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新規遺伝子改変動物と患者iPSを利用した分子病態に基づくてんかんの革新的治療開発
同様に作出した動物を用いて、病態に基づく治療薬のシーズとなる薬剤のスクリーニングを実施している。本研究はてんかんの分子病態を明らかとし、治療法の確立のために実施された。多くのてんかんの責任遺伝子変異と、次世代シークエンサーを利用して世界に先駆け小児交互性片麻痺の責任遺伝子を同定した。また、SCN1Aの異常によるドラベ症候群の患者より樹立したiPS細胞により、その分子病態を明らかにした。さらにこの細胞のSCN1Aの異常を修復、また正常細胞に導入することに成功した。Scn1aの遺伝子の微少欠失を持つマウスの作出とScn1aの遺伝子とPcdh19に変異を導入したラットを作出した。現在、樹立したiPS細胞と作出した動物を用いて、病態に基づく治療薬のシーズのスクリーニングを実施している。26年度が最終年度であるため、記入しない。小児科学26年度が最終年度であるため、記入しない。ナトリウムチャネルをコードする遺伝子、SCN1Aの異常により起こるドラベ症候群の患者より樹立したiPS細胞から神経を分化させることに世界に先駆け成功した。これにより、ドラベ症候群の分子病態を明らかにすることができた。すなわち、ドラベ症候群の病態がGABA系神経細胞の活動電位の減弱によることを世界に先駆けて明らかにすることができた。これの知見により、ドラベ症候群の病態は抑制神経系の不全によることが証明された。今までSCN1Aの異常を持つマウスで観察されていたドラベ病態を、初めてヒトで再現した事例となった。さらに、ドラベ症候群ではナトリウムチャネル阻害効果がある、抗てんかん薬は患者の症状を悪化させることが知られていたが、その理由がこれらに抗てんかん薬は抑制神経系の不全をさらに悪化させることによることを明確に示すことができた。ドラベ症候群のiPS細胞の遺伝子修復をTALEN技術で実施することができた。知りうる限り、ドラベ症候群のiPS細胞の遺伝子修復例は他に報告がない。これにより、本研究の最終目的である、難治性てんかんの遺伝子修復による治療開発へ大きく近づくことになった。これは同時に、健常者由来のiPS細胞にドラベ症候群の任意の遺伝子異常を導入することができることを意味しており、希少疾患であるドラベ症候群の患者よりiPS細胞を樹立する要なく、様々な変異によるドラベ症候群の病態研究が行えるようになったと言える。またドラベ症候群でみられるようなSCN1Aの遺伝子の微少欠失を持つマウスの作出に成功した。この動物はヒトのドラベ症候群で見られる激しいてんかん発作が観察された。さらにTALEN技術を使い、ラットのSCN1Aの遺伝子にナンセンス変異を導入することに成功し、現在その表現型を確認中である。平成24年度はおおむね、計画通りあるいは計画を上回る成果を得ることができた。iPS細胞を使用した病態研究が有用と判明したので、今後は対象をできるだけ多くのてんかん病型へ広げる。
KAKENHI-PROJECT-24249060
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24249060
筋萎縮性側索硬化症の運動ニューロン内に形成されるBunina小体の構成蛋白の探索
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は脊髄及び脳に存在する運動神経細胞が変性し、四肢の筋及び呼吸筋の筋萎縮をきたす疾患である。ALSは急速に症状が進行し、発症から死亡もしくは人工呼吸器などの侵襲的換気が必要になる期間は20ー48ヶ月と予後が悪い。現在、ALSに対する根本的治療法は乏しく治療法の開発、あるいはその病態解明は急務である。本研究は、ALSの神経細胞内に確認される異常構造物でありながらその成り立ちが不明であるBunina小体に注目し、その構成蛋白を明らかにすることを目的とした。それによりALSの病態を深く理解することができる様になり、ひいては治療法や早期診断法の開発に寄与できると考えている。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は脊髄及び脳に存在する運動神経細胞が変性し、四肢の筋及び呼吸筋の筋萎縮をきたす疾患である。ALSは急速に症状が進行し、発症から死亡もしくは人工呼吸器などの侵襲的換気が必要になる期間は20ー48ヶ月と予後が悪い。現在、ALSに対する根本的治療法は乏しく治療法の開発、あるいはその病態解明は急務である。本研究は、ALSの神経細胞内に確認される異常構造物でありながらその成り立ちが不明であるBunina小体に注目し、その構成蛋白を明らかにすることを目的とした。それによりALSの病態を深く理解することができる様になり、ひいては治療法や早期診断法の開発に寄与できると考えている。
KAKENHI-PROJECT-19K17050
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K17050
離散的函数方程式の有理型函数解の研究
複素平面上で差分方程式,Schroeder方程式のように微分などの極限操作を含まない離散的函数方程式の超越的有理型解の性質について値分布理論を用いて考察した。また,増大の位数の小さい整函数の合成函数に関する評価式の精密化に取り組んだ。ここでは,ある増大の条件を満たす整函数の評価式については除外区間を取り去ることに成功した。応用として,超越整函数を定義方程式に持つ,Schroeder函数の増大度を考察した。複素力学系と関わりの深い合成型の函数方程式f(G(z))=R(f(z))を調べ,既知の定理を可視化して定理の精密化をした。複素平面上で差分方程式,Schroeder方程式のように微分などの極限操作を含まない離散的函数方程式の超越的有理型解の性質について値分布理論を用いて考察した。また,増大の位数の小さい整函数の合成函数に関する評価式の精密化に取り組んだ。ここでは,ある増大の条件を満たす整函数の評価式については除外区間を取り去ることに成功した。応用として,超越整函数を定義方程式に持つ,Schroeder函数の増大度を考察した。複素力学系と関わりの深い合成型の函数方程式f(G(z))=R(f(z))を調べ,既知の定理を可視化して定理の精密化をした。離散的函数方程式の超越的有理型解の値分布的性質を今までの研究と照らし合わせながら行いました。離散的な函数方程式の代表例である非線形差分方程式と非線形常微分方程式との対比を試みました。特に、代数的常微分方程式の解の値分布と超越的有理型解の個数についてある結果を得ました。対応する差分方程式についてどのようなことが成り立つのか研究の方向づけになりました。離散的函数方程式のひとつでもあり複素力学系と密接な関わりのあるSchroeder方程式も研究対象にしました。特に、定義函数を超越的にした場合の取り扱いの基点となる、増大の小さい超越函数についてのValiron-Mokhonko型の評価式に取り組みました。以下に分担者ごとの研究実績を報告いたします。いくつかの点(あるいは点の組)の逆像の一致による有理形関数の一意性定理において、Nevanlinnaの4点定理の重複度に関する条件を弱めました。さらに、点の逆像の代わりに、点の組の別々の逆像の一致による定理も与えました。条件によっては、2つの有理形関数が一致はしないが互いにメビウス変換の関係を得ました。(森)準Painleve性をもつ方程式のクラスでPainleve I方程式を含むものを見出し、その解析的性質を調べました。Painleve Iのタイプの2変数Garnier系についてその特異集合のまわりでの漸近解を求めました。フィボナッチ数の逆数和により定義される数についてその間になりたつ代数関係式を調べました。(下村)超越整函数の力学系について研究を行いました。二つの特異値を持つ構造有限型整函数の力学系の族について、その双曲成分の考察を行いました。(諸澤)有理型函数の角領域での振る舞いや函数の一意性の問題を取り扱いました。また、高階線形方程式の超越解の積の性質を調べました。(藤解)複素平面上で離散的函数方程式の超越的有理型解の性質を考察しました。離散的函数方程式の場合は複素微分方程式の解と類似の性質を持つ場合と,全く異なる性質を持つ場合があります。今年度は,の合成(Factorization)についての性質を値分布理論を用いて考察しました。代数的複素微分方程式においては,超越的有理型解が二つの超越函数の合成の形に書けるのであれば,それぞれの因子もまた代数的複素常微分方程式を満たすことが知られています。これは,1980年代のSteinmetzの結果によりどころをおいています。しかしながら,この方法は、離散的函数方程式の解については必ずしも適用可能ではなく新たな試みが必要とされました。ここでは、q-差分方程式・Schroeder方程式などを対象にEremenko and Rubelによってなされた右側共通因子定理の適用を試みました。離散的函数方程式の解の存在定理についての研究を進めました。今年度は複素力学系に関わりの深い合成型の函数方程式f(G(z))=R(f(z))を対象に調べました。ここで,G(z),R(z)は多項式です。得られた結果は,G(z)の固定点の近くでの局所的な解の存在と,多項式解の構成をしました。実際に,この函数方程式には超越整函数解は存在しないことが知られているので,解の存在については多項式解の自由度を調べることが残された課題となります。また,上記の大域的解の存在は、複素力学系理論ではG(z)とR(z)が共役であることを意味しています。このとき、G(z),R(z)のJulia集合の間に関係があることがBergweiler and Hinkkanenによってしめされています。多項式解を具体的に構成することでこの関係を可視化することも試みました。離散的函数方程式を複素平面上で考察しました。昨年度に引き続き、合成を含んだ離散的函数方程式の解の存在定理についての研究を進めました。特に、複素力学系に関わりの深い合成型の函数方程式f(G(z))=R(f(z))を対象に調べました。ここで,G(z),R(z)は多項式です。
KAKENHI-PROJECT-19540225
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19540225
離散的函数方程式の有理型函数解の研究
この函数方程式には超越整函数解は存在しないことが知られています。そこで、課題となるのは多項式解の構成と局所解の存在証明です。前者については、具体的に構成し複素力学系における超越函数解についてのBergweiler and Hinkkanenの定理が成り立つかどうかを可視化することを試みました。可視化によって、多項式の場合には、より精密な結果が得られることを予想しこれを解決しました。後者につきましては、G(z)の固定点の近くでの局所的な解の存在を示し、どこまで解析接続できるかを試みましたが、今後の課題として残りました。値分布論の応用として微分方程式を考察する方法は昔から知られています。この場合は、除外区間は問題にならない場合もあります。一方で、離散的函数方程式の場合は除外区間を無視することはできず、どの程度取り除くことができるかは重要な問題です。この研究では、離散的函数方程式の定義方程式に増大の位数の小さい整函数を含む場合を考察しました。準備として、整函数の合成函数についての評価式の精密化に取り組み、ある増大の条件を満たす整函数については除外区間を取り去ることに成功しました。応用として超越函数を定義方程式に持つ、Schroeder函数の増大度を考察しました。
KAKENHI-PROJECT-19540225
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19540225
19世紀フランス農村における市民的規範の受容に関する研究
本研究の最大の成果は、平成13年に広島大学に提出し同年12月に審査を受けた博士学位請求論文に若干の加筆、修正を行い出版した『近代フランス農村の変貌-アソシアシオンの社会史-』(刀水書房、平成14年2月)である。この著作は、研究代表者が長年に亘って取り組んできた近代フランス農村社会史研究をひとまず集大成したものであるが、本研究の課題に即して農村杜会への民主制の浸透、定着化を跡づけようとする関心を強く反映したものでもあった。とくにアソシアシオンassociationが果たした多様な役割を解明した。研究期間の後半には、本書が残した課題を検証し、新たな研究に着手した。新たに浮かび上がった問題は大きく分けて二つある。まず、(1)農業組合であれ読書サークルであれ、農村民衆が多様なアソシアシオンに主体的に参加する際の契機や意識が十分に明らかにされなかったという点がある。もう一点は、(2)アソシアシオンとコルポラシオンcorporationとの組織上、概念上の区別、民主制とのかかわりを再考することである。いずれも、農村社会への市民的規範の浸透を解明する際に欠かせない論点である。これらの課題に応えるためにひとまず13年11月の広島史学研究会大会報告に際し、E.フルニエール、R.ドゥ・ラ・トゥール・デュ・パンら20世紀初頭の代表的なアソシアシオン論を参照し、(2)の問題に迫るための視点を提示した。また(1)の問題にアプローチするために、世紀転換期から20世紀前半にかけて活躍した農民作家E.ギヨマンの生涯と社会的な活動に着目した。そして彼の文学作品、農業組合運動、そしてとくに手紙の交換によるソシアビリテ(社会的結合と交渉)の形成に関する文献・資料を収集し、分析してきた。平成15年4月の比較教育社会史研究会大会では,その成果の一端を発表した。本研究の最大の成果は、平成13年に広島大学に提出し同年12月に審査を受けた博士学位請求論文に若干の加筆、修正を行い出版した『近代フランス農村の変貌-アソシアシオンの社会史-』(刀水書房、平成14年2月)である。この著作は、研究代表者が長年に亘って取り組んできた近代フランス農村社会史研究をひとまず集大成したものであるが、本研究の課題に即して農村杜会への民主制の浸透、定着化を跡づけようとする関心を強く反映したものでもあった。とくにアソシアシオンassociationが果たした多様な役割を解明した。研究期間の後半には、本書が残した課題を検証し、新たな研究に着手した。新たに浮かび上がった問題は大きく分けて二つある。まず、(1)農業組合であれ読書サークルであれ、農村民衆が多様なアソシアシオンに主体的に参加する際の契機や意識が十分に明らかにされなかったという点がある。もう一点は、(2)アソシアシオンとコルポラシオンcorporationとの組織上、概念上の区別、民主制とのかかわりを再考することである。いずれも、農村社会への市民的規範の浸透を解明する際に欠かせない論点である。これらの課題に応えるためにひとまず13年11月の広島史学研究会大会報告に際し、E.フルニエール、R.ドゥ・ラ・トゥール・デュ・パンら20世紀初頭の代表的なアソシアシオン論を参照し、(2)の問題に迫るための視点を提示した。また(1)の問題にアプローチするために、世紀転換期から20世紀前半にかけて活躍した農民作家E.ギヨマンの生涯と社会的な活動に着目した。そして彼の文学作品、農業組合運動、そしてとくに手紙の交換によるソシアビリテ(社会的結合と交渉)の形成に関する文献・資料を収集し、分析してきた。平成15年4月の比較教育社会史研究会大会では,その成果の一端を発表した。平成12年度の研究は、これまでの研究で明らかになっていた民衆教育結社(アソシエーション)網の形成過程を踏まえて、よりミクロな視角から農村において市民的諸規範がいかに受容されたのかを問おうとした。この観点から、フランス滞在を中心とする史料・文献の収集や現地研究者との交流も行った。とくにパリのプロテスタント史協会図書館での調査によって、運動の具体相について多くの知見を得ることができた。12年度の研究で明らかになったことは、おおよそ以下のとおりである。186080年代にかけて、自由帝政、第三共和政の公教育相によって支持された学校図書館が急速に広まった。一方で、中流階級によって主導されたフランクリン協会と教育同盟による民衆図書館の設立運動も精力的に展開され、大半の地方に図書館網を形成するにいたった。農村住民は図書館の蔵書に親しんだが、それらは夜の集いヴェイエで朗読されることが多かった。この過程は全体として、村の結合関係に新たな要素をもたらし、読書サークルに代表される、より開かれた平等主義的な結合も生まれた。自由主義ブルジョワ、とりわけ共和主義者は、当時読み書きを習得しつつあった下層階級、とくに農民層を文明化・教化するために、この運動に積極的に参加した。ところが読者は、小説や旅行記など娯楽的な読み物を選好し、科学や産業、道徳に関する書物はほとんど読まれなかった。結局、この民衆図書館運動は、農村民衆の知育・徳育よりも、他の結社運動と合わさって、民主的政治体制の構造的な基盤づくりに貢献したといえよう。但し、現地研究者の助言によって、当初期待していた村落レベルでの実証はかなり難しいこともわかった。
KAKENHI-PROJECT-12610392
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12610392
19世紀フランス農村における市民的規範の受容に関する研究
この点を踏まえ、次年度の研究はやや方向を変え、地方レベルでのセーフティネットの形成(例えば、消防団)過程を跡づける予定である。平成13年度の研究は、以下の二つの系列に分けられる。1.19世紀フランス農村のアソシアシオン史について、これまでの研究を総合した学位論文「近代フランス農村におけるアソシアシオンの杜会史」を広島大学大学院文学研究科に提出、平成14年1月に学位を授与された。本論文は、アソシアシオンassociation(結杜、任意団体)の生成・展開過程を追うことによって、19世紀フランス農村社会の近代化、とくに民主制の定着化の問題を考察した。とくにアソシアシオン的結合を媒介として、国家、政治的支配層の統治のベクトルと、地方の民衆、農民の主体的な実践とがせめぎあい、接合される点に着目した。これに加筆・修正を加えて『近代フランス農村の変貌-アソシアシオンの社会史-』(刀水書房刊)を出版した。2.上記の総合的研究の後に残された課題として、アソシアシオンとコルポラシオンcorporation(同業組合)との組織上、概念上の区別について再考することがある。フランスにおいて職業組合の結成権が認められた1884年、結社の自由が認められた1901年当時、アソシアシオンに関して共通の理解、共通の理念があったわけでは決してなかった。この問題に関して、2001年度広島史学研究会大会西洋史部会で「アソシアシオン理念のスペクトル-フランス農村の結社運動に関連して-」と題する発表を行った。また、フランス現地での調査において、世紀転換期に活躍した農民作家エミール・ギヨマンの組合活動家としての側面、農村アソシアシオンヘの係わりに関する資料収集を行った。関連する研究として、松塚俊一のイギリス民衆教育史に関する業績について、フランスとの比較の観点から論評したものを発表する予定である。平成14年度の研究においては、これまでの研究をまとめた成果『近代フランス農村の変貌-アソシアシオンの社会史-』(2002年2月,刀水書房刊)が残した課題を検証し、関連する新たな研究に着手した。拙著が残した課題は主に二つある。まず、農村民衆が農業組合であれ読書サークルであれ、多様なアソシアシオンassociationに主体的に参加する際の契機や意識が十分に明らかにされなかったという点がある。もう一点は、アソシアシオンとコルポラシオンcorporationとの組織上、概念上の区別、民主制とのかかわりを再考することである。いずれも、農村社会への市民的規範の浸透を解明する際に欠かせない論点であるが、それぞれに本格的な資料分析と考察が必要であることがわかったので、14年度は前者の問題に焦点を絞ることにした。この問題にアプローチするためには、フランス現地の文書館での地道な史料調査によって個別のアソシアシオンの設立、発展の過程をつぶさに跡づける方法が有効であると考えられるが、少なくとも半年以上の長期にわたる滞在を必要とするため不可能であった。そこで、これと並んでもうひとつ有効と考えられる方法を採った。つまり、農民自身の残した記録(刊行されたもの)を調べる方法である。このような観点にとって興味深い事例、研究対象として、世紀転換期から20世紀前半にかけて活躍した農民作家エミール・ギヨマンの生涯と社会的な活動がある。
KAKENHI-PROJECT-12610392
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12610392
抗腫瘍薬による歯の形成障害に対する有効な齲蝕予防法の開発
近年、小児がんの治療法が改善され、長期生存する治療経験者は増加している。一方で、小児がん治療経験者の晩期合併症が注目されるようになってきた。本研究では、化学療法でよく使用されるシクロホスファミド(CY)が歯の形成にあたえる影響を調べるため、歯の形成期のマウスにCYを投与し臼歯の歯根形成を観察した。CY作用させマウスの臼歯の形態的変化を3D立体構築画像を用いて分析した。その結果、歯根の伸長を障害し、根尖孔が早期に閉鎖する傾向を示した。また、CYはヘルトウィッヒ上皮鞘の形成や象牙芽細胞の増殖を阻害しており、これらが短根でV字型の歯根形成障害を引き起こす可能性があることが示唆された。本研究の目的は,抗腫瘍薬シクロホスファミド(CY)を投与したマウスの下顎第一臼歯におよぼす影響についてμCT撮影を用いて生後16日齢から27日齢までの歯根形成を経日的に観察することである。【対象と方法】生後12日齢のICRマウスを用い,対照群は生理食塩水を投与し,実験群にはCY[エンドキサン,塩野義製薬(株)]100mg/kgを腹腔内投与した。その後,生後27日齢まで飼育した後,下顎骨を摘出した。下顎第一臼歯歯根の三次元的形態観察および歯根長を測定する目的で,第一臼歯を中心としてμCT装置(ElescanII,日鉄エレックス社,福岡)を用いて撮影した。その後デジタルデータを得るために断層画像の再構成をおこなった。三次元構築は,画像解析ソフトTRI/3D-BON(ラトックシステムエンジニアリング,東京)を用いた。歯根長の計測は,三次元構築像を骨と歯の閾値で抽出した後,同解析ソフトを用いて,生後16日齢から生後27日齢の第一臼歯遠心根の歯頸部エナメル質形成端から根尖象牙質形成端までの距離を歯根長として計測した。【結果】生後16日齢の対照群と実験群ではほとんど差は認められなかったが,経日的に実験群の歯根長は対照群に比べ明らかに短かくなっていた。三次元立体構築画像から解析ソフトを用いて歯根長を測定した結果,生後16日齢では統計学的有意差を認めなかった。それに対して,生後27日齢では対照群の歯根長は生後16日齢の約2倍に伸長していたが,実験群では短く,両群間に有意差を認めた(p<0.01)。【考察】本結果から,CYを歯根形成期のマウスに投与すると,正常な歯根形成を阻害することが明らかになった。シクロホスファミドによって歯根形成に関与するHERSの形態が変化し,機能に異常が生じたと考えられ,早期に歯根形成が停止し,正常な歯根形成が進まなかったことが示唆された。本研究の目的は、抗腫瘍薬シクロホスファミド(CY)を投与したマウスの下顎第一臼歯歯根形成におよぼす影響についてその形態変化および機能変化を解析することである。昨年度、マイクロCT撮影を用いて生後16日齢から27日齢までの歯根形成の経日的変化を観察しておりその結果をさらに考察した。【対象と方法】生後12日齢のICRマウスを用い、対照群は生理的食塩水を投与し、実験群にはCY(エンドキサン、塩野義製薬(株))100mg/kgを腹腔内投与した。その後、生後27日齢まで飼育したのち、下顎骨を摘出した。下顎第一臼歯歯根の三次元的形態観察及び歯根長を測定する目的で第一臼歯を中心としてマイクロCT装置(ElescanII,日鉄エレックス社、福岡)を用いて撮影した。その後デジタルデータを得るために断層画像の再構成を行った。三次元構築は、画像解析ソフトTRI/3D-BON(ラトックシステムエンジニアリング、東京)を用いた。歯根長の計測は、三次元構築像を骨と歯の閾値で抽出したのち、同解析ソフトを用いて第一臼歯遠心根の歯頚部エナメル質形成端から根尖象牙質端までの距離を歯根長として計測した。また、遠心根根尖孔面積の計測をImageJ解析ソフトを使用して測定した。【結果】経日的に実験群の歯根長は形成阻害され対照群に比べ短くなっていた。解析ソフトの結果では、歯根長は生後16日齢では統計学的有意差を認めなかったものの、生後27日齢では実験群が短く、有意差を認めた。また、根尖孔面積は実験群が対照群に比較して、経日的に小さくなっており、生後27日齢では両群間に有意差を認めた。【考察】本結果から、CYを歯根形成期のマウスに投与すると、正常な歯根形成を阻害することが明らかになった。また、CY群では歯根長の形成が阻害されるにもかかわらず、根尖孔が早期に閉鎖される傾向が認められた。全体としておおむね順調に進行しており、昨年度は抗腫瘍薬(シクロホスファミド)によって成長期マウスの歯根形成障害の形態的変化を立体的に観察し、計測値からその経日的変化も示すことができた。また、これらの結果をまとめて論文投稿を行った。小児がん(白血病など)は、手術療法・化学療法・放射線療法・移植法などの治療法が進歩したことで予後生存率が上昇し治療後の長期生存が可能となった。
KAKENHI-PROJECT-26463121
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26463121
抗腫瘍薬による歯の形成障害に対する有効な齲蝕予防法の開発
しかしその一方で、小児がん経験者の、小児期のがん治療の副作用と考えられる二次的影響(晩期合併症)もさまざまな領域で明らかになってきている。口腔領域での小児がん治療の晩期合併症としでは、石灰化障害、矮小歯、欠如歯、歯根の短根化などが報告されている。臨床治療の化学療法では多剤併用療法が使用されるため、個々の薬剤の歯の形成に対する影響についていまだ不明なことも多い。本研究では抗腫瘍薬の歯の形成に及ぼす影響を調べるために、マウスを用いて歯根形態の変化を解析した。【方法】生後12日齢の歯の形成期のマウスを用い、対照群には生理的食塩水、実験群にはシクロホスファミド(CY)100mg/kgを投与した後、生後27日まで飼育し、臼歯の歯根形成を観察した。下顎第一臼歯歯根の3次元的の形態をマイクロCT装置を用いて撮影し、3D立体構築画像に変換して分析した。計測項目は、歯根長および根尖孔の面積である。計測にはラトック社の解析ソフトおよびImageJを用いた。【結果】歯根長はCY投与群では伸長が阻害され、根尖孔が早期に閉鎖する傾向を示した。また免疫染色結果からCYによるヘルトウィッヒ上皮鞘(HERS)の形成阻害が認められた。【考察】CYが歯根形成において伸長を抑制し、根尖を早期に閉鎖させたことから、臨床のエックス線写真でみられるV字型歯根の原因となる可能性が示された。またCYによるHERSの形成阻害を認めたことも歯根長や形態に影響を与えることが示唆された。今後小児がん経験者は増加すると予想される。歯の形成不全のリスクを持つ小児がん経験者に対して、歯の晩期合併症についての情報提供や継続した歯科健診などのフォローアップが重要になると考えられた。近年、小児がんの治療法が改善され、長期生存する治療経験者は増加している。一方で、小児がん治療経験者の晩期合併症が注目されるようになってきた。本研究では、化学療法でよく使用されるシクロホスファミド(CY)が歯の形成にあたえる影響を調べるため、歯の形成期のマウスにCYを投与し臼歯の歯根形成を観察した。CY作用させマウスの臼歯の形態的変化を3D立体構築画像を用いて分析した。その結果、歯根の伸長を障害し、根尖孔が早期に閉鎖する傾向を示した。また、CYはヘルトウィッヒ上皮鞘の形成や象牙芽細胞の増殖を阻害しており、これらが短根でV字型の歯根形成障害を引き起こす可能性があることが示唆された。全体としておおむね順調に進行しており、昨年度は抗腫瘍薬(シクロフォスファミド)によって小児期マウスの歯根の形成障害の状態をμCTをもちいて形態的な変化を経日的に観察することができた。現在これらの結果をまとめて論文製作を行っている。1.形成障害に対する予防的方策について、文献的検索をさらに進める。2.抗腫瘍薬により形成障害を受けた歯の構造的変化について検討を加える。3.口腔内細菌に対する形成障害をうけた歯の反応を検索する。4.学会報告および論文発表を行う。医歯薬学1.μCT立体画像の解析をさらに進めて、定量化を試みる。計測部位や計測項目を再検討して、さらなるデータが得られるか検討する。2.形成障害に対する予防的方策について文献検索を行い、実験方法について検討し、実施する。3.これまでに作成した試料から歯周組織変化について定量的な測定が可能であるか検討を加える。4.学会報告および論文発表を行う。昨年度の繰越金があり、計画時よりも予算が増えていた。本年度は、学会参加や論文投稿を行った。投稿はオープンアクセスジャーナルであったが、この前年度繰り越し分にて充足することができた。しかし、次年度使用額が生じた。
KAKENHI-PROJECT-26463121
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26463121
人工二次元電子系を用いた実験的シミュレーション手法の確立
低温超高真空STM装置を用いた原子操作により、Cu(111)表面に吸着させたFe原子やCO分子の二次元格子構造を人工的に形成した。CO分子の(8×8)超構造では、ハニカムの副格子AとBそれぞれに対応する位置でFermi準位近傍の電子状態が異なることが、トンネル電子分光やSTS測定から明らかになった。一方、同じCO分子の(6×6)超構造では、副格子の電子状態の等価性は失われないことがわかった。これらの結果は、吸着種による散乱過程により表面状態がバルクと強く結合して共鳴状態となり、表面第二層からの影響が大きくなったものと解釈され、第一原理計算を用いたシミュレーションにより再現されることがわかった。本研究では、固体の清浄表面上において、低温超高真空STM装置を用いた原子操作の手法で任意の二次元格子を形成し、人工的な電子状態を創り出す実験を行っている。基板と吸着種の組み合わせや格子の形状を変えることで、電子の様々な振る舞いを引き起こし、実験条件や観察された電子状態に関するデータベースを構築して、理論研究と物性実験の間の溝を埋める実験的シミュレーション手法を確立することを目指している。平成27年度は、表面状態を有するCu(111)面上に吸着させたCO分子で三角格子を形成し、二次元電子系に周期的ポテンシャルを導入することでグラフェンと同じ電子状態を創り出し、トンネル電子分光により局所電子状態の実空間変化を観察した。CO分子の近傍ではポテンシャルが高くなるため、表面電子はその隙間に追いやられるため、結果的にハニカム状の領域に閉じ込められる事になる。Cu(111)面上にCO分子の8×8構造を形成すると、このハニカムの副格子Aに対応する位置と副格子Bに対応する位置で、Fermi準位近傍の電子状態が異なることが明らかになった。一方、6×6構造の場合には、そのような差異は観測されなかった。これらの結果は、表面電子が吸着CO分子によって散乱されバルクバンドに吸収される過程により、表面状態とバルクの結合が強められた結果、表面第二層の影響が表面の局所状態密度に強く反映され、対称性が破れたことが原因であると解釈される。これらの成果により、原子操作によって二次元格子を形成し、人工的な電子状態を創り出すという本研究の最初の目的は達成された。二次元格子の原子操作による形成は、Stanford大による先行研究に次ぐ二例目であり、今後、この手法を適用することで実験的に実現可能な系を探索し、バリエーションを増やしていくことでこの研究を発展させることが可能であることが確認された。今年度は、原子操作の実験手法を確立すること、実際に人工二次元電子状態を形成しその局所状態密度を測定することなど、主たる目標は達成されたことから、まずまずの実験進捗状況であると考えている。平成27年度の計画では、原子操作を用いる手法で、形状が完全に制御された“仮想グラフェンナノリボン"を創り、その電子状態をトンネル電子分光で調べることも目的の一つとしていた。理論計算によれば、グラフェンをナノスケールの幅を持つリボン状にすると、zigzag端を持つリボンはFermi準位に平坦なバンドを持つ金属的な電子構造になり、一方、armchair端を持つリボンはその幅に依存して金属的な電子状態と半導体的な電子状態が交互に現れる。実際のグラフェンでは、ナノリボンのエッジや幅などの構造制御を完全に行うことが難しいことから、本研究の手法でシミュレートすることで計算結果を再現出来ないかと考えた。しかし、実際にナノリボン構造を形成してトンネル電子分光を行ったが、期待されるような結果は得られなかった。本研究の手法では、Cu(111)表面状態の二次元自由電子系にCO吸着分子の格子を形成することで周期ポテンシャルを導入してグラフェンと同様の電子状態を創り出しているが、この手法では構造の端が自由電子の海に直接接続されているためグラフェンの端のようにポテンシャル障壁が存在しないことが、計算と異なる結果が得られた原因と考えられる。二次元格子の端にCO分子の壁を作ることで、計算と同じ状態を創り出すことが可能であると考えられ、平成28年度に挑戦したい。計画では更に、“仮想グラフェン"に磁場を印加して、Landau準位の観察を試みることも目標にしていた。超伝導マグネットを使用して磁場を印加することに技術的な問題はなく、時間があれば試したいと考えている。Cu(111)面上に吸着CO分子を配列することで表面の二次元電子系に周期ポテンシャルを導入し、新たな電子状態を創り出す実験を行っている。昨年度の実験で得られた、配列分子の間隔に依存して局所電子状態の副格子対称性が保たれたり破られたりするという結論について、東京理科大の山本研と第一原理計算を用いた共同研究を進めた結果、計算により同じ傾向が再現されることが判った。また、同じ系において、より多くの分子を複雑に配列することで新たなトポロジカル相の創出が可能であるという理論予測があり、その検証を目指して更に実験を進めた。これまで最大50個程度の分子の位置を制御してきたが、その数を200から300個程度まで増やす必要がある。現状では、STMの探針が原子操作を行うと次第に劣化し、100個以上の分子の操作は難しいことが判った。そこで、探針の材質として、これまでのAuやWの代わりにPt/Ir合金を用いて、より長時間の原子操作実験に耐え得る探針の作製方法の確立を試みている。
KAKENHI-PROJECT-15K13367
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人工二次元電子系を用いた実験的シミュレーション手法の確立
また、今後扱う物質系として、非磁性金属表面の磁性原子、絶縁体表面の金属原子などを検討しているが、それらの中で、原子操作が実際に可能な系の探索を進めた。Fe /Pt(111)やFe /NiAl(110)などの系で実験を行い、これまで原子操作の前例のないPt(111)面においてもFe原子の操作が可能な条件を見つけ出すことに成功した。NiAl(110)面についても、実験を進めている。これらの系で実験する場合、個々の原子のスピンの検出は実験の幅を拡げる上で重要であるが、現在の測定温度(4.2 K)はスピンの揺動を止めるのに十分ではない。より低温での実験を可能にするため冷凍機の使用を検討しており、その組み立てと測定装置への組み込み作業を完了した。テストの結果が良好であれば、スピンの検出実験などを行っていく予定である。低温超高真空STM装置を用いた原子操作により、Cu(111)表面に吸着させたFe原子やCO分子の二次元格子構造を人工的に形成した。CO分子の(8×8)超構造では、ハニカムの副格子AとBそれぞれに対応する位置でFermi準位近傍の電子状態が異なることが、トンネル電子分光やSTS測定から明らかになった。一方、同じCO分子の(6×6)超構造では、副格子の電子状態の等価性は失われないことがわかった。これらの結果は、吸着種による散乱過程により表面状態がバルクと強く結合して共鳴状態となり、表面第二層からの影響が大きくなったものと解釈され、第一原理計算を用いたシミュレーションにより再現されることがわかった。平成28年度は、Fermi準位付近の状態密度の低いNiAl合金単結晶の(110)面に、金属原子を配列して人工低次元構造を形成し、その電子状態を観察する予定である。NiAlは合金でありながら半導体的な電子構造を有し、表面の清浄化の方法や吸着種との結合の強さなどは通常の金属と変わらないため、本研究に用いる基板として最適である。表面を酸化させると適度な厚みのAl2O3が形成されるため、電極の付いた絶縁体基板として用いることも出来る。本研究では、遷移金属原子を原子操作である程度の間隔で配列し、電子がhopping伝導的に振る舞う、電子相関の強い系を人工的に創り出すことを試みる。原理的には、原子の間隔を変えることで電子のsite間の遷移エネルギーを、吸着種の元素を変えることでsite上のクーロン相互作用を変化させることが出来るはずであり、原子間隔の小さい金属的な状態から少しずつ間隔を大きくしていくとMott絶縁体への転移が起きるのか、その電子状態を観測することは興味深い。また、遷移金属元素を用いることにより、各siteのスピンの大きさを系統的に変えることも可能である。これらの実験ではスピンに関する情報を直接得ることが出来れば、起きている現象の理解は飛躍的に高まるため、スピン偏極STMも試みる。また、検出するスピンの搖動を止めるため、測定温度を1 K程度に下げる目的で、冷凍機を用いる。平成27年度にCO/Cu(111)系でやり残した実験もあるが、まずは物質系を替えて、まったく性質の異なる電子状態を人工的に創り出すことが出来るか挑戦したい。また、特に冷凍機のテストは優先して行いたい。原子操作に用いるSTM用ソフトウエアの改良なども行い、原子操作の精度を上げることや、より高度な測定手法の確立などに取り組んでから、再度CO/Cu(111)系に戻って実験を行いたいと考えている。固体物理
KAKENHI-PROJECT-15K13367
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脳機能の特性を活用したクロスモーダルコンテンツ
本研究課題では、脳機能の解明によって明らかとなった認知特性を利用して、新たな身体感覚を生起する情報の呈示手法とその内容を、クロスモーダル(感覚統合)コンテンツと呼称し、次世代メディアとしてのクロスモーダルコンテンツの制作・応用・検証を行った。具体的な取り組みとして、身体イメージを利用したコンテンツの制作、脳活動のモニタリングによる客観的な評価法の検討ならびに共感覚的なクロスモーダル表現手法の開発を行った。本研究課題の遂行によって得られた知見を以下にまとめる。1)身体イメージを利用したコンテンツ制作として、身体イメージの誘発を利用した安全教育用VRコンテンツの試作を行った。アンケート調査の結果から、多様な認知状態を対象としたコンテンツ開発への展開が考察された。2)身体イメージ獲得という認知体験について、脳機能計測(NIRS)を用いた評価手法の検討を行った。実験の結果、特定の脳部位の観察によって、身体イメージの誘発が評価できることが示唆された。データ解析方法についても、トレンド解析によるノイズ除去が可能となった。3)視触覚のクロスモーダル刺激によって、仮想の触運動感覚が生じるという錯覚を発見し、この錯覚について評価実験を行った。結果、主観評価とNIRSデータの結果にある程度の関連性を認めることができた。4)上記錯覚に関連し、実際には呈示されていない触覚を生起するという共感覚的な現象に注目し、基礎的な検討を行った。試作コンテンツを用いたNIRSによる評価実験の結果から、特徴的な体験の生起が示唆された。以上、本研究課題の推進により、具体的かつ有益な知見を数多く取得できたことから、新たなメディアコンテンツの可能性を拓く、近未来のコア技術の形成に寄与できたと考える。本研究課題では、脳機能の解明によって明らかとなった認知特性を利用して、新たな身体感覚を生起する情報の呈示手法とその内容を、クロスモーダル(感覚統合)コンテンツと呼称し、次世代メディアとしてのクロスモーダルコンテンツの制作・応用・検証を行った。具体的な取り組みとして、身体イメージを利用したコンテンツの制作、脳活動のモニタリングによる客観的な評価法の検討ならびに共感覚的なクロスモーダル表現手法の開発を行った。本研究課題の遂行によって得られた知見を以下にまとめる。1)身体イメージを利用したコンテンツ制作として、身体イメージの誘発を利用した安全教育用VRコンテンツの試作を行った。アンケート調査の結果から、多様な認知状態を対象としたコンテンツ開発への展開が考察された。2)身体イメージ獲得という認知体験について、脳機能計測(NIRS)を用いた評価手法の検討を行った。実験の結果、特定の脳部位の観察によって、身体イメージの誘発が評価できることが示唆された。データ解析方法についても、トレンド解析によるノイズ除去が可能となった。3)視触覚のクロスモーダル刺激によって、仮想の触運動感覚が生じるという錯覚を発見し、この錯覚について評価実験を行った。結果、主観評価とNIRSデータの結果にある程度の関連性を認めることができた。4)上記錯覚に関連し、実際には呈示されていない触覚を生起するという共感覚的な現象に注目し、基礎的な検討を行った。試作コンテンツを用いたNIRSによる評価実験の結果から、特徴的な体験の生起が示唆された。以上、本研究課題の推進により、具体的かつ有益な知見を数多く取得できたことから、新たなメディアコンテンツの可能性を拓く、近未来のコア技術の形成に寄与できたと考える。複数の感覚刺激により特徴的な認知体験を呈示する、クロスモーダルコンテンツの実現を目指し、近赤外分光法(MRS)による脳機能計測を用いた評価系を実装したテストワークベンチを構築し、基礎的な検討を行った。同時に、クロスモーダルコンテンツの応用システムについて、併せて試作・評価を行った。テストワークベンチとして、3Dプロジェクタを用いたシアター型、および3Dディスプレイを用いたパーソナル型の環境をそれぞれ構築し、位置センサやデータグローブ等によりインタラクティブな視・触覚刺激の呈示を可能とした。評価系は、コンテンツ呈示時のNIRSによる脳機能計測を中心に、皮膚電位などの客観評価と、内省報告などの主観評価を同時に行えるよう設計した。特に、脳機能計測については、コンテンツ評価への事例が希少であることから、文献調査と基礎的な評価データの取得に重点を置いた。脳機能計測による基礎的な検討では、視覚と体性感覚の呈示による視覚刺激への身体感覚の誘発において、多様な呈示条件下での印象変化を客観的に観察することを目的とした。クロスモーダルコンテンツの応用システムでは、身体感覚を伴う視覚刺激へのニーズという観点から安全教育分野を対象とし、認知状態の操作を意図したコンテンツを試作した。視覚と体性感覚に対する情報を操作することで、身体感覚に矛盾を生じさせ、労働災害の置きやすい認知状態の再現を試みた。評価実験の結果から、視覚情報の操作に対する許容量が示され、また脅威刺激としての有効性が示唆された。試作したコンテンツの表現や妥当性について、工場作業の安全管理業務の担当者を対象としたヒアリングを行った結果、概ね肯定的な意見が聞かれた。本研究課題では、複数の感覚刺激呈示による特徴的な認知活動の体験を意図した、クロスモーダルコンテンツの開発を目指し、インタラクティブなバーチャルリアリティ(VR)コンテンツの呈示環境と近赤外分光法(NIRS)による脳機能計測を用いた評価システム、およびコンテンツ開発用テストワークベンチ環境の構築を行った。NIRSを用いたクロスモーダル刺激の評価においては、視覚と体性感覚の刺激呈示による身体イメージの誘発を対象とし、刺激呈示条件の変化による身体に対する主観的な印象や体験の変化を客観的に観察することが可能であるか、実験的に検討を行った。
KAKENHI-PROJECT-18200006
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脳機能の特性を活用したクロスモーダルコンテンツ
その結果、側頭葉前部に反応が見られ、VR空間で生じた身体イメージの変化を、脳機能計測により評価する可能性が示唆された。NIRSのデータについては、生体信号の影響を抽出する処理の検討として、トレンド解析を用いる手法も提案した。具体的に、トレンド解析をNIRSの時系列データに対して適用することで、心拍信号の抽出が可能となった。一方、クロスモーダルコンテンツの表現手法の検討においては、前年度に開発した安全教育分野向けのVRで試みた、視覚と体性感覚情報の操作を発展させ、視覚刺激の呈示に伴って仮想の触運動感覚を体験するという錯覚を考案した。この錯覚は、VR空間での多様なインタラクションへの応用が期待されることから、錯覚の発生にかかる刺激要件および錯覚体験の強度について実験的に検討を行った。脳機能計測による評価によって、体験される主観的な感覚と客観的な計測結果の対応にかかる一定の傾向が確認された。
KAKENHI-PROJECT-18200006
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スティック・スリップ現象の解明と油性剤の効果に関する研究
