すことはできたが、最適の構成条件が存在することはまだ確認できていない。現在、これまでと同じ設計理論に基づいた新しい露光用マスクパターンを作製中である。この新しいマスクパターンによって、今年度中には単一モード光ファイバとの整合性に優れた分岐・合流素子を実現できるものと予想している。まず,多モード分布結合系の結合特性を利用したモード変換器の設計理論を完成し,本理論を光分岐導波路の設計に応用した.その結果,本導波路の低損失構成法として,モード変換を利用した二つの新構成法を考案することができた.これらの構成法に関し,スラブ光導波路モデルによる分岐導波路の特性解析及び計算機による数値シミュレーション実験を行い,実用上十分な性能を得る可能性があることを確めた.次に,本研究の光分岐導波路を,光ファイバとの整合性に富んだガラス製埋込み型チャネル導波路として実現するために,分岐部のマスクパターンの設計並びに試作を行った.マスクパターンの設計に際し,設計パラメータとして,光導波路の等価屈折率を知る必要があった.そのため,予備実験として,本実験におけるのと同一のドーパントイオン源とガラス基板を用い,熱拡散と電界印加熱拡散を併用して,埋込み型の直線状チャネル光導波路を作製し,その横断面屈折率分布を実測した.屈折率分布の測定には,本研究の交付申請書に試載した方法の他に,最近新たに考案した有効な方法,即ち, "光導波路の伝搬モードの近傍界を用いた屈折率分布の計算機推定法"を併用した.又,一回の実験によって形状及び分岐角の異った複数の分岐導波路を作製できるにようにするために,マスクパターンは,一板のマスク基板上に設計条件の異った26種類のパターンを描くように設計した.
KAKENHI-PROJECT-62550248
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光分岐・合流導波路の低損失構成法
このように設計,試作したマスクパターンを介して,希釈硝酸銀融液中の銀イオンをガラス基板中に拡散させ,光分岐導波路を作製した.作製条件は,ドーパントイオン源の硝酸銀融液の希釈濃度を, 0.2mol%, 1次拡散の温度及び時間をそれぞれ330°C及び3分とし,又, 2次拡散の温度350°C,時間15分及び印加電圧100Vとした.本試作光分岐導波路の特性を評価した結果,ほぼ,設計条件から予測される通りの性能が得られることが,実験的にも確められた.今年度は、まずY分岐を単一モード導波路の合流用導波路として用いたときの数値的検討を行った。その結果、合流用導波路として設計したY分岐は合流用導波路としても、直線状Y分岐に比べ低損失であることを示すことができた。従って、合流用導波路に対して改めて拡散用マスクパターンを設計する必要はなくなった。そこで、従来から作製している分流用導波路を合流用導波路として用いた場合の分流・合流特性を高速かつ精度の高い画像処理装置によって昨年度よりも精密に測定した。分岐角が1度および2度の単一モード並びに2モード導波路のY分岐を作製し、モード変換部の長さに対する伝送損失を測定した。その結果、モード変換型Y分岐導波路では、分流あるいは合流のいずれの目的に用いても、その伝送損失が導波モードの等価屈折率に依存する。即ち、モード変換部の長さに依存していることが確認でき、設計理論の正当性を確認した。そして、モード変換部の長さが適切に選ばれた場合には、直線状Y分岐・合流導波路よりも伝送損失の低い分岐・合流導波路が実現できることを示すことができた。光ファイバとの整合性や経時変化などの実用に際して検討しておかなければならない問題については、十分に特性評価はできなかった。しかし、ガラス基板中に光ファイバとの整合性に優れた拡散型チャネル導波路を作製するための基礎的データは蓄えることができた。現在、これまでと同じ設計理論に基づいた新しい露光用マスクパターンを作製中である。この新しいマスクパターンを用いることにより、今年度中には単一モード光ファイバとの整合性に優れた分岐・合流素子を実現できるものと予想している。なお、Y分岐・合流導波路を非対称構造とした場合についても数値的検討を行った結果、分流・合流特性に非対称性をもたらすことが可能であることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-62550248
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多発性硬化症/自己免疫疾患の腸管免疫機構の病態解析と経口免疫寛容導入の試み
本年度は、来年度よりのライン化細胞樹立および使用を中心とした研究へ繋げることを前提に行った。すなわち、食餌性蛋白抗原としてのウシ血清アルブミン(BSA),kappa-カゼイン(k-C),ウシ免疫グロブリン(BGG),および卵白アルブミン(OVA)に対する免疫反応を誘発するために最も有効な血清を、従来使用していた牛新生児血清1ロットを標準として、牛胎児血清4ロット、ヒトAB型血清4ロットの計9ロットについて検討した。具体的には末梢血単核球の7日間培養法を用い、0.1-100mug/mlまでの抗原濃度において、培養終了前の16時間における^3H-thymidineの取り込みを指標とした。対象は、6名の多発性硬化症(MS)患者(全員女性、平均年齢40.7歳)、2名の中枢神経症状を有する全身性紅斑性狼瘡(SLE)患者(39歳と41歳の女性)、および4名の正常健康人(男女各2名、平均27歳)。血清ロットのスクリーニングについては健常人でもある程度の反応を検知することのできるものを選択の条件とした。その結果、特にOVA50mug/ml付近で増殖反応を検出することが可能であった米国Whitaker社のヒトAB血清が最適であると判明し、2000mlを確保した。MS患者については、蛋白抗原の反応性との関連の詳細な検討を進めるためにHLAタイピングを行った。DR2抗原陽性者は1名のみであった。必ずしも最適とは言い難いウシ新生児血清を用いた予備実験では、SLE患者1名および6名中3人のMS患者でOVAに対する反応を認めた。しかし、適切な血清を用いれば健常人でもOVAに対する細胞性免疫反応が検知されることを考え合わせると、OVA反応自体は病的な現象とは言い難い。MSの他の1名において牛乳中に比較的多量に存在するkappa-カゼインに対する反応が認められ、今後、選択した血清を用いて上記4抗原に対する免疫応答の詳細な検討を行う予定である。本年度は、来年度よりのライン化細胞樹立および使用を中心とした研究へ繋げることを前提に行った。すなわち、食餌性蛋白抗原としてのウシ血清アルブミン(BSA),kappa-カゼイン(k-C),ウシ免疫グロブリン(BGG),および卵白アルブミン(OVA)に対する免疫反応を誘発するために最も有効な血清を、従来使用していた牛新生児血清1ロットを標準として、牛胎児血清4ロット、ヒトAB型血清4ロットの計9ロットについて検討した。具体的には末梢血単核球の7日間培養法を用い、0.1-100mug/mlまでの抗原濃度において、培養終了前の16時間における^3H-thymidineの取り込みを指標とした。対象は、6名の多発性硬化症(MS)患者(全員女性、平均年齢40.7歳)、2名の中枢神経症状を有する全身性紅斑性狼瘡(SLE)患者(39歳と41歳の女性)、および4名の正常健康人(男女各2名、平均27歳)。血清ロットのスクリーニングについては健常人でもある程度の反応を検知することのできるものを選択の条件とした。その結果、特にOVA50mug/ml付近で増殖反応を検出することが可能であった米国Whitaker社のヒトAB血清が最適であると判明し、2000mlを確保した。MS患者については、蛋白抗原の反応性との関連の詳細な検討を進めるためにHLAタイピングを行った。DR2抗原陽性者は1名のみであった。必ずしも最適とは言い難いウシ新生児血清を用いた予備実験では、SLE患者1名および6名中3人のMS患者でOVAに対する反応を認めた。しかし、適切な血清を用いれば健常人でもOVAに対する細胞性免疫反応が検知されることを考え合わせると、OVA反応自体は病的な現象とは言い難い。MSの他の1名において牛乳中に比較的多量に存在するkappa-カゼインに対する反応が認められ、今後、選択した血清を用いて上記4抗原に対する免疫応答の詳細な検討を行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-05807054
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05807054
積層カロリメターを使った高エネルギー中性粒子の分離
本研究では、高エネルギー(GeV嶺域)の中性子とγ線を分離計測する測定法を開発することを目的とする。提案する方法は、光速に近い速度の粒子にのみ感度のあるチェレンコフ発光体と、あらゆる荷電粒子に感度がある蛍光体を積層したカロリメーターである。その際、中性粒子ビームライン上などで使用することを想定して、計数率が高い(高放射能)環境に適合することを目指している。平成15年度(16年2月)にチェレンコフ発光体として結晶石英(6層42モジュール)、蛍光発光体としてプラスチックシンチレーター(36層)を使ったカロリメーター(BA1)を製作した。BA1では、シンチレーターが軽い物質から出来ているので、γ線に対する阻止能を増やすために2mm厚の鉛を36層各シンチレーター層に前置した。BA1の製作後、高エネルギー加速器研究機構・東カウンターホール内の中性粒子ビームライン(KOライン)上に設置し、平成16年2月と平成17年2月の2度にわたって照射テストを行なった。中性子とγ線の分離には、シンチレーター36層内の信号の分布も有効に使えることが分かったが、プラスチックシンチレターに放射線損傷の効果も観測された。平成16年度は、それらビームテストと平行して、蛍光体を、プラスチックシンチレーターから、より放射線耐性がよい無機シンチレーターPWO(鉛タングステート)結晶(80モジュール)へ変更するべく準備を行なった。変更後のカロリメーター(BA2)では、PWOの比重が大きいので鉛を挟み込む必要が無く、全層がアクティブな構成をとることが出来る。又、この間、高計数率に対応するために、光電子増倍管の電圧分割器をトランジスター化する研究も行なった。これらの準備は、15年度と16年度内におこなわれ、結晶と読み出し光電子増倍管ともども用意が出来ているので、平成16年10月から、変更後のカロリメーター(BA2)のビームテストに間に合わせることが出来る。残念ながら、最終的な結果発表はまだ出来ていない。中性子とγの分離には、解析において全モジュールの詳しいゲイン合わせ等が必要な為で、平成17年度末以降になると予想している。この間、ほとんど同じ動機から、中性子とγ両方に対する阻止能に優れた酸化ガドリニウム入りタングステン合金の開発を行なった。本研究では、高エネルギー(GeV嶺域)の中性子とγ線を分離計測する測定法を開発することを目的とする。提案する方法は、光速に近い速度の粒子にのみ感度のあるチェレンコフ発光体と、あらゆる荷電粒子に感度がある蛍光体を積層したカロリメーターである。その際、中性粒子ビームライン上などで使用することを想定して、計数率が高い(高放射能)環境に適合することを目指している。平成15年度(16年2月)にチェレンコフ発光体として結晶石英(6層42モジュール)、蛍光発光体としてプラスチックシンチレーター(36層)を使ったカロリメーター(BA1)を製作した。BA1では、シンチレーターが軽い物質から出来ているので、γ線に対する阻止能を増やすために2mm厚の鉛を36層各シンチレーター層に前置した。BA1の製作後、高エネルギー加速器研究機構・東カウンターホール内の中性粒子ビームライン(KOライン)上に設置し、平成16年2月と平成17年2月の2度にわたって照射テストを行なった。中性子とγ線の分離には、シンチレーター36層内の信号の分布も有効に使えることが分かったが、プラスチックシンチレターに放射線損傷の効果も観測された。平成16年度は、それらビームテストと平行して、蛍光体を、プラスチックシンチレーターから、より放射線耐性がよい無機シンチレーターPWO(鉛タングステート)結晶(80モジュール)へ変更するべく準備を行なった。変更後のカロリメーター(BA2)では、PWOの比重が大きいので鉛を挟み込む必要が無く、全層がアクティブな構成をとることが出来る。又、この間、高計数率に対応するために、光電子増倍管の電圧分割器をトランジスター化する研究も行なった。これらの準備は、15年度と16年度内におこなわれ、結晶と読み出し光電子増倍管ともども用意が出来ているので、平成16年10月から、変更後のカロリメーター(BA2)のビームテストに間に合わせることが出来る。残念ながら、最終的な結果発表はまだ出来ていない。中性子とγの分離には、解析において全モジュールの詳しいゲイン合わせ等が必要な為で、平成17年度末以降になると予想している。この間、ほとんど同じ動機から、中性子とγ両方に対する阻止能に優れた酸化ガドリニウム入りタングステン合金の開発を行なった。本研究は、高計数率下で中性子とγ線を分離計測する積層型カロリメーターを開発研究することであり、提案する方法は、チェレンコフ発光体と蛍光発光体を交互に積層するものである。今年度はまず、チェレンコフ発光体として結晶石英、蛍光発光体としてはプラスチツクシンチレーターを製作した。チェレンコフ発光体からの光を最大限観測できるよう光電子増倍管として、手持ちの石英窓型を使い、高計数率に見合ったトランジスター方式の電圧分割器を製作した。プラスチックシンチレーターからの読み出しには波長変換ファイバーを使った。光学的接着剤や反射剤なども、一から見直す姿勢で選定した。各測定器の製作後、予定より早く平成16年2月中旬に組み上げることが出来、たまたま機会があったビームによるテストが出来た。現在、本カロリメーターは、中性子とγ線が高い強度で来るKEK東カウンターホールの中性ビームライン(KO)に設置して様々なテスト行っている。
KAKENHI-PROJECT-15340083
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15340083
積層カロリメターを使った高エネルギー中性粒子の分離
5月には運転の切れ目を活用して若干の手直しを行う予定であるが、今のところ設計通りの性能がえられているもようで、来年度内には解析を終えて論文化したいと考えている。本研究では、高エネルギー(GeV領域)の中性子とγ線を分離計測する測定法を開発することを目的とする。提案する方法は、光速に近い速度の粒子にのみ感度のあるチェレンコフ発光体と、あらゆる荷電粒子に感度がある蛍光体を積層したカロリメーターである。その際、中性粒子ビームライン上などで使用することを想定して、計数率が高い(高放射能)環境に適合することを目指している。平成15年度(16年2月)にチェレンコフ発光体として結晶石英(6層42モジュール)、蛍光発光体としてプラスチックシンチレーター(36層)を使ったカロリメーター(BA1)を製作した。BA1では、シンチレーターが軽い物質から出来ているので、γ線に対する阻止能を増やすために2mm厚の鉛を36層各シンチレーター層に前置した。BA1の製作後、高エネルギー加速器研究機構・東カウンターホール内の中性粒子ビームライン(K0ライン)上に設置し、平成16年2月と平成17年2月の2度にわたって照射テストを行なった。中性子とγ線の分離には、シンチレーター36層内の信号の分布も有効に使えることが分かったが、プラスチックシンチレターに放射線損傷の効果も観測された。平成16年度は、それらビームテストと平行して、蛍光体を、プラスチックシンチレーターから、より放射線耐性がよい無機シンチレーターPWO(鉛タングステート)結晶(80モジュール)へ変更するべく準備を行なった。変更後のカロリメーター(BA2)では、PWOの比重が大きいので鉛を挟み込む必要が無く、全層がアクティブな構成をとることが出来る。又、この間、高計数率に対応するために、光電子増倍管の電圧分割器をトランジスター化する研究も行なった。これらの準備は、15年度と16年度内におこなわれ、結晶と読み出し光電子増倍管ともども用意が出来ているので、平成16年10月から、変更後のカロリメーター(BA2)のビームテストに間に合わせることが出来る。残念ながら、最終的な結果発表はまだ出来ていない。中性子とγの分離には、解析において全モジュールの詳しいゲイン合わせ等が必要な為で、平成17年度末以降になると予想している。この間、ほとんど同じ動機から、中性子とγ両方に対する阻止能に優れた酸化ガドリニウム入りタングステン合金の開発を行なった。
KAKENHI-PROJECT-15340083
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15340083
OH-PCB妊娠期曝露による体内代謝経路と次世代への甲状腺ホルモン攪乱作用の解明
出生前向きコホートを用いて代謝関連遺伝子多型(SNPs)の違いによる母体血中水酸化PCB(OH-PCB)濃度を検討したところ、SNPsによる有意な濃度差はみられなかった。妊娠期のOH-PCB曝露が母児甲状腺ホルモン値(TSH、FT4)に及ぼす影響を検討するため重回帰分析を行ったところ、母では妊娠中の母体血中4-OH-CB187濃度が高いとFT4が高く、児においてはΣOH-PCB、4-OH-CB187濃度が高いとFT4が高かった。児の男女別解析では男児でΣOH-PCB、4-OH-CB187濃度が高いとFT4が高かったが、女児では有意差が認められなかった。出生前向きコホートを用いて代謝関連遺伝子多型(SNPs)の違いによる母体血中水酸化PCB(OH-PCB)濃度を検討したところ、SNPsによる有意な濃度差はみられなかった。妊娠期のOH-PCB曝露が母児甲状腺ホルモン値(TSH、FT4)に及ぼす影響を検討するため重回帰分析を行ったところ、母では妊娠中の母体血中4-OH-CB187濃度が高いとFT4が高く、児においてはΣOH-PCB、4-OH-CB187濃度が高いとFT4が高かった。児の男女別解析では男児でΣOH-PCB、4-OH-CB187濃度が高いとFT4が高かったが、女児では有意差が認められなかった。本研究は国内最大規模の出生前向きコホートを用いて母体血・臍帯血の生体試料と妊娠期の環境の両面からPCB、OH-PCBの曝露評価を行い、代謝に関与するSNPsと体内PCB・OH-PCB濃度との関連を検討し、妊娠期のPCB代謝経路を明らかにする糸口を提供し、これまでPCBがヒトの健康に与えるとされてきた影響が、実際はOH-PCBの影響である可能性についての解明を行うこと、OH-PCBが母児の甲状腺ホルモン値攪乱および生後の児の神経発達へ与える影響の解明を行い、OH-PCBの胎児期曝露がおよぼす次世代への健康影響評価によって効果的な環境リスク対策と予防対策への道を切り拓くことを目的とする。前向きコホート研究「環境と子どもの健康-北海道スタディ」を用いて、2002年2005年までに北海道内の産科施設で妊婦健診、出産を行った母児514組を対象に、すでに採取・保管済みである凍結血液を用いて、一部母体血液よりLC/MS/MSを用いた一斉分析法による妊娠中PCB,OH-PCBの濃度測定を行った。札幌市が母児に実施しているマススクリーニングの結果である妊娠初期の母甲状腺ホルモン値および児の出生時甲状腺ホルモン値(TSH,FT4)と母体血中OH-PCBのデータが揃う母児256組で、妊娠期OH-PCB曝露がおよぼす母児甲状腺ホルモン値への影響を検討した結果、男児において胎児期OH-PCB曝露濃度が高いと出生時のFT4値が上昇することを見出した。妊娠中・胎児期の環境要因が児の成長発達や疾病発症に及ぼす影響を解明するために立ち上げた一産院における前向き出生コホート(N=514)を用いて、OH-PCBの母体血中濃度測定と代謝関連遺伝子多型(SNPs)の解析と評価を行った。SNPs(AhR、CYP1A1、CYP1B1、GSTM、GSTT)で層別化した集団間での4-OH-CB 146 + 3-OH-CB 153、4-OH-CB 187およびΣOH-PCB母体血中濃度差を検討したところ、遺伝子多型による有意な濃度差はみられなかった。妊婦514名のコホート参加者のうち、妊娠中母体血中OH-PCB濃度と妊娠中の母親および出生時の札幌市による甲状腺マススクリーニング測定結果から得られた甲状腺ホルモン値データ(TSH、FT4)が揃う260組の母児において、OH-PCBの体内濃度が母児甲状腺ホルモン値へ与える影響について解析・検討を行った。独立件数は、母体血中∑OH-PCB、4-OH-CB 146 + 3-OH-CB 153、4OH-CB187濃度、従属変数は、母児TSH、FT4値とし、共変量に母親の出産時年齢、非妊娠時BMI、出産回数、魚摂取量、世帯年収、OH-PCB測定用採血時期と、児の解析のみ在胎週数、出生時体重、生下時採血日数を加えて重回帰分析を行った。その結果、母において母体血中4-OH-CB187濃度(log10)が高いほど、FT4(log10)が高く(β=0.033、p=0.044)、児においてはΣOH-PCB、4-OH-CB187濃度(log10)が高いほど、FT4(log10)が高かった(β=0.031、p=0.046、β=0.029、p=0.017)。児の男女別解析では、男児でΣOH-PCB、4-OH-CB187濃度(log10)が高いほど、FT4(log10)が高かった(β=0.053、p=0.017、β=0.036、p=0.043)。女児では有意差が認められなかった。コホート参加者のうち、臍帯血検体を有する264名について、臍帯血中レプチン・アディポネクチン濃度の測定を行った。
KAKENHI-PROJECT-25860434
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OH-PCB妊娠期曝露による体内代謝経路と次世代への甲状腺ホルモン攪乱作用の解明
総アディポネクチン濃度の平均値は19.2μg/ml、高分子量アディポネクチン濃度の平均値は12.8μg/ml、レプチン濃度の平均値は7.42μg/mlであった。医歯薬学OH-PCB測定が当初の計画より順調に進み、早期に甲状腺ホルモン値へ与える影響について検討することができた。そのため、H25年度中に国際学会にて「OH-PCBの胎児期曝露がおよぼす母児甲状腺ホルモン値への影響」について発表を行った。一方代謝関連遺伝子多型の解析は使用装置の解析条件検討を行っている段階であり、当初の計画よりも若干の遅れがみられるが、H26年度の早期に開始できる予定である。当初の計画に沿って研究を推進し、平成25年度までの研究内容をふまえて、引き続き妊娠期のOH-PCB曝露量を検討するため、母体血中PCB,OH-PCB濃度の測定を行っていく。また、H25年度中に解析を行わなかったSNPsについては、H26年度から解析を行い、OH-PCB曝露量との関連を検討していく。その上で、学会での発表を行い、英文論文を作成していく予定である。PCB、OH-PCB濃度測定については、測定用実験試薬の在庫で対応できた。H25年度中に開始予定だった代謝関連遺伝子SNPsの解析は、使用装置の解析条件検討の後に開始予定であるため、H25年度は解析を行わず、実験試薬の購入もなかった。H26年度に代謝関連遺伝子SNPsの解析を開始するため、H25年度繰り越し分を同解析用実験試薬購入費に充てる。
KAKENHI-PROJECT-25860434
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膜インターフェイスでの血清タンパク介在性薬物輸送機構の解明
本研究は、血清タンパク介在性薬物輸送の存在および輸送機構の解明を目的として行われた。薬物の血清における主要結合タンパクであるヒト血清アルブミン(HSA)と組織細胞との相互作用の詳細を検討した結果、組織細胞にはHSAを効率的に取り込む機構が存在し、取り込みの際には薬物を遊離する方向にHSAが構造変化を起こしている可能性が高いことを明らかにした。さらに、肝細胞においてはクラスリン介在性エンドサイトーシスによりHSAが取り込まれていることが示唆された。本研究は、血清タンパク介在性薬物輸送の存在および輸送機構の解明を目的として行われた。薬物の血清における主要結合タンパクであるヒト血清アルブミン(HSA)と組織細胞との相互作用の詳細を検討した結果、組織細胞にはHSAを効率的に取り込む機構が存在し、取り込みの際には薬物を遊離する方向にHSAが構造変化を起こしている可能性が高いことを明らかにした。さらに、肝細胞においてはクラスリン介在性エンドサイトーシスによりHSAが取り込まれていることが示唆された。本研究は、生体膜インターフェイスにおける血清タンパク質が介在する薬物輸送機構の解明を通して、的確な薬物投与設計へとつながる薬物動態予測システムを構築することを目的として行われている。本年度は、まず、円二色性分散計、核磁気共鳴装置および蛍光分光光度計を用いた検討を行い、ヒト血清アルブミン(HSA)およびα_1-酸性糖タンパク質(AGP)がいずれも、生体膜モデル(リポソーム)と相互作用することで二次構造の変化を起こし、トリプトファン残基(Trp)の置かれている環境が疎水的環境から親水的環境に変化していることを見出した。さらに、HSAおよびAGPへのワルファリンの結合性を検討し、生体膜との相互作用により結合性が低下することを確認した。次に、初代肝培養細胞とHSAおよびAGPの相互作用を検討し、肝実質細胞膜上に糖鎖を認識する取り込みレセプターが存在していることを確認した。また、AGP変異体と薬物の結合性を検討した結果、AGPの薬物結合には122位のTrpを含む100位付近の3種程度の残基が関与していることを見出した。以上の結果から、AGPは、膜レセプターに捉えられる形で細胞膜に取り込まれ、さらに、膜成分と相互作用することで薬物を放出する方向に構造変化(薬物結合領域の環境変化)を起こしているという機構を考察するに至った。今後、検討する細胞の種類を増やすとともに、HSA介在性の薬物輸送機構の存在および機序解明にも注力していく。以上得られた基礎的な知見を、最終的には生体レベルで視覚的に実証するために、SPECTを用いた評価法も本年度確立しており、これらの知見、評価法に基づいて、膜インターフェイスでの血清タンパク介在性薬物輸送機構の詳細解明をさらに推進していく。本研究は、生体膜インターフェイスにおける血清タンパク質が介在する薬物輸送機構の解明を通して、的確な薬物投与設計へとつながる薬物動態予測システムを構築することを目的として行われている。本年度は、まず、マウスを用いてヒト血清アルブミン(HSA)およびα_1-酸性糖タンパク質(AGP)の体内動態に関する検討を行った。その結果、いずれのタンパク質も、血漿中に最も多く、次いで肝、腎臓や肺などの血流の多い臓器に分布した。一方、筋肉、皮膚や肺のような血流の少ない組織中にも分布が確認された。筋肉、皮膚や肺に通じる毛細血管の血管壁は内皮細胞が比較的密に接合した連続内皮構造を有し、高分子である血漿タンパクが漏れ出しにくい構造であることを考えると、血管内皮細胞に能動的なタンパク質取り込み機構が存在する可能性が示唆された。次に、HSA上のアミノ酸を1残基置換した変異体を各種作成し、その動態特性を評価した結果、変異体の表面電荷(キャピラリー電気泳動法で評価)が負に帯電するほど、肝クリアランスが増大することが示された。以上を前年度までに得られた知見とあわせて考察すると、血管内皮および組織細胞膜上には、血清タンパク質の表面構造を認識し能動的に取り込む機構が存在している可能性が強く、さらに、血清タンパク質は膜成分と相互作用し構造変化を起こす結果、結合した薬物を放出・輸送していると推定している。以上の実証を目的に、現在、血管内皮、肝、腎および肺由来の細胞に絞り、これと変異体との相互作用を評価しながら、細胞膜上の輸送担体の存在確認および特定を急いでいる。今後、薬物の組織移行率を算出し、この値を、動態実験の速度論解析の結果に外挿することにより、HSAまたはAGP結合性薬物の正確な体内動態予測システムの構築に繋げていく。本研究は、生体膜インターフェイスにおける血清タンパク質が介在する薬物輸送機構の解明を通して、的確な薬物投与設計へとつながる薬物動態予測システムを構築することを目的として行われている。これまでの検討で、ヒト血清アルブミン(HSA)およびα_1-酸性糖タンパク質(AGP)と組織細胞膜との相互作用においてはレセプター介在性のエンドサイトーシスの関与が示唆される結果を得た。さらに、HSAおよびAGPを静脈内投与した場合、血漿中に最も多く、次いで肝臓、腎臓などの血流の多い臓器のみならず、筋肉、皮膚や肺のような血流の少ない組織中への分布も確認した。本年度は、肝由来細胞(ラット初代肝培養細胞およびヒト肝がん細胞)および正常ヒト臍帯静脈内皮細胞を用いて、HSAおよびAGPの取り込み機構の詳細解明を行った。
KAKENHI-PROJECT-21590054
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膜インターフェイスでの血清タンパク介在性薬物輸送機構の解明
その結果、HSAの肝由来細胞の取り込みにおいてはクラスリン介在性エンドサイトーシスの関与が、さらに、AGPの肝由来細胞の取り込みにおいてはカベオラ介在性エンドサイトーシスの関与が示唆された。一方、正常ヒト臍帯静脈内皮細胞の透過においてはレセプター介在性エンドサイトーシスを示す明確な結果は得られなかったが、それぞれの血清タンパク質に特異的に結合する薬物の透過が認められることから、血清タンパク質が薬物の透過をサポートする何らかの能動的な機序が存在するものと考えられた。以上を前年度までに得られた知見とあわせて考察すると、血管内皮細胞および組織細胞膜上には、血清タンパク質の表面構造を認識し能動的に取り込む機構が存在している可能性が高く、これらの機構が連関し、薬物を効率的に運搬するシステムが機能していると考えられた。今後、この血清タンパク介在性の薬物輸送を定量的に把握し、より正確な薬物動態予測システムの構築に繋げていく予定である。
KAKENHI-PROJECT-21590054
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上皮細胞の細胞接着と細胞極性のシグナリングの分子機構
aPKCの線虫ホモログPKC-3の結合タンパクとして同定したプロテアソームサブユニットRPN-2は、そのRNAi胚の分裂軸方向の異常がpkc-3 (RNAi)胚と類似することから、PKC-3と同様に、細胞極性形成と引き続く非対称分裂を制御していることが考えられた。今年度の極性タンパクの局在(PKC-3も含む)の解析からrpn-2(RNAi)胚では、これまでに知られている極性の喪失とは異なり、本来極性化せず等分裂するべき細胞に異常な極性化を引き起こし、分裂も非対称になっていることが明らかとなた。一方、本来非対称分裂する細胞には顕著な異常は見いだされなかった。同様の表現型は、プロテアソームの他のサブユニットでも見られることを明らかにし、RPN-2単独なものではなく、プロテアソームの表現型であることが示唆された。他方、細胞分裂期の進行に、プロテアソームと同じ経路で働くanaphase promoting complexの発現喪失胚の表現型とは異なることを確認し、分裂期の進行異常に付随する二次的な表現型ではなく、プロテアソームの機能喪失によって直接引き起こされる異常であると考えられた。以上の、プロテアソームの発現喪失は異所的な細胞極性化および非対称分裂を引き起こすという結果から、野生型胚には細胞の等分裂を制御する機構が存在するという、これまでに注目されたことのなかった機構があることを示し、その経路にプロテアソームが関与していることを明らかにした。他方、RPN-2特異的抗体の作製に成功し、内在性タンパクは細胞質、分裂期の核周辺、そして細胞膜に局在していることを明らかにした。このうち細胞膜の局在はPKC-3の既知の局在と一致するので、この部分において共局在する可能性が示唆された。aPKCの線虫ホモログPKC-3の結合タンパクとして同定したプロテアソームサブユニットRPN-2は、そのRNAi胚の分裂軸方向の異常がpkc-3 (RNAi)胚と類似することから、PKC-3と同様に、細胞極性形成と引き続く非対称分裂を制御していることが考えられた。今年度の極性タンパクの局在(PKC-3も含む)の解析からrpn-2(RNAi)胚では、これまでに知られている極性の喪失とは異なり、本来極性化せず等分裂するべき細胞に異常な極性化を引き起こし、分裂も非対称になっていることが明らかとなた。一方、本来非対称分裂する細胞には顕著な異常は見いだされなかった。同様の表現型は、プロテアソームの他のサブユニットでも見られることを明らかにし、RPN-2単独なものではなく、プロテアソームの表現型であることが示唆された。他方、細胞分裂期の進行に、プロテアソームと同じ経路で働くanaphase promoting complexの発現喪失胚の表現型とは異なることを確認し、分裂期の進行異常に付随する二次的な表現型ではなく、プロテアソームの機能喪失によって直接引き起こされる異常であると考えられた。以上の、プロテアソームの発現喪失は異所的な細胞極性化および非対称分裂を引き起こすという結果から、野生型胚には細胞の等分裂を制御する機構が存在するという、これまでに注目されたことのなかった機構があることを示し、その経路にプロテアソームが関与していることを明らかにした。他方、RPN-2特異的抗体の作製に成功し、内在性タンパクは細胞質、分裂期の核周辺、そして細胞膜に局在していることを明らかにした。このうち細胞膜の局在はPKC-3の既知の局在と一致するので、この部分において共局在する可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-00J61102
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撮影所システム崩壊後の日本映画の製作体制:インタビューを中心とする総合的研究
本研究の最大の成果は、伊地智啓著『映画の荒野を走れ:プロデューサー始末半世紀』(上野昂志・木村建哉編、インスクリプト、2015年4月)の刊行である。編者の木村は本研究の研究代表者、上野は研究協力者である。本書は、1960年に日活に入社し、1971年にプロデューサーに転じ、1970年代後半以降は独立系のプロデューサーとして撮影所システム崩壊後の日本映画界を2000年代まで牽引し続けてきた日本映画史上有数のプロデューサー伊地智啓への、10回以上に渡るロングインタビューをまとめたものであり、今後の日本映画研究に必須の第一級の資料となった。2012年度に引き続き、プロデューサー伊地智啓氏へのインタビューを5度にわたって行い、1970年代から90年代映画界の状況の変化に関して、様々な側面からの貴重な証言を得ることが出来た。伊地智氏へのインタビューは、当初予定の4ー5回を超えて、2012年度と合わせて既に7回に及び、2014年度にもさらにもう1度行う予定であるが、これは、伊地智啓氏の助監督、そしてとりわけプロデューサーとしての経歴・実績が、我々の予想を超えて遙かに多岐にわたっていたためであり、充実した内容の、これまでに知られていない様々な事実や事情を明らかにするインタビューが実現している。伊地智啓氏へのインタビューは、当初予定では2014年度前半中に単行本として刊行予定であったが、インタビューが予想を超えた分量に達しているため、2014年度後半に出版の予定と変更となった。また、研究代表者木村建哉は、『おしん』を監督した冨樫森氏(研究協力者)へのインタビューを行い、活字化して公表して(業績欄参照)、現在の日本映画の製作状況の一端を明らかにしている。研究分担者の藤井仁子は、当科学研究費の助成の下、森崎東作品の関係者へのインタビューを行い、各種資料と研究者、批評家等による論考をも集めた編著『森崎東等宣言』を刊行し(業績欄参照)、撮影所システム崩壊後の日本映画の制作状況を伊地智氏へのインタビューとはまた別の角度から明らかにしている。なお、藤井仁子自身による、インタビュー結果を踏まえた論考が同編著には収載されている。同編著には、もう一人の分担者中村秀之も論考を寄せており(業績欄参照)、2013年度においては、プロジェクト全体としても、研究代表者及び各研究分担者個々人においても、撮影所システム崩壊後の日本映画の制作状況を多様な角度から明らかにする研究・調査が大いに進展した。スタッフ・インタビューに取り掛かる前に、主として1960年代の日活の制作状況について資料集の調査を行った。その後伊地智啓氏(映画プロデューサー、元助監督)へのインタビューを2012年の10月と2013年の1月の計2回行った。初回のインタビューでは、伊地智氏が入社した1960年から60年代末までの日活での撮影所システムの機能状況を、助監督として制作現場に加わった立場から御証言頂き、60年代の日本映画界の撮影所システムのある程度の共通点と、会社ごとのシステムの違いをある程度明らかに出来たと考える。また、1960年代後半の映画斜陽期の撮影所の状況についても貴重な証言が得られた。第2回のインタビューでは、1960年代末から1970年代初頭の日活撮影所の状況について伺った。日活が倒産寸前に追い込まれる中での制作現場の状況、そして1971年の日活のロマンポルノ路線への転換という、日本映画史上、いや世界映画史上の大事件について、助監督からプロデューサーへと立場を変えながら制作現場で体験された様々な出来事や事情を詳細に語って頂き、これは1970年代におけるロマンポルノ下での日活にのみ可能だった撮影所システムの存続の具体的なあり方を検証する意味で極めて意義の大きなインタビューとなったと言える。映画プロデューサー伊地智啓氏へのインタビューを、当初予定の4-5回から11回へと大幅に増やし、これまで明らかになっていなかった日本映画関係の様々な事実を明らかにした。他に、伊地智啓氏とやはり映画プロデューサーである黒澤満氏に同席して頂いてのインタビューや、冨樫森監督、中村義洋監督、森崎東監督のスタッフや関係者等へのインタビューを行った。インタビュー結果は、研究代表者木村建哉と研究協力者上野昂志の共編による、伊地智啓著『映画の荒野を走れプロデューサー始末半世紀』(インスクリプト、2015年4月)や研究分担者藤井仁子編『森崎東党宣言』(インスクリプト、2013年)に発表され大きな反響を呼んでいるほか、大学紀要類にも掲載されているか、今後掲載予定である。特に伊地智啓氏及び伊地智氏と黒澤満氏が同席してのインタビューに関しては、研究者とベテランの映画評論家上野昂志が協力したことにより、同時代的な経験を通じての状況把握と徹底した資料調査の両面から、これまでの映画関係者へのインタビューには稀である詳細かつ具体的な証言を多々引き出すことが出来、日本映画史上の未知の事実を多数明らかにすることが出来た点で、そして今後の映画史研究の一つの有力な方法論を示すことが出来た点で、本研究の成果は極めて大きいと言って良いであろう。インタビューの成果を活用した映像テクスト分析に関しては、インタビュー自体が予想以上に大量のものとなったことも有り、当初予定通りに必ずしも進められなかったが、藤井仁子や中村秀之による成果が、藤井仁子編の上掲書に発表されている。
KAKENHI-PROJECT-24520175
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24520175
撮影所システム崩壊後の日本映画の製作体制:インタビューを中心とする総合的研究
本研究の最大の成果は、伊地智啓『映画の荒野を走れ:プロデューサー始末半世紀』(上野昂志・木村建哉編、インスクリプト、総頁357頁+xxiii、2015年4月)である。共編者は、本研究の研究代表者である木村と、本研究の研究協力者である上野である。本書は、本研究の助成により実現した伊地智への10回以上に渡るロングインタビューに、加筆・再構成を加えたものである(本書の一部は本研究の研究代表者木村と研究分担者中村・藤井の共編著『甦る相米慎二』(2011年)に既に収録されていたインタビューの再録であるが、その部分に関しても、本研究の成果を踏まえての加筆・修正が行われている)。伊地智は、1960年に日活に助監督として入社し、1971年にプロデューサーに転じ、1970年代後半以降は独立系のプロデューサーとして、撮影所システム(スタジオ・システム)崩壊後の日本映画界をリードし続けてきた日本映画史上最も重要なプロデューサーの一人であり、本ロングインタビューは、1960年代から2000年代までの日本映画界の実状に関する第一級の資料として、今後の日本映画研究になくてはならないものとなった。なお、本書は既に映画研究者達に引用・言及されているのみならず、『キネマ旬報』主催の「映画本大賞2015」において、2015年に出版された700冊を超える映画書の中で第3位に選出されるなど、高い評価を得ている。本研究の主要な成果としては、藤井仁子編『森崎東党宣言!』(インスクリプト、2013年11月)も挙げることが出来る。本書は、1960年代から2000年代の日本映画界を代表する監督森崎東についての論考(本研究の研究分担者中村と藤井によるものを含む)、関係者へのインタビュー、森﨑本人へのインタビューの集成である。本研究は、1960年代から2000年代を代表するプロデューサーと監督とについて、それぞれ重要な資料、研究成果を公開し得たと言えよう。本研究の最大の成果は、伊地智啓著『映画の荒野を走れ:プロデューサー始末半世紀』(上野昂志・木村建哉編、インスクリプト、2015年4月)の刊行である。編者の木村は本研究の研究代表者、上野は研究協力者である。本書は、1960年に日活に入社し、1971年にプロデューサーに転じ、1970年代後半以降は独立系のプロデューサーとして撮影所システム崩壊後の日本映画界を2000年代まで牽引し続けてきた日本映画史上有数のプロデューサー伊地智啓への、10回以上に渡るロングインタビューをまとめたものであり、今後の日本映画研究に必須の第一級の資料となった。インタビューを通じて、撮影所システム崩壊後の日本映画史の展開を明らかにするという点に関しては、予想を遙かに上回る成果が上がった。インタビュー、資料分析を活用しての映像テクスト分析に関しては、必ずしも当初予定通りには進めることが出来なかったが、森崎東をめぐる中村秀之と藤井仁子の論考が藤井仁子編『森崎東党宣言』(インスクリプト、2013年)に発表されており、一定の成果を収めている。映画学伊地智啓氏へのロングインタビューは、木村(研究代表者)と上野昂志(研究協力者)の共編によって、2015年4月24日にインスクリプトより単行本『映画の荒野を走れプロデューサー始末半世紀』として刊行され、既に大きな反響を得ている。研究資金はこの単行本の一定部数の買い取りと献本によって既に尽きているが、単行本への反応を受けて、無償協力を得て追加インタビューが行えないか検討中である。
KAKENHI-PROJECT-24520175
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24520175
細胞接着分子の糖鎖病理学的研究
近代病理学の基礎を築いたウィルヒョウ(Virchow)は、すべての病気は細胞の異常に起因する、という「細胞病理学」を確立した。細胞が生命を維持し、複製していくためには、核酸とタンパク質は必須であることは言うまでもない。本研究では、遺伝子の支配を直接受けない第3の生命鎖である糖鎖に焦点を当て、その機能を病気との関連において分子レベルで明らかにすることを目標とし、「糖鎖病理学」ともいえる領域に踏み込む研究を行うことを心がけた。この背景として、著者は、細胞表面の糖脂質、糖タンパク質糖鎖の構造と機能に関する研究を続けてきた.この過程で多細胞生物を構築する細胞はさまざまな接着の形を通して生物個体全体のシステムを維持しており、この乱れが疾患として認識されること、細胞の接着の多くが糖鎖を介して行われることを明らかにして来た.すなわち、糖鎖を介する細胞-細胞間、細胞-バクテリア間、細胞-ウイルス間の接着および認識が病態と深く関わることに注目していた。本研究では、初年度は、主に脈管系の糖鎖を介する接着分子(セレクチン群)の病態への関わりを中心とした研究を行い、次年度はこれに加えて、ウイルス(特にインフルエンザウイルス)の感染における糖鎖認識接着分子の分子生物学的研究を加えた。脈管系細胞には、サイトカインなどの刺激により発現される新しい糖鎖認識レセプタータンパク質群(セレクチンファミリー;E-セレクチン、L-セレクチン、P-セレクチン)があり、これらは、リンパ球のホ-ミング、好中球やリンパ球の血管内皮細胞への接着と炎症組織への遊走、血小板同士の凝集や、原発癌細胞の転移、浸潤などに深く関わることが我々の研究を含め明らかにされつつある.我々は、本研究において、L-セレクチンやP-セレクチンの新しい糖鎖性リガンドとして硫酸化糖鎖を見出し、さらに、腎炎や肺炎の発症や癌細胞の転移には標的細胞膜の硫酸化糖鎖へのL-およびP-セレクチンを介したリンパ球や血小板の接着が深く関わることを明らかにした。セレクチンファミリーは新しいレクチン様接着分子であり、白血球のローリングによる血管内皮細胞への接着開始において免疫学上極めて重要な役割を担うと同時に、続いて起こるスーパーオキシドやプロテアーゼ産生による組織細胞の損傷などさまざまな病態発現とも深く関わるタンパク質である。本研究では、硫酸化糖脂質であるスルファチドが、L-およびP-セレクチンと特異的に結合する糖鎖リガンドであること、L-およびP-セレクチン依存性の肺炎、腎炎さらに肝炎などを強力に阻止できることなどを見出した。また、スルファチドは、Bリンパ球上に存在しTリンパ球には存在しないこと、Bリンパ球の分化、増殖および抗体産生に深く関わることなど、免疫学上重要な現象を明らかにすることができた。さらに、スルファチドは、TNF-αの産生を抑制し、エンドトキシンショックの予防に極めて有効であることを見出すことができた。一方、インフルエンザウイルスはウイルス膜に宿主細胞表面の糖鎖性受容体への結合に必須なヘマグルチニン、および受容体を破壊する酵素(ノイラミニダーゼ)を有している。インフルエンザA型ウイルスは、ヒトのみならずブタ、トリ、ウマなど多くの動物にも感染し、世界的大流行を起こす。この原因は、ウイルスヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼの変異に起因する。本研究においては、ヒトおよび動物インフルエンザウイルスが認識する糖鎖性受容体の構造を明らかにし、次いで、どのようにして宿主の壁を超えるのかという宿主変異機構の一端を分子生物学的に解明できた。すなわち、インフルエンザウイルスヘマグルチニンの変異は、主として抗体による圧力の他に、受容体認識特異性、すなわちシアル酸分子種[N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)、N-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)]認識特異性とシアル酸の結合様式(Neu5Aα2-3Galβ1-,Neu5Acα2-6Galβ1-)に対する認識特異性によるウイルスの選択が重要な因子であることを見出した。さらに、このシアル酸結合様式の認識特異性の発現にはLeu226のアミノ酸が極めて重要な役割をしていることも解った。近代病理学の基礎を築いたウィルヒョウ(Virchow)は、すべての病気は細胞の異常に起因する、という「細胞病理学」を確立した。細胞が生命を維持し、複製していくためには、核酸とタンパク質は必須であることは言うまでもない。本研究では、遺伝子の支配を直接受けない第3の生命鎖である糖鎖に焦点を当て、その機能を病気との関連において分子レベルで明らかにすることを目標とし、「糖鎖病理学」ともいえる領域に踏み込む研究を行うことを心がけた。この背景として、著者は、細胞表面の糖脂質、糖タンパク質糖鎖の構造と機能に関する研究を続けてきた.この過程で多細胞生物を構築する細胞はさまざまな接着の形を通して生物個体全体のシステムを維持しており、この乱れが疾患として認識されること、細胞の接着の多くが糖鎖を介して行われることを明らかにして来た.すなわち、糖鎖を介する細胞-細胞間、細胞-バクテリア間、細胞-ウイルス間の接着および認識が病態と深く関わることに注目していた。本研究では、初年度は、主に脈管系の糖鎖を介する接着分子(セレクチン群)の病態への関わりを中心とした研究を行い、次年度はこれに加えて、ウイルス(特にインフルエンザウイルス)の感染における糖鎖認識接着分子の分子生物学的研究を加えた。脈管系細胞には、サイトカインなどの刺激により発現される新しい糖鎖認識
KAKENHI-PROJECT-07044286
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07044286
細胞接着分子の糖鎖病理学的研究
レセプタータンパク質群(セレクチンファミリー;E-セレクチン、L-セレクチン、P-セレクチン)があり、これらは、リンパ球のホ-ミング、好中球やリンパ球の血管内皮細胞への接着と炎症組織への遊走、血小板同士の凝集や、原発癌細胞の転移、浸潤などに深く関わることが我々の研究を含め明らかにされつつある.我々は、本研究において、L-セレクチンやP-セレクチンの新しい糖鎖性リガンドとして硫酸化糖鎖を見出し、さらに、腎炎や肺炎の発症や癌細胞の転移には標的細胞膜の硫酸化糖鎖へのL-およびP-セレクチンを介したリンパ球や血小板の接着が深く関わることを明らかにした。セレクチンファミリーは新しいレクチン様接着分子であり、白血球のローリングによる血管内皮細胞への接着開始において免疫学上極めて重要な役割を担うと同時に、続いて起こるスーパーオキシドやプロテアーゼ産生による組織細胞の損傷などさまざまな病態発現とも深く関わるタンパク質である。本研究では、硫酸化糖脂質であるスルファチドが、L-およびP-セレクチンと特異的に結合する糖鎖リガンドであること、L-およびP-セレクチン依存性の肺炎、腎炎さらに肝炎などを強力に阻止できることなどを見出した。また、スルファチドは、Bリンパ球上に存在しTリンパ球には存在しないこと、Bリンパ球の分化、増殖および抗体産生に深く関わることなど、免疫学上重要な現象を明らかにすることができた。さらに、スルファチドは、TNF-αの産生を抑制し、エンドトキシンショックの予防に極めて有効であることを見出すことができた。一方、インフルエンザウイルスはウイルス膜に宿主細胞表面の糖鎖性受容体への結合に必須なヘマグルチニン、および受容体を破壊する酵素(ノイラミニダーゼ)を有している。インフルエンザA型ウイルスは、ヒトのみならずブタ、トリ、ウマなど多くの動物にも感染し、世界的大流行を起こす。この原因は、ウイルスヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼの変異に起因する。本研究においては、ヒトおよび動物インフルエンザウイルスが認識する糖鎖性受容体の構造を明らかにし、次いで、どのようにして宿主の壁を超えるのかという宿主変異機構の一端を分子生物学的に解明できた。すなわち、インフルエンザウイルスヘマグルチニンの変異は、主として抗体による圧力の他に、受容体認識特異性、すなわちシアル酸分子種[N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)、N-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)]認識特異性とシアル酸の結合様式(Neu5Aα2-3Galβ1-,Neu5Acα2-6Galβ1-)に対する認識特異性によるウイルスの選択が重要な因子であることを見出した。さらに、このシアル酸結合様式の認識特異性の発現にはLeu226のアミノ酸が極めて重要な役割をしていることも解った。本研究の目的は、1)細胞間の接着にかかわる糖鎖認識接着分子であるセレクチンファミリー(E-、L-、P-セレクチン)やウイルスやバクテリア、さらに原虫感染における糖鎖認識分子の特異性、相互認識機構、情報伝達機構などを明らかにし、2)新しい糖鎖病理学の研究領域を開拓し、3)新世代の抗炎症、抗癌転移薬開発へと応用する実験的基盤を確立する事である。本年度は主としてセレクチンが認識する糖鎖と炎症病理との関連を分子レベルで解明するためミシガン大学医学部Peter A. Ward教授との共同研究を展開した。
KAKENHI-PROJECT-07044286
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X線複結晶回折法による多孔質シリコン薄層の格子ひずみ評価
CZ・シリコン単結晶上に陽極化成法で作製した多孔質シリコン層がレーザ光照射で赤色の発光をすることが報告され,申請者らも実際にこの発光現象を確認した.この発光現象は残留シリコンの量子サイズ効果によると推測されているが,格子ひずみによる効果も考えられ,実験的にはどのような機構によるものか未だ検証されていない.本研究では,十分に規定された強力なX線束を用いた複結晶回折法により,多孔質シリコン層の結晶性を調べ発光特性との関係について検討した.さらに,高分解能電子顕微鏡の結果を参照し,多孔質シリコンの微細構造および形態,発光効率,結晶性と格子ひずみの関係について考察した.本研究で得られた主な結果は以下の通りである.(1)陽極化成条件により,多孔質シリコン薄層の格子定数と細孔構造(樹状構造)は著しく異なる.(2)基板から剥離すると基板による拘束を免れるため多孔質シリコン薄層は全体でひずみを緩和しX線の回折曲線の半値幅は著しく広がり,樹状構造が破壊されモザイク構造となると解釈された.(3)この結果から多孔度の高い多孔質シリコン層では,在留シリコン部は微細粒子の集合した一種のモザイク構造となることで格子ひずみを緩和していると解釈された.(4)作製条件および作製後の処理条件を変えた試料について,レーザ照射とその発光特性を調べ,結晶学的完全性および格子ひずみが大きい微細粒子からなる部分が著しい発光特性を示すことがわかった.この点は,高分解能走査型および透過型電子顕微鏡観察によっても確認された.可視光発光に関与している部分は,数nm程度の結晶性の悪いあるいは格子ひずみの大きい微粒子状になっている部分である可能性が高いことが示された.今後は,X線小角散乱法を併用した構造評価法で,具体的にどのような形態が関与しているか調べる計画である.CZ・シリコン単結晶上に陽極化成法で作製した多孔質シリコン層がレーザ光照射で赤色の発光をすることが報告され,申請者らも実際にこの発光現象を確認した.この発光現象は残留シリコンの量子サイズ効果によると推測されているが,格子ひずみによる効果も考えられ,実験的にはどのような機構によるものか未だ検証されていない.本研究では,十分に規定された強力なX線束を用いた複結晶回折法により,多孔質シリコン層の結晶性を調べ発光特性との関係について検討した.さらに,高分解能電子顕微鏡の結果を参照し,多孔質シリコンの微細構造および形態,発光効率,結晶性と格子ひずみの関係について考察した.本研究で得られた主な結果は以下の通りである.(1)陽極化成条件により,多孔質シリコン薄層の格子定数と細孔構造(樹状構造)は著しく異なる.(2)基板から剥離すると基板による拘束を免れるため多孔質シリコン薄層は全体でひずみを緩和しX線の回折曲線の半値幅は著しく広がり,樹状構造が破壊されモザイク構造となると解釈された.(3)この結果から多孔度の高い多孔質シリコン層では,在留シリコン部は微細粒子の集合した一種のモザイク構造となることで格子ひずみを緩和していると解釈された.(4)作製条件および作製後の処理条件を変えた試料について,レーザ照射とその発光特性を調べ,結晶学的完全性および格子ひずみが大きい微細粒子からなる部分が著しい発光特性を示すことがわかった.この点は,高分解能走査型および透過型電子顕微鏡観察によっても確認された.可視光発光に関与している部分は,数nm程度の結晶性の悪いあるいは格子ひずみの大きい微粒子状になっている部分である可能性が高いことが示された.今後は,X線小角散乱法を併用した構造評価法で,具体的にどのような形態が関与しているか調べる計画である.
