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核内に局在する新規低分子量Gタンパク質の機能解析
低分子量GTP結合蛋白質κB-RasはNF-κBの活性化を阻害する分子として報告された。κB-Rasは核内に局在し、主にGTP結合型であることが分かった。κB-Rasの変異体T18NはGTPに対する結合活性を示さず、しかもその細胞内局在は細胞質であり、κB-Rasは結合するグアニンヌクレオチドによってその細胞内局在を変化することが分かった。κB-RasおよびT18N変異体の過剰発現はTNF-κによるNF-κBの活性化を顕著に抑制し、その阻害効果はGDP結合型であるT18N変異体の方が強かった。低分子量GTP結合蛋白質κB-RasはNF-κBの活性化を阻害する分子として報告された。κB-Rasは核内に局在し、主にGTP結合型であることが分かった。κB-Rasの変異体T18NはGTPに対する結合活性を示さず、しかもその細胞内局在は細胞質であり、κB-Rasは結合するグアニンヌクレオチドによってその細胞内局在を変化することが分かった。κB-RasおよびT18N変異体の過剰発現はTNF-κによるNF-κBの活性化を顕著に抑制し、その阻害効果はGDP結合型であるT18N変異体の方が強かった。低分子量GTP結合タンパク質κB-RasはNF-κB制御分子であるIκBの結合分子として同定され、NF-κBの活性化を阻害するRasファミリーのひとつとして報告された。NF-κBは、活性化刺激によるIκBとの複合体の解消により活性化されるが、κB-RasはIκBの分解を抑制する事によってNF-κBの転写活性を抑制する事が報告された。しかし、その正否を含めて詳細なNF-κB抑制の分子機構は明らかにされていない。本研究は初年度において、κB-RasのNF-κB抑制の分子機構を解明することを目的とした。私達が作成したポリクローナル抗体を用いた解析により、κB-Rasはユビキタスに発現し、しかもその細胞内局在は核内であることが明らかとなった。κB-Rasは細胞内において主にGTP結合型であることが分かった。次にκB-Rasの変異体T18Nを作成したところ、T18N変異体はGTPに対する結合活性を示さず、しかもその細胞内局在は細胞質であり、κB-Rasは結合するグアニンヌクレオチドによってその細胞内局在を変化することが分かった。レポーターアッセイではκB-RasおよびTI8N変異体の過剰発現はTNF-αによるNF-κBの活性化を顕著に抑制した。一方、TNF-αにより誘導されるIκBの分解はκB-RasおよびT18N変異体、どちらの発現によっても弱い抑制効果を示したが、その効果はNF-κB活性化に対する阻害効果と比較して非常に低く、IκBの分解制御のみではこの阻害効果は説明できなかった。さらにp65/RelAあるいはGAL4DBD-RelAの過剰発現たよるNF-κBの転写活性を検討したところ、κB-RasおよびT18N変異体は共に強い阻害効果を示し、κB-RasがIκBの安定化よりもむしろp65/RelAなどNF-κB自身の転写活性に対して影響を及ぼしている可能性が示唆された。低分子量GTP結合タンパク質κB-RasはNF-κB制御分子であるIκBの結合分子として同定され、NF-κBの活性化を阻害するRasファミリーのひとつとして報告された。NF-κBは、活性化刺激によるIκBとの複合体の解消により活性化されるが、κB-RasはIκBの分解を抑制する事によってNF-κBの核内移行を抑制する事が報告されている。しかし、昨年度、本研究はκB-RasがIκBの安定化よりもむしろp65/RelAなどNF-κB自身の転写活性に対して影響を及ぼしている可能性を示した(論文投稿中)。κB-Rasはその結合するグアニンヌクレオチドによってその細胞内局在を変化する。GTP結合型κB-Rasの機能を明らかにするため、κB-Rasの活性に影響を与えるシグナルを探索した。その結果、がん遺伝子RasがκB-RasのGTP結合能を正に制御することを見出した。さらにがん遺伝子型RasはκB-Rasの核内への局在を促進することが示され、この結果はκB-RasがGTP結合型のときに核内への局在が促進される以前の観察とよく一致した。さらに野生型κB-RasおよびGDP結合型であるκB-Ras(T18N)変異体のがん遺伝子型Rasの発がんシグナルへの影響を検討した。野生型κB-Rasはがん遺伝子型Rasによるマウス線維芽細胞の形質転換能を著しく促進したが、T18N変異体にはそのような効果は観察されなかった。以上の結果からκB-Rasはがん遺伝子型Rasの下流シグナルに位置し、がん遺伝子型Rasのがん化シグナルにおいて重要な役割を果たしていることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-20770103
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20770103
口腔顔面痛に対する自律神経調節機能の強化-心拍変動バイオフィードバック法の試み-
われわれは口腔顔面痛の治療過程において、自律神経系の易変性が重要であることに気づき、自律神経の調節機能を強化することによって治療成績が向上すると考えた。しかしながら、現行の治療法であるSGRには治療頻度・回数などの物理的な制約がある。そこで、われわれは患者自身によるセルフケアを最大限に活用する発想に至り、心拍変動バイオフィードバック法(以下HRV-BF)に着目した。HRV-BFは心拍変動を利用する新しいバイオフィードバック法で、喘息・線維筋痛症などのストレス関連疾患(いわゆる心身症)に対する有効性が報告されつつあるが、口腔顔面痛に対して実施された報告はない。HRV-BFは非侵襲かつ簡便で、労苦を伴わないため継続的に実施可能であり、セルフセアとして最適である。さらに、HRV-BFはSGRと同様に自律神経の調節機能に作用すると考えられ、SGRの補完または代替治療として極めて有望である。しかも、新規治療マーカーであるDパラメーターを用いたHRV解析によって口腔顔面痛の治療過程における詳細な病態解析も可能である。既存のパラメーター値からDパラメーター値を算出した。これらを疾患群ー対照群間で対比し、統計学的に検討を行った。応募者らは口腔顔面痛の治療過程において自律神経系の易変性が重要であることに気付き、自律神経の調節機能を強化することによって治療成績が向上すると考えた。しかしながら、現行の治療法であるSGRには治療頻度・回数などの物理的制約がある。そこで、応募者らは患者自身によるセルフケアを最大限に活用する発想に至り、心拍変動バイオフィードバック法(以下HRV-BF)に着目した。HRV-BFは心拍変動を利用する新しいバイオフィードバック法で、喘息・線維筋痛症などのストレス関連疾患(いわゆる心身症)に対する有効性が報告されつつあるが、口腔顔面痛に対して実施された報告はない。HRV-BFは非侵襲かつ簡便で、労苦を伴わないため継続的に実施可能であり、セルフセアとして最適である。さらに、HRV-BFはSGRと同様に自律神経の調節機能に作用すると考えられ、SGRの補完または代替治療として極めて有望である。しかも、新規治療マーカーであるDパラメーターを用いたHRV解析によって口腔顔面痛の治療過程における詳細な病態解析も可能である。既存のパラメーター値からDパラメーター(D Mean HRT、D SDNN、D RMSSD、D PSI、D TP、D VLF、D LF、D HF、D LF norm、D HF norm、D LF/HF)値を算出した。これらを疾患群ー対照群間で対比し、統計学的に検討を行った。さらに、質問票として用いたVAS、CMI、TMI、SDSの結果と上記項目との相関性についても検討した。口腔顔面痛の患者に対し実施している。参加予定人数は目標に到達していないが、データの取得、解析を進めている。われわれは口腔顔面痛の治療過程において、自律神経系の易変性が重要であることに気づき、自律神経の調節機能を強化することによって治療成績が向上すると考えた。しかしながら、現行の治療法であるSGRには治療頻度・回数などの物理的な制約がある。そこで、われわれは患者自身によるセルフケアを最大限に活用する発想に至り、心拍変動バイオフィードバック法(以下HRV-BF)に着目した。HRV-BFは心拍変動を利用する新しいバイオフィードバック法で、喘息・線維筋痛症などのストレス関連疾患(いわゆる心身症)に対する有効性が報告されつつあるが、口腔顔面痛に対して実施された報告はない。HRV-BFは非侵襲かつ簡便で、労苦を伴わないため継続的に実施可能であり、セルフセアとして最適である。さらに、HRV-BFはSGRと同様に自律神経の調節機能に作用すると考えられ、SGRの補完または代替治療として極めて有望である。しかも、新規治療マーカーであるDパラメーターを用いたHRV解析によって口腔顔面痛の治療過程における詳細な病態解析も可能である。既存のパラメーター値からDパラメーター値を算出した。これらを疾患群ー対照群間で対比し、統計学的に検討を行っている。口腔顔面痛の患者に対しHRV-BFを実施し、HRV解析をすすめている。治療過程において、データの収集を行い、データ解析も併せて行っている。現在までのところ参加予定人数は目標に到達していないが、今後も引き続きデータの取得、解析を進める予定としている。われわれは口腔顔面痛の治療過程において、自律神経系の易変性が重要であることに気づき、自律神経の調節機能を強化することによって治療成績が向上すると考えた。しかしながら、現行の治療法であるSGRには治療頻度・回数などの物理的な制約がある。そこで、われわれは患者自身によるセルフケアを最大限に活用する発想に至り、心拍変動バイオフィードバック法(以下HRV-BF)に着目した。HRV-BFは心拍変動を利用する新しいバイオフィードバック法で、喘息・線維筋痛症などのストレス関連疾患(いわゆる心身症)に対する有効性が報告されつつあるが、口腔顔面痛に対して実施された報告はない。HRV-BFは非侵襲かつ簡便で、労苦を伴わないため継続的に実施可能であり、セルフセアとして最適である。さらに、HRV-BFはSGRと同様に自律神経の調節機能に作用すると考えられ、SGRの補完または代替治療として極めて有望である。しかも、新規治療マーカーであるDパラメーターを用いたHRV解析によって口腔顔面痛の治療過程における詳細な病態解析も可能である。既存のパラメーター値からDパラメーター値を算出した。
KAKENHI-PROJECT-16K11888
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K11888
口腔顔面痛に対する自律神経調節機能の強化-心拍変動バイオフィードバック法の試み-
これらを疾患群ー対照群間で対比し、統計学的に検討を行った。参加予定人数が当初の目標より少ないため、参加人数の増加を図るとともに、引き続き研究データの取得、解析を進めていく。解析したデータについては、積極的に学会発表や論文発表を行うようにする。参加予定人数が当初の目標よりまだ少ないため、新規参加者の獲得を図るとともに、引き続き研究データの取得、解析を進めていく。得られた研究データについては、引き続き積極的に学会発表や論文発表を行っていく予定である。参加人数が目標に達しなかったこと、それに伴い物品費の購入費用が当初より少なくなったことが理由として挙げられる。消耗品の使用が計画より少なかったため。次年度は新規患者分の消耗品購入や、論文発表、学会発表を積極的に行いたいと考えている。参加人数増加を図り、必要物品の購入に充てたいと考えている。
KAKENHI-PROJECT-16K11888
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K11888
内耳における遺伝子発現パターンと聴力像に関する研究
今までに難聴の原因遺伝子が数多く報告されてきた。現在、さらなる新規難聴遺伝子の探索や、それぞれの遺伝子から転写・翻訳されたタンパクが内耳のどの部分に局在するのか精力的な研究がつづけられている。しかしながら、遺伝子変異の表現型である難聴には高音漸傾型や低音障害型など様々なパターンがあり、遺伝子変異によって特徴的な型の難聴が引き起こされるメカニズムは不明である。おそらく遺伝子発現パターンと聴力像に関連性があると考えられる。本研究ではマウスを用いて、内耳の遺伝子発現パターンをレーザーマイクロダイセクションとReal-Time PCR解析およびDNAマイクロアレイを用いて内耳における遺伝子発現パターンを研究した。今までに難聴の原因遺伝子が数多く報告されてきた。現在、さらなる新規難聴遺伝子の探索や、それぞれの遺伝子から転写・翻訳されたタンパクが内耳のどの部分に局在するのか精力的な研究がつづけられている。しかしながら、遺伝子変異の表現型である難聴には高音漸傾型や低音障害型など様々なパターンがあり、遺伝子変異によって特徴的な型の難聴が引き起こされるメカニズムは不明である。おそらく遺伝子発現パターンと聴力像に関連性があると考えられる。本研究ではマウスを用いて、内耳の遺伝子発現パターンをレーザーマイクロダイセクションとReal-Time PCR解析およびDNAマイクロアレイを用いて内耳における遺伝子発現パターンを研究した。聴力像に特徴のある難聴において遺伝子の発現パターンと聴力像がどのように関連性があるかについて研究を進めている。今年度は高音障害型の難聴を呈す老人性難聴のモデルマウスであるSAM(Scenescens Accelerated Mouse)を用いて高音障害型の感音難聴に高発現する遺伝子について検討した。マウスを麻酔下におき,マウスを断頭して内耳を摘出した後,内耳全体からmRNAを抽出した。抽出されたmRNAを用いてマイクロアレイによる解析を行い,SAMの内耳に高発現している遺伝子を同定した。マイクロアレイの結果では週齢を重ねたSAMマウスではいくつかの遺伝子が発現上昇する所見を得ることができた。SAMマウスは高音障害型の感音難聴を示すため,これらの遺伝子は高音障害型の難聴に関係している可能性があると考えた。現在マイクロアレイで得られた結果をReal-Time PCRをもちいて正確に検証している。また,これらの遺伝子が高音を感受する内耳の基底回転に多く発現している遺伝子であるかどうかを検証するために,レーザーマイクロダイセクションを使用して実験を行っている。マウスに対して4%パラボルムアルデヒドによる経鼓膜及び経心灌流固定を行って側頭膏を固定する。内耳を摘出した後,OCTコンパウンドで包埋して凍結切片を作成する。作成した切片をレーザーによって内耳の回転ごと,部位ごとに切り出しmRNAを抽出している。レーザーによって切り出されたサンプルは大変微量なために,抽出できるmRNAは極短時間に分解されてしまい高度な技術を必要とされる。この手技が確立できれば難聴の解明に大きな貢献をすることができる。聴力像に特徴のある難聴において遺伝子の発現パターンと聴力像が、どのように関連性があるのかについて研究を進めている。本年度は高音障害型の感音難聴を来たす老人性難聴にスポットをあてて研究を進めた。老人性難聴のモデルマウスであるSAM(Senesence Accelerated Mouse)を実験動物とした。昨年度のマイクロアレイを用いた解析により、老人性難聴との関連が疑われた3つの遺伝子について、今年度はさらに詳細な検討を加えた。SAMには老化促進を示すSAMP1系統と、それに対するコントロールとして用いられ、老化促進を示さないSAMR1という系統がある。この2つの系統の8週齢と20週齢のそれぞれ4群の間で、この3つの遺伝子の発現量の変化をReal time PCRを用いて検証し結果を得た。現在この結果について考察を行なっている最中である。また、マウスにキシラジンとケタミンで全身麻酔を行なった後に、聴力をABR(Acoustic Brainstem Responses)を用いて評価した。トーンバーストの刺激で4, 8, 16, 32kHzの周波数で聴力検査を行った。20週齢のSAMはコントロールと比較すると、16KHzの高音域で聴力悪化を生じ始めていることを確認することができた。40週齢から急激な老人性難聴を示すと報告されているSAMP1であるが、20週齢という時期は老人性難聴の原因となる遺伝子発現がスタートする時期であることが示唆された。現在SAMP1、SAMR1の8週齢と20週齢の計4群を比較するために、内耳からRNA抽出して、エクソンアレイで網羅的に遺伝子発現を把握するとともに、レーザーマイクロダイセクションにより、部位を摘出しRNA抽出と発現量評価を行っている。内耳における遺伝子の発現パターンと聴力像が、どのように関連性があるのかを明らかにすることを目的に、内耳における遺伝子発現パターンの解析を行っている。本年度は老人性難聴にスポットをあてて研究を進めた。老人性難聴のモデルマウスであるSAM(Senesence Accelerated Mouse)を実験動物とした。SAMには老化促進を示すSAM-P1系統と、それに対するコントロールとして用いられ、老化促進を示さないSAM-R1という系統がある。この2つの系統の8週齢と20週齢のそれぞれ4群の間で、この内耳における遺伝子の発現量の変化をマイクロアレイを用いて検討した。
KAKENHI-PROJECT-19791202
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19791202
内耳における遺伝子発現パターンと聴力像に関する研究
今年度は、以前に用いていたスライドグラスアレイとは異なり、全遺伝子が搭載されているアレイを用いたため、全遺伝子の転写の変異をモニターすることが可能となり、新たな知見が多数得られており、現在この結果について考察を行なっている最中である。また、マウスにキシラジンとケタミンで全身麻酔を行なった後に、聴力をABR(Acoustic Brainstem Responses)を用いて評価した。トーンバーストの刺激で4,8,16,32kHzの周波数で聴力検査を行った。20週齢のSAM-P1はコントロールと比較すると、16KHzの高音域で聴力悪化を生じ始めていることを確認することができた。40週齢から急激な老人性難聴を示していた。現在SAM-P1、SAM-R1の8週齢と20週齢の計4群を比較するために、内耳からRNA抽出して、エクソンアレイで網羅的に遺伝子発現を把握するとともに、レーザーマイクロダイセクションにより、部位を摘出しRNA抽出と発現量評価を行い、高音域だけで発現量が低下する遺伝子を解析している。
KAKENHI-PROJECT-19791202
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19791202
デュアルフェライトフェーズ型広GHz帯対応電磁波吸収体の開発
1.目的衛星通信、移動通信の発達により電磁波障害が社会的問題となり、GHz帯域に対応できる優れた電磁波吸収体が要求されている。本研究ではM型相と結晶構造、磁気的性質が類似しているが異なる共鳴周波数をもつW型相を、M型相とともに出現させた混晶組織からなる焼結体を作製し、両相の自然共鳴を有効利用することにより薄型で広GHz帯域で機能する電磁波吸収体の開発を目的とする。2.方法試料組成は置換元素をSnMnとしたBaZn_<2y>Fe_<12-x+4y>(Sn_<0.5>Mn_<0.5>)_xO_<19+8y>(1.2≦x≦2.0,0.25≦y≦0.75)とし、焼成温度T=1473K1573Kで通常のセラミックス焼結法にて作製した。焼結後トロイダル状に加工した試料を同軸管中に挿入し、HP8720Dネットワークアナライザを用いてS_<11>およびS_<21>パラメータを測定した。これらの値より複素比誘電率ε_r、複素比透磁率μ_rおよびR.L.を算出して電磁波吸収特性を評価した。また相の同定にはXRDを用いた。3.結果(1)x=1.2,y=0.5と固定しT=1473K1573Kで焼成したBaZn_2Fe_<12.8>(Sn_<0.5>Mn_<0.5>)_<1.2>O_<23>試料において、MおよびW相からなる2相混晶試料が得られ、μ_r^I、μ_r^<II>の周波数分散に2つのピークが観察された。これらのうち、T=1473K,1523Kの試料でR.L.≦-20dBとなり、ΔFはそれぞれ2.2GHz,0.7GHzなる値を示した。(2)T=1473Kと固定し、MおよびW相の配合比(y)を0.250.75と変化させたところ、整合厚さ(d_m)の値はほとんど変化しないが、ΔFはy=0.5で極大値を示した。(3)2相混晶フェライト試料は、M型単相試料より広帯域化を示すことから2相混晶フェライトにより、薄型かつ広帯域特性を有する電磁波吸収体の作製が可能と考えられる。1.目的衛星通信、移動通信の発達により電磁波障害が社会的問題となり、GHz帯域に対応できる優れた電磁波吸収体が要求されている。本研究ではM型相と結晶構造、磁気的性質が類似しているが異なる共鳴周波数をもつW型相を、M型相とともに出現させた混晶組織からなる焼結体を作製し、両相の自然共鳴を有効利用することにより薄型で広GHz帯域で機能する電磁波吸収体の開発を目的とする。2.方法試料組成は置換元素をSnMnとしたBaZn_<2y>Fe_<12-x+4y>(Sn_<0.5>Mn_<0.5>)_xO_<19+8y>(1.2≦x≦2.0,0.25≦y≦0.75)とし、焼成温度T=1473K1573Kで通常のセラミックス焼結法にて作製した。焼結後トロイダル状に加工した試料を同軸管中に挿入し、HP8720Dネットワークアナライザを用いてS_<11>およびS_<21>パラメータを測定した。これらの値より複素比誘電率ε_r、複素比透磁率μ_rおよびR.L.を算出して電磁波吸収特性を評価した。また相の同定にはXRDを用いた。3.結果(1)x=1.2,y=0.5と固定しT=1473K1573Kで焼成したBaZn_2Fe_<12.8>(Sn_<0.5>Mn_<0.5>)_<1.2>O_<23>試料において、MおよびW相からなる2相混晶試料が得られ、μ_r^I、μ_r^<II>の周波数分散に2つのピークが観察された。これらのうち、T=1473K,1523Kの試料でR.L.≦-20dBとなり、ΔFはそれぞれ2.2GHz,0.7GHzなる値を示した。(2)T=1473Kと固定し、MおよびW相の配合比(y)を0.250.75と変化させたところ、整合厚さ(d_m)の値はほとんど変化しないが、ΔFはy=0.5で極大値を示した。(3)2相混晶フェライト試料は、M型単相試料より広帯域化を示すことから2相混晶フェライトにより、薄型かつ広帯域特性を有する電磁波吸収体の作製が可能と考えられる。[目的]衛星通信,移動通信の発達により電磁波障害が社会的問題となり,GHz帯域に対応できる優れた電磁波吸収体が要求されている.最近,我々はM型フェライト磁石化合物の自然共鳴に着目し,GHz帯で対応できる電磁波吸収体を開発した.しかしながら焼結体では厚さは薄くなるが電磁波吸収を示す帯域幅が狭いという問題点を残している.
KAKENHI-PROJECT-13555183
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13555183
デュアルフェライトフェーズ型広GHz帯対応電磁波吸収体の開発
本研究ではM型相と結晶構造,磁気的性質が類似しているが異なる共鳴周波数をもつW型相を,M型相とともに出現させた混晶組織からなる焼結体を作製し,両相の自然共鳴を有効利用することにより薄型で広GHz帯域で機能する電磁波吸収体の開発を目的とする.期待される研究成果としては(1)W型フェライト化合物が新たにGHz帯域電磁波吸収体の候補となること,(2)M型+W型混晶組織の制御により焼結体でも薄型・広GHz帯域対応の電磁波吸収体が開発できること,が挙げられ,本年度は前者を目的として種々の元素イオンで置換したW型フェライト化合物単相焼結体を作製し,電磁波吸収特性を調べた.[結果]1)SnMn,ZrMn置換した試料においてZn_2-W型フェライト相が得られ,置換量とともに磁化の値・キュリー温度・共鳴周波数frが低下した.2)frの最小値はSnMn置換試料で1.9GHz,ZrMn置換試料で2.1GHzであった.3)SnMn置換試料において反射損失R.L.〈-20dBを示し,整合周波数fmも3・5GHzから15・5GHzの間で変化した.4)以上よりW型フェライトもGHz帯域電磁波吸収体として用いることができることがわかった.1.目的衛星通信、移動通信の発達により電磁波障害が社会的問題となり、GHz帯域に対応できる優れた電磁波吸収体が要求されている。本研究ではM型相と結晶構造、磁気的性質が類似しているが異なる共鳴周波数をもつW型相を、M型相とともに出現させた混晶組織からなる焼結体を作製し、両相の自然共鳴を有効利用することにより薄型で広GHz帯域で機能する電磁波吸収体の開発を目的とする。2.方法試料組成は置換元素をSnMnとしたBaZn_<2y>Fe_<12-x+4y>(Sn_<0.5>Mn_<0.5>)_xO_<19+8y>(1.2≦x≦2.0,0.25≦y≦0.75)とし、焼成温度T=1473K1573Kで通常のセラミックス焼結法にて作製した。焼結後トロイダル状に加工した試料を同軸管中に挿入し、HP8720Dネットワークアナライザを用いてS_<11>およびS_<21>パラメータを測定した。これらの値より複素比誘電率ε_r、複素比透磁率μ_rおよびR.L.を算出して電磁波吸収特性を評価した。また相の同定にはXRDを用いた。3.結果(1)x=1.2,y=0.5と固定しT=1473K1573Kで焼成したBaZn_2Fe_<12.8>(Sn_<0.5>Mn_<0.5>)_<1.2>O_<23>試料において、MおよびW相からなる2相混晶試料が得られ、μ_r′、μ_r′′の周波数分散に2つのピ-クが観察された。これらのうち、T=1473K,1523Kの試料でR.L.≦-20dBとなり、ΔFはそれぞれ2.2GHz,0.7GHzなる値を示した。(2)T=1473Kと固定し、MおよびW相の配合比(y)を0.250.75と変化させたところ、整合厚さ(d_m)の値はほとんど変化しないが、ΔFはy=0.5で極大値を示した。(3)2相混晶フェライト試料は、M型単相試料より広帯域化を示すことから2相混晶フェライトにより、薄型かつ広帯域特性を有する電磁波吸収体の作製が可能と考えられる。
KAKENHI-PROJECT-13555183
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13555183
光・超音波の統合及び光の位相空間制御による高機能光音響イメージングシステムの開発
光音響イメージング技術は、生体内の光の散乱、センサによる測定点や視野角の制限、光の位相情報の欠落などが原因で、解像度、画質、定昇性の低下を招いている。そこで、光音響メーシンクの医療適用における、これらの問題を克服するため、超音波と光計測を統合した計測法、および光の位相情報を利用した計測系に基づく光音響イメージング法の開発と、実証実験による有効性の検証を行う。今年度は以下の項目について検討した。1.光のスペックル制御による無欠陥画像の生成リニア超音波プローブで撮像した光音響像では、照射光量が十分であれば、深さcmオーダの計測が可能であるが、通常の一様照明の場合、吸収体構造とセンサ視野角の制限により、光音響像の一部が欠損することがある。そこで、新たな照射法として多点のスペックルを変化させる照明を用いることで、深部での欠損の少ない形状情報を抽出する方法を検討した。シミュレーションおよび屈曲したワイヤのファントムを用いた実験により、提案手法により視認性が向上することが実証された。2.超音波像を用いた光超音波像クラッタノイズの除去臨床計測では、体表近くの照射光の散乱が強いと、断層面以外の吸収体からの光音響信号がプローブに受信され、断層像に重畳しクラッタノイズとして画像劣化の原因となる。このクラッタ除去として、超音波像との光超音波像との比較により実際の吸収体とクラッタを識別する方法と、光音響信号のスペクトルにより識別する方法を考案した。ファントムを用いて実験により、各手法で適用可能な条件が異なるがクラッタの識別やクラッタの抑圧が可能であることが検証され、その内容はレーザー学会等で発表した。光のスペックル制御による無欠陥画像の生成に関しては、シミュレーション解析に加えて、実際に実験システムを構築してファントム計測により有効性を示すことができた。また、クラッタノイズの除去法についても、クラッタを発生するファントムを用いて実験し、クラッタ抑圧の有効性を実証した。これらを含め、前年までに得られたの成果は、5件の論文ならびに10件以上の国内外の会議、及び招待講演で発表しており、次年度以降に計画している臨床適用の検証に進む見通しを得ることができた。現在まで、当初の研究計画に沿って順調に進展しており、今後も研究計画に従って進める予定である。一方で、最終年度の課題に挙げている臨床応用に向けた実証実験に関しては、予算規模と実施体制を考慮して実施内容を調整する計画である。光と超音波技術を融合した光音響イメージングは、他のモダリティでは描出が困難な、微細ながんの新生血管を描出し早期診断に有用であることや、腫瘍血管の酸素飽和度を評価でき、良悪性の鑑別診断が可能になることが期待されている。しかし、従来の光音響イメージングの医療適用においては、深部計測やデータ計測上の制限を受けた場合に、解像度、画質、定量性などの機能の低下が問題となる。これらを克服するため、超音波と光計測を統合した計測法、および光の位相情報を利用した計測系に基づく光音響イメージング法を開発し実証実験による有効性の検証を行う。このため、以下の項目について検討した。(1)角度制限・スパース計測下での高画質光音響像再構成法アルゴリズムの開発UBP法はセンサ素子が機密で対象を取り囲む理想的な場合は、高画質な画像が再構成できるが、実際の臨床では、角度制限やスバースな受信アレイセンサのため画質が低下する。そこで、compressed sensingの手法を用いて、このような臨休での計測条件下でも高面質が得られる光音響像の再構成アルゴリズムを検討した。シミュレーション及びファントム、さらにin vivo計測を行い、スパースなセンサでもアーチファクトを抑え、画質向上を図ることが可能なことを実証した。(2)超音波と光音響の総合による高精度・高機能化原理的には光音響用のセンサで超音波エコー像を得ることができ、両画像を統合したマルチモーダルな診断が可能になる。しかし、実際には、双方に適したブローブが用いられておらず、両者の統合が十分に図られていない。そこで、半期型の光音響センサを用いて、空間的に走査しながら、光音響信号の計測および超音波パルスの送受信を行うことで、双方とも仮想的に稠密に信号を受信する方式を試みた。その結果、同一センサで、光音響像と超音波像ともに高画質な画像が得られることを示した。スパース計測下での高画質化については、compressed sensingの方法の有効性をシミュレーションで示しただけでなく、実際の計測システムを構築して、ファントムとin vivoの計測データに対してその有効性を実証し、その成果をまとめて国際論文誌に投稿することができた。また、超音波と光音響の統合においては、ワイヤーや、腫瘍ファントムを用いた実験で画像を再構成し、リニアアレイでの画像での画質に近い超音波像を得ることができ、当初の計画以上の進展が得られたと判断する。光音響イメージング技術は、生体内の光の散乱、センサによる測定点や視野角の制限、光の位相情報の欠落などが原因で、解像度、画質、定昇性の低下を招いている。そこで、光音響メーシンクの医療適用における、これらの問題を克服するため、超音波と光計測を統合した計測法、および光の位相情報を利用した計測系に基づく光音響イメージング法の開発と、実証実験による有効性の検証を行う。今年度は以下の項目について検討した。(1)超音波での動き補正による光音響画像の高画質化
KAKENHI-PROJECT-16H01856
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H01856
光・超音波の統合及び光の位相空間制御による高機能光音響イメージングシステムの開発
光音響においては、多波長での酸素飽和度の計測や、計測データ数を増やすため、複数回のレーザ照射によるデータ計測を必要とする場合かあり、その際の組織の動きがアーチフファクトを生じ解像度や定量性の低下につながる。このため、超音波エコーで光音響と同時相得た信号を用いて動きを補正した。その結果、補正前には、画像のボケにより細い血管の識別が困難な場合も補正により明瞭になるなど、光音響像の高画質化を図ることができた。2.光の位相空間制御による高機能イメージング手法の問発征来の光音響のように、光照射をエネルギー源として捉えるだけに留めずに、光の位相制御による高機能な光音響イメージンク法の開発を検討する、今年度は、照射光の位相を制御し所望の位置で散乱光を集束させることでSNを上け、深部での高解像度化を図ることを試みた。シミュレーションと、ファントム実験において有効性が示され、その内容は主要な国際誌Photoacousticsに掲載された。光の位相空間制御による高機能イメージング手法の開発においては、シミュレーションと、ファントム実験において有効性が示され、その内容は主要な国際誌Photoacousticsに掲載された。光音響イメージング技術は、生体内の光の散乱、センサによる測定点や視野角の制限、光の位相情報の欠落などが原因で、解像度、画質、定昇性の低下を招いている。そこで、光音響メーシンクの医療適用における、これらの問題を克服するため、超音波と光計測を統合した計測法、および光の位相情報を利用した計測系に基づく光音響イメージング法の開発と、実証実験による有効性の検証を行う。今年度は以下の項目について検討した。1.光のスペックル制御による無欠陥画像の生成リニア超音波プローブで撮像した光音響像では、照射光量が十分であれば、深さcmオーダの計測が可能であるが、通常の一様照明の場合、吸収体構造とセンサ視野角の制限により、光音響像の一部が欠損することがある。そこで、新たな照射法として多点のスペックルを変化させる照明を用いることで、深部での欠損の少ない形状情報を抽出する方法を検討した。シミュレーションおよび屈曲したワイヤのファントムを用いた実験により、提案手法により視認性が向上することが実証された。2.超音波像を用いた光超音波像クラッタノイズの除去臨床計測では、体表近くの照射光の散乱が強いと、断層面以外の吸収体からの光音響信号がプローブに受信され、断層像に重畳しクラッタノイズとして画像劣化の原因となる。このクラッタ除去として、超音波像との光超音波像との比較により実際の吸収体とクラッタを識別する方法と、光音響信号のスペクトルにより識別する方法を考案した。ファントムを用いて実験により、各手法で適用可能な条件が異なるがクラッタの識別やクラッタの抑圧が可能であることが検証され、その内容はレーザー学会等で発表した。光のスペックル制御による無欠陥画像の生成に関しては、シミュレーション解析に加えて、実際に実験システムを構築してファントム計測により有効性を示すことができた。また、クラッタノイズの除去法についても、クラッタを発生するファントムを用いて実験し、クラッタ抑圧の有効性を実証した。これらを含め、前年までに得られたの成果は、5件の論文ならびに10件以上の国内外の会議、及び招待講演で発表しており、次年度以降に計画している臨床適用の検証に進む見通しを得ることができた。
KAKENHI-PROJECT-16H01856
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身体の清潔援助技術が及ぼす生理・心理的影響
【研究目的】術後の全身シャワー浴が及ぼす生体負担について,エネルギー代謝量,血圧,心拍数,鼓膜温を指標に,術前のシャワー浴と術後初回シャワー浴の比較,および対象者と同一年代の健康者をコントロールにして比較検討した。【研究方法】呼吸器・循環器疾患を有しない婦人科領域の開腹術を受ける患者6名を対象に,術前のシャワー浴時(術前患者群)と術後8日目以降の術後初回全身シャワー浴時(術後患者群)に測定した。測定ポイントは,安静仰臥位30分後(安静),シャワー浴後病室に戻りベッドに仰臥位になった直後(直後)、および20分後(20分後)とした。シャワー浴は病棟の浴室で実施し,その方法は洗髪を行わないことのみを統一し,その他の方法は対象者の習慣に準じ,対象者は心地よいと感じるペースで行った。コントロールの健康な女性7名(平均年齢40.57±3.57歳)(健常者群)の測定は,実習室内の浴室を使用し,測定内容およびシャワー浴の方法は対象者と同一にして実施した。【結果・考察】術前患者群は健常者群と同じような平均値推移および各測定ポイント間での変化量を示し,両群間に差異はなかった。また,術後患者群の平均値推移においても術前患者群と同じ推移を示した。術後患者群の各測定ポイント間の変化量では,心拍数の安静時から直後にかけての増加量が術前患者群に比べ有意に少なかったが,このことは,シャワー浴動作に伴う運動量が術後患者群で減少していたことに起因していると考えられ,また心拍数以外の変化量は両群間に有意差が認められず,術後患者群は変化量においても術前患者群と同じ傾向を示す群であることが推察された。したがって術後8日目を経過した時点での初回全身シャワー浴は,術前のシャワー浴時と差違のない負荷であることが示唆され,創部の保護を考慮すれば術後8日目よりも早い時期にシャワー浴を実施することが可能と考えられる。【研究目的】術後の全身シャワー浴が及ぼす生体負担について,エネルギー代謝量,血圧,心拍数,鼓膜温を指標に,術前のシャワー浴と術後初回シャワー浴の比較,および対象者と同一年代の健康者をコントロールにして比較検討した。【研究方法】呼吸器・循環器疾患を有しない婦人科領域の開腹術を受ける患者6名を対象に,術前のシャワー浴時(術前患者群)と術後8日目以降の術後初回全身シャワー浴時(術後患者群)に測定した。測定ポイントは,安静仰臥位30分後(安静),シャワー浴後病室に戻りベッドに仰臥位になった直後(直後)、および20分後(20分後)とした。シャワー浴は病棟の浴室で実施し,その方法は洗髪を行わないことのみを統一し,その他の方法は対象者の習慣に準じ,対象者は心地よいと感じるペースで行った。コントロールの健康な女性7名(平均年齢40.57±3.57歳)(健常者群)の測定は,実習室内の浴室を使用し,測定内容およびシャワー浴の方法は対象者と同一にして実施した。【結果・考察】術前患者群は健常者群と同じような平均値推移および各測定ポイント間での変化量を示し,両群間に差異はなかった。また,術後患者群の平均値推移においても術前患者群と同じ推移を示した。術後患者群の各測定ポイント間の変化量では,心拍数の安静時から直後にかけての増加量が術前患者群に比べ有意に少なかったが,このことは,シャワー浴動作に伴う運動量が術後患者群で減少していたことに起因していると考えられ,また心拍数以外の変化量は両群間に有意差が認められず,術後患者群は変化量においても術前患者群と同じ傾向を示す群であることが推察された。したがって術後8日目を経過した時点での初回全身シャワー浴は,術前のシャワー浴時と差違のない負荷であることが示唆され,創部の保護を考慮すれば術後8日目よりも早い時期にシャワー浴を実施することが可能と考えられる。研究目的:看護職者には患者のニードと身体の状態にあった適切な清潔の援助のための判断が求められるが,看護場面における患者の清潔動作が生体に及ぼす影響についてのデータはまだ十分に蓄積されていない.そこで基本的データを得る目的で,今回は三つの清潔動作を取り上げて,生理的変化と快適感を測定した.方法:予備実験で条件設定等を試行後,平成10年9月30日10月24日の間,8名の健康成人女子を対象に,洗髪動作を伴わない入浴,シャワー浴(以下,s浴),ベッド上での全身清拭(以下,清拭)のそれぞれを別の日に実施時間帯を一定にして行い,それぞれの清潔動作前安静時(以下,前),実施直後(以下,直後),30分,60分の時点で,鼓膜温,心拍数,血圧,代謝量,全身の皮膚温,足背の皮膚血流量を測定した.測定場所は,入浴とs浴は本学の実習室内の浴室,清拭は本学の恒温度湿室を用いた.また,測定の各時点において被験者から快適感も聞き取った.
KAKENHI-PROJECT-10672211
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10672211
身体の清潔援助技術が及ぼす生理・心理的影響
結果:鼓膜温平均値は,入浴・s浴では安静時に比べ直後で上昇し,その後下降するが,清拭では直後はほとんど前値に比べ変化なくその後上昇した.心拍数平均値は,入浴・s浴では前値に比べ直後上昇し,その後下降するが,清拭では直後も前値とほぼ変わらずその後下降した.代謝量平均値は,三つの清潔動作いずれも前値に比べ直後で増加しているがその後は減少しており,その中でも清拭においては直後の増加量は僅かであった.全身平均皮膚温の平均値は,前に比べ直後で上昇し,その後下降しているが,s浴では前と直後の変化は無く,その後上昇,また清拭においても前に比べ直後では下降し,その後上昇していた.足背の皮膚血流量は,入浴では安静時に比べ直後で急上昇し,その後は緩やかに徐々に下降するが,60分でも前値より高い値を示しているのに対し,s浴・清拭では直後は僅かに減少し,その後緩やかに上昇した.【研究目的】術前,術後の全身シャワー浴時の生体負担について,エネルギー代謝量・血圧・心拍数・鼓膜温を指標に検討した.【研究方法】呼吸器・循環器疾患を有しない婦人科領域の開腹術を受ける患者6名を対象に,術前のシャワー浴時(術前群)と,術後8日目以降の術後初回全身シャワー浴時(術後群)に測定した.測定ポイントは,安静仰臥位30分後,シャワー浴後病室のベッドに仰臥位を取った直後および20分後とした.シャワー浴は病棟の浴室を使用し洗髪は含まなかった.シャワー浴の方法は対象者の習慣に準じ,対象者が心地よいと感じるペースで実施した.【結果・考察】代謝量の平均値推移は,両群ともに安静時から直後にかけて増加し20分後には減少した.術後群の安静時と直後,両群の直後と20分後の各平均値間に有意差が認められた(P<0.050.001).収縮期血圧は,両群ともに安静時から直後にかけて上昇し20分後には低下した.このうち術前群の安静時と直後の平均値間に有意差が認められた(P<0.01).心拍数は両群ともに安静時から直後にかけて増加し20分後には減少した.このうち術前群の安静時と直後の平均値間に有意差が認められた(P<0.05).鼓膜温も両群ともに安静時から直後にかけて増加し20分後には減少した.このうち術後群の直後と20分後の平均値間に有意差が認められた(P<0.001).次に,各測定ポイント間の変化量を2群間で比較してみると,心拍数の安静時から直後にかけての増加数が術前群に比べ術後群で有意に少なかった(P<0.05)が,これは術後の運動量の減少に起因していると考えられ,他の測定項目においては2群間に有意差は認められなかった.以上より,術前群と術後群は同じ平均値推移を示しており,心拍数以外の変化量には両群間に有意差が認められず,術前群と術後群のシャワー浴による負荷には差異の無いことが示唆された.【研究目的】前回,婦人科疾患患者を対象に術後全身シャワー浴が及ぼす生体負担について検討し報告したが,今回はそれらのコントロール群として健康人を対象に,全身シャワー浴が及ぼす生体負担について,エネルギー代謝量,血圧,心拍数,鼓膜温を指標に検討した.【研究方法】健康な女性7名(平均年齢40.57±3.57歳)を対象に,実習室内の浴室を使用し実施した.シャワー浴の方法は,洗髪を実施しないことのみ統一し,対象者の習慣に準じ,心地よい状態で行うことを前提とした.測定ポイントは安静仰臥位30分後(安静時),シャワー浴直後および20分後とした.【結果】1)エネルギー代謝量は,安静時に比べ直後は有意に増加したが(p<0.01),20分後は直後に比べ有意に減少した(p<0.001).2)収縮期血圧は,安静時に比べ直後で有意に上昇し(p<0.001),直後から20分後にかけては有意に下降した(p<0.05).拡張期血圧は安静時に比べ直後,20分後と除々に下降したが有意な変化ではなかった.3)心拍数および鼓膜温の平均値推移には有意な変化は示されなかった.【考察】
KAKENHI-PROJECT-10672211
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認知症発生における重点課題の解明・リスク予測の開発に関する疫学研究
認知症の予防のためには、認知症発生における重点課題の把握(認知症発生への寄与割合が高い危険因子を解明すること)、認知症の早期発見(リスク予測モデルの開発)が重要である。本研究の目的は、1)認知症の危険因子の解明、2)認知症における集団寄与危険割合の高い危険因子の解明、3)認知症発生のリスク予測モデルの検証、の3点である。以上の目的を達成するために、まず申請者らが実施しているコホート研究や先行研究の系統的レビューによって関連の強い危険因子を特定し、特定された危険因子の集団寄与危険割合を算出することを計画した。なお、研究代表者の国外機関への異動により、当研究課題は研究期間1年を残し中途終了を余儀なくされ、3)認知症発生のリスク予測モデルの検証は完遂できなかったが、平成30年度には下記の1と2を実施した。1系統的レビュー:認知症発生の代表的な危険因子を把握することを目的として、文献データベース「Pubmed」を用いて認知症発生の危険因子に関する研究報告(メタアナリシスを含むシステマティックレビューの論文)の系統的レビューを実施し、約230報の論文データの抽出(エビデンステーブルの作成)が完了した。2日本人高齢者における危険因子の集団寄与危険割合:欧米の先行研究で特に集団寄与危険割合が高いとされる危険因子について、「大崎コホート研究」のデータを用いて、認知症発生に対する集団寄与危険割合を検討した。その結果、7個のリスク因子(糖尿病、高血圧、肥満、身体不活動、心理的苦痛、喫煙、低学歴)が認知症発生に対して相当な影響を与えることが示唆された。認知症の予防のためには、認知症発生における重点課題の把握(認知症発生への寄与割合が高い危険因子を解明すること)、認知症の早期発見(リスク予測モデルの開発)が重要である。本研究の目的は、1)認知症の危険因子の解明、2)認知症における集団寄与危険割合の高い危険因子の解明、3)認知症発生のリスク予測モデルの検証、の3点である。以上の目的を達成するために、平成29年度には下記の1と2を実施した。1独自のコホート研究による危険因子の検討:申請者らが実施している前向きコホート研究「大崎コホート研究」(解析対象者:約8000人)のデータセットを用い、代表的な危険因子(糖尿病、高血圧、肥満、喫煙、低身体活動、心理的ストレス、教育歴)と認知症発生との関連について計画した解析作業を完了できた。また個々の危険因子に対する集団寄与危険割合を算出するとともに、Joint effect(危険因子を組み合わせた場合の集団寄与危険割合)に関する解析作業を完了できた。当初の計画通り、目的に挙げた「1)認知症の危険因子の解明」と「2)認知症における集団寄与危険割合の高い危険因子の解明」の検討ができるよう、上記「1独自のコホート研究による危険因子の検討」と「2先行研究(文献情報)の収集」の作業を進めることができた。特に「1独自のコホート研究による危険因子の検討」については、平成31年度までに取組みたいと考えていた「Joint effectの検討」も実施することができ、研究報告(学術論文の投稿など)に向けた準備を進めているところである。以上のように、おおむね予定通り順調に進展していると考えられる。認知症の予防のためには、認知症発生における重点課題の把握(認知症発生への寄与割合が高い危険因子を解明すること)、認知症の早期発見(リスク予測モデルの開発)が重要である。本研究の目的は、1)認知症の危険因子の解明、2)認知症における集団寄与危険割合の高い危険因子の解明、3)認知症発生のリスク予測モデルの検証、の3点である。以上の目的を達成するために、まず申請者らが実施しているコホート研究や先行研究の系統的レビューによって関連の強い危険因子を特定し、特定された危険因子の集団寄与危険割合を算出することを計画した。なお、研究代表者の国外機関への異動により、当研究課題は研究期間1年を残し中途終了を余儀なくされ、3)認知症発生のリスク予測モデルの検証は完遂できなかったが、平成30年度には下記の1と2を実施した。1系統的レビュー:認知症発生の代表的な危険因子を把握することを目的として、文献データベース「Pubmed」を用いて認知症発生の危険因子に関する研究報告(メタアナリシスを含むシステマティックレビューの論文)の系統的レビューを実施し、約230報の論文データの抽出(エビデンステーブルの作成)が完了した。2日本人高齢者における危険因子の集団寄与危険割合:欧米の先行研究で特に集団寄与危険割合が高いとされる危険因子について、「大崎コホート研究」のデータを用いて、認知症発生に対する集団寄与危険割合を検討した。その結果、7個のリスク因子(糖尿病、高血圧、肥満、身体不活動、心理的苦痛、喫煙、低学歴)が認知症発生に対して相当な影響を与えることが示唆された。「1独自のコホート研究による危険因子の検討」については、平成29年度で得られた研究成果に基づき、学会発表や論文執筆を順次実施する予定である。また「2先行研究(文献情報)の収集」については、得られた文献情報のエビデンステーブルを平成30年度中に完成させたいと考えている。これらの作業を通じて、次なる研究目標として日本人における代表的な危険因子の集団寄与危険割合を算出できるよう、平成31年度までに必要となるデータを準備していきたい。また平成30年度には「3)認知症発生のリスク予測モデルの検証」として、「大崎コホート研究」のデータで妥当性検証が実施できるよう、データ解析(変数作成など)の準備作業を実施予定である。
KAKENHI-PROJECT-17K15844
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K15844
超深海に固有の生物相はあるか?:海溝周辺の小型底生生物群集の空間変異
水深6000mを超える超深海帯に属する海溝の生物相を明らかにすべく,千島海溝と琉球海溝,それぞれの周辺の大陸斜面や大洋底の底生カイアシ類の群集組成の比較を行った.千島,琉球,両海域とも水深に沿って群集組成が変化した.一方,両海域の大陸斜面間の群集の類似度は高いが,海溝間,大洋底間の類似度は低かった.水深の深い場所に位置するこれらの地形は島嶼などにより分断される傾向が高いため,各海域の群集の独立性が高くなっていると考えられる.水深6000mを超える超深海帯に属する海溝の生物相を明らかにすべく,千島海溝と琉球海溝,それぞれの周辺の大陸斜面や大洋底の底生カイアシ類の群集組成の比較を行った.千島,琉球,両海域とも水深に沿って群集組成が変化した.一方,両海域の大陸斜面間の群集の類似度は高いが,海溝間,大洋底間の類似度は低かった.水深の深い場所に位置するこれらの地形は島嶼などにより分断される傾向が高いため,各海域の群集の独立性が高くなっていると考えられる.全長4万km以上に及ぶ海溝やトラフなどの"沈み込み帯"の小型底生生物(メイオファウナ)の群集構造は,ほとんど分かっていない.本研究では,日本周辺の沈み込み帯のうち,千島海溝,南海トラフ,琉球海溝周辺海域において,メイオファウナの優占分類群の1つである底生カイアシ類の群集構造の空間変異の解積を試みた.琉球・千島海溝周辺については,堆積物コアサンプル採集が行われた計30測点の内,24測点の堆積物中のカイアシ類の属レベルまでの解析が終っている.水深6,000m以深の測点を"海溝",海溝より陸側の測点を"大陸斜面",海側の測点を"大洋底"と分類して多変量解析を行った結果,海溝に固有な属は存在せず,両海域とも海溝の群集構造は大陸斜面や大洋底のそれと全く異なる訳ではないが,属の存在比率が異なること,海域間の群集構造を比較すると,大陸斜面同士の群集の類似度に比べて,海溝同士,大洋底同士の類似度は低く,海溝及び大洋底群集の独立性が大陸斜面に比べて高いことが示された.南海トラフ周辺に関しては,全8測点(水深570-4900m)から採集された堆積物中のカイアシ類の抽出・計量を終えた.カイアシ類の個体数は水深約570mの最大値(約58個体/10cm^2)から水深に沿って急激に減少し,2000m以深では,約11個体/10cm^2で安定した.この値は,富栄養海域に横たわる千島海溝付近の同程度の水深幅(2000-5000m)における海底堆積物中の密度(約11個体/10cm^2)と貧栄養海域の琉球海溝周辺で観察された密度(約4個体/10cm^2)との中間値であった.この値は,海域間の一次生産量の差を反映していると考えられた.本研究の目的は,日本周辺の沈み込み帯のうち,千島海溝,南海トラフ,琉球海溝周辺海域におけるメイオファウナの優占分類群の1つである底生カイアシ類の群集構造の把握である.本年度は,前年度の研究成果を踏まえ,琉球・千島海溝周辺については属レベルの群集構造,南海トラフに関しては科レベルの群集解析を試みた.琉球・千島海溝周辺については,白鳳丸KH01-2及びKH05-1航海,淡青丸KT09-7及びKT10-23航海で採集されたサンプル計31測点の内,27測点の解析が終っている.ソコミジンコ類の成体1,500個体を属レベルまで同定したところ,琉球海溝で64属,18科(246個体),千島海溝で79属,17科(1,254個体)が出現した.琉球海溝周辺域では,ソコミジンコ類の多様性は水深と共に減少した.一方,千島海溝周辺域では,水深20003000mまでは上昇するが,その後減少する傾向が見られた.この両海域での多様性の深度変化パターンの違いは,両海域の生産性の違いによるものであると考えられた.琉球海溝周辺域では,海溝群集はより浅い測点と大きく異なることは無かった一方で,千島海溝周辺域では,群集構造が水深に沿って変化し,海溝群集はより浅い測点と大きく異なっていた.群集構造の変化を制御する要因としては,琉球海溝周辺域では海底に供給される有機物量,千島海溝周辺域では水深,もしくは水深と相関する要因であると示唆されている.南海トラフ周辺海域(土佐沖)に関しては,白鳳丸KH02-3航海でサンプル採集された8測点のうち4測点の科レベルの同定を行った.その結果,水深1000m以浅では,千島海溝周辺と同様,Ectinosomatidaeが優占するが,水深4000mを超えるトラフ軸には,千島-琉球両海溝軸とは大きく異なる群集構造が存在するという,興味深い結果が得られた.
