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粘膜免疫ネットワークにおける時空間ダイナミズムの解明 | 本研究においては、粘膜組織における生体防御と微生物の時空間制御を解析するためのイメージングシステムを用いた免疫学的研究を遂行した。微生物の動態解析に介しては、化学発光を基盤とした微生物増殖検出システムを用い、肺炎球菌に対する経鼻ワクチン効果を評価する系を確立した。一方、宿主免疫系に関しては、粘膜リンパ組織の上皮細胞層に存在することが示されているM細胞が鼻腔の上皮細胞層にも存在していることを提示し、新たな病原体取り込みとしていることを宿主側のレクチン染色と蛍光標識微生物を用いたイメージング解析にて示した。さらにマクロ共焦点レーザー顕微鏡を駆使し、抗原提示細胞として機能することが知られている樹状細胞が、パイエル板においてはT細胞領域の形成にも関わることを新たに見いだした。特に経時的な細胞分布の変化が解析出来るようになったことで、樹状細胞によるパイエル板T細胞の領域形成においては、ナイーブT細胞のパイエル板への進入ではなく、進入後のT細胞領域での滞留に樹状細胞が重要であることを示すことが出来た。これらの結果は、宿主と微生物の時空間的なイメージング解析が可能となることで初めて得ることの出来た知見であると考える。本研究においては、粘膜組織における生体防御と微生物の時空間制御を解析するためのイメージングシステムを用いた免疫学的研究を遂行した。微生物の動態解析に介しては、化学発光を基盤とした微生物増殖検出システムを用い、肺炎球菌に対する経鼻ワクチン効果を評価する系を確立した。一方、宿主免疫系に関しては、粘膜リンパ組織の上皮細胞層に存在することが示されているM細胞が鼻腔の上皮細胞層にも存在していることを提示し、新たな病原体取り込みとしていることを宿主側のレクチン染色と蛍光標識微生物を用いたイメージング解析にて示した。さらにマクロ共焦点レーザー顕微鏡を駆使し、抗原提示細胞として機能することが知られている樹状細胞が、パイエル板においてはT細胞領域の形成にも関わることを新たに見いだした。特に経時的な細胞分布の変化が解析出来るようになったことで、樹状細胞によるパイエル板T細胞の領域形成においては、ナイーブT細胞のパイエル板への進入ではなく、進入後のT細胞領域での滞留に樹状細胞が重要であることを示すことが出来た。これらの結果は、宿主と微生物の時空間的なイメージング解析が可能となることで初めて得ることの出来た知見であると考える。本研究計画の初年度である22年度は粘膜組織における生体防御と微生物の時空間制御を解析するためのシステムの開発を行った。微生物の動態解析に介しては、化学発光を基盤とした微生物増殖検出システムを用い、肺炎球菌に対する経鼻ワクチン効果を解析する系を確立した。また常在微生物を解析する系にも着手し、遺伝子解析から腸管リンパ組織であるパイエル板の内部に存在する常在細菌として同定したAlcaligenesをwhole mount FISH法にて観察することに成功した。一方、宿主免疫系に関しては、粘膜リンパ組織の上皮細胞層に存在することが示されているM細胞が鼻腔の上皮細胞層にも類似細胞として存在していることを提示し、新たな病原体取り込みとしていることを宿主側のレクチン染色と蛍光標識微生物を用いたイメージング解析にて示した。さらに実体顕微鏡と共焦点レーザー顕微鏡を組み合わせたマクロ共焦点レーザー顕微鏡を駆使し、パイエル板の組織レベルでの3次元観察を可能とするシステムを構築した。これらは少なくとも12時間は同一個体で観察出来ることを確認し、時間軸も加えた4次元システムとして用いることが出来るようになった。これらにより粘膜組織における生体免疫系と微生物の時空間的な解析システムの構築が可能になったと考えられる。本研究計画の2年度である23年度は、初年度に開発したイメージングシステムを用い、粘膜組織における生体防御と微生物の時空間制御を解析した。微生物の動態解析に介しては、化学発光を基盤とした微生物増殖検出システムを用い、肺炎球菌に対する経鼻ワクチン効果を解析する系を確立した。本システムを用いることで、同一個体における非侵襲的なワクチン評価が可能となり、ワクチン用DDSの機能評価を行うことが出来た。また常在微生物については、生存シグナルプローブを用い、腸管リンパ組織であるバイエル板の内部に存在する常在細菌として同定したAlcaligenesが樹状細胞内で生存していることを示した。一方、宿主免疫系に関してはマクロ共焦点レーザー顕微鏡を用いたバイエル板の組織レベルでの3次元観察システムを用い、抗原提示細胞として機能することが知られている樹状細胞が、バイエル板においてはT細胞領域の形成にも関わること、その機能にストローマ細胞から産生されるリンフォイドケモカインが重要であることを新たに見いだした。特に経時的な細胞分布の変化が解析出来るようになったことで、樹状細胞によるバイエル板T細胞の領域形成においては、ナイーブT細胞のバイエル板への進入ではなく、進入後のT細胞領域での滞留に樹状細胞が重要であることを示すことが出来た。これらの結果は、宿主と微生物の時空間的なイメージング解析が可能となることで初めて得ることの出来た知見であると考える。 | KAKENHI-PROJECT-22689015 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22689015 |
階層的微細加工ハイドロゲルを用いる癌細胞浸潤評価系の開発 | 本研究では,癌細胞の環境を生体外において再現し,癌細胞の浸潤挙動や抗癌剤効果の正確な評価を可能とする,新規3次元細胞培養系の開発を目指した。マイクロ流路技術を用いて,軟部および硬部からなる階層的な微小ハイドロゲル材料(ハイドロゲルファイバーおよびハイドロゲルシート)を作製し,その内部に癌細胞と正常細胞を正確に配置して培養した。ハイドロゲルの硬さを調節し,また栄養分の供給方向を制御することで,癌細胞の浸潤を一定方向に誘導し,浸潤度合の定量評価を可能とする新規システムを開発した。本研究で作製したハイドロゲル材料は,癌の診断や新規抗がん剤の開発において有用なツールとなりうると期待される。初年度である平成28年度は,主にハイドロゲル作製のためのマイクロ流路の設計と作製を行い,実際のハイドロゲル中における癌細胞の浸潤挙動の評価を行った。ハイドロゲルの材料としては主にアルギン酸を利用した。階層的ファイバー状ハイドロゲルの作製においては,マイクロノズルアレイ構造を通して,組成の異なるアルギン酸Na水溶液を導入し,ノズルのパターンに応じた複合的な断面パターンを有するゲル材料の作製方法を応用した。中央(コア)に肺癌細胞,シェルに正常細胞として線維芽細胞を導入したところ,シェル部に形成した軟部を通じて,癌細胞が一定期間の培養後に外部へと浸潤することが確認でき,癌細胞の浸潤度合を,「浸潤した(外部に到達した)細胞の数」によって簡便に定量できることが明らかとなった。さらに抗癌剤を投与した場合の細胞の浸潤度合が変化することや,癌細胞の発現する遺伝子にも差異が生じることが確認された。また階層的シート状ハイドロゲルの作製においては,3層構造をとり,入口から導入された溶液が交互に分配され合流する流路構造を作製した。平面的なノズルの出口から,デバイス外部におけるゲル化剤水溶液中に押し出すことによって,ストライプ状となった中層の内部に一定間隔で癌細胞(メラノーマ)を包埋し,上下層に正常細胞を含んだハイドロゲルシートを形成することができた。得られたシートをコラーゲンゲルの上に静置したところ,細胞の浸潤が実際にゲル方向に誘導される様子が観察され,本手法の有用性を実証することができた。なお,これらの検討において,細胞接着性のペプチドを結合させたアルギン酸からなるハイドロゲルを用い,それによって癌細胞の浸潤が促進することを明らかにした。階層的なハイドロゲル材料として,当初の予定通り,ファイバーおよびシートの2種類を作製し,それぞれ癌細胞の3次元的空間における浸潤挙動を制御することに成功した。このことによって,癌細胞の浸潤を簡便かつ正確に定量評価するための新規手法としての有用性を実証することができた。さらに,抗癌剤を投与したところ,癌細胞単独の場合と共培養を行った場合で,細胞機能に差異が生じることが明らかとなった。以上の結果は,ほぼ当初の想定通りの進捗であると考えられる。本研究の2年目に当たる平成29年度は,初年度に構築した階層的ハイドロゲルの,がん細胞の浸潤挙動評価における有用性を追求するとともに,生体のがん細胞環境の再現を試みた。昨年度までに開発した複合型ファイバーについては,線維芽細胞増殖因子の添加によってがん細胞の浸潤が促進される一方,Rockインヒビターの添加によってがん細胞の浸潤が抑制される,という結果が得られたことから,細胞の遊走を総合的に評価できる系であることが確認された。さらに,がん細胞の浸潤に関わる遺伝子発現を定量評価し,共培養が抗がん剤の薬効に与える影響を評価することができた。これらの結果は,本手法が,既存の平面的な環境における手法とある程度の相関を示す一方で,3次元的な環境における評価を可能とする新しい手段であることを示すため,本実験系の有効性および汎用性を明らかにすることができたと考えられる。また,サンドイッチ状の階層的ハイドロゲルシートを利用した実験系については,コラーゲンゲル状に添付する培養系の確立を目指し,特に線維芽細胞のコンディション培地を用いて,がん細胞の浸潤が一定方向に制御できることを実証した。特に,がん細胞の浸潤は3次元的な環境で進行する一方で,コラーゲンゲルに添付したハイドロゲルシートを剥離することで,観察環境を平面的なものに変換することができるため,簡便に,かつ正確に3次元環境におけるがん細胞の浸潤度合いを定量化できることが示された。一方で,土台となるコラーゲンゲルの内部に対するがん細胞の浸潤挙動は限定的であったため,今後は培養系の最適化によって,生体組織をより高度に模倣したがん細胞の浸潤アッセイ系の構築へと発展させたいと考えている。本研究では,癌細胞の環境を生体外において再現し,癌細胞の浸潤挙動や抗癌剤効果の正確な評価を可能とする,新規3次元細胞培養系の開発を目指した。マイクロ流路技術を用いて,軟部および硬部からなる階層的な微小ハイドロゲル材料(ハイドロゲルファイバーおよびハイドロゲルシート)を作製し,その内部に癌細胞と正常細胞を正確に配置して培養した。ハイドロゲルの硬さを調節し,また栄養分の供給方向を制御することで,癌細胞の浸潤を一定方向に誘導し,浸潤度合の定量評価を可能とする新規システムを開発した。本研究で作製したハイドロゲル材料は,癌の診断や新規抗がん剤の開発において有用なツールとなりうると期待される。 | KAKENHI-PROJECT-16K14485 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K14485 |
階層的微細加工ハイドロゲルを用いる癌細胞浸潤評価系の開発 | 今後は,特に階層的なシート状ハイドロゲル材料を用いた癌細胞の浸潤挙動評価系について,シート形成の再現性,細胞挙動の再現性,および細胞機能の変化について,より詳細な評価を行う予定である。特に,共培養によって癌細胞の浸潤がより増加するかどうかについて検証を行う。さらに,癌細胞の転移モデルの構築を目指した応用展開として,微小な流路構造を内包するハイドロゲルを用いた実験系の構築についてもチャレンジしたいと考えている。生物化学工学 | KAKENHI-PROJECT-16K14485 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K14485 |
消散項を持つ双曲型方程式の漸近挙動と特異摂動問題 | 本研究は、時間に関して減衰する消散項を持つKirchhoff方程式に対する解の大域的一意存在性、漸近挙動及び散乱に関するものである。消散項の減衰度により、解の挙動が放物型方程式の解に漸近するか、双曲型方程式の解に漸近するかが分かれる。減衰次数が劣臨界次数の時には、消散項の係数が時間変数と空間変数両方に依存する場合に解の大域的一意存在とエネルギー減衰を得た。優臨界次数の時には、消散項の係数が時間変数のみに依存する場合に、適当な関数のクラスにおける大域解の一意存在性及び散乱作用素の存在を示した。本研究は、時間に関して減衰する消散項を持つKirchhoff方程式に対する解の大域的一意存在性、漸近挙動及び散乱に関するものである。消散項の減衰度により、解の挙動が放物型方程式の解に漸近するか、双曲型方程式の解に漸近するかが分かれる。減衰次数が劣臨界次数の時には、消散項の係数が時間変数と空間変数両方に依存する場合に解の大域的一意存在とエネルギー減衰を得た。優臨界次数の時には、消散項の係数が時間変数のみに依存する場合に、適当な関数のクラスにおける大域解の一意存在性及び散乱作用素の存在を示した。張力の弦の伸びによる影響を考慮した弦の振動モデルとして導入された準線形双曲型方程式であるKirchhoff方程式は、数学的には主部の係数が解に非局所的に依存する準線形双曲型方程式として研究されている.実解析的またはそれを拡張した枠組みでは大域解の存在は知られているが、一般のソボレフ空間の枠組みでは小さい初期値に対しても大域解の存在は知られていない。摩擦の影響を考慮した消散項をもつKirchhoff方程式に関しては、消散項の係数が正定数のときには,小さい初期値に対する大域解の存在が知られている。消散項が時間に関し減衰すると、消散項の影響が弱くなるので大域解の存在を示すのが難しくなる。消散項をもつ線形双曲型方程式の場合は、消散項の減衰次数が臨界次数より大きいときには解は双曲型方程式の解に漸近し、小さいときにはエネルギーが時間減衰することが知られている。ここでは減衰次数が臨界次数より小さい消散項を持つKirchhoff方程式について考察する。消散項の係数が時間のみに依存する場合、または、時間のみに依存する関数と空間関数の積になっており有界領域の場合には、時間変数に関する減衰次数が臨界次数より小さいときの小さい初期値に対する大域解の存在は知られている。本研究では、必ずしも有界とは限らない領域上で、時間変数と空間変数に依存し時間変数に関する減衰次数が臨界次数より小さい消散項をもつKirchhoff方程式の小さい初期値に対する大域解の存在及びエネルギーの時間減衰評価を示した。時間減衰次数は、消散項の減衰度から定まる。時間に関する減衰が速い時消散項をもつキルヒホッフ型準線形双曲型偏微分方程式の解の存在と漸近挙動について考察した。消散項をもつ線形双曲型偏微分方程式に関しては、消散項の係数の時間減衰の速さに応じて、双曲型方程式の解に漸近するか、放物型の解に漸沂するか分かれることが知られている。消散項の係数が時間に関して可積分である程度に減衰が速い時の線形双曲型偏微分方程式に関しては、散乱作用素の存在が知られている。そこで、キルヒホッフ型準線形双曲型偏微分方程式に関しても同様の結果が期待できる。しかし、線形方程式と異なり、消散項のないキルヒホッフ型準線形双曲型偏微分方程式の解の存在については、遠方で減衰して小さい初期値に対してしか解の存在が知られておらず、減衰の速い消散項をもつキルヒホッフ型準線形双曲型偏微分万程式の大域解の存在・漸近挙動は、線形方程式と同様にはできない。一方、消散項の減衰が遅い時には、消散作用を用いて大域解の存在を示すことができるが、減衰が速い消散項をもつキルヒホッフ型準線形双曲型偏微分方程式の解の存在については、消散作用が弱いために同様の議論を用いることができない。本研究では十分強い消散項を持つキルヒホッフ型型準線形双曲型偏微分方程式に対する解の存在性及び減衰評価と、消散項がない場合のキルヒホッフ型準線形双曲型偏微分方程式に対する大域解の存在性を示す議論をあわせ用い、消散項の係数が時間に関して可積分な時に、遠方で減衰する小さい初期値に対して大域解の存在を示した。さらに、解が摂動項のない波動方程式の解に漸近することを示した。本研究で得られた結果については、論文準備中である。減衰の速い消散項を持つKirchhoff型準線形双曲型偏微分方程式の漸近挙動について研究した。消散項の時間に関する減衰が速い時の線形双曲型偏微分方程式に関しては、散乱作用素の存在が知られている。減衰が速い消散項をもつKirchhoff型準線形双曲型偏微分方程式に関しても同様の結果が期待できるが、この場合は、消散項のない方程式についても、遠方で減衰して小さい初期値に対してしかし大域解の存在が知られていない。また、消散項の減衰が遅い時には、消散作用をもちいて大域解の存在を示せるが、消散項の減衰が速い時には消散作用が弱いために同様の議論を用いることができない。 | KAKENHI-PROJECT-21540201 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21540201 |
消散項を持つ双曲型方程式の漸近挙動と特異摂動問題 | 昨年度は値が小さい可積分関数を消散項の係数として持つKirchhoff型方程式について遠方で減衰して小さい初期値に対して大域解の存在と漸近挙動をアプリオリ評価を用いて示したが、本年度は値が小さいとは限らない可積分関数を消散項の係数として持つKirchhoff型方程式に対し、減衰し小さい関数のクラスで散乱作用素の存在を縮小写像の方法を用いて示した。準線形性のために、波動作用素の逆関数を構成する方が波動関数の構成よりも困難である。Greenberg-Huが消散項のないKirchhoff型準線形双曲型偏微分方程式の大域解の存在を示す時に用いた変換を本研究でも用いるが、消散項の係数が変換に依存するため、変数変換の変換に対する依存性を評価した。また、消散項を伴わないKirchhoff型方程式の大域解及び散乱作用素の存在性に従来用いられてきた評価法をそのまま利用しようとすると、消散項の係数の値の小ささの仮定が必要になる。本研究ではその点も改良した。 | KAKENHI-PROJECT-21540201 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21540201 |
歯周病と動脈硬化の関連性に関する基礎研究 | 【目的】近年、脂肪細胞からのアディポサイトカイン産生に、マクロファージが関与する可能性が報告された。すなわち、脂肪細胞周囲血管に集積したマクロファージに由来するサイトカインが脂肪細胞に働いて、アディポサイトカイン(脂肪組織由来生理活性物質)産生が元進し糖尿病や動脈硬化が一層増悪するという、脂肪細胞・マクロファージ相互作用説である。一方、高感度CRPの上昇が虚血性心疾患の予知因子として有用であるという事実に代表されるように、軽微な慢性感染症が、動脈硬化の増悪因子として働く可能性が示唆されている。これまでに、代表的なアディポサイトカインであるIL-6およびMCP-1に注目し、脂肪細胞・マクロファージ共培養系に低濃度のLPS刺激を加えた際、LPS無刺激時と比較してIL-6で100倍以上、MCP-1セ約50倍、それらの産生性が充進することを報告した(Yamashita, et. al.,Obesity,2007)。しかしながら脂肪細胞由来アディポサイトカインは多種多様であり、マクロファージとの相互作用でIL-6やMCP-1以外の分子の産生性に変化があるか否かについては未だ明らかでない。そこで今回、脂肪細胞・マクロファージ共培養系を低濃度のLPSで作用させた場合のサイトカイン産生性の変化を知るため、抗体アレイの手法を用いて産生量が著明に増加する分子の解析を行った。【方法】1.細胞および培養マクロファージ由来細胞株RAW264.7とマウス由来前駆脂肪細胞3T3-L1を使用した。3T3-L1を分化誘導し、誘導開始から14日後の細胞を分化脂肪細胞として用いた。2脂肪細胞・マクロファージの共培養およびLPS刺激3.培養上清中のサイトカイン量の抗体アレイによる解析回収した培養上清中のサイトカインを抗体アレイ(Ray Biotech,Inc)を用いて解析した。なお、産生性の変化が著明であったものに関しては、その量をEHSAキット(R&D)にて定量した。【結果】1.抗体アレイ法により、マクロファージ・脂肪細胞共培養系を低濃度細菌LPS刺激した際、先行研究で明らかにしたIL-6およびMCP-1ともに、RANTESとKCの産生性が元進していることが明らかになった。2.ELISA法にて定量したところ、LPS刺激のあるマクロファージ・脂肪細胞共培養系では無刺激の場合よりも、RANTESについては約40倍、KCについては350倍以上に産生が元進した。【結論および考察】脂肪細胞とマクロファージをLPS刺激することで、IL-6やMCP-1以外にRANTESおよびKCといったアディポサイトカインの産生性が元進した。RANTESは脂肪細胞へのT細胞リンパ球浸潤に、KCは脂肪細胞における毛細血管新生に関与する可能性がある。すなわち、歯周病のような慢性の微細感染症に由来する抗原が、脂肪細胞における炎症性変化を充進することによって、動脈硬化や糖尿病をさらに悪化させる可能性が示唆された。【目的】近年,脂肪細胞からのアディポサイトカイン産生に,マクロファージが関与する可能性が報告されている。すなわち,脂肪細胞周囲血管に集積したマクロファージ由来のサイトカインが脂肪細胞に働いて,アディポサイトカイン産生が亢進し糖尿病や動脈硬化が増悪するという,脂肪細胞・マクロファージ相互作用説である。一方,軽微な慢性感染症が,動脈硬化の増悪因子として働く可能性が示唆されている。本感染は虚血性心疾患の予知因子である高感度CRP値を上昇させる。そこで,細菌LPSがマクロファージを活性化し,さらに脂肪細胞からの炎症性サイトカイン産生を促進するとの仮説を立てた。ここでは,マクロファージ・脂肪細胞共培養系にLPSを作用させた場合のアディポサイトカイン産生性を検討した。【方法】分化3T3-L1細胞とRAW264.7細胞の共培養系を確立し,低濃度のLPS刺激下でのIL-6,TNF-αおよびMCP-1の産生性を調べた。抗TNF-α中和抗体と外因性TNF-αがIL-6産生性に及ぼす影響も調べた。【結果】3T3-L1とRAWの共培養系にLPSを添加することで,培地中のIL-6とMCP-1濃度が相乗的に増加した。IL-6はLPS刺激のみの脂肪細胞からも産生されたことから,主な産生細胞は脂肪細胞と考えられた。TNF-αについては,共培養することによる大きな変化は見られず,LPS刺激でRAW細胞からの産生が亢進したことから主な産生細胞はマクロファージと考えられた。抗TNF-α中和抗体の添加でIL-6産生が部分的に抑制された。【結論および考察】LPSに代表される感染抗原に晒されたマクロファージがTNF-α等の液性因子を介して脂肪細胞を活性化し,脂肪細胞からのIL-6産生を促進する可能性が示された。これにより産生されたIL-6は門脈を介して肝臓に集積し,肝細胞からのCRP産生に関与することが考えられた。【目的】近年、脂肪細胞からのアディポサイトカイン産生に、マクロファージが関与する可能性が報告された。すなわち、脂肪細胞周囲血管に集積したマクロファージに由来するサイトカインが脂肪細胞に働いて、アディポサイトカイン(脂肪組織由来生理活性物質) | KAKENHI-PROJECT-18791593 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18791593 |
歯周病と動脈硬化の関連性に関する基礎研究 | 産生が元進し糖尿病や動脈硬化が一層増悪するという、脂肪細胞・マクロファージ相互作用説である。一方、高感度CRPの上昇が虚血性心疾患の予知因子として有用であるという事実に代表されるように、軽微な慢性感染症が、動脈硬化の増悪因子として働く可能性が示唆されている。これまでに、代表的なアディポサイトカインであるIL-6およびMCP-1に注目し、脂肪細胞・マクロファージ共培養系に低濃度のLPS刺激を加えた際、LPS無刺激時と比較してIL-6で100倍以上、MCP-1セ約50倍、それらの産生性が充進することを報告した(Yamashita, et. al.,Obesity,2007)。しかしながら脂肪細胞由来アディポサイトカインは多種多様であり、マクロファージとの相互作用でIL-6やMCP-1以外の分子の産生性に変化があるか否かについては未だ明らかでない。そこで今回、脂肪細胞・マクロファージ共培養系を低濃度のLPSで作用させた場合のサイトカイン産生性の変化を知るため、抗体アレイの手法を用いて産生量が著明に増加する分子の解析を行った。【方法】1.細胞および培養マクロファージ由来細胞株RAW264.7とマウス由来前駆脂肪細胞3T3-L1を使用した。3T3-L1を分化誘導し、誘導開始から14日後の細胞を分化脂肪細胞として用いた。2脂肪細胞・マクロファージの共培養およびLPS刺激3.培養上清中のサイトカイン量の抗体アレイによる解析回収した培養上清中のサイトカインを抗体アレイ(Ray Biotech,Inc)を用いて解析した。なお、産生性の変化が著明であったものに関しては、その量をEHSAキット(R&D)にて定量した。【結果】1.抗体アレイ法により、マクロファージ・脂肪細胞共培養系を低濃度細菌LPS刺激した際、先行研究で明らかにしたIL-6およびMCP-1ともに、RANTESとKCの産生性が元進していることが明らかになった。2.ELISA法にて定量したところ、LPS刺激のあるマクロファージ・脂肪細胞共培養系では無刺激の場合よりも、RANTESについては約40倍、KCについては350倍以上に産生が元進した。【結論および考察】脂肪細胞とマクロファージをLPS刺激することで、IL-6やMCP-1以外にRANTESおよびKCといったアディポサイトカインの産生性が元進した。RANTESは脂肪細胞へのT細胞リンパ球浸潤に、KCは脂肪細胞における毛細血管新生に関与する可能性がある。すなわち、歯周病のような慢性の微細感染症に由来する抗原が、脂肪細胞における炎症性変化を充進することによって、動脈硬化や糖尿病をさらに悪化させる可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-18791593 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18791593 |
液滴を用いたプラズマ誘起液相反応利用のためのプラズマと液滴の相互作用の解明 | 本研究は,(i)誘電体バリア放電へ液滴を導入した系,(ii)コロナ放電を伴うエレクトロスプレーの系,の2種の系において,実験とモデリング・数値解析からプラズマと液滴の相互作用の解明を目的とする。2018年度は,以下の成果を得た。系(ii)における液滴の動的挙動の観測:液体を満たしたノズル電極に負極性高電圧を印加したとき,テイラーコーン形成に伴ってトリチェルパルス放電様の電流パルス群(各電流パルス幅:100 ns程度,パルス電流頻度:100kHz-1MHz,パルス群の周期:100 us程度)から構成されるコロナ放電が生じる。高速カメラでの観測により,液滴放出はテイラーコーン先端部の微小振動により,電流パルス群の最初の電流に伴ってのみ放出されること,液滴の帯電量はレイリー限界よりも低いために放出以降の分裂を伴わないこと,放出された液滴は5 m/s程度の速度で輸送されること,などが明らかになった。また,正極性高電圧を印加した場合はテイラーコーン先端の微小振動やコロナ放電は生じず,より微小な帯電液滴が放出されることが観測された。モデリング・数値解析では,大気圧He中の平行平板型誘電体バリア放電を1次元流体モデルで表し,この中に微粒子を導入した際のプラズマと微粒子の相互作用について検証を行った。放電プラズマ中の微粒子は電子流とイオン流のバランスによって負に帯電するが,誘電体バリア放電中の電子密度は周期内で変化するために帯電量も大きく変化すること,僅かな微粒子導入も電子やイオンの消滅項となるために放電維持を困難とすること,などが示された。更に,液滴表面へ到達した荷電粒子やラジカルによるプラズマ誘起液滴内液相反応をモデル化する第一段階として,プラズマ中に置かれた単一液滴の帯電過程のモデルを,荷電粒子のドリフト・拡散流,液滴や空間電荷による電界歪みを考慮して構築した。2018年度の当初研究計画では,系(i)ついては,放電チャンバーや電極を設計・製作し,プラズマ-液滴相互作用の計測に適した安定なプラズマ源の実現を目標としていた。また,系(ii)については,放出される液滴挙動の観測に加え,レーザ誘起蛍光法によるOHラジカルの計測を挙げていた。系(i)については,放電用電源の購入,放電チャンバーの製作が遅れたために予定通り進行しておらず,これは2019年度の前半に進める計画を立てている。また,レーザ誘起蛍光法によるOHラジカル計測については,他の研究課題(Oラジカル,Nラジカルの計測)でも同レーザを利用していることに加え,レーザ制御用パソコンの不調もあり,当初予定通りに進行していない。これも2019年度中に進める予定である。モデリング・数値解析に関する研究は予定通りに進行している。また,実験での遅れを最小限に留めるために,当初は2020年度に計画していた研究課題を先行して開始し,研究実績の概要でも記した通り,既に基盤となるモデル構築を行った。従って,本研究の終了年度までには,予定した研究を十分に遂行できるものと考えている。実験:系(i)はチャンバー製作等の遅れにより,液滴を含む安定した誘電体バリア放電の形成に至っていないが,2019年度の早期にプラズマ-液滴相互作用の計測に適する安定したプラズマ生成を実現する。これを実現した上で,電圧電流特性等の電気的特性,発光分光等の光学的な特性などの詳細を調査する。更に,大気圧のみならず,0.1気圧程度の減圧環境下でも同様の実験を行う。系(ii)については,液滴の放出,動的挙動とコロナ放電形成との関係を調べ,一定の成果を得ている。しかし,印加電圧とその極性,液体の導電率・表面張力・粘性率などの様々なパラメータにも依存した状態の変化が推測されるため,様々な条件下において詳細な特性を調べる。更に,コロナ放電の発生頻度を制御することを目的として,大気圧のみならず,0.1気圧程度の減圧環境下でも同様の実験を行う。得られた実験結果を詳細に解析することで,プラズマ-液滴相互作用に関する新たな知見を得る。モデリング・数値解析:系(i)に対しては空間一次元の流体近似モデルにより,誘電体バリア放電の数値解析を行う。既に,大気圧He中の誘電体バリア放電に固体微粒子を投入した場合の,放電構造に対する微粒子の影響を評価した。今後はこれを発展し,He/H2O混合ガス中での誘電体バリア放電に対して固体微粒子,及び,液滴を投入した場合の数値解析を行い,放電構造,及び,反応場の特徴を明らかにする。また,0.1気圧程度に減圧した場合の数値解析も実施する。更に,微視的な観点でのプラズマ-液滴相互作用を明らかにするために,陽光柱に相当する均一なプラズマ中に単一液滴を置いた際の液滴の帯電,液滴へのラジカルの拡散,及び,液滴中の化学反応を考慮した物理モデルを構築する。系(ii)に対しては,テイラーコーン形成過程,これに伴う電界計算を行い,帯電液滴放出に関する定量的な物理量に関する知見を得る。本研究は,(i)誘電体バリア放電へ液滴を導入した系,(ii)コロナ放電を伴うエレクトロスプレーの系,の2種の系において,実験とモデリング・数値解析からプラズマと液滴の相互作用の解明を目的とする。2018年度は,以下の成果を得た。 | KAKENHI-PROJECT-18H01207 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H01207 |
液滴を用いたプラズマ誘起液相反応利用のためのプラズマと液滴の相互作用の解明 | 系(ii)における液滴の動的挙動の観測:液体を満たしたノズル電極に負極性高電圧を印加したとき,テイラーコーン形成に伴ってトリチェルパルス放電様の電流パルス群(各電流パルス幅:100 ns程度,パルス電流頻度:100kHz-1MHz,パルス群の周期:100 us程度)から構成されるコロナ放電が生じる。高速カメラでの観測により,液滴放出はテイラーコーン先端部の微小振動により,電流パルス群の最初の電流に伴ってのみ放出されること,液滴の帯電量はレイリー限界よりも低いために放出以降の分裂を伴わないこと,放出された液滴は5 m/s程度の速度で輸送されること,などが明らかになった。また,正極性高電圧を印加した場合はテイラーコーン先端の微小振動やコロナ放電は生じず,より微小な帯電液滴が放出されることが観測された。モデリング・数値解析では,大気圧He中の平行平板型誘電体バリア放電を1次元流体モデルで表し,この中に微粒子を導入した際のプラズマと微粒子の相互作用について検証を行った。放電プラズマ中の微粒子は電子流とイオン流のバランスによって負に帯電するが,誘電体バリア放電中の電子密度は周期内で変化するために帯電量も大きく変化すること,僅かな微粒子導入も電子やイオンの消滅項となるために放電維持を困難とすること,などが示された。更に,液滴表面へ到達した荷電粒子やラジカルによるプラズマ誘起液滴内液相反応をモデル化する第一段階として,プラズマ中に置かれた単一液滴の帯電過程のモデルを,荷電粒子のドリフト・拡散流,液滴や空間電荷による電界歪みを考慮して構築した。2018年度の当初研究計画では,系(i)ついては,放電チャンバーや電極を設計・製作し,プラズマ-液滴相互作用の計測に適した安定なプラズマ源の実現を目標としていた。また,系(ii)については,放出される液滴挙動の観測に加え,レーザ誘起蛍光法によるOHラジカルの計測を挙げていた。系(i)については,放電用電源の購入,放電チャンバーの製作が遅れたために予定通り進行しておらず,これは2019年度の前半に進める計画を立てている。また,レーザ誘起蛍光法によるOHラジカル計測については,他の研究課題(Oラジカル,Nラジカルの計測)でも同レーザを利用していることに加え,レーザ制御用パソコンの不調もあり,当初予定通りに進行していない。これも2019年度中に進める予定である。モデリング・数値解析に関する研究は予定通りに進行している。また,実験での遅れを最小限に留めるために,当初は2020年度に計画していた研究課題を先行して開始し,研究実績の概要でも記した通り,既に基盤となるモデル構築を行った。従って,本研究の終了年度までには,予定した研究を十分に遂行できるものと考えている。実験:系(i)はチャンバー製作等の遅れにより,液滴を含む安定した誘電体バリア放電の形成に至っていないが,2019年度の早期にプラズマ-液滴相互作用の計測に適する安定したプラズマ生成を実現する。これを実現した上で,電圧電流特性等の電気的特性,発光分光等の光学的な特性などの詳細を調査する。更に,大気圧のみならず,0.1気圧程度の減圧環境下でも同様の実験を行う。系(ii)については,液滴の放出,動的挙動とコロナ放電形成との関係を調べ,一定の成果を得ている。しかし,印加電圧とその極性,液体の導電率・表面張力・粘性率などの様々なパラメータにも依存した状態の変化が推測されるため,様々な条件下において詳細な特性を調べる。更に,コロナ放電の発生頻度を制御することを目的として,大気圧のみならず,0.1気圧程度の減圧環境下でも同様の実験を行う。 | KAKENHI-PROJECT-18H01207 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H01207 |
ロタキサンを用いた分子の整列化と配列化:自己複製人工DNAへの展開 | 効率的なロタキサン合成法の開発:2級アンモニウムとジベンゾ24クラウン8(DB24C8)との間に働く水素結合を用い、擬ロタキサンを形成し、その末端封鎖によるロタキサン合成を以下の示す2法確立した。両法ともロタサキン軸主鎖に異なる置換基を同一の方法論で導入できる点が利点である。1.アセチレン-コバルトクラスター形成による合成法:末端にアセチレン部を持つ2級アンモニウム軸分子と24クラウン8(DB24C8)からin situに擬ロタキサンを形成し、さらにジコバルトオクタカルボニルを作用し、ロタキサンの合成を達成した。本法は1置換アセチレンにおいて高収率で目的物を生成し、また立体的に混み入った2置換アセチレンにおいても比較的高い収率で目的物を与えた。2.Ru触媒を用いたプロパルギルアルコールからのロタキサン合成:上記同様に、末端にプロパルギルアルコール部を持つ2級アンモニウム軸分子に、DB24C8存在下Ru触媒と種々の求核剤を作用し、ロタキサン合成に成功した。求核剤としては、アニリン、アミド、スルフォナミド、ケトン等価体等を用い、いずれの場合も高い収率でロタキサンを与えた。オリゴロタキサン合成:我々が以前に開発したエステル化によるロタキサン合成を用いて、オリゴロタサキンの合成を検討したものの目的物の合成は達成できなかった。しかしながら、上記方法のうち、Ru触媒を用いたロタキサン合成について検討した。その結果、[3]ロタキサンの合成を達成し、また、液性変化による環部位の選択的な固定化にも成功した。圧力によるロタキサン形成:圧力変化に伴うロタキサンの形成速度について検討した。その結果、圧力上昇に応じロタキサン形成速度の上昇が観測された。また圧力と反応速度の相関より、遷移状態のおける体積変化(活性化体積)を算出した。ポリロタキサン合成の検討2級アンモニウムとジベンゾ24クラウン8(DB24C8)との間に働く水素結合を用いたロタキサン合成に成功した。本法は末端部位にα-メチルスチルベンを持つ擬ロタキサンのかさ高さの調節を2重結合の光異性化によって行い、高収率でロタキサンを与える手法であり、共有結合を見かけ上形成しないことから全く新しい合成法である。またこのシス・トランス異性化は平衡でありため、条件により可逆的にロタキサン合成とその解離を可能にする。ロタキサン合成に成功したので、次に本法、あるいは以前に我々が開発したジアリルジアゾメタンを用いるエステル化による合成法によって、オリゴロタキサンの合成を検討したが、軸部位となるオリゴアンモニウムの有機溶媒への溶解性が乏しいため、これらの方法を用いた効率的なオリゴロタキサン合成は達成できなかった。そこで溶解性を向上する目的で、オリゴエチレングリコール-金属イオン間の結合を用いたロタキサン合成の検討を開始した。本結合を用いたロタキサン合成には、成功していないものの、軸と環双方にエチレンレンコール単位を持つロタキサンにおいて、アルカリ金属イオンとの選択的な認識を確認した。今後、オリゴエチレングリコールとクラウンエーテルと金属イオンの3成分からオリゴロタキサンの合成を実施する予定である。オリゴ及びポリロタキサン合成では、均一なロタキサン部位の構築が問題となる。そこで高比率でオリゴロタキサンを形成するために、アンモニウム-クラウン間に働く水素結合に加え、π-π相互作用を用いたロタキサン形成を検討した。その結果、π欠如-π過剰系相互作用が効果的に働き、ロタキサンの結合定数で2倍の改善が見られ、今後オリゴロタキサン合成に展開予定である。計画に従し,1)π-π相互作用を用いる方法,2)2個の軸分子を束ねる方法と,さらに3)金属イオンの配位による方法にて,分子の整列化と配列化に関する研究を実施した.1)π-π相互作用を用いる方法:まず環状分子として,電子欠如な芳香族(ナフラリミド部)と電子豊富な芳香環(トリフェニレン)とを持つクラウンエーテルを合成した.一部のクラウンエーテルと2級アンモニウムとの間に働く水素結合によって,ロタキサンが形成されることを見出した.2)2個の軸分子を1個の環が束ねる方法:2個の軸分子を認識する環分子(28-38員環クラウン)の合成を行い,続いて嵩高さの異なる末端部位を持つ軸分子を数種合成し,軸分子の認識能をそれぞれ観測した.その結果,本環分子群の軸分子認識は,24員環クラウンに比較しあまり強くないことが確認された.また,末端部位の嵩高さの違いによる擬ロタキサンの形成・解離速度の変化も観測した.3)金属イオンの配位による方法:複数の環部位間に働く相互作用を期待し,ダイマー形成能を持つクラウンエーテルとオリゴアンモニウムとのロタキサン2重線の合成を検討したものの,複雑な混合物を与えるに留まった.これは,環が軸上で自由に回転していることに基づくものと考察した.そこで環の軸部への緩やかな固定化を期待し,ロタキサンの金属イオン取り込みについて検討した.その結果,導入したオリゴエチレングリコール部位とアルカリ金属イオンとの配位結合によって,環の固定化が行われていることが示唆された. | KAKENHI-PROJECT-15750116 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15750116 |
ロタキサンを用いた分子の整列化と配列化:自己複製人工DNAへの展開 | またこの配位においては,エーテル部位の酸素の塩基性度が重要であることが判明した.効率的なロタキサン合成法の開発:2級アンモニウムとジベンゾ24クラウン8(DB24C8)との間に働く水素結合を用い、擬ロタキサンを形成し、その末端封鎖によるロタキサン合成を以下の示す2法確立した。両法ともロタサキン軸主鎖に異なる置換基を同一の方法論で導入できる点が利点である。1.アセチレン-コバルトクラスター形成による合成法:末端にアセチレン部を持つ2級アンモニウム軸分子と24クラウン8(DB24C8)からin situに擬ロタキサンを形成し、さらにジコバルトオクタカルボニルを作用し、ロタキサンの合成を達成した。本法は1置換アセチレンにおいて高収率で目的物を生成し、また立体的に混み入った2置換アセチレンにおいても比較的高い収率で目的物を与えた。2.Ru触媒を用いたプロパルギルアルコールからのロタキサン合成:上記同様に、末端にプロパルギルアルコール部を持つ2級アンモニウム軸分子に、DB24C8存在下Ru触媒と種々の求核剤を作用し、ロタキサン合成に成功した。求核剤としては、アニリン、アミド、スルフォナミド、ケトン等価体等を用い、いずれの場合も高い収率でロタキサンを与えた。オリゴロタキサン合成:我々が以前に開発したエステル化によるロタキサン合成を用いて、オリゴロタサキンの合成を検討したものの目的物の合成は達成できなかった。しかしながら、上記方法のうち、Ru触媒を用いたロタキサン合成について検討した。その結果、[3]ロタキサンの合成を達成し、また、液性変化による環部位の選択的な固定化にも成功した。圧力によるロタキサン形成:圧力変化に伴うロタキサンの形成速度について検討した。その結果、圧力上昇に応じロタキサン形成速度の上昇が観測された。また圧力と反応速度の相関より、遷移状態のおける体積変化(活性化体積)を算出した。 | KAKENHI-PROJECT-15750116 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15750116 |
糸球体蛋白透過性における荷電障壁の関与 ーその定量化に関する検討ー | 糸球体基底膜(GBM)における高分子蛋白の透過性について、主としてヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)よりなる荷電障壁の重要性が報告されている。従来、これら荷電障壁を形成する陰荷電物質を染色する目的で、各種陽荷電プロ-ベが使用されているが、これらを定量化することは困難であり、さらに電顕にて観察されたこれらの形態は、HSPGの分子構造形態とは著しく矛盾すると指摘されていた。最近、我々はCuprolinic blueという銅を含む色素を用いて、まずGBM陰荷電物質を、その分子構造形態に近い形で捉え、さらに定量的評価としてこの色素中に銅が含まれることに着目し、GBM陰荷電物質に結合した銅を原子吸光分析装置にて測定し、陰荷電性の定量的指標化とすることに成功した。この方法にて、ラットのアミノヌクレオシド誘発ネフロ-ゼモデルにおけるGBM陰荷電物質の変化を検討した。即ち、本色素を臨界電界質濃度法に従って左腎を灌流し、一部を一般電顕観察用に試料を作成した。他方、GBMを単離し、GBM結合銅両を原子吸光分析装置にて測定し、単位蛋白当たりで示した。正常対照群では、GBM内外透明層に、足突起直下よりGBM緻密層に垂直に伸展する長さ約3040nmの線維状構造が認められた。実験群では、極期に多量の蛋白尿が出現し、上記線維状構造は減少し、その配列も不規則となっていた。GBM結合銅量(μg/mg蛋白)も、対照群7.9±0.43に比し、3.7±0.33と有意に減少していた。以上の如く、本法により陰荷電障壁の定量化に成功し、さらにアミノヌクレオシド誘発ネフロ-ゼモデルにおける蛋白尿の成因の一つにGBM陰荷電障壁の減少が関与することを示した。糸球体基底膜(GBM)における高分子蛋白の透過性について、主としてヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)よりなる荷電障壁の重要性が報告されている。従来、これら荷電障壁を形成する陰荷電物質を染色する目的で、各種陽荷電プロ-ベが使用されているが、これらを定量化することは困難であり、さらに電顕にて観察されたこれらの形態は、HSPGの分子構造形態とは著しく矛盾すると指摘されていた。最近、我々はCuprolinic blueという銅を含む色素を用いて、まずGBM陰荷電物質を、その分子構造形態に近い形で捉え、さらに定量的評価としてこの色素中に銅が含まれることに着目し、GBM陰荷電物質に結合した銅を原子吸光分析装置にて測定し、陰荷電性の定量的指標化とすることに成功した。この方法にて、ラットのアミノヌクレオシド誘発ネフロ-ゼモデルにおけるGBM陰荷電物質の変化を検討した。即ち、本色素を臨界電界質濃度法に従って左腎を灌流し、一部を一般電顕観察用に試料を作成した。他方、GBMを単離し、GBM結合銅両を原子吸光分析装置にて測定し、単位蛋白当たりで示した。正常対照群では、GBM内外透明層に、足突起直下よりGBM緻密層に垂直に伸展する長さ約3040nmの線維状構造が認められた。実験群では、極期に多量の蛋白尿が出現し、上記線維状構造は減少し、その配列も不規則となっていた。GBM結合銅量(μg/mg蛋白)も、対照群7.9±0.43に比し、3.7±0.33と有意に減少していた。以上の如く、本法により陰荷電障壁の定量化に成功し、さらにアミノヌクレオシド誘発ネフロ-ゼモデルにおける蛋白尿の成因の一つにGBM陰荷電障壁の減少が関与することを示した。糸球体基底膜(GBM)における高分子蛋白の透過性について、主としてヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)よりなる荷電障壁の重要性が報告されている。従来、これら荷電障壁を形成する陰荷電物質を染色する目的で、各種陽荷電プローベが使用されているが、これらを定量化することは困難であり、さらに電顕にて観察されたこれらの形態は、HSPGの分子構造形態とは著しく矛盾すると指摘されていた。最近、我々はCoprolinic blueという銅を含む色素を用いて、まずGBM陰荷電物質をその分子構造形態に近い形で捉え、さらに定量的評価として、この色素中に銅が含まれることに着目し、GBM陰荷電物質に結合した銅を原子吸光分析装置にて測定し、陰荷電性の定量的指標化を行うことに成功した。この方法にてラットのアミノヌクレオシド誘発ネフローゼモデルにおけるGBM陰荷電物質の変化を検討した。即ち、本色素を臨界電解質濃度法に従って左腎を灌流し、一部を一般電顕観察用に試料を作成した。他方、GBMを単離し、GBM結合銅量を原子吸光分析装置にて測定し、単位蛋白量あたりで示した。正常対照群では、GBM内外透明層に足突起直下よりGBM緻密層に垂直に伸展する長さ約3040nmの線維状構造が認められた。実験群では、極期に多量の蛋白尿が出現し、上記線維状構造が減少し、その配列も不規則となっていた。GBM結合銅量(μg/mg蛋白)も対照群7.9±0.43に比し、3.7±0.33と有意に減少していた。以上のごとく、本法により陰荷電障壁の定量化に成功し、さらにアミノヌクレオシド誘発ネフローゼモデルにおける蛋白尿の成因の一つにGBM陰荷電障壁の減少が関与することを示した。 | KAKENHI-PROJECT-63570288 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63570288 |
糸球体蛋白透過性における荷電障壁の関与 ーその定量化に関する検討ー | 糸球体基底膜(GBM)における高分子蛋白の透過性について、主としてヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)よりなる荷電障壁の重要性が報告されている。前回、申請者らCuprolinic blueという銅を含む色素を用いて、GBM陰荷電物質を、その分子構造形態に近い形で捉え、さらに定量的評価としてこの色素中に銅が含まれることに着目し、GBM陰荷電物質に結合した銅を原子吸光分析装置にて測定し、陰荷電性の定量的指標化することに成功した。さらに、この方法によってラットのアミノヌクレオシド誘発ネフロ-ゼモデルにおいてGBM結合銅量は、対照に比し有意に減少し、本症における蛋白尿の成因の一つにGBM陰荷電障壁の減少が関与することを報告した。今回は、本陽荷電プロ-ベが、果してGBM中のどの陰イオンに結合するかを知る目的で、in vitroで一定イオン強度のもとに、溶液のPHを0.7から8.0まで変化させ、Cuprolinic blueのGBMへの結合性を検討した。即ち、GBMは無処理ラットより腎を摘出し、sieving法にて糸球体を単離、その後超音波処理により単離GBMを得た。この単離GBMを0.3MMgCl_2加酢酸Na緩衝液中で、PHを変化させ、Cuprolinic blueのGBMへの結合性をGBM単位蛋白当りで示した。この結果、PH2.0ではPH5.6に比し半減しており、Carboxyl陰イオンのPKが5.0、sulfate陰イオンのPKが2.0であることを考え合わせると本陽荷電プロ-ベは、carboxyl基に比し、優位にsulfate基に結合すると考えられた。GBMの陰荷電障壁は主としてHSPGより形成されると考えられるので、以上の結果は、GBM陰荷電障壁の定性的及び定量的評価に本方法は適当な手段であると考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-63570288 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63570288 |