KAKENHI-PROJECT-04680054
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中国法文化の特質とそれを支える基層観念の解明
伝統中国において成立した「法治」と「徳治」の観念は、帝政期に礼法一体の観念として完成され、その影響は、社会主義中国においても大きな影響を残していると考えられる。今回の研究では、漢代に董仲舒によって完成された礼法一体論の内容およびその歴史的・社会的背景を明らかにすると同時に、法の倫理化、法と同時に倫理をも社会統治の道具とする概念の及ぼす一般的帰結について、詳細に明らかにした。その成果の一つは、法と倫理を一体化した法体系は、人間の全人的把握を前提するが、そのことが、帝制中国法制の典型であった口供主義を生み、又紛争の拡大化を帰結することを明らかにしたもので、この点については1996年8月中国黄山市で開催された『儒学与中国法文化研究会』において「重視義与中国法文化」という題で報告され、1997年中国にて刊行予定の書(書名未定)に掲載される。二つは、前述の董仲舒の法思想を手がかりに、礼法一体の法思想の基層に自然主義とプラグマティズムとの奇妙な結合が存在すること、それが人と人との関係性の重視を基礎にしていること、手続のアド・ホックな定立を促すことに影響を与えていること等を、明らかにしたものである。関係性の重視、手続のアド・ホクな定立は現代法研究においても注目されているところであるが、その中国的在り方の解明は、その限界を指摘することにもなる。これについては、鹿児島大学『法学論集』の最新号(1997年発行予定)に発表される予定である。伝統中国において成立した「法治」と「徳治」の観念は、帝政期に礼法一体の観念として完成され、その影響は、社会主義中国においても大きな影響を残していると考えられる。今回の研究では、漢代に董仲舒によって完成された礼法一体論の内容およびその歴史的・社会的背景を明らかにすると同時に、法の倫理化、法と同時に倫理をも社会統治の道具とする概念の及ぼす一般的帰結について、詳細に明らかにした。その成果の一つは、法と倫理を一体化した法体系は、人間の全人的把握を前提するが、そのことが、帝制中国法制の典型であった口供主義を生み、又紛争の拡大化を帰結することを明らかにしたもので、この点については1996年8月中国黄山市で開催された『儒学与中国法文化研究会』において「重視義与中国法文化」という題で報告され、1997年中国にて刊行予定の書(書名未定)に掲載される。二つは、前述の董仲舒の法思想を手がかりに、礼法一体の法思想の基層に自然主義とプラグマティズムとの奇妙な結合が存在すること、それが人と人との関係性の重視を基礎にしていること、手続のアド・ホックな定立を促すことに影響を与えていること等を、明らかにしたものである。関係性の重視、手続のアド・ホクな定立は現代法研究においても注目されているところであるが、その中国的在り方の解明は、その限界を指摘することにもなる。これについては、鹿児島大学『法学論集』の最新号(1997年発行予定)に発表される予定である。
KAKENHI-PROJECT-07620008
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07620008
大脳皮質が制御する大脳基底核の神経生理作用と運動制御機構の解明
大脳皮質は大脳皮質-線条体経路と大脳皮質-視床下核経路の二つの経路により大脳基底核に情報を送っている。これまでの技術では、大脳皮質-線条体経路あるいは大脳皮質-視床下核経路のどちらか一方の経路の役割を選択的に解析することができなかった。本研究では、ウイルスベクターを用いて大脳皮質-線条体経路に選択的な光受容体の遺伝子導入に成功し、さらに光照射により大脳皮質-線条体経路の選択的な興奮誘導に成功した。大脳皮質は大脳皮質-線条体経路と大脳皮質-視床下核経路の二つの経路により大脳基底核に情報を送っている。これまでの技術では、大脳皮質-線条体経路あるいは大脳皮質-視床下核経路のどちらか一方の経路の役割を選択的に解析することができなかった。本研究では、ウイルスベクターを用いて大脳皮質-線条体経路に選択的な光受容体の遺伝子導入に成功し、さらに光照射により大脳皮質-線条体経路の選択的な興奮誘導に成功した。大脳皮質が大脳基底核を制御する機構を明らかにするため、平成20年度は特定の波長の光に応答して細胞を興奮させる作用のあるChR2(channelrhodopsin-2)を大脳皮質来線条体経路あるいは大脳皮質-視床下核経路に特異的に発現させるウイルスベクターを利用した遺伝子導入方法の確立を試みた。最近開発された狂犬病のGタンパクを利用したレンチウイルスベクターは、ウイルスの注入部位から逆行性に遺伝子導入できる技術であり、この技術を利用すれば、線条体あるいは視床下核にレンチウイルスベクターを注入することにより、大脳皮質-線条体経路あるいは大脳皮質-視床下核経路に特異的にChR2を発現させることができる。大脳皮質への光照射により、これらの神経経路を特異的に興奮させることができるため、大脳皮質が大脳基底核を制御する機構を解明するために極めて重要な技術開発である。ChR2をコードするcDNAを組み込んだ狂犬病のGタンパクを利用したレンチウイルスベクターを作製し、野生型マウスの線条体に局所注入した。注入から1ヶ月後に脳を摘出し、ChR2の発現を組織化学的に解析した。その結果、大脳皮質、視床、黒質緻密部の極一部の神経細胞にChR2の発現が認められた。しかし、より多くの神経細胞にChR2を発現させるため、ウイルスベクターの濃縮率を上げてさらに高い力価のウイルスベクターを作製し、野生型マウスの線条体に局所注入した。このマウスのChR2の発現を解析したところ、より多くの大脳皮質、視床の神経細胞にChR2の発現が認められた。光感受性受容体であるチャネルロドプシン-2(ChR2)は青色光に応答して陽イオンを細胞内に流入させて時間分解能良く細胞を興奮させるため、標的とする神経経路に特異的に発現させて神経活動を操作することができれば、神経経路の神経生理機能の解明に非常に役立つ。大脳皮質運動野が大脳基底核を制御する機構を明らかにするため、平成20年度に引き続き、注入部位から逆行性に遺伝子導入できる狂犬病のGタンパクを利用したレンチウイルスベクターを用いて、大脳皮質-線条体経路あるいは大脳皮質-視床下核経路に特異的にChR2を発現させる遺伝子導入法の確立を試みた。濃縮方法と精製方法の改良により、平成20年度に作製したウイルスベクターよりも高力価のベクターを作製することができた。このウイルスベクターを野生型マウスの線条体に注入したところ、大脳皮質運動野および感覚野の第V層や視床の束傍核など、線条体に投射していることがよく知られている領域で、特に軸索においてChR2の発現が認められた。そこで、このウイルスベクターを線条体に注入したマウスの大脳皮質運動野に青色光を照射するための光ファイバーと神経活動を記録するための記録電極を刺入し、光の照射で大脳皮質の神経細胞の興奮を誘導することができるのかどうかを検証した。その結果、青色光の照射に応答して弱いながらも大脳皮質の神経細胞に興奮が認められ、大脳皮質-線条体経路の興奮を特異的に誘導することができた。この神経経路特異的に神経活動を操作する技術は、大脳皮質運動野が大脳基底核を制御する機構の解明だけでなく、他の脳領域における神経生理機能の解明に利用することが可能であり、今年度の研究成果は今後の神経生理機能の解明において大きく寄与することができると考えられる。大脳皮質運動野が大脳基底核の神経活動と運動機能を制御する機構を解明するためには、大脳皮質-線条体経路や大脳皮質-視床下核経路の役割を明らかにすることが必須である。大脳皮質-線条体経路の役割を解析するため、大脳皮質-線条体経路に光受容体のチャネルロドプシン-2(ChR2)を選択的に発現させ、光刺激により大脳皮質-線条体経路の興奮を特異的に誘導し、大脳基底核を構成する神経核の神経活動の変化および運動の変化を解析することにより、大脳皮質-線条体経路の役割を解明しようと試みた。大脳皮質-線条体経路に特異的にChR2を発現させるため、平成20、21年度に引き続き、注入部位から逆行性に遺伝子導入できる狂犬病のGタンパクを利用したレンチウイルスベクターによる遺伝子導入法の改良を試みた。これまでの方法ではChR2の発現量が少なく、光照射に応じて大脳皮質-線条体経路の十分な興奮誘導が認められなかったことから、ウイルスベクターの注入回数を増やした。
KAKENHI-PROJECT-20700353
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20700353
大脳皮質が制御する大脳基底核の神経生理作用と運動制御機構の解明
その結果、大脳皮質運動野の第II層や第V層などにこれまでよりも多量のChR2を発現させることが出来た。そこで、ウイルスベクターを数回注入したマウスの大脳皮質運動野に光ファイバーと記録電極を刺入し、光照射により大脳皮質-線条体経路の興奮を誘導することができるのかどうかを検証した。その結果、光照射に応答して大脳皮質の神経細胞に興奮誘導が認められ、大脳皮質-線条体経路の興奮を特異的に誘導することができた。現在、大脳皮質-線条体経路を特異的に興奮させたときの淡蒼球外節や黒質網様部における神経活動を引き続き記録している。この研究課題において確立した技術は、大脳皮質-大脳基底核の制御機構の解明だけでなく、他の脳領域における神経生理機能の解明に利用することが可能であり、この研究成果は今後の神経生理機能の解明において大きく寄与することができると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-20700353
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20700353
インドネシアのハリナシバチが生産するプロポリスの機能性解明を目指した研究
インドネシアのような熱帯地域には、毒針を持たないハリナシバチとよばれる小さなミツバチが生息している。このミツバチは一般的な西洋ミツバチと同様、ハチミツやプロポリスを巣に蓄える性質を持っている。しかし、ハリナシバチが生産するプロポリスの構成成分や生理機能はあまり解明されていない。そこで、本研究はインドネシアのハリナシバチが生産するプロポリスを対象に、その成分分析と生理機能評価を行うことで科学的エビデンスに基づいた付加価値を与えるとともに、具体的な製品開発を視野に入れた効率的なプロポリス生産法を確立することを目標としている。また、インドネシア現地でのフィールド調査とミツバチの生態学的研究によって、プロポリスの起源植物の解明を行うことも目指している。2018年度はインドネシアのスラウェシ島産プロポリスより、尿酸生成に関連する酵素であるキサンチンオキシダーゼに対する顕著な阻害活性を有する新規化合物を見出すことができ、原著論文(Journal of Natural Products)に発表することができた。本成果はインドネシアにおける国内特許の出願を進めており、今後日本においても特許出願を行う予定である。フィールド調査研究に関しては、スラウェシ島において、プロポリスの起源植物探索を実施した。起源植物はまだ特定できていないが、候補となる植物を発見することができた。以上の成果は、インドネシアのジャカルタで開催されたアジア養蜂学術会議等で発表を行い、学術活動を通じたインドネシアとの国際交流も順調に進んでいる。本研究はインドネシアのハリナシバチが生産するプロポリスを対象に、その成分分析と生理機能評価を行うことで科学的エビデンスに基づいた付加価値を与えるとともに、具体的な製品開発を視野に入れた効率的なプロポリス生産法を確立することを目標としている。プロポリスの成分分析は順調に進み、いくつかの新規成分の同定に成功した。また、それらの成分の中から、尿酸生成関連酵素であるキサンチンオキシダーゼに対する阻害活性を有する化合物を見出すことができ、インドネシア産プロポリスの痛風予防や治療につながる可能性が示唆された。インドネシア現地でのフィールド調査も良好な成果を得ることができた。これまでの研究をより進展させることに注力し、主に以下の内容を推し進める。なお、これらの研究内容を実施するために、必要に応じてインドネシアより若手研究者または学生を日本に招き、研究指導を行う。(1)スラウェシ島産のプロポリス試料については、まだ未解明な成分に関する分析研究を継続する。また、スラウェシ島産プロポリスより単離・同定したキサンチンオキシダーゼ阻害効果を有する新規成分に関して、より高活性な化合物を得るため、類縁体の合成検討を行う。(2)スラウェシ島産以外のインドネシア産プロポリスの成分研究と幅広い機能性評価研究を進める。(3)インドネシア現地でのフィールド調査を行い、プロポリスの起源植物解明を目指す。インドネシアのような熱帯地域には、毒針を持たないハリナシバチとよばれる小さなミツバチが生息している。このミツバチは一般的な西洋ミツバチと同様、ハチミツやプロポリスを巣に蓄える性質を持っている。しかし、ハリナシバチが生産するプロポリスの構成成分や生理機能はあまり解明されていない。そこで、本研究はインドネシアのハリナシバチが生産するプロポリスを対象に、その成分分析と生理機能評価を行うことで科学的エビデンスに基づいた付加価値を与えるとともに、具体的な製品開発を視野に入れた効率的なプロポリス生産法を確立することを目標としている。また、インドネシア現地でのフィールド調査とミツバチの生態学的研究によって、プロポリスの起源植物の解明を行うことも目指している。2018年度はインドネシアのスラウェシ島産プロポリスより、尿酸生成に関連する酵素であるキサンチンオキシダーゼに対する顕著な阻害活性を有する新規化合物を見出すことができ、原著論文(Journal of Natural Products)に発表することができた。本成果はインドネシアにおける国内特許の出願を進めており、今後日本においても特許出願を行う予定である。フィールド調査研究に関しては、スラウェシ島において、プロポリスの起源植物探索を実施した。起源植物はまだ特定できていないが、候補となる植物を発見することができた。以上の成果は、インドネシアのジャカルタで開催されたアジア養蜂学術会議等で発表を行い、学術活動を通じたインドネシアとの国際交流も順調に進んでいる。本研究はインドネシアのハリナシバチが生産するプロポリスを対象に、その成分分析と生理機能評価を行うことで科学的エビデンスに基づいた付加価値を与えるとともに、具体的な製品開発を視野に入れた効率的なプロポリス生産法を確立することを目標としている。プロポリスの成分分析は順調に進み、いくつかの新規成分の同定に成功した。また、それらの成分の中から、尿酸生成関連酵素であるキサンチンオキシダーゼに対する阻害活性を有する化合物を見出すことができ、インドネシア産プロポリスの痛風予防や治療につながる可能性が示唆された。インドネシア現地でのフィールド調査も良好な成果を得ることができた。これまでの研究をより進展させることに注力し、主に以下の内容を推し進める。なお、これらの研究内容を実施するために、必要に応じてインドネシアより若手研究者または学生を日本に招き、研究指導を行う。(1)スラウェシ島産のプロポリス試料については、まだ未解明な成分に関する分析研究を継続する。また、スラウェシ島産プロポリスより単離・同定したキサンチンオキシダーゼ阻害効果を有する新規成分に関して、より高活性な化合物を得るため、類縁体の合成検討を行う。(2)スラウェシ島産以外のインドネシア産プロポリスの成分研究と幅広い機能性評価研究を進める。(3)インドネシア現地でのフィールド調査を行い、プロポリスの起源植物解明を目指す。
KAKENHI-PROJECT-18KK0165
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18KK0165
インドネシアのハリナシバチが生産するプロポリスの機能性解明を目指した研究
当研究費の交付決定が10月であったため、消耗品関係(物品費)に関しては、実質、半年間分だけとなった。また、事務手続きの遅れ等により、他大学の研究分担者への配分は次年度に回すことになった。さらに、研究代表者のインドネシアへの旅費に関しては、招待講演でもあったため、先方負担であった。2019度は、研究分担者に対して2年間分の物品費を支払うこと、また、インドネシア側から研究者を招待すること等も予定しているため、使用額は今年度よりも増えることが予想される。
KAKENHI-PROJECT-18KK0165
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18KK0165
ヒト感染防御抗体作成によるリンパ球嗜好性C型肝炎ウイルス感染防御
細胞嗜好性を検討するためT細胞株HPB-Ma細胞以外に肝細胞株HuH7に結合するHCV量の測定系を確立した。その結果,多くの患者のHCVは肝細胞とリンパ球の双方に感染できたが,一部の患者のHCVは肝細胞だけにしか感染できなかった。リンパ球だけにしか感染できないHCVは存在しなかった。インターフェロン治療効果とは,肝細胞系細胞への細胞嗜好性を有するHCV量は関係無く,肝細胞とリンパ球の双方に嗜好性を有するHCV量がインターフェロン治療抵抗性を決定した(2000年肝臓学会総会発表)。現在これら嗜好性の異なるHCVのE2領域のアミノ酸配列を決定中であり,今後antibody-free virionの解析で得られたコンセンサス配列と比較検討を行い,リンパ球への感染防御抗体の解析を行う予定である。細胞嗜好性を検討するためT細胞株HPB-Ma細胞以外に肝細胞株HuH7に結合するHCV量の測定系を確立した。その結果,多くの患者のHCVは肝細胞とリンパ球の双方に感染できたが,一部の患者のHCVは肝細胞だけにしか感染できなかった。リンパ球だけにしか感染できないHCVは存在しなかった。インターフェロン治療効果とは,肝細胞系細胞への細胞嗜好性を有するHCV量は関係無く,肝細胞とリンパ球の双方に嗜好性を有するHCV量がインターフェロン治療抵抗性を決定した(2000年肝臓学会総会発表)。現在これら嗜好性の異なるHCVのE2領域のアミノ酸配列を決定中であり,今後antibody-free virionの解析で得られたコンセンサス配列と比較検討を行い,リンパ球への感染防御抗体の解析を行う予定である。C型肝炎ウイルス(HCV)の細胞嗜好性を明確にするために,T細胞株HPB-Ma細胞と肝細胞株HuH7のそれぞれに感染可能なHCV量の測定系を確立した。その結果,血中のHCVは全て肝細胞への感染能を有したが,リンパ球への感染能は個々の患者で異なっていることが明らかになった。つまり多くの患者は,肝細胞とリンパ球の双方に感染できるHCVが存在し,一部の患者で肝細胞だけに特異的なHCVのみが存在したが、リンパ球だけに特異的なHCVのみの患者は存在しなかった。インターフェロン療法の治療効果と細胞嗜好性の関係を検討した結果,肝細胞ではなくリンパ球への感染能が深く関係することが明らかとなり,肝細胞とリンパ球の双方に嗜好性を有するHCVの存在がインターフェロン治療抵抗性を決定する要因であった(投稿準備中)。Envelope領域のアミノ酸配列が細胞嗜好性を決定する可能性を考えて,71名の患者(1b 36名,2a/2b35名)に関してE2領域のアミノ酸配列をPCRで増幅した後にdirect sequence法で決定した。その結果,抗体が結合していないフリービリオンが多い1b症例では個々の症例間で共通性が認められなかったが,フリービリオンが少ない1b症例とフリービリオンの量に関係無く2a/2b症例の間で共通性のあるアミノ酸配列を認めた(J Med Virol印刷中)。これら結果を踏まえて,フリービリオン量と関係する可能性が高いEnvelop構造の検討を始めた。今後は,細胞嗜好性とフリービリオン量の調節に関与する構造を明らかにして,ウイルス量の制御へと研究を進める予定である。細胞嗜好性を検討するためT細胞株HPB-Ma細胞以外に肝細胞株HuH7に結合するHCV量の測定系を確立した。その結果,多くの患者のHCVは肝細胞とリンパ球の双方に感染できたが,一部の患者のHCVは肝細胞だけにしか感染できなかった。リンパ球だけにしか感染できないHCVは存在しなかった。インターフェロン治療効果とは,肝細胞系細胞への細胞嗜好性を有するHCV量は関係無く,肝細胞とリンパ球の双方に嗜好性を有するHCV量がインターフェロン治療抵抗性を決定した(2000年肝臓学会総会発表)。現在これら嗜好性の異なるHCVのE2領域のアミノ酸配列を決定中であり,今後antibody-free virionの解析で得られたコンセンサス配列と比較検討を行い,リンパ球への感染防御抗体の解析を行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-11670512
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11670512
機能性miRNAによる角膜上皮幹細胞の生体恒常性維持機構の解明
我々人類は外界からの情報の90%以上を視覚から得ており、この重要な視覚情報を担う眼球の中で、角膜は前眼部を構成する主要組織である。特に角膜上皮は外界と絶えず接し、物理学的にも生理学的にも極めて重要な機能を担っている。これまでの一連の細胞生物学的な研究から、角膜上皮幹細胞は角膜輪部に存在することが間接的な状況証拠から報告されているが、その幹細胞の分子レベルにおける生理機構、細胞動態に関してはほとんど解明されていない。そこで組織幹細胞を用いた角膜再生医療の臨床基盤技術開発を念頭に、角膜上皮幹細胞の生体内での恒常性維持機構を分子レベルで解明することを主目的とし、近年の精力的な基礎研究から、タンパク質をコードしていないnon-coding RNAの一種であるmiRNAに注目した。解析方法として、スイス連邦工科大学より導入した角膜上皮幹細胞の単一細胞レベルでの網羅的な機能性miRNAプロファイルを作成し、miRNA 205がヒト角膜上皮幹細胞で有意に発現が亢進していることを、複数のヒト角膜上皮細胞群においてその再現性を確認した。miRNAは生体内の様々な部位に存在し、発生・分化・癌化などの生命現象や幹細胞分化制御に深く関与していることが報告されている。そこで、miRNA205の生体内での機能解析を行った。方法としては、近年の最新の遺伝子組み換え技術を応用して、miRNA-205の遺伝子改変マウスの作成を試みた。miRNA-205ノックアウトマウスは胎生期に皮膚の形成不全により致死的であった.次にmiRNA-205のより組織特異的な機能解析を行うため、上皮基底細胞マーカーであるKeratin 5に特異的なmiRNA-205 conditionalノックマウスの生体創出に成功した。角膜上皮幹細胞の単一細胞レベルでの網羅的な機能性miRNAプロファイルを複数作成した結果、miRNA-205がparacloneタイプと比較して、holocloneタイプのヒト角膜上皮幹細胞群で有意に発現が亢進していることを、複数のヒト角膜上皮細胞群において確認した。また、miRNA-205ノックアウトマウスの創出に成功し、胎生期において皮膚の形成不全により致死的であることを確認した。さらにより上皮細胞特異的なmiRNA-205の機能解析を行うため、Keratin 5に特異的なmiRNA-205 conditionalノックマウスの生体創出に成功した。従って、現在までの進捗状況としては、おおむね順調に進展していると考える。miRNA-205ノックアウトマウスの創出に成功し、胎生期において皮膚の形成不全により致死的であることを確認した。またKeratin 5に特異的なmiRNA-205conditionalノックマウスの生体創出に成功した。よって、今後は両マウスの胎生期前後および胎生期から経時的に眼球をサンプリングして角膜の形態発生を肉眼的・組織学的に観察する。特に表面外胚葉から角膜上皮細胞へと特異的に分化する胎生期(E11.5-P0)には注意深く考察を加える。同時に、角膜周辺組織(結膜、眼瞼、マイボーム腺等)の形態学的考察を加え、角膜との関連性も検討する。また特徴的な表現型が観察される場合は必要に応じて走査型・透過型電子顕微鏡等を用いて細胞レベルでの詳細な形態学的観察を行う。我々人類は外界からの情報の90%以上を視覚から得ており、この重要な視覚情報を担う眼球の中で、角膜は前眼部を構成する主要組織である。特に角膜上皮は外界と絶えず接し、物理学的にも生理学的にも極めて重要な機能を担っている。これまでの一連の細胞生物学的な研究から、角膜上皮幹細胞は角膜輪部に存在することが間接的な状況証拠から報告されているが、その幹細胞の分子レベルにおける生理機構、細胞動態に関してはほとんど解明されていない。そこで組織幹細胞を用いた角膜再生医療の臨床基盤技術開発を念頭に、角膜上皮幹細胞の生体内での恒常性維持機構を分子レベルで解明することを主目的とし、近年の精力的な基礎研究から、タンパク質をコードしていないnon-coding RNAの一種であるmiRNAに注目した。解析方法として、スイス連邦工科大学より導入した角膜上皮幹細胞の単一細胞レベルでの網羅的な機能性miRNAプロファイルを作成し、miRNA 205がヒト角膜上皮幹細胞で有意に発現が亢進していることを、複数のヒト角膜上皮細胞群においてその再現性を確認した。miRNAは生体内の様々な部位に存在し、発生・分化・癌化などの生命現象や幹細胞分化制御に深く関与していることが報告されている。そこで、miRNA205の生体内での機能解析を行った。方法としては、近年の最新の遺伝子組み換え技術を応用して、miRNA-205の遺伝子改変マウスの作成を試み、その安定した生体マウスの創出に成功した。我々が予備実験段階で確認した研究結果の再現性を確認するため、角膜上皮幹細胞の単一細胞レベルでの網羅的な機能性miRNAプロファイルを複数作成した。その結果、miRNA 205がヒト角膜上皮幹細胞で有意に発現が亢進していることを、複数のヒト角膜上皮細胞群において確認した。また、予備実験段階で、miRNA 205遺伝子改変マウスの創出技術をさらに確立して、安定したmiRNA 205ノックアウトマウスの創出に成功した。従って、現在までの進捗状況としては、おおむね順調に進展していると考える。
KAKENHI-PROJECT-17K11487
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K11487
機能性miRNAによる角膜上皮幹細胞の生体恒常性維持機構の解明
我々人類は外界からの情報の90%以上を視覚から得ており、この重要な視覚情報を担う眼球の中で、角膜は前眼部を構成する主要組織である。特に角膜上皮は外界と絶えず接し、物理学的にも生理学的にも極めて重要な機能を担っている。これまでの一連の細胞生物学的な研究から、角膜上皮幹細胞は角膜輪部に存在することが間接的な状況証拠から報告されているが、その幹細胞の分子レベルにおける生理機構、細胞動態に関してはほとんど解明されていない。そこで組織幹細胞を用いた角膜再生医療の臨床基盤技術開発を念頭に、角膜上皮幹細胞の生体内での恒常性維持機構を分子レベルで解明することを主目的とし、近年の精力的な基礎研究から、タンパク質をコードしていないnon-coding RNAの一種であるmiRNAに注目した。解析方法として、スイス連邦工科大学より導入した角膜上皮幹細胞の単一細胞レベルでの網羅的な機能性miRNAプロファイルを作成し、miRNA 205がヒト角膜上皮幹細胞で有意に発現が亢進していることを、複数のヒト角膜上皮細胞群においてその再現性を確認した。miRNAは生体内の様々な部位に存在し、発生・分化・癌化などの生命現象や幹細胞分化制御に深く関与していることが報告されている。そこで、miRNA205の生体内での機能解析を行った。方法としては、近年の最新の遺伝子組み換え技術を応用して、miRNA-205の遺伝子改変マウスの作成を試みた。miRNA-205ノックアウトマウスは胎生期に皮膚の形成不全により致死的であった.次にmiRNA-205のより組織特異的な機能解析を行うため、上皮基底細胞マーカーであるKeratin 5に特異的なmiRNA-205 conditionalノックマウスの生体創出に成功した。角膜上皮幹細胞の単一細胞レベルでの網羅的な機能性miRNAプロファイルを複数作成した結果、miRNA-205がparacloneタイプと比較して、holocloneタイプのヒト角膜上皮幹細胞群で有意に発現が亢進していることを、複数のヒト角膜上皮細胞群において確認した。また、miRNA-205ノックアウトマウスの創出に成功し、胎生期において皮膚の形成不全により致死的であることを確認した。さらにより上皮細胞特異的なmiRNA-205の機能解析を行うため、Keratin 5に特異的なmiRNA-205 conditionalノックマウスの生体創出に成功した。従って、現在までの進捗状況としては、おおむね順調に進展していると考える。角膜上皮幹細胞の単一細胞レベルでの網羅的な機能性miRNAプロファイルから、miRNA 205がヒト角膜上皮幹細胞で有意に発現が亢進していることを確認し、また、安定したmiRNA 205ノックアウトマウスの創出に成功したため、今後は胎生期から経時的に眼球をサンプリングして角膜の形態発生を肉眼的・組織学的に観察する。特に表面外胚葉から角膜上皮細胞へと特異的に分化する胎生期(E11.5-P0)には注意深く考察を加える。同時に、角膜周辺組織(結膜、眼瞼、マイボーム腺等)の形態学的考察を加え、角膜との関連性も検討する。また特徴的な表現型が観察される場合は必要に応じて走査型・透過型電子顕微鏡等を用いて細胞レベルでの詳細な形態学的観察を行う。miRNA-205ノックアウトマウスの創出に成功し、胎生期において皮膚の形成不全により致死的であることを確認した。またKeratin 5に特異的なmiRNA-205
KAKENHI-PROJECT-17K11487
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K11487
弦理論と行列模型、非可換幾何学
弦理論は重力を含む素粒子の統一理論の最も有望な候補であるが、通常の点粒子の場の理論と比べるとその定式化が完成されているとはいえない。この理論の摂動論はほぼ完成されているが、弦の場の理論にあたるものがまだよくわかっていない。そのため、場の理論の形式によって明らかになるはずの理論のもつ対称性等がよくわかっておらず、この理論を応用する際に非常な困難が生じる。このような問題を研究するためのアプローチとして行列模型がある。この模型では理論の基本的自由度として弦でなく行列を用い、弦理論の通常のアプローチでは見えない側面を明らかにしようとするものである。この研究ではこの行列模型を次に述べる2つの側面から研究した。ひとつは膜の理論の定式化である。タイプIIA超弦理論は強結合極限でM理論と呼ばれる理論で記述されるということが提案されている。M理論は膜の理論として記述することができると予想されている。一方、膜の理論は行列模型を使って記述することが出来る。この研究では行列模型による記述を使って、膜の世界体積上の基本的対称性について議論した。もうひとつは、非臨界弦の理論である。非臨界弦の理論とは1次元以下の時空における弦の理論であり、通常の弦理論のおもちゃの模型として研究されてきた。この理論は行列模型の手法を使って厳密に解くことが出来る。特に、この理論を研究することで、弦理論における非摂動効果の一般的な性質を明らかにすることが出来る。非臨界弦の理論における非摂動効果はD-インスタントンと呼ばれるインスタントンがもたらすものであるということがわかっていた。この研究ではこのインスタントンの化学ポテンシャルの値を初めて計算し、この値が正則化の方法によらないユニヴァーサルなものであることを示した。弦理論は重力を含む素粒子の統一理論の最も有望な候補であるが、通常の点粒子の場の理論と比べるとその定式化が完成されているとはいえない。この理論の摂動論はほぼ完成されているが、弦の場の理論にあたるものがまだよくわかっていない。そのため、場の理論の形式によって明らかになるはずの理論のもつ対称性等がよくわかっておらず、この理論を応用する際に非常な困難が生じる。このような問題を研究するためのアプローチとして行列模型がある。この模型では理論の基本的自由度として弦でなく行列を用い、弦理論の通常のアプローチでは見えない側面を明らかにしようとするものである。この研究ではこの行列模型を次に述べる2つの側面から研究した。ひとつは膜の理論の定式化である。タイプIIA超弦理論は強結合極限でM理論と呼ばれる理論で記述されるということが提案されている。M理論は膜の理論として記述することができると予想されている。一方、膜の理論は行列模型を使って記述することが出来る。この研究では行列模型による記述を使って、膜の世界体積上の基本的対称性について議論した。もうひとつは、非臨界弦の理論である。非臨界弦の理論とは1次元以下の時空における弦の理論であり、通常の弦理論のおもちゃの模型として研究されてきた。この理論は行列模型の手法を使って厳密に解くことが出来る。特に、この理論を研究することで、弦理論における非摂動効果の一般的な性質を明らかにすることが出来る。非臨界弦の理論における非摂動効果はD-インスタントンと呼ばれるインスタントンがもたらすものであるということがわかっていた。この研究ではこのインスタントンの化学ポテンシャルの値を初めて計算し、この値が正則化の方法によらないユニヴァーサルなものであることを示した。近年の研究によって,超弦理論の非摂動効果においてブレーンと呼ばれる広がった対象が重要な役割を果たしていることがわかってきた。特にM理論と呼ばれる超弦理論の背後にあると考えられている理論の定式化においては2次元に広がった対象であるいわゆる膜の理論が基本的であると予想されている。ところが、弦の理論に比べて膜の理論はよくわかっているとは言えない。今年度の研究ではこの膜の理論を研究した。膜が時空の中を走ると世界体積と呼ばれる3次元の軌跡を作る。膜の理論はこの世界体積上の場の理論で記述される。この世界体積上の場の理論は弦の場合と違い繰り込み不可能であり解析が難しい。我々はこの理論を摂動論的に扱い,無限個のカウンター・タームを許すという立場で世界体積上の座標の取替えに対する不変性にアノマリーが出るかを議論した。もし,このようなアノマリーがあると,その前の係数をゼロにするという条件からいわゆる臨界次元が求まることが期待される。ところが,世界体積上の理論を摂動論的に扱うためには膜のある配位の周りの摂動という形で理論を考える必要がある。我々はこのような配位が縮退していないinduced metricを与えるときにはアノマリーが出ないこ.とを示した。膜の理論にdimensional reductionという操作を施すと,弦の理論になる。やり方によっては弦の理論としてシルト型の作用を持つものを出すことができる。シルト型の作用を持つ弦理論は膜の理論と同様にある配位の周りの展開という形でしか摂動論を定義できない。我々はシルト型の作用を持つ弦理論においては臨界次元を出す方法があることを示し、その値は26であることを導出した。近年の研究によって,超弦理論の非摂動効果においてブレーンと呼ばれる広がった対象が重要な役割を果たしていることがわかってきた。
KAKENHI-PROJECT-13640308
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13640308
弦理論と行列模型、非可換幾何学
特にM理論と呼ばれる理論の背後にあると考えられている理論の定式化においては2次元に広がった対象であるいわゆる膜の理論が基本的であると予想されている。ところが,弦の理論に比べて膜の理論はよくわかっているとは言えない。膜が時空の中を走ると世界体積と呼ばれる3次元の軌跡を作る。膜の第一量子化はこの3次元の軌跡上の場の理論を考えることに対応する。膜の理論が弦の理論に比べて難しいのは膜が広がっている配位からの展開として理論を定義しないと、この場の理論の運動項がうまい形にならない点にある。弦の理論では、弦が全く広がっていない配位の周りの展開として理論が定義できる。このため臨界次元の存在等の著しい性質が出てくる。我々は弦理論に出てくる膜の理論を考えているので、この理論には弦と共通の臨界次元が存在してほしいわけである。そのためには、膜が縮退しているような配位の周りで理論を展開する技術が必要になる。最近、関野と米谷はコンパクト化された時空に巻きついた膜と行列弦模型との対応を指摘した。われわれは、彼らの対応を弦理論の立場から正当化した。また、この対応を使うと膜の理論を縮退しているような配位の周りで考えることが出来る。われわれは、この対応を使って、光円錐ゲージにおけるローレンツ代数が閉じるという条件から予想される臨界次元11を導き出せることを示した。近年の研究によって、超弦理論の非摂動効果においてブレーンと呼ばれる広がった対象が重要な役割を果たしていることがわかってきた。特にM理論と呼ばれる理論の背後にあると考えられている理論の定式化においては2次元に広がった対象であるいわゆる膜の理論が基本的であると予想されている。最近、関野と米谷はコンパクト化された時空に巻きついた膜と行列弦模型との対応を指摘した。われわれは、彼らの対応を弦理論の立場から正当化した。また、この対応を使って、光円錐ゲージにおけるローレンツ代数が閉じるという条件から予想される臨界次元11を導き出せることを示した。1次元以下の時空上の弦理論は行列模型の手法を使って厳密に解ける模型として弦理論の様々な性質を議論する際重要な役割を果たす。この模型において弦の非摂動効果は、行列の固有値のインスタントン的な配位のもたらす効果としてとらえることができる。最近.、このインスタントン的な配位を弦理論におけるD-インスタントンととらえることができることがわかってきた。我々は、この模型における弦の場の理論の立場から、このインスタントン解を解析し、この解は弦の場の理論の運動方程式の解ではあるが、通常の場の理論の場合と違い、結合定数に依存していることを示した。このために、弦の非摂動効果は点粒子の場合とは違った形をしている。また、この議論を踏まえた上で、弦理論の定式化において開いた弦はどのような役割を果たすかを議論した。弦の理論は点粒子の理論の拡張であるが、その非摂動効果の性質が点粒子の場合と非常に異なっている。例えばゲージ理論においては、結合定数をgとすると非摂動効果はexp(-C/g^2)の形をしていることが知られている。ところが弦理論においては、結合定数をg_sとすると非摂動効果はexp(-C/g_s)の形になる。
KAKENHI-PROJECT-13640308
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13640308
沖縄に多発する頭部血管肉腫の発症に関与する病因ウイルス・外来遺伝子断片の探索
沖縄県に多発する血管肉腫の発症に関わる遺伝子断片を探索した。動物感染性のヘルペスウイルス群に共通する遺伝子配列を選択し、PCR増幅を多様なアニール温度で試みたが、既知や新規のヘルペスウイルスは全く増幅されなかった。サブトラクションスクリーニングからも、未知の外来遺伝子の発現は確認されなかった。患者腫瘍組織よりトランスクリプトーム解析により、ヒトゲノムに合致しない転写産物を解析したが、毛包虫、表皮常在菌、カンジダ菌などの病態に関与がないと思われる微生物の遺伝子配列のみが観察された。結果的に患者腫瘍組織より、血管肉腫の発症原因となるウイルスなどの外来生成物の存在の有無を決定するには至らなかった。沖縄県・宮古島地方に多発する、悪性血管内皮細胞肉腫(血管肉腫)の発症に関わる病原体・原因ウイルスの遺伝子断片の探索を目的とする。この腫瘍は高齢者の額部・頭部に小さな紫斑・出血斑として発症し、急速に結節化・潰瘍化し顔貌を破壊し、肺出血による死に至る悪性度が極めて高い原因不明の腫瘍である。真皮の微小血管を発生母地とする腫瘍にはカポシ肉腫とこの血管肉腫が挙げられるが、両腫瘍とも沖縄・宮古島地方には非常に高率に発症する。近年のHIV依存性のカポシ肉腫にせよ、沖縄県に多い高齢者の古典型のカポシ肉腫にせよ、カポシ肉腫各型の発症にはヒトヘルペス8型(HHV8)ウイルスの関与が知られている。この偏った地域発症性と、高齢者に多中心的に急速に発症する経過より、今回の研究対象である血管肉腫の発症にも、HHV8以外の直接寄与する発癌ウイルスの存在を強く考える。本課題では、琉球大学に数多い血管肉腫患者や疾患コントロールとしてのカポシ肉腫の組織を用い、ゲノムサブトラクション法、cDNAサブトラクション法、サブトラクションライブラリーのランダムcDNAスクリーニング、クロスPCRハイブリ法などの手法を駆使して、血管肉腫患者の組織に共通して存在する、既知あるいは未知のウイルス遺伝子や外来遺伝子断片の存在を明らかにするのが一義的な目標である。また診断的な面からも、このような血管肉腫に共通した遺伝子断片、さらには発現蛋白・特異蛋白の存在を見いだすことで、初期においてはしばしば病理診断に苦慮する血管肉腫の診断が、より迅速に確実に断定的に可能になるかと考える。沖縄県に多発する血管肉腫の発症に関わる遺伝子断片を探索した。動物感染性のヘルペスウイルス群に共通する遺伝子配列を選択し、PCR増幅を多様なアニール温度で試みたが、既知や新規のヘルペスウイルスは全く増幅されなかった。サブトラクションスクリーニングからも、未知の外来遺伝子の発現は確認されなかった。患者腫瘍組織よりトランスクリプトーム解析により、ヒトゲノムに合致しない転写産物を解析したが、毛包虫、表皮常在菌、カンジダ菌などの病態に関与がないと思われる微生物の遺伝子配列のみが観察された。結果的に患者腫瘍組織より、血管肉腫の発症原因となるウイルスなどの外来生成物の存在の有無を決定するには至らなかった。沖縄県・宮古島地方に多発する、悪性血管内皮細胞肉腫(血管肉腫)の発症に関わる病原体・原因ウイルスの遺伝子断片の探索を目的とする。この腫瘍は高齢者の額部・頭部に小さな紫斑・出血斑として発症し、急速に結節化・潰瘍化し顔貌を破壊し、肺出血による死に至る悪性度が極めて高い原因不明の腫瘍である。真皮の微小血管を発生母地とする腫瘍にはカポシ肉腫とこの血管肉腫が挙げられるが、両腫瘍とも沖縄・宮古島地方には非常に高率に発症する。この偏った地域発症性と、高齢者に多中心的に急速に発症する経過より、血管肉腫の発症に直接寄与する発癌ウイルスの存在を強く考えた。本課題では、血管肉腫の原因ウイルス・外来性遺伝子の断片を発見し病態への糸口をつかみ、将来の診断法や治療法の開発にまでの発展を目的とする。カポシ肉腫各型の発症にはヒトヘルペス8型(HHV8)ウイルスの関与が知られている。このHHV8への感染率が沖縄県、中でも宮古島では若干高いとも言われている。そこで、本年度はHHV-8ウイルスを含め8種のヒトヘルペスウイルス遺伝子や、さらに数十種類以上の動物感染性のヘルペスウイルス群に共通する遺伝子配列を選択し、イノシン残基を組み込み、アニール温度を数段階に調節することで、既知のヘルペスウイルスファミリーは全て増幅しえる遺伝子プラ-マーの組み合わせを数カ所に設定し、血管肉腫患者組織のDNAをテンプレートとして、PCR増幅を多様なアニール温度で試みた。沖縄県・宮古島地方に多発する、悪性血管内皮細胞肉腫(血管肉腫)の発症に関わる病原体・原因ウイルスの遺伝子断片の探索を目的とする。この腫瘍は高齢者の額部・頭部に小さな紫斑・出血斑として発症し、急速に結節化・潰瘍化し顔貌を破壊し、肺出血による死に至る悪性度が極めて高い原因不明の腫瘍である。進行が極めて早く月単位で予後が変化し、頭部・顔面に出血と醜形を来すヒトの固形がんの中でも極めて、悪性度の高い腫瘍である。真皮の微小血管を発生母地とする腫瘍にはカポシ肉腫とこの血管肉腫が挙げられるが、両腫瘍とも沖縄・宮古島地方には非常に高率に発症する。近年のHIV依存性のカポシ肉腫にせよ、沖縄県に多い高齢者の古典型のカポシ肉腫にせよ、カポシ肉腫各型の発症にはヒトヘルペス8型(HHV8)ウイルスの関与が知られている。