KAKENHI-PROJECT-22770022
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22770022
超深海に固有の生物相はあるか?:海溝周辺の小型底生生物群集の空間変異
本研究の目的は,日本周辺の沈み込み帯のうち,千島海溝,南海トラフ,琉球海溝周辺海域におけるメイオファウナの優占分類群の1つである底生カイアシ類の群集構造の把握である.最終年度である本年度は,琉球・千島海溝周辺については属レベルの最終的な群集構造解析を行い,さらに科レベルに関しては,南海トラフのデータを加えて,3つの沈み込み帯周辺海域の群集構造の比較を試みた.琉球・千島海溝周辺については,白鳳丸KH01-2及びKH05-1航海,淡青丸KT09-7及びKT10-23航海で採集されたサンプル計30測点の全ての解析が終っている.ソコミジンコ類の成体約1,700個体を属レベルまで同定したところ,琉球海溝で96属,22科(640個体),千島海溝で79属,18科(1,129個体)が出現した.琉球海溝周辺域では,ソコミジンコ類の多様性は水深と共に減少した.一方,千島海溝周辺域では,水深20003000 mまでは上昇するが,その後減少する傾向が見られた.両海域とも,水深と共に属の組成が連続的に変化するパターンが見られ,両海域を比較すると,水深が深くなるほど組成の違いが大きくなった.群集構造の変化を制御する要因としては,琉球海溝周辺域では海底に供給される有機物量,千島海溝周辺域では水深,もしくは水深と相関する要因であると示唆されている.科レベルで見た場合,3つの海域すべてにおいて,水深1000m以浅では,フネガタソコミジンコ科Ectinosomatidaeが優占するが,水深が深くなるにつれて同科の優占率は下がり,さらに同科に占めるBradya属の相対頻度が高くなった.これは大西洋の研究ですでに指摘されていた傾向であるが,同じ傾向が,西太平洋の日本近海にも存在するという興味深い事実を,本研究で初めて明らかにすることができた.千島海溝周辺海域の研究成果は,すでに本年度末に論文にまとめ,初稿を共著者間でチェック中である,英文校閲後,平成24年度初めには投稿予定である,琉球海溝周辺海域のデータ解析もほぼ予定通り進展している.南海トラフ周辺海域に関しては,過去の知見がなく本年度初めて標本の同定を行ったため,若干作業が遅れているが,情報が蓄積するにつれて同定作業の効率は上がるはずである.24年度が最終年度であるため、記入しない。千島海溝周辺海域に続き,琉球海溝周辺海域の研究成果を来年度中に論文にして投稿する.南海トラフ周辺海域に関しては,本年度新たに設けられた2測点のサンプルも合わせて,平成24年度末までに,合計10測点から得られたすべての標本を科レベルまで同定する.24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22770022
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高齢者の全身持久力および心筋に好作用を及ぼす持久性運動プロトコルの開発
プロトコルの完遂率を主要評価とし、新規運動プロトコル実践中の酸素摂取動態、心拍変動、自覚的運動強度等を副次的に評価し、それらをcontinues aerobic training(CAT)と比較した。その結果、プロトコルの完遂率はJ-HIATが100%、CATは95.2%であった。プロトコル中の酸素摂取動態、心拍数、自覚的運動強度は一過性にJ-HIATが高値を示した。研究で続ける自信度をVASで評価した結果、J-HIATは76.0%、CATは66.5%であった。J-HIATは、従来ゴールドスタンダートとして実践されてきたCAT(アメリカスポーツ医学会で推奨されているプロトコル)と比較して運動強度は一過性に高いものの、高い完遂率、研究で続ける自信度を示したことから、実施可能性の高いプロトコルであることが示された。これらの結果をまとめ、国際誌に投稿中である。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。1.研究開始までの準備実現可能性の高い研究を遂行するため、特別研究員申請書を基盤とした綿密な研究計画書を3機関(筑波大学体育系、筑波大学附属病院、JAXA)の研究倫理審査委員会の指摘を勘案しながら2016年2月までに作成した。具体的には、J-HIAT開発者との高齢者版運動プログラムの新規開発、安全管理体制の整備(医師(心臓血管外科)の協力要請、研究組入・除外基準と運動中止基準の作成、緊急連絡網の配備、スポーツ安全保険の加入)、機関内の予算実施請求と発議(研究遂行上伴う予算を発議し、決裁を得る)をおこなった。2015年10月に筑波大学体育系研究倫理審査委員会、2016年3月に筑波大学附属病院倫理審査委員会、同日にJAXA人間を対象とする研究開発倫理審査委員会の承認を得て、大学病院医療情報ネットワーク研究センター(UMIN center)に試験内容を登録した(UMIN00021185)。2.研究(予備試験)開始研究参加者の募集:地域情報誌の広告欄に研究概要を掲載し、研究参加者を募集した結果、23名の応募者を獲得した。組入:22名が、組入基準を満たしていることを確認し、研究説明会に関する資料を郵送した。研究説明会:被験者に研究内容、研究参加に伴う利益や不利益、個人情報が保護されること等を説明し、全員から研究参加への同意を得た。適格性検査:被験者に適格性検査(問診、採血、12誘導心電図検査、運動負荷試験)をおこなった結果、1名を除き、予備試験への参加が承認された。3機関の倫理委員会の審査を承認をうけることによる書類手続きと日程調整のため、3か月ほどの遅れが生じた。プロトコルの完遂率を主要評価とし、新規運動プロトコル実践中の酸素摂取動態、心拍変動、自覚的運動強度等を副次的に評価し、それらをcontinues aerobic training(CAT)と比較した。その結果、プロトコルの完遂率はJ-HIATが100%、CATは95.2%であった。プロトコル中の酸素摂取動態、心拍数、自覚的運動強度は一過性にJ-HIATが高値を示した。研究で続ける自信度をVASで評価した結果、J-HIATは76.0%、CATは66.5%であった。J-HIATは、従来ゴールドスタンダートとして実践されてきたCAT(アメリカスポーツ医学会で推奨されているプロトコル)と比較して運動強度は一過性に高いものの、高い完遂率、研究で続ける自信度を示したことから、実施可能性の高いプロトコルであることが示された。これらの結果をまとめ、国際誌に投稿中である。速やかに予備実験をおこない、実験データをまとめ原著論文として国際誌に投稿する。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15J11056
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寄せ場労働者の労働と生活と文化-日本五大寄せ場の比較を通して
日本の五大寄せ場である山谷(東京),釜ケ崎(大阪),寿町(横浜),笹島(名古屋),ドン(広島)の参与観察法を中心としたフィールド・ワークをおこなった。調査自体はいまだ未完了であるが、本研究ではとくに寄せ場の類型化と寄せ場社会の変動に焦点をあてた。まず五つの寄せ場の形成過程、社会・文化構造を比較して、特徴の類似と相異を抽出することをめざした。この分析は、寄せ場(ないしは簡易宿泊所街)の社会学的概念の構成のために不可欠な手続きである。類型化の作業は、いまだ進行中である。次に研究者のこれまでの寄せ場研究に立って、年々変わりゆく寄せ場の諸相をとらえ、その中から寄せ場の将来の予測をめざした。日本経済の全般的不況の中で寄せ場が全体として縮少傾向にある反面、最近部分的ではあるが青壮年層の日雇労働者の流入がめだっている。外国人労働者の流入といった新たな要因をも合わせて、寄せ場は大きく変わりつつある。日雇労働者と他の下層労働者の労働力の環流のメカニズム、日雇労働者と外国人労働者の共存と競合のダイナミズムといった、寄せ場をとりまく状況の中で寄せ場をとらえていかなければ、これからの寄せ場の実相は見えてこなくなるであろう。以上、本研究から導きだされる結論は、寄せ場の類型化と寄せ場概念の構成、寄せ場研究の視野と対象の拡大、であった。寄せ場の社会、文化構造の分析、寄せ場労働者の精神世界の分析といった課題も、こうしたマクロな分析の中で位置づけていく必要がある。この点は、今回の調査にてどれほどか前進したものと考える。今後、さらにアジアのスラムをも視野に入れながら、寄せ場研究の前進をはかっていく予定である。日本の五大寄せ場である山谷(東京),釜ケ崎(大阪),寿町(横浜),笹島(名古屋),ドン(広島)の参与観察法を中心としたフィールド・ワークをおこなった。調査自体はいまだ未完了であるが、本研究ではとくに寄せ場の類型化と寄せ場社会の変動に焦点をあてた。まず五つの寄せ場の形成過程、社会・文化構造を比較して、特徴の類似と相異を抽出することをめざした。この分析は、寄せ場(ないしは簡易宿泊所街)の社会学的概念の構成のために不可欠な手続きである。類型化の作業は、いまだ進行中である。次に研究者のこれまでの寄せ場研究に立って、年々変わりゆく寄せ場の諸相をとらえ、その中から寄せ場の将来の予測をめざした。日本経済の全般的不況の中で寄せ場が全体として縮少傾向にある反面、最近部分的ではあるが青壮年層の日雇労働者の流入がめだっている。外国人労働者の流入といった新たな要因をも合わせて、寄せ場は大きく変わりつつある。日雇労働者と他の下層労働者の労働力の環流のメカニズム、日雇労働者と外国人労働者の共存と競合のダイナミズムといった、寄せ場をとりまく状況の中で寄せ場をとらえていかなければ、これからの寄せ場の実相は見えてこなくなるであろう。以上、本研究から導きだされる結論は、寄せ場の類型化と寄せ場概念の構成、寄せ場研究の視野と対象の拡大、であった。寄せ場の社会、文化構造の分析、寄せ場労働者の精神世界の分析といった課題も、こうしたマクロな分析の中で位置づけていく必要がある。この点は、今回の調査にてどれほどか前進したものと考える。今後、さらにアジアのスラムをも視野に入れながら、寄せ場研究の前進をはかっていく予定である。
KAKENHI-PROJECT-61510093
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頭部挙上訓練が嚥下障害を有する維持期脳卒中患者の嚥下内圧に及ぼす影響
維持期脳卒中患者の摂食・嚥下障害を改善する摂食・嚥下リハビリテーションに関する報告は少ない.摂食・嚥下障害を有する維持期脳卒中患者に対し頭部挙上訓練を実施すると誤嚥が減少するという報告があるがその詳細なメカニズムは明らかではない.そこで、頭部挙上訓練が嚥下機能を改善するメカニズムを検討する目的で、摂食・嚥下障害を有する維持期脳卒中患者に対し頭部挙上訓練を行い嚥下造影検査、嚥下内圧検査による結果を訓練実施前後で比較した.その結果、訓練実施後の嚥下内圧は訓練実施前と比較し統計学的に有意に上昇していたが、嚥下造影検査の画像解析の評価においては変化を認めなかった.維持期脳卒中の摂食・嚥下障害に対する頭部拳上訓練は嚥下内圧を上昇させ、嚥下機能を改善する可能性がある.維持期脳卒中患者の摂食・嚥下障害を改善する訓練の有効性を検討した報告は少ないが、頭部挙上訓練が維持期脳卒中の嚥下機能を改善し、誤嚥が減少することが報告されている.頭部挙上訓練は仰臥位で頭部の持続挙上および反復挙上を行うことで嚥下時の喉頭挙上に関わる筋の筋力が強化され、喉頭運動と食道入口部開大が改善する方法である.しかし、頭部挙上訓練による嚥下機能改善のメカニズムを詳細に検討した報告はないため、維持期脳卒中患者に対して頭部挙上訓練を行い嚥下造影検査、嚥下内圧検査等による結果を訓練実施前後で比較することで、機能改善のメカニズムを明らかにすることにした.対象は、脳卒中を発症後6ヶ月以上が経過した男性で、嚥下造影検査で舌骨移動の不良、食道入口部開大不全などの異常所見を認め、本研究の主旨と内容を理解し研究参加に同意した患者である.対象者に対し頭部挙上訓練を行い、訓練実施前後に評価を行った.頭部挙上訓練は、Shakerらの方法に従い、1日3回、6週間実施した.評価内容は等尺性頚部屈曲筋力、嚥下造影検査による嚥下機能、嚥下内圧である.等尺性頚部屈曲筋力は、背もたれの上端が頭部より高い椅子に腰かけた状態でハンドヘルドダイナモメーターのセンサー部分が被験者の前額部に接触した状態で椅子とベルトで固定し、被験者が頚部屈曲を最大努力で行った際の筋力を測定した.嚥下造影検査はLogemannの方法に従い、3ml・5mlのバリウム水、3mlのバリウムゼリーを側面および正面像で撮影をしながら摂取し、撮影した検査画像をコンピューターに取り込み、舌骨移動距離、食道入口部最大開大幅を測定した.嚥下内圧は、システムの圧センサーを上・中・下咽頭、食道入口部に置き、嚥下時の圧力、圧発生のタイミングについて測定した.平成24年度の対象者は4名であった.維持期脳卒中患者の摂食・嚥下障害を改善する摂食・嚥下リハビリテーションに関する報告は少ない.摂食・嚥下障害を有する維持期脳卒中患者に対し頭部挙上訓練を実施すると誤嚥が減少するという報告があるがその詳細なメカニズムは明らかではない.そこで、頭部挙上訓練が嚥下機能を改善するメカニズムを検討する目的で、摂食・嚥下障害を有する維持期脳卒中患者に対し頭部挙上訓練を行い嚥下造影検査、嚥下内圧検査による結果を訓練実施前後で比較した.その結果、訓練実施後の嚥下内圧は訓練実施前と比較し統計学的に有意に上昇していたが、嚥下造影検査の画像解析の評価においては変化を認めなかった.維持期脳卒中の摂食・嚥下障害に対する頭部拳上訓練は嚥下内圧を上昇させ、嚥下機能を改善する可能性がある.維持期脳卒中患者の摂食・嚥下障害を改善する訓練の有効性を検討した報告は少ないが、頭部挙上訓練が維持期脳卒中患者の嚥下機能を改善し誤嚥が減少すると報告されている.頭部挙上訓練は仰臥位で頭部の持続挙上および反復挙上を行うことで嚥下時の喉頭挙上に関わる筋の筋力が強化され、喉頭運動と食道入口部開大が改善する方法である.しかし、頭部挙上訓練による嚥下機能改善のメカニズムを詳細に検討した報告はないため、今回、維持期脳卒中患者に対して頭部挙上訓練を行い、嚥下造影検査、嚥下内圧検査等による結果を訓練実施前後で比較することで、機能改善のメカニズムを明らかにすることにした.対象は、脳卒中を発症後6ヶ月以上が経過した男性で、嚥下造影検査で舌骨移動の不良、食道入口部開大不全などの異常所見を認め、本研究の主旨と内容を理解し研究参加に同意した患者である.対象者に対し頭部挙上訓練を行い、訓練実施前後に評価を行った.頭部挙上訓練は、Shakerらの方法に従い、1日3回、6週間実施した.評価内容は等尺性頚部屈曲筋力、嚥下造影検査による嚥下機能、嚥下内圧である.等尺性頚部屈曲筋力は、背もたれの上端が頭部より高い椅子に腰かけた状態でハンドヘルド
KAKENHI-PROJECT-23700654
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頭部挙上訓練が嚥下障害を有する維持期脳卒中患者の嚥下内圧に及ぼす影響
ダイナモメーターのセンサー部分が被験者の前額部に接触した状態で椅子とベルトで固定し、被験者が頚部屈曲を最大努力で行った際の筋力を測定した.嚥下造影検査はLogemannの方法に従い、3ml・5mlのバリウム水、3mlのバリウムゼリーを側面および正面像で撮影をしながら摂取し、撮影した検査画像をコンピューターに取り込み、舌骨移動距離、食道入口部最大開大幅、食塊咽頭通過時間などを測定した.嚥下内圧は、システムのセンサーを上・中・下咽頭、食道入口部に置き、嚥下時の圧力、圧発生のタイミングについて測定した.平成23年度は5名の患者に対して訓練実施と評価を行った.内圧カテーテルを購入(海外からの輸入)したが、納品までに時間がかかり、また、食道内圧検査システムを放射線透視装置に設置する際に不具合が生じ、研究の開始自体が遅れたため。平成24年度は、前年度に引き続き、20名の患者に対し訓練の実施と評価を行う.集めたデータを統計解析ソフトに入力し、各測定値間での関連、各測定値の訓練前後での変化について統計学的にデータ解析を行う.また、得られた結果をまとめ、その成果を学会で発表する.データ解析のための統計解析ソフトを購入、研究成果を学会で発表するための旅費に使用する予定。
KAKENHI-PROJECT-23700654
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遷移金属酸化物における電子及びフォノン励起による光相制御
本研究では、多様な物性を示す強相関電子系を対象とし、光誘起相転移現象を用いた光による物性制御とそのメカニズムの解明を目的とした。幾つかの強相関電子系薄膜において、巨大な伝導度の変化を伴う永続的な光誘起絶縁体-金属転移の観測とメカニズムの解明を行った。特に、Pr(Ca,Sr)MnO_3薄膜おいては、本研究で初めて光誘起金属-絶縁体転移の発現に成功した。本研究では、多様な物性を示す強相関電子系を対象とし、光誘起相転移現象を用いた光による物性制御とそのメカニズムの解明を目的とした。幾つかの強相関電子系薄膜において、巨大な伝導度の変化を伴う永続的な光誘起絶縁体-金属転移の観測とメカニズムの解明を行った。特に、Pr(Ca,Sr)MnO_3薄膜おいては、本研究で初めて光誘起金属-絶縁体転移の発現に成功した。本研究では、多様な物性を示す強相関電子系を対象とし、光誘起相転移現象を用いた光による物性制御とそのメカニズムの解明を目的とする。本年度は、特に、電子励起状態を介した伝導度の制御に焦点を当てた。強相関電子系の3つの物質において、巨大な伝導度の変化を伴う光誘起現象の観測に成功した。(1)マンガン酸化物薄膜における光誘起金属-絶縁体相転移絶縁体-金属相転移を示すPr (Ca, Sr) Mn03薄膜を作製した。金属状態でパルスレーザーを照射し、数桁の伝導度の減少を伴う永続的な転移を観測した。温度や波長依存性等から、電子励起状態を介し、準安定である金属相から安定である絶縁体相への相転移であることを確かめた。光誘起金属-絶縁体相転移の観測は、あらゆる系においてこれが初めての報告となり、光物性や強相関電子系などの相転移現象の研究において大変意義がある。(2)スズ酸化物薄膜における光誘起現象酸化物透明半導体Sn02薄膜を作製した。室温、真空中においてUV光を照射し、数桁の伝導度の増加を伴う永続的な転移を観測した。試料の酸素欠損量や波長依存性等から、電子励起状態を介し、試料表面から酸素が脱離することにより、主に移動度が増加することを確認した。本研究では、光照射による酸素脱離効果の統一的なメカニズムを初めて打ち立てた。また、室温で巨大な変化を示すことから、応用への可能性も期待される。(3)BEDT-TTF系における光誘起絶縁体-金属転移絶縁体-金属転移を示す分子性導体α(BEDT-TTF)-I3を作製した。絶縁体状態でパルスレーザーを照射し、数桁の伝導度の増加を伴う過渡的な転移を観測した。詳細なメカニズムの解明は現在進行中である。本研究では、多様な物性を示す強相関電子系を対象とし、光誘起相転移現象を用いた光による物性制御とそのメカニズムの解明を目的とした。本年度は、強相関電子系BEDT-TTF塩の電荷秩序状態に着目し、光励起による電荷秩序の融解という観点から光誘起相転移の研究を行った。具体的には、α-(BEDT-TTF_2I_3、(BEDT-TTF)_3(ClO_4)_2、(BEDT-TTF)_5Te_2I_6、θ-(BEDT-TTF)_2RbZn(CNS)_4(fast cooling)の電荷秩序状態において、光誘起絶縁体-金属転移を観測した。各物質において、低温の電荷秩序状態(4K)において電場下でパルスレーザーを照射したところ、2つの成分を持つ巨大異常光電流が観測された。第1成分は、5ns以下で数桁の伝導度の増加を伴うものである。また、遅れて立ち上がる第2成分は、ある程度以上の測定電場を印加している限りは光照射後も永続的に保たれるという特徴を持つ。さらに、波長依存性や温度依存性などから、光誘起絶縁体-金属転移のメカニズムの考察を行った。なお、(BEDT-TTF)_3(ClO_4)_2と(BEDT-TTF)_5Te_2I_6においては、本研究で初めて光誘起相転移が確認された。また、θ-(BEDT-TTF)_2RbZn(CNS)_4においては、冷却速度の違いによる異なる電荷秩序状態のもとで光照射実験を行い、電子格子相互作用と光誘起相転移の関係を見出した。さらに、本研究では、バルク試料に加えて薄膜試料でも実験を行った。BEDT-TTF塩の薄膜化試料での光照射実験は本研究が初めての報告である。薄膜固有の性質を活かし、ゲート電圧下での光照射実験や、基板の違いによる考察を行った。本研究の結果は、電荷秩序状態における光誘起相転移の発現メカニズムを確立する指針となる。また、高速で巨大な応答を示すため、光スイッチなど応用への展開も期待される。特に、薄膜化試料は応用上大変有用であり、本研究は応用においても大変意義がある。
KAKENHI-PROJECT-20740172
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20740172
歯科切削技術の評価ロボット開発に関する研究
最近では、エアタービンハンドピースの高性能化に伴なって、歯科学生が短期間に高度の切削技術を習得するのはかなり難しいのが現状である。このような状況から、本研究では、教育効果を高めるために、歯科学生を対象とした歯牙切削技術トレーニング用歯科患者ロボットの開発研究を行うこととした。最初に、窩洞形成時の切削力及びエアタービンの回転速度を計測するための方法について検討した。その結果、切削力を計測する荷重センサには、現在開発中の工学ロボットの圧覚センサを、回転速度の計測には渦電流を利用した回転速度センサをそれぞれ応用することとした。この荷重センサは切削歯牙モデル(被削材として市販の歯冠材料を使用)の下部に設置し、そしてその切削時には歯に加わる歯軸方向の力(垂直力)と歯を傾けようとする力(チルトモーメン、水平力にも対応する力)を連続的に計測できる。なお、患者ロボットの口腔内の構造は、最初の段階では、一般に採用されているマネキンを改造したものとしたが、口腔内に舌も存在せず、その空間はかなり広い。そこで、マネキンの計装化ばかりでなく、マネキンの口腔内は解剖学的にもその構造を生体に近似させ、また患者に接したときの皮膚感覚とも類似させた歯科患者ロボットを開発した。この歯科患者ロボットは、術者が窩洞形成を行うときに発生する切削力をパーソナルコンピュータのディスプレイ上にリアルタイムで表示することができる。そして、切削作業終了後、患者ロボットは、計測された切削波形を基準切削波形と相互比較しながら各種の分析を行い、術者の切削技術を具体的に評価するシステムを備えている。その切削技術に関するコメントはディスプレイ上に表示され、術者に与えられる。したがって、術者はその具体的なコメントを参考にして窩洞形成のトレーニングに向かうことができ、その結果、これまでよりも短期間で切削技術を習得するものと期待できる。最近では、エアタービンハンドピースの高性能化に伴なって、歯科学生が短期間に高度の切削技術を習得するのはかなり難しいのが現状である。このような状況から、本研究では、教育効果を高めるために、歯科学生を対象とした歯牙切削技術トレーニング用歯科患者ロボットの開発研究を行うこととした。最初に、窩洞形成時の切削力及びエアタービンの回転速度を計測するための方法について検討した。その結果、切削力を計測する荷重センサには、現在開発中の工学ロボットの圧覚センサを、回転速度の計測には渦電流を利用した回転速度センサをそれぞれ応用することとした。この荷重センサは切削歯牙モデル(被削材として市販の歯冠材料を使用)の下部に設置し、そしてその切削時には歯に加わる歯軸方向の力(垂直力)と歯を傾けようとする力(チルトモーメン、水平力にも対応する力)を連続的に計測できる。なお、患者ロボットの口腔内の構造は、最初の段階では、一般に採用されているマネキンを改造したものとしたが、口腔内に舌も存在せず、その空間はかなり広い。そこで、マネキンの計装化ばかりでなく、マネキンの口腔内は解剖学的にもその構造を生体に近似させ、また患者に接したときの皮膚感覚とも類似させた歯科患者ロボットを開発した。この歯科患者ロボットは、術者が窩洞形成を行うときに発生する切削力をパーソナルコンピュータのディスプレイ上にリアルタイムで表示することができる。そして、切削作業終了後、患者ロボットは、計測された切削波形を基準切削波形と相互比較しながら各種の分析を行い、術者の切削技術を具体的に評価するシステムを備えている。その切削技術に関するコメントはディスプレイ上に表示され、術者に与えられる。したがって、術者はその具体的なコメントを参考にして窩洞形成のトレーニングに向かうことができ、その結果、これまでよりも短期間で切削技術を習得するものと期待できる。歯科切削技術の評価のための基礎として計測システムの作成を行なった。評価の対象とした測定項目は切削時のエアタービンの回転連度歯軸方向の切削力および歯軸方向に直角な接線方向の回転力(チルトモーメント)である。計測システムは測定したデータを取り込むブロックとこれらのデータを基にタービンの回転力、切削時の波形さらにはFFT解折などの演算処理を行なうブロック、そしてこれらの演算処理の結果をCRT及びプリンタに表示するブロックから構成されたものである。切削用の歯牙モデルは上顎左第1大臼歯を対象に作製したもので、まず第1段階としてアルミ製のマネキンを用い、限られた空間の口腔内での実際の歯牙切削を想定し、切削技術の評価用のロボットの作成を行なった。被削用モデルには、保存領域での歯牙切削として行なわれる十字型の窩洞形成を対象に行なった。現段階では被削歯として用いた上顎左第1大臼歯の支持方法、切削時の製作と収集データとの相関など基礎的な検討を行なった。その結果、本計測システムの周辺を再度検討することにより、初期の目的である歯科切削技術の評価ロボットの実用化についての基礎的な検討を行なうことができた。これまでに、試作した歯科用患者ロボットを対象に、その窩洞形成を行っているときに生じる切削力及びエアタービンの回転速度の変化を調べることのできる、いわゆる切削波形のパターンを、それぞれの経験年数をもった歯科医師及び歯科大学学生を術者としてデータの蓄積を図ってきた。そして、このような切削波形を観察するだけでも、術者の切削技術の評価は十分可能であることが分かった。
KAKENHI-PROJECT-61870075
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61870075
歯科切削技術の評価ロボット開発に関する研究
しかし、基礎実習における教育用としてこの患者ロボットを開発していることを考えると、このような患者ロボットに初めて接する学生には、窩洞形成後の切削波形を観察させても、たとえ熟達した術者の切削波形を参考に比べさせても、自分の切削技術を分析することは難しく、逆に学生の切削技術を習得する時間を少なくするだけである。そこで、今までに蓄積したデータを基に最適切削条件の基準化を策定し、その結果を基に、術者の切削技術を自動的に分析するシステムについて次のように検討した。最初に、切削時に生ずる垂直力、チルトモーメントのしきい値を、それぞれ600gf、300gfーmmとして設定した。次に、切削波形において、このしきい値を越えたデータの解析として、例えば、しきい値を越えた範囲のピーク値の個数/ピーク値の総数比、しきい値を越えた部分の積分値/全積分値比などの値を求め、そして術者の切削技術との相関性について調べた。さらに、切削開始時から終了に至るまでの切削波形を微分すること、しきい値をベースにピーク値の大きさの程度を調べること、そして横軸に時間を取り切削作業時のこれらの分布線図を作成した。その結果、術者の切削技術の傾向が認識できるばかりでなく、切削技術の程度も評価できることが分かった。したがって、このシステムを歯科用患者ロボットに導入することにより、切削技術を習得している術者には、具体的な手法として、その適正なコメントを与えることが可能となった。
KAKENHI-PROJECT-61870075
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61870075
TLRsとその下流因子の肺癌進行における役割の解明
非小細胞肺癌の切除検体においてTLR4とMyD88の免疫組織学的な発現について検討し、臨床病理学的因子や予後との相関について評価を行った。結果は未公開であるがTLR4とMyD88の肺癌細胞における発現が臨床病理学的因子や予後などと相関することが明らかとなっている。現時点ではin vitroやin vivoの研究の準備段階であり、さらにより基礎的な研究において実証していく予定である。in vitroやin vivoの研究で使用する肺癌細胞株はすでに購入しており、細胞を増殖・継代しいつでも研究に移ることができる状況である。平成27年度は実験に用いる物品を揃えることや対象となる症例の情報収集を主に行った。過去に当科で行った手術症例の検体を収集し免疫染色ができるようにパラフィン切片を薄切する機械や細胞実験の際に用いるウェスタンブロットの器具などを購入した。症例は2001年以降に当科で行った肺癌根治切除症例で臨床因子の整理や予後を調査することでデータベースを作成している。現在過去の手術症例から得ていた検体を免疫染色にて評価中である。TLR familyやその下流であるMyD88などの分子の発現を評価することで、これらの分子が発癌や癌の進展にどのように関与しているのかを明らかにすることができると考えている。特にTLR signaling pathwayは炎症と密接に関連していることが明らかとなっており、結核や間質性肺炎など慢性炎症からの発癌の機構も判明できる可能性がある。これらの疾患の罹患患者において肺癌が発生すると根治的な治療が困難となることもある。また、仮に治療が可能であったとしても、その治療には通常よりも多くの労力とコストが必要となることが少なくない。慢性炎症からの発癌の機序が明らかとなれば発癌の抑制が期待できるものと考えられ社会的意義は大きいと考えている。また、今後in vitroで用いる癌細胞を購入し継代して増殖させている。これらの癌細胞株を用いて臨床で得た知見をより確証をもって証明できるものと考える。平成27年度はこれまでの手術症例のデータベースがしっかりとしていなかったため、それを完成させることに力を注いだ。並行して免疫染色や細胞増殖を行っているが当初予定していたよりやや進行が遅れている。今年度は非小細胞肺癌の手術検体においてTLR4とMyD88の免疫組織学的な発現についての評価についてを中心に研究を行った。この実験に対する一次抗体や免疫染色に使用する試薬、実際に免疫染色を行う研究員への人件費に費用を用いた。免疫組織学的検討に関する成果としてはまだ評価の段階にある。その結果はTLR4やMyD88といった因子は非小細胞肺癌の進行に影響を与えていると思われるものであるがさらに症例数を増やし、サブセット解析やTLRs signaling pathwayに影響を及ぼしている他の因子からの影響などを含めて検討し研究を進めた上で国内・国際学会や論文等で成果を発表したいと考えている。また、現段階において評価できる症例数が少ないため検討する手術検体を増やすために更に長期間にわたるデータベースの作成を進めてきた。これらの症例から得た検体を追加で免疫組織学的に評価する段階にある。また、in vitroの研究においては研究に使用する非小細胞肺癌の細胞株を10種類以上用意しこれらの継代による細胞増殖を行い、現在はいつでも実験に着手できる状況となった。in vivoの研究に関してはin vitroの研究においてなんらかの有用な知見が得られた場合に着手する予定であるため現在は検討段階にある。TLRs signaling pathwayの非小細胞肺癌の進行における役割が解明されれば慢性炎症からの癌化の機構について解明できる可能性があり得られる研究結果は非常に重要な知見と考えられる。現在免疫組織学的検討を中心に研究を進めているが検討できる検体がまだ少ない状態であった。今年度は検体数を増加させるべくさらなるデータベースの作成を行った。すでに追加での免疫染色が実行できる状況にあり早急に免疫染色の施行と評価を進めていく予定である。非小細胞肺癌の切除検体においてTLR4とMyD88の免疫組織学的な発現について検討し、臨床病理学的因子や予後との相関について評価を行った。結果は未公開であるがTLR4とMyD88の肺癌細胞における発現が臨床病理学的因子や予後などと相関することが明らかとなっている。現時点ではin vitroやin vivoの研究の準備段階であり、さらにより基礎的な研究において実証していく予定である。in vitroやin vivoの研究で使用する肺癌細胞株はすでに購入しており、細胞を増殖・継代しいつでも研究に移ることができる状況である。研究に使用した一次抗体や免疫染色を行うための試薬、肺癌の細胞株や細胞株の保存・増殖に用いる試薬、今後in vivoの研究に用いる試薬などを揃えるために費用を要した。また、実際に免疫染色や細胞の培養・増殖などを行う実験助手の人件費にも費用が必要であった。この研究期間には、2017年に横浜で行われたIASLCをはじめとして日本呼吸器外科学会・日本肺癌学会・日本胸部外科学会・日本呼吸器内視鏡学会などに参加し、他の研究者と本研究に関する議論を行った。これらの旅費にも費用を要した。今後はin vitroの研究においてTLR4やMyD88の発現した細胞株と発現しない細胞株の細胞の増殖能や浸潤能、遊走能などについて検討し、それらをまとめた上でin vivoの研究で実験動物を用いて実際の生体内におけるこれらの役割を解明していくことを予定している。
KAKENHI-PROJECT-15K10266
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TLRsとその下流因子の肺癌進行における役割の解明
これらの研究において有意義な結果が得られれば現在得られている結果を合わせて国際学会や国内学会、論文での報告をしたいと考えている。非小細胞肺癌の切除検体においてTLR4とMyD88の免疫組織学的な発現について検討し、臨床病理学的因子や予後との相関について評価を行った。結果は未公開であるがTLR4とMyD88の肺癌細胞における発現が臨床病理学的因子や予後などと相関することが明らかとなっている。現時点ではin vitroやin vivoの研究の準備段階であり、さらにより基礎的な研究において実証していく予定である。in vitroやin vivoの研究で使用する肺癌細胞株はすでに購入しており、細胞を増殖・継代しいつでも研究に移ることができる状況である。今後は現在行っている免疫染色とその評価をさらに進めていく予定である。発癌や癌の進行に関連している可能性があるTLR signaling pathwayの下流の分子やTLR signalingpathwayと相互作用していると思われる他のsignaling pathwayの分子も評価したいと考えている。さらに、上記研究で有望な分子はこれまで増殖させてきた細胞を用いてさらに詳しく解析する。タンパク質の発現やmRNAの発現を確認し、mRNAを抑制したり過剰発現させることで癌の性質の変化をみる予定としている。今後は追加で作成したデータベースにあたる症例から得た手術検体の免疫染色を進める。また、現在検討していないTLRs signaling pathwayの他の因子や影響を与えている因子についても検討を行う予定である。並行して準備した非小細胞肺癌の細胞株を用いたin vitroの実験を遂行し、免疫組織学的検討で得た知見についての立証を行う。これらの研究において有意義な所見が得られれば、それをin vivoの研究においてさらに実証していく予定としている。呼吸器外科
KAKENHI-PROJECT-15K10266
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分子ローターの2次元高密度集積に伴うキラル反転相転移現象の検証
本研究では、分子ローターの2次元集積により、分子ローター間でのギアモーションを利用した2次元物質におけるキラル反転相転移現象の発現を目指している。1年目は金属への配位能力を有する分子ローターの合成を行い、LB法を用いた配位高分子合成法を利用することで分子ローター集積体の合成までを行うことができた。分子ローターは配位能を有するテトラフェニルカルボキシポルフィリン(TCPP)と、回転部位として働くフタロシアニン(Pc)からなる。分子ローター集積体の合成に伴うπ-A曲線において、TCPPのみを用いた場合と比較して大きな面積で表面圧の上昇が見られた。これは、分子ローターの方がPcを含んでいる分だけ嵩高いためであり、予想される結果と一致していた。また、金属イオン水溶液に分子ローター溶液を展開すると、不溶性の膜状物質が得られたことから、強固な2次元分子ローター集積体の合成に成功したと考えられる。2次元膜をマイカ基板上に写し取り、AFM測定を行ったところ、膜状の構造を観測することに成功した。紫外可視吸収スペクトル測定では、集積前後においてスペクトルに明確な変化が見られなかったことから、分子ローターの構造が保たれていることを確認した。一方で、温度可変の薄膜吸収スペクトルでは、分子膜の熱膨張による微小な吸収強度の減少のみが観測され、本研究で目指している2次元物質の相転移現象を観測するには至らなかった。1年目において、分子ローターの合成と集積体形成を実行することができた。一方で、分子ローターの合成において副反応が起こってしまい、分子の単離に難航したため、1種類の分子ローターしか合成できなかった。また、AFMでの単分子膜の構造観測に成功したが、分解能が不十分なため、個々の分子を観測するには至らなかった。相転移現象を温度可変薄膜吸収スペクトルで観測しようとしたが、薄膜の熱膨張に由来した微小なスペクトルの変化しか観測でいなかった。以上のことから、上記評価とした。今後の方針は下記の通りである。1)分子ローターの配位子等を変更することで、分子のライブラリーを形成する。2)分子ローター集積体の膜形成プロセスの最適化を行う。3)これまでに合成した分子ローター集積体を金基板上に写し取り、空間分解能の高いSTM測定を行う。4)温度可変吸収スペクトルの代替として、微小試料を熱測定可能な超高速DSCを用い、分子ローターの回転に由来した相転移の有無を確認する。本研究では、分子ローターの2次元集積により、分子ローター間でのギアモーションを利用した2次元物質におけるキラル反転相転移現象の発現を目指している。1年目は金属への配位能力を有する分子ローターの合成を行い、LB法を用いた配位高分子合成法を利用することで分子ローター集積体の合成までを行うことができた。分子ローターは配位能を有するテトラフェニルカルボキシポルフィリン(TCPP)と、回転部位として働くフタロシアニン(Pc)からなる。分子ローター集積体の合成に伴うπ-A曲線において、TCPPのみを用いた場合と比較して大きな面積で表面圧の上昇が見られた。これは、分子ローターの方がPcを含んでいる分だけ嵩高いためであり、予想される結果と一致していた。また、金属イオン水溶液に分子ローター溶液を展開すると、不溶性の膜状物質が得られたことから、強固な2次元分子ローター集積体の合成に成功したと考えられる。2次元膜をマイカ基板上に写し取り、AFM測定を行ったところ、膜状の構造を観測することに成功した。紫外可視吸収スペクトル測定では、集積前後においてスペクトルに明確な変化が見られなかったことから、分子ローターの構造が保たれていることを確認した。一方で、温度可変の薄膜吸収スペクトルでは、分子膜の熱膨張による微小な吸収強度の減少のみが観測され、本研究で目指している2次元物質の相転移現象を観測するには至らなかった。1年目において、分子ローターの合成と集積体形成を実行することができた。一方で、分子ローターの合成において副反応が起こってしまい、分子の単離に難航したため、1種類の分子ローターしか合成できなかった。また、AFMでの単分子膜の構造観測に成功したが、分解能が不十分なため、個々の分子を観測するには至らなかった。相転移現象を温度可変薄膜吸収スペクトルで観測しようとしたが、薄膜の熱膨張に由来した微小なスペクトルの変化しか観測でいなかった。以上のことから、上記評価とした。今後の方針は下記の通りである。1)分子ローターの配位子等を変更することで、分子のライブラリーを形成する。2)分子ローター集積体の膜形成プロセスの最適化を行う。3)これまでに合成した分子ローター集積体を金基板上に写し取り、空間分解能の高いSTM測定を行う。4)温度可変吸収スペクトルの代替として、微小試料を熱測定可能な超高速DSCを用い、分子ローターの回転に由来した相転移の有無を確認する。
KAKENHI-PROJECT-18K14242
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黄檗鉄眼版一切経の仏教史的研究
前年度の調査により、収集され、カ-ド化された刊記(総数1288件)について、その内容を整理・分析した結果、以下のような成果が得られた。第一に、刊記の年代は、寛文11(1671)延宝9(1680)年の10年間に及ぶが、時期的・地域的に極端な片寄りがある。最初期は江戸が多く、次いでこれに重なるように大阪の多い時期がある。刊記の少い数年をはさんで後期には肥後が多く出現する。これは、鉄眼の勧募活動を何らかの形で反映しているものと考えられるが、彼の伝記的記録と必ずしも相応しない面もあり、今後に課題を残した。第二に、寄進者について、その数は、数えられるものだけで延べ8395人に及び、総数では9千人を上回るものと推定される。その階層は、上は大名から下は都市や農村の庶民に及ぶ。また、女性の名が少なからず含まれることも注目に値する。第三に、寄進の金額では、半数以上の刊記がその記載を欠いた。記載のあるものの中では、一刊記中の寄進の総額が白銀6両前後のものが圧倒的に多く、白銀6両というのが勧募に際しての一巻当りの目安ではなかったかと考えられる。次に、鉄眼版の流布状況を知る為の基本資料「大蔵経請去総牒」、「全蔵斬請千字朱点簿」は、前年度以来の撮影調査を完了し、その内容をプリントアウトし、さらに整理を加えて、原稿化した。その結果、江戸期を通じての全蔵請去数は920件余、部分的な請去数は2200件余であることが判明した。また、その流布状況を検討すると、鉄眼版が江戸期仏教界における学問研究の進展に果した役割の大きさは、従来の予想をはるかに上回るものであったことが考えられる。八角輪蔵の実測図を作成した。上記の研究内容を成果報告書にまとめた。昭和60年、新潟県中頚城郡三和村の宮崎家から鉄眼版一切経を寄贈されて以来、整理を進め、ほどなく学術研究上、極めて貴重な全巻揃いであることが確認されたため、63年10月、一般研究C「黄檗鉄眼版一切経の基礎調査研究」(研究代表者松野純孝研究課題番号62510014)の助成を得ることができ、63年3月研究成果として『黄檗鉄眼版一切経目録』を出版することができた。本研究はこの目録にもとづいて史料を収拾し、仏教史的考察をすることを目的とした。本年度は、まず鉄眼版に付属する刊記をすべて集成することを終了することができた。この結果、刊記は寛文から延宝までの1288点あることが確認された。同時に、これらの刊記はすべてカード化することができた。年代・寄進者の国別に分類され、現在、整理中ではあるが鉄眼による勧進の地域は圧倒的に大坂中心の上方が大きく占めて、西高東低ついで出身地の肥後周辺と江戸であった。今後さらに分析を進め、寄進者の階層・金額などを含めて、鉄眼の年譜を増補しながら、検討を加えていきたい。また、鉄眼版関係史料の収集のため、全員で京都府宇治市黄檗山万福寺に出張し、『大蔵経請去層牒』(全1冊)、『全蔵斬請千字朱点簿』(全21冊)の半ばまで撮影調査することができた。これらは従来注意されなかった史料で、鉄眼版の流布状態を考察できる。収集された史料は、今年度、購入したリーダー・プリンターによって逐次、速やかに紙焼きされ、刊記集成と関係史料集成とにまとめることができた。これらは今年度中に、整理することはできたが、余りにも膨大な資料群になったため、分析することが追いつかず、検討・考察は、次年度の継続課題としたい。さらに学内に移建された八角輪蔵の実測調査も実施され、実測図の作成が準備されている。前年度の調査により、収集され、カ-ド化された刊記(総数1288件)について、その内容を整理・分析した結果、以下のような成果が得られた。第一に、刊記の年代は、寛文11(1671)延宝9(1680)年の10年間に及ぶが、時期的・地域的に極端な片寄りがある。最初期は江戸が多く、次いでこれに重なるように大阪の多い時期がある。刊記の少い数年をはさんで後期には肥後が多く出現する。これは、鉄眼の勧募活動を何らかの形で反映しているものと考えられるが、彼の伝記的記録と必ずしも相応しない面もあり、今後に課題を残した。第二に、寄進者について、その数は、数えられるものだけで延べ8395人に及び、総数では9千人を上回るものと推定される。その階層は、上は大名から下は都市や農村の庶民に及ぶ。また、女性の名が少なからず含まれることも注目に値する。第三に、寄進の金額では、半数以上の刊記がその記載を欠いた。記載のあるものの中では、一刊記中の寄進の総額が白銀6両前後のものが圧倒的に多く、白銀6両というのが勧募に際しての一巻当りの目安ではなかったかと考えられる。
KAKENHI-PROJECT-63450002
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63450002
黄檗鉄眼版一切経の仏教史的研究
次に、鉄眼版の流布状況を知る為の基本資料「大蔵経請去総牒」、「全蔵斬請千字朱点簿」は、前年度以来の撮影調査を完了し、その内容をプリントアウトし、さらに整理を加えて、原稿化した。その結果、江戸期を通じての全蔵請去数は920件余、部分的な請去数は2200件余であることが判明した。また、その流布状況を検討すると、鉄眼版が江戸期仏教界における学問研究の進展に果した役割の大きさは、従来の予想をはるかに上回るものであったことが考えられる。八角輪蔵の実測図を作成した。上記の研究内容を成果報告書にまとめた。
KAKENHI-PROJECT-63450002
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50〜100ミクロン内径の毛細管内面を鏡面加工できる磁気援用研磨技術の開発
毛細管(微細管)はマイクロマシン,微細医療機器等に多用されるが,微細管内面の粗さを0.3μmRzの鏡面に仕上げられる加工技術は存在しない.現状は,比較的経が大きな管丙面を鏡面化した後,細管を引き伸ばして微細管を製作するため内面は粗面化する.そこで本研究は,磁気を利用した微細間内面の新しい鏡面仕上げ技術の創出を目指して研究展開した.平成17年度の成果は下記の通りである.1.微細管内面磁気研磨装置及び磁石工具の製作及び加工実験永久磁石と0.1mm径ピアノ線工具の間の磁力により微細管内面に加工力を発生させ,磁石と微細管の距離を調節してピアノ線工具の加工力制御が可能な微細管内面研磨装置を製作した.当初は0.1mmのSUS304微細管を用いて実鹸したが,研磨材の微細管内部への投入が不可能であり,円管の曲率半径を無限大とした平面工作物(0.1mm厚のSUS304薄板)を用いたモデル実験を実施して,基本的な加工特性を把握するとともに,面粗さ0.14μmRzを0.09μmRzに改善できることを明らかにした.2.永久磁石工具を用いた高周波振動細管内面研磨工具の開発とその加工挙動の解明微細管モデルとして2mm内径の細管を採用し,細管内部た永久磁石工具を挿入して内面研磨する新タイプの磁気研磨装置を製作した.これは,外部静磁場により磁石工具に一定の加工力を,変動磁場により磁石工具に高周波振動運動を与えて加工する新しい加工法である.振動研磨工具の挙動観察,電磁コイルへの励磁電流と磁石工具の振幅の関係,工具磁石間距離と工具振幅の関係などを明らかにし,磁石工具は外部変動磁場の周波数に完全に同期して振動研磨加工することを明らかにした.本手法により,細管内面の面粗さ15.6μmRzを0.15μmRzに改善できることを確認した.毛細管(微細管)はマイクロマシン,微細医療機器等に多用されるが,微細管内面の粗さを0.3μmRzの鏡面に仕上げられる加工技術は存在しない.現状は,比較的経が大きな管丙面を鏡面化した後,細管を引き伸ばして微細管を製作するため内面は粗面化する.そこで本研究は,磁気を利用した微細間内面の新しい鏡面仕上げ技術の創出を目指して研究展開した.平成17年度の成果は下記の通りである.1.微細管内面磁気研磨装置及び磁石工具の製作及び加工実験永久磁石と0.1mm径ピアノ線工具の間の磁力により微細管内面に加工力を発生させ,磁石と微細管の距離を調節してピアノ線工具の加工力制御が可能な微細管内面研磨装置を製作した.当初は0.1mmのSUS304微細管を用いて実鹸したが,研磨材の微細管内部への投入が不可能であり,円管の曲率半径を無限大とした平面工作物(0.1mm厚のSUS304薄板)を用いたモデル実験を実施して,基本的な加工特性を把握するとともに,面粗さ0.14μmRzを0.09μmRzに改善できることを明らかにした.2.永久磁石工具を用いた高周波振動細管内面研磨工具の開発とその加工挙動の解明微細管モデルとして2mm内径の細管を採用し,細管内部た永久磁石工具を挿入して内面研磨する新タイプの磁気研磨装置を製作した.これは,外部静磁場により磁石工具に一定の加工力を,変動磁場により磁石工具に高周波振動運動を与えて加工する新しい加工法である.振動研磨工具の挙動観察,電磁コイルへの励磁電流と磁石工具の振幅の関係,工具磁石間距離と工具振幅の関係などを明らかにし,磁石工具は外部変動磁場の周波数に完全に同期して振動研磨加工することを明らかにした.本手法により,細管内面の面粗さ15.6μmRzを0.15μmRzに改善できることを確認した.毛細管はプラズマ物理学,バイオテクノロジー,マイクロマシン,微細医療機器で多用される.しかし,毛細管内面の面粗さを0.20.3μmRzの鏡面に仕上げる機械加工技術はない.現状は,細管内面を鏡面化した後,細管を引き伸ばしながら毛細管を製作していく方法が取られるため内面は粗面化する.本研究は,磁気を利用した毛細管内面の新しい鏡面仕上げ技術の創出を目的としている.16年度の成果は下記の通りである.1.毛細管内面の磁気研磨工具及び基礎実験装置の製作永久磁石と0.1mm径ピアノ線の間の磁力により毛細管内面に加工圧力を発生させる.磁石と毛細管の距離を調節してピアノ線工具の加工圧力が制御できる装置を製作した.研究当初は0.1mmのSUS304微細管を用いて実験したが,研磨材を微細管内部に投入できなかった.そこで,基礎実験として円管の曲率半径を無限大とした平面状工作物(0.1mm厚のSUS304薄板)を用い,ピアノ線工具に振動と前後方向の揺動運動を与えて加工する装置を製作した.2.基礎実験装置の加工性能の評価と加工機構の考察ピアノ線工具の軸方向振動数1.1Hz・振幅15mm,前後方向揺動数1Hz・振幅2mm,磁石とピアノ線の間隙2mm,ダイヤモンドペースト(平均粒径0.25μm)を用いた遊離砥粒加工実験を行った結果,研磨量は時間とともに直線的に増加し,面粗さ0.14μmRzを0.09μmRzに改善できることを明らかにした.
