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器官系の加齢に関する組織化学的研究 | glucosamineで標識し,ラジオオ-トグラムを観察し,題種の中のSを源水部X線分析で定量すると,糖質合成とS量は2週で最高となり収後減少した。マウス肝臓を^3Hーthymidineで標識すると,胎生期には多数の造血細胞が標識されるが生後9日で0となり,肝細胞,類調内皮細胞等は生後2年まで減少しつつ残った。RNAと蛋白合成は生後2週が最高であった。マウス膵臓ではDNA合成は生後低下したが,RNA,蛋白,脂質,糖質の合成は2週から2ケ月まで高く,収後低下した。泌尿生殖器系についてはマウス腎臓のDNA合成を糖成合のレクチン染色性が加齢により変動した。神経感覚器系についてはマウス網膜と色素皮層の核酸合成とレクチン染色性を検索したが,DNA合成は胎生期に多く,網膜内層,外層色素上皮層において,胎生9日から18日までの間に異なった変動が認められた。RNA合成は生後急速に増加し,網膜で1回,色素上皮で7日が最高となった。レクチン染色性も加齢の変動が認められた。本研究計画は,実験動物及び生検によって得られる人体の各器官系の組織を材料として、生体の加齢によって起こる組識細胞の微細構造の変化を,細胞小器官レベルにおいて解明することを目的としている。本年度は,培養細胞系,運動器系,循環器系,消化器系,泌尿生殖器系,内分泌器系,神経感覚器系の組織を種々の組織化学的方法で検索した。その結果,培養細胞系のHeLa細胞は, ^3Hーthymidine及び^3Hーuridineの標識率が培養開始後増加し,1週間で減少する変動を示した。運動器系のヒト黄色靭帯は加齢により石灰化が増加し,靭帯骨化症となる症例があり,電顕誌科をX線微小部分析した結果,靭帯の椎弓上部付着部に石灰化前に不溶性カルシウムの蓄積が存在することが明らかになった。循環器系のマウス内臓について,酸性フォスファタ-ゼ活性,DNA,RNA蛋白合成を調べた。酵素活性は生後2週で強くなり,以後減少した。椎酸・蛋白合成も2週が最高で,10ケ月まで低下した。検化器系についてはマウスの肝臓と膵臓を検索した。マウス肝臓では胚生期に造血細胞がDNA合成を行い分裂増殖するが,生後2週で消失し,肝細胞,血管内疫細胞のS期細胞は加齢と共に減少し生後2年まで認められた。RNA及び蛋白合成は生後1,2週が最高値を示した。膵臓ではDNA合成は生後低下し,2年まで認められ,RNA合成,糖質合成は2週が最高で以後低下脂質合成は1,2ケ月が最高で以後低下した。泌尿生殖器系のマウス賢臓のDNA合成,糖のレクチン染色の加齢により変動した。内分泌器系については,モト甲状腺とマウス副腎を調べたが,S期細胞は加齢を共に減少した。神経感覚器系についてはマウス細胞のDNA,RNA合成とレクチン染色性を検索したが,S期細胞は胎生期に多く,網膜内層,外層,色素上皮層において,胎生9日から18日までの間に異なった変動が認められた。RNA合成及びレクチン染色性についても変動が観察された。 | KAKENHI-PROJECT-02454564 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02454564 |
地球温暖化に向けた農業用水マネジメントの新たな制度的手法の開発 | 本研究は、地球温暖化の環境下において増大すると懸念される経営リスクの軽減および水利施設の安定的な更新を行うための新たなかんがい政策を提示するとともに、その有効性を実証的に研究することを目的とした。具体的には、限界節水費用等の推定を行い、それにより、事後的料金制度の導入可能性を明らかにした。事後的料金制度が構造的に土地改良区財務を不安定にする課題については、耕作者の節水により生じた余剰水を改良区がリースする制度の創設が有効であることを示した。本研究は、地球温暖化の環境下において増大すると懸念される経営リスクの軽減および水利施設の安定的な更新を行うための新たなかんがい政策を提示するとともに、その有効性を実証的に研究することを目的とした。具体的には、限界節水費用等の推定を行い、それにより、事後的料金制度の導入可能性を明らかにした。事後的料金制度が構造的に土地改良区財務を不安定にする課題については、耕作者の節水により生じた余剰水を改良区がリースする制度の創設が有効であることを示した。事後的料金制度の構築のための第一ステップとして節水の限界費用分析を行った。まず、CVMや選択実験による表明選考法を用いて水の限界価値を測定した先行研究をとりまとめ、CVMの手法によって節水量とそれによって発生するコストの関係を複数の表現によって明らかにするアンケートを滋賀県A改良区を対象に行った。また、当該改良区では節水の際に支線用水路単位で協調行動を行わなければ、使用料金の低減が実現しないことから、この協調行動のための取引費用に関する質問も合わせて行った。回収率は3割で、210サンプルを得た。さらに、これをGISデータと組み合わせ、地理的な情報と組み合わせて解析するためのデータセットの構築を行った。同様に、岩手県B土地改良区を対象に,限界節水費用の計測を試みた。計測方法は,同土地改良区の管轄面積が極めて大きく,農家属性も多岐に渡っていることから,役員・総代を対象としたアンケート調査(85サンプル)とした。その結果,節水政策の需要曲線を推定することができ,通常の用水使用量の1割相当分水量で10aあたり2,000円,3割相当で同2,500円という推計値が得られた。また,農業用水マネジメントのコストとして,賦課金制度上は明示化されていない畦畔草刈作業費用が,営農現場では極めて重負担となっていることが指摘された。あわせて、米国カリフォルニア州における渇水銀行に関する予備的調査も行い、事後的料金制度に対する改良区の収入の変動を吸収するための1手法としての水利権リース市場についての分析を行った。本年度の研究成果をもとに新たな政策についてのワークショップを関係県職員及び改良区事務局長を招いて実施した。節水の限界費用の推計方法として実験経済学的手法の適用可能性を検討した。はじめに限界費用計測に適した調査地の選定を滋賀県において行った。周知のように面積当たり賦課が基本の日本の水田灌漑用水では、節水水量とそのために投入する追加的な労働量の関係を農家に質問しても、そもそも使用水量が不明で答えることが難しい。ただし、例外的に支線分水口単位で従量料金制をとるパイプライン配水の改良区が存在しており、調査研究の了解を得た。ただし当該改良区でも、圃場単位の使用水量までは測定していないため、節水量を明らかにするためのベンチマークとなる通常の使用水量は不明のため、圃場単位で実際に節水を行う実験以外の方法を用いることとした。実験経済学の適用可能性について、海外研究協力者の独キール大学ローマン教授の助言を得た。新たな農業用水マネジメント手法の開発のために初年度で課題として浮き彫りとなった農業用水マネジメント・コストとしての畦畔草刈作業費用について,岩手県I土地改良区において綿密な現地調査を行い,その実際費用を明らかとした。立地条件(純農村地域,市街化近接地域,用水上流および末端地域)などで費用水準に有意な差があることが判明した。また,末端管理組織の性格(ビジョンや組織形態)の違いによって,将来的な畦畔草刈作業費用の負担問題の現れ方に大きな差があることが理論的に検討された。したがって,畦畔草刈作業費用の負担問題(普遍的な費用の把握方法とその最小化手法の開発)が新たな研究課題として,示唆されることとなった。水利権リース市場の導入可能性を検討するため、米国カリフォルニア州の水利権リース市場について現地調査を行った。その結果、水量の実測をもとにしたリース市場は取引費用の観点から現実的ではなく、取引水量についての何らかの制度的近似が導入の前提条件であることを明らかにした。地球温暖化に伴い増大すると懸念される農業経営リスクのなかで、農業水利施設の更新事業にかかわる長期債務は農家にとって大きな財務リスクになる懸念がある。本研究においては、そのリスクを減じつつ安定的な農業水利施設の保全を行うための新たな政策として、『事後的料金制度』を提案する。用水の使用実績に応じて農家が費用を負担する事後的料金制度を適用することができれば、農家には長期債務は発生しないことから、財務リスクを著しく軽減することが可能となる。一方で、この方法は農業水利施設の維持管理更新を農家からの費用徴収で実施する土地改良区の財務安定性を棄損する懸念がある。それへの対応として、土地改良区による水利権リース市場の導入をセットで整備することが必要となる。 | KAKENHI-PROJECT-21380148 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21380148 |
地球温暖化に向けた農業用水マネジメントの新たな制度的手法の開発 | 本年度においては、(1)事後的料金制度の農業経営に与える影響分析、(2)水利権リース市場の役割分析、(3)新たな総合的政策の有効性検証、を行った。(1)については、事後的料金制度を導入した場合、維持管理費や更新事業費の農家負担を軽減するために農家には節水インセンティブが作用することとなる。しかしながら、節水限界費用が節水量の増加に伴う維持管理・更新事業費負担の増加分よりも大きければ、節水インセンティブは政策的効力を発揮しない。このことからし節水限界費用の定量的推計が重要であり、それをアンケート調査等により試みた。その結果、節水限界費用は、事後的料金制度の制度設計を有意味とする範囲内に収まる可能性が高いことを明らかにした。(2)については、カリフォルニア州や豪州の制度分析をもとに、事後的料金制度のもとでの水利権リース市場の役割を分析するとともに、国内におけるアンケート調査を実施した。その結果、たとえば、カリフォルニア州のかんがい区については、節水に伴う水利権のリース収入と、節水による土地改良区のかんがい料金徴収の減少が相殺関係にある場合があることが明らかになった。(3)については、国内の大規模な5土地改良区の理事長等と、米国カリフォルニア州のかんがい区副理事長、豪州のかんがい用水専門家によるワークショップを開催し、事後的料金制度の導入可能性について議論を行った。 | KAKENHI-PROJECT-21380148 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21380148 |
塩ストレスによる細胞死誘導機構 | プログラム細胞死(アポトーシス)は最近の研究から、植物細胞において道管形成などの形態形成や病原菌への抵抗性などで、中心的な役割をになう重要な細胞機構であると考えられるようになってきた。しかしその初期過程および分子メカニズムについてはまだ不明の点が多い。そこでこれらの点について、塩ストレスによって細胞死が誘導されるオオムギ根の実験系で研究をおこなった。動物細胞のアポトーシスにおいては、核DNAの断片化に先立って細胞膜インテグリティーの崩壊が起こるとされている。すなわち、通常では細胞膜脂質二重層の細胞質側に局在するフォスファチジルセリン(PS)の局在がくずれ、細胞外からPSに特異的に結合するアネキシンVによって細胞が標識されるようになる。昨年度の研究ではオオムギ根、オオムギ培養細胞、およびイネ培養細胞から単離したプロトプロストでは、塩ストレス処理によってはアネキシンVで標識されるようにはならない、という結果を報告した。今年度はプロトプロスト化しない、組織のままの根端を用いて、染色液を加圧して処理することにより染色することができることを見出した。すなわち塩ストレス処理後30分1時間で、一部の細胞がアネキシンVで標識されるようになることを明らかにした。また細胞死抑制遺伝子として、いくつかの植物種からdad1遺伝子が報告されたので、オオムギにおいても、そのホモログを検索した。PCR法を用いていくつかの産物を検出したが、塩基配列を解析した結果、既存のdad1と類似するものは見つからなかった。引き続きオオムギdad1の同定を進めているところである。プログラム細胞死は、植物細胞において道管形成などの形態形成や病原菌への抵抗性などにおいて中心的な役割をになう重要な細胞機構であると考えられている。研究代表者はオオムギ根これまでに、塩ストレスによって細胞死が誘導されることを報告してきた(Plant Cell Physiol.37:169、38:1091)。塩ストレス環境下の他植物種でも似たように細胞死が誘導されることや、また他のストレス(UVなど)でもやはり細胞死が誘導されることが報告されており、この現象がかなり普遍的であると思われるので、その初期過程をより深く理解することが重要であると考え、研究をおこなった。動物細胞のアポトーシスにおいては、核DNAの断片化に先立って細胞膜インテグリティーの崩壊が起こるとされている。すなわち、通常では細胞膜脂質二重層の細胞質側に局在するフォスファチジルセリン(PS)の局在がくずれ、細胞外からPSに特異的に結合するアネキシンVによって細胞が標識されるようになる。植物細胞でもこのような現象が起こるかどうか、オオムギ根、オオムギ培養細胞、およびイネ培養細胞からプロトプラストを単離して実験をおこなった。熱処理によって膜の半透性を失わせてから標識するとアネキシンVで標識されることから、細胞内にPSが存在することは確かであった。しかし塩ストレス処理によっては、いくつかの条件を試みてみたが、いずれも標識されるようにはならなかった。核の形態変化やFDA染色性もプロトプラストにおいては、塩ストレスを受けたintactな細胞の反応とは異なっており、プロトプラスト化によって、細胞死誘導機構になんらかの影響があったのではないかと考えている。プログラム細胞死(アポトーシス)は最近の研究から、植物細胞において道管形成などの形態形成や病原菌への抵抗性などで、中心的な役割をになう重要な細胞機構であると考えられるようになってきた。しかしその初期過程および分子メカニズムについてはまだ不明の点が多い。そこでこれらの点について、塩ストレスによって細胞死が誘導されるオオムギ根の実験系で研究をおこなった。動物細胞のアポトーシスにおいては、核DNAの断片化に先立って細胞膜インテグリティーの崩壊が起こるとされている。すなわち、通常では細胞膜脂質二重層の細胞質側に局在するフォスファチジルセリン(PS)の局在がくずれ、細胞外からPSに特異的に結合するアネキシンVによって細胞が標識されるようになる。昨年度の研究ではオオムギ根、オオムギ培養細胞、およびイネ培養細胞から単離したプロトプロストでは、塩ストレス処理によってはアネキシンVで標識されるようにはならない、という結果を報告した。今年度はプロトプロスト化しない、組織のままの根端を用いて、染色液を加圧して処理することにより染色することができることを見出した。すなわち塩ストレス処理後30分1時間で、一部の細胞がアネキシンVで標識されるようになることを明らかにした。また細胞死抑制遺伝子として、いくつかの植物種からdad1遺伝子が報告されたので、オオムギにおいても、そのホモログを検索した。PCR法を用いていくつかの産物を検出したが、塩基配列を解析した結果、既存のdad1と類似するものは見つからなかった。引き続きオオムギdad1の同定を進めているところである。 | KAKENHI-PROJECT-10740370 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10740370 |
インテリジェント・イオン液体を用いた藻類オイル生産に向けた湿式抽出プロセスの構築 | 藻類からのバイオ燃料生産プロセスにおいて,オイル抽出のための乾燥工程は,エネルギー消費が大きいため課題となっている.本研究の目的は水溶液におけるイオン液体(IL)の界面活性剤の性質と熱応答性を利用した藻類オイルの湿式抽出プロセスの構築である.本研究は本用途におけるIL構造と相平衡の関係を明確にし,抽出・分離プロセスに必要な知見の獲得を行った.本検討を通して、イオン液体を用いる微細藻類の湿式抽出法は従来の乾燥とヘキサンによる抽出法と同程度の抽出率を保ち,イオン液体のリサイクルも可能であることを明らかにした.藻類からのバイオ燃料生産プロセスにおいて,オイル抽出のための乾燥工程は,エネルギー消費が大きいため課題となっている.本研究の目的は水溶液におけるイオン液体(IL)の界面活性剤の性質と熱応答性を利用した藻類オイルの湿式抽出プロセスの構築である.本研究は本用途におけるIL構造と相平衡の関係を明確にし,抽出・分離プロセスに必要な知見の獲得を行った.本検討を通して、イオン液体を用いる微細藻類の湿式抽出法は従来の乾燥とヘキサンによる抽出法と同程度の抽出率を保ち,イオン液体のリサイクルも可能であることを明らかにした.藻類からのバイオ燃料生産プロセスにおいて,オイル抽出のための乾燥工程は,エネルギー消費が大きいため課題となっている.本研究の目的は水溶液におけるイオン液体(IL)の界面活性剤の性質と熱応答性を利用した藻類オイルの湿式抽出プロセスの構築である.本研究は本用途におけるIL構造と相平衡の関係を明確にし,抽出・分離プロセスに必要な知見の獲得を行う.これらの結果に基づいて,界面活性剤の効果,温度応答性の効果に最適なイオン液体を設計し,最後に,実藻類の抽出を行い,本手法の課題を明確にする.25度はイオン液体ー水の2成分系における相平衡測定およびデータの蓄積を行った。イオン液体にはバイオマスの反応・溶解の報告が豊富に存在するイミダゾリウム系のイオン液体を用いて,そのカチオン種の側鎖長が及ぼす相挙動の温度応答性を観察した.【実験】イオン液体としてカチオンのアルキル鎖長の異なる4種類のイミダゾリウム塩化物([Cnmim][Cl]:n=12、14、16、および18)を用いた。イオン液体を0.10 mol/Lの水溶液とし、540°Cにおいて相状態を目視観察した。相平衡測定は本予算で購入した可視窓付高温高圧セルを用いて測定を行った.またn=18のイオン液体に対しDSC(示差走査熱量測定)を用いて相転移温度に及ぼす濃度の影響(0.010.10 mol/L)を測定した。各濃度条件において40°C5°Cの冷却時に導電率の変化を測定することにより、液相から結晶相への相転移温度を決定した。また、各相におけるミセルの形成をDLSで確認した。本年度の検討により、n=18のイオン液体であれば0.02 mol/L以上の水溶液を媒体とすることで30°C以上での抽出、15°C以下での分離を行う藻類油脂の抽出・分離プロセスの実現が期待できることを示した。平成26年度は藻類におけるイオン液体の抽出法の評価を行った.試料の微細藻類には,緑藻Botryococcus braunii(藻体)を用い,界面活性イオン液体(SAILs)には,カチオンのアルキル鎖長の異なる4種類のイミダゾリウム塩化物([Cn mim][Cl]:n=12,14,16,および18)を用いた.抽出実験は,藻体スラリー(含水率96 %)にSAILsを加えて混合し,35 °Cで5時間抽出を行った後,4 °Cまで冷却し,相分離を誘発させ,24時間保持した.相分離後,ヘキサンを加え,上相(ヘキサン相),水相および固体相(SAILs相)のオイルを定量した.オイルの抽出率は,乾燥藻体のヘキサン抽出量を100 %として評価した.検討を行ったSAILsにおいて,アルキル鎖長が短い[C12mim][Cl], [C14mim][Cl]は,水との親和性が高く,冷却をしても相分離が認められなかった.一方, SAILsのアルキル鎖長が長い[C16mim][Cl],[C18mim][Cl]は,冷却後に相分離することを確認した.オイル抽出率は,[C16mim][Cl]を用いた抽出においては約80%, [C18mim][Cl]ではほぼ100%であった.SAILsを用いた湿式抽出法が,藻体を乾燥し,ヘキサンで抽出を行う従来法と同等の抽出率であることを明らかにした.最後に,本手法におけるSAILsのリサイクルについて検討を行った.冷却後に固相において回収したSAILsの回収率は[C16mim][Cl]を用いた抽出ではほぼ100%であるのに対し, [C18mim][Cl]の回収率は80%であった.以上,微細藻類のSAILs抽出法は従来法と同程度の抽出率を保ち,SAILsのリサイクルも可能であることを明らかにした.今後は室温で相分離するSAILsの合成が期待される.本年度の研究成果は、現在、学術論文として投稿準備中である。本研究成果を発展させた研究を、H27年度を基盤Cの研究課題として申請しており、採択をいただいている(研究課 | KAKENHI-PROJECT-25820380 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25820380 |
インテリジェント・イオン液体を用いた藻類オイル生産に向けた湿式抽出プロセスの構築 | 題名:イオン液体の相間・リレーによる藻類オイルの湿式・超臨界CO2抽出法の構築)。化学工学25年度において検討を行った項目は以下の3点であり、研究実施計画はほぼ達成しいると考えている。検討項目:(1)イオン液体ー水系における相平衡データの蓄積、(2)イオン液体水溶液の相状態の温度依存性および構造依存性に解明、(3)イオン液体水溶液におけるオイルの溶解実験。具体的な成果は以下に示す。【実験】イオン液体としてカチオンのアルキル鎖長の異なる4種類のイミダゾリウム塩化物([Cnmim][Cl]:n=12、14、16、および18)を用いた。イオン液体を0.10 mol/Lの水溶液とし、540°Cにおいて相状態を目視観察した。相平衡測定は本予算で購入した液観察セルを用いて測定を行った.またn=18のイオン液体に対しDSC(示差走査熱量測定)を用いて相転移温度に及ぼす濃度の影響(0.010.10 mol/L)を測定した。各濃度条件において40°C5°Cの冷却時に導電率の変化を測定することにより、液相から結晶相への相転移温度を決定した。また、各相におけるミセルの形成をDLSで確認した。【結果と考察】15°Cおよび25°Cの温度条件においてはアルキル側鎖が短い系は均一相となり、長鎖の系では高温において相分離を示した。これは、側鎖の延長にともない、イオン液体間の疎水性相互作用が増大し、会合しやすくなったためだと考える。なお、n=18のイオン液体水溶液において温度条件30°C以上で均一相を形成することを確認した。2n=18のイオン液体水溶液において15°C、30°Cおよび60°C付近で相転移を確認した。15°C付近の相転移はイオン液体の結晶相から液晶相への転移、30°C付近の相転移は液晶相からミセル相への転移、60°C付近ではミセル相から等方相への相転移であることを確認した。本イオン液体水溶液におけるオイルの溶解度測定も現在行っているところである。実藻類におけるイオン液体抽出法の評価平成25年度に得られた結果に基づき、選定したイオン液体を2種ほど用いて抽出・分離実験を行い、相挙動観察と回収物の定量的評価を行いながら,本手法の課題を明らかにする.試料には真正眼点藻Nannochloropsis sp.,緑藻Botryococcusbraunii,および熱水前処理したこれらの藻類を使用する.実験には可視セル反応装置を用いる.試料,超純水,イオン液体を反応器に仕込み,所定温度において抽出を行った後,冷却し,分離したオイル層,水層,固体の回収を行う.抽出条件の温度範囲は工場の排熱利用が可能な150°Cまでとする.購入予定の可視窓付高温高圧セル【AKICO・V50- 20M-T150-OP2、1台、\1,860,000】が必要でなくなったため、大幅な予算の節約が可能となった。これは実験の進行にともない、測定条件が明確となり、また自ら設計することで、実験装置の軽量化、小スペック化が可能となったためである。繰越予算はインテリジェントイオン液体水溶液の温度応答性を顕微鏡観察するためのセルの購入(150万円)のため使用予定である。 | KAKENHI-PROJECT-25820380 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25820380 |
中世フランス語版『グラティアヌス教令集』の言語地理学的・文献学的語彙研究 | ヘルシンキ大学教授レーナ・レーフシュテツト女史が1992-1997年に4巻の校訂版を出版した中世フランス語版『グラティアヌス教会集』は、この出版まで学界で知られていなかった資料である。フランス語史上大変重要なこの作品の語彙を網羅的に検討し、言語地図および各種辞書を活用しつつ、その作成地域の特定を行った。その結果、ノルマンディ地方に固有の単語が複数含められていることが判明した。また、単語の初出にも着目し、従来のフランス語史の知見を補完する要素を多数収集することがてきた。その成果は、ハイデルベルク大学でフランクヴァルト・メーレン教授の指揮下に作成されている『古フランス語語源辞典』にすでに収められ始めている。学問用語が従来は中世末期の翻訳作品(ラテン語からフランス語)を通して確立してきたとされてきたのに対し、この『グラティアヌス教会集』は13世紀末という早い時期から、すでにフランス語の中に学問用語を導入しようという動きがあったことを示している。この作品以外にも、中世フランス語の語彙研究として、複数の作品の校訂版を批判的に検討する作業を行った。とりわけゴーチエ・ド・コワンシー『聖母の奇蹟』と逸名作者による『師父の生涯』の校訂版ならびに複数の写本を調査し、校訂版自体の問題点を浮き彫りにすると同時に、ゴドフロワの『古フランス語辞書』による両作品の扱いの特色ならびに問題点を明らかにした。この研究により、中世フランス語の語彙研究の従来の知見を補完するような貢献ができた。ヘルシンキ大学教授レーナ・レーフシュテツト女史が1992-1997年に4巻の校訂版を出版した中世フランス語版『グラティアヌス教会集』は、この出版まで学界で知られていなかった資料である。フランス語史上大変重要なこの作品の語彙を網羅的に検討し、言語地図および各種辞書を活用しつつ、その作成地域の特定を行った。その結果、ノルマンディ地方に固有の単語が複数含められていることが判明した。また、単語の初出にも着目し、従来のフランス語史の知見を補完する要素を多数収集することがてきた。その成果は、ハイデルベルク大学でフランクヴァルト・メーレン教授の指揮下に作成されている『古フランス語語源辞典』にすでに収められ始めている。学問用語が従来は中世末期の翻訳作品(ラテン語からフランス語)を通して確立してきたとされてきたのに対し、この『グラティアヌス教会集』は13世紀末という早い時期から、すでにフランス語の中に学問用語を導入しようという動きがあったことを示している。この作品以外にも、中世フランス語の語彙研究として、複数の作品の校訂版を批判的に検討する作業を行った。とりわけゴーチエ・ド・コワンシー『聖母の奇蹟』と逸名作者による『師父の生涯』の校訂版ならびに複数の写本を調査し、校訂版自体の問題点を浮き彫りにすると同時に、ゴドフロワの『古フランス語辞書』による両作品の扱いの特色ならびに問題点を明らかにした。この研究により、中世フランス語の語彙研究の従来の知見を補完するような貢献ができた。1)中世フランス語版『グラティアヌス教令集』の中で注目すべき単語・表現を収集した。その際,写本のマイクロフィルムと比較しつつ校訂版を訂正するとともに,レーナ・レーフシュテット教授から送られてきている電子テクストを用例の確認用に活用した。2)ラテン語『グラティアヌス教令集』ならびにそのコンコルダンスを活用し,ラテン語と中世フランス語との対応関係を調査した。3)関連する中世フランス語ならびにラテン語の作品を検討し,補足的な情報を収集した。4)フランクヴァルト・ソーレン教授及びジャン=クロード・シュミット教授と研究打合わせをするために、ハイデルベルク(ドイツ)及びパリ(フランス)に出張した。平成12年度の研究に基づき、本年度は以下の研究を行った。1)中世フランス語版『グラティアヌス教令集』において注目すべき単語と表現を収集した。その際、校訂版の底本となっているブリュッセル写本のマイクロフィルムと比較検討し、レーナ・レーフシュテット教授が作成した校訂版に多くの訂正を加えることができた。2)トブラー・ローマッチ、ゴドフロワ、ヴァルトブルクなどの各種辞書および方言地図を活用し、収集した語彙の地理的・歴史的な意義を明らかにした。さらに、ハイデルベルク大学でフランクヴァルト・メーレン教授らによって現在編纂されつつある『古フランス語語源辞典』を補足する情報を提供することができた。その補足的情報は、出版された辞書の項目および補遺に収録された。3)関連する中世フランス語・ラテン語作品の収集を続け、校訂版および語彙研究の批判的検討を行った。その成果は、ドイツの学術誌『ロマンス文献学雑誌』ならびにフランスの学術誌『ロマンス言語学雑誌』などに発表した。とりわけ、13世紀にアングロ・ノルマン語で書かれた『世俗の者たちへの釈義』の校訂版に対する補足と、13世紀にピカルディー地方で書かれたゴーティエ・ド・コワンシー作『聖母の奇蹟』の語彙研究を文献学的、言語地理学的な観点から詳細に検討し、多数の訂正を加えた。4)パリ社会科学高等研究院のジャン=クロード・シュミット教授と研究打ち合わせを行い、中世フランス語版『グラティアヌス教令集』成立の歴史的背景、細部にわたる語彙の検討などを行うことができた。ヘルシンキ大学教授レーナ・レーフシュテット女史が1992-1997年に4巻の校訂版を上梓した中世フランス語版『グラティアヌス教令集』は今まで学界で知られていなかった資料である。 | KAKENHI-PROJECT-12610522 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12610522 |
中世フランス語版『グラティアヌス教令集』の言語地理学的・文献学的語彙研究 | フランス語史の観点からこの資料の語彙を網羅的に検討し、言語地図・各種辞書を活用しつつその作成地域の特定とその地域に固有の単語をつきとめ、単語の初出に着目して従来のフランス語史の情報を補完する要素を明らかにする、といった作業を行った。ノルマンディ地方でしか見られない単語を特定することができ、また、従来知られていたより早い時期にこの作品で使われていることが判明した単語は多数ある。その結果はハイデルベルク大学で作成されている『古フランス語語源辞典』の執筆者にすでに伝えてあり、辞書の中に反映され始めている。語彙調査のかたわら、校訂版と写本(ブリュッセルの王立図書館所蔵)のマイクロフィルムを比較検討し、校訂版に見られる多数の誤りを訂正することができた。また、中世フランス語版『グラティアヌス教令集』以外の中世フランス語の諸作品の校訂版の再検討も平行して行い、とりわけゴーチェ・ド・コワンシー『聖母の奇蹟』と『師父の生涯』という13世紀の作品とその語彙の研究を行い、それらがゴトフロワの『古フランス語辞書』の中でいかに扱われており、その扱い方にどのような特徴があり、いかに多くの誤りを含んでいるかを明らかにすることができた。フランス語史の従来の知見を訂正するような発見がいくつもなされたのである。 | KAKENHI-PROJECT-12610522 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12610522 |
CRAG機能と遺伝子治療開発 | 本研究グループにより同定されたCRAGは、脊髄小脳変性症の原因タンパク質である異常伸長したポリグルタミンタンパク質(PolyQ)の分解を促進すること、およびCRAGは転写因子SRFを活性化することで神経細胞保護することが明らかになっている。しかしながらその詳細な分子機構、およびCRAGの生体内における役割は不明である。私たちはCRAGノックアウトマウスを作製し解析した結果、CRAG欠損マウスは生後3週齢で致死を示した。CRAGは神経細胞の生存に必須の分子であることが明らかになりCRAGが脊髄小脳変性症だけでなく、様々な神経変性疾患に応用できる可能性が示された。本研究グループにより同定されたCRAGは、脊髄小脳変性症の原因タンパク質である異常伸長したポリグルタミンタンパク質(PolyQ)の分解を促進すること、およびCRAGは転写因子SRFを活性化することで神経細胞保護することが明らかになっている。しかしながらその詳細な分子機構、およびCRAGの生体内における役割は不明である。私たちはCRAGノックアウトマウスを作製し解析した結果、CRAG欠損マウスは生後3週齢で致死を示した。CRAGは神経細胞の生存に必須の分子であることが明らかになりCRAGが脊髄小脳変性症だけでなく、様々な神経変性疾患に応用できる可能性が示された。脊髄小脳変性症は治療法が確立されていない神経変性疾患である。本研究グループにより同定されたCRAGは、脊髄小脳変性症の原因タンパク質である異常伸長したポリグルタミンタンパク質(PolyQ)の分解を促進すること、およびCRAGは転写因子SRFを活性化することで神経細胞保護することが明らかになっている。しかしながらその詳細な分子機構、およびCRAGの生体内における役割おは不明である。今回、私たちはCRAGノックアウトマウスを作製し、解析を行った。その結果、CRAG欠損マウスは生後3週齢で致死を示した。さらに大脳皮質神経細胞、海馬神経細胞、小脳プルキンエ細胞において広範な細胞死が認められた。以上の結果から、CRAGは神経細胞の生存に必須の分子であることが明らかとなった。これらの研究成果はCRAGが脊髄小脳変性症だけでなく、様々な神経変性疾患に応用できる可能性が示された。現在、小脳プルキエンエ細胞特異的なノックアウトマウスを作製中である。次にCRAGによるSRFの活性化機構において新たな進展が見られた。CRAGはELK1と結合してSRFを活性化することが明らかとなった。興味深いことにCRAGはELK1のスモ化を認識して結合し、SRFを活性化していることが明らかとなった。これらの結果より、CRAGは神経細胞の細胞死を強力に抑制できることが判明し、脊髄小脳変性症をはじめ神経変性疾患の遺伝子治療に有用であることが示された。脊髄小脳変性症は治療法が確立されていない神経変性疾患である。本研究グループにより同定されたCRAGは、脊髄小脳変性症の原因タンパク質である異常伸長したポリグルタミンタンパク質(PolyQ)の分解を促進すること、およびCRAGは転写因子SRFを活性化することで神経細胞保護することが明らかになっている。しかしながらその詳細な分子機構、およびCRAGの生体内における役割は不明である。私たちはCRAGノックアウトマウスを作製し解析した結果、CRAG欠損マウスは生後3週齢で致死を示した。CRAGは神経細胞の生存に必須の分子であることが明らかになりCRAGが脊髄小脳変性症だけでなく、様々な神経変性疾患に応用できる可能性が示された。CRAGによるSRFの活性化機構においてCRAGはELK1と結合してSRFを活性化することが明らかとなった。これまでCRAGの活性化機構は不明であったが、CRAG自身がスモ化修飾を受けて核移行することがわかった。さらにスモ化されないCRAGの変異体に核移行シグナルを付加して強制的に核移行させてもSRFの活性化は認められなかった。この結果はCRAGのスモ化修飾は核移行のみならず核内でもSRFの活性化に必須であることがわかった。またCRAGはELK1を細胞質から核に移行させることにより細胞の生存を高めていることが示唆された。CRAGは神経細胞の細胞死を強力に抑制できることが証明され、脊髄小脳変性症をはじめ神経変性疾患の遺伝子治療に有用であることが示された。現在CRAGのスモ化酵素の同定を試みている。これまでの知見を論文にまとめ現在投稿中である。生化学CRAGノックアウトマウスを作製に成功した。さらに解析の結果、CRAG欠損マウスは生後3週齢で致死を示した。大脳皮質神経細胞、海馬神経細胞、小脳プルキンエ細胞において広範な細胞死が認められ、CRAGが神経細胞の生存に必須であることが証明された。またCRAGによるSRFの活性化機構においてELK1のスモ化を認識して結合し、SRFを活性化していることを見いだした。思いがけない発見であり、今後の展開が期待できる。CRAG欠損マウスは生後3週齢で致死を示したので、脳の部位特異的な欠損マウスを作製中である。とくに大脳皮質・海馬特異的な欠損マウスおよび小脳プルキンエ細胞特異的に欠損マウスを作製し、CRAGの生体内の重要性をより詳細に明らかにしなければならない。またELK1のスモ化の制御機構を解明する必要がある。今後、脊髄小脳変性症をはじめ神経変性疾患の遺伝子治療用のベクターを開発していく必要がある。 | KAKENHI-PROJECT-25640040 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25640040 |
尿細管および腸管上皮細胞におけるヒ素化合物の吸収と代謝動態に関する研究 | MDCK細胞とCaco-2細胞は共にヒ酸、亜ヒ酸、モノメチルアルソン酸、ジメチルアルシン酸、トリメチルアルシンオキサイド、アルセノコリン、アルセノベタインの7種の化学形態を変化させなかった。MDCK細胞を用いた尿細管性上皮モデルにおける上記7種ヒ素化合物の膜透過性は、クレアチニンの12.5倍高かった。魚類と海藻類中のヒ素化合物は、溶媒として50%メタノール、物理的抽出法として細胞破砕ビーズを使用することで効率的に抽出することができた。MDCK細胞とCaco-2細胞は共にヒ酸、亜ヒ酸、モノメチルアルソン酸、ジメチルアルシン酸、トリメチルアルシンオキサイド、アルセノコリン、アルセノベタインの7種の化学形態を変化させなかった。MDCK細胞を用いた尿細管性上皮モデルにおける上記7種ヒ素化合物の膜透過性は、クレアチニンの12.5倍高かった。魚類と海藻類中のヒ素化合物は、溶媒として50%メタノール、物理的抽出法として細胞破砕ビーズを使用することで効率的に抽出することができた。アルセノシュガー類などの有機ヒ素化合物はヒト体内での代謝について不明な点が多い。海産物中に含まれるこれらヒ素化合物の体内動態を知る手掛かりとして、培養細胞を用いて腸管上皮での吸収と尿細管上皮での再吸収の研究を計画した。培養細胞に添加するための有機ヒ素化合物は海産物からの抽出が必要となる。海産物からの有機ヒ素化合物抽出法には定められた方法は無く、さらに熱や酸・アルカリに対して分解されやすいと考えられるアルセノシュガーの抽出に適し、抽出効率の高い方法はこれまでほとんど報告されていない。そこで今年度は主に海産物からの有機ヒ素化合物抽出法の検討を行なった。魚介類として生マグロ赤身、カニ脚身缶詰、海藻類として乾燥ワカメを試料として、抽出溶媒とホモジナイズ法の最適な組合せの検討を行なった。その結果、魚介類では、抽出溶媒に50%エタノール、ホモジナイズに細胞破砕ビーズチューブの使用が適していることが見出された。海藻類からの抽出には、酵素を用いた前処理を行なうことで高い回収率が得られることが見出された。化学形態別分析の結果、本法により抽出されたヒ素化合物は、魚介類の場合、主成分はアルセノベタインで、僅かに未知のヒ素化合物も含まれていることがわかった。海藻類の場合は、主成分はアルセノシュガーであり、その他複数のヒ素化合物が検出されたが、含有量が僅かであることから、これらの同定には至っていない。今回開発した抽出法は化学的に温和かつ熱を加える行程も無いことから、アルセノシュガー類の抽出に適した方法であると考えられる。また回収率も高いことから、試料を多量に必要とする培養細胞を用いた実験に実用可能であると判断し、細胞を用いた実験に移行した。なお今回開発した抽出法については論文と学会にて発表を予定している。【研究目的】現在スポット尿を検体としたヒ素曝露バイオモニタリングでは、尿量補正のためヒ素濃度のクレアチニン補正が慣例的に行われているが、尿細管において様々なヒ素化合物がクレアチニンと同じ挙動を示すことは証明されておらず、補正の有効性を検証する必要がある。今年度は尿細管でのヒ素の再吸収を確認するための基礎検討として、尿細管上皮モデルを用いた膜透過性試験を実施した。【実施内容】尿細管上皮モデルにはMDCK細胞をトランスウェル上に培養したものを用いた。実験に供したヒ素化合物は5価及び3価の無機ヒ素、モノメチルアルソン酸、ジメチルアルシン酸、トリメチルアルシンオキサイド、アルセノコリン、アルセノベタインの7種とした。これらヒ素化合物と共に尿素とクレアチニンを尿細管上皮モデル膜の管腔側に添加し、3時間後に基底膜側の培養液を回収した。培養液中のヒ素検出及び化学形態分析はHPLC-ICP-MSを用いた。【研究成果】膜透過性試験の結果、7種のヒ素化合物のPapp値は1.63.4×10^<-6>cm/secの範囲となった。また尿素とクレアチニンの値はそれぞれ、7.38と1.33×10^<-6>cm/secとなった。ヒ素の透過性を尿素およびクレアチニンと比較したところ、ヒ素の透過性は尿素の0.20.4倍、クレアチニンの1.02.5倍であった。また透過したヒ素化合物の化学形態分析の結果、今回試験を行った7種は試験後も化学形態に変化は見られなかった。以上の結果より、今回実験に供したヒ素化合物はMDCK細胞の単層膜をクレアチニンと同等から2.5倍程度透過することが判明した。従って実際の尿細管においても再吸収を受ける可能性があるものの、その吸収動態は比較的クレアチニンに近いという可能性が示唆された。今後、より生体に近い条件で検証を進める必要があるといえる。 | KAKENHI-PROJECT-21790558 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21790558 |
星間空間および惑星大気中におけるラジカル反応の速度論的研究 | 星間空間および惑星大気中におけるラジカルを主とする反応速度をLIF法を中心に、気相および低温固相において測定した。その目的のため、極低温領域で測定するための多目的チャンバーを設計・製作した。本チャンバーはガスフロー系、反応室、励起およびモニター光学系、光検出部、真空排気系、冷却システム、温度制御系よりなり、極低温におけるラジカルの測定を可能にするものである。特に低温固相下での光反応生成物をFT-IRにより直接検出することを主眼としたシステムとなっている。作成したチャンバーを用いてアセチレン系の化合物の光反応中間体の検出に成功した。主として生成した中間体はC_nHタイプのラジカルであった。気相における化学反応はLIF法によるラジカルの検出の実験を行った。中心課題はC_2Hラジカルの反応でその検出を行った。C_2Hラジカルはエキシマーレーザー(193nm)による光分解でパルス的に生成させた。ラジカルが生成後、充分に基底状態に緩和した後、他の分子と反応して減衰する速度を波長可変,レーザーを用いたLIF法により測定した。C_2HラジカルからのLIFシグナルが得られ、同定した。C_2Hラジカルと星間空間や惑星大気中に見られるジアセチレン(C4H2)、シアノアセチレン(HC3N)、ジシアノアセチレン(C4N2)を反応させ反応速度を測定可能なところまで研究を進めた。反応に用いる分子は現段階ですべて有機化学的手法により合成を完了した。一方、低温固相系の研究から、低温固相中でアセチレンから直接、ジシアノアセチレンが生成していることを確認できた。これにより惑星大気中における低温エアロゾル表面での光化学過程の反応機構の解明に寄与することができた。星間空間および惑星大気中におけるラジカルを主とする反応速度をLIF法を中心に、気相および低温固相において測定した。その目的のため、極低温領域で測定するための多目的チャンバーを設計・製作した。本チャンバーはガスフロー系、反応室、励起およびモニター光学系、光検出部、真空排気系、冷却システム、温度制御系よりなり、極低温におけるラジカルの測定を可能にするものである。特に低温固相下での光反応生成物をFT-IRにより直接検出することを主眼としたシステムとなっている。作成したチャンバーを用いてアセチレン系の化合物の光反応中間体の検出に成功した。主として生成した中間体はC_nHタイプのラジカルであった。気相における化学反応はLIF法によるラジカルの検出の実験を行った。中心課題はC_2Hラジカルの反応でその検出を行った。C_2Hラジカルはエキシマーレーザー(193nm)による光分解でパルス的に生成させた。ラジカルが生成後、充分に基底状態に緩和した後、他の分子と反応して減衰する速度を波長可変,レーザーを用いたLIF法により測定した。C_2HラジカルからのLIFシグナルが得られ、同定した。C_2Hラジカルと星間空間や惑星大気中に見られるジアセチレン(C4H2)、シアノアセチレン(HC3N)、ジシアノアセチレン(C4N2)を反応させ反応速度を測定可能なところまで研究を進めた。反応に用いる分子は現段階ですべて有機化学的手法により合成を完了した。一方、低温固相系の研究から、低温固相中でアセチレンから直接、ジシアノアセチレンが生成していることを確認できた。これにより惑星大気中における低温エアロゾル表面での光化学過程の反応機構の解明に寄与することができた。星間空間および惑星大気中におけるラジカルを主とする反応速度を極低温領域で測定するための多目的チャンバーを設計・製作した。本チャンバーはガスフロー系、反応室、励起およびモニター光学系、光検出部、真空排気系、冷却システム、温度制御系よりなり、極低温におけるラジカルの測定を可能にするものである。本年度は特に低温固相下での光反応生成物をFT-IRにより直接検出することを主眼としたシステムとなっている。作成したチャンバーを用いて現在までにアセチレン系の化合物の光反応中間体の検出に成功した。主として生成した中間体はC_nHタイプのラジカルであった。一方、気相における化学反応はLIF法によるラジカルの検出の実験を行った。中心課題はC_2Hラジカルの反応でその検出について検討を進めている。C_2Hラジカルはエキシマーレーザー(193nm)による光分解でパルス的に生成させる。ラジカルが生成後、充分に基底状態に緩和した後、他の分子と反応して減衰する速度を波長可変レーザーを用いたLIF法により測定した。現段階ではラジカルからと思われるLIFシグナルが得られているものの同定にまではいたっていない。同定後に、C_2Hラジカルと星間空間や惑星大気中に見られるジアセチレン(C_4H_2)、シアノアセチレン(HC_3N)、ジシアノアセチレン(C_4N_2)を反応させ反応速度を測定する計画を進行させている。反応に用いる分子は現段階ですべて有機化学的手法により合成を完了した。本年度の成果としては低温固相中でアセチレンから直接、ジシアノアセチレンが生成していることを確認できた。これにより惑星大気中における低温エアロゾル表面での光化学過程の反応機構の解明に寄与することができた。星間空間および惑星大気中におけるラジカルを主とする反応速度LIF法を用いて行った。 | KAKENHI-PROJECT-15550008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15550008 |
星間空間および惑星大気中におけるラジカル反応の速度論的研究 | 前年度に引き続きC_2Hラジカルの反応とその検出について検討を進めている。C_2Hラジカルはエキシマーレーザー(193nm)による光分解でパルス的に生成させる。ラジカルが生成後、充分に基底状態に緩和した後、他の分子と反応して減衰する速度をOPO波長可変レーザーを用いたLIF法により測定した。測定されたLIFスペクトルはC_2Hとほぼ特定でき、シグナルの強度変化の解析からアセチレンとC_2Hの反応速度が1×10^<-11>cm^3molecule^<-1>s^<-1>であることを決定した。この値は既報告値とオーダーで一致している。一方、極低温領域での研究はアセチレンの193nmのおける光化学過程の研究を10Kにおいてアルゴンマトリックス法を用いて行った。その結果、アセチレンの濃度により、生成物が変わることが判明した。アルゴンとアセチレンのモル比が1/100以上ではジアセチレンの生成が直接観測され、C_2Hの存在はなく、1/1000以下ではC_2Hが観測され、ジアセチレンの生成は見られなかった。このことから10KでもC_2Hがある程度マトリックス内で移動しており、親分子であるアセチレンとの距離がジアセチレンの生成過程を決定していることが明らかになった。C_2Hラジカルと星間空間や惑星大気中に見られるジアセチレン(C_4H_2)、シアノアセチレン(HC_3N)、ジシアノアセチレン(C_4N_2)を反応させ反応速度を測定する計画を進行させている。本年度の成果としてはC_2Hと炭化水素の反応速度が決定されたこと、低温固相中でアセチレンから直接、ジシアノアセチレンが生成している系の反応機構の解明が挙げられる。以上により惑星大気中における低温エアロゾル表面での光化学過程の反応機構の解明に寄与することができた。星間空間および惑星大気中におけるラジカルの反応速度の測定についてLIF法を用いて行った。主としてC_2Hラジカルの反応とその検出について検討を進めている。C_2Hラジカルはエキシマーレーザー(193nm)による光分解でパルス的に生成させる。ラジカルが生成後、充分に基底状態に緩和した後、他の分子と反応して減衰する速度をOPO波長可変レーザーを用いたLIF法により測定した。測定されたLIFスペクトルはC_2Hラジカルの第2励起状態であるB状態のもので、そのスペクトル形状からΣ-Σ遷移、II-II遷移、Δ-Δ遷移、Φ-Φ遷移に帰属できる。スペクトルの詳細な解析から、C_2Hの電子状態の知見およびアセチレンとの反応速度を決定した。一方、極低温領域での研究は不飽和炭化水素の193nm励起における光化学過程の研究を10Kにおいてアルゴンマトリックス法を用いて行った。前年度はアセチレン単体の光化学過程についてC_2Hラジカルの挙動を研究したが、本年度はさらにそれを進めて定量的な見積もりおよび連鎖反応過程に関する研究を行った。C_2Hラジカルが低温マトリックス中で光励起により生成した後、基底状態にあるアセチレンと反応してジアセチレン分子を形成するが、この反応量子収率が1を越えており、固相中で連鎖反応もしくはミクロ領域での爆発とも呼べる反応過程が起きていることを発見した。この過程はハロゲン分子の反応で報告されているが、有機化合物単体で見られたのは初めてである。 | KAKENHI-PROJECT-15550008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15550008 |