Barrett上皮の腸上皮化生と胃の腸上皮化生の比較による前癌病変の分子機構解析 | 胃の腸上皮化生と比較して,Barrett上皮の腸上皮化生は1)Barrett上皮腸上皮化生のムチンの形質は胃型(MUC5AC),腸型(MUC2)の混合型が多い.2)Barrett癌とその隣接するBarrett粘膜は腸型,特に大腸型sulfo-Lewis^a mucinを強く発現する.胃の腸上皮化生粘膜では小腸型ムチン(sialyl Tn)がdominantであった.3)Barrett粘膜の増殖活性(CyclinD1,Ki-67)は特殊円柱上皮>移行型上皮>胃底腺型上皮であり,特殊円柱上皮のKi-labeling indexは胃の腸上皮化生粘膜のそれより高値であった.4)Barrett上皮の腸型形質発現はepigeneticalにhomeobox genefamily(HOXB6,CDX-1,-2),p16 promoter領域のmethylation或いはdemethylationと関連があった.5)Barrett粘膜の実体顕微鏡・拡大内視鏡観察で腸型,移行型,胃型のムチンを発現する粘膜はそれぞれ特異なpit patternを示す.腸型のpit patternはtubulovillous patternで複雑な分岐を示す脳回転状鎖状のパターンで中心部に毛細血管を認める.胃の腸上皮化生粘膜は比較的単純な樹枝状パターンで毛細血管を認めることはまれであった.6)Barrettの腸型,移行型,胃底腺型粘膜および正常重層扁平上皮ではcytokeratin 7/20/14の発現パターンが異なる.腸型Barrett粘膜では腺管の表層がCK20陽性で中深層でCK7が陽性であるが,胃幽門部腸上皮化生では一定の傾向は認められなかった.7)Barrett粘膜の腸型形質のpit pattern(tubulovillous pattern)を示す粘膜は狭帯域フィルター拡大内視鏡(Narrow Band Imaging endoscope)により異常な毛細血管networkを示し,8)かつ,この腸型粘膜ではVEGFなどのangiogenetic factorが胃の腸上皮粘膜に比し高発現を認めることが明らかであった.以上からBarrett粘膜の腸上皮化生は形質的には胃腸混合型でhybrid patternを示し,特に大腸型の硫酸型糖鎖を持つムチンが特徴的であり(ムチン発現と拡大内視鏡所見は対応しており),このような粘膜は細胞回転が亢進し,血管新生因子を高発現し,拡大内視鏡的にも異常な毛細血管network patternを確認できた.胃の腸上皮化生と比較して,Barrett上皮の腸上皮化生は1)Barrett上皮腸上皮化生のムチンの形質は胃型(MUC5AC),腸型(MUC2)の混合型が多い.2)Barrett癌とその隣接するBarrett粘膜は腸型,特に大腸型sulfo-Lewis^a mucinを強く発現する.胃の腸上皮化生粘膜では小腸型ムチン(sialyl Tn)がdominantであった.3)Barrett粘膜の増殖活性(CyclinD1,Ki-67)は特殊円柱上皮>移行型上皮>胃底腺型上皮であり,特殊円柱上皮のKi-labeling indexは胃の腸上皮化生粘膜のそれより高値であった.4)Barrett上皮の腸型形質発現はepigeneticalにhomeobox genefamily(HOXB6,CDX-1,-2),p16 promoter領域のmethylation或いはdemethylationと関連があった.5)Barrett粘膜の実体顕微鏡・拡大内視鏡観察で腸型,移行型,胃型のムチンを発現する粘膜はそれぞれ特異なpit patternを示す.腸型のpit patternはtubulovillous patternで複雑な分岐を示す脳回転状鎖状のパターンで中心部に毛細血管を認める.胃の腸上皮化生粘膜は比較的単純な樹枝状パターンで毛細血管を認めることはまれであった.6)Barrettの腸型,移行型,胃底腺型粘膜および正常重層扁平上皮ではcytokeratin 7/20/14の発現パターンが異なる.腸型Barrett粘膜では腺管の表層がCK20陽性で中深層でCK7が陽性であるが,胃幽門部腸上皮化生では一定の傾向は認められなかった.7)Barrett粘膜の腸型形質のpit pattern(tubulovillous pattern)を示す粘膜は狭帯域フィルター拡大内視鏡(Narrow Band Imaging endoscope)により異常な毛細血管networkを示し,8)かつ,この腸型粘膜ではVEGFなどのangiogenetic factorが胃の腸上皮粘膜に比し高発現を認めることが明らかであった.以上からBarrett粘膜の腸上皮化生は形質的には胃腸混合型でhybrid patternを示し,特に大腸型の硫酸型糖鎖を持つムチンが特徴的であり(ムチン発現と拡大内視鏡所見は対応しており),このような粘膜は細胞回転が亢進し,血管新生因子を高発現し,拡大内視鏡的にも異常な毛細血管network patternを確認できた.Barretts上皮の腸上皮仮生と胃幽門部の腸上皮仮生巣はMUC2コアpeptideの発現は両者に差は認められなかったが,アポムチンA3D4の発現はBarrett | KAKENHI-PROJECT-13670533 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13670533 |
Barrett上皮の腸上皮化生と胃の腸上皮化生の比較による前癌病変の分子機構解析 | 上皮に強く発現し,またこの側鎖と考えられる硫酸化糖鎖の発現も同様の傾向を示した.Ki-67による細胞増殖活性はBarrett上皮腸上皮化生=胃不完全型腸上皮化生>胃完全型腸上皮化生であった.Barrett上皮を有する患者30名の拡大内視鏡観察を行い,粘膜微細構造を5型に分類した.点状ならびに直線状のpitはアポムチンMUC5ACならびにMUC6を強く発現し(75%),管状,絨毛状のpitはアポムチンMUC2ならびに硫酸化糖鎖sulfo-Lewisa,シアル酸化糖鎖sialyl Tnを高頻度(90%)に認められた.また長楕円型のpitはMUC5ACとMUC2の両者を混在して発現する傾向を見せた。PCNAlabelingindexは絨毛状>管状>長楕円状>直線状・点状pitであった.胃の腸上皮化生と比較して,Barrett上皮の腸上皮化生は1.Barrett上皮腸上皮化生のムチンの形質は胃型(MUC5AC),腸型(MUC2)の混合型が多い.2. Barrett癌とその隣接するBarrett粘膜は腸型,特に大腸型Sulfo-Lewis^a mucinを強く発現する.胃の腸上皮化生粘膜では小腸型ムチン(sialyl Tn)がdominantであった.3. Barrett粘膜の増殖活性(CyclinDl, Ki-67)は特殊円柱上皮>移行型上皮>胃底腺型上皮であり,特殊円柱上皮のKi-labeling indexは胃の腸上皮化生粘膜のそれより高値であった.4. Barrett上皮の腸型形質発現はepigeneticalにhemeobox gene family(HOXB6, CDX-1, -2),p16 promoter領域のmethylation或いはdemethylationと関連があった.5. Barrett粘膜の実体顕微鏡・拡大内視鏡観察で腸型,移行型,胃型のムチンを発現する粘膜はそれぞれ特異なpit patternを示す.腸型のpit patternはtubulovillous patternで複雑な分岐を示す脳回転状鎖状のパターンで中心部に毛細血管を認める.胃の腸上皮化生粘膜は比較的単純な樹枝状パターンで毛細血管を認めることはまれであった.6. Barrettの腸型,移行型,胃底腺型粘膜および正常重層扁平上皮ではcytokeratin 7/20/14の発現パターンが異なる.腸型Barrett粘膜では腺管の表層がCK20陽性で中深層でCK7が陽性であるが,胃幽門部腸上皮化生では一定の傾向は認められなかった.7. Barrett粘膜の腸型形質のpit pattern(tubulovillous pattern)を示す粘膜は狭帯域フィルター拡大内視鏡(Narrow Band Imaging endoscope)により異常な毛細血管networkを示し,8.かつ,この腸型粘膜ではVEGFなどのangiogenetic factorが胃の腸上皮粘膜に比し高発現を認めることが明らかであった.以上からBarrett粘膜の腸上皮化生は形質的には胃腸混合型でhybrid patternを示し,特に大腸型の硫酸型糖鎖を持つムチンが特徴的であり(ムチン発現と拡大 | KAKENHI-PROJECT-13670533 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13670533 |
膜2回貫通型カリウムチャネルの分子機能調節と生体機能異常 | 本研究で得られた実績は以下のとおりである。(1) ATP感受性カリウムチャネルA)血管平滑筋型ATP感受性カリウムチャネルがスルホニルウレア受容体SUR2bと膜2回貫通型カリウムチャネルKir6.1の複合体として構成されることを世界で初めて明らかにした。その構成ユニットの違いによりATP感受性カリウムチャネルが、細胞内ヌクレオチドやチャネル開口薬により異なる調節を受けることを明らかにした。B)ATP感受性カリウムチャネルのチャネルコンダクタンスの違いが、イオン透過孔を構成する膜2回貫通型カリウムチャネルKir6.0の分子構造中のポア領域に存在することをKir6.1とKir6.2のキメラ体を作成することにより明らかにした。(2) G蛋白調節性カリウムチャネルA)黒質線条体のドーパミンニューロンのG蛋白調節性カリウムチャネルが、kir3.2a、Kir3.2cから構成されることを明らかにし、この分布にPSD系列のアンカリング蛋白が関与していることを示唆した。B)脳下垂体前葉甲状腺刺激ホルモン(TSH)分泌細胞において、分泌顆粒上にKir3.1が存在していることを見い出し、TSH分泌刺激により細胞膜に分泌顆粒が融合し機能的チャネルを発現することを見い出した。C)心臓からkir3.0の新たなサブユニットkir3.1bを単離し、その活性を調べることによりG蛋白質によるチャネル活性化にチャネルのカルボキシル末端が重要であることを示唆した。(3)その他の膜2回貫通型カリウムチャネルA)Kir2.Oサブファミリーが中枢神経系において嗅球に階層状に発現していることを見い出した。B)kir4.1が中枢神経では内耳の内リンパ胞、グリア細胞、脳室上皮細胞の基底膜側、網膜ミュラー細胞に発現していることを見い出した。C)新しい膜2回貫通型カリウムチャネル検索の過程で心臓から新たな膜4回貫通型チャネルCTBAKをクローニングした。本研究で得られた実績は以下のとおりである。(1) ATP感受性カリウムチャネルA)血管平滑筋型ATP感受性カリウムチャネルがスルホニルウレア受容体SUR2bと膜2回貫通型カリウムチャネルKir6.1の複合体として構成されることを世界で初めて明らかにした。その構成ユニットの違いによりATP感受性カリウムチャネルが、細胞内ヌクレオチドやチャネル開口薬により異なる調節を受けることを明らかにした。B)ATP感受性カリウムチャネルのチャネルコンダクタンスの違いが、イオン透過孔を構成する膜2回貫通型カリウムチャネルKir6.0の分子構造中のポア領域に存在することをKir6.1とKir6.2のキメラ体を作成することにより明らかにした。(2) G蛋白調節性カリウムチャネルA)黒質線条体のドーパミンニューロンのG蛋白調節性カリウムチャネルが、kir3.2a、Kir3.2cから構成されることを明らかにし、この分布にPSD系列のアンカリング蛋白が関与していることを示唆した。B)脳下垂体前葉甲状腺刺激ホルモン(TSH)分泌細胞において、分泌顆粒上にKir3.1が存在していることを見い出し、TSH分泌刺激により細胞膜に分泌顆粒が融合し機能的チャネルを発現することを見い出した。C)心臓からkir3.0の新たなサブユニットkir3.1bを単離し、その活性を調べることによりG蛋白質によるチャネル活性化にチャネルのカルボキシル末端が重要であることを示唆した。(3)その他の膜2回貫通型カリウムチャネルA)Kir2.Oサブファミリーが中枢神経系において嗅球に階層状に発現していることを見い出した。B)kir4.1が中枢神経では内耳の内リンパ胞、グリア細胞、脳室上皮細胞の基底膜側、網膜ミュラー細胞に発現していることを見い出した。C)新しい膜2回貫通型カリウムチャネル検索の過程で心臓から新たな膜4回貫通型チャネルCTBAKをクローニングした。内向き整流カリウムチャネル(Krec)ファミリーは、古典的内向き整流性(IRK)、G蛋白制御性(GIRK)、ATP感受性(K_<ATP>)およびATP抑制性(K_<AB>)に分類することができる。本年度において我々はGIRKファミリーに属する新たなクローンの単離を行い、報告した(Isomoto S. et al. Biochen. Biophys. Res. Commun. 218:286,1996)。このクローンはGIRK2のsplice variantであり、GIRK2Bと名付けた。GIRK2BはGIRKファミリーの別のサブユニットであるGIRK1とのヘテロ重合体としてG蛋白制御性カリウム(K_G)チャネルを形成するが、他のGIRKファミリーに比べて広範囲な組織に発現が認められており、組織によってはその他の機能を有している可能性が示唆された。また、GIRK1に特異的な抗体を用いて脳を免疫染色するとシナプス前ニューロンが染まるという所見を得た(Morishige K. et al. Biochen. Biophys. Res. Commun. 1996,in press)。これはGIRK1の中枢における調節のメカニズムがシナプス前抑制であることを強く示唆している。さらに、この抗体を用いた生化学的検討により、前脳におけるK_GチャネルがGIRK1およびその結合蛋白との4量体として形成されることも推測された(Inanobe A. et al. Biochen. Biophys. Res. Commun. 217:1238,1995)IRKファミリーに属する3種類のクローン(IRK1.2.3)についてin situ hybridizationを用いて中枢神経系での発現分布を検討した。 | KAKENHI-PROJECT-07407006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07407006 |
膜2回貫通型カリウムチャネルの分子機能調節と生体機能異常 | その結果、これらIRKファミリーは脳内においてそれぞれ異なった発現分布を示しており、それぞれの中枢における機能調節も異なっていることを強く示唆している(Horio Y. et al. FEBS Lett. 379:239,1996)。膜2回貫通型カリウムチャネルの全貌を明らかとするために脳cDNAライブラリーから、新たなチャネルGIRK2Bをクローン化した。また、GIRK1についてもG蛋白質βγサブユニットの結合部位を欠くバリアント(GIRK1B)があることを最近見いだした。一方、ATP感受性カリウムチャネルについてチャネルサブユニットであるBIRとuK_<ATP>をクローン化し、さらにそれに結合するスルフォニル尿素受容体SUR2Bを新たにクローン化した。SUR2Bの発現は広く分布しており、uK_<ATP>と共に培養細胞HEKに発現させたところ血管平滑筋に存在するATP感受性カリウムチャネルに非常に似た性質チャネルを発現することがわかった。これははじめての血管平滑筋型ATP感受性カリウムチャネルのクローニングである。ゲノム遺伝子のクローニングについても既にIRK3 geneを単離していたがさらにK_<AB>-2、GIRK1 geneを単離した。一方クローン化したチャネルについては、まず、古典的内向き整流カリウムチャネルのIRK1,IRK2,IRK3についてはin situ hybridizationによって脳内の詳細な分布を明かとし、ATP依存性カリウムチャネルのK_<AB>-2の分布について網膜のグリア細胞であるMull細胞や内耳血管状のなかのMarginal細胞に特異的に発現していることを明かとした。また、GIRK1については生化学的解析からG蛋白質βγサブユニットが直接チャネルに結合すること、免疫電顕によりGIRK1はプレシナプスに存在することを明らかとした。チャネル電気生理学的解析ではK_GチャネルやIRK2の内向き整流特性が細胞内ポリアミンによってもたらされること、1つのK_Gチャネルの開口には複数個(おそらく4つ)のG蛋白質βγサブユニットが必要であること、また、脳内向き整流カリウムチャネルが_CAMPや_CGMPで抑制されることを明かとした。神経の興奮性はNO等の各種の伝達物質でカリウムチャネルを介して調節されている可能性が高いことが判明した。本年度に本研究で得られた実績は以下のとおりである。1.K_<ATP>チャネル関連:(1)血管平滑筋型K_<ATP>チャネルが、スルフォニールユレア受容体SUR2Bと2回膜貫通型K^+チャネルサブニットKir6.1の複合体として構成されることを、世界で初めて見いだした。またSUR2B/Kir6.1チャネルが、Kir6.2を含む心筋・膵臓型の古典的K_<ATP>チャネルとは全く異なる、細胞内ヌクレオチドによる調節、K^+チャネル開口薬による活性化を受けることを見いだした。(2)古典的K_<ATP>チャネルは細胞内 | KAKENHI-PROJECT-07407006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07407006 |
敗血症などの代謝亢進状態における臓器酸素化指標としての消化管トノメーターの有用性 | 多発外傷および重症熱傷による外傷性ショック、食道癌術後、遊離小腸移植後、胸腹部大動脈癌術後および敗血症例、計38例を対象に、経時的に胃トノメーターによる胃粘膜pH(以下pHi)を測定し、次の結果を得た。1)胃トノメーターによる胃粘膜内PH値(phi)は、外傷性ショックからの蘇生後、あるいは大手術直後には、7.3以下に低下したが、大部分の症例で、浸襲暴露から72時間以内に、7.3以上に回復した。しかし、7.3以下を72時間以上遷延した症例は、臓器不全の合併を認め予後不良であった。2)外傷性ショック15例について、pHi値と、他の指標との関連を見ると、受傷後72時間以内では、乳酸値・IL-6・動脈血中ケトン体比(AKBR)・好中球エラスターゼ(PMNE)・PAI-1と有意の相関を認め、浸襲の程度とpHiとの間に密接な関連を認めた。3)Swan-Ganz catheterによる循環諸量について検討すると、pHiと酸素供給量(Do2)との間に、有意の負の相関が認められたが、酸素消費量(Vo2)との間には、認められなかった。従って、敗血症など代謝亢進状態における消化管粘膜の酸素化状態は、Swan-Ganz Catheterによる酸素需給の指標と一致せず、pHiのモニタリングは、組織酸素代謝の新たな情報を提供するものとして意義が認められた。4)腹部臓器血流改善策としてDopaminおよびPGE1の投与を行ったが、後者に比較的、pHiの改善を認めた。5)胃液pHとpHi値との間に有意の負の相関があり、pHi測定に当たっては、H2ブロッカーの投与が必要と考えられた。以上より、浸襲下における臓器酸素化指標として、胃トノメーターの有用性を示唆するデータが得られたが、今後は、代謝亢進状態における組織の酸素摂取率を上昇させ、酸素消費量の改善をいかにして行うかが次に課せられた問題と考えられる。多発外傷および重症熱傷による外傷性ショック、食道癌術後、遊離小腸移植後、胸腹部大動脈癌術後および敗血症例、計38例を対象に、経時的に胃トノメーターによる胃粘膜pH(以下pHi)を測定し、次の結果を得た。1)胃トノメーターによる胃粘膜内PH値(phi)は、外傷性ショックからの蘇生後、あるいは大手術直後には、7.3以下に低下したが、大部分の症例で、浸襲暴露から72時間以内に、7.3以上に回復した。しかし、7.3以下を72時間以上遷延した症例は、臓器不全の合併を認め予後不良であった。2)外傷性ショック15例について、pHi値と、他の指標との関連を見ると、受傷後72時間以内では、乳酸値・IL-6・動脈血中ケトン体比(AKBR)・好中球エラスターゼ(PMNE)・PAI-1と有意の相関を認め、浸襲の程度とpHiとの間に密接な関連を認めた。3)Swan-Ganz catheterによる循環諸量について検討すると、pHiと酸素供給量(Do2)との間に、有意の負の相関が認められたが、酸素消費量(Vo2)との間には、認められなかった。従って、敗血症など代謝亢進状態における消化管粘膜の酸素化状態は、Swan-Ganz Catheterによる酸素需給の指標と一致せず、pHiのモニタリングは、組織酸素代謝の新たな情報を提供するものとして意義が認められた。4)腹部臓器血流改善策としてDopaminおよびPGE1の投与を行ったが、後者に比較的、pHiの改善を認めた。5)胃液pHとpHi値との間に有意の負の相関があり、pHi測定に当たっては、H2ブロッカーの投与が必要と考えられた。以上より、浸襲下における臓器酸素化指標として、胃トノメーターの有用性を示唆するデータが得られたが、今後は、代謝亢進状態における組織の酸素摂取率を上昇させ、酸素消費量の改善をいかにして行うかが次に課せられた問題と考えられる。1多発外傷、重症熱傷などの外傷性ショック10例、食道癌、腹部大動脈瘤などの大手術後5例を対象に、臓器酸素化指標としての消化管トノメーターの有用性について検討した。2胃トノメーターによる胃粘膜内pH値(pHi)は、外傷性ショックからの蘇生後、及び大手術直後には7.310±0.046に低下したが、12時間後にはさらに7.295±0.027に低下した。しかし、24-48時間後には正常値へ復した。侵襲直後24時間における消化管虚血と、その後に生ずる敗血症との関連が示唆された。3pHi値と有意の相関を示したものは、乳酸値(r=-0.079)、IL-6値(r=0.565)、TAT値(r=-0.642)、PAI-1値(r=-0.634)、好中球エラスターゼ値(r=-0.622)であり、臓器障害の種々の誘因との密接な関連が示唆された。4敗血症における代謝亢進状態(SVR↓、CO↑、DO_2↑、VO_2↓、VO_2/DO_2↓)とpHiの変動は必ずしも一致しないが、病勢の早期予知及び予後判断に、よく反映されていた。5組織酸素摂取率の低下に対して、全例Dopamineを使用したが、第2年度には、PGE_1の効果を検討することにした。 | KAKENHI-PROJECT-05671000 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671000 |
敗血症などの代謝亢進状態における臓器酸素化指標としての消化管トノメーターの有用性 | 6胃液pH値とpHi値との間には、有意の相関は認められなかった。以上により、外傷性ショック後及び大手術後における臓器酸素化指標として、また、敗血症における臓器障害の予知あるいは予後指標として、消化管トノメーターの有用性を示唆するデータが得られたが、今後は症例を重ねると同時に、酸素摂取率の低下した組織をいかに改善させ、そしてトノメーターがその指標となり得るかを課題として検討する。1 30例の重症例(多発外傷10、重症熱傷5、大手術後15)を対象に、臓器酸素化指標としての胃トノメーターの有用性について検討した。2胃トノメーターによる胃粘膜内pH値(pHi)は、外傷性ショックからの蘇生後、あるいは大手術直後には、7.3以下に低下したが、大部分の症例で、侵襲暴露から72時間以内に、7.3以上に回復した。しかし、7.3以下を72時間以上遷延した症例は、臓器不全の合併を認め予後不良であった。3外傷性ショック15例について,pHi値と、他の指標との関連を見ると、受傷後72時間以内では、乳酸値・IL-6・動脈血中ケトン体比(AKBR)・好中球エラスターゼ(PMNE)・PAI-1と有意の相関を認め、侵襲の程度とpHiとの間に密接な関連を認めた。4 Swan-Ganz catheterによる循環諸量について検討すると、pHiと酸素供給量(Do2)および酸素消費量(Vo2)との間に、有意の負の相関が認められた。従って、敗血症など代謝亢進状態における消化管粘膜の酸素化状態は,Swan-Ganz catheterによる酸素需給の指標と一致せず,pHiのモニタリングは、組織酸素代謝の新たな情報を提供するものとして意義が認められた。5腹部臓器血流改善策としてDopaminおよびPGE1の投与を行ったが、後者に比較的,pHiの改善を認めた。6胃液pHとpHi値との間に有意の負の相関があり,pHi測定に当たっては、H2ブロッカーの投与が必要と考えられた。以上により、外傷性ショック後および大手術後における臓器酸素化指標として、また、敗血症における臓器障害の予知あるいは予後指標として、胃トノメーターの有用性を示唆するデータが得られたが、今後は、代謝亢進状態における酸素摂取率の低下をいかに改善させるかが臨床上の課題と考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-05671000 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671000 |
虚血心筋障害、リモデリングにおける心筋間質の病態と血管新生の画像化に関する研究 | ラット心筋虚血再還流モデルにおいて、C-14-methionineを用い、その経時的空間的集積の動態を病理組織学的所見と対比検討した。メチオニン集積は虚血領域の中心部を主体に、ほぼTl-201の集積低下部に一致して再還流3日で最大となり、その後漸減し4週後以降は正常部とほぼ同等の集積となった。病理学的にはその集積は浸潤したマクロファージの分布(CD68陽性細胞)と一致し、血管新生に関係するmyofibroblast(SMA陽性細胞)とは相関しなかった。メチオニンイメージは梗塞後の炎症反応の評価に有用である可能性が示唆された。虚血再還流ラット(30分虚血再還流モデル)を用いて、再還流後の心筋におけるC-14-methionineの集積の空間的、経時的変化のデータと、病理組織学的所見との対比検討を行った。再還流1日後ではメチオニンの集積が低く、病理学的には好中球等の炎症細胞浸潤が始まる時期であった。メチオニン集積は再還流3日後に増加しピークを示し、以後7日、14日、28日と漸減した。このメチオニン集積はTc-99m-MIBIによるarea at riskの内部でかつ心筋viability低下を反映するTl-201の集積低下部におおむね一致しており、心筋viability低下部への集積と判定された。どのような細胞にメチオニンが集積しているかを検討するためにマクロファージに対するCD68抗体と血管新生に関与するmyofibroblastに対する抗αSMA抗体ならびに心筋のマーカーである抗トロポニンI抗体による免疫組織染色を施行し比較した。その結果、再還流3日では心筋細胞間に浸潤したメクロファージが主体で、αSMA陽性のmyofibroblastはほとんど認めなかった。7日ではマクロファージ浸潤が依然として主体であったが、有意にmyofibroblastが出現していた。14日ではマクロファージは減少し、myofibroblastが相対的に増加していた。以上の経過から、虚血再還流による心筋梗塞の亜急性期のメチオニン集積はマクロファージに主に集積していると考えられた。治療的介入として虚血後の再還流時に、血流の再開、再閉塞を10秒毎に2分間繰り返すPostconditioningを行いメチオニンの集積がどのように変化するかに関する検討を開始した。視覚的な暫定的評価では、梗塞亜急性期のメチオニン集積はPostconditioningで低下していた。虚血再還流ラット(30分虚血再還流モデル)を用いて、再還流後の心筋におけるC-14-methionineの集積の空間的、経時的変化のデータと、病理組織学的所見に関して、治療的介入として虚血後の再還流時に、血流の再開、再閉塞を10秒毎に2分間繰り返すPostconditioning(PC)を行いメチオニンの集積がどのように変化するかに関する検討を行った。再還流1日後ではPosconの有無にかかわらずメチオニンの集積が低く(正常灌流部に対する虚血部のカウント比:PCなし0.74±0.12 vs PCあり0.78±0.11, P=ns)、病理学的には好中球等の炎症細胞浸潤が始まる時期であった。メチオニン集積は再還流3日後に増加し、ピークを示したがPCにより集積は抑制されなかった(PCなし1.72±0.12vsPCあり1.64±0.24, P=ns)。しかし7日(PCなし1.44±0.13 vs PCあり1.20±0.21, P<0.05)、14日(PCなし1.25±0.04 vs PCあり1.08±0.09/,P<0.005)、は有意にPCによりメチオニン集積は抑制された。PCの有無にかかわらず病理組織学的には、再還流3日では心筋細胞間に浸潤したメクロファージ(CD68抗体陽性細胞)が主体で、αSMA陽性のmyofibroblastはほとんど認めなかった。7日ではマクロファージ浸潤が依然として主体であったが、有意にmyofibroblastが出現していた。14日ではマクロファージは減少し、特にPCではほとんど認めず、myofibroblastが相対的に増加していた。以前の検討ではメチオニン集積はマクロファージへの集積を反映していることが示されたが、病理組織学的には明確にPCの有無でのマクロファージ浸潤の変化が示されなかった。これはRIイメージングでは定量が簡単にしかも精度よく行えるのに対して、病理組織での全虚血領域にわたるマクロファージ浸潤の定量化が困難なことに起因していると考えられた。将来の生体イメージングを鑑みるとこのイメージングの利点は重要であると思われる。ラット心筋虚血再還流モデルにおいて、C-14-methionineを用い、その経時的空間的集積の動態を病理組織学的所見と対比検討した。メチオニン集積は虚血領域の中心部を主体に、ほぼTl-201の集積低下部に一致して再還流3日で最大となり、その後漸減し4週後以降は正常部とほぼ同等の集積となった。病理学的にはその集積は浸潤したマクロファージの分布(CD68陽性細胞)と一致し、血管新生に関係するmyofibroblast(SMA陽性細胞)とは相関しなかった。メチオニンイメージは梗塞後の炎症反応の評価に有用である可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-23591756 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23591756 |
虚血心筋障害、リモデリングにおける心筋間質の病態と血管新生の画像化に関する研究 | 虚血再還流ラットを用いて、再還流後の心筋におけるメチオニンの代謝がどのような空間的、経時的変化をたどってゆくかを病態生理との関連において検討した。ラットの左冠動脈を30分閉塞後再還流したモデルを作成し、再還流1、3、7、14、28日、3月、6月後に、C-14-methionineならびに心筋viabilityをみるためのTl-201、area at riskの描出のためのTc-99m-MIBIを用いトリプルオートラジオグラフィを施行した。視覚的評価では、C-14-methionineの集積は3日以降にTc-99m-MIBIでの血流欠損部の内部に認めた。またmethionineの集積はおおむねTl-201の集積低下部に一致して認めたので、その集積は心筋細胞以外の間質組織への集積が疑われた。Tc-99m-MIBIの血流欠損部に相当する関心領域(ROI)における、正常血流部に対するTl-201, C-14-methionineの集積比は、再還流1日後ではTl-201, C-14-methionineの集積比はそれぞれ、0.35±0.13, 0.71±0.13といずれも減少していた。しかしながら再還流3日目にはTl-201の集積は0.66±0.10へと改善したが依然として正常部に比べ大きく低下していた。しかるにC-14-methionineは1.79±0.23と大きく増加していた。その後Tl-201の集積比は6月まで0.7-0.55の間でおおむね一定していたが、C-14-methionineの集積は7日で1.52±0.20、14日で1.31±0.12、28日で1.12±0.08と徐々に低下し、3、6月ではそれぞれ1.03±0.04, 0.94±0.04とほとんど正常部と同等となった。以上より梗塞亜急性期にmethionine集積が増加することが判明した。methionineの集積機序に関する研究はおおむね順調に進んだ。Galactro-RGDの合成、作成も進み、I-125による標識は可能となったものの、多核種によるオートラジオグラフィのためのTc-99mまたはIn-111による標識が依然として難しく、問題点として残った。ただしメチオニンの集積が梗塞亜急性期では血管新生ではなく、マクロファージの浸潤を反映していることが判明したため、メチオニンとの直接比較の必要性が低下した。従ってGalactro-RGDの集積分布の検討に関しては優先順位をおとし、今後の課題とした。虚血再還流モデルにおけるモデル作成は、心電図の監視により致死性の不整脈を早期に発見できたため死亡率が有意に低下した。従ってまとまった放射性トレーサーの投与が可能となり実験効率がアップした。またmethionineの集積、分布に関する検討は3核種オートラジオグラフィでの各トレーサーの投与放射能量の最適の比率(C-14-methionine:15-20μCi, Tl-201: 300-400μCi, Tc-99m-MIBI: 5-6 mCi)が比較的早期につかめたためスムーズに進行した。一方、Galactro-RGDの合成、作成も進み、I-125による標識は可能となったものの、多核種によるオートラジオグラフィのためのTc-99mまたはIn-111による標識が難しく、問題点として残った。従ってGalactro-RGDとメチオニンの集積分布を直接比較するための2核種同時のオートラジオグラフィの検討解析が遅れている。 | KAKENHI-PROJECT-23591756 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23591756 |
協同的学習を支援するネットワーク・システムの開発研究 | 本研究では小学生が、協同的に、相互の作品(科学的探求の記録、自由作文、絵や写真)を作り、それらを保存し、適宜参照/編集して、より創造的な協同探求活動継続、発展させることを支援するためのグループウェアの基本構成を設計し、それを活用した授業実践のフィールドワーク研究をもとに評価・改善を行い、協同学習をベースとしたコンピュータ教育実践についての新しいツールの開発と実践上の具体的な提言を行った。グループウェア開発は(株)リクルートのメディアデザインセンターとの協力のもとに、中心的なデザインコンセプトはリクルートの永井義人を含めた研究分担者の討議を経て決定した。実践としては、子どもの自主的な創造活動を積極的に進め、子どもたちがコンピュータを学習の道具の一つとして、他の道具や教材を活用した活動の中で「必要に応じて」活用する学習環境を構成し、その中で子どもたちが協同的な「作品づくり」(科学的探求だけでなく、自由作文や絵、写真なども含む)を通して、互いの個性を賞味しあい、自らの個性を具体的な形に作り上げるという、フレネ教育の基本理念に即した真の人間教育をめざしたコンピュータ教育の実践が実現した。実証実験としてコンピュータ利用教育で実績のある東京都港区神応小学校の苅宿学級とフレネ教育の実績のある東京都保谷市立保谷第二小学校の田中学級、さらに、やはりフレネ教育を長年実践してきてはいるがパソコン活用はほとんど行っていなかった東京都荒川区立第三峡田小学校の浅川学級、東京都杉並区立杉並第七小学校の石丸学級が加わり、開発されたソフト(仮称「キッズ・コム」)を利用して子どもたちの自由作文やアルバムの相互交換、電子メール交換などの学級間通信の実験的活用を行ったが、大変使いやすく、子どもたちの学習意欲を喚起し、学校教育にきわめて有効であることが実証された。本研究では小学生が、協同的に、相互の作品(科学的探求の記録、自由作文、絵や写真)を作り、それらを保存し、適宜参照/編集して、より創造的な協同探求活動継続、発展させることを支援するためのグループウェアの基本構成を設計し、それを活用した授業実践のフィールドワーク研究をもとに評価・改善を行い、協同学習をベースとしたコンピュータ教育実践についての新しいツールの開発と実践上の具体的な提言を行った。グループウェア開発は(株)リクルートのメディアデザインセンターとの協力のもとに、中心的なデザインコンセプトはリクルートの永井義人を含めた研究分担者の討議を経て決定した。実践としては、子どもの自主的な創造活動を積極的に進め、子どもたちがコンピュータを学習の道具の一つとして、他の道具や教材を活用した活動の中で「必要に応じて」活用する学習環境を構成し、その中で子どもたちが協同的な「作品づくり」(科学的探求だけでなく、自由作文や絵、写真なども含む)を通して、互いの個性を賞味しあい、自らの個性を具体的な形に作り上げるという、フレネ教育の基本理念に即した真の人間教育をめざしたコンピュータ教育の実践が実現した。実証実験としてコンピュータ利用教育で実績のある東京都港区神応小学校の苅宿学級とフレネ教育の実績のある東京都保谷市立保谷第二小学校の田中学級、さらに、やはりフレネ教育を長年実践してきてはいるがパソコン活用はほとんど行っていなかった東京都荒川区立第三峡田小学校の浅川学級、東京都杉並区立杉並第七小学校の石丸学級が加わり、開発されたソフト(仮称「キッズ・コム」)を利用して子どもたちの自由作文やアルバムの相互交換、電子メール交換などの学級間通信の実験的活用を行ったが、大変使いやすく、子どもたちの学習意欲を喚起し、学校教育にきわめて有効であることが実証された。本研究は、協同学習を支援する学習環境システムの開発(協同的学習を支援するソフトウェア開発とその活用のノウハウの開発を含む)を目的としたものである。本年度は小学生が、協同的に、相互の作品(科学的探求の記録、自由作文、絵や写真)を作り、それらを保存し、適宜参照/編集して、より創造的な協同探求活動継続、発展させることを支援するためのグループウェアの基本構成を設計し、それを活用した授業実践のフィールドワーク研究をもとに評価・改善を行い、協同学習ベースとしたコンピュータ教育実践についての新しいツールの開発と実践上の具体的な提言を得た。実践としては、子どもの自主的な創造活動を積極的に進め、子どもたちがコンピュータを学習の道具の一つとして、他の道具や教材を活用した活動の中で「必要に応じて」活用する学習環境を構成し、その中で子どもたちが協同的な「作品づくり」(科学的探求だけではなく、自由作文や絵、写真なども含む)を通して、互いの個性を賞味しあい、自らの個性を具体的な形に作り上げるという、フレネ教育の基本理念に即した真の人間教育をめざしたコンピュータ教育の実践のあるべき姿をさぐった。研究体制としては、パソコン活用の学習経験の豊富な東京都港区神応小学校の苅宿学級と、それほどフルに活用はしていないがきわめて着実に子どもたちの自発的な創造的活動に活用しはじめている保谷市立保谷第二小学校の田中学級、さらに、やはりフレネ教育を長年実践してきてはいるがパソコン活用はほとんど行っていなかった荒川区立第三峡田小学校の浅川学級が加わり、実験的授業のフィールドワークを通して、コンピュータ支援の在り方をさぐり、教育研究者と現場教師、ソフトウェア技術者との相互討論のもとにシステム開発とその試験的実践への基本体制を確立できた。 | KAKENHI-PROJECT-09558011 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09558011 |
協同的学習を支援するネットワーク・システムの開発研究 | 本研究では小学生が、協同的に、相互の作品(科学的探求の記録、自由作文、絵や写真)を作り、それらを保存し、適宜参照/編集して、より創造的な協同探求活動継続、発展させることを支援するためのグループウェアの基本構成を設計し、それを活用した授業実践のフィールドワーク研究をもとに評価・改善を行い、協同学習をベースとしたコンピュータ教育実践についての新しいツールの開発と実践上の具体的な提言を行った。グループウェア開発は(株)リクルートのメディアデザインセンターとの協力のもとに、中心的なデザインコンセプトはリクルートの永井義人を含めた研究分担者の討議を経て決定した。実践としては、子どもの自主的な創造活動を積極的に進め、子どもたちがコンピュータを学習の道具の一つとして、他の道具や教材を活用した活動の中で「必要に応じて」活用する学習環境を構成し、その中で子どもたちが協同的な「作品づくり」(科学的探求だけでなく、自由作文や絵、写真なども含む)を通して、互いの個性を賞味しあい、自らの個性を具体的な形に作り上げるという、フレネ教育の基本理念に即した真の人間教育をめざしたコンピュータ教育の実践が実現した。実証実験としてコンピュータ利用教育で実績のある東京都港区神応小学校の苅宿学級とフレネ教育の実績のある東京都保谷市立保谷第二小学校の田中学級、さらに、やはりフレネ教育を長年実践してきてはいるがパソコン活用はほとんど行っていなかった東京都荒川区立第三峡田小学校の浅川学級、東京都杉並区立杉並第七小学校の石丸学級が加わり、開発されたソフト(仮称「キッズ・コム」)を利用して子どもたちの自由作文やアルバムの相互交換、電子メール交換などの学級間通信の実験的活用を行ったが、大変使いやすく、子どもたちの学習意欲を喚起し、学校教育にきわめて有効であることが実証された。 | KAKENHI-PROJECT-09558011 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09558011 |
単分散粒子による高密度規則充填法の開発 | 1成分ないし2成分の単分散球形微粒子懸濁系による規則構造体生成条件の探索を実験とシミュレ-ションにより試み、高密度規則構造材料生成のための諸条件を明らかにすることを目的とした。研究概要は以下の通りである。(1)1成分単分散微粒子を用い、この懸濁液を定圧濾過により規則構造ケ-クを作ることを試み、規則構造ケ-クを生成するための実験条件を明らかにした。すなわち、規則構造の生成のためには濾過ケ-ク上面近傍の粒子濃厚層においてアルダ-転位を起こす必要があり、加圧力、電解質濃度を低くし、適当な粒子濃度が必要であることを明らかにした。(2)上述の実験における規則構造ケ-ク生成過程のシュミレ-ションを行い、定性的ではあるが規則構造生成条件を明らかにし、計算によってもその生成条件を探ることが可能であることを明らかにした。(3)規則構造の生成時に、どの程度粒径の異なる粒子が混入すれば規則構造が生成されないかについてもシミュレ-ションを行い、規則構造生成するために満足すべき単分散粒子の粒径の条件を明らかにした。(4)2成分単分散粒子の場合、自然界に存在するAB_<13>型、AB_2型規則構造(Aが大粒子、Bが小粒子)が安定であるための条件の領域をシミュレ-ションにより明らかにし、これらの2成分規則構造体は生成の可能性のあることが示された。また、AB_5型構造は非常に不安定であることが示された。一方、どの様な過程を経てAB_<13>型、AB_2型規則構造が生成されるかについても種々の生成プロセスのシミュレ-ションを試みたが、現在のところ成功していない。(4)2成分単分散粒子懸濁系の濾過においては少量の小粒子を添加することにより、規則構造ではないが、ケ-クの高密度化が可能であること、並びに低濃度の小粒子を大粒子ケ-ク層の粒子間隙に注入することによりケ-クの高密度化の可能性があることを明らかにした。1成分ないし2成分の単分散球形微粒子懸濁系による規則構造体生成条件の探索を実験とシミュレ-ションにより試み、高密度規則構造材料生成のための諸条件を明らかにすることを目的とした。研究概要は以下の通りである。(1)1成分単分散微粒子を用い、この懸濁液を定圧濾過により規則構造ケ-クを作ることを試み、規則構造ケ-クを生成するための実験条件を明らかにした。すなわち、規則構造の生成のためには濾過ケ-ク上面近傍の粒子濃厚層においてアルダ-転位を起こす必要があり、加圧力、電解質濃度を低くし、適当な粒子濃度が必要であることを明らかにした。(2)上述の実験における規則構造ケ-ク生成過程のシュミレ-ションを行い、定性的ではあるが規則構造生成条件を明らかにし、計算によってもその生成条件を探ることが可能であることを明らかにした。(3)規則構造の生成時に、どの程度粒径の異なる粒子が混入すれば規則構造が生成されないかについてもシミュレ-ションを行い、規則構造生成するために満足すべき単分散粒子の粒径の条件を明らかにした。(4)2成分単分散粒子の場合、自然界に存在するAB_<13>型、AB_2型規則構造(Aが大粒子、Bが小粒子)が安定であるための条件の領域をシミュレ-ションにより明らかにし、これらの2成分規則構造体は生成の可能性のあることが示された。また、AB_5型構造は非常に不安定であることが示された。一方、どの様な過程を経てAB_<13>型、AB_2型規則構造が生成されるかについても種々の生成プロセスのシミュレ-ションを試みたが、現在のところ成功していない。(4)2成分単分散粒子懸濁系の濾過においては少量の小粒子を添加することにより、規則構造ではないが、ケ-クの高密度化が可能であること、並びに低濃度の小粒子を大粒子ケ-ク層の粒子間隙に注入することによりケ-クの高密度化の可能性があることを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-03650777 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03650777 |
テクスチャー解析とディープ・ラーニングのPETへの応用を目指した基礎的研究 | テクスチャー解析とディープ・ラーニングがPETのAI診断に用いられるようになるための基礎的データを得ることを目指す。テクスチャー解析として、ファントム・動物のPET画像を、ファントムの真の画像や腫瘍病理切片と比較検討し、テクスチャー解析の特徴量がどのような微小構造に対応しているのかを明らかにする。ディープ・ラーニングについては申請者の所属する北海道大学病院で過去約10年間に蓄積された2万件以上のPET臨床画像を用いる。画像には医師が作成した報告書が付属しており、それを教師データとして機械学習を行う。(1)異常所見の有無、(2)もし異常があればその臓器をAIが指摘できるかを明らかにする。テクスチャー解析とディープ・ラーニングがPETのAI診断に用いられるようになるための基礎的データを得ることを目指す。テクスチャー解析として、ファントム・動物のPET画像を、ファントムの真の画像や腫瘍病理切片と比較検討し、テクスチャー解析の特徴量がどのような微小構造に対応しているのかを明らかにする。ディープ・ラーニングについては申請者の所属する北海道大学病院で過去約10年間に蓄積された2万件以上のPET臨床画像を用いる。画像には医師が作成した報告書が付属しており、それを教師データとして機械学習を行う。(1)異常所見の有無、(2)もし異常があればその臓器をAIが指摘できるかを明らかにする。 | KAKENHI-PROJECT-19K17127 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K17127 |
