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アイドリング状態の脳における情報処理メカニズム
マウスを用いて、「脳海馬の記憶エングラム細胞とノンエングラム細胞のそれぞれを同定しつつ、神経細胞の活動を自由行動下で測定できる新規技術」を確立した。この技術を用いて、学習時・想起時、さらには睡眠中の神経活動をカルシウム動態を指標として計測し、記憶エングラムとなる細胞特有の神経活動パターンを抽出した。得られた大規模な活動データを数理解析し、同期活動したエングラム細胞の集団(セルアンサンブル)を同定した。一つの記憶エングラムは、時間的には少しずつ離れて活動した数多くのセルアンサンブルの集合体であることを見いだした。また、学習時に活動した数多くのサブアンサンブルのうち、引き続く睡眠時に再活動したものが、その記憶の想起時にも優先的に活動することを見いだした。これらの結果は、睡眠中のエングラムサブアンサンブルの再活動が記憶の固定化などの重要な機能を担っていることを強く示唆している。さらに、マウスが複数の情報間の関係を推論する報酬学習課題を開発した。推論が睡眠中に行われているか否かを検討中である。MiLSS/U-FEISを用いて脳活動を計測中に、特定の数個のセルアセンブリ活動を検出し、直ちにトリガー信号を出すクローズドループ光操作系を開発した。大脳皮質の神経回路を単純化したモデルを用いて、自発発火に含まれるセルアセンブリを自動的に学習・検出できることを人工データで検証した。また井ノ口グループが測定した海馬CA3の活動データの数学的手法による解析を開始した。またCA3によるエピソードの時系列学習に関して、最新の実験結果に基づき新しいモデルを提案した。積極的な脳アイドリングである瞑想の動物モデルを確立するため、自由行動下のマウスで呼吸を安定してモニターできる装置を開発した。精神疾患のモデルマウスでは総じて呼吸の異常がみられた。1.アイドリング中の脳内活動:マウスを用い学習時やその後のニューロン活動を超小型内視顕微鏡を用いカルシウム動態を指標として計測した。記憶エングラムとなる細胞が形成するセルアセンブリ活動の推移を数理解析により調べた。学習時に形成された数多くのサブアセンブリは睡眠時にも再活動(リプレイ)していた。リプレイしたセルアセンブリが、その後の記憶想起時に優先的に活動することを見いだし、リプレイが記憶の固定化に重要であることを強く示唆した。また、学習課題を与える前にプレプレイ活動を示したセルアセンブリが優先的に学習後のリプレイや想起時に現れたことから、プレプレイセルアセンブリが記憶エングラムに優先的に取り込まれることが明らかになった。さらに、マウスが複数の情報間の関係を推論する報酬学習課題を開発した。推論が睡眠中に行われているか否かを検討中である。2.技術開発MiLSS/U-FEISを用いて脳活動を計測中に、特定の数個のセルアセンブリ活動を検出し、直ちにトリガー信号を出すクローズドループ光操作系を開発した。3.数理モデル:セルアセンブリの検出が可能なのは、記録した細胞集団がセルアセンブリに参加するニューロンを一定数以上(3040程度)含む場合であることがわかった。この条件はカルシウム蛍光法であれば十分達成可能である。CA3の神経回路は、従来考えられているアトラクター記憶とは様相を異にする活動パターンを示すことがわかってきた。またモデルはアトラクター間の時間的な相関の長さが、複数の抑制メカニズムでかなり広範囲に調節される可能性を示唆した。4.瞑想モデル:自由行動下のマウスで呼吸を安定してモニターできる装置を開発し、呼吸の特性を計測した。精神疾患のモデルマウスでは総じて呼吸の異常がみられた。さらに呼吸の速度情報をフィードバックするシステムを開発し、呼吸速度を変更させる訓練を試みている。アイドリング中の脳神経活動が行っている機能を明らかにするために、それに適したマウスの学習課題の開発をさらに進める。特にアイドリング中に行っていると思われる脳機能として、「選択的固定化」、「選択的忘却」、「推論」、「情報の統合」、「意思決定」、「共通性抽出」などを取り上げ、それぞれの脳機能を独自に判定できる学習課題の開発を進める。確立できた個々の学習課題を用いて、アイドリング脳がそれぞれの機能を果たしているか否かを検討する。さらに、超小型内視顕微鏡を用いカルシウム動態を指標として、上記課題を遂行前後のアイドリング中の脳神経活動を計測し数理解析を行う。また、セルアセンブリのアイドリング中プレプレイ活動を指標として、記憶エングラムの生成原理を探る。MiLSS/U-FEISを用いて脳活動を計測中に、特定の数十個程度のセルアセンブリ活動を検出できる系を開発し、実用に供することができるように技術開発を進める。CA3の記録データの解析をさらに進め、モデルの予言との整合性を検証する。また同時に発火率ニューロンを用いる現在の回路モデルをスパイクニューロンのモデルに拡張する。またセル・アセンブリ検出に用いた大脳皮質回路モデルを、領野間の情報連絡を記述できるような階層的計算モデルに拡張する。昨年度までに開発したマウスの呼吸速度情報をフィードバックさせるシステムを用いて野生型マウスの呼吸の操作を試み、呼吸の速度を調節させるパラダイムを開発する。平行して、各種環境による呼吸速度の変化の検討や、各種の疾患モデルマウスの呼吸特性についても検討を行う。マウスを用いて、「脳海馬の記憶エングラム細胞とノンエングラム細胞のそれぞれを同定しつつ、神経細胞の活動を自由行動下で測定できる新規技術」を確立した。この技術を用いて、学習時・想起時、さらには睡眠中の神経活動をカルシウム動態を指標として計測し、記憶エングラムとなる細胞特有の神経活動パターンを抽出した。
KAKENHI-PROJECT-18H05213
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H05213
アイドリング状態の脳における情報処理メカニズム
得られた大規模な活動データを数理解析し、同期活動したエングラム細胞の集団(セルアンサンブル)を同定した。一つの記憶エングラムは、時間的には少しずつ離れて活動した数多くのセルアンサンブルの集合体であることを見いだした。また、学習時に活動した数多くのサブアンサンブルのうち、引き続く睡眠時に再活動したものが、その記憶の想起時にも優先的に活動することを見いだした。これらの結果は、睡眠中のエングラムサブアンサンブルの再活動が記憶の固定化などの重要な機能を担っていることを強く示唆している。さらに、マウスが複数の情報間の関係を推論する報酬学習課題を開発した。推論が睡眠中に行われているか否かを検討中である。MiLSS/U-FEISを用いて脳活動を計測中に、特定の数個のセルアセンブリ活動を検出し、直ちにトリガー信号を出すクローズドループ光操作系を開発した。大脳皮質の神経回路を単純化したモデルを用いて、自発発火に含まれるセルアセンブリを自動的に学習・検出できることを人工データで検証した。また井ノ口グループが測定した海馬CA3の活動データの数学的手法による解析を開始した。またCA3によるエピソードの時系列学習に関して、最新の実験結果に基づき新しいモデルを提案した。積極的な脳アイドリングである瞑想の動物モデルを確立するため、自由行動下のマウスで呼吸を安定してモニターできる装置を開発した。精神疾患のモデルマウスでは総じて呼吸の異常がみられた。1.アイドリング中の脳内活動:マウスを用い学習時やその後のニューロン活動を超小型内視顕微鏡を用いカルシウム動態を指標として計測した。記憶エングラムとなる細胞が形成するセルアセンブリ活動の推移を数理解析により調べた。学習時に形成された数多くのサブアセンブリは睡眠時にも再活動(リプレイ)していた。リプレイしたセルアセンブリが、その後の記憶想起時に優先的に活動することを見いだし、リプレイが記憶の固定化に重要であることを強く示唆した。また、学習課題を与える前にプレプレイ活動を示したセルアセンブリが優先的に学習後のリプレイや想起時に現れたことから、プレプレイセルアセンブリが記憶エングラムに優先的に取り込まれることが明らかになった。さらに、マウスが複数の情報間の関係を推論する報酬学習課題を開発した。推論が睡眠中に行われているか否かを検討中である。2.技術開発MiLSS/U-FEISを用いて脳活動を計測中に、特定の数個のセルアセンブリ活動を検出し、直ちにトリガー信号を出すクローズドループ光操作系を開発した。3.数理モデル:セルアセンブリの検出が可能なのは、記録した細胞集団がセルアセンブリに参加するニューロンを一定数以上(3040程度)含む場合であることがわかった。この条件はカルシウム蛍光法であれば十分達成可能である。CA3の神経回路は、従来考えられているアトラクター記憶とは様相を異にする活動パターンを示すことがわかってきた。
KAKENHI-PROJECT-18H05213
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H05213
確率変数列の法則収束に対する関数解析的研究
本年度は主に2つの研究を行った。ひとつは研究課題の主目的である4次モーメント定理に関するものである。本研究の最終目的は、ある種の確率変数列に対して、任意の2つの偶数次モーメントの収束から法則収束を導くことである。初めに、Hermite-Steinの補題とよばれる確率変数列の正規分布への法則収束を特徴付ける補題に着目し、この収束の定量評価を試みた。この試みにより、Nualart-Ortiz-Latorre(2008)によるMalliavin微分を用いた法則収束の特徴付けを拡張する見込みが立った。次に、Azmoodeh-Malicet-Minoule-Poly(2016)らの結果をやや拡張し、さらに、彼らの手法が適用可能は範囲を明確にした。このことにより、本研究で目的とする4次モーメント定理の拡張は彼らの手法によって実行不可能であることが分かった。2つ目は、非整数Brown運動により駆動される確率微分方程式の解の性質に関する研究である。この方程式の解に基本解が存在することが知られており、その基本解の漸近挙動も限られた状況では知られていた。本研究では、基本解の漸近挙動をできる限り一般的な形で示した。この結果はBen Arous(1988)が導いたBrown運動により駆動される場合の結果の非整数Brown運動への拡張となっている。証明は、Malliavin解析とラフパス解析の双方で得られた結果を巧妙に組み合わせたものである。本研究は稲浜譲氏(九州大学)との共同研究である。4次モーメント定理の拡張に関して、少しずつ前進しているとは考えられるが、当初の予定と比較するとやや遅れていると言える。しかし、確率微分方程式の解の漸近挙動に関する成果が得られたので、全体としては順調であると言える。非整数Brown運動により駆動される確率微分方程式の近似誤差の漸近挙動の解明を目指す。本研究はやや遅れ気味の課題であるので、本年度中の解決を目指す。また、Hermite-Steinの補題に着目した試みにも決着を付け、4次モーメント定理の拡張への足がかりとしたい。本年度は主に2つの研究を行なった.ひとつは研究課題の主目的である4次モーメント定理の拡張に関するものである。Azmoodehらの先行研究により、あるWienerカオスに属する確率変数のモーメントに関する性質が多く調べられている。本年度は彼らの研究の流れに添い確率変数のモーメントに関する性質を調べた。結果として、確率変数の各次数のモーメントには非自明な不等式系が成立することが分かった。特に、4次モーメント定理の拡張に有用であろう不等式系も見つけることができた。ふたつめは、Dyson Brown運動などを典型例とする非衝突過程の分布密度の存在と滑らかさに関する研究である。Brown運動の汎関数が分布密度の存在や滑らかさに関する研究に対してMalliavin解析が有効に働くことはよく知られている。例えば、滑らかな係数をもつ確率微分方程式の解が滑らかな分布密度をもつことが知られている。一方で、Dyson Brown運動を確率微分方程式により記述すると、非衝突性を表現するために特異性をもつドリフト項が現れる。本研究では、Dyson Brown運動のように特異なドリフト項をもつ確率微分方程式の解が連続な分布密度をもつことを示した。本研究では、Florit-Nualart (1995)やNaganuma(2013)が扱った局所非退化性の概念を用いて証明を与えた。その際に、隣り合う粒子の距離の負冪のモーメントの評価がひとつの鍵になり、それはGirsanov変換を用いて示される。本研究は田口大氏(大阪大学)との共同研究である。平成29年度は、非整数Brown運動により駆動される確率微分方程式の近似誤差の漸近挙動の解明が当初の目標であったが、順序を入れ替えて、平成30年度に予定していた4次モーメント定理の拡張に関する研究を行った。4次モーメント定理の拡張はまだまだ成果が出ているとは言い難い状況である。しかし、非衝突過程の分布密度の存在と滑らかさに関する研究が予定外の完成をみたので、全体としては順調に進展しているといえる。本年度は主に2つの研究を行った。ひとつは研究課題の主目的である4次モーメント定理に関するものである。本研究の最終目的は、ある種の確率変数列に対して、任意の2つの偶数次モーメントの収束から法則収束を導くことである。初めに、Hermite-Steinの補題とよばれる確率変数列の正規分布への法則収束を特徴付ける補題に着目し、この収束の定量評価を試みた。この試みにより、Nualart-Ortiz-Latorre(2008)によるMalliavin微分を用いた法則収束の特徴付けを拡張する見込みが立った。次に、Azmoodeh-Malicet-Minoule-Poly(2016)らの結果をやや拡張し、さらに、彼らの手法が適用可能は範囲を明確にした。このことにより、本研究で目的とする4次モーメント定理の拡張は彼らの手法によって実行不可能であることが分かった。2つ目は、非整数Brown運動により駆動される確率微分方程式の解の性質に関する研究である。この方程式の解に基本解が存在することが知られており、その基本解の漸近挙動も限られた状況では知られていた。本研究では、基本解の漸近挙動をできる限り一般的な形で示した。この結果はBen Arous(1988)が導いたBrown運動により駆動される場合の結果の非整数Brown運動への拡張となっている。
KAKENHI-PROJECT-17K14202
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K14202
確率変数列の法則収束に対する関数解析的研究
証明は、Malliavin解析とラフパス解析の双方で得られた結果を巧妙に組み合わせたものである。本研究は稲浜譲氏(九州大学)との共同研究である。4次モーメント定理の拡張に関して、少しずつ前進しているとは考えられるが、当初の予定と比較するとやや遅れていると言える。しかし、確率微分方程式の解の漸近挙動に関する成果が得られたので、全体としては順調であると言える。4次モーメント定理の拡張に関する研究を推進して行く。本年度に見つけた不等式系は綺麗な性質を持つように見える。その背後にはWienerカオスの何らかの性質が隠れていると思われる。今後はこの不等式系を出発点としてWienerカオスの性質を考察し、その結果として4次モーメント定理の拡張を行いたい。また、非整数Brown運動により駆動される確率微分方程式の近似誤差の漸近挙動の解析も行う。これに関してLiu-Tindelが本年にプレプリントを発表しているが、彼らとは別の手法により解析を進める予定である。非整数Brown運動により駆動される確率微分方程式の近似誤差の漸近挙動の解明を目指す。本研究はやや遅れ気味の課題であるので、本年度中の解決を目指す。また、Hermite-Steinの補題に着目した試みにも決着を付け、4次モーメント定理の拡張への足がかりとしたい。研究計画の若干の変更により書籍購入を次年度に持ち越したために生じた。次年度に購入する。本年度は海外出張を行わなかった為,次年度へ繰り越すこととなった.次年度は,海外出張を計画しているので,その経費に当てる.
KAKENHI-PROJECT-17K14202
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K14202
微小循環系のマルチスケール血流バイオメカニカルシステムの同定
赤血球のタンブリング-タンクトレッディング運動遷移の計算機シミュレーションを粒子法および境界要素法を用いて行い,invitro実験観察結果を表現できる膜の弾性定数と自然状態のパラメタセットを決定した.また,血球の力学的相互作用に応じた見かけの血流特性を,二分岐血管モデルおよびイメージベースト微小血管網モデルに対して二次元シミュレーションを用いて明らかにした.以上より,微小循環系における赤血球から見かけの流動特性に至る血流の振る舞いについて,マルチスケールな力学モデル構築に必要な定量的データを得た.赤血球のタンブリング-タンクトレッディング運動遷移の計算機シミュレーションを粒子法および境界要素法を用いて行い,invitro実験観察結果を表現できる膜の弾性定数と自然状態のパラメタセットを決定した.また,血球の力学的相互作用に応じた見かけの血流特性を,二分岐血管モデルおよびイメージベースト微小血管網モデルに対して二次元シミュレーションを用いて明らかにした.以上より,微小循環系における赤血球から見かけの流動特性に至る血流の振る舞いについて,マルチスケールな力学モデル構築に必要な定量的データを得た.本年度は,まず,従来観察されてきた定ずり速度下の赤血球運動について,粒子法を用いて,赤血球膜変形と粘性流れとの連成計算シミュレーションを行った.二次元シミュレーションの結果,粘性せん断力,膜の弾性定数と自然状態の組み合わせに応じて,赤血球がタンブリング運動あるいはタンクトレッディング運動のいずれかを示すことが明らかとなり,これらのパラメタセットに関する運動の相図を得た.続いて,本計算を三次元問題に拡張してシミュレーションを行うことに成功した.一方,膜の力学パラメタセットに応じた赤血球の釣合形状も求めて,赤血球の運動状態と釣合形状に着目することで,赤血球の力学パラメタセットを同定した.その結果,赤血球の自然状態が,せん断流中の運動および釣合形状において,重要な力学パラメタであることが明らかになった.さらに,血球の力学的相互作用に応じた見かけの血流特性を明らかにした.ここでは,個々の赤血球膜の弾性特性や自然状態等の力学特性,赤血球内外の流体の粘性係数およびレイノルズ数と,見かけの流動抵抗との関係を,二分岐間内の二次元血流シミュレーションによって定量的に示した.さらに,血管ネットワークの流動特性モデリングの準備研究として,イメージベースドモデルを用いた二次元血流シミュレーションを家兎腹腔の微小血管網に対して行った.一方,分岐マイクロ流路内の血球の変形運動を観察するために,当該年度備品費で購入した顕微鏡を用いて,in vitro実験観察システムを試作した.本年度は,従来観察されてきた定ずり速度下の赤血球運動について,前年度に続いて計算力学的検討を行った.まず,赤血球膜変形と粘性流れとの三次元連成計算の粒子法シミュレーション法を確立し,パラメタスタディによって,粘性せん断力,膜の弾性定数と自然状態の組み合わせに応じた,赤血球のタンブリング運動とタンクトレッディング運動の遷移挙動を明らかにし,これらのパラメタセットに関する赤血球運動の相図を得た.続いて,上記のパラメタがタンクトレッディング中の伸張変形に与える影響を明らかにした.さらに,膜の力学パラメタセットに応じた赤血球の釣合形状も求めた.以上の結果から,実験的に観測されてきた赤血球膜の弾性定数および赤血球内外の流体の粘度比を与えたとき,定ずり速度下の赤血球の運動遷移挙動とタンクトレッディング運動中の剛体回転振動,および赤血球の釣合形状を力学的に説明するためには,赤血球膜の自然状態が,球形と両凹円盤形の中間である必要があることがわかった.一方,血球の力学的相互作用に応じた血球の凝集挙動について,血栓の形成モデルを用いた力学計算を行った.その結果,血球同士の凝集力の大きさや,凝集力を発生するタイミングが,凝集挙動に大きな影響を与えることが示された.また,血栓形成を決定するパラメタとして,凝集力と流体力の比を表す力学パラメタを新たに提案し,血栓形成過程をこの力学パラメタに応じて整理することを試みた.定ずり速度下の赤血球運動について,前年度に続いて計算力学的検討を行った.まず,赤血球膜変形と粘性流れとの三次元連成シミュレーションについて,境界要素法コードを新たに作成した.この手法を用いて,赤血球のタンブリング運動とタンクトレッディング運動の遷移挙動,および赤血球の形状記憶挙動が,膜の粘弾性にどのような影響を受けるのかを検討した.その結果,弾性特性と粘性特性が,それぞれ,運動遷移時のキャピラリー数をどのように決定するのかを明らかにした.一方,個々の赤血球の変形運動を考慮したマクロ血流解析として,単純せん断流れおよび管内流れに対する計算シミュレーションを行った.さらに,微小分岐血管および多分岐血管内の血流についても,計算シミュレーションを行った.これらの結果から,マルチスケール血流解析を行う上で,赤血球の個々の粘弾性変形が,マクロな流動特性にどのように影響を与えるのかについて,明らかにした.計画に記載の項目に応じて,進展が著しいものと,通常の進度のものと,ばらつきがあり,全体としては,順調に進んでいる.24年度が最終年度であるため、記入しない。計算力学をベースに,着実に研究項目を進めることが出来る見込みである.24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22560155
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22560155
Xenopus由来因子のエピゲノム制御による神経系細胞の系譜転換と神経再生
これまでの大規模ゲノム解析での実績からアフリカツメガエル(Xenopus)での神経再生時に高発現し、内在性神経幹細胞を誘導する分子を選定する。新規に開発した神経幹細胞嗜好性のあるリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)のエンベロープと分裂細胞に感染し恒常的に発現するレトロウイルスのハイブリッドベクターを構築し、感染効率と発現効率上昇を両立させる技術を用いる。ヒストン脱アセチル化酵素を阻害することで興奮性運動ニューロンに誘導・分化させ、エピゲノム制御により細胞運命の系譜転換を起こし、軸索伸長とシナプス再構築と機能回復をマウス脊髄損傷モデルで検討する。これまでの大規模ゲノム解析での実績からアフリカツメガエル(Xenopus)での神経再生時に高発現し、内在性神経幹細胞を誘導する分子を選定する。新規に開発した神経幹細胞嗜好性のあるリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)のエンベロープと分裂細胞に感染し恒常的に発現するレトロウイルスのハイブリッドベクターを構築し、感染効率と発現効率上昇を両立させる技術を用いる。ヒストン脱アセチル化酵素を阻害することで興奮性運動ニューロンに誘導・分化させ、エピゲノム制御により細胞運命の系譜転換を起こし、軸索伸長とシナプス再構築と機能回復をマウス脊髄損傷モデルで検討する。
KAKENHI-PROJECT-19K09453
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K09453
合成ショ-トペプチドを用いた各種糖輸送担体のRIA法の開発
糖輸送担体には構造の極めて類似したisoformが存在し、そのアミノ酸配列にも高く相同性が認められる。しかし、そのC末端の10数個のアミノ酸配列が異なることに我々は着目し、この合成ペプチドをRIAのスタンダ-ドとするRIA系の確立を目指した。当初の目的通り、各々の糖輸送担体を分別し、しかも定量できる簡便なRIA系が確立できた。抗体の作製は、各isoformのC末端のアミノ酸10数個より成るペプチドを合成し、このN末端でKLHに結合さて家兎に免疫して得た。さらに抗体を合成ペプチドのアフィニティカラムを用いて精製した。標識ペプチドは、この合成ペプチドを放射性ヨ-ドで標識して得たが、チロシンを含まないアミノ酸配列の場合には(GLUT1とGLUT2)N末端にチロシンを加えたペプチドを合成して用いた。このようにして、GLUT1、GLUT2、GLUT4に各々特異的なRIA系を組み立てたが、予定通り、各RIA系の間には交又反応は認められなかった。すなわち、GLUT1を含むヒト赤血球膜では、膜蛋白の7%という豊富なGLUT1が認められたが、GLUT2やGLUT4は全く認められなかった。ラット肝にはGLUT2のみ、ラット脂肪細胞にはGLUT4が大量に認められ、他のisoformは測定感度以下であった。ヒト赤血球のGLUT1の測定には数Ulの血液で充分であり、RIAは約4時間で完了した。これらのRIA系を用いて、糖尿病患者での赤血球糖輸送担体の変動、老齢ラットの脂肪や骨格筋でのGLUT4の変動、インスリンによるGLUT4の細胞内部から細胞膜へのトランスロケ-ションなどを簡便に定量的に測定することが可能となった。糖輸送担体には構造の極めて類似したisoformが存在し、そのアミノ酸配列にも高く相同性が認められる。しかし、そのC末端の10数個のアミノ酸配列が異なることに我々は着目し、この合成ペプチドをRIAのスタンダ-ドとするRIA系の確立を目指した。当初の目的通り、各々の糖輸送担体を分別し、しかも定量できる簡便なRIA系が確立できた。抗体の作製は、各isoformのC末端のアミノ酸10数個より成るペプチドを合成し、このN末端でKLHに結合さて家兎に免疫して得た。さらに抗体を合成ペプチドのアフィニティカラムを用いて精製した。標識ペプチドは、この合成ペプチドを放射性ヨ-ドで標識して得たが、チロシンを含まないアミノ酸配列の場合には(GLUT1とGLUT2)N末端にチロシンを加えたペプチドを合成して用いた。このようにして、GLUT1、GLUT2、GLUT4に各々特異的なRIA系を組み立てたが、予定通り、各RIA系の間には交又反応は認められなかった。すなわち、GLUT1を含むヒト赤血球膜では、膜蛋白の7%という豊富なGLUT1が認められたが、GLUT2やGLUT4は全く認められなかった。ラット肝にはGLUT2のみ、ラット脂肪細胞にはGLUT4が大量に認められ、他のisoformは測定感度以下であった。ヒト赤血球のGLUT1の測定には数Ulの血液で充分であり、RIAは約4時間で完了した。これらのRIA系を用いて、糖尿病患者での赤血球糖輸送担体の変動、老齢ラットの脂肪や骨格筋でのGLUT4の変動、インスリンによるGLUT4の細胞内部から細胞膜へのトランスロケ-ションなどを簡便に定量的に測定することが可能となった。ヒト肝癌細胞HepG2糖輸送担体の3個所に相当するショートペプチドを合成し家兎に免疫した。いずれの部位に対しても抗体の産生が確認され、精製した抗体は50μg/mlの濃度でヒト赤血球糖輸送担体をほとんどすべて免疫沈降し、ヒト赤血球糖輸送担体はHepG2糖輸送担体と恐らく同一と考えられた。作製した抗体の中でも反応性の良いC末端に対する抗体を用いてRIA系を組み立てることとしたが、抗体との反応性を保ちつつよい標識を得ることがなかなか困難であることが判明した。そこで現在、このショートペプチドのN末端に標識を容易にするためのチロシンを加えて合成し、この標識および抗体との反応性を検討している。我々は研究計画の発展のために他種類の糖輸送担体のクローニングを目指しているが、この過程の中でラビット脳のHepG2タイプ糖輸送担体遺伝子のクローニングに成功した。この結果より、我々の作製した抗体がヒトばかりでなくラビットやラットの研究にも使用できることが明らかとなった。我々はさらにこの糖輸送担体cDNAをChinese Hamster Ovary細胞に導入し、糖輸送担体を大量に発現させることに世界に先駆けて成功した。糖輸送担体の発現と共に糖輸送活性は約4倍と上昇し、糖輸送やインスリン作用の解明の上でも重要な示唆を与えている。現在組み立てているRIA系で糖輸送担体の増加を定量的に調べる予定である。肝タイプ糖輸送担体が米国のグループによりクローニングされたが、我々はヒト赤血球糖輸送担体と共通性のないC末端部と中央部に対する抗体の作製にとりかかり、抗体の産生が現在ELISAにて確認されている。このように、合成ショートペプチドとその抗体を用いることにより異なった種類の糖輸送担体を明確に区別できるRIA系を確立するという我々の当初の予測が極めて正しいものであることが確認された。
KAKENHI-PROJECT-63870046
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63870046
合成ショ-トペプチドを用いた各種糖輸送担体のRIA法の開発
抗体とよく反応する標識ペプチドを作製することがRIA系を組み立てる上で極めて重要であったが、これはペプチドのN末端にチロシンを加えたペプチドを新たに合成することで解決できた。標識はクロラミンTを用いて行いSepPakで精製した。糖輸送担体のC末端部分は細胞内部に存在するため可溶化が必要であり、0.5%トライトンにて可溶化し、アフィニティ精製した抗体と0.1%BSAを加えたPBS中にて室温30分孵置した後、プロテインAセルロファインを加えて30分後に抗原抗体複合物を沈降させた。PBSにて沈降物を洗浄した後、^<125>Iを測定した。標準曲線はヨ-ド化したショ-トペプチドに種々の濃度の非標識ショ-トペプチドを加えて同様の操作を行い作製し、試料中の糖輸送担体量をショ-トペプチド量当りに換算した。ヒト赤血球で測定してみると、HepG2タイプ糖輸送担体が極めて豊富で、赤血球ゴ-スト(ヘモグロビンを除いた赤血球膜)1μg中には約×10^<-3>μgショ-トペプチド相当の糖輸送担体が認められた。これは膜重量の約7%に相当し、従来の報告と一致し、我々のショ-トペプチドに対するRIA系が、HepG2タイプ糖輸送担体を正しく定量できることを示している。我々はラット肝タイプ糖輸送担体に対しても同様の方法でRIA系を確立したが、ラット肝膜分画1μg当たり約10^<-4>μgショ-トペプチド相当の糖輸送担体が認められるのに対し、ヒト赤血球の糖輸送担体は検出感度以下であった。逆にラット肝膜分画をHepG2タイプ糖輸送担体のRIA系で測定しても検出感度以下であり、これらのRIA系の間に交叉は認められず、各々、HepG2タイプ、ラット肝タイプを特異的に検出するRIA系であることが確認された。本年度は、糖輸医担体のサブタイプであるGLUT2とGLUT4に対するラジオイムノアッセイ系を組み立て、すでに確立したGLUT1に対するRIAと比較検討し、さらにヒト糖尿病患者や、実験的糖尿病動物などでの応用を行った。ラットGLUT2のC末端部に対する抗体は、ラット脂肪細胞や骨格筋に存在するGLUT4やGLUT2と交又反応を示さず、又、ラットGLUT4のC末端部に対する抗体はラット肝やヒト赤血球の糖輸送担体と反応しなかった。ヒト赤血球には膜蛋白の約7%という非常に豊富なGLUT1が認められ、数μlの血液で充分測定が可能であった。糖尿病患者と正常者ではその赤血球糖輸送担体の量に有意差を認めず、又、糖尿病状態の指標としての空腹時血糖順やHbArc値とも相関を認めなかった。このように赤血球のGLUT1は糖尿病状態による変動を受けなかったが、他の臓器では代謝状態による変動を受け、確立したRIAにてその変動が確認できた。我々はラット肝のGLUT2がストレプトゾトシン糖尿病ラットでは増加することをウエスタンブロッティングにて示したが、我々が確立したGLUT2のRIAにて、この変動が定量的に確認できた。また、ラット脂肪細胞をインスリンで刺激するとGLUT4は細胞内部のプ-ルから細胞膜上に移動するが、確立したRIAにて、GLUT4の細胞膜分画での増加と、細胞内膜分画での減少が定量的に確認できた。以上のように、多くの検体で定量的に糖輸医担体が測定できるというRIAの利点が生かされたRIA法が開発できた。
KAKENHI-PROJECT-63870046
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63870046
「ハディースの徒」の社会史的研究:スンナ派の形成・浸透過程の解明に向けて
平成26年度から5カ年計画で遂行してきた本研究は、スンナ派の形成と浸透の歴史過程を明らかにすることに向けて、10-13世紀の西アジアで「ハディース(預言者ムハンマドの言行に関する伝承)」の徒」と称し、ハディースを用いて社会の様々な事柄をスンナ(預言者ムハンマドの慣行)に根拠づけたハディース学者の知的実践を社会史的に解明することを目的としている。本研究では、この目的に向けて以下の3つの課題を設定した。すなわち、【課題1:「ハディースの徒」の時代的・地理的分布の傾向の整理】、【課題2:ハディースの真正性判定理論の形成・展開の解明】、【課題3:「ハディースの徒」の知的実践と社会状況の相互影響の解明】である。平成30年度は、当初の計画にしたがって、【課題1】【課題2】【課題3】の成果を総合的に考察し、本研究全体を総括した。この総括作業からは、以下の3点の成果が得られた。(1)「ハディースの徒」を称したウラマーたちが、知識人としての評価を得るために行った知的実践の成果を用いて、周囲の社会的・政治的要請にも良く応えていたこと。(2)そうした社会や政治に対する協力的な姿勢が、彼らの社会的権威にもつながっていたこと。そして、(3)社会や政治の多くの側面を、ハディースをとおしてスンナに結びつけようとする彼らの姿勢と活動が、スンナに則った共同体の一員と自らを想像する人々、すなわち、スンナ派の形成に大きく貢献したと考えられることである。以上の総括作業を、本研究を基課題とする国際共同研究(16KK0043)として、ジョージタウン大学(ワシントンDC、30年4月12月)とイブン・ハルドゥーン大学(イスタンブール、31年1月3月)で行い、本研究全体の成果を国際的な水準に照らして検証し、他者の信仰の重要な要素を外部から一方的に語る「オリエンタリズム的」な研究となることを防ぐ工夫を行った。平成30年度に取り組んだ研究作業(「研究実績の概要」を参照)の概要は、計画段階で予定していたものであり、その成果も計画段階での予測と概ね一致した。したがって、本研究はほぼ順調に進展していると判断される。また、本研究を基課題とする国際共同研究(16KK0043)を通して、アメリカおよびトルコのハディース研究者と継続的な研究交流を行い、本研究全体の成果の妥当性を国際的な議論を通して検証した。その一環として、11月にジョージタウン大学外交学院のアルワリード・ビン・タラール王子ムスリムーキリスト教徒理解センターにおいて、アメリカおよびトルコの研究者を招いてハディース学に関する国際ワークショップを開催し、本研究の成果に基づいた研究発表を行うとともに参加した研究者たちと議論を行った。2月にはイブン・ハルドゥーン大学諸文明協調研究所において公開講演を行い、本研究の成果を披露した。これらの海外における研究活動は、本研究の計画時には想定していなかった研究成果の国際的発信として大きな成果となった。その一方で、本年度に約10か月間の長期にわたって海外での研究活動を行ったことは、本研究の計画段階では予定していなかった事態であった。国際的な環境を活用して【課題1】【課題2】【課題3】の各段階における成果を英語の学術論文として投稿する作業と本研究全体の成果を英語の単著にまとめる準備も進めてきたが、上記のワークショップや公開講演会、継続的な研究交流を通してアメリカ・トルコの研究者から様々な建設的な指摘を受けたことから、本研究の総括を完了し、その成果を公開するには至っていない。ホームページの作成・公開に関わる作業も充分に進めることができなかった。そのため、本研究の事業期間を1年延長し、本研究全体の総括作業の完了と成果公開を在外研究の成果をも盛り込んだより有意義な形で行うこととする。1年間の延長期間にあたる次年度(令和元年度)には、本年度に【課題1】【課題2】【課題3】の成果を総合的に考察することで得られた成果に、在外研究における国際的な議論の成果も盛り込むことで研究全体の総括作業を完了する。同時に、在外研究によって得られた国際的な研究ネットワークを活用して【課題1】【課題2】【課題3】の各段階における成果を英語の学術論文として投稿する作業を進め、本研究全体の成果を英語の単著にまとめる準備も進める。また、ホームページを開設し、本研究の成果とその過程で構築したデータベースを内外の研究者と広く共有できるようにする。平成26年度から5カ年の計画で遂行する本研究は、スンナ派の形成と浸透の歴史過程を明らかにすることに向けて、1013世紀の西アジアで、「ハディース(預言者ムハンマドの言行に関する伝承)の徒」と称し、ハディースを用いて、社会の様々な事柄をスンナに根拠づけたハディース学者の知的実践を社会史的に解明することを目的とする。この目的に向けて、以下の三つの課題を設定した。すなわち、【課題1:「ハディースの徒」の時代的・地理的分布と傾向の整理】、【課題2:ハディース真正性判定理論の形成・展開の解明】、【課題3:「ハディースの徒」の知的実践と社会状況の相互影響の解明】である。平成26年度は、【課題1】に係わる研究作業を中心に遂行した。
KAKENHI-PROJECT-26370840
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「ハディースの徒」の社会史的研究:スンナ派の形成・浸透過程の解明に向けて
その結果、910世紀に「ハディースの徒」の主流がイラクからホラーサーン(イラン北東部)に移り、それに伴って、ハディースが伝える預言者のスンナ(慣行)に照らして社会や政治の現状を批判する傾向が減退し、現状をスンナに根拠付け、それらのスンナを伝えるハディースの真正性を証明することで現状を肯定する傾向が強まっていくことが明らかになった。上記の研究に基づき、平成26年8月にトルコ共和国アンカラ市の中東工科大学で開催されたWorld Congress for Middle EasternStudies (WOCMES Ankara 2014)で口頭報告を行った。【課題2】と【課題3】の準備も開始し、分析材料を確保するために、平成26年年8月にトルコ共和国イスタンブル市のスレイマニエ図書館で、平成27年3月にイラン・イスラーム共和国テヘラン市のテヘラン大学中央図書館で写本調査を行った。平成26年度から5カ年の計画で遂行している本研究は、スンナ派の形成と浸透の歴史過程を明らかにすることに向けて、1013世紀の西アジアで「ハディース(預言者ムハンマドの言行に関する伝承)の徒」と称し、ハディースを用いて、社会の様々な事柄をスンナ(預言者ムハンマドの慣行)に根拠づけたハディース学者の知的実践を社会史的に解明することを目的としている。本研究では、この目的に向けて、以下の三つの課題を設定した。すなわち、【課題1:「ハディースの徒」の時代的・地域的分布の傾向の整理】、【課題2:ハディース真正性判定理論の形成・展開の解明】、【課題3:「ハディースの徒」の時代的・地理的分布と傾向の整理】である。平成27年度は、【課題2】に中心的に取り組み、これまでに収集した「ハディースの徒」が書いた論説や理論書の読解し、ハディースの真正性判定基準をデータベースにまとめていった。その結果、10世紀のホラーサーン(イラン北東部)において、伝達経路の多寡に依拠してハディースの真正性を判定する理論が形成され、その理論が、多彩な内容のハディースについて、真正性の高さを演出する技術を生み出したことが明らかになった。そして、この理論と技術は、11世紀から13世紀にかけて、イラクやシリアの「ハディースの徒」の間でも盛んに研究・活用されるようになり、当時の社会の様々な事柄をハディースに根拠づけて肯定、あるいは、批判する論説が数多く書かれるようになった。以上の研究の材料となる理論書・論説をより多く確保するために、27年8月にトルコ共和国イスタンブル市とレバノン共和国ベイルート市の図書館などで調査を行い、28年3月にもイスタンブル市で調査を行った。28年3月の調査は、エジプトのカイロを予定していたが、治安面で不安があったためイスタンブルに調査地を変更したものである。平成27年度に中心的に取り組んだ【課題2】に関する研究作業から得られた成果(「研究実績の概要」を参照)は、計画段階で予測されたものとおおむね一致し、したがって、本研究はほぼ順調に進展していると判断される。また、本研究では、ハディースというイスラームの信仰の根幹に関わる宗教的テキストを扱うため、信徒としてハディースを研究している研究者徒の意見交換により、「オリエンタリズム」的になることを避ける工夫を行っている。この面においても、モスクのイマーム(導師)との意見交換や、イスタンブルのイスラーム研究センターにおいて、現代の信徒のハディース研究に触れることなどによって、当初の計画に沿うことができた。成果発表の側面においては、現代研究者との共同研究において、以下の2点の予想外の成果が得られた。
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テキストの「読み方」モデルの構築と利用に関する研究
本研究では、視線計測と対象テキストの言語分析による読み方モデルの構築とその利用について検討を進めた。まず対象テキストの構造と人間の読み方の特徴的なパターンを利用して視線計測のずれを補正する手法を提案した。次に、文書中の各単語について、視線の停留時間、文書中での位置、品詞等の言語的特徴をあわせて、読み方の予測モデルを構築する手法を提案して視線コーパスや利用者実験を通して有用性を示した。本研究では、「読む」という行為を、読み手の言語の理解や知識の獲得と対応付けて解析する技術の確立を目指す。具体的には、画面上に表示される文字情報(テキスト)から人間が情報を得る際の「読み方」を視線計測装置を用いて実際に測定して、テキストの意味や文脈と照合しながら分析・予測する手法を開発する。このような「読み方」のモデル化と測定を通して、対象テキストの計算言語的な解析結果と読み手の興味や理解の容易性とを対応付け、社会生活で不可欠な「読む」行為の支援へと結びつける。具体的には、(1)読み方モデルの構築と視線情報からの注視テキストの抽出、および、(2)視線情報に基づく人間の言語行動の分析、の2つの課題に取り組み、中核となる手法の確立を目指す。本年度は、2番目の課題である「視線情報による人間の言語行動の分析」に焦点をあてて研究を進めた。まず視線のコーパスとして代表的なDundeeコーパスを用いて単語の読み飛ばしの予測モデルを学習し、品詞や頻度などの単語の言語的な特徴に加えて画面上の位置を考慮することで、予測の精度が高まることを示した。また、中国語におけるコンマ配置の予測では、読み手の視線の動きを人手で解析してルールを抽出することで、より優れたコンマ配置が提案できることを示した。さらに、視線解析を理解支援に結び付ける試みとして、言語特徴量・視線特徴量・読み手の属性の相互の関係を解析することで、読み手の注視する単語領域を予測する手法を提案した。実験では、40名の被験者を対象として視線データを収集して、提案手法の有効性を示すとともに、言語タスクや被験者による読み方の違いを考察した。本研究では、視線計測と対象テキストの言語分析による読み方モデルの構築とその利用について検討を進めた。まず対象テキストの構造と人間の読み方の特徴的なパターンを利用して視線計測のずれを補正する手法を提案した。次に、文書中の各単語について、視線の停留時間、文書中での位置、品詞等の言語的特徴をあわせて、読み方の予測モデルを構築する手法を提案して視線コーパスや利用者実験を通して有用性を示した。本研究では、「読む」という行為を、読み手の言語の理解や知識の獲得と対応付けて解析する技術の確立を目指す。具体的には、画面上に表示される文字情報(テキスト)から人間が情報を得る際の「読み方」を視線計測装置を用いて実際に測定して、テキストの意味や文脈と照合しながら分析・予測する手法を開発する。このような「読み方」のモデル化と測定を通して、対象テキストの計算言語的な解析結果と読み手の興味や理解の容易性とを対応付け、社会生活で不可欠な「読む」行為の支援へと結びつける。具体的には、(1)読み方モデルの構築と視線情報からの注視テキストの抽出、および、(2)視線情報に基づく人間の言語行動の分析、の2つの課題に取り組み、中核となる手法の確立を目指す。本年度は、言語処理やユーザインタフェース分野における視線データの利用について文献調査を行うとともに、視線計測装置を用いた実験環境を構築して、視線データを取得した。現実的なユーザ環境で得られる視線データには測定誤差が含まれることから、文書構造や言語的な知識を事前知識としてモデルに取込むことで、視線計測の精度を高める手法の開発に取り組んだ。その結果、注視点と単語領域の位置合わせ最適化問題を解く手法を提案し、これにより視線計測装置単独では補正できない誤差に対応できることを示した。また、複雑なレイアウト構造を持つ文書や、単語境界が明示されない日本語文書に対しても上記手法の適用を可能にするため、画面イメージの自動文字認識出力を言語タグつきのテキストに対応付ける手法を開発し、有効性を確認した。さらに、人間の読み方モデルの構築とテキスト読解・理解支援を目標として、文書中で被験者が注視する単語を、言語的およびレイアウト的特徴に基づき予測する機械学習手法を提案して効果を示すとともに、言語タスクや被験者による違いを考察した。交付申請書では本年度の研究目標として、(1)テキスト要素と画面上の領域の対応付け、および、(2)予測遷移グラフと実際の計測結果に基づく事後確率計算、の2つを設定した。(1)については、注視点と単語領域との位置合わせ最適化問題を解くアプローチを提案するとともに、自動文字認識を組み合わせて任意のテキストについて単語境界を正しく認識する手法を開発し、当初の予定を達成した。(2)については、言語的なモデルだけではなく単語の出現場所情報を取り込む新たなモデルを提案するなど追加で検討した課題もあり、順調に研究を進めている。人間の読み方を分析するための言語理解タスクを設計して視線データを収集し、平成23年度で構築したモデルを検証する。言語モデルを用いた視線情報の誤り修正、および視線と語句の構文・意味役割との対応づけ手法を提案・評価し、成果の発表を行う。1.視線データの収集とコーパス整備:被験者実験によりデータを収集し、視線情報を埋め込んだ参照コーパスを構築する。品詞、構文木、述語項構造、照応関係などの言語アノテーションと視線情報を対応づけて分析することで、視線遷移の予測に有効な言語的な手がかりを抽出する。
KAKENHI-PROJECT-23650076
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テキストの「読み方」モデルの構築と利用に関する研究
2.人間の文解析・読解過程のモデル化における有効性の検証:言語処理により自動付与される語句の様々な役割と実際に観測される注視順や停留時間とを対応づけ、これらを統計的に解析することで、テキストの読みやすさや人間の興味や理解の状態を推測し、読解支援に役立てる手法の開発に取り組む。視線計測装置を使った被験者実験および論文発表を予定しており、実験のための補助装置の購入・謝金・リサーチアシスタント雇用、成果発表のための出張・会議参加・英文校正・論文別刷代等を支出する予定である。
KAKENHI-PROJECT-23650076
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精巣特異的カルシニューリンを標的とした男性避妊薬の開発
カルシウム依存性の脱リン酸化酵素(カルシニューリン)は、酵素ドメインと調節ドメインから成るヘテロダイマーである。ヒトやマウスでは、それぞれ3つと2つの遺伝子にコードされている。また我々は精子特異的に存在する精子カルシニューリンが受精能力に必須であることを報告している。本課題では、上記5つのORFをPCR増幅して発現ベクターを作製し、培養細胞で酵素活性を再構築できることを確認した。その結果、男性避妊薬の標的分子となりうる精子カルシニューリンのみを阻害する小分子の探索が可能な系を構築した。またin silico解析から、精子カルシニューリンの基質と考えられる12遺伝子を見つけることに成功した。日本では年間約20万件もの人工妊娠中絶が行われているが、その理由の1つとして望まない妊娠が挙げられる。米国でも約50%が予定外の妊娠とされ、約半数で人工妊娠中絶が行われている(Finer, Contraception 2006)。このような状況を改善するには、効果的な避妊法の開発や普及が急務である。我々は精子特異的に発現するカルシニューリンを同定し、その阻害剤により精子運動能力が低下して雄性不妊となることを発表している。そこで本研究課題では、体細胞のカルシニューリンは阻害せず、精子カルシニューリンを特異的に阻害する化合物の探索を行うことを目的とした。まずIn silicoスクリーニングによりカルシニューリン結合ドメインを持つタンパク質を10個、リストアップした。その後、RT-PCR等の発現確認により精巣特異的に発現する3つに絞り込み、CRISPR/Cas9法により遺伝子破壊マウスを作製した。いずれも生存には問題なく雄が性成熟することを確認したので、交配試験により妊孕性の有無を確認中である。またヒト精子カルシニューリンに結合する小分子をスクリーニングする目的で、ヒト精巣cDNAからPPP3R2とPPP3CCの遺伝子をクローニングし、FLAGタグを付加したリコンビナントタンパク質を調整した。生化学的試験により脱リン酸化酵素活性を有することを確認した。今後、共同研究先において、DEC-TEC法により結合小分子を同定する予定である。遺伝子改変マウスの作製および小分子スクリーニング用リコンビナントタンパク質の調整も順調に進んでおり、ひきつづき研究を発展させることで、男性避妊薬開発の基礎が構築できると考えている。カルシウム依存性の脱リン酸化酵素(カルシニューリン)は、酵素ドメインと調節ドメインから成るヘテロダイマーである。ヒトやマウスでは、それぞれ3つと2つの遺伝子にコードされている。また我々は精子特異的に存在する精子カルシニューリンが受精能力に必須であることを報告している。本課題では、上記5つのORFをPCR増幅して発現ベクターを作製し、培養細胞で酵素活性を再構築できることを確認した。その結果、男性避妊薬の標的分子となりうる精子カルシニューリンのみを阻害する小分子の探索が可能な系を構築した。またin silico解析から、精子カルシニューリンの基質と考えられる12遺伝子を見つけることに成功した。実験動物学
