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現代の「職人」に着目した社会科学習における新たな職業観、職業意識の育成
仕事に関わるアンケート調査では、小・中学生約3000人の回答を分析した。その結果、子どもたちに仕事について考える機会を提供しているのは、社会科等の授業ではなく家族や友人、マスメディアであること、好きな仕事の上位と下位が小・中ともに共通しており、運輸関係など総じて子どもに情報が少ない仕事の好感度が低いことなどが明らかになった。なお、よい仕事の条件には、楽しみや喜びを感じられる、個性が発揮できる、自分を成長させられる等が挙げられている。好感度の低い仕事は、マスメディア等で話題になることが少ないため、それらがよい仕事かどうかを考える機会すらない現状が推察される。上記の調査と既に行われた各種の調査の結果を受けて、小学校社会科で最も仕事に関わる内容を取り上げることになる5年の産業学習、中でも職業認識の面で問題の存在が予想された工業学習について学習指導要領及び教科書等の分析を行った。その結果、学習において産業の理解に重点が置かれ、働く人間の理解が不充分であることが明らかになった。中学校で仕事を扱う公民分野については、既に以前の研究で基本的な経済概念の理解が優先され、生き方と関わる職業生活の理解が不充分であることを指摘しており、小・中共に仕事、特に働くことの意味を含めた職業という面での仕事に対する認識形成に課題を抱えている現状を示した。こうした課題に教材面から対応するため、現代の「職人」とその事業所に対する調査を実施した。その結果、高度な技術・技能を有する作業者に注目することにより、子どもたちの職業認識を育成し、職業意識を高める教材の開発が可能であることを調査内容により提示した。そして、調査内容に基づく授業を小学校5年生で実施し、働く人間に対する子どもの認識の変容を考察すると共に、中学校公民分野の学習プランを提示した。仕事に関わるアンケート調査では、小・中学生約3000人の回答を分析した。その結果、子どもたちに仕事について考える機会を提供しているのは、社会科等の授業ではなく家族や友人、マスメディアであること、好きな仕事の上位と下位が小・中ともに共通しており、運輸関係など総じて子どもに情報が少ない仕事の好感度が低いことなどが明らかになった。なお、よい仕事の条件には、楽しみや喜びを感じられる、個性が発揮できる、自分を成長させられる等が挙げられている。好感度の低い仕事は、マスメディア等で話題になることが少ないため、それらがよい仕事かどうかを考える機会すらない現状が推察される。上記の調査と既に行われた各種の調査の結果を受けて、小学校社会科で最も仕事に関わる内容を取り上げることになる5年の産業学習、中でも職業認識の面で問題の存在が予想された工業学習について学習指導要領及び教科書等の分析を行った。その結果、学習において産業の理解に重点が置かれ、働く人間の理解が不充分であることが明らかになった。中学校で仕事を扱う公民分野については、既に以前の研究で基本的な経済概念の理解が優先され、生き方と関わる職業生活の理解が不充分であることを指摘しており、小・中共に仕事、特に働くことの意味を含めた職業という面での仕事に対する認識形成に課題を抱えている現状を示した。こうした課題に教材面から対応するため、現代の「職人」とその事業所に対する調査を実施した。その結果、高度な技術・技能を有する作業者に注目することにより、子どもたちの職業認識を育成し、職業意識を高める教材の開発が可能であることを調査内容により提示した。そして、調査内容に基づく授業を小学校5年生で実施し、働く人間に対する子どもの認識の変容を考察すると共に、中学校公民分野の学習プランを提示した。本年度は、補助金交付の決定時期との関係から当初の予定を一部変更し、小・中学生に対する職業観・労働観のアンケート調査を規模を拡大して実施した。小学生については産業学習を終えた5年生1829名(東京都内公立小学、東京学芸大学附属小学校、島根県松江市公立小学校)を対象とし、中学生については公民分野の学習をほぼ終えた3年生1119名(都内公立中学校、同上附属中学校、私立中学校、松江市公立中学校)を対象とした。その結果からは、子どもたちの職業観・労働観の発達や特徴、社会科との関わりに見る問題点などが明らかになっている。また、情報収集の結果を踏まえ、今や日本的なものづくりを代表するようになったトヨタグループの中核であるデンソーとアイシン精機を取り上げ、技術・技能の向上・育成を担うセクションの調査を行った。さらに大田区産業振興課の協力を得て、区内に集積した中小製造業の中から高い技術力を発揮して活躍しようとしている工場を選び出し、調査を行った。併せて、元旋盤工で作家として活躍している小関智弘氏と、ものづくりの多元的なネットワークの構築に努める(株)マイスター代表取締役高井作氏にインタビューを行った。そうした中で、ものづくりにおける人間の役割が益々重要になっていること、ものづくりに携わる人々の技術・技能への注目が働く人間の理解にとって重要であること、硬度熟練技能者やその仕事と出会いが子どもたちの職業や労働への関心、理解に効果的であることなどが明らかになってきた。そこで、先の職業観・労働観のアンケート調査と聞き取り調査などの結果をもとに、教材化の対象を絞り込み、小学校産業学習における工業単元のパイロットプランを作成した。本年度は、昨年度末に実地調査を行った事例の中から山形県の「株式会社マイスター」とその経営者であり自らも現代の「職人」である高井作氏を取り上げ、中学校公民分野の経済学習を対象とした教材化と学習プランの作成を行い、学会誌に発表した。それと平行して、先進的なセル生産システムで知られるキャノン株式会社阿見事業所の調査を行い、働く人間の意欲を引き出す生産システムの実際について明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-16530566
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16530566
現代の「職人」に着目した社会科学習における新たな職業観、職業意識の育成
この調査の報告書については、キャノン広報部より、生産性向上に関する現場の取り組みとその考察についての詳細な記述を避けて欲しいとの要請があり一部を削除したが、教材開発の新たな視点を得た。また、東京学芸大学附属小金井小学校で研究実践を行うことを考慮し、商工会等の協力を得て小金井市・国分寺市で独自の技術力でものづくりに取り組む事業所の調査を実施した。自動車産業で研究実践を行うことが決まったことから、ブレーキ部品を製造する株式会社ムラコシ(小金井市)の福島工場と、日産自動車株式会社の九州工場を協力者である授業者と共に調査して、教材化を進めた。研究実践を行うに当たっては、事前と事後に自由記述による調査を実施し、学習の広がりと深まり、仕事に対する子どもの認識の変容を明らかにした。ここでは、展開計画等の問題はあったものの、5年生の子どもがものづくりの仕事を通して働く人間を共感的に理解することは可能であることが示された。特に、働く人間に対する子どもの認識の構造を仮説的ながら示すことができた点が重要であると考える。今後は、それを踏まえて高度な技術・技能を必要とする仕事において自己を実現していく人間の教材化を業種を超えてどのように進めるかが課題となる。最後に上記の研究内容と昨年度の研究内容について、報告書にまとめた。
KAKENHI-PROJECT-16530566
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16530566
現地調査と数値計算に基づく2011年東北沖津波の挙動と堆積物分布との関係性の解明
本年度は,2011年東北地方太平洋沖地震津波による浸水被害を受けた宮城県山元町と福島県南相馬市に位置する2つの谷底平野を対象として,高精度な津波遡上計算に基づく津波の挙動と,現地調査や堆積学的分析に基づく津波堆積物の空間的特徴とを比較した.その結果,津波の挙動と津波堆積物の局所的変化・全体的変化との関係について,次のことが明らかになった.津波堆積物の局所的変化は,微地形の凹凸による津波の挙動の違いが大きく反映されることがわかった.そのため,これまで津波堆積物の分布特徴との関係が多く議論されてきた掘削地点を特徴づける絶対的な指標(海岸線からの距離,標高)だけではなく,相対的な地形的位置付け(周囲の地形との関係)も考える必要があることがわかった.次に,津波堆積物の全体的変化については,内陸に向かって,津波の持つ土砂運搬能力や供給される堆積物の量・粒径が減少するのにしたがい,津波堆積物が薄層化・細粒化することが明らかになった.また,津波堆積物中の様々な堆積構造は,各堆積構造が形成されるために必要な水理条件や供給粒子の条件に応じた分布の開始地点や分布限界を持っていた.そのため,古津波堆積物中の堆積構造の情報は古津波の水理条件(流速,浸水深)を推定する上で重要な情報となると考えられる.また,谷底平野においては,押し波による岸沖方向の全体的な堆積傾向は測線上で十分捉えることができるが,引き波による侵食の強さは,海岸線と平行方向に大きく変化し,谷筋などの相対的に標高が低い場所に集中する特徴が見られたので,測線調査では引き波の影響を十分に捉えることができない可能性がある.そのため,古津波調査において,津波堆積物から引き波の特徴を推定するためには,津波堆積物を面的に調査することが有効であると考えられる.27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。本研究の目的は,2011年東北沖津波によって大きな浸水被害を受けた宮城県山元町と福島県南相馬市の沿岸低地を対象として,2011年東北沖津波による堆積物の面的な調査・分析と高精度な津波遡上計算を組み合わせて,堆積物分布の空間パターンと津波挙動の時空間パターンとの面的な関係性を解明し,2011年東北沖津波による堆積プロセスを詳細に復元することである.本年度は,宮城県山元町と福島県南相馬市の沿岸低地を対象として,2011年東北沖津波によって形成された堆積物を多地点かつ高解像度で調査し,両地域における津波堆積物の空間的な分布特徴を明らかにした.その結果,津波堆積物の層厚は,大局的には津波堆積物の供給源からの距離の増加に伴って減少するが,局所的には,微地形の凹凸によって層厚が大きく変化することが明らかになった.両地域においては,GPS測量機器を用いた地形測量を行ない,標高データを得た.標高データを得ることができなかった場所については,GISソフトを用いて,国土地理院が発行している津波後の5 mDEMの標高値の抽出を行った.これらの地形データと,津波堆積物の空間的な分布特徴を比較し,微地形が津波堆積物の層厚変化に与える影響を詳細に検討した.また,宮城県山元町で採取した津波堆積物については,沈降管天秤法を用いた粒度分析を行い,津波堆積物の平面的,鉛直的な粒度分布の特徴を明らかにし,微地形が津波堆積物の粒度分布に与える影響を調べた.また,仙台湾全体を対象として,2011年東北沖津波の挙動の巨視的な再現計算を行った.微地形が津波の挙動に与える影響を調べるためには,より微視的なスケールを対象とした津波の数値計算を行う必要があり,次年度は,宮城県山元町と福島県南相馬市を対象として,より高精度な津波の数値計算を行う予定である.本年度は,2011年東北地方太平洋沖地震津波による浸水被害を受けた宮城県山元町と福島県南相馬市に位置する2つの谷底平野を対象として,高精度な津波遡上計算に基づく津波の挙動と,現地調査や堆積学的分析に基づく津波堆積物の空間的特徴とを比較した.その結果,津波の挙動と津波堆積物の局所的変化・全体的変化との関係について,次のことが明らかになった.津波堆積物の局所的変化は,微地形の凹凸による津波の挙動の違いが大きく反映されることがわかった.そのため,これまで津波堆積物の分布特徴との関係が多く議論されてきた掘削地点を特徴づける絶対的な指標(海岸線からの距離,標高)だけではなく,相対的な地形的位置付け(周囲の地形との関係)も考える必要があることがわかった.次に,津波堆積物の全体的変化については,内陸に向かって,津波の持つ土砂運搬能力や供給される堆積物の量・粒径が減少するのにしたがい,津波堆積物が薄層化・細粒化することが明らかになった.また,津波堆積物中の様々な堆積構造は,各堆積構造が形成されるために必要な水理条件や供給粒子の条件に応じた分布の開始地点や分布限界を持っていた.
KAKENHI-PROJECT-14J10914
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J10914
現地調査と数値計算に基づく2011年東北沖津波の挙動と堆積物分布との関係性の解明
そのため,古津波堆積物中の堆積構造の情報は古津波の水理条件(流速,浸水深)を推定する上で重要な情報となると考えられる.また,谷底平野においては,押し波による岸沖方向の全体的な堆積傾向は測線上で十分捉えることができるが,引き波による侵食の強さは,海岸線と平行方向に大きく変化し,谷筋などの相対的に標高が低い場所に集中する特徴が見られたので,測線調査では引き波の影響を十分に捉えることができない可能性がある.そのため,古津波調査において,津波堆積物から引き波の特徴を推定するためには,津波堆積物を面的に調査することが有効であると考えられる.対象地域における現地調査をほぼ終えることができ,堆積物の分析も順調に進んでいる.その結果,微地形が津波堆積物の分布特徴や津波の挙動に与える影響が明らかになった.また,津波の数値計算の基礎的な技術を習得し,対象地域における2011年東北沖津波の巨視的な再現計算を行った.27年度が最終年度であるため、記入しない。津波堆積物の現地調査結果の精査を行い,必要に応じて追加の現地調査を行う.また,堆積物の分析と地形データの解析を進めていく.加えて,高解像度の地形データを用いて,対象地域における高精度な2011年東北沖津波の再現計算を行う.27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-14J10914
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J10914
インターフェロンにより誘導される2-5A合成酵素の遺伝子発現調節
今年度の本課題による研究で,まず,ヒト2-5A合成酵素遺伝子の転写開始部位の同定とその上流領域の塩基配列の決定を行った.クローン化した本酵素の染色体遺伝子の翻訳開始コドンより上流0.5Kbの塩基配列を決定した.また, IFN処理したヒト細胞より抽出したRNAを用いて, S1mapping法およびprimer exfention法により転写開始部位を同定したところ,翻訳開始コドンの上流-60-84の領域に少なくとも4カ所存在することが分かった.この転写開始領域の内部および上流0.3Kbには, TATA-boxやCAAT-boxの配列は見だされなかった.つぎに,欠損変異遺伝子による転写制御領域の解析を行った.転写開始領域より上流約2.2Kbを含む2-5A合成酵素遺伝子DNAをプラスミドpSP64にサブクローニングし,これをネオマイシン耐性遺伝子と共にマウスL細胞にco-transfectした. G418耐性細胞をスクリーニングし,それにマウスLFNを作用させると,導入したヒト2-5A合成酵素遺伝子からの転写の誘導が観察された.そこで, 5'上流領域のDNA(-2.2K+40)をchloramphenical acetyl transferase(CAT)遺伝子の翻訳領域に接続したプラスミドおよびそれに種々の5'欠失を導入した変異体を作製し,ヒトFL細胞を用いたtransient expression系での発現を調べた.その結果,転写開始点から上流の-144bpまでを含む組換え体では,より上流までを含むものと同程度の誘導が見られたが, -67bpまでを欠失させるとやや誘導レベルが低下し,さらに-23bpまで欠失させると誘導は全く認められなくなった.以上のことはLFNによる誘導に必要な塩基配列の5'側の境界は-67-23にあることを示している.この領域にLFNによる誘導に関係していると考えられている共通配列(CACTTTC)が存在し,さらに, -70+25に(G/C)(G/C)AAAなる特徴的配列が7カ所存在していた.これらの知見から本遺伝子の転写制御領域は-70-40付近にあると考えられる.今年度の本課題による研究で,まず,ヒト2-5A合成酵素遺伝子の転写開始部位の同定とその上流領域の塩基配列の決定を行った.クローン化した本酵素の染色体遺伝子の翻訳開始コドンより上流0.5Kbの塩基配列を決定した.また, IFN処理したヒト細胞より抽出したRNAを用いて, S1mapping法およびprimer exfention法により転写開始部位を同定したところ,翻訳開始コドンの上流-60-84の領域に少なくとも4カ所存在することが分かった.この転写開始領域の内部および上流0.3Kbには, TATA-boxやCAAT-boxの配列は見だされなかった.つぎに,欠損変異遺伝子による転写制御領域の解析を行った.転写開始領域より上流約2.2Kbを含む2-5A合成酵素遺伝子DNAをプラスミドpSP64にサブクローニングし,これをネオマイシン耐性遺伝子と共にマウスL細胞にco-transfectした. G418耐性細胞をスクリーニングし,それにマウスLFNを作用させると,導入したヒト2-5A合成酵素遺伝子からの転写の誘導が観察された.そこで, 5'上流領域のDNA(-2.2K+40)をchloramphenical acetyl transferase(CAT)遺伝子の翻訳領域に接続したプラスミドおよびそれに種々の5'欠失を導入した変異体を作製し,ヒトFL細胞を用いたtransient expression系での発現を調べた.その結果,転写開始点から上流の-144bpまでを含む組換え体では,より上流までを含むものと同程度の誘導が見られたが, -67bpまでを欠失させるとやや誘導レベルが低下し,さらに-23bpまで欠失させると誘導は全く認められなくなった.以上のことはLFNによる誘導に必要な塩基配列の5'側の境界は-67-23にあることを示している.この領域にLFNによる誘導に関係していると考えられている共通配列(CACTTTC)が存在し,さらに, -70+25に(G/C)(G/C)AAAなる特徴的配列が7カ所存在していた.これらの知見から本遺伝子の転写制御領域は-70-40付近にあると考えられる.
KAKENHI-PROJECT-62620511
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62620511
チベット仏教中観思想の研究
本研究は最初にゲルク派の中観思想の構造と、その思想の独自点を明らかにした上で、ゲルク派が批判対象とするシャーキャ・チョクデンの中観思想の特色を明らかにし、その中観学がインド仏教にどのように組み込まれているかを探るものである。本研究が対象とするチベット仏教中観思想は、現在に至るまでチベットの僧院で学習されてきたものである。数百年にわたって培われてきたその伝統を客観的に記述し、評価することは、本研究を通じて始めて可能となるであろう。また、本研究の成果はインド仏教中観思想の研究にも新たな視座を与えるものでもある。従って、本研究はチベット仏教とインド仏教の双方の研究に大きく資するものと期待される。本研究は最初にゲルク派の中観思想の構造と、その思想の独自点を明らかにした上で、ゲルク派が批判対象とするシャーキャ・チョクデンの中観思想の特色を明らかにし、その中観学がインド仏教にどのように組み込まれているかを探るものである。本研究が対象とするチベット仏教中観思想は、現在に至るまでチベットの僧院で学習されてきたものである。数百年にわたって培われてきたその伝統を客観的に記述し、評価することは、本研究を通じて始めて可能となるであろう。また、本研究の成果はインド仏教中観思想の研究にも新たな視座を与えるものでもある。従って、本研究はチベット仏教とインド仏教の双方の研究に大きく資するものと期待される。
KAKENHI-PROJECT-19J10765
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19J10765
中性子エネルギー分析器の開発とその実用化に関する研究
本研究では、中性子エネルギー分析器の開発研究を行った。中性子エネルギー分析器は中性子屈折光学素子と位置敏感検出器を用いて構成するものとし、その要素技術である中性子屈折光学素子と、時間分解能を有し位置分解能に優れた中性子2次元検出器の開発研究を並行して行った。一般に中性子に対する物質の屈折率は1に非常に近く、また、物質による中性子の吸収や、物質の内部構造に起因した散乱が起こるため、エネルギー分析器として用いる中性子屈折光学素子の開発に於いては材料の選択および素子形状の工夫が不可欠である。そこで、まず中性子屈折光学特性に優れていると考えられる材料について、中性子透過率および中性子散乱能の測定を行い、材料の選定を行った。その結果、測定を行った材料の内、MgF_2単結晶が最も中性子光学特性に優れていることが分かった。そこで、MgF_2単結晶を用いて、三角柱形状のプリズムを製作した。プリズムの表面粗さの屈折特性への影響を調べるため、表面粗さが0.02および1.7μm-rmsの異なる2種類のプリズムを製作した。これらの試料について、パルス中性子を用いて中性子屈折特性の評価を行った。その結果、それぞれの試料についてほぼ設計通りの中性子の屈折効果が確認できた。また、表面粗さが1.7μm-rmsの試料は、0.02μm-rmsのものと比較して、屈折後の中性子ビームにぼやけが観測された。表面粗さの屈折効果への影響について定量的な議論を行うためには、さらに系統的な研究が必要である。厚さ0.5mmの中性子シンチレータZnSと断面積0.5x0.5mm^2の波長変換ファイバーを組み合わせて、検出部面積50x50mm^2の中性子2次元検出器を構成した。この検出器に中性子ビームを照射して、中性子検出実験を行った。その結果、中性子の検出に成功し、約0.5mmの位置分解能が得られた。中性子エネルギー分析器は、中性子屈折光学素子と中性子位置敏感検出器を用いて構成される。中性子屈折光学素子には、中性子と磁場との相互作用を利用して中性子を屈折させるものと、物質界面での中性子の屈折現象を利用するものがある。これまで、我々は4-piece型の永久四極磁石を製作し、中性子ビームを用いてその特性評価を行ってきた。本年度、永久四極磁石の中性子屈折光学特性について詳細な数値シミュレーションを行った。その結果、数値シミュレーションにより、永久四極磁石の中性子屈折光学特性を良く再現できることが分かった。また現在、物質界面での中性子の屈折現象を利用した素子として、単結晶MgF2を用いた中性子屈折光学素子を制作中である。製作完了後、中性子ビームを用いて特性評価を行う。中性子エネルギー分析器のエネルギー分解能を向上させるためには、中性子屈折光学素子の屈折能の向上と、中性子検出器の空間分解能の向上が必要である。そこで、Halbach型の永久四極磁石の設計を行った。その結果、四極磁石を4-piece型からHalbach型にすることで、永久磁石の作る磁場強度勾配を約2倍向上出来ることが分かった。今後、Halbach型磁石の製作を行い、製作完了後、中性子ビームを用いて特性評価を行う予定である。また現在、高性能位置敏感検出器として、中性子シンチレータと波長変換ファイバーを組み合わせた新しい型の中性子検出器の製作を行っている。この検出器は、飛行時間法の適用に対して十分な時間分解能を有した上で、約0.5mmの空間分解能を達成できると期待される。検出器の製作完了後、中性子ビームを用いてその特性評価を行う予定である。本研究では、中性子エネルギー分析器の開発研究を行った。中性子エネルギー分析器は中性子屈折光学素子と位置敏感検出器を用いて構成するものとし、その要素技術である中性子屈折光学素子と、時間分解能を有し位置分解能に優れた中性子2次元検出器の開発研究を並行して行った。一般に中性子に対する物質の屈折率は1に非常に近く、また、物質による中性子の吸収や、物質の内部構造に起因した散乱が起こるため、エネルギー分析器として用いる中性子屈折光学素子の開発に於いては材料の選択および素子形状の工夫が不可欠である。そこで、まず中性子屈折光学特性に優れていると考えられる材料について、中性子透過率および中性子散乱能の測定を行い、材料の選定を行った。その結果、測定を行った材料の内、MgF_2単結晶が最も中性子光学特性に優れていることが分かった。そこで、MgF_2単結晶を用いて、三角柱形状のプリズムを製作した。プリズムの表面粗さの屈折特性への影響を調べるため、表面粗さが0.02および1.7μm-rmsの異なる2種類のプリズムを製作した。これらの試料について、パルス中性子を用いて中性子屈折特性の評価を行った。その結果、それぞれの試料についてほぼ設計通りの中性子の屈折効果が確認できた。また、表面粗さが1.7μm-rmsの試料は、0.02μm-rmsのものと比較して、屈折後の中性子ビームにぼやけが観測された。表面粗さの屈折効果への影響について定量的な議論を行うためには、さらに系統的な研究が必要である。厚さ0.5mmの中性子シンチレータZnSと断面積0.5x0.5mm^2の波長変換ファイバーを組み合わせて、検出部面積50x50mm^2の中性子2次元検出器を構成した。この検出器に中性子ビームを照射して、中性子検出実験を行った。その結果、中性子の検出に成功し、約0.5mmの位置分解能が得られた。
KAKENHI-PROJECT-12740251
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12740251
既存建築物の災害弱者火災避難のための改修技術の検討
火災時避難が困難である災害弱者の安全確保を目的とした。法改正で既存不適格となる既存建築物では避難にも問題を生じるため対策が必要である。初年度は「避難能力からみた災害弱者の分類」として文献調査を行い、火災覚知、避難移動、情報伝達能力が重要とした。災害弱者として、障害者、高齢者、子ども、外国人をあげ、避難能力、状況による分類を行った。次年度は「災害弱者を想定した被験者避難実験」として、車いす利用者の避難に着目した。「防火戸通過実験(単独車いす/群集)」を行った。防火戸の開放力を実験条件とした車いすによる通過実験及び車いす座位姿勢で扉を押す発揮力を計測し、防火戸の開放力は40N以下が適当であるとした。また100人の群集による防火戸通過実験から、群集流動係数の実測値として2.2人/m・sを得た。「高層建築物における車いす介助避難実験」では、車いす利用者は緊急時に出火階の数階下に移動することで安全性は高まると考え、車いすごとの持上げ、人のみを担いでの介助避難について実験した。車いすごとの場合、幅員1200mm以上の階段室では4名、900mmの幅員では2名で介助する方法が有効である。最終年度は「既存建築物改修のための改修技術の検討」として研究結果から、災害弱者は火災覚知時間が長い、移動速度が低い、避難に介助を必要とすることを示した。またケーススタディを通して、安全性向上のための改修方法として階段、通路幅員の増加は非常に困難、スプリンクラーの導入は困難、非常用エレベータの導入は困難、火災報知設備等の導入は可能性あり、防火区画の変更は可能性ありを明らかにした。災害弱者のための防火改修では、早期発見のための火災報知設備の導入、十分な避難時間を確保するための防火区画の拡充が適している。特に階段室、付室は、一時的に待機して救助を待つ施設としても利用出来ることから重点的な改修が必要である。本研究では、不特定多数が利用する大規模施設を対象として、垂直移動、水平移動が困難である移動制約者等、災害弱者の火災避難安全確保のために必要とされる身体機能、避難設備の性能を実験・文献より明らかにすることを目的としている。災害弱者の火災避難に関する従来の研究を整理するとともに、その中で特に研究が遅れている避難者の避難行動能力に着目し、被験者実験を通して人間工学的観点から定量的に性能基準を明らかにする。また、これらの指針をもとに、既存建築物の災害弱者避難対応改修の技術指針を検討する。本年度は、不特定多数が利用する大規模施設を対象として、さまざまな身体障害や加齢による身体能力の低下に起因する移動制約者にたいして、避難に必要とされる身体機能、避難設備の性能を文献調査、ヒヤリングなどにより、研究の整理を行った。国内の事例はもとより、海外における研究成果、事例等についての情報収集を行う。このため、国内外の専門家の意見を聴取するとともに、国内外の学会、会議において、情報収集をはかった。ハートビル法の改正(2003年)、各地方自治体の福祉の街づくり条例、交通バリアフリー法(2000年)などの施行により、エレベータ、エスカレータの設置など弱者のアクセシビリティ(利用可能性)を高める努力が続けられている。これに対し、火災時の避難・誘導に関する対応はなされていない。たとえば、車椅子、歩行器、杖など使用する高齢者を含む移動制約者は、エレベータ、エスカレータを利用して上層階へ移動する。ところが、火災が発生するとこれらの設備は、避難に利用できない。避難に対応した既存建築物の改修整備を行う技術について整理し、技術指針を作成する。昨今のアクセス向上のためのバリアフリー対応をみても、既存建築物に対する改修も多く、災害弱者避難対応についても改修技術基準を早急に整備すべきである。平成17年度は、災害弱者による防火戸通過を想定して、以下の実験を行った。また、結果を審査付き国際学術論文誌に投稿し、掲載された。火災避難時に、安全区画に入るために防火戸等防火設備を通過しなければならない。現状の法規では、防火戸には開放重量の規定がないため、扉の開放に要する力が大きいものが多い。特に車椅子利用者、高齢者などは、開放が困難である。車椅子などでは、扉を開く場合に空間が必要となるため、機器と人間の動作寸法を三次元的に検討する必要がある。また、自動的に閉鎖する扉を避けられずに衝突・転倒するなどの危険性がある。そこで、災害弱者が単独で防火戸を通過する実験を通して、扉の開閉重量、開口幅、開口部下の段差、ドアクローザーの閉鎖速度、開放に必要となる扉周辺スペース等の検討を行った。また、車いすに乗った状態で発揮できる扉を押す力を計測することで、車いす利用者の発揮力の基礎資料とするとともに、通過可能性を検討する方法を提案した。火災時避難が困難である災害弱者の安全確保を目的とした。法改正で既存不適格となる既存建築物では避難にも問題を生じるため対策が必要である。初年度は「避難能力からみた災害弱者の分類」として文献調査を行い、火災覚知、避難移動、情報伝達能力が重要とした。災害弱者として、障害者、高齢者、子ども、外国人をあげ、避難能力、状況による分類を行った。次年度は「災害弱者を想定した被験者避難実験」として、車いす利用者の避難に着目した。「防火戸通過実験(単独車いす/群集)」を行った。
KAKENHI-PROJECT-16760499
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16760499
既存建築物の災害弱者火災避難のための改修技術の検討
防火戸の開放力を実験条件とした車いすによる通過実験及び車いす座位姿勢で扉を押す発揮力を計測し、防火戸の開放力は40N以下が適当であるとした。また100人の群集による防火戸通過実験から、群集流動係数の実測値として2.2人/m・sを得た。「高層建築物における車いす介助避難実験」では、車いす利用者は緊急時に出火階の数階下に移動することで安全性は高まると考え、車いすごとの持上げ、人のみを担いでの介助避難について実験した。車いすごとの場合、幅員1200mm以上の階段室では4名、900mmの幅員では2名で介助する方法が有効である。最終年度は「既存建築物改修のための改修技術の検討」として研究結果から、災害弱者は火災覚知時間が長い、移動速度が低い、避難に介助を必要とすることを示した。またケーススタディを通して、安全性向上のための改修方法として階段、通路幅員の増加は非常に困難、スプリンクラーの導入は困難、非常用エレベータの導入は困難、火災報知設備等の導入は可能性あり、防火区画の変更は可能性ありを明らかにした。災害弱者のための防火改修では、早期発見のための火災報知設備の導入、十分な避難時間を確保するための防火区画の拡充が適している。特に階段室、付室は、一時的に待機して救助を待つ施設としても利用出来ることから重点的な改修が必要である。
KAKENHI-PROJECT-16760499
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私人による国際責任の援用-投資条約仲裁における投資家の法的地位-
最終年度にあたる平成29年度は、前年度までの研究に引き続き、本研究課題に関わる若干の各論的問題(投資条約の改廃およびICSID条約の廃棄)に検討を加えるとともに、それら具体的論点について得られた知見を包括的かつ整合的に説明するための理論的枠組みの構築を行い、研究全体のまとめとした。また研究成果の一部については単独の論文として投稿も行った。ICSID条約廃棄の問題については、2015年から2017年に立て続けに出された重要なICSID仲裁判断例(Venoklim事件、Blue Bank事件、Valores Mundiales事件、Fabrica事件)の比較検討を行ない、研究会で報告を行なった。また投資条約の改廃については二国間条約実行の収集を行なうとともに、シンガポール最高裁高等法院によるSwissbourgh事件判決の分析も行なった。研究全体にとって特に重要な成果として、『法学論叢』に投稿した「投資条約の解釈統制と投資家の『客観的』国際法主体性」が挙げられる。そこでは、条約全当事国の合意による解釈統制の内容およびタイミングに対する法的制約の存在を論証し、それぞれが投資条約の公的性質および投資条約仲裁手続きのハイブリッド=トランスナショナルな性質から説明されると論じた。後者の、投資家の国際法主体性に対する仲裁手続準拠法の側からの国際私法的規律の存在を指摘できたことは、極めて大きな成果であった。また、前者の点については、前年度に学会報告を行なった非金銭的救済の問題との関連で、『国際法外交雑誌』に論稿を投稿した。研究全体は、博士論文「投資条約仲裁における投資家の国際法主体性の理論と実践」として京都大学に提出した。今後、その内容をより充実させつつ、公表の準備を進める。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。本研究は投資条約上の投資家の法的地位を、とりわけ他の法主体(本国・受入国・条約当事国全体)との関係で明らかにすることを目的とする。(ただし本研究は投資条約の実体規定の解釈それ自体を目的とするものではない。)。平成27年度は、先行研究および検討の対象とすべき実践的論点の把握・理解に重点を置いて研究を遂行した。実践的帰結を重視して機能主義的にのみ国際法を援用する傾向が顕著であった国際投資法学において、本研究の理論的課題を包括的に論じた研究は未だ見当たらないが、萌芽的・部分的研究は提出され始めており(例、Anthea Roberts)、それらの読解を通じて問題の全体像を捉えることを目指した。その結果、(究極的に個別条約の解釈問題である)投資家の法主体性の存在を半ば所与とするかのような認識が実行・学説上一般化しつつあり、議論はその性質・限界を論じるpost-ontologicalな段階に移行しており、またそこにおいて投資仲裁の制度的本質理解が重要性を持つとの知見を得た。このことは、「国際法主体(性)」という概念に先験的実質があるわけではなく、その内容は個別法規則の解釈により帰納的に決定するほかないことを示唆する。そこで(1)国家責任法上の非金銭的救済、(2)本国による投資家の請求権の放棄、(3)条約全当事国の解釈合意(有権的解釈)という具体的問題を素材として、国家実行・仲裁実行・先行研究の分析・整理を行った。いずれにおいても通底する問題は国家間関係を念頭に形成されてきた一般国際法を(いかに)投資家・国家間関係で修正して適用すべきかであり、修正の対象となる実定国際法の内容理解と、修正を要求し得る投資仲裁の特質を明らかにすることが求められる。これら研究の成果は国際法研究会・国際ワークショップにて報告した。平成27年度は、条約の第三国効に関する議論を前提として、条約の第三「者」たる投資家の地位を分析する予定であった。第三国効との関係での先行研究は少なく、必ずしも有益な示唆は得られなかったが、請求権放棄および有権的解釈という個別的問題に視点を移して検討した結果、条約当事国の意思と私人の地位との関係という当初の問題意識につき一定の知見が得られ、おおむね順調に進捗していると評価する。本年度の研究の結果、ある具体的問題に解答を与えるには投資仲裁の制度趣旨・性質という大きな問題の解明が前提として必要であることが明らかになったため、具体的成果の刊行には至っていないが、複数回の中間報告において有益な批判を得た。前記問題に関する先行研究の全容は明らかになっており、論点の適切な切り出しの上で執筆を進めている。本年度は、前年度の研究を前提として、投資条約仲裁における投資家の法的地位に関わる個別の問題の検討を通じて、本研究の全体的な問題意識に通底する理論的含意を得ることを目指して研究を遂行した。また前年度の研究実績を学会報告の形で批判に問う作業も行った。具体的には次のような成果が得られた。まず投資家の二次規則(国家責任法)上の権利主体性につき、非金銭的救済に着目して行ってきた研究を、国際法学会研究大会において報告し、国家責任法上の救済規則の運用が投資条約仲裁の制度的性質を反映して一定の修正を受けていることを指摘した。また前年度理論的な検討に付した条約解釈合意(「有権的解釈」)につき、最近の重要な国家実行を素材として実践的検討を行った。同様に国家間仲裁を通じた解釈統制についても条約・仲裁実行を分析し、「後の合意」(条約法条約31条3項a)としての位置づけを探った。それぞれにつき、研究会での報告を行い、批判・コメントを受けた。
KAKENHI-PROJECT-15J08164
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私人による国際責任の援用-投資条約仲裁における投資家の法的地位-
以上の検討から、投資家の法的地位を検討するにあたっては、投資条約を通常の相互主義的な二国間条約と捉えるのではなく、何らかの客観的価値を含んだより多層的な制度として理解する方が適切であるとの仮説を持ちつつある。この点を実証的に明らかにするため、本年度は投資家の「国籍」の概念を機能主義的に理解する議論についての先行研究と仲裁実行を検討した。これらの素材は、投資家がその本国との関係で有する国籍は、投資家自身ないしは投資家本国の主観的利益を保護するための紐帯ではなく、むしろ条約の客観的価値を実現するために機能的に設定された連関に過ぎず、それ故条約ごとに自律的に定義・運用されているとの示唆をもたらす。以上の成果から、本年度は本研究課題の各論点について一定の具体的検討を行うことができ、また課題全体に通ずる一般的理論的知見に繋がる示唆をも得ることができた。前年度の研究から、本研究の課題を明らかにするためには個別の実践的論点を包括的に俯瞰するための理論的視野が求められることが明らかとなっており、本年度はかかる個別論点の具体的検討を重点的に行なった。とりわけ中心的な問題となっている条約解釈については、重要な実行が現れたことも幸いして、充実した検討を行うことができた。また非金銭的救済に関しては、エネルギー憲章条約事務局(ベルギー・ブリュッセル)において起草過程の調査を行うことができ、貴重な発見が得られた。これらのことから、理論的分析の基礎構築が順調に進行していると評価する。最終年度にあたる平成29年度は、前年度までの研究に引き続き、本研究課題に関わる若干の各論的問題(投資条約の改廃およびICSID条約の廃棄)に検討を加えるとともに、それら具体的論点について得られた知見を包括的かつ整合的に説明するための理論的枠組みの構築を行い、研究全体のまとめとした。また研究成果の一部については単独の論文として投稿も行った。ICSID条約廃棄の問題については、2015年から2017年に立て続けに出された重要なICSID仲裁判断例(Venoklim事件、Blue Bank事件、Valores Mundiales事件、Fabrica事件)の比較検討を行ない、研究会で報告を行なった。また投資条約の改廃については二国間条約実行の収集を行なうとともに、シンガポール最高裁高等法院によるSwissbourgh事件判決の分析も行なった。研究全体にとって特に重要な成果として、『法学論叢』に投稿した「投資条約の解釈統制と投資家の『客観的』国際法主体性」が挙げられる。そこでは、条約全当事国の合意による解釈統制の内容およびタイミングに対する法的制約の存在を論証し、それぞれが投資条約の公的性質および投資条約仲裁手続きのハイブリッド=トランスナショナルな性質から説明されると論じた。後者の、投資家の国際法主体性に対する仲裁手続準拠法の側からの国際私法的規律の存在を指摘できたことは、極めて大きな成果であった。また、前者の点については、前年度に学会報告を行なった非金銭的救済の問題との関連で、『国際法外交雑誌』に論稿を投稿した。研究全体は、博士論文「投資条約仲裁における投資家の国際法主体性の理論と実践」として京都大学に提出した。今後、その内容をより充実させつつ、公表の準備を進める。
KAKENHI-PROJECT-15J08164
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クラスレート化合物の機能設計のためのマクロクラスター結晶化学の構築
無機化合物の結晶構造において、「クラスターユニットの相互連結によるマクロクラスター結晶化学」を構築する目的で、BS_4四面体の連結からなる巨大四面体クラスター形成とその結合様式について検討した。一価カチオンとしてAg、Li、Na、K、Cuを選択し、これとホウ素、硫黄の組合せからなる三元系化合物を高圧合成し、得られた生成物の結晶構造を解析した。Li-B-S系では二種の新規化合物(LiBS_2、Li_2B_8S_<13>)が生成し、このうちLi_2B_8S_<13>はB_2S_3高圧相の結晶構造を基本骨格とし、その空隙内にLiイオンが分布したマクロクラスター構造を有することが明らかとなった。Na-B-S、KB-S、Ag-B-S系では、それぞれ高圧合成により新規化合物が得られたが、単一相の合成が困難で詳細な結晶構造解析には至らなかった。しかし、赤外吸収スペクトルからはBS_4四面体からなるクラスターユニットの存在が示唆され、一価カチオンを含む三元系ホウ硫化物にはマクロクラスター構造が多数出現することが見出された。一方、Cu-B-S系ではカルコパイライト型構造の新規化合物CuBS_2が得られ、バンドギャップが3.6eVのワイドギャップ半導体であることが判明した。マクロクラスター構造の構築と一価カチオンのイオン半径との間には明瞭な相関が存在し、イオン半径が小さいほど、BS_4四面体の連結からなるマクロクラスター構造が形成されやすいことが明らかとなった。高圧力場は構成イオン間のイオン半径比に大きく影響を及ぼすため、これらの化合物群の合成には有利な反応場である。以上、本研究により、三元系ホウ硫化物に特異に発現するマクロクラスター構造が明らかになったとともに、その構造形成がクラスターユニットに含まれない一価カチオンのサイズに大きく依存することを見出した。無機化合物の結晶構造において、「クラスターユニットの相互連結によるマクロクラスター結晶化学」を構築する目的で、BS_4四面体の連結からなる巨大四面体クラスター形成とその結合様式について検討した。ホウ素とイオウの二成分系の高圧合成により、四面体配位のホウ素を基本単位とするマクロテトラヘドロン化合物の形成を確認し、圧力、温度をパラメーターとした生成ダイヤグラムを作成した。B_2S_3組成では、5GPa程度の圧力用域において、BS_4四面体が4段、5段に積み重なった巨大四面体クラスターが形成され、このクラスター同士が閃亜鉛鉱型構造に連結した結晶構造を形成することを確認した。次に、一価、二価金属を含む三元系ホウ硫化物の高圧合成を検討し、Ca-B-S系において、新規化合物CaB_2S_4高圧相を発見した。CaB_2S_4高圧相には2つの多形が存在し、比較的低圧側(CaB_2S_4-I)ではBS_4四面体の三段連結からなる巨大四面体が形成されることを見出した。Ca原子は巨大四面体配列の空隙位置に存在しており、結晶構造内の空洞を移動経路とするイオン伝導体としての応用可能性が見出された。一方、さらに高圧側ではCaB_2S_4-IIが生成し、結晶構造解析の結果、CaB_2S_4-I相における巨大四面体が崩壊し、孤立したBS_4四面体を結晶構造内に含むことが判明した。以上の結果から、常圧下で平面3配位構造となるホウ硫化物系において、高圧力下ではBS_4四面体からなるマクロクラスターが形成されることを知見したが、さらに圧力を増大させるとクラスターが崩壊することが明らかとなった。無機化合物の結晶構造において、「クラスターユニットの相互連結によるマクロクラスター結晶化学」を構築する目的で、BS_4四面体の連結からなる巨大四面体クラスター形成とその結合様式について検討した。一価カチオンとしてAg、Li、Na、K、Cuを選択し、これとホウ素、硫黄の組合せからなる三元系化合物を高圧合成し、得られた生成物の結晶構造を解析した。Li-B-S系では二種の新規化合物(LiBS_2、Li_2B_8S_<13>)が生成し、このうちLi_2B_8S_<13>はB_2S_3高圧相の結晶構造を基本骨格とし、その空隙内にLiイオンが分布したマクロクラスター構造を有することが明らかとなった。Na-B-S、KB-S、Ag-B-S系では、それぞれ高圧合成により新規化合物が得られたが、単一相の合成が困難で詳細な結晶構造解析には至らなかった。しかし、赤外吸収スペクトルからはBS_4四面体からなるクラスターユニットの存在が示唆され、一価カチオンを含む三元系ホウ硫化物にはマクロクラスター構造が多数出現することが見出された。一方、Cu-B-S系ではカルコパイライト型構造の新規化合物CuBS_2が得られ、バンドギャップが3.6eVのワイドギャップ半導体であることが判明した。マクロクラスター構造の構築と一価カチオンのイオン半径との間には明瞭な相関が存在し、イオン半径が小さいほど、BS_4四面体の連結からなるマクロクラスター構造が形成されやすいことが明らかとなった。高圧力場は構成イオン間のイオン半径比に大きく影響を及ぼすため、これらの化合物群の合成には有利な反応場である。以上、本研究により、三元系ホウ硫化物に特異に発現するマクロクラスター構造が明らかになったとともに、その構造形成がクラスターユニットに含まれない一価カチオンのサイズに大きく依存することを見出した。