多量の太陽光発電が導入された配電系統における需要家自律EMSの研究 | 本研究では配電系統のEMSとして(1)HEMS(2)BEMS(3)電力貯蔵の3種類を取り上げた。(1)HEMSでは2030年までにすべての家庭に普及を目指して、既存家電の運用状況を見える化する技術を研究した。これにより家庭の多量の太陽光発電との独立協調が可能となる。(2)BEMSでは再生可能電源との協調動作を実現するデマンドレスポンスの高精度化に向け、ビルの動的な詳細モデルの構築を行った。これにより、ビルの蓄熱機能の評価やデマンドレスポンスの応答を定量的に把握できる。(3)電力貯蔵では可変速揚水発電を取り上げ、太陽光発電と協調動作可能となる制御方法の検討をシミュレーションにて行い、提案した。電源電流データを測定し、ネットワーク対応していない既存家電の種類を推定するアルゴリズムを開発した。従来、電源高調波を計測して家電判別を行う技術が開発されていたので、それの検証を行った。測定により、FFTによる電源高調波の分析は必ずしも安定性が十分でないことが分かった。そこで、Wavelet変換による波形認識による家電識別アルゴリズムを試作した。波形のマッチングを行うので、比較標準となる基準波形と実測の波形を比較して、その2波形の距離を定義し、その大きさを計算して尤もらしい家電を推定する。このアルゴリズムにより、TV、電気ポット、電子レンジ、冷蔵庫など主要な家電について、認識性能を測定した。その結果、多くの家電について認識できることが分かった。(2)(BEMS技術)ビルの空調電力を計測し、ビルの空調エネルギー消費モデルを構築した。ビルの空調モデルにおいてのポイントは、外気条件と空調消費エネルギーの関係、外気条件や運用条件の変化に対する空調消費エネルギーの変化時定数、長時間ビル空調を止めた後、空調を立ち上げた時の影響、である。これらを、大同大学の14F建ての研究棟を用いてデータを計測し、そのデータに対してビルエネルギーモデルを構築した。この結果、当該ビルには数時間を超える時定数のダイナミクスは存在せず、1.5時間程度の1次遅れ関数でモデル化できること、したがって、長時間ビル空調を止めた後であっても、特に空調エネルギーに影響の出ないことがわかった。この観察にもとづきビル空調エネルギーモデルを提案した。昨年度に引き続き、連続Wavelet変換を用いた非ネットワーク対応家電の認識技術の改良を行った。特に、今年度は電流実効値を考慮して、家電認識精度を向上させるとともに電力の推定も行うようにした。この結果、昨年度認識可能となっていたTV、電気ポット、電子レンジ、冷蔵庫のほか、エアコンでも可能となり、電流波形の一定しない洗濯機や食洗器を除いて、ほとんど100%の認識率となった。従来行われているFFTなどとは異なり、極めて安定した学習のいらいないシステムとなった。(2)(BEMS技術)ビルの放熱性能を短時間に測定するための、熱貫流率計測方法を確立した。サーモグラフィーによりビル壁温度を測定する。これと自然対流熱伝達理論を組み合わせて壁の熱貫流率を推定する。さらに、実験によりこれらの理論推定と実験データの比較を行い、相関関係を得た。これにより、ビルの熱貫流率の簡易推定が可能となった。先年度に開発したビルエネルギーモデルと合わせ、ビルのエネルギー特性把握技術を確立した。(3)(電力系統の制御)太陽光発電が多量に導入された配電系統の需給を制御するためには、需要家EMSと並んで電源の高速制御も必要である。そこで、揚水発電の可変速化と可変速揚水発電の高速需給制御を研究した。特に、巻線型発電機のモデル化とそのPI制御の設計法を考察した。(1)計画通り、リアルタイムに家電の種別推定および電力推定を行うHEMSを構築しつつある。認識の範囲が着実に広がっている。(2)BEMSにおいて、ビルのエネルギー特性を把握する技術が確立できた。当初の計画以上の成果である。(3)超高速電力調整アルゴリズムとして、巻線型発電機・誘導機の超高速制御アルゴリズムを開発している。一次簡易アルゴリズムをPI制御で試作した。昨年度までの研究によりWavelet変換を用いた瞬時値波形を利用した家電判別システムにより多くの家電の判別が可能となった。特に、インバータを利用した電子レンジやエアコンなど比較的動作が単調な家電に対して有効である。しかし、洗濯機や食器洗い機などのシーケンス動作を持つ家電については、瞬時値波形だけでは判別、状態推定が困難である。そこで、電流の実効値を用いてそれらのシーケンスを解析する技術を開発した。この第1ステップとして動作モードの判別アルゴリズムを開発した。(2)(BEMS技術)昨年までのビルの壁や窓の熱貫流率推定手法開発により、ビル躯体や窓の省エネ性能を簡易に推定することができるようになった。これに加え、今年度はビル内壁の熱の吸放熱、太陽日射などの熱負荷を加えて、ビルの動的なシミュレータを開発した。空調機器の動作を加味することにより、概ね実際のビルの空調動特性を再現することができた。これにより、ビルのデマンドレスポンス特性を詳細に検討することができる。また、ビル躯体に期待することのできる蓄熱性能も評価できる。(3)(電力系統の制御)昨年度までの研究を通して、可変速揚水発電の動的シミュレータを開発し、それを用いて電力の高速制御の可能性を提案した。今年度は、可変速揚水発電の中で、巻き線型誘導発電機部分について、巻線型誘導機を用いてシミュレータの検証を行った。 | KAKENHI-PROJECT-26420430 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26420430 |
多量の太陽光発電が導入された配電系統における需要家自律EMSの研究 | 巻き線型誘導機であるので、理論通りの特性が出ていることを確認した。これにより昨年度提案した高速電力制御の確からしさを示すことができた。本研究では配電系統のEMSとして(1)HEMS(2)BEMS(3)電力貯蔵の3種類を取り上げた。(1)HEMSでは2030年までにすべての家庭に普及を目指して、既存家電の運用状況を見える化する技術を研究した。これにより家庭の多量の太陽光発電との独立協調が可能となる。(2)BEMSでは再生可能電源との協調動作を実現するデマンドレスポンスの高精度化に向け、ビルの動的な詳細モデルの構築を行った。これにより、ビルの蓄熱機能の評価やデマンドレスポンスの応答を定量的に把握できる。(3)電力貯蔵では可変速揚水発電を取り上げ、太陽光発電と協調動作可能となる制御方法の検討をシミュレーションにて行い、提案した。申請書に記した下記の平成26年度研究計画の目標通りの成果を得られたので。(1)ネットワーク対応していない既存家電の状態を、主幹電源のデータから推定し、家電の種類の推定とその電力消費量を見える化アルゴリズムを開発する。(HEMS技術)(2)ビルの空調電力を計測し、ビルのエネルギー消費モデルを構築する。(BEMS技術)(1)HEMS技術に関しては、確立しつつある非ネットワーク家電対応のHEMSアルゴリズムを完成させる。特に、複数の家電の同時認識、残されたスケジュール家電の認識を完成させる。(2)BEMS技術に関しては、デマンドレスポンスの機能とビルの快適性を両立させた自立型制御に昇華させる。(3)高速電力系統制御に関しては、巻線型誘導機・発電機の高速制御方法を確立・実証する。制御技術申請書の計画に沿って、以下の研究を推進する。(1)リアルタイム制御装置に開発アルゴリズムを搭載し、家電種別推定並びの電力推定器を試作する。(HEMS)(2)在来の「調停率」の考え方に代わる新しい自律安定化アルゴリズムを開発する。また、ビルエネルギーモデルに基づき超高速電力調整アルゴリズムを研究する。(BEMS)高速電力制御の実証試験装置の立ち上げが遅れたので、その試験装置に付随する系統連系装置に要するはずであった物品費を支出しなかった。高速電力制御の実証装置は立ち上がったので、平成28年度早々に系統連系装置等を購入し、高速制御の実証試験を行う。 | KAKENHI-PROJECT-26420430 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26420430 |
列状伐区における立地環境モニタリングと地位指数変動の解明に関する研究 | 九州大学農学部附属福岡演習林内ヒノキ帯状皆伐区において,保残列と伐採後植栽列の林分調査を実施した.林齢は保残列が81年生,植栽列が30年生となっている.林分調査は皆伐帯輻が異なるようにラインプロットを設定し,樹高および胸高直径の測定を行った.解析は植栽列を中央部と林縁部にわけ.地位指数曲線上で地位指数に変換後,保残列の地位指数と比較し,分散分析により検討した.また,形状比(樹高/胸高直径)を用いた樹幹形状の比較も行った.その結果として.次の知見が得られた.1)植栽列中心部(3列)と保残列の地位指数を比較したところ,列状伐区内植栽列の地位指数の方が高いことがわかった.2)植栽列林縁部と保残列との間には地位指数に差は見られなかった.3)植栽列と保残列の形状比には明らかな差が認められ,同齢の通常施業林分の値(0.65前後)と比較して,約0.10.2程度高くなることがわかった.4)帯状皆伐区の列幅を10mから26mまで設定したが,列輻による地位指数に差は認められなかった.しかし,列幅が大きくなるに従って,形状比が小さくなる傾向が認められた.以上のことは林地生産力を左右する風の影響であると推察され,防風林の効果とほぼ同様であると考えられた.このことから,林地生産力が林分の隣接条件により変化する可能性があることが示唆された.上記の内容は第53回日本林学会九州支部大会で発表し,現在投稿準備中である.九州大学農学部附属福岡演習林内ヒノキ帯状皆伐区において,保残列と伐採後植栽列の林分調査を実施した.林齢は保残列が81年生,植栽列が30年生となっている.林分調査は皆伐帯幅が異なるようにラインプロットを設定し,樹高および胸高直径の測定を行った.解析は植栽列を中央部と林縁部にわけ,地位指数曲線上で地位指数に変換後,保残列の地位指数と比較し,分散解析により検討した.また,形状比(樹高/胸高直径)を用いた樹幹形状の比較も行った.その結果として,次の知見が得られた.1)植栽列中心部(3列)と保残列の地位指数を比較したところ,列状伐区内植栽列の地位指数の方が高いことがわかった.2)植栽列林縁部と保残列との間には地位指数に差は見られなかった.3)植栽列と保残列の形状比には明らかな差が認められ,同齢の通常施業林分の値(0.65前後)と比較して,約0.10.2程度高くなることがわかった.4)帯状皆伐区の列幅を10mから26mまで設定したが,列幅による地位指数に差は認められなかった.しかし,列幅が大きくなるに従って,形状比が小さくなる傾向が認められた.以上のことは林地生産力を左右する風の影響であると推察され,防風林の効果とほぼ同様であると考えられた.このことから,林地生産力が林分の隣接条件により変化する可能性があることが示唆された.上記の内容は第53回日本林学会九州支部大会で発表し,現在投稿準備中である.また,風の影響を明らかにするために,鹿児島大学高隈演習林内に風速計を設置し観測中であるが,十分な観測期間ではなく来年度にとりまとめる予定である。九州大学農学部附属福岡演習林内ヒノキ帯状皆伐区において,保残列と伐採後植栽列の林分調査を実施した.林齢は保残列が81年生,植栽列が30年生となっている.林分調査は皆伐帯輻が異なるようにラインプロットを設定し,樹高および胸高直径の測定を行った.解析は植栽列を中央部と林縁部にわけ.地位指数曲線上で地位指数に変換後,保残列の地位指数と比較し,分散分析により検討した.また,形状比(樹高/胸高直径)を用いた樹幹形状の比較も行った.その結果として.次の知見が得られた.1)植栽列中心部(3列)と保残列の地位指数を比較したところ,列状伐区内植栽列の地位指数の方が高いことがわかった.2)植栽列林縁部と保残列との間には地位指数に差は見られなかった.3)植栽列と保残列の形状比には明らかな差が認められ,同齢の通常施業林分の値(0.65前後)と比較して,約0.10.2程度高くなることがわかった.4)帯状皆伐区の列幅を10mから26mまで設定したが,列輻による地位指数に差は認められなかった.しかし,列幅が大きくなるに従って,形状比が小さくなる傾向が認められた.以上のことは林地生産力を左右する風の影響であると推察され,防風林の効果とほぼ同様であると考えられた.このことから,林地生産力が林分の隣接条件により変化する可能性があることが示唆された.上記の内容は第53回日本林学会九州支部大会で発表し,現在投稿準備中である. | KAKENHI-PROJECT-09760146 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09760146 |
対向ターゲット式交互堆積反応性スパッタ法で硫化水素を用いた銅インジウム薄膜の作製 | 対向ターゲット式スパッタ装置を用いて,H2S反応性ガス中でのCuとInの交互堆積によりCu-In-S系薄膜を作製した。組成は交互堆積時間比の変化に対応して(CuxS)-(CuInS2)系で変化し,化学量論組成付近でCuInS2の基礎吸収端を有する多結晶CuInS2薄膜が得られた。太陽電池セル応用を意図して,ZnO:Al/ZnO/ZnS/CuInS2/Mo/glass積層構造等を作製した。Ar希釈CS2反応性ガスに加えてAr希釈H2S反応性ガスも供給可能に改造した,CuとInの2組の対向ターゲット対及び基板回転機構を有するスパッタ装置を用いて,これまでのCS2による薄膜作製条件を参考にして,H2Sを用いてソーダライムガラス基板(450°C)上でCuとInの交互スパッタ時間比(tCu/tIn)を変化させて薄膜を作製した。交互スパッタの1周期での堆積膜厚は,CS2を用いた場合と同様にCuInS2の1分子オーダー程度に対応していたものの堆積速度はやや遅い傾向がみられた。CS2の場合と同様に,大きなtCu/tIn比ではCuxS異相XRDピークが現れるCu-rich薄膜が得られ,tCu/tIn比の減少に伴ってCuxS異相が抑制されてCuInS2のXRDピークのみの化学量論組成薄膜が得られた。しかしながら,さらにtCu/tIn比を減少させた際にはCS2の場合のようなCuIn5S8異相が現れるIn-rich薄膜は得られず,化学量論組成付近薄膜が得られた。これらの結果は,H2Sによる反応性スパッタ法によるCuInS2薄膜が作製可能なことを示しているものの,H2SとCS2の反応性が異なる可能性も示唆しており,興味深い。一方,バッファー層として有用な高抵抗無添加ZnO薄膜を酸素ガス中でZnターゲットを用いた反応性直流マグネトロンスパッタ法でガラス基板上(無加熱:80°C付近)で作製し,その上に透明導電膜として有用なZnO:Al薄膜をArガス中でZnO:Al焼成ターゲットを用い直流マグネトロンスパッタ法で作製したころ,n形高導電性(10-1Ωcm程度)が得られた。この結果を踏まえてZnO:Al/ZnO/CuInS2/Mo/glass積層構造の試作を開始したが,その電気的特性においてはまだ十分な整流性が得られておらず,積層構造作製条件の最適化を進めている。Ar希釈CS2ガスに加えてAr希釈H2Sガスも供給可能に改造したCuとInの2組の対向ターゲット対及び基板回転機構を有するスパッタ装置を用いて,これまでのCS2による薄膜作製条件を参考にし,H2Sを用いてソーダライムガラス基板上でCuとInの交互スパッタ時間比(tCu/tIn)を変化させて薄膜を作製した。CS2の場合と同様に,大きなtCu/tIn比ではCuxS異相XRDピークが現れるCu-rich薄膜が得られ,tCu/tIn比の減少に伴ってCuxS異相が抑制されてCuInS2のXRDピークのみの化学量論組成薄膜が得られた。しかしながら,さらにtCu/tIn比を減少させた際にはCS2の場合のようなCuIn5S8異相が現れるIn-rich薄膜は得られず,化学量論組成付近薄膜が得られた。これらの結果は,H2SはCS2と同様にCuInS2薄膜が作製可能なことを示しているものの,H2SはCS2に比較して反応性が劣っている可能性を示唆している。作製されたCuInS2薄膜は厚さ方向及び面内での組成均一性に優れていて,金属プレーカーサ膜の硫化法で作製されたCuInS2薄膜で報告されている硫化銅の表面析出現象は観られなかった。一方,窓層用の透明導電膜として,マグネトロンスパッタ法によりZnO:Al薄膜の作製した。バッファー層として,反応性直流マグネトロンスパッタ法による無添加ZnO薄膜に加えて,ケミカルバス法によるZnS系層,InS系層,CdS系層の作製評価にも取り組んだ。これらの結果を踏まえてZnO:Al/ZnO/ZnS/CuInS2/Mo/glass積層構造等の小面積セルの作製を試みたが,その電気的特性においてはまだ十分な整流性が得られておらず,プロセス温度を含む積層構造作製条件の最適化を進めることで,反応性ガス種の違いの効果がさらなる解明につながるものと期待される。対向ターゲット式スパッタ装置を用いて,H2S反応性ガス中でのCuとInの交互堆積によりCu-In-S系薄膜を作製した。組成は交互堆積時間比の変化に対応して(CuxS)-(CuInS2)系で変化し,化学量論組成付近でCuInS2の基礎吸収端を有する多結晶CuInS2薄膜が得られた。太陽電池セル応用を意図して,ZnO:Al/ZnO/ZnS/CuInS2/Mo/glass積層構造等を作製した。Ar希釈CS2反応性ガス供給システム、CuとInの2組の対向ターゲット対及び基板回転機構を有する既存のCuInS2薄膜作製用の自作スパッタ装置に,Ar希釈H2S反応性ガスも供給可能なガス供給配管システム工事を行った。 | KAKENHI-PROJECT-23560361 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23560361 |
対向ターゲット式交互堆積反応性スパッタ法で硫化水素を用いた銅インジウム薄膜の作製 | また、排気ガスでの未反応H2Sガス含有の可能性を考慮し、排気ガスを窒素ガス希釈後にH2S除外筒を通過させて局所排気装置ドラフトチャンバー内へ導くガス排気配管システム工事を行った。さらに、H2Sガス検知警報装置システム据付工事も行った。これら工事は部分的に自作した。ポンプオイル中混濁ガスの影響などの予期せぬ不具合に対して配管システム改善等を施すことで、最終的ガス漏れ防止テストで支障がないことが確認された。この改造装置を用いて、CS2反応性ガスを用いた薄膜作製条件データを参考にし、Ar希釈H2Sガス供給下で初期的な薄膜作製実験を試みた。現段階ではまだ十分な評価データが蓄積できていないが、X線回折でCuInS2のピークが観測されたことから、H2S供給下でのCuとInの交互堆積による反応性スパッタ法を用いてCuInS2薄膜作製に成功したと判断される。一方、CS2反応性ガスを用いたCuInS2薄膜作製及び評価では、深さ方向の組成均一性が良好であること、Mo薄膜上で配向性及び結晶性が向上すること、CuInGaSe2系のようなNa効果は明確に観られなかったことなどが明らかとなり、今後のH2Sガス利用の際の興味深い基礎データが蓄積された。また、多元同時蒸着法によるGaP及びGaAs基板上の高品質エピタキシャル薄膜評価で明らかとなった格子歪み緩和過程と金属原子周期配列の関係も有用な基礎データと位置付けられる。直流マグネトロンスパッタ法によるAl添加ZnO透明薄膜の作製条件最適化でn形導電性向上(10-2Ωcm程度)を前倒しで達成できたことは、今後のデバイス作製につながる。本研究の目的は、これまでのCS2ガス供給下でCu及びInを交互堆積する対向ターゲット式反応性スパッタ法によるCuInS2薄膜作製の実験データを基礎として、CS2ガスの代わりにH2Sガスを用いてCuInS2薄膜作製を試み、その高品質薄膜作製条件を明らかにすると共に,薄膜太陽電池セル作製を試みることである。初年度の平成23年度ににおいてはH2Sガス供給も可能なCuInS2薄膜作製用の交互堆積スパッタ装置を構築し、H2SでCuInS2薄膜が作製可能であることを示す初期的データを得た。平成24年度では,1初期的データを基に,薄膜を様々な条件で作製し,その特性評価結果を薄膜作製条件にフィードバックすることで高品質薄膜作製条件を確立すると共に,化学量論組成のずれ等と薄膜特性の関係を明確化することと,2これら結果を踏まえつつ,平成24年度後半頃から小面積太陽電池セルの試作を開始するが目的とされていた。目的1については,CuとInの交互スパッタ時間比(tCu/tIn)に対する薄膜の特性等の解明に取組み,異相フリーなCuInS2化学量論組成薄膜が得られるスパッタ条件を明確化したことに加えて,H2SとCS2の反応性が異なることに起因する可能性がある興味深いデータも得られていることから,その達成度は高いと評価できる。目的2については,真空蒸着装置を改造した直流スパッタ装置を用いることで,Mo裏面電極,n形透明導電性薄膜Al添加ZnO薄膜および高抵抗無添加ZnO薄膜バッファー層の作成条件を明らかにした後に,ZnO:Al/ZnO/CuInS2/Mo/glass積層構造の試作を開始するだけでなく,既にその電気的特性評価結果等から積層構造作製条件の最適化に取り組み始めていることから,ある程度の達成度にあると評価できる。以上の状況から、総合的に、おおむね順調に進展しているものとみなせる。本研究の目的は、これまでのCS2ガス供給下でCu及びInを交互堆積する対向ターゲット式反応性スパッタ法によるCuInS2薄膜作製の実験データを基礎として、CS2ガスの代わりにH2Sガスを用いて同様な方法によるCuInS2薄膜作製を試み、その高品質化のための作製条件を明らかにすると共に,薄膜太陽電池セル作製を試みることである。 | KAKENHI-PROJECT-23560361 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23560361 |
導電性高分子ポリピロール薄膜のエレクトロクロミズム現象及び劣化機構の解明 | 平成7年度はPPy膜の電解重合中の成長過程を、我々が構築したCCD顕微鏡システムを用いて観察した。その結果、エタノール溶液中における良好な製膜条件を見出した。次に、PPy単独膜の電気化学的特性の評価を行った。具体的には、密度勾配菅及び、ソースメジャーユニットを用いて、ド-ピング/脱ド-ピングの繰り返し回数の増加に伴う膜の密度、及び導電率を測定した。導電率は膜を作製後、空気中にて四探針法にて行った。その結果、PPy単独膜繰り返しの電圧印加に伴い、膜の密度は1.328から1.520まで上昇し、他方、膜の導電率は低下することがわかった。平成8年度は、電気化学AFMを用いてド-ピング/脱ド-ピングにともなう膜表面の微細構造の変化の様子を溶液中でその場観察した。その結果、電圧印加に伴い、膜は一旦隆起、膨張し、次に収縮することが明らかになった。光学顕微鏡、及び電気化学AFMを用いた観察と、この密度測定及び導電率測定から、「PPy膜の劣化は繰り返しの電圧印加による膜の収縮に起因する」、という我々の仮説を強く裏付ける有力な証拠を得ることが出来た。一方、本研究で作成したPPy/PVA複合膜の方はPPy単独膜に比較して密度、及び導電率は究めて安定していた。そこで、ITO基坂上に作製したこの複合膜を用いて、固体型ECDを試作した。その結果、20万回以上のド-ピング/脱ド-ピングの繰り返しに耐え、ディスプレイとして実用化の可能性が高いことが初めて示された。上述の結果から、本研究で我々が考案したPPy/PVA複合膜は、多孔性のポリマーがこうしたPPy膜の収縮を機械的に妨げる役割を果たしているといえる。さらに、(1)複合膜をからPVA層を除去したPPy膜の耐久性はPPy単独膜よりもはるかに長いこと、(2)しかもPPy単独膜に後からPVA層を接合した試料は色変化を示すものの耐久性に劣る、という二つの実験事実から、成長した膜の高次構造、微細構造自体がPPy膜のエレクトロクロミズム現象の劣化を大きく左右するものと結論づけられた。平成7年度はPPy膜の電解重合中の成長過程を、我々が構築したCCD顕微鏡システムを用いて観察した。その結果、エタノール溶液中における良好な製膜条件を見出した。次に、PPy単独膜の電気化学的特性の評価を行った。具体的には、密度勾配菅及び、ソースメジャーユニットを用いて、ド-ピング/脱ド-ピングの繰り返し回数の増加に伴う膜の密度、及び導電率を測定した。導電率は膜を作製後、空気中にて四探針法にて行った。その結果、PPy単独膜繰り返しの電圧印加に伴い、膜の密度は1.328から1.520まで上昇し、他方、膜の導電率は低下することがわかった。平成8年度は、電気化学AFMを用いてド-ピング/脱ド-ピングにともなう膜表面の微細構造の変化の様子を溶液中でその場観察した。その結果、電圧印加に伴い、膜は一旦隆起、膨張し、次に収縮することが明らかになった。光学顕微鏡、及び電気化学AFMを用いた観察と、この密度測定及び導電率測定から、「PPy膜の劣化は繰り返しの電圧印加による膜の収縮に起因する」、という我々の仮説を強く裏付ける有力な証拠を得ることが出来た。一方、本研究で作成したPPy/PVA複合膜の方はPPy単独膜に比較して密度、及び導電率は究めて安定していた。そこで、ITO基坂上に作製したこの複合膜を用いて、固体型ECDを試作した。その結果、20万回以上のド-ピング/脱ド-ピングの繰り返しに耐え、ディスプレイとして実用化の可能性が高いことが初めて示された。上述の結果から、本研究で我々が考案したPPy/PVA複合膜は、多孔性のポリマーがこうしたPPy膜の収縮を機械的に妨げる役割を果たしているといえる。さらに、(1)複合膜をからPVA層を除去したPPy膜の耐久性はPPy単独膜よりもはるかに長いこと、(2)しかもPPy単独膜に後からPVA層を接合した試料は色変化を示すものの耐久性に劣る、という二つの実験事実から、成長した膜の高次構造、微細構造自体がPPy膜のエレクトロクロミズム現象の劣化を大きく左右するものと結論づけられた。平成7年度はまずはじめに、PPy膜の電解重合中の成長過程を、我々の研究室で構築したCCD顕微鏡システムを用いて観察した。そして観察の結果、エタノール溶液中における良好な製膜条件を見出した。PPy単独膜及びPPy/PVA複合膜の電気化学的特性の評価を行った。具体的には、密度勾配管及び、申請した説備品費にて購入したソースメジャーユニットを用いて、ド-ピング/脱ド-ピングの繰り返し回数の増加に伴う膜の密度、及び導電率を測定した。導電率は膜を作成後、空気中にて四探針法にて行った。その結果、PPy単独膜繰り返しの電圧印加に伴い、膜の密度は1.328から1.520まで上昇することが明らかになった。また同時に、膜の導電率は低下することがわかった。顕微鏡を用いた観察と、この密度測定及び導電率測定から、劣化が繰り返しの電圧印加による膜の収縮に起因する、という我々の仮説を強く裏付ける有力な証拠を得ることが出来た。(謝、平井、池崎、"ポリピロール膜のエレクトロクロミズム現象び劣化機構(2)"、第56回応用物理学会 | KAKENHI-PROJECT-07650019 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07650019 |
導電性高分子ポリピロール薄膜のエレクトロクロミズム現象及び劣化機構の解明 | 学術講演会講演予稿集Vol.3 28a-R-5,1995)一方、我々の研究室で作成したPPy/PVA複合膜の方はPPy単独膜に比較して密度、及び導電率は究めて安定していた。そこで、ITO基板上に作製したこの複合膜を用いて、固体型のECDを試作した。その結果、10万回以上のド-ピング/脱ド-ピングの繰り返しに耐え、ディスプレーとして実用化の可能性が高いことが初めて示された。(平井、謝、池崎、"Ppy/PVA複合膜を用いた固体型エレクトロクロミック表示素子"、第56回応用物理学会学術講演会講演予稿集Vol.3 28a-R-6,1995)上述の結果から、当研究室で考察したPPy/PVA複合膜は、多孔性のポリマーがこうしたPPy膜の収縮を機械的に妨げる役割を果たしていることは容易に推察できるが、(1)複合膜をからPVA層を除去したPPy膜の耐久性はPPy単独膜よりもはるかに長いこと、(2)しかもPPy単独膜に後からPVA層を接合した試料は色変化を示すものの耐久性に劣る、という二つの実験事実から、成長した膜の高次構造、微細構造自体がエレクトロクロミズム現象の劣化を大きく左右するものと考えられる。平成7年度はPPy膜の電解重合中の成長過程を、我々が構築したOCD顕微鏡システムを用いて観察した。その結果、エタノール溶液中における良好な製膜条件を見出した。次に、PPy単独膜の電気化学的特性の評価を行った。具体的には、密度勾配管及び、ソースメジャーユニットを用いて、ド-ピング/脱ド-ピングの繰り返し回数の増加に伴う膜の密度、及び導電率を測定した。導電率は膜を作製後、空気中にて四探針法にて行った。その結果、PPy単独膜繰り返しの電圧印加に伴い、膜の密度は1.328から1.520まで上昇し、他方、膜の導電率は低下することがわかった。平成8年度は、電気化学AFMを用いてド-ピング/脱ド-ピングにともなう膜表面の微細構造の変化の様子を溶液中でその場観察した。その結果、電圧印加に伴い、膜は一旦隆起、膨脹し、次に収縮することが明らかになった。光学顕微鏡、及び電気化学AFMを用いた観察と、この密度測定及び導電率測定から、「PPy膜の劣化は繰り返しの電圧印加による膜の収縮に起因する」、という我々の仮説を強く裏付ける有力な証拠を得ることが出来た。一方、本研究で作成したPPy/PVA複合膜の方はPPy単独膜に比較して密度、及び導電率は究めて安定していた。そこで、ITO基板上に作製したこの複合膜を用いて、固体型ECDを試作した。その結果、20万回以上のド-ピング/脱ド-ピングの繰り返しに耐え、ディスプレイとして実用化の可能性が高いことが初めて示された。上述の結果から、本研究で我々が考案したPPy/PVA複合膜は、多孔性のポリマーがこうしたPPy膜の収縮を機械的に妨げる役割を果たしているといえる。さらに、(1)複合膜をからPVA層を除去したPPy膜の耐久性はPPy単独膜よりもはるかに長いこと、(2)しかもPPy単独膜に後からPVA層を接合した試料は色変化を示すものの耐久性に劣る、という二つの実験事実から、成長した膜の高次構造、微細構造自体がPPy膜のエレクトロクロミズム現象の劣化を大きく左右するものと結論づけられた。 | KAKENHI-PROJECT-07650019 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07650019 |
迅速な癌の光力学的治療を目指した酸素分圧診断と治療の融合型多機能製剤の開発 | 酸素分圧プローブ疎水性過クロロトリフェニルメチルラジカルは、DDSの担体として用いるリポソームの磁気共鳴法による体内トレースに応用できることがわかった。一方、薬物担体として加水分解したスチレン-無水マレイン酸共重合体あるいはデキストランを用いた検出法を検討した。デキストランにガドリニウムを結合させる方法でMRIによりマウス血管を描画でき、本研究目的にふさわしいことがわかった。併せて。ガドリニウムの簡便定量法も開発できた。酸素分圧プローブ疎水性過クロロトリフェニルメチルラジカルは、DDSの担体として用いるリポソームの磁気共鳴法による体内トレースに応用できることがわかった。一方、薬物担体として加水分解したスチレン-無水マレイン酸共重合体あるいはデキストランを用いた検出法を検討した。デキストランにガドリニウムを結合させる方法でMRIによりマウス血管を描画でき、本研究目的にふさわしいことがわかった。併せて。ガドリニウムの簡便定量法も開発できた。トリアリルメチルラジカルを一種類合成し、性質を調べた。1.トリアリルメチルラジカルの合成:トリアリルメチルラジカル類縁体のうちESRスペクトル上で1本のシグナルを示し、最も合成の容易なperchlorotriphenylmethyl triethylesterラジカル(PTM-TE)を、既報を参考にして合成した。2.PTM-TEのESRスペクトル:PTM-TEは水にほとんど溶けず、クロロホルムなどの有機溶媒に容易に溶けた。PTM-TE溶液のESRスペクトルは、^<13>Cによる小さな2つのサテライトシグナルを伴った線幅約0.14mTの1本のシグナルから成った。溶媒をミネラルオイルに替えて粘性を高めたところ、ESRシグナルの形状はほとんど変化せず、薬物担体へ取り込んだのちも幅の狭いESRシグナルが期待できる。残念ながら、用いた有機溶媒中でのPTM-TEのESRシグナルの酸素応答性は満足のいくものではなかった。3.PTM-TE含有リポソーム:PTM-TEの疎水性である性質を利用して、リポソームの標識への応用を検討した。PTM-TEは、卵黄レシチンリポソームで構成されるリポソーム膜に容易に取り込まれた。ESRスペクトルから解析したところ、卵黄レシチンに対するPTM-TEのモル比が約0.017以上では、膜内でクラスターを形成することがわかり、リポソーム標識にはこの濃度が最適であることが示唆された。また、膜中にコレステロールが存在するとPTM-TEのクラスター形成が促進された。1.昨年度酸素プローブとして合成したPTM-TEは脂溶性が高く、本研究の目的には不向きであることが判明したため、本年度は、より水溶性のトリアリルメチルラジカルを合成することとした。しかし、中間体の収率が低く、現在のところ合成途中段階である。PROXYL標識SMAは3-hydroxymethyl-PROXYLと同様にアスコルビン酸に対して抵抗性を示し、TEMPO標識SMAでは4-hydroxy-TEMPOと同様アスコルビン酸で還元された。マウス血漿との接触で、いずれの標識SMAのESRシグナルも著しく幅広化し、これら標識SMAが血清タンパク質と強固に結合することがわかった。このことから、in vivoでの検出手段として、ESRシグナルに基づく検出法よりもニトロキシルによる水プロトンの緩和時間短縮を利用たMRIにより検出する方向で進めるべきであることがわかった。1.既報に従い、2,2,6,6-tetramethylpiperidin-1-oxyl(TEMPO)をデキストラン(MW 40,000)に結合させデキストラン-TEMPOを合成した。結合比は、グルコース残基:TEMPO=57:1であった。デキストラン-TEMPOの濃度依存的にMRIシグナルの強調効果が見られ、その効果は未結合のTEMPOと同程度であった。しかし、マウスにおいては、残念ながら造影効果は見られなかった。2. MRIでの検出をより容易にするため、デキストランにDTPAを介してGdをキレートさせ、Gd-デキストランを合成した。結合率は、グルコース残基:Gd=1:0.5から1:1であった。ファントムにてMRI増強効果を調べたところ、市販のマグネビスト(Gd-DTPA)と比較して造影効果は1/4程度であることがわかった。マウスに投与してMRIを撮像したところ、血管が描画され、造影剤が血管内に留まっている様子が確認された。血管から漏れ出た部分で造影効果が高まると考えられ、癌組織や血管障害の診断に利用できると期待される。3. Gdが溶液中で近傍の他の常磁性物質のESRシグナルを広幅化することを利用して、ESRを用いた簡易定量法を開発した。4-Oxo-TEMPOのESRシグナルはGd及びそのキレート化合物の濃度依存的に広幅化し、直線性が得られた。定量は簡便であるため、合成造影剤の評価や造影剤の検定に利用できる。4.デキストランにエチレンジアミンをスペーサートしてクロリンe6を結合させたが、結合後クロリン結合デキストランは水に不溶性となった。可溶化にはポリエチレングリコール化などの処置をとる必要があることがわかった。水溶性トリアリルメチルラジカルの合成に手間取り、これを使用した実験が遅れている。その他については順調に進展している。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22590052 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22590052 |
迅速な癌の光力学的治療を目指した酸素分圧診断と治療の融合型多機能製剤の開発 | 本年度までの研究で、SMAは生体分子との相互作用が強く、標識のESRシグナルが幅広化することが判明した。そのため、in vivoでの検出手段としてMRIを使用する方向へ変更する。さらに、SMAに替えて生体分子との相互作用の小さいデキストランを用いて進めることとする。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22590052 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22590052 |
高齢者における健康の社会階層による格差のメカニズムとその制御 | 1、高齢者の健康・保健行動の社会階層による格差のメカニズム:高齢者の保健行動の就学年数および収入による格差が時間的展望を媒介要因として説明できるか否かを分析した。分析の結果、時間的展望の5つのサブカテゴリーのうち将来展望が就学年数と栄養摂取行動や禁煙行動の関連をそれぞれ媒介していることが明らかとなった。2、社会階層が高齢者の健康に与える影響の年齢・時代による差:潜在期間モデルと経路モデルを用いてライフコース上の社会階層の高齢期の健康に与える影響を評価するとともに、その結果が年齢区分と時代によって異なるか否かを分析した。分析の結果、潜在期間モデルおよび経路モデルにもとづく結果が年齢区分および時代によって差があることが示された。3、透析患者におけるセルフケアの社会階層による格差のメカニズム:透析患者の就学年数と収入によるセルフケアの格差が自己効力感、コントロール感、社会的支援という心理社会的要因によって説明可能か否かを分析した。分析の結果、就学年数とセルフケアの関連が自己効力感やコントロール感によって媒介されていることが明らかにされた。4、高齢者における療養場所の嗜好性の世帯構成による差:高齢者が要介護状態に至った場合における介護手段(主に家族介護を希望するか、在宅介護サービスの利用を希望するか、施設介護を希望するか)の嗜好性が世帯構成(単独世帯か、それ以外か)によって異なるか、さらにその嗜好性が時代と年齢によって差があるか否かを分析した。分析の結果、単独世帯の高齢者は他の世帯の高齢者と比較して、在宅介護サービスの利用と施設介護を希望する割合がそれぞれ高いとともに、施設介護の利用希望の割合については年齢が低い単独高齢者ほど高いことが明らかとなった。1、高齢者および疾患をもつ人たちを対象とした社会階層による健康・保健行動の格差とそのメカニズムの解明については、計画通りに分析が進み、学術誌に投稿した。2、社会階層指標間の関係性をモデル化した指標の健康影響については、日本版総合的社会調査(JGSS)のデータを用いた二次分析がおおむね計画通りに進んだ。3、住宅階層の健康への影響については、既存データの二次分析を開始した。しかし、学術的に公表できるような研究成果を得るにはいたっていない。4、要介護高齢者とその介護者における介護サービスの未充足度・健康度の社会階層格差については、分析予定の既存データの一部については二次分析を開始し、研究成果を得ているものの、二次分析に着手していないデータも残されている。5、次年度実施予定の追跡調査の準備:東京都内の2自治体(世田谷区と墨田区)の65歳以上住民各1,000人ずつを対象に実施した調査の追跡調査については、計画通りに、分析課題の確認、調査項目の取捨選択を行なった。1、社会階層指標間の関係性をモデル化した指標の健康影響については、日本版総合的社会調査(JGSS)のデータの二次分析の結果をもとに論文を執筆し、学術誌に投稿する。2、疾患をもつ人たちにおける社会階層と健康との関連については、ライフコース上の社会階層の影響についての分析が終了していない。早急に分析を開始し、成果を公表できるようにする。3、住宅階層の健康への影響については、学術的に公表できるような研究成果を得るために、分析モデルを工夫しつつ、既存データの二次分析を継続する。4、要介護高齢者とその介護者における介護サービスの未充足度・健康度の社会階層格差については、分析を開始していない既存データがあり、二次分析の課題が残されている。早急に分析を開始し、研究成果が得られるようにする。1、高齢者の健康・保健行動の社会階層による格差のメカニズム:高齢者の保健行動の就学年数および収入による格差が時間的展望を媒介要因として説明できるか否かを分析した。分析の結果、時間的展望の5つのサブカテゴリーのうち将来展望が就学年数と栄養摂取行動や禁煙行動の関連をそれぞれ媒介していることが明らかとなった。2、社会階層が高齢者の健康に与える影響の年齢・時代による差:潜在期間モデルと経路モデルを用いてライフコース上の社会階層の高齢期の健康に与える影響を評価するとともに、その結果が年齢区分と時代によって異なるか否かを分析した。分析の結果、潜在期間モデルおよび経路モデルにもとづく結果が年齢区分および時代によって差があることが示された。3、透析患者におけるセルフケアの社会階層による格差のメカニズム:透析患者の就学年数と収入によるセルフケアの格差が自己効力感、コントロール感、社会的支援という心理社会的要因によって説明可能か否かを分析した。分析の結果、就学年数とセルフケアの関連が自己効力感やコントロール感によって媒介されていることが明らかにされた。4、高齢者における療養場所の嗜好性の世帯構成による差:高齢者が要介護状態に至った場合における介護手段(主に家族介護を希望するか、在宅介護サービスの利用を希望するか、施設介護を希望するか)の嗜好性が世帯構成(単独世帯か、それ以外か)によって異なるか、さらにその嗜好性が時代と年齢によって差があるか否かを分析した。分析の結果、単独世帯の高齢者は他の世帯の高齢者と比較して、在宅介護サービスの利用と施設介護を希望する割合がそれぞれ高いとともに、施設介護の利用希望の割合については年齢が低い単独高齢者ほど高いことが明らかとなった。1、高齢者および疾患をもつ人たちを対象とした社会階層による健康・保健行動の格差とそのメカニズムの解明については、計画通りに分析が進み、学術誌に投稿した。2、社会階層指標間の関係性をモデル化した指標の健康影響については、日本版総合的社会調査(JGSS)のデータを用いた二次分析がおおむね計画通りに進んだ。3、住宅階層の健康への影響については、既存データの二次分析を開始した。 | KAKENHI-PROJECT-18H03651 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H03651 |
高齢者における健康の社会階層による格差のメカニズムとその制御 | しかし、学術的に公表できるような研究成果を得るにはいたっていない。4、要介護高齢者とその介護者における介護サービスの未充足度・健康度の社会階層格差については、分析予定の既存データの一部については二次分析を開始し、研究成果を得ているものの、二次分析に着手していないデータも残されている。5、次年度実施予定の追跡調査の準備:東京都内の2自治体(世田谷区と墨田区)の65歳以上住民各1,000人ずつを対象に実施した調査の追跡調査については、計画通りに、分析課題の確認、調査項目の取捨選択を行なった。1、社会階層指標間の関係性をモデル化した指標の健康影響については、日本版総合的社会調査(JGSS)のデータの二次分析の結果をもとに論文を執筆し、学術誌に投稿する。2、疾患をもつ人たちにおける社会階層と健康との関連については、ライフコース上の社会階層の影響についての分析が終了していない。早急に分析を開始し、成果を公表できるようにする。3、住宅階層の健康への影響については、学術的に公表できるような研究成果を得るために、分析モデルを工夫しつつ、既存データの二次分析を継続する。4、要介護高齢者とその介護者における介護サービスの未充足度・健康度の社会階層格差については、分析を開始していない既存データがあり、二次分析の課題が残されている。早急に分析を開始し、研究成果が得られるようにする。 | KAKENHI-PROJECT-18H03651 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H03651 |
予防的アプローチを考慮した地域レベルでの環境リスク管理に関する協議システムの構築 | 本研究では、地域レベルでの環境リスクに関するコミュニケーションモデルを構築したうえで、埼玉県を対象に会議形式のコミュニケーション実験を実施した。その結果、提供された情報に関しては、わかりやすい情報を求める意見がある一方、情報の操作性を懸念する声もあった。また、企業に対する質問紙調査の結果、工業団地レベルでの取り組みの可能性と課題が示唆された。本研究では、地域レベルでの環境リスクに関するコミュニケーションモデルを構築したうえで、埼玉県を対象に会議形式のコミュニケーション実験を実施した。その結果、提供された情報に関しては、わかりやすい情報を求める意見がある一方、情報の操作性を懸念する声もあった。また、企業に対する質問紙調査の結果、工業団地レベルでの取り組みの可能性と課題が示唆された。まず、これまでに構築された有害化学物質に関するリスク情報システムの特性を整理するとともに、情報システムの運用の場となるコミュニケーション手法に関しても、事例を整理し、効果と課題を抽出した。このため、既にPRTR情報をはじめとするリスク情報を用いて会合形式のコミュニケーションを地域的なレベルで進めている米国での調査結果を整理し、わが国で求められる協議手法を具体化する際の検討材料とした。上記を踏まえて、本研究で実施する協議手法のフレームワークを構築し、本研究の実施地域である埼玉県の関係者を含めた関係者の間で、基本的なコンセンサスを得ることに努めた。その中で、次年度に実施する社会実験の概要について検討する機会を持った。一方、実際のコミュニケーションで扱う情報源として埼玉県全域を対象とした有害化学物質の濃度分布を把握することを試みた。このため、国によって公表されているPRTR(環境汚染物質排出移動登録)の情報を基に、産業技術総合研究所の化学物質リスク管理研究センターが開発した曝露・リスク評価大気拡散モデル(AIST-ADMER)を用いて、県内の発生量が多いと考えられる5物質ごとの分布状況を地図上で示すとともに、それらの複合的影響の状況についても検討を行った。これらの作業を通じて、県内で化学物質の排出量が多い地域の傾向を把握した。こうした情報を充実させ、次年度に行う実験で実際に用いる情報源として用いる。さらに、これらの物質の発生要因を検討し、議論の際の選択肢の検討に努めた。平成19年度は、主として以下の2点から研究を進めた。第一に、埼玉県が実施している化学物質円卓会議の場を用いてPRTRデータを対象としたコミュニケーションの実験的な取り組みを実施し、その特性と今後の課題を整理した。ここで対象とした化学物質は、国の優先取組物質のうち、人への影響を対象とし排出量が比較的多い6種類である。埼玉県ならびに周辺県で操業する事業所を抽出し、それらの位置と物質ごとの排出量を確認し、シミュレーションソフトにより5kmメッシュ単位の濃度を求めた。議論された内容のうち、提供された情報に関しては、わかりやすい情報であったとする意見がある一方、データの一人歩きを懸念する声もあった。また、地域単位の管理のためには、目的に応じた情報の視覚化や、届出外や非点源を含めることの重要性が指摘された。また、地域単位の管理のためには、目的に応じた情報の視覚化や、届出外や非点源を含めることの重要性が指摘された。第二に、複数の事業者が協力してリスク管理に取り組む際の形態のあり方に関する質問紙調査を行った。質問項目には、複数事業者が協力することの必要性および実現可能性、取組を進めるうえでの課題、今後望まれる協力体制のあり方などについて事業者の意向、事業者が望ましいと考える協力体制などが含まれる。調査対象は埼玉県環堵保全連絡協議会の会員事業者741とし、有効回収数は194であった。調査の結果、多くの事業者は協力してリスクコミュニケーションを進めることは重要ではあるが困難だと感じ、特に業種の違いに対して大きな困難を感じていること、事業者の多くは行政主導で異業種を含めた形でコミュニケーションを行うことが望ましいと考えており、現在取組を進めている業界団体は行政主導の取組には効果の面から慎重な見方を示しており、一般事業者との間に意識のギャップが見られることなどが明らかになった。本年度は、埼玉県川越市において住民や事業者に加え、有識者や行政も含めた形で実験的な環境リスクコミュニケーションを実施した。具体的には、公募による市民6名、市内の事業者から3名、有識者を2名、行政から1名の計12名で、グループワーク、情報を提示しての議論、質問紙調査などのための会合を開催した。まず様々な立場の参加者が持つ考えを整理するため、KJ法を用いて参加者の環境に対する意見の集約を行った。作業中は身近な現象から制度・規制まで、参加者による積極的な意見交換が行われた。次に、埼玉県内・川越市内における状況についてPRTRデータを提示したうえで、議論や質問紙調査を行った。本研究では工業用としてベンゼンと塩化メチレン、農業用としてD-Dとジクロルボス、家庭用としてLASとAEの計6物質を提示対象とし、埼玉県・川越市における各化学物質の年間排出量を、物質の有害性などを解説しつつ図表で提示した。これらのデータについて、事業者からは、「住民におけるPRTRの知名度の低さを実感した」といった意見が表明された。続いて、地域内の環境濃度という視点から現在の状況を提示した。このため、産業技術総合研究所のソフトウェア「ADMER」を用いてシミュレーションを行い、データ内容に関する議論と質問紙調査を実施した。 | KAKENHI-PROJECT-18510036 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18510036 |
予防的アプローチを考慮した地域レベルでの環境リスク管理に関する協議システムの構築 | 議論では、「事業者としても化学物質を使わなければならない現状がある」、「市民の立場で理解できるような化学物質の情報が必要である」など、各参加者の意識を反映した意見も表明された。また、議論のなかで参加者が他の主体の考え方を認識しつつある様子が見てとれた。このことから、各主体がそれぞれの立場を理解しながら、リスク削減という共通の目的に向けて意識を共有する萌芽がみられたと考えている。 | KAKENHI-PROJECT-18510036 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18510036 |