KAKENHI-PROJECT-16K15687
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溶液法による多層薄膜のp-n接触界面の形成と二酸化炭素ガスセンサーへの応用
予備的な実験から本研究では、p型酸化物半導体として酸化ニッケルと酸化コバルトを、n型酸化物半導体として酸化亜鉛を選択した。これらの薄膜の原料として酢酸塩を用いたが溶媒のイソプロパノールにはそのままでは溶解しなかった。そこでエタノールアミンを塩に対して等モル2倍添加し、溶解させた。この溶液を用いてディップコーティング法により製膜した。単一膜のガスセンシング特性を測定した結果、酸化ニッケル膜と酸化コバルト膜では可燃性ガスに接触すると比抵抗が増加し、酸化亜鉛では減少した。この変化の割合は酸化亜鉛がもっとも大きくついで酸化ニッケルであり、酸化コバルトは最も変化率が小さかった。1%の二酸化炭素ガスに対しては酸化亜鉛薄膜がガス導入直後に過渡的に比抵抗が減少すると言う現象が観察された。酸化物同士のp-n接触は、酸化亜鉛をコーティングしさらに酸化ニッケルをコーティングした多層膜で優れた整流特性が得られた。このp-n多層膜のモット・ショットキープロットからも接触界面に空乏層が形成されていることが確認された。p型半導体として酸化コバルトを用いた場合は良好な整流特性は認められなかった。酸化亜鉛、酸化ニッケル多層膜のI-V特性の温度変化は単調ではなく、室温よりも100200°Cで順バイアス方向の電流値が小さくなるという結果が選られ、界面準位に吸着されている酸素ガス等が整流特性に影響を及ぼしていることが示唆された。さらにこのp-n界面には光起電力の発生が確認され、I-V特性も光照射によって特に純方向に電流値が大きくなった。しかしI-V特性や接触界面の静電容量は実験範囲内では雰囲気ガスに依存しなかった。予備的な実験から本研究では、p型酸化物半導体として酸化ニッケルと酸化コバルトを、n型酸化物半導体として酸化亜鉛を選択した。これらの薄膜の原料として酢酸塩を用いたが溶媒のイソプロパノールにはそのままでは溶解しなかった。そこでエタノールアミンを塩に対して等モル2倍添加し、溶解させた。この溶液を用いてディップコーティング法により製膜した。単一膜のガスセンシング特性を測定した結果、酸化ニッケル膜と酸化コバルト膜では可燃性ガスに接触すると比抵抗が増加し、酸化亜鉛では減少した。この変化の割合は酸化亜鉛がもっとも大きくついで酸化ニッケルであり、酸化コバルトは最も変化率が小さかった。1%の二酸化炭素ガスに対しては酸化亜鉛薄膜がガス導入直後に過渡的に比抵抗が減少すると言う現象が観察された。酸化物同士のp-n接触は、酸化亜鉛をコーティングしさらに酸化ニッケルをコーティングした多層膜で優れた整流特性が得られた。このp-n多層膜のモット・ショットキープロットからも接触界面に空乏層が形成されていることが確認された。p型半導体として酸化コバルトを用いた場合は良好な整流特性は認められなかった。酸化亜鉛、酸化ニッケル多層膜のI-V特性の温度変化は単調ではなく、室温よりも100200°Cで順バイアス方向の電流値が小さくなるという結果が選られ、界面準位に吸着されている酸素ガス等が整流特性に影響を及ぼしていることが示唆された。さらにこのp-n界面には光起電力の発生が確認され、I-V特性も光照射によって特に純方向に電流値が大きくなった。しかしI-V特性や接触界面の静電容量は実験範囲内では雰囲気ガスに依存しなかった。
KAKENHI-PROJECT-06650740
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腎微小循環におけるアルドステロンの作用とその生理的・病態生理学的意義の解明
アルドステロンは従来よりナトリウム・水貯留ホルモンとして知られているが、近年、種々の腎疾患の病態・進展に関与する可能性が示唆されている。しかしながら、アルドステロンがいかなる機序を介して腎疾患の病態に関与するのかに関しては詳細は未だ不明である。腎疾患の進行には糸球体高血圧などの糸球体血行動態の異常が重要な役割を演じている。そこで我々は、糸球体血行動態の調節に重要な輸出入細動脈におけるアルドステロンの作用と機序を微小灌流法を用いて検討した。その結果、(1)アルドステロンはnon-genomicな機序を介して両細動脈を収縮させること、(2)輸入細動脈では内皮由来のNOがアルドステロンの血管収縮作用を減弱させているためアルドステロンに対する感受性は輸出細動脈で高いこと、(3)内皮機能障害を伴う輸入細動脈では生理的濃度のアルドステロンが収縮を引き起こすことが明らかとなった。以上の結果より、アルドステロンは輸出細動脈を収縮させて糸球体内圧を上昇させることで腎疾患の病態に関与するという可能性が示唆された。また、内皮障害が存在する病態下では、アルドステロンは輸入細動脈を収縮させて腎血管抵抗を上昇させることで高血圧の発症または元々存在する高血圧の増悪に関与するという可能性が示唆された。さらにこれらの研究を遂行する中で、アルドステロンのnon-genomicな血管収縮作用とミネラルコルチコイド受容体を介して生じる緩徐な作用(genomic action)の間にinteractionが存在する可能性が示唆されたため検討を加えたが、詳細は不明であった。今後このinteractionの可能性について更なる検討を加えていく予定である。アルドステロンは従来よりナトリウム・水貯留ホルモンとして知られているが、近年、種々の腎疾患の病態・進展に関与する可能性が示唆されている。しかしながら、アルドステロンがいかなる機序を介して腎疾患の病態に関与するのかに関しては詳細は未だ不明である。腎疾患の進行には糸球体高血圧などの糸球体血行動態の異常が重要な役割を演じている。そこで我々は、糸球体血行動態の調節に重要な輸出入細動脈におけるアルドステロンの作用と機序を微小灌流法を用いて検討した。その結果、(1)アルドステロンはnon-genomicな機序を介して両細動脈を収縮させること、(2)輸入細動脈では内皮由来のNOがアルドステロンの血管収縮作用を減弱させているためアルドステロンに対する感受性は輸出細動脈で高いこと、(3)内皮機能障害を伴う輸入細動脈では生理的濃度のアルドステロンが収縮を引き起こすことが明らかとなった。以上の結果より、アルドステロンは輸出細動脈を収縮させて糸球体内圧を上昇させることで腎疾患の病態に関与するという可能性が示唆された。また、内皮障害が存在する病態下では、アルドステロンは輸入細動脈を収縮させて腎血管抵抗を上昇させることで高血圧の発症または元々存在する高血圧の増悪に関与するという可能性が示唆された。さらにこれらの研究を遂行する中で、アルドステロンのnon-genomicな血管収縮作用とミネラルコルチコイド受容体を介して生じる緩徐な作用(genomic action)の間にinteractionが存在する可能性が示唆されたため検討を加えたが、詳細は不明であった。今後このinteractionの可能性について更なる検討を加えていく予定である。アルドステロンは従来よりナトリウム・水貯留ホルモンとして知られているが、近年、直接的な心血管作用を有するとともに種々の腎疾患の病態・進展に関与する可能性が示唆されている。しかしながら、アルドステロンがいかなる機序を介して腎疾患の病態に関与するのかに関しては詳細は未だ不明である。腎疾患の進行には糸球体高血圧などの糸球体血行動態の異常が重要な役割を演じている。そこで我々は、糸球体血行動態の調節に重要な輸出入細動脈におけるアルドステロンの作用と機序を微小灌流法を用いて検討した。nMレベルのアルドステロンは両細動脈を濃度依存性に収縮させたが、感受性は輸出細動脈で高く、有意な収縮は輸出細動脈では1nMから、一方、輸入細動脈では5nMから認められた。しかしながら、輸入細動脈では内皮を除去するかNitric Oxide (NO)の合成を阻害するとアルドステロンの作用が増強し、生理的レベルである0.1nMで有意な収縮が認められた。アルドステロンによる収縮はいずれの細動脈においても投与後5分以内に認められ、non-genomicであると考えられた。このことは、アルドステロンによる収縮がスピロノラクトンで抑制されず、アクチノマイシンDやシクロヘキシミドで影響されないことからも裏付けられた。また、両細動脈においてアルドステロンによる収縮はPhospholipase C依存性であったが、輸入細動脈ではL型チャネルを介したカルシウムの流入が、一方、輸出細動脈ではT型カルシウムチャネルが重要であると考えられた。以上、アルドステロンは輸出細動脈を収縮させて糸球体内圧を上昇させることで、腎疾患の病態に関与する可能性が示唆された。また、内皮障害が存在する病態下では、アルドステロンは輸入細動脈を収縮させて腎血管抵抗を上昇させることで、高血圧の発症または元々存在する高血圧の増悪に関与する可能性が示唆された。我々は平成15年度にアルドステロンがnon-genomicな機序を介して輸出入細動脈を収縮させることを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-15590840
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腎微小循環におけるアルドステロンの作用とその生理的・病態生理学的意義の解明
その研究の中でアルドステロンのnon-genomicな血管収縮作用とミネラルコルチコイド受容体を介して生じる緩徐な作用(genomic action)の間にinteractionが存在する可能性が示唆されたが詳細は不明であった。そこで本年度はこのinteractionの可能性について検討を行った。具体的には1-10nMのアルドステロンで1時間輸出入細動脈を前処置してからnon-genomicな血管収縮作用を検討したが、残念ながらこの前処置ではNO合成阻害などのgenomic actionは引き起こされず、genomic actionとnon-genoic actionのinteractionは観察されなかった。そこで文献的検索を行ったところ、genomic actionを誘発するには1時間では不十分で3時間程度の前処置が必要であることが判明した。現在、輸出入細動脈を単離した後、生理的(pMレベル)病的状態で認められる高濃度(nMレベル)のアルドステロンを含む溶液で3時間以上灌流してからnon-genomicな血管収縮反応を検討することで、genomic actionとnon-genomic actionのinteractionの可能性を検討している。さらに、我々はアルドステロンがその病因に関与すると考えられている食塩感受性高血圧の病態生理を検討する目的で、Descending Vasa Recta(DVR)の単離灌流実験を行うことを計画しているが、ウサギのDVRは問題無く単離できることが確認された。今後、アルドステロンを含む種々の血管作動物質に対するDVRの反応性とその機序を解明し、食塩感受性高血圧の病態生理に関する新知見を得たいと考えている。
KAKENHI-PROJECT-15590840
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超低速コライダーによるナノ粒子衝突ダイナミクスの解明
本研究の目的は、ナノサイズの試料を真空中に浮かべてその内部の物性を探究する、これまでにない物性実験手法を創出することである。特に、多くの物性実験で用いられる希釈冷凍機では到達不可能な超低温(絶対零度1mK以下)へと試料の温度を冷却する技術を開発することを目標とする。この目標に向け、本研究ではナノ粒子同士の衝突を利用する新たな冷却機構の実現を目指す。平成30年度は、帯電したナノ粒子の価数の制御や電場への応答を中心に研究を進めた。その中で、ナノ粒子の帯電価数が大きいことを活用し、粒子の重心運動の観測結果に応じて時間変化する電場をかけることで粒子の重心運動を冷却する、という新たな冷却手法の開発に成功した。従来、ナノ粒子の重心運動の冷却には、粒子の重心運動の観測結果に応じて、捕捉レーザー光の強度を変調する手法が実証されてきており、多くのグループが利用してきたが、この手法による冷却能力は、重心運動の温度に比例するため、重心運動が充分に低温となると、冷却がうまく働かなくなる、という問題があった。一方、我々が今回実証した電場による冷却手法の冷却能力は、粒子の重心運動の温度とは関係ないため、従来手法よりはるかに低い温度まで、ナノ粒子の重心運動を冷却できると期待される。一方、粒子の衝突ダイナミクス追究に関わるナノ粒子の帯電価数の制御を試みた結果、価数を真空下である程度変化させることができ、変化した後の価数を充分長く維持できることがわかった。このため、将来的には中性、もしくは価数が1程度のナノ粒子を用いて、衝突ダイナミクスを探る実験が可能であるとの展望を得た。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。本研究の目的は、ナノサイズの試料を真空中に浮かべてその内部の物性を探究する、これまでにない物性実験手法を創出することである。特に、多くの物性実験で用いられる希釈冷凍機では到達不可能な超低温(絶対零度1mK以下)へと試料の温度を冷却する技術を開発することを目標とする。この目標に向け、本研究ではナノ粒子同士の衝突を利用する新たな冷却機構の実現を目指す。冷却の要となる2粒子間の超低速における衝突ダイナミクスを明らかにすると共に、粒子間の付着という冷却の弊害になり得る現象を双極子相互作用を利用して防ぎながら冷却を行う技術を開発する。平成28年度は、ナノ粒子の重心運動の冷却に関して研究を進め、ナノ粒子を真空中でレーザー捕捉する装置を製作すると共に、光格子に捕捉されたナノ粒子の重心運動を10K程度にまで冷却する技術を確立した。先行研究では、単一ビームに捕捉したナノ粒子の重心運動の冷却が報告されているが、光格子中における重心運動の冷却は、本研究が初めてである。光格子の特長は、単一ビームと異なり、複数粒子を同時に捕捉できる点にあるため、今回確立した冷却技術は、今後の複数粒子を用いた研究の中核をなすものである。この研究を進める中で、高真空下でのナノ粒子の振動の様子を表すパワースペクトル密度の線幅から直接ナノ粒子の感じる光ポテンシャルの深さを測定できることを見出し、論文として発表した。これは光との相互作用を利用してナノ粒子の大きさを測定することに相当し、本研究を進める上で重要な成果である。本研究では、ナノ粒子同士の超低速での衝突ダイナミクスを探ることを主な目的としている。このためには、2個のレーザー捕捉されたナノ粒子の重心運動を充分低温まで冷却する技術が不可欠となる。そこで、まずナノ粒子の3次元的な重心運動を冷却する技術の確立を行った。具体的には、ナノ粒子を捕捉する光学系・真空系の製作、ナノ粒子の運動を観測する光検出器の開発、および得られた信号を処理する電子回路系からなる。特に電子回路系に対する最適化を行った結果、3方向全てに対して常温から10K程度まで冷却する技術を確立できた。なお、本来予定にはなかった成果として、高真空下でのナノ粒子のパワースペクトル密度の線幅に関する考察を論文として出版した。通常、ナノ粒子のパワースペクトル密度の幅は真空度のみで決まるものとされてきたが、本研究を進める中で、高真空下では線幅が方向に依存する一定値をとることを見出した。この振る舞いは、ナノ粒子の三次元的な運動およびポテンシャルの非調和性に基づく振動の非線形性が原因であることを突き止め、線幅からナノ粒子の感じる光ポテンシャルの深さが直接推定できることを示した。この実験的・理論的研究のために、当初の計画よりも研究の進行が遅れた。本研究の目的は、ナノサイズの試料を真空中に浮かべてその内部の物性を探究する、これまでにない物性実験手法を創出することである。特に、多くの物性実験で用いられる希釈冷凍機では到達不可能な超低温(絶対零度1mK以下)へと試料の温度を冷却する技術を開発することを目標とする。この目標に向け、本研究ではナノ粒子同士の衝突を利用する新たな冷却機構の実現を目指す。平成30年度は、帯電したナノ粒子の価数の制御や電場への応答を中心に研究を進めた。その中で、ナノ粒子の帯電価数が大きいことを活用し、粒子の重心運動の観測結果に応じて時間変化する電場をかけることで粒子の重心運動を冷却する、という新たな冷却手法の開発に成功した。
KAKENHI-PROJECT-16H06016
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超低速コライダーによるナノ粒子衝突ダイナミクスの解明
従来、ナノ粒子の重心運動の冷却には、粒子の重心運動の観測結果に応じて、捕捉レーザー光の強度を変調する手法が実証されてきており、多くのグループが利用してきたが、この手法による冷却能力は、重心運動の温度に比例するため、重心運動が充分に低温となると、冷却がうまく働かなくなる、という問題があった。一方、我々が今回実証した電場による冷却手法の冷却能力は、粒子の重心運動の温度とは関係ないため、従来手法よりはるかに低い温度まで、ナノ粒子の重心運動を冷却できると期待される。一方、粒子の衝突ダイナミクス追究に関わるナノ粒子の帯電価数の制御を試みた結果、価数を真空下である程度変化させることができ、変化した後の価数を充分長く維持できることがわかった。このため、将来的には中性、もしくは価数が1程度のナノ粒子を用いて、衝突ダイナミクスを探る実験が可能であるとの展望を得た。本研究の目的は、ナノサイズの試料を真空中に浮かべてその内部の物性を探究する、これまでにない物性実験手法を創出することである。特に、多くの物性実験で用いられる希釈冷凍機では到達不可能な超低温(絶対零度1mK以下)へと試料の温度を冷却する技術を開発することを目標とする。この目標に向け、本研究ではナノ粒子同士の衝突を利用する新たな冷却機構の実現を目指す。平成29年度は、複数のナノ粒子を光格子に捕捉した後、光格子を切ることで粒子間衝突を引き起こす実験を進めた。その中で、粒子が衝突したと考えられる事象が少数ながら観測されたものの、多くの場合に粒子同士が衝突する前に粒子が捕捉光トラップから逃げてしまうことが判明した。この現象は、粒子が帯電しており、お互いにクーロン反発することで生じるものと考えられたことから、真空槽内に電極を導入し、粒子が帯電しているかどうかについて詳しく調べた。この結果、粒子は多くの場合に数十程度の価数で帯電していることがわかった。また、この研究と関連して、特にサイズの大きな粒子や屈折率の高い材質からなる粒子を光捕捉すると、自発的に発振し始め、数時間に渡って安定して発振状態を維持する新しい現象を発見した。粒子からの散乱光を詳しく分析した結果、この発振現象は、一つの光格子内に2個以上の粒子が同時に捕捉された場合に生じるものであることが判明した。このような現象はこれまでに知られておらず、特に真空中で光捕捉されたナノ粒子という新しい実験系を扱う上で、重要な知見となると考えられる。発振が生じる具体的なメカニズムについて、明確な結論は得られておらず、複数のナノ粒子を扱う研究において今後の重要な課題となるといえる。本研究では、ナノ粒子同士の衝突ダイナミクスを探ることを目的として研究を進めてきたが、本年度の研究により、ナノ粒子がかなり大きな電荷を持っていることがわかった。このことは、ナノ粒子同士のクーロン反発が非常に強いことを示唆しており、粒子同士の付着や内部状態の変化を伴う衝突といった、当初予想していた現象はほとんど起こらないと考えられる。すなわち、当初想定していたような、中性ナノ粒子同士のダイナミクスを調べることは、現状では難しいとの結論が得られた。なお、本来予定にはなかった成果として、複数のナノ粒子が自発的に起こす発振現象の発見を論文として報告した。ナノ粒子からの散乱光の時空間変化を分析した結果、この現象は2個以上のナノ粒子が単一光格子内に捕捉されている場合に自発的に生じることを見出し、粒子が別格子に分離した際には発振が止まること、また発振現象は2粒子がお互いの周りを周回するような軌道運動であることを突き止めた。
KAKENHI-PROJECT-16H06016
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日本の転換社債の転換権行使に関する実証研究
日本の企業が国内外で発行した転換社債・ワラント債についてデータを収集し,転換行動について本格的な計量分析を行った結果,以下の点が明らかになった。●アメリカン型オプションとしてみた転換社債は,投資家にとって権利行使(転換)が最適とは思われない状況下でも転換が行われている,●転換を行う主体(その理由)として,大口投資家や証券会社(大口の売買がひきおこすマーケット・インパクトを避けるため),および証券会社(引受け幹事獲得など発行市場への影響も考慮しつつ,流動性供給などマーケット・メイクを行う上では,在庫管理上必要となるため)など,一般(大衆)投資家とは違った利害をもつ主体の蓋然性が高い,●売買高が多く転換社債価格もパリティを上回る状況にある転換開始時と,売買高が減少し転換社債価格がパリティ前後にある転換進捗時とでは,転換主体(およびその理由)の蓋然性が異なる-上記2主体のほか,転換という迂回的な方法で投票権としての株式取得をねらうものの蓋然性は,転換進捗時には低いが開始時には無視できない-,アップ率など発行条件が固定的であり,発行時には割当による需給調整がおこっていたと考えらる。これらと多数の投資家に消化(売却)しなければならないというルールとも相俟って,発行直後は盛んに取引されるが12年もすると取引が減少すること,株価に比べ転換社債価格が低すぎるという現象が,バブルの後半から現在に至るまで万遍なく見受けられた。これが本当に無リスクの裁定機会であったかどうかは,株式をショートするコスト,とりわけ追加証拠金のコストをどう評価するかに依存する。追加証拠金のコストの評価モデルを組込んで,裁定機会の有無を検証することを今後の課題としたい。日本の企業が国内外で発行した転換社債・ワラント債についてデータを収集し,転換行動について本格的な計量分析を行った結果,以下の点が明らかになった。●アメリカン型オプションとしてみた転換社債は,投資家にとって権利行使(転換)が最適とは思われない状況下でも転換が行われている,●転換を行う主体(その理由)として,大口投資家や証券会社(大口の売買がひきおこすマーケット・インパクトを避けるため),および証券会社(引受け幹事獲得など発行市場への影響も考慮しつつ,流動性供給などマーケット・メイクを行う上では,在庫管理上必要となるため)など,一般(大衆)投資家とは違った利害をもつ主体の蓋然性が高い,●売買高が多く転換社債価格もパリティを上回る状況にある転換開始時と,売買高が減少し転換社債価格がパリティ前後にある転換進捗時とでは,転換主体(およびその理由)の蓋然性が異なる-上記2主体のほか,転換という迂回的な方法で投票権としての株式取得をねらうものの蓋然性は,転換進捗時には低いが開始時には無視できない-,アップ率など発行条件が固定的であり,発行時には割当による需給調整がおこっていたと考えらる。これらと多数の投資家に消化(売却)しなければならないというルールとも相俟って,発行直後は盛んに取引されるが12年もすると取引が減少すること,株価に比べ転換社債価格が低すぎるという現象が,バブルの後半から現在に至るまで万遍なく見受けられた。これが本当に無リスクの裁定機会であったかどうかは,株式をショートするコスト,とりわけ追加証拠金のコストをどう評価するかに依存する。追加証拠金のコストの評価モデルを組込んで,裁定機会の有無を検証することを今後の課題としたい。わが国企業が国内外で発行した転換社債・ワラント債についてデータを収集し,データベースを構築した。転換率および残存額に関しては主として東証『所報』を用い,転換社債価格と取引高,および株式価格と取引量に関しては野村総合研究所から提供されたデータを主として用いた。予備的分析(Tanigawa=Nishimura[1995])で行なった少数銘柄を対象とした分析結果が,大筋の上では一般性を持っていることを確認した。すなわち,(1)アメリカン型オプションとしてみた転換社債は,Yield Advantage(受取配当とク-ポンの差)がマイナスであるにも転換が起こっており,またその時期は,これらが変化する権利落ち日直前や償還日直前などに集中しているわけではない。すなわち,権利行使(転換)が最適とは思われない状況下でも転換が行われている,(2)転換開始および転換進渉を説明する要因を実証的に探るためロジット分析を行ったところ,転換開始にはマイナスの効果を持っていたCB取引高が転換進渉にはプラスの効果をもっているなど影響方向が異なる変数がみられること,である。ただ予備的分析の結果に比べて,転換開始時期についての計測結果があまり良好ではないので,改善を計画中である。また転換社債の取引数量について理論的および実証的考察を行い,(3)発行時期がバブル期以前であるか以後であるかに関わらず,発行(取引所上場)直後はさかんに取引きされるが後は次第に減衰していくという事実を確認し,(4)パネル分析を行い,株式取引高とCB取引高とは正相関がみられることから,企業価値のボラティリティに関する意見の相違,および(5)株価が転換価額をいつ越えるかという事に関する投資家間の意見の相違差が,主要な転換社債の取引動機であると解釈できる計測結果を得た。本年度は,構築されたデータベースを使って,転換行動について本格的な計量分析を行なうとともに,転換主体が誰であるかを識別しようと試みた。具体的には,流動性を提供する証券会社,マーケット・インパクトを嫌う大口投資家や証券会社,転換という迂回的方法で投票権としての株式を確保したい主体,権利行使による希薄化を嫌う投資家といった,4つのケースを念頭において計量分析を行なった。
KAKENHI-PROJECT-08630092
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08630092
日本の転換社債の転換権行使に関する実証研究
転換量についてのTOBIT分析では,証券会社在庫管理説,およびマーケットインパクト回避説とほぼ矛盾しない結果を得た。また,サンプル分割したLOGIT分析により,売買高が多く転換社債価格もパリティを上回る転換開始時と,売買高が少なく転換社債価格がパリティ前後である転換進捗時とでは,上記ケースの蓋然性が異なるという結果を得た。また,算出に利用するモデルは異なるものの,計算される転換社債「理論価格」に比べて現実価格は低すぎるという傾向が指摘されてきた。そこで,無リスク裁定機会が見られるかどうかを検出し,特定のモデルに依存しない形で転換社債および株式市場のパフォーマンス評価を行なった。その結果,売買委託手数料や有価証券取引税を考慮した上でも,無リスク裁定機会と思われるケースが存在し,それらはバブル期後半から最近までまんべんなく分布していることがわかった。ただし,これら裁定機会から利益を得るためには,当初証拠金や株価が一時的にせよ意図と反対に動いたときに必要となる追加証拠金など,株式をショート(空売り)するためのコストおよびそのリスクを負担しなければならず,完全に「無リスク」の「裁定機会」があったとは言い切れない。追加証拠金という仕組みが完全な無リスク裁定を不可能にしていることを十分考慮して,再評価を行なうことが今後に残された課題である。
KAKENHI-PROJECT-08630092
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日・韓の科学技術活動の計量的比較-科学技術政策への政策科学的接近を目指して
本研究は研究代表者が提唱した「科学技術の発展サイクル」モデルを韓国に応用し、モデルの普遍性と科学技術政策の科学化の可能性を探ることを目的としている。このモデルは既に日本の戦後の科学技術活動に応用し、その適応性を検証している。「科学技術の発展サイクル」モデルは4相・2次元からなる二重構造モデルである。相は「製造」、「技術革新」、「知識の創造」および「科学技術基盤」から構成されている。次元は量と質である。各相は2次元の平面上で、開始期、推進期、浮上期、上昇期及び巡航期というS字曲線を描く軌跡に沿って発展する。量と質は絶対値ではなく、世界における割合という相対値を採用する。それは世界という舞台で発展を観察しなければ、真の発展を把握することはできないと考えるからである。本研究ではこのモデルを韓国の科学技術発展の過程に応用した。当初、日本と同じように適切な統計を入手できると考えた。それは韓国がOECDに加入するなど、この面の統計の充実に努力することが期待されたからである。しかし、一部については適切な統計を収集できたが、すべての変数については適切な統計の収集は困難であった。そこで関連する統計を多数収集し、「科学技術の発展サイクル」モデルの適応性を傍証によって明らかにした。次ぎに、韓国の科学技術に詳しい内外の専門家を対象に面接調査を実施し、論及し、モデルの適応可能性を探った。その結果、韓国の科学技術活動に関しても、モデルが適応できるとの確信を得た。それによれば、韓国の科学技術の「製造」相は浮上期の前期に、「技術革新」相は推進期の前期に、「知識創造」と「科学技術基盤」の両相は開始期にある。このような認識は韓国の科学技術政策をより科学的に推進する基礎的認識になり、科学的近接に大いに貢献することが期待される。本研究は研究代表者が提唱した「科学技術の発展サイクル」モデルを韓国に応用し、モデルの普遍性と科学技術政策の科学化の可能性を探ることを目的としている。このモデルは既に日本の戦後の科学技術活動に応用し、その適応性を検証している。「科学技術の発展サイクル」モデルは4相・2次元からなる二重構造モデルである。相は「製造」、「技術革新」、「知識の創造」および「科学技術基盤」から構成されている。次元は量と質である。各相は2次元の平面上で、開始期、推進期、浮上期、上昇期及び巡航期というS字曲線を描く軌跡に沿って発展する。量と質は絶対値ではなく、世界における割合という相対値を採用する。それは世界という舞台で発展を観察しなければ、真の発展を把握することはできないと考えるからである。本研究ではこのモデルを韓国の科学技術発展の過程に応用した。当初、日本と同じように適切な統計を入手できると考えた。それは韓国がOECDに加入するなど、この面の統計の充実に努力することが期待されたからである。しかし、一部については適切な統計を収集できたが、すべての変数については適切な統計の収集は困難であった。そこで関連する統計を多数収集し、「科学技術の発展サイクル」モデルの適応性を傍証によって明らかにした。次ぎに、韓国の科学技術に詳しい内外の専門家を対象に面接調査を実施し、論及し、モデルの適応可能性を探った。その結果、韓国の科学技術活動に関しても、モデルが適応できるとの確信を得た。それによれば、韓国の科学技術の「製造」相は浮上期の前期に、「技術革新」相は推進期の前期に、「知識創造」と「科学技術基盤」の両相は開始期にある。このような認識は韓国の科学技術政策をより科学的に推進する基礎的認識になり、科学的近接に大いに貢献することが期待される。本研究の根幹になる「科学技術発展サイクル」モデルをより精緻なものにした。この発展モデルでは、(a)製品製造、(b)技術開発、(c)科学的発見、(d)科学的基盤、という各フェーズで、その質と量とが共通の軌跡で発展するというものである。軌跡は、(1)まず低位のレベルで量が拡大し、質は低位に留まる開始期、(2)次いで質が向上する向上期、(3)量と質が共に向上し、質のレベルが量のレベルを凌駕する浮上期、(4)質量共に向上する量の増加が質の増加を上回る上昇期、(5)質の大幅な増加はみられぬものの量は順調に増大する巡航期、に分けられる。この軌跡は4つのフェーズに共通にS字カーブを描くと推定される。日本の場合、最近20年の期間を統計データで検証し、それ以前は歴史的事項の検討により検証した。科学技術政策との関係では、例えば科学的基盤ではその開始期に(1960年代初め)、科学技術会議の第1号答申が理工系の学生定員の大幅な増加を提言し、それが実現されたように時宜にあった政策が打ち出されている。その一方で、論文やその引用でモデル化した科学的発見のフェーズではかなり向上がみられるものの、国際的なレベルには未だしであり、適切で強力な政策の必要性を明示するものもある。一方、近年韓国において科学技術に関する各種統計が整備されつつあり、計量的に日本と同様の分析ができるようになってきた。特にOECDへの加盟が認められ、各種統計においてOECDの基準に合わせた統計が収集、発表されようとしている。
KAKENHI-PROJECT-09680416
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09680416
日・韓の科学技術活動の計量的比較-科学技術政策への政策科学的接近を目指して
そこでこの研究では、第2に日・韓両国が(国際的比較において)どの発展位置にあるかを検証することを目的に、韓国の統計を収集した。しかし、国際機関や国際データベースが収集した統計を除き、日本の場合のように長期にわたって収集することは困難であり、最近のものを分析中である。本研究の目的は、科学技術の発展サイクルモデルに基づいて、日本と韓国の科学技術活動を比較し、それによって両国の科学技術政策に接近するものであった。科学技術発展サイクルとは一国の科学技術活動を製造、技術開発、科学的発見、科学技術基盤という4相から分析するものである。各相は量と質を示す2次元で構成され、各相ともS字曲線で成長する、というものである。さらに、一国の科学技術の発展は一般に予想されているように科学技術基盤から始まるものではなく、製造から牽引され、次いで技術開発、化学的発見、科学技術基盤へと進むものである。日本についてはそのサイクルを定量的に測定し、モデルを検証することができた。製造では量の指標に第二次産業の生産額(の世界におけるシェア、以下同じ)、質の指標にハイテク製品の生産額を採用した。技術開発では各米国特許庁に対する特許登録数とその被引用数、科学的発見では論文発表数とその被引用数、科学技術基盤では理工学部学生数とその博士数を採用した。これらは日本だけでなく米独英仏の統計を使用し、最近20年間の日本の科学技術活動がほぼ仮説モデルのように挙動することを明らかにした。韓国については、様々な統計を資料を入手したが、上記モデルを完全に検証できるようなものを入手することはできなかった。しかし、断片的ではあるものの、製造業のたち上げから、技術開発、科学的発見、科学技術基盤の整備へと進むことは予想された。日本との比較で言えば、各相とも数年の遅れがある(あくまでも平均的である)と推定される。しかし、後の相になる程遅れは逆に短いと推定される。さらに、このモデルの視点から両国の科学技術政策を眺めると、日本は最近基礎シフトが行き過ぎではなかったか、韓国は科学と技術との連携が薄いのではなかったか、と評価される。今後のより精密な分析がさらに必要と考えられる。
KAKENHI-PROJECT-09680416
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振動覚を利用した動的かつ方向性を有する警告情報提供手法の開発
高齢者の逆走等の事故対策として、これまでの視覚中心に加え、動的かつ方向性を有す振動による警告装置を開発するため、(1)振動装置を試作し、学内道路に設置し、平成24年度に予備実験、25年度に他方式との走行比較実験を行った。(2)二回の実験の結果、振動の高さは軽自動車で2cm、大型車で4cmが最適であるとの結果を得た。そこで、最終的に実現可能なシステム構成も検討した。(3)情報交換の場として、ITSシンポジュームやITS世界会議、更には学内講演会等を立ち上げ、複数の外部講師を招聘し、意見交換を行った。本研究の目的は高速道路の逆走行防止や中山間道路等の狭隘道路の行き違いの安全確保の手法として、動的かつ方向性を有した振動を通じて警告する手法を新たに開発することである。そのため、特に問題となっている高齢者による高速道路の逆走事故の実態と、既に導入されている「逆走防止装置」の課題や事故の実態及び情報提供装置の実態等を調査した。一方、研究分担者の朴客員教授によりMRIデータと運転との関係を調査した。これらの結果、これまで次の諸点が明白となった。1ドライバーへの路上設備を通じた情報提供は殆どが視覚に訴えるものである。2脳の白質病変と運転の反応速度との関連がある程度推定できた。3逆走者への警告は表示板を通じた視覚情報であるが、一部には見落としがある。そこで、今後の超高齢社会の運転者への情報提供、特に逆走等の警告に関しては、視覚以外の提供が不可欠であると考えられ、警告等の非常に重要な情報提供には振動覚を通じた手段は重要と考えられる。24年度に次の「可動式車両減速ハンプ」による実験機器を試作し、校内実験を行った。機器の幅1,000mm、奥行き400mmのU字溝状に手動で高さを変更可能な構造とすること、最大40mmのハンプ状突出部が構成されていること、およびハンプの走行方向に順方向と逆方向で角度を付けた構造とした。又、実験は普通車と大型車とし、被験者は高齢者5名で実施した。評価はドライバーのアンケートで行ったが、アクセルとブレーキの反応を計測するATRで開発の"オブジェ"とドライバーの視線を計測するSmart Eye社製「Proシステム」でも試行的に行った。結果的に大型車は最低40mmは必要である事を確認出来た。又、「Proシステム」は振動による影響があるが、その前後の反応を見ることが出来ることを確認した。本研究の目的は高速道路の逆走防止や中山間道路等の狭隘道路の行き違いの安全確保の手法として、動的かつ方向性を有した振動を通じて警告する手法を新たに開発する事である。そのため、23年度は仕様検討と試作の準備、24年度は校内で試行的に走行実験を行った。又、研究分担者の朴客員教授によるMRIデータとの関連等も調査した。そこで最終年度である25年度は昨年度試作した装置を使用し、複数のドライバーにて検証をおこなった。その際、朴客員教授の協力を得て、MRI被験者で高齢者二名も実験に参加した。その結果、大型車は4cm、小型車は2cmの高さで警告を与える事を再確認した。一方、実用化システムとして、センサーと提供装置のあり方を検討し、概略仕様を決めた。これまでの逆走装置はセンサーによる課題もあり、その点も実用的なサーモセンサーに注目し、精度等を確認した。高齢者の逆走等の事故対策として、これまでの視覚中心に加え、動的かつ方向性を有す振動による警告装置を開発するため、(1)振動装置を試作し、学内道路に設置し、平成24年度に予備実験、25年度に他方式との走行比較実験を行った。(2)二回の実験の結果、振動の高さは軽自動車で2cm、大型車で4cmが最適であるとの結果を得た。そこで、最終的に実現可能なシステム構成も検討した。(3)情報交換の場として、ITSシンポジュームやITS世界会議、更には学内講演会等を立ち上げ、複数の外部講師を招聘し、意見交換を行った。本研究の目的は高速道路の逆走行防止や中山間道路等の狭隘道路の行き違いの安全確保の手法として、動的かつ方向性を有した振動を通じて警告する手法を新たに開発することである。そのため、23年度は仕様検討とその仕様に基づく機器試作の準備や評価手法の検討及び被験者事前検査を行なった。特に問題となっている高齢者による高速道路の逆走事故はその実態と、既に導入されている「逆走防止装置」の課題や事故の実態及び情報提供装置の実態等を調査した。又、海外の事例もITS世界会議(2011年10月16日20日、於米国オーランド)への参加等を通じ情報を得た。一方、朴客員教授によりMRIデータと運転との関係を調査した。これらの調査から幾つかの事が明確になった。(1)ドライバーへの路上設備を通じた情報提供は殆どが視覚に訴えるものである。(2)脳の白質病変と運転の反応速度との関連がある程度推定できた。(3)逆走者への警告は表示板を通じた視覚情報であるが、一部には見落としがある。そこで、今後の超高齢社会の運転者への情報提供、特に逆走等の警告に関しては、視覚以外の提供が不可欠であると考えられる。視覚以外では聴覚と振動覚があり、警告等の非常に重要な情報提供は振動覚は重要と考えられる。
KAKENHI-PROJECT-23656322
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23656322
振動覚を利用した動的かつ方向性を有する警告情報提供手法の開発
車両運転時、運転者が振動を感じるのは、橋の継ぎ目が殆どであり、それ以外の場所では振動を感じる事は稀で情報量が多い視覚や聴覚に比べて有効であると考えられる。そこで、これらを確認する実験機器の仕様を検討した。当面は高速道路の逆走車への警告を考え、正常運転車へは振動を与えなく、反対方向のみが感じる、方向性を持たせた機器を考える。次いで、昇降機能付の動的な装置を検討する。可動式車両減速ハンプを試作し、校内で走行実験を行い、大型車の場合感知高さは最低40mmは不可欠である事を確認出来た。又、評価方法としてブレーキとアクセルの反応を計測する"オブジェ"に加え、試行的に行った視線の反応も限定的ではあるが、使用可能を確認した。当初予定は二年度の実験に向けた諸準備を考えており、そのため関係者に対する調査等を行い、かつ実験機器の仕様等も決定した。本研究では最終年度なり、纏めと外部発表を考える。発表は今年東京で開催のITS世界会議の場を考える。既に「Driving behavior of elderly driversand their safety countermeasures」と題した企画セッションを立ち上げており、本セッションを通じ世界に発信を行う。一方、成果を新たに採択を受けた他の研究への反映を考える。一方、実用化を考え、NEXCO西日本と協力し、現地実験を推進する。実験装置を試作し、校内で実験を行う。その際、朴客員教授の行うMRIデータに基づく、白質病変の程度と振動覚の関連も調査するため、何人かの被験者を選択する。基礎的データ取得後、より実道に近い状況で実験を行う。実験装置の可動式車両減速ハンプは可動は手動で行っているが、実用化を考えた際の機器の仕様を検討する。その際、逆走装置への適用としての条件を調査する。(反応速度や設置環境条件)又、そのための簡易試作を行う。一方、調査のための関係部署への出張も行う。主に、実験装置の試作費用と実験の諸費用(車使用料特に大型、被験者への謝金等)に充当する。
KAKENHI-PROJECT-23656322
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追突警報システムの利便性向上による追突防止効果促進に必要な警報タイミングの考察
追突事故の低減効果を高めるために必要な警報タイミングの在り方について,先行車への追従状態,ドライバの運転状態を考慮した実験検討を踏まえ,理論的整備を行った.ドライバの普段の運転行動を,脇見運転時の警報タイミングの設計に組み込む手法を提案した.また,先行車との車間時間(THW)が長い上に,脇見,ハンズフリー携帯電話によって運転への注意が削がれている場合には,警報による追突リスクの低減効果が高めるために,短いTHWとは異なる警報呈示閾値を用いる等によって早いタイミングの警報を呈示する必要があることを示した.追突事故の低減効果を高めるために必要な警報タイミングの在り方について,先行車への追従状態,ドライバの運転状態を考慮した実験検討を踏まえ,理論的整備を行った.ドライバの普段の運転行動を,脇見運転時の警報タイミングの設計に組み込む手法を提案した.また,先行車との車間時間(THW)が長い上に,脇見,ハンズフリー携帯電話によって運転への注意が削がれている場合には,警報による追突リスクの低減効果が高めるために,短いTHWとは異なる警報呈示閾値を用いる等によって早いタイミングの警報を呈示する必要があることを示した.本研究の主要な目的は,追突警報の利便性を向上させるための技術を開発するために,ドライバの運転行動の特徴を警報タイミングの設定方策に適応する方法を構築した上で,警報に対するドライバ反応を検証することである.平成21年度については,先行車追従中の視覚的なディストラクション(脇見)の有無および脇見中の先行車との追突に対する緊急性の違いによって,追突警報の有用性,主観的な煩わしさ等にどのような影響が生じるかを運転シミュレータによる実験により検証した.具体的には,まず始めに,12名のドライバについて,普段(警報呈示なし)の先行車追従時における車間時間(THW)を計測した.次に,個々のドライバについて,THWの分布に対する20%タイル値を先行車追従時の運転行動の特徴量として抽出した.さらに,追突警報のタイミング設定するにあたり,これらの値のドライバ全体での平均を,警報アルゴリズムの1つであるStopping Distance Algorithmの警報反応時間に関するパラメータの値として適用した.最後に,今回設定した警報(聴覚)に対する追突リスクの低減効果,煩わしさ等への影響を検証した.その結果,同じタイミングの警報であっても,脇見の有無や脇見中の先行車の走行状態によって,追突リスクの低減効果および主観的な煩わしの評価に違いが生じることを明らかにした.具体的には,今回設定したタイミングの警報であれば,脇見中に先行車が急減速するような場面であっても,追突リスクを低減できる可能性を示した.ただし,脇見のない条件で走行している場合には,脇見をしている状態と同じタイミングで呈示される警報を煩わしいと感じる可能性があることを確かめた.これらの結果は,警報による追突リスクの低減効果を確保すると同時に,警報に対する煩わしさを低減させる上で,ドライバの状態に配慮した警報タイミングの設定方策の必要性を示唆している.本研究では,ドライバが普段以上に車間時間をあけて追従走行(3秒4秒程度)している状況に焦点をあて,追突の緊急性をパラメトリックにかえた場合,すなわち,追従中の車間時間,先行車減速度の条件をかえたことによって,脇見の仕方がどのように異なるかを運転シミュレータによる実験により検討した.さらに,これまで検討してきたSDAにもとづく追突警報を呈示した場合の追突リスクへの影響を検討した.その結果,以下の点を明らかにした.・短い車間時間で追従している場合と比較して,長い車間時間で走行している場合に脇見の継続時間が長くなり,結果として先行車の減速に対する反応が遅れる可能性がある.・今回の実験で用いた警報ロジックによって警報を呈示した場合,警報呈示による脇見の継続時間への影響は,先行車追従中の車間時間によって異なる可能性がある.すなわち,車間時間が1.6秒程度と比較的短い状態で追従走行している場合には,警報呈示により脇見の時間が短くなる.一方,車間時間が3.0秒程度以上の場合には,警報呈示によって,脇見時間を著しく短くする効果は小さいものの,警報が呈示されない状況と比較して,極端に長い脇見(例えば4秒以上)を抑制できる可能性がある.・脇見状態で先行車が急減速する状況について,本実験で用いた警報ロジックによって警報を呈示した場合,追突リスクを低下させる効果は,比較的短い車間時間(1.6秒程度)で先行車に追従していた条件において顕著となる.長い車間時間で追従している状況であっても,そのことによって長い脇見が誘発され,先行車の急な減速に対して追突リスクを高める可能性があることを実験的に明確化させたことに本研究の意義がある。また,本研究の結果から,追突警報に有効性を確保する上で,追突の緊急性に応じて警報ロジックを調整する必要性が示唆される.本研究では,先行車追従時の車間時間(THW)が長く(4秒程度),追突までの時間的な緊急性が比較的低い走行場面に着目し,追突の緊急性をパラメトリックにかえた場合,すなわち,追従中のTHW,先行車減速度の条件の違いによって,ハンズフリー携帯電話での会話によるドライバの減速行動,追突リスクへの影響がどのように異なるかを運転シミュレータによる実験により検討した.さらに,これまで検討してきたStopping Distance Algorithm(SDA)にもとづく追突警報を呈示した場合の追突リスクへの影響を調査した.
KAKENHI-PROJECT-21710175
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追突警報システムの利便性向上による追突防止効果促進に必要な警報タイミングの考察
その結果,以下の点を明らかにした.・運転中の携帯電話による会話に起因した注意の低下度合いが大きくなるに従って,先行車が減速する場面におけるブレーキ反応時間の遅れが大きくなる傾向にある.先行車追従時のTHWが比較的長い(4秒)場合にこの傾向が顕著であり,また,ブレーキ反応時間の遅れの個人差が顕在化する可能性があることを明らかにした.・今回の実験で呈示したSDAにもとづく警報について,先行車追従時のTHWが比較的短い(2秒)場合には,警報が呈示されることによって,警報が呈示されない条件で生じやすい追突回避のためのブレーキ反応時間が長くなる頻度を,抑制できる可能性があることを確かめた.また,警報呈示によりドライバの個人差に起因した追突リスクのばらつきを抑制できることを確かめた.・比較的長いTHWで先行車に追従している場合には,警報による減速行動への影響および追突リスクの低減効果は小さく,その結果として警報の有用性も低い評価となる.この結果から,ドライバの安全性を向上させるためには,比較的長いTHWで先行車に追従している条件に加え,ドライバが携帯電話等で会話をしている状況であるならば,比較的短いTHWで追従走行している時とは異なる警報呈示のロジックやパラメータの値を設定することによって,警報タイミングを早める必要性が示唆される.