KAKENHI-PROJECT-15655072
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低酸素腫瘍を標的とする内部照射治療薬剤に関する研究
低酸素がんへの選択的親和性を示すCU-ATSMの特性を利用して、殺細胞能を持つ放射性Cu-64を細胞内に送達し、がん細胞内部からの選択的放射線照射治療を試みた。本年度は、Cu-ATSMのがん組織内集積の特性を糖代謝イメージング薬剤であるF-18-2-fluoro-2-deoxy-D-glucose (FDG)と比較検討するとともに、免疫組織学的検討を加えることにより、細胞生物学的に評価した。皮下に10mm径のがんを持つマウスにCu-64-ATSMおよびFDGを同時投与した。1時間後に腫瘍を摘出し2分割した後、一方をオートラジオグラフィに、他方を固定,免疫組織染色に用いた。Cu-ATSMとFDGとは非常に異なる集積パターンを示した。CU-ATSM高集積部位でははCD34で染色される血管内皮細胞がほとんどみられず、血流が非常に乏しいことが示唆された。またKi67で染色される増殖細胞はほとんどなかった。一方、FDG高集積部位は血管が充実しており、血液供給がかなり豊富であると考えられた。また非常に増殖細胞が多く見られた。FDG高集積部位は、壊死層の周辺に顕著にみられた。興味あることに、Tunel法で染色されるapoptosis細胞はFDG高集積部位にはまったく見出されず、Cu-ATSM集積部位にごく少数(0.2%以下)見出されるに留まった。これらのことは、Cu-ATSM高集積部位が、一旦増殖したものの血管新生がまだ始まっておらず、その中で生存維持するために増殖を含む細胞活動を停止させるという非常に巧妙な戦略を持った細胞集団からなることを示していると考えられる。このような部位は、当然放射線照射や抗がん剤治療に対して抵抗性を有すると考えられ、それらを選択的治療できるCu-64-ATSMに大きな期待が持たれる。低酸素がんへの選択的親和性を示すCU-ATSMの特性を利用して、殺細胞能を持つ放射性Cu-64を細胞内に送達し、がん細胞内部からの選択的放射線照射治療を試みた。本年度は、Cu-ATSMのがん組織内集積の特性を糖代謝イメージング薬剤であるF-18-2-fluoro-2-deoxy-D-glucose (FDG)と比較検討するとともに、免疫組織学的検討を加えることにより、細胞生物学的に評価した。皮下に10mm径のがんを持つマウスにCu-64-ATSMおよびFDGを同時投与した。1時間後に腫瘍を摘出し2分割した後、一方をオートラジオグラフィに、他方を固定,免疫組織染色に用いた。Cu-ATSMとFDGとは非常に異なる集積パターンを示した。CU-ATSM高集積部位でははCD34で染色される血管内皮細胞がほとんどみられず、血流が非常に乏しいことが示唆された。またKi67で染色される増殖細胞はほとんどなかった。一方、FDG高集積部位は血管が充実しており、血液供給がかなり豊富であると考えられた。また非常に増殖細胞が多く見られた。FDG高集積部位は、壊死層の周辺に顕著にみられた。興味あることに、Tunel法で染色されるapoptosis細胞はFDG高集積部位にはまったく見出されず、Cu-ATSM集積部位にごく少数(0.2%以下)見出されるに留まった。これらのことは、Cu-ATSM高集積部位が、一旦増殖したものの血管新生がまだ始まっておらず、その中で生存維持するために増殖を含む細胞活動を停止させるという非常に巧妙な戦略を持った細胞集団からなることを示していると考えられる。このような部位は、当然放射線照射や抗がん剤治療に対して抵抗性を有すると考えられ、それらを選択的治療できるCu-64-ATSMに大きな期待が持たれる。治療に適した放射性Cu同位体としてCu-64を選択し、病院内超小型サィクロトロンによる製造システムを構築した。同時に、原料となるNi-64の金ディスクへの電着システム、Ni-64の再回収システムを構築した。金ディスクに電着したNi-64をプロトン照射し、生成したCu-64をNi-64とともに濃硝酸にて溶解後、イオン交換樹脂カラムにて分離した。塩酸溶液として回収されたNi-64は、塩酸留去後電気炉にて加熱酸化しNiOとして回収再利用した。Cu-64は最終的に生理的に緩和な200mM Gly溶液として得られた。これをATSM溶液と混和するのみで、98%以上の標識率で低酸素親和性薬剤であるCu-64-ATSMを調製することができた。得られたCu-64-ATSMによる細胞障害性について培養腫瘍細胞を用いて基礎検討を行った。Cu-ATSMは細胞集積後速やかに代謝を受け、核やミトコンドリアに移行することなくサイトゾルに滞留したことから、細胞障害性は飛程の小さいオージェ電子ではなくβ線によるものと考えられた。β線の飛程がミリメータレベルであることからCu-64-ATSMを取り込んだ細胞のみでなくその周辺細胞へも障害効果が及ぶことが期待された。またコメットアッセイならびにアポトーシスマーカーによる検討により、数回の分裂後にアポトーシスを起こす緩やかな細胞障害であることが示唆された。これとは別に、ウサギVX2腫瘍モデルを用いて、Cu-ATSMの腫瘍内集積を解糖系マーカーであるFDGと2核種同時投与により比較した。
KAKENHI-PROJECT-14370274
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14370274
低酸素腫瘍を標的とする内部照射治療薬剤に関する研究
Cu-ATSMが腫瘍のもっとも増殖の活発な細胞群に集積したのに対して、FDGはその内側にある障害を受けた細胞群に高く集積し、低酸素マーカー集積と解糖系マーカー集積とに不一致が観察され、腫瘍細胞のエネルギー代謝と血流に関する新しい解釈が必要であることが示された。病院内に設置された超小型サイクロトロンを用いた放射性金属核種特に放射性Cuの製造システムの設計を行った。また金属ターゲットよりターゲット物質ならびに生成放射性同位元素を分離精製するためのシステムの設計を行った。これらにより放射性Cuを安全かつ効率よく製造できるシステムを構築した。特に、別途リーディングプロジェクトによって新たに設置されたサイクロトロンに関して、金属ターゲットを安定に取り付け、また照射後に遠隔操作にて安全に取り外し自動精製装置に移送するためのシステムの設計を行った。これらを総合することにより、治療に適した大量の放射性同位元素を実際に製造するための基盤が整いつつある。これと平行して、昨年度からの検討としてウサギVX2がん組織内の低酸素指向性薬剤Cu-ATSMと糖代謝指向性薬剤FDGとの分布が相違することを確認した。この相違がなにに基づくものかをさらに明らかにすることを目的として、多種のマウス腫瘍モデルを作成し、それらにおけるCu-ATSMとFDGの腫瘍内集積を検討すると同時に、これらの腫瘍組織の免度組学的検討を行うことにより、低酸素に関連することが知られる遺伝子産物の発現パターンとの関連や細胞生存率などとの比較検討を行った。現在その結果を考察中である。これらとは別に、腫瘍の増殖に関連する核酸誘導体の合成とその基礎検討を行い、細胞増殖に良好な相関を持つ集積を示す化合物を得た。これらは増殖腫瘍への選択的放射能送達に有用と考えられ、今後さらに検討を加える予定である。低酸素がんへの選択的親和性を示すCu-ATSMの特性を利用して、殺細胞能を持つ放射性Cu-64を細胞内に送達し、がん細胞内部からの選択的放射線照射治療を試みた。本年度は、Cu-ATSMのがん組織内集積の特性を糖代謝イメージング薬剤であるF-18-2-fluoro-2-deoxy-D-glucose(FDG)と比較検討するとともに、免疫組織学的検討を加えることにより、細胞生物学的に評価した。皮下に10mm径のがんを持つマウスにCu-64-ATSMおよびFDGを同時投与した。1時間後に腫瘍を摘出し2分割した後、一方をオートラジオグラフィに、他方を固定,免疫組織染色に用いた。Cu-ATSMとFDGとは非常に異なる集積パターンを示した。Cu-ATSM高集積部位でははCD34で染色される血管内皮細胞がほとんどみられず、血流が非常に乏しいことが示唆された。またKi67で染色される増殖細胞はほとんどなかった。一方、FDG高集積部位は血管が充実しており、血液供給がかなり豊富であると考えられた。また非常に増殖細胞が多く見られた。FDG高集積部位は、壊死層の周辺に顕著にみられた。興味あることに、Tunel法で染色されるapoptosis細胞はFDG高集積部位にはまったく見出されず、Cu-ATSM集積部位にごく少数(0.2%以下)見出されるに留まった。これらのことは、Cu-ATSM高集積部位が、一旦増殖したものの血管新生がまだ始まっておらず、その中で生存維持するために増殖を含む細胞活動を停止させるという非常に巧妙な戦略を持った細胞集団からなることを示していると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-14370274
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地域社会の文化遺産から探るイスラーム陶器の文化的変遷
イスラーム陶器の時期別の種類分類と産地・年代に関する研究を、ペルシア湾岸・オマーン湾岸で発掘調査した遺跡出土品、ウズベキスタンとアフガニスタンの中央アジアの施釉陶器分類調査資料を核として行った。中央アジア・西アジアではイスラーム陶器が広範な地域のどの遺跡からも出土するため、遺跡の年代、居住者の性格を読み解く歴史資料として共通言語の役割を果たす。佐々木がすでに発掘調査した遺跡出土イスラーム陶器のうち、シャルジャ国立博物館、フジェイラ国立博物館に保管された資料を整理し研究資料として用い、バハレーンの国立博物館、アフガニスタンのバーミヤーン、ウズベキスタンのサマルカンドの施釉陶器を資料化した。博物館倉庫内資料から研究に使う陶器を抽出し、撮影、実測、記述した。新たな資料をコールファッカン遺跡発掘によって採集した。年代研究はイスラーム陶器の組み合わせ枠が出来ると年代提案ができるようになる。細部にわたる小さな問題点を取り上げた論文を作成し、編年表の基になる年代研究を行う。7世紀から19世紀に至るイスラーム陶器の変遷資料をコンピュータ内に並べ、これまで継続してきた科学分析や文様研究も日本国内で併せて実施した。こうした資料をもとに型式分類によるイズラーム陶器編年表を作成した。イスラーム陶器の時期別の種類分類と産地・年代に関する研究を、ペルシア湾岸・オマーン湾岸で発掘調査した遺跡出土品、ウズベキスタンとアフガニスタンの中央アジアの施釉陶器分類調査資料を核として行った。中央アジア・西アジアではイスラーム陶器が広範な地域のどの遺跡からも出土するため、遺跡の年代、居住者の性格を読み解く歴史資料として共通言語の役割を果たす。佐々木がすでに発掘調査した遺跡出土イスラーム陶器のうち、シャルジャ国立博物館、フジェイラ国立博物館に保管された資料を整理し研究資料として用い、バハレーンの国立博物館、アフガニスタンのバーミヤーン、ウズベキスタンのサマルカンドの施釉陶器を資料化した。博物館倉庫内資料から研究に使う陶器を抽出し、撮影、実測、記述した。新たな資料をコールファッカン遺跡発掘によって採集した。年代研究はイスラーム陶器の組み合わせ枠が出来ると年代提案ができるようになる。細部にわたる小さな問題点を取り上げた論文を作成し、編年表の基になる年代研究を行う。7世紀から19世紀に至るイスラーム陶器の変遷資料をコンピュータ内に並べ、これまで継続してきた科学分析や文様研究も日本国内で併せて実施した。こうした資料をもとに型式分類によるイズラーム陶器編年表を作成した。イスラーム陶器は博物館に収集された後、20世紀初からヨーロッパ人研究者によって論文と概説本が著された。研究当初からエジプトのフスタート遺跡(カイロ)出土品が資料として取り上げられ、一方でイランの各地から集められた陶器がヨーロッパの博物館に収められて研究資料となった。20世紀後半にイギリス人によりイスラーム陶器概説本が書かれ、現在まで定説となっている。しかし、遺跡出土品にはさまざまなものがあり、考古学の研究成果を使用したイスラーム陶器の論文と実態に基づく概説本が必要である。こうした研究状況を背景に、今年度は地域社会のなかで遺跡出土のイスラーム陶器を研究することを目的に、フジェイラ町跡とコールファッカン町跡の2カ所の発掘を実施した。フジェイラ町跡は1819世紀のイスラーム陶器が出土し、地方農村のイスラーム陶器の使用状況と出土品の実態を明らかにできた。コールファッカンは1415世紀の港町跡を発掘し、中国陶磁器や東南アジアの陶磁器とともに出土するイスラーム陶器を資料化した。以前に発掘したジュルファール遺跡の性格を港町としてとらえる研究を行い、大量に出土した1415世紀のイスラーム陶器の整理を継続している。白濁釉陶器については整理が完了した。ルリーヤ砦出土のイスラーム陶器については、13世紀末の基準資料となることを提示した。これらの研究成果は学会発表を中心に公表しているが、それらは学会誌に掲載する予定で、投稿中の論文もいくつかある。平成17年度に実施した研究は、平成16年度の継続が中心である。とくに今年度は佐々木がすでに発掘調査した遺跡出土イスラーム陶器のうち、シャルジャ国立博物館、フジェイラ国立博物館に保管されたものを重点的に研究した。研究方法は博物館倉庫内に積み上げた資料から今回の研究に使う陶器を抽出し、それらを撮影、実測、記述し、さらに関連資料について、他の博物館の調査を行った。博物館内での作業が中心となったが、新たな遺跡踏査も現地情報を得ながら実施した。9世紀から18世紀に至るイスラーム陶器の変遷資料をコンピュータ内に並べ、これまで継続してきた科学的分析や文様研究も日本国内で併せて実施した。こうした資料をもとに型式分類による第1次仮説的編年表の仮作成が進んでいる。同時に細部にわたる小さな問題点を取り上げた論文をいくつか作成した。年代研究は同時出土の中国陶磁器との比較研究に依るところが大きく、中国国内の竜泉窯跡出土品の調査も実施した。イスラーム陶器の年代と産地研究が進んでいる。欧米博物館に保管されている関連陶器資料の調査も実施した。平成18年度の研究は平成17年度に実施した研究の継続が中心である。国外ではマサフィ砦、ディバ町跡、コールファッカン町跡を発掘した。第5次調査となるコールファッカン港町遺跡ではイスラーム陶器と中国・ミャンマー陶磁器が建物室内及び水タンクから出土し、イスラーム陶器の編年研究に良好な資料を提供した。国内研究会でいくつかの成果を発表した。「ヘレニズムイスラーム考古学研究会」ではハレイラ島出土の青釉陶器の編年的問題を提起し、ササン・ウマイア朝時代の陶器編年を検討した。「オリエント学会」ではアッバース朝と唐代の陶磁器の技術的交流の実態を具体的な陶器を示して提起した。
KAKENHI-PROJECT-16401016
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地域社会の文化遺産から探るイスラーム陶器の文化的変遷
「西アジア考古学会」ではマサフィ砦から出土した近世陶磁器の世界的な広がりを紹介した。それらの資料を含めて愛知県陶磁資料館「ペルシアのやきもの展」で開催したシンポジウムで、イスラーム陶器の問題点と研究成果をまとめた。今年度に論文となった成果。「オマーン湾岸北部地域の遺跡出土陶磁器」(『金沢大学文学部論集史学・考古学・地理学篇』27,203-282)は、これまで調査した遺跡出土の陶磁器のうち、オマーン湾岸の資料を整理し報告した。「西アジアに輸出された1415世紀の東南アジア陶磁器」(『地域の多様性と考古学』雄山閣、23-36)は、東南アジアの陶磁器がペルシア湾の遺跡からどのように出土するかをまとめ、イスラーム陶器との組み合わせ、量的関係、種類と器種の関係を層位別に描き出した。「ジュルファール出土陶磁器の重量」(『金沢大学文学部論集史学・考古学・地理学篇』26:51-202)は前年度末(2006年3月)の発表であるが、前年度の研究実績概要に取りあげなかったので、今回紹介する。遺跡出土陶磁器を種類別・層位別に重量を計測する仕事を成し遂げ、イスラーム陶器の全体的な様相を知る基本的資料を提供した。イスラーム陶器の時期別の種類分類と産地・年代に関する研究を、ペルシア湾岸・オマーン湾岸で発掘調査した遺跡出土品、ウズベキスタンとアフガニスタンの中央アジアの施釉陶器分類調査資料を核として行った。中央アジア・西アジアではイスラーム陶器が広範な地域のどの遺跡からも出土するため、遺跡の年代、居住者の性格を読み解く歴史資料として共通言語の役割を果たす。佐々木がすでに発掘調査した遺跡出土イスラーム陶器のうち、シャルジャ国立博物館、フジェイラ国立博物館に保管された資料を整理し研究資料として用い、バハレーンの国立博物館、アフガニスタンのバーミヤーン、ウズベキスタンのサマルカンドの施釉陶器を資料化した。博物館倉庫内資料から研究に使う陶器を抽出し、撮影、実測、記述した。新たな資料をコールファッカン遺跡発掘によって採集した。年代研究はイスラーム陶器の組み合わせ枠が出来ると年代提案ができるようになる。細部にわたる小さな問題点を取り上げた論文を作成し、編年表の基になる年代研究を行う。7世紀から19世紀に至るイスラーム陶器の変遷資料をコンピュータ内に並べ、これまで継続してきた科学分析や文様研究も日本国内で併せて実施した。こうした資料をもとに型式分類によるイスラーム陶器編年表を作成した。
KAKENHI-PROJECT-16401016
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縄文・弥生社会の人口シミュレーションと文化変化モデルの構築
遺跡のデータベース化を行い、それに基づく分析から、西日本の縄文弥生時代の居住様式変化の実態、岡山県の弥生古墳時代における人口推移のプロセスと社会の複雑化との関係、関東・中部地方の弥生時代についての人口推定方法の問題点等を明らかにした。生活様式に関する情報の少ない中国地方については、発掘調査によって新たな資料を得た。縄文土器片の形状を定量的記述方法を用いて分析し、年代差を表す変異とそうでない変異があること、後期前葉と中葉の間で土器の構造に大きな差異があることを示した。人口動態と文化変化に関するシミュレーション・プログラムを開発し、両者の関係を検討した。シミュレーションはWebで公開した。(1)GISを共通の技術基盤としたデータベースの作成:対象とする時代・地域の遺跡の位置(国土座標)と内容についてのデータベースを作成する。ポピュレイション変動の要因のひとつである環境変化については具体的なデータに乏しい中国地方縄文時代を中心にフィールドワークで新たな情報を得る。(2)シミュレーション・モデルの構築:民族誌や文献史料からシミュレーションに応用可能な関数とパラメータを検討する。パラメータを実験により変更してシミュレーションを実施し、考古学的データと比較する。(3)分析:遺跡と遺物それぞれについて、分布密度・構造評価とそれらの時空間相関分析を行い、結果を重ね合わせる。GISによる分析結果と、シミュレーション分析の結果とを再現性について比較し、パラメータを検証する。遺跡のデータベース化を行い、それに基づく分析から、西日本の縄文弥生時代の居住様式変化の実態、岡山県の弥生古墳時代における人口推移のプロセスと社会の複雑化との関係、関東・中部地方の弥生時代についての人口推定方法の問題点等を明らかにした。生活様式に関する情報の少ない中国地方については、発掘調査によって新たな資料を得た。縄文土器片の形状を定量的記述方法を用いて分析し、年代差を表す変異とそうでない変異があること、後期前葉と中葉の間で土器の構造に大きな差異があることを示した。人口動態と文化変化に関するシミュレーション・プログラムを開発し、両者の関係を検討した。シミュレーションはWebで公開した。シミュレーションと実際の遺跡データの分析に基づいて、ポピュレイションの変動と文化動態の関係についての理論的・実証的研究を進めることが本研究の目的である。そのために、GISを共通の技術基盤とした遺跡・遺物のデータベースの作成と、シミュレーション・モデルの構築を並行して行い、両者を総合するという方法をとる。当初の研究計画にほぼ沿ったかたちで、2009年度は遺跡のデータベース作成を中心に、以下のような研究を実施した。1.データベース作成研究の基礎となる遺跡のデータベース作成について、松本は、すでに構築してある縄文時代後期から弥生時代前期のデータベースの補足と整備を行った。安藤は、東日本における弥生時代の遺跡群・人口の動態の特徴を明らかにするため、遺跡の調査密度が高く地形との関係も捉えやすい、中部高地地方の甲府盆地諏訪湖一帯、南関東地方の下末吉台地一帯を分析対象地域とした。松木は、岡山県南部の弥生集落と墳墓のデータベース化を行った。2.ブイールド調査松本は、鳥取県伯耆町井後草里遺跡で発掘調査を行い、縄文時代早期・後期・晩期および弥生時代の遺物を検出するとともに、体系的な土壌サンプリングによる年代測定・花粉分析・植物珪酸体分析等の多角的な分析を行い、縄文時代早期から現代までの古環境変化についての良好なデータを得た。このフィールド調査の成果を生かした遺跡動態の分析を行うべく、鳥取県の遺跡データベースの補足を重点的に行った。3.方法・技術開発津村は、すでに構築されたデータベースに基づいて、GISを用いた遺跡動態分析方法の検討を行った。また、松本と松木は遺物のデータベース化の方向性について検討し、3次元スキャナによるデータ化および分析の可能性を検討した。実際の遺物のコード化と分析は、22年度から開始する。データベース作成についてすでに作成してある中国地方のデータをより詳細なGIS分析およびシミュレーションとの対応分析に使用可能にするべく取県を中心に補足を行った(松本)。また、前年度から引き続き、中部高地地方の甲府盆地諏訪湖一帯、南関東地方の下末吉台地一帯の、縄文時代晩期古墳時代前期の遺跡のデータベース化を進めた(安藤)。GIS分析についてすでに作成している遺跡データについて、データ整形処理(メタデータ構築と実装)、完成したデータのGISへの入力、データの不備(位置情報他)に関する補完文献調査、および時期別・地域別のデータベース項目に関連する基本定量分析を行った(津村)。その結果、縄文時代から弥生時代前期にかけて、居住様式が非線形的に推移することを示唆する結果が得られた。この成果については、23年度中に学会にて発表する予定である。シミュレーションについて人口規模、出生率、移動率などのパラメータを操作してシミュレーションを行うための基本プログラムを作成した(松本)。23年度にインターフェイスの改良を行う予定である。フィールド調査について鳥取県の井後草里遺跡の発掘調査を実施し、縄文時代早期・後期の遺物・遺構を検出するとともに、古環境復元のための土壌サンプルを採取した。古環境分析と土器の胎土分析結果について複数の学会で発表を行った(松本)。遺跡データベースと分析縄文時代については、鳥取県を中心にデータベースを拡充し、ほぼすべての縄文時代遺跡を網羅した(松本)。弥生時代の関東については、甲府盆地諏訪湖一帯と東京湾西岸鶴見川流域一帯の二つの地域の弥生時代遺跡データベースの修正、データの追加を行った。幾つかの遺跡については現地踏査を実施して遺跡の現況や周辺の地形等を確認し、その成果をデータベースに反映させた(安藤)。
KAKENHI-PROJECT-20320123
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縄文・弥生社会の人口シミュレーションと文化変化モデルの構築
岡山県南部地域の集落遺跡で検出された、紀元前10世紀紀元後7世紀前半の竪穴住居約2000棟のデータを集成して、各所属土器型式毎に計数し、AMS炭素年代法で得られた各土器型式の継続年数で割り振ることによって、時期ごとの住居数とその変化を明らかにした。さらにその結果を、時期の判明した埋葬の数によって検証を試みつつ、現時点で蓋然性の高い人口推移のプロセスを具体的に復元した(松木)。土器の形態分析岡山大学における津島岡大遺跡出土縄文時代後期土器群を対象とし、Roland社製PICZALPX-60DSを用いて0.2mmピッチで断面データを取得した。これらのデータを2値画像に変換してチェーンコードを求め、N=20の楕円フーリエ記述子に変換した。こうすることで、一つの土器断面形状を77次元の定量データとして記述することができ、その分布から形状の類似度を測定することが可能となった。主成分分析の結果、時間的変化を反映する成分と、それ以外の変異を分離することができた(津村・松本)。シミュレーション研究昨年度作成したプログラムを用いて変数を変えながら試行を繰り返し、発見されたバグを修正した。また、人口の増減や移動状況を視覚的に確認できるようなインターフェイスも追加した(松本・笹倉)。遺跡データベースと分析:鳥取県二本松上郷後峯遺跡の発掘調査によって遺跡動態および古環境復元に関するデータを得、報告書として発表した(松本)。岡山県南部の弥生時代から古墳時代にかけての住居跡のデータベースに基づく研究成果を発表(松木)。南関東地方と中部高地地方の縄文時代晩期弥生時代の集落遺跡データベースの整備のため、データの追加を行った。また、遺構出土土器にみられる時期的偏りという現象に注目し、そうした事例の収集と分析を行ったうえで、土器による住居址の時期決定とそれに基づく住居址数からの人口推定方法の問題点を明らかにした(安藤)。土器の形態分析:形状の輪郭線を数学的に記述する方法(楕円フーリエ関数)によって津島岡大遺跡出土縄文時代後期土器群の土器形状を定量的に記述し、その記述子の統計解析により形状の類似度の析出と評価を行う研究を進め、津島岡大遺跡17・22次調査出土の縄文時代後期前葉中葉の土器群について、口縁部の形状特性が年代差とバリエーションを示し、一器種からではあるが、後期前葉と中葉の間には土器の構造に大きな差異のあることを評価(津村・山口)。人口シミュレーション:2011年度に作成した基礎的な人口シミュレーション・プログラムに、遺伝情報の伝達機能および文化的情報の伝達機能を追加し、5地域の設定で500年間のシミュレーションを実施し、人口動態と遺伝情報伝達、文化情報伝達の間の関係について検討した(笹倉・松本)。
KAKENHI-PROJECT-20320123
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非線形波動方程式の初期・境界値問題に関する研究
本研究では,波動方程式に関する初期値問題や境界値問題の解の性質について調べることを目的としている.これまでの研究において,Keel-Smith-Soggeによる「KSS不等式」と呼ばれる解の時空L^2評価を,標準的なエネルギー評価と併用する手法の応用と一般化について考察してきた.波動方程式の解に対して,いわゆるdispersive estimateを得るためにはLorentz群の生成作用素をエネルギー評価とソボレフ評価の枠組で用いるのが有効であるが,最近のAlinhacらの研究ではlight coneに接するような別のベクトル場を導入して解の挙動を明快に説明していた.そこで,Alinhacらの用いたlight coneに接するベクトル場を利用してKlainerman-Machedon型の不等式を作り,dispersive estimateを得るための研究を行った.残念ながらまだ実用上の有効性を確認するには至っていないが,これを用いて変数係数波動方程式の解の挙動の解析に応用することが考えられる.本研究においては,種々の波動現象の基礎となる非線形波動方程式について初期値問題や境界値問題に取組み,なるべく一般的な非線形性で,広い解空間において主に解の時間大域的な挙動を研究することを目的としている.最近ではKeel, SmithおよびSoggeによる外部問題への応用を契機として,KSS不等式と呼ばれる波動方程式に対する時空L^2評価が注目されるようになった.そのKSS不等式に関心を持ち,非線形問題への応用について考えている.このことに関し,波動方程式の初期値問題に対する正則性の低い解を論じる上でKSS不等式が有効であることを三重大・肥田野久二男助教授との共同研究として北海道大学プレプリントシリーズ#655(2004年7月)および数理解析研究所講究録1411(2005年1月)にまとめている.また,非線形連立波動方程式の初期値問題において広いクラスの非線形項を扱うことを目指し,和歌山大・片山聡一郎助教授との共同研究の結果を北海道大学プレプリントシリーズ#688(2005年2月)にまとめている.これは非線形波動方程式に対するnull-conditionと呼ばれる条件の一つの一般化を論じたもので,手法としては80年半ば頃から用いられてきた滑らかな解に対するKlainermanベクトル場の方法の一つの到達点であり,種々の有用な不等式が総合的に用いられている.この方面での研究の一つの区切りであり,今後の研究を進めていく上での基礎としたい.本研究の目的は,波動方程式に関する初期値問題や境界値問題の解の性質について調べることである.特に,時間が十分に経過した後の解の挙動を研究することは,時間大域的に存在する解の研究において基本的な意味を持つ.これまでの研究では,Keel, SmithおよびSoggeによる「KSS不等式」と呼ばれる解の時空L^2評価を標準的なエネルギー評価と併用する手法でその有用性を確認してきた.ここで用いたのは定数係数方程式に対するKSS不等式であるが,最近ではSoggeらのグループやAlinhacにより,変数係数方程式への不等式に一般化されてきている.そこで今年度は研究対象を変数係数方程式に広げ,定数係数と同様に解の挙動に関する研究において有効であるかどうかについて調べることを考えた.今年度は基礎的・準備的な調査にとどまり,まだ満足な結果は得られていないが,解の性質に影響を与えるファクターを再考察できると考えられるため,来年度も研究を継続して意義のある結果を得たい.本研究では,波動方程式に関する初期値問題や境界値問題の解の性質について調べることを目的としている.これまでの研究において,Keel-Smith-Soggeによる「KSS不等式」と呼ばれる解の時空L^2評価を,標準的なエネルギー評価と併用する手法の応用と一般化について考察してきた.波動方程式の解に対して,いわゆるdispersive estimateを得るためにはLorentz群の生成作用素をエネルギー評価とソボレフ評価の枠組で用いるのが有効であるが,最近のAlinhacらの研究ではlight coneに接するような別のベクトル場を導入して解の挙動を明快に説明していた.そこで,Alinhacらの用いたlight coneに接するベクトル場を利用してKlainerman-Machedon型の不等式を作り,dispersive estimateを得るための研究を行った.残念ながらまだ実用上の有効性を確認するには至っていないが,これを用いて変数係数波動方程式の解の挙動の解析に応用することが考えられる.
KAKENHI-PROJECT-16740097
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紙の生態学的適正価格に関する研究
現在巷には紙ごみがあふれ、市民のリサイクルに対する機運は高まっているが、再生紙の需要が伸びず、市民運動に水をさしている。一方で、わが国は世界の木食い虫としての評判は相変わらず健在で、紙は現代物質文明の典型的な姿を示している。本研究では、環境問題の根本的解決を目指して「生態系に悪影響を与えないように、原料を調達し、生産し、消費し、廃棄する経済システム」下での紙の適正価格を試算した。まず原木は、国内林業から原木を自給することを生態学的であるとして、林業の持続できる原木価格を考え、人口扶養力の経年変化等を参考にして、現行の5倍とした。生産段階については、産業連関表を利用して、紙1単位生産するのに要する、波及効果を含めたエネルギー、水質負荷、大気負荷、産業廃棄物排出量の各原単位(紙1kgあたり水質汚濁41g、大気汚染39g、産業廃棄物585g、エネルギー消費9.9×10^6kcal)をまず求め、処理費用関数を用いて、自浄能力を考慮したほぼバックグランドに近いレベルまで処理するための追加費用を算出する。エネルギー消費に関しては、炭素税は2万円/トンCを用い、紙ごみの処理費用、産業廃棄物の処理費は現行の2倍とした。以上より、原木価格は現行15円/kg紙が75円/kg紙に、同様に公害防止費用は8から20、エネルギー価格は20から40に、産業廃棄物処理費用は3から12に、紙ごみ処理費用は0から68円となり、結局現行の価格150円/kgが319円/kg程度になること試算された。現行経済システムを生態学的経済システムへの移行は簡単ではないが、本件級の成果を生かして、人類の持続的発展のため、価値観を変えていくための環境教育が重要であると考えられる。現在巷には紙ごみがあふれ、市民のリサイクルに対する機運は高まっているが、再生紙の需要が伸びず、市民運動に水をさしている。一方で、わが国は世界の木食い虫としての評判は相変わらず健在で、紙は現代物質文明の典型的な姿を示している。本研究では、環境問題の根本的解決を目指して「生態系に悪影響を与えないように、原料を調達し、生産し、消費し、廃棄する経済システム」下での紙の適正価格を試算した。まず原木は、国内林業から原木を自給することを生態学的であるとして、林業の持続できる原木価格を考え、人口扶養力の経年変化等を参考にして、現行の5倍とした。生産段階については、産業連関表を利用して、紙1単位生産するのに要する、波及効果を含めたエネルギー、水質負荷、大気負荷、産業廃棄物排出量の各原単位(紙1kgあたり水質汚濁41g、大気汚染39g、産業廃棄物585g、エネルギー消費9.9×10^6kcal)をまず求め、処理費用関数を用いて、自浄能力を考慮したほぼバックグランドに近いレベルまで処理するための追加費用を算出する。エネルギー消費に関しては、炭素税は2万円/トンCを用い、紙ごみの処理費用、産業廃棄物の処理費は現行の2倍とした。以上より、原木価格は現行15円/kg紙が75円/kg紙に、同様に公害防止費用は8から20、エネルギー価格は20から40に、産業廃棄物処理費用は3から12に、紙ごみ処理費用は0から68円となり、結局現行の価格150円/kgが319円/kg程度になること試算された。現行経済システムを生態学的経済システムへの移行は簡単ではないが、本件級の成果を生かして、人類の持続的発展のため、価値観を変えていくための環境教育が重要であると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-04210121
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脳卒中死亡に関連する住環境要因のインパクト評価と改善策の提案
山形県郡部の住宅を対象とした住環境や生活習慣に関するアンケート調査を実施し,脳卒中死亡率が高い地域の住環境の特徴を統計分析した。その結果,食習慣や住宅特性,部屋の温度等に地域性が認められた。また,山形県郡部の高齢者を対象とした室内温度と血圧の長期測定により,服薬なし群では居間温度が15°Cを下回ると収縮期血圧が上昇する可能性が示唆された。さらに,高血圧と関連する住宅の温熱環境の特徴を分析した結果,起床時の血圧上昇は,血圧測定時の曝露温度のみならず,就寝中の寝室温度も影響する可能性が示唆された。脳卒中の発症は,暖房環境と関連深いことが指摘されているが,着衣の状況,食事の摂取などの住環境全般から見ると,影響要因の一つであると考えられる。そこで,本研究は,疫学の視点から住環境と脳卒中死亡率との関連性を説明し,要因のインパクトの程度を明らかにするとともに,脳卒中死亡率が高い地域の住環境の特徴を明らかにし,改善策を提案することを目的とする。本年度は以下に示す研究項目を実施した。(1)既往研究のレビュー暖房環境と血圧との関連性に着目した研究例は多く,いずれも室温や外気温の変動と血圧変動とが関連していることに言及している。外気温が10°Cを境に収縮期血圧との関連に異なった傾向を示すようであり,10°Cを下回ると暖房行動の差異が反映されることが予想される。(2)住環境と脳卒中死亡率との関連性に関する疫学調査申請者らが30年前に調査地域とした山形県朝日町,旧羽黒町,旧八幡町を対象に,役場の協力を得ながら調査フィールドを確保した。それぞれの対象地域に対して,高齢者を家族に含む100世帯に住環境に関する質問への回答ならびに,冬期の1週間の室内温度を記録することを依頼した。また,併せて訪問調査を実施し,全地域にて合計55世帯を対象として,冬期の温熱環境と高齢者の血圧ならびに活動量の計測を開始した。その結果,調査地域は温熱環境のグレードが低い住宅が多く30年前の調査と大差がないこと,温熱環境のグレードが低い住宅では暖房時の室内温度のばらつきが大きく,高齢者の血圧が変動しやすいことを確認した。訪問調査は次年度も継続する予定である。昨年度に,申請者らが30年前に調査地域とした山形県朝日町,旧羽黒町,旧八幡町を対象に,役場の協力を得ながら調査フィールドを確保し,住環境と脳卒中死亡率との関連性に関する疫学調査を実施した。本年度は調査データを分析し,以下に示す知見を得た。(1)脳卒中死亡率が高い地域の住環境の特徴に関する統計分析:住環境要因及び被験者の属性・生活習慣が脳卒中の発症に及ぼす影響を検討するため,統計分析を行った。本研究では,調査地域のうち脳卒中の標準化死亡比が全国平均より高い「旧八幡町」,全国平均より低い「朝日町」を従属変数に投入し,各要因を説明変数としてロジスティック回帰分析を行い調整オッズ比により,脳卒中死亡率の高い地域の特徴を分析した。その結果,その結果,浴槽の種類が和式に該当するタイプであることや居間の隙間風を感じる等の住宅の気密性の低さが特徴であることがわかった。(2)冬季における室内温度の実態と温熱環境の評価:冬期の1週間に訪問調査を実施し,全地域にて合計55世帯を対象として,冬期の温熱環境と高齢者の血圧ならびに活動量を計測した。その結果,調査地域は温熱環境のグレードが低い住宅が多く30年前の調査と大差がないこと,温熱環境のグレードが低い住宅では暖房時の室内温度のばらつきが大きく,高齢者の血圧が変動しやすいことを確認した。(3)室内温度と血圧との関連性の分析:山形県郡部の高齢者を対象とした室内温度と血圧の長期測定を継続し,服薬なし群では居間温度が15°Cを下回ると収縮期血圧が上昇する可能性が示唆された。脳卒中死亡と住環境との関連性を評価するためのフィールド調査を終え,分析が順調に進み意義ある知見が得られている。また,防除策の検討のための調査を企画し,被験者を確保することができたため,次年度の研究活動として継続する。昨年度までに実施した疫学調査データを分析し,以下に示す知見を得た。1.脳卒中死亡率が高い地域の住環境の特徴に関する統計分析調査地域のうち脳卒中の標準化死亡比が全国平均より高い「旧八幡町」,全国平均より低い「朝日町」を従属変数に投入し,各要因を説明変数としてロジスティック回帰分析を行い調整オッズ比により,脳卒中死亡率の高い地域の特徴を分析した。その結果,その結果,食習慣や住宅特性,部屋の温度等に地域性が認められる結果が示唆された。2.冬季における室内温度の実態と温熱環境の評価冬期の1週間に訪問調査を実施し,全地域にて合計55世帯を対象として,冬期の温熱環境と高齢者の血圧ならびに活動量を計測した。その結果,調査地域は温熱環境のグレードが低い住宅が多く30年前の調査と大差がないことがわかった。また,高血圧と関連する住宅の温熱環境の特徴を分析した結果,起床時の血圧上昇は,血圧測定時の曝露温度のみならず,就寝中の寝室温度も影響する可能性が示唆された。3.高血圧予防のための建築的な防除策の検討
KAKENHI-PROJECT-26420579
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脳卒中死亡に関連する住環境要因のインパクト評価と改善策の提案
高血圧予防には冬期の室内温度を適切に保つことが重要であるため,住宅の断熱改修手法の一つである部位改修として内窓設置に着目し,改修前後の環境性能や被験者の血圧を比較した。その結果,築40年程度の無断熱状態の住宅に対して,居間のみ内窓を設置するという部位の断熱改修では,明確な温熱環境の改善効果は求められなかったが,寝室の温度の上昇によって収縮期血圧の数値が低下し,就寝時の温度が高いことが家庭内血圧上昇の抑制に効果があるという知見を裏付ける結果を得た。山形県郡部の住宅を対象とした住環境や生活習慣に関するアンケート調査を実施し,脳卒中死亡率が高い地域の住環境の特徴を統計分析した。その結果,食習慣や住宅特性,部屋の温度等に地域性が認められた。また,山形県郡部の高齢者を対象とした室内温度と血圧の長期測定により,服薬なし群では居間温度が15°Cを下回ると収縮期血圧が上昇する可能性が示唆された。さらに,高血圧と関連する住宅の温熱環境の特徴を分析した結果,起床時の血圧上昇は,血圧測定時の曝露温度のみならず,就寝中の寝室温度も影響する可能性が示唆された。本研究では地元の保健所,役場との連携が可能となったため,調査地域で高齢者を家族に含む世帯に直接協力を依頼することができた。したがって,当初計画していたポスティング調査は必要なくなり,調査対象を絞り込むためのスクリーニング調査を経た上で,詳細アンケート調査を実施した。また,訪問調査の計画を前倒しし,当該年度より開始した。住環境の改善のための防除策を検討するにあたり,開口部への内窓設置の効果検証を行う。既に,被験者が確保されているため,年度初めに速やかに実施する。最終的には,昨年度までに得られた知見と合わせて,脳卒中死亡の低減に向けた防除策を提示する。建築環境工学質の高い調査データが確実に蓄積されつつあるため,今後は衣食住を含めた住環境要因と脳卒中死亡率との関係を分析し,健康に影響を与える要因のインパクトを統計的に評価する。また,居住者の血圧や活動量などの生理反応を含めた住環境要因の特徴を解明するために訪問調査を継続するとともに,住環境の改善策の提示につながる知見を得る。住環境の改善のための内窓設置による環境改善効果を検証するための調査を次年度に引き継いだことにより,調査費用を確保する必要があったため。消耗品節約等の努力により多少の残が生じた。内窓設置による環境改善効果を検証するためのフィールド調査を計画している。そのための調査旅費,検証測定に係る消耗品費のほか,研究成果発表のための旅費(海外含む)が主な使途となる。成果発表旅費等に充当する。
KAKENHI-PROJECT-26420579
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希土類錯体触媒による有機合成反応の立体化学制御