東京と南洋を往還する帝国の残映とゴジラ映画史50年の比較文化史 | 『ゴジラ』(1954年)に始まる「ゴジラ映画史50年」という“もう一つの文化史"には,成瀬巳喜男,小津安二郎などの戦後日本映画とも連動し,戦前の「帝国」日本と戦後の「敗戦国」日本の連続した昭和史が表象されている。ゴジラは,「東京」と「南洋」を往復する存在であり,(a)ゴジラ映画が描き続けてきた首都東京の歴史的・地理的特質,及び,(b)『モスラ』(1961年)にも痕跡が残されている戦前・戦後の日本と深く係わった「南洋憧憬」(南洋史観)という二つの観点を交差させ,その「帝国の残映」を浮き彫りにすることによって,「郷愁と鎮魂の空間」としてゴジラ映画の描いてきた日本の戦後比較文化史を明らかにした。『ゴジラ』(1954年)に始まる「ゴジラ映画史50年」とも言うべき“もう一つの文化史"には,成瀬巳喜男,小津安二郎などの1950年代の戦後日本映画とも分かち難く連動し,「帝国」日本と「敗戦国」日本の連続した昭和史が表象されている。ゴジラは,「東京」と「南洋」を往復する存在であり,本研究は,(1)ゴジラ映画が一貫して描き続けてきた帝都東京の歴史的・地理的特質という観点,及び,(2)『モスラ』(1961年)にもその痕跡が残されている戦前・戦後の日本と深く係わった南洋史・南洋史観(南洋憧憬)という二つの観点を交差させ,これまで学問的俎上に載せられることのなかった50年に亙るゴジラ映画の描いてきた日本の戦後比較文化史を研究するものである。敗戦国から立ち直ろうと1950年代に再軍備化されるなど,「ゴジラ映画史」から抽出される戦後の歴史表象(航空機・船舶・鉄道・軍事・交通・都市・海洋など)を研究することを主眼とし,大東亜戦争を経験した「帝国の残映」ー東京と南洋の「往還」,即ち,戦前と戦後の「連続性」ーを浮き彫りにすることによって,昭和史の表象空間ー「郷愁と鎮魂の空間」ーを明らかにする。その一環として,当該年度は,東武伊勢崎線隅田川橋梁や京急本線八ツ山跨線線路橋などの実地調査を行ない,『ゴジラ』や小津の『東京物語』,『早春』などの映画と,東京の鉄道線の戦前・戦後史との関係を考察した。論文「鉄道線と銀幕の風景ーゴジラの足跡を辿る東京1954年ー」(人文科学研究,第132輯)は,鉄道橋の都市景観,都心部への鉄道線の延伸,及び,戦前と戦後(1930年代と1950年代)の連続性について論じたものである。『ゴジラ』(1954年)に始まる「ゴジラ映画史50年」とも言うべき“もう一つの文化史"には,成瀬巳喜男,小津安二郎などの1950年代の戦後日本映画とも分かち難く連動し,「帝国」日本と「敗戦国」日本の連続した昭和史が表象されている。ゴジラは,「東京」と「南洋」を往復する存在であり,本研究は,(1)ゴジラ映画が一貫して描き続けてきた帝都東京の歴史的・地理的特質という観点,及び,(2)『モスラ』(1961年)にもその痕跡が残されている戦前・戦後の日本と深く係わった南洋史・南洋史観(南洋憧憬)という二つの観点を交差させ,これまで学問的俎上に載せられることのなかった50年に亙るゴジラ映画の描いてきた日本の戦後比較文化史を研究するものである。敗戦国から立ち直ろうと1950年代に再軍備化されるなど,「ゴジラ映画史」から抽出される戦後の歴史表象(航空機・船舶・鉄道・軍事・交通・都市・海洋など)を研究することを主眼とし,大東亜戦争を経験した「帝国の残映」ー東京と南洋の「往還」,即ち,戦前と戦後の「連続性」ーを浮き彫りにすることによって,昭和史の表象空間ー「郷愁と鎮魂の空間」ーを明らかにする。その一環として,当該年度は,総武緩行線松住町架道橋,昌平橋,両国橋,総武緩行線隅田川橋梁など,総武緩行線高架橋(御茶ノ水・秋葉原・浅草橋・両国間)とその周辺の景観・風景の現地調査などを行ない,『ゴジラ』や小津,成瀬の『稲妻』などの映画と,東京の鉄道線の戦前・戦後史との関係を,昨年度に引き続き考察した。『ゴジラ』(1954年)に始まる「ゴジラ映画史50年」とも言うべき"もう一つの文化史"には,成瀬巳喜男,小津安二郎などの1950年代の戦後日本映画とも分かち難く連動し,「帝国」日本と「敗戦国」日本の連続した昭和史が表象されている。ゴジラは,「東京」と「南洋」を往復する存在であり,本研究は,(1)ゴジラ映画が一貫して描き続けてきた帝都東京の歴史的・地理的特質という観点,及び,(2)『モスラ』(1961年)にもその痕跡が残されている戦前・戦後の日本と深く係わった南洋史・南洋史観(南洋憧憬)という二つの観点を交差させ,これまで学問的俎上に載せられることのなかった50年に亙るゴジラ映画の描いてきた日本の戦後比較文化史を研究するものである。 | KAKENHI-PROJECT-23520423 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23520423 |
東京と南洋を往還する帝国の残映とゴジラ映画史50年の比較文化史 | 敗戦国から立ち直ろうと1950年代に再軍備化されるなど,「ゴジラ映画史」から抽出される戦後の歴史表象(航空機・船舶・鉄道・軍事・交通・都市・海洋など)を研究することを主眼とし,大東亜戦争を経験した「帝国の残映」ー東京と南洋の「往還」,即ち,戦前と戦後の「連続性」ーを浮き彫りにすることによって,昭和史の表象空間ー「郷愁と鎮魂の空間」ーを明らかにする。その一環として,当該年度は,「第五福竜丸」や原子核エネルギーの軍事利用及び非軍事的利用の戦前・戦後史と「ゴジラ映画史」との関係を考察した。論文「発光する背びれと戦後日本ー核兵器とゴジラ映画史ー」(人文科学研究,第130輯)は,映画『第五福竜丸』と『ゴジラ』の比較,放射能とゴジラ,核兵器の戦後史を論じたものである。「東京湾から南洋へーゴジラ映画史と帝国日本ー」(図書『人文学の現在』,創風社出版,所収)では,戦前の国策映画,19501960年代の日本映画を含めて,昭和の交通史・軍事史とその映画表象,及び,戦前の委任統治領南洋群島と帝都東京の歴史的・地理的関係と戦後に於けるその連続性について論じた。『ゴジラ』(1954年)に始まる「ゴジラ映画史50年」とも言うべき“もう一つの文化史"には,成瀬巳喜男,小津安二郎などの1950年代の戦後日本映画とも分かち難く連動し,「帝国」日本と「敗戦国」日本の連続した昭和史が表象されている。ゴジラは,「東京」と「南洋」を往復する存在であり,本研究は,(1)ゴジラ映画が一貫して描き続けてきた帝都東京の歴史的・地理的特質という観点,及び,(2)『モスラ』(1961年)にもその痕跡が残されている戦前・戦後の日本と深く係わった南洋史・南洋史観(南洋憧憬)という二つの観点を交差させ,これまで学問的俎上に載せられることのなかった50年に亙るゴジラ映画の描いてきた日本の戦後比較文化史を研究するものである。敗戦国から立ち直ろうと1950年代に再軍備化されるなど,「ゴジラ映画史」から抽出される戦後の歴史表象(航空機・船舶・鉄道・軍事・交通・都市・海洋など)を研究することを主眼とし,大東亜戦争を経験した「帝国の残映」ー東京と南洋の「往還」,即ち,戦前と戦後の「連続性」ーを浮き彫りにすることによって,昭和史の表象空間ー「郷愁と鎮魂の空間」ーを明らかにする。当該年度は,書籍の刊行を目指して,これまで行なってきた研究を整理し,まとめる作業に着手した。全体の約半分程度まで進めることができた。また,表象文化論学会第9回研究発表集会(平成26年11月8日,新潟大学)に於いて,シンポジウム「ゴジラ再考」を行ない,「水爆か,生命かー発光する背びれと東京1954年ー」(ゴジラの歩いた東京1954年ー帰りたかった祖国ー,発光する背びれと銀座のネオンー「水爆か,生命か」ー,南下する鎮魂の隅田川ー亡夫魄霊の姿・複式夢幻能ー,生命としてのゴジラー「抗核」と「故郷」ー)という観点から話題を提供した。『ゴジラ』(1954年)に始まる「ゴジラ映画史50年」とも言うべき“もう一つの文化史"には,成瀬巳喜男,小津安二郎などの1950年代の戦後日本映画とも分かち難く連動し,戦前の「帝国」日本と戦後の「敗戦国」日本の連続した昭和史が表象されている。ゴジラは,「東京」と「南洋」を往復する存在であり,本研究では,(1)ゴジラ映画が一貫して描き続けてきた帝都東京の歴史的・地理的特質という観点,及び,(2)『モスラ』(1961年)にもその痕跡が残されている戦前・戦後の日本と深く係わった「南洋憧憬」(南洋史・南洋史観)という二つの観点を交差させ,これまで学問的俎上に載せられることのなかった50年に亙るゴジラ映画の描いてきた日本の戦後比較文化史を明らかにした。敗戦国から立ち直ろうとした1950年代の再軍備化や戦後復興期・高度経済成長期の首都東京など,「ゴジラ映画史」から抽出される戦後の歴史表象・地理表象(航空機・船舶・鉄道・軍事・交通・都市・海洋など)を研究することを主眼とし,大東亜戦争を経験した「帝国の残映」ー東京と南洋の「往還」,即ち,戦前と戦後の「連続性」ーをも浮き彫りにすることによって,昭和史の表象空間ー「郷愁と鎮魂の空間」ーとしての「ゴジラ映画史」を研究した。最終年度は,書籍の刊行を目指して,これまで行なってきた研究をまとめる作業に着手し,全体の約半分以上まで進めることができた。 | KAKENHI-PROJECT-23520423 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23520423 |
ゴルジ装置に局在するプロアルブミンの変換酵素について | 1)プロアルブミンのプロペプチドに対する抗体を調製し、その性格付けを行った(論文1)。プロペプチドに対する抗体は成熟型である血清アルブミンとは全く反応せず、プロアルブミンに特異的であることを明らかにした。また、本抗体を用いたイムノアフィニティ-クロマトグラフィ-によりプロアルブミンを簡便に精製する方法を報告した。さらに、ラット肝細胞を用いてのアルブミンの生合成とそのプロセシングに本抗体が有用であることを示した。2)ラット肝のcDNAライブラリ-よりα_1ープロテア-ゼインヒビタ-(α_1ーPI)のクロ-ニングを行ってその全アミノ酸配列を明らかにし,さらにCOSー1細胞にトランスフェクトすることによりその発現を確認した(論文2)。3)上述したα_1ーPIの352番目のメチオニンを部分特異的突然変異法によりアルギニンに変換し(Var M→A)、COSー1細胞で発現させた.またVarM→Aとプロアルブミンの遺伝子をCOSー1細胞にトランスフェクトすることにより、Var(M→A)がプロアルブミンのプロセシングを著明に阻害すること、一方α_1ーPI自身はプロセシングに何ら影響しないことを報告した(論文3)。4)プロアルブミンの切断部位の配列はArgーArg〓Gluからなっているが、グルタミン酸残基を部位特異的突然変異法を用いて他のアミノ酸に変換し、プロセシングへの影響を検討したところ、疎水性のアノミ酸に置換するとプロセシングが著明に阻害されることを見い出した(論文4)。1)プロアルブミンのプロペプチドに対する抗体を調製し、その性格付けを行った(論文1)。プロペプチドに対する抗体は成熟型である血清アルブミンとは全く反応せず、プロアルブミンに特異的であることを明らかにした。また、本抗体を用いたイムノアフィニティ-クロマトグラフィ-によりプロアルブミンを簡便に精製する方法を報告した。さらに、ラット肝細胞を用いてのアルブミンの生合成とそのプロセシングに本抗体が有用であることを示した。2)ラット肝のcDNAライブラリ-よりα_1ープロテア-ゼインヒビタ-(α_1ーPI)のクロ-ニングを行ってその全アミノ酸配列を明らかにし,さらにCOSー1細胞にトランスフェクトすることによりその発現を確認した(論文2)。3)上述したα_1ーPIの352番目のメチオニンを部分特異的突然変異法によりアルギニンに変換し(Var M→A)、COSー1細胞で発現させた.またVarM→Aとプロアルブミンの遺伝子をCOSー1細胞にトランスフェクトすることにより、Var(M→A)がプロアルブミンのプロセシングを著明に阻害すること、一方α_1ーPI自身はプロセシングに何ら影響しないことを報告した(論文3)。4)プロアルブミンの切断部位の配列はArgーArg〓Gluからなっているが、グルタミン酸残基を部位特異的突然変異法を用いて他のアミノ酸に変換し、プロセシングへの影響を検討したところ、疎水性のアノミ酸に置換するとプロセシングが著明に阻害されることを見い出した(論文4)。 | KAKENHI-PROJECT-02671044 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02671044 |
金属間化合物ナノ粒子表面の電子的・構造的修飾による触媒活性の向上および長寿命化 | 燃料電池のカソード側で生じる酸素還元反応(ORR)の触媒として用いられているカーボンブラック(CB)上に担持した白金触媒(Pt/CB)の最大の問題は、高い過電圧が生じることである。また、電極触媒の担持体として使用されているCBがORR中の高電位域で酸化されてしまうことによる触媒の劣化が挙げられる。本研究ではこれらの問題点を解決するために、カップを重ねた形状を有するカップスタックカーボンナノチューブ(CSCNT)のグラフェンエッジ部位を多く有する形状を利用しTiO2をコーティングし、さらに、そのTiO2を担持体として使用し、選択的にPtを光析出させてPt/TiO2/CSCNTを合成することで、この触媒が従来のPt/CBよりも触媒活性が高く、さらに触媒活性の耐久性が高くなることを明らかにした。金属酸化物上に担持したPt触媒が高い耐久性及びORR活性を得られる要因を十分に把握できていないことから、触媒表面を高分解能透過電子顕微鏡(TEM)及び高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡(HAADF-STEM)を用いることでPt-TiO2間の観察を行い、TiO2担持体を用いることによる耐久性向上の要因の解析を試みた。また、ORR電極触媒活性とPtナノ粒子の電子状態に関しては、Ptのd-バンドセンターの位置とORR触媒活性との相関に関して多くの報告があるが、これまで、Pt系合金中の第二元素とPt元素の電子的相互作用により5d軌道に変化を与え、ORR活性を向上させようとする研究などが報告されている。そこで、本研究では、Ptに鉛(Pb)を添加したPtPbナノ粒子をTiO2/CSCNTに担持させることでPt系合金とTiO2による電子的相互作用でPtの5d軌道に変化を与え、電位を印加することで第二元素を溶出させてPtとの組成比を変化させることによるPtの5d軌道の変化とORR活性の向上の検討を行った。予定した内容において研究が進み、その内容で学術論文が数報投稿中であるので。前述で述べたようにd-バンドセンターのシフトとORR活性向上には相関性が見られることから、今回の研究ではPtPb/TiO2/CSCNT触媒において、電位を印加することによるPtPbからPbを溶出させることで同一触媒のd-バンドセンターに変化を与えることによるORR活性とd-バンドセンターとの間の相関が観察された。これは、PtPb/TiO2/CSCNT触媒を、0.1M HClO4水溶液(Ar飽和)中でCVのサイクルを繰り返すことによって電気化学的に脱合金化したことによるもので、XRD、XPSおよびSTEMの観察からは、この脱合金化がPtPbからのPbの溶出をもたらし、その結果、異なる電子状態を有するPtおよびPb原子の組成及び表面構造の変化からなるPtPb金属間構造からPt3Pb金属間構造、さらにCVのサイクルの数を増加させてPt3Pbコア-Ptシェル構造への表面変化をもたらすことを示した。さらに、上記のような表面組成および構造の変化は、価電子帯領域におけるXPSから触媒の電子状態に大きな変化に反映されることが判明した。その結果、電気化学的に脱合金化されたPtPb/TiO2/CSCNT触媒について、ORR活性とd-バンドセンターとの相関が成立することを見出した。また、これらの結果はほかの元素でも同様の結果が得られ、理論的計算による結果だけでなく実際の測定でもPtの電子状態を変化させることによってORR活性を大幅に向上させることが可能であることを示した。しかし、上記の結果は現在実測値のみの結果であり理論値との差がどのようにあるのかをまだ確かめられていない。そのことから、今後はこの研究で使用された一連の触媒のd-バンドセンターのDFT計算ならびにそれらの酸素吸着エネルギーに基づき構成されたd-バンドセンターとORR活性との相関のさらなる理論的確認が必要である。固体高分子形燃料電池のカソード酸素還元反応(ORR)触媒として用いられているカーボンブラック(CB)上に担持した白金(Pt)触媒(Pt/CB)の最大の問題は、ORRで高い過電圧が生じてしまう。また電極触媒の担持体として使用されているCBがORR中における高電位域で酸化反応が生じてしまうことによる触媒の劣化である。本研究ではこれらの問題点を解決するために、カップを重ねたような形状を有するカップスタック型カーボンナノチューブ(CSCNT)のグラフェンエッジ部位を多く有することを利用しTiO2をコーティングし、さらに、そのTiO2を担持体として使用し、選択的にPtを光析出させてPt/TiO2/CSCNTを合成し、この触媒が従来のPt/CBよりも触媒活性が高く、さらに触媒活性の耐久性が高くなることを明らかにした。また、酸性水溶液中の酸素還元反応(ORR)において、貴金属である白金(Pt)を多用する必要があり、またPtを用いた場合においても高い過電圧が生じるなどの問題が残っている。Ptと同じ第8属金属であるパラジウム(Pd)は、Ptと比較して、触媒活性が劣るものの、Ptの代替触媒として注目されている。一方で、今までPtの触媒活性を向上させるために、Ptと卑金属の合金触媒が数多く提案されてきた。たとえば、PtとCuの規則合金(金属間化合物)はPt単体と比較して、高い触媒活性を有している。本研究ではPdとCuの金属間化合物PdCu3ナノ粒子の合成手法を検討するとともに、活性向上の要因を電子状態の観点から考察した。予定した内容において研究が進み、その内容で学術論文が数報公開されているので。 | KAKENHI-PROJECT-16K05945 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K05945 |
金属間化合物ナノ粒子表面の電子的・構造的修飾による触媒活性の向上および長寿命化 | 燃料電池のカソード側で生じる酸素還元反応(ORR)の触媒として用いられているカーボンブラック(CB)上に担持した白金触媒(Pt/CB)の最大の問題は、高い過電圧が生じることである。また、電極触媒の担持体として使用されているCBがORR中の高電位域で酸化されてしまうことによる触媒の劣化が挙げられる。本研究ではこれらの問題点を解決するために、カップを重ねた形状を有するカップスタックカーボンナノチューブ(CSCNT)のグラフェンエッジ部位を多く有する形状を利用しTiO2をコーティングし、さらに、そのTiO2を担持体として使用し、選択的にPtを光析出させてPt/TiO2/CSCNTを合成することで、この触媒が従来のPt/CBよりも触媒活性が高く、さらに触媒活性の耐久性が高くなることを明らかにした。金属酸化物上に担持したPt触媒が高い耐久性及びORR活性を得られる要因を十分に把握できていないことから、触媒表面を高分解能透過電子顕微鏡(TEM)及び高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡(HAADF-STEM)を用いることでPt-TiO2間の観察を行い、TiO2担持体を用いることによる耐久性向上の要因の解析を試みた。また、ORR電極触媒活性とPtナノ粒子の電子状態に関しては、Ptのd-バンドセンターの位置とORR触媒活性との相関に関して多くの報告があるが、これまで、Pt系合金中の第二元素とPt元素の電子的相互作用により5d軌道に変化を与え、ORR活性を向上させようとする研究などが報告されている。そこで、本研究では、Ptに鉛(Pb)を添加したPtPbナノ粒子をTiO2/CSCNTに担持させることでPt系合金とTiO2による電子的相互作用でPtの5d軌道に変化を与え、電位を印加することで第二元素を溶出させてPtとの組成比を変化させることによるPtの5d軌道の変化とORR活性の向上の検討を行った。予定した内容において研究が進み、その内容で学術論文が数報投稿中であるので。これまで、電極触媒活性の検討において、有機分子の酸化反応、酸素分子の還元反応に有効に機能する触媒を開発し、有効な触媒を開発した。しかし、まだまだ触媒活性の向上を必要とする。また、触媒活性の耐久性についても実用的にはまだまだであるため、今後の研究にはさらなる活性の向上と耐久性の確立に集中する。活性の向上には、触媒表面の電子状態が重要な因子があるので、例えば、酸素還元反応においては触媒表面のdーバンドセンターの位置が重要と議論されていいるので、本研究にもdーバンドセンターを変えた触媒表面を複数合成し、触媒活性とdーバンドセンターの位置について詳しく検討する。耐久性においては、触媒粒子が担持される材料を工夫することにより、触媒粒子が使用中に変化しないような工夫を行う。前述で述べたようにd-バンドセンターのシフトとORR活性向上には相関性が見られることから、今回の研究ではPtPb/TiO2/CSCNT触媒において、電位を印加することによるPtPbからPbを溶出させることで同一触媒のd-バンドセンターに変化を与えることによるORR活性とd-バンドセンターとの間の相関が観察された。これは、PtPb/TiO2/CSCNT触媒を、0.1M HClO | KAKENHI-PROJECT-16K05945 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K05945 |
方向スペクトル波中の浮体の挙動に関する研究 | 海洋開発において安定したプラットフォームを提供しうると言うことで重要な位置を占める浮遊式の海洋構造物は、海底石油開発、海上空港、海洋居住空間構築用等の基盤として注目されており、しかもより苛酷な外洋波浪中での運用にも耐えられる事を示す事が要求されつつある。本協力研究は、そのような中でも建造実績のある石油掘削、生産用海洋構造物を対象として、過酷な外洋波浪環境としての短波頂不規則波(方向スペクトル波)中での耐波性能推定法の開発を目指すものであり、日本及びブラジル両国の実情に応じた協力研究を実施したものである。初年度は先ず浮遊式海洋構造物を使用する外洋波浪環境の実態把握のため浮遊式海洋構造物の外洋波浪(方向スペクトル波)環境下に於ける運用の実情をみた。これには外洋での海底石油の生産現場を有するブラジルが適しておりブラジルに於て現地調査を行った。そのために日本からブラジルに研究者を派遣し、海底石油生産現場において各種浮遊式海洋構造物(船タイプも含む)の運用の実態、外洋波浪環境の実態についてブラジル側と共同の調査を行った。更に試験水槽に設置されている方向スペクトル波造波機を使用して方向スペクトル波中での浮遊式海洋構造物の運動、構造応答実験等を実施し、方向スペクトル波中での浮体の運動応答,構造応答を推定する方法の開発を検討するとともに、実験結果との比較を行う事によってその信頼性を確認した。方向スペクトル波中での流体力、構造強度推定法については基礎的な検討をするため方向スペクトル波の造波および解析実績のある横浜国立大学に於て共同研究を行った。また、そのためブラジルから研究者を招聘した。2年度目には前年度の共同研究を踏まえて方向スペクトル波中での浮遊式海洋構造物の挙動推定の為に入射角別に規則波中の応答を推定出来る計算プログラムを特異点分布法により作製した。特に安全性の観点から傾斜状態でも計算可能なプログラムとした。方向スペクトル波中での長周期波浪漂流力の計算法に関しては不明な点が多いのでブラジルに研究者を派遣し共同研究を行った。それとともに確認のために実験を共同で行った。但し実験は横浜国立大学の設備でのみ可能であるためにブラジルより研究者を招聘した。その結果方向スペクトル波中で比較的精度良く長周期運動を推定出来る実用計算手法が提案できた。また長波頂スペクトル波中での実験及び計算はブラジル側でも可能であるので日本より研究者を派遣した時にその点についても共同研究を実施し方向スペクトル波中での推定方法が長波頂波中でも適用可能である事を確認した.最終年度である本年度は、まず前年度開発したプログラムを使用して種々の方向スペクトル波中での運動、構造応答など挙動推定計を実施し、どのような状況で安全性に問題が生ずるかを検討した。また傾斜時にも本計算プログラムが有効であることを確認するため20度程度縦横同時に大傾斜した状態での方向別周波数応答関数を計算し実験結果と比較確認した。さらに石油掘削用の浮体だけでなく、長大な海上空港といった浮体についても計算、実験の両面から検討し、この様な長大浮体では方向スペクトル波中に於て、剛体モードの運動だけでなく弾性体モードの運動を考慮に入れる必要性を明かにした。この様な実験結果と計算結果の取りまとめおよび方向スペクトル波中6自由度運動計測の追加実験指導のため研究者をサンパウロ大学に2名派遣するとともに最終的な全体取りまとめの為にブラジル側責任者を招聘した。海洋開発において安定したプラットフォームを提供しうると言うことで重要な位置を占める浮遊式の海洋構造物は、海底石油開発、海上空港、海洋居住空間構築用等の基盤として注目されており、しかもより苛酷な外洋波浪中での運用にも耐えられる事を示す事が要求されつつある。本協力研究は、そのような中でも建造実績のある石油掘削、生産用海洋構造物を対象として、過酷な外洋波浪環境としての短波頂不規則波(方向スペクトル波)中での耐波性能推定法の開発を目指すものであり、日本及びブラジル両国の実情に応じた協力研究を実施したものである。初年度は先ず浮遊式海洋構造物を使用する外洋波浪環境の実態把握のため浮遊式海洋構造物の外洋波浪(方向スペクトル波)環境下に於ける運用の実情をみた。これには外洋での海底石油の生産現場を有するブラジルが適しておりブラジルに於て現地調査を行った。そのために日本からブラジルに研究者を派遣し、海底石油生産現場において各種浮遊式海洋構造物(船タイプも含む)の運用の実態、外洋波浪環境の実態についてブラジル側と共同の調査を行った。更に試験水槽に設置されている方向スペクトル波造波機を使用して方向スペクトル波中での浮遊式海洋構造物の運動、構造応答実験等を実施し、方向スペクトル波中での浮体の運動応答,構造応答を推定する方法の開発を検討するとともに、実験結果との比較を行う事によってその信頼性を確認した。方向スペクトル波中での流体力、構造強度推定法については基礎的な検討をするため方向スペクトル波の造波および解析実績のある横浜国立大学に於て共同研究を行った。また、そのためブラジルから研究者を招聘した。2年度目には前年度の共同研究を踏まえて方向スペクトル波中での浮遊式海洋構造物の挙動推定の為に入射角別に規則波中の応答を推定出来る計算プログラムを特異点分布法により作製した。特に安全性の観点から傾斜状態でも計算可能なプログラムとした。方向 | KAKENHI-PROJECT-04045026 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04045026 |
方向スペクトル波中の浮体の挙動に関する研究 | スペクトル波中での長周期波浪漂流力の計算法に関しては不明な点が多いのでブラジルに研究者を派遣し共同研究を行った。それとともに確認のために実験を共同で行った。但し実験は横浜国立大学の設備でのみ可能であるためにブラジルより研究者を招聘した。その結果方向スペクトル波中で比較的精度良く長周期運動を推定出来る実用計算手法が提案できた。また長波頂スペクトル波中での実験及び計算はブラジル側でも可能であるので日本より研究者を派遣した時にその点についても共同研究を実施し方向スペクトル波中での推定方法が長波頂波中でも適用可能である事を確認した.最終年度である本年度は、まず前年度開発したプログラムを使用して種々の方向スペクトル波中での運動、構造応答など挙動推定計を実施し、どのような状況で安全性に問題が生ずるかを検討した。また傾斜時にも本計算プログラムが有効であることを確認するため20度程度縦横同時に大傾斜した状態での方向別周波数応答関数を計算し実験結果と比較確認した。さらに石油掘削用の浮体だけでなく、長大な海上空港といった浮体についても計算、実験の両面から検討し、この様な長大浮体では方向スペクトル波中に於て、剛体モードの運動だけでなく弾性体モードの運動を考慮に入れる必要性を明かにした。この様な実験結果と計算結果の取りまとめおよび方向スペクトル波中6自由度運動計測の追加実験指導のため研究者をサンパウロ大学に2名派遣するとともに最終的な全体取りまとめの為にブラジル側責任者を招聘した。海洋開発において安定したプラットフォームを提案しうると言うことで重要な位置を占める浮遊式の海洋構造物は、海底石油開発、海上空港、海洋居住空間構築用等の基盤として注目されており、しかもより苛酷な外洋波浪中での運用にも耐えられる事を示す事が要求されつつある。本協力研究は、そのような中でも建造実績のある石油堀削、生産用海洋構造物を対像として、過酷な外洋波浪環境としての方向スペクトル波中での耐波性能推定法の開発を目指すものであり、日本及びブラジル両国の実情に応じた協力研究を実施するものである。本年度は先ず浮遊式海洋構造物を使用する外洋波浪環境の実態把握のため浮遊式海洋構造物の外洋波浪(方向スペクトル波)環境下に於ける運用の実情をみた。これには外洋での海底石油の生産現場を有するブラジルが適しておりブラジルに於て現地調査を行った。そのために日本からブラジルに研究者を派遣し、海底石油生産現場において各種浮遊式海洋構造物(船タイプも含む)の運用の実態外洋波浪環境の実態についてブラジル側と共同の調査を行った。更に試験水槽に設置されている方向スペクトル造波機を使用して方向スペクトル波中での浮遊式海洋構造物の運動、構造応答実験を実施し、方向スペクトル波中での浮体の運動応答、構造応答を推定する方法の開発を検討するとともに実験結果との比較を行う事によってその信頼性を確認した。方向スペクトル波中での流体力、構造強度推定法については基礎的な検討をするため方向スペクトル波の造波実績のある横浜国立大学に於て共同研究を行った。そのためブラジルから研究者を招聘した。 | KAKENHI-PROJECT-04045026 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04045026 |
柔軟な結晶を有し、液体ヘリウム温度で強靭な高分子材料の創製 | 平成15年度において,極低温で引張り試験を可能とする試験装置を試作し,その性能評価を行った。その結果,本装置を用いることで18K以下の極低温での引張り試験が可能であることを確認した。そこで平成16年度においては,同装置を用いて,具体的に各種高分子の極低温領域での引張り試験を開始した。まず,室温で柔軟な材料であるシリコーンゴムを取り上げて試験したところ,極低温域では極めて剛直であるだけでなく破断ひずみも小さく,ゴムとしての特性を失って脆い材料となることを見出した。したがって,当初予想したように通常のエントロピー弾性に立脚したゴムでは,極低温において,たとえばパッキン材料などへの利用が困難であることを確認した。一方,平成15年度において,ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)の分子鎖軸方向の結晶弾性率が室温で2.59GPa,18Kにおいて5.6GPaであることを見出した。この知見に基づけば,研究課題名にあるように,PTTは液体ヘリウム温度においても柔軟な結晶を有し,強靭な高分子材料となりうる可能性が示唆されていた。そこでPTTの4倍延伸配向試料について極低温領域での引張り試験を行ったところ,弾性率4.7GPa,引張り強度270MPa,破断ひずみ7.2%の力学物性値を得た。これらの値はPTTが極低温域で強靭であることを示している。上で述べたように本研究は当初計画を順調に遂行することに成功し,極低温高分子物性の領域に新たな知見を与えることができたのみならず,クライオジェニック材料の開発に際して有用な情報を提供することができた。今後本研究で確立した測定法をさらに発展させて各種高分子に展開するだけでなく,分子設計,合成に遡って,極低温域でのより一層強靭な高分子材料の創製を行っていく予定である。平成15年度は,(1)液体ヘリウム温度で柔軟な結晶を有する高分子の探索と,(2)液体ヘリウム温度での高分子材料の強靭性を評価するための装置の試作を行った。(1)に関しては,既存の試作装置を用いてさまざまな高分子の結晶弾性率の評価を進めている。これまでのところ,他の高分子に比較して,ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)の分子鎖軸方向の結晶弾性率が常温(25°C)で著しく低いこと(2.59GPa),極低温(18K)においても高々5.4GPaにまでしか増加しないことを見出した。さらに極低温でも結晶領域を5%以上可逆的にひずませることが可能であった。その他の材料ではひずみにして1%程度までであったのに比較して,この高分子の示す高ひずみ,低弾性率は,まさにPTTがエネルギー弾性に基づく柔軟性高分子材料として極めて有力な候補になりえることを意味している。(2)に関して本年度は,装置として,i)極低温(18Kを目標とする)まで冷却可能なこと,ii)真空下で試料に応力を付加できること,iii)既存の引張り試験機に附属させることが可能なこと,の条件のもと,まず装置の設計からはじめた。設計に基づいて装置を試作し,同装置が当初の冷却能力,応力付加能力を満たしていることを確認した。現在,試料取り付け部位の微調整を行っており,来年度には当初予定している高分子材料の強靭性評価を行う予定である。この際,まずは(1)で見出したPTTを手始めとして,さまざまな高分子材料を評価の対象とする。このように現在までのところ本研究は当初計画を遂行すべく順調に推移している。平成15年度において,極低温で引張り試験を可能とする試験装置を試作し,その性能評価を行った。その結果,本装置を用いることで18K以下の極低温での引張り試験が可能であることを確認した。そこで平成16年度においては,同装置を用いて,具体的に各種高分子の極低温領域での引張り試験を開始した。まず,室温で柔軟な材料であるシリコーンゴムを取り上げて試験したところ,極低温域では極めて剛直であるだけでなく破断ひずみも小さく,ゴムとしての特性を失って脆い材料となることを見出した。したがって,当初予想したように通常のエントロピー弾性に立脚したゴムでは,極低温において,たとえばパッキン材料などへの利用が困難であることを確認した。一方,平成15年度において,ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)の分子鎖軸方向の結晶弾性率が室温で2.59GPa,18Kにおいて5.6GPaであることを見出した。この知見に基づけば,研究課題名にあるように,PTTは液体ヘリウム温度においても柔軟な結晶を有し,強靭な高分子材料となりうる可能性が示唆されていた。そこでPTTの4倍延伸配向試料について極低温領域での引張り試験を行ったところ,弾性率4.7GPa,引張り強度270MPa,破断ひずみ7.2%の力学物性値を得た。これらの値はPTTが極低温域で強靭であることを示している。上で述べたように本研究は当初計画を順調に遂行することに成功し,極低温高分子物性の領域に新たな知見を与えることができたのみならず,クライオジェニック材料の開発に際して有用な情報を提供することができた。今後本研究で確立した測定法をさらに発展させて各種高分子に展開するだけでなく,分子設計,合成に遡って,極低温域でのより一層強靭な高分子材料の創製を行っていく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-15655083 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15655083 |
細菌が有する環境汚染性芳香族化合物分解能の改良と環境保全への応用 | 1)単環性芳香族炭化水素化合物(MAH)多重分解性細菌の分解性に関する酵素学的解明(分担:八田)2)多環性芳香族炭化水素化合物(PAH)分解細菌の分解遺伝子の解析(分担:滝澤)P.putidaOUS82の多環性芳香族炭化水素化合物分解オペロン(pah)の転写を負に制御する遺伝子をクローニングした。また,P.aeruginosa PaK1pahオペロンの各構造遺伝子を完全に同定し、酵素反応レベルでその特性を明かにした。3)2,4,6-トリクロロフェノール(TCP)分解系遺伝子の構造解析(分担:浄原)TCP分解に於ける第2段階に関与する酵素6-Chlorohydroxyquinol-1.2-dioxygenasの遺伝子(hadC)をクロニングし、塩基配列を決定した結果、その遺伝子は948塩基から成り、分子量34,591の316アミノ酸からなるタンパク質を4)分解系酵素の単離精製(分担:山中)P.pickettii DTP0602の初発酵素遺伝子hadA,-Bの遺伝子産物を精製し、N-末端アミノ酸配列を決め、脱塩素には両タンパク質が必要成ことを明かにした。1)単環性芳香族炭化水素化合物(MAH)多重分解性細菌の分解性に関する酵素学的解明(分担:八田)2)多環性芳香族炭化水素化合物(PAH)分解細菌の分解遺伝子の解析(分担:滝澤)P.putidaOUS82の多環性芳香族炭化水素化合物分解オペロン(pah)の転写を負に制御する遺伝子をクローニングした。また,P.aeruginosa PaK1pahオペロンの各構造遺伝子を完全に同定し、酵素反応レベルでその特性を明かにした。3)2,4,6-トリクロロフェノール(TCP)分解系遺伝子の構造解析(分担:浄原)TCP分解に於ける第2段階に関与する酵素6-Chlorohydroxyquinol-1.2-dioxygenasの遺伝子(hadC)をクロニングし、塩基配列を決定した結果、その遺伝子は948塩基から成り、分子量34,591の316アミノ酸からなるタンパク質を4)分解系酵素の単離精製(分担:山中)P.pickettii DTP0602の初発酵素遺伝子hadA,-Bの遺伝子産物を精製し、N-末端アミノ酸配列を決め、脱塩素には両タンパク質が必要成ことを明かにした。研究目的に従って、研究計画を実施し、下記の実績を挙げた。1)単環性芳香族炭化水素(MAHs)多重分解性細菌の同定と分解性(担当:八田貴)。ビフェニールあるいはエチルベンゼンを用いて土壌より単離されたいた4株(CIR201,CIR202,CIR203,CIR204)の同定を行ない、いずれの株も細胞壁にミコール酸とジアミノピメリン酸を含むことから、グラム陽性細菌のRhodococcus属と同定され、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン、ビフェニールとトルエンに対して多重的に資化能を示した。現在、遺伝子レベルでそれら分解系の関連性を調べている。3)2,4,6-トリクロロフェノール(2,4,6-TCP)分解系遺伝子の構造解析(担当:浄原法蔵)。P.pickettii DTP0602の2,4,6-TCP分解に係わる初発脱塩素酵素遺伝子の塩基配列を決定した。また、次段階関連遺伝子をクローニングした。4)PAHs分解関連酵素の単離精製(担当:山中啓)。関連酵素を多量に得るために、各酵素の遺伝子を発現ベクターにクローンし、大腸菌で高発現させることに成功した。1)単環性芳香族炭化水素化合物(MAH)多重分解性細菌の分解性の検討(分担:八田)2)陸生及び海洋性多環性芳香族炭化水素化合物(PAH)分解細胞の分解遺伝子の解析(分担:滝澤)3)2,4,6-トリクロロフェーノル(TCP)分解系遺伝子の構造解析(分担:浄原)4)分解系酵素の単離精製(分担:山中)TCP分解系のhadA,hadB、PAH分解系のPaK1のpahDの遺伝子産物のE.coliにおける大量生産を行い、それらの作用を検討した、またRhodococcus CIR2のpahCの各遺伝子産物の単離を試みた。1)単環性芳香族炭化水素化合物(MAH)多重分解性細菌の分解性に関する酵素学的解明(分担:八田)2)多環性芳香族炭化水素化合物(PAH)分解細菌の分解遺伝子の解析(分担:滝澤)P.putidaOUS82の多環性芳香族炭化水素化合物分解オペロン(pah)の転写を負に制御する遺伝子をクローニングした。また,P.aeruginosa Pak1 pahオペロンの各構造遺伝子を完全に同定し、酵素反応レベルでその特性を明かにした。。3)2,4,6-トリクロロフェノール(TCP)分解系遺伝子の構造解析(分担:浄原)TCP分解に於ける第2段階に関与する酵素6-Chlorohydroxyquinol-1.2-dioxygenasの遺伝子(hadC)をクローニングし、塩基配列を決定した結果、その遺伝子は948塩基から成り、分子量34,591の316アミノ酸からなるタンパク質を4)分解系酵素の単離精製(分担:山中)P.pickettii DTP0602の初発酵素遺伝子hadA,Bの遺伝子産物を精製し、N-末端アミノ酸配列を決め、脱塩素には両タンパク質が必要成ことを明らかにした。。 | KAKENHI-PROJECT-05454616 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05454616 |
感性情報処理を用いた食品に対する嗜好の定量化 | (1)昨年度に引き続き、ビールに関する嗜好の定量化を試みた。市販品ビール48種類の成分濃度、および比重・濁度といった物理的な分析値と、熟練パネラーによる官能評価値との間のモデリングを行った。ファジィニューラルネットワーク(FNN)も含めて、推定精度が高いモデルは、入力変数が多く、構造やルールを理解しにくい。そこで、パラメータ増加法(PIM)による回帰分析モデルとPIMを用いたFNN、遺伝的アルゴリズム(GA)とSWEEP演算子法を併用した新手法FNNとでモデリングを行い、推定精度を比較した。その結果、新手法のFNNでは実用上充分な精度を保ったままモデルのルール数の削減が可能であることがわかった。(2)構築した食嗜好モデルを実際の製品製造に結びつけるには製品製造のプロセス変数を成分濃度などの製品品質で記述することが重要である。このため(1)と同様にして、ビールの仕込み工程、発酵工程、貯酒工程などの醸造工程と製品ビールの品質(成分濃度)との間のモデリングも行った。新手法のFNNで選択された入力変数やファジィルールは熟練工程管理者の知識と一致しており、得られたFNNモデルの妥当性と有用性が示唆された。(3)感性情報処理の手法を麹製造プロセスのモデリングにも応用した。NNとGAの組み合わせにより、麹の目的品質を達成するための品温軌道を算出できることが示された。(4)バイオミメティック味覚センサーの開発を行った。味覚レセプタータンパク質遺伝子を組み込んだ大腸菌を培養し、目的タンパク質を精製する手法を確立した。さらにこのタンパク質を表面プラズモン共鳴測定装置(SPR)表面に固定する方法を検討し、SPR値の変化を確認した。センサー部分は直径3mmであり、充分に小さいバイオミメティックセンサーの開発が可能であることがわかった。(1)昨年度に引き続き、ビールに関する嗜好の定量化を試みた。市販品ビール48種類の成分濃度、および比重・濁度といった物理的な分析値と、熟練パネラーによる官能評価値との間のモデリングを行った。ファジィニューラルネットワーク(FNN)も含めて、推定精度が高いモデルは、入力変数が多く、構造やルールを理解しにくい。そこで、パラメータ増加法(PIM)による回帰分析モデルとPIMを用いたFNN、遺伝的アルゴリズム(GA)とSWEEP演算子法を併用した新手法FNNとでモデリングを行い、推定精度を比較した。その結果、新手法のFNNでは実用上充分な精度を保ったままモデルのルール数の削減が可能であることがわかった。(2)構築した食嗜好モデルを実際の製品製造に結びつけるには製品製造のプロセス変数を成分濃度などの製品品質で記述することが重要である。このため(1)と同様にして、ビールの仕込み工程、発酵工程、貯酒工程などの醸造工程と製品ビールの品質(成分濃度)との間のモデリングも行った。新手法のFNNで選択された入力変数やファジィルールは熟練工程管理者の知識と一致しており、得られたFNNモデルの妥当性と有用性が示唆された。(3)感性情報処理の手法を麹製造プロセスのモデリングにも応用した。NNとGAの組み合わせにより、麹の目的品質を達成するための品温軌道を算出できることが示された。(4)バイオミメティック味覚センサーの開発を行った。味覚レセプタータンパク質遺伝子を組み込んだ大腸菌を培養し、目的タンパク質を精製する手法を確立した。さらにこのタンパク質を表面プラズモン共鳴測定装置(SPR)表面に固定する方法を検討し、SPR値の変化を確認した。センサー部分は直径3mmであり、充分に小さいバイオミメティックセンサーの開発が可能であることがわかった。本年度の研究計画に基づいて以下のような研究実績をあげました。(1).吟醸酒、ビール、コーヒーのうち、まずコーヒーについて、原料およびブレンディンクを変えたサンプルを作成した。すなわち、3段階にローストした5種類の豆を様々なブレンディング比で混合した合計67種類のサンプルを用意し、ぺ一パ-フイルター方式でドリップしたサンプル液を調製した。ガスクロマトグラフ、高速液体クロマトグラフにより、製品中に含まれるアミノ酸、有機酸、糖の含量を分析した。また、専門の官能士に感性評価も行っていただき、味覚嗅覚に関する感性情報として入手した。(2).上記サンプル液の分析データと感性評価値の間のモデリングを重回帰分析(MRA)、ニューラルネットワーク(NN)、ファジィニューラルネットワーク(FNN)を用いて行った。構築した3つのモデルの入力項目および推定精度について比較したところ、MRAはいくつかの官能評価項目において精度が低く、NN、FNNモデルは1つの官能評価項目(Hard)以外の評価項目について高い推定精度を示すことがわかった。また、構築したFNNモデルからは定性的に理解しやすいメンバーシップ関数とプロダクションルールが抽出でき、品質設計などに利用できると考えられた。(3).吟醸酒の嗜好の定量化についても研究した。官能評価点の異なる29点のサンプルを得、アミノ酸組成などにつき機器分析を行い、また、品質に関する5つの官能評価項目と総合品質についての評価データを収集した。モデリングはFNNと階層化FNN(HFNN)の2種類で行った。FNNモデルでは最大10%の高い推定精度が得られた。一方、HNNモデルでは推定精度は7%となり、さらに高い推定精度となった。この結果から、感性の定量化に関するモデリング手法としてFNNあるいはHNNが優れた方法であることが確認できた。(1)昨年度に引き続き、ビールに関する嗜好の定量化を試みた。市販品ビール48種類の成分濃度、および比重・濁度といった物理的な分析値と、熟練パネラーによる官能評価値との間のモデリングを行った。 | KAKENHI-PROJECT-09838017 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09838017 |
感性情報処理を用いた食品に対する嗜好の定量化 | ファジィニューラルネットワーク(FNN)も含めて、推定精度が高いモデルは、入力変数が多く、構造やルールを理解しにくい。そこで、パラメータ増加法(PIM)による回帰分析モデルとPIMを用いたFNN、遺伝的アルゴリズム(GA)とSWEEP演算子法を併用した新手法FNNとでモデリングを行い、推定精度を比較した。その結果、新手法のFNNでは実用上充分な精度を保ったままモデルのルール数の削減が可能であることがわかった。(2)構築した食嗜好モデルを実際の製品製造に結びつけるには製品製造のプロセス変数を成分濃度などの製品品質で記述することが重要である。このため(1)と同様にして、ビールの仕込み工程、発酵工程、貯酒工程などの醸造工程と製品ビールの品質(成分濃度)との間のモデリングも行った。新手法のFNNで選択された入力変数やファジィルールは熟練工程管理者の知識と一致しており、得られたFNNモデルの妥当性と有用性が示唆された。(3)感性情報処理の手法を麹製造プロセスのモデリングにも応用した。NNとGAの組み合わせにより、麹の目的品質を達成するための品温軌道を算出できることが示された。(4)バイオミメティック味覚センサーの開発を行った。味覚レセプタータンパク質遺伝子を組み込んだ大腸菌を培養し、目的タンパク質を精製する手法を確立した。さらにこのタンパク質を表面プラズモン共鳴測定装置(SPR)表面に固定する方法を検討し、SPR値の変化を確認した。センサー部分は直径3mmであり、充分に小さいバイオミメティックセンサーの開発が可能であることがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-09838017 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09838017 |
社会的‐価値的転回以後の認識論的観点からの知識の規範性についての研究 | 現代の知的状況においては、各個人間かつ各専門者集団間の知的分業がますます進んでいる。他方で、同一の研究プロジェクト下での複数の専門知の協働的も必須のことになりつつある。また、科学や知識に求められる性質や規準も、多様化しつつある。本研究では、科学研究の実践形態が巨大化しており、研究プロジェクト内部での社会的分業もふくむ集団的なものになっていることを「社会的転回」、科学理論や知識の「望ましさ」の多元化を「価値的転回」と呼ぶ。このような研究実践の形態や価値の転回を包含可能な認識論的理論として、「社会的認識論」の一部である「批判的文脈的経験主義」についての明確化と批判的考察を主として行った。現代社会の知的状況においては、各個人間かつ各専門官の知的分業がますます進む一方、同一プロジェクト下での複数の協働および多人数での共同研究も必須である。本研究の目的は、この状況に適応した知識の枠組みを認識論的理論として確立することである。この背景のもとで、今年度は、知識の価値問題における実践的利害にかかわる審級(知的コンテンツの実践的-社会的評価軸)と、いわゆる真理-実在との一致や経験的成功にかかわる審級(同認識的評価軸)について、哲学的先行文献と、科学研究の実際の状況について、検討・考察した。【認識的評価概念について】従来的な命題的理論評価のための認識論的規範概念である「真理」にかわり、より広いタイプの知的コンテンツに適用可能である規範概念(より多くのタイプのコンテンツに適応でき、より多くの観点から合意を得られるような概念)の検討を行った。D・ベアードの「物知識」概念を援用し、実験機器や装置といった実物的知的コンテンツが、再現可能な動作を安定的に実現する事態、複数の理論のもとで信頼可能な作動や予測をもたらしうる事例に注目し、実物的知識コンテンツが持つ客観的性格を知識条件として定式化することを試みた。この成果は、HeKKSaGOn第5回日独大学長会議ワーキンググループ内で発表した。【実践的-社会的側面からの知的コンテンツ評価について】研究代表者が、データ・サイエンスがより身近にある機関に移動したこともあり、データ・ドリブン型科学研究の構造、制度、認識的/社会的問題を検討した。この成果は、発表および論文「ビッグデータは科学的研究を変化させるのか」(『東北哲学会年報』第33号、2017)で公開したが、ここでは、近年話題となっているデータ・ドリブン型科学と、仮説ドリブン型科学との対立の一因として、巨大プロジェクト内部で複数の方法論、コンテンツ評価の審級が存在していることを指摘した。以下の理由から、「おおむね順調に進展している」と自己評価する。(1)命題に限定されない知識種についての、認識論的概念について、一定の研究成果を公開することができた。(2)現代の科学研究の代表事例のひとつであり、知的分業体制が先鋭化したビッグデータ科学、データ・ドリブン型科学研究について検討、考察を行い、知的分業下での、社会的/認識論的問題について指摘することができた。(3)また、(2)の考察を通じて、当初計画では意識していなかったが、「データ」の認識論的地位について社会的認識論的に考察することの有効性と必要性に気づかされことは、今後の研究の展開にとって非常に有意義であった。現代社会においては、各個人間かつ各専門グループ間での知的分業がますます進んでいる。他方、同一プロジェクト下での複数の専門分野の協働および多人数での共同研究も必須である。本研究は、この状況に適応した認識論的理論の検討を目的としている。今年度は、ヘレン・ロンジーノが提起している「批判的文脈的経験主義」等の社会認識論的な科学方法論の批判的検討を中心に研究を行った。ロンジーノは、仮説評価の場面での観点の多様性を重視し、個々人ごとに仮説評価の仕方(仮説と証拠の結びつけ)が異なっていることを積極的に認める。だが、個々の仮説評価は、多様な観点を持つ個人たちから成る科学者共同体のなかで、多様な視点から批判的に吟味され修正されていく必要がある。共同体レベルでの批判に耐えた見解が、社会的な知識として共有される。共同体的批判を通じて生産される知識は、客観性を持つとされるが、この際の客観性は程度を持つ。共同体での批判がより厳しいほど、それに耐えた「知識」はより高い客観性を持つ。彼女のモデルは、本研究が意図していた複数のサブグループ協働型の研究による知識生産の形態にも適合しうるのではないかと思われる。「批判的文脈的経験主義」の基本的見解については、それ以前のいわゆる新・旧科学哲学における方法論との相違を中心として議論したものを『松山大学論集』(第29巻、第6号、2018)に発表した。ただし、この立場は、共同体的批判によって支えられるいみでの客観性はカバーできるものの、知識コンテンツそれ自体がもつ客観性についての議論は弱い。そのため、共同体によって担保される知識が、いわゆる「合意説」の産物のようにみなされうるという問題もある。だが、この問題点については、前年度に本研究で検討した実物的知的コンテンツの客観性(物知識の客観性)という観点を補うことで修正が可能であると思われる。現代の知的状況においては、各個人間かつ各専門者集団間の知的分業がますます進んでいる。他方で、同一の研究プロジェクト下での複数の専門知の協働的も必須のことになりつつある。 | KAKENHI-PROJECT-16K20911 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K20911 |
