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対称性破壊型配位集積化による多孔性ゲルの創製
また、直線型のMOPを用いいた研究も展開した。その研究の過程で、直線型MOPが溶媒によって様々な集積状態を取りうることを明らかにし、またその集積状態によって吸着特性が大きく変化することを見出した。この成果はCheimcalScience誌に発表した。当初の予定どおり、金属錯体多面体を用いてゲルを合成することに成功した。特に、熱力学的に安定な状態ではゲル化はおこらずコロイド粒子が生成し、速度論的に安定な状態を経由することでコロイド粒子が結合したコロイドネットワークを形成し、その結果としてゲル化が起こることが明らかになった。最終的に合成されたゲルは超臨界二酸化炭素で処理することによりエアロゲル化することが可能であり、吸着特性を測定したところ完全にアモルファスな金属錯体材料にもかかわらず、マイクロ孔に由来する吸着現象を示すことがわかった。これは、結晶性PCP/MOFと似たような物性であるが、アモルファス材料で見られた初めての例である。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。今後は、MOPに非対称性を導入する方法の開発を行う必要がある。また吸着特性もPCP/MOFと比較するとかなり小さくその吸着能を向上させることが大きな課題であるといえる。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-17H05367
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-17H05367
米国における学校法人の多元化―チャータースクールと私立学校の比較を焦点に―
本研究では、学校法人の組織特性を三点から解明した。第一は、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)の理論的分析である。その第二が、教員の同僚性を体現した教員団体の歴史類型分析である。第三が、学校法人の組織活動の中核に位置付くカリキュラム・マネジメントの事例分析である。特に、社会関係資本分析では、理論的原型であるロバート・パットナム、ピエール・ブルデュー、ジェームズ・コールマンの理論的性格を比較し、学校組織改革へ示唆する論点を明確にした。また、アメリカの教員団体の歴史類型では、産業別組合主義、専門職組合主義、新組合主義やsocial jusitice unionismへと進化したことを示した。学校法人は法人ボランタリズムを実体化した組織であり、その組織的特質の究明が本研究の目的である。米国には、伝統的な学校法人である私立学校のみならず、チャータースクールという公共学校法人が、全米で5,600校(2011-2012学年度)設置され、質的に進化を遂げてきた。本研究の第2年度は、チャータースクールと私立学校を比較するために、具体的テーマを二つ設定した。その一つが、法人ボランタリズムの起源であるアカデミー(academy)の分析である。アカデミーの歴史研究から得られた知見は二つである。教育史家であったクレミン(E.A. Cremin)が、「法人学校(corporate school)」とアカデミーを定義し、ハイスクールとの競合を問題にしたこと。次に、中等学校改革をリードしてきたサイザー(Th. Sizer)も注目し、アカデミーを公教育機関であり同僚組織(collegiate organization)であったと再評価していたことである(The Age of the Academies, 1964)。3年間の研究プロジェクトの最終年度として、チャータースクールや私立学校というボランタリーな学校法人を特徴付ける社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)について、理論的な分析をおこなった。その成果は、日本教育社会学会『教育社会学研究』(第94集)に「社会関係資本のエートス論」と題した論文として公表した。同論文では、まず、ジェームズ・コールマン、ロバート・パットナム、ピエール・ブルデューという代表的な社会関係資本論の理論的特質を析出した。その上で、それらの理論と「学びの共同体」論などの教育理論との接点を明らかにして、ハビトゥスや心の習慣の再評価と関わる教育学の理論的課題を提示した。もう一つの研究実績は、学校マネジメントの核心に位置付くカリキュラム・マネジメントの分析をおこなったことである。初等中等学校であるチャータースクールや私立学校だけでなく、それと接続する大学のカリキュラム・マネジメントにも視野を広げて分析をすすめた。その成果の一端は、「学部カリキュラムの考え方と全体像」(『キャリアデザイン学への招待』ナカニシヤ出版に所収)として公刊した。同論文では、カリキュラムのシークエンスとスコープの設計だけでなく、実社会や学生生活との接続、及び学生履修のルールや組織的な履修支援の重要性を指摘した。後二者は、初等中等学校においても、教える側の設計思想だけでなく、学習者の行動特性も視野に収めた複眼的視点を持たねば、カリキュラムの実像に迫れないことを提起するものである。以上が、具体的成果をともなった研究実績であるが、シカゴ大学が設置運営する三つのチャータースクールを現地調査したことも申し添えておきたい。大学がいかに初等中等学校の学校改革に関わるかという点で、示唆に富む先進事例であるからである。本研究では、学校法人の組織特性を三点から解明した。第一は、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)の理論的分析である。その第二が、教員の同僚性を体現した教員団体の歴史類型分析である。第三が、学校法人の組織活動の中核に位置付くカリキュラム・マネジメントの事例分析である。特に、社会関係資本分析では、理論的原型であるロバート・パットナム、ピエール・ブルデュー、ジェームズ・コールマンの理論的性格を比較し、学校組織改革へ示唆する論点を明確にした。また、アメリカの教員団体の歴史類型では、産業別組合主義、専門職組合主義、新組合主義やsocial jusitice unionismへと進化したことを示した。本研究の目的は、法人ボランタリズムの組織的特質の究明である。法人ボランタリズム(corporate voluntarism)とは、教育社会史研究者のマイケル・B・カッツが、米国の公教育組織化を史的究明するなかで析出した学校組織の理念型である。1990年代以降のアメリカには、チャータースクールと私立学校という2種類の学校法人が実在する。本研究では、この2つの学校法人を新と旧の法人ボランタリズムと捉えた上で、両者の分析を通じて法人ボランタリズムの解明をおこなうことになった。本年度はチャータースクールと私立学校を比較する研究の初年度である。そこで、前者では従来と異なる視点や最近の注目すべき事例を探索すること(研究実施計画(1))、後者では基礎的な情報を収集し整理すること(同(2))、を研究の重点とした。(1)の成果は、教員団体のチャータースクールへの対応という視点を持ち込み、教員団体の産業別組合主義から専門職主義への組織変化がその対応を規定すると推定できたことである。この推定は、教育官僚制(学区労使協調体制)の一角を占める教員団体がチャータースクールに敵対するという通説を覆し、この協調体制を進化させる柔軟な対応の諸事実を説明可能にする(『教育学研究』第79巻2号所収の書評論文を参照)。(2)の計画は、今世紀に入っても私立学校の過半を占めるカトリック学校(catholic schools)に対象を絞り、その組織的分析に資する情報を収集・整理し始めた段階にとどまる。
KAKENHI-PROJECT-23531085
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23531085
米国における学校法人の多元化―チャータースクールと私立学校の比較を焦点に―
少ない知見の一つを挙げれば、全国カトリック教育連盟の現地調査を通じて、20世紀中頃に比して生徒数が半減し、ヒスパニックなどのマイノリティ生徒も増加する中で、カトリック学校が質的な転換(transformation)を迫られるなかで、その組織的近代化を模索している事実をつかんだことである。第2年度に入り、現状の比較分析を進めるなかで、この両者が組織特性として、いかなる共通基盤をもつかを究明する必要を自覚した。そこで、本研究申請時の計画になかったアカデミーの歴史研究を開始した。アメリカ教育史を再検討し、チャータースクールの共同設立者でもあるサイザーの著作も読み直し、彼の学校改革像の原点がアカデミーであることを確認した。加えて、アカデミーの史的系譜を探るために、英国私立学校史の研究者であるウォルフォード(G. Walford)の著作を参照し、また、日本における英国私立学校史研究を調べ、ウォリントン・アカデミーの事例(三時眞貴子『イギリス都市文化と教育』2012年)も発見した。次に、チャータースクールと私立学校の現状比較では、まず、Council for American Private Education、Center for Education Reform等が提供するマクロ・データの整理を行った。この全米データを踏まえて、学校改革の先進州であるカリフォルニア州に焦点を絞りデータと事例の分析を進めた。カリフォルニア教育に関する大学間研究ネットワーク(Policy Analysis for California Education)の調査研究を探索し、CMOと学校の実態に関しては、California Charter School Assoiciationの年次集会に参加し、聞きとり等を実施した。なお、研究の達成度を「やや遅れている」と自己評価した理由は、以上の歴史及び現状の分析を、中間報告の論文ないしは研究ノートとして公表できなかったからである。研究費交付決定の遅れや3.11震災の影響から、夏休みに予定した現地調査が行えず、これが春休みまでずれ込んでしまった。しかも、春休み調査は諸般の事情から期間を短縮して実施せざるを得なかった。言い換えれば、本年度の研究のかなりの部分を、文献やインターネットを通じた間接的な調査に費やさざるを得なかった。それゆえ、間接情報に基づく推定や、興味ある諸事実は確認したが、これを裏付け掘り下げて論文にするまでには至っていない。25年度は本研究の最終年度であり、アカデミーとカリフォルニア州のCMOに研究の焦点を絞る。まず、アカデミー研究では、米国の歴史的実体としてのアカデミーを、サイザーやカッツ(M. B. Katz)などの先行研究を踏まえて、その学校組織特性を解明する。と同時に、アカデミーの現代的意義を明らかにするために、英国におけるアカデミーを検討する。その検討は歴史だけでなく、今日的な事態についても最小限おこなう。
KAKENHI-PROJECT-23531085
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23531085
放射線感受性に寄与するヌクレアーゼの同定と解析
がんの治療には放射線や抗がん剤が使用されます。放射線も抗がん剤もDNAに傷をつけることで、がん細胞を死に導きます。しかし、細胞はDNAの傷を修復する能力を持っているので、そちらが勝ればがん細胞は生き延びてしまいます。DNA修復に関わる遺伝子の機能を明らかにすることで、抗がん剤の効果を高める戦略を立てることが可能です。この研究では放射線やある種の抗がん剤により生じたDNA損傷の修復因子と、その作用メカニズムを明らかにしました。また、新規の抗がん剤(PARP阻害剤)の新たな作用メカニズムを明らかにしました。がんの治療には放射線や抗がん剤が使用されます。放射線も抗がん剤もDNAに傷をつけることで、がん細胞を死に導きます。しかし、細胞はDNAの傷を修復する能力を持っているので、そちらが勝ればがん細胞は生き延びてしまいます。DNA修復に関わる遺伝子の機能を明らかにすることで、抗がん剤の効果を高める戦略を立てることが可能です。この研究では放射線やある種の抗がん剤により生じたDNA損傷の修復因子と、その作用メカニズムを明らかにしました。また、新規の抗がん剤(PARP阻害剤)の新たな作用メカニズムを明らかにしました。ヌクレアーゼはDNA切断酵素の総称である。放射線治療においては、DNAに傷をつけることで、複製盛んな細胞に対して細胞死を誘導しているが、DNAに傷がついた際に、DNAの断端の修飾(ゴミのようなもの)を除去するのもヌクレアーゼである。そういったヌクレアーゼ機能を抑制することができれば、DNAの傷が修復されにくく、細胞はより死にやすくなると考えられる。私は、放射線照射後のDNA断端修復に関わるヌクレアーゼの特定や、機能解析を行う目的で研究費申請を行った。研究の過程で、新規抗がん剤であるPARP阻害剤も、DNAの断片にゴミ(この場合PARP:核内に豊富に存在する、DNA修復に関わるタンパク質)をつけることで、細胞死を誘導する事を発見し、2012年Cancer Researchに報告した。その後の研究で、新規PARP阻害剤(BMN 673)が現存するPARP阻害剤の中で、最もDNA断端にPARPを強固に結合させることを発見し、論文発表した。またこれらの発見を元に、PARP阻害剤と他剤併用療法における、合理的な組み合わせについて論文発表した。現在、DNA断端修飾除去にかかわるヌクレアーゼとして、一つが有力な候補を特定し、放射線やPARP阻害剤の抗がん作用に寄与するかを研究している。放射線も抗がん剤もDNAに傷をつけることで、がん細胞を死に導く。しかし、細胞にはDNA修復能力を持つので、DNA修復が正常であれば、ある程度の損傷に対しては耐性となる。がん細胞はゲノムの欠失や変異のため、しばしばDNA修復に欠損がある。DNA修復に関わる遺伝子の機能を明らかにすることで、抗がん剤の効果を高める戦略を立てることが可能となる。研究者は放射線や、ある種の抗がん剤で生じるDNA断端の修復酵素TDP1 (tyrosyl-DNA phosphodiesterase)の機能について昨年報告した。本年度は、研究者が留学中の2012年に報告した、PARP阻害剤の新規抗がんメカニズム(PARP-DNA複合体形成)について、研究を発展させた。PARP阻害剤はDNA修復因子としてのPARPの酵素阻害による抗がん作用をもつ、と考えられていた。しかし、我々が5種類の臨床で使用されているPARP阻害剤について検討したところ、酵素阻害活性はほぼ同等であるにも関わらず、抗がん効果に1,000倍以上の差があることに気づいた。この差が生まれるメカニズムは、PARP阻害剤の種類により、PARP-DNA複合体を形成する作用が大きく異なるからであった。申請者らの発見により、PARPの酵素阻害活性では説明のつかなかった、PARP阻害剤間の効果の違いを明確にできた。また、この発見を元に、合理的なPARP阻害剤の他剤併用両方についても研究したところ、これまで相乗作用が知られていたPARP阻害剤+トポイソメラーゼ阻害剤、PARP阻害剤+テモゾロマイドについて、相乗作用のメカニズムが異なる事を明らかにした。アメリカ国立衛生研究所との共同研究により、CCLE, NCI60といった、がんビックデータベースを用いて、耐性に関わる遺伝子を探索し、一つの遺伝子の同定に至った。現在その遺伝子の機能を鋭意研究中である。DNA断端の修飾を修復するヌクレアーゼの特定であるが、主に抗がん剤PARP阻害剤によって生じる、DNA-PARP複合体の除去にかかわるヌクレアーゼに絞って研究を行っている。アメリカで治験中のPARP阻害剤5種類すべてがDNA-PARP複合体を形成する訳ではない。私は、より強固にDNA-PARP複合体を形成するPARP阻害剤、BMN 673を特定し論文発表した。ヌクレアーゼを欠損させた複数のDT40細胞をもちいて、DNA-PARP複合体を形成しないPAPR阻害剤VS形成するPARP阻害剤への感受性(死にやすさ)を比較する事で、欠失しているヌクレアーゼのDNA-PARP複合体除去への貢献度を明らかにできた。現在候補を一つにしぼっており、今後このヌクレアーゼが実際どのようにDNA-PARP複合体除去に働くかを、生化学的、生物学的手法を併せて検討する。このヌクレアーゼが放射線によるDNA断端修復にも寄与するかも検討する。申請内容とは少し外れるが、PARP阻害剤のDNA-PARP複合体形成能力にもとづいて、合理的な他剤併用療法について研究し、論文発表した。
KAKENHI-PROJECT-25740016
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25740016
放射線感受性に寄与するヌクレアーゼの同定と解析
このように、PARP阻害剤や放射線の抗がん作用に寄与する因子について研究成果がでている。現在特定できているヌクレアーゼは、既知のものであるが、DNA-PARP複合体除去や放射線によるDNA断端修復に関わるかは明らかになっていない。今後このヌクレアーゼが実際どのようにDNA-PARP複合体除去に働くかを、生化学的、生物学的手法を併せて検討する。ガン細胞の大規模データが利用可能なので、このヌクレアーゼや他の候補ヌクレアーゼについて、抗がん剤感受性への寄与度を検討したい。また、ゲノム編集ができる時代になっているので、このヌクレアーゼや他の候補ヌクレアーゼについて、ノックアウト細胞を作成し、抗がん剤感受性への寄与度を検討したい。PARP阻害剤は日本ではまだ無名なものの、アメリカではフェーズ3まで進んでいる抗がん剤である。将来的に日本にも導入される可能性は高いので、日本のがん研究のため、PAPR阻害剤の作用メカニズム、特に耐性メカニズムについて研究を進めていきたい。
KAKENHI-PROJECT-25740016
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25740016
MVR-PCR分析による民族特異的アリルの同定とその系統進化に関する研究