スティック・スリップ現象は,摩擦の速度特性によって決定されることがわかってはいるが,その詳細については不明な点が多い.特に摩擦の速度特性と潤滑剤の性状との間の関係についてはほとんど明らかにされていない.本研究は,スティック・スリップに及ぼす潤滑剤の影響と,摩擦の速度特性解析の2つを目的をして行なったものである.初年度(昭和61年度)において行なった内容は以下の通りである.1.ボール・オン・ディスク型スティック・スリップ試験機の作成.2.一定速度におけるスティック・スリップ発生限界荷重を求め,評価の指標としての解析.この結果得られた知見は以下の様である.1.一枚のディスクでも場所の違いによる微妙な表面性状変化が結果に大きな影響を与えるため,試験片の調製,表面研磨には細心の注意を払う必要がある.2.粘度指数向上剤として入れられる高分子化合物は,それ単独ではスティック・スリップ特性にさほど大きな影響を与えないが,油性剤と共存させると油性剤の働きに大きく影響を与える.また,次年度(昭和62年度)においては摩擦の速度特性解析を行なうべく試験機の改造とコンピュータによるデータ処理システムの確立を行なった.その結果得られた知見は以下の通りである.1.摩擦の速度特性解析により求まった,スリップ時の最高速度域における摩擦係数(μk)は,潤滑油の粘度増大につれ低下するが,ある程度以上粘度が増大すると逆に大きくなっていく.2.μkとスティック・スリップの振幅との間に相関が認められた.スティック・スリップ現象は,摩擦の速度特性によって決定されることがわかってはいるが,その詳細については不明な点が多い.特に摩擦の速度特性と潤滑剤の性状との間の関係についてはほとんど明らかにされていない.本研究は,スティック・スリップに及ぼす潤滑剤の影響と,摩擦の速度特性解析の2つを目的をして行なったものである.初年度(昭和61年度)において行なった内容は以下の通りである.1.ボール・オン・ディスク型スティック・スリップ試験機の作成.2.一定速度におけるスティック・スリップ発生限界荷重を求め,評価の指標としての解析.この結果得られた知見は以下の様である.1.一枚のディスクでも場所の違いによる微妙な表面性状変化が結果に大きな影響を与えるため,試験片の調製,表面研磨には細心の注意を払う必要がある.2.粘度指数向上剤として入れられる高分子化合物は,それ単独ではスティック・スリップ特性にさほど大きな影響を与えないが,油性剤と共存させると油性剤の働きに大きく影響を与える.また,次年度(昭和62年度)においては摩擦の速度特性解析を行なうべく試験機の改造とコンピュータによるデータ処理システムの確立を行なった.その結果得られた知見は以下の通りである.1.摩擦の速度特性解析により求まった,スリップ時の最高速度域における摩擦係数(μk)は,潤滑油の粘度増大につれ低下するが,ある程度以上粘度が増大すると逆に大きくなっていく.2.μkとスティック・スリップの振幅との間に相関が認められた.これまでの潤滑油の研究の多くは、焼付きや摩耗などの表面損傷に大きな関心が向けられていたが、近年の省資源・省エネルギー志向により、各種潤滑油の摩擦特性が重要な位置を占めるようになってきた。本研究は各種潤滑油のスティック・スリップ特性を把握することにより、潤滑油の摩擦低減に関してその作用機構を探ろうとするものである。ところで、スティック・スリップ現象は、摩擦の速度特性によって決定されるが、その速度特性と潤滑剤の性質との間の関係については、ほとんど明らかにされていない。また、スティック・スリップ現象は精密機械の精度にも影響を与えるため、極力取り除くことが好ましいが、前述のように潤滑剤の性質との相関がわかっていないため、この機構の解明が望まれている。本年度に行なった内容は以下の通りである。1.ボール・オン・ディスク型スティック・スリップ試験機の作成。2.一定速度においてスティック・スリップ発生の限界荷重を求め、それを評価の指標としての解析。得られた主な知見は以下の通りである。1.一枚のディスクでも、場所の違いによる微妙な表面性状変化が、結果に大きな影響を与える。2.そのため、試験片調製・表面研摩には細心の注意を払う必要がある。3.粘度指数向上剤として入れられる高分子化合物は、それ単独ではスティック・スリップ特性にさほど大きな影響を与えないが、油性剤と共存させると、油性剤の働きに大きく影響を与える。
KAKENHI-PROJECT-61550109
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脂肪細胞の分化における細胞外基質の役割の解析
未分化な先駆細胞が分化する際、その周囲の細胞外基質の顕著な再構築を伴う場合があり、筋肉、脂肪組織などはその代表的な例である。これらの先駆細胞はフィブロネクチン、I型コラゲンを主体とする基質をもつが、分化に伴ってIV型コラゲン、ラミニン、などを主成分とする基底膜にとって替わられる。我々が分離樹立したマウス前脂肪細胞ST13は白色脂肪細胞の先駆細胞として知られている。未分化ST13細胞は多量のフィブロネクチンを産生分泌する。ところが分化誘導するフィブロネクチンの産生が停止するのみならず既存のフィブロネクチン基質までも消失することを我々は間接蛍光抗体法およびラジオイムノアッセイ法により初めて明らかにした。この現象は生体内での基質再構築をin vitroで再現したものと考えている。このフィブロネクチンの消失を、2種類のプロテア-ゼ阻害剤ベスタチン及びnafamostat mesilateが低濃度で防ぎ、かつ分化を阻害することを見いだした。この結果は細胞外プロテア-ゼの産生が脂肪細胞の分化に必要な過程であることを示している。さらに分化誘導に伴って産生されるプロテア-ゼによってフィブロネクチンの消化と基質の再構築が起きることを示唆している。この分化誘導に伴って産生されるプロテア-ゼの実態は、adipisinは1つの候補であるが、いまだ不明である。前脂肪細胞から脂肪細胞への分化過程における細胞外基質の役割を解明するために、さらに今後このプロテア-ゼを分子レベルで明らかにすることが必要と思われる。未分化な先駆細胞が分化する際、その周囲の細胞外基質の顕著な再構築を伴う場合があり、筋肉、脂肪組織などはその代表的な例である。これらの先駆細胞はフィブロネクチン、I型コラゲンを主体とする基質をもつが、分化に伴ってIV型コラゲン、ラミニン、などを主成分とする基底膜にとって替わられる。我々が分離樹立したマウス前脂肪細胞ST13は白色脂肪細胞の先駆細胞として知られている。未分化ST13細胞は多量のフィブロネクチンを産生分泌する。ところが分化誘導するフィブロネクチンの産生が停止するのみならず既存のフィブロネクチン基質までも消失することを我々は間接蛍光抗体法およびラジオイムノアッセイ法により初めて明らかにした。この現象は生体内での基質再構築をin vitroで再現したものと考えている。このフィブロネクチンの消失を、2種類のプロテア-ゼ阻害剤ベスタチン及びnafamostat mesilateが低濃度で防ぎ、かつ分化を阻害することを見いだした。この結果は細胞外プロテア-ゼの産生が脂肪細胞の分化に必要な過程であることを示している。さらに分化誘導に伴って産生されるプロテア-ゼによってフィブロネクチンの消化と基質の再構築が起きることを示唆している。この分化誘導に伴って産生されるプロテア-ゼの実態は、adipisinは1つの候補であるが、いまだ不明である。前脂肪細胞から脂肪細胞への分化過程における細胞外基質の役割を解明するために、さらに今後このプロテア-ゼを分子レベルで明らかにすることが必要と思われる。未分化な先駆細胞が分化する際、その周囲の細胞外基質の顕著な再構築を伴う場合があり、筋肉、脂肪組織などはその代表的な例である。これらの先駆細胞はフィブロネクチン、I型コラゲンを主体とする基質をもつが、分化に伴ってIV型コラゲン、ラミニン、などを主成分とする基底膜にとって替わられる。当研究室で分離樹立されたマウス前脂肪細胞STー13は白色脂肪組織の先駆細胞株として海外にも知られたモデル系である。未分化STー13は多量のフィブロネクチンを産生分泌する。ところが分化誘導するとフィブロネクチンの産生が停止するのみならず既存のフィブロネクチン基質までも消失することを我々は初めて明らかにした。このフィブロネクチンの消失を、2種類のプロテア-ゼ阻害剤:ベスタチンおよびnafamostat mesilateが低濃度で防ぎ、かつ分化を阻害することを見いだした。この結果は細胞外プロテア-ゼの産生が脂肪細胞の分化に必要な過程であることを示唆している。更に本年度は細胞外基質のみならず、細胞間接着因子も分化調節の重要な一因子であることを示唆する知見を得た。ビタミンAが分化の初期に作用してSTー13細胞を未分化な状態に留めることを見いだした。ビタミンAは脊椎動物の発生過程で形態形成因子として作用することが示された唯一のホルモンである。このビタミンAの作用は培養液中にカルシウムを必要とすることを見いだした。ビタミンAの作用発現の際にカルシウムを要求するのはこの細胞に特異的な事である。そこでビタミンAにより発現が調整されている蛋白が、カルシウム要求性であり、しかもこの細胞の分化の調節に密接に拘わっていると想定した。現在までの実験結果より、この蛋白はカルシウム要求性の細胞間接着因子カドヘリンN型であることが明らかになった。これらの現象は生体内での基質再構築をin vitroで再現したものと考えている。未分化な先駆細胞が分化する際、その周囲の細胞以基質の顕著な再構築を伴う場合があり、筋肉、脂肪組織などはその代表的な例である。これらの先駆細胞はフィブロネクチン、I型コラゲンを主体とする基質をもつが、分化に伴ってIV型コラゲン、ラミニンなどを主成分とする基底膜にとって替わられる。我々は前脂肪細胞から脂肪細胞へと分化する細胞株ST13細胞をマウスより分離樹立した。分化した脂肪細胞ST13は生体内の白色脂肪細胞の生化学的特性をよく保存している。
KAKENHI-PROJECT-01570663
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01570663
脂肪細胞の分化における細胞外基質の役割の解析
この細胞をモデル系として前脂肪細胞から脂肪細胞への分化過程における細胞外基質の役割を解析した。未分化ST13細胞は多量のフィブロネクチンを産生分泌する。ところが分化誘導するとフィブロネクチンの産生が停止するのみならず既存のフィブロネクチン基質までも消失することを我々は初めて明らかにした。この現象は生体内での基質再構築をin vitroで再現したものと考えている。これらの結果は分化誘導に伴って産生されるプロテア-ゼによってフィブロネクチンの消化と基質の再構築が起きることを示唆している。このプロテア-ゼを分子レベルで明らかにするために、ST13前脂肪細胞の無血清培養の条件を確立し、以下のことを明らかにした。(1)ST13前脂肪細胞細胞の増殖とその後脂肪細胞へと分化するために細胞外基質としてコラゲンタイプIVが必要である。コラゲンタイプI、II、IIIを基質としてもちいると、増殖能、分化誘導能はタイプIVの50%以下である。(2)ST13前脂肪細胞細胞から脂肪細胞へと分化を誘導するためにはインスリンなどの分化誘導剤が必須である。
KAKENHI-PROJECT-01570663
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01570663
透析予防外来へ通院する患者の自己管理への動機づけを促進する支援システムの構築
本邦の医療政策においても透析導入数の減少のため透析予防外来が実施されてきたが、人員確保の困難さ等により、普及には課題が多い。看護師は多職種間のコーディネート役を期待され、患者の自己管理を支えるスキルが必要とされている。しかし、透析予防外来患者特有の動機づけを促進する為の支援については充分に検討・実践されていない。そこで、本研究では、透析導入前の腎臓病患者の動機づけの認知と関連要因を明らかにし、透析患者において有効であった自律的動機づけを予防外来患者の管理行動へ適用し、さらに予防外来に従事する看護師の実践上の課題分析から、より効果の高い透析予防支援の方略を構築することを目的とする。本邦の医療政策においても透析導入数の減少のため透析予防外来が実施されてきたが、人員確保の困難さ等により、普及には課題が多い。看護師は多職種間のコーディネート役を期待され、患者の自己管理を支えるスキルが必要とされている。しかし、透析予防外来患者特有の動機づけを促進する為の支援については充分に検討・実践されていない。そこで、本研究では、透析導入前の腎臓病患者の動機づけの認知と関連要因を明らかにし、透析患者において有効であった自律的動機づけを予防外来患者の管理行動へ適用し、さらに予防外来に従事する看護師の実践上の課題分析から、より効果の高い透析予防支援の方略を構築することを目的とする。
KAKENHI-PROJECT-19K10914
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K10914
17世紀以降の日中における『詩経』図解の展開に関する研究
本研究では、日本、中国に現存する『詩経』図解を調査し、その変遷や編纂背景を分析した。この結果、現存する早期の『詩経』図解である南宋の「毛詩正変指南図」は南宋、元代を通じて学者や書店により改編され、これらが明代以降の『詩経』勅撰書に取り込まれ他の図解の基礎となっていたこと、明代中期以降、『詩経』解釈の変化や科挙の影響、書店の活動により勅撰書の図解の改編や、新たな図解の編纂が行われたこと、中国では『詩経』の動植物を図示した図解が清代乾隆年間にようやく編纂され、日本の図解としては、岡元鳳『毛詩品物図考』がほぼ唯一中国に影響を与えた日本の図解であることを明らかにした。本研究では、日本、中国に現存する『詩経』図解を調査し、その変遷や編纂背景を分析した。この結果、現存する早期の『詩経』図解である南宋の「毛詩正変指南図」は南宋、元代を通じて学者や書店により改編され、これらが明代以降の『詩経』勅撰書に取り込まれ他の図解の基礎となっていたこと、明代中期以降、『詩経』解釈の変化や科挙の影響、書店の活動により勅撰書の図解の改編や、新たな図解の編纂が行われたこと、中国では『詩経』の動植物を図示した図解が清代乾隆年間にようやく編纂され、日本の図解としては、岡元鳳『毛詩品物図考』がほぼ唯一中国に影響を与えた日本の図解であることを明らかにした。平成25年度は、17世紀以降の日中の『詩経』図解本の継承関係、編纂状況の総体的な状況を把握するべく、関係資料の調査および分析を同時に行った。調査の面では、中国の復旦大学図書館や南京図書館、日本の静嘉堂文庫や足利学校図書館等の蔵書を対象として、元代から中華民国までの『詩経』図解を調査した。特に復旦大学では、明・清の科挙学習の参考書に附された図解を複数発見した。また、足利学校所蔵の元版『詩集伝』図解に同時期の他の図解より多くがあること、静嘉堂文庫所蔵の明版『詩経疏義会通』や公文書館所蔵の明版『詩集伝』に『詩経大全』の図解が附されていることが明らかとなった。これらは、明代以降の『詩経』図解の継承や伝播を明らかにする上で重要な発見であった。このほか、明の胡明勗『詩経集成図説』が明代の他の図解とは全く異なり、『詩経』中の名物ではなく、詩の内容解釈を図示する形式の図解であることを確認した。さらに、日本人編纂の図解である細井東陽『詩経名物図解』、田邊楽斎『詩経図解』、尾田玄古『五経図解』などについても調査を行った。これらの図解はいずれも中国の『詩経』図解とは異なる考証を行なっており、日本における『詩経』名物考証の独自の発展経過を解明するうえで、注目すべき資料である。今後他の資料と合わせて分析をすすめる。分析の面では、17世紀以降最も広く流布し、参照された勅撰の『詩経』図解である、明の「詩経大全図」と、これを改訂した清の「詩伝図」を取り上げ、両図解の編纂背景と異同、および他の『詩経』図解との関わりを考察した。この結果、勅撰『詩経』図解は朱熹の『詩経』解釈を主としたが、清代にかけて朱熹の影響が次第に薄らぎ唐代以前の注釈が多く収録されるようになること、そして、この二つの勅撰図解が『詩経』名物解釈の標準となったことで、これらとは異なる図解が編纂されるようになったことを明らかにした。本研究では、17世紀以降の日本および中国の『詩経』の図解について、伝来状況、内容の異同と変遷、『詩経』解釈との関わりを主として調査と分析を行った。平成25年度は、資料分析の過程において、17世紀以降の『詩経』図解を考察するにあたり、明代の勅撰書『詩経大全』に附された図解が他の多くの図解に影響を与えたと推測されたことから、勅撰書の図解が編纂され、さらにこれが清代の勅撰書の図解に継承され、他に影響を与えた過程について論文「詩経大全図」と「詩伝図」ー明清期の勅撰『詩経』図解についてー」に発表した。また、中国において図解の学術的意義を述べた早い時期の著述である鄭樵『図譜略』の内容は、本研究の大きな手がかりとなりえるため、その著述意図に対する分析を論文「鄭樵『図譜略』の著述意図について」にまとめた。平成26年度は、調査の過程で明代の三種の図解が上述した勅撰書の図解と異なる特徴を具えていることから、清代以降多く見られるようになる『詩経』図解の改編が明代まで遡れることを実証するため、この三種の図解のと勅撰図解の異同と編纂背景について論文「明代『詩経』図解の変化についてー嘉靖年間以降の図解三種を中心にー」を発表した。以上のほか、両年度では上記論文に関する口頭発表も行った。本研究期間では、特に明代の『詩経』図解について新たな発見が多くあったため、本来目的としていた清代の図解および日本の図解については、上記論文の中で言及したが、まとまった研究成果として発表することができなかった。
KAKENHI-PROJECT-25770137
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17世紀以降の日中における『詩経』図解の展開に関する研究
このことから、今後はすでに整理、分析を行った清代以降の図解の変遷と清代末期に見られる日本の図解の影響を発表し、同時に現在整理中である日本の『詩経』図解の内容と変遷、さらには既述した鄭樵『図譜略』とともに、後世に少なからぬ影響を与えたと考えられる朱熹の学問における図解の利用について、研究をすすめていきたい。中国文学平成25年度の実施計画では、現存する『詩経』図解のうち最も古い南宋「毛詩正変指南図」以来の図解の継承関係とともに、これとは異なる形式をもつ図解を調査し、分析する予定であった。調査の面では、上記「研究実績の概要」に記したように、これまで未見の図解を複数調査することができたため概ね順調であったが、分析の面では「異なる形式をもつ図解」を分析するまでに至らなかった。この原因は、平成25年度の調査を通じて南宋「毛詩正変指南図」の内容を継承している図解が複数発見されたこと、そして、これらの図解を整理し、さらに「異なる形式をもつ図解」を考察する上で、まずは明・清の当時、最も広く流通し、最も標準的な図解であったと推測される勅撰図解の内容を分析することが必要となったからである。そこで、平成25年度は明の「詩経大全図」と清の「詩伝図」を対象とした分析を進めたのだが、両図解はその内容、特に注釈の面での異同が多く、詳細な比較を行うのに多くの時間を費やしたため、「異なる形式をもつ図解」の分析を行うことができなかった。平成25年度は、すでに分析を進めるのに必要な資料のうち、中国のものについては概ね調査することができた。また、二つの勅撰図解の分析を終えたことで、清代以後に多く編纂される、南宋「毛詩正変指南図」とは異なった形式の図解を分析する準備は整ったと考えられる。平成26年度は、まだ調査を行なっていない台湾および関西の蔵書機関に所蔵されている図解を調査する。また、平成25年度の調査で得られた資料をもとに、明・清以後の南宋「毛詩正変指南図」とは異なる形式の『詩経』図解、および日本における『詩経』図解の内容の分析を行い、両国の18世紀以降の図解編纂の総体的な流れと特徴を明らかにし、日中の『詩経』図解の間に存在する異同とその背景について比較検討をすすめる。
KAKENHI-PROJECT-25770137
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CYP2C9の遺伝子診断に基づく抗凝固薬物療法の個別化
ワルファリンによる抗凝固作用の反応性と遺伝子変異との関係を解明し、抗凝固薬物療法に「個人の遺伝情報に基づく投薬の最適化」という新しい治療概念を確立することを目的として以下の検討を行った。ワルファリン代謝を担う薬物代謝酵素チトクロムP450 2C9(CYP2C9)の遺伝多型の診断に、対立遺伝子特異的増幅法と蛍光プローブ法を組み合わせたTaqMan PCR法を活用し、迅速且つ低コストの検査法を確立した。TaqMan PCR法は、PCR反応のみでタイピングするため、従来のPCR-RFLP法よりはるかに効率的であり、採血後わずか4時間で数百検体の判定が可能である。併せて検査コストを抑えることができた。ワルファリンはラセミ体として投与されるが、抗凝固作用を発揮する活性体(S)-ワルファリンであるため、血漿中の(S)-ワルファリン濃度を分離分析するキラル分析法をHPLCにより確立した。一方、凝固活性低下を伴う凝固系第VII因子の一塩基変異多型(R353Q)についてもTaqMan PCR法による迅速且つ簡便な診断法の開発に成功した。以上、(S)-ワルファリンの血漿中濃度測定法ならびにCYP2C9の遺伝子診断法を確立するとともに、凝固系第VII因子の新たな遺伝子診断法をTaqMan PCR法により開発できたことにより、多数の患者を対象として各個人の薬剤反応性とこれら遺伝多型の関係について研究を遂行する基盤が整った。今後はワルファリン投与患者を対象に薬剤反応性とSNPsとの関連解析を実施する。ワルファリンによる抗凝固作用の反応性と遺伝子変異との関係を解明し、抗凝固薬物療法に「個人の遺伝情報に基づく投薬の最適化」という新しい治療概念を確立することを目的として以下の検討を行った。ワルファリン代謝を担う薬物代謝酵素チトクロムP450 2C9(CYP2C9)の遺伝多型の診断に、対立遺伝子特異的増幅法と蛍光プローブ法を組み合わせたTaqMan PCR法を活用し、迅速且つ低コストの検査法を確立した。TaqMan PCR法は、PCR反応のみでタイピングするため、従来のPCR-RFLP法よりはるかに効率的であり、採血後わずか4時間で数百検体の判定が可能である。併せて検査コストを抑えることができた。ワルファリンはラセミ体として投与されるが、抗凝固作用を発揮する活性体(S)-ワルファリンであるため、血漿中の(S)-ワルファリン濃度を分離分析するキラル分析法をHPLCにより確立した。一方、凝固活性低下を伴う凝固系第VII因子の一塩基変異多型(R353Q)についてもTaqMan PCR法による迅速且つ簡便な診断法の開発に成功した。以上、(S)-ワルファリンの血漿中濃度測定法ならびにCYP2C9の遺伝子診断法を確立するとともに、凝固系第VII因子の新たな遺伝子診断法をTaqMan PCR法により開発できたことにより、多数の患者を対象として各個人の薬剤反応性とこれら遺伝多型の関係について研究を遂行する基盤が整った。今後はワルファリン投与患者を対象に薬剤反応性とSNPsとの関連解析を実施する。
KAKENHI-PROJECT-12204096
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東南アジア・南アジアにおけるヒ素汚染地下水の生物学的浄化方法の開発
ベトナムとカンボジアのメコンデルタで起こっている自然由来のヒ素による環境汚染問題に対して、海外の研究者と共同で、低コスト・省エネの地域結合型新規浄化技術を開発することを目的とする。日本で小規模圃場試験を行なっているヒ素高蓄積植物を用いた浄化技術と、植物にヒ素を取り込ませるための微生物による亜ヒ酸酸化処理について、それぞれベトナム、カンボジアの研究者とともに取り組み、二つのシステムを組み合わせたシステムの構築と評価までを行う。本年度は、カンボジア工科大学において、亜ヒ酸酸化システムの実験室レベルでの実験を開始した。コークスを担体として用い、ヒ素汚染水を循環させ、ヒ酸態、および亜ヒ酸態のヒ素濃度を測定して、それぞれの変化を測定する予定である。まずは実験室にて小規模のヒ素汚染水循環システムを構築した。また、現地にてヒ素汚染地下水を採取して、装置内での循環を始めたところである。ベトナムにおいては、ヒ素高蓄積シダ植物であるモエジマシダの育苗システムの立ち上げの準備を行っている。現地ノンラム大学の植物培養システム、および東北大学の研究チームが用いている胞子発芽法の両方を用いて育苗システムを構築することを決定した。また、現地においてモエジマシダの収集を開始した。収集した株は大学内の圃場に植え、浄化実験に必要な数が集まるまで保管しつつ、胞子の採取を行う。また、以前作製した、パイロットスケール実験用のタンク類を使用することを決定し、現在整備を行っている。カンボジア、ベトナムの研究者と研究計画について確認を行い、今後の研究の進め方について十分な話し合いを持つことができた。カンボジアにおいては、実験室レベルでの装置の作成が終了し、汚染水の循環実験をスタートできた。ベトナムとの研究においても、以前作製した汚染処理用のパイロットスケールの装置がよく整備されていて使用可能であることがわかったとともに、育苗のための装置等も揃っており、速やかに実験に入れることが明らかとなった。しかしながら、使用するシダ植物を保存していた圃場が洪水の被害にあってしまったため、植物の採取から行う必要がある。カンボジアにおいては、現在行なっている実験のデータを取り、亜ヒ酸の酸化とそれに続く鉄との共沈が起こっていることを確認する。安定して同じ結果が出るようであれば、規模を大きくした実験に取り組む予定である。ベトナムにおいては、育苗体制を整備すると同時に、十分な数のシダ植物が集まり次第、パイロットスケールでのヒ素汚染水の浄化実験を行なっていきたい。いずれの研究においても、必要であれば両国の研究スタッフを日本に招聘して、技術の習得の手助けをし、現地での研究がスムーズに行われるような体制を維持していきたい。ベトナムとカンボジアのメコンデルタで起こっている自然由来のヒ素による環境汚染問題に対して、海外の研究者と共同で、低コスト・省エネの地域結合型新規浄化技術を開発することを目的とする。日本で小規模圃場試験を行なっているヒ素高蓄積植物を用いた浄化技術と、植物にヒ素を取り込ませるための微生物による亜ヒ酸酸化処理について、それぞれベトナム、カンボジアの研究者とともに取り組み、二つのシステムを組み合わせたシステムの構築と評価までを行う。本年度は、カンボジア工科大学において、亜ヒ酸酸化システムの実験室レベルでの実験を開始した。コークスを担体として用い、ヒ素汚染水を循環させ、ヒ酸態、および亜ヒ酸態のヒ素濃度を測定して、それぞれの変化を測定する予定である。まずは実験室にて小規模のヒ素汚染水循環システムを構築した。また、現地にてヒ素汚染地下水を採取して、装置内での循環を始めたところである。ベトナムにおいては、ヒ素高蓄積シダ植物であるモエジマシダの育苗システムの立ち上げの準備を行っている。現地ノンラム大学の植物培養システム、および東北大学の研究チームが用いている胞子発芽法の両方を用いて育苗システムを構築することを決定した。また、現地においてモエジマシダの収集を開始した。収集した株は大学内の圃場に植え、浄化実験に必要な数が集まるまで保管しつつ、胞子の採取を行う。また、以前作製した、パイロットスケール実験用のタンク類を使用することを決定し、現在整備を行っている。カンボジア、ベトナムの研究者と研究計画について確認を行い、今後の研究の進め方について十分な話し合いを持つことができた。カンボジアにおいては、実験室レベルでの装置の作成が終了し、汚染水の循環実験をスタートできた。ベトナムとの研究においても、以前作製した汚染処理用のパイロットスケールの装置がよく整備されていて使用可能であることがわかったとともに、育苗のための装置等も揃っており、速やかに実験に入れることが明らかとなった。しかしながら、使用するシダ植物を保存していた圃場が洪水の被害にあってしまったため、植物の採取から行う必要がある。カンボジアにおいては、現在行なっている実験のデータを取り、亜ヒ酸の酸化とそれに続く鉄との共沈が起こっていることを確認する。安定して同じ結果が出るようであれば、規模を大きくした実験に取り組む予定である。ベトナムにおいては、育苗体制を整備すると同時に、十分な数のシダ植物が集まり次第、パイロットスケールでのヒ素汚染水の浄化実験を行なっていきたい。いずれの研究においても、必要であれば両国の研究スタッフを日本に招聘して、技術の習得の手助けをし、現地での研究がスムーズに行われるような体制を維持していきたい。共同研究先の研究者を日本に招聘する予定であったが、スケジュールの都合がつかず、次年度に持ち越しとなったため。また、それに伴い、招聘社の研究に使用する物品の購入も次年度に持ち越しとなったため。
KAKENHI-PROJECT-18KK0302
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金属メッシュの表面プラズモン共鳴効果を用いた発振器型高感度計測法の研究
微小な誘電率変化を検出可能とする新たなテラヘルツ帯材料計測法として、表面プラズモン共鳴効果を有する容量性金属メッシュを反射鏡として用いた固体発振器構造を提案し、その有用性を周波数75GHzから110GHzのミリ波帯で理論及び実験的に詳細に調べた。その結果、テラヘルツ帯で従来測定が困難とされた水性試料の測定が可能で、かつ1E-5という微小な誘電率変化の検出が可能であることを実験的に示し、本計測法の有用性を立証した。本年度は、容量性金属メッシュを用いた計測回路で用いる容量性金属メッシュおよびガン発振器の設計、製作、そしてその評価と当初研究計画に従って実施した。先ず、容量性金属メッシュについて理論解析を進め、Wバンド(75GHz110GHz)で表面プラズモン共鳴効果が観測可能なメッシュパラメータ、つまり、金属メッシュのピッチ、金属パターンの間隙幅、基板として用いる石英基板の厚さ、の各値を決定した。この理論解析を通して、石英基板厚増加に対し指数関数的に共鳴周波数が減少することを定量的に明らかにした。この結果は、基板選定時に不可欠な重要な知見である。次に、新たに真空蒸着装置を設備し、設計したメッシュを金属にアルミを用いて製作し、その透過特性を実験的に評価した。その結果より、共鳴効果が失われないメッシュサイズの最小直径が約10mm(7周期以上)であること、次に、金属メッシュ表面に付着させる誘電体の比誘電率変化に対する共鳴周波数変化割合が-2.5E9となり、メッシュ単体でも高い変化率が得られること、測定共鳴周波数と設計値との間に数GHz以上の差異があること、が分かった。これらの結果より、理論モデルの改良が次年度の課題として残ったが、基本的な金属メッシュの製作を完了した。金属メッシュを反射鏡として用いるガンダイオード発振器の開発を実施した。ガンダイオードとしては、より利得が大きく発振出力の大きなInPタイプ選択し、発振器回路の設計、製作を行い、発振器の基本特性評価を実施した。その結果、90GHz95GHzでの発振を実験的に確認し、基本的な発振器製作を完了した。実際のセンサー用発振器としては、より広帯域での発振が望ましいことから、直流バイス供給部のポスト形状の見直しを次年度実施することとした。当初研究計画では、1容量性金属メッシュの設計、製作、評価、2ガンダイオードを用いた共振回路部の設計と製作、3発振器出力測定用ミリ波回路の製作、4製作した発振器の出力特性の実験的確認と設計結果との比較検討、をそれぞれ実施するとした。1に対し、ほぼ予定通り実施することができた。実施結果より、メッシュ単体でも1E-5以下の微小な誘電率差の識別が可能であることが分かり、本計測方式の有用性を確認することができた。ただ、理論設計値と実際に製作したメッシュにおける表面プラズモン共鳴周波数に大きな差異があり、無限周期のメッシュを使った理論モデルの不完全性も明らかとなった。このモデル改良は、次年度の課題として残った。2に対し、基本的なガン発振器の開発を完了している。但し、メッシュを反射鏡として用いる部分は、設計値と実際に製作したメッシュの共鳴周波数が異なったため、未完了となった。これは、1の理論モデル改良と共に、開発したガン発振器の発振周波数に合わせ、メッシュを再製作することで完了させる予定である。3に対し、当初目標を達成した。4に対しては、2で述べた問題のため、次年度への課題として残された。以上の通り、金属メッシュおよびガン発振器の基本的な部分は当初計画通り完了したが、メッシュを反射鏡として用いる部分が未完了のため、最終的な研究目標に対する達成度は、約40%である。本年度は、前年度残された課題である理論解析モデルの再構築、容量性金属メッシュの再製作、ガンダイオード発振器の改良、をそれぞれ実施後、金属メッシュを組み込んだ発振器による試料測定を行った。その結果、本計測方式の高感度特性の実証という当初目標をほぼ達成した。以下に得られた成果を示す。研究期間中に下記成果の論文誌発表ができなかったが、今後、結果をまとめ論文誌への投稿を進める予定である。1.周期境界を用いた3次元電磁界解析により、石英基板を含めた金属メッシュの正確な設計が可能であることを、ベクトルネットワークアナライザー(VNA)による特性評価結果との照合を通して示した。2.メッシュ面に厚さの異なる試料を付着させ、その表面プラズモン共鳴周波数(fo)の変化を、理論および実験的に詳細に調べた結果、試料の実効比誘電率が、メッシュ表面のエバネッセント波と試料との結合割合により決定されることを定量的に明らかにした。3.試料を付着したメッシュ特性のVNAによる測定結果より、foの変化は、メッシュ基板の実効誘電率に比較して、付着する試料の比誘電率が高い場合と低い場合でその変化率が大きく異なること、また、高い場合には、比誘電率1の変化に対し約15GHzの周波数変化が得られることを明らかにした。この結果より、本研究の当初目標である微小誘電率差1E-5の検出が、発振器を用いないメッシュ単体のみでも可能であることを明らかにした。4.金属メッシュを共振器内に組み込み、最終的なメッシュセンサーを持つ発振器を完成させ、水やエタノール等の様々な試料測定を実施した。その結果より、実験周波数帯(95GHz帯)で強い損失を与える水分を含む試料測定が可能であることを実験的に確認できた。
KAKENHI-PROJECT-15K14001
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金属メッシュの表面プラズモン共鳴効果を用いた発振器型高感度計測法の研究
また、誘電率が1.03以下の発泡スチロールに対し1MHz以上の周波数変化を観測し、本計測方式の高感度特性を実証した。微小な誘電率変化を検出可能とする新たなテラヘルツ帯材料計測法として、表面プラズモン共鳴効果を有する容量性金属メッシュを反射鏡として用いた固体発振器構造を提案し、その有用性を周波数75GHzから110GHzのミリ波帯で理論及び実験的に詳細に調べた。その結果、テラヘルツ帯で従来測定が困難とされた水性試料の測定が可能で、かつ1E-5という微小な誘電率変化の検出が可能であることを実験的に示し、本計測法の有用性を立証した。前年度残された課題に対する改良を行い、当初研究計画通り、金属メッシュを用いた発振器型高感度計測を実施し、当初目標である1E-5以下の微小な誘電率差の識別が可能なことを実証する予定である。その方法は、次の通りである。(1)金属メッシュ理論モデルの改良:現在の無限周期メッシュと平面波入射を用いた理論モデルでは、実験と大きな差異を生じることが分かった。より実際に近い理論モデルを再構築し、実験との差異が何故でるのか明らかにする。この結果に基づき、より精度の高い金属メッシュセンサー回路設計法確立のための基礎データを取得する。(2)発振回路の改良:ガンダイオードへのバイアス形状を変更することで発振周波数範囲の広帯域化を計ると同時に、発振器の発振周波数に合わせ金属メッシュを再製作し、計測回路を完成させる。(3)測定試料の準備:測定試料として、特性の明らかな半導体(SiやGaAs等)や各種誘電体基板、そして、本センサー方式の優位性を示すため、成分の異なる水溶性試料を準備する予定である。(4)各種試料の複素誘電率の計測:厚さや材質の異なる試料を金属メッシュ表面上において、その時の発振出力電力と周波数の変化を詳細に測定する。この結果と理論との照合を通して、本測定方式の動作原理を検証し、その有用性を立証する。更に、精密な誘電率測定における定量化における問題点を明らかにし、より高いTHz周波数領域へ適用するための基礎データを取得する。同時に当初目標値である1E-5以下の微小な誘電率差の識別が可能なことを実証する。工学当初計画していた金属メッシュを反射鏡として用いる発振器出力部の製作が次年度課題として残ったためである。金属メッシュを再製作後、開発したガンダイオード発振器への取付け部の製作費として使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-15K14001
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キリスト教倫理と悪の問題
本年度の研究課題は、(1)ウェーバーの宗教社会学、ニーチェやフロイトの宗教批判などを手がかりとして、キリスト教倫理を他の宗教倫理と比較し、あるいはキリスト教倫理を相対化する視点から、キリスト教倫理における悪の観念に考察を加えること。(2)キリスト教倫理における悪の観念に関する倫理思想史的な研究を相互に比較討究することを通じて、現代におけるキリスト教倫理の可能性と射程とを明らかにし得るような視点を確立すること。以上二点であったが、具体的な研究実績は以下の通りである。(1)研究分担者の関根は、一方でキリスト教批判の研究を進めながらも、他方、旧約学を中心としたキリスト教的伝統に関する研究をも継続し、両者の研究から現代におけるキリスト教倫理の可能性に関する考察を深めた。具体的には、「超越」と「象徴」、「知恵」と「悪」や「良心」といった観念をめぐって研究成果を挙げた。(2)研究分担者の湯浅は、ニーチェにおける「ディオニュソス的なもの」、「良心」「悪」といった概念の分析を通じてニーチェのキリスト教批判の論拠、背景に関する研究を深めた。(3)その他、数人の研究協力者は、ハーマン、ウェーバー等に関する研究を進めたが、その成果は研究成果報告書に収めた。本年度の研究課題は、(1)ウェーバーの宗教社会学、ニーチェやフロイトの宗教批判などを手がかりとして、キリスト教倫理を他の宗教倫理と比較し、あるいはキリスト教倫理を相対化する視点から、キリスト教倫理における悪の観念に考察を加えること。(2)キリスト教倫理における悪の観念に関する倫理思想史的な研究を相互に比較討究することを通じて、現代におけるキリスト教倫理の可能性と射程とを明らかにし得るような視点を確立すること。以上二点であったが、具体的な研究実績は以下の通りである。(1)研究分担者の関根は、一方でキリスト教批判の研究を進めながらも、他方、旧約学を中心としたキリスト教的伝統に関する研究をも継続し、両者の研究から現代におけるキリスト教倫理の可能性に関する考察を深めた。具体的には、「超越」と「象徴」、「知恵」と「悪」や「良心」といった観念をめぐって研究成果を挙げた。(2)研究分担者の湯浅は、ニーチェにおける「ディオニュソス的なもの」、「良心」「悪」といった概念の分析を通じてニーチェのキリスト教批判の論拠、背景に関する研究を深めた。(3)その他、数人の研究協力者は、ハーマン、ウェーバー等に関する研究を進めたが、その成果は研究成果報告書に収めた。研究計画の初年度に当たる今年度、本研究の研究課題は、(1)旧約をも含めた聖書研究を手がかりとし、キリスト教倫理の初発の段階で悪の観念の内実を明らかにすること。(2)近代の神義論を手がかりとして、近代倫理学とキリスト教倫理との差異と共通性を明らかにすること。以上二点であったが、これらに関する具体的な研究成果としては次のようなものが挙げられる。(1)に関して。研究分担者の関根清三は、旧約聖書の象徴解釈という視点から旧約聖書全般の研究を進めるとともに、バテシェバ事件という具体的問題を手がかりとして悪の問題に考察を加えた。(2)に関して。研究代表者の濱井修は、カントの神義論を、悪の問題と人間の自由との連関という哲学的観点から考察した。また、研究分担者の湯浅弘は、ライプニッツの神義論を、同じく人間の自由に焦点を当てて考察したが、どちらの研究においても、近代神義論とキリスト教倫理の連続性が確認された。本年度の研究課題は、(1)ウェーバーの宗教社会学、ニーチェやフロイトの宗教批判などを手がかりとして、キリスト教倫理を他の宗教倫理と比較し、あるいはキリスト教倫理を相対化する視点から、キリスト教倫理における悪の観念に考察を加えること。(2)キリスト教倫理における悪の観念に関する倫理思想史的な研究を相互に比較討究することを通じて、現代におけるキリスト教倫理の可能性と射程とを明らかにし得るような視点を確立すること。以上二点であったが、具体的な研究実績は以下の通りである。(1)研究分担者の関根は、一方でキリスト教批判の研究を進めながらも、他方、旧約学を中心としたキリスト教的伝統に関する研究をも継続し、両者の研究から現代におけるキリスト教倫理の可能性に関する考察を深めた。具体的には、「超越」と「象徴」、「知恵」と「悪」や「良心」といった観念をめぐって研究成果を挙げた。(2)研究分担者の湯浅は、ニーチェにおける「ディオニュソス的なもの」、「良心」「悪」といった概念の分析を通じてニーチェのキリスト教批判の論拠、背景に関する研究を深めた。(3)その他、数人の研究協力者は、ハーマン、ウェーバー等に関する研究を進めたが、その成果は研究成果報告書に収めた。
KAKENHI-PROJECT-05451009
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05451009
低温プラズマによるリグノセルロースのガス化とその応用
これまでに、セルロース試料(濾紙)やリグノセルロース試料(スギ)の分解挙動を検討しており、いずれもグロー放電プラズマ中で完全にガス化することが示されている。しかし、リグノセルロースの細胞壁構成成分(セルロース、ヘミセルロース及びリグニン)のそれぞれの分解挙動の違いは明らかになっていなかった。そこで初年度の2018年度には、セルロース試料として微結晶セルロース(アビセル)、ヘミセルロース試料として単離キシラン、リグニン試料としてクラーソンリグニン(KL)及び摩砕リグニン(MWL)を用い、それぞれの分解挙動を比較した。これらの試料をそれぞれグロー放電プラズマ中で処理した結果、アビセル≒MWL >キシラン≒KLの順に分解速度が速かった。一方、試料のBET比表面積には差があったため、比表面積当たりの分解速度で比較したところ、キシラン>アビセル>MWL≒KLの順であった。さらに、プラズマ処理後の固体残渣をFT-IR分析した結果、処理前の試料のFT-IRスペクトルとは有意な差はなく、分解反応は固体試料の表面で起こっていると考えられた。そのため、実際の分解速度はヘミセルロース>セルロース>リグニンの順に高いものと示唆される。このように、化学構造の違いによってプラズマ中での分解挙動に差が見られた一方、結合様式が大きく異なる二種のリグニン試料(KL及びMWL)の間には差が全く見られなかったことは興味深い。それぞれの試料における生成ガスの組成や中間生成物を詳細に調べていくことにより、低温プラズマ中でのバイオマスの分解挙動がより深く明らかにされていくものと期待される。リグノセルロースの細胞壁構成成分の分解挙動の違いが明らかにされつつある。同時に、次年度以降に計画している無機室複合化木材からの木質の除去による新規材料創製の予備検討や、生成ガス分析の信頼性向上のための検討も進めることができた。以上より、概ね順調に進展していると判断した。リグノセルロースの細胞壁構成成分の分解挙動の他、酸化チタン、グラファイト等の無機材料の挙動も比較している。これらは予想通り低温プラズマ中では全く分解しないことが確認されたため、今後は無機室複合化木材を調製してプラズマ処理を行い、木材細胞壁構造を反映した無機材料の製造を試みる。一方、グラファイトも全く分解しないことから、木炭の低温プラズマ処理も興味深いと考えられる。木炭には木材由来の官能基が残されており、これらは炭化条件によって複雑に異なるが、低温プラズマ処理によって木炭表面の官能基を制御できる可能性もあるため、今後の検討に加えることとした。雰囲気ガスの違いによる分解挙動の比較については、最終年度に実施する予定である。これまでに、セルロース試料(濾紙)やリグノセルロース試料(スギ)の分解挙動を検討しており、いずれもグロー放電プラズマ中で完全にガス化することが示されている。しかし、リグノセルロースの細胞壁構成成分(セルロース、ヘミセルロース及びリグニン)のそれぞれの分解挙動の違いは明らかになっていなかった。そこで初年度の2018年度には、セルロース試料として微結晶セルロース(アビセル)、ヘミセルロース試料として単離キシラン、リグニン試料としてクラーソンリグニン(KL)及び摩砕リグニン(MWL)を用い、それぞれの分解挙動を比較した。これらの試料をそれぞれグロー放電プラズマ中で処理した結果、アビセル≒MWL >キシラン≒KLの順に分解速度が速かった。一方、試料のBET比表面積には差があったため、比表面積当たりの分解速度で比較したところ、キシラン>アビセル>MWL≒KLの順であった。さらに、プラズマ処理後の固体残渣をFT-IR分析した結果、処理前の試料のFT-IRスペクトルとは有意な差はなく、分解反応は固体試料の表面で起こっていると考えられた。そのため、実際の分解速度はヘミセルロース>セルロース>リグニンの順に高いものと示唆される。このように、化学構造の違いによってプラズマ中での分解挙動に差が見られた一方、結合様式が大きく異なる二種のリグニン試料(KL及びMWL)の間には差が全く見られなかったことは興味深い。それぞれの試料における生成ガスの組成や中間生成物を詳細に調べていくことにより、低温プラズマ中でのバイオマスの分解挙動がより深く明らかにされていくものと期待される。リグノセルロースの細胞壁構成成分の分解挙動の違いが明らかにされつつある。同時に、次年度以降に計画している無機室複合化木材からの木質の除去による新規材料創製の予備検討や、生成ガス分析の信頼性向上のための検討も進めることができた。以上より、概ね順調に進展していると判断した。リグノセルロースの細胞壁構成成分の分解挙動の他、酸化チタン、グラファイト等の無機材料の挙動も比較している。これらは予想通り低温プラズマ中では全く分解しないことが確認されたため、今後は無機室複合化木材を調製してプラズマ処理を行い、木材細胞壁構造を反映した無機材料の製造を試みる。一方、グラファイトも全く分解しないことから、木炭の低温プラズマ処理も興味深いと考えられる。木炭には木材由来の官能基が残されており、これらは炭化条件によって複雑に異なるが、低温プラズマ処理によって木炭表面の官能基を制御できる可能性もあるため、今後の検討に加えることとした。雰囲気ガスの違いによる分解挙動の比較については、最終年度に実施する予定である。
KAKENHI-PROJECT-18K05762
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新規マイナー組織適合性抗原の同定および造血幹細胞移植におけるその臨床的意義の解析