KAKENHI-PROJECT-21710175
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チロシンリン酸化酵素関連分子の遺伝子ターゲティング法によるがん化分子機構の解析
1.p53とFynの二重遺伝子欠損マウスの作製とその解析:遺伝子ターゲティング法により得たp53とFyn欠損マウスの交配により、p53とFynを二重に欠損させたマウス作製を行った。その結果、p53欠損マウスでは全個体(20例)が生後7ヶ月齢までに全てがん発症により死亡したのに対し、p53とFynを二重に欠損させたマウスではがんの発症が6ヶ月齢をすぎても認められず、p53欠損によるがん発症特に胸腺腫発症にFynが重要な役割を果たしていることが明らかとなった。p53欠損による胸腺腫においてFynが過剰発現してがん化を引き起こすことが考えられたが、Fynの発現はむしろ胸腺腫細胞では減少していた。また、Fyn欠損個体では約1/10が突然死するが、興味深いことにp53とFynを二重に欠損させたマウスではこの傾向が高まり、7ヶ月齢までに約半数の個体が突然死した。2.抗Fynモノクローナル抗体の作製:我々は本年度、新たにFynに対するモノクローナル抗体を作製することに成功し、その抗体を用いてプロB細胞中での細胞増殖、分化過程におけるFynの局在を西川等との共同研究により明らかにした。その結果、Fynが細胞増殖の際に収縮環や紡錘体上に存在していることを明らかにした。また、Fyn欠損プロB細胞ではIL-7増殖下において細胞分裂が収縮環がくびれる際に止まることが明らかとなり、実際に細胞増殖過程でFynが機能していることが確かめられた。3.Fyn結合分子の解析:Fynが実際にがん発症や細胞増殖の際にどの様な細胞内情報伝達系と関連し機能するかを明らかにする目的で、Fynと結合する分子の単離を行っている。FynのSrcファミリー間で保存されていない領域、SH2、SH3と結合する分子を酵母2ハイブリッド系を用いて単離した。その結果、現在までにSrcファミリーと結合することが報告されているhnRNPが得られた他、4種類の新規分子の単離に成功した。現在解析を進めている。本研究により、チロシンリン酸化酵素のFynが実際のp53欠損によるがん発症に関連することを明らかにすることができた。今後の解析により、がん発症の初期過程での分子機構の解明が期待される。1.p53とFynの二重遺伝子欠損マウスの作製とその解析:遺伝子ターゲティング法により得たp53とFyn欠損マウスの交配により、p53とFynを二重に欠損させたマウス作製を行った。その結果、p53欠損マウスでは全個体(20例)が生後7ヶ月齢までに全てがん発症により死亡したのに対し、p53とFynを二重に欠損させたマウスではがんの発症が6ヶ月齢をすぎても認められず、p53欠損によるがん発症特に胸腺腫発症にFynが重要な役割を果たしていることが明らかとなった。p53欠損による胸腺腫においてFynが過剰発現してがん化を引き起こすことが考えられたが、Fynの発現はむしろ胸腺腫細胞では減少していた。また、Fyn欠損個体では約1/10が突然死するが、興味深いことにp53とFynを二重に欠損させたマウスではこの傾向が高まり、7ヶ月齢までに約半数の個体が突然死した。2.抗Fynモノクローナル抗体の作製:我々は本年度、新たにFynに対するモノクローナル抗体を作製することに成功し、その抗体を用いてプロB細胞中での細胞増殖、分化過程におけるFynの局在を西川等との共同研究により明らかにした。その結果、Fynが細胞増殖の際に収縮環や紡錘体上に存在していることを明らかにした。また、Fyn欠損プロB細胞ではIL-7増殖下において細胞分裂が収縮環がくびれる際に止まることが明らかとなり、実際に細胞増殖過程でFynが機能していることが確かめられた。3.Fyn結合分子の解析:Fynが実際にがん発症や細胞増殖の際にどの様な細胞内情報伝達系と関連し機能するかを明らかにする目的で、Fynと結合する分子の単離を行っている。FynのSrcファミリー間で保存されていない領域、SH2、SH3と結合する分子を酵母2ハイブリッド系を用いて単離した。その結果、現在までにSrcファミリーと結合することが報告されているhnRNPが得られた他、4種類の新規分子の単離に成功した。現在解析を進めている。本研究により、チロシンリン酸化酵素のFynが実際のp53欠損によるがん発症に関連することを明らかにすることができた。今後の解析により、がん発症の初期過程での分子機構の解明が期待される。
KAKENHI-PROJECT-07273271
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07273271
分子マーカーを用いた本州中部高山帯フロラにおける分断生物地理学的証拠の探索
本研究の目的は、分子マーカーを用いて日本の本州中部高山帯に生育する「高山植物」の分布変遷の歴史を明らかにすることである。今年度は本研究課題の最終年度ということで、過去3年間の研究をまとめて国際植物学会議(IBC)において発表を行った。その内容についてはTaxon誌に掲載予定である。また本研究で解析を行った23分類群の高山植物の葉緑体DNAの種内多型に関するデータは、Acta Phytotaxonomica et Geobotanica誌において短報としてまとめた。本研究において明らかになった最も興味深い結果は、ミネズオウやトウヤクリンドウ、ハクサンイチゲ、ミヤマタネツケバナ、エゾシオガマの5分類群において、本州中部山岳と北方地域の集団間において遺伝的分化が見られたことである。この結果は先行研究であるヨツバシオガマやエゾコザクラの解析結果と共通するパターンであり、このことは本州中部地域における高山植物のレフュージア仮説を強く支持するものである。上記以外の種では、種内多型がほとんど見られないか、多型は多くても異なるパターンであった。これらの結果が何を意味しているのかについては今後の研究課題である。一方、本州中部内における葉緑体DNAハプロタイプの分布パターンは、種によって様々であった。それらを類型化するにはまだ早計ではあるが、いくつかの興味深いパターンが観察された。一つは日本海側と太平洋側の山岳の間での遺伝的分化を示すもの、もう一つは南アルプス・八ヶ岳と飯豊山の集団の間に共通する形質を示すパターンである。本州中部山岳域は面積的には小さいながらも、その成立過程や地形発達史、気候環境において山岳ごとに大きく異なる。そうした要因を受けて多くの高山植物の分布拡大と縮小がくり返されたものと想定される。今後より多くの高山植物の解析データを蓄積していくことが望まれる。本研究の目的は、分子マーカーを用いて日本の本州中部高山帯に生育する「高山植物」の分布変遷の歴史を明らかにすることである。今年度は、主に解析試料のサンプリングおよび実験設備の整備を行い、データを効率よく出せるような体制作りを行った。夏季には本州中部および東北、北海道の12山岳の集団から高山植物32種類(16科23種9変種)を対象にDNA解析用のサンプリング調査を行った。また研究室にDNAシークエンサー(ABI PRISM 3100-Avant Genetic Analyzer (Applied Biosystems社))を導入し、DNAの塩基配列データが出せる体制が整えることができた。現在、葉緑体DNAのtrnT-trnFの遺伝子間領域の塩基配列をもとに集団間の遺伝的変異を検討している。その結果、チングルマでは変異が検出されなかったが、その他の種では集団間変異が検出された。エゾシオガマ、ミネズオウ、イワヒゲ、ミヤマダイコンソウなどでは比較的多くの変異が検出された。ミヤマタネツケバナ、クモマスズメノヒエ、タカネヨモギ、シナノキンバイ、イワスゲ、ウサギギクなどでは比較的変異は少なかった。さらに集団間変異の検出された種の中で、エゾシオガマ、ミネズオウ、ミヤマタネツケバナなどでは明瞭な地理的構造が認識された。各種とも本州中部の集団と北方地域との遺伝的分化が見られ、さらに前2種では本州中部内においても地理的構造が認められた。エゾシオガマでは(大雪山、飯豊山)(白馬岳、白山)(木曽駒ヶ岳、赤石岳)の3グループに、ミネズオウでは(大雪山、飯豊山)(白馬岳)(八ヶ岳、赤石岳)の3グループに分かれる形質が観察された。本解析結果については3月の日本植物分類学会広島大会にて発表予定である。来年度は解析する集団数や領域(核マーカーも検討)を増やし、種間で見られる遺伝的な地理的構造を比較し、共通パターンが見られるかどうかを検討する予定である。本研究の目的は、分子マーカーを用いて日本の本州中部高山帯に生育する「高山植物」の分布変遷の歴史を明らかにすることである。今年度は、昨年度予備的な解析を行った種から23種を対象種として絞り、より詳細な解析を行うことを主眼に研究を進めた。夏季には各種の解析集団数を増やすために本州中部および東北、北海道の11山岳のDNA解析用のサンプリング調査を行った。葉緑体DNAのtrnT-trnFの遺伝子間領域、rpl16イントロン領域の塩基配列約2000bpの情報をもとに集団間の遺伝的変異を調査した。その結果、葉緑体DNAハプロタイプの分布は種によって様々なパターンが認識されたが、大きくみると6種類のパターンに区別することができた。例えば、ミネズオウやトウヤクリンドウ、イワスゲなどでは本州中部の集団と北方地域との遺伝的分化が見られ、さらに本州中部内においては日本海側と太平洋側の集団で地理的構造が認められた。またチングルマやミヤマダイコンソウでは、東北地方の飯豊山と本州中部の南アルプス・八ヶ岳の集団と同じハプロタイプもしくは共通の形質を有していた。一方、ミヤマキンバイやミヤマタネツケバナでは本州中部の集団と北方地域との間で明瞭な遺伝的分化が見られなかった。北方地域で見られるタイプが本州中部内の北アルプスでも観察された。またシナノキンバイやイワヒゲなどでは、北方地域で見られるタイプが本州中部の北アルプスと南アルプスのどちらでも観察された。
KAKENHI-PROJECT-15687003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15687003
分子マーカーを用いた本州中部高山帯フロラにおける分断生物地理学的証拠の探索
以上のように、本州中部における葉緑体DNAハプロタイプの分布は種によってかなり異なっているものの、いくつかの共通パターンを認識することができた。分断生物地理学的な観点から、このような種を越えた共通パターンには何らかの外的な要因が関わっているものと推測される。具体的な要因については今後考察を進めたい。現在、さらなる解析として、本州中部山岳間の関係を推定するためにブルックス最節約法(BPA)および成分分析法(component analysis)などを試みており、その結果については3月の日本植物分類学会で発表する予定である。本研究の目的は、分子マーカーを用いて日本の本州中部高山帯に生育する「高山植物」の分布変遷の歴史を明らかにすることである。今年度は本研究課題の最終年度ということで、過去3年間の研究をまとめて国際植物学会議(IBC)において発表を行った。その内容についてはTaxon誌に掲載予定である。また本研究で解析を行った23分類群の高山植物の葉緑体DNAの種内多型に関するデータは、Acta Phytotaxonomica et Geobotanica誌において短報としてまとめた。本研究において明らかになった最も興味深い結果は、ミネズオウやトウヤクリンドウ、ハクサンイチゲ、ミヤマタネツケバナ、エゾシオガマの5分類群において、本州中部山岳と北方地域の集団間において遺伝的分化が見られたことである。この結果は先行研究であるヨツバシオガマやエゾコザクラの解析結果と共通するパターンであり、このことは本州中部地域における高山植物のレフュージア仮説を強く支持するものである。上記以外の種では、種内多型がほとんど見られないか、多型は多くても異なるパターンであった。これらの結果が何を意味しているのかについては今後の研究課題である。一方、本州中部内における葉緑体DNAハプロタイプの分布パターンは、種によって様々であった。それらを類型化するにはまだ早計ではあるが、いくつかの興味深いパターンが観察された。一つは日本海側と太平洋側の山岳の間での遺伝的分化を示すもの、もう一つは南アルプス・八ヶ岳と飯豊山の集団の間に共通する形質を示すパターンである。本州中部山岳域は面積的には小さいながらも、その成立過程や地形発達史、気候環境において山岳ごとに大きく異なる。そうした要因を受けて多くの高山植物の分布拡大と縮小がくり返されたものと想定される。今後より多くの高山植物の解析データを蓄積していくことが望まれる。
KAKENHI-PROJECT-15687003
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シングルチップ型時空間マッピングデバイスの開発とその応用
2回の電気光学偏向動作に基づくシングルチップ型時空間マッピングシステムを開発した。擬似速度整合型電気光学偏向器を用いて5psの時間分解能を初期のシステムにおいて実証した。応用として、光周波数コムの形状を光ビーム形状によりデザインすることのできるシステムを提案し、実証した。デバイスの改良を行い、16.25GHzの間隔、240GHzの幅のガウス型光周波数コムの生成を実証した。2回の電気光学偏向動作に基づくシングルチップ型時空間マッピングシステムを開発した。擬似速度整合型電気光学偏向器を用いて5psの時間分解能を初期のシステムにおいて実証した。応用として、光周波数コムの形状を光ビーム形状によりデザインすることのできるシステムを提案し、実証した。デバイスの改良を行い、16.25GHzの間隔、240GHzの幅のガウス型光周波数コムの生成を実証した。本研究は、本研究者が独自に提案し、実現してきた超高速電気光学偏向による光信号の時空間マッピングを活用した新しい光制御手法の確立に挑戦するものである。従来から精力的に研究されてきた「光波の周波数軸を空間で制御」する手法に対し、本研究では「光波の時間軸を空間で制御」する新しい手法を提案し、今までになかったアプローチとなる光波の高速性と空間的並列性の両者を複合的に生かした光情報処理技術への展開を狙う。平成21年度には、以下に上げる研究成果を得た。1.時空間マッピングデバイスのシングルチップ化に成功した。ここでは、一つの電気光学結晶に二つの超高速電気光学偏向器を作りこみ、光波と変調信号との相互作用長を調整することで、線形時空間マッピングに必要となる所望の動作を実現することができた。2.開発した線形時空間マッピングデバイスの特性評価を行い、実験と理論との比較を行った。得られた時間分解能は理論から予測されるものと一致し、2ps程度であった。3.光ビーム形状の空間制御による光周波数コムの制御の手法を提案し、その動作の理論解析を行った。また2psの時間分解能を有する線形時空間マッピングデバイスを用いて、ガウス型の光周波数コムの生成を実証した。本研究では,10GHz以上の周波数で動作する超高速光偏向動作に其づくシングルチップ型時空間マッピングデバイスを開発し、これを用いた新しい光制御手法を開柘することを目的としている。従来技術では光信号の時間的特性を時間軸で制御するのに対し、本研究で新た開柘した手法では、空間軸に線形マッピングされた時間軸を、ピンホールやスリットをはじめをした空間光学素子を用いて制御する。この手法においては、レンズによる空間Fourier変換が時間軸と周波数軸との間のFourier変換と等価となることを明らかにし、光波のスペクトル制御を光ビーム形状の操作により実証した。平成22年度では,主に以下の研究成果を得た.1.シングルチップ型時空間マッピングデバイスの開発折り返しマイクロストリップ線路を変調電極としたデバイスを開発した。変調のために相互作用長を最適化することで、線形時空間マッピングを実現するデバイスの開発に成功した。2.空間フィルタを用いた光周波数コム形状の制御光信号の時間軸が空間軸にマッピングされる面(マッピング面)にスリットを一つ配することで光周波数コムを発生した。また、マッピング面の前Fourier変換面に置く空間フィルタにより光周波数コムのエンベロープがリアルタイムで制御可能であることを示した。3.スリットアレイによる16.25GHzパルスの8多重化マッピング面に8つの空間スリットをアレイ状に配することで、16.25GHz(変調周波数)の基本クロックが8逓倍された(繰り返し周波数130GHz)パルス列の生成に成功した。
KAKENHI-PROJECT-21760039
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内分泌攪乱作用を中心とした歯科用材料の生物学的安全性評価に関する研究
内分泌攪乱化学作用を中心とした歯科用材料の安全性評価を行うに先立ち、歯科材料と最も関係の深いビスフェノールA(BPA)の高感度分析法を検討し、BPAを原材料として合成されたポリカーボネートが歯科用材料として使われている矯正用ブラケット、暫間被覆冠、レジン歯、義歯床などについて分析を行った結果、ポリカーボネート(PC)は長期使用により材料中のBPAが増加し、唾液中えの溶出量も増加する可能性があること、溶出動態は検体によって異なっていることなどが示唆された。Bis-GMAをマトリックスレジンとして使用するフィシャーシーラントとコンポジットレジン硬化体から唾液中へのBPAの移行は検出限界以下であった。エストロゲン様作用についてレセプター結合試験、酵母Two-hybrid法、E-screen等によってin vitroスクリーニング試験を行った結果、従来代謝変換因子を加味しないin vitro試験で一定の判断がなされていた濃度が、代謝変換因子によって変化する可能性が示唆された。培養細胞による高度検出系としてはヒト由来培養細胞でレポータープラスミドを導入したHepG2細胞が、内分泌攪乱物質の掘る文様作用の検出系として有用であることが示された。78週齢の成熟雄ラットを用いた動物実験では、BPAの6日間経口投与を行った結果、BPAは成熟個体の精巣においても精子形成に何らかの影響を与える可能性が示唆された。内分泌攪乱化学作用を中心とした歯科用材料の安全性評価を行うに先立ち、歯科材料と最も関係の深いビスフェノールA(BPA)の高感度分析法を検討し、BPAを原材料として合成されたポリカーボネートが歯科用材料として使われている矯正用ブラケット、暫間被覆冠、レジン歯、義歯床などについて分析を行った結果、ポリカーボネート(PC)は長期使用により材料中のBPAが増加し、唾液中えの溶出量も増加する可能性があること、溶出動態は検体によって異なっていることなどが示唆された。Bis-GMAをマトリックスレジンとして使用するフィシャーシーラントとコンポジットレジン硬化体から唾液中へのBPAの移行は検出限界以下であった。エストロゲン様作用についてレセプター結合試験、酵母Two-hybrid法、E-screen等によってin vitroスクリーニング試験を行った結果、従来代謝変換因子を加味しないin vitro試験で一定の判断がなされていた濃度が、代謝変換因子によって変化する可能性が示唆された。培養細胞による高度検出系としてはヒト由来培養細胞でレポータープラスミドを導入したHepG2細胞が、内分泌攪乱物質の掘る文様作用の検出系として有用であることが示された。78週齢の成熟雄ラットを用いた動物実験では、BPAの6日間経口投与を行った結果、BPAは成熟個体の精巣においても精子形成に何らかの影響を与える可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-11307047
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11307047
Necdin/MAGE蛋白質によるニューロン死の制御機構
Necdin/MAGEファミリー蛋白質のニューロン死(アポトーシス)に及ぼす作用ついて解析し、以下の結果を得た。1.Necdinと類似蛋白質MAGE-G1(necdin-like 2)はニューロン死を誘発することが知られる転写因子E2F1と受容体p75の両者に結合して、ニューロンのアポトーシスを制御した。2.Necdinは神経成長因子NGF受容体であるTrkAとp75に結合して、NGFによって惹起される細胞内神経生存シグナル伝達系を増強した。3.Necdin遺伝子欠損マウスでは、NGFシグナル伝達系の減弱によって、NGF依存性知覚ニューロンのアポトーシスが増加していた。これらのマウスでは熱刺激に対する痛覚耐性の増加がみられた。4.Necdinはアポトーシス誘発作用をもつMAGE蛋白質MAGE-D1との結合を介してホメオドメイン蛋白質Dlx2と三者複合体を形成した。Dlx2は前脳GABA作動性ニューロン分化促進因子であるため、Necdin遺伝子欠損マウスでは前脳GABA作動性ニューロン数の減少が認められた。5.Necdin遺伝子欠損マウスの小脳顆粒細胞では、アポトーシス誘導因子E2F1の活性化とアポトーシスの増加がみられた。以上の結果、NecdinおよびNecdin類似MAGE蛋白質はニューロンのアポトーシスを抑制することによってニューロン生存を維持していることが明らかになった。これらの研究成果は、Necdinの関与が推定されているゲノムインプリンティング疾患プラダー・ウィリー症候群発症の分子機構を知る上で重要なものと考えられる。Necdin/MAGEファミリー蛋白質のニューロン死(アポトーシス)に及ぼす作用ついて解析し、以下の結果を得た。1.Necdinと類似蛋白質MAGE-G1(necdin-like 2)はニューロン死を誘発することが知られる転写因子E2F1と受容体p75の両者に結合して、ニューロンのアポトーシスを制御した。2.Necdinは神経成長因子NGF受容体であるTrkAとp75に結合して、NGFによって惹起される細胞内神経生存シグナル伝達系を増強した。3.Necdin遺伝子欠損マウスでは、NGFシグナル伝達系の減弱によって、NGF依存性知覚ニューロンのアポトーシスが増加していた。これらのマウスでは熱刺激に対する痛覚耐性の増加がみられた。4.Necdinはアポトーシス誘発作用をもつMAGE蛋白質MAGE-D1との結合を介してホメオドメイン蛋白質Dlx2と三者複合体を形成した。Dlx2は前脳GABA作動性ニューロン分化促進因子であるため、Necdin遺伝子欠損マウスでは前脳GABA作動性ニューロン数の減少が認められた。5.Necdin遺伝子欠損マウスの小脳顆粒細胞では、アポトーシス誘導因子E2F1の活性化とアポトーシスの増加がみられた。以上の結果、NecdinおよびNecdin類似MAGE蛋白質はニューロンのアポトーシスを抑制することによってニューロン生存を維持していることが明らかになった。これらの研究成果は、Necdinの関与が推定されているゲノムインプリンティング疾患プラダー・ウィリー症候群発症の分子機構を知る上で重要なものと考えられる。Necdinおよび類似MAGEファミリー蛋白質のニューロン死(アポトーシス)に及ぼす作用ついて解析し、以下のような結果を得た。1)脳発達障害発症機構に関与することが推定される三種のMAGE蛋白質(Necdin、MAGE-L2、MAGE-G1)のアポトーシス誘導因子E2F1への作用を検討したところ、NecdinとMAGE-G1はE2F1の転写活性化領域に結合し、E2F1によるアポトーシスを抑制した。一方、MAGE-L2はこれらの作用を示さなかった。2)NecdinとMAGE-G1は神経栄養因子受容体p75と結合した。また、NecdinやMAGE-G1の示すE2F1誘発性アポトーシス抑制作用は、p75を共発現させると減少し、その効果は神経成長因子NGFによって増強された。3)Necdinはアポトーシス誘発作用をもつMAGE蛋白質であるMAGE-D1と結合し、その作用を調節した。4)父性Necdin遺伝子を変異させたマウスでは、小脳顆粒細胞や脊髄後根神経節細胞でアポトーシスの促進がみられた。5)MAGEファミリー遺伝子はショウジョウバエでは一種類のみ存在した。遺伝子がコードする蛋白質は成虫複眼のニューロンに存在し、発現量が減少するとアポトーシスを起こした。上記の結果、NecdinおよびNecdin類似MAGEファミリー蛋白質はニューロンのアポトーシスに対して共通の機構が存在することが明らかになった。また、これらの蛋白質の機能の類似性や相違性は、ゲノムインプリンティング疾患であるプラダー・ウィリー症候群発症の分子機構を知る上で重要な知見と考えられる。Necdin/MAGEファミリー蛋白質のニューロン死(アポトーシス)に及ぼす作用について解析し、以下の結果を得た。1.Necdinの神経栄養因子シグナル伝達系に及ぼす作用を検討するため、神経成長因子NGFの二種の受容体であるTrkAとp75への結合を調べた。Necdinは両者に結合して、NGFによって惹起される細胞内シグナル伝達を増強した。2.Necdin遺伝子欠損マウスを作製し、NecdinのNGFシグナル伝達系へのin vivoでの作用を検討したところ、脊髄後根神経節のNGF依存性ニューロンのアポトーシスが増加していた。これらのマウスでは生後に熱刺激に対する痛覚感受性の低下が起こっていた。
KAKENHI-PROJECT-16300118
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16300118
Necdin/MAGE蛋白質によるニューロン死の制御機構
3.Necdinはアポトーシス誘発作用をもつMAGE蛋白質であるMAGE-D1と結合した。また、NecdinはMAGE-D1との結合を介してホメオドメイン蛋白質Dlx2と三者複合体を形成し、前脳GABA作動性ニューロンの分化を促進した。Necdin遺伝子欠損マウスでは、これらのニューロン数が減少していた。4.Necdin遺伝子欠損マウスの小脳では、アポトーシス誘導因子E2F1の発現と顆粒細胞のアポトーシスが共に増加していた。5.NecdinホモログであるショウジョウバエMAGEは複眼や中枢神経系に発現しており、その発現量をRNAiによって減少させるとアポトーシスを起こした。以上の結果、NecdinおよびNecdin類似MAGE蛋白質はニューロンのアポトーシスを抑制することによってニューロン生存を維持していることが明らかになった。また、この性質は、Necdinの関与が推定されているゲノムインプリンティング疾患プラダー・ウィリー症候群発症の分子機構を知る上で重要な知見と考えられる。
KAKENHI-PROJECT-16300118
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診療情報の保護と利活用 ━国民健康記録データベース構築を目指して
本年度は、オーストラリアの患者の診療情報から構成される国家レベルのデータベースMy Health Record(以下「MyHR」という。)システムに関して、現地調査を通して現状と課題を検討した。オーストラリアでの最初の国家レベルの電子患者医療記録システムとして2012年にスタートしたPersonally Controlled Electronic Health Recordsシステムは、オプトイン方式であったためか、患者、医療機関ともに10パーセント前後の参加率にとどまった。そこで2013年のレビューを経て、2015年11月27日、すべてのオーストラリア人のために一貫した生涯電子健康記録システムを継続的に運営するために、法律が改正されMyHR法2012(連邦法)という名称になった。参加方式に関しては、同法施行規則に則り、2016年6月中旬ー10月に、オーストラリア国内2地点でオプトアウト・トライアルが行われ、結果的にオプトアウト率は1.9%にすぎなかった。そこで政府は、住民の理解が得られたとして、2019年1月31日までにオプトアウトしなかった住民全員に対してMyHRを作成し、システムを運用することとした。この間、2018年11月26日、オーストラリア議会はMyHR改正(プライバシーの強化)法案を可決した。本改正は、MyHRを使用している者に対して、より強力なプライバシーとセキュリティの保護を求めるオーストラリアのコミュニティの要望に応えるものである。データ主体の治療目的を超えるMyHRの二次利用に関しては、2018年5月11日に連邦保健大臣が、MyHRデータの二次利用のための開示は実施計画の確定と枠組みのガバナンスの取り決めの確立を条件として、2020年から開始する予定である、と慎重な検討を重ねる姿勢を示している。オーストラリアにおいて実務担当者に話を聞く機会を持つことができたことで、事態の深刻さをよく理解することができた。患者の自己情報コントロール権を保護することは重要であるが、他方で、その保護を手厚くすればするほど、診療情報のデータベースとしての可用性の低下は防げないように思われた。患者の自己情報コントロール権を尊重することにより、診療情報データベースは患者の都合により完全な真実を反映するものではなくなり、臨床医は当該データベースだけからでは患者の現状を把握することが困難になる場合が生じ得る。医事法学を研究し、疫学研究を行う者として、患者の自己情報コントロール権と、精確な患者の診療情報を保管するデータベースの利益の調整を図るため、さらに考察を深めたい。これまでの調査から、患者、医療機関等の利害関係者との効果的なコミュニケーション、特にプライバシーが関わる利害関係者とのコミュニケーションは、単なる情報の提供以上のものでなければならないと思われる。そして、おそらく真の課題は、透明な責任ある法の執行にある。単に法律を整備するだけでは、国民や利害関係者らの支持を得るには不十分である。プロジェクト周辺の透明性の欠如と、これがデータ再利用に関する信頼を蝕むという結果が浮かび上がってくるように思われる。透明性を生み出す手段としての住民参加と、研究におけるデータ再利用の公的利益に関する意識を高めることは、利害関係者にとって非常に重要なテーマであると考えるようになった。そのためにオーストラリア政府は、多くの時間と予算を使ってきた。パブリック・エンゲージメントを含めた、各国の対応にも触れてみたい。、本年度は、オーストラリアの患者の診療情報から構成される国家レベルのデータベースMy Health Record(以下「MyHR」という。)システムに関して、オーストラリアの現状と課題について、主に法学的観点から検討した。オーストラリアの最初の全国レベルの電子健康記録システムとして2012年7月からスタートしたPersonally Controlled Electronic Health Records(以下「PCEHR」という。)システムは、オプトイン方式であったためか、患者、医療従事者ともに10パーセント前後という参加率にとどまった。そこで2013年11月ー12月のわずか6週間という短期間のロイル・レビューを経て、2015年11月27日、すべてのオーストラリア人のために一貫した生涯電子健康記録システムを継続的に運営するために、PCEHR法2012(連邦法)が改正されMyHR法2012(連邦法)という新しい名称となった。主な改正点は、オプトインからオプトアウト方式への転換であった。本法施行規則に従い、2016年6月中旬ー10月に、オーストラリア国内2地点でオプトアウトモデル・トライアルが行われた。このトライアルでは、2か所の居住者971,000人のうち、オプトアウトした者は1.9%であった。このトライアルの目的は、住民が自動的に作成されたレコードを持つことに肯定的であるかどうか、オプトアウトアプローチが医療提供者のシステム参加を増やすかどうかを検討することだった。この結果に伴い、2018年度中に、全国レベルでMyHRシステムが稼働する予定になっている。ところが、本システムの大きな目的の1つであった診療情報の研究等への二次利用に関しては、国内数か所で住民向けに積極的にコンサルテーションが行われてきたものの、その枠組みの公表は2018年6月まで延期されている。MyHRと呼ばれるオーストラリアの全国レベルの電子健康記録システムについて、その現状と課題に関して、主に法律学的側面から検討を加え、当該システムの基盤となっているMy Health Records Act 2012(Cth)の邦訳を試みるとともに、その法改正の状況、条文の関連性となお残っている問題点について検討することができた。しかしながら、当該システムの大きな目標の1つである診療情報の二次利用に関しては、その枠組みの公表が2018年6月にまで延期されることになった。そこで、詳細な検討は、次年度以降も引き続き行う必要性が生じた。今後の経過を継続的にフォローしてく予定である。
KAKENHI-PROJECT-17K03508
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K03508
診療情報の保護と利活用 ━国民健康記録データベース構築を目指して
本年度は、オーストラリアの患者の診療情報から構成される国家レベルのデータベースMy Health Record(以下「MyHR」という。)システムに関して、現地調査を通して現状と課題を検討した。オーストラリアでの最初の国家レベルの電子患者医療記録システムとして2012年にスタートしたPersonally Controlled Electronic Health Recordsシステムは、オプトイン方式であったためか、患者、医療機関ともに10パーセント前後の参加率にとどまった。そこで2013年のレビューを経て、2015年11月27日、すべてのオーストラリア人のために一貫した生涯電子健康記録システムを継続的に運営するために、法律が改正されMyHR法2012(連邦法)という名称になった。参加方式に関しては、同法施行規則に則り、2016年6月中旬ー10月に、オーストラリア国内2地点でオプトアウト・トライアルが行われ、結果的にオプトアウト率は1.9%にすぎなかった。そこで政府は、住民の理解が得られたとして、2019年1月31日までにオプトアウトしなかった住民全員に対してMyHRを作成し、システムを運用することとした。この間、2018年11月26日、オーストラリア議会はMyHR改正(プライバシーの強化)法案を可決した。本改正は、MyHRを使用している者に対して、より強力なプライバシーとセキュリティの保護を求めるオーストラリアのコミュニティの要望に応えるものである。データ主体の治療目的を超えるMyHRの二次利用に関しては、2018年5月11日に連邦保健大臣が、MyHRデータの二次利用のための開示は実施計画の確定と枠組みのガバナンスの取り決めの確立を条件として、2020年から開始する予定である、と慎重な検討を重ねる姿勢を示している。オーストラリアにおいて実務担当者に話を聞く機会を持つことができたことで、事態の深刻さをよく理解することができた。患者の自己情報コントロール権を保護することは重要であるが、他方で、その保護を手厚くすればするほど、診療情報のデータベースとしての可用性の低下は防げないように思われた。患者の自己情報コントロール権を尊重することにより、診療情報データベースは患者の都合により完全な真実を反映するものではなくなり、臨床医は当該データベースだけからでは患者の現状を把握することが困難になる場合が生じ得る。医事法学を研究し、疫学研究を行う者として、患者の自己情報コントロール権と、精確な患者の診療情報を保管するデータベースの利益の調整を図るため、さらに考察を深めたい。オーストリアの今後の展開もフォローしながら、次年度は、地域住民を巻き込んで、診療情報の二次利用、さらに医学研究への参加候補者をも募集している英国の各カントリーの状況を調査する予定である。
KAKENHI-PROJECT-17K03508
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石狩湾沿岸の砂堤列の地形と堆積物から過去1000年間の周期的な気候変動を読み取る
目的:石狩湾沿岸の海岸線に平行な波状地形、花畔砂堤列は、過去6000年間に徐々に陸化していく過程で形成された(松下1979)。現在は海岸林内だけに20列ほどの連続した砂堤列が残されている。繰り返す砂堤の形成には周期的な気候変動が関係している可能性があるため、本研究では、海岸林内の砂堤列の数や間隔を計測すること、堆積物から古環境を推定すること、を目的とした。方法:海岸林内を踏査し、春季に出現する融雪プール(雪解け水の水たまり)の分布を詳細に調べた。融雪プールは砂堤間低地に形成されるため、波状地形を反映している。また、砂堤間低地の2ヶ所で柱状堆積物を採取し、堆積物中の珪藻遺骸を観察し、植物片の放射性炭素年代を測定した。また、同様の砂堤列地形が見られる北見市常呂町の海岸部において、比較観察を実施した。成果:海岸林内で融雪プールもしくは明瞭な谷地形を精査したところ、海岸線と直交方向の長さ450m内に21の低地が見られた。平均すると砂堤・低地は21m間隔で繰り返していることが明らかになった。海岸線から約400m内陸の地点で採取した堆積物は、上部14cmは泥炭質砂、それより下部は中粒砂で構成されており、堆積環境は海浜砂丘環境から湿地的環境へ移行したことがわかった。上部の泥炭質砂中では珪藻遺骸群集は淡水生種陸生種で構成されており、今回の研究では、群集には明瞭な周期的変遷は確認できなかった。下部の砂層からは珪藻殻は検出されなかった。地表下6.5cmの木片の炭素年代は230年前(±30年)であった。平均堆積速度は28cm/1000年となり、この地点が砂丘・海浜的環境から林内の湿地的環境へと移行したのは約500年前であったことが判明した。目的:石狩湾沿岸の海岸線に平行な波状地形、花畔砂堤列は、過去6000年間に徐々に陸化していく過程で形成された(松下1979)。現在は海岸林内だけに20列ほどの連続した砂堤列が残されている。繰り返す砂堤の形成には周期的な気候変動が関係している可能性があるため、本研究では、海岸林内の砂堤列の数や間隔を計測すること、堆積物から古環境を推定すること、を目的とした。方法:海岸林内を踏査し、春季に出現する融雪プール(雪解け水の水たまり)の分布を詳細に調べた。融雪プールは砂堤間低地に形成されるため、波状地形を反映している。また、砂堤間低地の2ヶ所で柱状堆積物を採取し、堆積物中の珪藻遺骸を観察し、植物片の放射性炭素年代を測定した。また、同様の砂堤列地形が見られる北見市常呂町の海岸部において、比較観察を実施した。成果:海岸林内で融雪プールもしくは明瞭な谷地形を精査したところ、海岸線と直交方向の長さ450m内に21の低地が見られた。平均すると砂堤・低地は21m間隔で繰り返していることが明らかになった。海岸線から約400m内陸の地点で採取した堆積物は、上部14cmは泥炭質砂、それより下部は中粒砂で構成されており、堆積環境は海浜砂丘環境から湿地的環境へ移行したことがわかった。上部の泥炭質砂中では珪藻遺骸群集は淡水生種陸生種で構成されており、今回の研究では、群集には明瞭な周期的変遷は確認できなかった。下部の砂層からは珪藻殻は検出されなかった。地表下6.5cmの木片の炭素年代は230年前(±30年)であった。平均堆積速度は28cm/1000年となり、この地点が砂丘・海浜的環境から林内の湿地的環境へと移行したのは約500年前であったことが判明した。
KAKENHI-PROJECT-24916004
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24916004
Web動画像・音楽メディアを対象とした感性自動分析・個人化・配信システムの実現
本研究の成果として,Web動画像・音楽メディアを対象とした感性自動分析・個人化・配信システムを構築し,Web上の実データを対象としたメディア処理機構として公開した.特筆すべき成果として,Web分野における国際会議であるICIW2012 (The Seventh International Conference on Internet and Web Applicationsand Services)において,実現したシステムに関するデモンストレーション発表を行い,Best Papers Awardを2件受賞した.本研究の国際的展開として,スロベニア・リュブリャナ大学,フィンランド・タンペレ工科大学との間において,感性自動分析・個人化・配信システムの国際共同研究を行った。本研究では、動画像・音楽データを対象とし、それらを多様なコンテクストを持つ時系列メディアデータとして捉え、感性分析によるコンテクストの自動抽出により、利用者の個人的嗜好に応じた感性計量処理を伴う自動的なメディア配信を行う“動画・音楽メディア感性自動分析・個人化・配信システム"を実現した。具体的には、色彩印象コンテクストを識別可能な動画像感性分析機能、および、音楽印象コンテクストを識別可能な音楽印象分析機能を実現した。動画・音楽メディア感性自動分析・個人化・配信システムを構成する基盤技術として、ユーザの個人的感性に応じた動画像・音楽メタデータ自動生成技術の開発を行い、各利用者に対応する個人化感性空間を生成する機能を実現した。また、Web動画像・ライブ動画像・音楽メディアの個人化感性メタデータを用いたリコメンデーション技術の開発を行い、利用者が自身のPCや携帯情報端末上に蓄積した動画像・音楽データ,および,それらの視聴履歴を対象とした分析技術を可能とした。プロトタイプシステムの開発では、動画到着量に応じて動的に分析精度を制御する分散並列型感性メディア分析フレームワークを実装した。特筆すべき成果として、国際会議の発表のうち、2件の論文が、Web技術に関する国際学会ICIW2012にて、Best Papers Awardを受賞し、国際的に高く評価された。本システム実現に関する学術的成果として、5件の国際会議発表、海外学術雑誌への4件の論文採録(査読有)、1件の国内会議口頭発表を実施した。また、2013年3月26日時点において、国際会議への論文3件(査読有)が採録決定済みである。本システムは、今後発展が期待されるコンテンツのネット配信を前提として、個人の感性に合致する情報の自動配信環境を実現する、新しいメディア獲得の可能性を広げるコンテンツ流通基盤として位置付けることができる。本研究の成果として,Web動画像・音楽メディアを対象とした感性自動分析・個人化・配信システムを構築し,Web上の実データを対象としたメディア処理機構として公開した.特筆すべき成果として,Web分野における国際会議であるICIW2012 (The Seventh International Conference on Internet and Web Applicationsand Services)において,実現したシステムに関するデモンストレーション発表を行い,Best Papers Awardを2件受賞した.本研究の国際的展開として,スロベニア・リュブリャナ大学,フィンランド・タンペレ工科大学との間において,感性自動分析・個人化・配信システムの国際共同研究を行った。本研究では、動画像・音楽データを対象とし、それらを多様なコンテクストを持つ時系列メディアデータとして捉え、感性分析によるコンテクストの自動抽出により、利用者の個人的嗜好に応じた感性計量処理を伴う自動的なメディア配信を行う"動画・音楽メディア感性自動分析・個人化・配信システム"を実現している。具体的には、(1)色彩印象コンテキストを識別可能な動画像感性分析機能、および、音楽印象コンテキストを識別可能な音楽印象分析機能を実現した。また、(2)Web動画像を閲覧・検索する個人の感性的嗜好に合致するよう、前述の色彩印象分析機能および音楽印象分析機能を対象とした個人化検索・配信技術を実現した。本システム実現に関する学術的成果として、1件の国際論文誌発表(査読有り)、6件の国際学会発表(査読有り)、1件の国内学会発表(査読有り)、1件の国内学会投稿(査読無し)を行った。本研究の国際的な展開として、スロベニア・リュブリャナ大学のAna Sasa博士との間での動画・音楽メディア感性自動分析・個人化・配信システムの共同研究を通じて具体的なシステム構築を行い、1件の国際論文誌発表(査読有り)、および、1件の国際学会発表(査読有り)を行った。また、フィンランド・タンペレ工科大学のPekka Sillberg研究員、および、Petri Rantanen研究員との間で、MediaMatrixに関する感性分析処理性能評価実験を行い、1件の国際学会発表(査読有り)に採択された。本システムは、今後発展が期待されるコンテンツのネット配信を前提として、個人の感性に合致する情報の自動配信環境を実現する、新しいメディア獲得の可能性を広げるコンテンツ流通基盤として位置付けることができる。研究代表者は、前述のとおり、平成23年度の「Web動画像・音楽メディアを対象とした感性自動分析・個人化・配信システムの実現」に関する研究成果として、交付申請書に示した平成23年度の研究計画として、(A)動画像・音楽データを対象とした印象特徴量の自動分析技術、(B)動画像・音楽データのコンテンツ印象変化に応じた検索技術、(C)コンテンツ印象変化の可視化技術の開発、および、(実証実験1)感性的特徴に応じた大規模動画像・音楽メディア配信機構を開発した。この本システム実現に関する学術的成果として、1件の国際論文誌発表(査読有り)、6件の国際学会発表(査読有り)、1件の国内学会発表(査読有り)、1件の国内学会投稿(査読無し)を行った。本研究の国際的な展開として、スロベニア・リュブリャナ大学のAna Sasa博士との間での動画・音楽メディア感性自動分析・個人化・配信システムの共同研究を通じて具体的なシステム構築を行い、1件の国際論文誌発表(査読有り)、および、1件の国際学会発表(査読有り)を行った。
KAKENHI-PROJECT-23700128
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23700128
Web動画像・音楽メディアを対象とした感性自動分析・個人化・配信システムの実現
また、フィンランド・タンペレ工科大学のPekka Sillberg研究員、および、Petri Rantanen研究員との間で、MediaMatrixに関する感性分析処理性能評価実験を行い、1件の国際学会発表(査読有り)に採択された。特に、これらの国際共同研究に関する研究成果は、当初予定を上回るものであり、本研究が計画以上に進展していることを示している。研究代表者は、次の(D)(F)の研究項目、および、実証実験に取り組む。(D)ユーザの個人的感性に応じた動画像・音楽メタデータ自動生成技術の開発:利用者のメディアデータの視聴履歴、および、利用者が有するメディアデータ群をコンテクストとして、各利用者に対応する個人化感性空間を生成する機能を実現する。利用者毎に異なる感性ベクトル空間を構築することにより、利用者の感性的嗜好の個人差を計量し、個人の感性的嗜好に応じた感性メタデータを生成する。(E)Web動画像・ライブ動画像・音楽メディアの個人化感性メタデータを用いたリコメンデーション技術の開発:利用者がPCや携帯情報端末上に蓄積した動画像・音楽データ、および、それらの視聴履歴を対象として、利用者の感性的嗜好を自動的に分析し、利用者の視聴特性と時系列メディアデータから抽出した感性的特徴量との関連性を計量することにより、利用者個人の感性的嗜好に応じた動画像・音楽の自動推薦を行う感性個人化・推薦機能を実現する。(F)動画到着量に応じて動的に分析精度を制御する分散並列型感性メディア分析フレームワークの開発:新着メディアデータの総数に応じて、分析対象とする時間的粒度を増減させる動的LOA(Dynamic Level of Analysis)技術を開発する。(実証実験2)ライブ・ストリーミング中継サービスからリアルタイムに取得される動画像・音楽データを対象とした感性自動分析・個人化・配信システムを構築し、大規模ライブ動画像データを対象として、感性特徴量に応じた大規模ライブ動画像・音楽メディア配信機構を実現する。(実証実験3)動画・音楽メディア感性自動分析・個人化・配信システムの国際的共同研究環境を構築し、本システムによる時系列メディアデータを対象とした感性自動分析・個人化・配信サービスを実用的なレベルで構築する。次年度に使用する研究費が生じた理由として、世界的な半導体価格の下落により、年度当初の計画時よりも、研究に必要な計算機及びその部品の調達を安価に行うことができたため、次年度に使用する研究費が生じた。
KAKENHI-PROJECT-23700128
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23700128
符号と有限幾何の視点による代数曲線論
以下に述べるような定理が証明できた.これは, Sziklai予想の解決となっている.F(X, Y, Z)を,係数をq元体Fqに持つX, Y, Zについての次数dの斉次多項式とし,これで定まる平面曲線をC, CのFq点全体,すなわち, C(Fq)={(x, y, z)∈P2(Fq) F(x, y, z)=0}を考え,この集合の個数をNq(C)で表す.定理. F(X, Y, Z)がX, Y, ZについてのFq係数の1次式では割り切れないものとする.このとき,本質的には唯一つの例外を除けば, Nq(C).(d-1) q+1が成り立つ.唯一つの例外とは, d=q=4で, F(X, Y, Z)がF4係数の1次変換で(X+Y+Z)4+(XY+YZ+ZX)2+XYZ(X+Y+Z)に移る場合である.また,次数dの非特異曲線Cで上の不等式で等号をとるようなものが存在するためのdについての必要十分条件はdがq+2, q+1, q, q-1,√<q+1>(ただし, qが平方数), 2のいずれかの場合である.以下に述べるような定理が証明できた.これは, Sziklai予想の解決となっている.F(X, Y, Z)を,係数をq元体Fqに持つX, Y, Zについての次数dの斉次多項式とし,これで定まる平面曲線をC, CのFq点全体,すなわち, C(Fq)={(x, y, z)∈P2(Fq) F(x, y, z)=0}を考え,この集合の個数をNq(C)で表す.定理. F(X, Y, Z)がX, Y, ZについてのFq係数の1次式では割り切れないものとする.このとき,本質的には唯一つの例外を除けば, Nq(C).(d-1) q+1が成り立つ.唯一つの例外とは, d=q=4で, F(X, Y, Z)がF4係数の1次変換で(X+Y+Z)4+(XY+YZ+ZX)2+XYZ(X+Y+Z)に移る場合である.また,次数dの非特異曲線Cで上の不等式で等号をとるようなものが存在するためのdについての必要十分条件はdがq+2, q+1, q, q-1,√<q+1>(ただし, qが平方数), 2のいずれかの場合である.2009年度の研究目的の第2として、Sziklaiの予想の解決を掲げた。思惑通り特異点の無い場合については完全な解決に至った。以下これについてやや詳しく述べる。Sziklai自身の予想は「q元体上の次数dの射影平面曲線の有理点の個数Nは、N≦(d-1)q+1をみたす。」というものであった。しかし、われわれはq=d=4の場合にこの予想上界を1だけ超える曲線を見出した。この方程式を具体的書き下すことは可能だが、スペースの関係でここでは行わない。この曲線をKとしよう。しかし、q=d=4の場合には予想上界を超える曲線はKに限るということも合わせて証明できた。この観察に基づき、われわれはmodified Sziklai予想と呼んだのであるが、「Kを除けばSziklai予想は正しい」という作業仮説を立てた。このmodifiedSziklai予想が、与えられた曲線が特異点を持たない、あるい特異点を持ったとしてもその曲線がFrobenius classicalと呼ばれる性質を持てば正しいことが証明できた。q個の元からなる有限体上の平面代数曲線の有理点の個数が、たった一つの例外を除き,(d-1)q+1で上から押さえられるであろうということが,本研究の第1年目において,S.J.Kim氏と私が提案したSziklai予想のmodificationであった.本年度の成果として,幸いにも,このmodified Sziklai予想を肯定的に証明することができたことを報告する.証明には初等的ではあるが様々な手法が必要であった.第一段階では,例外となる曲線にも通用す(d-1)q+(q+2-d)という上界を示し,d=q+1の場合に決着をつけ,第2段階ではd=qの場合に考察をする.第一段の上界は目的のものより1弱いだけであり,この弱い上界をとるものがあると矛盾が生ずることを次数qの方程式を詳しく調べることによって示す.さらに第三段階として,Stohr-Volochの結果でカバーできない部分を第一段と良くにた方法により処理をした.手法はともかくとして,この結果自体はB.Segreの古い結果の改良であり,最近この結果を符号理論に応用するような研究も現れている.
