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厳密なカイラル対称性をもつ格子理論による量子色力学の精密シミュレーション
本研究は、研究代表者らがこれまで推進してきた厳密なカイラル対称性をもつ格子理論による量子色力学(QCD)シミュレーションをさらに発展させ、低エネルギーQCDの"精密計算"の実現を目指すものである。低エネルギーQCDの諸問題からフレーバー物理に関連する物理量まで、1%レベルの精密な結果を与え、U(1)問題などの歴史的問題の解決と精密実験を通じた新物理探索につなげることを主要な課題とした。次々世代のQCD計算のさらなる精密化のために必要な専用計算機開発に向けたR&Dを並行して進めることも課題の一部であった。研究開始当初の1ヶ月で、国内および国外(台湾)の共同研究者と、課題と具体的な計画の整理を進めた。その後、研究代表者が別途申請中だった若手研究(S)が採択になったため、この研究課題は発展的に解消することとなり、廃止することとした。本研究は、研究代表者らがこれまで推進してきた厳密なカイラル対称性をもつ格子理論による量子色力学(QCD)シミュレーションをさらに発展させ、低エネルギーQCDの"精密計算"の実現を目指すものである。低エネルギーQCDの諸問題からフレーバー物理に関連する物理量まで、1%レベルの精密な結果を与え、U(1)問題などの歴史的問題の解決と精密実験を通じた新物理探索につなげることを主要な課題とした。次々世代のQCD計算のさらなる精密化のために必要な専用計算機開発に向けたR&Dを並行して進めることも課題の一部であった。研究開始当初の1ヶ月で、国内および国外(台湾)の共同研究者と、課題と具体的な計画の整理を進めた。その後、研究代表者が別途申請中だった若手研究(S)が採択になったため、この研究課題は発展的に解消することとなり、廃止することとした。
KAKENHI-PROJECT-21244039
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21244039
スマートテキスタイルの動的接触感評価
本研究では、素材と皮膚との接触による双方の変化に着目し、スマートテキスタイル(特にナノファイバーマテリアル,毛羽のある材料)の表面特性の評価をおこなった。接触感を分析するにあたり、表面特性の異なる素材を対象に以下の3つのアプローチ,すなわち布の「しっとり感」「なめらかさ」「ぬめり感」の分析(2)ナノファイバー集合体の摩擦特性と接触感(3)パイルによる皮膚刺激となめらかさ、を物性値の測定と官能検査をあわせて実施した。その結果、「しっとり感」では、手で触ったときに柔らかく、あたたかく感じる布に、より強い「しっとり感」があることがわかった。スマートテキスタイルの医療分野への応用を考えるため、シルクフィブロインとナイロン66をブレンドしたナノファイバーファブリックを作製し、表面特性を解析した。繊維を配向させ、繊維軸方向の摩擦係数、摩擦係数の平均偏差を測定したところ、ナイロンにシルクをブレンドすることで値はともに大きく減少した。またブレンドファブリックは、絹とほぼ同等の摩擦係数を示したことより、シルクライクな布が作製されたといえる。パイルの毛の長さを変えた試料に対する接触感では、毛が長くなるにつれてひとは弾力性を強く感じる。なめらかさは、毛が長い試料では毛が寝てくるため、違いはわかりにくい。球圧子を用いた圧縮試験の結果、圧縮エネルギーと弾力性の間に相関が見られた。またさらに毛先に加工を加えた試料についても同様の実験をおこなったところ、毛先の差よりも加工によりできた毛の束が触覚に与える影響が大きかった。以上のことから、「しっとり感」「ぬめり感」の分析と定量化、ナノファイバーマテリアルの表面特性解析を行い微妙な接触感覚の評価に用いる特性値の抽出と測定機器の構築を行うための基礎データを収集することができた。本研究では、素材と皮膚との接触による双方の変化に着目し、スマートテキスタイル(特にナノファイバーマテリアル,毛羽のある材料)の表面特性の評価をおこなった。接触感を分析するにあたり、表面特性の異なる素材を対象に以下の3つのアプローチ,すなわち布の「しっとり感」「なめらかさ」「ぬめり感」の分析(2)ナノファイバー集合体の摩擦特性と接触感(3)パイルによる皮膚刺激となめらかさ、を物性値の測定と官能検査をあわせて実施した。その結果、「しっとり感」では、手で触ったときに柔らかく、あたたかく感じる布に、より強い「しっとり感」があることがわかった。スマートテキスタイルの医療分野への応用を考えるため、シルクフィブロインとナイロン66をブレンドしたナノファイバーファブリックを作製し、表面特性を解析した。繊維を配向させ、繊維軸方向の摩擦係数、摩擦係数の平均偏差を測定したところ、ナイロンにシルクをブレンドすることで値はともに大きく減少した。またブレンドファブリックは、絹とほぼ同等の摩擦係数を示したことより、シルクライクな布が作製されたといえる。パイルの毛の長さを変えた試料に対する接触感では、毛が長くなるにつれてひとは弾力性を強く感じる。なめらかさは、毛が長い試料では毛が寝てくるため、違いはわかりにくい。球圧子を用いた圧縮試験の結果、圧縮エネルギーと弾力性の間に相関が見られた。またさらに毛先に加工を加えた試料についても同様の実験をおこなったところ、毛先の差よりも加工によりできた毛の束が触覚に与える影響が大きかった。以上のことから、「しっとり感」「ぬめり感」の分析と定量化、ナノファイバーマテリアルの表面特性解析を行い微妙な接触感覚の評価に用いる特性値の抽出と測定機器の構築を行うための基礎データを収集することができた。ひとの触感覚と試料のなめらかさやしっとり感の関係を調べるために、2つのシリーズの実験をおこなった。1)絹フィプロインタンパク質からエレクトロスピニング法により、ナノファイバーがランダムに配向した不織布を作製した。これらは繊維直径を約70nmから300nmの間で4段階にコントロールした試料である。KES-SE表面試験機で、ピアノ線を10本並べた摩擦子と試料間の平均摩擦係数、摩擦係数の平均偏差を測定した。その結果、繊維直径の増加とともに平均摩擦係数は0.4から0.8まで増加した。また平均摩擦係数の平均偏差の増加もみられた。これらの試料を、実際ひとが触れてなめらかさを評価した結果、この範囲の繊維直径の差はなめらかさの評価として感知するのはむずかしいことがわかった。しかし、しっとり感には、わずかな差が識別できた。摩擦係数の増加が一般の布と比較して大きいにも関わらず、ひとのなめらかさの評価に差がみられなかったことは、官能値と物性値間の関係をさらに詳細に調べる必要がある。またしっとり感には、皮膚と試料が接触した時の温度変化が関係している。2)同一のアクリル繊維を起毛した構造を持つ布の、パイル長を4mmから16mmの間で5段階に設定し、他の構造を同一にした試料をほほに当てたときの皮膚が感知する柔らかさやなめらかさの閾値を調べた。毛が長くなるにつれて弾力性を強く感じる。なめらかさは、毛が長い試料では毛が寝てくるため、なめらかさの違いはわかりにくい。球圧子を用いた圧縮試験をハンディー圧縮試験機でおこなった結果、圧縮エネルギーと弾力性の間に相関が見られた。またさらに毛先に加工を加えた試料についても同様の実験をおこなったところ、毛先の差よりも加工によりできた毛の束が触覚に与える影響が大きかった。「しっとり感」「ぬめり感」の分析と定量化、ナノファイバーマテリアルの表面特性解析を行い微妙な接触感覚の評価に用いる特性値の抽出と測定機器の構築を行うための基礎データを収集した。
KAKENHI-PROJECT-18500568
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18500568
スマートテキスタイルの動的接触感評価
マイクロファイバーの起毛布、繊維直径が1020μの絹織物、ポリエステル布を用いて「しっとり感」を手触り評価しKESシステムを使用した布の力学、表面、通気、熱移動特性データとの関係を調べた。その結果、手で触ったときに柔らかく、あたたかく感じる布に、より強い「しっとり感」があることがわかった。物性値では布表面からの最大熱流束q_<max>との相関がみられたが、布の水分率との関係は明確ではなかった。また官能検査の際に軽く指で押さえる方法をとったため、布の曲げやわらかさとの関係は明確ではなかった。アクリル糸の長さを変化させたパイル布を用いて、毛の流れとピアノ線の接触子間の摩擦抵抗を測定し、毛が流れながら皮膚に接触したときのなめらかさを定量化する装置試作にむけた検討を行った。U字型ピアノ線1本を用いた結果、定量化には流れの方向や、初期条件の設定に工夫が必要なことがわかり、今後さらにデータを蓄積する必要がある。スマートテキスタイルの医療分野への応用を考えるため、シルクフィブロインとナイロン66をブレンドしたナノファイバーファブリックを作製し、表面特性を解析した。繊維を配向させ、繊維軸方向の摩擦係数(MIU)、摩擦係数の平均偏差(MMD)を測定したところ、ナイロンにシルクをブレンドすることでMIU、MMDともに大きく減少した。またブレンドファブリックは、絹とほぼ同等の摩擦係数を示したことより、シルクライクな布が作製されたといえる。繊維が配向したナノファイバーファブリックよりも、繊維がランダムに集合している試料の方が、ひとが触れた時にはより「しっとり感」を感じる。すなわち、繊維間の微細な空隙が接触時の熱移動に影響しているのではないかと考えられる
KAKENHI-PROJECT-18500568
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18500568
「物語る絵」のナラトロジー分析
1.平成16年度は先ず、西洋における物語る絵画の歴史的変化、つまり中世ミニチュア挿絵やステンドグラスから、ルネサンス・近代の歴史画へと至る歴史的変化をリアリズムへの展開と、語りの様態の変化に注目して記述・分析することをめざした。そのために、物語絵画にかんする美術史の領域でこれまで蓄積された研究成果と、また絵画の物語を観者の視点から受容美学的に分析しようとする1980年代以降のWolfgang Kempらの研究成果、さらには「物語る絵」の現代版である映画理論にかんする文献を収集し批判的に検討した。また主として大英図書館に滞在し、集中的に挿絵を中心とする文献と図版の調査・収集にあたり、満足すべき成果を得た。また、すでに準備段階で相当数収集しているわが国の明治期以降の挿絵図版をさらに充実させるため、いくつかの主要大学図書館を中心に調査し、収集した。上述の研究成果として、今年度はリオデジャネイロでおこなわれた第16回国際美学会議で口頭発表("Is Visual Metaphor Possible?")をおこなった。また、それをふくめて、「研究発表」にあげた三つの論文を公刊した(既刊1編、予定2編)。2.平成17年度はつぎの課題である小説の挿絵のナラトロジー分析に着手した。そのために、今年度はフランスの国立図書館、ドイツのミュンヘンとベルリンの州立図書館を中心に調査し、十分の成果を得た。また、わが国の明治期以降の挿絵図版をさらに充実させるため、いくつかの主要大学図書館を中心に調査し、収集した。こうしてえられた資料にもとづき、西洋における15世紀以来の挿絵本を時代ごとに探索し、とくに近代の小説における語りの視点の変化とそれにつけられた挿絵における語りのモードの対応関係について分析した。またこの成果をふまえて、明治維新以来西洋近代小説を移入した日本の近代小説と、それにつけられた挿絵の変化をも、その対応関係を中心に分析することをめざした。上述の研究成果として、今年度は慶應大学でおこなわれた第56回美学会全国大会で口頭発表(「絵画における物語りの視点」)をおこなった。また、「研究発表」にあげた2つの論文を公刊した。1.平成16年度は先ず、西洋における物語る絵画の歴史的変化、つまり中世ミニチュア挿絵やステンドグラスから、ルネサンス・近代の歴史画へと至る歴史的変化をリアリズムへの展開と、語りの様態の変化に注目して記述・分析することをめざした。そのために、物語絵画にかんする美術史の領域でこれまで蓄積された研究成果と、また絵画の物語を観者の視点から受容美学的に分析しようとする1980年代以降のWolfgang Kempらの研究成果、さらには「物語る絵」の現代版である映画理論にかんする文献を収集し批判的に検討した。また主として大英図書館に滞在し、集中的に挿絵を中心とする文献と図版の調査・収集にあたり、満足すべき成果を得た。また、すでに準備段階で相当数収集しているわが国の明治期以降の挿絵図版をさらに充実させるため、いくつかの主要大学図書館を中心に調査し、収集した。上述の研究成果として、今年度はリオデジャネイロでおこなわれた第16回国際美学会議で口頭発表("Is Visual Metaphor Possible?")をおこなった。また、それをふくめて、「研究発表」にあげた三つの論文を公刊した(既刊1編、予定2編)。2.平成17年度はつぎの課題である小説の挿絵のナラトロジー分析に着手した。そのために、今年度はフランスの国立図書館、ドイツのミュンヘンとベルリンの州立図書館を中心に調査し、十分の成果を得た。また、わが国の明治期以降の挿絵図版をさらに充実させるため、いくつかの主要大学図書館を中心に調査し、収集した。こうしてえられた資料にもとづき、西洋における15世紀以来の挿絵本を時代ごとに探索し、とくに近代の小説における語りの視点の変化とそれにつけられた挿絵における語りのモードの対応関係について分析した。またこの成果をふまえて、明治維新以来西洋近代小説を移入した日本の近代小説と、それにつけられた挿絵の変化をも、その対応関係を中心に分析することをめざした。上述の研究成果として、今年度は慶應大学でおこなわれた第56回美学会全国大会で口頭発表(「絵画における物語りの視点」)をおこなった。また、「研究発表」にあげた2つの論文を公刊した。(1)平成16年度は、本研究計画の初年度にあたる。本年度は先ず、西洋における物語る絵画の歴史的変化、つまり中世ミニチュア挿絵やステンドグラスから、ルネサンス・近代の歴史画へと至る歴史的変化をリアリズムへの展開と、語りの様態の変化に注目して記述・分析することをめざした。そのために、物語絵画にかんする美術史の領域でこれまで蓄積された研究成果と、また絵画の物語を観者の視点から受容美学的に分析しようとする1980年代以降のWolfgang Kempらの研究成果、さらには「物語る絵」の現代版である映画理論にかんする文献を収集し批判的に検討した。(2)こうした物語絵画についての理論研究にもとづいて、つぎに小説の挿絵のナラトロジー的分析に着手するためには、なお多くはない挿絵にかんする諸文献と、これもほとんどは直接に挿絵が掲載された小説本や新聞・雑誌の挿絵図版の収集にも着手する必要がある。とくに西洋の活版印刷にはじまり近代小説へと至る挿絵図版については、今年度は主として大英図書館に滞在し、集中的に挿絵を中心とする文献と図版の調査・収集にあたり、満足すべき成果を得た。
KAKENHI-PROJECT-16520071
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16520071
「物語る絵」のナラトロジー分析
また、すでに準備段階で相当数収集しているわが国の明治期以降の挿絵図版をさらに充実させるため、いくつかの主要大学図書館を中心に調査し、収集した。またこうして収集された図版をデジタル化し、整理・保管する作業にあたった。(3)上述の研究成果として、今年度はリオデジャネイロでおこなわれた第16回国際美学会議で口頭発表("Is Visual Metaphor Possible?")をおこなった。また、それをふくめて、「研究発表」にあげた三つの論文を公刊した(既刊1編、予定2編)が、これらもすべて本研究の成果である。(1)平成17年度は、本研究計画の二年目(最終年度)にあたる。本年度は、前年度における、西洋における物語る絵画の歴史的変化、つまり中世ミニチュア挿絵やステンドグラスから、ルネサンス・近代の歴史画へと至る歴史的変化をリアリズムへの展開と、語りの様態の変化の記述・分析の成果をふまえ、つぎの課題である小説の挿絵のナラトロジー的分析に着手した。そのために、一方で西洋における15世紀以来の挿絵本を時代ごとに探索し、特に近代の小説における語りの視点の変化とそれにつけられた挿絵における語りのモードの対応関係について分析した。またこの成果をふまえて、明治維新以来西洋近代小説を移入した日本の近代小説と、それにつけられた挿絵の変化をも、その対応関係を中心に分析することをめざした。(2)小説の挿絵のナラトロジー的分析に着手するためには、なお多くはない挿絵にかんする諸文献と、これもほとんどは直接に挿絵が掲載された小説本や新聞・雑誌の挿絵図版の収集にも着手する必要がある。とくに西洋の活版印刷にはじまり近代小説へと至る挿絵図版については、前年度は主として大英図書館に滞在し、集中的に挿絵を中心とする文献と図版の調査・収集にあたったが、今年度はフランスの国立図書館、ドイツのミュンヘンとベルリンの州立図書館を中心に調査し、十分の成果を得た。また、わが国の明治期以降の挿絵図版をさらに充実させるため、いくつかの主要大学図書館を中心に調査し、収集した。またこうして収集された図版をデジタル化し、整理・保管する作業にあたった。(3)上述の研究成果として、今年度は慶應大学でおこなわれた第56回美学会全国大会で口頭発表(「絵画における物語りの視点」)をおこなった。また、「研究発表」にあげた2つの論文を公刊したが、これらもすべて本研究の成果である。
KAKENHI-PROJECT-16520071
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16520071
小型風洞中での大規模拡散現象の実験的解明
1.乱流発生装置によって、乱流強度や渦スケールが大きく幅広いスペクトル分布を有する高レイノルズ数乱流場(Re〓10^610^7)を形成し、3次元スペクトルや散逸スペクトルなどの統計的性質を詳しく調べた結果、(1)局所等方的な領域の大きさや平衡領域の存在条件や、(2)局所等方的とみなせる渦の最大スケールの準理論的な決定法、(3)乱流中に階層的に含まれる渦のスケールの推定法、(4)自己相似領域の推定法等を確立した。(5)これらの知見に基づき乱流拡散や物体まわりの流れなど乱流中における風洞実験に関して、良好な実験領域の設定などを的確に行なうことが可能になった。2.本乱流場が建物まわりの流れに及ぼす影響を調べた結果、(1)乱流中の最大渦スケールよりも建物が小さい場合、その背後にいわゆるビル風のような巻き込み現象が観察された。(2)上記の現象は乱流中の最大渦スケールと建物のスケールの比に依存する。(3)このことから風洞実験により建物等の環境影響調査を行う場合乱流強度が大気乱流と同程度であれば模型と渦のスケールを合わせることにより相似条件が満足されることが判った。3.本乱流場中において粒子拡散実験をレーザー計測と写真観測によって行った結果、(1)強い乱流場中ではスケールの大きな渦の作用によりプルームが大きく蛇行する。(2)本実験領域においてはプルーム幅は強い乱流場では時間に比例し弱い乱流場では時間の1/2乗に比例して拡大する。この結果はTaylorの拡散理論によってよく説明される。(3)強い乱流場中における拡散係数は130cm^2/secに達し、弱い乱流場中の3cm^2/secに比べ著しく大きくなった。この結果強い乱流場においては分子拡散の影響を無視し、乱流拡散の特性のみを抽出できることが判った。(4)強い乱流場中における拡散の様子は野外実験に基づく実験式とも良く一致し、大気乱流拡散の実験的シミュレーションが充分可能であることが判明した。1.乱流発生装置によって、乱流強度や渦スケールが大きく幅広いスペクトル分布を有する高レイノルズ数乱流場(Re〓10^610^7)を形成し、3次元スペクトルや散逸スペクトルなどの統計的性質を詳しく調べた結果、(1)局所等方的な領域の大きさや平衡領域の存在条件や、(2)局所等方的とみなせる渦の最大スケールの準理論的な決定法、(3)乱流中に階層的に含まれる渦のスケールの推定法、(4)自己相似領域の推定法等を確立した。(5)これらの知見に基づき乱流拡散や物体まわりの流れなど乱流中における風洞実験に関して、良好な実験領域の設定などを的確に行なうことが可能になった。2.本乱流場が建物まわりの流れに及ぼす影響を調べた結果、(1)乱流中の最大渦スケールよりも建物が小さい場合、その背後にいわゆるビル風のような巻き込み現象が観察された。(2)上記の現象は乱流中の最大渦スケールと建物のスケールの比に依存する。(3)このことから風洞実験により建物等の環境影響調査を行う場合乱流強度が大気乱流と同程度であれば模型と渦のスケールを合わせることにより相似条件が満足されることが判った。3.本乱流場中において粒子拡散実験をレーザー計測と写真観測によって行った結果、(1)強い乱流場中ではスケールの大きな渦の作用によりプルームが大きく蛇行する。(2)本実験領域においてはプルーム幅は強い乱流場では時間に比例し弱い乱流場では時間の1/2乗に比例して拡大する。この結果はTaylorの拡散理論によってよく説明される。(3)強い乱流場中における拡散係数は130cm^2/secに達し、弱い乱流場中の3cm^2/secに比べ著しく大きくなった。この結果強い乱流場においては分子拡散の影響を無視し、乱流拡散の特性のみを抽出できることが判った。(4)強い乱流場中における拡散の様子は野外実験に基づく実験式とも良く一致し、大気乱流拡散の実験的シミュレーションが充分可能であることが判明した。
KAKENHI-PROJECT-63550133
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63550133
AFMリソグラフィによる集積型超微小電極の作製とその分子修飾
本年度は下記の2つの研究項目について研究を行った。(1)選択無電解めっきによる金属微細構造の作製炭素数18個のアルキル基からなる単分子膜(octadecylsilyl,ODS,膜厚約2nm)をレジストに用いる単分子膜リソグラフィ技術による電極表面の微細構造化表面修飾について研究を行い、ODS膜上へ描画したパターンを、金属の微細構造へと転写するプロセスを開発した。本プロセスは、昨年度の研究によって開発されたプロセスを発展させたプロセスで、昨年度の研究では金の選択無電解めっきしかできなかったが、パラジウム触媒のマイクロパターンによって、金以外の金属マイクロパターンを無電解めっきによって作製することが可能になった。実際にニッケルの選択堆積を行った。(2)金微細構造電極の分子修飾単分子膜リソグラフィ選択無電解メッキによって作製した金微細構造を選択的に表面修飾する実験を行った。硫黄化合物有機分子を金表面だけに吸着させ、金表面に自己組織化単分子膜を形成できることを実証した。(3)半導体ナノ電極の作製ODS膜をレジストに、AFMリソグラフィ技術によってシリコンのナノ構造を作製した。SOI基板を微細加工することによって、絶縁体基板上に孤立したシリコンナノ構造を作製することに成功した。以上の研究結果により、単分子膜リソグラフィによってマイクロからナノメートルスケールの微細構造をもった電極を作製することができるようになった。本年度は下記の2つの研究項目について研究を行った。(1)選択無電解めっきによる金属微細構造の作製炭素数18個のアルキル基からなる単分子膜(octadecylsilyl,ODS,膜厚約2nm)をレジストに用いる単分子膜リソグラフィ技術による電極表面の微細構造化表面修飾について研究を行い、ODS膜上へ描画したパターンを、金属の微細構造へと転写するプロセスを開発した。本プロセスは、昨年度の研究によって開発されたプロセスを発展させたプロセスで、昨年度の研究では金の選択無電解めっきしかできなかったが、パラジウム触媒のマイクロパターンによって、金以外の金属マイクロパターンを無電解めっきによって作製することが可能になった。実際にニッケルの選択堆積を行った。(2)金微細構造電極の分子修飾単分子膜リソグラフィ選択無電解メッキによって作製した金微細構造を選択的に表面修飾する実験を行った。硫黄化合物有機分子を金表面だけに吸着させ、金表面に自己組織化単分子膜を形成できることを実証した。(3)半導体ナノ電極の作製ODS膜をレジストに、AFMリソグラフィ技術によってシリコンのナノ構造を作製した。SOI基板を微細加工することによって、絶縁体基板上に孤立したシリコンナノ構造を作製することに成功した。以上の研究結果により、単分子膜リソグラフィによってマイクロからナノメートルスケールの微細構造をもった電極を作製することができるようになった。
KAKENHI-PROJECT-11118234
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11118234
波動伝播を考慮したラチス構造物の減衰評価に関する実験的研究
本研究では、1、同一パターンの部材配置をもつラチス構造物を研究対象とし、連続体の波動伝播特性との違いを実験・解析の両面から調査すること、2、1の結果を利用してラチス構造物を連続体置換するときに導入する有効減衰の最適値について考察を行うこと、を主な目的としている。そのために、今年度は以下のような研究計画を遂行している。1.前年度に引き続き、ラチス構造試験体の波動実験を行う。2.前年度および今年度に行った実験の測定データを利用して、a.部材長のばらつきと減衰特性との関係、b.接合部における部材の接続状況と減衰特性との関係、c.卓越振動数と部材長との関係、d.卓越振動数と固有振動数との関係、について、理論的な考察を行う。3.試験体境界部の散逸減衰の評価方法を検討する。4.測定データを数値解析で追跡できるか検討し、またモデルパラメータの誤差による応答予測感度について調べる。5.前年度の結果と合わせ、ラチス構造物の減衰特性について定量的にまとめる。1.2.については、実験用テーブルを設計・製作し、実験の作業がスムーズ化された。また、実験に必要な測定機器を購入した。また、現在なお実験を遂行中であり、継続してデータ収録を行っている。3.については、実験用テーブルを製作することで周辺固定の境界条件とし、得られたデータから逆に境界条件を推測する方法について検討した。4.については、実験結果と数値解析結果との比較を行い、数値解析手法の有効性を検証した。5.については、今後さらに実験を継続して行い、十分な実験データを得た後に検討する予定である。本研究では、1、同一パターンの部材配置をもつラチス構造物を研究対象とし、連続体の波動伝播特性との違いを実験・解析の両面から調査すること、2、1の結果を利用してラチス構造物を連続体置換するときに導入する有効減衰の最適値について考察を行うこと、を主な目的としている。そのために、今年度は以下のような研究計画を遂行している。1.部材配置の異なる数種類のラチス平板およびラチスシェルの試験体を作成する。試験体は、実験の測定精度を考え、伝播速度が比較的遅いアクリル製(縦波の位相速度において、鉄:アクリル=4:1)とする。経費の大半は、実験用の試験体およびパソコン、実験結果の解析に必要なソフトウェアの購入に充てる。2.ラチス平板構造試験体の実験を行う。実験を、以下の点に注目して行う。a.部材長のばらつきと減衰特性との関係b.接合部における部材の接続状況(接続部材数や接続角度など)と減衰特性との関係c.卓越振動数と部材長との関係1については3種類のラチスシェル試験体を作成し、実験に必要なパソコンおよび適切と思われるデータ解析ソフトウェアを購入した。2については、現在実験を遂行中である。購入したデータ解析ソフトウェアを利用することにより、迅速なデータ処理が可能となった。今後、得られた測定データをもとに試験体境界部の散逸減衰の評価方法を検討する予定である。本研究では、1、同一パターンの部材配置をもつラチス構造物を研究対象とし、連続体の波動伝播特性との違いを実験・解析の両面から調査すること、2、1の結果を利用してラチス構造物を連続体置換するときに導入する有効減衰の最適値について考察を行うこと、を主な目的としている。そのために、今年度は以下のような研究計画を遂行している。1.前年度に引き続き、ラチス構造試験体の波動実験を行う。2.前年度および今年度に行った実験の測定データを利用して、a.部材長のばらつきと減衰特性との関係、b.接合部における部材の接続状況と減衰特性との関係、c.卓越振動数と部材長との関係、d.卓越振動数と固有振動数との関係、について、理論的な考察を行う。3.試験体境界部の散逸減衰の評価方法を検討する。4.測定データを数値解析で追跡できるか検討し、またモデルパラメータの誤差による応答予測感度について調べる。5.前年度の結果と合わせ、ラチス構造物の減衰特性について定量的にまとめる。1.2.については、実験用テーブルを設計・製作し、実験の作業がスムーズ化された。また、実験に必要な測定機器を購入した。また、現在なお実験を遂行中であり、継続してデータ収録を行っている。3.については、実験用テーブルを製作することで周辺固定の境界条件とし、得られたデータから逆に境界条件を推測する方法について検討した。4.については、実験結果と数値解析結果との比較を行い、数値解析手法の有効性を検証した。5.については、今後さらに実験を継続して行い、十分な実験データを得た後に検討する予定である。
KAKENHI-PROJECT-09750648
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09750648
光化学系I複合体を中心とした電子伝達メカニズムの構造基盤解明
本研究では、光化学系I(PSI)とその電子供与/受容蛋白質が電子伝達反応を行っている複合体状態のX線結晶構造解析を行い、PSIを中心とした電子伝達メカニズムの構造基盤を解き明かすことを目的とする。本年度の研究の成果は以下の二点である。1. PSI還元メカニズムの構造基盤解明:PSIを還元する蛋白質であるシトクロムc6(Cytc6)の大量発現系を構築した。ヘム鉄を組み込むシャペロンを発現する大腸菌CCM株を利用することで、効率よくCytc6にヘム鉄を配位させた。また、Cytc6を大腸菌のペリプラズム領域に輸送させるシグナル配列を付加することで、簡便に高純度で精製することが可能となった。2. PSI酸化メカニズムの構造基盤解明:前年度にT.elongatusを用いて4.2Å分解能でPSI-フェレドキシン(Fd)の構造を決定した。本年度は、構造から得られた複合体形成に重要なアミノ酸が、生化学的にも重要であるかを確かめた。具体的には、FdのPSIと相互作用するアミノ酸の変異体を13種類作製し、PSIとのアフィニティー実験を行った。その結果、多くの変異体でアフィニティーが変化しており、特にFdのヘリックス上にあるアミノ酸Y97、E93が複合体形成に重要であることが明らかとなった。さらにFd結合前後のPSI構造を比較することで、FdによるダイナミックなPSIの制御機構を解き明かした。Fdが結合することで、PsaC、PsaEのみならず、PSI還元蛋白質が結合するPsaFも構造変化しており、チラコイド膜を挟んだルーメン側とのクロストークを捉えることができた。また、Fd結合に誘導されてPSI三量体の各プロトマー間に位置するPsaKとPsaBが互いに近づいていた。このことから、PSI三量体間で光エネルギーを共有する二分子アンテナモデルを提唱した。PSI酸化メカニズムの解明についてはPSI-Fdの複合体構造をもとに得られた相互作用アミノ酸が重要であることを、生化学的な手法を用いて確認するという目標を達成できた。さらに、当初よりも構造比較計算が進展し、FdによるPSIの制御機構を解き明かすことにも成功した。還元メカニズムの解明については、T.elongatusのCytc6の大量発現系を構築し、PSIとの共結晶化スクリーニングにより59条件において結晶を得ることに成功した。PSIとCytc6の混合サンプルをSDS-PAGEにて分離すると、PSIのサブユニットであるPsaDとCytc6のバンドは殆ど同じ位置に検出される。そのため、得られた結晶中にCytc6が含まれているかを確認するためにはウエスタンブロットを行うことが必要となり、Cytc6の抗体を作製した。今後はこの抗体を利用して、結晶中にCytc6が含まれている結晶を選別する必要がある。以上のことを総合的に判断し、上記の評価とした。本年度の研究により、PSIとFdが複合体を形成する際に相互作用していると考えられるアミノ酸が生化学的にも重要であることが示された。今後の課題は、Fd結合に由来するPsaFの構造変化を詳細に解析し、PSI還元側とのクロストークに関する知見を得ることである。また、PSI還元メカニズムの解明に向けてPSIとCytc6の複合体結晶構造解析を行う。現在、1000条件以上の共結晶初期スクリーニングにおいて、59条件で結晶が得られ、そのうち6条件で単結晶が得られている。この中の1条件において結晶を回収し、ウエスタンブロットによりのCytc6の有無を確認したが、結晶中にCytc6は存在していなかった。今後は残りの結晶の中でCytc6が含まれている条件を探索する。共結晶が得られれば、X線回折実験により結晶の質を評価しながら結晶化条件の最適化を行う。また、同時に不凍剤の種類や浸透方法を慎重に検討する。その後、放射光X線(SPring-8のBL44XU)にて回折実験の最適化を行う。各結晶に最適なX線露光時間や一カ所あたり何枚の回折強度データがとれるかなど予備実験により決定する。また、モザイク性が高い場合は振動角度やディテクター距離を検討する。結晶とディテクター間のヘリウムパス設置によるバックグラウンドの低減や液体ヘリウムを用いた結晶凍結によるX線照射ダメージの軽減も試みる。このようにして最適化された条件で最高の回折データを収集する。得られた回折強度データをもとに、Jordanらが決定した2.5Å分解能のシアノバクテリアT. elongatusのPS1構造、Bialekらが決定した1.2Å分解能のCytc6構造を初期モデルに用いた分子置換法によって位相決定を試み全体構造を決定する。光化学系I(PSI)は、光エネルギーをもとに光電変換反応を行う蛋白質複合体である。光合成生物の生体内に於いて、チラコイド膜の内側にPSIへ電子を供給する系(PSI還元系)、外側にPSIから電子を受容する系(PSI酸化系)が存在している。そして、これらの「PSI酸化還元系」と光電変換反応系を有機的に連結させることで、効率よく光エネルギーを化学エネルギーに固定している。本研究では、PSIと電子供与/受容蛋白質が電子授受反応を行っている複合体状態の構造を解析し、PSIを中心とした電子伝達メカニズムを解明することを目的としている。1、PSI還元メカニズムの構造基盤
KAKENHI-PROJECT-13J03550
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光化学系I複合体を中心とした電子伝達メカニズムの構造基盤解明
解明: PSIを還元する蛋白質であるプラストシアニンを大腸菌で発現する系を構築した。また、ラン藻Synechocrystisから均質なPSIを得るためにPsaF-His1/ΔPsaK2株を作製した。2、PSI酸化メカニズムの構造基盤解明:好熱性ラン藻T. elongatusを用いて、PSIとPSIを酸化する蛋白質であるフェレドキシン(Fd)が形成する電子伝達複合体について、X線結晶構造解析法とNMR分光法にて相補的に解析した。PSI-Fd複合体結晶構造は4.2Å分解能で決定することに成功した。その結果、FdはPsaC、PsaE、PsaDが形成するポケットに結合しており、Fdの[2Fe-2S]クラスターがPSIのF_Bから8Åの距離に位置すること、またFdとの分子間相互作用にはPsaA、PsaC、PsaE上のアミノ酸が関与していることを確認した。さらに、溶液状態でのPSI-Fdの相互作用を^<15>N-Fdを用いた(^<15>N, ^1H)HSQC化学シフト摂動法により解析し、Fd上の相互作用アミノ酸を同定した。これら二つの手法で得られた結果は互いによく一致しており、X線結晶構造解析の結果は溶液中の複合体形成を反映していると結論づけた。本研究では、光化学系I(PSI)とその電子供与/受容蛋白質が電子伝達反応を行っている複合体状態のX線結晶構造解析を行い、PSIを中心とした電子伝達メカニズムの構造基盤を解き明かすことを目的とする。本年度の研究の成果は以下の二点である。1. PSI還元メカニズムの構造基盤解明:PSIを還元する蛋白質であるシトクロムc6(Cytc6)の大量発現系を構築した。ヘム鉄を組み込むシャペロンを発現する大腸菌CCM株を利用することで、効率よくCytc6にヘム鉄を配位させた。また、Cytc6を大腸菌のペリプラズム領域に輸送させるシグナル配列を付加することで、簡便に高純度で精製することが可能となった。2. PSI酸化メカニズムの構造基盤解明:前年度にT.elongatusを用いて4.2Å分解能でPSI-フェレドキシン(Fd)の構造を決定した。本年度は、構造から得られた複合体形成に重要なアミノ酸が、生化学的にも重要であるかを確かめた。具体的には、FdのPSIと相互作用するアミノ酸の変異体を13種類作製し、PSIとのアフィニティー実験を行った。その結果、多くの変異体でアフィニティーが変化しており、特にFdのヘリックス上にあるアミノ酸Y97、E93が複合体形成に重要であることが明らかとなった。さらにFd結合前後のPSI構造を比較することで、FdによるダイナミックなPSIの制御機構を解き明かした。Fdが結合することで、PsaC、PsaEのみならず、PSI還元蛋白質が結合するPsaFも構造変化しており、チラコイド膜を挟んだルーメン側とのクロストークを捉えることができた。また、Fd結合に誘導されてPSI三量体の各プロトマー間に位置するPsaKとPsaBが互いに近づいていた。このことから、PSI三量体間で光エネルギーを共有する二分子アンテナモデルを提唱した。PSI酸化メカニズムの解明についてはPSI-Fdの複合体構造をもとに得られた相互作用アミノ酸が重要であることを、生化学的な手法を用いて確認するという目標を達成できた。
KAKENHI-PROJECT-13J03550
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ダイズの脂肪酸組成の改良に関する研究
大豆の種子中の脂肪酸は、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノ-ル酸、リノレン酸の5種類からなっている。なかでも、オレイン酸とリノ-ル酸の含量は多く、およそ70%を占め、リノレン酸は必須脂肪酸であるが不飽和度が高く、脂肪の変敗の大きな原因となり、できるだけ含量の低い品種が望まれている。したがって、大豆品種BayにX線の21.4kRを照射して、リノレン酸に関しての突然変異の誘発をこころみた。M_2世代の3.000個体の脂肪酸組成について、各脂肪酸含量の広がりは親品種Bayに比べて大きく、放射線照射による脂肪酸含量の変異の拡大が認められた。リノレン酸含量の変異について、親品種Bayのリノレン酸含量の広がりが6.8%から9.0%までの範囲にあるのに対し、照射集団では、4.4%から15.0%までの低含量から高含量までの広い変異幅の拡大が認められた。特に、リノレン酸がBay品種の平均値の8.1%に比較して、4.4%と極めて含量の低い突然変異体M923が得られた。このM923の他の脂肪酸組成については、リノ-ル酸含量の減少が認められた。一般に、リノレン酸含量は、開花期から成熟期までの気温に大きく影響される。高温での種子の成熟はリノレン酸含量の減少を、低温での成熟はリノレン酸含量を増加させる。M_3世代について、M923が低リノレン酸含量の突然変異体であることを確認する実験を行った。M923と親品種Bayを異にした環境におき、脂肪酸組成を比較したところ、両者のリノレン酸含量の差は常に明瞭で、M923は低リノレン酸含量の突然変異体であると認めた。ダイズの脂質は,パルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸,リノール酸リノレイン酸の各脂肪酸から構成され,なかでもリノレイン酸は3.5%から12.5%までの品種による多様な変異が認められている.本研究はこのリノレイン酸含量の遺伝様式を知る目的で,含量を異にするダイズ10品種間の正逆交雑によるF_1種子についてダイアレル分析を行なった.リノレイン酸の生成量は,リノレイン酸とリノール酸含量の比によって示すが,最も高い品種の石原大豆の17.6%,最も低い品種の青地の13.1%までの変異幅であった.リノレイン酸含量の分散分析の結果,一般組合せ能力(a)のみが1%水準で有意となり遺伝子の相加的効果が認められ,他の特定組合せでの効果(b),正逆交雑による一般組合せ(c)と特定組合せ(d)はいずれも有意とは認められなかった.正逆交雑の平均値から各系統の分散(Vr)および各系列内の個々の値と非共通親との共分散(Wr)を求め, Wr-Vrの均一性を検定したところ, Wr-Vrの系列間の有意差はなく,非対立遺伝子間相互作用が認められない.すなわち,相加,優性モデルが適合するとして各遺伝パラメーターを推定した.リノレイン酸含量の優性の方向は2(F_1平均-親平均)=-0.940となり,リノレイン酸含量の低い方向に優性を示すとともに,平均的優性度√<H_1/D>=0.586で不完全優性であると判断される.リノレイン酸含量を支配する優性・劣性遺伝子の総数はゼロを示すことから,各遺伝子はほぼ均一に分布する.また,その有効因子数はHaymanの方法から0.7, Naiの方法から3.5となり, 14個が関与するものと推定された.遺伝率は広義では41%,狭義では31%と低かった.青地,オリヒメ,春日在来での遺伝子作用は,不完全優性で,相加的であり,リノレイン酸含量を低下させる.大豆の種子中の脂肪酸は、パルミテン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸の5種類からなっている。なかでもオレイン酸とリノール酸は含量も多く、おおよそ80%を占め、リノレン酸は必須脂肪酸であるが不飽和度が高く、脂質の変敗の大きな原因となり、できるだけ含量の低い品種が望まれている。したがって、大豆品種BayにX線の25KRを照射して、リノレン酸含量に関しての突然変異の誘発をこころみた。M_2世代の2006個体の脂肪酸組成について、各脂肪酸含量の広がりは親品種Bayに比べて大きく、放射線照射による脂肪酸含量の変異の拡大が認められた。リノレン酸含量の変異について、親品種Bayのリノレン酸含量の広がりが8.4%から10.8%までであるのにたいし、照射集団では7.0%から18.4%までの低含量から高含量まで広い変異幅の拡大が認められた。特に18.4%と高リノレン酸含量となった変異体B739はBay品種の9.4%に比べて略2倍の高含量であり、他の脂肪酸組成について、パルミチン酸とオレイン酸含量の減少が認められた。一般にリノレン酸含量は、開花期から成熟期までの気温に大きく影響される。高温での成熟はリノレン酸含量の減小を、低温での成熟はリノレン酸含量を増加させる。M_3世代について、B739が高いリノレン酸含量の突然変異体であることを確認する実験を行った。
KAKENHI-PROJECT-62560008
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62560008
ダイズの脂肪酸組成の改良に関する研究
B739と親品種を開花期を異にした環境におき両者の脂肪酸含量を比較したところ、両者の含量の差は常に明瞭であり、B739は高リノレン酸含量の突然変異体であると認めた。大豆の種子中の脂肪酸は、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノ-ル酸、リノレン酸の5種類からなっている。なかでも、オレイン酸とリノ-ル酸の含量は多く、およそ70%を占め、リノレン酸は必須脂肪酸であるが不飽和度が高く、脂肪の変敗の大きな原因となり、できるだけ含量の低い品種が望まれている。したがって、大豆品種BayにX線の21.4kRを照射して、リノレン酸に関しての突然変異の誘発をこころみた。M_2世代の3.000個体の脂肪酸組成について、各脂肪酸含量の広がりは親品種Bayに比べて大きく、放射線照射による脂肪酸含量の変異の拡大が認められた。リノレン酸含量の変異について、親品種Bayのリノレン酸含量の広がりが6.8%から9.0%までの範囲にあるのに対し、照射集団では、4.4%から15.0%までの低含量から高含量までの広い変異幅の拡大が認められた。特に、リノレン酸がBay品種の平均値の8.1%に比較して、4.4%と極めて含量の低い突然変異体M923が得られた。このM923の他の脂肪酸組成については、リノ-ル酸含量の減少が認められた。一般に、リノレン酸含量は、開花期から成熟期までの気温に大きく影響される。高温での種子の成熟はリノレン酸含量の減少を、低温での成熟はリノレン酸含量を増加させる。M_3世代について、M923が低リノレン酸含量の突然変異体であることを確認する実験を行った。M923と親品種Bayを異にした環境におき、脂肪酸組成を比較したところ、両者のリノレン酸含量の差は常に明瞭で、M923は低リノレン酸含量の突然変異体であると認めた。