新しい耐放射線性絶縁樹脂を用いた電磁石の開発 | 加速器用電磁石コイルの絶縁材として一般的なエポキシ樹脂よりも耐放射線性が高い樹脂として、これまでビスマレイミド・トリアジン樹脂が多く使われてきたが、それと同程度以上の耐放射線性を持つ樹脂として、シアネート樹脂が最近注目され始めている。このシアネート樹脂を用いた加速器用電磁石コイルを開発することが本研究課題の目的である。初年度は、シアネート樹脂に混ぜるエポキシ樹脂の種類やその配合比を最適化することで、樹脂そのものの物性値の改善を図った。樹脂の耐熱性能の指標であるガラス転移温度を系統的に測定することで、ビスマレイミド・トリアジン樹脂やシアネート樹脂100%よりも高いガラス転移温度が得られるような、最適なエポキシ樹脂の種類と配合比、温度条件等を決定することができた。2年目は、その樹脂を電磁石コイルの絶縁材として使用するために、プリプレグテープ(ガラス繊維布に樹脂を含浸させた絶縁テープ)の開発を行った。しかしながら、量産設備で使用するような量ではシアネート樹脂が熱暴走を起こすことが判明し、その対策が必要となった。プリプレグテープ製造業者の工場でシアネート樹脂とエポキシ樹脂とを混合させる場合、安全対策に追加の設備投資が必要となるが、元の樹脂製造業者であらかじめ混合させた製品を使用することで熱暴走を起こさずにプリプレグテープが製造できるようになった。これにより、シアネート樹脂製プリプレグテープ製造の目途を立てられた。今後、このシアネート樹脂製プリプレグテープを用いて、その耐放射線性の測定や、電磁石コイルの製造技術の確立を進める予定である。シアネート樹脂という新しい樹脂を電磁石の絶縁材として使用するためには、シアネート樹脂製のプリプレグテープを開発する必要がある。手塗りによる少量生産では問題なかったが、量産化のために工場の製造ラインで製作しようとしたところ、熱暴走が発生した。幸い、火災事故にはならなかったものの、その後の開発、製造には、熱暴走の抑止や万一の場合の安全対策が必要となったため、当初の研究計画の見直しが必要となった。これまで開発してきたシアネート樹脂製プリプレグテープを用いて、ビーム照射試験や、模擬コイルの樹脂含浸硬化試験を並行して実施する。これらにより、シアネート樹脂の耐放射線性や絶縁性能、コイル絶縁材としての適性などを評価し、シアネート樹脂を用いた電磁石コイルの製造技術を確立する。加速器用電磁石コイルの絶縁材として一般的なエポキシ樹脂よりも耐放射線性が高い樹脂として、これまでビスマレイミド・トリアジン樹脂が多く使われてきたが、それと同程度以上の耐放射線性を持つ樹脂として、シアネート樹脂が最近注目され始めている。このシアネート樹脂を用いた加速器用電磁石コイルを開発することが本研究課題の目的である。電磁石コイルの絶縁材として使用するためには、ガラス繊維布に樹脂を含浸させたプリプレグテープの形にする必要があるため、初年度は、まず最初にシアネート樹脂製プリプレグテープの開発を行った。シアネート樹脂にエポキシ樹脂を混ぜることでシアネート樹脂100%よりも物性値が改善する可能性があるため、混合させるエポキシ樹脂の種類やその配合比の最適化を図った。特に、樹脂の耐熱性能の指標であるガラス転移温度が、ある程度耐放射線性能と相関があることが期待されることから、各種のエポキシ樹脂ごとに、シアネート樹脂との配合比や硬化時の温度条件等をいろいろ変えて重合させたテストサンプルを用意し、それらのガラス転移温度を系統的に測定した。その結果、ビスマレイミド・トリアジン樹脂やシアネート樹脂100%よりも高いガラス転移温度が得られるような、最適なエポキシ樹脂の種類と配合比、温度条件等を決定することができた。これにより、シアネート樹脂製プリプレグテープの量産の目途を立てられた。今後、このシアネート樹脂製プリプレグテープを用いて、その耐放射線性の測定や、電磁石コイルの製造技術の確立を進める予定である。当初計画では、シアネート樹脂製プリプレグテープを用意し、それに陽子ビームを照射して耐放射線性を測定するまでを初年度に実施する予定であったが、シアネート樹脂製プリプレグテープの開発に時間がかかったため、ビーム照射が実施できなかった。しかしながら、ガラス転移温度を系統的に測定することにより、ビーム照射前に樹脂の種類等の選別ができた。むしろ、樹脂の種類や配合比などの各種条件について、ビーム照射による耐放射線性測定だけの場合よりも、幅広いなかから最適な条件を選び出すことができたという意味で、技術的にはより確度の高い情報が得られたと言える。また、その結果シアネート樹脂製プリプレグテープの量産が可能になったため、ビーム照射以外の試験も並行して実施することで、遅れは十分挽回できる。加速器用電磁石コイルの絶縁材として一般的なエポキシ樹脂よりも耐放射線性が高い樹脂として、これまでビスマレイミド・トリアジン樹脂が多く使われてきたが、それと同程度以上の耐放射線性を持つ樹脂として、シアネート樹脂が最近注目され始めている。このシアネート樹脂を用いた加速器用電磁石コイルを開発することが本研究課題の目的である。初年度は、シアネート樹脂に混ぜるエポキシ樹脂の種類やその配合比を最適化することで、樹脂そのものの物性値の改善を図った。 | KAKENHI-PROJECT-17K18788 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18788 |
新しい耐放射線性絶縁樹脂を用いた電磁石の開発 | 樹脂の耐熱性能の指標であるガラス転移温度を系統的に測定することで、ビスマレイミド・トリアジン樹脂やシアネート樹脂100%よりも高いガラス転移温度が得られるような、最適なエポキシ樹脂の種類と配合比、温度条件等を決定することができた。2年目は、その樹脂を電磁石コイルの絶縁材として使用するために、プリプレグテープ(ガラス繊維布に樹脂を含浸させた絶縁テープ)の開発を行った。しかしながら、量産設備で使用するような量ではシアネート樹脂が熱暴走を起こすことが判明し、その対策が必要となった。プリプレグテープ製造業者の工場でシアネート樹脂とエポキシ樹脂とを混合させる場合、安全対策に追加の設備投資が必要となるが、元の樹脂製造業者であらかじめ混合させた製品を使用することで熱暴走を起こさずにプリプレグテープが製造できるようになった。これにより、シアネート樹脂製プリプレグテープ製造の目途を立てられた。今後、このシアネート樹脂製プリプレグテープを用いて、その耐放射線性の測定や、電磁石コイルの製造技術の確立を進める予定である。シアネート樹脂という新しい樹脂を電磁石の絶縁材として使用するためには、シアネート樹脂製のプリプレグテープを開発する必要がある。手塗りによる少量生産では問題なかったが、量産化のために工場の製造ラインで製作しようとしたところ、熱暴走が発生した。幸い、火災事故にはならなかったものの、その後の開発、製造には、熱暴走の抑止や万一の場合の安全対策が必要となったため、当初の研究計画の見直しが必要となった。初年度に開発したシアネート樹脂製プリプレグテープの量産品を用いて、ビーム照射試験や、模擬コイルの樹脂含浸硬化試験を並行して実施する。これらにより、シアネート樹脂の耐放射線性や絶縁性能、コイル絶縁材としての適性などを評価し、シアネート樹脂を用いた電磁石コイルの製造技術を確立する。これまで開発してきたシアネート樹脂製プリプレグテープを用いて、ビーム照射試験や、模擬コイルの樹脂含浸硬化試験を並行して実施する。これらにより、シアネート樹脂の耐放射線性や絶縁性能、コイル絶縁材としての適性などを評価し、シアネート樹脂を用いた電磁石コイルの製造技術を確立する。シアネート樹脂製プリプレグテープの開発に時間がかかったため、当初予定していたビーム照射試験が実施できず、そのための物品費や旅費が繰り越しとなった。しかしながら、初年度の研究開発の結果シアネート樹脂製プリプレグテープの量産が可能になったため、ビーム照射以外の試験も並行して実施することができるので、繰り越し分も含めて2年目に使用する計画である。シアネート樹脂製プリプレグテープの開発途中で、熱暴走という新たな問題が生じ、その対策に時間がかかったため、当初予定していた試験が実施できず、そのための費用が繰り越しとなった。しかしながら、これまでの研究開発の結果、シアネート樹脂製プリプレグテープの製造が可能になったため、繰り越し金により当初予定していた各種試験を実施する計画である。 | KAKENHI-PROJECT-17K18788 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18788 |
神経変性疾患モデル動物の作成と神経栄養因子による機能修復 | 神経変性疾患は神経系の特定の神経細胞集団が変性・脱落する結果誘起される疾患である。神経変性疾患の実験モデル動物の創出を目指して、マウス脳内における特定の領域で神経細胞の生存維持因子である神経栄養因子の細胞内シグナル伝達系を人為的に遮断することにより、神経細胞の変性を起こす系の作成を試みた。細胞内において低分子量GTP結合タンパク質Rasがほとんどすべての神経栄養因子のシグナル伝達を媒介することが知られているので、Rasの抑制性調節因子Gap1^mを過剰に発現することにより、シグナル伝達を遮断することとした。本年度は以下の研究成果を得た。1.培養細胞を用いた実験からGapl^mの発現により、神経栄養因子(NGF)による神経突起誘導活性が抑制されることを示した。この際に細胞内においてRasシグナル伝達系が遮断されていることを確認した。2.Rasはマウス個体発生に必須であることから、その抑制性調節因子Gapl^mの発現を人為的にコントロールし得る遺伝子発現系を構築し、実際に細胞内でその発現を可逆的に制御できることを確認した。3.作成した遺伝子発現系をマウスに導入し、遺伝子発現系を保持する複数のクローンを選択した。また導入した遺伝子は次世代に伝達することを確認した。今後得られたマウスを用いて、マウス個体内でRasシグナル伝達系を可逆的に制御し、神経栄養因子のシグナル伝達を遮断した際の効果について検討していく予定である。神経変性疾患は神経系の特定の神経細胞集団が変性・脱落する結果誘起される疾患である。神経変性疾患の実験モデル動物の創出を目指して、マウス脳内における特定の領域で神経細胞の生存維持因子である神経栄養因子の細胞内シグナル伝達系を人為的に遮断することにより、神経細胞の変性を起こす系の作成を試みた。細胞内において低分子量GTP結合タンパク質Rasがほとんどすべての神経栄養因子のシグナル伝達を媒介することが知られているので、Rasの抑制性調節因子Gap1^mを過剰に発現することにより、シグナル伝達を遮断することとした。本年度は以下の研究成果を得た。1.培養細胞を用いた実験からGapl^mの発現により、神経栄養因子(NGF)による神経突起誘導活性が抑制されることを示した。この際に細胞内においてRasシグナル伝達系が遮断されていることを確認した。2.Rasはマウス個体発生に必須であることから、その抑制性調節因子Gapl^mの発現を人為的にコントロールし得る遺伝子発現系を構築し、実際に細胞内でその発現を可逆的に制御できることを確認した。3.作成した遺伝子発現系をマウスに導入し、遺伝子発現系を保持する複数のクローンを選択した。また導入した遺伝子は次世代に伝達することを確認した。今後得られたマウスを用いて、マウス個体内でRasシグナル伝達系を可逆的に制御し、神経栄養因子のシグナル伝達を遮断した際の効果について検討していく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-09280238 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09280238 |
グローバルな算数・数学教員養成を目指す遠隔協同セミナーの研究 | 算数・数学を教える教員を目指す学生や教員に対して,教育のグローバル化を目指すための国際遠隔協働セミナーを構築した。日独伯の学生調査によれば,生きるために解決すべき最重要課題は、地域の環境問題に関心が高かった。STEAM教育に結びつく学習内容は概算能力が必要なFermi推定を扱い,問題解決能力と創造的思考力を育成する活動と評価規準・方法を開発した。日独間でのクラウド型グローバルスタンダード高機能Web会議の課題は,複数の音声の伝送方式であった。このプロジェクトはグローバルな教員を輩出し,学生交流の基盤となった。IoTや生理反応データを扱うような創造的思考力の教材・評価の再検討が今後必要である。カリキュラム構成のための実地調査(教材・評価・制度)とWeb会議システムを検討した。1シンガポールNIEを中心に各機関を訪問しSTEAM教育の教材・評価方法・教育制度等について整理した。そこでは、京都府と岐阜県の教員とともに、中等教育段階の教育機関を中心に実態調査を行い、グローバルとグローカルそれぞれにあるべき内容を明らかにすることができた。2共同研究(カールスルーエ教育大学・ルーテル大学)を立ち上げ、学生の環境に対する意識調査を行い、必要な教材を検討する基礎研究を開始した。自国民が相手国にどのように分析をしているのかは勿論、自国をどのように評価しているのかをメタ認知の観点で行う方向で取り組んだ。3クラウド型グローバルスタンダード高機能Web会議Zoomを採用し、国際遠隔協働セミナーを立ち上げ、教材としてのFermi推定の有効性に関する基礎研究を行った。カールスルーエ教育大学の学生と岐阜大学の学生及び学校教員を交えて、Fermi推定を用いて概数・概形をイメージする教材を扱った。これらは「思考力・判断力・表現力」を養う取組になるだろうという方向性は認められたが、その評価規準について検討の必要性が示された。国際遠隔協働学習では、どのように学生間や教員間の考えや意思疎通をするために、表現方法について検討が必要となった。また国際交流によってどのようにまた算数・数学の教育内容に環境や災害問題などの社会問題をどのように取り入れることができるか等の糸口が見えた。日本数学的モデリングチャレンジ京都を教員が立ち上げ、教員主体の活動を開始した。今後、国際遠隔協働セミナーにおけるFermi推定の教材の在り方とセミナーの評価規準について、共同研究者とともに検討すべきという考えが一致した。高機能web会議Zoomの活用は教育効果を高めるであろうと期待できるが、さらに有効的な活用場面や方法とその基盤が整理されないと継続性が難しいと判断できる。音響・画像が満足できるのか、授業の求めに柔軟に対応できるかについて、高い評価を得られるように更に利便性の高い機器の開発とその整合性の研究を進める必要がある。学校教員をグローバルな教員として変容していくには、教員自身が海外の教育機関や教員との交流によって養われる効果が高まることは再確認できた。但しそれには費用や予算と教育機関の理解と教員の勤務時間等が問題として起こっている。また深層学習の領域やSTEAM教育の研究が各国かなり進んできており、算数・数学の教員養成という括りだけの研究では対応ができなくなるだろうと推測される。1平成28年8月20日「ひらめき★ときめきサイエンス(小学生)」,平成28年12月3日「大垣市わくわく算数アドベンチャー(小学生)」,平成29年2月12日「日本数学的モデリングチャレンジ(中高生対象)」において,数学的モデリングの教材を開発し,特にFermi推定を用いた概数・概形に関する学習活動について,活動行程の様子と解決レベルの到達度のルーブリックを同時に可視化する評価も開発した。これらを「思考力・判断力・表現力」の概要評価とすることにした。細部までの評価については、次の段階の研究が必要となった。2平成28年7月に共同研究の相手であるドイツ・カールスルーエ教育大学と岐阜大学教育学部との教員養成課程科目の授業において,学習者と授業者(遠隔地)との効果的な遠隔協同学習の形態について,新しいセミナー方式について構想を作り上げ,次年度の教育実践への礎とした。3昨年度に国際セミナーの実施は達成されているのが,さらにバーデン・ヴュルテンベルク州のレアルシューレ校を訪問し,問題解決学習の一つであるFermi推定教材の先行的な授業を見学した。そこで現地教員達と内容・方法・評価について議論を行い,有効な教育方法の知見を得た。42大学間及び学校教員との教育環境が整い始め,クラウド型グローバルスタンダード高機能Web会議の運用を活発化し,頻繁に教育実践における研究協議や打合せが達成可能となった。5日独伯3国(カールスルーエ教育大学・ルーテル大学)の教員養成系大学の学生の環境教育に対する意識調査の比較研究の成果から,地域や教育に対する学生の意識改革に向けての教育プログラムの必要性に着目した。さらに統解析の高度化とこれからの教員研修の在り方を考える上で,学業やキャリア教育に影響を及ぼす外的要因の比較,教育制度と教員研修の比較について調査・分析を進める調整を行った。国際遠隔協働セミナーを実施する環境・施設が両大学に最低限整い,数多くの打合せが達成できるようになった。その教育内容としてFermi推定による概数・概形を取り上げ,算数・数学以外の分野を盛り込んだ教材作成を行った上で、この学習活動の様子と解決レベルの到達度のルーブリックを同時に可視化できるシステムを開発した。人工知能で処理可能な評価の一つとなるであろうと考えている。 | KAKENHI-PROJECT-15K01063 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K01063 |
グローバルな算数・数学教員養成を目指す遠隔協同セミナーの研究 | さらに尚一層の評価システムの整理をしなければならないが、これらの評価規準を用いて、国内の小学校5,6年生対象の教育実践を行い、どのような活動が解決結果に有効に結びつくかの分析を行い,教材と評価が一体となる教育方法に結びつけた。さらに子どもの量認識の獲得を目指すSTEAM教育として,「速さ」の概念と子どもの直感を結びつける活動を取り上げ,グローバル教員養成に向けての次なる国際遠隔協働学習の教材になるような共同研究の基盤作りを始めた。また数学的モデリングの教育研究と日独伯3国(カールスルーエ教育大学・ルーテル大学)の学生の環境教育に対する意識調査の比較研究の成果をICME13(ハンブルク)において発表した。さらに統計分野と教員研修のチームを作り、従来の意識調査に加えながら、教員を目指す学生達の資質向上に影響を及ぼす外的要因と教師自身が志す未来像についての議論・分析を考えることにした。クラウド型グローバルスタンダード高機能web会議Zoomを用いて,2国間における国際遠隔協働セミナーの新方式を考案し実践しようとしたが、事前準備の議論不足となり繰り越し実施とした。1平成29年8月19日ひらめき☆ときめきサイエンス,平成30年2月11日数学的モデリングチャレンジ京都での教材開発・普及を目指し,平成29年8月4日京都府総合教育センターで高等学校数学科教育講座を開催した。2数学的モデリングとしてのFermi推定の教育実践の有効性とより細密でリアルタイムなデータの入手・管理を目指した。平成29年5月25日九州大学ラーニング・アナリティクスセンターで,ラーニングポートフォリオの有効活用の協議を行った。心拍数やストレス度等に加え,行動形態を時系列に捉えるデータへの知見を得た。Fermi推定教材の特徴を活かして創造的思考力の獲得を焦点化を検討し,Benesse CorporationとGlobal Proficiency Skills programの共同研究を開始した。平成29年8月28日10月10日にカールスルーエ教育大学へ赴き,学生交流を含めた協定を締結した。これによって,グローバルな算数数学教員養成と協同講義の環境整備のスタートを切り,創造的思考力の評価及び国際遠隔協同セミナーの方針も協議した。10月24日12月19日の5回に渉り,高機能web会議システムzoomによる国際遠隔セミナーを実施した。3地域独自の課題の実地調査のために,平成29年8月14日16日隠岐島,12月19日23日カンボジア,平成30年1月20日22日沖縄の教育機関の訪問し,資料収集を行った。4創造的思考力を体現した視える教材としてmicro:bitの活用検討を開始した。AI環境のSTEAM教育への活用に向けて,IoT&プログラミング学習とで協働し,問題解決の拡がりが期待できる。無線通信の評価方法の模索に繋がるとも考えら,今後の継続課題研究として提言する。5以上の取組みは,平成30年3月5日9日パダーボルンでの国際学会にて投稿発表を行った。算数・数学を教える教員を目指す学生や教員に対して,教育のグローバル化を目指すための国際遠隔協働セミナーを構築した。 | KAKENHI-PROJECT-15K01063 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K01063 |
グルタミン酸神経毒性における分子間相互作用の探索的PETイメージング研究 | グルタミン酸は興奮性の脳神経伝達物質であり、その強い興奮作用から神経毒性を呈することが知られている。受容体の過剰な刺激や神経システムの不均衡により引き起こされるグルタミン酸神経毒性は、結果として神経変性などの病態に進行することが分かってきている。本研究では、神経毒性が生じた際のグルタミン酸受容体やエンドカンナビノイシステム(eCS)の分子間相互作用を明らかにするために、グルタミン酸による急性神経毒性の代表的なモデルであるてんかんラットにおいて、PETイメージングにより生きたままの状態でグルタミン酸受容体やeCSにおける標的分子の変化を長期間観察することとする。グルタミン酸は興奮性の脳神経伝達物質であり、その強い興奮作用から神経毒性を呈することが知られている。受容体の過剰な刺激や神経システムの不均衡により引き起こされるグルタミン酸神経毒性は、結果として神経変性などの病態に進行することが分かってきている。本研究では、神経毒性が生じた際のグルタミン酸受容体やエンドカンナビノイシステム(eCS)の分子間相互作用を明らかにするために、グルタミン酸による急性神経毒性の代表的なモデルであるてんかんラットにおいて、PETイメージングにより生きたままの状態でグルタミン酸受容体やeCSにおける標的分子の変化を長期間観察することとする。 | KAKENHI-PROJECT-19K08240 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K08240 |
深部静脈血栓症予防に対する局所遺伝子導入の検討 | 深部静脈血栓症の発症予防には抗凝固療法などの対策が有効であるが、出血などの副作用により十分な対策が取れない場合も少なからず存在する。本研究では、組換えアデノウイルスを用いた遺伝子導入により静脈壁でフォンビルブランド因子切断酵素を持続的に高発現させ、局所での血栓形成を抑制することを検討した。この結果、局所への遺伝子導入により、ラットの静脈血栓モデル血管において目的蛋白の持続的発現が確認され、抗血栓効果の可能性も示唆された。深部静脈血栓症の発症予防には抗凝固療法などの対策が有効であるが、出血などの副作用により十分な対策が取れない場合も少なからず存在する。本研究では、組換えアデノウイルスを用いた遺伝子導入により静脈壁でフォンビルブランド因子切断酵素を持続的に高発現させ、局所での血栓形成を抑制することを検討した。この結果、局所への遺伝子導入により、ラットの静脈血栓モデル血管において目的蛋白の持続的発現が確認され、抗血栓効果の可能性も示唆された。<研究目的>深部静脈血栓症の発症予防には抗凝固療法や弾性ストッキング使用などの対策が有効であるが、出血性疾患の合併などにより十分な対策が取れない場合も少なからず存在し、肺塞栓症という重篤な合併症を来すことが危惧されている。本研究では、遺伝子導入により下肢静脈壁で抗血栓因子を持続的に高発現させ、局所での血栓形成を抑制することを検討する。遺伝子導入による局所発現は、必要な場所(下肢静脈)、および必要な時(周術期)でのみ効果を有するという点で、臨床的に非常に有効な手段と考えられる。<研究内容と結果>1)遺伝子組換えアデノウイルスの作製ADAMTS13の組換えアデノウイルスを作製した。ADAMTS13には数個の変異体の存在も知られており、通常の蛋白に加えてこれらの蛋白を発現する遺伝子の組換えアデノウイルスも新規に作成した。2)培養細胞への導入実験作製した遺伝子組換えベクターによる遺伝子導入効率を培養細胞にて検討した。培養細胞にはヒト血管平滑筋細胞を使用した。この細胞に対し、組換えアデノウイルスにて遺伝子を導入した結果、持続的に目的蛋白が発現することを確認し、培養液中での酵素活性の上昇を認めた。3)動物実験モデルの作製、遺伝子導入、評価静脈血栓モデルは、SDラットの下大静脈を露出・結紮して作製した。組換えアデノウイルスベクターを用いて同血管に遺伝子導入を行ったのち、蛋白発現量、酵素活性測定を行った。この結果遺伝子導入により静脈血栓モデル血管において目的蛋白の持続的発現を確認した。抗血栓効果を現在評価中である。<研究目的>深部静脈血栓症の発症予防には抗凝固療法や弾性ストッキング使用などの対策が有効であるが、出血性疾患の合併などにより十分な対策が取れない場合も少なからず存在し、肺塞栓症という重篤な合併症を来すことが危惧されている。本研究では、遺伝子導入により下肢静脈壁で抗血栓因子を持続的に高発現させ、局所での血栓形成を抑制することを検討する。遺伝子導入による局所発現は、必要な場所(下肢静脈)、および必要な時(周術期)でのみ効果を有するという点で、臨床的に非常に有効な手段と考えられる。<研究内容と結果>1、遺伝子組換えアデノウイルスの作製ADAMTS13の組換えアデノウイルスを作製した。ADAMTS13には数個の変異体の存在も知られており、通常の蛋白に加えてこれらの蛋白を発現する遺伝子の組換えアデノウイルスも新規に作成した。2、培養細胞への導入実験培養したヒト血管平滑筋細胞に対し、組換えアデノウイルスにて遺伝子を導入した結果、持続的に目的蛋白が発現することを確認し、培養液中での酵素活性の上昇を認めた。また、この細胞を用いて、生体外で血小板凝集反応への影響を検討すると、有意に血小板凝集を抑制する可能性が示唆された。3、動物実験モデルの作製、遺伝子導入、評価静脈血栓モデルは、SDラットの下大静脈を露出・結紮して作製した。組換えアデノウイルスベクターを用いて同血管に遺伝子導入を行ったのち、蛋白発現量、酵素活性測定を行った。この結果遺伝子導入により静脈血栓モデル血管において目的蛋白の持続的発現を確認した。また、抗血栓効果の可能性も示唆され、現在これらの結果を投稿準備中である。 | KAKENHI-PROJECT-20790901 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20790901 |
心筋特異的誘導型過剰発現マウスの作成によるRaclの心肥大および心不全への関与 | 胎児ラット心筋培養細胞を用いた実験系でアンジオテンシンIIなどの液性因子は心筋細胞内の情報伝達系を活性化することで心筋の構成蛋白発現の増加をもたらすことが知られているが、我々はRhoファミリーであるRac1が制御しているNADPHoxidase活性に着目した。NADPHoxidaseは近年、心血管系細胞の主な活性酸素供給源として多くの病態への関与が報告されているが、Rac1はこの酵素のひとつのコンポーネントとなり活性化を調節している。そこで、我々はRac1の役割を解析するため、siRNAを用いてRac1をノックダウンして解析を行った。胎児ラット心筋細胞にRac1に対するsiRNAをHVJ-envelopベクターに封入して遺伝子導入したところ、アンジオテンシンIIあるいはフェニレフリンによってもたらされる蛋白合成増加および心筋構成蛋白のmRNA増加が有意に抑制された。また、それと同様にNADPH oxidase活性もRac1のノックダウンによって有意に抑制されたことから、Rac1はNADPH oxidase活性を抑制することで細胞内活性酸素産生に関与していることおよびRac1の活性低下は細胞内活性酸素活性の抑制を促し、引いては心筋細胞肥大を抑制することが明らかとなった。また、血管内皮細胞においてもサイトカイン刺激でNAPDHoxidaseの活性化がもたらされることが確認され、一酸化窒素の産生抑制および活性化阻害作用を有することも分かった。このような培養細胞での結果を動物モデルで作成するために誘導型過剰発現マウスの作成を試みたが、タモキシフェンを腹腔内投与することによるCre蛋白の核内移行効率が悪く、未だに充分な過剰発現が得られていない。近年、エストロゲン受容体よりもグルココルチコイド受容体を用いたシステムの方が核移行効率が良いことも知られており、システムの改良が必要である可能性がある。もうひとつの原因としては、1つにはゲノムのエピジェネティックな修飾によってLoxPサイトへのCre蛋白のアクセスが困難になっていることが考えられた。胎児ラット心筋培養細胞を用いた実験系でアンジオテンシンIIなどの液性因子は心筋細胞内の情報伝達系を活性化することで心筋の構成蛋白発現の増加をもたらすことが知られているが、同時にRho阻害剤(C3 toxin)を添加するとその心筋細胞の肥大は抑制される。さらにRhoファミリーであるRhoA, Rac1およびCdc42のdominant-negativeを過剰発現させたときに、dominant-negative Rac1の過剰発現で最も抑制された。その機序として、Rac1が制御しているNADPHoxidase活性およびそれによって産生される細胞内の活性酸素に着目した。NADPHoxidaseは近年、心血管系細胞の主な活性酸素供給源として多くの病態への関与が報告されているが、Rac1はこの酵素のひとつのコンポーネントとなり活性化を調節している。そこで、我々はRac1の役割を解析するため、siRNAを用いてRac1をノックダウンして解析を行った。胎児ラット心筋細胞にRac1に対するsiRNAをHVJ-envelopベクターに封入して遺伝子導入したところ、24-28時間後でのRac1のmRNA発現はほぼ完全に抑制できた。このようにRac1をノックダウンした状態の細胞ではアンジオテンシンIIあるいはフェニレフリンによってもたらされる蛋白合成(Leucineの取り込み)増加および心筋構成蛋白(alpha-myosin heavy chainやatrial natriuretic factor)のmRNA増加が有意に抑制された。また、それと同様にNADPH oxidase活性(Lucigenin Cheminoluminescence)もRac1のノックダウンによって有意に抑制されたことから、Rac1はNADPH oxidase活性を抑制することで細胞内活性酸素産生に関与していることおよびRac1の活性低下は細胞内活性酸素活性の抑制を促し、引いては心筋細胞肥大を抑制することが明らかとなった。心筋特異的誘導型過剰発現マウスは現在作成中であり、また新しい知見を得るに至っていない。胎児ラット心筋培養細胞を用いた実験系でアンジオテンシンIIなどの液性因子は心筋細胞内の情報伝達系を活性化することで心筋の構成蛋白発現の増加をもたらすことが知られているが、我々はRhoファミリーであるRac1が制御しているNADPHoxidase活性に着目した。NADPHoxidaseは近年、心血管系細胞の主な活性酸素供給源として多くの病態への関与が報告されているが、Rac1はこの酵素のひとつのコンポーネントとなり活性化を調節している。そこで、我々はRac1の役割を解析するため、siRNAを用いてRac1をノックダウンして解析を行った。胎児ラット心筋細胞にRac1に対するsiRNAをHVJ-envelopベクターに封入して遺伝子導入したところ、アンジオテンシンIIあるいはフェニレフリンによってもたらされる蛋白合成増加および心筋構成蛋白のmRNA増加が有意に抑制された。また、それと同様にNADPH oxidase活性もRac1のノックダウンによって有意に抑制されたことから、Rac1はNADPH oxidase活性を抑制することで細胞内活性酸素産生に関与していることおよびRac1の活性低下は細胞内活性酸素活性の抑制を促し、引いては心筋細胞肥大を抑制することが明らかとなった。また、血管内皮細胞においてもサイトカイン刺激でNAPDHoxidaseの活性化がもたらされることが確認され、一酸化窒素の産生抑制および活性化阻害作用を有することも分かった。 | KAKENHI-PROJECT-16790419 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16790419 |
心筋特異的誘導型過剰発現マウスの作成によるRaclの心肥大および心不全への関与 | このような培養細胞での結果を動物モデルで作成するために誘導型過剰発現マウスの作成を試みたが、タモキシフェンを腹腔内投与することによるCre蛋白の核内移行効率が悪く、未だに充分な過剰発現が得られていない。近年、エストロゲン受容体よりもグルココルチコイド受容体を用いたシステムの方が核移行効率が良いことも知られており、システムの改良が必要である可能性がある。もうひとつの原因としては、1つにはゲノムのエピジェネティックな修飾によってLoxPサイトへのCre蛋白のアクセスが困難になっていることが考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-16790419 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16790419 |
広範囲脱分極波とCa waveによる中枢神経系の機能発生制御機構の光学的解析 | 我々は、中枢神経系の機能形成/構築過程を明らかにする目的で、膜電位感受性色素とニューロン電位活動の光学的多チャネル計測法を発生初期の鶏胚・ラット胚に適用し、個体発生に伴う神経回路網の機能的システム構築と、それに関わる受容体の機能的発現過程について解析を行っている。本年度に得られた主な成果は以下の2点である。(1)鶏胚において、脳神経・脊髄神経を介した外来性入力、あるいは中枢神経系内に内在する自発興奮活動によって、中枢神経系のほぼ全領域にわたって広範に伝播する脱分極波(depolarization wave)が誘発され、それに引き続き、中枢神経系全体に広がるCa waveが引き起こされることを発見した。このdepolarization waveは発生のある一時期に特異的に出現し、脊髄から大脳までと非常に広範囲に伝播すること、上位中枢から脊髄へ、逆に脊髄から上位中枢へといった非固定的な伝播パターンを示すことなど、これまでの報告には全く例がない新しい特性が明らかとなった。このdepolarization waveの伝搬にchemical synapseとgap junctionの両方が関与していることが示唆されたが、gap junctionの特異的なblockerがなく、その関与は確定的ではなかった。そこで、gap junctionの特異的なblockerと考えられるconnexin-mimetic peptideを新たに設計・合成し、このpeptideがgap junctionのblockerとして非常に効果的であることを示した。(2)ラット胚脳幹における三叉神経核の機能的形成過程について解析を行った。膜電位感受性色素で染色したE12-E16のラット胚脳幹において、眼神経(V1)、上顎神経(V2)、下顎神経(V3)を別々に刺激し、得られた光学的シグナルのマッピングから三叉神経主知覚核、脊髄路核を同定した。各神経刺激により活動電位はE13から誘発されたが、EPSPはE15になって始めて観察された。E14では、normal Ringer液中ではEPSPは観察されなかったが、外液からMgイオンを取り除くと小さなEPSPが誘発された。電子顕微鏡を用いた形態学的観察では、E16においても神経核に明らかなシナプスは観察されず、発生初期にはいわゆるシナプス構造がなくとも、神経伝達がなされていることが示唆された。さらに、3本の感覚神経の応答領域を比較した結果、これらの応答領域には、この時期すでにsomatotopyが存在することが示された。我々は、中枢神経系の機能形成/構築過程を明らかにする目的で、膜電位感受性色素とニューロン電位活動の光学的多チャネル計測法を発生初期の鶏胚・ラット胚に適用し、個体発生に伴う神経回路網の機能的システム構築と、それに関わる受容体の機能的発現過程について解析を行っている。本年度に得られた主な成果は以下の2点である。(1)鶏胚において、脳神経・脊髄神経を介した外来性入力、あるいは中枢神経系内に内在する自発興奮活動によって、中枢神経系のほぼ全領域にわたって広範に伝播する脱分極波(depolarization wave)が誘発され、それに引き続き、中枢神経系全体に広がるCa waveが引き起こされることを発見した。このdepolarization waveは発生のある一時期に特異的に出現し、脊髄から大脳までと非常に広範囲に伝播すること、上位中枢から脊髄へ、逆に脊髄から上位中枢へといった非固定的な伝播パターンを示すことなど、これまでの報告には全く例がない新しい特性が明らかとなった。このdepolarization waveの伝搬にchemical synapseとgap junctionの両方が関与していることが示唆されたが、gap junctionの特異的なblockerがなく、その関与は確定的ではなかった。そこで、gap junctionの特異的なblockerと考えられるconnexin-mimetic peptideを新たに設計・合成し、このpeptideがgap junctionのblockerとして非常に効果的であることを示した。(2)ラット胚脳幹における三叉神経核の機能的形成過程について解析を行った。膜電位感受性色素で染色したE12-E16のラット胚脳幹において、眼神経(V1)、上顎神経(V2)、下顎神経(V3)を別々に刺激し、得られた光学的シグナルのマッピングから三叉神経主知覚核、脊髄路核を同定した。各神経刺激により活動電位はE13から誘発されたが、EPSPはE15になって始めて観察された。E14では、normal Ringer液中ではEPSPは観察されなかったが、外液からMgイオンを取り除くと小さなEPSPが誘発された。電子顕微鏡を用いた形態学的観察では、E16においても神経核に明らかなシナプスは観察されず、発生初期にはいわゆるシナプス構造がなくとも、神経伝達がなされていることが示唆された。さらに、3本の感覚神経の応答領域を比較した結果、これらの応答領域には、この時期すでにsomatotopyが存在することが示された。 | KAKENHI-PROJECT-15016041 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15016041 |
地方における高卒就職者の「学校から仕事への移行」に関する教育社会学的研究 | 本研究の目的は、地方における高卒就職者の「学校から仕事への移行」および仕事を通じた「大人への移行」をローカルな社会状況や文化との関連から明らかにすることである。平成25年度は、地方の若者たちの移行過程に〈ローカリティ〉をとらえる理論と方法を精緻に検討した。加えて、9月から10月にかけて英国ニューカッスル大学地理学科に滞在し、訪問研究を行った。理論研究では、空間や場所と若者の社会生活との関連をとらえる英語圏人文地理学の視点と、ローカリティを社会的達成とみなす文化人類学者アルジュン・アパデュライの視点とを接続させる試みを行った。アパデュライは今日のローカリティがグローバルに生産される局面に着目しているが、その認識論において、ローカリティを身体化した「ローカルな主体」とかれらによる時間と空間のローカル化の実践を重要視している。本研究ではこの認識論を援用し、職業移行をはじめとする若者の「大人になる」経験を、ローカルな主体として自己を生産しつつ同時に「地元」の生産という空間のローカル化をも達成する過程として理解できることを明らかにした。ニューカッスル大学での訪問研究では、現地研究者の協力を得ながら「若者の地理学」関連の文献を収集し、研究動向を調査した。その結果、イギリスにおける人文地理学ではイングランド南部からスコットランドに至るまでさまざまな地域で若者調査が行われており、地域の歴史や社会状況を考慮した分析が蓄積されていることを明らかにした。一方、それらの研究では地理的・空間的概念が分析上強調されているものの、階級やアイデンティティなどをめぐる社会学的洞察が不十分である点が限界として指摘できた。以上の活動から、本研究では若者の経験をめぐる社会学的なアプローチと地理学的なアプローチを接合した「社会=空間」という概念を構想し、分析上の具体的な課題を示すことができた。(抄録なし)本年度は、地方の若者たちによる「学校から仕事へ」および仕事を中心とした「大人」への移行の過程を明らかにするため、研究方法に関する理論的な検討および地方郡部でのフィールドワークにもとづく事例分析を行った。研究方法について、若者たちの移行経験を地域特性に応じて把握するため、以下2つの観点から調査および記述二解釈上の方法をめぐる理論的な考察をすすめた。第一に、グローバリゼーション論における「文化」に焦点を当てた議論に着目し「ローカリティ」の概念を明確化した。第二に、英語圏人文地理学の若者文化研究における視座を参考にしつつ、若者たちの移行経験にローカリティを見出すための認識枠組みを提示した。これらの作業から、若者たちが「地元」という空間的なローカリティとの間に相互作用を経験する過程をとらえる、本研究の理論枠組みを設定した。事例分析では、以下2つの質的調査にもとづく記述=解釈を行った。「若者調査」では、調査協力者たちの離転職をめぐる経験に着目し、無計画な早期離職や行き当たりばったりの再就職などを「地元」流のキャリア形成をめぐる物語として組織化するかれらの解釈実践のプロセスを明らかにした。「専門高校調査」では、生徒指導の内容と方法をめぐる学科間の分化が、学校ランクや地域的な新規高卒労働市場など学校をとりまくローカルな社会的文脈に対する教師の認識にもとづいていることを明らかにした。総じて、若者たちが経験する「移行」の具体的な過程と意味に地域=空間的な視座からアプローチする方法と、調査協力者たちの移行経験(キャリア形成や職業的社会化のプロセスなど)が「地元」のローカリティと相互作用的に構築されていることが、明らかになった。これは、従来の移行研究が十分に説明してこなかったことであるが、それぞれの若者たちに「生きられた」移行過程と現代の社会変容を理解するための重要な論点であろう。本研究の目的は、地方における高卒就職者の「学校から仕事への移行」および仕事を通じた「大人への移行」をローカルな社会状況や文化との関連から明らかにすることである。平成25年度は、地方の若者たちの移行過程に〈ローカリティ〉をとらえる理論と方法を精緻に検討した。加えて、9月から10月にかけて英国ニューカッスル大学地理学科に滞在し、訪問研究を行った。理論研究では、空間や場所と若者の社会生活との関連をとらえる英語圏人文地理学の視点と、ローカリティを社会的達成とみなす文化人類学者アルジュン・アパデュライの視点とを接続させる試みを行った。アパデュライは今日のローカリティがグローバルに生産される局面に着目しているが、その認識論において、ローカリティを身体化した「ローカルな主体」とかれらによる時間と空間のローカル化の実践を重要視している。本研究ではこの認識論を援用し、職業移行をはじめとする若者の「大人になる」経験を、ローカルな主体として自己を生産しつつ同時に「地元」の生産という空間のローカル化をも達成する過程として理解できることを明らかにした。ニューカッスル大学での訪問研究では、現地研究者の協力を得ながら「若者の地理学」関連の文献を収集し、研究動向を調査した。その結果、イギリスにおける人文地理学ではイングランド南部からスコットランドに至るまでさまざまな地域で若者調査が行われており、地域の歴史や社会状況を考慮した分析が蓄積されていることを明らかにした。一方、それらの研究では地理的・空間的概念が分析上強調されているものの、階級やアイデンティティなどをめぐる社会学的洞察が不十分である点が限界として指摘できた。以上の活動から、本研究では若者の経験をめぐる社会学的なアプローチと地理学的なアプローチを接合した「社会=空間」という概念を構想し、分析上の具体的な課題を示すことができた。 | KAKENHI-PROJECT-12J07183 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J07183 |
地方における高卒就職者の「学校から仕事への移行」に関する教育社会学的研究 | 平成24年度は、当初計画していた事例分析に加えて理論的考察にも着手することができた。したがって、本研究の理論的基盤や、それにもとづく各分析事例の位置づけなどがある程度定まり、研究全体の見通しと結論が当初の計画よりも早期に明確になった。平成25年度には、平成24年度中に検討した理論について、さらに多角的かつ精緻な検討をすすめる必要がある。とりわけ、日本の教育社会学研究に空間論的な視座を導入するために、英語圏人文地理学領域における若者文化研究の理論と実証的知見をより一層精緻に検討する。具体的には、日本の社会学や人文地理学の研究動向とグローバリゼーション論を参照しながら、より広い視点で上記若者研究の意義を問い直す作業を行う。加えて、英国ニューカッスル大学に数ヶ月にわたって滞在し、資料・文献収集や研究会への参加、フィールドワーク、現地研究者との共同研究の打ち合わせ等を含む、訪問研究を行う予定である。(抄録なし) | KAKENHI-PROJECT-12J07183 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J07183 |
国際法における国家管轄権概念と域外適用 | 本研究は、規律管轄権の域外行使に関する枠組みがいかなるものかを明らかにしようとするものである。そしてこの研究は、「管轄権構造全体の枠組み」と「域外行使を一般的に禁止する規則の存否」という二段階から構成され、一年目である2017年度は、その第一段階、さらにその中でも、「管轄権と絶対的主権概念との関係」についての検討を主に行うことを予定していた。こうした研究計画に基づき、2017年度は、以下のように研究を実施した。まず、管轄権と絶対的主権概念との関係について、19世紀後半に焦点を当てて学説、とりわけドイツの学説の検討を行った。その結果、絶対的主権概念が唱えられていたというこの時代に対する一般的な理解とは異なり、国際法と主権概念との整合性を図ろうとする学説が存在していたことが明らかとなった。また、2017年度は、第二段階の検討である、「域外行使を一般的に禁止する規則の存否」についても検討の指針を得ることができた。域外行使を一般的に禁止する規則の存否についての検討は、管轄権概念の領域的性格を問うものであるが、これに関して、近年の学説においては、領域性から脱却して新たな原則を見出すというよりはむしろ、管轄権の領域的性格を認めつつそれをどのように再構成するかという議論がなされる傾向にあることが分かった。域外行使を一般的に禁止する規則の存否を今後検討していくうえで、単なる「存否」の問題に限られず、その背景を含めた検討が必要であることが明らかとなり、今後の検討を行う上での重要な指針が得られた。なお、本研究の二段階からなる検討枠組み自体については、世界法若手研究会において報告を行った。また、予定通り、論文の公表に向けての準備も行っている。おおむね当初の予定通り、二段階から構成される本研究の第一段階について、研究を進めることができた。ただし、管轄権概念自体が主権との関係でどのようにとらえられてきたかについては、引き続き検討が必要である。他方で、研究計画の時点では2年度目以降に検討することを予定していた第二段階について重要な視座を得られたことは、当初の予定にはなかった進展である。本年度得られた視点に基づき、「管轄権構造全体の枠組み」、とりわけ主権概念と管轄権概念の関係について、学説の検討を中心に、検討を進める予定である。「域外行使を一般的に禁止する規則の存否」についても、本年度得られた視点に基づき、国家実行にも目を配りながら検討を進める。また同時に、論文の公表に向けて準備を行う予定である。本研究は、規律管轄権の域外行使に関する枠組みがいかなるものかを明らかにしようとするものである。そしてこの研究は、「管轄権構造全体の枠組み」と「域外行使を一般的に禁止する規則の存否」という二段階から構成され、一年目である2017年度は、その第一段階、さらにその中でも、「管轄権と絶対的主権概念との関係」についての検討を主に行うことを予定していた。こうした研究計画に基づき、2017年度は、以下のように研究を実施した。まず、管轄権と絶対的主権概念との関係について、19世紀後半に焦点を当てて学説、とりわけドイツの学説の検討を行った。その結果、絶対的主権概念が唱えられていたというこの時代に対する一般的な理解とは異なり、国際法と主権概念との整合性を図ろうとする学説が存在していたことが明らかとなった。また、2017年度は、第二段階の検討である、「域外行使を一般的に禁止する規則の存否」についても検討の指針を得ることができた。域外行使を一般的に禁止する規則の存否についての検討は、管轄権概念の領域的性格を問うものであるが、これに関して、近年の学説においては、領域性から脱却して新たな原則を見出すというよりはむしろ、管轄権の領域的性格を認めつつそれをどのように再構成するかという議論がなされる傾向にあることが分かった。域外行使を一般的に禁止する規則の存否を今後検討していくうえで、単なる「存否」の問題に限られず、その背景を含めた検討が必要であることが明らかとなり、今後の検討を行う上での重要な指針が得られた。なお、本研究の二段階からなる検討枠組み自体については、世界法若手研究会において報告を行った。また、予定通り、論文の公表に向けての準備も行っている。おおむね当初の予定通り、二段階から構成される本研究の第一段階について、研究を進めることができた。ただし、管轄権概念自体が主権との関係でどのようにとらえられてきたかについては、引き続き検討が必要である。他方で、研究計画の時点では2年度目以降に検討することを予定していた第二段階について重要な視座を得られたことは、当初の予定にはなかった進展である。本年度得られた視点に基づき、「管轄権構造全体の枠組み」、とりわけ主権概念と管轄権概念の関係について、学説の検討を中心に、検討を進める予定である。「域外行使を一般的に禁止する規則の存否」についても、本年度得られた視点に基づき、国家実行にも目を配りながら検討を進める。また同時に、論文の公表に向けて準備を行う予定である。 | KAKENHI-PROJECT-17J05289 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J05289 |