以前我々は造血幹細胞移植患者の移植後末梢血からHLA-A*2902拘束性のマイナー抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)クローンPL8を分離し、その標的抗原として新規マイナー抗原UGT2B17遺伝子由来10merペプチドを同定し報告した(J Exp Med,2003)。今回我々は同一患者末梢血から別のCTLクローンPL10(HLA-B*4403拘束性)を分離した。このCTLクローンもまた、以前報告した10merペプチドと全く同一のペプチドを認識していた。このペプチドはB*4402分子に対してもB*4403分子とほぼ同程度の結合能を示したことから(ペプチド結合試験)、UGT2B17由来マイナー抗原はHLA-A*2902、B*4403、B*4402の3つのHLA分子上に提示されることが示された。PL10CTLは、合成した10merペプチドを高濃度でパルスしたB*4402陽性/B*4403陰性/UGT2B17陰性細胞を傷害したが、B*4402陽性/B*4403陰性/UGT2B17陽性細胞は傷害しなかった。この理由として、UGT2B17/B*4402分子複合体の細胞表面密度が低い可能性、あるいはUGT2B17/B*4402分子複合体とUGT2B17/B*4403分子複合体の立体構造が異なる可能性などが考えられ、免疫学的にも興味深いと思われ現在解析を続けている。この患者は移植後に肝と腸を含むGVHDを発症した。UGT2B17は肝と腸で高発現しており、かつUGT2B17を標的とする複数個のCTLクローンが分離されたことから、このUGT2B17マイナー抗原はGVHDの発症に重要な役割を果たしていると考えられた。以前我々は造血幹細胞移植患者の末梢血中からマイナー抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)クローンPL8を分離し、その標的抗原としてHLA-A^*2902分子上に提示されるUGT2B17遺伝子由来のペプチドを同定し、さらにその抗原機序がドナーUGT2B17遺伝子の欠損に由来することを報告した(J Exp Med 2003;197:1279-89)。今回我々は同一患者末梢血から別のCTLクローンPL10(HLA-B^*4403拘束性)を分離し、その標的遺伝子の同定を試みた。第三者のEBウイルス感作Bリンパ球(LCL)に対する細胞傷害性試験(Cr遊離試験)において、PL10が傷害したB^*4403陽性LCLは全てUGT2B17遺伝子が陽性で、一方PL10が傷害しなかったB^*4403陽性LCLは全てUGT2B17遺伝子が欠損していた。そこで、UGT2B17欠損B^*4403陽性LCLにUGT2B17 cDNAを遺伝子導入したところ、PL10はこれを傷害した。またUGT2B17陽性B^*4403陰性LCLにHLA-:B^*4403cDNAを遺伝子導入したところ、PL10はこれを傷害した。以上より、PL10はHLA-B^*4403分子上に提示されるUGT2B17由来のペプチドを認識していることが証明された。さらにUGT2B17 cDNAのdeletion mutantを作製し解析を行ったところ、PL10は以前報告したA29分子上に提示されるペプチドと全く同一のペプチドを認識していることが分かった。さらにこのペプチドはB^*4402に対してもB^*4403とほぼ同程度の結合能を示すことが分かった(ペプチド結合試験)。従ってUGT2B17由来マイナー抗原はHLA-A^*2902、B^*4403、B^*4402の3つのHLA分子上に提示されることが分かった。現在その臨床的な意義について解析を進めている。以前我々は造血幹細胞移植患者の移植後末梢血からHLA-A*2902拘束性のマイナー抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)クローンPL8を分離し、その標的抗原として新規マイナー抗原UGT2B17遺伝子由来10merペプチドを同定し報告した(J Exp Med,2003)。今回我々は同一患者末梢血から別のCTLクローンPL10(HLA-B*4403拘束性)を分離した。このCTLクローンもまた、以前報告した10merペプチドと全く同一のペプチドを認識していた。このペプチドはB*4402分子に対してもB*4403分子とほぼ同程度の結合能を示したことから(ペプチド結合試験)、UGT2B17由来マイナー抗原はHLA-A*2902、B*4403、B*4402の3つのHLA分子上に提示されることが示された。PL10CTLは、合成した10merペプチドを高濃度でパルスしたB*4402陽性/B*4403陰性/UGT2B17陰性細胞を傷害したが、B*4402陽性/B*4403陰性/UGT2B17陽性細胞は傷害しなかった。この理由として、UGT2B17/B*4402分子複合体の細胞表面密度が低い可能性、あるいはUGT2B17/B*4402分子複合体とUGT2B17/B*4403
KAKENHI-PROJECT-17790642
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17790642
新規マイナー組織適合性抗原の同定および造血幹細胞移植におけるその臨床的意義の解析
分子複合体の立体構造が異なる可能性などが考えられ、免疫学的にも興味深いと思われ現在解析を続けている。この患者は移植後に肝と腸を含むGVHDを発症した。UGT2B17は肝と腸で高発現しており、かつUGT2B17を標的とする複数個のCTLクローンが分離されたことから、このUGT2B17マイナー抗原はGVHDの発症に重要な役割を果たしていると考えられた。
KAKENHI-PROJECT-17790642
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低分子量G蛋白質Rap2とがん細胞の分化異常
私共はRasファミリー蛋白質Rap2のエフェクターとしてHGK、TNIK、MINKを同定したが、これらはMAPKKKキナーゼ(MAP4K)としてJNKやp38を制御することから、Rap2はMAPキナーゼ経路を介して細胞分化に関与する可能性が高い。一方、TNIKがJNKと独立に細胞基質接着を制御することも見出しており、Rap2は未知のシグナル経路を介してがん細胞の異常形質に関与すると考えている。Rap2とがん細胞の分化異常の関連を明らかにするため、(1)未知のシグナル経路の解析、(2)がん細胞における解析、(3)遺伝学的解析を進めた。その結果、(1)で見出した新規MAP4K結合蛋白質の一つは、ショウジョウバエRolsの哺乳類ホモログで、TNIKのリン酸化標的蛋白質でもあった。この分子は細胞極性、細胞間接着に関与する癌抑制遺伝子産物DLG1のPDZドメインに結合する。DLG1は上皮細胞の細胞間接着部位に集積するが、(2)の解析ではこの分子も扁平上皮癌細胞株の細胞間接着部位にRap2、TNIK、DLG1と共局在した。この癌細胞ではTNIKの過剰発現により細胞間接着と細胞極性の喪失が認められた。(3)Rap2A,B,CおよびTNIKのコンディショナルノックアウトマウス作成を進めた。Rap2Bは、germ-line transmissionマウスと野生型マウスの仔としてヘテロマウスを得た。現在、コンディショナルノックアウトの前に全身でCre組換え酵素を発現するマウスとの交配によるnullマウスの作成を行っている。Rap2A,CおよびTNIKについても作業を進めている。また、Rap2A,B,Cは相同性が高く識別できる抗体が無かったため、比較的相同性の低いC末端領域を抗原として抗血清を得、アフィニティー精製により特異抗体を作成した。私共はras癌遺伝子産物の類縁分子Rap2がHGK、TNIK、MINKの3つのMAPKKKキナーゼ(MAP4K)と結合することを見出している。これらがJNKやp38を制御することから、Rap2はMAPキナーゼ経路を介して細胞分化に関与する可能性が高い。一方、TNIKがJNKと無関係に細胞接着を制御することも見出しており、Rap2はMAPキナーゼ経路に加え未知のシグナル経路を介してがん細胞の異常形質に関与すると考えている。そこで本研究では(1)未知のシグナル経路の解析、(2)がん細胞における解析、(3)遺伝学的解析を通して、Rap2とがん細胞の分化異常との関連を解明している。(1)(2)未知のシグナル経路の解析とがん細胞における解析:各MAP4Kに結合する蛋白質やリン酸化標的蛋白質を検索している。TNIK結合蛋白質の一つで、Rap2により活性化されたTNIKによってリン酸化される足場分子を見出しており、上皮細胞における役割を解析している。この分子はショウジョウバエ上皮の極性遺伝子産物Dlgの哺乳類ホモログ(PSD-95、SAP-97)のPDZドメインに結合する。この足場分子はマウスで扁平上皮癌を形成する上皮細胞株では細胞間接着部位に濃縮していたが、TNIKを過剰発現により活性化すると、TNIKによってリン酸化されると共に、細胞間接着部から離脱した。また、この上皮細胞株では、TNIKの活性化に伴って細胞間接着部位に濃縮していたE-カドヘリンが細胞の頭頂面に出現したり、wound healingアッセイにおいてゴルジ体の配向が全く揃わないなど、細胞極性の異常を思わせる表現型が出現した。(3)遺伝学的解析:Rap2のコンディショナルノックアウトマウスを作製している。相同組換えES細胞でのCreによるゲノム切り出しを確認し、現在キメラマウスの作製中である。私共はRasファミリー蛋白質Rap2のエフェクターとしてHGK、TNIK、MINKを同定したが、これらはMAPKKKキナーゼ(MAP4K)としてJNKやp38を制御することから、Rap2はMAPキナーゼ経路を介して細胞分化に関与する可能性が高い。一方、TNIKがJNKと独立に細胞基質接着を制御することも見出しており、Rap2は未知のシグナル経路を介してがん細胞の異常形質に関与すると考えている。Rap2とがん細胞の分化異常の関連を明らかにするため、(1)未知のシグナル経路の解析、(2)がん細胞における解析、(3)遺伝学的解析を進めた。その結果、(1)で見出した新規MAP4K結合蛋白質の一つは、ショウジョウバエRolsの哺乳類ホモログで、TNIKのリン酸化標的蛋白質でもあった。この分子は細胞極性、細胞間接着に関与する癌抑制遺伝子産物DLG1のPDZドメインに結合する。DLG1は上皮細胞の細胞間接着部位に集積するが、(2)の解析ではこの分子も扁平上皮癌細胞株の細胞間接着部位にRap2、TNIK、DLG1と共局在した。この癌細胞ではTNIKの過剰発現により細胞間接着と細胞極性の喪失が認められた。(3)Rap2A,B,CおよびTNIKのコンディショナルノックアウトマウス作成を進めた。Rap2Bは、germ-line transmissionマウスと野生型マウスの仔としてヘテロマウスを得た。現在、コンディショナルノックアウトの前に全身でCre組換え酵素を発現するマウスとの交配によるnullマウスの作成を行っている。Rap2A,CおよびTNIKについても作業を進めている。また、Rap2A,B,Cは相同性が高く識別できる抗体が無かったため、比較的相同性の低いC末端領域を抗原として抗血清を得、アフィニティー精製により特異抗体を作成した。
KAKENHI-PROJECT-18013044
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18013044
ナイジェリア南東部で流行するラッサ熱の分子疫学・病態解析と迅速診断法の開発
ラッサウイルスによって引き起こされるラッサ熱は致死性の高い感染症であり、西アフリカ、特にナイジェリアでは深刻な問題となっている。本研究では、他の地域よりも高い致死率が報告されている南東部で2012年から2016年にかけてラッサ熱疑い患者から血清121検体を採集し、解析した。RT-PCR検査の結果、32検体がラッサウイルス陽性であった。ウイルス遺伝子の分子遺伝学的解析からこの地域においてウイルスは抗体等の選択圧力を受けることなく遺伝学的に高度に保存された状態で長期間維持されていることが明らかになった。また、病態の重篤化に腸管出血性大腸菌O157:H7の感染が関わっている可能性も示唆された。ナイジェリア南東部はラッサ熱の発生が非常に多い地域の一つであり、その致死率も他の地域に比べて著しく高い。本研究では、この地域に蔓延するラッサウイルスの分子疫学解析を行い、高価な特殊検査機器がなくても現地で迅速かつ簡便にラッサウイルスの検出・診断が可能なシステムを開発する。早期診断、早期治療を可能にすることで致死率を大幅に改善する。更に、重症化に関与する他の要因についても、(1)ウイルス株と臨床症状の関連性、(2)他の出血熱ウイルスの存在の可能性、(3)血中サイトカイン等と病態の関連性、(4)他の病原体の重感染との関連性(次世代シーケンサーを用いた病原体の網羅的解析)を解析することにより、多角的にその解明を目指す。本研究の成果は、ナイジェリア南東部におけるラッサ熱対策に直接役立つとともに、これまでほとんど解明されていないラッサ熱の病態の解明にも結びつくものである。ラッサ熱疑い患者の血清サンプルを2011-12シーズンは56検体、2012-13シーズンは10検体入手し、RT-PCR法によるラッサウイルス遺伝子の検出を試みた。各シーズン1検体よりウイルス遺伝子の検出に成功し、Sセグメントの全塩基配列を決定した。その結果、両ウイルス株ともに2008年に同地域で分離されたラッサウイルス株と96%以上の相同性があり、大きな選択圧力を受けることなく類似のウイルス株が同地域で維持されていることが分かった。また、2012-13シーズンの10検体に対してラッサウイルス、リフトバレー熱ウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルスに対するIgMおよびIgG抗体を検出するELISAも実施したが、PCR陽性検体以外にウイルス抗体陽性を明確に示す検体はなかった。更に次世代シーケンサーを用いた病原体の網羅的解析にも着手した。ナイジェリア南東部はラッサ熱の発生が非常に多い地域の一つであり、その致死率も他の地域に比べて著しく高い。本研究では、その原因を究明するためにナイジェリア大学研修病院との共同研究でこの地域に蔓延するラッサウイルスの分子疫学的解析を行っている。本年度は2013年と2014年にラッサ熱疑い患者から採取した血液検体の解析を行った。RT-PCR検査を行った結果、2013年の血清10検体のうち1検体、2014年の血清41検体のうち16検体がラッサウイルス陽性であった。陽性例について全遺伝子解析を行った結果、2013年の株は2008年に分離されたNig08-04株と99%の相同性(99塩基、17アミノ酸の相違)が確認された。2014年の株については13株がNig08-04株と相同性が高く、3株が2005年に分離されたNig05-SE40株、Nig05-SE43株と相同性が高いことが明らかになった(91-92%)。これらの成績は、この地域で数系統のウイルス株が良く保存された形で自然界において長期間にわたり維持されていることを示した。また、2014年のラッサウイルス陽性8検体について次世代シーケンサー解析を行った結果、2検体から腸管出血性大腸菌E. coli O157:H7の遺伝子が検出された。このことが、この地域におけるラッサ熱の致死率の高さと関連している可能性が考えられるため、現在更に詳細な解析を進めている。ナイジェリア南東部はラッサ熱の発生が非常に多い地域の一つであり、その致死率も他の地域に比べて著しく高い。本研究では、その原因を究明するためにナイジェリア大学研修病院との共同研究でこの地域に蔓延するラッサウイルスの分子疫学的解析を行っている。本年度は2015-6年にラッサ熱疑い患者から採取した血液14検体について引き続き解析を行った。RT-PCR検査には昨年度使用したプライマーセットに加えて、昨年度の次世代シーケンサー解析の結果に基づいて新たに準備した新規プライマーセットも用いて、ラッサウイルス遺伝子の検出を試みた。その結果、14検体中、旧プライマーセットでは3検体が陽性だったのに対して、新規プライマーセットでは6検体が陽性であり、新規プライマーセットがより正確に塩基配列の異なる幅広いラッサウイルス株を検出することがわかった。陽性例についてGPCコード領域の遺伝子配列決定と系統樹解析を行ったところ、今回解析した6株のGPC領域の塩基配列の相同性は93%以上であり、3株は2011年に分離された株と98%の相同性を示し、残りの3株はそれぞれ2005年、2008年、2013年に分離されたウイルス株と高い相同性を示した。これらの成績は、この地域で複数系統に枝分かれしたウイルス株が存在していることを示した。
KAKENHI-PROJECT-25305016
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25305016
ナイジェリア南東部で流行するラッサ熱の分子疫学・病態解析と迅速診断法の開発
ただし、個々の系統のウイルス株のアミノ酸配列は高度に保存されており、抗体等の選択圧力を受けることなく長期にわたり自然界においてウイルスが同じ地域で維持されていることも示唆された。ラッサウイルスによって引き起こされるラッサ熱は致死性の高い感染症であり、西アフリカ、特にナイジェリアでは深刻な問題となっている。本研究では、他の地域よりも高い致死率が報告されている南東部で2012年から2016年にかけてラッサ熱疑い患者から血清121検体を採集し、解析した。RT-PCR検査の結果、32検体がラッサウイルス陽性であった。ウイルス遺伝子の分子遺伝学的解析からこの地域においてウイルスは抗体等の選択圧力を受けることなく遺伝学的に高度に保存された状態で長期間維持されていることが明らかになった。また、病態の重篤化に腸管出血性大腸菌O157:H7の感染が関わっている可能性も示唆された。2013年および21014年にナイジェリア大学研修病院でラッサ熱疑い患者から採取された51の血液検体についてRT-PCR検査を行った結果、17のラッサウイルス陽性例を得ることができた。続いて、これらのウイルスの全遺伝子配列を解読し、遺伝子データベースに登録されている既知のラッサウイルス株の遺伝子との比較解析を行うことで当初の計画通り遺伝子系統分類を行うことができた。さらに、2014年のラッサウイルス陽性8検体について次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子解析を行った結果、2検体から腸管出血性大腸菌E. coli O157:H7の遺伝子が検出された。この結果は、腸管出血性大腸菌E. coli O157:H7がこの地域におけるラッサ熱の致死率の高さと関連している可能性を示唆するものであり、今後の詳細な解析により本研究目的の達成が期待される。以上の成績は、本研究の方法論の妥当性を示すものであり、概ね当初の計画通り研究が進んでいると評価できる。27年度が最終年度であるため、記入しない。ウイルス学今後は検体数をさらに増やすことにより、より詳細なウイルス遺伝子系統解析を進めるとともに、陽性検体及び陰性検体の次世代シーケンサー解析を行うことにより、ラッサ熱様症状を引き起こす他の病原体の同定やラッサ熱の病態の増悪化に関与する他の病原体等の同定を行う。さらに、重症患者で顕著に発現変化が認められるサイトカインあるいは遺伝子群を明らかにすることによりラッサ熱の病態の解明を目指す。これまでの研究において現地でのサンプル調製法に一部問題があり、次世代シーケンサー解析に進めない検体例もあったため、現地でのサンプル調製法の再検証も行う。当初予定していたラッサウイルス遺伝子解析に加えて、予定を前倒しして次世代シーケンサーを用いた病原体の網羅的解析にも着手した。27年度が最終年度であるため、記入しない。予定していた物品の納品が年度内に間に合わなかったため。27年度が最終年度であるため、記入しない。ラッサ熱疑い患者の中には、未知、未同定の出血熱ウイルスが原因で同様の症状を呈している患者がいることもも否定できないため、次世代シーケンサーを用いた解析も行い原因ウイルスを明らかにする。平成27年度の物品費として使用する。27年度が最終年度であるため、記入しない。年度をまたぐ海外出張が生じたため年度内に残額の確定ができず概算で大目に予算を残す必要があったことと、高額試薬の国内在庫がなく年度内納品が難しかったため次年度購入にまわしたため繰越金(次年度使用額)が生じる結果となった。
KAKENHI-PROJECT-25305016
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25305016
超高速移動無線通信における周波数領域等化に関する研究
第3世代通信システムでは,Rake受信器というチャネル整合フィルタを用いる直接拡散符号分割多重(DS-CDMA)が採用されているが,大きなパス間干渉(IPI)により伝送特性が大幅に劣化してしまう.最近,100Mbps以上の次世代移動通信システムの候補として,多数の狭帯域サブキャリアを用いて並列伝送するマルチキャリア(MC)-CDMAが有望視されている.しかし,これらのマルチキャリア伝送では送信信号のピーク対平均信号電力比(PAPR)が大きくなってしまう.そこで,私は従来のRake受信の代わりに周波数領域等化をDS-CDMAに適用する研究を行ってきた.最小平均二乗誤差(MMSE)規範に基づく周波数領域等化(FDE)を用いるDS-CDMAでは,PAPRの問題も少なく,MC-CDMAと同等の優れた伝送特性が得られる.しかし,上りリンクでは,各ユーザの送信タイミングが非同期であることと各ユーザでフェージングチャネルが異なるため大きなマルチューザ干渉(MAI)が発生してしまい,伝送特性が大幅に劣化する.そこで,私は,上りリンクで生じるマルチューザ干渉を抑圧する周波数領域インターリーブを用いるアクセス方式(Spread-spectrum FDMA)を提案してきた.まず,拡散率SF_tの時間領域拡散を行ってN_c個のチップ系列を得る.次いで,N_cポイント高速フーリェ変換(FFT)によりN_c個の周波数成分を得た後,他ユーザと直交するインターリーブパターンを用いて,それらをSF_f倍の周波数帯域幅ヘマッピングする.トータル拡散率がSF(=SF_t×SF_f)でユーザ数がUのとき,BERを最小とする拡散率の組み合わせが(SF_t,SF_f)=(SF/U,U)となることを示し,そのときのBER特性を計算機シミュレーションで明らかにした.その結果,提案方式を用いれば,MMSE-FDEを用いるDS-CDMAよりも優れたBER特性が得られることを示した.更に,マルチセル環境下における上りリンク容量を計算機シミュレーションにより明らかにし,DS-CDMAより多くのユーザを収容できることを示してきた.最近,100Mbps以上の次世代移動通信システムの候補として,多数の狭帯域サブキャリアを用いて並列伝送するOFDMやMC-CDMAが有望視されている.しかしこれらのマルチキャリア伝送では送信信号のピーク対平均信号電力比(PAPR)が大きくなってしまう.そこで,私は従来のRake受信の代わりに周波数領域等化をDS-CDMAに適用する研究を行ってきた.周波数領域等化を用いるDS-CDMAでは,PAPRの問題も少なく,かつMC-CDMAと同等の伝送特性が得られる.ところで,周波数領域等化では,チャネル伝達関数の推定が必要である.これまで,周波数領域等化に適したチャネル推定の研究はなされていなかった.そこで,私は従来の時間領域のチャネル推定に代わり周波数領域でチャネルの伝達関数を直接求めるチャネル推定法を検討してきた.しかし,周波数領域で直接チャネルの伝達関数を求めようとすると,チャネル推定特性がパイロットチップ系列に大きく依存し,劣化してしまうという問題があった.そこで,私はパイロット系列の周波数応答に依存しない最小平均二乗誤差(MMSE)規範に基づくパイロットチャネル推定法を提案してきた.提案したMMSEチャネル推定では,実際のチャネル伝達関数とその推定値との誤差を定義し,その平均二乗誤差を最小とするような受信パイロット系列を用いてチャネル伝達関数の推定を行う.以上のMMSEチャネル推定では雑音電力と平均信号電力の推定が必要であるが,提案方式では,パイロット系列を用いてこれらを推定した後,MMSEチャネル推定を行っている.以上のMMSEチャネル推定を用いれば,従来のMMSEチャネル推定を用いない場合と比較して,周波数領域等化のBER特性を大幅に改善できることを示した.第3世代通信システムでは,Rake受信器というチャネル整合フィルタを用いる直接拡散符号分割多重(DS-CDMA)が採用されているが,大きなパス間干渉(IPI)により伝送特性が大幅に劣化してしまう.最近,100Mbps以上の次世代移動通信システムの候補として,多数の狭帯域サブキャリアを用いて並列伝送するマルチキャリア(MC)-CDMAが有望視されている.しかし,これらのマルチキャリア伝送では送信信号のピーク対平均信号電力比(PAPR)が大きくなってしまう.そこで,私は従来のRake受信の代わりに周波数領域等化をDS-CDMAに適用する研究を行ってきた.最小平均二乗誤差(MMSE)規範に基づく周波数領域等化(FDE)を用いるDS-CDMAでは,PAPRの問題も少なく,かつMC-CDMAと同等の伝送特性が得られる.しかし,DS-CDMAでは,MMSE-FDE後にチップ間干渉(ICI)が残留してしまい,それが誤り率(BER)特性改善に限界を与えるという問題があった.そこで,私は,残留ICIを考慮したMMSE重みを理論的に導出し,それを用いるFDEと周波数領域ICIキャンセラを提案してきた.周波数領域ICIキャンセラでは,残留ICIレプリカの生成が必要である.提案法では,判定誤りによる誤り伝搬を軽減するために,対数尤度比(LLR)より求めた軟判定レプリカを用いている.周波数領域ICIキャンセラでは,まず,N_cポイント高速フーリエ変換(FFT)により得られたN_c個からなる受信信号の周波数成分にMMSE規範に基づくFDEおよびICIキャンセルを行う.次いで,N_cポイント逆FFT(IFFT)を適用して時間領域信号に変換し,逆拡散を行い,軟判定値系列を得る.これをフィードバックし,MMSE-FDE重みおよびICIレプリカを更新して,FDE, ICIキャンセルおよび逆拡散を行って,データ復調する.以上の周波数領域ICIキャンセラを用いれば,大幅にBER特性を改善でき,理論的下界に近い優れた特性が得られることを計算機シミュレーションにより示した.
KAKENHI-PROJECT-05J04740
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05J04740
超高速移動無線通信における周波数領域等化に関する研究
第3世代通信システムでは,Rake受信器というチャネル整合フィルタを用いる直接拡散符号分割多重(DS-CDMA)が採用されているが,大きなパス間干渉(IPI)により伝送特性が大幅に劣化してしまう.最近,100Mbps以上の次世代移動通信システムの候補として,多数の狭帯域サブキャリアを用いて並列伝送するマルチキャリア(MC)-CDMAが有望視されている.しかし,これらのマルチキャリア伝送では送信信号のピーク対平均信号電力比(PAPR)が大きくなってしまう.そこで,私は従来のRake受信の代わりに周波数領域等化をDS-CDMAに適用する研究を行ってきた.最小平均二乗誤差(MMSE)規範に基づく周波数領域等化(FDE)を用いるDS-CDMAでは,PAPRの問題も少なく,MC-CDMAと同等の優れた伝送特性が得られる.しかし,上りリンクでは,各ユーザの送信タイミングが非同期であることと各ユーザでフェージングチャネルが異なるため大きなマルチューザ干渉(MAI)が発生してしまい,伝送特性が大幅に劣化する.そこで,私は,上りリンクで生じるマルチューザ干渉を抑圧する周波数領域インターリーブを用いるアクセス方式(Spread-spectrum FDMA)を提案してきた.まず,拡散率SF_tの時間領域拡散を行ってN_c個のチップ系列を得る.次いで,N_cポイント高速フーリェ変換(FFT)によりN_c個の周波数成分を得た後,他ユーザと直交するインターリーブパターンを用いて,それらをSF_f倍の周波数帯域幅ヘマッピングする.トータル拡散率がSF(=SF_t×SF_f)でユーザ数がUのとき,BERを最小とする拡散率の組み合わせが(SF_t,SF_f)=(SF/U,U)となることを示し,そのときのBER特性を計算機シミュレーションで明らかにした.その結果,提案方式を用いれば,MMSE-FDEを用いるDS-CDMAよりも優れたBER特性が得られることを示した.更に,マルチセル環境下における上りリンク容量を計算機シミュレーションにより明らかにし,DS-CDMAより多くのユーザを収容できることを示してきた.
KAKENHI-PROJECT-05J04740
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折れ曲がり型2核金属錯体の合成および基質に対する2つの金属の協同的反応
2つの平面4配位金属錯体が、2つの架橋配位子によって辺を共有すると2核錯体となる。この2核錯体の折れ曲がり型には、それぞれのメタルのアキシャル配位座が交わる場所があり、この位置に基質がくると、基質は2つのメタルと同時に相互作用すると期待できる。このような相互作用は、複数のメタルによる基質活性化反応のモデルとして重要である。本研究では、2つのホスフィド基をアルキル鎖で結んだ3種の架橋配位子MPE=MePCH_2CH_2PMe^<2->,PPE=PhPCH_2CH_2PPh^<2->,およびPPP=PhPCH_2CH_2CH_2PPh^<2->を用いて2核錯体の合成を行った。その結果、一般式(μ-bridge)-[M(DPPE)]_2X_2(M=Pd, Pt ; X=Cl^-,I^-,B(3,5-(CF_3)_2-Ph)_4^-)で表される2核パラジウム(II)および2核白金(II)錯体を得ることに成功した。これらのX線構造解析を行った結果、2つの架橋リン配位子と2つの金属原子が成す2つの"wing"の2面角が、エチレン鎖で結んだ架橋配位子MPEおよびPPEの錯体では約120°であり、プロピレン鎖で結んだ架橋配位子PPPの錯体では、やや大きな131°となることが判った。さらに、興味深いことにPPEおよびPPPの2核パラジウム錯体では、対イオンのハロゲンイオンがアキシャル配位座が交わる場所に位置し、期待どおり2つのメタルと同時に相互作用することが見出された。一方、メタルとしてRh(I)を用いた2核錯体(μ-PPE)-[Rh(COD)]_2は、フェニルアセチレン(PA)に対して重合触媒として働き、立体規則性の高いcis-trasoidalポリアセチレンを与えることが判った。2つの平面4配位金属錯体が、2つの架橋配位子によって辺を共有すると2核錯体となる。この2核錯体の折れ曲がり型には、それぞれのメタルのアキシャル配位座が交わる場所があり、この位置に基質がくると、基質は2つのメタルと同時に相互作用すると期待できる。このような相互作用は、複数のメタルによる基質活性化反応のモデルとして重要である。本研究では、2つのホスフィド基をアルキル鎖で結んだ3種の架橋配位子MPE=MePCH_2CH_2PMe^<2->,PPE=PhPCH_2CH_2PPh^<2->,およびPPP=PhPCH_2CH_2CH_2PPh^<2->を用いて2核錯体の合成を行った。その結果、一般式(μ-bridge)-[M(DPPE)]_2X_2(M=Pd, Pt ; X=Cl^-,I^-,B(3,5-(CF_3)_2-Ph)_4^-)で表される2核パラジウム(II)および2核白金(II)錯体を得ることに成功した。これらのX線構造解析を行った結果、2つの架橋リン配位子と2つの金属原子が成す2つの"wing"の2面角が、エチレン鎖で結んだ架橋配位子MPEおよびPPEの錯体では約120°であり、プロピレン鎖で結んだ架橋配位子PPPの錯体では、やや大きな131°となることが判った。さらに、興味深いことにPPEおよびPPPの2核パラジウム錯体では、対イオンのハロゲンイオンがアキシャル配位座が交わる場所に位置し、期待どおり2つのメタルと同時に相互作用することが見出された。一方、メタルとしてRh(I)を用いた2核錯体(μ-PPE)-[Rh(COD)]_2は、フェニルアセチレン(PA)に対して重合触媒として働き、立体規則性の高いcis-trasoidalポリアセチレンを与えることが判った。多核金属錯体において、2つの金属が同時に基質と相互作用できる反応サイトは、複数の金属による新たな反応を開発できる場所として関心を集めている。本研究では、2つの平面4配位金属錯体から成る2核錯体を強制的に折れ曲がり型にすることで、2つのメタルのアキシャル配位座が同時に相互作用できる空間を作り出した。我々は、d^8の電子配置をもつ10族のPd(II),Pt(II)および9族のRh(I)を中心金属に選んだ。架橋原子にはホスフィドを用い、2つの架橋ホスフィド配位子をアルキル鎖で結ぶことで、強制的に折れ曲がり型にした。合成では、まず単核の錯体に架橋配位子となるRHPCH_2CH_2PHR(R=Me,Ph)を配位させ、Na_2CO_3を用いてリン上のHをプロトンとして引き抜き、そこへ第2のメタルを結合させた。最初のメタルと第2のメタルを変えることにより、この方法は、異核の2核錯体の合成にも適用できた。種々のPd(II),Pt(II)の錯体のうち、対イオンをCl^-,I^-,B(3,5-(CF_3)_2-C_6H_3)_4^-としたものの構造をX線構造解析により決定した。その結果、期待どおり2つの4配位平面が約120゚の折れ曲がり角を成していることが判った。さらに、Pd(II)の同核
KAKENHI-PROJECT-12640540
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折れ曲がり型2核金属錯体の合成および基質に対する2つの金属の協同的反応
2核錯体で対イオンがCl^-の組み合わせでは、Cl^-が2つのPd(II)と同時に相互作用できる空間を占めていることが判った。架橋配位子としてMPEおよびPPE(MPE : R=Me, PPE : R=Ph, RPCH_2CH_2PR^<2->)を用いると、2核平面4配位錯体を強制的に折れ曲がり型にできる。本研究では、新たな架橋配位子として2つのホスフィド間のメチレン鎖を延ばしたもの(PPP=PhPCH_2CH_2CH_2PPh^<2->)を用いて折れ曲がり型錯体を合成した。得られた(μ-PPP)-[Pd(DPPE)]_2Cl_2の結晶構造解析を行った結果、既に構造を明らかにしている(μ-PPE)-[Pd(DPPE)]_2Cl_2の場合と同様に、対イオンのCl^-が2核錯体の折れ曲がった分子平面の下側で2つのPd(II)中心と同時に相互作用していることが見出された。興味深いことにこのPPPが架橋した錯体では、PPE架橋のものに比べて架橋部のメチレン鎖が延びたために、バタフライ型の折れ曲がり角が広がっていた。そのため、2つのメタルが同時に相互作用しにくくなり、メタルと対イオンとの相互作用が弱められることが確認できた。一方、メタルとしてRh(I)を用いた2核錯体(μ-PPE)-[Rh(COD)]_2は、フェニルアセチレン(PA)に対して興味深い重合活性を示すことが判った。すなわち、基質のPAの濃度が0.1Mで触媒として0.75mMの濃度の(μ-PPE)-[Rh(COD)]_2を反応させると、平均して20量体程度のPAのオリゴマーがターンオーバー数20100程度で生成することが判った。PAをリビング重合できる錯体は多数知られているが、本触媒は、PAをポリマー化した後、ポリマーが触媒からから外れて再び触媒が再生されるという極めて希な特性を持つことが判った。
KAKENHI-PROJECT-12640540
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遺伝子組換え酵母の生育能回復試験を用いた抗腫瘍性海洋天然物の探索と創製
有用物質探索で重要な点は、ハイスループットなin vitroの試験をいかにして細胞を用いた試験系での生理活性に結びつけるかという点である。吉田らが提唱している、遺伝子過剰発現により生育に異常をきたす酵母の生育を正常に戻すことを指標とする試験系は、ハイスループットな点と細胞に対して効果を示すことの両者を同時に満たす優れた試験系である。海産無脊椎動物抽出液をこの試験系で調べ、カイメンTheonellaswinhoeiからチアミンの生合成中間体を2種類得た。ついで、別種の未同定種カイメンから3種のステロイド配糖体を得た。本研究は、以下の6項目の実験を組み合わせて繰り返し実施することにより、海産無脊椎動物由来の化合物を母核とした抗腫瘍物質のリード化合物の創製を企図するものである。(1)組換え酵母の生育回復を指標とした、海産無脊椎動物抽出物のスクリーニング(2)スクリーニングにおける「ヒット」検体からの「活性物質」およびその類縁化合物の網羅的単離ならびに構造決定(天然物ライブラリーの作成)(3)活性物質のインビトロ酵素阻害試験ならびにがん細胞を用いた生物活性の評価による「有効物質」の選定、(4)有効物質を母核とした化合物ライブラリー(化学ライブラリー)の作成(5)天然物ライブラリーと化学ライブラリーの生物活性評価による構造活性相関の解明(6)構造活性相関情報に基づくリード化合物の創出。有用物質探索で重要な点は、ハイスループットなin vitroの試験をいかにして細胞を用いた試験系での生理活性に結びつけるかという点である。吉田らが提唱している、遺伝子過剰発現により生育に異常をきたす酵母の生育を正常に戻すことを指標とする試験系は、ハイスループットな点と細胞に対して効果を示すことの両者を同時に満たす優れた試験系である。海産無脊椎動物抽出液をこの試験系で調べ、カイメンTheonellaswinhoeiからチアミンの生合成中間体を2種類得た。ついで、別種の未同定種カイメンから3種のステロイド配糖体を得た。吉田らは、約5000種類の分裂酵母遺伝子を1つずつ導入した組み換え株を作成し、当該遺伝子の発現に伴う生育能について観察を行った。大多数の遺伝子は過剰発現しても酵母の生育に影響を及ぼさなかったが,169種類の遺伝子を過剰発現させると酵母の生育が阻害された。さらに.これらの遣伝子産物の機能阻害物質が存在すると過剰発現による生育停止が解消されることが明らかにされたため、生育の回復を指標とすることによって遺伝子産物の機能を阻害する化合物の探索ができることが示された。この169種類の遺伝子にはヒトのがん化関連遺伝子のホモ口グが多数含まれているため、これらの遺伝子産物の阻害剤は抗がん剤のリード化合物となることが期待される。1997年から2005年にかけて採集された659種類の海洋無脊椎動物抽出物ライブラリーを用いて、5種の組み換え酵母を用いて生育回復試験を行った。288サンプルに活性が認められたbそのうち187サンプルがすべての株に共通して生育回復活性を示した。導入された遺伝子はnmtlの制限下にあるため、このプロモーターに作用して転写を調節する作用を持つ化合物が多<の海洋無脊椎動物に含まれることがわかっか。また、多くのサンプルにおいて生育阻止が観察されたため、野生株の酵母を用いて抗真菌活性の評価を行ったところ、62サンプルが野生株の生育を阻害することがわかった。スクリーニングで強い抗真菌活性が認められた鹿児島県奄美大島産未同定種海綿S97-0131こ含まれる沃件成分の蛍離,横浩決宇券試みか。吉田らが確立した、約5000種類の分裂酵母遺伝子を1つずつ導入した組み換え酵母株において、遺伝子の過剰発現において生育が阻害された169株の遺伝子の機能を調べたところ、ヒトのがん化関連遺伝子のホモログが多数含まれていた。そこで、これらからその阻害によって抗がん剤のリード化合物となることが期待される遺伝子が導入された株5種を選抜した。2006年から2008年にかけて採集された海洋無脊椎動物抽出物ライブラリーを用いて、これら5種の組み換え酵母に対する生育回復試験を行った。多数のサンプルに活性が認められたが、そのうち大多数のサンプルがすべての株に共通して生育回復活性を示した。導入された遺伝子はnmt1の制限下にあるため、このプロモーターに作用して転写を調節する作用を持つ化合物が多くの海洋無脊椎動物に含まれることが、前年度に続き顕在化した。なお、多くのサンプルにおいて酵母に対する生育の阻害が観察された。そこで、生育回復に加え、生育阻害物質の検索も並行して実施した。前年度のスクリーニングで強い生育阻害活性が認められた鹿児島県奄美大島産未同定種カイメンS97-013に含まれる活性成分の単離、構造決定を進めた。すなわち、カイメンをエタノールで抽出し、抽出物をクロロホルムと水で二層分配に付した。クロロホルム層をさらに90%メタノールとヘキサンで二層分配を行い、含水アルコール層をシリカゲルカラムクロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィーおよび逆相高速液体クロマトグラフィーに付して、2種類の活性物質を単離した。それらの構造解析を進めている。吉田らが確立した、約5000種類の分裂酵母遺伝子を1つずつ導入した組み換え酵母株において、遺伝子の過剰発現において生育が阻害された169株の遺伝子の機能を調べたところ、ヒトのがん化関連遺伝子のホモログが多数含まれていた。
KAKENHI-PROJECT-20248022
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20248022
遺伝子組換え酵母の生育能回復試験を用いた抗腫瘍性海洋天然物の探索と創製
そこで、これらからその阻害によって抗がん剤のリード化合物となることが期待される遺伝子が導入された株5種を選抜した。本年度は前年度に引き続き、2009年に採集された海洋無脊椎動物抽出物ライブラリーを用いて、これら5種の組み換え酵母に対する生育回復試験を行った。多数のサンプルに活性が認められたが、そのうち大多数のサンプルがすべての株に共通して生育回復活性を示した。導入された遺伝子はnmt1の制限下にあるため、このプロモーターに作用して転写を調節する作用を持つ化合物が多くの海洋無脊椎動物に含まれることが、わかっている。抽出液に生育回復活性が観察されたカイメン。そこで、生育回復に加え、生育阻害物質の検索も並行して実施することとした。前年度までのスクリーニングで強い生育阻害活性が認められた鹿児島県奄美大島産未同定種カイメンS97-013から2種類の活性物質を単離した。それらの構造解析を核磁気共鳴や質量分析などの機器分析を用いて行った。ひとつめの化合物は分子式がC34H56N2で、二重結合を4つ含み、2つ存在する窒素原子はいずれも互いに結合したテトラヒドロピリジン環中にあり、それぞれが3つのメチレン炭素と結合していた。4つの二重結合は2つの環をつなぐアルキル鎖中に認められた。2つめの化合物は1つめの化合物とより1つのアルキル鎖の長さが短く二重結合も2つだけ存在した。現在、立体配置を検討している。前年度までの研究により、カイメンなどの海洋生物には組換え酵母の生育回復活性を示すものが多数あることがわかった。しかし、導入された遺伝子が異なる5つの株を用いて、並行して実験を行うと、全ての株の生育を回復されるものがほとんどすべての活性検体について認められた。一般に、カイメンには多種多様な共生微生物が含まれるが、そのような微生物がチアミンおよびその生合成前駆体を生産していて、そのような化合物が本アッセイ系を撹乱していることが推察された。そこで、特定の株に対してのみ活性を占める検体を選抜して活性成分の探索を行うことが必須であることが判明した。しかし、そのような試料は大変稀なため、生育阻害物質についても探索を行ってきた。このような背景の下、本年度はゴン曽根産未同定種カイメンに含まれる生育阻害物質の探索を行った。まず、カイメンをメタノールで抽出し、抽出物をクロロホルムと水で二層分配に付した。水層をさらにブタノールで抽出し、ブタノール層を逆相カラムクロマトグラフィー、シリカゲルカラムクロマトグラフィーおよび逆相高速液体クロマトグラフィーに付して、4種類の活性物質を単離した。それらの構造解析を行ったところ、2置換インドール、2置換ベンゼン環に加え多数のアミド基由来のNHが観察された。詳細に2次元NMRデータを解析したところ、カイメンから見いだされてミクロスクレロダーミン類とよく似ていることが判明した。現在、立体化学を含めた構造解析を進めている。真核生物の細胞の、染色体の末端には単純な反復配列からなるテロメアが存在する。細胞分裂を繰り返すごとにテロメアは短くなり、一定の長さに達すると細胞は老化を迎え、それ以上細胞分裂を行うことができなくなる。
KAKENHI-PROJECT-20248022
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20248022
グラフィックスプロセッサを用いた磁気回転不安定性の非線形シミュレーション