KAKENHI-PROJECT-62560008
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重症心身障害児療育史研究-重症児キャンペーンとおばこ天使-
本研究は、重症児療育史研究の一環として、重症児問題の社会的受容に重要な役割を演じていた新聞・テレビ等のマスコミ報道、いわゆる重症児キャンペーンの実態を分析・考察することを目的とした。「おばこ天使」とは昭和40年代に秋田県内の女性が東京や大阪の重症児施設へ看護助手等として集団就職していった際に秋田魁新報により女性らに名付けられた名称である。この出来事は新聞各紙に大きく報道され、重症児へ愛の手をさしのべた秋田おばこの人間愛、美談として全国民からたたえられた。しかし、こうした報道は重症児療育における過酷な労働実態を美談として覆い隠す役割も果たしていたと言える。本研究は、重症児療育史研究の一環として、重症児問題の社会的受容に重要な役割を演じていた新聞・テレビ等のマスコミ報道、いわゆる重症児キャンペーンの実態を分析・考察することを目的とした。「おばこ天使」とは昭和40年代に秋田県内の女性が東京や大阪の重症児施設へ看護助手等として集団就職していった際に秋田魁新報により女性らに名付けられた名称である。この出来事は新聞各紙に大きく報道され、重症児へ愛の手をさしのべた秋田おばこの人間愛、美談として全国民からたたえられた。しかし、こうした報道は重症児療育における過酷な労働実態を美談として覆い隠す役割も果たしていたと言える。本研究は重症心身障害児の処遇問題がどのような経緯で歴史的に登場し、また社会福祉、障害児教育の各分野でどのような特質を持ちながら展開されてきたのか、重症児療育史の全体像を解明しようとする一連の研究作業の一環として取り組んだものである。本年度は昭和30年代のマスコミによる重症児キャンペーンについて、秋田県立図書館においてマイクロフィルム化された「秋田魁新報」紙の見出し検索を行い、関係資料を閲覧・収集した。その結果、秋田県内における「おばこ」報道の概要を把握できた。きっかけは同紙夕刊に掲載された島田療育園の看護婦不足によって入所できない重症児が多数いるとの記事であった。その後の反響は大きく、同紙は続報を続けていた。このため重症児問題は県民の大きな関心事となり、人手不足解消に向けた呼びかけに応えて、数十人の女性が応募し、それをたたえ、紹介する報道が続いた。こうして島田療育園の人手不足という形で報道された重症児処遇問題は社会的関心を呼び,この女性たちは「おばこ」天使と呼ばれるようになった。この名称をつけたのは最初の記事を執筆した渡部誠一郎氏(元秋田魁新報編集局長・秋田市立美術館長)であることも判明した。本研究は重症児の施設療育の初期において、その人手不足を補うために行われた小林提樹らによる重症児キャンペーンの実態及び小林らの尽力により実現した秋田からの看護助手、いわゆる"おばこ天使"の実態を新聞報道及び現地調査により明らかにすることを目的とした。昭和30年代後半に整備されはじめた重症児施設ではその介護にあたる職員の確保が緊急の課題となっていた。介護職員を確保できないため、入所児を制限せざるを得ない事態も生まれていた。そこで小林提樹は都内マスコミ各社にその実情を訴えることし、啓発パンフレットの作成や施設見学会を行って報道してもらうこととした。当時、新聞による重症児関連記事の連載やテレビ番組などが作られている。評論家の秋山智恵子らはこの時期に小林に誘われ島田療育園を見学している。秋田県からの入所希望に対し、看護助手を確保すれば入所可能と伝えたところ、秋田県児童相談所では秋田魁新報を通じて秋田県内からの施設職員の希望を募った。すると県内女性から多数の応募があり、小林らによる面接選考を経て、昭和40年3月末に第1期"おばこ天使"が東京へ旅立った。"おばこ天使"の名称は当時秋田魁新報社の記者によって命名されたものである。その後も毎年秋田から島田療育園、秋津療育園に"おばこ天使"が就職していった。昭和50年まで継続し、総人数は約80名となった。まだ詳細は把握できていないが長野、新潟からも看護助手として多くの女性が就職している。このように初期重症児療育における介護問題ではマスコミの重症児キヤンペーンは過酷な施設労働の実態を覆い隠し、女性看護助手を天使として美化する役割を果たしていたと言える
KAKENHI-PROJECT-19530488
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強磁場内での真核生物のアポトーシス
ミドリムシの磁場配向現象および磁場によるアポトーシス誘導について解明するために以下の研究を行った。(1)磁場内における細胞の運動性およびcell cycle変化の解析------ミドリムシおよびゼニゴケ培養細胞をアフィデコリン等の同調剤を使って同調の後8Tの磁場内にいれ,その運動性,特に走光性および走化性に対する磁場効果を調べた。(2)磁場内における培養細胞のアポトーシスの解析-----植物培養細胞にあらかじめ低分子のストレス化合物を投与した後,磁場中にいれ,低磁場(0.5T)から強磁場(8T)まで段階的に磁場強度を変え,アポトーシスが磁場をかけない場合に対して有為に誘起されているかどうかを調べた。(3)アポトーシス生起の初期過程と細胞内情報伝達過程の解明-----ミドリムシおよびそのミュータントの白色ミドリムシを対象にして,磁場によって過酸化水素等の活性酸素種の発現量を比較した。(4)磁場中で発現する遺伝子の解明-----強磁場に曝した培養細胞から継時的にmRNAを単離し,強磁場に曝すことにより特異的に発現した遺伝子を検索した。しかしながら,mRNAレベルでの明らかな相違はみられなかった。これらの結果より,ミドリムシの磁場配向現象は葉緑体中のポルプィリン類が反磁性を持つことに関連することが明らかとなった。また,磁場によるアポトーシスの発現は少なくとも8T以下の磁場内では見られないことがわかった。1.磁場内における細胞の運動性およびcell cycle変化の解析......ミドリムシおよびゼニゴケ培養細胞をアフィデコリン等の同調剤を使って同調の後8Tの磁場内にいれ,その運動性,特に走光性および走化性に対する磁場効果を調べた。2.磁場内における培養細胞のアポトーシスの解析.....植物培養細胞にあらかじめ低分子のストレス化合物を投与した後,磁場中にいれ,低磁場(0.5T)から強磁場(8T)まで段階的に磁場強度を変え,アポトーシス磁場をかけない場合に対して有為に誘起されているかどうかし調べた。アポトーシス生起の初期過程と細胞内情報伝達過程の解明.....ストレス化合物を投与した後,磁場によって過酸化水素等の活性酸素種の濃度がどのように変化するかを測定した。4.磁場中で発現する遺伝子の解明.....強磁場に曝した培養細胞から継時的にmRNAを単離し,強磁場に曝すことにより特異的に発現した遺伝子を探索した。ミドリムシの磁場配向現象および磁場によるアポトーシス誘導について解明するために以下の研究を行った。(1)磁場内における細胞の運動性およびcell cycle変化の解析------ミドリムシおよびゼニゴケ培養細胞をアフィデコリン等の同調剤を使って同調の後8Tの磁場内にいれ,その運動性,特に走光性および走化性に対する磁場効果を調べた。(2)磁場内における培養細胞のアポトーシスの解析-----植物培養細胞にあらかじめ低分子のストレス化合物を投与した後,磁場中にいれ,低磁場(0.5T)から強磁場(8T)まで段階的に磁場強度を変え,アポトーシスが磁場をかけない場合に対して有為に誘起されているかどうかを調べた。(3)アポトーシス生起の初期過程と細胞内情報伝達過程の解明-----ミドリムシおよびそのミュータントの白色ミドリムシを対象にして,磁場によって過酸化水素等の活性酸素種の発現量を比較した。(4)磁場中で発現する遺伝子の解明-----強磁場に曝した培養細胞から継時的にmRNAを単離し,強磁場に曝すことにより特異的に発現した遺伝子を検索した。しかしながら,mRNAレベルでの明らかな相違はみられなかった。これらの結果より,ミドリムシの磁場配向現象は葉緑体中のポルプィリン類が反磁性を持つことに関連することが明らかとなった。また,磁場によるアポトーシスの発現は少なくとも8T以下の磁場内では見られないことがわかった。
KAKENHI-PROJECT-09878137
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09878137
開口放出の分子機構に関する研究
一酸化窒素は、膵島β細胞でのATP産生を抑制することによってK_<ATP>チャネルの閉鎖を抑制して脱分極を阻害し、細胞内Ca^<2+>変動を抑制してインスリンの開口放出を抑制することが示唆された。光増感物質のSALPcをラット腹腔内肥満細胞に負荷して、光を照射するとcompound48/80刺激による開口放出が抑制されることが認められた。光増感作用で産生された一重項酸素が開口放出機序の[Ca^<2+>]_i上昇以降の過程を阻害していると示唆された。ラットの膵島B細胞では、高濃度ぶどう糖刺激によるインスリンの開口放出に、Na^+/Ca^<2+>交換輸送体が関わっていることが示唆された。モルモット涙腺の腺房細胞と筋上皮細胞は異なるアゴニストに反応する異なる細胞内情報伝達系を持っていることが示唆された。ラット副腎髄質細胞では、髄質細胞の発達と分布神経の発達がコリン作動性分泌機序の発達に連動しており、ニコチン作動性機序がムスカリン作動性機序に先行していると示唆された。ラットの膵外分泌腺からのカルバコール刺激による消化酵素の開口放出は、活性酸素による酸化ストレスで阻害されるが、この時細胞内のCa^<2+>濃度変動も阻害されていることが明らかとなった。ニコチン刺激による牛の副腎髄質からのカテコールアミンのP物質による開口放出抑制は、ニコチン様受容体のNa^+チャネルを非競合的に抑制することによると示唆された。ラット大脳皮質の神経細胞死に、細胞内Ca^<2+>ホメオスタシスの破綻が一部関係していることが強く示唆された。マウスの小腸陰窩上皮では、G蚕白質の活性化およびATPが細胞内のCa^<2+>濃度を上昇させるることが明らかとなった。以上の結果、開口放出に細胞内のCa^<2+>濃度の変動が重要な役割を果たしていることが確認された。それのみならず、酸化ストレスによる開口放出傷害や、グルタミン酸による神経細胞死に、Ca^<2+>ホメオスタシスの破綻が強く関与していることが示唆された。一酸化窒素は、膵島β細胞でのATP産生を抑制することによってK_<ATP>チャネルの閉鎖を抑制して脱分極を阻害し、細胞内Ca^<2+>変動を抑制してインスリンの開口放出を抑制することが示唆された。光増感物質のSALPcをラット腹腔内肥満細胞に負荷して、光を照射するとcompound48/80刺激による開口放出が抑制されることが認められた。光増感作用で産生された一重項酸素が開口放出機序の[Ca^<2+>]_i上昇以降の過程を阻害していると示唆された。ラットの膵島B細胞では、高濃度ぶどう糖刺激によるインスリンの開口放出に、Na^+/Ca^<2+>交換輸送体が関わっていることが示唆された。モルモット涙腺の腺房細胞と筋上皮細胞は異なるアゴニストに反応する異なる細胞内情報伝達系を持っていることが示唆された。ラット副腎髄質細胞では、髄質細胞の発達と分布神経の発達がコリン作動性分泌機序の発達に連動しており、ニコチン作動性機序がムスカリン作動性機序に先行していると示唆された。ラットの膵外分泌腺からのカルバコール刺激による消化酵素の開口放出は、活性酸素による酸化ストレスで阻害されるが、この時細胞内のCa^<2+>濃度変動も阻害されていることが明らかとなった。ニコチン刺激による牛の副腎髄質からのカテコールアミンのP物質による開口放出抑制は、ニコチン様受容体のNa^+チャネルを非競合的に抑制することによると示唆された。ラット大脳皮質の神経細胞死に、細胞内Ca^<2+>ホメオスタシスの破綻が一部関係していることが強く示唆された。マウスの小腸陰窩上皮では、G蚕白質の活性化およびATPが細胞内のCa^<2+>濃度を上昇させるることが明らかとなった。以上の結果、開口放出に細胞内のCa^<2+>濃度の変動が重要な役割を果たしていることが確認された。それのみならず、酸化ストレスによる開口放出傷害や、グルタミン酸による神経細胞死に、Ca^<2+>ホメオスタシスの破綻が強く関与していることが示唆された。ラット膵島β細胞を高濃度ぶどう糖で刺激すると、細胞内Ca^<2+>の一過性の上昇と引き続く振動性変動を伴った長時間の上昇が認められる。一酸化窒素(NO)の供与体であるNOR3を添加するとこのCa^<2+>変動が強く抑制された。NOの消去剤であるオキシヘモグロビンはこの抑制を解除した。活性酸素とNOを生成し、その結果強細胞毒性のONOO^-を産生するSIN-1は、ぶどう糖によるCa^<2+>変動に対して無効であった。O_2^-の消去剤であるSODを添加するとSIN-1はCa^<2+>変動を抑制した。高濃度K^+液による脱分極性Ca^<2+>変動に対してNOは無効であった。NOによるDNA損傷はPARS修復系を活性化しATPが消費される。ATP消費増加はインスリン分泌の起動に必須のK_<ATP>channelを開口し、分泌を抑制する可能性がある。しかしPARS抑制薬である3-AB存在下でもNOによるCa^<2+>変動抑制が残存した。
KAKENHI-PROJECT-09460134
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09460134
開口放出の分子機構に関する研究
以上から、ONOO^-やO_2^-ではなくNOによる膵島β細胞でのATP産生抑制の結果K_<ATP>channelが開口して脱分極が阻害されて、細胞内Ca^<2+>変動が抑制されてインスリンの開口放出が障害されるものと考える。ラット腹腔内肥満細胞をcompound48/80(c48/80)で刺激すると開口放出が観察される。光増感物質を前もって細胞内に負荷して光照射すると、細胞内Ca^<2+>濃度が生理的刺激に類似して変動する(Cui et al.,1997)。しかし逆に肥満細胞では光増感物質はc48/80による開口放出を強く抑制した。この抑制は一重項酸素消去剤のNAN_3で消失したことから光増感物質への光照射で生成した一重項酸素が開口放出を抑制したものと思われる。今後細胞内Ca^<2+>動態に対する効果を検討する計画である。Na^+-Ca^<2+>exchanger阻害薬のKB-R7943は低Na^+灌流液によるラット膵島β細胞の細胞内Ca^<2+>濃度上昇を抑制したことから、膵島β細胞の開口放出機序にNa^+-Ca^<2+>exchangeが関与していると推測される。ラットの腹腔内肥満細胞は、開口放出に伴う顆粒膜の融合に起因する膜容量の測定に理想的である。現在技術的な問題をひとつひとつ解決しながらパッチクランプ法による膜容量測定系を立ち上げている。その他、涙腺における腺房細胞と筋上皮細胞のCa^<2+>動態(Satoh et al,.1997)、ラット副腎髄質の刺激一分必連関の生後発達(Oomori et al,1998)やサブスタンスPの作用(Suzuki et al,準備中)も検討している。モルモット涙腺ではカルバコール(CCh)刺激で腺房細胞の[Ca^<2+>]_iが上昇し、開口放出像が観察された。筋上皮細胞も[Ca^<2+>]_i上昇後4-8秒で収縮した。ノルアドレナリン(NA)、アドレナリン(A)で腺房細胞の[Ca^<2+>]_iが上昇したが、筋上皮細胞では無効であった。Ca^<2+>除去下で、CChとNAによる[Ca^<2+>]_i上昇が筋上皮細胞では抑制されたが腺房細胞のCChに対する反応は不変であった。イソプロテレノールは[Ca^<2+>]_iに無効であったが時々開口放出を引き起こした。涙腺の腺房細胞と筋上皮細胞は異なるアゴニストに反応する異なる細胞内情報伝達系を持っていると考えられた。ラット副腎髄質細胞では胎生1416日目、DBH陽性、PNMT陰性であり細胞に分泌顆粒はほとんど認められずCCh刺激で開口放出は起こらなかった。分布神経に分泌顆粒はなかった。メサコリン(MeCh)、ニコチン(Nic)とも[Ca^<2+>]_iを上昇させなかった。胎生1820日にPNMTも陽性となり、分泌顆粒も認められた。CCh刺激で開口放出が起こり、神経に顆粒が認められた。[Ca^<2+>]_iにはMeChは無効であったがNicは多くの細胞で上昇させた。生後23日から1週目で多くの細胞で両合成酵素陽性であったが、一部の細胞でDBHのみ陽性であった。A細胞とNA細胞が区別できた。MeChは軽度の[Ca^<2+>]_i上昇を惹起したがNicは大きな上昇を引き起こした。一部の細胞がNicのみに反応した。
KAKENHI-PROJECT-09460134
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睡眠時無呼吸症候群の歯科における集学的治療法の確立
平成8年度,9年度と同様に睡眠時無呼吸症候群の新規患者を対象に研究を進めた.しかし,平成10年4月に本学附属病院に「いびき外来」が開設され,同年には291名の新患が来院し,その後も月平均30名の新患が来院するため,睡眠ポリグラフの需要が増え研究の遂行に支障を来した.しかし,可能な限りの測定機器を駆使して,PMAとnasal CPAPとの相互関係を検討した.対象は,睡眠ポリグラフの稼働制限が生じたためnasal CPAPの適応となった無呼吸低換気指数が20以上の50症例の内,nasal CPAPのtitrationをマニュアルで行った9例と患者の都合で中止した2例を除いた39例について分析したところ,平均CPAP圧は7.2cmH20であった.この内,PMAを併用しているのは4例で,その平均CPAP圧は6.6cmH20と全例の平均よりも低く,nasal CPAPとPMAとの相乗効果が認められた.さらに,PMAの効果をCPAP圧として換算するとおよそ4cmH20に相当することがわかった.一方,Uvulopalatopharyngoplasty(UPPP)やLaser assisted uvulopalatoplasty(LAUP)という軟口蓋手術を行っている5例の平均CPAP圧は6.9cmH20で,nasal CPAPとの相乗効果は認められなかった.以上から,PMAとnasal CPAPとは積極的に併用しするとCPAP圧を下げたり下顎前突量を軽減したりして,それぞれの治療法のコンプライアンス向上に寄与するが,UPPPやUPPやLAUPといった軟口蓋手術とnasal CPAPとはそれぞれの欠点を補うことができないため,併用は避けるのが賢明であると思われた.今後は,上下顎前方移動術など新しい手術に対してもそれぞれの保存的療法との相互関係を検討する必要があると思われた.平成8年度,9年度と同様に睡眠時無呼吸症候群の新規患者を対象に研究を進めた.しかし,平成10年4月に本学附属病院に「いびき外来」が開設され,同年には291名の新患が来院し,その後も月平均30名の新患が来院するため,睡眠ポリグラフの需要が増え研究の遂行に支障を来した.しかし,可能な限りの測定機器を駆使して,PMAとnasal CPAPとの相互関係を検討した.対象は,睡眠ポリグラフの稼働制限が生じたためnasal CPAPの適応となった無呼吸低換気指数が20以上の50症例の内,nasal CPAPのtitrationをマニュアルで行った9例と患者の都合で中止した2例を除いた39例について分析したところ,平均CPAP圧は7.2cmH20であった.この内,PMAを併用しているのは4例で,その平均CPAP圧は6.6cmH20と全例の平均よりも低く,nasal CPAPとPMAとの相乗効果が認められた.さらに,PMAの効果をCPAP圧として換算するとおよそ4cmH20に相当することがわかった.一方,Uvulopalatopharyngoplasty(UPPP)やLaser assisted uvulopalatoplasty(LAUP)という軟口蓋手術を行っている5例の平均CPAP圧は6.9cmH20で,nasal CPAPとの相乗効果は認められなかった.以上から,PMAとnasal CPAPとは積極的に併用しするとCPAP圧を下げたり下顎前突量を軽減したりして,それぞれの治療法のコンプライアンス向上に寄与するが,UPPPやUPPやLAUPといった軟口蓋手術とnasal CPAPとはそれぞれの欠点を補うことができないため,併用は避けるのが賢明であると思われた.今後は,上下顎前方移動術など新しい手術に対してもそれぞれの保存的療法との相互関係を検討する必要があると思われた.1.未治療の睡眠呼吸障害患者を対象にして,睡眠ポリグラフ(スリ-プトレース2000)と睡眠オキシメトリーにて無呼吸低換気指数と睡眠中にSp02が90%未満となる時間の比率(90%時間比)を計測して,無呼吸低換気指数が5以上または90%時間比が1%以上を診断基準として成人の閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者を選択し,全例に咽頭造影側方セファログラム分析を行い,睡眠呼吸障害と関連深い咽頭気道形態のパラメーター(第40回口腔外科学会総会にて報告)である平均咽頭気道径,咽頭気道面積,咽頭気道長,軟口蓋長,咽頭深度,軟口蓋過剰量,上顎舌骨距離,下顎舌骨距離を計測した.2.睡眠ポリグラフより得られた無呼吸低換気指数を従属変数とし,咽頭造影側方セファログラムの各パラメータを独立変数として多変量解析を行ったところ,軟口蓋過剰量が最も偏相関係数が高く,(無呼吸低換気指数)=1.48(軟口蓋過剰量)-2.63(平均咽頭気道径)+32.6という相関式が得られた.3.これを基に,平均咽頭気道径を増加する目的で下顎前方移動装置を作製して下顎前方移動に伴う平均咽頭気道径の増加量と無呼吸低換気指数の変化とを比較検討したところ,下顎前方移動装置による睡眠呼吸障害の改善は顕著であったが,その効果は気道径の変化とは僅かな相関しかなかった(第42回形成外科地方会にて報告).4.次に,経鼻式持続陽圧装置の作用機序を同じく咽頭造影側方セファログラムを用いて検討したところ,同装置による咽頭気道の拡大作用は軟口蓋を口腔側に移動させて軟口蓋と咽頭後壁の間の気道を拡大することから,主な作用点は中咽頭部にあった.
KAKENHI-PROJECT-08672294
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睡眠時無呼吸症候群の歯科における集学的治療法の確立
これは,舌根を前方に移動させて下咽頭で気道を拡大する下顎前方移動装置とは作用点が異なり互いに作用機序が競合しないことがわかった.5.今後,下顎前方移動装置と経鼻式持続陽圧装置との併用療法について研究を推進させる予定である.1.平成8年度と同様に,58名の未治療の睡眠呼吸障害患者を対象にして睡眠ポリグラフと睡眠オキシメトリーを施行して,無呼吸低換気指数が5以上または90%時間比が1%以上を診断基準として成人の閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者を選択し,全例に咽頭造影側方セファログラム分析を行い,睡眠呼吸障害と関連深い咽頭気道形態のパラメーターを計測した.2.睡眠ポリグラフと咽頭気道形態のパラメーターから閉塞型の睡眠時無呼吸症候群を選択し,さらにレーザーによる軟口蓋形成術を希望した症例を除外して,H erbst型下顎前方移動装置を作製して同装置の治療効果を睡眠ポリグラフならびに睡眠オキシメトリーにて判定した.3.また,経鼻式持続陽圧呼吸装置(鼻CPAP)を希望者に導入し,睡眠ポリグラフならびに睡眠オキシメトリーにて効果を判定したところ,およそ6cm H20の陽圧でH erbst型下顎前方移動装置と同等の効果が認められた.4.H erbst型の下顎前方移動装置にて効果のなかった症例にも経鼻式持続陽圧装置(鼻CPAP)を使用したところ,陽圧を増加させることにより,無呼吸低換気指数が改善し,特に低酸素血症(正確には経皮的低酸素飽和度状態)の改善は著しい傾向があった.しかしながら,陽圧が10cm H20以上となると,呼吸苦が生じて睡眠が妨げられたり,耳痛などの合併症が出現した.5.経鼻式持続陽圧装置の作用機序を咽頭造影側方セファログラムを用いて検討したところ,同装置による咽頭気道の拡大作用は軟口蓋を口腔側に移動させて軟口蓋と咽頭後壁の間の気道を拡大することから,主な作用点は中咽頭部にあったが,その効果は舌根部の気道経にも大きく依存していることがわかった.5.今後は,下顎前方移動装置と経鼻式持続陽圧装置との併用療法について,さらに研究を推進させる予定である.平成8年度,9年度と同様に睡眠時無呼吸症候群の新規患者を対象に研究を進めた.しかし,平成10年4月に本学附属病院に「いびき外来」が開設され,同年には291名の新患が来院し,その後も月平均30名の新患が来院するため,睡眠ポリグラフの需要が増え研究の遂行に支障を来した.しかし,可能な限りの測定機器を駆使して,PMAとnasal CPAPとの相互関係を検討した.対象は,睡眠ポリグラフの稼働制限が生じたためnasal CPAPの適応となった無呼吸低換気指数が20以上の50症例の内,nasal CPAPのtitrationをマニュアルで行った9例と患者の都合で中止した2例を除いた39例について分析したところ,平均CPAP圧は7.2cmH2Oであった.この内,PMAを併用しているのは4例で,その平均CPAP圧は6.6cmH2Oと全例の平均よりも低く,nasal CPAPとPMAとの相乗効果が認められた.
KAKENHI-PROJECT-08672294
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社会的境界研究の構築と移民トランスナショナリズムへの応用
本年度は、昨年度の研究会で明らかになった境界研究の理論的側面を強化する作業をまず行った。論点は、いかにすれば境界研究は領域的ー地理的境界だけでなく社会的境界をも探究できるのであろうか、いかにすれば境界研究は領域的ー地理的境界と社会的境界を分別できるのであろうかという問いに答えることである。ひとつの方向性として、すでに研究代表者は国家による移民市民権政策を把握するためHammar=Koido=Tarumotoモデル(HKTモデル)を構築していた。このHKTモデルおよび他の既存研究を検討しつつ研究分担者とも議論を重ね、社会的境界(social border)のつぎのような概念化に到達した。「社会的境界(social border)とは、人々のある集合と別の集合を区別する規則、規範、共有知識のことであり、集団間や階層間などを区切る機能を持ち、しばしば権力関係、社会的・経済的格差、差別、排除を伴う。」さらに、社会的境界が立ち現れる問題として二種類が取り出されると結論づけた。1つめは移民主導的な問題系で、典型例は移民トランスナショナリズムである。もう1つは社会主導的問題系であり、文化的人種主義やエスニック排外主義など広範な問題がここに含められる。以上のような理論的考察に基づき、各国の事例が検討された。取り上げられたのは、フランスの包括的なmigration把握と境界再編、アメリカ合衆国における生得的市民権、日本のインバウンド観光における越境的ネットワーク、日本に滞在する難民の越境的移動と適応、ドイツにおける国民国家の境界をめぐる言説の対立、在外イタリア人から見た「イタリア」の境界である。昨年度に課題となった理論的精緻化がある程度なされたことで、社会的境界論が有効になる射程がかなり明確となったため、おおむね順調に進展していると理解できる。ただし、個々の事例と理論との接続にはいまだ一貫していない部分があり、今後の課題となっている。さらに、いくつかの国では社会的境界論にとってきわめて重要な事例がいまだ継続して生起しており、本研究においてどこまで論じられるか、また論じるべきかを見極めなければならない。今後の研究として以下のような課題が残されている。第1に、理論的な観点として社会的境界概念が捉えられる社会現象が明確になって一方、同現象の生起・維持・消失の理論的メカニズムについてはいまだ明らかにされていない。このような因果的理論モデルの構築をしなければならない。第2に、社会的境界にあてはまる各国の事例の中でいくつかの現象が現在継続して生起している。たとえばアメリカ合衆国におけるトランプ大統領のメキシコ国境の「壁」の建設の試み、英国のEU離脱、イタリアにおける極右ポピュリズム連立政権の政権運営など、社会的境界論的に見てきわめて重要な現象を追っていく作業を行わなければならない。第3に、本研究全体をまとめる作業をしなければならない。基本的な方向性は各国比較の視点を取り入れつつ、移民・外国人に関する社会的境界を盛り込んだ編著を出版することである。そこで、各章の執筆を進めるとともに、理論的なまとめを進めていきたい。電子メールを利用した議論および研究会における研究発表と議論を通じて、各研究分担者の観点からどのような現象が境界研究の対象になりうるのかを探索していった。アメリカ合衆国においてはトランプ大統領が就任してにわかに排外主義的な緊張が生じているように見えるけれども、その源泉は一九世紀前半のカトリック移民に反対する人々によるネイティヴィズムであり、その後1980年代90年代には「シヴィック・ネイティヴィズム」へと変化し、21世紀になると安全保障と治安維持の様相を帯びるようになった。日本において境界研究の対象となりうる現象としてインバウンド観光が挙げられる。たとえば新潟県糸魚川市に外国人観光客が訪れる理由は、スイス出身の個人がキーパーソンとなって外国人の来訪を促進したことが大きい。ドイツにおいては移民・難民の流入が急増していくなか知識人や政治家などがイスラム嫌悪的な「イスラム批判」を展開し、ムスリムとそれ以外の境界を構築しようとしている。フランスでは、「フランス文化とは合わない文化を持っている」いった文化的理由で差別を行う人種主義が現れ、人種間の境界を構築するために文化が持ち出されている。イタリアでは、反移民排外主義やイスラム嫌悪が急速に広がる中で、イタリア北部の自治拡大を要求する地域政党として誕生した北部同盟が人気を獲得し、非合法移民やムスリム移民とマジョリティとの境界を構築しようとしている。ミャンマーに関しては、日本で難民認定を受け正常回復後母国に帰国した人々がビジネスなどで日本とミャンマーの境界を越えている事例が報告された。いずれの事例も境界研究が有効性を発揮する可能性に富むトランスナショナルな事例である。しかし計画時点では初期段階で行う予定であった理論研究は後回しになってしまった。今後は理論研究を進めながら、以上の実証的研究に結びつける努力をしなくてはならない。当初の計画では先に行うことにしていた社会的境界に関する理論研究は来年度以降に行うことになった。「境界」に相当する具体的な現象を確定する必要が出てきたためである。しかし各研究分担者が得意とする国・地域の状況を報告し議論していく過程で境界研究が扱うべき各国の具体的な現象が明らかになった。このため、結果として当研究は順調に進展することになった。本年度は、昨年度の研究会で明らかになった境界研究の理論的側面を強化する作業をまず行った。
KAKENHI-PROJECT-17KT0030
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17KT0030
社会的境界研究の構築と移民トランスナショナリズムへの応用
論点は、いかにすれば境界研究は領域的ー地理的境界だけでなく社会的境界をも探究できるのであろうか、いかにすれば境界研究は領域的ー地理的境界と社会的境界を分別できるのであろうかという問いに答えることである。ひとつの方向性として、すでに研究代表者は国家による移民市民権政策を把握するためHammar=Koido=Tarumotoモデル(HKTモデル)を構築していた。このHKTモデルおよび他の既存研究を検討しつつ研究分担者とも議論を重ね、社会的境界(social border)のつぎのような概念化に到達した。「社会的境界(social border)とは、人々のある集合と別の集合を区別する規則、規範、共有知識のことであり、集団間や階層間などを区切る機能を持ち、しばしば権力関係、社会的・経済的格差、差別、排除を伴う。」さらに、社会的境界が立ち現れる問題として二種類が取り出されると結論づけた。1つめは移民主導的な問題系で、典型例は移民トランスナショナリズムである。もう1つは社会主導的問題系であり、文化的人種主義やエスニック排外主義など広範な問題がここに含められる。以上のような理論的考察に基づき、各国の事例が検討された。取り上げられたのは、フランスの包括的なmigration把握と境界再編、アメリカ合衆国における生得的市民権、日本のインバウンド観光における越境的ネットワーク、日本に滞在する難民の越境的移動と適応、ドイツにおける国民国家の境界をめぐる言説の対立、在外イタリア人から見た「イタリア」の境界である。昨年度に課題となった理論的精緻化がある程度なされたことで、社会的境界論が有効になる射程がかなり明確となったため、おおむね順調に進展していると理解できる。ただし、個々の事例と理論との接続にはいまだ一貫していない部分があり、今後の課題となっている。さらに、いくつかの国では社会的境界論にとってきわめて重要な事例がいまだ継続して生起しており、本研究においてどこまで論じられるか、また論じるべきかを見極めなければならない。当初の計画とは若干異なり具体的現象の確認から研究が始まったため、今後は理論研究を進め、理論と実証との関係づけを進めつつ、実証自体に関しても理論を踏まえたさらなる分析を進めていくことにする。したがって、平成30年度の特に前半には理論研究を進展させることが必要となっており、研究分担者と協働しつつ遂行していくことになる。今後の研究として以下のような課題が残されている。第1に、理論的な観点として社会的境界概念が捉えられる社会現象が明確になって一方、同現象の生起・維持・消失の理論的メカニズムについてはいまだ明らかにされていない。このような因果的理論モデルの構築をしなければならない。第2に、社会的境界にあてはまる各国の事例の中でいくつかの現象が現在継続して生起している。たとえばアメリカ合衆国におけるトランプ大統領のメキシコ国境の「壁」の建設の試み、英国のEU離脱、イタリアにおける極右ポピュリズム連立政権の政権運営など、社会的境界論的に見てきわめて重要な現象を追っていく作業を行わなければならない。第3に、本研究全体をまとめる作業をしなければならない。
KAKENHI-PROJECT-17KT0030
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地盤と構造物の動的相互作用系の合理的制振法と終局耐震安全性に関する研究
1.断層の進行性破壊による発生地震波のシミュレーションをディスロケーション・モデルを用いて、地質の層状性を考慮して行った。直下型の地震記録波形との比較検討をした。これより直下型地震の特徴を指摘した。2.衝撃載荷・加振に対して、半無限地盤、成層地盤内の波動伝播特性を把握するため、3次元有限要素法、薄層要素法と水平面内の離散化波数法との組み合わせでシミュレーションを行った。そして波動場の解析から、波動の伝播・遮断の理論に基づいた合理的な波動遮断工法(WIB)の設計法を検討した。従来工法との比較から、WIBの制振効果の優位性をシミュレーションから示した。3.強震下での構造物の終局耐力の評価では、杭基礎上のRC橋梁を対象に、部材の非線型履歴特性を導入して行った。破壊損傷度を応答靭性率とエネルギー消失履歴面積のと線型重ね合わせで評価し、構造諸元と地震入力とのパラメータ解析をした。4.衝撃的地震波に対するRC構造物の引張り破壊についての可能性をパルス的入力を用いて考察した。モデル化には、2D,3D有限要素法を適用した。5.非線型地盤中の地中構造物の応答性状を周辺地盤との動的相互作用の下で調べた。その際、地盤の応答ひずみによる剛性の低下をHDモデルを使用し、構造物の安定性に注目した。1.断層の進行性破壊による発生地震波のシミュレーションをディスロケーション・モデルを用いて、地質の層状性を考慮して行った。直下型の地震記録波形との比較検討をした。これより直下型地震の特徴を指摘した。2.衝撃載荷・加振に対して、半無限地盤、成層地盤内の波動伝播特性を把握するため、3次元有限要素法、薄層要素法と水平面内の離散化波数法との組み合わせでシミュレーションを行った。そして波動場の解析から、波動の伝播・遮断の理論に基づいた合理的な波動遮断工法(WIB)の設計法を検討した。従来工法との比較から、WIBの制振効果の優位性をシミュレーションから示した。3.強震下での構造物の終局耐力の評価では、杭基礎上のRC橋梁を対象に、部材の非線型履歴特性を導入して行った。破壊損傷度を応答靭性率とエネルギー消失履歴面積のと線型重ね合わせで評価し、構造諸元と地震入力とのパラメータ解析をした。4.衝撃的地震波に対するRC構造物の引張り破壊についての可能性をパルス的入力を用いて考察した。モデル化には、2D,3D有限要素法を適用した。5.非線型地盤中の地中構造物の応答性状を周辺地盤との動的相互作用の下で調べた。その際、地盤の応答ひずみによる剛性の低下をHDモデルを使用し、構造物の安定性に注目した。1.地盤-構造物系への直接載荷と地震波の入射における波動場を時間領域境界要素法により解析することで、地盤と構造物の動的相互作用を波動論から明確に把握し、衝撃応答を利用してコンプライアンス関数を効果的に評価できた。また隣接構造物間のキネマチックな相互作用効果を地盤の層厚との関係において波動の伝播/遮断のメカニズムから明らかにした。2.波動遮断ブロック(WIB)による制振効果のメカニズムを地盤と構造物の動的相互作用場の解析から究明し、構造物の制振工法の合理的なWIBの設計に関する規範となる知見を得た。これを基に、杭基礎を対象としたな多重ディスクWIB工法を提案してその有効性を調べた。3.地盤の不整形性による地震波の増幅作用と地中構造物の応答性状について、地盤形状と規模と入射波長の関係において軸力と同時に曲げの応答の傾向を捉え、後者の重要性を指摘した。4.地盤の不整形性による地震波の増幅・位相特性に関して、兵庫県南部地震における神戸地震動のシミュレーションを地盤の浅層と深層構造を対象に波動の異常増幅効果を起こしたメカニズムを波動伝播から実証した。5.くいの打設現場の地盤振動計測から、成層地盤内の波動の伝播を直達波と基盤層による反射波と捉え、周辺への伝播波の周期特性と距離減衰特性を明らかにした。層状地盤の衝撃載荷からシミュレーションを行い実測とよい対応を示していることを確認した。1.断層の破壊の進行に伴う強い衝撃的な地震波の発生、その地盤内の伝播に注目した。移動震源過程の下での弾性くい違い(デイスロケーション)理論を用いた。モデル化手法をとった。多層地盤の波動伝盤統制を明確にするため、薄層要素モデル化に対して離散波数法から定式化した。解析結果から断層の走行による地表面応答の指向性を明確にすることができ、また応用例として兵庫県南部地震のアスペリティに基づいた地震動をシミュレーションし、観測波形との比較検討を行なった。2.強震動の下でのRC構造物の終局耐力を評価するため、兵庫県南部地震による阪神高速道路の高架橋の倒壊を1自由度系、多自由度系としてモデル化し、復元力特性にこれまで提案されている代表的な曲線を導入して解析した。入力地震動の強度と非線形応答の程度をパラメータ解析した。3.沖積軟弱地盤の2次元モデル化による有限要素法と境界要素法を結合した解析を神戸の不整形地形に対して行なった。非線形履歴特性を軟弱地盤の物性に付与することで、阪神大震災のときの実現に即した地盤の応答が評価できた。4.杭打ち建設現場の振動計測を行ない、成層地盤内の波動伝播の様相から地盤物性の逆解析による評価を行なった。
KAKENHI-PROJECT-07044154
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07044154
地盤と構造物の動的相互作用系の合理的制振法と終局耐震安全性に関する研究
これにより震度との対応で、地盤の非線形特性を把握することができた。5.波動遮断ブロック(WIB)による制振効果のメカニズムを地盤と構造物の動的相互作用における波動場から究明し、合理的なWIBの設計法に関する知見を得た。しかし、地震時において地盤振動の高い振動数と共振する可能性があり、そのため非線形応答を検討しておく必要がある。1.断層の進行性破壊による発生地震波のシミュレーションをディスロケーション・モデルを用いて、地質の層状性を考慮して行った。直下型の地震記録波形との比較検討をした。これより直下型地震の特徴を指摘した。2.衝撃載荷・加振に対して、半無限地盤、成層地盤内の波動伝播特性を把握するため、3次元有限要素法、薄層要素法と水平面内の離散化波数法との組み合わせでシミュレーションを行った。そして波動場の解析から、波動の伝播・遮断の理論に基づいた合理的な波動遮断工法(WIB)の設計法を検討した。従来工法との比較から、WIBの制振効果の優位性をシミュレーションから示した。3.強震下での構造物の終局耐力の評価では、杭基礎上のRC橋梁を対象に、部材の非線型履歴特性を導入して行った。破壊損傷度を応答靱性率とエネルギー消失履歴面積のと線型重ね合わせで評価し、構造諸元と地震入力とのパラメータ解析をした。4.衝撃的震波に対するRC構造物の引張り破壊についての可能性をパルス的入力を用いて考察した。モデル化には、2D,3D有限要素法を適用した。5.非線型地盤中の地中構造物の応答性状を周辺地盤との動的相互作用の下で調べた。その際、地盤の応答ひずみによる剛性の低下をHDモデルを使用し、構造物の安定性に注目した。
KAKENHI-PROJECT-07044154
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07044154
エキシトン顕微鏡による量子ホール系の動的スピンの直接観察
去年の研究実績の概要で報告した量子ホールスカーミオンに関する実験結果を更に分析しました。物理理論の准教授柴田尚和に相談しながらこの研究の論文を執筆して雑誌で出版しました。学位の条件に従って博士論文を執筆し、審査委員会に提出しました。博士論文が国立国会図書館に送付されました。博士論文と博士論文発表の審査の結果、筆者の研究は東北大学物理学専攻の2018年度の専攻賞を受賞しました。電子スピンのコヒーレンス時間計測の実験装置を組み立てました。この装置はパンプの光パルスで電子スピンのコヒーレント状態を励起して、プローブの光パルスでカー回転の検出法によって状態の緩和を時間的に測ります。チタンサファイアレーザーから発光される光パルスを2つに分けて、調整可能な遅延線で時差を作りました。そして回折格子を用いてパルスを整形することによって試料のバンドギャップエネルギーに合うパルスを作りました。極低温でも電子スピンのコヒーレンス時間を測定出来るように、光パルスがあまりに分散しない光ファイバーを希釈冷凍機に導入し、光をファイバーにカップリングしました。冷凍機の中で反射光の回転(カー回転)を強度の変化に変換し、室温で強度をロックイン検出法で測定できるようにしました。実験試料のガリウム砒素量子井戸に光を当てながら、カー回転検出のテストとトラブル対応段階に入りましたが、まだ信号を検出できませんでした。研究室の他の一人の学生はこの研究を引き継ぎました。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。量子ホール液体の占有率が1付近になる時に起こる、二つの磁気秩序の電子スピン相間の一次相転移を断定的に観測した。この未報告の相転移は二次元電子系の化学ポテンシャルを変える時に起こり、スカーミオンという準粒子の密度が異なる二つの相の間の転移である。相転移の存在の証拠は、二つの相の共在している磁区の実空間イメージングとその磁区の長距離秩序とヒステリシスの観測から裏付けられる。相転移を通って核スピンの縦緩和時間T1を顕微的に測定し、相転移と同時にT1が急峻な変化を生じる結果を得た。これにより、本相転移は文献が以前に特定した相の間の相転移だと結論した。その一つの相は、局在化されたスカーミオンまたはアンチスカーミオンが希薄に存在して、部分的に偏極されている相である。もう一つの相は、スカーミオンが濃密な相である。相転移が起こる化学ポテンシャルは温度の上昇によって大きに減少することも観測した。また、外磁場に対して二次元電子系を傾けることによってゼーマンエネルギーを増加させる時に、相転移はより高い化学ポテンシャルに移動することを観測した。この結果から、相転移はゼーマンエネルギーに相当する状態密度のエネルギーギャップと関係していることを結論付けた。以上の成果を報告する論文を現在執筆中である。量子ホールブレークダウン効果による核スピン偏極の顕微光検出を散々試みたが、検出できなかった。その理由は、核スピン偏極度が我々の光検出法の感度より弱すぎたためだと考えられる。従って本スピン研究で、核スピン偏極を伴う現象の実験にはブレークダウン効果は非実用的な方法だと考えている。スカーミオン研究において新しいT1測定法を工夫した。以上に加えて、ミリケルビン温度においての時間分解したカー回転の検出が可能な実験装置を開発した。セットアップの設計を完成し、素子の大半を購入し、組み立て始めた。年次計画より量子ホールスカーミオンの研究は2,3ヵ月遅れた。その理由は、面白くて有意義な成果をさらに得られる実験を考え出して行ったからである。ゼーマンエネルギーを増加させるために垂直磁場に対して二次元電子系を傾けてスカーミオン相転移はどう反応するか観測する実験であった。その実験は大成功であり、このために計画を遅らせる価値はとてもあったと思っている。また、カー回転による量子ホールエッジチャネルのコヒーレンス時間の測定はこれから遅れそうである。なぜなら、この研究に必要な冷凍機が故障しており、修理が可能であるか分からない状態である。修理は可能な場合でも、一年間ほどかかる。新しい冷凍機を設計している途中であるが、完了するまでは数か月間かかる。去年の研究実績の概要で報告した量子ホールスカーミオンに関する実験結果を更に分析しました。物理理論の准教授柴田尚和に相談しながらこの研究の論文を執筆して雑誌で出版しました。学位の条件に従って博士論文を執筆し、審査委員会に提出しました。博士論文が国立国会図書館に送付されました。博士論文と博士論文発表の審査の結果、筆者の研究は東北大学物理学専攻の2018年度の専攻賞を受賞しました。電子スピンのコヒーレンス時間計測の実験装置を組み立てました。この装置はパンプの光パルスで電子スピンのコヒーレント状態を励起して、プローブの光パルスでカー回転の検出法によって状態の緩和を時間的に測ります。チタンサファイアレーザーから発光される光パルスを2つに分けて、調整可能な遅延線で時差を作りました。そして回折格子を用いてパルスを整形することによって試料のバンドギャップエネルギーに合うパルスを作りました。極低温でも電子スピンのコヒーレンス時間を測定出来るように、光パルスがあまりに分散しない光ファイバーを希釈冷凍機に導入し、光をファイバーにカップリングしました。冷凍機の中で反射光の回転(カー回転)を強度の変化に変換し、室温で強度をロックイン検出法で測定できるようにしました。