KAKENHI-PROJECT-24591631
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24591631
沖縄に多発する頭部血管肉腫の発症に関与する病因ウイルス・外来遺伝子断片の探索
この偏った地域発症性と、高齢者に多中心的に急速に発症する経過より、今回の研究対象である血管肉腫の発症にも、HHV8以外の直接寄与する発癌ウイルスの存在を強く考える。本課題では、琉球大学に数多い血管肉腫患者や疾患コントロールとしてのカポシ肉腫の組織を用い、ゲノムサブトラクション法、cDNAサブトラクション法、サブトラクションライブラリーのランダムcDNAスクリーニング、クロスPCRハイブリ法などの手法を駆使して、血管肉腫患者の組織に共通して存在する、既知あるいは未知のウイルス遺伝子や外来遺伝子断片の存在を明らかにするのが一義的な目標である。また診断的な面からも、このような血管肉腫に共通した遺伝子断片、さらには発現蛋白・特異蛋白の存在を見いだすことで、初期においてはしばしば病理診断に苦慮する血管肉腫の診断が、より迅速に確実に断定的に可能になり、さらには腫瘍特異的な免疫療法へ向けた1ステップになるかと考える。分子生物学、皮膚病態学、ウイルス発癌、ゲノム解析これまでに、8種のヒトヘルペスウイルス遺伝子や、数十種類以上の動物感染性のヘルペスウイルス群に共通する遺伝子配列を選択し、イノシン残基を組み込み、アニール温度を数段階に調節することで、既知のヘルペスウイルスファミリーは全て増幅しえる遺伝子プラ-マーの組み合わせを数カ所に設定し、血管肉腫患者組織のDNAをテンプレートとして、PCR増幅を多様なアニール温度で試みた。しかし、ヘルペス群、あるいは新規のウイルスと思われる遺伝子配列の増幅は全く生じなかった。増幅される遺伝子群は全てヒトゲノムの遺伝子配列が僅かな相動性の元に増幅された結果であった。この解析より血管肉腫の原因ウイルスとして既知のヘルペス群に近い外来病原体の可能性は低いと考えた。次に、改良したゲノムサブトラクション法、cDNAサブトラクション法などの手法による病原ウイルスの探索を開始した。熱処理後にアニールしストレプトアビジンで沈降、上清のビオチンラベルされないDNA分画を回収するという手法を数回繰り返す。最終的に残存するDNA分画は非常に微量となり、そのままでのライブラリー化は困難であると考えられる。サブトラクトされたDNA断片に均一性の高いPCR増幅をかけ、通常のプラスミドベクターにサブクローンしランダムで配列を決定する。現在、直示、サブトラクションライブラリーで選択された遺伝子断片について、その遺伝子配列を決定し、ヒトのゲノムに含まれない遺伝子断片を探索している。沖縄県・宮古島地方に多発する、悪性血管内皮細胞肉腫(血管肉腫)の発症に関わる病原体・原因ウイルスの遺伝子断片の探索を目的とする研究課題である。申請時の計画のように、まず血管指向性の強い発現ウイルスとして、また同様の地域性の強い血管腫瘍の原因となるウイルスとしてヒトヘルペス8型(HHVー8)が存在することより、本年度はHHV-8ウイルスを含め8種のヒトヘルペスウイルス遺伝子や、さらに数十種類以上の動物感染性のヘルペスウイルス群に共通する遺伝子配列を選択し、イノシン残基を組み込み、アニール温度を数段階に調節することで、既知のヘルペスウイルスファミリーは全て増幅しえる遺伝子プラ-マーの組み合わせを数カ所に設定し、血管肉腫患者組織のDNAをテンプレートとして、PCR増幅を多様なアニール温度で試みた。アニール温度の低下と共に、多様なサイズの遺伝子断片が増幅されたので、これらをすべく逐次、遺伝子配列を決定したが、ヘルペス群、あるいは新規のウイルスと思われる遺伝子配列の増幅は全く生じなかった。
KAKENHI-PROJECT-24591631
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24591631
新規分子動力学法による金属酵素反応システムの機能発現機構の解明
本研究では生体内金属酵素の反応機構サイクルを解明するため、新規方法論の開発とそれを用いた実在系の計算を行うことが目標である。対象とする系のサイズは大規模でありかつ、時間スケールも極めて長いため、現在の方法論では取り扱えていない。しかしながら酵素の持つ生体内反応は高効率なエネルギー変換、物質変換として極めて優れているため、その機構解明は非常に注目されている。よって理論的方法で酵素全体の仕組みを解明することが今後益々重要になっている。そこで本研究では酵素反応機構全体を理論解析できる幾つかの新規分子動力学法を開発することを試みた。前年度までに化学反応を古典分子動力学法で取り扱えるMulti State-Empirical Valence Bond (MS-EVB)法の実装と量子古典混合近似を用いた量子動力学計算法の実装を行った。本年度ではそれを基に、より実在系での量子分子動力学シミュレーションの実行を行い、その際に分かってきた様々な問題点を解決した。まず始めにアンモニア溶液中におけるプロトン移動反応を取り扱った。計算系は(NH_4^+)N_9H_<27>であり、1つのプロトンを量子化し、その他は古典粒子として取り扱った。このアンモニア溶媒を導入した実在系に近いモデルでアンモニウムイオンの分子間プロトン移動反応を取り扱った。NN間距離が近いときにプロトン移動反応が起き、正しくダイナミックスを行えていることを確認した。様々な条件下でもダイナミックスが記述できていることを確認した。本方法は生体系などより複雑な系に対しても極めて有用となると考えられる。本研究では生体内の金属酵素での反応機構サイクルを解明するための新規方法論の開発とその適用を行うことを最終目標にしている。対象とする系のサイズは大規模でありかつ、時間スケールも極めて長いため現在の方法論では取り扱えていない。しかしながら生体内反応は重要かつ高効率なエネルギー、物質変換過程として極めて優れており、全体としての仕組みを解明することは極めて重要である。特にこれまで行われてきているような反応過程のごく一部の反応過程を解明するだけでは物質変換過程について解明できたとはとても言えない。この問題を解決するため、筆者は幾つかの新規分子動力学法の方法論の開発を行うことを試みた。1)多段階の反応過程を記述できる新規分子動力学法結合の生成、開裂はEmpirical Valence Bond(EVB)法を用いることで有効的にポテンシャルを構築した。また常に基底結合状態の力場に更新し、励起結合状態の力場も更新していくことで多段階反応でも結合の生成、開裂を記述できる新規分子動力学法(Dynamical EVB)を開発した。Fortran95で新たにコードを作成し、1年間かけてNVE条件で複数の励起結合状態を参照できる新規プログラムを作成した。モデル系としてアンモニア液体中でのアンモニウムイオン(プロトン)移動反応を選んだ。アンモニウムイオンはアンモニア液体中で4つのアンモニア分子と水素結合する。そのため本シミュレーションでは、これら4つの励起結合状態を考慮して、フレキシブルなプロトン移動過程を記述できるようにした。実際、本方法論により分子間プロトン移動ダイナミックスが記述できていることを確認した。本研究では生体内金属酵素の反応機構サイクルを解明するため、新規方法論の開発とそれを用いた実在系の計算を行うことを目標にしている。対象とする系のサイズは大規模でありかつ、時間スケールも極めて長いため、現在の方法論では取り扱えない。しかし生体内反応は重要かつ高効率なエネルギー、物質変換過程として極めて優れており、全体としての仕組みを解明することは極めて重要であると考える。特にこれまで行われてきているような反応過程のごく一部の反応過程を解明するだけでは物質変換過程について解明できたとはとても言えない。そこで本研究では幾つかの新規分子動力学法を開発することを試みた。本年度ではそれを基に、核を量子化し、より正確な分子動力学計算が行える量子分子動力学法の新規開発を行った。本方法は核の量子性が顕著な分子間プロトン移動反応に適しており、移動プロトン核を位置で3次元量子化した。量子古典混合系として系全体を取り扱い、量子系の時間発展にサーフェスホッピング法を用いた。プログラムのコーデングから行い、効率よく計算できるアルゴリズムの模索を行った。量子系のハミルトニアン要素の数値積分にはFuzzy Ce11法を応用した多中心積分法を用い、時間発展にマルチタイムステップ法を用いた。まず始めに最も簡単な系であるアンモニウムイオンにおける分子間プロトン移動反応:NH_3+NH_4->NH_4+NH_3に適用した。MN間距離が近い時、トンネリングが起こり、量子的なプロトン移動ダイナミックスが正しく記述されている事を確認した。本方法は生体内といった凝縮系内でも正確な量子ダイナミックスを記述できる新しい方法であり、極めて画期的である。本研究では生体内金属酵素の反応機構サイクルを解明するため、新規方法論の開発とそれを用いた実在系の計算を行うことが目標である。対象とする系のサイズは大規模でありかつ、時間スケールも極めて長いため、現在の方法論では取り扱えていない。しかしながら酵素の持つ生体内反応は高効率なエネルギー変換、物質変換として極めて優れているため、その機構解明は非常に注目されている。よって理論的方法で酵素全体の仕組みを解明することが今後益々重要になっている。そこで本研究では酵素反応機構全体を理論解析できる幾つかの新規分子動力学法を開発することを試みた。
KAKENHI-PROJECT-08J05437
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J05437
新規分子動力学法による金属酵素反応システムの機能発現機構の解明
前年度までに化学反応を古典分子動力学法で取り扱えるMulti State-Empirical Valence Bond (MS-EVB)法の実装と量子古典混合近似を用いた量子動力学計算法の実装を行った。本年度ではそれを基に、より実在系での量子分子動力学シミュレーションの実行を行い、その際に分かってきた様々な問題点を解決した。まず始めにアンモニア溶液中におけるプロトン移動反応を取り扱った。計算系は(NH_4^+)N_9H_<27>であり、1つのプロトンを量子化し、その他は古典粒子として取り扱った。このアンモニア溶媒を導入した実在系に近いモデルでアンモニウムイオンの分子間プロトン移動反応を取り扱った。NN間距離が近いときにプロトン移動反応が起き、正しくダイナミックスを行えていることを確認した。様々な条件下でもダイナミックスが記述できていることを確認した。本方法は生体系などより複雑な系に対しても極めて有用となると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-08J05437
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日本語社会における言語習得と教育方策に関する総合的研究
交付金により、研究会合を重ねるとともに、平成5年10月22日(金)10時15時10分広島市中区中電大ホールにて「新しい日本語社会」「日本語習得の基盤を考える」と題して公開講演とシンポジウムを開催した。全国から多数の参会者があって、盛会に行われた。シンポジウムではメンバーの江川清・土岐哲・佐藤亮一・吉田則夫・真田信治の各氏とNHKの西橋アナウンサーに登壇いただいた。「日本語の習得と話言葉」のテーマの下、それぞれの立場からの提言と討議が行われた。午後から演題「日本語習得の基盤と社会言語学」井上史雄、演題「日本語の習得基盤と音声言語情報処理」桐谷滋各氏の講演があった。その成果を受けて、研究課題「国際化する日本語社会における音声言語の実態とその教育に関する総合的研究」により平成6年度総合研究(A)の申請をした。その内容はつぎの通りである。(1)国際化の進行している日本語社会における音声言語の実態を把握し、有効な教育方策を提案すること。(2)言語理論並びに高度情報処理技術等により、日本語社会における音声言語の教育に効果的な科学的方法を導入すること。この研究目的を、次の6事項に絞って期間内に達成する。A【.encircled1.】日本語社会における音声言語の多様性と標準、【.encircled2.】日本語社会における談話行動の習得過程、B【.encircled1.】日本語教育における学習活動が音声言語の習得に及ぼす効果、【.encircled2.】日本語社会における帰国子女・外国人子弟等の音声言語の習得、C【.encircled1.】日本語社会における音声言語の習得支援システムの開発、【.encircled2.】日本語社会における音声言語の教育用データーベース今年度の成果として、公開シンポジウムと公開講演を冊子にまとめ、研究機関や日本語教育関係機関等に配布した。交付金により、研究会合を重ねるとともに、平成5年10月22日(金)10時15時10分広島市中区中電大ホールにて「新しい日本語社会」「日本語習得の基盤を考える」と題して公開講演とシンポジウムを開催した。全国から多数の参会者があって、盛会に行われた。シンポジウムではメンバーの江川清・土岐哲・佐藤亮一・吉田則夫・真田信治の各氏とNHKの西橋アナウンサーに登壇いただいた。「日本語の習得と話言葉」のテーマの下、それぞれの立場からの提言と討議が行われた。午後から演題「日本語習得の基盤と社会言語学」井上史雄、演題「日本語の習得基盤と音声言語情報処理」桐谷滋各氏の講演があった。その成果を受けて、研究課題「国際化する日本語社会における音声言語の実態とその教育に関する総合的研究」により平成6年度総合研究(A)の申請をした。その内容はつぎの通りである。(1)国際化の進行している日本語社会における音声言語の実態を把握し、有効な教育方策を提案すること。(2)言語理論並びに高度情報処理技術等により、日本語社会における音声言語の教育に効果的な科学的方法を導入すること。この研究目的を、次の6事項に絞って期間内に達成する。A【.encircled1.】日本語社会における音声言語の多様性と標準、【.encircled2.】日本語社会における談話行動の習得過程、B【.encircled1.】日本語教育における学習活動が音声言語の習得に及ぼす効果、【.encircled2.】日本語社会における帰国子女・外国人子弟等の音声言語の習得、C【.encircled1.】日本語社会における音声言語の習得支援システムの開発、【.encircled2.】日本語社会における音声言語の教育用データーベース今年度の成果として、公開シンポジウムと公開講演を冊子にまとめ、研究機関や日本語教育関係機関等に配布した。
KAKENHI-PROJECT-05351010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05351010
子宮内発育遅延児の成長ホルモン治療による代謝・免疫学的応答と遺伝学的背景の解析
SGA性低身長患者に対して成長ホルモン(GH)治療を行い、治療後1年間の内分泌代謝・免疫学的指標の変化を検討した。また、治療前患者のデータを基礎疾患のない対照者と比較した。患者群では治療開始1ヶ月後よりIGF1が上昇し、3ヶ月後から身長SDSが改善したため、GHの成長促進効果が確認できた。治療前患者群では対照群よりHbA1cが高かったが、GH治療後の悪化は認めなかった。患者群では治療後LDL-Cは低下し、GHの脂質代謝改善作用を示唆した。同時にアポ蛋白の変化も認めた。患者群では白血球数・好中球数・リンパ球数・リンパ球分画比率で対照群と差があったがGH治療後はそれぞれ対照群に近づく変化を示した。SGA(Small for gestational age)性低身長患者26名を同意を得た上で登録した。患者群において、成長ホルモン(GH)投与開始前、開始後1、3、6、9、12ヶ月後の情報収集と検体採取を行った。これまで代謝内分泌学的パラメーターとして、身長SDS・IGF1・HbA1c・甲状腺機能・総コレステロール・LDLコレステロール・HDLコレステロール・各種アポ蛋白・リポ蛋白分画・アディポサイトカイン(PAI-1、レジスチン、レプチン、アディポネクチン)を測定し、各パラメーターについてGH開始後の変化を解析した。同様に免疫学的パラメーターとして、白血球分画、フローサイトメトリーによるリンパ球サブセットを測定し、GH開始後の変化を解析した。その結果、身長SDSは治療後3ヶ月から有意に改善し、12ヶ月後には平均+0.59SDの上昇を認めたが、改善に乏しい例もあった。患者群でIGF1は治療後1ヶ月から有意に上昇したが、身長の改善に乏しい例ではIGF1の上昇も認めなかった。FT4は治療後1ヶ月から有意に低下したがTSHに有意な変化はなかった。HbA1cは一過性に大きく上昇した例があったが、治療後12ヶ月では全体で有意な上昇はなかった。LDLコレステロールは治療後有意に低下し、ApoC-2・ApoEの有意な上昇とApoBの有意な低下を認めた。アディポサイトカインの解析ではPAI-1が治療後有意に低下した。また、GH治療後は白血球数・好中球数が有意に上昇し、リンパ球サブセットでは有意にTリンパ球・Bリンパ球の上昇を認めた。CD4/8比に有意な変化はなかった。これらの結果より、SGA児に対するGH治療は、成長に影響するだけでなく代謝内分泌系や免疫系の変化を生じることが示唆された。【対象】SGA性低身長患者24名、対照者24名。【方法】患者に対して成長ホルモン(ソマトロピン) 0.23mg/kg/週を投与し、治療開始前、開始後1、3、6、9、12ヶ月に検体を採取し、それぞれの検体でIGF1、HbA1c、総Cho、LDL-C、HDL-C、各種アポ蛋白を測定した。さらに末梢血中の各種血球数・白血球分画の測定を行い、フローサイトメトリーにてリンパ球における各種細胞の割合を解析した。治療前の患者群と対照群の値を比較し、患者群における治療開始後の値を治療前と比較し検討した。【結果】身長SDSは治療12ヶ月後には平均+0.63SDの改善を認めた。IGF1は治療開始後1ヶ月より有意に上昇した。HbA1cは治療前患者群では対照群より有意に高かったが、GH治療後の上昇は認めなかった。治療前患者群の脂質の値は対照群と差がなかったが、GH治療後LDL-Cは有意に低下した。GH治療後、ApoA1・A2、ApoC2・C3、ApoEは有意に上昇し、ApoBは有意に低下した。患者群では白血球数・好中球数が対照群より少なく、リンパ球数が対照群より多い傾向があったが、GH治療後、白血球数・好中球数・リンパ球数は有意に変化し対照群に近づいた。患者群では対照群に比べてBリンパ球の割合が少なくNK細胞の割合が多い傾向があったが、GH治療後には対照群に近づく変化を示した。【考察】治療前の患者群と対照群でIGF1値に差はなく、本研究で認めたSGA性低身長児の特徴はGH分泌の差異によらないことが示唆された。SGA児では治療前よりHbA1cが対照より高く、小児期より耐糖能異常が生じている可能性があるが、本研究ではGH治療後にHbA1cの有意な上昇は認めず、GH治療が必ずしも糖尿病リスクの上昇につながらない可能性がある。GH治療は脂質代謝を改善させることが示唆されたが、アポ蛋白が脂質代謝の変化に関与している可能性がある。また、GHはSGA児の持つ免疫学的特徴を健常児に近づける作用を持つ可能性がある。SGA性低身長患者に対して成長ホルモン(GH)治療を行い、治療後1年間の内分泌代謝・免疫学的指標の変化を検討した。また、治療前患者のデータを基礎疾患のない対照者と比較した。患者群では治療開始1ヶ月後よりIGF1が上昇し、3ヶ月後から身長SDSが改善したため、GHの成長促進効果が確認できた。治療前患者群では対照群よりHbA1cが高かったが、GH治療後の悪化は認めなかった。患者群では治療後LDL-Cは低下し、GHの脂質代謝改善作用を示唆した。
KAKENHI-PROJECT-23791184
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23791184
子宮内発育遅延児の成長ホルモン治療による代謝・免疫学的応答と遺伝学的背景の解析
同時にアポ蛋白の変化も認めた。患者群では白血球数・好中球数・リンパ球数・リンパ球分画比率で対照群と差があったがGH治療後はそれぞれ対照群に近づく変化を示した。SGA(Small for gestational age)性低身長患者19名を同意を得た上で登録した。患者群において、成長ホルモン(GH)投与開始前、開始後1、3、6、9、12ヶ月後の情報収集と検体採取を行った。これまで代謝内分泌学的パラメーターとして、身長SDS・IGF1・HbA1c・甲状腺機能・総コレステロール・LDLコレステロール・HDLコレステロール・各種アポ蛋白・リポ蛋白分画を測定し、各パラメーターについてGH開始後の変化を解析した。その結果、身長SDSは治療後3ヶ月から有意に改善し、12ヶ月後には平均+0.55SDの上昇を認めたが、個人差が大きかった。患者群でIGF1は治療後1ヶ月から有意に上昇したが、身長の改善に乏しい例ではIGF1の上昇も認めなかった。FT4は治療後1ヶ月から有意に低下したがTSHに有意な変化はなかった。HbA1cは一過性に大きく上昇する例があり、治療後12ヶ月では患者群で有意に上昇した。LDLコレステロールは治療後有意に低下し、ApoC-2・ApoEの有意な上昇とApoB/A1比の有意な低下を認めた。これらの結果より、SGA性低身長におけるGH治療において、GHに対するIGF1反応性の差が治療効果に関与する可能性が考えられた。また、これまでの報告と同様に、GH治療により耐糖能や甲状腺機能が変化する可能性があり、注意が必要と考えられた。LDLコレステロールやApoB/ApoA1比の低下からは、GHの脂質代謝改善作用が示唆されたが、総コレステロールやHDLコレステロールには変化がなく、SGA児においてはGHの影響がGH分泌不全患者とは異なる可能性がある。ApoC-2はリポ蛋白リパーゼの活性化に重要であり、ApoEはリポ蛋白受容体のリガンドであるため、これらのアポ蛋白が脂質代謝の変化に関与している可能性がある。これまでSGA性低身長患者26名を登録しており、目標の30症例の到達に近づいている。同時に年齢・性別をマッチングした対照者の登録を進めている。登録患者のGH開始後の情報収集・検体採取もおおむね予定通りできており、代謝内分泌学的パラメーター、免疫学的パラメーターについて統計学的に解析を開始している。さらに、GH反応性と遺伝子多型の関係を調べるために、GH受容体JAK-STAT経路に関与する遺伝子群の多型解析も進行中である。これまでSGA性低身長患者19名を登録しており、1年間で目標の30症例の約3分の2を到達できた。同時に年齢・性別をマッチングした対照者の登録を進めている。登録患者のGH開始後の情報収集・検体採取もおおむね予定通りできており、代謝内分泌学的パラメーターについては統計学的に解析できる程度のデータが集積した。収集した検体の血球数やフローサイトメトリーを用いたリンパ球分析による免疫学的パラメーターもほぼ測定が終了しており、現在解析中である。GH反応性と遺伝子多型の関係を調べるために、GH受容体JAK-STAT経路に関与する遺伝子群の多型解析も進行中である。SGA性低身長患者の新規登録を進め、目標の30症例を到達する。同時に適切な対照者からの検体採取を進める。臨床情報の収集と採取した検体の代謝内分泌学的パラメーター・免疫学的パラメーターの測定は引き続き行う。同意を得られた患者については遺伝子多型解析もこれまで通り行う。
KAKENHI-PROJECT-23791184
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23791184
新しい型のWerner錯体に関する研究
本国際学術研究(共同研究)においては、藤田・柏原・小島とGalsbolが主として実験的な側面を担当して新しいロジウム(III)、イリジウム(III)錯体の合成など行い(1、2)、山寺とSchafferが主として理論的な側面を担当して共役π軌道に基づく配位子場の角重なり模型による新しい解析を行った(3)。1.ヒ素を配位原子とするキレ-ト配位子1,3ービス(ジメチルアルシノ)プロパン(dmap)を含む新しいロジウム(III)錯体、シスーおよびトランスー[RhCl_2(dmap)_2]^+を合成し、諸性質を検討するとともに、X線結晶解析によりその構造を決定した。ヒ素が互いにトランス配置にあるRhーAs結合距離は、Clーがトランス位にあるRhーAsよりも0.040.07A長い。対応するホスフイン錯体では、この伸びは0.050.09Aであり、Rh(III)に対するAsのトランス影響はPと同程度か、やや小さい。対応するCo(III)錯体と比較するためトランス異性体を合成し、構造解析した。RhーAsとCoーAsの結合距離の差は約0.09Aで、RhーClとCoーClの差(約0.11A)、およびアンミン錯体でみられるRhーNとCoーNとの差(0.10A)よりやや小さいが、多くのホスフィン錯体でみられるRhーPとCoーPとの差(約0.05A)よりかなり大きく、Rh(III)はPに対し特に強い親和性をもつことを示している。なお、対応するCo(III)のシス異性体は容易に熱異性化してトランス異性体になるが、Rh(III)の両異性体は熱・光に対して安定で異性化しない。一方、これらジアルシン錯体の配位子場吸収スペクトルを対応するジアミン、ジホスフィン錯体と比較し、5B(15)族配位原子のRh(III)に対する配位子場強度はP〉As〉Nの順になると結論した。Co(III)錯体についても同じ順が得られている。2.コバルト、ロジウムと同族のイリジウム錯体の合成を試み、(2ーアミノエチル)ジメチルホスフィン(edmp)とIrCl_3・3H_20との反応により一種のジクロロ錯体をPF_6塩として単離し、X線構造解析によりtrans(Cl,Cl),trans(P,P)ー[IrCl_2(edmp)_2]PF_6と決定した。対応するCo(III)、Rh(III)錯体はtrans(Cl,Cl),cis(P,P)異性体のみ生成する。Ir(III)の場合はPのトランス効果による電子的要因よりも、大きいジメチルホスフィノ基による立体的要因が異性体の安定性に寄与していると思われる。この配置のためIrーPの結結合距離は2.325Aで、RhーPの2.252Aよりかなり長いが、IrーNはPのトランス影響を受けず2.097Aとなり、トランス影響を受けているRhーNの2.165Aより0.068A短い。3.山寺とSchafferは、数年来を行ってきた「π共役対称二座配位子の配位子場の角重なり模型による解析」に関する共同研究を完成し、共著論文をInorganic Chemistry誌に投稿した。この型の配位子をもつ錯体は、物質としては新しいものではないが、それらがもつ2個の配位原子のπ〓軌道(分子面に垂直なπ軌道)の間に相互作用があるという点に特徴があり、この点着目してそれらをを新しい型の錯体として捉え、解析を行つた。共役二座配位子の配位子場に対しては在来の角重なり模型が適用できないといわれていたが、分子軌道的な角重なり模型を用いることにより、すなわち、在来の角重なり模型のe_<π〓>パラメ-タ-を、2個の配位原子π〓軌道からなる2種類の群軌道(inーphaseの組み合わせによるψ軌道とoutーofーphaseの組み合わせによるχ軌道)に対応する2個の独立のパラメ-タ-e_ψとe_χで置き換かることにより、角重なり模型の基本的な考え方に変更を加えることなく、その配位子場を解析することができた。さらに、互いに等価な二つの方式、配位原子方式と配位子方式とを考案した。配位原子方式は上記のように対称性の異なる2種の配位子群軌道(ψとx)による摂動を考えるのに対して、配位子方式では、π共役対称2座配位子がその2回軸上に位置する単座配位子のようにふるまい、中心原子のdπおよびdδ軌道に摂動を与えると考えるものであり、eパラメ-タ-の値が中心原子と2個の配位原子との間の結合角に無関係になるという点に特徴がある。ただし、配位子のσ軌道による摂動は配位原子の座標の関数となるので、配位原子方式のほうが実用的であることが多い。本国際学術研究(共同研究)においては、藤田・柏原・小島とGalsbolが主として実験的な側面を担当して新しいロジウム(III)、イリジウム(III)錯体の合成など行い(1、2)、山寺とSchafferが主として理論的な側面を担当して共役π軌道に基づく配位子場の角重なり模型による新しい解析を行った(3)。1.ヒ素を配位原子とするキレ-ト配位子1,3ービス(ジメチルアルシノ)プロパン(dmap)を含む新しいロジウム(III)錯体、シスーおよびトランスー[RhCl_2(dmap)_2]^+を合成し、諸性質を検討するとともに、X線結晶解析によりその構造を決定した。
KAKENHI-PROJECT-01044131
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01044131
新しい型のWerner錯体に関する研究
ヒ素が互いにトランス配置にあるRhーAs結合距離は、Clーがトランス位にあるRhーAsよりも0.040.07A長い。対応するホスフイン錯体では、この伸びは0.050.09Aであり、Rh(III)に対するAsのトランス影響はPと同程度か、やや小さい。対応するCo(III)錯体と比較するためトランス異性体を合成し、構造解析した。RhーAsとCoーAsの結合距離の差は約0.09Aで、RhーClとCoーClの差(約0.11A)、およびアンミン錯体でみられるRhーNとCoーNとの差(0.10A)よりやや小さいが、多くのホスフィン錯体でみられるRhーPとCoーPとの差(約0.05A)よりかなり大きく、Rh(III)はPに対し特に強い親和性をもつことを示している。なお、対応するCo(III)のシス異性体は容易に熱異性化してトランス異性体になるが、Rh(III)の両異性体は熱・光に対して安定で異性化しない。一方、これらジアルシン錯体の配位子場吸収スペクトルを対応するジアミン、ジホスフィン錯体と比較し、5B(15)族配位原子のRh(III)に対する配位子場強度はP〉As〉Nの順になると結論した。Co(III)錯体についても同じ順が得られている。2.コバルト、ロジウムと同族のイリジウム錯体の合成を試み、(2ーアミノエチル)ジメチルホスフィン(edmp)とIrCl_3・3H_20との反応により一種のジクロロ錯体をPF_6塩として単離し、X線構造解析によりtrans(Cl,Cl),trans(P,P)ー[IrCl_2(edmp)_2]PF_6と決定した。対応するCo(III)、Rh(III)錯体はtrans(Cl,Cl),cis(P,P)異性体のみ生成する。Ir(III)の場合はPのトランス効果による電子的要因よりも、大きいジメチルホスフィノ基による立体的要因が異性体の安定性に寄与していると思われる。この配置のためIrーPの結結合距離は2.325Aで、RhーPの2.252Aよりかなり長いが、IrーNはPのトランス影響を受けず2.097Aとなり、トランス影響を受けているRhーNの2.165Aより0.068A短い。3.山寺とSchafferは、数年来を行ってきた「π共役対称二座配位子の配位子場の角重なり模型による解析」に関する共同研究を完成し、共著論文をInorganic Chemistry誌に投稿した。この型の配位子をもつ錯体は、物質としては新しいものではないが、それらがもつ2個の配位原子のπ〓軌道(分子面に垂直なπ軌道)の間に相互作用があるという点に特徴があり、この点着目してそれらをを新しい型の錯体として捉え、解析を行つた。共役二座配位子の配位子場に対しては在来の角重なり模型が適用できないといわれていたが、分子軌道的な角重なり模型を用いることにより、すなわち、在来の角重なり模型のe_<π〓>パラメ-タ-を、2個の配位原子π〓軌道からなる2種類の群軌道(inーphaseの組み合わせによるψ軌道とoutーofーphaseの組み合わせによるχ軌道)に対応する2個の独立のパラメ-タ-e_ψとe_χで置き換かることにより、角重なり模型の基本的な考え方に変更を加えることなく、その配位子場を解析することができた。さらに、互いに等価な二つの方式、配位原子方式と配位子方式とを考案した。配位原子方式は上記のように対称性の異なる2種の配位子群軌道(ψとx)による摂動を考えるのに対して、配位子方式では、π共役対称2座配位子がその2回軸上に位置する単座配位子のようにふるまい、中心原子のdπおよびdδ軌道に摂動を与えると考えるものであり、eパラメ-タ-の値が中心原子と2個の配位原子との間の結合角に無関係になるという点に特徴がある。
KAKENHI-PROJECT-01044131
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01044131
画像処理LSI設計のためのモデルベース自動合成ツールの構築
近年のスマートフォン、4K/8Kテレビ、デジタルカメラ等の開発において、画像処理回路の搭載は不可欠となっている。本プロジェクトでは画像処理LSIの設計ツール“Image Processing Builder"を開発し、インターネット上で無償公開した。この開発ツールはLSI設計者にとって非常に有用であるのみならず、将来の画像処理技術者を目指す学生の教育にも利用できる。本プロジェクトの目標は、3年間で画像処理LSIのモデルベース設計ツールを開発・公開することである。これによって画像処理アプリケーションの開発効率を向上させ、産業界に貢献する。1年目(平成24年度)は各種の画像処理の要素となるモジュールのデータベースを充実させることを目標とし、ほぼこれを達成した。2年目(平成25年度)は、画像処理アルゴリズムのモデル記述から、ハードウェア記述であるVerilogを自動生成することを目標とした。まずは自動生成のための記述ルール作りを行った。そして、本ルールにより生成されたVerilogをアルテラ社製のCADソフトウェアQuartusIIによってコンパイルすることにより、ハードウェア(FPGA)が完成・動作することを確認した。このように平成25年度の計画はほぼ順調に進んだ。なお、以上の研究過程で得られた各種のノウハウは、学術論文1件、国際会議10件、国内会議7件において発表している。以上のように、研究成果を挙げるとともに、それらを広く公開することによって国内外の研究者に貢献することができた。近年のスマートフォン、4K/8Kテレビ、デジタルカメラ等の開発において、画像処理回路の搭載は不可欠となっている。本プロジェクトでは画像処理LSIの設計ツール“Image Processing Builder"を開発し、インターネット上で無償公開した。この開発ツールはLSI設計者にとって非常に有用であるのみならず、将来の画像処理技術者を目指す学生の教育にも利用できる。本プロジェクトの目標は3年で画像処理LSIのモデルベース設計ツールを開発・公開することである。初年度(平成24年度)はソフトウェアベースで既に完成済みの各種の画像処理モジュールをハードウェア上に実現し、その記述言語であるVerilogのデータベースを充実させることを目標とした。具体的には超解像システムを題材とし、アルテラ社製のFPGA上で各種の画像処理モジュールが動作することを確認した。超解像システムとは、近年の4Kディスプレイの発展を支える重要な技術である。これらの研究成果は、学術論文1件、国際会議1件、国内会議4件で公開している。以上のように、研究成果を挙げるとともに、それらを広く公開することによって産業界に貢献することができた。本プロジェクトの目標は、画像処理LSIのモデルベース設計ツール“Image Processing Builder"を開発・公開することである。これにより、スマートフォン、4K/8Kテレビ、デジタル・カメラ等の画像処理機器の研究・開発効率が大きく改善できる。1年目(平成24年度)は各種の画像処理の要素となるモジュールのデータベースを充実させることを目標とし、30種類以上の基本モジュールをソフトウェアとして完成させた。2年目(平成25年度)は、画像処理アルゴリズムのモデル記述から、ハードウェア記述であるVerilogファイルを自動生成するためのエンジン部を作成した。上記の設計ツールは、画像処理アプリケーション開発者にとって非常に有用であるのみならず、将来の画像処理技術者を目指す学生の教育にも利用できる。なお、以上の研究過程で得られた各種のノウハウについては、学術論文4件、国際会議18件、国内会議13件において発表した。本プロジェクトの成果は学会および産業界に大きく貢献するものと考える。情報通信工学平成25年度(2年目)は画像処理アルゴリズムのモデル記述から、ハードウェア記述であるVerilogを自動生成することを目標とした。簡単な画像処理を題材にVerilogの自動生成を行った結果、それらがアルテラ社製のハードウェア(FPGA)上で正しく動作することを確認した。その成果は神戸大学大学院の2013年度修士論文「IPコアに基づく画像処理ハードウェア設計手法と誤差帰還型超解像処理への応用」にまとめられている(http://cas.eedept.kobe-u.ac.jp/WelcomeES1/thesis.html)。以上は当初の計画通りであり、2年目の研究目標はほぼ達成できたと考える。初年度は各種の画像処理モジュールをハードウェア上に実現し、その記述言語であるVerilogのデータベースを充実させることを目標とした。そして、画像処理システムの一例として超解像システムをFPGA上に完成させた。これを通してVerilogによる基本的なモジュールを準備することができた。その成果は学術論文、国際会議、国内会議等で発表している。また、本研究に必要な設備として、アルテラ社製のFPGA、CADソフトウェアQuartusII、および開発用PCを計画通り準備した。以上のように、研究は順調に進展しており、初年度の研究目標はほぼ達成できたと考える。本プロジェクトは計画通り、平成26年度中にモデルベースLSI設計ツールの完成および公開を目指す。これまでの研究において、簡単な画像処理を題材に、Verilogの自動生成機能が正しく動作することを確認できた。今後は画像処理の基本モジュールを充実させると共に、より高度なアルゴリズムの自動生成を行い、その動作を検証する。その後、本機能を、既にインターネット上で公開中の画像処理アルゴリズム設計ツールIPBuilder(http://cas.eedept.kobe-u.ac.jp/WelcomeES1/IPBuilder/)に搭載する予定である。本CADツールが完成・公開されれば、画像処理技術者はソフトウェア開発とハードウェア開発を同時に進められることから、非常に大きな意義がある。なお、本研究の中間成果については逐次、論文・学会・Webを通して公開する予定である。本プロジェクトは計画通り2年後にモデルベースLSI設計ツールの完成を目指す。
KAKENHI-PROJECT-24500063
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画像処理LSI設計のためのモデルベース自動合成ツールの構築