本研究の目的は、希土類錯体を触媒に用いて不斉アルドール反応や不斉Michael付加反応の立体化学を検討し、希土類錯体触媒による特異な立体化学制御を達成することにある。本年度は、NMRシフト剤として用いられているユーロピウム(III)錯体Eu(fod)_3を触媒に用いて、キラルなγ-シロキンα,β-シクロペンテノンを酢酸エステル由来のケテンシリルアセタールとのMichael反応の立体化学制御に取り組んだ。その結果、このEu触媒反応では、立体的に不利なsyn体が優先的に生成するという興味ある結果を見いだした。ここで見られたsyn選択性は、TASF(F^<◯->源)触媒反応で見られたanti選択性(立体的に有利)とは逆である。そこで、この“異常な"syn選択性の理由を解明するために、種々のルイス酸触媒や種々のケテンシリルアセタールを用いて、上記のα,β-エノンのMichael反応の立体化学を詳細に検討したところ、かさ高いケテンシリルアセタールとの反応では、anti選択性が見られること、またこのsyn選択性はEu触媒特有の現象ではなく、ルイス酸触媒下で見られる一般的現象であることを見いだした。さらに上記のα,β-エノンの代わりに(γ-シロキシメチル)シクロペンテノンを用いて酢酸エチル由来のケテンシリルアセタールとのEu触媒反応を行ったところ、syn選択性は消滅してanti選択性が見られることを見いだした。以上の結果から、本研究で見られた“異常な"syn選択性は、反応の遷移状態におけるγ-シロキシ基の立体電子効果によるものであることを明らかにした。本研究の目的は、希土類錯体を触媒に用いて不斉アルドール反応や不斉Michael付加反応の立体化学を検討し、希土類錯体触媒による特異な立体化学制御を達成することにある。本年度は、NMRシフト剤として用いられているユーロピウム(III)錯体Eu(fod)_3を触媒に用いて、キラルなγ-シロキンα,β-シクロペンテノンを酢酸エステル由来のケテンシリルアセタールとのMichael反応の立体化学制御に取り組んだ。その結果、このEu触媒反応では、立体的に不利なsyn体が優先的に生成するという興味ある結果を見いだした。ここで見られたsyn選択性は、TASF(F^<◯->源)触媒反応で見られたanti選択性(立体的に有利)とは逆である。そこで、この“異常な"syn選択性の理由を解明するために、種々のルイス酸触媒や種々のケテンシリルアセタールを用いて、上記のα,β-エノンのMichael反応の立体化学を詳細に検討したところ、かさ高いケテンシリルアセタールとの反応では、anti選択性が見られること、またこのsyn選択性はEu触媒特有の現象ではなく、ルイス酸触媒下で見られる一般的現象であることを見いだした。さらに上記のα,β-エノンの代わりに(γ-シロキシメチル)シクロペンテノンを用いて酢酸エチル由来のケテンシリルアセタールとのEu触媒反応を行ったところ、syn選択性は消滅してanti選択性が見られることを見いだした。以上の結果から、本研究で見られた“異常な"syn選択性は、反応の遷移状態におけるγ-シロキシ基の立体電子効果によるものであることを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-06241223
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06241223
中日経済の多部門計量モデルの構築と日本の対中直接投資のシミュレーション分析
本研究では、初めて中国と日本の、新SNAと国際産業連関表を対応させたデータ・ベースを構築したうえ、中日経済の多部門計量モデルを開発した。日中の経済依存について、本研究によると、中国の外国資本利用は日本の対中投資から比較的に大きな影響を受けていること、輸出決定の要因中国に対する日本の所得が小さいのに対して、日本に対する中国の所得が大きいことなどが分かった。しかし、本研究のデータ・ベースの精度向上とそれに基づくモデルの再推定が今後の課題となる。よって今回の研究で得られているいくつかの結論は暫定なものである。本研究の目的は、第1には、中日経済のデータベースを構築すること、第2には、中日経済の多部門計量モデルを開発すること、第3には、同モデルを用いて日系企業の経済活動が両国の経済に及ぼす影響や対中直接投資に伴う技術移転などをシミュレーション分析することにある。そのため、本研究では、中日経済の既存統計資料に基づいて、SNAデータの整備(支出、分配、雇用・賃金、価格、付加価値、生産決定など)と産業連関表データの新規推計(2005年)、および新SNAと産業連関表の接合を行い、モデルのためのデータベースを構築する。また、支出(最終需要)、生産決定、付加価値形成、雇用・賃金、価格決定の5つのブロックから中日経済の多部門計量モデルを開発する。そして、このモデルを用いて日本の対中投資や技術移転などの実証分析や将来展望を行う。本研究では、初めて中国と日本の、新SNAと国際産業連関表を対応させたデータ・ベースを構築したうえ、中日経済の多部門計量モデルを開発した。日中の経済依存について、本研究によると、中国の外国資本利用は日本の対中投資から比較的に大きな影響を受けていること、輸出決定の要因中国に対する日本の所得が小さいのに対して、日本に対する中国の所得が大きいことなどが分かった。しかし、本研究のデータ・ベースの精度向上とそれに基づくモデルの再推定が今後の課題となる。よって今回の研究で得られているいくつかの結論は暫定なものである。平成20年度の課題は、中日経済多部門計量モデルのため、データベースを整備、更新することと研究全体の枠組みを検討することにある。そのため、中国と日本の既存の統計資料を集計すると同時に、8月に中国の国家統計局などへの現地調査で最新のデータやまだ公開していないデータを早期に入手した。また、本研究と関連する先行研究を収集し、先行研究の成果と残る問題点を検討している。研究の面において、中日経済多部門計量モデルのデータベースを構築するために、Economate I-0(マクロエコノメリックス研究会)を活用し、時系列中日国際産業連関表(中日表)を推計する方法を検討している。Economate I-0は、RAS法による産業連関表予測表を作成できるソフトである。このソフトでは、実績表に基づいて投入係数をはじめ種々の係数を機械的に推計した上、ユーザによる調整を加えて予測表を求める。われわれは、このソフトの予測機能を中日表の作成に活用し、2000年中日表(実績)と2005年の中国と日本の一国表に基づいて2005年中日表の作成を進めている。現在各係数を推計、調整中である。また、中日経済の数量的国際比較をより的確に行うことを可能にするために、中日両国の産業分類基準における相違点を検討した。この研究での最大の成果は、3桁レベルで中日間の産業分類には対応していない部分が存在しているため、中日間の経済統計データを3桁分類レベルで組み換えることは困難であることが、始めて明らかにされたことである。同時に、研究全体の枠組みと中日経済多部門計量モデルの構造方程式体糸を検討している。本研究の目的は、第1には、中日経済のデータベースを構築すること、第2には、中日経済の多部門計量モデルを開発すること、第3には、同モデルを用いて日系企業の経済活動が両国の経済に及ぼす影響や対中直接投資に伴う技術移転などをシミュレーション分析することにある。20年度の研究成果を踏まえて、21年度からモデルの理論的構成と定式化を行っている。具体的に、中日経済の多部門計量モデルのマクロ経済で支出(最終需要)、雇用・賃金、価格決定、付加価値形成、生産決定の5つのブロックについて、モデルの理論的構成を行い、経済変数間の相互依存関係を検討し、これに基づいてモデルの定式化を行った。この作業は研究全体のフレームワークを構築する上、重要な進展である。また、今年度も引き続きデータベースの整備を行っている。中日の既存の統計資料を集計しながら、SNAデータの整備(支出、分配、雇用・賃金、価格、付加価値、生産決定など)と産業連関表データの新規推計(2005年)、および新SNAと産業連関表の接合を行い、データベースの更新、維持を図っている。とくに、今年度においてEconomate I-O(エコノメイトI-O)を活用し産業連関表を早期推計する方法を検討し、この方法を2005年中日国際産業連関表の作成への適用を試みた。Economate I-Oは、RAS法による産業連関表の予測表を作成するソフトであるが、われわれは、このソフトの予測機能を中日表の推計に適用し、実績表としての接続中日表、中日各国の一国産業連関表に基づいて、2005年を対象として中日国際産業連表を推計し、作成した。同作成法の開発によって、中日経済の多部門計量モデルのためのデータベースとして最も困難な作業と思われる時系列接続中日産業連関表の構築に道が開かれた。
KAKENHI-PROJECT-20530200
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中日経済の多部門計量モデルの構築と日本の対中直接投資のシミュレーション分析
本研究の目的は、第1には、中日経済のデータベースを構築すること、第2には、中日経済の多部門計量モデルを開発すること、第3には、同モデルを用いて日系企業の経済活動が両国の経済に及ぼす影響や対中直接投資に伴う技術移転などをシミュレーション分析することにある。22年度には、昨年度に続いて、モデルの理論的構成と定式化を検討している。とくに多部門モデルの研究蓄積が乏しい中国モデルについて、データベースの整備とともに改善、改訂を行っている。また、中日多部門モデルのデータベースの更新、改良を行っている。昨年度に検討したEconomate I-O(エコノメイトI-O)による産業連関表の早期推計法を用いて、2005年について新しい統計データを追加したり、推計方法を改善したりした上で、中日国際産業連関表(実質、2000年基準)を再作成した。本研究の目的は、中日経済の多部門計量モデルを開発し、同モデルを用いて日系企業の経済活動が両国の経済に及ぼす影響や対中直接投資に伴う技術移転などをシミュレーション分析することにある。昨年度(平成22年度)で行われたデータ・ベースの改訂、更新と同時に、モデルの推定(パイロット・モデル)と、各種の内外挿テストによるモデルの評価を行った。平成23年度において、中日経済の多部門計量モデルのデータ・ベースを更新・維持した。19902005年接続日中国際産業連関表を1985年まで遡って推計し、2007年まで延長して推計した。同データ・ベースを用いて、モデル(パイロット)各関数を再推定した。多部門計量モデルの関数推定は、最終需要・生産決定、雇用・賃金決定、価格形成、外国資本・国際貿易、といったブロック別に、多部門計量モデルの19分類部門別に行われた。推定期間は基本的に1985年2007年である。最終需要・生産決定では、家計消費の決定は、中国の場合農村部門の消費性向が大きな決定要因となっている点で日本と異なる。また、住宅投資について、中国も日本も実質可処分所得所が大きな決定要因となっているが、物価と貸出金利の影響は日本が比較的に大きく、中国では小さいことがわかった。雇用・賃金決定では、中国も日本も産業別の賃金率は全体の賃金率と産業間の労働生産性格差により説明できることが分かった。外国資本・国際貿易については、中国の固定資産投資における外国資本利用の影響が大きくないが、中国の外国資本利用は日本の対中投資から比較的に大きな影響を受けている。産業別に見ると、食品・タバコ、繊維・衣服・皮革、電気・電子機械、輸送機械は日本の直接投資の影響が大きい。また、中国の輸出決定の所得要因(所得弾力性)は日本が小さいのに対して、日本については中国の所得変化によるところが相対的に大きいことが分かった。24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-20530200
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ヒト末梢血リンパ球放射線照射によるフリーラジカル産生・酸化的DNA損傷とその制御
ヒト末梢血リンパ球は、放射線に対して高い感受性を示し、このことがヒトを含めた脊椎動物が5 Gyという比較的少ない放射線量の全身照射により死亡する(骨髄死)大きな原因となっている。末梢血リンパ球は通常は分裂・増殖は行わず、また、未分化でもないことから、その放射線高感受性のメカニズムについては、これまでの放射線生物学の概念にあてはまらないものとして、その解明が期待されてきた。従来から、細胞に対するエックス線やガンマ線等の低LET(linear energy transfer)放射線の作用のうち3分の2は、細胞に含まれる水を介してフリーラジカルやハイドロキシルラジカル等の活性酸素種(ROS, reactive oxygen species)の産生が起こり、これによる酸化的DNA損傷によって発揮されるものと考えられてきた。しかしながら、この点については未だ実際に証明されるに至っておらず、今回、私達はヒト末梢血リンパ球に対する放射線照射によるフリーラジカル産生酸化的DNA損傷およびこれらを制御することを目的として研究を行った。末梢血Tリンパ球は、5 Gy照射直後より細胞内での著明な活性酸素産生を示し、照射6時間後には酸化的DNA損傷を来たし、10時間後にはミトコンドリア膜電位変化を生じ、続いてAnnexin V陽性(初期アポトーシス)、24時間後にはPropidium iodide陽性(後期アポトーシス)となることを示した。さらに、照射1時間後には、リソソームの変化を来たしていることを見出した。このことから、抗酸化作用の弱い細胞ではリソソームは放射線照射によって発生したヒドロキシルラジカルの影響を受けやすく、そのために放射線に対して高い感受性を示すものと考えられた。ヒト末梢血リンパ球は、放射線に対して高い感受性を示し、このことがヒトを含めた脊椎動物が5 Gyという比較的少ない放射線量の全身照射により死亡する(骨髄死)大きな原因となっている。末梢血リンパ球は通常は分裂・増殖は行わず、また、未分化でもないことから、その放射線高感受性のメカニズムについては、これまでの放射線生物学の概念にあてはまらないものとして、その解明が期待されてきた。従来から、細胞に対するエックス線やガンマ線等の低LET(linear energy transfer)放射線の作用のうち3分の2は、細胞に含まれる水を介してフリーラジカルやハイドロキシルラジカル等の活性酸素種(ROS, reactive oxygen species)の産生が起こり、これによる酸化的DNA損傷によって発揮されるものと考えられてきた。しかしながら、この点については未だ実際に証明されるに至っておらず、今回、私達はヒト末梢血リンパ球に対する放射線照射によるフリーラジカル産生酸化的DNA損傷およびこれらを制御することを目的として研究を行った。末梢血Tリンパ球は、5 Gy照射直後より細胞内での著明な活性酸素産生を示し、照射6時間後には酸化的DNA損傷を来たし、10時間後にはミトコンドリア膜電位変化を生じ、続いてAnnexin V陽性(初期アポトーシス)、24時間後にはPropidium iodide陽性(後期アポトーシス)となることを示した。さらに、照射1時間後には、リソソームの変化を来たしていることを見出した。このことから、抗酸化作用の弱い細胞ではリソソームは放射線照射によって発生したヒドロキシルラジカルの影響を受けやすく、そのために放射線に対して高い感受性を示すものと考えられた。ヒト末梢血リンパ球は、未分化でもなくまた活発な細胞分裂を起こさない細胞であるにもかかわらず、非常に高い放射線感受性を示し、脊椎動物の5Gyという全身被曝による骨髄死線量を規定している重要な細胞である。末梢血Tリンパ球は、5Gy照射直後より細胞内での著明な活性酸素産生を示し、照射6時間後には酸化的DNA損傷を来し、10時間後にはミトコンドリア膜電位変化を生じ、続いてAnnexin V陽性、24時間後にはPropidium iodide陽性(後期アポトーシス)となることを示してきた。一方、骨肉腫細胞(HS-Os-1)では、30Gyの照射によっても細胞内での活性酸素産生はほとんど認めず、DNAの酸化損傷もわづかであった。このHS-Os-1細胞にはペルオキシダーゼやスーパーオキシドジスムターゼなどの抗酸化酵素が多く存在することから、これらをブロックする目的で0.1mMという低濃度の過酸化水素の存在下に放射線照射を行ったところ10Gyの照射においてもアポトーシスを誘導できることを見いだした。従って、ヒト末梢血Tリンパ球の放射線高感受性は、細胞内の抗酸化作用が弱いことが原因であるものと推定され、5Gyの照射1時間後にはリソソーム変化を来していることを示し、さらに、0.1mMの過酸化水素によってもリンパ球のリソソームは膜の変化内容物の放出の所見を示した。このことから、抗酸化作用の弱い細胞ではリソソームは放射線照射によるヒドロキシラジカルの影響を受けやすいとともに、抗酸化作用の強い細胞での放射線抵抗性は低濃度の過酸化水素によるリソソームでのヒドロキシラジカル産生を応用することにより克服できるものと考えられた。ヒト末梢血リンパ球は、未分化でもなくまた活発な細胞分裂を起こさない細胞であるにもかかわらず、非常に高い放射線感受性を示し、ヒトを含めた哺乳類、脊椎動物の5Gyという全身被曝による骨髄・リンパ球死を規定している重要な細胞である。末梢血Tリンパ球は、5Gy照射直後より細胞内での著明な活性酸素産生を示し、照射6時間後には酸化的DNA損傷を来たし、10時間後にはミトコンドリア膜電位変化を生じ、続いてAnnexin V陽性(初期アポトーシス)、24時間後にはPropidium iodide陽性(後期アポトーシス)となることを、これまでの研究で示してきました。
KAKENHI-PROJECT-15591281
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ヒト末梢血リンパ球放射線照射によるフリーラジカル産生・酸化的DNA損傷とその制御
一方、骨肉腫細胞(HS-Os-1)細胞では、30Gyの照射によっても細胞内での活性酸素産生はほとんど認めず、DNAの酸化損傷もわつかであった。このHS-Os-1細胞にはペルオキシダーゼやスーパーオキシドジスムターゼなどの抗酸化酵素が多く存在することから、これらをブロックする目的で0.1mMという低濃度の過酸化水素の存在下に放射線照射を行ったところ10Gyの照射によってもアポトーシスを誘導できることを見出しました。従って、ヒト末梢血Tリンパ球の放射線高感受性は、ペルオキシダーゼを欠くことなど、細胞内の抗酸化作用が弱いことが原因であるものと推定され、5Gyの照射1時間後には、細胞内リソソームの変化を来たしていることを示し、さらに、0.1mMの過酸化水素によってもリンパ球のリソソームは膜の変化内容物の放出の所見を呈しました。このことから、抗酸化作用の弱い細胞ではリソソームは放射線照射によって発生したヒドロキシルラジカルの影響を受けやすく、そのために放射線に対して高い感受性を示すものと考えられます。一方、抗酸化作用の強い細胞での放射線抵抗性は、低濃度の過酸化水素による抗酸化酵素のブロックおよびリソソームでのヒドロキシルラジカル産生を応用することにより、克服できるものと考えられました。
KAKENHI-PROJECT-15591281
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高齢者の歩行習慣とソーシャルキャピタル(SC)の関連:SC評価指標の作成と検証
近年、ソーシャル・キャピタルは公衆衛生分野の研究において分析枠組みとして用いられることが多くなっている。本研究は、ソーシャル・キャピタルの概念整理と評価指標の検討を行い、ソーシャル・キャピタルと地域高齢者の歩行習慣との関連について検討を行った。本研究では、個人レベルのソーシャル・キャピタルである信頼感と帰属意識の評価指標を用いることとした。次に、それらの評価指標を用いて地域高齢者18,000名のデータから散歩行動との関連を検討したが、信頼感・帰属意識のソーシャル・キャピタルと歩行習慣との関連は認められなかった。本研究は、高齢者の歩行習慣に関連するソーシャルキャピタル(以下SCという)を明らかにするために、歩行習慣に関連するSC評価指標の作成と、その妥当性を横断的、縦断的調査により検証することを目的としている。そのために当該年度は、歩行習慣と個人レベルのSCに関する調査を実施し、歩行習慣に関連するSC要因を抽出するとともに、SC評価指標を作成することを目的とした。具体的には、京都府亀岡市に在住する65歳以上の高齢者18000人のうち、平成23年度亀岡市が実施した生活圏域ニーズ調査の回答のあった要支援・要介護認定を受けていない自立した高齢者のうち、無作為に抽出した8000人を対象に歩行習慣に関する調査を実施した。調査は郵送による質問紙および歩数計による歩数調査を実施した。質問項目は、日常的な歩行習慣に関する項目として、外出方法や外出頻度、健康のためのウォーキング、散歩の有無などについて自記式の質問項目を用いた。また個人レベルのSCに関する項目として、内閣府国民生活局および近藤ら(2007)の質問票を参考にし、個人が利用する主な施設・団体等の加入状況、活動参加頻度、利用頻度などの項目と人的ネットワークの指標としてDuke Social Support Index (DSSI_11)(ALSWH Data Dictionary Supplement, 2004)を用いた。現在、これらの調査項目の入力作業は終了し分析のためのデータセットを作成中である。データのクリーニングと適切なデータセットの作業は、歩行習慣と関連性の高い要因を抽出し、歩行習慣に関連するSC評価の指標について検討を行う上で非常に重要なプロセスである。本研究は、高齢者の歩行習慣に関連するソーシャルキャピタル(以下SCという)を明らかにするために、歩行習慣に関連するSC評価指標を作成し、その妥当性を横断的、縦断的調査により検証することを目的としている。これらの研究目的を達成するために、当該年度では以下の研究を行った。1歩行習慣と関連の高いと考えられる個人レベルのSC要因の評価項目を用いて、異なる地域高齢者を対象とした質問紙による調査を実施した。当該年度において用いた個人レベルのSC要因の評価項目としては、世間一般の人への信頼感、地域住民への信頼感、そして地域への帰属意識とした。その結果、歩行習慣と関連の高い要因は世間一般への信頼感と地域への帰属意識であった。今後は歩行習慣とSC要因評価項目との関連について、さらに地域、体力、歩行頻度の違いによる関連性の検証を行っていく。2歩行習慣と関連の高いと考えられる個人レベルのSC要因の評価項目を用いて、研究者が過去に実施した運動教室参加者を対象とした調査を実施し、さらに継続して実施中である。この調査では、過去の教室終了者を対象に、新たに歩数計を配布し、約1か月間の日常生活歩数のモニタリングを行ない、継続的な歩行習慣の有無とSC評価項目との関連を検証する。これらの調査では、SC評価指標の他、基本属性、基本疾患の有無、世帯構成、運動実施状をIPAQ日本語版(村瀬ら, 2002)、PGCモラールスケール(Lawton,1983)と自覚的健康感、生きがい感を質問項目とした。本研究は高齢者の歩行習慣に関連するソーシャルキャピタル(以下SCという)を明らかにするため、歩行習慣に関連するSC評価指標を作成し、その妥当性を地域在住高齢者を対象とした大規模横断調査より検証を行った。歩行習慣と関連が高いSCとして、個人レベルのSC要因である「近隣住民への信頼感」、「一般的な信頼感」、「地域への帰属意識」に関する質問項目を用いて調査を行った。分析対象は、京都府亀岡市在住65歳以上高齢者8227名である。調査結果は、地域高齢者の散歩行動が生きがい感や自覚的健康感と高い関連が認められたものの、地域高齢者の散歩行動とSC要因との関連は低値であった。関連する媒介要因を精査するなど分析モデルの構築が課題である(レジャー・レクリエーション研究第76号,2015)。そこで最終年度は、社会的ネットワークとの関連を明らかにするために、「家族や友人との交流」に着目し検証を行った。他者との交流頻度と個人レベルのSC要因である「近隣住民への信頼感」、「一般的な信頼感」、「地域への帰属意識」および趣味やスポーツ活動などの社会活動への参加および精神的健康度との関連について検討を行った。分析対象は京都府亀岡市在住65歳以上高齢者8330名である。地域高齢者の家族や友人との交流頻度とSC要因、精神的健康度、余暇・スポーツ活動への参加との関連について分析を行った結果、特に友人との交流頻度は趣味活動、スポーツ活動への参加との関連が認められた。また近隣住民への信頼感、地域への帰属意識や生きがい感との関連も認められた(学会発表のみ、論文執筆中)。今後は、地域高齢者のウォーキングや趣味・スポーツ活動への参加といった健康行動に影響を及ぼすSC要因について、友人との交流頻度との関連から検討を行っていきたい。
KAKENHI-PROJECT-25350846
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高齢者の歩行習慣とソーシャルキャピタル(SC)の関連:SC評価指標の作成と検証
近年、ソーシャル・キャピタルは公衆衛生分野の研究において分析枠組みとして用いられることが多くなっている。本研究は、ソーシャル・キャピタルの概念整理と評価指標の検討を行い、ソーシャル・キャピタルと地域高齢者の歩行習慣との関連について検討を行った。本研究では、個人レベルのソーシャル・キャピタルである信頼感と帰属意識の評価指標を用いることとした。次に、それらの評価指標を用いて地域高齢者18,000名のデータから散歩行動との関連を検討したが、信頼感・帰属意識のソーシャル・キャピタルと歩行習慣との関連は認められなかった。研究の達成度は概ね順調に実施できているが、当初の調査時期よりやや遅れている。8000人の横断調査はデータセットもできデータ分析も終了した。しかし今年度実施予定の縦断調査の実施にあたり、行政機関との調整において予定以上の時間を要した。これは行政担当者の異動に伴い担当者が変わったことにより、以前に実施した教室参加者へのフォローアップへの理解がなかなか得られなかったため、調査開始が遅れてしまった。応用健康科学今後の研究の推進方策として、8000人の調査分析結果を論文にまとめ公表していく。それとともに縦断調査の結果分析を進めて、結果を公表していく予定である。また横断調査によって得られたデータについても、さらに分析の方法を再検討して、歩行習慣に関連したSC要因の抽出を再度行っていく予定である。研究の達成度は、京都府亀岡市に在住する65歳以上の高齢者18000人のうち、無作為に抽出した8000人を対象に歩行習慣に関する調査を実施した。また調査実施にあたり、プレ調査として二次予防対象となった地域高齢者を対象とした講座参加者を対象に実施した。しかしながら8000人の調査にあたっては、当初平成25年12月までに調査終了の予定であったが、調査開始が遅れたことによって、やや遅れが生じている。その理由は、調査実施にあたり行政機関との調整に時間を要したことによるものである。調査票の送付にあたり、個人情報保護の観点から行政期間内の決済が必要となった。この手続き期間については、当初想定していなかったことが原因である。現在、当該年度に実施した調査項目の入力作業を終了しデータセットを作成中であり、データセット作成後、歩行習慣と関連性の高い要因を抽出し、歩行習慣に関連するSC評価の指標を作成する。縦断調査の実施がやや遅れていることによって、データ分析のための人件費の支出が少なかったこと。また分析が遅れていることから、論文化など研究発表のための支出が少なかったことによる。今後の研究の推進方策としては、早急に8000人の調査結果の分析を進めて、歩行習慣と関連性の高い要因の抽出を行っていく。それらの要因を基に、歩行習慣に関連するSC評価指標の作成を実施するとともに、評価指標を用いた調査用紙の策定と調査の実施を行っていく予定である。調査実施にあたっては、行政機関、民間団体への協力依頼と、協力にあたって調整が必要になるため、SCの関連要因が抽出された段階で、調査実施計画を作成し、早めに調査協力の依頼を進めていく予定である。次年度、早急にデータ分析を進めるとともに、学会発表および論文化を進めていく。
KAKENHI-PROJECT-25350846
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インシュリン情報伝達系に基づく生理活性物質の化学選択性評価法の創製
インシュリン情報伝達系に基づく生理活性物質の化学選択性を評価するための分析法の開発を行った.1.蛋白質のスプライシング反応を用いた蛋白質-蛋白質間相互作用を検出するための新規方法を開発した.相互作用検出用プローブは,2つの蛋白質に各々連結される2つのプローブ分子a,bからなる.プローブaは,スプライシングを起こす蛋白質VDEのN末側に緑色蛍光蛋白質(GFP)のN末側を,プローブbは,VDEのC末側にGFPのC末を結合した.これらプローブを相互作用する蛋白質カルモジュリンとM13ペプチドに連結し,大腸菌内で発現させた.カルモジュリンとM13存在下では510nmの蛍光極大が観測された.カルモジュリンとM13との相互作用により,VDEのN末とC末が近接しスプライシング反応が起こり,GFPが形成されたことを確認した.本法は細胞種を問わず原理的にいかなる蛋白質-蛋白質間相互作用を解析できる一般性のある方法であることを示した.(Anal.Chem.72,5151-5157(2000))1.インシュリン情報伝達過程のチロシンのリン酸化とSH2ドメインとの相互作用を指標とした生理活性物質の化学選択性を評価する新規方法を開発した.蛋白質間相互作用を検出する基本原理は(1)に従った.スプライシングを起こす蛋白質としてdnaE蛋白質を用い,スプリットしたルシフェラーゼにdnaEをつなげたペプチドをプローブ分子とした.リン酸化蛋白質IRS-1及びその標的蛋白質SH2ドメインをプローブに接続し,インシュリンリセプターを過剰発現させた細胞内に発現させた.インシュリンを添加すると,濃度依存的にスプライシング反応が起こりルシフェラーゼ活性が上昇することが分かった.(投稿中)インシュリン情報伝達系に基づく生理活性物質の化学選択性を評価するための分析法の開発を行った.(1)インシュリン情報伝達過程のチロシンリン酸化を可視化する蛍光プローブ分子を開発した.インシュリン(Ins)がそのリセプター(IR)に結合すると標的蛋白質IRS-1のチロシン残基をリン酸化する.リン酸化IRS-1はその標的蛋白質であるPI3-kinaseに結合しその活性を制御する.IRS-1のチロシンリン酸化部位を含む合成リン酸化ペプチドpY939とPI3-kinaseのSH2N蛋白質を,それぞれテトラメチルローダミン(T)とフルオレセイン(F)で蛍光標識した(T-pY939,F-SH2N).F-SH2NーT-pY939錯体形成によるドナーFとアクセプターTの相互近接により,蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が誘起された.培養細胞から抽出したIR,Y939ペプチド及びFRETpairを含む溶液にInsを添加すると濃度依存的にFRETpairが解消した.このFRETpairはインシュリン情報伝達のリン酸化を可視化する蛍光プローブ分子となることが分かった.(Anal.Chem.71,3948(1999))(2)表面プラズモン共鳴(SPR)法によるインシュリン情報伝達過程のアゴニスト選択性評価法を開発した.InsとIR及びその基質となるY939を一定時間反応させ,SH2N蛋白質を添加した溶液を,pY939を固定化した金薄膜表面上にフローセルを用いて一定時間流したところ,Ins濃度に依存したSPR応答を得た.Ins様作用を持つIGF-I,IGF-IIはIRを介した情報伝達系を活性化するが,4価バナジウムイオン,チアゾリジン系糖尿病治療薬はSPR応答変化を示さないことからPI3-kinase以降の情報伝達系に作用していることが分かった.(Anal.Chem.72,6(2000))インシュリン情報伝達系に基づく生理活性物質の化学選択性を評価するための分析法の開発を行った.1.蛋白質のスプライシング反応を用いた蛋白質-蛋白質間相互作用を検出するための新規方法を開発した.相互作用検出用プローブは,2つの蛋白質に各々連結される2つのプローブ分子a,bからなる.プローブaは,スプライシングを起こす蛋白質VDEのN末側に緑色蛍光蛋白質(GFP)のN末側を,プローブbは,VDEのC末側にGFPのC末を結合した.これらプローブを相互作用する蛋白質カルモジュリンとM13ペプチドに連結し,大腸菌内で発現させた.カルモジュリンとM13存在下では510nmの蛍光極大が観測された.カルモジュリンとM13との相互作用により,VDEのN末とC末が近接しスプライシング反応が起こり,GFPが形成されたことを確認した.本法は細胞種を問わず原理的にいかなる蛋白質-蛋白質間相互作用を解析できる一般性のある方法であることを示した.(Anal.Chem.72,5151-5157(2000))1.インシュリン情報伝達過程のチロシンのリン酸化とSH2ドメインとの相互作用を指標とした生理活性物質の化学選択性を評価する新規方法を開発した.蛋白質間相互作用を検出する基本原理は(1)に従った.スプライシングを起こす蛋白質としてdnaE蛋白質を用い,スプリットしたルシフェラーゼにdnaEをつなげたペプチドをプローブ分子とした.リン酸化蛋白質IRS-1及びその標的蛋白質SH2ドメインをプローブに接続し,インシュリンリセプターを過剰発現させた細胞内に発現させた.
KAKENHI-PROJECT-11740408
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11740408
インシュリン情報伝達系に基づく生理活性物質の化学選択性評価法の創製
インシュリンを添加すると,濃度依存的にスプライシング反応が起こりルシフェラーゼ活性が上昇することが分かった.(投稿中)
KAKENHI-PROJECT-11740408
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11740408
移植ES細胞と蝸牛有毛細胞の有機的結合による聴覚機能再生
聴神経の障害による難聴に対し、神経細胞の移植により聴神経を再生させ難聴を改善させることを目指して本研究は行われた。そして本研究課題の具体的な目的としては移植したES細胞由来神経がホストの有毛細胞と確かに有機的にシナプスを形成するということを証明することにあった。また、聴神経は求心性神経と遠心性神経の2つから成るがES細胞由来神経はどちらの神経の性質を持つかについても検討した。我々はこれらの目的を達するために更に詳細な形態評価を行った。具体的にはマウスES細胞を神経細胞へ分化誘導し、このES細胞由来神経を生後3日齢のICRマウスのコルチ器と7日間共培養した。その後、シナプス形成の評価のためにシナプスリボンやシナプス小胞のマーカーによる免疫染色、更には透過電子顕微鏡を用いて評価した。シナプス形成については、これまでに成熟したシナプスにおいては求心性神経ではシナプスリボンが、遠心性神経ではシナプス小胞が発現し、未熟なシナプスではその両方が発現していることが知られている。我々の研究の結果では、有毛細胞基底部とES細胞由来神経突起との接合部においてシナプスリボン及びシナプス小胞の両方の発現を認めた。また透過電子顕微鏡による観察では、ES細胞由来神経終末に小胞様構造を認め、有毛細胞基底部膜に接する部分に高い電子密度を認めた。これらの結果は即ち共培養7日目ではES細胞由来神経は有毛細胞と確かにシナプスを形成しつつあるが、成熟するまでには至らず未熟なシナプスである可能性を示唆する。そしてこの時点ではES細胞由来神経は求心性か遠心性か不明であった。今後の検討課題としてはシナプスを成熟させるために、培養期間を延長したり、シナプスの成熟を促すような因子を投与したりする等の工夫が必要と思われる。高度感音難聴の新しい治療法として、これまで我々は細胞移植を用いたラセン神経節細胞の機能的な再生を目指して研究を行ってきた。具体的には、これまで我々は緑色蛍光タンパクを発現するマウス胚性幹細胞(ES細胞)を神経方向に誘導し、この細胞を生後3日齢のICRマウスから取り出した蝸牛と一緒に7日間培養したところ、ES細胞由来神経から伸長した神経突起が蝸牛有毛細胞に接し、シナプス小胞のマーカータンパク陽性所見を示したことを報告した。すなわちES細胞由来神経と蝸牛有毛細胞がシナプスを形成している可能性が示唆された。本年度は、このシナプス形成に対して機能しているか否かについて、カルシウムイメージング法を用いて評価を試みた。具体的には蝸牛有毛細胞の不動毛へガラス管からの圧変化による機械的刺激を与え、それに伴ってその蝸牛有毛細胞に神経突起を伸長しているES細胞内でのカルシウムイオン濃度の上昇の有無を測定した。残念ながら、現在のところ明らかな反応を捉えられていない。そこで、このシナプス形成が成熟しているか否かについて更に詳細に形態的に検討を加えた。結果、一部の神経においてシナプス小胞のマーカタンパクが神経終末に限局して発現(未熟な神経では神経線維にも発現する)し、電子顕微鏡にて蝸牛有毛細胞とES細胞由来神経が接する膜でシナプスを示唆する所見を認めた。これらの結果は少なくとも一部の神経ではシナプスが成熟していることを強く示唆する。今後、わずかな反応も鋭敏に捉えられるようにカルシウムイメージング法を更に改良して、繰り返し機能評価を試みていく予定である。聴神経の障害による難聴に対し、神経細胞の移植により聴神経を再生させ難聴を改善させることを目指して本研究は行われた。そして本研究課題の具体的な目的としては移植したES細胞由来神経がホストの有毛細胞と確かに有機的にシナプスを形成するということを証明することにあった。また、聴神経は求心性神経と遠心性神経の2つから成るがES細胞由来神経はどちらの神経の性質を持つかについても検討した。我々はこれらの目的を達するために更に詳細な形態評価を行った。具体的にはマウスES細胞を神経細胞へ分化誘導し、このES細胞由来神経を生後3日齢のICRマウスのコルチ器と7日間共培養した。その後、シナプス形成の評価のためにシナプスリボンやシナプス小胞のマーカーによる免疫染色、更には透過電子顕微鏡を用いて評価した。シナプス形成については、これまでに成熟したシナプスにおいては求心性神経ではシナプスリボンが、遠心性神経ではシナプス小胞が発現し、未熟なシナプスではその両方が発現していることが知られている。我々の研究の結果では、有毛細胞基底部とES細胞由来神経突起との接合部においてシナプスリボン及びシナプス小胞の両方の発現を認めた。また透過電子顕微鏡による観察では、ES細胞由来神経終末に小胞様構造を認め、有毛細胞基底部膜に接する部分に高い電子密度を認めた。これらの結果は即ち共培養7日目ではES細胞由来神経は有毛細胞と確かにシナプスを形成しつつあるが、成熟するまでには至らず未熟なシナプスである可能性を示唆する。そしてこの時点ではES細胞由来神経は求心性か遠心性か不明であった。今後の検討課題としてはシナプスを成熟させるために、培養期間を延長したり、シナプスの成熟を促すような因子を投与したりする等の工夫が必要と思われる。
KAKENHI-PROJECT-18659499
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18659499
南九州下の稍深発地震とサイスモテクトニクス
鹿児島大学や九州大学の高精度の地震データを用い,南九州下の稍深発地震活動・地震面の形状・発震機構について解析した.稍深発地震面はかなり複雑な形状であることが明らかになった.もっとも特徴的なことは,桜島を含む領域で地震面がずれていることである.すなわち,桜島の北北東側領域の地震面は,南南西側領域に比べ西北西方向におよそ10kmずれている.ずれは,深さ130kmでは水平距離50km程度の範囲で,深さ70kmでは80km程度の範囲で徐々に生じている.しかし,地震面の走向は,ずれの両側ともほぼ同じでN25°E-S25°W程度である.地震面の断面形状は,基本的には緩やかに曲率を変えながら深部に繋がっている.しかし,詳細に見ると,深さ65km前後で浅い方に,深さ50km付近と100km付近では深い方に凸の,波打ったような形状である.深さ80130kmの範囲での地震面の平均的な傾斜角は6065°であり,ずれの両側で差は認められない.深さ130km以深では,北北東側領域の傾斜角の方が大きくなっている.南九州の稍深発地震は,開聞岳下の深さ160km付近の活発な活動とその浅部の深さ70100km付近の低活動度で特徴づけられるが,この特徴的な活動が,地震面がずれている領域の近くに位置することは興味深い.南九州下に発生する稍深発地震の発震機構は,プレートの沈み込む方向の断面で見ると,張力軸は沈み込む方向に,圧縮軸はそれに直交する方向にほぼ揃っており,Down-Dip Extension型の様相を示す.しかし,水平面で見ると,圧縮軸がプレートの進行方向に揃っており,張力軸は沈み込む方向からずれている.すなわち,この領域の稍深発地震の発震機構は単純なDown-Dip Extension型とは言えない.以上のように,本研究によって,南九州下に沈み込むフィリピン海プレートには,単純な沈み込みに伴う力の他に,異なる力源が作用していると考えなければならないことが明かとなった.鹿児島大学や九州大学の高精度の地震データを用い,南九州下の稍深発地震活動・地震面の形状・発震機構について解析した.稍深発地震面はかなり複雑な形状であることが明らかになった.もっとも特徴的なことは,桜島を含む領域で地震面がずれていることである.すなわち,桜島の北北東側領域の地震面は,南南西側領域に比べ西北西方向におよそ10kmずれている.ずれは,深さ130kmでは水平距離50km程度の範囲で,深さ70kmでは80km程度の範囲で徐々に生じている.しかし,地震面の走向は,ずれの両側ともほぼ同じでN25°E-S25°W程度である.地震面の断面形状は,基本的には緩やかに曲率を変えながら深部に繋がっている.しかし,詳細に見ると,深さ65km前後で浅い方に,深さ50km付近と100km付近では深い方に凸の,波打ったような形状である.深さ80130kmの範囲での地震面の平均的な傾斜角は6065°であり,ずれの両側で差は認められない.深さ130km以深では,北北東側領域の傾斜角の方が大きくなっている.南九州の稍深発地震は,開聞岳下の深さ160km付近の活発な活動とその浅部の深さ70100km付近の低活動度で特徴づけられるが,この特徴的な活動が,地震面がずれている領域の近くに位置することは興味深い.南九州下に発生する稍深発地震の発震機構は,プレートの沈み込む方向の断面で見ると,張力軸は沈み込む方向に,圧縮軸はそれに直交する方向にほぼ揃っており,Down-Dip Extension型の様相を示す.しかし,水平面で見ると,圧縮軸がプレートの進行方向に揃っており,張力軸は沈み込む方向からずれている.すなわち,この領域の稍深発地震の発震機構は単純なDown-Dip Extension型とは言えない.以上のように,本研究によって,南九州下に沈み込むフィリピン海プレートには,単純な沈み込みに伴う力の他に,異なる力源が作用していると考えなければならないことが明かとなった.南九州下の稍深発地震は,日本中で最も急傾斜の面上で発生しており,また薩摩半島下の深さ160km付近の活動は日本で最も活発であるなど,特有の特徴を有している.しかしながら,この領域の地震観測網の整備は不十分であったため,活動の詳細は把握できていなかった.本研究は観測網の空白域である鹿児島県鹿児島郡竹島で臨時観測を行ない,そのデータと既設の観測点データを併合処理することにより,この領域に発生する稍深発地震活動の特徴を明らかにすることである.平成11年度は竹島に臨時地震観測点を設置し,観測を開始した.トリガ方式で現地観測機器に収録された観測データは,一般回線を用いた呼び出し方式で鹿児島大学に伝送している.現在は,観測データを蓄積している段階であり,まだ本格的な解析は始めていない.既設の観測点のデータについては,1998年以降に発生したものについて,地震波初動到達時間などの再検測を行っている.竹島観測点のデータがある程度揃った段階で震源再決定を行う予定である.
KAKENHI-PROJECT-11640418
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南九州下の稍深発地震とサイスモテクトニクス
一方,既設の観測データを用いた稍深発地震のメカニズム解の解析は開始した.現在までに得られている結果では,南九州下の稍深発地震のメカニズム解は,他の島弧で多く見られるような単純なdown-dipcompression型あるいはdown-dip extension型とはならず,海洋プレートが島弧下に沈み込む方向以外の力がプレート内に作用しているものと推定される.今後の解析により,稍深発地震面(沈み込むフィリピン海プレート)の形状が明らかになるとともに,この領域のサイスモテクトニクスの理解が進むものと思われる.鹿児島大学や九州大学の高精度の地震データを用い,南九州下の稍深発地震活動・地震面の形状・発震機構について解析した.稍深発地震面は,かなり複雑な形状であることが明らかになった.もっとも特徴的なことは,桜島を含む領域で地震面がずれていることである.すなわち,桜島の北北西側領域の地震面は,南南西側領域に比べ西北西方向におよそ10kmずれている.ずれは,深さ130kmでは水平距離50km程度の範囲で,深さ70kmでは80km程度の範囲で徐々に生じている.しかし,地震面の走向は,ずれの両側ともほぼ同じで,N25゚E-S25゚W程度である.地震面の断面形状は,基本的には緩やかに曲率を変えながら深部に繋がっている.しかし,詳細に見ると,深さ65km前後で浅い方に,深さ50km付近と100km付近では深い方に凸の,波打ったような形状である.深さ80130kmの範囲での地震面の平均的な傾斜角は6065゚であり,ずれの両側で差は認められない.深さ130km以深では,北北東側領域の傾斜角の方が大きくなっている.南九州の稍深発地震は,開聞岳下の深さ160km付近の活発な活動とその浅部の深さ70100km付近の低活動度で特徴づけられるが,この特徴的な活動が,地震面がずれている領域の近くに位置することは興味深い.南九州下に発生する稍深発地震の発震機構は,プレートの沈み込む方向の断面で見ると,張力軸は沈み込む方向に,圧縮軸はそれに直交する方向にほぼ揃っており,Down-DipExtension型の様相を示す.しかし,水平面で見ると,圧縮軸がプレートの進行方向に揃っており,張力軸は沈み込む方向からずれている.すなわち,この領域の稍深発地震の発震機構は単純なDown-DipExtension型とは言えない.以上のように,本研究によって,南九州下に沈み込むフィリピン海プレートには,単純な沈み込みに伴う力の他に,異なる力源が作用していると考えなければならないことが明かとなった.