KAKENHI-PROJECT-17J02035
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J02035
エキシトン顕微鏡による量子ホール系の動的スピンの直接観察
実験試料のガリウム砒素量子井戸に光を当てながら、カー回転検出のテストとトラブル対応段階に入りましたが、まだ信号を検出できませんでした。研究室の他の一人の学生はこの研究を引き継ぎました。1スカーミオン研究の成果を報告する論文を投稿する。21.5ケルビンまで冷える新しい冷凍機の設計と作製を他の学生と一緒に行う。3新しい冷凍機を完了する前に、光ファイバを利用するカー回転検出装置を室温で開発する。そのために、まず装置に必要な光学素子を購入する。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-17J02035
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J02035
比較認知科学の視点に立った新しい福祉科学の構築─ヒト科3種の比較を通して─
本研究では、他者と共感し、他者をいたわるという、利他的なこころの進化・適応という新しい視点に立った「福祉学」の構築をめざし、以下に示す研究を進めた。まず第1に、ふたごチンパンジーの発達におけるソーシャルサポートについて観察研究を行った。第2に、四肢麻痺から回復したチンパンジーの機能維持のための認知課題を駆使したリハビリ訓練の効果評価や、脳性まひのチンパンジー幼児に対する介入の効果評価を実施した。第3は、ヒトとの比較である。チンパンジーのふたごのきょうだい関係をヒトと比較するために、ヒトのふたごきょうだいの家庭における日常場面の観察ビデオの分析を行い、種間での類似性と相違点を明らかにした。本研究では、他者と共感し、他者をいたわるという、利他的なこころの進化・適応という新しい視点に立った「福祉学」の構築をめざす。本年度は、高知県のいち動物公園に暮らすふたごチンパンジーのダイヤとサクラを対象に、個体間の近接関係とその時々の行動の記録に加えて、移動時の追随関係、ケンカの際のサポートの関係、採食時の食物分配、遊び関係の継時的変化などについて、集中的に観察を進めた。その結果、2歳頃には顕著であった、非血縁女性個体による緊密な養育行動が消失し、逆にそれらの個体に対する「からかい」などの行動が頻発するようになった。また、のいち動物園のミルキーという発達遅滞を示す個体に対して、理学療法士、作業療法士らと連携しつつ、発達検査ならびに療育を継続的に実施し、昨日の回復過程について詳しく検討した。また、ふたごチンパンジーの成果の対照群としてかみね動物園に暮らす1歳違いの2個体の子どもチンパンジーの観察も開始した。これらの個体は人工保育から復活した個体であり、これらの子どもの社会性の発達をふたごのチンパンジーと縦断的かつ横断的に比較してく予定だ。また、京都大学霊長類研究所の四肢麻痺から回復したチンパンジーの機能維持のための認知課題を駆使したリハビリ訓練を継続して実施した。本研究では、他者と共感し、他者をいたわるという、利他的なこころの進化・適応という新しい視点に立った「福祉学」の構築をめざす。本年度は、昨年度に続き、高知県のいち動物公園に暮らすふたごチンパンジーのダイヤとサクラを対象に、個体間の近接関係とその時々の行動の記録に加えて、移動時の追随関係、ケンカの際のサポートの関係、採食時の食物分配、遊び関係の継時的変化などについて、集中的に観察を進めた。その結果、2歳頃には顕著であった、非血縁女性個体による緊密な養育行動が消失し、逆にそれらの個体に対する「からかい」などの行動が頻発するようになった。また、のいち動物園のミルキーという発達遅滞を示す個体に対して、理学療法士、作業療法士らと連携しつつ、発達検査ならびに療育を継続的に実施し、機能の回復過程について詳しく検討した。その結果、この1年での機能回復には著しいものがあり、次のステップとして、群れへの再導入の可能性について関係者を含めて議論を進めている。また、ふたごチンパンジーの成果の対照群としてかみね動物園に暮らす1歳違いの2個体の子どもチンパンジーの観察も開始した。これらの個体は人工保育から復活した個体であり、これらの子どもの社会性の発達を縦断的に観察した。また、京都大学霊長類研究所の四肢麻痺から回復したチンパンジーの機能維持のための認知課題を駆使したリハビリ訓練を継続して実施した。その成果を論文にまとめ、国際誌に掲載が決定した。これらの研究を3名の研究代表者・分担者に加えて、櫻庭陽子、林美里、竹下秀子、高塩純一、多々良成紀、山田信宏、生江信孝、山内直朗、大栗靖代らの研究協力者とともに推進した。のいち、かみね各動物園でのチンパンジーの発達の縦断的観察は着実に進展している。残り1年でその成果を取りまとめたい。また、発達遅滞を示すチンパンジーについても劇的な改善が認められており、現在次の段階への移行を検討中である。また、四肢麻痺から回復したチンパンジーのリハビリ訓練の成果が国際誌への掲載が決定した。本研究では、他者と共感し、他者をいたわるという、利他的なこころの進化・適応という新しい視点に立った「福祉学」の構築をめざし、以下に示す研究を進めた。まず第1は、養育行動におけるソーシャルサポートという観点からの研究である。高知県のいち動物公園に暮らすふたごチンパンジーのダイヤとサクラを対象に、個体間の近接関係とその時々の行動の記録に加えて、移動時の追随関係、ケンカの際のサポートの関係、採食時の食物分配、遊び関係の継時的変化などについて、集中的に観察を進めた。加えて、ふたごチンパンジーの対照群として、かみね動物園に暮らす1歳違いの2個体の子どもチンパンジーの観察を実施した。これらの個体は人工保育から母子保育へと復活した個体であり、これらの子どもの社会性の発達を縦断的に観察した。第2は、障害を持ったチンパンジーを対象とした研究である。まず、京都大学霊長類研究所の四肢麻痺から回復したチンパンジーの機能維持のための認知課題を駆使したリハビリ訓練を継続して実施し、その効果を評価した。その成果を論文にまとめ、国際誌に掲載した。また、のいち動物園のミルキーという発達遅滞を示す個体に対して、理学療法士、作業療法士らと連携しつつ、発達検査ならびに療育を継続的に実施し、機能の回復過程について詳しく検討した。さらに、名古屋市東山動植物園に暮らす後天的
KAKENHI-PROJECT-26540063
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26540063
比較認知科学の視点に立った新しい福祉科学の構築─ヒト科3種の比較を通して─
身体障害を持つチンパンジー2個体を対象に、治療のための隔離から群れへの再導入における社会的行動の変化について検討した。第3は、ヒトとの比較である。チンパンジーのふたごのきょうだい関係をヒトと比較するために、ヒトのふたごきょうだいの家庭における日常場面の観察ビデオの分析を行い、種間での類似性と相違点を明らかにした。本研究では、他者と共感し、他者をいたわるという、利他的なこころの進化・適応という新しい視点に立った「福祉学」の構築をめざし、以下に示す研究を進めた。まず第1に、ふたごチンパンジーの発達におけるソーシャルサポートについて観察研究を行った。第2に、四肢麻痺から回復したチンパンジーの機能維持のための認知課題を駆使したリハビリ訓練の効果評価や、脳性まひのチンパンジー幼児に対する介入の効果評価を実施した。第3は、ヒトとの比較である。チンパンジーのふたごのきょうだい関係をヒトと比較するために、ヒトのふたごきょうだいの家庭における日常場面の観察ビデオの分析を行い、種間での類似性と相違点を明らかにした。これまでののいち動物園を中心とした研究に加えて、かみね動物園での研究にも着手した。また、発達遅滞を示すチンパンジーに対しても積極的な介入を開始し、よい結果を得つつつある。次年度は最終年度であるので、のいちのふたご、かみねの子どもたち、発達遅滞の子ども、四肢麻痺回復個体のそれぞれについて、残り一年さらに研究を進めるとともに、それぞれの成果を取りまとめることによって、比較福祉科学という新しい学問の創生の萌芽をさらに成長させていきたい。比較認知科学今後とものいちのふたご、かみねのきょうだい、そしてのいちの発達遅滞のチンパンジーを軸に研究を進めていきたい。さらに、京都大学霊長類研究所でのリハビリ訓練についても継続させていきたい。当初予定していた調査回数に不可避の事由による変更が生じたため、旅費の執行に差分が生じた。当初予定していた調査回数が変更となったため、旅費の執行に差分が生じた。また、データ分析等の補助を予定した方の日程に変更が生じたため、人件費・謝金についても差分が生じた。これらの差額については、次年度の調査日程を再度見直すことによって対応する。これらの差額については、次年度の調査日程を見直すとともに、データ分析補助業務の時間を増やすことで対応可能である。
KAKENHI-PROJECT-26540063
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26540063
血液型抗原オリゴ糖鎖を有する生体適合性材料の合成
N-アセチルグルコサミン誘導体にグリコシド結合でスペーサー部分を導入し、ガラクトシル化、フコシル化してH型抗原オリゴ糖誘導体を合成した。合成スキーム中、ガラクトシル化部分については、ガラクトシルブロマイドを用いる方法も検討したが、オルソエステル法を用いた方が、合成過程を1段階短縮でき、取扱いも簡便であった。スペーサー末端にアミノエタノールを介してアクリロイル基を導入し、重合可能なモノマーとした。H型糖鎖を有するアクリル酸誘導体モノマーと、アクリルアミドおよびアクリル酸メチルとの共重合を行った。コモノマーとしてこれら2種が選ばれたのは、生成コポリマーを生体材料として考えた場合の親水性材料、疎水性材料を意識してのことである。しかも、アクリル系のモノマーは、糖モノマーとよく共重合するであろう。という点も考慮した。糖モノマーとコモノマーの仕込み比を変化させることにより、コポリマー中の糖鎖部分の分布をかなり制御できるようになった。また、糖鎖導入率の違いによりコポリマーの物性は様々なものが得られた。そこで、コポリマーの脱保護(脱ベンジル化)の際には、混合溶媒系を用いるという画期的な方法を導入することにより、容易に脱ベンジル化を可能にした。接触水添によるポリマーの脱ベンジル化は、本研究が最初の例である。次に、A酵素(N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ)を用いて、合成ポリマー中のH型糖鎖のA型糖鎖への変換を試みたところ、わずかではあるが、A型糖鎖が確認された。すなわち、合成ポリマー中の糖鎖は、生体分子であるA酵素にアクセプターとして認識されたのである。今回合成したポリマーは、他の血中分子や細胞とも相互作用するものと考えられ、人工臓器や人工血管用の生体適合性材料(抗血栓材料)などに応用されることが期待される。N-アセチルグルコサミン誘導体にグリコシド結合でスペーサー部分を導入し、ガラクトシル化、フコシル化してH型抗原オリゴ糖誘導体を合成した。合成スキーム中、ガラクトシル化部分については、ガラクトシルブロマイドを用いる方法も検討したが、オルソエステル法を用いた方が、合成過程を1段階短縮でき、取扱いも簡便であった。スペーサー末端にアミノエタノールを介してアクリロイル基を導入し、重合可能なモノマーとした。H型糖鎖を有するアクリル酸誘導体モノマーと、アクリルアミドおよびアクリル酸メチルとの共重合を行った。コモノマーとしてこれら2種が選ばれたのは、生成コポリマーを生体材料として考えた場合の親水性材料、疎水性材料を意識してのことである。しかも、アクリル系のモノマーは、糖モノマーとよく共重合するであろう。という点も考慮した。糖モノマーとコモノマーの仕込み比を変化させることにより、コポリマー中の糖鎖部分の分布をかなり制御できるようになった。また、糖鎖導入率の違いによりコポリマーの物性は様々なものが得られた。そこで、コポリマーの脱保護(脱ベンジル化)の際には、混合溶媒系を用いるという画期的な方法を導入することにより、容易に脱ベンジル化を可能にした。接触水添によるポリマーの脱ベンジル化は、本研究が最初の例である。次に、A酵素(N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ)を用いて、合成ポリマー中のH型糖鎖のA型糖鎖への変換を試みたところ、わずかではあるが、A型糖鎖が確認された。すなわち、合成ポリマー中の糖鎖は、生体分子であるA酵素にアクセプターとして認識されたのである。今回合成したポリマーは、他の血中分子や細胞とも相互作用するものと考えられ、人工臓器や人工血管用の生体適合性材料(抗血栓材料)などに応用されることが期待される。ヒトの血液や分泌液は、そのヒトの血液型に従ってA型、B型、H型のオリゴ糖鎖を有する糖タンパク質を含むことが知られている。本研究では、重合可能なモノマ-に、化学合成したH型オリゴ糖鎖の末端部分を導入し、重合することによって、“血液型適合性"を有する高分子材料を合成することを目的とした。Nーアセチルグルコサミンに塩化アセチルを作用させて1位をクロル化、3、4、6位をアセチル化した。次にスペ-サ-として末端にメチルエステルを有するペンチルアルコ-ルを、シアン化第二水銀を触媒とした反応によりβ結合で導入した。ナトリウムメトキシドにより脱アセチル化し、ジメトキシトルエンにより4、6位をベンジリデン化し、3位のみがフリ-の水酸基であるグリコサミン誘導体(1__)を得た。次にDーガラクト-スを原料として、オルソエステルを経由する方法により2ーOーアセチルー3,4,6ートリーOーベンジルーαーDーガラクトシルブロマイド(2__)を合成した。さらに、Lーフコ-スを原料として、オキサリルブロマイドーDMF複合体等の反応試薬を用い、2,3,4ートリーOーベンジルーαーLーフコシルブロマイド(3__)を得た。(2__)による(1__)のガラクトシル化、さらに得られた二糖の(3__)によるフコシル化によって、HI型糖鎖の末端部分(抗原決定基)を合成した。三糖のスペ-サ-末端に、エステルアミド交換によりエタノ-ルアミンを導入し、さらにアクリル酸クロリドを作用させて、末端に二重結合を有するオリゴ糖モノマ-を得た。このモノマ-は、アクリルアミド、アクリル酸メチルと共重合し、HI型糖鎖誘導体の末端部分を有するポリマ-を与えた。
KAKENHI-PROJECT-02650662
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02650662
血液型抗原オリゴ糖鎖を有する生体適合性材料の合成
NMRスペクトル等を用いて、ポリマ-中への糖鎖導入率を求めた。細胞表層に出現する糖鎖は、細胞周期、分化、ガン化等によって量的、質的に大きく変化することが知られている。これらの糖鎖は、細胞膜抗原として、また、ある種の毒素や細菌のレセプタ-として機能していると考えられている。糖鎖抗原としては血液型抗原が最も広く知られており、赤血球表面、分泌液、胃粘膜表面などに多数存在している。このうち、本研究ではABO式血液型抗原に着的し、その活性部位の基本骨格を側鎖に有する高分子の合成を行い、酵素による認識を調べた。ABO式血液型の基本骨格であるH型糖鎖の化学合成は、Dーガラクト-ス、Lーフコ-ス、そしてスペ-サ-部分をアグリコンに持つNーアセチルーDーグルコサミンを出発物質として、保護、活性化、脱保護という反応を繰り返し行った。さらに、その末端にビニル基を導入し、H型糖鎖を有するモノマ-を合成した。このモノマ-とアクリルアミドまたはアクリル酸メチルとの共重合を行った。モノマ-及びコポリマ-中の糖鎖部分の脱保護は種々検討したが、ポリマ-の接触水素化分解(PdーC解媒)による脱ベンジル化がよい結果を与えた。DMFー水(混合溶媒)という新しい溶媒系を用いることによって、従来、多くの研究者が難題としていたポリマ-の脱ベンジル化に初めて成功した。しかしながら、オリゴ糖残基の含量によって溶媒系を変化させる必要があり、今後、体系的に確立されるべき問題点である。つぎに、A型ヒト血漿中に存在するA型転移酵素(GalNAc transferase)を用いて、UDPー[ ^3H]GalNAcからポリマ-中のガラクト-ス残基上へのNーアセチルガラクトサミンこの転移反応について調べた。その結果、H型糖鎖を有するポリマ-にA酵素による[ ^3H]GalNAcの転移が起こっていることが予備的にわかった。このことは、血液型抗原オリゴ糖鎖を有する高分子が、生体分子により認識される可能性を示唆している。N-アセチルグルコサミン誘導体と5-メトキシカルボニルペンタノールとをグリコシデーションし、ガラクトシル化、フコシル化を行って、H型抗原オリゴ糖鎖を合成した。さらに、スペーサー末端のメチルエステル部に2-アミノエタノールをエステルアミド交換により導入し、ここで末端水酸基にアクリル酸クロリドを反応させて、重合可能な官能基を有する3糖モノマーを合成した。次に、化学合成したH型糖鎖を有するモノマーを、アクリルアミドやアクリル酸メチルと共重合して、側鎖に血液型オリゴ糖鎖を有するポリマーを合成した。ABO式血液型の抗原オリゴ糖であるH型糖鎖を有するアクリル酸誘導体モノマーを、トリメチルシリル化ヨウ素を用いて脱ベンジル化を試みたが、二重結合の反応や、エステルの分解などが起こり、選択的な脱ベンジル化はできなかった。また、アクリルアミドと3糖モノマーとの共重合体を接触水添により脱ベンジル化を試みた。パラジウム炭素を触媒とし、DMFと水の混合溶媒を用いた時にポリマーの脱ベンジル化が可能であった。今回合成したポリマーは、共重合体の種類やコポリマー組成に応じて脱ベンジル化反応の溶媒組成を変化させることにより、かなりのものについて脱保護できた。本研究結果は、ポリマー中のベンジル基を脱保護した初めての例である。
KAKENHI-PROJECT-02650662
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02650662
書き換えシステムの基本的性質の解明と定理の自動証明に関する研究
項書き換えシステム(TRS)は等式の集合上で推論や簡約(計算)を行うための計算モデルであり,その応用例として,定理の自動証明,ソフトウェアの正当性検証など非常に重要な問題を包含していることから,これまで多くの研究者の注目を集め,盛んに研究されてきた.しかしながら,TRSの停止性が保証されない場合,或いはTRSが非線形である場合についてはまだ多くの重要な問題が未解決のまま残されていた.そこで,本研究では,まず,非停止または非線形TRSの合流性に関する未解決問題について考察し,新しい証明手法を考案することにより,従来の結果を真に拡張すると共に,従来得られていた,左線形TRSの合流性を保証する条件を一般化することに成功した.次に,以下の条件(a)(c)を満たすTRSの部分クラスSが存在することを明らかにした.(a)任意のTRSから部分クラスSのあるTRSへ等価性(合同関係)を保存した変換手続きが存在し,(b)部分クラスSの書き換えによる計算能力はTuring機械(一般のプログラム)の計算能力と同等で,(c)部分クラスSにおいて,完備化手続きが構築できるような,合流性を保証する条件が導き出せること.さらに,クラスSの合流性を保証する条件からTRSの完備化手続きを構成し,この完備化手続きに基づく定理の自動証明法についての理論的基礎を確立すると共に,新しい定理の自動証明システムを実現して,その有用性を実証した.本研究では,TRSの最も重要な問題の一つである単一化問題についても考察し,合流性を満たす右定項TRSの単一化問題が可解であることを明らかにした.さらに,この証明手法を拡張して合流性を満たす単純TRSの単一化問題が可解であることを示すと共に,合流性を満たす単項TRSについてはこの問題が非可解であることを示した.項書き換えシステム(TRS)は等式の集合上で推論や簡約(計算)を行うための計算モデルであり,その応用例として,定理の自動証明,ソフトウェアの正当性検証など非常に重要な問題を包含していることから,これまで多くの研究者の注目を集め,盛んに研究されてきた.しかしながら,TRSの停止性が保証されない場合,或いはTRSが非線形である場合についてはまだ多くの重要な問題が未解決のまま残されていた.そこで,本研究では,まず,非停止または非線形TRSの合流性に関する未解決問題について考察し,新しい証明手法を考案することにより,従来の結果を真に拡張すると共に,従来得られていた,左線形TRSの合流性を保証する条件を一般化することに成功した.次に,以下の条件(a)(c)を満たすTRSの部分クラスSが存在することを明らかにした.(a)任意のTRSから部分クラスSのあるTRSへ等価性(合同関係)を保存した変換手続きが存在し,(b)部分クラスSの書き換えによる計算能力はTuring機械(一般のプログラム)の計算能力と同等で,(c)部分クラスSにおいて,完備化手続きが構築できるような,合流性を保証する条件が導き出せること.さらに,クラスSの合流性を保証する条件からTRSの完備化手続きを構成し,この完備化手続きに基づく定理の自動証明法についての理論的基礎を確立すると共に,新しい定理の自動証明システムを実現して,その有用性を実証した.本研究では,TRSの最も重要な問題の一つである単一化問題についても考察し,合流性を満たす右定項TRSの単一化問題が可解であることを明らかにした.さらに,この証明手法を拡張して合流性を満たす単純TRSの単一化問題が可解であることを示すと共に,合流性を満たす単項TRSについてはこの問題が非可解であることを示した.項書き換えシステム(TRS)は等式の集合上で推論や簡約(計算)を行うための計算モデルであり,その応用例として,定理の自動証明,関数型プログラムの効率の良い実行,プログラムの仕様と実現の正当性検証など非常に重要な問題を包含していることから,これまで多くの研究者の注目を集め,盛んに研究されてきた.しかしながら,まだ多くの重要な未解決問題が残されており,さらなる研究の発展が望まれている.そこで本研究では,TRSにおける最も基本的で重要な問題である合流性及び単一化問題について研究を行い,判定可能なより広いクラスを明らかにすると共に,その研究成果に基づく(拡張)危険対の新しい完備化法を明らかにした.即ち,まず,強い深さ保存性を満たす右線形TRSについて,その合流性を保証する,より一般的な条件を明らかにすると共に,この条件に基づく,制限のない任意のTRSに対して適用可能な完備化法を明らかにした.次に,線形TRSの合流性に関する,長い間未解決であった重要な問題について研究を行い,従来の結果をさらに拡張することに成功した.また,TRSの部分(sub)TRSの合流性が既知の場合に,元のTRS全体の合流性を保証するためのより一般的な条件を明らかにした.さらに,合流性を満たす右定項TRSの単一化問題の可解性を新しい証明手法を導入することにより,明らかにした.この研究成果はこの分野で最も権威のある国際会議(RTA)で発表論文として採択された.以上のことより,本年度は学術的に重要な研究成果を得ると共に,次年度以降の新しい定理の自動証明法の実現に必須な準備研究を行い,所期の目標を達成することができた.項書き換えシステム(TRS)は等式の集合上で推論や簡約(計算)を行うための計算モデルであり,その応用例として,定理の自動証明,関数型プログラムの効率の良い実行,ソフトウェアの正当性検証など非常に重要な問題を包含していることから,これまで多くの研究者の注目を集め,盛んに研究されてきた.
KAKENHI-PROJECT-12680344
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12680344
書き換えシステムの基本的性質の解明と定理の自動証明に関する研究
しかし,まだ多くの重要な未解決問題が残されており,さらなる研究の発展が望まれている.そこで本研究では,TRSにおける最も基本的で重要な問題である合流性及び単一化問題について研究を行い,前年度に得られた結果をさらに拡張すると共に,その研究成果に基づくより強力な拡張危険対の新しい完備化法を明らかにした.即ち,まず,強い探さ保存性を満たす右線形TRSに関する前年度の結果を拡張して,合流性を保証する,より一般的な条件を明らかにすると共に,この条件に基づく,制限のない任意のTRSに対して適用可能な完備化法を明らかにした.さらに,これらの研究成果を基盤とする,新しい定理の自動証明システムの設計方針を確立し,そのプロトタイプを実装した.次に,線形TRSの合流性に関する従来の結果をさらに拡張すると共に,TRSの部分(sub)TRSの合流性が既知の場合に,元のTRS全体の合流性を保証するためのより一般的な条件を明らかにした.さらに,合流性を満たす右定項TRSの単一化問題の可解性を明らかにした.この研究成果はこの分野で最も権威のある雑誌の一つであるInformation and Computationに掲載が決定された.また,合流性をみたす右定項TRSを真に含む幾つかのクラスについては単一化問題が非可解であることも明らかにした.以上より,本年度は学術的に重要な研究成果を得ると共に,次年度の新しい定理の自動証明法の確立及びその実現に必須な準備研究を行い,所期の目標を達成することができた.項書き換えシステム(TRS)は等式の集合上で推論や簡約(計算)を行うための計算モデルであり,その応用例として,定理の自動証明,関数型プログラムの効率の良い実行,ソフトウェアの正当性検証など非常に重要な問題を包含していることから,これまで多くの研究者の注目を集め,盛んに研究されてきた.しかし,まだ多くの重要な未解決問題が残されており,さらなる研究の発展が望まれている.そこで本研究では,TRSにおける最も基本的で重要な問題である合流性及び単一化問題について研究を行い,前年度に得られた結果をさらに拡張する結果を得た.まず,単一化問題に関して,従来得られていた結果を拡張して,合流性を満たす単純TRSのクラスにおいてもこの問題が可解であることを示すと共に,合流性及び停止性を満たす単項的線形TRSのクラスにおいては決定不能であることを明らかにした.次に,合流性問題に関して,書き換え系列の概念を拡張した書き換えグラフの概念を用いて,従来の結果を真に拡張する結果を得ると共に,TRSが階層構造化され,その部分(sub)TRSの合流性が既知の場合において,TRS全体の合流性を保証する,より一般的な条件を明らかにした.さらに,TRSの停止性を前提にするという従来の定理の自動証明法とは異なり,停止性などの条件を必要としない,より一般的な広いクラスを対象とする新しい定理の自動証明法を初めて明らかにした.また,終代数に基づく定理の自動証明法についての理論的基礎を確立し,この枠組の中で強完全性を保証する,より一般的な条件を明らかにすると共に,新しい定理の自動証明システムを計算機上に実現して,種々の実現上の問題点を洗い出し,その解決のための改善を行った.以上のことより、本年度の研究計画の所期の目的を達成することができた.なお,本年度は本研究課題の最終年度に当り,これらの研究成果をまとめ,報告書を作成した.
KAKENHI-PROJECT-12680344
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GPS・GISを利用したラオス農村部の複合的生業活動に関する時間地理学的研究
<ラオスにおける現地調査>2006年8月にラオスの首都ヴィエンチャンの近郊農村であるドンクアーイ村において,GPSによる生活活動データの収集・GISによって作成された時空間地図を用いた生活行動に対するインタビューを組み合わせた調査を行った.調査対象者は村落内から抽出された40世帯154名(乳児を除く世帯の全員)である.世帯内や農村内部での複数人の分業や時空間的な資源の共有がどのように行われているかを実際に知るために,現地では同時間にある程度まとまった人数のデータを取得する必要がある.このため,25台のGPSを用いて,複数人の活動時間・場所に関するデータを取得した.次に,GISソフトウェア・ノート型コンピュータ・プリンタを用いて,取得したGPSデータを調査直後に現地で分析し,調査カルテの作成を行った.次にそのカルテをもとに活動場所や内容に関するインタビューを行い,個人の時空間収支データの作成を行った.<学会発表・論文>経済地理学会中部支部2006年4月例会にて,生活活動データを用いて農村の日常生活の変化とラオスの近代化に関する発表を行った.2006年7月にオーストラリア・ブリズベンで行われた国際地理学連合地域大会において,昨年度のパイロット調査データに基づくラオスの日常生活の時空間と生業複合に関する研究発表を行った.また,2007年4月に行われたアメリカ地理学会サンフランシスコ大会において,生活活動データの分析を中心としたラオスの日常生活に関する研究発表を行った.また,時間地理学の方法論に関わる著書の分担執筆,時間地理学と関連する認知・行動地理学の学界展望論文は発行された.また.現地のカウンターパートであるラオス国立農林業研究所が発行する専門学術誌への生活活動データの分析に関する論文が掲載予定である。<ラオスにおける現地調査>2006年2月にラオス農村ドンクアーイ村において,GPSによる生活活動データの収集・GISによって作成された時空間地図を用いた生活行動に対するインタビューを組み合わせたパイロット調査を行った.世帯内や農村内部での複数人の分業や時空間的な資源の共有がどのように行われているがを実際に知るためには,現地では同時間にある程度まとまった人数のデータを取得する必要がある.このため,25台のGFSを用いて,複数人の活動時間・場所に関するデータを取得した.次に,GISソフトウェア・ノート型コンピュータ・プリンタを用いて,取得したGPSデータを調査直後に現地で分析し,調査カルテの作成を行った.次にそのカルテをもとに活動場所や内容に関するインタビューを行った.これらの作業を行うため,現地において通訳兼調査補助スタッフにつき謝金による雇い上げを行った.<国内データ分析・学会発表>ラオスの首都ヴィエンチャン近郊に点在する工場労働者の居住地データの分析を行い,ラオスの近郊農村の就業と日常生活に関するデータ作成を行った.2005年9月に行われた日本地理学会大会において,既存の調査統計データからラオスの日常生活の時空間の特徴についての研究発表を行った.また,11月に行われた人文地理学会大会において,作成した工場労働者の居住地データの分析を中心としたラオスの日常生活と産業化に関する研究発表を行った.また,2006年3月に行われた日本地理学大会において,GPS・GISを利用した生活時間・空間の調査法についての発表を行った<ラオスにおける現地調査>2006年8月にラオスの首都ヴィエンチャンの近郊農村であるドンクアーイ村において,GPSによる生活活動データの収集・GISによって作成された時空間地図を用いた生活行動に対するインタビューを組み合わせた調査を行った.調査対象者は村落内から抽出された40世帯154名(乳児を除く世帯の全員)である.世帯内や農村内部での複数人の分業や時空間的な資源の共有がどのように行われているかを実際に知るために,現地では同時間にある程度まとまった人数のデータを取得する必要がある.このため,25台のGPSを用いて,複数人の活動時間・場所に関するデータを取得した.次に,GISソフトウェア・ノート型コンピュータ・プリンタを用いて,取得したGPSデータを調査直後に現地で分析し,調査カルテの作成を行った.次にそのカルテをもとに活動場所や内容に関するインタビューを行い,個人の時空間収支データの作成を行った.<学会発表・論文>経済地理学会中部支部2006年4月例会にて,生活活動データを用いて農村の日常生活の変化とラオスの近代化に関する発表を行った.2006年7月にオーストラリア・ブリズベンで行われた国際地理学連合地域大会において,昨年度のパイロット調査データに基づくラオスの日常生活の時空間と生業複合に関する研究発表を行った.また,2007年4月に行われたアメリカ地理学会サンフランシスコ大会において,生活活動データの分析を中心としたラオスの日常生活に関する研究発表を行った.また,時間地理学の方法論に関わる著書の分担執筆,時間地理学と関連する認知・行動地理学の学界展望論文は発行された.また.現地のカウンターパートであるラオス国立農林業研究所が発行する専門学術誌への生活活動データの分析に関する論文が掲載予定である。
KAKENHI-PROJECT-17720222
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微生物電極界面電子移動の理解と制御に基づくin-vivo酵素反応速度測定法の開発
ある種の微生物は細胞外膜にシトクロムタンパク質(OM c-Cyts)を局在化させることで、細胞外の電極との電子のやり取り(細胞外電子移動(EET))を可能とする。本研究は、精密電気化学測定によりEET菌内酵素の反応電子数を計測し、反応速度を測定するプラットフォームとなる技術を確立することを目的としており、本年度は光合成細菌を用いた計測を行った。しかし、前年度に試みたモデルEET菌(シュワネラ)の電気化学測定と異なり、数か月の試行錯誤を経てなお光合成細菌に起因する電気シグナルの検出には至らなかった。考察の結果、その原因は光合成細菌の電気化学測定の技術的な難度だと考えられた。そこでオーストラリアへと渡航し、光合成細菌の測定に関する知見を有しているクイーンズランド大学のStefano Freguia准教授のもとで実験を行った。その結果、光合成細菌を利用した電気化学測定系の確立に成功し、代謝と酵素反応速度に対応した電気シグナルを取得することができた。本結果は、モデルEET菌であるシュワネラのみならず、EET能を有する多彩な微生物に対して本酵素反応速度測定手法が利用できることを強く示唆するものである。以上の成果に関し、現在論文を執筆している。また、前年度の検討により、シュワネラ菌内のOM c-Cytsがヘムの空間配置を反映した極めて強い円偏光二色性シグナルを示すことが明らかになっている。本知見に基づきOM c-Cytsのシグナル強度を定量比較することで、外膜・細胞外固体との相互作用や電子の流れといった生体特異的な環境の変化によりOM c-Cytsの構造が柔軟に変化することが明らかになった。これらの内容はChemical Communications誌、Langmuir誌に原著論文として掲載され、いずれも雑誌カバーとして採択された。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。酵素反応速度は、反応の機構解明に資する基礎学問的重要性に加え、創薬における薬剤効果の重要な指標となる。そのため、単離精製した酵素を用いた反応速度測定が長年にわたり行われてきたが、単離精製に伴う労力に加え、単離精製条件や測定条件により反応速度に大きな乖離が生じうるため、生体内で直接的に酵素反応速度を得る手法の必要性が高まってきている。本研究では、細胞外電子移動(EET)と呼ばれる電極と細胞内の間での電子伝達を可能とする微生物シュワネラを用い、生細胞内の酵素反応で使われた電子の量を直接電極へ出力することで、電気シグナルにより酵素反応速度を定量する技術の確立を目指す。シュワネラは大腸菌と同等の高い増殖速度を有する取り扱いが極めて容易な菌体であるため、本技術により多様な生細胞内酵素反応の追跡が可能となれば、多くの酵素学、生物物理学研究を飛躍的に進める基盤技術となることが期待できる。当該年度では、本酵素反応速度測定法のコンセプトを立証するため、シュワネラ菌が細胞内に元来有する酵素の反応速度の追跡を試みた。EETを利用した本手法により細胞内の特定の酵素反応を追跡したところ、既報の単離酵素の反応速度と極めて近い速度定数が算出され、本測定法が生体内の酵素反応速度を反映することが強く示唆された。今後は、遺伝子工学的手法を用いることで、シュワネラの元来発現する酵素に限らない、多様な酵素反応を追跡できる基盤技術へと展開させることを予定している。本酵素反応速度測定法のコンセプトを立証するため、シュワネラ菌が細胞内に元来有する酵素の反応速度の追跡を試みた。EET経路を形成し、細胞内の亜硝酸還元酵素であるNrfAの反応速度を追跡すると、亜硝酸還元に対応した還元電流値が観測された。そこで、観測された定常電流値が反応速度に対応すると仮定し反応速度定数を算出したところ、ミカエリスメンテン定数(KM)は55 μM、阻害定数(Ki)は20 mMとなった。驚くべきことに、これらの値は既報の単離NrfAと極めて近い値であり、本測定法が生体内の酵素反応速度を反映することが強く示唆された。このように期待通りの結果が得られ、計画に従って研究を進展させることができた一方で、当初は想定していなかった結果までも得ることに成功した。細胞内フマル酸還元酵素であるFccAに対して上記手法を適用すると、既報の単離酵素よりも約100倍大きなKM値が得られたため、生きたシュワネラ菌そのものを用いた様々な分光手法を利用しその原因を追究した。すると、その原因こそ明らかにならなかったものの、分光法の一つである円偏光二色性をシュワネラ菌に対して測定した際、偶然にもEET経路の一部である外膜シトクロム(OM c-Cyts)が極めて高いシグナルを有することを発見した。円偏光二色性はOM c-Cyts内ヘムの絶対配置を反映したスペクトルを示すことから、生きたシュワネラ内のOM c-Cytsの構造を追跡できる可能性がある。そこで単離したOM c-Cytsのスペクトルと比較すると、生細胞内OM c-Cytsのソーレー帯シグナルの形と強度が大きく変化していることが分かった。これは、生細胞内OMc-Cytsのヘム配置が単離状態と明確に異なることを示しており、生体内でのタンパク質の構造と機能を追究する極めて重要な知見と技術であると言える。ある種の微生物は細胞外膜にシトクロムタンパク質(OM c-Cyts)を局在化させることで、細胞外の電極との電子のやり取り(細胞外電子移動(EET))を可能とする。
KAKENHI-PROJECT-17J02602
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微生物電極界面電子移動の理解と制御に基づくin-vivo酵素反応速度測定法の開発
本研究は、精密電気化学測定によりEET菌内酵素の反応電子数を計測し、反応速度を測定するプラットフォームとなる技術を確立することを目的としており、本年度は光合成細菌を用いた計測を行った。しかし、前年度に試みたモデルEET菌(シュワネラ)の電気化学測定と異なり、数か月の試行錯誤を経てなお光合成細菌に起因する電気シグナルの検出には至らなかった。考察の結果、その原因は光合成細菌の電気化学測定の技術的な難度だと考えられた。そこでオーストラリアへと渡航し、光合成細菌の測定に関する知見を有しているクイーンズランド大学のStefano Freguia准教授のもとで実験を行った。その結果、光合成細菌を利用した電気化学測定系の確立に成功し、代謝と酵素反応速度に対応した電気シグナルを取得することができた。本結果は、モデルEET菌であるシュワネラのみならず、EET能を有する多彩な微生物に対して本酵素反応速度測定手法が利用できることを強く示唆するものである。以上の成果に関し、現在論文を執筆している。また、前年度の検討により、シュワネラ菌内のOM c-Cytsがヘムの空間配置を反映した極めて強い円偏光二色性シグナルを示すことが明らかになっている。本知見に基づきOM c-Cytsのシグナル強度を定量比較することで、外膜・細胞外固体との相互作用や電子の流れといった生体特異的な環境の変化によりOM c-Cytsの構造が柔軟に変化することが明らかになった。これらの内容はChemical Communications誌、Langmuir誌に原著論文として掲載され、いずれも雑誌カバーとして採択された。遺伝子工学的手法を用いることで、シュワネラの元来発現する酵素に限らない、多様な酵素反応を追跡できる基盤技術へと展開させる。目的酵素をコードするプラスミドをシュワネラに導入し反応速度を追跡することで、シュワネラを酵素反応測定のためのプラットフォームとして発展させる。具体的には、創薬分野で分子ライブラリーとして用いられるシトクロムP450を発現させ、購入可能である単離精製されたシトクロムP450の反応速度と比較することで、基盤技術としての有用性を議論する。また、測定の成否に直接影響を与えうる、シュワネラの遺伝子発現変化を定量するために必須となるマイクロアレイの外注を行う。偶然にも明らかになった円偏光二色性による生体内OM c-Cyts構造追跡技術は、これまでに確立されてきた細胞内タンパク質構造を追跡する手法に比べ、極めて短時間で測定が可能である。そのため、本手法を用いてタンパク質の経時変化や動的な変化を追跡することで、生きた細胞内のタンパク質と単離されたタンパク質の性質の違いをより詳しく検討していくことを予定している。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-17J02602
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アフリカ大湖地域における多元的な歴史の生成と暴力に抗する共生社会に関する研究