次年度(平成25年度)の目標は、画像処理アルゴリズムのモデル記述から、ハードウェア記述であるVerilogを自動生成する機能を実現することである。これによって画像処理アプリケーションの開発効率を向上させる。具体的には初年度に人手で構築したVerilog記述について、モジュール別に生成ルールを決定し、人手を介さない完全自動合成を目指す。研究の中間成果については逐次、論文・学会・Webを通して公開する予定である。海外より研究物品を購入した際、為替レートの変動により若干の誤差が出た。繰越は数千円以下であり、翌年度の使用計画には全く影響しない。次年度(平成25年度)は2年後の完成を目指すモデルベース設計ツールに関して、ユーザインターフェース部分の設計を開始するため、Windows上で動作するソフトウェア開発環境を購入する。また、FPGAの開発環境を追加で購入することにより、チーム全体の研究効率をさらに向上させる予定である。本研究の成果については初年度と同様に学術論文、国際会議、国内会議等で発表するため、印刷製本費、および出張旅費等を使用する。
KAKENHI-PROJECT-24500063
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フッ化物洗口法によるう蝕予防プログラムの経済効果分析
本研究は,フッ化物洗口剤(ミラノール@S1(]CP○(1)R[)を用いたフッ化物洗口法を学校歯科保健プログラムに導入し,6年間のCohort観察からう蝕予防効果と経済効果を検討する目的により実施した。研究対象は,1987年から1989年に小学校に入学し,1993年から1995年3月に卒業した児童785名である。フッ化物洗口を実施した児童は,大規模小学校(A群)212名と中規模小学校(B・C群)315名に分け、対照群(N群)258名と比較検討した。対照群では,小学校でのブラッシングのみでフッ化物洗口法を全く実施していない。成績は,う蝕予防効果をDMFT index,DMFSindexにより経年的観察を行い,経済効果はコスト・ベネフィットおよびコスト・エフェクテブネスにより検討した。DMFT index,DMFSindexは,研究開始時1年生では各群間が差なかった。しかし,学年が進むにしたがって,フッ化物洗口の2群と対照群との差が明らかになり,6年生3月には有意の差を認めた。フッ化物洗口の2群のDMFTindex,DMFSindexは,類似した傾向を示し,6年生3月の成績も近似した値を認めた。フッ化物洗口法を実施するために必要な費用(フッ化物洗口剤,溶解ビン,洗口カップ)は,1年間1人785円であった。1人1年間の推定歯科治療費は,A群1,877円,B・C群1,861円,N群2,780円であり,コスト・ベネフィット比は1:1.15,1:1.17を示した。コスト・エフェクティブネスは,1歯面を救うために必要な費用で表され,A群3,019円,B・C群2,707円であった。以上のことから,次の結論を得た。臨床的う蝕予防効果は,フッ化物洗口群の小学校の規模にかかわらず,高いう蝕予防効果が認められた。また,フッ化物洗口法によるう蝕予防効果の普遍性を認めた。経済効果は,う蝕予防に投資した費用より歯科治療費が13-15%抑制され,良好であった。また,フッ化物洗口を実施した児童は,痛みや治療の恐怖から解放され,小児にとって有益であることが認められた。フッ化物洗口法は,う蝕予防効果,経済効果が良好であり公衆衛生的に優れた方法であることから,今後学校歯科保健プログラムに広く導入実施する必要性を認めた。本研究は,フッ化物洗口剤(ミラノール@S1(]CP○(1)R[)を用いたフッ化物洗口法を学校歯科保健プログラムに導入し,6年間のCohort観察からう蝕予防効果と経済効果を検討する目的により実施した。研究対象は,1987年から1989年に小学校に入学し,1993年から1995年3月に卒業した児童785名である。フッ化物洗口を実施した児童は,大規模小学校(A群)212名と中規模小学校(B・C群)315名に分け、対照群(N群)258名と比較検討した。対照群では,小学校でのブラッシングのみでフッ化物洗口法を全く実施していない。成績は,う蝕予防効果をDMFT index,DMFSindexにより経年的観察を行い,経済効果はコスト・ベネフィットおよびコスト・エフェクテブネスにより検討した。DMFT index,DMFSindexは,研究開始時1年生では各群間が差なかった。しかし,学年が進むにしたがって,フッ化物洗口の2群と対照群との差が明らかになり,6年生3月には有意の差を認めた。フッ化物洗口の2群のDMFTindex,DMFSindexは,類似した傾向を示し,6年生3月の成績も近似した値を認めた。フッ化物洗口法を実施するために必要な費用(フッ化物洗口剤,溶解ビン,洗口カップ)は,1年間1人785円であった。1人1年間の推定歯科治療費は,A群1,877円,B・C群1,861円,N群2,780円であり,コスト・ベネフィット比は1:1.15,1:1.17を示した。コスト・エフェクティブネスは,1歯面を救うために必要な費用で表され,A群3,019円,B・C群2,707円であった。以上のことから,次の結論を得た。臨床的う蝕予防効果は,フッ化物洗口群の小学校の規模にかかわらず,高いう蝕予防効果が認められた。また,フッ化物洗口法によるう蝕予防効果の普遍性を認めた。経済効果は,う蝕予防に投資した費用より歯科治療費が13-15%抑制され,良好であった。また,フッ化物洗口を実施した児童は,痛みや治療の恐怖から解放され,小児にとって有益であることが認められた。フッ化物洗口法は,う蝕予防効果,経済効果が良好であり公衆衛生的に優れた方法であることから,今後学校歯科保健プログラムに広く導入実施する必要性を認めた。研究対象校は、フッ化物洗口法実施校(以下F群)の3小学校および対照校(以下C群)の2小学校である。
KAKENHI-PROJECT-07457514
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フッ化物洗口法によるう蝕予防プログラムの経済効果分析
対象児童は、1987年から1989年に各小学校へ入学し、1993年から1995年3月に卒業したF群523名とC群190名である。これらの児童は、それぞれの小学校において6年間在籍し、7回の歯科健康診査を受診した。DMF者率の比較6年生の成績では、DMF者率F群72.3%(380/523)、C群85.3%(28/190)を示した。平成5年歯科疾患実態調査はDMF者率11歳で87.8%を示しており、C群と近似の値を認めた。F群のDMF者率は、C群に比較して明らかに低値を示し、統計的にも有意の差を認めた。DMFT indexの比較F群のDMFT indexは、1.93、C群は3.19を示した。平成5年歯科疾患実態調査は、3.44であり、C群に近似した値を示した。F群のDMFT indexは、西暦2000年のWHOが目標とした値より明らかに低値を示しており、C群の成績と比較しても統計的に有意の差をもってDMFT indexの抑制を認めた。これらの成績から厚生省で認可されたフッ化物洗口剤ミラノールの1g包を用いた、週5回法のフッ化物洗口法は、継続実施することにより、高いう蝕予防効果が得られることを確認した。平成8年には、歯科治療費の算出方法を確立し、コスト・ベネフィット及びコスト・エフェクティブネスを検討する。平成7年度には、フッ化物洗口群のDMFT index,DMFS indexが対照群に比較してかなり抑制されていることを確認し報告した。今年度は、購入したコンピューターの特殊ソフトの充実と入力用カードの作製およびフッ化物洗口群の費用算出、歯科治療費算出方法の確立を行い、cost-benefitおよびcost-effectivenessを算出している。フッ化物洗口群の費用は、各自が厚生省で認可されているフッ化物洗口剤ミラノールを1年間12包を使用し、各自が洗口剤を溶解する洗口ビン、洗口に用いる洗口カップを1年間に1式使用するとして算出した。したがって、costとして1年間にフッ化物洗口を行うために必要な費用は、ミラノール1包(50円×12カ月=600円)、洗口ビン、洗口カップ一式137円の737円となり、6年間のcostは4,422円必要であった。現在、1人平均歯科治療費を算出し、洗口群と対照群の治療費の差、すなわち、benefitを算出している。また、両群間の健全歯面数の差をeffectivenessとした。歯科診療費は、すべてのう蝕経験歯を完全に治療したと仮定して、その治療費を平成8年4月の歯科診療報酬点数表から算出している。未処置う蝕は、診療室で一般に実施される治療方法を想定し治療費とした。また、処置歯は、処置に用いられている材料により、治療費を算出した。なお、未処置う蝕歯の治療時に必要と考えられる初診料金は、治療費に含めず算出することにした。平成9年5月には、両群のcost-benefitおよびcost-effectivenessを算出、学会発表、論文投稿を予定している。本研究は,フッ化物洗口剤(ミラノール^<【O!R】>)を用いたフッ化物洗口法を学校歯科保健プログラムに導入し,6年間のCohort観察からう蝕予防効果と経済効果を検討する目的により実施した。研究対象は,1987年から1989年に小学校に入学し,1993年から1995年3月に卒業した児童785名である。フッ化物洗口を実施した児童は,大規模小学校(A群)212名と中規模小学校(B・C群)315名に分け、対照群(N群)258名と比較検討した。対照群では,小学校でのブラッシングのみでフッ化物洗口法を全く実施していない。成績は,う蝕予防効果をDMFT index,DMFS indexにより経年的観察を行い,経済効果はコスト・ベネフィットおよびコスト・エフェクティブネスにより検討した。DMFT index,DMFSindexは,研究開始時1年生では各群間が差なかった。
KAKENHI-PROJECT-07457514
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07457514
SIRSにおけるエンドセリンと臓器障害の関連についての研究
1.臨床研究腹部大動脈瘤手術患者7名では、血中エンドセリンー1(ET-1)濃度は術後上昇し、術中出血量と手術前後の血中ET-1濃度の変動との間に有意な正の相関(r=0.678)が認められた。また、腹部大動脈瘤破裂患者2名のうち生存例では血中ET-1濃度は手術直後に一過性に上昇したが、その後低下した。死亡例ではET-1濃度は高値が持続し多臓器不全を併発した。これらより血中ET-1濃度は、外科侵襲の程度や血管損傷の大きさを反映し、ET-1の高値遷延化は多臓器不全を招く可能性がある。2.エンドトキシンショックモデル犬による研究雑種成犬にLPS(250ng/kg/min 2hr)を投与したところ、低血圧、代謝性アシドーシス、低酸素血症、腎機能障害が生じ、血中ET-1濃度が上昇してMAP,MPAP,PCWP,CVPと正の相関を示した。非選択的ETA/ETB受容体拮抗薬であるTAK-044(5mg/kg)を前投与することにより、代謝性アシドーシス、低酸素血症、腎機能障害を阻止できた。ET-1は、エンドトキシンショック時の全身血管拡張に対して血管収縮により血圧を維持する役割を果たしているが、腎や肺循環には対しては臓器血流減少を引き起こすためTAK-044は急性腎不全の治療薬として有効である。またLPS(3mg/kg/hr1hr)投与後、選択的誘導型NO合成酵素阻害薬であるL-カナヴァニンを10mg/kg/hrの速度で5hr持続投与したところ、NO阻害により血中ET-1濃度がさらに上昇し、ET-1は酸素運搬量の低下や乳酸アシドーシスと関係していた。これらのことより、NO阻害によるET-1の著明な増加は臓器血流を減少させ、臓器不全を発症させる可能性があることが示唆された。1.臨床研究腹部大動脈瘤手術患者7名では、血中エンドセリンー1(ET-1)濃度は術後上昇し、術中出血量と手術前後の血中ET-1濃度の変動との間に有意な正の相関(r=0.678)が認められた。また、腹部大動脈瘤破裂患者2名のうち生存例では血中ET-1濃度は手術直後に一過性に上昇したが、その後低下した。死亡例ではET-1濃度は高値が持続し多臓器不全を併発した。これらより血中ET-1濃度は、外科侵襲の程度や血管損傷の大きさを反映し、ET-1の高値遷延化は多臓器不全を招く可能性がある。2.エンドトキシンショックモデル犬による研究雑種成犬にLPS(250ng/kg/min 2hr)を投与したところ、低血圧、代謝性アシドーシス、低酸素血症、腎機能障害が生じ、血中ET-1濃度が上昇してMAP,MPAP,PCWP,CVPと正の相関を示した。非選択的ETA/ETB受容体拮抗薬であるTAK-044(5mg/kg)を前投与することにより、代謝性アシドーシス、低酸素血症、腎機能障害を阻止できた。ET-1は、エンドトキシンショック時の全身血管拡張に対して血管収縮により血圧を維持する役割を果たしているが、腎や肺循環には対しては臓器血流減少を引き起こすためTAK-044は急性腎不全の治療薬として有効である。またLPS(3mg/kg/hr1hr)投与後、選択的誘導型NO合成酵素阻害薬であるL-カナヴァニンを10mg/kg/hrの速度で5hr持続投与したところ、NO阻害により血中ET-1濃度がさらに上昇し、ET-1は酸素運搬量の低下や乳酸アシドーシスと関係していた。これらのことより、NO阻害によるET-1の著明な増加は臓器血流を減少させ、臓器不全を発症させる可能性があることが示唆された。【目的】全身性炎症反応症候群(SIRS)におけるエンドセリン(ET)-1と臓器障害との関連、特に敗血症性ショック時の全身、肺、腎の血行動態とET-1の関連を解明することを目的とした。【対象と方法】雄イヌをバルビタールにて麻酔し、気管内挿管後人工呼吸を施行した。大腿静脈よりCVPカテーテルを挿入し、ラクテックリンゲル液(10ml/kg/hr)を輸液した。大腿動脈にカテーテルを挿入し、動脈圧の測定と動脈血の採血を行った。頚静脈よりSwan-Ganzカテーテルを肺動脈まで挿入した。開腹後左腎動脈を剥離して、腎動脈血流測定用の電磁血流計を装着した。尿量測定のために膀胱にカテーテルを挿入した。測定項目は、(1)血行動態(HR,MAP,MPAP,WP,CVP,CI,SVRI,PVRI)、(2)血液ガス(a/v)、(3)酸素運搬量(DO_2I)、酸素摂取量(VO_2I)(4)血中ET-1濃度、(5)呼吸パラメーター、(6)腎機能(Ccr,UV,FENa,Uosm)で薬剤投与前、投与後0.5,1,2,3,4hrで測定した。イヌは、1)エンドトキシン投与群:lipopoplysaccharide(LPS,250ng/kg/min)2hri.v.2)ET_A/ET_B受容体桔抗薬+エンドトキシン投与群:(TAK-044,1mg/kg)i.v.後0.5hrでLPS(250ng/kg/min)2hri.v.の2群に分類した。【結果】
KAKENHI-PROJECT-09671543
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09671543
SIRSにおけるエンドセリンと臓器障害の関連についての研究
LPS投与後、血中ET-1濃度は有意に上昇し、MAP,MPAP,WP,CVPと正の相関を示した。LPS投与により、低血圧、代謝性アシドーシス、低酵素血症、腎機能障害が発生した。ET受容体桔抗薬であるTAK-044は、LPS-誘導性の代謝性アシドーシス、低酵素血症、腎機能障害を改善したが、低血圧は阻止できなかった。【考察及び結論】LPS投与により、血中ET-1濃度が上昇したが、これはLPSによる血管拡張に対する代償的なメカニズムと考えられる。敗血症性ショック時に、ET-1は全身の血管を収縮させ血圧を維持しようと働くが、腎や肺循環に対しては血管収縮による臓器血流減少を引き起こす可能性があることが示唆された。【目的】SIRSにおけるエンドセリンと臓器障害との関連、特に低酸素刺激時の肺血行動態や肺機能とエンドセリンの関連を解明することを目的とした。片肺換気モデルにエンドセリン受容体拮抗薬を経気管支的に投与し、血行動態、血液ガス、酸素運搬に及ぼす影響を評価し、治療薬として臨床応用できるかを検討した。【対象と方法】雑種成犬(体重12.5-16.7kg)をバルビタールにて麻酔し、ダブルルーメンエンドトラキアルチューブ(ブロンコキャス)を気管内挿管し、人工呼吸を施行した。大腿静脈よりCVPカテーテルを挿入し、ラクテックリンゲル(10ml/kg/hr)を輸液した。大腿動脈にカテーテルを挿入し、動脈圧の測定と動脈血の採血を行った。頚静脈よりSwan-Ganzカテーテルを挿入した。低酸素チャレンジは、右肺を100%窒素、左肺を30%酸素で換気する。犬は2群に分類した。1)対照群:両肺換気(1hr)→低酸素チャレンジ(1hr)、生食5mlを左肺にネブライザーで吸入→両肺換気(1hr)、2)治療群(吸入):両肺換気(1hr)→低酸素チャレンジ(1hr)、ET_A/ET_B受容体拮抗薬(1mg/kg)左肺吸入→両肺換気(1hr)、測定項目は、(1)血行動態(HR,MAP,MPAP,WP,CVP,CI,SVRI,PVRI)(2)血液ガス(a/V)(3)酸素運搬量(4)呼吸パラメーターで、低酸素チャレンジ前、チャレンジ後30,60minで測定した。【結果】片肺換気によりPaO2が低下し、MPAPは上昇したが、他のパラメーターは有意に変化しなかった。ET_A/ET_B受容体拮抗薬吸入はMPAPの上昇は軽度抑制できたものの、PaO2の低下を予防することはできなかった。【目的】敗血症性ショック時には血管内皮障害により血管内皮由来因子が放出される。そのうちの弛緩因子の一つは一酸化窒素(NO)で、収縮因子の一つはエンドセリン(ET)であり、相互に影響し合って血管トーンの調節をしていると考えられるが、詳細は不明である。そこでエンドトキシンショツクにおけるNOとET-1の関係を調べるため、NO合成酵素姐害薬をエンドトキシンショツクモデルに投与し、血行動態や血中ET-1濃度に及ぼす影響を検討した。【対象と方法】麻酔した雑種成犬を対象とした。L-カナヴァニン群(n=6)は、LPS(3mg/kg/hf,1hr)投与後、選択的NO含成酵素阻害薬であるL-カナヴァニン(10mg/kg/hr,5hr)を持続接写した。LPS群(n=5)はLPSと溶剤投与のみとし、血行動態、血液ガス、酸素運搬量、血中ET-1濃度を6hrまで測定した。【結果】L-カナヴァニンはLPSにより誘発された乳酸性アシドーシスを増悪し、血中ET-1濃度もさらに上昇させた。
KAKENHI-PROJECT-09671543
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小児血液腫瘍に対する遺伝子治療の基礎と実践
1)患者由来の腫瘍細胞の検討患者または患者親権者の同意のうえで、初発の小児がん患者の腫瘍細胞から、cell lineを確立した。IL-12、IL-18はともに、強力なIFN-γ産生の誘導能を有する。IL-12receptorは、βI、βIIから構成され、IL18receptorは、α、βから構成されている。IL-12、IL-18の抗癌作用を解析するために、遺伝子組換え技術を応用してIL-12receptor、IL-18receptorを作成し、それらを発現ベクターに組み込んで発現実験を行い、マウスB細胞に発現させた。これらreceptorの発現はフローサイトメトリーを用いて確認した。IL-12receptorβII、IL-18receptorαは、IL-12receptorβI、IL-18receptorβが存在しなくても、それぞれ単独で、IL-3依存性マウスB細胞表面上に発現した。IL-12receptorβI、IL-18receptorβについては、現在発現実験を施行中である。さらに、IL12receptorβII、IL18receptorαの遺伝子構造を変化させたmutantを作成し、receptorのタンパク立体構造が変化した変異体を作成した。変異体を正常なreceptorと同時に発現させ、活性の違いを測定した。このベクターの導入により、IL-12receptor、IL-18receptorが発現する事が確認された。現在、各種腫瘍株に、IL-12receptor、IL-18receptorを強制発現させ、細胞の増殖、アポトーシスへの誘導の有無について、さらに詳細な研究を実施中である。本年度は本研究の基礎的データを集積するとともに、研究実施計画に従って研究に着手した。1)正常人におけるIL-12,IL-18の平均値を決定正常小児50人以上の血清を解析し、血清中のIL-12,IL-18をELISA法で測定した。その結果、日本人小児における健常者の平均値を決定した。担癌患者または免疫抑制状態にある患者での値を検討している。2)小児白血病細胞の細胞株を確立小児白血病患者3名の初発時の骨髄液から白血病細胞を分離し、細胞株の樹立に成功した。現在、これらの細胞株の表面マーカー等につき検討している。3)腫瘍細胞へのIL-12receptorβ2の導入および発現IL-12receptorβ2をIL-3依存性のマウスB細胞腫瘍に発現させた。この細胞は、IL-12に反応して増殖を認めた。IL-12receptorβ2の強い発現がフローサイトメーターで確認され導入遺伝子が発現したことが明らかになった。IL-12が一部の腫瘍細胞の増殖に関与していることがあきらかとなった。4)臨床への還元毛細血管拡張性失調症(Ataxia-telangiectasia)患者の胸部に再発したB cell typeの悪性リンパ腫に対し治療を行った。Ataxia-telangiectasia患者への抗癌剤の使用は,薬剤感受性が正常人とかなり異なるため注意を要する。化学療法には,小児白血病研究会の小児急性リンパ性白血病の治療プロトコールをベースに,我々独自に改変し施行した。現在まで再々発なく、寛解を維持している。1)患者由来の腫瘍細胞の検討患者または患者親権者の同意のうえで、初発の小児がん患者の腫瘍細胞から、cell lineを確立した。IL-12、IL-18はともに、強力なIFN-γ産生の誘導能を有する。IL-12receptorは、βI、βIIから構成され、IL18receptorは、α、βから構成されている。IL-12、IL-18の抗癌作用を解析するために、遺伝子組換え技術を応用してIL-12receptor、IL-18receptorを作成し、それらを発現ベクターに組み込んで発現実験を行い、マウスB細胞に発現させた。これらreceptorの発現はフローサイトメトリーを用いて確認した。IL-12receptorβII、IL-18receptorαは、IL-12receptorβI、IL-18receptorβが存在しなくても、それぞれ単独で、IL-3依存性マウスB細胞表面上に発現した。IL-12receptorβI、IL-18receptorβについては、現在発現実験を施行中である。さらに、IL12receptorβII、IL18receptorαの遺伝子構造を変化させたmutantを作成し、receptorのタンパク立体構造が変化した変異体を作成した。変異体を正常なreceptorと同時に発現させ、活性の違いを測定した。このベクターの導入により、IL-12receptor、IL-18receptorが発現する事が確認された。現在、各種腫瘍株に、IL-12receptor、IL-18receptorを強制発現させ、細胞の増殖、アポトーシスへの誘導の有無について、さらに詳細な研究を実施中である。
KAKENHI-PROJECT-12770383
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12770383
脂質動態のオルガネラレベルでの調節機構解明とその応用
微生物を利用した油脂生産能の向上や、真核生物における脂質代謝の新たな知見獲得を目指し、酵母の中性脂質を中心とする脂質代謝、および中性脂質集積の場となる細胞内小器官である脂肪滴の動態を、特にオートファジー関連タンパク質(Atgタンパク質)の関与に着目して解析した。結果、脂肪滴の量維持に機能する2つのAtgタンパク質を見いだし、それらが脂肪滴に局在するリパーゼによる中性脂質の加水分解反応、すなわちリポリシスをどのように制御するかという分子機構についても解明することに成功した。本研究課題は1)脂肪滴に対するオートファジーの分子機構の解明と、2)液胞由来脂質リサイクリング経路の解明を主要な目的として始められた。(1)に関して、本年度研究から、出芽酵母において炭素源がグルコースからエタノールへと切り替わる(Diauxic shift)際に、脂肪滴が液胞膜の変形(陥入)により液胞内へと取り込まれる、ミクロオートファジーが誘導されているとが、電子顕微鏡観察・蛍光顕微鏡観察により強く示唆された。このミクロオートファジーにより、液胞膜上に局在するタンパク質自身も液胞内部へ輸送され、液胞内タンパク質分解酵素による分解を受けると想定されたので、2つの液胞膜タンパク質に蛍光タンパク質を付加した融合タンパク質を発現させ、その液胞内分解の有無を生化学的に検出するアッセイ系の構築に成功した。このアッセイ系を用いて、上記の培養条件で、たしかにミクロオートファジーが誘導されることが確認できた。(2)に関しては、液胞内に局在する推定脂質分解酵素であるAtg15の欠損株における脂肪滴動態についての解明が進んだ。すなわち、出芽酵母を最小培地で長期間(2-4日)培養した場合に、Atg15が欠損した出芽酵母の変異株では、野生株と比較して脂肪滴の量が著しく減少することを見いだした。この減少は、他のオートファゴソーム形成に必要なAtgタンパク質の欠損株では見られなかった。さらに、この減少は脂肪滴合成に必要な酵素群の変化ではなく、脂肪滴内部の中性脂質分解(リポリシス)に機能する酵素群の量や局在変化に起因することを見いだした。本研究課題は1)脂肪滴に対するオートファジーの分子機構の解明と2)液胞由来脂質リサイクリング経路の解明を主要な目的として始められた。(1)に関して、本年度研究においては、生育炭素源の変換と他の栄養源、特に窒素源の減少とが共に起こる培養条件において、脂肪滴に対するオートファジーが顕著に誘導されることが分かった。このオートファジーの誘導は、蛍光顕微鏡観察による形態学的解析のほか、脂肪滴局在タンパク質の分子量変化によっても検知された。(2)に関しては、前年度までに見いだしていたAtg15タンパク質欠損による脂肪滴量の減少を、さらにリポリシスに機能するリパーゼ欠損により抑制すると、細胞の生存率が上昇することを見いだした。このことは脂肪滴量のホメオスタシス維持が細胞生存に果たす機能を示唆している。微生物を利用した油脂生産能の向上や、真核生物における脂質代謝の新たな知見獲得を目指し、酵母の中性脂質を中心とする脂質代謝、および中性脂質集積の場となる細胞内小器官である脂肪滴の動態を、特にオートファジー関連タンパク質(Atgタンパク質)の関与に着目して解析した。結果、脂肪滴の量維持に機能する2つのAtgタンパク質を見いだし、それらが脂肪滴に局在するリパーゼによる中性脂質の加水分解反応、すなわちリポリシスをどのように制御するかという分子機構についても解明することに成功した。(1)脂肪滴に対するオートファジーの分子機構の解明に関しては、本オートファジー過程の形態学的解析結果を検証し、さらにその分子機構を明らかにするための有力な解析手法として、生化学的な解析系を構築することができた点が大きな進展である。構築された解析系を、これまでの解析手法と組み合わせて利用することにより、脂肪滴動態に寄与するオートファジーの分子機構の詳細が解明されることが期待される。(2)液胞由来脂質リサイクリング経路の解明に関しても、本年度は大きな進展が見られた。従来、脂肪滴内部の中性脂質分解(リポリシス)とオートファジーとの関連について詳細に解析した研究はほとんどなかった。本研究はその関連の解明研究の嚆矢となっているばかりでなく、脂質の細胞内循環に果たすオートファジーの重要性を明確にしたという点でも重要な成果が得られたと考えている。応用微生物学(1)脂肪滴に対するオートファジーの分子機構の解明に関しては構築した生化学的な解析系を出芽酵母の多数の遺伝子破壊株に対して適用することで、ミクロオートファジーによる脂肪滴分解に関与する因子の特定を行う予定である。さらに特定された因子の破壊株における脂肪滴量の変化の有無を調べるために、蛍光色素による脂肪滴の可視化・蛍光顕微鏡観察や脂肪滴内中性脂質の主要成分であるトリアシルグリセロールの定量を行う予定である。(2)液胞由来脂質リサイクリング経路の解明に関しては、Atg15の欠損に伴うリポリシス酵素の活性や局在を左右する分子メカニズムについて明らかにすることを企図している。また、液胞からの脂質リサイクリングが停止すると脂肪滴量が減少する培養条件が同定されたことから、本条件で脂肪滴量が減少する他の遺伝子破壊株の探索、特に膜貫通型のトランスポーター分子の欠損株の脂肪滴量を解析し、脂質リサイクリングに機能する新たな因子を同定する(3)以上の結果をふまえ、グリセロールを効率的に資化できるメタノール資化性酵母において、同定した脂肪滴動態関連因子の欠損株における脂肪滴量を測定し、脂質生産の向上が見られるか調べる予定である。
KAKENHI-PROJECT-26850064
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脂質動態のオルガネラレベルでの調節機構解明とその応用
本研究において、遺伝子のクローニングに必要な試薬他の消耗品にかける費用を可能な限り節減することに努めたため、予定より物品費が大幅に減少することとなった。また、本年度は海外研究発表の機会がなく、旅費等の費用の減少につながった。本年度は、本研究課題の成果を積極的に公開する予定であり、海外での研究発表、および論文投稿に当該金額を活用していく予定である。また、研究の迅速化のための適切な機器・試薬購入のためにも当該金額を活用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-26850064
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諫早湾潮受堤防開門に伴う調整池内外の底質環境の変化とその評価
本研究の核心部は確定判決による開門に伴う環境変動の把握であり、判決が示した開門期限(2013年12月10日)を挟んだ環境変動を詳細に観測し、比較する計画であった、しかし、長崎地裁による開門差止仮処分決定により開門は実施されていない。これまでに確定判決を履行されなかった事例はなく、想定外の状況が生じているが、自然科学研究者の立場から、これらの法的、政治的事象に関与する事出来ず、本研究の核となる比較調査は実現できなかった。そこで、将来のために、従来のモニタリングを継続するとともに、排水に伴うミクロシスチンの短期的堆積および海域への長期的拡散と食物連鎖を通じた動態、分解過程の研究を進めた。【調整池、有明海と周辺生物のモニタリング】前年度と同様に継続している。但し、24年度まで実施した、B1地点底泥表層のマスバランス測定を目的としたコアサンプリングは止め、現在解析中である。そのかわり、26年度からはS!!地点の底質中MCs定量は深度4cmまで1cm毎に実施することとした。【排水拡散調査】調整池からの排水をMCsをトレーサーとして把握する調査を24年度に引き続き実施した。24年度分の一部は論文化されたが、残りと25年度実施分については解析中で、今秋の学会で発表予定である。【水と底質中のmcy遺伝子定量】一年分の水サンプルを濾過したフィルターを凍結保存している。この一部を使用して、RT-qPCRによる定量を試みたところ、問題なく実施できる事が確認できたため、全サンプルを一気に実施すべく準備中である。検量線作成に必要な標準株(NIES834)の頒布を国立環境研究所に依頼し、培養準備中である。続いて分解酵素遺伝子定量をおこない、凍結保存している調整池と海域の底質についても逐次実施してゆく。【干潟環境調査】別グループが同様の調査を実施している事が判明したため、南部排水門外瑞穗海岸の海苔漁場に塩分水温データロガーを設置して、環境変動と海苔の状況のモニタリングに一部変更した。同所における潮間帯の簡易調査は実施している。自動モニタリングは継続中である。【開門前後の環境変動比較】平成25年12月20日が確定判決期限であったため、前後の環境変化を詳細に把握する調査準備を整えていたが、諸般の事情で実施されていない。法治国家において確定判決は実施されるはずという前提に基づく判断であったが、事態が社会的・政治的要因に依っているため、自然科学研究者の立場では準備して待機するしか方法がない。2010年の福岡高裁判決は、2013年12月20日より5年間にわたり南北排水門を開放し、海域や調整池内の調査を実施する事を命じ、この判決は確定した。本研究はこの確定判決の実施を前提に立案されたものである。しかし、判決が命じた期限から2年半経過した2015年5月20日現在、長崎地裁の開門差止仮処分判決を理由に開門調査は実施されていない。憲政史上、国が確定判決を履行しなかった例はないとされ、いずれは実施されると考えられるが、自然科学研究者の立場からは司法や行政の判断を見守る以外に術が無い。しかしながら、開門調査の実施が潮流に影響を与え、赤潮や貧酸素水塊の発生頻度に影響を与えるか否かの調査には数年にわたる調査が必要と考えられ、そのために福岡高裁判決が5年間の開放を指定している一方で、本研究が対象とする調整池内の水質、底質、底生生物および調整池内外の底泥中ミクロシスチン含量に関しては、制限開門であったとしても、短期間で劇的な変化が期待される。25年度と26年度は、従来のデータを積み重ねることに加え、これまでの知見の論文化および学会発表に取り組んできた。その中で、排水直後に諌早湾内全域の底泥中ミクロシスチン表層のミクロシスチン含量の上昇を直接確認した調査結果を得た。これにより、諌早湾内に広く広がる残留ミクロシスチンが調整池由来と確証する事ができた。一方、海域に残留しているミクロシスチンの分解過程を明らかにする研究の前段階として、RT-qPCRによって表層水のミクロシスチン合成遺伝子mcyB,Dの定量をおこなった。2010年福岡高裁判決は「遅くとも2013年12月10日以降5年間の潮受堤防の水門開放」を命じた。この判決は確定され、司法の常識においては「再審」以外のいかなる理由においても覆る事はないと考えられた。当研究はその事を前提として立案されたものだが、研究終了時においてもついに海水導入は実現せず、政治的課題や金銭補償の問題として報道されている。自然科学研究者としては政治経済的問題に関与する立場になく、当初立案した計画通りの調査実施は不可能となった。しかし、限られた条件の中で、今後の開門調査時に有効と思われる、調整池と周辺海域の環境及び生物データを蓄積出来た。今後、開門調査が実施された場合に重要な基礎資料となる筈である。2014-15年にかけては夏期の天候が落ち着かなかったこともあり、有毒シアノバクテリアの発生量は少なかったが、調整池と海域の底質、周辺の水生生物へのミクロシスチン(MCs)の蓄積はなくならなかった。これは、一部で言われているほどMCsの分解が進行していないためと思われた。
KAKENHI-PROJECT-25340065
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諫早湾潮受堤防開門に伴う調整池内外の底質環境の変化とその評価
MCsを含む調整池の底泥で室内分解実験をおこなったところ、20;C以下では分解が止まり、むしろMCs濃度が上昇した。MCs合成酵素遺伝子mcyDおよび、分解酵素遺伝子mlrAをRT-PCRで定量したところ、予想通り、20;C以下では分解が止まっている事がわかった。一方、mcyDは低温でも一定量検出された。また、シアノバクテリアを含む調整池の水を海水と混合した場合、シアノバクテリアは凝集沈殿したが、細胞はそのまま生き続けた。つまり、排水に含まれたミクロキスティスは海域で増殖する事はないにしても、一定期間泥で生き続け、MCsを産生している事が示唆された。短期排水調査を含め、排水による広域汚染と生物濃縮(残留)が確実となった。この結果の一部は既に論文等で報告し、さらに詳細を追加報告する準備中である。本研究の核心部は確定判決による開門に伴う環境変動の把握であり、判決が示した開門期限(2013年12月10日)を挟んだ環境変動を詳細に観測し、比較する計画であった、しかし、長崎地裁による開門差止仮処分決定により開門は実施されていない。これまでに確定判決を履行されなかった事例はなく、想定外の状況が生じているが、自然科学研究者の立場から、これらの法的、政治的事象に関与する事出来ず、本研究の核となる比較調査は実現できなかった。そこで、将来のために、従来のモニタリングを継続するとともに、排水に伴うミクロシスチンの短期的堆積および海域への長期的拡散と食物連鎖を通じた動態、分解過程の研究を進めた。前記「研究実績の概要」に述べたとおり、確定判決である開門調査が期日をすぎても実施されていないため、核心部分の調査が実施できていない。しかし、自然科学研究者の立場としては、この状況を見守る以外に術はない。しかし、本研究にとっては、短期の制限開門であっても一定の成果が期待されるため、開門条件以外で出来うる研究に専念し、開門が実施された場合には即時に対応出来るよう準備を整えている。研究結果に基づき、一般市民の疑問に答える事を意識して作成したサイトです。海洋生態学昨年以来、大量排水によるミクロシスチンの拡散と生物濃縮、およびそれを裏付けるミクロシスチンの派イズ時直後の動態について論文化してきたが、引き続き、有明海奥部全域に拡散するミクロシスチンおよび調整池の底生生物について執筆中である。さらに、RT-qPCRによる残留と分解の動態を把握するための準備として、昨年度でミクロシスチン合成遺伝子の定量を実施した。今夏に溶藻菌と分解酵素遺伝子の定量をおこなった後、秋期の底泥を用いて分解過程の詳細を捉えるための実験を実施する予定で準備中である。なお、開門調査が実施された場合には即時対応出来るように待機している。理由1:開門前後の比較調査は開門が実施されてないため実現してない。理由2:3月中に投稿予定の論文原稿があったが、直前に投稿先を変更したため、年度を超えた。図表も文章も全て完成しているため、まもなく投稿予定。開門(海水導入開門)は自然とは別の条件に支配されているが、法的に確定された事項なので必ず実施されるという前提で準備を怠らないようにしたい。開門された場合には、これまで蓄積したデータと比較するため、環境と生物データを可能な限り細かい間隔で採取する。特に早期に変動が予測される項目(プランクトン組成、底質、底生生物)に集中したサンプリングを実施したい。一方、開門されない期間も遂行できる調査・実験として、ミクロシスチン合成・分解遺伝子の定量に取り組みたい。昨年度でミクロシスチン合成
KAKENHI-PROJECT-25340065
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アナリティカル・アプローチによる欲望思想の新角度からの研究―経済学基礎仮定の解明