ミニサテライトDNAの繰り返し単位内の変異をマッピングするMVR-PCR法を用いて318個の血縁関係のない日本人のMS32のアリルを分析したところ、異なるアリルは302種類検出された。ドットマトリックス法によってホモロジーの分析をしたところ、75.5%のアリルがそれぞれ部分的に特定のリピートで配列を共有する31のグループに分けられた。分類したアリルを並べてみると、5′末端で各アリルのリピート配列は異なっているが、3′末端に近づくにつれて類似した配列を多く持つようになり、このミニサテライトの5′末端付近の突然変異が膨大な多形性をもたらしたのであろうと推察された。また、Prof.Jeffreysより供与されたCaucasianやAfricanなどの他の人種・民族のアリルデータベースを合わせて、同様に分類して比較したところ、グループ内のアリル相互のホモロジーが極めて高く、殆ど単一の人種・民族のアリルで構成されるものと、数十個の複数の異なる人種・民族のアリルがサブグループを形成しながら、全体にはホモロジーの緩やかな大きなグループを構成するものの2つに大別された。さらに、MS32と同程度の高変異ミニサテライトであるMS31Aにおいても、同様に日本人アリルの分析をおこなった。3種類のアリル特異的MVR-PCRによって149個のアリルをマッピングしたところ、異なるアリルが147種類検出され、99.99%以上の高いヘテロ接合度を示したが、17.4%のアリルは全長50リピート程度の比較的短いものであり、これらの殆どが酷似したリピート配列を持ち、Caucasianのアリルには見られないものであった。このグループのアリルの突然変異率は高くないことが予想され、これらのアリルはMS32において示されたアリルの突然変異率がフランキング領域の制御を受けていることを、違うローカスで採る貴重な資料となるものと予想された。このように、MS32およびMS31アリルのMVR-PCRによるマッピングは民族特異性や相互の関連性について極めて有力な情報を与える遺伝マーカーになり得るものと期待された。ミニサテライトDNAの繰り返し単位内の変異をマッピングするMVR-PCR法を用いて318個の血縁関係のない日本人のMS32のアリルを分析したところ、異なるアリルは302種類検出された。ドットマトリックス法によってホモロジーの分析をしたところ、75.5%のアリルがそれぞれ部分的に特定のリピートで配列を共有する31のグループに分けられた。分類したアリルを並べてみると、5′末端で各アリルのリピート配列は異なっているが、3′末端に近づくにつれて類似した配列を多く持つようになり、このミニサテライトの5′末端付近の突然変異が膨大な多形性をもたらしたのであろうと推察された。また、Prof.Jeffreysより供与されたCaucasianやAfricanなどの他の人種・民族のアリルデータベースを合わせて、同様に分類して比較したところ、グループ内のアリル相互のホモロジーが極めて高く、殆ど単一の人種・民族のアリルで構成されるものと、数十個の複数の異なる人種・民族のアリルがサブグループを形成しながら、全体にはホモロジーの緩やかな大きなグループを構成するものの2つに大別された。さらに、MS32と同程度の高変異ミニサテライトであるMS31Aにおいても、同様に日本人アリルの分析をおこなった。3種類のアリル特異的MVR-PCRによって149個のアリルをマッピングしたところ、異なるアリルが147種類検出され、99.99%以上の高いヘテロ接合度を示したが、17.4%のアリルは全長50リピート程度の比較的短いものであり、これらの殆どが酷似したリピート配列を持ち、Caucasianのアリルには見られないものであった。このグループのアリルの突然変異率は高くないことが予想され、これらのアリルはMS32において示されたアリルの突然変異率がフランキング領域の制御を受けていることを、違うローカスで採る貴重な資料となるものと予想された。このように、MS32およびMS31アリルのMVR-PCRによるマッピングは民族特異性や相互の関連性について極めて有力な情報を与える遺伝マーカーになり得るものと期待された。
KAKENHI-PROJECT-07670486
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07670486
沿岸域における生態系保全のための次世代型水質予測手法の開発
わが国の水質シミュレーションは、始まった頃には水質を環境基準に適合させる施策を得るためになされていたが、その後は富栄養化防止を対象になされてきている。本来、水質の評価は水質自体の評価に加えて生態系への影響についてもなされるべきであるが、そこまでには至っていない。また、水質は種々の外的条件に支配されるので外的条件の変動の特性を予測結果に反映させるべきであるが、現状ではそうなっていない。さらに、水質予測の基本となる水質データも瞬間のポイント値がある空間、ある時間の平均値の代わりとして利用されているという矛盾を抱えている。本研究はこのような状況に鑑み、生態系に対する水質の影響を確率的に予測する手法とデータの空間平均値取得方法の開発を目的とした。得られた結果は以下の通りである。生態系に対する水質の影響を確率的に予測する手法を開発するために、外部要因に水質が大きく支配される水域を対象に検討した。第一に東京湾の青潮の発生を風向、温度躍層の生成を要素としエネルギーの輸送伝達により推定した。その結果、数値解析により推定された結果を幅広く包含する予測が可能となった。第二に宍道湖の貧酸素水塊の発生を中海から宍道湖への塩水侵入の確率と結びつけることに成功した。美保湾から中海への塩水侵入は美保湾での低気圧の通過による海面上昇と結びつけられる。第三に博多湾での長期連続観測結果をもとに博多湾の密度躍層下での貧酸素水魂の発生をはじめて確認し、密度躍層下の層厚、昼間の日射量、植物プランクトンと底質による酸素消費速度により貧酸素水塊の発生確率密度関数を表示し得た。さらに、データの空間平均値取得方法を開発するために、開水面上の大気と水面直下の二酸化炭素と一酸化二窒素をそれぞれ測定し、乱流物質輸送仮定下で気散率より平均濃度を推定する方法を開発した。今年度は、博多湾を対象として、生態系を保全することを目的とした水質予測モデルの構造および素過程の決定とモデル中の変数、係数を決定するための予備調査を行った。現時点では、モデル構造を多層水平2次元とし、底質中も同様にしている。水中での構成要素は、デトリタス(懸濁態有機炭素・懸濁態有機窒素・懸濁態有機りん)、溶存態有機物質、植物プランクトン、動物プランクトン、バクテリアとし、底質中ではバクテリアによる反応のみとしている。次年度の調査結果により、バクテリアを要素とするか否かを決定することにしている。今年度の調査結果によると、博多湾ではデトリタス中の炭素は1-2mg/L、溶存態のものは3-4mg/Lであり、デトリタスと溶存態とを分けて扱わなければならないことを明らかにした。ク-ロメトリーによる生分解性試験の結果、デトリタスはやや分解しやすい傾向にあることが判明した。底質の酸素消費速度も室内試験により推定し、10mg/m^2/dのオーダーであることを確認した。一点サンプリングのばらつきを減少させるために、空間平均値を得ることができるようにして、モニタリングの精度を向上させるための新しい方法として、大気への輸送フラックスを直接測定する方法を試みた。現在、測定可能な項目は、CO_2、N_2Oに限られているが、利用可能である見通しを得ることができた。ただ、周辺に高い構造物があると気流中の乱れが定常状態にならず、しかも鉛直方向濃度分布も定常に至らないために濃度分布の発達過程を仮定せざるを得ない弱点があることが判明した。わが国の水質シミュレーションは、始まった頃には水質を環境基準に適合させる施策を得るためになされていたが、その後は富栄養化防止を対象になされてきている。本来、水質の評価は水質自体の評価に加えて生態系への影響についてもなされるべきであるが、そこまでには至っていない。また、水質は種々の外的条件に支配されるので外的条件の変動の特性を予測結果に反映させるべきであるが、現状ではそうなっていない。さらに、水質予測の基本となる水質データも瞬間のポイント値がある空間、ある時間の平均値の代わりとして利用されているという矛盾を抱えている。本研究はこのような状況に鑑み、生態系に対する水質の影響を確率的に予測する手法とデータの空間平均値取得方法の開発を目的とした。得られた結果は以下の通りである。生態系に対する水質の影響を確率的に予測する手法を開発するために、外部要因に水質が大きく支配される水域を対象に検討した。第一に東京湾の青潮の発生を風向、温度躍層の生成を要素としエネルギーの輸送伝達により推定した。その結果、数値解析により推定された結果を幅広く包含する予測が可能となった。第二に宍道湖の貧酸素水塊の発生を中海から宍道湖への塩水侵入の確率と結びつけることに成功した。美保湾から中海への塩水侵入は美保湾での低気圧の通過による海面上昇と結びつけられる。第三に博多湾での長期連続観測結果をもとに博多湾の密度躍層下での貧酸素水魂の発生をはじめて確認し、密度躍層下の層厚、昼間の日射量、植物プランクトンと底質による酸素消費速度により貧酸素水塊の発生確率密度関数を表示し得た。さらに、データの空間平均値取得方法を開発するために、開水面上の大気と水面直下の二酸化炭素と一酸化二窒素をそれぞれ測定し、乱流物質輸送仮定下で気散率より平均濃度を推定する方法を開発した。
KAKENHI-PROJECT-07555465
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07555465
沿岸域における生態系保全のための次世代型水質予測手法の開発
わが国の水質シミュレーションは、始まった頃には水質を環境基準に適合させる施策を得るためになされていたが、その後は富栄養価防止を対象になされてきている。本来、水質の評価は水質自体の評価に加えて生態系への影響についてもなされるべきであるが、そこまでには至っていない。また、水質は種々の外的条件に支配されているので外的条件の変動の特性を予測結果に反映させるべきであるが、現状ではそうなっていない。さらに、水質予測の基本となる水質データも瞬間のポイント値がある空間、ある時間の平均値の代わりとして利用されているという矛盾を抱えている。本研究はこのような状況に鑑み、生態系に対する水質の影響を確率的に予測する手法とデータの空間平均値取得方法の開発を目的とした。得られた結果は以下の通りである。生態系に対する水質の影響を確率的に予測する手法を開発するために、外部要因に水質が大きく支配される水域を対象に検討した。第一に東京湾の青潮の発生を風向き、温度躍層の生成を要素としエネルギーの輸送伝達により推定した。その結果、数値解析により推定された結果を幅広く包含する予測が可能となった。第二に宍道湖の貧酸素水塊の発生を中海から宍道湖への塩水侵入の確立と結びつけることに成功した。美保湾から中海への塩水侵入は美保湾での低気圧の通過により海面上昇と結びつけられる。第三に博多湾での長期連続観測結果をもとに博多湾の密度躍層下での貧酸素水塊の発生をはじめて確認し、密度躍層下の層厚、昼間の日射量、植物プランクトンと低質による酸素消費速度により貧酸素水塊の発生確率密度関数を表示し得た。さらに、データの空間平均値取得方法を開発するために、開水面上の大気と水面直下の二酸化炭素と一酸化二窒素をそれぞれ測定し、乱流物質輸送仮定下で気散率より平均濃度を推定する方法を開発した。
KAKENHI-PROJECT-07555465
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07555465
細胞内亜鉛制御による関節リウマチの新規治療戦略の確立
マウス関節炎モデル(CIA)では、足関節の軟骨におけるMTF-1ならびにMMP-3のmRNA発現の亢進を認めた。一方、軟骨特異的ZIP8過剰発現マウス、ならびに軟骨特異的MT-1/2欠損マウスではCIAの明らかな悪化を認めなかった。また、マウスナイーヴヘルパーT細胞をTh17条件下で培養した際、亜鉛トランスポーターのmRNA発現と細胞内亜鉛濃度変化との関連は明らかではなかった。また、MT-1/2ノックダウンによるヘルパーT細胞分化に明らかな影響は認められなかった。以上より、マウス関節炎ならびにヘルパーT細胞分化において、亜鉛トランスポーターは有意な役割を果たしていないと考えられた。1.マウス関節炎モデルに関しては、野生型マウスにおけるコラーゲン誘導性関節炎(CIA)の系が安定した。また、足関節軟骨・滑膜・リンパ節のmRNA抽出のセットアップが終了し、免疫組織染色、ならびにFluoZin-3によるZn2+濃度の解析はセットアップ中である。軟骨特異的ZIP8トランスジェニックマウス(Col2A1-Zip8 TG)は交配により個体数が確保され、CIAの予備実験を開始するとともに、軟骨特異的MTF1欠損マウス(Col2A1 Cre-Mtf1 KO)の交配を開始した。軟骨特異的MT-1/2欠損マウス(Col2A1 Cre-Mt KO)ならびにT細胞特異的MT-1/2欠損マウス(CD4 Cre-Mt KO)を作成準備中である。2.野生型マウス脾細胞よりナイーヴCD4陽性T細胞を単離し、Th0/Th17/Treg条件下で培養した際、Th17分化において複数の亜鉛トランスポーター(ZNT1-10、ZIP1-14)の発現が増強されることを見出し、その確認、経時的変化、ならびに細胞内Zn2+濃度変化との関連を解析中である。また、MT-1/2のノックダウンベクターを作成済みである。CIAの発症率および発症までの期間が安定せず、試薬の変更などにより系が安定するまでに時間を要した。研究計画1:マウス関節炎モデル(CIA)が確立し、足関節の軟骨におけるMTF-1ならびにMMP-3のmRNA発現の亢進を認めた。一方、軟骨特異的ZIP8過剰発現マウスでは、現時点でCIAの明らかな悪化を認めず、条件の調整を行っている。また軟骨特異的MT-1/2欠損マウスは現在作成中である。研究計画2:マウス脾細胞より単離したナイーヴヘルパーT細胞をTh17条件下で培養した際、複数の亜鉛トランスポーターのmRNA発現が増強されることを見出し、その経時的変化を確認した。一方、細胞内Zn2+濃度変化との関連は明らかではなかった。また、MT-1/2ノックダウンによるTh17分化に明らかな影響は認められず、現在条件を調整中である。研究計画3: CIAの滑膜組織あるいはリンパ節では、明らかな亜鉛トランスポーター発現の増強は認められなかった。CIAのセットアップに時間が掛かった。またin vitro/in vivoともに予想と異なる結果が得られた。研究計画1:マウス関節炎モデル(CIA)が確立し、足関節の軟骨におけるMTF-1ならびにMMP-3のmRNA発現の亢進を認めた。一方、軟骨特異的ZIP8過剰発現マウスではCIAの明らかな悪化を認めなかった。また軟骨特異的MT-1/2欠損マウスにおいても関節炎に関連する明らかな表現型を認めなかった。研究計画2:マウス脾細胞より単離したナイーヴヘルパーT細胞をTh17条件下で培養した際、複数の亜鉛トランスポーターのmRNA発現が増強されることを見出し、その経時的変化を確認した。一方、細胞内Zn2+濃度変化との関連は明らかではなかった。また、MT-1/2ノックダウンによるTh17分化に明らかな影響は認められなかった。研究計画3: CIAの滑膜組織あるいはリンパ節では、明らかな亜鉛トランスポーター発現の増強は認められなかった。以上より、マウス関節炎ならびにヘルパーT細胞分化において、亜鉛トランスポーターは有意な役割を果たしていないことが明らかとなった。マウス関節炎モデル(CIA)では、足関節の軟骨におけるMTF-1ならびにMMP-3のmRNA発現の亢進を認めた。一方、軟骨特異的ZIP8過剰発現マウス、ならびに軟骨特異的MT-1/2欠損マウスではCIAの明らかな悪化を認めなかった。また、マウスナイーヴヘルパーT細胞をTh17条件下で培養した際、亜鉛トランスポーターのmRNA発現と細胞内亜鉛濃度変化との関連は明らかではなかった。また、MT-1/2ノックダウンによるヘルパーT細胞分化に明らかな影響は認められなかった。以上より、マウス関節炎ならびにヘルパーT細胞分化において、亜鉛トランスポーターは有意な役割を果たしていないと考えられた。CIA発症後の組織における亜鉛関連遺伝子発現には変動が認められ、関節炎病態における亜鉛制御機構の関与が示唆される。セットアップに時間は要したが、計画通りで研究を遂行したい。必ず条件設定の実験を行う。条件設定を最適化しても予想外の部分については、研究の方向性を柔軟に修正し、準備したマウス・ベクターで新規知見が得られるよう、研究計画を立てる。リウマチ膠原病学・免疫学マウス関節炎モデルとその解析のセットアップに時間を要し、本年度実施計画の一部が次年度実施予定となったため。CIAの実験系は確立したものの、ZIP8過剰発現マウスで明らかなCIAの悪化を認めず、またCIAの滑膜組織における亜鉛トランスポーターの発現増強が認められなかった。
KAKENHI-PROJECT-15K09521
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K09521
細胞内亜鉛制御による関節リウマチの新規治療戦略の確立
これにより、CIAを用いたin vivo解析が不適当である可能性が示唆され、予定されていた先の実験を保留としている。Th17分化における亜鉛濃度制御に重要な亜鉛トランスポーターZNT/ZIPを絞り込み、MTとともにベクターの作成・マウスの作成を進め、それらの関節炎病態における役割を明らかとする。条件設定によりCIAにおける亜鉛トランスポーターの役割が示せる場合には予定通りの実験の費用にあてる。示せない場合には、他の関節炎モデルを用いる実験の費用にあてるか、またはin vitroのTh17分化に焦点を絞り、RNAシークエンスならびに分子生物学的手法を用いた実験に費用をあてることにより、亜鉛を介したTh17分化制御機構を明らかとする。
KAKENHI-PROJECT-15K09521
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ドイツ語圏におけるイメージ学の包括的研究ー修辞学・政治的図像学・技術的イメージー