本研究の目的は、ルワンダを中心としたアフリカ大湖地域を対象に、暴力的に創出される「国家の歴史」に対して、人びとの共約不可能な記憶が、それとの対処や折衝を繰り返しながら生起している様相をつぶさに記述することである。そこから、その記憶を感知する者とのあいだに個別の歴史が生成し、地域社会のなかで対立関係になった人びとがともに生きるための、共生社会の実現にむけた構想を示していくことを目指す。平成30年度には、2018年4月2日23日の期間でルワンダに渡航した。本渡航では、1ルワンダ全国で毎年4月に実施される虐殺記念事業における国家の取り組みと、2それに対する人びとの反応に関する現地調査をおこなうことをおもな目的とした。11994年に虐殺を経験したルワンダでは、毎年4月7日からの一週間を虐殺記念週間と位置づけている。その一週間は全国の行政村を単位として、毎日午後15時より対話集会が開かれる。この集会をはじめとする虐殺記念事業における国家の取り組みは、ひろく「国家の歴史」を普及させる場として機能するとともに、政権の正統性を高めるためにおこなわれてきた。2上記のような取り組みのもとでは、個々の凄惨な経験や愛する者の死を嘆き悲しむことができるか否かにおいて、格差をともなう承認の配置がなされており、人びとの感情が規律化される事態が生じていた。他方で調査地の対話集会においては、人びとが他者の痛みを感知し、それに応じる姿がみられた。それは、承認の政治にもとづく市民の創出とその排除の仕組みを乗り越えうる、共生への萌芽として考えられる。研究成果の一部は、「日本アフリカ学会」や「日本文化人類学会」などの学会の場で発表した。また、『文化人類学』の特集号として論文の投稿をおこない、平成31年3月までに掲載が確定している。さらに、これまでの一連の研究成果を博士論文として執筆した。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。本研究の目的は、ルワンダを中心としたアフリカ大湖地域を対象に、暴力的に創出される「国家の歴史」に対して、人びとの共約不可能な記憶が、それとの対処や折衝を繰り返しながら生起している様相をつぶさに記述することにある。そこから、その記憶を感知する者とのあいだに個別の歴史が生成し、地域社会のなかで対立関係になった人びとがともに生きるための、共生社会の実現にむけた構想を示していくことを目指す。平成29年度は、2017年7月30日9月7日にルワンダ共和国で現地調査を実施した。本調査では、1990年代前半の紛争や虐殺を経験していない若者世代の歴史認識と国家の影響を検討することを目的としていたため、まずは、1とくに農村部における若者の生活実態、2学校教育における歴史の授業内容、に焦点をあてて調査をおこなった。1ルワンダの農村部では、近年の人口増加と土地の細分化による相続地の減少とともに、多くの若者が都市部へ働きに出るようになっている。しかしその場合も、ルワンダでは就業機会がいまだかなり限定されているために、若者たちの雇用先のひとつとして、女性のあいだにおいてさえ軍隊が選び取られつつあることが明らかとなった。そしてこのような傾向は、ルワンダの国家が形成する「平和」のあり方とも密接に関係していることが示唆された。2ルワンダの歴史に関する授業は、おもに中等教育から開始される。その授業内容の詳細については現在分析中であるが、一部の大人世代からは、虐殺の前後で授業内容が大きく変化したことが指摘された。とくに前政権にかかわる内容はすべて否定的な記述になったこと、また現在の「国家の歴史」のなかでは「語られない死」の存在があることも言及された。研究成果の一部は、すでに「国際ジェノサイド学会」などの学会の場で発表した。また、『スワヒリ&アフリカ研究』誌などに論文として掲載された。ルワンダにおける現地調査は、当初の計画よりも短期間の滞在にはなったが、予定していた調査を遂行することができた。また現地滞在中に、研究開始時より調査対象としてきた一人の虐殺生存者のトゥチ女性の結婚式に参列することができたことは、今後の研究を進めるうえでも貴重な機会となった。彼女の婚出先は隣村のフトゥの男性である。結婚は村をあげて催され、彼女が地域社会のなかで孤立することなく生きている姿を確認することができた。婚出先の家族とこれからいかなる関係を築いていくのか、また過去の経験をどのように共有していくのかについては継続的な調査が必要であるが、彼女とその母親の凄惨な体験や記憶が、彼女たちの内だけで保持されるものではないことが、結婚の一連の手続きからは示唆された。研究成果の公開に関しては、国内および国外で数件の口頭発表をおこなった。とくにオーストラリアで開催された「国際ジェノサイド学会」における口頭発表では、ナチスドイツやカンボジア、ブルンジなどの研究に従事する聴衆から多様な意見をいただき、大変有意義な時間を過ごすことができた。雑誌論文への投稿もおこない、本研究に関する成果の公表を進めた。本研究の目的は、ルワンダを中心としたアフリカ大湖地域を対象に、暴力的に創出される「国家の歴史」に対して、人びとの共約不可能な記憶が、それとの対処や折衝を繰り返しながら生起している様相をつぶさに記述することである。そこから、その記憶を感知する者とのあいだに個別の歴史が生成し、地域社会のなかで対立関係になった人びとがともに生きるための、共生社会の実現にむけた構想を示していくことを目指す。
KAKENHI-PROJECT-17J04126
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J04126
アフリカ大湖地域における多元的な歴史の生成と暴力に抗する共生社会に関する研究
平成30年度には、2018年4月2日23日の期間でルワンダに渡航した。本渡航では、1ルワンダ全国で毎年4月に実施される虐殺記念事業における国家の取り組みと、2それに対する人びとの反応に関する現地調査をおこなうことをおもな目的とした。11994年に虐殺を経験したルワンダでは、毎年4月7日からの一週間を虐殺記念週間と位置づけている。その一週間は全国の行政村を単位として、毎日午後15時より対話集会が開かれる。この集会をはじめとする虐殺記念事業における国家の取り組みは、ひろく「国家の歴史」を普及させる場として機能するとともに、政権の正統性を高めるためにおこなわれてきた。2上記のような取り組みのもとでは、個々の凄惨な経験や愛する者の死を嘆き悲しむことができるか否かにおいて、格差をともなう承認の配置がなされており、人びとの感情が規律化される事態が生じていた。他方で調査地の対話集会においては、人びとが他者の痛みを感知し、それに応じる姿がみられた。それは、承認の政治にもとづく市民の創出とその排除の仕組みを乗り越えうる、共生への萌芽として考えられる。研究成果の一部は、「日本アフリカ学会」や「日本文化人類学会」などの学会の場で発表した。また、『文化人類学』の特集号として論文の投稿をおこない、平成31年3月までに掲載が確定している。さらに、これまでの一連の研究成果を博士論文として執筆した。平成30年度には、再度、海外渡航をおこない現地調査に従事することで、前年度に集めた情報を補足するための資料の収集に努める。とくに平成29年度の現地調査の際には、家族のなかであっても、紛争時の経験についての語りやその共有が積極的にはおこなわれていない場合のあることが垣間見られたが、そのようなときに、個々の記憶がだれとともにどのように維持され、また継承されていくのかについて、重点的に調査をおこなっていく。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-17J04126
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J04126
2方向形状記憶効果メカニズム解明/開発と応用
初年度(平成13年度)は、申請者らがめざす形状記憶合金を用いたシンプルで複雑な3次元的動きが可能なアクチュエータの開発にあたり、形状記憶合金の持つアクチュエータ機能(二方向形状記憶効果)の基本的性質および可能性を詳しく調べた。1.二方向形状記憶挙動の3次元的運動を計測するための計測システムを開発した。すなわち、形状記憶合金に余分な外力を与えないためにロゼット型ひずみゲージを用いた計測システムを構築した。また、トレーニングされた試験片に適切な温度サイクルを与えるため、低温用温度槽を用いた温度制御装置を作成し、これに前述の計測システムを組み込こんだ。2.申請者らがこれまでに用いてきた実績のある銅系形状記憶合金を薄肉円筒形状に加工した試験片に、軸力・ねじり組合せ負荷試験装置(オートグラフ/島津製作所)を用いて、まず引張および単純ねじりによる単純負荷トレーニングを与え、トレーニング強度と二方向形状記憶挙動の間の基礎的な関係を調べた。同時に、トレーニングによる微視的構造変化、すなわち内部残留応力の発生メカニズムを考察した。3.単純負荷トレーニングの結果を基礎として、次に用系形状記憶合金製の薄肉円筒に軸力とねじりの組合せ負荷を用いた種々のトレーニングを与え、複合負荷トレーニングが与える二方向形状記憶挙動への影響を詳しく調べた。この成果を踏まえ、本年度(平成14年度)では、得られた実験結果を詳しく分析し、二方向形状記憶効果の基礎メカニズムの解明、応用の可能性を論じ、いくつかの追加実験を行った。また、他の材料、特に優れた特性をもつTi-Ni系形状記値合金を用いた同様の実験を行い、二方向形状記憶効果の本質的メカニズムを解明に務めた。ここで得られた多くの研究成果については、国内外の学会誌また学術講演会などを通じ広く公表してきた。初年度(平成13年度)は、申請者らがめざす形状記憶合金を用いたシンプルで複雑な3次元的動きが可能なアクチュエータの開発にあたり、形状記憶合金の持つアクチュエータ機能(二方向形状記憶効果)の基本的性質および可能性を詳しく調べた。1.二方向形状記憶挙動の3次元的運動を計測するための計測システムを開発した。すなわち、形状記憶合金に余分な外力を与えないためにロゼット型ひずみゲージを用いた計測システムを構築した。また、トレーニングされた試験片に適切な温度サイクルを与えるため、低温用温度槽を用いた温度制御装置を作成し、これに前述の計測システムを組み込こんだ。2.申請者らがこれまでに用いてきた実績のある銅系形状記憶合金を薄肉円筒形状に加工した試験片に、軸力・ねじり組合せ負荷試験装置(オートグラフ/島津製作所)を用いて、まず引張および単純ねじりによる単純負荷トレーニングを与え、トレーニング強度と二方向形状記憶挙動の間の基礎的な関係を調べた。同時に、トレーニングによる微視的構造変化、すなわち内部残留応力の発生メカニズムを考察した。3.単純負荷トレーニングの結果を基礎として、次に用系形状記憶合金製の薄肉円筒に軸力とねじりの組合せ負荷を用いた種々のトレーニングを与え、複合負荷トレーニングが与える二方向形状記憶挙動への影響を詳しく調べた。この成果を踏まえ、本年度(平成14年度)では、得られた実験結果を詳しく分析し、二方向形状記憶効果の基礎メカニズムの解明、応用の可能性を論じ、いくつかの追加実験を行った。また、他の材料、特に優れた特性をもつTi-Ni系形状記値合金を用いた同様の実験を行い、二方向形状記憶効果の本質的メカニズムを解明に務めた。ここで得られた多くの研究成果については、国内外の学会誌また学術講演会などを通じ広く公表してきた。初年度は、申請者らがめざす形状記憶合金を用いたシンプルで複雑な3次元的動きが可能なアクチュエータの開発にあたり、形状記憶合金のもつアクチュエータ機能(二方向形状記憶効果)の基本的性質および可能性を詳しく調べた。1.二方向形状記憶挙動の3次元的運動を計測するための計測システムを開発した。すなわち、形状記憶合金に余分な外力を与えないためにロゼット型ひずみゲージを用いた計測システムを構築(購入備品:シグナルコンディショナー)した。2.申請者らがこれまでに用いてきた実績のある銅系形状記憶合金を薄肉円筒形状に加工した試験片に、軸力・ねじり組合せ負荷試験装置(オートグラフ/島津製作所)を用いて、まず引張および単純ねじりによる単純負荷トレーニングを与え、トレーニング強度と二方向形状記憶挙動の間の基礎的な関係を調べた。同時に、トレーニングによる微視的構造変化、すなわち内部残留応力の発生メカニズムを考察した。これらの成果については、国内外の学会発表・論文などの形で公表した。初年度(平成13年度)は、申請者らがめざす形状記憶合金を用いたシンプルで複雑な3次元的動きが可能なアクチュエータの開発にあたり、形状記憶合金の持つアクチュエータ機能(二方向形状記憶効果)の基本的性質および可能性を詳しく調べた。1.二方向形状記憶挙動の3次元的運動を計測するための計測システムを開発した。すなわち、形状記憶合金に余分な外力を与えないためにロゼット型ひずみゲージを用いた計測システムを構築した。また、トレーニングされた試験片に適切な温度サイクルを与えるため、低温用温度槽を用いた温度制御装置を作成し、これに前述の計測システムを組み込こんだ。2.申請者らがこれまでに用いてきた実績のある銅系形状記憶合金を薄肉円筒形状に加工した試験片に、軸力・ねじり粗合せ負荷試験装置(オートグラフ/島津製作所)を用いて、まず引張および単純ねじりによる単純負荷トレーニングを与え、トレーニング強度と二方向形状記憶挙動の間の基礎的な関係を調べた。同時に、トレーニングによる微視的構造変化、すなわち内部残留応力の発生メカニズムを考察した。
KAKENHI-PROJECT-13650086
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13650086
2方向形状記憶効果メカニズム解明/開発と応用
3.単純負荷トレーニングの結果を基礎として、次に銅系形状記憶合金製の薄肉円筒に軸力とねじりの組合せ負荷を用いた種々のトレーニングを与え、複合負荷トレーニングが与える二方向形状記憶挙動への影響を詳しく調べた。この成果を踏まえ、本年度(平成14年度)では、得られた実験結果を詳しく分析し、二方向形状記憶効果の基礎メカニズムの解明、応用の可能性を論じ、いくつかの追加実験を行った。また、他の材料、特に優れた特性をもつTi-Ni系形状記憶合金を用いた同様の実験を行い、二方向形状記憶効果の本質的メカニズムを解明に務めた。ここで得られた多くの研究成果については、国内外の学会誌また学術講演会などを通じ広く公表してきた。
KAKENHI-PROJECT-13650086
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13650086
^<31>p核磁気共鳴スペクトルによる癌に対する光力学的治療の評価
光力学的治療(PDT)の効果が^<31>P核磁気共鳴スペクトル(^<31>PMRS)で評価できるか、またPDTが肝細胞癌の治療に応用できるか否かを検討する目的で実験し、以下の結果を得た。1. ^<31>PMRSによるPDTの評価BALB/cヌードマウスに移植したHela腫瘍にATX-S10あるいはフォトフリン・II(Ph-II)を投与して、PDTを行い両者の作用機序の差異について^<31>PMRSと病理像より検討した。PDT後28日までに完全治癒あるいは再発したが一旦腫瘍が消失した高効果群と期間中腫瘍が消失しない低効果群を比較した。ATX-S10ではPDT後1日目のβ-ATP/total P比が、Ph-IIではPDT後7日目までのtotal Pの減少度が治療効果を反映した。高効果群の1日目の病理と^<31>PMRSを比較したところ、ATX-S10では腫瘍全体が壊死に陥っていてATPが消失しているのに対し、Ph-IIでは完全に壊死しておらずATPが残っていた。これは作用機序の違いによる障害状態の相違を^<31>PMRSで捕らえたものと考えられた。以上よりPDTの治療効果の評価に^<31>PMRSが有用であることが示唆された。2.実験的肝癌に対する光感受性物質の肝臓内分布についての検討ラットにジエチルニトロソアミンを投与して肝内に癌境界病変から高一低分化肝癌までの様々の病変を有する化学発癌モデルを作成した。δ-アミノレプリン酸(ALA)を投与し、一定時間後開腹し、各部位のALA由来のfluorescence量をlight induced fluorescence detection systemを用いて検討した。その結果、一定時間後に他の部位より癌部の蛍光強度が高い傾向が認められ、ALA分布の選択性が示唆された。この結果は肝細胞癌の治療にPDTが応用できる可能性を示すものと考えられた。光力学的治療(PDT)の効果が^<31>P核磁気共鳴スペクトル(^<31>PMRS)で評価できるか、またPDTが肝細胞癌の治療に応用できるか否かを検討する目的で実験し、以下の結果を得た。1. ^<31>PMRSによるPDTの評価BALB/cヌードマウスに移植したHela腫瘍にATX-S10あるいはフォトフリン・II(Ph-II)を投与して、PDTを行い両者の作用機序の差異について^<31>PMRSと病理像より検討した。PDT後28日までに完全治癒あるいは再発したが一旦腫瘍が消失した高効果群と期間中腫瘍が消失しない低効果群を比較した。ATX-S10ではPDT後1日目のβ-ATP/total P比が、Ph-IIではPDT後7日目までのtotal Pの減少度が治療効果を反映した。高効果群の1日目の病理と^<31>PMRSを比較したところ、ATX-S10では腫瘍全体が壊死に陥っていてATPが消失しているのに対し、Ph-IIでは完全に壊死しておらずATPが残っていた。これは作用機序の違いによる障害状態の相違を^<31>PMRSで捕らえたものと考えられた。以上よりPDTの治療効果の評価に^<31>PMRSが有用であることが示唆された。2.実験的肝癌に対する光感受性物質の肝臓内分布についての検討ラットにジエチルニトロソアミンを投与して肝内に癌境界病変から高一低分化肝癌までの様々の病変を有する化学発癌モデルを作成した。δ-アミノレプリン酸(ALA)を投与し、一定時間後開腹し、各部位のALA由来のfluorescence量をlight induced fluorescence detection systemを用いて検討した。その結果、一定時間後に他の部位より癌部の蛍光強度が高い傾向が認められ、ALA分布の選択性が示唆された。この結果は肝細胞癌の治療にPDTが応用できる可能性を示すものと考えられた。ATX-S10とフォトフリンII(Ph-II)によるPDTの作用機序の差異について_<31>P核磁気共鳴スペクトル(_<31>P MRS)と病理像を用いて検討した。BALB/cに移植HeLa腫瘍を作成しATX-S10とPh-IIによりPDTを行い、経時的に_<31>P MRSおよび病理組織像について検討し、その両者を比較することにより、光感受性物質の相違による抗腫瘍効果の差異を検討した。PDT後28日までの観察により完全に腫瘍が消失したCR群と7日から10日目ごろ肉眼的に一旦腫瘍が消失した後、再び大きくなる再発群は7日目まで差がなくhigh effect群とし、期間中一度も腫瘍の消えないPR群をlow effect群とした。ATX-S10によるPDTでは1日目のMRSにおける総リン量と残存ATR量の比により両群の区別が可能であった。Ph-IIのPDTでは7日目までリン総量の減少度が大きい程効果が大であったが、1日目のMRSパターンは両群ともATPが残存しており差がなかった。病理所見からは生きている細胞の多少はMRSのATPの多少で示された。ATX-S10によるPDTではhigh effectの場合1日目に細胞はほとんど死滅しておりMRSはhypoxic patternをとった。Ph-IIのPDTではほとんどの細胞が死滅している場合と残っている場合があり、いずれもMRSでATPが残っていた。
KAKENHI-PROJECT-09670534
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^<31>p核磁気共鳴スペクトルによる癌に対する光力学的治療の評価
このことから、Ph-IIは、ATX-S10が血流遮断効果により腫瘍全体が障害されるのと異なり、細胞レベルで障害され、その程度によってPDTの効果が異なることがわかった。以上よりPDT治療後28日目に判定した治療効果を治療後7日目までのMRSで予測できることが病理により裏付けられた。2種類の光感受性物質によるMRSパターンの違いは、作用機序の違いによる腫瘍の障害状態の相違を示している。光力学的治療(PDT)では正常部分への影響を少なくするため、癌部、非癌部における光感受性物質の分布の差が大きいことが望まれる。どのような種類の光感受性物質がより肝臓癌の治療に適しているかを評価する目的で、化学発癌肝癌モデルを用いて、光感受性物質の正常部分と腫瘍部分の分布の差について検討した。ラットにジエチルニトロソアミン100ppm水溶液を11週間自由に飲水させ、その後2,3週間水道水で飼育し、化学発癌肝癌モデルを作成した。この時期のラット肝臓では組織学的に変異肝細胞巣や過形成性結節などの境界病変から、高分化型から低分化型にわたる肝細胞癌まで、様々な段階の病変がみられ、人の肝細胞癌に近い進展像および組織像が得られた。この時期のラットに、代謝が速く毒性の少ない光感受性物質前駆体であり、なおかつ樹立肝細胞株を用いた実験において正常肝細胞より肝癌細胞に高く集積したとの報告のあるδ-アミノレブリン酸(ALA)500mg/kgを投与し、一定時間後(1,2,3,4,6,8,時間後)に開腹、light induced fluorescence detectionsystem(浜松ホトニクス社製PMA-10)を用いて癌部、非癌部における蛍光強度の測定を行った。測定後屠殺し、蛍光測定部位の病理標本および蛍光光度計測定のための資料を作成した。その結果、蛍光強度は肉眼的な病変の検討では時間経過において、非癌部より癌部に高い傾向が認められた。すなわち、肝細胞癌においても光感受性物質の分布の腫瘍選択性が認められ、治療に応用できる可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-09670534
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脱血時の皮弁内微小循環の変動に及ぼす諸因子の影響について
急性大量出血が、有茎皮膚弁移植術後の皮弁内の微小循環動態に与える影響を視覚的に捕える事を目的とし、皮弁内微小循環系の脱血時の変動を観察した。ラット挙筆筋弁を皮弁のモデルとして用いた。皮弁内微小循環を毎秒1000コマの高速度ビデオにより観察し、ビデオ画面上で動静脈径の計測および血流速度の計測を行った。脱血により血流速度は細動脈では急速に低下、細静脈では徐々に低下した。補液および輸血により血流速度は速やかに回復したが、輸血群でもっとも早く回復した。細動脈径は脱血により急速に縮小し、桶液及び輸血により回復したが、細静脈および毛細血管においては全経過中血管径はほとんど変化しなかった。輸血により血圧は脱血前値よりも高値を示し、低分子デキストラン(DXT)投与では血圧の回復は生食補液時と比較しても緩やかであった。この事は、DXTは全身血圧の上昇無しに微小循環を改善させる事を示し、血圧値は必ずしも微小循環の回復の指標とはならない事が示唆された。脱血時にプロスタグランディンE1(PGE1)を1μg/kg/min静脈内持続注入した群と、ペントキシフィリン(PTX)を6mg/kg静脈内投与した群とで比較すると、PGE1では投与後早期より血圧の上昇を伴わずに細動脈、細静脈の血流速度を改善し、細動脈血管径を拡張させたが、PTX投与群では、血管径の拡張を伴わずに、血流速度の改善が見られた。これは本剤の赤血球変形能亢進作用による効果と思われた。つぎに、一酸化窒素(NO)濃度と微小循環の関係を観察するため、NO産生物質であるスペルミン/NO複合体(スペルミン)を投与した。スペルミン投与により、濃度依存性に血中のNO量も増加したが、NOが平常時の10倍の濃度にまで増加しないと、細動脈径に変化は起こらず、生体内では、NOが恒常性を保つように働くと考えられた。急性大量出血が、有茎皮膚弁移植術後の皮弁内の微小循環動態に与える影響を視覚的に捕える事を目的とし、皮弁内微小循環系の脱血時の変動を観察した。ラット挙筆筋弁を皮弁のモデルとして用いた。皮弁内微小循環を毎秒1000コマの高速度ビデオにより観察し、ビデオ画面上で動静脈径の計測および血流速度の計測を行った。脱血により血流速度は細動脈では急速に低下、細静脈では徐々に低下した。補液および輸血により血流速度は速やかに回復したが、輸血群でもっとも早く回復した。細動脈径は脱血により急速に縮小し、桶液及び輸血により回復したが、細静脈および毛細血管においては全経過中血管径はほとんど変化しなかった。輸血により血圧は脱血前値よりも高値を示し、低分子デキストラン(DXT)投与では血圧の回復は生食補液時と比較しても緩やかであった。この事は、DXTは全身血圧の上昇無しに微小循環を改善させる事を示し、血圧値は必ずしも微小循環の回復の指標とはならない事が示唆された。脱血時にプロスタグランディンE1(PGE1)を1μg/kg/min静脈内持続注入した群と、ペントキシフィリン(PTX)を6mg/kg静脈内投与した群とで比較すると、PGE1では投与後早期より血圧の上昇を伴わずに細動脈、細静脈の血流速度を改善し、細動脈血管径を拡張させたが、PTX投与群では、血管径の拡張を伴わずに、血流速度の改善が見られた。これは本剤の赤血球変形能亢進作用による効果と思われた。つぎに、一酸化窒素(NO)濃度と微小循環の関係を観察するため、NO産生物質であるスペルミン/NO複合体(スペルミン)を投与した。スペルミン投与により、濃度依存性に血中のNO量も増加したが、NOが平常時の10倍の濃度にまで増加しないと、細動脈径に変化は起こらず、生体内では、NOが恒常性を保つように働くと考えられた。急性大量出血が、有茎皮膚弁移植術後の皮弁内の微小循環動態にどのような影響を与えるかを知る事を目的とし、まず皮弁内微小循環型の脱血時の変動を視覚的に観察した。ラットの挙睾筋を下腹壁動静脈を栄養血管とする皮弁モデルとして挙上し、皮弁内の微小循環を毎秒1000コマの高速度ビデオにより観察し、ビデオ画面上で動静脈径の計測および高速度画像のコマ落とし再生による赤血球移動距離の測定により血流速度の計測を行った。同時に頸動脈にカニュレーションし、中心血圧の測定を行った。脱血量は3ccに設定した。脱血のみを行ったものを対照群として、脱血に対する処置として、生理食塩水の補液を行った群と、循環改善剤としての低分子デキストランを投与した群、および脱血した血液を返血(輸血)した群とで、末梢循環の変化を観察した。脱血により細胞脈の血流速度は急激に低下、細静脈血流速度は徐々に低下した。補液および輸血により血流速度は速やかに回復したが、輸血群でもっとも早く回復した。細動脈径は脱血により急速に縮小し、補液および輸血により回復したが、細静脈および毛細血管においては全経過中血管径の変化はほとんど見られなかった。
KAKENHI-PROJECT-08671698
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脱血時の皮弁内微小循環の変動に及ぼす諸因子の影響について
輸血により中心血圧は脱血前値よりも高値を示し、デキストラン投与では血圧の回復は生食補液時と比較しても緩やかであった。この事は、デキストランは全身血圧の上昇無しに微小循環を改善させる事を示しており、血圧値は必ずしもの微小循環の回復の指標とはならない事が示唆された。今後は種々の薬剤の微小循環に与える影響を検討する予定である。急性の大量出血が、皮弁内微小循環に与える影響を確認するため、ラット挙睾筋皮弁を用いて、高速度ビデオにより微小循環を観察した。昨年度の研究で、細動脈の血流速度及び血管径は、脱血とともに急速に減少し、輸液、輸血により速やかに回復するが細静脈及び毛細血管では殆ど変動がないこと、輸血は血圧を脱血前の値より上昇させるが、低分子デキストランは血圧を上昇させることなく末梢の循環を改善する効果があることなどを確認した。今年度は、まず、同一の実験系を用いて、失血性ショックに対する薬剤の効果を観察した。脱血後にプロスタグランディンE1(以下PGE1)を1μg/kg/min静脈内持続注入した群と、ペントキシフィリン(以下PTX)を6mg/kg静脈投与した群とで、脱血後の微小循環の変化を観察した。結果はPGE1では投与後早期より血圧の上昇を伴わず細動脈、細静脈の血流速度を改善し、細動脈血管径を拡張させた。PTX投与群では、血管径の拡張を伴わずに、血流速度の改善が見られた。これは本剤の赤血球変形能の亢進作用による効果と思われた。またPTX投与群では、作用発現に時間を要したが、作用の持続時間は長かった。つぎに、近年血管内皮由来の弛緩因子として知られている一酸化窒素(以下NO)が、微小循環にどのような影響を与えるかを確認するため、NO産生物質であるスペルミン/NO複合体(以下スぺルミン)を投与し、同一実験系でNO濃度と微小循環の関係を観察した。スペルミン投与により、濃度依存性に血中のNO量も増加したが、Noが平常時の10倍の濃度にまで増加ないと、細動脈径に変化は起こらず、生体内では、NO恒常性を保つように働くと考えられた。今後は、さらに失血性ショック時のNOの働きについて検討を加える予定である。
KAKENHI-PROJECT-08671698
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消化管粘膜におけるTrefoil peptide(pS2gene)の発現の検討
本研究の目的は,消化性潰瘍やCrohn病あるいは潰瘍性大腸炎の様な慢性潰瘍性病変の治癒過程におけるpS2などのtrefoil peptides(TP)の発現を分子生物学的に検討し,その治療に貢献しようとするものである.胃潰瘍に関しては,ラット胃に酢酸潰瘍を作成し、胃炎についてはインドメタシンンを用いてモデルを作成しその治癒過程を追跡した.単層培養細胞に我々の考案した方法により欠損部を作成し,その治癒過程を解析した.この際細胞増殖と細胞遊走を分離して検討し、この場合におけるTPの発現を組織学的及び生化学的方法を用いて解析した.またEGF,TGFαなどの増殖因子のTP発現に対する影響を検討した.まずin vivoおよびin vitroでのTP蛋白の発現を免疫組織学的及びWestern blottingを用いて検討した.TPのmRNA発現に関しては,pS2geneのcDNAをRT-PCRを用いて作成しているので,それをプローブとしてNorthern blottingより検討した.TPにはpS2gene,hSPをはじめ多くの種類が存在するため,それぞれの部位でのPCR,RT-PCRを用いた遺伝子学的検討が進行中である.特にヒト生検組織は量的に少ないためPCRを用いた検討を行っている.上記の基礎的検討を基盤として,ヒト生検材料及び手術材料においてTPの発現を検討している.本研究の目的は,消化性潰瘍やCrohn病あるいは潰瘍性大腸炎の様な慢性潰瘍性病変の治癒過程におけるpS2などのtrefoil peptides(TP)の発現を分子生物学的に検討し,その治療に貢献しようとするものである.胃潰瘍に関しては,ラット胃に酢酸潰瘍を作成し、胃炎についてはインドメタシンンを用いてモデルを作成しその治癒過程を追跡した.単層培養細胞に我々の考案した方法により欠損部を作成し,その治癒過程を解析した.この際細胞増殖と細胞遊走を分離して検討し、この場合におけるTPの発現を組織学的及び生化学的方法を用いて解析した.またEGF,TGFαなどの増殖因子のTP発現に対する影響を検討した.まずin vivoおよびin vitroでのTP蛋白の発現を免疫組織学的及びWestern blottingを用いて検討した.TPのmRNA発現に関しては,pS2geneのcDNAをRT-PCRを用いて作成しているので,それをプローブとしてNorthern blottingより検討した.TPにはpS2gene,hSPをはじめ多くの種類が存在するため,それぞれの部位でのPCR,RT-PCRを用いた遺伝子学的検討が進行中である.特にヒト生検組織は量的に少ないためPCRを用いた検討を行っている.上記の基礎的検討を基盤として,ヒト生検材料及び手術材料においてTPの発現を検討している.
KAKENHI-PROJECT-08670618
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旧ソ連における農村地域での所有・経営形態の転換-ロシアを中心として
土地改革の基礎である「ロシア土地法典草案」が1995年半ばに至って議会で採択された。その基調は、現実の土地・企業財産の私有化過程を反映してかさまざまな制限、猶予を置いた漸進的なものであり、土地私有権の承認等に関して現行憲法と矛盾する点を持っている。本草案を契機として連邦レベルでの所有・経営形態転換がいかに展開するかのフォローがますます重要になってきている。他方で、地域(地方)における所有・経営形態過程は、資料上の制約があるが現在のところ次のような類型化が可能である。第一に、転換先行地域であり、その一つのニジュゴロド州は、「資本主義の実験場」にふさわしく土地・企業財産の私有化について中央に比べて穏健で段階的な成熟過程・手続きを細かく規定した独自の方式を編み出し、国内の他の地域をもリ-ドする地位にある。しかし、先行が成功を約束するものでないことも示している。第二に、従来から農業の地位、役割が低かった地域(工業都市)における転換についてである。ウラル経済地域のスヴェルドロフスク・エカチェリンブルグは、もともと閉鎖都市として重・運需産業地帯に特化した産業構造を持っていた。したがって、農業自体の占める役割は大きくなかった歴史的要因から、農業における私有化過程にそう特筆すべきものはないと言ってよいが、問題は、農業改革によってそのすべての指標悪化が促進され、離農・農業生産の衰退に拍車がかかっていることである。第三に、中央の政策と一定の距離を置いて、独自の改革路線を実行している地域がある。その代表と目されるタタール共和国では、連邦や他地域とは大きく異なる性格を帯びた市場経済化への移行が展開されている。端的に言えば、コルホ-ズ、ソフホ-ズ改造型の漸新的私有化とそれに基づく安定的農民の創出が進行しており、ロシアにおけるシステム転換の一つのオールタナティヴを提起している。土地改革の基礎である「ロシア土地法典草案」が1995年半ばに至って議会で採択された。その基調は、現実の土地・企業財産の私有化過程を反映してかさまざまな制限、猶予を置いた漸進的なものであり、土地私有権の承認等に関して現行憲法と矛盾する点を持っている。本草案を契機として連邦レベルでの所有・経営形態転換がいかに展開するかのフォローがますます重要になってきている。他方で、地域(地方)における所有・経営形態過程は、資料上の制約があるが現在のところ次のような類型化が可能である。第一に、転換先行地域であり、その一つのニジュゴロド州は、「資本主義の実験場」にふさわしく土地・企業財産の私有化について中央に比べて穏健で段階的な成熟過程・手続きを細かく規定した独自の方式を編み出し、国内の他の地域をもリ-ドする地位にある。しかし、先行が成功を約束するものでないことも示している。第二に、従来から農業の地位、役割が低かった地域(工業都市)における転換についてである。ウラル経済地域のスヴェルドロフスク・エカチェリンブルグは、もともと閉鎖都市として重・運需産業地帯に特化した産業構造を持っていた。したがって、農業自体の占める役割は大きくなかった歴史的要因から、農業における私有化過程にそう特筆すべきものはないと言ってよいが、問題は、農業改革によってそのすべての指標悪化が促進され、離農・農業生産の衰退に拍車がかかっていることである。第三に、中央の政策と一定の距離を置いて、独自の改革路線を実行している地域がある。その代表と目されるタタール共和国では、連邦や他地域とは大きく異なる性格を帯びた市場経済化への移行が展開されている。端的に言えば、コルホ-ズ、ソフホ-ズ改造型の漸新的私有化とそれに基づく安定的農民の創出が進行しており、ロシアにおけるシステム転換の一つのオールタナティヴを提起している。
KAKENHI-PROJECT-07206206
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07206206
看護管理者のリーダーシップに着目した人材管理プログラムの開発
看護管理者のオーセンティック・リーダーシップを測定する尺度開発を行うために,病院に勤務する看護管理者1000名を対象に調査を実施する。信頼性・妥当性が得られた尺度を基に,看護師側からみた看護管理者という設定で尺度の改変を行い,看護師対象に調査を実施し,組織阻害行動への関連要因を検証を行う。以上のものを用いて実用に向けた介入方法を開発する。看護管理者のオーセンティック・リーダーシップを測定する尺度開発を行うために,病院に勤務する看護管理者1000名を対象に調査を実施する。信頼性・妥当性が得られた尺度を基に,看護師側からみた看護管理者という設定で尺度の改変を行い,看護師対象に調査を実施し,組織阻害行動への関連要因を検証を行う。以上のものを用いて実用に向けた介入方法を開発する。
KAKENHI-PROJECT-19K19553
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一本鎖DNAとして特殊構造を示すDNA配列とタンパク質の特異的相互作用
1)GCGAAAGC断片の高次構造の決定:この断片のNMRスペクトルや酵素分解の実験より、このGCGAAAGC断片は、両末端の2つのGC塩基対からなるヘアピン様構造であると推定しているが、これだけではこの配列の高い安定性を説明することは出来ない。そこでこの断片のX線結晶構造解析を行うために、大量合成(30mg)を行い現在、この断片の微結晶を得るに至っている。今後、この結晶を基にしてこの断片の詳細な構造が解明できると考えられる。また、GCGAAAGC配列の3番目の塩基のグアニンをアデニンにするとそれほど安定な構造にはならない。そこで、CGGCGAAAGCCG断片と比較にCGGCA__ーAAAGCCG断片を大量合成(各200 OD_<260>ユニット)し、現在それぞれのNMRスペクトルより構造の違いを調べている。2)GCGAAAGC配列を含むDNA断片と一本鎖DNA結合タンパク質との相互作用:ファ-ジG4の1本鎖DNAが二本鎖化するためにの複製開始点のヘアピン構造中にこのGCGAAAGC配列が存在するが、従来から考えられているこの部分のヘアピン構造とGCGAAAGC配列のヘアピン様構造とでは塩基対の様式が異なっている。この部分の構造を調べるとステム部分の長さによってこれら2つの構造のどちらかを形成することが解った。そしてGCGAAAGC配列からなるヘアピン様構造は、複製の開始時に必要な一本鎖DNA結合タンパク質(ssb)と結合しにくいことが解り、この構造が複製の開始に関与していると考えられる。また、同じ機構で複製が始まるファ-ジφK、α3は、この部分の配列が多少異なっているが、アァ-ジG4の場合と同様の現象を示すことを確認した。以上のように申請した今年度の目標の大半を達成することが出来た。1)GCGAAAGC断片の高次構造の決定:この断片のNMRスペクトルや酵素分解の実験より、このGCGAAAGC断片は、両末端の2つのGC塩基対からなるヘアピン様構造であると推定しているが、これだけではこの配列の高い安定性を説明することは出来ない。そこでこの断片のX線結晶構造解析を行うために、大量合成(30mg)を行い現在、この断片の微結晶を得るに至っている。今後、この結晶を基にしてこの断片の詳細な構造が解明できると考えられる。また、GCGAAAGC配列の3番目の塩基のグアニンをアデニンにするとそれほど安定な構造にはならない。そこで、CGGCGAAAGCCG断片と比較にCGGCA__ーAAAGCCG断片を大量合成(各200 OD_<260>ユニット)し、現在それぞれのNMRスペクトルより構造の違いを調べている。2)GCGAAAGC配列を含むDNA断片と一本鎖DNA結合タンパク質との相互作用:ファ-ジG4の1本鎖DNAが二本鎖化するためにの複製開始点のヘアピン構造中にこのGCGAAAGC配列が存在するが、従来から考えられているこの部分のヘアピン構造とGCGAAAGC配列のヘアピン様構造とでは塩基対の様式が異なっている。この部分の構造を調べるとステム部分の長さによってこれら2つの構造のどちらかを形成することが解った。そしてGCGAAAGC配列からなるヘアピン様構造は、複製の開始時に必要な一本鎖DNA結合タンパク質(ssb)と結合しにくいことが解り、この構造が複製の開始に関与していると考えられる。また、同じ機構で複製が始まるファ-ジφK、α3は、この部分の配列が多少異なっているが、アァ-ジG4の場合と同様の現象を示すことを確認した。以上のように申請した今年度の目標の大半を達成することが出来た。
KAKENHI-PROJECT-02263202
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腸内細菌と食物繊維の接着が腸内フローラに及ぼす影響
乳酸菌表層に局在するセルロースに親和性をもつタンパク質としてDnaK、GroEL、GAPDHなどを同定した。組換えDnaKのセルロース、ムチン、キチン、IL1403細胞に対する吸着定数はpH 7.0ではそれぞれ(2.7±0.9)×10^6、(2.5±0.5)×10^5、(3.7±2.2)×10^5、(8.7±3.2)×10^5 M^<-1>だった。ELISAプレートに固定したムチンに対する乳酸菌の接着率はセルロース懸濁液の添加で有意に低下した。pH4.0では、ムチンに対する親和性が1桁高くなることから、乳酸菌が乳酸を生成して自身の周囲のpHを下げれば、より腸管に定着しやすくなると考えられる。乳酸菌表層に局在するセルロースに親和性をもつタンパク質としてDnaK、GroEL、GAPDHなどを同定した。組換えDnaKのセルロース、ムチン、キチン、IL1403細胞に対する吸着定数はpH 7.0ではそれぞれ(2.7±0.9)×10^6、(2.5±0.5)×10^5、(3.7±2.2)×10^5、(8.7±3.2)×10^5 M^<-1>だった。ELISAプレートに固定したムチンに対する乳酸菌の接着率はセルロース懸濁液の添加で有意に低下した。pH4.0では、ムチンに対する親和性が1桁高くなることから、乳酸菌が乳酸を生成して自身の周囲のpHを下げれば、より腸管に定着しやすくなると考えられる。ヒトの腸管内では、多種多様な微生物が複雑な腸内フローラを形成しているが、これらの微生物は蠕動運動によって体外へ排出されないように、何らかの方法で腸管上皮細胞に接着していると考えられる。そこで本研究では、腸内フローラを制御するための基礎的な知見を得るため、乳酸菌表層に局在する接着タンパク質を同定し、ムチンを含む各種の炭水化物にどの程度の親和性をもつかを調べた。乳酸菌Lactococcus lactis IL1403株の表層に局在するタンパク質を可溶化し、セルロースカラムでアフィニティ精製して同定したところ、DnaK、GroEL、GAPDH、malate oxidoreductase、30S ribosomal protein S1およびS2などが同定された。既報の知見と総合すると、DnaK、GroEL、GAPDHは腸管のセルロース、ムチン、マンナンの何れにも親和性を持つことになる。組換えDnaKを大腸菌で調製して蛍光標識し、セルロース、ムチン、キチスIL1403細胞に対するpH7.0における吸着定数を測定したところ、それぞれ(2.7±0.9)×10^6、(2.5±0.5)×10^5、(3.7±2.2)×10^5、(8.7±3.2)×10^5M^<-1>となった。ムチンを固定したELISAプレートに乳酸菌を接着させ腸管モデル系におして、セルロース懸濁液を添加すると、固相に吸着した乳酸菌数は有意に減少した。pH7.0においてDnaKはムチンに対して、セルロースよりも1桁低い親和性しか有していないが、pH4.0においてはDnaKのセルロースおよびムチンに対する親和性はそれぞれ(5.7±0.2)×10^6および(4.4±1.0)×10^6M^<-1>となった。これは、乳酸菌が乳酸を生成して自身の周周のpHを下げれば、より腸管に定着しやすくなることを示している。
KAKENHI-PROJECT-23656534
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23656534
クロロフィル分解の分子機構
一部の植物では,クロロフィル分解の初期反応においてフェオホルビドaはピロフェオホルビドaへと分解されることが知られている.この反応は維管束植物では酵素的な加水分解と自発的な脱炭酸反応の2段階の反応による.この加水分解反応を触媒する酵素をフェオホルビダーゼと名付け,研究を行っている.本酵素は老化によって誘導されるものと構成的に存在するものの2種類があり,FPLCを用いて高度に精製をした.ダイコン(Raphanus sativus)の子葉から,老化誘導型,構成型はそれぞれ10,000倍と6,500倍に精製できた.フェオホルビダーゼのサブユニットは77kDaであるが,サンプル調製時に熱処理することで,SDS-PAGEにおいて16.8,15.9,11.8kDaの3つのバンドを得た.高度な精製標品の断片化されたペプチドを用いて部分アミノ酸配列の解析を行い,2種類のアミノ酸配列の決定に成功した.決定したアミノ酸配列をもとにプライマーを設計し,RT-PCRによって部分ヌクレオチド配列を得た.さらに,3'-RACE,5'-RACEを組み合わせて,フェオホルビダーゼ遺伝子のクローニングを行っている.現在までに明らかになったヌクレオチド配列を用いてBLASTサーチを行ったところ,ダイコンのフェオホルビダーゼと高い相同性を持つものがシロイヌナズナに存在し,このことは酵素活性の植物分布とも一致していた.今後は,大腸菌を用いた大量発現系の構築を行い,得られたタンパクを用いて抗体作成を行う.また,ウエスタン,ノーザン解析を行い,フェオホルビダーゼの発現調節機構を解明していく予定である.一部の植物では,クロロフィル分解の初期反応においてフェオホルビドaはピロフェオホルビドaへと分解されることが知られている.この反応は維管束植物では酵素的な加水分解と自発的な脱炭酸反応の2段階の反応による.この加水分解反応を触媒する酵素をフェオホルビダーゼと名付け,研究を行っている.本酵素は老化によって誘導されるものと構成的に存在するものの2種類があり,FPLCを用いて高度に精製をした.ダイコン(Raphanus sativus)の子葉から,老化誘導型,構成型はそれぞれ10,000倍と6,500倍に精製できた.フェオホルビダーゼのサブユニットは77kDaであるが,サンプル調製時に熱処理することで,SDS-PAGEにおいて16.8,15.9,11.8kDaの3つのバンドを得た.高度な精製標品の断片化されたペプチドを用いて部分アミノ酸配列の解析を行い,2種類のアミノ酸配列の決定に成功した.決定したアミノ酸配列をもとにプライマーを設計し,RT-PCRによって部分ヌクレオチド配列を得た.さらに,3'-RACE,5'-RACEを組み合わせて,フェオホルビダーゼ遺伝子のクローニングを行っている.現在までに明らかになったヌクレオチド配列を用いてBLASTサーチを行ったところ,ダイコンのフェオホルビダーゼと高い相同性を持つものがシロイヌナズナに存在し,このことは酵素活性の植物分布とも一致していた.今後は,大腸菌を用いた大量発現系の構築を行い,得られたタンパクを用いて抗体作成を行う.また,ウエスタン,ノーザン解析を行い,フェオホルビダーゼの発現調節機構を解明していく予定である.