社会的‐価値的転回以後の認識論的観点からの知識の規範性についての研究 | また、科学や知識に求められる性質や規準も、多様化しつつある。本研究では、科学研究の実践形態が巨大化しており、研究プロジェクト内部での社会的分業もふくむ集団的なものになっていることを「社会的転回」、科学理論や知識の「望ましさ」の多元化を「価値的転回」と呼ぶ。このような研究実践の形態や価値の転回を包含可能な認識論的理論として、「社会的認識論」の一部である「批判的文脈的経験主義」についての明確化と批判的考察を主として行った。引き続き、知識コンテンツの複眼的知識評価モデルの明確化を行うため、知識の認識論的側面と、社会的/実践的側面の両方から、知識の価値を評価する枠組みを理論的に検討する。それとともに、実際の科学研究の場面に照らして、これらの検討が妥当であるかを検討する。28年度に、現在さかんに実施されているデータ・ドリブン型科学研究が、知的分業がすすむ巨大科学の典型事例であることを確認したので、このタイプの研究体制を具体的検討対象に採ることにする。28年度中の成果の精緻化をすすめつつ、29年度の具体的作業としては、以下のことをする予定。・当初計画にはなかったが、平成28年度中に明らかにした、「物知識」の知識条件、知識としての規範性概念を、「データ」概念に適用することを試みてみたい。とくに、データ駆動型の理論産出、知識生成において、どのような規範性が求められているのか、求められるべきなのか、について調査と考察を行う。・また、すでにデータ収集やデータ管理の社会的側面での問題については成果でも言及しているが、これら問題を解決しうるようなデータ収集・受容・共有のための制度的枠組みについても検討する。・「データ」および、そのデータを利用して産出される知識コンテンツについて、認識論的/社会的両面からその妥当性を評価・支持可能であるような枠組みを明確化する。当初から本研究は、科学理論・科学知識産出のための科学者共同体および、その成果としての科学的知識コンテンツの受容者をひとつの社会として想定したうえでの、知識コンテンツの産出、評価、受容、管理、共有、維持、のプロセス全体を俯瞰できる枠組みの構築を目指していた。上記のように、領域を設定することで、知識の多様な価値を包含する認識論的枠組みの実践的射程を適切に見積もることができると思われる。哲学、科学哲学、認識論 | KAKENHI-PROJECT-16K20911 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K20911 |
幹細胞ニッチにおけるノッチシグナルによる造血幹細胞制御機構の解明 | 1)Notchシグナルの減弱した状態での造血幹細胞の評価Notch1+/-Notch2+/-マウスあるいはMx-Creを用いたコンディショナルノックアウトによるNotch1-/-Notch2-/-マウスでの造血幹細胞をFACS(CD34(-)KSLの定量)にて評価した。その結果定常状態、5-FU投与後の幹細胞の活性化状態のいずれにおいても、造血幹細胞の量に差は認められなかった。またNotchシグナルの阻害薬であるg-secretase inhibitor(GSI)をin vivo投与でも造血幹細胞の量に変化は認められなかった。これらは、FACSによる表面抗原による解析および移植の系にて確認した。このように、in vitroとin vivoにおいて造血幹細胞のNotchシグナルへの依存性が異なることが判り、現在、1)ニッチにおける他のシグナルとのクロストーク、2)造血幹細胞の細胞周期の違いという観点から、胎生期から生直後の造血幹細胞が増殖期にある時期におけるNotchシグナルの役割について検討中である。1)Notchシグナルの減弱した状態での造血幹細胞の評価Notch1+/-Notch2+/-マウスあるいはMx-Creを用いたコンディショナルノックアウトによるNotch1-/-Notch2-/-マウスでの造血幹細胞をFACS(CD34(-)KSLの定量)にて評価した。その結果定常状態、5-FU投与後の幹細胞の活性化状態のいずれにおいても、造血幹細胞の量に差は認められなかった。またNotchシグナルの阻害薬であるg-secretase inhibitor(GSI)をin vivo投与でも造血幹細胞の量に変化は認められなかった。これらは、FACSによる表面抗原による解析および移植の系にて確認した。このように、in vitroとin vivoにおいて造血幹細胞のNotchシグナルへの依存性が異なることが判り、現在、1)ニッチにおける他のシグナルとのクロストーク、2)造血幹細胞の細胞周期の違いという観点から、胎生期から生直後の造血幹細胞が増殖期にある時期におけるNotchシグナルの役割について検討中である。1)Notchシグナルの減弱した状態での造血幹細胞の評価Notch1+/-Notch2+/-マウスあるいはMx-Creを用いたコンディショナルノックアウトによるNotch1-/-Notch2-/-マウスでの造血幹細胞をFACS(CD34(-)KSLの定量)にて評価した。その結果定常状態、5-FU投与後の幹細胞の活性化状態のいずれにおいても、造血幹細胞の量に差は認められなかった。またNotchシグナルの阻害薬であるg-secretase inhibitor(GSI)をin vivo投与でも造血幹細胞の量に変化は認められなかった。このように、in vitroとin vivoにおいて造血幹細胞のNotchシグナルヘの依存性が異なることが判り、現在、1)ニッチにおける他のシグナルとのクロストーク、2)造血幹細胞の細胞周期の違いという観点から検討中である。1)Notchシグナルの減弱した状態での造血幹細胞の評価Notch1+/-Notch2+/-マウスあるいはMx-Creを用いたコンディショナルノックアウトによるNotch1-/-Notch2-/-マウスでの造血幹細胞をFACS(CD34(-)KSLの定量)にて評価した。その結果定常状態、5-FU投与後の幹細胞の活性化状態のいずれにおいても、造血幹細胞の量に差は認められなかった。またNotchシグナルの阻害薬であるg-secretase inhibitor(GSI)をin vivo投与でも造血幹細胞の量に変化は認められなかった。これらは、FACSによる表面抗原による解析および移植の系にて確認した。このように、in vitroとin vivoにおいて造血幹細胞のNotchシグナルへの依存性が異なることが判り、現在、1)ニッチにおける他のシグナルとのクロストーク、2)造血幹細胞の細胞周期の違いという観点から、胎生期から生直後の造血幹細胞が増殖期にある時期におけるNotchシグナルの役割について検討中である。 | KAKENHI-PROJECT-18591044 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18591044 |
アナフィラキシ-ショック時の病態におけるNOの役割 | 目的:我々は,アナフィラキシ-ショック時には内皮型一酸化窒素合成酵素(NOS)の活性化により一酸化窒素(NO)が産生されていることを末梢組織において明らかにした(Shock2,381-384,1994)。末梢においてはNOの過剰産生がアナフィラキシ-時の血圧の低下に関与している,一方NOがアナフィラキシ-時の心血管の攣縮を抑制する働きがあるというin vitroにおける報告がある。アナフィラキシ-時の心と末梢でのNOの役割の違いを解明するためin vivoにおいて心臓でのNOの産生を調べた。方法:Ascaris Suumに感受性のある雑種成犬を用いた。フェンタネスト麻酔下にAscaris Suum(抗原)の静脈内投与によりI型のアナフィラキシ-を生じさせ,60分にわたり血圧,心拍数,心拍出量などとともに心表面においてのNOの産生量を選択的NO電極を用いて測定した。結果:NOの産生量は抗原投与から2および3分後には有意に増加し,4分から15分の間は増加傾向を示したが,20分後には抗原投与前のレベルにもどった。まとめ:心臓におけるNO産生量の増加はアナフィラキシ-の発症初期にのみ認められた。目的:我々は,アナフィラキシ-ショック時には内皮型一酸化窒素合成酵素(NOS)の活性化により一酸化窒素(NO)が産生されていることを末梢組織において明らかにした(Shock2,381-384,1994)。末梢においてはNOの過剰産生がアナフィラキシ-時の血圧の低下に関与している,一方NOがアナフィラキシ-時の心血管の攣縮を抑制する働きがあるというin vitroにおける報告がある。アナフィラキシ-時の心と末梢でのNOの役割の違いを解明するためin vivoにおいて心臓でのNOの産生を調べた。方法:Ascaris Suumに感受性のある雑種成犬を用いた。フェンタネスト麻酔下にAscaris Suum(抗原)の静脈内投与によりI型のアナフィラキシ-を生じさせ,60分にわたり血圧,心拍数,心拍出量などとともに心表面においてのNOの産生量を選択的NO電極を用いて測定した。結果:NOの産生量は抗原投与から2および3分後には有意に増加し,4分から15分の間は増加傾向を示したが,20分後には抗原投与前のレベルにもどった。まとめ:心臓におけるNO産生量の増加はアナフィラキシ-の発症初期にのみ認められた。 | KAKENHI-PROJECT-07771266 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07771266 |
高分子マイクロゲル分散系の結晶化・ガラス化挙動の解明と巨大コロイド単結晶作製 | ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPA)マイクロゲル分散系は温度変化によりコロイド粒子の粒径を可逆的に変化させることが可能であり、分散粒子が単分散である場合コロイド結晶化が誘起される。本研究では、マイクロゲル微粒子のコロイド結晶化動力学を明らかにし、巨大コロイド単結晶を作製するための基礎的知見を得ることを目的とした。既報の方法により作成したPNIPAコロイド結晶化における核形成速度と成長速度の温度依存性測定により、融点直下での結晶化が有効であることが明らかとなった。また、結晶成長速度はWilson-Frenkel則でよく記述できた。前年度までに得られた知見をさらに深めると共に、単結晶作成のための方法を模索した。沈殿重合法により合成した単分散の粒径(200500nm)を有するポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PolyNIPA)マイクロゲルのコロイド結晶化動力学を、紫外可視分光法に加え顕微鏡観察、光散乱法により検討した。種々の濃度に調整したマイクロゲル分散液のコロイド結晶化過程における全結晶化速度および結晶グレイン成長速度をそれぞれ紫外可視分光法および顕微鏡観察により測定した。全結晶化速度は時間のべき乗で増大し、微重力下の固体コロイド分散系で観察されるものと同様の挙動を示した。また、その温度依存性は、低温側および高温側で速度が低下する典型的な釣鐘型となった。顕微鏡観察により評価した結晶成長速度もまた釣鐘型の温度依存性を示した。希薄分散系における粘度測定および静的光散乱法に基いて求められたゲル体積充填率により結晶化速度を整理した所、結晶化速度の濃度および温度依存性は、体積充填率のみで整理可能なことが明らかとなった。粒子拡散速度低下の影響の小さい高温側における結晶グレイン成長速度は、単純なWilson-Frenkel則でよく説明できることが明らかとなった。以上により、結晶グレイン成長速度および前結晶化速度が定量的に評価出来、次年度測定する予定の結晶核生成速度と合わせて検討することにより、巨大コロイド結晶を作成するための知見が得られると考える。ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPA)マイクロゲル分散系は温度変化によりコロイド粒子の粒径を可逆的に変化させることが可能であり、分散粒子が単分散である場合コロイド結晶化が誘起される。本研究では、マイクロゲル微粒子のコロイド結晶化動力学を明らかにし、巨大コロイド単結晶を作製するための基礎的知見を得ることを目的とした。既報の方法により作成したPNIPAコロイド結晶化における核形成速度と成長速度の温度依存性測定により、融点直下での結晶化が有効であることが明らかとなった。また、結晶成長速度はWilson-Frenkel則でよく記述できた。架橋密度一定で100500nmの粒径を有するポリ(N-イソプロピルアクリルアミド) (PolyNIPA)ゲルを沈殿重合法により調整し、その粒径の温度依存性を動的光散乱法により測定した。粒径は温度に依存して変化し、通常のpolyNIPAゲルと同様30-35 °C付近に体積相転移温度を有した。種々の濃度に調整したマイクロゲル分散液を40 °Cから20 °C前後の所定温度へ温度ジャンプすると、ある温度・濃度領域においてコロイド結晶化に起因する回折光が観察された。紫外可視分光スペクトルの温度・時間依存性測定により、PolyNIPAマイクロゲル水分散系においてそのコロイド結晶化温度とガラス化温度を決定し相図を作成した。また、希薄系における粘度測定および静的光散乱法によるマイクロゲルの分子量測定に基づき、コロイド結晶化条件が体積分率のみに依存することを明らかにした。相図に基づき、コロイド結晶サイズの冷却条件依存性を測定し、単純冷却でも数ミリメートルサイズのコロイド結晶が得られることが分かった。紫外可視吸収により、様々な濃度温度条件におけるコロイド結晶化速度を測定した。結晶化速度は通常見られる釣鐘型の温度依存性を示した。また、結晶化度の時間依存性は過去に報告された剛体球分散系の微重力下におけるものと同様であった。これは、マイクロゲルの密度が溶媒とほぼ同等であることに起因する。DLSにより拡散係数を評価したところ、低温ほど粒径が増大するにも関わらず、低温のコロイド結晶化温度以下においてむしろ拡散係数が大きくなった。高温で見られるマイクロゲル粒子の並進拡散に、集合体としての緩和モードが加わるためであると考えられる。コロイド単結晶作製のため、コロイド結晶化における全結晶化速度、結晶粒成長速度、結晶核生成速度の測定と解析を進めた。前年度までと同様に、全結晶化速度は紫外・可視分光光度計により、結晶粒成長速度と結晶核生成速度は光学顕微鏡観察により測定した。全結晶化速度は、時間に対してべき乗則を保ちながら増大し、そのべき指数は固体粒子系を微重力下で測定した場合と同様の結果となった。マイクロゲル系が固体コロイド結晶化のモデル系として有用であることを意味する。光散乱法によるマイクロゲルの「分子量」測定および希薄および濃厚分散系における粘度測定から見積もった粒子体積分率を用いて、結晶粒成長速度をWilson-Frenkel則により解析した。マイクロゲル粒子の化学ポテンシャルには粒子間のエンタルピー的な相互作用は寄与しない、すなわちエントロピーのみで決まると仮定し結晶化挙動を整理したところ、結晶化速度はWilson-Frenkel則に従うマスター直線に整理可能であることが示された。 | KAKENHI-PROJECT-24550248 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24550248 |
高分子マイクロゲル分散系の結晶化・ガラス化挙動の解明と巨大コロイド単結晶作製 | これは、静電反発力でコロイド結晶が生じる剛体球コロイド系において報告されている結果と同様である。これにより結晶粒成長速度の予想が可能となった。結晶核生成速度は、分散液の過冷却度に依存して増大する通常の結晶化度同様の挙動を示したが、定量的な評価まではいたらなかった。以上を踏まえて、巨大コロイド単結晶の作成条件を検討した。各種濃度および過冷却度において作成したコロイド結晶粒の初期濃度、過冷却度依存性を検討した。その結果、ミリメートルスケールのコロイド結晶作成条件を見出した。高分子構造・高分子物性前年度に引き続き、コロイド結晶化過程における結晶化速度とその条件依存性の定量的評価を行った。順調に必要な知見が得られており、研究は概ね予定通り進行している。昨年度までは、試料合成と基礎的物性の評価に重点を置いており、研究遂行上支障となることは無かった。また、本年度以降の研究遂行のために有効な知見が多数得られ、研究は概ね順調に進行している。これまでに得られたコロイド結晶化動力学の基礎的な知見をさらに深め、他のコロイド結晶や結晶化一般に関する研究で得られている知見に基づき、この系におけるコロイド結晶化理解のための理論的裏付けを与える。それと平行して、巨大コロイド単結晶作成の方法論を確立する。大きく分けて二つの方法を取る。第一に、これまでに得られているコロイド結晶の核生成速度とコロイド結晶グレイン成長速度に関する情報に基づき、核生成頻度が低く結晶グレイン成長速度が早い条件を模索する。そのためにはより精密な温度制御が必要となるかもしれない。第二に、温度勾配印加が可能な結晶化セルを作成し、試料中に結晶化駆動力の勾配を発生させることによる結晶の一軸成長を試みる。上記結晶化動力学制御において、低温への温度ジャンプとその後の加熱によるガラス結晶化過程を用いるかもしれない。そのために、動的光散乱法によりガラス化挙動の検討も必要になってくるであろう。また、結晶グレインサイズとその配向性の評価には、別途入手した静的光散乱装置を改造したものを用いる。上記方法により、巨大コロイド単結晶の作成可能性を検討する。1年目に得られたコロイド結晶化についての理解をさらに深める。これまで行った測定において、成長速度の異なる2種類の結晶の存在を示唆する結果が得られている。剛体球分散系のコロイド結晶では、一般に2種類の結晶形が存在することが報告されており、本研究においても同様かもしれない。コロイド結晶からの回折光測定のための静的光散乱装置を構築し、結晶形の決定を行うとともにそれぞれの結晶形の成長速度の特徴を明らかにする。ガラス化挙動についても詳細に検討する。この系は溶媒とマイクロゲルとの屈折率差が小さいため、固体コロイド系と比較して試料の白濁度が小さく多重散乱の影響を受けにくく、結晶化・ガラス化するような高濃度であってもDLSによる解析が可能である。これまで、流動状態から結晶・ガラス状態への転移過程において、動的構造関数の複雑な変化が観察されている。最近導入した長時間測定可能な光子相関計を用い、動的構造因子の温度・濃度依存性の特徴を明らかにする。。 | KAKENHI-PROJECT-24550248 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24550248 |
免疫異常を基盤とした拡張型心筋症の発症におけるMst1キナーゼの役割の解明 | 今回、私たちはMst1が制御性T細胞のマスター転写因子であるFoxp3をリン酸化することを見いだした。また、Mst1によるリン酸化がFoxp3の機能を制御していることも示すことができた。さらに、実験的自己免疫性心筋炎マウスモデルの慢性期には拡張型心筋症の表現型を示すことも確認できた。これらの結果から、Mst1が心筋炎が拡張型心筋症に移行するのを予防する新しい治療標的になるものと考えられた。申請者らはin vitroキナーゼアッセイにてFoxp3がMst1によりリン酸化されることを確認し、さらに質量分析法を用いてFoxp3のMst1によるリン酸化部位を同定することができた。このMst1によるFoxp3のリン酸化部位を特異的に認識するリン酸化抗体(Rabbit polyclonal antibody)を作成した。このリン酸化抗体を用いて、内在性のMst1が実際にFoxp3をリン酸化することを確認した。また、Mst1によるFoxp3のリン酸化が生体内の細胞機能に与える影響を検討するため、Mst1によるFoxp3のリン酸化部位をアラニンに変異させたリン酸化抵抗性のFoxp3変異体(A-変異体)、グルタミン酸に変異させた恒常的リン酸化模倣性のFoxp3変異体(E-変異体)、ならびに野生型Foxp3をコードしたレンチウイルスを作成した。そして、野生型ならびに変異体のFoxp3レンチウイルスをJurkat細胞に感染させて制御性T細胞に類似した表現型を有するT細胞に分化することを確認した。7週齢の野生型BALB/cマウスに0.2mgのFreundアジュバントでエマルジョン化したαMHCペプチドを皮下注射し、マウスの実験的自己免疫性心筋炎モデルを作成した。8週間後に血圧・脈拍・心機能評価を行い屠殺し、心筋の病理学的変化につき免疫染色法などを用いて検討したところ、発症から8週間以上経過すると拡張型心筋症に類似した表現型を示すことを確認した。応募者は平成27年度までにin vitroキナーゼアッセイにてFoxp3がMst1によりリン酸化されることを確認し、さらに質量分析法を用いてFoxp3上のMst1によりリン酸化されるアミノ酸部位を同定することができた。このMst1によるFoxp3のリン酸化部位を特異的に認識するリン酸化抗体を作成してin vivoにおいてMst1がFoxp3を同部位にてリン酸化していることを確認した。またJurkat細胞に野生型およびMst1によるリン酸化部位を変異させたFoxp3レンチウイルスを導入した擬似制御性T細胞を作製してIL-2転写活性などの機能解析を行った結果、in vitroにおいてMst1によるFoxp3のリン酸化が制御性T細胞の機能発現に重要な役割を果たしていることが判明した。また、Mst1/Mst2-floxedマウスおよびYFP-Cre Foxp3ノックインマウスを入手し、制御性T細胞特異的Mst1欠損マウスを作成している。現在、BALB/cとの戻し交配を行っている最中(F4)である。さらに、pX330ベクターにFoxp3-pXのD変異をコードしたguide RNAにインサートしてCas9発現ベクターを作製した。その上で、Cas9発現ベクターを受精卵にインジェクションした。ファウンダーマウスをダイレクトシーケンスによってスクリーニングして、目的通りの変異が導入されている個体を選択し、次世代(F1)マウスを作成した。現時点でF2まで得られている。現在まで、本研究応募時の申請書に記載した研究計画通り、順調に研究が進行している。GST-Foxp3リコンビナント蛋白とMst1リコンビナント蛋白を用いたin vitroキナーゼアッセイと質量分析法により、Mst1によるFoxp3の有力なリン酸化部位の候補(以降"Foxp3-pX"とする)を見いだした。HEK293細胞にGFP-Foxp3プラスミドを遺伝子導入し、shRNA-Mst1の共導入を行った群と行っていない群との間で、Mst1によるFoxp3のリン酸化について評価を行った。上述した方法で作成したMst1によるFoxp3のリン酸化部位Foxp3-pXを特異的に認識するリン酸化抗体を用いてウェスタンブロティング法を施行したところ、GFP-Foxp3プラスミドを遺伝子導入したHEK293細胞では、内在性のMst1依存性にFoxp3-pXのバンドの発現増加が認められた。マウス野生型Foxp3、Foxp3-pXのA-変異体およびE-変異体のレンチウイルスを作成した。これら野生型ならびに変異体のFoxp3レンチウイルスをJurkat細胞に感染させて擬似制御性T細胞を作成した。野生型Foxp3を導入したJurkat細胞ではMst1依存性にIL-2転写活性が抑制された。A-変異体Foxp3を導入したJurkat細胞ではMst1の有無にかかわらずIL-2転写活性が抑制されなかった一方で、E-変異体Foxp3を導入したJurkat細胞ではMst1の有無にかかわらず恒常的にIL-2転写活性が抑制されていた。Mst1/Mst2-floxedマウスおよびYFP-Cre Foxp3ノックインマウスを交配して制御性T細胞特異的Mst1欠損マウスを作成した。また、CRISPR/Cas9法にてFoxp3-pXDノックインマウスも作成した。 | KAKENHI-PROJECT-26461126 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26461126 |
免疫異常を基盤とした拡張型心筋症の発症におけるMst1キナーゼの役割の解明 | 今後は、これらのマウスを用いて実験的自己免疫性心筋炎マウスモデルを作成し、表現型を検討する予定である。今回、私たちはMst1が制御性T細胞のマスター転写因子であるFoxp3をリン酸化することを見いだした。また、Mst1によるリン酸化がFoxp3の機能を制御していることも示すことができた。さらに、実験的自己免疫性心筋炎マウスモデルの慢性期には拡張型心筋症の表現型を示すことも確認できた。これらの結果から、Mst1が心筋炎が拡張型心筋症に移行するのを予防する新しい治療標的になるものと考えられた。現在まで、本研究費応募時の申請書に記載した研究計画通り順調に研究が進行している。本研究応募時の申請書に記載した研究計画通り、今後は遺伝子改変動物を用いた疾患モデルの解析を中心に行っていく予定である。循環器内科学本研究費応募時の申請書の研究計画に記載した通り、今後は遺伝子改変動物を用いた研究を主体に行って行く予定である。本研究計画は平成26年度から平成28年度の3ヶ年計画であり、次年度である平成28年度は本研究計画の3年目にあたるため。本研究計画は平成26年度から平成28年度の3ヶ年計画であり、次年度である平成27年度は本研究計画の2年目にあたるため。応募時に記載した研究計画・方法に準じて、実験的自己免疫性心筋炎における、Mst1-Foxp3経路により制御されている因子の探索を通した自己免疫性心筋炎の発症及び拡張型心筋症への病状進展の機序の解明を行うために必要な研究資源を入手する目的で使用する。応募時に記載した研究計画・方法に準じて、実験的自己免疫心筋炎における、Mst1 - Foxp3経路により制御されている因子の探索を通した自己免疫心筋炎の発症および拡張型心筋症への病状進展の機序の解明を行うために必要な研究資源を入手する目的で使用する。 | KAKENHI-PROJECT-26461126 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26461126 |
日本型舞台芸術環境の地域計画策定に向けたネットワーク型創造活動支援モデルの構築 | 平成19年度は、主に二つの調査研究と全体的な考察及びフレームの提示を行った。日本の状況を相対的に捉える為に、民間主体にも関わらず、アジア随一の小劇場集積地域であるソウル(韓国)の大学路においてフィールド調査を行った。整備状況、運営状況を観察調査、ヒアリング調査等から捉えた。その結果、大学路における小劇場の立地状況の推移並びに創作状況の質を発展させる為の課題が明らかになった。第二都市全体の舞台芸術環境とネットワーク形成に不可欠な都市の文化施策に着目し、創造性指標をベンチマークとした統計調査、具体的な文化施策の企画・立案状況の把握を目的としたアンケート調査、先駆的な施策展開を行っている自治体の実地調査の3つのフェーズから捉えた。具体的な対象としては、政令都市レベルを対象とした。その結果、統計調査におけるデータベースから、主成分分析により創造環境と需要の二つが重要な軸であることが明らかとなった。また、アンケート調査からは、文化施策の施策・立案・実施のための組織統合の有無、創造都市施策への立脚状況等が明確な要因として明らかとなった。研究全体の総括度しては、日本版舞台芸術環境のネットワーク整備には、創造環境を軸とした都市内部での民間を含んだネットワークのインフラ整備が重要であり、都市内で展開させる文化施策がそれらのネットワーク形成を視野に入れた施策展開が急務である。また、近年注目されている創造都市施策にしめされるように都市全体のアクティビティを上げる為のアウトリーチ、レジデンスの活用、コンバージョンによる創造の場の整備などが具体的な施策内容として有用であることが明らかとなった。本年度においては継続して調査を展開している仙台市における過去15年あまりの創造活動の状況をアンケート調査及びヒアリング調査などから詳細に整理・考察を行った。特に演劇の創造活動支援施設であるせんだい演劇工房10-BOX(2002年)の開設前後により、仙台市内の演劇の創造活動のプロセス、活動揚所に大きな変化があることを把握した。同時に公的な文化事業の企画立案及び各種助成を行う市民文化事業団の事業展開との関係を捉え、事業イベントの企画システムが人材育成及び活動の規模へ波及する事を碓認した。次に1961年に群馬県高崎市に開館した群馬音楽センターを題材として、舞台芸術施設の開館前後における地域の舞台芸術活動の変化及び、長期的な活動状況の推移を捉えた。調査の結果施設の実現により様々な活動団体の発生を碓認する一方、専用的な施設運営が継続されないために地域全体の活動のポテンシャルを開館後も形成することが困難であったことを捉えた。更に、都市的な状況と劇場整備の観点では、東京都世田谷区の下北沢に着目し、過去20年あまりの小劇揚の劇場整備とそこでの劇団の活動状況、劇団の劇場選択意図を整理し、各劇団の類型化を行った。そしてその類型化ごとに下北沢での公演が活動自体の拠点を下北沢に移動させたり、知名度等の価値を施設選択条件として重視するなどの活動が集積する要因として明らかとなった。同時にこれらの集積がメディアにおける都市の価値を高め、新たな集積を呼び込む循環構造となっていることが明らかとなった。また、2006年10月には、日本型の舞台芸術環境の都市部の集積効果の新しい展開を捉えるために、アジアで最も小劇場の集積状況が高いソウルの大学路を対象にフィールドワークを行った。平成19年度は、主に二つの調査研究と全体的な考察及びフレームの提示を行った。日本の状況を相対的に捉える為に、民間主体にも関わらず、アジア随一の小劇場集積地域であるソウル(韓国)の大学路においてフィールド調査を行った。整備状況、運営状況を観察調査、ヒアリング調査等から捉えた。その結果、大学路における小劇場の立地状況の推移並びに創作状況の質を発展させる為の課題が明らかになった。第二都市全体の舞台芸術環境とネットワーク形成に不可欠な都市の文化施策に着目し、創造性指標をベンチマークとした統計調査、具体的な文化施策の企画・立案状況の把握を目的としたアンケート調査、先駆的な施策展開を行っている自治体の実地調査の3つのフェーズから捉えた。具体的な対象としては、政令都市レベルを対象とした。その結果、統計調査におけるデータベースから、主成分分析により創造環境と需要の二つが重要な軸であることが明らかとなった。また、アンケート調査からは、文化施策の施策・立案・実施のための組織統合の有無、創造都市施策への立脚状況等が明確な要因として明らかとなった。研究全体の総括度しては、日本版舞台芸術環境のネットワーク整備には、創造環境を軸とした都市内部での民間を含んだネットワークのインフラ整備が重要であり、都市内で展開させる文化施策がそれらのネットワーク形成を視野に入れた施策展開が急務である。また、近年注目されている創造都市施策にしめされるように都市全体のアクティビティを上げる為のアウトリーチ、レジデンスの活用、コンバージョンによる創造の場の整備などが具体的な施策内容として有用であることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-18760448 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18760448 |
学修マップ構築システムによる自発的学びの支援 | それぞれの履修科目に対して学生群が持つ集団的な学習難易度と,それぞれの学生が履修科目群に対して持つ個別的な学習難易度との連携を考案した。集団的側面と個別的な側面の両方を持つ学習難易度を用いた可視化情報の提供による学習支援情報の作成を行った。学生群が持つ科目の科目難易度は,該当科目に関する学生群の過去の成績取得状況から算出する。それぞれの学生が持つ科目難易度の算出に関して,該当科目の関連科目群に関する学生の成績履歴と,前年度までに構築した科目群の関連度とを合算する形式で算出する方法を考案した。個別化した学習難易度情報と科目群の関連性情報とを連結した可視化方法を実現した。統合化された情報を可視化することにより,それぞれの学生の学習履歴に合わせて科目群の関連具合とそれぞれの学生にとっての学習難易度を提示することができる.学生に学習優先度を提示する機能を持つ可視化システムとして「科目ハザードマップ型学修マップ」を新たに設計し構築した。前年度までに構築した,教育プログラム情報から抽出して構築する知識マップとの連携により,可視化された学習支援情報による学修ナビゲーション機能を提供することができるようになった。また,学習の支援方法の指標となる,履修中の科目に関して学期中に変動する学生の学習理解度を,できるだけ低負担で簡便かつ有効に測定する方法の分析と考案を行った.理解度の尺度や測定方法との関連付けについて,教育理論の理論分析とオンラインでの測定機能の両面の結びつけを品質機能展開のアプローチを援用して行った。理論的な創案を実装に移すことに時間がかかり,ユーザに提供する学習状況の可視化システムの開発が遅れた.そのために学生の評価実験が限定的な範囲にとどまっている.これまでに理論化した内容の汎化と深化を行うことにより適用範囲を広域化する.これまでに開発した要素技術の統合を行い,学生の学習状況に適応化した動的なカリキュラムマップを開発したナビゲーションシステムを構築する.ナビゲーションにより学生個人への学習支援を行うとともに,学生集団の情報を教員が把握することによる教育質向上を行う.第一フェーズとして計画していた,学生の学修マップの情報構造の設計および構築に関する分析的な研究と第一段階の実装を実施した。学修マップを相互に連結する三つのサブマップに分離して構成した.(1)科目を基軸に知識を配置するサブマップ(2)教育プログラムで扱う知識を基軸に科目を配置するサブマップ(3)教育プログラム内の科目群を配置するサブマップ,である.初期状態の決定と,学習者の状況を反映させた継続的な学修マップの更新についてモデル化を行った.これには,研究課題番号:24501131「品質機能展開を利用した工学系教育コースの総合支援」での成果の一部を用いた.まず,初期状態は教育プログラムの知識構造を反映して学習者の状況に依存しないものと考え,科目シラバスが持つキーワードを抽出して配置した知識マップを基本とした.実際の履修実績と本人の定期的な自主的な見直しを反映させ、理解が十分であるか不十分であるかの状況情報を継続的に学修マップに反映していくモデルを構築した.実装に関してはシステム統合の準備段階である.既存のe-Learningシステムやe-Portfolioシステム上に構築する実装形態を採っていない.学修マップを作成するためのシステムを独自に立てる形態を採っている.学習者の個人情報を保護しながら,利用結果を研究者が把握する実装形態の検討を行っている.分析的な側面では,教育プログラム利用者へのサービスの要求定義と品質評価という観点で,科目履修行動を品質機能展開の方法論を適用して分析した.学習者の科目履修の成功の要因を整理し,システムが実行する学修支援活動との関連付けを行った.第一フェーズでの研究の中間的な成果について,日本人工知能学会全国大会と品質機能展開国際会議において発表した.学習者を被験者としての評価実験が計画段階にとどまっているが,研究の第一フェーズとして計画していた分析と実装については終了した.評価実験に関して,学習者の個人情報を保護しながら,利用結果を研究者が把握するために実装形態の工夫が必要であることが判明した.それぞれの履修科目に対して学生群が持つ集団的な学習難易度と,それぞれの学生が履修科目群に対して持つ個別的な学習難易度との連携を考案した。集団的側面と個別的な側面の両方を持つ学習難易度を用いた可視化情報の提供による学習支援情報の作成を行った。学生群が持つ科目の科目難易度は,該当科目に関する学生群の過去の成績取得状況から算出する。それぞれの学生が持つ科目難易度の算出に関して,該当科目の関連科目群に関する学生の成績履歴と,前年度までに構築した科目群の関連度とを合算する形式で算出する方法を考案した。個別化した学習難易度情報と科目群の関連性情報とを連結した可視化方法を実現した。統合化された情報を可視化することにより,それぞれの学生の学習履歴に合わせて科目群の関連具合とそれぞれの学生にとっての学習難易度を提示することができる.学生に学習優先度を提示する機能を持つ可視化システムとして「科目ハザードマップ型学修マップ」を新たに設計し構築した。前年度までに構築した,教育プログラム情報から抽出して構築する知識マップとの連携により,可視化された学習支援情報による学修ナビゲーション機能を提供することができるようになった。 | KAKENHI-PROJECT-17K00480 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K00480 |
学修マップ構築システムによる自発的学びの支援 | また,学習の支援方法の指標となる,履修中の科目に関して学期中に変動する学生の学習理解度を,できるだけ低負担で簡便かつ有効に測定する方法の分析と考案を行った.理解度の尺度や測定方法との関連付けについて,教育理論の理論分析とオンラインでの測定機能の両面の結びつけを品質機能展開のアプローチを援用して行った。理論的な創案を実装に移すことに時間がかかり,ユーザに提供する学習状況の可視化システムの開発が遅れた.そのために学生の評価実験が限定的な範囲にとどまっている.分析研究では,成績評価に関してループリックをデータ行列として品質機能展開や影響度関連度の分析手法にあてはめることで学習者の個人的および集団的な挙動を把握して学修支援と対応付けるモデル化を実施する.実装研究では,学習者をユーザとして実験を行い,科目履修の学修支援を行うとともに学修履歴と学修マップの構築モデルの妥当性検証と改善の分析を行う.学習者の個人情報を保護するために,学習者の情報入力システムと情報分析システムとの間にデータ匿名化機構を介在させる.これまでに理論化した内容の汎化と深化を行うことにより適用範囲を広域化する.これまでに開発した要素技術の統合を行い,学生の学習状況に適応化した動的なカリキュラムマップを開発したナビゲーションシステムを構築する.ナビゲーションにより学生個人への学習支援を行うとともに,学生集団の情報を教員が把握することによる教育質向上を行う.他の業務の関係で参加できなかった国内学会が発生したために残額が発生した.今後の本人または発表補助者の学会参加に関わる費用に充てる計画である.大きな部分として,中規模検証実験を行うためのシステム導入に利用する予算を計上していた。しかしシステム構築の作業が遅延したので中規模検証実験に耐える計算環境に対する性能評価が完了せず,実験の延期と共に機種選定および導入を延期した。そのため,差額による次年度使用額が発生した。教育の静的データおよび動的データの情報蓄積およびデータからのテキストマイニングやデータの時系列分析を実行する支援システムを構築する。サーバの基本性能とネットワーク応答性能およびセキュリティを考慮したシステムを構築する。機能とデータを複数の計算機に分割することも視野に入れる. | KAKENHI-PROJECT-17K00480 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K00480 |
超高速計算機とadaptive型計算法を用いた数値的天文学の展開 | 1.最近登場したベクトル並列型計算機、超並列型計算機、重力多体問題専用計算機などの高速計算機を天体物理学で適用するための、それぞれの計算機で最適の手法の選定、具体的な適用法などについて研究した。(1)高速なシミュレーションを行なうために並列型計算機へ計算プログラムを移植する点については、双曲型方程式に関しては、データの分割を含んだ並列化が容易に達成され、大型高速のシミュレーションが可能であることが実証された。しかし楕円型方程式については従来の解法における「前処理」の並列化が非常に困難であり、前処理方法自身の改良が必要とされることがわかった。(2)この楕円型方程式(天体物理学では重力や静電磁場のPoisson方程式解法が重要)については、「多重格子反復法」がベクトル並列型計算機などで非常に高速に計算できることを見い出した。その能力は、同数の格子点数を用いた磁気流体力学を1ステップ時間推進するのに要する1/2のCPU時間で重力場の計算を1回行なえるほどであった。2.天体物理学に適した適応型計算法(Adaptive Scheme)について研究した。(1)ad-hocな適応型計算法であるNested Grid Schemeについて2次元軸対称磁気流体力学コードにこれを適用し密度のダイナミック・レンジで10^8という高精度計算が可能になることを実証した。(2)これを、新たな格子点の自動生成や不必要な格子点の自動消去も行なえる完全な適応型計算法に移行するためには、生成・消去の判定条件を新たに検討するなど、計算結果の「自動評価」の研究が必要である。1.最近登場したベクトル並列型計算機、超並列型計算機、重力多体問題専用計算機などの高速計算機を天体物理学で適用するための、それぞれの計算機で最適の手法の選定、具体的な適用法などについて研究した。(1)高速なシミュレーションを行なうために並列型計算機へ計算プログラムを移植する点については、双曲型方程式に関しては、データの分割を含んだ並列化が容易に達成され、大型高速のシミュレーションが可能であることが実証された。しかし楕円型方程式については従来の解法における「前処理」の並列化が非常に困難であり、前処理方法自身の改良が必要とされることがわかった。(2)この楕円型方程式(天体物理学では重力や静電磁場のPoisson方程式解法が重要)については、「多重格子反復法」がベクトル並列型計算機などで非常に高速に計算できることを見い出した。その能力は、同数の格子点数を用いた磁気流体力学を1ステップ時間推進するのに要する1/2のCPU時間で重力場の計算を1回行なえるほどであった。2.天体物理学に適した適応型計算法(Adaptive Scheme)について研究した。(1)ad-hocな適応型計算法であるNested Grid Schemeについて2次元軸対称磁気流体力学コードにこれを適用し密度のダイナミック・レンジで10^8という高精度計算が可能になることを実証した。(2)これを、新たな格子点の自動生成や不必要な格子点の自動消去も行なえる完全な適応型計算法に移行するためには、生成・消去の判定条件を新たに検討するなど、計算結果の「自動評価」の研究が必要である。宇宙物理分野で必要となる流体力学、磁気流体力学、重力多体問題、輻射流体力学などで必要とされる高速高精度の数値計算法を、特に近年の計算能力の発展のめざましい並列、ベクトル並列計算機を念頭に置いて、開発することを行った。流体力学、磁気流体力学の分野においては、花輪らや松元らを中心として高解像風上差分法について調査し、実際の計算機上で降着円盤内の活動現象等に応用し、ベクトル並列計算機においても高速な計算法であることを示した。空間の一部分に高解像度の格子を用いることにより空間分解能をあげる適応型計算法の一種である多重格子法については、富阪らが、星間雲から星への重力収縮に適応し暴走的な収縮からその後の進化を調べ、中心密度が表面の1億倍に達する時期まで安定に追跡されることを示した。輻射流体力学の高速計算法については、梅村らや観山らが中心となって、変動エディントン係数法による定式化が高速かつ精度よく計算できる方法であることを見いだした。輻射輸送を長い基線にそって積分する方法と短いそれのどちらを選ぶべきかについては、実際の計算機を用いての研究の途上である。差分法、粒子法などの基本的な計算法の並列化の技法についても研究を開始した。1.最近登場したベクトル並列型計算機、超並列型計算機、重力多体問題専用計算機などの高速計算機を天体物理学で適用するための、それぞれの計算機で最適の手法の選定、具体的な適用法などについて研究した。(1)高速なシミュレーションを行なうために並列型計算機へ計算プログラムを移植する点については、双曲型方程式に関しては、データの分割を含んだ並列化が容易に達成され、大型高速のシミュレーションが可能であることが実証された。しかし楕円型方程式については従来の解法における「前処理」の並列化が非常に困難であり、前処理方法自身の改良が必要とされることがわかった。(2)この楕円型方程式(天体物理学では重力や静電磁場のPoisson方程式解法が重要)については、「多重格子反復法」がベクトル並列型計算機などで非常に高速に計算できることを見い出した。その能力は、同数の格子点数を用いた磁気流体力学を1ステップ時間推進するのに要する1/2のCPU時間で重力場の計算を1回行えるほどであった。2.天体物理学に適した適応型計算法(Adaptive Scheme)について研究した。 | KAKENHI-PROJECT-07304025 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07304025 |
超高速計算機とadaptive型計算法を用いた数値的天文学の展開 | (1)ad-hocな適応型計算法であるNested Grid Schemeについて2次元軸対称磁気流体力学コードにこれを適用し密度のダイナミック・レンジで10^8という高精度計算が可能になることを実証した。(2)これを、新たな格子点の自動生成や不必要な格子点の自動消去も行なえる完全な適応型計算法に移行するためには、生成・消去の判定条件を新たに検討するなど、計算結果の「自動評価」の研究が必要である。 | KAKENHI-PROJECT-07304025 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07304025 |