本研究の目的は、ドイツ語圏における「イメージ学」の動向を修辞学・政治的図像学・技術的イメージという三つの観点から整理することであり、それを受けて領域横断的なイメージ理論とそれを補助するイメージ・データーベースの構築を目指す。近年、美術史や人類学、認知科学などにおいてイメージという対象は広く注目を集めているが、本研究ではイメージから観者への力動的作用に注目する修辞学的なアプローチを採用することで、伝統的に行われてきたイメージ分析とは異なる立場を打ち出す。さらに、このような方法論を政治と自然科学という2つの領域において応用していくことで、現代のイメージ研究の様々な論点を深めていく。本研究の目的は、ドイツ語圏における「イメージ学」の動向を修辞学・政治的図像学・技術的イメージという三つの観点から整理することであり、それを受けて領域横断的なイメージ理論とそれを補助するイメージ・データーベースの構築を目指す。近年、美術史や人類学、認知科学などにおいてイメージという対象は広く注目を集めているが、本研究ではイメージから観者への力動的作用に注目する修辞学的なアプローチを採用することで、伝統的に行われてきたイメージ分析とは異なる立場を打ち出す。さらに、このような方法論を政治と自然科学という2つの領域において応用していくことで、現代のイメージ研究の様々な論点を深めていく。
KAKENHI-PROJECT-19J22916
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19J22916
戦後日本の旧軍人復員制度に関する歴史学的実証研究
本科研費採択初年度における2018年度は本研究課題で扱う主要な一次資料である元軍人軍属短期在職者協力協会の資料群の概要整理を行った。資料の種別毎に分類の上、主題別に仮目録を作成し、資料の残存状況の把握とともに今後の資料の詳細目録作成の上で必要なキーワードを抽出し、次年度以降の資料整理作業の方針を策定した。また復員援護制度に関係する行政文書の所蔵状況について、地方自治体の文書館等の現地調査を行った。申請者自身の研究環境が今年度より現在の所属元となったことに伴い大幅に変更することを余儀なくされたため、資料の保管方法とデータ作成作業手順の見直しを行ったため、予定していた目録作成作業に遅れが生じた。昨年度の作業の遅延解消のため、資料整理作業手順と目録作成方針を変更し、まだデジタル化を行っていない紙資料群については概要整理にとどめ、デジタルデータに加工済の資料を中心に内容確認と目録作成を優先的に進めることとする。本科研費採択初年度における2018年度は本研究課題で扱う主要な一次資料である元軍人軍属短期在職者協力協会の資料群の概要整理を行った。資料の種別毎に分類の上、主題別に仮目録を作成し、資料の残存状況の把握とともに今後の資料の詳細目録作成の上で必要なキーワードを抽出し、次年度以降の資料整理作業の方針を策定した。また復員援護制度に関係する行政文書の所蔵状況について、地方自治体の文書館等の現地調査を行った。申請者自身の研究環境が今年度より現在の所属元となったことに伴い大幅に変更することを余儀なくされたため、資料の保管方法とデータ作成作業手順の見直しを行ったため、予定していた目録作成作業に遅れが生じた。昨年度の作業の遅延解消のため、資料整理作業手順と目録作成方針を変更し、まだデジタル化を行っていない紙資料群については概要整理にとどめ、デジタルデータに加工済の資料を中心に内容確認と目録作成を優先的に進めることとする。
KAKENHI-PROJECT-18K12509
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量子化学計算を用いたグルコース環構造変換過程の網羅的解明とセルラーゼの分子設計
本研究の目的は、グルコースの環構造変換過程を量子化学的計算手法を用いて明らかにすることである。グルコースの環変換過程は地球儀上の緯度と経度の値を用いたClemer-Popleのパラメータにより表記することが出来る。本研究の成果として、Clemer-Pople図の北極部に相当するイス型4C1構造からねじれ配座を経て、南極部のイス型構造である1C4に至る多くの経路とその遷移状態を求めることが出来た。グルコースに関し、このような環変換経路の網羅的な解析はこれまでになく、今後のセルロース利用の基礎情報として重要な成果である。本研究の目的は、グルコースの環構造変換過程を量子化学的計算手法を用いて明らかにすることである。グルコースの環変換過程は地球儀上の緯度と経度の値を用いたClemer-Popleのパラメータにより表記することが出来る。本研究の成果として、Clemer-Pople図の北極部に相当するイス型4C1構造からねじれ配座を経て、南極部のイス型構造である1C4に至る多くの経路とその遷移状態を求めることが出来た。グルコースに関し、このような環変換経路の網羅的な解析はこれまでになく、今後のセルロース利用の基礎情報として重要な成果である。本研究は、グルコースの環構造変換過程の全貌を、量子化学的計算手法を用いて明らかにすることを目的とするものである。この研究は糖の中で最もポピュラーなグルコースについて、未だに明確でないグルコース環の立体配座について定量的に明らかにするもので、糖化学の最も基本的な基礎情報を与えるものとして学術的に重要であるのみならず、実用的にも低炭素化社会実現に向けてのグリーンエネルギーの実用化研究の一つである、セルロースを酵素分解してエネルギー資源として利用する際の酵素設計や反応の効率化等を図る上で重要である。今年度は平成22年度の研究計画に基づき、グルコースの最も典型的な環構造である^4C_1から"ねじれ配座"に至る網羅的な環変換経路を探索した。これまでに^4C_1からねじれ配座のBやSに至る3本の環変換過程を得ているが、その他の経路についてはまだ探索中である。これまでの中間結果では、他の変換過程は前回の経路に比べエネルギー値が高いという予想となっている。^4C_1からの全経路探索に並行して、"ねじれ構造"についての系統的なエネルギー値の計算とその環変換過程の探索も進めている。さらに、平成23年度の研究計画にある、ねじれ配座からもう一つのイス型構造である^1C_4に至る経路とその構造についても検討を開始した。これらについては、遷移状態におけるエネルギー障壁の高さについて探索を進めており、これまでに^1C_4から^0S_2に到る経路と、その遷移状態を見出すことに成功している。今後は、前回見出した^4C_1から^2S_0に到る経路と、今回の^1C_4から^0S_2に到る経路とを結ぶ経路についても探索を進める予定である。本研究は、グルコースの環構造変換過程の全貌を、量子化学的計算手法を用いて明らかにすることを目的とするものである。この研究は糖の中で最もポピュラーなグルコースについて、未だに明確でないグルコース環の立体配座について定量的に明らかにするもので、糖化学の最も基本的な基礎情報を与えるものとして学術的に重要であるのみならず、実用的にも低炭素化社会実現に向けてのグリーンエネルギーの実用化研究の一つである、セルロースを酵素分解してエネルギー資源として利用する際の酵素設計や反応の効率化等を図る上で重要である。今年度は平成23年度の研究計画に基づき、グルコースの環変換過程を地球儀状に表すことのできる、Clemer-Pople図の南半球部分における環変換過程について検討した。すなわち、ねじれ配座からもう一つのイス型構造である1C4に至る経路とその構造、さらに遷移状態におけるエネルギー障壁の高さを求めた。その結果、新たに3本の経路が見出された。また、環の配座転移は4C1から"ねじれ配座"に至る環変換経路のみではなく、"ねじれ配座"間の転移も存在する。すなわち、、Clemer-Pople図で説明すると、φ=180のB3,oから、赤道面を通ってφ=210の1S3へ至るような経路である。このような変換経路については現在解析中であり、次年度の研究計画とあわせてグルコースの環変換過程の全解明を完成させる。本研究は、グルコースの環構造変換過程の全貌を、量子化学的計算手法を用いて明らかにすることを目的とするものである。この研究は糖の中で最もポピュラーなグルコースについて、未だに明確でないグルコース環の立体配座について定量的に明らかにするもので、糖化学の最も基本的な基礎情報を与えるものとして学術的に重要であるのみならず、実用的にも低炭素化社会実現に向けてのグリーンエネルギーの実用化研究の一つである、セルロースを酵素分解してエネルギー資源として利用する際の酵素設計や反応の効率化等を図る上で重要である。今年度は研究計画の最終年度としてこれまでの研究の総括を行った。グルコースの環変換過程はClemer-Popleにより地球儀状に表記されているが、そのClemer-Pople図の北半球部分から南半球部分における環変換過程について多数の経路を見出すことが出来た。
KAKENHI-PROJECT-22500272
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22500272
量子化学計算を用いたグルコース環構造変換過程の網羅的解明とセルラーゼの分子設計
すなわち、グルコースの環変換過程について3年間の研究で北極部に相当するイス型4C1構造からねじれ配座を経て、南極部のイス型構造である1C4に至る多くの経路と構造及びその遷移状態におけるエネルギー障壁の高さなどを求めることが出来た。また、環の配座転移は4C1から“ねじれ配座“に至る環変換経路のみではなく、“ねじれ配座“間の転移も見出した。Clemer-Pople図で説明すると、φ=180のB3,oから、赤道面を通ってφ=210の1S3へ至るような経路であり、これらを総合してグルコース環変換の主要な経路を見出すことが出来た。このような変換経路の情報を実用的な課題へと発展させる試みとして、セルラーゼ酵素に基質として捕えられたグルコースの構造と今回求めた遷移状態の構造との関係解明を海外共同研究者であるコーネル大学のProf. Bradyとの協力で継続していく。平成23年度の研究計画にある、ねじれ配座からもう一つのイス型構造である1C4に至る経路については新たに3本の経路が見出され、計画以上の進展を見た。一方、4C1から"ねじれ配座"に至る環変換経路については現在解析中であるため、概ね順調とした。24年度が最終年度であるため、記入しない。まずは、昨年度に得られたイス型構造である1C4に至る経路についての結果を論文にまとめ公表する。その後、研究計画どおりに、まずは4C1から"ねじれ配座"に至る環変換経路について解析を行い、その経路を明らかにする。また、予定しているセルラーゼ酵素の設計や反応の効率化を図ることを目的とした分子改変の計算を、これまですでに求めている遷移状態構造を用いて行っていく予定である。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22500272
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22500272
心筋虚血再灌流障害耐性獲得の機序と長時間心保存法への応用
当教室においては平成9年以降単離心筋細胞をもちいた実験系において薬物投与による内因性心筋保護因子活性化(プレコンディショニング)による心筋保護効果についての研究をおこなってきた。これまでの単離心筋細胞を用いた研究では細胞内カルシウム過負荷を軽減することにより虚血再灌流障害を抑制し、虚血再灌流障害にはアポトーシスが関与することを明らかにしてきた。本研究では単離心筋細胞においてPDE阻害薬のtrapidilが細胞内カルシウム過負荷を軽減する作用を有することを確認した。細胞を用いた実験系においては細胞内カルシウム過負荷を評価できるが、心収縮機能についての評価は不可能である。そこで本研究はこれら細胞による実験で明らかになった心筋保護効果を、移植治療を想定した長時間心保存法に応用するために計画し、プレコンディショニングによる内因性心筋保護効果を保存後の心収縮及び心拡張機能として評価した。保存後の心機能についてはLangedorff型心灌流装置を用いて検討した。短時間虚血(5分間)短時間再灌流(5分間)によるプレコンディショニングを2サイクル行い、細胞外液型臓器保存液であるKerbs-Henseleit solutionで4時間の心保存を行った。心保存後の心機能について、左室拡張末期圧(LVEDP)、左室圧(LVDP)、左室収縮能(LVdP/dT)、左室拡張能(LVdP/dT)、心拍数(HR)、冠血流量(coronary flow)を検討した。プレコンディショニング群はプレコンディショニングを行わないコントロール群と比較し、有意にLVEDP、LVDP、LVdP/dT、LVdP/dT、HRを改善させた。Coronary flowは改善させなかった。これらのことより短時間虚血再灌流によるプレコンディショニングは移植治療を想定した長時間心保存法に有用である可能性があることが示唆された。当教室においては平成9年以降単離心筋細胞をもちいた実験系において薬物投与による内因性心筋保護因子活性化(プレコンディショニング)による心筋保護効果についての研究をおこなってきた。これまでの単離心筋細胞を用いた研究では細胞内カルシウム過負荷を軽減することにより虚血再灌流障害を抑制し、虚血再灌流障害にはアポトーシスが関与することを明らかにしてきた。本研究では単離心筋細胞においてPDE阻害薬のtrapidilが細胞内カルシウム過負荷を軽減する作用を有することを確認した。細胞を用いた実験系においては細胞内カルシウム過負荷を評価できるが、心収縮機能についての評価は不可能である。そこで本研究はこれら細胞による実験で明らかになった心筋保護効果を、移植治療を想定した長時間心保存法に応用するために計画し、プレコンディショニングによる内因性心筋保護効果を保存後の心収縮及び心拡張機能として評価した。保存後の心機能についてはLangedorff型心灌流装置を用いて検討した。短時間虚血(5分間)短時間再灌流(5分間)によるプレコンディショニングを2サイクル行い、細胞外液型臓器保存液であるKerbs-Henseleit solutionで4時間の心保存を行った。心保存後の心機能について、左室拡張末期圧(LVEDP)、左室圧(LVDP)、左室収縮能(LVdP/dT)、左室拡張能(LVdP/dT)、心拍数(HR)、冠血流量(coronary flow)を検討した。プレコンディショニング群はプレコンディショニングを行わないコントロール群と比較し、有意にLVEDP、LVDP、LVdP/dT、LVdP/dT、HRを改善させた。Coronary flowは改善させなかった。これらのことより短時間虚血再灌流によるプレコンディショニングは移植治療を想定した長時間心保存法に有用である可能性があることが示唆された。当教室においては平成9年以降ラット単離心筋細胞を用いた実験系において薬物投与による内因性心筋保護因子活性化(プレコンディショニング>による心筋保護効果についての研究をおこなってきた。これまでの単離心筋細胞を用いた研究においてプレコンディショニングがカルシウムオーパーロードを軽減することによりアポトーシスを含む細胞死、虚血再灌流障害を抑制することが明らかとなったが、細胞を用いた実験系では心機能についての評価は当教室での実験設備においては不可能である。本研究はこれらの細胞レベルで明らかとなった心筋保護効果を、移植治療を想定した長時間心保存法に応用すべく計画された。本研究はすなわち摘出時にプレコンディショニングにより内因性心筋保護因子の活性を導き、虚血再灌流障害並ぴに移植後拒絶反応を抑制する有効な長時間心保存液を開発することを目的とした。長時間保存後の心筋保護効果をこれまでの細胞死の観点からのみならず心機能、および移植後の免疫反応の観点からも評価するごとを計画した。その第一段階として平成13年度は長時間保存後の心機能についてLangendorff型心灌流装置を用いて検討する予定であった。当教室にはLangenndorff型心灌流装置は設置されていないため、本研究経費によりLangenndorff型心灌流装置(ハーバート製)の購入し、予備実験にて、保存時間を設定しそれぞれ違うプレコンディショニングを施し、保存後の心機能についいて検討を行っている。今後、プレコンディショニングの手法のみならず、保存液中の各種薬物の組成についての研究を行い、心機能低下を来さない有効な良時間心保存液の開発に向けた研究を行っていく予定である。
KAKENHI-PROJECT-13671389
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13671389
心筋虚血再灌流障害耐性獲得の機序と長時間心保存法への応用
当教室においては平成9年以降単離心筋細胞をもちいた実験系において薬物投与による内因性心筋保護因子活性化(プレコンディショニング)による心筋保護効果についての研究をおこなってきた。これまでの単離心筋細胞を用いた研究で細胞内カルシウム過負荷を軽減することにより虚血再灌流障害を抑制することを明らかにしてきた。本年度は単離心筋細胞においてPDE阻害薬のtrapidilが細胞内カルシウム過負荷を軽減する作用を有する可能性があることを確認した。細胞を用いた実験系では細胞内カルシウム過負荷を評価できるが、心収縮機能についての評価は不可能である。そこで本研究はこれら単離心筋細胞による実験で明らかになった心筋保護効果を、移植治療を想定した長時間心保存法に応用すべく計画された。すなわち心摘出時にプレコンディショニングによる内因性心筋保護効果を保存後の心収縮及び心拡張機能として評価するために計画された。本年度は長時間心保存後心機能についてLangendorff型灌流装置を用いて検討した。短時間虚血(5分間)短時間再灌流(5分間)によるプレコンディショニング法を用い、細胞外液型臓器保存液であるKrebs-Henseleit solutionで4時間の心保存を行った。心保存後の心機能について、左室拡張末期圧(LVEDDP)、左室圧(LVDP)、左室収縮能(LVdP/dT)、左室拡張能(LVdP/dT)、心拍数(HR)、冠血流量(coronary flow)を検討した。プレコンディショニング群はプレコンディショニングを行わないコントロール群と比較し、有意にLVEDP、LVDP、LVdP/dT、LVdP/dT、HRを改善させた。Coronary flowは改善させなかった。これらのことより短時間虚血再灌流によるプレコンディショニングは移植治療を想定した長時間心保存法に有用である可能性があることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-13671389
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13671389
超高分子量PVAの合成とその機能材料化に関する研究