KAKENHI-PROJECT-00J07856
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-00J07856
マウス及びヒト細胞の細胞分化に関与する細胞内因子の研究
マウス赤芽球性白血病細胞(フレンド細胞)の分化を引き起こす3種の細胞内因子(DIT-I,II,III)の相互作用を解析した結果DIF-IIはDIF-Iに作用する脱燐酸化酵素であることが推定された。DIF-IIIはDIF-IとDIF-IIとの脱燐酸化を含む共役反応により生成されると考えられる。すなわちフレンド細胞分化の誘導(分化沢定因子DIF-IIIの生成)にはリン酸化チロシン脱リン酸化酵素反応が関与している可能性が強い。以上の結果を下にチロシンキナ-ゼ阻害剤を用いて細胞の分化が誘導されるかについて検討した。その結果HerbimycinAは単独でgehisteinとST638とはDIF-Iの誘導剤マイトマイシンCと相乗的に、フレンド細胞の分化を誘導し、分化の決定にリン酸化チロシンの脱リン酸化が関与していることを強く示唆した。さらにherbimycinAは、マウス胚性腫瘍細胞(F9細胞)のparietal endodermへの分化を引き起こすことからF9細胞においてもフレンド細胞におけるのと同様な機構が存在している可能性が示唆される。一方herbimycinAによるF9細胞分化の機構を別の方面から探るため、herbimycinA処理後短時間で顕著に発現がみられる遺伝子のクロ-ニングを行い、1つのクロ-ンを得た。この遺伝子の発現誘導にはde novoの蛋白質合成が関与していないと思われることから、hevbimycinAによるタンパク質のリン酸化の阻害の直接の結果として発現が誘導されていると考えられる。この遺伝子はレチノイン酸のみでは誘導されないが、レチノイン酸とdibutyvyl CAMPとの共存で誘導されることから、F9細胞のparietal endoderm細胞への分化に関与していると思われる。さらに塩基配列の解析から、遺伝子はheat shockタンパク質の1つ(hsp86)であることが明らかとなった。又、分化誘導初期におけるリン酸化チロシンの含量を調べたところ、フレンド細胞、F9細胞のいずれも低下していることが判明した。マウス赤芽球性白血病細胞(フレンド細胞)の分化を引き起こす3種の細胞内因子(DIT-I,II,III)の相互作用を解析した結果DIF-IIはDIF-Iに作用する脱燐酸化酵素であることが推定された。DIF-IIIはDIF-IとDIF-IIとの脱燐酸化を含む共役反応により生成されると考えられる。すなわちフレンド細胞分化の誘導(分化沢定因子DIF-IIIの生成)にはリン酸化チロシン脱リン酸化酵素反応が関与している可能性が強い。以上の結果を下にチロシンキナ-ゼ阻害剤を用いて細胞の分化が誘導されるかについて検討した。その結果HerbimycinAは単独でgehisteinとST638とはDIF-Iの誘導剤マイトマイシンCと相乗的に、フレンド細胞の分化を誘導し、分化の決定にリン酸化チロシンの脱リン酸化が関与していることを強く示唆した。さらにherbimycinAは、マウス胚性腫瘍細胞(F9細胞)のparietal endodermへの分化を引き起こすことからF9細胞においてもフレンド細胞におけるのと同様な機構が存在している可能性が示唆される。一方herbimycinAによるF9細胞分化の機構を別の方面から探るため、herbimycinA処理後短時間で顕著に発現がみられる遺伝子のクロ-ニングを行い、1つのクロ-ンを得た。この遺伝子の発現誘導にはde novoの蛋白質合成が関与していないと思われることから、hevbimycinAによるタンパク質のリン酸化の阻害の直接の結果として発現が誘導されていると考えられる。この遺伝子はレチノイン酸のみでは誘導されないが、レチノイン酸とdibutyvyl CAMPとの共存で誘導されることから、F9細胞のparietal endoderm細胞への分化に関与していると思われる。さらに塩基配列の解析から、遺伝子はheat shockタンパク質の1つ(hsp86)であることが明らかとなった。又、分化誘導初期におけるリン酸化チロシンの含量を調べたところ、フレンド細胞、F9細胞のいずれも低下していることが判明した。DIF-I及びDIF-IIに関する研究と平行して、この両因子の相互作用の生化学的性質の検討が更にくわしくなされた。まずin vitroにおいてDIF-IとDIF-IIをcoinduceする条件下で、新たな活性が検討されたがこの活性の出現には常にDIF-I活性の消失が伴い、又DIF-IIの存在が必要である。又、同じような新しい活性の出現にはin vitroにおいてDIF-IとDIF-IIをインキュベートすることによっても見られた。又、この時も新しい活性の出現と同時にDIF-I活性の消失が見られた。新しく生じた活性はDIF-I及びDIF-IIと異なりそれ単独で分化をひきおこすことから分化決定因子(commitment factor)である可能性が強い。又新しい因子はDIF-IがDIF-IIによって脱燐酸化を受けたものと考えられる。上述したMEL細胞の細胞分化に関与する因子の研究と平行して、新しいプラズミド・ベクターを用いて分化時の遺伝子発現の基礎的研究が開始された。そのために細胞の分化に中立であるプラズミドが必要であったがこの目的に適していると考えられるプラズミドが見出され、マウス胚性細胞の分化時におけるプラズミド上の遺伝子が解析された。マウスフレンド細胞の分化において3種のタンパク質因子(DIF-I,DIF-II,DIF-III)が関与しているがDIF-IとDIF-IIからDIF-IIIがin vitroで生成する再構成系を確立した。
KAKENHI-PROJECT-63480509
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マウス及びヒト細胞の細胞分化に関与する細胞内因子の研究
DIF-IIIの生成と同時にDIF-Iが消失したがDIF-IIよりDIF-Iが修飾を受けDIF-IIIに変換するものと思われる。上述した試験管内でDIF-IIIを生成するin vitroの反応は脱燐酸化阻害剤Na_3VO_4やZnCl_2によって阻害される。又DIF-Iをアルカリホスファタ-ゼ、ウシ心筋プロティンホスファタ-ゼで処理してもDIF-IIの関与なしにDIF-IIIが生成した。これらのことからDIF-IとDIF-IIとの共役反応には脱燐酸化反応が含まれることが推定される。以上の結果よりDIF-Iが燐酸化タンパク質でありDIF-IIは特異的なプロティンホスファタ-ゼである可能性を強く示唆している。更に最近見出されたチロシンキナ-ゼ阻害剤herbimycin A,genistein,ST638を用いた分化誘導の結果これらの薬剤はフレンド細胞の分化を引き起こし更には細胞内にはDIF-IIIの誘導を引き起こした。又これらの物質は胚性腫瘍細胞(F9)の分化も誘導した。これらの事実から分化のプロセスには蛋白質のチロシン残基の脱燐酸化が関与していると考えられる。一方蛋白質のセリン・スレオニン・チロシン残基の燐酸化についてはprotein kinase C及びsrcなど増殖関連遺伝子産物の関与が実証されその生物的意義が明らかになりつつあるがこれらの蛋白質の脱燐酸化反応の存在及びその生物学的意義については全く不明であった。上述の我々の研究の成果を細胞の分化においては特異蛋白質の燐酸化-脱燐酸化反応が関与ししかもこの反応が末端分化のモデル系であるフレンド細胞の分化のみならず胚分化のモデル系であるマウスF9細胞の分化においても関与していることが明らかになった。このことは多くの細胞分化における共通反応が特異蛋白質の脱燐酸化であることを強く示唆しているものである。
KAKENHI-PROJECT-63480509
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ヒト分離滑膜細胞と細切軟骨片を用いた一期的自家軟骨移植用インプラントの作製
[目的]ヒト滑膜細胞と細切軟骨片の同時培養または移植が、軟骨分化に与える影響を検討した。[方法]ヒト滑膜細胞を分離しフィブリンゲル内に包埋した。滑膜細胞のみを含むSC群、細切軟骨片と滑膜細胞を含むAC+SC群を作製して培養またはヌードマウス皮下に移植し、組織学的・生化学的検討を行った。[結果]AS+SC群ではSC群と比較してプロテオグリカン含有量が増加し、II型コラーゲンおよびSOX9の発現が促進された。[考察]細切軟骨片とともに移植した滑膜細胞が軟骨様細胞へ分化したと考えられた。滑膜細胞と細切軟骨片を含む移植片を利用することで、新しい一期的関節軟骨修復法の開発が可能と思われる。患者からの同意を得て、滑膜、軟骨、血液(50cc)を採取、抵凝固剤であるクエン酸入りの注射筒を使用して採血し、遠心により血漿成分を調整しました。血漿を用いて分離滑膜細胞の浮遊液を作製後、トロンビンにてフィブリンゲル化させ、このゲル100μlに対して2mm角の細切軟骨片3つをおいてインプラントを作製しました。これらを前年度に用いた軟骨分化誘導培地(1% FBS, 1% ITS mix, 160μg/ml sodium pyruvate, 100 ng/ml dexamethasone, 0.2 mM Asc2-Pを添加したDMEM/F12培地)中で培養し、軟骨分化の評価を行いました。組織学的検討をトルイジンブルー、サフラニン-Oによる染色で、生化学的検討をプロテオグリカン(PG)含有量測定(DMMB法)で行なったところ、共培養群で軟骨分化が促進する傾向がみられました。蛍光顕微鏡による観察では、PKH26で標識された滑膜細胞が軟骨様細胞へ分化していることが確認されました。本研究ではヒト細胞に至適な細胞密度を検討する目的で、1, 2, 4 million/mlの3種類の細胞密度について検討しましたが、1, 2 million/ml群と比較して、4 million/ml群で軟骨分化がより促進される傾向を認めました。また、専用遠心器(DePuy社製SYMPHONYTM)を用いて、血液からPlatelet-rich plasma(PRP)を精製し、PRPゲルを用いた場合の軟骨分化促進効果につき検討を行いましたが、明らかな有意差は認められませんでした。さらにゲルの強度を高める目的で、すでに軟骨移植への応用が報告されているChitosanとFibroinを担体として用いました。この実験では、Fibroinにおいて軟骨分化がよりみられることがわかりました。患者からの同意を得て、滑膜、軟骨、血液(50cc)を採取、抵凝固剤であるクエン酸入りの注射筒を使用して採血し、遠心により血漿成分を調整した。血漿を用いて分離滑膜細胞の浮遊液を作製後、トロンビンにてフィブリンゲル化させ、このゲル100μlに対して2mm角の細切軟骨片3つをおいてインプラントを作製した。平成23,24年度行ったヒト細胞に至適な細胞密度の検討結果から、滑膜細胞の細胞密度は4 million/mlとして、インプラントの作製を行った。これらをヌードマウス(Athymic mice, nu/nu)の皮下に移植し、8週間埋め込んだ。実験群は、ゲル担体のみの群、滑膜細胞のみ含有群、細切軟骨片のみ含有群、滑膜細胞および細切軟骨片含有群、滑膜細胞およびfreeze & sawを行った細切軟骨片を含有群の5群とした。移植後2週、4週、8週で摘出し、軟骨分化の評価を行った。組織学的検討をトルイジンブルー、サフラニン-Oによる染色で、生化学的検討をプロテオグリカン(PG)含有量測定(DMMB法)で行なったところ、共培養群で軟骨分化が促進する傾向がみられました。蛍光顕微鏡による観察では、PKH26で標識された滑膜細胞が軟骨様細胞へ分化していることが確認された。また、専用遠心器(DePuy社製SYMPHONYTM)を用いて、血液からPlatelet-rich plasma(PRP)を精製し、PRPゲルを用いた場合の軟骨分化促進効果につき検討を行ったが、明らかな有意差は認められなかった。さらにゲルの強度を高める目的で、すでに軟骨移植への応用が報告されているフィブロイン(前年度の予備実験で確認)を担体として用いる方法も試みたが、フィブロイン内においても滑膜細胞の軟骨分化傾向が認められた。[目的]ヒト滑膜細胞と細切軟骨片の同時培養または移植が、軟骨分化に与える影響を検討した。[方法]ヒト滑膜細胞を分離しフィブリンゲル内に包埋した。滑膜細胞のみを含むSC群、細切軟骨片と滑膜細胞を含むAC+SC群を作製して培養またはヌードマウス皮下に移植し、組織学的・生化学的検討を行った。[結果]AS+SC群ではSC群と比較してプロテオグリカン含有量が増加し、II型コラーゲンおよびSOX9の発現が促進された。[考察]細切軟骨片とともに移植した滑膜細胞が軟骨様細胞へ分化したと考えられた。滑膜細胞と細切軟骨片を含む移植片を利用することで、新しい一期的関節軟骨修復法の開発が可能と思われる。Tissue culture insertの下面に播種(micromass culture)したヒト滑膜細胞を10% FBSおよび0.2 mM Asc2-Pを添加したDMEM/F12
KAKENHI-PROJECT-23592235
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23592235
ヒト分離滑膜細胞と細切軟骨片を用いた一期的自家軟骨移植用インプラントの作製
培地にて2日間培養し、細胞接着後上面に細切軟骨片を加えて共培養を行いました。12時間無血清培地とした後、1% FBS, 1% ITS mix, 160μg/ml sodium pyruvate, 100 ng/ml dexamethasone, 0.2 mM Asc2-Pを添加したDMEM/F12培地に変更し、さらに2週間培養しました(Positive controlは、5ng/ml TGF beta-1およびinsulin添加群、negative controlは、滑膜細胞のみの群およびfreeze & sawを行った細切軟骨片との共培養群)。組織学的検討をトルイジンブルー、サフラニン-Oによる染色で、生化学的検討をプロテオグリカン(PG)含有量測定(DMMB法)で行なったところ、共培養群で軟骨分化が促進する傾向がみられました。また蛍光顕微鏡による観察で、PKH26で標識された滑膜細胞が軟骨様細胞へ分化していることが確認されました。現在は、追加して行なった実験のサンプルを用いて、免疫染色、各種増殖因子、サイトカインのreal-time RT-PCR、コラーゲン含有量測定を施行中です。また、平行してヒト分離滑膜細胞と細切軟骨片を含む移植用インプラントを作製し、試験管内で培養する実験も開始し、組織学的検討を行なっています。ヒト分離滑膜細胞と細切軟骨片を含む移植用インプラント(フィブリンゲル使用)の作製と試験管内で培養する実験を行いました。動物実験でみられたほどの有意差は得られませんでしたが、ヒト滑膜細胞を用いた場合でもほぼ同等の傾向がみられることが明らかとなりました。ヒト細胞に至適な細胞密度を検討する目的で、1, 2, 4 million/mlの3種類の細胞密度について検討しましたが、1, 2 million/ml群と比較して、4 million/ml群で軟骨分化がより促進されることが明らかとなりました。しかしながら、ヒト軟骨組織からは動物実験のときほど多くの細胞数が得られず、軟骨細胞のサンプル量の確保は非常に難しいことがわかりました。フィブリンゲルの代わりにPlatelet-rich plasma(PRP)を用いた場合の軟骨分化促進効果については、残念ながら明らかな効果は認められませんでしたが、ゲルの強度補強目的でChitosan, Fibroinを併用した実験では、Fibroinでより軟骨分化がみられる傾向を認めました。以上より、「(2)おおむね順調に進展」の評価としました。滑膜細胞をmicromass cultureし、細切軟骨片と共培養を行った実験では、動物実験でみられたほどの有意差は得られませんでしたが、ヒト滑膜細胞を用いた場合でもほぼ同等の結果が得られることが明らかとなりました。サンプル量が少なかったため、real-time RT-PCR、コラーゲン含有量の解析が遅れていますが、現在実験を追加して解析中です。一方、上記結果が得られたことから、平成24年度に行なう予定であったヒト分離滑膜細胞と細切軟骨片を含む移植用インプラント(フィブリンゲル使用)の作製と試験管内で培養する実験をすでに開始しており、この点は計画よりも順調に進行しています。ヒト分離滑膜細胞と細切軟骨片を含む移植用インプラント(フィブリンゲル使用)の作製と試験管内で培養する実験では、ほぼ予想された結果が得られました。
KAKENHI-PROJECT-23592235
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循環型製造業の将来像を設計するための持続可能社会シナリオシミュレータの開発
持続可能社会像の議論のため、「持続可能社会シナリオ」が盛んに描かれているが、文章の合理的理解が困難であり、また、シナリオ作成の計算機支援も十分ではない。以上の問題を解決するため、本研究は、論理構造に注目したシナリオ表現方法論、シナリオ作成の計算機支援方法論を提案し、これらを実装したシナリオ作成・分析支援システム「Sustainable Society Scenario (3S) Simulator」を開発した。さらに実行例として、持続可能社会における製造業のシナリオを作成した。本研究は、直面する地球環境問題の解決に必要不可欠な、持続可能社会に向けたシナリオ作成の新たな方法論を提案することを目的とする。具体的には、従来のMacroなシナリオでは扱えなかった消費者行動や技術普及といったMesoレベルの要因まで考慮したシナリオ作成・分析支援システム「持続可能社会シナリオシミュレータ(Sustainable Society Scenario Simulator,以下、3Sシミュレータと呼ぶ)」を構築し、中長期的な政策立案や事業戦略構築に資する、我が国を中心としたアジア圏の逆工程を含めた持続的な循環型製造業の姿(シナリオ)を合理的に描く。具体的な研究課題は、(1)シナリオの構造的な表現方法を提案する「シナリオ表現方法論」、(2)シナリオの作成過程の支援方法を提案する「シナリオ作成方法論」、(3)作成したシナリオ上でwhat-if分析を可能にする「動くシナリオ化」、(4)既存のシナリオを形式化・計算可能化し、集積する「シナリオのアーカイブ化」、(5)3Sシミュレータの実装、(6)循環型製造業シナリオの作成、の6点である。持続可能社会像の議論のため、「持続可能社会シナリオ」が盛んに描かれているが、文章の合理的理解が困難であり、また、シナリオ作成の計算機支援も十分ではない。以上の問題を解決するため、本研究は、論理構造に注目したシナリオ表現方法論、シナリオ作成の計算機支援方法論を提案し、これらを実装したシナリオ作成・分析支援システム「Sustainable Society Scenario (3S) Simulator」を開発した。さらに実行例として、持続可能社会における製造業のシナリオを作成した。本研究は、シナリオ作成・分析支援システム「持続可能社会シナリオシミュレータ(3Sシミュレータ)」を構築し、中長期的な政策立案や事業戦略構築に資する、我が国を中心としたアジア圏の逆工程を含めた持続的な循環型製造業の姿(シナリオ)を合理的に描くことを目的とする。H20年度は、以下の三点に関して基本アプローチを検討し、これらに基づき、3Sシミュレータの仕様を検討した。1.シナリオ表現方法論:文章の構造化言語XMLを用いて、仮定、事実、引用文献、結論、問題、アクションなどの概念と因果関係、論理的飛躍関係、矛盾関係、ツールによる評価などの概念間の関係に関するキーワード(オントロジー)を用意し、シナリオ文章を計算機に処理可能な形で構造的に記述するための方法論を開発した。2.シナリオ作成方法論:既存のシナリオ作成技法やバックキャスティング手法を調査し、これを上記のシナリオの構造化表現上で形式化するための方法を検討した。3.動くシナリオ化:シナリオ上の概念に種々のシミュレータやデータベースを関係づけ、その前提条件、仮定、モデル化方法、計算方法を明示的に記述することにより、シナリオ文書とシミュレータを動的に接続するための方法論を開発した。特に、シミュレータを用いてシナリオのwhat-if分析を行うための手法を開発した。このほか、既存のシナリオ、シミュレータの現状調査、資料収集を行い、例題とする循環型製造業のシナリオを作成するために必要なシミュレータの仕様を検討した。さらに、エコデザイン2008ジャパンシンポジウムにおいて、本研究プロジェクトのオーガナイズドセッションを開催し、本研究の成果を公開した。H21年度は、H22年度末の3Sシミュレータ公開を目標に研究を進めたが、予定より早くH21年度中に3Sシミュレータの公開を本研究のホームページを通じて行うことができた。3Sシミュレータ実現の基本要素である(a)シナリオ表現方法論、(b)シナリオ作成方法論、(c)動くシナリオ化については、方法論を明確にした。特に、(a)シナリオ表現方法論、(c)動くシナリオ化については、H20年度に基本的な方法論に目処を立てることができたので、(b)シナリオ作成方法論を中心に研究を進めた。主な成果は、フォアキャスティングを主体としたシナリオ作成手順の定式化を行い、また、因果ネットワークを導入することによりシナリオ表現を充実することができた。さらに、既存のシナリオを活用してより詳細なシナリオを作成する方法論、および、what-if分析を行う方法論を開発した。3Sシミュレータと接続して利用する、公開可能な外部シミュレータとしてグローバルエネルギーバランスシミュレーションシステムを発注し、要求を満足するシステムを得ることが出来た。(f)循環型製造業シナリオの例として、電気自動車が大幅に普及した社会に関するシナリオを作成した。これを叩き台として、循環型製造業シナリオの詳細化を来年度以降も引き続き検討することとした。このほか、(h) 3Sコンソーシアムの設立に向けて、国際シンポジウムEcoDesign2009において、オーガナイズドセッション「Designing Sustainable Society」を主催し、本研究の成果を世に問うと共に、今後の推進のための有効なコメントを得ることができた。本研究は、直面する地球環境問題の解決に必要不可欠な、持続可能社会に向けたシナリオ作成の新たな方法論を提案し、シナリオ作成・分析支援システム「持続可能社会シナリオシミュレータ(Sustainable Society Scenario Simulator,3Sシミュレータと呼ぶ)」を構築し、中長期的な政策立案や事業戦略構築に資する、我が国を中心としたアジア圏の逆工程を含めた持続的な循環型製造業の姿(シナリオ)を合琿的に描くことを目的とする。
KAKENHI-PROJECT-20246130
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循環型製造業の将来像を設計するための持続可能社会シナリオシミュレータの開発
本年度は、3Sシミュレータを実装し、持続可能製造業シナリオ作成を可能とすることを目的とした。H21年度までに基本的な方法論を提案した(a)シナリオ表現方法論、(b)シナリオ作成方法論、(c)動くシナリオ化を実装、統合化することにより、3Sシミュレータを実装することができた。特に、シナリオ作成方法論については、バックキャスティングに基づく作成方法論を提案することができ、これによりquantum jumpを含むようなシナリオ作成を支援することが可能となった。H23年度以降に本格的に実施する持続可能製造業シナリオ作成の第一歩として、「日本製造業破綻シナリオ」を作成した。このために、グローバル沓源エネルギーバランスシミュレーションシステムを発注し、また、資源枯渇シミュレータの開発を行った。これらのシミュレータ、および、本年度の主成果物である3Sシミュレータを活用して、シナリオを作成することに成功した。本研究は、直面する地球環境問題の解決に必要不可欠な、持続可能社会に向けたシナリオ作成の新たな方法論を提案することを目的としている。具体的には、シナリオ作成・分析支援システム「持続可能社会シナリオシミュレータ(Sustainable Society Scenario Simulator,以下、3Sシミュレータと呼ぶ)」を構築し、中長期的な政策立案や事業戦略構築に資する、我が国を中心とした持続的な循環型製造業の姿(シナリオ)を合理的に描く。そのために、以下の6点の課題を研究する。(a)形式化、計算可能化のためのシナリオ表現方法論、(b)シナリオ作成方法論の計算機化、(c)動くシナリオ化、(d)シナリオのアーカイブ化、(e)3Sシミュレータの実装、(f)循環型製造業シナリオの作成。本年度は、これまでの成果に基づき、3Sシミュレータを活用し、持続可能な社会に向けた製造業のシナリオを描き出すことを目標に研究を進めた。H22年度に作成した基本シナリオを拡張し、合宿を行い6つのサブシナリオを展開した。また、シナリオの裏付けとして、低炭素化と資源枯渇対策のバランスポイントの検討を行った。方法論の面では、フォアキャスティングとバックキャスティングを統合化したシナリオ設計方法論の検討、既存シナリオを活用したビジネス戦略シナリオ作成方法論の検討を行った。これらの結果は、ホームページに掲載すると共に、国際会議EcoDesgin2011においてオーガナイズドセッションを開催し、本研究の成果を世界に向けて発信すると同時に、意見集約を行った。本研究は、直面する地球環境問題の解決に必要不可欠な、持続可能社会に向けたシナリオ作成の新たな方法論を提案することを目的としている。
KAKENHI-PROJECT-20246130
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地球環境変化に対応する地理・地図情報システム研究組織の検討
本研究においては、主として研究分担者からの関連情報の集収に当るとともに,平成3年度文部省科学研究費總合研究(B):国際環境に即応する地理情報システム研究組織の検討(課題番号:03351006)における研究内容,および,それ次前からの関連研究を總括することに重点を置いた。つまり,日本学術会議が昭和63年3月に可決した「国立地図学博物館(仮称)」の設立勧告文に基づく過去数年間の研究集成である。その結果は「国際環境と地理情報システム-国立地図学博物館・地図情報センター(仮称)設立に向けて-」というタイトルで報告書を作成した(平成5年3月)。その主な内容は次の通りである。まず国立地図学博物館設立に関する日本学術会議の勧告文を載せた。次いで,昭和64年・平成元年後の経過報告を,主に財団法人福武学術振興財団の助成研究による集会内容を載せた。平成2年度については,主として犬山市における国立地図学博物館の誘致運動を説明した。平成3・4年度についとは,科研費報告書が主な内容である。さらに、今までの関連情報の主なものを載せた。例えば,犬山市,名古屋大学・国連地域開発センター共催の会議等のシンポジウム内容,アメリカ合衆国地理情報と分析に関するナショナルセンター(NCGIA)のコアカリキュラム内容,建設省が進めている地球地理院構想,埼玉県立文書館地図センターの業務内容,名古屋大学地理情報システム研究組織の会議報告等を列挙した。さらに,関連する新聞・雑誌情報等を列挙し、社会的ニーズについての参考資料とした。今年後の研究成果は主として次上の通りであるが,本研究の性格上,情報交換とその纒めが中心となった。本研究においては、主として研究分担者からの関連情報の集収に当るとともに,平成3年度文部省科学研究費總合研究(B):国際環境に即応する地理情報システム研究組織の検討(課題番号:03351006)における研究内容,および,それ次前からの関連研究を總括することに重点を置いた。つまり,日本学術会議が昭和63年3月に可決した「国立地図学博物館(仮称)」の設立勧告文に基づく過去数年間の研究集成である。その結果は「国際環境と地理情報システム-国立地図学博物館・地図情報センター(仮称)設立に向けて-」というタイトルで報告書を作成した(平成5年3月)。その主な内容は次の通りである。まず国立地図学博物館設立に関する日本学術会議の勧告文を載せた。次いで,昭和64年・平成元年後の経過報告を,主に財団法人福武学術振興財団の助成研究による集会内容を載せた。平成2年度については,主として犬山市における国立地図学博物館の誘致運動を説明した。平成3・4年度についとは,科研費報告書が主な内容である。さらに、今までの関連情報の主なものを載せた。例えば,犬山市,名古屋大学・国連地域開発センター共催の会議等のシンポジウム内容,アメリカ合衆国地理情報と分析に関するナショナルセンター(NCGIA)のコアカリキュラム内容,建設省が進めている地球地理院構想,埼玉県立文書館地図センターの業務内容,名古屋大学地理情報システム研究組織の会議報告等を列挙した。さらに,関連する新聞・雑誌情報等を列挙し、社会的ニーズについての参考資料とした。今年後の研究成果は主として次上の通りであるが,本研究の性格上,情報交換とその纒めが中心となった。
KAKENHI-PROJECT-04351009
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04351009
組織間信頼の形成と維持に関する研究――日伊の比較を通じて
本研究の目的は、組織間信頼の形成と維持のメカニズムについて、普遍的なモデルを確立することである。組織間信頼に関しては、組織論において、少なくとも日本では理論的な検討がほとんどなされてこなかった。また、組織間信頼の形成・維持の要因、メカニズムが解明されておらず、これを明らかにすることが課題とされている。そこで、本研究では、先行研究において前提とされてきた、経済的合理性や機会主義的行動の抑制といったものから形成される組織間信頼ではなく、同地域や同業種といった、取引前から組織間に一定の関係があり、従来の経済的合理性のみでは説明のつかない組織間信頼について考察する。組織と組織の信頼がどのように形成され、維持されていくのか、それぞれの要因と要因間の関係について検討を行い、そこで得られた要因について具体的に検討するため、主に産業集積地(日本とイタリア)における組織間信頼を事例として考察する。当該年度においては、上記の研究目的を実現するため、これまでの研究で明らかになった組織間信頼の形成・維持の要因およびメカニズムについてさらに理論的検討を進めた。大枠となるメカニズムについては、博士論文において既に明らかにしていたが、理論的整合性などの点で大幅に修正、再検討をする必要があった。これに関しては、2019年6月に著書『組織間信頼の形成と維持』が出版される予定である。また、継続して行っている日本における共同受注ネットワークへのインタビュー調査に加え、イタリアの産業集積に関する文献収集および次年度から行う予定であるインタビュー調査先の検討・準備を行った。理論的検討の部分については、まだ課題が多く残されている。しかし、イタリアの産業集積地における文献収集およびインタビュー調査先の検討についてはほぼ予定通り行うことができたと思われる。今後の研究の進め方としては、当初、課題として挙げた理論的検討を進めていくとともに、イタリアにおけるインタビュー調査を実施し、日本とイタリアにおける産業集積地の組織間信頼の比較を行い、組織間信頼の形成と維持のメカニズムの普遍的モデルを確立することを試みる。本研究の目的は、組織間信頼の形成と維持のメカニズムについて、普遍的なモデルを確立することである。組織間信頼に関しては、組織論において、少なくとも日本では理論的な検討がほとんどなされてこなかった。また、組織間信頼の形成・維持の要因、メカニズムが解明されておらず、これを明らかにすることが課題とされている。そこで、本研究では、先行研究において前提とされてきた、経済的合理性や機会主義的行動の抑制といったものから形成される組織間信頼ではなく、同地域や同業種といった、取引前から組織間に一定の関係があり、従来の経済的合理性のみでは説明のつかない組織間信頼について考察する。組織と組織の信頼がどのように形成され、維持されていくのか、それぞれの要因と要因間の関係について検討を行い、そこで得られた要因について具体的に検討するため、主に産業集積地(日本とイタリア)における組織間信頼を事例として考察する。当該年度においては、上記の研究目的を実現するため、これまでの研究で明らかになった組織間信頼の形成・維持の要因およびメカニズムについてさらに理論的検討を進めた。大枠となるメカニズムについては、博士論文において既に明らかにしていたが、理論的整合性などの点で大幅に修正、再検討をする必要があった。これに関しては、2019年6月に著書『組織間信頼の形成と維持』が出版される予定である。また、継続して行っている日本における共同受注ネットワークへのインタビュー調査に加え、イタリアの産業集積に関する文献収集および次年度から行う予定であるインタビュー調査先の検討・準備を行った。理論的検討の部分については、まだ課題が多く残されている。しかし、イタリアの産業集積地における文献収集およびインタビュー調査先の検討についてはほぼ予定通り行うことができたと思われる。今後の研究の進め方としては、当初、課題として挙げた理論的検討を進めていくとともに、イタリアにおけるインタビュー調査を実施し、日本とイタリアにおける産業集積地の組織間信頼の比較を行い、組織間信頼の形成と維持のメカニズムの普遍的モデルを確立することを試みる。
KAKENHI-PROJECT-18K12852
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K12852
海岸・海洋構造物の連結目地内での流体共振の発生条件と運動特性の体系化に関する研究
ケーソン護岸および防波堤連結目地内での流体共振の発生条件とその発生規模に関して,昨年度の規則波を用いた実験による体系化に続き,本年度は,理論解析手法の構築,さらに不規則波を用いた実験により,共振の発生条件およびその規模の体系化を行った.また,大型浮体を構成する浮体要素間の微小間隙内における流体共振の発生条件に関する理論解に関しては,複数の間隙が存在する場合に対応できる理論解析手法を構築することに成功した.以上の研究成果は次のようにまとめられる.(1)ケーソン護岸およびケーソン防波堤護岸連結目地内での流体共振の発生条件とその発生規模漸近接合法を用いた理論解析手法に,目地内部でのエネルギー消散効果を取り込むことにより,これまで明らかにされてきている,規則波入射に対する流体共振の発生条件に加えて,発生規模の予測を検討することが可能となった.さらに,不規則波実験では,入射波成分に,規則波入射時に流体共振が発生する共振周波数成分が含まれている場合に,流体共振が発生すること,また,その規模は,入射波に含まれる共振周波数成分のエネルギー比にほぼ線形的に比例することが分かった.(2)大型浮体を構成する浮体要素間の微小間隙内における流体共振の発生条件に関する理論解間隙個数を増加させた場合に対応できる流体共振の発生条件の解析法を,エネルギー保存則を用い,多自由度系の連立振動方程式の解法を援用することによって構築した.この解として,系内の固有振動数を,矩形浮体長さ,喫水深および間隙幅を陽に含む形で新たに誘導し,実験結果との比較から,誘導した固有振動数を用いて,間隙内での流体共振の発生が良好に予測できることが分かった.ケーソン護岸およびケーソン防波堤連結目地内での流体共振の発生条件とその発生規模に関して,本年度は,規則波を用いた実験によりこれらの体系化を行った.さらに,大型浮体を構成する浮体要素間の微小間隙内における流体共振の発生条件に関する理論解の誘導に成功した.以上の研究成果は次のようにまとめられる。(1)ケーソン護岸連結目地内での流体共振の発生条件とその発生規模ケーソン護岸連結目地内において流体共振現象が発生することを実験的に確認し,目地内の最大波高が入射波高の5倍を上回る場合を流体共振の発生条件とした場合,本研究で対象とした実験範囲(形状比a/L<0.039,a:連結目地幅,L:ケーソン岸沖方向長さ)において,1次モードの流体共振がkL=1.12.0(k:入射波の波数)の場合,さらに,2次モード流体共振がkL=4.14.8の場合に発生することが分かった.(2)ケーソン防波堤連結目地内での流体共振の発生条件とその発生規模ケーソン防波堤連結目地内において流体共振現象が発生することを実験的に確認し,目地内の最大波高が入射波高の4倍を上回る場合を流体共振の発生条件とした場合,本研究で対象とした実験範囲(形状比a/L<0.039,a:連結目地幅,L:ケーソン岸沖方向長さ)において,1次モードの流体共振がkL=2.53.5の場合に発生することが分かった.(3)大型浮体を構成する浮体要素間の微小間隙内における流体共振の発生条件に関する理論解2つの矩形浮体要素から構成された1の間隙を伴う浮体の場合を対象とし,管径が非一様なU字管内の流体振動の解析法を応用して,間隙内流体振動に関する固有振動数を,矩形浮体長さ,喫水深および間隙幅を陽に含む形で新たに誘導した.実験結果との比較から,誘導した固有振動数を用いて,間隙内での流体共振の発生がおおよそ予測できることが分かった.ケーソン護岸および防波堤連結目地内での流体共振の発生条件とその発生規模に関して,昨年度の規則波を用いた実験による体系化に続き,本年度は,理論解析手法の構築,さらに不規則波を用いた実験により,共振の発生条件およびその規模の体系化を行った.また,大型浮体を構成する浮体要素間の微小間隙内における流体共振の発生条件に関する理論解に関しては,複数の間隙が存在する場合に対応できる理論解析手法を構築することに成功した.以上の研究成果は次のようにまとめられる.(1)ケーソン護岸およびケーソン防波堤護岸連結目地内での流体共振の発生条件とその発生規模漸近接合法を用いた理論解析手法に,目地内部でのエネルギー消散効果を取り込むことにより,これまで明らかにされてきている,規則波入射に対する流体共振の発生条件に加えて,発生規模の予測を検討することが可能となった.さらに,不規則波実験では,入射波成分に,規則波入射時に流体共振が発生する共振周波数成分が含まれている場合に,流体共振が発生すること,また,その規模は,入射波に含まれる共振周波数成分のエネルギー比にほぼ線形的に比例することが分かった.(2)大型浮体を構成する浮体要素間の微小間隙内における流体共振の発生条件に関する理論解間隙個数を増加させた場合に対応できる流体共振の発生条件の解析法を,エネルギー保存則を用い,多自由度系の連立振動方程式の解法を援用することによって構築した.この解として,系内の固有振動数を,矩形浮体長さ,喫水深および間隙幅を陽に含む形で新たに誘導し,実験結果との比較から,誘導した固有振動数を用いて,間隙内での流体共振の発生が良好に予測できることが分かった.
KAKENHI-PROJECT-16760405
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関孝和の功績と中国数学, 西欧数学との比較研究及びその視点を活かした中等教育の実践
研究目的18世紀, 19世紀の和算を軸とした数学史全般について原典の解読,研究を進めた.特に,関孝和の数論と円理について中国伝来の解法および西欧での研究との比較検証を進めた.また,数学史の研究,原典の解読の成果をもとに,高校2年生対象の学習指導要領「数学活用」をはじめ高校1年「数学I」「数学A」の[課題学習]および他すべての科目において,数学史の視点を活かした授業の研究,さらに生活の中に活きている数学について発見,気付かせる授業の研究,実践を進めた.特に「数学活用」, [課題学習]では,生徒による主体的な数学的活動の充実,アクティブラーニングの取り組みの研究,実践を続けた.今年度は解読,調査,研究そして授業実践に力を注ぎ,研究発表は行えなかったが,過年度までの実績をもとに,次年度,平成28年度には報告,発表の予定を得ているの.数学史の専門的な研究と中等教育における授業研究は直接的な関連が薄いとも考えられるが,数学嫌いを多く生んでいる現状を鑑み,数学の本質的な意義,良さを伝えるため,数学が拠って生まれ来るその歴史を踏まえた授業の実践,先人達が築き上げた数学的な実りとそれに至る数学的営みをよく理解した上で教壇に立つことが肝要と考え,数学史の研究とその視点を活かした授業の研究,実践を試みている.研究方法京都大学数理科学研究所の研究集会「数学史の研究」および全国和算研究大会長野大会に参加,原典,特に関孝和,建部賢明,賢弘兄弟による『大成算経』と中国南宋の数学者秦九韶の『数書九章』の精読に努めた.そのほか「数学教育の会」(お茶の水女子大学),共立出版に於ける数学文献を読む会など多数の学会,研究会に参加し,研鑽を積んだ.研究成果今年度は授業の実践と原典の精読に努めた.次年度,各研究会にて報告,発表を進めたい。研究目的18世紀, 19世紀の和算を軸とした数学史全般について原典の解読,研究を進めた.特に,関孝和の数論と円理について中国伝来の解法および西欧での研究との比較検証を進めた.また,数学史の研究,原典の解読の成果をもとに,高校2年生対象の学習指導要領「数学活用」をはじめ高校1年「数学I」「数学A」の[課題学習]および他すべての科目において,数学史の視点を活かした授業の研究,さらに生活の中に活きている数学について発見,気付かせる授業の研究,実践を進めた.特に「数学活用」, [課題学習]では,生徒による主体的な数学的活動の充実,アクティブラーニングの取り組みの研究,実践を続けた.今年度は解読,調査,研究そして授業実践に力を注ぎ,研究発表は行えなかったが,過年度までの実績をもとに,次年度,平成28年度には報告,発表の予定を得ているの.数学史の専門的な研究と中等教育における授業研究は直接的な関連が薄いとも考えられるが,数学嫌いを多く生んでいる現状を鑑み,数学の本質的な意義,良さを伝えるため,数学が拠って生まれ来るその歴史を踏まえた授業の実践,先人達が築き上げた数学的な実りとそれに至る数学的営みをよく理解した上で教壇に立つことが肝要と考え,数学史の研究とその視点を活かした授業の研究,実践を試みている.研究方法京都大学数理科学研究所の研究集会「数学史の研究」および全国和算研究大会長野大会に参加,原典,特に関孝和,建部賢明,賢弘兄弟による『大成算経』と中国南宋の数学者秦九韶の『数書九章』の精読に努めた.そのほか「数学教育の会」(お茶の水女子大学),共立出版に於ける数学文献を読む会など多数の学会,研究会に参加し,研鑽を積んだ.研究成果今年度は授業の実践と原典の精読に努めた.次年度,各研究会にて報告,発表を進めたい。
KAKENHI-PROJECT-15H00280
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H00280
骨髄は痛みを感じるか
骨髄内を刺激することで興奮する脊髄ニューロンの活動電位を記録することに成功した。これらのニューロンは主に痛み刺激に反応するニューロンであり、骨髄内の神経が痛み刺激を伝達している可能性が示唆された。また、骨髄内の刺激に反応するニューロンは皮膚からの刺激にも反応があり、骨の中の刺激を皮膚の痛みとして感じる可能性があることが分かった。これらの結果から骨のがん、整形外科手術後などの骨の中だけの病変でも痛みを感じる原因となりうることが分かった。細胞外記録により骨髄内刺激(バルーン拡張、骨髄吸引)に応答する脊髄後角ニューロンの存在が明らかとなった。骨髄内刺激に応答するニューロンは、侵害刺激に応答するwide-dynamic rangeニューロンもしくはhigh-thresholdニューロンでありその多くが皮膚にも受容野を持つことが明らかとなった。また、骨髄内刺激に応答するlow-thresholdニューロンは今回の実験では記録されず、骨髄内の神経は侵害刺激を特異的に伝達している可能性が示唆された。骨髄刺激に応答する脊髄後角ニューロンはモルヒネを脊髄投与することで刺激に対する反応が低下し、ナロキソンを投与することで反応が戻ることが明らかとなった。このことからも、骨髄内の神経が侵害刺激を受容し脊髄後角に伝達していることがわかった。大腿骨内にバルーンを留置したモデルラットを作成し、骨髄内刺激に対する行動薬理学的評価を行った。骨髄内でバルーンを拡張すると、痛み行動(guarding)をとり、電気生理学的研究で得られた皮膚受容野で痛覚過敏が起こることが明らかとなった。これらの行動はモルヒネのくも膜下投与により抑制され、ナロキソン投与により拮抗された。以上の結果から骨髄内刺激により痛みを知覚し、皮膚受容野で痛覚過敏を引き起こすことが行動薬理学的に明らかとなった。これらの結果から、骨髄内の神経も痛みの受容に関わっており、骨髄からの刺激により該当皮膚受容野で関連痛が起き骨折手術後の創部通を増強する可能性が示唆された。本研究の結果は、骨転移性がん痛や整形外科手術後痛、関節炎・骨髄炎の痛みの機序の一部を明らかにする重要な知見であった。骨髄内を刺激することで興奮する脊髄ニューロンの活動電位を記録することに成功した。これらのニューロンは主に痛み刺激に反応するニューロンであり、骨髄内の神経が痛み刺激を伝達している可能性が示唆された。また、骨髄内の刺激に反応するニューロンは皮膚からの刺激にも反応があり、骨の中の刺激を皮膚の痛みとして感じる可能性があることが分かった。これらの結果から骨のがん、整形外科手術後などの骨の中だけの病変でも痛みを感じる原因となりうることが分かった。細胞外記録により骨髄内刺激に応答する脊髄後角ニューロンの存在が明らかとなった。骨髄内刺激に応答するニューロンは、侵害刺激に応答するWide-Dynamic RangeニューロンもしくはHigh-Thresholdニューロンであり皮膚にも受容野を持つことが明らかとなった。また、骨髄内刺激に応答するLow-Thresholdニューロンは今回の実験では記録されず、骨髄内の神経は侵害刺激を特異的に伝達している可能性が示唆された。骨髄刺激に応答する脊髄後角ニューロンはモルヒネを脊髄投与することで刺激に対する反応が低下し、ナロキソンを投与することで反応が戻ることが明らかとなった。このことからも、骨髄内の神経が痛みを受容し脊髄後角に伝達していることが分かった。大腿骨にバルーンを挿入したモデルラットを用いた行動薬理学的評価では、骨髄内のバルーン拡張に伴い、痛み行動を取ることが明らかとなった。また、これらの行動はモルヒネをくも膜下投与することで抑制されナロキソンを投与することでモルヒネの作用が拮抗された。以上の結果からも骨髄内刺激により痛みを知覚することが行動薬理学的にも明らかとなった。この結果は、骨髄からの痛みで当該皮膚に関連痛が起こり、骨折手術後の創部痛を増強する可能性を示唆している。本研究の結果は、今後、骨転移性がん痛や整形外科手術後痛、関節炎・骨髄炎の痛みの機序を解明するための重要な知見である。現時点で骨髄から脊髄後角に入力するニューロンの電気生理学的特性が明らかとなった。また、行動生理学的にも骨髄内のニューロンが侵害刺激を受容していることが明らかとなっている。これらから、骨折や悪性腫瘍の骨転移などにおける痛みに骨髄内の神経が侵害刺激を受容している可能性が示唆され、骨痛の痛みのメカニズムの一部が明らかになった。今後は、同様のモデルを用いて、AMPAレセプタ拮抗薬、NMDAレセプタ拮抗薬、オピオイドなどを脊髄に投与し,骨髄内刺激による脊髄後角V層ニューロンの興奮がどのレセプタの活性化により惹起されているかについて検討を行う予定である。同様に、行動薬理学的にもAMPAレセプタ拮抗薬、NMDAレセプタ拮抗薬、オピオイドなどを脊髄くも膜下に持続投与による骨髄内刺激に対する応答性の評価を行う。また、神経トレーサーを用いて骨髄や皮膚からのニューロン投射の解析やモデルラットにおける脊髄でのリン酸化ERKの定量及び、c-fos mRNAとリン酸化ERKの免疫染色を行う。当初計画で見込んだよりも安価に研究が行えたため、次年度使用額が生じた。また、当初計画では神経トレーサーを用いた解析を行う予定であったが、研究の進捗状況により次年度実施することとなったため、次年度使用額が生じた。
KAKENHI-PROJECT-24791587
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24791587
骨髄は痛みを感じるか
次年度は骨髄刺激に応答するニューロンの薬理学的特性を明らかにするため、実験動物、薬理学実験試薬(AMPAレセプタ拮抗薬、NMDAレセプタ拮抗薬)、生化学実験試薬、細胞標的関連試薬に使用する。
KAKENHI-PROJECT-24791587
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24791587
主要部が非線形微分作用素である高階非線形常微分方程式の解の構造の研究
本研究の目的は,非線形Sturm-Liouville微分作用素が主要部である高階常微分方程式の解の振動性と漸近挙動の精密な解析を行い,それを拠り所にして解の全体構造を解明することである.本年度は,高階非線形微分方程式への橋頭堡となる4階非線形微分方程式の解の全体構造の精細な研究と高階非線形微分方程式の内で最も単純な偶数階非線形常微分方程式及びずれの変数を含む偶数階非線形関数微分方程式に対して,"非振動解の無限遠における漸近挙動の精密な分析"と"全ての解が振動あるいは非振動である状況の特徴付げ"などを重点課題として研究を行った.[研究実施の具体的な内容](1)振動理論の発展史の総括.考究の対象となっている微分方程式の種類,それらに対して得られている結果,結果を導出するために利用されている数学的方法・手段・技術を分類し,可能な限り体系的にまとめる作業を行った.情報の収集にはインターネット(Math.Sci.Net.,Zentralblatt MATH等)と他大学の図書館を利用した.(2)研究成果報告.研究経過を定期的に振動理論の世界的権威で世界の情報を握っている草野尚教授(広島大学名誉教授,福岡大学)に報告して批判と助言を求めた.[主な研究成果](1)非線形Sturm-Liouville微分作用素に含まれている係数関数に,ある積分収束条件を仮定し,その条件の下で,4階微分方程式の非振動解の構造と振動解の存在性に関する結果を得た.(2)セルビアのKaramataによって創始されたKaramata関数(正則変動関数)をさらに一般化したKaramata関数の枠組みの中で,2階非線形微分方程式の非振動解の漸近行動を解析し,解の構造に関する情報を得た.(3)ずれの変数を含む偶数階非線形関数微分方程式の非振動解の漸近的性質と振動解の存在性を吟味し,解の構造に関する結果を得た.(4)ある高階非線形微分方程式の全ての解が振動するための必要十分条件を求めた.本研究の目的は,非線形Sturm-Liouville微分作用素が主要部である高階の常微分方程式の解の振動性と漸近挙動の精密な解析を行い,それを拠り所にして解の全体構造を解明することである.本年度は,高階の非線形常微分方程式に対して,"非振動解の無限遠における漸近行動の精密な分析"と"全ての解が振動あるいは非振動である状況の特徴づけ"などを重点課題として研究を行った.[研究実施の具体的な内容](1)微分方程式の解の性質を調べる研究に対しては,有効な数学的手段・技法の効果的な適用が一義的に重要である.そこで,文献の収集やインターネット(MathSciNet等)の活用を通して必要な情報を蓄積して,それを的確に総括,整理し,問題の解決に有効な方法や技法(解析的,位相的,幾何学的)網羅する作業を行い,自らの手で新たな方法論を開発し計算を実行した.さらに,無限区間における(振動性と無限遠における漸近行動)を推測するために,計算ソフトMapleを活用した.(2)研究経過を定期的に振動理論の世界的権威である草野尚教授(広島大学名誉教授,福岡大学)に報告して批判と助言を求めた.(3)振動理論の第一人者であるスロバキアのコメニウス大学のJaroslav Jaros教授に来日して頂き,高階微分方程式の振動性について討論,情報交換を行った,[研究成果](1)高階のSturm-Liouville微分作用素を含む非線形微分方程式の非振動解を無限遠点における漸近挙動に従って分類し,その分類された各々のタイプの解が存在するための条件を求めた.(2)4階非線形Sturm-Liouville常微分方程式の主要部である微分作用素の係数に,ある積分収束条件を課し,非振動解の存在について述べ,さらに全ての解が振動するための十分条件を求めた.本研究の目的は,非線形Sturm-Liouville微分作用素が主要部である高階の常微分方程式の解の振動性と漸近挙動の精密な解析を行い,それを拠り所にして解の全体構造を解明することである.昨年度は,高階非線形微分方程式への橋頭堡となる4階非線形微分方程式の解の全体構造の研究を行い,本年度は高階非線形微分方程式の内で最も単純な偶数階非線形微分方程式に対して,"非振動解の無限遠における漸近挙動の精密な分析"と"全ての解が振動あるいは非振動である状況の特徴付け"などを重点課題として研究を行った.[研究実施の具体的な内容]1振動理論の発展史の総括.考究の対象となっている微分方程式の種類,それらに対して得られている結果,結果を導出するために利用されている数学的方法・手段・技術を分類し,可能な限り体系的にまとめる作業を行った.情報の収集にはインターネット(Math.Sci.Net.,Zentralblatt MATH等)と他大学の図書館を利用した.2研究成果報告.研究経過を定期的に振動理論の世界的権威で世界の情報を握っている草野尚教授(広島大学名誉教授,福岡大学)に報告して批判と助言を求めた.[研究成果]1 4階非線形微分方程式の主要部である微分作用素の係数に,ある積分収束条件を課し,全ての解が振動するための必要十分条件を求めた.21970年セルビアのKaramataによって創始されたKaramata関数(正則変動関数)をさらに一般化したKaramata関数の枠組みの中で,2階非線形微分方程式の非振動解の漸近行動を分析した.
KAKENHI-PROJECT-16740084
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16740084
主要部が非線形微分作用素である高階非線形常微分方程式の解の構造の研究
3ずれの変数を含む偶数階非線形微分方程式の振動性,非振動性を比較原理を用いて分析した.本研究の目的は,非線形Sturm-Liouville微分作用素が主要部である高階常微分方程式の解の振動性と漸近挙動の精密な解析を行い,それを拠り所にして解の全体構造を解明することである.本年度は,高階非線形微分方程式への橋頭堡となる4階非線形微分方程式の解の全体構造の精細な研究と高階非線形微分方程式の内で最も単純な偶数階非線形常微分方程式及びずれの変数を含む偶数階非線形関数微分方程式に対して,"非振動解の無限遠における漸近挙動の精密な分析"と"全ての解が振動あるいは非振動である状況の特徴付げ"などを重点課題として研究を行った.[研究実施の具体的な内容](1)振動理論の発展史の総括.考究の対象となっている微分方程式の種類,それらに対して得られている結果,結果を導出するために利用されている数学的方法・手段・技術を分類し,可能な限り体系的にまとめる作業を行った.情報の収集にはインターネット(Math.Sci.Net.,Zentralblatt MATH等)と他大学の図書館を利用した.(2)研究成果報告.研究経過を定期的に振動理論の世界的権威で世界の情報を握っている草野尚教授(広島大学名誉教授,福岡大学)に報告して批判と助言を求めた.[主な研究成果](1)非線形Sturm-Liouville微分作用素に含まれている係数関数に,ある積分収束条件を仮定し,その条件の下で,4階微分方程式の非振動解の構造と振動解の存在性に関する結果を得た.(2)セルビアのKaramataによって創始されたKaramata関数(正則変動関数)をさらに一般化したKaramata関数の枠組みの中で,2階非線形微分方程式の非振動解の漸近行動を解析し,解の構造に関する情報を得た.(3)ずれの変数を含む偶数階非線形関数微分方程式の非振動解の漸近的性質と振動解の存在性を吟味し,解の構造に関する結果を得た.(4)ある高階非線形微分方程式の全ての解が振動するための必要十分条件を求めた.