がん特異的なREICの構造を判別する薬効評価系の開発及びその構造と機能の評価 | REICは、様々ながん種において発現が低下しており、がん抑制遺伝子として機能する。そしてREICの強い抗がん作用を利用して、アデノウイルスを用いた遺伝子治療製剤(Ad-REIC)が開発され、前立腺がん・悪性中皮腫を対象とした臨床試験が実施中である。本研究では、この治療をモニターする方法を確立するため、血中REIC濃度を定量可能な新規REICモノクローナル抗体を取得し、sandwich ELISA系を検討した。そしてAd-REIC投与後にREICタンパク質の血中濃度が上昇することを示した。REICは、複数種のがんで臨床試験を実施・計画中であり、REIC治療の薬効評価法として実用化を推進中である。REIC (Reduced expression immortalized cell)は、多岐にわたるがん種において発現が低下しており、がん抑制遺伝子として機能することが明らかとなっている。さらにREICの強い抗がん作用を利用したバイオ医薬品として、アデノウイルスを用いた遺伝子治療製剤(Ad-REIC)が開発され、前立腺がんを対象とした臨床試験が実施された。この治療をモニターする方法としてREICタンパク質の血中濃度の測定系を検討し、独自にエピトープが異なる12種類のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体を整備し、それらを組み合わせたsandwich ELISA系を確立した。これら測定系を用いた前立腺がん患者の遺伝子治療前・治療後の血清の解析により、Ad-REIC投与後の血清においてREICタンパク質濃度の上昇を確認し、この測定系によりREICの遺伝子治療をモニター可能であることを示した。さらにこれらの解析結果から前立腺がん患者血清中には異なる構造のREICタンパク質が存在し、がんの状態によりそのタンパク質の比率が異なることが示唆された。この測定系の有効性を複数のがん種で検証するため、健常人10例の血清と肝がん患者10例、肺がん患者15例の未治療の血清を詳細に比較・検討し、前立腺がんだけではなく、他のがん種においてもこの測定系が適応可能であることを示した。REICは、多岐にわたるがん種において抗がん作用を示していることから、この測定系も複数種のがんで適応可能であり、REIC治療の薬効評価およびコンパニオン診断薬としての実用化が期待される。Ad-REIC投与前・投与後の前立腺がん患者血清中のREICタンパク質濃度を測定することにより、REICの遺伝子治療をモニター可能であることを示した。さらに健常人10例の血清と肝がん患者10例、肺がん患者15例の未治療の血清を独自の抗体を用いたsandwich ELISA系で詳細に解析し、この測定系が前立腺がんだけではなく、複数のがん種に適応可能であることを示した。REIC (Reduced expression immortalized cell)は、多岐にわたるがん種において発現が低下しており、がん抑制遺伝子として機能することが明らかとなっている。さらにREICの強い抗がん作用を利用したバイオ医薬品として、アデノウイルスを用いた遺伝子治療製剤(Ad-REIC)が開発され、前立腺がん・悪性中皮腫を対象とした臨床試験が実施中である。この治療をモニターする方法としてREICタンパク質の血中濃度の測定系を検討し、独自にエピトープが異なる12種類のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体を整備し、それらを組み合わせたsandwich ELISA系を確立した。これら測定系を用いた前立腺がん患者の遺伝子治療前後の血清の解析により、Ad-REIC投与後にREICタンパク質濃度の上昇を確認した。さらにこれらの解析結果から前立腺がん患者血清中には異なる構造のREICタンパク質が存在し、がんの状態によりそのタンパク質の比率が異なることが示唆された。この測定系の有効性を複数のがん種で検証するため、健常人10例・肝がん患者10例、肺がん患者15例の未治療の血清を用いて検討し、他のがん種においても適応可能であることを示した。REICは、多岐にわたるがん種において抗がん作用を示しており、複数種のがんで臨床試験を実施・計画中であるため、この測定系もあわせてREIC治療の薬効評価およびコンパニオン診断薬としての実用化を推進中である。またモノクローナル抗体のエピトープを決定することで、がん患者血清中に存在するREICは、コイルドコイルドメインを介してがん特異的なタンパク質と結合していることが予測された。現在、がん免疫に関連するREIC結合受容体の解析中であり、がんの進展を抑制するREICの作用点解明につながる研究へと発展させる。REICは、様々ながん種において発現が低下しており、がん抑制遺伝子として機能する。そしてREICの強い抗がん作用を利用して、アデノウイルスを用いた遺伝子治療製剤(Ad-REIC)が開発され、前立腺がん・悪性中皮腫を対象とした臨床試験が実施中である。本研究では、この治療をモニターする方法を確立するため、血中REIC濃度を定量可能な新規REICモノクローナル抗体を取得し、sandwich ELISA系を検討した。そしてAd-REIC投与後にREICタンパク質の血中濃度が上昇することを示した。REICは、複数種のがんで臨床試験を実施・計画中であり、REIC治療の薬効評価法として実用化を推進中である。今後は、血中におけるREICタンパク質の構造に着目し、血中から精製したREICタンパク質の糖鎖解析・REIC結合タンパク質の解析を行う。分子生物学 | KAKENHI-PROJECT-16K18440 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K18440 |
可溶性グアニレートシクラーゼのNOに誘起される構造変化:可視及び紫外共鳴ラマン分光法による研究 | Dr.B.PALは、平成13年11月に訪日後、まず共鳴ラマンスペクトルの測定法を学び、色々なレーザーを1人で発振させ、それを光源としてラマンスペクトルを測定できるようになった。次に可溶性グアニレートシクラーゼをウシ肺から単離、精製した。4kgの肺から3mgの純粋な酵素を得る事に成功した。この酵素を用いて活性と共鳴ラマンスペクトルを測定した。NO付加体は活性が200倍以上高くなるのにCO付加体は4倍程度しか上昇しなかった。しかしYC-1というエフェクターを加えると、CO付加体の活性が200倍程度上昇した。共鳴ラマン分光法でFe-CO伸縮振動を測定してみると、エフェクター無しではFe-CO伸縮振動は473cm^<-1>に1本バンドが見えたが、YC-1を入れると487cm^<-1>に肩が出てきた。そこにGTPを加えると487cm^<-1>にバンドが完全にシフトすると同時に521cm^<-1>に新たにCO同位体鋭敏バンドが現れた。後者を5配位ヘムすなわちFe-ヒスチジン結合の切れた5配位CO錯体に帰属した。一方、大阪府立大学農学部の津山伸吾教授の研究室に出向し、昆虫ヴィールス系に本酵素の遺伝子を組み込んだベクターを入れ、人工的に本酵素を合成しようとした。活性のある蛋白質はとれたが発現効率が悪く、ラマン分光法の測定に十分な量の蛋白がまだ得られていない。そこでヘムを含む部分のみの発現を大腸菌でやる事を試み、βサブユニットの1番から382番までの残基とヘムを含む部分を合成する事に成功した。この発現を効率よくして紫外共鳴ラマンの実験をやれる量の蛋白を得る努力をする予定である。Dr.B.PALは、平成13年11月に訪日後、まず共鳴ラマンスペクトルの測定法を学び、色々なレーザーを1人で発振させ、それを光源としてラマンスペクトルを測定できるようになった。次に可溶性グアニレートシクラーゼをウシ肺から単離、精製した。4kgの肺から3mgの純粋な酵素を得る事に成功した。この酵素を用いて活性と共鳴ラマンスペクトルを測定した。NO付加体は活性が200倍以上高くなるのにCO付加体は4倍程度しか上昇しなかった。しかしYC-1というエフェクターを加えると、CO付加体の活性が200倍程度上昇した。共鳴ラマン分光法でFe-CO伸縮振動を測定してみると、エフェクター無しではFe-CO伸縮振動は473cm^<-1>に1本バンドが見えたが、YC-1を入れると487cm^<-1>に肩が出てきた。そこにGTPを加えると487cm^<-1>にバンドが完全にシフトすると同時に521cm^<-1>に新たにCO同位体鋭敏バンドが現れた。後者を5配位ヘムすなわちFe-ヒスチジン結合の切れた5配位CO錯体に帰属した。一方、大阪府立大学農学部の津山伸吾教授の研究室に出向し、昆虫ヴィールス系に本酵素の遺伝子を組み込んだベクターを入れ、人工的に本酵素を合成しようとした。活性のある蛋白質はとれたが発現効率が悪く、ラマン分光法の測定に十分な量の蛋白がまだ得られていない。そこでヘムを含む部分のみの発現を大腸菌でやる事を試み、βサブユニットの1番から382番までの残基とヘムを含む部分を合成する事に成功した。この発現を効率よくして紫外共鳴ラマンの実験をやれる量の蛋白を得る努力をする予定である。 | KAKENHI-PROJECT-01F00289 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01F00289 |
誘電測定による複雑系の異常緩和機構の研究 | 高分子などの複雑系では相転移の際の構造変化の時間スケールが通常の時間スケールと比較して、数桁遅い。これに対応して、種々の動的測定により得られる高分子鎖の緩和過程は異常緩和と呼ばれる非デバイ型の緩和過程を示す。本研究では、この異常緩和機構が結晶化という構造形成とどのようにかかわっているのかという点を明らかにするために、結晶化速度が遅く時分割測定の可能なポリエチレンテレフタレートを対象として、融液から結晶化が進行し、高次構造が形成されていく過程で、非晶相に関係した誘電緩和スペクトルがどの様に変化するかを実時間で追跡し、同時にX線回折により、高次構造・結晶構造の変化を測定した。小角散乱装置は京都大学超強力X線室の点収束型小角散乱装置を用いた。誘電測定は10-2Hz-10^2Hzの範囲ではHP4284LCRメータを、10^2Hz-10^6Hzの範囲ではソ-ラトロンインピーダンスアナライザ1260を用いた。その結果、結晶化の前駆現象として、α緩和過程がα'緩和過程へと変化する動的転移が起こり、それに遅れて、通常の長周期構造形成が起こることが明らかとなった。また、結晶構造形成と長周期構造の形成はほぼ同時に起こっていた。高分子などの複雑系ではこの様なダイナミクスの転移を支配するキネティクスと構造形成のそれとは個別に議論する必要性が本研究により明確となった。高分子などの複雑系では相転移の際の構造変化の時間スケールが通常の時間スケールと比較して、数桁遅い。これに対応して、種々の動的測定により得られる高分子鎖の緩和過程は異常緩和と呼ばれる非デバイ型の緩和過程を示す。本研究では、この異常緩和機構が結晶化という構造形成とどのようにかかわっているのかという点を明らかにするために、結晶化速度が遅く時分割測定の可能なポリエチレンテレフタレートを対象として、融液から結晶化が進行し、高次構造が形成されていく過程で、非晶相に関係した誘電緩和スペクトルがどの様に変化するかを実時間で追跡し、同時にX線回折により、高次構造・結晶構造の変化を測定した。小角散乱装置は京都大学超強力X線室の点収束型小角散乱装置を用いた。誘電測定は10-2Hz-10^2Hzの範囲ではHP4284LCRメータを、10^2Hz-10^6Hzの範囲ではソ-ラトロンインピーダンスアナライザ1260を用いた。その結果、結晶化の前駆現象として、α緩和過程がα'緩和過程へと変化する動的転移が起こり、それに遅れて、通常の長周期構造形成が起こることが明らかとなった。また、結晶構造形成と長周期構造の形成はほぼ同時に起こっていた。高分子などの複雑系ではこの様なダイナミクスの転移を支配するキネティクスと構造形成のそれとは個別に議論する必要性が本研究により明確となった。 | KAKENHI-PROJECT-08740340 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08740340 |
大標本高次元データに対するノンパラメトリック手法の開発 | 本研究課題では、様々な分野で扱われるようになってきたビッグデータの解析のため、高次元データに対するノンパラメトリックな手法(データの分布を仮定せずに様々な判断を行う手法)の開発を行うことを目的としている。本年度は主に以下の研究を行った。1.高次元データについて、その分布が正規分布に従っているか否かを判断することは難しく、その手法もほとんど提案されていない。そこで、標本の分布の歪みに注目し、歪みがあれば正規分布ではないと判断する新たな分析手法に関する研究を行い、論文の執筆を行った(2019 publish)。2.一般的な線形モデルに対する線形仮説における論文作成に取り掛かっている。本研究は一般的なGMANOVAモデルに対するノンパラメトリックな仮説検定手法の研究であり、これまでの研究成果を全て網羅した上、2元配置分散分析などにも応用のきく手法となっている。このモデルにより、一般的な線形モデルにおける線形仮説について、分布を問わずに検定を行えるフレームワークを作成した。3.上記の2で開発した検定統計量やパラメータの推定量を用い、様々な応用について検討している。これまで、多くのパラメータの推定について、中心極限定理等を使った一致推定量は提案されてきているが、このような手法は高次元の枠組みではうまくいかないケースも見うけられた。だが、本研究で行っている様々なパラメータ推定は分布の仮定だけでなく、次元の大きさもほとんど影響しないため、幅広い応用が期待される。論文作成について様々な検討を行っており、作成に時間を要している。現在、これまでの研究の総括的な論文作成のめどが立ち、該当論文を早急にまとめる。本研究課題では、様々な分野で扱われるようになってきたビッグデータの解析のため、高次元データに対するノンパラメトリックな手法(データの分布を仮定せずに様々な判断を行う手法)の開発を行うことを目的としている。本年度は主に以下の研究を行った。1.一般的な手法(ノンパラメトリックな手法)の開発に取り掛かる前段階として、線形判別分析におけるパラメトリックな手法(データの分布が正規分布であるという仮定の下での手法)の漸近的性質に関する共同研究を行った。一般に判別分析では、2つの群に対する誤判別確率(異なる群に所属すると誤って判断してしまう観測値の総数)を最小にするようにルールを作成する。しかし、対称でない二つの群を比較する場合は、一方の群への誤判別は小さくしたい(厳密に設定したい)が、もう一方の群への誤判別はそれほど小さくする必要がないということがありうる。そのようなケースに対応するため、一方の誤判別確率を一定の値に保つ判別ルールの作成を高次元データの枠組みの下で行った。2.今までに発表した研究(高次元データにおける複数のグループの平均の比較(全ての平均が等しいという統計的検定問題)に関するノンパラメトリック手法の開発)の一般化に向け、過去の研究内容の見直し、及び他研究の調査等を実施した。また、過去に提案したノンパラメトリックなパラメータ推定法のさらなる有用性及び、手法の一般化について数値実験に基づく検証を行った。平成28年度は予定していた研究について、理論的な証明が完了せず、数値的検証を行うにとどまっている。本研究課題では、様々な分野で扱われるようになってきたビッグデータの解析のため、高次元データに対するノンパラメトリックな手法(データの分布を仮定せずに様々な判断を行う手法)の開発を行うことを目的としている。本年度は主に以下の研究を行った。1.一般的な手法(ノンパラメトリックな手法)の開発に取り掛かる前段階として、線形判別分析の効果を事前に知るための指標(対数オッズ)について、パラメトリックな条件(データの分布が正規分布であるという仮定の下での手法)の下での漸近的推定に関する共同研究を行った。通常、判別分析の効果を調べるには、機械学習的な方法(教師データとテストデータを使った評価)が取られるが、本手法を用いることで現在の標本から効果的な判別ルールを作ることができるかどうかが判断できるようになる。2.高次元データについて、その分布が正規分布に従っているか否かを判断することは難しく、その手法もほとんど提案されていない。そこで、標本の分布の歪みに注目し、歪みがあれば正規分布ではないと判断する新たな分析手法に関する研究を行った。3.これまで、繰り返しデータに対するノンパラメトリックな検定手法の研究を行ってきたが、一般的な線形モデルへの拡張の理論的考察を終え、論文作成の準備を行っている。提案手法の様々な応用事例も見つかっている。本手法は、統計的検定のみならず、高次元データの様々なパラメータ推定にも役立つことが期待される。また、2017年度は関連論文2件が出版された。理論的な研究の完了目途が立ったが、論文作成の準備が遅れている。本研究課題では、様々な分野で扱われるようになってきたビッグデータの解析のため、高次元データに対するノンパラメトリックな手法(データの分布を仮定せずに様々な判断を行う手法)の開発を行うことを目的としている。本年度は主に以下の研究を行った。1.高次元データについて、その分布が正規分布に従っているか否かを判断することは難しく、その手法もほとんど提案されていない。そこで、標本の分布の歪みに注目し、歪みがあれば正規分布ではないと判断する新たな分析手法に関する研究を行い、論文の執筆を行った(2019 publish)。2.一般的な線形モデルに対する線形仮説における論文作成に取り掛かっている。 | KAKENHI-PROJECT-16K16018 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K16018 |
大標本高次元データに対するノンパラメトリック手法の開発 | 本研究は一般的なGMANOVAモデルに対するノンパラメトリックな仮説検定手法の研究であり、これまでの研究成果を全て網羅した上、2元配置分散分析などにも応用のきく手法となっている。このモデルにより、一般的な線形モデルにおける線形仮説について、分布を問わずに検定を行えるフレームワークを作成した。3.上記の2で開発した検定統計量やパラメータの推定量を用い、様々な応用について検討している。これまで、多くのパラメータの推定について、中心極限定理等を使った一致推定量は提案されてきているが、このような手法は高次元の枠組みではうまくいかないケースも見うけられた。だが、本研究で行っている様々なパラメータ推定は分布の仮定だけでなく、次元の大きさもほとんど影響しないため、幅広い応用が期待される。論文作成について様々な検討を行っており、作成に時間を要している。過去の研究結果について、有用な特性を持つこと可能性が高いことが判明したので、その理論的な証明を含め、数値的に検証できた内容について、理論的な証明を行い、論文化を行っていく予定である。これまでにまとめた内容をいくつかの論文にまとめ、今年度中(早い時期)の投稿を目指す。現在、これまでの研究の総括的な論文作成のめどが立ち、該当論文を早急にまとめる。研究の遅延により、学会発表、論文作成等が遅れ、主に旅費、その他の部分で使用額が少なくなったため。本年度までの研究の状況として、論文作成及び研究発表が遅れているため、その部分の費用が使用できていない。本年度は、論文作成及び研究発表に重点を置き、経費の使用を実施していく。研究の遅れ及び論文執筆の遅れのため、残額が発生した。本年度は、研究のまとめ及び更なる研究の発展の模索にあたり、研究発表、論文投稿、情報収集を行う。次年度は研究の遅れ分を取り戻し、研究結果の成果報告に努め、残額を使用する。 | KAKENHI-PROJECT-16K16018 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K16018 |
パルスフィールド電気泳動法を用いた歯周疾患、関連細菌の家族内伝播の検索 | 成人性菌周疾患関連細菌として注目されているPorphyromonas gingivalis(以下Pg)の家族内伝播を調べる一助として4組の夫婦間から分離されたPgのDNAの電気泳動パターンを、巨大DNAを画分処理することのできるパルスフィールド電気泳動法により検索したところ以下のような結果を得た。1)制限酵素未処理DNA泳動パターン:DNA抽出法の検定およびNativeなDNAの状況を調べるために制限酵素未処理のDNA泳動パターンについてまず検索を行なった。その結果、調べた8菌株間に特異な差を認めることはできなかった。2)8塩基認識制限酵素切断DNA泳動パターン:8塩基認識制限酵素として知られるNotIおよびSfiIによりPgDNAを切断し、パルスフィールド電気泳動によりそのパターンを検索した。その結果、NotI処理を行なったものにおいて2組の夫婦の泳動パターンがほぼ同一であったが、その他2組の夫婦間においては必ずしも同一ではなかった。またSfiI処理群においては明瞭なバンドが認められなかった。またよく用いられる基準株であるPg381株との比較したところ各夫婦から分離されたPgのDNA泳動パターンは異なっていた。以上の結果より、本パルスフィールド電気泳動法を用いた検索において夫婦間でのPgの伝播が示唆された。よって各分離菌株に特異的なDNA断片を調製し、各々のDNAとサザンハイブリダイゼーションを行ない、より特異性の高い検索法を構築する必要がある。成人性菌周疾患関連細菌として注目されているPorphyromonas gingivalis(以下Pg)の家族内伝播を調べる一助として4組の夫婦間から分離されたPgのDNAの電気泳動パターンを、巨大DNAを画分処理することのできるパルスフィールド電気泳動法により検索したところ以下のような結果を得た。1)制限酵素未処理DNA泳動パターン:DNA抽出法の検定およびNativeなDNAの状況を調べるために制限酵素未処理のDNA泳動パターンについてまず検索を行なった。その結果、調べた8菌株間に特異な差を認めることはできなかった。2)8塩基認識制限酵素切断DNA泳動パターン:8塩基認識制限酵素として知られるNotIおよびSfiIによりPgDNAを切断し、パルスフィールド電気泳動によりそのパターンを検索した。その結果、NotI処理を行なったものにおいて2組の夫婦の泳動パターンがほぼ同一であったが、その他2組の夫婦間においては必ずしも同一ではなかった。またSfiI処理群においては明瞭なバンドが認められなかった。またよく用いられる基準株であるPg381株との比較したところ各夫婦から分離されたPgのDNA泳動パターンは異なっていた。以上の結果より、本パルスフィールド電気泳動法を用いた検索において夫婦間でのPgの伝播が示唆された。よって各分離菌株に特異的なDNA断片を調製し、各々のDNAとサザンハイブリダイゼーションを行ない、より特異性の高い検索法を構築する必要がある。 | KAKENHI-PROJECT-06772022 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06772022 |
三次元鍛造加工プロセスの最適化に関する研究 | 近年、自動車エンジンのコネクティングロッドなどのような、複雑な3次元形状を持つ部品が鍛造で生産されるようになってきた。そのような加工プロセスの最適化には、有限要素法などの数値解析などを用いることが極めて有効であると考えられているが、現状では大きな材料の変形に伴う要素の過大な歪みによる精度低下が実用化の大きな障害となっている。本研究では、解析の途中で動的に解析要素メッシュを作り直すアダプティブリメッシング法を3次元剛塑性FEM解析に取り組むことにより、複雑な3次元鍛造プロセスの実用的な解析を可能とすることを目的とした。この解析では、(1)3次元変形解析部、(2)誤差解析部、(3)自動要素分割部を開発した。変形解析部においては、自動要素分割部の作成の容易さを考慮し、4面体を採用した剛塑性FEM解析プログラムを開発した。誤差解析部は2次元問題の誤差解析部の拡張として、要素内の離散化誤差をベースとした3次元誤差解析プログラムを開発した。アダプティブリメッシング法で用いる自動要素分割部(メッシュジェネレータ)は、そのアルゴリズムがロバストである必要がある。そこで本研究ではアドバンシングフロント法および修正デロ-ニ法の2種類のアルゴリズムを検討した。その結果、修正デニ-ロ法の方が偏平な要素ができにくいことがわかり、それを用いた自動要素分割プログラムを開発した。これらプログラムにより簡単な形状の加工の解析を行い、モデル実験と比較して成型品の形状、成型荷重、ひずみなどの計算結果が妥当なものであることを確認した。以上のことから、従来、要素の過度な歪みにより自動で行うのが困難であった大きな変形を伴う3次元鍛造の数値解析が、可能となったと考えられる。これにより3次元鍛造部品の設計や加工プロセスの、コンピュータシミュレーションを用いた最適化に対し道を開くものと考えられる。近年、自動車エンジンのコネクティングロッドなどのような、複雑な3次元形状を持つ部品が鍛造で生産されるようになってきた。そのような加工プロセスの最適化には、有限要素法などの数値解析などを用いることが極めて有効であると考えられているが、現状では大きな材料の変形に伴う要素の過大な歪みによる精度低下が実用化の大きな障害となっている。本研究では、解析の途中で動的に解析要素メッシュを作り直すアダプティブリメッシング法を3次元剛塑性FEM解析に取り組むことにより、複雑な3次元鍛造プロセスの実用的な解析を可能とすることを目的とした。この解析では、(1)3次元変形解析部、(2)誤差解析部、(3)自動要素分割部を開発した。変形解析部においては、自動要素分割部の作成の容易さを考慮し、4面体を採用した剛塑性FEM解析プログラムを開発した。誤差解析部は2次元問題の誤差解析部の拡張として、要素内の離散化誤差をベースとした3次元誤差解析プログラムを開発した。アダプティブリメッシング法で用いる自動要素分割部(メッシュジェネレータ)は、そのアルゴリズムがロバストである必要がある。そこで本研究ではアドバンシングフロント法および修正デロ-ニ法の2種類のアルゴリズムを検討した。その結果、修正デニ-ロ法の方が偏平な要素ができにくいことがわかり、それを用いた自動要素分割プログラムを開発した。これらプログラムにより簡単な形状の加工の解析を行い、モデル実験と比較して成型品の形状、成型荷重、ひずみなどの計算結果が妥当なものであることを確認した。以上のことから、従来、要素の過度な歪みにより自動で行うのが困難であった大きな変形を伴う3次元鍛造の数値解析が、可能となったと考えられる。これにより3次元鍛造部品の設計や加工プロセスの、コンピュータシミュレーションを用いた最適化に対し道を開くものと考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-06750736 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06750736 |
科学的臨床検査を目指した、標準化未踏である免疫学的検査データの標準化への挑戦 | 免疫学的測定法は測定値が標準化されず測定値がばらばらなものが多い。そこで、標準化を目指した実態調査を行った。可溶性IL-2受容体、PIVKA-IIは、それぞれ多くの試薬があり使用抗体も異なるため、患者試料を測定したところ、比較的良好な相関性を示し、調査試薬全体の平均値との乖離も大きくなかった。また、プロカルシトニンはイムノクロマトグラフィ法も広く使用されているため、高感度測定法との関係を調べたところ、概ね良好な相関が得られた。従って、乖離する測定法を平均値に合わせるAPTM法を使用するのではなく、学術的に極端な試薬の改良を促すなど産官学共同での活動が必要と考える。検体検査の多くは客観的な指標としてデジタルで表されるため、測定法によって測定値が異なると診療上大きな誤判断を起こす危険性がある。従って、どこでもいつでも同じ検査結果を得ることができるシステム構築が必要である。しかしながら、標準測定法がなく各社が個別の測定体系で試薬を市販している免疫学的検査項目は、検査値がまちまちで標準化がされていないし、標準化できないものも多い。そこで、検査データの標準化とハーモナイゼーション(これらをまとめて標準化と呼ぶこともある)を進めるために最適の手法を考案・構築し、モデル例として先鞭をつけることを目的とする。まず行うべきことは、どの項目を扱うか、世界情勢など情報収集を行い、各検査項目でどれくらいの試薬が市販されているか、市場調査、それぞれの測定系で用いられている標準物質の種類、測定系の種類などについて調べた。その結果、まだ十分な検討がなされていないトロポニンT、トロポニンI、NT-proBNP、IgE、フェリチン、プロラクチン、ACTHを対象とするのがよいと考えられた。そこで、それらについての詳細な情報収集を行い、患者検体の収集に取り掛かっている。次に、患者試料をどのように収集するかである。実際に複数の試薬での検討を行うためには、そこそこの血清量が必要である。実際には、患者の残余血清の量は多くはないため、2人分を加える、献血の残余血清をプール化して希釈液として使用するなどの方策を考えて、下準備を進めている段階にある。各検査項目でどれくらいの試薬が市販されているか、市場調査、それぞれの測定系で用いられている標準物質の種類、測定系の種類などについて調べるのに、試薬の添付文書だけではわからないことも多く、予想以上の時間がかかってしまったために、次のステップである検体収集が遅れてしまった。検体検査の多くは客観的な指標としてデジタルで表されるため、測定法によって測定値が異なると診療上大きな誤判断を起こす危険性がある。従って、どこでもいつでも同じ検査結果を得ることができるシステム構築が必要である。しかしながら、標準測定法がなく各社が個別の測定体系で試薬を市販している免疫学的検査項目は、検査値がまちまちで標準化は至難の業である。そこで、検査データの標準化とハーモナイゼーション(これらをまとめて標準化と呼ぶこともある)を進めるために最適の手法を考案・構築し、モデル例として先鞭をつけることを目的とする。今年度は、本邦では広く臨床検査に活用されている項目であるが、まだ十分な検討がなされていない可溶性IL-2受容体(IL-2R)、PIVKA-II、KL-6などを対象とした。IL-2Rは、現在4つの試薬で測定可能である。化学発光酵素免疫測定法が2法、酵素免疫測定法が1法、ラテックス凝集免疫測定法が1法である。いずれの方法も基準値とされる130-580 U/mLの範囲から多くの患者が示す50000 U/mLくらいまでは希釈も入れて可能であった。これらの患者試料での相関性を確認したところ、10000 U/mL以下の159例でいずれも相関係数が0.97以上と高かった。All Procedure Trimmed Mean(APTM)で得られる回帰式に近づける方法によって、各法による結果はAPTMに近づくが、それが本当に各患者において妥当な選択かどうかには疑問が残った。患者試料の多様性を測定法が異なった場合にいかに扱うか、今後の課題である。免疫測定法は、測定に用いる抗体だけでなく、他種の測定法からなっており、測定条件が千差万別であるため、測定試薬が数多く出回ってしまうとハーモナイゼーションが難しくなる。そこで、まだそれほど多くない項目を選択して実態を評価した。市場調査の結果、検討対象項目の順番を変更したこともあり、若干開始が遅れたため、達成できた項目が少なくなってしまった。しかしながら、患者検体を収集しIL-2Rについて検討した結果、それについては4社の試薬の検討が終了し、比較的大きなばらつきがないものの生データを見る限り、データが数倍異なる試料も散見された。次にPIVKA-IIの検討にかかっている。検体検査の多くは数値で客観的に表されるため、測定値の違いは診療上大きな誤判断を起こす危険性がある。従って、測定法が変わっても同様の検査結果を得ることが必要である。しかしながら、標準測定法がなく各社が個別の測定体系で試薬を市販している免疫学的検査項目は、機器試薬によって検査値がまちまちである。そこで、検査データの標準化とハーモナイゼーションを目指した検討を行った。PIVKA-IIは、現在少なくとも10種類の試薬が販売されている。化学発光酵素免疫測定法が2種、(化学発光) | KAKENHI-PROJECT-15H04760 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H04760 |
科学的臨床検査を目指した、標準化未踏である免疫学的検査データの標準化への挑戦 | 酵素免疫測定法が7種、その他が1種である。このうち、7種の試薬では一次抗体にMU-3抗体が用いられ、二次抗体は20B8抗体が6種の試薬で使用されている。抗体の異なる3社の機器試薬で同じ患者試料216検体を測定したところ、μTAS(和光純薬)とHISCL(シスメックス)の相関係数は0.990、μTAS(和光純薬)とArchitect(アボット)は0.988、HISCLとArchitectでは0.989と概ね良好な相関が得られたが、乖離例も見出された。乖離の原因を調べることも大切である。プロカルシトニンは簡易測定試薬(イムノクロマトグラフィ法)を含めると多種の試薬が開発・販売されているため、高感度測定法として電気化学発光免疫測定法(ロシュ)と化学発光酵素免疫測定法(富士レビオ)、イムノクロマトグラフィ法で機械読取りの定量試薬(積水メディカル)を検討した。その結果、イムノクロマトグラフィ法と高感度測定法との相関係数は0.996, 0.998と良好な相関を示した。また、全血と血漿と異なった測定試料でも良好な相関を示した。高感度測定法2種は同じ抗体を用いた測定系で、イムノクロマトグラフィ法は別の抗体であるにもかかわらず良好な相関が得られたことは、ハーモナイゼーションに近い項目と考えられた。免疫学的測定法は測定値が標準化されず測定値がばらばらなものが多い。そこで、標準化を目指した実態調査を行った。可溶性IL-2受容体、PIVKA-IIは、それぞれ多くの試薬があり使用抗体も異なるため、患者試料を測定したところ、比較的良好な相関性を示し、調査試薬全体の平均値との乖離も大きくなかった。また、プロカルシトニンはイムノクロマトグラフィ法も広く使用されているため、高感度測定法との関係を調べたところ、概ね良好な相関が得られた。従って、乖離する測定法を平均値に合わせるAPTM法を使用するのではなく、学術的に極端な試薬の改良を促すなど産官学共同での活動が必要と考える。トロポニンT、トロポニンI、NT-proBNP、IgE、フェリチン、プロラクチン、ACTHを標的として、それらの依頼があった患者血清を収集する。この単一の単一のヒト血清を集めたパネルは、いろいろな特徴を100%発揮する複数の混ぜ物のない試料からなり、マトリクス効果が相殺されることなくきれいに捉えることができるが、1人分の血清の量は少ないため、多くの方法で測定するのが困難になる。一方、プール血清は複数人の血清を混合するため、予期せぬ望ましくない反応や変化が生じたり、マトリクス効果については相殺されたり減じたりする。そこで、これらを組合せて使用する。すなわち、献血者血清を混合したプール血清と適宜混合して希釈に使用する。複数種の測定系による測定値の分布図を、ヒト血清パネル、プール血清と市販の精度管理試料、日本医師会の精度管理試料との関係(相互互換性;コミュータビリティ)を調べる。すなわち、横軸に複数測定法の平均値(代表値)を、縦軸に実測値−平均値をプロットする。各社の測定試薬でヒト血清パネルを測定した値の平均(All Procedure Trimmed Mean; APTM)を代表値とし、それとのバイアスがなくなるように補正したときの各試薬の個々の検体の測定値が収束すれば、ヒト血清パネルの使用によりデータの標準化・ハーモナイゼーションができると判断する。 | KAKENHI-PROJECT-15H04760 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H04760 |
原子間コヒーレンスを利用した微弱な高次QED過程の増幅 | 本研究の目的は、原子間コヒーレンスを用いて励起状態からの放射レートを増幅する技術を応用し、微弱な高次QED過程(E1三光子遷移、E1×M1二光子遷移)の放射を実現、観測することであった。この技術は、ニュートリノ質量の精密測定や、パリティ対称性の破れの精密測定に応用できるもので、標準理論を越えた物理の構築に手がかりを与える実験の基盤技術となり得る。本研究は、コヒーレント増幅を記述するシミュレーションモデルの構築から始めた。具体的には、E1三光子励起によるコヒーレンス生成と、コヒーレント増幅されるE1×M1二光子放出、コヒーレント反ストークスラマン散乱型E1×M1二光子遷移を同時に記述できるMaxwell-Bloch方程式を導出し、数値シミュレーションコードの開発を行った。実際の実験では、標的準備が比較的容易なキセノン原子気体を用いることにした。基底状態と第一励起状態間にコヒーレンスを生成するのを目標として、波長298nmの光による二光子励起を行った。この遷移はE1×E1二光子遷移は禁制であるので、より高次の二光子遷移となる。励起光源は、非線形光学結晶を用いた波長変換等を利用して開発した。励起された原子数は、ポンププローブ法によって測定した。具体的には、第一励起状態から別の励起準位へ遷移させ、脱励起時に発生する蛍光量を測定し、レート方程式の計算と比較した。コヒーレンス生成のための励起と、励起原子数評価が可能になったことは、高次QED過程の放射の実現、観測に向けた重要な結果である。本研究では、原子間コヒーレンスを用いて励起状態からの放射レートを増幅する技術を応用し、微弱な高次QED過程(E1三光子遷移、E1×M1二光子遷移)の放射を実現、観測することを目指している。この技術は、ニュートリノの質量絶対値の精密測定や、パリティ対称性の破れの精密測定へ応用できるもので、標準理論を超えた物理の構築に手がかりを与える実験の基盤技術となり得る。これまでに、E1×E1二光子遷移の放射レートの増幅に成功しているが、本研究では、E1×E1二光子遷移の研究で培ったノウハウを活かして進めていく。本研究は、コヒーレント増幅を記述するシミュレーションモデルの構築から始まる。これまでは、E1×E1二光子遷移に関して、励起によるコヒーレンス生成や脱励起、電場の伝搬を記述するMaxwell-Bloch方程式を用いたシミュレーションを行い、実験結果を説明することに成功していた。この手法を発展させ、今回、さらに高次の過程も取り扱うことのできるMaxwell-Bloch方程式を導出し、数値シミュレーションコードを開発した。具体的には、E1三光子励起によるコヒーレンス生成と、コヒーレント増幅されるE1×M1二光子放出、コヒーレント反ストークスラマン散乱型E1×M1二光子遷移を同時に記述できるMaxwell-Bloch方程式を構築した。そして、実現可能なパルスエネルギー(数10mJ100mJ)の励起光源を用いた場合に発生するE1×M1二光子放出の信号光がサブpJ程度であることが分かった。これは10^5個程度の光子数に相当しており、光電子増倍管を用いて検出することが可能であることを見出した。当初の予定通り、E1三光子励起によるコヒーレンス生成と、コヒーレント増幅される様々な過程を同時に記述できるようなMaxwell-Bloch方程式を構築し、計算機によるシミュレーションコードの開発をするところから始めた。研究開始当初は、励起によるコヒーレンス生成と、脱励起過程を個別に取り扱うことしかできていなかった。これらを同時に取り扱えるようになり、より詳細なシミュレーションによって、実験セットアップを検討することができるようになった。シミュレーションの開発という本研究の目標のひとつを初年度に達成することができたため、おおむね順調に進展していると判断した。本研究の目的は、原子間コヒーレンスを用いて励起状態からの放射レートを増幅する技術を応用し、微弱な高次QED過程(E1三光子遷移、E1×M1二光子遷移)の放射を実現、観測することであった。この技術は、ニュートリノ質量の精密測定や、パリティ対称性の破れの精密測定に応用できるもので、標準理論を越えた物理の構築に手がかりを与える実験の基盤技術となり得る。本研究は、コヒーレント増幅を記述するシミュレーションモデルの構築から始めた。具体的には、E1三光子励起によるコヒーレンス生成と、コヒーレント増幅されるE1×M1二光子放出、コヒーレント反ストークスラマン散乱型E1×M1二光子遷移を同時に記述できるMaxwell-Bloch方程式を導出し、数値シミュレーションコードの開発を行った。実際の実験では、標的準備が比較的容易なキセノン原子気体を用いることにした。基底状態と第一励起状態間にコヒーレンスを生成するのを目標として、波長298nmの光による二光子励起を行った。この遷移はE1×E1二光子遷移は禁制であるので、より高次の二光子遷移となる。励起光源は、非線形光学結晶を用いた波長変換等を利用して開発した。励起された原子数は、ポンププローブ法によって測定した。具体的には、第一励起状態から別の励起準位へ遷移させ、脱励起時に発生する蛍光量を測定し、レート方程式の計算と比較した。 | KAKENHI-PROJECT-17K14363 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K14363 |
原子間コヒーレンスを利用した微弱な高次QED過程の増幅 | コヒーレンス生成のための励起と、励起原子数評価が可能になったことは、高次QED過程の放射の実現、観測に向けた重要な結果である。初年度に開発したシミュレーションに基づき、高次QED過程のコヒーレント増幅に必要な実験装置の開発を行う。光源開発後は、開発したパルス光を重ねて標的セルに入射することで、E1三光子励起によるコヒーレンス生成を行う。コヒーレンスが生成すると、励起光をトリガーとしたE1三光子放出と、E1×M1二光子放出がコヒーレント増幅されるので、これらを検出する。初年度は、数値シミュレーションを中心に行ったため、次年度使用額が生じた。実験に使用する光学部品や電子部品、検出器の購入、学会参加のための旅費等に使用していく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-17K14363 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K14363 |
産業廃棄物の不法投棄に起因する農業生産への影響低減化手法の開発 | 青森岩手県境の産業廃棄物不法投棄現場を対象として、水質汚濁による農業生産或いは生産環境への悪影響について、実態の把握と低減化手法の開発を行った。現場周辺における環境水の水質モニタリングから、臭化物イオンが工業由来の汚染の指標となること、現状回復事業によりその濃度は低下してゆくことがわかった。灌漑用水中の臭素酸イオンは、コマツナポット栽培試験により、成長阻害を引き起こすことがわかった。100mg/L以上の高濃度で現場地下水中に存在するジクロロメタン(DCM)について、高速パルスパワーを用いた水中放電により効率よく分解できることがわかった青森岩手県境に実在する産業廃棄物不法投棄現場は灌漑用水と生活用水の水源地上流にあり、水質汚濁に伴う周辺住民の不安が高まっている。本研究は、農地に生じる農業生産或いは生産環境への悪影響について、実態の把握と低減化手法を開発するものである。具体的には、以下を実施する。(1)現場周辺における環境水と灌漑水中の臭素酸イオン及び臭化物イオン濃度等を同時にモニタリングし、ハロゲン濃度を形態別に空間分布と経時変化を把握することで、汚染状況の解明と汚染の拡散状況を検討する。(2)灌漑用水中の臭素酸イオン等が農作物の生育に与える影響については、既往の研究がほとんど無く、本研究においてコマツナポット栽培試験により、栽培実験手法や栽培条件を確立し、成長阻害を引き起こすかどうかについて、人間の摂取基準がある臭素酸を重点的に検討する。現場下流は水田が多いことから、水稲を用いた検討も試みる。(3)現場では揮発性有機化合物(VOC)による地下水汚染も深刻であり、周辺環境の汚染を発生源で防止するための処理技術の開発を行う。本研究では100mg/L以上の高濃度で現場地下水中に存在するジクロロメタン(DCM等)のVOCについて、電気エネルギーの先端利用技術である高速パルスパワーを用いた水中放電現象を応用することにより、対象物質の分解と水相からの分離の効率化を行う。ビーカーサイズの処理装置(バッチ式)を作成し、効率的な処理が可能な条件を評価するとともに実用化に向けた改良を行う。この際、水中放電に伴う副生成物の検討も行う。青森岩手県境の産業廃棄物不法投棄現場を対象として、水質汚濁による農業生産或いは生産環境への悪影響について、実態の把握と低減化手法の開発を行った。現場周辺における環境水の水質モニタリングから、臭化物イオンが工業由来の汚染の指標となること、現状回復事業によりその濃度は低下してゆくことがわかった。灌漑用水中の臭素酸イオンは、コマツナポット栽培試験により、成長阻害を引き起こすことがわかった。100mg/L以上の高濃度で現場地下水中に存在するジクロロメタン(DCM)について、高速パルスパワーを用いた水中放電により効率よく分解できることがわかった本研究は、青森岩手県境に実在する産業廃棄物不法投棄現場周辺の農地に生じる農業生産或いは生産環境への悪影響について、実態の把握と低減化手法を開発するものである。1.不法投棄現場周辺環境水の無機態臭素を形態別にモニタリングした結果、臭素酸イオンは青森県側浸出水処理施設の放流水のみから極微量検出され、他地点からは検出されなかった。また、ヨウ素酸イオンが、最大数百μg/Lで検出され、不法投棄に由来するものと考えられた。放流後は他の環境水で希釈され、下流でも微量ながらヨウ素酸イオンが検出された。2.臭素酸ナトリウムと臭素酸カリウムを用いて、コマツナの成長に及ぼす影響を検討した。苗の状態で数十mg/Lの臭素酸イオン含有水に暴露されると、体高、乾燥重量ともに減少した。臭素酸イオンには成長抑制効果があり、濃度の上昇とともに抑制割合は大きくなることがわかった。同伴イオンがカリウムの場合、成長促進効果と拮抗するが、ナトリウムの場合はそのような効果はなく、成長阻害がより大きくあらわれた。3.不法投棄現場の浸出水浄化のための水中放電リアクタを開発した。当初銅電極を使用したが、銅が処理水に溶解するために、タングステン電極とした。電極の形状や電極間距離を改良し、本年度は模擬廃水である20mg/Lのインジゴカルミン溶液100mLを数分で脱色できるリアクタを開発した。脱色作用として、水中放電で生成する過酸化水素が重要であることがわかった。脱色促進には、あらかじめ過酸化水素を添加することが有効であることが分かった。処理水に臭化物イオンが含まれる場合には、副生成物として臭素酸イオンが生成されることもわかった。本研究は、青森岩手県境に実在する産業廃棄物不法投棄現場周辺の農地に生じる農業生産或いは生産環境への悪影響について、実態の把握と低減化手法を開発するものである。1.不法投棄現場周辺環境水の無機態ヨウ素・臭素を形態別にモニタリングした。臭素酸イオンは、昨年度唯一検出された青森県側浸出水処理施設の放流水から検出されなくなった。ヨウ素酸イオンは、放流水では昨年より1桁以上低い数μg/L以下で検出された。またヨウ素酸は岩手側の井戸でも検出され、廃棄物に由来する井戸も示唆された。放流水のTOCは昨年度に比べ上昇し、臭素酸イオン、ヨウ素酸イオン濃度低下と合わせ、処理工程においてオゾン処理が停止されたことによると考えられた。2.無機ヨウ素塩と人工土を用いて、コマツナの成長に及ぼす影響を検討した。苗の状態で50mg/L以上のヨウ化物イオン含有水に暴露されると、体高、乾燥重量ともに減少した。 | KAKENHI-PROJECT-20380130 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20380130 |
産業廃棄物の不法投棄に起因する農業生産への影響低減化手法の開発 | ヨウ化物イオンには成長抑制効果があり、濃度の上昇とともに抑制割合は大きくなった。ヨウ素酸イオンでは、成長阻害作用は200mg/Lの曝露濃度まであらわれず、臭素酸イオンと大きく異なった。ヨウ素酸イオンの場合、対になる陽イオンによる差異はなかった。3.不法投棄現場の浸出水浄化のため昨年開発した水中放電電極について、3種類の金属で検討し、放電電極をタングステン電極、接地電極はステンレスとすると電極溶解の影響を無視できた。本年度はVOCであるジクロロメタン10mg-C/L溶液100mLを15分で90%以上処理できるリアクタを開発した。濃度の低下は曝気の効果が高いが、水中放電では単なる曝気よりもジクロロメタンの無機化が進行することが、TOCの濃度減少や塩化物イオン、水素イオン濃度の変化から明らかになった。ジクロロメタンの分解には、過酸化水素が重要であることもわかった。処理水に臭化物イオンが含まれる場合には、副生成物として臭素酸イオンが生成されるが、分解も起きることもわかった。本研究は、青森岩手県境に実在する産業廃棄物不法投棄現場周辺の農地に生じる農業生産或いは生産環境への悪影響について、実態の把握と低減化手法を開発するものである。1.不法投棄現場周辺環境水の無機態ヨウ素・臭素を形態別にモニタリングした。臭素酸イオンは、20年度唯一検出された青森県側浸出水処理施設の放流水から検出されなくなった。ヨウ素酸イオンも、放流水では検出されなくなった。またヨウ素酸は岩手側の井戸でも検出され、濃度レベルは21年度と同様のレベルであった。廃棄物に由来する井戸も示唆された。常温保管していた青森側の19年度サンプルでは、臭素酸イオンはが検出されたが、20年度よりも低く保管中の形態変化が考えられた。2.無機ヨウ素塩とクロボク土を用いて、コマツナの成長に及ぼす影響を検討した。苗の状態で50mg/L以上のヨウ化物イオン含有水に暴露されると、体高、乾燥重量ともに減少した。ヨウ化物イオンには成長抑制効果があり、濃度の上昇とともに抑制割合は大きくなった。ヨウ素酸イオンでは、成長阻害作用は200mg/Lの曝露濃度まであらわれず、臭素酸イオンと大きく異なった。ヨウ素酸イオンの場合、対になる陽イオンによる差異はなかった。3.水中気泡内放電によるジクロロメタン(DCM)処理において、酸素とアルゴンで導入ガスの影響を検討し、みかけの除去率は酸素のほうがアルゴンよりもわずかによいが、分解率はアルゴンのほうが酸素よりも良いことがわかった。これは、オゾンよりもOHラジカルの効果が高いことを示唆し、アルゴンではOHラジカルの生成量が多いためであることがわかった。1,4ジオキサンもアルゴンのほうが分解効率がよいことがわかった。本研究は、青森岩手県境に実在する産業廃棄物不法投棄現場周辺の農地に生じる農業生産或いは生産環境への悪影響について、実態の把握と低減化手法を開発するものである。1.不法投棄現場周辺環境水について、無機態ヨウ素・臭素を形態別に23年度もモニタリングを継続した。青森県側浸出水処理施設の放流水において、臭素酸は不検出であり、ヨウ素酸は極微量検出された。岩手県側南調整池において、臭素酸は数十ppb、ヨウ素酸は数百ppbで検出された。 | KAKENHI-PROJECT-20380130 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20380130 |