KAKENHI-PROJECT-21540051
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符号と有限幾何の視点による代数曲線論
本研究は韓国Gyeongsang大学のSeon Jeong Kim教授との共同研究として,実施された.昨年度までの研究により,q個の元からなる有限体Fq上定義された次数d(d≧2)の平面代数曲線のFq-点の個数Nに関するSziklai予想について,満足すべき解答が与えられた.すなわち,唯一つの例外を除けば,N≦(d-1)q+1という不等式が成立する.本年度は,この不等式の等号をとるような曲線の分類を目標にすえたが,曲線の次数dがq+1,qの場合に分類が完成しFinite Fields and Their Applications誌に発表した.(特異点を持たない場合には,dの可能性はq+2,q+1,q,q-1,√q+1,2に限られること,さらにq+2,√q+1,2の場合の分類は,先人の研究および昨年度までのわれわれの研究で分かっていた.)また,この過程で,特異点を持つ曲線についてその有理点の個数を調べる必要が生じ,山形大学深澤准教授の協力を得て興味深い特異点を持つ有理曲線の例を得た.この有理曲線の定義式はHermitian曲線を彷彿させるものがあり,また,この曲線から得られるいくつかの符号は,きわめて良い符号パラメータを有するなど,平面曲線:Hermitian曲線=有理曲線:この興味深い特異点を持つ有理曲線というような対比の成立が夢想される,
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長野県社会部厚生課長としての原崎秀司の職務内容とホームヘルプ事業化との関連
本研究では、1950年代前半の長野県内での原崎秀司の職務内容とホームヘルプ事業化との関係性を明らかにすることを目的とし、原崎秀司、家庭養護婦派遣事業、ホームヘルプ事業に関する第一次資料を紐解き、同事業化のプロセスを実証的に明らかにすることに努めた。その際、史料収集と聞き取り調査の両方法によりアプローチした。結果としては、史料収集では、原崎が国連本部に提出した『欧米社会福祉視察研修報告書』や長野県社協理事会会議録は発掘されなかったものの、長野県社会部厚生課関連資料(議事録、厚生年報、長野県広報など)や長野県社協ニュース、上田市社協ニュース、上田市社協議事録などを探し当て、史実の一端を明確にし、ホームヘルプ事業化の解明を一歩前進させた。なかでも、ホームヘルプ事業の先覚者であり、元長野県社会部厚生課長の原崎秀司の県社協勤務時代、晩年期、さらには、短歌や農民美術に傾倒した青年期にまでアプローチできたことは大きなことであった。その他、長野県の事例のみならず、高知県や島根県のホームヘルプ事業史をも探究できたことは予想外の成果となった。初年度は、ホームヘルプ事業の先覚者、原崎秀司が国連本部(瑞国・ジュネーヴ)に提出した『欧米社会福祉視察研修報告書』の発掘及び同報告書がいかにして長野県告示「家庭養護婦の派遣事業について」へとつながっていったのかを探究することが目的であった。前者はまだ十分な成果が挙がっておらず、継続課題となるが、後者については、長野県庁内図書室・同情報公開センター、県立長野図書館、上田市立図書館、戸倉図書館、千曲市文化会館、日本社会事業大学附属図書館、国立国会図書館などで原崎関連の一次資料及び関連二次資料の発掘に努め、とりわけ、原崎が県庁に在籍した17年3ヶ月間について明らかになってきた。得られた主な原資料は、『長野縣厚生時報』(1940年)、『生活相談員取扱事例集(秘)』(1952年)、『長野県広報』(1952-1956年)、『信州自治』(1955年)、『戸倉町公民館報』(1956年)、『公民館報とぐら』(1958年)、『厚生年報昭和38年度』(1963年)であった。これらを整理・分析し、原著論文を投稿し、機関誌『社会事業史研究』(社会事業史学会)及び同『介護福祉学』(日本介護福祉学会)に掲載できた。また、日本社会福祉学会(於仏教大学)・日本介護福祉学会(於長野大学)の全国大会でも研究発表(口頭発表)し、フロアからの貴重なご指摘も受けた。県庁内での原崎の役割の解明は、原崎をとり巻く人間関係をていねいに紐解くことでもある。原崎が県社会部厚生課長時に大いに資質を発揮したのであれば、それを支援した同部長の鈴木鳴海や、同知事の西沢権一郎らとの関わりにも目を向けなければならない。歴史的事項は個々が浮遊しているのではなく、連結しているはずである。こうした視点から、さらに本研究を進め、長野県で組織的なホームヘルプ事業は全国に先駆けて始動した理由や背景要因を明確にしていきたい。わが国のホームヘルプ事業史研究において未解明であった、長野県庁職員時代の原崎秀司の職務内容や役割が資料的裏付けの下に明かされつつあるからである。官公庁や大学図書館などで、数的にはそれほど多くはないが、しかし原崎の思想や取り組みを立証し得る原資料を収集できている。紐解けば紐解くほどに、その拡がりを目の当たりにすることができる。歴史研究では資料の散逸や記憶の希薄化に対し、どれだけスピーディに対応できるかが厳しく問われる。そのため、今後は、残された課題である原崎の視察報告書探しの一方、確かな歴史研究のアプローチ(方法論)についても検討し、何らかの形でまとめていきたいと考える。今年度は、昨年度に続き、1939年1月1956年3月までの17年3ヶ月間、長野県庁職員を勤めた原崎秀司の公務内容に焦点をあてた。戦後荒廃や生活再建を思案するなかで、それらがのちのホームヘルプ事業化にいかにつながったかを考究した。『長野縣厚生時報』(1940年)、『戸倉町公民館報』(1956年)などの第一次資料及び関連第二次資料を分析した結果、現実のなかに真理を見出すこと、敗戦への省察が戦残軍人遺族への配慮につながったこと、「心篤き援護」として未亡人対策が重視されたこと、全体の切り下げではなく、協同・組織の力による実質的底上げが可能になること、住民たちの民主性・自主性を喚起し、社会福祉を萌え上がらせようと意図したことなどが明確になった。家庭養護婦派遣事業の創設に結びつく糸口を解明すべく、要援護者の適切な選定や新生活運動の展開などを重視した原崎の言説を精査し、その要点の実証的裏づけを試みた。その成果が『社会事業史研究』第54号(2018年9月刊行)に掲載される予定である。一方、原崎の晩年にも着目し、日本赤十字社長野県支部事務局長就任、ヒルティの『幸福論』と読書法、歌集刊行への熱意、障害者福祉分野との関わり、九州旅行と山崎等との関連、教育活動と闘病生活などを具体的に明らかにした。こちらは『社会事業史研究』第52号(2017年9月刊行)に掲載された。
KAKENHI-PROJECT-16K04179
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長野県社会部厚生課長としての原崎秀司の職務内容とホームヘルプ事業化との関連
他方、長野県社会福祉協議会理事会での討議内容や人間関係については、現存する『長野県社協ニュース』(1974年以降)に当たったが、いずれも時期が1970年代以降と原崎の生きた時代と合致していないため、さらなる資料の掘り起こしに努めているところである。横内浄音や藤井伊右衛門らの認めた日誌などがあればそれらを紐解くことが研究課題へのアプローチとなる。未完の課題については、引き続き、資料収集及び聞き取り調査を継続する予定である。原崎秀司の長野県庁職員時代の役割や人間関係については解明されつつあるものの、彼の私的な面については資料の限界等の壁に直面し、時間を要している。私生活で趣味であった短歌、読書、日誌等へのアプローチは彼の思想を解明するためには欠かせない。一方、公務についても、長野県社会福祉協議会理事会、長野県社会福祉大会、長野県議会議事録など、県政レベルの資料の発掘という課題が残されている。最後の一年ではこれらの課題に加え、ホームヘルプ事業と関連する事業にも目をむけ、原崎が参照した関連団体・機関の動きも捉えるようにしていきたい。本研究では、1950年代前半の長野県内での原崎秀司の職務内容とホームヘルプ事業化との関係性を明らかにすることを目的とし、原崎秀司、家庭養護婦派遣事業、ホームヘルプ事業に関する第一次資料を紐解き、同事業化のプロセスを実証的に明らかにすることに努めた。その際、史料収集と聞き取り調査の両方法によりアプローチした。結果としては、史料収集では、原崎が国連本部に提出した『欧米社会福祉視察研修報告書』や長野県社協理事会会議録は発掘されなかったものの、長野県社会部厚生課関連資料(議事録、厚生年報、長野県広報など)や長野県社協ニュース、上田市社協ニュース、上田市社協議事録などを探し当て、史実の一端を明確にし、ホームヘルプ事業化の解明を一歩前進させた。なかでも、ホームヘルプ事業の先覚者であり、元長野県社会部厚生課長の原崎秀司の県社協勤務時代、晩年期、さらには、短歌や農民美術に傾倒した青年期にまでアプローチできたことは大きなことであった。その他、長野県の事例のみならず、高知県や島根県のホームヘルプ事業史をも探究できたことは予想外の成果となった。2年目の課題が、長野県社会福祉協議会理事会での原崎の役割を明らかにすることと、晩年期(1960-1966年)の彼の福祉哲学・人生訓を明確にすることなので、その究明に励みたい。長野県社会福祉協議会や長野県歴史館などを訪れるのは当然のこと、原崎の子孫や関係者への聞き取り等も進めていきたい。あわせて、上述した残された課題である、原崎秀司の『欧米社会福祉視察研修報告書』探しと歴史研究アプローチ法の開発にも尽力したい。そして、明らかになった成果を、日本社会福祉学会、社会事業史学会、日本介護福祉学会などで論文投稿・研究報告(口頭発表)という形で公表していきたい。原崎秀司を中心とした長野県内におけるホームヘルプ事業の制度化のプロセスの解明にはまだまだ残された課題が少なくないと考える。第1に、欧米社会福祉視察研修時に彼が作成した英文報告書(原文)が発見されていないことである。この報告書を発見し、これと長野県通知「家庭養護婦の派遣事業」に記載された実施要綱や服務心得とを比較検討することで、新事業の制度化のプロセスが実証的に明らかにし得る。第2に、原崎が欧米視察時において見聞きしたイギリス、スイス、フランス、アメリカの4カ国の当時の社会福祉制度やホームヘルプサービスの実態解明をすることである。進んだ他国のどの部分を原崎が参照しようとしたのかに迫ることで、より具体的に制度化のプロセスが解明できよう。第3に、長野県社会福祉協議会理事会での検討内容の解き明かしについてである。
KAKENHI-PROJECT-16K04179
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3次元コンピュータ・グラフィックスによる立体表示運動学習システムの開発
3次元コンピュータ・グラフィックス(3DCG)によるアニメーションを使用して、体育・スポーツの運動学習を行った際に、立体表示が身体動作の再現性に与える影響を検討した。エアロビクスダンスの3DCGアニメーションを作成し、その映像を2次元表示と立体表示で学習者に提示した。その時の学習者の身体動作を分析した結果、2次元表示では奥行き方向の動きが小さくなっているのに対して、立体表示では、左右方向、奥行き方向ともにより学習モデルに近い動きが再現されていた。したがって、体育・スポーツの複雑な身体動作の運動学習では、3DCGアニメーションによる立体表示が有効であることが示された。本研究では、近年急速に発展・普及しているテレビやパソコンでの立体表示を活用し、3次元コンピュータ・グラフィックス(3DCG)アニメーションによる運動学習モデルを立体表示する運動学習システムを開発することである。昨年度は学校体育の中から体操、器械運動、剣道の基本動作をモーションキャプチャーシステムのよって収録した。収録した身体動作は、体操では、ラジオ体操第1、ラジオ体操第2、器械運動では、前転、開脚前転、伸膝前転、後転、伸膝後転、側転、ロンダート、ヘッドスプリング、ハンドスプリング、剣道では、面、胴、逆胴、素振りなどであった。さらに今年度は、各種スポーツ種目の内、サッカーのインステプキック、インフロントキック、ハンドボールの7mスローとジャンプシュート、野球のピチング動作とバッティング動作、ソフトボールのバッティング動作、空手とボクシングのパンチ動作、陸上競技のスプリント動作、ハードルのハードリング動作などをモーションキャプチャーシステムによって収録した。また、取得した三次元座標値の時系列データからコンピュータ・グラフィックスによる身体動作のアニメーションを作成した。さらにその中の一部は三次元立体表示によるアニメーションを作成した。また、3DCGアニメーションによる運動学習システムとして、運動学習モデルを提示しながら、同時に学習者のモデルをリアルタイムで立体表示してフィードバックをすることが可能なシステムを、ソリッドレイ社のオメガスペースによって作成した。研究の最終年度である平成25年度には、これらのシステムを実際に使用して、立体表示による運動学習システムによってどの程度、学習効率が向上するのかや、その問題点を明らかにし、運動学習システムとしての実用性を検証する。本研究の目的は、近年急速に発展・普及しているテレビやパソコンでの立体表示を活用し、3次元コンピュータ・グラフィックス(3DCG)アニメーションによる運動学習モデルを立体表示する運動学習システムを開発し、その学習効果を検証することであった。平成23年度から平成24年度には運動学習モデルを作成する基本動作として、小・中学校や高等学校の学校体育の現場で必要とされる学習課題から体操、器械運動、剣道、陸上競技、野球、ハンドボール、テニスの基本動作をモーションキャプチャーシステムによって収録した。収録した身体動作は、体操ではラジオ体操第1、ラジオ体操第2、器械運動では跳び箱の屈身跳び、剣道では、面、胴、逆胴、陸上競技では、ハードル、ハイジャンプ、野球では、投球動作と打撃動作、ハンドボールでは、7mスロー、ジャンプシュート、テニスのサーブなどであった。これらの3次元座標データをもとに、基本動作の3DCGアニメーションや骨格モデルのアニメーションを制作した。平成25年度はこれまで収録した基本動作の中からラジオ体操第1、第2やエアロビクスのボックスステップの立体表示による3DCGアニメーションを制作した。そして運動学習モデルの提示を、2次元のCGアニメーションで提示した時と、立体表示で提示した時の運動学習に与える影響を検討した。その結果、エアロビクスのボックスステップでは、ステップの前後の幅(奥行き方向)と左右の幅の再現性を検討したところ、2次元の映像による学習モデルの提示では、左右方向の幅は再現されているのに対して、前後方向の幅が小さくなっていた。一方、立体表示による学習モデルの提示では、左右方向、前後方向ともに学習モデルのステップの幅が再現されていた。したがって、スポーツの複雑な身体動作を学習する場合には、学習モデルを立体表示で提示するほうが学習効果が高まる可能性が示唆された。3次元コンピュータ・グラフィックス(3DCG)によるアニメーションを使用して、体育・スポーツの運動学習を行った際に、立体表示が身体動作の再現性に与える影響を検討した。エアロビクスダンスの3DCGアニメーションを作成し、その映像を2次元表示と立体表示で学習者に提示した。その時の学習者の身体動作を分析した結果、2次元表示では奥行き方向の動きが小さくなっているのに対して、立体表示では、左右方向、奥行き方向ともにより学習モデルに近い動きが再現されていた。したがって、体育・スポーツの複雑な身体動作の運動学習では、3DCGアニメーションによる立体表示が有効であることが示された。本研究では、近年急速に発展・普及しているテレビやパソコンでの立体表示を活用し、3次元コンピュータ・グラフィックス(3DCG)アニメーションによる運動学習モデルを立体表示する運動学習システムを開発することである。平成23年度は、運動学習システムを開発する前提となる、運動学習の課題の選定として、小・中学校や高等学校の体育教師にアンケート調査を行い、師範することが難しい学習課題を抽出しデータベースを作成し、されらの課題の中から、実際の学校体育の現場で必要とされる学習課題の身体動作を3次元動作解析する予定であった。しかし、平成23年度は東日本大震災の影響で、助成金が3割削減して助成され、年度の中頃まで助成金の総額が未定の状態となった。そのため機器備品の予算計画の再考が必要かもしれず、予算の執行ができず、研究の立ち上がりが遅れた。そこで、現場の体育教師へのアンケート調査を中止し、学校体育の中から体操、機器運動、剣道の基本動作をモーションキャプチャーシステムのよって収録した。
KAKENHI-PROJECT-23500760
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3次元コンピュータ・グラフィックスによる立体表示運動学習システムの開発
収録した身体動作は、体操では、ラジオ体操第1、ラジオ体操第2、器械運動では、前転、開脚前転、伸膝前転、後転、伸膝後転、側転、ロンダート、ヘッドスプリング、ハンドスプリング、剣道では、面。胴、逆胴、素振りなどであった。これらの3次元座標データをもとに、骨格モデルによるCGアニメーションの制作を行った。さらに、次年度の研究予定である立体表示についてもラジオ体操第1とラジオ体操第2につては基本的なCGアニメーションの制作を行った。本研究では、近年急速に発展・普及しているテレビやパソコンでの立体表示を活用し、3次元コンピュータ・グラフィックス(3DCG)アニメーションによる運動学習モデルを立体表示する運動学習システムを開発し、その実用性を検証することが目的である。この目的を達成するために3DCGアニメーションによる運動学習システムの基本的な開発は完了した。今年度はこのシステムを使用して、運動学習の効率がどの程度向上するかを検証し、運動学習システムの実用性を検証すると同時に問題点を検討する。平成23年度は東日本大震災の影響で、学術研究助成基金助成金が当初、3割削減して支給され、総額が未定の期間が半年近く続いた。そのため当初、予定した予算配分の修正が必要かもしれず、予算の執行ができす研究の立ち上がりが遅れた。平成23年度に研究できなかった課題については、平成24年度と平成25年度の残りの研究期間の中で遂行する予定である。次年度は今年度開発した3DCGアニメーションによる運動学習システムを用いて、運動学習の効率がどの程度向上するかなどシステムの実用性を検証すると同時に、立体表示による身体への影響などの問題点を検討する。平成23年度に実施できなかった課題は、実際の学校現場で師範などが難しい課題を実際の体育教師にアンケート調査し、指導が難しい課題のデータベースを構築する部分であった。この平成23年度に実施できなかった部分に関しては、平成24年度の研究課題である3次元コンピュータ・グラフィックスを用いた運動学習モデルの立体表示化とあわせて、平成24年度中に研究を実施する予定である。次年度は、システムの実用性を検証するために、様々な条件で被験者の数を増やして実験を行うことが必要である。そのため、測定にかかる消耗品、験者謝金や被験者謝金などが必要である。また、身体動作のフィードバックの手法としてデジカメや携帯端末を活用した運動学習方法についても検討を加えたい。さらに、可能な限り成果の公表を進めて行きたい。平成23年度に執行できずに残った予算の殆どは、遅れて支給された助成金であり、当初の研究計画で実施でできなかった実際の学校現場で師範などが難しい課題を実際の体育教師にアンケート調査し、指導が難しい課題のデータベースを構築する部分であった。
KAKENHI-PROJECT-23500760
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晶析速度と生成結晶純度
工業晶析プロセスでは、高純度物質を省エネルギー的に精製分離することが求められる。共晶系融液からの結晶化による分離においては、母液が結晶中あるいは結晶表面に含有され、純度の低下を起こす場合がり、発汗操作などにより純度の向上がなされる。本研究では、融液の晶析過程において装置内の核化・成長現象に着目し、これらの現象と結晶純度の関連を実験的に検討することにより、結晶化過程のおける母液の取り込み機構について新しい概念を提出し、高純度化のための最適操作を得ることを目的としている。ベンゼン-シクロヘキサン共晶系融液を対象とした研究では、半回分式撹拌型晶析装置を用いて、ベンゼンの核化、成長を行い、この過程における個数基準の粒径分布の推移、ならびに所定粒径幅の結晶純度を晶析操作時間毎に実測した。粒径分布の推移から、一次核が生成し、これらが合体しながら成長すること、成長の過程で二次核が周期的に生成することを再確認した。また付着母液をふき取った後の結晶純度と結晶粒径の関係を定量的に表すことにより、結晶の成長過程においては、1:微結晶の凝集により、母液を多く取り込む小粒径結晶の生成段階、2:微粒子が粗大結晶に配列し母液の包含量が少ない中粒径結晶の生成段階、3:二次核の付着により母液を結晶表面に取り込む大粒径結晶生成段階があることを明らかにした。また、パラキシレン-シクロヘキサン共晶系融液を対象とした回分晶析実験により、初期の一次核化現象が、合体成長過程における結晶純度の変化に影響を与えることを示すとともに、その不純物排除の機構を結晶の成長現象と対応させることによりモデル化した。以上の結果に基づいて、融液の晶析精製過程における不純物の取り込み、および排除の機構を装置内現象との関連で整理し、高純度化のための最適晶析操作法を提案した。工業晶析プロセスでは、高純度物質を省エネルギー的に精製分離することが求められる。共晶系融液からの結晶化による分離においては、母液が結晶中あるいは結晶表面に含有され、純度の低下を起こす場合がり、発汗操作などにより純度の向上がなされる。本研究では、融液の晶析過程において装置内の核化・成長現象に着目し、これらの現象と結晶純度の関連を実験的に検討することにより、結晶化過程のおける母液の取り込み機構について新しい概念を提出し、高純度化のための最適操作を得ることを目的としている。ベンゼン-シクロヘキサン共晶系融液を対象とした研究では、半回分式撹拌型晶析装置を用いて、ベンゼンの核化、成長を行い、この過程における個数基準の粒径分布の推移、ならびに所定粒径幅の結晶純度を晶析操作時間毎に実測した。粒径分布の推移から、一次核が生成し、これらが合体しながら成長すること、成長の過程で二次核が周期的に生成することを再確認した。また付着母液をふき取った後の結晶純度と結晶粒径の関係を定量的に表すことにより、結晶の成長過程においては、1:微結晶の凝集により、母液を多く取り込む小粒径結晶の生成段階、2:微粒子が粗大結晶に配列し母液の包含量が少ない中粒径結晶の生成段階、3:二次核の付着により母液を結晶表面に取り込む大粒径結晶生成段階があることを明らかにした。また、パラキシレン-シクロヘキサン共晶系融液を対象とした回分晶析実験により、初期の一次核化現象が、合体成長過程における結晶純度の変化に影響を与えることを示すとともに、その不純物排除の機構を結晶の成長現象と対応させることによりモデル化した。以上の結果に基づいて、融液の晶析精製過程における不純物の取り込み、および排除の機構を装置内現象との関連で整理し、高純度化のための最適晶析操作法を提案した。共晶系有機物質であるベンゼン-シクロヘキサン混合融液を原料に、半回分晶析装置を用いて懸濁結晶系におけるベンゼンの晶析実験を行った。晶析過程における結晶の粒径分布、および各粒径区分の純度を経時的に実測した。個数基準の粒径分布の推移を見ると、一次核発生後、所定の時間ごとに小粒径側に新たなピークを生じており、これらは二次核発生によるものと考えた。粒径と純度の関係を各時間ごとに、整理すると、その傾きは時間的に振動しており、その傾きが増加する時間は、小粒径側にピークを生じる時間とほぼ一致した。このことから装置内で発生した二次核が、粗大結晶に付着し、これにより母液の取り込みが増加し、結果として傾きが増加したものと考察した。また二次核の付着により増大した傾きは、次の核発生が起こるまでは、減少する傾向を示し、このことを母液の排除過程と関連づけて考察した。さらに、p-キシレン-シクロヘキサン系において、回分晶析実験を試み、晶析過程における個数基準の粒径分布および各粒径区分の純度を経過時間ごとに実測したところ、発生核が付着・合体しながら成長し、結晶合体面に母液が包含されることを示した。この母液は、成長過程において、排除される場合と、されない場合があり、このことを合体部分の修復現象と関連づけて考察し、高純度の結晶を得るための最適晶析条件について検討した。工業晶析プロセスでは、高純度物質を省エネルギー的に精製分離することが求められる。
KAKENHI-PROJECT-05650770
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05650770
晶析速度と生成結晶純度
共晶系融液からの結晶化による分離においては、母液が結晶中あるいは結晶表面に含有され、純度の低下を起こす場合があり、発汗操作などにより純度の向上がなされる。本研究では、融液の晶析過程において装置内の核化・成長現象に着目し、これらの現象と結晶純度の関連を実験的に検討することにより、結晶化過程のおける母液の取り込み機構について新しい概念を提供し、高純度化のための最適操作を得ることを目的としている。ベンゼン-シクロヘキサン共晶系融液を対象とした研究では、半回分式撹拌型晶析装置を用いて、ベンゼンの核化、成長を行い、この過程における個数基準の粒径分布の推移、ならびに所定粒径幅の結晶純度を晶析操作時間毎に実測した。粒径分布の推移から、一次核が生成し、これらが合体しながら成長すること、成長の過程で二次核が周期的に生成することを再確認した。また付着母液をふき取った後の結晶純度と結晶粒径の関係を定量的に表すことにより、結晶の成長過程においては、1:微結晶の凝集により、母液を多く取り込む小粒径結晶の生成段階、2:微粒子が粗大結晶に配列し母液の包含量が少ない中粒径結晶の生成段階、3:二次核の付着により母液を結晶表面に取り込む大粒径結晶生成段階があることを明らかにした。また、バラキシレン-シクロヘキサン共晶系融液を対象とした回分晶析実験により、初期の一次核化現象が、合体成長過程における結晶純度の変化に影響を与えることを示すとともに、その不純物排除の機構を結晶の成長現象と対応させることによりモデル化した。以上の結果に基づいて、融液の晶析精製過程における不純物の取り込み、および排除の機構を装置内現象との関連で整理し、高純度化のための最適晶析操作法を提案した。
KAKENHI-PROJECT-05650770
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05650770
空気電池を活用した酸素センサキットの構築と新しい展開研究
空気電池の特性を利用して誰でも簡単に作製できる理科教育のための手作り酸素センサを開発してきた。この酸素センサを使って身の回りの酸素に関わる様々な自然現象について教材を開発することを目的としている。初等中等理科教育実験に酸素センサを活用することで、酸素の定量性を導入することができ生徒たちの定量的な思考力、理解力、判断力、表現力その他の能力が育成され、主体的に課題に取り組む態度を養うことができるのではないかと考えている。今回紹介する教材は、鉄粉カイロの酸化反応の実験である。手作り酸素センサと温度計を使って酸素濃度と温度を自作の計測キットを使用して観測を行った。非常に興味ある結果を得たので報告する。本研究は、補聴器などで一般的に使われている空気電池を利用して、初等中等理科教育の教育現場で実践的に使える酸素センサを開発した。空気電池に付いている酸素遮断のためのシールを外して1分間待ち、空気電池を可変抵抗が付いた開発ホルダーにセットしてから1時間待待つ。測定値の表示にテスターを使用し、ホルダーに接続するだけで誰でも簡単に作製することができる。可変抵抗を20.9mVに合わせた値が20.9%の酸素濃度に対応するようにした。そのため測定値がそのまま酸素濃度として読むことができるなど、センサの取扱いが非常に簡単で小学生から大人まで扱うことができる。空気電池式の酸素センサは、応答性にも優れ、何度も実験データを計測することができるため、酸素濃度が変化す自然現象の経時変化も簡単に計測可能である。さらにセンサのサイズが、コンパクトに設計しているのでペットボトルを計測用の容器としても使える。また、この酸素センサは、非常に安価で誰でも簡単に作製・操作できるため、数台の酸素センサを使って同時に多点計測も可能である。そのため酸素濃度分布も作ることができることから、新しい展開研究も可能である。今回の研究テーマである、「空気電池を活用した酸素センサキットの構築と新しい展開研究」の成果は、次の学会発表で行った。1光合成の実践として“思考力育成を目指した光合成学習"日本理科教育学会全国大会論文集11H-201, 390,(2013)平成25年8月11日。2視覚障がい者理科教育の実践例として“視覚障がい児童生徒への酸素/二酸化炭素センサを用いた学習"日本理科教育学会全国大会論文集、11C-103, 329,(2013)、平成25年8月11日。3過酸化水素の分解反応の実践例として“高橋式酸素センサを使った理科教育における教材開発"日本理科教育学会全国大会論文集10F-103, 187,(2013)平成25年8月10日。今年度の実践例を報告する。以上空気電池の特性を利用して誰でも簡単に作製できる理科教育のための手作り酸素センサを開発してきた。この酸素センサを使って身の回りの酸素に関わる様々な自然現象について教材を開発することを目的としている。初等中等理科教育実験に酸素センサを活用することで、酸素の定量性を導入することができ生徒たちの定量的な思考力、理解力、判断力、表現力その他の能力が育成され、主体的に課題に取り組む態度を養うことができるのではないかと考えている。今回紹介する教材は、鉄粉カイロの酸化反応の実験である。手作り酸素センサと温度計を使って酸素濃度と温度を自作の計測キットを使用して観測を行った。非常に興味ある結果を得たので報告する。平成24年度は、酸素センサキットA(空気電池の外部抵抗に可変抵抗を使用する)を100個作製しマニュアルも作成した。また、マルチ計測用に開発した酸素センサキットBも100個作製した。キットは、北海道の教育センターと次の3県合計、4か所で貸出を行って、教員研修会等や視覚障害者の理科教育に活用された。具体的には、静岡県総合教育センター:「空気電池式酸素センサの活用-酸素濃度の変化の測定に関する教員研修の実施と授業の実践-」、富山県総合教育センター:「高等学校生徒による酸素/二酸化炭素センサーの活用」、新潟県立教育センター:「空気電池式酸素センサキットを活用した小学校理科実験について-ろうそくを燃やし続ける方法を調べる場面において」、北海道教育研究附属理科教育センター:「酸素・二酸化炭素センサの活用-函館盲学校での実験-」で実践した。他に研究成果を3学会で発表を行った。日本科学教育学会(東京理科大学)「USBデーターロガーを使った酸素センサのマルチ計測-ロウソクの燃焼実験-」、日本理科教育学会関東支部大会(東京学芸大学)「理科教育のための空気電池を利用した酸素センサキットの開発-(2)ーオクラの呼吸の実験ー、第93回春季年回日本化学会(立命館大学)「初等中等教育のための酸素センサの開発とその教材開発ーキノコの呼吸ー」で行った。社会貢献としては、8月に相模女子大学で開催された「教員免許状更新講習会」の講師として、酸素センサキットを使って実習を行た。また、11月には文部科学省国立教育政策研究所でセンサ講習会が開催され、講師として空気電池式酸素センサの紹介した。さらに、H25年2月は、国立科学博物館で行われている「化学実験講座(第177回)の講師として呼ばれ、23名の現役教員を対象に「初等中等教育の理科実験で実践的に使える酸素センサの紹介と教材への活用」と題して実験を行った。平成26年度は、空気電池を活用した酸素センサキットの構築と新しい展開研究は、順調に研究成果を上げることができた。
KAKENHI-PROJECT-24501117
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24501117
空気電池を活用した酸素センサキットの構築と新しい展開研究
空気電池を使った酸素センサは、応答性、操作性、ペットボトルにも挿入できるコンパクトサイズなど理科教材として優れた特性を持って開発することができた。今年の実績としては、空気電池の特性を利用した手作り酸素センサを使って、鉄粉カイロの酸化反応の実験を行った。この成果は、日本科学教育学会(埼玉大学)で発表した。酸素センサを使って重曹とクエン酸の溶解反応の実験を行い、酸素濃度と温度変化を計測したところ、重曹とクエン酸の溶解反応は、容器を直接触っても冷たく感じるが、定量的に温度計を使って吸熱反応となることを検証できた。さらに容器の下方にセットした酸素センサの濃度が減少したのは、容器内の下方にCO2が溜まり、空気を上へ押し上げる現象を実証することができた。この成果は、日本理科教育学会(愛媛大学)で発表をおこなった。さらに、空気電池を使った酸素センサを開発してきたが、酸素濃度は大気中の酸素分圧を計測しているため、空気電池は気圧センサとしての機能も兼ね備えていると仮定した。文献値より気圧と標準大気の高さの関係から、富士山とエベレストの頂上での気圧を導き出し、各山頂での酸素濃度を導き出すことができた。この研究成果は、日本化学会(日本大学)で発表をおこなった。これらの研究は、北海道立教育研究所附属理科教育センター、静岡県総合教育センター富山県総合教育センター、新潟県立教育センターの支援や多くのご協力者に支えられており、日本全国の理科教育に空気電池による酸素センサが次第に広まることを期待している。また、音声による機能を加えて、視覚障害者の支援教材としてその実践的成果としても日本視覚障害者理科教育研究会で函館盲学校の高橋教諭より報告がなされている。科学教育「研究の目的」の達成度は、90%以上と自己評価している。今回開発した酸素センサは、センサとしての応答性に優れ、教育現場の授業を40分と仮定した時、ロウソクの消炎実験や人間の呼気の実験など、10分以内で実験結果をだすことができる。今年度は、小学校、中学校を重点的に酸素センサキットを広めて行くことが実施計画にあり、共同研究をしている中学校の先生から、光合成の実験で成果が飛躍的に上げることができた。日当たる場所と日陰の場所では、光合成による酸素の発生に明らかに違いが見らえることが検証できた。また、視覚障がい者の理科教育への活用として、酸素濃度の測定値を音声によて読み上げた点では、新しい展開研究として研究の成果として対応できたので当初の計画以上に進展していると考えている。現在までの進捗状況は、ほぼ順調に進んでいる。研究実績概要にも記載しているが、次第に全国の教育研究センターを使われるようになってきた。今年は、茨城県教育センターと群馬教育センターが酸素センサを活用する予定となっている。また、社会貢献も広がってきており、今年度も国立科学博物館や教育免許状更新講習会等で活動の場を広げたいと考えている。今後の研究の推進方策として、1酸素センサキットを使った、理科教材として動物・植物の他に菌類に関わる酸素との関係を探究する。2酸素センサによって計測された酸素濃度を音声によって測定値を読み上げるキットを充実させる。
KAKENHI-PROJECT-24501117
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tRNAスプライシングにおける多機能性tRNAリガーゼの分子機構解明
Trl1リガーセドメイン(Trl1-LD)- GMP複合体の構造を2.75オングストローム分解能で決定した。Trl1-LDの活性中心付近に2分子のGMPがスタックして結合していた。その複合体構造を詳細に解析した結果、2分子のGMPの周辺には塩基性のアミノ酸が集中していた。このことから、これらのGMPはライゲーション過程のtRNAエキソンをミミックしているものと考えられた。これによりTrl1-LDのtRNAの結合様式を類推することが可能となった。tRNAのスプライシングはmRNAの自己スプライシングとは異なり、複数のタンパク質性酵素によって触媒される。近年、研究代表者らは多機能性tRNAリガーゼ(Trl1)のリガーゼドメイン(Trl1-LD)の構造を決定し、これまでに提唱されていたライゲーション反応が活性化中間体を経るという仮説を、初めて構造から証明した。本研究では、Trl1-tRNA複合体のX線結晶構造解析を行い、構造をもとにtRNAスプライシングにおける3段階のライゲーション反応の分子機構を解明することを目的とする。平成28年度はTrl1-tRNA複合体の構造解析に向けて、Trl1各ドメイン及び全長とtRNAエキソンの相互作用解析を行った。Trl1各ドメイン及び全長とtRNAエキソンを個別に調整し、in vitroで混合したのちにゲル濾過クロマトグラフィーを行い、その溶出位置の比較とSDS-PAGE、Urea-PAGEにより、複合体形成の有無を確認した。その結果、Trl1全長とTrl1-LDのみtRNAエキソンと複合体を形成することが確認された。その他のCPDase(Trl1-CD)、キナーゼドメイン(Trl1-KD)は、Trl1-LDと比較してtRNAエキソンとの相互作用が弱く、全長のTrl1ではTrl1-LDの補助的な相互作用を必要とし、それぞれの酵素活性を発揮しているのではないかと考えられる。またTrl1-CDとTrl1-KDの単体での構造決定に向けて、それぞれのサンプルについて結晶化条件を最適化することによって、Trl1-KDについては2.9angstrom分解能のデータを収集することに成功した。またTrl1-CDについては再現性のある結晶化条件を決定でき、分解能10angstrom程度の回折点を確認している。Trl1-tRNA複合体の構造解析に向けて、Trl1各ドメイン及び全長とtRNAエキソンの結合親和性解析を行った結果、Trl1全長とTrl1-LDにおいてtRNAエキソンとの安定な複合体形成の条件を決定することに成功し、当初の目的を達成した。さらにそれらの複合体については結晶化のステップに進めている。また構造未決定のドメインの構造解析においては、それぞれのサンプルについて結晶化条件を最適化し、Trl1-KDについては2.9angstrom分解能のnativeデータを収集することに成功し、Trl1-CDについては、これまでより高い回折能を持つ再現性のある結晶化条件を決定しているが構造決定には至っていない。Trl1-KDは構造既知のファミリー酵素と相同性が低く(12-20%)分子置換法による位相決定ができなかった。またTrl1-CDについては、さらに結晶化条件を詳細検討し分解能を改善する必要がある。tRNAのスプライシングはmRNAの自己スプライシングとは異なり、複数のタンパク質性酵素によって触媒される。近年、研究代表者らは多機能性tRNAリガーゼ(Trl1)のリガーゼドメイン(Trl1-LD)の構造を決定し、これまでに提唱されていたライゲーション反応が活性化中間体を経るという仮説を、初めて構造から証明した。本研究では、Trl1-tRNA複合体のX線結晶構造解析を行い、構造をもとにtRNAスプライシングにおける3段階のライゲーション反応の分子機構を解明することを目的とする。平成29年度はTrl1-tRNA複合体の構造解析に向けて、Trl1-tRNA複合体の大量調整し、結晶化を試みた。前年度の相互作用解析の結果、Trl1全長とTrl1-LDのみtRNAエキソンと安定な複合体を形成することが確認されたため、精製したTrl1全長、及びTrl1-LDとin vitroで転写したtRNAエキソンを混合しゲル濾過クロマトグラフィーを用いて、それぞれの複合体を高純度で大量に調整した。それらのサンプルを用いて、それぞれについて約2000条件で結晶化スクリーニングを行ったが、結晶は得られなかった。そこで既に構造が得られているTrl1-LD結晶を用いて、10mMの濃度の核酸を浸漬(ソーキング)させることによってTrl1-LDと核酸の複合体の構造解析を試みた。その結果、2.75オングストローム分解能で構造解析可能なX線回折強度データを収集することに成功し、構造を決定することができた。その構造にはTrl1-LDの活性中心付近に2分子の核酸(GMP)が結合しており、そのGMPと相互作用しているアミノ酸、及びその周辺には塩基性のアミノ酸が集中していたことから、これらのGMPはライゲーション過程のtRNAエキソンをミミックしているものと考えられた。Trl1リガーセドメイン(Trl1-LD)- GMP複合体の構造を2.75オングストローム分解能で決定した。Trl1-LDの活性中心付近に2分子のGMPがスタックして結合していた。その複合体構造を詳細に解析した結果、2分子のGMPの周辺には塩基性のアミノ酸が集中していた。
KAKENHI-PROJECT-16K18498
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K18498
tRNAスプライシングにおける多機能性tRNAリガーゼの分子機構解明
このことから、これらのGMPはライゲーション過程のtRNAエキソンをミミックしているものと考えられた。これによりTrl1-LDのtRNAの結合様式を類推することが可能となった。構造未決定のドメインの構造解析において、Trl1-KDについてはSe-Met置換体結晶の作成、またタンパク質自身が持つ硫黄原子の異常散乱を利用したS-SAD法を試み、位相決定を目指す。Trl1-CDについては、さらに結晶化条件を詳細検討し構造決定可能な分解能の回折を起こす結晶を作成し、構造を決定する。さらに決定した機能ドメイン構造情報をもとに活性に密接に関係すると考えられるアミノ酸残基に変異を導入し、それぞれの酵素反応の分子機構の詳細を明らかにする。Trl1全長とTrl1-LDにおいてtRNAエキソンとの複合体の構造解析については、当研究室保有の自動タンパク質結晶化ロボットを用いて効率よく結晶化条件のスクリーニングを行い、回折実験に適用できる良質の結晶を得ることができたら、シンクロトロン放射光施設にてクライオ条件下でX線回折実験を行う。構造因子の初期位相は、得られたドメイン構造を用いて分子置換法により決定する。それぞれの構造解析に成功した場合、Trl1-tRNAエキソン複合体との構造比較から、3つのドメインの構造変化そして各ドメインとtRNA間の詳細な相互作用様式を明らかにし、Trl1によって行われる動的な3段階のライゲーション反応機構を解明する。構造生物学
KAKENHI-PROJECT-16K18498
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Web-Basedによるリアリスティックおよびノンリアリスティック画像生成の研究
本研究は、ネットワークを有効利用するコンピユータグラフィックス(以下CGと略す)の応用技術の開発である。自然現象の視覚化シミユレーションなどの写実的(リアリスティック)表現、および感性を訴え易い非写実的(ノン・リアリスティック)表現を統合的に扱う技術開発は十分とは言えない。本研究では現実感のあるCG画像を生成する技法と、それとは逆に非写実的な画像によって感性や感情に訴える画像を生成する技法を統合したシステムを実現する。すなわち、次の研究項目、1)物理則に基づく写実的表現、2)非写実的表現、および3)Web-basedのインタラクティブなCGシステムの開発を実現する。1)の物理則に基づく写実的表現に関しては、自然物の表現に注目されており申請者の地球大気の可視化、水中の光学的効果の論文を発表した。2)の非写実的表現に関して、形状の特徴を把握し易く表示するためには、スケッチ風の画像が好ましいことがある。このため、申請者は、テクニカルスケッチ風、ペンアンドインク風描画に関する論文を発表した。3)のインターネットを利用した会話型CGシステムに関して、形状モデルを表現するには、いくつかののパラメータが必要であり、これらをストレスなく設定できるシステムが望まれる。これらを実現するためJava言語を用いた複雑形状モデルの伝送・表示方法を開発した。なお、これらの成果は、9件の研究会報告、3件の国際会議論文及び、1件の学会誌論文として発表した。本研究は、ネットワークを有効利用するコンピユータグラフィックス(以下CGと略す)の応用技術の開発である。自然現象の視覚化シミユレーションなどの写実的(リアリスティック)表現、および感性を訴え易い非写実的(ノン・リアリスティック)表現を統合的に扱う技術開発は十分とは言えない。本研究では現実感のあるCG画像を生成する技法と、それとは逆に非写実的な画像によって感性や感情に訴える画像を生成する技法を統合したシステムを実現する。すなわち、次の研究項目、1)物理則に基づく写実的表現、2)非写実的表現、および3)Web-basedのインタラクティブなCGシステムの開発を実現する。1)の物理則に基づく写実的表現に関しては、自然物の表現に注目されており申請者の地球大気の可視化、水中の光学的効果の論文を発表した。2)の非写実的表現に関して、形状の特徴を把握し易く表示するためには、スケッチ風の画像が好ましいことがある。このため、申請者は、テクニカルスケッチ風、ペンアンドインク風描画に関する論文を発表した。3)のインターネットを利用した会話型CGシステムに関して、形状モデルを表現するには、いくつかののパラメータが必要であり、これらをストレスなく設定できるシステムが望まれる。これらを実現するためJava言語を用いた複雑形状モデルの伝送・表示方法を開発した。なお、これらの成果は、9件の研究会報告、3件の国際会議論文及び、1件の学会誌論文として発表した。本研究は、ネットワークを有効利用するコンピュータグラフィックス(以下CGと略す)の応用技術の開発である。自然現象の視覚化シミュレーションなどの写実的(リアリスティック)表現、および感性を訴え易い非写実的(ノン・リアリスティック)表現を統合的に扱う技術開発は十分とは言えない。本研究では現実感のあるCG画像を生成する技法と、それとは逆に非写実的な画像によって感性や感情に訴える画像を生成する技法を統合したシステムを実現する。すなわち、次の研究項目、1)物理則に基づく写実的表現、2)非写実的表現、および3)Web-basedのインタラクティブなCGシステムの開発を実現する。1)の物理則に基づく写実的表現に関しては、自然物の表現に注目されており申請者の地球大気の可視化、水中の光学的効果の論文を発表した。2)の非写実的表現に関して、形状の特徴を把握し易く表示するためには、スケッチ風の画像が好ましいことがある。このため、申請者は、テクニカルスケッチ風、ペンアンドインク風描画に関する論文を発表した。3)のインターネットを利用した会話型CGシステムに関して、形状モデルを表現するには、いくつかののパラメータが必要であり、これらをストレスなく設定できるシステムが望まれる。これらを実現するためJava言語を用いた複雑形状モデルの伝送・表示方法を開発した。なお、これらの成果は、9件の研究会報告、3件の国際会議論文及び、1件の学会誌論文として発表した。本研究はCG技術を応用し、形状を写実的(リアリスティック)あるいは非写実的(ノンリアリスティック)に表示するものであり、次の研究項目が必要である。1、物理則に基づく写実的表現3、非写実的表現本研究は、ユーザに負担をかけずにデータベースを駆使し、複雑な任意形状の3次元形状モデルを生成し、それをネットワークを介して効率よく伝送し、汎用PCに描画するものである。その際、形状の性質や複雑さ、あるいはユーザ要望に応じて描画方法を選択できるシステムである。対象とする形状は人工物とその背景となる自然景観である。描画(レンダリング)としては、写真のようにリアルなものと、スケッチ風の非写実的なものを選択できる。ある程度の対象物に関してはすでにモデル化の基礎は既に完了しており、それらを統合化しよりモジュール化をはかる。特に曲面形状のシンプル化の手法の開発に力点をおく。本年度は、デジタルビデオレコーダを購入して昨年度の写実的表現の成果を高画質で録画・保存すると共に、研究としては2のWeb-basedのインタラクティブシステムについて行った。Web-basedのインタラクティブシステムに関しては、Java言語を採用することによりネットワーク化を計り、利便性を増加させた。Javaはオブジェクト指向言語であるため、プログラム開発の効率化が計れた。
KAKENHI-PROJECT-13680393
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13680393
Web-Basedによるリアリスティックおよびノンリアリスティック画像生成の研究