KAKENHI-PROJECT-16740084
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16740084
感染と関連した腎疾患における補体を介した腎組織障害機序とその指標の解明
補体系は感染防御の重要な構成要素であるが、その過剰な活性化は組織障害性に働くことが知られている。そこで感染と関連した腎疾患における補体による腎障害機序の検討を進めている。当初、対象疾患として感染関連糸球体腎炎の解析を進める予定であったが、東京医科大学八王子医療センター及び防衛医科大学校腎臓内分泌内科に保存されている感染関連糸球体腎炎の腎生検凍結組織を調べたところ、非常に限られており解析できる十分なサンプル数に及ばないことが判明した。そこで対象疾患をサンプル数が豊富ですぐに解析を開始できる、ANCA関連腎炎に変更することとした。20例のMPO-ANCA陽性MPA患者を対象として、腎生検組織と血清を中心に解析を進めてきた。血清に関して、Wieslabのキットを用いて、補体の活性化3系統の評価を実施したところ、一部のサンプルで副経路、レクチン経路の特異的な活性化がみられるものもあったが、古典経路を含め全経路が一緒に活性化しているサンプルも存在し、結果の評価が困難であった。この原因として結成の保存状態が検査結果に影響して不安定な結果になってしまっている可能性が考えられた。一方、腎生検組織に関しては、C4d, MBL, C3, C5, FBb, C5b-9などを直接蛍光抗体法で組織染色をしたところ、C4d, C5, C5b-9はほぼ全例で陽性ながらMBLはほぼ全てのサンプルで陰性であり、おそらく古典経路を中心とする補体活性化が起こって、腎組織障害に関与している可能性が示唆された。当初予定していた対象疾患である感染関連糸球体腎炎の患者さんの腎生検凍結組織の保存が非常に限られており、解析できる十分なサンプル数に及ばないことが判明したため当初の解析予定疾患を変更して解析を進めている。さらに、組織染色に用いる蛍光標識した補体関連蛋白に対する抗体をBioss社から購入して使用したが、全く染色結果が安定せず、抗体の信用性に欠ける状況であった。抗体の信用性を評価するため、染色法の条件を種々に振って実施したが結局安定した結果が得られず、やむを得ず多数の抗体を他社から再購入し、染色も間接法に変更して再度検討したことで遅延を生じた。また、感染関連糸球体腎炎に関しては、解析サンプルを増やす必要があり、他施設サンプルの使用の可能性を調査中で、全体に研究の進捗は遅れている。血清に関して、Wieslabのキットを用いた補体の活性化の評価結果が不安定であったため、C5a,可溶性C5b-9のアッセイキットを用いた評価や、古典経路の活性化と関連した血中免疫複合体の存在を検査会社に依頼して実施する予定である。また、血清でうまく解析が実施できるようであれば、尿に関しても、C5a,可溶性C5b-9などのレベルをELISAを用いて検討する。さらにANCA関連血管炎での検討で、評価方法が確立しつつあるので、これらの評価方法を用いて、感染関連糸球体腎炎、敗血症性急性腎障害症例を対象とした検討も早急に進めたい。補体系は感染防御の重要な構成要素であるが、その過剰な活性化は組織障害性に働くことが知られている。そこで感染と関連した腎疾患における補体による腎障害機序の検討を進めている。当初、対象疾患として感染関連糸球体腎炎の解析を進める予定であったが、東京医科大学八王子医療センター及び防衛医科大学校腎臓内分泌内科に保存されている感染関連糸球体腎炎の腎生検凍結組織を調べたところ、非常に限られており、解析できる十分なサンプル数に及ばないことが判明した。そこで、対象疾患をサンプル数が豊富ですぐに解析を開始できる、ANCA関連腎炎に変更し、まずは腎生検組織の解析を開始することとした。補体C5の活性化を抑制しC5b-9の生成を抑制する治療薬であるエクリズマブ(抗C5モノクローナル抗体)を蛍光色素で標識し、直接蛍光抗体法で組織染色をしたところ、検討した18例のANCA関連腎炎全例でC5の沈着を認め、その沈着強度は、腎炎の活動性と相関すると予測される血尿のレベルと有意な正の相関がみられた。当初予定していた対象疾患である感染関連糸球体腎炎の患者さんの腎生検凍結組織の保存が非常に限られており、解析できる十分なサンプル数に及ばないことが判明したため当初の解析予定疾患を変更して進めている。さらに、組織染色に関して、C4d, C3b, C5b-9やC5a, Factor H, MSP-1などの標識ズミ抗体をBioss社から購入して使用したが、全く組織染色がされず、抗体の信用性に欠ける状況であった。そこで、現在、蛍光抗体関節法で使用可能な抗体を購入しなおして再検討を進めるなど、手間取っている状況がある。補体系は感染防御の重要な構成要素であるが、その過剰な活性化は組織障害性に働くことが知られている。そこで感染と関連した腎疾患における補体による腎障害機序の検討を進めている。当初、対象疾患として感染関連糸球体腎炎の解析を進める予定であったが、東京医科大学八王子医療センター及び防衛医科大学校腎臓内分泌内科に保存されている感染関連糸球体腎炎の腎生検凍結組織を調べたところ、非常に限られており解析できる十分なサンプル数に及ばないことが判明した。そこで対象疾患をサンプル数が豊富ですぐに解析を開始できる、ANCA関連腎炎に変更することとした。20例のMPO-ANCA陽性MPA患者を対象として、腎生検組織と血清を中心に解析を進めてきた。
KAKENHI-PROJECT-17K08992
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K08992
感染と関連した腎疾患における補体を介した腎組織障害機序とその指標の解明
血清に関して、Wieslabのキットを用いて、補体の活性化3系統の評価を実施したところ、一部のサンプルで副経路、レクチン経路の特異的な活性化がみられるものもあったが、古典経路を含め全経路が一緒に活性化しているサンプルも存在し、結果の評価が困難であった。この原因として結成の保存状態が検査結果に影響して不安定な結果になってしまっている可能性が考えられた。一方、腎生検組織に関しては、C4d, MBL, C3, C5, FBb, C5b-9などを直接蛍光抗体法で組織染色をしたところ、C4d, C5, C5b-9はほぼ全例で陽性ながらMBLはほぼ全てのサンプルで陰性であり、おそらく古典経路を中心とする補体活性化が起こって、腎組織障害に関与している可能性が示唆された。当初予定していた対象疾患である感染関連糸球体腎炎の患者さんの腎生検凍結組織の保存が非常に限られており、解析できる十分なサンプル数に及ばないことが判明したため当初の解析予定疾患を変更して解析を進めている。さらに、組織染色に用いる蛍光標識した補体関連蛋白に対する抗体をBioss社から購入して使用したが、全く染色結果が安定せず、抗体の信用性に欠ける状況であった。抗体の信用性を評価するため、染色法の条件を種々に振って実施したが結局安定した結果が得られず、やむを得ず多数の抗体を他社から再購入し、染色も間接法に変更して再度検討したことで遅延を生じた。また、感染関連糸球体腎炎に関しては、解析サンプルを増やす必要があり、他施設サンプルの使用の可能性を調査中で、全体に研究の進捗は遅れている。今後、C5の陽性所見の詳細をC5b-9, C5a, C5aRなどに対する抗体を用いた間接蛍光抗体法で確認を進めるとともに、組織だけでなく、血清・尿などに関して可溶性C5b-9などのレベルをELISA法などを用いて検討し比較評価する。さらに、ANCA関連血管炎での評価方法を用いて、敗血症性急性腎障害の検討も進める。感染関連糸球体腎炎に関しても、他施設との共同研究の形にして、解析症例数を増やすことを考える。血清に関して、Wieslabのキットを用いた補体の活性化の評価結果が不安定であったため、C5a,可溶性C5b-9のアッセイキットを用いた評価や、古典経路の活性化と関連した血中免疫複合体の存在を検査会社に依頼して実施する予定である。また、血清でうまく解析が実施できるようであれば、尿に関しても、C5a,可溶性C5b-9などのレベルをELISAを用いて検討する。さらにANCA関連血管炎での検討で、評価方法が確立しつつあるので、これらの評価方法を用いて、感染関連糸球体腎炎、敗血症性急性腎障害症例を対象とした検討も早急に進めたい。当初、試料の保存・整理用にディープフリーザを購入する予定であったが、実験室の管理・運営系統の変革があり、すぐに購入することができなくなったため、機器使用予定金がかからなかった。今年度購入した抗体などの試薬で、予想通りに働かない試薬もあり、次年度は、これらの代替用試薬やELISA kitなど多数の試薬購入に使用する予定である。当初、試料の保存・整理用にディープフリーザを購入する予定であったが、実験室の管理・運営系統の変革があり、すぐに購入することができなくなったため、機器使用予定金がかからなかった。昨年度購入した抗体などの試薬で、全く予想通りに働かない試薬があってかえって研究の遅れを生じてしまったこともあり、試薬・キットの購入をより慎重に実施していることもあって使用額が少なめになっている。
KAKENHI-PROJECT-17K08992
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ヒトの発生・老化における癌原遺伝子の新たな役割の解明
申請者らは2005年にHRASの生殖細胞系列(受精卵に始まり全身に存在)での変異を先天奇形症候群であるCostello症候群で同定した(Aoki et al, 2005)。それに引き続き2006年にcarcio-facio-cutaneous(CFC)症候群の原因がKirsten-RAS(KRAS),B型RAFキナーゼ(BRAF)の生殖細胞系列の変異であることを世界に先駆けて報告した(Niihori,Aoki et al., 2006)。この研究の目的は1)患者で同定された遺伝子変異を導入したモデル動物を作製し、癌原遺伝子の新しい役割を明らかにすることである。2)未だ遺伝子変異の明らかでない類縁疾患の新規原因遺伝子を明らかにすることである。これまで細胞の増殖・分化・老化・死における癌原遺伝子の役割に関する研究が行われてきた。申請者らの研究がブレークスルーとなり、RAS/MAPKシグナル伝達経路上の分子がヒトの発生に重要であることが明らかになったが、それを解析するためのモデルマウスはいまだ作製されていない。この研究の目的は1)患者で同定された遺伝子変異を導入したモデルマウスを作製し、個体の発生・老化・発癌・死における癌原遺伝子の新しい役割を明らかにすることである。また遺伝子変異をもつ患者細胞・組織、変異導入を導入した培養細胞を用いることにより、多角的にヒト細胞でも老化・発癌の現象を検証する。2)これらの研究で得られたシグナル伝達情報を元に、未だ遺伝子変異の明らかでない類縁疾患の新規原因遺伝子を明らかにする。これまでにNoonan類縁疾患300人を収集し既知の原因遺伝子PTPN11,HRAS,KRAS,BRAF,MEK1/2,RAF1,SHOC2の包括的遺伝子解析を行い180人(60%)に遺伝子変異を同定した。新たに報告されたRAF1遺伝子をスクリーングするとともに,RAF1変異蛋白の活性化メカニズムを検討した。既知の遺伝子における変異陰性の類縁患者119人中18人に遺伝子変異を同定した。臨床症状の詳細な検討により他の遺伝子変異をもつヌーナン症候群に比べて肥大型心筋症と低身長の合併頻度が高いことが明らかになった。変異蛋白の機能解析にて,変異蛋白では抑制性のS259リン酸化が低下しており,RAF1活性抑制に重要な14-3-3蛋白との結合が低下し,その結果非刺激時にも下流のERKを活性化していることが明らかになった。さらにCFC症候群での血液腫瘍合併3例目として,生後早期に非ホジキンリンパ腫を発症した症例にBRAF遺伝子変異を同定した。申請者らは2005年にHRASの生殖細胞系列(受精卵に始まり全身に存在)での変異を先天奇形症候群であるCostello症候群で同定した(Aoki et al, 2005)。それに引き続き2006年にcarcio-facio-cutaneous(CFC)症候群の原因がKirsten-RAS(KRAS),B型RAFキナーゼ(BRAF)の生殖細胞系列の変異であることを世界に先駆けて報告した(Niihori,Aoki et al., 2006)。この研究の目的は1)患者で同定された遺伝子変異を導入したモデル動物を作製し、癌原遺伝子の新しい役割を明らかにすることである。2)未だ遺伝子変異の明らかでない類縁疾患の新規原因遺伝子を明らかにすることである。
KAKENHI-PROJECT-19679005
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19679005
部材の性能と接合部の性能の相関性に関する実験的研究
本研究は合理的な木質構造の設計に欠かせない材料と接合部の強度性能の相関性を把握することを目的にした実験的研究である。従来、部材の性能を表す因子として比重が考えられ、許容応力度も比重に応じて決められていた。比重はその計測が困難で、これまで樹種に対して1比重という形態であった。しかし近年部材のヤング係数を計測することが比較的簡易に行えるようになり、部材の許容応力度もヤング係数に対して与えられるように変化してきた。そこで、本研究では部材の性能を代表するものとして曲げヤング係数を、接合部の性能を代表するものとして円形めり込み性能を考えた。実験は、様々なヤング係数の部材に、ピン径1224phiの円形めり込みを生じさせ、その荷重とめり込み量を測定するものである。実験の結果、以下の知見が得られた。1.接合強度と曲げヤング係数の間には、相関係数0.78以上の強い正の相関関係がみられた。しかし、ピン径が20mmの場合には、その傾向がみられない。2.初期剛性と曲げヤング係数の間には、接合強度ほどではないが、相関係数0.420.77程度の正の相関関係がみられる。しかし、強度の場合と同様にピン径20mmの場合にはその傾向がみられず、逆に負の相関を示した。3.部材の曲げヤング係数とは別に、含水率、比重の計測を行ったが、含水率はほとんど相関が見られず、比重は曲げヤング係数と同程度の相関が見られた。試験体数が少ないものがあったため、相関が見られないものもあったが、部材の曲げヤング係数を用いて、接合強度を評価する方法は有効だという結果が得られた。本研究は合理的な木質構造の設計に欠かせない材料と接合部の強度性能の相関性を把握することを目的にした実験的研究である。従来、部材の性能を表す因子として比重が考えられ、許容応力度も比重に応じて決められていた。比重はその計測が困難で、これまで樹種に対して1比重という形態であった。しかし近年部材のヤング係数を計測することが比較的簡易に行えるようになり、部材の許容応力度もヤング係数に対して与えられるように変化してきた。そこで、本研究では部材の性能を代表するものとして曲げヤング係数を、接合部の性能を代表するものとして円形めり込み性能を考えた。実験は、様々なヤング係数の部材に、ピン径1224phiの円形めり込みを生じさせ、その荷重とめり込み量を測定するものである。実験の結果、以下の知見が得られた。1.接合強度と曲げヤング係数の間には、相関係数0.78以上の強い正の相関関係がみられた。しかし、ピン径が20mmの場合には、その傾向がみられない。2.初期剛性と曲げヤング係数の間には、接合強度ほどではないが、相関係数0.420.77程度の正の相関関係がみられる。しかし、強度の場合と同様にピン径20mmの場合にはその傾向がみられず、逆に負の相関を示した。3.部材の曲げヤング係数とは別に、含水率、比重の計測を行ったが、含水率はほとんど相関が見られず、比重は曲げヤング係数と同程度の相関が見られた。試験体数が少ないものがあったため、相関が見られないものもあったが、部材の曲げヤング係数を用いて、接合強度を評価する方法は有効だという結果が得られた。
KAKENHI-PROJECT-05750541
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05750541
法整備支援の手法と評価に関する理論研究
近年、社会主義体制から市場経済体制に移行しつつあるアジア諸国は、市場経済化に相応しい法体制を整備するために、外国とりわけ日本の知的・人的支援を求めている。日本政府は1996年以降、ベトナム、ラオス、カンボジアなどに対する法整備支援を開始したが、その法整備支援の実際のなかで、法整備支援の理念とは何か、どのような法分野に対して支援を行うべきか、というような基本的な諸問題が問われてきた。本領域研究においては、実際に行われつつある法整備支援事業を学問的に検討し、法整備支援学の構築を目指してきた。本班では、(1)情報科学の成果を法整備支援のプロジェクト運営と評価に利用できるような「新世代の比較法研究」の枠組みを構想し、その具体化を考察すること、(2)行政学の政策評価の手法を取り入れて、法整備支援の評価手法を確立すること、の2点を目標としてきた。これらの研究の過程で明らかになった問題や研究成果を報告書『法整備支援の情報基盤:比較法研究の新たな枠組』(松浦好治、F.Bennett、養老真一、田中規久雄編)として刊行した。本報告書では、評価手法の開発だけに焦点を小さく絞ることはせず、「新世代比較法研究の枠組み構築」という観点から研究成果をとりまとめている。今後、これらの成果を踏まえて、さらなる研究が展開されることが期待される。近年、社会主義体制から市場経済体制に移行しつつあるアジア諸国は、市場経済化に相応しい法体制を整備するために、外国とりわけ日本の知的・人的支援を求めている。日本政府は1996年以降、ベトナム、ラオス、カンボジアなどに対する法整備支援を開始したが、その法整備支援の実際のなかで、法整備支援の理念とは何か、どのような法分野に対して支援を行うべきか、というような基本的な諸問題が問われてきた。本領域研究においては、実際に行われつつある法整備支援事業を学問的に検討し、法整備支援学の構築を目指してきた。本班では、(1)情報科学の成果を法整備支援のプロジェクト運営と評価に利用できるような「新世代の比較法研究」の枠組みを構想し、その具体化を考察すること、(2)行政学の政策評価の手法を取り入れて、法整備支援の評価手法を確立すること、の2点を目標としてきた。これらの研究の過程で明らかになった問題や研究成果を報告書『法整備支援の情報基盤:比較法研究の新たな枠組』(松浦好治、F.Bennett、養老真一、田中規久雄編)として刊行した。本報告書では、評価手法の開発だけに焦点を小さく絞ることはせず、「新世代比較法研究の枠組み構築」という観点から研究成果をとりまとめている。今後、これらの成果を踏まえて、さらなる研究が展開されることが期待される。計画研究C1「法整備支援の手法と評価に関する理論研究」の研究実績の概要は、以下のとおりである。(1)本年度は、対外支援の有効性を図るためにこれまで用いられてきた手法の特定とその長所・短所を分析して特定する準備作業を行った。具体的には、国際協力事業団(JICA)の採用している評価手法の確認作業から開始した。JICAの手法の中に「参加型」評価と呼ばれる手法が導入されつつあること、その特徴についての資料収集と、理解を深めた。(2)スウェーデンの支援機関であるSidaについても研究の一環として2001年度に訪問調査を行った。それによって収集した評価に関する資料の分析作業を始めつつある。(3)名古屋大学が関係しているベトナムに対する法整備支援事業に関連して2002年1月にベトナムで日本側とベトナム側の間で年次協議が行われた。この年次協議は、当該年度の支援事業の評価を中核としており、その現地調査に参加し評価のプロセスの流れを直接観察した(4)2002年2月16-17日に名古屋大学で開催された「21世紀中央アジアにおける体制転換と法-法整備の現状と課題-」では、中央アジア3カ国の法整備への需要の大きさが明らかになっただけでなく、「有効かつ効率的な支援」のための評価方法についても意見を交換した。世界銀行やアジア開発銀行など多くの国際支援機関は、その事業が効率的に行われていることを確認評価し、その後援助プロジェクトの質を向上させるための評価プログラムをそれぞれ用意している。今年度は、世界銀行、アジア開発銀行、国連開発計画、JICA、スウェーデンのSidaなどの援助機関が評価に関連してどのようなアプローチを採用しているのかに関して、聞き取り調査及び文献調査を行った。これらの調査の報告は、それぞれ文書として蓄積されつつある。また、支援対象国で実際に実施された評価活動に参加し、そこから評価の実態や有効性を考えるという観点から、今年度は、JICAのベトナム法整備支援、第2フェーズ終了評価の企画立案にアドバイザーとして参加する一方、現地における評価自体にも参加して、検討を行った。評価枠組みの多様性を研究の射程に取り込むため、法整備支援以外の事業にも検討の範囲を拡大した。高等教育機関の外部評価は、法整備支援とは直接関係しないが、その評価手法は、法整備支援評価についても転用できると思われるので、イギリスにおける大学評価の手続き、その有効性についても、現地調査に参加する一方、資料の検討を進めた。日本の学位授与機構の行う評価手法についても比較の観点から概観を行った。評価の基礎となるデータの整備も重要であり、世界銀行が作成中の世界の司法と法運用の実態を統計情報から明らかにするプロジェクトにも参加し、データの収集作業を進めている。(1)支援記録のデジタルデータ化ラオスおよびベトナムに対する日本の法整備支援の記録をデジタルデータ化する作業を進め、ラオスについてはその作業を完了し、ベトナムについては継続中である。
KAKENHI-PROJECT-13123204
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13123204
法整備支援の手法と評価に関する理論研究
この記録から、日本の法整備支援の特徴を明らかにし、あわせてその中でどのような評価が行われ、その後の支援に影響を及ぼしたかの検討に着手した。(2)有力な支援機関である世界銀行が法整備支援の領域でどのような支援活動評価を行っているかを調査した。その成果は、英文および日本語要約の資料としてまとめてている。(3)プロジェクトの評価について、テレビ会議システムがどの程度効率的であるかを調査するため、世界銀行がワシントンとベルギー裁判所支援機構を結んで行ったテレビ会議に参加した。また、JICAが留学生選抜のために導入したテレビ会議システムには積極的に協力し、その長所と短所に関する調査を進めている。(4)ベトナムにおいて、草の根支援の観点から支援の有効性や紛争解決の実態に関する研究を進めた。(5)行政学を中心として、政策評価に関する最新の学問的戎果を共通理解にする目的で一連の研究会の実施と、法整備支援当事者からの聞き取り作業の実施は、不十分な状態にある。1.発展途上国において起草された法案と現行法との間で矛盾がしばしば発生する。そのため、起草された法案の品質を評価し、起草段階から法令間の整合性を確保する手段を講じる必要がある。そのための立法支援ソフトの研究を進め、ベトナム司法省と共同で日本語のソフトをベトナム語化する作業を進めた。2.ベトナムに対する法整備支援の適切さを草の根レベルでモニターする研究を昨年度同様継続して行った。3.日本法令を英訳するための基礎調査として、フランス司法省法令英訳プロジェクトの実施調査を行い、法令英訳の手順、問題点などを総合的に洗い出す作業を完了した。4.法と開発というテーマで国際シンポジウムを実施し、これまでの各国の法整備事業の概要、問題点、改善の方向について検討した。詳細であるよりは、簡便で継続的に使用できる評価が必要なこと、国際的な評価体制のあり方などについて、情報を収集した。日本法令の英訳プロジェクトが進行中であり、このプロジェクトは、各国の法制度に関する最新の生きた情報を共有するための基盤となりうる点が報告された。5.中国民法プロジェクトを推進し、市場経済化に対応する中国の努力に協力した。これにより、機能する民法典に関する研究を進めた。6.日本のベトナムとカンボジアに対する法整備支援活動を歴史的に回顧し、その特徴を分析する作業を行い、その成果をまとめた。基礎資料についても、電子情報化をほぼ完了した。研究計画に従った活動を行い、次のような成果を得た。1.昨年度にまとめたカンボジア、ベトナムに対する日本の法整備支援の記録の分析を進め、報告書にまとめる作業を行った。この成果は、報告書の一部に組み込まれる予定である。この作業は、評価を行うための基礎資料の整備と分析という意味を持っている。2.ウズベキスタンについては、名古屋大学を中心とした法整備支援活動について、とくに法令起案・および法令データ的提供システムの近代化のための基礎調査を行い。データベース管理と法令起案システムの改善に関する勧告意見を提供した。
KAKENHI-PROJECT-13123204
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位置情報システムを用いた公共図書館利用者の情報探索行動の傾向と要因分析
位置情報システムであるRFID(無線周波個体識別)技術を用いて,公共図書館利用者の情報探索行動について調査を行った。その結果,ゾーンごとの滞在時間や滞在経路などのデータを得ることができた。例えば,滞在時間は3分の1以上の利用者が30分未満と短い一方で,120分を超える利用者が約7%と少ないながらも存在する。また滞在場所は,約80%が,一般図書ゾーンであり,インターネットや契約データベース利用を含むコンピュータゾーンの滞在時間が8%にも満たないこと等が明らかになった。今回採用した手法から,図書館利用者の情報探索行動を説明するために必要なデータを得られることを確認した。本研究では,公共図書館における利用者の情報探索行動を解明することを目的とし,近年開発の進むRFID(無線周波固体識別:Radio Frequency Identification)の技術を応用して,利用者が情報探索を行う際の行動軌跡を記録,分析している。本年度は,3年計画の2年目にあたる。初年度は,情報収集や調査依頼館の決定,調査依頼館において予備調査を実施した。本年度は,初年度に行った予備調査において明らかになった問題点を改善できる方策を検討し,調査依頼館において本調査を実施した。本調査では,図書館来館者にRFIDのアンテナと電波を蓄積するためのアンテナを携帯してもらい,通常通りに図書館を利用してもらった。調査依頼館の所蔵する個々の資料にはRFIDタグが貼付されているため,資料の書誌データを利用することで,利用者の館内における時間ごとの位置と滞在中の行動軌跡を得ることができた。また利用者の退館時には,利用者の属性や,利用内容,図書館に対する認識などを問う質問紙調査を行った。これは,RFIDタグにより得られたデータを,利用者のニーズや認識により,分析するためである。調査の結果,館内における行動軌跡に関するデータと,質問紙調査の結果の両方が有効なデータは,合計211名分であった。これらのデータを,滞在時間,移動距離,部門ごとの滞在時間,資料の主題部門ごとの滞在時間等ごとに集計を行った。本研究では,公共図書館における利用者の情報探索行動を解明することを目的とし,近年開発の進むRFID(無線周波固体識別:Radio Frequency Identification)の技術を応用して,利用者が情報探索を行う際の行動軌跡を記録,分析してきた。本年度は,3年計画の3年目にあたる。初年度は,情報収集や調査依頼館の決定,調査依頼館において予備調査を実施し,2年目は,初年度に行った予備調査において明らかになった問題点を改善できる方策を検討し,調査依頼館において本調査を実施した。3年目にあたる本年度はデータ分析を経て,この手法の有効性を検討し,論文執筆を行うことを目指した。その結果,資料に貼付されたRFIDタグを用いた位置特定システムには,利用者の館内行動を把握するためのデータを取得するのに有効であること,館内の位置(書架に配架された資料の分野に至るまで)に関する詳細なデータを得ることが可能であることが確認された。データの分析の最初の段階では,業者に作成を依頼したアプリケーションソフトを使用して集計を行ったが,専門家に相談する中で,統計処理を行えば,より詳細は分析が可能であることがわかり,統計用の言語であるRを使った分析に着手した。この作業により,予定が大幅に遅れたものの,新たな可能性も見いだすことができた。調査で取得した時系列データ(時刻と座標上の位置)を用いて,平面上の確立密度を算出し,グループごとに行動パターンの傾向を見いだすことができる。例えば,資料を借りた利用者と借りなかった利用者とでは,明らかに訪問エリアに違いがある。現在も作業は継続中なので,次年度中には論文執筆を行い成果を公表する予定である。位置情報システムであるRFID(無線周波個体識別)技術を用いて,公共図書館利用者の情報探索行動について調査を行った。その結果,ゾーンごとの滞在時間や滞在経路などのデータを得ることができた。例えば,滞在時間は3分の1以上の利用者が30分未満と短い一方で,120分を超える利用者が約7%と少ないながらも存在する。また滞在場所は,約80%が,一般図書ゾーンであり,インターネットや契約データベース利用を含むコンピュータゾーンの滞在時間が8%にも満たないこと等が明らかになった。今回採用した手法から,図書館利用者の情報探索行動を説明するために必要なデータを得られることを確認した。本研究では,公共図書館における利用者の情報探索行動を解明することを目的とし,近年開発の進むRFID(無線周波個体識別:Radio Frequency Identification)の技術を応用して,利用者が情報探索を行う際の行動軌跡を記録する。また探索行動に影響を与える種々の要因について,被験者に対して質問紙調査も同時に行う。本年度は3年計画の初年度にあたるため,情報収集,文献収集を行って,調査協力館と使用する機材を決定し,調査協力館に協力を依頼し,協力範囲について交渉を行った。またこれまでの研究成果を,Evidence BasedLibrary and Information Practice Conference in Salford(Greater Manchester, UK, June 30th 2011)において発表し,研究者や図書館員から意見をもらった。さらに,図書館利用者の行動軌跡を記録するための実験と予備調査を実施した。利用者の行動軌跡の記録には,平成21年に申請者が実施した調査で用いた位置情報システム(RFIDタグやリーダ・ライタ,データを処理するソフトウェア)をもとにして,より性能のよい機材を検討し,作成した。予備調査では,利用者に小型のアンテナ携帯して図書館滞在中に自由に過ごしてもらった。
KAKENHI-PROJECT-23500300
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23500300
位置情報システムを用いた公共図書館利用者の情報探索行動の傾向と要因分析
アンテナは図書に貼付されているRFIDタグの電波を受信するため,個々の図書に記録された情報から,館内の位置を推定できることがわかった。電波の受信が不足する箇所には,設置用のタグを置いて補うなど,本調査に向けて機材や環境の調整を行った。以上により,今回システムにより,どのような方法で,どのようなデータを得ることができるかを把握することができた。本調査ではどのようなどのような分析が可能かについても,一応の目処を得ることができた。本年度の主な予定は,調査依頼館における本調査の計画と実施であった。予備調査においてみつかったいくつかの問題(図書館内においてRFIDタグから発信されるデータが得られない場所があるなど)について,調査手法を修正することで,おおむね解決することができ,予定していた調査計画を大きく変えることなく,無事に本調査を終えることができた。また,200件を超えるデータを得ることができたため,分析に必要なデータを一応得られたと考えている。ただし調査の実施最中に,館内における特定の位置において,データの精度が低くなることなど,分析に影響を与えるであろう問題もみつかっている。引き続き分析の手法を検討していく必要がある。また,目標としていた研究発表も無事に終えることができた。調査協力館を探し依頼すること,情報収集・文献収集を行うこと,学会発表を行うこと,そして予備調査の計画をたて実施することという当初の研究計画は一応無事に終了することができた。特に調査協力館として,理想的な図書館から協力の承諾を得ることができたことは,大きな収穫であった。また学会発表を行い,図書館員や研究者から率直な意見を得ることができたことも,今後の計画を考える上で参考になった。ただし,すべてが計画通りに進んだわけではない。本来は平成23年8月9月に実施予定であった予備調査が,実際には平成24年2月3月に遅れてしまった。これは,図書館が採用するタグの種類がすべて今回の調査が可能なものではなく,事前に数種類の機材を借りて実験をしなければならなかったため,予想以上に時間がかかったことと,第二回の助成金受入が終わるまで,業者の選定を始めることができなかったためである。時期は遅れてしまったが,調査協力館からの十分な支援を受けることができ,また心配していたトラブルも発生することなく予備調査を進めることができたため,本調査に必要な準備は一応無事に終えることができたと考えている。本調査で得られるであろうデータと分析の見通しを立てることができ,手法の検討を終えることができたため,予定どおり本調査を実施する見込みを得ることができた。平成24年度の研究計画は,無事に進行したため,平成25年度も,申請時の計画どおり進めたいと考えている。平成25年度には,平成24年度に得られたデータを整理し,分析を行う。得られたデータの分析方法として,単純集計以外の統計的手法を模索したい。
KAKENHI-PROJECT-23500300
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赤血球膜Na+/K+-ATPaseの簡易活性測定法開発と臨床検査への応用
我々は赤血球膜蛋白から高純度のNa+/K+-ATPaseを得るためにWGA-Agaroseゲルを用いて夾雑物の分離を行った。その結果、0.03M GlcNAcを用いて溶出したピークを目的物質として捉えることができた。この蛋白質を検証するためにSDS-PAGEを用いたNa+/K+-ATPaseサブユニット構造の解析を行った。鍍銀染色の結果、分子量97kDa付近にBF1、BF2、BF3ともに目的とするバンドが確認できた。さらに我々がブタ腎から単離したNa+/K+-ATPaseと比較検討した結果、溶出ピークは一致していた。これにより簡易的に赤血球膜からNa+/K+-ATPaseの単離法が確立できた。本研究の最終目的は赤血球からのNa+/K+-ATPaseを単離する方法を開発することにより糖尿病を始め、骨粗鬆症、関節リウマチなどの生活習慣病の予防や診断に貢献できる新たな臨床検査法を確立することにある。そのため平成25年度では24年度に行ったHPLC(高速液体クロマトグラフィ)を用いた赤血球膜からのNa+/K+-ATPaseの単離を試みるための基礎的研究を元に実際に赤血球膜からの蛋白の単離を試みた。HPLCによるNa+/K+-ATPaseの単離赤血球膜からの膜蛋白質を精製するため赤血球に冷却H20を作用させることで溶血させ、遠心分離を行い膜蛋白のみを精製した。その後、非イオン性界面活性剤のC12E8と膜蛋白濃度の混合比を変化させ、可溶化濃度を測定したところ蛋白濃度2mg/ml:C12E8濃度6mg/mlの割合が最も可溶化されることが示された。そこでP/C=2/6で可溶化し、0.2mg/ml C12E8 pH5.6の溶出液を用いてNa+/K+ーATPaseのOligomers構造の検出のためC12E8ーSECを行ったところ、複数のピークが認められた。アルブミンの分取位置から分子量を推測し、Na+/K+-ATPaseのTetraprotomer(T)、Diprotomer (D)、Protomer(P)であることが示唆された。さらにNa+/K+-ATPaseサブユニット構造(α、β、γ)の検出と定量のために採取したT分画、D分画、P分画を濃縮し、1.0%SDS pH7.0の溶出液を用いてHPLCを用いて分離を試みた結果、3つの溶出位置の異なるピークが認められた。それぞれピークの大きさは異なるもの同一溶出位置に分取されたため、Na+/K+-ATPaseのα、β、γであることが推察された。またWGA-Agaroseゲル(Bio Rad)を用いてNa+/K+ーATPase以外の夾雑物を除くことでより純度の高い赤血球膜Na+/K+ーATPaseの分離を試みた。その結果、0.03MのGlucNacで溶出したピークを目的物質として捉えることができた。我々は赤血球膜蛋白から高純度のNa+/K+-ATPaseを得るためにWGA-Agaroseゲルを用いて夾雑物の分離を行った。その結果、0.03M GlcNAcを用いて溶出したピークを目的物質として捉えることができた。この蛋白質を検証するためにSDS-PAGEを用いたNa+/K+-ATPaseサブユニット構造の解析を行った。鍍銀染色の結果、分子量97kDa付近にBF1、BF2、BF3ともに目的とするバンドが確認できた。さらに我々がブタ腎から単離したNa+/K+-ATPaseと比較検討した結果、溶出ピークは一致していた。これにより簡易的に赤血球膜からNa+/K+-ATPaseの単離法が確立できた。本研究の最終目的は赤血球からのNa+/K+-ATPaseを単離する方法を開発することで糖尿病を始め、骨粗鬆症、関節リウマチなどの生活習慣病の予防や診断に貢献できる新たな臨床検査法を確立することである。平成24年度では下記に示す基礎的検討を行った。(1)HPLCによるNa+/K+-ATPaseの単離のための検討Na+/K+-ATPaseのSubunits構造解析のために必要な条件として、TSKgel G4000SWXLを用いてElution Bufferに界面活性剤としてSDSおよびEDTAを混じることによりα、β、γの検出が可能となり、またOligomers構造解析のためにはTSKgel G4000SWXLとG3000SWXLのカラムを組合せ、Elution Bufferに界面活性剤としてC12E8とプロピオン酸カリウムそしてpHを酸性の5.6にすることが適していることを見いだした。さらに赤血球膜からの単離に適した条件として、WGA(小麦胚芽)レクチンカラムを用いて、タンパクがレクチン-アガロースカラムに結合した後、阻害糖であるN-アセチルグルコサミン(GlcNAc、NAG)を用いてリニアグラジエントで溶出することでNa+/K+-ATPaseを単離できることを明らかにした。(2)関節リウマチとNa+/K+-ATPaseとの関連性関節リウマチ患者は破骨細胞が活性化しており、骨から血中へのCaの漏出が進み、その結果、骨粗鬆症が認められる。
KAKENHI-PROJECT-24590702
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赤血球膜Na+/K+-ATPaseの簡易活性測定法開発と臨床検査への応用
関節リウマチ患者(20名)の血清検体を用いて我々が開発したTRACP-5a,5b同時検出法で両者の活性を測定したところ5aは全ての検体で高値を示し、骨疾患を併発している患者は5bも高値を示すことが明らかとなった。今後、上記方法でのNa+/K+-ATPase活性値との関連性の解析を進める予定である。本研究の最終目的は赤血球からのNa+/K+-ATPaseを単離する方法を開発することで糖尿病を始め、骨粗鬆症、関節リウマチなどの生活習慣病の予防や診断に貢献できる新たな臨床検査法を確立することである。本年度は赤血球膜蛋白の中からより純度の高いNa+/K+-ATPaseを得るためにWGA-Agaroseゲルを用いて夾雑物の分離を試みた。その結果、阻害糖である0.03M GlcNACで溶出したピークを目的物質として捉えることができた。またSDS-PAGEを用いたNa+/K+-ATPaseサブユニット構造の解析を行ったが泳動後のCBB染色では検出感度の問題でバンドが認められなかったため鍍銀染色を試み、標準物質であるNa+/K+-ATPaseα1に認められ、FTに認められないバンドの検出を行った。その結果、スタンダード分子量97,000付近にBF1、BF2、BF3に抽出された蛋白質に目的とするバンドが確認できた。さらに我々がブタ腎尿細管上皮より分離精製したNa+/K+-ATPaseと比較検討して赤血球膜から得られた標品が目的物質かを検証した。C12E8ーSECを行ったところ、Na+/K+-ATPaseの3つのピークが確認でき、これらはブタ腎から得られたピーク位置と一致していた。さらにNa+/K+-ATPaseサブユニット構造(α、β、γ)の検出と定量のために採取したT分画、D分画、P分画を濃縮し、1.0%SDS pH7.0の溶出液を用いてHPLCを用いて分離を試みた結果、3つの溶出位置の異なるピークが認められ、これもブタ腎から得られたNa+/K+-ATPaseのα、β、γの溶出位置と一致していた。その結果、我々が開発した赤血球から簡易的に単離する方法は、目的物質を的確に捉えていることが確認できた。臨床検査交付申請書に記載した研究計画では平成25年度の実験において赤血球Tetraprotomer(T)の純度検定や内因性ウアバインとNa+/K+-ATPase複合体の検出と簡易活性測定法の開発を行うことが主の目的となっていた。前年度の目標を達成するために精力的に実験を進めたが、赤血球膜に存在するNa+/K+-ATPaseは単離することはできても非常に微量のため検出が難しく、濃度の調整や夾雑物の除去に時間を取られ、試行錯誤を繰り返したために計画通りには進んでいない。しかし、赤血球膜からの膜蛋白質の精製、Na+/K+ーATPaseのOligomers構造の検出そしてNa+/K+ーATPaseサブユニット構造の解析を行うことができ、目標の80%は達成されたと考える。また糖尿病、骨粗鬆症などの生活習慣病患者のNa+/K+-ATPase活性値と病態との関連性について、骨粗鬆症患者(20名)の血清検体を用いて我々が開発したTRACP-5a,5b同時検出法で両者の活性を測定した。その結果、5bは全ての検体で高値を示し、マクロファージ活性化の指標となる5aについては炎症性疾患の併発と関連して上昇していることを見いだした。骨細胞のNa+/
KAKENHI-PROJECT-24590702
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砂ネズミにおけるヘリコバクター・ピロリ感染誘発胃潰瘍の発生機序の解明
リコバクター・ピロリ(Hp)感染による胃潰瘍の発生機序について砂ネズミモデルで検討した。Hp感染後、胃体部の出血性損傷が発生した。胃体部の損傷はその前に誘起された粘膜内炎症の激しさに関連することから、損傷の発生には宿主側の免疫反応の関与が考えられた。炎症細胞の粘膜内浸潤は好中球遊走刺激活性の発現・増加と対応しており、好中球走化性因子(CINC)の発現・増加も認められた。除菌療法を行うとCINCレベルは低下し、粘膜内炎虹も軽減された。従って、CINCは粘膜内への好中球浸潤・活性化を促進し、胃体部損傷の発生に関与するものと思われる。また、胃炎発生後、抗分泌薬を投与すると粘膜病変は消失し潰瘍形成には至らないことから、胃酸の関与も示唆された。また、Hp胃炎の発生に伴い、粘液合成が促進したが、その後潰瘍発生期になるにつれ、逆に正常以下のレベルに低下した。Hp感染の粘液分泌に対する効果を培養胃上皮細胞で検討したとごろ、Hpはインターフェロンγ(IFNγ)存在下で強力な抑制作用を示した。IFNγは胃炎の進行により発現することを認めた。従って、粘液レベルの低下も潰瘍形成に関与することが推察された。一方、プロスタグランジン(PG)は重要な胃粘膜保護因子であり、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は胃潰瘍発生の危険因子のひとつとして知られている。胃炎の進行とともにPGE2産生は増大し、潰瘍発生まで持続的に高値を示した。インドメタシンの連続投与は非感染動物においては何ら胃傷害を誘起しなかったが、Hp感染動物では胃潰瘍を短期間で発生させた。PGE2産生は顕著に抑制されていたが、Hp生菌数はむしろ低下した。すなわち、Hp感染によるPGE2産生増大は宿主の防御反応の亢進と考えられ、その抑制は潰瘍発生を促進することが判明した。以上の結果より、Hp誘発胃潰瘍の発生に関して、CINC、好中球浸潤・活性化、胃酸やIFNγは促進的に、粘液やPGE2は抑制的に働くものと考えられる。リコバクター・ピロリ(Hp)感染による胃潰瘍の発生機序について砂ネズミモデルで検討した。Hp感染後、胃体部の出血性損傷が発生した。胃体部の損傷はその前に誘起された粘膜内炎症の激しさに関連することから、損傷の発生には宿主側の免疫反応の関与が考えられた。炎症細胞の粘膜内浸潤は好中球遊走刺激活性の発現・増加と対応しており、好中球走化性因子(CINC)の発現・増加も認められた。除菌療法を行うとCINCレベルは低下し、粘膜内炎虹も軽減された。従って、CINCは粘膜内への好中球浸潤・活性化を促進し、胃体部損傷の発生に関与するものと思われる。また、胃炎発生後、抗分泌薬を投与すると粘膜病変は消失し潰瘍形成には至らないことから、胃酸の関与も示唆された。また、Hp胃炎の発生に伴い、粘液合成が促進したが、その後潰瘍発生期になるにつれ、逆に正常以下のレベルに低下した。Hp感染の粘液分泌に対する効果を培養胃上皮細胞で検討したとごろ、Hpはインターフェロンγ(IFNγ)存在下で強力な抑制作用を示した。IFNγは胃炎の進行により発現することを認めた。従って、粘液レベルの低下も潰瘍形成に関与することが推察された。一方、プロスタグランジン(PG)は重要な胃粘膜保護因子であり、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は胃潰瘍発生の危険因子のひとつとして知られている。胃炎の進行とともにPGE2産生は増大し、潰瘍発生まで持続的に高値を示した。インドメタシンの連続投与は非感染動物においては何ら胃傷害を誘起しなかったが、Hp感染動物では胃潰瘍を短期間で発生させた。PGE2産生は顕著に抑制されていたが、Hp生菌数はむしろ低下した。すなわち、Hp感染によるPGE2産生増大は宿主の防御反応の亢進と考えられ、その抑制は潰瘍発生を促進することが判明した。以上の結果より、Hp誘発胃潰瘍の発生に関して、CINC、好中球浸潤・活性化、胃酸やIFNγは促進的に、粘液やPGE2は抑制的に働くものと考えられる。ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)感染による胃潰瘍の発生機序について砂ネズミモデルで検討した。胃病変の発生を経時的に解析したところ、幽門部粘膜表層の損傷が最も初期に出現することを見出した。このとき粘膜内は正常であり、ミエロパーオキシダーゼ活性や好中球の遊走刺激活性はほとんど見られなかった。以上の結果より、H.pylori感染初期の胃損傷には感染宿主の免疫反応の関与はなく、H.pyloriによる直接的な傷害によるものと示唆された。この損傷に引き続いて幽門部粘膜内の炎症、さらに胃体部粘膜内炎症および胃体部の出血性損傷が見られた。胃体部の損傷はその前に誘起された炎症の激しさに関連することから、胃体部損傷の発生には宿主側の免疫反応の関与も考えられた。
KAKENHI-PROJECT-09470508
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砂ネズミにおけるヘリコバクター・ピロリ感染誘発胃潰瘍の発生機序の解明