KAKENHI-PROJECT-16360062
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16360062
50〜100ミクロン内径の毛細管内面を鏡面加工できる磁気援用研磨技術の開発
加工面は梨地面になり,砥粒の転がり運動による加工機構であることを確認した.ピアノ線工具の摩耗問題の解決が今後の課題になることも分かった.3.永久磁石工具を用いた細管内面の磁気研磨装置の開発細管モデルに2mm内径の円管を採用し,11.5mm径の永久磁石工具を挿入して内面を精密磁気研磨する新タイプの研磨装置を製作した.外部静磁場により磁石工具に定圧加工力を,変動磁場により磁石工具に振動運動を付与して高周波振動研磨工具の加工効果が得られることが期待される.毛細管(微細管)はマイクロマシン,微細医療機器等に多用されるが,微細管内面の粗さを0.3μmRzの鏡面に仕上げられる加工技術は存在しない.現状は,比較的経が大きな管内面を鏡面化した後,細管を引き伸ばして微細管を製作するため内面は粗面化する.そこで本研究は,磁気を利用した微細管内面の新しい鏡面仕上げ技術の創出を目指して研究展開した.平成17年度の成果は下記の通りである.1.微細管内面磁気研磨装置及び磁石工具の製作及び加工実験永久磁石と0.1mm径ピアノ線工具の間の磁力により微細管内面に加工力を発生させ,磁石と微細管の距離を調節してピアノ線工具の加工力制御が可能な微細管内面研磨装置を製作した.当初は0.1mmのSUS304微細管を用いて実験したが,研磨材の微細管内部への投入が不可能であり,円管の曲率半径を無限大とした平面工作物(0.1mm厚のSUS304薄板)を用いたモデル実験を実施して,基本的な加工特性を把握するとともに,面粗さ0.14μmRzを0.09μmRzに改善できることを明らかにした.2.永久磁石工具を用いた高周波振動細管内面研磨工具の開発とその加工挙動の解明微細管モデルとして2mm内径の細管を採用し,細管内部に永久磁石工具を挿入して内面研磨する新タイプの磁気研磨装置を製作した.これは,外部静磁場により磁石工具に一定の加工力を,変動磁場により磁石工具に高周波振動運動を与えて加工する新しい加工法である.振動研磨工具の挙動観察,電磁コイルへの励磁電流と磁石工具の振幅の関係,工具磁石間距離と工具振幅の関係などを明らかにし,磁石工具は外部変動磁場の周波数に完全に同期して振動研磨加工することを明らかにした.本手法により,細管内面の面粗さ15.6μmRzを0.15μmRzに改善できることを確認した。
KAKENHI-PROJECT-16360062
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16360062
APPからAβの切り出しを修飾する内在性タンパク質の機能解析
アルツハイマー病はAβの細胞外蓄積を原因とする。大部分のAβはAβ40として産生するが、量的に少ないが凝集性が強いAβ42が発症に中核的な役割を果している。先行研究で、iPS細胞を神経細胞へ分化誘導する際、分化誘導日数依存的にAβ42/Aβ40の産生比が変化することを見出した。分化誘導日数に応じて発現量が変化する遺伝子をAPPからAβの切り出しを修飾する候補分子と仮定し、当該分子の過剰発現系を用いて解析した結果、APPからの切り出しを修飾しAβ42/Aβ40産生比を変化させる分子として、新たにMYT1LとVAT1Lを同定した。研究計画に従って実験を進め、γセクレターゼ活性を修飾する候補遺伝子SLC39A3 cDNAとアミロイド前駆体タンパク質(APP)を共発現する安定発現細胞4クローンを樹立した。SLC39A3とγセクレターゼまたはAPPとの相互作用を明らかにする目的で、これらの細胞を用いて免疫沈降実験を行い、本エンドは先ずSLC39A3がAPPと結合することを明らかにした。その一方で、SLC39A3の亜鉛トランスポーターとしての機能とAβ42/Aβ40産生比の変化を解析するために、活性部位に人工的変異を導入した不活性型のSCL39A3のコンストラクトを作製し、細胞膜透過性亜鉛蛍光指示薬ZnAF-2 DAを用いた機能変化の解析を進めた。また、研究計画に従って、SLC39A3の細胞内局在性についても検討を行った。今後、siRNAを用いたSLC39A3ノックダウンによるAβ42/Aβ40比の変化についての解析を順次進める予定である。Aβ産生に関与し、Aβのカルボキシル末端の多様性を生むγセクレターゼにはAPP以外にもNotchを含む数多くの内在性基質が存在するため、直接的な阻害剤は副作用が多く、アルツハイマー病の治療目的に使用できない。そのため、Aβ40産生には影響せずAβ42産生のみを選択的に阻害するようなγ-セクレターゼ調節薬の開発が望ましい。しかし、この特異性を修飾する分子については全くと言って良いほど明らかにされておらず、本研究がさらに進めば、アルツハイマー病の新たな治療標的を見出したことになり、本疾患の創薬研究上大きな意義があると考えている。研究計画に従って実験を進め、今年度までにγセクレターゼ活性を修飾する候補遺伝子SLC39A3 cDNAとアミロイド前駆体タンパク質(APP)を共発現する安定発現細胞4クローンを樹立した。また、ネガティブコントロール用の遺伝子として、SLC39A1およびSLC30A3の動物細胞発現用プラスミドの作製と遺伝子発現確認を行った。その一方で、SLC39A3の亜鉛トランスポーターとしての機能とAβ42/Aβ40産生比の変化を解析するために、活性部位に人工的変異を導入した不活性型のSCL39A3のコンストラクトを作製し、Aβ42/Aβ40比の変化について解析を進めた。また、研究計画に沿って、SLC39A3のノックダウン条件を検討し、3種のsiRNAで何れも効率よく培養細胞でSLC39A3をノックダウンさせることに成功している。Aβ産生に関与し、Aβのカルボキシル末端の多様性を生むγセクレターゼにはAPP以外にもNotchを含む数多くの内在性基質が存在するため、直接的な阻害剤は副作用が多く、アルツハイマー病の治療目的に使用できない。そのため、Aβ40産生には影響せずAβ42産生のみを選択的に阻害するようなγ-セクレターゼ調節薬の開発が望ましい。しかし、この特異性を修飾する分子については全くと言って良いほど明らかにされておらず、本研究がさらに進めば、アルツハイマー病の新たな治療標的を見出したことになり、本疾患の創薬研究上大きな意義があると考えている。昨年度までにγセクレターゼ活性を修飾する候補遺伝子SLC39A3とアミロイド前駆体タンパク質(APP)との共発現細胞の樹立、ネガティブコントロール用遺伝子としてSLC39A1、SLC30A3および活性部位に人工的変異を導入した不活性型SCL39A3の動物細胞発現用プラスミドの作製、SLC39A3のノックダウン条件の確立を行い、Aβ42/Aβ40産生比の変化についての解析やSLC39A3とAPPとの相互作用について解析を行った。その一方で、Aβ産生比が細胞密度によって影響を受け、使用する培地中のFBSの含有率によっても測定値にバラつきが生じることが明らかになった。そこで、何度も条件検討を行い、候補遺伝子をトランスフェクション後24時間で血清低減培地に交換して培地中に含まれるAβ量を一旦リセットし、さらにその24時間後にAβを定量することで、導入遺伝子の効果を適切にかつ安定的に評価できるようになった。さらに、今年度はこの解析系を用いてSLC39A3以外にAβ42/Aβ40産生比を変化させる新規の分子を二種類見出すことに成功した。現在、これらの分子がAβ42/Aβ40産生比を変化させる詳細なメカニズムの解析を開始している。Aβ産生に関与し、Aβのカルボキシル末端の多様性を生む
KAKENHI-PROJECT-25293019
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APPからAβの切り出しを修飾する内在性タンパク質の機能解析
γセクレターゼにはAPP以外にもNotchを含む数多くの内在性基質が存在するため、直接的な阻害剤は副作用が多く、アルツハイマー病の治療目的に使用できない。そのため、Aβ40産生には影響せずAβ42産生のみを選択的に阻害するようなγセクレターゼ調節薬の開発が望ましい。しかし、この特異性を修飾する分子については全くと言って良いほど明らかにされていなかったため、本研究はアルツハイマー病の新たな治療標的を見出したことになり、本疾患の創薬研究上大きな意義があると考えている。アルツハイマー病はAβの細胞外蓄積を原因とする。大部分のAβはAβ40として産生するが、量的に少ないが凝集性が強いAβ42が発症に中核的な役割を果している。先行研究で、iPS細胞を神経細胞へ分化誘導する際、分化誘導日数依存的にAβ42/Aβ40の産生比が変化することを見出した。分化誘導日数に応じて発現量が変化する遺伝子をAPPからAβの切り出しを修飾する候補分子と仮定し、当該分子の過剰発現系を用いて解析した結果、APPからの切り出しを修飾しAβ42/Aβ40産生比を変化させる分子として、新たにMYT1LとVAT1Lを同定した。SLC39A3とAPPを安定に共発現する細胞株の樹立、SLC39A3とAPPとの相互作用の確認、SCL39A3不活性型コンストラクトおよびネガティブコントロール用遺伝子SLC39A1(SLC39A3ホモログタンパク質)、SLC30A3 (39A3とは逆に細胞質側から管腔・細胞外側にZnイオンを輸送する)のコンストラクト作製と培養細胞での遺伝子発現確認、不活性型SLC39A3の安定発現細胞の樹立、SLC39A3の細胞内局在性の検討、細胞膜透過性亜鉛蛍光指示薬ZnAF-2 DAを用いた機能変化の解析系の樹立、培養細胞でのSLC39A3ノックダウン条件の確立を行った。また、昨年に引き続きin vivo解析に備えアルツハイマー病モデルマウス(APPトランスジェニックマウス)の繁殖および飼育(加齢動物の作製)を進めた。研究計画に照らし合わせても一義的な目的は達成されていると考えられる。但し、SLC39A3の機能とAβ産生との関連づけについて優先順位を上げたため、SLC39A3部位欠失変異体を用いたγセクレターゼまたはAPP結合部位の決定については、当初の計画より若干遅れている。27年度が最終年度であるため、記入しない。神経薬理学上記の研究成果を踏まえ、Aβの最終的な切出しを行う「γセクレターゼ」とAβ42の切り出しを特異的に亢進しAβ40産生量には影響を与えない分子「SLC39A3」にターゲットを置き、その分子機構を明らかにした上で、Aβ42の切り出しを低下させることにより、副作用が少なく安全性が担保される創薬を目指す。これらの基礎研究により創薬開発基盤を固めた上で、最終的にSLC39A3に拮抗する低分子化合物のスクリーニング研究へと発展させていく。次年度以降は、特に、SLC39A3のAβ切出しに対する分子機構において、SLC39A3がγセクレターゼ複合体に直接結合して切断活性を変化させるのか、または亜鉛トランスポーターとしての生理機能を介して間接的にAβ42/Aβ40比を変化させるのかを明らかにしていく。前者であれば両分子の結合部位を明らかにし、両者の結合を阻害する化合物をスクリーニングすることで創薬研究に展開する。一方、後者であれば亜鉛トランスポーターに作用し、機能に拮抗する化合物のスクリーニングへと展開する。また、SLC39A3がin vivoでAβ
KAKENHI-PROJECT-25293019
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新たに開発した自然免疫スクリーニング系を用いた新しい作用点を有する医薬品の開発
本研究の目的は、研究代表者が新たに開発した遺伝子導入ショウジョウバエを利用したスクリーニング系を用いて、自然免疫に作用する化合物を検索し、新たな免疫賦活剤や免疫抑制剤を開発することにある。まず、このスクリーニング系の有効性を、ヒトの抗炎症薬を用いて示し、哺乳動物と昆虫において、アラキドン酸などの脂肪酸を介した共通な経路が存在することを示した。次いで、千を越す化合物・微生物抽出物についてスクリーニングし、シクロペンタン誘導体を同定した。この化合物は、ショウジョウバエ自然免疫の抗菌ペプチド産生におけるimd経路に作用して免疫抑制効果を示す。この化合物の作用点を同定したところ、膜上の受容体から転写因子Relishが核に移行するまでの、細胞内シグナル経路に作用していることが明らかとなった。ショウジョウバエのimd経路は、哺乳動物自然免疫系のTNF-α経路に共通性を示すことから、この化合物が、哺乳動物のTNF-α経路に抑制的に働くことが予想された。実際、本化合物は、TNF-αによるケモカイン産生に抑制的に働くことが示された。本研究は、自然免疫系が進化的に保存されており、昆虫とヒトで共通性を示すことに着目し、遺伝子導入ショウジョウバエを利用して自然免疫に作用する化合物を検索することにより、新たな免疫賦活剤や免疫抑制剤の開発を目指すという極めて独創的な研究であったが、新たな作用点を有する医薬品の開発にとって、予想以上に有効な戦略であることが示された。本研究の目的は、研究代表者が新たに開発した遺伝子導入ショウジョウバエを利用したスクリーニング系を用いて、自然免疫に作用する化合物を検索し、新たな免疫賦活剤や免疫抑制剤を開発することにある。まず、このスクリーニング系の有効性を、ヒトの抗炎症薬を用いて示し、哺乳動物と昆虫において、アラキドン酸などの脂肪酸を介した共通な経路が存在することを示した。次いで、千を越す化合物・微生物抽出物についてスクリーニングし、シクロペンタン誘導体を同定した。この化合物は、ショウジョウバエ自然免疫の抗菌ペプチド産生におけるimd経路に作用して免疫抑制効果を示す。この化合物の作用点を同定したところ、膜上の受容体から転写因子Relishが核に移行するまでの、細胞内シグナル経路に作用していることが明らかとなった。ショウジョウバエのimd経路は、哺乳動物自然免疫系のTNF-α経路に共通性を示すことから、この化合物が、哺乳動物のTNF-α経路に抑制的に働くことが予想された。実際、本化合物は、TNF-αによるケモカイン産生に抑制的に働くことが示された。本研究は、自然免疫系が進化的に保存されており、昆虫とヒトで共通性を示すことに着目し、遺伝子導入ショウジョウバエを利用して自然免疫に作用する化合物を検索することにより、新たな免疫賦活剤や免疫抑制剤の開発を目指すという極めて独創的な研究であったが、新たな作用点を有する医薬品の開発にとって、予想以上に有効な戦略であることが示された。本研究の目的は、申請者が新たに開発したスクリーニング系を用いて、自然免疫に作用する化合物を検索し、新たな免疫賦活剤や免疫抑制剤を開発することにある。自然免疫は、生物が進化のごく初期に獲得した、生体防御の基本となる防御機構である。さらに、哺乳動物において、病原菌の感染時に獲得免疫が成立するためには、自然免疫系が必要であることが示された。したがって、自然免疫系に作用する物質を検索することは、新たな免疫賦活剤や免疫抑制剤の開発に直結する可能性が高い。研究代表者は、自然免疫系がヒトと昆虫で共通であることに着目し、遺伝子組換え昆虫を用いて自然免疫のスクリーニング系を新たに開発した。本年度は、研究分担者・久保寺が、スクリーニングする化合物のライブラリーを作製した。その際、これまでの研究成果をふまえ、自然免疫を制御する脂質メディエーターに構造が類似している化合物のライブラリーを作製した。研究代表者・倉田は自然免疫スクリーニング系を用いて、自然免疫に作用する化合物を、このライブラリーから検索し、自然免疫を抑制する化合物を得た。一方、昆虫と昆虫寄生菌との関係に着目し、昆虫寄生菌が宿主の自然免疫を抑制する物質を生産しているかどうか、自然免疫スクリーニング系で探索した。その結果、多くの昆虫寄生菌が、自然免疫を抑制する物質を産生していることを見出した。本研究の目的は、研究代表者が新たに開発した遺伝子導入ショウジョウバエを利用したスクリーニング系を用いて、自然免疫に作用する化合物を検索し、新たな免疫賦活剤や免疫抑制剤を開発することにある。ショウジョウバエの自然免疫は、imd経路とToll経路の二つのシグナル伝達系で制御されている。これらは、それぞれ哺乳動物でも存在しており、RIPとToll様受容体(TLR)を介する経路に相当する。本年度は、(1)本研究で用いるスクリーニング系が、imd経路に作用する化合物を特異的に検出できることを明らかにした(Biochem.J.371,205-210,2003)。したがって、本スクリーニング系で同定した化合物は、哺乳動物のRIPが関わるシグナル伝達カスケードに作用することが期待できる(特許出願:出願日:2002年10月4日、出願番号:特願2002-292976)。
KAKENHI-PROJECT-13557200
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13557200
新たに開発した自然免疫スクリーニング系を用いた新しい作用点を有する医薬品の開発
実際、本スクリーニング系において、哺乳動物で抗炎症作用を有するホスホリパーゼA2阻害剤が同定された(Biochem.J.371,205-210,2003)。(2)本スクリーニングで同定した化合物のあるものは、ショウジョウバエの突然変異体を組み合わせた解析から、imd経路のカスケードにおいて、アダプター分子であるimdの下流で、転写因子Relishの上流に作用することが明らかとなった。本研究の目的は、研究代表者が新たに開発した遺伝子導入ショウジョウバエを利用したスクリーニング系を用いて、自然免疫に作用する化合物を検索し、新たな免疫賦活剤や免疫抑制剤を開発することにある。これまでに、千を越す化合物・微生物抽出物についてスクリーニングし、シクロペンタン誘導体を同定した。この化合物は、ショウジョウバエ自然免疫のimd経路に作用して免疫抑制効果を示す。この化合物の作用点を同定したところ、膜上の受容体から転写因子Relishが核に移行するまでの、細胞内シグナル経路に作用していることが明らかとなった。ショウジョウバエのimd経路は、哺乳動物自然免疫系のTNF経路に共通性を示すことから、この化合物が、哺乳動物のTNF経路に抑制的に働くことが予想された。実際、ヒト正常内皮細胞を用いて、TNF刺激によるケモカイン産生への影響を調べたところ、本化合物は、TNFによるケモカイン産生に抑制的に働くことが示された。さらに、その作用点は昆虫自然免疫と同じ細胞内シグナル伝達系であることが判明した。本研究は、自然免疫系が進化的に保存されており、昆虫とヒトで共通性を示すことに着目し、遺伝子導入ショウジョウバエを利用して自然免疫に作用する化合物を検索することにより、新たな免疫賦活剤や免疫抑制剤の開発を目指すいう極めて独創的な研究であったが、新たな作用点を有する医薬品の開発にとって、予想以上に有効な戦略であることが示された。
KAKENHI-PROJECT-13557200
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細孔組織が適切に設計された高緻密な繊維強化セメント系建材の開発
平成7年度と8年度の目的である建材用原料粉体の高緻密化は、高速気流中衝撃処理により球状高緻密粒子に改質することができた。新規合成した改質セメント原料を用いて作製した非石綿繊維強化セメント建材の吸水率は約45%となり、従来の粉体混合手法で作製した建材の吸水率値1520%に比べて大幅な低減に成功した。その結果、得られた新建材の耐凍害性は大幅に向上した。平成9年度の目標である「試作建材の液/気相を用いた表面改質プロセスによる耐凍害性の改善」は、反応気体である炭酸ガス(23気圧)で水或いは微粒炭酸マグネシウムサスペンジョンで湿潤させた建材を高圧容器中で約1時間、約60°C程度の加温状態で処理することにより、建材表面に高緻密な反応層を形成させることができた。その結果、例えばASTM法で規定する凍結融解試験600サイクル後でも建材内部からのイオン溶出が極めて効果的に阻止され、内部組織は緻密に維持され耐凍害性を大幅に向上させることに成功した。本研究で対象とする「建材の凍害発生メカニズムの解明」の基礎的課題については、“建材内部での化学成分や結晶状態によって細孔内表面の水の凍結挙動がどの様に相違するか"に焦点を絞り検討した。組成及び結晶状態の異なる酸化物を対象に低温冷却DSC分析法で表面水の凍結開始温度と凝固エンタルピーを測定した。その結果、約610nm程度の膜厚さの表面水はイオン結合性の低い固体表面や非晶質表面上ほど強固に束縛されて熱力学的に極めて安定して存在し、凍結し難いことが分かった。本研究では従来からの補強繊維である「石綿」を用いず、同等の補強性能を持つ非発ガン性のビニロン繊維を用い、セメント原料も従来になかった新規な粉体処理により球状化かつ高緻密化した粒子粉体を合成して、従来にはない極めて低温環境下で高耐久性を有する板状新建築素材(壁、屋根、床用)を開発することを目的としている。本年度の成果をまとめると以下のようである。(1)高速気流中衝撃式セメント粉体処理により、個々の単一粒子が高性能減水剤、細骨材、成形助剤などを所定量含む緻密で球形で流動性および充填性に優れるビニロン繊維補強セメント系建材の原料粉体が合成できる事が分かった。この新規合成セメント原料を用いると、建材成形時の混水比が比処理セメント粉に比べて約5割に低減でき、養生後に得られる板建材の吸水率は、同じ成形法で比較すると半分以下(例えば注型/加圧法では5%程度)の低吸水率建材を作製できることが分かった。(3)上記の低吸水率で高緻密なビニロン繊維強化セメント板建材をアメリカ・コンクリート低温耐久性試験法(ASTMC-666-A)で凍結融解を700サイクル繰り返しても、比処理粉体の同種系建材では組織破壊を起こすが、全く組織劣化が見られず極めて高耐久性化が達成されていることが分かった。これらの内容は学会で口頭発表すると同時に工業新聞社の掲載記事として公表された。(4)また、平成8年度に本格的に実施の予定であるが、予備実験として今年度新規に開発できた高耐久性セメント建材の表面を炭酸ガスにて処理を行った結果、表面細孔組織が変化して、本研究で計画した低温高耐久性向上に適した細孔組織と構造を達成するための実験条件設定を大まかに掴むことが出来たので、この予備的検討の結果は来る関連学会での発表を行うと共に平成8年度に本格的に成果を求めて行く予定である。平成7年度と8年度の目的である建材用原料粉体の高緻密化は、高速気流中衝撃処理により球状高緻密粒子に改質することができた。新規合成した改質セメント原料を用いて作製した非石綿繊維強化セメント建材の吸水率は約45%となり、従来の粉体混合手法で作製した建材の吸水率値1520%に比べて大幅な低減に成功した。その結果、得られた新建材の耐凍害性は大幅に向上した。平成9年度の目標である「試作建材の液/気相を用いた表面改質プロセスによる耐凍害性の改善」は、反応気体である炭酸ガス(23気圧)で水或いは微粒炭酸マグネシウムサスペンジョンで湿潤させた建材を高圧容器中で約1時間、約60°C程度の加温状態で処理することにより、建材表面に高緻密な反応層を形成させることができた。その結果、例えばASTM法で規定する凍結融解試験600サイクル後でも建材内部からのイオン溶出が極めて効果的に阻止され、内部組織は緻密に維持され耐凍害性を大幅に向上させることに成功した。本研究で対象とする「建材の凍害発生メカニズムの解明」の基礎的課題については、“建材内部での化学成分や結晶状態によって細孔内表面の水の凍結挙動がどの様に相違するか"に焦点を絞り検討した。組成及び結晶状態の異なる酸化物を対象に低温冷却DSC分析法で表面水の凍結開始温度と凝固エンタルピーを測定した。その結果、約610nm程度の膜厚さの表面水はイオン結合性の低い固体表面や非晶質表面上ほど強固に束縛されて熱力学的に極めて安定して存在し、凍結し難いことが分かった。
KAKENHI-PROJECT-07555501
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07555501
細孔組織が適切に設計された高緻密な繊維強化セメント系建材の開発
本研究は肺ガン誘発材料である「石綿」を用いず、石綿繊維補強と同等或いはそれ以上の耐久性(特に、低温環境下での耐久性;耐凍害性)を具備するセメント建材を新規に開発することを目的とした。研究の特色は、建材の多孔組織を緻密化し、成形時の水/セメント比を低減し結果的に組織を緻密化して吸水率を大幅に低減させ、機械的強度も向上させて低温耐久性の改善効果をねらう点である。特に、板状建材の表層部分(約1mm厚さ程度)の細孔径分布を炭酸ガス処理によって細孔内部に炭酸化物を析出させることによって調節する建材処理技術の確立も主な研究特色である。上述のセメント原料粉体を各種混和剤粉体と共に数千r.p.m.で回転する気流場中で相互粒子衝突させることによって球状で大きさが揃ったセメント建材用原料に変えて細密充填理論(Fuller則など)で適当な粒度配合を行い建材成形時の水/セメント比(W/C)を低減させることに成功した。同種原料配合系で高速気流衝撃場処理の有無で比較すると、無処理系の建材では(W/C=0.4程度)でも成形に適した可塑性が得られないが、処理系の建材では(W/C=0.2程度)でも十分に流動成形可能で養生条件を十分に施すことによって、建材内部でも未水和は回避でき、吸水率は無処理系の建材の約1618%に比べて約2程度にまで大幅に低減出来ることを実験的に明らかにした。従って、上述の様な高度の吸水率低減化新建材は、研究代表者の以前からの基礎研究で明らかにされている様に、極めて優れた耐凍害性を示す事が分かった。また、上述のもう一つの研究発想である炭酸ガス処理による建材表層部の細孔径分布の制御に適した具体的な処理条件を確立出来た。その結果、炭酸ガス処理建材は吸水率の低減効果と共に凍害促進細孔径の低減を可能にして、結果的に耐凍害性を大幅に向上させることに成功した。従って、これらの諸成果は幾つかの無機系材料或いは粉体の専門学会で発表・投稿を済ませた。また、これら諸成果は本国寒冷地でのセメントを主体とする無機建材(板材)の実際に利用可能な建材の製造に大きく貢献すると考えられる。平成7年度と8年度の目的である建材用原料粉体の高緻密化は、高速気流中衝撃処理により球状高緻密粒子に改質することができた。新規合成した改質セメント原料を用いて作製した非石綿繊維強化セメント建材の吸水率は約45%となり、従来の粉体混合手法で作製した建材の吸水率値1520%に比べて大幅な低減に成功した。その結果,得られた新建材の耐凍害性は大幅に向上した。平成9年度の目標である「試作建材の液/気相を用いた表面改質プロセスによる耐凍害性の改善」は、反応気体である炭酸ガス(23気圧)で水或いは微粒炭酸マグネシウムサスペンジョンで湿潤させた建材を高圧容器中で約1時間、約60°C程度の加温状態で処理することにより、建材表面に高緻密な反応層を形成させることができた。その結果、例えばASTM法で規定する凍結融解試験600サイクル後でも建材内部からのイオン溶出が極めて効果的に阻止され、内部組織は緻密に維持され耐凍害性を大幅に向上させることに成功した。本研究で対象とする「建材の凍害発生メカニズムの解明」の基礎的課題については、"建材内部での化学成分や結晶状態によって細孔内表面の水の凍結挙動がどの様に相違するか"に焦点を絞り検討した。組成及び結晶状態の異なる酸化物を対象に低温冷却DSC分析法で表面水の凍結開始温度と凝固エンタルピーを測定した。その結果、約610nm程度の膜厚さの表面水はイオン結合性の低い固体表面や非晶質表面上ほど強固に束縛されて熱力学的に極めて安定して存在し、凍結し難いことが分かった。
KAKENHI-PROJECT-07555501
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07555501
量子化学および分子動力学的手法による星間分子反応素過程の理論的研究
天文・宇宙物理分野で分子や物質の反応が重要な役割を果たす広範な現象に対し、理論化学的手法を適用して問題解明へ貢献することが本研究の目的である。具体的な研究対象は2つあり、1つ目は気相・星間塵表面での複雑な分子生成に関わる化学反応素過程の理論化学的取り扱いである。本計画では特に、複雑な星間有機分子生成に関連する気相・星間塵表面それぞれの反応素過程の詳細を明らかにする。本研究のもう一つの対象は、原子・分子超精密分光を用いた非加速器素粒子物理実験への理論化学的立場からの実験提案・結果の予測・サポートである。これら素粒子関連の研究は、生物のアミノ酸がL体のみから出来ている非対称性、我々の宇宙の物質・反物質の非対称性などを解明する上で重要な役割を果たすと考えられており、原子分子分光実験の計画・解析には理論化学的手法が不可欠である。今年度は前年度に引き続き、主に非加速器素粒子物理実験と関連した課題を推進した。特に、原子の電子励起状態から光子1つとニュートリノ対が放出されて基底状態に脱励起する過程について検討を進めた。対象として金およびキセノン原子を候補とし、まず、それぞれの原子について相対論的電子状態計算手法を用いて精度の高い励起状態間遷移要素の計算を行った。次にそれらの結果を用いて光子1つとニュートリノ対が放出される過程の強度の計算を行った結果、従来から検討されているキセノン原子の方が金原子に比べて大幅に強い強度でニュートリノ対が放出されることを確認することができた。一方で、星間塵表面での分子生成過程に関連し、水クラスター上で一酸化炭素に逐次的に水素が付加される反応過程を対象とし、GRRMを用いた取扱いについて検討を行った。計画申請後の所属異動による研究環境の変化により、初年度・次年度においてはエフォートの割合が大幅に低下し想定通りに計画を進めることができなかった。このため当初の想定よりも全体ではやや遅れているが、研究課題自体は着実に進んでいると考えている。非加速器素粒子物理実験と関連した課題はほぼ完了しつつあるので、今後は気相・星間塵表面での複雑な分子生成に関わる課題に主に取り組むことになる。今年度に引き続き、GRRMを用いた表面反応取扱いの検討を推めて行く予定である。一方で、申請者がこれまで開発してきた第一原理R行列法の手法を発展させて電子・分子衝突過程の計算で振動・解離といった核運動の効果を取り扱えるよう改良し、プログラム実装を行う。その後は、電子・分子衝突を取り扱うことのできる理論・プログラム開発を行うと同時に星間分子反応への応用も進める予定である。理論開発面では、電子・分子衝突過程において空間的に広がった分子軌道を取り扱うための基底関数の検討を行う。これまでの取り扱いでは標的分子・衝突電子双方ともにガウス型関数の線形結合を用いて軌道を表現していたが、この方法では標的分子が大きい場合や価電子軌道がdiffuseで広がっている場合に数値的な不安定性が発生し易い。また、R行列法で用いるInner Regionを大きく取ることが困難であるという点も問題である。これらの問題を回避するため、本計画では衝突電子を表現する軌道関数をガウス関数以外の関数で表現することを検討する。具体的には、スレーター型関数・スプライン関数などを導入してガウス型関数を用いた場合との計算時間の違い、適用範囲の違いなどを探索する予定である。天文・宇宙物理分野で分子や物質の反応が重要な役割を果たす広範な現象に対し、理論化学的手法を適用して問題解明へ貢献することが本研究の目的である。具体的な研究対象は2つあり、1つ目は気相・星間塵表面での複雑な分子生成に関わる化学反応素過程の理論化学的取り扱いである。本計画では特に、複雑な星間有機分子生成に関連する気相・星間塵表面それぞれの反応素過程の詳細を明らかにする。本研究のもう一つの対象は、原子・分子超精密分光を用いた非加速器素粒子物理実験への理論化学的立場からの実験提案・結果の予測・サポートである。これら素粒子関連の研究は、生物のアミノ酸がL体のみから出来ている非対称性、我々の宇宙の物質・反物質の非対称性などを解明する上で重要な役割を果たすと考えられており、原子分子分光実験の計画・解析には理論化学的手法が不可欠である。今年度は主に本計画の2つ目の研究対象、非加速器素粒子物理実験と関連した課題に取り組んだ。素粒子の1つであるニュートリノには未だ決されていない基礎的なパラメータ(絶対質量,Dirac/Majoranaの区別など)が存在している。最近、原子・分子を用いる精密分光実験を用いて、これらのパラメータを決定できる可能性が議論されている(Prog. Theor. Exp. Phys. 04D002 (2012)など)。これらの実験では光子が1つとニュートリノ対が原子・分子の励起状態から放出されるRENP(radiative emission of neutrino pair)過程を利用するが、その対象としてどのような原子・分子が良いかをあらかじめ理論計算によって絞り込むことが望まれている。本年度は原子でのニュートリノ放射率を見積もる準備として、SrやXe等の原子を対象としてGRASP2Kを用いた相対論的電子状態計算を行った。申請時(研究所)と研究開始時(大学)の所属が変化したため、研究環境や割り当てることのできるエフォートに大きな変化があった。特に、エフォートに関しては申請時に想定していた量の1/4程度に留まるのではないかと考えている。したがって、計画していたよりも研究計画はやや遅れているのが現状である。
KAKENHI-PROJECT-16K05307
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量子化学および分子動力学的手法による星間分子反応素過程の理論的研究
ただし、非加速器素粒子物理に関連する課題については概ね順調に進んでいる。天文・宇宙物理分野で分子や物質の反応が重要な役割を果たす広範な現象に対し、理論化学的手法を適用して問題解明へ貢献することが本研究の目的である。具体的な研究対象は2つあり、1つ目は気相・星間塵表面での複雑な分子生成に関わる化学反応素過程の理論化学的取り扱いである。本計画では特に、複雑な星間有機分子生成に関連する気相・星間塵表面それぞれの反応素過程の詳細を明らかにする。本研究のもう一つの対象は、原子・分子超精密分光を用いた非加速器素粒子物理実験への理論化学的立場からの実験提案・結果の予測・サポートである。これら素粒子関連の研究は、生物のアミノ酸がL体のみから出来ている非対称性、我々の宇宙の物質・反物質の非対称性などを解明する上で重要な役割を果たすと考えられており、原子分子分光実験の計画・解析には理論化学的手法が不可欠である。今年度は主に2つ目の研究対象、非加速器素粒子物理実験と関連した課題に取り組んだ。素粒子の1つであるニュートリノには未だ決されていない基礎的なパラメータが存在している。最近、原子・分子を用いる精密分光実験を用いて、これらのパラメータを決定できる可能性が議論されている(Prog. Theor. Exp. Phys. 04D002 (2012)など)。これらの実験では光子が1つとニュートリノ対が原子・分子の励起状態から放出されるRENP(radiative emission of neutrino pair)過程を利用するが、その対象としてどのような原子・分子が良いかをあらかじめ理論計算によって絞り込むことが望まれている。本年度はこれまでXe原子やI2分子等で想定されていた放射過程(遷移要素にスピン演算子を含む)とは異なる過程(遷移要素やgamma5演算子を含む)に着目し、Au原子等を対象としてGRASP2Kを用いた相対論的電子状態計算を行った。申請時と研究開始時の所属が変化したため、研究環境や割り当てることのできるエフォートに大きな変化があった。特に、エフォートに関しては申請時に想定していた量の1/4程度に留まるのではないかと考えている。当初の想定よりもやや遅れているが、研究課題は着実に進んでいると考えている。天文・宇宙物理分野で分子や物質の反応が重要な役割を果たす広範な現象に対し、理論化学的手法を適用して問題解明へ貢献することが本研究の目的である。具体的な研究対象は2つあり、1つ目は気相・星間塵表面での複雑な分子生成に関わる化学反応素過程の理論化学的取り扱いである。本計画では特に、複雑な星間有機分子生成に関連する気相・星間塵表面それぞれの反応素過程の詳細を明らかにする。本研究のもう一つの対象は、原子・分子超精密分光を用いた非加速器素粒子物理実験への理論化学的立場からの実験提案・結果の予測・サポートである。これら素粒子関連の研究は、生物のアミノ酸がL体のみから出来ている非対称性、我々の宇宙の物質・反物質の非対称性などを解明する上で重要な役割を果たすと考えられており、原子分子分光実験の計画・解析には理論化学的手法が不可欠である。今年度は前年度に引き続き、主に非加速器素粒子物理実験と関連した課題を推進した。
KAKENHI-PROJECT-16K05307
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動作主体と動作対象の視覚的な関係を考慮した動作認識モデルの提案
本研究は動詞概念と、動作対象もしくは動作主体の名詞概念との視覚的な関係に関する分析を行い、その関係を考慮した動作モデルを学習する。このモデルを利用することで、動詞と名詞の関係を考慮した、それぞれ単独で認識していた従来の手法より精度の高い動作および物体の同時認識の実現が期待できる。そのモデルの学習には指定キーワードに対応する動画ショットが大量に必要である。我々がすでに提案したデータ収集フレームワークを用いて100種類のキーワードに関して大規模な実験を実施し多くの動作の動画ショットが得られた。ただし、動作の多様性に対応できなかった場合もある。例えば同じ「swing」(ブランコで遊び)でも、個人で行う場合と、二人で行う場合の動作は見た目が違う。さらにどの場合でもビューポイントなどの違いによりまた動作が異なるように見えることがわかる。このように多様性の大きい動作でも今まで提案した手法を利用することよって見た目が同じのショットしか得られなかった。それで今年度は結果の精度と多様性の改善を目的とし、新しいショット選択手法を提案した。動作の多様性に対応できるようにショットランキングの前にショットクラスタリングを行う。各クラスタは動作の異なる様相を表す。ショットランキングはクラスタごとに行われ、多くのショットと視覚的に類似したショットは上位にランキングされる。その結果、動作の様々な角度から撮った動画ショットが得られた。これらの結果はすでに国内外学会で発表し、雑誌に投稿中である。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。本研究は動詞概念と、動作対象もしくは動作主体の名詞概念との視覚的な関係に関する分析を行い、その関係を考慮した動作モデルを提案する。このモデルを利用することで、動詞と名詞の関係を考慮した、それぞれ単独で認識していた従来の手法よりも精度の高い動作および物体の同時認識の実現が期待できる。そのモデルの学習には指定キーワードに対応する動画ショットが大量に必要である。我々がすでに提案したデータ収集フレームワークを用いて100種類のキーワードに関して大規模な実験を実施し多くの動作の動画ショットが得られた。ただし、動作の多様性に対応できなかった場合がある。例えば同じ「縄跳び」でも、個人で行う場合と、グループで行う場合の動作は見た目が違う。さらにどの場合でもビューポイントなどの違いによりまた動作が異なるように見えることがわかる。それで前年度は収集データの精度と多様性の改善を目的とし、新しい視覚特徴およびショット選択手法を提案した。視覚特徴として提案フレームワークでは既存の時空間特徴を利用した。この既存の特徴の抽出し方を改良、デンスサンプリングでより多くの特徴点を得られることになった。また、手動きに注目した特徴も抽出した。新しい視覚特徴を利用することによって精度がよくなかった動作の多くは大幅に改良できた。これらの成果はすでに国際会議で発表し、国際雑誌に投稿中である。動作の多様性に対応できるようにショットランキングの前にショットクラスタリングを行う。各クラスタは動作の異なる様相を表す。ショットランキングはクラスタごとに行われ、多くのショットと視覚的に類似したショットは上位にランキングされる。その結果、動作の様々な角度から撮った動画ショットが得られた。これらの成果は現在国際学会に投稿中である。本研究は動詞概念と、動作対象もしくは動作主体の名詞概念との視覚的な関係に関する分析を行い、その関係を考慮した動作モデルを学習する。このモデルを利用することで、動詞と名詞の関係を考慮した、それぞれ単独で認識していた従来の手法より精度の高い動作および物体の同時認識の実現が期待できる。そのモデルの学習には指定キーワードに対応する動画ショットが大量に必要である。我々がすでに提案したデータ収集フレームワークを用いて100種類のキーワードに関して大規模な実験を実施し多くの動作の動画ショットが得られた。ただし、動作の多様性に対応できなかった場合もある。例えば同じ「swing」(ブランコで遊び)でも、個人で行う場合と、二人で行う場合の動作は見た目が違う。さらにどの場合でもビューポイントなどの違いによりまた動作が異なるように見えることがわかる。このように多様性の大きい動作でも今まで提案した手法を利用することよって見た目が同じのショットしか得られなかった。それで今年度は結果の精度と多様性の改善を目的とし、新しいショット選択手法を提案した。動作の多様性に対応できるようにショットランキングの前にショットクラスタリングを行う。各クラスタは動作の異なる様相を表す。ショットランキングはクラスタごとに行われ、多くのショットと視覚的に類似したショットは上位にランキングされる。その結果、動作の様々な角度から撮った動画ショットが得られた。これらの結果はすでに国内外学会で発表し、雑誌に投稿中である。前年度は期待通りに研究が進展した。Computer Vision and Image Understanding誌に発表した成果を基本にしてその発展的研究を行った。その成果を国内外の学会2件において発表するとともに、周辺研究についての解説論文をまとめた。現在、自分を筆頭著者とする2報目の原著論文を投稿中である。本年度の計画した研究内容にしたがって大規模のデータを準備中である。本研究は動作主体と動作対象の関係を考慮した動作認識モデルを構成することを目的とする。高性能の認識モデルを学習するには高精度で多様性が大きいデータセットが必要である。前年度では提案の改良によってデータの精度と多様性を大幅に改善できた。本研究は従来なかったもので、収集できたデータに対して、提案手法を適用することによって初めて得られる結果であると期待できる。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-14J11435
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動作主体と動作対象の視覚的な関係を考慮した動作認識モデルの提案
前年度は大量に存在するWeb動画を用いた動画ショット収集作業を行った。本年度は収集できたWeb動画データセットを用いて提案モデルを学習する。そして、構築した動作と物体の関係を考慮した確率モデルを利用して、動詞概念・名詞概念の視覚的関係について、大規模に分析を行う予定である。具体的には、動詞概念・名詞概念の組み合わせの視覚的な関係を分析するために、クエリワード毎に抽出した対応ショットの特徴量の分布をPLSA(Probabilistic Latent Semantic Analysis)もしくはLDA(Latent Dirichlet Allocation)を拡張した新しく提案する確率生成モデルを用いて表現する。そして、エントロピーや相互情報量などの基準を用いて、様々な動詞概念・名詞概念の組み合せについて分布の違いの定量的な分析を行う。「食べる」の例でいうと食べ物による食べ方の相違点と共通点がわかるようになる。さらに、得られた動作モデルを動作認識あるいは物体認識のシステムに適用してそのモデルの有効性の検証を行う。例えば、「食べる」動作モデルの応用例としては「食べ方を考慮した食品認識システム」が考えられる。このシステムは従来の食品の特徴のみによる食品認識システムより性能が高いことが期待できる。実験では、動詞毎に分けてモデル学習を行う場合と、様々な動作をすべてまとめて学習する2通りを実験する予定である。後者の場合、学習データ量が多くなるが、異なる動詞であっても、動作が同じである場合には同じカテゴリとして検出されるので、名詞概念と動詞概念の関係分析の結果としては新しい結果が得られる可能性がある。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-14J11435
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19世紀初頭イギリスのジャーナリズムに対するチャップブックの影響
本研究は、ウィリアム・ホーンが手掛けたパンフレットと当時のチャップブックとの共通点を探り、彼が自身の作品の中で具体的にどのような特徴を利用したのかという点を明らかにするものである。主な研究成果は、以下の2点にまとめられる:(1)学術論文「大衆文化とジャーナリズムーチャップブックの成り立ちとその意義ー」の発表、(2)共著「詩と詩論の相互作用とその変容「秋に寄せて」におけるキーツの新たな試み」の出版。平成25年度は、主に18世紀から19世紀初頭にかけてイギリスで流通していたと考えられる子供向けのチャップブックの資料収集を行った。Newbery関連のチャップブックを中心とした資料を集めることに専念したが、日本においてほぼ入手が不可能であると判断されるものについては、ロンドンのBritish Libraryに赴き、資料の閲覧を行った。さらに、この時点でまとめることが出来た研究成果については、論文として投稿することができた。本論文は、ジャンルとしての確立自体が不明瞭なチャップブックの成立及び分類について外観及び整理を行い、18世紀末から19世紀初頭イギリスにおいて人気を博した理由を探るというものである。また、チャップブックの形式を最大限に利用したと考えられるウィリアム・ホーン(William Hone)及びジョージ・クルックシャンク(George Cruikshank)作の『ジャックの建てた家』(The Political House that Jack Built,1819年)創作の意義について考察したものでもある。チャップブックの最大の読者層であった労働者階級の読書が、単なる娯楽としての目的から社会変革のために必要な知識や情報を入手するための手段へと変化していった事に伴い、時事性を極力排除しようとしてチャップブックのメリットが、時代の変化によって逆にデメリットとして作用するようになった事が判明した。その点に於いて、時事性と政治性の双方の要素を巧みに取り込んで融合させた『ジャックの建てた家』は、「新たなチャップブック」としての成功例の一例だと言えるのではないだろうか。平成26年度は、William Hone以外の政治パンフレットに対象を広げ、児童書籍との関連性を探ることを大きな目標とした。しかしながら、19世紀初頭に発行されたパンフレットも数多くあるため、まずはHoneに対抗して出版されたパロディ版に焦点を絞り、共通するイメージや表象方法の有無を調査することに専念した。さらには、イギリス文化という大局的な観点から、当時の体制(政府側)あるいは反体制(一般市民側)という二項対立の構図の中で、18世紀以降に子供たちの間で人気を博した伝統的なチャップブックが果たした役割という点についても、その解明を試みることにした。。具体的な資料収集については、まず昨年度に引き続きイギリスのBritish Libraryに赴き、関係資料の閲覧を行った。そこでは、18世紀末から19世紀初頭にイギリスで出版されたチャップブック関連の書籍、例えばHannah MoreのVillage Politics、1795年に出版されたCheap Repository Tracts、1817年に出版されたVagabondianaなどを閲覧することができた。それに加えて、Nursery Rhymesの辞書やチャップブックに関係する研究書を購入した。しかしながら、その具体的な研究成果については、出版のスケジュールの関係から、平成26年度内の実績としてはこの報告書に記載することが出来なかった。因みにその研究成果は平成27年度中に他の研究者との共同執筆という形式で書籍として出版することになっている。平成27年度は、平成25年度及び平成26年度に引き続き、18世紀から19世紀初頭に出版されたチャップブック関連の書籍の収集に引き続き専念するとともに、それらに収録されている歌、子供向けの文学、バラッド、宗教冊子など、多種多様な形態の作品を整理しながら、作家でもあり書籍業者でもあるWilliam Hone作のパンフレット『The Political House that Jack Built』(1819年)が具体的にどの作品のどの箇所の影響を最も強く受けているのかという点について調査を行うこととなった。これに加えて、William Hone以外の政治パンフレットや児童書籍を中心に資料収集とその精読を行った。具体的には、これも前年度と同じくイギリス・ロンドンのBritish Libraryに赴いて、計20点余の資料収集を行うことができた。しかしながら、3年間という限られた時間内で当初計画していた通りの成果は得られなかった。それはチャップブックが予想以上に多種多様かつ広範囲に存在したからである。また、そのジャーナリズムへの影響についても限定的な視点において確認することはできたものの、ジャーナリズム全体に敷衍して説明することは出来なかった。従って、これらの点については引き続き今後の研究課題とする予定である。具体的な研究成果については、スケジュールの問題から、残念ながら計画していた国内での研究発表については実現が出来なかった。しかしながら、分担著の形式で自身の研究成果を一冊の書籍にまとめることが出来た。これについては、『詩的言語の諸相ロマン派を超えて』というタイトルで2016年の前半に出版されることが確定している。本研究は、ウィリアム・ホーンが手掛けたパンフレットと当時のチャップブックとの共通点を探り、彼が自身の作品の中で具体的にどのような特徴を利用したのかという点を明らかにするものである。主な研究成果は、以下の2点にまとめられる:(1)学術論文「大衆文化とジャーナリズムーチャップブックの成り立ちとその意義ー」の発表、(2)共著「詩と詩論の相互作用とその変容「秋に寄せて」におけるキーツの新たな試み」の出版。資料収集については概ね順調に推移している。