本研究においては、多種の対象物を扱うので、それらを統一的に扱うにはオブジェクト指向言語は最適であった。またJavaはインタラクティブ性に優れたGUIを構築するにも有用であり、分散処理が実現するメリットもある。すでに研究代表者は、Javaによる表示法の一部実験(遠隔学習システムを開発)を終了していたため、より広範なシステムにするための研究を行うことができた。本研究の目的は、物体の高画質なレンダリングのみでなく広く利用できるCGシステムの構築である。すなわち、高精度シミュレーションのみではなく、インターネットを介して誰もが会話的な条件設定を可能にし、利用が簡単になるシステムの構築を行った。インタクティブ性の必要な部分においては、近年注目されているJava言語を用いた。Java言語を採用することによりネットワーク化を計り、利便性を増加させることができた。本研究では、具体的には次のようなシステムの構築を行った。まず、Web-basedなコンピュータグラフィクスのトレーニングシステムを構築した。このシステムは、50以上ものCG教育用のアプレットを開発した。これにより、インターネットにつながる環境であればどこでもいつでも好きなときに、インタラクティブにCGの勉強を行うことが可能である。次に、Web-basedのレンダリングシステムの構築を行った。本システムでは、高性能なサーバ上において、高コストであるレンダリング処理を行い、生成された高品質な画像をネットワーク配信する。このシステムによって、通常高コストなレンダリングが困難であるノートPCや携帯電話からも、高品質なレンダリング結果を得ることが可能となった。また、クライアントからの様々な要求に対応できるように、様々な画風(ペンアンドインクスタイル、水彩画風、油絵風など)で画像を生成できるようなノンフォトリアリスティックレンダリング技術の開発も行った。最後に、本研究ではJava言語による3次元グラフィクスライブラリの作成を行った。インターネット上での3次元プログラミングには、様々なプラットホーム上で動かさなければならないという問題があった。そのため、Java言語による3次元グラフィクスライブラリを開発した。これによって、インターネット上でのグラフィクスプログラミングが容易になった。
KAKENHI-PROJECT-13680393
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13680393
新規低分子化合物を用いたがん抑制機構の解析
当初はIMF-001の標的情報なしに研究を推進する予定だったが、他の解析によって標的蛋白の興味深い情報が得られたため、本研究のアプローチとそれらを発展的に統合し、標的蛋白解明を通じて研究目的の達成を行うこととした。まずIMF-001によって誘導される遺伝子パターンについてさらに深く解析したところ、興味深いことにIMF-001処理によってHela細胞中でTLR経路が活性化していることが新たに示唆された。実際、Hela細胞をネクローシスさせた細胞は、TLR経路を強く活性化するリガンドになることも確認できたことから、IMF-001処理で死んだ細胞が生きているHela細胞のTLR経路を活性化することが示唆された。そのため、IMF-001の直接の作用を解析するにはこのような二次的な遺伝子誘導を除外して解析する必要があることが分かった。そこで、がん細胞死を誘導する濃度と誘導しない濃度の遺伝子発現パターンを比較し、濃度依存性がある遺伝子(細胞死が起こらない濃度でも誘導される遺伝子)を抽出し、その遺伝子発現パターンと類似の遺伝子発現パターン示す既知化合物をデータベースから検索し、それらの標的蛋白からIMF-001の標的予測を行った。また、他の研究課題で推進されていた検討からIMF-001結合蛋白情報、IMF-001の類似化合物とその標的蛋白情報を利用し、それぞれの解析におけるIMF-001の標的蛋白候補をリスト化した。さらにその中でTLRシグナルに関わる既知の蛋白に結合する可能性のある蛋白をデータベース情報から特定した。これらの解析を総合してIMF-001の標的候補の絞り込みを行ったところ、その中にはがん細胞死やTLRシグナルとの関連が全く分かっていない蛋白が含まれていた。そのため今後、これら蛋白の解析を推進することで、新しいがん抑制機構の発見に繋がることが強く期待される。また、上記のIMF-001標的蛋白の解析は、一般的な薬剤の新しい標的探索法としても有効だと考えられる。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。当初の予定通り、IMF-001でHela細胞を処理した際の遺伝子発現パターンを経時的にmicroarray解析によって網羅的に解析した。解析の結果、解析の時間が遅くなるほど、遺伝子発現レベルのサンプル間のばらつきが大きくなるが、一方で、早期にはばらつきの少ないデータが得られた。このような結果から、経時的な遺伝子発現の流れを解析するのではなく、早期に発現される遺伝子に着目し、どのような経路が活性化しているかを解析する事とした。その結果、IMF-001によって誘導される遺伝子が分類されるシグナル経路および、IMF-001誘導遺伝子の上流分子の推測結果が得られた。これらの中から次のsiRNAを用いた解析の候補遺伝子を100前後決定した。すなわち、シグナル経路についてはその経路に必須の因子をsiRNAによってノックダウンする事とし、一方で、IMF-001誘導遺伝子の上流分子については、その遺伝子の誘導レベルや誘導レベルの濃度依存性、既知の情報を総合的に判断して選定した。さらに、これらの候補遺伝子のsiRNAの合成および、候補遺伝子をスクリーニングするためのスクリーニング系の構築が完了した。当初はIMF-001の標的情報なしに研究を推進する予定だったが、他の解析によって標的蛋白の興味深い情報が得られたため、本研究のアプローチとそれらを発展的に統合し、標的蛋白解明を通じて研究目的の達成を行うこととした。まずIMF-001によって誘導される遺伝子パターンについてさらに深く解析したところ、興味深いことにIMF-001処理によってHela細胞中でTLR経路が活性化していることが新たに示唆された。実際、Hela細胞をネクローシスさせた細胞は、TLR経路を強く活性化するリガンドになることも確認できたことから、IMF-001処理で死んだ細胞が生きているHela細胞のTLR経路を活性化することが示唆された。そのため、IMF-001の直接の作用を解析するにはこのような二次的な遺伝子誘導を除外して解析する必要があることが分かった。そこで、がん細胞死を誘導する濃度と誘導しない濃度の遺伝子発現パターンを比較し、濃度依存性がある遺伝子(細胞死が起こらない濃度でも誘導される遺伝子)を抽出し、その遺伝子発現パターンと類似の遺伝子発現パターン示す既知化合物をデータベースから検索し、それらの標的蛋白からIMF-001の標的予測を行った。また、他の研究課題で推進されていた検討からIMF-001結合蛋白情報、IMF-001の類似化合物とその標的蛋白情報を利用し、それぞれの解析におけるIMF-001の標的蛋白候補をリスト化した。さらにその中でTLRシグナルに関わる既知の蛋白に結合する可能性のある蛋白をデータベース情報から特定した。これらの解析を総合してIMF-001の標的候補の絞り込みを行ったところ、その中にはがん細胞死やTLRシグナルとの関連が全く分かっていない蛋白が含まれていた。そのため今後、これら蛋白の解析を推進することで、新しいがん抑制機構の発見に繋がることが強く期待される。また、上記のIMF-001標的蛋白の解析は、一般的な薬剤の新しい標的探索法としても有効だと考えられる。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。当初の予定を微調整し、数理解析の焦点を早期誘導遺伝子に定め、また、候補遺伝子の選定に時間をかけた。さらに当初の予定にはなかったが、活性のないIMF-001類縁体をスクリーニングし、同定に成功した。
KAKENHI-PUBLICLY-25134703
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25134703
新規低分子化合物を用いたがん抑制機構の解析
このような検討によって、当初の予定よりも候補遺伝子をより絞り、さらに新しい検証のツールとしてIMF-001類縁体を用いる事で、解析の精度を上げる事ができると考えられる。このような準備のため、スクリーニングに取りかかる時期が遅れたものの、より高い精度で目的の遺伝子同定を行える状況が整ったと考えており、候補遺伝子の中には多くの興味深い遺伝子が含まれる事からも、研究は順調に進展していると考えている。スクリーニングの準備が整ったため、本年度は精力的にスクリーニングを推進し、さらに予定通りスクリーニングから単離された遺伝子について、がん抑制との関連を詳細に解析する。一方で、当初の予定にはなかったが、本研究課題とは別の研究課題において、IMF-001の標的蛋白の同定が進められており(本研究課題の目的は標的の同定ではなく機序の解明)、最近、その解析結果が得られている。その成果は本研究のものではないが、本研究を推進する上で非常に重要な情報を提供し得るものであるため、今後、研究目的をより確実に達成するために、標的蛋白情報も考慮して進めて行く。すなわち、上記のスクリーニングで得られた因子とIMF-001の直接の標的蛋白との関係についても新しく解析を追加する可能性を視野に入れ、検討を進める予定である。
KAKENHI-PUBLICLY-25134703
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25134703
東西ドイツにおける教科書の教育学的・教授学的機能に関する研究の展開
研究員は平成23年度、東西両ドイツにおける教授学的教科書研究の展開を主題とする博士論文の完成に向けて尽力した。その際とりわけ重要だったのは、ドイツ、ベルリンにおいて3週間にわたり実施した資料調査である。この調査では、連邦文書館(Bundesarchiv)を訪問し、公開されたばかりだった、:東ドイツの教科書出版社「人民と知識」出版(Verlag Volk und Wissen)の資料を重点的に収集した。そこで明らかになったのは、次の三点である。まず第一点目として、60年代の同出版では、社会主義国、資本主義国を問わず、50冊を超える諸外国の教科書が綿密に分析されていた。この時期の東ドイツは、教科書改革の途上にあり、その新しいモデルを模索している最中だった。そこにおいてとりわけ注目を集めていたのは、授業における子どもの自発性や創造性を教科書がどのような形で支えうるのか、ということだった。多くの教科書分析者が指摘したのが、諸外国、とりわけ社会主義国の教科書が、問いや課題、資料など様々な要素を通して子どもめ学びを支えようとしているということだった。そのような教科書は「ワークブック(Arbeitsbuch)としての教科書」とされ、新しい教科書モデルの一つとなっていった。第二点目として、東ドイツでは、優れたデザインを持つ本に与えられる「ドイツ民主共和国の最も美しい本(Die schonsten Bucher der Deutscken Demokratischen Republik)」賞において、ほぼ毎年のように教科書が入選していた。このことは、一方では、東ドイツが様々な形で教科書に権威を与えようとしていたことを示している。他方で、教科書のデザインがこのようなコンテストの対象となるのは極めて珍しく、教科書の内容だけでなく、書籍としてのデザインの向上が、同国において強い関心の対象だったことがうかがわれる。実際、このコンテストに入選した教科書の一部が、後述するように、西ドイツの教科書出版社の目にとまり、西ドイツでの出版にも至っていることは極めて興味深い。第三点目として、とりわけ60年代、東西両ドイツの教科書出版社は極めて積極的に交流し、教科書をはじめとする出版物の交換を行っていた。その契機となったのは、65年にフランクフルトで開催された書籍見本市だった。ここで展示された東ドイツの新しい教科書シリーズに、複数の西ドイツの教科書出版社が興味を示し、その後版権の売買の交渉に入ることになった。物理、化学、生物の便覧や実験教則本、語学の教科書がその主たる対象であり、実際に西ドイツではこれらが出版されて広く用いられることになった。研究員は、現在、これらの成果をも反映した博士論文を執筆しており、早ければ今年度の前半にも提出が見込まれている。本年度研究において最も成果があったのは、1960年代80年代の東ドイツにおける教科書の教授学的研究の系譜の解明である。東ドイツで教科書の教授学的研究が盛んに行われるようになった契機は、60年代初頭の教科書を巡る二つの危機にある。教科書は教室で殆ど用いられず、自立した子どもの学びを要請する教育改革の流れにも応えられなくなっていたのである。唯一の教科書出版社「人民と知識」出版は、国内の関係者による討議と並行して、外国の教科書分析を進めることで改良の道を探った。その際提案された新しい教科書の形式が、問いや課題によって構成される「ワークブック(Arbeitsbuch)としての教科書」である。ソ連の読本分析から生まれたこの考え方は、とりわけ自然科学系教科書において熱心に展開されるようになる。65年に発表された「教科書の機能と構成に関するテーゼ」は、出版社の内部に教科書研究部門を設立することを提唱し、70年初頭にかけて、出版社・政府・大学・学校の綿密な協力関係のもとで教科書研究を行う基盤が作られた。70年代には、この体制のもとで膨大な研究成果が発表され、学術専門誌『教科書問題に関する情報』などに掲載された。テキストや目次、挿絵など教科書を構成する各要素の教授学的機能にも関心が集まり、複数の教科書の構成が実際に変化した。さらに80年代になると、教科書の教授学的な構成・機能に関する経験的な研究に重点が置かれるようになった。教師や子どもを教科書開発に積極的に取り込もうとする試みが生まれ、教科書研究の体系化も進んだのである。しかしながら、これらの研究は、東ドイツの崩壊と統一ドイツの誕生とともに急速に衰退していく。教科書研究者たちは大学を追われ、出版社の教科書研究部門は解体された。研究の伝統を残そうと唯一設立された研究所も、多くの成果を残すことはできなかったのである。研究員は平成23年度、東西両ドイツにおける教授学的教科書研究の展開を主題とする博士論文の完成に向けて尽力した。その際とりわけ重要だったのは、ドイツ、ベルリンにおいて3週間にわたり実施した資料調査である。この調査では、連邦文書館(Bundesarchiv)を訪問し、公開されたばかりだった、:東ドイツの教科書出版社「人民と知識」出版(Verlag Volk und Wissen)の資料を重点的に収集した。そこで明らかになったのは、次の三点である。まず第一点目として、60年代の同出版では、社会主義国、資本主義国を問わず、50冊を超える諸外国の教科書が綿密に分析されていた。この時期の東ドイツは、教科書改革の途上にあり、その新しいモデルを模索している最中だった。そこにおいてとりわけ注目を集めていたのは、授業における子どもの自発性や創造性を教科書がどのような形で支えうるのか、ということだった。
KAKENHI-PROJECT-10J10489
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東西ドイツにおける教科書の教育学的・教授学的機能に関する研究の展開
多くの教科書分析者が指摘したのが、諸外国、とりわけ社会主義国の教科書が、問いや課題、資料など様々な要素を通して子どもめ学びを支えようとしているということだった。そのような教科書は「ワークブック(Arbeitsbuch)としての教科書」とされ、新しい教科書モデルの一つとなっていった。第二点目として、東ドイツでは、優れたデザインを持つ本に与えられる「ドイツ民主共和国の最も美しい本(Die schonsten Bucher der Deutscken Demokratischen Republik)」賞において、ほぼ毎年のように教科書が入選していた。このことは、一方では、東ドイツが様々な形で教科書に権威を与えようとしていたことを示している。他方で、教科書のデザインがこのようなコンテストの対象となるのは極めて珍しく、教科書の内容だけでなく、書籍としてのデザインの向上が、同国において強い関心の対象だったことがうかがわれる。実際、このコンテストに入選した教科書の一部が、後述するように、西ドイツの教科書出版社の目にとまり、西ドイツでの出版にも至っていることは極めて興味深い。第三点目として、とりわけ60年代、東西両ドイツの教科書出版社は極めて積極的に交流し、教科書をはじめとする出版物の交換を行っていた。その契機となったのは、65年にフランクフルトで開催された書籍見本市だった。ここで展示された東ドイツの新しい教科書シリーズに、複数の西ドイツの教科書出版社が興味を示し、その後版権の売買の交渉に入ることになった。物理、化学、生物の便覧や実験教則本、語学の教科書がその主たる対象であり、実際に西ドイツではこれらが出版されて広く用いられることになった。研究員は、現在、これらの成果をも反映した博士論文を執筆しており、早ければ今年度の前半にも提出が見込まれている。
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熱帯の土壌生物が植物・植食者・捕食者群集の多様性創出とその維持に及ぼす影響
本研究課題では、主に以下の事項を中心に野外調査と室内実験を実施した。野外で植物の菌根形成率の違いが植物及び節足動物群集の多様性創出に及ぼす影響カリマンタン、ジャワ、鶴岡の3地域の原野で、1)土壌への殺菌剤散布または水散布、2)菌根菌の接種または非接種の各実験処理区を設け、菌根形成率、植物及び昆虫の調査を実施した。その結果、1)では水散布区よりも殺菌剤散布区で、2)では菌根菌非接種区より接種区で、それぞれ植物と昆虫の発生量が増加する傾向が見られた。3地域の圃場実験でも、同様の結果が得られた。これらの結果から、菌根形成率の違いは地上部生物の多様性創出に影響を及ぼしていると考えられた。菌根形成率の違いが植物生育及び植食性昆虫の発生に及ぼすボトムアップ効果菌根形成率および鱗翅目による食害の有無を操作してポット栽培したダイズを野外に設置し、植物の体内成分の変化と植食者昆虫の発生量を調査した。菌根区で食害に関係なくアザミウマ発生量は増加したが、アブラムシ発生量は食害区で減少した。また、菌根形成により植物の生育は促進されるとともに体内成分や遺伝子レベルからの変化も見られた。実験室内でも同様の結果を得た。これらの結果から菌根形成率の違いは地上部生物へのボトムアップ効果を生じさせていると考えられた。食害が菌根形成率やアブラムシの発育に及ぼすトップダウン効果鱗翅目幼虫による食害がダイズの菌根形成率とアブラムシの発育に及ぼす影響を、植物の体内成分の変化などから解明する室内実験を行った。その結果、食害は菌根形成率や植物の体内成分(ポリフェノールなど)濃度に影響し、アブラムシの発育にも影響した。この結果から食害は菌根形成率やアブラムシへのトップダウン効果を生じさせていたことが明らかになった。以上の結果から、土壌微生物は植物及び昆虫の生育や発育に影響を与え、それにより各栄養段階間の種間相互作用を通じ地上部生物の多様性創出と維持に重要な影響を及ぼすと考えられた。これらの結果は、計19編の学会発表により公表し、2008年には国際学会での3編の発表と原著論文5編の投稿を予定している。本研究課題では、主に以下の事項を中心に野外調査と室内実験を実施した。野外で植物の菌根形成率の違いが植物及び節足動物群集の多様性創出に及ぼす影響カリマンタン、ジャワ、鶴岡の3地域の原野で、1)土壌への殺菌剤散布または水散布、2)菌根菌の接種または非接種の各実験処理区を設け、菌根形成率、植物及び昆虫の調査を実施した。その結果、1)では水散布区よりも殺菌剤散布区で、2)では菌根菌非接種区より接種区で、それぞれ植物と昆虫の発生量が増加する傾向が見られた。3地域の圃場実験でも、同様の結果が得られた。これらの結果から、菌根形成率の違いは地上部生物の多様性創出に影響を及ぼしていると考えられた。菌根形成率の違いが植物生育及び植食性昆虫の発生に及ぼすボトムアップ効果菌根形成率および鱗翅目による食害の有無を操作してポット栽培したダイズを野外に設置し、植物の体内成分の変化と植食者昆虫の発生量を調査した。菌根区で食害に関係なくアザミウマ発生量は増加したが、アブラムシ発生量は食害区で減少した。また、菌根形成により植物の生育は促進されるとともに体内成分や遺伝子レベルからの変化も見られた。実験室内でも同様の結果を得た。これらの結果から菌根形成率の違いは地上部生物へのボトムアップ効果を生じさせていると考えられた。食害が菌根形成率やアブラムシの発育に及ぼすトップダウン効果鱗翅目幼虫による食害がダイズの菌根形成率とアブラムシの発育に及ぼす影響を、植物の体内成分の変化などから解明する室内実験を行った。その結果、食害は菌根形成率や植物の体内成分(ポリフェノールなど)濃度に影響し、アブラムシの発育にも影響した。この結果から食害は菌根形成率やアブラムシへのトップダウン効果を生じさせていたことが明らかになった。以上の結果から、土壌微生物は植物及び昆虫の生育や発育に影響を与え、それにより各栄養段階間の種間相互作用を通じ地上部生物の多様性創出と維持に重要な影響を及ぼすと考えられた。これらの結果は、計19編の学会発表により公表し、2008年には国際学会での3編の発表と原著論文5編の投稿を予定している。今年度は、次の2点を中心に野外実験準備とその実施及び室内予備実駿を実施し、以下の結果を得た。1.原野の菌根菌の多様性の違いが植物遷移と植食者及び捕食者群集の多様性創出に及ぼす影響(1)調査地の設定カリマンタン島、ジャワ島、鶴岡の3地域の原野の土壌に含まれる菌根菌の多様性の違いが侵入植物とその後の植物遷移を通じ、植食者と捕食者群集の多様性創出に及ぼす影響を解明するため、3地域で1haの原野を5m間隔の碁盤日状に区切り、殺菌剤の散布頻度を高、中、低、無散布と4段階に分けて菌根菌の多様性を操作した調査地を設定し、野外調査を開始した。(2)調査結果
KAKENHI-PROJECT-16255002
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熱帯の土壌生物が植物・植食者・捕食者群集の多様性創出とその維持に及ぼす影響
殺菌剤の散布頻度が高いと菌根菌の形成率が低いことが予測され、カリマンタン島では概ね予測された傾向が示されたが、ジャワ島ではそのような傾向は示されなかった。一方、植物の多様性は、カリマンタン島よりジャワ島の方が高い傾向があり、カリマンタン島では殺菌剤の散布頻度が高いと植物の覆度が低く種数が少なくなる傾向があったが、ジャワ島ではそのような傾向は見られなかった。また、植食性と捕食性昆虫の平均種数は、カリマンタン島では、それぞれ約4種と約3種、ジャワ島では、約25種と約22種とジャワ島はカリマンタン島より6倍以上種数が多く多様であった。殺菌剤の散布頻度と2つのグループの昆虫の多様度指数との関係は、散布頻度が高いと多様度が低下する傾向は見られなかった。今回の調査結果は、調査地設定後第1回日の調査であり、2005年10月まで2ヶ月毎に調査を実施する予定である。今後の継続調査により、菌根菌の多様性の違いが植物遷移と植食者及び捕食者群集の多様性創出に及ぼす影響の実態を解明できると思われる。2.室内での菌根菌の多様性の違いが2種作物の生育及び植食者、捕食者の生存と発育に及ぼす影響標記項日を明らかにする予備実験として、人工気象器の中で3地域から採集した菌根菌の多様性の異なる土壌でダイズをポット栽培し、順調に生育することを確認した。現在、このダイズで2種のアブラムシとハスモンヨトウ幼虫を飼育中である。今後、菌根菌の多様性などを操作し、それがダイズの生育及び植食者、捕食者の生存と発育に及ぼす影響などを明らかにする予定である。今年度は、次の3点を中心に野外調査と室内実験を実施し、以下の結果を得た。1.原野の菌根菌の多様性の違いが植物遷移と植食者及び捕食者群集の多様性創出に及ぼす影響カリマンタン島、ジャワ島、鶴岡の3地域の原野で、原則として1月から2ヶ月ごとに6回の野外調査を実施した。3地域の調査地での植物の多様性は、カリマンタン島や鶴岡よりジャワ島の方が高い傾向があったが、殺菌剤の散布頻度と多様性には明瞭な関係はなかった。また優占植物3種の菌根菌形成率を調べたところ、殺菌剤散布頻度が高いとコントロール区より菌根菌形成率は低くなる傾向があったが、これは植物の種類にも依存していた。植物乾物重量は、鶴岡では季節を通じ殺菌剤高頻度散布区で重い傾向があったが、カリマンタン島とジャワ島では一定の傾向は見られなかった。現在、殺菌剤処理が菌根菌形成率と節足動物の多様性に及ぼす影響の結果を解析中である。今後は、データ解析を進め、表記課題のパターンの抽出とその機構を検討する予定である。2.圃場の菌根菌の多様性の違いが2種作物の生育及び植食者・捕食者の生存と発育に及ぼす影響野外の圃場で大豆とトウモロコシを栽培し、殺菌剤処理区とコントロール区で作物の生育と2種の植食性昆虫の生存と発育及び昆虫群集の多様性を明らかにする調査を実施した。その結果、2種の作物ともに殺菌剤処理区で菌根菌形成率が低い傾向があった。また、殺菌剤処理区でトウモロコシの生育が促進されアブラムシの発育や繁殖は良好であったが、アワノメイガでは逆の傾向があった。一方、殺菌剤処理区のダイズでは乾物重への影響はなかったが、ダイズアブラムシの産仔数は増加した。ジャガイモヒゲナガアブラムシやハスモンヨトウではそのような傾向はなかった。今後は、現在、解析中の植物の体内成分の分析結果から、得られた処理による違いの要因を検討する。3.ポット栽培による菌根菌の有無が2種作物の生育及び植食者の生存と発育に及ぼす影響トウモロコシの生育には処理効果はなかったが、アブラムシでは菌根菌区で発育と繁殖は良好であり、アワノメイガでは影響がなかった。一方、ダイズではコントロール区で徒長する傾向があり、ダイズアブラムシで産仔数が増加する傾向があった。
KAKENHI-PROJECT-16255002
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アルカリフォスファテース遺伝子導入によるう蝕原性細菌の人為的石灰化法の開発
本研究では、う蝕原性細菌の人為的石灰化現象を利用した微小領域における非切削・非修復的な初期治療の完成を目的として、細菌にアルカリフォスファテース遺伝子(phoA遺伝子)を導入しその酵素活性を上昇させ、人為的石灰化の誘導が可能であることをまず大腸菌にて証明した。石灰化物は、FTIR、電顕、電子回折パターンにてハイドロキシアパタイトであることを確認した。しかし、一部に石灰化のおよぱない細菌が存在することが明らかになり、振盪培養から静置培養へさらに固形培地上での培養を試みた。固形培地では、結晶の成長では有利だが、基質の供給率が減るためか細菌全体にわたる石灰化を生じさせることは困難であった。う蝕原性細菌として、乳酸菌(Lactococcus lactis、Lactobacillus casei)、Streptococcus mutantsを用い、上記の組み換え大腸菌にて発現精製したアルカリフォスファテースを加えることにより、石灰化を確認した。従ってこれらの菌でもアルカリフォスファテース酵素活性の上昇にて石灰化能の亢進が可能であることが証明された。大腸菌と違い、う蝕原性細菌の酸産生能は強く、石灰化環境のPHコントロールが重要であることのデータを得た。また、う蝕原性細菌ではアルカリフォスファテース活性が低く配列に関する報告もないので、他の菌種間で保存されている領域のアミノ酸配列をもとに、染色体から遺伝子のクローニングを行ない、可能性の高い断片を得た。さらに発現ベクターを構築上、強力なプロモーターの検索が必要となるため、大腸菌のphoA遺伝子をレポーター遺伝子としてその発現量をマーカーにスクリーニングを進行中である。以上、本研究では、遺伝子操作によるアルカリフォスファテース活性上昇による細菌の人為的石灰化が可能であり、う蝕原性細菌への応用へ向けて様々な基礎的データを得ることができた。大腸菌にアルカリフォスファテース遺伝子(phoA遺伝子)を導入しその酵素活性を人為的に上昇させ、適当な条件下で培養すると石灰化が生じることは、既に明らかにしている。そのシステムを齲蝕原性細菌に応用することを目的として、以下の実験を行った。齲蝕原性細菌として、Streptococcus mutansと乳酸菌(lactococcus lactis)を用いた。1、石灰化条件に関する検討大腸菌の場合、長期間連続培養しても培地のpH低下は問題とならなかったが、S.mutansや乳酸菌を培養したところ、菌の増埴とともに培地pHが低下した。S.mutansをBHI培地で24時間培養した場合、pHは4まで低下していた。石灰化を考える場合、結晶の安定性からpHは中性以上に保たれる必要がある。齲蝕原性細菌は、酸を多く産生するのものがほとんどである。pHの条件を整えるために何らかの工夫が必要であることが明らかとなった。2、乳酸菌のphoA遺伝子のクローニング乳酸菌では、PhoAの存在および配列に関する報告がないため、他の菌種間で保存されている領域のアミノ酸配列をもとにプライマーを設計し、PCRを行った。その結果、期待される約140bpの位置にバンドを得ることができた。このDNA断片をプローブとして用い、染色体から遺伝子クローニングを行なっている。S.mutansから外来の遺伝子を発現させるにあたり、強力なプロモーターの検索が必要となる。大腸菌-連鎖球菌シャトルベクター(pHTet30)に、S.mutansの遺伝子断片とレポーター遺伝子として大腸菌のphoA遺伝子を挿入した。その発現量をマーカーに、現在スクリーニング中である。本研究では、う蝕原性細菌の人為的石灰化現象を利用した微小領域における非切削・非修復的な初期治療の完成を目的として、細菌にアルカリフォスファテース遺伝子(phoA遺伝子)を導入しその酵素活性を上昇させ、人為的石灰化の誘導が可能であることをまず大腸菌にて証明した。石灰化物は、FTIR、電顕、電子回折パターンにてハイドロキシアパタイトであることを確認した。しかし、一部に石灰化のおよぱない細菌が存在することが明らかになり、振盪培養から静置培養へさらに固形培地上での培養を試みた。固形培地では、結晶の成長では有利だが、基質の供給率が減るためか細菌全体にわたる石灰化を生じさせることは困難であった。う蝕原性細菌として、乳酸菌(Lactococcus lactis、Lactobacillus casei)、Streptococcus mutantsを用い、上記の組み換え大腸菌にて発現精製したアルカリフォスファテースを加えることにより、石灰化を確認した。従ってこれらの菌でもアルカリフォスファテース酵素活性の上昇にて石灰化能の亢進が可能であることが証明された。大腸菌と違い、う蝕原性細菌の酸産生能は強く、石灰化環境のPHコントロールが重要であることのデータを得た。また、う蝕原性細菌ではアルカリフォスファテース活性が低く配列に関する報告もないので、他の菌種間で保存されている領域のアミノ酸配列をもとに、染色体から遺伝子のクローニングを行ない、可能性の高い断片を得た。さらに発現ベクターを構築上、強力なプロモーターの検索が必要となるため、大腸菌のphoA遺伝子をレポーター遺伝子としてその発現量をマーカーにスクリーニングを進行中である。以上、本研究では、遺伝子操作によるアルカリフォスファテース活性上昇による細菌の人為的石灰化が可能であり、う蝕原性細菌への応用へ向けて様々な基礎的データを得ることができた。
KAKENHI-PROJECT-12771145
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12771145
統合的な内容検索が可能な画像情報サービスの研究開発
本研究開発では、以下の3つの課題を相互に連携させながら進めた。(1)多種多様な画像の階層的特徴記述法と類似検索アルゴリズムの開発モノクロやフルカラーの図形・文様・図案・イラスト・写真等、画像的な特徴が大きく異なる対象を包括的に記述する、新しい画像特徴量群を定式化した。研究代表者が考案した光刺激に対する側抑制機構の数理モデルを一般化し、非線形な局所的相互作用と、光順応や解像度調節などの大局的処理の双方をモデル化した。(2)インターネットに開いた画像データベースサーバーの開発一つのデータベースサーバー中に格納された画像だけでなく、インターネット上の画像も分散配置したまま内容検索の対象とするような、一元的なデータ管理および内容検索の仕組みを実現した。データベースサーバーに自律的なデータ管理機構を統合した。(3)統合的ユーザインタフェースGUIの一つの拡張として、内容検索等の画像情報サービスを享受できるようにするための統合的なユーザインタフェースの仕組みを、認知科学的な視点からも検討しつつ実現した。具体例としては、利用者自身が描画したりCCDカメラで撮影した例示画をオンラインで受付け、これと従来型のキーワード等の2次情報による検索ともスムーズに組合されたユーザインタフェースを開発した。これによって、利用者は画像のカテゴリ・所在・検索の仕組みを意識せずに、画像情報サービスを享受できるようになった。本研究開発では、以下の3つの課題を相互に連携させながら進めた。(1)多種多様な画像の階層的特徴記述法と類似検索アルゴリズムの開発モノクロやフルカラーの図形・文様・図案・イラスト・写真等、画像的な特徴が大きく異なる対象を包括的に記述する、新しい画像特徴量群を定式化した。研究代表者が考案した光刺激に対する側抑制機構の数理モデルを一般化し、非線形な局所的相互作用と、光順応や解像度調節などの大局的処理の双方をモデル化した。(2)インターネットに開いた画像データベースサーバーの開発一つのデータベースサーバー中に格納された画像だけでなく、インターネット上の画像も分散配置したまま内容検索の対象とするような、一元的なデータ管理および内容検索の仕組みを実現した。データベースサーバーに自律的なデータ管理機構を統合した。(3)統合的ユーザインタフェースGUIの一つの拡張として、内容検索等の画像情報サービスを享受できるようにするための統合的なユーザインタフェースの仕組みを、認知科学的な視点からも検討しつつ実現した。具体例としては、利用者自身が描画したりCCDカメラで撮影した例示画をオンラインで受付け、これと従来型のキーワード等の2次情報による検索ともスムーズに組合されたユーザインタフェースを開発した。これによって、利用者は画像のカテゴリ・所在・検索の仕組みを意識せずに、画像情報サービスを享受できるようになった。我々は感性の工学的なモデル化法として、写真などのマルチメディアデータと、これを見た時に受ける印象を表現した言葉の間の相関関係を統計的に発見する手法と、印象語から適切なマルチメディアデータを検索する感性検索アルゴリズムを開発してきた。本年度は、この枠組み上で、未知の写真などのマルチメディアデータを与えて、計算機に、この写真が特定の利用者にどのような印象語を想起させるかを推定するアルゴリズムを開発した。このアルゴリズムと感性検索アルゴリズムを統合的に利用することで、風景写真と絵画、テクスチャなど、異なったコンテンツのマルチメディアデータ間でも、例えば、風景写真から印象語を推定し、その印象語にふさわしいテクスチャを検索できるように、主観的な基準に基づいたマルチメディア感性検索が可能となる。本年度はまた、客観的なキーワードをキーとして、インターネット上の複数の画像サーチエンジンを単一のインタフェースから利用し、回答として得られた画像群を自動的に統合しつつ、さらに感性のモデルに基づいて印象語でフィルタリングするメカニズムを開発した。我々は感性の工学的なモデル化法として、写真などのマルチメディアデータと、これを見た時に受ける印象を表現した言葉の間の相関関係を統計的に発見する手法と、印象語から適切なマルチ芽でゃ位データを検索する感性検索アルゴリズムを開発してきた。本年度は、この枠組み上で、具体的な画像データベースサーバーのプロトタイピングを進めた。本研究で定式化した画像特徴量群を用いて、統計的な基準により、類似検索に適合した画像特徴量の組を自動的に選択する内容検索のアルゴリズムを開発し、評価した。このようなソフトウェアの実際的な評価を行うために、オフィスの設計やリフォームの際に使用するオフィス家具、什器、天井・壁紙・絨毯・クロス等をデータベース化し、主観的なイメージ表現から、それぞれのコンテンツに関して適した事例を検索する、総合的な感性検索システムの試作を進めた。また、利用者による検索精度の評価実験を実施した。画像的な特徴が大きく異なる対象を包括的に記述する、新しい画像特徴量群の定式化に取り組んだ。具体的には、非線形な局所的相互作用(例:明るさ・色彩の対比効果と補正メカニズム)、と、光順応(例:明暗順応・色順応)や解像度調節等の大局的処理、及び、局所・大局の階層間の相互作用のモデル化を行った。また、オブジェクト指向システム設計の観点から、プラットフォームとなるべきデータベースサーバーの設計を行った。開発したソフトウェアをブラッシュアップするため、種々の感性検索システムのプロトタイピングを行った。内容検索アルゴリズムや、利用者の視点からのシステムの使いやすさ等を評価・検証した。同時に、内容検索をデータベースサーバーに要求するための統合的ユーザインタフェースを、認知科学的な視点から検討した。研究成果の具体例として画像データベースサーバーを公開すると共に、当該分野での研究開発用のソフトウェアプラットホームとして「感性工房」を開発し、オープンソース化した。
KAKENHI-PROJECT-11558041
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11558041
写真・映像による具体美術協会の研究-戦後美術史研究の基盤構築と活性化の試みとして
本研究の目的は、日本を代表する戦後日本美術グループであり、近年は欧米でも活発な研究が進んでいる具体美術協会(以下「具体」と略)の活動や作品の意義を、具体」関係者の遺族などから大阪市に寄贈された大量の記録写真や写真映像の検証、分析によって考察するとともに、考察の家庭で構築した記録写真や記録映像のデータベースをインターネットにより研究者に公開し、国内外における「具体」研究の活性化に寄与することにある。記録写真や記録映像に基づく研究は、戦後日本の前衛美術史研究にとって、不可欠かつ本質的なアプローチと言える。それらは、今後日本美術を世界的視野で捉えるための重要な研究対象となる。このことを踏まえて、平成28年度は、まず資料全体の整理と分類と劣化が激しい資料への処置などを行った。平成29年度は、記録写真、写真映像の一つ一つがいつ撮影されたものであるか、何が写(映)っているか、その内容を記録していく課題1「被写体の検証、分析に基づく研究」に特に集中的に取り組んだ。また、本研究の先進事例を調査するため、研究協力者である大阪新美術館建設準備室の資料担当学芸員(松山ひとみ)が渡米、ニューヨーク近代美術館、ホイットニー美術館、フリーア美術館&アーサー・M・サックラー・ギャラリーなど西海岸ではゲティ・リサーチ・インスティチュート、バークレー美術館&パシフィックフィルムアーカイブなどに赴いた。平成29年度は、アルバイトを雇用し書籍、映像以外の資料の種分けスキャニングを進めた。課題1の「被写体の検証、分析に基づく研究」の進め方については、平井、河﨑が方法論を検討し、年代ごと(1954=1972)の紙焼きラッシュのデータ化を進め、それら被写体の1コマ1コマの期日、内容、人名などを記載するその準備を始めた。課題2については、谷口が引き続き写真映像の研究を行い、課題3「日本の現代美術に関する文化資源の活用方法の研究」については、谷口が中心となり大阪新美術館準備室建設の資料担当に渡米のための調査内容を指示した。アーカイブの先進国であるアメリカの美術館を調査したことは今回の研究の大きな実績となる。電子記録アーカイブ(資料のデジタル化)、専門の担当者の雇用(アーキビスト)、閲覧体制などを中心に調査し、今後報告会を開きその内容をまとめていく。平成30年度は、最終年度であり、それぞれの課題を達成していく。10月から11月をめどに総括報告書を作成し、プロジエクト内のチェックを兼ねた報告会を開催する。成果物として、課題1の「被写体の検証、分析に基づく研究」では、資料ファイルに残された写真の内容を記述したファイルを作成する。課題2については、谷口が写真映像の研究をまとめる。課題3「日本の現代美術に関する文化資源の活用方法の研究」では、アメリカの美術館のアーカイブ保存に関する報告をもとに、今後大阪新美術館準備室建設がどの様なかたちで資料を後悔していくことができるかを提言していく。それらの最終目的を達成するために、総括的な視野から研究者が意見交換を推進し、最終報告書へとまとめていく。本研究の目的は、日本を代表する戦後前衛美術グループであり、近年は欧米でも活発な研究が進んでいる具体美術協会(以下「具体」と略)の活動や作品の意義を「具体」関係者の遺族などから大阪市に寄贈された大量の記録写真や記録映像の検証、分析によって考察するとともに、考察の過程で構築した記録写真や記録映像のデータベースをインターネットにより研究者に公開し、国内外における「具体」研究の活性化に寄与することにある。記録写真や記録映像に基づく研究は、戦後日本の前衛美術にとって、不可欠かつ本質的なアプローチであるといえる。それらは、今後日本美術を世界的視野で捕らえるための重要な研究対象となる。それらを踏まえて平成28年11月の交付時から本格的な研究準備をはじめた。平成28年度は、実質活動できる期間が11月から3月であったために、当初計画を大幅に見直し、年度内に一定の成果が得られる内容に絞った。具体的には、具体美術協会関係者から大阪市に寄贈された記録写真、記録映像をデータベース化するための基本的な分類整理を進めた。それらと大阪市の自己予算で別途デジタル化された資料映像などをあわせて研究会を開催、研究課題の確認、資料整理や研究の方向性を見極めていった。しかし平成28年度は、大阪新美建設準備室に保管されている記録写真や記録映像の全体像を把握するまでには至らなかった。平成28年度は、研究発表、学会発表、図書掲載など外部に向けての研究成果の発表は行わなかった。平成28年度は、資料整理に用いるスキャナー、パソコン、資料整理箱などを購入、1月よりアルバイトを雇用し、資料の種分け、スキャニングなどの基本的な整理作業をはじめた。スキャニングを導入したアルバムの整理種分けは、整理作業を大きく前進させた。課題2「『具体』の活動におけるメディアとしての写真、映像に関する研究」に関して、谷口がデジタル化された写真の調査を行った。3ヶ月という短期間であったため、課題1「被写体の検証、分析に基づく研究」、課題3「日本の現代美術に関する文化資源の活用方法の研究」まで踏み込むことができなかったが、平成29年度にはこれらについても何らかの成果を出したい。本研究の目的は、日本を代表する戦後日本美術グループであり、近年は欧米でも活発な研究が進んでいる具体美術協会(以下「具体」と略)の活動や作品の意義を、具体」
KAKENHI-PROJECT-16K02288
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K02288
写真・映像による具体美術協会の研究-戦後美術史研究の基盤構築と活性化の試みとして
関係者の遺族などから大阪市に寄贈された大量の記録写真や写真映像の検証、分析によって考察するとともに、考察の家庭で構築した記録写真や記録映像のデータベースをインターネットにより研究者に公開し、国内外における「具体」研究の活性化に寄与することにある。記録写真や記録映像に基づく研究は、戦後日本の前衛美術史研究にとって、不可欠かつ本質的なアプローチと言える。それらは、今後日本美術を世界的視野で捉えるための重要な研究対象となる。このことを踏まえて、平成28年度は、まず資料全体の整理と分類と劣化が激しい資料への処置などを行った。平成29年度は、記録写真、写真映像の一つ一つがいつ撮影されたものであるか、何が写(映)っているか、その内容を記録していく課題1「被写体の検証、分析に基づく研究」に特に集中的に取り組んだ。また、本研究の先進事例を調査するため、研究協力者である大阪新美術館建設準備室の資料担当学芸員(松山ひとみ)が渡米、ニューヨーク近代美術館、ホイットニー美術館、フリーア美術館&アーサー・M・サックラー・ギャラリーなど西海岸ではゲティ・リサーチ・インスティチュート、バークレー美術館&パシフィックフィルムアーカイブなどに赴いた。平成29年度は、アルバイトを雇用し書籍、映像以外の資料の種分けスキャニングを進めた。課題1の「被写体の検証、分析に基づく研究」の進め方については、平井、河﨑が方法論を検討し、年代ごと(1954=1972)の紙焼きラッシュのデータ化を進め、それら被写体の1コマ1コマの期日、内容、人名などを記載するその準備を始めた。課題2については、谷口が引き続き写真映像の研究を行い、課題3「日本の現代美術に関する文化資源の活用方法の研究」については、谷口が中心となり大阪新美術館準備室建設の資料担当に渡米のための調査内容を指示した。アーカイブの先進国であるアメリカの美術館を調査したことは今回の研究の大きな実績となる。電子記録アーカイブ(資料のデジタル化)、専門の担当者の雇用(アーキビスト)、閲覧体制などを中心に調査し、今後報告会を開きその内容をまとめていく。今年度は、劣化の激しい記録写真や記録映像のデジタル化を進めるとともに、順次、大阪新美術館建設準備室ホームページにより研究者に整理の状況を公開していく。また、課題1については、平井、河﨑が原資料やデジタル化された資料をもとに、被写体の検証、分析を行う。課題2については谷口が引き続き写真・映像の調査研究を行い、課題3については平井、谷口、菅谷、高柳、および今年度から研究協力者に加わる予定の國井で内外を問わず他の機関の活動を調査し、「具体」資料の世界的レベルでの公開要請に対応できる方策を研究する。今後は研究会をより多く持ち、課題ごとの研究成果を発表、共有する。平成30年度は、最終年度であり、それぞれの課題を達成していく。10月から11月をめどに総括報告書を作成し、プロジエクト内のチェックを兼ねた報告会を開催する。成果物として、課題1の「被写体の検証、分析に基づく研究」では、資料ファイルに残された写真の内容を記述したファイルを作成する。課題2については、谷口が写真映像の研究をまとめる。課題3「日本の現代美術に関する文化資源の活用
KAKENHI-PROJECT-16K02288
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小さい金属クラスター組立てによる分子ドット,分子ワイヤーの超構造構築と物性研究
本研究の目的は小さい金属錯体を「積み木」として用い、これを分子設計的に組み立て、ナノメートルサイズの球状、ワイヤー状の超構造をもつインテリジェント高次金属クラスター錯体を構築する事である。これらのクラスターのインテリジェント性として、(1)量子箱、量子線類似の量子物性の発現(2)複数の発光金属中心をもつクラスターの構築による新発光特性の発現を期待している。【II】新規スプラ構造の構築:インテリジェント物質の開発法の一つとして近年水素結合のような弱い相互作用力を利用した「結晶工学」が盛んになっている。我々はこのような弱い相互作用力としてd^<10>のAu(I)間のAu...Au相互作用、つまりaurophilicityやπ-π相互作用を利用してスプラ構造、インテリジェント物質の開発を試みることにした。その結果、二次元無限鎖構造の[Au(PPh_3)(S-C_6H_4-4-N=CH-C_5H_4N-4](4),二次元梯子状のAu{P(3,5-(CF_3)_2C_6H_3)_3}(Sph)(5)の合成と結晶解析に成功した。【III】新規発光性スプラ錯体の合成:序論の(2)に関する目的を達成するため、RuとAu,RuとCoの2種の金属を同一分子中にもつスプラ錯体の合成に取り組んだ。[Ru(bpy)_2(o-phen4-C≡C-Au-(PPh_3)](PF_6)(6),[Ru(bpy)_2(o-phen-4-C≡C-tol(Co_2(CO)_4(μ-dppe)](7)の合成に成功した。とりわけ6ではAu(I)由来の波長で励起するとRu(II)サイトで発光することが判明した。また7ではo-phen-C≡C由来のLC吸収帯で励起するとこの吸収がクエンチされることが判明した。今後紫外光励起により青-緑色発光するスプラ錯体の合成を目指す。本研究の目的は小さい金属錯体を「積み木」として用い、これを分子設計的に組み立て、ナノメートルサイズの球状、ワイヤー状の超構造をもつインテリジェント高次金属クラスター錯体を構築する事である。これらのクラスターのインテリジェント性として、(1)量子箱、量子線類似の量子物性の発現(2)複数の発光金属中心をもつクラスターの構築による新発光特性の発現を期待している。【II】新規スプラ構造の構築:インテリジェント物質の開発法の一つとして近年水素結合のような弱い相互作用力を利用した「結晶工学」が盛んになっている。我々はこのような弱い相互作用力としてd^<10>のAu(I)間のAu...Au相互作用、つまりaurophilicityやπ-π相互作用を利用してスプラ構造、インテリジェント物質の開発を試みることにした。その結果、二次元無限鎖構造の[Au(PPh_3)(S-C_6H_4-4-N=CH-C_5H_4N-4](4),二次元梯子状のAu{P(3,5-(CF_3)_2C_6H_3)_3}(Sph)(5)の合成と結晶解析に成功した。【III】新規発光性スプラ錯体の合成:序論の(2)に関する目的を達成するため、RuとAu,RuとCoの2種の金属を同一分子中にもつスプラ錯体の合成に取り組んだ。[Ru(bpy)_2(o-phen4-C≡C-Au-(PPh_3)](PF_6)(6),[Ru(bpy)_2(o-phen-4-C≡C-tol(Co_2(CO)_4(μ-dppe)](7)の合成に成功した。とりわけ6ではAu(I)由来の波長で励起するとRu(II)サイトで発光することが判明した。また7ではo-phen-C≡C由来のLC吸収帯で励起するとこの吸収がクエンチされることが判明した。今後紫外光励起により青-緑色発光するスプラ錯体の合成を目指す。