過去2年間にわたる交付研究費による研究で、PVAの高重合度化、膜・繊維化の作業が以下のようにかなり進展した。まず高重合度化については、酢酸ビニル(VAc)の低温無触媒光乳化重合により重合度(Pn)が13000のPVAを得ることができた。この重合法をピバル酸ビニル(VP)に適用することによりPn=18000のPVAが得られた。このPVAを得るにあたり、従来困難とされていたポリピバル酸ビニル(PVP)の効果的なケン化法も開発した。またVAcとVPの無触媒光乳化共重合物を上記の方法でケン化することにより高重合度のPVAを得ることができた。これらのPVAの立体規則性については、ポリ酢酸ビニル(PVAc)からのものがシンジオタクチックダイアッド(SD)の割合は53%、PVPからのものはSD=64%であり、一方共重合物からのものは仕込モノノマ-組成により上記5364%の範囲で制御できることを見い出した。特にSD=64%は、従来報告されているもののなかでも最も高い立体規則度をもつものであり、その化学反応性・物性は興味深い。また共重合物からはSD=5364%の範囲で任意の値のPVAが得られるところに特徴があり立体構造と化学反応性・物性の関係解明にも期待がもてる。これらのPVAの膜化・膜物性の研究も進展しており、SD=64%の膜はSD=53%の膜に比べて融点が約20度高いことなど、大きな相違点が見出されている。また、SD=53%の膜によるイソプロピルアルコ-ルのパ-ベ-パレ-ションでは約3000の分離係数が得られ、膜材料としても期待される。繊維化の研究も進展しており、ゲル紡糸が可能で、SD=53%のPVAの高強度化にも成功している。過去2年間にわたる交付研究費による研究で、PVAの高重合度化、膜・繊維化の作業が以下のようにかなり進展した。まず高重合度化については、酢酸ビニル(VAc)の低温無触媒光乳化重合により重合度(Pn)が13000のPVAを得ることができた。この重合法をピバル酸ビニル(VP)に適用することによりPn=18000のPVAが得られた。このPVAを得るにあたり、従来困難とされていたポリピバル酸ビニル(PVP)の効果的なケン化法も開発した。またVAcとVPの無触媒光乳化共重合物を上記の方法でケン化することにより高重合度のPVAを得ることができた。これらのPVAの立体規則性については、ポリ酢酸ビニル(PVAc)からのものがシンジオタクチックダイアッド(SD)の割合は53%、PVPからのものはSD=64%であり、一方共重合物からのものは仕込モノノマ-組成により上記5364%の範囲で制御できることを見い出した。特にSD=64%は、従来報告されているもののなかでも最も高い立体規則度をもつものであり、その化学反応性・物性は興味深い。また共重合物からはSD=5364%の範囲で任意の値のPVAが得られるところに特徴があり立体構造と化学反応性・物性の関係解明にも期待がもてる。これらのPVAの膜化・膜物性の研究も進展しており、SD=64%の膜はSD=53%の膜に比べて融点が約20度高いことなど、大きな相違点が見出されている。また、SD=53%の膜によるイソプロピルアルコ-ルのパ-ベ-パレ-ションでは約3000の分離係数が得られ、膜材料としても期待される。繊維化の研究も進展しており、ゲル紡糸が可能で、SD=53%のPVAの高強度化にも成功している。〔1〕(イ)モノマー:100ml、水:200ml、乳化剤(LWZ):10mlの系を、0°Cで光照射し、高収率でポリ酢酸ビニル(PVAc)を重合し、これをケン化することにより、重合度が10,00013,000のポリビニルアルコール(PVA)を得た。(ロ)これらPVAは^1H-NMR分析で特性決定した。ケン化度は99%以上、1,2ーグリコール構造の割合は約1%、トリアッドタクティシィティーは、mm:22.1、mr:49.5、rr:28.4%であった。以上の結果は、第37回高分子学会年次大会(1988、名古屋)において発表した。〔2〕ピバル酸ビニルの低温無触媒光乳化重合により高重合度ポリピバル酸ビニル(PVP)を得た。高重合度PVPのケン化は極めて困難であったが、THF溶媒中、窒素ガス雰囲気下でKOH/メタノールを用いて処理することにより、短時間でケン化度99.5%以上、重合度約18,000のPVAを得ることができた。得たPVAはシンジオタクテイシィティーに富む立体構造を有し、従来のPVAと異なる物性を発現することが期待できる。これらの結果は、1989環太平洋国際化学会議(ホノルル)にて発表予定である。〔3〕これら無触媒光乳化重合では、ミセルを形成しているLWZが、稀ではあるが光を吸収し分解すると、一方の親水性部ラジカルは水層に、また、もう一方の疏水性部ラジカルはミセル内にと、それぞれ引き込まれて、効果的に重合を開始すると推定した。
KAKENHI-PROJECT-63550691
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63550691
超高分子量PVAの合成とその機能材料化に関する研究
これらの結果は、中日高分子シンポジウム(1989、中国広州)にて発表予定である。〔4〕(イ)〔1〕で得たPVAの水溶液から、キャスト法で耐水性に優れた膜を調製し、現在それの諸物性、パーベーパレーション能などを検討中である。(ロ)また、同上PVAをゲル紡糸して高強度・高弾性率の繊維を得た。力学的諸物性の検討を現在続行中である。過去2年間にわたる交付研究費による研究で、PVAの高重合度化、膜・繊維化の作業が以下のようにかなり進展した。まず高重合度化については、酢酸ビニル(VAc)の低温無触媒光乳化重合により重合度(Pn)が13000のPVAを得ることができた。この重合法をピバル酸ビニル(VP)に適用することによりPn=18000のPVAが得られた。このPVAを得るにあたり、従来困難とされていたポリピバル酸ビニル(PVP)の効果的なケン化法も開発した。またVAcとVPの無触媒光乳化共重合物を上記の方法でケン化することにより高重合度のPVAを得ることができた。これらのPVAの立体規則性については、ポリ酢酸ビニル(PVAc)からのものがシンジオタクチックダイアッド(SD)の割合は53%、PVPからのものはSD=64%であり、一方共重合物からのものは仕込モノルマ-組成により上記5364%の範囲で制御できることを見い出した。特にSD=64%は、従来報告されているもののなかでも最も高い立体規則度をもつものであり、その化学反応性・物性は興味深い。また共重合物からはSD=5364%の範囲で任意の値のPVAが得られるところに特徴があり立体構造と化学反応性・物性の関係解明にも期待がもてる。これらのPVAの膜化・膜物性の研究も進展しており、SD=64%の膜はSD=53%の膜に比べて融点が約20度高いことなど、大きな相違点が見出されている。またSD=53%の膜んにんよるイソプロピルアルコ-ルのパ-ベ-パレ-ションでは約3000の分離係数が得られ、膜材料としても期待される。繊維化の研究も進展しており、ゲル紡糸が可能で、SD=53%のPVAの高強度化にも成功している。
KAKENHI-PROJECT-63550691
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間質細胞依存的血球前駆細胞に対するリピッドの生理作用の解析
造血幹細胞システムの維持には、間質細胞との細胞間相互作用を介して、幹細胞の自己複製または前駆細胞の状態を維持する分子機構が鍵となっていると考られる。このことは、造血幹細胞、前駆細胞の段階では、造血組織に保持されていることが必要となる。本研究は、間質細胞依存的な血球細胞の依存的な状態に必要な機能分子を検索していくこと、特にリピッドが機能的なメディエーターとして間質細胞依存的血球細胞で作用するかを解明することを目的とした。研究を進めるに当たり、間質細胞依存的に間質細胞層の下で増殖・維持される細胞株をモデル系とした。造血支持能を示す骨髄間質細胞株TBR59を支持細胞として、SV40T抗原遺伝子トランスジェニックマウスから分化マーカ陰性、Sca-1陽性の造血幹細胞を含む未分化血球画分を共培養し、間質細胞依存的に増殖する、分化マーカ陰性、Sca-1陽性、c-Kit陽性の細胞株(THS119)を樹立した。間質細胞依存のTHS119を用いて、血球細胞が間質細胞に侵潤していく過程のリピッドの機能解析を進め、血球細胞が間質細胞層に浸潤する際に、スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)とLPAが機能的に作用することを示した。さらに、S1PとLPAのそれぞれ特異的受容体であるedg-1とedg-2がTHS119で発現し、間質細胞依存的な状態を失ったTHS119ではedg-2の発現が低下していることがわかった。また、マウス骨髄の分化マーカ陰性、Sca-1陽性、c-Kit陽性の敷石状コロニーを形成する画分はedg-2の発現が有意に高いことを見つけ、前駆細胞でのリピッド受容体の発現制御が生理的に重要であることを示した。さらに、間質細胞依存的血球前駆細胞の解析を進め、B細胞分化のコミットメントが間質細胞によって可逆的に引き起こされることを見つけ、間質細胞と血球細胞の相互作用を解析する際の新しい視点を得ることができた。骨髄間質細胞に関しては、中胚葉性幹細胞由来であることを示す細胞株を樹立して研究を深めた。造血幹細胞システムの維持には、間質細胞との細胞間相互作用を介して、幹細胞の自己複製または前駆細胞の状態を維持する分子機構が鍵となっていると考られる。このことは、造血幹細胞、前駆細胞の段階では、造血組織に保持されていることが必要となる。本研究は、間質細胞依存的な血球細胞の依存的な状態に必要な機能分子を検索していくこと、特にリピッドが機能的なメディエーターとして間質細胞依存的血球細胞で作用するかを解明することを目的とした。研究を進めるに当たり、間質細胞依存的に間質細胞層の下で増殖・維持される細胞株をモデル系とした。造血支持能を示す骨髄間質細胞株TBR59を支持細胞として、SV40T抗原遺伝子トランスジェニックマウスから分化マーカ陰性、Sca-1陽性の造血幹細胞を含む未分化血球画分を共培養し、間質細胞依存的に増殖する、分化マーカ陰性、Sca-1陽性、c-Kit陽性の細胞株(THS119)を樹立した。間質細胞依存のTHS119を用いて、血球細胞が間質細胞に侵潤していく過程のリピッドの機能解析を進め、血球細胞が間質細胞層に浸潤する際に、スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)とLPAが機能的に作用することを示した。さらに、S1PとLPAのそれぞれ特異的受容体であるedg-1とedg-2がTHS119で発現し、間質細胞依存的な状態を失ったTHS119ではedg-2の発現が低下していることがわかった。また、マウス骨髄の分化マーカ陰性、Sca-1陽性、c-Kit陽性の敷石状コロニーを形成する画分はedg-2の発現が有意に高いことを見つけ、前駆細胞でのリピッド受容体の発現制御が生理的に重要であることを示した。さらに、間質細胞依存的血球前駆細胞の解析を進め、B細胞分化のコミットメントが間質細胞によって可逆的に引き起こされることを見つけ、間質細胞と血球細胞の相互作用を解析する際の新しい視点を得ることができた。骨髄間質細胞に関しては、中胚葉性幹細胞由来であることを示す細胞株を樹立して研究を深めた。造血幹細胞システムの維持には、造血組織の間質細胞が、細胞間相互作用を介して、幹細胞の自己複製または未分化な段階の前駆細胞の状態を維持する分子機構が鍵となっていると考えられる。本研究は、造血前駆細胞が、造血組織間質細胞依存的な状態を取る際にリピッドが機能的なメディエーターとして作用するかを解明することを目的とした。骨髄間質細胞株とそれに依存した増殖制御を受ける血球細胞株(THS119)を用いて、血球細胞が間質細胞に浸潤していく過程のリピッドの機能の解析を進めた。11年度の成果として、造血前駆細胞が造血組織の間質細胞の作り出す造血微小環境内に保持される際に、スフィンゴシン-1リン酸とLPAが機能的なリピッドであることを示し、造血前駆細胞でのリピッド受容体の発現制御が生理的に重要であることを示した。1.THS119の間質細胞依存的な状態をIL-
KAKENHI-PROJECT-11680688
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間質細胞依存的血球前駆細胞に対するリピッドの生理作用の解析
3依存的、間質細胞非依存的な状態で培養すること、間質細胞層の下には潜り込まない。この際にLPAの受容体であるedg-2の発現が低下していることを明らかにした。2.THS119は間質細胞層の下に潜り込んで増殖し、維持されている。この際のリピッド受容体の発現が生体内でも同様に重要な意味を持つのかを検討した。マウス骨髄から未分化な血球画分を得て、リピッド受容体の発現を調べたところ、分化マーカ陰性、c-Kit陽性の画分ではedg-2の発現が高く、生体での造血前駆細胞においてもLPAが機能的であることを示すことができた。3.リピッド受容体遺伝子を導入するためのレトロウイスルを構築した。4.edg-2の間質細胞非依存的なTHS119での強制発現による浸潤能の回復は観察できなかった。造血幹細胞システムの維持には、造血組織の間質細胞との細胞間相互作用を介して、幹細胞の自己複製または未分化な段階の前駆細胞の状態を維持する分子機構が鍵となっていると考られる。このことは、造血幹細胞、前駆細胞の段階では、造血組織に保持されていることが必要であることを意味する。本研究は、造血組織間質細胞依存的な増殖制御を受ける血球細胞の間質細胞依存的な状態に必要な機能分子を明らかにすること目的とした。特にリピッドが機能的なメディエーターとして間質細胞依存的血球前駆細胞で作用するかを解明することを中心に研究を進めた。造血支持能を示す骨髄間質細胞株TBR59を支持細胞として、SV40T抗原遺伝子トランスジェニックマウスから未分化血球の細胞画分を間質細胞株と共培養し、間質細胞依存的に増殖する分化マーカ陰性、Sca-1陽性、c-Kit陽性血球細胞株(THS119)を樹立した。骨髄間質細胞株とそれに依存した増殖制御を受けるTHS119を用いて、血球細胞が間質細胞に侵潤していく過程のリピッドの機能解析を進めた結果、造血前駆細胞が造血微小環境内に保持される際に、スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)とLPAが機能的なリピッドであることを明らかにした。さらに、それぞれ特異的受容体であるedg-1とedg-2がTHS119で発現し、間質細胞依存的な状態を失ったTHS119ではedg-2の発現が低下していた。また、マウス骨髄から未分化な血球画分を得、間質細胞依存的に敷石状コロニーを形成する画分はedg-2の発現が有意に高いことを見つけ、造血前駆細胞でのリピッド受容体の発現制御が生理的に重要であることを示した。また、間質細胞依存的血球前駆細胞の解析を進め、血球分化のコミットメントの可逆的変化が間質細胞によって引き起こされることを新たに見つけ、間質細胞と血球細胞の相互作用を解析する際の新しい視点を得ることもできた。さらに、骨髄間質細胞が中胚葉性幹細胞由来であることを示す細胞株も樹立するなど、間質細胞の研究を深めた。
KAKENHI-PROJECT-11680688
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占領期沖縄におけるGHQの性病対策―ジェンダーの視点から
本年度は、(1)9月に著書を出版、(2)出版した著書を踏まえて11月、12月、1月とそれぞれ社会に発信、(3)2月に直接統治沖縄の性病対策関係の資料を米国立公文書館で収集、この3点をおこなった。(1)『パンパンとは誰なのかキャッチという占領期の性暴力とGIとの親密性』(インパクト出版会)。本書は直接統治沖縄を考察するうえでベースとなる資料。一般財団法人竹村和子フェミニズム基金2014年度出版助成補助金により出版。(2)11月21日一橋大学ジェンダー社会科学研究センター公開レクチャー・シリーズ第28回「日本占領と性ー性暴力、売買春から親密な関係まで」で招へい報告。12月7日「パンパンとは誰なのか」というテーマで占領期の性暴力をジェンダーの視点から考察した研究会を開催(研究大学強化促進事業「百家争鳴」プログラム協力)。1月24日「占領期の性暴力を問う」というテーマで報告会を京都大学で実施。2月1日に関西社会学研究活動委員会セクシュアリティ/クィアスタディーズグループで拙著『パンパンとは誰なのか』に著者として招へい出席。(3)2月にワシントンDCの米国立公文書館(NARA)にて、占領初期沖縄における米軍側の性病対策実施に関する資料を収集。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。本年度は、(1)9月に著書を出版、(2)出版した著書を踏まえて11月、12月、1月とそれぞれ社会に発信、(3)2月に直接統治沖縄の性病対策関係の資料を米国立公文書館で収集、この3点をおこなった。(1)『パンパンとは誰なのかキャッチという占領期の性暴力とGIとの親密性』(インパクト出版会)。本書は直接統治沖縄を考察するうえでベースとなる資料。一般財団法人竹村和子フェミニズム基金2014年度出版助成補助金により出版。(2)11月21日一橋大学ジェンダー社会科学研究センター公開レクチャー・シリーズ第28回「日本占領と性ー性暴力、売買春から親密な関係まで」で招へい報告。12月7日「パンパンとは誰なのか」というテーマで占領期の性暴力をジェンダーの視点から考察した研究会を開催(研究大学強化促進事業「百家争鳴」プログラム協力)。1月24日「占領期の性暴力を問う」というテーマで報告会を京都大学で実施。2月1日に関西社会学研究活動委員会セクシュアリティ/クィアスタディーズグループで拙著『パンパンとは誰なのか』に著者として招へい出席。(3)2月にワシントンDCの米国立公文書館(NARA)にて、占領初期沖縄における米軍側の性病対策実施に関する資料を収集。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-26883005
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酸化物超伝導体の磁束ピンニングに関する研究