伝統的海上捕獲法の正当化根拠 | 本研究では、伝統的国際法における海上捕獲権の根拠を解明するため、1909年ロンドン宣言に至るまでの時期の国家実行・学説を検討した。その結果、海上捕獲権は、(1)侵害された権利の回復、(2)貨物が敵の手に渡れば自国の安全が危うくされる、(3)中立船のある種の行動が敵対行為であって同船が敵船と見なされる、(4)一定の海域において海軍が占領軍に類似する権限を行使できる、という4つのいずれかにより正当化されていたことが明らかになった。敵産捕獲は(1)、戦時禁制品制度は(2)か(3)、封鎖制度は(3)か(4)に基づく制度である。本研究では、伝統的国際法における海上捕獲権の根拠を解明するため、1909年ロンドン宣言に至るまでの時期の国家実行・学説を検討した。その結果、海上捕獲権は、(1)侵害された権利の回復、(2)貨物が敵の手に渡れば自国の安全が危うくされる、(3)中立船のある種の行動が敵対行為であって同船が敵船と見なされる、(4)一定の海域において海軍が占領軍に類似する権限を行使できる、という4つのいずれかにより正当化されていたことが明らかになった。敵産捕獲は(1)、戦時禁制品制度は(2)か(3)、封鎖制度は(3)か(4)に基づく制度である。本研究は、伝統的海上捕獲法の正当化根拠(伝統的国際法において交戦国はいかなる物に対していかなる根拠によって捕獲権を行使できたのか)を歴史的研究によって解明しようとするものである。平成19年度は、(1)国内の図書館で入手できる公刊資料を収集・検討し、また、(2)英国国立公文書館(The National Archives)において未公刊資料の調査も行った(英国について未公刊資料の調査まで行うのは、英国が海上捕獲法の成立史において特に重要な役割を果たした国だからである)。資料の収集・検討を一通り終えたばかりの段階なので、まだ断片的な知見しか得られていないが、それでもいくつかの興味深いことが分かってきた。まず、伝統的海上捕獲法を構成する様々な制度のうち、正当化がもっとも容易だったのは、戦時禁制品制度である。交戦国は、戦争遂行上の必要に基づき、敵国に輸送される戦時禁制品を捕獲できる。戦時禁制品を単に留置するにとどまらず、没収までできるのは、そうすることによって、私人による戦時禁制品輸送を抑止するためである(一般予防)。これに対して、封鎖制度と敵船敵貨捕獲制度は、戦争の用に供される物品であるか否かを問わず、あらゆる物品を捕獲・没収できるという制度であり、これを戦争遂行の必要によって正当化することはできない。それ故、これら2つの制度についてはそれぞれ、戦争遂行の必要以外の様々な根拠により正当化が試みられていたが、そのような試みが完全に成功していた訳ではなく、両制度は国際法上の正当性を欠くという主張すらあった。要するに、戦時禁制品制度、封鎖制度および敵船敵貨捕獲制度は、それぞれ固有の論理によって正当化が試みられていたのであり、正当性が強い制度も弱い制度も(あるいは正当性がない制度も)あった。従来の研究では、伝統的海上捕獲法のすべてが同一の根拠によって正当化されていたと考えられていたが、決してそのようなことはなかったのである。本研究は、伝統的国際法において交戦国がいかなる物に対していかなる根拠によって捕獲権を行使できたのかを歴史的研究によって解明しようとするものである。平成20年度は、前年度に引き続き資料の収集・検討を行った後、年度後半には、研究の成果を論文にまとめる作業にとりかかった。研究の成果を簡単にまとめれば次の通り。伝統的国際法において交戦国が交戦国および中立国の商船・積荷に対して捕獲権を行使できたことの根拠について、従来の研究は、伝統的国際法において戦争の自由が認められていたことの当然の帰結であったとしてそれ以上の説明をしないか、交戦国と中立国の妥協の結果であると説明するかのいずれかであった。ところが、実際に第一次大戦以前の判例・外交文書・学親等を検討してみると、捕獲権は、妥協という事実の問題に尽きる訳でも、戦争の自由の帰結という自明の理でもなく、理論的な正当化が必要とされていた。すなわち、交戦国は敵国の戦争遂行能力(経済力を含む)を削ぎ敵国に講和条件を受け入れさせるため、敵国に属する船舶および貨物をすべて捕獲・没収することができる。しかし、敵国以外、つまり中立国に属する船舶・貨物に対してそのようなことは行えない。中立国に属する船舶・貨物に対しては、(1)貨物が敵の手に渡れば自国の存立が危うくされる場合(自己保存)、(2)中立船のある種の行動が敵対行為であって、同船が中立性を失い敵船と見なされる場合、(3)敵国沿岸が占領されたと見なされ、海軍が占領軍の権限に類似する権限を行使できる場合のいずれかに基づかない限り捕獲権を行使できない。戦時禁制品は(1)と(2)の根拠に、封鎖は(2)と(3)の根拠に基づく制度であると解される。なお、以上のような成果の一部は、平成21年度中に東京大学出版会から公刊される拙著『伝統的中立制度の法的根拠』に盛り込んだ他、研究成果をより詳細に展開する論文を平成21年度中に公表する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-19830014 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19830014 |
単一心室筋細胞無酸素暴露によるイオンチャネル活性化の機序とその役割 | 心筋が虚血に陥るとATP感受性K^+チャネル(K^+_<ATP>チャネル)が活性化すると考えられている.この研究では単離心室筋細胞を特殊なチャンバーを用いて無酸素に暴露(すなわアノキシア)することにより,まずK^+_<ATP>チャネルが開口することを示し、つぎにアノキシアによるK_<ATP>チャネル開口のメカニズムを明らかにすることを目的とする.[方法]コラゲナーゼで処理で得たモルモットの単離心室筋細胞からパッチクランプ用電極により活動電位と膜電流を記録した.アノキシアは,外気の流入を妨げるよう特別に工夫した「空気遮断チャンバー」内に細胞を置き,無グルコースのアノキシアタイロード液を灌流することにより行った.[結果]アノキシア13±3分後に活動電位持続時間(APD)は対照の20%にまで短縮したが,正常液による再灌流により急速かつ完全に回復した.アノキシアにより時間非依存性の大きな外向き電流が活性化されたが,これは正常液再灌流またはK_<ATP>チャネル遮断薬グリベンクラミド添加により容易にブロックされた.アノキシア(無グルコース)の最中にグルコースを加えてもAPDは短縮のままであった.アノキシアが長くなると正常液で再灌流してもAPDは回復せず,またアノキシアと再灌流を繰り返し行なうと,再灌流によるAPDの回復は次第にみられなくなった.[結論]単離心室筋細胞をアノキシアにすると,1.K_<ATP>チャネルが活性化されることを確認した.2.このK_<ATP>チャネルの活性化,脱活性化に直接関与しているATPは,酸化的りん酸化によって生じるATPであった.3.嫌気的解糖によって生じるATPは,酸化的りん酸化によるATP産生が著しく障害されたときに限りK_<ATP>チャネルの活性化,脱活性化に関与していた.4.アノキシアを繰り返すとAPD回復がみられなくなるのは,解糖が障害される結果ATP産生に必要な基質が消失するためと考えられる.心筋が虚血に陥るとATP感受性K^+チャネル(K^+_<ATP>チャネル)が活性化すると考えられている.この研究では単離心室筋細胞を特殊なチャンバーを用いて無酸素に暴露(すなわアノキシア)することにより,まずK^+_<ATP>チャネルが開口することを示し、つぎにアノキシアによるK_<ATP>チャネル開口のメカニズムを明らかにすることを目的とする.[方法]コラゲナーゼで処理で得たモルモットの単離心室筋細胞からパッチクランプ用電極により活動電位と膜電流を記録した.アノキシアは,外気の流入を妨げるよう特別に工夫した「空気遮断チャンバー」内に細胞を置き,無グルコースのアノキシアタイロード液を灌流することにより行った.[結果]アノキシア13±3分後に活動電位持続時間(APD)は対照の20%にまで短縮したが,正常液による再灌流により急速かつ完全に回復した.アノキシアにより時間非依存性の大きな外向き電流が活性化されたが,これは正常液再灌流またはK_<ATP>チャネル遮断薬グリベンクラミド添加により容易にブロックされた.アノキシア(無グルコース)の最中にグルコースを加えてもAPDは短縮のままであった.アノキシアが長くなると正常液で再灌流してもAPDは回復せず,またアノキシアと再灌流を繰り返し行なうと,再灌流によるAPDの回復は次第にみられなくなった.[結論]単離心室筋細胞をアノキシアにすると,1.K_<ATP>チャネルが活性化されることを確認した.2.このK_<ATP>チャネルの活性化,脱活性化に直接関与しているATPは,酸化的りん酸化によって生じるATPであった.3.嫌気的解糖によって生じるATPは,酸化的りん酸化によるATP産生が著しく障害されたときに限りK_<ATP>チャネルの活性化,脱活性化に関与していた.4.アノキシアを繰り返すとAPD回復がみられなくなるのは,解糖が障害される結果ATP産生に必要な基質が消失するためと考えられる.大気中の酸素から細胞と潅流液を隔離し,単一心室筋細胞を虚血類似状態に置くため,特殊な半密閉式容器を作製した。この中に細胞を入れ,無酸素・無グルコースタイロード液で潅流を行うと,心筋細胞の活動電位は平均13分30秒でスパイク状に短縮し,再酸素化すると急速に回復した。このとき同一時間経過でATP感受性カリウムチャネルの活性化が生じていることが,膜電位固定法で明らかとなった。このATP感受性カリウムチャネルの活性化は,心筋虚血時の細胞傷害や虚血再潅流性不整脈の発生や防止に深く関与していると思われるが,今回はこのチャネル活性化の機序を細胞内のエネルギー代謝の面から検討した。その結果,このチャネルは,通常は酸化的燐酸化によって産生されたATPによって開口が抑制されているが,虚血時や無酸素時には酸化的燐酸化によるATP産生が著明に抑制される結果,開口が生じることが明らかになった。また嫌気的解糖系によるATP産生は,従来の考えとは異り,このチャネルの活性化を補助的に調節しているに過ぎないことが判明した。すなわち細胞内のエネルギー産生系の微妙なバランスの上でこのチャネルの活性化は規定されている。なお,今回研究費で購入した解析用コンピューター(Macintosh520)とデーター解析用インターフェイス(MacLab/2e)は,膜電位・膜電流の解析と電気刺激発生用として使用した。 | KAKENHI-PROJECT-06670064 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06670064 |
単一心室筋細胞無酸素暴露によるイオンチャネル活性化の機序とその役割 | また解析データ記録用リム-バブルハードディスク(RM270L)を使用することによりデーター解析の効率化が得られた。我々の開発したパッチクランプ可能な半密閉式心筋細胞灌流装置(平成6年度の概要記載)を用いてモルモット心筋細胞をanoxia状態に導き,ATP感受性K^+(K_<ATP>)チャネルを活性化させ,その活性化のメカニズムを明らかにした。[結果](1)Anoxiaで活性化される大きな外向き電流は,K_<ATP>チャネル阻害剤グリンベンクラマイドで完全にブロックされたことよりK_<ATP>電流であると考えられる。(2)Normoxia状態で,代謝阻害剤FCCP(0.1μM)によりミトコンドリアにおける酸化的リン酸化によるATP産生を阻止すると,K_<ATP>電流が急速に活性化されAPDは短縮した。(3)外液にグルコースが高濃度(11mM)に存在しても,anoxiaによる活動電位持続時間(APD)の短縮を阻止できなかった。(4)無グルコース下で,iodoacetic acid(3mM)により解糖を阻害すると,30分以上経過してようやくAPDの短縮が出現した。以上よりEGTAを含む細胞内液で灌流されている心室筋細胞におけるK_<ATP>チャネルの活性化は,解糖ではなく,酸化的リン酸化によって産生されるATPにより調節されていることが判明した。 | KAKENHI-PROJECT-06670064 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06670064 |
Systematic study of the stellar initial mass function and its variation | 本研究の目的は、弱重力レンズとスタックした銀河の分光スペクトルの測定を組み合わせ、初期の星質量関数を制限する手法を開発することである。銀河の重力レンズ効果の測定を用いることにより、SDSS-BOSS銀河の星質量の上限を得ることができ、これにより異なる初期質量関数の理論モデルを区別できる可能性がある。BOSS銀河の星質量を正確に測定するには、すばるHSCデータにおいて銀河が密集した領域の重力レンズ効果を測定する必要がある。このため、異なる銀河の重なりを区別するための指標を定義し、HSCパイプラインに実装した。また、この研究の一部としてHSCデータの重力レンズ解析のためのソフトウェアも開発した。本研究の目的は、弱重力レンズとスタックした銀河の分光スペクトルの測定を組み合わせ、初期の星質量関数を制限する手法を開発することである。銀河の重力レンズ効果の測定を用いることにより、SDSS-BOSS銀河の星質量の上限を得ることができ、これにより異なる初期質量関数の理論モデルを区別できる可能性がある。BOSS銀河の星質量を正確に測定するには、すばるHSCデータにおいて銀河が密集した領域の重力レンズ効果を測定する必要がある。このため、異なる銀河の重なりを区別するための指標を定義し、HSCパイプラインに実装した。また、この研究の一部としてHSCデータの重力レンズ解析のためのソフトウェアも開発した。天文学 | KAKENHI-PROJECT-15K17600 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K17600 |
気管支喘息におけるIkarosファミリー分子Aiolosの役割の解明 | 我々は、マウスCD4+T細胞においてIL-4がStat6依存的にAiolosの発現を誘導することを発見した。しかし、Aiolosの発現はTh2細胞分化には関与していなかった。また、OVA誘導性アレルギー性気道炎症を惹起したマウスの肺においてAiolosの発現が増加することも明らかになった。さらに、我々はヒトCD4+T細胞において、Aiolos遺伝子の発現量、TNFRSF4 (OX40)やTNFRSF18 (GITR)などの遺伝子の発現と相関していることを見出した。これらの結果より、AiolosはOX40はGITRの発現を調節することでCD4+T細胞の機能を制御している可能性が示唆された。本年度の研究により以下の成果を得た。(結果) AiolosはTh2細胞において発現し、その発現はIL-4/Stat6シグナルに依存していた。2. Aiolos発現CD4+ T細胞ではIL-13産生は亢進しておらず、Aiolos発現はTh2細胞のサイトカイン産生を増強しないことが示唆された。3. OVA誘導性アレルギー気道炎症を惹起したWTマウスの肺ではAiolosの発現が亢進していた。一方、Dectin-2欠損マウスにHDM誘導性アレルギー気道炎症を惹起した際はWTマウスと比して気道炎症が減弱するにもかかわらず、肺内Aiolos発現がさらに増強していた。4. Papain誘導性自然型アレルギー気道炎症を惹起したWTマウスの肺内で、T細胞、自然型リンパ球2(ILC2)におけるAiolosの発現は健常マウスと同程度であった。また、Aiolos発現ILC2においてIL-5産生の亢進は認めなかった。これらの結果より、自然型アレルギー性気道炎症においてILC2でAiolos発現が増強しないこと、また、ILC2におけるAiolos発現はTh2サイトカインの産生に関与しないことが示唆された。(結論)AiolosはTh2細胞に発現し、T細胞依存的なアレルギー性気道炎症を誘導したマウスの肺内においてその発現が亢進する。一方、アレルギー性気道炎症が減弱したDectin-2欠損マウスの肺では、WTマウスと比べてAiolos発現が増強しており、Aiolosはアレルギー性炎症の制御に関与している可能性が示唆された。また、ILC2の活性化にはAiolosは関与していない可能性も示された。我々は、マウスCD4+T細胞においてIL-4がStat6依存的にAiolosの発現を誘導することを発見した。しかし、Aiolosの発現はTh2細胞分化には関与していなかった。また、OVA誘導性アレルギー性気道炎症を惹起したマウスの肺においてAiolosの発現が増加することも明らかになった。さらに、我々はヒトCD4+T細胞において、Aiolos遺伝子の発現量、TNFRSF4 (OX40)やTNFRSF18 (GITR)などの遺伝子の発現と相関していることを見出した。これらの結果より、AiolosはOX40はGITRの発現を調節することでCD4+T細胞の機能を制御している可能性が示唆された。当該年度は以下の知見を得た。1) CD4T細胞におけるAiolos発現調節機構の解明:野生型マウスの脾細胞からナイーブCD4T細胞を単離し、TCR刺激とともにサイトカインを添加し培養した。その後、Aiolosの発現を細胞内染色法により解析したところ、CD4T細胞ではAiolosの発現が誘導された。2) CD4T細胞分化におけるAiolosの役割の解明:野生型マウスの脾細胞からナイーブCD4T細胞を単離し、TCR刺激とともに様々なサイトカイン添加時のもと、レトロウイルスベクターによりAiolosを過剰発現させた。その結果、Aiolos発現CD4T細胞では、コントロールベクターを感染させたCD4T細胞と比べて、IL-17A産生が亢進することが明らかになった。この結果より、AiolosはTh17細胞分化を誘導しアレルギー性気道炎症の増悪に関与している可能性が示唆された。3)アレルギー性気道炎症浸潤細胞におけるAiolos発現の解析:野生型マウスにOVAを感作及び吸入しアレルギー性気道炎症を誘導したところ肺内リンパ球においてAiolos mRNAの発現が誘導されていた。本年度は、マウスCD4T細胞におけるAiolosの発現調節機構及びその役割についてin vitroとin vivoで解析を行い、(1)マウスCD4T細胞ではAiolosが抗原刺激により発現すること、(2)Aiolosを過剰発現させるとマウスCD4T細胞ではIL-17A産生が亢進すること、さらに(3)マウスにアレルギー性気道炎症を誘導すると、肺内リンパ球でAiolosnの発現が亢進することなどの新たな知見を得ることができた。今後は以下の研究を推進する。1)マウスアレルギー性気道炎症の肺内CD4T細胞におけるAiolos発現の役割の解析と、その新規下流遺伝子の同定。2)マウスアレルギー性気道炎症の肺内B細胞におけるAiolos発現とB細胞における役割の解析。3)ヒト末梢血単核球におけるAiolosの発現の解析。さらに難治性アレルギー性喘息患者の末梢血単核球におけるAiolosの発現と重症度との相関を解析。該当なし | KAKENHI-PROJECT-24790989 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24790989 |
滑膜樹状細胞の分化および抗原提示能に及ぼすサブスタンスPの影響 | 樹上細胞が強力なTリンパ球活性化作用を有することは以前から知られていた。しかしながら、抗原提示細胞としての機能は軽視され、マクロファージやBリンパ球を中心として現在まで研究がなされてきた。今回我々は、慢性関節リウマチ滑膜細胞より樹状細胞の採取および培養・調製後、以下の実験を行った。1、滑膜細胞より低密度培養破砕収集法により樹状細胞を収集し、樹状細胞膜上のHLA-DR抗原の発現を確認したところ、約95%に発現が確認された。2、この細胞にM-CSFを添加するとマクロファージ様細胞に分化し、GM-CSFおよびTNF-αを投与すると樹状細胞へ分化した。この細胞を1nMのGM-CSFと共に3週間培養すると樹状細胞クローンが得られた。3、この細胞をサブスタンスP(1nM)にて前処置した群と前処置しない群に分け、両群間における貧食能(^3Hラベルparticle)を比較したところ、サブスタンスP前処置群は有意に貧食能が亢進していた。4、樹状細胞クローンの培養上清中のインターロイキン(IL-1)産生量をサブスタンスP処置群と未処置群で比較したところ、処置群での産生量は有意に亢進していた。以上の結果より、慢性関節リウマチの病態生理において重要な役割を果たしている樹状細胞の貧食能、抗原提示能およびサイトカイン産生能のいずれにおいてもサブスタンスPは有意に亢進させる可能性が示唆された。樹上細胞が強力なTリンパ球活性化作用を有することは以前から知られていた。しかしながら、抗原提示細胞としての機能は軽視され、マクロファージやBリンパ球を中心として現在まで研究がなされてきた。今回我々は、慢性関節リウマチ滑膜細胞より樹状細胞の採取および培養・調製後、以下の実験を行った。1、滑膜細胞より低密度培養破砕収集法により樹状細胞を収集し、樹状細胞膜上のHLA-DR抗原の発現を確認したところ、約95%に発現が確認された。2、この細胞にM-CSFを添加するとマクロファージ様細胞に分化し、GM-CSFおよびTNF-αを投与すると樹状細胞へ分化した。この細胞を1nMのGM-CSFと共に3週間培養すると樹状細胞クローンが得られた。3、この細胞をサブスタンスP(1nM)にて前処置した群と前処置しない群に分け、両群間における貧食能(^3Hラベルparticle)を比較したところ、サブスタンスP前処置群は有意に貧食能が亢進していた。4、樹状細胞クローンの培養上清中のインターロイキン(IL-1)産生量をサブスタンスP処置群と未処置群で比較したところ、処置群での産生量は有意に亢進していた。以上の結果より、慢性関節リウマチの病態生理において重要な役割を果たしている樹状細胞の貧食能、抗原提示能およびサイトカイン産生能のいずれにおいてもサブスタンスPは有意に亢進させる可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-09771122 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09771122 |
alpha2-マクログロブリンによるプロテアーゼ捕獲機構の解明 | alpha2-マクログロブリン(alpha2-M)によるプロテアーゼトラップの速度論的研究は、ヒトのalpha2-Mと同様の機構を持ちながら、より単純な分子ではないかと思われるカブトガニのマクログロブリン(LAM)やニワトリのオボマクログロブリン(OMG)についても研究を行って、その機構に迫った。その結果、蛍光ストップトフロー法のデータからこれらのマクログロブリンはヒトのalpha2-Mの反応の部分反応を示すことがわかってきた。2量体で1分子のプロテアーゼをトラップするLAMは、4量体で2分子のプロテアーゼをトラップするalpha2-Mの1分子目のプロテアーゼとの反応に対応しており、OMGの場合は2分子目のプロテアーゼとの反応はあるものの1分子のプロテアーゼは取り逃がしてしまうようだ。OMGがプロテアーゼを取り逃がすことと、OMGの構造変化の速度がalpha2-MやLAMに比べて著しく遅いことは対応していると思われる。これらのことと、alpha2-MとLAMには分子内チオールエステルが存在しOMGには存在しないこととの対応については今後の研究課題となる。この間題の解決には、チオールエステルの開裂の速度論的研究が必要となるが、このための測定法については現在検討中である。これらの反応の温度依存性の実験は、現在予備実験の段階ではあるが、非常に活性化エネルギーが低いことを示している。このことは、構造変化前後のalpha2-Mの熱力学的関係について興味深い事実を示唆しているものと思われるので、今後詳細について検討して行きたい。なお、この研究の過程で、従来2量体と言じられてきたLAMには4量体のものもあることを示すデータが得られた。この4量体はプロテアーゼをトラップすると2量体になる。この様なマクログロブリンは他に例がなく。蛋白質の進化の面からも興味深い。alpha2-マクログロブリン(alpha2-M)によるプロテアーゼトラップの速度論的研究は、ヒトのalpha2-Mと同様の機構を持ちながら、より単純な分子ではないかと思われるカブトガニのマクログロブリン(LAM)やニワトリのオボマクログロブリン(OMG)についても研究を行って、その機構に迫った。その結果、蛍光ストップトフロー法のデータからこれらのマクログロブリンはヒトのalpha2-Mの反応の部分反応を示すことがわかってきた。2量体で1分子のプロテアーゼをトラップするLAMは、4量体で2分子のプロテアーゼをトラップするalpha2-Mの1分子目のプロテアーゼとの反応に対応しており、OMGの場合は2分子目のプロテアーゼとの反応はあるものの1分子のプロテアーゼは取り逃がしてしまうようだ。OMGがプロテアーゼを取り逃がすことと、OMGの構造変化の速度がalpha2-MやLAMに比べて著しく遅いことは対応していると思われる。これらのことと、alpha2-MとLAMには分子内チオールエステルが存在しOMGには存在しないこととの対応については今後の研究課題となる。この間題の解決には、チオールエステルの開裂の速度論的研究が必要となるが、このための測定法については現在検討中である。これらの反応の温度依存性の実験は、現在予備実験の段階ではあるが、非常に活性化エネルギーが低いことを示している。このことは、構造変化前後のalpha2-Mの熱力学的関係について興味深い事実を示唆しているものと思われるので、今後詳細について検討して行きたい。なお、この研究の過程で、従来2量体と言じられてきたLAMには4量体のものもあることを示すデータが得られた。この4量体はプロテアーゼをトラップすると2量体になる。この様なマクログロブリンは他に例がなく。蛋白質の進化の面からも興味深い。 | KAKENHI-PROJECT-05780433 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05780433 |
肝癌・胃癌における発癌、転移機構のトランスジェニックマウスによる分子生物学的解明 | アデノウイルスE1A+E1B遺伝子、E1A遺伝子、E1B遺伝子をそれぞれマウス乳癌ウイルス(MMTV)-LTRのもとに導入しトランスジェニックマウスを作製した。E1A+B遺伝子をもつマウスでは、高率に胃癌を発生した。この胃癌組織中にはE1A,E1B両遺伝子の高度な発現が認められた。E1A,E1B遺伝子をそれぞれ単独で持つマウスでは、副腎皮質ホルモン投与によって導入遺伝子の発現が維持されたが、胃癌の発生は認められなかった。in vitroでは、発癌のためには経路の異なる2種類以上の癌遺伝子が必要であり、単独では発癌に至らないことが知られていたが、我々の毛かは生体内においても同様の事実があることを示している。アデノE1マウスと組織適合性遺伝子クラス1トランスジェニックマウスの掛け合わせでは、アデノE1マウスが子供を作らなかったため実現しなかった。infertileであった原因は、おそらく精巣中でE1遺伝子が高度に発現していたため、腫瘍こそ作らなかったものの精子の発達に以上をきたしたためと思われる。E1マウスの一系統でolfactory bulbにneuroblastomaを発生したマウスがあったが、この特徴ある腫瘍中にタイプCレトロウイルスが多数認められた。ウイルスの解析から、内在性のレトロウイルスが活性化されたものと考えられたが、病因と関連している可能性もある。肝癌については、B型肝炎ウイルスHBx遺伝子を導入したトランスジェニックマウスを作製した。このトランスジェニックマウスでは、肝癌が多発(オスマウスの80%以上)し、HBx遺伝子が慢性B型肝炎ウイルス感染症における肝発癌に大きな役割を果していることが明かとなった。アデノウイルスE1A+E1B遺伝子、E1A遺伝子、E1B遺伝子をそれぞれマウス乳癌ウイルス(MMTV)-LTRのもとに導入しトランスジェニックマウスを作製した。E1A+B遺伝子をもつマウスでは、高率に胃癌を発生した。この胃癌組織中にはE1A,E1B両遺伝子の高度な発現が認められた。E1A,E1B遺伝子をそれぞれ単独で持つマウスでは、副腎皮質ホルモン投与によって導入遺伝子の発現が維持されたが、胃癌の発生は認められなかった。in vitroでは、発癌のためには経路の異なる2種類以上の癌遺伝子が必要であり、単独では発癌に至らないことが知られていたが、我々の毛かは生体内においても同様の事実があることを示している。アデノE1マウスと組織適合性遺伝子クラス1トランスジェニックマウスの掛け合わせでは、アデノE1マウスが子供を作らなかったため実現しなかった。infertileであった原因は、おそらく精巣中でE1遺伝子が高度に発現していたため、腫瘍こそ作らなかったものの精子の発達に以上をきたしたためと思われる。E1マウスの一系統でolfactory bulbにneuroblastomaを発生したマウスがあったが、この特徴ある腫瘍中にタイプCレトロウイルスが多数認められた。ウイルスの解析から、内在性のレトロウイルスが活性化されたものと考えられたが、病因と関連している可能性もある。肝癌については、B型肝炎ウイルスHBx遺伝子を導入したトランスジェニックマウスを作製した。このトランスジェニックマウスでは、肝癌が多発(オスマウスの80%以上)し、HBx遺伝子が慢性B型肝炎ウイルス感染症における肝発癌に大きな役割を果していることが明かとなった。AdE1遺伝子、E1A遺伝子、E1B遺伝子をそれぞれ保持するトランスジェニックマウスが作製された。E1遺伝子をマウス乳癌ウイルス(MMTV)の制御領域の下に持つトランスジェニックマウスでは、高頻度に胃癌が発生した。その胃病変は、偏平上皮の過形成、腺癌、腺偏平上皮癌と、良性過形成から転移を示す悪性の癌までの広いスペクトラムを持っていた。これらの組織からRNAを抽出しノ-ザンブロットを行ったところ、腫瘍においてE1A、E1B両遺伝子の高レベルの発現が認められ、これらの腫瘍がAdE1遺伝子により引き起こされたことが明らかになった。AdE1遺伝子の発現された正常細胞が生体内において癌化することを示す初めてのデ-タである。EIA,E1B遺伝子をMMTV制御領域の下にそれぞれ単独で持つマウスは2系統と3系統が得られた。低いレベルの各遺伝子の発現が見られたが、デキサメサゾンの腹腔内投与により発現は大幅に上昇した。これらの遺伝子の持続的発現の結果如何なる病理学的所見が生じるかを知るため、デキサメサゾンを週に3回継続投与している。現在までのところ、過形成や癌などの病変は発生していない。MHCクラスI遺伝子はその固有の制御領域の下にトランスジェニックマウスに導入された。肺、肝、腎などの組織で高い発現が認められた。p53マウスは数回の試みにもかかわらず、まだトランスジェニックマウスは得ていない。昨年度はアデノウイルス12型E1遺伝子をもつマウスでは胃癌が発生することを示した。E1A、E1B遺伝子をそれぞれ単独でMMTVの制御領域の下にもつトランスジェニックマウスは、デキサメサゾン週三回腹腔内投与で持続的に刺激され、E1A、E1B遺伝子の発現を継続させた。50匹以上のマウスを平均20カ月にわたって観察を続けたが、胃癌、その他の臓器の癌は発生しなかった。このことは発がんが起こるためにはE1AとE1Bの両癌遺伝子が必要であることを示している。 | KAKENHI-PROJECT-02454228 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02454228 |
肝癌・胃癌における発癌、転移機構のトランスジェニックマウスによる分子生物学的解明 | 組織学的観察によと、E1A単独マウスの胃に過形成と思われる病変が存在していた。現在、この過形成組織中のE1A遺伝子の発現を検索中である。さらに、これらの単独マウスどうしを掛け合わせてE1AとE1Bの両方を保持するマウス(ダブルトランスジェニックマウス)を作製した。同様にデキサメサゾンで刺激しているが、6カ月の観察期間中に癌は発生していない。このダブルトランスジェニックマウスに発がんが起これば、より完全な形で生体内での多段階発がん(発がんのためには経路の異なる二つ以上の癌遺伝子が必要である)が証明できると思われる。アデノE1マウスと組織適合性遺伝子クラスIトランスジェニックマウスの掛け合わせは、アデノE1マウスが子供を作らなかったため実現しなかった。infertileであった原因は、おそらく精巣中でE1遺伝子が高度に発現していたため、腫瘍こそ作らなかったものの精子の発達に異常をきたしたためと思われる。E1マウスの一系統で、olfactory bulbにneuroblastomaを作ったマウスがあったが、この特徴ある腫瘍中にタイプCのレトロウイルスが多数認められた。ウイルスの解析から、内在性のレトロウイルスが活性化されたものと考えられたが、病因と関連している可能性もある。 | KAKENHI-PROJECT-02454228 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02454228 |
がんサバイバーが治療と社会的役割を調和する多職種支援統合モデルの開発 | 外来化学療法に携わる看護師には,症状マネジメントや地域社会に生きるサバイバーの社会生活の調和を支援するという重要な役割がある.外来看護師が日常的にがんサバイバーの社会生活役割を遂行できるように多職種と協働し,調整するためのモデルとしては,アルゴリズム支援が適切と判断し, 4種類のアルゴリズムを開発した.これを使用し3施設の倫理委員会の承認後,外来化学療法室および放射線外来において介入を実施した.方法は外来でがん治療を受けているがんサバイバーの状況に応じて, 4種類の看護アルゴリズム(初回治療当日,診察日(3週間1ヵ月毎),治療変更時,症状悪化時)から1種類を選択し,看護支援として実施していく.今年度の目的は研究者らが開発した「がんサバイバーの社会役割と治療の調和を促進する看護アルゴリズム」使用による外来看護への効果を明らかにすることであった.方法は県内のがん診療に携わる外来看護師に,アルゴリズムを使用した看護支援を実施してもらった.その後,所属毎にグループインタビューを実施し,質的帰納的に分析した.その結果,対象者は28名で看護師経験が10年以上ある者が7割を占めた.外来看護への効果は49コードから10サブカテゴリーに集約され,「社会で生活するサバイバーを統合的にみることが可能になる」,「多職種をつなぎ支援の方向性を共有化できる」「外来看護師としての自己効力感が高まる」のカテゴリーが形成された.アルゴリズム使用によりサバイバーの社会的背景が明確化され,個別的な支援を可能にした.それによりサバイバーとの信頼関係強化の一助となり,看護師の自己効力感を高めることにもつながることが示唆された.本研究の目的は,社会的役割の調和を図る多職種支援モデルを質評価指標である「構造」「過程」「結果」から提案し,その有効性を検証することである.平成27年度は1)文献より介入要素・評価項目を抽出する.2)看護管理者,外来化学療法に携わる責任者と会議を開き質評価の構造・過程・結果項目の明確化と要素を抽出する.3)外来および外来化学療法に関連する部門の看護実践家・認定看護師等に社会的役割調整に関するグループインタビューを行い,分析を加え,要素・項目検討を施行することである.調査に先立ち,看護師が行う「調整」の定義を明確にした.本研究では「がんサバイバーが,治療を受けながら社会生活における役割を果たすことができるよう,看護師が環境を整えること.なお,環境には内的環境(症状マネジメント,治療継続の動機付け,気持ちをコントロールすること),外的環境(人間関係,役割,経済など生活に影響を与えること)を含むとした.その後2)3)の対象者のフォーカスグループを数回施行し,内容分析の手法に基づき分析を加えている.またそれらの結果と文献を照らし合わせ「構造」「過程」「結果」の要素を明確化している.しかし, 2)の対象者が10名以上になっておらず,もう1回フォーカスグループインタビューを行う段階である.外来化学療法に携わる常勤看護師が少なく対象者を得にくい外来化学療法に携わる看護師には,症状マネジメントや地域社会に生きるサバイバーの社会生活の調和を支援するという重要な役割がある。本研究の目的は,社会的役割の調和を図る多職種支援モデルを質評価指標である「構造」「過程」「結果」から提案し,その有効性を検証することである.役割と課題を明確にするため, A県内のがん拠点病院に勤務する看護管理者10名およびエキスパート看護師13名にフォーカス・グループ・インタューを行い,内容分析の手法を用い質的記述的に分析した。結果,看護管理者は<生活を維持するための支援><外来看護師の教育と効率的な活用><看護師以外の資源の活用><外来看護師の教育と効率的な活用><化学療法センターの看護手順の見直し>の5カテゴリーが抽出された。看護師はサバイバーの<生活者としての社会生活の意味づけ><把握した生活関連情報を多職種に提供><多職種協働での副作用症状マネジメント><サバイバーの特性を見極めた生活支援><他部門と調整し多職種で経済や困難な状況に対応><仕事・生活を重視し治療継続できるシステムの整備>の6カテゴリーが抽出された。これらの結果から外来看護師がサバイバーの社会的問題のアセスメント・判断ができ,多職種と協働しながら支援するためのアルゴリズムを4つの時期(初回治療時・継続治療診察時・治療変更時・症状悪化時)に分け開発した。多職種支援モデルを質評価指標である「構造」「過程」「結果」から提案する予定であったが,質的記述的分析結果から,外来看護師が日常的にがんサバイバーの社会生活役割を遂行できるように多職種と協働し,調整するためのモデルに変更した方がよいと考えた。介入のためのアルゴリズムを開発し,介入の段階にはいっているため順調とする。外来化学療法に携わる看護師には,症状マネジメントや地域社会に生きるサバイバーの社会生活の調和を支援するという重要な役割がある。本研究の目的は,社会的役割の調和を図る多職種支援モデルを質評価指標である「構造」「過程」「結果」から提案し,その有効性を検証することである.看護管理者とエキスパートナースへの質的記述的研究2件から「構造」「過程」「結果」からモデルを提案するよりも外来看護師が日常的にがんサバイバーの社会生活役割を遂行できるように多職種と協働し,調整するためのモデルとしては,アルゴリズム支援が適切と判断し、4種類のアルゴリズムを開発した. | KAKENHI-PROJECT-15K15826 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K15826 |
がんサバイバーが治療と社会的役割を調和する多職種支援統合モデルの開発 | これを使用し3施設の倫理委員会の承認後,外来化学療法室および放射線外来において介入を実施した.方法は外来でがん治療を受けているがんサバイバーの状況に応じて, 4種類の看護アルゴリズム(初回治療当日、診察日(3週間1ヵ月毎),治療変更時,症状悪化時)から1種類を選択し,看護支援として実施していく.実施期間は1名の治療対象者について2ー3か月継続する.評価としては質問票調査とフォーカスグループインタビューによる看護師の認識とサバイバーの就労状況、専門家への相談回数を設定した.開発したアルゴリズム支援の介入を計画したが,倫理審査段階で時間を費やし実際に開始できたのが11月になってしまい対象者が十分に確保できなくなった.そのため当初計画した評価に至らないためやや遅れているとした.外来化学療法に携わる看護師には,症状マネジメントや地域社会に生きるサバイバーの社会生活の調和を支援するという重要な役割がある.外来看護師が日常的にがんサバイバーの社会生活役割を遂行できるように多職種と協働し,調整するためのモデルとしては,アルゴリズム支援が適切と判断し, 4種類のアルゴリズムを開発した.これを使用し3施設の倫理委員会の承認後,外来化学療法室および放射線外来において介入を実施した.方法は外来でがん治療を受けているがんサバイバーの状況に応じて, 4種類の看護アルゴリズム(初回治療当日,診察日(3週間1ヵ月毎),治療変更時,症状悪化時)から1種類を選択し,看護支援として実施していく.今年度の目的は研究者らが開発した「がんサバイバーの社会役割と治療の調和を促進する看護アルゴリズム」使用による外来看護への効果を明らかにすることであった.方法は県内のがん診療に携わる外来看護師に,アルゴリズムを使用した看護支援を実施してもらった.その後,所属毎にグループインタビューを実施し,質的帰納的に分析した.その結果,対象者は28名で看護師経験が10年以上ある者が7割を占めた.外来看護への効果は49コードから10サブカテゴリーに集約され,「社会で生活するサバイバーを統合的にみることが可能になる」,「多職種をつなぎ支援の方向性を共有化できる」「外来看護師としての自己効力感が高まる」のカテゴリーが形成された.アルゴリズム使用によりサバイバーの社会的背景が明確化され,個別的な支援を可能にした.それによりサバイバーとの信頼関係強化の一助となり,看護師の自己効力感を高めることにもつながることが示唆された.対象者を常勤にかかわらずある一定期間勤務している人まで拡大するなど条件を緩やかに設定し、対象者を増加させる1.アルゴリズムによる支援を実施し,データを蓄積する:1)3施設の倫理書類の作成,委員会の承認後開始する2)介入内容:看護師が中心となる多職種による支援モデル(4場面)1看護師の社会的問題のアセスメント・判断基準・アルゴリズムにより調整,多職種による相談件数,離職率など質・量的の両面から指標を設定する。3)対象人数30名4)実施場所:外来化学療法室および放射線外来2.収集したデータを分析し,看護師を中心としたアルゴリズムを用いた多職種支援モデルの効果を判定する1.アルゴリズムによる介入支援を継続的に実施する.3施設5外来での実施看護師数が20名以上になるまで実施 | KAKENHI-PROJECT-15K15826 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K15826 |
超音波誘起電磁応答を利用した新規骨粗鬆症診断装置の開発 | 正常ラット大腿骨を採取し、周波数及びアンテナの調整を行い超音波誘起電磁波(ASEM波)の最適な検出の設定を行った。ラット大腿骨顆上部で最も強いASEM信号が得られ、測定部位とした。骨粗鬆症モデル(卵巣摘出ラット、膝不動化ラット)を使用し、ASEM波の計測、マイクロCTによる皮質骨密度、海綿骨密度、皮質骨の厚さの測定、コラーゲンの架橋異常とされる終末糖化産物(AGEs)としてペントシジンの定量(卵巣摘出ラット)を行った。コントロールとしては卵巣摘出モデルではシャム手術を行ったラット、膝不動化モデルでは健側の大腿骨を使用した。骨粗鬆症モデルでは皮質骨密度、海綿骨密度、皮質骨の厚さはいずれも低下し骨粗鬆症モデルとして適切であることが確認された。また卵巣摘出ラットではコントロールと比較しペントシジンが増加していた。ASEM信号はコントロールと比較しいずれの骨粗鬆症モデルでも低下しており、骨粗鬆症を反映している可能性が示された。ASEM信号のパルス遅延時間の解析からASEM信号は皮質骨で生じており、特にASEM信号の強い大腿骨顆上部ではミネラル成分の濃度が低く、コラーゲンの濃度が高い。このためASEM信号はコラーゲン由来の情報をとらえ、コラーゲンの圧電効果で生じていることが示唆された。また骨粗鬆症モデルではペントシジンが増加し、コラーゲンの物性変化が生じていると考えられることから、ASEM波はコラーゲンの量や物性情報を可視化している可能性が示された。ASEM波の適切な設定を行い、ラット正常大腿骨及び骨粗鬆症モデル大腿骨での計測が可能であった。ASEM法を使用した骨の計測は初めての試みであり、検出される信号強度を解釈する基準がない。また観察される信号が何に由来するものかの判断が難しい。これまでの研究で骨粗鬆症に伴う骨の変化がASEM信号に影響を与えることが明らかとなった。ASEM法により検出される信号強度や観察される信号が何に由来するものかの判断が難しい。今後計測数を増やしASEM信号の標準を設定していく。また皮質骨組織切片を作成し、ASEM信号に関わる構造的・質的変化を評価する。さらに遺伝子・タンパク解析を行い、ASEM波に影響を与える因子を検討する。正常ラット大腿骨を採取し、周波数及びアンテナの調整を行い超音波誘起電磁波(ASEM波)の最適な検出の設定を行った。ラット大腿骨顆上部で最も強いASEM信号が得られ、測定部位とした。骨粗鬆症モデル(卵巣摘出ラット、膝不動化ラット)を使用し、ASEM波の計測、マイクロCTによる皮質骨密度、海綿骨密度、皮質骨の厚さの測定、コラーゲンの架橋異常とされる終末糖化産物(AGEs)としてペントシジンの定量(卵巣摘出ラット)を行った。コントロールとしては卵巣摘出モデルではシャム手術を行ったラット、膝不動化モデルでは健側の大腿骨を使用した。骨粗鬆症モデルでは皮質骨密度、海綿骨密度、皮質骨の厚さはいずれも低下し骨粗鬆症モデルとして適切であることが確認された。また卵巣摘出ラットではコントロールと比較しペントシジンが増加していた。ASEM信号はコントロールと比較しいずれの骨粗鬆症モデルでも低下しており、骨粗鬆症を反映している可能性が示された。ASEM信号のパルス遅延時間の解析からASEM信号は皮質骨で生じており、特にASEM信号の強い大腿骨顆上部ではミネラル成分の濃度が低く、コラーゲンの濃度が高い。このためASEM信号はコラーゲン由来の情報をとらえ、コラーゲンの圧電効果で生じていることが示唆された。また骨粗鬆症モデルではペントシジンが増加し、コラーゲンの物性変化が生じていると考えられることから、ASEM波はコラーゲンの量や物性情報を可視化している可能性が示された。ASEM波の適切な設定を行い、ラット正常大腿骨及び骨粗鬆症モデル大腿骨での計測が可能であった。ASEM法を使用した骨の計測は初めての試みであり、検出される信号強度を解釈する基準がない。また観察される信号が何に由来するものかの判断が難しい。これまでの研究で骨粗鬆症に伴う骨の変化がASEM信号に影響を与えることが明らかとなった。ASEM法により検出される信号強度や観察される信号が何に由来するものかの判断が難しい。今後計測数を増やしASEM信号の標準を設定していく。また皮質骨組織切片を作成し、ASEM信号に関わる構造的・質的変化を評価する。さらに遺伝子・タンパク解析を行い、ASEM波に影響を与える因子を検討する。先行研究がなく骨より得られるASEM信号の評価・設定を優先して行った。そのため組織・遺伝子・タンパク解析等を次年度に行う事とした。次年度は光学薬品、試薬、標本作成に経費を要する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18K09092 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K09092 |
下腿三頭筋における筋シナジーの筋内支配領域の解明 | 研究は、(1) MRIを用いてT2強調法により下腿三頭筋内で同時に活動した部位を筋シナジーとして特定し、その時の表面筋電図法の結果と比較する研究と、(2)MRIを用いて位相コントラスト法により下腿三頭筋内で同時に動く部位を筋シナジーとして特定し、運動強度の増大による活動部位の増加様態を明らかにする研究と、(3)それらの研究により特定した筋シナジーの機能的意義を有限要素法による下腿三頭筋のシミュレーションを用いて明らかにする研究の三つに分けて行われる。研究は、(1) MRIを用いてT2強調法により下腿三頭筋内で同時に活動した部位を筋シナジーとして特定し、その時の表面筋電図法の結果と比較する研究と、(2)MRIを用いて位相コントラスト法により下腿三頭筋内で同時に動く部位を筋シナジーとして特定し、運動強度の増大による活動部位の増加様態を明らかにする研究と、(3)それらの研究により特定した筋シナジーの機能的意義を有限要素法による下腿三頭筋のシミュレーションを用いて明らかにする研究の三つに分けて行われる。 | KAKENHI-PROJECT-19J01479 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19J01479 |