銀河などの降着円盤において,観測される物質の降着率が古典的な理論では説明できないほど速いという問題があった.1991年に提案された磁気回転不安定性は,磁場の影響を考慮することで電磁流体的な不安定性を引き起こして乱流を発生させるという点で画期的であった.しかし電磁流体的な解析では局所熱平衡を仮定しており,低衝突の極限でやはり観測に合わないという指摘がある.本研究ではこの問題を解決するため,局所熱平衡を仮定しない運動論による理論・数値シミュレーション研究に取り組んだ.数値計算には近年計算能力進歩の著しいグラフィックスプロッセッサを用いることとし,数理モデルの開発も同時に行った.グラフィックスプロセッサ(GPU)には、グラフィックスカード内のグローバルメモリに加え、コンスタントメモリ、テクスチャメモリ、またプロセッサ上のコア間で共有できる共有メモリなど、メモリに階層構造がある。これまでの研究から、グローバルメモリを用いるだけでも数十倍程度の高速化が可能であることがわかっているが、メモリの階層性を考慮に入れ、更なる高速化の可能性を探った。これまでに得られたFFTや積分計算の性能には満足しているので、今回は衝突項などに適用を検討している差分法を対象とし、高速化には、コアから近くアクセス速度の速い共有メモリをできるだけ活用することを指針とした。各コアで時間発展計算を担当するグリッドよりも多めにグローバルメモリから関数値を共有メモリにコピーし、共有メモリ内で10数10回程度の時間発展を行う。アクセス速度の遅いグローバルメモリへのアクセスを、毎時間ステップから数10回に一度へと減らすことで、高速化が実現できると考えたわけである。またCUDA Visual Profilerを用いてコアレッシング、バンクコンフリクト、ダイバージェント分岐などの遅延要素を一つずつ解消するような地道な作業を行った。1次元問題への適用は期待通りに働き、すべての計算をグローバルメモリ上で行ったときと比べて2倍程度の高速化に成功した。しかし多次元問題では効率が落ちて数%程度の高速化にとどまった。本研究の予備実験として、磁化プラズマにおける2次元静電乱流の運動論的な解析を行った。2次元配位では2つの無衝突保存量が存在するが、それらが互いに逆方向にスケール間を移動する、双カスケードが起こる。自由減衰乱流の大規模数値シミュレーションを行ったところ、これらの量は時間について代数的に減衰するが、これは2つの量のカスケードによってうまく説明できることを示し、論文にまとめた。運動論コードでは、粒子の速度分布関数を速度空間について積分することから、密度や電流などの場の量が求まるため、速度空間積分に対応する総和計算を繰り返し行う必要がある。この総和計算は、多数の数から一つの数を導き出すという、原理的に並列化が困難な計算であり、並列計算においてもよく取り上げられる操作である。この計算について、グラフィックスプロセッサに適したアルゴリズムを検討し、実装した。NVIDIAが開発したグラフィックスプロセッサ用のプログラミング言語CUDAは、それだけでは複数マシンにまたがる並列計算をサポートしない。したがって、この目的に合致した、Message Passing Interface (MPI)などのマシン間の通信を利用するには、MPIに対応した他の言語との混在プログラミングが求められる。本研究では、並列プログラミングにはc++を使用し、CUDAとの混在プログラミングが可能であることを実証した。また、磁気回転不安定性で用いられる剪断的境界条件を、擬スペクトル法で実現するアルゴリズムを考案し、実装した。大雑把に言えば、Kelvin卿が19世紀に用いた、剪断流の系に乗った座標系で非線形計算を行い、引き伸ばしが系の長さに達したところで離散的な座標変換をする、というものである。磁気回転不安定性の元となる、剪断流のある平衡について考察を行った。銀河などの降着円盤は、ケプラー回転(回転角速度の逆数が半径の3/2乗に比例)することで中心天体の重力とつり合い、定常的に回っていると考えられる。そういった力学的平衡の流体的な表現は古くから知られており、Navier-Stokes方程式の定常解となっているが、運動論による記述を用いる場合、Vlasov方程式の定常解としてケプラー回転する平衡を見つけるのは容易ではない。一般的な楕円軌道を含む運動論平衡を作ることは困難であるが、構成粒子がほぼ円軌道を取ると仮定して、近似的にケプラー回転を示す解析解を求めることに成功した。さらに時間発展を記述するVlasov方程式を、上で述べた仮定を用いて簡約化した。運動論方程式を大域的にシミュレーションするには、グラフィックスプロセッサ(GPU)を用いたとしても現在のコンピュータでは性能が足りないため、何らかの仮定をおく必要がある。本研究では、粒子軌道が円軌道から大きく外れないと仮定し、降着円盤の一部を切り取ることとした。平衡軌道のまわりを回転しながら、差動回転によって変形する局所的なデカルト座標を考え、その座標系でのVlasov方程式を導出した。電場や磁場についても、相対性理論の小速度極限としてのGalilei変換性を満たすよう変換することで、理論的に整合するものが導けた。開発中の数値コードについて、プロファイリングツールnvprofを用いて解析をおこなった。グラフィックスボードではメモリの割当と開放にCPUよりも時間がかかることがあり、従来のコードのボトルネックとなっていることがわかった。メモリの割当を最適化することで、約6倍の高速化が実現できた。これらの研究成果をまとめ、米国物理学会でポスター発表を行った。本研究は、グラフィックスプロセッサを用いた数値シミュレーションを行うという情報科学的側面と、銀河の膠着円盤についての解析を行うという物理学的な側面の2つにおいて、運動論に基づいたモデルを用いるという新しい試みを行うものである。
KAKENHI-PROJECT-24540533
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24540533
グラフィックスプロセッサを用いた磁気回転不安定性の非線形シミュレーション
これまで、情報科学的な側面と物理学的な側面の両方について少しずつ進展があった。ところが昨年度米国物理学会で行った成果発表において、カリフォルニア工科大のBellan教授からモデルの妥当性について質問を受けた。本研究では、従来の電磁流体的モデルに基づく解析で用いられているように、粒子がケプラー回転(回転角速度の逆数が半径の3/2乗に比例)する、という仮定をおいていた。この流体的な力学平衡を運動論に拡張し、膠着円盤の構成粒子がほぼ円軌道を取ると仮定してVlasov方程式の定常解を求めたわけである。これに対しBellan氏の主張は、重力と電磁力の相互作用下における荷電粒子の運動はケプラー運動から大きく外れるため、「ほぼ円軌道」の粒子集団を仮定することは、対象を限定しすぎることになるのではないか、というものである。本年度はこの疑問に答えるために物理学的側面を見直し、Bellan氏から紹介頂いた文献も参照して、新たなモデルによる検討を行った。特殊相対性理論を用いた簡易モデルに基づいて粒子軌道の分類を行った結果、Bellan氏の評価以上に多様な粒子軌道の可能性があることがわかった。現在はこの結果を論文にまとめるため、さらに詳細なモデルを用いて解析を進めているところである。銀河などの降着円盤において,観測される物質の降着率が古典的な理論では説明できないほど速いという問題があった.1991年に提案された磁気回転不安定性は,磁場の影響を考慮することで電磁流体的な不安定性を引き起こして乱流を発生させるという点で画期的であった.しかし電磁流体的な解析では局所熱平衡を仮定しており,低衝突の極限でやはり観測に合わないという指摘がある.本研究ではこの問題を解決するため,局所熱平衡を仮定しない運動論による理論・数値シミュレーション研究に取り組んだ.数値計算には近年計算能力進歩の著しいグラフィックスプロッセッサを用いることとし,数理モデルの開発も同時に行った.当初の計画よりも問題が難しいことが分かった。様々な物理的モデリングについてはようやく決着したので、数値コードの開発に取り組んでいるところである。プラズマ物理現在速度空間の離散化手法について検討しているところである。これが終わり次第数値コードを完成させ、早急にシミュレーションを始められるようにしたい。差分法による偏微分方程式の計算が効率よく高速化できていないため。研究計画には、離散化手法、衝突作用素の決定、境界条件の実装を初年度の計画として挙げていたが、衝突作用素についての検討が終わっていない。それは、研究実績の項に記した総和計算についての検討を行ったからである。研究立案時には、そのような検討が必要なことに気づかなかった。それ以外は比較的順調に進んでいる。
KAKENHI-PROJECT-24540533
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椎間板におけるplasmid vecterを用いたin vivoRNA干渉と応用
SDラット尾椎椎間板を用いた。培養髄核細胞を用いた基礎研究は終了しているので、基本的にin vivo研究を中心に行った。麻酔下にラットの尾椎椎間板を展開し、直視下にplasmid遺伝子とマイクロバブルを混合したものを椎間板内に注入し、直ちに外部より超音波を照射した。定量的実験として、ウミシイタケおよびホタルルシフェラーゼ遺伝子を同時に椎間板内に導入し、ホタルルシフェラーゼの遺伝子発現抑制のみを目的としたsiRNAをコードするplasmid遺伝子を導入した。経時的に椎間板組織を回収し、組織内のシフェラーゼ遺伝子発現を定量した。ウミシイタケルシフェラーゼを内因性コントロールとして、ホタルルシフェラーゼ発現が特異的にどれだけブロックされているかを両者の比を用いて統計学的に検討した(n=7)。Negativecontro1として、siRNAを導入しないものと、RNA干渉は引き起こさないが同様の遺伝子内容(配列は異なる)を含むscramble siRNAをコードするplasmidを用いた。結果として、少なくとも2週間まで、in vivoでのRNAiが観察された。今後さらに長期間の調査を予定している。椎間板内で内因性に発現しているとされる種々の遺伝子抑制を同様の手技を用いて検討した。まずは我々が正常椎間板に発現しているとして世界に先駆けて報告したFas ligandの発現抑制を試みた。基礎実験として、ラットのFas ligand(FasL)発現を抑制するためにデザインされたsiRNAを用いて、in vitroで培養髄核細胞にこれを導入し、後日FasL発現が抑制されているかどうかをウエスターンブロッティングならびに定量PCR法にて確認した。このsiRNAをplasmidに組み込み、plasmidから産生されたsiRNAでも同様にin vitroでFasL発現が抑制できることを確認した。さらに前述の超音波コントラスト法を用いて、ラット尾椎椎間板に対するin vivoでの遺伝子導入を行った。現時点では有意な内因性遺伝子発現のin vivoでの抑制は観察されておらず、条件を変更するなど原因調査中である。(1)外因性Reporter遺伝子(in vivo)を用いた研究SDラット尾椎椎間板を用いた。培養髄核細胞を用いた基礎研究は終了しているので、基本的にin vivo研究を中心に行った。麻酔下にラットの尾椎椎間板を展開し、直視下にplasmid遺伝子とマイクロバブルを混合したものを椎間板内に注入し、直ちに外部より超音波を照射した。定量的実験として、ウミシイタケおよびホタルルシフェラーゼ遺伝子を同時に椎間板内に導入し、ホタルルシフェラーゼの遺伝子発現抑制のみを目的としたsiRNAをコードするplasmid遺伝子を導入した。経時的に椎間板組織を回収し、組織内のシフェラーゼ遺伝子発現を定量した。ウミシイタケルシフェラーゼを内因性コントロールとして、ホタルルシフェラーゼ発現が特異的にどれだけブロックされているかを両者の比を用いて統計学的に検討した(n=7)。Negativecontro1として、siRNAを導入しないものと、RNA干渉は引き起こさないが同様の遺伝子内容(配列は異なる)を含むscramble siRNAをコードするplasmidを用いた。結果として、少なくとも2週間まで、in vivoでのRNAiが観察された。今後さらに長期間の調査を予定している。椎間板内で内因性に発現しているとされる種々の遺伝子抑制を同様の手技を用いて検討した。まずは我々が正常椎間板に発現しているとして世界に先駆けて報告したFas ligandの発現抑制を試みた。基礎実験として、ラットのFas ligand(FasL)発現を抑制するためにデザインされたsiRNAを用いて、in vitroで培養髄核細胞にこれを導入し、後日FasL発現が抑制されているかどうかをウエスターンブロッティングならびに定量PCR法にて確認した。このsiRNAをplasmidに組み込み、plasmidから産生されたsiRNAでも同様にin vitroでFasL発現が抑制できることを確認した。さらに前述の超音波コントラスト法を用いて、ラット尾椎椎間板に対するin vivoでの遺伝子導入を行った。現時点では有意な内因性遺伝子発現のin vivoでの抑制は観察されておらず、条件を変更するなど原因調査中である。基礎実験として、培養髄核細胞を用いてsiRNAとsiRNAをコードするplasmid(Vector based siRNA)をリポフェクション法にて遺伝子導入し、遺伝子発現の抑制効果期間を調査した。siRNAと比較して、Vector based siRNAにおいては、有意に長期間の遺伝子発現の抑制効果が得られた。上記の結果をもとに、SDラット尾椎椎間板を用いたin vivo研究を行った。麻酔下にラットの尾椎椎間板を展開し、直視下にplasmid遺伝子とマイクロバブルを混合したものを椎間板内に注入し、直ちに外部より超音波を照射して遺伝子導入を行った(超音波コントラスト法)。定量的実験として、ウミシイタケおよびホタルルシフェラーゼのreporter plasmidを同時に椎間板内に導入し、ホタルルシフェラーゼの発現抑制のみを標的としたsiRNAをコードするplasmidを同時導入した。経時的に椎間板組織を回収し、組織内のシフェラーゼ遺伝子発現を定量した。ウミシイタケルシフェラーゼを内因性コントロールとして、ホタルルシフェラーゼ発現が特異的にどれだけブロックされているかを両者の比を用いて統計学的に検討した(n=7)。Negative controlとして、siRNAを導入しないものと、RNA干渉は引き起こさないが同様の遺伝子内容(配列は異なる)を含むscramble siRNAをコードするplasmidを用いた。
KAKENHI-PROJECT-17591570
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椎間板におけるplasmid vecterを用いたin vivoRNA干渉と応用
遺伝子導入後2週間までの結果では約80%の特異的なホタルルシフェラーゼの発現抑制が観察された。発現抑制効果期間については現在調査中である。これらの成果は、日本整形外科学会基礎および国際腰痛学会にて報告した。(1)外因性Reporter遺伝子(in vivo)を用いた研究SDラット尾椎椎間板を用いた。麻酔下にラットの尾椎椎間板を展開し、直視下にplasmid遺伝子とマイクロバブルを混合したものを椎間板内に注入し、直ちに外部より超音波を照射した。定量的実験として、ウミシイタケおよびホタルルシフェラーゼ遺伝子を同時に椎間板内に導入し、ホタルルシフェラーゼの遺伝子発現抑制のみを目的としたsiRNAをコードするplasmid遺伝子を導入した。経時的に椎間板組織を回収し、組織内のシフェラーゼ遺伝子発現を定量した。ウミシイタケルシフェラーゼを内因性コントロールとして、ホタルルシフェラーゼ発現が特異的にどれだけブロックされているかを両者の比を用いて統計学的に検討した(n=7)。Negative controlとして、siRNAを導入しないものと、RNA干渉は引き起こさないが同様の遺伝子内容(配列は異なる)を含むscramble siRNAをコードするplasmidを用いた。結果として、少なくとも2週間まで、in vivoでのRNAiが観察された。椎間板内で内因性に発現しているとされる種々の遺伝子抑制を同様の手技を用いて検討した。まずは我々が正常椎間板に発現しているとして世界に先駆けて報告したFas ligandの発現抑制を試みた。基礎実験として、ラットのFas ligand(FasL)発現を抑制するためにデザインされたsiRNAを用いて、in vitroで培養髄核細胞にこれを導入し、後日FasL発現が抑制されているかどうかをWestern Blottingならびに定量PCR法にて確認した。このsiRNAをplasmidに組み込み、plasmidから産生されたsiRNAでも同様にin vitroでFasL発現が抑制できることを確認した。
KAKENHI-PROJECT-17591570
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DNA複製フォークの修復機構におけるMUS81とRecQの機能の解明
日常生活の中にはDNA複製を阻害する多くの要因が存在し、それに対処するためにDNA複製の修復機構が存在する。本研究はDNA複製の修復機構のメカニズムを解明することを目標として研究を行った。我々は、MUS81-EME1ヌクレアーゼが中断した複製フォークを切断することで2重鎖切断を導入することと、その機能が相同組換えタンパク質(RAD51やRAD54)誘導することでDNA複製の修復が起きていることを明らかにしたが、それに関わる新しい因子としてFBH1を発見し、その機能解析を行った。我々の解析から、FBH1はRAD51の機能を制御することでDNA複製の修復機構に貢献することが明らかになった。平成25年度は、ファンコーニ貧血症患者由来の細胞を用いた解析を行った。MUS81やRecQを中心としたDNA複製フォーク修復機構の活性に関して遺伝子変異細胞を用いて検証した。MUS81の活性に関しては、染色体切断活性の検出を中心とした解析を行った。その他の関連因子(RecQなど)に関しては、免疫蛍光染色法による細胞内局在等の解析を行った。これらの解析を組合わせて、ファンコーニ貧血症の原因遺伝子産物が、DNA複製フォーク修復に関して、どのように貢献しているか検証している。細胞レベルでの知見をより深く理解するために、分子レベル(精製タンパク質レベル)での検証も行った。ファンコーニ貧血症の原因遺伝子の1つであるFANCD2タンパク質を精製して、FANCD2タンパク質が他のDNA修復関連酵素を活性化するか、精製タンパク質を用いて検証した。また、DNA複製の修復に関与するFBH1タンパク質について、デンマークのIan Hicksonのグループとの共同研究で、その生化学的機能を明らかにすることが出来たので、彼らとの共著論文として報告した。また、ダメージを受けたDNA複製フォークの修復に関わる新規の遺伝子を同定するために、染色体不安定性を示す遺伝子疾患を有するヒト患者由来の細胞や、候補遺伝子を人工的に破壊した遺伝子組換えマウスES細胞を入手することに成功した。現在、DNA複製阻害剤を投与してDNA複製フォークにダメージを与えた後、どのような表現型を示すか解析している段階である。DNAダメージにより阻害されたDNA複製を修復するメカニズムを理解することを目標として研究を行っており、MUS81-EME1構造特異的エンドヌクレアーゼとRecQヘリカーゼファミリーの関与について検証を行っている。平成26年度は、関連酵素を精製してその活性の測定を試みた。これまでのところ、候補としてあげていたFANCD2が直接的にMUS81-EME1の活性化に関与している可能性がは低いという結果になっているため、MUS81-EME1の活性化メカニズムを解明するまでに、もう少し時間が必要である。一方、RAD51のユビキチン化がこの修復経路の活性化に必要であることを新規に発見した。この事実は研究計画を作成した際には予想しなかった成果である。今後も、タンパク質レベルでDNA複製の修復機構の解明を行っていく予定である。一方、RecQファミリー遺伝子の機能が正常に作用しないと、早老症や高発癌といった症状を示す遺伝病を引き起こす。この遺伝子ファミリーの産物は、相同組換えを介したDNA複製の修復に関与する可能性が示唆されており、そのような症状を示すヒト遺伝病の患者由来の細胞の原因遺伝子を探索することで、新規のDNA修復因子を発見できる可能性が考えられる。そこで、まず、ウェルナー症候群様の症状を示す患者由来の細胞の責任遺伝子の探索を行い、その解析から既知のDNA修復に関与する遺伝子の変異を発見した。残念ながら、これらはすでにDNA複製の修復に関与していることが知られており、新規性はない。しかし、まだ、変異を同定できていない疾患由来細胞が多数あり、今後も解析を続ける。DNAダメージにより中断したDNA複製フォークの再開始メカニズムを解明することを目標として研究を行っており、特にMUS81-EME1構造特異的エンドヌクレアーゼとRecQヘリカーゼファミリーのDNA複製再開始反応に関わる役割を解明することを目標として研究を行った。今年度の解析で、MUS81-EME1の活性化に関わる因子として以前から関与が指摘されていたDNAヘリカーゼやDNAトランスロケースを中心として、そのメカニズムの解明に関する研究を実施した。関連するタンパク質をバキュロウイルス-昆虫細胞系にて組換えタンパク質を過剰発現させ、そのタンパク質を精製して活性の測定を行った。その結果、幾つかの候補を発見した。現在は、再現性を含め、詳細な検証を行っている。一方、早老症患者からの新規遺伝子の単離に関しては、多くの患者由来の細胞から見つかった因子は、BLMやWRM遺伝子変異であったが、1つ新規の候補が見つかった。まだ、その候補遺伝子が早老症や染色体不安定性に関与するか解明していないが、今後はその遺伝子産物の機能解明を目指したい。日常生活の中にはDNA複製を阻害する多くの要因が存在し、それに対処するためにDNA複製の修復機構が存在する。本研究はDNA複製の修復機構のメカニズムを解明することを目標として研究を行った。我々は、MUS81-EME1ヌクレアーゼが中断した複製フォークを切断することで2重鎖切断を導入することと、その機能が相同組換えタンパク質(RAD51やRAD54)誘導することでDNA複製の修復が起きていることを明らかにしたが、それに関わる新しい因子としてFBH1を発見し、その機能解析を行った。我々の解析から、FBH1はRAD51の機能を制御することでDNA複製の修復機構に貢献することが明らかになった。MUS81-EME1の活性化に関する生化学的研究がやや計画より遅れている。
KAKENHI-PROJECT-25710010
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DNA複製フォークの修復機構におけるMUS81とRecQの機能の解明
FBH1タンパク質を介したRAD51のユビキチン化がDNA複製の修復に関与していることを発見したことで、MUS81の活性化メカニズムは当初想定していたものと異なる可能性が生じたため、作業仮説を見直したためである。この点を考慮して、今後も慎重に研究を進めていき、来年度には論文として発表したい。一方、MUS81やRecQとは異なる新規のDNA複製修復因子を同定するという目標に対して、FBH1を介した修復経路を発見することに成功したので、研究計画書に示す最終目標の1つを平成26年度内に達成することに成功した。この部分に関しては前向きに評価をしてもいいと思っている。一方、ヒト遺伝病の患者由来の細胞から新規のDNA複製の修復因子を発見するという目標に関して、2つの遺伝子の同定に成功した。1つはMUS81と非常に近い機能を持つ酵素であり、その酵素の精製も既に終了した。今後は、その活性評価を行う予定である。今後の計画としては、疾患遺伝子の特定とその遺伝子産物の生化学的機能解析を行って、その解析結果を基に論文として発表できるようにする予定である。以上の点から、MUS81-EME1の生化学的解析が遅れていることがマイナス要素はあるが、新規の因子を発見できたプラス要素もあることから、概ね順調に進展していると考えている。27年度が最終年度であるため、記入しない。腫瘍生物学まず、遅れているMUS81-EME1の生化学的解析を終了させる。すでに関連酵素の精製は終わっており、あとは活性を測定するだけであるが、当初想定していたメカニズムと異なる可能性を見出したので、現在、慎重に検証を行っている。平成27年度内には終了できる見込みなので、まず、その解析を終了させる。さらに、これをサポートする細胞生物学的な検証を行い、細胞生物学と生化学を組み合わせた論文として仕上げる予定である。また、さらに多くの因子を発見するために、中断したDNA複製フォークの構造であるY型構造やX型構造の合成オリゴヌクレオチドを作成して、ヒト細胞抽出液から、これらの構造に特異的に結合するタンパク質を同定し、そのタンパク質がDNA複製の修復に関与しているか検証するという点を新しく追加し、検証したい。一方、ヒト遺伝病患者由来の細胞の解析からは、これまでにウェルナー症候様の細胞から2種類、他の疾患から1種類の遺伝子の同定に成功している。まず、これらの性質を細胞生物学的に解析し、報告したい。さらに、変異が未同定の患者由来細胞に関して解析を進め、新規のDNA修復関連遺伝子を発見したい。平成25年度は、まずファンコーニ貧血症患者由来の細胞を用いて、その原因遺伝子産物がDNA修復にどのように関与するか明らかにすることを目標としていたので、その部分に関してはおおむね順調に研究が進んでいる。また、その研究から、当初想定していなかった新規の因子を数種類発見したことから、それらの機能に関しても解析を行うことにした。
KAKENHI-PROJECT-25710010
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ベクトル場の分岐とそれに伴うカオスの発生の研究
本研究ではベクトル場の分岐によるカオスの発生の研究について以下のような成果が得られた.(1)前年度からの研究を引き継いで,ベクトル場の退化特異性からのLorenz型のカオス的アトラクタの発生の研究に一応の完成をみた.これはF. Dumortier, H. Okaとの共著論文として学術雑誌Ergodic Theory and Dynamical Systemsに掲載された.orbit-flipと呼ばれる余次元2のホモクリック軌道の倍分岐が無限回引き続いて起こるような大域的分岐現象を,ある種の区分線型ベクトル場を数学的・数値的に調べることにより見出した.これは周期軌道の周期倍分岐に関するFeigenbaum現象と類似のものであり,カオスに至る新しいシナリオと考えられる.しかし周期倍分岐の場合と異なり,無限回のホモクリニック倍分岐の集積に関するスケール則は,対応する平衡点の固有値に強く依存している.またベクトル場における分岐を数学的に理解するために1次元写像に還元し,その解析も行った.この結果はM. Komuro, H. Okaとの共著論文として学術雑誌International Journal of Bifurcations and Chaosに掲載が決定している.(3)上で述べたホモクリニック倍分岐の集積は完全に大域的な分岐であるためその数学的解析は容易ではないが,状況を余次元3のより退化したホモクリニック軌道の分岐として捉え直すことにより,その少なくともある部分は解析しやすくなると期待される.このような考えに基づいてV. Naudotと共にある種の余次元3のホモクリニック軌道の分岐を解析し,ホモクリニック倍分岐を起こすような余次元2のホモクリニック軌道が余次元3の退化したホモクリニック軌道から無限個分岐することを示した.このことは無限回のホモクリニック倍分岐の集積を直接示したものではないが,それを強く示唆した結果であるといえる.この結果についての論文は学術雑誌Journal of Dynamics and Differential Equationsに投稿中である.本研究ではベクトル場の分岐によるカオスの発生の研究について以下のような成果が得られた.(1)前年度からの研究を引き継いで,ベクトル場の退化特異性からのLorenz型のカオス的アトラクタの発生の研究に一応の完成をみた.これはF. Dumortier, H. Okaとの共著論文として学術雑誌Ergodic Theory and Dynamical Systemsに掲載された.orbit-flipと呼ばれる余次元2のホモクリック軌道の倍分岐が無限回引き続いて起こるような大域的分岐現象を,ある種の区分線型ベクトル場を数学的・数値的に調べることにより見出した.これは周期軌道の周期倍分岐に関するFeigenbaum現象と類似のものであり,カオスに至る新しいシナリオと考えられる.しかし周期倍分岐の場合と異なり,無限回のホモクリニック倍分岐の集積に関するスケール則は,対応する平衡点の固有値に強く依存している.またベクトル場における分岐を数学的に理解するために1次元写像に還元し,その解析も行った.この結果はM. Komuro, H. Okaとの共著論文として学術雑誌International Journal of Bifurcations and Chaosに掲載が決定している.(3)上で述べたホモクリニック倍分岐の集積は完全に大域的な分岐であるためその数学的解析は容易ではないが,状況を余次元3のより退化したホモクリニック軌道の分岐として捉え直すことにより,その少なくともある部分は解析しやすくなると期待される.このような考えに基づいてV. Naudotと共にある種の余次元3のホモクリニック軌道の分岐を解析し,ホモクリニック倍分岐を起こすような余次元2のホモクリニック軌道が余次元3の退化したホモクリニック軌道から無限個分岐することを示した.このことは無限回のホモクリニック倍分岐の集積を直接示したものではないが,それを強く示唆した結果であるといえる.この結果についての論文は学術雑誌Journal of Dynamics and Differential Equationsに投稿中である.
KAKENHI-PROJECT-07740150
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グルタミン酸トランスポーター機能異常によるてんかん発症機序の解析
てんかん発作は、焦点性発作(部分発作)と全般性発作に大別され、各々の発作発現機構は異なると考えられている。焦点性発作の発現機序には、興奮性および抑制性神経系のバランス異常が重要な役割を果たしている。グルタミン酸トランスポーターは、哺乳類中枢神経系において主要な興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸を細胞外から取り除き、興奮性および抑制性神経系のバランス維持に重要な役割を果たしている。本研究では、脳に存在する4種類のグルタミン酸トランスポーター(GLT1,GLAST,EAAC1,EAAT4)欠損マウスを用い、各サブタイプのてんかん発作発生における役割を解析した。GLT1欠損マウスは、致死性の自発てんかん発作により、12週齢までに約80%が死亡してしまう。てんかんの発作パターンはNMDAを皮下注した時に観察される発作と類似しており、突然ケージの中を走り回り反弓緊張様姿勢をとり、パタッと死んでしまう。GLAST欠損マウスは、GLT1欠損マウスと違い、自発てんかん発作は認められなかった。しかし、GLAST欠損マウスに焦点性発作の二次性全般化発作の実験モデルである扁桃核キンドリングを適応し解析した結果、GLASTがてんかん焦点の形成には関与していないが、発作の二次性全般化には重要であることがわかった。さらに、GLAST欠損マウスではPTZ誘発性てんかんに対する感受性が亢進しており、GLASTの機能異常は、自発性てんかん発作を起こすことはないが、一次性および二次性の全般性発作に対する感受性を亢進させることが明らかになった。EAAC1,EAAT4欠損マウスでは、自発性てんかん発作・PTZ誘発性てんかんに対する感受性の亢進は、認められなかった。以上の解析から、グリア細胞に存在するGLT1,GLASTがてんかん発作の発現、部分発作の二次性全般化に重要な役割を果たしていることがわかった。てんかん発作は、焦点性発作(部分発作)と全般性発作に大別され、各々の発作発現機構は異なると考えられている。焦点性発作の発現機序には、興奮性および抑制性神経系のバランス異常が重要な役割を果たしている。グルタミン酸トランスポーターは、哺乳類中枢神経系において主要な興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸を細胞外から取り除き、興奮性および抑制性神経系のバランス維持に重要な役割を果たしている。本研究では、脳に存在する4種類のグルタミン酸トランスポーター(GLT1,GLAST,EAAC1,EAAT4)欠損マウスを用い、各サブタイプのてんかん発作発生における役割を解析した。GLT1欠損マウスは、致死性の自発てんかん発作により、12週齢までに約80%が死亡してしまう。てんかんの発作パターンはNMDAを皮下注した時に観察される発作と類似しており、突然ケージの中を走り回り反弓緊張様姿勢をとり、パタッと死んでしまう。GLAST欠損マウスは、GLT1欠損マウスと違い、自発てんかん発作は認められなかった。しかし、GLAST欠損マウスに焦点性発作の二次性全般化発作の実験モデルである扁桃核キンドリングを適応し解析した結果、GLASTがてんかん焦点の形成には関与していないが、発作の二次性全般化には重要であることがわかった。さらに、GLAST欠損マウスではPTZ誘発性てんかんに対する感受性が亢進しており、GLASTの機能異常は、自発性てんかん発作を起こすことはないが、一次性および二次性の全般性発作に対する感受性を亢進させることが明らかになった。EAAC1,EAAT4欠損マウスでは、自発性てんかん発作・PTZ誘発性てんかんに対する感受性の亢進は、認められなかった。以上の解析から、グリア細胞に存在するGLT1,GLASTがてんかん発作の発現、部分発作の二次性全般化に重要な役割を果たしていることがわかった。研究成果ダリア型グルタミン酸トランスポーターGLTl,GLASTを欠損したマウスを作成し、その生理学的・病態生理学的役割を解析した。GLTl(大脳・海馬のグリア細胞に多量に存在するタイプ)欠損マウスは生後3週齢頃から致死性のてんかん発作を示し、12週齢頃までに80%が死亡した。てんかん発作の行動パターンは、NMDAを皮下注した時に起きる発作パターンと類似しており、突然すごい勢いで走り回り反弓緊張様姿勢をとり死亡する。GLTl欠損マウスではシナプス間隙でのグルタミン酸のクリアランスが障害されており、NMDA受容体による興奮性シナプス後電流(EPSC)の成分が増大していた。これらが、GLTl欠損マウスで見られるてんかん発作の原因の一部だと考えられる。また、ペンチレンテトラゾールにより誘発されるてんかん発作の閾値が減少していた。GLAST(小脳のバーグマングリアに大量に存在するタイプ)欠損マウスでは、登状線維のプルキンエ細胞多重支配による軽度の運動障害と視細胞-双極細胞間シナプス伝達障害による視覚障害が認められた。しかし、GLTl欠損マウスで観察されるような自発性のてんかん発作は観察されなかった。GLAST欠損マウスでもペンチレンテトラゾールにより誘発されるてんかん発作の閾値が減少していた。また、カイニン酸注入によりてんかん発作を誘発させるとGLASTの転写が増強されることを見つけた。以上の結果は、重篤なてんかん発作の原因の一つとしてGLTlの機能異常が、軽度なてんかん発作の原因の一つとしてGLASTの機能異常が考えられることを示している。今年度はてんかん発作におけるグリア型グルタミン酸トランスポーターGLASTの役割を中心に解析した。GLAST欠損マウスは、GLT1欠損マウスと違い、自発てんかん発作は認められなかった。
KAKENHI-PROJECT-10480221
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10480221
グルタミン酸トランスポーター機能異常によるてんかん発症機序の解析
そこで我々は、GLAST欠損マウスの実験てんかんモデルに対する感受性を調べた。焦点性発作の二次性全般化発作の実験モデルとして、扁桃核キンドリング、全般性発作の実験モデルとして、PTZ誘発性てんかんモデルを用いた。扁桃核キンドリングは、マウス脳の扁桃核に、慢性深部電極を通して微弱な電気刺激を加えて後発射を反復して誘発することによって形成される。初期には、刺激脳部位に特異的な部分発作のみが出現するが、刺激の反復につれて安定した二次性全般化発作が出現する。キンドリングモデルを作成する時の最初の電気刺激の後発射閾値・後発射持続時間およびキンドリングが完成するまでに必要な電気刺激の回数は、欠損マウスと野生型で差はなかった。また、二次性全般化発作出現時の後発射持続時間・潜時も、野生型と差はなかった。しかし、二次性全般化発作の持続時間が、欠損マウスで優位に延長していた。これらの結果は、GLASTがてんかん焦点の形成には関与していないが、発作の二次性全般化に重要な役割を果たしていることを示している。さらに、GLAST欠損マウスではPTZ誘発性てんかんに対する感受性が亢進しており、PTZ注入により起こるてんかんの重症度が悪化し、発作発生までの潜時が短くなっていた。以上の結果から、GLASTの機能異常は、自発性てんかん発作を起こすことはないが、一次性および二次性の全般性発作に対する感受性を亢進させる。今年度は、てんかん発作におけるグリア型グルタミン酸トランスポーターGLT1、神経型グルタミン酸トランスポーターEAAT4の役割を中心に解析した。1)GLT1欠損マウス、致死性の自発てんかん発作により、12週齢までに約80%が死亡してしまう。てんかんの発作パターンはNMDAを皮下注した時に観察される発作と類似しており、突然ケージの中を走り回り反弓緊張様姿勢をとり、パタッと死んでしまう。この致死性てんかん発作の発生機序を解析するため、海馬スライス標本を用いて、グルタミン酸シナプス伝達を電気生理学的に調べた。海馬のCA1錐体細胞で記録されるシェーファー側枝による興奮性シナプス後電流(EPSC)には、AMPA受容体を介するEPSCとNMDA受容体を介するEPSCの2種類がある。各々の成分の時間経過を欠損マウスで調べたところ、野生型と差はなかった。また、EPSCのNMDA受容体を介する成分とAMPA受容体を介する成分の振幅の比を調べると、野生型に比べ欠損マウスではNMDA受容体を介する成分が増大していた。さらにGLT1欠損マウスでは、静止時細胞外グルタミン酸濃度が上昇しており、長期抑制は正常であるが、長期増強が起こりにくくなっていることがわかった。以上のことから、GLT1欠損マウス海馬のグルタミン酸作動性シナプスにおいて、EPSCのカイネティクスに変化はないが、シナプス間隙からのグルタミン酸除去能が低下しており、静止時細胞外グルタミン酸濃度が上昇し、EPSCのNMDA成分が増大・長期増強の誘導阻害が起こっていることがわかった。これらのシナプス伝達異常が、どのように致死性・自発性てんかん発作
KAKENHI-PROJECT-10480221
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10480221
発電機能を有する液晶流体軸受けの開発
液晶を利用した発電可能な軸受けの開発のための基礎研究として,ネマティック液晶の二重円筒間せん断流れの実験及び数値解析を行った.本研究では,内円筒が回転することによる液晶流動によって誘起される内外円筒間の巨視的分極の計測に成功した.また,実験および数値解析結果より,流動中の液晶分子配向分布に線状の不規則な組織が現れるため,内外円筒間に誘起される分極値が不規則となることを明らかにした.さらに,内円筒の回転速度が大きいほど線状組織の空間密度が大きくなる.従来の研究成果において,液晶を流動させることにより液晶分子の配向場に歪を発生させ,液晶材料に巨視的な分極を発生させることが可能であることを見出した.本研究では,流動条件による液晶分極値の制御方法の最適化と液晶発電デバイスのプロトタイプの作成を通して,これまでにない全く新しい液晶デバイスを世に送り出すことを目的とする.液晶発電デバイスの最終形態として,発電機能を付与した液晶流体軸受けの開発を計画しており,昨今のエネルギー事情も鑑みて,実現の暁には広範囲な用途が期待できる.本研究計画全体を通して,液晶発電システムの実用化にターゲットを絞って研究を行う.具体的には,回転軸の軸受けに液晶材料を用いた潤滑と発電を同時もしくは切り換えて行えるようなデバイスの開発を最終目的とする.その第一段階として,平成24年度はまず,2重円筒間液晶せん断流れのシミュレータの開発およびデータの収集を行った.得られた結果より,2重円筒間の液晶圧電効果の時間および空間スケールの解明を行い,実験装置の設計指針を得た.その後,2重円筒間液晶せん断流れ実験装置の設計および流路部分の試作を行った.平成25年度は,上述の実験装置全体を完成させ,2重円筒の内筒を回転させることによって液晶にせん断流れを与えた.さらに,液晶が流動しているときの内外円筒間の電圧を測定することによって,流動による液晶に生じる巨視的分極の実測に成功した.液晶を利用した発電可能な軸受けの開発のための基礎研究として,ネマティック液晶の二重円筒間せん断流れの実験及び数値解析を行った.本研究では,内円筒が回転することによる液晶流動によって誘起される内外円筒間の巨視的分極の計測に成功した.また,実験および数値解析結果より,流動中の液晶分子配向分布に線状の不規則な組織が現れるため,内外円筒間に誘起される分極値が不規則となることを明らかにした.さらに,内円筒の回転速度が大きいほど線状組織の空間密度が大きくなる.従来の研究成果において,液晶を流動させることにより液晶分子の配向場に歪を発生させ,液晶材料に巨視的な分極を発生させることが可能であることを見出した.本研究では,流動条件による液晶分極値の制御方法の最適化と液晶発電デバイスのプロトタイプの作成を通して,これまでにない全く新しい液晶デバイスを世に送り出すことを目的とする.液晶発電デバイスの最終形態として,発電機能を付与した液晶流体軸受けの開発を計画しており,昨今のエネルギー事情も鑑みて,実現の暁には広範囲な用途が期待できる.本研究計画全体を通して,液晶発電システムの実用化にターゲットを絞って研究を行う.具体的には,回転軸の軸受けに液晶材料を用いた潤滑と発電を同時もしくは切り換えて行えるようなデバイスの開発を最終目的とする.その第一段階として,平成24年度はまず,2重円筒間液晶せん断流れのシミュレータの開発およびデータの収集を行った.得られた結果より,2重円筒間の液晶圧電効果の時間および空間スケールの解明を行い,実験装置の設計指針を得た.その後,2重円筒間液晶せん断流れ実験装置の設計および流路部分の試作を行った.この実験装置を用いて,平成25年度以降の研究を行う.従来の研究成果において,液晶を流動させることにより液晶分子の配向場に歪を発生させ,液晶材料に巨視的な分極を発生させることが可能であることを見出した.本研究では,流動条件による液晶分極値の制御方法の最適化と液晶発電デバイスのプロトタイプの作成を通して,これまでにない全く新しい液晶デバイスを世に送り出すことを目的とする.液晶発電デバイスの最終形態として,発電機能を付与した液晶流体軸受けの開発を計画しており,昨今のエネルギー事情も鑑みて,実現の暁には広範囲な用途が期待できる.本研究計画全体を通して,液晶発電システムの実用化にターゲットを絞って研究を行う.具体的には,回転軸の軸受けに液晶材料を用いた潤滑と発電を同時もしくは切り換えて行えるようなデバイスの開発を最終目的とする.その第一段階として,平成24年度はまず,2重円筒間液晶せん断流れのシミュレータの開発およびデータの収集を行った.得られた結果より,2重円筒間の液晶圧電効果の時間および空間スケールの解明を行い,実験装置の設計指針を得た.その後,2重円筒間液晶せん断流れ実験装置の設計および流路部分の試作を行った.平成25年度は,上述の実験装置全体を完成させ,2重円筒の内筒を回転させることによって液晶にせん断流れを与えた.さらに,液晶が流動しているときの内外円筒間の電圧を測定することによって,流動による液晶に生じる巨視的分極の実測に成功した.平成26年度は,前年の実験をさらに発展させ,実際の軸受けを想定し,軸の回転速度に対する分極電圧の精密測定を行い,約40mVの最大電圧が得られることを明らかにした.さらに,軸の回転速度が0.2rpmで最大電圧が得られるという液晶発電デバイス特性を明らかにした.
KAKENHI-PROJECT-24560205
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24560205
発電機能を有する液晶流体軸受けの開発
流体工学初年度はLeslie-Ericksen理論を用いた2重円筒間液晶せん断流れのシミュレータの開発を行い,液晶材料の物性値,2重円筒形状(円筒曲率および円筒間隔),せん断速度および円筒壁面における液晶分子の配向処理強度をパラメータとして,平行平板間せん断流れによる巨視的分極についての数値シミュレーションを行った.また,シミュレーション結果を基にして,実験装置および液晶材料の仕様の設計および2重円筒間液晶せん断流動発生装置の試作を行った.試作した2重円筒間液晶せん断流動発生装置を用いて,液晶流動実験及び巨視的分極値の計測を行ってみたところ,円筒を回転させるのに用いたモータや円筒の保持に用いたベアリングの摩擦等により,電気的ノイズが発生してしまい,本来の液晶による分極値が計測できないことが明らかとなった.そこで,本年度は,実験装置のノイズ対策を徹底して行うとともに,実験データからノイズを差し引けるように,実験装置の改良を行うことから始めた.すなわち,液晶を充填した2重円筒と空の2重円筒の同時計測を行い,電圧の差分を求めることで,液晶が発生する巨視的分極値の測定に成功した.しかし,実験装置の改良に時間を費やしてしまったため,液晶材料の違いによる発電特性および潤滑特性の解明には至らなかった.当初の計画通り,Leslie-Ericksen理論を用いた2重円筒間液晶せん断流れのシミュレータの開発を行い,液晶材料の物性値,2重円筒形状(円筒曲率および円筒間隔),せん断速度および円筒壁面における液晶分子の配向処理強度をパラメータとして,平行平板間せん断流れによる巨視的分極についての数値シミュレーションを行った.また,シミュレータには,GPU(Graphics Processing Unit)を用いた並列計算プログラムを用い,演算に要する時間の大幅な軽減に成功した.また,シミュレーション結果を基にして,実験装置および液晶材料の仕様の設計および2重円筒間液晶せん断流動発生装置の試作を行った.試作した2重円筒間液晶せん断流動発生装置を用いて,液晶流動実験及び巨視的分極値の計測を行ってみたところ,円筒を回転させるのに用いたモータや円筒の保持に用いたベアリングの摩擦等により,電気的ノイズが発生してしまい,本来の液晶による分極値が計測できないことが明らかとなった.25年度の成果により,2重円筒間液晶流動装置が完成し,実際に巨視的分極値の測定に成功した.しかし,これまでに2種類の液晶材料についてのみの実験しか行えていない.そこで,液晶材料の違いが巨視的分極値の関係に及ぼす影響を明らかにする.この実験結果と初年度に開発したシミュレータの計算結果を総合して液晶材料の発電特性および潤滑特性を最適にする利用条件(軸受け形状,流動条件,温度条件,液晶材料の物性)の同定を行う.その後,発電機能を有する液晶流体軸受けの設計および試作を行い,その性能評価を行う予定である.24年度の研究成果より,実験装置における電気的ノイズの問題が明らかとなったため,25年度は実験装置のノイズ対策から行う.具体的には,円筒を駆動するためのモータをファラデーケージで遮蔽すること考えているが,場合によっては,装置全体の見直しも視野に入れる必要がある.装置の完成後は,当初の計画通り,先ずは2重円筒間液晶せん断流れデータ収集を行う.