経済学においては、理論上、各人が欲望を満足させるように行動することを前提としている。しかし、欲望の存在が前提とされてしまっており、欲望とは一体何かということは不問に付されている。そこで、本研究では、経済学において欲望とは何かを探求することにした。その目的を達するためには、過去の思想家・経済学者が欲望をどう捉えたかを把握することが重要である。過去の思想家における欲望の把握の上に、経済学における欲望の理解が成立しているからである。具体的には、経済学形成期である18世紀に欲望がどう捉えられたかに関連する論文を敢行し、学会報告を実施した。平成26年度は、欲望思想の基礎概念の把握に努めるための研究を行った。研究成果としては、平成26年度5月29日から31日に開催されたヨーロッパ経済思想史学会The European Society for the history of Economic Thoughtのスイス・ローザンヌ大学における大会にて、「スミスとコンドルセにおける自由不平等Liberty and inequality in Smith and Condorcet」との題名にて、経済学上の人間動機の中心にある欲望肯定の社会的背景について報告をおこなった。すなわち、初期近代は世界各国にヨーロッパ人が旅行に行った時代であり、旅行記が多く執筆された。そのなかでもアメリカ・インディアンの社会は、未開だが平等な社会の典型として肯定的に描かれた。旅行記文献の作者にとり、未開社会の貧しさは、欲望の僅少さとして肯定的に描かれたのである。スミスやコンドルセは、文明社会の豊かさを称揚したが、その際、文明社会と対比して、平等かもしれないが貧困にあえぐものとして未開社会を描いた。対比して、不平等かもしれないが豊かな文明社会を肯定したのである。すなわち、旅行記文献に見られる未開社会を、旅行記文献の作者とは異なる価値観から捉え直し、欲望を原動力とする文明社会を肯定したのである。その他、平成26年度9月には、国際18世紀学会ISECSのイギリス・マンチェスター大学におけるセミナーにて「アダム・スミスの思考を追うTracing Adam Smith's thinking」との題で、スミスの思考における欲望思想の展開を追った。その他、平成27年度に刊行予定の国際学術図書において、「アダム・スミス図書からIn the Library of Adam Smith」との題の論文を掲載予定である。本年度は、論文の作成に加えて、国際学会での三つの別々のテーマでの報告を行った。第2に、4年に一度した行われない国際18世紀学会の、オランダ・ロッテルダムにての大会において、"Adam Smith on the value of silver"と題して、人間の欲望の対象である銀について、なぜ人間は欲望の対象として価値をあたえるのか、銀の価値をスミスはどのように捉えたのか、という観点から報告を行い、活発な討議が行われた。第3に、小樽商科大学での、日本とヨーロッパの経済学史学会合同の国際学会にて、"The effects of commerce and war in Adam Smith"と題して、経済学上の欲望についての考えが、戦争を対極としたものとして形成されたものであることを明らかにした。また、「アダム・スミスにおける貧困対策問題」と題して、人間の基礎的欲望の欠如の問題にスミスがどう向き合ったかを論文にした。さらに、イギリス・スコットランドにおいて資料調査を実施し、スミス周辺の人物の、未刊の原稿の調査と精力的な撮影を実施した(ジョン・ミラー、アンダーソンら)。平成27年度においては、三度の国際学会での報告を実施し、研究に相当の進展があった。なおかつ、論文の作成を行い、刊行物における研究成果も見られた。さらに、資料調査を実施し、未刊の草稿がスコットランドの大学にどの程度眠っており、何が利用可能なのかという目安をつけ、資料の精力的な撮影を行い、次の研究成果を得るための準備を整えた。最終年度においては、イギリス・ケンブリッジ大学歴史学部に客員研究員として滞在し、研究調査を実施した。本研究計画の課題は、欲望思想の歴史の解明であるが、それは広く言えば、思想史というジャンルに属する。新たな研究方法を模索する立場としては、既存の有力な研究手法の担い手との意見交換は必要不可欠である。したがって、思想史において最も有力な研究手法である文脈主義の拠点である、ケンブリッジ大学歴史学部に滞在することにしたのである。ケンブリッジ大学は、客員研究員受け入れの最も厳しい大学の一つとして知られている。そこで、客員研究員の資格を得たということは、それ自体として、我が国の学術水準を海外において認知せしめる効果をもつ。また、ケンブリッジ大学歴史学部のジョン・ロバートソン教授、ジョン・ダン名誉教授、ミシェル・ゾーネンシャー博士らと、研究上の助言と意見交換を行った。特に、三年間の本科研費による研究成果をとりまとめるために、英語での書籍の出版を計画しているが、その出版計画および、その本に含まれる予定の研究内容について、上記の諸氏と研究上の意見交換を実施した。その結果、研究成果の出版に向けて、研究が大きく進展している。さらに、ケンブリッジ大学歴史学部において毎週開催されているIntellectual Historyのセミナーに参加し、他の研究者と意見交換を実施した。また、本年度においては、具体的な研究成果として、英語論文二本の掲載が決定している。経済学においては、理論上、各人が欲望を満足させるように行動することを前提としている。しかし、欲望の存在が前提とされてしまっており、欲望とは一体何かということは不問に付されている。そこで、本研究では、経済学において欲望とは何かを探求することにした。その目的を達するためには、過去の思想家・経済学者が欲望をどう捉えたかを把握することが重要である。
KAKENHI-PROJECT-26780132
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アナリティカル・アプローチによる欲望思想の新角度からの研究―経済学基礎仮定の解明
過去の思想家における欲望の把握の上に、経済学における欲望の理解が成立しているからである。具体的には、経済学形成期である18世紀に欲望がどう捉えられたかに関連する論文を敢行し、学会報告を実施した。平成26年度は、年二回国際学会での報告を通じて(平成26年度5月のヨーロッパ経済思想史学会The European Society for the history of Economic Thoughtのスイス・ローザンヌ大学における大会および9月の国際18世紀学会ISECSのイギリス・マンチェスター大学における大会)、計画書に記した国際的水準での研究の遂行を行うことができた。参加を通じて、各国の研究者から質問・助言などをいただき、研究水準の向上のきっかけとなった他、各国の第一線の研究者と知己を得ることもできた。加えて、平成27年度刊行予定の国際学術図書への論文の掲載も決定しており、着実に成果をあげているものと言える。本年度は、6月にアメリカ・ダラムはデューク大学において、History of Economics SocietyとInternational Adam Smith Society合同の国際学会において報告を行う。なおかつ、本年度末には、約2ヶ月間にわたって、イギリスの大学において客員研究員として在外研究を行い、研究の総仕上げを行うものとする。論文作成のほか、英文での単著出版の準備を完了させることも渡航の目的である。経済学史今年度は、スミスを中心にして、経済学の形成者における欲望思想の研究を行う。具体的には、平成27年度6月のアメリカ・経済学史学会History of Economics Societyにて経済学の形成と欲望との関連についての報告を行う。また、7月の国際18世紀学会ISECSの大会にて、スミスにおける貨幣と欲望の報告を行う。また、北海道小樽にて、ヨーロッパ経済思想史学会The European Society for the history of economic thoughtと日本の経済学史学会の合同国際会議にて、スミスにおける商業の概念と欲望について報告を行う予定である。なおかつ、これらの研究成果を論文にして国際雑誌に積極的に投稿していきたいと考えている。これらを通じて、欲望思想にかんする研究を着実に進めるととも、その研究が国際的水準で行われることを担保するつもりである。平成27度、当初予定していたイギリスの大学での在外研究の日程調整が難航したため。旅費の精算や図書費の購入において、必要額が当初よりも下回ったことによる。本年度における、イギリスの大学での在外研究の実施今年度は、三度の国際学会の出席を行うほか、国内での研究成果の普及のための研究会への参加を図ることから、次年度使用額は着実に使用されるものと考える。
KAKENHI-PROJECT-26780132
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高温高密度における強い相互作用の相転移の非平衡過程に関する研究
1ゲージ理論に基づくカイラル相転移近傍のクォークスペクトルの研究を行うため、シュインガーダイソン方程式を用いた解析を行った。1グルーオン交換に基づくダイアグラムを基本にし、無限次のダイアグラムの足し上げによってカイラル相転移を実現させている。結果として、強結合領域ではグルーオンとの相互作用により大きな減衰効果を持つこと、熱質量の結合定数依存性が、弱結合の場合と異なりほぼ一定になること、等がわかった。2前年度までに有限温度におけるフェルミオンスペクトルの研究を行っていたが、本年度はそれを拡張し、有限質量フェルミオンのスペクトルや、フェルミオン伝播関数の極構造を複素エネルギ一平面上で調べることなどをおこなった。このなかで、極の位置の温度依存性が、ある質量を境に定性的に変化することを見出し、その機構をフェルミオンとポソンの準位反発の立場から明らかにした。また、有限質量フェルミオンにおいてもある温度領域3ピーク構造がみられることも示した。さらにカイラル相転移付近のクォークスペクトルについても調べ、パイオンの分散関係の変化に起因してパイとクォークとの結合状態密度に発散を生ずる、いわゆるvan Hove特異点が現れることを示した。3これまでの解析ではフェルミオンスペクトルを1ループ計算によって調べていたが、高次のダイアグラムの効果によってその結果がどのように変更を受けるかをみるため、湯川型相互作用を持つ模型にシュインガーダイソン方程式を用いて非摂動的に有限温度のフェルミオンスペクトルの構造を調べた。その結果、強結合領域においてもフェルミオンスペクトルに3ピーク構造がみられること、フェルミオンの熱的質量が上記1で見出された結果と同じ結合定数依存性を持つこと、などを示した。1前年度の研究において、カイラル相転移温度付近の零質量クォークスペクトルは、カイラル秩序変数揺らぎとの相互作用によって低運動量部に三つのピーク構造を持つことを明らかにした。このようなピーク構造が有限温度系においてどのような機構によって現れるかを、より一般的に示すために、零質量ディラックフェルミオンが有限質量ボソンと湯川結合している模型を用いて、フェルミオンスベクトルの温度依存性等を調べた。その結果、温度がボソンの質量と同程度になる場合には一般的に三ピーク構造を形成することピーク形成はフェルミオンのランダウ減衰に起因し、ピークの数はボソンに質量があることが本質的に重要であることを明らかにした。2有限質量クォークの場合に現れる、一次のカイラル相転移が終わる点のまわりでは、二次相転移に伴う秩序変数揺らぎが存在すると考えられる。この揺らぎが重イオン衝突等で観測されるレプトン対生成にどのような影響を与え得るかを調べるため、光子と揺らぎとが結合する過程を通じてクォーク対がレプトン対に崩壊する過程の一つを見積もった。この過程はローレンツ対称性を破る頂点を含んでおり、有限密度においてもその効果によってレプトン対生成に大きな抑制効果をもたらすことがわかった。現在はさらに別の効果を取り入れて研究をすすめている。3ゲージ理論に基づくカイラル相転移近傍のクォークスペクトルの研究を行うため、シュインガーダイソン方程式を用いた解析を行った。1グルーオン交換に基づくダイアグラムを基本にし、無限次のダイアグラムの足し上げによってカイラル相転移を実現させている。結果として、強結合領域ではグルーオンとの相互作用により大きな減衰効果を持つこと熱質量の結合定数依存性が、弱結合の場合と異なりほぼ一定になること、等がわかった。現在論文作成中である。1ゲージ理論に基づくカイラル相転移近傍のクォークスペクトルの研究を行うため、シュインガーダイソン方程式を用いた解析を行った。1グルーオン交換に基づくダイアグラムを基本にし、無限次のダイアグラムの足し上げによってカイラル相転移を実現させている。結果として、強結合領域ではグルーオンとの相互作用により大きな減衰効果を持つこと、熱質量の結合定数依存性が、弱結合の場合と異なりほぼ一定になること、等がわかった。2前年度までに有限温度におけるフェルミオンスペクトルの研究を行っていたが、本年度はそれを拡張し、有限質量フェルミオンのスペクトルや、フェルミオン伝播関数の極構造を複素エネルギ一平面上で調べることなどをおこなった。このなかで、極の位置の温度依存性が、ある質量を境に定性的に変化することを見出し、その機構をフェルミオンとポソンの準位反発の立場から明らかにした。また、有限質量フェルミオンにおいてもある温度領域3ピーク構造がみられることも示した。さらにカイラル相転移付近のクォークスペクトルについても調べ、パイオンの分散関係の変化に起因してパイとクォークとの結合状態密度に発散を生ずる、いわゆるvan Hove特異点が現れることを示した。3これまでの解析ではフェルミオンスペクトルを1ループ計算によって調べていたが、高次のダイアグラムの効果によってその結果がどのように変更を受けるかをみるため、湯川型相互作用を持つ模型にシュインガーダイソン方程式を用いて非摂動的に有限温度のフェルミオンスペクトルの構造を調べた。その結果、強結合領域においてもフェルミオンスペクトルに3ピーク構造がみられること、フェルミオンの熱的質量が上記1で見出された結果と同じ結合定数依存性を持つこと、などを示した。
KAKENHI-PROJECT-18740140
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18740140
安全性の高い細胞移植治療を目的としたiC9システムによる細胞増殖制御法の確立
本研究は、細胞へのinducible caspase-9(iC9)遺伝子の導入とiC9特異的アポトーシス誘導剤の濃度制御による細胞増殖制御法の開発を目的として、移植細胞の増殖を薬物によって制御可能な安全かつ有効性の高い細胞移植治療法の確立を試みるものである。2018年度は、2017年度の研究内容に引き続き、マウスインスリノーマ株MIN6細胞およびマウス間葉系幹細胞株C3H10T1/2細胞への単純ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ(HSVtk)遺伝子の導入とそのアポトーシス誘導剤であるガンシクロビルを用いることで、各細胞の増殖制御に成功した。また、C3H10T1/2細胞にHSVtk遺伝子と抗腫瘍サイトカインinterferongamma遺伝子を導入し、担癌マウスに移植することで優れたがん抑制効果を実証するとともに、ガンシクロビル投与によって移植した細胞を除去可能であることも示した。さらに、iC9遺伝子を安定発現するヒト間葉系幹細胞株UE7T-13/iC9細胞の樹立に成功し、iC9特異的アポトーシス誘導剤AP20187の添加濃度を調節することでUE7T-13/iC9細胞の増殖制御にも成功した。本成果は、TERMIS World Congress 2018や日本薬学会第139年会などの複数の学会において発表し、HSVtk遺伝子とガンシクロビルを利用したMIN6細胞の増殖制御に関する内容はJournal of Controlled Release誌に掲載された。これまでに、細胞への単純ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ(HSVtk)遺伝子の導入とそのアポトーシス誘導剤であるガンシクロビルを用いることで、細胞の増殖制御法の開発に成功した。また、抗腫瘍サイトカインinterferon gammaとHSVtk遺伝子を発現する細胞の移植により、担癌モデルマウスにおけるがん増殖の抑制に成功するとともに、ガンシクロビル投与によって移植した細胞の増殖制御にも成功した。2018年度は、レンチウイルスを利用することでinducible caspase-9(iC9)遺伝子発現ヒト間葉系幹細胞株(UE7T-13/iC9細胞)の樹立に成功し、AP20187によるUE7T-13/iC9細胞のin vitroにおける増殖制御にも成功していることから、進捗状況はおおむね順調である。2018年度は、単純ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ(HSVtk)遺伝子およびinducible caspase-9(iC9)遺伝子を用いた細胞増殖制御法の開発に成功した。そこで最終年度は、マウスに移植したiC9遺伝子を安定発現するヒト間葉系幹細胞株UE7T-13/iC9細胞の増殖制御を試みるとともに、iC9による細胞増殖制御システムを搭載した生理活性物質産生細胞を樹立することで、細胞移植による安全な疾患治療を実証する。具体的には以下の通り。・UE7T-13/iC9細胞を移植したマウスにiC9特異的アポトーシス誘導剤AP20187を投与することにより、移植した細胞の数を調節する、または細胞を完全に除去する。・抗腫瘍分子を発現するUE7T-13/iC9細胞を担癌マウスに移植し、抗腫瘍効果を評価する。また、経時的に血中の抗腫瘍分子濃度を測定し、AP20187投与による抗腫瘍分子の制御および除去を試みる。・AP20187を移植細胞へ効率的に送達可能なドラッグデリバリーシステムを開発する。本研究は、生体内における移植細胞の機能制御を目的として、自殺遺伝子として知られるinducible Caspase-9(iC9)の移植細胞内への遺伝子導入とiC9特異的アポトーシス誘導剤AP1903の薬物濃度制御によるiC9システムを応用した細胞増殖制御法を構築し、移植細胞の増殖を薬物によって制御可能な安全かつ有効性の高い細胞移植治療法の確立を試みるものである。H29年度は申請者の所属変更があったことから、研究計画の推進効率を考慮し、自殺遺伝子としてiC9遺伝子の代わりに単純ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ(HSVtk)遺伝子、ヒト間葉系幹細胞UE6E7-16細胞の代わりにマウスインスリノーマMIN6細胞およびマウス間葉系幹細胞株C3H10T1/2細胞を利用して計画を遂行した。その結果、HSVtk遺伝子とアポトーシス誘導剤ガンシクロビルを利用することで、生体に移植したMIN6細胞の増殖制御に成功した。これにより、生体に移植した自殺遺伝子発現細胞の増殖は、アポトーシス誘導剤の濃度を調節することにより制御可能であることを示した。さらに、C3H10T1/2細胞に対してinterferon (IFN)-gammaとHSVtkを遺伝子導入し、C3H10T1/2/HSVtk/IFN-gamma細胞移植によるがん治療に成功するとともに、ガンシクロビル投与による細胞の除去にも成功した。本成果は、Journal of Controlled Release誌に発表するとともに、日本薬物動態学会第32回年会や第17回日本再生医療学会総会、第7回超異分野学会本大会などの複数の学会において発表した。H29年度では、利用する自殺遺伝子と細胞の種類を変更したが、移植細胞の増殖制御法の開発に成功するとともに、生理活性物質産生細胞の移植による疾患治療と移植細胞の増殖制御に成功したことから、研究はおおむね順調に進んでいると考える。すでにレンチウイルスを用いたiC9遺伝子発現細胞の樹立にも取り組んでおり、H30年度では現在の研究と並行してiC9遺伝子を利用した研究内容を遂行する。
KAKENHI-PROJECT-17K15437
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K15437
安全性の高い細胞移植治療を目的としたiC9システムによる細胞増殖制御法の確立
本研究は、細胞へのinducible caspase-9(iC9)遺伝子の導入とiC9特異的アポトーシス誘導剤の濃度制御による細胞増殖制御法の開発を目的として、移植細胞の増殖を薬物によって制御可能な安全かつ有効性の高い細胞移植治療法の確立を試みるものである。2018年度は、2017年度の研究内容に引き続き、マウスインスリノーマ株MIN6細胞およびマウス間葉系幹細胞株C3H10T1/2細胞への単純ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ(HSVtk)遺伝子の導入とそのアポトーシス誘導剤であるガンシクロビルを用いることで、各細胞の増殖制御に成功した。また、C3H10T1/2細胞にHSVtk遺伝子と抗腫瘍サイトカインinterferongamma遺伝子を導入し、担癌マウスに移植することで優れたがん抑制効果を実証するとともに、ガンシクロビル投与によって移植した細胞を除去可能であることも示した。さらに、iC9遺伝子を安定発現するヒト間葉系幹細胞株UE7T-13/iC9細胞の樹立に成功し、iC9特異的アポトーシス誘導剤AP20187の添加濃度を調節することでUE7T-13/iC9細胞の増殖制御にも成功した。本成果は、TERMIS World Congress 2018や日本薬学会第139年会などの複数の学会において発表し、HSVtk遺伝子とガンシクロビルを利用したMIN6細胞の増殖制御に関する内容はJournal of Controlled Release誌に掲載された。これまでに、細胞への単純ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ(HSVtk)遺伝子の導入とそのアポトーシス誘導剤であるガンシクロビルを用いることで、細胞の増殖制御法の開発に成功した。また、抗腫瘍サイトカインinterferon gammaとHSVtk遺伝子を発現する細胞の移植により、担癌モデルマウスにおけるがん増殖の抑制に成功するとともに、ガンシクロビル投与によって移植した細胞の増殖制御にも成功した。2018年度は、レンチウイルスを利用することでinducible caspase-9(iC9)遺伝子発現ヒト間葉系幹細胞株(UE7T-13/iC9細胞)の樹立に成功し、AP20187によるUE7T-13/iC9細胞のin vitroにおける増殖制御にも成功していることから、進捗状況はおおむね順調である。H29年度において自殺遺伝子の一つであるHSVtk遺伝子を用いた細胞増殖制御法の開発に成功したことから、H30年度はiC9遺伝子を利用することで同様に細胞の増殖制御が可能かについて検討する。具体的には以下の通り。・各間葉系幹細胞(C3H10T1/2細胞およびUE6E7-16細胞など)にiC9遺伝子を導入し、AP1903による細胞増殖制御を試みる。・iC9発現間葉系幹細胞にinterferon gammaなどの抗腫瘍分子を遺伝子導入し、がん細胞の増殖抑制効果を評価する。・iC9および抗腫瘍分子発現間葉系幹細胞を担癌マウスに移植し、抗腫瘍効果を評価する。また、経時的に血中抗腫瘍分子濃度を測定し、AP1903投与による抗腫瘍分子の制御および除去を試みる。・AP1903をiC9発現細胞へ効率的に送達可能なドラッグデリバリーシステムを開発する。
KAKENHI-PROJECT-17K15437
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PKAシグナルによるATF4の活性化機構と上皮-間充織転換の制御メカニズムの解明
昨年度までの研究から、ATF4 mRNAの分布と比較してATF4タンパク質は神経堤細胞により限局していることが観察された。このことから、ATF4は転写後、または翻訳後に何らかの制御を受けている可能性が考えられた。そこで今年度は、ATF4タンパク質が神経堤細胞に限局されるメカニズムを明らかにすることを目的とした。ATF4タンパク質は不安定で分解されやすいことが過去の報告から調べられており、ユビキチンリガーゼのサブユニットの一部であるβ-TrCPが結合することが契機となりプロテアソームによって分解されることが報告されている。このβ-TrCPの結合部位に変異を導入した発現ベクターを神経管に導入した場合、野生型と比較して高発現することが分かった。また、アセチルトランスフェラーゼのp300がβ-TrCPの結合を競合的に阻害することでATF4タンパク質は安定性が上昇することが培養細胞株を用いた実験で知られている。神経堤細胞と神経管の細胞におけるp300の発現を調べたところ、p300タンパク質は神経堤細胞に特異的に局在していることが分かった。そこで、p300を神経管に遺伝子導入したところ、内在性ATF4タンパク質の発現レベルが上昇することが確認された。また、PKAのリン酸化部位に変異を導入したベクターにおいても野生型に比べ安定性が増していることが分かった。これらの結果から、ATF4タンパク質は神経管の細胞ではβ-TrCPやPKAによってすみやかに分解される一方、神経堤細胞ではp300によって安定化されていると考えられた。なお上記の研究結果については、新潟県新潟市にて2009年に5月に開催された42^<nd> Annual Meeting for the Japanese Society of Developmental Biologistsにおいて英語による口頭発表を行い、現在論文投稿中である。神経堤細胞は外胚葉性上皮細胞から上皮-間充織転換(EMT)によって離脱し、様々な場所に移動して、末梢神経系の細胞や色素細胞な様々な細胞種に分化する。私の所属する研究グループでは、神経堤細胞のEMT過程にcAMP依存性キナーゼ(PKA)が重要な機能を果たしていることを報告している。私がPKAシグナルの機能をさらに詳しく調べる過程で、PKAシグナルによってその活性が制御される転写因子、ATF4が神経堤細胞に発現していることが分かった。さらに、神経堤細胞がEMTに起こす過程においてATF4タンパク質が細胞質から核へ移行することを明らかにした。本年度は神経堤細胞のEMT過程におけるATF4の機能を調べるために、まずATF4の全長をクローニングした。クローニングした全長のATF4の転写活性化領域をEn遺伝子の転写抑制領域に置き換え、ATF4の機能阻害型のEn-ATF4を作製した。En-ATF4遺伝子を鳥類初期胚の神経堤細胞に電気穿孔法を用いて導入すると、遺伝子が導入された神経堤細胞では、神経堤細胞特異的マーカーであるHNK1の発現が消失することが分かった。このことからATF4は神経堤細胞に発現する遺伝子の発現を調節することが示された。なお上記の研究結果については2007年5月に福岡で開催された第第40回大会日本発生生物学会・第59回日本細胞生物学会合同大会にてポスター発表、及び宮城蔵王にて2008年に1月に開催された東北大学脳科学グローバルCOE第1回国際カンファレンスにおいて、英語によるポスター発表を行った。神経堤細胞は発生初期に神経板と表皮外胚葉の境界部に形成された後、上皮-間充織転換(EMT)によって離脱し、胚体内を様々な場所に移動して末梢神経系の細胞や色素細胞等を含む様々な細胞種に分化する。この神経堤細胞のEMT過程においてはBMP、Wnt、FGFやPKAなど様々なシグナルが働いていることが知られている。前年度の実績報告書では鳥類胚の神経堤細胞のEMT過程おいてPKA応答性の転写因子ATF4のmRNAとタンパク質が神経堤細胞に発現すること、神経堤細胞のEMT過程の前後においてATF4タンパク質が局在変化することを報告した。またATF4の全長をクローニングし、発現ベクターを作製した。今年度はATF4の機能を知るために、ATF4の発現ベクターを電気穿孔法を用いて鳥類胚の神経管に導入した。結果、ATF4を導入した神経上皮細胞で異所的なEMTを誘導するような現象は確認されなかった。しかし、ATF4を導入された細胞ではN-cadherinやCadherin6Bなどの細胞接着分子の発現レベルの低下、基底膜側のマーカーであるLamininの異所的な局在、移動中の神経堤細胞に発現するIntegrin β1の異所的な発現誘導等が確認された。これらはEMTの現象を示す要素であることから、ATF4は単独ではEMTを完全に誘導することはできないが、部分的にEMTを誘導する役割を持つことが考えられた。なお上記の結果については、4月に東北大学にて行われた東北大学脳科学グローバルCOE第7回若手フォーラムにおいての招待講演では日本語で発表を行い、5月に徳島県徳島市で行われた第41回日本発生生物学会、8月に宮城県松島市で行われた東北大学脳科学グローバルCOE第1回脳神経科学サマーリトリート、及び9月にフランスのジアンで行われた日仏発生生物学会における合同年会の国際学会において英語による発表を行った。昨年度までの研究から、ATF4 mRNAの分布と比較してATF4タンパク質は神経堤細胞により限局していることが観察された。このことから、ATF4は転写後、または翻訳後に何らかの制御を受けている可能性が考えられた。
KAKENHI-PROJECT-07J55041
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07J55041
PKAシグナルによるATF4の活性化機構と上皮-間充織転換の制御メカニズムの解明
そこで今年度は、ATF4タンパク質が神経堤細胞に限局されるメカニズムを明らかにすることを目的とした。ATF4タンパク質は不安定で分解されやすいことが過去の報告から調べられており、ユビキチンリガーゼのサブユニットの一部であるβ-TrCPが結合することが契機となりプロテアソームによって分解されることが報告されている。このβ-TrCPの結合部位に変異を導入した発現ベクターを神経管に導入した場合、野生型と比較して高発現することが分かった。また、アセチルトランスフェラーゼのp300がβ-TrCPの結合を競合的に阻害することでATF4タンパク質は安定性が上昇することが培養細胞株を用いた実験で知られている。神経堤細胞と神経管の細胞におけるp300の発現を調べたところ、p300タンパク質は神経堤細胞に特異的に局在していることが分かった。そこで、p300を神経管に遺伝子導入したところ、内在性ATF4タンパク質の発現レベルが上昇することが確認された。また、PKAのリン酸化部位に変異を導入したベクターにおいても野生型に比べ安定性が増していることが分かった。これらの結果から、ATF4タンパク質は神経管の細胞ではβ-TrCPやPKAによってすみやかに分解される一方、神経堤細胞ではp300によって安定化されていると考えられた。なお上記の研究結果については、新潟県新潟市にて2009年に5月に開催された42^<nd> Annual Meeting for the Japanese Society of Developmental Biologistsにおいて英語による口頭発表を行い、現在論文投稿中である。
KAKENHI-PROJECT-07J55041
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07J55041
1950〜70年代の南アフリカ文学に反映された文化的・社会的状況の研究
アレックス・ラ・グ-マの『三根の縄』(1964)の作品論、アパルトヘイトの歴史と現状についての講演、南アフリカ作家ミリアム・トラ-ディさんの宮崎講演の実現、が主な成果である。『三根の縄』は50年代のアパルトヘイト体制下で呻吟するケ-プタウン郊外の「カラ-ド」と称される人々の状況を描いた物語だが、歴史を記録したい、世界に現状を伝えたいという作家ラ・グ-マの願いが反映されている。雨のイメ-ジを象徴的に使った文学手法に着目し、1988年カナダのブロック大学で開催されたアレックス・ラ・グ-マ/ベシ-・ヘッド記念大会で行なった口頭発表を軸に「アレックス・ラ・グ-マ」人と作品6『三根の縄』-南アフリカの人々」にまとめた。近々出版予定(校正済み)講演は、愛媛県松山市の市民グル-プ「アサンテ・サ-ナ!」に招かれ、50年代、60年代の文化的・社会的状況を生み出した政治的、歴史的背景を中心に行なったもので、今までのまとめと今後の方向づけという意味と、研究成果を社会に問う意味でよかったと思う。「アパルトヘイトの歴史と現状」にまとめ、近々出版の予定。(校正済み)突然の来日のため、個人的招待という形になったが、南アフリカ国内外で活躍中の作家ミリアムさんを迎え、本学で一般公開の講演会を持った。文化的行事の少ない宮崎では、マスコミも好意的に取り上げ、大きな反響があった。通訳も含め、講演会という形で研究成果を社会に還元出来たのは、出版物を世に問う以上の成果があったように思う。1960年代後半から作家活動を始めたミリアムさんとの交流は、研究テ-マそのものでもあった。宮崎訪問、滞在についてのエッセイ、講演「南アフリカの文学と政治」と質疑応答の翻訳も含め「ミリアムさんを宮崎に迎えて」にまとめ、近々出版の予定。(現在、校正中)アレックス・ラ・グ-マの『三根の縄』(1964)の作品論、アパルトヘイトの歴史と現状についての講演、南アフリカ作家ミリアム・トラ-ディさんの宮崎講演の実現、が主な成果である。『三根の縄』は50年代のアパルトヘイト体制下で呻吟するケ-プタウン郊外の「カラ-ド」と称される人々の状況を描いた物語だが、歴史を記録したい、世界に現状を伝えたいという作家ラ・グ-マの願いが反映されている。雨のイメ-ジを象徴的に使った文学手法に着目し、1988年カナダのブロック大学で開催されたアレックス・ラ・グ-マ/ベシ-・ヘッド記念大会で行なった口頭発表を軸に「アレックス・ラ・グ-マ」人と作品6『三根の縄』-南アフリカの人々」にまとめた。近々出版予定(校正済み)講演は、愛媛県松山市の市民グル-プ「アサンテ・サ-ナ!」に招かれ、50年代、60年代の文化的・社会的状況を生み出した政治的、歴史的背景を中心に行なったもので、今までのまとめと今後の方向づけという意味と、研究成果を社会に問う意味でよかったと思う。「アパルトヘイトの歴史と現状」にまとめ、近々出版の予定。(校正済み)突然の来日のため、個人的招待という形になったが、南アフリカ国内外で活躍中の作家ミリアムさんを迎え、本学で一般公開の講演会を持った。文化的行事の少ない宮崎では、マスコミも好意的に取り上げ、大きな反響があった。通訳も含め、講演会という形で研究成果を社会に還元出来たのは、出版物を世に問う以上の成果があったように思う。1960年代後半から作家活動を始めたミリアムさんとの交流は、研究テ-マそのものでもあった。宮崎訪問、滞在についてのエッセイ、講演「南アフリカの文学と政治」と質疑応答の翻訳も含め「ミリアムさんを宮崎に迎えて」にまとめ、近々出版の予定。(現在、校正中)
KAKENHI-PROJECT-01510294
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01510294
時代変化を伴う仮想都市空間の自動生成とシミュレーション
仮想都市の道路網におけるミクロレベルの交通シミュレーションを行うシステムを開発し、実験結果を解析した。具体的には、自動生成した仮想都市の道路網について、交通信号・道路設計および物流などの経済活動を含む種々のケースを設定することにより、交通状況の変化を観察できるシステムを開発した。これは、都市や道路網などのデザイン段階から将来予測などの都市計画に示唆を与えることのできるシステムとなっている。都市の諸問題のなかで交通環境の問題について、道路交通において発生する諸現象をシミュレートする手法を提供するものである。生成した仮想都市環境の中を自転車などでウォークスルーする状況をシミュレートする仮想環境を開発し、改良する。人は未知の都市などの環境を理解するには、その都市をウォークスルーして徐々に理解を進めていく。これはその人の中にメンタルマップが成長していくことと捉えることができるが、本仮想環境システムはそのための心理実験への応用可能性を示した。さらに、従来から進めている、道路網に対して、区画の自動生成、建物などの人工物の配置、居住・消費・生産などの都市経済ダイナミックモデルの実装、時代変化のシミュレーションなどの機能をより洗練させることを行った。都市は一つの生命体(有機体)と見なすことができる。実際、都市は、時代とともに自律的に変化して行くものであり、人工物であると同時に自然現象としての側面も備えている。このような観点に立って都市を捉え、都市計画や環境計画におけるコンピュータの応用可能性を拡げるための研究を行った。都市は一つの生命体(有機体)と見なすことができる.実際,都市は,時代とともに自律的に変化して行くものであり,人工物であると同時に自然現象としての側面も備えている.このような観点に立って都市を捉え、都市計画や環境計画におけるコンピュータの応用可能性を拡げることを目標において研究を実施した.まず,都市は複雑系(complex system)の一つであると推察されるので,局所的な相互作用に基づいた経済モデル化を構築し,衰退や発展などの都市の各種現象を視覚的に再現することを試みた。具体的には、住宅地・商業地・低開発地等の土地分類の上に経済指標を被せたダイナミックモデルを実装し、シミュレーションを行った。このように,都市生成に,時間的要素・都市モデル・自律性の概念を導入し自動生成するというアプローチによるシステムを開発した。以上により、都市の自動生成,都市の時間的変遷のシミュレーションのための技術およびシステムにの開発という初年度の目標を達成した。具体的には、(1)都市を創成の場とするべき地理的環境データを与えると,そこに指定したチューニングパラメータに従った仮想都市が生成される、(2)与えられた仮想都市に対して,経済指標などのチューニングパラメータを与えると,自律的に時代変遷が進行していく。加えて、本年度の後半では、(1)生成した仮想都市の中を自転車に乗ってウォークスルーする仮想環境の構築、(2)仮想都市内での交通流のシミュレーションを行う初期システムの開発をスタートした。都市は時代とともに自律的に変化していくと同時に、一つの都市内においても地域によって盛衰を繰り返している。このように都市はあたかも一つの生命体(有機体)のような性質を有しており、たしかに人工物ではあるが、同時に自然現象としての側面も備えている。このような観点に立って都市を捉え、都市計画や環境計画におけるコンピュータの応用可能性を拡げることを目標において研究を実施した。このように、都市は複雑系(complex system)の一つであると推察されるので、前年度に引き続き、局所的な相互作用に基づいた経済モデルを構築し、衰退や発展などの都市の各種現象を視覚的に再現することを試みた。さらに加えて、都市機能および住空間としての都市の快適さなどに関して、交通渋滞などの道路交通問題に関する交通シミュレーションシステムを開発した。以上により、住宅地・商業地・生産地・低開発地等の土地分類の上に経済指標を被せたダイナミックモデルを実装し、一般の仮想都市および実在の池袋駅周辺の過去60年の再現シミュレーションを行った。記録されている実データとの照合を行い、十分現実に近い結果が得られた。また、道路交通シミュレーションに関しては、都市の人工物をめざして自動車が移動するとき、建物の種別に影響されるようなモデルを構築してシミュレーションを行った。実験データの解析はまだ実施していないが、動作システムの開発が完了した。都市の諸問題のなかでも大きな交通環境の問題への一つのアプローチをスタートさせることができた。仮想都市の道路網におけるミクロレベルの交通シミュレーションを行うシステムを開発し、実験結果を解析した。具体的には、自動生成した仮想都市の道路網について、交通信号・道路設計および物流などの経済活動を含む種々のケースを設定することにより、交通状況の変化を観察できるシステムを開発した。これは、都市や道路網などのデザイン段階から将来予測などの都市計画に示唆を与えることのできるシステムとなっている。都市の諸問題のなかで交通環境の問題について、道路交通において発生する諸現象をシミュレートする手法を提供するものである。生成した仮想都市環境の中を自転車などでウォークスルーする状況をシミュレートする仮想環境を開発し、改良する。人は未知の都市などの環境を理解するには、その都市をウォークスルーして徐々に理解を進めていく。これはその人の中にメンタルマップが成長していくことと捉えることができるが、本仮想環境システムはそのための心理実験への応用可能性を示した。さらに、従来から進めている、道路網に対して、区画の自動生成、建物などの人工物の配置、居住・消費・生産などの都市経済ダイナミックモデルの実装、時代変化のシミュレーションなどの機能をより洗練させることを行った。都市は一つの生命体(有機体)と見なすことができる。
KAKENHI-PROJECT-18650017
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18650017
時代変化を伴う仮想都市空間の自動生成とシミュレーション
実際、都市は、時代とともに自律的に変化して行くものであり、人工物であると同時に自然現象としての側面も備えている。このような観点に立って都市を捉え、都市計画や環境計画におけるコンピュータの応用可能性を拡げるための研究を行った。
KAKENHI-PROJECT-18650017
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18650017
常温に近い温度で成形可能な新しい機能ガラス材料群の創成