凝縮相における熱化電子の大きさの研究 | 高分子フィルム中における熱化電子の拡がりを明らかにするとともに、電離放射線入射直後の熱化電子と電子捕捉剤の反応の定式化を行い、イオン化による二次電子放出から熱化過程および熱化から電子が局在化するまでの間の電子の反応のシミュレーションを可能とした。高分子フィルム中における熱化電子の拡がりを明らかにするとともに、電離放射線入射直後の熱化電子と電子捕捉剤の反応の定式化を行い、イオン化による二次電子放出から熱化過程および熱化から電子が局在化するまでの間の電子の反応のシミュレーションを可能とした。本研究では、電離放射線によるイオン化によって凝縮相中に生成される電子が局在化する前の大きさ(準自由電子の波動関数の空間的広がりの程度)を明らかにすることを目的とする。特に、熱化電子の凝縮相における波動関数の空間的広がりの程度を知ることは、その後に続く放射線誘起反応を解明する上で非常に重要な問題であるが、凝縮相においてはイオン化で生成した電子は多くの場合数100fs以内に熱化し、1ps以内に何らかの形で局在化するため、局在化する前の電子の大きさを知ることは非常に困難である。本研究では実験により熱化電子の大きさを推定し、電離放射線が凝縮相に入射した直後(1ps以内)の準自由電子が関与した化学反応の記述を可能にする。平成21年度は申請者が開発したフェムト秒パルスラジオリシス装置を用い、凝縮相の液体マトリクスとしてテトラヒドロフラン溶媒を用いることによりC37の分子構造依存性を測定した。テトラヒドロフラン中では水やアルコールと異なり、溶媒和前電子が測定されておらず、熱化した電子は直接テトラヒドロフランの溶媒シェルにトラップされ局在化し、溶媒和電子を形成すると考えられている。従って、この溶媒中で測定されるC37は熱化電子と電子捕捉剤の反応性を示すと考えられる。[2-(Propylsulfonyloxyimino)-2,3-dihydrothiophene-3-ylidene](o-tollyl)acetonile, Di-1,3-(1-nonafulorobutylsulofonyliminyl)nonafulorobutyl]phennoxybutane, 2-[2-(Octylsulfonyloxyimino)-thiophene-3(2H)-ylidene]-2-methylphenyl)acetonile等14種類の電子捕捉剤のC37を明らかにした。シミュレーションでは、光学近似モデルからサムルールを適用して求められた20eVの低エネルギーまで適用可能な修正型ベーテ式、電子エネルギーロススペクトラ、光電子スペクトルを用いたモンテカルロシミュレーションコードを作製し、熱化電子と電子捕捉剤との反応半径を見積もることを可能とした。平成22年度は、高分子薄膜に前年度実験で使用した電子捕捉剤を高濃度(1050wt%)添加した状態での電子捕捉剤の反応量を、開発したシミュレーションコードにより解析した。これまでの研究から、電離放射線により生成した熱化電子と電子捕捉剤の反応はこの濃度範囲で1PS以内に完了することを見積もっている。本研究を成功させるためには、熱化電子と電子捕捉剤との反応量の正確な評価が重要あるが、そのためにポリヒドロキシスチレンをマトリクス高分子として選択した。ポリヒドロキシスチレンは固体薄膜状態で水酸基が水素結合ネットワークを組んでおり、イオン化されると水酸基の酸素と水素間の電子密度が減少し、水素が水素結合により隣接する酸素から引っ張られているため速やかに脱プロトン反応を起こす。さらに、高分子中に水素結合ネットワークが形成されているため、高分子マトリクス中をプロトンが容易に移動可能であり、高分子中に酸感応色素を分散させておくことにより、発生したプロトン量を正確に測定することが可能である。ここで、電子捕捉剤が存在しない系では電子はプロトンもしくはその前駆体であるラジカルカチオンと再結合し、プロトンを失活させるため、プロトンの生成量が電子捕捉剤の反応量と1対1対応となる。以上の原理を利用し、電子捕捉剤の反応量を見積もり、電子捕捉剤の反応量から熱化電子の固体マトリクス中での反応半径を見積もった。典型的な電子補足剤であるtriphenylsulfonium triflateで反応半径は0.7nmであった。本研究では、電離放射線によるイオン化によって凝縮相中に生成される電子が局在化する前の大きさ(準自由電子の波動関数の空間的広がりの程度)を明らかにすることを目的とする。特に、熱化電子の凝縮相における波動関数の空間的広がりの程度を知ることは、その後に続く放射線誘起反応を解明する上で非常に重要な問題であるが、凝縮相においてはイオン化で生成した電子は多くの場合数100fs以内に熱化し、1ps以内に何らかの形で局在化するため、局在化する前の電子の大きさを知ることは非常に困難である。本研究では実験により熱化電子の大きさを推定し、電離放射線が凝縮相に入射した直後(1ps以内)の準自由電子が関与した化学反応の記述を可能にする。平成23年度(最終年度)は、初年度および2年度で行った実験の捕捉実験を行うとともに、これまでの2年間で得られた知見をまとめ、電離放射線入射直後の熱化電子と電子捕捉剤の反応の定式化を行い、イオン化による二次電子放出から熱化過程および熱化から電子が局在化するまでの間の電子の反応のシミュレーションを可能とした。エネルギー付与直後の反応中間体の空間分布、及び、その反応性は、電離放射線によって生成される最終生成物の量を大きく左右するため、その過程をシミュレーションにより定量的に議論・予測可能とした意義は大きい。 | KAKENHI-PROJECT-21656238 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21656238 |
子宮筋腫におけるミトコンドリアの形態観察と機能解析 | 子宮筋腫は低酸素に長期間暴露されているためにミトコンドリアの機能に異常が起こるとの仮説を立て、子宮筋腫における低酸素反応を検討した。筋腫組織では、子宮筋よりも低酸素誘導因子Hypoxia inducible factor-1α(HIF-1α)の発現が有意に高く、培養筋腫細胞では、低酸素によるHIF-1α発現量の増加、核内HIF-1α発現の誘導、HIF標的遺伝子のプロモーター領域への結合増加が確認された。さらにHIF標的遺伝子のmRNA発現が増加し、アポトーシスが誘導された。以上より子宮筋腫ではHIFを介した低酸素反応が起こっていることが示された。子宮筋腫細胞と正常子宮筋細胞を低酸素(1%酸素)と通常酸素(20%酸素)条件下に培養し、子宮筋腫における低酸素誘導因子Hypoxia induciblefactor-1 alpha(HIF-1α)を介した低酸素反応を検討した。HIF-1αは低酸素下でタンパク分解が阻害されることで、標的遺伝子の転写調節を行うことが知られている。そこでまず、低酸素と通常酸素下に培養した子宮筋腫、子宮筋細胞からタンパクを抽出し、HIF-1αのタンパク発現を比較検討した。HIF-1αの低酸素刺激により子宮筋腫、正常子宮筋ではHIF1αのタンパク発現量がともに増加したが、筋腫では子宮筋よりも上昇の割合が緩慢であった。一方、HIF-1αmRNA発現量は子宮筋腫、正常筋ともに低下しており、mRNA発現の低下割合は筋腫で子宮筋よりも緩慢であった。次に子宮筋腫と正常筋における低酸素と通常酸素培養下のHIF標的遺伝子のmRNA発現変化を、比較検討した。KEGGデータベースからHIF signaling pathwayに存在する10種類の遺伝子を抽出し、定量的RT-リアルタイムPCR法にて筋腫細胞および正常筋細胞におけるHIF標的遺伝子のmRNA発現を比較検討した。その結果、抽出した10遺伝子すべてでHIF-1αタンパクの発現と同様、低酸素培養下で増加した。さらにその増加割合は9遺伝子(ALDOA, ENO1, GAPDH, HK1, PFKL, PFKFB3, LDHA, SLC2A1, VEGFA)において、筋腫で正常子宮筋よりも緩慢だった。以上より、子宮筋腫では正常子宮筋と同様、低酸素刺激によりHIF-1αのタンパク分解が阻害され、HIF-1αのタンパク発現量が増加し、HIF-1標的遺伝子の転写活性が亢進する可能性が示唆された。また、筋腫では子宮筋に比べHIF-1αを介した低酸素応答が減弱していて、この低酸素応答の減弱が筋腫の特性を示していると考えられた。子宮筋腫における低酸素誘導因子Hypoxia inducible factor-1 alpha(HIF-1α)を介した低酸素反応を検討した。低酸素培養により子宮筋腫細胞でHIF1αのタンパク発現量が増加し、HIF標的遺伝子のmRNA発現も増加することが明らかになり、筋腫ではHIF-1αを介した低酸素反応があることが示唆された。そこで、低酸素培養下でのHIF-1αタンパクのHIF標的遺伝子のHIF反応配列への結合をクロマチン免疫沈降法を用いて検討した。その結果、低酸素培養下でmRNAの発現が増加した3遺伝子(ENO1, LDHA, VEGFA)において、筋腫でHIF反応配列へのHIF-1αタンパクの結合量が増加した。次に、子宮筋腫組織におけるin vivoでのHIF-1αタンパクの発現を検討した。過去の報告では子宮筋腫組織では、正常子宮筋と同様にHIF-1αの発現はみられない、とされていた。しかし、今回の検討で培養子宮筋腫細胞では低酸素刺激でHIF-1αの発現が誘導されることが確認できた。そこで子宮筋腫組織でもHIF-1αは発現しているが筋腫組織からのタンパク抽出方法に問題があるために検出できていないとの仮説を立てた。子宮筋腫は大量の細胞外マトリックスに囲まれているため、核内タンパクを抽出してウエスタンブロット法で検討したところ、子宮筋腫では正常子宮筋と比較して有意にHIF-1αタンパクの発現量が高かった。以上より、子宮筋腫組織は生体内で著しい低酸素環境にさらされているため、正常子宮筋に比べHIF-1αタンパク発現量が高いと考えられた。筋腫では低酸素刺激により発現が誘導されたHIF-1αが核内に移行し、HIF転写複合体がHIF標的遺伝子のプロモーター領域に結合し、その転写活性が亢進する可能性が示唆された。子宮筋腫におけるミトコンドリア機能異常は、筋腫組織が著しい低酸素環境で発育するために引き起こされると考えられる。ミトコンドリア機能異常を検討する前に、子宮筋腫における低酸素反応を明らかにする必要が生じた。そのため、まず転写因子HIF-1に着目し、子宮筋腫におけるHIF-1を介した低酸素反応を検討する必要性が生じた。子宮筋腫におけるミトコンドリア機能異常は、筋腫組織が著しい低酸素環境で発育するために引き起こされると考えられる。低酸素誘導因子、Hypoxia inducible factor-1(HIF-1)は低酸素により多くの細胞で発現が誘導され、その標的遺伝子の発現を調節する。そこで子宮筋腫におけるHIF-1を介した低酸素反応と低酸素による細胞増殖、アポトーシスの変化を検討した。まず、低酸素培養によるHIF-1αタンパクの細胞内局在の変化を細胞蛍光免疫染色にて検討した。 | KAKENHI-PROJECT-26462475 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26462475 |
子宮筋腫におけるミトコンドリアの形態観察と機能解析 | 低酸素培養により、筋腫細胞の核内でのHIF-1αタンパク発現が誘導された。塩化コバルトを添加して培養すると核内のHIF-1αタンパク発現はさらに上昇した。次に低酸素培養による子宮筋腫細胞の増殖能、アポトーシスの変化を検討した。低酸素培養により、細胞増殖能には変化がみられなかったが、子宮筋腫細胞のアポトーシスが亢進した。昨年度までに、子宮筋腫組織では子宮筋組織よりもHIF-1αの発現が高いこと、子宮筋細胞を低酸素で培養するとHIF-1αの発現が誘導され、HIF標的遺伝子のプロモーター領域にあるHIF反応配列へのHIF-1αの結合が増加すること、HIF標的遺伝子のmRNA発現が上昇することを明らかにした。以上より、子宮筋腫細胞では低酸素刺激によりプロテアソームでの分解を逃れたHIF-1αの発現が上昇し、HIF-1βとヘテロダイマーを形成し、核内に移行する。このヘテロダイマーを中心としたHIF転写複合体がHIF標的遺伝子のプロモーター領域に結合し、その転写を調節する。これらHIF標的遺伝子の発現により嫌気性解糖、グルコース輸送、血管新生などの低酸素反応が制御されていると考えられた。また、低酸素により子宮筋腫細胞でアポトーシスが誘導されることが示された。子宮筋腫は低酸素に長期間暴露されているためにミトコンドリアの機能に異常が起こるとの仮説を立て、子宮筋腫における低酸素反応を検討した。筋腫組織では、子宮筋よりも低酸素誘導因子Hypoxia inducible factor-1α(HIF-1α)の発現が有意に高く、培養筋腫細胞では、低酸素によるHIF-1α発現量の増加、核内HIF-1α発現の誘導、HIF標的遺伝子のプロモーター領域への結合増加が確認された。さらにHIF標的遺伝子のmRNA発現が増加し、アポトーシスが誘導された。以上より子宮筋腫ではHIFを介した低酸素反応が起こっていることが示された。子宮筋腫細胞、正常子宮筋細胞の低酸素培養下におけるHIF-1αmRNA発現とタンパク発現に乖離が見られたため、子宮筋腫におけるHIF-1の転写調節を明らかにする必要性が新たに生じた。また、子宮筋腫細胞におけるHIF-1標的遺伝子のmRNA発現を定量するのに時間を要した。子宮筋腫細胞のミトコンドリア機能解析を行う。低酸素で培養した子宮筋腫細胞、正常子宮筋細胞のミトコンドリア染色、酸素消費量、乳酸デヒドロゲナーゼ活性を測定し、比較検討する。また、子宮筋腫におけるHIF-1を介した低酸素反応は、低酸素刺激12時間後には減弱することが明らかになったため、代わりに別の転写因子を介した低酸素反応が存在する可能性が示唆された。乳癌細胞ではN-myc downstream regulated-1(NDRG1)を介した低酸素反応がHIF-1を介した低酸素反応と別に存在することが報告されている。予備実験で筋腫細胞では低酸素培養によりNDRG1のmRNA発現が誘導されることが明らかになったため、子宮筋腫におけるNDRG1を介した低酸素反応を検討する予定である。婦人科学子宮筋腫細胞と正常子宮筋細胞の低酸素培養下における遺伝子発現プロファイルを比較検討する。子宮筋腫細胞と正常子宮筋細胞を低酸素、通常酸素条件下で培養した後、RNAを回収し発現アレイを行う。次に子宮筋腫細胞のミトコンドリア機能解析を行う。 | KAKENHI-PROJECT-26462475 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26462475 |
拓本の時空間データベースの作成及び潜在的知識の発見 | 本研究では、漢字を中心とした日本と中国の重要な古資料文献である拓本の多書体文字を、深層学習を用いて認識し、さらに、時空間情報を含むデータベースを作成して、それらを地図上に可視化することで有用な情報を抽出し、歴史の整理、気候変動、自然災害の予測対応等の研究に貢献することを目的とする。現在、拓本内の多書体文字を認識するためのデータ増強、データセット作成手法、深層学習による認識と認識率の向上手法を提案し、実験を行ってきた。また、拓本の時空間情報をキーワード毎に整理して時空間データベースを作成し、それらを地図上に可視化して潜在知識を抽出する、拓本潜在知識発見システムを設計している。拓本内の多書体文字の認識では、集めてきた拓本内の文字に対して、ノイズの除去、切り取り、輝度値変更の処理を行い、訓練データを増強し、100文字種5267331枚の画像を生成した。また、AlexnetとGoogLenetを用いて学習、認識を行い、61文字種のときGoogLenetで認識率96%、100文字種のときAlexnetで認識率92%を達成することを示した。さらに、AlexnetのDropoutの値を変更することで、認識率を92%から93.5%まで向上することを示した。時空間データベースの作成と可視化では、拓本の時空間情報を整理して、時空間管理番号表を作成し、さらに、キーワード毎に拓本の情報を管理番号でまとめた、キーワード管理番号表を12文字分作成した。そして、それら2つのリストを用いて、時空間データベースを作成するプログラムと、時空間データベースから地図上に可視化するのに必要な情報を整理するシステムを実現した。新たに発見した問題点(1)拓本の欠損により、深層学習においても認識できない部分が存在している。(2)歴史の原因により、拓本の出土地域と出土時間を記載されていない拓本が存在していることが分かった。それにより、当該する拓本情報を時間空間データベースに記録できない問題が生じる。(3)研究推進することにより、拓本のみならず、本研究は、日本の古典籍の認識と整理にも使えると発見した。今年度の研究計画は、当初設定されたプロセスの進行と、新たに発見された問題点の解決の二つで構成されている。【設定されたプロセス】(1)深層学習と画像処理を用いて、拓本文字認識精度の向上を目指す。(2)時空間データベースを完成する。(3)画像処理を用いてキーワードの可視化を実現する。【新たに発見された問題点】(1)拓本欠損問題について:拓本の欠損による認識できない拓本文に対して、統計的な手法を用いて、認識できた部分を整理し、認識できない拓本文の推測を行う。(2)拓本情報の不足問題について:インタネットでの検索、海外の研究者を含めた専門に聞く、そして、認識できた拓本の文章から、必要な拓本に関する情報を分析し、取得する。(3)日本古典籍への応用について、本研究は日本古典籍への応用ができると判明し、今後本システムを用いて、日本古典籍のキーワードに関する時間空間データベースを作成し、日本古典籍から潜在的な知識の抽出に貢献したい。本研究では、漢字を中心とした日本と中国の重要な古資料文献である拓本の多書体文字を、深層学習を用いて認識し、さらに、時空間情報を含むデータベースを作成して、それらを地図上に可視化することで有用な情報を抽出し、歴史の整理、気候変動、自然災害の予測対応等の研究に貢献することを目的とする。現在、拓本内の多書体文字を認識するためのデータ増強、データセット作成手法、深層学習による認識と認識率の向上手法を提案し、実験を行ってきた。また、拓本の時空間情報をキーワード毎に整理して時空間データベースを作成し、それらを地図上に可視化して潜在知識を抽出する、拓本潜在知識発見システムを設計している。拓本内の多書体文字の認識では、集めてきた拓本内の文字に対して、ノイズの除去、切り取り、輝度値変更の処理を行い、訓練データを増強し、100文字種5267331枚の画像を生成した。また、AlexnetとGoogLenetを用いて学習、認識を行い、61文字種のときGoogLenetで認識率96%、100文字種のときAlexnetで認識率92%を達成することを示した。さらに、AlexnetのDropoutの値を変更することで、認識率を92%から93.5%まで向上することを示した。時空間データベースの作成と可視化では、拓本の時空間情報を整理して、時空間管理番号表を作成し、さらに、キーワード毎に拓本の情報を管理番号でまとめた、キーワード管理番号表を12文字分作成した。そして、それら2つのリストを用いて、時空間データベースを作成するプログラムと、時空間データベースから地図上に可視化するのに必要な情報を整理するシステムを実現した。新たに発見した問題点(1)拓本の欠損により、深層学習においても認識できない部分が存在している。(2)歴史の原因により、拓本の出土地域と出土時間を記載されていない拓本が存在していることが分かった。それにより、当該する拓本情報を時間空間データベースに記録できない問題が生じる。(3)研究推進することにより、拓本のみならず、本研究は、日本の古典籍の認識と整理にも使えると発見した。今年度の研究計画は、当初設定されたプロセスの進行と、新たに発見された問題点の解決の二つで構成されている。【設定されたプロセス】 | KAKENHI-PROJECT-18K18337 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K18337 |
拓本の時空間データベースの作成及び潜在的知識の発見 | (1)深層学習と画像処理を用いて、拓本文字認識精度の向上を目指す。(2)時空間データベースを完成する。(3)画像処理を用いてキーワードの可視化を実現する。【新たに発見された問題点】(1)拓本欠損問題について:拓本の欠損による認識できない拓本文に対して、統計的な手法を用いて、認識できた部分を整理し、認識できない拓本文の推測を行う。(2)拓本情報の不足問題について:インタネットでの検索、海外の研究者を含めた専門に聞く、そして、認識できた拓本の文章から、必要な拓本に関する情報を分析し、取得する。(3)日本古典籍への応用について、本研究は日本古典籍への応用ができると判明し、今後本システムを用いて、日本古典籍のキーワードに関する時間空間データベースを作成し、日本古典籍から潜在的な知識の抽出に貢献したい。 | KAKENHI-PROJECT-18K18337 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K18337 |
神経細胞死と樹状突起の形成維持に及ぼす入力の賦法効果ー新しい標識法による研究 | 脊髄運動ニュ-ロンの樹状突起形成に及ぼす入力の影響を検討する最初の試みとして、セロトニン(5HT)線維を除去する実験を行った。5HT線維はPクロ-ルフェニ-ルアラニン(PCPA)により薬理学的に除去し、PCPAを投与後一週目で鶏の下肢筋にコレラトキシンを注入し、運動ニュ-ロンの樹状突起を逆行性に標識した。樹状突起の形成状態を定量的に評価した結果、PCPA投与によっても樹状突起形成には変化のないことが明らかになった。次にPCPA投与によるシナップス形成への影響を検討した。まず孵化直後の雛にPCPAを投与し、一週目で脊髄各層でのシナップスの密度を調べた。その結果、対照群で5HT線維の分布が観察される部位(I,II,VII,IX層)ではPCPA投与群で20ー40%のシナップスが消失していた。PCPA投与によるシナップス密度の低下は成鶏でも観察された。PCPA投与後のシナップス密度の低下は5HT線維が消失したために生じた現象なのか、またあるいはPCPAの一般的な、いわば副作用によるものなのかを知るために、PCPAとは異なる薬理学的機構によるモノアミン除去薬、レセルピンを使用した。その結果、PCPAと同様にシナップス密度は低下した。しかし正常では5HT線維の分布しない鶏の小脳、ラットの海馬分子層ではシナップス密度は変化しなかった。本研究によって5HTはシナップスの形成維持に深く関わっていることが明らかになった。また成体でもシナップスのturn overが起こっていることが示唆された。5HT線維の除去により大量のシナップスが脱落する事により細胞死が惹起されることが予想されるが現在この点に付いて研究を進めている。脊髄運動ニュ-ロンの樹状突起形成に及ぼす入力の影響を検討する最初の試みとして、セロトニン(5HT)線維を除去する実験を行った。5HT線維はPクロ-ルフェニ-ルアラニン(PCPA)により薬理学的に除去し、PCPAを投与後一週目で鶏の下肢筋にコレラトキシンを注入し、運動ニュ-ロンの樹状突起を逆行性に標識した。樹状突起の形成状態を定量的に評価した結果、PCPA投与によっても樹状突起形成には変化のないことが明らかになった。次にPCPA投与によるシナップス形成への影響を検討した。まず孵化直後の雛にPCPAを投与し、一週目で脊髄各層でのシナップスの密度を調べた。その結果、対照群で5HT線維の分布が観察される部位(I,II,VII,IX層)ではPCPA投与群で20ー40%のシナップスが消失していた。PCPA投与によるシナップス密度の低下は成鶏でも観察された。PCPA投与後のシナップス密度の低下は5HT線維が消失したために生じた現象なのか、またあるいはPCPAの一般的な、いわば副作用によるものなのかを知るために、PCPAとは異なる薬理学的機構によるモノアミン除去薬、レセルピンを使用した。その結果、PCPAと同様にシナップス密度は低下した。しかし正常では5HT線維の分布しない鶏の小脳、ラットの海馬分子層ではシナップス密度は変化しなかった。本研究によって5HTはシナップスの形成維持に深く関わっていることが明らかになった。また成体でもシナップスのturn overが起こっていることが示唆された。5HT線維の除去により大量のシナップスが脱落する事により細胞死が惹起されることが予想されるが現在この点に付いて研究を進めている。 | KAKENHI-PROJECT-03263205 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03263205 |
本邦第三紀古脊椎動物相の起源と変遷 | 昭和62年度に引き続き、日本列島形成中の新生代第三紀における本邦の脊椎動物相がどこに由来し、どのような変遷を経てきたかを明らかにするべく研究を行った。その最も基礎的作業として、これまで欠如していた精密な比較骨学的資料の作成を行い、初年度に購入したSOFTEX CMB特型軟X線発生装置を用い、これまでほとんど不可能であった中型の板鰓類、硬骨魚類、両生類、鳥類等の骨格に関する諸データを非破壊的に得て蓄積する作業を行った結果約80科170種の資料を作成した。これらのデータを用いて北海道網走支庁の中新世中期常呂層の約1500万年前の地層から採集されたアカガレイ属の化石が新種であることが判明しトコロガレイと名付けて日本魚類学会において報告し、論文に記載を行ったまた埼玉県秩父近郊の川本町を流れる荒川の河床(中新世中期)より採集されたホホジロザメ属カルカロドン・メガロドンの同一個体に属する73個の歯を調査し、その歯列解析を行って古生物学会にて報告し、論文とした。この研究により、世界的にも初めてこの巨大化石鮫の歯の歯列解析が可能となり第三紀におけるネズミザメ科の起源と変遷、解明が容易になった。脊椎動物化石資料データベースの入力作業は完成し、印刷可能な段階に到達した。北海道における第三紀層化石の調査採集は特に三笠、北見地方において(白亜紀後期および漸新地)効果があり、新しい資料を入手することができた。北九州、鹿児島、種ケ島における調査ではかなり大量の魚類および植物化石が採集された。これらの標本により日本列島全体における脊椎動物相変遷の重要な断面を理解することができた。二年間にわたる集中的な調査結果は、本邦古脊椎動物の時空分布の表としてまとめ第三紀におる変遷のパターンのいくつかとともに発表する予定である。日本の脊椎動物相はアジア大陸および北アメリカ大陸の脊椎動物相と,その起源において密接な関係にある.日本列島が形成されつつあった新生代第三紀において本邦の脊椎動物がどこに由来し,どのような変遷を経たかを,精密な比較骨学的調査に立脚して,明らかにすることが本研究の目的である.本年度はその第一年度であるので,1)これまでに蓄積されている現生種骨格に関する基礎資料をより充実させるため備品として購入したSOFTEX CMB特型の軟X線発生装置を用い,これまでほとんど不可能であった大型,中型の魚類および鳥類の骨格に関するデータを非破壊的に得ることができた.このデータを用いて福島県相馬市鮮新世滝口層産出のサメガレイ化石の実体を明らかにし論文として発表することができた.また富山県鮮新世の魚類化石が現生のヒラメと同完されることがわかり原稿がまもなく完成する.千葉県東金産出の魚類化石はアカガレイであることが判明し,日本魚類学にて発表を行う.その他今年は約50種の関連魚種の軟X線写真撮影を行い,魚類化石の研究の資料として蓄積することができた.2)上野と植村は北海道北見市鮮新統の魚類化石ならびに植物化石産地にて採集と調査を行い,北海道における第三紀淡水魚類相の起源に関する古気候と古生態学的資料の解析を試み,更に来年度の調査を行ってまとめることとした.3)冨田・長谷川は謝金を使用してこれまでに蓄積された哺乳類化石の情報化〓理を進め,大型標本に関する整形とデータベース作成作業を完了した.上野はサメ・エイ等軟骨魚類のデータベースをほぼ完成し,来年度は硬骨魚類化石のデータベースを完成する予定である.4)小野・上野はいわき市鮮新統産出の鳥類化石5種,サメ類化石約10種の存在を確認し,来年度更に研究を進める計画である.来年度は最終年度であるので資料のデータベースの完成度を高めつつ,動物相変遷のパターンについて総括を行う.昭和62年度に引き続き、日本列島形成中の新生代第三紀における本邦の脊椎動物相がどこに由来し、どのような変遷を経てきたかを明らかにするべく研究を行った。その最も基礎的作業として、これまで欠如していた精密な比較骨学的資料の作成を行い、初年度に購入したSOFTEX CMB特型軟X線発生装置を用い、これまでほとんど不可能であった中型の板鰓類、硬骨魚類、両生類、鳥類等の骨格に関する諸データを非破壊的に得て蓄積する作業を行った結果約80科170種の資料を作成した。これらのデータを用いて北海道網走支庁の中新世中期常呂層の約1500万年前の地層から採集されたアカガレイ属の化石が新種であることが判明しトコロガレイと名付けて日本魚類学会において報告し、論文に記載を行ったまた埼玉県秩父近郊の川本町を流れる荒川の河床(中新世中期)より採集されたホホジロザメ属カルカロドン・メガロドンの同一個体に属する73個の歯を調査し、その歯列解析を行って古生物学会にて報告し、論文とした。この研究により、世界的にも初めてこの巨大化石鮫の歯の歯列解析が可能となり第三紀におけるネズミザメ科の起源と変遷、解明が容易になった。脊椎動物化石資料データベースの入力作業は完成し、印刷可能な段階に到達した。北海道における第三紀層化石の調査採集は特に三笠、北見地方において(白亜紀後期および漸新地)効果があり、新しい資料を入手することができた。北九州、鹿児島、種ケ島における調査ではかなり大量の魚類および植物化石が採集された。これらの標本により日本列島全体における脊椎動物相変遷の重要な断面を理解することができた。 | KAKENHI-PROJECT-62480025 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62480025 |
本邦第三紀古脊椎動物相の起源と変遷 | 二年間にわたる集中的な調査結果は、本邦古脊椎動物の時空分布の表としてまとめ第三紀におる変遷のパターンのいくつかとともに発表する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-62480025 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62480025 |
内耳奇形ハムスターにおける前庭感覚上皮細胞の細胞骨格構造の観察 | 数年前、無治療飼育群に、偶然に発見された内耳奇形ゴールデンハムスターを系代飼育中である。これを使用し形態学的に詳細な検討をおこなっているが、殊に成熟後の蝸牛に特異な所見が確認され、この奇形の原因が細胞の成熟障害に起因することを検証した。また、他に例を見ない、特異な水泳行動が見られ前庭神核及び小脳に光顕的に異常を認めないことから、前庭耳右器の異常であることが、強く示唆される。前庭機能評価と形態異常との関連について生後より3ヶ月までの詳細な検討を加えた。前庭形態評価は前庭の走査電顕による検索を行い特徴的な異常を認めた。前庭有毛細胞の極性は通常と異なりほぼ単極性であり、正常対照群前庭に見られる双極性の有毛細胞の配列は認められない。これらの所見以外には前庭微細構造の異常は見られていない。前庭機能の行動評価から生後4週間以内に著明な行動低下が見られ、前庭形態評価によって前庭有毛細がまばらで、感覚細胞の変性程度が経時的変化が認められた。行動異常と形態変化が平行して起こっており、大変まれなdevelopmental anomalyであることが検証された。有毛細胞の極性がアクチンフィラメントの存在によっておこることはかつてより報告されていることであるが、この内耳奇形ハムスターにおいてもアクチンフィラメント異常を強く示唆し、今後の検討に大変期待のおける動物モデルである。数年前、無治療飼育群に、偶然に発見された内耳奇形ゴールデンハムスターを系代飼育中である。これを使用し形態学的に詳細な検討をおこなっているが、殊に成熟後の蝸牛に特異な所見が確認され、この奇形の原因が細胞の成熟障害に起因することを検証した。また、他に例を見ない、特異な水泳行動が見られ前庭神核及び小脳に光顕的に異常を認めないことから、前庭耳右器の異常であることが、強く示唆される。前庭機能評価と形態異常との関連について生後より3ヶ月までの詳細な検討を加えた。前庭形態評価は前庭の走査電顕による検索を行い特徴的な異常を認めた。前庭有毛細胞の極性は通常と異なりほぼ単極性であり、正常対照群前庭に見られる双極性の有毛細胞の配列は認められない。これらの所見以外には前庭微細構造の異常は見られていない。前庭機能の行動評価から生後4週間以内に著明な行動低下が見られ、前庭形態評価によって前庭有毛細がまばらで、感覚細胞の変性程度が経時的変化が認められた。行動異常と形態変化が平行して起こっており、大変まれなdevelopmental anomalyであることが検証された。有毛細胞の極性がアクチンフィラメントの存在によっておこることはかつてより報告されていることであるが、この内耳奇形ハムスターにおいてもアクチンフィラメント異常を強く示唆し、今後の検討に大変期待のおける動物モデルである。 | KAKENHI-PROJECT-07771501 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07771501 |
キャビテーション気泡の運動状態の計測制御に関する研究 | 本研究は,高出力超音波に付随して発生する気泡の運動状態を気泡から生じる音響信号(気泡信号)により制御することを目的としている。超音波により発生した気泡は,超音波の周期に伴い,発生,膨張収縮,圧壊の3段階の運動状態に分かれる。気泡信号は,基本波,高調波,分調波,広帯域雑音の4つの信号が発生するが,基本波と高調波は気泡の発生現象以外にも生じるため,分調波と広帯域雑音に注目して研究を進めている。これまでに,我々は高速度ビデオカメラを用いた実験により,気泡の発生・圧壊時は広帯域雑音が,膨張収縮時は分調波が発生している可能性があることを確認した。そこで,最終年度である30年度は,気泡の運動状態計測・制御技術の応用を目的として,気泡を用いて加工部品の洗浄を行っている超音波洗浄器の洗浄能力を評価した。気泡信号と従来の洗浄能力評価方法を比較した。従来法は,微粒子を塗布したガラス板の超音波照射前後の重量比(超音波による微粒子の剥がれ具合)を用いた。その結果,気泡の発生・圧壊の信号である広帯域雑音とガラス板の重量変化の間には強い正の相関が確認できた。一方,気泡の膨張収縮の信号である分調波とガラス板の重量比の間には,広帯域雑音との関係ほど相関が確認できなかった。そのため,洗浄には気泡の発生や圧壊時に生じる衝撃波が大きく影響している可能性がある。洗浄能力の評価に広帯域雑音を用いることにより,洗浄分野に定量的且つ統一的な指標を確立できる可能性がある。本研究は、高出力超音波に付随して発生する気泡の信号のみを用いて、気泡の運動状態を制御することを目的としている。水に超音波を照射すると気泡が発生する。気泡は、照射超音波の出力の増加に伴い、発生、膨張収縮するstable状態、気泡自体が大きく動くinertial状態、気泡が破裂する圧壊の段階に分かれる。理論的には異なる状態の気泡からは異なる信号が発生している。我々は、気泡由来の信号をキャビテーションセンサで測定し、気泡の運動状態を制御できないか検討している。28年度は以下の検討を行った。1.超音波照射装置及びキャビテーションセンサの製作→共振周波数1MHzのPZTを用いて円筒形水槽を製作した。PZTは円形で直径は20mmとして、直径100mmの水槽の底部に設置した。超音波は水槽底部から水面に向かって照射され、局所的に定在波音場が形成される。またPZTのサイズに合うように、内径を30mmにした新しい円筒形キャビテーションセンサを製作した。2.水槽内の音圧測定→高音圧対応のハイドロホンを用いて、PZTへの印加電圧に対する水槽内の音圧を測定し、振動子への印加電圧と音圧の関係を明らかにした。今後は測定した結果を元にして水槽内の音圧を制御する予定である。3.キャビテーションセンサによる分調波と広帯域雑音の測定→水槽内の音圧を増加させた時の気泡由来の信号である分調波と広帯域雑音の変化をキャビテーションセンサを用いて測定した。その結果、分調波と広帯域雑音は異なる音圧で発生することを確認した。音圧を増加させると、最初に広帯域雑音が発生し、その後分調波が発生することが確認できた。これは、気泡が発生する瞬間は広帯域雑音が発生し、気泡が膨張収縮するときは分調波が発生している可能性を示している。本研究の達成度は、28年度に行った1.超音波照射装置及びキャビテーションセンサの製作、2.水槽内の音圧測定、3.キャビテーションセンサによる分調波と広帯域雑音の測定の成果により、おおむね順調に進行していると考えられる。28年度基盤研究(C)研究計画調書や28年度交付申請書に記述した28年度に行う研究計画をほぼ達成している。しかし、研究計画では気泡の状態をstable状態、inertial状態、圧壊の3つに分けていたが、その後の考察により気泡の発生、stable状態、inertail状態、圧壊の4つに分けることが必要であることを確認した。そのため、今後1/2分調波だけでなく2/3分調波も測定する必要が生じたため、29年度に検討予定である。本研究は,高出力超音波に付随して発生する気泡の運動状態を,気泡から発生する信号を用いて制御することを目的としている。超音波に付随して発生する気泡は,半導体の基盤洗浄などに用いられているが,気泡の運動状態を制御できていないため,基盤本体を傷つけてしまうことが問題となっている。気泡の運動状態は,超音波出力の増加に伴い,発生,膨張収縮,圧壊の状態に分かれ,理論的には,それぞれ異なる運動状態からは異なる信号が発生していることが報告されている。そこで我々は,気泡から発生する信号のみを用いて気泡の発生量を定量化すること及び運動状態を制御することを検討している。昨年度までに気泡由来の信号と言われている分調波及び広帯域雑音が,それぞれ異なる音圧で発生することを確認した。今年度は,高速度ビデオカメラで気泡の運動状態の観察を行い,気泡由来の信号との相関を実験的に確認した。疑似気泡として超音波造影剤のマイクロバブルを使用し,高速度ビデオカメラを用いて超音波音圧の増加に伴う気泡の運動状態の変化を観察した。 | KAKENHI-PROJECT-16K06405 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K06405 |
キャビテーション気泡の運動状態の計測制御に関する研究 | 結果として,超音波音圧の増加に伴い気泡は膨張収縮を行い,最後に破裂する状態を観察できた。次に,同じ条件下で,キャビテーションセンサを用いて気泡の信号を受信したところ,最初に分調波が次に広帯域雑音が増加することが確認できた。これは,膨張収縮時には分調波が,圧壊時には広帯域雑音が増加することを示している。気泡由来の信号として膨張収縮時には周期的な信号が,発生及び圧壊時にはインパルス的な信号が発生していると考えられ,これらの信号を受信することにより,気泡の運動状態を制御できる可能性がある。マイクロバブルと高速度ビデオカメラを用いて,水槽内の気泡の観察を行い,気泡由来の信号との相関を確認した。この結果は,28年度基盤研究(C)研究計画調書の29年度計画をほぼ達成しており,おおむね順調に進展していると考えられる。本研究は,高出力超音波に付随して発生する気泡の運動状態を気泡から生じる音響信号(気泡信号)により制御することを目的としている。超音波により発生した気泡は,超音波の周期に伴い,発生,膨張収縮,圧壊の3段階の運動状態に分かれる。気泡信号は,基本波,高調波,分調波,広帯域雑音の4つの信号が発生するが,基本波と高調波は気泡の発生現象以外にも生じるため,分調波と広帯域雑音に注目して研究を進めている。これまでに,我々は高速度ビデオカメラを用いた実験により,気泡の発生・圧壊時は広帯域雑音が,膨張収縮時は分調波が発生している可能性があることを確認した。そこで,最終年度である30年度は,気泡の運動状態計測・制御技術の応用を目的として,気泡を用いて加工部品の洗浄を行っている超音波洗浄器の洗浄能力を評価した。気泡信号と従来の洗浄能力評価方法を比較した。従来法は,微粒子を塗布したガラス板の超音波照射前後の重量比(超音波による微粒子の剥がれ具合)を用いた。その結果,気泡の発生・圧壊の信号である広帯域雑音とガラス板の重量変化の間には強い正の相関が確認できた。一方,気泡の膨張収縮の信号である分調波とガラス板の重量比の間には,広帯域雑音との関係ほど相関が確認できなかった。そのため,洗浄には気泡の発生や圧壊時に生じる衝撃波が大きく影響している可能性がある。洗浄能力の評価に広帯域雑音を用いることにより,洗浄分野に定量的且つ統一的な指標を確立できる可能性がある。29年度は、水槽内に発生させた気泡を高速度ビデオカメラで観察する予定である。超音波造影剤であるマイクロバブルを使用して、水槽内の音圧を制御することにより、マイクロバブルの運動状態を制御し、その時の挙動をビデオカメラで観察する予定である。観察結果と28年度に測定した水槽内の音圧と気泡由来の信号の関係を用いて、信号と気泡の挙動の関係を明らかにする予定である。本研究の最終的な目標は,超音波洗浄機における気泡の最適な運動状態を明確にすることである。そのために,これまでにキャビテーションセンサで受信した気泡由来の信号と超音波洗浄機の洗浄能力の関係を評価する予定である。超音波洗浄機の洗浄能力の評価には,医療機器の洗浄評価のために使用されている評価用キットを使用する予定である。キャビテーションセンサは、気泡により発生する衝撃波により徐々に損傷するため、信号が小さくなった場合、新たに製作する必要が生じるが、予定していたより実験が順調に進んだため、キャビテーションセンサの製作台数が少なくてすんだ。また、超音波照射装置は、29年度に行う高速度ビデオカメラによる撮影を考慮して、当初予定していたよりコンパクトに設計・製作した。上記の理由により繰越金が生じた。 | KAKENHI-PROJECT-16K06405 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K06405 |
遺伝子改変動物を用いたChondromodulin-Iの機能解析 | Chondromodulin-I(ChM-I)ノックアウトマウスの骨代謝を明らかにするため、骨形態計測を試みた。骨組織を凍結包埋し、粘着フィルムの支持のもとにタングステンカーバイド製刃を用いて薄切する方法(フィルム法)により骨組織切片を作製して、Villanueva Goldner染色を行った。しかし、現在までのところ、類骨と石灰化骨を明瞭に染め分けることが出来なかった。そこで次に、骨組織をGMA樹脂或いはMMA樹脂中に包埋し、これをタングステンカーバイド製刃にて薄切する方法を試みた。GMA樹脂包埋したブロックから得られた骨組織切片は全体的な骨の構造は維持されるものの、多くの骨の中央部で、組織が割れる部分が見られた。一方、MMA樹脂包埋したブロックから得られた骨組織切片は、周囲、内部共に構造が維持され、組織の割れる部分もほとんど見られなかった。現在、主にC57BL6バックグラウンドに戻し交配したChM-Iノックアウトマウス(12週齢雄)から脛骨を採取し、MMA樹脂中に包埋する方法により切片を作製し、Villanueva Bone染色、或いはVillanueva Goldner染色により骨代謝に関する解析を進めている。これらの結果をもとに、ChM-Iノックアウトマウスの骨代謝における表現型に対するバックグラウンドの影響ならびに骨代謝におけるChM-Iの作用を示すデータを蓄積している。今後、骨代謝疾患に対する本ノックアウトマウスの代謝応答を含めて展開する準備を進めた。マウス骨組織を固定後に凍結包埋し、これを粘着フィルムの支持のもとにタングステンカーバイド製刃を用いて薄切することにより、非脱灰条件下において良好な骨組織切片を作製した。この方法を用いてChondromodulin-I(ChM-I)ノックアウトマウスの脛骨組織内部の様子を詳細に調べた。その結果、ChM-1ノックアウトマウスでは骨量が増加するという表現系を確認することができた。とくに、骨量の増加は成長軟骨直下の海綿骨領域で特に顕著であること、またChM-Iノックアウトマウスにおいては成長軟骨領域が正常マウスに比べ増大し、骨梁中に残る軟骨由来細胞外マトリックスの量も増えるなどの異常が新たに明らかとなった。これらの表現系は12週齢において顕著であり、週齢が進むに従い、その異差は小さくなった。同様の表現系はバッククロスにより作製したC57BL/6、DBAなど複数のバックグラウンドにおいても観察されることを明らかにした。現在、免疫染色によりChM-Iの詳細な発現局在を解析して、系統的にノックアウトマウスの表現系を検討している。Chondromodulin-I(ChM-I)ノックアウトマウスの骨代謝を明らかにするため、骨形態計測を試みた。骨組織を凍結包埋し、粘着フィルムの支持のもとにタングステンカーバイド製刃を用いて薄切する方法(フィルム法)により骨組織切片を作製して、Villanueva Goldner染色を行った。しかし、現在までのところ、類骨と石灰化骨を明瞭に染め分けることが出来なかった。そこで次に、骨組織をGMA樹脂或いはMMA樹脂中に包埋し、これをタングステンカーバイド製刃にて薄切する方法を試みた。GMA樹脂包埋したブロックから得られた骨組織切片は全体的な骨の構造は維持されるものの、多くの骨の中央部で、組織が割れる部分が見られた。一方、MMA樹脂包埋したブロックから得られた骨組織切片は、周囲、内部共に構造が維持され、組織の割れる部分もほとんど見られなかった。現在、主にC57BL6バックグラウンドに戻し交配したChM-Iノックアウトマウス(12週齢雄)から脛骨を採取し、MMA樹脂中に包埋する方法により切片を作製し、Villanueva Bone染色、或いはVillanueva Goldner染色により骨代謝に関する解析を進めている。これらの結果をもとに、ChM-Iノックアウトマウスの骨代謝における表現型に対するバックグラウンドの影響ならびに骨代謝におけるChM-Iの作用を示すデータを蓄積している。今後、骨代謝疾患に対する本ノックアウトマウスの代謝応答を含めて展開する準備を進めた。 | KAKENHI-PROJECT-17790208 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17790208 |
局部座屈の局所化によるエネルギー吸収を考慮した耐震機能性構造部材の研究 | 本研究の目的は、構造物のある部分に弱点を設定し、そこで局部座屈変形の局所化によるエネルギー吸収を期待することによって構造物全体の延性を確保しながら、構造物の主要部分の損傷を回避するというフェイルセーフ機能を有した構造メカニズムを考え、その具体的構造部材を創意工夫して新規開発することである。ここでは具体的構造物として自立式単独柱の鋼製橋脚を取り上げる。この場合の居部座屈発生位置は、橋脚固定端にもっとも近く、曲げモーメントが最大となるパネルであることは自明であるので、人工的な弱点の導入は必要ない。まず、弾塑性有限変位解析シミュレーションの数値的精度を確認するため、角形鋼管柱に関する既往の実験結果と数値解を静的繰り返し載荷条件のもとで比較し、繰り返し載荷条件での材料構成則の仮定には若干の疑問が残るものの、実用的には充分な精度でシミュレート可能であることを確認した。材料の塑性状態での局部座屈変形の発生状況を調べ、さらにこの局部座屈変形を防止するためにコーナー部に曲率をつけた断面形の耐荷性能および変形能を比較した結果、ある程度の改善は認められるものの、局部座屈発生以後の変形能は一本柱という静定構造ゆえにあまり期待できないことが分かった。(発表論文-1)同様に、円筒形式の鋼製橋脚についてもその局部座屈変形の発生および進展状況と変形能特性を調べた。この橋脚モデルは「兵庫県南部地震」で実際に被災した実橋脚の断面構成を忠実に再現したものである。一般によく言われる「提灯座屈」形の発生がやはり橋脚の基部近傍の板厚変化点付近で生じ、鋼管の必要径厚比パラメータを満足しているにも関わらず、繰り返し水平力に対する延性はさほど期待できないことが分かった。(発表論文-2)この変形能力あるいは延性を改善すべく、ここで円筒鋼製橋脚タイプとして二重円筒形式を考え、その耐震機能特性を検討した。この構造は内円筒で上載荷重に対する強度を保ったまま、薄肉の外円筒で局部座屈を発生させて局部変形および塑性変形の局所化によるエネルギー吸収を期待するという延性向上策の具体例である。この構造に繰り返し水平変位を作用させると、外円筒の局部変形の早期発現により橋脚全体としてのエネルギー吸収能は向上するが、外円筒に引き続く内円筒の塑性化も同時に生じるため、相対的に延性の向上はほとんど認められない結果となってしまった。よって、今後はこの局部座屈変形とエネルギー吸収能の関連を明らかにするとともに、コンクリート充填などの効果についても検討する必要のあることが分かった。本研究の目的は、構造物のある部分に弱点を設定し、そこで局部座屈変形の局所化によるエネルギー吸収を期待することによって構造物全体の延性を確保しながら、構造物の主要部分の損傷を回避するというフェイルセーフ機能を有した構造メカニズムを考え、その具体的構造部材を創意工夫して新規開発することである。ここでは具体的構造物として自立式単独柱の鋼製橋脚を取り上げる。この場合の居部座屈発生位置は、橋脚固定端にもっとも近く、曲げモーメントが最大となるパネルであることは自明であるので、人工的な弱点の導入は必要ない。まず、弾塑性有限変位解析シミュレーションの数値的精度を確認するため、角形鋼管柱に関する既往の実験結果と数値解を静的繰り返し載荷条件のもとで比較し、繰り返し載荷条件での材料構成則の仮定には若干の疑問が残るものの、実用的には充分な精度でシミュレート可能であることを確認した。材料の塑性状態での局部座屈変形の発生状況を調べ、さらにこの局部座屈変形を防止するためにコーナー部に曲率をつけた断面形の耐荷性能および変形能を比較した結果、ある程度の改善は認められるものの、局部座屈発生以後の変形能は一本柱という静定構造ゆえにあまり期待できないことが分かった。(発表論文-1)同様に、円筒形式の鋼製橋脚についてもその局部座屈変形の発生および進展状況と変形能特性を調べた。この橋脚モデルは「兵庫県南部地震」で実際に被災した実橋脚の断面構成を忠実に再現したものである。一般によく言われる「提灯座屈」形の発生がやはり橋脚の基部近傍の板厚変化点付近で生じ、鋼管の必要径厚比パラメータを満足しているにも関わらず、繰り返し水平力に対する延性はさほど期待できないことが分かった。(発表論文-2)この変形能力あるいは延性を改善すべく、ここで円筒鋼製橋脚タイプとして二重円筒形式を考え、その耐震機能特性を検討した。この構造は内円筒で上載荷重に対する強度を保ったまま、薄肉の外円筒で局部座屈を発生させて局部変形および塑性変形の局所化によるエネルギー吸収を期待するという延性向上策の具体例である。この構造に繰り返し水平変位を作用させると、外円筒の局部変形の早期発現により橋脚全体としてのエネルギー吸収能は向上するが、外円筒に引き続く内円筒の塑性化も同時に生じるため、相対的に延性の向上はほとんど認められない結果となってしまった。よって、今後はこの局部座屈変形とエネルギー吸収能の関連を明らかにするとともに、コンクリート充填などの効果についても検討する必要のあることが分かった。 | KAKENHI-PROJECT-08650542 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08650542 |