KAKENHI-PROJECT-24560205
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ラマン分光法によるAlzheimer病凝集タンパク質の定量的測定技術の開発
1.ラマン分光法を用いた振動スペクトル測定装置の構築(i).レーザー光源安定性の向上:本研究では、レーザーラマン分光顕微鏡の光源として、ECDL(external cavity diode laser)モジュールを自作し、レーザー発振を安定化させるために必要な定電流ドライバおよびレーザーダイオード温度コントローラを自作した。レーザーダイオード(LD)の温度を一定に保つことで、ラマンスペクトル測定の際の測定基準となる光源波長を固定することが可能である。今年度は温度安定化のためのPID制御機構を達成するマイコンプログラムの改良を進めており、±0.3°CであったLDの温度変動を±0.12°C程度まで安定化できるようになった。(ii).レーザーラマン分光顕微鏡の製作:可視光用の冷却CMOSを用いた昨年度までの検出系では、微量な生体サンプル・薄い病理切片の観測には測定感度が十分でないことが判明し、近赤外用の冷却CCDを新たに導入し、市販のレーザーラマン分光顕微鏡とほぼ同等のS/N比での測定が可能となりつつある。2.組織中での振動スペクトル測定技術の開発:ヒト剖検脳中での老人斑の振動スペクトル取得のためには、非染色試料で振動スペクトル画像取得後、免疫染色を行い老人斑を同定し、老人斑のある画素での振動スペクトルを同定する。振動スペクトル測定と免疫染色画像の撮影の間に、免疫染色操作が入るため、二つの測定を同じタイミングで連続して行うことはできない。この解決のためには、先に振動スペクトル測定した部位と同じ標本上の場所を、免疫染色後に定位するための位置あわせ技術が必要になる。本研究では、明視野画像から自動で検出した細胞の輪郭を免疫染色前後で比較し、互いにsuperimposeすることで、免疫染色後にはじめて確認できる老人斑の位置を、振動スペクトル画像上で特定する画像処理プログラムを製作した。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。1.指紋領域振動スペクトル測定系の開発:自作の自発ラマン散乱顕微鏡を製作した.488nmの連続波レーザーを対物レンズで試料に集光し,試料からの反射光からdichroic mirrorとlong pass filterを用いて光源波長を除去したのちに,分光器で散乱光のスペクトルを観測する.試料は自動XYステージの上に載せ,ラスタースキャンによる画像取得ができるようにした.488nm光源波長を用いた測定系のスペクトルはまだS/N比が悪く,測定感度を上げるために,光源レーザーのパワーを上げる改造や,フィルターの特性を最適化する作業を行っている.2.凝集タンパク質の振動スペクトル測定とデータベースの構築:in vitroでアミロイドβ42ペプチド(Aβ42)をincubationすることによりアミロイドβ凝集体を生成する系を新たに立ち上げた.このin vitroで生成したアミロイドβ凝集体について自発ラマン顕微分光装置を用いた振動スペクトル測定を行った.その結果,アミロイドβ凝集体が特徴的なスペクトル波形によって二種類に分類できることや,凝集体内の特定部位にのみ局在する分子振動の存在を発見した.これはアミロイドβ凝集体内部の化学結合組成に空間的な不均質性が存在することを示しており,従来,概念的に一通りの存在として扱われてきたタンパク質凝集体が,実際には複数の状態の間を遷移するダイナミックな存在である可能性を示唆している.ここで測定した振動スペクトルに認められるラマンシフトは,理論的にはアミロイドβタンパク質の分子内の化学結合に一対一対応するはずである.測定したラマンシフトに対応する化学結合および分子振動を推定するには,量子化学計算を用いた振動解析を行う必要がある.そこで,市販の量子化学計算パッケージであるGaussianを組み込んだラマンスペクトルの理論予測ソフトウェアをPython言語およびC言語を用いて自作した.1.振動スペクトル測定装置の構築:分光装置の光源として、新たに785nmのECDL(external cavity diode laser)モジュールを自作した。また、レーザー発振を安定化させるために必要な定電流ドライバおよび温度コントローラを自作した。製作したECDL光源を顕微鏡に組み込み、レーザーラマン分光顕微鏡を製作した。光源から出た連続波レーザーを対物レンズでサンプルに集光した後、フィルターで光源波長をカット、長波長側のラマン散乱光のみを冷却CMOS付分光器に導き、ラマンスペクトルを測定する。2.アルツハイマー病剖検脳の振動スペクトル測定系の構築:アルツハイマー病剖検脳の凍結切片を抗アミロイドβマウスモノクローナル抗体で免疫染色し、染色性を認めた部位(老人斑)での振動スペクトル測定系を構築した。in vitroのAβ凝集体で特徴的だった1449cm-1, 1656cm-1のピークは剖検脳中の老人斑では目立たなかった。抗Aβ抗体で染色性を認める老人斑と、染色性を認めない脳組織のスペクトルの比較からは、1473cm-1のピーク(点線矢印)が老人斑に特徴的な可能性が考えられた。3.組織中での振動スペクトル測定技術の開発:測定した免疫染色試料上の老人斑の振動スペクトルは、in vitroのAβ凝集体のスペクトルと異なる。この原因として、免疫染色後の試料の自家蛍光が、相対的に弱いラマン散乱光のスペクトル構造の観測を困難にしている可能性が考えられた。この可能性を排除するためには、非染色試料の振動スペクトル測定後に免疫染色を行い、老人斑のある画素でのスペクトルを確認する必要がある。現在、染色操作前後に標本上の同じ場所を定位するための位置あわせの画像処理プログラムを製作している。
KAKENHI-PROJECT-13J06016
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ラマン分光法によるAlzheimer病凝集タンパク質の定量的測定技術の開発
4.培養細胞でのアミロイドβ凝集系の構築:高濃度Matrigelを用いて間質の拡散係数を下げ、培養細胞にアミロイド凝集体を作らせる系の構築を進めている。1.ラマン分光法を用いた振動スペクトル測定装置の構築(i).レーザー光源安定性の向上:本研究では、レーザーラマン分光顕微鏡の光源として、ECDL(external cavity diode laser)モジュールを自作し、レーザー発振を安定化させるために必要な定電流ドライバおよびレーザーダイオード温度コントローラを自作した。レーザーダイオード(LD)の温度を一定に保つことで、ラマンスペクトル測定の際の測定基準となる光源波長を固定することが可能である。今年度は温度安定化のためのPID制御機構を達成するマイコンプログラムの改良を進めており、±0.3°CであったLDの温度変動を±0.12°C程度まで安定化できるようになった。(ii).レーザーラマン分光顕微鏡の製作:可視光用の冷却CMOSを用いた昨年度までの検出系では、微量な生体サンプル・薄い病理切片の観測には測定感度が十分でないことが判明し、近赤外用の冷却CCDを新たに導入し、市販のレーザーラマン分光顕微鏡とほぼ同等のS/N比での測定が可能となりつつある。2.組織中での振動スペクトル測定技術の開発:ヒト剖検脳中での老人斑の振動スペクトル取得のためには、非染色試料で振動スペクトル画像取得後、免疫染色を行い老人斑を同定し、老人斑のある画素での振動スペクトルを同定する。振動スペクトル測定と免疫染色画像の撮影の間に、免疫染色操作が入るため、二つの測定を同じタイミングで連続して行うことはできない。この解決のためには、先に振動スペクトル測定した部位と同じ標本上の場所を、免疫染色後に定位するための位置あわせ技術が必要になる。本研究では、明視野画像から自動で検出した細胞の輪郭を免疫染色前後で比較し、互いにsuperimposeすることで、免疫染色後にはじめて確認できる老人斑の位置を、振動スペクトル画像上で特定する画像処理プログラムを製作した。アミロイドβのin vitroでのタンパク質凝集体について、非染色・非標識でのラマンスペクトル測定を成功させ、分子特異的な振動スペクトルのデータベースを構築した。新たに測定のための振動スペクトル測定装置開発を並行して進めているが、2014年3月時点では、稼動が少し遅れていた。アルツハイマー病剖検脳の組織中で老人斑の振動スペクトルを測定できる実験系を構築した。また免疫染色試料上の老人斑で、実際に振動スペクトルを測定し、先にin vitroで測定していたアミロイドβ凝集体の振動スペクトルとの比較・考察を行った。本来、振動スペクトル測定は非染色の試料を対象とする。組織中の振動スペクトルの空間分布を測定し、既存の染色方法を用いた標本の染色性との比較を行うためには、染色操作前後で撮影した顕微鏡画像を位置あわせする画像処理技術が必要になる。このためのプログラムも自作し、性能評価を行っている。培養細胞系でアミロイドβ凝集体の振動スペクトル測定を行う系は、構築中である。
KAKENHI-PROJECT-13J06016
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クリニカル・クラークシップでの新たな診療現場指導・評価法導入による教育効果の研究
クリニカル・クラークシップの実習週数を増やした新しいカリキュラムを履修する医学生を対象として、診療現場での新しい指導・評価方法を導入するために、miniCEXや診療手技(採血、縫合・結紮、手術手洗い・清潔手袋装着、心電図記録)の評価表案を作成した。また、日々の実習記録、振り返り、指導医からのフィードバックで構成される実習ログ・ポートフォリオの様式を整え、学外ならびに選択臨床実習から導入した。また、旧カリキュラムでクリニカル・クラークシップの履修を修了した6年次を対象としてアンケート調査を実施し、担当患者数、単独で病歴を聴取した患者数、単独で身体診察した患者数、カルテ記載した患者数、カンファレンスで症例提示した患者数、病状説明に立ち会った患者数等の臨床実習実績、病歴聴取、身体診察、カルテ記載、症例提示、医療手技、診療参加についての自己評価、指導体制・指導状況についての学生の評価、学生の満足度、学生の自由記載意見等のデータを収集した。この結果、2006年度に医療面接、身体診察、カルテ記載、プレゼンテーションで構成される臨床推論課題による臨床実習後OSCEを導入した以降、2011年度までは臨床実習実績は経年的に増加したが、それ以降は減少しており、臨床実習後OSCEの改革によるクリニカル・クラークシップの改善効果には限界があることが示唆された。一方、主成分分析では、学生の満足度を規定する因子として、臨床医として模範的な指導医、適切な指導体制、指導医から適切な指導が抽出され、学生の経験症例数との関係は乏しかった。これらの結果から、クリニカル・クラークシップの評価を臨床実習後OSCE主体ではなく、指導と一体となった診療現場評価を重視する方向へシフトすることが、教育効果の向上に寄与すると考えられた。研究計画に従い、クリニカル・クラークシップにおける診療現場指導・評価表案の作成、実習ログ・ポートフォリオ様式の策定とその導入を実施した。また、旧カリキュラムでクリニカル・クラークシップの履修を修了した6年次を対象としてアンケート調査を実施し、担当患者数、単独で病歴を聴取した患者数、単独で身体診察した患者数、カルテ記載した患者数、カンファレンスで症例提示した患者数、病状説明に立ち会った患者数等の臨床実習実績、病歴聴取、身体診察、カルテ記載、症例提示、医療手技、診療参加についての自己評価、指導体制・指導状況についての学生の評価、学生の満足度、学生の自由記載意見等のデータを収集し、得られたデータを用いて、2006年以降の各項目の経年的変化を明らかにした。さらに、主成分分析等によって、満足度を規定する因子を明らかにした。これらによって、新たな診療現場指導・評価を導入することによって、クリニカル・クラークシップの教育効果が向上する可能性を示すことができ、今後の研究の方向性の適切さを確認できた。これらは、すべて当初の研究計画に基づいて計画通り実施されていることから、現在までの研究の進捗状況については、おおむね順調に進展していると判断した。2019年度は臨床実習週数を増やした新カリキュラムを履修する46年次に対して、miniCEX、実習ログ・ポートフォリオ、指導者との振り返りセッションの導入等の新しい指導・評価方法を本格的に導入する。履修を修了した6年次を対象としては、前年度までに実施した項目に加えて、実習週数の増加や新しい教育手法の導入についての学生による評価を調査項目に追加したアンケート調査を実施する。このデータを用いて、各項目の結果について前年度までとの比較検討を行う。さらに、多変量解析や主成分分析によって、満足度を規定する因子、学修成果を規定する因子を明らかにする。特に実習週数増加や新しい教育手法との関連性について検証を行う。また、自由記載によるテキストデータをもとに質的分析を行うことにより、学生の意見の傾向と特徴を明らかにする。これらによって、新しいカリキュラムや教育手法が、学生の満足度や学修成果に及ぼす影響を明らかにするとともに、これらの問題点や課題を抽出して、その改善策を作成し、次学年の指導・評価方法に新たに導入する。2020年度はクリニカル・クラークシップの週数を増やした新カリキュラムの履修を修了した6年次に対して、同様の履修修了後調査を継続し、前年度までと同様の分析を行うことにより、新たに導入した改善策が、学生の満足度や学修成果に及ぼす影響を明らかにする。これによって、課題の解決策の有効性を明らかにする。クリニカル・クラークシップの実習週数を増やした新しいカリキュラムを履修する医学生を対象として、診療現場での新しい指導・評価方法を導入するために、miniCEXや診療手技(採血、縫合・結紮、手術手洗い・清潔手袋装着、心電図記録)の評価表案を作成した。また、日々の実習記録、振り返り、指導医からのフィードバックで構成される実習ログ・ポートフォリオの様式を整え、学外ならびに選択臨床実習から導入した。また、旧カリキュラムでクリニカル・クラークシップの履修を修了した6年次を対象としてアンケート調査を実施し、担当患者数、単独で病歴を聴取した患者数、単独で身体診察した患者数、カルテ記載した患者数、カンファレンスで症例提示した患者数、病状説明に立ち会った患者数等の臨床実習実績、病歴聴取、身体診察、カルテ記載、症例提示、医療手技、診療参加についての自己評価、指導体制・指導状況についての学生の評価、学生の満足度、学生の自由記載意見等のデータを収集した。この結果、2006年度に医療面接、身体診察、カルテ記載、プレゼンテーションで構成される臨床推論課題による臨床実習後OSCEを導入した以降、2011年度までは臨床実習実績は経年的に増加したが、それ以降は減少しており、臨床実習後OSCEの改革によるクリニカル・クラークシップの改善効果には限界があることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-18K10004
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K10004
クリニカル・クラークシップでの新たな診療現場指導・評価法導入による教育効果の研究
一方、主成分分析では、学生の満足度を規定する因子として、臨床医として模範的な指導医、適切な指導体制、指導医から適切な指導が抽出され、学生の経験症例数との関係は乏しかった。これらの結果から、クリニカル・クラークシップの評価を臨床実習後OSCE主体ではなく、指導と一体となった診療現場評価を重視する方向へシフトすることが、教育効果の向上に寄与すると考えられた。研究計画に従い、クリニカル・クラークシップにおける診療現場指導・評価表案の作成、実習ログ・ポートフォリオ様式の策定とその導入を実施した。また、旧カリキュラムでクリニカル・クラークシップの履修を修了した6年次を対象としてアンケート調査を実施し、担当患者数、単独で病歴を聴取した患者数、単独で身体診察した患者数、カルテ記載した患者数、カンファレンスで症例提示した患者数、病状説明に立ち会った患者数等の臨床実習実績、病歴聴取、身体診察、カルテ記載、症例提示、医療手技、診療参加についての自己評価、指導体制・指導状況についての学生の評価、学生の満足度、学生の自由記載意見等のデータを収集し、得られたデータを用いて、2006年以降の各項目の経年的変化を明らかにした。さらに、主成分分析等によって、満足度を規定する因子を明らかにした。これらによって、新たな診療現場指導・評価を導入することによって、クリニカル・クラークシップの教育効果が向上する可能性を示すことができ、今後の研究の方向性の適切さを確認できた。これらは、すべて当初の研究計画に基づいて計画通り実施されていることから、現在までの研究の進捗状況については、おおむね順調に進展していると判断した。2019年度は臨床実習週数を増やした新カリキュラムを履修する46年次に対して、miniCEX、実習ログ・ポートフォリオ、指導者との振り返りセッションの導入等の新しい指導・評価方法を本格的に導入する。履修を修了した6年次を対象としては、前年度までに実施した項目に加えて、実習週数の増加や新しい教育手法の導入についての学生による評価を調査項目に追加したアンケート調査を実施する。このデータを用いて、各項目の結果について前年度までとの比較検討を行う。さらに、多変量解析や主成分分析によって、満足度を規定する因子、学修成果を規定する因子を明らかにする。特に実習週数増加や新しい教育手法との関連性について検証を行う。また、自由記載によるテキストデータをもとに質的分析を行うことにより、学生の意見の傾向と特徴を明らかにする。これらによって、新しいカリキュラムや教育手法が、学生の満足度や学修成果に及ぼす影響を明らかにするとともに、これらの問題点や課題を抽出して、その改善策を作成し、次学年の指導・評価方法に新たに導入する。2020年度はクリニカル・クラークシップの週数を増やした新カリキュラムの履修を修了した6年次に対して、同様の履修修了後調査を継続し、前年度までと同様の分析を行うことにより、新たに導入した改善策が、学生の満足度や学修成果に及ぼす影響を明らかにする。これによって、課題の解決策の有効性を明らかにする。
KAKENHI-PROJECT-18K10004
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K10004
フグ毒テトロドトキシンの輸送・蓄積に関わる分子機構究明
まず、養殖トラフグにつき、稚魚、成魚、および性成熟が十分に進んだ個体の各組織からトータルタンパク質を抽出し、二次元電気泳動により分離後、抗Tr抗体を用いたウエスタンブロット法による候補タンパク質の選択とTOF-MSによるそれらの構造解析を行った。その結果、Tr群は、一部のアイソフォームで構造に個体差がみられるものの、その発現は成長/成熟段階には依存しないことが示唆された。一方、養殖トラフグ12ヶ月齢魚にテトロドトキシン(TTX)を経口経管投与し、各組織におけるTr群の発現状況をウエスタンブロット法で調べたところ、血漿中にみられるTr群のうち、Tr3と思われるアイソフォームが毒の投与により消失する現象が見出された。本アイソフォームについては、現在TOF-MSによる同定を進めており、今後は当該現象と毒輸送との関連について検討を行う予定である。遺伝子発現については、トラフグを対象として成長段階を比較するためのサンプルを追加し、これまでのサンプルと合わせて比較解析を行うとともに、ゲノム配列も合わせて総合的に解析を行っている。これまでにTr群は成長/成熟段階によらず肝臓のみで発現している可能性が示されているが、それに加えTr群のプロファイルもよく似ていることが示唆された。また、Tr2およびTr3が単一の遺伝子(scaffold_10076もしくはHE591872)にコードされていること、Tr3がコードされていると思われていた遺伝子(scaffold_3348もしくはHE593622)にはTr1-Tr4のいずれにも該当しないアイソフォームがコードされており、転写開始点が複数箇所あることなどもわかってきた。さらに、Tr群がゲノム上の複数箇所でかなり複雑にコードされていることも示唆された。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。各種フグにおけるテトロドトキシン(TTX)結合性タンパク質(PSTBP)アイソフォーム(Tr)群の組成や発現状況を明らかにするため、今年度は、有毒種としてコモンフグ、マフグ、ナシフグを、無毒種としてシロサバフグを用い、まず、RTーPCR法により肝臓における2ドメインタイプのTrの発現状況を調べた。次いで、RT-PCRと3'-RACE法により、各アイソフォームの部分配列を得た後、PSTBPとトラフグTr群の配列を加えて、Clustalで多重配列アライメントを、MEGA6でドメイン単位の系統樹を作成した。その結果、RT-PCR後の電気泳動において、有毒3種から目的サイズのバンドが得られた。これらにつき、部分配列取得後に作成した多重配列アライメントでは、N-グリカン推定結合部位(NXS/T配列)は7カ所において種間で保存されており、トラフグ以外ではさらに12カ所のNXS/T配列を有していた。また、N末端ドメインに比べ、C末端ドメインでアミノ酸の置換が高頻度に起きていた。系統樹は、N末端およびC末端ドメインでそれぞれクレードが構成され、N末端ドメインのクレードでは、トラフグのドメインのみ他種のフグから離れており、糖鎖推定結合部位の数も含めて、トラフグのTr群は他とは若干異なる特徴をもつことが示唆された。ウェスタンブロット法によりタンパク質レベルでの発現状況を調べたところ、Tr群はTakifugu属有毒フグに特異的であるが、その組成は種によって異なること、性成熟に伴って発現するアイソフォームが存在すること、などが示唆された。他方、トラフグ無毒個体に異なる用量でTTXを筋肉内投与し、皮と肝臓へのTTX移行様式を調べたところ、皮への移行率(投与毒量に対する移行毒量の割合)は投与毒量の増加に伴い有意に減少するのに対し、肝臓への移行率は投与毒量によらずほぼ一定であることがわかった。本年度は、数種フグの天然個体について、全長cDNAの網羅的解析を行う予定であったが、次世代シークエンサーの準備が遅れたため、年度末になってようやくトラフグを対象にcDNAライブラリーを作成し、それらの配列を取得することができた。現在その解析を進めている状況にある。今年度は、まず、トラフグTakifugu rubripesの各部位につき、テトロドトキシン(TTX)結合性タンパク質(PSTBP)アイソフォーム(Tr)群等、毒輸送関連遺伝子群の発現量を比較した。トラフグ試料より肝臓、卵巣、筋肉、皮を腑分けし、それぞれの部位から全RNAを抽出してcDNAライブリーの作製を行った。次世代シーケンサによって塩基配列を取得し、得られた配列のアセンブル、アノテーション、発現量の標準化を行い、部位毎で発現量を比較した。その結果、毒輸送関連遺伝子群には多くのアイソフォームが存在していることが明らかになった。また、これらの遺伝子群は特定の部位のみで発現していることが示されるとともに、その発現パターンには、生育段階や性別による違いが見られる可能性も考えられた。一方、部位毎に発現量が大きく異なる遺伝子群も明らかになりつつあり、発現量の再現性や生育段階による発現量の違い等を検証しつつ、今後は毒輸送関連遺伝子群と関係する他の遺伝子についても着目することで、毒輸送の分子機構の解明に繋がることが期待された。一方、天然ヒガンフグTakifugu pardalisにつき、性成熟に伴う体内TTX分布の変化を調査するとともに、同種養殖個体(12ヵ月齢)を用いてTTXと麻痺性貝毒(PST)の投与試験を行った。さらに、それら天然および養殖個体(毒投与および非投与個体)の血漿につき、PSTBPの発現状況を調べた。
KAKENHI-PROJECT-15H04551
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フグ毒テトロドトキシンの輸送・蓄積に関わる分子機構究明
その結果、ヒガンフグは食物からTTXを特異的に吸収し、普段は主に皮に蓄積するが、成熟に伴いTTXは卵巣に輸送・蓄積されるようになること、その際、卵母細胞内の毒の微細分布も次第に変化すること、PSTBPは毒の有無に関わらず構成的に発現していること、などが示された。研究実績の概要に記載のとおり、トラフグを対象に、次世代シーケンサによる全長cDNAの網羅的解析を行うことができた。しかしながら、性成熟が十分に進んだ雌個体を入手することができず、また、タンパク質レベルでの解析も若干遅れているため、成長段階や成熟段階によるTr群の発現プロファイルの相違を明らかにするには至らなかった。まず、成長/成熟段階の異なるトラフグの各部位について、PCRによりTr群遺伝子の発現プロファイルを調べた。その結果、いずれの段階においても、肝臓にのみTr1、Tr2、およびTr3の発現が確認された。次いで、二次元電気泳動によって各部位のトータルタンパク質を分離し、抗Tr抗体を用いたウェイスタンブロット法によりTr群と推定される複数のタンパク質を選択した。これらにつき、現在、TOF-MSによる構造解析とPro-Q Emeraldキットによる糖鎖修飾の解析を並行して進めている。一方、成熟段階の異なるトラフグ試料につき、次世代シーケンサを用いた遺伝子発現解析を引き続き行っている。今回、部位毎にcDNAライブリーを構築して発現遺伝子の同定と定量化を行う従来の方法とともに、転写開始点から確実に配列を解読する新たな方法(CAGE法)による解析も追加して行った。従来の方法では、Trのように類似の配列がタンデムに連結されているような場合に発現量の定量化やアイソフォームの同定が困難であるという欠点があったが、転写開始点からの解析を追加することで、より高精度な発現プロファイルが得られつつある。他方、淡水フグPao suvattiiの人工飼育個体から肝臓、皮、および消化管の組織切片を作成し、テトロドトキシン(TTX)またはサキシトキシン(STX)を含む培地で一定時間培養後、各切片の毒取り込み量を測定した。その結果、いずれの組織もSTXの取り込み量がTTXを上回った。特に消化管ではTTXはほとんど取り込まれず、STX取り込み量との差が最も顕著となった。現在、このような毒選択の分子機構について検討中である。研究実績の概要に記載のとおり、CAGE法とPro-Q Emeraldキットの導入により、より高精度なcDNA発現プロファイの解析や糖鎖修飾の解析が可能となりつつある。しかしながら、依然として性成熟が十分に進んだ雌個体の入手が困難であったことに加え、タンパク質レベルでの解析が遅れているため、成長段階や成熟段階によるTr群発現プロファイルの相違を明らかにするには至っていない。まず、養殖トラフグにつき、稚魚、成魚、および性成熟が十分に進んだ個体の各組織からトータルタンパク質を抽出し、二次元電気泳動により分離後、抗Tr抗体を用いたウエスタンブロット法による候補タンパク質の選択とTOF-MSによるそれらの構造解析を行った。その結果、Tr群は、一部のアイソフォームで構造に個体差がみられるものの、その発現は成長/成熟段階には依存しないことが示唆された。一方、養殖トラフグ12ヶ月齢
KAKENHI-PROJECT-15H04551
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非切断型DNA損傷を契機とする放射線誘発遺伝的不安定性の染色体移入法による解析
電離放射線照射によって引き起こされる様々な影響の中でも、遺伝的不安定性は放射線発がんにも関係すると考えられており、その誘発機構の解明は放射線の生物影響だけでなく発がん過程を解明する上でも重要である。本研究では、遺伝的不安定性の誘発原因の一つとして非切断型のDNA損傷に着目し、その損傷の種類の違いによって誘発される遺伝的不安定性の違いを明らかにする為、染色体や細胞の核型を指標とした解析を行った。電離放射線により誘発される遺伝的不安定性は、放射線の被ばくにおいて深刻な問題である放射線発癌等の長期的な影響に関与するが、その誘発気候は解明されていない。申請者はこれまでに、DNA二重鎖切断(DNA Double-strand breaks;DSBs)修復機構の欠損によって生成する不完全なDSBs修復産物を有する細胞において、遺伝的不安定性の誘発が亢進されたことから、非DSBs型DNA損傷による細胞の不安定化の可能性を調べる為、非DSBs型DNA損傷を細胞に導入した。その結果、非DSBs型DNA損傷の導入は、細胞に対して染色体異常や核型の異常といった遺伝的不安定性が誘発する事を明らかにした。しかし、非DSBs型DNA損傷によって遺伝的不安定性が誘発される事は示されたものの、その誘発過程は未だ不明である。本研究は、癌細胞の悪性度にも県警する染色体の数的な異常である核型異常に着目し、非DSBs型クラスターDNA損傷によって誘発される核型異常の誘発機構解明を目的とする。本研究は、放射線いよる生物影響の中でも、高感度の検出が可能な染色体異常に着目し、非DSBs型クラスターDNA損傷によって遅延性染色体異常の生成及び、細胞分裂制御機構の破綻の解明を目的とする。すなわち、非DSBs型クラスターDNA損傷の細胞への導入により、引き起こされる染色体数の異数化と多倍数体化の誘発機構の解明に重点を置き。染色体の異数体化を起こしている癌細胞との関係を明らかにする事を目指す。そのために、非DSBs型クラスターDNA損傷の残存が核型異常の原因となるのか、あるいは細胞内の修復機構を始めとする各種細胞応答の異常が原因なのかを明らかにし、非DSBs型DNA損傷による細胞分悦制御や細胞周期の制御への影響の詳細を解明する。電離放射線により引き起こされる様々な影響の中でも遺伝的不安定性は放射線の長期的な影響であり、放射線発がんの要因となりうるものである。しかし、その誘発機構の解明は未だなされていない。申請者はこれまでに、DNA二重鎖切断(DNA Double-strand breaks; DSBs)修復機構の欠損した細胞では遺伝的不安定性が高くなることから、DSBs修復欠損により生じる不完全なDSBs修復産物が遺伝的不安定性の因子と成り得ると考えた。そこで、非DSBs型DNA損傷を細胞内に導入することによって、損傷を導入された細胞が不安定性を誘発するかを調べた結果、非DSBs型DNA損傷の導入は細胞に対して核型異常、染色体異常を誘発することを明らかにした。しかし、それら各種異常の誘発機構の全容は未だ不明である。そこで本研究は、がん細胞の悪性度にも関係する染色体の数的な異常である核型異常の非DSBs型クラスターDNA損傷による誘発機構解明を目的とする。UV-Aの照射によって生じさせた非DSBs型DNA損傷は、微小核細胞融合法によって未照射の細胞に移入する。その後、損傷導入細胞を選択的に培養し、核型異常等を調べる。本研究では、導入によって細胞周期にどのような影響を及ぼすのか、すなわち、細胞分裂制御への影響があるのかを調べる。通常、DNA損傷が生じると細胞周期には修復のための遅延等が見られる。そこで核型異常の形成の原因として、細胞分裂の制御に異常が生じるのではないかと考え、非DSBsクラスターDNA損傷の導入が細胞分裂制御へ及ぼす影響を解明する。電離放射線により引き起こされる様々な影響の中でも、遺伝的不安定性は放射線の長期定期な影響であり放射線発がんの要因となりうるものである。しかし、その誘発機構の解明は未だなされていない。申請者は、DNA二重鎖切断(DNA double-strand breaks ; DSBs)修復機構の欠損した細胞では遺伝的不安定性の誘発頻度が高くなることから、DSBs修復欠損により生じる不完全なDSBs修復産物が遺伝的不安定性の因子と成り得ると考えた。そこで、非DSBs型DNA損傷を不完全なDSBs修復産物と想定し、これを細胞内に導入し、損傷を導入された細胞が遺伝的不安定性をを誘発するかを調べた結果、非DSBs型DNA損傷の導入は細胞に対して核型異常、染色体異常を誘発することを明らかにした。しかし、それらの各種異常の誘発機構の全容は未だ不明である。そこで本研究では、がん細胞の悪性度にも関係する染色体の数的な異常である核型異常の非DSBs型クラスターDNA損傷による誘発機構解明を目的とする。UV-Aの照射によって生じさせた非DSBs型DNA損傷は、微小核細胞融合法によって未照射の細胞に導入する。その後、損傷導入細胞を選択的に培養し、核型異常等を調べる。本研究では、導入によって細胞周期にどのような影響を及ぼすのか、すなわち、細胞分裂制御への影響があるのかを調べる。通常、DNA損傷が生じると細胞周期には修復のための遅延等が見られる。そこで、核型異常の形成の原因として、細胞分裂の制御に異常が生じるのではないかと考え、非DSBs型クラスターDNA損傷の導入が細胞分裂制御へ及ぼす影響を解明する。
KAKENHI-PROJECT-25740021
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非切断型DNA損傷を契機とする放射線誘発遺伝的不安定性の染色体移入法による解析
電離放射線照射によって引き起こされる様々な影響の中でも、遺伝的不安定性は放射線発がんにも関係すると考えられており、その誘発機構の解明は放射線の生物影響だけでなく発がん過程を解明する上でも重要である。本研究では、遺伝的不安定性の誘発原因の一つとして非切断型のDNA損傷に着目し、その損傷の種類の違いによって誘発される遺伝的不安定性の違いを明らかにする為、染色体や細胞の核型を指標とした解析を行った。平成26年度は客員研究員として研究活動を行っているものの、研究時間の確保が当初計画していたより少なくなってしまった。また、紫外線照射染色体の移入効率の大幅な低下により、予定していた研究に着手することが出来ず、研究計画に遅れが生じた。放射線生物学平成26年度に行った非DSBs型クラスターDNA損傷の移入では、紫外線の照射線量を増加させることで移入する損傷を増やすことを検討したが、その結果移入効率の大幅な低下を引き起こした。そこで、損傷量を増やすことよりも影響の解析に重点を置き、移入後の細胞の細胞内酸化度の変化、および、細胞分裂時における中心体や紡錘糸形成の異常、移入染色体の細胞内での修復過程におけるDNA切断の生成の有無を調べることとする。また、損傷の移入により移入後の細胞でDNA修復機構が活性化されるかどうかを調べることにより、紫外線照射染色体を導入した細胞が、細胞全体への紫外線照射では見られなかった大きな影響を受けた原因を調べる。平成25年度の途中で前所属研究機関を退職したことにより、現在の所属先に研究拠点を移した。これによって、研究環境等を含む実験結果の再現性の確認等を行う必要が生じた。そのため、当初の研究計画には含まれていなかった研究拠点の移動とそれに伴う再現実験等により、研究計画に遅れが生じた。研究の進捗状況の遅れに伴い、本来当該年度に行う予定であった研究に必要であった物品等の購入を行わなかった為に物品費の残額が生じた。平成25年度に引き続き、非DSBs型クラスターDNA損傷が細胞内環境に及ぼす影響の解析を行う。DNA損傷修復機構の存在が、UV-A照射染色体の移入により誘発される遺伝的不安定性に対して及ぼす影響を調べる。UV-A照射染色体を移入した修復機構欠損細胞に対して、遺伝的不安定性の誘発を調べる。解析は、染色体異常、及び核型の異常を指標として行う。また、非DSBs型クラスターDNA損傷による細胞分裂制御機構への影響を調べる。染色体の増減による異数体化は、細胞分裂時の染色体の不均一な分配、あるいは、多倍数体化した細胞から染色体が欠落して起こるため、染色体の欠落や不均一な分配には、中心体の機能異常や染色体の動原体の異常・不活化による紡錘糸形成異常や、中心体複製異常による多極分配等が関与していると考えられる。そこで、非DSBs型クラスターDNA損傷が細胞分裂の制御機構に及ぼす影響を調べる。解析は、蛍光免疫染色法によって、中心体の複製及びその機能、あるいは紡錘糸の形成等について正常に行われているのかを調べる。当該年度に行うことのできなかった研究に関しては、平成27年度に行うものとする。また、研究計画に大幅な遅れが生じているため、アプローチ方法を大きく見直し、より効率的に行う。所属研究機関が日本原子力研究開発機構から大阪府立大学に移った事に伴い、研究計画に遅れが生じた。
KAKENHI-PROJECT-25740021
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全部材の最大荷重効果を同時に再現するユニバーサルな風荷重分布算定法の開発
変動風力を受ける構造物の全ての部材に生ずる最大荷重効果を,一つの荷重分布で同時に再現するユニバーサルな等価静的風荷重の算定手法について研究した。先ず,大スパン片持ち屋根,高層建築物,ドーム屋根など,種々の建物モデルの多点変動風圧実験を行い,得られた変動風圧力を構造物のFEMモデルに作用させ,時刻歴応答解析によって全部材の最大荷重効果を求めた。ついで,変動風圧力のPOD規準モードおよび特異値分解を用いることによって,時刻歴応答解析で得られた全部材の最大荷重効果と同じ静的荷重効果をもたらすユニバーサルな等価静的風荷重が合理的に算定できることを明らかにした。さらには,様々な構造形式に対応するユニバーサルな等価静的風荷重の算定を行い,影響関数とともにデータベース化するとともに,準静的成分のみならず,最大荷重効果に共振成分をも含む場合に対しても,ユニバーサルな等価静的風荷重の算定が可能であることも示した。大スパン片持ち屋根に関しては,構造モデルの違い,風向角の違い,気流の違いによるユニバーサルな等価静的風荷重分布の変化も検討した。得られたユニバーサルな等価静的風荷重により再現される全部材の最大荷重効果を,従来からのガスト影響係数法や,準静的成分に対するLRC法による結果と比較検討し,どのような条件下においても,ユニバーサルな等価静的風荷重の方が高い精度で真の最大荷重効果を再現できることを示した。なお,ユニバーサルな等価静的風荷重の算定では,最大荷重効果の正負の組み合わせ方は自由であり,場合によっては,非常に不自然な分布が得られることがある。この問題に対しては,各部材の荷重効果の時刻歴波形のPOD解析を行い,その規準座標に基づいて,最大荷重効果の正負の組み合わせを合理的に定める画期的な手法を開発した。変動風力を受ける構造物の全ての部材に生ずる最大荷重効果を,一つの荷重分布で同時に再現するユニバーサルな等価静的風荷重の算定手法について研究した。先ず,大スパン片持ち屋根,高層建築物,ドーム屋根など,種々の建物モデルの多点変動風圧実験を行い,得られた変動風圧力を構造物のFEMモデルに作用させ,時刻歴応答解析によって全部材の最大荷重効果を求めた。ついで,変動風圧力のPOD規準モードおよび特異値分解を用いることによって,時刻歴応答解析で得られた全部材の最大荷重効果と同じ静的荷重効果をもたらすユニバーサルな等価静的風荷重が合理的に算定できることを明らかにした。さらには,様々な構造形式に対応するユニバーサルな等価静的風荷重の算定を行い,影響関数とともにデータベース化するとともに,準静的成分のみならず,最大荷重効果に共振成分をも含む場合に対しても,ユニバーサルな等価静的風荷重の算定が可能であることも示した。大スパン片持ち屋根に関しては,構造モデルの違い,風向角の違い,気流の違いによるユニバーサルな等価静的風荷重分布の変化も検討した。得られたユニバーサルな等価静的風荷重により再現される全部材の最大荷重効果を,従来からのガスト影響係数法や,準静的成分に対するLRC法による結果と比較検討し,どのような条件下においても,ユニバーサルな等価静的風荷重の方が高い精度で真の最大荷重効果を再現できることを示した。なお,ユニバーサルな等価静的風荷重の算定では,最大荷重効果の正負の組み合わせ方は自由であり,場合によっては,非常に不自然な分布が得られることがある。この問題に対しては,各部材の荷重効果の時刻歴波形のPOD解析を行い,その規準座標に基づいて,最大荷重効果の正負の組み合わせを合理的に定める画期的な手法を開発した。・本研究は,全部材の最大荷重効果を同時に再現するユニバーサルな等価静的風荷重分布を算出する手法を提案するものである。データベースとしての汎用性を備えるため,まず,高層建築物および低層建築物に典型的な長方形平面の建物モデルを対象として,アスペクト比や辺長比を変化させた風圧模型を用い,多点同時風圧測定システムにより変動風圧の測定を行った。実験では,東京工芸大学・風工学研究センターに現有するエッフェル型境界層風洞を使用した。実験気流は,郊外および高層建築物の多い地域を想定し,実験風向を変化させて風圧測定を行った。・最大荷重効果の評価方法に関する情報を整理し,極値解析による手法で合理的な最大荷重効果算定法の提案を行った。・いくつかの建物形状の構造パラメータを仮定し,FEMモデルを作成した。ユニバーサルな等価静的風荷重の解析では,影響関数が必要となる。そこで,建物FEMモデルより,軸力,曲げモーメントおよびせん断力などの応力や,変位に関する影響関数を抽出し,影響関数マトリクスのデータベースを構築した。・風洞実験により得られた変動風圧データと,FEMモデルを用い,準静的な時刻歴応答解析を行った。・準静的な最大荷重効果を対象としたユニバーサルな等価静的風荷重は,POD解析による規準座標の線形結合により,最適な近似解として一義的に求め,かつ等価静的風荷重に対する規準座標の寄与率等を検討した。また,合理的な規準座標の組合せの検討のため,POD解析による規準座標のデータベースを構築し,解析の効率化を計った。本研究では,構造物のすべての部材の最大荷重効果を同時に再現するユニバーサルな等価静的風荷重という新しい概念を提案し,その算定手法の開発を行ってきた。平成18年度は,先ず,風洞実験による多点同時風圧データの蓄積を行うとともに,大スパン片持ち屋根を対象として,異なる3つの構造モデルを想定し,ユニバーサルな等価静的風荷重の検証を行なった。
KAKENHI-PROJECT-17360277
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17360277
全部材の最大荷重効果を同時に再現するユニバーサルな風荷重分布算定法の開発
屋根フレームをFEMモデルに置換し,風洞実験により得られた変動風力を作用させ,時刻歴解析によりすべての部材の真の最大応力を求めた。それらの結果をもとに,前年度までに提案された手法を用いて,ユニバーサルな等価静的風荷重を算定した。得られたユニバーサルな等価静的風荷重により再現される荷重効果と,時刻歴解析により求めた真の最大荷重効果を比較した結果,両者は非常に高い相関関係にあることが明らかにされ,種々のケースに対して,その精度の検証がなされた。更に,平成18年度に特に検討したのは,部材の最大荷重効果の正負の組み合わせ方によっては,得られるユニバーサルな等価静的風荷重分布が不自然な分布になる問題である。ユニバーサルな等価静的風荷重の算定では,条件として与える最大荷重効果の組み合わせば自由であり,任意に定めることができ,部材数が増えるに従い最大荷重効果の組み合わせば指数関数的に増加してしまう。これに対して,荷重効果の時刻歴に対してPOD解析を行い,この荷重効果のPOD規準モードに基づいて,最大荷重効果の組み合わせを一義的に決定する方法を考案した。その結果,ユニバーサルな等価静的風荷重として自然な分布が得られることが分かった。最大荷重効果に共振成分を含むケースの取り扱い,ドーム屋根などの種々の構造形態に対するユニバーサルな等価静的風荷重分布の検討などを行った。
KAKENHI-PROJECT-17360277
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地域依存性を考慮した製品ライフサイクルプランニング方法論の研究
途上国で持続可能な消費と生産を実現するには、製品ライフサイクルを通じた環境負荷と製品ユーザの生活の質を設計初期段階で考慮する必要がある。本研究では、人間の基本ニーズと製品開発プロセスを体系的に接続する生活圏アプローチを提案した。本アプローチでは、製品の存在理由と機能・構造を視覚的に表現するバリューグラフと、普遍的な基本ニーズの充足要因とが接続される。次に、製品機能・構造に地域情報を対応付ける拡張機能構造マップを提案し、設計情報可視化システム上に試作実装した。途上国の調査や製品分解、ライフサイクルアセスメントから得た情報を試作システム上で可視化し、その有効性を検証した。1)文献調査:関連研究の把握と,本研究の位置づけ明確化を行った.本研究をテアダウンを核とするリバースエンジニアリングと,現地観察を組み合わせて,設計支援に有効な形で地域制約情報を構造化する研究と位置付けた.特に,関連する既存研究は,適正技術に関するものであり,これについては国内第一人者のヒアリングを実施した.2)現地調査:ベトナムの都市部と農村部で家庭内工業製品の使い方や選定条件などを調査した.その結果,日本製品と比較して実現手段や構造が大きく異なる製品として,炊飯器,洗濯機,電気給湯器を抽出した.そして,それらの製品について,価格差以外の差異にも注目し,地域制約に関する複数の仮説を導いた.それらは,製品属性と,生活の価値観,住居,社会インフラ,気候などの属性との相互関係を意味する.3)テアダウンの実施:当初研究計画では,対象製品の使用環境において関連するすべての人工物を対象にテアダウンする計画だったが,現地調査の結果,これを変更した.すなわち,テアダウン対象は,対象製品のみとした.4)拡張機能構造分析手法の枠組み提案:設計情報としては対象製品を含む関連人工物を対象とし,地域制約を含む設計情報構造化の枠組みを「拡張機能構造分析手法」として提案した.以上がH27年度の成果である.地域特性と製品ライフサイクルの関係性可視化モデルの提案,という最終目標に向けて,これまでのところほぼ計画通りに推移している.一部テアダウンの対象範囲を変更したが,扱う情報の範囲は変えていないので,計画全体への影響は小さいと見積もっている.途上国で持続可能な消費と生産パターンを実現するには、製品ライフサイクルを通じた環境負荷と製品ユーザの生活の質を設計初期段階で考慮する必要がある。本研究では、まず人間の基本ニーズと製品開発プロセスを体系的に接続する生活圏アプローチを提案した。本アプローチでは、製品の存在理由と機能・構造を視覚的に表現するバリューグラフと、普遍的な基本ニーズの充足要因とが接続される。次に、製品機能・構造に地域情報を対応付ける拡張機能構造マップを提案し、設計情報可視化システム上に試作実装した。途上国の現地調査や製品分解情報、ライフサイクルアセスメントから得た情報を試作システム上で可視化して、その有効性を検証した。途上国で持続可能な消費と生産を実現するには、製品ライフサイクルを通じた環境負荷と製品ユーザの生活の質を設計初期段階で考慮する必要がある。本研究では、人間の基本ニーズと製品開発プロセスを体系的に接続する生活圏アプローチを提案した。本アプローチでは、製品の存在理由と機能・構造を視覚的に表現するバリューグラフと、普遍的な基本ニーズの充足要因とが接続される。次に、製品機能・構造に地域情報を対応付ける拡張機能構造マップを提案し、設計情報可視化システム上に試作実装した。途上国の調査や製品分解、ライフサイクルアセスメントから得た情報を試作システム上で可視化し、その有効性を検証した。H27年度で地域制約情報を製品の機能・構造に関係づける情報モデルのコンセプトを拡張機能構造分析手法として固めたので,H28年度は,それを計算機上に実装する.さらに,ライフサイクルオプションに関係する地域制約を抽出し、地域制約とライフサイクルオプションの関係を定量把握するための分析手法を考案する。事例研究を通じて有効性を検証するとともに,既存のライフサイクルプランニング・プロセスに組み込む提案を行う.上記事例研究については、現地関係者に手法開発者とは異なる角度からレビューしていただき、研究をまとめる。また、今後の課題と展望を明らかにして、先進国製品への地域依存性の反映などの発展を目指す.28年度が最終年度であるため、記入しない。ライフサイクル工学28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15H06347
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H06347
日本最初期の点字雑誌「六星の光」の墨訳と戦前の盲人の教育・生活論
本研究は、筑波大学障害学系の研究者と附属視覚特別支援学校の資料室担当教員・同窓会・後援会関係者などの共同研究として進められている。今年度だけで、延べ60人ほどが参加している。作業としては、全盲のアルバイト2名が週に23日原典(点字)のテープ録音を行っていて、全473号(欠本が100号以上ある)のうち340号まで完了した。この中で古い点字の特質などが明らかになり、各地の盲学校成立や当時活躍した盲人の資料等が発見されている。このテープを「日本盲人職能開発センター」および卒業生のグループへ送り、テープ反訳を行っているが、今年度は20号分が反訳された。この後を、月一回の共同の作業日に、全盲と晴眼者の2人一組で何組かに別れ、校正して、一次完成校にする。ここは大変手数がかかるため、約40号分の一次完成であった。人名・地名・鍼灸の用語など難解な漢字への変換が課題になっているので、厳密な完成はもう少し作業が進まないとむずかしい。また、製本されていないものの調査、欠本の調査もあわせて行ってきた。こうした中で、2009年は点字の発明者ルイ・ブライユの生誕200年、および日本点字をつくった石川倉次生誕150年にあたり、各地で記念する点字の歴史展が企画されてきた。「六星の光」は、日本で最初期の点字雑誌であるので、こうした展示へは、本研究の紹介と共に作成した点字の復刻版と墨訳したものを出品して、多くの関心を集めている。今年度は、視覚障害者向けのイベント「サイト・ワールド2008」において、ルイ・ブライユ生誕200年記念の「点字以前と点字の歴史」展を本校の資料を展示して行った。なお、大塚美紀は引き続きルイ・ブライユ関連の資料紹介を準備し、青松利明も「附属視覚特別支援学校研究紀要」に本研究の概要を執筆中である。本研究からの資料提供により、「東奥日報」に青森盲創設者の紹介がなされ、エロシェンコ関係者の研究発表も準備されている。また、墨訳後の出版も検討が進んでいる。本研究は、筑波大学障害学系の研究者と附属視覚特別支援学校の資料室担当教員・同窓会・後援会関係者などの共同研究として進められている。今年度だけで、延べ60人ほどが参加している。作業としては、全盲のアルバイト2名が週に23日原典(点字)のテープ録音を行っていて、全473号(欠本が100号以上ある)のうち340号まで完了した。この中で古い点字の特質などが明らかになり、各地の盲学校成立や当時活躍した盲人の資料等が発見されている。このテープを「日本盲人職能開発センター」および卒業生のグループへ送り、テープ反訳を行っているが、今年度は20号分が反訳された。この後を、月一回の共同の作業日に、全盲と晴眼者の2人一組で何組かに別れ、校正して、一次完成校にする。ここは大変手数がかかるため、約40号分の一次完成であった。人名・地名・鍼灸の用語など難解な漢字への変換が課題になっているので、厳密な完成はもう少し作業が進まないとむずかしい。また、製本されていないものの調査、欠本の調査もあわせて行ってきた。こうした中で、2009年は点字の発明者ルイ・ブライユの生誕200年、および日本点字をつくった石川倉次生誕150年にあたり、各地で記念する点字の歴史展が企画されてきた。「六星の光」は、日本で最初期の点字雑誌であるので、こうした展示へは、本研究の紹介と共に作成した点字の復刻版と墨訳したものを出品して、多くの関心を集めている。今年度は、視覚障害者向けのイベント「サイト・ワールド2008」において、ルイ・ブライユ生誕200年記念の「点字以前と点字の歴史」展を本校の資料を展示して行った。なお、大塚美紀は引き続きルイ・ブライユ関連の資料紹介を準備し、青松利明も「附属視覚特別支援学校研究紀要」に本研究の概要を執筆中である。本研究からの資料提供により、「東奥日報」に青森盲創設者の紹介がなされ、エロシェンコ関係者の研究発表も準備されている。また、墨訳後の出版も検討が進んでいる。
KAKENHI-PROJECT-20910001
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20910001
歯の上皮ー間葉相互作用の人工構築とシグナル伝達のイメージング解析