金属源としてチタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、酢酸亜鉛、酢酸ランタンを取り上げ、キレート剤として種々のβ-ジケトン、α-ジケトン、β-ケトエステル、アルカノールアミン、カルボン酸、無水カルボン酸を取り上げ、これら金属源と金属塩を含有する溶液を濃縮・乾固し、透明で熱可塑性をもつ乾固体が得られるかどうかを調べた。ただし、アルコキシドを金属塩とする場合にはアルコキシドを加水分解するための水を溶液に加えた。その結果、ベンゾイルアセトン(β-ジケトン)、ベンジル(α-ジケトン)、エチルベンゾイルアセテート(β-ケトエステル)をキレート剤とすることにより黄色透明な乾固体が得られること、そのうち、β-ジケトンをキレート剤とする乾固体が熱可塑性をもつことがわかった。光学的応用のためには乾固体が無色であることが望ましいが、アルカノールアミンをキレート剤として得られる乾固体は無色透明であるものの、大気中で容易に液化してしまった。一方、無水コハク酸と無水フタル酸をキレート剤とすることにより、無色透明で熱可塑性をもつ乾固体が得られることがわかった。無水コハク酸と無水フタル酸をキレート剤とし、チタンアルコキシドを金属源として得られる乾固体では、加水分解・濃縮・乾燥の過程で、カルボキシレートイオンがチタン原子にキレート配位またはブリッジ配位していることが赤外吸収スペクトル測定によりわかった。無水コハク酸、無水フタル酸の対チタンモル比が1という条件のもとで作製した乾固体の屈折率は、それぞれ1.65、1.68であり、無水フタル酸の対チタンモル比を0.5まで下げると屈折率は1.73まで高くなることがわかった。以上のように、種々の金属源とキレート剤について検討を加えることにより、熱可塑性をもつ透明で熱可塑性をもつ非晶質が得られる条件、さらには、無色透明な非晶質体が得られる例が集まり始めた。本研究の目的の第一は、新しいガラス材料群としての金属オキソオリゴマー集合体の本性を学術的に把握するために(i)「金属オキソオリゴマー集合体がガラスとして生成する化学的条件」を明らかにし、(ii)得られたガラスのガラス転移温度、構造を調べ、「ガラス生成と構造の関係」「ガラス転移温度と構造の関係」を明らかにすることにある。目的の第二は、実用材料・機能材料としての可能性を探るために、(iii)得られたガラスについて「力学的・化学的耐久性」を明らかにするとともに、「成形可能な温度領域」を調べ、(iv)「特異な物性の有無」について明らかにすることにある。「(i)金属オキソオリゴマー集合体がガラスとして生成する化学的条件」を明らかにするためには多種類の金属源とキレート剤の組み合わせについて検討を加える必要があったが、2018年度の研究により、多種類の組み合わせについて検討を加えることができ、熱可塑性をもつ透明非晶質体が得られる条件だけでなく、無色透明で熱可塑性をもつ非晶質体が得られる条件も見出すことができた。無色透明な非晶質体が得られたことは、第二の目的の一つである「(iv)特異な物性の有無」にかかわる事柄として、光学材料としての応用の道を拓く成果であるともいえる。上記で述べた目的のうち、(i)「金属オキソオリゴマー集合体がガラスとして生成する化学的条件」について、2018年度の研究によりかなりのことがらを明らかにすることができた。今後は、(ii)得られた非晶質体のガラス転移温度、構造を調べ、「ガラス生成と構造の関係」「ガラス転移温度と構造の関係」を明らかにするとともに、(iii)得られた非晶質体について「力学的・化学的耐久性」を明らかにするとともに、「成形可能な温度領域」を調べ、(iv)「特異な物性の有無」について明らかにする。金属源としてチタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、酢酸亜鉛、酢酸ランタンを取り上げ、キレート剤として種々のβ-ジケトン、α-ジケトン、β-ケトエステル、アルカノールアミン、カルボン酸、無水カルボン酸を取り上げ、これら金属源と金属塩を含有する溶液を濃縮・乾固し、透明で熱可塑性をもつ乾固体が得られるかどうかを調べた。ただし、アルコキシドを金属塩とする場合にはアルコキシドを加水分解するための水を溶液に加えた。その結果、ベンゾイルアセトン(β-ジケトン)、ベンジル(α-ジケトン)、エチルベンゾイルアセテート(β-ケトエステル)をキレート剤とすることにより黄色透明な乾固体が得られること、そのうち、β-ジケトンをキレート剤とする乾固体が熱可塑性をもつことがわかった。光学的応用のためには乾固体が無色であることが望ましいが、アルカノールアミンをキレート剤として得られる乾固体は無色透明であるものの、大気中で容易に液化してしまった。一方、無水コハク酸と無水フタル酸をキレート剤とすることにより、無色透明で熱可塑性をもつ乾固体が得られることがわかった。無水コハク酸と無水フタル酸をキレート剤とし、チタンアルコキシドを金属源として得られる乾固体では、加水分解・濃縮・乾燥の過程で、カルボキシレートイオンがチタン原子にキレート配位またはブリッジ配位していることが赤外吸収スペクトル測定によりわかった。
KAKENHI-PROJECT-18H02063
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H02063
常温に近い温度で成形可能な新しい機能ガラス材料群の創成
無水コハク酸、無水フタル酸の対チタンモル比が1という条件のもとで作製した乾固体の屈折率は、それぞれ1.65、1.68であり、無水フタル酸の対チタンモル比を0.5まで下げると屈折率は1.73まで高くなることがわかった。以上のように、種々の金属源とキレート剤について検討を加えることにより、熱可塑性をもつ透明で熱可塑性をもつ非晶質が得られる条件、さらには、無色透明な非晶質体が得られる例が集まり始めた。本研究の目的の第一は、新しいガラス材料群としての金属オキソオリゴマー集合体の本性を学術的に把握するために(i)「金属オキソオリゴマー集合体がガラスとして生成する化学的条件」を明らかにし、(ii)得られたガラスのガラス転移温度、構造を調べ、「ガラス生成と構造の関係」「ガラス転移温度と構造の関係」を明らかにすることにある。目的の第二は、実用材料・機能材料としての可能性を探るために、(iii)得られたガラスについて「力学的・化学的耐久性」を明らかにするとともに、「成形可能な温度領域」を調べ、(iv)「特異な物性の有無」について明らかにすることにある。「(i)金属オキソオリゴマー集合体がガラスとして生成する化学的条件」を明らかにするためには多種類の金属源とキレート剤の組み合わせについて検討を加える必要があったが、2018年度の研究により、多種類の組み合わせについて検討を加えることができ、熱可塑性をもつ透明非晶質体が得られる条件だけでなく、無色透明で熱可塑性をもつ非晶質体が得られる条件も見出すことができた。無色透明な非晶質体が得られたことは、第二の目的の一つである「(iv)特異な物性の有無」にかかわる事柄として、光学材料としての応用の道を拓く成果であるともいえる。上記で述べた目的のうち、(i)「金属オキソオリゴマー集合体がガラスとして生成する化学的条件」について、2018年度の研究によりかなりのことがらを明らかにすることができた。今後は、(ii)得られた非晶質体のガラス転移温度、構造を調べ、「ガラス生成と構造の関係」「ガラス転移温度と構造の関係」を明らかにするとともに、(iii)得られた非晶質体について「力学的・化学的耐久性」を明らかにするとともに、「成形可能な温度領域」を調べ、(iv)「特異な物性の有無」について明らかにする。
KAKENHI-PROJECT-18H02063
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診断・治療への貢献を目指した高肝転移性胃癌の解析
胃癌の中には発生初期の幼若な細胞分化を示し、SALL4やClaudin-6等の胚性幹細胞マーカーを特異的に高発現する一群が存在することを明らかにした。これらはAFP産生胃癌を含む肝転移を来たしやすい胃癌であることを示し、また治療ターゲットであるHER2陽性率が比較的高いことを見出した。一方、転移が稀な低悪性度胃癌として、腸型腸高分化型胃癌の臨床病理学的特徴を明らかにした。これまで本研究者の成果から、AFP産生胃癌をはじめとする肝転移をきたしやすい胃癌では、胚性幹細胞から胎生初期までの幼若な細胞で発現する遺伝子群が高発現し、高悪性度形質に関わっているという仮説を得た。本研究ではこの仮説をもとに、胚性幹細胞やiPS細胞の遺伝子発現データベースを検索し、幼若な細胞の上皮細胞のみで発現する細胞接着因子であるClaudin-6に注目、正常組織および癌組織計約1,000例におけるClaudin-6の発現パターンを網羅的に調べた。この結果、Claudin-6は性上皮腫、胎児性癌、卵黄嚢性腫瘍、絨毛癌といった幼若な細胞への分化を示す胚細胞性腫瘍に特異的に発現することを発見し、さらに体細胞由来の癌の中では、胎児型肺癌とAFP産生胃癌(胎児型胃癌、肝様腺癌を含む)で特に高発現することを見出した。Claudin-6は生後の正常組織では発現がなく、細胞表面に発現する分子であるため、理想的な治療ターゲットとしても期待される。既存の胃癌の治療ターゲットとしてHER2遺伝子の発現・遺伝子増幅についても検討した。この結果、AFP産生胃癌ではHER2発現・遺伝子増幅の頻度が一般の胃癌よりも高く、抗HER2抗体薬治療の対象になりやすいことがわかった。一方、本研究で行った胃癌の臨床病理学的検討の中から、転移を来たしにくい低悪性度の胃癌として腸型超高分化胃癌を見出し、その臨床病理学的特徴を明らかにした。以上の研究成果は、国内外の学会および英文誌で発表、あるいは発表予定である。胃癌の中には発生初期の幼若な細胞分化を示し、SALL4やClaudin-6等の胚性幹細胞マーカーを特異的に高発現する一群が存在することを明らかにした。これらはAFP産生胃癌を含む肝転移を来たしやすい胃癌であることを示し、また治療ターゲットであるHER2陽性率が比較的高いことを見出した。一方、転移が稀な低悪性度胃癌として、腸型腸高分化型胃癌の臨床病理学的特徴を明らかにした。1.胃癌手術検体1000例余りの臨床病理学的検討により、高肝転移性胃癌の臨床病理学的特徴の概要が明らかになった。胃癌手術検体の網羅的遺伝子解析データから、高肝転移性胃癌マーカーの有力な候補遺伝子の一つとしてClaudin-6を取り上げ、検索を進めた。この結果、Claudin-6は正常組織では胎生初期中期の上皮細胞の一部でのみ発現する細胞接着遺伝子であり、腫瘍ではセミノーマ、胎児性癌、卵黄のう腫瘍、絨毛癌といった胚細胞腫瘍で100%高発現していることを世界で初めて明らかにした。胃癌においては予想通り、AFP産生胃癌をはじめとする高肝転移性胃癌で高頻度に発現が見られることが判明し、高肝転移性胃癌の抽出に有用であることが分かった。またClaudin-6は成人の正常組織では発現がなく、癌細胞の細胞表面に局在する分子であるため、抗体療法や免疫療法の極めて有力なターゲットであることを示すことができた。これらの成果は英文誌に投稿済みである。2.胃癌の抗体療法(ハーセプチン)のターゲットであるHER2遺伝子の発現・増幅について、胃癌手術検体100例余りを用いて、治療適応上の臨床病理学的問題点、および高肝転移性胃癌におけるHER2発現・遺伝子増幅状態を検討した。この成果は2012年度日本病理学会総会で発表予定。本研究課題で最も時間を要する胃癌1000例以上の詳細な臨床病理学的検討がほぼ終了した。高肝転移性胃癌の最も有力なマーカー遺伝子と考えられたClaudin-6についても検討を進め、英文誌に投稿、現在Minor Revise中となっている。現在胃癌診療において注目されている治療ターゲットであるHER2遺伝子についても検討を進めることができ、高肝転移性胃癌ではHER2遺伝子の発現頻度が高い傾向があることがわかった。胃癌診療上、重要な知見であり、さらに症例を追加し検討を進めている。これらの成果は学会発表、英文誌への投稿を予定(一部は採択済み)であり、おおむね順調に進展していると評価できる。1.Claudin-6以外の高肝転移性胃癌マーカーの候補遺伝子についても、遺伝子発現と臨床病理学的要素との関連について検討を進めていく。2.HER2遺伝子発現・増幅についてさらなる症例を蓄積し、治療適応上の問題点、高肝転移性胃癌におけるHER2発現・遺伝子増幅、他のマーカーとの関連について検討を追加する。最も高額なHER2遺伝子増幅の検討に必要なHER2-DISHキットは次年度の繰り越しによって購入済みであり、これを次年度も使用することができる。次年度新たに購入を予定しているのは、免疫染色抗体、関連試薬、および論文投稿費用、海外を含めた学会発表費用である。
KAKENHI-PROJECT-23790390
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急速に成長する活動銀河核の探査と構造の理解による巨大ブラックホール形成史の究明
吸収によるバイアスが極めて小さいSwift/BAT硬X線天体カタログから、「すざく」で観測された適度に吸収を受けた中高光度活動銀河核(AGN;水素柱密度log N_H = 22-24 cm-2, X線光度log L_x > 42 erg s-1) 45天体と低光度(log L_x < 42 erg s-1) AGN 10天体のX線スペクトルの系統的な解析を行った。「すざく」による統計の良い広帯域X線スペクトルによりこれまで以上にX線での性質に強い制限を与え、それをもとに統計的な議論を行った。結果、中高度で提唱されてきたAGN構造の光度依存モデルは、低光度になると成り立たなくなり、新しいモードを示すことを発見した。以上に加えて、全天X監視装置MAXIを用いて、超巨大ブラックホール(SMBH)による星潮汐破壊現象(TDE)の発生頻度の光度依存性(光度関数)について観測的に初めて制限を与えた。TDEは、破壊された星がSMBHに降着するまさにSMBHの質量成長の現場であり、現在の宇宙に存在するSMBH形成に寄与してきたと考えられる。そして、その定量的な議論には、光度関数を観測的に求めることが極めて重要である。そこで、MAXIによる37ヶ月の全天探査により、突発的に明るくなる現象を系統的に検出し、TDEの観測的特徴を考慮することで、4例のTDE候補がMAXIで検出されることを確認した。得られたTDEサンプルを用いて、TDEの光度関数を最尤法により決定した。結果、赤方偏移z < 1.5において、TDEによるSMBH質量密度進化への寄与がAGNと比較して極めて小さいことを突き止めた。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。X線観測衛星「すざく」とSwift/BATを合わせた広帯域X線スペクトルを用いて、低光度活動銀河核のダストトーラスの性質について調査した。その結果、活動銀河核の活動性が小さくなるほど、ダストトーラスの存在を示唆する鉄輝線の強度が小さくなるという傾向が見られた。また、これまで統計的な解析では見逃されていた、低光度活動銀河核のトーラス構造の大きさには多様性が存在することを発見した。この結果については、現在論文にまとめている。全天X線監視装置MAXIで得られた37ヶ月のデータを用いて、全天で一時的に明るい突発天体の調査を行った。その結果、第2版MAXI/GSCカタログでは見逃されていた突発天体を新たに12個検出することに成功した。それに伴って、超巨大ブラックホールによって星が破壊される潮汐破壊現象を3例検出することに成功した。そのうち2例は、相対論的ジェットを伴う現象であった。このサンプルを用いて、潮汐破壊現象の発生頻度の光度依存性を導出した。これは、全天を常時モニターすることで、突発現象でもピーク光度を正確に求められるMAXIの特性を十分に活かした研究になっている。また、導出した関数をもとに、相対論的ジェットを伴う潮汐破壊現象の割合や、潮汐破壊現象によって超巨大ブラックホールに供給されうる質量を定量的に求めた。その結果、ジェットを持つ潮汐破壊現象の起こる割合は、全体の1%未満であり、この現象が極めて稀有であることがわかった。また、活動銀河核によって超巨大ブラックホールに供給されうる質量と比較して、潮汐破壊現象で供給されうる質量は十分に小さく、潮汐破壊現象は超巨大ブラックホールの成長にはあまり効かないことが示唆された。以上の結果については、国内、海外問わず口頭発表を行っており、現在論文を執筆中である。吸収を受けた(水素柱密度22 <= log N_H < 24)活動銀河核(AGN)は、全体のAGNの大部分を占める種族で、その統計的な性質を調べることは、ブラックホール(BH)の成長を理解する上で重要である。そこで、X線観測衛星「すざく」とSwift/BATによって2005-2015年の間とられた吸収を受けた中高光度(X線光度log L_X > 42) AGNの広帯域X線スペクトルの系統的な解析を行った。その結果、以下の4つ事実がわかった。1)冪関数で近似される連続成分の光子指数が、Eddington比(BH質量で規格化した光度)と正の相関を示した。これは、低光度AGNで見られる負の相関と逆であり、Eddington比に応じて、降着円盤とコロナの相互作用の関係が変化していることを示唆している。2) AGN周りに存在するダストトーラス由来と考えられる鉄輝線のAGN光度に対する相対強度は、光度が高くなるにつれて弱くなる傾向を示した。これは、光度が高くなるにつれて、BHからより遠方までダストが昇華され、立体角が小さくなるダスト後退モデルと矛盾しない。3)吸収量(N_H)または、光度(L_X)でサンプルを二つに分けて硬X線スペクトルのスタッキング解析を行い、反射成分の強度を求めた。吸収量が高い、もしくは、光度が低いサンプル程、その強度が強いことを発見した。前者は、視線方向の吸収体が多い程、AGNのトーラス構造の立体角(=反射強度が高い)が高くなる傾向があることを示唆する。後者は、ダスト後退モデルと矛盾しない。
KAKENHI-PROJECT-14J01550
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急速に成長する活動銀河核の探査と構造の理解による巨大ブラックホール形成史の究明
4)あるAGN光度に対して散乱光の割合が低い天体ほど、中間赤外線の高階電離輝線[OIV]の光度が弱くなる傾向を発見した。[OIV]輝線は、AGNの本来の光度を見積もる手段として用いられてきたが、以上の結果は、散乱体が小さいと、本来の光度が小さく見積もられるバイアスが起こることを示唆する。前年度から執筆していた低光度AGNとBHによる星の潮汐破壊現象についての論文2編をまとめ、欧文雑誌(APJ, PASJ)に投稿した。その結果、前者については現在、掲載受理された。また、昨年度の研究の推進方策で述べた中高光度AGNについて、その広帯域X線スペクトルの系統的解析をし終えた。そして、その活動性(光度、Eddington比)と降着円盤やダストトーラス構造との関係性を調査した。以上の結果を論文にまとめ、欧文雑誌に投稿した。加えて、低光度AGNについて、電波干渉計ALMAへの観測提案も行った。当初の予定では、3編の論文の掲載受理を目標にしていたが、内2編はまだ受理されていないため、「やや遅れている。」と判断した。吸収によるバイアスが極めて小さいSwift/BAT硬X線天体カタログから、「すざく」で観測された適度に吸収を受けた中高光度活動銀河核(AGN;水素柱密度log N_H = 22-24 cm-2, X線光度log L_x > 42 erg s-1) 45天体と低光度(log L_x < 42 erg s-1) AGN 10天体のX線スペクトルの系統的な解析を行った。「すざく」による統計の良い広帯域X線スペクトルによりこれまで以上にX線での性質に強い制限を与え、それをもとに統計的な議論を行った。結果、中高度で提唱されてきたAGN構造の光度依存モデルは、低光度になると成り立たなくなり、新しいモードを示すことを発見した。以上に加えて、全天X監視装置MAXIを用いて、超巨大ブラックホール(SMBH)による星潮汐破壊現象(TDE)の発生頻度の光度依存性(光度関数)について観測的に初めて制限を与えた。TDEは、破壊された星がSMBHに降着するまさにSMBHの質量成長の現場であり、現在の宇宙に存在するSMBH形成に寄与してきたと考えられる。そして、その定量的な議論には、光度関数を観測的に求めることが極めて重要である。そこで、MAXIによる37ヶ月の全天探査により、突発的に明るくなる現象を系統的に検出し、TDEの観測的特徴を考慮することで、4例のTDE候補がMAXIで検出されることを確認した。得られたTDEサンプルを用いて、TDEの光度関数を最尤法により決定した。結果、赤方偏移z < 1.5において、TDEによるSMBH質量密度進化への寄与がAGNと比較して極めて小さいことを突き止めた。当初の目的である、MAXI/GSCを用いて全天で一時的に明るい突発天体の探査は既に完了している。また、その探査の結果、潮汐破壊現象という想定外の現象を検出し、その研究も含めて論文を執筆中である。また、もう一つの目的である第2版MAXI/GSCカタログの未同定天体に対する、Swift/XRTを用いた同定プロジェクトについては、現在観測提案を行っている途中である。以上の2点から当初の計画の大半について進展していると考えられる。MAXIが運用を開始してから約6年間取りためてきた全天のX線データを用いて全天カタログを作成する。これは、硬X線領域(> 2 keV)において、過去最高感度のカタログになる予定である。
KAKENHI-PROJECT-14J01550
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18世紀ヨーロッパの空間認識
政治史・社会史・思想史・芸術史・科学史・技術史などを含めた共同研究により、諸領域に共通の空間認識の変容が次のような形で明らかになった。1.16世紀までの閉じた同心円的世界に対し、17・8世紀になってはじめて開かれた空間としての世界が成立した。2-(1)そのうち17世紀的空間は統一性・同質性を特徴とするが、18世紀的空間は多様性・異質性を特徴とする。前者の範例をニュートンとすると、後者の範例はディドロである。(2)開放空間の成立は諸要素の空間的布置としてのシステムの概念をもたらしたが、それについても同様な変化が見出される。17世紀的システムは統一原理から出発して諸要素を外在的に結びつける構造であるが、18世紀的システムは多様な諸要素の間から自ずと浮かびあがってくるソフトな内在的関係の網の目である。前者の範例をデカルトとすると、後者の範例はモンテスキューである。(3)このような18世紀的空間認識は近代的世界像の成立にとって決定的に重要であった。事実、そこにおいてはじめて具体的な事物の多様性にむけて開かれた世界像が生まれるのである。近代的世界像の確立を17世紀に求め、18世紀をその単なる後継者とする従来の見方は、今や修正されなければならない。3-(1)18世紀的空間認識はしかし極めて不安定な均衡のうちにあった。19世紀に入るとそれは時間軸にそったラセン運動の中に引き込まれていくことになる。(2)その転換点において「空間の爆発」ともいうべき現象のあったことが明らかにされた。ナポレオンの帝国や「ヴィジオネール」様式の建築などがその範例である。そうやって膨張しきった空間が一挙に時間的運動へと吸引されていくのだ。4.しかし、19世紀以来の歴史的拡大の「後」にあって、一定空間内での多様な諸要素の共存という課題に直面しつつある現在においては、新たに浮き彫りにされた18世紀の空間の知から学び得るところは極めて大であると思われるのである。政治史・社会史・思想史・芸術史・科学史・技術史などを含めた共同研究により、諸領域に共通の空間認識の変容が次のような形で明らかになった。1.16世紀までの閉じた同心円的世界に対し、17・8世紀になってはじめて開かれた空間としての世界が成立した。2-(1)そのうち17世紀的空間は統一性・同質性を特徴とするが、18世紀的空間は多様性・異質性を特徴とする。前者の範例をニュートンとすると、後者の範例はディドロである。(2)開放空間の成立は諸要素の空間的布置としてのシステムの概念をもたらしたが、それについても同様な変化が見出される。17世紀的システムは統一原理から出発して諸要素を外在的に結びつける構造であるが、18世紀的システムは多様な諸要素の間から自ずと浮かびあがってくるソフトな内在的関係の網の目である。前者の範例をデカルトとすると、後者の範例はモンテスキューである。(3)このような18世紀的空間認識は近代的世界像の成立にとって決定的に重要であった。事実、そこにおいてはじめて具体的な事物の多様性にむけて開かれた世界像が生まれるのである。近代的世界像の確立を17世紀に求め、18世紀をその単なる後継者とする従来の見方は、今や修正されなければならない。3-(1)18世紀的空間認識はしかし極めて不安定な均衡のうちにあった。19世紀に入るとそれは時間軸にそったラセン運動の中に引き込まれていくことになる。(2)その転換点において「空間の爆発」ともいうべき現象のあったことが明らかにされた。ナポレオンの帝国や「ヴィジオネール」様式の建築などがその範例である。そうやって膨張しきった空間が一挙に時間的運動へと吸引されていくのだ。4.しかし、19世紀以来の歴史的拡大の「後」にあって、一定空間内での多様な諸要素の共存という課題に直面しつつある現在においては、新たに浮き彫りにされた18世紀の空間の知から学び得るところは極めて大であると思われるのである。
KAKENHI-PROJECT-59490020
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-59490020
物体把持情報伝達システムを備えたバイオミメティック義手の開発
本研究においては,義手による物体把握時の感覚情報と把持状態を使用者に伝達する物体把持情報伝達機能を備えた筋電義手の開発を目的とした.本研究得られた成果は次の通りである.(1)物体把握時のすべりを検出するため,小型の2軸せん断応力センサを試作した.(2)皮膚電気刺激を用いた感覚情報伝達システムを作成し,15パタンの情報伝達が可能であることを示した.(3)独立成分分析(ICA)とテンプレートマッチングを用いた単一運動単位活動波形の同定手法を提案し,筋長変化が伴う運動時において同定が可能であることを示した.本研究においては,義手による物体把握時の感覚情報と把持状態を使用者に伝達する物体把持情報伝達機能を備えた筋電義手の開発を行うことを目的とする.本年度に得られた成果を以下に要約する.義手人工手掌部におけるすべりと把持力検出センサの試作:義手人工手掌部におけるすべりと把持力検出センサの改良を行った.昨年度試作した十字型の台形状センサでは円筒握りにおいて物体把握時に生じるせん断応力によりセンサが台座から剥離することが問題となった.そのため,堅牢さを増すように,1軸の台形型センサを90度回転させ,重ねるように設置したタイプに改良を行った.また,2つの1軸センサからの出力から,せん断応力の方向,大きさが検出可能なモデルを定式化した.(2)電気刺激を用いた刺激提示システムの試作:視覚によるフィードバックが効かない場所において,義手を用いて物体把握をした場合に使用者にフィードバックする情報を検討した.その結果, 3種類の義手開閉角度と5種類の把握状態を伝達することとした.これにともない,皮膚電気刺激を用いた8種類の仮現運動刺激パターンを提案した.前腕部を対象とした刺激提示実験を行い,識別可能であることを示した.(4)多チャンネル筋電図処理方式の開発:前年度に検討した独立成分分析(ICA)を用いた手法を改良し,肘関節屈曲動作時における上腕二頭筋の筋電図を計測し,運動単位の波形分離が可能であることを示した.本研究においては,義手による物体把握時の感覚情報と把持状態を使用者に伝達する物体把持情報伝達機能を備えた筋電義手の開発を目的とした.本研究得られた成果は次の通りである.(1)物体把握時のすべりを検出するため,小型の2軸せん断応力センサを試作した.(2)皮膚電気刺激を用いた感覚情報伝達システムを作成し,15パタンの情報伝達が可能であることを示した.(3)独立成分分析(ICA)とテンプレートマッチングを用いた単一運動単位活動波形の同定手法を提案し,筋長変化が伴う運動時において同定が可能であることを示した.本研究においては,義手による物体把握時の感覚情報と把持状態を使用者に伝達する物体把持情報伝達機能を備えた筋電義手の開発を行うことを目的とする.本年度に得られた成果を以下に要約する.義手人工手掌部におけるすべりと把持力検出センサの試作:物体を把握した時に生じるすべりを検出するため,人工手掌部に埋め込み可能な滑りセンサのプロトタイプを試作した.本センサは十字型の金属板を台形状にし,直交する2斜辺に歪みゲージを貼付したものである.試作したセンサを用いた実験を行い,せん断応力が大きくなると伴に歪みゲージの出力も増加した.また,せん断応力を負荷する角度により正弦波状に出力が変化すること,直交する方向に貼付したひずみゲージの出力の位相差が90度であることを示した.このことから試作したセンサを用いて物体把握時のせん断応力の方向と大きさを計測することが可能であることが示唆された.(2)皮膚電気刺激による刺激パターンの検討:皮膚電気刺激を用いた5種類の仮現運動刺激パターンを提案した.前腕部を対象とした刺激提示実験を行い,識別可能であることを示した.多チャンネル筋電図計測法の検討:義手の制御信号である多チャンネルの表面筋電図を計測・処理するため,8チャンネル表面電極を用いた筋電図の計測法を提案した.本手法では計測された筋電図を短い時間間隔で区切り,独立成分分析(ICA)を用いて筋運動制御信号の基本単位である運動単位の同定を行うものである.弱い等尺性収縮実験を行い,運動単位の同定が可能であることが示唆された.本研究においては,義手による物体把握時の感覚情報と把持状態を使用者に伝達する物体把持情報伝達機能を備えた筋電義手の開発を行うことを目的とする.本年度に得られた成果を以下に要約する.(1)物体把持情報伝達システムの試作:前年度に引き続き,すべり検出センサの改良を行った.物体把握時において,過渡応答におけるオーバーシュートにより正確なせん断応力を計測することが困難である.そのため,本年度は,まず,物体把握時に生じるのと同じステップ状に負荷を加えた時の過渡応答を計測した.そして,時間応答をモデル化し,定常状態におけるせん断応力を推定する手法を提案した.また,試作したセンサと昨年度試作した皮膚電気刺激装置を用いて物体把持情報伝達システムを構築した.(2)多チャンネル筋電図処理方式の開発:前年度に検討した独立成分分析(ICA)を用いた手法を改良した.筋長の変化が生じる状態における単一運動単位波形を識別するため,波形を短区間に切り出し,独立成分分析(ICA)を用いて運動単位波形の候補を抽出した.そして,その短区間において逐次的にテンプレート波形を変化させ,テンプレートマッチングを行い単一運動波形の同定を行った.
KAKENHI-PROJECT-24500667
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物体把持情報伝達システムを備えたバイオミメティック義手の開発
この改良型手法の有用性を確かめるため,肘関節等角速度屈曲運動時における上腕二頭筋の多チャンネル表面筋電図を計測し,本手法により単一運動単位波形の同定を行った.その結果,単一運動単位の発火頻度等が,これまでの生理学的知見とおおよそ一致していることから,本手法の有用性が示唆された.人間医工学義手人工手掌部に貼付するためのセンサを改良し,せん断応力の大きさ,方向の推定が可能であることを示した.これにより人工手掌部に備えさせるセンサのプロトタイプが試作できたものと考えられる.また,感覚情報伝達システムにおいては,物体把握時に使用者に伝達が必要な情報の種類を検討し,8種類の電気刺激パターンの識別が可能であることを示した.筋電図処理については筋電図に対し独立成分分析(ICA)を用いた波形同定手法を改良するとともに,筋長が変化する動作時において本手法が適用可能であることを示した.このことから,本研究では本年度予定した研究内容を概ね遂行することできたものと考えられる.義手人工手掌部に貼付するためのセンサのプロトタイプを試作し,せん断応力の大きさ,方向により出力が変化することを示した.これによりセンサのハードウェア構造の基本はできたものと考えられる.今後,信号処理法を決定し,せん断応力の方向,大きさを検出可能なアルゴリズムを完成させる.また,電気刺激パターンについては5種類の刺激パターンを提案した.筋電図処理については筋と皮膚の相対的位置関係が変化した時の波形変化にも対応できるように,時間分割した筋電図に対し独立成分分析(ICA)を用いた波形同定手法を提案することができた.このことから,本研究では本年度予定した研究内容を概ね遂行することできたものと考えられる.平成24および25年度の研究成果を元に次年度以降,下記の事項について研究を遂行する.(1)義手人工手掌部の試作:把持力,すべりの検出可能なセンサを備えた義手人工指先部,手掌部を試作する.義手の示指,中指および母指の手掌部に前年度試作したセンサを備えた人工手掌部を試作する.(2)物体把持情報伝達システムの試作:前年度決定した刺激パターンをもとに,物体の把持情報を使用者に伝達するシステムを試作する(3)多チャンネル筋電図処理方式の開発:前年度に引き続き,多チャンネル筋電図処理手法を改良するとともに,運動時の筋電図から単一運動単位波形の同定を行い,運動単位の活動様式を明らかにする.平成24年度の研究成果を元に次年度以降,下記の事項について研究を遂行する.(1)義手人工手掌部におけるすべりと把持力検出センサの試作:平成24年度に試作したセンサのプロトタイプを元に改良を行うと伴に,信号処理法を決定し,せん断応力の方向,大きさを検出可能なアルゴリズムを完成させる.(2)義手人工手掌部の試作:把持力,すべりの検出可能なセンサを備えた義手人工指先部,手掌部を試作する.義手の示指,中指および母指の手掌部に前年度試作したセンサを備えた人工手掌部を試作する.(3)電気刺激を用いた刺激提示システムの試作:前年度決定した刺激パターンを備えた刺激提示システムを試作する.心理物理実験を行い,情報の伝達が可能であることを示す.(4)多チャンネル筋電図処理方式の開発:前年度に検討した独立成分分析(ICA)を用いた手法を改良すると伴に,運動時の筋電図に対して運動単位の波形分離が可能であるかを検討する.多チャンネル筋電図処理法の開発において,本年度は高い演算能力を得るために解析用計算機を購入した.
KAKENHI-PROJECT-24500667
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24500667
生徒参加による主権者教育に関する日米仏独の比較研究
本研究の目的は日米仏独の主権者教育の国際比較研究を行うことで、研究実施計画通りアメリカの学校調査を研究メンバーで実施した。2019年の3月に、アメリカ・シカゴのイリノイ州から「デモクラシー・スクール」の認証を受けている高校4校(ジョン・ハンコック高校、アルコット・カレッジ・プレップ高校、キュリー・メトロ高校、ジョーンズ・カレッジ・プレップ高校)と、教育委員会と連携して市民性教育のモデルカリキュラム開発などをしているNPO(ミクヴァ・チャレンジ)を訪問して、公民科の授業見学と教師・生徒からの聞き取りによって民主主義教育・市民性教育の取り組みを調査した。「サービス・ラーニング」「学校評議会」「生徒の『声』委員会」などの学校運営と地域活動への生徒参加による主権者を育てる教育内容は、主体的・対話的な学びによって知識を活用して行動できる市民を育てる教育で、日本の主権者教育にとって示唆に富んだ実践であり意義深いものである。研究計画で研究メンバーによる各国の生徒参加による主権者教育の論点整理を計画したが、各人が研究を進め、学会や研究会で発表し、論文を発表した。とくに、「開かれた学校づくり全国研究集会」では、本研究会メンバーで一分科会を担当して各人が研究報告できたことは意義があった。日本の学校における生徒参加による主権者教育については、宮下が長野県辰野高校、和歌山県立粉河高校、荒井が高知県奈半利中学校、両者で東京の大東学園高校の調査・分析を行った。いずれも著名な実践校であり、調査の重要性は高かった。2年目の研究ではドイツ、フランスへの訪問調査を計画していて、日本との比較分析で日本の主権者教育の課題をさらに明らかにしていく。研究計画で予定した日本の学校での生徒参加による主権者教育調査、米独仏の市民性教育の論点整理、アメリカでの学校とNPОへの訪問による授業見学と教師と生徒からの聞き取りによる市民性教育調査が実施でき、ほぼ予定していた内容を実施できた。本年度は、フランスの学校訪問調査とともに、次年度予定していたドイツの学校訪問調査も同時期にまとめて実施する予定である。また研究計画にあるように、日本の学校の主権者教育の調査をすすめ、若者が選挙に行かないことや社会的関心が低いことなど、その原因と主権者教育の問題点や課題を分析していく。前年のアメリカの学校訪問調査から得たものを日本の学校教育や教育政策でどう生かしていけるのか研究をすすめる。これらについて、学会や研究会で発表し、学会誌などに論文を投稿していく。本研究の目的は日米仏独の主権者教育の国際比較研究を行うことで、研究実施計画通りアメリカの学校調査を研究メンバーで実施した。2019年の3月に、アメリカ・シカゴのイリノイ州から「デモクラシー・スクール」の認証を受けている高校4校(ジョン・ハンコック高校、アルコット・カレッジ・プレップ高校、キュリー・メトロ高校、ジョーンズ・カレッジ・プレップ高校)と、教育委員会と連携して市民性教育のモデルカリキュラム開発などをしているNPO(ミクヴァ・チャレンジ)を訪問して、公民科の授業見学と教師・生徒からの聞き取りによって民主主義教育・市民性教育の取り組みを調査した。「サービス・ラーニング」「学校評議会」「生徒の『声』委員会」などの学校運営と地域活動への生徒参加による主権者を育てる教育内容は、主体的・対話的な学びによって知識を活用して行動できる市民を育てる教育で、日本の主権者教育にとって示唆に富んだ実践であり意義深いものである。研究計画で研究メンバーによる各国の生徒参加による主権者教育の論点整理を計画したが、各人が研究を進め、学会や研究会で発表し、論文を発表した。とくに、「開かれた学校づくり全国研究集会」では、本研究会メンバーで一分科会を担当して各人が研究報告できたことは意義があった。日本の学校における生徒参加による主権者教育については、宮下が長野県辰野高校、和歌山県立粉河高校、荒井が高知県奈半利中学校、両者で東京の大東学園高校の調査・分析を行った。いずれも著名な実践校であり、調査の重要性は高かった。2年目の研究ではドイツ、フランスへの訪問調査を計画していて、日本との比較分析で日本の主権者教育の課題をさらに明らかにしていく。研究計画で予定した日本の学校での生徒参加による主権者教育調査、米独仏の市民性教育の論点整理、アメリカでの学校とNPОへの訪問による授業見学と教師と生徒からの聞き取りによる市民性教育調査が実施でき、ほぼ予定していた内容を実施できた。本年度は、フランスの学校訪問調査とともに、次年度予定していたドイツの学校訪問調査も同時期にまとめて実施する予定である。また研究計画にあるように、日本の学校の主権者教育の調査をすすめ、若者が選挙に行かないことや社会的関心が低いことなど、その原因と主権者教育の問題点や課題を分析していく。前年のアメリカの学校訪問調査から得たものを日本の学校教育や教育政策でどう生かしていけるのか研究をすすめる。これらについて、学会や研究会で発表し、学会誌などに論文を投稿していく。今年度国内の学校調査をする予定だったが行けなかった学校があり、次年度に調査するために繰越をした。使用計画は31年度122万円で、物品費22万円、旅費96万円、人件費・謝金4万円。32年度120万円で、物品費22万円、旅費84万円、人件費・謝金4万円、その他10万円である。
KAKENHI-PROJECT-18K02544
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K02544
ウェーブレット解析と仮想現実感技術を用いた血流場の立体再構成システムの試作
心筋梗塞,弁の狭窄,不整脈など様々な心疾病は正常な血流を阻害する.このような心疾病の早期発見には血流中の渦や弁付近での逆流などを正確に検出する必要がある.現状の血流診断は超音波診断装置を用いたカラードプラ法やパルスドプラ法が主流である.これらは共にドプラシフト周波数を解析し画像化する手法であるが,時間周波数分解能に劣る,関心領域を固定してしまうなどの間題点がある.つまり,現状では本来エコー信号が持つ情報を完全に抽出または画像化していない.そこで血流の定量解析とその分布を把握するために,信号解析にウェーブレット変換を,血流の表現にVR技術を用いることとし,科学研究費補助の助成を受け研究を行った.まず信号解析では各種のマザ-ウェーブレットを用いたウェーブレット変換により瞬時周波数解析を行い,従来法である瞬時フーリエ変換法と比較を行った.この結果ガボール関数に若干の修正を加えたマザ-ウェーブレットを用い,オクターブギャップをボイスで補間した離散ウェーブレット変換で有為差を確認した.また実装のための前段階として,複数の球面波送波超音波振動子を有するアレイを仮定し,これらの信号を最適化処理することにより可視化を行うシステムの設計を行った.この結果計算機シミュレーションでは血球成分を可視化することに成功した.つぎに血流のVR表現であるが,3次元的な血流データは位置と方向の両ベクトルを有するため,方向性を持ち3次元分布する対象に対してVR可視化を行った.この結果位置,方向の両ベクトルを有し分布する対象の可視化に成功した.心筋梗塞,弁の狭窄,不整脈など様々な心疾病は正常な血流を阻害する.このような心疾病の早期発見には血流中の渦や弁付近での逆流などを正確に検出する必要がある.現状の血流診断は超音波診断装置を用いたカラードプラ法やパルスドプラ法が主流である.これらは共にドプラシフト周波数を解析し画像化する手法であるが,時間周波数分解能に劣る,関心領域を固定してしまうなどの間題点がある.つまり,現状では本来エコー信号が持つ情報を完全に抽出または画像化していない.そこで血流の定量解析とその分布を把握するために,信号解析にウェーブレット変換を,血流の表現にVR技術を用いることとし,科学研究費補助の助成を受け研究を行った.まず信号解析では各種のマザ-ウェーブレットを用いたウェーブレット変換により瞬時周波数解析を行い,従来法である瞬時フーリエ変換法と比較を行った.この結果ガボール関数に若干の修正を加えたマザ-ウェーブレットを用い,オクターブギャップをボイスで補間した離散ウェーブレット変換で有為差を確認した.また実装のための前段階として,複数の球面波送波超音波振動子を有するアレイを仮定し,これらの信号を最適化処理することにより可視化を行うシステムの設計を行った.この結果計算機シミュレーションでは血球成分を可視化することに成功した.つぎに血流のVR表現であるが,3次元的な血流データは位置と方向の両ベクトルを有するため,方向性を持ち3次元分布する対象に対してVR可視化を行った.この結果位置,方向の両ベクトルを有し分布する対象の可視化に成功した.