KAKENHI-PROJECT-11640418
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日本語の表記形態の標準化とその認知心理学的妥当性の研究
1.日本語の3表記形態(漢字・ひらがな・カタカナ)の主観的表記頻度の標準的資料作成のための調査を行なった。材料は750語の名詞と代名詞。各語を漢字、ひらがな、カタカナで表記し、各表記を日常生活で目にする度合を3段階で、大学生に評定させた。この際、評定の信頼性を調べる手続も導入した。よく見るという段階の評定について集計したところ、(1)評定に信頼性のあることが分かった。(2)主観的表記頻度に従って、各語を漢字型・ひらがな型・カタカナ型等、10種類に分類することができた。(3)語としての出現頻度の高い語には、漢字で表記されやすい語(漢字型、漢字優位型等)の多いことが分かった。2.主観的表記頻度の認知的妥当性を見るため、以下の研究を行なった。(1)表記型が単語の音読潜時と再認記憶に及ぼす影響を大学生を用いて調べたところ、(1)音読潜時は、ひらがな表記では表記型間に差はなかったが、漢字型、漢字・ひらがな型では、漢字表記でも、ひらがな表記と同じレベルであった。(2)偶発再認記憶は、一般に漢字表記で提示した場合、ひらがな提示よりも成績がよかった。(2)表記型がアナグラム解決課題に及ぼす効果をみるため、漢字型、ひらがな型、カタカナ型の語を、それぞれ、ひらがな表記とカタカナ表記してアナグラムを作成し、大学生に解決させたところ、(1)漢字型は他の二つの型よりも解決しにくかった。(2)ひらがな型はひらがな表記の場合に、カタカナ型はカタカナ表記の場合に、それぞれ、その逆の場合よりも解決しやすかった。(3)俳句の季語の部分を3種の表記で提示し、俳句全体の印象をSD法で大学生に評価させたところ、ひらがな表記の場合、漢字やカタカナ表記の場合にくらべて、異なった評価をしていることが分かった。1.日本語の3表記形態(漢字・ひらがな・カタカナ)の主観的表記頻度の標準的資料作成のための調査を行なった。材料は750語の名詞と代名詞。各語を漢字、ひらがな、カタカナで表記し、各表記を日常生活で目にする度合を3段階で、大学生に評定させた。この際、評定の信頼性を調べる手続も導入した。よく見るという段階の評定について集計したところ、(1)評定に信頼性のあることが分かった。(2)主観的表記頻度に従って、各語を漢字型・ひらがな型・カタカナ型等、10種類に分類することができた。(3)語としての出現頻度の高い語には、漢字で表記されやすい語(漢字型、漢字優位型等)の多いことが分かった。2.主観的表記頻度の認知的妥当性を見るため、以下の研究を行なった。(1)表記型が単語の音読潜時と再認記憶に及ぼす影響を大学生を用いて調べたところ、(1)音読潜時は、ひらがな表記では表記型間に差はなかったが、漢字型、漢字・ひらがな型では、漢字表記でも、ひらがな表記と同じレベルであった。(2)偶発再認記憶は、一般に漢字表記で提示した場合、ひらがな提示よりも成績がよかった。(2)表記型がアナグラム解決課題に及ぼす効果をみるため、漢字型、ひらがな型、カタカナ型の語を、それぞれ、ひらがな表記とカタカナ表記してアナグラムを作成し、大学生に解決させたところ、(1)漢字型は他の二つの型よりも解決しにくかった。(2)ひらがな型はひらがな表記の場合に、カタカナ型はカタカナ表記の場合に、それぞれ、その逆の場合よりも解決しやすかった。(3)俳句の季語の部分を3種の表記で提示し、俳句全体の印象をSD法で大学生に評価させたところ、ひらがな表記の場合、漢字やカタカナ表記の場合にくらべて、異なった評価をしていることが分かった。目的:1、日本語の表記形態(漢字・ひらがな・カタカナ)の主観的出現頻度の標準的資料作成のため、以前の予備調査を参考にして、調査を行う。2、表記形態の主観的出現頻度の妥当性を、認知心理学的方法を用いて調べる。3、表記形態が文学作品の評価に及ぼす効果をみる。表記形態の主観的出現頻度調査:動物や家具等30のカテゴリに属する語から計750語を選択、これを4群に分け、一つの語を漢字、ひらがな、カタカナで表記し、各表記を目にする度合いを「よくみる」「みることもある」「みることはない」の基準で、大学生に評定してもらった。なお、評定の信頼性をみるため、共通の30語を各群に挿入した。最終的には各群200名のデータを収集の予定であるが、本年度は各群約70名分を収集した。従って、結果はまだ報告できる段階にない。表記形態の主観的出現頻度の認知的妥当性の研究:予備調査の資料より、漢字型、ひらがな型、漢字・ひらがな型の語各8語を選択、半数づつ漢字表記とひらがな表記で大学生に提示し、1、音読反応時間を測定した。その結果、反応時間は、(1)ひらがな表記では、三つの型とも差はなかったが、(2)漢字表記では、ひらがな型が他の二つの型よりも遅かった。2、音読に続いて音読した語の偶発再認を求めた。ターゲット語は音読時と同表記、異表記半数づつとした。
KAKENHI-PROJECT-04610082
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日本語の表記形態の標準化とその認知心理学的妥当性の研究
その結果、再認成績は、(1)三つの型とも、音読時漢字表記の語はひらがな表記の語よりも優れ、(2)漢字型において、再認時漢字表記の語はひらがな表記の語よりもまさった。なお、認知的の妥当性の考察は次年度の研究結果を待って報告の予定。表記形態が俳句の評価に及ぼす効果:俳句の季語の部分を、漢字、ひらがな、カタカナに変えて提示し、俳句全体の印象をSD法で大学生に評価させたところ、ひらがな表記の場合、漢字やカタカナ表記の場合に比べて、よい評価をしていることが分った。1.日本語の3表記形態(漢字・ひらがな・カタカナ)の主観的表記頻度の標準的資料作成のための調査を完了した。材料は29のカテゴリに属する750語の名詞と代名詞(予備調査の119語を含む)。これを4群に分け、各語を漢字、ひらがな、カタカナで表記し、各表記を「よくみる」「みることもある」「みることはない」の基準で各群約200名の大学生に評定させた。評定の信頼度をみるため共通の30語を各群に挿入。従って、各群210語の評定となった。その結果、「よくみる」という評定について集計したところ(1)4群相互間の相関はr>0.9で、予備調査と共通の119語との相関もr>0.9となり、評定の信頼性の高いことが分かった。(2)結果を漢字型、ひらがな型、カタカナ型等、10種類に分類した。(3)表記の型と語としての出現頻度との関係を調べたところ、高頻度出現語には、漢字型や漢字優位型等、漢字で表記されるものの多いことが分かった。(4)今後、表記と語としての熱知性の関係の分析や、中高年者を対象に調査を行なうことを計画している。2.主観的表記頻度の認知的妥当性をみるため、表記型がアナグラム解決課題に及ぼす効果を調べた。高頻度語は、ひとまとまりのユニットとして知覚されやすいので、この種の語を構成する文字の順序をかえた配列を復元するアナグラム課題の解決は、低表記頻度語よりも容易であるという仮説の検証である。材料は、上記資料より、漢字型、ひらがな型、カタカナ型各14語を選び、アナグラムを作成、それぞれ、ひらがなとカタカナで表記し、各表記群16名の大学生にこれを解決させ、解決までの反応時間と難易度を調べた。その結果、反応時間も難易度も、漢字型は、両表記とも、ひらがな型、カタカナ型よりも劣り、ひらがな型はひらがな表記の場合、カタカナ型はカタカナ型の場合に、いずれも、その逆の場合よりも優れていた。かくて、仮説は立証された。
KAKENHI-PROJECT-04610082
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ハイブリッドモデルによる英語学習者のプロソディの知覚に関する研究
本研究は、英語の自然発話の音調(プロソディ)を、日本語を母語とする英語学習者(以下JEFLと略す)がどのように知覚しているのか、母語話者との知覚とはどのような違いがあるのかを知覚実験によって検証するものである。実施した知覚実験は、英語の自然発話を聞いて、「発話のまとまり(以下IPと略す)」と意味上大切な「音調核」を知覚するものであるが、JEFLの実験結果は、学習中級者と上級者では異なっているが、予測に反して音調核のほうがIPよりも認識され易いという結果を得た。本研究はじデザインに基づいた母語話者の知覚実験の結果と比較して、人間の言語音声知覚のメカニズムの解明に発展性がある。研究目的:英語のプロソディ(つまりアクセントやイントネーション)知覚が、母語話者と日本語を母語とする英語学習者(以下「L2学習者」と呼ぶ)で、異なるのか否か、を同一の自然発話コーパスを用いて聴覚実験を検証することである。研究実施計画:1年目に引き続き、2年目もL2学習者の大規模な実験を行い、データを収集し分析することを計画し、遂行した。1年目にも同様の聴覚実験を実施したが、実験用のコーパス素材が米国オハイオ大学の自然発話コーパスを用いたものではあったが、L2学習者と母語話者の間で異なっていた。今年度は、完全に同一の実験素材を用いての実験である。今年度の実験は2大学から100名を超える被験者を集めてることができ順調に行われた。その後データを解析せきるように処理し、統計分析を行い、L2学習者のデータは解析が終わった。その結果を共同研究者である米国イリノイ大学のコール教授の専攻研究の母語話者のデータを比較し、分析を進めている最中である。現在のところ分かっていることは、英語の自然発話であっても、L2話者と母語話者では、発話のまとまりの知覚に関してはほとんど違いがない。また発話の中での重要な内容であることを示す音声特性の把握に関しても、統計的にはL2学習者が母語話者より数値が低いものの、音声特性知覚の傾向は類似している。つまり、母語話者もL2学習者も、自然発話を処理する能力はあまり違わない、という予測とは異なったおもしろい結果がでている。また共同研究者のイリノイ大学のコール教授と本研究のL2母語話者のデータを共有し、分析に助言をもらっている。研究実績:今年度の業績は、論文1(国内専門誌、英語論文)と口頭発表1(国内での開催学会、英語での発表)である。本研究は、英語の自然発話の音調(プロソディ)を、日本語を母語とする英語学習者(以下JEFLと略す)がどのように知覚しているのか、母語話者との知覚とはどのような違いがあるのかを知覚実験によって検証するものである。実施した知覚実験は、英語の自然発話を聞いて、「発話のまとまり(以下IPと略す)」と意味上大切な「音調核」を知覚するものであるが、JEFLの実験結果は、学習中級者と上級者では異なっているが、予測に反して音調核のほうがIPよりも認識され易いという結果を得た。本研究はじデザインに基づいた母語話者の知覚実験の結果と比較して、人間の言語音声知覚のメカニズムの解明に発展性がある。本研究の目的は、日本語を母語とする英語学習者が、英語プロソディの音韻的特質を知覚出来るか否かを、ハイブリッドモデル(Cole et al. 2008参照)に基づいて検証することにある。本年度は、Cole et al. 2008と同じ音源を使い、日本語を母語とする英語学習者を被験者として、プロソディの知覚を調査する計画であった。H24年度は、この研究計画に基づき、Cole et al. 2008と同じ音源を入手し、それを日本語の英語学習者の知覚実験ができるようにまず加工した。Cole et al. 2008の音源はアメリカのオハイオ大学が提供しているのBucheye corpusというアメリカ人の日常会話を録音したコーパスであるので、学習者には難しすぎるからである。母語話者の知覚データと比較する必要上、加工には工夫が必要であったが、ほぼ半分の長さにして、被験者の心的ならびに物理的な負担が過度にならないように注意をした。その上で、日本語の英語学習者である100名の被験者を使って知覚実験を実施した。実験はプロミネンスとチャンキング知覚の二種類で、得られたデータは統計処理をして分析をした。結果は、母語話者と日本語を母語とする英語学習者では、プロミネンスとチャンキングの両方で大きく異なる、というものであった。チャンキング(どこで発話のまとまりを感じるか)では統語情報が大きく影響すると言われているが、母語話者がS(文)単位で英語発話のかたまりを知覚しているのに対し、日本語を母語とする英語学習者は、NP(名詞句)やVP(動詞句)という小さなかたまりで知覚をしている、という統計的に優位な結果がでた。またチャンキング(どこが目立って聞こえるか)に関しては、日本語を母語とする学習者は被験者間でばらつきが大きく、母語話者間でばらつきが小さいのとは大変対照的である、という結論を得た。
KAKENHI-PROJECT-24520542
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24520542
ハイブリッドモデルによる英語学習者のプロソディの知覚に関する研究
本研究は、アメリカオハイオ州立大学のBuckeyeコーパスに収められている英語の自然発話を用いて、英語母語話者(NS)、日本語を母語とする英語学習者(中級Int)と同(上級Adv)がどのように英語のプロソディを知覚するのか、を同じデザインの知覚実験を用いて調査、検証するものである。具体的には英語の10秒から20秒程度の発話の境界(バウンダリー)と意味上顕著に聞こえるプロミネンスをマークするRTP実験と呼ばれている実験方式を採用している。最終年度はAdv20名に知覚実験を行い、これまでのInt108名の実験データとあわせて、音声面と統語面から総合考察を行った。1研究成果:本研究は日本語を母語とする英語学習者を被験者として知覚実験を行っており、母語話者のデータはRPT実験を発案したアメリカイリノイ大学のJennifer Cole教授の研究を許諾を得て使用している。実験の結果は、まず第一に被験者間の知覚の合致度はいずれの3群でもバウンダリーの方がプロミネンスよりも有意に高い、という結果を得た。第二にバウンダリーにおいてもプロミネンス知覚においても、NS>Adv>Intの順で被験者間合致度が有意に高いという結果であった。本研究では、プロミネンス知覚を音声面と統語面からさらに解析を行った。バウンダリー知覚に関しては、NSが反応するが学習者が全く反応しない統語範疇があることが分かった。音声面ではNSも学習者も時間長とポーズに反応する点は同じである。2意義と重要性:英語のプロミネンスは解明が困難とされている分野である。また数が決して多くはないプロミネンス研究は、産出の研究のみであり、プロミネンス知覚の研究は本研究がはじめてである。加えてプロミネンスの先行研究は音声面からの研究が主であるが、本研究は統語面からも考察している点に意義がある。言語学聴覚実験は計画通り進行している。分析に関しては、L2学習者と母語話者のデータを同じ分析方法で統計をかけるための前処理に時間がかかった。分析はおおむね終わっているが、まだ検討したい項目が残っているので、完了するにはもう少し時間が必要である。当初の初年度の計画としては、プロソディの聴覚実験をする環境の整備をする予定であった。しかし実際には、書年度から知覚実験のための環境整備だけではなく、実際に実験を大規模にできたことは計画以上である。また実験結果を分析できたばかりではなく、初年度にもかかわらず研究成果を国際会議に応募し、受理され、ポスター発表ができたことは喜びである。さらに実験音源を提供していただきたイリノイ大学のコール教授をアメリカ合衆国まで訪ね、実験結果、分析を発表する機会を得、またデータに関して、また今後の実験計画について建設的な打ち合わせができ、H25年度の研究方針が発展的に決定できた。以上の理由から、当初の計画以上に本研究が進展していると言える。3年目には、留学経験のある上級のL2学習者を被験者として、3回目の英語自然発話音声の聴覚実験を続け、被験者の英語能力によって英語の自然発話の知覚能力に違いがあるか否かを検討する。また、研究成果は国内外の学会で発表し、論文も執筆する予定である。H24年度の実験を踏まえて、さらに発展的実験を行う。具体的には、実験群をH24年度以上に細かく設定し、大規模知覚実験を行う。H24年度では英語の能力別の観点から実験群を作ることができなかったので、H25年度は日本語を母語とする英語学習者を英語の能力別に分けて実験群を設定する。知覚実験素材については、H25年度は母語話者の知覚実験を加工することなく全く同じデータを使える環境を整え、パラレルな比較が可能になるように腐心し、H24年度よりも、厳密な実験をめざす。
KAKENHI-PROJECT-24520542
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24520542
免疫親和性を利用したタンパク質アシル化の網羅的解析法の開発
質量分析計を用いたプロテオミクス的手法に免疫沈降法を組み合わせることにより,T. thermophilus HB8のリシン残基のアシル化プロテオーム解析を行った。その結果,アセチル化部位197箇所(128個の蛋白質),プロピオニル化部位361箇所(183個の蛋白質),スクシニル化部位18箇所(14個の蛋白質)を同定した。特に,プロピオニル化が広範に存在することをはじめて明らかにした。さらに,増殖相や栄養源によってアシル化の種類や数が変動することが分かった。さらに他4種の細菌についてもアシル化プロテオーム解析を行い,アシル化の多寡が生物種ごとに異なることを明らかにした。本年度は,アシル化リシンのうち,アセチルリシンを対象にした研究を行った。まず過剰量の無水酢酸と反応させたウシ血清アルブミンをプロテアーゼで断片化し,得られたアセチルリシン含有ペプチドの混合物を抗原として,抗アセチルリシン抗体を作製した。この抗体(抗血清)を固定化したビーズを,高度好熱菌Thermus thermophilus HB8の細胞破砕液から調製したトリプシン消化物と混合し,中性緩衝液で洗浄した後,ビーズに吸着したペプチドを溶出した。この画分を脱塩,濃縮したのち,nano-LCと接続したESI-Q-TOF型質量分析装置によってタンデムMS解析を行い,アセチル化部位を同定した。その結果,128個の蛋白質について197箇所のリシン残基のアセチル化と4箇所のN末端アミノ基のアセチル化を同定した。同定したアセチル化蛋白質は,代謝や翻訳などに関するものが多く見られた。アセチル化部位は規則的二次構造中に多く見られ,また近傍には負電荷をもつグルタミン酸残基が多い傾向が見られた。さらにアセチル化部位を立体構造上にマッピングしたところ,蛋白質分子表面で静電的相互作用や水素結合を形成していたため,アセチル化はこれらの相互作用を破壊することが示唆された。さらに,蛋白質の働きにとって重要な部位にあるリシン残基がアセチル化されているケースも22例あり,この場合はアセチル化が蛋白質の活性を直接制御する可能性が示唆された。次に,対数増殖期と定常期にある高度好熱菌の細胞についてアセチル化部位の同定を行ったところ,アセチル化は定常期でより多く見られることが分かった。さらに,抗アセチルリシン抗体を用いた解析でもいくつかのプロピオニル化リシンが同定した。そこで,抗プロピオニルリシン抗体を作製し,同様の解析を行ったところ,アセチルリシンに匹敵する数のプロピオニルリシンを同定した。本年度は,アシル化リシンのうち,プロピオニル化リシンを対象にした研究を行った。まず過剰量の無水プロピオン酸と反応させたウシ血清アルブミンをプロテアーゼで断片化し,得られたプロピオニル化リシン含有ペプチドの混合物を抗原として,抗プロピオニル化リシン抗体を作製した。この抗体(抗血清)を固定化したビーズを,高度好熱菌Thermus thermophilus HB8の細胞破砕液から調製したトリプシン消化物と混合し,中性緩衝液で洗浄した後,ビーズに吸着したペプチドを溶出した。この画分を脱塩,濃縮したのち,nano-LCと接続したESI-Q-TOF型質量分析装置によってタンデムMS解析を行い,アセチル化部位を同定した。その結果,183個のタンパク質について361箇所のリシン残基のプロピオニル化を同定した。プロテオームレベルでこれほど多くのプロピオニル化が同定されたのは,本研究が初めてである。いくつかのペプチドについては,同じ配列をもつプロピオニル化ペプチドを合成し,同じMS/MSスペクトルが得られることを検証した。同定したプロピオニル化タンパク質の約60%は,エネルギー産生や広く代謝に関わるものであり,特に解糖経路やTCA回路で働く酵素の多くがプロピオニル化されていた。対数増殖期(80個のタンパク質,121箇所)と比べると,定常期(163個のタンパク質,323箇所)でより多くのプロピオニル化が同定され,全体の約60%は各増殖相に特有であった。代謝に関わるタンパク質のプロピオニル化は,定常期になると増加する傾向が見られた。また,アセチル化部位と重複していたのは,プロピオニル化部位全体の約20%であった。これらの結果から,アセチル化とプロピオニル化は細胞内で別々の制御を受けて異なる働きをしており,特に細胞増殖の調節に関与していることが示唆された。最終年度では,グラム陰性菌3種(うち好熱菌2種),グラム陽性菌2種(うち好熱菌1種)の計5種のバクテリアについて,蛋白質リシン残基のプロピオニル化とスクシニル化の解析を行った。まずプロピオニル化はThermus thermophilus (129箇所),Geobacillus kaustophilus (83箇所)で多く見られたのに対し,Bacilllus subtilis (7箇所),Escherichia coli (10箇所),Rhodothermus marinus (2箇所)では少なかった。この研究により,プロピオニル化がバクテリアに広く存在する翻訳後修飾であることが初めて示された。また,プロピオニル化の多寡と系統関係や生育温度との間には直接的なつながりはなく,近縁種でも異なる分布パターンを示した。次にスクシニル化は,G. kaustophilus (65箇所),B. subtilis (84箇所),E. coli (123箇所)に多く見られた。
KAKENHI-PROJECT-25650008
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免疫親和性を利用したタンパク質アシル化の網羅的解析法の開発
同一の手法を用いて種横断的に調べた結果,同じアシル化であってもその分布に大きな違いがあることが明らかとなった。同定されたアシル化部位は代謝や翻訳に関わる蛋白質に多く見られたが,立体構造上にマッピングした結果,機能的に重要な部位がアシル化されている例が多く見られた。プロピオニル化は酵素の活性部位に多く,スクシニル化は核酸の結合部位に多いという特徴が見られた。これらの結果は,プロピオニル化とスクシニル化が異なる制御を受けて独自の機能を持っていることを示唆した。さらに富栄養培地から栄養制限培地にすると,アシル化の種類や数が大きく変動することも判明した。本研究を通じて,アシル化リシン特異的な抗体を用いた蛋白質アシル化の網羅的解析法を確立し,アセチル化以外のリシンアシル化がバクテリア界に広く存在することを明らかにした。質量分析計を用いたプロテオミクス的手法に免疫沈降法を組み合わせることにより,T. thermophilus HB8のリシン残基のアシル化プロテオーム解析を行った。その結果,アセチル化部位197箇所(128個の蛋白質),プロピオニル化部位361箇所(183個の蛋白質),スクシニル化部位18箇所(14個の蛋白質)を同定した。特に,プロピオニル化が広範に存在することをはじめて明らかにした。さらに,増殖相や栄養源によってアシル化の種類や数が変動することが分かった。さらに他4種の細菌についてもアシル化プロテオーム解析を行い,アシル化の多寡が生物種ごとに異なることを明らかにした。「研究の目的」として上げた4点のうち,「1)キャリアータンパク質を化学的に修飾して,アシル化リシンを含むペプチドの混合物を調製し,それらに対する抗体を作製する」点については,化学的にアシル化したウシ血清アルブミンを用いて抗アセチルリシン抗体および抗プロピオニルリシン抗体を作製することに成功した。次に,「2)抗アシル化リシン抗体に対する免疫親和性を利用して,細菌細胞から各アシル化修飾を含むペプチドをアフィニティー精製により選択的に濃縮する方法を確立する」点についても,高度好熱菌の細胞破砕液からアセチル化ペプチドだけでなく,プロピオニル化ペプチドを選択的に濃縮する方法も確立した。さらに,「3)確立した方法を用いて,異なる培養条件の菌体やタンパク質のアセチル化に関与する酵素の遺伝子欠損株について,アシル化プロテオーム解析を行う」点については,nano-LCと接続したESI-Q-TOF型質量分析装置によってタンデムMS解析を行い,対数増殖期と定常期という異なる培養条件の菌体について,アセチル化部位とプロピオニル化部位を同定することに成功した。また,(脱)アセチル化酵素の遺伝子欠損株も作製したが,アシル化プロテオーム解析はまだ行っていない。最後に「4)アシル化によるタンパク質機能の影響を精製タンパク質を用いて解析する」点については,アシル化酵素と脱アセチル化酵素(2種類)の発現・精製に成功し,そのうち1つについては合成ペプチドに対する脱アセチル化活性を確認した。また,平行して,同定したアセチル化部位を立体構造上にマッピングすることにより,修飾による蛋白質機能への影響を評価した。以上のことから,初年度としては当初の目的の半分近くは達成しているものと判断した。
KAKENHI-PROJECT-25650008
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生体反応関連分子の遺伝子多型解析に基づく個別化治療確立に関する研究
日本人独自の遺伝子多型からみた重症救急患者に対する個別化治療を確立することを目的としている.多施設共同研究(計5施設)で遺伝子情報と臨床情報を収集した.IL1RA 2nd intronVNTRの臨床経過や転帰への影響について検討した.その結果,導出コホート(自施設症例;n=261)および検証コホート(多施設症例;n=793)両方において,IL1RA RN^*2 alleleの保有数が多くなるにつれてICU死亡率,重症敗血症罹患率ともに有意に上昇していた.日本人独自の遺伝子多型からみた重症救急患者に対する個別化治療を確立することを目的としている.多施設共同研究(計5施設)で遺伝子情報と臨床情報を収集した.IL1RA 2nd intronVNTRの臨床経過や転帰への影響について検討した.その結果,導出コホート(自施設症例;n=261)および検証コホート(多施設症例;n=793)両方において,IL1RA RN^*2 alleleの保有数が多くなるにつれてICU死亡率,重症敗血症罹患率ともに有意に上昇していた.近年、感染や外傷、熱傷などの侵襲に対する生体反応は、免疫-炎症反応に関連する各種分子の遺伝子多型によって左右されることが報告されている。この生体反応の個人差は、続発する臓器障害の発症頻度や転帰に大きく影響することが明らかになっている。また、これら遺伝子多型の頻度は人種差が大きく、欧米人と日本人では各種の治療に対する反応性の差となって現れる可能性がある。本研究では、これら遺伝子多型に関する情報をさらに多くの個体を対象として集積するとともに、転帰や治療経過との関連を研究することで、日本人独自の重症救急患者に対する個別化治療を確立することを目的としている。本研究では、これまでの自施設での研究を基盤に、多施設共同研究でより多くの固体の遺伝子情報と臨床情報を収集する。目標症例数は1000例とし、全国8つの施設でインフォームド・コンセントを得た上で検体採取と臨床データ収集を行う。また、ハイリスクと診断された症例のサイトカインプロファイルを、非ハイリスク患者と比較検討する。さらにハイリスク患者から採取した全血をエンドトキシン(LPS)で刺激し、血中サイトカインプロファイル、TLR発現、MIF、プロテインC濃度等を検討し表現型の違いを明らかにし、これらの反応を制御するための治療法の確立を図る。本年度は、協力を依頼した8施設のうち7施設において倫理審査の承認が得られ、検体採取とデータ収集が開始され、360症例が登録された。これら検体において我々が共同開発した高感度遺伝子検出バイオチップ(DNAアレイ)を用いて、サイトカイン、自然免疫、凝固系に関連した15種類の遺伝子多型を解析した。侵襲に対する生体反応は、免疫一炎症反応に関連する各種分子の遺伝子多型によって左右されることが報告されている。この個人差は、続発する臓器障害の発症頻度や転帰に大きく影響することが明らかになっている。また、これら遺伝子多型頻度の人種差が各種の治療に対する反応性の差となって現れる可能性もある。本研究では、これら遺伝子多型に関する情報をさらに多くの個体を対象として集積し、臨床経過との関連を研究することで、日本人独自の重症救急患者に対する個別化治療を確立することを目的とする。本研究では、自施設での過去の研究を基に、多施設共同研究でより多くの個体の遺伝子情報と臨床情報を収集する。全国5施設でインフォームド・コンセントを得た上で検体採取と臨床データ収集を行う。また、ハイリスクと診断された症例のサイトカインプロファイルを、非ハイリスク患者と比較検討する。さらに患者全血をエンドトキシン(LPS)で刺激し、血中サイトカインプロファイル等から表現型の違いを明らかにし、これらの反応を制御するための治療法の確立を図る。本年度までに、協力施設5施設において検体採取が継続され、計677症例(目標1000症例)が登録された。現時点で,ICU患者重症化予測として有望な遺伝子多型としては,IL1RA VNTR(variable number of tandem repeat),TNF-308*G/A,IL1B-31*C/T,などが中間結果で挙がっている.そして,1μg/mLのLPS刺激により,IL-1ra,IL-1β,TNF等の産生量に関して,異なる遺伝子型間で表現型に差が生じるか否かにつき検討中である.現時点で,IL1RA VNTRのminor allele保有者で,IL-1β産生に比し,相対的にIL-1ra産生が少ない傾向が認められている.今後他のサイトカインおよびそれらのmRNA発現についても詳細に測定する方針である.侵襲に対する生体反応は,遺伝子多型によっても少なからず左右される.この個人差は,臓器障害の発症頻度や転帰に大きく影響することが示唆されている.本研究は,本邦の症例を対象として,遺伝子多型に関する情報と臨床経過との関連を研究することで,日本人独自の重症救急患者に対する個別化治療を確立することを目的としている.今年度は,多施設共同研究(計5施設)でより多くの症例の遺伝子情報と臨床情報を収集した.このうち,重症敗血症における遺伝子多型の関与を明らかにするために,IL-1 receptor antagonist遺伝子のvariable number of tandem repeat多型( IL1RA VNTR )を取り上げ,臨床経過や転帰への影響について検討した.検体採取時期から,導出コホート(自施設症例; n=261)と検証コホート(多施設症例; n=793)に分け,ICU患者の転帰とIL1RA VNTRとの関連を検討した.
KAKENHI-PROJECT-22390335
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生体反応関連分子の遺伝子多型解析に基づく個別化治療確立に関する研究
さらに,健常者80名を対象に,in vitroでLPSにて刺激した全血の血清中IL-6,IL-1ra濃度を測定し, IL1RA mRNA発現量を測定した.その結果,導出コホートおよび検証コホート両方において,RN*2 alleleの保有数が多くなるにつれてICU死亡率,重症敗血症罹患率ともに有意に上昇していた(P adj=.002). LPS刺激下で,培養血中IL1RA mRNAを測定したところ,RN*1.2症例では1.1症例に比しその発現が有意に抑制されていた.したがって,RN*2 alleleが抗炎症性サイトカインの発現低下を介して重症敗血症患者の転帰を悪化させている可能性が示唆された.本邦において集中治療室における高サイトカイン血症対策を中心とした重症敗血症個別化対策への応用が期待される.サンプルの収集,患者データの集積,ex vivoassayは概ね順調であったが,遺伝子多型解析の手法として,当初導入していた遺伝子検出バイオチップ(DNAアレイ)の精度が不安定となり,原因検索を行ってきたが結局,別の手法に切り替えざるを得なくなったため.24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22390335
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変異ウイルスに対して有効な液性免疫記憶形成機序
ウイルス一次感染時、メモリーB細胞は、高親和性IgG抗体を有する細胞が選択されると考えられていた。このモデルでは、2度目にドラスチックな変異が入ったウイルスが感染した時には、高親和性IgG抗体メモリーB細胞は、反応できず、にもかかわらず、なぜ免疫記憶反応が成立するヒトが存在するのかが謎であった。申請者らは、メモリーB細胞集団は、広汎な親和性を有する細胞が選択されており、それ故、変異ウイルス2次感染時、免疫記憶反応を誘導できる、という仮説提唱に至った。本研究では、先ず、この仮説検定をおこない、このメモリーB細胞の生成・活性化を支えるメカニズムを明らかにする。本研究は、「メモリーB細胞集団には、抗体レパトアが広汎かつ低・中親和性を示すものが存在し、変異ウイルス感染時に迅速な免疫記憶反応を誘導できる基盤となっている」という研究代表者の仮説をインフルエンザウイルスを対象として検証すること、またメモリーB細胞の生成・活性化機構を解明することを目的としている。本研究は、新規メモリーB細胞集団の役割を解明してワクチン効果の分子機構そのものを明らかにする研究といえ、学術的にも臨床的にも極めて重要な課題を担っている。本研究により、メモリーB細胞の生成・活性化機構が解明され、結果、感染症予防にとって有益なワクチン開発への情報が提供されることが期待される。ウイルス一次感染時、メモリーB細胞は、高親和性IgG抗体を有する細胞が選択されると考えられていた。このモデルでは、2度目にドラスチックな変異が入ったウイルスが感染した時には、高親和性IgG抗体メモリーB細胞は、反応できず、にもかかわらず、なぜ免疫記憶反応が成立するヒトが存在するのかが謎であった。申請者らは、メモリーB細胞集団は、広汎な親和性を有する細胞が選択されており、それ故、変異ウイルス2次感染時、免疫記憶反応を誘導できる、という仮説提唱に至った。本研究では、先ず、この仮説検定をおこない、このメモリーB細胞の生成・活性化を支えるメカニズムを明らかにする。
KAKENHI-PROJECT-19H01028
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清浄金属ナノ粒子形成のためのカーボンナノチューブチュービング法の確立
金属内包カーボンナノチューブ(CNT)の内包金属の低温溶出現象を利用した、金属ナノ粒子の新しい形成法を研究した。銅内包CNTと樹脂との複合フィルムは、590 nm付近に内包銅による特異な光吸収があることを見出した。さらに、加熱処理した試料では処理前と比較して、約5 nm短波長へシフトした。これは内包銅が溶出し、CNTの外側に銅ナノ粒子を形成する温度領域と一致していることを明らかにした。また銅とゲルマニウムならびに銅とチタンの合金内包CNTを従来の銅内包CNTに匹敵する収率、充填率で作製することに成功した。これらは銅内包CNTより、さらに約200°C低い温度で溶出することがわかった。金属内包カーボンナノチューブ(CNT)の内包金属の低温溶出現象を利用した、金属ナノ粒子の新しい形成法を研究した。銅内包CNTと樹脂との複合フィルムは、590 nm付近に内包銅による特異な光吸収があることを見出した。さらに、加熱処理した試料では処理前と比較して、約5 nm短波長へシフトした。これは内包銅が溶出し、CNTの外側に銅ナノ粒子を形成する温度領域と一致していることを明らかにした。また銅とゲルマニウムならびに銅とチタンの合金内包CNTを従来の銅内包CNTに匹敵する収率、充填率で作製することに成功した。これらは銅内包CNTより、さらに約200°C低い温度で溶出することがわかった。アーク放電法で作製可能な高充填率の銅内包カーボンナノチューブ(CNT)と紫外線硬化樹脂とのコンポジットフィルムを作製し、可視光吸収スペクトルによる評価を行った。その結果、590 nm付近に特異な吸収を観測することができた。これは紫外線硬化樹脂に埋め込まれた銅内包CNTの内包銅による吸収である。さらに、300-1100°Cの範囲で真空加熱処理した銅内包CNTの試料も同様に、紫外線硬化樹脂とのコンポジットフィルムを作製し、吸収スペクトルの測定を行った。900°C以上で加熱処理したものでは、銅による吸収ピークは観察できなかった。これは内包銅が完全に蒸発し、中空のCNTしか存在していないという電子顕微鏡観察の結果と一致している。興味深いのは300-800°Cの加熱温度領域である。詳細な最大吸収波長を調べたところ、熱処理前の試料では586.5 nmであったが、300°C以上で加熱した試料では581.5 nmとなっており、5 nmほどブルーシフトした。つまり、ちょうど内包銅が溶出し、CNTの外側に銅のナノ粒子を形成する温度領域と一致していることが明らかとなった。また並行して酸処理による内包銅の溶出挙動を調べる過程で、予想に反してCNT層数が増大しグラファイト性が向上することを見出した。銅内包CNTよりもさらに低温で溶出する金属を模索する過程で、銅とゲルマニウムの合金が、その可能性を有することを見出した。同様のアーク放電法により銅・ゲルマニウム内包CNTを従来の銅内包CNTに匹敵する収率、充填率で作製することに始めて成功した。さらに熱処理により200°C以上(銅内包CNTより100°C低下)で内包金属が溶出することがわかった。XRD解析により内包物はCu3Geであることが明らかとなった。また現在までに100%ゲルマニウム内包CNTや銅/チタン合金内包CNTなどの作製にも成功している。研究初年度には、アーク放電法で作製可能な高充填率の銅内包カーボンナノチューブ(Cu@CNT)と紫外線硬化樹脂とのコンポジットフィルムを作製し、可視光吸収スペクトルによる評価を行った。その結果、590 nm付近に内包銅による特異な吸収を観測することができた。さらに、真空加熱処理したCu@CNTの試料でも同様に、紫外線硬化樹脂とのコンポジットフィルムを作製し、詳細な吸収スペクトルの測定を行った。その結果、熱処理前の試料と比較して、300°C以上で加熱した試料では約5 nmブルーシフトした。つまり、ちょうど内包銅が溶出し、CNTの外側に銅ナノ粒子を形成する温度領域と一致していることが明らかとなった。研究最終年度には、紫外領域も含めた吸収スペクトルによるCu@CNTの銅溶出現象の追跡を可能にするため、ポリビニルアルコールとのコンポジットフィルムを作製し、評価を行った。その結果、初年度には測定できなかったCNT構造由来の吸収と、大気中で操作した場合に自然酸化された酸化銅ナノ粒子由来の吸収を評価することができた。また、さらに低温で溶出する金属を模索する過程で、銅とゲルマニウムならびに銅とチタンの合金内包カーボンナノチューブ(Cu-Ge@CNTならびにCu-Ti@CNT)を従来のCu@CNTに匹敵する収率、充填率で作製することに成功した。これらはCu@CNTより約200°C低い温度で内包金属が溶出することがわかった。XRD解析によりCu-Ge@CNTの内包物はCu3Geであることが明らかとなった。一方Cu-Ti@CNTの場合はCu-Ti合金はCNTに内包しているときはアモルファスで、CNTから溶出すると結晶性のCu3Ti合金粒子に変化することが分かった。さらにXPS分析から、熱処理により溶出し形成されたCu3Ti合金粒子は表面がTiO2で覆われたコアシェル構造であることを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-25600024