KAKENHI-PROJECT-25370281
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19世紀初頭イギリスのジャーナリズムに対するチャップブックの影響
しかしながら、前年度の報告と同じく、研究目的の一つである「文化的な視座から19世紀初頭イギリスにおける民間伝承とジャーナリズムとの関係を探る」という点については、未だ十分に達成できてはいないからである。イギリス文化研究平成28年度は、前年度に引き続きチャップブック関連の資料収集を継続して行うとともに、最終年度であるため、研究成果を発表し、研究の総括を行う。資料収集については、おおむね順調に推移しているものの、研究の目的の一つである「文化的な視点から19世紀初頭イギリスにおける民間伝承とジャーナリズムとの関係を探る」という点については、未だ達成できていないからである。物品費及び旅費については概ね予定額に近いものとなったが、その他及び謝金について該当する出費がなく、繰越金が生じたと思われる。平成26年度は、18世紀から19世紀初頭に出版されたチャップブック関連の書籍の収集に引き続き専念するとともに、それらに収録されている歌、子供向けの文学、バラッド、宗教冊子など多種多様な形態の作品を整理し、まずはWilliam Honeのパンフレットが具体的にどの作品のどの箇所の影響を最も強く受けているのかという点について調査を行う。資料収集及び学会発表のための旅費、さらには資料収集の物品費に充てる。物品費及び旅費については概ね予定額に近いものとなったが,その他及び謝金について該当する出費がなかったため,繰越金が生じた。イギリスにおける資料収集及び学会発表等を目的とした旅費及びチャップブックに関連する資料を購入する物品費にあてる。
KAKENHI-PROJECT-25370281
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ヒト細胞に強く作用する化合物の合成
1。アクロメリン酸類縁体の新合成法開発;トリフロロアセトフエノン存在下に光照射して、ベンジル位にラジカルを発生させ、αβ-不飽和エステルで受けてC-C結合をつくり、ピロリジン環を構築する方法が殆ど完成した。本法の問題点はピロリジン環形成に際し3,4位のサイドグループがシスの立体配置をもつ様に構築することである。4-[2-(2-メトキシフェニル)エトキシ]アクリル酸エステルを使ったモデル実験ではメチルエステルでもトランス体が優り、エステル部が大きくなるとトランス体が主生成物となった。しかし、本反応を3-[2-(2-メトキシフェニル)エチル]-4-(2-メトキシカルポニルビニル)-2-オキサゾロンに適用したところ目的の反応は殆ど進行しなかったが、KFを加えることで収率が50%程度となり、またシス:トランスは1:1となった。KFの作用については不明のままであるが、エステル部をメトキシメチルアミドにかえベンゼンを溶媒にしたところ、シス体が98%にまで向上した。しかし、シス体が多くなるに従い全収率が下がってくるので、この点の改良を検討中である。アミドは収率良く加水分解され、この段階で、最も活性の強い類縁体MFPAの通算収率が約25%となった。2。タキソール合成法の検討: (5+2)反応によって骨格を作る経路と(4+2)反応でC環を構築する経路の二つを検討する予定であったが、その原料合成が途上にあるため、まだ鍵反応は検討していない。しかし、原料合成上でケタール化し難いケトンのケタール化にフマール酸などのジカルボン酸の添加が有効であることがわかり、一般化を検討中である。1。アクロメリン酸類縁体の新合成法開発;トリフロロアセトフエノン存在下に光照射して、ベンジル位にラジカルを発生させ、αβ-不飽和エステルで受けてC-C結合をつくり、ピロリジン環を構築する方法が殆ど完成した。本法の問題点はピロリジン環形成に際し3,4位のサイドグループがシスの立体配置をもつ様に構築することである。4-[2-(2-メトキシフェニル)エトキシ]アクリル酸エステルを使ったモデル実験ではメチルエステルでもトランス体が優り、エステル部が大きくなるとトランス体が主生成物となった。しかし、本反応を3-[2-(2-メトキシフェニル)エチル]-4-(2-メトキシカルポニルビニル)-2-オキサゾロンに適用したところ目的の反応は殆ど進行しなかったが、KFを加えることで収率が50%程度となり、またシス:トランスは1:1となった。KFの作用については不明のままであるが、エステル部をメトキシメチルアミドにかえベンゼンを溶媒にしたところ、シス体が98%にまで向上した。しかし、シス体が多くなるに従い全収率が下がってくるので、この点の改良を検討中である。アミドは収率良く加水分解され、この段階で、最も活性の強い類縁体MFPAの通算収率が約25%となった。2。タキソール合成法の検討: (5+2)反応によって骨格を作る経路と(4+2)反応でC環を構築する経路の二つを検討する予定であったが、その原料合成が途上にあるため、まだ鍵反応は検討していない。しかし、原料合成上でケタール化し難いケトンのケタール化にフマール酸などのジカルボン酸の添加が有効であることがわかり、一般化を検討中である。
KAKENHI-PROJECT-10125242
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視床下部性生殖機能抑制:Toll様受容体4を介したGnRH神経活動抑制機序の解明
機能性視床下部性性腺機能低下はストレスと関連があることが知られている。本研究は私達の先行研究を発展させ、「末梢ストレスにより活性化した終板器官MΦが、IL-1βを介してGnRHニューロン興奮を抑制し、LHサージ状分泌を抑制する」との仮説を検証することを目的とした。平成30年度は、前年度に引き続きIL-1βの視床下部での作用点の検討を行った。IL-1受容体1に対するin situハイブリダイゼーション(ISH)を行った結果、一部の血管でシグナルが観察された。脳実質では観察されなかった。この結果は、IL-1βが他の細胞を介してGnRHニューロンに間接的に作用し、その経路に血管内皮細胞が関与する可能性を示唆している。続いて、Toll様受容体4(LPSの受容体)の阻害薬TAK-242を終板器官に局所投与し、この部位のMΦ細胞の、LPSによるLHサージ抑制への関与を検討するした。しかし、TAK-242の局所投与はLPSによるLHサージ抑制を回復できなかった。この結果から、終板器官MΦ以外の因子(他領域のミクログリア/MΦを含む)も、LPSによるLHサージ抑制に関わっており、終板器官MΦのTLR4阻害だけでは、LHサージを回復するのに不十分だった可能性が考えられる。しかし、TAK-242は難溶性のため局所投与の量では、LPSによる終板器官MΦの活性化を十分に抑制できなかった可能性も排除できず、さらなる検討が必要である。さらに、LPSによるLHサージ抑制の経路をkiss-1ニューロンが介在するのかを検討した。kiss-1とc-Fosの二重染色の結果、kiss-1ニューロンでのc-Fos発現はLPSの投与により低下し、ミクログリア/MΦ活性化阻害薬の前投与により回復することを明らかにした。この結果により、kiss-1ニューロンがLPSによるLHサージ抑制に関与する可能性を示唆された。機能性視床下部性性腺機能低下はストレスと関連があることが知られている。申請者は先行研究で、感染ストレス負荷によりLHサージ状分泌抑制と並行して終板脈絡器官マクロファージ(MΦ)の一部で、IL-1βの発現が増加することを明らかにした。本研究はこの結果を更に発展させ、「末梢ストレスにより活性化した終板器官MΦが、IL-1βを介してGnRHニューロン興奮を抑制し、その結果LHサージ状分泌を抑制する」との仮設を立てこれを検証することを目的とした。平成28年度は、感染ストレス負荷(lipopolysaccharide (LPS)投与)によりIL-1βの発現が上昇する終板脈絡器官MΦ細胞の分布を、免疫組織化学を用いて検討した。その結果、これらの細胞は終板脈絡器官の血管の実質側の縁に局在することが示された(第39回日本神経科学大会にて発表)。この結果は、終板脈絡器官MΦ細胞が末梢血中の情報を生殖中枢に伝えるインターフェースとしての役割を担っている可能性を示唆するものである。次に、ミクログリア/MΦ活性化阻害薬であるミノサイクリンを終板脈絡器官に局所投与し、LPS末梢投与によるLHサージ状分泌抑制が減弱するのかを検討した。しかし、今回用いた実験条件(5 ug/rat単発投与)ではLHサージ状分泌抑制の減弱は観察されなかった。この結果については、(1)使用濃度が十分では無かった、(2)単発投与であったため効果がみられなかったなどの可能性が考えられるため、濃度の再検討や浸透圧ポンプを用いた長期投与実験による再検討を計画している。ミクログリア/MΦ活性化阻害薬であるミノサイクリンを終板脈絡器官に局所投与し、LPS末梢投与によるLHサージ状分泌抑制が減弱するのかを検討した実験において、条件検討と再実験が必要となったことが、研究の進捗状況に影響した。また、年度後半(13月)にかけて血中LH濃度測定のためのラジオアイソトープの供給が、供給元の都合により停止していたことも進捗状況に影響した(平成29年4月現在供給再開済み)。機能性視床下部性性腺機能低下はストレスと関連があることが知られている。研究代表者は先行研究で、感染ストレス負荷によりLHサージ状分泌抑制と並行して終板脈絡器官マクロファージ(MΦ)の一部で、Interleukin-1β(IL-1β)の発現が増加することを明らかにした。本研究はこの結果を更に発展させ、「末梢ストレスにより活性化した終板器官MΦが、IL-1βを介してGnRHニューロン興奮を抑制し、その結果LHサージ状分泌を抑制する」との仮設を立てこれを検証することを目的とした。平成29年度は、IL-1βの視床下部での作用点を検討するため、その受容体であるIL-1 receptor 1 (IL1R1)およびIL-1の細胞内シグナルに関与するIL-1 receptor accessory protein (IL1RAP)の分布を二重蛍光染色法を用いて免疫組織化学的に検討した。その結果、IL1R1およびIL1RAP免疫陽性シグナルは、GnRHニューロン細胞体の存在する視床下部視索前野(POA)を含む領域で観察されたが、IL1R1およびIL1RAP免疫陽性シグナルはGnRH免疫陽性細胞では観察されなかった。この結果は、IL-1βがGnRHニューロンに直接ではなく、他の細胞を介して間接的に作用していることを示唆するものである。
KAKENHI-PROJECT-16K20218
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K20218
視床下部性生殖機能抑制:Toll様受容体4を介したGnRH神経活動抑制機序の解明
しかし、この結果については、Control条件下ではGnRHニューロンでのIL1R1の発現が低く検出できなかった可能性が考えられるため、lipopolysaccharide(LPS)投与ラットのサンプルを用いて再検討を行う予定である。また、抗体の非特異反応の可能性を考慮しin situ hybridizationでIL1R1 mRNAの分布を検討し、免疫染色と同様の結果が得られるかを現在検討中である。研究代表者所属施設が保有する実験動物管理施設の空調が経年劣化により故障し、その修理のため、おおよそ3ヶ月に渡り同施設が閉鎖となったことにより、この期間、手術処置を伴う動物実験が出来なかったことが研究の進捗状況に影響した。機能性視床下部性性腺機能低下はストレスと関連があることが知られている。本研究は私達の先行研究を発展させ、「末梢ストレスにより活性化した終板器官MΦが、IL-1βを介してGnRHニューロン興奮を抑制し、LHサージ状分泌を抑制する」との仮説を検証することを目的とした。平成30年度は、前年度に引き続きIL-1βの視床下部での作用点の検討を行った。IL-1受容体1に対するin situハイブリダイゼーション(ISH)を行った結果、一部の血管でシグナルが観察された。脳実質では観察されなかった。この結果は、IL-1βが他の細胞を介してGnRHニューロンに間接的に作用し、その経路に血管内皮細胞が関与する可能性を示唆している。続いて、Toll様受容体4(LPSの受容体)の阻害薬TAK-242を終板器官に局所投与し、この部位のMΦ細胞の、LPSによるLHサージ抑制への関与を検討するした。しかし、TAK-242の局所投与はLPSによるLHサージ抑制を回復できなかった。この結果から、終板器官MΦ以外の因子(他領域のミクログリア/MΦを含む)も、LPSによるLHサージ抑制に関わっており、終板器官MΦのTLR4阻害だけでは、LHサージを回復するのに不十分だった可能性が考えられる。しかし、TAK-242は難溶性のため局所投与の量では、LPSによる終板器官MΦの活性化を十分に抑制できなかった可能性も排除できず、さらなる検討が必要である。さらに、LPSによるLHサージ抑制の経路をkiss-1ニューロンが介在するのかを検討した。kiss-1とc-Fosの二重染色の結果、kiss-1ニューロンでのc-Fos発現はLPSの投与により低下し、ミクログリア/MΦ活性化阻害薬の前投与により回復することを明らかにした。この結果により、kiss-1ニューロンがLPSによるLHサージ抑制に関与する可能性を示唆された。平成29年度は、本年度の研究成果をふまえ、ミノサイクリンの終板脈絡器官局所投与実験の条件検討および再実験を行う予定である。また、ミノサイクリンで局所でのMΦ抑制がうまくいかない場合は、MΦ除去薬であるクロドロン酸リポソームの終板脈絡器官局所投与実験を行い終版脈絡器官MΦのLHサージ状分泌抑制への関与を検討する予定である。その結果をふまえ、当初計画していたTLR4シグナルの関与を検討する実験を行う予定である。平成30年度は、平成28年度および平成29年度の研究成果をふまえ、IL1R1のPOAでの分布を免疫染色およびin situ hybridizationで引き続き検討を行う予定である。また、Toll-like受容体4アンタゴニストの終板脈絡器官局所投与実験を行い終版脈絡器官MΦのLHサージ状分泌抑制への関与へのTLR4シグナルの関与を検討する予定である。
KAKENHI-PROJECT-16K20218
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北欧の在宅・地域ケアに繋がる生活世界アプローチの思想的基盤の解明
「在宅ケア」と「地域ケア」とはともに、北欧では、日本とは異なる「在宅」と「地域」のあり方があり、また、高齢者ケア、知的障害者ケア、精神障害者ケアそれぞれに異なる時代的・行政的背景があるため、簡単に対比させることはできない。にもかかわらず、日本と比べると、北欧ではそれらが根っこのところではつながっているのではないかと思われるような点を見出してきた。本研究では、それらの思想的基盤を掘り進めるなかで、自立と連帯についての考え方、ロマン主義のつながる人間観、ノーマライゼーション、フェミニズムといった鉱脈を明らかにした。本研究は、共同研究「北欧ケアの実地調査に基づく理論的基礎と哲学的背景の研究」(20102012年度)の研究成果を踏まえつつ、新たに、「北欧の在宅・地域ケアに繋がる生活世界アプローチの思想的基盤の解明」へと一歩踏み込んだ共同研究である。そのため、平成25年度は、これまでの研究に新しい研究分担者が加わったこともあり、まずは共通の研究基盤を固めるため、これまでの研究成果を共有するとともに、それぞれの専門分野でのこれまでの研究やフィールド調査に基づいて、北欧ケアの「在宅・地域ケア」と「生活世界アプローチ」の繋がりについて、本年度は、3年間の研究として構想している「自由」「連帯」「人間観」という三つの着眼点のうち、最初の「自立・自由・自己決定・自己責任」に焦点を当てて、それぞれがこれまで研究してきたことを、4回の国内研究会の場で発表、情報・意見交換をすることで、共同研究の方向を見定めて来た。そして、それと平行しながら、本年度は、研究組織メンバーのうち竹之内、備酒、是永の3名がそれぞれ北欧諸国(デンマーク、スウェーデン、ノルウェー)のいずれかもしくは複数の国でのケアの現場に現地調査を行い、あるいは現地の研究者を訪ねて情報・意見交換を行い、帰国後に研究会で報告、情報・意見交換を行った。と同時に、第3回の研究会では、研究組織メンバーには欠けているフィンランドの研究者(牧田満知子氏)をお招きし、フィンランドの高齢者福祉の現状を報告いただき、意見・情報交換を行い、また、第4回の研究会では、我々の考察が的を射たものであるかどうかを、北欧の研究者達はどう見ているかを確認することで検証するために、スウェーデンの研究者(Margret Lepp氏)およびスウェーデンの現場で働く日本人(下田まい子氏)をお招きし、情報・意見交換を行うことができた。平成26年度は、研究組織メンバーのうち3名(中河、山本、齋藤)がそれぞれの北欧諸国での現地調査と研究者訪問を行い、同様に年4回行った国内研究会での報告、情報・意見交換を交えながら、北欧ケアの「在宅・地域ケア」と「生活世界アプローチ」の繋がりについて、この年度の二つ目の着眼点である「連帯、平等、公平、正義」に焦点を当てて、それぞれの専門分野の垣根を越えて、共同研究のスタイルを実質化していった。研究期間の中間に当たるこの年度は、お互いに異分野の研究に目配りをし、お互いに学ぶべきことを積極的に取り入れ、相互乗り入れを行っていくことを目指した。と同時に、それぞれが現地での研究会などで発表をして、北欧の研究者たちとの情報・意見交換を行った。第5回から第8回まで、年4回の研究会を開催し、第5回研究会では、是永「スウェーデンにおける高齢者・障害者ケアの現地視察報告」、斉藤「高齢者介護の供給と編成ースウェーデンの経験から」の発表、第6回研究会では、高山(研究協力者)「自律の観点から見た公私の領域区分の問題性ーケアの倫理を生活世界概念につなぐための試論(その1)」、浜渦「北欧の在宅・地域ケアに関心を寄せることの意義」の発表、第7回研究会では、齋藤「ストックホルムとヨーテボリにおける高齢者ケアの視察報告」の発表とテキスト河野哲也『境界の現象学』を用いた討論、第8回研究会では、中河「社会の寛容性をめぐって」と山本「精神疾患をどのように捉えるかー地域生活から考える」の発表とテキスト斉藤弥生『スウェーデンにみる高齢者介護の供給と編成』を用いた討論を行った。また、海外での発表についても、浜渦が、ドイツで1度、スウェーデンで2度、英国で1度行い、竹之内が、スリランカで1度、斉藤と石黒がノルウェーで1度、国内での国際学会で1度行い、海外の研究者からのさまざまな意見や助言を聞くことができた。基盤研究(B)「北欧ケアの実地調査に基づく理論的基盤と哲学的背景の研究」(20102012年度)の成果を継承しながら、若干のメンバーを入れ替えて取り組んだ本研究は、前研究同様に、哲学、倫理学、リハビリテーション学、社会福祉学、文化人類学、教育学、看護学という多分野にわたる学際的研究により、「北欧在宅・地域ケア」に焦点を絞って、その思想的基盤の探求をさらに掘り進めるものであった。そこで浮かび上がってきたのは、次のような論点である。そもそも「在宅」という語が、日本ではこれまで家族とともに過ごしてきた「自宅」というイメージが強いが、北欧では家族との生活スタイルも住居についての考え方も異なるので、日本と同じ感覚で「在宅ケア」という語を使えない。他方、「地域」という語も、日本では都市と田舎ではかなり異なる状況にあり、同じように「地域ケア」が語れないが、北欧では、それとはまた異なる「地域」の事情があり、これまた日本と同じ感覚で「地域ケア」という語を使えない。
KAKENHI-PROJECT-25300019
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北欧の在宅・地域ケアに繋がる生活世界アプローチの思想的基盤の解明
さらに、高齢者ケア、知的障害者ケア、精神障害者ケア、それぞれの領域で、日本でも異なる時代的・行政的背景があるが、北欧でもそう簡単に一緒に論ずるわけにはいかないところがあり、それぞれの領域によって、「在宅ケア」と「地域ケア」とが異なる文脈で論じられるところもある。にもかかわらず、日本でのそれぞれの領域の間の壁と比べると、北欧ではそれらが根っこのところでは繋がっているのではないか、と思えるようなところもある。本研究では、それらの思想的基盤を掘り進めるなかで、ロマン主義につながる人間観、ノーマライゼーション、ケアの合理性、フェミニズムといった鉱脈にぶつかることになった。しかし、わが国でも超高齢社会に対応する「在宅医療・介護」が推し進められるなかで、これらをどのように理念として生かすことができるかは、まだまだ課題として残されている。「在宅ケア」と「地域ケア」とはともに、北欧では、日本とは異なる「在宅」と「地域」のあり方があり、また、高齢者ケア、知的障害者ケア、精神障害者ケアそれぞれに異なる時代的・行政的背景があるため、簡単に対比させることはできない。にもかかわらず、日本と比べると、北欧ではそれらが根っこのところではつながっているのではないかと思われるような点を見出してきた。本研究では、それらの思想的基盤を掘り進めるなかで、自立と連帯についての考え方、ロマン主義のつながる人間観、ノーマライゼーション、フェミニズムといった鉱脈を明らかにした。4回の研究会によって、3人の現地調査ならびに現地の研究者との意見交換・情報交換の内容を共有することができた。また、同じテキストを読んできての討論も、研究組織メンバーの研究だけでは欠けているところを補うのに役立った。また、浜渦が、スウェーデンのウプサラ大学およびリンショーピン大学で、また、斉藤と石黒がノルウェーのオスロ大学で発表の機会を得たことも、北欧の研究者達と意見交換をすることに役立ち、大きな成果となった。27年度が最終年度であるため、記入しない。哲学・倫理学平成27年度は、研究組織メンバーのうち4名(浜渦、斉藤、石黒、福井)がそれぞれの北欧諸国での現地調査と研究者訪問を行い、同様に年4回予定している国内研究会を通じて、また、それぞれの北欧諸国での現地調査と研究者訪問の報告や現地での学会発表も交えながら、北欧ケアの「在宅・地域ケア」と「生活世界アプローチ」の繋がりについて、3つ目の着眼点である「人間観、死生観、家族観」に焦点を当てて、これまでの共同研究の成果をそれぞれの立場から公表・公開していく作業へ比重を移して行く。年度末には、3年間の研究成果をまとめて報告書を刊行するとともに、その成果を一般に公表するために公開のシンポジウムを行う。さらには、その研究成果をまとめた書物(仮題『北欧ケアの思想的基盤』)を近い将来に出版し、その成果を世に問うことを目指している。4回の研究会によって、それぞれのこれまでの研究成果を共有することにより、共通の研究基盤を固めることがほぼできてきたとともに、研究組織メンバーの3人がそれぞれ北欧諸国で現地調査ならびに現地の研究者と意見・情報交換してきたこともほぼ共有することができた。また、研究組織メンバーに欠けているフィンランドの研究者をお招きして、フィンランドの高齢者福祉の現状について意見・情報交換できたこと、スウェーデンの研究者および現場の実務者をお招きして、我々の共同研究について意見・情報交換し、評価を伺うことができたのも、大きな成果となった。27年度が最終年度であるため、記入しない。中河は、書籍(洋書)を海外発注したが、3月末までに届かず、次年度に繰り越すことになった。
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モンゴル国オンギー河流域におけるニンジャの実証的研究-遊牧民との社会関係を中心に-
本研究は、民主化以降のモンゴルにおける環境及び貧困問題の象徴である「ニンジャ」を研究対象とし、現地での調査、対話、交流などを通じて「ニンジャ」問題が形成される社会的要因を解明するとともに、モンゴル政府、国民、国際社会に対し解決案を示した。また、本研究は「ニンジャ」研究の草分け的な役割を果たし、「ニンジャ」問題をモンゴル、さらに国際社会へ広く発信する努力を行った。本研究は、民主化以降のモンゴルにおける環境及び貧困問題の象徴である「ニンジャ」を研究対象とし、現地での調査、対話、交流などを通じて「ニンジャ」問題が形成される社会的要因を解明するとともに、モンゴル政府、国民、国際社会に対し解決案を示した。また、本研究は「ニンジャ」研究の草分け的な役割を果たし、「ニンジャ」問題をモンゴル、さらに国際社会へ広く発信する努力を行った。本研究課題は、モンゴル国オブルハンガイ県オンギ河流域における「ニンジャ(沙金を掘る人々)」の活動実態、組織の特徴、周辺遊牧民との関係について、現地調査、地域住民との交流・対話を行ない、ニンジャと遊牧民の対立関係、非循環的な自然関係から地域社会の再生と自然環境の持続的利用の可能性を構築することである。平成22年度は、現地調査、学術会議、地域住民とのワークショップなどを通じて、以下のことを明らかにした。1.「ゾド(自然災害)」はニンジャと密接な関係がある。2009年末から2010年にかけて、モンゴルは大雪の被害に遭い、オンギ河流域の自然災害で家畜を失った遊牧民の中にニンジャ集団に加えた人がいた。民主化以降のモンゴルでは、個人化と市場化が急速に進められ、社会連帯感が薄れ、国、地域の救済、支援システム(セーフティーネット)があまり機能しなくなり、また、町には就職口があまりないことと関係していることが明らかになった。2.ニンジャ集団の多様化、流動化、機械化が進んでいる。今まで、ニンジャが集まる場所は主に社会主義時代開発された鉱山であった。しかし、近年ニンジャたちは自分で鉱物を探し、掘る現象がみられる。これを可能したのは、ニンジャたちが鉱物資源の分布、鉱脈等に関する情報を収集しやすくなり(ニンジャ集団内部で経験がかなり蓄積されていることも)、自動車の普及と関係している。この変化は地域の取り組み(環境保護)をさらに困難にしている。3.自然資源をめぐる国際政治の動きとモンゴルの鉱山開発ブームとの関係、さらにニンジャ集団を拡大させていることもある程度明らかになった。22年度では、ニンジャが置かれている現状とモンゴル社会の状況、そして地域社会の対応について多くのデータを収集することができた。次年度の調査研究では、ニンジャに関する調査を継続すると同時に、地域社会の異なる主体との関係、地域住民の信仰についての調査、収集したデータの分析、研究成果の活字化、公開化を行なう。本研究課題の目標は、モンゴル国オブルハンガイ県のオンギ河流域における"ニンジャ"(沙金を採掘する集団、あるいは個人)の活動実態(自然環境に与える影響を中心に)、ニンジャ組織の構成、特徴及び周辺民族との関係を聞き取り調査、遊牧民との交流などを通じて明らかにし、ニンジャと遊牧民との対立関係、非循環的な自然利用から地域社会の再生と自然環境の持続的利用の可能性を構築することである。平成23年度は、以下のような調査研究を行なった。(1)客観性と中立の立場から"ニンジャ"たち(20人)の活動、生活、家族構成及び政府や周辺住民、遊牧民との関係を記録したドキュメンタリ映画(「"ニンジャ"の新年」35分)をモンゴルの民間テレビ局と共同で作り、また、そのテレビ局を通じて放送した。本ドキュメンタリ映画(映画を作るため430時間以上の撮影を行なった)は、貴重な記録であると同時に、客観的な報道がほとんど見られないモンゴルのマスメディアにおいて、客観的にニンジャン現象を考える数少ない情報源になったと考えられる。(2)本研究がスタートした時点から進められているツェブルワンチグドルジの経典(オブルハンガイ県の自然環境と人間関係に関する部分)解読作業は終わり、本研究テーマと関係する経典内容の翻訳(チベット語からモンゴル語)及び詳細な注、解説を付けた本(報告書)をモンゴル国仏教大学の協力を得て、モンゴル語で出版した。この研究成果は、地域社会の再生と循環的自然資源の利用を考える上で、大変意義あるだけではなく、モンゴルの仏教研究にとっても、また、地方生態史の研究などにとっても意義あるものと考えられる。(3)2011年8月アルベイヘイル町で、地域の政府関係者、環境保護者(NGPの代表者)を召集し、ワークショップを開催した。本ワークショップを通じて、ニンジャが置かれる状況、生まれる原因など研究成果を報告すると同時に、彼らと意見交換し、情報収集することができた。政府関係者と環境保護者が一緒になってニンジャ問題を議論するのは、今回が初めてである。また、研究成果を地域に伝え、社会的な実践に活かす目的も果たした。平成24年度では、計画通り、以下のような調査研究を実施した。12012年8月ニンジャと寺院や遊牧民の関係を中心の調査研究及び補助調査を実施した。22012年9月モンゴル国立大学(ウランバートル市)でニンジャに関する国際会議を企画、開催した。モンゴル国の多くのテレビ局、新聞や雑誌が会議の様子と内容を伝えた。また、研究内容を合計3回、環境や鉱山開発の国際会議で発表した。3チェブグオンチグドルジの経典を解読作業を完了させ、出版した。
KAKENHI-PROJECT-22510267
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モンゴル国オンギー河流域におけるニンジャの実証的研究-遊牧民との社会関係を中心に-
4ニンジャと寺院・行政の対話を行った。また、ニンジャと大学生との対話も行った。その理由概ね2つある。1つは研究代表者がモンゴル人出身であるため、ことばや人間関係作りがスムーズに進んだ。もう1つは、モンゴル側の協力によって、文献解読など時間かかる作業が早く進んだ。24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度は本研究の最終年度であるため、以下のように研究を進めたいと考えている。モンゴル国立大学と共同で"ニンジャ"に関する国際シンポジウムを開催する(2012年9月5日と6日)。シンポジウムを通じてニンジャに関する研究を推進すると同時に研究成果をモンゴル社会に公表する。モンゴル政府と地方政府にニンジャ現象、「分断社会」問題を解決するための提案書を提出する。研究成果を、論文や報告書の形でまとめ、発表する。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22510267
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医療への参加に対する子ども・家族・看護者の認識の特徴とギャップ
本研究は、医療への家族の参画を支援する看護を確立していくことを目的とし、入院中の子どもを抱えた家族の医療への参画に対する考え、家族が直面している困難な事柄、医療者に対する期待、家族はどの程度医療に参画しいると捉えているのか、看護者が医療への家族の参画をどのように捉えているかについて、入院中の子どもの家族、および臨床経験5年以上の看護者を対象に調査を行った。量的データは、spssを用いて記述統計を用いて分析し、質的データについてはKJ法により分析した。主要な結果は、以下の通りであった。(1)約9割の家族が医療に参画することは必要であると考えている。(2)項目平均値を比較すると、状況を読み取る項目は2.86点で最も高く、次いで日常生活へケア行動の項目は2.78点、治療に関わる行動の項目は2.72点であり、交渉する項目は2.54点と最も低い値をしめした。(3)家族が直面している困難な事柄として、"家族一医療者との関係に関わる事柄" "医療者からの説明に関わる事柄" "家族の参画の妨げとなる事柄""子どもへのダイレクトなケアに関わる事柄" "入院環境に関わる事柄" "家族システムに関わる事柄""家族の心理面に関わる事柄" "家族看護に関する事柄"が抽出された。(4)家族は、看護者が専門職として能力を発揮し、子どものみならず家族に対してもケアを提供することを期待していた。(5)看護者は、家族は医療に中等度参画しており、状況を読みとり、日常生活へのケア行動や、治療に関わる行動を行っていると捉えていた。これらに比べて、看護者や医師との交渉は行っていないと捉えていた。また、看護者は、家族は、医療の中でパワーを有しているい医者に注目し、医師の特性を読みとり医師に添いながら参画すると捉えていた。今後は、これらの結果を吟味し、家族の医療への参画を支援することのできる介入論を開発していくことが課題であると言えよう。本研究は、医療への家族の参画を支援する看護を確立していくことを目的とし、入院中の子どもを抱えた家族の医療への参画に対する考え、家族が直面している困難な事柄、医療者に対する期待、家族はどの程度医療に参画しいると捉えているのか、看護者が医療への家族の参画をどのように捉えているかについて、入院中の子どもの家族、および臨床経験5年以上の看護者を対象に調査を行った。量的データは、spssを用いて記述統計を用いて分析し、質的データについてはKJ法により分析した。主要な結果は、以下の通りであった。(1)約9割の家族が医療に参画することは必要であると考えている。(2)項目平均値を比較すると、状況を読み取る項目は2.86点で最も高く、次いで日常生活へケア行動の項目は2.78点、治療に関わる行動の項目は2.72点であり、交渉する項目は2.54点と最も低い値をしめした。(3)家族が直面している困難な事柄として、"家族一医療者との関係に関わる事柄" "医療者からの説明に関わる事柄" "家族の参画の妨げとなる事柄""子どもへのダイレクトなケアに関わる事柄" "入院環境に関わる事柄" "家族システムに関わる事柄""家族の心理面に関わる事柄" "家族看護に関する事柄"が抽出された。(4)家族は、看護者が専門職として能力を発揮し、子どものみならず家族に対してもケアを提供することを期待していた。(5)看護者は、家族は医療に中等度参画しており、状況を読みとり、日常生活へのケア行動や、治療に関わる行動を行っていると捉えていた。これらに比べて、看護者や医師との交渉は行っていないと捉えていた。また、看護者は、家族は、医療の中でパワーを有しているい医者に注目し、医師の特性を読みとり医師に添いながら参画すると捉えていた。今後は、これらの結果を吟味し、家族の医療への参画を支援することのできる介入論を開発していくことが課題であると言えよう。本年度は、家族の医療への参加に関する看護者の認識に焦点をあてて研究を進めた。諸外国で行われた家族の医療への参加に関する先行研究、および我が国で行われた、病気の子どもを抱えた家族の役割・看護婦の役割に関する先行研究を参考に、家族の医療への参加に対する看護者の認識の実態を明らかにする93項目からなる調査用紙を作成した。作成した調査用紙を用いて、研究の目的・内容への協力の得られた看護者を対象に調査を行った。得られたデータは、SPSSを用いて分析を行った。データを分析した結果、以下のようなことが明らかになった。(1)入院生活や子どもの身の回りの世話、看護婦との話し合いなどに関する領域への家族の参加に関する項目74項目の総合平均点は、190.40点(得点範囲74-370点、得点率51.46%)であった。以上のことから、看護婦は、入院中の患者の家族は、入院生活や子どもの身の回りの世話、看護婦との話し合いなどに関する領域について、中等度の参加をしていると認識していることがわかった。(2)子どもの病状の観察や、治療や予後についての医師との話し合いなどに関する領域への家族の参加に関する項目
KAKENHI-PROJECT-09672421
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医療への参加に対する子ども・家族・看護者の認識の特徴とギャップ
19項目の総合平均得点は、56.241点(得点範囲19-95点、得点率59.20%)であった。以上のことから、看護婦は、入院中の患者の家族は、子どもの病状の観察や、治療や予後についての医師との話し合いなどに関する領域について、中等度の参加をしており、入院生活や子どもの身の回りの世話、看護婦との話し合いの領域と比べ、より参加していると認識していることがわかった。(3)項目別に見てみると、平均得点の上位項目は、子どもを情緒的に支援する項目が占めていた。次いで、医師に説明を求めたり、医師と家族の意見が異なった場合には、妥協案を提案するなどの項目の平均得点が高値を占めていた。一方、病院のサービスの現状や、病棟のサービスの現状について、改善してほしい点を申し出ることに関する項目は、得点率32.81%と低い値を示した。以上のとから、看護婦は、家族は入院中の患者の情緒的支援や治療など直接患者に関する事柄を中心に参加しており、病院サービスや病棟サービスなど、システムに関する領域への参加は、あまりなっされていないと認識していることがわかった。本年度は、医療への参加に関する家族の認識に焦点をあてて研究を進めた。平成9年度に作成した、医療への家族の参加についての看護者の認識に関する調査用紙を、さらに検討し、医療への参加についての家族の認識に関する調査用紙を作成した。作成した調査用紙を用いて、小児を対象とした入院病棟を有する6施設でデータ収集を行った。得られたデータは、SPSSを用いて分析を行った。データを分析した結果以下のことが明らかになった。(1)家族は、病気の子どもの精神的な支えとなり、入院生活を整えたり子どもに安楽をもたらしていると認識していた。しかし、生活リズムを整えるなど、日常生活を維持することはあまりできていないと認識していた。(2)家族は、子どもの身に起こっていることを掴んだり、治療の内容を把握しているが、医療者に率直に意見を言ったり、疑問点を確認することはあまりしていないと認識していた。(3)家族は、子どもの様子で気ずいたことは主体的に医師に知らせていると認識していた。(4)家族は、看護者に子どもについての情報や子どもの今後のことや、子どもの世話の仕方について話し合ったり、家族の意向や考えを看護者に伝えることは、あまりしていないと認識していた。(5)家族は、子どもが治療や検査を確実に受けることができるように、医療者に協力しながら子どもを精神的に支え、子どもの病状をモニタリングし医師に連絡していると認識していた。しかし、子どもが理解できるように、病気や療養行動について説明することは、あまりできていないと認識していた。
KAKENHI-PROJECT-09672421
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導波形光インターコネクションデバイスに関する研究
光IC技術・装置を利用して、新たな光インターコネクション用のハイブリッド導波形デバイスを実現することを目的として研究を行った。具体的にはLiNb【O_3】を基板として、方向性結合器を構成要素とする光導波形デバイス・ICの設計・作製を行い、そのインターコネクション機能について検討した。主な研究成果は次のとおりである。1.レーザビーム直接描画装置を改良し、50×50【mm^2】の大面積に渡って<0.2μmの精度で、LiNb【O_3】基板上に導波路パターニング・作製が行えることを実証した。2.本装置を用いて、導波路幅3μm、間隔24μmの方向性結合器が10%以下の誤差で作製できることを確認し、このデータをもとに1×10のスターカップラを作製しその特性評価を行った。出力部での光パワー分配比の変動はわずか5%であり、このスターカップラを多端子のインターコネクションデバイスに応用できる可能性を示した。3.インターコネクションデバイスの基本素子として、光損傷のない光スイッチについて検討し、駆動電圧5Vで消光比>20dBを得た。さらに、モード変換素子、モードスプリッタなどの偏光制御素子および信号多重化に必要な周波数シフタについて作製・特性測定を行った。4.これらの導波形素子を一つの基板上に集積化して各々の特性評価を行うため、出力導波路に単一モードファイバを接続した実際的な速度計測用光ICを試作した。その結果、各導波形素子が所定の性能で動作することが確認できた。以上の基礎的研究成果から、現在の光IC技術を用いてインターコネクション機能をもつ導波形デバイス実現の見通しが得られた。光IC技術・装置を利用して、新たな光インターコネクション用のハイブリッド導波形デバイスを実現することを目的として研究を行った。具体的にはLiNb【O_3】を基板として、方向性結合器を構成要素とする光導波形デバイス・ICの設計・作製を行い、そのインターコネクション機能について検討した。主な研究成果は次のとおりである。1.レーザビーム直接描画装置を改良し、50×50【mm^2】の大面積に渡って<0.2μmの精度で、LiNb【O_3】基板上に導波路パターニング・作製が行えることを実証した。2.本装置を用いて、導波路幅3μm、間隔24μmの方向性結合器が10%以下の誤差で作製できることを確認し、このデータをもとに1×10のスターカップラを作製しその特性評価を行った。出力部での光パワー分配比の変動はわずか5%であり、このスターカップラを多端子のインターコネクションデバイスに応用できる可能性を示した。3.インターコネクションデバイスの基本素子として、光損傷のない光スイッチについて検討し、駆動電圧5Vで消光比>20dBを得た。さらに、モード変換素子、モードスプリッタなどの偏光制御素子および信号多重化に必要な周波数シフタについて作製・特性測定を行った。4.これらの導波形素子を一つの基板上に集積化して各々の特性評価を行うため、出力導波路に単一モードファイバを接続した実際的な速度計測用光ICを試作した。その結果、各導波形素子が所定の性能で動作することが確認できた。以上の基礎的研究成果から、現在の光IC技術を用いてインターコネクション機能をもつ導波形デバイス実現の見通しが得られた。
KAKENHI-PROJECT-61550278
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61550278
リチウム合金を用いた活性窒素生成における反応メカニズムの解明
本研究では,窒素(N2)を可逆的に解離/再結合可能なリチウム合金を用いた活性窒素の生成及びその利用技術に関する新たな学術領域を創出するための基礎を確立することを目的とする。具体的には,LixM合金の作製,熱力学及び動力学特性の評価,物性評価,電子顕微鏡等を用いた観察,窒化物合成特性評価を行う。NH3合成特性を評価するためのガス流通式装置を作製した。この装置では,窒素,水素,アルゴン,或いは窒素-水素混合ガス等を導入することができ,試料部は500°C程度まで加熱可能である。NH3ガスの定性,定量分析には長光路ガスセルを用いた赤外吸収分光を用いた。この装置を用いて窒素-水素(モル比1:3)混合ガスをLi-Sn合金に導入しNH3合成特性を評価した結果,NH3生成量は400°Cで400 ppm程度であり,熱力学平衡から予想される理論生成量に比べ低い値となった。これは,触媒プロセスとして用いる場合にはLi-Sn合金の活性が低いことを示しており,ガススイッチングによる擬触媒プロセスを用いたNH3合成技術として用いる方が望ましいと考えられる。TEMを用いたLi-Sn合金の窒化反応のその場観察について,課題をであった窒素ガスの導入方法を再検討し,実験を行った。結果として,酸化物の生成は避けられなかったが,合金粒子と酸化物層の界面に窒素が存在することが明らかとなった。これは,窒素との反応により合金表面に生成した窒化物が不純物である酸素と反応したことを示唆している。従って,この結果は,合金内部のLiが表面に拡散し窒素と反応するという,本研究で提案するモデルと矛盾しない。比較試料として金属Liの窒化反応についてもTEMその場観察を行ったところ,合金とは異なるプロセスで窒化が進行することが示唆された。試料合成について,研究計画に沿って14族以外の合金の作製を実施した。異なる組成比の合金の混相が得られた試料については,今後条件の最適化が必要である。試料評価については,計画していた熱分析,相同定,化学状態分析等を実施した。また,Li金属の窒化反応特性評価も行った。環境セルを用いたその場TEM観察について,前年度の課題であった窒素導入方法について検討した。結果として,酸化物の生成を抑制するのは困難であったが,合金中のLiが表面に拡散し窒化物を形成することが示唆された。当初想定していた方法でのTEM観察では不純物の混入を避けることが難しいと判断されるため,バルク試料を用いた実験,分析について検討する予定である。NH3生成反応については,ガス流通式の装置を作製し,Li-Sn合金の特性評価を実施し,反応温度や反応率に関する知見を得ることに成功した。今後は,この装置を利用して,温度反応条件の最適化や繰り返し特性評価を実施すると共に,その他の合金の反応特性評価を実施する予定である。以上のことから,2年目においては,計画していた合金作製,特性評価,物性評価等を概ね遂行できたと判断されるが,一部の実験については,研究目的の達成に向け再検討を行う。試料合成について,これまでの2年間で合成した試料の条件を参考に,新たなLi合金の作製を行うと共に,Liと同じアルカリ金属であるNa合金についても作製を試みる。また,TEM及びSEM観察試料として,バルク体(可能なら単結晶)の合金作製を行う。合成した試料については,種々の熱分析装置を用いて,窒化反応特性評価,窒化物合成特性評価等を行う。Li合金とNa合金の結果を比較し,反応特性や反応プロセスの違いについて知見を得ることで, Li合金の反応メカニズムについての議論を深める。合成後試料及び反応生成物について,X線回折測定を用いた相同定を行う。また,走査電子顕微鏡(SEM)や透過電子顕微鏡(TEM)を用いた生成物の観察,核磁気共鳴(NMR)実験を用いた試料中Liの化学状態分析等を行う。特に,SEM及びTEM観察については,バルク試料をFIB(Focused ion beam)加工し断面観察や元素分布の評価を行うことで原子移動のダイナミクスについての知見を得る。NH3合成反応については,熱重量分析-昇温脱離ガス質量分析装置,及び前年度作製したガス流通式反応特性評価装置を用いて,ガススウィッチングプロセス及び混合ガスを用いた触媒プロセスにおける反応評価を行うと共に,合成を繰り返し行った際の特性劣化等の評価も行う。また,その他のLi及びNa合金を用いたNH3合成実験も実施する。加えて, Li及びNa合金を用いて,NH3以外の固体窒化物(GaN等)合成を試みる。本研究期間で得られた成果をまとめ,学会発表を積極的に行うと共に,論文として科学系学術雑誌へ投稿する。また,知的財産としての価値が認められると判断される成果については特許出願を行う。本研究では,窒素(N2)を可逆的に解離/再結合可能なリチウム合金を用いた活性窒素の生成及びその利用技術に関する新たな学術領域を創出するための基礎を確立することを目的とする。具体的には,LixM合金の作製,熱力学及び動力学特性の評価,物性評価,電子顕微鏡等を用いた反応メカニズムの解明を行う。Li-Sn合金について,既報の相図を基に種々の組成の合金作製を試みた。合成した試料について,窒素との反応性評価,及び核磁気共鳴(NMR)を用いた化学状態調査を行った。結果として,窒化反応特性と化学状態に明確な相関性を見出すには至らなかった。
KAKENHI-PROJECT-17H03417
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H03417
リチウム合金を用いた活性窒素生成における反応メカニズムの解明
Li-Sn合金の窒化反応について,北海道大学で保有する環境セルを用いたその場透過電子顕微鏡(TEM)観察を行った。その結果,窒素導入に伴い合金粒子表面に生成物が成長する様子が観測された。これは,これまでに我々が提案してきたLiの高速拡散に基づいた反応モデルを裏付ける結果である。Li-Sn合金を用いたNH3合成について,Li-Sn合金を熱重量分析装置内の反応炉に入れ,雰囲気を1気圧の窒素,水素,アルゴン(不活性ガス)と段階的に変化させながらそれぞれのプロセスで500°Cまで熱処理を行った。その結果,窒素雰囲気では窒化に伴う重量増加,水素雰囲気ではNH3放出に伴う重量減少,Ar雰囲気では水素放出に伴う重量減少が観測された。また,上記反応後の生成物は出発物質と同じ合金であった。以上の結果は,ガススイッチングにより,1気圧で窒化反応,NH3生成反応,合金再生反応を連続的に制御可能であることを示しており,Li合金がNH3合成における擬触媒として利用可能であることが実験的に証明された。試料合成について,既存のLi-Sn二元相図に基づいて種々の組成のLi-Sn合金の作製を行った。しかしながら,幾つかの合金相については単相を合成することができなかった。これら単相合成が困難な合金は,相図上に組成が近い相が存在しており,単相を得るためには現状の方法よりも厳密に反応条件を制御する必要があると考えられる。試料評価については,計画していた熱分析,相同定,化学状態分析等を実施した。環境セルを用いたその場TEM観察については,予想された試料変化を捉えることができた。この結果は,窒化処理後の試料を観察した際に得られた結果とよく一致するため,非常に有用であると言える。一方で,不純物である酸化物の生成を示す結果も多数得られている。Li合金の窒化による生成物はナノサイズで且つLiを含むため非常に活性であると予想されることから,装置への試料輸送過程や窒素ガス導入時に微量の酸素と反応した可能性がある。NH3合成反応については,評価装置の作製が必要となるため2年目以降に実施する予定であったが,保有する分析装置の改良により簡易的な評価が可能となったため,本年度に実験を実施した。その結果,我々の提案するLi合金を擬触媒(反応場)として用いたプロセスが実現可能であることが明らかになった。以上のことから,1年目においては,計画していた合金作製,特性評価,物性評価等を概ね遂行できたと判断されるが,合金の作製条件やTEMによる評価方法については,再検討が必要である。本研究では,窒素(N2)を可逆的に解離/再結合可能なリチウム合金を用いた活性窒素の生成及びその利用技術に関する新たな学術領域を創出するための基礎を確立することを目的とする。具体的には,LixM合金の作製,熱力学及び動力学特性の評価,物性評価,電子顕微鏡等を用いた観察,窒化物合成特性評価を行う。NH3合成特性を評価するためのガス流通式装置を作製した。この装置では,窒素,水素,アルゴン,或いは窒素-水素混合ガス等を導入することができ,試料部は500°C程度まで加熱可能である。NH3ガスの定性,定量分析には長光路ガスセルを用いた赤外吸収分光を用いた。