歯の発生は上皮間葉相互作用により進行するため、由来の異なる2つの細胞をin vitroで長期的に同時に観察できる系が望まれる。本研究はこれを実現するための基礎研究として、歯胚より分離した細胞の未分化性を維持する分子の検索と培養条件の検索を行った。その結果、上皮細胞が発現するFgf9が歯の間葉細胞の増殖に働くと共に間葉側での持続的なFgf10の発現に働くことで細胞の未分化性を維持することが明らかになった。歯の発生は上皮間葉相互作用により進行するため、由来の異なる2つの細胞をin vitroで長期的に同時に観察できる系が望まれる。本研究はこれを実現するための基礎研究として、歯胚より分離した細胞の未分化性を維持する分子の検索と培養条件の検索を行った。その結果、上皮細胞が発現するFgf9が歯の間葉細胞の増殖に働くと共に間葉側での持続的なFgf10の発現に働くことで細胞の未分化性を維持することが明らかになった。平成19年度は切歯の幹細胞の増殖・維持に働く成長因子を検討する為に、マウス切歯の形成端部で発現する成長因子の網羅的解析実験を行った。さらにin vitroにおける歯の上皮系幹細胞と間葉系幹細胞の共培養条件を検討する為に、培養液の最適化条件とコラーゲンを使用した場合の培地と歯の幹細胞の適合性について検討を行った。1.SuperArray社のRT2Profiler PCR Array Sytemの製品の中からMouse Growth factors(PAMM-041C)を使用して解析を行ったところ、これまで報告されているFgf,Bmpシグナルの他、歯での解析が行われていない数種類の分子が侯補として挙げられた。特に発現が高かったFgf9について組織化学的実験を行ったところ、切歯歯胚形成端部の上皮組織に局所的に分布することが見いだされた。さらにFgf9タンパクを加えて培養を行った歯胚ではFgf10の発現が維持されたことから、Fgf9はFgf10とともに幹細胞nicheを構成する分子であることが示唆された。この結果は現在論文にまとめ受理されている。また、近年骨髄などの造血組織において特定のケモカインが幹細胞nicheを構成する為の重要なファクターであることが、CXCL12のトランスジェニックマウスを使用した実験により示されている。同様のケモカインがPCRアレイの結果から歯でも表現しており、重要な機能を持ちうることが考えられたため現在これらの分子についても詳細を検索している。2.コラーゲンを数種類の異なった濃度で培地に加え、間葉細胞をコラーゲンの中で培養し、上皮細胞と間葉細胞の分布,細胞数の変化について数日培養を行い検討した。現在最適なコラーゲンの濃度と細胞の播種法について引き続き検討中である。歯の発生は上皮間葉相互作用によって調節されているため、より詳細な観察を行うには由来の異なる2つの細胞をin vitroで同時に観察できる系が望まれる。本研究ではこれを実現するための基礎研究として歯胚由来の細胞の長期培養条件と未分化性を維持するためのシグナル分子の解析を行った。平成20年度では前年度に行ったDNAアレイの結果をふまえた解析とコラーゲンを用いた培養条件について引き続き検討を行った。1.歯の未分化領域においてFgf9の発現が上昇していたことから、Fgf9タンパクを加えた状態で歯胚由来の間葉細胞の培養を行ったところ細胞の増殖率が向上しな。2.切歯歯胚の未分化領域から分離した一次培養上皮細胞にFgf2とEGFタンパクを加えた状態で長期間培養した後、幹細胞マーカー遺伝子数種類の発現を確認した。3.コラーゲンコートを行った培養皿によって歯胚由来の一次培養細胞の接着効率が上昇した結果、細胞の増殖速度が向上した。4.コラーゲン上に上皮細胞を培養した結果、シート様に配列した上皮細胞が回収できた。また以上の研究過程において新たに特定のケモカインの発現が上昇していたため、現在これに注目しその機能について検討している。本研究課題で得られたin vitroでの歯の培養条件を使用した解析方法の確立についても今後の課題としたい。
KAKENHI-PROJECT-19791342
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腸内細菌による中枢神経系炎症制御メカニズムの解析
多発性硬化症のモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)マウスを用いて、中枢神経系炎症の発症に寄与する腸内細菌の探索を行った。その結果、EAEが抑制されたマウスの小腸においてErysipelotrichaceae科の菌株が減少することを見出した。本菌株をマウスから単離培養し、無菌マウスに定着させたところ、EAE症状が悪化することを確認した。本菌株は小腸においてバイオフィルムを形成し、小腸上皮に付着することで炎症反応を促進し、さらにはEAEにおける自己抗原特異的T細胞の病原性を高める可能性が示された。各種抗生物質を投与したマウスの小腸内容物の16S rRNAメタシーケンシングを行った結果、ampicillin投与によりErysipelotrichaceae科の菌株が有意に減少することが明らかとなった。そこで同菌株を単離培養し無菌マウスに定着させたところ、無菌マウスに比べEAE症状が悪化することを確認した。また、小腸粘膜固有層においてTh17の活性化が誘導されたこと、さらには小腸でのserum amyloid A発現およびIL-23発現が有意に増加したことから、本菌株はSegmented filamentous bacteria(SFB)と同様のメカニズムでTh17細胞の分化を誘導することが示唆された。また、Th17はEAE発症において中心的な役割を果たしていることから、今回単離した菌株はMOG特異的なTh17細胞を小腸で活性化することによりEAE病態悪化を促進することが示唆された。今回単離した菌株のゲノムシーケンシングを行った結果、本菌株は細胞外多糖を高産生することでバイオフィルムを形成し、宿主腸管上皮細胞に定着することが示唆された。現在、Th17細胞の活性化に寄与する因子を探索中である。多発性硬化症モデル(Experimental Autoimmune Encephalomyelitis, EAE)における腸内細菌の影響を検討した結果、Erysipelotrichaceae科の菌株が小腸において抗原特異的T細胞を活性化し、中枢神経系の炎症を促進することが示唆された。これらの結果は、マウス小腸から単離したErysipelotrichaceae科菌株のみを有するモノアソシエイトマウスにおいて確認できた。一方、マウス小腸で優性なLactobacillus属菌株は、中枢神経系の炎症に影響を及ぼすことは無かった。Erysipelotrichaceae科菌株が抗原特異的T細胞を活性化するメカニズムを解析した結果、本菌株は小腸においてserum amyloid A(SAA)およびIL-23発現を誘導することで、抗原特異的Th17細胞のpathogenicityを高めることが示唆された。本菌株は小腸粘膜においてバイオフィルムを形成することで上皮細胞に接着することを確認しているが、このことが上記の炎症促進反応に寄与すると予想される。一方、Erysipelotrichaceae科菌株のみが腸管に定着したモノアソシエイトマウスは、通常の腸内細菌を有するマウス(SPF)に比べ、EAEの重篤度は低い。このことは、Erysipelotrichaceae科菌株だけでなく、他の腸内細菌も複合的に中枢神経系の炎症促進に関与していると考えられる。今後更なる研究で腸内細菌-中枢神経系炎症の関係を紐解くことにより、腸内細菌をターゲットとした多発性硬化症の治療戦略を確立できると期待される。多発性硬化症のモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)マウスを用いて、中枢神経系炎症の発症に寄与する腸内細菌の探索を行った。その結果、EAEが抑制されたマウスの小腸においてErysipelotrichaceae科の菌株が減少することを見出した。本菌株をマウスから単離培養し、無菌マウスに定着させたところ、EAE症状が悪化することを確認した。本菌株は小腸においてバイオフィルムを形成し、小腸上皮に付着することで炎症反応を促進し、さらにはEAEにおける自己抗原特異的T細胞の病原性を高める可能性が示された。当初の予定どおり、中枢神経系炎症に関与する菌株の同定、単離培養、さらにはモノアソシエイトマウスの作製を行うことができた。また、本菌株の宿主への影響(小腸粘膜固有層におけるTh17細胞の活性化)を確認することができた。これは、平成27年度実施予定である「中枢神経系炎症に関与する菌活性成分の作用メカニズムの解明」を行うあたって、非常に重要な結果である。また、本年度の予定であった関与菌株のゲノムシーケンスを完了した。得られたシーケンスのde novoアセンブリおよびアノテーションを行ったが、complete配列を得るには至っていない。しかし、draftゲノム配列をvirulence factor databaseに対してBLASTを行い、宿主に影響を及ぼす可能性のある遺伝子群の抽出を完了している。現在、さらなる解析を行うことにより、平成27年度実施予定の遺伝子欠損株作製の準備を進めている。また、モノアソシエイトマウスの小腸内容物から菌トランスクリプトーム解析を行う予定であったが、今年度はシーケンシングデータを得るまでに留まっており、来年度に詳細な解析を行う予定である。以上のように、当初予定していた計画どおりに進展しており、来年度実施予定の実験準備も順調に行うことができた。農学今回単離した中枢神経系炎症に関与する菌株からゲノムシーケンスおよびトランスクリプトーム(RNA-seq)データをすでに取得している。
KAKENHI-PROJECT-26850090
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26850090
腸内細菌による中枢神経系炎症制御メカニズムの解析
今年度はこれらのデータを詳細に解析することにより、中枢神経系炎症に関与する活性成分候補遺伝子の探索を行う。また当初の予定どおり、上記解析により短鎖脂肪酸を始めとする代謝物の関与が疑われた場合、腸管内容物のメタボローム解析を行う。現在、核磁気共鳴装置(NMR)に加えLS-MS/MSによるメタボローム解析条件を検討中であり、これらの手法を組み合わせることにより低濃度代謝物の変動も解析することを目指す。上記の解析による菌活性成分の同定を行うとともに、作用メカニズムの解析を行う。今回単離した菌株の作用機序として、小腸粘膜固有層のTh17細胞の活性化が関与することをすでに確認している。また、本作用にはserum amyloid Aを介したIL-23発現亢進が関与することを示唆するデータを得ている。これらの情報をもとに、腸内細菌によるMOG特異的Th17細胞の活性化メカニズムの解明を試みる。具体的には、単離精製した菌活性成分を無菌マウスに投与し、腸管上皮細胞のメタトランスクリプトーム解析を実施する。これにより、腸管上皮細胞からのserum amyloid A産生促進に寄与する細胞内シグナル経路を解析する。また、小腸粘膜固有層で活性化したMOG特異的Th17細胞が中枢神経系炎症促進に関与するのか、本細胞を単離精製後、adoptive transfer EAEモデルを用いて確認を行う。当初予定していた旅費を今年度は使用しなかった。招待講演(広島)では旅費等を主催者から負担して頂いた。また、一般発表を行った日本分子生物学会年会は横浜開催であったため、宿泊費等が不要となった。その他、日本免疫学会学術集会で発表予定であったが、実験の進捗の理由により今年度は発表を控えた。今年度発表予定であった日本免疫学会学術集会で発表を行う。また、日本分子生物学会年会および日本農芸化学会など、当初の予定より多くの学会発表を行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-26850090
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運動器損傷に対する血管新生および組織特異的マイクロRNAによる新規治療開発
脊髄損傷モデルに対するmiR-210の投与では、損傷後早期の損傷部での血管新生が促進され、それに引き続いておこるグリオーシスも促進されて、運動機能の回復が改善した。また同モデルに対するmiR-145の投与では、運動機能が改善し、ターゲット遺伝子候補の一つであるセマフォリン3Aの発現が抑制されていた。半月板損傷モデルに対するmiR-210投与では損傷半月板にmiR-210が取り込まれ、半月板の修復が促進されていた。ラットアキレス腱損傷モデルに対するmiR-210の投与では、最終の腱の修復にコントロール群との差はなかったが、miR-210投与群では早期にアキレス腱が修復されていた。各種運動器損傷モデルに対して血管新生マイクロRNA投与実験を行い、その中で半月板損傷モデル、腱損傷モデル、脊髄損傷モデルにおいて血管新生促進作用を持つmiR-210の投与で組織修復促進効果が確認できた。半月板損傷モデルではコントロール群(無機能siRNA投与群)に比べて、miR-210投与群で局所での血管新生が促進し、半月板欠損部が早期に線維性組織にて架橋された。アキレス腱損傷モデルに対するmiR-210投与ではコントロール群に比べて、腱断裂部での瘢痕形成が少なく、良好な腱組織で修復された。脊髄損傷モデルに対するmiR-210投与では、コントロール群に比べて損傷後早期のアストログリオーシスが促進され、F4/80陽性のマクロファージが集積している面積が小さく、血管新生、軸索伸長および髄鞘形成も促進され、後肢運動機能の回復が促進された。損創部におけるmiR-210の発現は投与後7日までコントロール群に比べて有意に高く、投与したmiR-210が十分に細胞内に取り込まれている可能性があり、in situハイブリダイゼーションによる評価でもmiR-210投与群では損傷部とその周囲においてmiR-210の高発現を認めた。ターゲット遺伝子ではPTP1BやEFNA3の発現が有意に低下していた。TUNEL染色やCaspase3の発現評価から損傷部におけるアポトーシスが抑制されており、miR-210投与によるPTP1BやEFNA3の発現抑制による血管新生促進や神経保護作用が脊髄修復に促進的に働いた可能性が考えられた。各種運動器損傷モデルに対する血管新生マイクロRNAとしてmiR-210の投与を行った。昨年度までに行っていた脊髄損傷に対する投与の内容については雑誌Spineでpublishされた。半月板損傷モデルに対する投与では昨年度までの結果に加えて、損傷部へのmiR-210の取り込みが確認され、miR-210投与により局所でのI型およびII型コラーゲン、VEGF、FGF2などの発現が上昇し、損傷部での血管新生や細胞増殖が促進されることが明らかとなった。これらの結果については雑誌Arthritis Research & Therapyにpublishされた。また、アキレス腱損傷モデルに対する投与では、昨年度までの結果に加えて、miR-210投与による局所での血管新生促進効果やI型コラーゲン、VEGF、FGF2などの発現が上昇について明らかにした。これらの内容については雑誌Journal of Orthopaedic Scienceに投稿し、acceptされた。さらに組織特異性マイクロRNAとして脊髄損傷モデルに対するmiR-145の投与実験を行った。脊髄損傷後の投与時期の違いでのmiR-145の局所への取り込みや脊髄機能改善の程度の違いを検討したところ、損傷後3日以降での投与でmiR-145の取り込みが上昇することが分かり、損傷3日後の投与が最も脊髄機能を改善させた。Targetgene候補にSemaphorinやEphrinなど軸索伸長抑制因子を複数含むmiR-145の投与が脊髄損傷後の修復促進効果について検討した。前年度の研究で、脊髄損傷部へmiR-145を投与するタイミングとして、損傷後3日以降での投与でmiR-145の取り込みが上昇し、脊髄機能回復が改善されることが分かったため、本年度の研究は損傷後3日以降の投与での実験を行った。損傷後42日において経頭蓋電気刺激による後肢筋電位を測定し、振幅を評価したところ、損傷後7日の投与群において特に筋電位の振幅が高く、コントロールとの有意差を認めた。Dynamic Plantar Aesthesiometerを用いた感覚機能の評価では、損傷後3日での投与群において反応時間の延長を認めたが、他の群との有意差は認めなかった。脊髄損傷部でのmiR-145のtarget geneを明らかにするためにmiR-145投与翌日の損傷部組織で候補遺伝子についてreal-time PCRやWestern blottingによる発現レベルの評価を行った。Real-time PCRでは、Sema-3A, Sema-6A, ROCK1, Ephrin-B3, Plexin-A2, Netrin-4,GAP1, GAP2, GAP3の発現レベルの評価を行ったが、miR-145投与群とコントロール群との間に有意差は認められなかった。一方、Western blottingによる発現レベルの評価では、miR-145投与によってSema-3Aの発現が著明に抑制されていた。また脊髄損傷部におけるEphrin-B3およびSema-3Aの免疫染色を行うと、miR-145投与群ではコントロール群に比べて、これらの因子の陽性面積が小さかった。これらのことから、miR-145の投与はmRNAレベルではなく、タンパクレベルにおけるEphrin-B3およびSema-3Aの発現を抑制していると考えられた。
KAKENHI-PROJECT-25293324
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運動器損傷に対する血管新生および組織特異的マイクロRNAによる新規治療開発
脊髄損傷モデルに対するmiR-210の投与では、損傷後早期の損傷部での血管新生が促進され、それに引き続いておこるグリオーシスも促進されて、運動機能の回復が改善した。また同モデルに対するmiR-145の投与では、運動機能が改善し、ターゲット遺伝子候補の一つであるセマフォリン3Aの発現が抑制されていた。半月板損傷モデルに対するmiR-210投与では損傷半月板にmiR-210が取り込まれ、半月板の修復が促進されていた。ラットアキレス腱損傷モデルに対するmiR-210の投与では、最終の腱の修復にコントロール群との差はなかったが、miR-210投与群では早期にアキレス腱が修復されていた。各運動器モデルに対する血管新生マイクロRNAの投与実験は終了し、すべて国際科学雑誌でpublishされた。さらに組織特異性マイクロRNAの投与実験も順調に進んでいる。27年度が最終年度であるため、記入しない。脊椎脊髄病学さらに組織特異性マイクロRNAの投与実験を進めていき、最終的には投与するマイクロRNAのベストミックスを明らかにする。当初の計画通り各種運動器損傷モデルに対する血管新生マイクロRNAの投与実験を行い、その中でmiR-210投与による半月板、アキレス腱、脊髄の修復促進を確認できた。脊髄損傷モデルの実験結果に関してはすでに雑誌Spineに投稿し、アクセプトされた。27年度が最終年度であるため、記入しない。組織特異的マイクロRNA投与のターゲット遺伝子の解明に関する実験を次年度で継続することになったため27年度が最終年度であるため、記入しない。これまでに結果が得られている内容に関しては論文にまとめて発表予定である。また、当初の計画どおり、各種運動器損傷モデルにおける組織特異的マイクロRNAの探索と組織修復への効果についての評価を行い、血管新生マイクロRNAとのベストミックスの検討を行う。ターゲット遺伝子候補のPCRおよびWestern blotを行う27年度が最終年度であるため、記入しない。平成26年度に予定していた各種運動器損傷モデルに対する血管新生マイクロRNAの投与実験のうち、作用機序に関する研究が一部終了せず、次年度で継続することになったため投与したマイクロRNAのターゲット遺伝子を探索するため、real-time PCRとウェスタンブロットを行う
KAKENHI-PROJECT-25293324
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色受容細胞における分子応答
ヒトを含めた多くの脊椎動物の網膜には、薄明視の司る桿体と昼間視を司る錐体が存在する。本研究では、「桿体と錐体の光応答の違いを光レセプターのレベルでどこまで説明できるか」に焦点を絞って研究を行い、以下のことを明らかにした。1.遺伝子クローニングの技術を用いて、ニワトリの4種類の錐体光レセプター、及び、オオヤモリの2種類の光レセプターの一次構造を決定した。その結果を基に、光レセプターの吸収極大波長を決定しているアミノ酸残基を推定した。また、光レセプターの分子系統樹を作製して光セレプターの分子進化について考察した結果、先祖型の光レセプターはまず4種類の錐体光レセプターに分岐し、その後、そのうちの一つのグループから桿体の光レセプター(ロドプシン)が分岐したことが推定された。すなわち、動物はまず色識別能を獲得し、その後薄明視を獲得したことがわかった。2.ニワトリの網膜からアイオドプシンを分離・精製し、その光反応過程を分光学的に検討した。その結果、励起状態および第一光産物(フォト中間体)を同定するとともに、光反応過程に現れる全ての中間体を同定した。また、G蛋白質と相互作用して活性化させる中間体を分光学的手法と蛋白化学的手法を組み合わせて同定した。さらに、ニワトリ緑およびニワトリ青の光反応過程をアイオドプシン及びロドプシンと比較することにより、錐体光レセプターと桿体光レセプターとの性質の違いを検討した。その結果、錐体光レセプターは桿体光レセプターと同様、非常に高い光感受性および分子吸光係数をもつが、錐体光レセプターは桿体光レセプターに比べて非常に速く再生し、また、活性中間体であるメタII中間体の生成・崩壊の速度が非常に速いことがわかった。これらの結果は、錐体と桿体の光応答の違いとよい相関のあることがわかった。ヒトを含めた多くの脊椎動物の網膜には、薄明視の司る桿体と昼間視を司る錐体が存在する。本研究では、「桿体と錐体の光応答の違いを光レセプターのレベルでどこまで説明できるか」に焦点を絞って研究を行い、以下のことを明らかにした。1.遺伝子クローニングの技術を用いて、ニワトリの4種類の錐体光レセプター、及び、オオヤモリの2種類の光レセプターの一次構造を決定した。その結果を基に、光レセプターの吸収極大波長を決定しているアミノ酸残基を推定した。また、光レセプターの分子系統樹を作製して光セレプターの分子進化について考察した結果、先祖型の光レセプターはまず4種類の錐体光レセプターに分岐し、その後、そのうちの一つのグループから桿体の光レセプター(ロドプシン)が分岐したことが推定された。すなわち、動物はまず色識別能を獲得し、その後薄明視を獲得したことがわかった。2.ニワトリの網膜からアイオドプシンを分離・精製し、その光反応過程を分光学的に検討した。その結果、励起状態および第一光産物(フォト中間体)を同定するとともに、光反応過程に現れる全ての中間体を同定した。また、G蛋白質と相互作用して活性化させる中間体を分光学的手法と蛋白化学的手法を組み合わせて同定した。さらに、ニワトリ緑およびニワトリ青の光反応過程をアイオドプシン及びロドプシンと比較することにより、錐体光レセプターと桿体光レセプターとの性質の違いを検討した。その結果、錐体光レセプターは桿体光レセプターと同様、非常に高い光感受性および分子吸光係数をもつが、錐体光レセプターは桿体光レセプターに比べて非常に速く再生し、また、活性中間体であるメタII中間体の生成・崩壊の速度が非常に速いことがわかった。これらの結果は、錐体と桿体の光応答の違いとよい相関のあることがわかった。交付申請書に記載の研究実施計画に沿って研究を進め、以下の知見を得た。1.アイオドプシンには塩素イオンが結合し、その結合によってアイオドプシンの吸収極大が変化する。そこで、塩素イオンの結合サイトを同定するために、塩素イオンを結合したアイオドプシン及び結合していないアイオドプシンとそれらの初期中間体(バソ中間体)との差FTIR(フ-リエ変換赤外)スペクトルを測定した。その結果、塩素イオンは発色団の14番目の炭素原子の近くのアミノ酸残基に結合していることがわかった。2.ConAーセファロ-スカラムとCMーセフイロ-スカラムを用いて、ニワトリ網膜から緑色感受性錐体の光受容蛋白質を分離・精製し、その蛋白化学的・分光学的性質をアイオドプシン及びロドプシンと比較した。その結果、錐体光受容蛋白質の性質として、非常に速く再生すること、また、メタIII中間体の存在しないことなどが明らかになった。3.遺伝子操作技術を利用してアイオドプシン以外の錐体光受容蛋白質(3種類)の一次構造を決定した。また、それらのアミノ酸配列を、すでに報告されているロドプシンと比較し、分子系統樹を作製した。その結果、光受容蛋白質はまず4種類の錐体光受容蛋白質に分岐し、その後錐体光受容蛋白質の一つからロドプシンが分岐したことが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-03454559
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03454559
色受容細胞における分子応答
また、ロドプシン遺伝子を培積容養細胞に挿入して、ロドプシンの蛋白質を発現させることに成功した。4.錐体にG蛋白質トランスデュ-シンのγサブユニット(Tγ)の一次構造を明らかにするため、ウシ桿体Tγの全長cDNAをプロ-ブとしてニワトリ網膜のcDNAライブラリ-をスクリ-ニングしたが,Tγをコ-ドすると思われるcDNAクロ-ンは単離できなかった。一方、桿体TγのC末端システインの翻訳後修飾は、ロドプシンとG蛋白質との共役に必須であることを明らかにした。交付申請書に記載の研究実施計画にそって研究を進め、以下の知見を得た。1.アイオドプシンをサブピコ秒レーザー(波長590nm、パルス幅0.5ピコ秒)で励起した後の吸収変化を測定した。その結果、励起直後にアイオドプシンの励起状態の生成が観測され、その後励起状態は約200フェムト秒の時定数でフォト中間体に変化することがわかった。また、フォト中間体は数ピコ秒の時定数でバソ中間体に変化することがわかった。以上の結果から、アイオドプシンの第一光産物もロドプシンと同様フォト中間体であることがわかった。2.ニワトリ網膜4000枚から青色感受性錐体に存在する光受容蛋白質(ニワトリBlue)を分離・精製することに成功した。また、この試料を用いてその光反応課程を検討したところ、ロドプシンやアイオドプシンと同様、バソ、ルミ、メタ中間体に対応する中間体の生成を確認した。3.メタII中間体とトランスデューシンの相互作用におけるトランスデューシンの翻訳後修飾(ファルネシル化及びメチル化)の生理的役割を明らかにするため、ファルネシル基のみ結合しているトランスデューシンとファルネシル基、メチル基の両方が結合しているものを分離・精製した。それぞれをフォスファチジルコリンのリポソームに組み込んだロドプシンと混合して光照射したところ、メチル化されているトランスデューシンの方がメタII中間体と強く相互作用することがわかった。4.ヒト由来の株細胞である293s細胞中でロドプシンの遺伝子を発現させることに成功した。さらにPCR法を用いて、ロドプシン遺伝子に点変異を導入した変異体を作製し、上記細胞中で発現させることに成功した。交付申請書に記載の研究実施計画に沿って研究を進め、以下の知見を得た。1.我々の研究から、低温で生成したアイオドプシンの中間体は、試料の温度を上げるともとのアイオドプシンに戻ることがわかっている。そこで、この反応がアイオドプシンに塩素イオンが結合していることに起因するかどうかを検討するために、塩素イオンを含まないアイオドプシン試料を調製して検討した。その結果、バソ中間体のアイオドプシンへの戻り反応は塩素イオンの有無によらないことがわかった。一方、メタI中間体からアイオドプシンへの戻り反応は塩素イオン特異的であり、そのKd値は約30mMと求められた。後者の結果から、アイオドプシンには塩素イオン特異的な光シグナル伝達の調節機構があることが示唆された。2.ロドプシンのメタI中間体とルミ中間体の間に温度依存性の平衡があることを発見した。その結果、低温と室温でのロドプシンの光反応過程の違いが中間体の熱力学的パラメーターの温度依存性によって説明できる可能性が示唆された。3.錐体型光レセプターであるオオヤモリのP467を培養細胞系で発現させることに成功した。発現させた蛋白質の吸収スペクトルは網膜から抽出したものと同じであることがわかった。また、ロドプシンのメタII中間体の挙動がC末端付近のシステイン残基の修飾(パルミチル化)の有無によって変化するかどうかを検討するために、部位特異的変異によってこのシステインを持たない変異ロドプシンを培養細胞系で発現させ、その光反応を検討した。
KAKENHI-PROJECT-03454559
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財政危機のメカニズムに関する研究
本研究では、成長に不確実性の簡易なOLGモデルを構築し、市場が抱く「財政規律の見通し」や「財政調整ルール」が国債金利に及ぼす影響のほか、国債金利の低下と公的債務の増加との関係の分析を行っている。分析の結果、公的債務の蓄積は国債金利の上昇をもたらすとの伝統的な見解とは対照的に、公的債務の蓄積が民間資本に比べて進むと国債金利は下がる可能性があることや、財政調整ルールが均衡での国債金利の決定に重要な役割を果たす可能性があり、相対的に安定的な均衡解が消失するときは経済は離散的な経路をたどり、財政再建が避けられず国債金利が急上昇する状況に経済が移行する可能性があることが示された。本研究では、成長に不確実性の簡易なOLGモデルを構築し、市場が抱く「財政規律の見通し」や「財政調整ルール」が国債金利に及ぼす影響のほか、国債金利の低下と公的債務の増加との関係の分析を行っている。分析の結果、公的債務の蓄積は国債金利の上昇をもたらすとの伝統的な見解とは対照的に、公的債務の蓄積が民間資本に比べて進むと国債金利は下がる可能性があることや、財政調整ルールが均衡での国債金利の決定に重要な役割を果たす可能性があり、相対的に安定的な均衡解が消失するときは経済は離散的な経路をたどり、財政再建が避けられず国債金利が急上昇する状況に経済が移行する可能性があることが示された。少子高齢化の進展とそれに伴う社会保障費の膨張、また恒常化する財政赤字によって、日本の公的債務残高(対GDP)は急増しているが、むしろ長期金利は低下してきている。また、2012年8月上旬に消費増税法案が成立したものの、引き続き、公的債務(対GDP)の上昇は確実であり、現状のままでは、いつまでも国債の安定消化が図られるとは限らない。このような状況の中、本研究の目的は、国債が消化できない閾値の存在可能性や、財政危機と金融危機の相互作用に関する分析を行うことであった。このモデル分析では、公的債務の蓄積は国債金利の上昇をもたらすとの伝統的な見解とは対照的に、公的債務の蓄積が民間資本に比べて進むと国債金利が低下する局面の存在可能性や、財政調整ルールが均衡での国債金利の決定に重要な役割を果たす可能性が明らかとなった。少子高齢化の進展とそれに伴う社会保障費の膨張、また恒常化する財政赤字によって、日本の公的債務残高(対GDP)は急増しているが、むしろ長期金利は低下してきている。また、2012年8月上旬に消費増税法案が成立したものの、引き続き、公的債務(対GDP)の上昇は確実であり、現状のままでは、いつまでも国債の安定消化が図られるとは限らない。このような状況の中、本研究の目的は、国債が消化できない閾値の存在可能性や、財政危機と金融危機の相互作用に関する分析を行うことにあった。これらの分析によると、公的債務の蓄積は国債金利の上昇をもたらすとの伝統的な見解とは対照的に、公的債務の蓄積が民間資本に比べて進むと国債金利は下がる可能性があることや、財政調整ルールが均衡での国債金利の決定に重要な役割を果たす可能性があり、相対的に安定的な均衡解が消失するときは経済は離散的な経路をたどり、財政再建が避けられず国債金利が急上昇する状況に経済が移行する可能性があることが分かった。社会科学平成26年度は、当初の研究計画のとおり、現在構築中のモデルを完成させる。具体的には、数回にわたる試験的なシミュレーションを行い、モデルの性質や特性を把握する。その上で、理論モデルのシミュレーション結果を丁寧に分析・考察し、当該モデルの抱える問題点を明らかにし、頑健なモデルになるよう、問題点の改善を試みる。そうした分析や改善を繰り返しつつ、試行錯誤を重ねることで、理論モデルを完成させる。その後、これらシミュレーション分析の結果に基づき、まずは、本研究をディスカッションペーパーといった形で取りまとめ、学会・研究会等で報告後、論文を完成させる。また、必要に応じて、政治システム・人口動態と財政との関係についても分析を行い、その理論モデルの構築も試みる。これまでの研究期間中、研究費を有効に活用したところ、当初予定よりも全体的な支出総額を低く抑えることが出来たため。発生した未使用額の具体的な使途としては、論文のブラッシュアップのための資料収集や英文校閲、及び論文投稿料等に利用する。
KAKENHI-PROJECT-25870236
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ブレインマシンインターフェイスを利用した単孔式手術支援ロボットの開発
単孔式内視鏡下手術は一つの切開口から術具を挿入して手術するため,切開口が少なくて済むことから患者の早期回復が可能であるという利点がある.しかし,単孔式内視鏡下手術は内視鏡画像の操作の不確実性,術具の可動範囲・自由度不足が原因で医師の操作は困難である.本研究は人間工学と認知科学に基づいて術具マニピュレータを設計し,ブレイン・マシン・インターフェースを利用して操作するシステムの要素技術を開発した.本研究ではブレイン・マシン・インターフェース技術を用いた単孔式手術支援ロボットの開発を行った.本研究を行うに辺り,(A)単孔式手術支援ロボットの開発とシステム開発,(B)脳活動計測を用いた手術支援ロボットの最適化設計の二つの技術課題を解決した.(A)単孔式手術支援ロボットの開発とシステム開発: SILS支援用ロボットのプロトタイプを基に医師から臨床としての評価を受け,良好なhand-eye coordinationが得られるような設計に改良した.プロトタイプと比べ,内視鏡の位置を立体的に変化できる機構を用いて設計したため,医師はより直感的な操作が可能となる.改良した単孔式手術支援ロボットは豚試験片を用いたin vivo実験を行い,医師から高い評価を受けた.(B)脳活動計測を用いた手術支援ロボットの最適化設計:手術支援ロボット操作者の脳活動を計測し,直感的な操作性を定量化することで,脳内における脳内におけるhand-eye coordinationと直感的な操作性との関係性をモデル化し,最適なhand-eye coordinationの導出を行った.実験では,仮想空間にてロボット手術を実施している操作者の脳内血中酸化ヘモグロビン濃度を,脳活動計測装置光トポグラフィを用いて計測し,直感的な操作性を定量化した.実験の結果,操作者にとって最も直感的に操作可能であるhand-eye coordinationにおいて,脳内血中酸化ヘモグロビン濃度は有意に上昇した.上記(A),(B)から,直感的な操作が可能な単孔式手術支援ロボットの開発,および脳活動計測による直感的な操作性の定量化を行った.今後は脳活動計測を用いて意図推定システムの構築を行い,ブレイン・マシン・インターフェースを用いた単孔式手術支援ロボットの操作手法の確立を目指す.単孔式内視鏡下手術は一つの切開口から術具を挿入して手術するため,切開口が少なくて済むことから患者の早期回復が可能であるという利点がある.しかし,単孔式内視鏡下手術は内視鏡画像の操作の不確実性,術具の可動範囲・自由度不足が原因で医師の操作は困難である.本研究は人間工学と認知科学に基づいて術具マニピュレータを設計し,ブレイン・マシン・インターフェースを利用して操作するシステムの要素技術を開発した.(1)術具マニピュレータの多自由度化これまでに開発したプロトタイプロボットについて,「本機構の小型化」と「本機構を多段に配置することによる多自由度化」を実施した.具体的には,術具マニピュレータは左腕を鉗子用,右腕を電気メス等の処置具用とした.自由度構成は,医師の術中の手の動きを再現するため,片腕で6自由度(+把持1自由度)とした.また,内視鏡マニピュレータの先端部が屈曲している状態でも摩擦の影響を抑えて動力伝達を行うため,フレキシブルシャフトとねじを組み合わせた動力伝達機構を採用した.ロボット駆動に一般的に用いられるワイヤ駆動と比較した際に,バックドライバビリティが非常に小さく,術具先端に与えられる負荷が駆動部に影響しにくいことから従来と比較し位置精度の向上が可能となった(2)マスタロボットの開発双腕術具マニピュレータおよび視点変更の双方を,直観的かつ持ち替えることなく操作することが可能な,一体型のマスタロボットを開発した.具体的には従来からマスタマニピュレータとして使用していたPHANTOM Omniを片腕につき2台,双腕で計4台使用することで、低コストかつ開発期間の短縮を可能にした。本マスタマニピュレータは片腕7自由度(双腕14自由度)を有し,そのうち6自由度を能動的に制御可能である.片腕の自由度構成はPHANTOM Omni2台で位置3自由度,姿勢2自由度の合計5自由度,小型モータを用いて姿勢1自由度を制御する.小型モータはMAXON製RE 10(12[V],1.5[W])を用い,バックドライバビリティを確保するため減速比を16:1とした.また,術具鉗子の把持制御のため小型エンコーダ(SES-10-200)を用いて把持用の1自由度を追加した.平成23年度に実施予定であった術具マニピュレータの多自由度化,マスタロボットの開発が順調に終了し,平成24年度に予定している認知科学を用いたスレイブロボットの評価・改良,およびBMIを有する操作システムの開発に移行することが可能な状態にあるため(1)認知科学を用いたスレイブロボットの評価・改良H23年度に完成させた術具マニピュレータを視点操作マニピュレータに統合し,スレイブロボットを完成させる.統合時には,仮想空間上に構築したスレイブシミュレータを用いた試験を実施しながら,内視鏡と術具マニピュレータの位置関係を決定する.この際,スレイブロボットを定量的に評価するため,脳計測装置(NIRS等)を用いた脳内活動計測を行う.ヒトの"慣れ"や"直感性"との相関性が高いことが示唆されている,脳の頭頂間溝(IPS)の活動を計測することで,スレイブロボットの操作性を評価する.(2)BMIを有する操作システムの開発
KAKENHI-PROJECT-23650101
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ブレインマシンインターフェイスを利用した単孔式手術支援ロボットの開発
現在車いすの制御等で研究が進んでいる,脳活動計測を規範とした情報処理技術を利用して,考えるだけで視点を操作するBMIを有する操作系を開発する.術具マニピュレータの操作には,申請者らが先行研究において開発済みのマスタロボットを利用する.本研究においては,BMIにおける意図推定アルゴリズムは既存技術を用いることで,研究の迅速化を図る.マスタロボットを用いた術具マニピュレータを操作した時に生じるBMIへの影響を測定し,干渉が大きい場合には,意図推定アルゴリズムの改良を実施する.平成24年度の主な実施事項はロボットの改良及びその評価であり,改良のための加工品費,要素部品費,評価実験系構築費等に費用を使う予定である.また,九州大学と連携して研究を行うため,旅費にも費用を充てる
KAKENHI-PROJECT-23650101
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フラクタル解析とその破壊物理学への応用
岩盤を対象として、応力・歪み解析をもとにした破壊現象の研究と、破壊の結果として生じる亀裂模様のフラクタル性について研究した。特に、岩盤に断層がある場合についての解析をおこなった。そのための数値解析の手法としては、3次元の境界要素法を用い、コンピュータ・システムも開発した。(1)3次元境界要素法としては、亀裂・断層がないときに有効な応力不連続法と、断層があるときに有効な変位不連続法とをそれぞれ開発した。特異性をもった関数の積分の処理という境界要素法に特有な問題については、積分を解析的に得ることにより解決した。対象が3次元であるために、積分は境界上での2重積分になる。それをStokesの定理を用いることにより、線積分に変換して解析解を得た。(2)応力不連続法と変位不連続法を連成させることにより、断層がある場合の応力・歪み解析をおこなった。それを神岡鉱山で作られた岩盤内の宇宙線関係の実験に使用される、地下空洞について適用し、岩盤の応力・変位の現場計測結果と照らし合わせた。(3)岩盤に円柱状の穴を堀り、その周囲の円柱側面に小さな孔を掘ったときにひきおこされる穴の底面の岩盤に生じる亀裂面について(2)の方法を用いて研究した。なお、この問題は岩盤力学の学術雑誌で岩盤力学の研究者に、提起された問題への一つの回答である。(4)地熱発電(高温岩体発電)のシミュレーションのために必要となる、熱方程式の3次元境界要素方のための研究を行った。そのさい、ある種の関数2重積分の数値積分の新しいアルゴリズムを開発した。それを使いシステムを開発した。岩盤を対象として、応力・歪み解析をもとにした破壊現象の研究と、破壊の結果として生じる亀裂模様のフラクタル性について研究した。特に、岩盤に断層がある場合についての解析をおこなった。そのための数値解析の手法としては、3次元の境界要素法を用い、コンピュータ・システムも開発した。(1)3次元境界要素法としては、亀裂・断層がないときに有効な応力不連続法と、断層があるときに有効な変位不連続法とをそれぞれ開発した。特異性をもった関数の積分の処理という境界要素法に特有な問題については、積分を解析的に得ることにより解決した。対象が3次元であるために、積分は境界上での2重積分になる。それをStokesの定理を用いることにより、線積分に変換して解析解を得た。(2)応力不連続法と変位不連続法を連成させることにより、断層がある場合の応力・歪み解析をおこなった。それを神岡鉱山で作られた岩盤内の宇宙線関係の実験に使用される、地下空洞について適用し、岩盤の応力・変位の現場計測結果と照らし合わせた。(3)岩盤に円柱状の穴を堀り、その周囲の円柱側面に小さな孔を掘ったときにひきおこされる穴の底面の岩盤に生じる亀裂面について(2)の方法を用いて研究した。なお、この問題は岩盤力学の学術雑誌で岩盤力学の研究者に、提起された問題への一つの回答である。(4)地熱発電(高温岩体発電)のシミュレーションのために必要となる、熱方程式の3次元境界要素方のための研究を行った。そのさい、ある種の関数2重積分の数値積分の新しいアルゴリズムを開発した。それを使いシステムを開発した。
KAKENHI-PROJECT-06804009
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星雲環境と星間微粒子の磁気的挙動
この研究では星雲環境における粒子の磁気的挙動を解明する目的で、ガス分散させた反磁性粒子の磁場整列実験を進めつつある。特に粒子中に含まれる微量な磁性イオンの寄与を評価する目的で、磁気的性質が既知の鉱物粒子について測定を進める。ガス分散では液体分散に比べ星間環境にはるかに近い条件で整列が実現する。分散ガス中で粒子磁場整列を実現するため、大型円筒容器(径40cm)およびヘルムホルツコイルで構成される測定装置を製作した。この装置を用いて、媒体ガスの圧力・分子種をパラメータとして変化させ、反磁性粒子の磁場整列の測定を進めることが可能となった。さらに上記のガス分散粒子の磁場整列を低温で実現させるための装置製作を進めつつある。これにより分子雲の10ケルビンの低温で粒子を分散させ、粒子の並進・回転運動を研究することが可能となる。また粒子試料の元素分析(SIMS)や磁化測定(SQUID)を行うことにより、磁性イオン濃度とその磁性を評価したマゼラン星雲においては最近数個の星について可視・赤外の偏光および減光観測が行なわれ、我々の銀河と比較して磁性イオンを担う重元素が極端に欠乏している結果が報告されている。本研究の結果はマゼラン銀河のダストの挙動から、その磁場構造を議論する場合の基盤になると期待される。この研究では星雲環境における粒子の磁気的挙動を解明する目的で、ガス分散させた反磁性粒子の磁場整列実験を進めつつある。特に粒子中に含まれる微量な磁性イオンの寄与を評価する目的で、磁気的性質が既知の鉱物粒子について測定を進める。ガス分散では液体分散に比べ星間環境にはるかに近い条件で整列が実現する。分散ガス中で粒子磁場整列を実現するため、大型円筒容器(径40cm)およびヘルムホルツコイルで構成される測定装置を製作した。この装置を用いて、媒体ガスの圧力・分子種をパラメータとして変化させ、反磁性粒子の磁場整列の測定を進めることが可能となった。さらに上記のガス分散粒子の磁場整列を低温で実現させるための装置製作を進めつつある。これにより分子雲の10ケルビンの低温で粒子を分散させ、粒子の並進・回転運動を研究することが可能となる。また粒子試料の元素分析(SIMS)や磁化測定(SQUID)を行うことにより、磁性イオン濃度とその磁性を評価したマゼラン星雲においては最近数個の星について可視・赤外の偏光および減光観測が行なわれ、我々の銀河と比較して磁性イオンを担う重元素が極端に欠乏している結果が報告されている。本研究の結果はマゼラン銀河のダストの挙動から、その磁場構造を議論する場合の基盤になると期待される。
KAKENHI-PROJECT-10147210
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10147210
半導体における核スピンコヒーレンスの制御に関する研究
本研究では、極微細半導体量子ナノ構造において、光、電子スピン、核スピン間の相互作用の最適化と制御を、光検出を組み合わせた高感度・高空間分解能を有する核磁気共鳴(NMR)により行い、固体量子情報デバイス応用への可能性を探索することを目的としている。本年度は、n型(110)GaAs/AIGaAs単一量子井戸構造を用い、電界による核スピン操作に関する実験を行った。<1.エネルギー準位の制御>核スピンに働く相互作用の中で、四重極相互作用は電界によって制御可能である。ここでは電界による四重極相互作用の制御手法の確立を目的として、四重極分裂幅の電界依存性を調査した。試料は(110)基板上に成長したGaAs/AIGaAs単一量子井戸であり、試料表面に半透明ショットキーゲートを形成した。核スピンの検出には時間分解力一回転測定法を用い、電界を変化させながらNMRスペクトルを測定した。本実験では、静電界によってNMRスペクトルの共鳴周波数を共鳴線幅(20kHz)以上変化させられることを確認した。電気的に核スピンのエネルギー準位を制御できるため、静磁場や歪とは異なりアクティブな制御を行うことができる。これを利用することで、核磁気共鳴の共鳴状態と非共鳴状態とのダイナミックな切り替えが期待できる。<2.核スピンのコヒーレント操作>ここでは核スピンのコヒーレント操作を電気的手法により実現することを目標に実験を行った。本実験では、パルス的に高周波電界を印加することで、核スピンのコヒーレントな振動(ラビ振動)が観測された。更に、位相を制御した連続したパルス列を印加することによって、任意方向への核スピン操作も実証した。核スピン操作は元来磁気的に行われており、電界による核スピンのコヒーレント操作実証は大変意味のある結果である。本研究では,極微細半導体量子ナノ構造において,光,電子スピン,核スピン間の相互作用の最適化と制御を,光検出を組み合わせた高感度・高空間分解能を有する核磁気共鳴(NMR)により行い,固体量子情報デバイス応用への可能性を探索することを目的としている。本年度は,n型(110)GaAs/AlGaAs単一量子井戸を対象として核スピンコヒーレンス制御に関する研究を行った。<1.超微細相互作用の電界制御>ここでは,NMRによる核スピン量子操作と高感度光検出をより効率的に行うことを目的として,核スピン緩和の一要因である接触フェルミ超微細相互作用(電子スピンとの相互作用)制御の可能性を探った。まず,試料表面に半透明ショットキーゲートを形成し,井戸内の電子濃度を変調可能にした。核スピン緩和時間の測定には,NMRを組み合わせた時間分解カー回転測定を用いた。本実験から,エネルギー緩和時間,コヒーレンス時間ともに電子濃度に大きく依存することが明らかになり,前者は10倍以上,後者も2倍近く制御可能であるという結果が得られた。<2.四重極相互作用の制御>核スピン緩和には,核周りの電荷分布非対称に起因する四重極相互作用も影響し,これは歪によって制御できることが知られている。ここでは,主に位相情報保持時間の延長を目的に,四重極相互作用のコヒーレンス時間への影響を調査した。まず,極低温で試料に任意歪を加えることができる機構を作製し,四重極相互作用の制御を可能にした。次に,この機構を利用して歪量を変えながらコヒーレンス時間の測定を行った。本実験では,歪量を大きくし,四重極相互作用の効果を増大させることで,コヒーレンス時間が延長されるという結果が得られた。上述のように,本年度の研究では核スピンコヒーレンス制御に関して多くの知見が得られた。本研究では,極微細半導体量子ナノ構造において,光,電子スピン,核スピン間の相互作用の最適化と制御を,光検出を組み合わせた高感度・高空間分解能を有する核磁気共鳴(NMR)により行い,固体量子情報デバイス応用への可能性を探索することを目的としている。本年度は四重極相互作用に注目し,n型(110)GaAs/AlGaAs単一量子井戸を対象として核スピンコヒーレンス制御に関する研究を行った。<1.四重極相互作用の電界制御>四重極相互作用は核周りの電荷分布非対称により発生し,歪(昨年度報告)や電界によって制御できることが知られている。ここでは位相情報保持時間の延長を見据え,電界による四重極相互作用の制御手法の確立を目的として,四重極分裂幅の電界依存性を調査した。まず試料表面に半透明ショットキーゲートを形成し,電界の印加を可能にした。核スピンの検出にはNMRを組み合わせた時間分解力-回転測定を用い,電界を変化させながらNMRスペクトルを測定した。本実験では,四重極相互作用に起因する四重極分裂幅が最大10kHz変調可能であるという結果が得られた。<2.四重極相互作用の静磁場による制御>四重極相互作用は歪や電界により制御可能である一方で,静磁場の大きさにも大きく依存する。ここでは,四重極相互作用の核スピンコヒーレンスへの影響を調べることを目的に,NMRスペクトル,コヒーレンス時間の静磁場強度依存性を調査した。一般的に四重極相互作用は,静磁場によって誘起されるゼーマン分裂に対して小さく,摂動として扱われる。しかし,静磁場の強度を抑え,相対的に四重極相互作用の寄与を増大させることで,NMRスペクトルが非対称になり,これがコヒーレンス時間に影響することが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-09J07823
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J07823
半導体における核スピンコヒーレンスの制御に関する研究
上述のように本年度の研究では,四重極相互作用に関して核スピンコヒーレンス制御の観点から多くの知見が得られた。本研究では、極微細半導体量子ナノ構造において、光、電子スピン、核スピン間の相互作用の最適化と制御を、光検出を組み合わせた高感度・高空間分解能を有する核磁気共鳴(NMR)により行い、固体量子情報デバイス応用への可能性を探索することを目的としている。本年度は、n型(110)GaAs/AIGaAs単一量子井戸構造を用い、電界による核スピン操作に関する実験を行った。<1.エネルギー準位の制御>核スピンに働く相互作用の中で、四重極相互作用は電界によって制御可能である。ここでは電界による四重極相互作用の制御手法の確立を目的として、四重極分裂幅の電界依存性を調査した。試料は(110)基板上に成長したGaAs/AIGaAs単一量子井戸であり、試料表面に半透明ショットキーゲートを形成した。核スピンの検出には時間分解力一回転測定法を用い、電界を変化させながらNMRスペクトルを測定した。本実験では、静電界によってNMRスペクトルの共鳴周波数を共鳴線幅(20kHz)以上変化させられることを確認した。電気的に核スピンのエネルギー準位を制御できるため、静磁場や歪とは異なりアクティブな制御を行うことができる。これを利用することで、核磁気共鳴の共鳴状態と非共鳴状態とのダイナミックな切り替えが期待できる。<2.核スピンのコヒーレント操作>ここでは核スピンのコヒーレント操作を電気的手法により実現することを目標に実験を行った。本実験では、パルス的に高周波電界を印加することで、核スピンのコヒーレントな振動(ラビ振動)が観測された。更に、位相を制御した連続したパルス列を印加することによって、任意方向への核スピン操作も実証した。核スピン操作は元来磁気的に行われており、電界による核スピンのコヒーレント操作実証は大変意味のある結果である。
KAKENHI-PROJECT-09J07823
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J07823
ジェノゲストを用いた抗癌剤からの卵巣機能保護の研究