インフルエンザウイルスと細菌重複感染による重症肺炎マウスモデルにおける宿主側重症化因子の同定と制御 | インフルエンザ肺炎に代表される急性肺障害(ALI/ARDS)では、気道上皮および免疫細胞のアポトーシスの病態への関与が指摘されている.インフルエンザウイルス感染症においてもアポトーシス関連酵素(カスパーゼなど)が活性化されることが報告されており,インフルエンザウイルスと肺炎球菌を重複感染させた重症肺炎モデルでは特に活性化していることが予想される.我々はこの重複感染マウスモデルの摘出肺からRNAを抽出し,cDNAライブラリーを作成した後,酵母を用いたカスパーゼの活性化因子の同定システムを用いて、caspase-8,7を活性化する因分のスクリーニングを行った.その結果,既知の分子ではあるものの,アポトーシスに重要な因子であるFas, FADD, caspase-2, caspase-3, caspase-7, caspase-8などの分子がクローニングされた.これらのin vivoでの活性を確認するため,上記重複感染マウスとそれぞれの単独感染マウスの肺を用いて,カスパーゼの発現量や活性の測定,TUNEL法によるアポトーシス細胞の検出などを行った.その結果,インフルエンザウイルス,肺炎球菌それぞれの単独感染において,時間経過とともに,effector caspaseの一つであるcaspase-3や,その上流に位置する外因性のinisiator caspaseであるcaspase-8の開裂,活性化と,TUNEL陽性細胞の増加を認めた.更に重複感染マウスでは,単独感染と比較し肺炎球菌感染後早期にこれらの因子の強い発現,活性化が認められ,インフルエンザ関連細菌性肺炎の重症化にアポトーシス関連因子の強い発現が関与していることが示唆された.現在,病態との関連性,治療のターゲットとなりうるか等検討するため,各種カスパーゼ阻害剤を用いて更に検討を行っており,siRNA,アンタゴニスト抗体などを使用し,詳細な検討を行う予定としている.現時点では本研究と同様の実験は報告されておらず,今後のインフルェンザ関連重症細菌性肺炎や類似する致死性の重症肺炎の病態解析や治療の進歩に本研究が大いに貢献するものと考えられる.インフルエンザ肺炎に代表される急性肺障害(ALI/ARDS)では、気道上皮および免疫細胞のアポトーシスの病態への関与が指摘されている.インフルエンザウイルス感染症においてもアポトーシス関連酵素(カスパーゼなど)が活性化されることが報告されており,インフルエンザウイルスと肺炎球菌を重複感染させた重症肺炎モデルでは特に活性化していることが予想される.我々はこの重複感染マウスモデルの摘出肺からRNAを抽出し,cDNAライブラリーを作成した後,酵母を用いたカスパーゼの活性化因子の同定システムを用いて、caspase-8,7を活性化する因分のスクリーニングを行った.その結果,既知の分子ではあるものの,アポトーシスに重要な因子であるFas, FADD, caspase-2, caspase-3, caspase-7, caspase-8などの分子がクローニングされた.これらのin vivoでの活性を確認するため,上記重複感染マウスとそれぞれの単独感染マウスの肺を用いて,カスパーゼの発現量や活性の測定,TUNEL法によるアポトーシス細胞の検出などを行った.その結果,インフルエンザウイルス,肺炎球菌それぞれの単独感染において,時間経過とともに,effector caspaseの一つであるcaspase-3や,その上流に位置する外因性のinisiator caspaseであるcaspase-8の開裂,活性化と,TUNEL陽性細胞の増加を認めた.更に重複感染マウスでは,単独感染と比較し肺炎球菌感染後早期にこれらの因子の強い発現,活性化が認められ,インフルエンザ関連細菌性肺炎の重症化にアポトーシス関連因子の強い発現が関与していることが示唆された.現在,病態との関連性,治療のターゲットとなりうるか等検討するため,各種カスパーゼ阻害剤を用いて更に検討を行っており,siRNA,アンタゴニスト抗体などを使用し,詳細な検討を行う予定としている.現時点では本研究と同様の実験は報告されておらず,今後のインフルェンザ関連重症細菌性肺炎や類似する致死性の重症肺炎の病態解析や治療の進歩に本研究が大いに貢献するものと考えられる. | KAKENHI-PROJECT-09J56521 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J56521 |
Zr基バルクアモルファス合金の疲労破壊における発光現象機構の解明 | 研究代表者は、Zr基バルクアモルファス合金の疲労特性及び強変形部における結晶化等、このアモルファス合金に特有な破壊現象を解明してきた。本研究では、その過程で発見した同合金の破壊時の発光現象機構の解明を目的として、同合金のせん断試験および疲労試験を行い、デジタル画像相関(DIC)法による破断時のひずみ分布の測定、発光現象起点の同定を行った。その結果、せん断破壊の起点のせん断ひずみは3.5%に達し、最大ひずみが生じた箇所から発光現象が開始、せん断破壊の進行とともに破面のシェアリップ部の摩擦により順次発光が生じたものと推察された研究代表者は、Zr基バルクアモルファス合金の疲労特性及び強変形部における結晶化等、このアモルファス合金に特有な破壊現象を解明してきた。本研究では、その過程で発見した同合金の破壊時の発光現象機構の解明を目的として、同合金のせん断試験および疲労試験を行い、デジタル画像相関(DIC)法による破断時のひずみ分布の測定、発光現象起点の同定を行った。その結果、せん断破壊の起点のせん断ひずみは3.5%に達し、最大ひずみが生じた箇所から発光現象が開始、せん断破壊の進行とともに破面のシェアリップ部の摩擦により順次発光が生じたものと推察された本研究では、Zr基バルクアモルファス合金の疲労の基本特性および疲労き裂進展機構を調べるとともに、疲労き裂近傍や破面等の強変形部における結晶化の機構およびき裂面からの発光機構等、このバルクアモルファス合金に特有な新しい破壊挙動および破壊機構を解明することを目的とする。本年度の主な成果を項目ごとに以下にまとめる。(1)バルクアモルファス合金の疲労の基本的特性および疲労き裂進展機構の解明き裂がランダムに配列した原子集団の中の最弱部を選択しつつ進展するため、分岐、屈曲、停留を繰返し、試験片表面と内部で進展経路が異なる複雑なき裂進展挙動を示した。このため、き裂進展速度da/dNと応力拡大係数幅ΔKの関係、log(da/dN)-log(ΔK)線図は、破壊力学でよく知られた逆S字型曲線で表されるのではなく、試験片ごとに異なるジグザグ状の曲線を示した。また、き裂開閉口現象は応力比R≦0.15で観察されたが、R≧0.2では観察されなかった。(2)疲労き裂近傍や破面等の強変形部における変形誘起結晶化の解明製造時に故意に結晶化させた素材部分のX線回折プロファイルと変形により結晶化した場合のそれとを比較した。前者の場合、アモルファス合金に特徴的に見られるハローパターンは見られず、結晶形を表す回折ピークだけが観察された。他方、後者の場合には、ハローパターンに結晶化を起したと思われる小領域部分の回折ピークが重畳していた。以上より、破面上の回折ピークは製造時の結晶化によるものではなく、き裂進展に伴う強変形によって生じた結晶化によるものと推察された。これは、荷重繰返しにより原子集団の協同的なすべりによって原子配列に規則性が生まれ、ストライエーション状模様が形成されるとともに、アモルファス相のZr2Cuへのある方位に偏った部分的な結晶化が起こったことを示唆するものと推察された。(3)疲労き裂面からの発光機構の解明高速度カメラを用いて試験片の破断挙動を観察した結果、き裂の複数箇所から火花の発生が観察された。破断直前の火花の観察は再現性良く観察されたが、き裂に沿って多数箇所の発生が観察される場合や、少数箇所の発生しか観察されない場合もあった。また、火花の発生量についても多量の場合や少量しかない場合など様々で、火花の発生形態は一様ではなく、大きなばらつきが見られた。本研究では、Zr基バルクアモルファス合金の疲労の基本特性および疲労き裂進展機構を調べるとともに疲労き裂近傍や破面等の強変形部における結晶化の機構およびき裂面からの発光機構等、このバルクアモルファス合金に特有な新しい破壊挙動および破壊機構解明することを目的とする。本年度の主な成果を項目ごとに以下にまとめる。(1)バルクアモルファス合金の疲労の基本的特性および疲労き裂進展機構の解明き裂がランダムに配列した原子集団の中の最弱部を選択しつつ進展するため、分岐、屈曲、停留を繰り返し、試験片表面と内部で進路経路が異なる複雑なき裂進展挙動を示した。このため、き裂進展速度da/dNと応力拡大係数幅ΔKの関係、log(da/dN)-log(ΔK)線図は、破壊力学でよく知られた逆S字型曲線で表されるのではなく、試験片ごとに異なるジグザグ状の曲線を示した。また、き裂開閉口現象は応力比R≦0.15で観察されたが、R≧0.2で観察されなかった。(2)疲労き裂近傍や破面等の強変形部における変形部における変形誘起結晶化の解明製造時に故意に結晶化させた素材部分のX線回折プロファイルと変形により結晶化した場合のそれと比較した。前者の場合、アモルファス合金に見られるハローパターンは見られず、結晶形を表す回折ピークだけが観察されたも他方、後者の場合には、ハローパターンに結晶化を起こしたと思われる小領域部分の回折ピークが重畳していた。以上より、破面上の回折ピークは製造時の結晶化によるものではなく、き裂進展に伴う強変形によって生じた結晶化によるものと推察された。(3)疲労き裂面からの発光機構の解明 | KAKENHI-PROJECT-22560090 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22560090 |
Zr基バルクアモルファス合金の疲労破壊における発光現象機構の解明 | 高速度カメラを用いて試験片の破談挙動を観察した結果、き裂の複数個所から花火の発生が見られた。破断直前の火花の観察は再現性良く観察されたが、き裂に沿って多数箇所の発生が観察される場合や、少数箇所の発生しか観察されない場合もあった。また、火花の発生量についても大きなばらつきがあった。本研究では、Zr基バルクアモルファス合金の疲労破壊及びき裂進展機構を調べるとともに破面等の強変形部における結晶化の機構及び破面からの発光機構等、バルクアモルファス合金に特有な新しい破壊挙動及び機構の解明を目的とする。本年度の主な成果を項目ごとに以下にまとめる。(1)アモルファス合金の疲労破壊及びき裂進展機構の解明:ランダムに配列した最弱部をぬって疲労き裂が進展するため、分岐、屈曲、停留を繰り返し、き裂進展速度da/dNと応力拡大係数幅△Kの関係は、試験片ごとに異なる不規則な挙動を示した。また、き裂開閉口現象は応力比R<0.2で起った。(2)疲労破面等の強変形部における変形誘起結晶化の解明:2-1) X線回折(XRD)法:人工結晶化材及び疲労破壊材のXRD測定の結果、人工結晶化材では複数のピークが検出されたのに対して、疲労によるピークは常に単独で観察された。このことから、疲労破面上のピークは製造時の結晶化によるものではなく、き裂進展に伴う強変形による結晶化によるものと推察された。2-2)電子線後方散乱(EBSD)法:EBSD法による結晶方位測定により、人工結晶化材ではZr2Al3とZr2Cuの混相が発生するのに対し、疲労破面上では特定の方位に偏ったZr2Cuの結晶のみが局所的に形成されることが分かった。(3)疲労破面からの発光機構の解明:本バルクアモルファス材のせん断試験を行い、DIC(デジタル画像相関)法による破断時のひずみ分布の算出、高速度カメラ撮影による発光現象発生場所の同定を行った。その結果、せん断破壊する直前の破壊起点におけるせん断ひずみは33.5%に達し、最大せん断ひずみが生じた箇所から発光現象が開始。せん断破壊の進行とともに破面から順次発光が伝播することが分かった。以上より、疲労破面のシェアリップ部の摩擦により発光が生じたものと推察された。発光現象の観察等に関しては予定通り研究が進められた。この意味で、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。しかし、これまでの研究によって、発光機構の現象論的説明をすることはできたが、その機構の物理モデルの開発までには至っていない。今後の研究の重要な方向性の1つとして、発光現象を再現できる物理モデルの開発があげられる。24年度が最終年度であるため、記入しない。今後は、破壊に伴う発光現象の物理モデルの構築を図る。現時点では、相対する破面間のすべり摩擦により発光が起こると考えているが、今後の研究でこの発火機構の確認を行うことが最重要事項として、研究を進めていく計画である。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22560090 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22560090 |
GPS情報の活用による公的統計の新たな展開可能性に関する多角的研究 | 本研究によって、位置情報が調査結果の地図による可視化だけでなく、位置情報を基盤情報とする各種の統計情報、行政情報といった様々な情報源のデータを統合するキー情報となりうること、位置情報を媒介した調査結果レコードの事後的な拡張を行うことによって、公的統計が潜在的に持つ情報の情報価値を飛躍的に高めることができることを明らかにすることができた。このため、海外の政府統計機関が位置情報の取得に具体的に取り組みつつある事実も明らかにすることができた。当初の研究計画に従い、平成24年度は、(a)前年度に引き続いて各国統計機関が保有するレジスターにおけるGPS情報の整備ならびに利活用の実態把握、(b)タウンページデータにジェオコーディングによるGPS情報を付与したデータベースの構築、(c)(b)で構築したデータセットの空間集計による事業所の地域集積度の具体的な計測を行った。〔項番(a)〕カナダ、フランス等海外の政府統計機関の統計地理情報担当者等とのインタビューその他による情報収集を行なった結果、1各国統計局ではレジスターに位置情報をすでに装備済であること、2小地域あるいは推計による位置情報の付与が行われていること、3利用面では統計の結果表章の手段として捉えられていることが明らかになった。〔項番(b)〕タウンページデータを用いてGPS情報を装備した事業所データベース(DB)を構築した。このDBは、経度情報をキー変数として既存のあるいは今後作成する場所的特性変数を接合することのできるリレーショナル型データ形式のDBである。〔項番(c)〕項番(b)が与える存続事業所に関する位置情報付のデータレコードを用いて、八王子市域を境域とした事業所の集積状況を近隣立地集積度I、IIとして与え、近隣地域の事業所集積状況を加味した集積指標を提案した。なお、分析結果についてはGISシステム学会で報告するとともに、現在、研究代表者がその構築に直接関係している総務省統計局におけるビジネス・レジスター構築プロジェクトの作業部会でも報告し、GPS情報のレジスターへの装備が統計の情報価値を飛躍的に拡張できることを担当者に説明した。以上に加え、地方自治体でもヒアリングを実施し、位置情報のデータベース構築機能についての担当者との意見交換を行ったほか、それに関する基礎的・理論的研究も行った。本研究によって、位置情報が調査結果の地図による可視化だけでなく、位置情報を基盤情報とする各種の統計情報、行政情報といった様々な情報源のデータを統合するキー情報となりうること、位置情報を媒介した調査結果レコードの事後的な拡張を行うことによって、公的統計が潜在的に持つ情報の情報価値を飛躍的に高めることができることを明らかにすることができた。このため、海外の政府統計機関が位置情報の取得に具体的に取り組みつつある事実も明らかにすることができた。当初の研究計画に従い、平成23年度は、(1)各国統計機関におけるGPS情報の整備・利活用の実態把握、(2)GPS情報の観測誤差の計測、(3)アドレスマッチングの実情を中心に研究を展開した。昨年度までの準備的研究と今年度実施した海外での現地調査とから、フィンランドとアメリカ合衆国がGPS情報を直接取得しており、またカナダとフランスでは、街路の両端点のGPS情報に基づき各建物のそれを推計する方法で位置情報を取得している。一方、位置情報の統計活用面では、各国とも単なる統計の表章方法にとどまっており、位置情報による統計個票情報の拡張という本研究のような観点からの統計の展開はないことが明らかになった〔以上、項番(1)〕。今年度の研究で実際に種々の計測機器による観測精度の比較分析を行った。その結果、現在のGPSの観測精度がすでに「最後の10m問題」を克服し、建物あるいは事業所等の場所的識別に十分対応可能であることを明らかにすることができた〔以上、項番(2)〕。種々のマッチングサービスによるアドレスマッチングの比較を試み、既存のマッチングサービスの件数制約や住所の枝番号までの対応の有無などの事実の確認を行った〔以上、項番(3)〕。また、研究成果については、各研究者が論文や学会等での報告により社会還元に努めたほか、本プロジェクトの拠点施設である法政大学日本統計研究所から、本年度の研究成果の一部を報告書Exploring Potential of Individual Statistical Records(『研究所報』第41号)として公刊した。なお本書はhttps://www.hosei.ac.jp/toukei/shuppan/mokuji41.htmlとしてもウエブ公開しており、海外の政府統計機関野党系研究者に対してもまさに萌芽的研究として情報発信を行った。本研究は、統計個体情報への位置情報(GPS)の付加による統計の新たな展開可能性の開拓というまさに挑戦的課題をもって企画したものである。その後、3.11の東日本大震災を契機に、統計を用いた被害評価推計や罹災マップ等の情報を政府が提供するなど、統計における空間情報が有する情報価値の重要性に広く社会的関心が向けられるようになり、本研究は、社会的にも注目されている。本研究の開始年次にあたる平成23年度には、各研究班はそれぞれの研究課題に取り組んできた。その成果は、論文や学会等での報告で積極的に開示してきた。特に、この間の多面的な研究成果の一部は英文の報告書Exploring Potential of Individual Statistical Recordsとしても刊行した。このことは、統計個票情報や行政情報への位置情報の付加が、それを介して各種の情報をレイヤーとして相互に統合(integrate)することで統計の潜在能力を飛躍的に高めるとの問題提起については、政府統計の新たな展開可能性を示唆するものとして、内外の政府統計機関や研究者から注目されている。 | KAKENHI-PROJECT-23653060 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23653060 |
GPS情報の活用による公的統計の新たな展開可能性に関する多角的研究 | 平成24年度には、本研究の主要な課題の一つとして、具体的に位置情報を持つデータベースの具体的な構築を行うことにしているが、平成23年度には、その骨格情報となるタウンページデータのクリーニング作業という次年度に向けての作業にも着手している。平成23年度には、研究プロジェクト全体で位置情報による調査票情報の情報価値の拡張可能性に関する基本的問題意識を共有しつつ、各研究班がそれぞれ分担して海外諸国における位置情報の統計利用の実態に関する調査をはじめ、位置情報取得の情報技術的側面や観測結果の精度に関する検証、調査個票の情報特性の研究といった諸課題に取り組んできた。それらの中で特に位置情報による調査票情報の情報価値の拡張可能性に関する方法論的検討結果は、法政大学日本統計研究所の『研究所報』No.41として刊行したExploring Potential of Individual StatisticalRecordsに集約されている。平成24年度は、これまで実施してきた海外調査の対象国を広げ、一層包括的にその実態把握を行うとともに、昨年度までの方法論的研究成果を踏まえ、情報価値の拡張可能性についての具体的展開に取り組む予定である。研究内容としては、まず緯度経度情報を変数として持つ事業所を対象とするデータベースを八王子市域をフィールドとして実際に構築し、各レコードに位置情報を介して様々な地域特性情報を変数として付加する。このようにして構築したデータに基づき、事業所の業種別、立地特性別の新規参入や退出といった動態分析を行う。なお、これは、OECD統計局が、近年、国際プロジェクトとして推進している企業動態分析(business demography)とも内容的には整合的なものであり、ビジネス・レジスターが整備途上にある日本からのこの分野での情報発信は、国際的にも注目されている。3月に計画していた海外調査が、先方の業務多忙により平成24年度に延期されたため、当初予算について、翌年度への繰り越しとなった。平成24年度は、次の3つの分野での研究に取り組む予定である。まず、海外におけるGPS情報の公的統計への活用について平成23年度に引き続き現地調査による実態把握を行うとともに、具体的な利用実績を持つ海外の研究者、政府統計職員との研究成果の交流に取り組む。次に、平成23年度においてすでに準備的作業に部分的に取り組んできた位置情報を変数として持つ事業所母集団データベースの構築作業を行う。そして第三に、構築したデータを用いて、事業所の動態分析を試みる。事業所データベースの構築には、NTTのタウンページ(職業別電話帳)ファイルの使用を予定している。このファイルには住所情報や業種情報を持ち、アドレスマッチングを用いて位置情報を取得でき、業種別分析も可能である。その反面で、すでに使用されなくなった電話番号も掲載しているという問題も持っている。このため、データベースの構築に当たっては、まずクリーニングした各年次ベースでのタウンページファイルを作成し、それから差分情報を作成する。 | KAKENHI-PROJECT-23653060 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23653060 |
末梢B細胞におけるV(D)J遺伝子再構成の高親和性抗体レパトア形成への寄与 | B細胞レパトアの限定されたマウスを用いて、抗体の親和性成熟機構を解析した。抗体の親和性成熟は、胚中心内で起こる高頻度の体細胞変異によるB細胞の多様化と、高親和性クローンの正の選択により起こるとされている。方、我々は免疫したマウスのリンパ節B細胞においてRAG-1,RAG-2の発現が上昇し、末梢でV(D)J再構成(receptor revision)が起こることを見出し、その生理的意義を追求してきた。本研究において、B細胞レパトアの限定されたNP特異的VH遺伝子ノックインマウス(QBF1)を用いてreceptor revisionが抗体の親和性成熟に寄与しているか否か、について検討した。NPよりも低親和性のハプテンであるpNPで免疫したところ、高親和性抗pNPIgGが誘導され、その大部分はλ鎖を有していた。このλ鎖陽性抗体はリンパ節内で起こった新たなλ鎖の再構成に依存して生成したことが以下の結果より強く示唆される。1)λ鎖陽性B細胞を除去したQBF1脾臓細胞をRAG-1(-/-)マウスに移入した系で、pNP免疫後、脾臓B細胞でRAG発現が上昇し、λ鎖組換えの中間体であるJλ1-RSS breakが検出される。2)MG発現を抑制すると、λ鎖陽性抗体の産生が減少し、抗pNPIgGの親和性が低下する。これらの結果は、末梢で免疫後にL鎖のreceptor revisionが起こり、高親和性λ鎖陽性クローンの生成に寄与し得ることを示している。最近、我々は末梢B細胞が、特に胚中心(GC, germinal center)においてRAG-1,RAG-2遺伝子を発現し、再びV(D)J再構成を行うことが明らかにした。本研究では、末梢リンパ組織で発現したRAGの生理的役割は何かについて解析した。通常、抗体の親和性成熟は体細胞変異によるBCRの多様化と高親和性クローンの選択により起こるとされている。抗NP抗体のH鎖VDJ(VHT)をノックインしたマウスでも、15-20%の末梢B細胞はVHTが他の内因性VHに置き換わっている。このVHT陰性B細胞のうちλ鎖を持っている細胞は更に少なく全体の2%以下である。このマウスを、p-nitrophenyl(pNP)ハプテンで免疫すると、VHTを使っていない抗pNPIgG抗体が主として産生され、高親和性抗体の大部分がλ鎖陽性抗体であることが分かった。λ鎖陽性の抗pNPIgGの出現が、免疫後に末梢リンパ節で起こるλ鎖遺伝子の再構成に依存するかどうかを、抗IL-7R抗体の投与で末梢でのRAG発現を抑制することにより検討した。免疫後に誘導されるリンパ節でのRAG発現が抑制されると、λ1遺伝子の再構成も阻害され、λ鎖陽性抗体が減少した。その結果、抗体の親和性成熟も有意に抑制された。以上の結果は、末梢リンパ組織において、免疫後に誘導されるL鎖の再構成が、体細胞変異と並んでBCRの多様性を産み出すのに寄与し、結果的に親和性成熟を促進する方向に作用し得ることを示すものである。B細胞レパトアの限定されたマウスを用いて、抗体の親和性成熟機構を解析した。抗体の親和性成熟は、胚中心内で起こる高頻度の体細胞変異によるB細胞の多様化と、高親和性クローンの正の選択により起こるとされている。方、我々は免疫したマウスのリンパ節B細胞においてRAG-1,RAG-2の発現が上昇し、末梢でV(D)J再構成(receptor revision)が起こることを見出し、その生理的意義を追求してきた。本研究において、B細胞レパトアの限定されたNP特異的VH遺伝子ノックインマウス(QBF1)を用いてreceptor revisionが抗体の親和性成熟に寄与しているか否か、について検討した。NPよりも低親和性のハプテンであるpNPで免疫したところ、高親和性抗pNPIgGが誘導され、その大部分はλ鎖を有していた。このλ鎖陽性抗体はリンパ節内で起こった新たなλ鎖の再構成に依存して生成したことが以下の結果より強く示唆される。1)λ鎖陽性B細胞を除去したQBF1脾臓細胞をRAG-1(-/-)マウスに移入した系で、pNP免疫後、脾臓B細胞でRAG発現が上昇し、λ鎖組換えの中間体であるJλ1-RSS breakが検出される。2)MG発現を抑制すると、λ鎖陽性抗体の産生が減少し、抗pNPIgGの親和性が低下する。これらの結果は、末梢で免疫後にL鎖のreceptor revisionが起こり、高親和性λ鎖陽性クローンの生成に寄与し得ることを示している。 | KAKENHI-PROJECT-13037024 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13037024 |
雪が樹木の水利用を抑制する-多雪地森林の蒸散光合成の統合的理解と再現- | 本年度は、研究の核心であるブナとミズナラの水利用への積雪の影響の検証に取り組んだ。樹液流センサーを製作して樹木個体に設置し、日中変化や季節変化を調べることで、光合成で必要とされる水の供給が十分に為されているのかどうかの検証を行った。試験地には、八甲田山麓にある、積雪深の異なる2サイト(C, K地点)を選び、葉量、樹液流速度と気象データの連続観測を行った。5月に開始された観測により、最も水利用が盛んになるのが5月であること、それが蒸発の最も活発な(蒸発要求能の高い)時期と一致すること、さらに蒸発要求能の変動があっても水利用に大きな違いが見られないことと、が明らかとなった。大気の蒸発要求能が増加しても水利用料が変わらないと言うことは、植物が自発的に水利用を抑制していることを意味している。乾燥環境下の植物では光合成での葉と大気とのCO2や水蒸気の交換の窓口である気孔を閉鎖し、水の損失を防ぐことが知られているが、年降水量が2000mmを超え、冷涼な八甲田の気象条件下でのこうした結果はこれまでの研究の知見とは大きく異なる。これまでのブナやミズナラの葉の特性を基に推定される、葉が必要とする水の量は蒸発要求能と共に推移することがモデル計算により明らかになったことから、ブナやミズナラでは葉が光合成のために早夏以降に水を寄り多く要求するにもかかわらず、幹、または根が要求されるだけの水を供給できていなかったことが示唆された。こうした葉での水の需給不均衡は、過剰な水利用に伴う通水器官への負荷が限界に達した場合に報告があるが、本年度の研究では通水器官や、そこへの負荷についての知見は得られなかった。この後の研究では、葉での水需給の不均衡発生時の通水器官の状態の解明が求められる。本年度では多雪地の樹木が、原因の特定までは到達していないものの、思うように葉に水を供給できていないこと、そのような事態が早夏など光合成にとって重要な時期にも発生していることの傍証を得ることができた。試験地の設置も行うことができたので、来年度には多雪地での水需給の不均衡をもたらしうる原因として注目する通水特性の計測の準備もできた。年度の終わりには気候は似るものの積雪深の低い弘前大学での計測も立ち上がっており、雪の影響の抽出、およびその原因の特定という、2年目の目標に向け、順調に進展している。多雪により、樹木の水供給が葉の水要求に応じられなくなっていることまでは明らかになったので、今後はその原因の特定と、その原因と多雪という現象との関連の解明が求められる。原因には、水を供給できない:供給することで供給源の通水器官に過剰な負荷がかかるため、という仮説を挙げているので、その検証をする予定である。検証には、みずの需給不均衡が発生しているときの通水器官への負荷の定量と、その負荷が通水器官に及ぼす影響など、解剖学的な手法が必要とされる。本年度にはその手法の習得や機材の収集も行っていることから、今後の研究推進への順位は整っている。本年度は、研究の核心であるブナとミズナラの水利用への積雪の影響の検証に取り組んだ。樹液流センサーを製作して樹木個体に設置し、日中変化や季節変化を調べることで、光合成で必要とされる水の供給が十分に為されているのかどうかの検証を行った。試験地には、八甲田山麓にある、積雪深の異なる2サイト(C, K地点)を選び、葉量、樹液流速度と気象データの連続観測を行った。5月に開始された観測により、最も水利用が盛んになるのが5月であること、それが蒸発の最も活発な(蒸発要求能の高い)時期と一致すること、さらに蒸発要求能の変動があっても水利用に大きな違いが見られないことと、が明らかとなった。大気の蒸発要求能が増加しても水利用料が変わらないと言うことは、植物が自発的に水利用を抑制していることを意味している。乾燥環境下の植物では光合成での葉と大気とのCO2や水蒸気の交換の窓口である気孔を閉鎖し、水の損失を防ぐことが知られているが、年降水量が2000mmを超え、冷涼な八甲田の気象条件下でのこうした結果はこれまでの研究の知見とは大きく異なる。これまでのブナやミズナラの葉の特性を基に推定される、葉が必要とする水の量は蒸発要求能と共に推移することがモデル計算により明らかになったことから、ブナやミズナラでは葉が光合成のために早夏以降に水を寄り多く要求するにもかかわらず、幹、または根が要求されるだけの水を供給できていなかったことが示唆された。こうした葉での水の需給不均衡は、過剰な水利用に伴う通水器官への負荷が限界に達した場合に報告があるが、本年度の研究では通水器官や、そこへの負荷についての知見は得られなかった。この後の研究では、葉での水需給の不均衡発生時の通水器官の状態の解明が求められる。本年度では多雪地の樹木が、原因の特定までは到達していないものの、思うように葉に水を供給できていないこと、そのような事態が早夏など光合成にとって重要な時期にも発生していることの傍証を得ることができた。試験地の設置も行うことができたので、来年度には多雪地での水需給の不均衡をもたらしうる原因として注目する通水特性の計測の準備もできた。 | KAKENHI-PROJECT-18K05748 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K05748 |
雪が樹木の水利用を抑制する-多雪地森林の蒸散光合成の統合的理解と再現- | 年度の終わりには気候は似るものの積雪深の低い弘前大学での計測も立ち上がっており、雪の影響の抽出、およびその原因の特定という、2年目の目標に向け、順調に進展している。多雪により、樹木の水供給が葉の水要求に応じられなくなっていることまでは明らかになったので、今後はその原因の特定と、その原因と多雪という現象との関連の解明が求められる。原因には、水を供給できない:供給することで供給源の通水器官に過剰な負荷がかかるため、という仮説を挙げているので、その検証をする予定である。検証には、みずの需給不均衡が発生しているときの通水器官への負荷の定量と、その負荷が通水器官に及ぼす影響など、解剖学的な手法が必要とされる。本年度にはその手法の習得や機材の収集も行っていることから、今後の研究推進への順位は整っている。本年度は、設置予定だった観測サイトのうち、冷気湖サイトと弘前大学キャンパスサイトの設置を来年度および年度末に移行したため、出張旅費およびサイト設営に必要な物品費が当初の予定よりも低くなった。サイト設置の遅延の余力で既設サイトの充実を行ったが、新規のサイト設置ほどの経費は要さなかった。来年度には新規サイトの設営もある一方で、来年度予定していた既設サイト(八甲田山2サイト)の充実は完了していることから、当初の予定通りの予算執行になると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-18K05748 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K05748 |
遅れを持つ積分・微分方程式とその離散化方程式の精度と安定性 | 時間遅れをもつSIR感染症モデルの安定性解析の研究を解決したMcCluskey(2010)論文の手法を、SIRS感染症モデルに応用し、当初は摂動法的に、ついで、Lyapunov関数法を拡張し、免疫消失項が比較的小さい場合の病理平衡点の大域漸近安定となる十分条件を得た。更に、グループSIRモデルへ応用し、グラフ理論を使わない簡単な方法も考案した。一方、Xu and Ma(2010)論文の単調法を改良する事により、免疫消失項が大きい場合の病理平衡点の大域漸近安定となる十分条件を大幅に拡張した。この単調法による解析手法は、Lyapunov関数法と異なる解析手法であり、今後の応用が期待できる。さらに、当時オープン問題となっていた、連続感染症モデルから、如何にして、大域漸近安定となる離散モデルを見つけるかという問題を、後退オイラー法をベースにした離散モデルへの自然な拡張法を見つけ、解決した。また、パーマネンスの解の正の下界を求める手法を発展させ、それをグループモデルにも拡張できる手法を開発した。時間遅れをもつSIR感染症モデルの安定性解析の研究を解決したMcCluskey(2010)論文の手法を、SIRS感染症モデルに応用し、当初は摂動法的に、ついで、Lyapunov関数法を拡張し、免疫消失項が比較的小さい場合の病理平衡点の大域漸近安定となる十分条件を得た。更に、グループSIRモデルへ応用し、グラフ理論を使わない簡単な方法も考案した。一方、Xu and Ma(2010)論文の単調法を改良する事により、免疫消失項が大きい場合の病理平衡点の大域漸近安定となる十分条件を大幅に拡張した。この単調法による解析手法は、Lyapunov関数法と異なる解析手法であり、今後の応用が期待できる。さらに、当時オープン問題となっていた、連続感染症モデルから、如何にして、大域漸近安定となる離散モデルを見つけるかという問題を、後退オイラー法をベースにした離散モデルへの自然な拡張法を見つけ、解決した。また、パーマネンスの解の正の下界を求める手法を発展させ、それをグループモデルにも拡張できる手法を開発した。1)遅れを持つ微分方程式系やその離散化方程式系の解の大域漸近安定性について:(1)クラークモデル型Volterra差分方程式の大域安定条件の証明法を定式化した([7])。(2)2種の非自励、遅れを持つ共生Lotoka-Volterra方程式系の、有界な遅れに関係しないパーマネンス条件を導出([6])。(3)非自励複数の区分的定数遅れを持つロジスティック方程式に対する2種類のcontractivity条件を与えた([5])。2)病理モデルとその離散化方程式に対する安定性理論について:(1)infection項を持つ一般の離散人口モデルについて、基本再生産数を与え、大域漸近安定性との関係を調べた([4])。(2)分配型遅れを持つSIR病理モデルから、後退Euler法に一部バァリエーションを適用することで導出される、離散SIR病理モデルに対し、$R_0>1$のとき、連続版と類似なLyapunov法を適用する事により病理平衡点の大域漸近安定性を示した([1])。1)病理モデルとその離散化方程式に対するパーマネンスや大域漸近安定性について:(1)Bilinear incidencerateで遅れをを持つSIRSモデルのLyapunov関数法による大域漸近安定条件を求める新しい手法を開発した。これは、最近の遅れを持つSIRモデルを完全解決したC.C.McCluskeyの方法を拡張した画期的なものである([1])。(2)SIRSモデルに単調法を応用し、上記のLyapunov関数法とは本質的に異なる大域漸近安定条件を求めた([5])。また、その手法を具体的な問題に応用し、大域安定条件を大幅に拡張し、open questionの根拠となった例の大域漸近安定条件を証明した([7])。一方、open questionとして残っていた、病気が原因での死亡率を持つSISモデルに対する漸近安定条件を、各基本の人口モデルに応じた単調法を適用することで、具体的に求め、条件を改良した([2])(4)病理モデルの離散化方程式に対する、パーマネンス条件の本質を調べた。また、特別な場合として、大域漸近安定となる条件を具体的に明示した([4])。また、より一般的nonlinearincidenceratesを持つSIR病理モデルでも、その離散化方程式の場合の大域漸近安定条件が連続モデルと同様に求めれることを示した([3])。2)その他の遅れを持つ微分方程式系やその離散化方程式系の解の大域漸近安定性について:Self-difusionsに支配されるcross-diffusionsを持つ系が遅れを持つ場合の大域解の存在と大域漸近安定条件を求めた([8])。また、2個の遅れを持つVolterra積分方程式系のcritical caseの解の漸近状態を調べた([6])。感染症モデルとその離散化方程式に対するパーマネンスや大域漸近安定性についての研究で、多くめ成果を得ることができた。 | KAKENHI-PROJECT-21540230 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21540230 |
遅れを持つ積分・微分方程式とその離散化方程式の精度と安定性 | 特に、遅れ付きのSIRS感染症モデルに対し、部分的ではあるが,SIR感染症モデルを解決したMcCluskey論文の手法を拡張したLyapunov関数法で、免疫消失項が比較的小さい場合の感染症平衡点の大域漸近安定となる十分条件と、Xu and Ma論文の手法を改良した単調法により、この免疫消失項が大きい場合の感染症平衡点の大域漸近安定となる十分条件を大幅に改善することが出来、両者の条件を組み合わすことで、大域解析が未解決の免疫消失項の範囲を大幅に狭める事が出来た。また、遅れを持たない連続感染症モデルでは遅れを持つ場合に比べ、大域漸近安定となる条件が広がることを具体的に追及し、成果を挙げる事が出来た。更に、遅れがない連続感染症モデルの大域漸近安定性と対応する性質を持つ離散化モデルが後退オイラー法になることに気づき、遅れを持つ場合の連続感染症モデルの離散化はすでに発表済みであったので、遅れを持たない感染症モデルの場合の離散化と共に、2通りの離散化の方法を他に先駆けて発見する事が出来た。これにより、連続感染症モデルと対応する大域漸近安定を持つ、離散モデルとの関係が明確化できた。また、lytic and nonlyticモデルの大域漸近安定の完全解決、viral infectionモデルへの応用、groupSIS,SIRS感染症モデルなどの大域漸近安定など、現在、投稿中であり、更に、交通機関で移動中での感染症モデルやgroup間での移動による、感染症モデル等の大域漸近安定性について、現在論文作成中であり、引き続き、多くの研究成果を期待する事ができる。 | KAKENHI-PROJECT-21540230 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21540230 |
新規摂食調節ペプチド、ニューロメジンSの生理機能および作用機序に関する研究 | 私たちは2005年に新しい生理活性ペプチド、ニューロメジンSを発見しました。ニューロメジンSの機能は全く不明でしたので、生体内でどのような働きをしているのかをラット、マウスを用いて研究しました。その結果、ニューロメジンSは他のペプチドよりも強力な摂食抑制作用があるということを解明しました。ニューロメジンSの研究が進むことによりメタボリックシンドロームの治療、また家畜の効率的な育成に応用できるか興味深いところです。私たちは2005年に新しい生理活性ペプチド、ニューロメジンSを発見しました。ニューロメジンSの機能は全く不明でしたので、生体内でどのような働きをしているのかをラット、マウスを用いて研究しました。その結果、ニューロメジンSは他のペプチドよりも強力な摂食抑制作用があるということを解明しました。ニューロメジンSの研究が進むことによりメタボリックシンドロームの治療、また家畜の効率的な育成に応用できるか興味深いところです。本年度は、新規生理活性ペプチド、ニューロメジンSならびにその同族と考えられるニューロメジンUがどのような生理作用を持つのかを明らかにすることを目的にし、特にノックアウトマウスを用いて研究を行った。ニューロメジンSをラット脳室内に投与すると強力な摂食行動の抑制、さらに概日リズムに対して投与時刻依存的に位相の前進、後退をひきおこすことがこれまでの研究でわかったので、まず、ニューロメジンSノックアウトマウスにおいて糖・脂質代謝、概日リズムへの影響を検討した。その結果、軽度の肥満、糖代謝異常、UCP1やPPARαなどの糖・脂質代謝関連遺伝子に変化が見られた。また、赤外線センサーによる行動量の観察によって概日リズムを測定したところ、ニューロメジンSノックアウトマウスでは恒常暗下に置いて完全にリズムが消失した。しかし129SV/Pae系統のES細胞を用いて作成したノックアウトマウスだったのでC57BL/6Jマウスとのバッタクロスを進めていくとこれらの異常は全て見られなくなった。現在、これらの異常がニューロメジンSに由来するものなのか、129SV/Pae系統の影響なのか、慎重に検討している段階である。ニューロメジンSはニューロメジンUと同じ受容体に作用するのでバッククロスの各段階でニューロメジンUの発現が変わりニューロメジンS欠乏の代償作用が生じている可能性があるとも考えられる。現在、ニューロメジンSとニューロメジンUのダブルノックアウトマウスを作成し、解析を始めている。もしダブルノックアウトマウスに野生型とは異なる表現系が現れたら、ニューロメジンS、ニューロメジンUどちらに起因する作用なのかを、それぞれのノックアウトマウス用いたり、Cre/loxPシステムなどを用い、より詳細に検討したいと考えている。本年度は、新規生理活性ペプチド、ニューロメジンSならびにその同族と考えられるニューロメジンUがどのような生理作用を持つのかを明らかにすることを目的にし、研究を行った。その結果、ラットにおいて食餌時間を毎日決まった時間の2時間に制限する制限給餌を行うと、食餌時間の直前に誘発される予知行動の中枢と考えられている、視床下部腹内側核(DMH)に食餌時間に合わせてニューロメジンUの発現が増加することがわかった。そこで、ニューロメジンUノックアウトマウスを用い、制限給餌を行うと野生型マウスでは誘導される予知行動が、ニューロメジンUノックアウトマウスでは現れにくいことがわかった。また、その状態でマウス側脳室にニューロメジンUを投与すると予知行動が出現した。また、制限給餌下で予知行動が出現しにくいニューロメジンUノックアウトマウスは制限給餌下での死亡率が有意に高かった。ニューロメジンSノックアウトマウスではこのような現象は見られなかった。以上の結果より、制限給餌における予知行動のメカニズムにニューロメジンUが深く関わっていることが考えられた。ニューロメジンUは摂食調節作用、体内時計調節作用を有することを我々は明らかにしている。今回の結果と合わせて考えるとニューロメジンUが摂食行動と体内時計を結びつける働きがあることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-19780221 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19780221 |
標準体重者の2型糖尿病発症に対する基質酸化能を考慮した段階別改善プログラムの開発 | これまで、非肥満2型糖尿病患者に対する治療法のエビデンスは十分に得られていない。そのため、現在提唱されている国内のガイドラインは、主に肥満2型糖尿病患者を対象とした欧米の研究成果に基づいたものである。近年、アジア諸国の糖尿病患者数は増大しており、世界トップ10のうちの4カ国がアジアからである。このことからも、日本人を含むアジア人に適した治療・予防ガイドラインを作成するため、非肥満(標準体重者)の2型糖尿病発症予防に対するエビデンスの構築が求められる。申請者のこれまでの知見であると先行研究(Galgani et al., Diabetes, 2008)を比べると、欧米人と日本人のタイプではエネルギー基質への代謝応答が異なることがわかった。すなわち、主たる糖尿病発症の要因が肥満によるインスリン抵抗性の増大ではなく、インスリン分泌不全を由来としている2型糖尿病患者を含む非肥満の糖代謝異常者について検討をすることは国内外を含めて報告がなく、国際的にみても非常に独創的であるといえる。そこで、標準体重者における2型糖尿病の発症予防・治療を目的とした生活習慣ガイドラインのためのエビデンスを構築するため、疫学研究、基礎研究、実践研究で構成されている以下の課題を設定する。(1)標準体重の健常者における2型糖尿病の発症から治療にいたる医療コストについて、機械学習を用いてモデリングし、投薬に頼らない治療法の必要性を医療費から明らかにする、(2)一過性の食事・運動負荷に対する基質酸化調整能について、耐糖能異常レベルごとに検討する、(3)食事摂取および運動実践に対する糖代謝、エネルギー代謝の1日における変動とその関連性について、耐糖能異常レベルが異なる対象者で比較検討する、(4)食事療法と運動療法の併用が糖・脂質代謝機構の改善に及ぼす慢性効果を検証する(介入試験)。当該年度は、特に課題1に該当する2型糖尿病の発症から治療にいたる医療コストについて、機械学習を用いてモデリングするというテーマについて重点的に検討を進めた。現在は一つの学習モデルにとどまらず、複数の方法を用いて検討することを進めている。また、課題2に該当する一過性の食事・運動負荷に対する基質酸化調整能については、データの解析が進み、学会発表レベルまでに至っている。本研究の課題1および課題2については研究発表レベルまで到達しており、次年度は論文化を進める予定である。また、課題2の実施を通して得られたノウハウおよび実績をもとに、次年度はまずは課題3を進めていく。それらの実験実施とともに、これまでの成果を積極的に発表していく。これまで、非肥満2型糖尿病患者に対する治療法のエビデンスは十分に得られていない。そのため、現在提唱されている国内のガイドラインは、主に肥満2型糖尿病患者を対象とした欧米の研究成果に基づいたものである。近年、アジア諸国の糖尿病患者数は増大しており、世界トップ10のうちの4カ国がアジアからである。このことからも、日本人を含むアジア人に適した治療・予防ガイドラインを作成するため、非肥満(標準体重者)の2型糖尿病発症予防に対するエビデンスの構築が求められる。申請者のこれまでの知見であると先行研究(Galgani et al., Diabetes, 2008)を比べると、欧米人と日本人のタイプではエネルギー基質への代謝応答が異なることがわかった。すなわち、主たる糖尿病発症の要因が肥満によるインスリン抵抗性の増大ではなく、インスリン分泌不全を由来としている2型糖尿病患者を含む非肥満の糖代謝異常者について検討をすることは国内外を含めて報告がなく、国際的にみても非常に独創的であるといえる。そこで、標準体重者における2型糖尿病の発症予防・治療を目的とした生活習慣ガイドラインのためのエビデンスを構築するため、疫学研究、基礎研究、実践研究で構成されている以下の課題を設定する。(1)標準体重の健常者における2型糖尿病の発症から治療にいたる医療コストについて、機械学習を用いてモデリングし、投薬に頼らない治療法の必要性を医療費から明らかにする、(2)一過性の食事・運動負荷に対する基質酸化調整能について、耐糖能異常レベルごとに検討する、(3)食事摂取および運動実践に対する糖代謝、エネルギー代謝の1日における変動とその関連性について、耐糖能異常レベルが異なる対象者で比較検討する、(4)食事療法と運動療法の併用が糖・脂質代謝機構の改善に及ぼす慢性効果を検証する(介入試験)。当該年度は、課題1に設定した「安標準体重の健常者における2型糖尿病の発症から治療にいたる医療コストについて、機械学習を用いてモデリングし、投薬に頼らない治療法の必要性を医療費から明らかにする」と、課題2に設定した「一過性の食事・運動負荷に対する基質酸化調整能について、耐糖能異常レベルごとに検討する」ことを計画していた。現在までに、両課題ともデータを取得し、解析を進めている状況である。これまで、非肥満2型糖尿病患者に対する治療法のエビデンスは十分に得られていない。そのため、現在提唱されている国内のガイドラインは、主に肥満2型糖尿病患者を対象とした欧米の研究成果に基づいたものである。近年、アジア諸国の糖尿病患者数は増大しており、世界トップ10のうちの4カ国がアジアからである。このことからも、日本人を含むアジア人に適した治療・予防ガイドラインを作成するため、非肥満(標準体重者)の2型糖尿病発症予防に対するエビデンスの構築が求められる。申請者のこれまでの知見であると先行研究(Galgani et al., Diabetes, 2008)を比べると、欧米人と日本人のタイプではエネルギー基質への代謝応答が異なることがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-17K01756 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K01756 |