KAKENHI-PROJECT-12023221
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ゲノム編集を施したヒト気道上皮細胞株を基盤とするKRASシグナル経路の解析
KRAS遺伝子は肺癌など様々な癌で活性化変異を起こしている。そこで、癌原性KRAS変異をノックインした非癌ヒト気管支上皮細胞株を用いて変異KRAS遺伝子の機能を解析した。変異KRASは、細胞の形態を癌細胞様に変化させ、足場非依存性増殖能を与え、細胞の運動能、マトリゲル浸潤能を亢進させていた。また細胞内で増殖シグナルを核に伝えるMEK-ERK経路を過剰活性化していた。遺伝子およびタンパク質の網羅的発現解析の結果、これらの細胞特性の変化を説明しうる分子の発現量の変化を見出した。本研究の成果は変異KRASの機能の全容解明に貢献し、将来的にはKRAS変異癌の治療薬開発に道を開くものと期待される。KRAS癌遺伝子は肺癌、膵癌、大腸癌などの癌で高頻度に変異を呈する。しかし、KRAS変異に伴う癌発生・進展の分子機構の全容は未だ解明されておらず、KRAS変異癌に対する有効な治療薬は乏しい。本研究では、肺癌発生の初期段階におけるKRAS変異の役割を詳細に解析することを目標とする。また、KRAS変異癌の治療標的分子を同定し、将来的には新規癌治療薬の開発に道を開くことを目指す。本研究の開始にあたり、厳密で正確なアッセイを可能にする実験系を樹立するため、まずアデノ随伴ウイルスベクターを用いて非癌ヒト気道上皮細胞株NuLi-1のゲノム編集を行い、野生型KRASアレル2本中1本を癌原性KRASG12Vアレルに置換(変異ノックイン)した。次に、樹立したKRAS変異クローンと対照クローンの表現型を様々なアッセイによって比較検討した。その結果、KRAS変異クローンの細胞形態が上皮細胞の特徴である敷石状の外観から疎な紡錘形細胞様へ変化することを見出した。また、同クローンは、ウェスタンブロット解析においてKRAS下流で増殖シグナルを伝達するMEK-ERK経路の活性亢進を示し、軟寒天培地培養では足場非依存性コロニーを形成した。これらのことから、本研究で用いた非癌ヒト気道上皮細胞株NuLi-1は、野生型KRASアレル2本中1本の癌原性変異により癌形質の少なくとも一部を獲得することが示唆された。一方、意外なことに、増殖因子欠乏条件での単層培養において、KRAS変異ノックインによる増殖速度の低下が見られた。従来、マウスモデルなどでは、増殖シグナルの活性化がKRAS変異に伴う発癌機構のひとつであるとされてきた。しかし、我々のヒト気道上皮細胞モデルを用いた実験からは、KRAS変異による増殖速度の変化は細胞癌化において副次的である可能性が示唆された。前年度までに、非癌ヒト気管支上皮由来の不死化細胞株に対してアデノ随伴ウイルスベクターを用いた遺伝子改変を行い、内在性の野生型KRASアレルに癌原性の活性化型KRAS変異を導入(変異ノックイン)した。これにより、KRASアレル2本中1本における活性化変異の有無を理論上唯一の遺伝的相違とする細胞クローンのペアを樹立した。また、樹立した細胞クローンペアの表現型を様々な生化学的・分子生物学的解析によって比較し、間質様の細胞形態の変化、軟寒天培地におけるコロニー形成能の獲得、細胞運動能とマトリゲル浸潤能の亢進、下流シグナル伝達媒介分子MEKの活性亢進など、KRAS変異ノックインによる細胞の形質転換を示唆する所見を見出した。本年度、肺癌発生に関与する遺伝子の候補を探索するため、上記の細胞クローンペアのマイクロアレイ解析を行い、KRAS変異ノックインにより発現変動をきたす遺伝子群を同定した。検体は、低濃度血清含有培地で培養したKRAS変異ノックインクローン3個と野生型KRAS遺伝子を持つ対照クローン4個(親株1検体を含む)からRNAを抽出して用いた。データ処理はFeature Extractionソフトウェアを、クラスター解析はGene ClusterおよびTree Viewソフトウェアを用いて行った。クラスター解析の結果、7個の検体はKRAS変異ノックインクローンの3検体と対照群4検体に2大別され、KRAS変異ノックインにより遺伝子発現プロファイルが明らかに変化することが示された。また、KRAS変異ノックインクローンにおいてCOL1A2やCOL5A2など上皮間葉転換の指標となる遺伝子の発現が亢進し、CDH1やMST1Rなど上皮マーカー遺伝子の発現が低下していた。これは、KRAS変異ノックインクローンの紡錘状の細胞形態の変化や細胞運動能・マトリゲル浸潤能の亢進と符合する結果と考えられた。以前、当研究グループは、アデノ随伴ウイルスベクターによる遺伝子改変法を用いて、不死化ヒト気管支上皮細胞株が持つ2本の野生型KRASアレルのうち1本を癌原性(活性型)KRASG12V変異アレルに置換し(変異ノックイン)、細胞クローン群を単離した。本研究では、同じ細胞株由来で2本の野生型KRASアレルを持つクローン群を対照として、単離したKRAS変異ノックインクローン群の表現型を様々なアッセイによって解析している。本年度はクローン群の網羅的プロテオーム解析を行った。まずクローン群を低濃度血清中で一定期間培養した後、タンパク質抽出・トリプシン消化・精製を行い、質量分析システムTripleTOF 5600(ABSciex社)を用いてタンパク質の発現解析を行った。その結果、KRAS変異ノックインクローン群におけるコラーゲンタンパク質およびコラーゲン合成を制御する酵素タンパク質の発現量が対照群に比べて有意に増加していた。
KAKENHI-PROJECT-25460395
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ゲノム編集を施したヒト気道上皮細胞株を基盤とするKRASシグナル経路の解析
以前のマイクロアレイおよび定量的RT-PCR解析においても同じサブタイプのコラーゲンがmRNAレベルで発現亢進していたので、今回の実験結果はその知見と合致するものと考えられた。また、mRNAレベルの検討では検出されなかったペントースリン酸経路(解糖系の分枝経路)に関与する特定の酵素タンパク質の発現量の増加がKRAS変異ノックインクローン群において認められた。以上のようなタンパク質量の増加はKRAS変異細胞の増殖能および浸潤能を正に制御する可能性があり、その発現または活性の阻害によりKRAS変異ノックイン細胞に見られる癌細胞様の特性を抑制できる可能性がある。これらの分子が創薬標的候補になりうるか否かさらなる検討が必要と考えられる。本年度の研究によりKRAS遺伝子変異の有無による細胞内タンパク質の発現変動を把握することができた。一部のデータはmRNAレベルでの発現変動と合致するものであったが、他のデータの中に新たな知見も認められ、今後解析を進めるべき創薬標的候補分子を得ることもできた。以前、研究代表者らは、アデノ随伴ウイルスの骨格を持つターゲッティングベクターを用いて非癌ヒト気管支上皮細胞に由来する不死化細胞株NuLi-1の遺伝子改変を行った。その結果、2本の野生型KRAS遺伝子アレルのうち1本が癌原性の活性化型KRASG12V変異アレルに置換(変異ノックイン)された細胞クローンを樹立した。本研究ではまず、樹立したKRAS変異ノックインクローンの細胞特性を様々なアッセイによって野生型KRAS遺伝子を持つ対照クローンと比較した。その結果、KRAS変異ノックインクローンの細胞形態は疎な紡錘体様に変化しており、軟寒天培地中でも増殖し足場非依存性コロニーを形成することがわかった。また、ERKタンパク質の恒常的な過剰リン酸化を呈することから、KRASからの増殖シグナルを伝達する下流経路のうちMEK-ERK経路の活性が亢進していることが示唆された。これらの結果から、KRAS遺伝子1アレルへの活性化変異のノックインによってNuLi-1細胞株が一定の癌形質を獲得することが示された。次に、KRAS変異ノックインクローンと対照クローンのマイクロアレイ解析を行ったところ、KRAS変異の有無によって遺伝子発現プロファイルが明確に2大別された。KRAS変異ノックインクローンでは上皮間葉転換の指標となる遺伝子の発現が亢進し、上皮マーカー遺伝子の発現が低下していた。また、プロテオーム解析を行ったところ、KRAS変異ノックインクローンにおいてコラーゲンおよびコラーゲン合成を制御する酵素タンパク質の発現が亢進していた。KRAS変異によって発現量が増加するこれらの分子の役割を調べるため、CRISPR-Cas9システムに基づく遺伝子ノックアウトを行った。今後、単離したクローンの表現型を解析することによって変異KRASの増殖シグナルを媒介する重要な分子を同定し、創薬標的を探索する方針である。KRAS遺伝子は肺癌など様々な癌で活性化変異を起こしている。そこで、癌原性KRAS変異をノックインした非癌ヒト気管支上皮細胞株を用いて変異KRAS遺伝子の機能を解析した。変異KRASは、細胞の形態を癌細胞様に変化させ、足場非依存性増殖能を与え、細胞の運動能、マトリゲル浸潤能を亢進させていた。
KAKENHI-PROJECT-25460395
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光ファイバひずみ計測の普及に向けた計測の高精度化についての研究
近年、インフラ設備などの構造物に生じる事故や災害が大きな社会問題になっており、安心安全な生活環境の実現に向けて、これらの構造物の変状や損傷をモニタリングする技術の開発とその普及が重要な課題となっている。光ファイバ内で発生するブリルアン散乱光のスペクトル(以下BGSと略す)がひずみに比例して周波数シフトする現象を利用する光ファイバひずみ計測方法は、従来の電気的センサでは実現できなかったひずみの長距離・分布計測可能であることから、光ファイバをセンサとして構造物に設置することによる構造物のひずみモニタリング技術への利用が期待されている。通常、BGSは山型の形状を持つことから、光ファイバ上のひずみ計測位置において観測されたBGSが最大となる光周波数が求められ、それがひずみに変換される。このとき各ひずみ計測位置において、その位置を中心とする空間的にある長さのBGS観測区間、また観測時刻を中心とする時間的にある長さの観測時間内でのすべてのBGSが観測される。その結果、空間的または時間的に、また同時に不均一なひずみが生じるとBGSの形状が変形し、この変形が系統的計測誤差を引き起こす。光ファイバ計測の普及に向けた計測の高精度化のために、これまで不均一なひずみを考慮したBGS形状のモデル化と実験によるそのモデルの妥当性の実証、このモデルを用いた円環構造物の円周方向ひずみの計測方法の開発、さらに計測されたひずみから円環各部の変位計測方法を開発してきた。平成30年度は、円環の円周方向ひずみ計測においてシミュレーションによるBGS観測条件がひずみ計測誤差に与える影響の明確化、模擬実験による円環円周方向ひずみ計測方法の有効性の実証、円環から環状構造物の円周方向ひずみ計測への拡張を行った。さらに、考案した円環のひずみから円環各部の変位を計測する方法の妥当性を明らかにした。(1)空間的・時間的同時不均一ひずみのひずみ計測への影響の明確化本研究は当初の計画より早く進展し、昨年度(平成29年度)末で完了している。この研究の過程で、空間にかかわるパラメータと時間にかかわるパラメータを置き換えることによって、空間的不均一ひずみ下と時間的不均一ひずみ下の両方のBGSがモデルされることが明らかになった。これは、空間的また時間的ひずみによらず、BGSに同じ変形が生じることを意味している。以下の研究において、この特性を利用した模擬実験を行った。(2)環状構造物の高精度ひずみ計測方法の開発典型的な荷重である集中荷重と分布荷重が作用している円環について、シミュレーションによって円周方向ひずみ計測のためのBGS観測条件と計測誤差との関係について調べた。その結果、荷重によらず、ひずみ計測誤差はひずみ計測(BGS観測)角度の間隔とBGS観測周波数の間隔のいずれの平方根にも比例することを明らかにした。また、上記(1)で述べた特性を利用して、両荷重が作用している空間的不均一ひずみ下の円環で観測されるBGSと同じ変形を与える時間的不均一ひずみを光ファイバに形成し、このBGSを観測する模擬実験を行い、開発した円環円周方向のひずみ計測方法の有効性を実験的にも実証した。実際に楕円環を作成し実験を行うことは経費的にも設備的にも困難なため、このような模擬実験を行った。円環の円周方向ひずみ計測方法を、より一般的な環状構造物に拡張する方法の基礎検討を行い、この計測を実現するためのソフトウェアを開発した。(3)ひずみからの構造物断面各部の変位計測方法の開発上記(2)の実験によって円環内外周に生じるBGSを観測し、それより計測されたひずみから、開発した変位計測方法を用いて円環構造物各部の変位を算出した。その結果、相対誤差1%以下の高い精度で変位が求められることを明らかにした。(1)空間的・時間的同時不均一ひずみのひずみ計測への影響の明確化すでに述べているように本研究は完了しているので、実施しない予定である。(2)環状構造物の高精度ひずみ計測方法の開発代表的な環状構造物として、曲面だけからなる楕円環と曲線と直線からなる四角環を取り上げ、平成30年度に開発した環状構造物円周方向ひずみ計測方法を用いて、典型的な荷重である集中荷重と等分布荷重が作用している両環の円周方向ひずみをシミュレーションと実験によって計測し、本方法の有効性を調べる。まず、有限要素解析によって両環の円周方向ひずみを求める。シミュレーションでは、求められたひずみ下でのBGSの観測値を算出し、今回開発した方法によって、それよりひずみを計測する。有限要素解析と開発方法によって得られたひずみを比較する。一方実験では、平成30年度での研究と同様、両環に生じる空間的不均一ひずみと同じ変形を与える時間的不均一ひずみが形成された光ファイバのBGSを観測する。そしてそれよりひずみを計測し、有限要素解析によるひずみと比較する。このような模擬実験を行う理由は上述のとおりである。(3)ひずみからの構造物断面各部の変位計測方法の開発環状構造物内外周のひずみから断面各部の変位を計測する方法を開発し、その実行可能性をシミュレーションと実験によって調べる。まず、有限要素法解析によって、集中荷重と等分布荷重が作用している楕円環と四角環内外周の円周方向ひずみと各部の変位を求める。
KAKENHI-PROJECT-16K01286
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光ファイバひずみ計測の普及に向けた計測の高精度化についての研究
次に、求められた内外周のひずみ下で算出されたBGSの観測値からひずみを計測し、計測された内外周のひずみから、開発した変位計測方法によって各部の変位を求める。また、上述した模擬実験によって観測されたBGSから内外周のひずみを、さらにひずみから各部の変位を求め、有限要素法解析と模擬実験によるひずみを比較、評価する。安全安心な生活環境のためには、事故や災害が社会問題になっているインフラ設備などの構造物に対する変状や損傷のモニタリング技術の開発が急務である。光ファイバは一般的には、情報社会を支える通信用媒体として知られているが、それに加えて、長距離・分布計測が可能なひずみセンサとして構造モニタリングへの応用が期待されている。モニタリング対象に一体化して設置された光ファイバのひずみを計測することで、対象のひずみを間接的に得ることができる。この光ファイバひずみ計測は、光ファイバ内で発生するブリルアン散乱光のスペクトル(以下BGSと略す)がひずみに比例して周波数シフトする現象に基づいている。通常BGSは山型の形状を持つことから、BGSが最大になるときの光周波数が求められ、それが対応するひずみに変換される。この計測では、光ファイバ上のひずみ計測点を中心として空間的にある長さの観測区間内、また観測時刻を中心として時間的にある長さの観測時間内のBGSが観測される。地震の際などのように構造物に空間的にも時間的にも不均一なひずみが生じている場合を想定し、これまでの個別に検討してきたそれぞれのひずみ下のBGSの形状解析を統合することによって両不均一ひずみ下のBGSモデルを構築し、その妥当性を実験で確認した。断面の変形は、ひずみとともに構造物の変状を表す重要な指標である。円環の内外周のひずみから、円環断面各部の変位を計測する方法を開発した。この方法では真直梁に対する変位算出方法を基礎とし、構造物の断面を微小真直梁の集合とみなして各微小真直梁の向きを考慮して変位を求めている。本方法を実現するためのソフトウェアを作成した。円環直径上に作用する荷重によって生じる円環内外周のひずみと断面各部の変位を理論的に求めるとともに、本方法によりひずみから変位を求めた。両者はよく一致しており、本方法の有効性を確認できた。(1)空間的・時間的同時不均一ひずみのひずみ計測への影響の明確化これまで個別に研究を進めてきた、空間的・時間的不均一ひずみ下の光ファイバに生じるBGSの形状解析方法を組み合わせ、両者が同時に生じている場合のBGSの形状を与えるモデルを構築した。2種類の典型的な空間的・時間的不均一ひずみ、すなわち空間的にも時間的にも線形に変化するひずみと、空間的には線形で時間的には放物線で変化するひずみの下でBGSを実際に観測し、いずれの場合も、モデルから得られたBGSと観測されたBGSとがよく一致していることを確認した。有限要素法解析などによってモニタリング対象に生じる不均一ひずみを推定すれば、BGS形状の変形やそれによるひずみ計測誤差も予想できるとともに、変形したBGSに対する解析方法の開発も可能となる。(2)ひずみからの構造物断面各部の変位計測方法の開発この研究の第1ステップとして、円環の内外周に生じている円周方向ひずみから、円環断面各部の変位を得る方法を開発した。
KAKENHI-PROJECT-16K01286
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K01286
都市火炎伝搬のCFDシミュレーションと避難誘導システム開発
(1)都市火災シミュレーションコードの検証平成8年度の研究助成より開発を進めている建物周辺および街区、都市の3スケールの都市火災シミュレーションコードの検証を引き続いて行った。平成9年度は、Mellor-Yamada型の気候モデルを用い、神戸市を対象として都市スケールの火災シミュレーションを行った。(2)都市火災予測に必要な地形・都市データの整備都市火災シミュレーションに必要な地形、地物の情報を入手する。国土庁の国土情報磁気テープを利用し、地形データ、土地利用データ、建物容積率、建坪率等の詳細データの自動入力を行った。(3)風洞による検証実験都市火災シミュレーションコードの検証を目的として、風洞に於いて都市火災模擬実験を行うための予備実験を行った。(4)気象データの整備実時間で火災伝搬予測を行うため、GPVと呼ばれる広域気象数値予測データと、Amedas等の広域気象観測データを利用して、都市火災CFDシミュレーション用の境界条件を自動作成するプログラムを作成した。また、気象データを利用するための環境整備を行った。(1)都市火災シミュレーションコードの検証平成8年度の研究助成より開発を進めている建物周辺および街区、都市の3スケールの都市火災シミュレーションコードの検証を引き続いて行った。平成9年度は、Mellor-Yamada型の気候モデルを用い、神戸市を対象として都市スケールの火災シミュレーションを行った。(2)都市火災予測に必要な地形・都市データの整備都市火災シミュレーションに必要な地形、地物の情報を入手する。国土庁の国土情報磁気テープを利用し、地形データ、土地利用データ、建物容積率、建坪率等の詳細データの自動入力を行った。(3)風洞による検証実験都市火災シミュレーションコードの検証を目的として、風洞に於いて都市火災模擬実験を行うための予備実験を行った。(4)気象データの整備実時間で火災伝搬予測を行うため、GPVと呼ばれる広域気象数値予測データと、Amedas等の広域気象観測データを利用して、都市火災CFDシミュレーション用の境界条件を自動作成するプログラムを作成した。また、気象データを利用するための環境整備を行った。
KAKENHI-PROJECT-09234101
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09234101
栄養塩負荷量と漁業生産の関係:水質総量規制は漁業生産の減少要因か?
1)琵琶湖東岸および西岸における地下水流出と地下水経由のリンの寄与を推定するため、湖水・地下水・周辺湧水の採水およびラドン(222Rn)モニター調査を行った。山地渓流のリン酸濃度が0.05mg/l以下と低濃度であるのに対して、湖岸沖積層周辺の浅層および深層(被圧)地下水のリン酸濃度は0.1mg/l以上と明らかに高濃度であり、リンのソースとして沖積堆積物中の有機物が影響している可能性が示唆された。2)2018年49月の期間、毎月一回、琵琶湖北湖沖合の定点(K4)にて、正リン酸の鉛直プロファイルを得た。調査期間を通して、表層30 m以浅において、正リン酸濃度は0.03 uMを上回ることはなかった。一方、30 m以深においては5月と9月に一時的な増加が認められた。リン添加実験では、琵琶湖北湖の植物プランクトン群集は、調査期間を通してリン制限下にあることが示唆されたが、4月と9月にはリン不足が緩和されたことが示された。また、現場植物プランクトンの増殖には、少なくとも0.02 uMの正リン酸が必要であることが分かった。3)琵琶湖盆における地下水由来リンの寄与を推定するため、湖水・地下水・湖底堆積物間隙水のリン酸-酸素同位体比(δ18Op)を測定した。地下水のδ18Op値は涵養域によって変異するものの、同一地点では季節変動しなかった。堆積物中の易溶性リンのδ18Op値は地下水の値に近似した。4)琵琶湖北湖多景島沖定点(K4)において、植物プランクトンの一次生産速度を連続的に測定し、各環境因子との関係性を評価した。観測期間中、植物プランクトンの一次生産速度は0.103.92(平均1.11)g C /m2/dの範囲を変動し、春期から秋期(4ー10月)に増加し,冬期(1ー3月)に低下する傾向を示した。研究は、概ね順調に進んでいるものの、湖水中のリン酸塩濃度が低いためにリン酸酸素安定同位体比の定量に苦戦している。今年度は、大容量の湖水を処理するシステムの構築を考えており、これによって定量を試みる。また、懸濁態リンの動態解析については、昨年度は調査予定の21河川を選出したものの、調査は実施しなかった。本年度は、これら選定した河川において、湖水中の生物利用性の高い懸濁態リン画分の測定、あるいは湖底堆積物中のそれら画分についての測定を予定している。琵琶湖に流入するリンの動態を明らかにするため、昨年度、琵琶湖北湖流入河川を21本選定した。これらにおいて、平水時と降雨時に採水を行う。採水は共に1ー2ヶ月に一度の頻度とし、試水からは各種リン濃度の測定を行い、各河川から琵琶湖へのリンの形態別流入量を見積もる。昨年同様に、正リン酸の時空間分布調査を行う。特に、田植え期の5月には集中的に実施する。同時に、懸濁態リンの動態調査、および沿岸湖底堆積物中のリン画分の調査も行い、湖水中の正リン酸の時空間分布との関係を解析する。地下水調査については、現地観測、SWATモデル解析、沖積層コア試料の分析を継続する。滋賀県立大学構内に設置した観測井の地下水の水位および水質変動から、琵琶湖深層地下水湧出量の季節変動およびリン供給量(湖の貧酸素水塊分布を踏まえて推定)の変動について見積もる。リン酸濃度が低い湖水のδ18Opを測定するために、大容量水試料を処理するシステムの構築を目指す。また、地下水のδ18Opの地理的変異に及ぼす地質の影響を検討するため、涵養域の岩石試料のδ18Op分析を試みる。その関係性に基づいて、琵琶湖盆に対する外部リン負荷源としての地下水δ18Opマップの作成可否を検討する。昨年度から実施している、植物プランクトン一次生産から動物プランクトン生産への転換効率を求めるための擬似現場実験は、今年度も引き続き実施する。2年間に渡る擬似現場環境での動物プランクトン成長速度の測定を通して、水温、TP、個体数密度と動物プランクトン成長速度の関係式を作成する。これによって、過去40年以上に渡る動物プランクトン生産量を計算できるようになる。植物プランクトン一次生産については、これまでに得られたアルゴリズムを用い、衛星画像を使った琵琶湖北湖全域におよぶ植物プランクトン量の取得を目指し、これをもとに一次生産を求めることを試みる。1)琵琶湖東岸および西岸における地下水流出と地下水経由のリンの寄与を推定するため、湖水・地下水・周辺湧水の採水およびラドン(222Rn)モニター調査を行った。山地渓流のリン酸濃度が0.05mg/l以下と低濃度であるのに対して、湖岸沖積層周辺の浅層および深層(被圧)地下水のリン酸濃度は0.1mg/l以上と明らかに高濃度であり、リンのソースとして沖積堆積物中の有機物が影響している可能性が示唆された。2)2018年49月の期間、毎月一回、琵琶湖北湖沖合の定点(K4)にて、正リン酸の鉛直プロファイルを得た。調査期間を通して、表層30 m以浅において、正リン酸濃度は0.03 uMを上回ることはなかった。一方、30 m以深においては5月と9月に一時的な増加が認められた。
KAKENHI-PROJECT-18H03961
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H03961
栄養塩負荷量と漁業生産の関係:水質総量規制は漁業生産の減少要因か?
リン添加実験では、琵琶湖北湖の植物プランクトン群集は、調査期間を通してリン制限下にあることが示唆されたが、4月と9月にはリン不足が緩和されたことが示された。また、現場植物プランクトンの増殖には、少なくとも0.02 uMの正リン酸が必要であることが分かった。3)琵琶湖盆における地下水由来リンの寄与を推定するため、湖水・地下水・湖底堆積物間隙水のリン酸-酸素同位体比(δ18Op)を測定した。地下水のδ18Op値は涵養域によって変異するものの、同一地点では季節変動しなかった。堆積物中の易溶性リンのδ18Op値は地下水の値に近似した。4)琵琶湖北湖多景島沖定点(K4)において、植物プランクトンの一次生産速度を連続的に測定し、各環境因子との関係性を評価した。観測期間中、植物プランクトンの一次生産速度は0.103.92(平均1.11)g C /m2/dの範囲を変動し、春期から秋期(4ー10月)に増加し,冬期(1ー3月)に低下する傾向を示した。研究は、概ね順調に進んでいるものの、湖水中のリン酸塩濃度が低いためにリン酸酸素安定同位体比の定量に苦戦している。今年度は、大容量の湖水を処理するシステムの構築を考えており、これによって定量を試みる。また、懸濁態リンの動態解析については、昨年度は調査予定の21河川を選出したものの、調査は実施しなかった。本年度は、これら選定した河川において、湖水中の生物利用性の高い懸濁態リン画分の測定、あるいは湖底堆積物中のそれら画分についての測定を予定している。琵琶湖に流入するリンの動態を明らかにするため、昨年度、琵琶湖北湖流入河川を21本選定した。これらにおいて、平水時と降雨時に採水を行う。採水は共に1ー2ヶ月に一度の頻度とし、試水からは各種リン濃度の測定を行い、各河川から琵琶湖へのリンの形態別流入量を見積もる。昨年同様に、正リン酸の時空間分布調査を行う。特に、田植え期の5月には集中的に実施する。同時に、懸濁態リンの動態調査、および沿岸湖底堆積物中のリン画分の調査も行い、湖水中の正リン酸の時空間分布との関係を解析する。地下水調査については、現地観測、SWATモデル解析、沖積層コア試料の分析を継続する。滋賀県立大学構内に設置した観測井の地下水の水位および水質変動から、琵琶湖深層地下水湧出量の季節変動およびリン供給量(湖の貧酸素水塊分布を踏まえて推定)の変動について見積もる。リン酸濃度が低い湖水のδ18Opを測定するために、大容量水試料を処理するシステムの構築を目指す。また、地下水のδ18Opの地理的変異に及ぼす地質の影響を検討するため、涵養域の岩石試料のδ18Op分析を試みる。その関係性に基づいて、琵琶湖盆に対する外部リン負荷源としての地下水δ18Opマップの作成可否を検討する。昨年度から実施している、植物プランクトン一次生産から動物プランクトン生産への転換効率を求めるための擬似現場実験は、今年度も引き続き実施する。2年間に渡る擬似現場環境での動物プランクトン成長速度の測定を通して、水温、TP、個体数密度と動物プランクトン成長速度の関係式を作成する。これによって、過去40年以上に渡る動物プランクトン生産量を計算できるようになる。植物プランクトン一次生産については、これまでに得られたアルゴリズムを用い、衛星画像を使った琵琶湖北湖全域におよぶ植物プランクトン量の取得を目指し、これをもとに一次生産を求めることを試みる。
KAKENHI-PROJECT-18H03961
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次世代型合成法を用いた生理活性糖鎖の合成とその医学的利用技術の創出
糖鎖は核酸、タンパク質に続く第三の生命鎖として認識され、その多くの生理作用に大きな注目が集まっている。細胞間の認識、情報伝達、分化、増殖、免疫応答など生命を維持していく上で必須の生命現象を糖鎖が司っていることが明らかにされてきた。すなわち、糖鎖が担う役割や経時的な発現を追跡することは、未知の生命現象を明らかにすることができ、炎症や病気の発症メカニズムを解明できる。このような背景のもと糖鎖関連研究は、国内外において非常に重要な研究内容として位置づけられている。糖鎖の利用法は多岐にわたり医薬品、食品、化粧品などに応用されている。糖鎖の機能解明には多様な糖鎖が一定以上必要となるがその合成は難度が高く、現状では十分な供給が困難となっている。本研究は、これまでに受けた若手研究B及び基盤研究Cにおいて開発してきた「次世代型合成法」を更に発展させることにより課題を解決し、糖鎖の関わる生命現象を解明するための要となる糖鎖分子プローブおよびオリゴ糖鎖を網羅的に創出する。これらの糖鎖を用いて、糖鎖型医薬品の開発、糖鎖型ガンワクチンの創出、ガンの分子イメージング技術への応用を行い、生化学・薬学・医学研究の進展に大きく貢献することを目標とする。本年度においては、目的としたオールマイティーなグリコシル化法の開発のための重要課題であったシアリル化反応を中心にメソッド開発を行った。新たな方法論の開発に成功し、高効率的なシアロ糖鎖合成法を見出すことができた。そのメソッドを展開することにより多数の生理活性オリゴ糖、およびそのプローブの合成を達成した。本研究の一つのキーポイントであるシアリル化反応において新なメソッド開発に成功した。開発以前のシアリル化反応は、マッチした基質を用いた場合、8割前後、ミスマッチの基質の場合は1割以下という収率にとどまっていた。今回のメソッドに従えば、おおむね8割以上の収率を得ることが出来るようになった。このことにより、シアロ糖鎖ライブラリーの構築が加速され、多数のシアロ糖鎖およびそのプローブの合成に成功し、合成が困難とされている硫酸化シアロ糖鎖の合成においても糸口を掴んだ。よって、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。今年度までに開発を行ったグリコシル化反応メソッドを組み合わせ、複雑な構造を有する糖鎖の簡便合成を達成する。本研究実施期間中に十分な糖鎖ライブラリーの構築を完了する。有用な生理活性を有する構造であり、ガンの糖鎖抗原やウイルスなどのレセプターとして知られるシアロ糖、硫酸化糖を中心に網羅的合成を達成する。ついで、糖鎖をリガンドとしているウイルス、病原菌、毒素のそれぞれのタンパク質と相互作用(結合および解離の速さ)を解析する。また実際に合成糖鎖をウイルス及び細胞と共培養することによりin vitoroでの作用を明らかにする。それらのデータを基に、より親和性の高い糖鎖構造をデザインして合成し、新な防御システムを構築する。最後に、更に高活性を有する類似糖鎖をデザインし、網羅的に合成して、それらの糖鎖を腸管免疫療法や糖鎖サプリメント療法へつなげる。糖鎖は核酸、タンパク質に続く第三の生命鎖として認識され、その多くの生理作用に大きな注目が集まっている。細胞間の認識、情報伝達、分化、増殖、免疫応答など生命を維持していく上で必須の生命現象を糖鎖が司っていることが明らかにされてきた。すなわち、糖鎖が担う役割や経時的な発現を追跡することは、未知の生命現象を明らかにすることができ、炎症や病気の発症メカニズムを解明できる。このような背景のもと糖鎖関連研究は、国内外において非常に重要な研究内容として位置づけられている。糖鎖の利用法は多岐にわたり医薬品、食品、化粧品などに応用されている。糖鎖の機能解明には多様な糖鎖が一定以上必要となるがその合成は難度が高く、現状では十分な供給が困難となっている。本研究は、これまでに受けた若手研究B及び基盤研究Cにおいて開発してきた「次世代型合成法」を更に発展させることにより課題を解決し、糖鎖の関わる生命現象を解明するための要となる糖鎖分子プローブおよびオリゴ糖鎖を網羅的に創出する。これらの糖鎖を用いて、糖鎖型医薬品の開発、糖鎖型ガンワクチンの創出、ガンの分子イメージング技術への応用を行い、生化学・薬学・医学研究の進展に大きく貢献することを目標とする。本年度においては、目的としたオールマイティーなグリコシル化方法の開発のため種々の酵素固定化カラムの作製、及びそれらを用いた目的糖鎖合成反応条件の確立を行った。その確立した合成条件に則り、目的としている新たな生理活性糖鎖ライブラリーの構築を行った。目標とした位置及び立体選択的な糖鎖合成条件の開発は順調にすすんだ。確立した合成条件を用いて、生理活性糖鎖ライブラリー13種類の構築に成功した。それらの内の糖鎖においてインフルエンザウイルス不活化作用を認めている。以上のように、合成条件の確立、新規ライブラリーの合成達成、それらの効果を導き出しており、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。糖鎖は核酸、タンパク質に続く第三の生命鎖として認識され、その多くの生理作用に大きな注目が集まっている。細胞間の認識、情報伝達、分化、増殖、免疫応答など生命を維持していく上で必須の生命現象を糖鎖が司っていることが明らかにされてきた。すなわち、糖鎖が担う役割や経時的な発現を追跡することは、未知の生命現象を明らかにすることができ、炎症や病気の発症メカニズムを解明できる。
KAKENHI-PROJECT-17K01963
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K01963
次世代型合成法を用いた生理活性糖鎖の合成とその医学的利用技術の創出
このような背景のもと糖鎖関連研究は、国内外において非常に重要な研究内容として位置づけられている。糖鎖の利用法は多岐にわたり医薬品、食品、化粧品などに応用されている。糖鎖の機能解明には多様な糖鎖が一定以上必要となるがその合成は難度が高く、現状では十分な供給が困難となっている。本研究は、これまでに受けた若手研究B及び基盤研究Cにおいて開発してきた「次世代型合成法」を更に発展させることにより課題を解決し、糖鎖の関わる生命現象を解明するための要となる糖鎖分子プローブおよびオリゴ糖鎖を網羅的に創出する。これらの糖鎖を用いて、糖鎖型医薬品の開発、糖鎖型ガンワクチンの創出、ガンの分子イメージング技術への応用を行い、生化学・薬学・医学研究の進展に大きく貢献することを目標とする。本年度においては、目的としたオールマイティーなグリコシル化法の開発のための重要課題であったシアリル化反応を中心にメソッド開発を行った。新たな方法論の開発に成功し、高効率的なシアロ糖鎖合成法を見出すことができた。そのメソッドを展開することにより多数の生理活性オリゴ糖、およびそのプローブの合成を達成した。本研究の一つのキーポイントであるシアリル化反応において新なメソッド開発に成功した。開発以前のシアリル化反応は、マッチした基質を用いた場合、8割前後、ミスマッチの基質の場合は1割以下という収率にとどまっていた。今回のメソッドに従えば、おおむね8割以上の収率を得ることが出来るようになった。このことにより、シアロ糖鎖ライブラリーの構築が加速され、多数のシアロ糖鎖およびそのプローブの合成に成功し、合成が困難とされている硫酸化シアロ糖鎖の合成においても糸口を掴んだ。よって、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。酵素固定化カラムを作成し、それらのカラムを用いた位置及び立体選択的グリコシル化反応開発を平成29年度に引き続き行う。現在までに合成を可能とした糖鎖構造に加え、更に複雑な構造を有する糖鎖の合成を可能にすることを目指す。また必要に応じて土壌微生物などから新規の酵素を発掘し、本手法による糖鎖合成の応用範囲を拡充する。次に合成した糖鎖ライブラリーをウィルスのタンパク質などの相互作用解析に供し、その応用利用を探る。またビフィズス菌増殖作用や免疫賦活化作用を調査する。今年度までに開発を行ったグリコシル化反応メソッドを組み合わせ、複雑な構造を有する糖鎖の簡便合成を達成する。本研究実施期間中に十分な糖鎖ライブラリーの構築を完了する。有用な生理活性を有する構造であり、ガンの糖鎖抗原やウイルスなどのレセプターとして知られるシアロ糖、硫酸化糖を中心に網羅的合成を達成する。ついで、糖鎖をリガンドとしているウイルス、病原菌、毒素のそれぞれのタンパク質と相互作用(結合および解離の速さ)を解析する。また実際に合成糖鎖をウイルス及び細胞と共培養することによりin vitoroでの作用を明らかにする。それらのデータを基に、より親和性の高い糖鎖構造をデザインして合成し、新な防御システムを構築する。最後に、更に高活性を有する類似糖鎖をデザインし、網羅的に合成して、それらの糖鎖を腸管免疫療法や糖鎖サプリメント療法へつなげる。(理由)
KAKENHI-PROJECT-17K01963
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K01963
部分双曲力学系の野性的挙動と滑らかさ
ホモクリニック接触は野生的な挙動を生成する代表的なメカニズムであるが,最近,BarrientosとRaibekasにより,余次元の高いホモクリニック接触がC^2位相で持続的に起きるような例が構成された.彼らの例は部分双曲性を持ち,かつ,野生的な挙動を生成するメカニクスの一つであるblenderを,グラスマン多様体上に持ち上げたダイナミクスにおいて考えることで構成されており,C^2位相で考えることが本質的である.ただ,その方法ではもっとも余次元の高いホモクリニック接触が持続的になる例を構成することはできず,彼らの論文では予想とされていた.今年度の研究においては,2つのblenderに付随するカントール集合が持続的な交わりを持つような状態を見つけ出すことで,BarrientosとRaibekasの予想を肯定的に解決することができた.すなわち,2n次元多様体上のC^2微分同相写像の双曲集合で,n次元の安定多様体と不安定多様体を持ち,それらが持続的にn次元の接触を起こすような例を構成した.この構成は最近,BarrientosとPerezが調べたような余次元の高いヘテロクリニック接触の問題の最終解決にの応用も期待できるので,来年度の課題の一つとしたい.また,実解析的な1次元反復写像系における周期点の増大度についても先行研究を分析した結果,まずは冪級数展開の増大度を抑えた形の制限された問題を考察することから始めるのがよいという結論に達した.来年度はその方向で研究を進めたい.また,これらの研究と並行して,浅岡-入江のClosing Lemmaの方法の他の状況への適用への準備として,(2n-1)次元球面の上の標準的な接触構造を定める接触構造に関するReeb流に同様の議論を行うとしたときにどこに困難が生じるかについて考察した.そこで見つかった困難の解決も来年度以降の課題としたい.C^2位相が本質的に重要である分岐現象を引き起こすメカニズムを発見することができた.このメカニズムは高次元における普遍力学系などの野生的挙動を生成する可能性が高く,本研究において非常に有用であると期待される.今年度の研究の方向性を保って研究を進める.まずは,今年度発見した分岐のメカニズムを用いて,C^2位相の下での野生的挙動を調べていく.その一方で,冪級数展開に制限をつけたときに周期軌道の増大度がどのように振る舞うかについての研究や,浅岡-入江のclosing lemmaの方法の高次元の場合への適用の可能性を探っていく.ホモクリニック接触は野生的な挙動を生成する代表的なメカニズムであるが,最近,BarrientosとRaibekasにより,余次元の高いホモクリニック接触がC^2位相で持続的に起きるような例が構成された.彼らの例は部分双曲性を持ち,かつ,野生的な挙動を生成するメカニクスの一つであるblenderを,グラスマン多様体上に持ち上げたダイナミクスにおいて考えることで構成されており,C^2位相で考えることが本質的である.ただ,その方法ではもっとも余次元の高いホモクリニック接触が持続的になる例を構成することはできず,彼らの論文では予想とされていた.今年度の研究においては,2つのblenderに付随するカントール集合が持続的な交わりを持つような状態を見つけ出すことで,BarrientosとRaibekasの予想を肯定的に解決することができた.すなわち,2n次元多様体上のC^2微分同相写像の双曲集合で,n次元の安定多様体と不安定多様体を持ち,それらが持続的にn次元の接触を起こすような例を構成した.この構成は最近,BarrientosとPerezが調べたような余次元の高いヘテロクリニック接触の問題の最終解決にの応用も期待できるので,来年度の課題の一つとしたい.また,実解析的な1次元反復写像系における周期点の増大度についても先行研究を分析した結果,まずは冪級数展開の増大度を抑えた形の制限された問題を考察することから始めるのがよいという結論に達した.来年度はその方向で研究を進めたい.また,これらの研究と並行して,浅岡-入江のClosing Lemmaの方法の他の状況への適用への準備として,(2n-1)次元球面の上の標準的な接触構造を定める接触構造に関するReeb流に同様の議論を行うとしたときにどこに困難が生じるかについて考察した.そこで見つかった困難の解決も来年度以降の課題としたい.C^2位相が本質的に重要である分岐現象を引き起こすメカニズムを発見することができた.このメカニズムは高次元における普遍力学系などの野生的挙動を生成する可能性が高く,本研究において非常に有用であると期待される.今年度の研究の方向性を保って研究を進める.まずは,今年度発見した分岐のメカニズムを用いて,C^2位相の下での野生的挙動を調べていく.その一方で,冪級数展開に制限をつけたときに周期軌道の増大度がどのように振る舞うかについての研究や,浅岡-入江のclosing lemmaの方法の高次元の場合への適用の可能性を探っていく.学内での用務と日程がぶつかってしまった国内出張が1つ取りやめとなり,その分の旅費が残額として残った.
KAKENHI-PROJECT-18K03276
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K03276
自律化および協調化のための3次元走行クレーンの知能制御に関する研究
本研究課題では,「自律化および協調化のための3次元走行クレーンの知能制御に関する研究」を行ったものである.静止した障害物に対する経路計画,障害物回避機能などの自律走行機能と,移動搬送車など動的障害物に対する協調制御機能を有する天井クレーンの知能制御に関する研究を行った.主な研究の内容は,第I部と第II部からなる.著者は,従来,オフラインでの,レーザラインマーカーとCCDカメラを用いた方法による工場内障害物認識と環境地図の作成方法,またそれに基づき,ポテンシャル法を利用した経路計画法の提案,および位置決め,・振れ止めなどのモーションコントロールなどを統合化したグローバルナビゲーションシステムを構築してきた.それに対して,本研究では,搬送中に,障害物が突然出現したときや,また移動障害物に遭遇したときに,一旦グローバルナビゲーションをやめ,超音波センサにより搬送付近の局所的情報を獲得し,それを利用して,オンラインで障害物回避を行うことを考え,それを実現できるハードウエア,ソフトウエアを備えた制御システムを構築することを目的とする.これにより,グローバルナビゲーション,ローカルナビゲーションを備えたインテリジェント制御システムの完成を目指したものである.本研究課題では,「自律化および協調化のための3次元走行クレーンの知能制御に関する研究」を行ったものである.静止した障害物に対する経路計画,障害物回避機能などの自律走行機能と,移動搬送車など動的障害物に対する協調制御機能を有する天井クレーンの知能制御に関する研究を行った.主な研究の内容は,第I部と第II部からなる.著者は,従来,オフラインでの,レーザラインマーカーとCCDカメラを用いた方法による工場内障害物認識と環境地図の作成方法,またそれに基づき,ポテンシャル法を利用した経路計画法の提案,および位置決め,・振れ止めなどのモーションコントロールなどを統合化したグローバルナビゲーションシステムを構築してきた.それに対して,本研究では,搬送中に,障害物が突然出現したときや,また移動障害物に遭遇したときに,一旦グローバルナビゲーションをやめ,超音波センサにより搬送付近の局所的情報を獲得し,それを利用して,オンラインで障害物回避を行うことを考え,それを実現できるハードウエア,ソフトウエアを備えた制御システムを構築することを目的とする.これにより,グローバルナビゲーション,ローカルナビゲーションを備えたインテリジェント制御システムの完成を目指したものである.本研究の目的は,「最適経路計画,障害物回避機能などの自律走行機能と,対向移動搬送車との経路に関する協調制御機能を有する天井クレーンの知能制御に関する研究」を行うことである.本年度は,まず自律走行クレーンのハードウエアシステムの構築を行った.現有の天井クレーンシステムは,メインフレーム部,オフライン用センサ部,コントローラ部,シミュレータ部が完成している.本研究では,さらにクレーン走行中におけるオンラインでの障害物の正確な位置の認識を行うために複数個の超音波センサを,近接センサとして用いた.荷物台の側面に12個,上下に4個合計16個のセンサを取り付けた.また振れ角測定にはジャイロセンサを用いた.無線モデム,シールドバッテリィなどを用い,オンライン演算は,ホストコンピュータで行うことにした.また,クレーンと自律走行車との経路に関する協調制御を行うために,自律走行車としてマイクロマウス2台を購入し,協調システムのハードウエアを完成させた.次に,最適経路での走行中に,CCDカメラから得られるマクロ的な情報と超音波近接センサによる正確な距離測定とのセンサ情報融合によるオンライン障害物回避の知能制御システムを構築した.本研究課題では、「自律化および協調化のための3次元走行クレーンの知能制御に関する研究」を行ったものである.静止した障害物に対する経路計画,障害物回避機能などの自律走行機能と,移動搬送車など動的障害物に対する協調制御機能を有する天井クレーンの知能制御に関する研究を行った.主な研究の内容は,第I部と第II部からなる.著者は,従来,オフラインでの,レーザラインマーカーとCCDカメラを用いた方法による工場内障害物認識と環境地図の作成方法,またそれに基づき,ポテンシャル法を利用した経路計画法の提案,および位置決め・振れ止めなどのモーションコントロールなどを統合化したグローバルナビゲーションシステムを構築してきた.それに対して,本研究では,搬送中に,障害物が突然出現したときや,また移動障害物に遭遇したときに,一旦グローバルナビゲーションをやめ,超音波センサにより搬送付近の局所的情報を獲得し、それを利用して,オンラインで障害物回避を行うことを考え,それを実現できるハードウエア,ソフトウェアを備えた制御システムを構築することを目的とする.これにより,グローバルナビゲーション,ローカルナビゲーションを備えたインテリジェント制御システムの完成を目指したものである.