炎症細胞の粘膜内浸潤は好中球遊走刺激活性の発現・増加と対応しており、強力な好中球の遊走刺激因子であるサイトカイン誘導性好中球走化性因子(CINC)の発現・増加も認められた。除菌療法を行うとCINCの発現レベルは低下し、粘膜内炎症も軽減された。従って、粘膜内で産生されるCINCは胃体部損傷の発生に関与するものと思われる。一方、プロスタグランジン(PG)は最も重要な胃粘膜保護因子であり、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は胃潰瘍発生の危険因子のひとつとして知られている。H.pylori感染による胃潰瘍の発生過程における胃粘膜PGE2産生を検討したところ、胃炎の進行とともにPGE2産生は増大し、潰瘍発生まで持続的に高値を示した。低用量のインドメタシンの連続投与は非感染動物においては何ら胃傷害を誘起しなかったが、H.pylori感染動物では胃潰瘍を短期間で発生させた。PGE2産生は顕著に抑制されていたが、H.pylori生菌数はむしろ低下した。以上の結果より、H.pylori感染によるPGE2産生増大は宿主の防御反応の亢進と考えられ、その抑制は潰瘍発生を促進することが判明した。従って、非感染者への投与以上に、H.pylori感染者へのNSAID投与は危険性が高い可能性が示された。ヘリコバクター・ピロリ(Hp)感染による胃潰瘍の発生機序について砂ネズミモデルで検討した。Hp感染後、胃体部の出血性損傷が発生した。胃体部の損傷はその前に誘起された粘膜内炎症の激しさに関連することから、損傷の発生には宿主側の免疫反応の関与が考えられた。炎症細胞の粘膜内浸潤は好中球遊走刺激活性の発現・増加と対応しており、好中球走化性因子(CINC)の発現・増加も認められた。除菌療法を行うとCINCレベルは低下し、粘膜内炎症も軽減された。従って、CINCは粘膜内への好中球浸潤・活性化を促進し、胃体部損傷の発生に関与するものと思われる。また、胃炎発生後、抗分泌薬を投与すると粘膜病変は消失し潰瘍形成には至らないことから、胃酸の関与も示唆された。また、Hp胃炎の発生に伴い、粘膜合成が促進したが、その後潰瘍発生期になるにつれ、逆に正常以下のレベルに低下した。Hp感染の粘液分泌に対する効果を培養胃上皮細胞で検討したところ、Hpはインターフェロンγ(IFNγ)存在下で強力な抑制作用を示した。IFNγは胃炎の進行により発現することを認めた。従って、粘液レベルの低下も潰瘍形成に関与することが推察された。一方、プロスタグランジン(PG)は重要な胃粘膜保護因子であり、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は胃潰瘍発生の危険因子のひとつとして知られている。胃炎の進行とともにPGE2産生は増大し、潰瘍発生まで持続的に高値を示した。インドメタシンの連続投与は非感染動物においては何ら胃傷害を誘起しなかったが、Hp感染動物では胃潰瘍を短期間で発生させた。PGE2産生は顕著に抑制されていたが、Hp生菌数はむしろ低下した。すなわち、Hp感染によるPGE2産生増大は宿主の防御反応の亢進と考えられ、その抑制は潰瘍発生を促進することが判明した。以上の結果より、Hp誘発胃潰瘍の発生に関して、CINC、好中球浸潤・活性化、胃酸やIFNγは促進的に、粘液やPGE2は抑制的に働くものと考えられる。
KAKENHI-PROJECT-09470508
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食育推進のための教育ツールの開発 〜食物ベースの食事評価法の発展・応用から〜
飲食物の内容と量から主食・主菜・副菜等の料理分類を行う方法と基準、食事摂取基準等指標との関係を明確にし、食事状況を栄養素・食品レベルだけでなく料理レベル、さらに料理の組合せである食事レベルで示し、食生活の質を総合的に評価するための、食物ベースの食事評価方法を確立することを目的とした。また、栄養士等専門家向けの定量的データ(食事摂取基準)と、一般向け定性的メッセージ(食生活指針)をつなぐ、半定量的な食事ガイドとして、食物ベースによる食事評価の科学的根拠に基づく教育ツールを開発し、栄養指導や食育活動に活用し、その妥当性と有効性について検討した。1.前回の科学研究費の研究成果であった「料理群分類方法」の妥当性を、データベースに基づいた系統的分析によって明らかにした。2.食事状況を食物ベースで、視覚的にわかりやすく、的確に示す方法を提案し、その効果を検証した。3.食事評価に料理レベルのデータを用いることの意義を明らかにした。4.料理レベルで食物摂取の内容と量を簡便に把握する食事調査方法の検討を行った。5.自分の食習慣を簡便に把握し、食生活改善の動機づけに役立つシステムを開発した。6.料理を食事バランスガイドの基準で分類、サービング計算するシステムを開発した。7.食事記録調査データの栄養計算を行い、食物ベースで評価するシステムを試作した。8.上記開発した調査、評価手法を活用して、食事調査や栄養教育・食育活動行い、その妥当性と効果の検証を行った。飲食物の内容と量から主食・主菜・副菜等の料理分類を行う方法と基準、食事摂取基準等指標との関係を明確にし、食事状況を栄養素・食品レベルだけでなく料理レベル、さらに料理の組合せである食事レベルで示し、食生活の質を総合的に評価するための、食物ベースの食事評価方法を確立することを目的とした。また、栄養士等専門家向けの定量的データ(食事摂取基準)と、一般向け定性的メッセージ(食生活指針)をつなぐ、半定量的な食事ガイドとして、食物ベースによる食事評価の科学的根拠に基づく教育ツールを開発し、栄養指導や食育活動に活用し、その妥当性と有効性について検討した。1.前回の科学研究費の研究成果であった「料理群分類方法」の妥当性を、データベースに基づいた系統的分析によって明らかにした。2.食事状況を食物ベースで、視覚的にわかりやすく、的確に示す方法を提案し、その効果を検証した。3.食事評価に料理レベルのデータを用いることの意義を明らかにした。4.料理レベルで食物摂取の内容と量を簡便に把握する食事調査方法の検討を行った。5.自分の食習慣を簡便に把握し、食生活改善の動機づけに役立つシステムを開発した。6.料理を食事バランスガイドの基準で分類、サービング計算するシステムを開発した。7.食事記録調査データの栄養計算を行い、食物ベースで評価するシステムを試作した。8.上記開発した調査、評価手法を活用して、食事調査や栄養教育・食育活動行い、その妥当性と効果の検証を行った。1.主食・主菜・副菜等の料理分類法と基準の妥当性についての検討飲食物の内容と量から主食・主菜・副菜等の料理分類を行う方法と基準を明らかにし、関連情報の収集・分析を行い、妥当性の検討を行った(論文作成中)。また、日本版フードガイド「食事バランスガイド」検討委員として、その料理区分別基準値の検討を行ったので、当研究室の基準値と「食事バランスガイド」基準値との調整を図った。2.地域におけるフィールド調査福岡県M市の国民健康栄養調査方式による食事調査データを用い、栄養素・食品レベルの結果だけでなく、料理・食事レベルの結果を用いて、地域住民の食生活実態を分かりやすく、また的確に示す媒体の工夫を行い、対象者の反応を調べた(平成18年度栄養改善学会において発表予定)。3.新入生の栄養アセスメントと栄養指導I新入生の栄養アセスメントを行い、栄養素・食品・料理・食事レベルの食事状況に基づく栄養指導を実施した。なお、平成17年度は下記指導媒体を用いず、「望ましい食事」の理解度を把握した。平成18年度は指導媒体を用いて指導を行い、「望ましい食事」の理解度を比較する予定である。4.視覚媒体の試作食や栄養に対する意識や知識が十分ではない小学校中学年以上の児童、若者や働き盛りの男性が自分の食生活上の問題に気づき、「何をどれだけ食べたらよいのか」を理解して実践できるような指導媒体の検討を行った。日本版フードガイド「食事バランスガイド」を活用して、簡便に食生活をチェックするシートと、食事調査結果を分かりやすく表示する視覚媒体の検討を行った。今後は実際にこれらを使用して調査ができるようにシステム化を行い、その効果を検証する予定である。1.視覚的媒体を用いた栄養指導方法の検討(1)食生活上の実態を簡便に把握し、食生活改善の動機づけに役立てることができるような、食生活セルフチェックの開発を行った。(2)食事記録調査結果をわかりやすく示すことにより、食事の良し悪しや偏りを的確に、また容易に把握できるようにした。(3)料理レベルで食物摂取の内容と量を簡便に把握する方法を開発した。*(1)(2)は平成18年度栄養改善学会で発表、(3)は平成19年度日本栄養食糧学会で発表予定2.食育推進のための教育ツールのシステム化ポピュレーションアプローチを可能にするために、上記(1)(2)(3)栄養指導のための教育ツールのシステム化を進めている。3.視覚的媒体を用いた栄養指導の実践と評価下記
KAKENHI-PROJECT-17300237
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食育推進のための教育ツールの開発 〜食物ベースの食事評価法の発展・応用から〜
栄養指導の現場において、上記視覚的媒体を適宜状況に応じて活用、その妥当性と有効性を評価、検討を行った。(1)女子大生の栄養指導・栄養教育(2)児童・生徒・学生の食生活実態の簡便把握(3)学生食堂や職員食堂における栄養表示への活用(4)地域や職域の健康教室等における栄養指導*(1)は平成18年度栄養改善学会で発表、(2)(3)は平成19年度食育学会、(4)は平成19年度日本栄養食糧学会と栄養改善学会で発表予定飲食物の内容と量から主食・主菜・副菜等の料理分類を行う方法と基準、食事摂取基準等指標との関係を明確にし、食事状況を栄養素・食品レベルだけでなく料理レベル、さらに料理の組合せである食事レベルで示し、食生活の質を総合的に評価するための、食物ベースの食事評価方法を確立することを目的とした。また、栄養士等専門家向けの定量的データ(食事摂取基準)と、一般向け定性的メッセージ(食生活指針)をつなぐ、半定量的な食事ガイドとして、食物ベースによる食事評価の科学的根拠に基づく教育ツールを開発し、栄養指導や食育活動において使用し、その妥当性と有効性について検討した。1.昨年度までに開発した栄養教育ツールの有効性や妥当性を検証した。(1)食事バランスガイドを活用した栄養表示の活用方法の検討を行い、その効果を明らかにした。(2)食生活セルフチェックシートを活用することにより、対象者の食生活実態が簡便に把握でき、食生活改善の動機づけに役立つことを、学校や職域における保健指導で確認した。(3)食生活セルフチェックブックを用いて、食物摂取の内容と量が簡便に把握できることを確認した。(4)料理レベルで記述する簡易食事記録調査方法により、対象者や調査者の負担をどの程度軽減できるか妥当性について検討した。(5)食事記録調査結果を料理レベルでわかりやすく示すことにより、食事の良し悪しや偏りを的確に、また容易に把握できることが明らかになった。2.上記栄養教育ツールと検証結果を考察し、公表した。3.食育推進のための教育ツールのシステム化ポピュレーションアプローチを可能にするために、上記栄養指導のための教育ツールのシステム化を行い、公開した。
KAKENHI-PROJECT-17300237
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17300237
MHD効果を利用した超高熱負荷環境に対応可能なダイバータシステムへの挑戦
本年度はまず、本研究において提案する「部分絶縁フィン構造」が流動場に与える影響を明らかにするため、商用有限要素法コードCOMSOL Multiphysics 5.4を用いた電磁気と流れの連成解析を実施した。解析の結果より当該構造は液体金属自由表面流れの自由表面近傍に流速が大となる領域を形成することが明らかとなった。これらの結果を「部分絶縁フィン構造を用いた電磁力制御による液体金属蛇行流れの液体ダイバータへの適用性評価」と題し、2018年6月27日から28日に滋賀県大津市において開催された第12回核融合エネルギー連合講演会においてポスター発表を行った。これまでに実施した解析では、解析の難度と計算コストという観点より自由表面の変形を無視して実施した。しかしながら当該概念の実機適用性を評価するためにはこの自由表面変形の定量化は非常に重要である。これらを実験的に評価するため液体金属自由表面流動試験ループを設計、製作した。本研究概ね当初の計画通りに進行しているため、進捗状況は良好であるといえる。本研究では数値解析と流動実験の両方から、液体金属流動の攪拌機構開発にアプローチする予定となっている。以下が本研究の現在までの進捗状況である。(1)数値解析:数値解析においては上述の通り、現在までに電磁気-流動-伝熱の連成解析において、数値計算に用いる計算格子を微調整することによって収束解を得ることに成功している。地場下での液体金属流動実験については、現在までに試験装置の設計が完了しており本年度4月よりテストランに移行する。(2)液体金属流動実験:流動試験の実施に際しては現在までに(a)実験体系の考案、(b)数値解析による流動場予測、(c)実験装置の設計までが完了している。(a)に際して東北大学金属材料研究所付属強磁場超伝導材料研究センターの所有する無冷媒超伝導マグネットの形成する磁場分布を数値解析より取得した。また、磁場分布の実測を実施し、数値解析の妥当性より得られた磁場分布の妥当性を確認した。(b)では(a)で求めたマグネットの磁場分布を流動解析に導入し、実験によって求められる流動場を予測した。結果より、当該マグネットによって形成される流動場は実験に資するものであると判断した。(c)では液体金属自由表面流動試験流路および電磁ポンプ、不活性ガスサブループからなる実験ループの設計を行った。現在、試験流路は製作中の段階にあり、本年度4月に水を用いたテストランが、5月に液体金属を用いた流動試験が実施される予定となっている。本研究の推進方策は以下に示す通りである。(イ)液体金属自由表面流動実験の実施:これまでに実施された当該コンセプトの実証実験は、用いる超伝導マグネットの形成する磁場の向きが鉛直方向であることより、閉流路体系で実施されてきた。本年度はこの問題を解消すべく、新規に開流路体系での実験のための試験ループを設計、製作した。次年度以降はこの試験ループを用いた液体金属自由表面流動実験を開始し、数値解析では現状、評価が困難である液体金属自由表面の変形などの定量的評価を実施することが可能となる。(ロ)数値解析の妥当性評価と部分絶縁フィンの形状最適化への移行:これまでに数値解析結果の妥当性評価のために、既往研究によって導出された液体金属自由表面流動の理論解と、数値解析結果との比較を実施しており、両者の良好な一致を確認している。しかしながら当該理論解の適用される体系は極めて限定されており、部分絶縁フィン構造を導入する場合には適用不可である。したがって、当該構造を導入した場合の数値解析結果の妥当性を担保するためには流動実験より得られたデータとの比較が必要不可欠であるといえる。この妥当性評価が完了したのち、研究のフェーズは構造の最適化に移行することが可能であり、当該構造のジオメトリをパラメータとした流動攪拌に向けた最適化を実施することができる。(ハ)核融合炉システム的観点からの本研究へのアプローチ:部分絶縁フィン構造の液体ダイバータへの導入のための基礎検討としてダイバータ領域の一部分に限定した領域での調査を実施している。しかしながら当該コンセプトの実機適用性を評価する上ではよりマクロな、炉システム的な観点からのアプローチも必要不可欠である。具体的には、液体金属の導入と排出、トロイダル方向への電流の遮断、炉のオペレーション初期段階の過渡状態におけるシステム運用、などである。本年度はまず、本研究において提案する「部分絶縁フィン構造」が流動場に与える影響を明らかにするため、商用有限要素法コードCOMSOL Multiphysics 5.4を用いた電磁気と流れの連成解析を実施した。解析の結果より当該構造は液体金属自由表面流れの自由表面近傍に流速が大となる領域を形成することが明らかとなった。これらの結果を「部分絶縁フィン構造を用いた電磁力制御による液体金属蛇行流れの液体ダイバータへの適用性評価」と題し、2018年6月27日から28日に滋賀県大津市において開催された第12回核融合エネルギー連合講演会においてポスター発表を行った。これまでに実施した解析では、解析の難度と計算コストという観点より自由表面の変形を無視して実施した。しかしながら当該概念の実機適用性を評価するためにはこの自由表面変形の定量化は非常に重要である。これらを実験的に評価するため液体金属自由表面流動試験ループを設計、製作した。本研究概ね当初の計画通りに進行しているため、進捗状況は良好であるといえる。本研究では数値解析と流動実験の両方から、液体金属流動の攪拌機構開発にアプローチする予定となっている。
KAKENHI-PROJECT-18J20648
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J20648
MHD効果を利用した超高熱負荷環境に対応可能なダイバータシステムへの挑戦
以下が本研究の現在までの進捗状況である。(1)数値解析:数値解析においては上述の通り、現在までに電磁気-流動-伝熱の連成解析において、数値計算に用いる計算格子を微調整することによって収束解を得ることに成功している。地場下での液体金属流動実験については、現在までに試験装置の設計が完了しており本年度4月よりテストランに移行する。(2)液体金属流動実験:流動試験の実施に際しては現在までに(a)実験体系の考案、(b)数値解析による流動場予測、(c)実験装置の設計までが完了している。(a)に際して東北大学金属材料研究所付属強磁場超伝導材料研究センターの所有する無冷媒超伝導マグネットの形成する磁場分布を数値解析より取得した。また、磁場分布の実測を実施し、数値解析の妥当性より得られた磁場分布の妥当性を確認した。(b)では(a)で求めたマグネットの磁場分布を流動解析に導入し、実験によって求められる流動場を予測した。結果より、当該マグネットによって形成される流動場は実験に資するものであると判断した。(c)では液体金属自由表面流動試験流路および電磁ポンプ、不活性ガスサブループからなる実験ループの設計を行った。現在、試験流路は製作中の段階にあり、本年度4月に水を用いたテストランが、5月に液体金属を用いた流動試験が実施される予定となっている。本研究の推進方策は以下に示す通りである。(イ)液体金属自由表面流動実験の実施:これまでに実施された当該コンセプトの実証実験は、用いる超伝導マグネットの形成する磁場の向きが鉛直方向であることより、閉流路体系で実施されてきた。本年度はこの問題を解消すべく、新規に開流路体系での実験のための試験ループを設計、製作した。次年度以降はこの試験ループを用いた液体金属自由表面流動実験を開始し、数値解析では現状、評価が困難である液体金属自由表面の変形などの定量的評価を実施することが可能となる。(ロ)数値解析の妥当性評価と部分絶縁フィンの形状最適化への移行:これまでに数値解析結果の妥当性評価のために、既往研究によって導出された液体金属自由表面流動の理論解と、数値解析結果との比較を実施しており、両者の良好な一致を確認している。しかしながら当該理論解の適用される体系は極めて限定されており、部分絶縁フィン構造を導入する場合には適用不可である。したがって、当該構造を導入した場合の数値解析結果の妥当性を担保するためには流動実験より得られたデータとの比較が必要不可欠であるといえる。この妥当性評価が完了したのち、研究のフェーズは構造の最適化に移行することが可能であり、当該構造のジオメトリをパラメータとした流動攪拌に向けた最適化を実施することができる。(ハ)核融合炉システム的観点からの本研究へのアプローチ:部分絶縁フィン構造の液体ダイバータへの導入のための基礎検討としてダイバータ領域の一部分に限定した領域での調査を実施している。しかしながら当該コンセプトの実機適用性を評価する上ではよりマクロな、炉システム的な観点からのアプローチも必要不可欠である。
KAKENHI-PROJECT-18J20648
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プラストシアニンの電子移動反応における酸性アミノ酸残基の役割
プラストシアニンはチトロムfから電子を受取り,光化学系I反応中心複合体に電子を供与するタイプI銅蛋白質である。本研究は蛋白質工学の手法によりプラストシアニンの長距離の電子移動反応に対するアミノ酸残基の役割を明らかにすることを目的として以下の課題について研究行った。1.プラストシアニンの配位子の1つであるメチオニンmutant(Met92→Gln92)を作成する課題...Met92はGuとの距離が長く,Met92が活性中心の構造と電子移動反応にどのような役割を果たしているか全く不明である。そこでMet92→Glu92のmutant作成し,大腸菌で発現させ検討したところ,mutantの酸化還元電位は低下し,mutantとP700およびチトクロムfとの電子移動活性も低下していた。これらの結果から,Met92が酸化還元電位および電子移動活性に重要な役割を果たしていることが明らかになった。2.プラストシアニンのacidic patchを構成するアミノ酸を置換したmutantを作成する課題...プラストシアニンは2ヶ所で電子の授受を行うことが示唆されているユニークな蛋白質である。推定されている電子移動経路の1つには,酸性アミノ酸残基が集中した部位が存在する。このacidic patchの役割を明らかにするために,acidic patchの負電荷が1個ずつ正電荷に変化するようデザインしたmutantを作成した。プラストシアニンとチトクロムfおよびP700の反応速度定数は,酸性アミノ酸残基が減少したmutantほど減少した。これらの結果から,プラストシアニンの酸性アミノ酸残基はチトクロムfおよびP700との反応に重要であることが明らかになった。3.光化学系I反応中心複合体のプラストシアニン・ドッキング蛋白質とプラストシアニンの相互作用を明らかにする課題...本蛋白質のcDNAのクローニングとシーケンシングを完了した。プラストシアニンはチトロムfから電子を受取り,光化学系I反応中心複合体に電子を供与するタイプI銅蛋白質である。本研究は蛋白質工学の手法によりプラストシアニンの長距離の電子移動反応に対するアミノ酸残基の役割を明らかにすることを目的として以下の課題について研究行った。1.プラストシアニンの配位子の1つであるメチオニンmutant(Met92→Gln92)を作成する課題...Met92はGuとの距離が長く,Met92が活性中心の構造と電子移動反応にどのような役割を果たしているか全く不明である。そこでMet92→Glu92のmutant作成し,大腸菌で発現させ検討したところ,mutantの酸化還元電位は低下し,mutantとP700およびチトクロムfとの電子移動活性も低下していた。これらの結果から,Met92が酸化還元電位および電子移動活性に重要な役割を果たしていることが明らかになった。2.プラストシアニンのacidic patchを構成するアミノ酸を置換したmutantを作成する課題...プラストシアニンは2ヶ所で電子の授受を行うことが示唆されているユニークな蛋白質である。推定されている電子移動経路の1つには,酸性アミノ酸残基が集中した部位が存在する。このacidic patchの役割を明らかにするために,acidic patchの負電荷が1個ずつ正電荷に変化するようデザインしたmutantを作成した。プラストシアニンとチトクロムfおよびP700の反応速度定数は,酸性アミノ酸残基が減少したmutantほど減少した。これらの結果から,プラストシアニンの酸性アミノ酸残基はチトクロムfおよびP700との反応に重要であることが明らかになった。3.光化学系I反応中心複合体のプラストシアニン・ドッキング蛋白質とプラストシアニンの相互作用を明らかにする課題...本蛋白質のcDNAのクローニングとシーケンシングを完了した。
KAKENHI-PROJECT-05858095
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CRISPRを用いた複雑型ゲノム編集システムの開発とエピゲノム制御への応用
CRISPR/Cas9システムを利用すれば、受精卵へsgRNA/CAS9発現プラスミドを注入するだけで簡便に遺伝子改変動物を得られる。しかし、この方法では領域欠損やノックインの成功率が低いことが課題であった。そこで本研究では、一度に多くのクローンを解析できるES細胞株を用いて、複雑な遺伝子改変の手法を確立することを目的とした。ES細胞にsgRNA/Cas9発現プラスミドやリファレンスとなる二本鎖DNAを導入し、変異のスクリーニングを行った結果、変異導入効率が極めて高いことがわかった。しかし、変異ES細胞クローンからキメラマウスを作製し、ホモ型変異マウスを得るには2世代以上の交配を要する。そこで我々は、変異マウスの表現型解析までの時間短縮を目的とし、キメラマウスを用いた表現型解析を試みた。まず、精子形成に必須な既知遺伝子Cetn1のノックアウト(KO) ES細胞を樹立し、キメラマウスを作製した。キメラマウスの体内でES細胞由来の細胞を区別するため、Egfp遺伝子を恒常的に発現するES細胞を使用した。キメラマウスから採取したGFP陽性精子を観察すると、頭部奇形を呈しており、Cetn1-KOの表現型と一致した。さらに、体内に変異細胞と野生型細胞を併せ持つキメラマウスの特徴を活かして、致死遺伝子の表現型解析も試みた。精巣と脳で発現するDnajb13遺伝子は、KOすると水頭症のため生後致死となる。そこで、Dnajb13-KO-ES細胞を樹立してキメラマウスを作製したところ、野生型細胞が寄与したことで水頭症を免れ、性成熟するまで生存した。GFP陽性精子を観察すると、尾部に奇形が見られ、Dnajb13は精子形成においても重要であることがわかった。このように、ES細胞でのゲノム編集とGFPを指標としたキメラマウス解析を組み合わせることで、迅速な表現型解析が可能になった。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。次世代型のゲノム編集技術として注目されているCRISPR/Cas9システムを利用すれば、受精卵へsgRNA/CAS9発現プラスミドを注入するだけで簡便に遺伝子改変動物を得ることができる。しかし、この方法では広範囲に渡る領域欠損(1)や、相同組換えを利用したノックイン(2)の成功率は低く、改善が必要である。そこで本研究では、たくさんのクローンの遺伝子型解析が容易なES細胞株を用いて、複雑な遺伝子改変の手法を確立することを目的とし、実験系の構築を行った。(1)領域欠損に関しては、2種類のsgRNA/CAS9発現プラスミドをリポフェクションによりES細胞へ導入し、欠損領域を挟んだプライマーを用いてPCRによりスクリーニングを行った。(2)相同組換えに関しては、sgRNA/CAS9発現プラスミドと変異を有する一本鎖オリゴヌクレオチドもしくは二本鎖DNAを同時に導入し、PCRおよびシークエンス解析によりスクリーニングした。その結果、ES細胞では、受精卵注入法に比べて変異導入効率が高く、試した約50遺伝子すべてにおいて、目的の変異(最大800kbに及ぶ領域欠損やノックイン)を持つESクローンが得られた。また、こうした変異ES細胞を8細胞期のマウス胚に注入してキメラマウスを作製し、交配によりホモ型変異マウスを得ることができた。以上の成果を受精卵注入法と比較することにより、それぞれの方法の長所、短所をまとめて日本実験動物学会において口頭発表を行った。また現在、学術論文を投稿中である。CRISPR/Cas9システムを応用したES細胞での様々なゲノム編集を試み、計画通り研究を遂行した。研究結果は学会で報告し、論文も現在投稿中である。CRISPR/Cas9システムを利用すれば、受精卵へsgRNA/CAS9発現プラスミドを注入するだけで簡便に遺伝子改変動物を得られる。しかし、この方法では領域欠損やノックインの成功率が低いことが課題であった。そこで本研究では、一度に多くのクローンを解析できるES細胞株を用いて、複雑な遺伝子改変の手法を確立することを目的とした。ES細胞にsgRNA/Cas9発現プラスミドやリファレンスとなる二本鎖DNAを導入し、変異のスクリーニングを行った結果、変異導入効率が極めて高いことがわかった。しかし、変異ES細胞クローンからキメラマウスを作製し、ホモ型変異マウスを得るには2世代以上の交配を要する。そこで我々は、変異マウスの表現型解析までの時間短縮を目的とし、キメラマウスを用いた表現型解析を試みた。まず、精子形成に必須な既知遺伝子Cetn1のノックアウト(KO) ES細胞を樹立し、キメラマウスを作製した。キメラマウスの体内でES細胞由来の細胞を区別するため、Egfp遺伝子を恒常的に発現するES細胞を使用した。キメラマウスから採取したGFP陽性精子を観察すると、頭部奇形を呈しており、Cetn1-KOの表現型と一致した。さらに、体内に変異細胞と野生型細胞を併せ持つキメラマウスの特徴を活かして、致死遺伝子の表現型解析も試みた。精巣と脳で発現するDnajb13遺伝子は、KOすると水頭症のため生後致死となる。そこで、Dnajb13-KO-ES細胞を樹立してキメラマウスを作製したところ、野生型細胞が寄与したことで水頭症を免れ、性成熟するまで生存した。GFP陽性精子を観察すると、尾部に奇形が見られ、Dnajb13は精子形成においても重要であることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-15J04519
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J04519
CRISPRを用いた複雑型ゲノム編集システムの開発とエピゲノム制御への応用
このように、ES細胞でのゲノム編集とGFPを指標としたキメラマウス解析を組み合わせることで、迅速な表現型解析が可能になった。本研究で、ES細胞株を用いたCRISPR/Cas9システムによるゲノム編集の実験系構築した、ES細胞株を用いたCRISPR/Cas9システムを応用し、精巣特異的に発現遺伝子のノックアウトマウスの作製を試みる。ES細胞を介することで60kbに及ぶ遺伝子クラスターを欠損させることに成功し、今後はこのノックアウトマウスを作製して表現型解析に着手するところである。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15J04519
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J04519
鹿児島県竜ケ水地域カルデラ壁の物性層序と崩壊発生機構
鹿児島県姶良カルデラ壁ではしばしば土石流災害が発生するが、急崖で近づけないため、地質状況さえ不十分にしか分かっていない。そこで、地質の基礎資料収集のため、昨年度はオールコアボーリングを実施した。今年度はコアの岩質記載と亀裂状態の観察記載を行った。また、従来の資料とも併せ考察して吉野台地の水理地質構造も究明した。判明した事項は下記の通りである。1.上位から吉野火砕流堆積物(溶結凝灰岩)、花倉層(シルト凝灰質シルト)、玄武岩質火山礫凝灰岩、変質の著しい竜ヶ水安山岩の順になっている。これらは側方変化が著しい。2.吉野火砕流堆積物、玄武岩質火山礫凝灰岩、竜ヶ水安山岩には節理が発達し、高い透水性を有すると推定される。3.これに対し、花倉層のシルト凝灰質シルトは難透水層として機能すると考えられる。4.吉野台地面は竜ヶ水の急崖と反対の方向に緩く傾斜し、各層も同方向に緩く傾斜している。5.したがって、通常の降雨時には、花倉層上面に沿って台地側に流下すると推定される。6.ただし、強雨が連続すると、花倉層の薄い部分や凝灰質部分あるいは地層が途切れている部分等からオーバーフローするかたちで会に流下することが考えられる。こうして急崖で土石流が発生するのであろう。姶良カルデラ壁竜ヶ水地区では、大雨の度に崩壊とそれに起因する土石流が発生して多大の被害を与えている。地形が急峻で、地質や湧水などの災害予測に不可欠な基本的情報が不足しているため、本年度は竜ヶ水直上の吉野台地でオールコアボーリングを実施した。同時に、ボーリングが到達できなかった下半部の地質については、現地踏査を行って補った。また、既存の崩壊地についても位置の確認を行った。得られた地質層序は下位より次の通りである。◎三船層...塊状の凝灰質砂岩を主体とする軟岩である。◎竜ヶ水安山岩...堅硬緻密な輝石安山岩で自破砕状を呈す。旧崩壊地が多数存在する。なお、この層の上部玄武岩直下に湧水が認められる。◎玄武岩...塊状の溶岩である。◎花倉層...凝灰質砂岩火山礫凝灰岩凝灰角礫岩からなる。旧崩壊地が多数存在する。やはり、この最上部吉野火砕流直下から湧水が認められる。◎磯凝灰質砂部層...未半固結の砂層で湧水を伴うことが多い。◎吉野火砕流堆積物...中溶結凝灰岩を主体とする。急崖をなす。◎入戸火砕流堆積物...いわゆるシラスである。以上述べたように、湧水は2層準で認められる。すなわち、その直上の玄武岩および吉野火砕流堆積物が帯水層の役割を果たしているのである。これはボーリングコアにおいても、割れ目が多数発達しているのが認められることからも首肯できる。この地下水に起因して崩壊も竜ヶ水安山岩・花倉層に集中して発生しているのである。今後はこれら地下水の動態観測を長期にわたって行い、崩壊との因果関係を突き止めて、崩壊および土石流の予知予測に結びつけるべきであろう。鹿児島県姶良カルデラ壁ではしばしば土石流災害が発生するが、急崖で近づけないため、地質状況さえ不十分にしか分かっていない。そこで、地質の基礎資料収集のため、昨年度はオールコアボーリングを実施した。今年度はコアの岩質記載と亀裂状態の観察記載を行った。また、従来の資料とも併せ考察して吉野台地の水理地質構造も究明した。判明した事項は下記の通りである。1.上位から吉野火砕流堆積物(溶結凝灰岩)、花倉層(シルト凝灰質シルト)、玄武岩質火山礫凝灰岩、変質の著しい竜ヶ水安山岩の順になっている。これらは側方変化が著しい。2.吉野火砕流堆積物、玄武岩質火山礫凝灰岩、竜ヶ水安山岩には節理が発達し、高い透水性を有すると推定される。3.これに対し、花倉層のシルト凝灰質シルトは難透水層として機能すると考えられる。4.吉野台地面は竜ヶ水の急崖と反対の方向に緩く傾斜し、各層も同方向に緩く傾斜している。5.したがって、通常の降雨時には、花倉層上面に沿って台地側に流下すると推定される。6.ただし、強雨が連続すると、花倉層の薄い部分や凝灰質部分あるいは地層が途切れている部分等からオーバーフローするかたちで会に流下することが考えられる。こうして急崖で土石流が発生するのであろう。鹿児島県姶良カルデラ壁ではしばしば土石流災害が発生するが、急崖で近づけないため、地質状況さえ不十分にしか分かっていない。そこで、地質の基礎資料収集のため、昨年度はオールコアボーリングを実施した。今年度はコアの岩質記載と亀裂状態の観察記載を行った。また、従来の資料とも併せ考察して吉野台地の水理地質構造も究明した。判明した事項は下記の通りである。1.上位から吉野火砕流堆積物(溶結凝灰岩)、花倉層(シルト凝灰質シルト)、玄武岩質
KAKENHI-PROJECT-07458246
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07458246
鹿児島県竜ケ水地域カルデラ壁の物性層序と崩壊発生機構
火山礫凝灰岩、変質の著しい竜ヶ水安山岩の順になっている。これらは側方変化が著しい。2.吉野火砕流堆積物、玄武岩質火山礫凝灰岩、竜ヶ水安山岩には節理が発達し、高い透水性を有すると推定される。3.これに対し、花倉層のシルト凝灰質シルトは難透水層として機能すると考えられる。4.吉野台地面は竜ヶ水の急崖と反対の方向に緩く傾斜し、各層も同方向に緩く傾斜している。5.したがって、通常の降雨時には、花倉層上面に沿って台地側に流下すると推定される。6.ただし、強雨が連続すると、花倉層の薄い部分や凝灰質部分あるいは地層が途切れている部分等からオーバーフローするかたちで会に流下することが考えられる。こうして急崖で土石流が発生するのであろう。残念ながら科研費が減額された上、2年度に短縮されたので、地下水の動態観測を行うことが出来なかった。そのため崩壊の発生機構までは肉薄できなかったが、究明の基礎は確立できたと考える。
KAKENHI-PROJECT-07458246
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07458246
大振幅船体挙動の解析
本研究は実験と理論の両面から実施された。船側波形の計測システムの開発、およびそれを使用した実験を行い、所定の実験結果を得ることができた。既存の船舶小水槽に於いて船主部模型を強制動揺させたり、あるいは規則波中を航走させたりした場合の船首部船側波形を計測、解析する方法を開発し船首水線面上船型形状と船首部における波形との関係について詳細なデータを得ることが可能になった。これは船首部の水面挙動に関して極めて重要な情報を与えるものであった。実験は3つの船首部模型を用いて船体水面上における水面の挙動をビデオ撮影し実験結果を得ることができた。これには船体表面とビデオ撮影した画面上との相互関係を補正が必要であったが、正確に求められるようになった。この実験により船首部船型の違いによる船首部波動の変化を実験的に明確に捕らえることができるようになった。上記の問題の理論計算は自由表面と船体表面が共に強非線形性を持っているため、数値計算には高度な技術が必要である。既に開発された二次元計算手法を三次元計算に拡張するものであり一層の計算手法の精確さが要求される。この計算を可能にするための基礎的検討を終了した。例えば壁が左右に動く場合の造波現象を時間ステップごとに計算することが可能になった。これは上記の実験を理論的に計算することを可能にする大きな第一歩である。更に任意形状の二次元物体に働く非線型流体力を求める手法も完成し、それを三次船体の計算へと拡張しつつある。又、これら強非線型現象の確率論的取り扱いの手法も開発した。このことにより、高度な非線型計算結果を設計に利用する一つの手法を示すことができた。本研究は実験と理論の両面から実施された。船側波形の計測システムの開発、およびそれを使用した実験を行い、所定の実験結果を得ることができた。既存の船舶小水槽に於いて船主部模型を強制動揺させたり、あるいは規則波中を航走させたりした場合の船首部船側波形を計測、解析する方法を開発し船首水線面上船型形状と船首部における波形との関係について詳細なデータを得ることが可能になった。これは船首部の水面挙動に関して極めて重要な情報を与えるものであった。実験は3つの船首部模型を用いて船体水面上における水面の挙動をビデオ撮影し実験結果を得ることができた。これには船体表面とビデオ撮影した画面上との相互関係を補正が必要であったが、正確に求められるようになった。この実験により船首部船型の違いによる船首部波動の変化を実験的に明確に捕らえることができるようになった。上記の問題の理論計算は自由表面と船体表面が共に強非線形性を持っているため、数値計算には高度な技術が必要である。既に開発された二次元計算手法を三次元計算に拡張するものであり一層の計算手法の精確さが要求される。この計算を可能にするための基礎的検討を終了した。例えば壁が左右に動く場合の造波現象を時間ステップごとに計算することが可能になった。これは上記の実験を理論的に計算することを可能にする大きな第一歩である。更に任意形状の二次元物体に働く非線型流体力を求める手法も完成し、それを三次船体の計算へと拡張しつつある。又、これら強非線型現象の確率論的取り扱いの手法も開発した。このことにより、高度な非線型計算結果を設計に利用する一つの手法を示すことができた。1.既存の小水槽に於いて船首部模型を強制動揺させたり、あるいは規則波中を航走させたりした場合の船首部船側波形を計測、解析する方法を開発し、船首水線面上船体形状と船首部における波形との関係について詳細なデータを受ることが可能になった。これは船首部の水面挙動に関して極めて重要な情報を与えるものであった。実験は3つの船首部模型を用いて船体水面上における水面の挙動をビデオ撮影し実験結果を受ることが出来た。又、これには船体表面の曲面をビデオ撮影した画面上の平面との相互の関係を補正が必要であったが正確に求められるようになった。この実験により船首部船形の違いによる波動の変化を実験的に明確にとらえることが出来るようになった。2.上記の問題の理論計算は強非線型な現象である為、数値計算には高度な技術が必要であるが、この計算を可能にするための基礎的検討を終了した。例えば壁が左右に動く場合の造波現象を時間ステップごとに計算することが可能になった。これは上記の実験を理論的に計算することを可能にする大きな第一歩である。総合的に今年度の成果は初期計画通りのものであった。なお、これに関する文献の調査も進めたがこの課題に関しては海外を含めた他機関では未だ成果をあげれた報告はない。昨年度までは実験及び理論の両面から大きな振幅で揺れた船体がどのように挙動するかという点について考察してきた。特に実験的には船首部における水線面上部の船体の形状が船首近傍の波の有り様にどのように影響するかを調査した。今年度は理論的検討の結果、一定の成果を挙げることができた。第1点として、2次元模型が水面上を大きな振幅で上下運動する時にその2次元断面模型が造り出す造波の模様を計算することができるようになった。
KAKENHI-PROJECT-07455396
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07455396
大振幅船体挙動の解析
この問題は船体表面条件が刻々と大きく変化するという条件と、それによって大きな波が発生して自由表面条件を非線形なままにして問題を解かねばならず、高度な数値計算の技術が必要とされてきていたが、この点について解決でき、数値計算ができるようになった。第2点として、この2次元模型によって造られた波が計算領域の遠方場に達した時、その波を数値計算的に吸収するという技術も完成することができた。これは現在の大振幅船体動揺の2次元問題の最先端の計算技術が開発されたことを意味している。この手法を利用して3次元問題への展開を考え、まずウイグリー船型(これは実験に利用した船型でもあるが)に関しての計算を実行した。船の長手方向にも形状が変化し、かつ船の上下運動方向にも形状が変化する難しい問題であるが、前進速度を持って平水中を航走するときの船体表面上の波系を計算することが可能になった。これは従来の計算手法と違い、大きな波の中を大きく動揺する問題を解く方法を内に持っている手法であって、その手法で、運動しないで航走した場合の船体表面波系を計算することが可能になったということである。それを大きな波の中で大きく動揺する問題にまで拡張しつつあるが、今年度末までには完成に到っていない。しかしその方法は明らかになっているので時間をかけることで解決する。以上のように、大きな波の中で大きく動揺する船体の運動や船体に働く力について計算法を開発することができ、かつ、一部は実験手法も開発し、両者を比較することにより計算法の妥当性を確認することができた。今後は現実に近い船型を使い、波の中で大振幅動揺している場合の運動や力の計算を行うことで本計算法を拡張させて行く予定である。
KAKENHI-PROJECT-07455396
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卵巣癌の上皮間葉転換による免疫抑制機構の解明
卵巣癌の上皮間葉移行(Epithelial-Mesenchymal Transition: EMT)の中心遺伝子であるSnailを発現抑制したマウス卵巣癌モデルで、Snailにより癌細胞からのCXCL1とCXCL2が発現亢進していることを明らかにした。また、卵巣癌患者の血清中でのCXCL1/CXCL2の濃度をELISA法で調べた。CXCL1やCXCL2の濃度は、正常コントロール血清と比べて、卵巣癌患者で高いこと、また、進行癌の患者ほど高いことがわかった。CXCL1とCXCL2の濃度は互いに高い相関を示した。また、血清CXCL1/CXCL2濃度の高い患者において、有意に予後不良であることがわかった。また、免疫染色の検討で、患者の血清CXCL1/2と、同一患者の腫瘍サンプルにおける腫瘍内MDSC浸潤が正に相関していることがわかった。次に、卵巣癌マイクロアレイデータを用いて、Mesenchymal subtypeと呼ばれるEMTが起こっている症例において、特に発現の高くなっている遺伝子Xを同定した。この遺伝子がコードするタンパクは膜蛋白で、卵巣癌細胞株においてこの遺伝子をノックアウトすると、腫瘍内に遊走するMDSCが減少することが卵巣癌マウスモデルで示された。遺伝子Xをノックアウトした細胞株とコントロール細胞株の遺伝子発現をRNAseqで網羅的に解析したところ、多くの免疫抑制因子が発現変化し、遺伝子Xは免疫抑制に深くかかわる分子であることが示唆された。EMT関連遺伝子の一つであるSnailの抗腫瘍免疫に対する働きを証明できたから。卵巣癌の臨床サンプル、特に血液と初回手術時の腫瘍のFFPEサンプルを増やし、ケモカインの変化と腫瘍ないの抗腫瘍免疫の状態や予後、抗癌剤への反応性などとの関連を調べる。卵巣癌の遺伝子発現を網羅的に調べると、Mesenchymal subtypeとよばれる癌の上皮間葉移行(Epithelial-Mesenchymal Transition:EMT)が起こっている症例において予後不良であることが知られている。そこでEMT関連遺伝子であるSnailに着目し、以下の研究を行った。まず、Mesenchymal subtypeにおいてSnailが高発現していることを既存のマイクロアレイデータを解析して確認した。次に、Snailの発現をShRNAで抑制したマウス卵巣癌細胞株を作成し、免疫正常マウスにおける腫瘍増殖を観察した。すると、Snail抑制株では腫瘍増殖が抑制され、腫瘍内の細胞傷害性T細胞が増加し、抗腫瘍免疫が賦活化していることがわかった。Snailの発現が高い卵巣がんは、ケモカインであるCXCL1とCXCL2を分泌していることをELISAで示した。CXCL1とCXCL2は、卵巣癌の腫瘍内の骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)に発現しているケモカイン受容体CXCR2を介して、MDSCを遊走させることを示した。Snailが直接、またはNF-kBを介して、CXCL1やCXCL2を発現亢進させることも明らかにした。以上より、SnailはCXCL1やCXCL2の発現亢進を介して、腫瘍内にMDSCを遊走させて、抗腫瘍免疫を抑制していることが示唆された。CXCR2の阻害薬を投与すると、Snailの高い卵巣癌モデルの腫瘍増殖を抑制することができることを示した。EMT関連遺伝子の一つであるSnailの抗腫瘍免疫に対する働きを示すデータが得られたから。卵巣癌の上皮間葉移行(Epithelial-Mesenchymal Transition: EMT)の中心遺伝子であるSnailを発現抑制したマウス卵巣癌モデルで、Snailにより癌細胞からのCXCL1とCXCL2が発現亢進していることを明らかにした。また、卵巣癌患者の血清中でのCXCL1/CXCL2の濃度をELISA法で調べた。CXCL1やCXCL2の濃度は、正常コントロール血清と比べて、卵巣癌患者で高いこと、また、進行癌の患者ほど高いことがわかった。CXCL1とCXCL2の濃度は互いに高い相関を示した。また、血清CXCL1/CXCL2濃度の高い患者において、有意に予後不良であることがわかった。また、免疫染色の検討で、患者の血清CXCL1/2と、同一患者の腫瘍サンプルにおける腫瘍内MDSC浸潤が正に相関していることがわかった。次に、卵巣癌マイクロアレイデータを用いて、Mesenchymal subtypeと呼ばれるEMTが起こっている症例において、特に発現の高くなっている遺伝子Xを同定した。この遺伝子がコードするタンパクは膜蛋白で、卵巣癌細胞株においてこの遺伝子をノックアウトすると、腫瘍内に遊走するMDSCが減少することが卵巣癌マウスモデルで示された。遺伝子Xをノックアウトした細胞株とコントロール細胞株の遺伝子発現をRNAseqで網羅的に解析したところ、多くの免疫抑制因子が発現変化し、遺伝子Xは免疫抑制に深くかかわる分子であることが示唆された。EMT関連遺伝子の一つであるSnailの抗腫瘍免疫に対する働きを証明できたから。卵巣癌の臨床サンプル、特に血液を用いて、ケモカインの変化と腫瘍内の抗腫瘍免疫の状態や予後、抗がん剤への反応性などとの関連を調べる。卵巣癌の臨床サンプル、特に血液と初回手術時の腫瘍のFFPEサンプルを増やし、ケモカインの変化と腫瘍ないの抗腫瘍免疫の状態や予後、抗癌剤への反応性などとの関連を調べる。臨床サンプルの収集があまり順調でなかったため、当該年度中には臨床サンプルの解析が十分に行えなかった。
KAKENHI-PROJECT-17K11275
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卵巣癌の上皮間葉転換による免疫抑制機構の解明
このため次年度へ解析費用を繰り越す結果となったが、2018年度以降にも臨床サンプルの収集を積極的に行い、十分なサンプル数を解析する計画である。今年度は臨床サンプルを用いた研究に多くの費用を費やす予定であったが、予測よりも臨床サンプルを集めるのに時間がかかり、次年度に費用が持ち越された。
KAKENHI-PROJECT-17K11275
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株式共有者間の法的関係と共有株式による権利の行使