CVD法Y_1Ba_2Cu_3O_<7ーδ>は、磁場中の優れたJ_c特性を示す。磁束ピンニング機構を解明することを目的として、臨界電流密度の問題点を検討した。また、臨界電流密度と上部臨界磁場の角度依存性をそれぞれ測定した。1.臨界電流の異方性と上部臨界磁場の角度衣存性を磁束ピンニングのスケ-ル則を通して関係づけることを試みた。上部臨界磁場の角度依存性はGLの有効質量モデルで比較的よく理解でき、特に抵抗遷移の中点での定義によるものは非常によく一致した。この有効質量モデルを磁束ピンニングに採りいれる試みは、J_cの角度依存性をかなり具体的に説明することができた。2.しかし、酸化物超伝導体は磁束クリ-プの問題があり、臨界電流を決定するものはB_<c2>よりも小さいB^*_<c2>であると考えられる。B^*_<c2>は実質的にJ_c【approximately equal】Oを決定するもので、通常はグロ-バルピンニング力F_p対Bの関係から外挿的に求められるが、J_cの角度依存性のフィッティングパラメ-タとして考えた。その結果、抵抗遷移のR=Oでの定義によるB_<c2>よりもさらに小さなB^*_<c2>の角度依存性を改めて磁束ピンニングのスケ-ル則に採り入れるべきであることが分かった。すなわち、J_cの角度依存性はB_<c2>の角度依存性によって生じていると結論される。3.C軸配向にa軸配向の結晶粒が混在する場合も異方性が変化する。応用上問題となっている酸化物超伝導体の強い異方性を小さくする目的で、a軸配向の結晶粒が混在する体積率とB_<c2>,J_cとの関係を調べた。その結果として、B_<c2>の異方性は小さくできる可能性があるが、異方性が小さくなるとJ_cも急激に小さくなることが分かった。CVD法Y_1Ba_2Cu_3O_<7ーδ>は、磁場中の優れたJ_c特性を示す。磁束ピンニング機構を解明することを目的として、臨界電流密度の問題点を検討した。また、臨界電流密度と上部臨界磁場の角度依存性をそれぞれ測定した。1.臨界電流の異方性と上部臨界磁場の角度衣存性を磁束ピンニングのスケ-ル則を通して関係づけることを試みた。上部臨界磁場の角度依存性はGLの有効質量モデルで比較的よく理解でき、特に抵抗遷移の中点での定義によるものは非常によく一致した。この有効質量モデルを磁束ピンニングに採りいれる試みは、J_cの角度依存性をかなり具体的に説明することができた。2.しかし、酸化物超伝導体は磁束クリ-プの問題があり、臨界電流を決定するものはB_<c2>よりも小さいB^*_<c2>であると考えられる。B^*_<c2>は実質的にJ_c【approximately equal】Oを決定するもので、通常はグロ-バルピンニング力F_p対Bの関係から外挿的に求められるが、J_cの角度依存性のフィッティングパラメ-タとして考えた。その結果、抵抗遷移のR=Oでの定義によるB_<c2>よりもさらに小さなB^*_<c2>の角度依存性を改めて磁束ピンニングのスケ-ル則に採り入れるべきであることが分かった。すなわち、J_cの角度依存性はB_<c2>の角度依存性によって生じていると結論される。3.C軸配向にa軸配向の結晶粒が混在する場合も異方性が変化する。応用上問題となっている酸化物超伝導体の強い異方性を小さくする目的で、a軸配向の結晶粒が混在する体積率とB_<c2>,J_cとの関係を調べた。その結果として、B_<c2>の異方性は小さくできる可能性があるが、異方性が小さくなるとJ_cも急激に小さくなることが分かった。
KAKENHI-PROJECT-02226204
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ハイリスク児の発達特性とその臨床的対応に関する縦断的研究
発達初期においてなんらかの要因により順調な精神及び神経の発達が阻害されたり,障害が発生する可能性を高く有する乳幼児のことをハイリスク児と呼ぶ。出生時体重は今日使用されている重要な指標の一つである。出生時体重を基準として分類した場合,1500g以下を極小未熟児とし,1000g以下を超未熟児として区別する。ハイリスク児の発達特徴と臨床的対応について検討した結果,次のことがわかった。(1)田中ビネ-式知能検査やWISC-Rの知能検査の結果から,6歳8歳の超未塾児の知能指数の分布は下位方向への偏りが認められ,リスクの程度によって知能指数に差があることが明らかになった。知能を構成する要因性の関係(例えば,動作性IQと言語性IQとの関係)にアンバランスがあり,彼らの発達に歪みが存在することも確認された。(2)3歳から5歳になれば,ハイリスク児は健常児に追い付くという見解は部分的に支持された。しかし,WISC-R等の検査結果では(1)に示したような問題もあり,“追い付く"と単純に結論することはできなかった。(3)そうした問題の根幹を形成する要因として,神経学的要因だけでなく,発達初期における生育環境の問題が指摘された。とくに,超未熟児は新生児集中治療室での制約された環境で平均56ヵ月間も入院するので,その影響は無視できない。その間の母親との分離やその後の過保護な育児は発達を阻害する要因と見做された。(4)ハイリスク児,とくに超未熟児は落ち着きの無さや注意欠陥,情緒不安,学校不適応などの行動上の問題を示した。また,脳障害や染色体異常等による発達の遅れも含めてハイリスク児の発達の遅れは心理臨床的対応によって改善することが確かめられた。(5)ハイリスク児が示すさまざまな臨床像に対して適切に対応するためには,親や保育・教育機関だけでなく病院や施設等の密接な連携による総合的アプローチの重要性が指摘された。発達初期においてなんらかの要因により順調な精神及び神経の発達が阻害されたり,障害が発生する可能性を高く有する乳幼児のことをハイリスク児と呼ぶ。出生時体重は今日使用されている重要な指標の一つである。出生時体重を基準として分類した場合,1500g以下を極小未熟児とし,1000g以下を超未熟児として区別する。ハイリスク児の発達特徴と臨床的対応について検討した結果,次のことがわかった。(1)田中ビネ-式知能検査やWISC-Rの知能検査の結果から,6歳8歳の超未塾児の知能指数の分布は下位方向への偏りが認められ,リスクの程度によって知能指数に差があることが明らかになった。知能を構成する要因性の関係(例えば,動作性IQと言語性IQとの関係)にアンバランスがあり,彼らの発達に歪みが存在することも確認された。(2)3歳から5歳になれば,ハイリスク児は健常児に追い付くという見解は部分的に支持された。しかし,WISC-R等の検査結果では(1)に示したような問題もあり,“追い付く"と単純に結論することはできなかった。(3)そうした問題の根幹を形成する要因として,神経学的要因だけでなく,発達初期における生育環境の問題が指摘された。とくに,超未熟児は新生児集中治療室での制約された環境で平均56ヵ月間も入院するので,その影響は無視できない。その間の母親との分離やその後の過保護な育児は発達を阻害する要因と見做された。(4)ハイリスク児,とくに超未熟児は落ち着きの無さや注意欠陥,情緒不安,学校不適応などの行動上の問題を示した。また,脳障害や染色体異常等による発達の遅れも含めてハイリスク児の発達の遅れは心理臨床的対応によって改善することが確かめられた。(5)ハイリスク児が示すさまざまな臨床像に対して適切に対応するためには,親や保育・教育機関だけでなく病院や施設等の密接な連携による総合的アプローチの重要性が指摘された。ハイリスク児に関する研究を推進するために,九州大学医学部小児科や聖マリア病院,福祉施設等と連携を取り,医学的診断,治療体系を背景として,臨床心理学的アプローチを組識的,体系的に行なえるような体制を構築した。研究環境の整備によって収集したハイリスク児に関するデータを分析したが,1000g以下で出生した超未熟児を含めてハイリスク児の発達は,脳性マヒ等の明確な障害を伴わない場合にも問題があることがわかった。この事実は,田中ビネーやWISC-Rなどによる知能検査の結果で裏付けることができた。さらに,そうした知能指数のような単一の指標だけでなく,それを構成する下位構造に着目し,探索領域や描画機能を含め,行動観察などを実施してきた。それらの結果から,ハイリスクの発達像には何らかの歪みが存在することが明らかになった。これらのデータの一部は,すでに日本特殊教育学会(平成4年)で三題にわたって発表したが,臨床的対応の在り方を含めて大きな反響があり,データの追加と分析の検討を継続して行なうことにした。また,日本教育心理学会総会(平成4年)において「発達援助としての動作法」と題して小講演を行なった。その中で,合併症を持つハイリスク児,とくに脳性マヒや重複障害,染色体異常(ダウン症,ブラウダリーウィリー症候群),重症仮死出生などの問題に対する臨床的対応の在り方と発達援助に関する理論的見解を示した。
KAKENHI-PROJECT-04301011
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ハイリスク児の発達特性とその臨床的対応に関する縦断的研究
今後,他の共同研究者のデータと合わせて,研究成果の補強・充実をはかり,合併症がなければ35歳でハイリスク児が健常児の発達水準に到達するという「キャッチアップ論」に一石を投じる予定である。その際,合併症の有無に拘らず,ハイリスク児一人一人の発達状態に応じた臨床的対応の必要性とその具体的理論と技法について言及する。発達初期において、なんらかの要因により順調な精神、神経発達が阻害されたり、障害が発生する可能性を高く有する乳幼児のことをリスク児、またはハイリスク児と呼ぶ。リスクの指標として、出生時体重は今日使用されている重要な指標の一つになっている。この体重を基準として分類した場合、1500g以下を極小未熟児とし、1000g未満を超未熟児として区別している。ハイリスク児は明白な障害が無い限り、知能指数などの発達指標はほぼ5歳で健常児の水準に追いつくとした研究報告は多い。しかし、我々の調べた結果楽観視は許されないものであった。聖マリア病院のデータでは、36歳の95人の超未熟児(男児42人、女児53人)に対して実施した田中・ビネー検査の結果では、超未熟児の知能指数の分布はほぼ正規分布を示したが、標準に比較して上限値は低く、下位方向への偏りが見られた。また、九大附属病院小児科で5歳から8歳までの14名のハイリスク児に実施したWPPSI.WISC-Rの結果でも、同様の傾向が認められた。知能の下位検査結果の違いを見るために、言語性知能(VIQ)の平均は72.1(SD=19.58)、動作性知能(PIQ)のそれは平均85.5(SD=27.93)を統計的に比較した結果、動作性知能が有意に高い結果が得られた(F=6.208,df=1)。このことは、知能の不均衡な発達状態を示すものであり、その原因究明や対応の在り方を検討する必要性を示唆したものと言える。その際、問題となるのは全体的発達の遅れもあるが、発達検査の下位項目に見られるアンバランスについては、学習障害などの問題を含めて慎重に検討する必要がある。勿論、合併症などに起因する発達遅滞の著しい事例においては、発達経過を記述することは困難であり、慎重な経過観察が必要となる。その他に、学齢期になって登校拒否を示した超未熟児の事例や低酸素性虚血性脳症と診断されたハイリスク児の事例等に対して発達援助の在り方を検討した。
KAKENHI-PROJECT-04301011
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熱応力緩和型耐熱コ-ティング設計のための耐熱衝撃性能評価法の開発
本研究は、熱応力緩和型耐熱コ-ティング設計のための非定常熱応力解析を基礎としたコ-ティング層の耐熱衝撃性能評価法を開発することを目的としたものである。所定の熱負荷条件のもと、各種の熱応力緩和組成を有する材料の評価手法の開発を行った。特に傾斜機能材料の開発に焦点をあてた検討を行った。このため、(1)コ-ティング構成要素材の機械的特性の評価、(2)熱応力緩和特性のコンピュ-タ解析、(3)レ-ザ-、プラズマア-ク加熱による耐熱衝撃性能評価法の開発を実施した。(1)については、セラミックス等の脆性材料に対して小型試験片(0.5mm板厚)を用いた評価を可能とするスモ-ルパンチ(SP)試験法を開発した。延性金属材料を対象としたSP試験法は既に開発済みであり、これより脆性、延性材料を統一的に評価し得る手法が整備されたことになる。ZrO_2/NiAl合金系、SiC/C系等の数段階に混合比を変化させた構成要素材を用いSP試験法により変形、破壊強度の1600°Cまでの温度依存性を測定した。また、上記材料の熱的特性値の評価結果を含めた特性値のデ-タベ-スを作成した。(2)では、有限要素法を用いて種々の傾斜組成に対して非定常熱応力解析を実施した。特に、(3)のレ-ザ-加熱熱衝撃試験を模擬し得る手法を開発し、これを基にZrO_2/NiAl合金系、SiC/C系を対象に、傾斜組成の熱応力緩和特性に及ぼす効果に関する検討を行った。(3)では、レ-ザ-加熱試験法を開発し、ZrO_2/NiAl合金系、SiC/C系の耐熱衝撃特性評価に関する検討を実施し、加えて高温酸化挙動についての基礎的知見を得た。また、LAS/ウラストナイト基低熱膨張セラミックスの試作を行い、LAS複合化により耐熱衝撃性能を増大させ得ることを実験結果により示し、熱膨張制御の傾斜化が可能であることを示した。本研究は、熱応力緩和型耐熱コ-ティング設計のための非定常熱応力解析を基礎としたコ-ティング層の耐熱衝撃性能評価法を開発することを目的としたものである。所定の熱負荷条件のもと、各種の熱応力緩和組成を有する材料の評価手法の開発を行った。特に傾斜機能材料の開発に焦点をあてた検討を行った。このため、(1)コ-ティング構成要素材の機械的特性の評価、(2)熱応力緩和特性のコンピュ-タ解析、(3)レ-ザ-、プラズマア-ク加熱による耐熱衝撃性能評価法の開発を実施した。(1)については、セラミックス等の脆性材料に対して小型試験片(0.5mm板厚)を用いた評価を可能とするスモ-ルパンチ(SP)試験法を開発した。延性金属材料を対象としたSP試験法は既に開発済みであり、これより脆性、延性材料を統一的に評価し得る手法が整備されたことになる。ZrO_2/NiAl合金系、SiC/C系等の数段階に混合比を変化させた構成要素材を用いSP試験法により変形、破壊強度の1600°Cまでの温度依存性を測定した。また、上記材料の熱的特性値の評価結果を含めた特性値のデ-タベ-スを作成した。(2)では、有限要素法を用いて種々の傾斜組成に対して非定常熱応力解析を実施した。特に、(3)のレ-ザ-加熱熱衝撃試験を模擬し得る手法を開発し、これを基にZrO_2/NiAl合金系、SiC/C系を対象に、傾斜組成の熱応力緩和特性に及ぼす効果に関する検討を行った。(3)では、レ-ザ-加熱試験法を開発し、ZrO_2/NiAl合金系、SiC/C系の耐熱衝撃特性評価に関する検討を実施し、加えて高温酸化挙動についての基礎的知見を得た。また、LAS/ウラストナイト基低熱膨張セラミックスの試作を行い、LAS複合化により耐熱衝撃性能を増大させ得ることを実験結果により示し、熱膨張制御の傾斜化が可能であることを示した。本研究は、熱応力緩和型耐熱コ-ティング設計のための非定常熱応力解析を基礎としたコ-ティング層の耐熱衝撃性能評価法を開発することを目的としている。所定の熱負荷条件のもと、最適の熱応力緩和組成を決定し、耐熱衝撃性能を向上させるための評価手法の開発を行う。このため本年度は、(1)コ-ティング構成要素材の機械的特性の評価、(2)熱応力緩和の最適化のためのコンピュ-タ解析、(3)レ-ザ-、プラズマア-ク加熱による耐熱衝撃性能評価法の開発を実施した。(1)については、セラミックス等の脆性材料に対して小型試験片(0.5mm板厚)を用いた評価を可能とするスモ-ルパンチ(SP)試験法を開発した。延性金属材料を対象としたSP試験法は既に開発済みであり、これにより脆性、延性材料を統一的に評価し得る手法が整備されたことになる。ZrO_2/NiAl合金系、SiC/C系等の数段階に混合比を変化させた構成要素材を用いSP試験法により変形、破壊強度の1,600°Cまでの温度依存性を測定した。また、上記材料の熱的特性値の評価結果を含めた特性値のデ-タベ-スを作製した。(2)では、有限要素法を用いて種々の傾斜組成に対して非定常熱応力解析を実施した。
KAKENHI-PROJECT-01850024
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01850024
熱応力緩和型耐熱コ-ティング設計のための耐熱衝撃性能評価法の開発
特に、(3)のレ-ザ加熱熱衝撃試験を模擬し得る手法を開発し、これを基にZrO_2/NiAl合金系を対象に、傾斜組成の熱応力緩和特性に及ぼす効果に関する検討を行った。また、(3)ではレ-ザ加熱試験法を開発し、ZrO_2/NiAl合金系の傾斜材について検討することにより、傾斜化が耐熱衝撃特性の向上に有効であることを示した。さらにプラズマア-ク加熱試験装置を設計し、現在本装置の整備を行っている。本研究は、熱応力緩和型耐熱コ-ティング設計のための非定常熱応力解析を基礎としたコ-ティング層の耐熱衝撃性能評価法を開発することを目的としたものである。所定の熱負荷条件のもと、各種の熱応力緩和組成を有する材料の評価手法の開発を行った。特に傾斜機能材料の開発に焦点をあてた検討を行った。このため、(1)コ-ティング構成要素材の機械的特性の評価、(2)熱応力緩和特性のコンピュ-タ解析、(3)レ-ザ-、プラズマア-ク加熱による耐熱衝撃性能評価法の開発を実施した。(1)については、セラッミクス等の脆性材料に対して小型試験片(0.5mm板厚)を用いた評価を可能とするスモ-ルパンチ(SP)試験法を開発した。延性金属材料を対象としたSP試験法は既に開発済みであり、これより脆性、延性材料を統一的に評価し得る手法が整備されたことになる。ZrO_2/NiAl合金系、SiC/C系等の数段階に混合比を変化させた構成要素材を用いたSP試験法により変形、破壊強度の1600°Cまでの温度依存性を測定した。また、上記材料の熱的特性値の評価結果を含めた特性値のデ-タベ-スを作成した。(2)では、有限要素法を用いて種々の傾斜組成に対して非定常熱応力解析を実施した。特に、(3)のレ-ザ-加熱熱衝撃試験を模擬し得る手法を開発し、これを基にZrO_2/NiAl合金系、SiC/C系を対象に、傾斜組成の熱応力緩和特性に及ぼす効果に関する検討を行った。(3)では、レ-ザ-加熱試験法を開発し、ZrO_2/NiAl合金系、SiC/C系の耐熱衝撃特性評価に関する検討を実施し、加えて高温酸化挙動についての基礎的知見を得た。また、LAS/ウラストナイト基低熱膨張セラミックスの試作を行い、LAS複合化により耐熱衝撃性能を増大させ得ることを実験結果により示し、熱膨張制御の傾斜化が可能であることを示した。