KAKENHI-PROJECT-08750535
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08750535
肺腺癌の発癌進展における癌間質相互作用の網羅的解析
これまで当研究室では肺腺癌細胞株40株を上皮型と間葉型に大別し、研究を進めてきた。本研究ではまず、これらの細胞株11株(上皮型9株、間葉型2株)からNOD/SCIDマウスを用いたXenograft modelを作成した。その結果、上皮型細胞株から作成したXenograftは、組織学的にマウスの間質を豊富に誘導し乳頭状腺管状の腫瘍を形成したのに対し、間葉型細胞株から作成したXenograftは組織学的に間質に乏しい髄様な腫瘍を形成することが分かった。この結果は上皮型と間葉型で癌間質相互作用が全く異なる事を示唆している。また、ヒトとマウスという異種間においても癌間質相互作用が働くことが示唆している。さらに解析を進めるため、これらのXenograftがヒト由来の癌細胞とマウス由来の間質組織という異種間であることを利用し、簡便なトランスクリプトーム解析を開発しこれにより、癌間質反応の網羅的定量解析が可能になった。この網羅的定量解析を行った結果、上皮型と間葉型で癌間質反応が異なると考えられた複数のリガンド/レセプターペアについて、抗体を購入し、Xenograft modelの組織切片を用いて免疫染色を行いそれらの発現を評価した。その結果、網羅的定量解析の結果と概ね相関した発現を示すものと、そうでないものがみられた。これは免疫染色結果の評価がやや困難な抗体があることや、異種間での抗原抗体反応の違いなどが原因として考えられる。それらの問題を解決するため、免疫染色の条件調整や、その他のリガンド/レセプターペアの検討などを現在行っている。上記の通り、免疫染色の定量評価の段階でやや手間取っているため。より多くのリガンド/レセプターペアについて抗体を増やすことが一つの対策として考えられる。また、癌悪性化などに関わる既報のリガンド/レセプターペアの免疫染色をコントロールとして行い、参考とする手法も考えられる。本年度はまず、上皮型肺腺癌細胞株で作成したXenograftと、間葉型肺腺癌細胞株で作成したXenograftにおいて行ったインターラクトーム解析の結果、両者に差があったリガンド/レセプターペアのを抽出した。その結果、上皮型で高かったものはTGFB1(human)/TGFBR1 (mouse)や、Amphiregulin (human)/ EGFR (mouse)などの他、いくつかのケモカインが抽出された。一方、間葉型で高かったものは、Finronectin 1 (human)/Integrin α3 (mouse)などの他、いくつかのケモカインが抽出された。今年度は特にケモカインに着目して、上記のインターラクトーム発現解析結果を検証するため、免疫組織化学的解析を行った。いくつかのリガンド/レセプターペア(CXCL16/CXCR6, CXCL17/CXCR8など)の抗体を購入し、条件検討を行い、実際の肺腺癌手術検体を用いて解析した。その結果、当初想定しているよりも、癌・間質に特異的な染色性は得られなかったものが多かった。この理由としては、1染色条件設定2間質における陽性細胞の評価が想定より若干困難であること3Xenograft (human/mouse)での癌間質相互作用が、実際の手術検体(human/human)では異なる可能性があること(種特異性の問題)などが挙げられる。免疫組織化学的解析を行う上で、当初想定していたほどの、癌間質におけるクリアカットな発現差が得られなかったため。これまで当研究室では肺腺癌細胞株40株を上皮型と間葉型に大別し、研究を進めてきた。本研究ではまず、これらの細胞株11株(上皮型9株、間葉型2株)からNOD/SCIDマウスを用いたXenograft modelを作成した。その結果、上皮型細胞株から作成したXenograftは、組織学的にマウスの間質を豊富に誘導し乳頭状腺管状の腫瘍を形成したのに対し、間葉型細胞株から作成したXenograftは組織学的に間質に乏しい髄様な腫瘍を形成することが分かった。この結果は上皮型と間葉型で癌間質相互作用が全く異なる事を示唆している。また、ヒトとマウスという異種間においても癌間質相互作用が働くことが示唆している。さらに解析を進めるため、これらのXenograftがヒト由来の癌細胞とマウス由来の間質組織という異種間であることを利用し、簡便なトランスクリプトーム解析を開発しこれにより、癌間質反応の網羅的定量解析が可能になった。この網羅的定量解析を行った結果、上皮型と間葉型で癌間質反応が異なると考えられた複数のリガンド/レセプターペアについて、抗体を購入し、Xenograft modelの組織切片を用いて免疫染色を行いそれらの発現を評価した。その結果、網羅的定量解析の結果と概ね相関した発現を示すものと、そうでないものがみられた。これは免疫染色結果の評価がやや困難な抗体があることや、異種間での抗原抗体反応の違いなどが原因として考えられる。それらの問題を解決するため、免疫染色の条件調整や、その他のリガンド/レセプターペアの検討などを現在行っている。上記の通り、免疫染色の定量評価の段階でやや手間取っているため。今後は一定の条件検討を行ったうえで、Xenograftを用いた免疫組織化学的解析に移る予定である。また、免疫組織化学的解析に時間がかかる場合は細胞株によるケモカインのノックダウンあるいは強制発現による実験も検討している。
KAKENHI-PROJECT-17K15652
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K15652
肺腺癌の発癌進展における癌間質相互作用の網羅的解析
より多くのリガンド/レセプターペアについて抗体を増やすことが一つの対策として考えられる。また、癌悪性化などに関わる既報のリガンド/レセプターペアの免疫染色をコントロールとして行い、参考とする手法も考えられる。当初想定していたよりも、研究の進行が若干遅れているため。次年度は免疫組織化学的解析に用いる抗体の購入や、有力なリガンドレセプターペアの候補分子のkcnodk downあるいは強制発現実験に必要な物品購入に使用する予定である。研究計画が当初より遅れており、購入予定数よりも抗体等の支出が少ない為。次年度は主に抗体を中心とした物品購入に使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-17K15652
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古地磁気学的アプローチによる房総―三浦地域における第三紀テクトニクスの解明―伊豆島弧多重衝突説の検証―
本研究では、房総半島中部に分布する中新統三浦層群の古地磁気記録を元に、本州弧に対する伊豆島弧地塊の衝突タイミングがどのようなものであったかを解明することを試みた。試料は天津層下部について鴨川地溝帯の北側に分布する銘川および小糸川の上流沿いで38サイト、木の根層について銘川で5サイト、神川層について銘川で3サイトから採取した。消磁実験の結果、天津層から10サイト、神川層から1サイトにおいて一時磁化成分を抽出することができた。今回得られた磁化方位の平均偏角およびその95%の信頼区間は、神川層(16Ma以前)では76±29度、天津層下部(11-13Ma)では中間的極性と思われる1サイトを除くと52±19度であった。また小竹・他(1995)は南房総の千倉・豊房層群(30.5Ma)において約10度の古地磁気偏角の東偏を報告しており、その原因として1Ma前後に起こったとされる伊豆地塊の本州弧に対する衝突を挙げている。以上のことから、本研究地域は1613Maの間に時計回りに数十度の回転運動を被った後、133Maの1000万年間に約40度の時計回り回転を被ったといえる。神川層はその堆積年代から考えると西南日本と同程度の日本海拡大による回転運動を被ったはずであるが、今回の結果はそれを裏付けている。また地層中のスコリア分布より、四国海盆の拡大によって伊豆島弧が現在の位置に来たのが13Maであったと推定されている(高橋,1998)ことから、伊豆島弧地塊の衝突はそれ以降始まったと考えられる。このことから、今回得られた約40度の時計回り回転は伊豆半島衝突以前の伊豆島弧地塊の衝突現象を反映したものと考えられる。本研究の目的は中期中新世以降に伊豆島弧の本州弧への衝突の影響を受けたと考えられる房総-三浦地域において古地磁気学的研究を行い、磁化方位の偏角異常から地塊の水平回転運動を求め、伊豆島弧衝突現象の様子を解明することである。そのために本年度は、中期中新世以降の地層群である三浦層群が広く分布する房総半島鴨川低地帯北部で試料採取のための地質調査を行った。その結果、古地磁気試料採取にもっとも適していると判断された銘川(めいがわ)沿いに露出する三浦層群最下部の神川層木の根層において詳細な柱状図の作成と古地磁気試料採取を行った。銘川やさらに北部の小糸川沿いでは三浦層群下部中部にかけての木の根層天津層においてすでに古地磁気学的研究を行っていたが、その結果では木の根層から採取した試料のほとんどが初生的な残留磁化を保持していないことがわかった。この原因としては、当該地層が堆積後に還元環境におかれたため酸化鉄からなる磁性鉱物が溶解してしまったことや、さらに地中深くに埋没した際に熱粘性残留磁化を獲得するに十分な温度(100°C程度)まで達したことなどが考えられる。このため今回試料採取には変型や属成作用の影響を比較的受けていないと考えられるノジュール部分を中心に行い、残留磁化記録におけるノイズ低減をめざした。試料採取は三浦層群最下部の神川層で3層準、その上位の木の根層で5層準について行い、1層準あたり6本のコア(24mmφ)を採取した。現在これらについての古地磁気測定を行っているところである。本研究では、房総半島中部に分布する中新統三浦層群の古地磁気記録を元に、本州弧に対する伊豆島弧地塊の衝突タイミングがどのようなものであったかを解明することを試みた。試料は天津層下部について鴨川地溝帯の北側に分布する銘川および小糸川の上流沿いで38サイト、木の根層について銘川で5サイト、神川層について銘川で3サイトから採取した。消磁実験の結果、天津層から10サイト、神川層から1サイトにおいて一時磁化成分を抽出することができた。今回得られた磁化方位の平均偏角およびその95%の信頼区間は、神川層(16Ma以前)では76±29度、天津層下部(11-13Ma)では中間的極性と思われる1サイトを除くと52±19度であった。また小竹・他(1995)は南房総の千倉・豊房層群(30.5Ma)において約10度の古地磁気偏角の東偏を報告しており、その原因として1Ma前後に起こったとされる伊豆地塊の本州弧に対する衝突を挙げている。以上のことから、本研究地域は1613Maの間に時計回りに数十度の回転運動を被った後、133Maの1000万年間に約40度の時計回り回転を被ったといえる。神川層はその堆積年代から考えると西南日本と同程度の日本海拡大による回転運動を被ったはずであるが、今回の結果はそれを裏付けている。また地層中のスコリア分布より、四国海盆の拡大によって伊豆島弧が現在の位置に来たのが13Maであったと推定されている(高橋,1998)ことから、伊豆島弧地塊の衝突はそれ以降始まったと考えられる。このことから、今回得られた約40度の時計回り回転は伊豆半島衝突以前の伊豆島弧地塊の衝突現象を反映したものと考えられる。
KAKENHI-PROJECT-12740281
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12740281
沖縄県伊江島の資料に基づく戦後沖縄の平和運動史に関する実証的研究
本研究は、阿波根昌鴻氏(故人)の個人資料を学術的に活用することを出発点とし、3年間の研究を通じて、詳細な資料目録の作成を中核として、当該資料の史料学的重要性の検証、保存環境に関する科学的検討、行政資料とは異なる観点からの沖縄戦後史研究等を実施した。また、戦後沖縄における平和運動史を多角的に検証するために、主として阿波根昌鴻氏の関係者に対する聴き取り調査を実施した。他方、研究成果を広く社会に還元する観点から、重要な文字資料の複製を作成し、破損・劣化したモノ資料に修復を施し、伊江島においてシンポジウムを開催した。本研究は、阿波根昌鴻氏(故人)の個人資料を学術的に活用することを出発点とし、3年間の研究を通じて、詳細な資料目録の作成を中核として、当該資料の史料学的重要性の検証、保存環境に関する科学的検討、行政資料とは異なる観点からの沖縄戦後史研究等を実施した。また、戦後沖縄における平和運動史を多角的に検証するために、主として阿波根昌鴻氏の関係者に対する聴き取り調査を実施した。他方、研究成果を広く社会に還元する観点から、重要な文字資料の複製を作成し、破損・劣化したモノ資料に修復を施し、伊江島においてシンポジウムを開催した。本研究は、沖縄県国頭郡伊江村に保管されている阿波根昌鴻氏(故人)の個人資料を学術的に活用し、その多様かつ詳細な歴史記録に依拠しながら、沖縄戦後史研究の発展を図ることを目的とし、詳細な資料目録の作成を通じて当該資料を検討し、行政資料や占領資料とは異なる観点からの沖縄戦後史研究の視座の提供を目指している。また、併せて当該資料を長く保管するための資料保存学的検討も実施し、保存環境の整備、破損・劣化資料の修復等も実施している。平成19年度においては、(1)2度の現地調査による膨大な当該資料群の目録化作業並びに保存環境整備、(2)当該資料のうち学術的価値の高いものについて複製資料の作成、(3)阿波根昌鴻氏関係者に対する聞き取り調査の実施、等を中心に研究活動を実施した。(1)のうち、目録化作業の進展により、数ケ所に分散されて保存されていた当該資料群のうち、1ケ所の史料群の目録化が殆ど終了し、今後の作業の見通しをたてることが容易になっただけでなく、阿波根資料の内容調査に入る前提条件が整備された。また、当該資料群の保存環境についてのデータを恒常的に収集することで、保存場所の温湿度と資料劣化との関係を科学的に解明することが可能となる。また、モノ資料のうち劣化状況の著しいものについては修復措置を施し、今後の当該資料群の保存環境整備に向けたサンプルとなることが期待される。これら活動により、阿波根昌鴻資料の全容解明につながるだけでなく、当該資料を用いた戦後沖縄史研究をおこなう上での準備が整いつつあると考えている。本研究は、沖縄県国頭郡伊江村に保管されている阿波根昌鴻氏(故人)の個人資料を学術的に活用し、その多様かつ詳細な歴史記録に依拠しながら、沖縄戦後史研究の発展を図ることを目的とし、詳細な資料目録の作成を通じて当該資料を検討し、行政資料や占領資料とは異なる観点からの沖縄戦後史研究の視座の提供を目指している。また、併せて当該資料に関する資料保存学的検討も実施し、保存環境の整備、破損・劣化資料の修復等も実施している。平成20年度においては、(1)2度の現地調査による当該資料群の目録化作業並びに保存環境整備、(2)当該資料のうち学術的価値の高いものについて複製資料作成、(3)阿波根昌鴻氏関係者に対する聞き取り調査の実施、(4)研究会の実施、等の研究活動を実施した。(1)のうち、目録化作業は着実に進展したものの、別の場所に保存されていた資料群には1つの箱に大量の資料が保存されているものが多く、作業速度が低下している。また、当該資料群の保存環境に関するデータの恒常的収集を継続した一方、モノ資料のうち劣化の激しい資料の修復作業も実施した。(2)については、1950年代の土地闘争に関係する資料を中心に、カメラ撮影による画像データの集積をおこなっている。(3)については、県内外の関係者への聞き取り調査を実施し、(4)の研究会において、その概要に関する報告をおこなった。これら活動により、戦後沖縄の平和運動に関する多面的な研究をおこなう準備が相当程度進み、来年度に実証的研究を実施する条件が整備されつつあると考える。本研究は、沖縄県国頭郡伊江村に保管されている阿波根昌鴻氏(故人)の個人資料を学術的に活用し、その多様かつ詳細な歴史記録に依拠しながら、沖縄戦後史研究の発展を図ることを目的とし、詳細な資料目録の作成を通じて当該資料を検討し、行政資料や占領資料とは異なる観点からの沖縄戦後史研究の視座の提供を目指している。また、併せて当該資料に関する資料保存学的検討も実施し、保存環境の整備、破損・劣化資料の修復等も実施している。平成21年度においては、(1)2度の現地調査による当該資料群の目録化作業並びに保存環境整備、(2)当該資料のうち学術的価値の高いものについて複製資料作成、(3)阿波根昌鴻氏関係者に対して実施した聞き取り調査の活字化、(4)シンポジウムの実施、等の研究活動を実施した。(1)のうち、目録化作業は前年度同様、1つの箱に大量の資料が保存されているものが多かったため、作業速度の向上は困難だった。
KAKENHI-PROJECT-19320108
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19320108
沖縄県伊江島の資料に基づく戦後沖縄の平和運動史に関する実証的研究
他方、当該資料群の保存環境に関するデータの恒常的収集を継続した。(2)については、集積した画像データを基にした複製資料の作成を実施した。(3)については、前年度までに実施した聴き取り内容の活字化を、順調に遂行した。(4)については、3年間の研究成果の社会還元として開催し、調査関係者以外の方の基調講演を含め、充実したシンポジウムとなった。これら活動により、戦後沖縄の平和運動に関する多面的な考察が着実に進んだものの、その資料群の膨大さから未着手のものも多数残った。また、資料の内容に関する実証的研究については、最終報告書までにまとめる予定である。
KAKENHI-PROJECT-19320108
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19320108
北太平洋中層水と黒潮の相互作用についての研究
本研究では「北太平洋中層水の元である亜寒帯水の亜熱帯への中層への流入が変化することにより、黒潮・黒潮続流の表層海流系を長期的に変化させる」という作業仮説を立て、データ解析・数値モデル実験・観測を行った。まず、(1)流速等観測資料を整理することにより、親潮水が西岸境界流として南下し風成循環境界を横切って亜熱帯循環域に流入する過程と亜寒帯前線に沿う渦混合過程の2つの過程を通じて、計10Svもの亜寒帯水が亜寒帯から亜熱帯へ輸送されることが明らかとなった。(2)北太平洋水平1/4度の3層モデルを用いて、オホーツク海における中層の層厚を観測データに合うように深層から中層へ等密度面を横切る輸送3Svを与えた結果、ほぼ同じ量の海水が西岸境界付近の親潮を通じて循環境界を横切り、亜熱帯循環域に流入することが明らかとなった。オホーツク海周辺海域での強い潮汐混合に伴う等密度面を横切る湧昇とオホーツク海低渦位水の形成・親潮南下・亜寒帯から亜熱帯への中層水輸送の関係を理論的に解明することができた。(3)黒潮続流域において、垂下式超音波流速計・走行式水温塩分プロファイラによる詳細な観測を行い、黒潮続流中層に、波長約200kmの前線波動が存在し、この波動が下流方向に向かって振幅を増加・砕波することによって2つの異なる水塊が効率良く混合することが明らかとなった。本研究では「北太平洋中層水の元である亜寒帯水の亜熱帯への中層への流入が変化することにより、黒潮・黒潮続流の表層海流系を長期的に変化させる」という作業仮説を立て、データ解析・数値モデル実験・観測を行った。まず、(1)流速等観測資料を整理することにより、親潮水が西岸境界流として南下し風成循環境界を横切って亜熱帯循環域に流入する過程と亜寒帯前線に沿う渦混合過程の2つの過程を通じて、計10Svもの亜寒帯水が亜寒帯から亜熱帯へ輸送されることが明らかとなった。(2)北太平洋水平1/4度の3層モデルを用いて、オホーツク海における中層の層厚を観測データに合うように深層から中層へ等密度面を横切る輸送3Svを与えた結果、ほぼ同じ量の海水が西岸境界付近の親潮を通じて循環境界を横切り、亜熱帯循環域に流入することが明らかとなった。オホーツク海周辺海域での強い潮汐混合に伴う等密度面を横切る湧昇とオホーツク海低渦位水の形成・親潮南下・亜寒帯から亜熱帯への中層水輸送の関係を理論的に解明することができた。(3)黒潮続流域において、垂下式超音波流速計・走行式水温塩分プロファイラによる詳細な観測を行い、黒潮続流中層に、波長約200kmの前線波動が存在し、この波動が下流方向に向かって振幅を増加・砕波することによって2つの異なる水塊が効率良く混合することが明らかとなった。北太平洋1/4度3層のモデルを用いて、現実の風を与えた数値実験を行った。黒潮続流はほぼ現実的に北緯35度離岸したが、親潮の南下は年平均/季節変動する風応力場のいずれを用いても再現されず、風の場で決まる循環境界付近に留まっていた。季節変動する風応力の場合には順圧応答と渦輸送によって多少は亜寒帯から亜熱帯海域への輸送が見られたが、現実よりも小さかった。オホーツク海水を模した低渦位水をウルップ水道から中層に流入させたところ、日本付近の前線構造は大きく変化した。親潮前線は日本付近で緯度で4度南下し、ほぼ現実に近い前線構造をとることが確認された。親潮前線の南下は、流入する低渦位水の流量だけでなく、岸で与える厚みに大きく依存していた。これらより、オホーツクからの低渦位水の流入が日本付近の前線構造を大きく変えることが明らかになった。現在、力学的な原因について追求中である。また、これまで得られたLADCP/CTDのデータを用いてインバース法によって絶対地衡流場を求め、日本東方における亜寒帯水の流入量と循環/混合過程を検討した。5-6月には黒潮続流域において、MVPを用いた詳細な観測を行った。水平3kmの間隔で1000mまで約500回の観測を行い、精度の良い水温塩分資料を取得することができた。このデータからオホーツク海水が黒潮続流の中層に貫入する様が明確に明らかとなった。また、本年度はMVP用のCTDセンサとDOセンサを本研究費により新たに導入した。酸素センサについては来年度試験航海を行い、MVPのような高速サンプリングで良好なデータが取得できるかどうか検証する予定である。平成13年度に開発した北太平洋1/4度3層のモデルを用いて、親潮の南下と親潮水が亜寒帯循環と亜熱帯循環の循環境界を横切る過程について研究を進めた。オホーツク海における深い密度躍層の効果を取り入れるために、オホーツク海における中層の層厚を観測データに合うように深層から中層へ等密度面を横切る輸送を与えた。その結果、約3Svの等密度面を横切る輸送が生じ、ほぼ同じ量の海水が西岸境界付近の親潮を通じて循環境界を横切り、亜熱帯循環域に流入することが明らかとなった。この循環を横切る輸送は、輸送場所/輸送量とも観測から報告されているものと整合的である。
KAKENHI-PROJECT-13440139
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北太平洋中層水と黒潮の相互作用についての研究
また、オホーツク海における深層から中層への等密度面を横切る輸送量は、近年明らかにされた千島列島付近での通常の1000倍もの大きな鉛直拡散と現実の密度構造を用いて推算した流量と同程度であり、かつ、最近の化学トレーサを用いた推定とも整合的であり、太平洋中層水を形成する循環を横切る亜寒帯水の輸送は千島列島付近での大きな鉛直混合によって維持されていることが示唆された。この循環を横切る輸送と親潮の南限緯度は、内部領域でスベルドラップバランス、西岸境界流域で地衡流を仮定し、等密度面を横切る輸送を与えた簡素化したモデルによって容易に解釈可能である。オホーツク海での深層から中層への輸送を変化させた実験と簡素化したモデルは良く一致し、輸送量が大きい程、循環を横切る輸送が大きくなり、親潮の南下は強まり、黒潮の北上は弱まる。また、2002年8月28日から9月9目に、中央水産研究所蒼鷹丸に乗船し黒潮続流付近の詳細観測を行った。当初当科研費で購入したCTD及び酸素センサを搭載したMVPによる観測を行う予定であったが、MVP観測が始まってまもなく大きなウネリによる船の動揺によりセンサが破損したため、CTD/LADCPに切替えて観測を行った。破損したCTD/酸素センサは本年度内に復旧した。この観測では、2001年度で存在が明らかになった波長約80kmの中層前線波動の構造をより明確に捉えるため、より狭い範囲を高解像度で観測した。この観測により、波長約60kmの中層前線波動が明確に捉えられ、さらに表層の波動と位相がずれていることが明らかとなった。この位相のずれにより、顕著な塩分極小構造が形成される。また、この前線波動は下流程振幅が大きくなる不安定波動の様相を呈していた。本研究で発見された前線波動は、親潮水と黒潮水が効率良く混合し、北太平洋中層水の形成に大きく寄与するものと推測される。本年度は、亜寒帯水と亜熱帯水が合流し、北太平洋中層水が形成される、黒潮続流域において近年導入された垂下式超音波流速計・走行式水温塩分プロファイラによる詳細な観測を、2003年8-9月に、中央水産研究所蒼鷹丸によって実施した。これらの観測から、黒潮続流中層には波長100-200kmの塩分・渦位の前線波動が存在し、この波動が下流方向に向かって振幅を増加砕波することによって2つの異なる水塊が効率良く混合することが明らかとなった。中層に比較すると振幅は小さいが表層にも前線波動が見られ、衛星画像解析によれば波長100-200kmの波動が成長しながら位相速度0.2-1m/sで下流方向に伝搬していた。中層の波動と表層の波動の間には位相差があり、波動の峰は表層が先行していた。この位相のずれにより、北太平洋中層水の顕著な塩分極小構造が形成される。また、流体の安定性解析からこの波動は、低渦位の中層親潮・表層亜熱帯モード水の存在によって規定される表・中層で反対の渦位傾度に起因する傾圧不安定波であることが明らかになった。親潮水が黒潮続流付近に流入することによって、傾圧不安定波を励起し、混合を活発化することによって自ら北太平洋中層水の形成を促進していることを示唆している。
KAKENHI-PROJECT-13440139
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腎炎の発症進展におけるRANTESの役割-遺伝子欠損マウスを用いた解析-
ケモカインの一種であるRANTESは、モノサイトやT細胞の遊走因子であり、免疫反応の様々なプロセスに関与している可能性がある。こめRANTESが、腎障害の発症や進展にどのように開与しているかを調べるため、われわれはRANTES適伝子欠損マウスを作成し、既存の実験賢炎の起こりやすさを検討した。抗糸球体基底膜抗体腎炎においては、RANTES欠損マウスの腎組織病変は、野生型における組織変化とほとんど変わらなかった。次にわれわれは自己免疫性組織障害におけるRANTESの役割を調べるために、RANTES欠損MRL-Fas lprマウスを作成した。RANTES欠損MRL-Fas lprマウスにおいては、野生型MRL-Fas lprマウスに比べて脇窩リンパ節が著明に腫脹していた。フローサイトメトリーの解析では、CD4(-)かつCD8(-)の、いわゆるダブル・ネガティブT細胞の割合が著しく低下していた。組織標本のイメージアナライザーによる解析では、肺の気管支周囲組織への炎症性細胞浸潤が著明に低下していた。野生型の肺組織にはRANTESのmRNAの表出が確認された。その一方、生存率や腎の組織変化はRANTES遺伝子の有無により有意な差がなかった。RNTESは肺病変に関与するが、その役割は腎組織では肺と異なるようである。RANTES欠損マウスを用いた研究は、臓器特異的な自己免疫性組織障害の機序を明らかにする上でも役立つかも知れない。ケモカインの一種であるRANTESは、モノサイトやT細胞の遊走因子であり、免疫反応の様々なプロセスに関与している可能性がある。こめRANTESが、腎障害の発症や進展にどのように開与しているかを調べるため、われわれはRANTES適伝子欠損マウスを作成し、既存の実験賢炎の起こりやすさを検討した。抗糸球体基底膜抗体腎炎においては、RANTES欠損マウスの腎組織病変は、野生型における組織変化とほとんど変わらなかった。次にわれわれは自己免疫性組織障害におけるRANTESの役割を調べるために、RANTES欠損MRL-Fas lprマウスを作成した。RANTES欠損MRL-Fas lprマウスにおいては、野生型MRL-Fas lprマウスに比べて脇窩リンパ節が著明に腫脹していた。フローサイトメトリーの解析では、CD4(-)かつCD8(-)の、いわゆるダブル・ネガティブT細胞の割合が著しく低下していた。組織標本のイメージアナライザーによる解析では、肺の気管支周囲組織への炎症性細胞浸潤が著明に低下していた。野生型の肺組織にはRANTESのmRNAの表出が確認された。その一方、生存率や腎の組織変化はRANTES遺伝子の有無により有意な差がなかった。RNTESは肺病変に関与するが、その役割は腎組織では肺と異なるようである。RANTES欠損マウスを用いた研究は、臓器特異的な自己免疫性組織障害の機序を明らかにする上でも役立つかも知れない。(目的)RANTESは、腎炎で強く発現しているケモカインのひとつであり、腎臓への炎症性細胞の集積と活性化に関与していると考えられている。RANTES遺伝子欠損マウスを用いていくつかの腎炎モデルを解析することにより、腎炎の発症と進展におけるRANTESの役割を明らかにする。(方法および結果)1)抗糸球体基底膜抗体腎炎(加速型馬杉腎炎)モデル:野生型およびRANTES欠損マウスに抗糸球体基底膜抗体を静脈投与して加速型馬杉腎炎を作成し、病理学的に解析した。欠損マウスにおいて尿タンパクや腎機能の改善傾向がみられ、病理学的にも糸球体や間質の障害が軽い傾向がみられた。免疫組織染色による腎浸潤細胞の比較では、欠損マウスにおいて間質へのマクロファージとT細胞の浸潤が軽い傾向がみられた。2)マウスループスモデル:RANTES欠損(-/-)マウスをMRL-Faslprマウスに5回戻し交配したのち、かけあわせてRANTES+/-または-/- MRL-Faslprマウスを作製して比較検討した。RANTES-/- MRL-Faslprマウスにおいて、1)脇窩リンパ節腫脹が減少し、リンパ節へのB220^+CD4^-CD8^-(DN)T細胞の集積が著明に低下していた。2)肺の血管および細気管支周囲のDNT細胞やCD4^+T細胞を中心とした細胞浸潤が低下していた。3)生存率の延長はわずかで、腎病変には明らかな差を認めなかった。(結論)加速型馬杉腎炎モデルにおいては、RANTESのこの腎炎への関与は部分的であることが示唆された。マウスループスモデルにおいては、RANTESはリンパ節へのDNT細胞の集積や肺への炎症性細胞浸潤に関与していることが示されたが、腎臓での明らかな差を認めず、臓器特異的なRANTESの関与が示唆された。現在さらに解析をすすめているところである。(目的)RANTES遺伝子欠損マウスを用いて、すでに確立している腎炎モデルの腎障害の発症と進展におけるRANTESの役割を明らかにする。(方法および結果)前年度の検討により、加速型馬杉腎炎モデルにおいては、RANTES遺伝子を欠損させても腎障害に著明な差はなく、腎障害におけるRANTESの関与は少ないと考えた。そこで今回はループスモデルマウスに絞って検討を加えた。
KAKENHI-PROJECT-12671022
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12671022
腎炎の発症進展におけるRANTESの役割-遺伝子欠損マウスを用いた解析-
マウスの作成は、RANTES欠損マウス(-/-)を自然発症ループスモデルマウスであるMRL-Fas lprマウスに5回戻し交配させた上にかけ合わせ、RANTES+/-またはRANTES-/-マウスを作成して比較検討した。その結果、1)生存率2)腎組織変化(糸球体、尿細管間質、血管病変各々について)3)血清グロブリン分画及び抗DNA抗体レベル4)蛋白尿および血清クレアチニンには差がみられなかった。しかし、RANTES-/-マウスにおいて1)脇窩リンパ節の腫脹の減少、2)気管支周囲の炎症細胞浸潤(特にCD4陽性T細胞とマクロファージ)の低下、3)肺組織での炎症細胞増殖やアポトーシスにはRANTES遺伝子欠損の差がないなどが明らかとなった。(結論)リンパ節や肺組織への細胞浸潤に差があったことから、RANTESの存在が免疫・炎症システムに影響を与えたことは明らかで、特に細胞遊走への影響が主と思われる。それにもかかわらず腎障害に差が見られなかったことは、このタイプの腎障害においてもRANTESの関与が限定的であることが示唆される。一方同じ個体の組織でも肺と腎の組織障害にRANTESの関与に差がみられたことは、自己免疫疾患の臓器特異的障害のメカニズムの一つとして、RANTESをはじめとするケモカインが重要な役割を果たすことも示唆された。
KAKENHI-PROJECT-12671022
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12671022
Co2FeAl0.5Si0.5フルホイスラー合金から半導体への高効率スピン注入
本研究の主目的は,室温においても高いスピン分極率を示すCo_2Fe (Al, Si)フルホイスラー合金(CFAS)を用い,半導体への高効率スピン注入を室温で実現である.昨年度,半導体(SC)へのスピン注入由来と予想されるシグナルを,フルホイスラー合金を用いて初めて,室温で検出することに成功した.しかし,このシグナルがスピン注入由来であるという決定的な証拠は得られていなかった.今年度はその証拠となる四端子非局所Hanleシグナルの検出を試み,同シグナルの検出により,これまで得られていたシグナルがSCへのスピン注入に依るものであると確認した.CFASを用いた際のスピン注入・検出効率が,一般的な金属強磁性体を用いたときよりも高いことは昨年度確認している,今年度は, CFASが室温でもスピン注入・検出に適していることを示すため,スピン注入・検出効率の測定温度依存性を調べた.その結果,測定温度上昇に対しスピン注入・検出効率がほとんど低下していないことを明らかにした.これらより, CFASが室温での高効率スピン注入に適した材料であると示された.スピン注入・検出効率は数%とまだ高いとは言えず,界面におけるCFASのスピン分極率低下が懸念された.これを防ぐため,界面への絶縁障壁層の挿入を試みた.その結果,高スピン分極率が期待される(001)配向したGaAs/Mg_xAl_<1-x>-0/CFAS構造の作製に成功した.昨年度は,デバイス応用上重要となる局所磁気抵抗(MR)効果の検出にもCFAS/n-GaAs接合を用いて成功し,バイアスによるスピン検出効率増大を見出していた.今年度は,スピン検出効率の変化を定量的に評価し,バイアス印加によりスピン検出効率は最大で3倍近く増大することを明らかにした.また,スピンMOSFETのMR比を増大させる上で,スピン引抜側電極を小さくすることが有効であることを示した.(抄録なし)本研究では,半導体への高効率スピン注入を室温で実現することを目的としており,本年度はスピン注入効率の増大を試みた.スピン注入効率はCo2FoAl0.5Si0.5(CFAS)の構造規則度だけでなくGaAsとの界面状態にも依存すると予想される.そこで,CFASの成膜温度によりそれらを変化させ,スピン注入シグナルの大きさを調査した.CFASの構造規則度は,CFAS成膜温度が上昇するに従って向上した.その一方,3端子Hanle測定で得られたスピン注入シグナルの大きさはCFAS成膜温度が低い試料ほど大きかった.しかし,この傾向はCFAS/GaAs界面に形成された局在準位中におけるスピン蓄積を検出したためにもたらされたことが示唆された.この結果は本質的ではないため,上記問題を取り除くため面内4端子非局所測定を用いて同様の調査を行った.その結果,3端子Hanleシグナルとは対照的にCFAS成膜温度が高い試料ほど大きなスピン注入シグナルが得られた.シグナルの大きさからスピン注入効率を算出した結果,10Kにおいて5%程度であった,これは一般的な強磁性金属を用いたときと同等,もしくはそれ以上の大きさである.また,このスピン注入シグナルを室温まで検出することに成功した,これはホイスラー合金を用いて初めての結果である.最終的にデバイスへと応用する上で,面内2端子局所測定における磁気抵抗(MR)効果についても理解する必要があるが強磁性体/半導体界面抵抗の問題からその報告はほとんどない,一方,本研究で作製された試料は局所測定においても明瞭なMR効果を示した,そのバイアス電圧依存性は明らかとされていないため調査した結果,局所シグナルはバイアス電圧が大きくなるにしたがって増大した.これは,GaAs中におけるスピン緩和長とスピン検出効率がバイアス電圧によって増大したことに起因することを明らかにした.本研究の主目的は,室温においても高いスピン分極率を示すCo_2Fe (Al, Si)フルホイスラー合金(CFAS)を用い,半導体への高効率スピン注入を室温で実現である.昨年度,半導体(SC)へのスピン注入由来と予想されるシグナルを,フルホイスラー合金を用いて初めて,室温で検出することに成功した.しかし,このシグナルがスピン注入由来であるという決定的な証拠は得られていなかった.今年度はその証拠となる四端子非局所Hanleシグナルの検出を試み,同シグナルの検出により,これまで得られていたシグナルがSCへのスピン注入に依るものであると確認した.CFASを用いた際のスピン注入・検出効率が,一般的な金属強磁性体を用いたときよりも高いことは昨年度確認している,今年度は, CFASが室温でもスピン注入・検出に適していることを示すため,スピン注入・検出効率の測定温度依存性を調べた.その結果,測定温度上昇に対しスピン注入・検出効率がほとんど低下していないことを明らかにした.これらより, CFASが室温での高効率スピン注入に適した材料であると示された.スピン注入・検出効率は数%とまだ高いとは言えず,界面におけるCFASのスピン分極率低下が懸念された.これを防ぐため,界面への絶縁障壁層の挿入を試みた.その結果,高スピン分極率が期待される(001)配向したGaAs/Mg_xAl_<1-x>-0/CFAS構造の作製に成功した.昨年度は,デバイス応用上重要となる局所磁気抵抗(MR)効果の検出にもCFAS/n-GaAs
KAKENHI-PROJECT-12J05553
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J05553
Co2FeAl0.5Si0.5フルホイスラー合金から半導体への高効率スピン注入
接合を用いて成功し,バイアスによるスピン検出効率増大を見出していた.今年度は,スピン検出効率の変化を定量的に評価し,バイアス印加によりスピン検出効率は最大で3倍近く増大することを明らかにした.また,スピンMOSFETのMR比を増大させる上で,スピン引抜側電極を小さくすることが有効であることを示した.高スピン注入源の探索に3端子Hanle測定が適していないこと,およびホイスラー合金をスピン注入源として用いる上で熱処理条件が極めて重要であることを示唆した.また,室温において初めてスピン注入シグナルを観測することに成功した.さらに,応用上重要となる特性についても調査を行い,その中で起こり得る現象を明らかにした.このように,本研究の目的である室温における高効率スピン注入実現への足掛かりとなる結果を得ただけでなく,今後スピン注入効率を向上させる研究を行う上での指針や応用へ向けた研究も行うなど,当初の目的以外の成果も得られており,計画以上に研究が進展していると言える.現在の問題として,スピン注入効率が数%程度と低いことが挙げられる.CFAS/GaAs界面においてバンド構造が変化し,スピン分極率が減少してしまっていることが原因として考えられる,そこで,今後は当初の計画通り,CFAS/GaAs界面に絶縁障壁を挿入し,スピン注入効率増大を試みる.(抄録なし)
KAKENHI-PROJECT-12J05553
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J05553
毒性元素を含まない新規ハロゲン化物発光材料の探索およびEL素子の作製
近年、ペロブスカイト型ハロゲン化物は優れた発光特性や低温プロセスが可能であるため次世代EL素子の発光材料として大きく注目されている。しかし、鉛のような毒性元素、大気不安定性などの問題点があり、現在では実用的応用が困難と考えられている。一方、申請者は近年、毒性元素を含まず大気安定なハロゲン化物青色発光体であるCs3Cu2I5を新たに見出した。Cs3Cu2I5は90%に及ぶ高い量子効率を示し、これは0次元的特異な電子構造に由来することを明らかにした。本研究では新たなハロゲン化物発光材料を探索し、光学物性の評価およびEL素子への応用を図る。さらに、ELに適した新規ハロゲン化物発光材料を提案する。近年、ペロブスカイト型ハロゲン化物は優れた発光特性や低温プロセスが可能であるため次世代EL素子の発光材料として大きく注目されている。しかし、鉛のような毒性元素、大気不安定性などの問題点があり、現在では実用的応用が困難と考えられている。一方、申請者は近年、毒性元素を含まず大気安定なハロゲン化物青色発光体であるCs3Cu2I5を新たに見出した。Cs3Cu2I5は90%に及ぶ高い量子効率を示し、これは0次元的特異な電子構造に由来することを明らかにした。本研究では新たなハロゲン化物発光材料を探索し、光学物性の評価およびEL素子への応用を図る。さらに、ELに適した新規ハロゲン化物発光材料を提案する。
KAKENHI-PROJECT-19K15655
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K15655
平滑筋収縮制御因子ライオトニンの作用機構
我々は平滑筋収縮制御機構において、アクチンに結合したライオトニンが、主役を果たすことを主張し、ミオシン軽鎖キナ-ゼが活性化因子であるとする説に反対してきたが、最近ミオシン軽鎖キナ-ゼを殆ど完全に除去したライオトニン標本を得ることができた。しかし、ライオトニンの作用機構については今のところ全く不明であり、早急にその輪郭を明らかにする必要があり、このことはまた同時にライオトニン説を確証することでもあるので、この点を留意して実験を行ったが、なお結論に達することはできなかった。またライオトニンは、分子量その他蛋白化学的にミオシン軽鎖キナ-ゼと類似しており、恐らく両者は同じまたは極めて近い分子種に属するものと思われる。この問題を解決するためにもまずその一次構造を明らかにする必要がある。この課題は昭和61年より筑波大真崎教授と協力してきたが、Nー端側に予期しなかった困難がありなお継続中である。単離したミオシンをミオシン軽鎖キナ-ゼで燐酸化するとカルシウムなしにアクチンと強く反応し、強力なATPaseを示す。このことが軽鎖キナ-ゼ説の有力な根拠となっているが、このATPase活性は天然アクトミオシンのATPase及び生きた筋のエネルギ-消費より数倍高く、生理的なものと異なる。この違いは主として抽出されたミオシンが、溶解度の減少など、ある種の変性を起すことに基くことから示された。ライオトニン作用及び軽鎖キナ-ゼ作用の一方のみを抑制する方法を幾つか発表して来たが、benzyl alkoniumがある条件でキナ-ゼのみを強く抑制することが明らかになった。他方ライオトニン作用はtergitolによって強く抑制される。今までの成績を総合するとキナ-ゼ作用は有機カチオンにより、ライオトニンは有機硫酸により選択的に抑制されることが明らかとなった。我々は平滑筋収縮制御機構において、アクチンに結合したライオトニンが、主役を果たすことを主張し、ミオシン軽鎖キナ-ゼが活性化因子であるとする説に反対してきたが、最近ミオシン軽鎖キナ-ゼを殆ど完全に除去したライオトニン標本を得ることができた。しかし、ライオトニンの作用機構については今のところ全く不明であり、早急にその輪郭を明らかにする必要があり、このことはまた同時にライオトニン説を確証することでもあるので、この点を留意して実験を行ったが、なお結論に達することはできなかった。またライオトニンは、分子量その他蛋白化学的にミオシン軽鎖キナ-ゼと類似しており、恐らく両者は同じまたは極めて近い分子種に属するものと思われる。この問題を解決するためにもまずその一次構造を明らかにする必要がある。この課題は昭和61年より筑波大真崎教授と協力してきたが、Nー端側に予期しなかった困難がありなお継続中である。単離したミオシンをミオシン軽鎖キナ-ゼで燐酸化するとカルシウムなしにアクチンと強く反応し、強力なATPaseを示す。このことが軽鎖キナ-ゼ説の有力な根拠となっているが、このATPase活性は天然アクトミオシンのATPase及び生きた筋のエネルギ-消費より数倍高く、生理的なものと異なる。この違いは主として抽出されたミオシンが、溶解度の減少など、ある種の変性を起すことに基くことから示された。ライオトニン作用及び軽鎖キナ-ゼ作用の一方のみを抑制する方法を幾つか発表して来たが、benzyl alkoniumがある条件でキナ-ゼのみを強く抑制することが明らかになった。他方ライオトニン作用はtergitolによって強く抑制される。今までの成績を総合するとキナ-ゼ作用は有機カチオンにより、ライオトニンは有機硫酸により選択的に抑制されることが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-01480130
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01480130
皮膚における高内皮静脈様血管の形成メカニズムとその役割の解明