標準体重者の2型糖尿病発症に対する基質酸化能を考慮した段階別改善プログラムの開発 | すなわち、主たる糖尿病発症の要因が肥満によるインスリン抵抗性の増大ではなく、インスリン分泌不全を由来としている2型糖尿病患者を含む非肥満の糖代謝異常者について検討をすることは国内外を含めて報告がなく、国際的にみても非常に独創的であるといえる。そこで、標準体重者における2型糖尿病の発症予防・治療を目的とした生活習慣ガイドラインのためのエビデンスを構築するため、疫学研究、基礎研究、実践研究で構成されている以下の課題を設定する。(1)標準体重の健常者における2型糖尿病の発症から治療にいたる医療コストについて、機械学習を用いてモデリングし、投薬に頼らない治療法の必要性を医療費から明らかにする、(2)一過性の食事・運動負荷に対する基質酸化調整能について、耐糖能異常レベルごとに検討する、(3)食事摂取および運動実践に対する糖代謝、エネルギー代謝の1日における変動とその関連性について、耐糖能異常レベルが異なる対象者で比較検討する、(4)食事療法と運動療法の併用が糖・脂質代謝機構の改善に及ぼす慢性効果を検証する(介入試験)。当該年度は、特に課題1に該当する2型糖尿病の発症から治療にいたる医療コストについて、機械学習を用いてモデリングするというテーマについて重点的に検討を進めた。現在は一つの学習モデルにとどまらず、複数の方法を用いて検討することを進めている。また、課題2に該当する一過性の食事・運動負荷に対する基質酸化調整能については、データの解析が進み、学会発表レベルまでに至っている。本研究の課題1については、データの取得・データセット構築、一次解析結果の学会発表まで達成し、論文化およびさらに抽出課題を解決するためのモデル再構築を進めていく。また、課題2については、ほぼ年度度の計画どおりの測定被験者数まで達成したが、特徴の異なる対象者においても測定を予定しているので、引き続き追加実験を行なう。その後、データ解析を進め、研究成果の発表までを次年度中に行なう予定である。課題3以降も本年度から着手する予定である。本研究の課題1および課題2については研究発表レベルまで到達しており、次年度は論文化を進める予定である。また、課題2の実施を通して得られたノウハウおよび実績をもとに、次年度はまずは課題3を進めていく。それらの実験実施とともに、これまでの成果を積極的に発表していく。研究実施自体は順調に進められたが、データ分析に関わる費用の執行が次年度に持ち越しとなったため。研究実施自体は概ね順調に進められたが、発表および分析に関わる費用の執行が次年度に持ち越しとなったため。 | KAKENHI-PROJECT-17K01756 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K01756 |
膜分離活性汚泥法における膜面堆積物の挙動を考慮したモデル化 | 膜分離活性汚泥法における目詰まり原因物質である菌体の代謝物(EPS)は膜の遮断効果により,膜面に付着し,膜透過流束低下を引きこすと考えられる.本研究では膜面堆積汚泥よりEPSを抽出し,膜面に堆積したEPSの分子量変化とそれに伴う膜透過流束の変化について検討を行った.膜面における強結合および弱結合EPSにおいては、50万Da以下の分子量をもつEPS量が増加した.また、膜面上の高分子量のEPSの減少により膜ろ過抵抗が減少し、膜面におけるポリマーの低分子化が膜分離リアクターの挙動に影響を与えることが示唆された。膜面におけるポリマーのはく離過程をモデル化を行った。膜モジュールとしては平膜モジュールに加え、中空糸膜モジュールも対象とし、せん断力と膜面からの汚泥のはく離速度との関係についても定量化を行った。平膜については、膜面のせん断力と気泡流の上層速度と速度分布との関係を定式化し、中空糸膜については、膜内の流速分布と気泡流量との関係を定式化し、膜に働く力との関係を定式化した。膜面に堆積したポリマーの低分子化速度と膜間差圧低下のモデル化を行った。膜面におけるポリマーの挙動の定式化を行うことを目的とし、膜面の堆積ポリマーを高分子成分(分子量100万以上)、中分子成分(同10万100万)、低分子成分(10万以下)に分類し、各成分の変化を一次方程式にて定式化し、係数の決定を行った。実験は、膜に汚泥を退席させたものを水道水中で整地させ、膜面における各成分のEPSの体積量の変化を測定し、モデルへのフィッティングを行った。その結果、各成分の変動を構築したモデルにより表現可能であることを示した。また、高分子部分の堆積量が膜ろ過抵抗に関係があるという式を構築し、膜フラックスの低下との関係について実験的検討を行い。モデルが妥当であることを示した。膜分離活性汚泥法における目詰まり原因物質である菌体の代謝物(EPS)は膜の遮断効果により,膜面に付着し,膜透過流束低下を引きこすと考えられる.本研究では膜面堆積汚泥よりEPSを抽出し,膜面に堆積したEPSの分子量変化とそれに伴う膜透過流束の変化について検討を行った.膜面における強結合および弱結合EPSにおいては、50万Da以下の分子量をもつEPS量が増加した.また、膜面上の高分子量のEPSの減少により膜ろ過抵抗が減少し、膜面におけるポリマーの低分子化が膜分離リアクターの挙動に影響を与えることが示唆された。膜面におけるポリマーのはく離過程をモデル化を行った。膜モジュールとしては平膜モジュールに加え、中空糸膜モジュールも対象とし、せん断力と膜面からの汚泥のはく離速度との関係についても定量化を行った。平膜については、膜面のせん断力と気泡流の上層速度と速度分布との関係を定式化し、中空糸膜については、膜内の流速分布と気泡流量との関係を定式化し、膜に働く力との関係を定式化した。膜面に堆積したポリマーの低分子化速度と膜間差圧低下のモデル化を行った。膜面におけるポリマーの挙動の定式化を行うことを目的とし、膜面の堆積ポリマーを高分子成分(分子量100万以上)、中分子成分(同10万100万)、低分子成分(10万以下)に分類し、各成分の変化を一次方程式にて定式化し、係数の決定を行った。実験は、膜に汚泥を退席させたものを水道水中で整地させ、膜面における各成分のEPSの体積量の変化を測定し、モデルへのフィッティングを行った。その結果、各成分の変動を構築したモデルにより表現可能であることを示した。また、高分子部分の堆積量が膜ろ過抵抗に関係があるという式を構築し、膜フラックスの低下との関係について実験的検討を行い。モデルが妥当であることを示した。膜分離活性汚泥法における目詰まり原因物質である菌体の代謝物(EPS)は膜の遮断効果により,膜面に付着し,膜透過流束低下を引きこすと考えられる.EPSは菌体との結合性が強いEPS(strongly-bound EPS)と菌体との結合性が弱いEPS(loosely-bound EPS)があり,これらは膜面堆積中に分解することが考えられる.本研究では膜面堆積汚泥よりEPSを抽出し,膜面に堆積したEPSの分子量変化とそれに伴う膜透過流束の変化について検討を行った.実験は2回行った.活性汚泥混合液に5枚のMF平膜(公称孔径0.45マイクロメートル)を浸漬させ,実験一回目はFlux 0.4m/dayで28日間,実験二回目はFlux 0.15m/dayで6日間連続吸引を行った. | KAKENHI-PROJECT-18560533 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18560533 |
膜分離活性汚泥法における膜面堆積物の挙動を考慮したモデル化 | 空気量は10L/minとした.膜面に汚泥を堆積させた後,膜面の付着物の変化を測定するために,水道水で満たした反応槽内に膜面に汚泥が付着した5枚の膜を移し,実験一回目はFlux 0.04m/dayで,実験二回目は膜間差圧40kPa連続的に吸引を行った,膜面に汚泥の隔離を防ぐため曝気は行わなかった.EPSは時間経過に伴い,膜面に堆積した汚泥を採取し,蒸留水で希釈した後,回転数300rpmで攪拌して混合液にした状態にし,遠心分離により回転数3000Gで固液分離を行い,沈殿物には菌体との結合性が強いもの(強結合EPS),上澄みには菌体との結合性が弱いもの(弱結合EPS)が含まれていると考え,それぞれに陽イオン交換樹脂を用いて抽出を行った.抽出したEPSをゲルクロマトグラフィーにより,分子量分画を行った.膜面における強結合および弱結合EPSにおいては、500,000Da以下の分子量をもつEPS量が増加した.また、膜面上の高分子量のEPSの減少により膜ろ過抵抗が減少することが示された。以上より、膜面におけるポリマーの低分子化が膜分離リアクターの挙動に影響を与えることが示唆された。膜面に堆積した菌体外ポリマーが低分子化し,それに伴い膜ろ過抵抗が低下することが実験的に確認したことを受け,以下の結論を得た。(1)膜面におけるポリマーのはく離過程をモデル化を行った。特に,ばっ気風量と膜面せん断力との関係について定量化を行った。膜モジュールとしては平膜モジュールに加え,中空糸膜モジュールも対象とし,せん断力と膜面からの汚泥のはく離速度との関係についても定量化を行った。平膜については,膜面のせん断力と気泡流の上層速度と速度分布との関係を定式化し,中空糸膜については,膜内の流速分布と気泡流量との関係を定式化し,膜に働く力との関係を定式化した。(2)膜面に堆積したポリマーの低分子化速度と膜間差圧低下のモデル化を行った。膜面におけるポリマーの挙動の定式化を行うことを目的とし,膜面の堆積ポリマーを高分子成分(分子量100万以上),中分子成分(同10万100万),低分子成分(10万以下)に分類し,各成分の変化を一次方程式にて定式化し,係数の決定を行った。実験は,膜に汚泥を退席させたものを水道水中で整地させ,膜面における各成分のEPSの体積量の変化を測定し,モデルへのフィッティングを行った。その結果,各成分の変動を構築したモデルにより表現可能であることを示した。また,高分子部分の堆積量が膜ろ過抵抗に関係があるという式を構築し,膜フラックスの低下との関係について実験的検討を行い。モデルが妥当であることを示した。 | KAKENHI-PROJECT-18560533 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18560533 |
英語語彙ネットワーク学習支援ツールの開発と応用 | 学習者の語彙知識がネットワーク構造をもつと考えられることは従来から指摘されてきた。語彙はリスト上の項目として個別に学習・記憶されるのではなく,意味や統語,音声といった側面で相互に関連づけられていると考えられる。本研究は,そのネットワーク構造を視覚的に提示することによって語彙学習を支援するツール開発に向けての基礎研究である。語彙間の関連性を多角的に測定する方法の確立を目指し,一つの項目がもつ多様なデータを二次元マップ上の位置関係で表現するSOM分析の有用性を確認した。学習者の語彙知識がネットワーク構造をもつと考えられることは従来から指摘されてきた。語彙はリスト上の項目として個別に学習・記憶されるのではなく,意味や統語,音声といった側面で相互に関連づけられていると考えられる。本研究は,そのネットワーク構造を視覚的に提示することによって語彙学習を支援するツール開発に向けての基礎研究である。語彙間の関連性を多角的に測定する方法の確立を目指し,一つの項目がもつ多様なデータを二次元マップ上の位置関係で表現するSOM分析の有用性を確認した。本研究課題は,(A)日本人英語学習者が持つ心内辞書のネットワーク構造をコンピュータ上で視覚的に提示するツールを開発し,(B)そのツールを教育・研究の両面において応用することをその全体的な目標としている。研究期間初年度となる今年度においては,理論的基礎研究として,まず,心内辞書の構造についての主要なモデルを概観し,意味・音韻/書記素・統語の各層において,(1)ある(サブ)ネットワークがどのようにして構成され,新規メンバーとなる語彙がどのようにそのネットワークに取り込まれるのか,という点,及び,(2)メンバーとなる個々の語彙間にある(心理的な)結びつきの強さがどのように決定され,それがどのように測定可能であるのか,という点に関して考察を行った。その結果,(1)のサブネットワークの構成要素の決定については,形態的・意味的類似性のみならず,音響的な文脈や共起する項構造といった要因が働き,その結果として複層的なネットワークが構成されること,また新規語彙の取り込みに関しては,個別事例の学習と抽象的なレベルでの一般化によるUsage-based Modelの有効性が確認された。こうした複層的なネットワーク構造が理論的には主張されている一方で,(2)の語彙間の結びつきの測定について,決定的な測定手法は確立されておらず,実証的に心内辞書のネットワーク構造や個々の語彙の間にある結びつきを確認することが課題として残されている。平成20年度は,先行研究で採用されている研究手法のうち,特に有効であると考えられる自己組織化マッピング等を利用して,日本人英語学習者がもつ心内辞書の構造解明を目指す。本研究課題は,(A)日本人英語学習者が持つ心内辞書のネットワーク構造をコンピュータ上で視覚的に提示するツールを開発し,(B)そのツールを教育・研究の両面において応用することをその全体的な目標としている。第2年目となる平成20年度は,特に近似の統語的・意味的特徴を持つとされる語彙群が,日本人英語学習者によって実際にどのようにカテゴライズされ,どのような位置関係にあると捉えられているのか,といった点を明らかにするために,心理動詞の文法性判断タスクに対する回答を基礎データとして,自己組織化マッピングを利用した分析を行った。その結果,言語理論的には二種類に分類される動詞群であってもその表象のされ方は言語理論が予想する2群とはならないこと,また個々の動詞によって異なる位置づけがなされていることが示された。また異なる習熟度レベルにある学習者群を比較したところ,それぞれ対象動詞群の範疇化が異なるだけでなく,より熟達した英語学習者であっても全ての候補動詞をそれらがカテゴライズされるべき動詞群に位置づけることはできていないことが示された。これら平成20年度中に得られた研究成果は,今後心内辞書の統語レベルでのネットワーク構造を視覚化する上で,今回用いたデータ,および分析手法が一つの解決策となりうることを示唆している。こうした実証研究を進める上で,特に自己組織化マッピングに関する理解を深めること,およびその第二言語習得研究への応用可能性について検討するためのフォーラムを,本研究課題に従事する研究者以外の研究者にも公開の上開催した。最終年度となる平成21年度は,前年度における英語心理動詞に関する成果を踏まえ,与格動詞(dative verbs)と二重他動詞(ditransitive verbs),非対格動詞(unaccusative verbs)と非能格動詞(unergative verbs)といった英語動詞のサブクラスを対象として自己組織化マップを援用して分析した。分析に利用したデータは,それぞれの動詞に関する文法性判断タスクに対する日本人英語学習者による反応であった。与格動詞・二重他動詞については,言語理論的に導かれる特徴を有する2つのクラスタが形成され,またそれぞれのクラスタに正しく位置づけられる動詞群があることが示された。さらに対象学習者の英語熟達度によって横断的に比較した場合,徐々にあるクラスタに集中していく過程が得られた。ただし,必ずしも正しいクラスタに位置づけられていくとは限らず,与格構文でforを伴って使用される動詞群は与格動詞と同じクラスタに位置づけられていく傾向も観測された。これら動詞は大きく他動詞に分類される動詞群であるが,今年度は分析対象を自動詞にも拡大した。一部の英語自動詞は非対格/非能格動詞に分類され,また非対格動詞は習得が難しいことが指摘されている。 | KAKENHI-PROJECT-19320088 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19320088 |
英語語彙ネットワーク学習支援ツールの開発と応用 | 今回の分析では,まず「非対格動詞にのみ習得上の困難を抱えている学習者」が実際に存在し,かつ,それら学習者は非対格動詞を同じ特徴を持つクラスタに位置づけていること,を,自己組織化マップの援用により確認しようとした。その結果,明確に「非対格動詞にのみ」習得上の困難を抱えている,と考えられる学習者は抽出できず,また,理論的な「非対格/非能格」という区分も観察されなかった。これらの研究は,日本人英語学習者が持つ心内辞書のネットワーク構造を把握し視覚的に提示するツールの開発の基礎研究としての意義を持つ。また,得られた知見は,心内辞書のネットワーク構造を把握するにあたり,学習者の言語使用実態に立脚したモデル構築が必要であることを示唆している。 | KAKENHI-PROJECT-19320088 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19320088 |
須恵器断面の電子顕微鏡観察ならびにX線透過試験による須恵器製作技法の復原 | 平成5年度の研究実施計画では、前年度に引続き、須恵器(主として杯)を全方向型X線透過装置と走査型電子顕微鏡によって観察し、須恵器製作技法の復原を試みた。また、X線マイクロアナライザーと蛍光X線分析装置による胎土分析によって、須恵器の産地同定の可能性を探ってみた。まず、製作技法の復原については、須恵器破片の断面を電子顕微鏡によって観察したが、その結果光学顕微鏡では確認できなかった胎土中の空隙が観察され、一部ではそれが規則性をもっているように見えた。これは、粘土紐積みあげによる成形時の痕跡-粘土紐の継ぎ目にあたるものと思われ、研究代表者の仮説に有利な結果を得た。なお、全方向型X線透過装置による観察では、成形技法の痕跡を認めるのが難しく、良好な結果は得られなかった。次に、須恵器の産地洞定についてFTIRを用いた示差吸収スペクトルでは、産地のちがいによってある程度の差があらわれた。今後詳細な検討を続けるなら、限定された狭い地域の産地同定も可能となるであろう。また、複数の産地の粘土を焼成したテストピースと、出土須恵器との成分分析結果を比較検討し、産地同定の精度を高める試みは、作業量が膨大で結果を出すには数年を要することがわかった。この実験研究は、今後も継続して実施したい。今年度の研究結果から、須恵器製作技法の復原には、仮説に基づいて須恵器を模作し、それと出土須恵器との両者の製作技法を比較観察するという実験方法が、最も有効であることがわかった。比較観察に電子顕微鏡やX線透過装置を用いることはいうまでもない。この研究は、ようやく緒についたところであり、将来大きな成果を生むことは間違いない。須恵器の杯〔身〕を試料として、断面、および底面と体部側面の観察を行なった。まず肉眼による表面の凹凸の検討を行ない、次にエメリー紙および金属研磨用アルミナ粉末で研磨し、観察面を平滑に仕上げ、光学顕微鏡および電子顕微鏡を用い観察を行なった。底面と側面の試料は外側を研磨し、観察面とした。肉眼の観察結果で、水平方向に平行に走る数本の凹凸が存在する例がいくつかみられた。これを断面で観察すると、垂直方向では壁の両面が直線にならず波を打つ曲線状になる。この点に着目し粘土紐積み上げ法との関連を検討した。大阪府陶邑TK23出土の例で口縁部から底面にかけての断面試料を作製し光学顕微鏡で観察した。この結果、2つの平たい紐状の塊を接合し、接合面は斜めに合わせて作られていることが、器体に含まれる粒子の並び方向と、横長の気泡の方向性から確認できた。電子顕微鏡を用いこの気泡を測定すると、幅は約10ミクロンのものが非常に多く、長さはばらつきがあった。また肉眼観察では、紐状の塊の幅は約2.5cmで中央に凹部を持っている。他の試料の観察でも、底部が2つの平たい紐からなる例は、20%以上の頻度で確認できており、出土遺物であることから良好な試料を確保することも容易できない点を考慮すれば、頻度は増すであろう。今後、今年後の成果を踏まえ本研究を継続し、X線の透過試験で紐の接合面を確認する作業、胎土の化学組成を作製試料と比較検討する作業をさらに進めたい。平成5年度の研究実施計画では、前年度に引続き、須恵器(主として杯)を全方向型X線透過装置と走査型電子顕微鏡によって観察し、須恵器製作技法の復原を試みた。また、X線マイクロアナライザーと蛍光X線分析装置による胎土分析によって、須恵器の産地同定の可能性を探ってみた。まず、製作技法の復原については、須恵器破片の断面を電子顕微鏡によって観察したが、その結果光学顕微鏡では確認できなかった胎土中の空隙が観察され、一部ではそれが規則性をもっているように見えた。これは、粘土紐積みあげによる成形時の痕跡-粘土紐の継ぎ目にあたるものと思われ、研究代表者の仮説に有利な結果を得た。なお、全方向型X線透過装置による観察では、成形技法の痕跡を認めるのが難しく、良好な結果は得られなかった。次に、須恵器の産地洞定についてFTIRを用いた示差吸収スペクトルでは、産地のちがいによってある程度の差があらわれた。今後詳細な検討を続けるなら、限定された狭い地域の産地同定も可能となるであろう。また、複数の産地の粘土を焼成したテストピースと、出土須恵器との成分分析結果を比較検討し、産地同定の精度を高める試みは、作業量が膨大で結果を出すには数年を要することがわかった。この実験研究は、今後も継続して実施したい。今年度の研究結果から、須恵器製作技法の復原には、仮説に基づいて須恵器を模作し、それと出土須恵器との両者の製作技法を比較観察するという実験方法が、最も有効であることがわかった。比較観察に電子顕微鏡やX線透過装置を用いることはいうまでもない。この研究は、ようやく緒についたところであり、将来大きな成果を生むことは間違いない。 | KAKENHI-PROJECT-04451080 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04451080 |
都市生活における時間地理学的分析に基づく舞台芸術環境の立地適応に関する研究 | 本研究は、時間地理学的観点から都市生活における鑑賞行動と施設の立地条件及びその周辺環境が行動そのものに及ぼす影響を明らかにしたものである。研究は、全体で3段階の構成で行なった。第一段階は、文献及び有識者からのヒアリングをもとに、時間地理学とGISの基礎的な融合の可能性を検討し、技術的な課題を明らかにした。第二段階は、都市中心部における公共の複合文化施設に着目し、その鑑賞者1500名程度を対象に、その日の行動を時間地理学のツールを援用し、そのパスを記述し、イベント毎による状況を分析した。その結果、ギャラリーでの展示の鑑賞の様な時間の規定性が弱い場合は、周辺環境でのアクティビティが多様になること。一方映画のような時間の規定性が強い場合は、周辺環境でのアクティビティが特定の時間に集中することが明らかとなった。第三段階としては、都市中心部での舞台芸術施設を対象として、施設の立地特性が、実際の鑑賞行動及び周辺商店街を含めた波及効果の把握を行なった。具体的には、東京都内において、駅中心部から半径500m以内に複数の小劇場が立地する6地域を対象に、対象施設の様々な立地データ及び周辺商店街へのヒアリング、実際の施設ユーザー(劇団)へのアンケート調査などをもとに分析を行なった。その結果、施設の立地密度が高いことによって、鑑賞行動を選択する際に、高い選択性が生まれること。また、鑑賞行為が集積することにより、その施設及び地域全体の知名度及び鑑賞の質が発展することにより、そこでのユーザー及び公演そのものが多様に発展することが明らかとなった。また、これらの分析に際して、時間地理学とGISによる3次元表記は、施設条件の記述に課題が残るものの一定の成果がみられた。今年度は、主に2つの調査・考察を行なった。第一に、時間地理学上のGISによる記述の方法を検討した。まず、既往文献により技術的な可能性を検討したうえで、時間地理学の有識者へのヒアリング調査、GISのメーカーとの3次元のデータ記述の技術的な検討を行なった。その結果、都市中心部の調査データを3次元の時間地理学による表記への転換においては、幾つかの課題が存在するもののある程度の記述方法が可能であることを確認した。第二に、都市中心部に立地する都市型複合文化施設の利用者を対象に、時間地理学を援用した来館前後、普段の日常生活圏の調査・分析を行なった。まず、施設運営の状況、第1次調査として2001年に開館した仙台市中心部に立地する複合文化施設であるせんだいメディアテークの利用者を対象に、フェイスシートによる文化イベント(映画2、美術展示1)利用者の整理を行なった。また、施設周辺の立地状況のデータを時系列上でGIS上に整理し、施設立地の周辺の効果を捉えた。次に二次調査としてそれらの利用者から、マップ上の記述や普段の施設や文化イベントの利用状況、鑑賞当日の軌跡とそのプロセスにおける滞在時間を捉えた。パスの形状・移動手段・同伴者の有無などから日常生活圏との関連で、その施設の選択のみならず施設利用時の周辺へのアクティビティの誘発を生んでいることを把握した。更に複合した施設の用途が、施設内の滞在時間を増加させているだけはなく、一日に複数の利用もみられるなど、都市内にそれらの施設が立地することによる周辺施設へのアクティビティの波及効果を明らかにした。本研究は、時間地理学的観点から都市生活における鑑賞行動と施設の立地条件及びその周辺環境が行動そのものに及ぼす影響を明らかにしたものである。研究は、全体で3段階の構成で行なった。第一段階は、文献及び有識者からのヒアリングをもとに、時間地理学とGISの基礎的な融合の可能性を検討し、技術的な課題を明らかにした。第二段階は、都市中心部における公共の複合文化施設に着目し、その鑑賞者1500名程度を対象に、その日の行動を時間地理学のツールを援用し、そのパスを記述し、イベント毎による状況を分析した。その結果、ギャラリーでの展示の鑑賞の様な時間の規定性が弱い場合は、周辺環境でのアクティビティが多様になること。一方映画のような時間の規定性が強い場合は、周辺環境でのアクティビティが特定の時間に集中することが明らかとなった。第三段階としては、都市中心部での舞台芸術施設を対象として、施設の立地特性が、実際の鑑賞行動及び周辺商店街を含めた波及効果の把握を行なった。具体的には、東京都内において、駅中心部から半径500m以内に複数の小劇場が立地する6地域を対象に、対象施設の様々な立地データ及び周辺商店街へのヒアリング、実際の施設ユーザー(劇団)へのアンケート調査などをもとに分析を行なった。その結果、施設の立地密度が高いことによって、鑑賞行動を選択する際に、高い選択性が生まれること。また、鑑賞行為が集積することにより、その施設及び地域全体の知名度及び鑑賞の質が発展することにより、そこでのユーザー及び公演そのものが多様に発展することが明らかとなった。また、これらの分析に際して、時間地理学とGISによる3次元表記は、施設条件の記述に課題が残るものの一定の成果がみられた。 | KAKENHI-PROJECT-15760448 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15760448 |
人間の自然な動作を利用した携帯端末向け実世界指向インタフェース技術に関する研究 | 本年度第一四半期(4月6月)は、過去の開発技術を利用し、ARHunterという没入型のマルチプレイヤーエンタテイメントコンピューティング環境の開発を行った。ARHunterではプレイヤーの動作がゲームの入力として取り入れられており、プレイヤーは体を動かしてゲームを行うことができる。これによりより没入感や興奮度の高いゲーム環境を構築することができることがわかった。この研究成果は9月の国際会議にて発表している。第二四半期(7月9月)、第三四半期(10月12月)は、人間の動作を利用したインタフェースに関する調査を重点的に行った。特に、ラピッドプロトタイピングと呼ばれるインタフェースの開発手法に着目し、モバイルデバイスにおけるユーザインタフェースのラピッドプロトタイピングを支援するツールが多く提案されてはいないことを発見した。また、人間の動作をインタフェースに取り入れるには、センサなどに関するハードウェアの知識が多いこともわかった。そこで、モバイルデバイスにおける人間の動作を利用したインタフェースの開発を支援するツールキットの製作を行うこととした。第四四半期(1月3月)では、ツールキットの製作に向け、人間の動作を取得するためのセンサを取り扱うハードウェアの製作を行っている。本ハードウェアは、ハードウェアに関する知識がないユーザでも簡単に取り扱えるように、ユーザがマザーボード基板にセンサをはめ込むだけで使えるように設計されている。本年度第一四半期(4月6月)は、過去の開発技術を利用し、ARHunterという没入型のマルチプレイヤーエンタテイメントコンピューティング環境の開発を行った。ARHunterではプレイヤーの動作がゲームの入力として取り入れられており、プレイヤーは体を動かしてゲームを行うことができる。これによりより没入感や興奮度の高いゲーム環境を構築することができることがわかった。この研究成果は9月の国際会議にて発表している。第二四半期(7月9月)、第三四半期(10月12月)は、人間の動作を利用したインタフェースに関する調査を重点的に行った。特に、ラピッドプロトタイピングと呼ばれるインタフェースの開発手法に着目し、モバイルデバイスにおけるユーザインタフェースのラピッドプロトタイピングを支援するツールが多く提案されてはいないことを発見した。また、人間の動作をインタフェースに取り入れるには、センサなどに関するハードウェアの知識が多いこともわかった。そこで、モバイルデバイスにおける人間の動作を利用したインタフェースの開発を支援するツールキットの製作を行うこととした。第四四半期(1月3月)では、ツールキットの製作に向け、人間の動作を取得するためのセンサを取り扱うハードウェアの製作を行っている。本ハードウェアは、ハードウェアに関する知識がないユーザでも簡単に取り扱えるように、ユーザがマザーボード基板にセンサをはめ込むだけで使えるように設計されている。 | KAKENHI-PROJECT-05J11872 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05J11872 |
植物の細胞死制御因子の機能解析 | 本研究では植物細胞の生死の制御機構を分子レベルで解析する事を目的として研究を行っている。これまでの結果から、動物由来の細胞死促進因子(Bax)と植物由来の細胞死抑制因子(Bax Inhibitor-1)が、植物細胞内で機能的にクロストークすることを明らかにした。すなわち、動物の細胞死促進遺伝子であるBaxをシロイヌナズナに導入し、薬剤添加により発現誘導する系を開発した。この結果、Baxは植物にもアポトーシスと類似の細胞死を引き起こす事を明らかにした。また、すでに我々のグループが単離していた植物由来のBax Inhibitor-1(AtBI-1)遺伝子を共発現すると、細胞死が抑制された。これらの結果は、植物にもBaxの下流で作用し、細胞死の制御を行うカスケードが存在する可能性を示唆している。さらにAtBI-1タンパク質の機能を詳細に解明するため、酵母においてBax誘導性細胞死を抑制するために必要な機能ドメインの検索を行った。その結果、サイトゾル側に存在していると考えられるC末端領域14aaを欠失させたタンパク質(ΔC-AtBI)では、酵母における細胞死抑制活性が消失した。さらに、タバコ培養細胞BY-2株にAtBI-GFP及びΔC-AtBI-GFPを35Sプロモーターの下流に連結して導入した結果、AtBI-GFPを過剰発現する株はH_2O_2やサリチル酸(SA)が引き起こす細胞死を抑制したが、ΔC-AtBI-GFPを発現する株は、その活性を消失していた。コンピューターによるサーチの結果、AtBI-1タンパク質のC末端領域はcoiled-coil構造をとると予想されており、何らかの未知の因子との相互作用を介して機能している可能性がある。今後、アミノ酸置換による変異導入タンパク質の作成や、抗体を用いた生化学的手法により細胞死抑制の機構について解析を進める予定である。細胞が自ら死ぬ能力(プログラム細胞死)は多細胞生物が有する基本的、且つ重要な生命現象の一つである。中でも、アポトーシスと称される細胞死現象は、医学的興味から注目され精力的に研究が推進されている。植物においてもプログラムされた細胞死が形態形成、病害虫抵抗性、環境ストレス抵抗性の獲得等に重要な役割を担っていることが明白であるが、どのような機構を通して自発的に生死をコントロールしているのか、詳細は不明である。本研究では植物細胞死の制御機構の解明を目的として解析を行い、以下の成果を得た。本年度は特に、動物の細胞死促進因子であるBaxをシロイヌナズナに導入し、薬剤添加により発現誘導する系を開発した。この結果、Bax遺伝子が植物にもアポトーシスと類似の細胞死を引き起こす事を明らかにした。また、すでに我々のグループが単離していた植物由来のBax Inhibitor-1(AtBI-1)遺伝子を共発現すると、細胞死が抑制される現象も見いだした。これらの結果は、植物由来の細胞死抑制因子が、動物の細胞死促進因子と植物細胞内でクロストークする事を明確に示す。また、AtBI-1タンパク質の小胞体上への局在を、GFPを用いた実験により酵母及び植物細胞で決定した。さらに本遺伝子の植物における機能を明らかにするため、形質転換植物の作成、及び表現型の観察を現在進行している。これらの研究成果については、既にPNAS誌、及びFEBS Lett誌に報告した。また、新規の細胞死抑制因子として、酵母を用いたスクリーニングによりEBPを単離した。本遺伝子は酵母内でBax誘導性細胞死を抑制できる植物特異的な転写因子である。今後、これら因子の機能解析を酵母、植物を用いてさらに進める予定である。本研究では植物細胞の生死の制御機構を分子レベルで解析する事を目的として研究を行っている。これまでの結果から、動物由来の細胞死促進因子(Bax)と植物由来の細胞死抑制因子(Bax Inhibitor-1)が、植物細胞内で機能的にクロストークすることを明らかにした。すなわち、動物の細胞死促進遺伝子であるBaxをシロイヌナズナに導入し、薬剤添加により発現誘導する系を開発した。この結果、Baxは植物にもアポトーシスと類似の細胞死を引き起こす事を明らかにした。また、すでに我々のグループが単離していた植物由来のBax Inhibitor-1(AtBI-1)遺伝子を共発現すると、細胞死が抑制された。これらの結果は、植物にもBaxの下流で作用し、細胞死の制御を行うカスケードが存在する可能性を示唆している。さらにAtBI-1タンパク質の機能を詳細に解明するため、酵母においてBax誘導性細胞死を抑制するために必要な機能ドメインの検索を行った。その結果、サイトゾル側に存在していると考えられるC末端領域14aaを欠失させたタンパク質(ΔC-AtBI)では、酵母における細胞死抑制活性が消失した。さらに、タバコ培養細胞BY-2株にAtBI-GFP及びΔC-AtBI-GFPを35Sプロモーターの下流に連結して導入した結果、AtBI-GFPを過剰発現する株はH_2O_2やサリチル酸(SA)が引き起こす細胞死を抑制したが、ΔC-AtBI-GFPを発現する株は、その活性を消失していた。コンピューターによるサーチの結果、AtBI-1タンパク質のC末端領域はcoiled-coil構造をとると予想されており、何らかの未知の因子との相互作用を介して機能している可能性がある。今後、アミノ酸置換による変異導入タンパク質の作成や、抗体を用いた生化学的手法により細胞死抑制の機構について解析を進める予定である。 | KAKENHI-PROJECT-13740452 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13740452 |
日独における「固有文化」とグローバリゼーションの比較文化論的研究 | 1)日独における「アメリカニズム」に関しては、日独の思想・文学・宗教研究における「アメリカ・モデル」の位置づけを探究し、それが日独の「固有文化」とどのような影響関係をもってきたのかを、戦後ドイツにおける亡命知識人・文化人の果たした役割、戦後日本におけるアメリカ・イメージにもとづいて考察した。2)「正義」に関する言説と文化的コンテクストに関しては、アングロサクソン文化圏とドイツ、および日本において「正義論」がいかに異なった前提をもって展開したかを分析し、さらには正義の文化的位相の相違を対比研究した。3)「記憶」をめぐる言説の展開に関しては日独両文化において第二次世界大戦の記憶がどのように継承され、過去の克服という課題がいかに提起されたかを歴史的および哲学的に考察し、ひいては哲学的・宗教的記憶論がそこにどう反映しているかをも視野に収めた。4)グローバリゼーションの時代におけるアイデンティティ形成の諸問題に関しては、インターネット等の発達によってかえって私的サークルが増殖する現象を踏まえたうえで、日独における宗教的・文化的小集団などを歴史的に近代初頭にまで遡って考究し、その意義について検討した。5)文化の「固有性」の定義に関しては、世界標準に服することのない文化的文脈の固有性と、国際化への意識的対策として形成される固有性という二つの位相を区別し、この二重の意味における文化的固有性の概念、を明確化すると同時に、今後の日独における文化攻策をも展望する研究を行った。1)日独における「アメリカニズム」に関しては、日独の思想・文学・宗教研究における「アメリカ・モデル」の位置づけを探究し、それが日独の「固有文化」とどのような影響関係をもってきたのかを、戦後ドイツにおける亡命知識人・文化人の果たした役割、戦後日本におけるアメリカ・イメージにもとづいて考察した。2)「正義」に関する言説と文化的コンテクストに関しては、アングロサクソン文化圏とドイツ、および日本において「正義論」がいかに異なった前提をもって展開したかを分析し、さらには正義の文化的位相の相違を対比研究した。3)「記憶」をめぐる言説の展開に関しては日独両文化において第二次世界大戦の記憶がどのように継承され、過去の克服という課題がいかに提起されたかを歴史的および哲学的に考察し、ひいては哲学的・宗教的記憶論がそこにどう反映しているかをも視野に収めた。4)グローバリゼーションの時代におけるアイデンティティ形成の諸問題に関しては、インターネット等の発達によってかえって私的サークルが増殖する現象を踏まえたうえで、日独における宗教的・文化的小集団などを歴史的に近代初頭にまで遡って考究し、その意義について検討した。5)文化の「固有性」の定義に関しては、世界標準に服することのない文化的文脈の固有性と、国際化への意識的対策として形成される固有性という二つの位相を区別し、この二重の意味における文化的固有性の概念、を明確化すると同時に、今後の日独における文化攻策をも展望する研究を行った。本年度は、研究テーマの1.日独における「アメリカニズム」および2.「正義」に関する言説と文化的コンテクストを分析した。1に関して:北川と大石は、(a)旧西ドイツにおける「モデル」としてのアメリカ・イメージの展開、および(b)戦後ドイツの文化におけるアメリカの影響、とりわけ亡命知識人・文化人が社会的に果たした役割を考察した。岡部は、(c)戦後日本におけるアメリカ・イメージの展開をドイツにおける発展との対照という視点から考察した。2に関して:北川は、(a)ロールズなどによる「正義論」の展開を調査し、大石と協力して、(b)ドイツにおけるディスクルス倫理学を対照的に考察した。猪口は、(c)欧米の普遍主義に対して「アジア的価値」が対置され、日本的な観念が提唱される状況を考察した。上記の諸問題について、ドイツとアメリカの研究者のレビューを受けるため、大石と北川は海外旅費を使用した。また、社会科学の立場からのレビューを受けるため、ビーレフ・エルト大学社会学部のオットハイン・ラムシュテット教授を招き、東京大学大学院総合文化研究科・教養学部において研究会を行った。資料の分析のためにコンピュータを購入したが、当初購入を予定していた機種が生産中止となり、後継機種が納入されるのを待たざるを得なかったため、分析作業の開始が遅れたが、各研究分担者の努力で遅れを取り戻しつつある。本年度は、3.「記憶」をめぐる言説の展開および4.グローバリゼーションの時代におけるアイデンティティ形成の諸問題を考察した。3に関して:大石は、(a)グローバル化のもとでの「過去の克服」をめぐる日独における新たな言説の展開を、現代ドイツにおける「ヨーロッパ・ユダヤ人虐殺の警告碑」をめぐる論争などについて調査し、その政治文化的文脈を再構成する論考を作成した。北川は、(b)戦後ドイツにおける人文科学、とりわけ哲学における「過去の克服」の展開と、英米哲学の影響との関連について考察した。同時に両者は、(c)最近の日独における対照的な発展について新聞記事を中心に調査した。これに関して海外共同研究者としてベルリン・フンボルト大学のゲアハルト・クルッヘルト博士を招聘する予定であったが、博士の事情により来日が延期され、次年度以降に持ち越さざるを得なかった。4に関して:岡部は、(a)18世紀のヨーロッパにおける啓蒙以来の世俗化が同時にそれを補償する神秘主義的志向を培った歴史的事例を振り返るとともに、(b)現代の日本とドイツにおける新興宗教の展開を考察した。猪口は、(c)インターネットのホームページなどにおいて展開されている新たなサークルの展開とそこで形成される現代の「伝承」を、日独の文化的固有性との関連において調査した。 | KAKENHI-PROJECT-12410130 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12410130 |
日独における「固有文化」とグローバリゼーションの比較文化論的研究 | 資料の分析のためにコンピュータを購入したが、当初購入を予定していた機種が生産中止となり、後継機種が納入されるのを待たざるを得なかったため、分析作業の開始が遅れたが、各研究分担者の努力で遅れを取り戻しつつある。本研究では、グローバリゼーションの時代における「固有文化」の現状と将来を比較文化論的に考察することを行った。グローバリゼーションは、主として経済の領域における「世界標準」の達成という位相で語られることが多いが,文化の領域では画一化の危険が語られ,とりわけ「アメリカ化」という意味で理解されることがある。こうした流れの分析のために、本研究は日独の思想・文学研究における「アメリカ・モデル」の位置づけとそれぞれの自文化の伝統との関係を中心的な考察対象とした。その枠組みのなかで、個々の研究分担者が行った研究は以下の通りである。岡部:「宗教と世俗化」という問題に関してグローバル化の問題を考察した。特にドイツと日本における固有の宗教的伝統が現代の思想に与えている影響を中心的に見た。その成果として、東京大学・教養学部における連続講義とその連続講議をもととした論文集『語りえぬものからの問いかけ』(講談社より刊行)を編集・執筆した。北川:ハイデガー哲学の研究という範囲内で、日独における研究スタイルの違いを比較し、特に、「政治的なもの」というテーマがどのように位置づけられているかを見た。その際に、アメリカにおけるハイデガー研究が現在もっている影響力にたいして、それぞれの問題設定がどのように異なった解釈枠で受容されているかを中心的に考察した。その成果としては、2002年6月にヴッパタール・ハイデガー国際学会における発表「ハイデガーと地政学的方向付け」を行った。また、図書『ハイデガー-存在の謎について考える』(日本放送出版協会)を刊行した。 | KAKENHI-PROJECT-12410130 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12410130 |
ヒト固型がんの分化度と細胞接着分子の発現異常 | 高分化がん、低分化がん、未分化がんという病理学的分化度分類が、浸潤・転移能を含むがんの生物学的悪性度と良く相関することが知られている。そこで、このヒトがんの分化度と細胞接着分子の発現異常の関連を明らかにすることを本研究の目的とした。細胞接着分子を特異的に認識するモノクロ-ナル抗体は、モノクロ-ナル抗体が細胞接着を阻止する機能を持つことでスクリ-ニングして分離した。これまでに、ヒトPー、Eーカドヘリン、インテグリンα_2α_4β_1β_4に対するモノクロ-ナル抗体を分離している。ヒトがんの中でも細胞接着の不全の目立つ低分化がんの多い胃がんを対象に、Ca^<++>依存性細胞接着分子カドヘリンの発現を検討した。検索症例は手術で切除された54例で凍結切片を作製し、免疫組織化学的に検索した。Eーカドヘリンは分化型がんならびに細胞結合性を示す未分化がん全例に均一に発現していた。バラバラに増殖する未分化がんでは、分化型がん同様Eーカドヘリンを発現するもの(19例)と、Eーカドヘリンの発現を失うもの(4例)とがあった。免疫ブロットによる分子量の検索では、Eーカドヘリンの大きな異常は見い出されなかった。また、胃がんでは正常胃粘膜では増殖帯にわずかに発現するPーカドヘリンが強く発現するものがあった。結論として、胃がんが低分化になる場合において、カドヘリンの発現異常を伴うものと、それ以外の機序で細胞接着の異常が起こるものの2種類あることが解明された。高分化がん、低分化がん、未分化がんという病理学的分化度分類が、浸潤・転移能を含むがんの生物学的悪性度と良く相関することが知られている。そこで、このヒトがんの分化度と細胞接着分子の発現異常の関連を明らかにすることを本研究の目的とした。細胞接着分子を特異的に認識するモノクロ-ナル抗体は、モノクロ-ナル抗体が細胞接着を阻止する機能を持つことでスクリ-ニングして分離した。これまでに、ヒトPー、Eーカドヘリン、インテグリンα_2α_4β_1β_4に対するモノクロ-ナル抗体を分離している。ヒトがんの中でも細胞接着の不全の目立つ低分化がんの多い胃がんを対象に、Ca^<++>依存性細胞接着分子カドヘリンの発現を検討した。検索症例は手術で切除された54例で凍結切片を作製し、免疫組織化学的に検索した。Eーカドヘリンは分化型がんならびに細胞結合性を示す未分化がん全例に均一に発現していた。バラバラに増殖する未分化がんでは、分化型がん同様Eーカドヘリンを発現するもの(19例)と、Eーカドヘリンの発現を失うもの(4例)とがあった。免疫ブロットによる分子量の検索では、Eーカドヘリンの大きな異常は見い出されなかった。また、胃がんでは正常胃粘膜では増殖帯にわずかに発現するPーカドヘリンが強く発現するものがあった。結論として、胃がんが低分化になる場合において、カドヘリンの発現異常を伴うものと、それ以外の機序で細胞接着の異常が起こるものの2種類あることが解明された。 | KAKENHI-PROJECT-02152132 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02152132 |
ALS罹病者の療養環境整備の体系化に関する建築計画研究 | 本研究では、ALS罹病者の代表的な療養場所である在宅およびALS患者の第三の療養の場として注目を集めている福祉施設において、臥床ALS罹病者とその家族の生活を罹病者の視点から切り取り、今後の医療・福祉計画の一助となるALS患者の療養環境を明らかにすることを目的とし、以下の知見を得た。(1)ALS罹病者の生活展開はベッド上が主となるものの、身体状態や意思伝達の可否によって異なること、(2)住宅面積やベッド配置に伴う視界が療養環境に影響を与えていることを明らかにした。また、視覚だけではなく自身の家に漂う独特のホーム感や日常生活の音が罹病者に生きる活力を与え、意思伝達が困難となっても残存機能に働きかけるような刺激を作り出すことで、罹病者にとっての療養環境を提供できることを確認することができた。ベッド上で過ごすことが大半を占める罹病者に対して、私たち健常者はベッド上で過ごすことの意味を当事者の立場からもっとみつめなおさなければいけないだろう。視界という限られた「窓」に何を置き、何を見て病気の人生を過ごすのか。これは、一人の人間の尊厳を考えることにつながる課題であると思われ、国の政策と含めた総合的な療養環境の体制づくりが望まれる。本研究では、ALS罹病者の代表的な療養場所である在宅およびALS患者の第三の療養の場として注目を集めている福祉施設において、臥床ALS罹病者とその家族の生活を罹病者の視点から切り取り、今後の医療・福祉計画の一助となるALS患者の療養環境を明らかにすることを目的とし、以下の知見を得た。(1)ALS罹病者の生活展開はベッド上が主となるものの、身体状態や意思伝達の可否によって異なること、(2)住宅面積やベッド配置に伴う視界が療養環境に影響を与えていることを明らかにした。また、視覚だけではなく自身の家に漂う独特のホーム感や日常生活の音が罹病者に生きる活力を与え、意思伝達が困難となっても残存機能に働きかけるような刺激を作り出すことで、罹病者にとっての療養環境を提供できることを確認することができた。ベッド上で過ごすことが大半を占める罹病者に対して、私たち健常者はベッド上で過ごすことの意味を当事者の立場からもっとみつめなおさなければいけないだろう。視界という限られた「窓」に何を置き、何を見て病気の人生を過ごすのか。これは、一人の人間の尊厳を考えることにつながる課題であると思われ、国の政策と含めた総合的な療養環境の体制づくりが望まれる。本研究は、重篤な病気や障害によたて臥床生活を余儀なくされる罹病者のための療養環境を明らかにすることを目的とし、その対象者としてALS(筋萎縮性側索硬化症)患者に焦点を当て、臥床者の視点で見た「空間の役割」を明らかにすることを機軸に置いている。臥床者の視点で研究を行うことにたいては、様々な研究者らが試みつつも、認知症や様々な障害によたて発話が困難な場合が多く、当事者に対して意見を求めることができないという困難さがあった。そのため、介護者の視点からの療養環境整備が進められ、臥床者の視点での整備が取り残されてきたという現実がある。その点、本研究はALS罹病者を対象とすることにより、臥床者の視点を浮き彫りにすることが可能となった。20年度はフィールドワークを機軸に置き、在宅と施設の両面から調査を行った。在宅調査は、近畿地方と東海地方のALS協会へ協力を依頼し、実際に患者が住まう自宅へと訪問し、計測調査ならびにヒアリング調査を実施した。施設については、2施設へのヒアリング調査と訪室頻度・実測調査を行った(内1施設)。施設の調査結果は分析中であるが、在宅にたいては(1)人工呼吸器を装着しているALS罹病者21名のうち、発症後に住まいを変更している人は20名でその割合は非常に高い。変更内容は、新築4名、転居2名、増築4名、改修8名、模様替え3名であり、増築・改修をあわせると過半数を占めていること、(2)主要階の住宅面積と住まいの対応(増築・改修・新築)に大きな関係はみられなかったが、見守りやすくするため全ての間仕切りを外しワンルームとして使用する例などが確認されている。筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis : ALS)は、成年期以降に大脳運動皮質錐体細胞から脊髄に至る上位運動ニューロンおよび下位運動ニューロンが選択的に障害される神経変性疾患であり、1972年に厚生省より難病に指定されたという経緯がある。ALS罹病者の療養を支えるためには、医療・看護・福祉面でのアプローチに加えて、機能の低下に伴いALS罹病者の身体の一部になっていく機器・器具類、介護者などを含めた療養特性を明らかにし、療養環境を整えることが必要であると考えられる。そこで本研究では、ALS罹病者の代表的な療養場所である在宅およびALS患者の第三の療養の場として注目を集めている福祉施設において、臥床ALS罹病者とその家族の生活を罹病者の視点から切り取り、今後の医療・福祉計画の一助となるALS患者の療養環境を明らかにすることを目的とし、以下の知見を得た。(1)ALS罹病者の生活展開はベッド上が主となるものの、身体状態や意思伝達の可否によって異なること、(2)住宅面積やベッド配置に伴う視界が療養環境に影響を与えていることを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-20760423 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20760423 |