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清浄金属ナノ粒子形成のためのカーボンナノチューブチュービング法の確立
材料化学銅内包カーボンナノチューブ(CNT)と紫外線硬化樹脂のコンポジットフィルムを作製し、その光吸収特性から、内包銅の溶出とナノ粒子形成との関係を見出した点、新しい合金内包CNTを作製し、その溶出温度の低温化に成功した点など、2年間の研究計画の内、現在までに計画に先んじて、いくつかテーマを遂行することができた。しかし、コンポジットフィルム内での内包金属の溶出によるナノ粒子形成や、ナノ粒子サイズ制御のための銅内包CNTの切断長制御などは達成できていない。計画通り、切断長のそろった銅内包カーボンナノチューブ(CNT)を用いた加熱型CNTチュービング法の確立を目指す。そのために超音波照射法による銅内包CNTの切断と遠心分離によるサイズ分離を試みる。また切断長制御の成否に関わらず、平行してコンポジットフィルム中での内包金属の溶出実験を試みる。そのためにフィルムとしてポリビニルアルコール(PVA)を選択し、コンポジットフィルムを作製した後、加圧による溶出試験を行う。得られたコンポジットフィルムの光学的特性を紫外・可視吸収や蛍光分光などにより評価する。最終的に、CNTチュービング法の確立と本方法で作製できるコンポジットフィルムの特性をまとめ、新しい素材として提案することを目指す。物品費による物品購入の際、当初予定価格より安価で購入でき、生じた残額をそのまま次年度へ繰り越した。次年度の物品費として使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-25600024
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ポリチア〔n〕フェロセノファン-遷移金属錯体の合成と金属-金属相互作用の研究
ポリチア〔n〕フェロセノファンと種々の遷移金属塩との反応を行ない、相当する錯体を多数合成し、フェロセンの鉄原子と遷移金属イオンとの間の相互作用を種々のスペクトルを用いて調べた。その結果、ある種の錯体については強い相互作用があることが見い出された。以下に具体的に述べる。テトラチア〔n〕フェロセノファンと銅(【I】),銀(【I】),水銀(【II】),パラジウム(【II】)との錯体を合成・単離した。その際、錯体の安定性がフェロセノファンの環の大きさに大きく影響されることがわかった。また、錯体のスペクトルを検討した結果、金属イオンとフェロセン核との相互作用は小さく、恐らく、その性格は硫黄原子の配位を介した誘起効果であろうと推測された。トリチア〔n〕フェロセノファンに対しても、上と同じ金属イオンとの錯体を合成・単離した。スペクトルデータから、パラジウム錯体以外はいずれの錯体もよく似た構造を持つことが推測された。また、いくつかの錯体においては、金属イオンとフェロセン核との間に何んらかの強い相互作用があることが推測された。トリチア〔n〕フェロセノファン(n=7,9)とパラジウム(【II】)フルオロボレートとの錯体を合成・単離した。この錯体のスペクトルデータは、上に述べたいずれの錯体とも大きく異なり、フェロセンの鉄原子とパラジウム原子との間に弱い配位結合が存在することが示唆された。また銅(【II】)フルオロボレートとの反応では、分子内酸化還元反応が起ったと考えられる興味深い2:1錯体が単離された。ポリチアフェロセノファンとの比較のために、ポリチア〔n〕ルテノセノファンと塩化パラジウム(【II】)との錯体の合成・単離および構造決定を行なった。ジチア〔4〕ルテノセノファンとテトラチア〔10〕ルテノセノファンでは配位様式が異なることがわかった。ポリチア〔n〕フェロセノファンと種々の遷移金属塩との反応を行ない、相当する錯体を多数合成し、フェロセンの鉄原子と遷移金属イオンとの間の相互作用を種々のスペクトルを用いて調べた。その結果、ある種の錯体については強い相互作用があることが見い出された。以下に具体的に述べる。テトラチア〔n〕フェロセノファンと銅(【I】),銀(【I】),水銀(【II】),パラジウム(【II】)との錯体を合成・単離した。その際、錯体の安定性がフェロセノファンの環の大きさに大きく影響されることがわかった。また、錯体のスペクトルを検討した結果、金属イオンとフェロセン核との相互作用は小さく、恐らく、その性格は硫黄原子の配位を介した誘起効果であろうと推測された。トリチア〔n〕フェロセノファンに対しても、上と同じ金属イオンとの錯体を合成・単離した。スペクトルデータから、パラジウム錯体以外はいずれの錯体もよく似た構造を持つことが推測された。また、いくつかの錯体においては、金属イオンとフェロセン核との間に何んらかの強い相互作用があることが推測された。トリチア〔n〕フェロセノファン(n=7,9)とパラジウム(【II】)フルオロボレートとの錯体を合成・単離した。この錯体のスペクトルデータは、上に述べたいずれの錯体とも大きく異なり、フェロセンの鉄原子とパラジウム原子との間に弱い配位結合が存在することが示唆された。また銅(【II】)フルオロボレートとの反応では、分子内酸化還元反応が起ったと考えられる興味深い2:1錯体が単離された。ポリチアフェロセノファンとの比較のために、ポリチア〔n〕ルテノセノファンと塩化パラジウム(【II】)との錯体の合成・単離および構造決定を行なった。ジチア〔4〕ルテノセノファンとテトラチア〔10〕ルテノセノファンでは配位様式が異なることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-61540362
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61540362
2ループファインマン積分の数値積分法の研究
現在のところ2ループ積分を解析的に計算する方法は一般的には知られていない。このため大きく分けて次の2つの接近の仕方で計算が試みられている。一つは外線の運動量で2ループ積分を展開し、展開係数を数式処理によって求め、それを最後に数値化する方法と、2ループ積分を何らかの表示で数値積分を直接行なってしまう方法である。今年度の研究ではファインマンパラメータ積分を数値積分する方法の確立を行なった。ファインマン積分は超関数の積分であるため数値積分を行うことは困難であるとされ、1ループ積分では一般的な解析積分が行なわれてきた。しかし、モンラカルロ積分法の一手法である負関数をとる方法を拡張することにより超関数の積分を可能なものとした。この方法により2点関数及び平面型3点関数の2ループ積分の数値化に成功した。折しも世界的にも2ループ補正の重要性が認識され初め、今年度にはロシア,オランダ又ドイツでは2グループが標準理論における2ループ積分が手がけられるようになった。本研究は他のグループに先駆けて数値結果を示すことができたため、ドイツの2グループ及びロシアのグループのそれぞれから結果の照合の問い合わせを受け、いずれにおいても一致と見ている。特に先に書いた展開係数を求める方法を採るグループにとっては展開の正当性を保証するものとして今研究結果との照合は不可欠となっている。現在の課題は交叉型3点関数の積分の数値化であり、未だどのグループも成功するに至っておらず激しい競争となっている。現在のところ2ループ積分を解析的に計算する方法は一般的には知られていない。このため大きく分けて次の2つの接近の仕方で計算が試みられている。一つは外線の運動量で2ループ積分を展開し、展開係数を数式処理によって求め、それを最後に数値化する方法と、2ループ積分を何らかの表示で数値積分を直接行なってしまう方法である。今年度の研究ではファインマンパラメータ積分を数値積分する方法の確立を行なった。ファインマン積分は超関数の積分であるため数値積分を行うことは困難であるとされ、1ループ積分では一般的な解析積分が行なわれてきた。しかし、モンラカルロ積分法の一手法である負関数をとる方法を拡張することにより超関数の積分を可能なものとした。この方法により2点関数及び平面型3点関数の2ループ積分の数値化に成功した。折しも世界的にも2ループ補正の重要性が認識され初め、今年度にはロシア,オランダ又ドイツでは2グループが標準理論における2ループ積分が手がけられるようになった。本研究は他のグループに先駆けて数値結果を示すことができたため、ドイツの2グループ及びロシアのグループのそれぞれから結果の照合の問い合わせを受け、いずれにおいても一致と見ている。特に先に書いた展開係数を求める方法を採るグループにとっては展開の正当性を保証するものとして今研究結果との照合は不可欠となっている。現在の課題は交叉型3点関数の積分の数値化であり、未だどのグループも成功するに至っておらず激しい競争となっている。
KAKENHI-PROJECT-06740235
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06740235
低速多価イオンによる二電子捕獲過程の衝突径数依存性
標的から電子を捕獲した後の低速多価イオンの励起状態の研究および多価イオンの標的からの電子捕獲過程の衝突径数依存性を研究するための準備を行った。1.低速多価イオン(O^<6->,Ne^<3->)を種々の標的ガスに衝突させ、標的からの二電子捕獲によりベリリウム様二電子励起状態を生成した。この励起状態のエネルギー準位を調べるために、Auger電子のエネルギーを零度電子分光法を用いて測定した。この結果、O^<4->(1s^23131^')の三重項状態のエネルギーを単回衝突の条件のもとで決められた。一般に、ヘリウムや水素分子標的を用いると二電子捕獲過程により一重項励起状態が生成され、多電子標的(窒素分子、ネオン、アルゴン等)を用いると一重項だけでなく三重項励起状態が生成される。多電子標的を用いた場合の一重項状態と三重項状態の生成される割合は衝突系(多価イオンと標的ガス)により大きく異なることがわかった。われわれの実験では、O^<6->をネオン標的に衝突させた場合に選択的にO^<4->(1s^23131^')の三重項励起状態が生成されている。これは、この衝突における二電子捕獲反応のリアクションウインドウの位置と二つの電子を引き抜かれた標的(Ne^<8->)に基底状態が三重項状態であることで定性的な説明がつけられる。2.リコイルイオン・散乱イオンの同時測定を行い衝突径数を決めるための測定系の準備を行った。本研究に必要な測定回路の一部を購入しCAMMACを利用した同時計測系をつくり回路系の動作試験を行い、来年度以降の実験の準備を行った。標的から電子を捕獲した後の低速多価イオンの励起状態の研究および多価イオンの標的からの電子捕獲過程の衝突径数依存性を研究するための準備を行った。1.低速多価イオン(O^<6->,Ne^<3->)を種々の標的ガスに衝突させ、標的からの二電子捕獲によりベリリウム様二電子励起状態を生成した。この励起状態のエネルギー準位を調べるために、Auger電子のエネルギーを零度電子分光法を用いて測定した。この結果、O^<4->(1s^23131^')の三重項状態のエネルギーを単回衝突の条件のもとで決められた。一般に、ヘリウムや水素分子標的を用いると二電子捕獲過程により一重項励起状態が生成され、多電子標的(窒素分子、ネオン、アルゴン等)を用いると一重項だけでなく三重項励起状態が生成される。多電子標的を用いた場合の一重項状態と三重項状態の生成される割合は衝突系(多価イオンと標的ガス)により大きく異なることがわかった。われわれの実験では、O^<6->をネオン標的に衝突させた場合に選択的にO^<4->(1s^23131^')の三重項励起状態が生成されている。これは、この衝突における二電子捕獲反応のリアクションウインドウの位置と二つの電子を引き抜かれた標的(Ne^<8->)に基底状態が三重項状態であることで定性的な説明がつけられる。2.リコイルイオン・散乱イオンの同時測定を行い衝突径数を決めるための測定系の準備を行った。本研究に必要な測定回路の一部を購入しCAMMACを利用した同時計測系をつくり回路系の動作試験を行い、来年度以降の実験の準備を行った。
KAKENHI-PROJECT-05238213
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05238213
中国語劇成立史研究-早期話劇を中心に
研究開始と同時に、まず中国語ワープロソフト、ハードディスク等のパソコン周辺設備を購入、大学研究室のパソコンの機能向上をはかった。あわせて清末民初の文学雑誌等を購入、そこにみられる演劇関係記事等の調査をおこなった。また平成四年八月より五年三月まで数回にわたって東京へ出張し、上海の新聞等を集中的に調査した。このような研究過程を経て、平成四年十一月二十一日開催の日本演劇学会秋季大会(於大阪大学)で研究の成果を話劇女優の誕生に焦点を絞って「中国話劇女優の誕生」という題目で報告した。また平成五年一月には話劇成立の指標とされる上海戯劇協社「若奥様の扇」上演の意義と内容を「上海戯劇協社『若奥様の扇』(《少〓〓的扇子》上演をめぐって」と題する論文にまとめ、日本中国学会報(日本中国学会)に投稿した。この論文は平成五年秋発行の同誌第四十五集に掲載されることがすでに決定している。以上を通して話劇の本質はリアリズム演劇であること、それは女優を必要とすること、話劇と清末民初・五四時代との関連などを考察した。また、これと平行してすでに作成した春柳社上演広告にデーターベース化をめざして業者に入力を委託した。さらにリアリズム演劇としての話劇の性格をより具体的に把握するために、リアリズム演劇の対立物として出現した日本「アングラ」演劇の初の訪中公演である新宿梁山泊「人魚伝説」上海公演の上演資料(劇評等現地の反響)を収集し、それを翻訳してパンフレットにまとめた。このパンフは平成五年五月に完成の予定である。研究開始と同時に、まず中国語ワープロソフト、ハードディスク等のパソコン周辺設備を購入、大学研究室のパソコンの機能向上をはかった。あわせて清末民初の文学雑誌等を購入、そこにみられる演劇関係記事等の調査をおこなった。また平成四年八月より五年三月まで数回にわたって東京へ出張し、上海の新聞等を集中的に調査した。このような研究過程を経て、平成四年十一月二十一日開催の日本演劇学会秋季大会(於大阪大学)で研究の成果を話劇女優の誕生に焦点を絞って「中国話劇女優の誕生」という題目で報告した。また平成五年一月には話劇成立の指標とされる上海戯劇協社「若奥様の扇」上演の意義と内容を「上海戯劇協社『若奥様の扇』(《少〓〓的扇子》上演をめぐって」と題する論文にまとめ、日本中国学会報(日本中国学会)に投稿した。この論文は平成五年秋発行の同誌第四十五集に掲載されることがすでに決定している。以上を通して話劇の本質はリアリズム演劇であること、それは女優を必要とすること、話劇と清末民初・五四時代との関連などを考察した。また、これと平行してすでに作成した春柳社上演広告にデーターベース化をめざして業者に入力を委託した。さらにリアリズム演劇としての話劇の性格をより具体的に把握するために、リアリズム演劇の対立物として出現した日本「アングラ」演劇の初の訪中公演である新宿梁山泊「人魚伝説」上海公演の上演資料(劇評等現地の反響)を収集し、それを翻訳してパンフレットにまとめた。このパンフは平成五年五月に完成の予定である。
KAKENHI-PROJECT-04610274
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精巣内体細胞におけるDAX1の機能解析とアデノウィルスベクターを用いた臨床応用
(目的)DAX1の精子形成に果たす役割は未だ解明されていないためアデノウィルスベクターを用いたDAX1の精巣内遺伝子導入の効果を検討した。(方法)DAX1発現アデノウィルスベクターを作製し、ライディッヒ・セルトリ細胞株に遺伝子導入した。遺伝子発現をRT-PCRで比較した。ラットの精巣にベクターを投与し、免疫染色で検討した。(結果)セルトリ細胞ではScf遺伝子の発現が亢進していた。ラット精巣ではセルトリ細胞にDAX1の強発現を認めた。(考察)DAX1はセルトリ細胞からSCF/KITシグナル経路を介して精子形成を促進していると考えられた。私たちは、これまでに特発性造精機能障害患者の精巣内では転写因子DAX1の発現が低下していることを明らかにした。本研究では、精巣内体細胞における転写因子DAX1の機能解析とアデノウイルスベクターを用いた精巣内遺伝子治療への臨床応用を目指し以下の2つを行った。i. DAX1発現アデノウイルスベクターの作製a).ベクターのコンストラクト作製:サブクローニングによりプラスミド内で遺伝子配列を作製した。サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを使用した。DAX1とマーカータンパクeGFPを発現できるように、DAX1遺伝子の全長cDNAとeGFPのcDNAとの間にIRES (internal ribosomal entry site)配列を挿入した。作製した目的遺伝子配列を非増殖性アデノウイルスのゲノムDNA内に組み込みアデノウイルスベクターを作製した。コントロールベクターとしてeGFPのみを発現するベクターも作製した。b).アデノウイルスベクターの精製とタイター調整:HEK293細胞内で増殖したアデノウイルスを培養細胞ごと回収し凍結融解により細胞壁を破壊したあと、Adeno-X Maxi Purification kit (Clonetech社)のカラムクロマトグラフィーで精製した。さらに、Adeno-X Rapid Titer kitを用いてタイター測定しウイルス溶液を調整した。ii.培養細胞におけるDAX1機能解析セルトリ細胞として幼仔期由来のTM4細胞、ライディッヒ細胞として幼仔期由来のTM3細胞を用いた。アデノウイルスベクターによりDAX1の発現を亢進した際の遺伝子変化を定量RT-PCRで解析した。本研究では、精巣内体細胞であるセルトリ細胞とライディッヒ細胞における、転写因子DAX1の機能を解明すること。その後DAX1遺伝子をマウス・ラットの精巣内に遺伝子導入し、造精機能への影響を検討することを目指している。そのために以下の4つを計画している。1. DAX1発現アデノウイルスベクターの作製、2.培養細胞(セルトリ細胞とライディッヒ細胞)における" in vitro "でのDAX1機能解析、3.ラット精巣に対するアデノウイルスベクター投与の条件検討、4.ラット精巣における" in vivo "でのDAX1機能解析、である。現在までに1と2が終了し、3に取りかかっている。1. DAX1発現アデノウイルスベクターの作製:サブクローニングによりプラスミド内で遺伝子配列を作製した。目的遺伝子を発現させるためのプロモーター、マウスDAX1遺伝子のcDNAとマーカータンパクeGFPのcDNAを非増殖型ヒト5型アデノウイルスゲノムDNAに組込んだ。その後は増殖に必要なE1領域を発現するHEK293細胞内では増殖させた。HEK293細胞内で増殖したアデノウイルスをカラムクロマトグラフィーで精製しタイター測定によりウイルス溶液を調製した。2.培養細胞における" in vitro "でのDAX1機能解析:セルトリ細胞とライディッヒ細胞を用いた。アデノウイルスベクターを用いてDAX1遺伝子を遺伝子導入しgain-of-function解析を行った。3.ラット精巣に対するアデノウイルスベクター投与の条件検討:アデノウイルスベクター投与後のDAX1発現の局在と経時的な変化を解析し、適切なウイルスタイターを検討中である。私たちは、これまでに特発性造精機能障害患者の精巣内では転写因子DAX1の発現が低下していることを明らかにした。本研究では、精巣内体細胞における転写因子DAX1の機能解析とアデノウイルスベクターを用いた精巣内遺伝子治療への臨床応用を目指し以下の2つを行った。1.DAX1発現アデノウイルスベクターの精製と培養細胞への投与コンストラクトを作製したアデノウイルスベクターをHEK293細胞内で増殖させ、Adeno-X MaxiPurification kit (Clonetech社)のカラムクロマトグラフィーで精製した。さらに、Adeno-X Rapid Titer kitを用いてタイター測定しウイルス溶液を調整した。セルトリ細胞として幼仔期由来のTM4細胞、ライディッヒ細胞として幼仔期由来のTM3細胞を用いた。アデノウイルスベクターによりDAX1の発現を亢進した際の遺伝子変化を定量RT-PCRで解析した。2.ラット精巣に対するアデノウイルスベクターの投与ラット精巣に様々なタイターのウイルス溶液を投与し、投与後1、4、7、14日目に精巣を採取した。精巣内投与法に関しては2種類の方法を用いた。精巣間質注入法ではライディッヒ細胞に特異的に遺伝子導入が可能であり、精細管内注入法ではセルトリ細胞に特異的に遺伝子導入が可能である。組織学的な変化(Johnsen scoreや精細管あたりの精原細胞数)とアポトーシスの有無を解析した。(目的)
KAKENHI-PROJECT-25861439
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精巣内体細胞におけるDAX1の機能解析とアデノウィルスベクターを用いた臨床応用
DAX1の精子形成に果たす役割は未だ解明されていないためアデノウィルスベクターを用いたDAX1の精巣内遺伝子導入の効果を検討した。(方法)DAX1発現アデノウィルスベクターを作製し、ライディッヒ・セルトリ細胞株に遺伝子導入した。遺伝子発現をRT-PCRで比較した。ラットの精巣にベクターを投与し、免疫染色で検討した。(結果)セルトリ細胞ではScf遺伝子の発現が亢進していた。ラット精巣ではセルトリ細胞にDAX1の強発現を認めた。(考察)DAX1はセルトリ細胞からSCF/KITシグナル経路を介して精子形成を促進していると考えられた。アデノウイルスベクターの調製とタイター調整に、手間と時間がかかるためである。ベクターとして使用しているアデノウイルスは非増殖性であるが、増殖に必要なE1領域を発現するHEK293細胞内では増殖可能である。HEK293細胞内で増殖したアデノウイルスを培養細胞ごと回収し凍結融解により細胞壁を破壊したあと、Adeno-X Maxi Purification kit (Clonetech社)のカラムクロマトグラフィーで精製する。さらに、Adeno-X Rapid Titer kitを用いてタイター測定しウイルス溶液を調製している。大量の培養細胞を継代しているが、少量のウイルス溶液しか精製できないために研究に時間がかかっている。泌尿器科研究指導者・研究協力者との連携を密にして、研究の共有化をはかる。特に、指導的立場の研究者が全体を俯瞰して研究をコントロールし、ポイントとなる部分や省ける部分を選別する。DAX1発現アデノウイルスベクターの作製に時間を要した。特に、サブクローニングによる遺伝子配列の構築をする際、コンストラクトを維持したままプラスミドを増殖することが出来る条件設定に日程を費やした。具体的には、コンピテントセルの選定とミニプレップの温度調節である。作製したアデノウイルスベクターを用いて、培養細胞への遺伝子導入まで行うことは出来た。予定では以下の4つを計画している。1. DAX1発現アデノウイルスベクターの作製、2.培養細胞(セルトリ細胞とライディッヒ細胞)における" in vitro "でのDAX1機能解析、3.ラット精巣に対するアデノウイルスベクター投与の条件検討、4.ラット精巣における" in vivo "でのDAX1機能解析、である。現在は、1と2が終了し3に取りかかっている段階であるので、3の続きと4を次年度に行う予定であるDAX1発現アデノウイルスベクターの増殖や精製には時間を要するため、余裕をもって予定を立てることが重要と思われる。また、効率的に研究を進めるために研究指導者や研究協力者との連絡を密にとっていくことが重要と考える。以下の3と4を予定している。
KAKENHI-PROJECT-25861439
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受粉・受精機構の解析
1.アブラナの自家不和合性磯貝はBrassica rapaの花粉から、SLGに結合する物質群を単離した。一方、FDDによって、花粉で発芽し多型が認められる2種類の遺伝子群を単離した。これらはシステインに富む分子量約7kDの蛋白質であった。渡辺は、B.rapaのS9系統の76kbのSLG,SRKを含むゲノム断片中で葯・花粉で発現している2種類の遺伝子を同定した。福井はB.rapaの染色体をDNAファイバー化し、FISHによりSLGとSRKを可視化することに成功した。2.ナシ、タバコの自家不和合性乗岡はニホンナシS3-RNaseの結晶化に成功した。タバコS1-RNaseの水銀置換結晶については2.7オングストロームの分解能までの回折強度データを収集した。またGSTとニホンナシS3-RNaseの融合蛋白質の大腸菌での発現に成功した。3.サツマイモの自家不和合性神山はサツマイモ野生2倍体種において,S遺伝子型に特異的な柱頭蛋白質(SSP)を解析し、これが柱頭表面の乳頭細胞で強い発現すること、またS遺伝子から1.2cMの距離にマッピングされることを明らかにした。4.初期胚発生北野はイネ初期胚発生突然変異体を用いて遺伝解析を行い、合計12の遺伝子座を同定した。変異体のホモ型胚を培養し植物体再分化の可能性を検討した。鎌田はニンジンの不定胚および受精胚において胚発生の極く初期から発現している遺伝子(C-ABI3)およびシロイヌナズナのその相同遺伝子(ABI3)のプロモーター領域に共通して存在するシス配列と思われる配列を同定した1.アブラナの自家不和合性磯貝はBrassica rapaの花粉から、SLGに結合する物質群を単離した。一方、FDDによって、花粉で発芽し多型が認められる2種類の遺伝子群を単離した。これらはシステインに富む分子量約7kDの蛋白質であった。渡辺は、B.rapaのS9系統の76kbのSLG,SRKを含むゲノム断片中で葯・花粉で発現している2種類の遺伝子を同定した。福井はB.rapaの染色体をDNAファイバー化し、FISHによりSLGとSRKを可視化することに成功した。2.ナシ、タバコの自家不和合性乗岡はニホンナシS3-RNaseの結晶化に成功した。タバコS1-RNaseの水銀置換結晶については2.7オングストロームの分解能までの回折強度データを収集した。またGSTとニホンナシS3-RNaseの融合蛋白質の大腸菌での発現に成功した。3.サツマイモの自家不和合性神山はサツマイモ野生2倍体種において,S遺伝子型に特異的な柱頭蛋白質(SSP)を解析し、これが柱頭表面の乳頭細胞で強い発現すること、またS遺伝子から1.2cMの距離にマッピングされることを明らかにした。4.初期胚発生北野はイネ初期胚発生突然変異体を用いて遺伝解析を行い、合計12の遺伝子座を同定した。変異体のホモ型胚を培養し植物体再分化の可能性を検討した。鎌田はニンジンの不定胚および受精胚において胚発生の極く初期から発現している遺伝子(C-ABI3)およびシロイヌナズナのその相同遺伝子(ABI3)のプロモーター領域に共通して存在するシス配列と思われる配列を同定した磯貝はアブラナ科植物につき,SLG(S糖タンパク質)のアンチセンス遺伝子を導入して得られた和合型の形質転換植物の形質が,交配によって後代に伝わること,形質の変化は柱頭側のみおきていることを明らかにした。さらにSRK(S-レセプタープロテインキナーゼ)について,そのキナーゼ領域を大腸菌で発現させ,自己燐酸化能があることを証明した。渡辺はアブラナ科植物のSLG,SRKについて,ゲノム遺伝子を単離し,それらをプロモーター領域を含め明らかにした。また,ゲノム中の類似遺伝子の存在とその一部のS遺伝子座への連鎖を証明した。崎山は,ニホンナシの自家不和合性を支配するS-RNaseを単離し,そのアミノ酸配列を決定し,保存領域を明らかにした。さらにこれをもとにcDNAライブラリーから相当する遺伝子を単離し,その塩基配列を決定した。神山は,トマトを材料として,これまでに明らかになっているS-RNaseの塩基配列のうちの可変領域についてそれらを相互にいれ換えたcDNAを作成し,これを形質転換する準備をすすめている。また,サツマイモについて,2次元電気泳動によって,S遺伝子座に特異的なスポットの存在を明らかにした。鎌田はニンジンを材料として,アブシジン酸による不定胚形成能の獲得の機構を解析し,この情報伝達に関わる遺伝子を単離した。さらにアラビドプシスからも,関連の遺伝子を単離した。北野はMUN受精卵処理による突然変異を利用して,イネの初期胚発生の多数の変異体を作出し,それらの遺伝的解析を行っている。塚谷はアラビドプシスを用いて,低分子GTPaseが,花粉管の伸長に関わっていることを証明し,この遺伝子産物がゴルジ体およびその周辺の小胞に局在することを明らかにした。1、自家不和合性に関する研究(磯貝,崎山,神山,渡辺,塚谷,福井)(1)胞子体型植物の自家不和合性:アブラナ科植物について、SLGあるいはSRKと相同な配列を持つゲノム断片を解析した。
KAKENHI-PROJECT-07281103
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07281103
受粉・受精機構の解析
S遺伝子座に連鎖しているもののうち1つはSRK様の配列を有しており、発現していることが予想された。また、S遺伝子座に連鎖していないものも存在した。SRKの自己燐酸化により、燐酸化されるアミノ酸を特定した。蛍光ディファレンシャルディスプレーによってS遺伝子毎に異なり、花粉で発現しているmRNAを見いだした。FISH法により、SLG遺伝子を染色体上でマッピングできた。一方、サツマイモについて、二次元電気泳動により、S遺伝子型特異的なスポットを見いだし、そのアミノ酸配列の一部を明らかにした。(2)配偶体型植物の自家不和合性:ニホンナシのS-RNaseについて、4種類のS-RNaseのcDNAの塩基配列を決定した。トマトについて、X線照射により花粉側の形質に変異がおきた突然変異体について、ホモ個体を作成し、それらのディファレンシャルディスプレーにより、変異体には存在しないいくつかのバンドを見いだした。2、初期胚発生,不定胚形成に関する研究(鎌田,北野)(1)ニンジンおよびアラビドプシスについて、ABAの情報伝達の仲介蛋白質遺伝子のC-ABI3遺伝子を導入した形質転換植物を作成した。そこでは、不定胚形成能誘導時に発現する遺伝子群が発現しており、C-ABI3遺伝子が胚の特異性に関わる転写調節機構の重要な因子であることをあきらかにした。(2)イネの胚発生突然変異体を用い,初期発生に関与する遺伝子につき、それらの遺伝関係を調査し、関連する座位を明らかにした。1、自家不和合成に関する研究(磯貝,崎山,神山,渡辺,福井)(1)胞子体型植物の自家不和合成:SLG蛋白質との相互作用が予想される花粉表層の一群の蛋白質PCPについて、その塩基配列を決定した。蛍光ディファレンシャルディスプレーによってS遺伝子毎に異なり、花粉で発現しているmRNAを見いだし、現在、解析中である。SLGとSRKをコードするゲノム断片を用いて、高解像度のFISHを行い、その間の距離を推定した。またゲノム遺伝子からの解析で、S遺伝子座にあり、花粉でも発現している遺伝子群を単離した。一方、サツマイモについて、S遺伝子型特異的な蛋白質の存在から、それをコードする遺伝子の塩基配列を決定した。(2)配偶体型植物の自家不和合成:ニホンナシのS-RNaseについて、X選結晶解析のための結晶の作成に成功した。また花粉のS遺伝子産物の候補として、特異的な蛋白質の存在を2次元電気泳動で見いだした。2、初期胚発生,不定胚形成に関する研究(鎌田,北野)(1)ニンジンの不定胚形成の制御因子であるABAの情報伝達の仲介蛋白質遺伝子としてのCABI-3について、形質転換体などの作成により、その機能の解析を行い、この発現を制御している因子が胚を規定する因子であると推定した。(2)イネの胚発生突然変異体を用い,初期発生に関与する遺伝子につき、それらの遺伝関係を調査し、関連する座位を明らかにし、分子レベルでの研究の基礎データを得た。1.アブラナの自家不和合性磯貝はBrassica rapaの花粉から、SLGに結合する物質群を単離した。一方、FDDによって、花粉で発芽し多型が認められる2種類の遺伝子群を単離した。これらはシステインに富む分子量約7kDの蛋白質であった。渡辺は、B.rapaのS9系統の76kbのSLG,SRKを含むゲノム断片中で葯・花粉で発現している2種類の遺伝子を同定した。
KAKENHI-PROJECT-07281103
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07281103
光化学エネルギーの生産・消費バランスからみたイネの個葉光呼吸・光合成特性
1.乾物生産能力,生理的諸形質に違いが認められている栽培イネ2種(Oryza sativaとO. glaberrima)を対象に,個葉光合成機能である光化学反応系の光エネルギー生産反応,葉内の光エネルギー消費反応に注目し,比較を行った.その結果,O. glaberrima種の光呼吸で消費されるエネルギーが相対的に低い傾向にあることが明らかとなった.この理由の一つとして,O. glaberrimaは常に気孔開度が高く,葉内のガス拡散に優れることにより,C02/02分圧比が高まり,キー酵素RubisCOのカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼの活性比が相対的に高くなることが関与していると推察された.O. glaberrima種は気孔が開きやすい性質を持ち,水消費の面から見ると蒸散要求量が大きいというマイナスの要素を持つが,乾物生産の面で見るとエネルギー効率の良い光合成反応を行い,乾物生産能力を高めていると推察された.2.日本型新旧10品種を対象に光合成・光呼吸の水ストレス耐性を比較したところ,新旧の差が明らかとなった.旧品種において光呼吸は低い傾向にあったが,光化学系がストレスの影響を受けやすいことが確認された.一方,新品種は気孔を閉鎖することで光合成を一時的に停止するが,ストレスからの回復に優れることが明らかとなった.以上,光化学系のエネルギー生産から光合成・光呼吸によるエネルギー消費のバランスをイネの種,品種間で比較することにより,それぞれの特性を明確にすることが可能となった.対肥性の異なる栽培イネ2種(Oryza sativaとO.glaberrima)を用いて,異なる窒素施肥条件下で光合成・光呼吸への光化学系生産エネルギーの分配比率をPSII量子収率とガス交換速度の両パラメータから算出した.その結果,真の光合成速度には両種間で明確な差は認められなかった.しかし,O.glaberrima種はいかなる窒素条件下においても生産される全エネルギーレベルがO.sativaよりも低いことが明らかとなった.これは,光呼吸において消費されるエネルギーが相対的に低いことに起因にするものであった.さらにこの現象が生じる理由の一つとして,O.glaberrimaは常に気孔開度が高く,葉内CO2濃度を高く保つことで葉内のCO2/O2分圧比が高まり,キー酵素RubisCOのカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ比が相対的に高くなることが関与しているものと推察された.つまり,O.sativa種は高いCO2固定と高い光呼吸で収支し,O.glaberrima種は低いCO2固定と低い光呼吸で収支しており,O.glaberrima種は消費エネルギー面から見て「省エネ型」の効率の良いタイプの光合成反応を行っていると考えられる.また,過去100年において栽培されてきた,10の新旧品種を用いて生育特性,水ストレス下の光合成特性を調査し,次年度の基礎データとした.結果としては水ストレス下の光合成反応に品種間差が認められ,ストレス下の光呼吸量の違いに興味がもたれた.1.乾物生産能力,生理的諸形質に違いが認められている栽培イネ2種(Oryza sativaとO. glaberrima)を対象に,個葉光合成機能である光化学反応系の光エネルギー生産反応,葉内の光エネルギー消費反応に注目し,比較を行った.その結果,O. glaberrima種の光呼吸で消費されるエネルギーが相対的に低い傾向にあることが明らかとなった.この理由の一つとして,O. glaberrimaは常に気孔開度が高く,葉内のガス拡散に優れることにより,C02/02分圧比が高まり,キー酵素RubisCOのカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼの活性比が相対的に高くなることが関与していると推察された.O. glaberrima種は気孔が開きやすい性質を持ち,水消費の面から見ると蒸散要求量が大きいというマイナスの要素を持つが,乾物生産の面で見るとエネルギー効率の良い光合成反応を行い,乾物生産能力を高めていると推察された.2.日本型新旧10品種を対象に光合成・光呼吸の水ストレス耐性を比較したところ,新旧の差が明らかとなった.旧品種において光呼吸は低い傾向にあったが,光化学系がストレスの影響を受けやすいことが確認された.一方,新品種は気孔を閉鎖することで光合成を一時的に停止するが,ストレスからの回復に優れることが明らかとなった.以上,光化学系のエネルギー生産から光合成・光呼吸によるエネルギー消費のバランスをイネの種,品種間で比較することにより,それぞれの特性を明確にすることが可能となった.