KAKENHI-PROJECT-17H03417
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明治期大名華族の海外留学と地域再生
越前松平家3代(慶永・茂昭・康荘)にわたる家譜並びに康荘海外留学関係書類、慶永日簿等の国内史料と英独墺の国外史料を収集・リスト化し一部翻刻を行い、大名華族の伝統的な子弟教育に翻弄された康荘の実際を辿ると共に、康荘の留学が衆議により旧領地福井の地域再生の方途として、私有地(城址)活用による試農場経営に生かされ、併設された園芸伝習所も含め民間モデルの先駆けとなったこと、及び、康荘随伴の旧臣にとって渡欧は「変則的な海外留学」であったが、自由闊達な学問研究と藩閥を越えた在外日本人ネットワーク形成を可能とし帰国後の近代化の一翼を担ったことを明らかにした。平成25年度は2回の英国史料調査ならびに福井で収集した史料の翻刻作業を行い、その成果を国際学会等で発表した。1大名華族の子弟教育に焦点を当て、「個」の成長を検討した。越前松平家松平康荘留学関係史料のうち、書簡史料を翻刻し、康荘が陸軍から農学へ修行替えした際に、祖父慶永及び重臣の反対があったこと、貴族の教養としてのケンブリッジ大学入学が期待されていたこと、それに対する康荘の葛藤を明らかにした。祖父慶永にとっての「幸福」は松平家の保護であり、学業による康荘の「自立」ではなかった。本考察は「大名華族の子弟教育ー越前松平康荘の自立への道」と題して刊行予定。上記の内容を社会的、科学的背景から検討し、ヨーロッパ日本研究学会(EAJS)国際関係部会で発表した。英文題目の日本語訳は「明治期華族の教育ー松平康荘の英国農学修行」である。2英国調査(夏)では、エジンバラ大学、オックスフォード大学、グローセスター州立文書館等で農学及び農学校の地位、日本人留学生と英国国教会に関する史料収集を行い、キーワードとなるニンプスフィールドのセント・バーソロミュー教会が何らかの仲介役をつとめたことを明らかにした。なかでも、グローセスター州には、各種海外渡航の名簿に掲載されていない福井からの人物がいることが判明した。3英国調査(春)では、学事監督松本源太郎の日記に登場する人物の足跡を追い、康荘留学に際して、数多くの旧福井藩関係者が英国倫敦及びその周辺へ渡航したことをつきとめた。彼ら自身は正規留学は経済的に不可能であったが、康荘の学事監督または学友、その他の名目で海外渡航し、勉学に励んだ。特に軍医が多い。華族について渡航した家臣たちが、新しい時代を担う知識と技能を修得し、日本へ持ち帰ったのである。越前松平家3代(慶永・茂昭・康荘)にわたる家譜並びに康荘海外留学関係書類、慶永日簿等の国内史料と英独墺の国外史料を収集・リスト化し一部翻刻を行い、大名華族の伝統的な子弟教育に翻弄された康荘の実際を辿ると共に、康荘の留学が衆議により旧領地福井の地域再生の方途として、私有地(城址)活用による試農場経営に生かされ、併設された園芸伝習所も含め民間モデルの先駆けとなったこと、及び、康荘随伴の旧臣にとって渡欧は「変則的な海外留学」であったが、自由闊達な学問研究と藩閥を越えた在外日本人ネットワーク形成を可能とし帰国後の近代化の一翼を担ったことを明らかにした。初年度は、ドイツ・ポーランドと英国での海外調査研究を中心に実施した。1、ドイツでは明治期の華族が関心を示したプロイセンの農業について概要を把握するために、駒場農学校英人化学教師キンチの後任として招聘されたオスカー・ケルネルについて調査を実施した。ケルネルは帰国後ライプチヒ=メッケルンの研究所長につき、畜産栄養関係で多くの業績を残したが、戦後研究所は旧東独にあったため、日本からの現地調査はほとんど行われていない。今回、ロストック大学、オスカー・ケルネル研究所、ライプチヒ大学、ホーヘンハイム大学等を訪問し日本からのケルネル関係の調査は初めてだと歓待された。ドイツ側の積極的なサポートを受け、ドイツにおけるケルネルの全業績、関係史料の収集・撮影を短期間に実施できた。中でも駒場農学校教師として雇入れになる書簡の発掘は農学史上においても価値がある。近日史料集(写真含む)として、刊行予定。2、英国留学した越前松平家嫡男康荘がサイレンセスター王立農学校入学を選択した訳、周辺に日本から人材派遣がされたのか等農学教育のネットワークを探る調査を実施した。またオックスフォード大学では、当時農学教育が高等教育においてどのような位置づけをされていたのか史料収集を実施した。松平康荘が英国留学中に、福井からの人材がコッツヲルズ地方に数多く滞在し、当時まだこの地方で盛んであった毛織物業を学んでいたようである。また、ロンドンでは病院で研修し、ボランティア活動等も行っている。その受け皿となったネットワークが英国国教会であったのではないか。ストーンハウスの牧師を中心としたサポート体制が存在したと考える。農学教育については英国でも研究者が少なく、史料もほとんど利用されていない。農業関係アーカイブ担当者の協力を取り付けた。国内調査研究による成果は「明治期福井の学校・文化・産業と越前松平家」と題して発表した。本研究では、大名華族の海外留学について越前松平康荘を事例に検討してきたが、康荘の学事監督
KAKENHI-PROJECT-24530970
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明治期大名華族の海外留学と地域再生
松本源太郎が康荘のいる英国サイレンセスターに居住せずに、オックスフォードやロンドン等に下宿を確保し、ほとんどの時間を自身の勉学と日本人留学生への援助・交流に費やしていたことに注目し、最終年度は大名華族の海外留学に伴い海外へ派遣された「家臣たち」の任務についてその足跡を現地調査により丹念に辿り、実態を明らかにした。現地調査では、まず康荘が大山陸軍卿一行と滞在したオーストリアでの世話役が公使上野景範と書記官本間清雄であることをつきとめた。さらに松本源太郎の1889年1890年の日記を手がかりとして、英国オックスフォードでの勉学と生活を考察し、ロンドンの下宿先ミッチャム、交流した実務家らの滞在・視察先であった病院や郊外を調べた結果、住居では中産階級の最新式庭付き集合住宅や共有地(コモン)を中心とした一戸建て住宅、病院はナイチンゲール後の療養的機能に関心を持ったことが判明した。また、勉学では1889年創設のマンスフィールドカレッジで一時的学生として宗教、倫理学、美術史などの講義に参加する一方で、オックスフォード学生ユニオンソサエティのメンバーにも推薦、承認されている。幕末明治の全国海外渡航者総数は延べ4,341名に上るが、大名華族子弟の随伴者の学問修行についてはこのリストには記載されていない。当時の文部省留学生は原則17歳22歳を対象とし、ごく限られた若手エリート学生にしか機会は与えられなかった。海外修行の志は有しているが、学力的に、あるいは、年齢的に対象外である者は、この他の手段を模索しなければならなかった。本研究では、松平康荘の学事監督松本源太郎の事例により、海外留学に同道した家臣たちの変則的な学問修行が、結果として、近代日本の発展の支柱となったことを解明した。教育史平成25年度は2度にわたって実施した英国史料調査を中心に、時間的制約がありながらも、新たな史料を発掘し、予想していた結論に近づくような結果となったことから、現在までの研究「達成度」は、「おおむね順調の進展している」といえよう。平成25年度は本研究をテーマに、初めて国際学会で英語による発表を行った。外国人研究者からの質問によどみなく回答できたことは、大いに達成感を感じることができた。本年度の収穫は国際学会での発表と言っても過言ではない。また、本年度第1回目の英国調査(夏)では、スコットランド地方で農学部を設置していたエジンバラ大学を見学し、いわゆる実学重視の地域性とイングランド地方との違いを確認した。さらに、康荘が世話になった教会関係者を辿り、ニンプスフィールドを中心とするコッツヲルド全域に広がる英国国教会のネットワークにより、康荘ら日本人の渡航者がサポートされていた事実をつきとめた。このネットワークの中心がニンプスフィールドのセント・バーソロミュー教会であったが、あいにくの悪天候と、交通手段が1日数本のバスしかなかったため、今回の英国滞在期間中の訪問は断念した。第2回目の英国渡航(春)では、さらなる悪天候によりニンプスフィールド行きは実施できなかったが、康荘の学事監督松本源太郎の日記に記された人物のロンドンの住居や学校、職場を特定した。ハムステッド・ヒース、ケンテッイシュタウン、カムデンタウン、スイス・コッテージなどに滞在し、軍医関係者が多い。研修先は、聖ジョンズウッド病院や聖トーマス病院等であり、ナイチンゲールの看護やホスピス等にも関心を持っていたようである。国内調査については、史料の翻刻作業に取り組んでおり、平成25年度の「研究の目的」はおおむね達成された。また、海外留学で得た知識・技術を帰国後、どのようにして生かすのか平成26年度への展望も見えてきた。
KAKENHI-PROJECT-24530970
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現代加工食品産業マーケティング論
近代工業生産システムは,大量生産システムを要請する.食品産業においても例外ではない.他方,食品は,消費の個別性,多様性,零細性を最も強く有する.生産システムと消費システムとの矛盾が存在する.食品という商品的特性に加えて,このことが反映されて,生産の側では,基礎的素材型と加工型の業種で産業構造が異なり,さらに,後者においても中小企業の占める割合が他産業に比較して多いといえる.これは流通過程をも規定する.ところで,食品産業は,現在,幾つかの課題とそれへの対応を迫られている.課題としては,需要構造の変化,国際化,原料問題,技術およびこれらを取り囲む情報化の諸問題である.これらの課題への食品産業界の全般的に共通する対応としては,食品の加工食品化であろう.事実,食費に占める加工食品の割合は年々増加しており,年収五分位段階階級別年間・一世帯当たり加工食品異存率では年収の低い階級ほどその占める割合が大きく,さらに,都市階級別年間一世帯当たり加工食品異存率では小都市ほど多い.加工食品は,今後,国民生活の中で量的にも質的にもますます大きな位置を占めて来るだろう.これは,加工食品の国民生活への影響が重大であることを意味する.ところが,加工食品の使用価値的側面および価値的側面の研究は未だ十分に行われていないことがわかる.現代のコンシューマリズムないし消費者運動は,まさにこの点に焦点をおいている.確かに,特に加工食品大企業は,それ自体を食品文化を創造する経営組織体として性格づける傾向が増大しているが,内容において未だ不十分である.他方,生活協同組合およびその連合体(日生協)も,同様に食品文化を創造する経営組織体として,加工食品大企業とは異なった経営活動(商品開発体制を含む)をしており,両者の活動は,ある意味で対照的である.この対照性を基軸にしながら,人類史的生活者的観点から研究を展開できた.近代工業生産システムは,大量生産システムを要請する.食品産業においても例外ではない.他方,食品は,消費の個別性,多様性,零細性を最も強く有する.生産システムと消費システムとの矛盾が存在する.食品という商品的特性に加えて,このことが反映されて,生産の側では,基礎的素材型と加工型の業種で産業構造が異なり,さらに,後者においても中小企業の占める割合が他産業に比較して多いといえる.これは流通過程をも規定する.ところで,食品産業は,現在,幾つかの課題とそれへの対応を迫られている.課題としては,需要構造の変化,国際化,原料問題,技術およびこれらを取り囲む情報化の諸問題である.これらの課題への食品産業界の全般的に共通する対応としては,食品の加工食品化であろう.事実,食費に占める加工食品の割合は年々増加しており,年収五分位段階階級別年間・一世帯当たり加工食品異存率では年収の低い階級ほどその占める割合が大きく,さらに,都市階級別年間一世帯当たり加工食品異存率では小都市ほど多い.加工食品は,今後,国民生活の中で量的にも質的にもますます大きな位置を占めて来るだろう.これは,加工食品の国民生活への影響が重大であることを意味する.ところが,加工食品の使用価値的側面および価値的側面の研究は未だ十分に行われていないことがわかる.現代のコンシューマリズムないし消費者運動は,まさにこの点に焦点をおいている.確かに,特に加工食品大企業は,それ自体を食品文化を創造する経営組織体として性格づける傾向が増大しているが,内容において未だ不十分である.他方,生活協同組合およびその連合体(日生協)も,同様に食品文化を創造する経営組織体として,加工食品大企業とは異なった経営活動(商品開発体制を含む)をしており,両者の活動は,ある意味で対照的である.この対照性を基軸にしながら,人類史的生活者的観点から研究を展開できた.
KAKENHI-PROJECT-62530066
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温熱刺激に対する骨格筋の応答と筋萎縮抑制効果の検討
右側には坐骨神経切除手術、左側には偽手術を施したラットに温熱刺激を行い、ヒラメ筋の形態および細胞内シグナルに生じる変化について検討した。温熱刺激は湯浴により行い、手術の1日後から1日おきに麻酔をしたラットの後肢を42°Cのお湯に30分間浸けた。手術の14日後に両脚より採取したヒラメ筋の形態解析の結果、間欠的温熱刺激による筋肥大促進および筋萎縮軽減効果を確認した。筋内のタンパク質の合成および分解に関わる細胞内シグナルについての解析結果からも、ヒラメ筋の形態に対する温熱刺激の効果は神経支配の有無にかかわらず得られるが、温熱刺激に伴う細胞内シグナルの変化は神経支配の有無により異なることが示唆された。現在、骨格筋の廃用性萎縮に対する予防・改善策として、運動処方が世間一般に認知されている。しかし、長期臥床患者や生活習慣病患者、高齢者の中には、健康上の理由から運動処方を行うことができない人もいる。したがって、運動処方以外の対策を確立することは重要である。骨格筋が活動量の変化に応じて形態や機能を変化させる現象を骨格筋のストレス(刺激)応答と捉えると、運動に伴い生じる刺激を別の手法で骨格筋に作用させることができれば、その手法は廃用性萎縮の新たな対策となり得ると考える。近年、温熱刺激が骨格筋の肥大を促進し、萎縮を抑制することが明らかとなったが、そのメカニズムについては不明な点が多い。そこで、本研究では温熱刺激により骨格筋に効果がもたらされるメカニズムを追究し、最適な刺激条件を確立するうえで重要な知見を得ることを目的としている。平成26年度は、細胞培養ユニットを搭載した共焦点顕微鏡を使用し、細胞培養ユニット内の温度上昇に伴うラット骨格筋由来筋芽細胞(L6細胞株)内のカルシウムイオン濃度変化を経時的に測定する実験を行った。その結果、培養液の温度上昇に伴うL6細胞内カルシウムイオン濃度の上昇はあまり顕著ではなく、あっても軽微であり、これを指標に最適な刺激条件を確立することは困難である可能性が示唆された。一方、坐骨神経切除後、14日間の飼育期間中に間欠的温熱刺激を行ったラットと行わなかったラットから摘出したヒラメ筋のタンパク質発現解析からは、温熱刺激により酸化的代謝が高められることにより、タンパク質合成シグナルの活性状態が維持されるため、筋萎縮が抑制されることを示す結果が得られた。本結果は、温熱刺激効果がもたらされるメカニズムの解明につながる重要な知見であり、平成27年度に、より詳細な解析を行うことによって、最適な刺激条件を確立するために重要な指標を見つけることも期待できる。坐骨神経について右側には切除手術、左側には偽手術を施したラットに温熱刺激を行い、ヒラメ筋の形態および細胞内シグナルに生じる変化について検討した。温熱刺激は湯浴により行い、手術の1日後から1日おきに麻酔をしたラットの後肢を42 &#186;Cのお湯に30分間浸けた。その後、14日経過した時点で両脚よりヒラメ筋を採取した。形態解析の結果、間欠的な温熱刺激はヒラメ筋の成長に伴う肥大を促進するとともに、除神経に伴う萎縮を軽減することを確認した。分子生物学的手法を用いた解析の結果からは、除神経されたヒラメ筋ではatrogin-1/muscle atrophy F-box (Atrogin-1)およびmuscle RING-finger protein-1 (MuRF-1)の転写が亢進しており、それを負に制御することが知られるリン酸化protein kinase B (Akt)および70-kDa heat shock protein (HSP70)、peroxisome proliferator-activated receptor γcoactivator-1α(PGC-1α)の発現が減少していることが確認された。しかし、間欠的に温熱刺激を行うことにより、Atrogin-1 mRNAの発現上昇は抑制され(MuRF-1 mRNAの発現については効果なし)、リン酸化AktおよびHSP70、PGC-1αの発現減少は軽減された。一方、偽手術脚のヒラメ筋では、間欠的温熱刺激によりリン酸化AktおよびHSP70の発現量が高まった(PGC-1αの発現については効果なし)にもかかわらず、Atrogin-1およびMuRF-1 mRNAの発現には温熱刺激の影響は確認されなかった。さらに、除神経および偽手術1日後のヒラメ筋において1回の温熱刺激の直後には、タンパク質合成を正に制御することが知られるAktおよびribosomal protein S6のリン酸化が亢進していた。以上の結果から、ヒラメ筋の形態に対する温熱刺激の効果は神経支配の有無にかかわらず得られるが、温熱刺激に伴う細胞内シグナルの変化は神経支配の有無により異なることが示唆された。ラット後肢への間欠的な温熱刺激による後肢筋(特にヒラメ筋)の形態へのポジティブな効果(肥大促進または萎縮抑制)は、筋を支配する神経の有無にかかわらず得られるが、温熱刺激に伴うタンパク質合成・分解に関わる細胞内シグナルの変化は、神経支配を受ける筋とそれを除去した筋では異なることを示唆する結果が得られている。また、徐神経に伴う骨格筋の機能的変化に対する間欠的温熱刺激の効果を評価する準備にも取りかかり、実験の条件検討も進んでいる。右後肢には坐骨神経切除手術を、左後肢にはその偽手術を施したラットを用いて、手術後1日14日の間に2日に1回の頻度で温熱刺激(42 °Cの温浴、30分間)を施し、ヒラメ筋の形態および細胞内シグナル伝達機構にもたらされる変化を追究した。
KAKENHI-PROJECT-26750347
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26750347
温熱刺激に対する骨格筋の応答と筋萎縮抑制効果の検討
温熱刺激群へは、イソフルランの吸入麻酔下で上記の温熱刺激を行い、刺激中はラットの身体が湯と直接接触しないようにビニール袋を穿かせた状態で後肢を湯に浸けた。また、麻酔の影響も考慮し、30分間のイソフルランの吸入麻酔のみを施したコントロール群も用意し、両群を比較することにより温熱刺激の効果を観察した。結果、間欠的に温熱刺激を行うことにより、神経支配が正常なヒラメ筋の肥大は促進され、神経支配が断たれたヒラメ筋の萎縮は軽減されることを確認した。しかし、これらの効果は同一の分子メカニズムを介してもたらされたのではなく、神経支配が正常なヒラメ筋では温熱刺激の最中または直後からAkt-mTORカスケードが活性化され、タンパク質の合成が亢進されることにより筋肥大が促された可能性が高い。一方、神経支配が断たれたヒラメ筋では、温熱刺激により細胞の保護機能を有するタンパク質が減少するのが抑えられるとともに、タンパク質分解機構の活性化が軽減されることにより筋萎縮が軽減されたと考えられる。坐骨神経切除脚のヒラメ筋では、温熱刺激によるAkt-mTORカスケードの活性化が顕著に抑制されたことから、温熱刺激は神経系を介して骨格筋のAkt-mTORカスケードを活性化し、タンパク質合成を亢進させることが明らかとなった。したがって、神経支配が正常(または軽微に傷害された程度)である骨格筋の萎縮モデルを用いた実験ではより大きな筋萎縮抑制効果が確認できる可能性が高いと考える。右側には坐骨神経切除手術、左側には偽手術を施したラットに温熱刺激を行い、ヒラメ筋の形態および細胞内シグナルに生じる変化について検討した。温熱刺激は湯浴により行い、手術の1日後から1日おきに麻酔をしたラットの後肢を42°Cのお湯に30分間浸けた。手術の14日後に両脚より採取したヒラメ筋の形態解析の結果、間欠的温熱刺激による筋肥大促進および筋萎縮軽減効果を確認した。筋内のタンパク質の合成および分解に関わる細胞内シグナルについての解析結果からも、ヒラメ筋の形態に対する温熱刺激の効果は神経支配の有無にかかわらず得られるが、温熱刺激に伴う細胞内シグナルの変化は神経支配の有無により異なることが示唆された。ラット骨格筋由来筋芽細胞(L6細胞株)のライブセルイメージングの実験系を立ち上げ、培養液の温度上昇に伴う細胞内カルシウムイオン濃度の経時的変化の観察を行った。また、ラット骨格筋のタンパク質発現解析からは、温熱刺激効果がもたらされるメカニズムにカルシウムシグナル以外も関与していることを示唆する結果も得られている。これらの結果を踏まえることで、平成27年度実施予定である実験を効率よく進展させることができる。したがって、順調に進展していると考える。徐神経に伴う骨格筋の機能的変化に対する間欠的温熱刺激の効果を評価する実験を実施する。これまでと同様に坐骨神経を切除した後14日の間に間欠的温熱刺激を行った個体と温熱刺激を行わなかった個体から摘出したヒラメ筋の収縮特性を比較し、温熱刺激による筋機能低下予防効果について検討する。また、本実験に使用したヒラメ筋からタンパク質を抽出し、筋の収縮特性を規定するタンパク質の発現量変化についても評価する。神経・筋生理学平成26年度に引き続き、ラット骨格筋由来筋芽細胞(L6細胞株)のライブセルイメージングを実施する。
KAKENHI-PROJECT-26750347
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26750347
金属錯体を含む複合系の光機能制御
現在、金属錯体を含む複合系の光機能に着目し、光反応や励起状態物性を任意に操る新たな研究分野の創出に大きな期待が寄せられている。豊かな可能性を秘めた「金属錯体を含む複合系の光機能性制御」の分野を飛躍的に発展させるために、関連研究者が一堂に会し、真剣な討論と更なるブレークスルーを目指した共同研究を行った。各共同研究者が調査した内容を持ち寄り、全体会議を開催した。また、外部の研究者との情報交換を行うために、基盤研究(C)(企画調査)「自発集積による超分子ナノ光科学」(研究代表民秋均立命館大学教授)研究チームとの合同会議を行った。さらに、「金属錯体を含む複合系の光機能性制御」分野の重要性を喧伝するために、2回のシンポジウムを開催した。この間に行われた議論は、今後の活動を決める上で重要であった。この成果をもとにさらに調査・議論を進め、最終的には、特定領域研究を含む大型研究費の申請を目指す方針が確認された。【活動概要】1)科学研究費基盤研究(C)企画研究「金属錯体を含む複合系の光機能制御」・「自発集積による超分子ナノ光科学」合同会議(平成16年8月6日)2)科学研究費基盤研究(C)企画研究「金属錯体を含む複合系の光機能制御」第2回会議(平成16年12月22日-12月24日)3)開催したシンポジウム1.複合系の光機能研究会講演会(平成16年8月7日)2.第54回錯体化学討論会におけるシンポジウム「錯体化学と光化学・光生物学との接点」(平成16年9月23日)4)平成17年3月25日に、第3回全体会議を開催し、来年度の特定研究への申請に向け、さらに議論を進める予定である。現在、金属錯体を含む複合系の光機能に着目し、光反応や励起状態物性を任意に操る新たな研究分野の創出に大きな期待が寄せられている。豊かな可能性を秘めた「金属錯体を含む複合系の光機能性制御」の分野を飛躍的に発展させるために、関連研究者が一堂に会し、真剣な討論と更なるブレークスルーを目指した共同研究を行った。各共同研究者が調査した内容を持ち寄り、全体会議を開催した。また、外部の研究者との情報交換を行うために、基盤研究(C)(企画調査)「自発集積による超分子ナノ光科学」(研究代表民秋均立命館大学教授)研究チームとの合同会議を行った。さらに、「金属錯体を含む複合系の光機能性制御」分野の重要性を喧伝するために、2回のシンポジウムを開催した。この間に行われた議論は、今後の活動を決める上で重要であった。この成果をもとにさらに調査・議論を進め、最終的には、特定領域研究を含む大型研究費の申請を目指す方針が確認された。【活動概要】1)科学研究費基盤研究(C)企画研究「金属錯体を含む複合系の光機能制御」・「自発集積による超分子ナノ光科学」合同会議(平成16年8月6日)2)科学研究費基盤研究(C)企画研究「金属錯体を含む複合系の光機能制御」第2回会議(平成16年12月22日-12月24日)3)開催したシンポジウム1.複合系の光機能研究会講演会(平成16年8月7日)2.第54回錯体化学討論会におけるシンポジウム「錯体化学と光化学・光生物学との接点」(平成16年9月23日)4)平成17年3月25日に、第3回全体会議を開催し、来年度の特定研究への申請に向け、さらに議論を進める予定である。
KAKENHI-PROJECT-16635003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16635003
ナノアーキテクトニクスのためのナノコンポジット基板の調製
金はAu-S結合により有機分子と化学結合を形成することを利用して、走査型プローブ顕微鏡を使った金基板固定分子や金ナノギャップ電極間に固定された分子の電気伝導度測定が試みられてきているが、測定には高い技術が必要であり容易ではない。数ナノメーターのギャップがより単純な手法で得られれば、分子電導測定に極めて有効であると期待され、金ナノ粒子がシリカマトリックスの中に分散したナノコンポジット単層薄膜はその可能性をもつ材料である。本研究では同時スパッタ法によりAu/SiO_2ナノコンポジット薄膜を作製し、その構造評価を行うことで分子電導測定用基板としての応用の可能性について検討した。これまでにAuの含有量が50%程度で粒子サイズが8nm程度のAu/SiO_2ナノコンポジット薄膜を作製し、その平滑性、膜全体の絶縁性を確認してきた。また、金ナノ粒子同士の位置関係を統計的に解析するためにVoronoi解析法を導入し、金同士のつながり関係や粒子間距離の分布などを統計的に解析する手法を開発した。このような基板上に導電性分子を固定化させその導電性を測定したところ、分子固定化前に比較して10^5倍の電導が確認され、分子1個あたりの導電性に換算すると走査型プローブ顕微鏡での実測値にほぼ対応することが確認された。また表面増強ラマン分光法を利用した単一分子検出用基板としての可能性を示すデータも得られている。特許出願1件、論文投稿中3件、投稿準備中3件、国際会議での発表3件(予定1件を含む)である。また、本研究の成果をNANTECH2007に出展予定であり、本研究成果を発展させた提案が科学技術振興機構のシーズ発掘試験に採択されている。金はAu-S結合により有機分子と化学結合を形成することができる元素であり、これを利用して走査型プローブ顕微鏡を使って金薄膜上に固定された分子の電気伝導度測定が行われてきている。また、様々な方法で調製されたナノギャップ電極も分子電導測定に使われてきているが、10ミクロン以下のナノギャップを作製することは容易ではない。数ナノメーターのギャップが単純な手法で得られれば、分子電導測定に極めて有効であると期待される。金ナノ粒子がシリカマトリックスの中に埋め込まれた構造のナノコンポジット単層薄膜はその可能性をもつ材料である。要求される性能としては、金の含有量が大きく、全体としては絶縁性で、数ナノメーター以下の金粒子間距離を持ち、平滑であり、金表面は分子を化学結合するために外界に露出しているなどがあげられる。本研究では同時スパッタ法によりAu/SiO_2ナノコンポジット薄膜を作製し、その構造評価を行うことで分子電導測定用基板としての応用の可能性について検討した。これまでにAuの含有量が50%程度で粒子サイズが8nm程度のAu/SiO_2ナノコンポジット薄膜を作製し、その平滑性、膜全体の絶縁性を確認してきた。また、金ナノ粒子同士の位置関係を統計的に解析するためにVoronoi解析法を導入し、金同士のつながり関係や粒子間距離の分布などを統計的に解析する手法を開発した。これにより、一定長さをもつ導電性分子が粒子間を橋掛けすることにより導電パスがどのように形成され、実際の導電性測定が十分可能であることを検証した。現在、これを使って実際に電導測定の実験を進めているところであり、また表面増強ラマン分光法を利用した単一分子検出用基板としての可能性についても検討を進めている。特許出願1件、論文投稿中1件、投稿準備中4件である。金はAu-S結合により有機分子と化学結合を形成することを利用して、走査型プローブ顕微鏡を使った金基板固定分子や金ナノギャップ電極間に固定された分子の電気伝導度測定が試みられてきているが、測定には高い技術が必要であり容易ではない。数ナノメーターのギャップがより単純な手法で得られれば、分子電導測定に極めて有効であると期待され、金ナノ粒子がシリカマトリックスの中に分散したナノコンポジット単層薄膜はその可能性をもつ材料である。本研究では同時スパッタ法によりAu/SiO_2ナノコンポジット薄膜を作製し、その構造評価を行うことで分子電導測定用基板としての応用の可能性について検討した。これまでにAuの含有量が50%程度で粒子サイズが8nm程度のAu/SiO_2ナノコンポジット薄膜を作製し、その平滑性、膜全体の絶縁性を確認してきた。また、金ナノ粒子同士の位置関係を統計的に解析するためにVoronoi解析法を導入し、金同士のつながり関係や粒子間距離の分布などを統計的に解析する手法を開発した。このような基板上に導電性分子を固定化させその導電性を測定したところ、分子固定化前に比較して10^5倍の電導が確認され、分子1個あたりの導電性に換算すると走査型プローブ顕微鏡での実測値にほぼ対応することが確認された。また表面増強ラマン分光法を利用した単一分子検出用基板としての可能性を示すデータも得られている。特許出願1件、論文投稿中3件、投稿準備中3件、国際会議での発表3件(予定1件を含む)である。また、本研究の成果をNANTECH2007に出展予定であり、本研究成果を発展させた提案が科学技術振興機構のシーズ発掘試験に採択されている。
KAKENHI-PROJECT-04F04569
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ウサギ心室筋のカルシウム電流に及ぼす全身麻酔薬およびその光学異性体の影響
イソフルレンなどの全身麻酔薬は、Ca^<2+>電流の抑制作用を示すことが報告されており、臨床的にも重要な問題であるが、全身麻酔薬が、(a)Ca^<2+>チャネルタンパク質上のある特定部分に作用するのか、(b)細胞質膜に非特異的に作用してCa^<2+>チャネルの性質を変化させるのかは明らかでない。今回我々は、酵素的に分離した心筋単一細胞標本にパッチクランプ法を適用し、Ca^<2+>チャネルに及ぼす全身麻酔薬イソフルレンおよびセボフルレンの作用部位・機序を検討した。イソフルレン(1.25,2.5,5.0 vol%)およびセボフルレン(2.5,5.0 vol%)はCa^<2+>電流のamplitudeを濃度依存性に抑制した。Ca^<2+>電流の不活性化過程をコンピュータ解析した結果:1.イソフルレンおよびセボフルレンは、Ca^<2+>電流の不活性化の時定数(τ_f)を減少させた。2.イソフルレンはCa^<2+>電流の定常状態での不活性化f_∞を過分極側へシフトした。3.イソフルレンCa^<2+>電流の不活性からの回復を遅延させた。さらにCa^<2+>電流のコンピュータシミュレーションの結果から、比較的定濃度のイソフルレン(1.25,2.5 vol%)およびセボフルレン(2.5 vol%)によるCa^<2+>電流amplitudeの抑制効果は、不活性化の時定数(τ_f)の変化から説明できることが明らかとなった。したがって心筋においてイソフルレンなどの全身麻酔薬は、細胞膜質膜に非特異的に作用してCa^<2+>チャネルの性質を変化させる可能性が示唆された。しかしながら高濃度のイソフルレン(5.0 vol%)およびセボフルレン(5.0vol%)によるCa^<2+>電流の抑制効果はτ_fのみでは説明できないことから、他の因子(Ca^<2+>チャネルのコンダクタンスなど)の関与が考えられた。イソフルレンなどの全身麻酔薬は、Ca^<2+>電流の抑制作用を示すことが報告されており、臨床的にも重要な問題であるが、全身麻酔薬が、(a)Ca^<2+>チャネルタンパク質上のある特定部分に作用するのか、(b)細胞質膜に非特異的に作用してCa^<2+>チャネルの性質を変化させるのかは明らかでない。今回我々は、酵素的に分離した心筋単一細胞標本にパッチクランプ法を適用し、Ca^<2+>チャネルに及ぼす全身麻酔薬イソフルレンおよびセボフルレンの作用部位・機序を検討した。イソフルレン(1.25,2.5,5.0 vol%)およびセボフルレン(2.5,5.0 vol%)はCa^<2+>電流のamplitudeを濃度依存性に抑制した。Ca^<2+>電流の不活性化過程をコンピュータ解析した結果:1.イソフルレンおよびセボフルレンは、Ca^<2+>電流の不活性化の時定数(τ_f)を減少させた。2.イソフルレンはCa^<2+>電流の定常状態での不活性化f_∞を過分極側へシフトした。3.イソフルレンCa^<2+>電流の不活性からの回復を遅延させた。さらにCa^<2+>電流のコンピュータシミュレーションの結果から、比較的定濃度のイソフルレン(1.25,2.5 vol%)およびセボフルレン(2.5 vol%)によるCa^<2+>電流amplitudeの抑制効果は、不活性化の時定数(τ_f)の変化から説明できることが明らかとなった。したがって心筋においてイソフルレンなどの全身麻酔薬は、細胞膜質膜に非特異的に作用してCa^<2+>チャネルの性質を変化させる可能性が示唆された。しかしながら高濃度のイソフルレン(5.0 vol%)およびセボフルレン(5.0vol%)によるCa^<2+>電流の抑制効果はτ_fのみでは説明できないことから、他の因子(Ca^<2+>チャネルのコンダクタンスなど)の関与が考えられた。
KAKENHI-PROJECT-07771217
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日本人の言語交渉における意見衝突の表明手続きと解決ストラテジー
本年度の研究成果を以下の5点にまとめる。1.否定表現「-ない」に付与される韻律変異の規則性について、ヴァリエーション理論の枠組みで研究をすすめた。言語使用域(レジスター)、話者の性別、会話参与者の職階差、否定表現自体の相互交渉的意味などの拘束要因の存在が明らかになった。これらの研究成果ついては、「社会言語科学会」弟9回大会(2000年9月、中京大学)のワークショップ(「社会・文化的認知と談話分析の新たな視界」)で口頭発表を行った。2.上記1の研究発表を論文にまとめ、「日本人の言語交渉における対立意見表明の韻律モダリティー:レジスター研究の視点から」(北星論集38号、北星学園大学文学部、1331ページ)として出版した。3.上記1の研究成果について、アリゾナ大学大学院認知科学専攻課程教授Dr.Malcah Yaeger-Drorからレヴューを受けた。レビュー内容を基に上記研究をさらに洗練させていくことと、Yaeger-Dror教授が取り組まれている米語とフランス語における否定韻律の変異研究との比較研究を行うことに、今後の研究の焦点を絞っていくつもりである。4.新たな談話資料を収集し、記録・保存するためにフィールドワーク用のノートパソコンを購入した。アルバイトを雇い、既存または新たに収集した会話資料の文字起こし作業を継続している。5.参考図書を購入し、資料の量(話者や分析トークン数)や種類(レジスター、談話場面など)を増やし、上記2の論文に改訂を加えていくつもりである。本年度の所究成果を以下の5点にまとめる。1.言語交渉における意見の衝突や食い違いといったテーマに関連した文献を日本語のみならず他言語からも幅広く検証した結果、本研究申請当初に予定していた談話分析的アプローチよりも、ヴァリエーション理輪に根差したアプローチを用いるほうがより独自性が増し、他言語(とりわけ、米語・英語・仏語)における類似研究との比較がしやすいという点で、より有益であることが判明した。従って、今後は特に自然談話中に現われる否定表現と韻律との規則的関係に分析の焦点をしぼった上で、日本語特有の(または、他言語と共有される)反対意見表明のしくみを解明していくこととする。2.韻律的特徴を分析するために必要とされるパソコン及び音声分析ソフトを購入し、実際の会話資料の分析を開始した。次年度もこの分析作業を継続していく。3.上記2を遂行するにあたって、既存の会話資料の文字起こし作業を行った。次年度も継続していく予定である。4.会話資料を追加するため、北海道千歳市内の職場1ヶ所でフィールドワークを行った。男性管理職1名を含め、合計7名(男4名・女3名)の話者から自然発生的談話を約10時間にわたってMD録音することができた。また、その際申請者は業務を観察し、適宜フィールドノートをとることが許された。5.本研究と類似した研究プロジェクトを主催する米国アリゾナ大学大学院認知科学課程Malcah Yaeger-Dror教授より本研究の中間的分析結果についてのレビューをうけ、分析作業上の問題点やその解決法に関して議論をすることができた。今後の分析作業に役立つ貴重な助言をいただいた。本年度の研究成果を以下の5点にまとめる。1.否定表現「-ない」に付与される韻律変異の規則性について、ヴァリエーション理論の枠組みで研究をすすめた。言語使用域(レジスター)、話者の性別、会話参与者の職階差、否定表現自体の相互交渉的意味などの拘束要因の存在が明らかになった。これらの研究成果ついては、「社会言語科学会」弟9回大会(2000年9月、中京大学)のワークショップ(「社会・文化的認知と談話分析の新たな視界」)で口頭発表を行った。2.上記1の研究発表を論文にまとめ、「日本人の言語交渉における対立意見表明の韻律モダリティー:レジスター研究の視点から」(北星論集38号、北星学園大学文学部、1331ページ)として出版した。3.上記1の研究成果について、アリゾナ大学大学院認知科学専攻課程教授Dr.Malcah Yaeger-Drorからレヴューを受けた。レビュー内容を基に上記研究をさらに洗練させていくことと、Yaeger-Dror教授が取り組まれている米語とフランス語における否定韻律の変異研究との比較研究を行うことに、今後の研究の焦点を絞っていくつもりである。4.新たな談話資料を収集し、記録・保存するためにフィールドワーク用のノートパソコンを購入した。アルバイトを雇い、既存または新たに収集した会話資料の文字起こし作業を継続している。5.参考図書を購入し、資料の量(話者や分析トークン数)や種類(レジスター、談話場面など)を増やし、上記2の論文に改訂を加えていくつもりである。
KAKENHI-PROJECT-11710288
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公害・環境問題の諸相における疫学のあり方に関する科学史・科学社会学的研究
研究代表者の篠田は「劇症型・典型例以外の被害を公害被害者に包含するための枠組み:疫学史の観点からの試論」(http://id.nii.ac.jp/1294/00001030/)を前年度に論文発表したことに続き、今後の研究を展望するための研究の視座を提示した。公害被害者による裁判や患者認定において、被害の切り捨てを含意するような「線引き」が行われているが、その中で歴史的に疫学はどのように議論されてきたかを調査研究した。また被害の包括的な再定義のために疫学がどのような機能を果たす可能性があるのか、水俣病やイタイイタイ病、カネミ油症事件等の具体的な事例をもとに考察した。その過程で科学(疫学)と被害者の関係とともに被害者・支援者らの主体的な病像理解や民間療法的な対策の試みにも注目した。これらの研究から、疫学研究・調査の持つ歴史性、政治性、社会性と認識論的問題が明らかになり、被害者の視点からの研究と、政治や科学者共同体の視点や枠組みからの研究を総合した歴史記述が必要であるという見通しが得られた。本格的な研究の展開に向けた今後の研究計画についても策定した。1分野横断的な「放射線疫学の研究会」を多分野の研究者と共同で2019年6月から立ち上げることが決まった。2疫学の歴史的・社会的機能について各地の公害被害や放射線被曝・被爆の実態を踏まえてさらに研究を深めていくこととした。1)疫学史に関する国内外の文献調査と検討を行った。それをもとに特に1970年代以降の疫学史および疫学と社会の関係について研究し、2016年12月3日(土)同志社大学寒梅館において開催された「放射線被ばくの科学史研究会」において篠田が「医学における因果関係の推論」として中間的な研究発表を行った。ここでは、海外における公衆衛生上の諸問題において疫学が果たした役割の史的展開事例について検討した。疫学における科学的確実性の理論的な展開だけでなく、確率的に示された原因論をいかに公衆衛生上の予防的措置に反映させていくかについての具体的な事例の積み重ねにより、疫学が実効的な役割を果たしていく過程について科学史及び科学社会学的に考察した。2)具体的な事例における疫学の役割に関しては、「イタイイタイ病を語り継ぐ会」や四日市公害「市民塾」など市民運動を担ってきた方々からの聞き取りを行い、それぞれ公害問題の因果関係や原因究明における疫学の役割の歴史、関係文献、およびその今日的意義などについて情報を収集した。公害の認定や補償が問題になり始めた670年代において、公害患者には重症者が多く、典型例、劇症例が多かったが、その後症状が軽減されていくにつれて、未認定患者の増加が問題化した。さらに現在においては、高齢化に伴う潜在患者の顕在化、申請の遅れによる認定の取りこぼし、さらに次世代への影響といった別の問題群が様々な公害問題において共通していることが明らかとなり、それらに対応するための理論的枠組みも変化せざるを得ないことが明らかになった。文献調査は順調に進展している。現地調査は、すべての地点で行うことはできなかったが、イタイイタイ病や四日市大気汚染公害の関連施設については現地調査を進めた。また、それ以外の事例についても、現地調査なしでも収集できる文献や情報については調査研究を行った。1)疫学史に関する国内外の文献調査と検討を行い、海外における公衆衛生史についても文献調査により検討した。疫学が裁判や一般的な認識においてどのように受容され、実効的な役割を果たしていったかという過程について、科学史及び科学社会学的に検討した。2)これまでの調査研究の中間的なまとめとして、科学技術社会論学会第16回年次研究大会でグループセッションを行い、「劇症型・典型例・急性症状以外の症状をどう捉えるのか」と「福島県「県民健康調査」の開始時における疫学の位置づけをめぐって」と題して発表を行った。また、論文として「劇症型・典型例以外の被害を公害被害者に包含するための枠組み:疫学史の観点からの試論」「ABCCと原子爆弾影響研究所」「原発事故後の放射線健康影響問題ーチェルノブイリと福島:序論」を発表し、公害と放射能の分野で、それぞれ、社会的な疫学の理解や位置づけについての枠組みについて考察を行った。これらの論文や研究発表で明らかにしたことは以下のとおり、研究動向の把握と、本研究課題の位置づけや枠組みについてである。公害や環境問題においては、原因と結果、加害と被害をめぐって科学的論争論争や係争が起こることが多い。科学がそれらに対して果たしている/果たすべき役割を考察し、どのようにして科学的な究明が遅れたり歪められたりしていくのか、あるいは悪影響が軽視されたり、無視されたりしてしまう事例を疫学の観点から研究した。公害・環境問題における科学史・科学社会学的な先行研究は多いが、特に疫学に焦点を絞った考察はいまだ十分ではなく、今後研究していく必要があることを示した。文献調査は順調に進展している。インタビュー調査は、対象者との日程調整がうまくいかなかったため、やや遅れている。しかし、文献調査に基づき中間まとめとして論文執筆や学会発表を行い、研究自体は先に進めることができた。研究代表者の篠田は「劇症型・典型例以外の被害を公害被害者に包含するための枠組み:疫学史の観点からの試論」(http://id.nii.ac.jp/1294/00001030/)を前年度に論文発表したことに続き、今後の研究を展望するための研究の視座を提示した。
KAKENHI-PROJECT-16K12801
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K12801
公害・環境問題の諸相における疫学のあり方に関する科学史・科学社会学的研究
公害被害者による裁判や患者認定において、被害の切り捨てを含意するような「線引き」が行われているが、その中で歴史的に疫学はどのように議論されてきたかを調査研究した。また被害の包括的な再定義のために疫学がどのような機能を果たす可能性があるのか、水俣病やイタイイタイ病、カネミ油症事件等の具体的な事例をもとに考察した。その過程で科学(疫学)と被害者の関係とともに被害者・支援者らの主体的な病像理解や民間療法的な対策の試みにも注目した。これらの研究から、疫学研究・調査の持つ歴史性、政治性、社会性と認識論的問題が明らかになり、被害者の視点からの研究と、政治や科学者共同体の視点や枠組みからの研究を総合した歴史記述が必要であるという見通しが得られた。本格的な研究の展開に向けた今後の研究計画についても策定した。1分野横断的な「放射線疫学の研究会」を多分野の研究者と共同で2019年6月から立ち上げることが決まった。2疫学の歴史的・社会的機能について各地の公害被害や放射線被曝・被爆の実態を踏まえてさらに研究を深めていくこととした。1)引き続き文献調査を行う。篠田は公害・環境問題における疫学文献を、柿原は放射能に関する疫学文献を調査検討するが、今後は特に海外論文や文献について収集、検討を行い国内外における疫学研究史の比較を行う予定である。2)引き続き公害や放射能汚染に関する研究機関を調査し、資料の所在を確認するとともに内容の検討を行う。3)疫学者重松逸造に関する資料収集及び検討を行う。4)1年目に十分行うことができなかった疫学及び公衆衛生に関する大学の学科・講座・研究室・教室の歴史について調査研究を行う。また、研究を進める中で、大学だけでなく国立公衆衛生院(現在の国立保健医療科学院)についての研究も重要であることがわかった。そのため、この機関の歴史についても調査研究を行う予定である。1)引き続き文献調査を行う。篠田は公害・環境問題における疫学文献を、柿原は放射能に関する疫学文献を調査検討するが、今後は前年度に引き続き海外論文や文献について収集、検討を行い国内外における疫学研究史の比較を行う予定である。2)引き続き公害や放射能汚染に関する研究機関を調査し、資料の所在を確認するとともに内容の検討を行う。3)インタビュー調査を進める。対象者との調整については、学会等の機会を積極的に利用する。4)国立公衆衛生院(現在の国立保健医療科学院)をふくめ、各学術団体・機関についての資料調査を進める。現地調査のうち、予定していた数か所について2016年度中に実施することができなかった。そのため、旅費交通費の使用額が予定よりも少なくなった。同じく、現地調査が行えなかった地点があるため、インタビューの書き起こしの必要性がなく、人件費を使用しなかった。当該年度は、日程調整の関係で予定のインタビュー調査を進めることができなかったため、旅費として計上していた予算を使用しなかった。今年度はインタビューを行う予定であり、旅費を含めて使用される見込みである。2016年度に現地調査を実施できなかった地点については、2017年度に実施する予定であり、そこで旅費交通費を使用する。それに伴いインタビュー調査を行い、インタビューの書き起こし人件費も使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-16K12801
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ルービン根による酸性フォスファターゼ分泌能の遺伝子解析とリン欠乏耐性植物の育成