社会的公正感を用いたパワーハラスメントのマネジメントに関する研究 | 2018年度産業カウンセリング学会にて職場のパワーハラスメントの実態と予防策についてワークショップを開催した(開催者:分担者仙波,指定討論者:研究責任者藤井)論文は2編投稿した。1.パワーハラスメントに性別は影響を及ぼさないが自己愛の高さはパワーハラスメントの認知に影響を及ぼすことが示された(掲載済み)。2.1パワーハラスメントが認定されていない事例×強い口調,2パワーハラスメントが認定されている事例×丁寧な口調,以上2つの映像媒体を用い調査を行った結果,過敏型自己愛の高い者は口調によってパワーハラスメントがあると誤認しやすいことが示された。また,パワーハラスメントがあっても口調が丁寧な場合には,過敏型自己愛の高さとは関係性がなくパワーハラスメントがないと誤認することも示された。パワーハラスメントがないにも関わらず「ある」とされることは,訴える方だけではなく訴えられる者のダメージもある。さらにパワーハラスメントがあるにも関わらず口調によって「ない」と認知することは,本来守られるべき労働者の権利が侵害されることにもつながる。パワーハラスメントおよびその誤認を減じていくためには,どの職位の組織の成員も適切なノンバーバル行動をとる必要性と正しい認識が必要であると考えられた(査読中)。追加データを収集し,今後再度分析する予定である。さらに追加調査として海外でのパワーハラスメントの実際について聞き取り調査を行った。国際学会に参加し他国の実情と予防策について示唆を得ていく。当初,国内での調査のみを予定し一定の成果を出すことができた。その後,多国籍企業に勤務する者からの情報を得て,国際的にはパワーハラスメントが起こりにくい状況にある,その仕組みづくりがされていることが示された。2019年度,国際学会に参加しパワーハラスメントに対する他国の予防策と日本への移植可能性について検討を継続する。得られた結果,追加データについては改めて分析し論文を投稿するとともに,得られた知見は臨地にフィードバックし職場でのパワーハラスメント減少に貢献させる。今後,国際学会でのパワーハラスメント予防策に関する情報収集と日本への移植可能性について継続して検討する。正当な指導や教育,業務命令であるにもかかわらず,パワーハラスメントであるとされ訴えられる事例は多い。このような訴えは,訴える側の心理的ストレスはもちろん,指導・教育・業務命令を発する者に対しても影響を及ぼすほか,組織の管理者の負担も増大させ正常な組織運営を困難にする可能性がある。そこで本研究は組織の中の公正によらず社会的に公正か否かによりパワーハラスメントを組織の成員が判断可能になることを目的に,裁判事例を基に社会的公正の考え方を検討し,今後の正常な組織運営に資することとした。平成28年度はこれまでのパワーハラスメントにかかる裁判事例を検討し,「過小評価による配置転換(パワーハラスメント事例)」「過度な指導(一部パワーハラスメント事例)」「職位の応じた業務命令と内容(パワーハラスメントなし事例)」を選定,これらの事例を基にシナリオを作成した。シナリオは映像に換算して5分以内とし,事例の内容は変更せず各事例の業態を変更し作成した(例工場→医療,ホテル業→飲食業等)。同時に調査対象組織,映像媒体出演者を募り,内諾を得ていることころである。また本研究に関する研究倫理審査を受審し了承を得た。研究者間で平成29年度に向け計画の調整をはかり,平成29年8月までに映像媒体を作成,その後のデータ収集の方法と分析方法,スケジュール,データを蓄積することを確認した。また調査にかかる各自の分担についても確認した。平成28年度までに研究倫理審査を受審・了承を得ている。平成29年度は映像媒体作成とデータ収集に取り組むことができ,研究期間である3年間以内に示唆を得ることが可能と推測するため。映像媒体と調査票の作成映像媒体シナリオは,訴えがあったがパワーハラスメントがないとされた判例,一部パワーハラスメントが認められた判例,パワーハラスメントが認定された判例の3つを研究者間で協議し,選定した。選定した判例の要旨は変更せず,業態を変更したシナリオを社会保険労務士の監修を受け作成,映像媒体も同じく監修を受け制作した。映像媒体の巻末にはシナリオごとにパワーハラスメントの有無とその理由について解説を加えた映像媒体を付した。個人属性,映像媒体のシナリオ(従属変数),職場環境(独立変数),共感性(統制変数),自己愛傾向(媒介変数)からなる調査票を作成した。調査協力者のリクルート,調査方法,分析方法企業,病院に勤務する者から調査協力が得られることを確認した。企業は150名程度,病院の勤務者も同数程度協力が得られる見込みである。調査時に最終的な調査協力意思を確認するが,調査協力は無記名であるため調査票の回収を以って調査に協力する意思があるとみなすことを文書で説明する。被験者には,まず従属変数のシナリオ部分を除く調査票を記入してもらい,次に作成した映像媒体3本のうち1本を視聴してもらう。最後に調査票のシナリオの部分を記入してもらい,封入しその場で調査票を回収する。完了後に当該映像媒体の解説映像を観てもらう。シナリオの正誤を得点化しこれを従属変数とし,共感性を統制変数,職場環境を独立変数,自己愛傾向を媒介変数とした重回帰分析を行う。調査票・映像媒体が完成し事前調査を完了させた。分析方法も決定しており調査対象のリクルートが完了したことから,平成30年度3年目で研究が完了することが見込めるため。計画に大幅な変更は必要ないため区分のとおりと判断した。 | KAKENHI-PROJECT-16K15883 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K15883 |
社会的公正感を用いたパワーハラスメントのマネジメントに関する研究 | 2018年度産業カウンセリング学会にて職場のパワーハラスメントの実態と予防策についてワークショップを開催した(開催者:分担者仙波,指定討論者:研究責任者藤井)論文は2編投稿した。1.パワーハラスメントに性別は影響を及ぼさないが自己愛の高さはパワーハラスメントの認知に影響を及ぼすことが示された(掲載済み)。2.1パワーハラスメントが認定されていない事例×強い口調,2パワーハラスメントが認定されている事例×丁寧な口調,以上2つの映像媒体を用い調査を行った結果,過敏型自己愛の高い者は口調によってパワーハラスメントがあると誤認しやすいことが示された。また,パワーハラスメントがあっても口調が丁寧な場合には,過敏型自己愛の高さとは関係性がなくパワーハラスメントがないと誤認することも示された。パワーハラスメントがないにも関わらず「ある」とされることは,訴える方だけではなく訴えられる者のダメージもある。さらにパワーハラスメントがあるにも関わらず口調によって「ない」と認知することは,本来守られるべき労働者の権利が侵害されることにもつながる。パワーハラスメントおよびその誤認を減じていくためには,どの職位の組織の成員も適切なノンバーバル行動をとる必要性と正しい認識が必要であると考えられた(査読中)。追加データを収集し,今後再度分析する予定である。さらに追加調査として海外でのパワーハラスメントの実際について聞き取り調査を行った。国際学会に参加し他国の実情と予防策について示唆を得ていく。当初,国内での調査のみを予定し一定の成果を出すことができた。その後,多国籍企業に勤務する者からの情報を得て,国際的にはパワーハラスメントが起こりにくい状況にある,その仕組みづくりがされていることが示された。2019年度,国際学会に参加しパワーハラスメントに対する他国の予防策と日本への移植可能性について検討を継続する。平成28年度に研究者間で調整したスケジュールと役割分担に則り遂行する。調査対象者を募り,調査を実施する。パワーハラスメントそのものを減じることはもちろん,対人関係の縺れや被害者とされる者の認知の問題から,パワーハラスメントとして訴えられる事例をどのようにすれば減じることができるのか,研究成果から検討できると考えられる。得られた結果,追加データについては改めて分析し論文を投稿するとともに,得られた知見は臨地にフィードバックし職場でのパワーハラスメント減少に貢献させる。今後,国際学会でのパワーハラスメント予防策に関する情報収集と日本への移植可能性について継続して検討する。調査の準備までが完了し,実際の調査に至っていない。そのため調査用映像媒体作成経費および調査にかかる旅費の支出がなかったことに因る。映像媒体の作成が2年目になったため国際学会にて2編成果報告をする他,海外のハラスメント・職場環境整備の取り組みについて聴取する。新たに収集したデータを用い論文作成を進める。平成29年度に支出予定である。 | KAKENHI-PROJECT-16K15883 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K15883 |
がん微小環境ネットワークの統合的研究 | 27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。がんの増殖・浸潤・転移のしやすさは、がん細胞自体のもつ特性のみならず、がん細胞と微小環境との相互作用が深く関わっている。今後のがん治療においてはがんをがん細胞のみではなく、がん組織全体として理解することにより、革新的な治療法の開発が可能となると考えられる。本領域では、1)がん微小環境のダイナミズム、2)がん幹細胞と微小環境、3)血管・リンパ管新生研究、4)転移の分子機構と治療戦略、の4つの項目を設定した。本領域では研究者間の交流を通じて共同研究を推進し、若手研究者を育成しつつ研究を行い、多くの興味深い成果を得た。総括班は、領域の研究の推進に必要な国内外の情報の収集を行い、研究者間の連携を強化する役割を担うことを目的として活動を行った。1)領域会議の開催:本年度は本研究領域発足初年度にあたることから領域内の連絡を密接にすることが重要と考え、平成22年9月8日、平成23年2月9日の2回にわたって領域会議を東京で開催した。領域会議では領域内の研究の進捗状況を報告し、平成23年3月までに決定される公募研究を含めた今後の領域の運営について議論を行った。また宮園浩平の分担研究者・城潤一郎の転出に伴い,分担研究者の交代(京都大学・田畑泰彦)について承認を得た。2)公開シンポジウムの開催:平成22年度は「がん研究支援活動」と連携を計り、平成23年2月89日に行われた公開シンポジウムにおいて本領域の高倉伸幸が「がん幹細胞の血管ニッチの形成とその制御」について発表を行った。また本領域の研究に密接な関連がある上野博夫教授(関西医科大学医学部)が本公開シンポジウムで「家族性ポリポーシスモデルマウスにおける腸幹細胞の動態」について発表し、発表後、領域内の研究者と意見交換を行った。3)共同研究の推進:領域内の研究の有機的連携を促進し、共同研究のコーディネート、とくに若手研究者間の交流の促進などを推進した。総括班の田畑泰彦教授からバイオマテリアルを用いた人工微小環境について領域内の研究者に紹介があり、共同研究が開始した。4)研究活動の公開:得られた研究成果を領域内外及び社会へ発信するためにホームページを開設した。また「がん研究支援活動」のホームページでは本領域の高倉伸幸が「血管領域でがんを潰す」と題して研究紹介を行った。総括班は、領域の研究の推進に必要な国内外の情報の収集を行い、研究者間の連携を強化する役割を担うことを目的として活動を行った。なお、計画研究代表者である南敬(東京大学)が最先端次世代研究開発支援プログラムに採択されたことに伴い、原英二(がん研究会)が代わって計画班員となった。1)領域会議の開催:本年度は公募研究者が研究を開始したことから領域内の研究の進捗状況を把握し、得られた研究成果を共有することが重要と考え、平成23年6月17日に領域会議を東京(東京大学農学部弥生講堂一条ホール)で開催した。2)公開シンポジウムの開催:平成23年度は6月17日に公開シンポジウムを行い、領域内の研究成果の発表を行った。また「がん研究支援活動」に支援されている新学術領域研究の中から大島正伸博士(金沢大学)に「炎症性微小環境と消化管発がん」と題して特別講演をお願いした。さらに「がん研究支援活動」と連携を計り、平成24年1月3031日に行われた公開シンポジウムにおいて本領域の佐藤靖史が「Vasohibinファミリーを応用したがん治療法の開発研究」について発表を行った。3)共同研究の推進:領域内の研究の有機的連携を促進し、共同研究のコーディネートなどを推進した。田畑泰彦教授がバイオマテリアルを用いた人工微小環境について領域内の研究者にセミナーを行った。4)研究活動の公開:得られた研究成果を領域内外及び社会へ発信するためにホームページを開設し、継続的に更新を行った。領域と関連したセミナー(平成24年2月24日開催の千里ライフサイエンスセミナー「がんの転移・浸潤と微小環境」など)を広報することで本領域の研究のさらなる活性化を図った。総括班は領域の研究の推進に必要な国内の情報の収集を行い、研究者間の連携を強化する役割を目的として活動を行った。とくにホームページの充実や各種シンポジウムの開催などにより、得られた研究成果を領域内外の研究者や社会へ発信するための支援を行った。平成25年度は領域内の連携や「新学術領域(領域提案型)がん研究分野における支援活動(がん研究支援活動)」と連携を密接に行い、研究班の研究を支援した。またニュースレターを作成し発行した。1)領域会議の開催:平成25年度は新たに公募研究が採択されたことから、計画研究者、公募研究者が一同に会し、平成25年6月20日、21日に領域会議・研究発表会を東京(東京大学小柴ホール)で開催した。2)公開シンポジウムの開催:平成25年度は6月20日に東京大学内で公開シンポジウムを行い、領域内の研究成果の発表を行った。愛媛大今村健志教授に蛍光イメージングに関する特別講演をお願いした。がん研究支援活動と連携をはかり、平成26年1月30日31日に開催された公開シンポジウムでは千葉滋(公募研究班員)が「T細胞性リンパ腫の起源とその進化」について発表を行った。3)共同研究・若手研究者の育成:平成25年度は若手研究者の育成のために2名(金沢大学、東京大学)の海外短期派遣(米国、スウェーデン)を支援した。 | KAKENHI-ORGANIZER-22112001 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-ORGANIZER-22112001 |
がん微小環境ネットワークの統合的研究 | 4)研究活動の公開:研究成果の発信のためにホームページを更新した。「ニュースリリース」のコーナーを新設し、マスコミで紹介された研究成果に関する情報を掲載した。またホームページの「一般の方へ」のコーナーでは、がん微小環境ネットワークについて一般向けに解説した。さらに本年度はニュースレターを作成し、発行した。1)領域会議の開催:平成26年6月5日に東京大学医学部内で第1回領域会議・研究発表会を開催した。本領域の研究者(計画研究、公募研究)が研究成果を報告したほか、京都大学山田泰広教授を招聘し「iPS細胞を用いたがん研究」について特別講演をお願いした。第2回領域会議・研究発表会は平成27年1月14日につくば国際会議場で開催し、研究発表に加え、成果とりまとめについて議論した。3)共同研究の推進:ゲノム解析技術、イメージング技術、バイオマテリアルの応用を中心に共同研究を推進した。ゲノム解析技術については総括班の間野博行教授、油谷浩幸教授に合同公開シンポジウムで講演を依頼、バイオマテリアルについては領域会議で田畑泰彦研究室の技術の紹介を行った。4)若手研究者の育成:平成27年1月27、28日のがん支援班シンポジウムに本領域から横田明日美博士ら4名の参加を援助、また吉松康裕博士のスウェーデンへの海外派遣・共同研究推進を支援した。5)研究活動の公開:ホームページを随時更新して、本領域の活動を紹介した。総括班は領域の研究の推進に必要な国内外の情報の収集を行い、研究者間の連携を強化する役割を担うことを目的として活動を行った。総括班はホームページの充実やシンポジウムの開催により、得られた研究成果を領域内外の研究者や社会へ発信するための支援を行った。平成23年度に引き続き平成24年度は領域内の連携や、「新学術領域(領域提案型)がん研究分野における支援活動(がん研究支援活動)」と連携を密接にし、研究を支援した。1)領域会議の開催:計画研究者、公募研究者が一同に会し、平成24年7月5日6日に領域会議・研究発表会を東京(東京大学医学部総合中央館)で開催した。2)公開シンポジウムの開催:平成24年度は7月5日に公開シンポジウムを行い、領域内の研究成果の発表を行った。さらに「がん研究支援活動」と連携を計り、平成25年1月2930日に行われた公開シンポジウムにおいて本領域の秋山徹(計画研究代表者)が「大腸がんと微小環境の相互作用」について、南敬(総括班員)が「血管内皮活性化・エピゲノム調節機構解明による抗がん作用への応用」について発表を行った。3)共同研究の推進:領域内の研究の有機的連携を促進し、共同研究のコーディネートなどを推進した。とくにゲノム解析や生体イメージングに関して総括班員を含めて共同研究が行われ、成果が得られた。4)研究活動の公開:得られた研究成果を領域内外及び社会へ発信するためにホームページを開設し、継続的に更新を行った。ホームページに一般向けにがん微小環境を解説するページを設けた。平成2324年度にかけて計画研究の成果が6回にわたってマスコミに紹介された。領域内ではMol. Cell、Nat. Commun.、Scientific Reports誌などに論文が発表された。領域内での共同研究も盛んに行われた。 | KAKENHI-ORGANIZER-22112001 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-ORGANIZER-22112001 |
胃発がんリスク亢進に繋がるピロリ菌感染宿主細胞の分子特性解析 | CD44v9陽性癌幹細胞は、オートファジー発現不全でありH. pylori由来癌蛋白質CagAを蓄積させることで胃癌の発生に強く寄与し、同時に、胃癌の再発にも関与することを報告してきたが、CD44v9陽性細胞がどの様に誕生するのかは明らかではなかった。前年度までに我々は、F-actin-capping protein subunit alpha-1(CAPZA1)過剰発現細胞では、LAMP1発現が抑制され、autophagyが抑制されるため、H. pylori感染を受けるとCagAが蓄積することを明確にした。さらに、CAPZA1過剰発現細胞は、CD44v9発現を誘導することを示した。本年度の成果から、CAPZA1過剰発現細胞では、H. pylori感染を受けることでSALL4及びKLF5のリプログラミング因子の発現も顕著に増強される事が示された。さらに、in vivo感染動物実験の結果から、CAPZA1過剰発現細胞は、H. pylori感染に伴う酸化ストレス刺激によって誘導され、かつ、CAPZA1過剰発現細胞からCD44v9陽性細胞が発生していることを確認した。さらに、ヒト胃癌組織検体を用いた解析により、胃癌部では、CAPZA1の過剰発現とCD44v9発現が共局在することも明らかにした。以上の結果から、H. pylori感染胃粘膜での胃発癌過程において、CAPZA1過剰発現細胞の発生とそこへのH. pylori感染が、CD44v9陽性癌幹細胞を誕生させる要因である事を示した。CapZA1過剰発現細胞では、H. pylori感染によりCD44v9の発現が誘導されることを明らかとした。そこで、CapZA1過剰発現細胞でのCD44v9発現誘導機序を解析し、CD44v9陽性細胞の誕生に関わる分子シグナルの解析を行った。その結果、CD44の転写因子として機能するβ-cateninの発現が亢進していることが明らかとなり、且つ、H. pylori感染により、過剰のβ-cateninが核内へ移行することが示された。さらに、CD44v9のスプライシングバリアントの構築に寄与するepithelialsplicing regulatory protein 1 (ESRP1)の発現がCapZA1過剰発現により誘導されることも明らかとなった。また、β-cateninの細胞質内での分解を促進する試薬(CCT031374)添加により、CapZA1過剰発現細胞のCD44発現誘導はキャンセルされた。これらの知見から、「CapZA1過剰発現細胞ではβ-catenin及びESRP1発現が亢進しており、そこへCagAが蓄積することでβ-cateninシグナルの異常活性化が誘発されCD44v9発現が惹起される」と考えられた。これらの成果から、H. pylori感染に伴うCD44v9発現シグナルが明らかとなりつつあり、胃発がんリスクを規定する宿主細胞キャラクターの同定に向けて順調に計画が進行していると考えている。CD44v9陽性細胞は、H. pylori感染を受けるとCagAを蓄積させ、腫瘍の増悪化をもたら胃発がんに関与する重要な宿主細胞である。本年度、研究代表者らは、ピロリ菌がんタンパク質CagAが、F-actin-capping protein subunit alpha-1(CAPZA1)過剰発現細胞に特異的に蓄積することを明示した。この機序は、CAPZA1過剰発現細胞では、LAMP1発現が抑制され、autophagyが抑制されることによるものであった。現在、ここまでの研究成果について、論文を投稿中である。さらに、CAPZA1過剰発現細胞では、CD44v9のスプライシングバリアントの構築に寄与するepithelialsplicing regulatory protein 1 (ESRP1)の発現が誘導されることも明らかとされた。また、CAPZA1過剰発現細胞へのピロリ菌感染では、CD44の転写因子として機能するβ-cateninの核内への移行が強く増強されることも見出し、CAPZA1過剰発現細胞は、ピロリ菌感染を受ける事で、CD4v9陽性がん幹細胞の前駆細胞として機能する可能性が示唆されている。興味深い事に、CAPZA1発現は、ピロリ菌感染胃粘膜において、酸化ストレス依存的に惹起される事も明らかとなり、ピロリ菌感染胃粘膜での胃発がん過程において、がん幹細胞の発生過程が明かになり始めている。CAPZA1過剰発現細胞は、H. pylori感染により、特異的にH. pyloriの産生するがんタンパク質CagAを蓄積させることが明らかとなった。これは、CAPZA1過剰発現細胞では、LAMP1発現が抑制され、autophagyが抑制されることによるものである(論文投稿中)。さらに、CAPZA1過剰発現細胞では、CD44v9のスプライシングバリアントの構築に寄与するepithelialsplicing regulatory protein 1 (ESRP1)の発現が誘導されることが明らかとなり、同時に、CAPZA1過剰発現細胞へのH. pylori感染は、CD44の転写因子であるβ-cateninの核内移行も増強される結果、CAPZA1過剰発現細胞が、H. pylori感染を受ける事で、CD44v9陽性細胞へ変化することを明らかとした(論文投稿準備中)。さらに、CAPZA1過剰発現細胞は、H. pylori感染胃粘膜で検出され、CAPZA1発現はH. pylori感染に伴う酸化ストレス刺激により誘導されることも明らかとなってきた。 | KAKENHI-PROJECT-16K08349 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K08349 |
胃発がんリスク亢進に繋がるピロリ菌感染宿主細胞の分子特性解析 | さらに、CAPZA1発現制御メカニズムの解析から、CAPZA1発現は、ヒストンアセチル化による制御を受ける事が、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を用いた検討並びに、ChIP assayの両面から明らかになった。これらの解析結果から、ピロリ菌感染胃粘膜における胃発がん過程での、CD44v9陽性がん幹細胞の発生過程並びにその前駆細胞となり得る細胞特性について新しい知見が明らかになり始めている。以上のことから、胃発がんリスクを規定する宿主細胞キャラクターの同定に向けて順調に計画が進行していると考えている。CD44v9陽性癌幹細胞は、オートファジー発現不全でありH. pylori由来癌蛋白質CagAを蓄積させることで胃癌の発生に強く寄与し、同時に、胃癌の再発にも関与することを報告してきたが、CD44v9陽性細胞がどの様に誕生するのかは明らかではなかった。前年度までに我々は、F-actin-capping protein subunit alpha-1(CAPZA1)過剰発現細胞では、LAMP1発現が抑制され、autophagyが抑制されるため、H. pylori感染を受けるとCagAが蓄積することを明確にした。さらに、CAPZA1過剰発現細胞は、CD44v9発現を誘導することを示した。本年度の成果から、CAPZA1過剰発現細胞では、H. pylori感染を受けることでSALL4及びKLF5のリプログラミング因子の発現も顕著に増強される事が示された。さらに、in vivo感染動物実験の結果から、CAPZA1過剰発現細胞は、H. pylori感染に伴う酸化ストレス刺激によって誘導され、かつ、CAPZA1過剰発現細胞からCD44v9陽性細胞が発生していることを確認した。さらに、ヒト胃癌組織検体を用いた解析により、胃癌部では、CAPZA1の過剰発現とCD44v9発現が共局在することも明らかにした。以上の結果から、H. pylori感染胃粘膜での胃発癌過程において、CAPZA1過剰発現細胞の発生とそこへのH. pylori感染が、CD44v9陽性癌幹細胞を誕生させる要因である事を示した。本年度の成果により、CapZA1過剰発現細胞では、ESRP1の過剰発現を誘導しており、そこにH. pylori感染により蓄積されたCagAによるβ-cateninシグナルの異常活性化が惹起されることで、CD44v9発現誘導に至ることを明らかにした。これらの成果から、H. pylori感染胃粘膜におけるCapZA1過剰発現細胞は、CD44v9陽性がん幹細胞のprogenitorcellとなり得ることが示唆された。研究代表者らは既に、in vivo解析から胃粘膜上皮におけるCapZA1発現は細胞間で異なり、CapZA1過剰発現細胞が存在することを見出している。そこで、今後、CapZA1発現制御機序を、エピジェネティクス制御、酸化ストレス応答性転写因子、miRNA発現制御機構に注目して解析し、CapZA1発現亢進に関わる要因を同定する。これにより、CD44v9陽性がん幹細胞の前駆細胞となり得るCapZA1過剰発現細胞の発生機構を解析する。 | KAKENHI-PROJECT-16K08349 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K08349 |
PCR-ELISAによるQ熱の診断に関する研究 | BGM細胞に0.0010.1%濃度の界面活性剤Triton X-100 (TX100)を加え、鏡検により細胞の破砕を観察した。Coxiella burnetii Nine Mile II相菌(ATCC VR-616)の培養上清(細胞外の菌体が主体)、及び感染BGM細胞(細胞内の菌体が主体)を別々に回収した。培養上清について各々0.0010.01%濃度のTX100を加えた試料と無添加の試料を遠心後、PCRを行った結果、無添加の場合と検出感度に差は無かった。感染細胞では0.01、0.02%のTX100を加え遠心した試料、免疫鉄ビーズで菌体を回収した(この方法についてはVeterinary microbiologyに掲載決定)。試料、及びTX100添加後、免疫鉄ビーズで菌体を回収した試料でPCRを行った。0.01%濃度のTX100を加えた試料では、TX100無添加で免疫鉄ビーズにより菌体回収した試料と比べPCRの結果、検出感度の上昇が見られた。また、0.01%TX100は免疫鉄ビーズと菌体の反応を阻害しないことが判った。牛乳の場合、0.01%TX100のみ添加では遠心後に大量の堅固なpelletが残り、PCRサンプル調整の妨げになると共に検出感度が低下した。牛乳からのPCR-ELISAサンプル調整では0.01%TX100添加+免疫鉄ビーズによる菌体回収で検出感度が良かった。ウシ60頭の生乳から、この方法によりサンプル調整し、PCR-ELISAによりC. burnetii検出を行った。PCR-ELISAは先に提出した申請書に記載した方法に準じて行った。10頭が陽性で(陽性率16.7%)、うち5頭が強陽性であった。PCR-ELISAは高感度に、多数の試料の判定が出来る利点を持つ。(以上の結果について第121回日本獣医学会で発表予定。Appliedand environmental microbiologyに投稿準備中。)BGM細胞に0.0010.1%濃度の界面活性剤Triton X-100 (TX100)を加え、鏡検により細胞の破砕を観察した。Coxiella burnetii Nine Mile II相菌(ATCC VR-616)の培養上清(細胞外の菌体が主体)、及び感染BGM細胞(細胞内の菌体が主体)を別々に回収した。培養上清について各々0.0010.01%濃度のTX100を加えた試料と無添加の試料を遠心後、PCRを行った結果、無添加の場合と検出感度に差は無かった。感染細胞では0.01、0.02%のTX100を加え遠心した試料、免疫鉄ビーズで菌体を回収した(この方法についてはVeterinary microbiologyに掲載決定)。試料、及びTX100添加後、免疫鉄ビーズで菌体を回収した試料でPCRを行った。0.01%濃度のTX100を加えた試料では、TX100無添加で免疫鉄ビーズにより菌体回収した試料と比べPCRの結果、検出感度の上昇が見られた。また、0.01%TX100は免疫鉄ビーズと菌体の反応を阻害しないことが判った。牛乳の場合、0.01%TX100のみ添加では遠心後に大量の堅固なpelletが残り、PCRサンプル調整の妨げになると共に検出感度が低下した。牛乳からのPCR-ELISAサンプル調整では0.01%TX100添加+免疫鉄ビーズによる菌体回収で検出感度が良かった。ウシ60頭の生乳から、この方法によりサンプル調整し、PCR-ELISAによりC. burnetii検出を行った。PCR-ELISAは先に提出した申請書に記載した方法に準じて行った。10頭が陽性で(陽性率16.7%)、うち5頭が強陽性であった。PCR-ELISAは高感度に、多数の試料の判定が出来る利点を持つ。(以上の結果について第121回日本獣医学会で発表予定。Appliedand environmental microbiologyに投稿準備中。) | KAKENHI-PROJECT-07760309 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07760309 |
A15型高磁場用超伝導材料の歪みによる反磁性および輸送電流特性劣化に関する研究 | 代表的なA15型高磁場用超伝導材料であるニオブ・スズ(Nb_3Sn)超伝導線の、歪み状態での臨界電流(超伝導状態を維持することができる輸送電流の最大値)劣化を調べるためにウォルタースプリング型装置を設計・製作した。実用ニオブ・スズ超伝導線をハンダ付けした本装置を、18テスラ超伝導マグネットに設置し、液体ヘリウム(温度4.2K=-269°C)中で輸送電流特性、磁化特性を調べた。その結果、1.0%歪み印加により輸送電流特性の顕著な劣化が観測されたが、磁化には顕著な変化は観測されなかった。代表的なA15型高磁場用超伝導材料であるニオブ・スズ(Nb_3Sn)超伝導線の、歪み状態での臨界電流(超伝導状態を維持することができる輸送電流の最大値)劣化を調べるためにウォルタースプリング型装置を設計・製作した。実用ニオブ・スズ超伝導線をハンダ付けした本装置を、18テスラ超伝導マグネットに設置し、液体ヘリウム(温度4.2K=-269°C)中で輸送電流特性、磁化特性を調べた。その結果、1.0%歪み印加により輸送電流特性の顕著な劣化が観測されたが、磁化には顕著な変化は観測されなかった。Nb_3Sn超伝導多重撚りケーブルを横圧縮して、通電法による臨界電流特性劣化について評価した。30MPa程度の横方向圧縮応力を印加することで、臨界電流が1/2以下になることを示した。しかし、本サンプルでは圧縮応力を印加できる長さが外径50mm、1ターンと短いため、磁化測定法には適さない。NbTi超伝導多重撚りケーブルを用いて12ターンサンプルを作製し、長尺サンプルに対して均等に横方向圧縮力を印加可能な機構を開発した。本装置により、約1mのケーブルに対して均等に横方向圧縮応力を印加できた。実際に応力が印加されていることは、ロードセルの出力のみならず、素線間接触抵抗の変化としても確認された。併せて、横方向圧縮による素線の変形挙動解析をANSYSを用いて実施した。素線を超伝導領域および安定化銅領域に分割し、圧縮冶具により横方向に圧縮する条件で計算した。ここで、素線および圧縮冶具表面にはギャップ要素を適用し、非線形解析を行った。素線長さ方向歪み印加機構については、Walter's Spring型装置の設計検討を行った。平成20年度では、Nb3Sn超伝導素線における歪(引張り/圧縮)状態での臨界電流劣化を調べるためのWalter's Spring型装置を製作し、室温での歪印加試運転を行った。本装置は、歪状態における臨界電流の劣化を通電法(外部印加磁場固定、通電電流掃引)および磁化法(外部印加磁場掃引、通電電流無し)により評価できる。評価を温度可変、強磁場環境で行うために、マグネットの温度可変インサートに収まる寸法(外径30mm)とした。本装置の心臓部であるWalter's Springは時効処理したベリリウム銅(CuBe)で製作した。Spring直径は23mmである。通電法での評価のためには数ターンもあれば十分であるが、磁化法評価のためには体積が必要であるため、15ターンとした。歪印加には室温で超音波モータを用いてロッドを回転させることで行う機構とした。このことで遠隔操作が可能となった。また、本装置で一様な歪を印加できることを調べるために、歪ゲージを貼付して室温で歪印加試運転を行った。平成19年度に設計検討を行い,20年度に製作,試運転を行ったWalter's Spring型装置を用いて,臨界電流(I_c)の歪依存性を調べた。内部スズ法によるニオブ・スズ(Nb_3Sn)線材を試料とした。未熱処理線材を熱処理用ボビンにWalter's Springの形状に合わせて15ターン巻き付け,650°Cx240時間の超伝導生成熱処理を行った。熱処理後の線材をWalter's Springに取り付け,電極部のハンダ付け,歪ゲージ貼付け,電圧端子取り付けを行った。このWalter's Springを装置に取り付けた。さらに,磁化法による測定のためにピックアップコイルおよびキャンセルコイルを製作し,取り付けた。実験は次の手順で行った。(1)ゼロ磁場で歪印加(2)15Tまで磁場を印加し,通電法によるI_c測定(3)ゼロ磁場まで減磁(4)0→5T→0のサイクルで磁化測定。この手順を,印加歪値を変化させて行った。通電法によるI_cは印加歪に対して単調減少し,1%引張り歪印加時は当初I_cの12.6%まで劣化した。再びゼロ歪に戻すと73%まで回復したが,不可逆であった。これは,本試料にとって1%引張り歪がI_c可逆限界を超えていることを意味し,超伝導フィラメントが破断していることを意味する。一方,磁化はキャンセルコイル信号が小さかったためにバックグラウンド磁化が残ってしまったために,ヒステリシス曲線からI_cを評価することは出来なかった。しかし初期状態(ゼロ歪),1%引張り歪印加時,1%引張り歪除荷後の磁化曲線に顕著な変化は見られなかった。 | KAKENHI-PROJECT-19360135 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19360135 |
A15型高磁場用超伝導材料の歪みによる反磁性および輸送電流特性劣化に関する研究 | つまり,I_c可逆限界以上の歪によって超伝導フィラメントが破断しても,磁化に変化は見られず,Nb_3Sn結晶粒内の超伝導特性には変化がないことを示唆する。 | KAKENHI-PROJECT-19360135 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19360135 |
癌遺伝子導入ヒト細胞を使用したシグナル伝達制御による抗癌剤感受性の解析 | ヒト上皮細胞モデルであるHAG-1細胞に,ヒト癌で活性化している癌遺伝子群を導入し,抗癌剤感受性の変化とその機序を解析した.v-src,c-Ha-ras,v-rafなどシグナル伝達に関与している活性型癌遺伝子を導入し、細胞特性と抗癌剤感受性の変化を調べた.活性化rasは浸潤能や造腫瘍能とともにシスプラチン(CDDP)耐性を誘導したが,活性型rasにはこのような作用はなかった.このsrc導入細胞のCDDP耐性機序を,薬剤の取り込みや排出・細胞内解毒機構・DNA修復機構の面から解析を行った.その結果,srcによるCDDP耐性機序は,PKCやPI-3 kinaseと関連なく,DNA内架橋鎖修復の亢進によることが明かとなった.この耐性はsrcキナーゼ阻害剤であるHerbimycin Aで克服され,同時に架橋鎖修復能の低下が見られたため,srcキナーゼの活性化はDNA修復能を高める働きをもつことが示唆された.srcは乳癌・大腸癌に悪性度が高いほど強く発現しており浸潤能と転移能に相関がある.このため進行癌や転移癌におけるシスプラチン耐性にチロシンキナーゼ活性が関与している可能性が出てきた。またsrcは転写因子であるSTAT3を恒常性に活性化していることがわかり,耐性誘導機序にSTAT3と修復酵素,特に除去修復酵素ERCC1のmRNA発現との関与が示唆される.現在、ERCC1とsrcとの関連を調べている.更に,生体内で高効率に遺伝子導入できるアデノウイルスに抑制変異型分子(Dominant negative ras)や癌抑制遺伝子(wild type p53,Cyclin-dependent kinase inhibitor-p21WAF1/Sdi1を組み込んだ組み換えアデノウイルスベクターを使用し、各種癌遺伝子発現細胞に及ぼす影響を薬剤感受性やアポトーシスの面から解析することにより、遺伝子治療の化学療法への応用の可能性を探っている。ヒト上皮細胞モデルであるHAG-1細胞に,ヒト癌で活性化している癌遺伝子群を導入し,抗癌剤感受性の変化とその機序を解析した.v-src,c-Ha-ras,v-rafなどシグナル伝達に関与している活性型癌遺伝子を導入し、細胞特性と抗癌剤感受性の変化を調べた.活性化rasは浸潤能や造腫瘍能とともにシスプラチン(CDDP)耐性を誘導したが,活性型rasにはこのような作用はなかった.このsrc導入細胞のCDDP耐性機序を,薬剤の取り込みや排出・細胞内解毒機構・DNA修復機構の面から解析を行った.その結果,srcによるCDDP耐性機序は,PKCやPI-3 kinaseと関連なく,DNA内架橋鎖修復の亢進によることが明かとなった.この耐性はsrcキナーゼ阻害剤であるHerbimycin Aで克服され,同時に架橋鎖修復能の低下が見られたため,srcキナーゼの活性化はDNA修復能を高める働きをもつことが示唆された.srcは乳癌・大腸癌に悪性度が高いほど強く発現しており浸潤能と転移能に相関がある.このため進行癌や転移癌におけるシスプラチン耐性にチロシンキナーゼ活性が関与している可能性が出てきた。またsrcは転写因子であるSTAT3を恒常性に活性化していることがわかり,耐性誘導機序にSTAT3と修復酵素,特に除去修復酵素ERCC1のmRNA発現との関与が示唆される.現在、ERCC1とsrcとの関連を調べている.更に,生体内で高効率に遺伝子導入できるアデノウイルスに抑制変異型分子(Dominant negative ras)や癌抑制遺伝子(wild type p53,Cyclin-dependent kinase inhibitor-p21WAF1/Sdi1を組み込んだ組み換えアデノウイルスベクターを使用し、各種癌遺伝子発現細胞に及ぼす影響を薬剤感受性やアポトーシスの面から解析することにより、遺伝子治療の化学療法への応用の可能性を探っている。 | KAKENHI-PROJECT-08266247 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08266247 |
線条体のGABA作働性介在細胞の多様性 | 線条体の局所回路の解析を進めていく上で、個々の神経細胞の性質を明らかにすることは非常に重要なことである。本年度は、線条体に認められる介在細胞のうち、ホールセル記録法でFS細胞およびLTS細胞と同定した細胞のシナプス結合のターゲットに違いがあるかどうかに焦点をあてて検討した。その結果、下記の事がわかった。ホールセル記録の後、バイオサイチンを注入し、DAB反応処理を経て、ひとつの神経細胞の全体像を染色し、エポン樹脂で包埋し、電子顕微鏡で神経終末を観察した。FS cellとLTS cellの神経終末が形成するシナプスの微細構造を、電子顕微鏡連続切片像3次元再構築画像解析システムを使って、シナプスの構造に関して解析を行った結果、これら2種類の介在細胞のターゲットは主に中型棘細胞の樹状突起であることと、FS cellの方がLTS cellよりもより多く細胞体にシナプスを形成していることを認めた。また、FS cellは、ターゲットの樹状突起の太さに正比例してシナプス結合の面積を変化させるという所見を認めた。いわば、FS cellはインピーダンスマッチングという概念のもとに抑制性の電流をターゲットに送り、効率的にターゲットを流れる興奮性の信号に抑制をかけているのではないかと思わせる形態的な構造をとっている。この観察結果は、ターゲットである中型有棘細胞にFScellが効率的で強力な抑制をかける可能性を形態的な局面から示唆するものである。一方、LTS cellにはこの傾向は認められず、どのような大きさの樹状突起にも一定の面積でレナプス結合を形成していた。このことから、FS cellとLTS cellは、局所神経回路において、異なる機能をもつであろうということが示唆された。線条体の局所回路の解析を進めていく上で、個々の神経細胞の性質を明らかにすることは非常に重要なことである。本年度は、線条体に認められる介在細胞のうち、ホールセル記録法でFS細胞およびLTS細胞と分類した細胞がGABAを伝達物質とするかどうかに焦点をあてて検討した。その結果、下記の事がわかった。(1)ホールセル記録の後、バイオサンチンを注入し、DAB反応処理を経て、ひとつの神経細胞の全体像を染色した。光学顕微鏡での形態面からの観察と描画を行った結果、FS細胞とLTS細胞は形態的に異なった特徴を示す事がわかった。具体的には、FS細胞の軸索は、樹状突起の分布領域よりやや広い領域に密に分布しているが、LTS細胞の軸索は樹状突起の分布領域より数倍広い領域に軸索を疎に分布させているという違いがあった。(2)電子顕微鏡観察用として、軸索の一部を切りだし、超薄切を試みた。この超薄切片を抗GABA抗体(ウサギ血清)で反応し、さらに、コロイダルゴールド(15nm径)標識抗ウサギIgG抗体で反応する。電子顕微鏡を使用して観察した結果、注入神経細胞の軸索にコロイダルゴールドが観察されたことから、これらの介在細胞の伝達物質はGABAであろうということが推測された。また、両者の軸索終末とも、抑制性神経終末の特徴である、棘突起の根元の部分や樹上突起の幹の部分にシナプス接着していたことから、これらの介在細胞は、GABAを伝達物質とする抑制型神経細胞であることが示唆された。線条体の局所回路の解析を進めていく上で、個々の神経細胞の性質を明らかにすることは非常に重要なことである。本年度は、線条体に認められる介在細胞のうち、ホールセル記録法でFS細胞およびLTS細胞と同定した細胞のシナプス結合のターゲットに違いがあるかどうかに焦点をあてて検討した。その結果、下記の事がわかった。ホールセル記録の後、バイオサイチンを注入し、DAB反応処理を経て、ひとつの神経細胞の全体像を染色し、エポン樹脂で包埋し、電子顕微鏡で神経終末を観察した。FS cellとLTS cellの神経終末が形成するシナプスの微細構造を、電子顕微鏡連続切片像3次元再構築画像解析システムを使って、シナプスの構造に関して解析を行った結果、これら2種類の介在細胞のターゲットは主に中型棘細胞の樹状突起であることと、FS cellの方がLTS cellよりもより多く細胞体にシナプスを形成していることを認めた。また、FS cellは、ターゲットの樹状突起の太さに正比例してシナプス結合の面積を変化させるという所見を認めた。いわば、FS cellはインピーダンスマッチングという概念のもとに抑制性の電流をターゲットに送り、効率的にターゲットを流れる興奮性の信号に抑制をかけているのではないかと思わせる形態的な構造をとっている。この観察結果は、ターゲットである中型有棘細胞にFScellが効率的で強力な抑制をかける可能性を形態的な局面から示唆するものである。一方、LTS cellにはこの傾向は認められず、どのような大きさの樹状突起にも一定の面積でレナプス結合を形成していた。このことから、FS cellとLTS cellは、局所神経回路において、異なる機能をもつであろうということが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-09780714 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09780714 |
光検出磁気共鳴の新しい手法の試み-ラマンヘテロダインビ-ト法によるC_<60>単結晶の励起三重項状態の分光- | 標題のラマンヘテロダインビ-ト検出のESRを行うためには、1.極低温の試料に2.単色光と3.ラジオ波を印加し、4.前方散乱光に含まれる数百MHzの微弱なビ-ト信号を検出しなければならない。本年度はこれら4つの条件のうち1から3を達成し、4については改善の後、来年度には本測定ができる状況に達した。以下に本年度の進渉状況を具体的に述べる。1.試料を極低温に冷やすために液体ヘリウムのクライオスタットを設計、制作した。さらに液体ヘリウム容器を数Torrに減圧することにより、1.3Kの超流動ヘリウムを得た。クライオスタットの液体ヘリウム容量は5リッターで、1.3Kを10時間維持できる性能を持つ。2.単色光はArイオンレーザー励起のTi:Sapphireリングレーザーを用い、波長7001000nmで単一モード発振できる。今年度、発振波長を知るための波長計、単一モード発振を確認するためのスペクトラムアナライザーを導入した。以上、1と2の条件が揃ったので予備的測定としてC_<60>単結晶の1.3Kにおける発光スペクトルを測定した。3.ラジオ波を試料に効率好く照射するために、容量可変のコンデンサーとコイルの直列共振器を制作した。共振周波数は90200MHzの範囲で変化させることができ、Q値は150であった。ラジオ波が実際試料に印加されていることは、1.3KでC_<60>単結晶のODMR信号を測定することによって確認した。4.1GHzの帯域を持つシリコン光検出器の出力の中から、ラジオ波と同じ周波数を持つビ-ト成分をスペクトラムアナライザーで検出する。現在、予備的な測定で、数mWの定常光に含まれる10_<-6>の強度のビ-ト成分を検出できることが分かった。実際の測定にはもう数十倍の感度の向上が必要であり、次年度にラジオ波の小信号増幅器を購入して本測定を行う。標題のラマンヘテロダインビ-ト検出のESRを行うためには、1.極低温の試料に2.単色光と3.ラジオ波を印加し、4.前方散乱光に含まれる数百MHzの微弱なビ-ト信号を検出しなければならない。本年度はこれら4つの条件のうち1から3を達成し、4については改善の後、来年度には本測定ができる状況に達した。以下に本年度の進渉状況を具体的に述べる。1.試料を極低温に冷やすために液体ヘリウムのクライオスタットを設計、制作した。さらに液体ヘリウム容器を数Torrに減圧することにより、1.3Kの超流動ヘリウムを得た。クライオスタットの液体ヘリウム容量は5リッターで、1.3Kを10時間維持できる性能を持つ。2.単色光はArイオンレーザー励起のTi:Sapphireリングレーザーを用い、波長7001000nmで単一モード発振できる。今年度、発振波長を知るための波長計、単一モード発振を確認するためのスペクトラムアナライザーを導入した。以上、1と2の条件が揃ったので予備的測定としてC_<60>単結晶の1.3Kにおける発光スペクトルを測定した。3.ラジオ波を試料に効率好く照射するために、容量可変のコンデンサーとコイルの直列共振器を制作した。共振周波数は90200MHzの範囲で変化させることができ、Q値は150であった。ラジオ波が実際試料に印加されていることは、1.3KでC_<60>単結晶のODMR信号を測定することによって確認した。4.1GHzの帯域を持つシリコン光検出器の出力の中から、ラジオ波と同じ周波数を持つビ-ト成分をスペクトラムアナライザーで検出する。現在、予備的な測定で、数mWの定常光に含まれる10_<-6>の強度のビ-ト成分を検出できることが分かった。実際の測定にはもう数十倍の感度の向上が必要であり、次年度にラジオ波の小信号増幅器を購入して本測定を行う。 | KAKENHI-PROJECT-06740463 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06740463 |
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