・昨年までの検討でアトピー性皮膚炎モデルにおいて、樹状細胞、LT-LTβRシグナル、IL-7-IL-7RaシグナルがHEV様血管形成に強く関与している可能性が示唆された。一方で、マクロファージ、TNFα-TNFRI/IIシグナル、RANKLを欠損あるいは中和抗体で阻害をしてもHEV様血管形成は抑制されなかったことから、関与は低いと考えた。・樹状細胞がLTシグナルを血管に入力し、HEVの形質を誘導するのではないかという仮説において、樹状細胞と血管の位置を免疫組織染色で観察した。樹状細胞が後毛細管静脈の周囲にクラスターを形成し、その中心でHEVの形質であるperipheral node addressinを発現することを確認した。・樹状細胞は何らかのシグナルを介して血管内皮周囲にクラスターを形成することが示唆されたことから、ケモカインの多くを阻害するGi-inhibitorである百日咳毒素を炎症を起こした皮膚に皮下注射を行うと、HEV形成と樹状細胞クラスター形成の両者が抑制され、クラスターはケモカイン依存性に形成されることが明らかとなった。計画通りに推移している。これまでの検討で、樹状細胞が後毛細管静脈周囲にケモカイン依存性にクラスターを形成し、膜型であるLTシグナルを血管に入力することでHEVの形質を誘導することが示唆された。来年度は、さらに樹状細胞サブセットごとの血管形成メカニズムへの作用に迫るとともに、皮膚におけるHEV様血管の形成の役割について検討を進めたい。アトピー性皮膚炎モデルで炎症の再惹起に関与すると考えられるセントラルメモリーT細胞を中心に、HEV様血管の存在意義を解明したいと考える。申請者は皮膚におけるHEV様血管の形成メカニズムとその役割を解き明かすことを研究目的と設定しており、今年度は、皮膚におけるHEV様血管の形成メカニズムの解明について特に研究を行った。申請者は、フローサイトメトリーを用いて、皮膚でのHEV様血管の簡便な定量法を既に確立していた。更に、予備的検討において、アトピー性皮膚炎モデルのマウス皮膚において、HEV様血管が著しく誘導されることを確認していた。この定量的手法とモデルを応用し、以下の実験を行った。LT inducer細胞欠損マウス: Rorg gfp/gfpマウス、CD169陽性マクロファージ誘導除去マウス:CD169DTR、樹状細胞の誘導的除去マウス:CD11cDTR、ケラチノサイトやリンパ管細胞特異的なIL-7ノックアウトマウスおよび全身性のノックアウトマウス:IL-7KOマウス、K5Cre:IL-7flox/flox、およびTie2Cre:IL-7flox/floxを入手し、アトピー性皮膚炎モデルにおけるこれらの因子のHEV様血管の誘導における重要性を確認した。この中で、CD11cDTRマウス、IL-7ノックアウトマウスで著明なHEV様血管形成阻害を得た。さらにLT・IL-7・RANKLなどの各種候補因子の阻害抗体を入手し、それぞれの抗体投与下(抗TNF-RI/II抗体、LTβR-Fc, anti-IL-7Ra抗体, anti-RANKL抗体)において、アトピー性皮膚炎モデルにおけるHEV様血管の量を比較検討した。これらのうち、LTβR-Fc, anti-IL-7Ra抗体投与下において、著明なHEV様血管形成阻害を得た。以上より、これまでのところ、アトピー性皮膚炎モデルにおいて、皮膚のHEV様血管形成には樹状細胞、LT- LTβR、IL-7-IL-7Raシグナルが関与している可能性が強く示唆された。研究計画に沿って順調にマウスを導入し、試薬等を購入し、研究を進めている。・昨年までの検討でアトピー性皮膚炎モデルにおいて、樹状細胞、LT-LTβRシグナル、IL-7-IL-7RaシグナルがHEV様血管形成に強く関与している可能性が示唆された。一方で、マクロファージ、TNFα-TNFRI/IIシグナル、RANKLを欠損あるいは中和抗体で阻害をしてもHEV様血管形成は抑制されなかったことから、関与は低いと考えた。・樹状細胞がLTシグナルを血管に入力し、HEVの形質を誘導するのではないかという仮説において、樹状細胞と血管の位置を免疫組織染色で観察した。樹状細胞が後毛細管静脈の周囲にクラスターを形成し、その中心でHEVの形質であるperipheral node addressinを発現することを確認した。・樹状細胞は何らかのシグナルを介して血管内皮周囲にクラスターを形成することが示唆されたことから、ケモカインの多くを阻害するGi-inhibitorである百日咳毒素を炎症を起こした皮膚に皮下注射を行うと、HEV形成と樹状細胞クラスター形成の両者が抑制され、クラスターはケモカイン依存性に形成されることが明らかとなった。計画通りに推移している。当初の研究計画に沿って検討を進める予定である。これまでの検討で、樹状細胞が後毛細管静脈周囲にケモカイン依存性にクラスターを形成し、膜型であるLTシグナルを血管に入力することでHEVの形質を誘導することが示唆された。来年度は、さらに樹状細胞サブセットごとの血管形成メカニズムへの作用に迫るとともに、皮膚におけるHEV様血管の形成の役割について検討を進めたい。アトピー性皮膚炎モデルで炎症の再惹起に関与すると考えられるセントラルメモリーT細胞を中心に、HEV様血管の存在意義を解明したいと考える。
KAKENHI-PROJECT-17J40146
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構造化された生体膜・オルガネラモデル系における機能発現
タンパク質が置かれている周囲の環境にある高次構造をとらせることによってタンパク質そのものの機能を制御することも、広い意味における高次構造に関わる問題である。この観点から、今年度は生体素子である酵素がそれを取り巻く媒体中の構造形成によってどのような影響を受けるかについて研究をおこなった。/非イオン性界面活性剤の一つで膜タンパク質可溶化試薬として有用であるアルキルグルコシド(AG)をとりあげ、その形成する液晶構造について研究した。また酵素としては微生物性のアルカリプロテアーゼを対象とした。まず低活性剤濃度領域における酵素反応に対する効果を検討し、その後高濃度-含有機溶剤系における構造性と反応性との関係を検討した。/低濃度領域においてAGは酵素活性を低下させ、活性低下の割合はほぼpHにはよらない。この効果は、酵素に対する不可逆的な作用によるものではなくいわゆる酵素の拮抗阻害剤としてのものであると推測された。/高濃度-水-有機溶媒系では、各成分の存在比により界面活性剤のとる構造が種々存在する。水/βOG/オクタノールの三成分の相図において主な相としては微エマルジョン、ラメラ、ミセルが存在する。組成変化に対応して酵素活性は特徴的に変化した。水分率低下に伴う酵素活性の低下については、有機溶媒の効果、反応系の粘性の増加による酵素分子の動きの制限、βOGによる阻害、加水分解への直接的効果など多くの因子が考えられるが、活性の増加を伴う変化の要因としは、構造変化に追随する酵素および基質の分配・局所濃度変化(増加)が主要な原因であると考えられる。何れにしろこのような結果は、環境構造の変化を通じて酵素活性を制御できる可能性を示唆するものである。タンパク質が置かれている周囲の環境にある高次構造をとらせることによってタンパク質そのものの機能を制御することも、広い意味における高次構造に関わる問題である。この観点から、今年度は生体素子である酵素がそれを取り巻く媒体中の構造形成によってどのような影響を受けるかについて研究をおこなった。/非イオン性界面活性剤の一つで膜タンパク質可溶化試薬として有用であるアルキルグルコシド(AG)をとりあげ、その形成する液晶構造について研究した。また酵素としては微生物性のアルカリプロテアーゼを対象とした。まず低活性剤濃度領域における酵素反応に対する効果を検討し、その後高濃度-含有機溶剤系における構造性と反応性との関係を検討した。/低濃度領域においてAGは酵素活性を低下させ、活性低下の割合はほぼpHにはよらない。この効果は、酵素に対する不可逆的な作用によるものではなくいわゆる酵素の拮抗阻害剤としてのものであると推測された。/高濃度-水-有機溶媒系では、各成分の存在比により界面活性剤のとる構造が種々存在する。水/βOG/オクタノールの三成分の相図において主な相としては微エマルジョン、ラメラ、ミセルが存在する。組成変化に対応して酵素活性は特徴的に変化した。水分率低下に伴う酵素活性の低下については、有機溶媒の効果、反応系の粘性の増加による酵素分子の動きの制限、βOGによる阻害、加水分解への直接的効果など多くの因子が考えられるが、活性の増加を伴う変化の要因としは、構造変化に追随する酵素および基質の分配・局所濃度変化(増加)が主要な原因であると考えられる。何れにしろこのような結果は、環境構造の変化を通じて酵素活性を制御できる可能性を示唆するものである。
KAKENHI-PROJECT-04205086
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代数的K理論とサイクリックホモロジー,及びその代数幾何への応用
相対代数的K理論の研究を行った。スキームXとその閉部分スキームDのペア(X,D)を考える。興味の対象は、K理論スペクトラム間のK(X)からK(D)への標準写像のホモトピーファイバーK(X,D)である。[Relative $K_0$ and relative cycle class map]ではDがアフィンの時にK_0(X,D)の構造を完全複体の言葉で記述し、応用としてモデュラス付きChow群CH_*(X|D)からK_0(X,D)の適当な部分商へのサイクル写像を構成し、これが全射であることを示した。また、このサイクル写像の核がトーションである証明のアイデアもある。高次の相対K群とモデュラス付き高次Chow群の関係は分かっていることは少ないが、Krishna氏との共著[Relative homotopy K-theory and algebraic cycles with moduli]にて、ホモトピーK理論(WeibelのKH理論)に関しては相対ホモトピーK理論KH(X,D)とモデュラス付きサイクル理論との関係を満足のいく形で確立することができた。すなわち、Atiya-Hirzebruch型のスペクトル系列が存在することを証明した。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。(1)代数的K理論において、Suslinのホモロジー安定性は基本的かつ重要な定理である。ホモロジー安定性とは、環Aのn次一般線形群を考えたときに、その整形数ホモロジーが行列のサイズnが十分大きければnに依らないというものである。Suslinの安定性においては、環Aは単位的であることが本質的である。本研究では、代数的K群のプロシステムを研究することを動機に、非単位的な環の一般線形群のホモロジーのプロシステムを考え、これの安定性について研究した。結果として得られた定理は、Suslinの安定性を非単位的な環を含める形で一般化するものとなった。またこれを用いて相対的代数K群を具体的に書くことにも成功した。これらの結果はシドニー及び東京での国際研究集会でも発表した。(2)代数的多様体のモチーフ理論は滑らかな多様体に関しては、基本的な枠組みは確立されたと言ってもいいであろう。モチーフ理論を代数多様体とその効果的Cartier因子の組み(これをモデュラスペアという)に拡張する取り組みは近年盛んに研究されている。Binda-斎藤によって、モデュラスペアのモチヴィックコホモロジーが定義されたが、これを代数的K群と比較することは、この分野での大きな一つの課題であり、本研究の目標でもある。本年度は、モデュラスペアの(相対的)代数的K群からそのモチヴィックコホモロジーにチャーン類写像を構成することに成功した。これを元に、この両者が比較されることが期待されている。平成28年度の研究の大きな目標としてあげていたものは、(1)ホモロジープロ安定性の証明と(2)相対的K群から相対的モチヴィックコホモロジーへのChern類の構成の二点であった。この二点の研究を完成させることができ、論文を公開することができた。また国際研究集会でも発表し、専門家からの高評価も得ることができた。相対代数的K理論の研究を行った。スキームXとその閉部分スキームDのペア(X,D)を考える。興味の対象は、K理論スペクトラム間のK(X)からK(D)への標準写像のホモトピーファイバーK(X,D)である。[Relative $K_0$ and relative cycle class map]ではDがアフィンの時にK_0(X,D)の構造を完全複体の言葉で記述し、応用としてモデュラス付きChow群CH_*(X|D)からK_0(X,D)の適当な部分商へのサイクル写像を構成し、これが全射であることを示した。また、このサイクル写像の核がトーションである証明のアイデアもある。高次の相対K群とモデュラス付き高次Chow群の関係は分かっていることは少ないが、Krishna氏との共著[Relative homotopy K-theory and algebraic cycles with moduli]にて、ホモトピーK理論(WeibelのKH理論)に関しては相対ホモトピーK理論KH(X,D)とモデュラス付きサイクル理論との関係を満足のいく形で確立することができた。すなわち、Atiya-Hirzebruch型のスペクトル系列が存在することを証明した。現在までの研究において、相対的K群から相対的モチヴィックコホモロジーへのChern類を構成することができた。これを元に、両者を比較することが本研究の最終目標である。現在考えているアプローチは、モデュラス付きChow群から相対的K群(ゼロ次K群)にサイクル写像を構成する、というものである。ゼロ次相対的K群の具体表示を示し、それを用いてモデュラス付きサイクルから具体的にK群の元を構成する試みをしている。またこのサイクルが全射であることを直接示すことも可能であると考えている。更にこのサイクル写像のdescent問題を解けば、相対的モチヴィックコホモロジーから相対的K群への全射写像ができることになる。最後にChern指標を用いて同型性が示されることが期待される。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-16J08843
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J08843
Rab35-centaurinβ2複合体による神経突起伸長メカニズムの解明
脳の情報処理回路の実体である神経細胞ネットワークは、神経細胞が周囲の神経細胞に向かってケーブル状の構造(神経突起)を伸長させることで初めて形成される。すなわち神経突起の伸長メカニズムの解明は神経科学における重要な研究課題である。神経突起を伸長させるためには神経突起伸長部位への脂質膜の供給や接着因子の輸送が不可欠であることが近年報告され始めており、細胞内の物質輸送を司る小胞輸送という視点が今後の神経突起伸長研究において重要な切り口になってくると考えられる。我々はこの観点から、小胞輸送を司るRabタンパク質に着目し、神経突起の伸長に必須な新規小胞輸送因子としてRab35とその結合因子centaurinβ2を同定することにこれまで成功している(Traffic (2010) 11:491-507)。しかし、肝心のRab35とcentaurinβ2が制御する小胞輸送の実体は明らかでなかった。そこで本研究課題では、Rab35-centaurinβ2複合体が神経突起伸長時に制御している小胞輸送の実体を明らかにすることで、小胞輸送という観点から神経突起伸長の新規メカニズムを解明することを目指した。第一年度・第二年度において、Rab35はcentaurinβ2を介してArf6の不活性化を引き起こすことで、ダイナミン様因子EHD1をリサイクリングエンドソームにリクルートすることを見出した(J. Cell Sci. (2012) 125:2235-2243 ; Commun. Integr. Biol. (2013) e25036 ; J. Cell Sci. (2013) 126:2424-2435)。EHD1はエンドソームからの小胞形成を促進することが報告されており、Rab35はリサイクリングエンドソームを出発点とする小胞輸送を制御していることが予想された。そこで第三年度では、Rab35の細胞内局在・動態をより詳細に解析した。その結果、免疫染色法によりRab35はEHD1をリサイクリングエンドソームにリクルートした後に(NGF刺激6時間後)、神経突起へとダイナミックに局在移行することが明らかになった(NGF刺激36時間後)。さらに、ライブセルイメージング法により、Rab35陽性の小胞が核周辺(リサイクリングエンドソームが主に局在する)から神経突起方向へと移動する様子が観察された(現在投稿中)。以上の結果から、Rab35-centaurinβ2複合体はリサイクリングエンドソームから神経突起への小胞輸送(神経突起伸長部位への脂質膜の供給)を制御することで、神経突起伸長を制御しているものと考えられた。(抄録なし)脳の情報処理回路の実体である神経細胞ネットワークは、神経細胞が周囲の神経細胞に向かってケーブル状の構造(神経突起)を伸長させることで初めて形成される。すなわち神経突起の伸長メカニズムの解明は神経科学における重要な研究課題である。神経突起を伸長させるためには神経突起伸長部位への脂質膜の供給や接着因子の輸送が不可欠であることが近年報告され始めており、細胞内の物質輸送を司る小胞輸送という視点が今後の神経突起伸長研究において重要な切り口になってくると考えられる。我々はこの観点から、小胞輸送を司るRabタンパク質に着目し、神経突起の伸長に必須な新規小胞輸送因子としてRab35とその結合因子centaurinβ2を同定することにこれまで成功している(Traffic(2010)11:491-507)。しかし、肝心のRab35とcentaurinβ2が制御する小胞輸送の実体はいまだ明らかでない。そこで本研究課題では、Rab35-centaurinβ2複合体が神経突起伸長時に制御している小胞輸送の実体を明らかにすることで、小胞輸送という観点から神経突起伸長の新規メカニズムを解明することを目指している。本年度はまず、Rab35とcentaudnβ2の結合が実際に神経突起伸長に必須であることを確認した。さらに、Rab35がリサイクリングエンドソームに局在すること、Rab35はcentaurinβ2を同エンドソームへとリクルートすること、そしてリクルートされたcentaurinβ2がリサイクリングエンドソーム上のArf6を不活性化することを見出し、この一連の過程が神経突起の伸長に必須であることを明らかにした(J.cell Sci(2012)in press)。今後はこのArf6の不活性化を手がかりに、Rab35-centaurinβ2複合体が制御する小胞輸送の実体に迫りたい。脳の情報処理回路の実体である神経細胞ネットワークは、神経細胞が周囲の神経細胞に向かってケーブル状の構造(神経突起)を伸長させることで初めて形成される。すなわち神経突起の伸長メカニズムの解明は神経科学における重要な研究課題である。神経突起を伸長させるためには神経突起伸長部位への脂質膜の供給や接着因子の輸送が不可欠であることが近年報告され始めており、細胞内の物質輸送を司る小胞輸送という視点が今後の神経突起伸長研究において重要な切り口になってくると考えられる。我々はこの観点から、小胞輸送を司るRabタンパク質に着目し、神経突起の伸長に必須な新規小胞輸送因子としてRab35とその結合因子centaurinβ2を同定することにこれまで成功している(Traffic (2010) 11 : 491-507)。しかし、肝心のRab35とcentaurinβ2が制御する小胞輸送の実体はいまだ明らかでない。そこで本研究課題では、Rab35-centaurinβ2複合体が神経突起伸長時に制御している小胞輸送の実体を明らかにすることで、小胞輸送という観点から神経突起伸長の新規メカニズムを解明することを目指している。
KAKENHI-PROJECT-11J06981
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J06981
Rab35-centaurinβ2複合体による神経突起伸長メカニズムの解明
昨年度は、Rab35がcentaurinβ2をリサイクリングエンドソームへとリクルートし、同エンドソーム上のArf6を不活性化していることを見出した(J. Cell Sci.(2012) 125 : 2235-2243)。そこで本年度は、このArf6不活性化の生理学的意義について解析したところ、リサイクリングエンドソーム上でArf6が不活性化されると、ダイナミン様タンパク質EHD1が同エンドソームへとリクルートされることが明らかになった。(J. Cell Sci.(2013) in press)。EHD1はリサイクリングエンドソームから細胞膜への小胞輸送を促進することが報告されている。従って、Rab35とcentaurinβ2はEHD1を介してリサイクリングエンドソームから細胞膜への小胞輸送を制御していることが予想されることから、現在この可能性について検討中である。脳の情報処理回路の実体である神経細胞ネットワークは、神経細胞が周囲の神経細胞に向かってケーブル状の構造(神経突起)を伸長させることで初めて形成される。すなわち神経突起の伸長メカニズムの解明は神経科学における重要な研究課題である。神経突起を伸長させるためには神経突起伸長部位への脂質膜の供給や接着因子の輸送が不可欠であることが近年報告され始めており、細胞内の物質輸送を司る小胞輸送という視点が今後の神経突起伸長研究において重要な切り口になってくると考えられる。我々はこの観点から、小胞輸送を司るRabタンパク質に着目し、神経突起の伸長に必須な新規小胞輸送因子としてRab35とその結合因子centaurinβ2を同定することにこれまで成功している(Traffic (2010) 11:491-507)。しかし、肝心のRab35とcentaurinβ2が制御する小胞輸送の実体は明らかでなかった。そこで本研究課題では、Rab35-centaurinβ2複合体が神経突起伸長時に制御している小胞輸送の実体を明らかにすることで、小胞輸送という観点から神経突起伸長の新規メカニズムを解明することを目指した。第一年度・第二年度において、Rab35はcentaurinβ2を介してArf6の不活性化を引き起こすことで、ダイナミン様因子EHD1をリサイクリングエンドソームにリクルートすることを見出した(J. Cell Sci. (2012) 125:2235-2243 ; Commun. Integr. Biol. (2013) e25036 ; J. Cell Sci. (2013) 126:2424-2435)。EHD1はエンドソームからの小胞形成を促進することが報告されており、Rab35はリサイクリングエンドソームを出発点とする小胞輸送を制御していることが予想された。そこで第三年度では、Rab35の細胞内局在・動態をより詳細に解析した。その結果、免疫染色法によりRab35はEHD1をリサイクリングエンドソームにリクルートした後に(NGF刺激6時間後)、神経突起へとダイナミックに局在移行することが明らかになった(NGF刺激36時間後)。
KAKENHI-PROJECT-11J06981
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J06981
遺伝子導入によるHLA非拘束性抗腫瘍cytotoxic T細胞の作製
本研究の目的は、単鎖抗体とT細胞受容体(TCR)γ鎖の融合遺伝子を導入したHLA非拘束性CTLクローンを確立することにある。昨年度の検討では、単鎖抗体として我々の教室で確立した抗MUC1ムチンモノクローナル抗体MUSE11のVHおよびVLを用い、RT-PCR法によってハイブリドーマよりVHおよびVLcDNAを、ヒトT細胞よりγ鎖cDNAをそれぞれ得、レトロウイルスベクターPG1ENに組み込み融合遺伝子発現ベクターとした。しかし、一過性遺伝子導入法にてパッケージング細胞からウイルスの産生を行ったが、十分なウイルス力価が得らず、このためEBウイルスにて不死化されたT細胞株への感染効率も低くこれまでのところ本法ではtransfectantを得るに至っていない。代わりにVH+VL+TCRγ鎖をCMVプロモーターを有する通常の真核細胞発現ベクターにつなぎ、lipofection法で導入した後G418で選択してsatable transfectantsの確立を行った。その結果、MUC1発現培養癌細胞株に結合能を示す数個のtransfectantクローンが得られたため、現在さらに単鎖抗体発現レベル、結合特異性などについて詳細な検討を進めている。今後は本transfectantsを用いて単鎖抗体の結合によるTCRγ鎖を介したシグナル伝達やin vivoでの腫瘍細胞への結合能についても検討する。本研究の目的は、単鎖抗体とT細胞受容体(TCR)γ鎖の融合遺伝子を導入したHLA非拘束性CTLクローンを確立することにある。昨年度の検討では、単鎖抗体として我々の教室で確立した抗MUC1ムチンモノクローナル抗体MUSE11のVHおよびVLを用い、RT-PCR法によってハイブリドーマよりVHおよびVLcDNAを、ヒトT細胞よりγ鎖cDNAをそれぞれ得、レトロウイルスベクターPG1ENに組み込み融合遺伝子発現ベクターとした。しかし、一過性遺伝子導入法にてパッケージング細胞からウイルスの産生を行ったが、十分なウイルス力価が得らず、このためEBウイルスにて不死化されたT細胞株への感染効率も低くこれまでのところ本法ではtransfectantを得るに至っていない。代わりにVH+VL+TCRγ鎖をCMVプロモーターを有する通常の真核細胞発現ベクターにつなぎ、lipofection法で導入した後G418で選択してsatable transfectantsの確立を行った。その結果、MUC1発現培養癌細胞株に結合能を示す数個のtransfectantクローンが得られたため、現在さらに単鎖抗体発現レベル、結合特異性などについて詳細な検討を進めている。今後は本transfectantsを用いて単鎖抗体の結合によるTCRγ鎖を介したシグナル伝達やin vivoでの腫瘍細胞への結合能についても検討する。単鎖抗体とT細胞受容体g鎖の融合遺伝子を導入したCTLにおいては、単鎖抗体が腫瘍関連抗原を認識して結合し、そのシグナルがT細胞受容体γ鎖を介して細胞内に入り、T細胞が活性化されて殺細胞効果を示すことが期待される。HLA非拘束性であり、個々の患者の免疫応答レベルに関係なく効果の期待できる点が特長である。本研究では、単鎖抗体として我々の教室で確立した抗MUC1ムチンモノクローナル抗体MUSE11のV_HおよびV_Lを用いた。RT-PCR法によって、ハイブリドーマよりV_HおよびV_LcDNAを、ヒトT細胞よりg鎖cDNAをそれぞれ得、レトロウイルスベクターPG1ENに組み込み融合遺伝子発現ベクターとした。パッケージング細胞は、スタンフォード大のノ-ラン博士との共同研究で、phoenix細胞(AとE)の供与を受けた。この細胞は、一過性遺伝子導入法で十分なウイルス力価が得られるため、短時間でT細胞の感染実験を行うことが可能である。遺伝子導入するT細胞としては、北海道大学癌研今井博士によってEBウイルス感染患者末梢血より樹立された、EBウイルスにて不死化したと考えられるT細胞株を用いている。現在順調に遺伝子導入実験を進めている。本研究の目的は、単鎖抗体とT細胞受容体(TCR)γ鎖の融合遺伝子を導入したHLA非拘束性CTLクローンを確立することにある。昨年度の検討では、単鎖抗体として我々の教室で確立した抗MUC1ムチンモノクローナル抗体MUSE11のVHおよびVLを用い、RT-PCR法によってハイブリドーマよりVHおよびVLcDNAを、ヒトT細胞よりγ鎖cDNAをそれぞれ得、レトロウイルスベクターPG1ENに組み込み融合遺伝子発現ベクターとした。しかし、一過性遺伝子導入法にてパッケージング細胞からウイルスの産生を行ったが、十分なイウルスカ価が得らず、このためEBイウルスにて不死化されたT細胞株への感染効率も低くこれまでのところ本法ではtransfectantを得るに至っていない。代わりにVH_+VL_+TCRγ鎖をCMVプロモーターを有する通常の真核細胞発現ベクターにつなぎ、lipofection法で導入した後G418で選択してsatable transfectantsの確立を行った。その結果、MUC1発現培養癌細胞株に結合能を示す数個のtransfectantクローンが得られたため、現在さらに単鎖抗体発現レベル、結合特異性などについて詳細な検討を進めている。今後は本transfectantsを用いて単鎖抗体の結合によるTCRγ鎖を介したシグナル伝達やin vivoでの腫瘍細胞への結合能についても検討する。
KAKENHI-PROJECT-08670524
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08670524
韓国の地域社会構成に関する歴史人類学的研究-李朝戸籍の分析-
1.前年度に引き続き、大丘戸籍のデータ・ベース化を行ない、その作業を終了した。対象地域は慶尚道大丘府下の祖岩坊一里・二里・甘泉里、月脊坊月脊里・上仁里・蔡亭里・遠徳里の7集落である。2.これらについて、各氏族毎に系譜の復元作業を行ない、系図を作成した。3.それに基づき、各時期のそれぞれの戸について、前後の時期との系譜の連続関係を検討し、村落構成戸の入れ替わりの状況を分析した。対象7集落内での継続居住に関する分析の結果は次の通りである。a.ある時期に存在した戸の子孫が、次の時期にも引き続き居住する比率b.ある時期に存在した戸のうち、その祖先が前の時期にも居住していた比率分析結果a.は、地域社会を構成する戸が、父子継続を通して定着に成功する確立が非常に低いことを、また分析結果b.は、定着に成功した戸は分家などにより幾分戸数を増やすが、それでも各時期の地域社会構成戸の半数以上は、近年に来住したものであることを、それぞれ示している。これらは17世紀末19世紀中期の農村において、人口の地理的流動性がきわめて高かったことを意味している。1.前年度に引き続き、大丘戸籍のデータ・ベース化を行ない、その作業を終了した。対象地域は慶尚道大丘府下の祖岩坊一里・二里・甘泉里、月脊坊月脊里・上仁里・蔡亭里・遠徳里の7集落である。2.これらについて、各氏族毎に系譜の復元作業を行ない、系図を作成した。3.それに基づき、各時期のそれぞれの戸について、前後の時期との系譜の連続関係を検討し、村落構成戸の入れ替わりの状況を分析した。対象7集落内での継続居住に関する分析の結果は次の通りである。a.ある時期に存在した戸の子孫が、次の時期にも引き続き居住する比率b.ある時期に存在した戸のうち、その祖先が前の時期にも居住していた比率分析結果a.は、地域社会を構成する戸が、父子継続を通して定着に成功する確立が非常に低いことを、また分析結果b.は、定着に成功した戸は分家などにより幾分戸数を増やすが、それでも各時期の地域社会構成戸の半数以上は、近年に来住したものであることを、それぞれ示している。これらは17世紀末19世紀中期の農村において、人口の地理的流動性がきわめて高かったことを意味している。1.大邱帳籍に含まれる隣接する4個集落(祖岩坊一里、月脊坊上仁里、月脊里、遠徳里)の1690年、1732年、1783年、1858年の戸籍の一部(合計約760戸、5350人)をデータ・ベース化し、校正作業を行なった。既にデータ・ベース化してある祖岩坊二里の資料と合わせると、データ・ベースの規模は約2,000戸、7400人分になる。2.これらについて、各氏族毎に系譜の復元作業を行ない、系図を作成した。☆これらの作業の結果、祖岩坊二里の資料に基づいて想定していたよりも激しい人口移動の状況が明らかになった。1.前年度に引き続き、大丘戸籍のデータ・ベース化を行ない、その作業を終了した。結果は下表の通りである。なお□で囲んだ村落が今年度新規に入力した部分である。2.これらについて、各氏族毎に系譜の復元作業を行ない、系図を作成した。3.それに基づき、各時期のそれぞれの戸について、前後の時期との系譜の連続関係を検討し、村落構成戸の入れ替わりの状況を分析した。
KAKENHI-PROJECT-05610251
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05610251
大規模伝導計算による有機半導体のキャリア機構の解明
有機半導体のキャリア伝導機構を原子レベルから理論的に解析することに成功した。第一原理電子状態によって有機分子の電子状態、分子間力、熱揺らぎを解析し、有機トランジスタにおけるキャリアコヒーレンスと熱揺らぎの強い相関を明らかにした。時間依存波束拡散伝導法によって移動度と平均自由行程の温度依存性や、トラップポテンシャルによる効果、移動度に対する熱揺らぎの効果を定量的に評価することに成功した。有機半導体のキャリア伝導機構を原子レベルから理論的に解析することに成功した。第一原理電子状態によって有機分子の電子状態、分子間力、熱揺らぎを解析し、有機トランジスタにおけるキャリアコヒーレンスと熱揺らぎの強い相関を明らかにした。時間依存波束拡散伝導法によって移動度と平均自由行程の温度依存性や、トラップポテンシャルによる効果、移動度に対する熱揺らぎの効果を定量的に評価することに成功した。次世代電子デバイスとして期待される有機半導体のキャリア伝導機構の解明を理論的に行うことを目指している。構造が柔軟・フレキシブルで環境に優しい高性能有機半導体トランジスタの伝導機構の解析を行い、カーボンナノチューブ・グラフェンなどのナノカーボン材料を用いたトランジスタとの比較検討により究極の高移動度キャリア伝導を実現するための材料・デバイス設計を行うことを目的としている。初年度はまず数値計算プログラムの整備・試験計算・データの可視化のための計算機環境を整え、時間依存拡散伝導法の発展のための準備をした。そこで、有機半導体の伝導機構を解析するため、バンド伝導からポーラロン伝導までを統一的に扱える量子伝導計算法へ拡張した。この手法では、電子波束の時間発展計算と、荷電キャリアに伴う格子ひずみや分子の熱揺らぎを記述する分子動力学計算を連立させて解き、有機半導体で重要と考えられているHolstein型電子格子相互作用とPeierls型電子格子相互作用の両方を等価に扱うことができる。これを有機半導体の伝導解析に適用し、移動度と平均自由行程の温度依存性や、不純物、トラップポテンシャルによる効果を明らかにした。また、有機半導体の伝導機構の解明において有機分子の分子間相互作用の効果の解析が重要であるため、密度汎関数理論に基づく第一原理計算により有機分子の電子状態、分子間相互作用、電子格子相互作用の解析を行った。その結果を用いて有機半導体のキャリア伝導の解析のための理論的方法論を発展させている。次世代電子デバイス材料として期待されている有機半導体のキャリア伝導機構の解明を理論的に行ってきた。有機半導体は有機分子が弱く結合した分子性結晶であり、伝導機構解明には分子の電子状態とともにその分子間相互作用、電子格子相互作用を定量的に精度良く解析する必要がある。そのため、ファンデルワールス相互作用を考慮した密度汎関数理論に基づく第一原理計算により電子状態計算を行い、分子間相互作用、電子格子相互作用を解析した。ペンタセン、ルブレン、テトラセン、DNTT有機結晶内における分子の並進運動、回転運動およびその異方性と温度依存性を解析して、有機半導体における分子運動の熱揺らぎの詳細を定量的に評価するとともに、大気圧や高圧下でのキャリアコヒーレンスと熱揺らぎの強い相関を明らかにして、伝導機構に関する熱揺らぎの効果を解明した。また、これらの分子間相互作用や分子運動に関する密度汎関数理論を用いた第一原理計算の詳細な解析と時間依存波束拡散伝導法によるキャリア伝導解析を組み合わせ、ペンタセン、ルブレンのキャリア伝導メカニズムを明らかにした。有効質量、移動度、キャリア速度、緩和時間、平均自由行程を分子レベルから定量的に評価し、物質間の相違や異方性の発現機構を明らかにした。さらに、局在基底を用いた密度汎関数理論に基づく第一原理伝導計算プログラムの開発も行い、個々の分子における伝導解析によって分子内伝導機構も解明した。次世代電子デバイス材料として期待されている有機半導体のキャリア伝導機構の解明を理論的に行うことを目指している。構造が柔軟・フレキシブルで環境に優しい高性能有機半導体トランジスタの伝導機構の解析を行い、究極の高移動度キャリア伝導を実現するための材料・デバイス設計を行うことを目的としている。有機半導体は有機分子が弱く結合した分子性結晶であり、伝導機構解明には、その分子間相互作用、電子格子相互作用を定量的に精度良く見積もることが不可欠である。そのため、分子間相互作用を密度汎関数理論を用いた第一原理計算によって解析した。分子性結晶の分子間相互作用においてはファンデルワールス力が重要になってくるが、従来型の密度汎関数法ではその効果を精度良く記述することは難しい。そこで、ファンデルワールス力を考慮した電子状態計算を行い、ペンタセン、ルブレン、テトラセン分子の解析を行った。分子の並進運動、回転運動およびその異方性と温度依存性を解析し、Spring8による単結晶構造解析およびTLS解析による分子運動解析の実験結果と比較検討を行い、精度良く解析できていることを確認した。それを踏まえて有機半導体における分子運動の熱揺らぎを定量的に評価することに成功し、キャリアコヒーレンスと熱揺らぎの強い相関を明らかにした。さらに、時間依存波束拡散伝導法により、電子波束の時間発展計算と、荷電キャリアに伴う格子ひずみや分子の熱揺らぎを記述する分子動力学計算を連立させて解き、移動度に対する熱揺らぎの効果を定量的に評価した。有機半導体のキャリア機構の解析を進めるにあたって、分子間相互作用の効果が重要なことがわかった。その効果を密度汎関数法を用いた詳細な計算によって取り扱い、伝導解析の理論的方法論が当初の計画以上に発展している。25年度が最終年度であるため、記入しない。有機半導体のキャリア機構の解析を進めるにあたって、熱揺らぎの効果が重要なことがわかった。その効果を密度汎関数法を用いた詳細な計算によって取り扱い、伝導解析の理論的方法論が当初の計画以上に発展している。
KAKENHI-PROJECT-23360018
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23360018
大規模伝導計算による有機半導体のキャリア機構の解明
分子間相互作用の高精度な計算が可能になり、この効果を取り込んだ時間依存波束拡散法により様々な有機半導体のキャリア機構を解析し、バンド伝導からホッピング伝導までの理論的な解明を進める。25年度が最終年度であるため、記入しない。熱揺らぎの高精度な計算が可能になり、この効果を取り込んだ時間依存波束拡散法により様々な有機半導体のキャリア機構を解析し、バンド伝導からホッピング伝導までの理論的な解明を進める。
KAKENHI-PROJECT-23360018
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23360018
周縁テクスト(注釈・翻訳)の自立性をめぐる歴史的・理論的研究
本研究は、これまでテクストの周縁としてみなされてきた「注釈」「翻訳」を、そのものに価値を見出すことが可能な自立したテクストとみなし、再評価することを目指したものである。中国文学と米文学の研究者が互いに意見を交換し合いながら、それぞれのフィールドで、本文に付随するものとしてではなく、「注釈」「翻訳」そのものに焦点を当て分析・検討を加えた点に本研究の大きな特色がある。その結果、注釈や翻訳それ自体も解釈したり分析したりすることが可能なテクストであり、またそれ自体が独立して変容し受容されていく可能性を持つテクストと見なしうることの一端を明らかにできたと考えている。平成27年度は、中国文学に関しては研究代表者が、米国文学に関しては研究分担者が、それぞれが基礎的な資料の収集と分析を行った。また、研究会を実施し、ゲストスピーカーから情報の提供を受けるとともに、研究発表と活発な議論を通じて研究の共有と深化を図った。個別研究の成果に関しては、次の通りである。高西は、翻訳と注釈について、中国文学研究における現状と課題を整理し、本研究の方向性を明らかにすることにつとめた。さらに、明治期における文言小説の翻訳について、資料を収集し整理をするとともに、とりわけ明治18年に出版された『妖怪府』について基礎的な分析を行った。さらに、それと並行して、『世説新語』劉孝標注の読解を進めたが、注釈に関する分析、考察までには至らなかった。この他にはJames Baldwinの創作スタイルに関する論考一篇、Francis Parkmanの歴史記述に関する論考二篇を発表した。平成27年度は、当初の計画通り、個別研究を中心に基礎的な資料収集と資料の読解を精力的に行い、一部に関してはその分析にまで入っている。また、11月にはゲストスピーカーを招いての公開研究会を実施し、研究発表と討論を実施した。さらに、研究代表者と研究協力者が同じ大学に所属することの利点を生かし、日常的に研究の交流をはかっている。これらを総合すると、おおむね順調に研究は進展しているといえよう。なお、個別の研究の進捗状況は以下のようになっている。高西はまず、注釈と翻訳を研究することの今日的意義及び、異なる分野の文学研究者が共同で研究することの意義についてあらためて整理を行い、11月の研究会で発表した。また、明治期から大正期にかけての中国文言小説に関する翻訳の資料収集を行った。リストアップは8割方完了している。なかでも、明治18年に出版された『妖怪府』は興味深い資料であり、林羅山『怪談全書』との文体比較、さらにはそこに付された注釈についての分析を行い、9月に研究会でその成果の一部を報告した。また、注釈に関しては、『世説新語』劉孝標注に注目し、資料の読解を進めている。山口は自身が研究代表のプロジェクト(「注釈の意義に関する理論的・実践的研究」(若手研究B))の最終年度と重なり、注釈行為が有す創造的な役割や可能性については一定の成果をまとめることができた。本文を傍証する客観性の装置である注釈には、本文とは別の種類の創造性が働いていることを指摘した。また、注釈(脚注)という周縁テクストの主役である資料の扱い方についても議論を広げることができた。主には18世紀末アメリカの歴史記述事業を題材に扱ったが、同じ問題は現代のデジタル・アーカイヴにも通ずることを指摘した。本研究計画2年目の2016年度は、中国文学に関しては研究代表者が、アメリカ文学に関しては研究分担者が昨年度に引き続き基礎的な資料を整理しつつ、分析を進めた。また研究会を実施し、ゲストスピーカーから情報の提供を受けるとともに、研究発表と活発な議論を通じて研究成果の共有と深化を図った。さらに、「翻訳」をテーマとした公開シンポジウムを開催し、様々な立場から翻訳をめぐって議論を行うとともに、一般市民への研究成果の還元を図った。個別の研究成果については、以下の通りであるが、今年度は研究代表者、研究分担者ともに、「翻訳」に焦点をあてた物が研究の中心となった。まず高西は、唐代伝奇「定婚店」を取り上げ、テキストと主題について考察を行うと共に、日本における受容に関しても整理を行い、明治以降人々の間にこの物語が流布するにあたって、松井等と田中貢太郎の翻訳の果たした役割の大きさを指摘した。あわせて、『太平広記』「宝」部の訳注を発表した。山口は、Maxine Hong KingstonのThe Woman Warriorを取り上げた研究発表では、母(中国生まれ)の物語を娘(アメリカ生まれ)が語り直す試みに「翻訳」の構造を見出し、翻訳者としての娘がいかに自分の声を獲得するかを論じた。本来裏方であるはずの翻訳者が自らの声を発することの意義と面白さは、11月末のシンポジウムでも考察することができた。「注釈」のほうの研究については、Washington IrvingのSalmagundiにおける注釈パロディに着目したことをきっかけに、彼のA History of New Yorkについての試論を発表した。今年度は昨年度に引き続き、研究代表者、研究分担者とも資料の収集を精力的に行い、順調に研究をすすめている。また、それぞれの研究資料に基づいた分析も本格化している。9月には高知県立大学に於いて研究会を実施し、それぞれの研究成果を持ち寄り研究発表と討論を行うとともに、同僚の英文学を専門とする鳥飼真人氏にも研究発表と情報の提供をいただいた。これ以外にも、研究代表者と分担者が同じ大学に所属するため、日常的な研究の交流を行い、互いの研究成果の共有と議論を展開することができている。
KAKENHI-PROJECT-15K02458
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K02458
周縁テクスト(注釈・翻訳)の自立性をめぐる歴史的・理論的研究
また、11月には公開シンポジウムを、「海域交流と中国古典小説研究会」と共同で開催した。これは、研究成果を積極的に社会に還元することをねらったものであり、研究者のほかに高知の書店員の方にも登壇いただき実施した。当日は多くの参加があり、文学の面白さと文学研究の成果の社会的還元に大きな成果を挙げることができた。以上の点を勘案すると、本研究はおおむね順調に進展しているといえよう。最終年度は、研究代表者と分担者がそれぞれ「注釈」と「翻訳」に関して個別の研究を深めるとともに、同一機関に所属していることを最大限に生かし、日常的に様々な議論を行いながら、研究の深化及び研究の統合を図ることにつとめた。その結果、「注釈」「翻訳」の諸相を改めて「注釈」及び「翻訳」そのものもまた、解釈したり分析したりすることが可能な自立したテクストであることが明らかになってきた。これは、三年間にわたる共同研究の一つの大きな成果だといえよう。また、個別研究における成果は、以下に記す通りである。高西は、注釈に関しては『世説新語』劉孝標注の分析を進めた。また、『世説新語』劉孝標注に引かれた志怪小説を取り上げ、注釈が結果として本文の読みを拡張していく働きをすること、本文と切り離し劉孝標の注釈を自立したテクストとしてみなせば、注釈はそれ自体で一つの世界観を隠し持っている可能性があること、などを学会において口頭発表した。翻訳に関しては、明治に出版された中国文言小説の翻訳である『妖怪府』に着目し、その序文の妖怪観に関して口頭発表するとともに、論文を発表した。山口は、Washington Irvingの注釈パロディに関する分析から発展させ、Irvingを中心とする最初期のアメリカ文学作家たちの間にあった二次創作文化について考察した。その結果、まだ確固とした特徴も代表的な作家・作品群もなかった最初期のアメリカ文学が自己形成を試みる際、それぞれの作家・作品の自律性や独創性に基礎を置くよりも、共有しうるキャラクターを二次創作し、広く流通させることに価値を見出す傾向があったということを明らかにした。翻訳に関する研究については、The Woman Warriorに関する論考を仕上げ、共著書の一部として出版準備段階まで至っている。2018年度中に書籍全体を脱稿し、出版される予定である。本研究は、これまでテクストの周縁としてみなされてきた「注釈」「翻訳」を、そのものに価値を見出すことが可能な自立したテクストとみなし、再評価することを目指したものである。中国文学と米文学の研究者が互いに意見を交換し合いながら、それぞれのフィールドで、本文に付随するものとしてではなく、「注釈」「翻訳」そのものに焦点を当て分析・検討を加えた点に本研究の大きな特色がある。その結果、注釈や翻訳それ自体も解釈したり分析したりすることが可能なテクストであり、またそれ自体が独立して変容し受容されていく可能性を持つテクストと見なしうることの一端を明らかにできたと考えている。今年度は、前年度に引き続き各人が個別研究をすすめる。それとともに、それぞれの研究成果を研究会などを通じて互いにフィードバックしながら、次のステップへと移行をはかりたい。
KAKENHI-PROJECT-15K02458
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K02458