抗癌剤に伴う不可逆的な卵巣機能喪失に対する、ジェノゲストの卵巣保護作用を検証した。卵胞数を有意に減少せしめる癌化学療法ラットモデルを作成し、これにジェノゲストを投与することで、原始卵胞プールの減少が阻止され、残存卵胞が癌化学療法終了後に発育排卵し得ることを証明した。更に癌化学療法ラットモデルを交配させ、その出生仔を観察したところ、抗癌剤にジェノゲストを併用することによって、コントロール群には及ばないものの抗癌剤単独投与群と比較して有意に妊孕性を保護することができ、次世代・次々世代の生殖にも影響を及ぼさないことを証明した。ジエノゲストの卵巣保護作用を検証するために、研究実施計画に沿って以下の実験プロトコールに準じて行った。平成24年度には、1予備実験として卵巣毒性が強いcyclophosphamideを、ラットに一定期間投与することによって、卵胞数を有意に減少せしめる至適濃度と投与期間を検証し「癌化学療法ラットモデル」を作成した。2癌化学療法ラットモデルにジエノゲストを投与することで、原始卵胞プールの減少が阻止され、更に残存卵胞が(癌化学療法終了後に)発育・排卵し得ることを、これまでに卵巣保護作用を有する可能性が示唆されてきたGnRHアナログと比較検討することによって、生理学的・内分泌学的・病理組織学的に確認し、ジエノゲストが卵巣保護作用を有する可能性とその至適濃度を証明した。本年度は3癌化学療法モデルラットを交配させ、その出生仔を観察することにより、抗癌剤やジエノゲスト、GnRHアナログが次世代・次々世代の生殖に及ぼす影響を観察した。すなわち、妊娠ラットが生産・死産する割合、分娩時の出生仔数や出生時体重、新生仔の発育状況を、それぞれ観察するとともに、出生仔が性成熟した後に交配させ、その妊娠・出産状況を観察した。抗癌剤にジェノゲスト、GnRHアナログを併用することによって、コントロール郡には及ばないものの抗癌剤単独投与群と比較して明らかに妊孕性を保護することができ、更には次世代・次々世代の生殖には影響を及ぼさないことを証明した。抗癌剤に伴う不可逆的な卵巣機能喪失に対する、ジェノゲストの卵巣保護作用を検証した。卵胞数を有意に減少せしめる癌化学療法ラットモデルを作成し、これにジェノゲストを投与することで、原始卵胞プールの減少が阻止され、残存卵胞が癌化学療法終了後に発育排卵し得ることを証明した。更に癌化学療法ラットモデルを交配させ、その出生仔を観察したところ、抗癌剤にジェノゲストを併用することによって、コントロール群には及ばないものの抗癌剤単独投与群と比較して有意に妊孕性を保護することができ、次世代・次々世代の生殖にも影響を及ぼさないことを証明した。ジエノゲストの卵巣保護作用を検証するために、研究実施計画に沿って以下の実験プロトコールに準じて行った。1予備実験として卵巣毒性が強いcyclophosphamideを、ラットに一定期間投与することによって、卵胞数を有意に減少せしめる至適濃度と投与期間を検証し「癌化学療法ラットモデル」を作成した。2癌化学療法ラットモデルにジエノゲストを投与することで、原始卵胞プールの減少が阻止され、更に残存卵胞が(癌化学療法終了後に)発育・排卵し得ることを、これまでに卵巣保護作用を有する可能性が示唆されてきたGnRHアナログと比較検討することによって、生理学的・内分泌学的・病理組織学的に確認し、ジエノゲストが卵巣保護作用を有する可能性とその至適濃度を証明した。3癌化学療法モデルラットを交配させ、その出生仔を観察することにより、抗癌剤やジエノゲスト、GnRHaが次世代・次々世代の生殖に及ぼす影響を観察した。すなわち、妊娠ラットが生産・死産する割合、分娩時の出生仔数や出生時体重、新生仔の発育状況を、それぞれ観察するとともに、出生仔が性成熟した後に交配させ、その妊娠・出産状況を観察することにより、抗癌剤が次世代・次々世代の生殖に及ぼす影響を検討した。ジェノゲストの卵巣保護作用を検証するために、研究実施経過に沿って以下の実験プロトコールに準じて行った。平成24年度には、1予備実験として卵巣毒性が強いcyclophosphamideを、ラットに一定期間投与することによって、卵胞数を有意に減少せしめる至適濃度と投与期間を検証し「癌化学療法ラットモデル」を作成した。2癌化学療法ラットモデルにジェノゲストを投与することで、原始卵胞プールの減少が阻止され、更に残存卵胞が(癌化学療法終了後に)発育・排卵し得ることを、これまでに卵巣保護作用を有する可能性が示唆されてきたGnRHアナログと比較検討することによって、生理学的・内分泌学的・病理学的に確認し、ジェノゲストが卵巣保護作用を有する可能性とその至適濃度を証明した。平成25年度には、3癌化学療法モデルラットを交配させ、その出生仔を観察することにより、抗癌剤やジェノゲスト、GnRHアナログが、次世代・次々世代の生殖に及ぼす影響を観察した。すなわち、妊娠ラットが生産・死産する割合、分娩時の出生仔数や出生時体重、新生仔の発育状況を、それぞれ観察するとともに、出生仔が性成熟した後に交配させ、その妊娠・出産状況を観察した。抗癌剤にジェノゲスト、GnRHアナログを併用することによって、コントロール群には及ばないものの抗癌剤単独投与群と比較して明らかに妊孕性を保護することができ、更には次世代・次々世代の生殖には影響を及ぼさないことを証明した。
KAKENHI-PROJECT-24791695
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24791695
ジェノゲストを用いた抗癌剤からの卵巣機能保護の研究
本年度は、これまで行ってきた実験を反復することで結果を確証するとともに、これまでの結果を報告するために論文投稿を行い採用された。産科婦人科学平成24年度には、同年の研究実施計画であるジエノゲストの卵巣保護作用の証明において、癌化学療法ラットモデルへのジエノゲスト投与が、これまでに卵巣保護作用を有する可能性が示唆されてきたGnRHアナログと比較検討しても、同等の有効性を有する可能性を示唆する結果を得ることができた。本年度は、平成26年度の研究実施計画である抗癌剤やジエノゲスト、GnRHaの次世代・次々世代の生殖に及ぼす影響の証明において、コントロール郡には及ばないものの抗癌剤単独投与群と比較して明らかに妊孕性を保護することができ、更には次世代・次々世代の生殖には影響を及ぼさないことを証明できた。更に、平成25年度の研究実施であるジエノゲストの卵巣保護メカニズムを明らかにするべく、細胞レベルでの機序の解明を行っているところである。平成24年度の研究実施計画であるジエノゲストの卵巣保護作用の証明において、癌化学療法ラットモデルへのジエノゲスト投与が、これまでに卵巣保護作用を有する可能性が示唆されてきたGnRHアナログと比較検討しても、同等以上の有効性を有する可能性を示唆する結果を得ることができた。さらに平成26年度の研究実施計画である抗癌剤やジエノゲスト、GnRHaの次世代・次々世代の生殖に及ぼす影響の証明においても、GnRHアナログと同等以上の有効性を有する可能性を示唆する結果を得ることができた。現在は平成25年度の研究実施であるジエノゲストの卵巣保護メカニズムを明らかにするべく細胞レベルでの機序の解明を行っているところである。ラットを使用したin vivoにおけるジエノゲストの卵巣保護作用の証明について繰り返し検証を行うとともに、平成25年度の研究実施計画であるジエノゲストの卵巣保護メカニズムの解明を引き続き行っていく予定である。上記実験プロトコールの卵巣組織切片を用いて、組織培養あるいは細胞培養によってin vitroにおける卵巣保護作用の証明を行う。すなわち卵胞細胞のアポトーシス出現率(TUNEL法)や、Caspase-3・Bcl2・Baxなどアポトーシス関連蛋白の発現(Western blot法)を調べることにより、ジエノゲストの卵巣保護作用が卵胞細胞アポトーシスの抑制を介するのか否か、検証する。さらには、ジエノゲストの卵巣保護作用に、細胞生存やアポトーシス抑制に重要な役割を担うERK/MAPK経路やPI3K/Akt経路などの細胞内シグナル伝達系が関与しているか否か、検討する。またジエノゲストによる卵巣保護作用が、GnRHaと同様に視床下部-下垂体系の抑制を介した卵胞発育抑制なのか、それとも視床下部-下垂体系を介さない卵巣への直接作用に基づく卵胞発育抑制なのかを解明するために、種々の血中ホルモンを測定し、卵巣局所におけるFSH受容体・LH受体・エストロゲン受容体・プロゲステロン受容体の発現を免疫組織染色やin situ hybridization法を用いて検討する。さらにはラット卵胞培養系に抗癌剤やジエノゲストを添加し、ジエノゲストが卵胞レベルで直接効果を呈するか否か、検証する。ラットを使用したin vivoにおけるジエノゲストの卵巣保護作用の証明について更なる検証を進めるとともに、平成25年度における当初の予定であるジエノジエノゲストの卵巣保護メカニズムを明らかにする予定である。
KAKENHI-PROJECT-24791695
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米国の湾岸地域に対するオフショア・バランシング:1969年-1979年
オフショア・バランシングとは、海洋により隔絶された地理的優位を利用する大戦略であり、対象地域において域内諸国が勢力均衡を維持できず、自身の死活的国益に直接的な脅威が発生した場合にのみ、戦力を投射する戦略である。本研究では、米国による同戦略の湾岸地域に対する適用に焦点をあて、一次史料に基づきその動態・機能を分析する。具体的には三つの研究目的が存在する。それが(一)本事例における同戦略の適用の有無の確認、(二)同戦略の実際的機能の分析、そして(三)同戦略についての既存の戦略的・理論的枠組みで説明できないと思われるケース(i.e.イラン革命)の考察とその既存の枠組みに内在する問題点の明確化である。オフショア・バランシングとは、海洋により隔絶された地理的優位を利用する大戦略であり、対象地域において域内諸国が勢力均衡を維持できず、自身の死活的国益に直接的な脅威が発生した場合にのみ、戦力を投射する戦略である。本研究では、米国による同戦略の湾岸地域に対する適用に焦点をあて、一次史料に基づきその動態・機能を分析する。具体的には三つの研究目的が存在する。それが(一)本事例における同戦略の適用の有無の確認、(二)同戦略の実際的機能の分析、そして(三)同戦略についての既存の戦略的・理論的枠組みで説明できないと思われるケース(i.e.イラン革命)の考察とその既存の枠組みに内在する問題点の明確化である。
KAKENHI-PROJECT-19J20793
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病院看護師における夜勤時の眠気と先行睡眠・勤務時間・身体活動との関連
予備的検討として、7病院に勤務する看護職者775名に無記名自記式質問紙調査を行い、回答者307名中、回答が完全で睡眠薬を服用していない246名の回答を分析した。調査は日勤日の終業時に行い、当日の時刻毎の眠気をカロリンスカ眠気尺度によって評価した。個人特性・勤務条件・前夜の睡眠との関連を統計学的に検討した。その結果、日勤帯の間の眠気は午後に上昇し、それが終業時まで持続していた。当日朝の睡眠充足感がないこと、起床時刻が遅いことが日勤帯の眠気と関連していた他、若年、未婚、同居者なし、治療中の病気なし、服薬なし、及び前日が休日の場合にも日勤中の眠気が強かった。終業時の眠気得点は、日勤のみの人より交替勤務に就いている人で高かった。日勤帯の眠気の一部は、前日からの睡眠時間短縮や睡眠覚醒リズムの位相のずれを介して生じている可能性が考えられた。若年者、未婚者、一人暮らしでは、このような生活時間の乱れを生じやすい可能性があり、また就寝前にインターネットなどで脳を刺激する活動をし、眠りを浅くしている可能性も考えられる。交替勤務者は日勤者よりも終業時の眠気が強いので、運転して帰宅する場合には交通事故のリスクに注意が必要と考えられた。これらの結果を病院看護職者に対する睡眠衛生教育に活かすことは、医療安全対策の一環として重要なので、前日の生活行動、前夜の睡眠、服薬と治療の詳細等についてさらに詳しく検討することが必要である。これらの結果は2019年の日本睡眠学会で発表の予定で、すでに演題受理されている。上記の予備的検討を通して、本調査の計画立案にあたり留意すべき重要なポイントがいくつか明らかになった。またこれとは別に2つの病院において、睡眠衛生に関する職員研修を行い、これを機会に今後の研究協力について大筋で合意を得た。一方、MicroTag活動量計と解析ソフトを購入し、本調査がスムーズにできるよう使用法の基礎検討を開始した。上記の他に睡眠・勤務記録用の日誌を開発する必要があるが、当初の予定通り2年度目には本調査に着手できる見通しである。睡眠・勤務記録用の日誌を開発し、また活動量計の取扱いに習熟する作業を、夏までに終える。睡眠や眠気のフィールド調査は盛夏を避けるべきことから、秋に本調査を開始できるよう、それまでにフィールド病院と協働して詳細な調査計画を立案する予定である。なお、予備調査の結果は睡眠学会での発表後、すみやかに学術誌に投稿できるよう準備を進めており、やはり夏までに投稿する予定である。予備的検討として、7病院に勤務する看護職者775名に無記名自記式質問紙調査を行い、回答者307名中、回答が完全で睡眠薬を服用していない246名の回答を分析した。調査は日勤日の終業時に行い、当日の時刻毎の眠気をカロリンスカ眠気尺度によって評価した。個人特性・勤務条件・前夜の睡眠との関連を統計学的に検討した。その結果、日勤帯の間の眠気は午後に上昇し、それが終業時まで持続していた。当日朝の睡眠充足感がないこと、起床時刻が遅いことが日勤帯の眠気と関連していた他、若年、未婚、同居者なし、治療中の病気なし、服薬なし、及び前日が休日の場合にも日勤中の眠気が強かった。終業時の眠気得点は、日勤のみの人より交替勤務に就いている人で高かった。日勤帯の眠気の一部は、前日からの睡眠時間短縮や睡眠覚醒リズムの位相のずれを介して生じている可能性が考えられた。若年者、未婚者、一人暮らしでは、このような生活時間の乱れを生じやすい可能性があり、また就寝前にインターネットなどで脳を刺激する活動をし、眠りを浅くしている可能性も考えられる。交替勤務者は日勤者よりも終業時の眠気が強いので、運転して帰宅する場合には交通事故のリスクに注意が必要と考えられた。これらの結果を病院看護職者に対する睡眠衛生教育に活かすことは、医療安全対策の一環として重要なので、前日の生活行動、前夜の睡眠、服薬と治療の詳細等についてさらに詳しく検討することが必要である。これらの結果は2019年の日本睡眠学会で発表の予定で、すでに演題受理されている。上記の予備的検討を通して、本調査の計画立案にあたり留意すべき重要なポイントがいくつか明らかになった。またこれとは別に2つの病院において、睡眠衛生に関する職員研修を行い、これを機会に今後の研究協力について大筋で合意を得た。一方、MicroTag活動量計と解析ソフトを購入し、本調査がスムーズにできるよう使用法の基礎検討を開始した。上記の他に睡眠・勤務記録用の日誌を開発する必要があるが、当初の予定通り2年度目には本調査に着手できる見通しである。睡眠・勤務記録用の日誌を開発し、また活動量計の取扱いに習熟する作業を、夏までに終える。睡眠や眠気のフィールド調査は盛夏を避けるべきことから、秋に本調査を開始できるよう、それまでにフィールド病院と協働して詳細な調査計画を立案する予定である。なお、予備調査の結果は睡眠学会での発表後、すみやかに学術誌に投稿できるよう準備を進めており、やはり夏までに投稿する予定である。活動量計を予算よりわずかに安く調達できたので、残額を次年度の本調査での調査協力者謝金として繰り越すこととした。
KAKENHI-PROJECT-18K10205
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多様なプレ配列に対しミトコンドリアTom20が獲得した認識機構の解明
以前の研究で、ミトコンドリア膜透過装置の一部であるTom20がミトコンドリア前駆蛋白質の多様なプレ配列を認識できるメカニズムとして、「複数のコンホメーションの動的平衡を使っている」という新しい認識様式(動的認識モデル)をX線結晶構造解析とNMRスペクトル解析により提唱した。本研究では、Tom20とプレ配列ペプチドの新たな複合体をエンタルピーの効果を利用して安定化する試みを行った。この結果、新たな相互作用様式の複合体構造を得ることに成功した。これらの研究は、Tom20の可溶性ドメインのみをサンプルとして使用してきたが、今回、膜貫通領域を含むTom20タンパク質全長の発現も試みた。以前の研究で、ミトコンドリア膜透過装置の一部であるTom20がミトコンドリア前駆蛋白質の多様なプレ配列を認識できるメカニズムとして、「複数のコンホメーションの動的平衡を使っている」という新しい認識様式(動的認識モデル)をX線結晶構造解析とNMRスペクトル解析により提唱した。本研究では、Tom20とプレ配列ペプチドの新たな複合体をエンタルピーの効果を利用して安定化する試みを行った。この結果、新たな相互作用様式の複合体構造を得ることに成功した。これらの研究は、Tom20の可溶性ドメインのみをサンプルとして使用してきたが、今回、膜貫通領域を含むTom20タンパク質全長の発現も試みた。ミトコンドリアを構成する蛋白質の大部分は細胞質においてプレ配列がN末端に付加された前駆体蛋白質として合成される。プレ配列は15から70残基程度であり、多様な配列中に約5残基からなるコンセンサス(φχχφφ:φは疎水性残基、χは任意のアミノ酸残基)が明らかになっている。このプレ配列を認識するのがミトコンドリア外膜に存在するTom20蛋白質である。我々はTom20によるプレ配列の認識の広い特異性について、構造を基盤とした理解を目指している。しかしTom20とプレ配列の相互作用は弱く(KdμM)、既存の方法では複合体の詳細な構造情報を得ることが難しい。そこで、Tom20とプレ配列の間に形成させた分子間SS結合、あるいはプレ配列内に導入した分子内SS結合を利用して、複合体を安定化する試みを行ってきた。その結果、新たに1)これまでと異なる結晶系から得られた新規の分子内SS結合複合体、2)Tom20とプレ配列間のリンカーをこれまでより長くした分子間SS複合体について、X線結晶構造解析に成功し、新たに3つの新規複合体構造を得た。うち2つはこれまでに報告している複合体構造と同一の相互作用様式であり、固定化方法の違いによるバイアスが無視できることを示唆している。3つ目の複合体構造は新規の相互作用様式であり、動的平衡にある状態が少なくとも3種存在することを意味している。今後、これらの結晶スナップショット構造とNMR動的情報を組み合わせて、「Tom20によるプレ配列の動的認識モデル」の詳細なメカニズムの解析を目指す。ミトコンドリアを構成するタンパク質の大部分は細胞質においてプレ配列がN末端に付加された前駆体蛋白質として合成される。プレ配列は15から70残基程度であるがその配列は多種類存在し、約5残基からなるコンセンサス(φχχφφ:φは疎水性残基、χは任意のアミノ酸残基)が明らかにされている。このプレ配列を最初に認識するのがミトコンドリア外膜に存在するTom20タンパク質である。そこでTom20が持つプレ配列への広い選択性を構造基盤の観点から明らかにすることを目的とした。弱い相互作用を克服するためにプレ配列中で分子内ジスルフィド結合を形成させ、ヘリックス構造を安定化する試みを行った。昨年度はD型システインを挿入したペプチドを用いた実験を行った。このペプチドもTom20に対する親和性が向上していることをNMR滴定実験によって確認し、その後このプレ配列ペプチドとTom20の複合体結晶構造解析に成功した。本年度はさらに約300種類の条件で結晶化スクリーニングを行ったところ、これまで得られた結晶系とは異なる結晶系で複合体の結晶が得られた。放射光施設でX線結晶構造解析実験を行った結果、高分解能での複合体構造の決定に成功した。その構造は、これまで報告した複合体構造と比較してTom20とプレ配列の相対的な位置関係はほぼ一致していたが、側鎖レベルでは新規の相互作用様式が用いられていた。同マの複合体において異なる結晶系で新たな相耳作用様式の構造が得られたことは、これまでに提唱している「Tom20によるプレ配列の動的認識モデル」を支持する結果である。ミトコンドリアを構成する蛋白質の大部分は細胞質においてプレ配列がN末端に付加された前駆体蛋白質として合成される。プレ配列は15から70残基程度であり、多様な配列中に約5残基からなるコンセンサス(φχχφφ:φは疎水性残基、χは任意のアミノ酸残基)が明らかになっている。このプレ配列を認識するのがミトコンドリア外膜に存在するTom20蛋白質である。我々はTom20によるプレ配列の認識の広い特異性について、構造を基盤とした理解を目指している。しかしTom20とプレ配列の相互作用は弱く(KdμM)、既存の方法では複合体の詳細な構造情報を得ることが難しい。そこで、Tom20とプレ配列の間に形成させた分子間SS結合、あるいはプレ配列内に導入した分子内SS結合を利用して、複合体を安定化する試みを行ってきた。
KAKENHI-PROJECT-22770104
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22770104
多様なプレ配列に対しミトコンドリアTom20が獲得した認識機構の解明
その結果、新たに1)これまでと異なる結晶系から得られた新規の分子内SS結合複合体、2)Tom20とプレ配列間のリンカーをこれまでより長くした分子間SS複合体について、X線結晶構造解析に成功し、新たに3つの新規複合体構造を得た。そこで本年度はTom20によるプレ配列認識のさらに詳細な情報を得るために膜貫通領域をを含めたTom20全長の蛋白質発現を試みた。大腸菌による蛋白質の発現では、BL21 DE3を用いると十分な蛋白質が得られなかったが、アジレント社のArctic Expressを用いることで発現に成功した。この蛋白質発現に成功したことは今後の「Tom20によるプレ配列の動的認識モデル」の詳細なメカニズムの解析について利用できる研究成果である。本年度もTom20とプレ配列ペプチドの複合体新規安定化手法により、新たな相互作用様式の複合体構造を得ることに成功した。これは研究目的である「Tom20によるペレ配列の動的認識モデル」の証拠となり得る研究結果である。24年度が最終年度であるため、記入しない。分子内ジスルフィド結合を利用した複合体の安定化手法については、これまでの研究結果でほぼ目的を達成した。そこで今後に研究では多様なプレ配列に着目し、これまで用いてきたアルデヒド脱水素酵素のプレ配列以外のプレ配列ペプチドを用い研究を進め、動的平衡認識モデルの普遍性について研究を進めていく。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22770104
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22770104
太陽光による水分解反応のためのナノ構造を有する非酸化物系光触媒の開発
水を分解する非酸化物系光触媒の問題点として、水素生成反応活性の低さが挙げられる。この問題点を克服するためには、水素生成活性点の改良が不可欠である。現在までに、我々の研究室では酸化ロジウムと酸化クロムの複合酸化物ナノ粒子の担持が水素生成反応の促進に有効であることを見出しているが、その分散は必ずしも均一ではない。したがって、ナノレベルのサイズを持ち、均一に分散したものを担持できれば触媒活性の飛躍的な向上が期待できる。このような観点から、ナノ構造を制御した光触媒の開発を行った。さらに、幅広いバンドギャップを持つため可視光に応答しない窒化ゲルマニウムに様々な金属元素をドープすることによって、可視光応答性を示す窒化ゲルマニウムの合成を行った。一般的にドープはごく少量の金属を導入することをいうが、本研究では数wt%から数十wt%のいわゆるヘビードープを目指しており、このようなヘビードープ法の確立も視野に入れて実験を行った。水を分解する非酸化物系光触媒の問題点として、水素生成反応活性の低さが挙げられる。この問題点を克服するためには、水素生成活性点の改良が不可欠である。現在までに、我々の研究室では酸化ロジウムと酸化クロムの複合酸化物ナノ粒子の担持が水素生成反応の促進に有効であることを見出しているが、その分散は必ずしも均一ではない。したがって、ナノレベルのサイズを持ち、均一に分散したものを担持できれば触媒活性の飛躍的な向上が期待できる。このような観点から、ナノ構造を制御した光触媒の開発を行った。さらに、幅広いバンドギャップを持つため可視光に応答しない窒化ゲルマニウムに様々な金属元素をドープすることによって、可視光応答性を示す窒化ゲルマニウムの合成を行った。一般的にドープはごく少量の金属を導入することをいうが、本研究では数wt%から数十wt%のいわゆるヘビードープを目指しており、このようなヘビードープ法の確立も視野に入れて実験を行った。
KAKENHI-PROJECT-06F06164
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06F06164
鎖状オリゴピロールの構造制御と新機能創出
本研究では、鎖長の長いオリゴピロール誘導体の一般的な合成ルートを開発し、らせんキラリティーを高い選択性で誘導することを目的とした。両末端にアルデヒド基を有する直鎖状のヘキサピロールのらせん状金属錯体(ヘリケート)に光学活性アミンを導入すると、らせん不斉が誘起される。この複核ヘリケートは複数のコンフォメーションを取りうるが、2,2'-ビピロール部への置換基導入により、95%以上の高いジアステレオ選択性でらせん方向が制御できることを見出した。一方向らせんのヘキサピロールは可視部長波長領域に強いCDシグナルを示すが、可逆的な一電子酸化還元により、大きなCDシグナルの変化を誘起した。本研究では鎖状オリゴピロールの構造制御と新機能創出という研究テーマのもとに、らせん構造の向きを厳密に制御することを第一の目標とし、次に、そのπ電子系に由来する光化学特性、酸化還元特性の解明を行い、構造機能相関の観点からキラリティーが関与する新機能を開拓することを目的としている。平成25年度では両末端にアルデヒド基を有するベンジヘプタピロールを合成し、2価のニッケル、パラジウム、銅の複核錯体を合成した。X線結晶構造解析により複核の1重らせん構造を明らかにすると同時に、溶液中のダイナミクスについても検討した。溶液中では複数のコンフォメーション変化が存在し、らせんの反転に導くコンフォメーション変化は極めて遅い事が明らかになった。1,3-フェニレンスペーサーを鎖中央部に含む特徴ある鎖状オリゴピロールニッケル錯体の末端ホルミル基は種々のアミンと容易に反応し、末端ジイミンを定量的に与えたが、1-シクロヘキシルエチルアミン、1-フェニルエチルアミン、1-(2-ナフチル)エチルアミン、フェニルアラニンエチルエステル、バリノールの光学活性アミンを用いると95%以上のジアステレオ選択性でらせんの向きが一方に偏ることを見いだした。CDスペクトルのgファクターは0.01330.0168であり、らせん不斉を持つ合成物質の中では極めて高いCD強度を示すことも明らかになった。CDシグナルの正負とらせんの方向の関係についても計算化学的な検討により決定することができた。本研究では鎖状オリゴピロールの構造制御と新機能創出という研究テーマのもとに、らせん構造の向きを含めたオリゴピロールの立体構造の制御、そのπ電子系に由来する光化学特性、酸化還元特性の解明を行い、構造機能相関の観点から新機能を開拓することを目的としている。平成24年度では両末端にアルデヒド基を有するヘキサピロールを高収率で合成し、2価のニッケル、パラジウム、銅の複核錯体を合成した。sp3炭素を鎖内に含む特徴ある鎖状ヘキサピロールを金属錯体化することにより、オリゴマーのコンフォメーション自由度を制限するとともに、らせん型に歪んだ2つの4配位平面が、直結した結合軸まわりに回転することにより、らせんの反転を起こすことの出来る分子システムを開発した。末端アルデヒドを光学活性アミンでイミン化することにより、らせんの向きを高い選択性(85%)で制御できることを示すことができた。更に、らせんの向きが一方向に完全に制御された誘導体を再結晶で得て、その可逆的な一電子酸化還元挙動を明らかにする事ができた。本研究では鎖状オリゴピロールのらせん構造制御を中心課題とし、機能開発の元となる特徴的なπ電子系に由来する光物性、レドックス特性についても明らかにすることを目標とする。平成26年度では1,3-フェニレンスペーサーを鎖中央部に含む特徴ある第二世代鎖状ヘキサピロールの複核ニッケル錯体に関するらせん方向制御についてデータをまとめ、一流誌への論文発表を行った(Chem. Eur. J., 2015, 21, 239-246)。このニッケル錯体では末端イミン部の光学活性アミンの不斉情報が効果的にらせん不斉へ転写され、使用した10種のアミンはすべて50%以上の一方向らせん過剰率を示し、そのうち5種は95%以上の一方向らせん過剰率を示した。ニッケル錯体で95%以上のらせん制御能を示した(R)-1-シクロヘキシルエチルアミン、(S)-1-フェニルエチルアミンについて、対応する複核パラジウム錯体(75%、30%)、及び、スペーサーを含まない第一世代の鎖状ヘキサピロールの複核ニッケル錯体(30%、50%)と複核パラジウム錯体(85%、38%)のらせん制御のデータをまとめ比較した。次に、1,4-フェニレンスペーサーを鎖中央部に含む第二世代鎖状ヘキサピロール誘導体の複核ニッケル錯体を合成した。この錯体は、1,3-フェニレンスペーサーの誘導体とは異なり、取りうるコンフォーメーションの数が少なく、上記2つの光学活性アミンのらせん制御能は97%、77%であった。このように、適当なスペーサーの導入がらせん構造の制御に極めて重要である事を明らかにした。また、環状オリゴピロールの複核金属錯体のらせん制御についても検討を行い、光学活性カルボン酸を使用することでらせん方向を完全に偏らせる事に成功した。これらの研究で得られた成果は国際学会2件、国内学会4件で発表している。昨年度までの研究でヘキサピロールの中央部に2,2'-ビピロール、両末端に光学活性イミンを有するパラジウムヘリケート誘導体の立体化学について明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-24550050
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24550050
鎖状オリゴピロールの構造制御と新機能創出
2,2'-ビピロール部がsynのclosed型の他に、antiのopen型およびheterohelical型のコンフォメーションが存在するために、そのらせん方向制御は十分ではなかった。この複雑なコンフォメーションの問題を解決するために予定の研究期間を一年延長した。従来のヘキサピロールヘリケートでは、らせん反転が容易に起こる事とπ共役平面が維持される事を考慮して2,2'-ビピロール部の3,3'-位は無置換であった。この3,3'-位にメチル基を導入したヘキサピロールヘリケートを合成し、その構造について検討した。メチル置換によって、らせん反転は遅くなったが停止することはなかった。更に、3,3'-位メチル基の立体障害はopen型およびheterohelical型のコンフォメーションを選択的に不安定化し、嵩高い末端イミン部を有するヘリケートでは実質的にclosed型のみが存在できることが、NMR解析で明らかになった。そのclosed型のらせん方向のジアステレオ選択性は(S)-1-フェニルエチルアミンの誘導体では89%,(R)-1-シクロヘキシルエチルアミンの誘導体では100%であった。これは対応する3,3'-位無置換の誘導体それぞれのジアステレオ選択性50%, 85%と比べて大きく改善された。また、X線結晶構造とNMRおよびCDスペクトルのデータを総合して、らせんの偏りを決定付けている構造因子がイミン部位の置換基と2,2'-ビピロール部との間のCH-π相互作用やπ-π相互作用であることを明らかにした。本研究では、鎖長の長いオリゴピロール誘導体の一般的な合成ルートを開発し、らせんキラリティーを高い選択性で誘導することを目的とした。両末端にアルデヒド基を有する直鎖状のヘキサピロールのらせん状金属錯体(ヘリケート)に光学活性アミンを導入すると、らせん不斉が誘起される。この複核ヘリケートは複数のコンフォメーションを取りうるが、2,2'-ビピロール部への置換基導入により、95%以上の高いジアステレオ選択性でらせん方向が制御できることを見出した。一方向らせんのヘキサピロールは可視部長波長領域に強いCDシグナルを示すが、可逆的な一電子酸化還元により、大きなCDシグナルの変化を誘起した。ピロールを構成要素とするシングルヘリケートとして、1,3-フェニレンスペーサーを有するヘキサピロールを用いれば、95%以上という非常に高いジアステレオ選択性で一方向らせんのヘリケートを得る事ができる。本研究室オリジナルの合成中間体であるビスアザフルベンを利用する新規な合成法により、多様なオリゴピロール誘導体が高収率で合成できることを明らかにした。これらのオリゴピロール誘導体は1重らせん構造の複核金属錯体を与え、末端アルデヒド基を光学活性アミンによりイミン化するとらせんの向きに偏りが誘起されるが、金属の種類により、光学活性アミンのらせん方向制御能が大きな影響を受ける。24年度に開発した第一世代ヘリケートではニッケルに比べてパラジウムが良い結果を与えたが、25年度に開発した1,3-フェニレンスペーサーを有する第二世代オリゴピロール誘導体の金属錯体では、パラジウムよりもニッケルが良好な結果を与えた。26年度に開発した1,4-フェニレンスペーサーを有する第二世代ニッケルヘリケートも良好ならせん制御能を示した。ほぼ当初の計画通りに優れたらせん制御能を持つヘリケートの開発に成功しているが、これらの開発した誘導体について新機能創出の元となる光物性と酸化還元能に対する分子構造の影響を明らかにする作業が必要である。
KAKENHI-PROJECT-24550050
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若年発症1型糖尿病患者の食行動に関する心理過程解明のための尺度開発
【目的】若年発症1型糖尿病患者が食行動に対してどのような思いを抱いて生きてきたのかについて、彼らによって語られた内容を質的手法を用いて分析し、導き出された心理的特徴をもとにした質問紙を作成・使用し、質問紙によって患者が類型化できるかどうかを検証した。【結果】語られた内容から19のテーマ(エピソードを象徴するもの)が抽出された。この19テーマに基づいて対象を質的手法を用いて類型化することを試みたところ、類型化には3つの解が関係していることを見出した。3つの解は、解1が「発達段階と関係する普通ではないことに対する思い」、解2が「糖尿病であることでの不安や欲求が満たされないことの不満」、解3が「食事制限に関する親への依存と自己責任のバランス」と命名できた。次に19テーマをもとに作成したアンケートの得点についての因子分析の結果、3因子が抽出され、第1因子は「糖尿病であることへの不安や不満などのネガティブな感情をあらわす尺度」(尺度1)、第2因子は「家族と関係するところでの食行動に対する感情をあらわす尺度」(尺度2)、第3因子は「糖尿病であるためにやらなければならないことをポジティブに考え、積極的に対処していこうとする感情をあらわす尺度」(尺度3)と命名できた。すなわち患者を類型化するにはこの3つの因子が関係しているのではないかということが示唆された。これらの結果より3つの解と3つの尺度はそれぞれ対応するものが存在していると考えられ、質的手法で行った類型化の方法が適切であったことが量的手法によって検証できたことが示唆された。【研究の意義および重要性】患者の特徴を捉え個々の状況にあわせた介入方法を検討していくことが今後の看護には必要であり、そのための患者の類型化の方法として、この研究で見出した2つの方法すなわち患者とゆっくりかかわる時間がもてる入院患者などの場合には面接法を用いた質的手法での類型化を、また外来患者のように短時間でしか関われない場合にはアンケート方法を用いた介入方法をというように、患者に合わせた類型化の活用が将来的には可能ではないかと考える。【目的】若年発症1型糖尿病患者が食行動に対してどのような思いを抱いて生きてきたのかについて、彼らによって語られた内容を質的手法を用いて分析し、導き出された心理的特徴をもとにした質問紙を作成・使用し、質問紙によって患者が類型化できるかどうかを検証した。【結果】語られた内容から19のテーマ(エピソードを象徴するもの)が抽出された。この19テーマに基づいて対象を質的手法を用いて類型化することを試みたところ、類型化には3つの解が関係していることを見出した。3つの解は、解1が「発達段階と関係する普通ではないことに対する思い」、解2が「糖尿病であることでの不安や欲求が満たされないことの不満」、解3が「食事制限に関する親への依存と自己責任のバランス」と命名できた。次に19テーマをもとに作成したアンケートの得点についての因子分析の結果、3因子が抽出され、第1因子は「糖尿病であることへの不安や不満などのネガティブな感情をあらわす尺度」(尺度1)、第2因子は「家族と関係するところでの食行動に対する感情をあらわす尺度」(尺度2)、第3因子は「糖尿病であるためにやらなければならないことをポジティブに考え、積極的に対処していこうとする感情をあらわす尺度」(尺度3)と命名できた。すなわち患者を類型化するにはこの3つの因子が関係しているのではないかということが示唆された。これらの結果より3つの解と3つの尺度はそれぞれ対応するものが存在していると考えられ、質的手法で行った類型化の方法が適切であったことが量的手法によって検証できたことが示唆された。【研究の意義および重要性】患者の特徴を捉え個々の状況にあわせた介入方法を検討していくことが今後の看護には必要であり、そのための患者の類型化の方法として、この研究で見出した2つの方法すなわち患者とゆっくりかかわる時間がもてる入院患者などの場合には面接法を用いた質的手法での類型化を、また外来患者のように短時間でしか関われない場合にはアンケート方法を用いた介入方法をというように、患者に合わせた類型化の活用が将来的には可能ではないかと考える。【目的】若年発症1型糖尿病患者が食行動に対してどのような思いを抱いて生きてきたのかについて、彼らによって語られた内容を質的手法を用いて分析、心理的特徴を導き出した。【方法】若年発症1型糖尿病患者で研究の同意が得られた方18名を対象に、「糖尿病発症後から面接時点までに食行動に関してどのような出来事があったか」について語ってもらい、テープ録音に関しての同意を得て、語ってもらった内容全てを録音、その内容を逐語的にすべて記述、質的手法による分析を行った。【結果】語られた食行動に関するエピソード(食行動に対して抱く何らかの思い)を分析した結果、1.自分の意志とは無関係の強制された食摂取・食事制限に対する不満2.高血糖の症状や合併症出現に対する常に存在する顕在的・潜在的不安3.血糖値を中程度に保つことの面倒くささ・困難さ4.自分の食行動に対する周囲の関心に伴う苦痛や違和感5.甘いものや量の多い食事を食べたらいけないと思っている親への抵抗感6.食べたらインスリン注射を打たなければならないということが習慣として身についている7.インスリン注射を打ち続けなければならないことへの抵抗感
KAKENHI-PROJECT-17592294
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若年発症1型糖尿病患者の食行動に関する心理過程解明のための尺度開発
8.病気じゃなければしなくてもよいことに対する面倒くささ9.糖尿病であることで特別視されることでの嫌な思い10.自分自身でがんばるしかないと思っている11.低血糖の対処は生活の一部である12.自分が好きなように食べる日が日常のなかに存在する13.家族の目が届かないところでの隠れ食いの経験14.低血糖で補食することのうれしさ15.とにかく食べたいという思い16.いつ低血糖を起こすかわからないという不安17.体型よりはまずは血糖コントロールが大切18.自分が糖尿病であることを伝えられる信頼できる人がおり、いざというときや精神的に支えてもらっている19.2型ではなく1型であることが抜け道になっている、の19のテーマ(エピソードを象徴するもの)が抽出された。【目的】H17年度に対象から質的手法を用いて導き出した若年発症1型糖尿病患者に特有と思われる食行動に関する心理過程が、若年発症1型糖尿病患者一般にも適応できるものであるかを検討する。【方法】1.H17年度に導き出された心理的特徴を表していると思われる19テーマの元となった(対象によって語られた)エピソードをすべて記述した。2.1型糖尿病の子どもをもつご父兄の方々を対象とした座談会を設け、グループインタビューの方式をとって、食に関する心理的特徴について語ってもらい、1のエピソード以外の新たなエピソードがないかを検証した。3.エピソードを質問項目となるような表現にした。4.質問項目の精選を行い、質問紙(1型糖尿病の方の食に関する思いについてのアンケート)を作成した。5.作成した質問紙を若年発症の1型糖尿病歴が長い患者に回答してもらい(プレテスト)、表現のわかりにくい部分や答えにくい部分を修正した。【結果】1.グループインタビューにおいて1のエピソードと同じような内容のエピソードが多く語られたが、新たなエピソードは得られなかった。2.19テーマ全部のエピソードは総数609であった。これらすべてを質問項目とした質問紙を臨床場面で使うことは不可能なことであるため、質問項目を精選し(99項目)、これに年齢、性別、発症年齢、糖尿病歴を加え総数99項目の質問紙を作成した。(項目精選方法)(1)若年発症1型糖尿病について熟知している研究者3名それぞれが、テーマ毎に1型糖尿病患者があてはまる頻度が高いと思う質問項目を10項目ずつ抽出し、頻度の高いものから順位をつけた。(2)評定者間で話し合いを行い、テーマ毎にあてはまる頻度が高いと思われる項目を5項目ずつ設定した(19テーマ×5項目=計95項目)。3.プレテストにおいて、1つの質問で2つのことについて聞いている質問項目がいくつかある、質問が長すぎて何を聞かれているのかわからないといった指摘を受けた。そこで、より明確にしたい1つのことのみを聞く質問項目としたり、質問が長い項目は表現方法を変えて短くシンプルな内容の質問項目に修正した。【目的】H18年度に作成した「1型糖尿病患者の食に関する思いについてのアンケート」用紙を若年発症1型糖尿病患者に実際に使用し,質問紙によって患者が類型化できるかどうかを検証する。【調査対象】日本国内の1型糖尿病患者を診療している医師のところへ通院している患者のうち,研究の主旨やアンケートの内容が理解でき,研究への同意が得られた若年発症1型糖尿病患者113名。
KAKENHI-PROJECT-17592294
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電気泳動法によるアクチノイド及び放射性Srの精密分離-超高感度検出-回収法の開発
本研究では、放射性試料中のアクチノイド(An)および放射性Srに対する安全な分析法を構築するため、キャピラリー電気泳動法(CE)やポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)などの電気泳動分離場を利用した精密分離-超高感度検出-回収法を確立することを目的とする。本法に必要なCEやPAGEで機能する蛍光プローブを開発するため、これまでになかったNpイオンやSr2+と解離不活性な錯体を形成する最適な配位骨格を探索するとともに、完全分離が困難であったAm3+、Cm3+の単離を実現するための精密分離回収技術を開発する。これにより、高放射線量の試料に対する新しい分析法の構築を目指す。本研究では、放射性試料中のアクチノイド(An)および放射性Srに対する安全な分析法を構築するため、キャピラリー電気泳動法(CE)やポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)などの電気泳動分離場を利用した精密分離-超高感度検出-回収法を確立することを目的とする。本法に必要なCEやPAGEで機能する蛍光プローブを開発するため、これまでになかったNpイオンやSr2+と解離不活性な錯体を形成する最適な配位骨格を探索するとともに、完全分離が困難であったAm3+、Cm3+の単離を実現するための精密分離回収技術を開発する。これにより、高放射線量の試料に対する新しい分析法の構築を目指す。
KAKENHI-PROJECT-19K15604
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催馬楽の成立過程と変遷の研究
本研究は、催馬楽の成立と変遷を明らかにし、その歴史を通観して、日本音楽史全体の中に位置づけることを目標としてきた。1 :文学・史学的アプローチからは、これまで、催馬楽の成立を論じる際に、史実に初めて現れた「催馬楽歌」と、以後勅撰され、御遊等の場で演奏された「催馬楽」とが混同されてきた経緯をふまえ、先年度蒐集した記述を基に、史実と創作の一致点、相違点等を整理し、「催馬楽歌」と「催馬楽」との区別を明らかにした。また、催馬楽の成立を、「催馬楽歌」以前の時代を「黎明期」、「催馬楽歌」の勃興した時代を「成立期」、御遊等に奏されるべく勅撰された時代を「勅撰期」と区分した。その成果については近日博士論文として発表する。2 :音楽学的アプローチからは、琵琶譜『三五要録』異説、箏譜『仁智要録』を含め、催馬楽の旋律情報のデータ化がほぼ完了し、「同音」曲間の比較分析が進行している。分析方法として、先年度より継続している「最長共通部分列(LCS)」を用いた旋律分析法が確立しつつある。LCSは文字列検索システムや遺伝子分析などの分野に活用される概念で、これを応用することにより、主観的になりがちな「同音」の判断に、客観的な指標を提示することができる。従来の方法では、分析曲の類似箇所のみを抽出して一致率を分析していたため、「同音」認定の客観的基準に欠けていたが、この分析法ならば、機械的に同音評価を下すことができる。具体的な成果については近日博士論文に収載する。3 :文・史・音の成果の統合をはかるべく、平成23年7月、法政大学国文学会で発表した内容を発展させ、「催馬楽成立研究の可能性ー「二重の同音性」を手がかりに」としてまとめた。催馬楽における二種の同音関係を音楽的に分析することによって、文・史の成果を補強し、裏付けていくという研究のモデルを示した。(抄録なし)本研究の目的は、催馬楽の成立と変遷を明らかにし、その歴史を通観して、日本音楽史全体の中に位置づけることである。A:文学・史学的アプローチからは、まず六国史の記事を精読し、特に聖武天皇期、仁明天皇期の記事を蒐集、催馬楽の形成状況を段階的に追っている。同時に、『源氏物語』等の物語引用、平安中期の催馬楽取りの和歌など、催馬楽が歌われていた時代の理解を援用するという、催馬楽の詞章解釈の一指針を示した(本塚2013.3)。また、催馬楽の最重要資料の一つである鍋島家本『催馬楽』について、新たに古筆学の視点から、資料の性格を量り、執筆中の翻刻・解題にその成果を反映している。B:音楽学的アプローチからは、催馬楽の成立を解明する上で重要な鍵となる「同音」についての再定義を行っている。琵琶譜『三五要録』異説、箏譜『仁智要録』を含め、旋律情報のデータ化を進行中。また2013年3月、京都大学付属図書館に赴き、善本とされる菊亭本『仁智要録』についての調査を行い、資料の重要性を再確認、諸本の取り扱いを検討している。C:文・史・音の成果の統合をはかるべく、日本歌謡学会春季大会における発表(本塚2012.5、論文は2012.12)において、各分野協働の重要性について主張した。質疑やその後の懇談の場で反響があり、文学の場における「同音」についての知識共有への需要を実感した。また、発表に対する文学界の反応として、岡田ひろみ「『源氏物語』催馬楽引用再考一「同音グループ」という特質から一」(『KYORITSU REVIEW』41号、2013年3月)がある本研究は、催馬楽の成立と変遷を明らかにし、その歴史を通観して、日本音楽史全体の中に位置づけることを目標としてきた。1 :文学・史学的アプローチからは、これまで、催馬楽の成立を論じる際に、史実に初めて現れた「催馬楽歌」と、以後勅撰され、御遊等の場で演奏された「催馬楽」とが混同されてきた経緯をふまえ、先年度蒐集した記述を基に、史実と創作の一致点、相違点等を整理し、「催馬楽歌」と「催馬楽」との区別を明らかにした。また、催馬楽の成立を、「催馬楽歌」以前の時代を「黎明期」、「催馬楽歌」の勃興した時代を「成立期」、御遊等に奏されるべく勅撰された時代を「勅撰期」と区分した。その成果については近日博士論文として発表する。2 :音楽学的アプローチからは、琵琶譜『三五要録』異説、箏譜『仁智要録』を含め、催馬楽の旋律情報のデータ化がほぼ完了し、「同音」曲間の比較分析が進行している。分析方法として、先年度より継続している「最長共通部分列(LCS)」を用いた旋律分析法が確立しつつある。LCSは文字列検索システムや遺伝子分析などの分野に活用される概念で、これを応用することにより、主観的になりがちな「同音」の判断に、客観的な指標を提示することができる。
KAKENHI-PROJECT-12J07478
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J07478
催馬楽の成立過程と変遷の研究
従来の方法では、分析曲の類似箇所のみを抽出して一致率を分析していたため、「同音」認定の客観的基準に欠けていたが、この分析法ならば、機械的に同音評価を下すことができる。具体的な成果については近日博士論文に収載する。3 :文・史・音の成果の統合をはかるべく、平成23年7月、法政大学国文学会で発表した内容を発展させ、「催馬楽成立研究の可能性ー「二重の同音性」を手がかりに」としてまとめた。催馬楽における二種の同音関係を音楽的に分析することによって、文・史の成果を補強し、裏付けていくという研究のモデルを示した。部門により進行状況にばらつきがあるが、学会発表(本塚2012.5)で呼びかけた文・史・音分野の協働についても反響があり、おおむね順調といえる。進展した部門は、主に文・史学方面の、催馬楽関連記事の蒐集、および資料の検討について(本塚2012.12)で、催馬楽の詞章解釈の視点が定められ(本塚2013.3)、催馬楽成立の大筋の見通しもついた。遅れている部門は、旋律分析法の再検討、および旋律のデータ化等であるが、文・史学方面の成果によって理論構築が先に進み、それに伴って、以降の作業効率の改善が期待できる。A:文・史学方面では、楽書、日記、六国史等の催馬楽関連記事の蒐集を継続する。特に、聖武天皇期、仁明天皇期に集中して見られる催馬楽関連記事について、順次整理・起稿していく。B:音楽方面では、引き続き催馬楽関連資料の翻刻、および旋律のデータ化を進める。より客観的な「同音」定義をめざし、LCS(最長共通部分列)の応用を画策中。箏譜『仁智要録』の本文検討が課題だが、3月に行った京都大学附属図書館蔵菊亭本『仁智要録』、および『類箏治要』の調査を踏まえ、諸本の取り扱いを定めていく。C:最後に、文・史・音の成果を統合し、催馬楽の成立過程を明らかにしていく。諸方面からの理解を得、意見や批判を仰ぐべく、一つ一つの術語法を厳密に整理することを心がける。(抄録なし)
KAKENHI-PROJECT-12J07478
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J07478
人工格子による超高感度光磁気センサ・メモリ創成
◆室温強磁性を示す(La, Ba)MnO_3歪み薄膜の作成およびデバイス応用レーザMBE法を用い、SrTiO_3単結晶基板上に(La_<1-x>Ba_x)MnO_3薄膜(x=0.100.20)の極薄膜(厚さ20nm5nm)を作成する事により、強磁性転移温度が上昇し、室温でも強磁性を示すことを見出した。更に周波数シフト非接触磁気力顕微鏡(Frequency Shift Non Contact MFM)を適用し室温で数10nmサイズの強磁性分域が原子レベルで平坦な薄膜表面上に現れる様子の観察に成功した。これは室温で動作するスピンデバイス作成に道を開く成果である。さらにこの(La,Ba)MnO_3歪み薄膜のTCR(Thermal Coefficient of Resistivity:熱抵抗係数)を測定し、室温で約6%と巨大な値を示すことを見出した。同成果は赤外線センサーとして利用可能であり(通常使用されるシリコン半導体ベース材料でTCR=1-2%)、得られた薄膜をリソグラフィー(フォトリソグラフィーおよびイオンシャワーエッチング)を用い2次元アレイ(4×4素子:200μmサイズ)を作成し、赤外線センサーのプロトタイプを作成した。◆走査型プローブ顕微鏡を用いた、遷移金属酸化物のナノリソグラフィー上記(La, Ba)MnO_3を含む遷移金属酸化物は強相関電子系であり数十ナノメートルの領域内で電子相分離などの特異な現象が生じていると考えられており、数十ナノメートルサイズでデバイスを作成できれば強相関電子系に特有な新規な現象およびデバイス動作が可能であると考えられる。しかし遷移金属酸化物には有効なナノリソグラフィー技術は一般に無い。これに対して原子間力顕微鏡(AFM)を用い薄膜観察中に電圧を印加する事によりナノスケールでリソグラフィーが可能なことを示した。機能性酸化物薄膜形成の標準基板であるNbドープSrTiO_3単結晶、室温強磁性(La,Ba)MnO_3極薄膜、完全スピン分極Fe_3O_4薄膜材料に対して同手法を適用し、最小40nm幅のAFMリソグラフィーを達成した。強磁性・超巨大磁気抵抗を示すMn酸化物をベースとした強相関電子系半導体と光学半導体酸化物をナノスケールで組み合わせたp-n接合・人工格子を作製し、界面を通じて電子の動きを制御する事により光・電場で強磁性/非磁性、金属状態/絶縁状態、超巨大磁気抵抗等の強相関電子物性を室温においてスイッチできる材料を創成する。◆p型伝導-室温強磁性・超巨大磁気抵抗酸化物-(La_<1-x>Ba_x)MnO_3の良質な単結晶薄膜を作製した。各種物質において、薄膜化した際に良好な結晶性、表面・界面平坦性、最適キャリア濃度、電気輸送特性、磁性を示す条件を、P0_2(酸化雰囲気)-T_S(基板温度)相図を作成し明らかにした。◆上記薄膜の膜厚を減少させ3nmまで室温強磁性が発現する事を示した。同時に周波数シフトMFMを用いナノメートルサイズの磁気ドメインの直接観察に成功した。(Nature Material投稿中)◆Pb(Zr,Ti)O3/-(La_<1-x>Ba_x)MnO_3による強誘電体電界効果トランジスタを作製し、室温(282K)での電界による(強磁性)転移温度の変調(変調幅2.5K)を達成した。◆更に効率的なデバイスを作製するためにはリソグラフィー技術が不可欠である。フォトリソグラフィーとイオンシャワーシステムを立ち上げ、マイクロパターンニングを行った。◆室温強磁性を示す(La, Ba)MnO_3歪み薄膜の作成およびデバイス応用レーザMBE法を用い、SrTiO_3単結晶基板上に(La_<1-x>Ba_x)MnO_3薄膜(x=0.100.20)の極薄膜(厚さ20nm5nm)を作成する事により、強磁性転移温度が上昇し、室温でも強磁性を示すことを見出した。更に周波数シフト非接触磁気力顕微鏡(Frequency Shift Non Contact MFM)を適用し室温で数10nmサイズの強磁性分域が原子レベルで平坦な薄膜表面上に現れる様子の観察に成功した。これは室温で動作するスピンデバイス作成に道を開く成果である。さらにこの(La,Ba)MnO_3歪み薄膜のTCR(Thermal Coefficient of Resistivity:熱抵抗係数)を測定し、室温で約6%と巨大な値を示すことを見出した。同成果は赤外線センサーとして利用可能であり(通常使用されるシリコン半導体ベース材料でTCR=1-2%)、得られた薄膜をリソグラフィー(フォトリソグラフィーおよびイオンシャワーエッチング)を用い2次元アレイ(4×4素子:200μmサイズ)を作成し、赤外線センサーのプロトタイプを作成した。◆走査型プローブ顕微鏡を用いた、遷移金属酸化物のナノリソグラフィー上記(La, Ba)MnO_3を含む遷移金属酸化物は強相関電子系であり数十ナノメートルの領域内で電子相分離などの特異な現象が生じていると考えられており、数十ナノメートルサイズでデバイスを作成できれば強相関電子系に特有な新規な現象およびデバイス動作が可能であると考えられる。しかし遷移金属酸化物には有効なナノリソグラフィー技術は一般に無い。