KAKENHI-PROJECT-12760012
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12760012
白色孔腐朽担子菌の一次および二次代謝系の解析
塩素化フェノール等のフェノール性環境汚染物質を重合させることなく、無公害的分解除去を行うシステムの構築を鑑みた基礎研究である。微生物反応・酵素反応に注目している。近年、白色腐朽菌はそのリグニン分解能から芳香族環境汚染物質分解除去に適用しようとする試みがなされてきている。しかし、その強い一電子酸化活性のためフェノール性物質を基質とした場合、フェノキシルラジカルを経由した酸化重合、すなわち、超難分解性塩素化芳香族ポリマーの生成が懸念されるわけである。そこで本研究では、以下の点に着目した。(1)フェノールオキシダーゼ活性の乏しいと言われている白色孔腐れ菌カタウロコタケの生理学的特性(2)前年度の研究でスクリーニングされた白色腐朽菌ベッコウタケの染料脱色能・リグニン分解能・分泌酵素の相関(3)リグニン分解能のない(菌体外フェノールオキシダーゼ活性のない)褐色腐朽菌による芳香族モノマーの代謝以下に特に興味深い知見についてまとめる。・カタウロコタケの特殊な腐朽様式(孔腐れ)によって腐朽された木片の分析法が確立された。・ベッコウタケについて染料脱色と酵素活性の相関、補因子(金属イオン・脂質・雰囲気)の影響等を検討した結果、既知の酵素系とは異なった酸化系を有することが強く示唆された。・ベッコウタケの菌体外培養濾液中に染料脱色活性が検出された。・褐色腐朽菌オオウズラタケ、キチリメンタケによって、フェノール性・非フェノール性モノマーが分解された。・反応はアルキル側鎖の酸化・還元および水酸化を伴っていた。・最終的にフェノール・非フェノールを問わず、芳香環が開裂され、無機化に伴う二酸化炭素の発生が見られた。・白色腐朽菌と異なり、酸化重合を示す培養液の着色現象は見られなかった。キチリメンタケの芳香環無機化能が高いことが示された。関連酵素の検索、塩素化フェノール及び塩素化芳香族化合物の分解を準備中である。本研究では、これまでと異なる観点から担子菌類の代謝の解析を試みる。即ち、フェノールオキシダーゼ(ペルオキシダーゼ、ラッカーゼ)活性の低い菌のリグニン分解機能を探るものである。1.代謝研究に用いる基質の合成(1)リグニンモデル化合物β-1、β-O-4型のフェノールおよび非フェノール型のリグニンモデル化合物を合成した。さらに、予想代謝生成物の標品の合成も行った。(2)合成リグニン既報に従って、^<14>C-標識DHPを合成した。2-^<14>C-マロン酸を出発物質としてβ-^<14>C-コニフェリルアルコールを合成し、それを脱水素重合させることで側鎖標識したDHPを得た。2.二次代謝系発現の生理学(1)生育曲線人工液体培地の組成、培地pH、酸素濃度の菌生育におよぼす影響を検討した。ベッコウタケについては、いわゆる高炭素・低窒素源条件で二次代謝活性が発現する事が判明した。(2)マーカー基質二次代謝発現の指標となる基質の検討を行った。ベッコウタケにおいて、これまで二次代謝系発現の指標となるとされていた染料(Poly R)脱色反応が一次代謝系発現条件下で観察されることが判明した。この脱色機構について現在検討中である。少なくとも、フェノールオキシダーゼが分泌されていないことは判明した。また、用いた基質が高分子染料であることから、菌対外活性であることも推察された。^<14>C-DHPを用いた実験から、リグニンの無機化が二次代謝発現条件下、酸素雰囲気下で最適化されることが明らかとなった。しかし、ベッコウタケにおいては、一次代謝発現条件下でもリグニン無機化が確認され、その機構について検討中である。少なくとも、染料やリグニンの添加によって、菌体外酵素の分泌が誘導されないことは確認している。3.一次および二次代謝産物の検討(1)酵素活性ベッコウタケにおいてリグニンペルオキシダーゼが分泌されていないこと、マンガンペルオキシダーゼの分泌量が、同培養条件下における既知菌株の1/100から1/1000程度であること、そして、二次代謝条件下でラッカーゼ活性が認められることが判明した。(2)関連酵素リグニンモデルの代謝実験から、リグニン側鎖を直接攻撃する酵素の存在が示唆されたが、詳細は現在検討中である。塩素化フェノール等のフェノール性環境汚染物質を重合させることなく、無公害的分解除去を行うシステムの構築を鑑みた基礎研究である。微生物反応・酵素反応に注目している。近年、白色腐朽菌はそのリグニン分解能から芳香族環境汚染物質分解除去に適用しようとする試みがなされてきている。しかし、その強い一電子酸化活性のためフェノール性物質を基質とした場合、フェノキシルラジカルを経由した酸化重合、すなわち、超難分解性塩素化芳香族ポリマーの生成が懸念されるわけである。そこで本研究では、以下の点に着目した。(1)フェノールオキシダーゼ活性の乏しいと言われている白色孔腐れ菌カタウロコタケの生理学的特性(2)前年度の研究でスクリーニングされた白色腐朽菌ベッコウタケの染料脱色能・リグニン分解能・分泌酵素の相関(3)リグニン分解能のない(菌体外フェノールオキシダーゼ活性のない)褐色腐朽菌による芳香族モノマーの代謝以下に特に興味深い知見についてまとめる。・カタウロコタケの特殊な腐朽様式(孔腐れ)によって腐朽された木片の分析法が確立された。
KAKENHI-PROJECT-06660217
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06660217
白色孔腐朽担子菌の一次および二次代謝系の解析
・ベッコウタケについて染料脱色と酵素活性の相関、補因子(金属イオン・脂質・雰囲気)の影響等を検討した結果、既知の酵素系とは異なった酸化系を有することが強く示唆された。・ベッコウタケの菌体外培養濾液中に染料脱色活性が検出された。・褐色腐朽菌オオウズラタケ、キチリメンタケによって、フェノール性・非フェノール性モノマーが分解された。・反応はアルキル側鎖の酸化・還元および水酸化を伴っていた。・最終的にフェノール・非フェノールを問わず、芳香環が開裂され、無機化に伴う二酸化炭素の発生が見られた。・白色腐朽菌と異なり、酸化重合を示す培養液の着色現象は見られなかった。キチリメンタケの芳香環無機化能が高いことが示された。関連酵素の検索、塩素化フェノール及び塩素化芳香族化合物の分解を準備中である。塩素化フェノール等のフェノール性環境汚染物質を重合させることなく、無公害的分解除去を行うシステムの構築を鑑みた基礎研究である。微生物反応・酵素反応に注目している。近年、白色腐朽菌はそのリグニン分解能から芳香族環境汚染物質分解除去に適用しようとする試みがなされてきている。しかし、その強い一電子酸化活性のためフェノール性物質を基質とした場合、フェノキシルラジカルを経由した酸化重合が問題となる。そこで本年度は、以下の点に着目して研究を進めた。(1)フェノールオキシダーゼ活性の乏しいと言われている白色孔腐れ菌カタウロコタケの生理学的特性(2)前年度の研究でスクリーニングされた白色腐朽菌ベッコウタケの染料脱色能・リグニン分解能・分泌酵素の相関(3)リギニン分解能のない(菌体外フェノールオキシダーゼ活性のない)褐色腐朽菌による芳香族モノマーの代謝以下に特に興味深い知見についてまとめる。・ベッコウタケの染料脱色・リグニン分解活性と菌体外フェノール酸化活性の間に相関は見られなかった。・ベッコウタケの染料脱色にマンガンイオンが阻害的に作用した。・振盪培養・酸素雰囲気条件は染料脱色・リグニン分解に対し促進的であった。・ベッコウタケの菌体外培養濾液中に染料脱色活性が検出された。・褐色腐朽菌オオウズラタケ、キチリメンタケによって、フェノール性・非フェノール性モノマーが分解された。・反応はアルキル側鎖の酸化・還元を伴っていた。・一部水酸化反応も起こる。・最終的にフェノール・非フェノールを問わず、芳香環が開裂され、無機化に伴う二酸化炭素の発生が見られた。・白色腐朽菌と異なり、酸化重合を示唆する培養液の着色現象は見られなかった。・キチリメンタケの芳香環無機化能が高いことが示唆された。関連酵素の検索、塩素化フェノール及び塩素化芳香族化合物の分解を準備中である。
KAKENHI-PROJECT-06660217
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粉体の瞬間精密電荷制御を可能にする気相単極イオン抽出法の開発と帯電粒子の運動解析
大気圧プラズマジェットから生成される電荷を利用して粒子表面の電荷を制御する方法を実験的に検討した.石英ガラス管に電極を取り付けて交流電圧および直流バイアス電圧を印加し,ヘリウムガスを供給して大気圧プラズマジェットを生成した.直流バイアス電圧の値を変えることにより,プラズマ中の正イオンや電子を選択的に抽出できた.粒子をプラズマジェット中で重力落下させる実験と静置した粒子にプラズマジェットを照射する実験を行い,いずれも空間電荷に基づく電場によって正イオンや電子を粒子に付与できることがわかった.また,外部電場の印加によっても粒子の帯電を制御できた.これらの実験結果をもとに粒子の帯電機構を考察した.本研究では,プラズマジェットを自由空間につくり,環状電極によって同符号の単極イオンジェットを粒子に照射することにより,瞬時に精密電荷付与を可能にする技術を開発することを目的とする。電荷付与装置の設計・製作後,単極イオンジェットの生成条件を明らかにしたのち,粒子を投入し,帯電粒子の動的挙動を解析するとともに,粒子帯電の最適条件を選定するために必要なパラメータを定量的に解析・評価して,粒子帯電装置のシステムを構築する。一連の実験,解析,評価を3年間で行う。本年度は,実験的検討で中心となる装置の設計・製作を行い,試運転と基礎特性実験を行った。高周波信号(10 kHz)の発生および波形制御のためにファンクションジェネレーターを用い,高電圧アンプ(10 kV)で電気信号を増幅した。プラズマジェットの形成には,希ガス(アルゴンおよびヘリウム)を用いた。プラズマジェットから正あるいは負の単極イオンを抽出するために,外部環状電極を利用する方法,バイアス電圧(5 kV)を印加する方法を検討した結果,後者の方が効果的であることが分かった。単極イオンの計測には,その場計測が可能な電極プローブ法を用い,エレクトロメータで空間電流分布を測定し,バイアス電圧を正あるいは負に変えることによって,正あるいは負の単極荷電を抽出できることが分かった。導電性あるいは誘電性による材料依存性を評価するために,アルミナ,フェライト,正コートフェライト,負コートフェライト,PTFEの5種類の試料粒子を用いた。試料粒子を連続供給するために,定量供給ユニットを試作した。帯電粒子の測定には,ファラデーカップを用いた。基礎特性実験によって,プラズマジェットは粒子の荷電に有効であることが分かった。本研究では,プラズマジェットを自由空間につくり,単極イオンあるいは電子を抽出して,粒子に電荷を瞬時にかつ精密に付与する技術を開発することを目的とする。電荷付与装置の設計・製作後,実験によって単極荷電ジェットの生成条件を明らかにしたのち,粒子を帯電させるための操作パラメータを定量的に解析・評価して,粒子帯電装置のシステムを構築する。一連の実験,解析,評価を3年間で行う。本年度は,前年度に制作した装置を用いて粒子帯電実験を行い,詳細なデータを取得するとともに,実験結果を踏まえて帯電過程の理論検討および帯電プロセスの検討を行った。1粒子帯電実験:単極荷電ジェットの操作条件を把握するため,実験パラメータを系統的に変化させて粒子帯電量を測定・評価した。すなわち,単極荷電ジェットの照射時間,濃度,電荷の極性の違いを評価した。単極荷電ジェットの照射距離および帯電粒子の照射方法を評価した。試料粒子の材料を変更し,粒子の比電荷を測定した。2帯電過程の理論検討:粒子帯電実験の結果および電荷移動モデルの整合性を検討しながら,単極荷電ジェットにおける粒子帯電過程の理論モデルを構築した。粒子の表面電荷密度を測定し,最大平衡帯電との関係を明らかにした。3帯電プロセスの検討:粒子を分散させて帯電実験を行うとともに固定粒子層で帯電実験を行った。単極イオンあるいは電子は粒子表面に十分に到達するが,その後の電荷移動の解析と検証を行った。また,顕微高速度カメラを使用して粒子の挙動を解析した。平成27年度は,前年度に制作した装置を用いて粒子帯電実験を行い,詳細なデータを取得するとともに実験結果を踏まえて帯電過程の理論検討および帯電プロセスの検討を行う計画である。これに対して,単極荷電ジェットの操作条件を系統的に変化させて粒子帯電量を測定・評価した。また,単極荷電ジェットの照射距離および帯電粒子の照射方法を評価し,試料粒子の材料を変更し,粒子の比電荷の分布を測定した。次に,粒子帯電実験の結果および電荷移動モデルの整合性を検討しながら,単極荷電ジェットにおける粒子帯電過程の理論モデルを構築した。さらに,粒子を分散させて帯電実験を行うとともに固定粒子層で帯電実験を行い,電荷移動の解析と検証および顕微高速度カメラを使用して粒子の挙動を解析した。上記のとおり,研究は計画にしたがって順調に進行している。本研究では,プラズマジェットを自由空間につくり,単極イオンあるいは電子を抽出して,粒子に電荷を精密かつ速やかに付与する技術を開発することを目的とする。電荷付与装置を設計・製作し,単極イオンジェットの生成条件を明らかにしたのち,粒子を供給して帯電粒子の動的挙動を解析するとともに,帯電制御を決定するパラメータを定量的に解析・評価して,粒子帯電システムを構築する。一連の実験,解析,評価を3年間で行う。本年度は,実用性を考慮した確証実験を行い,理論的検討を加えた総合評価を踏まえて,粒子帯電システムを完成させた。粒子の帯電制御を連続して行うために,粒子供給装置を組み込み,装置の素材の影響を検討して粒子の帯電特性を評価した。特に,プラズマジェットで生成した電荷を直接粒子に付与するのではなく,誘電板に電荷を付与したのち,その電荷を粒子に再付与させる方法を検討した。得られた主な知見は以下のとおりである。
KAKENHI-PROJECT-26289288
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26289288
粉体の瞬間精密電荷制御を可能にする気相単極イオン抽出法の開発と帯電粒子の運動解析
プラズマジェットの電極に印加する直流バイアス電圧を変更すると,正あるいは負の電荷を誘電板の表面に任意の割合で付与できた。誘電板には,正に帯電しやすいポリメタクリル酸メチルと負に帯電しやすいポリ塩化ビニルを使用した。プラズマジェットを使用しないで粒子を誘電板に接触させると,接触電位差の違いによって粒子の帯電に誘電板の素材の影響が現れたが,大気圧プラズマジェットの電荷を利用して粒子に電荷を再付与すると,粒子の電荷は誘電板の表面電位に対して正比例の関係を示した。すなわち,粒子の帯電量は誘電板に付与した電荷によって制御できることが実証された。本法により,プラズマジェットに起因する電荷の発生速度と粒子の供給速度を一致させる必要がなくなり,操作性の自由度は各段に向上した。粒子を誘電板に連続供給して瞬時に粒子の帯電制御を行うシステムを構築した。大気圧プラズマジェットから生成される電荷を利用して粒子表面の電荷を制御する方法を実験的に検討した.石英ガラス管に電極を取り付けて交流電圧および直流バイアス電圧を印加し,ヘリウムガスを供給して大気圧プラズマジェットを生成した.直流バイアス電圧の値を変えることにより,プラズマ中の正イオンや電子を選択的に抽出できた.粒子をプラズマジェット中で重力落下させる実験と静置した粒子にプラズマジェットを照射する実験を行い,いずれも空間電荷に基づく電場によって正イオンや電子を粒子に付与できることがわかった.また,外部電場の印加によっても粒子の帯電を制御できた.これらの実験結果をもとに粒子の帯電機構を考察した.平成26年度は,実験的検討で中心となる装置の設計・製作を行い,試運転と基礎特性実験を行う計画である。これに対して,装置の設計・製作を完了したのち,プラズマジェットの実験パラメータである周波数,電圧,波形の影響,プラズマジェットの形状および希ガスの種類と流量の影響を計画に基づいて,実験,解析,評価を行った。また,プラズマジェットによる粒子の荷電を行い,比電荷の測定を行うことができた。したがって,計画どおり順調に進展している。平成28年度は,実用性を考慮した確証実験を行い,理論的検討を加えて総合評価を行い,システムの構築を図る。特に,粒子を連続帯電させるために,供給装置を用いて連続供給し,素材の影響を検討して,粒子の帯電特性を評価する。プラズマジェットで生成した電荷を直接粒子に付与するのではなく,傾斜振動板に電荷を付与したのち,その電荷を粒子に付与させる方法を検討する。この方法により,プラズマジェットに起因する電荷の発生速度と粒子の供給速度を一致させる必要がなくなり,操作の自由度は各段に高くなる。さらに,システム構築に必要な粒子帯電メカニズムを検討する。28年度が最終年度であるため、記入しない。化学工学平成26年度に制作した装置を用いて粒子帯電性能実験を行い,詳細なデータを取得するとともに実験結果を踏まえて帯電過程の理論検討および帯電プロセスの検討を行う。
KAKENHI-PROJECT-26289288
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高等教育機関におけるFD・SDを目的としたOR支援型IRシステムの開発
本研究では,高等教育機関の教学データを一元的に管理・分析し,教職員によって学生指導に活用されることを目的としたIRシステムを開発,評価した.具体的には,学生の留年可能性を早期に発見し,指導に役立てるための留年判定モデルを運用するシステムを開発した.留年判定モデルでは,ソフトマージン・サポートベクターマシンを採用し,機械学習ライブラリを用いてスタンドアロンのPC上に実装した.過去の学生データを用いて留年を判定し,予測精度の確認と教員による評価を受けた結果,留年予測の精度は93%であり,判定結果の理解度も高かった.一方で,表示されるデータの解釈やインタフェースについては課題が残された.平成26年度の計画として,(1)米国におけるIR事例の調査,蓄積,(2)データの収集とデータベースが当初計画されていた.具体的には,IR先進国である米国の学会での情報収集や米国の研究者・IR専門職員との議論から,米国の最新事例やそこで用いられるデータを把握するほか,社会や学習者などのニーズを調査する.これを踏まえて,本研究が研究対象とする大学が保有するデータを網羅的に収集する.(2)について,(1)で得た情報や,国内におけるIRへのニーズを念頭に置きながら,研究対象とする大学でデータベースを構築する準備段階として,どのようなデータが,どこに(どの部署,部局によって)保存されているかの調査を行い,データディクショナリーのインデックスを開発した.本研究の目的は、高等教育機関が機関内の各部局・部署に保有するデータを一元的に管理・分析し、フィードバックして改善する統合的システムを開発し、教育実践の中で評価することである。また目標を達成するために、五段階の研究ステップを経る予定である。具体的には、米国におけるシステム使用状況調査、分析モデルの開発、データウェアハウスの設計・開発、ORの知見を活用した分析モデル・データの実装、システム使用の効果測定・評価の順に研究を進める計画となっている。平成27年度は、上記進捗ステップのうち、当初予定していたデータウェアハウス開発および分析モデルの実装までを達成した。具体的には、試作版として、大学教職員が学生の留年の可能性を早期に発見し、指導に役立てるための留年判定モデルを運用するシステムを開発し、過去の学生データを基にしたダミーデータを用いて稼働を確認した。留年判定モデルでは、判別分析に用いることができるソフトマージン・サポートベクターマシン(SVM)を採用し、機械学習ライブラリを用いてスタンドアロンのPC上に試作版を実装した。試作版の開発過程では、まず、使用できるデータを検討してデータウェアハウスの要件・仕様を定めた。次に、分析モデルとしてSVMおよび包絡分析法(DEA)を検討し、より的確な判定を行えるSVMを選択した。また、システムのインターフェース、特にユーザである教職員が最初に目にするダッシュボードに関しては、表示項目および表示方法を適正化するために教員へのニーズ調査を実施し、その結果を反映して可視化方法を決定した。なお、平成27年度末に入力しているデータは一大学の一専攻のIRデータを加工した11項目のダミーデータであり、複数教育機関の実データを用いた判定精度の確認や向上は今後の課題である。研究計画では、平成27年度中にモデルの試行、データウェアハウスの構築、モデルの実装、形成的評価までを達成する予定であった。平成27年度には、まず、システム開発以前に複数回にわたってモデルに用いる分析法を検討し、ソフトマージンSVMを選択した。その後、データウェアハウスおよびモデルを実装した試作版をシステム開発してダミーデータを用いた稼働テストまでを完了した。アクション・リサーチによる形成的評価は、年度末に開始されたが、評価結果を集約分析するには至らなかった。したがって、全体として順調に進展し、当初計画されていた進捗度合いをおおむね達成したが、成果のまとめまで至らなかった部分が残された状況である。平成28年度は前年度末(平成28年3月)までに開発した留年予測システム(Risk Detector、以下、本システム)の評価および活用法の検討を中心に研究を進め、成果を発表した。本システムは、ソフトマージン・サポートベクターマシン(SVM)による判別分析に機械学習ライブラリを用いて、過去の学生の成績やアンケート結果から留年判定モデルを構築し、現在在学している学生の留年を予測するものである。また、教職員が学生の指導で用いることを想定して、操作性やインターフェースを設計した。この開発過程を通じて、留年メカニズムや使用可能なデータのコーディング方法などに関する知見が得られたので随時発表した。本システムの評価では、本科研の代表者・分担者が所属する大学の学生データを匿名化したうえで入力し、実際に教員に本システムを使用してもらい、三つの観点からデータを集めた。第一に留年予測の精度、第二に判定結果の理解度、第三に学生指導・支援への役立ち度である。このうち、第一の観点では、正しく予測された学生は93%であり、予測が的中しなかった学生は7%であった。予測が外れた学生は、留年すると予測されたにもかかわらず実際には留年しなかった学生であって、その逆(留年しないと予測され、実際は留年した)は存在なかった。また、判定結果についてはおおむね理解が得られたが、判別関数の表示方法や、関数値を提示しても混乱をもたらすのではないかという指摘があった。学生指導に関しては、開発時に想定した複数の場面に応じて賛否が分かれ、具体的な改善点が提案された。
KAKENHI-PROJECT-26282057
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高等教育機関におけるFD・SDを目的としたOR支援型IRシステムの開発
これらの評価結果や、それを受けた改善策について国際会議で発表したところ、的中率については高評価であったが、システムの使用方法やどのタイミングで使用するのかまで検討すべきであるという意見が多かったため、それらも考慮したうえで最終的な成果を論文化し、発表する予定である。本研究では,高等教育機関の教学データを一元的に管理・分析し,教職員によって学生指導に活用されることを目的としたIRシステムを開発,評価した.具体的には,学生の留年可能性を早期に発見し,指導に役立てるための留年判定モデルを運用するシステムを開発した.留年判定モデルでは,ソフトマージン・サポートベクターマシンを採用し,機械学習ライブラリを用いてスタンドアロンのPC上に実装した.過去の学生データを用いて留年を判定し,予測精度の確認と教員による評価を受けた結果,留年予測の精度は93%であり,判定結果の理解度も高かった.一方で,表示されるデータの解釈やインタフェースについては課題が残された.概ね順調に進展していると考えられるが,研究分担者数名が27年度に異動し,研究体制の再構築に時間を要することが懸念される.テレビ会議などを密に行いながら,研究進展に努めたい.平成28年度は、本研究の最終年度であるので、残る研究課題に取り組み研究目標を達成できるようにする。また、学会発表や投稿論文の形で成果を積極的に発表する。具体的には、二つの方向性から、試作版システムを評価し、改善する。評価では、アクション・リサーチの手法を用いる予定である。第一に、判定精度と汎用性を高める研究である。多様なデータセットを用いて機械学習を深めて、留年判定の精度を上げると同時に、オーセンティックな使用場面を想定して評価する。さらに、平成27年度に用いたデータセット自体についても再検討する。第二に、ユーザビリティを高める研究である。ユーザビリティ評価の対象として、インターフェースだけでなく、操作性や学生指導への役立ち度も含める。研究成果発表の場としては、9月に開催される教育工学会全国大会、年度末に開催される大学教育研究フォーラムのほか、米国AIRやAACEが主催する国際会議も想定している。また、これら学会発表を通した指摘等をふまえて論文を取りまとめ、投稿する予定であり、代表者・分担者間で発表・執筆の分担も調整している。28年度が最終年度であるため、記入しない。オペレーションズ・リサーチ,経営工学平成27年度の研究計画として,(3)業務・教育改善モデルの開発とデータウエアハウスの要件定義,(4)業務・教育改善モデルの評価とデータウエアハウスの開発・評価を行う.(3)では,ORの手法を用いて,大学における業務・教育の問題の構造を把握し,問題の構成要素を明確にすることによって,モデルを開発する.(4)では,モデルの構成要素に関するデータを26年度計画(2)のデータベースから抽出し,コンピュータによる数値計算やシミュレーションを用いてモデルを評価する.上記の2点を今年度の研究計画として遂行し,年度内に,中間報告を行う予定である.分担者の次年度使用額は、予定していた学会への出張を体調不良により取りやめたためであり、代表者の次年度使用額は、システム開発委託費の端数として生じた。28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-26282057
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26282057
在宅医療を選択した癌患者とその家族の健康信念、選択に関連した要因、実施後の満足度
本研究では東京・神奈川・兵庫の8医療施設で研究承諾の得られた59名に面接調査を行なった。59名の対象者の内57名はすでに亡くなっておりその家族への面接調査となった。分析は質的研究方法の分析方法に沿って行なった。在宅医療を選択した対象者とその家族は、ターミナル期になり「治らない」ことがはっきりした時にそこからの転換をはかり、入院環境が対象者に与える影響を最も重要に考え、在宅医療を選択していた。家族は「在宅死」や「在宅での看取り」を在宅医療の目標としているのではなく、少しでも安寧に長く、よりよく生きることを目標としていた。対象者とその家族の在宅医療やHPNに関する知識はほとんどない状態で、"無知であり""初めての経験"であると述べていた。これに対して医療者からの適切なインフォームド・コンセントやコーディネート、教育・指導などの支援が提供されれば、病状への予測性と対処可能感、問題解決のコーピング能力も高まり、在宅医療への移行がスムーズ行なわれ、実施後の満足度も高かった。ターミナル期になった段階で家族が引き受けることが家族の役割と考え、それを果たすことが家族にとって大切なことだと考える家族は在宅医療の選択に関する意見の一致度も高かった。HPNに関する調剤や薬剤配送サービス、輸液ポンプの利用は在宅での医療処置の負担を軽減し、対象者の生活を広げるのに効果的であった。在宅医療で提供された訪問診療への満足度は高かった。しかし、対象者が医療処置や生活面でのセルフケアができる場合の訪問看護の評価は低かった。在宅医療のみの評価は高くても、在宅開始時のパフォーマンスステイタスやそれまでのインフォームド・コンセントが癌治療のプロセス全体での満足度に影響していた。費用に関しては保険適応内で実施されているため負担感は少なく満足していた。今後、在宅医療への情報やシステムが整備されることを望んでいた。平成12年7月までに本研究の在宅医療の選択という行動に対する前提要因、実現要因、強化要因の内容と要因間の関係について文献レビューにより研究概念を明らかにした。この研究概念に基づき、面接調査時の質問内容どして1.在宅医療に関する情報、2.在宅医療の選択、3.これまでの病気や治療・看病に関する考え方、4.今回の病気について、5.中心静脈栄養法に関して、6.家族や周りのサポートに関して,7.在宅医療の評価に関して、8.費用に関しての8つの項目を挙げ、40の質問項目を決定した。平成12年8月から首都圏(東京,千葉,埼玉,神奈川)の20施設(17病院,3医院)と大阪・兵庫の4施設(3病院,1医院)に研究協力を依頼し、首都圏では6施設(3病院,3医院)、大阪・兵庫では2施設(1病院,1医院)の研究協力が得られた。研究協力が得られた8施設の内4施設(2病院,2医院)では施設から対象患者への研究協力の依頼が行なわれ、31名の研究協力の承諾を得た。他の4施設では、95名の対象者に研究者から直接郵送による研究協力の依頼を行い、29名の研究協力を得た。平成12年10月から平成13年3月にかけて58名への面接調査を実施した。現在,在宅を実施している患者・家族に関しては、対象者の状況や倫理的な面からも協力依頼が難しく、亡くなった家族への面接調査となった。分析は今後行なっていくが、面接調査の過程で、在宅医療の選択が癌の治療により"治る可能性があるか否か"によって決定される傾向が見られた。"在宅死"についてはほとんどの家族が在宅医療の開始時には考えおらず、在宅医療で関わる医療者とのプロセスを経た結果として"在宅死"が見られた。今回、面接を行なった家族のほとんどは、行なわれた在宅医療の内容(中心静脈栄養法含めて)や対象患者への家族としての援助、費用に関して満足感を持っているように見られた。本研究では東京・神奈川・兵庫の8医療施設で研究承諾の得られた59名に面接調査を行なった。59名の対象者の内57名はすでに亡くなっておりその家族への面接調査となった。分析は質的研究方法の分析方法に沿って行なった。在宅医療を選択した対象者とその家族は、ターミナル期になり「治らない」ことがはっきりした時にそこからの転換をはかり、入院環境が対象者に与える影響を最も重要に考え、在宅医療を選択していた。家族は「在宅死」や「在宅での看取り」を在宅医療の目標としているのではなく、少しでも安寧に長く、よりよく生きることを目標としていた。対象者とその家族の在宅医療やHPNに関する知識はほとんどない状態で、"無知であり""初めての経験"であると述べていた。これに対して医療者からの適切なインフォームド・コンセントやコーディネート、教育・指導などの支援が提供されれば、病状への予測性と対処可能感、問題解決のコーピング能力も高まり、在宅医療への移行がスムーズ行なわれ、実施後の満足度も高かった。ターミナル期になった段階で家族が引き受けることが家族の役割と考え、それを果たすことが家族にとって大切なことだと考える家族は在宅医療の選択に関する意見の一致度も高かった。HPNに関する調剤や薬剤配送サービス、輸液ポンプの利用は在宅での医療処置の負担を軽減し、対象者の生活を広げるのに効果的であった。在宅医療で提供された訪問診療への満足度は高かった。しかし、対象者が医療処置や生活面でのセルフケアができる場合の訪問看護の評価は低かった。
KAKENHI-PROJECT-12877407
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12877407
在宅医療を選択した癌患者とその家族の健康信念、選択に関連した要因、実施後の満足度
在宅医療のみの評価は高くても、在宅開始時のパフォーマンスステイタスやそれまでのインフォームド・コンセントが癌治療のプロセス全体での満足度に影響していた。費用に関しては保険適応内で実施されているため負担感は少なく満足していた。今後、在宅医療への情報やシステムが整備されることを望んでいた。
KAKENHI-PROJECT-12877407
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カチオン性パラジウム錯体触媒を応用した新規イオウキラルシントンの創製
パラジウムトリフラートと2当量の2座ホスフィン配位子(R_2P(CH_2)_nPR_2:n=1,2,3)または2座ピリジン配位子(bipy;phen)との反応により、カチオン性パラジウムトリフラート錯体(L_2Pd^<2+>(OTf^-)_2))を高収率で合成することができた。4当量の1座ホスフィン配位子(R_3P)との反応では、アセトニトリルが共に配位したカチオン錯体(L_<4-n>(CH_3CN)_nPd2^+(OTF^-)_2))が得られた。この時の生成物の構造は、リン原子上の置換基(R)によって異なった。トリn-ブチルホスフィンでは4個配位したものが、トリt-ブチルホスフィンおよびトリフェニルホスフィンでは3個配位したものが、またトリi-プロピルホスフィンおよびトリシクロヘキシルホスフィンではホスフィンが2個しか配位しない錯体のみが得られた。得られたトリス(トリフェニルホスフィン)アセトニトリルパラジウム(2+)錯体は、アセトニトリル中で^<31>P NMRを測定することによって、配位子の解離に基づく動的な平衡状態にあることを見出した。以上の結果について、第45回有機金属化学討論会(1998年東京)にて発表した。2座ホスフィン配位子を有する錯体は、アルケンの二酸化イオウと水素によるヒドロスルホニル化反応、およびシクロペンタジエンの重合反応において触媒活性を示すことを見出した。ヒドロシランと二酸化イオウを用いるヒドロシラスルホニル化反応によるアルカンスルフィン酸シリルエステルの合成反応の条件を検討中である。カンファースルホン酸から光学活性アルカンスルフィン酸シリルエステルを別途合成し、安定性を確認中である。パラジウムトリフラートと2当量の2座ホスフィン配位子(R_2P(CH_2)_nPR_2:n=1,2,3)または2座ピリジン配位子(bipy;phen)との反応により、カチオン性パラジウムトリフラート錯体(L_2Pd^<2+>(OTf^-)_2))を高収率で合成することができた。4当量の1座ホスフィン配位子(R_3P)との反応では、アセトニトリルが共に配位したカチオン錯体(L_<4-n>(CH_3CN)_nPd2^+(OTF^-)_2))が得られた。この時の生成物の構造は、リン原子上の置換基(R)によって異なった。トリn-ブチルホスフィンでは4個配位したものが、トリt-ブチルホスフィンおよびトリフェニルホスフィンでは3個配位したものが、またトリi-プロピルホスフィンおよびトリシクロヘキシルホスフィンではホスフィンが2個しか配位しない錯体のみが得られた。得られたトリス(トリフェニルホスフィン)アセトニトリルパラジウム(2+)錯体は、アセトニトリル中で^<31>P NMRを測定することによって、配位子の解離に基づく動的な平衡状態にあることを見出した。以上の結果について、第45回有機金属化学討論会(1998年東京)にて発表した。2座ホスフィン配位子を有する錯体は、アルケンの二酸化イオウと水素によるヒドロスルホニル化反応、およびシクロペンタジエンの重合反応において触媒活性を示すことを見出した。ヒドロシランと二酸化イオウを用いるヒドロシラスルホニル化反応によるアルカンスルフィン酸シリルエステルの合成反応の条件を検討中である。カンファースルホン酸から光学活性アルカンスルフィン酸シリルエステルを別途合成し、安定性を確認中である。本年度は、触媒に用いる予定のパラジウム錯体について以下の2項目の研究を行った。1.パラジウムトリフラートと各種ホスフィン配位子との反応によるカチオン性2価パラジウム錯体の一般的調整法:アセトニトリル中パラジウムトリフラートに各種第三ホスフィンをはたらかせると、ホスフィンが24個配位したカチオン性2価パラジウムトリフラート錯体を高収率で単離することができた。配位するホスフィンの数はリン上のアルキル基によって異なることが分かった。例えば、トリイソプロピルホスフィンの場合には2個、トリフェニルホスフィンでは3個、トリブチルホスフィンでは4個配位した錯体が得られた。これら錯体はアセトニトリル溶液中では、配位子の解離・配位に基づく動的平衡状態にあることも明らかになった。2.カチオン性2価パラジウムトリフラート錯体の触媒活性:得られたカチオン性2価パラジウムトリフラート錯体を用いて、オレフィンの重合反応における触媒活性を検討した。その結果、従来から知られているBF_4など閉殻アニオンを持ったカチオン性2価パラジウム錯体とは異なり、オレフィンの重合反応の触媒として働かないことが明らかになった。一方、ジエンの重合においても中性2価錯体が触媒となるブタジエンの2量化反応に対し活性がないことも明らかになった。一方、カチオン性2価バラジウムトリフラート錯体はシクロペンタジエンの重合反応の触媒となり、従来のルイス酸触媒などを用いて得られるポリマーとは異なるポリシクロペンタジエンが得られた。
KAKENHI-PROJECT-09650954
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650954
カチオン性パラジウム錯体触媒を応用した新規イオウキラルシントンの創製
パラジウムトリフラートと2当量の2座ホスフィン配位子(R_2P(CH_2)_nPR_2:n=1,2,3)または2座ピリジン配位子(bipy;phen)との反応により、カチオン性パラジウムトリフラート錯体(L_2Pd^<2+>(OTf^-)_2))を高収率で合成することができた。4当量の1座ホスフィン配位子(R_3P)との反応では、反応溶媒であるアセトニトリルが共に配位したカチオン錯体(L_<4-n>(CH_3CN)_nPd^<2+>(OTf^-)_2))が得られた。この時の生成物の構造は、リン原子上の置換基(R)によって異なった。トリn-ブチルホスフィンでは4個配位したものが、トリt-ブチルホスフィンおよびトリフェニルホスフィンでは3個配位したものが、またトリi-プロピルホスフィンおよびトリシクロヘキシルホスフィンではホスフィンが2個しか配位しない錯体のみが得られた。得られたトリス(トリフェニルホスフィン)アセトニトリルパラジウム(2_+)錯体は、アセトニトリル中で^<31>P NMRを測定することによって、配位子の解離に基づく動的な平衡状態にあることを見出した。以上の結果について、第45回有機金属討論会(1998年東京)にて発表した。2座ホスフィン配位子を有する錯体は、アルケンの二酸化イオウと水素によるヒドロスルホニル化反応、およびシクロペンタジエンの重合反応において触媒活性を示すことを見出した。ヒドロシランと二酸化イオウを用いるヒドロシラスルホニル化反応によるアルカンスルフィン酸シリルエステルの合成反応の条件を検討中である。カンファースルホン酸から光学活性アルカンスルフィン酸シリルエステルを別途合成し、安定性を確認中である。
KAKENHI-PROJECT-09650954
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ストレス関連新規CRHファミリーペプチド及び受容体の卵巣機能に与える影響の解析
近年、CRH関連ペプチドとして、urocortin1 (Ucn1), stresscopin (SCP)/urocortin3 (Ucn3), stresscopin-related peptide (SRP)/urocortin 2 (Ucn2)が発見され、CRHR1およびCRHR2という2種類の受容体にそれぞれ異なる結合能(CRHとUcn1は、CRHR1,CRHR2の両方に結合し得るが、SCPとSRPは、CRHR2のみに結合する。)で結合し、CRHと同様に生体のストレス反応に関与することが解明されつつある。本検討はすべて、神戸大学大学院医学系研究学科医学倫理委員会の承認のもと、インフォームドコンセントの後に施行した。初期の子宮癌手術で摘出されたヒト正常卵巣および不妊治療患者(男性因子と卵管因子)の卵胞液から分離培養したヒト黄体化顆粒膜細胞におけるSCP/Ucn3およびCRHR2のmRNAレベルでの存在を、RT-PCRで検討した。ヒト正常卵巣ならびにヒト黄体化顆粒膜細胞では、CRH,Ucn1,SCP,SRPのmRNA発現を認めた。また、それら受容体であるCRHR1,CRHR2のmRNA発現を認めた。CRHR1ならびにCRHR2の培養ヒト黄体化顆粒膜細胞における局在は免疫染色法で存在を確認した。とくに、CRHR2の機能解析のため、Ucn1とSCPに着目した。培養ヒト黄体化顆粒膜細胞において、Ucn1とSCPのタンパク発現を免疫染色胞で検討したが、Ucn1のタンパク発現は抗体が悪いためか不明瞭であったが、SCPタンパク発現は存在を認めた。SCP/Ucn3の培養ヒト黄体化顆粒膜細胞のプロゲステロン産生に与える影響を検討するため、SCP/Ucn3添加前後の培養液中プロゲステロン値の変化をELISA法で測定した。SCP/Ucn3添加により培養ヒト黄体化顆粒膜細胞でのプロゲステロン産生を抑制した。CRH関連ペプチドとして、urocortin1 (Ucn1), stresscopin (SCP)/urocortin3 (Ucn3), stresscopin-related peptide (SRP)/urocortin 2 (Ucn2)が発見され、CRHR1およびCRHR2という2種類の受容体にそれぞれ異なる結合能で結合し、CRHと同様に生体のストレス反応に関与することが解明されつつある。本検討はすべて、神戸大学大学院医学系研究学科医学倫理委員会の承認のもと、インフォームドコンセントの後に施行した。昨年度、SCP/Ucn3の培養ヒト黄体化顆粒膜細胞のプロゲステロン産生に与える影響を検討するため、SCP/Ucn3添加前後の培養液中プロゲステロン値の変化をELISA法で測定した。SCP/Ucn3添加により培養ヒト黄体化顆粒膜細胞でのプロゲステロン産生を抑制した。本年度は、初期の子宮癌手術で摘出されたヒト正常卵巣および不妊治療患者(男性因子と卵管因子)の卵胞液から分離培養したヒト黄体化顆粒膜細胞におけるSRP/Ucn2の存在を、RT-PCRで検討した。ヒト正常卵巣ならびにヒト黄体化顆粒膜細胞では、SRP/Ucn2のmRNA発現を認めた。SRP/Ucn2の培養ヒト黄体化顆粒膜細胞における局在を免疫染色法で検討したが、抗体の特異性が悪く、明らかなタンパクレベルでの存在は明らかではなかった。また、SRP/Ucn2の生物活性の検討のためヒト黄体化顆粒膜細胞にさまざまな濃度で添加した。現在までのところ、SRP/Ucn2は添加前後の培養液中プロゲステロン値は濃度依存性に抑制されている傾向を認めた。現在、アンタゴニストを添加することで、この作用がCRHR2を介するものであるかどうかを検討している。
KAKENHI-PROJECT-21791556
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21791556
重元素領域の単一原子化学(ノーベリウムの酸化還元)
本研究では、重元素領域(原子番号100番以上の元素)の化学の開拓のために,迅速化学操作と検出法を開発し,(1)いわゆる"Atom ata time chemistry"(単一原子の化学)の化学的基盤の確立,(2)重元素実験の第一ステップとして重アクチノイド元素ノーベリウム(No)の酸化還元実験,を行うことを目的とする。そのために、これまでに単一原子検出が可能な放射性物質(RI)を対象とし,RI製造用照射チェンバー,生成物搬送システム(ガスジェット法),迅速化学分離装置,測定試料調製・搬送装置,及び検出システムを組み合わせた単一原子化学実験システムの開発を行った。これまでの成果は以下のようにまとめられる。・加速器オンライン用の化学実験装置を構築し、トレーサー及び既存のガスジェット搬送装置と^<252>Cf線源によるテスト実験を行った。・東北大サイクロトロンで加速器オンラインテストを行い、自動駆動を確認した。・2連カラムシステムのオンラインシミュレーションテストを行った。次に、理化学研究所のリングサイクロトロンを使って、核破砕反応による多種核種を導入し、オンラインによる希土類部分の相互分離テストを行った。これにより、装置的な問題点を洗い出し、改良を行った。・化学分離後試料に多様に対応できるよう液体シンチレーターによるα測定系の開発を行い、主に、溶媒抽出に対応する系でテスト実験を進めている。・日本原子力研究所にて、既存の重元素化学分離装置を改良し、Noの生成とNo^<II>のオンラインイオン交換挙動実験を行った。次に、No^<III>の挙動を調べるべく、種々の酸化剤による酸化反応を試み、PbO_2被服のカラム法によるオンライン酸化反応実験を行ったが不成功に終わった。現在、問題点の検討と電解法による新たな方法論の開発を進めている。本研究では、重元素領域(原子番号100番以上の元素)の化学の開拓のために,迅速化学操作と検出法を開発し,(1)いわゆる"Atom ata time chemistry"(単一原子の化学)の化学的基盤の確立,(2)重元素実験の第一ステップとして重アクチノイド元素ノーベリウム(No)の酸化還元実験,を行うことを目的とする。そのために、これまでに単一原子検出が可能な放射性物質(RI)を対象とし,RI製造用照射チェンバー,生成物搬送システム(ガスジェット法),迅速化学分離装置,測定試料調製・搬送装置,及び検出システムを組み合わせた単一原子化学実験システムの開発を行った。これまでの成果は以下のようにまとめられる。・加速器オンライン用の化学実験装置を構築し、トレーサー及び既存のガスジェット搬送装置と^<252>Cf線源によるテスト実験を行った。・東北大サイクロトロンで加速器オンラインテストを行い、自動駆動を確認した。・2連カラムシステムのオンラインシミュレーションテストを行った。次に、理化学研究所のリングサイクロトロンを使って、核破砕反応による多種核種を導入し、オンラインによる希土類部分の相互分離テストを行った。これにより、装置的な問題点を洗い出し、改良を行った。・化学分離後試料に多様に対応できるよう液体シンチレーターによるα測定系の開発を行い、主に、溶媒抽出に対応する系でテスト実験を進めている。・日本原子力研究所にて、既存の重元素化学分離装置を改良し、Noの生成とNo^<II>のオンラインイオン交換挙動実験を行った。次に、No^<III>の挙動を調べるべく、種々の酸化剤による酸化反応を試み、PbO_2被服のカラム法によるオンライン酸化反応実験を行ったが不成功に終わった。現在、問題点の検討と電解法による新たな方法論の開発を進めている。本研究は重元素領域(原子番号100番以上の元素)の化学の開拓のために,迅速化学操作と検出法を開発し,(1)いわゆる"Atom ata time chemistry"(単一原子の化学)の化学的基盤の確立,(2)重元素実験の第一ステップとして重アクチノイド元素ノーベリウム(No)の酸化還元実験,を行うことを目的とする。そのために、単一原子検出が可能な放射性物質(RI)を対象とし,RI製造用照射チェンバー,生成物搬送システム(ガスジェット法),迅速化学分離装置,測定試料調製・搬送装置,及び検出システムを組み合わせた単一原子化学実験システムの開発を行う。本年度は、主に化学分離装置の構築とオンラインテスト実験、および単一原子化学の基礎実験に当てられた。本研究補助金は主にイオン交換カラム系の迅速・連続型マルチステップ化学分離装置,回転式α線測定チェンバー、および単一原子製造用のターゲットチェンバーの作成に当てられた。今年度に行った実験の成果は以下の通りである。・迅速化学実験装置の連続駆動テストを行い、カラムのリサクル性や再現性が確認された。・既存のガスジェット搬送装置と^<252>Cf線源やRIトレーサーにより、オンラインシミュレーションテストを行った。トレーサーによる基本性能テストおよび核分裂生成物の希土類部分の相互分離テストの結果、Noの分離に充分な性能が確認された。・東北大学サイクロトロンにて加速器オンラインのテスト実験を行い、問題点を洗い出した。・回転式α線測定チェンバーを作成し、東北大学サイクロトロンにてテストを行いつつある。さらに、化学分離後試料に多様に対応できるよう液体シンチレーターによるα測定系の開発にも着手した。・日本原子力研究所にて既存の重元素化学分離装置を改良し、Noの酸化還元実験を平行して進めている。最終的には上記開発中の装置で行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-14340207
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14340207
重元素領域の単一原子化学(ノーベリウムの酸化還元)
本研究では、重元素領域(原子番号100番以上の元素)の化学の開拓のために,迅速化学操作と検出法を開発し,(1)いわゆる"Atom ata time chemistry"(単一原子の化学)の化学的基盤の確立,(2)重元素実験の第一ステップとして重アクチノイド元素ノーベリウム(No)の酸化還元実験,を行うことを目的とする。そのために、これまでに単一原子検出が可能な放射性物質(RI)を対象とし,RI製造用照射チェンバー,生成物搬送システム(ガスジェット法),迅速化学分離装置,測定試料調製・搬送装置,及び検出システムを組み合わせた単一原子化学実験システムの開発を行った。本年度は、昨年度開発された化学実験装置を使った加速器オンライン実験テスト、及び化学操作部分の開発をおこない、さらに、Noのオンライン酸化反応を行い、イオン交換挙動より3価のイオン半径の導出を目指した。・既存のガスジェット搬送装置と^<252>Cf線源やRIトレーサーにより、2連カラムシステムのオンラインシミュレーションテストを行った。次に、理化学研究所のリングサイクロトロンを使って、核破砕反応による多種核種を導入し、オンラインによる希土類部分の相互分離テストを行った。これにより、装置的な問題点を洗い出し、改良を行った。・化学分離後試料に多様に対応できるよう液体シンチレーターによるα測定系の開発を行い、主に、溶媒抽出に対応する系でテスト実験を行った。・日本原子力研究所にて、既存の重元素化学分離装置を改良し、Noの生成とNo^<II>のオンラインイオン交換挙動実験を行った。次に、No^<III>の挙動を調べるべく、種々の酸化剤による酸化反応を試み、PbO_2被服のカラム法によるオンライン酸化反応実験を行ったが不成功に終わった。この結果に基づき、電解法による新たな方法論が検討された。
KAKENHI-PROJECT-14340207
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14340207
有機イオンビーム法を用いた反応実験による有機反応論の検証
前年度までに製作したイオン・分子反応実験装置に波長可変紫外光源によるイオン化法を導入し、NOイオンおよびメチルラジカルイオンの状態選別イオンビーム発生実験を行った。反応実験における衝突エネルギーは、イオン電極群により0.1から10eVの範囲で制御されるが、衝突エネルギー幅の下限が、前駆体分子線の並進エネルギー幅で与えられることが昨年度までに行ったイオン経路シミュレーション計算により示されていた。発生したイオンビームの衝突エネルギー幅を評価するために、前駆体分子線の共鳴多光子イオン化スペクトルを測定して、回転温度を並進温度に近似して解析したところ、分子線回転温度は4Kであった。これは分子線速度1800m/s(He希釈気体試料)を仮定したときのエネルギー分解能15%に相当する。パルスバルブおよびバルブ周辺の分子線発生領域の仕様を大幅に改良したことにより得られたこの狭い速度幅は、衝突エネルギー0.1eVまでの超低エネルギー反応実験が有意に実行できることを示している。イオン経路シミュレーション計算が、生成プロトンを検出対象とした際に再捕捉効率が著しく低下することを示したことから、イオンガイドの改良が必要とされた。これは、反応セル通過後の生成物イオンの再捕捉に対して、反応熱による反跳エネルギーが大きく影響するためである。市販のRF発振器とRFアンプを発振段および増幅段として、コア条件の異なる複数の共振式インターフェース回路を組み合わせることで、130MHz全域において100V以上のRF電圧を供給できるシステムを完成させた。これにより高発熱反応とプロトン反応を対象とできるようになった。前年度までの装置シミュレーションにおいて問題となっていた技術的問題点を解決し、状態選別した分子イオンの衝突エネルギーを制御した反応実験装置を完成することができた。本研究では、イオン・分子反応を有機化学反応の微視的モデルと位置づけ、その反応メカニズムを解明することを目的としている。これを実現する実験手法として、振動・回転状態が選択された分子イオンビームを用いた反応実験装置の開発を行っている。本年度は、これまでに製作したイオン光学系全体が生成する静電ポテンシャルと、これに誘導されるイオン経路の数値シミュレーションを行い、装置全体の性能評価と改良点の精査を行った。シミュレーション計算では、電極群の実際の3次元構造をグリッド化表現し、RF電圧を印加する8重極イオンガイドを再現するために、10MHz以上の周波数で時間的に変動する電場計算を行った。反応系として、CH_3^++C_2H_6→CH_4+C_2H_5^+を想定して、イオン発生点からイオンガイドによる輸送効率と反応セル内での生成イオン再捕捉効率を、実験条件を変えながらシミュレーション計算によって評価した。シミュレーション計算結果のほとんどは、標準的な実験条件下では現在の電極設計が十分機能することを示した。イオンガイドの中心軸から3mm以内でレーザーイオン化発生したCH_3^+イオンは、ガイド内の安定軌道に収束し反応セルまで高効率で輸送された。反応セル内でC_2H_6との反応で生成したC_2H_5+イオンは、反応熱のすべてが並進エネルギーに分配された場合であっても、ほぼ完全にイオンガイドに再捕捉され、検出器に輸送されることが示された。一方で、H_+などの軽イオンを測定対象とする場合には、イオンガイドによる終息のために数10MHz以上の高いRF周波数が必要なことがわかった。また、反応セル直前の加減速電極により制御される衝突エネルギーは、0.1eV程度の低エネルギー領域では、分解能が著しく低下する結果が示された。この結果をもとに、イオンガイドの開口部分に沿った形状の電極を新たに設計するという改良の指針が得られた。前年度までに製作したイオン・分子反応実験装置に波長可変紫外光源によるイオン化法を導入し、NOイオンおよびメチルラジカルイオンの状態選別イオンビーム発生実験を行った。反応実験における衝突エネルギーは、イオン電極群により0.1から10eVの範囲で制御されるが、衝突エネルギー幅の下限が、前駆体分子線の並進エネルギー幅で与えられることが昨年度までに行ったイオン経路シミュレーション計算により示されていた。発生したイオンビームの衝突エネルギー幅を評価するために、前駆体分子線の共鳴多光子イオン化スペクトルを測定して、回転温度を並進温度に近似して解析したところ、分子線回転温度は4Kであった。これは分子線速度1800m/s(He希釈気体試料)を仮定したときのエネルギー分解能15%に相当する。パルスバルブおよびバルブ周辺の分子線発生領域の仕様を大幅に改良したことにより得られたこの狭い速度幅は、衝突エネルギー0.1eVまでの超低エネルギー反応実験が有意に実行できることを示している。イオン経路シミュレーション計算が、生成プロトンを検出対象とした際に再捕捉効率が著しく低下することを示したことから、イオンガイドの改良が必要とされた。これは、反応セル通過後の生成物イオンの再捕捉に対して、反応熱による反跳エネルギーが大きく影響するためである。市販のRF発振器とRFアンプを発振段および増幅段として、コア条件の異なる複数の共振式インターフェース回路を組み合わせることで、130MHz全域において100V以上のRF電圧を供給できるシステムを完成させた。これにより高発熱反応とプロトン反応を対象とできるようになった。前年度までの装置シミュレーションにおいて問題となっていた技術的問題点を解決し、状態選別した分子イオンの衝突エネルギーを制御した反応実験装置を完成することができた。
KAKENHI-PROJECT-20038049
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20038049
情報基盤アルゴリズムとしてのメタヒューリスティクスの研究
本研究では、社会や産業で解決を求められている問題の多くが組合せ問題(あるいは組合せ最適化問題)であることから、そのような問題を対象とする問題解決アルゴリズムの開発をめざした。特に、実用性の高い高速近似アルゴリズムの枠組であるメタヒューリスティクスを中心に、その周辺を含めて研究した。これは、解決を求められている問題の多くがNP困難であるので、実用的観点から近似アルゴリズムによらざるを得ないこと、メタヒューリスティクスは現実的な近似アルゴリズムとして顕著な実績を上げていること、メタヒューリスティクスのアルゴリズムは汎用性が高く頑健性も有しているので広範な問題を一つのアルゴリズムで対応できる、などの理由による。本年度は、最終年度として茨木:研究統括、および枠組みの見直し、標準問題の導入藤重:枠組み、およびアルゴリズム開発の理論的サポート柳浦:メタヒューリスティクスの枠組みの見直し、およびアルゴリズム開発巳波:アルゴリズム開発と意思決定支援システムの実現野々部:アルゴリズム開発と意思決定支援システムの実現梅谷、藤原、千葉、関口:アルゴリズムの開発と性能評価の分担テーマの下で研究を行った。その結果、成果を国際学会での発表、あるいは国際学術論文誌に掲載することができた。本研究では、社会や産業で解決を求められている問題の多くが組合せ問題(あるいは組合せ最適化問題)であることから、そのような問題を対象とする問題解決アルゴリズムの開発をめざしている。対象はきわめて多様であって、アルゴリズムのタイプもひとつに限定されるわけではない。その中で、本研究では、実用性の高い高速近似アルゴリズムの枠組であるメタヒューリスティクスを中心に、その周辺を含めて研究する。これは、解決を求められている問題の多くがNP困難であるので、実用的観点から近似アルゴリズムによらざるを得ないこと、メタヒューリスティクスは現実的な近似アルゴリズムとして顕著な実績を上げていること、メタヒューリスティクスのアルゴリズムは汎用性が高く頑健性も有しているので広範な問題を一つのアルゴリズムで対応できる、などの理由による。本年度は、茨木:研究統括、および枠組みの見直し、標準問題の導入、藤重:二枠組み、およびアルゴリズム開発の理論的サポート、柳浦:メタヒューリスティクスの枠組みの見直し、およびアルゴリズム開発、巳波:アルゴリズム開発と意思決定支援システムの実現、野々部:アルゴリズム開発と意思決定支援システムの実現、のサブテーマの下で研究を行った。それぞれこれまでの研究実績を土台に、どのように展開していくかを考察し、近似アルゴリズムとくにメタヒューリスティクスの枠組みについて検討を加えた。その結果、茨木と柳浦の共同研究になる長方形詰込み問題に対する局所探索の研究については、論文として発表した。また、通信ネットワークの高性能化について検討を加えた論文も掲載採択となった。本研究では、社会や産業で解決を求められている問題の多くが組合せ問題(あるいは組合せ最適化問題)であることから、そのような問題を対象とする問題解決アルゴリズムの開発をめざしている。特に、実用性の高い高速近似アルゴリズムの枠組であるメタヒューリスティクスを中心に、その周辺を含めて研究する。これは、解決を求められている問題の多くがNP困難であるので、実用的観点から近似アルゴリズムによらざるを得ないこと、メタヒューリスティクスは現実的な近似アルゴリズムとして顕著な実績を上げていること、メタヒューリスティクスのアルゴリズムは汎用性が高く頑健性も有しているので広範な問題を一つのアルゴリズムで対応できる、などの理由による。本年度は、茨木:研究統括、および枠組みの見直し、標準問題の導入、藤重:枠組み、およびアルゴリズム開発の理論的サポート、柳浦:メタヒューリスティクスの枠組みの見直し、およびアルゴリズム開発、巳波:アルゴリズム開発と意思決定支援システムの実現、野々部:アルゴリズム開発と意思決定支援システムの実現、梅谷:アルゴリズムの開発と性能評価のサブテーマの下で研究を行った。その結果、2次元長方形詰込み問題に対する局所探索の改良についての成果、配送計画問題に対するより一般的な時間枠制約を考慮したメタヒューリスティクスのアルゴリズム、平面上のn点を最小数の正方形(サイズ一定)で被覆する問題に対するメタヒューリスティクスのアルゴリズム、1次元切り出し問題についての数理計画法を用いた局所探索の改良など、いずれも国際学術論文誌に掲載することができた。本研究では、社会や産業で解決を求められている問題の多くが組合せ問題(あるいは組合せ最適化問題)であることから、そのような問題を対象とする問題解決アルゴリズムの開発をめざしている。特に、実用性の高い高速近似アルゴリズムの枠組であるメタヒューリスティクスを中心に、その周辺を含めて研究する。これは、解決を求められている問題の多くがNP困難であるので、実用的観点から近似アルゴリズムによらざるを得ないこと、メタヒューリステイクスは現実的な近似アルゴリズムとして顕著な実績を上げていること、メタヒューリスティクスのアルゴリズムは汎用性が高く頑健性も有しているので広範な問題を一つのアルゴリズムで対応できる、などの理由による。本年度は、茨木:研究統括、および枠組みの見直し、標準問題の導入藤重:枠組み、およびアルゴリズム開発の理論的サポート柳浦:メタヒューリスティクスの枠組みの見直し、およびアルゴリズム開発巳波:アルゴリズム開発と意思決定支援システムの実現野々部:アルゴリズム開発と意思決定支援システムの実現梅谷、藤原、千葉:アルゴリズムの開発と性能評価の分担テーマの下で研究を行った。その結果、集合被覆問題に対する実用性の高い禁じアルゴリズム、割当型問題の汎用解法、可変形状長方形詰込み問題に対する局所探索法、重量つきモジュールの詰込み問題、1次元資材切り出し問題、可変移動時間を持つ配送計画問題など、いずれも国際学会での発表、あるいは国際学術論文誌に掲載することができた。本研究では、社会や産業で解決を求められている問題の多くが組合せ問題(あるいは組合せ最適化問題)であることから、そのような問題を対象とする問題解決アルゴリズムの開発をめざした。特に、実用性の高い高速近似アルゴリズムの枠組であるメタヒューリスティクスを中心に、その周辺を含めて研究した。
KAKENHI-PROJECT-16092216
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16092216
情報基盤アルゴリズムとしてのメタヒューリスティクスの研究
これは、解決を求められている問題の多くがNP困難であるので、実用的観点から近似アルゴリズムによらざるを得ないこと、メタヒューリスティクスは現実的な近似アルゴリズムとして顕著な実績を上げていること、メタヒューリスティクスのアルゴリズムは汎用性が高く頑健性も有しているので広範な問題を一つのアルゴリズムで対応できる、などの理由による。本年度は、最終年度として茨木:研究統括、および枠組みの見直し、標準問題の導入藤重:枠組み、およびアルゴリズム開発の理論的サポート柳浦:メタヒューリスティクスの枠組みの見直し、およびアルゴリズム開発巳波:アルゴリズム開発と意思決定支援システムの実現野々部:アルゴリズム開発と意思決定支援システムの実現梅谷、藤原、千葉、関口:アルゴリズムの開発と性能評価の分担テーマの下で研究を行った。その結果、成果を国際学会での発表、あるいは国際学術論文誌に掲載することができた。
KAKENHI-PROJECT-16092216
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16092216
導電性高分子膜の電解合成とその機能に関する研究
本研究では、導電性高分子の有機機能材料としての応用を目的として、電解重合法による導電性高分子膜の合成及び得られる高分子膜の機能の向上について検討し、以下に述べる成果を得た。1.ポリアニリンの機能の向上ポリアニリンはその優れた機能により実用材料として期待されているが、その伝導度(10Scm^<-1>以下)及び機械的性質が劣るという欠点を有する。ポリアニリンの伝導度の向上を目的として、電解合成時の反応条件を詳細に検討した結果、適切な条件を選ぶことにより、その伝導度が従来知られている値より一桁向上する事(最大値80Scm^<-1>)を見出した。また、ポリアニリンの伝導度を支配する因子について検討した結果、得られたポリマ-のモルホロジ-及び重合度が重要な因子である事を明らかにした。さらに、本研究で得られた高導電性ポリアニリンは、その機械的強度(最大応力1kgcm^<-2>)においても、もろくて引張り強度が測定不可能な通常のポリアニリンに比較して優れていた。2.酵素複合化高分子膜の機能の向上電解重合法により作成したグルコ-スオキシダ-ゼ(GOD)-ポリピロ-ル修飾電極のグルコ-スセンサ-としての機能の向上を目的として、GODの補欠分子族であるフラピン補酵素(FADあるいはFMN)の同時固定化の効果を検討した。その結果、フラビン補酵素を膜中に共存させることにより、センサ-の感度を20倍以上向上させる事ができた。また、センサ-は100日以上劣化する事なく使用可能であり、安定性の点においても向上がみられた。感度向上の原因について種々の立場から検討を加え、固定化したフラビン補酵素は高分子膜中のGODの酵素活性を向上させるよう機能していることを明らかにした。本研究では、導電性高分子の有機機能材料としての応用を目的として、電解重合法による導電性高分子膜の合成及び得られる高分子膜の機能の向上について検討し、以下に述べる成果を得た。1.ポリアニリンの機能の向上ポリアニリンはその優れた機能により実用材料として期待されているが、その伝導度(10Scm^<-1>以下)及び機械的性質が劣るという欠点を有する。ポリアニリンの伝導度の向上を目的として、電解合成時の反応条件を詳細に検討した結果、適切な条件を選ぶことにより、その伝導度が従来知られている値より一桁向上する事(最大値80Scm^<-1>)を見出した。また、ポリアニリンの伝導度を支配する因子について検討した結果、得られたポリマ-のモルホロジ-及び重合度が重要な因子である事を明らかにした。さらに、本研究で得られた高導電性ポリアニリンは、その機械的強度(最大応力1kgcm^<-2>)においても、もろくて引張り強度が測定不可能な通常のポリアニリンに比較して優れていた。2.酵素複合化高分子膜の機能の向上電解重合法により作成したグルコ-スオキシダ-ゼ(GOD)-ポリピロ-ル修飾電極のグルコ-スセンサ-としての機能の向上を目的として、GODの補欠分子族であるフラピン補酵素(FADあるいはFMN)の同時固定化の効果を検討した。その結果、フラビン補酵素を膜中に共存させることにより、センサ-の感度を20倍以上向上させる事ができた。また、センサ-は100日以上劣化する事なく使用可能であり、安定性の点においても向上がみられた。感度向上の原因について種々の立場から検討を加え、固定化したフラビン補酵素は高分子膜中のGODの酵素活性を向上させるよう機能していることを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-01550625
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01550625
大規模テキストを対象とした質問応答技術の高度化に関する研究
大規模テキストを対象とした質問応答とは,利用者からの任意の質問に対して,蓄積された大規模テキストを参照して回答するというもので,質問という形で受け取った利用者の興味関心に基づき,利用者が真に必要とした情報だけを提供することを可能とする.本研究は,この質問応答技術を高度化し,利用者を中心に据えた高度な情報アクセス手段として確立することを目指し,以下の成果を得た.高度化の第一の方向性として,現状の一問一答型の質問応答技術から,複数の関連した質問に連続して対話的に解答することが可能となる質問応答技術への展開を図った.利用者のレポート作成支援を行うシステムを想定し,その状況でどのような質問がなされるか,それらの質問に適切に解答するためにはどのような処理が必要かの調査検討を行った.その結果に基づき,そのような状況で必要となる質問応答システムの能力を定量的に測定するタスクの提案とテストセットの構築を行った.これを用いて現状システムを分析し,質問応答技術は文脈処理の点でまだ改善の余地があること,正解の列挙を求めるリスト型質問については理論的に未整理の問題が残されていること等を明らかにした.高度化の第二の方向性として,テキストを中心とした質問応答技術からグラフ等の視覚的なモードを利用したマルチモーダルな質問応答技術への展開を行った.その中で,質問に解答するための適切なグラフの選択は利用者の意図に依存すること,その意図が文脈処理を通じて明らかにできることを示した.このマルチモーダル質問応答を更に発展させ,質問応答技術を情報可視化技術,文書要約技術と結びつける研究トピック「動向情報の要約と可視化」を提示し,研究の枠組みを提案すると共に,研究のためのデータセットを作成した.特に新聞記事に対して,要約と可視化の観点から意味的な情報を注釈づけるための仕様の設計を行い,注釈付きコーパスを作成した.大規模テキストを対象とした質問応答とは,利用者からの任意の質問に対して,蓄積された大規模テキストを参照して回答するというもので,質問という形で受け取った利用者の興味関心に基づき,利用者が真に必要とした情報だけを提供することを可能とする.本研究は,この質問応答技術を高度化し,利用者を中心に据えた高度な情報アクセス手段として確立することを目指し,以下の成果を得た.高度化の第一の方向性として,現状の一問一答型の質問応答技術から,複数の関連した質問に連続して対話的に解答することが可能となる質問応答技術への展開を図った.利用者のレポート作成支援を行うシステムを想定し,その状況でどのような質問がなされるか,それらの質問に適切に解答するためにはどのような処理が必要かの調査検討を行った.その結果に基づき,そのような状況で必要となる質問応答システムの能力を定量的に測定するタスクの提案とテストセットの構築を行った.これを用いて現状システムを分析し,質問応答技術は文脈処理の点でまだ改善の余地があること,正解の列挙を求めるリスト型質問については理論的に未整理の問題が残されていること等を明らかにした.高度化の第二の方向性として,テキストを中心とした質問応答技術からグラフ等の視覚的なモードを利用したマルチモーダルな質問応答技術への展開を行った.その中で,質問に解答するための適切なグラフの選択は利用者の意図に依存すること,その意図が文脈処理を通じて明らかにできることを示した.このマルチモーダル質問応答を更に発展させ,質問応答技術を情報可視化技術,文書要約技術と結びつける研究トピック「動向情報の要約と可視化」を提示し,研究の枠組みを提案すると共に,研究のためのデータセットを作成した.特に新聞記事に対して,要約と可視化の観点から意味的な情報を注釈づけるための仕様の設計を行い,注釈付きコーパスを作成した.大規模テキストを対象とした質問応答とは,利用者からの任意の質問に対して,蓄積された大規模テキストを参照して回答するというもので,質問という形で利用者の視点・観点を受け取り,それを考慮した情報の収集・取捨選択を行うと同時に,文書全体というような情報発信者が規定した形式に捕われ,利用者が真に必要とする情報だけを提供するという特徴を持つ.本研究は,この質問応答技術を高度化し,利用者を中心に据えた高度な情報アクセスの手段として確立することを目的とするものである.今期は,ベースシステムとして情報検索技術,情報抽出技術を応用した質問応答システムを構築を行った.既存技術である全文検索システムおよび意味辞書を用いて,固有表現抽出機能は新たに実装し,質問解析については,パタン主導による浅い解析を用い,回答抽出には,語の意味カテゴリとその出現頻度や出現位置を主な情報とした統計ベースの処理を採用している.今後,本システムの分析を通じて,既存技術の適用範囲と限界を明らかにしていく.加えて,質問応答の高度化へ向けて,質問応答における文脈の扱いについて検討を行った.現在の質問応答技術特に質問解析技術は,一問一答を前提としているが,対話的に連続した質問応答を扱わせるためにはどのような拡張が必要であるか,その時の文脈処理技術にはどのような機能が必要とされるかを検討した.現在,それら機能を確認するための質問セットを構築中である.大規模テキストを対象にした質問応答とは,利用者からの任意の質問に対して,蓄積された大規模テキストを参照して回答するというもので,質問という形で利用者の視点・観点を受け取り,それを考慮した情報の収集・取捨選択を行うと同時に,文書全体というような情報発信者が規定した形式にとらわれず,利用者が真に必要とした情報だけを提供するという特徴を持つ.
KAKENHI-PROJECT-14380155
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14380155
大規模テキストを対象とした質問応答技術の高度化に関する研究
本研究は,この質問応答技術を高度化し,利用者を中心に据えた高度な情報アクセス手段として確立することを目的とするものである.今期は,対話的な状況での質問応答技術の利用について検討する目的で,利用者が与えられたトピックについてレポートを作成する際にどのような質問を行うかを調査した.本調査により,そのような状況での質問の半分以上が値や名称を訊ねるもので,そのような回答範囲を持つ質問応答技術の有用性が確認された.また,対話的状況においては,代名詞やゼロ代名詞など様々な語用論的現象が現れることを確認した.このような状況で有効となる質問応答技術を評価するためのテストセットを構築した.昨年度より構築を進めている実験システムについては,固有表現抽出や質問解析のための知識の記述方法の見直しを行い,改善を図った.本研究を含む質問応答技術研究の活性化のために,7月に札幌で行われた国際会議ACL2003において,質問応答と自動要約に関するワークショップを企画し,運営を行った.大規模テキストを対象とした質問応答とは,利用者からの任意の質問に対して,蓄積された大規模テキストを参照して回答するというもので,質問という形で利用者の視点・観点を受け取り,それを考慮した情報の収集・取捨選択を行うと同時に,文書全体というような情報発信者が規定した形式にとらわれず,利用者が真に必要とした情報だけを提供するという特徴を持つ.本研究は,この質問応答技術を高度化し,利用者を中心に据えた高度な情報アクセス手段として確立することを目的とするものである.今期は対話的な状況での質問応答技術の利用についての研究をすすめた.利用者が与えられたトピックについてレポートを作成する際にどのような質問を行うかの調査結果と,その調査に基づいて作成した質問応答技術評価のためのテストセット,更にそのテストセットを用いた現状システムの評価結果を分析した.その結果,ここで作成したテストセットとその枠組みは,対話的状況での質問応答技術評価に適切なものであること,現状の質問応答技術は文脈処理の点でまだ改善の余地があること,正解の列挙を求めるリスト型質問については理論的に未整理の問題が残されていること,等を明らかにした.質問応答技術を情報可視化技術,文書要約技術と結びつけて,新しい情報アクセスを可能とするための研究トピックである「動向情報の要約と可視化」を提示し,そのための研究やシステムの枠組みを提案すると共に,その研究のために有用であるデータセットを作成した.特に新聞記事に対して,要約と可視化の観点から意味的な情報を注釈づけるための仕様の設計を行った.本研究の成果発表および情報収集のために,5月に米国ボストンで行われたNAACL/HLT,10月に同ガイザースバーグで行われたTRECに参加した.国内でも4回の研究発表を行った.