ALS罹病者の療養環境整備の体系化に関する建築計画研究 | また、視覚だけではなく自身の家に漂う独特のホーム感や日常生活の音が罹病者に生きる活力を与え、意思伝達が困難となっても残存機能に働きかけるような刺激を作り出すことで、罹病者にとっての療養環境を提供できることを確認することができた。ベッド上で過ごすことが大半を占める罹病者に対して、私たち健常者はベッド上で過ごすことの意味を当事者の立場からもっとみつめなおさなければいけないだろう。視界という限られた「窓」に何を置き、何を見て病気の人生を過ごすのか。これは、一人の人間の尊厳を考えることにつながる課題であると思われ、国の政策と含めた総合的な療養環境の体制づくりが望まれる。 | KAKENHI-PROJECT-20760423 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20760423 |
総合商社の生成・発展と運動メカニズムの基礎的研究 | 日本独自の商社形態として、1900年代から1910年代にその内実をかためた総合商社=三井物産を分析対象として、研究をすすめた。その際、まず商社内競争の局面から考察するという視角から分析をはじめ、ついで商社間競争の局面から考察するという視角をとった。その理由は、商社間競争が商社内競争に支えられて展開する、商社内競争こそが商社間競争をおこなうための原動力となっているからである。商社内競争に関しては、各店・各部・各課の独立採算制度や予算・経費査定制度などの変遷・内容を分析し、ほぼ1910年代に、強力なインセンティブを職員層に与え商品取引への積極的取組みを促す機構が内部に形成されたことを明らかにした。ついで、この商社内競争を促進する機構と連動しながら、商社間競争を積極的・攻勢的におこなうための機構が形成されていくことを検討した。すなわち、共通計算制度→首部制度→部制度へという発展についてである。この制度は、東アジアにおける商習慣、外国商社の活動形態に規定されながら、これらから受ける制約をうち破ろうとする過程で形成されたものである。三井物産は、これらの制約をうち破ろうとして、一手販売方式と見込商売方式を採用した。これらの方式のうち、とくに後者の方式が部制度形成を促す基本的要因であり、しかも前者の方式も部制度と親和的性格を持っていた。三井物産は、部制度によってリスクを管理するとともに、(1)大量の信用供与によって花主・販売先を確保し商品量を拡大する方式、(2)迅速に各店・各部間の貸借関係を決済し、三井物産内部の資金の流れを本店本部がコントロ-ルして、多額の調達資金のコストを低減する本店集中型資金流通方式などを採用し、攻勢的に商社間競争をおこなったのである。日本独自の商社形態として、1900年代から1910年代にその内実をかためた総合商社=三井物産を分析対象として、研究をすすめた。その際、まず商社内競争の局面から考察するという視角から分析をはじめ、ついで商社間競争の局面から考察するという視角をとった。その理由は、商社間競争が商社内競争に支えられて展開する、商社内競争こそが商社間競争をおこなうための原動力となっているからである。商社内競争に関しては、各店・各部・各課の独立採算制度や予算・経費査定制度などの変遷・内容を分析し、ほぼ1910年代に、強力なインセンティブを職員層に与え商品取引への積極的取組みを促す機構が内部に形成されたことを明らかにした。ついで、この商社内競争を促進する機構と連動しながら、商社間競争を積極的・攻勢的におこなうための機構が形成されていくことを検討した。すなわち、共通計算制度→首部制度→部制度へという発展についてである。この制度は、東アジアにおける商習慣、外国商社の活動形態に規定されながら、これらから受ける制約をうち破ろうとする過程で形成されたものである。三井物産は、これらの制約をうち破ろうとして、一手販売方式と見込商売方式を採用した。これらの方式のうち、とくに後者の方式が部制度形成を促す基本的要因であり、しかも前者の方式も部制度と親和的性格を持っていた。三井物産は、部制度によってリスクを管理するとともに、(1)大量の信用供与によって花主・販売先を確保し商品量を拡大する方式、(2)迅速に各店・各部間の貸借関係を決済し、三井物産内部の資金の流れを本店本部がコントロ-ルして、多額の調達資金のコストを低減する本店集中型資金流通方式などを採用し、攻勢的に商社間競争をおこなったのである。 | KAKENHI-PROJECT-02803008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02803008 |
農害虫の活動制御のための物理的アプローチ | イネに振動を与え,ウンカを誘因する農業機械の開発のための基礎的実験を行った。得られた知見は以下の通りである。1.加振および測定システムの開発について擬似生物振動を加振源としたイネの微小振動解析,および擬似生物振動を自由に作成できる装置の開発のために,微小な振動の測定が可能な超軽量の加速度センサであるAEセンサ(NF AE-903N)を加振と測定に用いた。加振波形はFunction Synthesizer(NF 1915)で決定し,出力信号はAmplifer,AE Discriminatorを通じて,Oscilloscopeを用いて測定を行った。この結果,砂糖粒一つの落下によってイネの茎に伝えられるわずかな振動レベル,あるいは指先でイネの茎を軽く擦るわずかな振動レベルについて時間領域での解析および,FFT Analyzerによる周波数領域の解析を可能とし,ウンカの振動を測定できる可能性を明らかにした。2.稲の微少振動伝達特性についてイネ(コシヒカリ:筑波大学農林技術センター1996年産)に対する入力信号として,主に矩形波によるパルス波形によってイネを振動させ,距離,あるいは茎葉の位置によって振動がどの程度減衰するかを測定した。その結果,AEセンサの加振および測定方向を,イネの茎に対して垂直方向にした場合は,その二つのAEセンサの距離が50mmを越えると測定不可能になった。一方で入力を,イネの茎の軸方向に変化させた場合は,加振パルスによる測定振動の最大振幅は指数関数的に減少するものの,二つのAEセンサの距離が250mmを越えても測定可能であった。よって,パルスの加振振動は,茎に対しての軸方向に加振するのが,ウンカを誘因する上で有効であることを明らかにした。イネに振動を与え,ウンカを誘因する農業機械の開発のための基礎的実験を行った。得られた知見は以下の通りである。1.加振および測定システムの開発について擬似生物振動を加振源としたイネの微小振動解析,および擬似生物振動を自由に作成できる装置の開発のために,微小な振動の測定が可能な超軽量の加速度センサであるAEセンサ(NF AE-903N)を加振と測定に用いた。加振波形はFunction Synthesizer(NF 1915)で決定し,出力信号はAmplifer,AE Discriminatorを通じて,Oscilloscopeを用いて測定を行った。この結果,砂糖粒一つの落下によってイネの茎に伝えられるわずかな振動レベル,あるいは指先でイネの茎を軽く擦るわずかな振動レベルについて時間領域での解析および,FFT Analyzerによる周波数領域の解析を可能とし,ウンカの振動を測定できる可能性を明らかにした。2.稲の微少振動伝達特性についてイネ(コシヒカリ:筑波大学農林技術センター1996年産)に対する入力信号として,主に矩形波によるパルス波形によってイネを振動させ,距離,あるいは茎葉の位置によって振動がどの程度減衰するかを測定した。その結果,AEセンサの加振および測定方向を,イネの茎に対して垂直方向にした場合は,その二つのAEセンサの距離が50mmを越えると測定不可能になった。一方で入力を,イネの茎の軸方向に変化させた場合は,加振パルスによる測定振動の最大振幅は指数関数的に減少するものの,二つのAEセンサの距離が250mmを越えても測定可能であった。よって,パルスの加振振動は,茎に対しての軸方向に加振するのが,ウンカを誘因する上で有効であることを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-08760231 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08760231 |
折りたたみ構造を有しない低分子量ポリヒドロキシ酪酸による結晶構造と水素結合の研究 | 微生物由来の生分解性高分子であるポリヒドロキシブタン酸(PHB)は、結晶構造中に弱い水素結合が存在し、それが結晶構造の安定化に寄与していることが分かっている。本研究では、分子量の小さいPHBを用いて結晶構造を形成していく様子を、赤外、ラマン、THzおよび時間分解小角広角X線散乱同時測定により調べた。その結果、分子鎖が短く折りたたみ構造を形成しない場合は、水素結合が分子鎖を配向させる駆動力となり結晶構造を形成しており、PHBの分子量が2000-3000より大きいと水素結合が結晶構造を安定化させる働きをすることが分かった。これまでの我々の研究でPHBの結晶構造中には分子間に弱い水素結合(CH...O=C水素結合)が存在し、それが結晶構造の安定化に寄与していることが分かっている。本研究では、極めて分子量の小さい(分子量1000)ポリヒドロキシブタン酸(PHB)を用いて、テラヘルツ分光測定、ラマン分光測定、赤外分光測定、および時間分解小角広角X線散乱(SAXS/WAXD)同時測定を行うことで、折りたたみ構造の有無による高分子の結晶構造形成過程の違いを明らかにすることを目的としている。平成27年度は、ラメラ厚程度の長さしかない低分子量PHB(分子量1000)および折りたたみ構造を有するPHB(分子量2.9X10^5)の結晶構造形成過程を、赤外、ラマンスペクトルの温度変化測定、放射光を利用した時間分解SAXS/WAXD同時測定を併せ用いて調べ、結晶構造形成過程に伴う水素結合形成過程、格子定数、ラメラ厚、結晶化度の変化等から、官能基レベルの情報とを併せて、分子全体の熱挙動を総合的に調べた。放射光施設での実験はSPring-8(FSBL03XU)で実施した。それにより、以下の結果を得た。赤外分光測定の結果より、Mn=1000の低分子量PHBの結晶化挙動において、C-H...O=C水素結合は結晶構造を安定させる役割を担っていた。一方、折りたたみ構造を有するPHB(分子量2.9X10^5)では、結晶構造形成の駆動力としての役割を果たしていた。また時間分解SAXS/WAXD同時測定からは、分子鎖が非常に短いために、結晶構造形成過程において隣同士のラメラ晶が合併し、より大きな積層構造を形作っていくことが示唆された。「研究の目的」および「研究実施計画」で示した内容をおおむね実行することができている。Mn=1000の低分子量PHBの結晶化挙動については、赤外・ラマン分光法および時間分解SAXS/WAXD同時測定を用いて、徹底的に解析を進めることができた。それにより、PHBの結晶構造中に存在するC-H...O=C水素結合は、分子量が小さく折りたたみ構造を有さないときは安定させる役割を担っており、折りたたみ構造を有する場合には結晶構造形成の駆動力として働いていることが示された。また時間分解SAXS/WAXD同時測定においても、再現性を含めた実験を行うことができた。本研究では分子量の小さいポリヒドロキシブタン酸(PHB)を用いて、テラヘルツ分光測定、ラマン分光測定、赤外分光測定、および時間分解小角広角X線散乱(SAXS/WAXD)同時測定を行うことで、折りたたみ構造の有無による高分子の結晶構造形成過程の違いを明らかにすることを目的としている。28年度は、27年度に得られた結果をもとに、分子量依存性についても結晶構造形成過程の違いや、分子鎖間に働くC-H・・・O=C水素結合の強さの違いについて検討した。水素結合の強さに関しては、どの分子量のPHBにおいてもほぼ同じであり、結晶構造にも違いは確認できなかった。しかしながら、結晶構造形成過程においては、この弱い水素結合の形成が結晶構造を安定化させる働きをするのか、分子鎖の整列させる駆動力になるのかが、PHBの分子量が2000-3000を境に異なることが示された。この分子量2000-3000の値は、ちょうどPHBの分子鎖の長さが、PHBがラメラ構造を形成したときのラメラ厚に相当するものである。つまり、PHBが結晶構造を形成する際に、分子鎖の折りたたみの有無によって弱い水素結合の役割が異なるのである。このことは、分子鎖が短く、結晶構造において折りたたみ構造を形成しない場合は、分子鎖が配向することで結晶構造を形成しており、分子鎖間の水素結合がこの分子鎖を結びつけて安定化させているのである。そして、折りたたみ構造を有しない場合はラメラ構造が合体成長をすることが示された。また、折りたたみ構造を形成する場合には、まず水素結合が形成され、それが結晶ラメラの構造形成へと繋がっていくことが示された。当該年度に実施した研究の成果について、交付申請書に記載した「研究の目的」および「研究実施計画」と照らし合わせると、量子化学計算については、まだ十分な結果は出ていないものの、テラヘルツ分光法や赤外分光法などによる結果は当初の研究計画以上の成果をあげており、全体として、おおむね順調に進展しているといえる。折りたたみ構造を有しない低分子量ポリヒドロキシ酪酸による結晶構造と水素結合の研究についてテラヘルツ分光測定、ラマン分光測定、赤外分光測定、および時間分解小角広角X線散乱(SAXS/WAXD)同時測定を行い、総合的に調べた。特に、分子量依存性についても結晶構造形成過程の違いや、分子鎖間に働くC-H---O=C水素結合の強さの違いについて検討した。 | KAKENHI-PROJECT-15K05629 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K05629 |
折りたたみ構造を有しない低分子量ポリヒドロキシ酪酸による結晶構造と水素結合の研究 | その結果、水素結合の強さに関しては、どの分子量のPHBにおいてもほぼ同じであり、結晶構造にも違いは確認できなかった。しかしながら、結晶構造形成過程においては、この弱い水素結合の形成がPHBの分子量が2000-3000を境に、結晶構造を安定化させる働きをする場合と、分子鎖の整列させる駆動力になる場合に分類することができた。この分子量2000-3000の値は、ちょうどPHBの分子鎖の長さが、PHBがラメラ構造を形成したときのラメラ厚に相当するものである。つまり、PHBが結晶構造を形成する際に、分子鎖の折りたたみの有無によって弱い水素結合の役割が異なるのである。このことは、分子鎖が短く、結晶構造において折りたたみ構造を形成しない場合は、分子鎖が配向することで結晶構造を形成しており、分子鎖間の水素結合がこの分子鎖を結びつけて安定化させていると考えられる。そして、折りたたみ構造を有しない場合はラメラ構造が合体成長をすることが示された。また、折りたたみ構造を形成する場合には、まず水素結合が形成され、それが結晶ラメラの構造形成へと繋がっていくことが示された。微生物由来の生分解性高分子であるポリヒドロキシブタン酸(PHB)は、結晶構造中に弱い水素結合が存在し、それが結晶構造の安定化に寄与していることが分かっている。本研究では、分子量の小さいPHBを用いて結晶構造を形成していく様子を、赤外、ラマン、THzおよび時間分解小角広角X線散乱同時測定により調べた。その結果、分子鎖が短く折りたたみ構造を形成しない場合は、水素結合が分子鎖を配向させる駆動力となり結晶構造を形成しており、PHBの分子量が2000-3000より大きいと水素結合が結晶構造を安定化させる働きをすることが分かった。平成27年度に引き続きラマン赤外スペクトルの温度変化測定、時間分解SAXD/WAXD同時測定を続けると共に、テラヘルツスペクトルの温度変化測定を行う。それらの結果を総合的に検討し、結晶構造形成過程と分子間水素結合の関係を詳細に検討する。また、分子量1000だけでなく、分子量5000, 6.5×105のPHBと比較することで、分子鎖の折りたたみ構造の有無による違いについても詳しく調べる。本研究課題の今後の推進方策については、現在までの研究計画がおおむね順調に進展していることから、交付申請書に記載した通り進めていく。高分子化学 | KAKENHI-PROJECT-15K05629 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K05629 |
エスニック空間をめぐる戦略的都市経営と社会・文化的機能の変化 | 本年度は、1)エスニックな要素で特徴づけられた空間(以下、エスニック空間)が移民の相互扶助の場から観光地へと変化するメカニズムの考察、2)そうした変化において生じる問題の検討、3)論文投稿による成果発表、の3点を中心に研究を進めた。1)については、リトル・イタリー地区に対する社会的認識は、1960年代までの負のイメージから1970年代のファッショナブルなイメージへとその認識が変化していたことが確認できた。このことから、同地区に対する社会的認識の変化が観光地化を可能とする素地になったといえ、さらにそうした素地はその後の同地区の都市経営的動きの展開をも生じさせたと考えられた。都市経営的動きをめぐっては、同地区の1985年のBusiness Improvement Area(以下、BIA)の加盟が地区のイタリアを主題とするまちづくりの契機となったと既存研究で指摘されてきた。しかし、BIAの設立は重要な契機ではあるものの、本研究の分析によると現実にみられる空間の変化はより漸次的に生じていたことがわかった。2)については、既存研究においてエスニック空間の観光地化は特定のエスニシティが選択的に観光地化されていると指摘されてきた。本研究の分析からは、観光地化をはじめとする都市経営的動きの展開を引き起こすには、それを可能とさせる社会的認識という素地が重要である点が明らかとなった。一方、エスニック空間を構成する主体の入れ替わりも生じている。背景には、観光地化にともないリトル・イタリー地区の商業地としての価値が高まったことでイタリア系以外の多様な店舗経営者が同地区に流入したことが指摘できる。同地区は都市計画上はイタリア系エスニック空間として維持されているが、実態はイタリア系経営者離れという乖離が生じている。3)については、1)2)の内容をまとめ国内誌・海外誌へ論文として投稿準備中である。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。本年度は、(1)トロント市の都市政策に関する資料の整理と、(2)これまでの現地調査で得られた聞取り調査等の結果の分析作業を中心に取り組んだ。具体的な作業としては、(1)は、既存研究と行政資料をもとに、1900年以降のトロントの都市計画の実施過程および都市構造の変化を時系列的に整理した。(2)は、行政への聞取り調査結果をもとに、トロント市の商業的自助組織であるBusiness Improvement Areaの活動の目的・実施状況を確認した。また、平成27年3月にトロント市で行った本研究に関連する調査で想定以上の成果を得ることができたため、平成28年度は、その成果をふまえて研究全体の枠組みを見直す必要が生じた。よって、当初の平成28年度の研究計画に加え、以下(3)(5)の作業を追加的に実施した。(3)平成27年3月の調査で入手した1946年・1961年・1971年・1981年・1990年・2001年のリトル・イタリー地区の電話帳(商業店舗名と居住者氏名が記載されているもの)を用い、同地区の商業店舗・居住者の変化に関するデータベースを作成した。(4)カナダの主要新聞2紙(Toronto Star紙・Globe and Mail紙)のアーカイブを用い、1946年・1961年・1971年・1981年・1990年・2001年に掲載された2紙すべての記事から「Little Italy」という語を含む記事を抜粋し、データベースを作成した。(5)作業(3)(4)をふまえ、リトル・イタリー地区の商業店舗・居住者の変化と、カナダ社会のリトル・イタリー地区に対するまなざしの変化という視点から、同地区の変遷の検討を試みた。(5)の作業は未完了であり、平成29年度も継続して実施する。以上の成果の一部は、日本地理学会秋季学術大会の一般発表および研究グループで発表した。研究の進捗状況としては、研究枠組みの見直しにともない、研究計画に一部変更が生じたが、おおむね順調に進展している。具体的には、平成27年3月に実施した現地調査の成果を受けて、下記に記載した経緯から、研究の枠組みを見直した。それにともない研究計画を一部変更したことで、当初の平成28年度の年間計画として記した作業内容の一部は未完了である。しかし、当初の年間計画としては予定していなかった追加的作業から、本研究の目的の達成に通じる大きな成果が得られたため、全体としては、おおむね順調に進展していると評価できる。研究の枠組みを見直した経緯は、以下のとおりである。本研究の目的を達成する第一段階として、エスニックな要素で特徴づけられた空間(以下、「エスニック空間」)が、移民の相互扶助の場から、いわゆる観光地へと変化するメカニズムを明らかにする必要がある。そのメカニズムについて言及した既存研究の多くは、エスニック空間の観光地化を「新自由主義的動向」の一部として説明してきた。しかし、既存研究の検討と対象地に関する情報を収集するなかで、新自由主義的動向は1980年代以降に生じた動きであり、その影響は一律ではなく、各地のエスニック空間がどのような歴史的経緯を経てきたのかによって異なる可能性が示唆された。それゆえ、エスニック空間が観光地化したメカニズムについて考察する前段階として、カナダ特有の状況を含め、対象地とするエスニック空間の歴史的経緯を精緻に把握する必要があると考えた。以上をふまえ、「研究実績の概要」に記載した作業(3)(5)を当初の年間計画に追加して実施した。 | KAKENHI-PROJECT-16J05631 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J05631 |
エスニック空間をめぐる戦略的都市経営と社会・文化的機能の変化 | 近年、エスニックな要素で特徴づけられた空間(以下、「エスニック空間」)は、従来研究で指摘されているような移民の相互扶助の場としてだけでなく、多様な主体によって管理・運営される都市経営的側面と、同胞者の社会的紐帯の拠点という社会・文化的機能をもつ場へと変化しつつあることが示唆されている。本研究は、そうしたエスニック空間の変遷メカニズムを明らかにすることを通して、エスニック空間における都市経営的側面と社会・文化的側面の結び付きを解明することを目的としている。本年度は、昨年度に作成したリトル・イタリー地区の電話帳データベース及び同地区について記載された新聞記事データベースを用い、同地区がどのように変化してきたのか分析・考察した。具体的には、(1)電話帳の分析から明らかとなった1946年・1961年・1971年・1981年・1990年・2001年のリトル・イタリー地区の商業店舗・居住者の移り変わりと、新聞記事の分析から明らかとなったカナダ社会における同地区に対するまなざしの変化を分析・考察した。その上で、(2)同地区において、エスニック空間が、移民の相互扶助の場から、いわゆる観光地へと変化するメカニズムを明らかにすることを試みた。(1)・(2)で得られた成果は、第二次大戦後のリトル・イタリー地区の変遷メカニズムを、同地区に実際に存在した商業店舗・居住者の移り変わりに着目して明らかにしたものであり、都市経営的側面と社会・文化的機能の結び付きを捉える上で重要な成果といえる。なお、(1)・(2)の成果の一部を新潟地理談話会で発表した。また、成果の詳細な内容については、国内学術雑誌に論文として投稿する予定である。本年度は、病気による研究の中断に伴い、実施計画の一部が遂行できなかった。そのため、研究計画の進捗は、やや遅れていると自己評価した。本研究は、理論的研究と、都市経営的側面及び社会・文化的側面の実証的分析から構成される。なお、上述の平成29年度に実施した(1)・(2)の成果は、当初計画していた実証的分析を補強するために追加で行ったものである。理論的分析については、エスニック空間をめぐる都市経営的側面と社会・文化的側面を扱った既存研究を整理した。実証的分析については、上述の(1)・(2)の作業を行った上で、都市経営的側面に関しては当初の研究計画を概ね完了したが、社会・文化的側面に関しては、研究の中断等の影響から研究計画の一部は未完了である。具体的には、当初の研究計画では、トロントに居住するイタリア系住民にとってリトル・イタリー地区がどのような場として認識されてきたのか、また、移民世代間の認識の変化を明らかにするために、Association for the Memory of Italo-Canadian Immigrants(イタリア系カナダ協会)に対する調査を予定していた。だが、ホームページ等を通じて複数回接触を試みたものの、未だ調査協力の承諾が得られていない状況である。そのため、次年度は現地で同団体に直接調査協力を依頼する等、引き続きアポイントメントが得られるよう努めるとともに、代替措置の検討が必要だろう。 | KAKENHI-PROJECT-16J05631 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J05631 |
2流体プラズマを用いた次世代磁気圏シミュレーションモデルの開発 | MHDシミュレーションを拡張して、陽解法による2流体プラズマシミュレーションの開発を進めた。実行テストにおいて、非物理的振動が見られるため、方程式系を含め、見直しが必要な状況である。陽解法では光速で、計算の時間ステップが規定されてしまうため、陰解法の導入を調査したが、計算結果がなまってしまう現象を回避するためには時間ステップを短くするしかなく、陽解法と比べて計算時間的にはそれほど優位性がなかった。このように開発しているシミュレーションは計算時間がかかるため、並列計算が必須であるが、新しい通信モデルを導入することでエクサスケール環境においても高い並列計算性能を発揮できることが確認できた。陽解法による2流体プラズマシミュレーションモデルの開発を開始した。現在研究で利用しているMHDシミュレーションは、ブラソフ方程式から求まる2流体方程式の電子流体とイオン流体を同じ流体と近似することで求まるMHD方程式を解いている。そのため2流体プラズマの方程式系はMHD方程式と構造が似ており、陽解法による2流体プラズマシミュレーションを開発する場合、陽解法MHDシミュレーションコードが活用できる。現在研究で利用しているMHDシミュレーションを拡張して、2流体シミュレーションモデルの開発を行っている。現在1次元MHDシミュレーションコードから開発した2流体プラズマシミュレーションコードを利用し、3次元化を行っている。簡単なテストにおいて、非物理的振動が見られるため、方程式系を含め、見直し中である。また、陽解法では光の速さで規定されてしまうため、現実的にはシミュレーション時間を進めることが難しい。そこで、陰解法を導入することにより時間発展を速く計算できないか調査した。3次元2流体プラズマシミュレーションでは陰解法がまだ利用されていないが、MHDシミュレーションやHallーMHDシミュレーションに適用された例があり、その調査を行った。その結果、数式的には問題が無いようだが、定常状態では無く、非定常状態を見る場合では、過渡的な現象が時間積分時になまる恐れがあると分かった。そのため、陰解法を導入する場合、時間ステップの取り扱いに注意する必要がある。本年度は陽解法による2流体プラズマシミュレーションモデルの開発を昨年度に引き続き行った。2流体プラズマシミュレーションは現在研究で利用しているMHDシミュレーションに比べ、扱う物理変数が多く、また時間を進める時間ステップが短いためシミュレーションを実行すると、計算量が多く計算時間がかかる。そのため開発中のシミュレーションコードを評価するために計算機で走らせる場合には、並列計算機を多く使う必要がある。その際、上記のMHDシミュレーションと比べた性質の違い(データ量、時間ステップ)から、通信時間が大きくなり、並列計算での実効速度劣化が非常に大きくなっていた。この問題に対処するために、新しく計算と並列計算に伴う通信の最適化を行った。今まではMHDシミュレーションで用いていた通信順序性がありプログラミングしやすいモデルだったが、本研究では通信を細分化することで、その順序性を無くし、通信とそれに伴うデータパック・アンパック処理をオーバーラップさせることが可能となり、計算速度劣化を抑えることに成功した。現在はさらに通信スレッドを用いて通信時間自体を隠蔽できる手法を作成している。今後の並列計算機では計算コア数が増えることが想定されており、モデル開発時から通信専用コア向け実装を行うことは非常に重要と考えられる。また、陰解法について調査を引き続き行った。陰解法では時間変化が大きい問題に対して、計算結果がなまってしまう性質があり、それを回避するためには結局時間ステップを短くするか、変動成分をうまく残すような計算を加える必要があり、結果として陽解法とそれほど計算時間が変わらないことも示唆されていた。このような手法やその高速化は研究として時間がかかる問題であることも分かったので、今後の研究課題としてさらに調査を進める。昨年度から作成を始めていた通信スレッドを用いた通信時間隠蔽手法は、通信時間の隠蔽という点では利点があるが、計算に割り当てるスレッドが減るため、計算自体の性能が下がる可能性があった。このため、通信スレッドの概念を進化させ、通信とその結果が必要な計算を行うスレッドHaloスレッドを作成した。このように通信結果が必要な計算までも同じスレッドに担当させると、他のスレッドとは同期を取る必要が無く(通信結果が必要無いため)、同期待ち時間の排除に成功し、また、一定量の計算もHaloスレッドでは行われるため、計算自体の性能低下もある程度抑えることが可能となった。この手法により高並列時においても並列性能を維持できるようになった。また、昨年に引き続き陰解法の調査を行い、見たい現象(イオンー電子の挙動の違い)をグローバルに計算するためには陰解法で解く場合であっても時間分解能を上げる必要があり、陽解法と比べて計算時間的にはそれほどアドバンテージがあるものではなく、むしろ現象自体がなまる傾向がある分、最適な手法ではないという結論に至った。MHDシミュレーションを拡張して、陽解法による2流体プラズマシミュレーションの開発を進めた。実行テストにおいて、非物理的振動が見られるため、方程式系を含め、見直しが必要な状況である。陽解法では光速で、計算の時間ステップが規定されてしまうため、陰解法の導入を調査したが、計算結果がなまってしまう現象を回避するためには時間ステップを短くするしかなく、陽解法と比べて計算時間的にはそれほど優位性がなかった。このように開発しているシミュレーションは計算時間がかかるため、並列計算が必須であるが、新しい通信モデルを導入することでエクサスケール環境においても高い並列計算性能を発揮できることが確認できた。シミュレーションモデルの評価のために必要な開発が26年度は主だった。評価可能な環境、モデルが準備できたので、少し遅れているが、モデルの完成度の確認、プロダクトランに耐えうるかの確認まで進んでいる。 | KAKENHI-PROJECT-25800275 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25800275 |
2流体プラズマを用いた次世代磁気圏シミュレーションモデルの開発 | 高性能計算、太陽地球系物理学大規模計算環境でシミュレーションモデルの評価を引き続き行い、その妥当性を検証する。陰解法に関しては扱う物理次第(時空間で大きく変動するなど)で適用が難しい場合があるため、このまま陽解法で開発は進めていく。陽解法3次元2流体シミュレーションモデルの大枠は開発ができ、あとはシミュレーションパラメータの調整を残すだけとなっているため、研究計画に近いところまで実施できている。また、研究計画にある陰解法の調査は問題無く実施でき、来年度以降に開発する陰解法モデルへの注意点が明確になっている。購入予定サーバが製品のアップデート時期であり、予定の半分程度の性能のサーバを購入したため、残額が生じた。現在、作成中の3次元モデルを完成させ、長時間ジョブを行い、その妥当性を検証する。このデータは保存しておき、次に開発する陰解法モデルでの計算結果と比較をし、モデルの妥当性を調査する。ここで陰解法の時間ステップの調整を行う。陽解法を用いた2流体プラズマシミュレーションでは、計算時間の多さから現実的にはグローバル磁気圏構造を計算できないことが見積もられるため、陰解法による2流体プラズマシミュレーションの開発を始める。まず、1次元陰解法を開発する。古典的な陰解法では陽解法時に行っていた領域分割による並列計算が不可能なため、並列化に対応した陰解法を導入しなければならない。そこで近年開発され、実績を上げているJFNK(Jacobian-Free Newton Krylov)法(Knoll and Keyes, 2004)を導入する。この手法ではNewton Krylov法という反復法において毎ステップ計算が必要であったヤコビアンをテーラー展開で置き換えた手法であり、計算時間も抑えられ、並列化も可能である。次年度の早いうちにアップデートされたサーバを購入し、研究の遂行に積極的に利用していく。平成25年度にデータ解析・データ保存用サーバを購入予定であったが、平成25年度内に長時間計算を行わなかったため、サーバの購入を見合わせた。平成26年度においては早い段階で長時間計算を行う予定であり、年度前半において、データ解析・データ保存用サーバを導入する。 | KAKENHI-PROJECT-25800275 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25800275 |
高速・高精度位置決め用小型・高トルク超音波モータの試作 | 本研究は、研究代表者らが提案した複合振動子型超音波モータの精密制御への本格的な応用をめざして、高効率化など(1)本モータのさらなる性能改善と、(2)制御方法の開発を行ったものである。得られた成果は以下のようになる。1.モータの試作これまでに直径5mm80mm、駆動周波数20kHz30kHzの複合振動子型超音波モータを試作し、動作特性を明らかにした。直径5mmのモータで最大トルク50gf・cm、無負荷回転数800rpm、効率20%、直径80mmのモータでは最大トルク160kgf・cm、無負荷回転数3rpm、効率2%を得ている。2.効率改善駆動正弦波波形の奇数倍の高調波を用いることで効率を改善できる可能性があることを理論的に示した。そこで、これを実現するために、振動子形状を工夫することで、3次共振周波数を1次共振周波数の整数倍に一致させる手法を考案した。これにより、十分な強度の高調波振動成分が効率よく励振可能となり、モータ効率が20%程度改善された。3.摩擦特性・摩擦材料の検討本モータの性能を決定するステ-タ・ロータ間の摩擦特性の理論的・実験的検討に引き続き、最適な摩擦材料を効率よく選定する評価方法を提案した。これにより、従来の摩擦試験方法で超音波モータの寿命の予測が可能となった。4.制御系の開発1)位置決め制御本モータのステ-タ振動子のねじり圧電素子に直流電圧を印加すると精密な角度変位が得られることに着目し、これと本来のモータとしての動作を組み合わせることで、新しい精密角度位置決め系を開発した。高分解能ロータリーエンコーダを用いることで、その分解能に等しい1秒の位置決め精度を実現した。2)回転速度制御本モータは、従来の電磁型モータとは対照的に、駆動電流と回転速度が比例関係にあることを指摘し、この性質を利用した回転速度の制御方法を提案した。また、複数のモータの同期運転法についても理論的・実験的に検討を行い、回転数同期のためには直列接続が適していることを示した。本研究は、研究代表者らが提案した複合振動子型超音波モータの精密制御への本格的な応用をめざして、高効率化など(1)本モータのさらなる性能改善と、(2)制御方法の開発を行ったものである。得られた成果は以下のようになる。1.モータの試作これまでに直径5mm80mm、駆動周波数20kHz30kHzの複合振動子型超音波モータを試作し、動作特性を明らかにした。直径5mmのモータで最大トルク50gf・cm、無負荷回転数800rpm、効率20%、直径80mmのモータでは最大トルク160kgf・cm、無負荷回転数3rpm、効率2%を得ている。2.効率改善駆動正弦波波形の奇数倍の高調波を用いることで効率を改善できる可能性があることを理論的に示した。そこで、これを実現するために、振動子形状を工夫することで、3次共振周波数を1次共振周波数の整数倍に一致させる手法を考案した。これにより、十分な強度の高調波振動成分が効率よく励振可能となり、モータ効率が20%程度改善された。3.摩擦特性・摩擦材料の検討本モータの性能を決定するステ-タ・ロータ間の摩擦特性の理論的・実験的検討に引き続き、最適な摩擦材料を効率よく選定する評価方法を提案した。これにより、従来の摩擦試験方法で超音波モータの寿命の予測が可能となった。4.制御系の開発1)位置決め制御本モータのステ-タ振動子のねじり圧電素子に直流電圧を印加すると精密な角度変位が得られることに着目し、これと本来のモータとしての動作を組み合わせることで、新しい精密角度位置決め系を開発した。高分解能ロータリーエンコーダを用いることで、その分解能に等しい1秒の位置決め精度を実現した。2)回転速度制御本モータは、従来の電磁型モータとは対照的に、駆動電流と回転速度が比例関係にあることを指摘し、この性質を利用した回転速度の制御方法を提案した。また、複数のモータの同期運転法についても理論的・実験的に検討を行い、回転数同期のためには直列接続が適していることを示した。これまで直径5mm80mm、駆動周波数20kHz30kHzの複合振動子型超音波モータを試作し、動作特性を明らかにした。実現したモータの動作特性は、直径5mmのモータで最大トルク50gf・cm、無負荷回転数800rpm、効率20%、直径80mmのモータでは最大トルク160kgf・cm、無負荷回転数3rpm、効率2%をであった。これらの特性を従来の電磁型モータと比較すると直径10mm以下では100倍近いトルクが得られていることになる。得られた成果を列挙すると次のようになる。(1)複合振動子型超音波モータの動作特性を容易に推定できる過渡特性測定を用いた手法を提案、開発した。(2)摩擦及び潤滑理論を用いた検討から、弾性潤滑状態が駆動部とロータとの接触面での最適な摩擦状態考えられることを明らかにし、その実現に必要な動作条件を示した。(3)得られる最大トルクは、摩擦力の限界で飽和し、この特性により、制動トルクが駆動トルクより必ず大きくなることを理論的に明らかにした。これより、立ち下がり時間が立ち上がり時間よりも必ず短くなるということが分かった。 | KAKENHI-PROJECT-05555023 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05555023 |
高速・高精度位置決め用小型・高トルク超音波モータの試作 | (4)振動子、ロータ、摩擦特性を統合した等価回路モデルを新たに提案し、これを解析することで、最大トルク、無負荷回転数などを与えた仕様から決定する系統的な設計手順を確立した。(5)最大トルクは直径の3乗に比例するなど、モータサイズと特性の関係を明らかにした。(6)駆動波形の検討から、駆動正弦波波形の奇数倍の高調波を用いることで効率を改善できる可能性があることを明らかした。本研究は、研究代表者から提案した複合振動子型超音波モータの精密制御への本格的な応用をめざして、高効率化など(1)本モータのさらなる性能改善と、(2)制御方法の開発を行ったものである。今年度は以下のような成果が得られた。1.効率改善昨年度までの研究により、駆動正弦波波形の奇数倍の高周波を用いることで効率を改善できる可能性があることが明らかになっていた。そこで、今年度はこれを実現するために、振動子形状を工夫することで、3次共振周波数を1次共振周波数の整数倍に一致させる手法を考案した。これにより、十分な強度の高周波振動成分が効率よく励振可能となり、モータ効率が20%程度改善された。2.摩擦特性・摩擦材料の検討ステ-タの振動系に加えて、ステ-タ・ロータ間の摩擦特性が本モータの性能を決定する。これに関し、前年度の摩擦状態の理論的・実験的検討に引き続き、最適な摩擦材料を効率よく選択する評価方法を提案した。これにより、従来の摩擦試験方法で超音波モータの寿命の予測が可能となった。制御系の開発1)位置決め制御本モータのステ-タ振動子のねじり圧電素子に直流電圧を印加する精密な角度変位が得られることに着目し、これと本来のモータとしての動作を組み合わせることで、新しい精密角度位置決め系を開発した。高分解能ロータリーエンコを用いることで、その分解能に等しい1秒の位置決め精度を実現した。2)回転速度制御本モータは、従来の電磁型モータとは対照的に、駆動電流と回転速度が比例関係にあることを指摘し、この性質を利用した回転速度の制御方法を提案した。また、複数のモータの同期運転法についても論理的・実験的に検討を行い、回転数同期のためには直列接続が適していることを示した。3)ステップモータの開発上述のような開ループ動作と比較するために、開きループ動作が可能な超音波ステッピングモータを新たに開発した。直径40mm、厚さ5mmの薄型構造で、1回転60ステップの動作の実現した。 | KAKENHI-PROJECT-05555023 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05555023 |
口腔扁平上皮癌における分子標的薬耐性メカニズムと対策 | 上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結合する抗体であるセツキシマブ(Cmab)は、局所進行頭頚部扁平上皮癌(HNSCC)の局所制御、生存における上乗せ効果、さらに遠隔転移再発HNSCCに対する生存における上乗せ効果が示されている。EGFRの過剰発現や遺伝子コピー数の増加がHNSCCの予後不良に関係することは知られており、特に放射線療法や化学療法後の予後を予測するうえで重要と考えられている。しかしながら、HNSCCにおけるCmabに対する反応性を予測する指標について、EGFRの発現レベルやコピー数は指標にならないとされ、その原因として、変異型EGFRであるEGFRvariantIII(EGFRvIII)の存在が指摘されている。野生型EGFR(EGFRwt)に対する抗体であるCmabは、EGFR細胞外ドメインに欠失変異を有するEGFRvIIIへの結合性が低いと考えられ、EGFRvIIIを指標としたネガティブセレクションの可能性が示唆されている。そこで、口腔扁平上皮癌(OSCC)におけるEGFRvIIIの発現を検討した。手術療法を施行したOSCC96症例を対象とした。定量RTーPCR法でEGFRwtおよびEGFRvIIIを検出した。PCR産物を電気泳動し、EGFRwt、EGFRvIII部を切り出し、シークエンス(サンガー法)を行い、塩基配列を確認した。しかし、EGFRvIIIの発現が不安定であるため、デジタルPCRによる検出と次世代シークエンサーによる確認を行っている。現在、次世代シークエンサーによる検討の準備を行っており、このためのサンプルの調製に時間を要している。サンプルの調製が出来次第、次世代シークエンスを行うことになっている。上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結合する抗体であるセツキシマブ(Cmab)は、局所進行頭頚部扁平上皮癌(HNSCC)の局所制御、生存における上乗せ効果、さらに遠隔転移再発HNSCCに対する生存における上乗せ効果が示されている。EGFRの過剰発現や遺伝子コピー数の増加がHNSCCの予後不良に関係することは知られており、特に放射線療法や化学療法後の予後を予測する上で重要と考えられている。しかしながら、HNSCCにおけるCmabni対する反応性を予測する指標について、EGFRの発現レベルやコピー数は指標にならないとされ、その原因として、変異型EGFRであるEGFRvariantIII(EGFRvIII)の存在が指摘されている。野生型EGFR(EGFRwt)に対する抗体であるCmabは、EGFR細胞外ドメインに欠失変異を有するEGFRvIIIへの結合性が低いと考えられ、EGFRvIIIを指標としたネガティブセレクションの可能性が示唆されている。そこで、口腔扁平上皮癌(OSCC)におけるEGFRvIIIの発現について検討した。手術療法を施行したOSCC96症例を対象とした。定量RT-PCR法でEGFRwt及びEGFRvIIIを検出した。PCR産物を電気泳動し、EGFRwt、EGFRvIII部を切り出し。シークエンス(サンガー法)を行い、塩基配列を確認した。その結果、96症例中12症例(12.5%)でEGFRvIIIが陽性であった。EGFRwtは96症例全例(100%)が陽性であった。今後もさらに症例数を蓄積し、新たな検出法の開発、OSCCにおけるEGFRvIIIの役割について検討を進める。EGFRvIIIの発現が不安定である可能性がり、検出精度が安定しなかったため、やや遅れている。上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結合する抗体であるセツキシマブ(Cmab)は、局所進行頭頚部扁平上皮癌(HNSCC)の局所制御、生存における上乗せ効果、さらに遠隔転移再発HNSCCに対する生存における上乗せ効果が示されている。EGFRの過剰発現や遺伝子コピー数の増加がHNSCCの予後不良に関係することは知られており、特に放射線療法や化学療法後の予後を予測するうえで重要と考えられている。しかしながら、HNSCCにおけるCmabに対する反応性を予測する指標について、EGFRの発現レベルやコピー数は指標にならないとされ、その原因として、変異型EGFRであるEGFRvariantIII(EGFRvIII)の存在が指摘されている。野生型EGFR(EGFRwt)に対する抗体であるCmabは、EGFR細胞外ドメインに欠失変異を有するEGFRvIIIへの結合性が低いと考えられ、EGFRvIIIを指標としたネガティブセレクションの可能性が示唆されている。そこで、口腔扁平上皮癌(OSCC)におけるEGFRvIIIの発現を検討した。手術療法を施行したOSCC96症例を対象とした。定量RTーPCR法でEGFRwtおよびEGFRvIIIを検出した。PCR産物を電気泳動し、EGFRwt、EGFRvIII部を切り出し、シークエンス(サンガー法)を行い、塩基配列を確認した。しかし、EGFRvIIIの発現が不安定であるため、検出精度を向上するために、今後デジタルPCRによる検出法を確立する。EGFRvIIIの発現が不安定であるため、検出精度が安定しないため、遅れている。上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結合する抗体であるセツキシマブ(Cmab)は、局所進行頭頚部扁平上皮癌(HNSCC)の局所制御、生存における上乗せ効果、さらに遠隔転移再発HNSCCに対する生存における上乗せ効果が示されている。EGFRの過剰発現や遺伝子コピー数の増加がHNSCCの予後不良に関係することは知られており、特に放射線療法や化学療法後の予後を予測するうえで重要と考えられている。 | KAKENHI-PROJECT-16K11732 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K11732 |