KAKENHI-PROJECT-01850024
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コンクリート劣化を考慮した橋梁耐震診断手法に関する研究
本研究は、コンクリートの劣化を考慮した橋梁の耐震安全性およびその経年変化特性の評価・予測方法およびそれに基づく合理的な耐震維持管理手法を検討したものである。具体的に以下の成果を得た。(1)兵庫県南部地震におけるコンクリート橋被害データの整理・分析:兵庫県南部地震発生直後から実施施したコンクリート橋被害状況および橋梁諸元データの調査、整理の結果をGIS(地理情報システム)利用してデータベース化し、これらのデータを利用することにより被害要因の統計分析を行った。さらに、被害推定と耐震対策を目的とした損傷確率マトリクスの作成を行った。(2)実橋におけるコンクリート材料試験とその統計解析:兵庫県南部地震において被害を受けたコンクリート橋および米国カリフォルニア州におけるコンクリート橋から採取したコンクリートコアを用いた材料試験を実施するとともに、従来の研究において行った兵庫県内の劣化橋梁に関する材料試験結果と比較し、コンクリート材料特性(圧縮強度、比重、中性化速度、超音波速度等)の経年変化とのばらつきに関する統計的評価を行った。(3)劣化したコンクリート部材のせん断耐荷力に関する評価実験および解析:劣化したコンクリートはり部材のせん断耐荷力実験および弾塑性有限要素解析を実施し、せん断耐荷性状およびその機構を考察した。さらに、示方書によるせん断耐力評価式の適用外である劣化が著しい場合において、その修正式の提案を行った。(4)以上の検討結果に基づいて、実際の橋梁の耐震診断および維持管理の方法について、その概念と具体的なフローについて検討を行った。つまり、地震動強度、構造特性、耐久性の3つのカテゴリーで評価・診断を行った後、これらを総合した耐震安全性を確率的に解析評価する方法を検討し、提案した。さらに、兵庫県南部のケースに適用して被災シミュレーションを行い、その精度と適用性を検証した。本研究は、コンクリートの劣化を考慮した橋梁の耐震安全性およびその経年変化特性の評価・予測方法およびそれに基づく合理的な耐震維持管理手法を検討したものである。具体的に以下の成果を得た。(1)兵庫県南部地震におけるコンクリート橋被害データの整理・分析:兵庫県南部地震発生直後から実施施したコンクリート橋被害状況および橋梁諸元データの調査、整理の結果をGIS(地理情報システム)利用してデータベース化し、これらのデータを利用することにより被害要因の統計分析を行った。さらに、被害推定と耐震対策を目的とした損傷確率マトリクスの作成を行った。(2)実橋におけるコンクリート材料試験とその統計解析:兵庫県南部地震において被害を受けたコンクリート橋および米国カリフォルニア州におけるコンクリート橋から採取したコンクリートコアを用いた材料試験を実施するとともに、従来の研究において行った兵庫県内の劣化橋梁に関する材料試験結果と比較し、コンクリート材料特性(圧縮強度、比重、中性化速度、超音波速度等)の経年変化とのばらつきに関する統計的評価を行った。(3)劣化したコンクリート部材のせん断耐荷力に関する評価実験および解析:劣化したコンクリートはり部材のせん断耐荷力実験および弾塑性有限要素解析を実施し、せん断耐荷性状およびその機構を考察した。さらに、示方書によるせん断耐力評価式の適用外である劣化が著しい場合において、その修正式の提案を行った。(4)以上の検討結果に基づいて、実際の橋梁の耐震診断および維持管理の方法について、その概念と具体的なフローについて検討を行った。つまり、地震動強度、構造特性、耐久性の3つのカテゴリーで評価・診断を行った後、これらを総合した耐震安全性を確率的に解析評価する方法を検討し、提案した。さらに、兵庫県南部のケースに適用して被災シミュレーションを行い、その精度と適用性を検証した。
KAKENHI-PROJECT-08750574
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3D培養表皮モデルを用いたRIP1の機能解析 -‘角化’はネクロプトーシスか?-
Receptor-interacting serine/threonine-protein kinase 1 (以下RIP1)は、TNF-α、TRAIL、TLRs刺激下で恒常性維持に深く関与しているが、ヒト表皮細胞における機能は解明されていない。本研究では尋常性乾癬病変部でRIP1の発現が低下しTRAIL刺激への感受性が増強していることを解明した。更にイミキモド誘発マウス乾癬様皮膚炎モデルでは、TRAIL中和抗体が乾癬様皮膚炎を改善し、マウス皮膚におけるTNF-αの発現を低下させた。以上より、TRAIL-RIP1シグナルが尋常性乾癬の増悪に関与していることを明らかにした。Receptor-interacting serine/threonine-protein kinase 1 (以下RIP1)は、TNF-α、TRAIL、TLRs刺激におけるアダプタープロテインとして細胞の生存と死の両者を制御し組織の恒常性を維持する分子として注目されているが、ヒト表皮細胞における機能は解明されていない。本研究ではヒト表皮角化細胞を用いた3D培養表皮モデルを用い表皮の恒常性維持におけるRIP1の機能の解明を目的としている。1、RIP1KD表皮細胞を用いた3D培養表皮モデルの作成:NHKにNucleofection(Lonza)を用いてsi-RNAを導入しRIP1の発現を15%まで抑制し、RIP1-KD-NHKとcontrol-NHKを用いてair-liquid interface methodで3D培養表皮を作成することに成功した。RIP1-KD-NHKを用いた培養表皮モデルは、コントロールと比較して角層が肥厚し、顆粒層の形成異常が認められた。2、刺激免疫応答における細胞死の検討:RIP1-KD-NHKとcontrol-NHKにTNF-α、TRAIL刺激を加え24h、48h後にMTT法で生細胞を確認したところ、いずれにおいても生細胞数に差がなく細胞死は認められなかった。3、皮膚疾患におけるRIP1発現低下の解析:正常皮膚、アトピー性皮膚炎、多形紅斑、尋常性乾癬、GVHDの病理組織でRIP1の免疫染色を施行した。正常皮膚、アトピー性皮膚炎、多形紅斑では表皮全層にRIP1の発現を認めたが、尋常性乾癬、GVHDではRIP1の発現が有意に低下していた。更に、RIP1-KD-NHKにTRAIL刺激を加えるとIL-1β、IL-6を初めとするサイトカインの発現が有意に亢進した。以上の結果から、ヒト表皮細胞においてRIP1は炎症性シグナルの調整を行っていることが示唆された。RIP1-KD-NHKを用いた3D培養表皮モデルの作成に成功した。当初、RIP1-KD-NHKではTFN-α、TRAIL刺激で細胞死が誘導されると予想していたが、MTT法では細胞死は認められなかった。そこで、更なる検討のためin vitroの実験を行った。すると、RIP1-KD-NHKにTRAIL刺激を加えると尋常性乾癬の病態に重要なサイトカインの発現が亢進し、阻害剤を用いた実験でNF-κBが活性化していることを確認した。また、乾癬病変部ではRIP1の発現が低下し、免疫染色でTRAIL陽性細胞が真皮に浸潤していることを確認した。これよりRIP1の発現低下が表皮における炎症シグナルの亢進に関与していることが示唆され、尋常性乾癬におけるTRAIL、RIP1シグナル経路を同定することで尋常性乾癬の新規治療法の開発が可能となる。1.尋常性乾癬病変部ではRIP1の発現が低下しているRIP1の免疫染色を施行したところ、正常皮膚では表皮全層にRIP1の発現を認めたが、尋常性乾癬ではRIP1の発現が有意に低下していた。更に、尋常性乾癬病変部と非病変部のwestern blottingでは、健常コントロールに比較してRIP1の発現が有意に低下していた。2.尋常性乾癬における表皮RIP1の発現低下はTRAIL刺激への感受性を増強するRIP1の発現をノックダウンしたNHKにTRAIL刺激を加えると、コントロールに比較してIL-1β, IL-6, IL-8, IL-20, IL-33, TNF-αの発現が上昇していた。これらサイトカインは、尋常性乾癬の病態形成において重要な因子であり、表皮におけるRIP1の発現低下とTRAIL刺激が病態の増悪に関与していることが示唆された。3.TRAIL中和抗体はイミキモド誘発マウス乾癬様皮膚炎を阻害するTRAIL中和抗体を用いた治療実験を行った。イミキモド誘発マウス乾癬モデルにTRAIL中和抗体およびコントロールIgGを投与すると、紅斑、浸潤、鱗屑が著明に軽快し、更に、マウスの耳の肥厚も改善していた。これらの症状改善は、TRAIL中和抗体によるTNF-α発現低下が寄与していると考えられた。Receptor-interacting serine/threonine-protein kinase 1 (以下RIP1)は、TNF-α、TRAIL、TLRs刺激下で恒常性維持に深く関与しているが、ヒト表皮細胞における機能は解明されていない。本研究では尋常性乾癬病変部でRIP1の発現が低下しTRAIL刺激への感受性が増強していることを解明した。更にイミキモド誘発マウス乾癬様皮膚炎モデルでは、TRAIL中和抗体が乾癬様皮膚炎を改善し、マウス皮膚におけるTNF-αの発現を低下させた。以上より、TRAIL-RIP1シグナルが尋常性乾癬の増悪に関与していることを明らかにした。培養細胞を用いた解析で、RIP1の発現を調節するメカニズムを検討したい。
KAKENHI-PROJECT-15K19669
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3D培養表皮モデルを用いたRIP1の機能解析 -‘角化’はネクロプトーシスか?-
更に、イミキモド塗布による乾癬様皮膚炎モデルマウスを用いて尋常性乾癬におけるRIP1,TRAILの機能を解析し、尋常性乾癬の新規治療法の開発のため治療実験を予定している。皮膚科学
KAKENHI-PROJECT-15K19669
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都市内・都市間交通網と公共施設配置に関する数理的ならびに実証的研究
1.ネットワーク構造を有するシステムの安定性,頑健性,信頼性等の定量的評価のための基礎理論の構築・手法の開発を行い,その応用として,東京都の水道網,マニラ市の道路交通網,等について数値計算を行った.2.都市の道路網において,交通規制や事故,工事,震災などにより一部分が通行不可能となった場合に全体が受ける影響の評価や,救急車の最短経路を求めるシステムの構築などを行った.3.首都圏に直下型地震が発生した場合を想定して,首都圏の鉄道利用者の被災状況を詳細に計算した.これらの結果は,救急活動の新しい検討資料として有効であると考えられる.4.首都圏の電車ネットワークを利用する通勤客を対象として,時間依存の利用者均衡配分問題を解くモデルを作成した.さらに,急行電車を廃止して,乗り換えによる混雑と電車の遅延をなくすことが,結果として乗客の円滑な輸送に効果があることをしめした.この対策は,ある私鉄線で実際に導入されて効果を挙げている.5.電力自由化問題を取り上げ,各種分散型電源の普及形態を探る数理計画モデルを構築し,種々の観点からのぞましい分散形態を探った.6.都市間移動のための施設としての新空港を建設した場合に,利用者の予測をするモデルを提案した.7.鉄道輸送に関しては,経済性を考慮して軌道の最適保守計画を策定するモデルを作成した.また,CO_2の排出削減の観点から,トラックによる貨物輸送を貨物列車による輸送に転換できるかどうかを検討するモデルを作成し,東海道線を例として実証的分析を行った.8.空間相互作用モデルの一般化に向けて,立ち寄り型のエントロピーモデルの開発と周遊モデルの提案を行った.1.ネットワーク構造を有するシステムの安定性,頑健性,信頼性等の定量的評価のための基礎理論の構築・手法の開発を行い,その応用として,東京都の水道網,マニラ市の道路交通網,等について数値計算を行った.2.都市の道路網において,交通規制や事故,工事,震災などにより一部分が通行不可能となった場合に全体が受ける影響の評価や,救急車の最短経路を求めるシステムの構築などを行った.3.首都圏に直下型地震が発生した場合を想定して,首都圏の鉄道利用者の被災状況を詳細に計算した.これらの結果は,救急活動の新しい検討資料として有効であると考えられる.4.首都圏の電車ネットワークを利用する通勤客を対象として,時間依存の利用者均衡配分問題を解くモデルを作成した.さらに,急行電車を廃止して,乗り換えによる混雑と電車の遅延をなくすことが,結果として乗客の円滑な輸送に効果があることをしめした.この対策は,ある私鉄線で実際に導入されて効果を挙げている.5.電力自由化問題を取り上げ,各種分散型電源の普及形態を探る数理計画モデルを構築し,種々の観点からのぞましい分散形態を探った.6.都市間移動のための施設としての新空港を建設した場合に,利用者の予測をするモデルを提案した.7.鉄道輸送に関しては,経済性を考慮して軌道の最適保守計画を策定するモデルを作成した.また,CO_2の排出削減の観点から,トラックによる貨物輸送を貨物列車による輸送に転換できるかどうかを検討するモデルを作成し,東海道線を例として実証的分析を行った.8.空間相互作用モデルの一般化に向けて,立ち寄り型のエントロピーモデルの開発と周遊モデルの提案を行った.1.首都圏の電車ネットワークを利用する通勤客を対象とし、時刻表をネットワークで表現して時間依存の利用者均衡配分問題を解くモデルを作成した。具体的な問題として時差出勤を取り上げ、出勤時間の幅を広げるという制度の推進だけでは混雑緩和の効果が少なく、乗客の意識を"急がない"という方向に変化させることが重要であることを示した。2.一般ネットワーク構造システムの安定性、頑健性、信頼性等の定量的評価のための基礎理論の構築と手法の開発とその応用として、マニラ市(フィリピン共和国)における道路交通網、三重県の道路網、東京都における水道供給網を対象としたネットワークの連結強度解析を行った。3.環状・放射道路網あるいは一般の道路網において、交通規制や事故、工事、震災などにより一部分が通行不可能となった場合に、道路網全体が受ける影響や救急車の運行経路などについての評価を試みた。4.わが国における電力自由化問題を取り上げ、各種分散型電源の普及形態を探る数理計画モデルを構築し、供給者、需要家、そしてグローバルな観点からの望ましい分散型電源の普及形態を探った。5.空間的相互作用モデルの一般化に向けて、立ち寄り型のエントロピー・モデルの開発と周遊モデルの提案を行った。また都市内アクティビティ分布の自律的形成モデルの進展をめざして、バランス・メカニズム・モデルの一般化と地利値の一般化モデルの提案を行った。6.待ち時間や乗り換え時間を含む旅行者の最短旅行時間を用いて、新空港の利用者推定モデルを作成し、国内に開設が予定される新空港の利用者数予測を行った。1.ネットワーク構造を有するシステムを対象として、その安定性、頑健性、信頼性等の定量的評価の基礎理論を構築し、その応用として、マニラ市の道路交通網、東京都の水道供給網、愛知県南東部の道路網を対象とした分析を行った。2.大地震などの災害時に道路網に通行不能部分が生じた場合の救急車の最短通路を求めるシステムを構築し、名古屋市の一部のデータを用いて実験を行った。また、それに基づいて、補強すべき道路を列挙する方法を検討した。
KAKENHI-PROJECT-17201037
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都市内・都市間交通網と公共施設配置に関する数理的ならびに実証的研究
3.首都圏に直下型地震が発生した場合を想定して、首都圏の鉄道利用者の被災状況を、時間帯、走行速度による受傷の程度、場所、地下か地上か、等を考慮して詳細に計算した。これは、救援活動の新しい検討資料として有効であると考えられる。4.欧州でよくみられる放射・環状道路網と北米で多く使われている格子状道路網の構造的性質を数理的に比較検討することによって、道路ネットワーク構造が都市交通に与える影響を理論的に調べ、またこられの視点から見た効率的な道路構造、さらには合理的な車線設計などについての研究を行った。5.複数地域の周遊を明示的に扱える分布交通量モデルをエントロピーモデルの一般化によって作成し、我が国の観光流動データによる実証分析を行った.6.新空港の立地評価に当たっては、将来の利用者数が発着便数に大きく影響されることを指摘し、任意の地点に空港を建設したと仮定した場合に、仮想的な発着便によって導かれる利用者数の推定を行った。7.電力自由化問題を取り上げ、各種分散型電源の普及形態を探る数理計画モデルを構築し、望ましい普及形態を検討した。また、天然ガスをパイプラインで供給し、改質精製した水素ガスを燃料電池自動車に供給するためのパイプラインと水素ステーションの施設計画に関するマクロ特性を解明し、Location-Allocationモデルによる数値解法を提案した。1.ネットワーク構造を有するシステムの頑健性の定量的評価手法の発展型として,水道網を構成する各部分の強度に差がある場合の分析方法を考案し,東京都を例として数値計算を行った.2.都市の道路網の典型的パターンである格子状ネットワークおよび放射・環状ネットワークを取り上げ,平常時および一部分の閉塞時に,ネットワーク構造が交通流分布にどのような影響を及ぽすかを検討した.3.経済性を考慮に入れて,鉄道の軌道の最適な保守計画を策定するモデルを作成した.4.都市内各地の重要度の分布を記述するための地利値モデルを作成し,最適化モデルを通じた位置づけを行った.5.空間データ予測手法の一つであるクリギングを応用して,2地点間の旅行時間を予測する手法を提案した.6.CO_2の排出削減の観店から,トラックによる貨物の輸送を貨物列車による輸送に転換できるかどうかを検討するモデルを作成し,東海道線を例として数値計算を行い,増発可能な列車数および輸送可能貨物量の推定を行った.7.首都圏直下地震が発生した際を想定して,発生時刻に応じて電車乗客の被害者の地理的分布を計算する方法を提案し,いくつかのケースを仮定して計算を行った.この中には,帰宅困難者の分布予測も含まれる.8.大震災時の多発火災によって延焼面積が増大してゆく様子を記述するための確率モデルを開発し,延焼の基本的な特性を解明した.