KAKENHI-PROJECT-14380155
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14380155
崩壊斜面の土壌化に関する研究
山腹工事施工地土壌とその周辺の崩れていない土壌を比較しながら土壌化の過程を土壌物理的、化学的に調査した。調査地は山腹施工年度、施工種が同じで斜面方位の異なる調査地を選び、施工地土壌の土壌化と斜面方位の関係を調べた。さらに施工年度の異なる調査地では、施工後の経過年数と土壌化の状況について検討した。調査方法は山腹工事施工地内の土壌断面を測定するとともに、A_0層を取り除いた表層土壌から100cc採土円筒により不攪乱試料を採取し、化学分析用に攪乱試料も採取した。さらに山腹工事施工地土壌と対比するために施工地周辺の崩れていない林地でも同様の測定および試料採取を行った。測定項目としては、土壌断面のほかに土壌物理的性質として採取時含水比、孔隙率、孔隙径別の孔隙量分布、土粒子比重などであり、化学的性質として土壌中の炭素量、室素量、土壌pHなどである。良好な林地土壌としては、1つの見方として水の浸透、貯留、流出にバランスのとれた土壌であると思われる。そのためには物理的にみて団粒構造が発達していて毛管孔隙量が多く、また化学的には炭素、窒素量が多いことがあげられよう。この観点から同一施工年度で斜面方位の異なる調査地において斜面方位と土壌化の程度を比較すると、南斜面のほうが北斜面に比べて毛管孔隙量、採取時含水比、炭素、室素含有量が大きく、土壌化の進行が速いという結果が得られた。また施行年度の異なる調査地で上述の要因を用いて施行後の経過年数と土壌化の状況を崩れていない周辺部の土壌と比較しながら考察すると、施工地の微地形などの影響は受けるものの一般的には経過年数に比例して土壌化の進行がみられた。しかし、数十年経過した施工地でも土壌中の炭素量は34%で、周辺部の崩れていない林地土壌の約半分であり、質的には両者にかなりの差がみられた。山腹工事施工地土壌とその周辺の崩れていない土壌を比較しながら土壌化の過程を土壌物理的、化学的に調査した。調査地は山腹施工年度、施工種が同じで斜面方位の異なる調査地を選び、施工地土壌の土壌化と斜面方位の関係を調べた。さらに施工年度の異なる調査地では、施工後の経過年数と土壌化の状況について検討した。調査方法は山腹工事施工地内の土壌断面を測定するとともに、A_0層を取り除いた表層土壌から100cc採土円筒により不攪乱試料を採取し、化学分析用に攪乱試料も採取した。さらに山腹工事施工地土壌と対比するために施工地周辺の崩れていない林地でも同様の測定および試料採取を行った。測定項目としては、土壌断面のほかに土壌物理的性質として採取時含水比、孔隙率、孔隙径別の孔隙量分布、土粒子比重などであり、化学的性質として土壌中の炭素量、室素量、土壌pHなどである。良好な林地土壌としては、1つの見方として水の浸透、貯留、流出にバランスのとれた土壌であると思われる。そのためには物理的にみて団粒構造が発達していて毛管孔隙量が多く、また化学的には炭素、窒素量が多いことがあげられよう。この観点から同一施工年度で斜面方位の異なる調査地において斜面方位と土壌化の程度を比較すると、南斜面のほうが北斜面に比べて毛管孔隙量、採取時含水比、炭素、室素含有量が大きく、土壌化の進行が速いという結果が得られた。また施行年度の異なる調査地で上述の要因を用いて施行後の経過年数と土壌化の状況を崩れていない周辺部の土壌と比較しながら考察すると、施工地の微地形などの影響は受けるものの一般的には経過年数に比例して土壌化の進行がみられた。しかし、数十年経過した施工地でも土壌中の炭素量は34%で、周辺部の崩れていない林地土壌の約半分であり、質的には両者にかなりの差がみられた。
KAKENHI-PROJECT-01601513
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01601513
非平面性芳香環含有ナノリングの自在合成と機能化
本研究では、一般的に合成困難な歪んだパイ共役大環状分子、特にベンゼン環とアセチレンのみで環構造が構成される分子の高効率な合成法を開発した。本手法を用いることで、置換様式の異なるベンゼン環を含む環状分子や環構造を二つ持つ双環状分子を構築した。これらの分子は内部の空孔にフラーレンを効率良く包接することを見出した。また環上に電子豊富な置換基を導入することで、より安定な包接体が形成されることも見出した。本研究では、一般的に合成困難な歪んだパイ共役大環状分子、特にベンゼン環とアセチレンのみで環構造が構成される分子の高効率な合成法を開発した。本手法を用いることで、置換様式の異なるベンゼン環を含む環状分子や環構造を二つ持つ双環状分子を構築した。これらの分子は内部の空孔にフラーレンを効率良く包接することを見出した。また環上に電子豊富な置換基を導入することで、より安定な包接体が形成されることも見出した。非平面性のパイ共役部位を有する分子は一般にその合成が困難である。それ故、非平面性のベンゼン環や曲がったアルキンなどを含む分子の合成やそれら分子の持つ物性に古くから興味がもたれていた。本研究代表者は、還元的芳香環形成反応を利用することで非平面性ベンゼン環の構築に成功している。平成22年度において、研究代表者は本手法を利用し、フラーレンを包接するアントラセン含有環状分子、サイクリン類の合成に成功した。また上記フラーレン包接サイクリンがより大きなアントラセン含有サイクリンにより包接されることも明らかにした。本成果によりアントラセンのようなアセン構造を有する非平面性パイ共役系分子の構築が可能であることが示された。またフラーレン包接現象が観測されるなど、パイ電子を利用した興味深いホスト-ゲスト挙動は今後の検討課題であると言える。次にサイクリン前駆体分子の収率が低いことが分かっていたため、その収率向上を目指した。その結果、段階的に合成を行うことで収率は格段に向上し、従来の約2.5倍の効率でサイクリンを得ることに成功した。本手法を用いれば、部分的に異なる芳香環を有するサイクリンの構築も可能となる。実際に、一部1,3-フェニレン部位を含む環状サイクリンの合成にも成功した。また従来法では低収率となるトラン部位を含む環状サイクリンの合成にも成功した。この手法はサイクリン前駆体分子構築を効率良くするだけでなく、非対称性サイクリンの構築にも利用できることから次年度以降に取り組む多機能化されたサイクリン創製の足掛かりになると言える。非平面性のパイ共役部位を有する分子は一般にその合成が困難である。それ故、非平面性のベンゼン環や曲がったアルキンなどを含む分子の合成やそれら分子の持つ物性に古くから興味がもたれていた。本研究代表者は、還元的芳香環形成反応を利用することで非平面性ベンゼン環の構築に成功している。平成23年度において研究代表者は、段階的クロスカップリングを用いることで環状分子の高効率合成に成功した。従来のカップリング反応を用いる環状分子の合成では、目的とする環状の三量体以外に環状の二量体、四量体、多量体が副生し、精製も困難であった。これに対し、環状の三量体を二つの構成要素に分け、これを別々に合成し、最後にカップリングさせることで高効率に目的物を合成できることを見出した。本手法を用いることで異なる官能基を有する環状分子の創製も可能となる(平成24年度の研究推進に利用する)。酸性条件下、3,6-ジメトキシシクロヘキサ-1,4-ジエン類に塩化スズ(II)を作用させることで、メトキシ基の脱離を伴う還元反応が進行し、歪みを持つベンゼン環へと効率良く変換される。この還元的芳香環形成反応を利用することで、これらの分子からフラーレン包接能を有する環状パラフェニレンアセチレン類へと効率良く変換できることも見出した。得られる大環状分子はフラーレンや高次フラーレンの包接能を有し、また環内に含まれる二種類の芳香環の回転挙動を温度により制御できることも見出した。これら平成22、23年度に見出した成果をまとめ、現在論文投稿中である。非平面性のパイ共役部位を有する分子は一般にその合成が困難である。それゆえ、非平面性のベンゼン環や曲がったアルキンなどを含む分子の合成やそれら分子の持つ物性に古くから興味がもたれていた。本研究では非平面性パイ共役大環状分子を合成し、その物性だけでなくフラーレン類の包接挙動を明らかにすることを目的としている。平成23年度までに非平面性大環状分子の構成ユニットの合成とそれらを用いる非平面性大環状分子の構築、フラーレンとの包接挙動について明らかにしている。平成24年度において、構成ユニット内にもう一分子の非平面性大環状分子を結合できる四置換ベンゼンの導入に成功した。これを利用することで、二分子の非平面性大環状分子が一つのベンゼン環を介して連結された双環状分子を合成した。また、この双環状分子がフラーレンを二分子包接することも見出した。なお、安定なフラーレン包接体を形成させるためには、パイ共役環状分子内に電子供与性基を導入する必要があることもわかった。電子供与性基を導入することにより、包接体内のフラーレン分子の第一還元電位が負にシフトすることも見出しており、上述の結果を支持するデータであるといえる。
KAKENHI-PROJECT-22550097
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22550097
非平面性芳香環含有ナノリングの自在合成と機能化
次に段階的合成法を利用することで、非対称な非平面性大環状分子の構築および異なる官能基を有する大環状分子の構築に成功した。これら成果は新しい機能性環状分子構築に欠かせない手法となると考えられる。なお、本研究において得られた成果に関して、平成24年度の成果は、現在論文誌に速報として投稿中である。またそれ以外の成果は、まとめ近日中に別途論文誌に投稿する予定である。これまでにカップリング反応を用いる大環状分子の段階的合成と還元的芳香環形成反応を用いる環状パラフェニレンアセチレン類の合成に成功している。最終目標である機能化された環状分子の合成につながる成果であり、これを基に本年度の研究を進めることを考えればおおむね順調であると考えられる。24年度が最終年度であるため、記入しない。環状分子の段階的合成と還元的芳香環形成反応を組み合わせることで、双環状のパラフェニレンアセチレン類および水溶性のパラフェニレンアセチレン類を合成し、機能評価を行う。合成面での問題点はほぼ克服していると考えており、目標達成に向けて邁進する。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22550097
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22550097
磁性薄膜・多層膜の磁化方向転移に関する材料物性研究
フラーレンにLiやNaをドープした擬似原子とも呼ぶべき新しい分子は、安定な高温超伝導体となる可能性があるため、大いに期待されている新物質である。我々が独自に開発した混合基底第一原理分子動力学により、このドープ過程をシミュレートした。その結果、5eV程度の初期運動エネルギーを持つLi原子は直接C_<60>に挿入可能であること、Na等のより重い原子は衝突時にケージを壊してしまうので直接挿入は不可能であり、複雑な過程を経て再生することが示された。多数のフラーレンを各種基板上に整列させたナノスケールの構造体は、超高密度のメモリー素子としての可能性を持つ夢の新素材である。本所の桜井研究室で行なわれた多数のC_<60>をGaAs表面に整列させた物質に対する走査トンネル顕微鏡実験結果を分子動力学法によって解析し、観測された特徴的な2個ずつのペア構造を再現することができた。この構造は、1個のC_<60>の安定吸着位置から予想されるものとは異なり、C_<60>の幾何学的大きさとの兼ね合いで決まる。整列過程は実験では全く観測不可能なナノ秒の時間で起こる現象であり、本シミュレーションによって始めて手に取るように明らかにされた。同様に本所の走査トンネル顕微鏡実験によるCu表面に整列したC_<60>とC70の混合体の示す特徴的なパターンを、我々の混合基底第一原理バンド計算法によって解析し、それがLUMO及びHOMOバンドに対応するものであることを明らかにした。フラーレンにLiやNaをドープした擬似原子とも呼ぶべき新しい分子は、安定な高温超伝導体となる可能性があるため、大いに期待されている新物質である。我々が独自に開発した混合基底第一原理分子動力学により、このドープ過程をシミュレートした。その結果、5eV程度の初期運動エネルギーを持つLi原子は直接C_<60>に挿入可能であること、Na等のより重い原子は衝突時にケージを壊してしまうので直接挿入は不可能であり、複雑な過程を経て再生することが示された。多数のフラーレンを各種基板上に整列させたナノスケールの構造体は、超高密度のメモリー素子としての可能性を持つ夢の新素材である。本所の桜井研究室で行なわれた多数のC_<60>をGaAs表面に整列させた物質に対する走査トンネル顕微鏡実験結果を分子動力学法によって解析し、観測された特徴的な2個ずつのペア構造を再現することができた。この構造は、1個のC_<60>の安定吸着位置から予想されるものとは異なり、C_<60>の幾何学的大きさとの兼ね合いで決まる。整列過程は実験では全く観測不可能なナノ秒の時間で起こる現象であり、本シミュレーションによって始めて手に取るように明らかにされた。同様に本所の走査トンネル顕微鏡実験によるCu表面に整列したC_<60>とC70の混合体の示す特徴的なパターンを、我々の混合基底第一原理バンド計算法によって解析し、それがLUMO及びHOMOバンドに対応するものであることを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-07650809
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07650809
サルで致死的流行したイヌジステンパーウイルスの性状解析およびコントロール法の確立
サルで致死的流行したイヌジステンパーウイルスの性状解析を行った。具体的には、肺炎、消化器症状等を主徴とする感染ザルのウイルス学的・血清学的・病理学的解析からCDVによる全身感染症であることを明らかにした。イヌSLAM発現Vero細胞を用いて分離したCYN07-dV株の全塩基配列を決定し(DDBJ / GenBank accession number AB687720)、既知のCDVで高度に保存されている領域において、複数のアミノ酸変異の存在を明らかにした(細胞侵入に関わるH蛋白質では4箇所、F蛋白質では8箇所、ウイルス増殖に関わるMやL蛋白質等にも複数存在)。動物感染実験では、イヌで神経症状を伴う致死的感染、カニクイザルでは中枢神経を含めた全身感染が認められ、その強い病原性を明らかにした。レセプター指向性の解析では、CYN07-dV株はサルのレセプター(SLAMならびにnectin4)をイヌのそれらと同等もしくはそれ以上に効率良く使えるウイルスであることを明らかにした。以上より、CYN07-dV株はサルの免疫系細胞及び上皮系細胞に、in vitro及びin vivoの両方で効率よく感染・増殖し、流行したと考えられた。サルで致死的流行したイヌジステンパーウイルスの性状解析を行った。具体的には、肺炎、消化器症状等を主徴とする感染ザルのウイルス学的・血清学的・病理学的解析からCDVによる全身感染症であることを明らかにした。イヌSLAM発現Vero細胞を用いて分離したCYN07-dV株の全塩基配列を決定し(DDBJ / GenBank accession number AB687720)、既知のCDVで高度に保存されている領域において、複数のアミノ酸変異の存在を明らかにした(細胞侵入に関わるH蛋白質では4箇所、F蛋白質では8箇所、ウイルス増殖に関わるMやL蛋白質等にも複数存在)。動物感染実験では、イヌで神経症状を伴う致死的感染、カニクイザルでは中枢神経を含めた全身感染が認められ、その強い病原性を明らかにした。レセプター指向性の解析では、CYN07-dV株はサルのレセプター(SLAMならびにnectin4)をイヌのそれらと同等もしくはそれ以上に効率良く使えるウイルスであることを明らかにした。以上より、CYN07-dV株はサルの免疫系細胞及び上皮系細胞に、in vitro及びin vivoの両方で効率よく感染・増殖し、流行したと考えられた。(1)カニクザル分離株の全塩基配列の決定カニクイザル感染臓器乳剤からイヌSLAM発現Vero細胞で分離されたCDV/dog-Vero、それをヒトSLAM発現Vero細胞に馴化したCDV/human-Veroの全配列決定を行った。馴化により、Hタンパク質に1アミノ酸変異が認められた。Hタンパク質の系統解析では、アジア1型に分類され、同時期に中国のアカゲサルから分離されたCDVと近縁であった。Hタンパク質及びFタンパク質でCDV株間で高度に保存されているに領域でそれぞれ4及び8箇所のアミノ酸変異が認められた。流行初期・後期の感染サル臓器のCDVのH遺伝子配列もCDV/dog-Vero型であり、イヌSLAM発現Vero細胞で効率よくウイルス分離できたことと一致した。(2)CDV遺伝子検出系の構築・導入実験動物用サルでの高感度CDV遺伝子検出システムとして、ウイルスや感染臓器を用いて検証したRT-PCRを確立した。また、感染細胞からRNA抽出を熱変性のみで行う迅速・簡便なDirect RT-PCRを確立した。(3)動物感染実験CDVカニクイザル分離株のサルへの経鼻接種を行った。全ての実験感染サルは、15日間の観察期間中生存したが、CDV/dog-Vero感染サルの4/5、CDV/human-Vero感染サルの1/4で、PBMC・呼吸器・消化器等の多くの組織・臓器からCDVが分離され、全身性CDV感染症が再現できた。CDV/dog-Vero感染サルでのみ感染性ウイルスの排泄が認められた。CDV/dog-Veroは、CDV/human-Veroと比べ、PBMCへの感染では差は認められないが、上皮系を含む組織では親和性が高いことがわかった。(1)カニクザル分離株の配列の決定カニクイザル感染脾臓乳剤由来、イヌSLAM発現Vero細胞分離株dv及びヒトSLAM発現Vero細胞馴化株hvの末端配列をRACE法により決定した。また、次世代シーケンサーを用いてのH遺伝子等の配列決定も実施した。感染サル体内においても、H遺伝子についてはダイレクトシーケンスで決定した配列と一致した。(2)レセプター指向性の解析これまでに報告されている免疫細胞系受容体のSLAMに加え、最近報告された上皮系受容体Nectin4の発現細胞を各種動物(ヒト、サル、イヌ)ごとに作製した。dv及びhvのH及びFを有するVSVシュードタイプウイルスならびにdv及びhvのH及びFの各発現プラスミドを作製した。各動物種、各受容体発現細胞における、(1)生ウイルスを用いてウイルス増殖曲線(2)VSVシュードタイプウイルスを用いてのEntry assay、(3)発現プラスミドを用いてのFusion assayを実施した。それら結果から、(1)SLAMについては、1)dvはヒト型を利用できないこと、2)dv,hv共にサル型を利用できること、(2)Nectin4については、サル型>ヒト-イヌ型で利用できることが明らかとなった。(3)動物感染実験サル感染実験ではdvの静脈内接種を実施した。これまでの経鼻接種より顕著に発疹やコプリック班が認められた。
KAKENHI-PROJECT-22700459
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サルで致死的流行したイヌジステンパーウイルスの性状解析およびコントロール法の確立
しかし、抗体陽転が認められ、実験期間中に致死は認められなかった。実際のアウトブレイク(輸入カニクイザル)では致死が認められたが、SPFカニクイザルへの本実験プログラム(CDV単独実験感染)では致死が認めらないことから、輸送ストレスによる増悪やSRVなどの混合感染、CDVのquasispeciesなどの複合的要因が考えられるが、現時点では明らかに出来ていない。(4)CDVモノクローナル抗体の作出複数のCDVモノクロナール抗体を作成した。今後、性状決定を行う。(1)カニクザル分離株の配列の決定カニクイザル感染脾臓乳剤由来、イヌSLAM発現Vero細胞分離株CYN07-dV、ヒトSLAM発現Vero細胞馴化株CYN07-hVに続き、サルSLAM発現Vero細胞分離株CYN07-macVの配列を決定した。HとF遺伝子の配列はCYN07-dVと一致した。また、ヒトSLAMへの馴化実験を複数回実施したところ、H遺伝子の変異がP541Sだけでなく、D540GやR519Sの場合でもヒトSLAMを利用できるようになることが明らかとなった。(2)レセプター指向性の解析これまでに作製した各種動物(ヒト、サル、イヌ)の免疫細胞系受容体SLAMならびに上皮系受容体Nectin4の発現細胞を用いて、CYN07-macVの生ウイルスを用いたウイルス増殖を解析し、それら性状はCYN07-dVと一致した。また、イヌ野外分離株についてもその解析を実施したところ、イヌ型SLAM及びNectin4だけでなく、サル型SLAM及びNectin4も利用できることが明らかとなった。しかし、ウイルス増殖の程度については、CYN07-dVのような急激なウイルス増殖は認められなかった。一方、ヒトSLAMについては、CYN07-dV同様に、効率よく利用できなかったが、ヒトSLAM馴化ウイルスが同様に分離され、イヌ野外分離株での容易なヒトSLAMへの馴化が観察された。in vivoのサル感染実験については、施設とサル搬入の都合、確認の追試を含め、予定より時間を要した。一方、in vitroでの実験は、新規上皮系受容体が報告されたが、それら含め解析系を構築できへ計画以上に進んだ。24年度が最終年度であるため、記入しない。今後、未実施の小型実験動物(マウス、フェレット、ラット)における病原性の確認ならびに実験動物感染モデルを確立のために、経鼻接種もしくは経口接種、静脈内接種により感染実験を行う。また、既知のイヌ分離株との相違点を明らかにするために、今回、レセプター指向性の解析で用いたシステムを用いて、アミノ酸レベルでの病原性因子の同定を試みる。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22700459
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ガス放出における表層構造の影響と光照射効果
1.アルミニウムの表層構造--放射光による圧力上昇が見出された加速器真空系の主要構造材料であるアルミニウム合金について表層構造の調査を行い以下の結果を得た.(1)電解研摩を施したアルミニウム合金(含マグネシウム合金)の表面に形成する初期酸化層は非晶質の水和酸化物であり,真空中加熱で脱水して欠陥を含む非晶質構造となる.その構造はγ-AL_2O_3またはそれにほぼ相当するものでることが電子線回折による既約動径分布関数解析から推定された.(2)加熱に伴い, Mgはこの非晶質酸化層中の不整合領域を介して短回路拡散機構などにより輸送され, MgO外層の形成をもたらす.(3)MgOの外層形成はベーキング温度相当の150°Cにおいても進行する.2.ガス放出における表層構造の影響--表面からの気体放出特性およびベーク・アウト効果に及ぼす表層構造の影響を明らかにする目的で昇温脱離実験を行い以下の結果を得た.(1)電解研摩を施した表面は,加熱に伴って, 100°Cを超えると表層の熱分解によると思われる急激なガス放出現象がすべての気体種(H_2O, H_2, CO, CO_2)で見られる.(2)AL-2.3%Mg合金の酸化表面は,大気露出に際してCOガスを除く他の気体種(H_2O, H_2, CO_2の化学吸着が見られる.(3)ガス放出特性と表層構造との間に相関が見られた.3.光照射に伴うガス放出と表層構造の役割--光照射に伴うガス放出の機構と表層構造の影響を明らかにする目的で,表層構造の異なるアルミニウム材料について光照射実験を行い以下の結果を得た.(1)陽極酸化,電解研摩,高温酸化(500°C, 10Torr,純酸素中1h)をそれぞれ施した表面に,高エネルギ物理学研究所の放射光を照射して放出ガス量を測定した.光子数で規格化した脱離係数値は,陽極酸化>電解研摩>高温酸化であった.(2)光照射に伴うガス放出が表層の構造と化学的性質(水和度)の影響を受けることを実験的に見出した.1.アルミニウムの表層構造--放射光による圧力上昇が見出された加速器真空系の主要構造材料であるアルミニウム合金について表層構造の調査を行い以下の結果を得た.(1)電解研摩を施したアルミニウム合金(含マグネシウム合金)の表面に形成する初期酸化層は非晶質の水和酸化物であり,真空中加熱で脱水して欠陥を含む非晶質構造となる.その構造はγ-AL_2O_3またはそれにほぼ相当するものでることが電子線回折による既約動径分布関数解析から推定された.(2)加熱に伴い, Mgはこの非晶質酸化層中の不整合領域を介して短回路拡散機構などにより輸送され, MgO外層の形成をもたらす.(3)MgOの外層形成はベーキング温度相当の150°Cにおいても進行する.2.ガス放出における表層構造の影響--表面からの気体放出特性およびベーク・アウト効果に及ぼす表層構造の影響を明らかにする目的で昇温脱離実験を行い以下の結果を得た.(1)電解研摩を施した表面は,加熱に伴って, 100°Cを超えると表層の熱分解によると思われる急激なガス放出現象がすべての気体種(H_2O, H_2, CO, CO_2)で見られる.(2)AL-2.3%Mg合金の酸化表面は,大気露出に際してCOガスを除く他の気体種(H_2O, H_2, CO_2の化学吸着が見られる.(3)ガス放出特性と表層構造との間に相関が見られた.3.光照射に伴うガス放出と表層構造の役割--光照射に伴うガス放出の機構と表層構造の影響を明らかにする目的で,表層構造の異なるアルミニウム材料について光照射実験を行い以下の結果を得た.(1)陽極酸化,電解研摩,高温酸化(500°C, 10Torr,純酸素中1h)をそれぞれ施した表面に,高エネルギ物理学研究所の放射光を照射して放出ガス量を測定した.光子数で規格化した脱離係数値は,陽極酸化>電解研摩>高温酸化であった.(2)光照射に伴うガス放出が表層の構造と化学的性質(水和度)の影響を受けることを実験的に見出した.1.超高真空反射電子回折装置の組立および調整ー既存のUHVチャンバの一部を改造し、反射電子回折装置を取り付けた。さらに、マスフィルタ型ガス分析計とオージエ電子分光分析(AES)用CMA型分光器を組み込み総合調整を行い、ガス出しベーキングの後、到達真空【10^(-9)】Torrがえられた。2.表層構造の解析ーMgを含むAL合金の表層酸化物の構造について、加熱の温度と時間、酸素ポテンシャルの影響および非晶質初期酸化層の役割について調査した。試料としてAL-Mg系(5052)、AL-Mg-Si系(6063)、AL-2.6at%Mg2元系合金を用い、初期表面は電解研摩で調整した。薄膜酸化層の結晶構造と結晶状態は反射と透過電子線回折および高分解能電子顕微鏡観察を併用して評価し、組成調査はAESにより行った。
KAKENHI-PROJECT-61470060
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ガス放出における表層構造の影響と光照射効果
真空中(<【10^(-7)】Torr)および酸素中(酸素分圧【10^(-3)】10Torr)加熱(150500°C)に伴う酸化層の構造と組成の変化およびMgO形成挙動について以下の結果がえられた。(1)真空中低温加熱(150°C,32h)で最外層にMgOの形成が見出された(6063)。MgOが最外層に形成される時間は合金中のMg濃度の増加に伴い短縮する。(2)MgOの低温形成に際して、酸化層にMgが存在することがAESで確かめられているにもかかわらず、スピネル構造の形成が動径分布関数解析で確認されないことから、MgOの形成は多孔性の非晶質酸化膜中をMgが気相で拡散・透過して進行すると結論した。(3)高温では、形成するMgOが、室温初期形成のアルミニウム酸化物と固相反応をしてスピネル型のMg【AL_2】【O_4】をつくる。この固相反応の開始は高温になる程早い。3.光照射効果の調査ー超高真空領域で放出される水素が、表層部からだけでなく、内部からも拡散・透過して放出されるのか否かを確かめる実験の準備とともに、ステンレス鋼について直接、照射効果を調査して、照射に伴う表層部の変化を見出した。
KAKENHI-PROJECT-61470060
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細胞内ミトコンドリアの形態変化を制御する遺伝子の転写調節機構
ラット肝に発現する脂肪酸不飽和化酵素遺伝子の同定とクローニング哺乳類における細胞内の巨大ミトコンドリアの出現と脂肪不飽和化酵素遺伝子の転写制御との関係を明らかにする目的で、脂肪酸不飽和酵素遺伝子の同定とクローニングを試みた。まず、ラット肝臓および培養肝細胞からmRNAを抽出してcDNAライブラリーを作成した。次に、緑藻のdesAおよび酵母OLE1のcDNA配列から相同配列をいくつか選別し、プローブとなるオリゴヌクレオチドを合成した後、テイリング法によってdigoxygenin-UTPを反応させ、DIGプローブを作製した。このDIGプローブを使って、プラークハイブリダイゼイションを行ったところ、いくつかの陽性プラークが得られた。しかし、それらのクローンのDNAシークエンスを行ったところ、すべて脂肪酸不飽和化酵素遺伝子とのホモロジーがなかった。今後の研究計画直接ミトコンドリア膜の脂肪酸を不飽和化する酵素の遺伝子を同定することは困難であると思われるので、ラットの初代培養肝細胞を用いた細胞レベルでのミトコンドリア巨大化の実験系を確立し、ディファレンシャルディスプレイ法によって巨大ミトコンドリアを持つ肝細胞と持たない肝細胞との間で、発現の異なる遺伝子群を同定することを試みる。そのために、まず初代培養の培養液中への薬物投入によってミトコンドリアの巨大化とその阻止を人工的に引き起こす実験系を確立する。次に、変異した肝細胞と正常肝細胞との間で発現量の異なる遺伝子群を同定する。ラット肝に発現する脂肪酸不飽和化酵素遺伝子の同定とクローニング哺乳類における細胞内の巨大ミトコンドリアの出現と脂肪不飽和化酵素遺伝子の転写制御との関係を明らかにする目的で、脂肪酸不飽和酵素遺伝子の同定とクローニングを試みた。まず、ラット肝臓および培養肝細胞からmRNAを抽出してcDNAライブラリーを作成した。次に、緑藻のdesAおよび酵母OLE1のcDNA配列から相同配列をいくつか選別し、プローブとなるオリゴヌクレオチドを合成した後、テイリング法によってdigoxygenin-UTPを反応させ、DIGプローブを作製した。このDIGプローブを使って、プラークハイブリダイゼイションを行ったところ、いくつかの陽性プラークが得られた。しかし、それらのクローンのDNAシークエンスを行ったところ、すべて脂肪酸不飽和化酵素遺伝子とのホモロジーがなかった。今後の研究計画直接ミトコンドリア膜の脂肪酸を不飽和化する酵素の遺伝子を同定することは困難であると思われるので、ラットの初代培養肝細胞を用いた細胞レベルでのミトコンドリア巨大化の実験系を確立し、ディファレンシャルディスプレイ法によって巨大ミトコンドリアを持つ肝細胞と持たない肝細胞との間で、発現の異なる遺伝子群を同定することを試みる。そのために、まず初代培養の培養液中への薬物投入によってミトコンドリアの巨大化とその阻止を人工的に引き起こす実験系を確立する。次に、変異した肝細胞と正常肝細胞との間で発現量の異なる遺伝子群を同定する。
KAKENHI-PROJECT-06670165
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戦略と組織メンバーの行動の間に生じるギャップの発生と解消メカニズム
本研究は戦略と組織メンバーの行動の間のギャップの発生と解消メカニズムを明らかにすることを試みたものである。本研究を通じて、戦略の言説にそのギャップの発生や解消のメカニズムが内在しており、その実践が大きな影響を及ぼすことが明らかになった。本研究は戦略と組織メンバーの行動の間のギャップの発生と解消メカニズムを明らかにすることを試みたものである。本研究を通じて、戦略の言説にそのギャップの発生や解消のメカニズムが内在しており、その実践が大きな影響を及ぼすことが明らかになった。研究の目的と研究計画に基づき,本年は主に下記の4つの活動を行った。(1)既存研究の文献研究(3)関連の強い国際学会への参加(4)予備的な調査(1)・(2)については『経営情報学会誌』(経営情報学会発行)に論文が掲載された。同論文では,既存の戦略論研究の理論的な課題点と実践としての戦略などの新しい領域との間の差異と架橋される部分について明らかにした。(3)については,6^<th> International Critical Management Studies Conference(Warwick Business Schoolで開催)に参加し,本研究分野と強い関連性がある同分野の数々の最新の研究を学ぶとともに,様々な研究者とディスカッションを行うことができた。Critical ManagementStudiesの諸研究の中でも,とりわけ実践としての戦略に関する報告ストリームに集中的に参加し,同分野の考え方について知ることが出来た。これは(1)・(2)の成果を生み出す上で,きわめて重要な情報収集の機会であった。(4)については,複数企業への予備的なヒアリング調査の実施,及び,病院組織を対象とした予備的な調査を実施した。同内容については,研究会レベルでの報告を行った。また,同報告に基づき内容を発展させた形で,2010年度の国際学会(Academy of Management:カナダ・モントリオールで開催)での報告が決定している。研究計画に基づき,(1)文献研究,及び,(2)調査研究を実施した。(1)文献研究については,欧州の実践としての戦略や批判的マネジメント研究,及び,それらに関連する領域に関しての文献研究を実施した。(2)調査研究については,文献研究と平行して,三重県内の病院組織における戦略転換を伴う組織変革に関して,綿密な調査を実施した。同研究から明らかになった点は,(1)文献研究に関しては,欧州における実践としての戦略に関する諸研究は,批判的マネジメント研究におけるポスト構造主義や社会構成主義の視点からの経営戦略論研究への批判的研究の展開に依拠しながらも,いかにして批判的研究から明らかにされた問題に対して実践的な解決を見いだしていくのかという,解決志向のアプローチであることが明らかになった。これについては,6月に開催された組織学会にて報告を実施した。(2)調査研究に関しては,組織変革における戦略と組織メンバーの行動との間のギャップは,組織メンバーに対して,ポジティヴな可能性を拓こうとする語りが重要であることが明らかになった。これは(1)の文献研究を通じた知見ともリンクする点である。この内容については,8月に開催されたAcademy of Management AnnualMeetingにて,報告を実施した。以上の2点に集約できる。とりわけ重要な発見としては,社会構成主義と実践的転回,及び,解決志向アプローチの3者が密接にリンクしながら,本研究課題に対して重要な示唆を提示している点が明らかになったことである。研究計画に基づき、下記の通り研究を実施した。1.調査研究の内容のまとめ昨年度までの調査を行った三重県の病院組織への調査内容のとりまとめを行った。この内容については、7th International Critical Management Studies Conferenceにて報告を行った。2.研究成果の公表昨年度までの研究内容について、以下の学会にて研究成果の公表を実施した。・経営戦略学会第11回研究発表大会・2012年度組織学会年次大会また、研究論文がInformatics(明治大学発行)に掲載された。また、翻訳書として『実践としての戦略』を訳出し、2012年度に出版された。3.研究上の発見・戦略と実際の組織メンバーの行動との間のギャップは、戦略の実行上の問題と言うよりも、むしろ、戦略という言語が組織内に策定する側と実行する側という隔絶した関係を構築してしまうことにある。・とりわけ戦略という概念には、現状の組織メンバーの行動に対する否定的な認識が内在し、かえってギャップを大きくすることで組織変革を困難にしている。どのように語りを構成するかがギャップの大小を大きく左右する。
KAKENHI-PROJECT-21730306
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モルモットを用いた骨導超音波聴覚の知覚メカニズムと音響負荷の影響についての研究
これまでの骨導超音波に関する動物実験では蝸電図を測定した報告はあるものの、ABRを測定した報告はなかったので、モルモットを用いて、骨導超音波呈示による、ABRの測定した。電気生理角的、形態学的に評価することで、骨導超音波の知覚メカニズムについて調べた。内耳障害前後のABR波形の比較を行った。また、シスプラチンの内耳障害により、外有毛細胞障害モデルのモルモットを作成し、骨導超音波によるABR反応を測定した。また、骨導著音波の強大音を呈示し、気導音によるABR測定で難聴が確認されたことから、骨導超音波の知覚が内耳で行われていることが確認された。モルモットを用いて骨導超音波によるABRの測定を行った。これまでの骨導超音波の動物実験では蝸電図の報告はあるもののABRを測定した報告はない。蝸電図の測定では気管切開や中耳骨包を開窓する必要があり、モルモット1個体につき1回限りの測定に制限される。ABRの測定が可能になることで、これまで不可能であった同一の個体での内耳障害前後の聴力変化を測定することが可能になる。ABRの測定は振動子からのアーチファクトの影響で測定が困難であった。我々は振動子の接触部位を設置電極と可能な限り遠ざけることや、電極のリード線のノイズを防止すること、振動子を改良して安定して耳後部に接触圧できるよう工夫することで、アーチファクトが軽減され、数体の個体で再現性をもってABRを測定することに成功した。ABRの測定が可能になることで、これまで不可能であった同一の個体について薬物投与や音響負荷前後の聴力変化を測定することが可能になる。シスプラチン投与による内耳障害と骨導超音波聴力の関係をABRによって評価することで、骨導超音波の知覚メカニズムが、我々の仮説「骨導超音波は内有毛細胞で知覚され、その知覚に外有毛細胞が関与しない」が明らかになることが期待される。H25年度はモルモットに軽度の内耳障害をおこさせるために、シスプラチンを4ー8mg/kgを1回腹腔内投与し、気導閾値と超音波閾値の関係を測定した。気導音についてはシスプラチンを8mg/kg投与すると約90%の個体で気導音のABRの閾値上昇が得られることがわかった。現在はシスプラチン投与後の内耳における内外有毛細胞の障害の程度を調べる為、組織標本の作製を行っている。以上のように今年度の研究成果は、骨導超音波の知覚メカニズムの解明に役立つと考えられた。我々の提唱する骨導超音波の知覚メカニズムの仮説を動物モデルを用いて証明するため、シスプラチンによる内耳障害が骨導超音波聴力に与える影響を調べた。ABRを用いてモルモットの内耳障害前後の骨導超音波聴力を測定した。これまでの骨導超音波の動物実験では蝸電図の報告はあるもののABRを測定した報告はない。蝸電図の測定では気管切開や中耳骨包を開窓する必要があり、モルモット1個体につき1回限りの測定に制限されていた。H25年度の成果でABRの測定がより安定して測定できるようになったので、同一の個体について繰り返しての測定が可能になった。本年度はシスプラチン投与による内耳障害と骨導超音波聴力の関係を形態学にも評価するために、聴力障害を起こさせた内耳の組織標本を作製し、内耳障害を組織学的に評価した。標本作成では、従来よりもコルチ器に固定液が到達するよう蝸牛の骨包の一部に穴開けて固定液が浸透しやすくするなど組織の固定法の改良を行った。モルモットに軽度の内耳障害をおこさせるために、8mg/kgのシスプラチンを腹腔内投与し、内耳における内外有毛細胞の障害の程度を調べた。8mg/kgの投与により、外有毛細胞が部分的に障害され、特に基底回転では8割程度の外有毛細胞が障害されていた。一方、骨導超音波の知覚に重要とされる内有毛細胞には障害を認めなかった。内耳の内外有毛細胞の障害を確認できるレベルの組織標本を作製することができたので、今後個体数を増やして実験を継続することで、ABRで得られた電気生理学的結果を形態学的に検証して行く予定である。我々の提唱する骨導超音波の知覚メカニズムの仮説を動物モデルを用いて証明するため、シスプラチンによる内耳障害が骨導超音波聴力に与える影響を調べた。ABRを用いてモルモットの内耳障害前後の骨導超音波聴力を測定した。これまでの骨導超音波の動物実験では蝸電図の報告はあるもののABRを測定した報告はない。蝸電図の測定では気管切開や中耳骨包を開窓する必要があり、モルモット1個体につき1回限りの測定に制限されていた。H25年度の成果でABRの測定がより安定して測定できるようになったので、同一の個体について繰り返しての測定が可能になった。H27年度はモルモットに軽度の内耳障害をおこさせるために、8mg/kgのシスプラチンを腹腔内投与し、内耳における内外有毛細胞の障害の程度を調べた。8mg/kgの投与により、外有毛細胞が部分的に障害され、特に基底回転では5割程度の外有毛細胞が障害されていた。一方、骨導超音波の知覚に重要とされる内有毛細胞には障害を認めなかったことを確認した。
KAKENHI-PROJECT-25861582
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25861582
モルモットを用いた骨導超音波聴覚の知覚メカニズムと音響負荷の影響についての研究
また、投与量を12mg/kgに増やした個体について、8mg/kgの投与と異なり、内有毛細胞も障害されているかどうかについて、組織標本を作製中である。これらの組織標本の作製法のこの個体モデルを用いてABRを測定し、骨導超音波の閾値の変化を電気生理学的に評価している。統計学的分析するために、個体数を増やして行う予定である。また、ABRの測定は以前よりも安定して測定できるようになったものの、アーチファクトが大きく、測定条件、環境の改善が必要と考えられ、さらに安定性がえられるよう調整中である。H27年も昨年に引き続き、骨導超音波についての研究成果を日本聴覚医学会で報告した。平成27年度はシスプラチンの投与量を12mg/kg以上に増やして内耳の内有毛細胞も障害されたモルモットのモデルを作成することを計画していたが、組織標本の作製法の確立に時間を要したため、達成できなかった。しかし、本年度は8mg/kg投与の個体について安定して内耳の外有毛細胞の障害が確認できるレベルの組織標本を作製することができたので、この点に関しては、計画が順調に進んでいると考えられる。また、ABRの測定は以前よりも安定して測定できるようになったものの、アーチファクトが大きく、測定条件、環境の改善が必要と考えられ、さらに安定性がえられるよう調整、改良をすすめていく。音響負荷の実験についても行う予定であったが、上記の遅れにともない、施行できなかったので、H28年度に実験期間を延長して、実験を進めていく。我々の提唱する骨導超音波の知覚メカニズムの仮説を動物モデルを用いて証明するため、シスプラチンによる内耳障害が骨導超音波聴力に与える影響を調べた。ABRを用いてモルモットの内耳障害前後の骨導超音波聴力を測定した。これまでの骨導超音波の動物実験では蝸電図の報告はあるもののABRを測定した報告はない。蝸電図の測定では気管切開や中耳骨包を開窓する必要があり、モルモット1個体につき1回限りの測定に制限されていた。H25年度の成果でABRの測定がより安定して測定できるようになったので、同一の個体について繰り返しての測定が可能になった。H26年度はシスプラチン投与による内耳障害と骨導超音波聴力の関係を形態学にも評価するために、聴力障害を起こさせた内耳の組織標本を作製し、内耳障害を組織学的に評価した。H27年度はに引き続き、H28年はモルモットの個体4匹について麻酔下に右耳に20Vp-pの骨導超音波を30分提示する音響負荷実験を2日間行った。20Vp-pの提示中の骨導超音波のABRはアーチファクトが強く測定困難であった。音響負荷後耳介反射の消失を認め、難聴が疑われた。8k、16k、32kHzの気導音でABRの測定とおこなったところ、ABRの測定が困難であり、内耳障害が起こっていることが示唆された。現在、超音波の音響外傷モデルの組織標本を作製を行っている段階である。H28年度も昨年に引き続き、骨導超音波についての研究成果を日本聴覚医学会で報告した。またH28年11/28から12/2に開催された第5回日米音響学会ジョイントミーティングで骨導超音波についての研究成果を発表した。これまでの骨導超音波に関する動物実験では蝸電図を測定した報告はあるものの、ABRを測定した報告はなかったので、モルモットを用いて、骨導超音波呈示による、ABRの測定した。電気生理角的、形態学的に評価することで、骨導超音波の知覚メカニズムについて調べた。内耳障害前後のABR波形の比較を行った。また、シスプラチンの内耳障害により、外有毛細胞障害モデルのモルモットを作成し、骨導超音波によるABR反応を測定した。
KAKENHI-PROJECT-25861582
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25861582
認知的負荷が多属性意思決定に及ぼす影響の解明:生体信号・生理指標に基づく分析
本研究の目的は、認知的負荷が、非合理的な選択現象である、2属性3肢選択意思決定における4種類の文脈効果(魅力効果、妥協効果、類似性効果、ファントム効果)に影響を及ぼすメカニズムを、生体信号指標(眼球運動、事象関連電位)と、生理学的指標を用いて解明することにあった。この研究目的は、眼球運動測定、事象関連電位測定、血中グルコース濃度測定において、ほぼ達成することができ、5件の雑誌論文に発表し、12件の国際学会発表と、13件の国内学会発表を行った。本研究の目的は,認知的な負荷が,非合理的な選択現象である2属性3肢選択意思決定における4種類の文脈効果(類似性効果,魅力効果,妥協効果,幻効果)に及ぼす影響を,生体信号指標(眼球運動,事象関連電位)と,生理学的指標を用いて詳細に分析することにあった。平成25年度においては,新たに複数の予備調査によって設定した刺激項目群を採用し,従来の頭部搭載型眼球運動測定装置に比べて参加者に負担が少なく精度も高い最新型の非接触型・眼球運動測定装置(Tobii X120)2台を用い,3種類の文脈効果(類似性効果,魅力効果,妥協効果)を,詳細に分析する基本的な実験に焦点を絞り込んだ(実験参加者数は,113名)。さらに,ファントム効果については,208名を実験参加者とし,代表的な認知負荷である時間的制約(time pressure)条件と統制条件を比較する実験を行い,興味深い知見を得ることができた。脳波の事象関連電位の測定については,BrainAmpを用いた実験準備を行った。実験参加者の唾液アミラーゼ活性の測定については,データの信頼性に問題があるため,実施を中止した。特に,3種類の文脈効果に関し,113名の実験参加者について,サンプリング時間解像度120Hz(サンプリング周期,8.4ms)という非常に高い精度で,眼球運動データを取得できたことは大きな成果である。膨大な生体信号データであるため,実験結果の公表に向けて,データ分析を進めている。平成25年度に実施した実験データは,平成26年度に複数の学会(国内,国際)にて研究発表を行うように手続き中である。先年度は,新たに設定した刺激項目群を採用し,参加者に負担が少なく精度が高い最新型の非接触型・眼球運動測定装置(Tobii X120)2台を用いて,3種類の文脈効果(類似性効果,魅力効果,妥協効果)について,詳細な測定を行った(実験参加者数は,113名)。ファントム効果については,代表的な認知負荷である時間的制約条件と統制条件を比較する実験を行った(208名)。平成26年度においては,先年度に得られた大量の実験データを詳細に分析し,複数の国内学会(6件)と,国際学会(4件)で研究発表を行った。また,前年度の実験では,類似姓効果が明確に得られなかったため,属性値を調整して追試実験(眼球運動測定)を行った(34名)。さらに,文脈効果の一般性を検証するため,刺激材料に長方形を用いた知覚的な2属性3肢選択意思決定実験(妥協効果,魅力効果;眼球運動測定)を開始した。当初の研究実施計画にしたがい,平成26年度は脳波の事象関連電位測定に重点をおいた。脳波測定では多数の刺激材料が必要になるため,新たに16項目の刺激を設定した。事象関連電位測定では眼球運動が大きなノイズを生むため,3肢を1つずつ継時提示した。脳波測定装置には,研究分担者の武田裕司先生のご協力を得て,国際標準のBrainAmpを使用した。頭皮上19チャンネル(国際10-20法)に加え,顔面4チャンネルの測定を行った。実験パラダイムとして,プローブ法を用い,視覚的な主課題(2属性3肢選択意思決定課題)と並行して提示した単調な聴覚刺激に対する事象関連電位の変化によって,主課題へ配分された認知資源を測定した。妥協効果条件と魅力効果条件に,各々16名の実験参加者を割り当てた。特に魅力効果条件で興味深い知見が得られており,国内外の学会で発表し,雑誌論文を執筆する予定である。知覚的な2属性3肢選択意思決定についても,脳波測定を開始した。本研究の目的は,認知的負荷が,非合理的な選択現象である多属性意思決定における文脈効果に影響を及ぼすメカニズムを,生体信号指標と生理学的指標を用いて解明することにあった。つまり,認知的負荷を与える状況で,2属性3肢選択意思決定課題を用い,眼球運動を詳細に測定し,事象関連電位における関連成分の変化を明らかにすることを目指した。さらに,実験参加者の血中グルコース濃度と唾液アミラーゼ活性を測定し,認知的負荷と認知資源の消耗やストレスとの関係を解明することを目的とした。上記の研究目的は,眼球運動測定,事象関連電位測定,血中グルコース濃度測定において,平成26年度までにほぼ達成することができた。平成27年度には,2属性3肢選択意思決定における膨大な眼球運動データを,時系列的に属性レベルで分析し,その結果を国内外の学会で発表した。また,上記の実験・分析方法を知覚的意思決定課題に応用し,眼球運動と事象関連電位を測定した実験も行い,その結果を国際学会で発表した。平成26年度は脳波測定に焦点を当てた。実験パラダイムとしてプローブ法を用い,視覚提示される主課題と並行して提示した聴覚刺激に対する事象関連電位の変化によって,主課題へ配分された認知資源を測定した。
KAKENHI-PROJECT-25380986
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25380986
認知的負荷が多属性意思決定に及ぼす影響の解明:生体信号・生理指標に基づく分析
特に魅力効果条件で興味深い知見が得られ,平成27年度,国内外の学会で分析結果を発表し,英文学術雑誌に論文を投稿した。しかし,英文学術雑誌では不採択となったため,査読者のコメントを踏まえ,刺激材料を48項目に増やし,分析方法も修正し,実験参加者40名程度を目標にして,魅力効果条件の追試実験を開始した。現在12名の有効データがあり,後半のフェイズでは,コンペティター選択試行において,ターゲット選択試行よりも有意にP1ーN1振幅が減衰し,主課題に多くの処理資源が配分されることが示唆され,仮説が支持された。本研究の目的は、認知的負荷が、非合理的な選択現象である、2属性3肢選択意思決定における4種類の文脈効果(魅力効果、妥協効果、類似性効果、ファントム効果)に影響を及ぼすメカニズムを、生体信号指標(眼球運動、事象関連電位)と、生理学的指標を用いて解明することにあった。この研究目的は、眼球運動測定、事象関連電位測定、血中グルコース濃度測定において、ほぼ達成することができ、5件の雑誌論文に発表し、12件の国際学会発表と、13件の国内学会発表を行った。当初の研究実施計画どおり,平成26年度は脳波の事象関連電位測定実験を進めることができた。脳波測定装置には,研究分担者の武田裕司先生のご協力を得て,国際標準のBrainAmpを使用した。頭皮上19チャンネル(国際10-20法)に加え,顔面4チャンネルによる詳細な測定を実施できた。実験パラダイムとして,比較的新しい技法であるプローブ法を用い,視覚的な主課題(2属性3肢選択意思決定課題)へ配分された認知資源(注意)を測定することができた。妥協効果条件と魅力効果条件で,各々16名のデータが得られた。特に魅力効果条件で興味深い知見が得られており,国内外の学会で発表し,雑誌論文を執筆する予定である。また,発展的な方向として,知覚的な2属性3肢選択意思決定についても,脳波測定を開始できた。社会科学交付申請書に記載した研究目的は,平成25,26年度においてほぼ達成できたと考えている。今後は,2属性3肢選択意思決定に関する眼球運動測定実験と事象関連電位測定実験(言語刺激,知覚刺激)を継続すると共に,実験データに基づいてモデルの修正・発展を行う。新たな発展的研究として,これまでの実験課題において,実験参加者の気分をpositive, negativeに誘導した場合,文脈効果がどのように変化するか,検討を予定している。平成27年度は最終年度であるため,研究成果を論文にまとめ,学会誌に投稿する。3種類の文脈効果(類似性効果,魅力効果,妥協効果)に関し,113名の実験参加者について,サンプリング時間解像度120Hz(サンプリング周期,8.4ms)という非常に高い精度で,眼球運動データを取得できたことは大きな成果である。また,ファントム効果については,208名を実験参加者とし,代表的な認知負荷である時間的制約(time pressure)条件と統制条件を比較する実験を行った。実験参加者の唾液アミラーゼ活性の測定については,データの信頼性に問題があるため,実施を中止し,今後も測定の予定はない。一方,脳波の事象関連電位の測定については,専門家の指導のもとに,BrainAmp(10-20法)を用いた実験準備を行った。脳波測定実験は長時間に及ぶため,多額の実験参加者謝礼を支払う必要がある。次年度に多数の実験参加者を募り,脳波測定実験を継続して行うことを計画しているため,次年度使用額を設定した。
KAKENHI-PROJECT-25380986
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経済グローバル化への政策対応と政党制の変容-先進諸国の財政・金融改革を事例に
本研究は、経済のグローバル化が進展する中で、各国の政策の違いに政党制度が与える影響を探ろうとするものである。国際的な市場の圧力を受けて市場指向型の経済政策への転換を迫られている状況は、先進各国に共通するものの、実際の政策対応には国ごとに違いがある。そうした差異は、しばしば各国の政治システムの違いから説明される。本研究では、特に政党システムに着目して、経済政策の変化を説明した。事例としては、日本の金融市場改革と、コーポレートガバナンス改革を中心として、ドイツとの比較を行った。日本のいわゆる55年体制、すなわち自民党一党優位体制の下では、政治家は、専門性の高い経済政策の決定権限の多くを官僚に委譲してきた。また、利益集団も政治家・官僚と長期的な関係を築き、時間をかけて関係者が協議を行い、経済環境の変化に漸進的に対応するような改革が行われてきた。それに対し、政党システムがより競合的なものに変化した93年以降は、その時々の政党間の競合状況に応じて、大幅な改革が提案されたり、官僚主導で緩やかな改革が実現したりといったバリエーションが生じるようになった。平成19年度は、引き続ぎ調査を行うとともに、学会・研究会において研究成果の公表を行った。日本政治学会での報告「対内直接投資と経済ナショナリズムをめぐる政治」、および日本国際政治学会での報告「市場の論理か国内政治か?-グローバリゼーションと経済政策の選択をめぐって-」学会報告を行った。また、ドイツ・オスナブリュック大学における国際シンポジウム(「1989年以降のドイツと日本:改革圧力と政治システムのダイナミクス」)においても報告の機会を得た。これらの機会に得られたフィードバックも踏まえ、成果を順次論文にまとめている。現在、20年度中刊行予定の学会誌1、論文集2への掲載が決定している。他に1本の論文を学術誌に投稿中である。本研究は、経済のグローバル化が進展する中で、各国の政策の違いに政党制度が与える影響を探ろうとするものである。国際的な市場の圧力を受けて市場指向型の経済政策への転換を迫られている状況は、先進各国に共通するものの、実際の政策対応には国ごとに違いがある。そうした差異を政党システムのあり方、より具体的には政党間の競合状況に着目して説明する。研究初年度は、日本の銀行危機への対応と政党システムの変化の関係についての事例を論文にまとめ、シンポジウム「日本とドイツ--グローバル化の挑戦と政策対応」(2005年9月26-28日、於東京大学)において報告した。バブル経済崩壊後、日本は金融危機に直面したが、処理が後手に回って危機を深刻化させたと批判されてきた。その政策対応の変遷を時間を追って検討すると、経済状況の変化だけではなく、政党制の変化と密接な関係があることが明らかになった。政党間の競合状況は、政治家と官僚組織との協力関係、および世論へのアピールに影響を与えることを通じて、大胆な新政策導入の可否を左右した。また、本年度は日本の財政改革や規制緩和の事例について調査を行うとともに、他国の事例(特にドイツ)についても予備的な調査を行った。政党政治と金融・財政改革に関する先行研究のレビューも行っており、こうした理論的見地を今後事例と結びつけたい。現在、来年度の学会およびシンポジウムでの報告に向けて成果をまとめるとともに、成果の刊行に向けて準備を行っている。本研究は、経済のグローバル化が進展する中で、各国の政策の違いに政党制度が与える影響を探ろうとするものである。国際的な市場の圧力を受けて市場指向型の経済政策への転換を迫られている状況は、先進各国に共通するものの、実際の政策対応には国ごとに違いがある。そうした差異を政党システムのあり方、より具体的には政党間の競合状況に着目して説明する。平成18年度は、日本やドイツ、イタリアの事例について、主に文献による調査を行うとともに、政党政治と金融・財政改革に関する先行研究のサーベイを行った。成果の公表としては、まず、日本比較政治学会にて学会報告を行った。グローバリゼーションによる市場の圧力と、国家間交渉による外国政府からの圧力が金融自由化にそれぞれどのように作用したかを検討するとともに、金融構造改革における政策決定者の専門知識の関係に特に着目した。また、複数の研究会でも報告もした(東京大学社会科学研究Contemporary Japan Group、2006年4月27日、および神戸大学政治学研究会、2006年12月13日)。ただし、予定されていた国際シンポジウムが受け入れ先(ドイツ・オスナブリュック大学)側の事情で延期となったため、そこでの発表は実現しなかった。成果の刊行については、現在、学術誌に論文を投稿する準備を行っている。平成19年度は研究最終年度であり、これまでの成果をまとめて刊行することを目指す。国内での学会報告、および国際シンポジウムでの報告も予定している。本研究は、経済のグローバル化が進展する中で、各国の政策の違いに政党制度が与える影響を探ろうとするものである。国際的な市場の圧力を受けて市場指向型の経済政策への転換を迫られている状況は、先進各国に共通するものの、実際の政策対応には国ごとに違いがある。そうした差異は、しばしば各国の政治システムの違いから説明される。本研究では、特に政党システムに着目して、経済政策の変化を説明した。事例としては、日本の金融市場改革と、コーポレートガバナンス改革を中心として、ドイツとの比較を行った。日本のいわゆる55年体制、すなわち自民党一党優位体制の下では、政治家は、専門性の高い経済政策の決定権限の多くを官僚に委譲してきた。
KAKENHI-PROJECT-05J10219
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05J10219
経済グローバル化への政策対応と政党制の変容-先進諸国の財政・金融改革を事例に
また、利益集団も政治家・官僚と長期的な関係を築き、時間をかけて関係者が協議を行い、経済環境の変化に漸進的に対応するような改革が行われてきた。それに対し、政党システムがより競合的なものに変化した93年以降は、その時々の政党間の競合状況に応じて、大幅な改革が提案されたり、官僚主導で緩やかな改革が実現したりといったバリエーションが生じるようになった。平成19年度は、引き続ぎ調査を行うとともに、学会・研究会において研究成果の公表を行った。日本政治学会での報告「対内直接投資と経済ナショナリズムをめぐる政治」、および日本国際政治学会での報告「市場の論理か国内政治か?-グローバリゼーションと経済政策の選択をめぐって-」学会報告を行った。また、ドイツ・オスナブリュック大学における国際シンポジウム(「1989年以降のドイツと日本:改革圧力と政治システムのダイナミクス」)においても報告の機会を得た。これらの機会に得られたフィードバックも踏まえ、成果を順次論文にまとめている。現在、20年度中刊行予定の学会誌1、論文集2への掲載が決定している。他に1本の論文を学術誌に投稿中である。
KAKENHI-PROJECT-05J10219
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神経変性疾患におけるエクソソームを介した生体内プロテオスターシス維持機構の解明
アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ポリグルタミン病などの神経変性疾患では、様々な蛋白質のミスフォールディング・凝集が神経変性を引き起こすと考えられている。申請者らは、蛋白質ミスフォールディング・凝集を防ぐ分子シャペロンが、エクソソームを介した細胞間伝播により生体内プロテオスターシスを維持する機構が存在する可能性を考えて研究を行い、以下の成果を得た。1)神経変性疾患モデルショウジョウバエにおいて、筋肉・脂肪などの末梢組織からの分子シャペロンの細胞間による複眼神経変性の抑制効果を明らかにした。2)ポリグルタミン病モデルマーモセットにおける末梢血中エクソソームのプロテオーム解析を行い、野生型マーモセットと比べて有意に増加しているバイオマーカー候補分子を見出した。神経変性疾患モデルマウスにおける末梢血中エクソソーム内分子シャペロンの評価を行ったところ、予想に反してHsp70、Hsp40などの明らかな変動を認めなかったため、プロテオーム解析により、これら以外の分子シャペロンも含めて再解析を行う必要が生じたため。神経変性疾患モデルマウス、マーモセットを用いて、経時的な血液中エクソソームのプロテオーム解析を行い、病態の進行と相関するバイオマーカー候補分子を同定する。アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ポリグルタミン病などの神経変性疾患では、様々な蛋白質のミスフォールディング・凝集が神経変性を引き起こすと考えられている。申請者らは、蛋白質ミスフォールディング・凝集を防ぐ分子シャペロンが、エクソソームを介した細胞間伝播により生体内プロテオスターシスを維持する機構が存在する可能性を考えて研究を行い、以下の成果を得た。1)神経変性疾患モデルショウジョウバエにおいて、分子シャペロンの細胞間による神経変性病態への影響を明らかにした。2)神経変性疾患モデルマウスにおける末梢血中エクソソーム内分子シャペロンの変動を評価した。また、プロテオーム解析により、疾患モデルマウスにおいて変動を認める候補分子を見出した。平成28年度の研究において、神経変性疾患モデルでの分子シャペロンの検出感度が低かったため研究計画を繰り越したが、平成29年度にタグを付加した分子シャペロンを用いて、研究を行うことができたため。アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ポリグルタミン病などの神経変性疾患では、様々な蛋白質のミスフォールディング・凝集が神経変性を引き起こすと考えられている。申請者らは、蛋白質ミスフォールディング・凝集を防ぐ分子シャペロンが、エクソソームを介した細胞間伝播により生体内プロテオスターシスを維持する機構が存在する可能性を考えて研究を行い、以下の成果を得た。1)神経変性疾患モデルショウジョウバエにおいて、筋肉・脂肪などの末梢組織からの分子シャペロンの細胞間による複眼神経変性の抑制効果を明らかにした。2)ポリグルタミン病モデルマーモセットにおける末梢血中エクソソームのプロテオーム解析を行い、野生型マーモセットと比べて有意に増加しているバイオマーカー候補分子を見出した。神経変性疾患モデルマウスにおける末梢血中エクソソーム内分子シャペロンの評価を行ったところ、予想に反してHsp70、Hsp40などの明らかな変動を認めなかったため、プロテオーム解析により、これら以外の分子シャペロンも含めて再解析を行う必要が生じたため。神経変性疾患モデルマウスを用いて、血液中エクソソーム内分子シャペロンの変動を評価する。神経変性疾患モデルマウス、マーモセットを用いて、経時的な血液中エクソソームのプロテオーム解析を行い、病態の進行と相関するバイオマーカー候補分子を同定する。
KAKENHI-PROJECT-16H05325
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「基本競合系」型神経回路による視覚競合過程の生物学的実現
本研究は,鳥類の向網膜系の構造と機能の詳細を把握し,基本競合系型の競合神経回路による視覚競合過程の生物学的実現の様式を明らかにすることを目的とする.この目的に添って,以下の多面的なアプローチによる一連の研究を行った.1)向網膜ニューロンの網膜内の標的細胞(IO標的細胞)を細胞内標識して,その軸索と終末を標識し,従来全く知られていなかった網膜内の走行経路と分布を明らかにした.この研究結果は,神経解剖学分野では最も権威のある国際雑誌であるJournal of Comparative Neurologyで出版された.この結果は,向網膜系のシステムとしての構造,特にその出力に関する重要な知見であり,今後の研究の進展にとって価値のあるものである.2)向網膜ニューロン(isthmo-optic neuron ; IOニューロン)が動物の行動,特に視覚誘導性行動の際にどのように活動しているかを明らかにするために,向網膜神経核(isthmo-optic nucleus ; ION)にタングステンワイヤ・テトロード電極を埋め込み,覚醒した頭部無拘束ウズラのIOニューロンから活動を記録した.その結果,頭部運動時にはIOニューロンの活動は抑制され,運動終了直前から活動が促進されることがわかった.3)IONの破壊が視覚誘導性行動にどのように影響するかを調べた.その結果,ION破壊によって散乱した餌を採餌する際のペック(ついばみ)の時間間隔が有意に遅延することがわかった.餌の探索を要しない採餌環境では遅延は見られないことから,ION破壊が餌の探索に関与する過程に障害したことを示唆していると考えられる.4)ION内の神経構築の詳細を明らかにするために,IONを含むスライス標本を作製し,ION内のニューロンの細胞内標識を行った.また,免疫組織化学によるGABA作動性ニューロンの標識も行った.これにより,網膜に投射するIOニューロンの軸索がION核内ではvaricosityを多く持つことを見いだした.これはIOニューロンがION核内でシナプス形成する可能性を示唆するものである.また,GABAニューロンの終末がIOニューロンの細胞体を取り囲むように存在することもわかった.本研究は,鳥類の向網膜系の構造と機能の詳細を把握し,基本競合系型の競合神経回路による視覚競合過程の生物学的実現の様式を明らかにすることを目的とする.この目的に添って,以下の多面的なアプローチによる一連の研究を行った.1)向網膜ニューロンの網膜内の標的細胞(IO標的細胞)を細胞内標識して,その軸索と終末を標識し,従来全く知られていなかった網膜内の走行経路と分布を明らかにした.この研究結果は,神経解剖学分野では最も権威のある国際雑誌であるJournal of Comparative Neurologyで出版された.この結果は,向網膜系のシステムとしての構造,特にその出力に関する重要な知見であり,今後の研究の進展にとって価値のあるものである.2)向網膜ニューロン(isthmo-optic neuron ; IOニューロン)が動物の行動,特に視覚誘導性行動の際にどのように活動しているかを明らかにするために,向網膜神経核(isthmo-optic nucleus ; ION)にタングステンワイヤ・テトロード電極を埋め込み,覚醒した頭部無拘束ウズラのIOニューロンから活動を記録した.その結果,頭部運動時にはIOニューロンの活動は抑制され,運動終了直前から活動が促進されることがわかった.3)IONの破壊が視覚誘導性行動にどのように影響するかを調べた.その結果,ION破壊によって散乱した餌を採餌する際のペック(ついばみ)の時間間隔が有意に遅延することがわかった.餌の探索を要しない採餌環境では遅延は見られないことから,ION破壊が餌の探索に関与する過程に障害したことを示唆していると考えられる.4)ION内の神経構築の詳細を明らかにするために,IONを含むスライス標本を作製し,ION内のニューロンの細胞内標識を行った.また,免疫組織化学によるGABA作動性ニューロンの標識も行った.これにより,網膜に投射するIOニューロンの軸索がION核内ではvaricosityを多く持つことを見いだした.これはIOニューロンがION核内でシナプス形成する可能性を示唆するものである.また,GABAニューロンの終末がIOニューロンの細胞体を取り囲むように存在することもわかった.本研究は,鳥類の向網膜系の構造と機能の詳細を把握し,それらに基づいた数理モデルを用いて向網膜系のシステムとしての振る舞いを明らかにし,基本競合系による視覚競合過程の生物学的実現を解明することを目的としている.この目的に添って,以下の一連の研究を行った.1)向網膜ニューロンの網膜内の標的細胞(IO標的細胞)を細胞内標識して,その軸索と終末を標識し,従来全く知られていなかった網膜内の走行経路と分布を明らかにした.この結果は,神経解剖学分野では権威ある国際学術雑誌であるJournal of Comparative Neurologyに投稿し,受理された.この結果は,向網膜系のシステムとしての構造,特にその出力に関する重要な知見であり,今後の研究の進展の上で重要なものとなる.2)向網膜神経核の破壊が,視覚競合過程を必要とする採餌の際の探索行動にどのように影響するかを調べた.現在はまだ例数が少ない段階ではあるが,向網膜神経核を破壊した動物では有意にペック(ついばみ)間隔の延長が観察された.今後例数を増やし,また同一動物での破壊の前後の比較などを行うことで,採餌行動での向網膜系の役割を検討する.