KAKENHI-PROJECT-10650239
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10650239
高周波バリア放電プラズマを用いた反応性酸素による自着火制御に関する研究
ディーゼル、ガソリンならびにガス機関においては、常用出力域での徹底的な熱効率の向上と環境影響物質の排出低減を進めるために希薄燃焼の高度化が望まれている。そのため本研究は、吸入空気を低温プラズマ処理して得られる反応性の高い化学種を利用して、着火および燃焼の制御を行う技術の開発とその検証を目的とする。低温プラズマ内では、空気中の酸素および窒素に自由電子が作用し、温度上昇を伴わずにO(3P)やオゾンなどの活性種が生成される。このような活性種が混合気中に取り込まれると、燃料炭化水素の反応速度が上昇し、希薄下でも火炎伝播ならびに自着火が促進されると考えられる。このとき、プラズマ強度の調整によって活性種の濃度を変化させれば、火炎伝播速度や自着火時期の制御が可能となる。初年度には、大流量の吸気を処理できる大型高周波バリア放電を新たに製作し、高電圧高周波電源と組み合わせて性能を評価した。続く最終年度は、その結果にもとづいて、空気と天然ガスの混合気をプラズマ化した後エンジンに導入し、天然ガス予混合圧縮自着火(PCCI)燃焼の改善を試みた。試験結果によると、オゾン添加によって天然ガスの着火が促進され未燃成分の排出量が低減し、燃焼効率が増加することがわかり、低い吸気加熱温度でも高い正味熱効率が得られることが示された。さらに、これらの反応の詳細を解明するために、化学動力学計算プログラムに、オゾン等の活性種の反応機構を組み込み、これらを用いた反応計算の結果と上記実験より得られた生成物組成の特徴を比較することによって反応過程を理論的に調べた。その結果、圧縮行程初めにおけるオゾンの分解により活性種であるHO2およびH2O2が生成し、それが主に天然ガスの着火と燃焼を改善する要因となること、オゾン濃度の増加による着火改善効果はある程度で飽和し、それは上記活性種の増加が制限されるためであること、などが示された。ディーゼル、ガソリンならびにガス機関においては、常用出力域での徹底的な熱効率の向上と環境影響物質の排出低減を進めるために希薄燃焼の高度化が望まれている。そのため本研究は、吸入空気を低温プラズマ処理して得られる反応性の高い化学種を利用して、着火および燃焼の制御を行う技術の開発とその検証を目的とする。低温プラズマ内では、空気中の酸素および窒素に自由電子が作用し、温度上昇を伴わずにO(3P)やオゾンなどの活性種が生成される。このような活性種が混合気中に取り込まれると、燃料炭化水素の反応速度が上昇し、希薄下でも火炎伝播ならびに自着火が促進されると考えられる。このとき、プラズマ強度の調整によって活性種の濃度を変化させれば、火炎伝播速度や自着火時期の制御が可能となる。初年度には、大流量の吸気を処理できる大型高周波バリア放電を新たに製作し、高電圧高周波電源と組み合わせて性能を評価した。続く最終年度は、その結果にもとづいて、空気と天然ガスの混合気をプラズマ化した後エンジンに導入し、天然ガス予混合圧縮自着火(PCCI)燃焼の改善を試みた。試験結果によると、オゾン添加によって天然ガスの着火が促進され未燃成分の排出量が低減し、燃焼効率が増加することがわかり、低い吸気加熱温度でも高い正味熱効率が得られることが示された。さらに、これらの反応の詳細を解明するために、化学動力学計算プログラムに、オゾン等の活性種の反応機構を組み込み、これらを用いた反応計算の結果と上記実験より得られた生成物組成の特徴を比較することによって反応過程を理論的に調べた。その結果、圧縮行程初めにおけるオゾンの分解により活性種であるHO2およびH2O2が生成し、それが主に天然ガスの着火と燃焼を改善する要因となること、オゾン濃度の増加による着火改善効果はある程度で飽和し、それは上記活性種の増加が制限されるためであること、などが示された。予混合圧縮自着火PCCI天然ガス機関は,ごく低いNOx排出量のもとで,高い熱効率が得られるポテンシャルを持つ.しかし,着火に要する圧縮空気温度および圧力が高いことに加えて失火とノックによる運転範囲が大きく限られることが問題である.これまでの研究によると,過給,管内および吸気管内噴射,排気再循環EGRや添加剤などにより,着火の安定化と運転範囲の拡大を図る試みが報告されている.本研究では,天然ガスPCCI機関での着火時期の制御と運転範囲の拡大を目的として,高周波バリア放電プラズマ装置によって得られる反応性酸素(オゾンO_3、Oラジカルなど)をエンジン吸気に添加した.これらの物質は高い反応特性を持つ.得られた結果から下記のことがわかった.1.オゾン吸気によって低い吸気温度(180°C)のもとで機関運転範囲の拡大が可能である。運転範囲の拡大はおもに低当量比の領域で得られる.2.オゾン吸気によって天然ガスの着火が促進され、未燃炭化水素THCおよび一酸化炭素COの排出量が大幅に減少する.これによって燃焼効率が上昇して、高い正味熱効率と高出力が得られる.3.オゾン吸気によって燃焼変動を大幅に低減し、燃焼圧力が上昇する.ただし,この効果がオゾン濃度の増加によって飽和する.4.オゾンを100ppm添加すると吸気温度を40°C上昇させたと同様な効果が得られる.本研究で用いたプラズマ装置では100ppmのオゾンを生成するには120Wエネルギーが必要である.これは吸気過熱と比べて比較的に小さい.ディーゼル、ガソリンならびにガス機関においては、常用出力域での徹底的な熱効率の向上と環境影響物質の排出低減を進めるために希薄燃焼の高度化が望まれている。
KAKENHI-PROJECT-16560186
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16560186
高周波バリア放電プラズマを用いた反応性酸素による自着火制御に関する研究
そのため本研究は、吸入空気を低温プラズマ処理して得られる反応性の高い化学種を利用して、着火および燃焼の制御を行う技術を行う技術を開発することを目的とする。低温プラズマ内では、空気中の酸素および窒素に自由電子が作用し、温度上昇を伴わずに0(3P)やオゾンなどの活性種が生成される。このような活性種が混合気中に取り込まれると、燃焼炭化水素の反応速度が上昇し、希薄下でも火炎伝播ならびに自着火が促進されると考えられる。このとき、プラズマ強度の調整によって活性種の濃度を変化させれば、火炎伝播速度や自着火時期の制御が可能となる。前年度には、大流量の吸気を処理できる大型高周波バリア放電を新たに製作し、高電圧高周波電源と組み合わせて性能を評価した。本年度は、その結果にもとづいて、空気と天然ガスの混合気をプラズマ化した後エンジンに導入し、予混合圧縮自着火(PCCI)燃焼の改善を試みた。試験結果によると、オゾン添加によって天然ガスの着火が促進され未燃成分の排出量が低減し、燃焼効率が増加することがわかり、低い吸気加熱温度でも高い正味熱効率が得られることが示された。さらに、これらの反応の詳細を解明するために、化学動力学計算プログラムに、オゾン等の活性種の反応機構を組み込み、これらを用いた反応計算の結果と上記実験より得られた生成物組成の特徴を比較することによって反応過程を理論的に調べた。その結果、圧縮行程初めにおけるオゾンの分解により活性種であるHO2およびH2O2が生成し、それが主に天然ガスの着火と燃焼を改善する要因となること、オゾン濃度の増加による着火改善効果はある程度で飽和し、それは上記活性種の増加が制限されるためであること、などが示された。
KAKENHI-PROJECT-16560186
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ケアにおけるニーズの相互的判断に基づく親密圏と公共圏の連結
本年度は、ケアに関する哲学的考察を探求した上で、それとの差異化を図りつつ、ケアの社会学の構想を打ち立てた。ケアを他者の「生」を支えようとする働きかけと捉え、そこにおいて今日問われている重要な課題を、「生」の固有性と専門職という観点から捉え返した。人々の「生」はその人のそれまでの生き方、生活のあり方、他者との関係性のあり方などが渾然一体となって構成される、その人固有のものである。このような「生」の固有性と働きかけの持続性という二つの要請に対して、一定程度応えてきた制度が、専門職制度である。個別対応をする主体を制度的に再生産することによって、専門職制度はケアの持続に貢献してきた。だが、専門職は専門職として社会化される過程で、対象者に対して自らが何をすべきで何が出来るかについて、固定されたイメージを形成している。このイメージはときに対象者の「生」の固有性を見失わせる。今日問われている重要な課題とは、専門職がこのような固定されたイメージを乗り越え、対象者の「生」の固有性に開かれることである。本研究はその課題に応える方途を、看護職が患者に働きかける過程と、それを支える医療専門職間関係から探求した。まず、看護職が患者に働きかける過程を検討することで、戦略的限定化という概念を抽出した。これは患者との間にすれ違いが生じ、看護職が問題的状況に直面した際に、それでも患者の「生」を探り支えようとするために必要となる行為である。問題的状況に直面した看護職は、自らに出来ることや自らのなすべきことを、自ら限定化する。それによって限定された範囲内においては可能なかぎりのあらゆることをする。本研究はこれを戦略的限定化と呼んだが、これはあくまでも当の看護職が自らを問い直すことでなされる主体的な行為である。それゆえ、既存の固定されたイメージを乗り越える可能性が生まれる。こうした戦略的行為の存在と意義を認め、それを支える試みをなしていくことが必要である。さらに、それを支える医療専門職間関係については、相補的自律性という概念を抽出した。相補的自律性は、最終的に決定するのは医師であったとしても、その決定過程に他の医療専門職が積極的に関わり、また医師もそれを認めることによって、各医療専門職がそれぞれのニーズ規定を活かすという関係性である。こうした関係性があってこそ、それぞれの医療専門職が患者の「生」の固有性に開かれることが可能になる。本研究はこのように、ケアを専門職に関わる側面から捉え返し、今後の医療においてケアを実現していく方途を探った。その成果の一部は、東京大学大学院人文社会系研究科博士論文として審査を通過した。今後は医療にとどまらず、広くケアにおける問題と可能性を探求していきたい。ケアは他者の「生」を支えようとする働きかけであるが、他者の「生」の多様性を思えば、ケアを真の意味で追及しようとすればするほど、それを支えるための働きかけであるケアも多様なものでなくてはならないことになる。そうした本来は多様で不確実な性格を有するケアが、どこまでどのように安定的で持続可能なものとして制度化されうるかを問うのが本研究の試みである。臨床現場にいる医療専門職、特に看護職のように患者と直接接する現場は、ケアの多様性と制度化による一律化とが交差し連結される場でもあり、本研究に重要な知見を与えてくれる。その一つとして末期患者へのケアが挙げられる。末期患者は自らの死を前にして様々な葛藤や苦しみを抱えるが、それらはまず看護職を始めとした医療専門職が常に把握し対処可能なこととは限らない。たとえば「俺死ぬのかな」と尋ねる患者に対して万能の解答はあり得ない。こうした多様な患者の苦しみ、それゆえ対処不可能な問いに直面させられる看護職はときに、患者とのかかわりに苦痛を覚え、かかわりを断とうとする。だが、それでも患者とのかかわりを断たないことがケアの上で重要であり、そしてそれを可能にするのが、看護職には患者の抱える様々な葛藤の全てに応える必要はないと認識することである。この一見多様性を無視したような認識が、実は患者とのかかわりを保ち、患者に対する多様な働きかけの可能性を残すことへとつながっている。さらに、患者からの訴えに実際に応える際には、特にそれが疾患への治療・処置とは直接関係がないものである場合、それらはニーズでもありつつニーズではないものとして位置づけられることによって応えることが可能になっている。医療専門職が応える義務を有するものでありつつそうではないものとして、一律化可能なものでありつつ多様でもありうるものとして位置づけることで、実際に応えることが可能になっているのである。実際のケアはこのような様々な制度化と多様化との戦略の中で実現される可能性が高められている。本年度は、ケアに関する哲学的考察を探求した上で、それとの差異化を図りつつ、ケアの社会学の構想を打ち立てた。ケアを他者の「生」を支えようとする働きかけと捉え、そこにおいて今日問われている重要な課題を、「生」の固有性と専門職という観点から捉え返した。人々の「生」はその人のそれまでの生き方、生活のあり方、他者との関係性のあり方などが渾然一体となって構成される、その人固有のものである。このような「生」の固有性と働きかけの持続性という二つの要請に対して、一定程度応えてきた制度が、専門職制度である。個別対応をする主体を制度的に再生産することによって、専門職制度はケアの持続に貢献してきた。
KAKENHI-PROJECT-01J04571
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01J04571
ケアにおけるニーズの相互的判断に基づく親密圏と公共圏の連結
だが、専門職は専門職として社会化される過程で、対象者に対して自らが何をすべきで何が出来るかについて、固定されたイメージを形成している。このイメージはときに対象者の「生」の固有性を見失わせる。今日問われている重要な課題とは、専門職がこのような固定されたイメージを乗り越え、対象者の「生」の固有性に開かれることである。本研究はその課題に応える方途を、看護職が患者に働きかける過程と、それを支える医療専門職間関係から探求した。まず、看護職が患者に働きかける過程を検討することで、戦略的限定化という概念を抽出した。これは患者との間にすれ違いが生じ、看護職が問題的状況に直面した際に、それでも患者の「生」を探り支えようとするために必要となる行為である。問題的状況に直面した看護職は、自らに出来ることや自らのなすべきことを、自ら限定化する。それによって限定された範囲内においては可能なかぎりのあらゆることをする。本研究はこれを戦略的限定化と呼んだが、これはあくまでも当の看護職が自らを問い直すことでなされる主体的な行為である。それゆえ、既存の固定されたイメージを乗り越える可能性が生まれる。こうした戦略的行為の存在と意義を認め、それを支える試みをなしていくことが必要である。さらに、それを支える医療専門職間関係については、相補的自律性という概念を抽出した。相補的自律性は、最終的に決定するのは医師であったとしても、その決定過程に他の医療専門職が積極的に関わり、また医師もそれを認めることによって、各医療専門職がそれぞれのニーズ規定を活かすという関係性である。こうした関係性があってこそ、それぞれの医療専門職が患者の「生」の固有性に開かれることが可能になる。本研究はこのように、ケアを専門職に関わる側面から捉え返し、今後の医療においてケアを実現していく方途を探った。その成果の一部は、東京大学大学院人文社会系研究科博士論文として審査を通過した。今後は医療にとどまらず、広くケアにおける問題と可能性を探求していきたい。
KAKENHI-PROJECT-01J04571
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01J04571
乳癌画像診断におけるMRI, PET検査:至適撮像法・検査法の確立を目指して
乳腺MRIについては、拡散強調像やダイナミックMRIに重点を置き、2017年3月までに3テスラMRIで乳腺MRI検査が行われ、手術未施行例や画像不適切例などを除外した240例を対象に評価を行った。拡散強調像は、通常の拡散強調像に加え、歪みの少ないRESOLVEdiffusionを用い患側の高分解能拡散強調像の撮像を行い、詳細な内部性状評価が可能かどうかを検討した。造影ダイナミックMRIについては、異なる時間分解能で撮像を行い(時間分解能10秒、30秒、85秒)、乳癌結節の辺縁性状や内部の造影効果について、高分解能の造影後T1強調像と比較検討を行った。通常の拡散強調像のみでは小病変の検出や内部のADC値の評価が困難な症例も見られ、撮像時間は長くなるが、患側乳房の高分解能RESOLVEdiffusionを追加撮像することで、病変の指摘や内部の拡散性状を詳細に評価できる症例があると思われた。造影dynamic MRIでは、辺縁性状(spiculaやirregularity)、内部造影効果の不均一性(heterogeneity)とも時間分解能10秒のものは、30秒や85秒のものと比べ有意に劣っていたが、30秒、85秒の両群では辺縁性状や内部の造影効果、いずれも高分解能の造影後T1強調像と同等の評価が可能であった。時間分解能10秒の撮像では、より正確な時間信号曲線を描けるがデータ量も多く、造影パターンやピーク時間の評価は時間分解能30秒の撮像で問題ないと思われた。潅流画像から得られるその他の情報(Ktrans, Ve)も時間分解能30秒の結果は時間分解能10秒の結果と有意差はみられなかったが、85秒のデータでは10秒や30秒のものと比較し有意差が見られ、ダイナミックMRIは時間分解能30秒の撮像が至適タイミングであると思われた。乳腺MRIについては、拡散強調像、ダイナミックMRIに重点を置きデータの蓄積をおこなっている。拡散強調像は通常の拡散強調像と高分解能拡散強調像の2つの撮像を行い、高分解能の拡散強調像でより詳細な内部性状評価が可能かどうかを検討している。症例蓄積の後に造影後のT1強調像や手術結果との比較検討を行っていく予定である。造影ダイナミックMRIについては、異なる時間分解能で撮像を行い(時間分解能10秒、30秒、85秒)データの蓄積を行った。乳癌結節の辺縁性状や内部の造影効果について、高分解能の造影後T1強調像と比較検討を行い、第23回日本乳癌学会学術総会(2015年7月東京。松隈、古川ら)で報告を行った。辺縁性状(spiculaやirregularity)、内部造影効果の不均一性(heterogeneity)とも時間分解能10秒のものは、30秒や85秒のものと比べ有意に劣っていると思われたが、30秒、85秒の両群では辺縁性状や内部の造影効果、いずれも高分解能の造影後T1強調像と同等の評価が可能であった。潅流画像から得られるそのほかの情報(Ktrans, Veなど)や、目的(ex.術前精査、NACの効果判定や予後予測等)に応じ、至適な時間分解能で検査を施行する必要があるが、今回の検討では時間分解能30秒のdynamic MRIで形態評価を行うだけの空間分解能を保てると思われたため、当面は時間分解能30秒のdynamic MRIで症例を蓄積していき、今後、perfusion解析の結果や良性病変の評価も含めた更なる検討を行っていく予定である。PET検査は乳腺MRIを行う症例全例に行えている訳ではないが、症例の蓄積を行い検討を行っていく。平成27年末にMRI機器の更新があり、予約枠が非常に密となり乳腺MRI症例についても検査予約が取りずらい時期があった。また、乳腺MRI検査は、現在スクリーニング検査としてはほとんど行われておらず、マンモグラフィーや超音波検査で異常が指摘された手術前症例に対して主に行われているため、症例の蓄積がやや遅れている。乳腺MRIについては、拡散強調像、ダイナミックMRIに重点を置きデータの蓄積をおこなっている。拡散強調像は通常の拡散強調像に加え、患側のみ高分解能拡散強調像の撮像を行い、高分解能の拡散強調像でより詳細な内部性状評価が可能かどうかを検討している。2017年3月までに検査が行われた症例を対象に、造影後のT1強調像や手術結果との比較検討を行っていく予定である。造影ダイナミックMRIについては、異なる時間分解能で撮像を行い(時間分解能10秒、30秒、85秒)、乳癌結節の辺縁性状や内部の造影効果について、高分解能の造影後T1強調像と比較検討を行った。辺縁性状(spiculaやirregularity)、内部造影効果の不均一性(heterogeneity)とも時間分解能10秒のものは、30秒や85秒のものと比べ有意に劣っていると思われたが、30秒、85秒の両群では辺縁性状や内部の造影効果、いずれも高分解能の造影後T1強調像と同等の評価が可能であった。
KAKENHI-PROJECT-15K09925
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K09925
乳癌画像診断におけるMRI, PET検査:至適撮像法・検査法の確立を目指して
潅流画像から得られるそのほかの情報(Ktrans, Veなど)や、目的(ex.術前精査、NACの効果判定や予後予測等)に応じ、至適な時間分解能で検査を施行する必要があるが、時間分解能30秒のdynamic MRIで蓄積された症例データをもとに、perfusion解析の結果や良性病変の評価も含めた更なる検討を行っていく予定である。PET検査は乳腺MRIを行う症例全例に行えているわけではないが、MRI、PET検査両方が行われた症例については、それぞれの診断能を比較検討していく。乳腺MRI検査は、マンモグラフィーや超音波検査で異常が指摘され、手術が検討される症例に対し主に行われているため、症例の蓄積がやや遅れている。乳腺MRIについては、拡散強調像、ダイナミックMRIに重点を置きデータの蓄積をおこなっている。拡散強調像は通常の拡散強調像に加え、歪みの少ないRESOLVEdiffusionを用い患側のみ高分解能拡散強調像の撮像を行い、より詳細な内部性状評価が可能かどうかを検討している。2017年3月までに検査が行われた症例を対象に、造影後のT1強調像や手術結果との比較検討を行っている。造影ダイナミックMRIについては、異なる時間分解能で撮像を行い(時間分解能10秒、30秒、85秒)、乳癌結節の辺縁性状や内部の造影効果について、高分解能の造影後T1強調像と比較検討を行った。辺縁性状(spiculaやirregularity)、内部造影効果の不均一性(heterogeneity)とも時間分解能10秒のものは、30秒や85秒のものと比べ有意に劣っていると思われたが、30秒、85秒の両群では辺縁性状や内部の造影効果、いずれも高分解能の造影後T1強調像と同等の評価が可能であった。潅流画像から得られるそのほかの情報(Ktrans, Veなど)や、目的(例:術前精査、術前化学療法の効果判定や予後予測等)に応じ、至適な時間分解能で検査を施行する必要があるが、時間分解能30秒のdynamic MRIで蓄積された症例データをもとに、perfusion解析の結果や良性病変の評価も含めた検討を行っている。腋窩リンパ節に関してもMRI所見と手術所見、センチネルリンパ節造影CT検査所見と比較検討を行うPET検査は乳腺MRIを行う症例全例に行えているわけではないが、MRI、PET検査両方が行われた症例については、それぞれの診断能を比較検討している。また、定量的な集積指標に関しても、集積の強さを従来のSUVmaxと除脂肪した計算式で求めるSULmaxなどいくつかのパラメータを手術所見等と比較検討している。乳腺MRI検査・PET検査の行われた症例の、kinetic解析を含めたデータの解析、手術所見との照らし合わせに時間を要し研究遂行が遅延している。理由の一つとして、画像サーバーから解析用コンピュータへデータを転送して評価を行う予定であったが、コンピュータ上で解析がうまく行えない項目があり、潅流画像の解析をMRI撮像機器本体上のworkstationで行うこととした。そのため、機器の使用時間が限られ、評価が十分に行えていない。乳腺MRIについては、拡散強調像やダイナミックMRIに重点を置き、2017年3月までに3テスラMRIで乳腺MRI検査が行われ、手術未施行例や画像不適切例などを除外した240例を対象に評価を行った。拡散強調像は、通常の拡散強調像に加え、歪みの少ないRESOLVEdiffusionを用い患側の高分解能拡散強調像の撮像を行い、詳細な内部性状評価が可能かどうかを検討した。造影ダイナミックMRIについては、異なる時間分解能で撮像を行い(時間分解能10秒、30秒、85秒)、乳癌結節の辺縁性状や内部の造影効果について、高分解能の造影後T1強調像と比較検討を行った。通常の拡散強調像のみでは小病変の検出や内部のADC値の評価が困難な症例も見られ、撮像時間は長くなるが、患側乳房の高分解能RESOLVE
KAKENHI-PROJECT-15K09925
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K09925
磁気研磨法による曲面の平滑加工に関する研究
X-Yテ-ブル2軸運動制御ステッピングモ-タを設置した磁気研磨装置を新規に設計製作し,曲率の大きな曲面を想定して平面磁気研磨特性とその加工機構を明らかにした。得られた研究成果は次のようである。1.磁気研磨装置における電磁コイルの設置位置および磁気回路構成部品の設計指針を得た。2.平面磁気研磨加工特性を実験的に究明し,磁性工作物材料(軟鋼,焼入れ鋼),非磁性工作物材料(ステンレス鋼),硬脆材料(セラミックス,シリコンウエハ)の研磨特性に及ぼす加工諸因子(磁束密度,磁極回転周速度,加工間隙,工作物送り速度,磁性砥粒の種類,工作物の厚さ,磁性砥粒の供給量,加工液,磁極の繰返し工程数など)の影響をそれぞれ明らかにし,曲面研磨における加工条件の選定を容易にした。3.磁気研磨法によって0.1μRmax程度の鏡面に近い仕上面が容易に得られることに明らかにした。4.回転磁極の運動条件と加工精度の関係を実験的に明らかにし,2μm/□100mmの平面度を得た。5.電解複合磁気研磨法について実験し,電解作用により能率的な研磨加工ができることを確認した。6.磁性砥粒の切れ味向上と寿命改善のために従来の焼結磁性砥粒に代り,電解法と無電解法による新しいダイヤモンド磁性砥粒を開発した。また,その研磨性能を調べた。次に,曲面研磨に関する実験を行い,次の成果を得た。7.上述のX-Yテ-ブル2軸運動制御研磨装置によってでは三次元形状研磨はできないため,倣い方式の小形卓上型曲面磁気研磨装置を設計製作した。8.磁性工作物材料(炭素鋼)と非磁性工作物材料(黄銅)に,凸面・凹面の曲面形状モデルを与えて磁気研磨加工実験し,磁気研磨法による曲面研磨の可能性を調べた。X-Yテ-ブル2軸運動制御ステッピングモ-タを設置した磁気研磨装置を新規に設計製作し,曲率の大きな曲面を想定して平面磁気研磨特性とその加工機構を明らかにした。得られた研究成果は次のようである。1.磁気研磨装置における電磁コイルの設置位置および磁気回路構成部品の設計指針を得た。2.平面磁気研磨加工特性を実験的に究明し,磁性工作物材料(軟鋼,焼入れ鋼),非磁性工作物材料(ステンレス鋼),硬脆材料(セラミックス,シリコンウエハ)の研磨特性に及ぼす加工諸因子(磁束密度,磁極回転周速度,加工間隙,工作物送り速度,磁性砥粒の種類,工作物の厚さ,磁性砥粒の供給量,加工液,磁極の繰返し工程数など)の影響をそれぞれ明らかにし,曲面研磨における加工条件の選定を容易にした。3.磁気研磨法によって0.1μRmax程度の鏡面に近い仕上面が容易に得られることに明らかにした。4.回転磁極の運動条件と加工精度の関係を実験的に明らかにし,2μm/□100mmの平面度を得た。5.電解複合磁気研磨法について実験し,電解作用により能率的な研磨加工ができることを確認した。6.磁性砥粒の切れ味向上と寿命改善のために従来の焼結磁性砥粒に代り,電解法と無電解法による新しいダイヤモンド磁性砥粒を開発した。また,その研磨性能を調べた。次に,曲面研磨に関する実験を行い,次の成果を得た。7.上述のX-Yテ-ブル2軸運動制御研磨装置によってでは三次元形状研磨はできないため,倣い方式の小形卓上型曲面磁気研磨装置を設計製作した。8.磁性工作物材料(炭素鋼)と非磁性工作物材料(黄銅)に,凸面・凹面の曲面形状モデルを与えて磁気研磨加工実験し,磁気研磨法による曲面研磨の可能性を調べた。X-Yテーブル2軸運動制御用ステッピングモータを設置した磁気研磨実験装置を新規に設計製作し、実験の第1段階として曲率の大きな曲面を想定し、平面磁気研磨特性を究明、その加工機構を考察した。得られた結果は次のようである。(1)専用磁気研磨装置を設計製作し、加工装置における電磁コイルの設置位置および磁気回路構成部品の設計指針を得た。(2)製作した研磨装置における最高磁束密度は1.5Tであり、磁気研磨装置としては十分な値が得られた。(3)平面磁気研磨加工特性を実験的に究明し、磁性工作物材料(軟鋼、焼入れ鋼)、非磁性工作物材料(ステンレス鋼、黄銅)、硬脆材料(セラミックス、シリコンウエハ、光学ガラス)の研磨特性に及ぼす磁束密度、磁極回転周速度、加工間隙、工作物送り速度、磁性砥粒の種類、工作物厚さ、磁性砥粒の供給量、加工液、磁極の繰返し工程数、磁性砥粒の寿命の影響をそれぞれ明らかにし、曲面研磨における加工条件の選定を容易にした。(4)上記の研磨特性を磁気工学的に解析し、加工機構を考察した。(5)精密な表面仕上げの一手段として電解複合磁気研磨法をとりあげ、電解作用により良好な研磨効果が得られることを確認した。(6)新しいフェライト磁性砥粒およびニッケル電鋳ダイヤモンド磁性砥粒を開発試作し、従来の磁性砥粒の研磨性能を高め得た。特にニッケル電鋳ダイヤモンド磁性低粒の研磨性能は従来品に比べ格段に優れ、しかも再利用が可能なことを明らかにした。(7)本年度は形状精度の確認まではできていないが、面精度の影響を明らかにでき、磁性砥粒の選定にもよるが、0.1μRmax以下の鏡面が容易に得られることを示した。
KAKENHI-PROJECT-63550096
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63550096
磁気研磨法による曲面の平滑加工に関する研究
問題点として、加工軌跡の重ね合わせによる加工面のうねり発生が予想され、今後の解決すべき課題であることを示した。本研究成果の一部は精密工学会講演会にて発表し、学会研究論文として投稿した。次年度は曲面の磁気研磨を実施する予定。昨年度は、平面磁気研磨装置を製作し、基本的な研磨特性を実験的に明らかにした。この時の課題は、加工の基本となる磁性砥粒の切れ味向上と加工寿命の改善であた。従来の焼結法によって製作したWA砥粒では、加工中における磁性砥粒の破壊が顕著であり、実用に耐え難いことが明らかになった。この結果に基づき、本年度は磁性砥粒の研磨性能の向上を第1の研究目的に設定し、電解法と無電解法による新しいダイヤモンド磁性砥粒を開発して実験的に供した。また、加工装置には昨年度製作したX-Yテ-ブル2軸運動制御研磨装置を主に使用したが、この研磨装置によってでは三次元研磨はできない。そこで曲面形状倣い方式の卓上型小型磁気研磨装置を新たに製作した。得られた研究結果は次のようである。1.追加実験として、平面磁気研磨実験を実施し、各種工作物材料の研磨特性とその加工機構を明らかにした。2.回転磁極の運動条件と加工精度の関係を実験的に究明した。3.電解法(電着法)および無電解法による新しいダイヤモンド磁性砥粒を開発し、各種の粒径の磁性砥粒を製作した。4.新しく開発したダイヤモンド磁性砥粒の研磨性能を調べるとともに、磁性砥粒の具備条件を明確にした。5.簡単に曲面研磨ができる倣い制御方式の小型卓上型磁気研磨装置を設計製作して三次元研磨実験に供した。6.磁性工作物材料(炭素鋼材)と非磁性工作物材料(黄銅材)に、凸面・凹面の形状モデルを与えて磁気研磨加工実験し、磁気研磨法による曲面研磨の可能性を調べた。7.電解法と無電解法によって製作した2種類の磁性砥粒を用いてファインセラミックスの平面平滑加工実験を行い、その研磨性能を比較検討した。
KAKENHI-PROJECT-63550096
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コホートによる高齢者運動器疾患の総合的研究
北海道Y町住民約18000人のうち1982年から20年間に定期に町民検診を受け内科的・生活習慣のデータが整備された約5000人をコホートを研究対象とした。とくに60歳以上の町民を対象とした。運動器疾患のprospectiveな検討を平成13年までの4年間続け、身体所見、生活習慣などの生活習慣と身体所見をはじめとした内科的データと総合的に解析した。1)骨粗鬆症と転倒に対する研究ではend pointを骨折として研究した。2)高齢者膝関節症の診断と疫学的研究をおこなった。3)腰痛と脊椎変形の疫学的研究をした。4)高齢者運動器疾患とQOLを検討した。運動器検診15項目は1)アンケート、2)転倒手帳を作成し転倒の記録、3)身体所見、4)整形外科疾患の問診、5)体力検査、6)骨密度、7)腰椎側面臥位X線像、膝関節立位撮影、8)膝サーモグラフィー9)血液検査、10)尿検査、11)健脚度評価、12)重心動揺検査、13)軟部組織量評価、14)エルゴメーター15)高次脳機能である。Y町の転倒率は約10%と少なく、骨折の頻度も少なかった。2)骨密度が高く、重労働との関連が示唆された。3)エルゴメータによる下肢筋力の基準値を作成した。下肢筋力は背筋力、下腿周囲径、健脚度と強く相関した。4)膝関節症は女性に多く、70歳以上の女性で35%あった。約50%で膝変形がないことが判明した。5)利き足と運動器疾患が関係する可能性がある。6)一般住民における重心動揺の加齢に伴う変化の標準値と変形性関節症との関連を検討した。7)膝関節症ではサーモグラフィーに変化が見られた。7)膝関節症と脊椎症のレントゲンの重症度の基準を作成した。8)腰椎の前彎の消失は腰痛の原因となっている可能性があった。9)生活の質(QOL)の質問票SF-36を行ない標準値を作成した。10)高次脳機能(記憶、計算、認知)の標準値を作成した。北海道Y町住民約18000人のうち1982年から20年間に定期に町民検診を受け内科的・生活習慣のデータが整備された約5000人をコホートを研究対象とした。とくに60歳以上の町民を対象とした。運動器疾患のprospectiveな検討を平成13年までの4年間続け、身体所見、生活習慣などの生活習慣と身体所見をはじめとした内科的データと総合的に解析した。1)骨粗鬆症と転倒に対する研究ではend pointを骨折として研究した。2)高齢者膝関節症の診断と疫学的研究をおこなった。3)腰痛と脊椎変形の疫学的研究をした。4)高齢者運動器疾患とQOLを検討した。運動器検診15項目は1)アンケート、2)転倒手帳を作成し転倒の記録、3)身体所見、4)整形外科疾患の問診、5)体力検査、6)骨密度、7)腰椎側面臥位X線像、膝関節立位撮影、8)膝サーモグラフィー9)血液検査、10)尿検査、11)健脚度評価、12)重心動揺検査、13)軟部組織量評価、14)エルゴメーター15)高次脳機能である。Y町の転倒率は約10%と少なく、骨折の頻度も少なかった。2)骨密度が高く、重労働との関連が示唆された。3)エルゴメータによる下肢筋力の基準値を作成した。下肢筋力は背筋力、下腿周囲径、健脚度と強く相関した。4)膝関節症は女性に多く、70歳以上の女性で35%あった。約50%で膝変形がないことが判明した。5)利き足と運動器疾患が関係する可能性がある。6)一般住民における重心動揺の加齢に伴う変化の標準値と変形性関節症との関連を検討した。7)膝関節症ではサーモグラフィーに変化が見られた。7)膝関節症と脊椎症のレントゲンの重症度の基準を作成した。8)腰椎の前彎の消失は腰痛の原因となっている可能性があった。9)生活の質(QOL)の質問票SF-36を行ない標準値を作成した。10)高次脳機能(記憶、計算、認知)の標準値を作成した。八雲町はの人口は約18000人で高齢化率は18%であった。町民検診を1998年8月6日から3日間おこなった。被検診者は内科検診をはじめとして全体の住民検診は956名であった。問診、血液検査、理学所見、レントゲン検診をおこなった。全てのを受診した膝検診の受診者は442名で、男154名、女288名、平均年齢は71歳であった。臨床とレントゲンがともに評価可能であった415名を対象とした。膝評価は問診と膝関節検診、立位レントゲン撮影を行った。レントゲンは45度屈曲撮影(Rosenberg,1988)と腰椎の評価は理学所見とレントゲン像でおこなった。膝レントゲンは骨棘、骨硬化像、関節裂隙の幅をデジタイザーで評価し、関節裂隙と骨棘によりgrade分類を試みた。
KAKENHI-PROJECT-10470305
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コホートによる高齢者運動器疾患の総合的研究
問診で現在と過去膝の痛みとレントゲンのgrade3以上の関節症との正診率、特異度は62%、60%であった。理学的所見でPFグライディングは陽性率18%、内側関節裂隙圧痛8%であった。変形性関節症の診断と相関が高いものは可動域制限、膝内側関節裂隙の圧痛、3cm以上の内反変形であった。骨棘の形成は顆間部に早期に見られ、進行すると周辺部の骨棘がみられた。レントゲン評価はgrade 0;135、gradel;379、grade 2;141、grade 3;102、grade 4;34、grade 5;33であった。左右差はなかった。grade3以上の明らかな関節症の罹患度は60歳まで13%、60歳から69歳まで21%、70歳以上32%であり年齢と共に罹患率が上昇した。また女性は男性に比べて発症率は有意に高く、60歳までは男性9%、女性15%で70歳以上は男性15%、女性33%であった。garde3以上の変形性膝関節症の変形性脊椎症の合併率は65%、Heberden結節は58%にみとめた。肥満とは有意の関係がみられなかった。研究の目的は、平衡機能が転倒に及ぼす影響と転倒による骨折のリスクファクターの検討である。さらに脂肪・筋肉等の軟部組織量と高齢者の骨折について検討し、大腿骨筋肉量が高齢者の転倒のリスクファクターであるかを調査することである。また転倒時の筋肉、脂肪等の軟部組織による衝撃吸収機能が、転倒に伴う骨折にどれほど関与するかを調査することである。平成10年と同様に研究対象は北海道八雲町住民約18000人のうち1982年から17年間定期に住民検診を受け内科的・疫学的データが整っている約5000人をコホートを対象とした。1997年を高齢者運動器疾患の骨粗鬆症と関節症のコホートによる総合的研究の開始年とし、今後現在の検診方法をprospectiveな検討を2001年までの4年間続け5年間の身体所見、生活習慣などを過去3年間の血液生化学データーと15年、10年、5年前の身体所見をはじめとした内科的データ合わせて総合的に解析する。研究対象は40歳以上の全ての受診者とする。第1のテーマである骨粗鬆症と転倒に対する研究ではend pointを骨折とする。椎体骨折、コレス骨折、上腕骨頚部骨折、大腿骨近位部骨折、その他を検討する。第2のテーマは高齢者の関節症変化とくに膝関節症および腰痛の整形外科診断と疫学的研究をおこなう。検討項目は1)アンケート、2)転倒手帳を作成し転倒の記録、3)身体所見、4)整形外科疾患の問診、5)体力検査、6)骨密度、7)腰椎側面臥位X線像、膝関節立位45度屈曲立位撮影、8)血液検査、9)尿検査、10)筋力評価、11)平衡機能検査、12)軟部組織量評価、13)下肢サーモグラフィーである。結果として転倒と運動器疾患が密接に関連していることを見いだした。腰痛と腰椎レントゲン像の関係について有意な所見を見いだした。膝関節症のレントゲン診断について新しく分類した。北海道八雲町で毎年行っている住民検診(平成12年8月4-6日)に整形外科医師並びにレントゲン技師など16名で参加した。以前から行っている膝と腰の問診および検診(理学所見・レントゲン)と平成11年から住民のQOLを評価するために問診票でNHP、SF-36、腰・膝の疼痛のVisual AnalogScale(VAS)評価を行った。運動器疾患のある住民はQOLとVASが低かった。またストレングス・エルゴによる下肢筋力評価を初めて導入した。51歳以上の最大トルク・仕事量を左右別々に評価し、標準値を作成した。年齢に相関して高齢化とともに最大トルク・仕事量は低下した。女性は男性の約60%の最大トルク・仕事量となった。
KAKENHI-PROJECT-10470305
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TG型γ-リノレン酸の摂取はリポジストロフィー(脂肪異栄養症)を改善できるのか?
本研究では、「トリアシルグリセロール(TG)型γ-リノレン酸(GLA)」の経口摂取により共役リノール酸(CLA)由来のリポジストロフィー症の改善を試みた。本検証で設定したTG GLAの投与量ではリポジストロフィー症を緩和する作用は弱く、摂取したGLAは肝臓へ含有する割合が低いことを新たに発見することができた。また、母マウスの性状および仔マウスのリポジストロフィー症状を検証したところ、母マウスのCLA摂取は仔のリポジストロフィー発症を誘起することが分かった。また、母マウスのTG GLA摂取は、特に仔雄のリポジストロフィー発症緩和を高めることが新たに判明した。今年度は、TG型γ-リノレン酸(GLA)の摂取がリポジストロフィーを改善できるか探るために、下記の実験を実施した。一週間馴化したICRマウスを体重が均一になるよう4群に分け、油脂を置換したAIN93Gの粉末飼料を4週間摂取させた。各群に与えた飼料の油脂は1Control群(Normal):大豆油7%、2CLA群:大豆油5%+共役リノール酸(CLA)油2%、3GLA群:大豆油5%+GLA含有油脂2%、4GLA+CLA群:大豆油3%+TG-GLA含有油脂2%+CLA2%である。一週間ごとにマウスの体重測定を行い、定期的に摂餌量を測定した。ただし、給餌方法は、pair feedingを採用した。4週間の飼育終了後、肝臓、血液、脂肪組織を採取し、臓器重量の測定および生化学的な手法による脂質分析を実施した。血液はヘパリン処理を施し、血漿を分析に用いた。総摂餌量はpair feedingにより群間に有意差はなく、全群が同量摂取したことが前提条件となった。CLA群の体重増加量は、Control群およびGLA群に比して増加量が少ない傾向にあり、GLA+CLA群の体重増加量はControl群と有意差がない値まで回復した。肝臓重量はCLAを投与した2群で有意に増加し、肝臓中トリアシルグリセロール量も同様の結果が得られた。一方、白色脂肪組織の重量はCLA群およびGLA+CLA群で明らかに減少したが、GLA+CLA群の白色脂肪量はCLA群より約2倍増加した。血漿分析に関して、GLA+CLA群の遊離脂肪酸濃度は最低値を示し、同群はCLA群よりグルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ活性を弱めることが分かった。さらに、昨年度から実施している試験では、CLA油のリポジストロフィー効果が強すぎるため、CLAの投与量を更に3群設け、発症試験を実施した。ICR雄マウス(4週齢)24匹を単飼ケージにて馴化後、4群に分け、大豆油7%を添加したAIN93G飼料(Control群)、CLA油0.5%および大豆油6.5%を添加したAIN93G改変飼料(CLA0.5%群)、CLA油1%および大豆油6%を添加したAIN93G改変飼料(CLA1%群)、CLA油2%および大豆油5%を添加したAIN93G改変飼料(CLA2%群)をそれぞれ3週間与えた。飼育終了後の解剖により、白色脂肪重量は、CLA0.5%群でControl群より有意に減少し、CLAの用量依存的に低下していた。また、肝臓重量はControl群に比べCLA0.5%群で増加する傾向が見られ、CLA1%および2%においても0.5%と同様の値を示していた。これらのことから、CLA0.5%以上の摂取量でリポジストロフィーを発症していることが明らかになった。血漿分析において、CLA油摂取群の遊離脂肪酸(NEFA)濃度はCLAの用量依存的に低くなり、CLA1%および2%群のTG濃度はCLA0.5%群と比べ有意に低下した。レプチンおよびアディポネクチン濃度は、Control群と比べCLA1%および2%摂取群で顕著に低くなった。一方、GPT活性値はCLA摂取で有意に高くなった。本実験は、共役リノール酸(CLA)摂取による母マウスのリポジストロフィー症が仔に影響するのか確認し、母が摂取したTG型γ-リノレン酸(GLA)が仔のリポジストロフィー症を改善するか否かを検証するために、下記の実験を実施した。ICR雌マウスを飼育馴化した後、体重が均一になるよう3群に分け、AIN93Gの粉末飼料を産後2週まで自由摂取させた。各群に与えた油脂は1Control群:大豆油7%、2CLA群:大豆油6%+CLA油1%、3TG-GLA+CLA群:大豆油4%+TG-GLA2%+CLA油1%である。ICR雄マウスと交配後、生まれた仔マウスは2週齢で屠殺し、肝臓および腎臓周囲脂肪組織を採取した。母マウスも産後2週目で屠殺し、肝臓および腎臓周囲脂肪組織を摘出した。これらの臓器は重量を測定した後、-80°Cで冷凍した。母マウスの体重増加量は群間で差は確認されなかった。CLA群の肝臓重量はControl群より増加する傾向にあり、TG-GLAとの混合摂取でさらに増加する傾向にあった。腎臓周囲脂肪に着目すると、CLA摂取でControl群より減少傾向になったが、TG-GLAの摂取により脂肪重量は回復した。この脂肪重量の結果により、母体においてTG-GLAはリポジストロフィー症状を緩和する可能性が確認できた。
KAKENHI-PROJECT-25350127
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25350127
TG型γ-リノレン酸の摂取はリポジストロフィー(脂肪異栄養症)を改善できるのか?