KAKENHI-PROJECT-17201037
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負の強化メカニズムを通じた薬物依存形成の行動神経薬理学的検討
メタンフェタミンなどの濫用薬物の慢性反復投与によって個体内に嫌悪的ストレス状態が生じること、その嫌悪状態は薬物摂取環境の一部と連合し環境刺激が条件性嫌悪を誘発する様になること、誘発された嫌悪状態の解消が負の強化子として薬物探索行動を依存へと導くという仮説を検証することが目的であった。本年度は、特定の環境下でメタンフェタミンを反復投与されたマウスが、環境を構成する要素の中で嗅覚刺激に対して条件性嫌悪を学習するという基課題で得られた結果を、刺激強度などの要因を操作する4つの実験から追検証した。研究実施者の異動により基課題で用いた実験装置が使用できなくなったため、新たに自作の装置を作成して実験を行った。基課題で得られた結果のパターンが概ね再現できたが、効果が弱く、装置の改良や刺激強度・種類のさらなる検討が必要であると考えられる。また濫用薬物とギャンブル依存との関連を調べるため、メタンフェタミンまたはニコチンの反復投与がギャンブル様行動に与える影響をマウスにおいて検証した。一つの報酬を得るために要求される反応数が平均すると等しいがその分布が一様か変動性を持つかにおいて異なる二つの選択肢を用意した。一方の選択肢への反応はFR15スケジュールで、他方はRR15スケジュールで強化された。並立連鎖スケジュールの終環にこれらの選択肢を配置し初環での反応率を選択の指標とした。選択行動が安定した後に7日間、薬物投与下で選択課題を行い、さらに7日間退薬状態にて選択課題を継続した。メタンフェタミン退薬時に、マウスは固定選択肢(FR)を選好する傾向を示した。ニコチン退薬時に、マウスは変動選択肢(RR)を選好した。ギャンブル行動を構成する要素のうち、報酬確率の変動性に対する嗜好に濫用薬物が与える影響を引き続き検証していく。薬物自己投与装置の導入・立ち上げに時間を要したため、先に研究2以降で行う薬物と環境刺激との連合において嫌悪効果が生じるパラメータを探索する実験を実施した。また、新たに濫用薬物とギャンブル様行動との関連を調べる実験系を立ち上げ、有望なデータを得ることができた。このため、研究計画全体としては概ね順調な進展であると判断した。引き続きメタンフェタミンが環境刺激との連合学習を通じて個体に嫌悪状態を誘発するメカニズムについて検証を行う。この現象を確立したのちに、薬物自己投与パラダイムと組み合わせた実験を実施することで、随意行動としての薬物探索・摂取が負の強化に制御され依存へと進むメカニズムの検証を行う。内定年度:2017メタンフェタミンなどの濫用薬物の慢性反復投与によって個体内に嫌悪的ストレス状態が生じること、その嫌悪状態は薬物摂取環境の一部と連合し環境刺激が条件性嫌悪を誘発する様になること、誘発された嫌悪状態の解消が負の強化子として薬物探索行動を依存へと導くという仮説を検証することが目的であった。本年度は、特定の環境下でメタンフェタミンを反復投与されたマウスが、環境を構成する要素の中で嗅覚刺激に対して条件性嫌悪を学習するという基課題で得られた結果を、刺激強度などの要因を操作する4つの実験から追検証した。研究実施者の異動により基課題で用いた実験装置が使用できなくなったため、新たに自作の装置を作成して実験を行った。基課題で得られた結果のパターンが概ね再現できたが、効果が弱く、装置の改良や刺激強度・種類のさらなる検討が必要であると考えられる。また濫用薬物とギャンブル依存との関連を調べるため、メタンフェタミンまたはニコチンの反復投与がギャンブル様行動に与える影響をマウスにおいて検証した。一つの報酬を得るために要求される反応数が平均すると等しいがその分布が一様か変動性を持つかにおいて異なる二つの選択肢を用意した。一方の選択肢への反応はFR15スケジュールで、他方はRR15スケジュールで強化された。並立連鎖スケジュールの終環にこれらの選択肢を配置し初環での反応率を選択の指標とした。選択行動が安定した後に7日間、薬物投与下で選択課題を行い、さらに7日間退薬状態にて選択課題を継続した。メタンフェタミン退薬時に、マウスは固定選択肢(FR)を選好する傾向を示した。ニコチン退薬時に、マウスは変動選択肢(RR)を選好した。ギャンブル行動を構成する要素のうち、報酬確率の変動性に対する嗜好に濫用薬物が与える影響を引き続き検証していく。薬物自己投与装置の導入・立ち上げに時間を要したため、先に研究2以降で行う薬物と環境刺激との連合において嫌悪効果が生じるパラメータを探索する実験を実施した。また、新たに濫用薬物とギャンブル様行動との関連を調べる実験系を立ち上げ、有望なデータを得ることができた。このため、研究計画全体としては概ね順調な進展であると判断した。引き続きメタンフェタミンが環境刺激との連合学習を通じて個体に嫌悪状態を誘発するメカニズムについて検証を行う。この現象を確立したのちに、薬物自己投与パラダイムと組み合わせた実験を実施することで、随意行動としての薬物探索・摂取が負の強化に制御され依存へと進むメカニズムの検証を行う。
KAKENHI-PROJECT-17KK0074
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17KK0074
氷温域を利用した新しい臓器保存法の開発
マウス(C57BL/6)の肝臓を摘出し、門脈に27Gテフロン針を挿入後、UW液で灌流した。摘出した肝臓を,ハサミを用いて小片化し、その一部をSCIDマウスの腎皮膜下に移植した(Group1)。残りの肝臓組織は二つのグループに分け、一方はマイクロチューブに保存し、そのまま液体窒素冷凍器に保存した(Group2)。残る一方は、マイクロチューブに保存し、プログラムフリーザーを用いて冷凍し、48時間後に液体窒素冷凍庫に移し、保存した(Group3)。4週間後に、肝組織を解凍し、SCIDマウスの腎皮膜下に移植した。さらに、2週間後にマウスを解剖し、病理組織学的に検討した。Group1では、SCIDマウスの腎皮膜下に移植肝組織を認めた。Group2では多くの組織が瘢痕化したが、Group3では一部肝組織が認められた。プログラムフリーザーによる氷温域を用いた肝組織保存の有用性が示唆された。臓器保存の分野においては、比較的新しい方法である氷温域保存法の効果について、ラット肝臓、腎臓を用いて検討した。ラットを二酸化炭素を用いて屠殺。肝臓については開腹した後、門脈よりカテーテルを挿入し、UW液にて灌流後に摘出した。腎臓については、腎動脈よりカテーテルを挿入し、UW液で灌流後に摘出した。摘出臓器を冷却したUW液で保存し、そのままプログラムフリーザーを用いて凍結した。プログラムフリーザーを用いず、直接冷凍した群をコントロール群とした。摂氏-80度の低温冷蔵庫で2週間保存した後、摂氏37度の水槽でゆっくりと解凍した。解凍後、一部は細胞浮遊液として、10%ウシ胎児血清を含むDMEMを用いて細胞培養した。また、一部はSCIDマウスの皮下に移植し、生着率について検討した。培養細胞の検討では、トリパンブルーを用いた染色法で、コントロール群に比し、実験群で生存細胞の回収率が良好であった。また、SCIDマウスを用いた実験では、移植後2週間で、移植片を摘出、病理学的に検討した。この実験においても、コントロール群に比し、実験群においてマウス固有組織との接合が良好で、生着率が高かった。本年度の実験により、臓器保存法におけるプログラムフリーザーの有用性が示唆された。マウス(C57BL/6)の肝臓を摘出し、門脈に27Gテフロン針を挿入後、UW液で灌流した。摘出した肝臓を,ハサミを用いて小片化し、その一部をSCIDマウスの腎皮膜下に移植した(Group1)。残りの肝臓組織は二つのグループに分け、一方はマイクロチューブに保存し、そのまま液体窒素冷凍器に保存した(Group2)。残る一方は、マイクロチューブに保存し、プログラムフリーザーを用いて冷凍し、48時間後に液体窒素冷凍庫に移し、保存した(Group3)。4週間後に、肝組織を解凍し、SCIDマウスの腎皮膜下に移植した。さらに、2週間後にマウスを解剖し、病理組織学的に検討した。Group1では、SCIDマウスの腎皮膜下に移植肝組織を認めた。Group2では多くの組織が瘢痕化したが、Group3では一部肝組織が認められた。プログラムフリーザーによる氷温域を用いた肝組織保存の有用性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-10770596
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10770596
上皮-間葉系転換(EMT)を利用したダイレクトリプログラミング法の開発
平成30年度においては、以下の2つの研究を行った。研究1 EMT現象を用いた直接転換法の解析:転写因子SOX10を過剰発現させるだけでは神経堤細胞へ直接転換できなかったマウス角化細胞でも、SOX10と共にEMTに関係する転写因子を過剰発現させると神経堤細胞に直接転換できることをこれまで明らかにしてきた。この成果より、EMT現象が直接転換を促進する役割を果たしていると考え、EMTを介してマウス角化細胞を神経堤細胞以外の細胞へ直接転換することを試みた。マウス角化細胞の色素細胞への直接転換を検討するため、色素細胞マスター遺伝子m-MitfをEMT関連転写因子と共に過剰発現させた。しかし、この方法では既知の色素細胞培養条件を用いただけでは色素細胞に直接転換できなかった。そのため、培養環境や培養期間など様々な条件を検討したが、色素細胞に転換した兆候は観察されなかった。研究2 EMT現象を促進する転写因子の新しい組み合わせの探索:研究1で用いた転写因子によるEMT現象で生じる遺伝子発現変動を定量的PCRで解析したところ、通常のEMT現象で観察される変動よりも小さいことがわかった。そこで、研究1ではEMT現象が十分に起きなかったため直接転換しなかったのではないかと考え、EMTを促進する転写因子の新しい組み合わせを探索した。既に明らかにしているEMT関連転写因子を様々な組み合わせで角化細胞にレトロウィルスで過剰発現させ、EMT現象の発生とその強弱を調べた。フローサイトメーターで間葉系細胞マーカーSca-1とPDGFRαの発現の強弱を観察し、定量的PCRでE-CadherinとVimentinの発現の変動を調べているが、現在まで、EMTを促進する転写因子の組み合わせは明らかにできていない。次年度も引き続き探索を行う予定である。神経堤細胞への直接転換に用いた転写因子の組み合わせでは、角化細胞を神経堤細胞以外の細胞への直接転換には応用できなかった。これは当初から予想していたことではあったが、EMTを促進する転写因子の組み合わせの探索に、計画以上の時間がかかってしまっている。引き続きEMT現象を促進させる転写因子の組み合わせの探索を行う。現在使用している間葉系細胞マーカー以外のマーカーも利用した詳細なEMTの定量を行い、より効率的な探索を行う。この成果を元に、EMTを用いた角化細胞の色素細胞への直接転換を試みる。明らかにしたEMT関連転写因子を用いて角化細胞以外の細胞でもEMTが起こるかどうかも検討することで、多種類の細胞のEMTを用いた直接転換への応用もめざす。平成30年度においては、以下の2つの研究を行った。研究1 EMT現象を用いた直接転換法の解析:転写因子SOX10を過剰発現させるだけでは神経堤細胞へ直接転換できなかったマウス角化細胞でも、SOX10と共にEMTに関係する転写因子を過剰発現させると神経堤細胞に直接転換できることをこれまで明らかにしてきた。この成果より、EMT現象が直接転換を促進する役割を果たしていると考え、EMTを介してマウス角化細胞を神経堤細胞以外の細胞へ直接転換することを試みた。マウス角化細胞の色素細胞への直接転換を検討するため、色素細胞マスター遺伝子m-MitfをEMT関連転写因子と共に過剰発現させた。しかし、この方法では既知の色素細胞培養条件を用いただけでは色素細胞に直接転換できなかった。そのため、培養環境や培養期間など様々な条件を検討したが、色素細胞に転換した兆候は観察されなかった。研究2 EMT現象を促進する転写因子の新しい組み合わせの探索:研究1で用いた転写因子によるEMT現象で生じる遺伝子発現変動を定量的PCRで解析したところ、通常のEMT現象で観察される変動よりも小さいことがわかった。そこで、研究1ではEMT現象が十分に起きなかったため直接転換しなかったのではないかと考え、EMTを促進する転写因子の新しい組み合わせを探索した。既に明らかにしているEMT関連転写因子を様々な組み合わせで角化細胞にレトロウィルスで過剰発現させ、EMT現象の発生とその強弱を調べた。フローサイトメーターで間葉系細胞マーカーSca-1とPDGFRαの発現の強弱を観察し、定量的PCRでE-CadherinとVimentinの発現の変動を調べているが、現在まで、EMTを促進する転写因子の組み合わせは明らかにできていない。次年度も引き続き探索を行う予定である。神経堤細胞への直接転換に用いた転写因子の組み合わせでは、角化細胞を神経堤細胞以外の細胞への直接転換には応用できなかった。これは当初から予想していたことではあったが、EMTを促進する転写因子の組み合わせの探索に、計画以上の時間がかかってしまっている。引き続きEMT現象を促進させる転写因子の組み合わせの探索を行う。現在使用している間葉系細胞マーカー以外のマーカーも利用した詳細なEMTの定量を行い、より効率的な探索を行う。この成果を元に、EMTを用いた角化細胞の色素細胞への直接転換を試みる。明らかにしたEMT関連転写因子を用いて角化細胞以外の細胞でもEMTが起こるかどうかも検討することで、多種類の細胞のEMTを用いた直接転換への応用もめざす。EMT現象を促進させる新しい転写因子の組み合わせの探索への着手が予定よりも遅れ、しかも計画以上の時間がかかってしまっている。そのため助成金を年度を跨いで使用する必要が生じた。次年度も引き続きEMT現象を促進させる転写因子の組み合わせの探索を重点的に行い、経費は前年度分からの繰越分を合わせて以下に示した項目に充てる予定である。フローサイトメーター解析のための各種蛍光抗体、定量的
KAKENHI-PROJECT-18K06826
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上皮-間葉系転換(EMT)を利用したダイレクトリプログラミング法の開発
遺伝子発現解析試薬、遺伝子発現制御システム、遺伝子導入関連物品(遺伝子導入試薬、電気的遺伝子導入機器、レトロウィルス発現関連試薬)、各種細胞培養のために必要な培養関連試薬・培地、実験用マウスなど動物飼育費。
KAKENHI-PROJECT-18K06826
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日本の複数の多言語コミュニティを比較する言語習得・言語接触の調査研究
近い将来に日本が多民族、多言語社会になるのではないかと言われています。それが現実になったときに、様々な政策作りや社会問題緩和のために参考になるのは、過去に実際に形成された日本国内の多言語コミュニティである。本研究では、数世代にわたる「長期的」コミュニティ(小笠原諸島の欧米系島民)を、半世紀続いている「中期的」もの(石垣の台湾系島民)、そして10年ほど続いている歴史の浅い「短期的」もの(茨城県大洗町のインドネシア人)と比較している。近い将来に日本が多民族、多言語社会になるのではないかと言われています。それが現実になったときに、様々な政策作りや社会問題緩和のために参考になるのは、過去に実際に形成された日本国内の多言語コミュニティである。本研究では、数世代にわたる「長期的」コミュニティ(小笠原諸島の欧米系島民)を、半世紀続いている「中期的」もの(石垣の台湾系島民)、そして10年ほど続いている歴史の浅い「短期的」もの(茨城県大洗町のインドネシア人)と比較している。日本の複数の多言語コミュニティにおける言語習得状況を比較し、日本語の学びやすい要素と学びにくい要素、あるいは変化しやすい要素と変化に耐える要素を見つけ出そうとしている。今年度は小笠原欧米系島民およか大洗町インドネシア入住民の調査を行なった。さらに、沖縄や奄美の若年層が話す地域共通語である「ウチナーヤマトゥグチ」や「トン普通語」を、標準語教育ではなく、第2言語として日本語習得の視点から捉え直した。研究論文や図書、研究発表や招待講演などを通じてその研究成果を公表し、フィードバックを求めた。「言語接触から見たウチナーヤマトゥグチの分類」という論文で、この言語変種の正体を検証し、ピジン、クレオール、コイネ、ネオ方言、混合言語、中間言語などさまざまな言語接触現象のいずれとも相違点を持っていることを明らかにした結果、クレオロイド(しかもこれまでに報告されてこなかった類のクレオロイド)であるという結論に至る。また、大学院生とまとめた「石垣島の台湾系島民の日本語-1話者のケース・スタディー-」の中で、台湾語を母語とする人が長年石垣島で暮らし、日本語を自然習得した結果形成された中間言語の具体的な言語形式をいくつか分析した。それは、呼称(自称や親族呼称など)、単語忘却の際のアレ、新情報認知要求のデショ、フィラー(間投詞)としてのモウ、非順接的用法のテカラ、文末詞サーの用法、非・理由用法のワケなどであった。日本国内にあるこれらの多言語コミュニティにおける日本語習得の実態を研究することによって、近い将来に増えてくるであろう、こうした「外国系日本住民」に対する日本語教育を、より効率の良いものにすることができると確認している。日本の複数の多言語コミュニティにおける言語習得状況を比較することが本研究の目的である。日本国内にある多言語コミュニティの日本語習得を研究することによって、近い将来に増えてくるであろう、こうした「外国系日本住民」に対する日本語教育を、より効率の良いものにすることができると確認している。平成22年度は小笠原欧米系島民および石垣の調査を行なった。さらに、沖縄や奄美の若年層が話す地域共通語である「ウチナーヤマトゥグチ」や「トン普通語」を、標準語教育ではなく、第2言語として日本語習得の視点から捉え直した。研究論文や図書、研究発表や招待講演などを通じてその研究成果を公表し、関連分野の研究者の反応を求めている。22年度に小笠原諸島の欧米系島民の言語習得と言語接触に関するドキュメンタリー映画を製作し始めた。2010年11月2021日、横浜の山手234番館にて第2小笠原研究者円卓会議を開催した。私の2件の発表を含む7件の研究発表があった。そのほかにこの映画の途中経過の試写会を行なった。また2011年2月19日に東京秋葉原の首都大学東京サテライトキャンパスで行われた国際会議The interdisciplinary workshop on sustainable symbiosis of human and nature from the view point of" Island study"でも試写会が行われた。こうしたドキュメンタリーを通じて、日本国内における多言語コミュニティやその中で起きている言語接触と言語習得現象がより広く知られることになると思われる。近い将来に日本が多民族、多言語社会になるのではないかと言われています。それが現実になったときに、様々な政策作りや社会問題緩和のために参考になるのは、過去に実際に形成された日本国内の多言語コミュニティである。本研究では、数世代にわたる「長期的」コミュニティ(小笠原諸島の欧米系島民)を、半世紀続いている「中期的」もの(石垣の台湾系島民)、そして10年ほど続いている歴史の浅い「短期的」もの(茨城県大洗町のインドネシア人)と比較している。比較した結果、次のことが分かった。(1)混合言語が生じるのは若いコミュニティではなく、むしろ数世代の時間を積み重ねた長期的なものであることが分かった。これは当初の予測や「一般常識」に反した驚きの発見だった。(2)中期的なコミュニティの場合は混合言語というよりもむしろ二つの言語変種(〓南語と日本語)の使い分けが目立った。石垣台湾人一世の「中間言語」には、ほかの地域の自然習得者との共通点も見られるが、「ウチナーヤマトゥグチ」という地域言語と、非母語話者の中間言語との両方の絡み合わせによる独特な「沖縄県ならでは」の言語現象も見られる。(3)短期的なコミュニティである大洗町では(10年住んでいる人が多いとは言え)、日本語がまだ習得段階にある大人はいるが、バイリンガルな2世も年月と共に増えつつある。
KAKENHI-PROJECT-21520544
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日本の複数の多言語コミュニティを比較する言語習得・言語接触の調査研究
なお、当初フィールドの一つとして考えていた大洗町は去年3月11日に起きた東日本大震災の被害を受けたため、調査が続けられなくなった。これまでお世話になっていた大洗のインドネシア人たちの安否が確認できたが、その後多くは(一時)帰国をしていた。一方、三重県伊賀市にある多言語コミュニティ(ポルトガル語、スペイン語、ベトナム語、中国語、韓国語、タガログ語、中国語)の方々に調査をしたいと申し入れしたら、それを快く受け入れてくれた。
KAKENHI-PROJECT-21520544
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樹状細胞と肝癌細胞の融合細胞を用いた肝癌に対する新しい癌免疫療法の研究