前年度の実験において、5.5×10^4pfuのcDNAライブラリーからcDNAの全長を含んでいると予想されるおよそ2,200bpの断片を含む陽性クローンを単離し、LASAP1と命名した。本年度は、このクローンのdeletion seriesを作成し、Sangerのdideoxy chain-terminal法により全塩基配列を決定した。LASAP1は2,187bpからなり、、637アミノ酸残基をコードする1,914bpのopen reading flameを有していた。データベースPDB,SWISS-PROT,PIR,GenPeptに対してアミノ酸配列の相同性検索を行った結果、Phaseolus vulgaris由来のacid phosphatase (APase)に76%、Arabidopsis thaliana由来のAPaseに71%、2つのAspergillus由来のAPaseにそれぞれ59%、58%の高い相同性を有していた。Phaseolus vulgaris由来のAPaseについてはFe,Znを含有する活性中心を7つのアミノ酸が構成することが報告されている(Strater et al., 1995)が、全てのアミノ酸がlupin,Arabidopsisで保存されており、これらの酸素は全て同様の機構で反応することが示唆された。先に、本酵素のN-末端アミノ酸配列を決定したが、LASAP1にはこれより上流に31のアミノ酸からなる領域が存在した。この領域は疎水性の高い領域であり、分泌性であるダイズおよびArabidopsisのAPaseのそれと類似していることを考えると、この領域は分泌に必要なシグナル配列であると考えられる。また、前年度に調製可能となったプローブLAP493を用いゲノムライブラリーをスクリーニングしたところ、1つの陽性クローンが得られた。現在このクローンについて解析中である。前年度の実験において、5.5×10^4pfuのcDNAライブラリーからcDNAの全長を含んでいると予想されるおよそ2,200bpの断片を含む陽性クローンを単離し、LASAP1と命名した。本年度は、このクローンのdeletion seriesを作成し、Sangerのdideoxy chain-terminal法により全塩基配列を決定した。LASAP1は2,187bpからなり、、637アミノ酸残基をコードする1,914bpのopen reading flameを有していた。データベースPDB,SWISS-PROT,PIR,GenPeptに対してアミノ酸配列の相同性検索を行った結果、Phaseolus vulgaris由来のacid phosphatase (APase)に76%、Arabidopsis thaliana由来のAPaseに71%、2つのAspergillus由来のAPaseにそれぞれ59%、58%の高い相同性を有していた。Phaseolus vulgaris由来のAPaseについてはFe,Znを含有する活性中心を7つのアミノ酸が構成することが報告されている(Strater et al., 1995)が、全てのアミノ酸がlupin,Arabidopsisで保存されており、これらの酸素は全て同様の機構で反応することが示唆された。先に、本酵素のN-末端アミノ酸配列を決定したが、LASAP1にはこれより上流に31のアミノ酸からなる領域が存在した。この領域は疎水性の高い領域であり、分泌性であるダイズおよびArabidopsisのAPaseのそれと類似していることを考えると、この領域は分泌に必要なシグナル配列であると考えられる。また、前年度に調製可能となったプローブLAP493を用いゲノムライブラリーをスクリーニングしたところ、1つの陽性クローンが得られた。現在このクローンについて解析中である。
KAKENHI-PROJECT-08255202
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08255202
アデノウイルスを用いた遺伝子導入静脈グラフトの冠動脈バイパスへの応用に関する研究
C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)は血管平滑筋上の特異的受容体(ANP-B受容体)を通して血管平滑筋弛緩、増殖抑制に働く。われわれはCNP遺伝子を非増殖性アデノウイルスに組み込んだベクターを作成し、このベクターが培養血管平滑筋細胞に対して非常に高い遺伝子導入効率を示し、強力な増殖抑制作用を持つことを明らかにした。これを踏まえて本研究ではまずウサギ頸動脈のバルーン障害モデルを用いて、血管内皮障害時に遺伝子導入を行うことにより、血管内皮障害後の新生内膜肥厚が著明に抑制されることを明らかにして報告した。さらに新生内膜における血管平滑筋細胞の表現型、血管内皮細胞の再生を検討した結果、CNPの過剰発現により、増殖刺激された血管平滑筋細胞の再分化が認められ、血管内皮細胞の再生が促進されることを明らかにして報告した。さらにウサギ頚静脈の動脈化グラフトモデルにおいて、移植前の自家静脈グラフトに対してex vivoにCNP遺伝子導入を行い、移植後のグラフト内膜肥厚、血栓形成、内皮再生について検討した。遺伝子導入を行った静脈グラフトでは血管壁におけるおよび二次伝達物質であるcGMPの濃度は対照群に比べ有意に高値であった。その結果、CNP遺伝子導入群では対照群に比べ、静脈グラフトの内膜肥厚が有意に抑制されると共に、血栓形成の抑制、内皮再生の促進効果が認められた。現在ビーグル犬において内胸動脈および下肢静脈を用いて冠動脈バイパスを行い、これらのグラフトに対するCNP遺伝子導入の効果を検討中である。C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)は血管平滑筋上の特異的受容体(ANP-B受容体)を通して血管平滑筋弛緩、増殖抑制に働く。われわれはCNP遺伝子を非増殖性アデノウイルスに組み込んだベクターを作成し、このベクターが培養血管平滑筋細胞に対して非常に高い遺伝子導入効率を示し、強力な増殖抑制作用を持つことを明らかにした。これを踏まえて本研究ではまずウサギ頸動脈のバルーン障害モデルを用いて、血管内皮障害時に遺伝子導入を行うことにより、血管内皮障害後の新生内膜肥厚が著明に抑制されることを明らかにして報告した。さらに新生内膜における血管平滑筋細胞の表現型、血管内皮細胞の再生を検討した結果、CNPの過剰発現により、増殖刺激された血管平滑筋細胞の再分化が認められ、血管内皮細胞の再生が促進されることを明らかにして報告した。さらにウサギ頚静脈の動脈化グラフトモデルにおいて、移植前の自家静脈グラフトに対してex vivoにCNP遺伝子導入を行い、移植後のグラフト内膜肥厚、血栓形成、内皮再生について検討した。遺伝子導入を行った静脈グラフトでは血管壁におけるおよび二次伝達物質であるcGMPの濃度は対照群に比べ有意に高値であった。その結果、CNP遺伝子導入群では対照群に比べ、静脈グラフトの内膜肥厚が有意に抑制されると共に、血栓形成の抑制、内皮再生の促進効果が認められた。現在ビーグル犬において内胸動脈および下肢静脈を用いて冠動脈バイパスを行い、これらのグラフトに対するCNP遺伝子導入の効果を検討中である。C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)は血管内皮細胞より合成分泌され、血管平滑筋細胞(VSMC)上の特異的受容体(ANP-B受容体)に作用し、二次性伝達物質である細胞内cyclic GMPの上昇を介して血管拡張、VSMC増殖抑制に働く。われわれはCNP遺伝子を組み込んだ非増殖アデノウイルスベクター(Ad.CNP)を作成し、培養VSMCを用いた基礎検討によりCNPの過剰発現が強力なVSMC増殖抑制作用を持つこと、さらにこの抑制が細胞周期におけるG1 arrestによるものであることをflow cytometryによって明らかにし報告した(Doi et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,1997)。またin vivoにおいてもAd.CNPによりウサギ大腿動脈バルーン障害後の新生内膜肥厚が有意に抑制され、障害部位においてCNP遺伝子導入がVSMCの再分化をもたらし、血管内皮細胞の再生促進効果を持つことを明らかにして報告した(Doi et al.,Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,in press)。更にウサギ頚静脈を同側頚動脈に移植する自家静脈グラフトモデルを作成し、静脈グラフトに対するCNP遺伝子導入の効果を検討した。移植後2週間、4週間でグラフトの新生内膜肥厚、グラフト内血栓形成、血管内皮再生の程度を組織学的に検討した結果、CNP遺伝子導入により新生内膜肥厚、グラフト内血栓形成の抑制、血管内皮再生の促進効果が認められることが明らかとなり現在報告中である。今後、同モデルにおいて更に遠隔期の静脈グラフト開存率を検討するとともに、ヒツジの冠動脈バイパスモデルにおいても同様の検討を行う予定である。C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)は血管平滑筋上の特異的受容体(ANP-B受容体)を通して血管平滑筋弛緩、増殖抑制に働く。われわれはCNP遺伝子を非増殖性アデノウイルスに組み込んだベクターを作成し、このベクターが培養血管平滑筋細胞に対して非常に高い遺伝子導入効率を示し、強力な増殖抑制作用を持つことを明らかにした。これを踏まえて本研究ではまずウサギ頸動脈のバルーン障害モデルを用いて、血管内皮障害時にCNP遺伝子導入を行うことにより、血管内皮障害後の新生内膜肥厚が著明に抑制されることを明らかにして報告した。さらに新生内膜における血管平滑筋細胞の表現型、血管内皮細胞の再生を検討した結果、CNPの過剰発現により、増殖刺激された血管平滑筋細胞の再分化が認められ、血管内皮細胞の再生が促進されることを明らかにして報告した。
KAKENHI-PROJECT-12671154
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12671154
アデノウイルスを用いた遺伝子導入静脈グラフトの冠動脈バイパスへの応用に関する研究
さらにウサギ頚静脈の動脈化グラフトモデルにおいて、移植前の自家静脈グラフトに対してex vivoにCNP遺伝子導入を行い、移植後のグラフト内膜肥厚、血栓形成、内皮再生について検討した。CNP遺伝子導入を行った静脈グラフトでは血管壁におけるCNPおよび二次伝達物質であるcGMPの濃度は対照群に比べ有意に高値であった。その結果、CNP遺伝子導入群では対照群に比べ、静脈グラフトの内膜肥厚が有意に抑制されると共に、血栓形成の抑制、内皮再生の促進効果が認められた。現在ビーグル犬において内胸動脈および下肢静脈を用いて冠動脈バイパスを行い、これらのグラフトに対するCNP遺伝子導入の効果を検討中である。
KAKENHI-PROJECT-12671154
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ラテンアメリカにおける第二世代改革に関する政治経済学的研究
グローバリゼーションの進展とともに、ラテンアメリカ諸国は政府介入から経済自由主義(ネオリベラリズム)へと転換し、多くの諸国で市場メカニズムを追及する政策改革を実施した。だが、急激な経済自由化は必ずしも望ましい成果をもたらしたとは言えず、雇用、貧困、通貨危機などの経済的、社会的不安定性を高めている。したがって、経済自由化を望ましい形で推進するために市場を補完し社会的公正を実現する新たな政府の役割が問われており、そのための「第二世代の政策改革」が不可避となっている。本研究プロジェクトは、ラテンアメリカではいかなる第二世代改革が実施されており、どのような問題があったのか、政府改革への政府自身のインセンティブはいかに生じるか、第二世代の政策改革に対し民主主義の進展など政治的要因はいかに関わるのか、などの基本的な問題に関し、経済学、政治学、国際関係論の立場から分析を実施した。平成13年度から平成14年度にかけては、以上の研究課題に関し、分担者による各国(ブラジル、アルゼンチン、チリ)についての詳しい実証分析を実施した。その成果は、『ラテンアメリカにおける政策改革の研究』(細野昭雄と共編著)神戸大学経済経営研究所研究叢書No.62、2003年3月、426頁に結実した。しかし、平成15年度からは研究分担者である細野教授が急遽エルサルバドル大使に転出したため、平成15年度はアルゼンチンに研究を特化し、第二世代の政策改革を要請する一つの重要な要素である通貨危機の問題と労働運動の問題を、西島と松下で分担して研究を実施した。結論的には、通貨危機を防ぐには適切なマクロ政策と制度的な構築が不可欠であること、また適切な労働関係を構築するための政治的体制が重要である、こうした問題を第二世代改革で実現する必要があることが明らかとなった。グローバリゼーションの進展とともに、ラテンアメリカ諸国は政府介入から経済自由主義(ネオリベラリズム)へと転換し、多くの諸国で市場メカニズムを追及する政策改革を実施した。だが、急激な経済自由化は必ずしも望ましい成果をもたらしたとは言えず、雇用、貧困、通貨危機などの経済的、社会的不安定性を高めている。したがって、経済自由化を望ましい形で推進するために市場を補完し社会的公正を実現する新たな政府の役割が問われており、そのための「第二世代の政策改革」が不可避となっている。本研究プロジェクトは、ラテンアメリカではいかなる第二世代改革が実施されており、どのような問題があったのか、政府改革への政府自身のインセンティブはいかに生じるか、第二世代の政策改革に対し民主主義の進展など政治的要因はいかに関わるのか、などの基本的な問題に関し、経済学、政治学、国際関係論の立場から分析を実施した。平成13年度から平成14年度にかけては、以上の研究課題に関し、分担者による各国(ブラジル、アルゼンチン、チリ)についての詳しい実証分析を実施した。その成果は、『ラテンアメリカにおける政策改革の研究』(細野昭雄と共編著)神戸大学経済経営研究所研究叢書No.62、2003年3月、426頁に結実した。しかし、平成15年度からは研究分担者である細野教授が急遽エルサルバドル大使に転出したため、平成15年度はアルゼンチンに研究を特化し、第二世代の政策改革を要請する一つの重要な要素である通貨危機の問題と労働運動の問題を、西島と松下で分担して研究を実施した。結論的には、通貨危機を防ぐには適切なマクロ政策と制度的な構築が不可欠であること、また適切な労働関係を構築するための政治的体制が重要である、こうした問題を第二世代改革で実現する必要があることが明らかとなった。本年度の研究課題は、ラテンアメリカ諸国における第二世代改革に関する研究の基礎的研究として、第1に、これまでどのような政策改革が実施され、そのことがいかなる問題をもたらしているかを中心にプロジェクトを実施した。その成果の一部は、例えば、『90年代ブラジルのマクロ経済の研究』や『米州におけるリジョナリズムとFTA』などの書物の重要なパートとして公表されている。すなわち、マクロ経済政策における改革の進展とその評価、政策改革を補完するものとしての地域経済統合戦略の進展とその評価である。また、急激な政策改革がもたらしたアルゼンチンの労働市場への影響に焦点を当て、ネオ・ポピュリズム型の改革の問題点を分析した。第2の課題は、第二世代改革の中心的課題となる政府改革と制度改革に関し、理論的研究を行なうことであるが、そこでは、政府改革がいかなる条件、過程でなされるのかを、ラテンアメリカのコンテキストにおいて理論的に捉えることであった。いくつかのテーマを設定し、基礎的な研究を行なった。グローバリゼーション(国際的競争)の政策改革への影響、民主化の進展と政策改革、官僚制度の改革、ラテンアメリカの政治過程・政治制度と改革の関連、などである。この関連での研究成果としては、ラテンアメリカにおけるグローバリゼーションが民主主義の進展に与えた影響や、アジアとブラジルの通貨危機を比較することによって、政府改革、制度改革の進展の相違が、通貨危機の発生とその影響にいかなる相違をもたらしたかについて分析を行なった。次年度は、研究グループのメンバーがそれぞれアルゼンチン、ブラジル、チリを分担することによって、各国での第二世代改革の進展とそのインプリケーションの相違を課題とする。本年度の研究課題は、ラテンアメリカにおける政策改革に関し、とくにアルゼンチンとチリの比較研究の観点から、金融システム、通貨危機、地域経済統合、マクロ政策、民営化などに焦点を当て、政策改革の功罪について研究することであった。これらの成果は、『ラテンアメリカにおける政策改革の研究』(神戸大学経済経営研究所研究叢書No.62,426頁)としてまとめられた。
KAKENHI-PROJECT-13630057
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13630057
ラテンアメリカにおける第二世代改革に関する政治経済学的研究
アルゼンチンに関しては、2002年1月の通貨危機に焦点を当て、急激な資本流入に対して、金融システム、労働改革などの制度における改革が不十分なことが、通貨危機の遠因となったことを議論した。また、チリに関しては、早い段階からの政策改革が制度的な面での改善をもたらし、通貨危機への抵抗力を有していたことを明らかにしている。今後は、これらの研究に基づき、第二世代の政策改革の役割について研究を進める。なお、当初研究対象として計画していたブラジルに関しては、通貨危機が発生したアルゼンチンに研究の比重がシフトしたため、十分に研究ができなかった。このため、新しい政権下のブラジルという観点からも、本研究プロジェクトの3年目の課題として、今後はブラジルの問題に焦点を当てたい。グローバリゼーションの進展とともに、多くのラテンアメリカ諸国で市場メカニズムを追及する政策改革を実施したが、急激な経済自由化は必ずしも望ましい成果をもたらしたとは言えず、今日では、経済自由化を補完し、社会的公正を実現する新たな政府と制度の役割が問われており、そのための「第二世代の政策改革」が不可避となっている。本研究プロジェクトは、ラテンアメリカではいかなる第二世代改革が実施されており、どのような問題があったのか、改革への政府自身のインセンティブはいかに生じるか、改革に対し民主主義の進展など政治的要因はいかに関わるのか、などの基本的な問題を経済学、政治学、国際関係論の立場から分析するものである。平成13年度から平成14年度にかけては、政府改革・制度構築に関する各分担者による各国(ブラジル、アルゼンチン、チリ)について詳しい実証分析を実施し、その成果は、『ラテンアメリカにおける政策改革の研究』(細野昭雄と共編著)神戸大学経済経営研究所研究叢書No.62、2003年3月、426頁に結実した。しかし、最終年度は研究分担者の一人である細野教授が急遽エルサルバドル大使に転出したため、アルゼンチンの通貨危機と労働運動の問題に特化し、西島と松下で分担して研究を実施した。結論的には、第二世代の政策改革によって政府改革と制度構築を推進するためには、改革へのインセンティブの問題と、経済の世界との緊密化自体が極めて重要な役割を果たすことが明らかとなったといえる。
KAKENHI-PROJECT-13630057
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分子内Diels-Alder反応の効率的利用:共通合成素子を経るテルペン類の合成
本年度には分子内Diels-Alder反応をkey reactionとして用い、立体選択的にテルペン類の基本骨格を合成し、本化合物を鍵中間体として数種のテルペン類の基本骨格を効率的に合成するとともに、本研究中に分子内DoubleMichael反応を開発することに成功し、本法を利用しジテルペンの部分骨格を合成することができた。以下上記研究の概略を説明する。先ずシクロヘキサノンとジビニルカルビノールよりトリエン誘導体を製し、本化合物を加熱することにより分子内Diels-Alder反応に対しジテルペンアルカロイドのABF環部に相当する三環性化合物を高立体選拓的にしかも変性率で合成する新方法を関発した、その立体化学は分光学的方法およびX線解析により決定した。続いて上記Diels-Alder反応で合成した三環性化合物がその他のテルペン類の部分構造に相当することに着目し、先ずRobinson annulationを行うことによりジテルペンのステモダン基本骨格の合成を行った。さらに開環-閉環反応を行うことにより環縮小反応に付しセドランの基本骨格を構築した。また上記鍵中間体を酸化的に開環させた後、官能基の変換等を行うことによりパヒドロアズレンおよびヒマカレンの基本骨格を合成することができた。さらに上記分子内Diles-Alder反応の研究中、分子内にα,β-不飽和エステルとα,β-不飽和エノン系の存在する化合物では塩基処理により高立体選択的に分子内Double Michael反応が進行することを見出した。本法を応用し分子内Diels-Alder反応では合成が困難なTricycls〔6,2,2,【0^(1,6)】〕dodecone系を構築する新反応を見出し、併せてジテルペンアルカロイドのアチシンのBCD環部の合成を完成した。本年度には分子内Diels-Alder反応をkey reactionとして用い、立体選択的にテルペン類の基本骨格を合成し、本化合物を鍵中間体として数種のテルペン類の基本骨格を効率的に合成するとともに、本研究中に分子内DoubleMichael反応を開発することに成功し、本法を利用しジテルペンの部分骨格を合成することができた。以下上記研究の概略を説明する。先ずシクロヘキサノンとジビニルカルビノールよりトリエン誘導体を製し、本化合物を加熱することにより分子内Diels-Alder反応に対しジテルペンアルカロイドのABF環部に相当する三環性化合物を高立体選拓的にしかも変性率で合成する新方法を関発した、その立体化学は分光学的方法およびX線解析により決定した。続いて上記Diels-Alder反応で合成した三環性化合物がその他のテルペン類の部分構造に相当することに着目し、先ずRobinson annulationを行うことによりジテルペンのステモダン基本骨格の合成を行った。さらに開環-閉環反応を行うことにより環縮小反応に付しセドランの基本骨格を構築した。また上記鍵中間体を酸化的に開環させた後、官能基の変換等を行うことによりパヒドロアズレンおよびヒマカレンの基本骨格を合成することができた。さらに上記分子内Diles-Alder反応の研究中、分子内にα,β-不飽和エステルとα,β-不飽和エノン系の存在する化合物では塩基処理により高立体選択的に分子内Double Michael反応が進行することを見出した。本法を応用し分子内Diels-Alder反応では合成が困難なTricycls〔6,2,2,【0^(1,6)】〕dodecone系を構築する新反応を見出し、併せてジテルペンアルカロイドのアチシンのBCD環部の合成を完成した。
KAKENHI-PROJECT-61570989
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組織における信念の異質性の役割について
第一に平成29年度から継続している「信念の異質性と内的動機づけの相互連関」についての研究を進めた.契約理論の分野では大きく分けて,労働者の努力レベルを0あるいは1の二項変数とするモデルと連続的な実数変数とするモデルの2つの流儀がある.これまで得たフィードバックの中に「本研究の含意は前者の流儀でモデル化していることに依存しているのではないか」という疑問があったので,そのような懸念に対する応答として連続モデルにおいても質的な結論は変わらないことを示した.また,最適契約の比較静学分析を行い,特に最適な金銭的誘因の度合いが[1]意思決定事項と努力の間の補完性の度合い,および[2]労働者の信念の強さの減少関数となることを示した.これらの結果を第3回Asia-Pacific Industrial Organization Conferenceで報告した.第二に「頑健な不満に対して安定なマッチング」についての研究を行った.上記の研究を発展させる上では労働者が複数いる状況について考えることが不可欠であるが,そのような場合どのように労働者を組織するかという問題が生じる.組織化の一つの方法は複数の労働者をマッチングしてチームを構成することだが,その際,構成員が割り当てに不満を持たないという意味での安定性が求められ,どのようなマッチングがより安定かは各構成員が他人の行動様式に対してもつ信念に依存する.本研究では「いかなる信念を持っていても必ず生じる不満」を頑健な不満として定義し,そのような不満が生じないマッチングを構成するアルゴリズムを示した.この結果を第14回Society for Social Choice and Welfare学会および第10回Lisbon Meetings in Game Theory and its Applicationsで報告した.第一に、「信念の異質性と内的動機づけの相互連関」についての研究に着手した。特に信念の異質性がある場合に、内的な動機づけと標準的な誘因契約による外的な動機づけとの間の最適なバランスについて分析を進めた。契約理論・組織の経済学の専門家が集まる国内最大の研究集会であるContract Theory Workshopにおいて、平成29年3月18日に研究経過を報告し、多くのフィードバックを得ることができた。研究論文として成果をまとめる段階にはいたっていないものの、概ね順調に進捗していると言える。第二に、耐戦略的な資源配分メカニズムについての研究を行った。経済理論における耐戦略性とは、いかなる場合であっても参加者がメカニズムを操作する誘因を持ちえないという性質で、私の研究テーマと関連付ければ、参加者の間にどのような信念・意見の対立があっても設計通りに機能するための頑健性であると言い替えることができる。このトピックに関しては、耐戦略的かつ安定的な配分メカニズムの性質を分析した成果"On stable and strategy-proof rules in matching markets with contracts"(神戸大学糟谷祐介氏との共著)をJounral of Economic Theory誌(168号27-43頁)に公刊した。また、安定性ではなく効率性と耐戦略性を両立するメカニズムについての研究を米国Yeshiva大学の橋本理氏と開始した。概要でも述べた通り、「信念の異質性と内的動機づけの相互連関」についての研究を研究集会で発表できるまで進捗させることができた。「最低でも学会・セミナーで報告して議論の叩き台にできるような予備的な結果を揃える」とした計画と照らし合わせて、概ね順調であると言える。一方、「組織内の意見対立について経済学以外の分野でどのような議論がなされているのか、より一層の情報収集を行う」という計画については、専門外の分野の文献の収集・読解には手間がかかり、経済学的な枠組みの中で十分に理解を深化させるにはまだ時間が必要である。第二に、上記の研究に関連して,「プリンシパルが情報優位にある場合の最適労働契約」の研究を行った.プリンシパルに情報優位がある場合には,(1)私的情報の漏洩を防ぐためにエージェントの属性に依存しない労働契約を結ぶこと(pooling)が最適となる可能性,(2)エージェントの外部賃金が高まることでプリンシパルの利潤が高まる可能性,(3)プリンシパルの利潤がエージェントの外部賃金に関して不連続に変動する可能性,が存在することを示した.これらはいずれも、エージェントに情報優位がある場合には現れない含意である.特に(1)の可能性は,雇用者にとって追加的な情報は有益にならないことを意味し,新卒労働市場において国際的に広く観察される「青田買い(unraveling)」の問題に対する一つの理論的説明となる.特に対称情報を仮定した既存理論に比して,「なぜ(被雇用者ではなく)雇用者側だけが採用を前倒しにする誘因を持つのか」を説明できる点に本研究の独自性がある.この成果は国際学会Association for Public Economic Theoryで報告した.概要で述べた二つの研究に関しては,中間成果をセミナー・学会で報告する段階には達しており,また発表で得たフィードバックを基に研究内容は進展している.しかし研究論文として完成し学術雑誌に投稿する段階には至っておらず,当初の「研究論文としてまとめる」という目標からはやや遅れている.研究計画で述べた「コミュニケーションと意思決定プロセス」については,当初の想定以上に分析が煩雑となったことから,報告可能な形に中間成果をまとめる段階に至っておらず,こちらも当初計画に比してやや遅れている.第一に平成29年度から継続している「信念の異質性と内的動機づけの相互連関」についての研究を進めた.契約理論の分野では大きく分けて,労働者の努力レベルを0あるいは1の二項変数とするモデルと連続的な実数変数とするモデルの2つの流儀がある.
KAKENHI-PROJECT-16K17081
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組織における信念の異質性の役割について
これまで得たフィードバックの中に「本研究の含意は前者の流儀でモデル化していることに依存しているのではないか」という疑問があったので,そのような懸念に対する応答として連続モデルにおいても質的な結論は変わらないことを示した.また,最適契約の比較静学分析を行い,特に最適な金銭的誘因の度合いが[1]意思決定事項と努力の間の補完性の度合い,および[2]労働者の信念の強さの減少関数となることを示した.これらの結果を第3回Asia-Pacific Industrial Organization Conferenceで報告した.第二に「頑健な不満に対して安定なマッチング」についての研究を行った.上記の研究を発展させる上では労働者が複数いる状況について考えることが不可欠であるが,そのような場合どのように労働者を組織するかという問題が生じる.組織化の一つの方法は複数の労働者をマッチングしてチームを構成することだが,その際,構成員が割り当てに不満を持たないという意味での安定性が求められ,どのようなマッチングがより安定かは各構成員が他人の行動様式に対してもつ信念に依存する.本研究では「いかなる信念を持っていても必ず生じる不満」を頑健な不満として定義し,そのような不満が生じないマッチングを構成するアルゴリズムを示した.この結果を第14回Society for Social Choice and Welfare学会および第10回Lisbon Meetings in Game Theory and its Applicationsで報告した.「信念の異質性と内的動機づけの相互連関」について引き続き研究報告を行いフィードバックを得る。得られたフィードバックを反映させつつ進捗させ、29年度中に研究論文としてまとめることを目標とする。平成29年度中に行われる海外の主要な学会は応募の締め切りが28年度中に過ぎてしまっているので、29年度は主として国内の大学でのセミナー報告の機会を多く持てるよう、関連分野の研究者にコンタクトをとる予定である.順調に研究成果を論文にまとめることができた場合には、その論文を海外の学会に投稿し、平成30年度には国外での発表機会も多く持てる努力する。研究が順調に進んだ場合には「コミュニケーションと意思決定プロセス」についての研究にも着手する。平成30年度に研究発表の機会を得るために最低限必要な予備的な分析を行うことを29年度の目標とする。信念の異質性と内的動機づけの相互連関」および「プリンシパルが情報優位にある場合の最適労働契約」の研究については,それぞれ29年度中に得られたフィードバックを基に引き続き分析を進める.30年度中に研究論文としてまとめ,ディスカッション・ペーパーとして公開しつつ学術雑誌に投稿することを目標とする.「コミュニケーションと意思決定プロセス」については,分析の複雑化を抑えるために,より単純な理論モデルを分析する.
KAKENHI-PROJECT-16K17081
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学習面や読み書き発達の躓きを就学前に予測しうる評価システムの構築
本年度の実施内容は以下の通りである。1昨年度までの経年データの集約と分析2語彙や統語面と社会性発達の関連に関するデータ収集と分析(継続)3新たな視知覚認知機能評価に関する簡便に使用できるアプリケーションの開発である。本研究の主たる目的は読み書き困難の背景要因を発達心理学的観点から再考し、読みと要素的認知機能との関連を検討すると共に、障害モデルの構築ではなく、広く読みスキルや言語発達が学力や社会性などのアウトカムに対してどの様に関連しているのか明らかにすると共に、各年代に応じた早期発見の評価法やシステムについて検討することにある。過年度の成果で一般的にひらがな読み正確性には音韻処理能力や自動化能力の関与が示唆されていたが、視知覚認知機能の介在について仮説検証を行っている。本年度はさらに視知覚課題に関するアプリケーション開発を行い既存データとの妥当性検証を行うとともに、クラウド化を試み一定の成果と実現可能性を得た。次に社会性発達を従属変数とした広く言語力の影響の検討では、昨年度同様に同一年度での語彙や統語発達を独立変数、社会性発達(保育現場でのチェックリスト)を従属変数とした検討では双方の因果関係を認めず、一年後の社会性発達を従属変数とした検討でも因果関係を認めなかった。これらの結果から「言語と社会性」の関連について旧来考えられてきた線形回帰的な関係性ではなく、双方の変数が双方に対して一定限度を下回ると影響を及ぼす閾値として作用している可能性が示唆された。データ聴取内容は広範囲に及ぶため今後さらに検討を加える。本研究では小学校入学後に生じる学習面をはじめ様々な課題や傾向を就学前につかむことを目的としている。今回、年中・年長児童のひらがな一文字を読む力(正確性)と「見る力」(図形弁別力)、「描く力」(図形構成力)に関する横断調査を行った。語彙と統語面に関する発達を調査し、特に統語発達過程の経年的変化(時代の変化)や語彙力との関連、ならびに社会性発達と言語面の関連について検討を加えた。また、微細運動に関する質問紙調査を実施した。対象はA県在住の就学前児童(年中・年長)79名である。主に使用した課題は次の通りである。社会性発達チェックリスト(本郷ら:2015)、改定絵画語彙テスト(語彙)、S-S法(統語課題)、ひらがな読み課題として音読流暢性課題から選択した。また「見る力」「描く力」は連携協力者である奥村智人(大阪医科大学LD)開発のWAVESアプリケーション版を幼児用に改変して用いた。本年度の結果から、1就学前の段階のひらがな読みは直音の正答率は年長児童で70%を超え、ひらがな読みを従属変数として実施した共分散構造分析では音読正答数(正確性)に対して統語課題(語順)と図形構成課題の成績が音読正確性に直接影響し、図形弁別力課題が図形構成課題を介して間接的に影響を及ぼすパスを想定した場合にもっとも適合度が高い結果となった(GFI=.988, AGFI=.882, RMSEA=.070, χ2(1)=1.25, n.s.)。社会性発達と言語発達の関連、ならびに運動面と文字の関連については検討を行っている段階である。今回の結果から就学前の読み正確性の獲得に視覚情報処理が一定の寄与を示すことが明らかとなった。29年度は追跡調査を行うとともに、新たな集団に対しても検討を行う予定である。当初は2箇所での調査で擬似縦断を計画していたが、予算の関係上、時期をずらした2年間の縦断研究とした。当初予定していたソフトウェアの開発も不要となり概ね順調に推移している。本年度は特に昨年度4歳児(年中児)の一年後、5歳児(年長児)での一年後の縦断データの聴取と変化について検討を加えた。さらに、初年度は1箇所での調査であったが、保育環境や文化を考慮し異なる2箇所(2県)で調査を行った。更に昨年度の調査結果について解析を加え、1年中から年長児童のひらがな読み正確性に関する知見2読み正確性を従属変数として視知覚認知機能が及ぼす影響(特に特殊音節)の知見についてその成果を環太平洋アジア小児神経学会ならびにヨーロッパ発達心理学会にて公表した。本年度の調査では二地域80名の年長児童(内45名は昨年度からの継続)を対象として昨年度同様の読み課題、視知覚認知課題(PC)、言語課題(語彙・統語)、音韻課題を実施するとともに、本郷ら(2018)の「社会性発達チェックリスト」を実施し社会性を従属変数とした検討も行った。ひらがな読み正確性の到達度に関する成果は地域や保育環境といった「読み」に関する交絡因子となりうる要因を踏まえても読み正確性が年長後半では特殊音節を除いて正答率が低い地域においても90%以上となることを改めてに確認した。また読み正確性への要素的認知機能関与も年長時点において特に昨年度同様に一定の寄与を認め、今後各年代発達の時間軸にそった読み正確性と要素的認知機能のモデル作成の端緒となった。今年度より導入した社会性発達の指標については一定の言語機能の発達と「仲間関係(子供同士)」や「対大人」との関係を共分散構造分析結果に基づいてモデル化することが可能となった。昨年度からの継続調査も90%以上の実施率を確保することが出来、さらに別地域での調査も無事に開始することが出来た。
KAKENHI-PROJECT-16K04286
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学習面や読み書き発達の躓きを就学前に予測しうる評価システムの構築
昨年度の調査も基にして示した読み正確性と視知覚認知の関係の知見についての再現性を確認することが出来たことも概ね順調に進展しているとした根拠である。課題としては実施した調査の解析がまだ十分とは言いがたく今後の課題と言える。本年度の実施内容は以下の通りである。1昨年度までの経年データの集約と分析2語彙や統語面と社会性発達の関連に関するデータ収集と分析(継続)3新たな視知覚認知機能評価に関する簡便に使用できるアプリケーションの開発である。本研究の主たる目的は読み書き困難の背景要因を発達心理学的観点から再考し、読みと要素的認知機能との関連を検討すると共に、障害モデルの構築ではなく、広く読みスキルや言語発達が学力や社会性などのアウトカムに対してどの様に関連しているのか明らかにすると共に、各年代に応じた早期発見の評価法やシステムについて検討することにある。過年度の成果で一般的にひらがな読み正確性には音韻処理能力や自動化能力の関与が示唆されていたが、視知覚認知機能の介在について仮説検証を行っている。本年度はさらに視知覚課題に関するアプリケーション開発を行い既存データとの妥当性検証を行うとともに、クラウド化を試み一定の成果と実現可能性を得た。次に社会性発達を従属変数とした広く言語力の影響の検討では、昨年度同様に同一年度での語彙や統語発達を独立変数、社会性発達(保育現場でのチェックリスト)を従属変数とした検討では双方の因果関係を認めず、一年後の社会性発達を従属変数とした検討でも因果関係を認めなかった。これらの結果から「言語と社会性」の関連について旧来考えられてきた線形回帰的な関係性ではなく、双方の変数が双方に対して一定限度を下回ると影響を及ぼす閾値として作用している可能性が示唆された。データ聴取内容は広範囲に及ぶため今後さらに検討を加える。次年度あらたに別都道府県で調査を開始し、現在実施している調査箇所では1年後の縦断データの聴取を行う。読み正確性を中心として社会性や言語発達と要素的認知機能の関連について一定の知見を集積することが出来た。本年度は1引き続き2年経過(年中児童の小学校入学直前での縦断データ)を集約すること2集積したデータの解析を恙無く進め研究発表並びに投稿につなげ研究成果のアウトプットを促進することを重点的に推し進めたい。併せて1小学校入学後の学力あるいは読解力のデータを経時的に収集することが出来る仕組みについて検討を深める2現在使用しているアセスメントソフトウェアをリニューアルし汎用性を高めるとともにクラウド化をはかり、遠隔地や社会資源の少ない過疎地においても運用可能なものとしたい。調査箇所が遠隔地中心となったために旅費が当初計画より増えた。29年度は調査中心であり、解析にかかる費用や雑費は比較的軽微にとどまった。ソフトウェア開発を取りやめ既存の課題を利用する一方、実態調査に重点をおいたため物品費が減少し人件費がかさんだ29年度は、調査箇所の追加、解析にかかる費用が増加すると思われるため、そちらに充当する。また28年度の研究成果を国際学会(ユトレヒト)で発表する予定であり、そこに使用する。
KAKENHI-PROJECT-16K04286
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イチジク属植物の送粉共生者による授粉行動の適応的意義と進化
昨年度授粉行動の観察を行ったイチジク-コバチ類送粉共生系の6種対(ガジュマル、イヌビワ、オオイタビ、ハマイヌビワ、オオバイヌビワ、ギランイヌビワ)について、コバチ類がイチジク属植物の花に授粉を行うことが、その後の幼虫発育にどのような影響を及ぼすのかについて調査を行った。現地で花粉を持たないコバチ類を導入し、花粉を持ったコバチ類に通常通り授粉・産卵させたものと比較したところ、ガジュマル、オオバイヌビワ、ギランイヌビワの3種では、羽化するコバチ類の成虫数が著しく少なく、特に雌でその傾向が顕著であった。これに対して、イヌビワ、オオイタビでは羽化するコバチ類の成虫数が有意に少なくなることはなかった。ハマイヌビワは寄生性のハエ類の影響もあって、十分なデータが取れなかった。このことから、前者3種ではコバチ類の幼虫の発育、特に雌個体の発育に、授粉による胚嚢の発達が重要であるのに対して、後者2種では、幼虫発育に特に授粉が必要ないことが明らかになった。このことは、前者3種の送粉コバチ類が花粉を運搬する器官(花粉ポケット)を持つのに対して、後者2種のコバチ類がそのような器官を持たないことと対応している。われわれのこれまでの研究から、花粉ポケットを持たないコバチ類は、持っているコバチ類から派生的に進化してきたことが明らかになっている。これらのことから、送粉コバチ類の授粉行動は、幼虫の発育を確実にする意味で適応的であり、その必要がなくなったイヌビワ、オオイタビのコバチ類の系統群では、授粉行動と花粉を運搬する器官を失ったと考えられる。授粉行動を取らないコバチ類に送粉されるイチジク属植物は、他の種に比べて多くの雄花を花嚢の中に持っており、これは授粉行動の消失にともなう受粉効率の低下が選択圧となって進化してきたものと考えられる。イチジク属植物とイチジクコバチ類の送粉共生系は、非常に厳密な1対1の種間対応関係が見られ、植物と昆虫の共進化の最も顕著な例であるとされる。この送粉共生系の成立にはイチジク属植物子房内に寄生するコバチ類が授粉を行うようになったことが、最も重要な役割を果たした進化過程であると考えられている。イチジクコバチ類にとって授粉を行うことは、胚乳を発達させ十分な幼虫の餌を用意することができるという意味で適応的であるとされていたが、このことが調べられたのはこれまでの1種のみで、全てのイチジクコバチ類にとって同様の適応的意義があるのかは、これまで検討されたことがなかった。本研究ではその第一段階として、日本産のイチジク属植物6種とそれに共生するイチジクコバチ類に関して授粉行動を調べ、授粉行動の進化とその適応的意義の解析の基礎情報を整える事を目的とした。その結果、6種のうち花粉ポケットをもつイチジクコバチに授粉される4種のイチジク属植物(ガジュマル、ハマイヌビワ、オオバイヌビワ、ギランイヌビワ)では、花粉ポケットから花粉を取り出して柱頭につける能動的授粉が観察されたのに対して、花粉ポケットをもたないイチジクコバチに授粉される残りの2種(オオイタビ、イヌビワ)ではそのような行動は観察されなかった。前者4種では花嚢内の雄花の割合は10%以下であるのに対し、後者2種では20%以上に達するのは、花粉ポケットをもたないグループの授粉効率の悪さを補うためであると考えられる。次年度はこの情報をふまえて、特に花粉ポケットをもたないイチジクコバチ類にとって、イチジク属植物を受粉させる事にどのような適応的な意義があるのかを実験的に明らかにしていく予定である。昨年度授粉行動の観察を行ったイチジク-コバチ類送粉共生系の6種対(ガジュマル、イヌビワ、オオイタビ、ハマイヌビワ、オオバイヌビワ、ギランイヌビワ)について、コバチ類がイチジク属植物の花に授粉を行うことが、その後の幼虫発育にどのような影響を及ぼすのかについて調査を行った。現地で花粉を持たないコバチ類を導入し、花粉を持ったコバチ類に通常通り授粉・産卵させたものと比較したところ、ガジュマル、オオバイヌビワ、ギランイヌビワの3種では、羽化するコバチ類の成虫数が著しく少なく、特に雌でその傾向が顕著であった。これに対して、イヌビワ、オオイタビでは羽化するコバチ類の成虫数が有意に少なくなることはなかった。ハマイヌビワは寄生性のハエ類の影響もあって、十分なデータが取れなかった。このことから、前者3種ではコバチ類の幼虫の発育、特に雌個体の発育に、授粉による胚嚢の発達が重要であるのに対して、後者2種では、幼虫発育に特に授粉が必要ないことが明らかになった。このことは、前者3種の送粉コバチ類が花粉を運搬する器官(花粉ポケット)を持つのに対して、後者2種のコバチ類がそのような器官を持たないことと対応している。われわれのこれまでの研究から、花粉ポケットを持たないコバチ類は、持っているコバチ類から派生的に進化してきたことが明らかになっている。
KAKENHI-PROJECT-09740634
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イチジク属植物の送粉共生者による授粉行動の適応的意義と進化
これらのことから、送粉コバチ類の授粉行動は、幼虫の発育を確実にする意味で適応的であり、その必要がなくなったイヌビワ、オオイタビのコバチ類の系統群では、授粉行動と花粉を運搬する器官を失ったと考えられる。授粉行動を取らないコバチ類に送粉されるイチジク属植物は、他の種に比べて多くの雄花を花嚢の中に持っており、これは授粉行動の消失にともなう受粉効率の低下が選択圧となって進化してきたものと考えられる。
KAKENHI-PROJECT-09740634
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ヘリカル系プラズマの閉じ込め性能の向上に関する理論共同研究
本共同研究の主な活動は、(1)電磁流体力学的安定性(MHD安定性)、(2)粒子軌道・新古典理論・加熱、(3)磁気島生成に関するシミュレーション研究、(4)新しいプラズマ輸送モデルの構築及び閉じ込め改善の4つに大きく分類できる。MHD安定性に関しては、2次元及び3次元磁場配位の類似点と相違点、LHDとW7-Xとの類似点と相違点を明らかにする事を主な目的とした。先ず、3次元理想MHD安定性コード「CAS3D〕と、2次元MHD安定性コード「RESORM」とのベンチマークテストを行った。LHD配位に対しては、両者の間に、限界ベータ値及び成長率とも良い一致を見た。高nバル-ニングモードの完全3次元解析をLHDとW7-Xプラズマに対して行い、両者の相違点・類似点を明らかにし、更に3次元高nバル-ニング方程式からシャフラノフシフトを考慮したモデル方程式をステラレータ展開を基に導出する事により、トカマクとは全く異なる性質を3次元系で発見し、その物質機構を明らかにした。ステラレータ的磁気シア-領域における低nバル-ニングモードの解析を「CAS3D」で行い、高nモードとの比較を考えた。その結果、高nバル-ニングモードは局所シア-で安定化させられるが、低nバル-ニングモードは大域的シア-で安定化させられるという重大な事を発見した。粒子軌道・新古典理論・加熱の研究では、先ず、3次元磁場配位に対する一般的な平行粘性の表式を導出した。この結果から、電子とイオンの衝突領域が異なると径電場に比例する新古典電流(ブートストラップ電流)が存在する事が明らかになった。電子及びイオンが各々、1/2及びプラトウ領域に存在する時、新古典的に定まる径電場は圧力駆動によるブートストラップ電流を大巾に減少させる。また、ブートストラップ電流等のトロイダル電流がMHD安定性に及ぼす影響を研究し、その結果、電流が回転変換を減少する方向に流れると交換型モードを著しく安定化し、閉じ込め改善に大きく寄与するという重要な結果を得た。加熱に関しては、これまでの日本側のICRF及びNBI加熱解析の結果を紹介し非軸対称系におけるプラズマ加熱について議論した。ICRF加熱における高エネルギーイオンテイルの効果を含んだエネルギー閉じ込め時間について検討し、テイル効果を含むエネルギー閉じ込め時間の表式を導いた。核融合科学研究所で開発された平衡コード「HINT」を用いてLHD及びW7-Xでの磁気島生成の計算を行った。磁気島生成、即ち磁気面破壊の問題は磁気閉じ込め核融合にとっては本質的問題であり、閉じ込め改善と深く関わっている。このテーマの共同研究所の大きな成果は、「Self-Healing」現象の発見である。W7-Xでは真空磁場配位(β=0)でm=6/n=5の大きな磁気島が生成される。しかし、βが上昇すると、この磁気島は消減することが「HINT」コードを用いたシミュレーションで明らかにされた。これは真空磁場での磁気島と有限ベータの平衡電流の作る磁気島の位相がずれ丁度相殺したものと考えられ、プラズマ自身による磁気年破壊の回避であり、きれいな磁気面を作りプラズマの閉じ込めを大巾に改善するものである。新しい輸送モデルの構築及び閉じ込め改善の研究では、日本側から新しい輸送理論の提案を行い、理論と実験との詳細な比較・検討を行い閉じ込め改善策の共同研究を行った。この理論で従来謎とされていた実験結果を説明する事ができ、多くの成果をあげる事ができた。されに、ヘリオトロン・ステラレーター・トカマクの閉じ込め性能の相違・類似が明らかにされ、各々の閉じ込め改善策が議論された。回転変換や電流分布の抑制が閉じ込め改善に重要である事が明らかにされ、また、ヘリカル系におけるH・モードの改善度がトカマクと比べ小さい事も解明すべき重要な課題であり、これに関して径電場・新古典拡散の重要性も検討された。以上のように2年間で日・欧の間で協同研究を強力に推進する事ができ、協同研究の目的に合致した多くの研究成果を得る事ができた。ヘリカル系、トカマク等において理論・実験で巾広く研究を行っている欧州とは、今後もこのような共同研究を続けていく事は重要な事と思われる。本共同研究の主な活動は、(1)電磁流体力学的安定性(MHD安定性)、(2)粒子軌道・新古典理論・加熱、(3)磁気島生成に関するシミュレーション研究、(4)新しいプラズマ輸送モデルの構築及び閉じ込め改善の4つに大きく分類できる。MHD安定性に関しては、2次元及び3次元磁場配位の類似点と相違点、LHDとW7-Xとの類似点と相違点を明らかにする事を主な目的とした。先ず、3次元理想MHD安定性コード「CAS3D〕と、2次元MHD安定性コード「RESORM」とのベンチマークテストを行った。LHD配位に対しては、両者の間に、限界ベータ値及び成長率とも良い一致を見た。高nバル-ニングモードの完全3次元解析をLHDとW7-Xプラズマに対して行い、両者の相違点・類似点を明らかにし、更に3次元高nバル-ニング方程式からシャフラノフシフトを考慮したモデル方程式をステラレータ展開を基に導出する事により、トカマクとは全く異なる性質を3次元系で発見し、その物質機構を明らかにした。ステラレータ的磁気シア-領域における低nバル-ニングモードの解析を「CAS3D」で行い、高nモードとの比較を考えた。その結果、高nバル-ニングモードは局所シア-で安定化させられるが、低nバル-ニングモードは大域的シア-で安定化させられるという重大な事を発見した。