仔雌マウスの体重および肝臓重量はCLA摂取によりControl群より有意に減少し、TG-GLA+CLA群はCLA単独摂取より増加していた。しかしながら、腎臓周囲脂肪はCLA群とTG-GLA+CLA群との間で有意な差はなく、両群ともControl群より有意に減少していた。一方、仔雄マウスの腎臓周囲脂肪はCLA単独摂取によりControl群より有意に減少したが、TG-GLA+CLA摂取群では他の2群と比べて有意差は無かった。これらの結果から、母マウスのCLA摂取は仔のリポジストロフィー発症の可能性があること、また母マウスのTG-GLAの摂取による仔のリポジストロフィー緩和作用は雌雄で異なることが示唆された。本研究では、「トリアシルグリセロール(TG)型γ-リノレン酸(GLA)」の経口摂取により共役リノール酸(CLA)由来のリポジストロフィー症の改善を試みた。本検証で設定したTG GLAの投与量ではリポジストロフィー症を緩和する作用は弱く、摂取したGLAは肝臓へ含有する割合が低いことを新たに発見することができた。また、母マウスの性状および仔マウスのリポジストロフィー症状を検証したところ、母マウスのCLA摂取は仔のリポジストロフィー発症を誘起することが分かった。また、母マウスのTG GLA摂取は、特に仔雄のリポジストロフィー発症緩和を高めることが新たに判明した。CLA投与量の違いによるリポジストロフィーの発症状態を把握し、餌中脂肪酸の体内含有割合についても検証できている。一方、リポジストロフィーを発症させた妊娠マウスの性状および仔マウスのリポジストロフィー症状を確認する実験は次年度への課題となる。食生活学成熟期および妊娠期マウスにおけるTG型GLA油脂摂取のリポジストロフィー緩和効果を肝臓および白色脂肪の状態を確認しながら検証する。また、仔マウスのリポジストロフィー症状に関しても肝臓の脂質量を分析して把握する。さらに、母体が摂取したCLAおよびGLAが仔の肝臓脂肪酸比率に変動をもたらすか否かについても検証する。リポジストロフィー発症マウスの作製、TG型GLAの長期摂取による内臓脂肪および肝臓の重量確認、肝臓および血液の脂質分析を計画通り遂行した。脂肪酸分析に関しては、機器の調整および分析値の採取等も含めて実施中である。さらに、CLA投与量の違いによるリポジストロフィーの発症状態の把握や、リポジストロフィーに有効なGLAの摂取量が決定できていないことが次年度への継続課題となる。臓器中の脂肪酸組成を分析し、CLAおよびTG型GLA摂取による器官中脂肪酸含有率への変動を分析する。さらに、CLAを用量依存的に摂取させ、白色脂肪組織および肝臓の脂質含有量を分析することでリポジストロフィーの発症状態を把握する。また、餌中へのGLA油脂含有割合を増やすなど、成熟期のリポジストロフィー症状に有効なGLA割合を探ることも実施する。成熟期でTG型GLA油脂の効果がみられた後、リポジストロフィーを発症させた妊娠マウスの脂肪組織の過度な縮小と脂肪肝を確認し、仔マウスのリポジストロフィー症状を成長段階に応じて検証する。
KAKENHI-PROJECT-25350127
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昆虫の社会行動を統御する分子遺伝学的、生理学的、生態学的機構
社会性アブラムシは、繁殖に専念する生殖階級と利他行動を行なう不妊の兵隊階級からなる社会性昆虫である。兵隊アブラムシは、若いうちは巣内の清掃を行ない、年を取るともっぱら巣外で攻撃に専念するという齢分業を示す。本研究では、この齢分業の成立基盤に関して、仲間を動員するフェロモンへの兵隊アブラムシの行動反応、触角応答、意思決定機構について明らかにした。昆虫の社会行動を統御するメカニズムや社会性獲得の進化過程を理解する上で深い洞察が得られた。社会性アブラムシは、繁殖に専念する生殖階級と利他行動を行なう不妊の兵隊階級からなる社会性昆虫である。兵隊アブラムシは、若いうちは巣内の清掃を行ない、年を取るともっぱら巣外で攻撃に専念するという齢分業を示す。本研究では、この齢分業の成立基盤に関して、仲間を動員するフェロモンへの兵隊アブラムシの行動反応、触角応答、意思決定機構について明らかにした。昆虫の社会行動を統御するメカニズムや社会性獲得の進化過程を理解する上で深い洞察が得られた。本研究は、社会性昆虫類のコロニーにおける強調と制御の仕組みを理解することを目的とする。社会性アブラムシをモデル系として、とくに化学コミュニケーションに着目して、アブラムシの兵隊階級による分業や社会行動の統御メカニズムを明らかにするために、分子生物学的、化学生態学的・神経生理学的研究をおこなった。社会性アブラムシは、繁殖に専念する生殖階級と利他的な社会行動をおこなう兵隊階級の二つの階級から構成される社会性昆虫である。兵隊は若いうちは掃除をおこない、年を取るともっぱら攻撃に専念するという齢差分業を示す。本年度は、社会性アブラムシにおける齢差分業の調節に関与する候補遺伝子の探索をおこなった。遺伝子の候補として、foraging遺伝子に着目した。foragingがコードする、PKGの活性を上昇させるcGMPのアナログを若齢兵隊に経ロ投与した結果、攻撃性を示す個体の割合が増加した。このことから、アブラムシの兵隊における齢差分業に、foraging遺伝子が関わっていることが強く示唆された。そこで、foraging遺伝子のクローニングをおこない、まだ予備的な段階ではあるものの、兵隊アブラムシ体内における遺伝子の発現量の定量化にも成功した。このように、齢差分業の成立メカニズムに対して遺伝子レベルからのアプローチをおこなうことで、社会性の成立・維持機構や社会性獲得の進化過程を理解する上できわめて重要な結果を得ることができた。本研究は、社会性アブラムシをモデル系として、社会性昆虫類のコロニーにおける強調と制御の仕組みを理解することを目的とした。とくにコロニーメンバー間の化学コミュニケーションに着目し、アブラムシの兵隊階級による分業や社会行動の統御メカニズムを明らかにするために、分子生物学的、化学生態学的・神経生理学的研究をおこなった。社会性アブラムシは、繁殖に専念する生殖階級と利他的な社会行動をおこなう兵隊階級の二つの階級から構成される社会性昆虫である。兵隊は若いうちは掃除をおこない、年を取るともっぱら攻撃に専念するという齢差分業を示す。本年度は、昨年度に引き続き、社会性アブラムシにおける齢差分業の調節に関与する候補遺伝子の探索をおこなった。遺伝子の候補として、foraging遺伝子に着目し、この遺伝子が関与するサイクリックグアノシン-一リン酸(cGMP)/プロテインキナーゼG(PKG)依存性シグナル伝達経路が、兵隊の加齢に伴う非攻撃から攻撃への行動転換に及ぼす影響について詳しく解析した。foraging遺伝子がコードする、PKGの活性を上昇させるcGMPのアナログを若齢兵隊に経口投与した結果、攻撃性を示す個体の割合が明らかに増加することが確認できた。この結果は、アブラムシの兵隊における齢差分業に、foraging遺伝子が関わっていることを強く示唆する。そこで、foraging遺伝子のクローニングをおこない、兵隊アブラムシ体内における遺伝子の発現量の定量化を試みた。その結果、兵隊の日齢と遺伝子の発現量との間には明確な傾向は認められなかった。今回は兵隊の体全体における遺伝子の発現量を見たため、重要な差を見過ごした可能性かある。そこで、兵隊の脳の領域に注目して遺伝子の発現量を比較するための蛍光in situハイブリダイゼーション法の開発を試みた。現在までのところ蛍光シグナルを検出するには至ってないものの、今回の結果から、齢差分業の成立メカニズムに対して遺伝子レベルからアプローチをおこなうことが、社会性の成立・維持機構や社会性獲得の進化過程を理解する上できわめて有効であることが確認できた。社会性アブラムシは、繁殖に専念する生殖階級と利他的な社会行動をおこなう兵隊階級の二つの階級から構成される社会性昆虫である。兵隊は若いうちは掃除をおこない、年を取るともっぱら攻撃に専念するという齢分業を示す。本研究は、社会性アブラムシをモデル系として、社会性昆虫類のコロニーにおける強調と制御の仕組みを理解することを目的とした。とくにメンバー間の化学コミュニケーションに着目し、アブラムシの兵隊階級による分業や社会行動の統御メカニズムを明らかにするために、分子生物学的、化学生態学的・神経生理学的研究をおこなった。最終年度である本年度は、これまでのデータの取りこぼしをチェックし、化学シグナルに対する兵隊階級の行動反応、触角応答、意思決定機構について定量的な補充実験をおこなった。
KAKENHI-PROJECT-20570016
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20570016
昆虫の社会行動を統御する分子遺伝学的、生理学的、生態学的機構
その結果、(1)兵隊の仕事刺激に対する行動反応閾値が加齢とともに変化することで齢分業が生じること、(2)兵隊の日齢に沿った掃除から攻撃への仕事転換のタイミングが、天敵の存在を知らせるフェロモンや化学シグナルなどの環境条件に応じて可塑的に変化すること、(1)神経伝達物質であるオクトパミンやcGMPアナログの経口投与による、オクトパミンレベルの上昇およびサイクリックグアノシン-一リン酸(cGMP)/プロテインキナーゼG(PKG)依存性シグナル伝達経路の活性上昇が、共に行動の意思決定に影響することなどを明らかにした。とくに社会性昆虫類において知られる齢分業の調節に関わるforaging遺伝子がコードするPKGカスケードが、社会性アブラムシにおける兵隊の加齢に伴う非攻撃から攻撃への行動転換に関与している点は興味深い。以上の結果から、社会性アブラムシにおける兵隊階級の分業と社会行動の発現統御メカニズムが浮き彫りとなり、社会性の成立・維持機構や社会性獲得の進化過程を理解する上で深い洞察を得ることができた。
KAKENHI-PROJECT-20570016
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小腸上皮細胞の分化過程における異物排泄ポンプの生理的意義
昨年度までの検討により、Multidrug resistance-associated protein (MRP)2は小腸上皮において分化過程で誘導を受けることが示された。その生理的意義を明らかにする上で上流の転写因子をひとつひとつ調べることは重要である。そこで、本年度はMRP2のプロモーター領域について、小腸分化過程での転写制御メカニズムに関してIEC6細胞を用いて検討を行った。その結果、1.IEC6において、小腸分化促進転写因子のCdx2を細胞に強制発現させ、培養を続けることでMRP2の発現が誘導される2.Cdx2を一過性に発現してもMRP2の発現は誘導されない3.IEC6細胞においてMRP2のプロモーター領域に関して順次欠失させた場合においても有意に転写活性が変化する部位は見出されないということが明らかとなった。以上の研究よりMRP2は確かに分化過程で誘導されるが分化の引き金となるCdx2による直接のMRP2プロモーター部位への作用では無く、むしろ分化過程における二次的な誘導と考えられた。MRP2は小腸に限らず他臓器においても分化時に誘導されることが知られており、Cdx2などの小腸特異的な分化因子よりむしろ、その下層に位置する臓器間で共通の転写制御因子によって制御されていることが示唆された。以上の結果は、今後の研究の進め方を決める上で有用な情報となると思われる。Multidrug resistance-associated protein(MRP)2の小腸上皮における発現変動と、その内因性基質でありアポトーシス進行への関与、或いは生体の主要な抗酸化物質としての役割を有する還元型グルタチオン(GSH)量の変動に関して検討を行った。MRP2遺伝的欠損ラットと正常ラットの小腸上皮細胞を基底部から先端部にかけて分取し、細胞内グルタチオン含量を測定したところ、基底部から頭頂部にかけての減少勾配が認められたものの、そのパターン、或いは絶対値に両ラット間で差は見られなかった。MRP2のmRNA発現量は基底部から頭頂部にかけて増加傾向が見られた。以上のことより小腸上皮細胞内GSHの分化に伴った減少にMRP2の発現量の変化が寄与している可能性は低いと考えられた。一方、in vivoで見られたMRP2の分化に伴った発現誘導はin vitro培養細胞系を用いても観察された。すなわち、小腸上皮の分化を促進する転写因子Cdx2を導入することでin vivoと同様の分化過程を辿ることが報告されている未分化小腸培養細胞IEC-6細胞において、MRP2の分化に応じた発現誘導を確認することができた。この時MRP2の発現と対応して細胞内GSHの低下傾向が見られ、GSHの細胞外への排出がMRP2の発現上昇によって亢進している可能性が示された。少なくともin vivo、in vitro両系でMRP2の分化に伴う誘導が見られたことから、MRP2の発現がどのような転写因子の元で制御されているのかに関して今後プロモーター解析を中心に進めていく予定である。昨年度までの検討により、Multidrug resistance-associated protein (MRP)2は小腸上皮において分化過程で誘導を受けることが示された。その生理的意義を明らかにする上で上流の転写因子をひとつひとつ調べることは重要である。そこで、本年度はMRP2のプロモーター領域について、小腸分化過程での転写制御メカニズムに関してIEC6細胞を用いて検討を行った。その結果、1.IEC6において、小腸分化促進転写因子のCdx2を細胞に強制発現させ、培養を続けることでMRP2の発現が誘導される2.Cdx2を一過性に発現してもMRP2の発現は誘導されない3.IEC6細胞においてMRP2のプロモーター領域に関して順次欠失させた場合においても有意に転写活性が変化する部位は見出されないということが明らかとなった。以上の研究よりMRP2は確かに分化過程で誘導されるが分化の引き金となるCdx2による直接のMRP2プロモーター部位への作用では無く、むしろ分化過程における二次的な誘導と考えられた。MRP2は小腸に限らず他臓器においても分化時に誘導されることが知られており、Cdx2などの小腸特異的な分化因子よりむしろ、その下層に位置する臓器間で共通の転写制御因子によって制御されていることが示唆された。以上の結果は、今後の研究の進め方を決める上で有用な情報となると思われる。
KAKENHI-PROJECT-13771370
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13771370
線型,及び非線型波動伝播現象の解析
(1)単独保存則の方程式に対して空間1次元の場合に衝撃波の構成を行った。Rankine-Hugoniotの方程式を直接解くことは出来ない。なぜなら方程式は原点の近傍でリプシッツ連続でないからである。我々の方法はHamilton-Jacobi方程式に一度もどることである。1986年9月に開かれた『夏の偏微分方程式研究集会』に於て、この結果を報告した。(2)一般一階偏微分方程式の古典解の構成はいつも2回連続的微分可能函数の空間に於て議論されている。しかし、方程式には1回偏導函数しか現われないので、解が2回連続的微分可能である必要はない。そこで1回連続的微分可能である解が存在するための『方程式及び初期値に対するギリギリの条件』について考察し、1つの結果を得た。これについては、1986年12月に信州大学に於て開かれた研究集会、及び1987年2月に福岡大学に於て開かれた研究集会において報告した。しかし、我々の結果は既にWazewskiにより1937年に証明されていることを後で知った。(3)特性曲線族により得られる『時間に依存する微分可能写像』に対して、そのJacobian=0となるとき、特性曲線は交差するかどうかについて考察した。この問題は弱解の特異性が衝撃波であるかどうかという事と関係している。先ず、Jacobian=0となるが特性曲線は交わらない例を構成した。この例に対応する7階偏微分方程式の大域的弱解は衝撃波とは別種の代数的特異点をもっている。次にJacobian=0となったとき、特性曲線が交差する為の特徴付けを行った。この場合、衝撃波(又はそれと同種のsingalarities)が現われる。現在、この結果について論文作成中。(1)単独保存則の方程式に対して空間1次元の場合に衝撃波の構成を行った。Rankine-Hugoniotの方程式を直接解くことは出来ない。なぜなら方程式は原点の近傍でリプシッツ連続でないからである。我々の方法はHamilton-Jacobi方程式に一度もどることである。1986年9月に開かれた『夏の偏微分方程式研究集会』に於て、この結果を報告した。(2)一般一階偏微分方程式の古典解の構成はいつも2回連続的微分可能函数の空間に於て議論されている。しかし、方程式には1回偏導函数しか現われないので、解が2回連続的微分可能である必要はない。そこで1回連続的微分可能である解が存在するための『方程式及び初期値に対するギリギリの条件』について考察し、1つの結果を得た。これについては、1986年12月に信州大学に於て開かれた研究集会、及び1987年2月に福岡大学に於て開かれた研究集会において報告した。しかし、我々の結果は既にWazewskiにより1937年に証明されていることを後で知った。(3)特性曲線族により得られる『時間に依存する微分可能写像』に対して、そのJacobian=0となるとき、特性曲線は交差するかどうかについて考察した。この問題は弱解の特異性が衝撃波であるかどうかという事と関係している。先ず、Jacobian=0となるが特性曲線は交わらない例を構成した。この例に対応する7階偏微分方程式の大域的弱解は衝撃波とは別種の代数的特異点をもっている。次にJacobian=0となったとき、特性曲線が交差する為の特徴付けを行った。この場合、衝撃波(又はそれと同種のsingalarities)が現われる。現在、この結果について論文作成中。
KAKENHI-PROJECT-61540134
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61540134
電子ビームを用いた新しいフラーレン固体の創製と物性評価
C_<60>薄膜に電子ビーム(加速電圧3kV)を照射することにより、分子間に融合反応が起き、ピーナッツの形状を持つ二量体が生成する。昨年度の研究では、水素ガス雰囲気下で電子ビームを照射したC_<60>薄膜の電界放出特性を調べ、照射後の薄膜の電界放出特性が向上することを見出した。この性質は、電子ビーム照射で誘起される融合反応により生成物のπ共役系が大きくなる結果、(1)Fermi準位付近の状態密度の増加と、(2)バンドギャップの減少が起きることが原因して考えられる。この仮定に従えば、照射後の薄膜の電気抵抗率が照射前に比べて減少することが予想される。そこで今年度は、電子ビーム照射C_<60>薄膜の電気抵抗率をin situで測定した。電流電圧計と接続した四つの電極をCsI基板に接触させ、この基板上にC_<60>薄膜を超高真空下(10^<-9> Torr)で作成した。この薄膜に電子ビームを照射し、照射の前後で電流-電圧特性及び抵抗率を測定した。抵抗率の測定は、van der Pauw法を用いた。一方、電子ビーム照射後のC_<60>薄膜の構造を調べるため、抵抗率測定と同時にFT-IRスペクトルを測定した。電子ビーム照射後のC_<60>薄膜のIRスペクトルから、照射時間とともに融合反応が進行していくことを確認した。薄膜の電気抵抗率は、予想どおり照射時間の増加にしたがって減少した。また、電流-電圧特性から、照射前に半導体であったC_<60>薄膜が、電子線照射後には金属に近い性質に変化することを見い出した。これまでの研究で、C_<60>薄膜に電子ビーム(加速電圧3 kV)を照射することにより、C_<60>二分子に融合反応が起きることが分かった。本研究は、この電子照射C_<60>薄膜の持つ電子的特性を明らかにすることを目的としている。今年度は、その一つとして電界放出特性を調べた。試料表面に電場をかけ、そこから放出される電流を測定したところ、水素ガス雰囲気下で電子照射した試料の電界放出の開始が、照射前に比べより低電場で起きることが分かった。同じ条件で照射した試料を赤外吸収分光で観察したところ、融合反応とともにC-H結合が形成されていることを確認した。電界放出特性の向上は、電子放出が起きやすいsp^3炭素がC-H結合によって薄膜表面に提供されたためと考えられる。我々は、C_<60>薄膜への電子ビーム照射により起きる融合反応が、[2+2]成環二量化反応から始まる多段階の一般化Stone-Wales転移により進行すると考えている。反応の出発点となる[2+2]成環二量化反応は、三重項励起状態(T_1)にあるC_<60>と基底状態(S_0)にあるC_<60>との間で起こるため、この反応のメカニズムを理解するためには、これらの電子状態の幾何構造とポテンシャルを知ることが重要となる。赤外吸収分光はこのための有用な手段であり、S_0についてはすでによく調べられているが、T_1については現在のところ測定も計算も行われていない。そこで密度汎関数法を用いてT_1の振動計算を行った。その結果、S_0からT_1へのJahn-Teller歪みは小さいにも関わらず、両者の赤外吸収スペクトルはかなり異なることが分かった。また、S_0とT_1のポテンシャルの基準座標空間における相対的位置関係を調べたところ、いくつかの基準座標において大きなDushinsky回転が起きていることが分かった。C_<60>薄膜に電子ビーム(加速電圧3kV)を照射することにより、分子間に融合反応が起き、ピーナッツの形状を持つ二量体が生成する。昨年度の研究では、水素ガス雰囲気下で電子ビームを照射したC_<60>薄膜の電界放出特性を調べ、照射後の薄膜の電界放出特性が向上することを見出した。この性質は、電子ビーム照射で誘起される融合反応により生成物のπ共役系が大きくなる結果、(1)Fermi準位付近の状態密度の増加と、(2)バンドギャップの減少が起きることが原因して考えられる。この仮定に従えば、照射後の薄膜の電気抵抗率が照射前に比べて減少することが予想される。そこで今年度は、電子ビーム照射C_<60>薄膜の電気抵抗率をin situで測定した。電流電圧計と接続した四つの電極をCsI基板に接触させ、この基板上にC_<60>薄膜を超高真空下(10^<-9> Torr)で作成した。この薄膜に電子ビームを照射し、照射の前後で電流-電圧特性及び抵抗率を測定した。抵抗率の測定は、van der Pauw法を用いた。一方、電子ビーム照射後のC_<60>薄膜の構造を調べるため、抵抗率測定と同時にFT-IRスペクトルを測定した。電子ビーム照射後のC_<60>薄膜のIRスペクトルから、照射時間とともに融合反応が進行していくことを確認した。薄膜の電気抵抗率は、予想どおり照射時間の増加にしたがって減少した。また、電流-電圧特性から、照射前に半導体であったC_<60>薄膜が、電子線照射後には金属に近い性質に変化することを見い出した。
KAKENHI-PROJECT-12750610
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新しい天然医薬素材を用いた分子探索による新化学療法剤の創出
1.洋生物ウミウシ由来物質:千葉県房総半島産ウミウシ(Dendrodoris carbunculosa)より、14種の新規化合物を含む16種のセスキテルペンを単離した。この中の数種はマウス白血病細胞P388に対する殺細胞活性を示した。2.天然医薬素材としての変形菌の開発:抗腫瘍活性成分探索のための新しい天然医薬素材の開発のため、変形菌(真性粘菌)を取り上げ、その人工培養に関する基礎研究を行った。野外採取した191種の菌株のうち、十数株で実験室培養が可能となり、そのうちの一菌株Didymium bahiense var.bahienseの大量培養に成功し、その抽出物からP388殺細胞活性ならびにトポイソメラーゼII阻害活性をもつ色素成分を単離した。3.熱帯植物成分:タイ、インドネシア、およびブラジル産熱帯植物(40種)の抽出物について、細胞増殖抑制活性に関するスクリーニングを行い、良好な活性を示す植物種13種を選別した。その中から、次のような植物成分の研究を行った。(1)キョウチクトウ科植物:タイ産の本科植物Adenium obesumの葉のメタノール抽出物より、hoghelinをはじめとする7種のステロイド配糖体ならびに4種のプレグナン類を単離した。4種のプレグナン類のうち、C16,17位に不飽和結合をもつ2つの化合物はP388細胞に対する殺細胞活性を示した。(2)数種のウルシ科植物:ブラジル産ウルシ科植物Anacardia giganteum(伯名カジュイ)の粗抽出物には、顕著なチロシンキナーゼ阻害活性が認められたので、活性画分の成分研究を行い、2種のフェノール型化合物を単離した。一方、インドネシア産ウルシ科植物Mangifera caesiaからは、P388殺細胞活性ならびにマウスリンパ球細胞増殖抑制活性物質として新規アルケニルサリチル酸を単離した。1.洋生物ウミウシ由来物質:千葉県房総半島産ウミウシ(Dendrodoris carbunculosa)より、14種の新規化合物を含む16種のセスキテルペンを単離した。この中の数種はマウス白血病細胞P388に対する殺細胞活性を示した。2.天然医薬素材としての変形菌の開発:抗腫瘍活性成分探索のための新しい天然医薬素材の開発のため、変形菌(真性粘菌)を取り上げ、その人工培養に関する基礎研究を行った。野外採取した191種の菌株のうち、十数株で実験室培養が可能となり、そのうちの一菌株Didymium bahiense var.bahienseの大量培養に成功し、その抽出物からP388殺細胞活性ならびにトポイソメラーゼII阻害活性をもつ色素成分を単離した。3.熱帯植物成分:タイ、インドネシア、およびブラジル産熱帯植物(40種)の抽出物について、細胞増殖抑制活性に関するスクリーニングを行い、良好な活性を示す植物種13種を選別した。その中から、次のような植物成分の研究を行った。(1)キョウチクトウ科植物:タイ産の本科植物Adenium obesumの葉のメタノール抽出物より、hoghelinをはじめとする7種のステロイド配糖体ならびに4種のプレグナン類を単離した。4種のプレグナン類のうち、C16,17位に不飽和結合をもつ2つの化合物はP388細胞に対する殺細胞活性を示した。(2)数種のウルシ科植物:ブラジル産ウルシ科植物Anacardia giganteum(伯名カジュイ)の粗抽出物には、顕著なチロシンキナーゼ阻害活性が認められたので、活性画分の成分研究を行い、2種のフェノール型化合物を単離した。一方、インドネシア産ウルシ科植物Mangifera caesiaからは、P388殺細胞活性ならびにマウスリンパ球細胞増殖抑制活性物質として新規アルケニルサリチル酸を単離した。
KAKENHI-PROJECT-12217024
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中小企業の事業承継に関する日仏共同研究を通じた事業承継リスクマネジメントの提案
研究課題開始前年に開催した「中小企業の事業承継日仏シンポジウム」に基づく『中小企業の事業承継日仏比較研究』を日仏両語で記述し平成24年に出版、平成25年に開催した日仏シンポジウム「新たなリスクと中小企業」と平成26年に開催した国際シンポジウム中小企業・老舗経営者の健康とリスクマネジメント」に基づく『新たなリスクと中小企業』を日仏両語で記述し平成28年に出版した。加えて、課題のテーマで、フランスのレフリー付きジャーナルに論文1本、英語のレフリー付きジャーナルに論文を4本、日仏経営学会誌に論文1本、フランスの研究者との共著で発表した。フランス語圏の学会で3回報告した。(1)『日仏経営学会誌』に「中小企業経営者を親に持つ学生」という視点での研究について、継続的なインタビュー調査を実施し、事業承継研究分野におけるフランスの代表的研究者と共著で『日仏経営学会誌』にフランス語による研究論文を発表した。(2)2013年9月13日午後に、主催アンスティチュ・フランセ関西/在日フランス大使館、共催関西大学社会安全学部、日本リスクマネジメント学会、後援関西大学経済・政治研究所、日仏公開討論会「新しいリスクと中小企業」(Les PME face aux nouveaux risques)を開催した。国際シンポジウムの実行委員長・日本側実行委員長・モデレーターを務めた。中小企業の事業承継問題も論点の一つとして大きく取り上げ、内外の研究者・実務家と議論を深めた。(3)2013年9月13日午前に、日本リスクマネジメント学会の創立35周年記念大会・第37回全国大会を実行委員長として企画した。中小企業の事業承継に関する研究発表を設定し、個人保証の問題を中心に討議した。(4)2013年6月28日に、日本リスクマネジメント学会関東部会(学会創立35周年記念公開シンポジウム)を兼ねる日本学術会議一部経営学委員会公開シンポジウムを日本学術会議講堂で開催し、実行委員長を務めた。テーマを「リスクマネジメント研究の35年」とし、リスクマネジメント研究の過去・現在・未来について討議した。主催:日本リスクマネジメント学会、後援:在日フランス大使館アンスティチュ・フランセ関西、日仏経営学会、ファミリービジネス学会による「中小企業・老舗企業経営者の健康とリスクマネジメント(LA SANTTE DU DIRIGEANTDES PMES ET SHINISES ET LE RISK MANAGEMENT)」を京都国際交流会館において2014年11月14日に開催し、研究代表者が責任者を務めた。フランス語圏国際中小企業学会(AIREPME)会長であるオリビエ・トレス(OLIVIER TORRES)教授を基調講演者として招へいした。このシンポジウムでは、中小企業の事業承継について、当事者の健康の観点から大きく取り上げた。上記2つについて、論文と本を作成している。上記2つの企画を実現したことは、中小企業の事業承継に関わるリスクとそのマネジメントについて日仏比較研究を行うという「研究の目的」に照らして、最大級に近い成果をあげたと考える。(1)出版について:2013年9月13日に開催した中小企業経営者と事業承継者にとってのリスクマネジメントに関する日仏公開討論会「新たなリスクと中小企業」の内容に基づく『新たなリスクと中小企業』(関西大学出版部,2016年3月31日)(第1部)を出版することができた。本書は、日本語とフランス語の両方で記述した書籍である。(2)出版について:2014年11月14日に開催した中小企業経営者と事業承継者にとって重要な心身の健康に関する日仏シンポジウム「中小企業・老舗企業経営者の健康とリスクマネジメント」の内容に基づく『新たなリスクと中小企業』(関西大学出版部,2016年3月31日)(第2部)を出版することができた。本書は、日本語とフランス語の両方で記述した書籍である。(3)調査について:2015年6月と7月に老舗企業後継者に集中的にインタビュー調査を行った。(4)日仏共同研究プロジェクトについて:2015年11月に中小企業経営者・事業承継者の健康について調査しているフランスAMAROKに所属するモンペリエ大学のフロランス・ギリアニ氏を招へいし、日本における中小企業経営者・事業承継者の健康リスクに関する調査の実現に向けて大きく前進した。(5)2015年4月から4年間の予定で、中小企業経営者・事業承継者の心身の健康についても研究対象とする関西大学経済・政治研究所「スポーツ・健康と地域社会」研究班を責任者としてたちあげて、研究活動を軌道に乗せることができた。(6)以上について、日本リスクマネジメント学会誌『危険と管理』に原稿を投稿した。(7)以上の研究活動が評価され、フランス上院より、「日本における事業承継税制の改革」についてフランス語でレポートをまとめる旨の依頼があった。責任を持ってこの依頼を遂行した。このレポートは現在、フランス上院のWEBサイトで見ることができる。(1)中小企業経営者と事業承継者にとってのリスクマネジメントに関連する日仏公開討論会「新たなリスクと中小企業」の内容に基づく書籍である『新たなリスクと中小企業』(関西大学出版部,2016年3月31日)(第1部)を出版することができた。本書は、日本語とフランス語の両方で記述した書籍である。(2)2014年11月14日に開催した中小企業経営者と事業承継者にとって重要な心身の健康に関する日仏シンポジウム「中小企業・老舗企業経営者の健康とリスクマネジメント」の内容に基づく『新たなリスクと中小企業』(関西大学出版部,2016年3月31日)(第2部)を出版することができた。
KAKENHI-PROJECT-24530436
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24530436
中小企業の事業承継に関する日仏共同研究を通じた事業承継リスクマネジメントの提案
本書は、日本語とフランス語の両方で記述した書籍である。(3)2015年6月と7月に老舗企業後継者に集中的にインタビュー調査を行った。(4)2015年11月に中小企業経営者・事業承継者の健つい康にて調査しているフランスAMAROKに所属するモンペリエ大学のフロランス・ギリアニ氏を招へいし、日本における中小企業経営者・事業承継者の健康リスクに関する調査の実現に向けて大きく前進した。(5)2015年4月から4年間の予定で、中小企業経営者・事業承継者の心身の健康についても研究対象とする関西大学経済・政治研究所「スポーツ・健康と地域社会」研究班を責任者としてたちあげて、研究活動を軌道に乗せることができた。(2)日仏共同研究プロジェクト:2016年4月に一月間、モンペリエ大学フロランス・ギリアニ氏を招へいし、日本における中小企業経営者・事業承継者の健康リスクに関する調査の実現に向けて大きく前進した。この調査計画は大妻女子大学と、あんしん財団の協力を得ることが決定した。(2)2016年4月に一月間、モンペリエ大学のフロランス・ギリアニ氏を招へいし日本における中小企業経営者・事業承継者の健康リスクに関する調査について指導を受けた。この調査計画について大妻女子大学と、あんしん財団の協力を得ることが決まった。第一に本課題研究の集大成として、京都のミネルヴァ書房から2017年7月に『決断力にみるリスクマネジメント』を刊行して成果を盛り込んだ。具体的には、第3章「事業承継とリスクマネジメント」(分量39ページ)と第4章「健康経営とリスクマネジメント」(分量39ページ)である。第3章「事業承継とリスクマネジメント」では3つの事例研究をまとめ上げた。本書のケース6として「大塚家具の経営権をめぐる一連の騒動と対立」(大塚家具の事例)、ケース7として「モンダヴィのフランス撤退と事業承継への影響」(ロバート・モンダヴィ・ワイナリーの事例)、ケース8として「日本の老舗企業における事業承継の事例」(堀金箔粉など)である。ケース6は、親子間の葛藤を事業承継のリスクと捉えて分析した。ケース7では、ファミリービジネスの事業承継の要諦をまとめた。ケース8では、老舗について事業承継に関わるリスクのマネジメントに成功した企業と位置付けて分析し、老舗の成功要因を分析した。第4章では1つの事例研究と1つの日仏共同研究について取り上げた。本書のケース9として「サンスターの健康道場を中心とした全社取り組み」、ケース10として「中小企業経営者のメンタルヘルス日仏の事例」である。それぞれ事業承継の不全、つまり事業承継リスクが先代経営者や後継経営者の心身の健康及ぼす影響という視点につながる研究である。第二に、事業承継が当該経営者の健康の及ぼす影響という視点を含む、中小企業経営者・個人事業主の健康に関する日仏共同調査を継続して実施し、その中間段階の成果を日本経営学会全国大会で報告すると共に、『商工金融』2017年10月号に論文として発表した。同時に、日仏共同調査に参画しているロッテルダム大学のロイ・チュリック教授を招いて東京2回、大阪3回、学術講演会を開催した。
KAKENHI-PROJECT-24530436
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24530436
植物の低温馴化過程における温度と青色光の認識機構
異なる光と低温条件下での低温馴化:青色光受容体フォトトロピン(PHOT)と低温馴化機構の関係についてシロイヌナズナPHOT欠損変異体(phot1phot2)と野生型(gl1)を用いて比較した。低温馴化の前後での植物体成長率(葉面積)と光合成活性を測定したところ、白色光で低温馴化した場合はPHOT欠損変異体で成長率が悪く、低温馴化期間における光合成活性低下度も大きかった。青色光では、逆に、PHOT欠損変異体で成長は良かったが光合成活性には差がみられなかった。従って、低温下におけるPHOTの機能は青以外の光が共存するか否かで異なることが示唆された。次に、白色光条件で7日間低温馴化した場合、細胞膜機能あるいは光合成機能で評価した凍結耐性にはPHOT欠損の影響は認められず、白色光下ではPHOTが与える凍結耐性への影響は少ないと言えた。光合成活性で評価した場合、青色光下で低温馴化した場合はPHOTの有無に関わらず白色光条件ほど凍結耐性が上がらず、さらにPHOT欠損変異体で凍結耐性が高い傾向が見られた。また、低温誘導遺伝子(CBFsやCOR15a)はPHOTの有無にかかわらず低温で誘導された。一方、青色光誘導遺伝子(HY5、CHS、CHI)もPHOTの有無にかかわらず低温馴化で発現誘導された。以上の結果から、低温馴化中にPHOTを介して受容される青色光情報は光合成を介して植物の成長に関与するが、凍結耐性機構にはクリプトクローム(CRY)を介した青色光情報より影響が弱いことが示唆された。タンパク質変動解析:低温馴化過程の温度や光質条件を変えた場合のプロテオーム解析およびデータ解析を継続している。今後、プロテオームの結果と遺伝子発現データなどを組み合わせ、温度と光質の認識機構を明らかにしていく。本研究は、植物の低温適応機構に大きな影響を与えている温度環境と光環境の相互関係を理解するため、さまざまな温度および光環境と光受容体構成の異なる植物体を組み合わせて低温・凍結応答性を解析する実験系を用いて研究を進めており、当初予想していたより面白い結果が得られており、集中した実験を進めている。本年度は赤色光受容体(フィトクローム)に加えて青色光受容体(フォトトロピン)欠損変異体を用いて白色光あるいは青色光下で低温処理する条件を用いて研究を行い、昨年度以前に得られたもう一つの青色光受容体(クリプトクロム)を用いて得られた結果と比較して考察を加えた。その結果、同じ波長域の青色光を受容する二つの受容体では低温処理中の応答や低温馴化に応答した凍結耐性変動などに違いがあることが明らかになった。低温および青色光に応答する遺伝子にも、これら二つの青色光受容体の有無による違いも見られ、今後、植物が低温下でどのように青色光受容体を使い分けているのかなどの興味深い研究が可能になってきた。また、自然界での低温馴化機構を考え、単色光ではなく混色光に中で特定の単色光割合を変えた際の光受容体の役割の解析を開始した。プロテオーム解析は、細胞膜だけではなく他の細胞内画分を含めた解析を特定の光受容の有無(光受容体欠損株を用いる)を考慮して解析する計画で進めている。現在までに、いくつかのサンプルの質量分析器によるデータ収集を終えたが、さらに繰り返し実験などでデータの信憑性を高めることが必要であり、さらには、共通機器である質量分析器の不具合やスケジュールの混雑などで、計画に比べて若干の遅れが見られている。今後、プロテオーム実験を継続し、当研究室に蓄積されている低温馴化に関わるプロテオーム・トランスクリプトームデータを組み合わせたさらに深化させた解析も計画している。2019年度も植物が温度と光情報を受容し、それらの情報をどのように統合させて、低温馴化機構に反映させているのかについて、さらに異なった温度と光条件のもとでそれぞれの光受容体の関与を解析する手法を用いて研究を進める。同時に、低温と光に応答したプロテオーム情報を得るため、いくつかのオルガネラに焦点を当てたプロテオーム解析やタンパク質のリン酸化に焦点を当てたプロテオーム解析を計画している。温度と光情報を受容した植物の応答を表現型から解析する項目については、野生型や光受容体欠損株と多様な光条件(白色光と単色光の混合を含む)で低温処理を行い、低温に応答した植物の成長特性(成長量や光合成活性で評価)や低温馴化の効率(凍結耐性で評価)を詳細に調べ、光質の違いによる低温馴化制御機構や自然界における低温馴化機構に対する光質の影響の理解を目指す。プロテオーム解析に関しては、2017年度から継続している細胞内オルガネラに関するプロテオーム解析を進め、低温と光の影響を詳細に解析するとともに、白色光下で低温馴化したサンプルとの比較から、光質の影響を取り出すことを試みる。さらに、低温馴化機構に対する質的なプロテオーム応答を解析する基盤的なデータを得るため、リン酸化プロテオミクス実験を始める。最初は、全タンパク質を対象とした実験を行い、時間があれば膜画分に限ったリン酸化プロテオミクスを行う。この実験は、低温や光の情報伝達を解析する際にも効果的に利用することが可能であり、本研究プロジェクトに限らず、今後の植物の低温応答および低温馴化機構へのタンパク質の関与を理解する上での貴重なデータベースとなり得るものと考えられる。異なる光と低温条件下での低温馴化:低温馴化制御における赤色光受容体フィトクロームB(PHYB)の役割を検討した.シロイヌナズナ野生型とphyB欠損株を低温馴化し、凍結融解試験を行った。
KAKENHI-PROJECT-17H03961
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H03961
植物の低温馴化過程における温度と青色光の認識機構
その結果、野外の気温が010Cになる11月19日26日に馴化した植物の凍結耐性が最も高かった。つまり、野外の植物はこの範囲の温度で低温馴化を始めていると考えられた。さらに、11月14日21日と19日26日に低温馴化した場合、日長の違いはほとんないにもかかわらず、野生型よりphyBの凍結耐性が低かった。次に、人工気象器内では、昼11C/夜2C条件では12時間より短い日長が凍結耐性上昇をもたらし、phyBは野生型に比べて凍結耐性が低かった。2C一定条件で、いずれの日長においても凍結耐性が上昇し、日長が短いほど凍結耐性が高い傾向があった。また、8時間日長の場合、野生型とphyBの凍結耐性はほぼ等しかった。これらのことから、植物は気温と日長の情報を統合して季節を判断しており、その統合にPHYBが関与していると示唆された。さらに、010C前後の温度帯で日長が12時間以下となる秋のような環境では、PHYBが凍結耐性の誘導に強く関与していると考えられた。さらに、青色光受容体クリプトクロームやフォトトロピンの関与についても実験を開始した。タンパク質変動解析:低温馴化過程の温度や光質条件を変えた場合の様々な細胞内画分におけるプロテオーム解析を始めた。低温馴化前後の野生型と光受容体欠損体を用いて定法に従って細胞分画・試料調整した後、nanoLC-MS/MSを用いてショットガン解析を実施した。現在、データ解析を実施中である。サンプル数が多いことと解析を多方面にわたって実施しているために時間を要している。今後、プロテオームの結果と遺伝子発現データなどを組み合わせ、温度と光質の認識機構を明らかにしていく。本研究は、当初計画していたことに関する解析の前に確認すべきことが生じたため、一部計画の変更が必要となったものの、新しく行った実験によって興味深い結果が得られたことから、総合的にはおおむね順調に進展していると判断した。植物の低温適応機構を理解するため、複数の環境因子(温度と光)の相互作用を理解したいということで開始し、低温情報の細胞内への伝達に重要な役割を果たす細胞膜に焦点を当てた研究を計画していたが、その前に、温度と光情報を受容した植物の応答を表現型から解析する必要があると認識し、平成29年度はその点に力を注いだ。その結果、赤色光受容体が温度と光の情報を統合するプロセスで重要な役割を果たすこと、さらに、その役割は植物が曝される温度帯や日長条件で可変すること、などが明らかになった。このことは、野外で秋から冬にかけて低温馴化する植物の環境応答機構を生理学的、および、分子生物学的に解析していく次年度以降に重要な指針を与えるものとなる。さらに、青色光受容体に関しても実験を進めている。まだ予備的な結果に過ぎないが、青色光受容体も低温の認識や細胞内への情報伝達系に対して複雑な影響を与えていることが示唆されており、次年度以降に解析をする予定である。当初計画されていた細胞膜プロテオーム解析は、細胞膜だけではなく他の細胞内画分を含めた解析を特定の光受容の有無(光受容体欠損株を用いる)を考慮して解析する計画で進めている。現在までに、いくつかのサンプルの質量分析器によるデータ収集を終え、オミクス解析手法を駆使して解析を進めている。
KAKENHI-PROJECT-17H03961
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H03961
摺動用ウッドセラミックス材料の開発とそのトライボロジー特性の評価
本研究の目的は、木質材料にフェノール樹脂を注入し無酸素雰囲気中で焼成して得られる新しい多孔質炭素材料「ウッドセラミックス」のトライボロジー特性を体系的に解明し、摺動部材としての応用の可能性を明らかにすることにある。平成7年度の研究では、ウッドセラミックスの摩擦係数及び比摩耗量は、炭化温度の増加とともに急激に減少すること、ウッドセラミックスの摩擦係数及び比摩耗量は、大気中無潤滑、基油含浸、水中の各条件下において低い良好な値を示すことなどを明らかにした。平成8年度の研究では、ウッドセラミックスを軸受材に用いることにより、完全無潤滑タイプの直動すべり軸受を構築することができること、同軸受は静摩擦係数と動摩擦係数の差が小さく摩擦音の抑制効果に優れることなどを明らかにした。平成9年度の研究では、ATF潤滑下において湿式クラッチを模擬したウッドセラミックスの摩擦試験を行い、接触圧力を現行のクラッチの3倍に増加させても焼き付きや激しい摩耗を生じず耐圧性に優れていること、ウッドセラミックスは、自動車の高圧下で使用される次世代湿式クラッチ材料として実用化の可能性を有していることなどを明らかにした。本研究の目的は,木質材料にフェノール樹脂を注入し無酸素雰囲気中で焼成して得られる新しい多孔質炭素材料「ウッドセラミックス」のトライボロジー特性を体系的に解明することにある.平成7年度の主な研究結果をまとめると,以下の様になる.(1)中質繊維板にフェノール樹脂を注入し,800°Cで炭化させたウッドセラミックスの摩擦係数は,大気中無潤滑,基油含浸,水中の各条件下において,0.10.15と極めて低い良好な値を示す.(2)中質繊維板にフェノール樹脂を注入し,800°Cで炭化させたウッドセラミックスの比摩耗量は,大気中無潤滑,基油含浸,水中の各条件下において,10^<-8>mm^2/N以下の極めて低い値を示す.(3)ウッドセラミックスのヤング率,降伏応力,ビッカース硬さは,炭化温度の増加に伴い増加し,800°C1500°Cで最大となり,さらに炭化温度を増加させると緩やかに減少する.(4)ウッドセラミックスの比摩耗量は,炭化温度の増加とともに急激に減少する.(5)ウッドセラミックスの摩擦係数は,炭化温度の増加とともに急激に減少し,800°C以上では一定となる.本研究の目的は、木質材料にフェノール樹脂を注入し無酸素雰囲気中で焼成して得られる新しい多孔質炭素材料「ウッドセラミックス」のトライボロジー特性を体系的に解明し、摺動部材としての応用の可能性を明らかにすることにある。平成7年度の研究では、ウッドセラミックスの摩擦係数及び比摩耗量は、炭化温度の増加とともに急激に減少すること、ウッドセラミックスの摩擦係数及び比摩耗量は、大気中無潤滑、基油含浸、水中の各条件下において低い良好な値を示すことなどを明らかにした。平成8年度の研究では、ウッドセラミックスを軸受材に用いることにより、完全無潤滑タイプの直動すべり軸受を構築することができること、同軸受は静摩擦係数と動摩擦係数の差が小さく摩擦音の抑制効果に優れることなどを明らかにした。平成9年度の研究では、ATF潤滑下において湿式クラッチを模擬したウッドセラミックスの摩擦試験を行い、接触圧力を現行のクラッチの3倍に増加させても焼き付きや激しい摩耗を生じず耐圧性に優れていること、ウッドセラミックスは、自動車の高圧下で使用される次世代湿式クラッチ材料として実用化の可能性を有していることなどを明らかにした。本研究の目的は,木質材料にフェノール樹脂を注入し無酸素雰囲気中で焼成して得られる新しい多孔質炭素材料「ウッドセラミックス」のトライボロジー特性を体系的に解明することにある.平成7年度の研究において,中質繊維板にフェノール樹脂を注入し,800°Cで炭化させたウッドセラミックスが低摩擦を示し,かつ耐摩耗性にも極めて優れることが明らかになった.この結果を踏まえ,平成8年度は,前述の条件で作成されたウッドセラミックスについて,軸受への応用のためのトライボロジー特性の評価試験を行った.得られた主な結果は以下の通りである.(1)ウッドセラミックス製軸受とステンレス鋼製軸の組み合わせにおいては,大気中無潤滑の条件下において,すべり出しの静摩擦係数は,動摩擦係数とほとんど同じ低い値(約0.15)を示し,極めてすべり出しの摩擦特性に優れることが示された.(2)ウッドセラミックスの比摩耗量は,大気中無潤滑の各件下において,10^<-8>mm^2/N以下の極めて低い値を示した.(3)ウッドセラミックスを軸受材に用いることにより,完全無潤滑タイプの直動型すべり軸受システムを構築することができた.本研究の目的は,木質材料にフェノール樹脂を注入し無酸素雰囲気中で焼成して得られる新しい多孔質炭素材料「ウッドセラミックス」のトライボロジー特性を体系的に解明し,摺動部材としての応用の可能性を明らかにすることにある.本年度は,自動車の湿式クラッチ材料としてのウッドセラミックスの適用の可能性を明らかにすることを目的として,ATF潤滑下において湿式クラッチを模擬したウッドセラミックスの摩擦試験を行った.実験に用いたウッドセラミックスは,無酸素雰囲気中で,400°C,600°C,800°Cで炭化焼成したものである.得られた結果は,以下の通りである.(1)いずれのウッドセラミックスも,0.7m/s7m/sの幅広いすべり速度において,摩擦係数が0.15程度の一定の値を示し,湿式クラッチ材に好適な摩擦係数を有している.
KAKENHI-PROJECT-07555370
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07555370
摺動用ウッドセラミックス材料の開発とそのトライボロジー特性の評価
(2)いずれのウッドセラミックスも,すべり距離90kmにおいても摩擦係数の低下がみられず,安定した摩擦特性を有している.(3)いずれのウッドセラミックスも,比摩耗量が10^<-10>mm^2/N以下の低い値を示し,極めて耐摩耗性に優れている.(4)いずれのウッドセラミックスも,接触圧力を現行のクラッチの3倍に相当する値(3MPa)に増加させても焼き付きや激しい摩耗を生じず,耐圧性に優れている.(5)ウッドセラミックスは,自動車の高圧下で使用される次世代湿式クラッチ材料として,実用化の可能性を有している.
KAKENHI-PROJECT-07555370
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07555370
超高速レーザー分光によるカーボンナノチューブ・蛋白質複合体の実時間ダイナミクス
そのままでは人体に対して有害なカーボンナノチューブ(CNT)をタンパク質で修飾できれば、生体内で薬を運ぶことができるナノマシン(ナノカプセル)としての応用が期待できる。しかし、CNTータンパク質間の結合の選択性や相互作用の詳細については、分子間力やクーロン相互作用などを基に議論があるが、未だ十分な理解が得られていないのが現状である。このような背景を踏まえて本研究では、CNTとタンパク質複合体の相互作用に着目し、フェムト秒パルスレーザーを光源とした時間分解コヒーレントフォノン分光法を用いて、CNTあるいはタンパク質を選択的に光励起した際の構造変化やエネルギー移動のダイナミクスを実時間領域で研究することが最終目的である。今年度は、CNTの選択的励起を効率的に行うための基盤知識を得る為、半金分離された試料を用いて、特に金属型および半導体型の電子構造の違いによるCNTのコヒーレントフォノン励起ダイナミクスを中心に調べた。金属型および半導体型の電子構造の違いによるCNTのコヒーレントフォノン励起ダイナミクスを調べる為、半金分離したSingle Walled CNT(SWCNT)溶液試料を産業技術総合研究所・ナノ炭素材料研究グループに作成して頂いた。実験では、SWCNT溶液をガラス基板上に配向膜として成長させ、フェムト秒レーザーを用いたコヒーレントフォノン分光法により、ラディアルブリージングモード(RBM)の励起パルス偏光依存性を調べた。その結果、SWCNT溶液とSWCNT配向膜では、偏光依存性が大きく異なること、および、その偏光依存性は励起波長にも依存することを明らかにした。24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度が最終年度であるため、記入しない。本研究では、CNTとタンパク質複合体の相互作用に着目し、フェムト秒パルスレーザーを光源とした時間分解コヒーレントフォノン分光法を用いて、CNTあるいはタンパク質を選択的に光励起した際の構造変化やエネルギー移動のダイナミクスを実時間領域で研究することを目的としている。今年度は、特にCNT-タンパク質複合体にアルコールを添加した際に起こるタンパク質の構造変化がCNTにもたらす影響を中心に調べた。また、フェムト秒再生増幅器を用いた高密度光励起により生じるCNTの構造変化がCNT-タンパク質複合体にもたらす影響についても予備的実験を行った。CNT-タンパク質複合体にアルコールを添加した際には、タンパク質の二次構造の一つであるα-ヘリックスが安定化あるいは不安定化すると考えられる。実験では、タンパク質としてリゾチーム(LSZ)を選択し、このアルコール添加の効果をラディアルブリージングモード(RBM)のコヒーレントフォノン分光により調べた。その結果、アルコールとしてヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)が添加された場合、2種のカイラリティをもつCNTのうち、(13.2)よりも(12.1)のカイラリティをもつCNTとリゾチームが選択的に結合していることを示す結果が得られた。この結果は、HFIP添加によるLSZ内のα-ヘリックス構造の安定化と、CNT-LSZ複合体におけるカイラリティ依存の相互作用が相関を持つことを示唆している。また、高密度光励起により生じるCNTの構造変化の実験については、緩和時間がおおよそ180fbの光励起キャリアの信号を検出することが出来た。そのままでは人体に対して有害なカーボンナノチューブ(CNT)をタンパク質で修飾できれば、生体内で薬を運ぶことができるナノマシン(ナノカプセル)としての応用が期待できる。しかし、CNTータンパク質間の結合の選択性や相互作用の詳細については、分子間力やクーロン相互作用などを基に議論があるが、未だ十分な理解が得られていないのが現状である。このような背景を踏まえて本研究では、CNTとタンパク質複合体の相互作用に着目し、フェムト秒パルスレーザーを光源とした時間分解コヒーレントフォノン分光法を用いて、CNTあるいはタンパク質を選択的に光励起した際の構造変化やエネルギー移動のダイナミクスを実時間領域で研究することが最終目的である。今年度は、CNTの選択的励起を効率的に行うための基盤知識を得る為、半金分離された試料を用いて、特に金属型および半導体型の電子構造の違いによるCNTのコヒーレントフォノン励起ダイナミクスを中心に調べた。金属型および半導体型の電子構造の違いによるCNTのコヒーレントフォノン励起ダイナミクスを調べる為、半金分離したSingle Walled CNT(SWCNT)溶液試料を産業技術総合研究所・ナノ炭素材料研究グループに作成して頂いた。実験では、SWCNT溶液をガラス基板上に配向膜として成長させ、フェムト秒レーザーを用いたコヒーレントフォノン分光法により、ラディアルブリージングモード(RBM)の励起パルス偏光依存性を調べた。その結果、SWCNT溶液とSWCNT配向膜では、偏光依存性が大きく異なること、および、その偏光依存性は励起波長にも依存することを明らかにした。24年度が最終年度であるため、記入しない。昨年度は、予定していた音響光学素子によるCavity-dumpedフェムト秒パルスレーザーへのアップグレードを変更し、再生増幅器を用いた非同舳光パラメトリック増幅器(NOPA)の製作に切り替えた。そのNOPAの立ち上げを行いつつ、アルコール添加により起こるタンパク質の構造変化のCNT-タンパク質複合体への影響をコヒーレントフォノン分光により調べ、CNTのカイラリティ選択性に関する知見を得ることが出来た。また、同時に再生増幅器の基本波を用いたポンプ-プローブ分光システムを立ち上げ、CNTの高密度光励起下における時間応答の計測も行った。以上のように、計画をより適切なものへと変えながら、同時進行で様々な実験を展開した。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-23104502
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-23104502
超高速レーザー分光によるカーボンナノチューブ・蛋白質複合体の実時間ダイナミクス
非同軸光パラメトリック増幅器(NoPA)の完成には、RegA9000の800nm光をさらに高強度にする必要がある。その為、RegA9000からNOPAまでの光路を見直し、エネルギーロスが無いように改善する。さらに、NOPA内のポンプ光(BBO結晶で変換した波長400nmの光)のBBO結晶への集光ミラーを現在の焦点距離25cmから15cmにし、ポンプ光の励起密度を改善する。以上の改善により、NOPAが発振すれば、予定通り広帯域のポンプ-プローブ分光測定を行うことが可能になる。
KAKENHI-PUBLICLY-23104502
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-23104502