口腔扁平上皮癌における分子標的薬耐性メカニズムと対策 | しかしながら、HNSCCにおけるCmabに対する反応性を予測する指標について、EGFRの発現レベルやコピー数は指標にならないとされ、その原因として、変異型EGFRであるEGFRvariantIII(EGFRvIII)の存在が指摘されている。野生型EGFR(EGFRwt)に対する抗体であるCmabは、EGFR細胞外ドメインに欠失変異を有するEGFRvIIIへの結合性が低いと考えられ、EGFRvIIIを指標としたネガティブセレクションの可能性が示唆されている。そこで、口腔扁平上皮癌(OSCC)におけるEGFRvIIIの発現を検討した。手術療法を施行したOSCC96症例を対象とした。定量RTーPCR法でEGFRwtおよびEGFRvIIIを検出した。PCR産物を電気泳動し、EGFRwt、EGFRvIII部を切り出し、シークエンス(サンガー法)を行い、塩基配列を確認した。しかし、EGFRvIIIの発現が不安定であるため、デジタルPCRによる検出と次世代シークエンサーによる確認を行っている。現在、次世代シークエンサーによる検討の準備を行っており、このためのサンプルの調製に時間を要している。EGFRvIIIの検出精度が安定したため、さらに症例数を増やし、検討を継続する。EGFRvIIIの検出精度を向上させるため、デジタルPCRによる検討を進めている。サンプルの調製が出来次第、次世代シークエンスを行うことになっている。研究遂行が遅延したため。(理由)研究遂行が遅延したため。(使用計画)平成30年度請求分と繰越金は、薬品の購入ならびに論文投稿に使用する。本研究の目的のひとつである口腔扁平上皮癌(OSCC)における変異型EGFR(EGFRvIII)の発現について検討した結果、OSCCにおいてEGFRvIIIの発現が比較的まれであり、さらに不安定であることがわかった。そこでデジタルPCRと次世代シークエンサーによる精密な検討が必要になった。2018年度内に次世代シークエンサーによる検討を完了する計画であったが、サンプルの調製に時間を要したため2018年度内に完了することが困難となった。そのため次世代シークエンスの委託費が未払いとなり、次年度繰越しとなった。研究計画を1年延長し、2019年度内に次世代シークエンサーによる検討を完了する計画に変更した。平成29年度請求分と繰越金は、実験用プラスチック製品、抗体、薬品の購入ならびに論文投稿に使用する。 | KAKENHI-PROJECT-16K11732 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K11732 |
近世における学問の社会的普及に関する研究 | 前年度に引き続き、以下の活動を行った。1.門人帳や学生名簿に関する現在の研究状況を把握し、それを共通の知見とするために、10月31日(東京、明治大学)において研究集会を開催し、研究分担者である木村礎と梅沢ふみ子による研究発表を聞くとともに、情報や意見の交換を行った。2.門人帳および関係資料などの原本を調査するために、東北大学付属図書館狩野文庫および宮城県図書館を共同で調査し、藩校である養賢堂の「養賢堂諸生鑑」「書生名年調」などの資料を調査し複写した。また、長崎県立長崎図書館および長崎市立博物館等において、水田紀久・日野龍夫・岡中正行・川名登・尾藤正英・沼田哲が各自調査を行い、長崎聖堂祭酒であった向井家門人帳をはじめとする向井家関係資料等の調査を行い写真複写を入手した。また別に、岡中は本居宣長記念館(三重県松阪市)、天理大学付属図書館(奈良県天理市)において、本居春庭、同内遠などの門人帳を調査し複写した。鈴木淳は広島県竹原市立図書館を中心に、頼山陽についての調査を行った。平野満は名古屋市立鶴舞図書館において、「医家姓名録」を始めとする資料の調査収集を行った。3.門人帳や学生名簿の類の所在目録を、漢学・国学・洋学について作成した。4.門人帳に記載されているデータをコンピュータに入力し、近世における学問の普及状況について検索するためのデータベースを作成すべく、岡中が中心となり本居宣長・皆川淇園・諸方洪庵などの門人帳を入力した。5.石川松太郎が中心となり「升堂記」を、鈴木・岡中が「藤垣内門人録」、平野が「賀川門籍を翻字した。1.門人帳や学生名簿に関する現在の研究状況を把握し、それを共通の知見とするために、11月17日(東京、明治大学)、1月26日(同)、2月26日(大阪)、3月27日(岡山)など、数回の研究集会を開催し、研究分担者である石川松太郎・鈴木淳・平野満ら、および研究協力者としての青木歳幸(長野県皐月高校教諭)、山中被之(大谷女子大学教授)、山根陸宏(天理図書館司書)、下山純正(津山洋学資料館員)の諸氏による研究発表を聞くとともに、情報や意見の交換を行った。2.門人帳など、および関係資料の原本を調査するため、杏雨書屋(大阪市、武田薬品KK内)、懷徳堂文庫(大阪大学図書館所蔵)、適塾(大阪市)、池田家文庫(岡山大学図書館所蔵)、津山洋学資料館所蔵文書(津山市)などを、共同して調査し、医家の門人帳約10点(杏雨書屋)、昌平黌書生姓名録(懐徳堂本)などの写真複写を入手した。また別に、分担者のうち、平野満は明治大学所蔵の賀川家(医家)門人帳の複製本を作り、検討を進めており、田崎哲郎は華岡家門人帳(和歌山医大所蔵)などを、川名登は利根川流域の文人学者資料(天理図書館綿屋文庫など)を、沼田哲は米沢藩藩校史料を、それぞれ独自に調査した。3.当面の目標としては、門人帳や学生名簿の類の、全国的な所在目録を作製することを計画し、平野満・鈴木淳を中心に作業を進めている。4.門人帳などに記載されている人名と、その身分・出身地・学統など関連あるデ-タを、コンピュ-タに入力することにより、近世における学問の普及状況について検索するための、デ-タベ-スを作製することができれば、この研究の目標は達成されるが、本年度はそのための準備として、本居宣長と土生玄碩との門人帳を材料とし、その記載内容を実験的に入力することを、岡中正行が中行となって進めている。前年度に引き続き、以下の活動を行った。1.門人帳や学生名簿に関する現在の研究状況を把握し、それを共通の知見とするために、10月31日(東京、明治大学)において研究集会を開催し、研究分担者である木村礎と梅沢ふみ子による研究発表を聞くとともに、情報や意見の交換を行った。2.門人帳および関係資料などの原本を調査するために、東北大学付属図書館狩野文庫および宮城県図書館を共同で調査し、藩校である養賢堂の「養賢堂諸生鑑」「書生名年調」などの資料を調査し複写した。また、長崎県立長崎図書館および長崎市立博物館等において、水田紀久・日野龍夫・岡中正行・川名登・尾藤正英・沼田哲が各自調査を行い、長崎聖堂祭酒であった向井家門人帳をはじめとする向井家関係資料等の調査を行い写真複写を入手した。また別に、岡中は本居宣長記念館(三重県松阪市)、天理大学付属図書館(奈良県天理市)において、本居春庭、同内遠などの門人帳を調査し複写した。鈴木淳は広島県竹原市立図書館を中心に、頼山陽についての調査を行った。平野満は名古屋市立鶴舞図書館において、「医家姓名録」を始めとする資料の調査収集を行った。3.門人帳や学生名簿の類の所在目録を、漢学・国学・洋学について作成した。4.門人帳に記載されているデータをコンピュータに入力し、近世における学問の普及状況について検索するためのデータベースを作成すべく、岡中が中心となり本居宣長・皆川淇園・諸方洪庵などの門人帳を入力した。5.石川松太郎が中心となり「升堂記」を、鈴木・岡中が「藤垣内門人録」、平野が「賀川門籍を翻字した。 | KAKENHI-PROJECT-03301043 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03301043 |
イネの穂分化を支配する感温性メカニズムの解明とセンシング部位の特定 | 本研究は、イネの穂分化に作用する感温メカニズムを解明し、変動気象下での発育反応の的確な評価に役立てることを目的とする。日長、気温、水温を制御した実験系で処理間相互のサンプル移動を実施し、幼穂形成期の変動を観測した。この結果から、イネの穂分化における感温性の仕組みを明らかにした。1.葉齢の展開速度は10葉前後まで、水温に支配され、気温や日長の影響を受けない。2.幼穂形成は、7葉期前後までの日長や気温の作用を受けない。このことから成長点に穂分化シグナルの受容体が形成される時間は7葉期と推定され、受容体形成までの期間(従来の基本栄養成長相に相当)の長短は水温(成長点温度)で決まる。3.限界日長以下の短日条件であれば、受容体形成とともに速やかに穂が分化し、気温の作用は受けない。4.これに対して長日条件下では、受容体が形成されても直ちには穂が分化しない。しかし長日であっても、高気温により穂分化が促進され、一部の品種を除いて24時間日長でも穂が分化する。5.従って、短日下では気温(地上部温度)は作用せず、長日下でその作用が現れる。6.気温感応部位は、主として葉身であり、葉鞘の感応は明確ではない。7.北東北におけるあきたこまちの通常作期(79葉期に長日)の場合、出芽から幼穂形成期までの日数に及ぼす水温影響は約4.3日/°C、気温影響は約1.5日/°Cであり、水温影響が約3倍大きい。以上の成果は、温暖化に適応する品種を育成するためには、南北の日長の違いを考慮する必要性を強く示唆する。また水管理による発育制御、発育予測精度の向上にも貢献する。本研究は、イネの穂分化に作用する感温メカニズムを解明し、変動気象下での発育反応の的確な評価に役立てることを目的とする。日長、気温、水温を制御した実験系で処理間相互のサンプル移動を実施し、幼穂形成期の変動を観測した。この結果から、イネの穂分化における感温性の仕組みを明らかにした。1.葉齢の展開速度は10葉前後まで、水温に支配され、気温や日長の影響を受けない。2.幼穂形成は、7葉期前後までの日長や気温の作用を受けない。このことから成長点に穂分化シグナルの受容体が形成される時間は7葉期と推定され、受容体形成までの期間(従来の基本栄養成長相に相当)の長短は水温(成長点温度)で決まる。3.限界日長以下の短日条件であれば、受容体形成とともに速やかに穂が分化し、気温の作用は受けない。4.これに対して長日条件下では、受容体が形成されても直ちには穂が分化しない。しかし長日であっても、高気温により穂分化が促進され、一部の品種を除いて24時間日長でも穂が分化する。5.従って、短日下では気温(地上部温度)は作用せず、長日下でその作用が現れる。6.気温感応部位は、主として葉身であり、葉鞘の感応は明確ではない。7.北東北におけるあきたこまちの通常作期(79葉期に長日)の場合、出芽から幼穂形成期までの日数に及ぼす水温影響は約4.3日/°C、気温影響は約1.5日/°Cであり、水温影響が約3倍大きい。以上の成果は、温暖化に適応する品種を育成するためには、南北の日長の違いを考慮する必要性を強く示唆する。また水管理による発育制御、発育予測精度の向上にも貢献する。本研究は、イネの穂分化に作用する感温メカニズムを解明し、変動気象下での発育反応の的確な評価に役立てることを目的とする。本年度は、生長点感温性と地上部感温性を分離し、地上部感温性の発現開始期を探索した。温度勾配チャンバーの高気温区(出芽から90日間平均:21.3°C)、低気温区(同:16.0°C)に、高水温(21.5°C)と低水温(18.5°C)の恒温水槽を設けた。水稲(品種:あきたこまち)をポット栽培し、出芽から幼穂形成期までの期間、その生長点が水中に浸るよう、ポットを水槽に沈めた。この処理により、地上部(葉身と葉鞘の大半)が気温の作用を、また生長点が水温の作用を受ける。出芽後17日目から高水温区では10日間隔、低水温区では12日間隔で、各区2ポットを高気温区から低気温区あるいは低気温区から高気温区へ順次移動した。この気温間移動に伴う幼穂形成期の変動を観測した。気温・水温の処理(含:気温間移動)にかかわらず、葉齢は水温の有効積算温度で統一的に説明できた。一方、同一水温で葉齢進度が同じであっても気温により幼穂形成期が変動した。このことから一定の葉齢に達するまでの期間(基本栄養生長相)は水温すなわち生長点温度に支配され、その後は地上部温度に支配されるモデルを想定した。葉齢が6葉以前の気温間移動は、幼穂形成期に大きな変化をもたらさないが、それ以降の気温間移動で幼穂形成期に変動が現れた。 | KAKENHI-PROJECT-17380153 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17380153 |
イネの穂分化を支配する感温性メカニズムの解明とセンシング部位の特定 | このことから品種「あきたこまち」では、6-7葉期が地上部感温性の発現開始期と推定した。上とは別に、地上部の上から2/3程度を不織布で覆い、作物体温を上昇させる実験でも、一様に幼穂形成期の前進が認められたことから、イネ体上部に感温部位があると推定した。次年度から計画する感光性と感温性の関係解明で、「あきたこまち」と比較対照に使用する品種として、「きらら397」、「コシヒカリ」、「ひとめぼれ」などを候補に選定した。本研究は、イネの穂分化に作用する感温メカニズムを解明し、変動気象下での発育反応の的確な評価に役立てることを目的とする。本年度は、1)地上部感温性と日長感応性の関係、2)生長点感温性の発現期間、3)地上部感温性の感応部位について解析した。1)ではハウス4棟を用意し、うち2棟を通気により外気温+約1°C以内の気温に制御し(低気温区)、他の2棟を暖房と通気により低気温区+4°Cに制御した。各気温処理区のうち1棟を、電照により24時間日長とし、他は自然日長とした。品種あきたこまちを水温21.5°Cの水槽内で栽培して、定期的に各処理間でサンプルを移動し、幼穂形成期を調査した。2)では水温18.5°Cと21.5°Cの水槽で、早晩性が大きく異なる水稲8品種を栽培して、5-7日間隔に両水温間でサンプルを移動し、出穂日を観察した。3)では2)の水槽であきたこまちを栽培し、生長点のみ、葉鞘のみあるいは葉の半分が水につかるようにポットを配置し、幼穂長を調査した。気温は23°Cを下回らないように暖房で調節し、常に水温より高く維持した。1)では、自然日長がイネにとって短日となる7月9日出芽試験で、地上部感温性と日長感応性の関係が明らかになった。すなわち自然日長下では、気温処理間移動の影響が認められず、いずれの移動処理も幼穂形成期がほぼ同時期となった。一方、日長処理間移動では7葉期以降に日長の作用が現れ、7葉期以降も長日下にあったサンプルだけに気温処理の影響が現れた。この結果から、地上部感温性は長日下でのみ発現するという新知見を得た。2)では、水温間移動処理の影響が、いずれの品種も7-8葉期で終息した。このことから生長点感温性の発現終期は品種の早晩性にかかわらず7-8葉期と推定された。3)では、葉の約半分が水中にある場合にのみ、幼穂形成が遅れた。このことから、地上部感温性の感応部位は葉と推定された。本研究は、イネの穂分化に作用する感温メカニズムを解明し、変動気象下での発育反応の的確な評価に役立てることを目的とする。本年度は18年度に引き続き、1)地上部感温性と日長感応性の関係、2)生長点感温性の発現時期、3)地上部感温性の感応部位について解析するとともに、3年間の結果をとりまとめて、穂分化における感温性の仕組みを明らかにした。実験系は18年度と同様、日長、気温、水温,作期の4処理,各2水準である。供試品種は、あきたこまち、ひとめぼれ、コシヒカリ、きらら397である。明らかになった穂分化の仕組みは以下の通りである。1.葉齢の展開速度は10葉前後まで、水温(生長点温度)に支配され、気温(地上部温度)や日長の影響を受けない。2.7葉期前後まで日長ならびに気温にも感応しない。このことから生長点に穂分化シグナルの受容体が形成される時期は7葉期と推定され、受容体形成までの期間(従来の基本栄養生長相に相当)の長短は水温で決まる。3.限界日長以下の短日条件であれば、受容体形成とともに速やかに穂が分化し、気温の影響は受けない。4.これに対して長日条件下では、受容体が形成されても直ちには穂が分化しない。しかし長日であっても、高気温により穂分化が促進され、一部の品種を除いて24時間日長でも穂が分化する。5.従って、短日下では気温(地上部温度)は作用せず、長日下でその作用が現れる。6.気温感応部位は、葉身であり、葉鞘ではない。 | KAKENHI-PROJECT-17380153 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17380153 |
中観派の大乗菩薩道における智慧の研究 | 本研究は、大乗仏教の系譜の中で、特にナーガールジュナを始祖とする中観派の実践体系に着目するものである。平成30年度は、中観派の実践体系と智慧との関係を考察する上で、菩薩の慈悲に着目し研究を進めた。中観派の文献において菩薩の実践道に関して論じた論書として、チャンドラキールティの『入中論』とカマラシーラの『修習次第』があるわけだが、いずれも菩薩が実践道を歩む動機として慈悲を重視している。このように慈悲は智慧と並んで重要な大乗菩薩の基盤となる徳目である。そこでまず、菩薩の実践としての慈悲行がどのようなものであるか、その具体像の整理を行った。『入中論』で示される実践道において慈悲は、誓願の根本にあるものとされ、菩薩の実践行を生み出す磯となるとされる。このように慈悲は菩薩がその実践道を歩む際に必要不可欠な徳目とされるが、その一方で、菩薩がその行道において常に持ち続けなければならないものであるとされた。つまり、『入中論』の菩薩道においては、慈悲は空性の智慧を得る前段階から要請されるものではあり、空性の智慧が極まっていくのを支える役目として示されているといえる。この慈悲があるからこそ、菩薩は般涅槃することなく、輪廻の中に身を置き、有情を救済する菩薩道をなすことができるのであり、この点が『入中論』では菩薩と声聞・独覚を分ける重要な差異として示されていた。この研究の成果に関しては、現在、雑誌論文への投稿が決定しており、研究成果をまとめている段階である。以上の研究と並行して、後期中観派のカマラシーラが著した『修習次第』を中心として、後期中観派の論師の思想を整理し、実践道と智慧の関係に着目した研究書を出版するための準備作業を行っている。こちらは現在も作業を継続中である。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。本研究は、大乗仏教の系譜の中で、特にナーガールジュナを始祖とする中観派の実践体系に着目するものである。そして、中観派の実践道における智慧の獲得と中観哲学思想がいかに関わっているのかを明確にすることを目的とする。H28年度は、まず、中期中観派の論師であるチャンドラキールティの著作であり、大乗菩薩の実践体系を描く『入中論』に関して、新たにサンスクリット原典が参照可能となった第6章を中心として、重要な議論の再確認を行った。また、並行して中観派と並ぶ、大乗の学派である瑜伽行派の実践体系の整理を試み、チャンドラキールティが示す菩薩道との関係性を探った。特にH28年度は、それらの大乗仏教の論師が示す実践体系の中で、菩薩の智慧の獲得と関係する高度な禅定の習得が如何に示されているかに着目した。『入中論』において示される菩薩道は、その実践体系を確認すると、菩薩の十地の第六地から第八地の展開の中で「滅尽定」が重視されている。一方、諸唯識文献に示される菩薩の十地においては、菩薩階梯の流れの中で「無相(animitta)」の獲得が示される。「滅尽定」も「無相」もその実態は菩薩が智慧の完成を獲得した上で成し得る最高位の禅定を示しており、菩薩の実践体系において重要な役割を果たしている。そこで、その「滅尽定」と「無相」との関係を探った。具体的には、ニカーヤ文献における無相の用例を検討し、大乗菩薩の菩薩階梯において示される無相と滅尽定との関係性を知る手がかりを得た。そしてその研究成果を2015年9月に行われた日本印度学仏教学会の第66回学術大会において発表し、同学会学術雑誌に論文が掲載された。チャンドラキールティ著『入中論』に関して、新たに参照可能となった第6章の偈頌のサンスクリット原典に基づき、重要な章である第6章の再整理を行うことができた。また中観派の思想を追う上で無視できない唯識派の文献にあらわれる菩薩の実践体系を確認し、中観派のチャンドラキールティ、カマラシーラなどが示す実践体系と比較検討した。その研究から、同じ中観派の論師とされていても、瑜伽行唯識派の実践体系を受け継ぐ論師と、異なった実践体系の系統を有する論師が存在することが明らかになった。以上のように研究の進捗状況としては概ね順調である。本研究は、大乗仏教の系譜の中で、特にナーガールジュナを始祖とする中観派の実践体系に着目するものである。平成29年度は、主な研究対象である中期中観派の論師チャンドラキールティの思想に関して、インド大乗仏教のもう一つの大きな学派である瑜伽行派の諸論師の思想との比較研究を行い、彼の思想の特異性を明らかにした。彼の思想の特異性は、今までも彼の実践道を検討していく中で、提示してきたが、今回は特に、彼の所知(認識対象)に対する思想を所知障という概念を手がかりに整理した。瑜伽行派では、所知障を「所知(知られるべきこと)に対する障害」と解釈する。つまり、所知とは菩薩が証得すべき真実であり、それに対する智慧の生起をさまたげるものが所知障と考えられている。 | KAKENHI-PROJECT-15J40254 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J40254 |
中観派の大乗菩薩道における智慧の研究 | それに対しチャンドラキールティは、所知を菩薩が実践道の中で止滅していくべきものと考えている。つまり、チャンドラキールティにとって所知とは、知と対応関係にあり、言説にすぎず、究極的には双方ともに完全に止滅した状態が仏の境地なのである。菩薩は実践道において、その所知を完全に断じていくと、チャンドラキールティは示すわけであるが、空性の智慧の獲得によって、所知が断じられていく行道が『入中論』の菩薩階梯の中でいかに示されているのかを確認した。そして、その研究成果を申請者の受入機関である京都光華女子大学の真宗文化研究所が刊行する機関誌『真宗文化』において発表した。平成29年度は、上記したチャンドラキールティの思想研究に加え、中観派の論師が示す菩薩の実践体系と智慧の獲得に関して、後期中観派のカマラシーラが著した『修習次第』を中心として、研究を行っている。同じ中観派の論師であっても、後期中観派のカマラシーラが『修習次第』において示す菩薩の実践体系は、唯識派のものを完全に受け継いでいる。つまり同じ中観派といえども、チャンドラキールティの示す実践体系とカマラシーラが示す実践体系は系統を異にする。この『修習次第』を中心として、実践道と智慧の関係に着目した研究書の出版を計画している。しかしながら、カマラシーラの示す哲学的思想の解明に関する研究に時間がかかっているため、全体として研究課題の進捗状況がやや遅れている。本研究は、大乗仏教の系譜の中で、特にナーガールジュナを始祖とする中観派の実践体系に着目するものである。平成30年度は、中観派の実践体系と智慧との関係を考察する上で、菩薩の慈悲に着目し研究を進めた。中観派の文献において菩薩の実践道に関して論じた論書として、チャンドラキールティの『入中論』とカマラシーラの『修習次第』があるわけだが、いずれも菩薩が実践道を歩む動機として慈悲を重視している。このように慈悲は智慧と並んで重要な大乗菩薩の基盤となる徳目である。そこでまず、菩薩の実践としての慈悲行がどのようなものであるか、その具体像の整理を行った。『入中論』で示される実践道において慈悲は、誓願の根本にあるものとされ、菩薩の実践行を生み出す磯となるとされる。このように慈悲は菩薩がその実践道を歩む際に必要不可欠な徳目とされるが、その一方で、菩薩がその行道において常に持ち続けなければならないものであるとされた。つまり、『入中論』の菩薩道においては、慈悲は空性の智慧を得る前段階から要請されるものではあり、空性の智慧が極まっていくのを支える役目として示されているといえる。この慈悲があるからこそ、菩薩は般涅槃することなく、輪廻の中に身を置き、有情を救済する菩薩道をなすことができるのであり、この点が『入中論』では菩薩と声聞・独覚を分ける重要な差異として示されていた。この研究の成果に関しては、現在、雑誌論文への投稿が決定しており、研究成果をまとめている段階である。以上の研究と並行して、後期中観派のカマラシーラが著した『修習次第』を中心として、後期中観派の論師の思想を整理し、実践道と智慧の関係に着目した研究書を出版するための準備作業を行っている。こちらは現在も作業を継続中である。今後の研究においては、引き続きチャンドラキールティを中心として中観派が示す菩薩の実践体系と菩薩の智慧との関係を考察する。この研究を通して、中観派の諸論師の特徴を実践体系に対する思想の側面からも検討し、インド大乗仏教への理解を深める。得られた研究成果は学会発表、論文投稿を行い随時公表していく。今後は、中観派の実践体系と智慧の関係を考察する上で、菩薩の慈悲に着目し研究を進めたいと考えている。中観派の文献において菩薩の実践道に関して論じた重要な論書として、チャンドラキールティの『入中論』とカマラシーラの『修習次第』があるわけだが、いずれも菩薩が実践道を歩む動機として慈悲を重視している。 | KAKENHI-PROJECT-15J40254 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J40254 |
医療技能の技術化・デジタル化で実現する超音波診断・治療統合システムの超高精度化 | 本研究の目的は,超音波技術およびAI・ロボット技術を基盤とする医療技能の技術化・デジタル化により,非侵襲超音波診断・治療統合システムの構築法を確立することであった。具体的に、つぎの2つの診断・治療支援を対象に下記の5つの作業手順を順次遂行する。(i)腎がん・腎結石の診断・治療、(ii)肝臓がんの診断・治療、作業手順:(1)医療診断・治療技能を機能として抽出・構造化、(2)機能におけるパラメータ解析、(3)機能の設計指針化、(4)機能の実装、(5)実験による機能の評価・改良。上記の作業ステップのうち、本年度は(1)および(2)を中心に行なった。本システムは運動(変位・変形・回転)する臓器を高精度に抽出・追従することであたかも静的なものを観察するようにモニタリングできるようにする。これにより既存の医療機器や医療技能をだれもが容易に扱うことを可能にする。本研究課題における主要な成果については2件の国際特許出願(US15/867302US15/876233)を行ない、医療ロボットの国際会議(UR2018、ACCAS2018、CARS2019)で採択・発表、ベストペーパーとして国際誌(IJE、IJCARS、JOE)への投稿を推薦・掲載されるなど、きわめて高い評価を得てきた。日本超音波治療研究会で最優秀演題賞・学生研究奨励賞、ベストポスター賞を受賞したり、日刊工業新聞等で研究紹介され、大きな反響を得た。本研究成果の一部は分担執筆した書籍(人工知能と社会: 2025年の未来予想,オーム社, 2018)のなかで紹介して大きな反響を得た。本研究の目的は,超音波技術およびAI・ロボット技術を基盤とする医療技能の技術化・デジタル化により,非侵襲超音波診断・治療統合システムの構築法を確立することであった具体的に、つぎの2つの診断・治療支援を対象に下記の5つの作業手順を順次遂行する。(i)腎がん・腎結石の診断・治療、(ii)肝臓がんの診断・治療、作業手順:(1)医療診断・治療技能を機能として抽出・構造化、(2)機能におけるパラメータ解析、(3)機能の設計指針化、(4)機能の実装、(5)実験による機能の評価・改良。上記の作業ステップのうち、本年度は(1)および(2)を中心に行なった。本システムは運動(変位・変形・回転)する臓器を高精度に抽出・追従することであたかも静的なものを観察するようにモニタリングできるようにするものである。本年度は画像処理アルゴリズムについては深層学習技術を用いて、操作者による技量の差を吸収する手法について新規に提案している。また制御アルゴリズムについては、カルマンフィルタを援用することで軌道のなめらかさのさらなる向上を図っている。これにより既存の医療機器や医療技能をだれもが高精度かつ頑健に扱うことを可能にする。本研究課題における主要な成果については2件の国際特許出願(US15/867302US15/876233)を行ない、医療ロボットの国際会議(UR2018、ACCAS2018、CARS2019)で採択・発表、ベストペーパーとして国際誌(IJE、IJCARS、JOE)への投稿を推薦・掲載されるなど、きわめて高い評価を得てきた。日本超音波治療研究会で最優秀演題賞・学生研究奨励賞、ベストポスター賞を受賞したり、日刊工業新聞等で研究紹介され、大きな反響を得た。本研究成果の一部は分担執筆した書籍(人工知能と社会: 2025年の未来予想,オーム社, 2018)のなかで紹介して大きな反響を得た。本研究の目的は,超音波技術およびAI・ロボット技術を基盤とする医療技能の技術化・デジタル化により,非侵襲超音波診断・治療統合システムの構築法を確立することであった。具体的に、つぎの2つの診断・治療支援を対象に下記の5つの作業手順を順次遂行する。(i)腎がん・腎結石の診断・治療、(ii)肝臓がんの診断・治療、作業手順:(1)医療診断・治療技能を機能として抽出・構造化、(2)機能におけるパラメータ解析、(3)機能の設計指針化、(4)機能の実装、(5)実験による機能の評価・改良。今後は上記の作業ステップのうち、本年度は(2-5)を順次遂行する計画である。本システムは運動(変位・変形・回転)する臓器を高精度に抽出・追従することであたかも静的なものを観察するようにモニタリングできるようにする。これにより既存の医療機器や医療技能をだれもが容易に扱うことを可能にする。本研究の目的は,超音波技術およびAI・ロボット技術を基盤とする医療技能の技術化・デジタル化により,非侵襲超音波診断・治療統合システムの構築法を確立することであった。具体的に、つぎの2つの診断・治療支援を対象に下記の5つの作業手順を順次遂行する。(i)腎がん・腎結石の診断・治療、(ii)肝臓がんの診断・治療、作業手順:(1)医療診断・治療技能を機能として抽出・構造化、(2)機能におけるパラメータ解析、(3)機能の設計指針化、(4)機能の実装、(5)実験による機能の評価・改良。上記の作業ステップのうち、本年度は(1)および(2)を中心に行なった。本システムは運動(変位・変形・回転)する臓器を高精度に抽出・追従することであたかも静的なものを観察するようにモニタリングできるようにする。 | KAKENHI-PROJECT-17H03200 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H03200 |
医療技能の技術化・デジタル化で実現する超音波診断・治療統合システムの超高精度化 | これにより既存の医療機器や医療技能をだれもが容易に扱うことを可能にする。本研究課題における主要な成果については2件の国際特許出願(US15/867302US15/876233)を行ない、医療ロボットの国際会議(UR2018、ACCAS2018、CARS2019)で採択・発表、ベストペーパーとして国際誌(IJE、IJCARS、JOE)への投稿を推薦・掲載されるなど、きわめて高い評価を得てきた。日本超音波治療研究会で最優秀演題賞・学生研究奨励賞、ベストポスター賞を受賞したり、日刊工業新聞等で研究紹介され、大きな反響を得た。本研究成果の一部は分担執筆した書籍(人工知能と社会: 2025年の未来予想,オーム社, 2018)のなかで紹介して大きな反響を得た。本研究の目的は,超音波技術およびAI・ロボット技術を基盤とする医療技能の技術化・デジタル化により,非侵襲超音波診断・治療統合システムの構築法を確立することであった具体的に、つぎの2つの診断・治療支援を対象に下記の5つの作業手順を順次遂行する。(i)腎がん・腎結石の診断・治療、(ii)肝臓がんの診断・治療、作業手順:(1)医療診断・治療技能を機能として抽出・構造化、(2)機能におけるパラメータ解析、(3)機能の設計指針化、(4)機能の実装、(5)実験による機能の評価・改良。上記の作業ステップのうち、本年度は(1)および(2)を中心に行なった。本システムは運動(変位・変形・回転)する臓器を高精度に抽出・追従することであたかも静的なものを観察するようにモニタリングできるようにするものである。本年度は画像処理アルゴリズムについては深層学習技術を用いて、操作者による技量の差を吸収する手法について新規に提案している。また制御アルゴリズムについては、カルマンフィルタを援用することで軌道のなめらかさのさらなる向上を図っている。これにより既存の医療機器や医療技能をだれもが高精度かつ頑健に扱うことを可能にする。本研究課題における主要な成果については2件の国際特許出願(US15/867302US15/876233)を行ない、医療ロボットの国際会議(UR2018、ACCAS2018、CARS2019)で採択・発表、ベストペーパーとして国際誌(IJE、IJCARS、JOE)への投稿を推薦・掲載されるなど、きわめて高い評価を得てきた。日本超音波治療研究会で最優秀演題賞・学生研究奨励賞、ベストポスター賞を受賞したり、日刊工業新聞等で研究紹介され、大きな反響を得た。本研究成果の一部は分担執筆した書籍(人工知能と社会: 2025年の未来予想,オーム社, 2018)のなかで紹介して大きな反響を得た。本研究の目的は,超音波技術およびAI・ロボット技術を基盤とする医療技能の技術化・デジタル化により,非侵襲超音波診断・治療統合システムの構築法を確立することであった。具体的に、つぎの2つの診断・治療支援を対象に下記の5つの作業手順を順次遂行する。(i)腎がん・腎結石の診断・治療、(ii)肝臓がんの診断・治療、作業手順:(1)医療診断・治療技能を機能として抽出・構造化、(2)機能におけるパラメータ解析、(3)機能の設計指針化、(4)機能の実装、(5)実験による機能の評価・改良。今後は上記の作業ステップのうち、本年度は(2-5)を順次遂行する計画である。本システムは運動(変位・変形・回転)する臓器を高精度に抽出・追従することであたかも静的なものを観察するようにモニタリングできるようにする。 | KAKENHI-PROJECT-17H03200 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H03200 |
大学における専門基礎及び教養科目としての生物教育-生物科学研究の現状分析・評価とカリキュラムの系統化 | 調査を分担する各班では、データの収集に努め、収集した調査結果の分析および研究成果のとりまとめを行った。1班は、研究全体の推進方向を策定するとともに、研究成果のとりまとめ方針を策定し、各班との緊密な連絡のもと、研究成果報告書の出版に努めた。2班は、全国主要大学院の生命科学及び生物学系研究科の研究者に対して、研究者となった動機、現在の研究体制や研究費、大学院の入試方法や内容、選抜した学生の質を含む選抜結果の評価、学生の中途退学の傾向、修了後の進路などについてアンケート調査を行い、収集結果を集計し、その分析を行った。また全国主要大学大学院の生命科学及び生物学系研究科の大学院学生に対して、出身学部や学科について、あるいは大学院に進学した動機、大学院の入試方法や内容、現在の研究体制や研究内容、奨学金や学生生活の質、修了後の進路などについてアンケート調査を行い、収集結果の集計及び分析を行った。3班は諸外国、特に米国の生物学教育および生物科学者養成に関する状況を把握し、国際的な比較研究のための資料の収集を行い、その内容の分析を行った。4班は、理学、医学、工学、農学の専門教育のための基礎教育としての生物学教育の現状を知るため、全国主要大学の医学部、農学部に対してアンケート調査を行い、その結果の集計と分析を行った。また理学系および工学系における基礎教育についての調査検討を行った。5班は、四年制の国公私立大学の教育学部・芸術学部・総合科学部を含む文系学部を持つ全国主要大学に対して、文系学生を対象とする一般教育における生物学教育の現状を把握するためのアンケート調査を行い、調査結果の集計と分析を行った。実務班は、各班間の連絡調整と研究の総括を進め、各班の作成した研究成果報告の原稿をとりまとめ、編集、印刷等にあたり、「大学における専門基礎及び教養科目としての生物教育」と題する研究成果報告書を刊行した。調査を分担する各班では、データの収集に努め、収集した調査結果の分析および研究成果のとりまとめを行った。1班は、研究全体の推進方向を策定するとともに、研究成果のとりまとめ方針を策定し、各班との緊密な連絡のもと、研究成果報告書の出版に努めた。2班は、全国主要大学院の生命科学及び生物学系研究科の研究者に対して、研究者となった動機、現在の研究体制や研究費、大学院の入試方法や内容、選抜した学生の質を含む選抜結果の評価、学生の中途退学の傾向、修了後の進路などについてアンケート調査を行い、収集結果を集計し、その分析を行った。また全国主要大学大学院の生命科学及び生物学系研究科の大学院学生に対して、出身学部や学科について、あるいは大学院に進学した動機、大学院の入試方法や内容、現在の研究体制や研究内容、奨学金や学生生活の質、修了後の進路などについてアンケート調査を行い、収集結果の集計及び分析を行った。3班は諸外国、特に米国の生物学教育および生物科学者養成に関する状況を把握し、国際的な比較研究のための資料の収集を行い、その内容の分析を行った。4班は、理学、医学、工学、農学の専門教育のための基礎教育としての生物学教育の現状を知るため、全国主要大学の医学部、農学部に対してアンケート調査を行い、その結果の集計と分析を行った。また理学系および工学系における基礎教育についての調査検討を行った。5班は、四年制の国公私立大学の教育学部・芸術学部・総合科学部を含む文系学部を持つ全国主要大学に対して、文系学生を対象とする一般教育における生物学教育の現状を把握するためのアンケート調査を行い、調査結果の集計と分析を行った。実務班は、各班間の連絡調整と研究の総括を進め、各班の作成した研究成果報告の原稿をとりまとめ、編集、印刷等にあたり、「大学における専門基礎及び教養科目としての生物教育」と題する研究成果報告書を刊行した。研究初年度の本年は、基礎調査デ-タの収集に務めた。1班では、当初の計画通り、各大学のカリキュラムを調査する為に、各大学の履修規定の収集を行った。今後内容を分析してゆく。大学における一般教養科目及び専門基礎教育科目としての生命科学教育と生物学教育の実態を把握する目的で、全国の大学の生命科学および生物学の教育に当っている教官に対して、教授内容、対象学年や専攻課程、教授方法等についてのアンケ-ト調査を実施した。調査結果は中型計算機を用いて集計・分析し、研究成果の一部は、ユネスコ機関の国際生物科学連合一般会議で報告した。第2班は、生物系研究科の研究者に対して、研究者となった動機や現在の研究体制や研究費、大学院の入試方法や内容、選抜結果の評価(選抜した学生の質、学生の中途退学の傾向、進路など)についてアンケ-ト調査を行い、結果の分析中である。第3班は諸外国、特に欧米諸国の科学教育および生物科学者養成の国際比較の状況を正しく把握するため、日本学術振興会、日米教育委員会、文部省調査統計企画課外国調査係、広島大学教育研究センタ-、国立教育研究所などに問い合わせ中である。4班は、理学、医学、工学、農学の専門教育の為の基礎教育としての生物学教育の現状分析を行っている。第5班はまず文系学生を対象とする一般教育における生物学教育の現状を調査することとし、その方途を検討した。その結果、四年制の国公私立大学のうち、教育学部・芸術学部・総合科学部を含む文系学部を持つ全大学に対して大学あたり一通ずつアンケ-トを送付し、回答を求めることによって現状把握を試みることとなった。アンケ-トの内容と様式については調査結果の分析に際して、その整合性を配慮し、第4班による医学・歯学進学課程における生物学教育の現状調査アンケ-トを参照し、自由記述を大幅に取り入れたものを作成した。 | KAKENHI-PROJECT-03305006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03305006 |
大学における専門基礎及び教養科目としての生物教育-生物科学研究の現状分析・評価とカリキュラムの系統化 | 研究二年度の本年も、各班では初年度に引き続き基礎調査データの収集に努め、これとともに収集した調査結果の分析にも努めた。1班では、大学における一般教養科目及び専門基礎教育科目としての生命科学教育と生物学教育のカリキュラムの実態を把握する目的で収集した、全国主要大学の覆修規定の内容の分析を行っている。2班は、全国主要大学院の生命科学および生物学系番究科の研究者に対して、研究者となった動機、現在の研究体制や研究費、大学院の入試方法や内容、選抜した学生の質を含む選抜結果の評価、学生の中途退学の傾向、修了後の進路などについてアンケート調査を行い、現在収集した結果の集計分析を行っている。3班は諸外国、特に欧米諸国の科学教育および生物科学者養成に関する状況を正しく把握し、国際的な比較研究を行うため、資料の検索と収集を行い、その内容の分析を行っている。4班は、理学医学、工学、農学の専門教育のための基礎教育としての生物学教育の現状を知るため、まず全国主要大学の医学部に対してアンケート調査を行い、その結果の集計と分析を行った。また理学系における基礎教育について調査検討を行った。5班は、文系学生を対象とする一般教育における生物学教育の現状を把握するため、四年制の国公私立大学のうち、教育学部・芸術学部・総合科学部を含む文系学部を持つ全国主要大学に対してアンケート調査を行い、現在その集計結果を分析している。実務班は、各班間の連絡調査と研究の総括を進め、最終年度における研究成果のとりまとめに向けて、その方策の策定に当たっている。研究最終年度の本年も、各班では昨年度に引き続き調査データの収集に努め、これとともに収集した調査結果の分析および研究成果のとりまとめにも努めた。1班では、研究最終年度である本年度の研究推進の方向を策定するとともに、研究成果のとりまとめ方針を策定し、各班との緊密な連絡のもと、研究成果報告書の出版に努めた。2班は、本年度は全国主要大学大学院の生命科学および生物学系研究科の大学院学生に対して、出身学部や学科について、あるいは大学院に進学した動機、大学院の入試方法や内容、現在の研究体制や研究内容、奨学金や学生生活の質、修了後の進路などについてアンケート調査を行い、収集した結果の集計及び分析を行った。3班は諸外国、特に米国の生物学教育および生物科学者養成に関する状況を把握し、国際的な比較研究を行うための資料の収集を行い、その内容の分析を行った。4班は、理学、医学、工学、農学の専門教育のための基礎教育としての生物学教育の現状を知るため、本年度は主要大学の農学部に対してアンケート調査を行い、その結果の集計と分析を行った。また工学系における基礎教育について調査・検討を行った。5班は、四年制の国公私立大学の教育学部・芸術学部・総合科学部を含む文系学部を持つ全国主要大学に対して、文系学生を対象とする一般教育における生物学教育の現状を把握するために昨年度行ったアンケート調査結果について、本年度はその集計結果の分析を行った。実務班は、各班間の連絡調整と研究の総括を進め、各班の作成した研究成果報告の原稿をとりまとめ、編集、印刷等に当たり、「大学における専門基礎及び教養科目としての生物教育」と題する研究成果報告書を刊行した。 | KAKENHI-PROJECT-03305006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03305006 |
泌尿器科腫瘍に対する内視鏡手術支援ソフトの開発 | 複数のソフトで作成した画像を重ねて表示するソフトを開発し、これを用いた腹腔鏡手術のナビゲーションを可能とし、その成果はJournal of Endourologyにアクセプトされ、日本泌尿器科内視鏡学会の学会賞を授与された。また前立腺肥大症の薬物治療において、内視鏡画像を用い、尿路の3D画像を用いて評価することを試み、その成果を海外の学会で発表し、現在、論文を2編投稿中である。CT画像をDICOMもしくはJPEG形式でPCに取り込み、内臓脂肪の量を測定するソフトを開発し、これを用いて、早期腎癌患者と肥満の関係につき、研究を行い、早期腎癌患者は肥満傾向があることを見出し、論文として発表した。複数のソフトで作成した画像を重ねて表示するソフトを開発し、これを用いた腹腔鏡手術のナビゲーションを可能とし、その成果はJournal of Endourologyにアクセプトされ、日本泌尿器科内視鏡学会の学会賞を授与された。また前立腺肥大症の薬物治療において、内視鏡画像を用い、尿路の3D画像を用いて評価することを試み、その成果を海外の学会で発表し、現在、論文を2編投稿中である。CT画像をDICOMもしくはJPEG形式でPCに取り込み、内臓脂肪の量を測定するソフトを開発し、これを用いて、早期腎癌患者と肥満の関係につき、研究を行い、早期腎癌患者は肥満傾向があることを見出し、論文として発表した。フロンティアメディカル工学研究開発センターでは従来より通常の白色光を分光し、任意の波長の光で表示する分光内視鏡の研究を行ってきた。この技術を用い、腫瘍やその周開の粘膜の変化を抽出し、表示することができれば、経尿道的膀胱腫瘍切除の際の切除マージンの確認や、削りきれているかの判断に役に立つものと考える。現在、膀胱腫瘍周囲の粘膜における血管走行の変化の表示が可能となった。これを用い、切除前にマーキングを行うことで十分な切除範囲を確保しうるものと考えられる。一方、切除後、熱変性が加わった組織においては、切除方法がバイポーラーか、モノポーラー下、あるいはレーザーか、また電気メスの出力にも影響を受けるため、個々め症例ごとに条件が変化し、最適な表示は確立できておらず、これは来年以降の課題と考えている。複数のソフトで作成した画像を重ねて表示するソフトを開発し、これを用いた腹腔鏡手術のナビゲーションが可能となった。その成果はJournal of Endourologyに投稿し、アクセプトされた。現在は画像め合成は2画像の合成のみであるが、さらにパノラマ画像、分光画像、術前CTの画像を重ねて表示すべく、3画像以上の合成を可能にするソフトを開発中である。一方、パノラマ画像表示ソフトはさらになめらかな動きとまたどのように重ねてパノラマ画像が表示されているかも表示することが可能となった。これにより、画像の回転を認識することが容易となったと考えている。また前立腺肥大症の手術に先立ち、立体画像にて、前立腺を表示することで排尿機能を評価する一助となるべく研究をすすめている。昨年まで所属したフロンティアメディカル工学研究開発センターでは従来より通常の白色光を分光し、任意の波長の光で表示する分光内視鏡の研究を行ってきた。この技術を用い、腫瘍やその周囲の粘膜の変化を抽出し、表示することができれば、経尿道的膀胱腫瘍切除の際の切除マージンの確認や、削りきれているかの判断に役に立つものと考える。膀胱腫瘍周囲の粘膜における血管走行の変化の表示が可能となり、随伴する上皮内癌の鑑別に役に立つかを検討し、この結果を今後発表していく予定である。。また、このソフトを用い、切除前にマーキングを行うことで十分な切除範囲を確保しうるものと考えられる。一方、切除後、熱変性が加わった組織においては、切除方法がバイポーラーか、モノポーラー下、あるいはレーザーか、また電気メスの出力にも影響を受けるため、個々の症例ごとのみならず、術者によっても条件が変化し、最適な表示は以前、確立できておらず、これは引き続きの課題と考えている。複数のソフトで作成した画像を重ねて表示するソフトを開発し、これを用いた腹腔鏡手術のナビゲーションが可能となった。その成果はJournal of Endourologyに投稿し、アクセプトされ、本年論文となった。また前立腺肥大症の薬物治療において、内視鏡画像を用い、評価することを試み、その成果を海外の学会で発表し、現在、論文を作成中である。また、このソフトに加え、形態とその抵抗より、尿の流れをシュミレーションするソフトを開発中である。これにより、手術を行った際にどのように前立腺を切除すると尿の出方がよくなるかシュミレーションできるようになり、手術の適応を決めるのに有用であると思われる。1昨年まで所属したフロンティアメディカル工学研究開発センターでは、通常の白色光を分尭レ、任意の波長の光で表示する分光内視鏡の研究を行ってきた。この技術を用い、腫瘍やその周囲の粘膜の変化を抽出し、表示することができれば、経尿道的膀胱腫瘍切除の際め切除マージンの確認や、削りきれているかの判断に役に立つものと考える。膀胱腫瘍周囲の粘膜における血管走行の変化の表示が可能となり、随伴する上皮内癌の鑑別に役に立つかを検討中であるが、個々の症例に応じ、適切な条件が違うため、未用にあたり、時間を要しているのが現状である。複数のソフトで作成した画像を重ねて表示するソフトを開発しこれを用いた腹腔鏡手術のナビゲーションが可能となったことは昨年も実績でも報告したが、その成果はJournal of Endourologyにアクセプトされ、論文化され、日本泌尿器科内視鏡学会の学会賞を授与された。 | KAKENHI-PROJECT-21592032 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21592032 |
泌尿器科腫瘍に対する内視鏡手術支援ソフトの開発 | この方法のメリットはwindowsPCがあれば、そのほかに新たなハードを必要とせず、安価に簡単にかつ術者自身がその場で滅菌パックでつつんだワイヤレスマウスにて合成するため、ほしい時にすぐほしい形で画像を得ることができることである。画像そのものはこのワークステーション上で作ったものを用いるか、DICOM-ソフトでPC上で合成するかは任意である。また前立腺肥大症の薬物治療において、内視鏡画像を用い、尿路の3D画像を用いて評価することを試み、その成果を海外の学会で発表し、現在、論文を2編投稿中である。また、このソフトに加え、形態とその抵抗より、尿の流れをシュミレーションするソフトを開発し、薬物投与前と投与後で排尿時の尿の流れがどのように変わったかシュミレーションすることが可能となった。今後、膀胱の収縮力の個人による違いをどのようにパラメーターとして取り込むのかを検討しているところである。 | KAKENHI-PROJECT-21592032 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21592032 |