KAKENHI-PROJECT-15500199
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15500199
「基本競合系」型神経回路による視覚競合過程の生物学的実現
3)自由行動時の向網膜ニューロンの活動を記録するべく,予備実験を開始した.実験用のアリーナ,アンプが完成し,記録用の電極が向網膜ニューロンの活動を記録できることを確認した.これらの結果を元に,近々無拘束の自由行動中の動物の向網膜ニューロンからの記録が可能になると思われる.これは,向網膜系の機能的意義を検討する最も重要な実験となる.本研究は,鳥類の向網膜系の構造と機能の詳細を把握し,基本競合系型の競合神経回路による視覚競合過程の生物学的実現の様式を明らかにすることを目的とする.この目的に添って,以下の多面的なアプローチによる一連の研究を行った.1)向網膜ニューロン(isthmo-optic neuron ; IOニューロン)が動物の行動,特に視覚誘導性行動の際にどのように活動しているかを明らかにするために,向網膜神経核(isthmo-optic nucleus ; ION)にタングステンワイヤ・テトロード電極を埋め込み、覚醒した頭部無拘束ウズラのIOニューロンから活動を記録した.その結果,頭部運動時にはIOニューロンの活動は抑制され,運動終了直前から活動が促進されることがわかった.2)IONの破壊が視覚誘導性行動にどのように影響するかを調べた.その結果,ION破壊によって散乱した餌を採餌する際のペック(ついばみ)の時間間隔が有意に遅延することがわかった.餌の探索を要しない採餌環境では遅延は見られないことから,ION破壊が餌の探索に関与する過程に障害したことを示唆していると考えられる.3)ION内の神経構築の詳細を明らかにするために,IONを含むスライス標本を作製し,ION内のニューロンの細胞内標識を行った.また,免疫組織化学によるGABA作動性ニューロンの標識も行った.これにより,網膜に投射するIOニューロンの軸索がION核内ではvaricosityを多く持つことを見いだした.これはIOニューロンがION核内でシナプス形成する可能性を示唆するものである.また,GABAニューロンの終末がIOニューロンの細胞体を取り囲むように存在することもわかった.4)昨年度得られた細胞内標識法によるIOニューロンの形態の論文が,神経解剖学分野では最も権威のある国際雑誌であるJournal of Comparative Neurologyで出版された.
KAKENHI-PROJECT-15500199
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場の理論におけるWILSONくりこみ群と対称性の実現
最終年度の研究実績は1)昨年度からの研究テーマである「大局的対称性の実現」において、2005年のくりこみ群国際会議(ヘルシンキ)で報告したカイラル対称性に関する研究成果をまとめた。2)本研究のもっとも中心的な課題である、Wilsonくりこみ群に固有な運動量切断と両立する新たな「ゲージ対称性の実現」で大きな前進があった。昨年度までの研究では、有効ゲージ対称性の存在自体は、概念的は示していたが、ゲージ対称性を記述する具体的な恒等式、マスター方程式の形は未知であった。突破口は、園田英徳氏(神戸大学)がQEDでWilson有効作用に対する厳密なWard-高橋恒等式の導出に成功したことに起因する。五十嵐(研究代表者)・伊藤(研究分担者)は、園田との共同研究を開始し、この恒等式を経路積分から導き出すと共に、これが反場形式のマスター方程式の形に書き直せることを示した。この研究成果は、ギリシャで行われた第3回厳密くりこみ群国際会議で報告した。年度末までにQEDに関する論文を投稿し、さらに非可換ゲージ理論への拡張、格子模型への応用などにとりくみたい。3)格子理論におけるアノマリーについての研究では、宗(研究分担者)が鈴木博氏(理化学研究所)らと共同研究を行い、いわゆるoverlap typeといわれる格子フェルミオンの重力場中の振る舞いを考察し、理論の定式化を与えるとともに、アノマリーの計算を行った。さらに、アノマリーのゼロ次元的な類似物である、いわゆる「大局的なアノマリー」について、その経路積分表示を考察した。今年度の研究計画の主要目的は、くりこみ群の流れの上で実現される対称性の一般的な定式化を与えることであった。この定式化には、BV形式が有効であると考えられた。実際、この枠組みでの研究を進めることによって、対称性を特徴づけるキーコンセプトが「量子論的マスター方程式(QME)」であり、UV領域でのQMEとIR領域での有効理論におけるQMEとの関係を見いだすことができた。これらの定式化の成功は、本研究課題の今後の遂行にとって重要な成果となるものであり、論文としてまとめた(論文1)。特に、応用上重要なゲージ(BRS)対称性については、我々の定式化の妥当性を確かめる意味もあって、まず摂動論解析を実行した。具体的には、パウリーヴィラス正則化をもちいて、与えられたゲージ理論のQMEの解法を与え、純ヤンーミルズ系に適応し、QMEの摂動論的解を構成した。これらの成果は、論文2として発表した。さらに、研究計画で記載した課題「相互作用のある系でのカイラル対称性とその自発的破れの機構の研究」についても、非摂動論的なマスター方程式を導出し、解の構成に関する簡単な方法を見いだすことができた。また、SU(2)などの大局的対称性への適用でも成果を上げることができ、これらを論文3にまとめた。なお、今年度は、主に連続理論での研究実績をあげるために、ドイツ、オランダなどの研究グループとの研究打ち合わせを、また、格子理論の分野でギリシャのグループとの研究打ち合わせを実施した。また、国内の研究集会で、研究成果の発表につとめた。1)平成14年度の研究計画の主要目的は、格子上で定義された場の理論における対称性の問題にとりくむことであった。格子理論は、QCDなどの非摂動論的研究や数値シミュレーションによる解析にとって重要な位置を占める正則化理論の一つであり、この理論における対称性の実現は、本研究と密接に関連するテーマである。2)我々が研究対象としたのは、自己相互作用するフェルミオン系でのカイラル対称性である。従来格子理論では、カイラルの実現は原理的に困難があるとみなされていたが、この数年、正則化を指定する格子間隔に依存した、新しい対称性の記述方法の発見によって、長年の困難が克服できることが明らかに成りつつあった。3)我々は、昨年来開発してきた、反場形式に基づく「正則化に依存する対称性の一般的定式化」をこの問題に適用し、(1)対称性を定義するkey relationとして注目されてきたGinsparg-Wilson関係式が、マスター方程式そのものであること。(2)フェルミオンの自己相互作用系でのマスター方程式を求め、その厳密解を構成した。これは、相互作用系でのカイラル対称性を定式化できる非自明な具体例を提供するものである。4)これらの成果は、論文として発表するとともに、京都大学基礎物理学研究所研究会「場の理論2002」(2002年7月)、「場の量子論の基礎的諸問題と応用」(2002年12月)で報告した。また、MITでの国際会議「Lattice 2002」で成果を発表するとともに、Braun大学、Bonn大学、Mainz大学を訪問し、研究打ち合わせを行った。今年度は、また研究支援者1名を雇い、研究計画の効果的な遂行に留意した。1)平成15年度の研究計画の主要目的の一つは、格子上で定義された場の理論における対称性の定式化を基礎として、これを連続理論に拡張することであった。格子理論と連続理論は、大筋で類似しているが、格子定数が運動量に依存する関数におきかわる等の技術的な困難もあることが明らかになった。2)連続理論におけるくりこみ群の活用は、いわゆる「くりこみ群方程式」の解析という形をとる。この方程式は、Legendre有効作用に対するものと、いわゆるWilsonian有効作用に対するものと二種類ある。
KAKENHI-PROJECT-13135209
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場の理論におけるWILSONくりこみ群と対称性の実現
これらは形式上は同等だが、近似計算を行う上では、取り扱いが異なってくる。我々は、特定の正則化を選んで、対称性の考察にとって有利なWilsonian有効作用を近似する一般的方法を開発し、これに対するくりこみ群方程式が、Legendre有効作用に対する方程式の情報を再現することを示した。3)具体的にカイラル対称性の非自明な実現を連続理論で試み、くりこみ群方程式を用いて解析するという目標に対しては、現在進行中で未だ十分な成果を達成するに至っていない。4)これらの成果は、日本物理学会(宮崎)等で発表した。また、今年度は国内の研究グループとの研究打ち合わせを重視するとともに、研究支援者を1名雇い、研究計画の効果的な遂行を図った。1)平成16年度の研究計画の一つは、WILSON有効作用に対するくりこみ群の発展方程式である、POLCHINSKI方程式の解析方法を研究することであった。これについては、有効作用のtree展開の枠組みに基づき、発展方程式のなかで、一粒子可約な寄与のなかから既約部分を生成するものを分離して、実質的にLegendre有効作用の発展方程式に現れる部分を取り出す処方を見いだした。この研究成果は、論文にまとめ出版した。2)研究計画の主要部分は、カイラル対称性などの大局的対称性について、通常の対称性を保持しない正則化の下で新たな有効対称性を定式化し、この対称性を持つWILSON有効作用を構成すること、また、有限個の相互作用項に対するPOLCHINSKI方程式を解析することであった。この課題については、対称性の保持に必要な微分項はすべてとりいれ、それ以外の微分項について展開するという新たな微分展開を考えた。この展開のleading項については、対称性を保持したまま発展方程式の解析が行えることを示した。この結果は、基礎物理学研究所研究会「場の量子論の基礎的諸問題と応用」(2004年12月)でポスターによる発表を行い、現在、論文としてまとめている。3)格子理論における超対称性の研究においては、いわゆる「市松格子」上でのstaggered fermionに関する対称性の分析をおこなった。これについての研究結果は、シカゴで開催された「LATTICE 2004」(2004年6月)や基礎物理学研究所研究会「格子ゲージ理論の新しい発展と芽」(2004年12月)などで発表した。4)上記の研究計画の効果的な遂行のため、国内、国外の研究グループとの研究打ち合わせ、各種研究会への出席・成果発表をこない、研究支援者1名を雇用した。本年度の研究業績は1)Wilsonくりこみ群に固有な運動量切断と両立する新たな「対称性の実現」を、質量項正則化のもとでのカイラル対称性を具体例として、特にくりこみ群の流れの記述に焦点をしぼり考察した。そのため、一般的な議論としてPolchinski方程式を反場形式での正準変換として記述し、この流れ方程式が、量子論的なBRS変換のもとで不変となることを示した。また、いわゆるスキーム独立性の問題と関連して、場の変数の有限正準変換に伴うPolchinski方程式の共変的な振る舞いを明らかにした。これらの一般論を用いて、Luesherらの非自明なカイラル対称性の表現と標準的な表現の間の写像を考察し、くりこみ群の流れの相互関係を理解することができた。これらの成果は、ヘルシンキでの国際会議「Renormalization group 2005」で報告した。
KAKENHI-PROJECT-13135209
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熱対流方程式系の空間周期的な分岐定常解のまわりの解のダイナミクスの研究
隠居はOberbeck-Boussinesq方程式のある種の定常解に対して、定常解が線形化安定性の臨界状態にあっても、初期撹乱の大きさに関係なく無条件安定であることを示した。さらに隠居は粘性による発熱の効果を考慮に入れたOberbeck-Boussinesq方程式タイプのモデル方程式を導出し、このモデル方程式については、熱伝導解が不安定になる制御パラメータの閾値(分岐点)が通常のOberbeck-Boussinesq方程式よりも大きくなるが、様々な空間周期パターンをもつ定常解がtranscriticalに分岐することを示し、熱伝導解は制御パラメータが閾値より小さくても有限振幅の撹乱に対して不安定であることを示した。また隠居は非局所的な非線形項をもつVlasov-Poisson-Fokker-Planck方程式の初期値問題を考察し、重み付きSobolev空間において不変多様体を構成することによって解の時間無限大における漸近形を求めた。川島は一般の双曲・楕円型連立系のある種の特異極限を論じ、この特異極限で双曲・楕円型連立系の解が対応する双曲・放物型連立系の解に収束することを、その収束の速さも込めて証明した。また川島は空間1次元の半空間における離散的Boltzmann方程式の初期・境界値問題を考察し、いくつかの境界条件のもとで、定常解の存在とそれらの時間無限大における漸近安定性を示した。小川はあるクラスの半線形分散型方程式の初期値問題において、初期値がDiracのデルタ関数のような一点だけの特異点を持つ場合に方程式の解が時間がたった後に時間と空間の両方向に付き実解析的になることを示した。また小川は3次元Euler方程式の解の爆発問題を考察し、爆発のための十分条件を渦度のある一般化されたBesov空間によるセミノルムによって与えた。井口は空間周期的な水底上の定常水面波の分岐について調べ、水底に小さな凹凸がある場合の可能な分岐パターンの分類を行なった。隠居はOberbeck-Boussinesq方程式のある種の定常解に対して、定常解が線形化安定性の臨界状態にあっても、初期撹乱の大きさに関係なく無条件安定であることを示した。さらに隠居は粘性による発熱の効果を考慮に入れたOberbeck-Boussinesq方程式タイプのモデル方程式を導出し、このモデル方程式については、熱伝導解が不安定になる制御パラメータの閾値(分岐点)が通常のOberbeck-Boussinesq方程式よりも大きくなるが、様々な空間周期パターンをもつ定常解がtranscriticalに分岐することを示し、熱伝導解は制御パラメータが閾値より小さくても有限振幅の撹乱に対して不安定であることを示した。また隠居は非局所的な非線形項をもつVlasov-Poisson-Fokker-Planck方程式の初期値問題を考察し、重み付きSobolev空間において不変多様体を構成することによって解の時間無限大における漸近形を求めた。川島は一般の双曲・楕円型連立系のある種の特異極限を論じ、この特異極限で双曲・楕円型連立系の解が対応する双曲・放物型連立系の解に収束することを、その収束の速さも込めて証明した。また川島は空間1次元の半空間における離散的Boltzmann方程式の初期・境界値問題を考察し、いくつかの境界条件のもとで、定常解の存在とそれらの時間無限大における漸近安定性を示した。小川はあるクラスの半線形分散型方程式の初期値問題において、初期値がDiracのデルタ関数のような一点だけの特異点を持つ場合に方程式の解が時間がたった後に時間と空間の両方向に付き実解析的になることを示した。また小川は3次元Euler方程式の解の爆発問題を考察し、爆発のための十分条件を渦度のある一般化されたBesov空間によるセミノルムによって与えた。井口は空間周期的な水底上の定常水面波の分岐について調べ、水底に小さな凹凸がある場合の可能な分岐パターンの分類を行なった。本研究では、無限層状領域における熱対流現象を記述する0berbeck-Boussinesq方程式の静止状態を記述する空間一様な定常解(熱伝導解)が不安定化する分岐点の近傍での解の時問発展の様子を明らかにすることを研究目的とした。隠居は0berbeck-Boussinesq方程式のある種の定常解に対して、定常解が線形化安定性の臨界状熊にあっても、初期撹乱の大きさに関係なく無条件安定であることを示した。また隠居は粘性による発熱の効果を考慮に入れた0berbeck-Boussinesq方程式タイプのモデル方程式を導出し、熱伝導解が不安定になる制御バラメータの閾値(分岐点)が通常の0berbeck-Boussinesq方程式よりも大きくなることを示した。さらに、このモデル方程式については、様々な空間周期パターンをもつ定常解がtranscriticalに分岐することを示し、熱伝導解は制御パラメータが閾値より小さくても有限振幅の撹乱に対して不安定であることを示した。川鳥と井口は輻射気体の運動を記述する双曲一楕円型方程式系の解の時刻無限大の時の漸近挙動について調べ、解の漸近形をある種の自己相似解で表し、その誤差項の各点評価を行なった。また川島は空間1次元の半空間における離散的Boltzmann方程式の純消散的境界条件のもとでの定常解の存在を示し、その定常解の漸近安定性を示した。
KAKENHI-PROJECT-11640208
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11640208
熱対流方程式系の空間周期的な分岐定常解のまわりの解のダイナミクスの研究
井口は空間周期的な水底上の定常水面波の分岐について調べ、水底に小さな凹凸がある場合の可能な分岐パターンの分類を行なった。小川はあるクラスの半線形分散型方程式の初期値問題において、初期値がDiracのデルタ関数のような一点だけの特異点を持つ場合に方程式の解が時間がたった後に時間と空間の両方向に付き実解析的になることを示した。本研究における各自の研究成果は次の通りである.隠居は粘性による発熱の効果を考慮に入れたOberbeck-Boussinesq方程式タイプのモデル方程式を導出し、熱伝導解が不安定になる制御パラメータの閾値(分岐点)が通常のOberbeck-Boussinesq方程式よりも大きくなることを示した。さらに、このモデル方程式については、様々な空間周期パターンをもつ定常解がtranscriticalに分岐することを示し、熱伝導解は制御パラメータが閾値より小さくても有限振幅の撹乱に対して不安定であることを示した。また隠居は非局所的な非線形項をもつVlasov-Poisson-Fokker-Planck方程式の初期値問題を考察し、重み付きSobolev空間において不変多様体を構成することによって解の時間無限大における漸近形を求めた。川島は一般の双曲・楕円型連立系のある種の特異極限を論じ、この特異極限で双曲・楕円型連立系の解が対応する双曲・放物型連立系の解に収束することを、その収束の速さも込めて証明した。また川島は空間1次元の半空間における離散的Boltzmann方程式の初期・境界値問題を考察し、いくつかの境界条件のもとで、定常解の存在とそれらの時間無限大における漸近安定性を示した。小川はあるクラスの半線形分散型方程式の初期値問題において、初期値がDiracのデルタ関数のような一点だけの特異点を持つ場合に方程式の解が時間がたった後に時間と空間の両方向に付き実解析的になることを示した。また小川は3次元Euler方程式の解の爆発問題を考察し、爆発のための十分条件を渦度のある一般化されたBesov空間によるセミノルムによって与えた。井口は2次元空間における水面波で表面張力がある場合の初期値問題の適切性を考察し、初期値の大きさに制限を課さなくても問題は適切であることを示した。
KAKENHI-PROJECT-11640208
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女子学生における摂食障害リテラシーの調査ならびに予防教育プログラムの作成
本研究では日本人女子学生の摂食障害に関するリテラシーを明らかにすることで、摂食障害の早期発見や予防のための教育プログラムの作成を目的とした。日本人女子大学生および短期大学生計1424人を対象に、ビネット法による摂食障害に関するリテラシー調査用紙を実施し、851の回答を得た。その結果、摂食障害という疾患名は理解できるが、摂食障害が精神疾患であることや治療が必要な疾患であることはあまり認識されておらず、摂食障害に関するリテラシーは十分でないことが示された。よって、摂食障害予防のためのプログラムにおいては、まずは摂食障害に関する正しい認識をもつことが必要だと考えらえる。摂食障害における予防や早期発見には摂食障害に関する知識や理解(リテラシー)を有することが有効とされているが、本邦では摂食障害のリテラシーに関する調査研究は少ない。そこで摂食障害に関するリテラシーの調査を行い、本邦における摂食障害リテラシーを明らかにすることで、摂食障害の早期発見や予防のための教育プログラムの作成を目的としている。平成27年度の研究計画としては、これまでに作成した自記式調査票を用い、高校・短大・大学等に所属する女子学生に対して摂食障害に関するリテラシー調査の実施を予定していた。しかし、調査協力を依頼していた高校や短期大学の都合等により27年度は女子大学生のみを対象とした調査を行った。地方私立大学に所属する女子大学生1104人に対し、授業開始前等の時間に調査の概要を説明し、調査票を配布した。任意での提出とするため、後日の提出とし、結果613の調査票を回収した(回収率55.5%)。現在、回収した調査票の集計・統計処理を行っている。平成28年度は、調査が実施できなかった高校生や短大生に対する調査を実施するとともに、引き続き大学生の調査結果の集計・統計処理を行っていく予定である。27年度に実施予定だった短大生・高校生に対する調査を実施することができなかった。平成28年度においては、予定していた女子短期大生に対する自記式質問紙調査を実施し、対象者323人中241人から回答を得た(回収率74.6%)得られた女子短期大生の回答結果は集計処理を終了し、今後統計処理を実施する予定である。調査結果の統計処理としては、短期大学生と4年制大学生のリテラシーに差があるのか、さらに摂食障害傾向の有無についても比較検討する予定である。平成27年度に実施した4年生女子大学生に対する調査結果については、統計処理を行い、摂食障害リテラシー傾向の検討を行った。調査結果の概要については、調査対象者全体としてどのような傾向がみられるかについてを学会で発表した。さらに、3種のビネット別に対象者の有するリテラシーの程度がどのように異なるかについての検討結果についても学会にて発表を行った。調査結果の統計処理としては、摂食障害リテラシー調査と同時に実施した摂食障害スクリーニング調査結果より、対象者の摂食障害傾向と摂食障害リテラシー傾向の関連性の検討を行い、摂食障害傾向の有無が摂食障害リテラシーにどのように影響するのかについて検討した。また、調査対象者の所属や学年別に、摂食障害リテラシー程度や摂食障害傾向の有無がどのように関連しているのかについても統計処理を行い検討を行っている。これら統計処理の結果については、平成29年度も継続して検討を行い、学会発表や論文投稿によって公表していく予定である。予定していた調査を終了し、調査結果の統計処理を実施した。今後はより詳細に調査結果を分析し、予定していた摂食障害予防プログラムの作成を目指したい。摂食障害における予防や早期発見には摂食障害に関する知識や理解(リテラシー)を有することが有効とされているが、本邦では摂食障害のリテラシーに関する調査研究は少ない。そこで本研究では摂食障害に関するリテラシーの調査を行い、本邦における摂食障害リテラシーを明らかにすることで、摂食障害の早期発見や予防のための教育プログラムの作成を目的としている。平成29年度は、これまで実施した女子大学生と女子短期大学生の摂食障害に関するリテラシー調査結果を集計・統計処理し、摂食障害に関する理解の有無や摂食障害患者に対する認識についてさらなる検討を行い、今後実施予定である教育プログラムの内容について検討した。また、摂食障害スクリーニング調査(EAT-26、SCOFF、EDE-Q)の結果が摂食障害に関する理解や認識に対しどのように影響しているかについて検討するため、対象者をそれぞれのスクリーニングテストの高得点群と正常得点群に分け、摂食障害リテラシーとの関連を検討した。調査で用いた神経性やせ症(AN)、神経性過食症(BN)、過食性障害(BED)の3ビネットの疾患名、症状の原因、対応方法に関しては全てのスクリーニング調査の高得点群と正常得点群において差は見られなかったが、現在または過去の経験におけるビネットの症状と自身の類似については、3つのビネットにおいて全てのスクリーニング調査の高得点群と正常得点群間で回答傾向に有意な差がみられ(χ2検定、p<0.05)、高得点群はビネットと自身との類似性が高いと認識している傾向がみられた。さらにビネットに対する共感においても高得点群はビネットに強く共感を持つ傾向がみられた(χ2検定、p<0.001)。摂食障害傾向の有無は摂食障害の知識との関連は少ないが、ビネットの症状と自身の類似点の判断や、ビネットに対する共感において関連する可能性が示された。本研究では日本人女子学生の摂食障害に関するリテラシーを明らかにすることで、摂食障害の早期発見や予防のための教育プログラムの作成を目的とした。日本人女子大学生および短期大学生計1424人を対象に、ビネット法による摂食障害に関するリテラシー調査用紙を実施し、851の回答を得た。
KAKENHI-PROJECT-15K21569
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女子学生における摂食障害リテラシーの調査ならびに予防教育プログラムの作成
その結果、摂食障害という疾患名は理解できるが、摂食障害が精神疾患であることや治療が必要な疾患であることはあまり認識されておらず、摂食障害に関するリテラシーは十分でないことが示された。よって、摂食障害予防のためのプログラムにおいては、まずは摂食障害に関する正しい認識をもつことが必要だと考えらえる。女子短大生および女子高校生に対する調査を実施し、27年度に得られた女子大学生のデータと合わせて解析を行っていく予定である。また、得られた結果をもとに教育プログラムの内容についても検討を行っていく予定である。まずは大学生・短期大学生の調査結果の比較分析を行う予定である。さらに摂食障害のスクリーニング調査結果と摂食障害リテラシー調査結果の関連性を検討し、有用な摂食障害予防のための教育プログラムの開発を行う予定である。食育・食生活・食行動当初計画していた調査が一部実施できなかったため、調査に関する費用を使用することができなかった。調査が完了しなかったため、研究成果の報告を予定していた学会に参加することができなかった。論文投稿のための費用を計上していたが、平成29年度に持ち越しとなったため。延期されている女子高校生および女子短大生に対する調査を実施し、調査対象者への謝礼、調査票処理のための費用として支出する予定である。また、研究成果の報告のために、学会に参加する旅費として使用する予定である。海外学術雑誌へ投稿する際に使用する予定である
KAKENHI-PROJECT-15K21569
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モバイルエージェントのための自己安定アルゴリズムに関する研究
本研究課題では、外乱の起こりやすい環境において、複数のモバイルエージェント(自律的に移動する計算オブジェクト)が安定的に協調動作を行うための自己安定アルゴリズムの開発、また、その設計手法の確立を目指す。2018年度は、様々なタイプのモバイルエージェントを対象に、安定的な動作を実現するアルゴリズムを提案した。主な成果は以下の通りである。(a)モバイルロボットのためのリング探索アルゴリズム:モバイルエージェントの一種であるモバイルロボットを対象とし、ロボットが動作する環境をリンググラフでモデル化したうえで、ロボットが協調して全てのノードを訪問するためのアルゴリズムを提案した。とくに、ロボットの視認範囲を1、ロボットの記憶ビット数・送信ビット数(ライトとしてモデル化される)を1に限定することで、外乱がロボットに与える影響を最小限に抑えている。(b)動的ネットワークにおけるモバイルエージェントの集合・探索アルゴリズム:本研究では、外乱の起こりやすい環境をリンクの接続状況が変化する動的ネットワークとしてモデル化し、その上で動作するエージェントのためのアルゴリズムを提案した。具体的には、リングネットワークにおいて全エージェントを1ノードに集合させる集合アルゴリズム、トーラスネットワークにおいて全ノードを訪問する探索アルゴリズムを提案した。(c)個体群プロトコルモデルにおけるリーダ選挙・分割アルゴリズム:個体群プロトコルモデルとは、不規則に移動する低性能なデバイスをエージェントとしてモデル化したものである。個体群プロトコルでは、2つのエージェントが近づいたときにのみ、交流によって状態を変化させることができる。本研究では、1個体をリーダとして選択するアルゴリズム、個体群を同サイズの複数のグループに分割するアルゴリズムを提案した。いくつかのアルゴリズムでは、自己安定性も実現している。2018年度は、設計手法確立のためのケーススタディとして、モバイルエージェントの様々な基本タスクに対して自己安定アルゴリズムの実現可能性を検討し、実現可能であればその効率化を目指すことを目的としていた。実際に、モバイルロボットモデル、動的ネットワークモデル、個体群プロトコルモデルなどの様々なモバイルエージェントモデルにおいて、重要な基本タスクに対する、自己安定性、または、その実現につながる性質をもった効率的なアルゴリズムを提案することができた。そのため、順調に進展しているといえる。2019年度は、より高度な自己安定アルゴリズムの設計手法を検討するために、付加的な性質を付与した自己安定アルゴリズムの開発を検討する。具体的には、2018年度に開発したモバイルロボットモデル、動的ネットワークモデル、個体群プロトコルモデルのアルゴリズムに対して、従来システムで多く研究されている故障封じ込め(故障発生時にその影響を限定的に抑える)、安全収束(部分的に条件を満たした目的状態に短時間で収束し、その状態を保ったまま条件を全て満たした目的状態に収束する)などの概念を適用可能かどうか検討する。そのうえで、エージェントモデルに特化した概念の導入を検討する。本研究課題では、外乱の起こりやすい環境において、複数のモバイルエージェント(自律的に移動する計算オブジェクト)が安定的に協調動作を行うための自己安定アルゴリズムの開発、また、その設計手法の確立を目指す。2018年度は、様々なタイプのモバイルエージェントを対象に、安定的な動作を実現するアルゴリズムを提案した。主な成果は以下の通りである。(a)モバイルロボットのためのリング探索アルゴリズム:モバイルエージェントの一種であるモバイルロボットを対象とし、ロボットが動作する環境をリンググラフでモデル化したうえで、ロボットが協調して全てのノードを訪問するためのアルゴリズムを提案した。とくに、ロボットの視認範囲を1、ロボットの記憶ビット数・送信ビット数(ライトとしてモデル化される)を1に限定することで、外乱がロボットに与える影響を最小限に抑えている。(b)動的ネットワークにおけるモバイルエージェントの集合・探索アルゴリズム:本研究では、外乱の起こりやすい環境をリンクの接続状況が変化する動的ネットワークとしてモデル化し、その上で動作するエージェントのためのアルゴリズムを提案した。具体的には、リングネットワークにおいて全エージェントを1ノードに集合させる集合アルゴリズム、トーラスネットワークにおいて全ノードを訪問する探索アルゴリズムを提案した。(c)個体群プロトコルモデルにおけるリーダ選挙・分割アルゴリズム:個体群プロトコルモデルとは、不規則に移動する低性能なデバイスをエージェントとしてモデル化したものである。個体群プロトコルでは、2つのエージェントが近づいたときにのみ、交流によって状態を変化させることができる。本研究では、1個体をリーダとして選択するアルゴリズム、個体群を同サイズの複数のグループに分割するアルゴリズムを提案した。いくつかのアルゴリズムでは、自己安定性も実現している。2018年度は、設計手法確立のためのケーススタディとして、モバイルエージェントの様々な基本タスクに対して自己安定アルゴリズムの実現可能性を検討し、実現可能であればその効率化を目指すことを目的としていた。実際に、モバイルロボットモデル、動的ネットワークモデル、個体群プロトコルモデルなどの様々なモバイルエージェントモデルにおいて、重要な基本タスクに対する、自己安定性、または、その実現につながる性質をもった効率的なアルゴリズムを提案することができた。そのため、順調に進展しているといえる。2019年度は、より高度な自己安定アルゴリズムの設計手法を検討するために、付加的な性質を付与した自己安定アルゴリズムの開発を検討する。具体的には、2018年度に開発したモバイルロボットモデル、動的ネットワークモデル、個体群プロトコルモデルのアルゴリズムに対して、従来システムで多く研究されている故障封じ込め(故障発生時にその影響を限定的に抑える)、安全収束(部分的に条件を満たした目的状態に短時間で収束し、その状態を保ったまま条件を全て満たした目的状態に収束する)などの概念を適用可能かどうか検討する。そのうえで、エージェントモデルに特化した概念の導入を検討する。計画通り使用しているが、端数として少額が余ったものである。
KAKENHI-PROJECT-18K11167
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K11167
教育用映像素材に対する字幕検索システムの開発
本研究では映像内の字幕に着目した字幕検索システムを開発する.本手法では,各字幕の文字画像特徴量と検索キーに対応する文字画像特徴量との距離に基づいて該当の字幕が出現するフレームを検索する.教育用映像データに対して検索実験(検索単語として91単語)を行った結果, 1-gram特徴量を用いた場合には最大98. 61%, 2-gram特徴量を用いた場合には最大99. 59%の平均適合率を得ることができた.検索時間に関しても, 2-gram特徴量を用いた場合でも約0. 5秒で検索結果を得ることができた本研究では映像内の字幕に着目した字幕検索システムを開発する.本手法では,各字幕の文字画像特徴量と検索キーに対応する文字画像特徴量との距離に基づいて該当の字幕が出現するフレームを検索する.教育用映像データに対して検索実験(検索単語として91単語)を行った結果, 1-gram特徴量を用いた場合には最大98. 61%, 2-gram特徴量を用いた場合には最大99. 59%の平均適合率を得ることができた.検索時間に関しても, 2-gram特徴量を用いた場合でも約0. 5秒で検索結果を得ることができた現在,マルチメディア技術の発展に伴って,教育分野の中で教育用映像素材が頻繁に利用されつつある.大量の映像素材がアーカイブ化されつつある反面,映像題目,映像制作会社,映像ジャンルといった予め人手で付与されたキーワード情報を基に管理されているのが現状である.そのため,学習者が事前にキーワード情報について熟知していなければならず,教育効果を低下させる原因になっている.そこで,より教育効果を上げるためには,映像内容に準じた情報で映像を検索する必要がある.映像内容を表すコンテンツとしては,映像フレームの構図情報,音声情報等が挙げられるが,本研究では,ユーザからの入力が容易なテキスト情報に対応した字幕情報に着目する.また,教育用映像素材の中でも特に英会話教育用の映像素材を対象にし,映像から字幕領域を検出する技術,検出した字幕領域から字幕文字を認識する技術,及び学習者が字幕により学習に有効な映像シーンを検索する技術を開発する.このような字幕に基づいて映像シーンを検索できれば,大量の英会話映像素材集から特定の単語が英会話で使用されているシーンのみを集めて試聴することができる.つまり,学習者が詳しく知りたい単語についての用例を,あたかも辞書を調べるように,解説付きの映像データ集で学習することが可能になる.平成21年度は,字幕領域を検出するシステム,及び字幕文字画像の特徴量を作成するシステムを開発した.特に英会話の教育用映像に対する評価実験を行い,領域検出アルゴリズム.文字画像特徴量の有効性を検証した.現在,マルチメディア技術の発展に伴って,教育分野の中で教育用映像素材が頻繁に利用されつつある.大量の映像素材がアーカイブ化されつつある反面,映像題目,映像制作会社,映像ジャンルといった予め人手で付与されたキーワード情報を基に管理されているのが現状である.そのため,学習者が事前にキーワード情報について熟知していなければならず,教育効果を低下させる原因になっている.そこで,より教育効果を上げるためには,映像内容に準じた情報で映像を検索する必要がある.映像内容を表すコンテンツとしては,映像フレームの構図情報,音声情報等が挙げられるが,本研究では,ユーザからの入力が容易なテキスト情報に対応した字幕情報に着目する.また,教育用映像素材の中でも特に英会話教育用の映像素材を対象にし,映像から字幕領域を検出する技術,検出した字幕領域から字幕文字を認識する技術,及び学習者が字幕により学習に有効な映像シーンを検索する技術を開発する.このような字幕に基づいて映像シーンを検索できれば,大量の英会話映像素材集から特定の単語が英会話で使用されているシーンのみを集めて試聴することができる.つまり,学習者が詳しく知りたい単語についての用例を,あたかも辞書を調べるように,解説付きの映像データ集で学習することが可能になる.平成22年度は,ユーザが入力した文字が字幕内に出現するシーンを検索するシステムを開発した.英会話の教育用映像に対する評価実験を行い,システムの有効性を検証した.現在,マルチメディア技術の発展に伴って,教育分野の中でも教育用映像素材が頻繁に利用されつつある.大量の映像素材がアーカイブ化されつつある反面,映像題目,映像制作会社,映像ジャンルといった予め人手で付与されたキーワード情報を基に管理されているのが現状である.そのため,学習者が事前にキーワード情報について熟知していなければならず,教育効果を低下させる原因になっている.そこで,より教育効果を上げるためには,映像内容に準じた情報で映像を検索する技術が必要である.映像内容を表すコンテンツとしては,映像フレームの構図情報,音声情報等が挙げられるが,本研究では,ユーザからの入力が容易なテキスト情報に対応した字幕情報に着目する.また,教育用映像素材の中でも特に英会話教育用の映像素材を対象にし,映像から字幕領域を検出する技術,検出した字幕領域から字幕文字を認識する技術,及び学習者が字幕により学習に有効な映像シーンを検索する技術を開発する.このような字幕に基づいて映像シーンを検索できれば,大量の英会話映像素材集から特定の単語が英会話で使用されているシーンのみを集めて試聴することができる.つまり,学習者が詳しく知りたい単語についての用例を,あたかも辞書を調べるように,解説付きの映像データ集で学習することが可能になる.平成23年度は,プロトタイプシステムから大規模システムへの拡張大規模システムの評価実験,大規模映像検索サーバを開発した.また,平成23年度以降の研究成果を国内学会,国際会議にて研究発表を行った。
KAKENHI-PROJECT-21500940
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21500940