KAKENHI-PROJECT-05044067
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05044067
ヘリカル系プラズマの閉じ込め性能の向上に関する理論共同研究
粒子軌道・新古典理論・加熱の研究では、先ず、3次元磁場配位に対する一般的な平行粘性の表式を導出した。この結果から、電子とイオンの衝突領域が異なると径電場に比例する新古典電流(ブートストラップ電流)が存在する事が明らかになった。電子及びイオンが各々、1/2及びプラトウ領域に存在する時、新古典的に定まる径電場は圧力駆動によるブートストラップ電流を大巾に減少させる。また、ブートストラップ電流等のトロイダル電流がMHD安定性に及ぼす影響を研究し、その結果、電流が回転変換を減少する方向に流れると交換型モードを著しく安定化し、閉じ込め改善に大きく寄与するという重要な結果を得た。加熱に関しては、これまでの日本側のICRF及びNBI加熱解析の結果を紹介し非軸対称系におけるプラズマ加熱について議論した。ICRF加熱における高エネルギーイオンテイルの効果を含んだエネルギー閉じ込め時間について検討し、テイル効果を含むエネルギー閉じ込め時間の表式を導いた。核融合科学研究所で開発された平衡コード「HINT」を用いてLHD及びW7-Xでの磁気島生成の計算を行った。磁気島生成、即ち磁気面破壊の問題は磁気閉じ込め核融合にとっては本質的問題であり、閉じ込め改善と深く関わっている。このテーマの共同研究所の大きな成果は、「Self-Healing」現象の発見である。W7-Xでは真空磁場配位(β=0)でm=6/n=5の大きな磁気島が生成される。しかし、βが上昇すると、この磁気島は消減することが「HINT」コードを用いたシミュレーションで明らかにされた。これは真空磁場での磁気島と有限ベータの平衡電流の作る磁気島の位相がずれ丁度相殺したものと考えられ、プラズマ自身による磁気年破壊の回避であり、きれいな磁気面を作りプラズマの閉じ込めを大巾に改善するものである。新しい輸送モデルの構築及び閉じ込め改善の研究では、日本側から新しい輸送理論の提案を行い、理論と実験との詳細な比較・検討を行い閉じ込め改善策の共同研究を行った。この理論で従来謎とされていた実験結果を説明する事ができ、多くの成果をあげる事ができた。されに、ヘリオトロン・ステラレーター・トカマクの閉じ込め性能の相違・類似が明らかにされ、各々の閉じ込め改善策が議論された。回転変換や電流分布の抑制が閉じ込め改善に重要である事が明らかにされ、また、ヘリカル系におけるH・モードの改善度がトカマクと比べ小さい事も解明すべき重要な課題であり、これに関して径電場・新古典拡散の重要性も検討された。以上のように2年間で日・欧の間で協同研究を強力に推進する事ができ、協同研究の目的に合致した多くの研究成果を得る事ができた。ヘリカル系、トカマク等において理論・実験で巾広く研究を行っている欧州とは、今後もこのような共同研究を続けていく事は重要な事と思われる。本共同研究は3年計画として実施の申請をしたが,残念ながら2年間しか認められず予算額も減額されたため,計画を縮少し個々の課題はかなり絞らざるを得なくなったが,プラズマ輸送と閉じ込め性能の研究を発展させ,また,ヘリカル系のMHD安定性の研究,異なる配位の相違・類似点の比較検討等に成果を挙げる事ができた。当該年度研究実績は以下の二つにまとめられる。
KAKENHI-PROJECT-05044067
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山梨感情障害プロジエクト研究
J. Angstより提供された経過表を改定、日本語版を作成し1998年6月29日より感情障害の追跡調査を開始している。Angstによる経過表はチューリッヒコホート研究でも用いられており、日本語版を作成することにより、国際間での調査の比較が可能になるものと考えた。エントリー患者総数は56例で病相の追跡が終了していないものと追跡不可能となったものが8例存在したため、48例について今回はまとめた。男女比は48例中、男性24例、女性24例であった。病相開始時年齢は56.66歳であり、病相期間は289.6日であった。病気を引き起こした誘引は33例に認められた。病相の前駆症状では、心気症状7例、妄想3例、パニック発作1例、離人症状1例、が認められた。病相期間は289.6日であった。病気を引き起こした誘引は33例に認められた。病相の前躯症状では、心気症状7例、不安症状3例、妄想2例、パニック発作1例、離人症状1例が認められた。病相で認められた症状群は、抑うつ症状群が45例、躁症状群1例、混合状態が1例、パニック発作が3例、健忘症状群が2例、強迫症状が1例、パレイドリアが1例に認められた。病相極期のGAFスコアは50.20点、ハミルトンスコアは22.18点であった。自殺帰途は2例に認められ、内訳は溺死未遂1例、刃物による未遂は1例であった。現在も調査は続行中であり、今後も症例数を重ねていくことにより、日本における感情障害の予後の長期調査が可能になるものと考えられる。J. Angstより提供された経過表を改定、日本語版を作成し1998年6月29日より感情障害の追跡調査を開始している。Angstによる経過表はチューリッヒコホート研究でも用いられており、日本語版を作成することにより、国際間での調査の比較が可能になるものと考えた。エントリー患者総数は56例で病相の追跡が終了していないものと追跡不可能となったものが8例存在したため、48例について今回はまとめた。男女比は48例中、男性24例、女性24例であった。病相開始時年齢は56.66歳であり、病相期間は289.6日であった。病気を引き起こした誘引は33例に認められた。病相の前駆症状では、心気症状7例、妄想3例、パニック発作1例、離人症状1例、が認められた。病相期間は289.6日であった。病気を引き起こした誘引は33例に認められた。病相の前躯症状では、心気症状7例、不安症状3例、妄想2例、パニック発作1例、離人症状1例が認められた。病相で認められた症状群は、抑うつ症状群が45例、躁症状群1例、混合状態が1例、パニック発作が3例、健忘症状群が2例、強迫症状が1例、パレイドリアが1例に認められた。病相極期のGAFスコアは50.20点、ハミルトンスコアは22.18点であった。自殺帰途は2例に認められ、内訳は溺死未遂1例、刃物による未遂は1例であった。現在も調査は続行中であり、今後も症例数を重ねていくことにより、日本における感情障害の予後の長期調査が可能になるものと考えられる。
KAKENHI-PROJECT-14770496
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インターネット利用による知的法律CAIシステムの開発研究
本研究では,科学研究費重点領域研究「法律エキスパートシステム」に関する研究成果,および知識情報処理に関するコンピュータ援用教育システム(CAI)の開発実績の二つの基本的成果を融合し,法律教育における計算機援用教育を促進するための基礎研究を目的とし,交渉過程におけるあいまいさを考慮した法的推論エンジンの開発および,CAIとしての実装を行い,法学部学生を中心とした試用を通じて基本的機能および教育効果の評価を行った.題材としては国際統一売買法(CISG)を採用し,これを事例データベースとして構築し,推論を行う.初年度(平成11年度)は,ファジィ推論に基づく,あいまいな事例表現および事例間の類似性判断を行うことのできる推論エンジンの開発を行った.二年度(平成12年度)には,法的推論を行う上で重要な基礎となる,類似度についての研究を重点的に行った.最終年度にあたる今年度は,前年までの成果をもとに,法的推論をファジィ推論に基づいて行う法的エキスパートシステムの実装を行い,CAIシステムとしての利用可能性を検証した.開発したエキスパートシステムは推論エンジン,インタフェース部,事例データベースの3主要構成要素から構成されており,事例データベースとしては前年度までにも部分的に利用していた,国際統一売買法の事例をデータベースとして整備し,システムで利用可能なものとした.法学部学生を中心とした被験者による試用の結果,計算機援用教育が他分野に比べて遅れがちな法律分野において,計算機・インターネットによる学習支援の普及・促進につながるものとの評価を得た.また,本研究の成果は,関連書籍3冊,学術論文2編,口頭発表13件(内招待講演・基調講演5件を含む国際会議10件)にもまとめられており,中でも平成12年10月に飯塚(福岡)で開催された国際会議IIZUKA2000では優秀論文賞を受賞するなど,高い評価を得ている.本研究では、科学研究費重点領域研究「法律エキスパートシステム」に関する研究成果、および知識情報処理に関するコンピュータ援用教育システムCAIの開発実績の二つの基本的成果を融合し、法律教育における計算機援用教育を促進するための基礎研究を目的とし、交渉課程におけるあいまいさを考慮した法的推論エンジンの開発およびCAIとして実装し、法学部学生を中心とした試用を通じて基本的機能および教育効果の評価を行う。初年度にあたる本年度は、ファジィ理論に基づく、あいまいな事例表現および事例間の類似性判断を行うことのできる推論エンジンの開発を行った。上記先行研究の成果として、法的推論の工学的モデル化には事例ベース推論(CBR)が適していること、および事例法を適用する際の解釈および当てはめの判断には、あいまい性の存在が避けられない事が、法学専門家との議論を通じてわかっているが、従来のCBRに基づく法的推論エンジンでは、この様なあいまい性が、あまり考慮されていなかった。本研究では、ファジィ理論におけるメンバーシップとベイグネス両概念を用いて、あいまいさを含んだ事例ルールの記述、および推論を可能にした。具体的には、入力となる相談事例に対し、事例ルールの要件要素を満たすか否かをファジィ推論により判定し結論を導出する。また、入力事例が各要件を満たす程度を基に、類似する先例を推論する。両推論結果より、相談事例の事例ルールに基づく結論と、類似先例の結論が同じ場合には、先例と同じ結論を持つと判断する。国際統一売買法(CISG)を題材として事例ルールを構築し、評価実験を行った結果、あいまい性を考慮した推論が行えることを確認した。本研究では,科学研究費重点領域研究「法律エキスパートシステム」に関する研究成果,および知識情報処理に関するコンピュータ援用教育システム(CAI)の開発実績の二つの基本的成果を融合し,法律教育における計算機援用教育を促進するための基礎研究を目的とし,交渉過程におけるあいまいさを考慮した法的推論エンジンの開発および,CAIとしての実装を行い,法学部学生を中心とした試用を通じて基本的機能および教育効果の評価を行った.題材としては国際統一売買法(CISG)を採用し,これを事例データベースとして構築し,推論を行う.初年度(平成11年度)は,ファジィ推論に基づく,あいまいな事例表現および事例間の類似性判断を行うことのできる推論エンジンの開発を行った.二年度(平成12年度)には,法的推論を行う上で重要な基礎となる,類似度についての研究を重点的に行った.最終年度にあたる今年度は,前年までの成果をもとに,法的推論をファジィ推論に基づいて行う法的エキスパートシステムの実装を行い,CAIシステムとしての利用可能性を検証した.開発したエキスパートシステムは推論エンジン,インタフェース部,事例データベースの3主要構成要素から構成されており,事例データベースとしては前年度までにも部分的に利用していた,国際統一売買法の事例をデータベースとして整備し,システムで利用可能なものとした.法学部学生を中心とした被験者による試用の結果,計算機援用教育が他分野に比べて遅れがちな法律分野において,計算機・インターネットによる学習支援の普及・促進につながるものとの評価を得た.また,本研究の成果は,関連書籍3冊,学術論文2編,口頭発表13件(内招待講演・基調講演5件を含む国際会議10件)にもまとめられており,中でも平成12年10月に飯塚(福岡)で開催された国際会議IIZUKA2000では優秀論文賞を受賞するなど,高い評価を得ている.本研究では、科学研究費重点領域研究「法律エキスパートシステム」に関する研究成果、および知識情報処理に関するコンピュータ援用教育システムCAIの開発実績の二つの基本的成果を融合し、法律教育における計算機援用教育を促進するための基礎研究を目的とし、交渉過程におけるあいまいさを考慮した法的推論エンジンの開発およびCAIとしての実装を行い、法学部学生を中心とした試用を通じて基本的機能および教育効果の評価を行う。二年度にあたる本年度は、法的推論を行う上で重要な基礎となる、類似測度についての研究を重点的に行った。
KAKENHI-PROJECT-11555103
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インターネット利用による知的法律CAIシステムの開発研究
第一に、法的推論における類似測度は、一般のそれとは性質が異なるものであり、従来主に用いられてきた、距離や特徴に基づく類似測度の様な、表層レベルのものだけでは不十分であることを示した。第二に、表層レベルの類似測度で得られる結果を評価するための、コンテキストや要因に基づく深層レベルの類似測度を新たに提案した。具体的には、法律に関する知識の持つ階層構造に着目し、要因間の関係はコンテキストに基づく類似測度で、要因における各要素は要因に基づく類似測度に基づいてそれぞれ評価を行う。提案手法は、前年度に開発した推論エンジンのプロトタイプに統合され、国際統一売買法(CISG)を題材とした評価実験でその有効性を確認した。研究成果は5件の国際会議等で発表され、10月に飯塚(福岡)で開催された国際会議IIZUKA2000では優秀論文賞を受賞するなど、その内容は高く評価されている。本研究では,科学研究費重点領域研究「法律エキスパートシステム」に関する研究成果,および知識情報処理に関するコンピュータ援用教育システム(CAI)の開発実績の二つの基本的成果を融合し,法律教育における計算機援用教育を促進するための基礎研究を目的とし,交渉過程におけるあいまいさを考慮した法的推論エンジンの開発および,CAIとしての実装を行い,法学部学生を中心とした試用を通じて基本的機能および教育効果の評価を行った.題材としては国際統一売買法(CISG)を採用し,これを事例データベースとして構築し,推論を行う.初年度(平成11年度)は,ファジィ推論に基づく,あいまい事例表現および事例間の類似性判断を行うことのできる推論エンジンの開発を行った.二年度(平成12年度)には,法的推論を行う上で重要な基礎となる,類似度についての研究を重点的に行った.最終年度にあたる今年度は,前年までの成果をもとに,法的推論をファジィ推論に基づいて行う法的エキスパートシステムの実装を行い,CAIシステムとしての利用可能性を検証した.開発したエキスパートシステムは推論エンジン,インタフェース部,事例データベースの3主要構成要素から構成されており,事例データベースとしては前年度までにも部分的に利用していた,国際統一売買法の事例をデータベースとして整備し,システムで利用可能なものとした.法学部学生を中心とした被験者による試用の結果,計算機援用教育が他分野に比べて遅れがちな法律分野において,計算機・インターネットによる学習支援の普及・促進につながるものとの評価を得た.また,本研究の成果は,関連書籍3冊,学術論文2編,口頭発表13件(内招待講演・基調講演5件を含む国際会議10件)にもまとめられており,中でも平成12年10月に飯塚(福岡)で開催された国際会議IIZUKA2000では優秀論文賞を受賞するなど,高い評価を得ている.
KAKENHI-PROJECT-11555103
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11555103
低酸素応答転写制御ネットワークの網羅的解析による慢性腎臓病の病態生理の解明
siRNAlibraryスクリーニングとChIPシークエンスおよびmicroarrayにより、hypoxia-inducible factor(HIF)の転写制御ネットワークの解析を行った。新規HIF調節分子および新規HIFターゲット遺伝子の同定に成功し、そのうちの1つであるGene Aについては、腎細胞癌の予後とよく相関し、細胞質分裂に重要な役割を果たすことを見出した。siRNAlibraryスクリーニングとChIPシークエンスおよびmicroarrayにより、hypoxia-inducible factor(HIF)の転写制御ネットワークの解析を行った。新規HIF調節分子および新規HIFターゲット遺伝子の同定に成功し、そのうちの1つであるGene Aについては、腎細胞癌の予後とよく相関し、細胞質分裂に重要な役割を果たすことを見出した。本研究の目的は低酸素応答という重要な個別生命現象に焦点を絞って転写制御ネットワークの網羅的解析を行い、得られた知見を腎臓病学の病態生理に応用するものである。まず、低酸素応答で重要な役割を果たす分子を同定するため、HIF応答レポーターベクターを恒常的に発現している細胞を利用してsiRNA libraryスクリーニングでの網羅的探索を行った。その結果、複数の新規HIF調節候補遺伝子を同定し、更に蛋白レベルでのHIFの発現の変化を調べ、特にHIF調節能の強い5つの新規遺伝子を同定した。今後、これらの遺伝子の具体的なHIF調節機構に関して研究を進める予定である。同時に、ChIPシークエンスを用いてHIFの転写制御ネットワークの解明を行うため、ヒト血管内皮細胞(HUVEC)を使用した実験を行った。HIF-1については信頼性のあるデータを得ることができており、従来HIF-1のターゲット遺伝子として知られていたものに加え、複数の新規HIF-1ターゲット遺伝子の同定に成功している。現在結果について網羅的解析を行っているが、並行してこれらの遺伝子に対するHIF-1の結合が機能的なものであることを確認するため、siRNAによるノックダウンの実験を行っている。一方、HIF-2についてはシグナルノイズ比が悪く再現性のある結果が得られていない、種々の抗体で行ったが、HIF-1の解析がうまくいっていることと考え合わせ、技術的な問題ではなくHIF-2の抗体の特異性の問題と考えており、現在新たにHIF-2の抗体の作成を開始している。本研究の目的は低酸素応答という重要な個別生命現象に焦点を絞って転写制御ネットワークの網羅的解析を行い、得られた知見を腎臓病学の病態生理に応用するものである。前年度から引き続いて行っている培養細胞を用いたChIPシークエンスによるHIFの転写制御ネットワークの研究について、条件設定の最適化を行い、当初HIF-1結合遺伝子として同定されたものが122遺伝子だったものを、567遺伝子に増やすことができた。同時に、低酸素状態においてEIF-1が正常に発現している細胞とHIF-1をノックダウンした細胞におけるmicroarrayを施行し、293遺伝子がHIF-1依存性に発現が変化することを見出した。これらに共通するものとして47遺伝子を同定し、これをHIF-1による直接の低酸素制御が確実な遺伝子とした。47遺伝子の中には、従来からHIF-1による調節が知られていたものに加え、従来HIFによる調節が知られていなかった新規遺伝子があり、それらについてはその機能の検証を進めている。例えば、GeneAについては、GeoProfileにて腎細胞癌における発現の亢進が再現性をもって報告されており、tissue arrayを施行することで腎細胞癌における蛋白レベルでの発現亢進を確認することが出来た。HIF-2については未だChIPシークエンスに使用可能な質の高い抗体が得られず、新しいHIF-2の特異抗体の作成を昆虫細胞の系を用いて継続して行っている。本研究の目的は低酸素応答という重要な個別生命現象に焦点を絞って転写制御ネットワークの網羅的解析を行い、得られた知見を腎臓病学の病態生理に応用するものである。前年度から引き続いて行っている培養細胞を用いたChIPシークエンスによるHIFの転写制御ネットワークの研究について、条件設定の最適化を行い、低酸素下でのHIF-1結合遺部位を2060箇所同定した。同時に、低酸素状態においてHIF-1が正常に発現している細胞とHIF-1をノックダウンした細胞におけるmicroarray解析の条件も最適化し、480遺伝子がHIF-1依存性に発現が変化することを見出した。これらに共通する新規HIF-1ターゲット遺伝子であるGeneAについては、GeoProfileにて腎細胞癌における発現の亢進が再現性をもって報告されており、tissue arrayを施行することで腎細胞癌における蛋白レベルでの発現亢進を確認することが出来た。レポーターアッセイを行い、HIF-1のGeneAのintronへの結合が低酸素状態での発現亢進に必須であることを確認した。また、GFPとのfusion proteinを培養細胞に発現させ、GeneAの蛋白産物が細胞質分裂の終期にintercellular bridgeに集まること、低酸素では培養細胞のうち多核細胞が増加すること、GeneAをノックダウンすると多核細胞が更に増えることを見出し、GeneAが低酸素状態での細胞質分裂に重要な役割を果たすことを示した。
KAKENHI-PROJECT-21390260
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21390260
水酸基活性化に基づく非天然アミノ酸の高効率合成
非天然型アミノ酸及びその誘導体は擬似ペプチド医薬品の創製の根幹に関わる重要な化合物であるが、入手は一般に困難である。研究代表者らはこれまでにジオール類をキラル銅触媒とキレート環形成させればその水酸基が活性化されるという概念を提唱し、ジオール類の一方の水酸基のみを不斉に官能基変換できる反応の開発を行ってきた。本研究課題では、プロキラルジオールの一方の水酸基のみを不斉モノスルホニル化や不斉酸化することにより多様な4級キラル分子素子への変換を目指した。先ず入手容易なプロキラル2ーアミノー1,3ージオールから多様な4級キラル分子素子を簡便かつ高効率に合成できる反応の開発を目指し、研究に着手した。鋭意検討した結果、PhBOXと銅塩からなるキラル銅触媒と臭素カチオン源を酸化剤とすることにより、様々な置換基を有するα-置換セリノール誘導体を不斉非対称化し、高効率にα-置換セリンエステルに変換することに成功した。また、スルホニル化による光学活性4ー置換アジリジン合成法を開発し、4ー置換アジリジンカルボン酸や非天然4ー置換アミノ酸合成に応用した。4置換アミノアルコールの不斉酸化による光学分割に加え、グリセリン誘導体のグリセリン酸誘導体への不斉酸化にも成功した。ここで、不斉配位子の構造に着目し、PhBOXの配位角度が小さくなるように構造変換したところ、S値や不斉収率、及び反応収率は大幅に改善され、効率的に光学活性四置換アミノ酸やグリセリン酸を高効率に合成できるようになった。これらにより、多様な置換基を有する非天然アミノ酸の簡便合成法が開発できた。非天然型アミノ酸及びその誘導体は新規擬似ペプチド医薬品の創製の根幹に関わる重要な化合物であるが、入手は一般に困難である。申請者らはこれまでにジオール類をキラル銅触媒とキレート環形成させればその水酸基が活性化されるという概念を提唱し、ジオール類の一方の水酸基のみを不斉に官能基変換できる反応の開発を行ってきた。この研究の過程で、プロキラルジオールの一方の水酸基のみを不斉モノスルホニル化や不斉酸化することにより多様な4級キラル分子素子に変換できる可能性を見出した。本研究課題では、入手容易なプロキラルジオールから多様な4級キラル分子素子を簡便かつ高効率に合成できる反応の開発を目指し、研究に着手した。鋭意検討した結果、PhBOXと銅塩からなるキラル銅触媒と臭素カチオン源を酸化剤とすることにより、様々な置換基を有するα-置換セリノール誘導体を不斉非対称化し、高効率にα-置換セリンエステルに変換することに成功した。また、その絶対配置をジアステレオマーに誘導化後、X線結晶構造解析することにより明らかにした。一方、上記不斉非対称化の反応条件では、ラセミ体のα,αー二置換アミノアルコールを酸化的光学分割はその効率を表すS値は低く、再現性にも乏しかった。そこで、不斉配位子の構造に着目し、PhBOXの配位角度が小さくなるように構造変換したところ、S値は改善され再現性も取れるようになり、効率的に光学活性四置換アミノ酸を合成できるようになった。これら見出した2つの反応により、多様な置換基を有する非天然アミノ酸の簡便合成法が開発できた。多様な置換基を有する重要な非天然アミノ酸を簡便且つ効率的に合成できる、不斉酸化反応による光学分割や不斉非対称化を開発することができたので、おおむね順調に進展していると評価できる。非天然型アミノ酸及びその誘導体は新規擬似ペプチド医薬品の創製の根幹に関わる重要な化合物であるが、入手は一般に困難である。申請者らはこれまでにジオール類をキラル銅触媒とキレート環形成させればその水酸基が活性化されるという概念を提唱し、ジオール類の一方の水酸基のみを不斉に官能基変換できる反応の開発を行ってきた。この研究の過程で、プロキラルジオールの一方の水酸基のみを不斉モノスルホニル化や不斉酸化することにより多様な4級キラル分子素子に変換できる可能性を見出した。本研究課題では、入手容易なプロキラルジオールから多様な4級キラル分子素子を簡便かつ高効率に合成できる反応の開発を目指し、研究に着手した。鋭意検討した結果、PhBOXと銅塩からなるキラル銅触媒と臭素カチオン源を酸化剤とすることにより、様々な置換基を有するα-置換セリノール誘導体を不斉非対称化し、高効率にα-置換セリンエステルに変換することに成功した。また、4置換アミノアルコールの不斉酸化による光学分割に加え、グリセリン誘導体のグリセリン酸誘導体への不斉酸化にも成功した。ここで、不斉配位子の構造に着目し、PhBOXの配位角度が小さくなるように構造変換したところ、S値や不斉収率、及び反応収率は大幅に改善され、光学活性四置換アミノ酸やグリセリン酸を高効率に合成できるようになった。これらにより、多様な置換基を有する非天然アミノ酸の簡便合成法が開発できた。多様な置換基を有する重要な非天然アミノ酸を簡便且つ効率的に合成できる、不斉酸化反応による光学分割や不斉非対称化を開発することができた。また、類似構造のグリセリン類のグリセリン酸誘導体への不斉酸化にも成功したので、おおむね順調に進展していると評価できる。非天然型アミノ酸及びその誘導体は擬似ペプチド医薬品の創製の根幹に関わる重要な化合物であるが、入手は一般に困難である。
KAKENHI-PROJECT-16K08167
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K08167
水酸基活性化に基づく非天然アミノ酸の高効率合成
研究代表者らはこれまでにジオール類をキラル銅触媒とキレート環形成させればその水酸基が活性化されるという概念を提唱し、ジオール類の一方の水酸基のみを不斉に官能基変換できる反応の開発を行ってきた。本研究課題では、プロキラルジオールの一方の水酸基のみを不斉モノスルホニル化や不斉酸化することにより多様な4級キラル分子素子への変換を目指した。先ず入手容易なプロキラル2ーアミノー1,3ージオールから多様な4級キラル分子素子を簡便かつ高効率に合成できる反応の開発を目指し、研究に着手した。鋭意検討した結果、PhBOXと銅塩からなるキラル銅触媒と臭素カチオン源を酸化剤とすることにより、様々な置換基を有するα-置換セリノール誘導体を不斉非対称化し、高効率にα-置換セリンエステルに変換することに成功した。また、スルホニル化による光学活性4ー置換アジリジン合成法を開発し、4ー置換アジリジンカルボン酸や非天然4ー置換アミノ酸合成に応用した。4置換アミノアルコールの不斉酸化による光学分割に加え、グリセリン誘導体のグリセリン酸誘導体への不斉酸化にも成功した。ここで、不斉配位子の構造に着目し、PhBOXの配位角度が小さくなるように構造変換したところ、S値や不斉収率、及び反応収率は大幅に改善され、効率的に光学活性四置換アミノ酸やグリセリン酸を高効率に合成できるようになった。これらにより、多様な置換基を有する非天然アミノ酸の簡便合成法が開発できた。合成したαー置換セリンエステルを有用なシステイン誘導体へ変換を行う。また、グリーンケミストリーの観点から、現在臭素カチオン源として使用している臭素化合物を触媒量の臭化物塩に置き換えることができるよう、電気化学的手法の開発に取り組む。合成したグリセリン酸誘導体を有用なアミノ酸誘導体へ変換を行う。また、グリーンケミストリーの観点から、現在臭素カチオン源として使用している臭素化合物を触媒量の臭化物塩に置き換えることができるよう、電気化学的手法の開発に取り組む。
KAKENHI-PROJECT-16K08167
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K08167
セキュリティの変化に迅速に対応できるパターン指向ソフトウェア開発法の研究
セキュリティ要求の変化に対して迅速な対応を行うためには、対策の設計を行う前に、複数の対策から適切な対策を選択する指針となる高精度な対策コストの予測と、選択した対策が可能な限り自動的に追加できる仕組みが必要である。そこで、本提案では、セキュリティパターンを脅威・攻撃・対策パターンの3つに分類し、それぞれの関連を明らかにすることで、各開発工程でモデル化されるセキュリティの関心事間の関連を導出できるようした。さらにアプリケーションとパターンの関連を明らかにするために、セキュリティパターンにより得られる情報を、セキュリティモデル中のステレオタイプで付加する方法を提案した。セキュリティ要求の変化に対して迅速な対応を行うためには、対策の設計を行う前に、複数の対策から適切な対策を選択する指針となる高精度な対策コストの予測と、選択した対策が可能な限り自動的に追加できる仕組みが必要である。そこで、本提案では、セキュリティパターンを脅威・攻撃・対策パターンの3つに分類し、それぞれの関連を明らかにすることで、各開発工程でモデル化されるセキュリティの関心事間の関連を導出できるようした。さらにアプリケーションとパターンの関連を明らかにするために、セキュリティパターンにより得られる情報を、セキュリティモデル中のステレオタイプで付加する方法を提案した。従来のセキュリティ開発手法では、さまざまな対策案がパターンとしてカタログ化されていたが、どのような対策をソフトウェアのどこに施すかは、開発者が判断し、その判断基準は開発中のモデルには明示されていなかった。また、セキュリティ要求の変化に対して迅速な対応を行うためには、対策の設計を行う前に、複数の対策から適切な対策を選択する指針となる高精度な対策コストの予測と、選択した対策が可能な限り自動的に追加できる仕組みが必要である。そこで、本提案では、セキュリティパターンを脅威パターン、攻撃パターン、対策パターンの3つに分類し、それぞれの関連を明らかにすることで、各開発工程でモデル化されるセキュリティの関心事間の関連(縦方向のトレース)を導出できるようにする。さらにアプリケーションとパターンの関連(横方向のトレース)を明らかにするために、セキュリティパターンにより得られる情報を、セキュリティモデル中のステレオタイプで付加する方法を提案する。これらの分析結果を新しい攻撃や脅威の対応の際に再利用することで、対策コストの予測やその自動追加が実現できる。平成24年度はセキュリティ分析・設計に必要な情報を整理しながら行い、インパクトの予測と自動化が扱える統一的な言語を構築した。具体的には、セキュリティ情報を既存のモデルに追加する手法を吉岡が中心になって開発し、パターンからインパクトを分析する手法を海谷が開発した。そして、対策を自動追加する仕組みを鷲崎が中心に開発した。さらに、オープンソースの事例を使ってこれを評価している。セキュリティ要求の変化に対して迅速な対応を行うためには、対策の設計を行う前に、複数の対策から適切な対策を選択する指針となる高精度な対策コストの予測と、選択した対策が可能な限り自動的に追加できる仕組みが必要である。そこで、本提案では、セキュリティパターンを脅威パターン、攻撃パターン、対策パターンの3つに分類し、それぞれの関連を明らかにすることで、各開発工程でモデル化されるセキュリティの関心事間の関連(縦方向のトレース)を導出できるようにする。さらにアプリケーションとパターンの関連(横方向のトレース)を明らかにするために、セキュリティパターンにより得られる情報を、セキュリティモデル中のステレオタイプで付加する方法を提案する。これらの分析結果を新しい攻撃や脅威の対応の際に再利用することで、対策コストの予測やその自動追加が実現できる。平成24年度はセキュリティ分析・設計に必要な情報を整理しながら行い、インパクトの予測と自動化が扱える統一的な言語を構築した。そして、対策を自動追加する仕組みを鷲崎が中心に開発した。さらに、オープンソースの事例を使ってこれを評価した。平成25年度は、さらに中規模な事例として大学の学生管理システムを提案手法に基づき設計し、その問題点をもとにメタモデルの改良を行った。具体的には学生管理システムの要求仕様を作り、設計を行った。その後、産学の協力者により、この仕様に対するセキュリティ要求とそれに対応した設計を本手法を含むいくつかの手法を使って作成した。その結果、従来手法で発見が難しかった脅威や要求が摘出され、本手法の有効性が確認できた。また、プライバシーの考慮など、これまで提案手法で考慮していなかった観点についても分析手法が必要であることが確認され、今後の課題が整理できた。セキュリティ要求の変化に対して迅速な対応を行うためには、対策の設計を行う前に、複数の対策から適切な対策を選択する指針となる高精度な対策コストの予測と、選択した対策が可能な限り自動的に追加できる仕組みが必要である。そこで、本提案では、セキュリティパターンを脅威パターン、攻撃パターン、対策パターンの3つに分類し、それぞれの関連を明らかにすることで、各開発工程でモデル化されるセキュリティの関心事間の関連(縦方向のトレース)を導出できるようにする。さらにアプリケーションとパターンの関連(横方向のトレース)を明らかにするために、セキュリティパターンにより得られる情報を、セキュリティモデル中のステレオタイプで付加する方法を提案する。これらの分析結果を新しい攻撃や脅威の対応の際に再利用することで、対策コストの予測やその自動追加が実現できる。平成24年度はセキュリティ分析・設計に必要な情報を整理しながら行い、インパクトの予測と自動化が扱える統一的な言語を構築した。そして、対策を自動追加する仕組みを鷲崎が中心に開発した。さらに、オープンソースの事例を使ってこれを評価した。平成25年度は、さらに中規模な事例として大学の学生管理システムを提案手法に基づき設計し、その問題点をもとにメタモデルの改良を行った。最終年度となる平成26年度は、ツールを洗練しWebから公開を行った。
KAKENHI-PROJECT-24300011
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24300011
セキュリティの変化に迅速に対応できるパターン指向ソフトウェア開発法の研究
さらに、プライバシーの考慮など、これまで提案手法で考慮していなかった観点についても分析を行い、ツールの有効性と今後の課題が整理できた。26年度が最終年度であるため、記入しない。セキュリティソフトウェア工学26年度が最終年度であるため、記入しない。各研究分担者の技術に対して、パターンを中心に統合し、各開発工程でモデル化される情報間の関連を整理することができた。具体的な例題を構築でき、実用性の評価および今後の課題が整理できた。26年度が最終年度であるため、記入しない。提案手法の有効性を示すために、事例の作成と評価を中心に推進予定である。平成25年度の評価結果を受けて、手法を洗練化させるとともに、開発プロセスをサポートするツールを改良する。そして、課題に挙げられたプライバシー要求等への拡張を行う。さらに、ツールを普及させるためにドキュメント等整理し、Webから公開する。26年度が最終年度であるため、記入しない。平成24年度に構築した言語をもとに、Webサービス分野で中規模な事例を設計し、提案するモデルの拡張性および、有効性を評価し、問題点を整理する。中規模の事例の構築に学生の謝金を計上していたが、教育の一環として構築を行ったため研究補助として計上していた謝金費用が不要となった。平成25年度に整理できた課題を解決するためにツールを拡張し完成度を向上させるための費用とする。さらに、事例の洗練を行うために学生への研究補助のための謝金、およびその他の費用で外注として使用する。
KAKENHI-PROJECT-24300011
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24300011
顎関節におけるBMP-6の抗アポトーシス作用に関する研究
【実験方法】1.細胞培養:顎関節内障の患者から採取した滑膜組織、および関節円板組織を培養し、実験に使用した。2.ヒト顎関節内障の滑膜、関節円板組織標本の免疫染色:抗BMP-6抗体にてBMP-6の発現の局在を免疫組織学的に検討した。また、同標本においてTUNEL法を用い、apoptosisの評価を行った。3.咬合不全ラットの顎関節滑膜、関節円板組織標本作製、免疫染色:頭部をパラフィン包埋し、顎関節の薄切切片(5nm)を作製した。ヒト標本と同様に評価。【結果】1.ヒト顎関節培養滑膜細胞で、インターロイキン-1βを添加したものにおいて、BMP-6のmRNAの発現が上昇していた。低酸素刺激によるBMP-6のmRNAの変化はほとんど認められなかった。2.ヒトの顎関節内障の滑膜・関節円板パラフィン包埋標本(1)BMP-6の発現:滑膜組織に明確なBMP-6の発現は見られない。円板組織には円板内の軟骨細胞様細胞にBMP-6の発現が認められた。線維化が強く円板内に軟骨細胞様細胞が少ないヒト顎関節円板組織は発現が少なかった。顎関節内障と正常顎関節の関節円板を比較すると、正常関節円板における軟骨細胞様細胞のBMP-6の陽性率が約20%であるのに対し、顎関節内障の関節円板の軟骨細胞様細胞のBMP-6の陽性率は関節円板の位置によって差があるが約60%に認められた。正常関節円板においては関節円板内の前方肥厚部や後方肥厚部に比較し、中央狭窄部の軟骨細胞様細胞に比較的陽性率が高い傾向にあると考えられた。(2)apoptosisの評価:TUNEL法によるapoptosis陽性細胞は約3%未満でほとんど陽性反応を認めない。3.咬合不全ラットの滑膜・関節円板パラフィン包埋標本(1)ラット顎関節滑膜組織には、実験群、対照群ともに明確なBMP-6の発現は見られない。ラット顎関節円板組織には実験群、対照群ともに円板内の軟骨細胞様細胞にBMP-6の発現が認められるが、両者に明確な差異は認められない。(2)apoptosisの評価:TUNEL法によるapoptosis陽性反応を認めない。【実験方法と経過】細胞培養:顎関節内障の患者から採取した滑膜組織、および関節円板組織を培養し、その細胞の増殖に成功した。ヒト顎関節内障の滑膜、関節円板組織標本作製:顎関節内障の滑膜・関節円板をパラフィン包埋し、薄切切片(5nm)を作製した。抗BMP-6抗体、HRP標識二次抗体を反応させ、DABにて発色を行い、BMP-6の発現の局在を免疫組織学的に検討した。また、同標本においてTUNEL法を用い、apoptosisの評価を行った。咬合不全ラットの作製:8週齢のWistar系ラットを用い、全身麻酔下、右側上顎臼歯部を抜歯し、ラットに咬合不全を生じさせた。【結果】ヒトの顎関節内障の滑膜・関節円板パラフィン包埋標本の薄切切片(5nm)におけるBMP-6の発現の免疫組織学的評価およびTUNEL法によるapoptosisの評価(1)BMP-6の発現:滑膜組織に明確なBMP-6の発現は見られない。円板組織には円板内の軟骨細胞様細胞にBMP-6の発現が認められた。線維化が強く円板内に軟骨細胞様細胞が少ないヒト顎関節円板組織は発現が少なかった。ただし顎関節内障と正常顎関節の関節円板を比較すると、正常関節円板における軟骨細胞様細胞のBMP-6の陽性率が約20%であるのに対し、顎関節内障の関節円板の軟骨細胞様細胞のBMP-6の陽性率は関節円板の位置によって差があるが約60%に認められた。正常関節円板においては関節円板内の前方肥厚部や後方肥厚部に比較し、中央狭窄部の軟骨細胞様細胞に比較的陽性率が高い傾向にあると考えられた。(2)apoptosisの評価:現段階では標本数が少ないが(15標本)、TUNEL法によるapoptosis陽性細胞は約3%未満でほとんど陽性反応を認めない。【実験方法】1.細胞培養:顎関節内障の患者から採取した滑膜組織、および関節円板組織を培養し、実験に使用した。2.ヒト顎関節内障の滑膜、関節円板組織標本の免疫染色:抗BMP-6抗体にてBMP-6の発現の局在を免疫組織学的に検討した。また、同標本においてTUNEL法を用い、apoptosisの評価を行った。3.咬合不全ラットの顎関節滑膜、関節円板組織標本作製、免疫染色:頭部をパラフィン包埋し、顎関節の薄切切片(5nm)を作製した。ヒト標本と同様に評価。【結果】1.ヒト顎関節培養滑膜細胞で、インターロイキン-1βを添加したものにおいて、BMP-6のmRNAの発現が上昇していた。低酸素刺激によるBMP-6のmRNAの変化はほとんど認められなかった。2.ヒトの顎関節内障の滑膜・関節円板パラフィン包埋標本(1)BMP-6の発現:滑膜組織に明確なBMP-6の発現は見られない。円板組織には円板内の軟骨細胞様細胞にBMP-6の発現が認められた。
KAKENHI-PROJECT-17659638
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17659638
顎関節におけるBMP-6の抗アポトーシス作用に関する研究
線維化が強く円板内に軟骨細胞様細胞が少ないヒト顎関節円板組織は発現が少なかった。顎関節内障と正常顎関節の関節円板を比較すると、正常関節円板における軟骨細胞様細胞のBMP-6の陽性率が約20%であるのに対し、顎関節内障の関節円板の軟骨細胞様細胞のBMP-6の陽性率は関節円板の位置によって差があるが約60%に認められた。正常関節円板においては関節円板内の前方肥厚部や後方肥厚部に比較し、中央狭窄部の軟骨細胞様細胞に比較的陽性率が高い傾向にあると考えられた。(2)apoptosisの評価:TUNEL法によるapoptosis陽性細胞は約3%未満でほとんど陽性反応を認めない。3.咬合不全ラットの滑膜・関節円板パラフィン包埋標本(1)ラット顎関節滑膜組織には、実験群、対照群ともに明確なBMP-6の発現は見られない。ラット顎関節円板組織には実験群、対照群ともに円板内の軟骨細胞様細胞にBMP-6の発現が認められるが、両者に明確な差異は認められない。(2)apoptosisの評価:TUNEL法によるapoptosis陽性反応を認めない。
KAKENHI-PROJECT-17659638
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17659638
ボルネオ島・スマトラ島での野外調査にもとづく東南アジアの樹木フロラの網羅的解明
本研究は種多様性がとくに高いボルネオ島とスマトラ島でトランセクト調査を集中的に実施し、これらの地域の樹木多様性を定量的に記述すること、また、クスノキ科などについて東南アジア全種を対象に分類学的研究を進め、新種を記載し、チェックリストを発表するを目的としている。平成29年度はボルネオ島(サラワク州、ブルネイ国)でトランセクト調査を実施し、東南アジアでもっとも種多様性が高いボルネオ島のデータを充実させた。また、重点的研究対象としているクスノキ科のDNAサンプルの分析と分類学的研究・新種記載を集中的に進め、クスノキ科についての東南アジア産全種チェックリストを作成した。クスノキ科の分類学的研究資料をさらに充実させるため、ミャンマー・タイ・マレー半島・ラオス・カンボジアで補足調査を実施した。これらの資料にもとづき、シロダモ属、ニッケイ属、シナクスモドキ属についてMIGseq, ITSによる系統解析を行った。ITSでは近縁種間の違いがなかったり、近縁種間で多型が共有されているケースがあったが、このような場合でもMIGseqでは近縁種間で顕著な違いが見られ、種判別を行うことが可能だった。MIGseqにもとづく解析の結果、シロダモ属では55種が確認され、うち38種(69%)が新種だった。シナクスモドキ属では27種が確認され、うち14種(52%)が新種だった。ニッケイ属では104種が確認され、うち31種(30%)が新種だった。これらの結果から、東南アジア熱帯林にはいまなお多くの未記載種が残されていることが明らかになった。平成29年度が最終年度であるため、記入しない。平成29年度が最終年度であるため、記入しない。本研究は種多様性がとくに高いボルネオ島とスマトラ島でトランセクト調査を集中的に実施し、これらの地域の樹木多様性を定量的に記述すること、また、クスノキ科などについて東南アジア全種を対象に分類学的研究を進め、新種を記載し、チェックリストを発表するを目的としている。平成27年度は、2015年9月にスマトラ島での調査を計画したが、大規模な森林火災のために調査を延期し、2016年3月および10月(繰越予算を使用)にスマトラ島で調査を実施した。また、2016年1月にボルネオ島(サラワク州バリオ)で調査を実施した。また、インドシナ半島とマレーシアの種を対象にクスノキ科の分類学的研究を進めた。標本調査から新種比率が高いことが判明したベトナムにおいて、新種記載のための標本採集調査を実施した。スマトラ島リアウ州では3地点において100mx5mトランセクトを設置し、全種調査を行い、329種、285種、248種を記録した。また、クスノキ科タブノキ属、Nothaphoebe属などにおいて、新種候補を得た。サラワク州バリオでは予備調査としてトランセクトによらない標本採集を実施し、235種を記録した。クスノキ科において、属が確定できない新種候補を得た。クスノキ科シロダモ属、タブノキ属について、インドシナ半島とマレーシア・スマトラ島・ジャワ島・カリマンタンでこれまでに得た資料からrbcL, matK, ITS配列を決定し、分子系統樹と形態的特徴にもとづいて分類学的研究を行なった。その結果、シロダモ属では69点の標本が35種に分類され、うち22種(62%)は新種と判定された。タブノキ属では34種が認識され、うち27種(79%)が新種と判定された。これら新種候補のうち、花か果実の標本が採集され、形態的特徴づけが明確なシロダモ属2種、タブノキ属2種について新種記載の論文を投稿した。野外調査については計画を達成できた。平成27年度のスマトラ森林火災のために延期した調査は28年度に実施できた。クスノキ科についての分類学的研究も順調に進展し、形態的特徴づけが明確なシロダモ属2種、タブノキ属2種について新種記載の論文を投稿した。本研究は種多様性がとくに高いボルネオ島とスマトラ島でトランセクト調査を集中的に実施し、これらの地域の樹木多様性を定量的に記述すること、また、クスノキ科などについて東南アジア全種を対象に分類学的研究を進め、新種を記載し、チェックリストを発表するを目的としている。平成28年度はボルネオ島で2回の調査を実施した(7月と9月にランビル国立公園)。また、平成27年度の研究でクスノキ科の新種があることが判明し、論文発表のために追加資料が必要となったため、ベトナム・ミャンマーにおいて野外調査を実施し、新種記載のための標本採集を実施した。ランビル国立公園では、100mx5mのトランセクトにおける全種調査を2地点で実施し、514種と472種を記録した。東南アジア各地での同じ方法による調査結果の中で、これらはもっとも高い記録である。クスノキ科バリバリノキ属において特徴が明確な新種を採集し、記載論文を投稿した。ITS配列の結果とハーバリウム標本にもとづいて、インドシナ産シナクスモドキ属の分類学的研究を実施した。de Kok (2015)のrevisionで他種のシノニム(同種異名)とされた種のうち5種は独立種であり、さらに4種の新種が確認され、インドシナ半島産の種数は16種から25種に増えた。
KAKENHI-PROJECT-15H02640