電子・陽子衝突による素粒子の構造研究(HERAに於ける国際協力実験) | 電子・陽子衝突装置による素粒子実験は、いわばレプトン・クォーク衝突実験であり、レプトンやクォークの内部構造、近距離における両者の相互作用を探る上で新しい情報をもたらす。従来試みられた例はなくHERAが最初の装置であり、加速器技術とともに、実験遂行上も測定器とデータ取得用エレクトロニクスに新しい課題がある。例えば、荷電流弱反応に際して終状態では電子がニュートリノになるため、現象再構成のために高精度のハドロンカロリーメーターが必要になる。また、ビーム電流を大きくするために、パンチ数が多く、間隔が96ナノ秒しかない。このためトリガーやデータ取得に並列処理の手法が取られた。本研究は電子・陽子衝突の研究を進めるためZEUS測定器の設計に伴う開発研究、量産試験と建設を主目的とした。具体的研究テーマは次のとおりである。1)ハドロンカロリーメーター用シンチレーター材料の対放射線試験2)吸収材によるe/h比のコンペンセーションの検討3)直流変換タイプの高電圧電源の開発による省エネルギー化4)新しい磁場遮蔽用材の試験と量産5)多数の光電子増倍管の性能試験と較正6)半導体検出器による電子識別系開発と製作7)並列処理型初段トリガー回路の開発と製作、同ソフトウェアの開発以上の研究に基づき建設された測定器は予定通り完成した。HERAがビーム衝突を開始して以来正常に稼動し、予想された性能を示している順次物理結果が得られている。電子・陽子衝突装置による素粒子実験は、いわばレプトン・クォーク衝突実験であり、レプトンやクォークの内部構造、近距離における両者の相互作用を探る上で新しい情報をもたらす。従来試みられた例はなくHERAが最初の装置であり、加速器技術とともに、実験遂行上も測定器とデータ取得用エレクトロニクスに新しい課題がある。例えば、荷電流弱反応に際して終状態では電子がニュートリノになるため、現象再構成のために高精度のハドロンカロリーメーターが必要になる。また、ビーム電流を大きくするために、パンチ数が多く、間隔が96ナノ秒しかない。このためトリガーやデータ取得に並列処理の手法が取られた。本研究は電子・陽子衝突の研究を進めるためZEUS測定器の設計に伴う開発研究、量産試験と建設を主目的とした。具体的研究テーマは次のとおりである。1)ハドロンカロリーメーター用シンチレーター材料の対放射線試験2)吸収材によるe/h比のコンペンセーションの検討3)直流変換タイプの高電圧電源の開発による省エネルギー化4)新しい磁場遮蔽用材の試験と量産5)多数の光電子増倍管の性能試験と較正6)半導体検出器による電子識別系開発と製作7)並列処理型初段トリガー回路の開発と製作、同ソフトウェアの開発以上の研究に基づき建設された測定器は予定通り完成した。HERAがビーム衝突を開始して以来正常に稼動し、予想された性能を示している順次物理結果が得られている。実際の電子・陽子衝突実験の測定装置として用いるのと類似のハドロンカロリーメーターを建設し,その基本的特性を測定した.その際,各部品について,性能,経年変化等の検討を行なうとともに,エネルギー分解能向上のための新方式の試験を行なった.今年度,特に重点を置いた研究は,以下の開発研究である.1.発光量,光の透過性,耐放射線性の優れたシンチレーター開発2.透過型光電子増倍管の高磁場中での特性測定と改良3.カロリーメーターの電子およびパイ中間子に対する出力比(e/π比)測定4.エネルギー分解能向上のための吸収材の検討試験用に製作したカロリーメーターは縦,横,奥行きが各60cm, 60cm, 120cmで,縦横それぞれ3分割,合計9個のユニットから成る.吸収材として鉛,検出層にはシンチレーターを用いた.最近の理論的研究から鉛とシンチレーターの厚さの比が34の場合, e/π比が1となると予想されたので,鉛は厚さ8.5mmシンチレーターは2.6mm厚(一部2mm)を採用した.試験には,原子核研究所の電子シンクロトロン,高エネルギー物理学研究所の陽子シンクロトロンを利用し,最高4GeV/cまでの電子,ミュー粒子,パイ中間子を入射した.測定結果によれば, e/π比は入射エネルギー依存性を示し, 4GeV/cでは1.2であり,予想値の1とは違った.しかし,エネルギー分解能は,従来得られている最良の性能を示した.今後,国内でより高いエネルギーのビームが使用できるようになり次第同様の試験を続けるが,試験用カロリーメーターを使って,信号経路の較正,電子・ハドロン分離等の系統的な研究を行なう.電子・陽子衝突装置HERAの建設は、DESYに於てほぼ予定通りに進捗し、来年夏には完成の見込みなので、それに間に合わせるべく測定器の建設が始まっている。目下製造部品の発注、納入途上にあり、その特性検査と較正が進んでいる。1.ハードウェアに関しては、殊に光電子増倍管の諸特性の測定と較正に重点を置いた。(1)全自動検査システムの開発:これについては、必要なメカニクス、エレクトロニクス、ソフトウェアの製作を終り、システムの較正中である。2月中には光電子の増倍管の大量測定を開始する。(2)高電圧分配系の開発:光電子増倍管用コッククロフト・ワルトン型の高電圧分配器とその制御装置の開発を行なった。(3)磁気シールド設計のため、様々な模型を用いて測定を行なった。2.測定器全体の初段トリガーに関して、各測定器部分の読出しについての調整を行ない、最終的プロトコールを決定した。目下 | KAKENHI-PROJECT-62420005 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62420005 |
電子・陽子衝突による素粒子の構造研究(HERAに於ける国際協力実験) | プロトコールモジュールの製作中であり、今年度中に完成する。3.ソフトウェアについては、シミュレーションソフトを移植し、最新のものが核研で稼動している。上述のトリガー系開発に関連して、予想される現象とバックグランド現象のシミュレーションデータを製作している。4.測定器の基礎的性能を調べるため、昨年建設したモデルカロリーメーターを用いて、ビームテストを継続した。今年はKEK陽子シンクロトロンに於て6Gev/cまでのπビームが得られたので、高いエネルギーでのe/π比の測定を行なった。また、今年度は、実用するシリコン検出器をカロリーメーターに組み込んで、de/dx測定によるeーπ分離の試験を行なった。HERAに於て行なうZEUS国際協力実験の測定器建設を進めた。具体的な担当検出器は、カロリ-メ-タ、ハドロン・電子分離用シリコン検出器、トリガ-回路であるが、いずれも国際協力の下に作業を行なった。各部について、今年度の実績は次のとおりである。1.カロリ-メ-タ-:1)光電子増倍管の長期安定性等自動性能試験装置の開発とそれを用いた大量の光電子増倍管の試験と較正。2)試験済み光電子増倍管のカロリ-メ-タ-への組み入れ。3)光電子増倍管用高電圧系制御系の設計と製作。CAMAC系とVME系の両方を開発。4)新材料を応用した光電子増倍管用磁気遮蔽の開発と量産。2.シリコン検出器:1)シリコン検出器とプリアンプを含むフロントエンド部分の開発と量産化に際しての試験装置の開発。現在カロリ-メ-タ-内への組み込み機構の試験を継続中。3.トリガ-回路:我々は、第1段階総合トリガ-回路を受け持っているが、これは、各測定器コンポ-ネントからのトリガ-信号を受けて、現象の高速判断を行なう。パイプライン方式の新しいシステムを開発した。1)各測定器のトリガ-情報発生回路との交信用プロトコル回路製作。2)第1段トリガ-回路の試作。現場にて試験。3)電子・陽子反応、陽子・原子核反応のシミュレ-ションによるトリガ-条件設定に関する考察。なお本研究は当初平成2年度までの4年計画として申請したものであり、実験開始は平成2年度に予定している。 | KAKENHI-PROJECT-62420005 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62420005 |
地震動の伝搬と細長い建築物の応答の相互関係に関する研究 | [平成3年度]1.ボーリングにより3台の地中地震計を埋設し、112m離れた観測点間の地震記録が互いに変化していることを確認した。[平成4年度]1.112m離れた2点間の記録を応答スペクトルで比較すると、周期0.2秒より短周期側の成分は一般的に変化している。両者の時刻歴を相関係数を用いて比較すれば、周期0.2秒より長周期側の成分は、約0.7以上の相関で類似している。2.地震動の0.2秒から2.0秒の周期成分が波形を変えず一方向へ伝播する傾向(Traveling Wave)を確認した。3.上記2の地震の震源は、北緯36度付近の茨城県南部から茨城県東方沖に至る太平洋プレートに近い位置に存在する。[平成5年度]1.2点間の記録に存在する位相差を相関係数を用いて時間軸上の時間差として評価すれば、観測点の東方に震源を有する地震では、100mの距離に換算して0.014秒から0.027秒、南方のそれでは0.009秒から0.014秒となった。2.地震応答解析と実測値の比較により、比較的堅固な地盤の場合、構造物の基礎に作用する強制力は、地下15mで採取した地震記録と、ほぼ同じであることが検証された。3.床は、通常の剛床仮定に反して明らかに変形しており、入力地震動を100galに換算した場合、大きなせん断力が発生する場所では、せん断応力度が137kg/cm^2から333kg/cm^2となり、強震時に構造体全体の崩壊へつながる可能性がある。4.最大ベースシア発生時の構造体全体の変形をC.G.を用いて3次元表示した結果、床変形を含む応答解析による構造体の変形は、1次振動モード以外に3次と6次の影響が現れた複雑な曲面を構成する。これに反して、剛床仮定による解析では、薄板が捩じれるような2次振動モードが主に現れている。5.3ヶ所の地中地震記録の補間に基づき作成した位相差を含む強制地動を用いたシミュレーションは、それを含まないものよりも実測値と良く一致した。6.位相差を含む応答シミュレーションの場合、計算値と実測値は、応答の主要動付近で極めてよく一致しているが、その後、実測値は計算値よりも速く減衰する。その理由については、今後の課題となった。[平成3年度]1.ボーリングにより3台の地中地震計を埋設し、112m離れた観測点間の地震記録が互いに変化していることを確認した。[平成4年度]1.112m離れた2点間の記録を応答スペクトルで比較すると、周期0.2秒より短周期側の成分は一般的に変化している。両者の時刻歴を相関係数を用いて比較すれば、周期0.2秒より長周期側の成分は、約0.7以上の相関で類似している。2.地震動の0.2秒から2.0秒の周期成分が波形を変えず一方向へ伝播する傾向(Traveling Wave)を確認した。3.上記2の地震の震源は、北緯36度付近の茨城県南部から茨城県東方沖に至る太平洋プレートに近い位置に存在する。[平成5年度]1.2点間の記録に存在する位相差を相関係数を用いて時間軸上の時間差として評価すれば、観測点の東方に震源を有する地震では、100mの距離に換算して0.014秒から0.027秒、南方のそれでは0.009秒から0.014秒となった。2.地震応答解析と実測値の比較により、比較的堅固な地盤の場合、構造物の基礎に作用する強制力は、地下15mで採取した地震記録と、ほぼ同じであることが検証された。3.床は、通常の剛床仮定に反して明らかに変形しており、入力地震動を100galに換算した場合、大きなせん断力が発生する場所では、せん断応力度が137kg/cm^2から333kg/cm^2となり、強震時に構造体全体の崩壊へつながる可能性がある。4.最大ベースシア発生時の構造体全体の変形をC.G.を用いて3次元表示した結果、床変形を含む応答解析による構造体の変形は、1次振動モード以外に3次と6次の影響が現れた複雑な曲面を構成する。これに反して、剛床仮定による解析では、薄板が捩じれるような2次振動モードが主に現れている。5.3ヶ所の地中地震記録の補間に基づき作成した位相差を含む強制地動を用いたシミュレーションは、それを含まないものよりも実測値と良く一致した。6.位相差を含む応答シミュレーションの場合、計算値と実測値は、応答の主要動付近で極めてよく一致しているが、その後、実測値は計算値よりも速く減衰する。その理由については、今後の課題となった。本研究では、大規模で平面的に細長い形状をした建築物と周辺地盤の地震時挙動の相互関係を調査するために、埼玉県比企郡鳩山町にある東京電機大学理工学部2号棟(全長116m、幅16m、高さ16mで、以下2号棟と略す。)及び周辺地盤地下15mの位置に地震計を設置することを計画した。平成3年度に行った研究の概要は以下の通りである。 | KAKENHI-PROJECT-03452223 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03452223 |
地震動の伝搬と細長い建築物の応答の相互関係に関する研究 | 1.建物周辺の地盤調査校地造成時のボ-リング調査資料及び今回行ったボ-リング調査により、2号棟周辺の地盤は、物見山砂礫層と呼ばれる洪積期の堆積層で、N値50前後の粘土混り砂礫層が地震計の埋設位置である地下15m以深まで続いていることが判った。調査で求めた土質的諸指標から、太田・後藤の方法で地盤のS波速度の推定を試み、その値として300m/sを得た。2.地震計の埋設及び2号棟の方位の測定地震計埋設のためのボ-リング工事を行い、3成分型地中震計を地下15mの位置に埋設した。2号棟の長辺方向(南北方向)に沿って南側から順にNo.1、No.2及びNo.3計3台の地震計を配置した。それぞれの水平距離は、約68mと42mである。各観測点の水平成分の検出器は、磁北を基準に設置している。また、2号棟の南北ラ-メン軸と磁北とのなす角度は5.5度である。3.地中地震計による地震観測地中地震観測を開始し、1992年2月26日茨城県南西部地震(マグニチュ-ド3.9)における2号棟周辺地下15mの位置における加速度記録を採取した。各記録の最大加速度は、南北、東西、上下成分の順に、No.1が1.22gal、1.68gal、0.58galで、No.2が1.56gal、1.22gal、0.76galで、No.3が1.77gal、1.22gal、0.89galである。南北及び東西成分の主要動付近の波形には、短周期成分の位相を除けば伝搬性が認められ、No.1No.3の間約110mで0.03秒程度の時間差が存在していることが判った。本年度は、15の地震(マグニチュード4.16.9)を観測した。この中で、最大加速度が最も大きかったのは、1992年4月23日の茨城県南西部地震のNS成分で、地中3ヶ所で、それぞれ68.92gal、90.45gal、76.08galを記録した。これらの地震について、地中地震計の記録を解析した結果、以下の知見を得た。1.校舎の周辺の地中-15mの位置で実施した水平方向のアレー観測によれば、記録の応答スペクトルの周期0.2秒以下成分は、100m程度離れた観測点間で一般に変化していると考えられる。2.相関係数を用いて、100m程度の距離を隔てた2観測点の記録に存在する位相遅れを評価する場合、両者が相関係数で0.7以上の相関を示すのは、地震動の周期0.2秒以上の成分である。3.15の地震記録のうち4の記録において、周期0.22.0秒の成分が波形を変えず一方向に伝搬する傾向を示した。このことは、これまで地震工学の理論で想定していたtravelingwaveが、実際の現象としても存在しうることを示している。4.観測した地震の震源深さと位置を地図に記せば、記録が波形を変えず一方向に伝搬する傾向を示した地震の震源は、北緯35度50分36度30分の茨城県南部と茨城県東方沖の領域に集中しており、太平洋プレートに近い位置にあるものに限られていることが判った。このことは、観測点における地震動の伝搬性に、発電機構や地震波の伝搬経路の問題が関与していることを示唆するものである。また、昨秋連動させたSMAC-MD型地震計と既存設備であるSMAC-M型強震計との位相特性を合わせるためのフィルターも作成が完了したので、最終年度は、伝搬する地震動が作用した場合の構造物の応答を中心に、研究を展開して行く予定である。本研究の平成5年度(該当年度)における成果として、以下の知見を得た。1.本観測点において、距離を隔てた2点間の記録に存在する位相差を相関係数を用いて時間軸上の時間差として評価すれば、観測点の東方に震源を有する地震では、100mの距離に換算して0.014秒から0.027秒、南方のそれでは0.009秒から0.014秒となった。2.地震応答解析と実測値の比較により、本観測点のように地盤がS波速度で300m/secと比較的堅固な場合、構造物の基礎に作用する強制力は、地下15mで採取した地震記録と、ほぼ同じであることが検証された。 | KAKENHI-PROJECT-03452223 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03452223 |
局所構造を含む宇宙プラズマMHD乱流:起源、統計解析、粒子輸送 | 本研究は、宇宙プラズマ中のMHD乱流に関する非線形発展、及びプラズマ粒子の運動論的効果を考慮した理論・シミュレーションによる解析を行い、衛星データ解析結果を解釈するための基礎的知見を得ることを目的としている。今年度は、太陽風中において最も重要な磁気流体波動である、大振幅の平行伝播アルフヴェン波の非線形発展に関する研究を、実際の太陽風中におけるアルフヴェン波の性質(高ベータプラズマ中、非単色など)に着目して行い、前年度に引き続き以下のような新たな知見を得た。○プラズマが高ベータである地球近傍において本質的に重要となる、有限イオン温度効果(イオンランダウ減衰、有限ラーマ半径効果)を含むアルフヴェン波のパラメトリック不安定性の線形分散関係式を導出し、無衝突減衰が有効でないアルフヴェン波の不安定性にも有限のイオン温度効果が本質的な寄与をすることを明らかにした。さらに、ハイブリッドシミュレーションを用いて、理論の妥当性を検証し、有限イオン温度効果が実際の太陽風中においては線形分散関係式で予測されるよりもさらに重要であることを示した。○実際に宇宙空間で観測される波動を想定した非単色アルフヴェン波の非線形発展についての数値実験を行い、磁場の変調により励起される有限振幅の縦波が「非線形的な」変調不安定を駆動することを示した。また、実際の太陽風中で確認されているような有限の位相相関(局所構造)がそれらの非線形的に駆動される不安定性によって生成され得ることを指摘した。さらに、上記の有限イオン温度効果を考慮した場合に、この駆動型の変調不安定性がアルフヴェン波の減衰に極めて大きな役割を果たすことを示した。このことにより、これまでの太陽風アルフヴェン波の理論と観測との間にあった矛盾の一部が解決されたといえる。本研究は、空間3次元的な非線形発展、及びプラズマ粒子の運動論的効果を考慮した理論・シミュレーションによる解析を行い、衛星データ解析結果を解釈するための基礎的知見を得ることを目的としている。今年度は、太陽風中において最も重要な磁気流体波動である、大振幅の平行伝播アルフヴェン波の非線形発展に関する研究を、実際の太陽風中におけるアルフヴェン波の性質(高ベータプラズマ中、非単色など)に着目して行った。平成18年度に得られた結果は以下の通りである。○プラズマが高ベータである地球近傍において本質的に重要となる、イオンのランダウ減衰の効果を含んだアルフヴェン波のパラメトリック不安定性の線形分散関係式を、ヴラソフ方程式を用いて体系的に導出した。得られた分散関係式を数値的に解くことにより、不安定性の成長率の各パラメータへの依存性を明らかにした。○一次元2流体方程式の時間積分により、実空間での波形の変化と波動間の位相相関の関連について議論した。自己変調不安定に伴う波動の非線形性と分散性の相殺に伴い、波数モード間の大域的な非線形相互作用が生じ、その結果孤立波(位相相関)が生成されることを、周波数の時間発展の定式化、及び高次スペクトル解析(バイコヒーレンス解析等)を用いて示した。○実際に宇宙空間で観測される波動を想定した広いスペクトル幅を持った非単色アルフヴェン波の非線形発展についての数値実験を行い、磁場のポンデロモーティブ力により励起される有限振幅の縦波が「非線形的な」変調不安定を駆動することを示した。さらに、実際の太陽風中で確認されているような有限の位相相関がそれらの非線形的に駆動される不安定性によって生成され得ることを指摘した。○現象論的なイオンランダウ減衰効果を含んだモデル方程式系(運動論的TDNLS系)を用いて、縦波のランダウ減衰が非常に大きい場合(太陽風中など)においても、上記のような非線形的な不安定性が生じることを示した。○有限イオン温度による分散効果(有限ラーマ半径効果)が、無衝突減衰が有効でないアルフヴェン波の不安定性にも本質的な寄与をすることを線形解析・ハイブリッドシミュレーションを用いて明らかにした(現在ジャーナル誌に投稿中)。以上の結果は、国内外の学会・研究会、国際学術ジャーナル誌上において発表されている。本研究は、宇宙プラズマ中のMHD乱流に関する非線形発展、及びプラズマ粒子の運動論的効果を考慮した理論・シミュレーションによる解析を行い、衛星データ解析結果を解釈するための基礎的知見を得ることを目的としている。今年度は、太陽風中において最も重要な磁気流体波動である、大振幅の平行伝播アルフヴェン波の非線形発展に関する研究を、実際の太陽風中におけるアルフヴェン波の性質(高ベータプラズマ中、非単色など)に着目して行い、前年度に引き続き以下のような新たな知見を得た。○プラズマが高ベータである地球近傍において本質的に重要となる、有限イオン温度効果(イオンランダウ減衰、有限ラーマ半径効果)を含むアルフヴェン波のパラメトリック不安定性の線形分散関係式を導出し、無衝突減衰が有効でないアルフヴェン波の不安定性にも有限のイオン温度効果が本質的な寄与をすることを明らかにした。さらに、ハイブリッドシミュレーションを用いて、理論の妥当性を検証し、有限イオン温度効果が実際の太陽風中においては線形分散関係式で予測されるよりもさらに重要であることを示した。○実際に宇宙空間で観測される波動を想定した非単色アルフヴェン波の非線形発展についての数値実験を行い、磁場の変調により励起される有限振幅の縦波が「非線形的な」変調不安定を駆動することを示した。また、実際の太陽風中で確認されているような有限の位相相関(局所構造)がそれらの非線形的に駆動される不安定性によって生成され得ることを指摘した。 | KAKENHI-PROJECT-06J09778 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J09778 |
局所構造を含む宇宙プラズマMHD乱流:起源、統計解析、粒子輸送 | さらに、上記の有限イオン温度効果を考慮した場合に、この駆動型の変調不安定性がアルフヴェン波の減衰に極めて大きな役割を果たすことを示した。このことにより、これまでの太陽風アルフヴェン波の理論と観測との間にあった矛盾の一部が解決されたといえる。 | KAKENHI-PROJECT-06J09778 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J09778 |
ソルガムのアレロパシー活性に関するQTL(量的形質遺伝子座)解析 | アフリカ起源で生産高が世界第5位の穀物であるソルガムは深根性に優れているため、乾燥地や半乾燥地に適応できる作物である。起源地のアフリカでは重要な穀物であるが、除草剤による雑草防除対策は現実的ではなく、生物機能を利用した低コストの雑草防除法を開発し普及されることが必要である。作物に内在するアレロパシー活性は、生物的防除ための有効な手段である。そこで、本課題では、DNAマーカーを利用して、ソルガムのアレロパシー活性に関与する量的形質遺伝子座(QTL)の検出をめざす。平成23年度に得られた成果は以下のとおりである。(1)アレロパシー活性強弱品種の交配に由来するF_2集団の作出アレロパシー活性の変異が大きく、SSRマーカー座における多型頻度が高い品種間で交配して得たF_1個体を栽培して、遺伝解析用のF_2種子を採種した。(2)連鎖不平衡解析によるアレロパシー活性に関連する染色体領域の特定コアコレクション107品種を用いて、ソルガムの染色体10本に散在するSSRマーカー98座におけるDNA遺伝子型情報とアレロパシー活性値に基づく連鎖不平衡解析(アソシエーション解析)を行った。その結果、アレロパシー活性の検定種物レタスの発芽率を指標として評価した場合、第1、2、5、9染色体のSSRマーカー座との間に強い連鎖不平衡を検出した。そのなかで、第9染色体のマーカー座との間で最大のP値を示した。また、レタスの根長を指標として評価した場合、第7染色体の2つのSSRマーカー座と有意な連鎖不平衡を検出した。(3)以上の結果から、ソルガムのアレロパシー活性に関連するQTLが第1,2,5,7,9染色体に計7個存在することを明らかにした。アフリカ起源で生産高が世界第5位の穀物であるソルガムは深根性に優れるため、乾燥地や半乾燥地に適応した作物である。起源地のアフリカでは重要な穀物であるが、除草剤による雑草防除対策は現実的ではなく、生物機能を利用した低コストの雑種防除法の開発・普及が必要である。作物に内在するアレロパシー活性は、生物的雑草防除のための有効な手段である。そこで、本課題では、DNAマーカーを利用して、ソルガムのアレロパシー活性に関与する量的形質遺伝子座(QTL)の検出をめざす。平成22年度に得られた成果は以下のとおりである。(1)ソルガムのアレロパシー評価法の開発イネの評価法をモデルとしてソルガムの評価法を確立した。(2)アレロパシー活性の品種変異の解析コアコレクション構成107品種のアレロバシー活性を評価した。イネに比べて全般的に強い活を示す品種が多く、品種変異の幅は大きかった。(3)アレロパシー活性強弱品種の雑種集団の作出F_1個体を栽培し、遺伝解析用のF_2種子を採取した。(4)交配親品種間のDNA多型解析F_1の作成に用いた交配親品種間で多型を示すSSRマーカーを選出し、連鎖地図を作製した。以上のように、22年度は計画通り進捗し、23年度に予定しているQTL解析に必要な植物実験材料およびDNAマーカーを準備できた。アフリカ起源で生産高が世界第5位の穀物であるソルガムは深根性に優れているため、乾燥地や半乾燥地に適応できる作物である。起源地のアフリカでは重要な穀物であるが、除草剤による雑草防除対策は現実的ではなく、生物機能を利用した低コストの雑草防除法を開発し普及されることが必要である。作物に内在するアレロパシー活性は、生物的防除ための有効な手段である。そこで、本課題では、DNAマーカーを利用して、ソルガムのアレロパシー活性に関与する量的形質遺伝子座(QTL)の検出をめざす。平成23年度に得られた成果は以下のとおりである。(1)アレロパシー活性強弱品種の交配に由来するF_2集団の作出アレロパシー活性の変異が大きく、SSRマーカー座における多型頻度が高い品種間で交配して得たF_1個体を栽培して、遺伝解析用のF_2種子を採種した。(2)連鎖不平衡解析によるアレロパシー活性に関連する染色体領域の特定コアコレクション107品種を用いて、ソルガムの染色体10本に散在するSSRマーカー98座におけるDNA遺伝子型情報とアレロパシー活性値に基づく連鎖不平衡解析(アソシエーション解析)を行った。その結果、アレロパシー活性の検定種物レタスの発芽率を指標として評価した場合、第1、2、5、9染色体のSSRマーカー座との間に強い連鎖不平衡を検出した。そのなかで、第9染色体のマーカー座との間で最大のP値を示した。また、レタスの根長を指標として評価した場合、第7染色体の2つのSSRマーカー座と有意な連鎖不平衡を検出した。(3)以上の結果から、ソルガムのアレロパシー活性に関連するQTLが第1,2,5,7,9染色体に計7個存在することを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-10F00096 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10F00096 |
海産無脊椎動物由来の生理活性物質を用いた細胞質分裂の解析 | 細胞質分裂には種々のタンパク質が関与するが、この中でもミオシンやアクチンなどの収縮性タンパク質は、収縮環の形成とその機能発現に重要な役割を果たす。本研究では、Theonella属海綿から単離され、アクチン2モルに対して1モル結合して、アクチンの重合阻害をすることが試験管内の反応で明らかにされているビスセオネライドA(bistheonellide-A、BT-A)を用いて、細胞質分裂の機構解明を図った。フィッシャー系ラット胚由来3Y1線維芽細胞クローン1-6の培養は、10%FCSを含むMEM培地中、5%CO_2下、37°Cで行った。次に、BT-Aを終濃度0.1μMで2.5×10^4cells/mlの3Y1細胞の培地中に添加して、上記条件下で一定時間培養後、細胞形態の変化を位相差顕微鏡で観察したところ、細胞の形態が大幅に変化することが認められた。これらの細胞をロ-ダミン・ファロイジン染色したところ、アクチンフェラメントからなるストレスファイバーが崩壊していることが明らかとなった。さらに培養を続けることにより、24時間以内に大部分の細胞は2核となったが、細胞質分裂が行われないまま、増殖は停止した。フローサイトメトリー分析で、正常細胞のG1期の核DNA量は細胞1個当たり2Cであったが、上述のようにBT-A処理した細胞では通常の2倍であった。したがって、この多核化現象は、核分裂終了後の細胞質分裂が、BT-Aによって阻害されたことを示唆する。次に、24時間処理した後の細胞からBT-Aを洗い流し、さらに培養を続けた。その結果、細胞形態は数時間後には復元し、20時間後には大部分の細胞は再び単核に戻っていた。フローサイトメトリー分析の結果、再増殖した細胞ではG1期で4C、さらにG2M期では8Cとなった。以上の結果は、アクチンフェラメントの形成が、細胞質分裂に必須であることを示唆する。細胞質分裂には種々のタンパク質が関与するが、この中でもミオシンやアクチンなどの収縮性タンパク質は、収縮環の形成とその機能発現に重要な役割を果たす。本研究では、Theonella属海綿から単離され、アクチン2モルに対して1モル結合して、アクチンの重合阻害をすることが試験管内の反応で明らかにされているビスセオネライドA(bistheonellide-A、BT-A)を用いて、細胞質分裂の機構解明を図った。フィッシャー系ラット胚由来3Y1線維芽細胞クローン1-6の培養は、10%FCSを含むMEM培地中、5%CO_2下、37°Cで行った。次に、BT-Aを終濃度0.1μMで2.5×10^4cells/mlの3Y1細胞の培地中に添加して、上記条件下で一定時間培養後、細胞形態の変化を位相差顕微鏡で観察したところ、細胞の形態が大幅に変化することが認められた。これらの細胞をロ-ダミン・ファロイジン染色したところ、アクチンフェラメントからなるストレスファイバーが崩壊していることが明らかとなった。さらに培養を続けることにより、24時間以内に大部分の細胞は2核となったが、細胞質分裂が行われないまま、増殖は停止した。フローサイトメトリー分析で、正常細胞のG1期の核DNA量は細胞1個当たり2Cであったが、上述のようにBT-A処理した細胞では通常の2倍であった。したがって、この多核化現象は、核分裂終了後の細胞質分裂が、BT-Aによって阻害されたことを示唆する。次に、24時間処理した後の細胞からBT-Aを洗い流し、さらに培養を続けた。その結果、細胞形態は数時間後には復元し、20時間後には大部分の細胞は再び単核に戻っていた。フローサイトメトリー分析の結果、再増殖した細胞ではG1期で4C、さらにG2M期では8Cとなった。以上の結果は、アクチンフェラメントの形成が、細胞質分裂に必須であることを示唆する。 | KAKENHI-PROJECT-07267202 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07267202 |
18世紀後半フランスにおけるアメリカ論の展開 - 比較政治思想の観点から | 本研究の目的は、18世紀後半のフランス社会における知的変容の複雑な諸相の一端を、フランスにおける同時代アメリカに関する政治的言説の分析を通じて明らかにすることにある。具体的には、コンドルセのアメリカ論の展開を、同時代の思想史的・歴史的・社会的文脈に位置づけながら、当時のフランスの知識人によるアメリカをめぐる言説空間の再構成を行った。さらに、フランス革命期のアメリカをめぐる議論の展開についての検討を行った。本研究は、18世紀後半のフランスにおいて同時代のアメリカがいかに論じられたか、比較政治思想史の観点から研究を行うことを目的としている。本年度は、思想家コンドルセの1780年代のアメリカ論の分析を中心に進めた。コンドルセは同時代アメリカの知識人と親交をもち、当時のフランスにおける親米派を代表する人物の一人だが、それでも彼の議論は単純なアメリカ賛美などではなく、アメリカの連邦国家建設については批判的な視線も向けており、その理由や背景を探ることは、当時のフランスにおけるアメリカに対する両義的な視点を明らかにする点で非常に重要だからである。またこの問題は、王政末期のフランスの改革構想とも連動していることを常に意識することも重要となる。作業としては、1.コンドルセの議論の背景となる文脈や議論の空間を整理し、再構成すること、2.コンドルセとは異なる視点からのアメリカ論について比較検討すること、の二つを軸に据えた。具体的には、1に関しては、テュルゴやマッツェとの関係を整理し、さらにコンドルセがデュポン・ド・ヌムールらと共に残しているジョン・スティーヴンスなる同時代アメリカ人の文書、アメリカ連邦憲法の注釈の分析にも着手した。2に関しては、マブリのアメリカ論を分析した。本年度後半の1月2月にかけては各種研究会においてコンドルセに関するこれまでの研究を報告する機会に恵まれ、コンドルセのアメリカ論についても同時代アメリカの研究者から貴重な示唆を与えられ、今後研究を進展させるにあたっての新たな視点を得るなど収穫を得られた。また3月にはフランスに滞在し、国立図書館において関連文献、資料の収集を行った。本年度は、資料の収集や情報の整理などに追われ、議論の大きな枠組みは掴めたものの、それぞれのテキストの精査、比較検討という点では、まだ不十分な段階にあるため。本研究は、18世紀後半のフランスにおいて同時代のアメリカがいかに論じられたか、比較政治思想史の観点から研究を行うことを目的としている。平成30年度は、平成29年度からの作業に引き続き取り組んだ。すなわち、コンドルセのアメリカ論について一区切りをつけるために、まとめる作業を進めた。その成果の一部は、2017年9月末に開催された日本政治学会で報告した。一方で、コンドルセを取り巻くより広い思想的文脈(アメリカ連邦憲法制定期の論争、同論争のフランスでの受容、コンドルセの同時代フランス人によるアメリカ論など)を再構成する作業に関しては、これまで収集した資料の読み込み、分析という作業を中心に行った。また2018年2月後半にはフランスに滞在し、国立図書館において関連文献、資料の収集などを行った。本研究の目的は、18世紀後半のフランス社会における知的変容の複雑な諸相の一端を、フランスにおける同時代アメリカに関する政治的言説の分析を通じて明らかにすることにある。具体的には、コンドルセのアメリカ論の展開を、同時代の思想史的・歴史的・社会的文脈に位置づけながら、当時のフランスの知識人によるアメリカをめぐる言説空間の再構成を行った。さらに、フランス革命期のアメリカをめぐる議論の展開についての検討を行った。引き続きコンドルセのアメリカ論を中心に据えて、今後は資料の分析と比較検討、考察に重点をおいて、研究を進めていきたい。その際「研究実績の概要」でも触れたが、アメリカ連邦憲法制定期の論争状況、とりわけ反連邦憲法派(アンチ・フェデラリスト)の議論などを参照することも視野にいれていく。コンドルセの視点に近い部分があり、おそらくコンドルセもなんらかの形でこうした議論に間接的に触れていた可能性が考えられるからである。なお、9月には政治学会においてこれまでの研究の中間報告を行う予定である。29年度が最終年度であるため、記入しない。西洋政治思想史29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-16H07257 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H07257 |
生後の歯胚細胞による歯周組織を備えた歯(歯根)の再生法 | 3年間の研究期間において,以下の事を明らかとした。初年度においては,ブタ/ヒト歯小嚢細胞,ヒト歯根膜間葉系幹細胞,ヒト歯髄間葉系幹細胞の単離と効率的な培養方法の開発。次年度においては,歯髄細胞から象牙質塊を作製するための適した担体の模索。最終年度はブタの歯胚から採取したエナメル上皮細胞,歯髄細胞および培養歯小嚢細胞による疑似歯胚を作製し,人工的に作製した疑似歯槽陥凹モデルに疑似歯胚を移植することで歯周組織様構造を持つ歯根の再生技術の確立を試みた。3年間の研究期間において,以下の事を明らかとした。初年度においては,ブタ/ヒト歯小嚢細胞,ヒト歯根膜間葉系幹細胞,ヒト歯髄間葉系幹細胞の単離と効率的な培養方法の開発。次年度においては,歯髄細胞から象牙質塊を作製するための適した担体の模索。最終年度はブタの歯胚から採取したエナメル上皮細胞,歯髄細胞および培養歯小嚢細胞による疑似歯胚を作製し,人工的に作製した疑似歯槽陥凹モデルに疑似歯胚を移植することで歯周組織様構造を持つ歯根の再生技術の確立を試みた。初年度では歯小嚢幹細胞の効率的な培養法を確立した。ブタの歯冠形成期歯胚から歯小嚢組織を容易に獲得することができ,かつ,この培養した歯小嚢細胞を頭蓋骨に移植すると骨形成を促進することがわかった(Connective Tissue Res)。一方で,臨床応用を視野に入れるとヒトの歯小嚢細胞の解析も必要であると考え,抜去歯より,歯小嚢組織を単離し,ヒト歯小嚢細胞を培養・増殖させた。歯小嚢組織は異種の細胞の集団であることは既知のことであり,マウスの歯小嚢組織には3種類の特性が異なる細胞が存在することが報告されていた。われわれは,ヒトの歯小嚢組織においても,培養下において,形態の異なる3種類の細胞が存在し,培養増殖できることを確認した。そして,これらの3種類の細胞は骨形成を促進することを明らかとした(投稿中)。また,骨芽細胞への分化誘導においてのBMPの効果も検討した(J.Cell Physiol)。次に,象牙質塊の作製において,ヒト歯髄組織から歯髄幹細胞を間葉系幹細胞の表面抗原を用いてFACSにて単離した。この単離したヒト歯髄幹細胞が骨芽細胞および脂肪細胞に分化することを確認した。また,歯髄細胞の分化誘導にバクテリアの凍結破砕画分が歯髄細胞を硬組織形成細胞に分化させることを発見した(Oral Surg, Oral Med)。現在は,象牙質塊の再生は歯髄幹細胞と担体を用いて行うが,その担体の選定を行っている。PLGAを主体として,ハイドロキシアパタイトを含有したものと含有しないもの,かつ,孔経の異なる4種類の担体を準備し,象牙質形成能を評価している。今年度は,歯髄細胞から象牙質塊を作製するために適した担体を探索した。使用した担体は,孔径の異なる2種類のポリグリコール酸のブロックとそれらのブロックにハイドロキシアパタイトを添加した4種類の担体を用意した。移植に用いた細胞は,矯正治療にて抜歯となった歯から無菌的に歯髄組織を採取し,培養増殖させた。これらの歯髄細胞は,FACSにおいて,CD10,CD44,CD73,CD90が陽性であることを確認した。次に,これらの歯髄幹細胞を4種類の担体に播種して,スキッドマウスの背部皮下に移植した。移植後16週にて,マウスから試料を取り出し,その直後に,マイクロCT撮影を行ったところ,ハイドロキシアパタイトを添加した担体にのみ硬組織の形成を確認した。そこで,現在,マイクロCT画像から,硬組織形成率を検討している。一方で,移植した細胞が,移植後の硬組織形成に関与していることを確認するために,ヒトミトコンドリア抗体を用いて免疫組織化学的解析を行った。担体に再生した組織中の細胞の約30-50%の割合でミトコンドリア抗体陽性の細胞が確認できた。また,免疫組織化学的に硬組織形成を確認するためにオステオカルシン抗体を用いて観察したところ,担体に再生した組織中にオステオカルシン陽性の細胞が観察できた。これらの今年度の結果から,移植した歯髄幹細胞が移植後16週後に担体中に維持されていること,硬組織形成には,担体の材料としてハイドロキシアパタイトが必須であることが確認できた。現在,再生した組織が象牙質であることを,形態学的に検討している。23年度は歯周組織を再生させるための実験モデルを構築し,細胞移植することで歯根膜組織用の構造物を確認することができた。歯周組織を再生させるための実験モデルとして,この研究ではブタ組織の歯胚細胞を用いているために,ブタの歯槽陥凹(2)細胞を移植することが理想的ではあるが,移植実験用にミニブタを用いることは,施設を借りることになり,実験の遂行が不可能になることから,購入可能なブタ顎から骨をトリミングすることで疑似歯槽陥凹を作製し,細胞を移植しても,移植した細胞が長期間生存することを確認した。次に,鐘状期後期のブタ歯胚組織から,歯胚上皮組織,歯髄組織および歯小嚢組織を採取し,上皮組織と歯髄組織からは,酵素処理にて細胞を単離し,保存した。 | KAKENHI-PROJECT-21390528 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21390528 |
生後の歯胚細胞による歯周組織を備えた歯(歯根)の再生法 | 歯小嚢組織中の細胞は,歯髄組織と比較して,極度に少ないことから,歯小嚢細胞は培養を用いることで,移植に必要な細胞数を獲得した。上皮細胞,歯髄細胞,培養歯小嚢細胞を準備後,エッペンドルフ内にて,疑似歯胚の再構築を行った。初めに,培養歯小嚢細胞をエッペンドルフの底部に播種後,歯髄細胞,そして上皮細胞を株の細胞を覆うように播種し,上皮細胞を覆うように,培養歯小嚢細胞を播種することで,疑似歯胚の作製に成功した。このエッペンドルフ内の疑似歯胚をトリミングした顎骨内に,壊れないように移動させて,コラーゲンゲルを覆うことで骨から疑似歯胚が落下しないように工夫した。この疑似歯胚付き骨をヌードラットの大網内に移植することで,象牙質周囲にセメント質用構造を持つ歯根葉組織の再生に成功し,再構築されたセメント質とトリミングされた骨との間には,結合組織が観察され,主線維用の構造物が観察された。しかし,この主線維がシャーピー線維としてセメント質および骨に埋入されていることまでは明らかにできなかった. | KAKENHI-PROJECT-21390528 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21390528 |
新しい原料分子を用いたハイドライド気相成長法による高品質InGaN厚膜の成長 | 発光効率が100%かつ信頼性の高い発光ダイオードやレーザーダイオードを実現するためには、高品質なInxGa1-xN厚膜の実現が必要不可欠である。本研究では従来不可能であったInGaN厚膜実現のため、新規成長手法を用いてInGaN厚膜成長を行った。平成26年度はIn組成を025%まで制御することに成功したことに加え、step grade法による高品質な高In組成InGaNの成長の可能性を見出してきた。最終年度である平成27年度はこれまでに得られた知見を元に、1全In組成にわたって組成制御されたInGaN成長、2InGaN厚膜成長に関して検討を行った。全In組成にわたって組成制御されたInGaN成長の検討においては、熱力学解析によって得られた知見を元に成長条件の最適化を行った。その結果、ほぼ全In組成においてInGaNを成長することに成功した。熱力学解析の結果が示唆するように、NH3供給分圧を増加させることで高温成長時においても、よりIn組成の大きなInGaNが成長できることを明らかにした。またNH3供給分圧が大きな条件で成長したInGaNの光学特性は、一般に窒化物結晶のフォトルミネッセンス(PL)測定時に見られる深い順位に由来するブロードな発光が現れないことを明らかにした。厚膜成長においては、10μmを越えるIn組成5%のInGaN厚膜の成長に成功した。従来法によって成長したInGaNの膜厚は最大でも2μm程度であり、10μmを超えるような膜厚を持つInGaNを実現した例はこれまでにない。X線構造解析やPL測定を用いて得られたInGaN厚膜の評価を行った所、結晶品質や光学特性を維持したままInGaNの厚膜成長を達成していることが明らかとなった。この結果から、本成長手法はInGaN厚膜の成長手法として有用であることが示唆された。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。本研究は省・創エネルギーデバイス用材料のキーマテリアルであるInxGa1-xNを新しい気相成長手法によって成長し、従来不可能であった高品質な厚膜結晶作製を目的としている。InxGa1-xNはIn組成(x)を変化させることで紫外(365nm)から近赤外(1900nm)までバンドギャップエネルギーを変化させることが可能であるため、高効率な発光素子や太陽電池としての利用が期待されている。しかしながらその結晶成長の難しさから、従来の成長手法で成長したInGaNで現在実用化されているのは青色発光に対応するIn組成17%程度かつ膜厚23nmのInGaN薄膜に限られているのが現状である。そのため、我々は熱力学的手法によって見出した新しい手法によってInGaNの成長を行い、全組成でIn組成が制御された高品質なInGaN厚膜を実現する。平成26年度は新規手法を用いて1成長条件が成長したInGaNのIn組成や成長速度、結晶品質に与える影響2In組成の異なる多段のInGaN中間層を用いた高品質な高In組成InGaN厚膜の実現(step grade法)についての検討を行った。成長条件を変化させることでIn組成を025%まで制御でき、さらに高In組成のInGaNを得るための知見が得られつつある。またいずれの条件においても成長速度1.5 μm/h以上と、従来法と比較して10倍以上速い速度でInGaNエピタキシャル層の成長が可能であることが明らかになった。step grade法を用いたInGaN成長においてはIn組成を約5%ずつ増加させたInGaN中間層を3段成長した後、組成20%程度のInGaNの成長を行った。InGaNをGaN自立基板上に直接成長した時と比較して、表面形態の優れたInGaNを得ることに成功し、step grade法が高品質なInGaN厚膜成長に有益な手法であることを示唆する結果を得た。発光効率が100%かつ信頼性の高い発光ダイオードやレーザーダイオードを実現するためには、高品質なInxGa1-xN厚膜の実現が必要不可欠である。本研究では従来不可能であったInGaN厚膜実現のため、新規成長手法を用いてInGaN厚膜成長を行った。平成26年度はIn組成を025%まで制御することに成功したことに加え、step grade法による高品質な高In組成InGaNの成長の可能性を見出してきた。最終年度である平成27年度はこれまでに得られた知見を元に、1全In組成にわたって組成制御されたInGaN成長、2InGaN厚膜成長に関して検討を行った。全In組成にわたって組成制御されたInGaN成長の検討においては、熱力学解析によって得られた知見を元に成長条件の最適化を行った。その結果、ほぼ全In組成においてInGaNを成長することに成功した。熱力学解析の結果が示唆するように、NH3供給分圧を増加させることで高温成長時においても、よりIn組成の大きなInGaNが成長できることを明らかにした。またNH3供給分圧が大きな条件で成長したInGaNの光学特性は、一般に窒化物結晶のフォトルミネッセンス(PL)測定時に見られる深い順位に由来するブロードな発光が現れないことを明らかにした。厚膜成長においては、10μmを越えるIn組成5%のInGaN厚膜の成長に成功した。従来法によって成長したInGaNの膜厚は最大でも2μm程度であり、10μmを超えるような膜厚を持つInGaNを実現した例はこれまでにない。 | KAKENHI-PROJECT-14J05164 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J05164 |
新しい原料分子を用いたハイドライド気相成長法による高品質InGaN厚膜の成長 | X線構造解析やPL測定を用いて得られたInGaN厚膜の評価を行った所、結晶品質や光学特性を維持したままInGaNの厚膜成長を達成していることが明らかとなった。この結果から、本成長手法はInGaN厚膜の成長手法として有用であることが示唆された。In組成025%と、本成長手法によって高In組成域のInGaNの成長ができることを確認した。またさらに高In組成のInGaN成長のための知見も得られつつあり、全組成のInGaN成長に向けて大きく前進している。Step grade法によるInGaNの成長においてはさらなる成長条件の最適化が必要ではあるものの、高品質な結晶が得られつつある。以上より研究はおおむね順調に進展していると考えている。27年度が最終年度であるため、記入しない。平成26年度までの研究において、新規成長手法によって高In組成のInGaN成長が可能であることや、上述したstep grade法が高品質なInGaN成長に有用であることがわかっている。そこで平成27年度は1さらなる高In組成(x>0.3)のInxGa1-xN成長のための成長条件の最適化、2step grade法を用いた高品質InGaN厚膜の実現を目的に研究を推進する。平成26年度までに得られた基礎的な実験データと熱力学解析の協調研究によって、高品質なInGaN厚膜成長を進める予定である。27年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-14J05164 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J05164 |
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