KAKENHI-PROJECT-02F00672
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02F00672
人工格子による超高感度光磁気センサ・メモリ創成
これに対して原子間力顕微鏡(AFM)を用い薄膜観察中に電圧を印加する事によりナノスケールでリソグラフィーが可能なことを示した。機能性酸化物薄膜形成の標準基板であるNbドープSrTiO_3単結晶、室温強磁性(La,Ba)MnO_3極薄膜、完全スピン分極Fe_3O_4薄膜材料に対して同手法を適用し、最小40nm幅のAFMリソグラフィーを達成した。
KAKENHI-PROJECT-02F00672
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02F00672
「リアリティTV」時代におけるドキュメンタリー文学の可能性
Popular Culture Association(Texas/Southwest)にて昨年度末(2007年2月)に行った、研究発表と学会参会による研修成果を軸に一年間の研究活動を展開した。アメリカ合衆国での「リアリティTV/メディア・スタディーズ」に関する最新の研究動向を参照した経験に基づき、日本映像学会第33回全国大会にて、主に「アメリカ合衆国におけるリアリティTVの動向」「日米および世界におけるリアリティTVをめぐる状況の比較考察と展望」にまつわる研究発表、さらに文学・環境学会(ASLE)日韓合同シンポジウム(8月)にて「1960年代以降の日本における公害と怪獣の創造」にまつわる研究発表を行った。共にアメリカ・日本・アジアに及ぶ比較文化的観点から、メディアを中心に時代状況とドキュメンタリー表現の関係について考察した成果であり、本研究課題の最終年度をしめくくるにあたり、3年間の研究成果の一端を具体的なケース・スタディの形で示すことができた。若手研究での研究課題であることからも、研究企画を課題期間終了後も発展継承させていく必要性があるだろう。学会での発表原稿を加筆改稿した上で、主要な学術雑誌への投稿論文としてまとめる機会を持ちたい。ドキュメンタリー作品が虚構性に対して自覚的であることをますます強いられていく状況の中で、「作り物の世界」を現出させるためにドキュメンタリー製作を作中に組み込む「モキュメンタリー」表現のあり方について関心をより一層深めるに至った。近年のドキュメンタリー表現において大きな潮流となっている、「セルフ・カメラ」の手法によるアイデンティティ探求の試みについて、さらに焦点を絞った検討を続けていきたい。研究テーマをより限定した形で、次の研究段階に進む足がかりを築き上げることができたことが、本研究期間の最大の収穫である。ドキュメンタリー映画再評価の現況から、文学においてノン・フィクションの分野がどのように探求されてきたかを展望している。はたして純粋に客観的に事実を描くことは可能であるのか。ノン・フィクションのジャンルの歴史は常に虚構性についての根源的な問いかけでもあった。1970年代に現れたニュー・ジャーナリズムの台頭は、客観的であるべきとされていたノン・フィクションのジャンルにあえて一人称の視点を導入することによって、「ノン・フィクション」というジャンルの制約から解き放たれ、新しい光を投げかけた。文学研究において「ノン・フィクション」のジャンルの概観と、小説や映画などの隣接する分野との比較考察は未だ研究の途上にある。映像におけるダイレクト・シネマと称する一人称のカメラ・ワークがニュー・ジャーナリズムに与えた影響など、文字媒体のみに視野を限定していたのでは見えてこない側面が少なからずある。最新の米国TVバラエティ番組に目を向けるならば、「リアリティTV」と称されるノン・フィクションのフィクション化が極度に進んだ実例を目にすることができる。裁判やデートなどタレントではない一般視聴者の私生活にカメラを向ける行為までもがフィクションの誘惑から免れることがもはやできない。向けられたカメラを一般視聴者が意識した瞬間に、あるいはメディアを媒介にした瞬間に、純粋なノン・フィクションという営為はすでに成立しえない。また、虚構として描くことによりリアリティがもたらされ、ノン・フィクションやドキュメンタリーが虚構性を内包せざるをえなくなる。この「リアリティTV」時代にフィクションとノン・フィクションはどのように交差・融合、あるいは回避しえるのか。ニュー・ジャーナリズム以降、現在のドキュメンタリー再評価に至るまでの時代を概観しつつ、映像・文学表現を含む新しい表現の可能性についての分析を継続していく。ドキュメンタリー映画再評価の現況から、文学においてノン・フィクションの分野がどのように探求されてきたかを展望している。はたして純粋に客観的に事実を描くことは可能であるのか。最新の米国TVバラエティ番組に目を向けるならば、「リアリティTV」と称されるノン・フィクションのフィクション化か極度に進んだ実例を目にすることができる。裁判やデートなどタレントではない一般視聴者の私生活にカメラを向ける行為までもがフィクションの誘惑から免れることがもはやできない。向けられたカメラを一般視聴者が意識した瞬間に、あるいはメディアを媒介にした瞬間に、純粋なノン・フィクションという営為はすでに成立しえない。また、虚構として描くことによりリアリティがもたらされ、ノン・フィクションやドキュメンタリーが虚構性を内包せざるをえなくなる。この「リアリティTV」時代にフィクションとノン。フィクションはどのように交差・融合、あるいは回避しえるのか。平成18年度は英米文化学会での学会発表および論文発表(「『ノン・フィクション。ノヴェル』再考」)、2007Annual SW/TX Popular/American Culture Association Meetingでの学会発表("The Possibility of Post Documentary Style: The Meeting of Documentary and Fiction in theEra of Reality TV"、2007年2月15日、於。米国アルバカーキ)をけじめ、成果の一部をまとめることができた。ニュー・ジャーナリズム以降、現在のドキュメンタリー再評価に至るまでの時代を概観しつつ、映像・文学表現を含む新しい表現の可能性についての分析を引き続き継続していく。Popular Culture Association(Texas/Southwest)にて昨年度末(2007年2月)に行った、研究発表と学会参会による研修成果を軸に一年間の研究活動を展開した。アメリカ合衆国での「リアリティTV/メディア・スタディーズ」に関する最新の研究動向を参照した経験に基づき、日本映像学会第33回全国大会にて、主に「アメリカ合衆国におけるリアリティTVの動向」「日米および世界におけるリアリティTVをめぐる状況の比較考察と展望」にまつわる研究発表、さらに文学・環境学会(ASLE)日韓合同シンポジウム(8月)にて「1960年代以降の日本における公害と怪獣の創造」にまつわる研究発表を行った。
KAKENHI-PROJECT-17720070
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17720070
「リアリティTV」時代におけるドキュメンタリー文学の可能性
共にアメリカ・日本・アジアに及ぶ比較文化的観点から、メディアを中心に時代状況とドキュメンタリー表現の関係について考察した成果であり、本研究課題の最終年度をしめくくるにあたり、3年間の研究成果の一端を具体的なケース・スタディの形で示すことができた。若手研究での研究課題であることからも、研究企画を課題期間終了後も発展継承させていく必要性があるだろう。学会での発表原稿を加筆改稿した上で、主要な学術雑誌への投稿論文としてまとめる機会を持ちたい。ドキュメンタリー作品が虚構性に対して自覚的であることをますます強いられていく状況の中で、「作り物の世界」を現出させるためにドキュメンタリー製作を作中に組み込む「モキュメンタリー」表現のあり方について関心をより一層深めるに至った。近年のドキュメンタリー表現において大きな潮流となっている、「セルフ・カメラ」の手法によるアイデンティティ探求の試みについて、さらに焦点を絞った検討を続けていきたい。研究テーマをより限定した形で、次の研究段階に進む足がかりを築き上げることができたことが、本研究期間の最大の収穫である。
KAKENHI-PROJECT-17720070
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17720070
分子性結晶構造と超伝導および磁性における多重バンド効果の関連性に関する理論的研究
本研究において、MgB_2超伝導体に代表される多重ギャップ超伝導発現には複数フェルミ面が重要であるという観点から、複数バンドからなる複数フェルミ面がもたらす物性発現機構を理論的に探究することを主眼に研究を行った。本研究では、(1)超伝導における多重バンド効果のさらなる解明、(2)多重バンド効果による磁性発現の可能性、(3)有機分子性結晶における分子配向による多重バンド効果発現法則の探索、を行うことが目的である。この複数フェルミ面がもたらす新規な物性発現効果に対する理論的考察を行い、結晶構造の違いによる多重バンド効果の理論的予測を行った。超伝導発現における多重バンド効果では、多重バンド超伝導状態が単一バンド超伝導より安定化することが理論的に示された。この結果から超伝導転移温度の上昇が予測された。電子-格子相互作用による超伝導発現の場合、バンド間電子対トンネルが小さい場合は二つの異なる超伝導ギャップが存在し、バンド間対トンネルが大きい場合は区別が付かないことが示された。また、単一バンド理論の枠組みでは超伝導が発現する場合は有効電子間相互作用が引力で無ければならないが、フェルミ面が二つのバンドを横切る場合は斥力電子間相互作用でも超伝導発現することが示された。磁性における多重バンド効果では、二重バンド構造と磁性についての理論的考察を行った。単一バンド理論に相当するフェルミ面が1つのバンドを横切る場合は反強磁性的であるのに対し、フェルミ面が2つのバンドを横切る場合にはhalf-filling近傍で強磁性的になる可能性を示すことができた。有機分子性結晶の多くに見られるヘリーンボーン構造と二層正方格子構造についての物性発現予測を行った結果、二層正方格子構造では多重バンド効果により新規な磁性および超伝導性発現の可能性があることが示された。また、外場下での物性変化についても考察を行った。本研究において、MgB_2超伝導体に代表される多重ギャップ超伝導発現には複数フェルミ面が重要であるという観点から、複数バンドからなる複数フェルミ面がもたらす物性発現機構を理論的に探究することを主眼に研究を行った。本研究では、(1)超伝導における多重バンド効果のさらなる解明、(2)多重バンド効果による磁性発現の可能性、(3)有機分子性結晶における分子配向による多重バンド効果発現法則の探索、を行うことが目的である。この複数フェルミ面がもたらす新規な物性発現効果に対する理論的考察を行い、結晶構造の違いによる多重バンド効果の理論的予測を行った。超伝導発現における多重バンド効果では、多重バンド超伝導状態が単一バンド超伝導より安定化することが理論的に示された。この結果から超伝導転移温度の上昇が予測された。電子-格子相互作用による超伝導発現の場合、バンド間電子対トンネルが小さい場合は二つの異なる超伝導ギャップが存在し、バンド間対トンネルが大きい場合は区別が付かないことが示された。また、単一バンド理論の枠組みでは超伝導が発現する場合は有効電子間相互作用が引力で無ければならないが、フェルミ面が二つのバンドを横切る場合は斥力電子間相互作用でも超伝導発現することが示された。磁性における多重バンド効果では、二重バンド構造と磁性についての理論的考察を行った。単一バンド理論に相当するフェルミ面が1つのバンドを横切る場合は反強磁性的であるのに対し、フェルミ面が2つのバンドを横切る場合にはhalf-filling近傍で強磁性的になる可能性を示すことができた。有機分子性結晶の多くに見られるヘリーンボーン構造と二層正方格子構造についての物性発現予測を行った結果、二層正方格子構造では多重バンド効果により新規な磁性および超伝導性発現の可能性があることが示された。また、外場下での物性変化についても考察を行った。本年度得られた結果を大別すると以下の二点に分けられる。(1)超伝導における多重バンド効果繰り込み群の方法を用いて超伝導の多重バンド効果を解析した。相互作用がs対称であるという仮定の下、バンド内電子間相互作用g_1およびバンド間電子対散乱g_2の2種類の相互作用が超伝導状態を安定化する条件を導いた。|g_1|>|g_2|である場合はバンド内相互作用g_1が負値である場合、すなわち引力的相互作用である場合にのみ超伝導状態が安定化する。一方、|g_1|<|g_2|の場合はバンド間電子対散乱g_2が正値でも負値でも超伝導状態が安定化することが分かった。また後者の場合、多重バンド効果により超伝導ギャップが二つ存在する二重バンド超伝導となることが示された。(2)磁性における多重バンド効果Hubbardモデルを用いて2次元2サイト格子モデルの磁性を考察した。Random-phase近似の範囲内でHeisenbergモデル中の有効交換積分Jをon-siteクーロン斥力Uおよび帯磁率χを用いて近似的に表わした。2次元2サイト格子モデル中のサイト間transfer積分のパラメータを変えながらJを数値的に見積もった。その結果、単一バンド理論に相当するフェルミ面が1つのバンドを横切る場合は反強磁性的であるのに対し、フェルミ面が2つのバンドを横切る場合(2バンド理論)にはhalf-filling近傍で強磁性的になる可能性を示すことができた。このことは多重バンド効果による強磁性発現およびスピン三重項超伝導の可能性を示すものである。本年度得られた結果を大別すると以下の二点に分けられる。(1)結晶構造と多重バンド効果2重バンド構造を取り得る二つの結晶構造についての理論的考察を行った。
KAKENHI-PROJECT-15550010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15550010
分子性結晶構造と超伝導および磁性における多重バンド効果の関連性に関する理論的研究
有機分子性結晶の多くに見られるヘリーンボーン構造と無機結晶に見られる2層構造について、Random-phase近似の範囲内でHeisenbergモデル中の有効交換積分Jを見積もることにより結晶系の磁気的相互作用を調べた。ヘリーンボーン構造はフェルミ面が変化しても常に反強磁性的相互作用をすることが分かった。また2層構造ではhalf-filling近傍では強磁性的相互作用となり、フェルミ面が変化することにより反強磁性的相互作用となることが理論的に示された。このことは2層構造をもつ無機結晶ではホールもしくは電子のドーピングにより強磁性-反強磁性転移の可能性を示唆している。ヘリーンボーン構造を持つ有機分子性結晶ではhalf-filling近傍で大きな反強磁性相互作用を示す。(2)多重バンド系における有効電子間相互作用Hubbardモデルを用いて2次元2サイト格子モデルの有効電子間相互作用を考察した。金森のt-行列法(ladder近似)を2バンド系に拡張を行った。この2バンド系ladder近似を用いて有効電子間相互作用を理論的に考察した。この結果、バンドに電子がほとんど充足された状態(ホールドーピング)もしくは電子が少し充足された状態(電子ドーピング)では電子対バンド間散乱過程が現れることが分かった。このことは2バンド超伝導発現の可能性を示すものである。
KAKENHI-PROJECT-15550010
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製品開発プロジェクトにおけるセミ・オープンイノベーションの有効性に関する研究
本研究では次の3つの成果を得た。まず「セミ・オープンイノベーション」モデルは関連会社などを考慮した場合、特に有効であることが示された。具体的には自動車などの部品サプライヤーとの関係性を含めたトータルな製品開発システムを構想することが効果的であることが分かった。また「製品コンセプト創造と市場機会の探索」は、セミ・オープンイノベーションの初期段階、特に本格的に開発に着手する前段階において効果的であることが示された。さらにセミ・オープンイノベーションのモデルを拡大・発展させるためには社会・経済・技術などとの関係を明確化することが必要でそのための理論的基盤を形作ることに成功した。本研究では次の3つの成果を得た。まず「セミ・オープンイノベーション」モデルは関連会社などを考慮した場合、特に有効であることが示された。具体的には自動車などの部品サプライヤーとの関係性を含めたトータルな製品開発システムを構想することが効果的であることが分かった。また「製品コンセプト創造と市場機会の探索」は、セミ・オープンイノベーションの初期段階、特に本格的に開発に着手する前段階において効果的であることが示された。さらにセミ・オープンイノベーションのモデルを拡大・発展させるためには社会・経済・技術などとの関係を明確化することが必要でそのための理論的基盤を形作ることに成功した。1.理論化に関する実績研究目的の1番目に掲げている「セミ・オープンイノベーションの実現性ならびに実現するための組織的な機能や仕組みを明らかにする」という観点で研究を進めた。特に外部知識と内部知識および多事業部やグループ企業にまたがる準内部知識間の組織的相互作用を解明するモデルを構築するために、「企業境界論」、「内部組織論」、「ネットワークマネジメント論」などの諸理論に基づく広範な理論的検討を行った。この際、従来のオープンイノベーションモデルの企業の境界線(boundary of the firm)に「知識の解釈」や「知識の受発信」といった組織的な能力を組み込むことによって「セミ・オープンイノベーション」モデルの理論化を試みた。現時点では、まだ十分な理論フレームワークの構築には至っていないが、モデル構築のための要素となる概念をいくつか抽出できたこともあり、構築のための糸口をつかんでいる段階である。2.実証研究に関する実績セミ・オープンイノベーションの実現性を推し量るために、企業事例比較に基づく実証的な分析を試みた。セミ・オープンイノベーションを意識的に実践している企業もあれば、そうではない企業もあるはずで、中には存在すら認められない企業もあると考えられるため、企業側の意識・無意識に関わらず、セミ・オープンイノベーションの定義に適う企業をオープンエンドの非構造化インタビューに基づくパイロット調査によって事前に数社選択した。しかしインタビュー内容の構造化が十分ではなかったため、再度、継続的な調査を実施することを確認した。25年度は24年度に引き続きインタビューや参与観察などを実施した。しかしこうした手法だけでは十分な情報が得られない可能性が高かったためfront end(前段階)に関する研究ノウハウを活かし、広範囲な質問票調査を実施を試みた。しかし研究代表者が長く英国に滞在しながら研究を進めたため英国内および欧州での調査は進展したものの日本国内における十分なパイロット調査を実施することができなかった。そこで25年度は質問票の設計を主として行うこととし基本設計の全体像を描いた。これまでにfront endの効果を調査する項目はすでに完成していたが、セミ・オープンイノベーションを推し量る項目については平成23年度から継続して実施してきた文献調査やパイロットインタビュー調査によって完成しつつあった。そこで研究代表者が中心となり、パイロット調査で見極めたfront endの段階に到達した技術シーズを有している英国ならびに他の欧州企業のプロジェクトに対してin-depthなインタビューや参与観察を実施した。そうした調査を通じて、ある程度、モデル化が進展してきたため、この完成しつつあるモデルをを質問票の設計に反映させることが可能となった。結果として一連の質問票調査のために構築されてきた研究フレームワークを基にパイロット調査した内容についての研究発表を数件と先行して収集してきた事例に対する事例研究などの研究成果が生まれた。24年度の最大の研究目的である「セミ・オープンイノベーションにおいて「製品コンセプト創造と市場機会の探索」を製品開発のどのプロセス段階に導入すれば効果的か」という問いに対しfuzzy front endの研究蓄積(Nagahira et al., 2006:研究業績29など)を交え、ケンブリッジ大学のProbert教授とハンブルグ工科大学のHerschtatt教授の協力を得て研究を進めた。欧州企業のインタビュー調査を精力的に推し進めたが、実際の観察には長期間を要し、インタビューだけでは十分な情報が得られない可能性が高いと判断した。そこでfront end(前段階)に関する研究ノウハウを活かし、広範囲な質問票調査を実施する計画を24年度は詰めた。パイロット調査を効果的とするために、最適な企業のピックアップに努め、セミ・オープンイノベーションが存在する可能性が認められた企業に対し一部志向的なインタビューを実施することができた。またセミ・オープンイノベーションを推し量る項目についてもある程度定まり。まだまだモデル化が十分でないので、フィールドワークよりも文献調査を継続するとともに、front endの段階に到達した技術シーズを有しているプロジェクトに対してin-depthなインタビューや参与観察を実施した。平成26年度は、セミ・オープンイノベーションについて「外部知識および内部知識と、同一企業内の他事業部や企業グループおよび周辺の緊密な取引企業間に存在する準内部知識などとの相互作用によるイノベーション」という当初の定義に基づくモデリングを行いほぼ完成した。ただオープンイノベーションを企業境界研究へと連結させることも企図していたが最終的にこの点は十分に詰めることができなかった。
KAKENHI-PROJECT-23330135
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23330135
製品開発プロジェクトにおけるセミ・オープンイノベーションの有効性に関する研究
またfuzzy front endの研究領域での「コンセプト創造・市場機会」に関する知識の解釈や受発信の実態に迫る知見が比較的薄く、この点においても新たな研究の方向性を切り開く可能性を有している点に鑑み、この領域における新しい知見をもたらすことができた。またイノベーションに導入される知識の履歴や社会的動向を勘案した「社会的文脈からのセミ・オープンイノベーション」のモデルを検討するうえで、近年台頭著しいmulti-levelperspectiveを採用し、ミクローマクロの両面から見据えた新たなイノベーション・モデルとして発展・充実させようと試みたが、研究期間内にmulti-levelperspective理論が十分に成熟してこなかったため表層的な検討に終わったことは大変残念である。最終的に環境優良車の普及戦略に関連した事例において本研究の一部が活用されるに至り当初予定していた事例研究の実施と合わせて新たな適応領域を開拓することができた。これらは当該年度に実施されたいくつかの研究発表の中に結実している。26年度が最終年度であるため、記入しない。技術経営26年度が最終年度であるため、記入しない。「セミ・オープンイノベーション」モデル構築に関しては十分な理論フレームワークの構築には至っていないが、要素概念を抽出できているなど緩やかに進展している。加えて実証分析のためのフィールドワークも、まだまだ十分ではないが実施できており質問票調査のための構造化のヒントが得られている。質問票調査の設計に思いのほか時間を要したが、設計内容はむしろ緻密化してきておりこの意味においては当初の計画以上の成果といえる。ただ時間的なスケジュールの中においては遅れているため「おおむね順調」と評価したい。概ね調書のとおりに進展している。本研究の目的とは若干異なる派生的な研究実績も出てきている点を考慮すれば当初の研究以上に進展しているといえるが、欧州でのインタビュー調査が当初の予想と異なる展開を見せているので若干注意を要する。しかし研究発表数ならびに論文数が予想以上に伸びているので、全体としては順調であると評価できる。基本的には当初の計画通りの推進方法で臨む。理論モデルの構築を促進するため当初の計画通りケンブリッジ大学のDavid Probert教授ならびにハンブルグ工科大学のCornelius Herstatt教授と共に共同研究を深めていく。加えて分担研究者である東北大学の長平教授の協力を得て、本年度末をめがけ、質問票調査を本格的に実施する計画を進めていく。本年度に質問票調査を実施してこれまでかなり進展しているモデリングならびにそれを基にした事例研究の結果と合わせて集大成的な研究論文を執筆したい。
KAKENHI-PROJECT-23330135
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憲法訴訟における「動機審査」の再検討
本研究は、憲法裁判における「動機審査(motive scrutiny)」について、その意義を再検討したものである。「動機審査」とは、とりわけ立法府の政策形成プロセスに焦点を合わせ、法律が公正で偏見のない見地から制定されたかどうかを吟味するという、違憲審査の一手法のことを言う。とりわけ、本研究では、19世紀から蓄積されてきたアメリカ憲法裁判における「動機審査」をめぐる議論を跡づけ、その歴史的展開を描き出すことを試みた。本研究は、従来の日本の憲法訴訟論においておよそ積極的に評価されてこなかった「動機審査(motive scrutiny)」について、その意義を再検討することを大きな目標とする。ここで「動機審査」とは、とりわけ立法府の政策形成プロセスに焦点を合わせ、法律が公正で偏見のない見地から制定されたかどうかを吟味するという、違憲審査の一手法のことを言う。この課題研究の進展に向けて、平成25年度は、前年度に計画していた課題の積み残しであった基礎文献の読み込みを継続して行った。具体的には、アメリカ憲法学を素材として、19世紀初頭から今日まで蓄積されてきた「動機審査」に関する判例・学説を精読し、その歴史理解を豊かにするべく試みた。なお、当初は20世紀の判例・学説を重点的に読み進める予定であったが、19世紀の議論に関してあらためて検討する必要に気づいたため、計画を変更して研究範囲を拡大させて読み込みを進めた。研究の遂行にあたっては、とくにアメリカ憲法史学の業績には裨益するところが大きかった。この分野の業績に多くを学びながら、19世紀から20世紀にかけての「動機審査」の歴史に関して、そしてひいてはアメリカ憲法裁判全体の歴史に関して、より豊かな理解が可能になったと考えている。なお平成25年9月に、調査・研究のためにアメリカ合衆国に出張を行い、コロンビア大学やウィリアム・アンド・メアリー大学などを訪問した。その後平成25年10月以降は、研究の総仕上げとして、成果となる論文の執筆を進めた。本研究は、憲法裁判における「動機審査(motive scrutiny)」について、その意義を再検討したものである。「動機審査」とは、とりわけ立法府の政策形成プロセスに焦点を合わせ、法律が公正で偏見のない見地から制定されたかどうかを吟味するという、違憲審査の一手法のことを言う。とりわけ、本研究では、19世紀から蓄積されてきたアメリカ憲法裁判における「動機審査」をめぐる議論を跡づけ、その歴史的展開を描き出すことを試みた。本研究は、従来の日本の憲法訴訟論においておよそ積極的に評価されてこなかった「動機審査(motive scrutiny)」について、その意義を再検討することを大きな課題とする。ここで「動機審査」とは、とりわけ立法府の政策形成プロセスに焦点を当て、公正で偏見のない見地から法律が制定されたかどうかを裁判所が吟味するという、違憲審査の一方法のことを言う。この課題研究の進展に向けて、平成24年度は、基礎文献の読み込みに重きを置いた。具体的には、アメリカ憲法学を素材にして、19世紀初頭から今日まで蓄積されてきた「動機審査」に関する判例・学説を精読し、その歴史を正確に理解するべく試みた。なお、19世紀の判例・学説については、本研究開始年度以前にすでにおおよその検討を済ませていたことから、本研究では、とりわけ20世紀以降の判例・学説に関する資料の読み込みを重点的に進めた。対象となる判例と学説が多岐にわたることから、研究の遂行に当たっては何らかの導きの糸が必要となったが、特にアメリカ憲法史学の業績には、裨益するところが大きかった。この分野の業績に多くを学びながら、「動機審査」の手法が、20世紀初頭の合衆国憲法判例において興隆しながらも、1930年代後半以降は衰退し、そして1970年代以降に再興してゆく道筋を跡づけることができた。なお、平成24年9月-10月にアメリカ合衆国(ワシントンD.C.およびボストン)へ出張をおこない、調査と資料収集を実施した。平成24年度は、20世紀の判例・学説に関する研究に重きを置いた。しかしながら、研究対象が広範囲にわたることから、いささか進捗に偏りが生じてしまったと言わなければならない。とりわけ、平成24年度は、憲法史学における業績の読み込みに予想以上に時間がかかってしまった。ゆえに、当初予定していた違憲審査の理論研究についての調査は、やや進展が遅れている。具体的には、平成24年度の研究実施計画では、20世紀以降の有力な違憲審査理論ー大別すれば、1リーガル・リアリズム、2リーガル・プロセス理論、3実体的価値理論、4政治プロセス理論、5新制度主義の5つが挙げられるーに関する基礎文献の精読と検討を行う予定であった。とりわけ本研究では123に関する調査に重点を置く予定であったが、しかし現実には、平成24年度は、1と2までしか調査を済ませることができなかった。また、諸理論の総合的な再検討や、21世紀以降の新たな理論に関する調査などにも、歩みを進めることができなかった。しかしながら、かえって憲法史学に重点を置いたことで、アメリカ憲法裁判の歴史や、特定の憲法理論の社会的背景などに関して、新たな知見を得ることができたことは、間違いなく大きな収穫であった。現在、これまでの研究成果を基に、「動機審査」をめぐるアメリカ憲法裁判史を総合的に描き出すという作業をおこなっている最中であり、その上で違憲審査の理論研究にも進んでゆきたいと考えている。
KAKENHI-PROJECT-24730012
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24730012
憲法訴訟における「動機審査」の再検討
なお、現在までの本研究の一端を示すものとして、平成24年11月に、黒澤修一郎「合衆国判例における『動機審査』・覚書」(憲法理論研究会編『危機的状況と憲法〈憲法理論叢書20〉』[敬文堂]177-192頁)を公表した。今後、本研究をより充実したかたちで推進してゆくための方策としては、次の3点を挙げることができる。まず第一に、平成24年度からおこなってきた基礎文献の精読を継続しなければならない。とくに当初の予定よりも遅れている違憲審査制の理論研究を、優先して進めたい。これに関しては、平成25年度の6月末を、関連文献を包括的に読み込み、その全体像を理解するにあたっての目処としたい。なお、これと併行して、新しい違憲審査理論など、アメリカ憲法学の最新の動向もフォローアップできるよう努めたいと考えている。第二に、平成25年度は、本研究についてほかの憲法研究者からレビューを受ける機会を、積極的に設けたいと考えている。現時点での希望としては、日本国内とアメリカ合衆国で一度ずつ、研究会報告や憲法研究者へのインタビューを実施する予定である。こういったレビューを通じて、新たに得た成果を申請者の従来までの調査にフィードバックし、研究成果をより洗練させたいと考えている。第三に、平成25年度は本研究の最終年度に当たることから、研究の総仕上げをおこなわなければならない。すなわち、研究成果を論文のかたちにまとめあげた上で、その公表をできる限りで進めたいと考えている。公表の方法としては、北海道大学法学研究科の紀要誌である北大法学論集への長期連載を予定している。目標としては、平成25年の11月末の時点で連載の第一回目の原稿を投稿し、翌年3月に公表できるよう間に合わせたい。平成25年度の研究費使用計画は、以下の通りである。第一に、アメリカ憲法学に関する文献を収集するために、図書購入費や出張費等を支出しなくてはならない。とりわけ、平成24年度に進捗が遅れてしまった違憲審査理論に関する資料収集のため、東京などの大学図書館に少なくとも1度は足を運ぶ予定である。第二に、研究のレビューを受けるための支出(旅費等)が必要である。日本国内とアメリカ合衆国に一度ずつの出張を予定しているが、この出張の際には、前述の資料収集についても併行して進めたいと考えている。第三に、申請者と関心の近い研究者との情報交換のために、各種の学会には積極的に参加するつもりである(日本公法学会など)。そのための出張旅費を、本研究費から支出する予定である。なお、平成24年度から平成25年度に移行するに際して、約20万円の繰越金が生じているが、これは、申請者の勤務する島根大学から、当初想定していなかった研究資金(「島根大学新規採用教員に対するスタートアップ支援事業」)を頂戴できたことに由来する。それゆえ、ノートPCやレーザープリンタなどの備品費は、本研究費から支出することなくして賄うことができた。その上、旅費や図書費などに関しても、上記の勤務校から受けることができた資金から幾分か支出したため、平成24年度の本研究費に余りが生じてしまった。繰越分の本研究費は、上述したような平成25年度の資料収集および調査のための資金に充てる予定である。
KAKENHI-PROJECT-24730012
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24730012
不規則な圧力脈動と配管共振に頑健な空圧式除振システムの開発
平成30年度では,まず圧縮空気圧の脈動による振動に対して,その抑制手法を検討した.電磁バルブ弁の開閉により圧縮空気の流量が調整されるため,圧力脈動の周期は消費流量に依存して不規則に変化する.その対策として,CPG(Central Pattern Generator)を用いた手法が報告されており,本研究では同手法の性能改善を行った.提案手法では,CPGの出力に加えて,内部状態の情報を用いる.それにより振動抑制の効果が改善することを実験により確認した.さらに本手法により,位置のPI制御器を用いずにCPG単独で除振台が平衡位置へ定位されたことも確認している.以上の成果を電気学会制御研究会で発表した.つぎに,2自由度除振装置に対してCPGを実装し,その有効性を検証した.実験結果より,除振台の並進と回転の両方の運動モードに対して,振動の抑圧効果が得られた.本成果をSICEシステム・情報部門学術講演会で発表した.また,空気ばねにつながれた各配管の長さが異なる状況下において,振動の様子を実測した.その結果,配管長の差異により振動幅が増加することを確認した.そこでCPGの内部情報を利用した制御系を実装し,また高周波振動を抑制するために新たなCPGを追加した.それにより,除振台の回転方向における振動が抑制された.本成果はスマートシステムと制御技術シンポジウムで発表された.圧力脈動の抑制と並行して,空気ばねの内圧推定に取組み,粒子フィルタによる推定手法を提案した.本手法の有効性をシミュレーションにより検証した.また,半導体露光装置向けの除振装置では,除振台上でステージの位置決めが行われるが,ステージとガイド間に発生する摩擦が位置決め精度の低下を招く.そこで,摩擦補償の前準備として,摩擦のパラメータ値を差分進化により同定方法する方法を提案した.これらの結果を電気学会制御研究会で発表した.圧縮空気圧の脈動を考慮した振動抑制手法などを提案し,その有効性を実験やシミュレーションにより検証している.研究成果を国際会議や国内会議で発表し,また論文誌に投稿しているので,本研究はおおむね順調に進展していると判断した.平成30年度では,2自由度除振装置に対してCPGによる振動抑制の効果を実験,シミュレーションにより評価した.平成31年度では,多自由度の除振装置に対して,本手法を用いたときの安定性を解析する.また,産業応用の場面では,除振装置を停止させて除振台を着座させる際,配管長が異なると除振台に不要な回転運動が生じる.この点を踏まえ,CPGが実装された除振装置に対して,適切な除振台の着座方法を検討する.また前年度に実施したステージの摩擦同定の結果を踏まえ,摩擦補償の方法も検討する.平成30年度では,まず圧縮空気圧の脈動による振動に対して,その抑制手法を検討した.電磁バルブ弁の開閉により圧縮空気の流量が調整されるため,圧力脈動の周期は消費流量に依存して不規則に変化する.その対策として,CPG(Central Pattern Generator)を用いた手法が報告されており,本研究では同手法の性能改善を行った.提案手法では,CPGの出力に加えて,内部状態の情報を用いる.それにより振動抑制の効果が改善することを実験により確認した.さらに本手法により,位置のPI制御器を用いずにCPG単独で除振台が平衡位置へ定位されたことも確認している.以上の成果を電気学会制御研究会で発表した.つぎに,2自由度除振装置に対してCPGを実装し,その有効性を検証した.実験結果より,除振台の並進と回転の両方の運動モードに対して,振動の抑圧効果が得られた.本成果をSICEシステム・情報部門学術講演会で発表した.また,空気ばねにつながれた各配管の長さが異なる状況下において,振動の様子を実測した.その結果,配管長の差異により振動幅が増加することを確認した.そこでCPGの内部情報を利用した制御系を実装し,また高周波振動を抑制するために新たなCPGを追加した.それにより,除振台の回転方向における振動が抑制された.本成果はスマートシステムと制御技術シンポジウムで発表された.圧力脈動の抑制と並行して,空気ばねの内圧推定に取組み,粒子フィルタによる推定手法を提案した.本手法の有効性をシミュレーションにより検証した.また,半導体露光装置向けの除振装置では,除振台上でステージの位置決めが行われるが,ステージとガイド間に発生する摩擦が位置決め精度の低下を招く.そこで,摩擦補償の前準備として,摩擦のパラメータ値を差分進化により同定方法する方法を提案した.これらの結果を電気学会制御研究会で発表した.圧縮空気圧の脈動を考慮した振動抑制手法などを提案し,その有効性を実験やシミュレーションにより検証している.研究成果を国際会議や国内会議で発表し,また論文誌に投稿しているので,本研究はおおむね順調に進展していると判断した.平成30年度では,2自由度除振装置に対してCPGによる振動抑制の効果を実験,シミュレーションにより評価した.平成31年度では,多自由度の除振装置に対して,本手法を用いたときの安定性を解析する.また,産業応用の場面では,除振装置を停止させて除振台を着座させる際,配管長が異なると除振台に不要な回転運動が生じる.この点を踏まえ,CPGが実装された除振装置に対して,適切な除振台の着座方法を検討する.また前年度に実施したステージの摩擦同定の結果を踏まえ,摩擦補償の方法も検討する.
KAKENHI-PROJECT-18K04022
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K04022
ネットワーク型超音波装置の開発
個々の検査室、病棟、外来など、部署ごとに設置されてきた超音波装置を中央部門に一括化すれば、設置スペースの節約と同時に毎年のごとく行われる超音波装置の改良につぶさに対応できるシステムを構築することが可能となる。本研究は、その基礎的検討のために、現状の超音波装置の演算部分を別途サーバとして中央に設置し、LANのネットワーク上に設置された入力端末、出力端末に探触子とモニタ部分のみを各々接続する。探触子でえられた信号はLANで中央のサーバに送られ、そこで演算処理後画像化したものを、再度LANを通じて各部屋のモニタに送るシステムを構築した。具体的には、信号を取り出せるように改良した超音波装置、データを受け処理する中央演算部PC、そのPCから信号を受け画像表示する別のPCで、3者をネットワーク(1000base)で結んだ。超音波のRF信号はその量が大きいため、そのままではネットワーク上でやり取りすることは困難である。そこで、超音波装置によりlineごとの画像データに変換処理した後のものを用いた。また、中央演算部PCで処理したデータは、もとの超音波装置のモニタに表示するかわりに、現行の装置の画像と画質を検討するため、別途のPCに出力することで検討を行った。データは1本のlineを512に細分し、パケットの信号として中央演算部に送った。パケットの信号は、frameごとにつけられたタグにより画像ごとに画像構成が行われ、BMPの画像に変換し表示用PCに送られる。本システムでは、連続的に走査信号を送ることにより、超音波装置で48枚表示されたものが演算部では30-47枚の表示が可能であった。問題点として、超音波のRF信号は信号が大きすぎるため、画像信号に変換後のものしか扱えない点であり、より速い通信速度の開発が必要である。研究するシステムは、病院の中央施設部門または超音波室内に処理能力の高いサーバー(演算部分)を設置し、各端末には、探触子と可搬性のモニター用の入出力ポートをあわせて設置しておき、検査時には探触子とモニターを取り付け、検査を行うものである。端末に接続された探触子から送られてくる信号受信・処理、画像作成をサーバーに担当させ、そこで作成された画像を出力端子に装着されているモニターに送る。探触子からの信号は、高速回線(1000base)を使用しネットワーク上で、演算部分と接続する。この端末は、検査室、病棟各部屋、外来に多数設置することを想定する。個々の検者は、探触子のポート側のアタッチメントを端末である入力ポートにつなぎ走査する。画像は、サーバーから出力されてくる画像を出力端子に接続したモニターに表示する。このような構想を進めるための前提として、平成15年度は、既存の装置から取り出すことのできるRF信号を利用するために、パソコンを購入し、連続的に信号による画像を再構成するシステムを構築し、来年度に行う画像の送信、構成、表示の研究に備えている。また、超音波画像の転送速度の検討、それに必要な圧縮法などについても検討した。個々の検査室、病棟、外来など、部署ごとに設置されてきた超音波装置を中央部門に一括化すれば、設置スペースの節約と同時に毎年のごとく行われる超音波装置の改良につぶさに対応できるシステムを構築することが可能となる。本研究は、その基礎的検討のために、現状の超音波装置の演算部分を別途サーバとして中央に設置し、LANのネットワーク上に設置された入力端末、出力端末に探触子とモニタ部分のみを各々接続する。探触子でえられた信号はLANで中央のサーバに送られ、そこで演算処理後画像化したものを、再度LANを通じて各部屋のモニタに送るシステムを構築した。具体的には、信号を取り出せるように改良した超音波装置、データを受け処理する中央演算部PC、そのPCから信号を受け画像表示する別のPCで、3者をネットワーク(1000base)で結んだ。超音波のRF信号はその量が大きいため、そのままではネットワーク上でやり取りすることは困難である。そこで、超音波装置によりlineごとの画像データに変換処理した後のものを用いた。また、中央演算部PCで処理したデータは、もとの超音波装置のモニタに表示するかわりに、現行の装置の画像と画質を検討するため、別途のPCに出力することで検討を行った。データは1本のlineを512に細分し、パケットの信号として中央演算部に送った。パケットの信号は、frameごとにつけられたタグにより画像ごとに画像構成が行われ、BMPの画像に変換し表示用PCに送られる。本システムでは、連続的に走査信号を送ることにより、超音波装置で48枚表示されたものが演算部では30-47枚の表示が可能であった。問題点として、超音波のRF信号は信号が大きすぎるため、画像信号に変換後のものしか扱えない点であり、より速い通信速度の開発が必要である。
KAKENHI-PROJECT-15650106
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15650106
鉱物組成変更によるビーライト活性化のための物性評価手法の開発
セメント原料由来の微量成分が,β相ビーライト表面での水和活性に及ぼす影響について,一切の実験値を用いずに量子力学のみに立脚した第一原理計算によって理論解析することを目的とする。解析には,超高速演算処理が可能なスーパーコンピューターを使用した。その結果,アルカリ土類金属のBa,Srはビーライト中の構成原子であるCaと置換することで水和活性の向上に寄与することが判明した。また,水和活性の向上が期待できないMgが固溶した構造でも,SO3とP2O5の複数の微量成分を置換固溶することで,水和活性を向上できることも明らかにした。省エネ型のセメントクリンカー焼成技術開発の鍵となる,ビーライト(β-C2S)の鉱物組成変更による水和活性向上について,一切の経験値を用いずに量子力学のみに立脚した第一原理計算により解析を行った。計算は,東北大学のスーパーコンピューターを使用して,ビーライト中のCa原子を微量成分(Sr, Ba)と置換した結晶構造について,その構造の安定性や,ビーライト結晶表面での水分子吸着に及ぼす微量成分の種類と置換位置,水分子吸着位置について解析を行った。Ca原子2個をSr原子と置換した構造(2Sr)では,平均Ca-Ca原子間距離は3.5583 Aであるのに対して,Ca原子2個をBa原子で置換した構造(2Ba)では3.5578 A,Ca原子2個をSr原子とBa原子で置換した構造(1Sr1Ba)では,3.5577 Aとなる。平均Ca-Ca原子間距離)が短いほど,水和活性の向上には有利となる。ビーライト表面近傍の7配位のCa(1)原子を微量成分Srで置換した構造のH2O分子の平均吸着エネルギーは,置換しない構造よりも小さくなり,微量成分のSrでCaを置換することでビーライト表面での水分子の吸着力は増す。セメントクリンカーで対称性の高い結晶配列で安定しているγ-C2Sについて,第一原理計算を行った。その結果,β-C2Sにおける平均Ca-Ca原子間距離は3.54 A,γ-C2Sは3.75 Aで,β-C2SのCa-Caの距離はγ-C2Sより短く,水和活性との相関が高いことが判明した。セメントクリンカーに対して,第一原理計算による数値シミュレーション技法の枠組みを構築することができれば,原子スケールでのセメントクリンカーとしてのビーライトへの水分子の吸着機構や,新たな機能をもつセメントクリンカーの原子レベルでの材料設計手法の道を開くことができる。日本のセメント製造での省エネ技術は,世界最高水準にあるが,既存の技術の延長だけでは更なる省エネや低炭素化は難しい。そこで,セメント製造プロセスで最もエネルギーを消費するクリンカー焼成工程において,焼成温度の低下や省エネを可能とする「革新的セメント製造プロセス基盤技術開発」が行われている。その一つには,鉱化剤の添加による燃焼温度の低下を図ること,二つ目としては微量成分の添加で鉱物組成を変更させることによるビーライト単相の水和反応の活性化を図ること,三つ目としてはアウインとの共存による活性化を図ることが実験的に検討されている。本研究では,二つ目の方策としての微量成分の添加で鉱物組成を変更させることによるビーライト単相の水和反応の活性化に着目したもので,Ca原子と同族で2価のSr及びBaの効果について検討を試みた。ここでは,2個のCaOx多面体中のCa原子を2個のSr原子と置換した3構造(2Sr77edge, 2Sr78edge, 2Sr78face)について,Sr原子の置換位置と2個のCaOx多面体の結合形態が結晶構造の変化に及ぼす影響を解析した。同じ3構造について,微量成分として2個のBa原子の場合,及び1個のSr原子と1個のBaで置換した構造について,物理的特性より水和活性を比較した。さらに,微量成分としてのSr原子を添加して鉱物組成変更させた,ビーライト表面への水分子の吸着に及ぼす水分子の吸着位置の影響について,化学的特性より解析を試みた。物理的及び化学的特性の両方法からのアプローチは,概ね予定通り研究が進展している。省エネルギー型のセメントクリンカー焼成技術開発の鍵となる,ビーライト(β-C2S)の鉱物組成変更による水和活性の向上について,一切の経験値を用いずに量子力学のみに立脚した第一原理計算により解析を行った。計算は,東北大学のスーパーコンピューターを使用して,ビーライト中のCa原子を微量成分(アルカリ土類金属,遷移金属)と置換した結晶構造について,その構造の安定性や,ビーライト結晶表面での水分子吸着に及ぼす微量成分の種類と置換位置,水分子吸着位置について解析を行った。ビーライト表面近傍の7配位のCa(1)原子を微量成分としてのアルカリ土類金属(Sr, Ba)で置換した構造について,β-C2S表面のCaOx (x=7,8)多面体中の7配位(x=7)のCa(1),8配位(x=8)のCa(2)上に1個の水分子を垂直配置して,β-C2Sの水和状態を設定し水分子吸着エネルギーを算出した。Sr原子及びBa原子と置換した構造の水分子の平均吸着エネルギーは置換しない構造よりも小さくなることから,微量成分のアルカリ土類金属のSr原子やBa原子は,ビーライト表面での水分子の吸着力の増大に有効である。8配位のCa(2)原子上に水分子を吸着させた構造は,7配位のCa(1)原子上に水分子を吸着させた構造よりも水分子の吸着エネルギーは小さく,配位数の多いCa原子の方が水分子の吸着力は増す。
KAKENHI-PROJECT-15K04631
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K04631
鉱物組成変更によるビーライト活性化のための物性評価手法の開発
また,微量成分のアルカリ土類金属としては,Ba原子の方がSr原子よりもCaとの置換による水分子の吸着エネルギーに及ぼす効果は大きい。本研究成果は,専門雑誌に投稿するとともに,国際会議や国内の学会で研究発表した。微量成分の添加で化学組成を変更させることによるビーライト単相の水和反応の活性化を図る試みが,セメントクリンカーの焼成温度の低下を可能とする「革新的セメント製造プロセス基盤技術開発」の中で実験的に検討されている。本研究では,ビーライトの化学組成変更による水和活性の特性を,原子レベルで理論的に解析を試みるものである。今年度は,微量成分であるアルカリ土類金属としてのSr原子及びBa原子を添加して化学組成変更させた,ビーライト表面への水分子吸着に及ぼす水分子の吸着位置の影響について,化学的特性より解析を試みた。解析は,水分子吸着エネルギーに及ぼす微量成分の種類と水分子吸着位置について第一原理計算に基づいて行った。また,複数の微量成分が水和活性に及ぼす影響として,2つのSr原子及び2つのBa原子がビーライトの表面近傍のCa原子と置換した構造について第一原理計算を行った。微量成分として,遷移金属の一部についても,同様の数値計算を進めている。化学的特性からのアプローチは,概ね予定通り研究が進展している。セメント原料由来の微量成分が,β相ビーライト表面での水和活性に及ぼす影響について,一切の実験値を用いずに量子力学のみに立脚した第一原理計算によって理論解析することを目的とする。解析には,超高速演算処理が可能なスーパーコンピューターを使用した。最終年度は,複数の微量成分を複数導入することによるビーライトの水和活性の改善効果を検討した。計算は,表面下第2層のCaを金属原子Mgと置換し,SiO4四面体をP2O5多面体と置換するとともにP2O5から離れた位置,あるいは近接した位置にSO3多面体を挿入した構造について実施した。その結果,ビーライト表面の7配位Ca上に水分子を垂直配置した場合には,水分子吸着エネルギーの絶対値は,Mgのみ置換した構造より4.02倍大きくなる。また,8配位Ca上に水分子を垂直配置した場合には,水分子吸着エネルギーの絶対値は,Mg置換の構造より2.0-2.2倍大きくなる。これより,Mgのみの置換では水和活性の向上がないビーライトでも,新たにSO3及びP2O5の複数の微量成分を置換固溶することで,水和活性が改善されることが第一原理計算結果より明らかになり実験結果とも適合した。アルカリ土類金属のBa,Srは,ビーライト中の構成原子であるCaと置換することで水分子の平均吸着エネルギーの絶対値は,置換しない構造よりも大きくなり,特にBaで置換した構造がSrで置換した構造よりもビーライト表面での水分子の吸着力は増し,水和活性の向上がより期待できることが判明した。一方,Mnで置換した構造ではビーライトの水和活性向上の効果は期待できるが,Mgではその効果は認められない。以上より,ビーライトの水和活性の改善に及ぼす微量成分の効果が,原子レベルでの第一原理量子論による理論解析により予測が可能で,新たなセメントクリンカーの材料設計に適用できることも判明した。セメント原料由来の微量成分が,β相ビーライト表面での水和活性に及ぼす影響について,一切の実験値を用いずに量子力学のみに立脚した第一原理計算によって理論解析することを目的とする。
KAKENHI-PROJECT-15K04631
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K04631