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ボルネオ島・スマトラ島での野外調査にもとづく東南アジアの樹木フロラの網羅的解明
その後のITS配列にもとづく研究によって隠ぺい種がさらに確認された。また、タイ産タブノキ属の分類学的研究を行い、合計20種を認めた。このうち新種は7種(35%)だった。ベトナム・ミャンマーの野外調査において、タブノキ属、シナクスモドキ属などの新種がさらに採集された。東北大陶山博士の協力を得て、次世代シークエンサーによる迅速かつ高精度な分子系統解析法を検討した(このため、東北大学陶山研究室を5月に訪問した)。シロダモ属において、ITS系統樹よりもさらに解像度の高い系統樹が得られ、さらなる新種が確認された。計画した調査は順調に進行し、標本資料・DNAサンプルが蓄積されている。また、これまでに蓄積された標本・DNAサンプルの分析も順調であり、論文発表も進んでいる。本研究は種多様性がとくに高いボルネオ島とスマトラ島でトランセクト調査を集中的に実施し、これらの地域の樹木多様性を定量的に記述すること、また、クスノキ科などについて東南アジア全種を対象に分類学的研究を進め、新種を記載し、チェックリストを発表するを目的としている。平成29年度はボルネオ島(サラワク州、ブルネイ国)でトランセクト調査を実施し、東南アジアでもっとも種多様性が高いボルネオ島のデータを充実させた。また、重点的研究対象としているクスノキ科のDNAサンプルの分析と分類学的研究・新種記載を集中的に進め、クスノキ科についての東南アジア産全種チェックリストを作成した。クスノキ科の分類学的研究資料をさらに充実させるため、ミャンマー・タイ・マレー半島・ラオス・カンボジアで補足調査を実施した。これらの資料にもとづき、シロダモ属、ニッケイ属、シナクスモドキ属についてMIGseq, ITSによる系統解析を行った。ITSでは近縁種間の違いがなかったり、近縁種間で多型が共有されているケースがあったが、このような場合でもMIGseqでは近縁種間で顕著な違いが見られ、種判別を行うことが可能だった。MIGseqにもとづく解析の結果、シロダモ属では55種が確認され、うち38種(69%)が新種だった。シナクスモドキ属では27種が確認され、うち14種(52%)が新種だった。ニッケイ属では104種が確認され、うち31種(30%)が新種だった。これらの結果から、東南アジア熱帯林にはいまなお多くの未記載種が残されていることが明らかになった。引き続き、計画している野外調査を実施し、標本資料とトランセクトデータを蓄積する。一方でクスノキ科についての分子系統学的・分類学的研究を進め、新種を記載し、東南アジアにおける樹木チェックリストのクスノキ科分を完成させる。次年度は最終年度なので、重点的研究対象としているクスノキ科のDNAサンプルの分析と分類学的研究・新種記載を集中的に進め、クスノキ科についての東南アジア産全種チェックリストを完成させる。平成29年度が最終年度であるため、記入しない。平成29年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15H02640
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多層膜X線望遠鏡による硬X線の撮像スペクトル観測
超新星の残骸、活動銀河核、銀河団等の硬X線での撮像観測を目指して、多層膜スーパーミラーを用い硬X線望遠鏡を開発した。それを搭載した最初の気球実験を2000年の夏に予定している。この望遠鏡は円錐近似によるWolter1型の斜入射光学系であり、X線天文衛星ASTRO-E(2000年2月10日に打ち上げられたが軌道に乗らず)と同じ多重薄板型レプリカ鏡による方式である。20-40keVのエネルギー領域で有効面積の増大を図るために、鏡面にはPt/C多層膜スーパーミラーを成膜する。金レプリカ鏡にスーパーミラーを成膜して硬X線望遠鏡を試作し、目標とする結像性能が得られることを確認した。その後、白金レプリカ鏡でより優れた性能が得られることが明らかになり、その大量生産方式を確立するとともに、製作を開始した。NASA/GSFCに研究者を派遣して共同研究を進め、気球実験に関する打ち合わせを行った。以下のような研究成果が得られた。1.鏡面基板の製作アルミ薄板をベースにしたPtレプリカ鏡で最も優れた性能が得られ、NASAと共同で鏡面基板の大量生産を開始した。1台の望遠鏡を組み上げるには2000枚程度の量産が必要である。2.多層膜の成膜と性能評価Pt/C多層膜スーパーミラーをDC及びRFスパッター装置によりレプリカ鏡に成膜し、特性X線及びSPring-8の硬X線ビームラインを用いて反射率の測定を行った。スーパーミラーの新たな設計法を見出し、性能向上を図った。3.硬X線検出器の開発NASA/GSFCはCdZnTe半導体を用いた撮像型検出器の開発を進めているが、我々はシンチレーションカウンターによる硬X線の撮像型検出器の開発を始めた。4.望遠鏡の設計と製作望遠鏡の鏡筒を設計・製作し、反射鏡を組み込んで結像性能の評価を行ったところ、ASTRO-Eと同程度の性能が得られた。超新星の残骸、活動銀河核、銀河団等の硬X線での撮像観測を目指して、多層膜スーパーミラーを用い硬X線望遠鏡を開発した。それを搭載した最初の気球実験を2000年の夏に予定している。この望遠鏡は円錐近似によるWolter1型の斜入射光学系であり、X線天文衛星ASTRO-E(2000年2月10日に打ち上げられたが軌道に乗らず)と同じ多重薄板型レプリカ鏡による方式である。20-40keVのエネルギー領域で有効面積の増大を図るために、鏡面にはPt/C多層膜スーパーミラーを成膜する。金レプリカ鏡にスーパーミラーを成膜して硬X線望遠鏡を試作し、目標とする結像性能が得られることを確認した。その後、白金レプリカ鏡でより優れた性能が得られることが明らかになり、その大量生産方式を確立するとともに、製作を開始した。NASA/GSFCに研究者を派遣して共同研究を進め、気球実験に関する打ち合わせを行った。以下のような研究成果が得られた。1.鏡面基板の製作アルミ薄板をベースにしたPtレプリカ鏡で最も優れた性能が得られ、NASAと共同で鏡面基板の大量生産を開始した。1台の望遠鏡を組み上げるには2000枚程度の量産が必要である。2.多層膜の成膜と性能評価Pt/C多層膜スーパーミラーをDC及びRFスパッター装置によりレプリカ鏡に成膜し、特性X線及びSPring-8の硬X線ビームラインを用いて反射率の測定を行った。スーパーミラーの新たな設計法を見出し、性能向上を図った。3.硬X線検出器の開発NASA/GSFCはCdZnTe半導体を用いた撮像型検出器の開発を進めているが、我々はシンチレーションカウンターによる硬X線の撮像型検出器の開発を始めた。4.望遠鏡の設計と製作望遠鏡の鏡筒を設計・製作し、反射鏡を組み込んで結像性能の評価を行ったところ、ASTRO-Eと同程度の性能が得られた。本研究で目指す、硬X線望遠鏡の開発は大きく三つに分けられる。それは、高い効率と滑らかな表面の創製を目指す薄板基板の製作、広い帯域で高い反射率を得る為の多層膜スーパーミラーの設計製作と、反射鏡/望遠鏡の評価である。今年度の調査研究の中では、基板の加工と評価を担当する難波が、国際会議での成果発表と合わせ、基板製作を担当するNASA/GSFCを訪問した。田村は、これまで名古屋で行って来た多層膜反射鏡の開発成果を国際会議で発表すると共に、NASA/GSFCで製作された基板に名古屋で最適設計した多層膜を蒸着してGSFCへ持ち込んだ。ここで、米国側研究者と共に、望遠鏡として組み上げ、世界で初めての硬X線の撮像実験に成功した。これは、基板を準備したSerlemitsos group、多層膜スーパーミラーを製作した名古屋グループ、硬X線撮像検出器を準備したTueller/Gehrels groupの国際協力の賜物である。この成果をまとめて国際会議で発表することと、その後の多層膜開発の成果の議論と実験をNASA/GSFCで行うため、芳賀が渡米した。一方、焦点面に置いて反射像を評価する検出器の開発研究の打ち合わせに寺島をGSFCに派遣している。年度の最後には国枝が基板製作、多層膜蒸着に関する研究打ち合わせのためGSFCを訪問する。また、米国側研究者と気球実験を目指した計画全体を議論するため、山下が渡米する。
KAKENHI-PROJECT-09044071
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多層膜X線望遠鏡による硬X線の撮像スペクトル観測
今年度は、目標としたDemonstration Modelの試作に成功し、タイミング良く整備の進んだ硬X線撮像型検出器と組み合わせることができ、世界に先駈けて硬X線望遠鏡システムの実用化を実証することができた。(敬称略)1.「あすか」衛星の観測による銀河団の研究銀河団の内部を満たす高温プラズマからのX線放射を、「あすか」衛星を用い撮像スパクトル観測を行った。特にかみのけ座銀河団を詳しく観測したところ、温度分布があることが分かり、銀河団が静水圧平行に落ち着いた構造ではなく、併合・合体の途上にあることが示された。また、数十個の銀河団のX線輝度と温度分布の観測から、銀河団を構成する、高温ガスおよびダークマターの分布を独立に求めることができた。中心部にダークマターがより多く集中していることは、銀河団の構造と進化を解明する大きな手がかりとなる。2.硬X線望遠鏡の開発前年度、試作に成功した多層膜スーパーミラーは、望遠鏡全体の一部にあたる。望遠鏡の異なる半径においては、入射角が異なり、それに合わせた多層膜の最適設計を行った。また、曲率半径の違いは、多層膜製膜の条件を個別に調整する必要が有り、これに対応するべく製膜装置の特性測定、調整を行い、ほぼ全体の半径に対応し、そして10cm平方以上のサンプルで均一な製膜法を確立した。その他、来年度以降の気球本観測を目指して、2000枚に及ぶ多量の反射鏡生産の検討、試作を始めている。気球搭載用硬X線望遠鏡は円錐近似によるWolter1型の斜入射光学系であり、X線天文衛星ASTRO-E(2000年2月10日に打ち上げられたが軌道に乗らず)と同じ多重薄板型レプリカ鏡による方式である。20-40keVのエネルギー領域で有効面積の増大を図るために、鏡面にはPt/C多層膜スーパーミラーを成膜する。2000年6月に最初の気球実験を予定しており、スーパーミラーレプリカ反射鏡の大量生産方式を確立するととも製作を開始した。NASA/GSFCに研究者を派遣して共同研究を進め、気球実験に関する打ち合わせを行った。硬X線領域の性能評価をSPring-8のビームラインを用いて行った。研究成果をSPIE及び多層膜の物理国際会議で発表した。今年度の目標はほぼ達成され、以下のような研究成果が得られた。1.鏡面基盤の製作アルミ薄板をベースにしたPtレプリカ鏡で最も優れた性能が得られ、NASAと共同で鏡面基盤の大量生産を開始した。1台の望遠鏡をくみ上げるには2000枚程度の量産が必要である。2.多層膜の成膜と性能評価Pt/C多層膜スーパーミラーをDC及びRFスパッター装置によりレプリカ鏡に成膜し、特性X線及びSPring-8の硬X線ビームラインを用いて反射率の測定を行った。スーパーミラーの新たな設計法を見出し、性能向上を図った。3.硬X線検出器の開発、NASA/GSFCはCdZnTe半導体を用いた撮像型検出器の開発を進めているが、我々はシンチレーションカウンターによる硬X線の撮像型検出器の開発を始めた。4.望遠鏡の設計と製作望遠鏡の鏡筒を設計・製作し、反射鏡を組み込んで結像性能の評価を行ったところ、ASTRO-Eと同程度の性能が得られた。
KAKENHI-PROJECT-09044071
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ニューロカインによる末梢侵害受容機構の修飾
健常ラットを用いた実験では、感覚神経を支持している細胞が放出する神経栄養因子のひとつが、熱疼痛閾値を低下させている可能性が示唆された。また、侵害刺激後にドップラー血流計で血流変化をとらえることができ、新たな末梢神経機能解析方法として疼痛研究領域で応用が期待される。健常ラットを用いた実験では、感覚神経を支持している細胞が放出する神経栄養因子のひとつが、熱疼痛閾値を低下させている可能性が示唆された。また、侵害刺激後にドップラー血流計で血流変化をとらえることができ、新たな末梢神経機能解析方法として疼痛研究領域で応用が期待される。19年度には科学研究費補助金でパッチクランプ記録のために必要なセットアップの一部を追加し、より効率的に電気生理学的実験を進めることができるようになった。1)「逆向性染色法」による足底皮膚・筋に分布する神経の同定これまでに同様の方法で内臓感覚神経の同定は確立できているが、足底に分布する体性感覚神経の同定に関しては、まだ安定した結果が出ていない状況である。染色物質の注入部位、確認時期の検討も行っている。また、投与する注射針をさらに細く(30G)するなど、足底皮膚・筋に分布する神経の同定方法に改善を加え、比較的安定した結果が得られはじめている。2)パッチクランプ記録による侵害受容器における痛覚受容に関わる受容体・イオンチャネル、特にカプサイシン受容体を含め、その性質を明らかにした。pH感受性の容量依存性、熱閾値、カプサイシンの濃度依存性を中心に検討した。カプサイシン感受性感覚神経を用いて、パッチクランプ記録を行なっているが、マウス培養後根神経節細胞(感覚神経)を用いた実験では、酸(プロトン)に対する反応から、異なるpHに反応する数種類の酸感受性が認められており、虚血組織、炎症組織でのこれらの感覚神経・イオンチャネルの関与が示唆される。現在、ニューロカイン投与による影響を検討中である。3)行動実験も並行してはじめている。足底にCNTFを投与したあとの変化を機械刺激と熱刺激に対する反応を観察し、現在検討中である。現在までの結果では、CNTF存在下で熱痛覚過敏を起こすようである。神経障害性疼痛の原因としてグリアの関与が注目されてきており、グリアが侵害受容器の感作に影響を与えている可能性があるのではないかと考え実験を行った。シュワン細胞は繊維芽細胞増殖因子(FGF)を初め、多くの栄養因子(ニューロトロフィン)は、損傷した神経線維に働きかけ生存と再生に作用することがわかっている。すでに神経栄養因子である神経成長因子(NGF)や脳由来神経栄養因子(BDNF)が、神経損傷モデルにおいて神経の過敏性亢進にかかわるとする報告がされている。しかし、シュワン細胞が産生するCNTFに関しては一次感覚神経への作用は未知の部分が多く、いまだ痛みにかかわる研究はわれわれの知る限り見当たらない。平成20年度は、行動実験を中心に行った。CNTFを投与した行動実験足底にCNTFを局所投与した後の痛覚閾値変化を、機械刺激と熱刺激を行い測定した。健常ラットを用いた実験で、温熱痛覚過敏に関しては、CNTF投与後に疼痛閾値の低下を引き起こす可能性が示唆された。拮抗薬による、閾値再の変化に関してはまだ調査の余地がある。このほかに、痛覚過敏における末梢神経機能を解析する方法として、新たに末梢神経の神経伝達物質分泌能に着目し、ドップラー血流計を用いた末梢神経分泌機能の解析を行った。侵害刺激後にドップラー血流形で測定される血流増加を認め、同時に測定した疼痛スケールも増加しており、比較的低侵襲で客観的に末梢神経機能の状態が解析できそうであり(日本ペインクリニック学会第42回大会発表)、新たな末梢神経機能解析方法として期待される。最近、神経損傷後の修復過程においてシュワン細胞が産生するニューロトロフィンのひとつFGFが、疼痛に関与することが報告された。神経障害性疼痛の発症メカニズムにおいて、軸索-グリア関連は益々重要視されてきていおり、CNTFもこれらの痛覚過敏の一機序になっているかもしれない。
KAKENHI-PROJECT-19591814
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19591814
視聴覚音声知覚中の脳内処理過程~母語・加齢・聴覚障害の影響~
本研究では、これまでの行動データ(音韻判断課題の正答率や反応時間、McGurk効果の生起率)で示唆されてきた日本人の視聴覚音声知覚の特殊性について、どのような処理によるものか、反応時間、時間分解能に優れた事象関連電位、視線計測を用いて総合的に検討してきた。今年度は、これまでに示唆された視覚情報入手の言語差について、いつごろから現れるのか、日本語環境下の乳幼児を対象にフレーズによる視聴覚音声刺激を用いて検討した。最近の英語圏の乳児を対象とした研究から、視聴覚音声知覚時の選択的注視部位(目元・口元)について、4ヵ月齢でみられる目元への注意が8、10ヵ月齢にかけて口元にシフトし、12ヵ月齢では、目元と口元を同程度注視するようになることが報告されていた(Lewkowics & Hansen-Tift,2012)。しかし、本研究結果から日本語環境下の乳幼児では、英語環境下で報告されたような明瞭な口元への注視時間の増大が見られないことが明らかになった。Lewkowics & Hansen-Tift(2012)は、48ヵ月にみられる口元への選択的注意のシフトについて、母語獲得のために視覚情報を積極的に取り入れようとするためと考えているが、この過程については言語間で異なる可能性が示された。日本語は英語に比べて、視覚から得られる音声情報が少なく、このことが日本語環境下での視覚情報の重要性を低くしているのかもしれないことが考えられた。また、このような言語間にみられた発達の違いが、若年者での視聴覚音声知覚の言語差を生み出した可能性が示唆された。今年度は、さらに人工内耳装用者の視聴覚音声知覚過程についても検討を行った。その結果、視覚情報の利用度合いが大きいほど(視覚情報付加による反応時間短縮)、後頭領域での陰性シフトが大きく現れることが示唆された。本研究で得られた知見(視覚情報依存と脳活動との対応性)は、アウトプットができない被験者(例えば小児など)でも適用できる点において重要な意義があると考える。本研究では、視聴覚音声知覚について外から観察できる行動データと外から観察できない脳活動データ(事象関連電位:ERP)から、日本人の視聴覚音声処理過程について検討してきた。これまでに、従来、英語母語話者で報告されている傾向とは異なる日本人に特有な視聴覚音声知覚過程があることが分かり(Hisanaga,Sekiyama,Igasaki, & Murayama,2009)、さらにその過程は加齢によって変化する傾向があることを捉えていた(Hisanaga, Sekiyama, Igasaki,& Murayama, 2010)。本研究では、19チャンネル電極キャップを使用しているが、音声刺激に対する電位変化は正中線上(Cz)で明瞭に捉えられることから、これまではCzの分析を中心に行ってきた。今年度は、まず、視覚情報の影響を反映する後頭領域(O1、O2)の分析を含め、19チャンネルすべての電極について再検討を行った。その際、これまで注目されていなかった音声生成に伴う視覚情報がすでに存在している音声開始前についても分析を行った。その結果、音声開始前に後頭領域での陰性電位が両言語間で確認された。しかし、音声開始以降に関して言語間の差異がみられ、英語母語話者では、この影響が持続的に見られたのに対して、日本人では一過的であることが明らかになった。また、加齢に伴う聴力低下によって視覚情報依存度が高まる高齢者でも同様の分析を行ったところ、高齢者では英語母語話者と同様の傾向が、さらに持続的にみられることが明らかになった。音声知覚にどのような視覚情報を取り入れているのか、視線計測から検討した結果、英語母語話者、日本人の高齢者に共通して、日本人の若年者よりも口元への注視時間が明らかに長いことが確認された。以上から、補完的に収集した視線データもERPデータと整合するものであることが分かり、これらの指標を併用することの有用性が明らかとなった。本研究では、これまでの行動データ(音韻判断課題の正答率や反応時間、McGurk効果の生起率)で示唆されてきた日本人の視聴覚音声知覚の特殊性について、どのような処理によるものか、反応時間、時間分解能に優れた事象関連電位、視線計測を用いて総合的に検討してきた。今年度は、これまでに示唆された視覚情報入手の言語差について、いつごろから現れるのか、日本語環境下の乳幼児を対象にフレーズによる視聴覚音声刺激を用いて検討した。最近の英語圏の乳児を対象とした研究から、視聴覚音声知覚時の選択的注視部位(目元・口元)について、4ヵ月齢でみられる目元への注意が8、10ヵ月齢にかけて口元にシフトし、12ヵ月齢では、目元と口元を同程度注視するようになることが報告されていた(Lewkowics & Hansen-Tift,2012)。しかし、本研究結果から日本語環境下の乳幼児では、英語環境下で報告されたような明瞭な口元への注視時間の増大が見られないことが明らかになった。Lewkowics & Hansen-Tift(2012)は、48ヵ月にみられる口元への選択的注意のシフトについて、母語獲得のために視覚情報を積極的に取り入れようとするためと考えているが、この過程については言語間で異なる可能性が示された。日本語は英語に比べて、視覚から得られる音声情報が少なく、このことが日本語環境下での視覚情報の重要性を低くしているのかもしれないことが考えられた。
KAKENHI-PROJECT-11J02002
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J02002
視聴覚音声知覚中の脳内処理過程~母語・加齢・聴覚障害の影響~
また、このような言語間にみられた発達の違いが、若年者での視聴覚音声知覚の言語差を生み出した可能性が示唆された。今年度は、さらに人工内耳装用者の視聴覚音声知覚過程についても検討を行った。その結果、視覚情報の利用度合いが大きいほど(視覚情報付加による反応時間短縮)、後頭領域での陰性シフトが大きく現れることが示唆された。本研究で得られた知見(視覚情報依存と脳活動との対応性)は、アウトプットができない被験者(例えば小児など)でも適用できる点において重要な意義があると考える。今年度は、これまで得られた脳波データについて、母語・加齢の影響に関するデータを徹底的に解析することを主眼とし、また、すでに収集済みのデータを補完するために視線計測実験をおこなった。その結果、ERPデータからは、これまで注目されていなかった後頭領域での電位変化から、言語間の差異、加齢による変化を捉えることができた。補完的に収集した視線データもERPデータと整合するものであることが分かり、今後、これらの指標を併用することの有用性が明らかになった。以上から、今年度は、乳幼児募集のためのリーフレット作成からのスタートであり、すぐに実験を始めることができなかったため、今後も継続してデータ収集を行う予定である。これまでに、ERPデータから、日本人特有の視聴覚音声知覚中の視覚情報の影響を確認できたことから、最終年度は、研究テーマにも挙げている聴覚障害により人工内耳を装用している方を対象とし研究を進める予定である。最終年度は、上記の経験を生かし、聴覚障害の影響に関して研究を展開できると考える。
KAKENHI-PROJECT-11J02002
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J02002
出産後の女性の心理・社会的構造と育児問題の関連および家族支援の構築に関する研究
本研究は、平成12年2月から平成14年8月までに5回の縦断的調査を行った。第1回の調査は、妊娠後期と産褥早期の女性計1490名に質問紙を配付し、1150名より回収した(回収率77%)。その後、継続調査に同意の得られた参加者460名(40%)を対象に調査を行った。第1回から5回までの各時期の対象者の背景は、初産婦が5456%、経産婦4446%であった。有職者は2030%、核家族は約80%であった。計画妊娠の者は約45%、計画外が約20%であった。第1回から5回までの調査結果から以下のことが明らかになった。1.妊娠後期と産褥早期の女性の心理社会的状態は類似したパターンを示した。特に、情緒的側面の「いらいら」は妊娠後期に多く、産褥早期では心身疲労の「疲労感」「起床時すっきりしない」が多かった。2.出産後1ヶ月から2年後までの心理社会的状態では、夫のサポートである「育児への協力」「家事への協力」「側にいてほしい」や、ボディイメージの「容姿が気になる」「体重が気になる」が強かった。3.妊娠後期、産褥早期の心理社会的状態はその後の状態と有意に関連があった。すなわち、妊娠期や産褥後期に心配の強い者は、その後の心配も高くなることが明らかとなった。4.妊娠、出産後の女性の心理社会的状態には、計画妊娠の有無やセルフエスティームが関連していた。計画外の妊娠だった者、セルフエスティームの低い者は心配も強かった。本調査結果から、女性の多様なニーズへのサポートと夫婦関係の調整の重要性が示唆された。本研究は、平成12年2月から平成14年8月までに5回の縦断的調査を行った。第1回の調査は、妊娠後期と産褥早期の女性計1490名に質問紙を配付し、1150名より回収した(回収率77%)。その後、継続調査に同意の得られた参加者460名(40%)を対象に調査を行った。第1回から5回までの各時期の対象者の背景は、初産婦が5456%、経産婦4446%であった。有職者は2030%、核家族は約80%であった。計画妊娠の者は約45%、計画外が約20%であった。第1回から5回までの調査結果から以下のことが明らかになった。1.妊娠後期と産褥早期の女性の心理社会的状態は類似したパターンを示した。特に、情緒的側面の「いらいら」は妊娠後期に多く、産褥早期では心身疲労の「疲労感」「起床時すっきりしない」が多かった。2.出産後1ヶ月から2年後までの心理社会的状態では、夫のサポートである「育児への協力」「家事への協力」「側にいてほしい」や、ボディイメージの「容姿が気になる」「体重が気になる」が強かった。3.妊娠後期、産褥早期の心理社会的状態はその後の状態と有意に関連があった。すなわち、妊娠期や産褥後期に心配の強い者は、その後の心配も高くなることが明らかとなった。4.妊娠、出産後の女性の心理社会的状態には、計画妊娠の有無やセルフエスティームが関連していた。計画外の妊娠だった者、セルフエスティームの低い者は心配も強かった。本調査結果から、女性の多様なニーズへのサポートと夫婦関係の調整の重要性が示唆された。本研究の目的は、妊娠後期及び産褥早期の女性を対象に出産後2年間の心理・社会的状況と育児に対する意識等を縦断的に追跡し、それらに関連する要因の分析、家族支援モデルを構築するものである。本年度の実施は下記の通りである。1.研究方法と測定用具の決定:(1)方法::測定用具a.妊娠末期、産褥期の質問紙の作成-産褥期母親の心配尺度質問紙(丸山作成)、b.エジンバラ産褥うつ調査票(Cox,Holden&Sagovsky,1987)、c.ローゼンバーグのセルフェスティーム質問紙(Rosenberg,1965)(2)対象の選択:a.妊娠末期(妊娠28週以降)の妊婦、産褥早期入院中の女性を対象に、研究に参加の同意の得られた妊婦695名、褥婦795名合計1490名に自記式質問紙を配布した。2.協力施設の選択:札幌市内の産科婦人科専門病院4施設、総合病院の産科4施設、及び札幌市以外の道内5ヶ所で、総合病院の産科4施設、産科婦人科専門病院3施設に調査依頼を行った。3.データ収集は、妊婦の場合は、外来受診時に手渡し、自宅で記載した後郵送法によって回収した。産褥早期産褥婦の場合は、産褥3,4日頃に配布し、記載後看護室に留め置きとした。3月末までに回収予定である。4.現在、回収中であり、回答について随時コンピューター入力を行っている。本研究の目的は、妊娠後期および産褥早期の女性を対象に出産後2年間の心理・社会的状況と育児に対する意識等を縦断的に追跡し、それらに関連する要因の分析、家族支援モデルを構築するものである。本年度の実施は以下の通りである。
KAKENHI-PROJECT-11672380
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出産後の女性の心理・社会的構造と育児問題の関連および家族支援の構築に関する研究
1.昨年度1490名に質問紙を配付し、1150名より回答が得られた。そのうちデータのそろっている1011名(妊婦370名、褥婦641名)について分析を行い、その成果を日本女性心身医学会に報告した。また、本結果について論文掲載予定である。2.回収の得られた1150名のうち、継続調査に同意の得られた460名について、産後1ヶ月および7,8ヶ月時に継続調査を行った。産後1ヶ月時については分析を行い、日本女性心身医学会に報告した。本結果についても現在論文掲載予定である。3.現在7,8ヶ月時の調査結果についてデータ入力中である。4.結果の概要は、妊婦は心理的・情緒的心配の側面が強く、褥婦は心身疲労が強かった。両群とも夫のサポートやボディイメージへの関心は強かった。また、計画していなかった妊娠群に心配が強い傾向が示唆された。5.質問紙の心配の内容および自由記載のうち、何らかのコンタクトをとる必要があると判断した対象については、電話や手紙によってその状況を把握しながら相談に対応している。6.12年8月には対象者のために大学においてグループ面談を2回行った。1回5,6人が参加した。7.対象者の要望により電話相談日時を設け、さらにグループ面談を行う予定である。現在も電話相談や必要時直接個人面談も行っている。本研究の目的は、妊娠後期および産褥早期の女性を対象に出産後2年間の心理・社会的状況と育児に対する意識等を縦断的に追跡し、それらに関連する要因の分析、家族支援モデルを構築するものである。本年度の実施は以下の通りである。1.本調査の継続調査に同意の得られた460名を対象に産後1年から1年3ヶ月時点で質問紙調査を行った。その結果、209名(回収率46;0%)から回答が得られた。主な内容は、今までの心理社会的側面、身体的側面に加え、月経、避妊、子育てに関する事項を加え、さらに精神健康状態を把握するためにGHQを用いた。これらのデータについて現在分析中である。2.本調査の札幌在住の方を対象に小集団「カルガモの会」をつくり(12年度2回開催)、13年度は6月と11月に2回の会合をもった。各1417名の出席によって日頃の疑問や子どもへの接し方、研究結果の概要報告等を行い、有意義だったという好評な結果を得ている。3.現在、対象者の産後約2年目にあたる3月から4月の最終調査の準備中である。4.質問紙の心配の内容および自由記載のうち、何らかのコンタクトをとる必要があると判断した対象については、電話や手紙によってその状況を把握しながら相談に対応している。本研究は、平成12年2月から平成14年8月までに5回の縦断的調査を行った。第1回の調査は、妊娠後期と産褥早期の女性計1490名に質問紙を配付し、1150名より回収した(回収率77%)。その後、継続調査に同意の得られた参加者460名(40%)を対象に調査を行った。第1回から5回までの各時期の対象者の背景は、初産婦が5456%、経産婦4446%であった。有職者は2030%、核家族は約80%であった。計画妊娠の者は約45%、計画外が約20%であった。第1回から5回までの調査結果から以下のことが明らかになった。1.妊娠後期と産褥早期の女性の心理社会的状態は類似したパターンを示した。特に、情緒的側面の「いらいら」は妊娠後期に多く、産褥早期では心身疲労の「疲労感」「起床時すっきりしない」が多かった。2.出産後1ヶ月から2年後までの心理社会的状態では、夫のサポートである「育児への協力」「家事への協力」「側にいてほしい」や、ポディイメージの「容姿が気になる」「体重が気になる」が強かった。3.妊娠後期、産褥早期の心理社会的状態はその後の状態と有意に関連があった。すなわち、妊娠期や産褥後期に心配の強い者は、その後の心配も高くなることが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-11672380
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視覚系の動き検出処理に学ぶ各画素が連続的な時間軸をもつ実像処理
通常の動画像処理では離散的な画像列に対して処理が行われているのに対し,ヒト視覚系では受光細胞ごとに信号を時間連続的に扱うという点が大きく異なっている.本研究では,実在する像を時間連続的に処理する「実像処理」と呼ぶ,新たな手法を構築することを目的とした.シミュレーションにより時空間的錯視(仮現運動)を再現することができ,実像処理の有効性を確認した.また,実像処理を実現するハードウェア神経回路モデルと移動物体の速度推定アルゴリズムの設計法について検討した.本研究では,視覚系における優れた動き検出能力の要因の1つとして,受光細胞ごとに信号を時間連続的に扱うという点に着目し,実在する像を時間連続的に処理する「実像処理」と呼ぶ手法を構築することを目的とする.このため,1コンピュータを用いたソフトウェアエミュレーションによる実像処理の有効性の検証,2神経回路の側面からヒトの時空間的な情報処理のメカニズムの解明,3実像処理をリアルタイムで行うためのハードウェア実現方法の開発を行う.本年度は以下の成果が得られた.1実像処理を行うエミュレータの構築についてはおおよそのプログラミングが終了した.また,移動体追跡実験に用いるためのパンチルトヘッドの仕様について検討した.2明るさ知覚の際に生じる錯視現象(シュブルール錯視)に関して,これまでは時間変動のない定常的な振舞いを回路モデルで再現してきた.本年度は明るさの境界部分が時間的に変動する(移動する)際に,回路モデルがシュブルール錯視を再現可能かどうかを回路シミュレータSPICEで調べた.その結果,明るさが高速に動いてもシュブルール錯視込みで回路モデルはその境界を知覚可能であることが示された.3網膜上では受光素子ごとに独立な連続時関係として処理が行われているが,このうち動き検出をとりあげ,受光素子ごとに独立・連続時関係において動き検出を行うアルゴリズムを,回路的な実現可能性の観点から再検討し,オペアンプを用いる積分回路と微分回路を組み合わせた回路構成で実現可能なピーク検出型のアルゴリズムが適しているとの結論を得た.通常の動画像処理では離散的な画像列に対して処理が行われているのに対し,ヒト視覚系では受光細胞ごとに信号を時間連続的に扱うという点が大きく異なっている.本研究では,実在する像を時間連続的に処理する「実像処理」と呼ぶ,新たな手法を構築することを目的とした.シミュレーションにより時空間的錯視(仮現運動)を再現することができ,実像処理の有効性を確認した.また,実像処理を実現するハードウェア神経回路モデルと移動物体の速度推定アルゴリズムの設計法について検討した.本研究では,視覚系における優れた動き検出能力の要因の1つとして,受光細胞ごとに信号を時間連続的に扱うという点に着目し,実在する像を時間連続的に処理する「実像処理」と呼ぶ手法を構築することを目的とする.このため,1コンピュータを用いたソフトウェアエミュレーションによる実像処理の有効性の検証,2神経回路の側面からヒトの時空間的な情報処理のメカニズムの解明,3実像処理をリアルタイムで行うためのハードウェア実現方法の開発を行う.本年度は以下の成果が得られた.1エミュレータの構築において,網膜における順応の空間特性及び充填処理部分をGPUにより高速化した.順応の空間特性については,画像と低周波フィルタをFFT処理し,掛け合わせた後逆変換することで,充填処理については,CG法を用いて高速化を図った.2神経活動を電子回路で模擬的に再現するには,ニューロン・シナプスモデルを設計しそれらの結合系を実現する必要がある.具体的には中枢パターン発生器と呼ばれる生体リズムを生成する仮定された神経ネットワークモデルを構築した.このネットワークモデルではニューロンモデル間をつなぐ抑制性シナプスモデルの電圧源に乾電池が用いられるがその数が膨大となるため,小型化の検討が必要であった.今回,乾電池,DC-DCコンバータ,フォトカプラの3つの特性を比較し,神経ネットワークモデルにおける情報伝達特性の観点からは,フォトカプラが最良であることが分かった.3網膜上では受光素子ごとに独立な,連続時間系として処理が行われているが,この処理のうち動き検出をとりあげ,受光素子ごとに独立・連続時間系において動き検出処理を行うアルゴリズムとして,頂点検知法と自己相関関数法の両者を,外乱に対する安定性の観点から比較検討した.その結果,自己相関関数法では外乱が加わった場合でも非常に良好な動き検出が可能であることが示された.本研究では,視覚系における優れた動き検出能力の要因の1つとして,受光細胞ごとに信号を時間連続的に扱うという点に着目し,実在する像を時間連続的に処理する「実像処理」と呼ぶ手法を構築することを目的とする.このため,1コンピュータを用いたソフトウェアエミュレーションによる実像処理の有効性の検証,2神経回路の側面からヒトの時空間的な情報処理のメカニズムの解明,3実像処理をリアルタイムで行うためのハードウェア実現方法の開発を行う.本年度は以下の成果が得られた.1正弦波,余弦波状の2種の刺激間に30ms程度のグレー画像を挿入するだけで,知覚する運動方向が逆転する仮現運動錯視を構築したエミュレータを用いて実像処理した結果,シーンの特徴が視覚野に送られる時点で実際の逆方向運動と同様の出力になっているという結論を得た.これに関連して,ヒト視覚系ではものを知覚するときに30ms程度の時間で眼球が跳躍運動(サッケード)することが知られている.実像処理を考える場合サッケードを考慮することが必要との着想に至り,これを測定するための研究にも着手した.2昨年度は,一次元の輝度を階段状に変えた複数の領域を並べた際に,ホタテ貝のように立体的に見えるシュブルール
KAKENHI-PROJECT-24500247
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24500247
視覚系の動き検出処理に学ぶ各画素が連続的な時間軸をもつ実像処理
錯視をニューロンとシナプスのアナログ電子回路モデルを用いてシミュレートしたが,今年度は入力が動的に(時間的に)変化する際にもシュブルール錯視が再現できることを示した.3画素間の連続時間系での時間相関を用いる動き検出では,アルゴリズムの実像での検証のために、スマートフォン上で動作するアプリケーションを試作し,相関関数を用いるアルゴリズムで実像での動き検出が可能であることを実証した.生体工学1実像処理を行うエミュレータの構築についてはおおよそのプログラミングが終了した.2回路シミュレータで設計した側抑制型ニューラルネットワークを用いて,時間的に変動する明るさ知覚をシュブルール錯視込みで再現することに成功した.また,情報の伝達効率を上げるため,ニューロンモデル間をつなぐ抑制性シナプスモデルにおいてフォトカプラを導入した.3受光素子ごとに独立・連続時関係において動き検出を行うアルゴリズムを,回路的な実現可能性の観点から再検討し,オペアンプを用いる積分回路と微分回路を組み合わせた回路構成で実現可能なピーク検出型のアルゴリズムが適しているとの結論を得た.1エミュレータ構築については,構成される処理のなかでも処理時間を要する部分のGPUによる実装に目処が立った.2神経回路については,神経系の情報伝達特性の観点から考察したが,消費エネルギー特性の観点からの分析は今後の課題.特に神経システムにおける情報伝達の効率性は,低消費エネルギーのもとでの大量情報処理,という観点から調べられねばならない.3ハードウェア実現方法については,独立・連続時間系での動き検出処理アルゴリズムについて検討し,自己相関関数法では外乱が加わった場合でも非常に良好な動き検出が可能であることが示された.それぞれの研究者が以下の方策を推進しつつ,互いの成果について議論し連携を図る.1構築したエミュレータを用いて,時間の連続性を考慮したシミュレーション方法について検討する.また,実験に用いるパンチルトヘッドに関して,回転速度の制御が可能な製品を検討する.2フォトカプラの導入により,削減すべき消費エネルギーが逆に上昇した可能性がある.これを評価することは今後の課題である.また,実際の回路を構築し,「時間的に変化するシュブルール錯視」の再現を試みる.3決定した独立・連続時関系におけるピーク検出型の動き検出アルゴリズムを,オペアンプを用いるアナログ回路でシミュレーション,および実装し,その動作検証,および外来ノイズに対する耐性などの検証を行う.それぞれの研究者が以下の方策を推進しつつ,互いの成果について議論し連携を図る.1本年度検討した処理以外の残された処理を高速化を図りつつプログラム上で構築する.構築したエミュレータを用いて,時間の連続性を考慮したシミュレーション方法について検討する.
KAKENHI-PROJECT-24500247
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24500247
南北貿易における資源環境政策と動学的貿易利易の研究
本研究の目的は、天然資源以外に然したる収入源を持だない経済が、長期にわたって存続し続けることができるかどうかを理論的に解明することであった。採掘された天然資源を工業国に売って生活していくだけでは、自国経済の持続可能性の確保がおぼつかないような途上国が、将来に向けて自活の道を採る手だてを考えることは自然な成り行きであるが、果たしてその持続は本当に可能であろうか。3年間にわたる研究で用いた分析モデルは、(1)再生可能資源とその他の物的資本という2種類のストック変数を考える、(2)それらを用いて生産される複合計を消費および投資活動に利用する、および(3)ストックの増減量に不確実性を導入する、という特徴を持っている。(1)は、天然資源は如何に再生可能であれ、いずれは枯渇することを前提にしなければ、経済学的な分析にはなじまない(枯渇する可能性がゼロであるとわかっておれば、各時点での採掘量の多寡こそ気にはなるが、持続可能性には問題がなくなる)と考えられるので、枯渇する前に、資源を他の物的な資本に移し替えておく必要性を理論的表現するための装置である。また、(2)は当該経済が最適に運営されているという条件の下に持続可能性を検証するために、生産された財を消費と物的資本蓄積のための投資に適切に振り分けることを保証するためである。さらに、(3)については2種類の不確実性を考えた。ストック変数の時間の経過に伴う変化が連続的である場合と、離散的な場合とである。前者はブラウン運動を、後者はポワソン過程を用いてモデル化した。ストックの大きさを現在時点では確実に把握していて、1期先のストックはごく少量の増減を被るということがわかっている経済でも、遠い将来になれば増減の幅を極めて大きく捉えざるを得ないという状況を表現するにはブラウン運動が最適である。一方、目立った変化は時々刻々起こるのではなく、忘れた頃にやってくるが、増減の幅と次の変化までの間隔は一定ではなくまちまちである状況を表すために複合ポアソン分布を考えた。主な研究成果として、(1)不確実性がない場合、すなわち上記(3)を想定しなければ、当該経済に定常状態が存在すること、(2)資源ストックに不確実性を導入すると、最適採掘量は不確実性がない場合より少なくなるが、最適な資源消費量は変わらないこと、(3)不破実性下の資源経済が破綻する確率および生き延びる確率に関する命題を打ち立てることができたことである。本研究の目的は、天然資源以外に然したる収入源を持だない経済が、長期にわたって存続し続けることができるかどうかを理論的に解明することであった。採掘された天然資源を工業国に売って生活していくだけでは、自国経済の持続可能性の確保がおぼつかないような途上国が、将来に向けて自活の道を採る手だてを考えることは自然な成り行きであるが、果たしてその持続は本当に可能であろうか。3年間にわたる研究で用いた分析モデルは、(1)再生可能資源とその他の物的資本という2種類のストック変数を考える、(2)それらを用いて生産される複合計を消費および投資活動に利用する、および(3)ストックの増減量に不確実性を導入する、という特徴を持っている。(1)は、天然資源は如何に再生可能であれ、いずれは枯渇することを前提にしなければ、経済学的な分析にはなじまない(枯渇する可能性がゼロであるとわかっておれば、各時点での採掘量の多寡こそ気にはなるが、持続可能性には問題がなくなる)と考えられるので、枯渇する前に、資源を他の物的な資本に移し替えておく必要性を理論的表現するための装置である。また、(2)は当該経済が最適に運営されているという条件の下に持続可能性を検証するために、生産された財を消費と物的資本蓄積のための投資に適切に振り分けることを保証するためである。さらに、(3)については2種類の不確実性を考えた。ストック変数の時間の経過に伴う変化が連続的である場合と、離散的な場合とである。前者はブラウン運動を、後者はポワソン過程を用いてモデル化した。ストックの大きさを現在時点では確実に把握していて、1期先のストックはごく少量の増減を被るということがわかっている経済でも、遠い将来になれば増減の幅を極めて大きく捉えざるを得ないという状況を表現するにはブラウン運動が最適である。一方、目立った変化は時々刻々起こるのではなく、忘れた頃にやってくるが、増減の幅と次の変化までの間隔は一定ではなくまちまちである状況を表すために複合ポアソン分布を考えた。主な研究成果として、(1)不確実性がない場合、すなわち上記(3)を想定しなければ、当該経済に定常状態が存在すること、(2)資源ストックに不確実性を導入すると、最適採掘量は不確実性がない場合より少なくなるが、最適な資源消費量は変わらないこと、(3)不破実性下の資源経済が破綻する確率および生き延びる確率に関する命題を打ち立てることができたことである。本研究の目的は、環境資源を利用して作られる製品の輸出国による貿易政策が、環境保全におよぼす影響について主に貿易パターンの決定と要素賦存比率の関係との関連から動学モデルを用いて分析することであるが、初年度はまず、動学分析の基礎となる資源経済モデルの構築と資本蓄積過程の分析を行った。
KAKENHI-PROJECT-16530118
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16530118
南北貿易における資源環境政策と動学的貿易利易の研究
1.再生可能資源の採取以外に産業を持たない経済が、物的資本の蓄積をつうじて生産能力を高め、資源採取からあがる収益だけにたよる場合に比べて、資源を移用して作られた製品の販売量と、資源量および資本量の長期的な行方を分析した。具体的には、採取された再生可能資源と物的資本を使って作られた製品の一部を市場で販売し、残りを資本蓄積のための投資に回している国を考え、資源の保有者が市場での製品販売収益から資源採取の費用を引いた利潤の割引現在価値を最大にするように、各時点での採取量と販売量をコントロールするという最適化問題を考えた。結果として、この経済には、定常状態が存在することを証明することができた。その特徴は、各期の最適資源採取量は資源のその期の再生量に等しく、各期の製品販売量はその期の製品生産量に等しくなるというものである。さらに、資源と製品の生産技術に不確実性を導入して分析を拡張した。結果は、不確実性のために、最適な採取量、販売量の時間経路は一般的には、単調ではなく、資源および資本ストックの変化に合わせて増減することになるが、一定の条件のもとで、この経済は不確実性が介在しない場合に比べてより慎重な資源・経済運営を行うことが証明できた。2.上記1のモデルで導入された不確実性は資源ストックが時間の経過において連続的に変化するようなタイプのものであったが、資源ストックの変化はある時点で不連続なジャンプを示すと考えるほうがより現実的であるかも知れない。原油のような枯渇性資源の採掘可能量は、かつては30年しかもたないと考えられたが、その後の確認埋蔵量はその予想を覆した。また、新たな油脈の発見だけではなく、既存の油田が地下水などの浸潤により当初の資源利用可能量の減少をもたらす可能性もある。いずれも、ある程度の時間の経過の後に確認できる事象である。よって、上記1のモデルをジャンプ・プロセスを含んだものに拡張することには大きな意義がある。今年度の研究では、ポワソン過程を導入して、各種の経済変数の最適経路がジャンプの影響をどのように受けるかを分析した。ただし、分析の都合上、目的関数は資源保有者の製品販売利潤ではなく、資源経済全体の消費の効用水準の割引現在価値にした。結果として、消費経路は資本ストックの線形関数、資源採取量は資源ストックの線形関数になり、両者は互いに独立に決定されることがわかった。本研究の目的は、環境資源を利用して作られる製品の輸出国による貿易政策が、環境保全におよぼす影響について主に貿易パターンの決定と要素賦存比率の関係との関連から動学モデルを用いて分析することである。昨年度、動学分析の基礎となる資源経済モデルの構築と資本蓄積過程の分析を行ったが、今年度も基本的には同じ方向性の研究を行い、新しい結果を得た。従来、資源ストックに関わる理論分析で不確実性を導入する場合には、時間の経過とともにストックが連続的に変化するようなタイプのものだけであったが、以前から考えていた資源ストックの大きさが時々不連続なジャンプを示すような場合の分析をさらに押し進めた。昨年度の研究で、すでにポワソン過程を導入して、各種の経済変数の最適経路がジャンプの影響をどのように受けるかを分析したが、今年度は、最終的に資源ストックがゼロあるいは最低限必要なある正の値を割り込む確率、あるいは反対にいつまでたってもそのような値を割り込むことがない確率について、何か確定的なことがいえるかどうかを検討した。また、単一の資源ストックを複数の採掘/採取者が利用することを想定し、彼らが協調して採掘に当たる場合と、非協力的な採掘を行う場合とを比較した。
KAKENHI-PROJECT-16530118
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