本年度においては、平成28年度及び平成29年度において行った株式共有の場合における権利行使者の指定の制度に関する調査・検討を深化させることを目的として、ドイツ法における類似の制度についての判例・学説の調査・検討を行った。とりわけ対象としたのは、ドイツ株式法69条1項の共同代理人(gemeinschaftlicher Vertreter)の制度、および、ドイツ有限会社法18条1項の持分共有に関する規整である。ドイツ株式法69条は、株式共有の場合において、共有者は共同代理人によって権利行使をしなければならない旨を定めているが、この規整は会社の利益のための制度として理解されており、この点において、わが国の権利行使者の制度と同一視することが可能である。もっとも、ドイツにおいては、共同代理人の選定について内部関係によってその方法が異なると理解されている点、共同代理人の権限については期間的な制限に服させることは可能であるが、内容的な制限を加えることはできず、また、共有者の権限行使にかかる指示による拘束や権限行使の対象についての限定といった制約はできないと解されている点は、その論拠とともに、わが国の解釈論に対して有益な示唆を与えるものと思われる。また、ドイツ有限会社法18条1項は、有限会社について上記のような共同代理人の選任を強制しておらず、この場合には、共同的な権利行使の必要性を定めているにとどまること、同法18条3項において、会社からの通知等については持分共有者の1名に対してこれを行えば足りるとされている点についても、会社の規模・機関構成を問わず権利行使者の指定を要求するわが国の法制に関する見直しの必要性を示唆するものであるとともに、株式(持分)共有における法律関係についての再定位にとって意義を有するものであるとの認識に至った。平成28年度・29年度・30年度にかかる研究実施計画については、文献の入手・検討等の作業にあたり、特にその遂行の妨げとなる事由は生じておらず、おおむね所期の成果を達成し得たものと考えている。もっとも、研究遂行の過程で、株式共有に関する内部関係については、その多様性について再認識するとともに、ドイツ法における遺産共有の制度・解釈論について検討することが、研究目的の達成にとって有益であると思料されるに至ったところ、これについては、平成31年度において行うこととした。本研究の対象である株式共有が典型的に生じ、さらには、先鋭的な利害関係者の対立が生ずることが多いと考えられるのは、相続の局面である。ドイツ法の検討によれば、共有者間の内部関係は株式(持分)共有についての法的扱いにおいて重要な意味を持ちうると考えられるところ、ドイツにおける共同相続関係について、今後、学説・判例を調査した上で、ドイツにおける共同代理人の制度の正確な評価を行い、わが国の株式共有に関する解釈論を提示することとしたい。本年度においては、共有株式に関する権利行使に関する直近の最上級審判例である最判平成27年2月19日民集69巻1号25頁に関する事案及び判旨を分析し、かつ、同判決以降、公表された判例評釈・学説についての検討を行なった。上記最高裁判決は、「株式が2以上の者の共有に属するとき」につき、共有者が権利行使者を定め、これを会社に通知しなければ当該株式について権利行使をしえないものとする会社法106条本文の規定を民法264条但書にいう民法の共有の規定に対する「特別の定め」であると解し、さらに、会社が同意した場合について、「この限りでない」とする会社法106条但書の意義を、会社の同意によって民法の共有に関する規定の原則に戻るものであるとするものである。本年度においては、同判決の論理構造を分析し射程を画定することにつとめると共に、同判決の論理が過去の公刊された紛争事例について説得的な解決を呈示しうるものであるかについて、昭和45年以降の下級審裁判例を中心に検討を行なった。そこでは、とりわけ、相続によって株式の共有が生じた事例において、「会社の同意」(それはすなわち現経営者の同意を意味する)を要件として民法の共有の原則に立ち戻るとの規制を採用することが、相続発生による会社支配構造のねじれが生じている場合について必ずしも適切な解決を導き得ないのではないか、との問題意識を有するに至った。なお、本年度においては、研究実施計画において示したとおり、ドイツ法に関する同種の規制に関する学説・判例について、データベースを参照しつつ、予備的な研究を行なった。本年度においては研究実施計画に従い、我が国の判例・学説の分析及びドイツ法についての準備的な検討作業を行なうこととしていたところ、研究を遂行するにあたって不測の事態や予想を超えた困難な検討課題に逢着することはなかったため。平成29年度においては、平成28年度において行った、権利行使者の指定・権利行使者による権利行使に関する裁判例及び会社法学説の分析・検討を踏まえつつ、共有・準共有についての民法学説の議論及び遺産共有についての裁判例・審判例の検討を行った。とりわけ、典型的な同族会社とみうる非公開会社における株式相続の事例において、中小企業の代表者の死亡に起因する経営の承継にかかわる問題に言及しつつ、民法906条の適用を通じて次期社長に就任することが予定されている者に相続財産中の株式の全部を取得させた審判例である東京高決平成26年3月20日判時2244号21頁については、これに関して公刊されている評釈等を参照しつつ検討を行った。
KAKENHI-PROJECT-16K03412
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株式共有者間の法的関係と共有株式による権利の行使
同決定は遺産分割手続において企業承継問題が適切に解決される可能性を明確にしており、同決定について好意的な見解が多くみられることからも、遺産共有の下にある支配株式に関しては少なくとも権利行使者による議決権行使による会社の現状変更について消極的に考えるべきであるとの結論を導きうるものであると考えられる。もっとも、同決定が遺産分割審判における裁判所の一般的な実務を代表しているものとはいえないことについては留意が必要であり、また、遺産共有ではない通常の共有の下にある株式についての権利行使者による議決権行使との整合性を会社法106条及び民法264条の解釈論として確保できるかについては慎重な検討が必要であると思われる。なお、上記の他、ドイツ法における共有株式の権利行使に関する規律についても、ドイツ株式法69条1項にかかわる議論を中心として、若干の調査・検討を行った。平成28年度及び平成29年度においては主として日本法に関する学説及び裁判例等の分析を行ったものであるところ、これについて文献収集などの障害などはなく概ね順調に研究を進展させることができたものと考えている。とりわけ中小企業の承継問題が絡む事案についての遺産分割審判の現状についてはこれを詳細に明らかにする文献は見いだせず、少数の公表審判例などを手がかりに分析をせざるを得ないという問題はあったが、本課題に関する研究の成果を著しく損なうものではなく、平成30年度における補充的な調査や多角的な検討によって十分に克服できるものであると考えている。本年度においては、平成28年度及び平成29年度において行った株式共有の場合における権利行使者の指定の制度に関する調査・検討を深化させることを目的として、ドイツ法における類似の制度についての判例・学説の調査・検討を行った。とりわけ対象としたのは、ドイツ株式法69条1項の共同代理人(gemeinschaftlicher Vertreter)の制度、および、ドイツ有限会社法18条1項の持分共有に関する規整である。ドイツ株式法69条は、株式共有の場合において、共有者は共同代理人によって権利行使をしなければならない旨を定めているが、この規整は会社の利益のための制度として理解されており、この点において、わが国の権利行使者の制度と同一視することが可能である。もっとも、ドイツにおいては、共同代理人の選定について内部関係によってその方法が異なると理解されている点、共同代理人の権限については期間的な制限に服させることは可能であるが、内容的な制限を加えることはできず、また、共有者の権限行使にかかる指示による拘束や権限行使の対象についての限定といった制約はできないと解されている点は、その論拠とともに、わが国の解釈論に対して有益な示唆を与えるものと思われる。また、ドイツ有限会社法18条1項は、有限会社について上記のような共同代理人の選任を強制しておらず、この場合には、共同的な権利行使の必要性を定めているにとどまること、同法18条3項において、会社からの通知等については持分共有者の1名に対してこれを行えば足りるとされている点についても、会社の規模・機関構成を問わず権利行使者の指定を要求するわが国の法制に関する見直しの必要性を示唆するものであるとともに、株式(持分)共有における法律関係についての再定位にとって意義を有するものであるとの認識に至った。
KAKENHI-PROJECT-16K03412
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蛍石代替用ネフェリンサイナイトの熱力学諸性質
製鋼プロセスではCaF_2(蛍石)の代替材料が希求されている。溶融温度がCaF_2に近いネフェリン(Nepheline,(1/2)K_2O・(3/2)Na_2O・2Al_2O_3・4SiO_2)に注目し、脱硫、脱リン反応における代替の可能性を明らかにした。脱硫反応での代替の可能性を評価するため、CaO-Al_2O_3-Nepheline系スラグのSulfide Capacity(Cs)を1773Kで測定し、CaO-Al_2O_3-CaF_2系スラグと比較した。本年度は固液共存スラグについて、Nepheline及びCaF_2添加量と液相の割合、見かけのCsとの関係を求めた。固液共存のCaO-Al_2O_3スラグ(重量比60/40)にNephelineを添加すると、液相割合の増加とともにCsは増加し、15wt%の添加で最大値2.2×10^<-2>を得た。同量の液相を生成するには、Nephelineの方がCaF_2より添加量が少なくなる結果となった。またCsは他の脱硫スラグと比較して充分な脱硫能を有すると判断できる値であり、Nephelineは蛍石の代替材料として有望であると考えられる。脱リン反応での代替の可能性を評価するため、CaO-Nepheline-FeO系スラグのFeO活量、CaO-Nepheline-P_2O_5活量を1673Kで測定した。測定にはジルコニア酸素センサーによる起電力法を用いた。脱リン反応は高FeO活量、低P_2O_5活量の条件で進行する。均一液相領域でCaOをNephelineに置換するとFeO活量は上昇した。一方CaO-Nephelineスラグ中のP_2O_5濃度が増加すると急激にP_2O_5活量が上昇する結果となった。測定した活量値から平衡到達リン濃度を見積もると、実操業ではほとんど脱リンが進行しないことが分かった。脱リンプロセスではNephelineは蛍石の代替材料として期待できない。スラグ中のCaO/Al_2O_3重量比が1/1、初斯(%S)の異なる2つの試料(各1.2g)を並べてPt製試料皿に載せて、SiC抵抗炉内、Ar-CO-CO_2-SO_2混合ガス気流中にて1773Kまで昇温し、6時間保持した。その後、試料を反応管の端部まで移動させて冷却凝固させ、(%S)を求めた。初期(%S)の異なる2種類の試料がほぼ等しいで(%S)になっていることを確認した。CaO-Al_2O_3にNephelineを添加すると、添加量の増加に伴ってSulfide Capacity, Csは低下したが、その低下の程度は徐々に緩やかになった。一方CaO-Al_2O_3にCaF_2を添加すると、Csは増加した。CaO-Al_2O_3-CaF_2中のCaF_2をNephelineに置き換えるとCsは低下する傾向を示した。ただし、CaO-Al_2O_3にNephelineを7.5%添加することによるC5の低下は1.0×10^<-3>から0.69×10^<-3>に低下する程度に抑えられた。これは、他の脱硫スラグと比較しても、充分な脱硫能を有すると判断できる値であり、Nephelineは蛍石の代替材料として有望であると考えられる。製鋼プロセスではCaF_2(蛍石)の代替材料が希求されている。溶融温度がCaF_2に近いネフェリン(Nepheline,(1/2)K_2O・(3/2)Na_2O・2Al_2O_3・4SiO_2)に注目し、脱硫、脱リン反応における代替の可能性を明らかにした。脱硫反応での代替の可能性を評価するため、CaO-Al_2O_3-Nepheline系スラグのSulfide Capacity(Cs)を1773Kで測定し、CaO-Al_2O_3-CaF_2系スラグと比較した。本年度は固液共存スラグについて、Nepheline及びCaF_2添加量と液相の割合、見かけのCsとの関係を求めた。固液共存のCaO-Al_2O_3スラグ(重量比60/40)にNephelineを添加すると、液相割合の増加とともにCsは増加し、15wt%の添加で最大値2.2×10^<-2>を得た。同量の液相を生成するには、Nephelineの方がCaF_2より添加量が少なくなる結果となった。またCsは他の脱硫スラグと比較して充分な脱硫能を有すると判断できる値であり、Nephelineは蛍石の代替材料として有望であると考えられる。脱リン反応での代替の可能性を評価するため、CaO-Nepheline-FeO系スラグのFeO活量、CaO-Nepheline-P_2O_5活量を1673Kで測定した。測定にはジルコニア酸素センサーによる起電力法を用いた。脱リン反応は高FeO活量、低P_2O_5活量の条件で進行する。均一液相領域でCaOをNephelineに置換するとFeO活量は上昇した。一方CaO-Nephelineスラグ中のP_2O_5濃度が増加すると急激にP_2O_5活量が上昇する結果となった。
KAKENHI-PROJECT-16760599
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蛍石代替用ネフェリンサイナイトの熱力学諸性質
測定した活量値から平衡到達リン濃度を見積もると、実操業ではほとんど脱リンが進行しないことが分かった。脱リンプロセスではNephelineは蛍石の代替材料として期待できない。
KAKENHI-PROJECT-16760599
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時空間分解によるスピンペルチェ効果の解明
本研究の目的は、伝導体/磁性体接合でスピン注入に伴って温度変化を生じるスピンペルチェ効果について、時空間データを最大限に活用した高感度・高空間分解測定を実現し、その発現機構や熱物性を調べることにある。スピンペルチェ効果による温度変化は接合界面に沿った方向では局在した特異な分布を示すが、接合界面に垂直な方向に関しては従来の研究では何ら情報が得られてこなかった。注入されたスピン流は接合界面に沿って伝搬するものであるため、この欠けている情報こそがスピン流による熱流生成現象の発現機構を明らかにする上で必要なパラメータとなる。本研究では、反射率変化に基づく温度測定技術であるサーモリフレクタンス法をスピンペルチェ効果測定に取り入れることで、高時間分解能・高空間分解能での温度変化計測を試み、スピン流がその伝播方向で示す熱物性(特に伝搬の長さスケール)を明らかにする。これにより、スピン流-熱流変換の物理の体系的な理解と高いスピンペルチェ効果を発現するための指針を得ることを目指す。本年度は、サーモリフレクタンス測定用の光学系を構築し、スピンペルチェ効果を駆動するための電流と同期させたロックインサーモリフレクタンス計測を実現した。複数の検証実験を行い、スピンペルチェ効果による温度変化の測定が可能なことを確認した。この検証実験において、スピンペルチェ効果による温度応答は予想以上に周波数依存性が大きく、時間応答からスピンペルチェ効果による熱生成の過程が追跡できる可能性が明らかとなった。実際、より高速応答まで測れるよう系を改良することで所望のデータが得られ、現在その熱的な特性の解析を行っている。本研究遂行にあたっては、伝熱工学で熱伝導評価に多く用いられてきたサーモリフレクタンス法を、スピン流を含む熱電効果(スピン熱電変換)測定に適用する必要があった。本年度は、光学系の構築と最適な光源波長・駆動電流との電気的な絶縁層を含む光反射層の探索を終え、スピンペルチェ効果の測定が実現できた(学会発表済み)。ロックイン計測によって周波数ドメインでの広帯域測定を行い、従来の最大周波数100Hz程度を大きく超える測定を実現した。これにより、スピンペルチェ効果による温度変化は、マイクロ秒程度の反応時間となることが期待されることがわかった。解析モデルを立ててスピン流の長さスケールを見積もることで、スピン熱電変換における基礎的でありながら未踏であったパラメータの評価が実現できる見込みである。スピンペルチェ効果の温度変化が示す時間応答が、スピン流による熱生成過程に由来することを示すために、熱伝搬およびスピン輸送を組み合わせた現象論モデルによる解析の枠組みを構築する。モデルの妥当性を検証するため、リファレンスとして熱源特性が予測可能な異常エッチングスハウゼン効果を用いた対照実験・解析を進める。以上により、電子状態に由来する“スピンペルチェ係数"の定義と、試料の質に敏感な長さスケールの分離を実現して、スピン流の示す熱物性を明らかにする。一方で上記モデル解析においては応答時間から長さスケールを導き出すため、仮定するパラメータに依存する部分が多い。より直接的な長さスケールの観察に向けて、引き続きサーモリフレクタンスを用いたサブミクロンスケールの空間イメージングにも取り組み、確実な研究遂行を狙う。広帯域の周波数測定結果の試行的な解析から、ミクロンスケールの熱源サイズが期待され、当初想定通りイメージング計測が適用可能な領域にある。すでにサーモリフレクタンス法を用いた高感度な温度応答検出のためのノウハウは蓄積しており、円滑に光学測定系のイメージング対応を進められる見込みである。本研究の目的は、伝導体/磁性体接合でスピン注入に伴って温度変化を生じるスピンペルチェ効果について、時空間データを最大限に活用した高感度・高空間分解測定を実現し、その発現機構や熱物性を調べることにある。スピンペルチェ効果による温度変化は接合界面に沿った方向では局在した特異な分布を示すが、接合界面に垂直な方向に関しては従来の研究では何ら情報が得られてこなかった。注入されたスピン流は接合界面に沿って伝搬するものであるため、この欠けている情報こそがスピン流による熱流生成現象の発現機構を明らかにする上で必要なパラメータとなる。本研究では、反射率変化に基づく温度測定技術であるサーモリフレクタンス法をスピンペルチェ効果測定に取り入れることで、高時間分解能・高空間分解能での温度変化計測を試み、スピン流がその伝播方向で示す熱物性(特に伝搬の長さスケール)を明らかにする。これにより、スピン流-熱流変換の物理の体系的な理解と高いスピンペルチェ効果を発現するための指針を得ることを目指す。本年度は、サーモリフレクタンス測定用の光学系を構築し、スピンペルチェ効果を駆動するための電流と同期させたロックインサーモリフレクタンス計測を実現した。複数の検証実験を行い、スピンペルチェ効果による温度変化の測定が可能なことを確認した。この検証実験において、スピンペルチェ効果による温度応答は予想以上に周波数依存性が大きく、時間応答からスピンペルチェ効果による熱生成の過程が追跡できる可能性が明らかとなった。実際、より高速応答まで測れるよう系を改良することで所望のデータが得られ、現在その熱的な特性の解析を行っている。本研究遂行にあたっては、伝熱工学で熱伝導評価に多く用いられてきたサーモリフレクタンス法を、スピン流を含む熱電効果(スピン熱電変換)測定に適用する必要があった。本年度は、光学系の構築と最適な光源波長・駆動電流との電気的な絶縁層を含む光反射層の探索を終え、スピンペルチェ効果の測定が実現できた(学会発表済み)。
KAKENHI-PROJECT-18K14116
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K14116
時空間分解によるスピンペルチェ効果の解明
ロックイン計測によって周波数ドメインでの広帯域測定を行い、従来の最大周波数100Hz程度を大きく超える測定を実現した。これにより、スピンペルチェ効果による温度変化は、マイクロ秒程度の反応時間となることが期待されることがわかった。解析モデルを立ててスピン流の長さスケールを見積もることで、スピン熱電変換における基礎的でありながら未踏であったパラメータの評価が実現できる見込みである。スピンペルチェ効果の温度変化が示す時間応答が、スピン流による熱生成過程に由来することを示すために、熱伝搬およびスピン輸送を組み合わせた現象論モデルによる解析の枠組みを構築する。モデルの妥当性を検証するため、リファレンスとして熱源特性が予測可能な異常エッチングスハウゼン効果を用いた対照実験・解析を進める。以上により、電子状態に由来する“スピンペルチェ係数"の定義と、試料の質に敏感な長さスケールの分離を実現して、スピン流の示す熱物性を明らかにする。一方で上記モデル解析においては応答時間から長さスケールを導き出すため、仮定するパラメータに依存する部分が多い。より直接的な長さスケールの観察に向けて、引き続きサーモリフレクタンスを用いたサブミクロンスケールの空間イメージングにも取り組み、確実な研究遂行を狙う。広帯域の周波数測定結果の試行的な解析から、ミクロンスケールの熱源サイズが期待され、当初想定通りイメージング計測が適用可能な領域にある。すでにサーモリフレクタンス法を用いた高感度な温度応答検出のためのノウハウは蓄積しており、円滑に光学測定系のイメージング対応を進められる見込みである。
KAKENHI-PROJECT-18K14116
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K14116
形態形成機構の基本原理の解明を目指した,ニワトリに内耳の発生機構の解析
●ニワトリ胚内耳原基への遺伝子導入法の開発細胞トレーシングのためにGFP遺伝子を内耳原基である耳胞へ導入する必要がある.このため局所導入エレクトロポレーションを応用し,耳胞へGFP遺伝子を導入した.その結果,継時的に蛍光を観察することに成功した.さらにエレクトロポレーションの条件を検討し,導入効率は約20%程までに高まった.トレーシングには十分な値である.●耳胞(蝸牛)の発生運命系譜の解明蛍光色素の注入による細胞系譜のトレースを行った結果,予定リンパ管領域は,過去の報告より広いことが明らかになった.今後解析を進めることで,さらに詳しい細胞系譜が書けると期待できる.●長期間のトレース一般にエレクトロポレーションには一過性の発現ベクターが用いられるが,本課題の目的には,より長期間にわたって導入遺伝子の発現が持続する系が必要である.そこで,次の二つの改良を行った.一つは,導入するGFP自体の細胞に対する毒性を下げることで,汎用されるEGFPの代わりに,ウミシイタケ由来のphrGFPを用いた.第2はベクターの変更である.プラスミドベクターに換えて,ニワトリレトロウィルスベクターにphrGFPを組み込み,エレクトロポレーションすることにした.これらにより,長期間にわたり安定したGFPの発現を観察し続けることが出来るようになった.現時点で,導入後最長7日後までGFPの蛍光が観察できている.●ニワトリ胚内耳原基への遺伝子導入法の開発細胞トレーシングのためにGFP遺伝子を内耳原基である耳胞へ導入する必要がある.このため局所導入エレクトロポレーションを応用し,耳胞へGFP遺伝子を導入した.その結果,継時的に蛍光を観察することに成功した.さらにエレクトロポレーションの条件を検討し,導入効率は約20%程までに高まった.トレーシングには十分な値である.●耳胞(蝸牛)の発生運命系譜の解明蛍光色素の注入による細胞系譜のトレースを行った結果,予定リンパ管領域は,過去の報告より広いことが明らかになった.今後解析を進めることで,さらに詳しい細胞系譜が書けると期待できる.●長期間のトレース一般にエレクトロポレーションには一過性の発現ベクターが用いられるが,本課題の目的には,より長期間にわたって導入遺伝子の発現が持続する系が必要である.そこで,次の二つの改良を行った.一つは,導入するGFP自体の細胞に対する毒性を下げることで,汎用されるEGFPの代わりに,ウミシイタケ由来のphrGFPを用いた.第2はベクターの変更である.プラスミドベクターに換えて,ニワトリレトロウィルスベクターにphrGFPを組み込み,エレクトロポレーションすることにした.これらにより,長期間にわたり安定したGFPの発現を観察し続けることが出来るようになった.現時点で,導入後最長7日後までGFPの蛍光が観察できている.
KAKENHI-PROJECT-13045002
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DMAHP/Six5遺伝子の機能と筋緊張性ジストロフィーへの関与
DMAHP/Six5遺伝子が筋緊張性ジストロフィー(DM)の発症にいかに関与するのかを分子レベルで明らかにすることを最終目的として、次の点を明確にした。(1)骨格筋、心筋、マウス胚でのSix5の転写開始点を同定し、各組織に共通の開始点2箇所と初期胚(E11)特異的な開始点を明らかにした。これらの開始点はいずれもCTGリピートの下流であり、転写されたmRNA中のCUGリピートによる、スプライシングや翻訳の異常によって、DMの発症が起こり可能性を排除した。(2)P19細胞における転写制御エレメントを解析し、3箇所のSp1/Sp3が正の制御エレメントであること、ほかに2箇所の負の制御エレメントが存在し、そのうち1箇所は特異的な因子が結合することを見出した。(3)DMAHP/Six5遺伝子産物によって制御される標的遺伝子群の同定のため、強力な転写活性化ドメインVP16および転写抑制化ドメインEngを融合させた活性化型Six5および抑制化型Six5を作成した。活性化型Six5はよく機能したが、抑制化型は、期待した効果がみられなかった。現在、活性化型Six5をアデノウイルスに組み込み、P19細胞やC2C12細胞に導入した結果誘導がみられる遺伝子をマイクロアレーにて同定している。(4)Six1、Six4の標的遺伝子として同定されたMyogeninプロモーターはSix5によっても活性化される。SixのコアクチベーターEyaのうちEya3とSix5の組み合わせが、Myogeninプロモーターをもっとも効率よく活性化した。このことは、Six5の発現低下により転写コアクチベーターEyaとの共同作用が減弱し、Myogeninの発現低下を来した結果筋肉の未成熟が起きるというDMの新たな発症機序の可能性を示唆するものである。DMAHP/Six5遺伝子が筋緊張性ジストロフィー(DM)の発症にいかに関与するのかを分子レベルで明らかにすることを最終目的として、次の点を明確にした。(1)骨格筋、心筋、マウス胚でのSix5の転写開始点を同定し、各組織に共通の開始点2箇所と初期胚(E11)特異的な開始点を明らかにした。これらの開始点はいずれもCTGリピートの下流であり、転写されたmRNA中のCUGリピートによる、スプライシングや翻訳の異常によって、DMの発症が起こり可能性を排除した。(2)P19細胞における転写制御エレメントを解析し、3箇所のSp1/Sp3が正の制御エレメントであること、ほかに2箇所の負の制御エレメントが存在し、そのうち1箇所は特異的な因子が結合することを見出した。(3)DMAHP/Six5遺伝子産物によって制御される標的遺伝子群の同定のため、強力な転写活性化ドメインVP16および転写抑制化ドメインEngを融合させた活性化型Six5および抑制化型Six5を作成した。活性化型Six5はよく機能したが、抑制化型は、期待した効果がみられなかった。現在、活性化型Six5をアデノウイルスに組み込み、P19細胞やC2C12細胞に導入した結果誘導がみられる遺伝子をマイクロアレーにて同定している。(4)Six1、Six4の標的遺伝子として同定されたMyogeninプロモーターはSix5によっても活性化される。SixのコアクチベーターEyaのうちEya3とSix5の組み合わせが、Myogeninプロモーターをもっとも効率よく活性化した。このことは、Six5の発現低下により転写コアクチベーターEyaとの共同作用が減弱し、Myogeninの発現低下を来した結果筋肉の未成熟が起きるというDMの新たな発症機序の可能性を示唆するものである。筋緊張性ジストロフィーの原因となるCTGリピート下流に存在するホメオボックス遺伝子DMAHP/Six5の病因へのかかわりを明確にするために、病変が観察される組織である骨格筋、心筋およびマウス胚において、マウスDMAHP/Six5転写開始点を決定した。初期胚(E11)特異的な最も下流に存在する開始点1箇所と各組織に共通な2箇所の開始点を同定した。これらの転写開始点はいずれも筋緊張性ジストロフィーの原因となるCTGリピートの位置よりも下流に存在するので、CUGリピート配列がDMAHPmRNAに含まれた結果スプライシングの異常を起こしたり、ポリグルタミン等を含む異常蛋白の翻訳が病因に関与する可能性が排除された。プロモーター領域の転写制御エレメントを、本遺伝子が効率良く転写されているP19EC細胞への一過性形質転換法にて解析した。3箇所の正の制御エレメントは、いずれもSp1/Sp3結合エレメントであり、2箇所の負の制御エレメントのうち、1箇所には新たな特異的な因子の結合が見い出された。これら転写開始点と転写制御エレメントはヒトとマウスとの間でよく保存されているので、ヒトの筋緊張性ジストロフィーの病態解明にマウス遺伝子を用いることの有効性が明かとなった。現在、DMAHP/Six5の標的遺伝子を明らかにするために、VP16や既知の転写抑制ドメインを有する蛋白質との融合Six5遺伝子を作成し、その過剰発現によって発現変動が観察される遺伝子の同定を進めている。DMAHP/Six5遺伝子が筋緊張性ジストロフィー(DM)の発症にいかに関与するのかを分子レベルで明らかにすることを最終目標として、次の点を明確にした。(1)骨格筋、心筋、マウス胚でのSix5の転写開始点を同定し、各組織に共通の転写開始点2箇所と初期胚(E11)特異的な開始点を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-10670143
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DMAHP/Six5遺伝子の機能と筋緊張性ジストロフィーへの関与
これらの開始点はいずれもCTGリピートの下流であり、転写されたmRNA中のCUGリピートによるスプライシングや翻訳の異常によって、DMの発症がおこる可能性が排除された。(2)P19細胞におけるDMAHP/Six5遺伝子の転写制御エレメントを解析し、3箇所のSp1/Sp3が正の制御エレメントであること、他に2箇所の負の制御エレメントが存在し、そのうちの1箇所には特異的な因子が結合することを見い出した。(3)DMAHP/Six5遺伝子産物によって制御される標的遺伝子群の同定のため、強力な転写活性化ドメインVP16および転写抑制化ドメインEngを融合させた活性化型Six5および抑制化型Six5を作成した。活性化型Six5はよく機能したが抑制化型は、期待した効果がみられなかった。現在、活性化型Six5をアデノウイルスに組み込み、P19細胞やC2C12細胞に感染させた結果誘導が見られる遺伝子をマイクロアレーにて同定している。(4)Six1、Six4の標的遺伝子として同定されたMyogeninプロモーターはSix5によっても活性化される。SixのコアクチベータEyaのうちEya3とSix5の組み合わせが、Myogeninプロモーターを最も効率良く活性化した。このことは、Six5の発現低下により転写コアクチベータEyaとの共同作用が減弱し、Myogeninの発現低下をきたした結果筋肉の未成熟がおきるというDMの新たな発症機序の可能性を示唆するものである。
KAKENHI-PROJECT-10670143
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生細胞内のグアニン四重鎖を可視化するライトアップ型リガンドの創製
グアニン四重鎖(以下G4)は、グアニンが豊富な核酸の1本鎖領域で可逆的に形成される核酸の高次構造である。近年、DNAの複製、遺伝子の転写調節などの生命現象を直接的に制御することが報告されている。また、がんなどの難治生疾患の分子標的としての研究も精力的に行われている。現在、G4を介した生命現象を明らかにするために、生細胞内でのG4形成の直接的な可視化に関して、精力的に研究展開されている。本研究では生細胞内でのG4形成を、リガンドを用いて直接可視化することを計画した。特に、G4構造を形成したときに相互作用し、同時に蛍光を発するライトアップ型リガンドの創製を目的とした。これまでに我々は、G4と選択的かつ強力に相互作用する大環状ヘキサオキサゾール化合物(以下6OTD)の創製を報告し、そのG4に対する相互作用様式も明らかにしている。そこでこれらの知見を基に、6OTDの側鎖にG4との会合により蛍光特性が変化する置換基候補としてナフチル基を設計し、これを導入した化合物の合成を行った。その結果、当該リガンドは、G4形成配列と選択的に相互作用し、かつその構造を安定化すること、また相互作用することで蛍光特性が大きく変化することがわかった。この蛍光特性の変化は、核酸との相互作用による疎水場効果によることもわかった。そこで、本結果をもとに、新たにナフチル基に電子求引基、電子供与基を置換したリガンドを系統的に合成した。その結果、その中の一つの化合物に、G4と相互作用することで蛍光を発するライトアップ型の特性を有するリガンドを見出すことができた。グアニン四重鎖(以下G4)は、グアニンが豊富な核酸の1本鎖領域で可逆的に形成される核酸の高次構造の1つである。G4を形成し得るDNA配列は、テロメア領域や、がん関連遺伝子(c-myc, c-kit等)のプロモーター領域を中心に、数万種見いだされている。近年G4形成がDNAの複製、遺伝子の転写調節などの生命現象を直接的に制御することが多数報告されている。一方、これまでに生細胞内でのG4形成を直接確認した例はなく、G4を介した生命現象は、現在in vitroでの観察にとどまっている。そこで本研究では、生細胞内でのG4形成を明らかにするために、G4構造を形成したときにこれと相互作用し、同時に蛍光を発するリガンド(ライトアップ型リガンド)の創製を目的とした。これまでにG4と選択的かつ強力に相互作用する化合物(大環状ヘキサオキサゾール、以下6OTD)の創製を報告している。また6OTDのG4に対する相互作用様式も明らかにしている。これらの知見を基に、6OTDの側鎖に励起会合により蛍光を発する置換基(ピレン)を導入した化合物を、ライトアップ型リガンドとして設計し、その合成を行った。リシン由来の側鎖を有する6OTD誘導体L2H2-6OTDを合成し、側鎖末端のアミノ基にピレンをアミド化反応を介して導入し、目的とするリガンドを得ることに成功した。現在、合成した化合物のG4形成能、安定化能、蛍光特性等の物性について調査をしている。本年度、設計を行った側鎖にピレンを導入した6OTDリガンドを計画通り合成することができた。合成した化合物は、G4と相互作用し、その複合体を安定化することがわかった。現在合成したリガンドの、G4形成時と非形成時とでの蛍光特性の変化について、測定を行っている。これらの基礎データは、次年度計画する生細胞内でのライトアップ機能評価の基盤となる。今後、更なるリガンドの構造展開を経て、ライトアップ型リガンドの創製を達成する予定であるが、今年度はリガンド創製の基盤を計画通り構築できたことから、現状の段階では研究が順調に進展していると判断した。グアニン四重鎖(以下G4)は、グアニンが豊富な核酸の1本鎖領域で可逆的に形成される核酸の高次構造の1つである。近年、DNAの複製、遺伝子の転写調節などの生命現象を直接的に制御することが報告されている。一方、これまでに生細胞内でのG4形成を直接確認した例はない。そこで本研究では生細胞内でのG4形成を、リガンドを用いて直接可視化することを計画した。特に、G4構造を形成したときに相互作用し、同時に蛍光特性が変化するリガンド(ライトアップ型リガンド)の創製を目的とした。これまでに我々は、G4と選択的かつ強力に相互作用する大環状ヘキサオキサゾール化合物(以下6OTD)の創製を報告している。また6OTDのG4に対する相互作用様式も、明らかにしている。これらの知見を基に、6OTDの側鎖にG4との会合により蛍光特性が変化する置換基を導入した化合物を設計し、その合成を行った。即ちグリシンのα位にアリル基を有する6OTD誘導体を合成した。ついで当該アリル基とのメタセシス反応により側鎖末端にナフチル基が導入された、新規蛍光G4リガンドの創製に成功した。合成したリガンドについて種々物性を評価したところ、当該リガンドはG4形成配列と選択的に相互作用し、かつその構造を安定化すること、また相互作用することで蛍光特性が大きく変化することがわかった。この蛍光特性の変化は、核酸との相互作用による疎水場効果によることも明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-16K13094
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K13094
生細胞内のグアニン四重鎖を可視化するライトアップ型リガンドの創製
本年度は、側鎖にナフチル基を導入した新規6OTDリガンドを計画し、合成することができた。合成した化合物は、G4と相互作用し、その複合体を安定化することがわかった。さらにG4形成時と非形成時とでの蛍光特性が変化することを明らかにし、ライトアップ型リガンドの創製に成功した。またさらに細胞内でのG4検出に適応したところ、当該リガンド由来の蛍光を観察することができた。以上のことから、本研究が順調に進展していると判断した。グアニン四重鎖(以下G4)は、グアニンが豊富な核酸の1本鎖領域で可逆的に形成される核酸の高次構造である。近年、DNAの複製、遺伝子の転写調節などの生命現象を直接的に制御することが報告されている。また、がんなどの難治生疾患の分子標的としての研究も精力的に行われている。現在、G4を介した生命現象を明らかにするために、生細胞内でのG4形成の直接的な可視化に関して、精力的に研究展開されている。本研究では生細胞内でのG4形成を、リガンドを用いて直接可視化することを計画した。特に、G4構造を形成したときに相互作用し、同時に蛍光を発するライトアップ型リガンドの創製を目的とした。これまでに我々は、G4と選択的かつ強力に相互作用する大環状ヘキサオキサゾール化合物(以下6OTD)の創製を報告し、そのG4に対する相互作用様式も明らかにしている。そこでこれらの知見を基に、6OTDの側鎖にG4との会合により蛍光特性が変化する置換基候補としてナフチル基を設計し、これを導入した化合物の合成を行った。その結果、当該リガンドは、G4形成配列と選択的に相互作用し、かつその構造を安定化すること、また相互作用することで蛍光特性が大きく変化することがわかった。この蛍光特性の変化は、核酸との相互作用による疎水場効果によることもわかった。そこで、本結果をもとに、新たにナフチル基に電子求引基、電子供与基を置換したリガンドを系統的に合成した。その結果、その中の一つの化合物に、G4と相互作用することで蛍光を発するライトアップ型の特性を有するリガンドを見出すことができた。ライトアップ型リガンドの設計において、前年度検討した励起会合形成による設計に加えて、分子のねじれ解消を駆動力とする蛍光リガンドの創製を計画する。即ち、6OTDを2量体化したリガンドに、G-カルテットとの相互作用を駆動力とするねじれ解消蛍光基を導入することで、リガンドがG-カルテット平面と相互作用する際に蛍光が生じるような分子設計を行う。具体的には、ビアリール骨格を6OTD側鎖近傍に導入したリガンドを合成する。合成した化合物は、CD測定、DNA融解実験、蛍光発光観察を行いin vitroでの機能評価を行った後、生細胞でのライトアップ効果について検討を行なう。今年度、G4形成により蛍光特性が変化する新規リガンドの創製に成功した。現在、当該リガンドを用い、生細胞内での観察に関して予備的な知見が得られている。今後はこの知見の再現性の確認と、蛍光特性が変化した箇所の、より詳細な解析(G4形成の有無の確認)を検討していく。励起会合型グアニン四重鎖リガンドの合成法の確立について、当該リガンドの構造展開が、一部に留まった。これは当該化合物の合成法の確立に当初の予定より少し時間がかかったためである。これらの合成等に係る消耗品費、合成した化合物の分析に関する費用を次年度に使用することとする。in vitroのレベルで相互作用するDNAの環境の違いにより異なる蛍光特性を示すリガンドを創製することができた。
KAKENHI-PROJECT-16K13094
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英語学習者音声コーパスの作成と利用に関する基礎的研究
本研究ではまずデータ収集の標準的な手順を定めることから始めた。被験者から一定の長さの発話を得ることは予想外にむずかしい。最初のひとこと、ふたことから先に進まない例が多い。(1)音声を引き出すためにはところどころ、あいづちを打ち、(2)被験者の反応を引き出しやすい話題、タスクを与えることを基本に、「これまで自分がいちばん楽しかった経験についてできるだけくわしく英語で話してください」といった課題を与えた。データの書式化にはCHILDESで使われているCHATとよばれる表記法を使った。その理由はなによりも標準化されて、広く利用されており、利用技術の蓄積がある点である。CHATフォーマットはヘッダーをはずせば、そのままプレーンなテキストファイルになるので、他のコーパス解析ソフトウェアでの利用も可能である。このコーパスの最大の特徴は音声を記録したという点だけでなく、音声をそのまま聞くことができ、また、音声を検索できるという点である。これを行うのに、音声をコンピュータファイルとして記録し、それをテキストからリンクさせて音声を再生するCHILDESの機能を利用した。母語と異なり、外国語コーパスでは音声が正しく発音されない場合が多い。このような学習者の音声上の特徴を体系的に探るには、特定の音を一括して検索できるしくみがあると便利である。このために作成したのが音素表記コーパスである。学習者が発話する音声は誤りも含めて何が現れるか予想がつかない。そこで、逆に「正しく発音したならば、このように発音されるはずだ」という音声を音素表記した。これならば最小限の記号で転写をすることができる。音素表記にはカーネギー・メロン大学が公開しているThe CMU Pronouncing Dictionaryの表記を利用した。本研究ではまずデータ収集の標準的な手順を定めることから始めた。被験者から一定の長さの発話を得ることは予想外にむずかしい。最初のひとこと、ふたことから先に進まない例が多い。(1)音声を引き出すためにはところどころ、あいづちを打ち、(2)被験者の反応を引き出しやすい話題、タスクを与えることを基本に、「これまで自分がいちばん楽しかった経験についてできるだけくわしく英語で話してください」といった課題を与えた。データの書式化にはCHILDESで使われているCHATとよばれる表記法を使った。その理由はなによりも標準化されて、広く利用されており、利用技術の蓄積がある点である。CHATフォーマットはヘッダーをはずせば、そのままプレーンなテキストファイルになるので、他のコーパス解析ソフトウェアでの利用も可能である。このコーパスの最大の特徴は音声を記録したという点だけでなく、音声をそのまま聞くことができ、また、音声を検索できるという点である。これを行うのに、音声をコンピュータファイルとして記録し、それをテキストからリンクさせて音声を再生するCHILDESの機能を利用した。母語と異なり、外国語コーパスでは音声が正しく発音されない場合が多い。このような学習者の音声上の特徴を体系的に探るには、特定の音を一括して検索できるしくみがあると便利である。このために作成したのが音素表記コーパスである。学習者が発話する音声は誤りも含めて何が現れるか予想がつかない。そこで、逆に「正しく発音したならば、このように発音されるはずだ」という音声を音素表記した。これならば最小限の記号で転写をすることができる。音素表記にはカーネギー・メロン大学が公開しているThe CMU Pronouncing Dictionaryの表記を利用した。
KAKENHI-PROJECT-12040234
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筋萎縮性側索硬化症に対するG-CSF療法の開発
1.変異SOD1^<G93A>遺伝子導入マウスへのG-CSF皮下投与による治療効果の検討。変異SOD1^<G93A>遺伝子導入マウスに、生後10週よりG-CSF製剤と対照コントロールとして生理食塩水の皮下投与(5日投薬、2日休薬)を死亡あるいは評価時期まで施行した。まず、臨床的評価では、G-CSF投与により、有意に生存期間の延長効果を認めた。次に、運動神経細胞死の抑制効果を調べるために、両群での発症前期(生後12週、14週)、麻痺症状出現期におけるL5前根の正常大径有髄線維数の変化を比較した。12週の時点から少数の神経線維の変性を認めた。14週では、さらに正常線維数の減少を認めたが、両群での有意差を認めなかった。しかし、麻痺症状出現期においては、G-CSF投与群で有意差をもって正常線維数の残存を認めた。また、G-CSFの作用機序の解明のために、麻痺症状出現期、死亡期において、抗アポトーシス蛋白(bcl-2タンパク)の発現量とその変化を検討した。両時期においても、G-CSF投与群で、bcl-2タンパクの発現量の増加を認めたが、死亡期では有意に増加していた。以上の結果から、変異SOD1^<G93A>遺伝子導入マウスに対して、G-CSF療法(皮下投与)は、bcl-2タンパクなどの抗アポトーシス蛋白の誘導により、運動神経細胞死の抑制や延命効果をおこすことが明らかにされた。2.G-CSFの長期間皮下投与による副作用の検討上記1同様にG-CSFを投与した。5日連続投与後でも、末梢血での白血球数増加、血小板数増加を認めた。生後10週から死亡するまで(約20週)投与したマウスでは、G-CSF投与による副作用死は認めなかったものの、全例で肝・脾腫を認めた。また、骨髄塗沫標本では、G-CSF投与による白血病細胞などの出現は認めなかった。1.運動ニューロン培養細胞系におけるG-CSFによる抗アポトーシス作用の検討。過酸化水素および血清除去培地を用いて細胞死を誘導させた運動ニューロンの培養細胞(NSC34細胞)にG-CSFを投与した。G-CSF投与により有意な生存活性が得られた。さらに、細胞からの抽出タンパクでは、カスパーゼ3の活性化が抑制され、G-CSFによるアポトーシス抑制作用が示された。2.変異SOD1^<G93A>遺伝子導入マウスへのG-CSF投与による治療効果の検討。変異SOD1^<G93A>遺伝子導入マウスに、生後10週よりG-CSF製剤と対照コントロールとして生理食塩水の皮下投与(5日投薬、2日休薬)を死亡するまで施行した。G-CSF投与により、有意な生存期間の延長を認めた(G-CSF投与群(141.3±7.1日)、対照群(133.7±8.1日)。組織学的検討では、G-CSFを投与した群では、発症早期において、新生細胞のマーカーであるnestin陽性細胞の増加を認めた。またG-CSF投与群では、摘出した脊髄のタンパクでbcl-2の上昇を認め、アポトーシス抑制作用が考えられた。3.G-CSFノックアウトマウスおよびG-CSFRノックアウトマウスと変異SOD1^<G93A>遺伝子導入マウスと変異SOD1^<G93A>遺伝子導入マウスの交配マウスの作成による機能解析。現在、G-CSFノックアウトマウス、G-CSFRノックアウトマウスを増産している。今後、変異SOD1^<G93A>遺伝子導入マウスとの交配を行い、ダブルトランスジェニックマウスを作成し、生存期間を検討する。1.変異SOD1^<G93A>遺伝子導入マウスへのG-CSF皮下投与による治療効果の検討。変異SOD1^<G93A>遺伝子導入マウスに、生後10週よりG-CSF製剤と対照コントロールとして生理食塩水の皮下投与(5日投薬、2日休薬)を死亡あるいは評価時期まで施行した。まず、臨床的評価では、G-CSF投与により、有意に生存期間の延長効果を認めた。次に、運動神経細胞死の抑制効果を調べるために、両群での発症前期(生後12週、14週)、麻痺症状出現期におけるL5前根の正常大径有髄線維数の変化を比較した。12週の時点から少数の神経線維の変性を認めた。14週では、さらに正常線維数の減少を認めたが、両群での有意差を認めなかった。しかし、麻痺症状出現期においては、G-CSF投与群で有意差をもって正常線維数の残存を認めた。また、G-CSFの作用機序の解明のために、麻痺症状出現期、死亡期において、抗アポトーシス蛋白(bcl-2タンパク)の発現量とその変化を検討した。両時期においても、G-CSF投与群で、bcl-2タンパクの発現量の増加を認めたが、死亡期では有意に増加していた。以上の結果から、変異SOD1^<G93A>遺伝子導入マウスに対して、G-CSF療法(皮下投与)は、bcl-2タンパクなどの抗アポトーシス蛋白の誘導により、運動神経細胞死の抑制や延命効果をおこすことが明らかにされた。2.G-CSFの長期間皮下投与による副作用の検討上記
KAKENHI-PROJECT-18659260
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18659260
筋萎縮性側索硬化症に対するG-CSF療法の開発
1同様にG-CSFを投与した。5日連続投与後でも、末梢血での白血球数増加、血小板数増加を認めた。生後10週から死亡するまで(約20週)投与したマウスでは、G-CSF投与による副作用死は認めなかったものの、全例で肝・脾腫を認めた。また、骨髄塗沫標本では、G-CSF投与による白血病細胞などの出現は認めなかった。
KAKENHI-PROJECT-18659260
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