樹状細胞と肝癌細胞の融合細胞を用いた新たな癌免疫療法開発のための基礎的検討を行うことが本研究の目的である。本年度は前年度の成果をもとに、肝臓への転移が高頻度に認められる肝癌細胞と樹状細胞と融合細胞を用い、in vitroにおいて肝癌細胞特異的細胞障害性T細胞の誘導が可能か否かをマウスを用いて検討し以下の結果を得た。1)肝転移癌細胞に対する抗腫瘍効果の検討肝臓に高い転移能を示す癌細胞株(C-1300 neuroblastoma, RL male 1 B lymphomaなど)を用いて樹状細胞との融合細胞による抗腫瘍免疫誘導を試み、その予防、治療効果について検討したところ、前もって融合細胞を投与するといずれの細胞株でも肝転移が抑制されることが示された。2)特異的細胞障害性Tリンパ球クローンの樹立と標的抗原の同定肝転移が抑制され特異的免疫の成立したマウスよりリンパ球を得て、融合細胞との混合培養を行い、特異的細胞障害性Tリンパ球(CTL)クローンを樹立した。現在、得られたクローンのT細胞リセプターの認識するペプチドの同定を、分画された肝癌細胞のMHC class I結合性ペプチドをパルスした標的細胞へのCTLクローンの障害性を調べることにより検討中である。樹状細胞と肝癌細胞の融合細胞を用いた新たな癌免疫療法開発のための基礎的検討を行うことが、本研究の目的である。本年度は、樹状細胞と肝癌細胞の融合細胞を用い、in vitroにおいて肝癌細胞特異的細胞障害性T細胞の誘導が可能か否かをマウスを用いて検討し、以下の結果を得た。1.BALB/cから得た樹状細胞と同系肝癌細胞c-BNLの融合細胞と、BALB/c由来末梢血リンパ球をin vitroにおいて混合培養すると、B細胞の著名な増加がみられ、培養上清中にはc-BNLに対する抗体が認められた。また、培養上清中にIL-4、IL-5等のTh2サイトカインは同定されなかった。一方、T細胞の増殖はみられず、c-BNL特異的CTLの誘導もみられなかった。2.C57BL/6から得た樹状細胞と同系肝癌細胞MC38の融合細胞と、C57BL/6由来末梢血リンパ球をin vitroにおいて混合培養すると、T細胞の著名な増加がみられ、MC38特異的CTLの誘導も認められた。しかし、培養上清中にIL-2、IFN-γ等のTh1サイトカインは同定されなかった。また、B細胞の増殖やMC38特異的抗体の産生もみられなかった。以上より、遺伝学的背景により融合細胞によるリンパ球刺激作用が異なることが示された。樹状細胞と肝癌細胞の融合細胞を用いた新たな癌免疫療法開発のための基礎的検討を行うことが本研究の目的である。本年度は前年度の成果をもとに、肝臓への転移が高頻度に認められる肝癌細胞と樹状細胞と融合細胞を用い、in vitroにおいて肝癌細胞特異的細胞障害性T細胞の誘導が可能か否かをマウスを用いて検討し以下の結果を得た。1)肝転移癌細胞に対する抗腫瘍効果の検討肝臓に高い転移能を示す癌細胞株(C-1300 neuroblastoma, RL male 1 B lymphomaなど)を用いて樹状細胞との融合細胞による抗腫瘍免疫誘導を試み、その予防、治療効果について検討したところ、前もって融合細胞を投与するといずれの細胞株でも肝転移が抑制されることが示された。2)特異的細胞障害性Tリンパ球クローンの樹立と標的抗原の同定肝転移が抑制され特異的免疫の成立したマウスよりリンパ球を得て、融合細胞との混合培養を行い、特異的細胞障害性Tリンパ球(CTL)クローンを樹立した。現在、得られたクローンのT細胞リセプターの認識するペプチドの同定を、分画された肝癌細胞のMHC class I結合性ペプチドをパルスした標的細胞へのCTLクローンの障害性を調べることにより検討中である。
KAKENHI-PROJECT-11770286
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11770286
百科事典の知識社会学――17-18世紀イギリスにおける知の連環――
本研究は18世紀イングランドにおける百科事典の出版について、編纂者の意図や当時の社会的文脈との関係において明らかにすることを目的とするものであった。本年度の研究は、2つの辞典(百科事典)を対象にし、それぞれの成立過程を分析することができた。第一に、ジョン・ハリスの『レクシコン・テクニクム』と呼ばれる百科事典の成立についての分析を行った。ハーヴァード大学での史料調査から始まった本年度は、デジタル化されていない史料の蒐集から始まり、そのなかにハリスの事典出版にかんする史料を発掘した。これまでの研究では、出版された百科事典そのものを対象として分析がなされてきた。しかし、この史料はその出版が可能であった地盤を明らかにすることが可能である出版計画書であった。この史料の分析に多くの時間を割いた結果、イングランドの百科事典は特にフランスの辞典群の影響を強く受けていたこと、予約購読制という手法を取り入れていたこと、聖職者や学者だけでなく商業者や職人の教育に力を入れていたことを明らかにした。これはハリスという編纂者によって百科事典の出版が可能であったというよりも、むしろ社会的な要因が百科事典の誕生を促したといえるだろう。第二に、トマス・ブラントの辞典を対象に、辞典と百科事典の境界線が曖昧であること、そして「百科事典的な知識」を収録したというブラントの主張の拠り所を明らかにするために、彼の著作全体と当時の社会的な関係を浮かび上がらせようと試みた。分析の結果、辞典編纂や百科事典的な知識の蒐集は、ルネサンス期からつづく修辞学で繰り返し主張されてきた方法の影響を受けていることが明らかになった。それは個人的な学習をするさいのノート取りの延長線上にある技術であった。上記の研究により、本年度は辞典・百科事典研究における社会的要因との関係、西洋の学問的伝統の影響関係を明らかにすることができた。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。本研究の目的であるイングランド百科事典における知識の枠組みの変容を明らかにするために、まずは17世紀から18世紀に出版された百科事典の出版遍歴を追うことから始めた。史料の多くはBritish LibraryのESTC (English Short Title Catalogue)に基本的なデータが掲載されており、ECCO (Eighteenth Century Collections Online)からデジタル化された史料を入手した。だが、デジタルデータはあくまでもある版のコピーでしかないため、編者や読者の反応を探求するために、11月末にオックスフォードのボドリアン図書館、3月にハーバード大学のホートン図書館での史料撮影を中心に調査を行った。特にハーバード大学では、これまでデジタル化されてこなかった史料やデジタル化されている版でも別のコピーにアクセスすることができたことで、これまでの先行研究では言及されてこなかった史料の発見があり、新たな論点を浮かび上がらせることが可能となった。従来の研究とは異なり、同一版によるコピーの違いや改訂版による編纂の変化を追うことで、イングランドにおける百科事典の編纂がフランスの辞典を大いに関係があったこと、18世紀末まで広く市民に受け入れられていったことが判明した。本年度は、イギリスの百科事典編纂者であるジョン・ハリスの『レクシコン・テクニクム』について分析を行った。この事典はイングランドにおける最初の科学事典と言われており、その後の百科事典編纂にも大きな影響を与えた書物である。本年度の成果として、岩波書店から刊行されている雑誌『思想』に研究論文を発表した。また、1月には東洋大学での研究会「知の編纂術」で発表を行い、百科事典の編纂における宗教と科学の関係、書籍商の位置づけ、引用としての書物としてのあり方について議論を深めた。コレクションを利用したイングランドの辞書史・百科事典史の基本的な見取り図を作成することから始めたことで、分析すべき対象を絞り込んだ。ジョン・ハリス、イーフレイム・チェンバーズという2人の辞典・百科事典が商業的成功と他国への影響をあたえるほどの編纂手法が用いられていることを明らかにした。ハリスの『レクシコン・テクニクム』を巡る、イングランドにおける科学事典の誕生については、すでに岩波の『思想』に掲載された。また、この論文を執筆した後、ハーバード大学で実際の一次史料の調査を行ったことで、新たな論点を見つけることができ、次年度に取り組むべき課題も発見することができた。しかし、チェンバーズについては多くの版とコピーが現存しているため、資料調査に多くの時間を割いてしまい、史料の分析は十分にできたとは言い難い。初年度は多くの時間を資料収集に費やしたが、その結果、当初計画していたよりも多くの版やコピーが現存していることが判明した。デジタル化されていない史料が海外の図書館に所蔵されており、特にチェンバーズについては、史料収集と分析が十分ではないため、進捗はやや遅れていると言える。本研究は18世紀イングランドにおける百科事典の出版について、編纂者の意図や当時の社会的文脈との関係において明らかにすることを目的とするものであった。本年度の研究は、2つの辞典(百科事典)を対象にし、それぞれの成立過程を分析することができた。第一に、ジョン・ハリスの『レクシコン・テクニクム』と呼ばれる百科事典の成立についての分析を行った。ハーヴァード大学での史料調査から始まった本年度は、デジタル化されていない史料の蒐集から始まり、そのなかにハリスの事典出版にかんする史料を発掘した。これまでの研究では、出版された百科事典そのものを対象として分析がなされてきた。
KAKENHI-PROJECT-17J09692
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J09692
百科事典の知識社会学――17-18世紀イギリスにおける知の連環――
しかし、この史料はその出版が可能であった地盤を明らかにすることが可能である出版計画書であった。この史料の分析に多くの時間を割いた結果、イングランドの百科事典は特にフランスの辞典群の影響を強く受けていたこと、予約購読制という手法を取り入れていたこと、聖職者や学者だけでなく商業者や職人の教育に力を入れていたことを明らかにした。これはハリスという編纂者によって百科事典の出版が可能であったというよりも、むしろ社会的な要因が百科事典の誕生を促したといえるだろう。第二に、トマス・ブラントの辞典を対象に、辞典と百科事典の境界線が曖昧であること、そして「百科事典的な知識」を収録したというブラントの主張の拠り所を明らかにするために、彼の著作全体と当時の社会的な関係を浮かび上がらせようと試みた。分析の結果、辞典編纂や百科事典的な知識の蒐集は、ルネサンス期からつづく修辞学で繰り返し主張されてきた方法の影響を受けていることが明らかになった。それは個人的な学習をするさいのノート取りの延長線上にある技術であった。上記の研究により、本年度は辞典・百科事典研究における社会的要因との関係、西洋の学問的伝統の影響関係を明らかにすることができた。今後はH29年度の調を踏まえ、それぞれの辞典・百科事典についての分析を中心に行っていく。今年度の反省を踏まえ、史料収集に終始することはせず、以下の点について研究を行う。1.史料調査:本年度も昨年度と同様にハーバード大学と大英図書館での史料調査を行っていく予定である。特に、大英図書館での史料調査が不十分なため、イギリスを中心に調査を行う。調査対象は、チェンバーズの『サイクロペディア』とそれが影響を与えた『エンサイクロペディア・ブリタニカ』である。重要となるのは、デジタル化されているものには見られない欄外の書き込みや編集の痕跡であるため、むやみにすべての史料に当たることはせず、カタログに記載されているノートを参照に対象を絞り込む。2.辞典・百科事典の分析:すでにハリスについて論文は執筆したが、その後新たな史料が発掘されたため、再度ハリスが準拠した辞典等について分析を行う。また、チェンバーズによる『サイクロペディア』を分析の中心におく。イングランドの百科事典編纂のあり方について、ハリスからの伝統と同時代のフランスやイタリアへの影響というコンテクストを重視した視座による分析によって、初期近代における学知の交流という当時の人文主義者たちの活動にも関心を向ける。3.博論執筆:最終的なゴールとして、本研究を博士論文としてまとめていく作業を行っていく。辞典・百科事典の編纂という行為を通して、17世紀から18世紀のイングランドにおける知の変容がいかになされていったのかを明らかにする。その射程は決してイングランドという地域、17ー18世紀という時代に限定されるものではなく、複雑で多様な要因・文化の交流のなかで生まれていった文化現象として記述する。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-17J09692
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J09692
アディポネクチンの糖尿病性腎症に対する影響とその作用機序についての研究
人工透析の原因疾患の第一位である糖尿病性腎症の発症・進展には、インスリン抵抗性が深く関連していると考えられる。インスリン抵抗性に深く関与しているアディポカインが、糖尿病性腎症の発症・進展に関しても重要な役割を果たしていると考えられる。本研究は、アディポネクチンが糖尿病性腎症の発症・進展抑制に果たす役割を解明することを目的として、培養メサンギウム細胞とSTZ糖尿病モデルラットを用いて検討した。まず、ラット腎メサンギウム細胞を培養し、レジスチンとアディポネクチンによる細胞増殖作用を[^3H]取り込み実験にて検討した。レジスチンは、濃度依存的にラット培養メサンギウム細胞における[^3H]取り込みが増加し、アディポネクチンは、レジスチンによるラット培養メサンギウム細胞DNA合成促進作用を抑制することを確認した。この結果は、レジスチンは糖尿病性腎症の増悪因子である可能性を示唆し、さらにアディポネクチンは、糖尿病性腎症の抑制作用を有する可能性を示唆した。さらに、STZ糖尿病モデルラットにアデノウイルスを用いてアディポネクチンを過剰発現させたラットにおいて、1)蛋白尿の減少、2)その腎皮質におけるTGFβ酬Aの発現の減少及びnephrinmRNAの発現の増加、3)その腎皮質におけるeNOSmRNAの発現の増加及びiNOSmRNAの減少、を新たに確認し、adiponectinの糖尿病腎症進展抑制機序の解明を行った。人工透析の原因疾患の第一位である糖尿病性腎症の発症・進展には、インスリン抵抗性が深く関連していると考えられる。インスリン抵抗性に深く関与しているアディポカインが、糖尿病性腎症の発症・進展に関しても重要な役割を果たしていると考えられる。本研究は、アディポネクチンが糖尿病性腎症の発症・進展抑制に果たす役割を解明することを目的として、培養メサンギウム細胞とSTZ糖尿病モデルラットを用いて検討した。まず、ラット腎メサンギウム細胞を培養し、レジスチンとアディポネクチンによる細胞増殖作用を[^3H]取り込み実験にて検討した。レジスチンは、濃度依存的にラット培養メサンギウム細胞における[^3H]取り込みが増加し、アディポネクチンは、レジスチンによるラット培養メサンギウム細胞DNA合成促進作用を抑制することを確認した。この結果は、レジスチンは糖尿病性腎症の増悪因子である可能性を示唆し、さらにアディポネクチンは、糖尿病性腎症の抑制作用を有する可能性を示唆した。さらに、STZ糖尿病モデルラットにアデノウイルスを用いてアディポネクチンを過剰発現させたラットにおいて、1)蛋白尿の減少、2)その腎皮質におけるTGFβ酬Aの発現の減少及びnephrinmRNAの発現の増加、3)その腎皮質におけるeNOSmRNAの発現の増加及びiNOSmRNAの減少、を新たに確認し、adiponectinの糖尿病腎症進展抑制機序の解明を行った。人工透析の原因疾患の第一位である糖尿病性腎症の発症・進展には、インスリン抵抗性が深く関連していると考えられる。インスリン抵抗性に深く関与しているアディポカインが、糖尿病性腎症の発症・進展に関しても重要な役割を果たしていると考えられる。本研究は、アディポネクチンが糖尿病性腎症の発症・進展抑制に果たす役割を解明することを目的として、培養メサンギウム細胞とSTZ糖尿病モデルラットを用いて検討した。まず、ラット腎メサンギウム細胞を培養し、高糖濃度条件下にて、レジスチンとアディポネクチンによる細胞増殖作用を[^3H]取り込み実験にて検討した。レジスチンは、濃度依存的にラット培養メサンギウム細胞における[^3H]取り込みが増加し、アディポネクチンは、レジスチンによるラット培養メサンギウム細胞DNA合成促進作用を抑制した。この結果は、レジスチンは糖尿病性腎症の増悪因子である可能性が示唆され、さらにアディポネクチンは、糖尿病性腎症の抑制作用を有する可能性が示唆された。現在、STZ糖尿病モデルラットにアデノウイルスを用いてアディポネクチンを過剰発現させたラットにおいて、蛋白尿、及びPDGFI、TGFβ、4型コラーゲン等の腎炎関連因子、転写因子(PPARα、γ、δ、SREBP)脂質輸送・転送関連因子、細胞内脂質合成・代謝酵素等の因子をNorthern解析、real-timePCRによる定量、Western解析にて解析中である。人工透析の原因疾患の第一位である糖尿病性腎症の発症・進展には、インスリン抵抗性が深く関連していると考えられる。インスリン抵抗性に深く関与しているアディポカインが、糖尿病性腎症の発症・進展に関しても重要な役割を果たしていると考えられる。本研究は、アディポネクチンが糖尿病性腎症の発症・進展抑制に果たす役割を解明することを目的として、培養メサンギウム細胞とSTZ糖尿病モデルラットを用いて検討した。まず、ラット腎メサンギウム細胞を培養し、高糖濃度条件下にて、レジスチンとアディポネクチンによる細胞増殖作用を[^3H]取り込み実験にて検討した。レジスチンは、濃度依存的にラット培養メサンギウム細胞における[^3H]取り込みが増加し、アディポネクチンは、レジスチンによるラット培養メサンギウム細胞DNA合成促進作用を抑制することを確認した。この結果は、レジスチンは糖尿病性腎症の増悪因子である可能性を示唆し、さらにアディポネクチンは、糖尿病性腎症の抑制作用を有する可能性を示唆した。
KAKENHI-PROJECT-18590896
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18590896
アディポネクチンの糖尿病性腎症に対する影響とその作用機序についての研究
さらに、STZ糖尿病モデルラットにアデノウイルスを用いてアディポネクチンを過剰発現させたラットにおいて、1)蛋白尿が減少していること、2)その腎皮質におけるTGFβmRNAの発現のが減少していること、を新たに確認し、その機序の解明を行った。
KAKENHI-PROJECT-18590896
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18590896
フルカラー像が表示面より飛び出す計算機合成ホログラムを用いた広視域ディスプレイ
本研究では,約180度の広い範囲からフルカラーの実像を観察できるようにするため,半円筒形状の計算機合成ホログラムにレインボウホログラムの手法を応用した光学モデルを構築した.広い視域のどこからでも正しく隠面処理された再生像を観察できるようにするため,仮想窓を用いて物体点光源にホログラム面上の計算範囲を付加する手法を提案した.白色光を用いた再生光学系により,出力した計算機合成ホログラムを再生した結果,フルカラーの実像を約180度の範囲から観察することができた.前年度研究において,水平方向視差のみを有する計算機合成ホログラムの計算手法を確立し,その像を確認することができた.しかし,初年度の再生像はこれまでの全方向視差がある半円筒の実像再生計算機合成ホログラムと同様,単色であった.本年度の研究では,レインボウホログラムの計算手法を取り入れることで,フルカラーの再生像の再生を行った.レインボウホログラムは水平スリットを用いて,垂直方向の任意の位置にRGB各波長の再生像を重ね合わせることができる手法である.そこで,本ホログラムの形状(半円筒)に合わせ,仮想スリットを半円筒とした光学モデルを構築する計算手法を確立した.再生された像を取り囲むように,等距離から観察位置に応じたフルカラー像を観察することが可能になった.今回出力したホログラムは約77.6GB(718,080 x 108,00)の解像度を有し,点光源数約8,000点のオブジェクトを用いて約123分の計算時間を要した.また,本年度はフルカラーの像再生を行うにあたり再生光学系の変更も行った.これまでは,単色のホログラムであったため,光源も単色のものを用いていた.しかし,本研究ではフルカラーの像再生を行うため,光源としては白色またはRGB各色が必要となる.計算したホログラムにおいて,照明光の波長を選択することが可能であるため,本年度は白色LEDによる照明を行った.白色LEDをそのまま用いると光源が大きさを持つため,像がぼやけてしまう.そこで,レンズとスリットを用いてノイズを軽減することでシャープな像を観察することが可能となった.本研究では,約180度の広い範囲からフルカラーの実像を観察できるようにするため,半円筒形状の計算機合成ホログラムにレインボウホログラムの手法を応用した光学モデルを構築した.広い視域のどこからでも正しく隠面処理された再生像を観察できるようにするため,仮想窓を用いて物体点光源にホログラム面上の計算範囲を付加する手法を提案した.白色光を用いた再生光学系により,出力した計算機合成ホログラムを再生した結果,フルカラーの実像を約180度の範囲から観察することができた.初年度は,これまでの全方向視差を含む計算機合成ホログラムの計算手法から,水平高方向の視差のみを有する計算機合成ホログラムの計算手法に変更を行った.これは,全方向視差を含む計算機合成ホログラムは計算量が膨大になってしまうため,1つの計算機合成ホログラムを計算するのに,数日かかってしまうため計算の高速化が必要であったためである.そこで,立体視に比較的重要でない垂直方向の視差を犠牲にすることで,約20倍の計算速度を実現することができた.現在著者らのグループで研究を行っている計算機合成ホログラムの出力装置は0.44umと高精細なホログラムを出力することが可能である.しかし,ホログラムでの回折角が十分でないため,再生像の大きい計算機合成ホログラムを出力するためには,物体とホログラムを離すことが必要であるため,大きなサイズのホログラムを計算しなくてはならない.本研究の成果により,これまでよりも半径のサイズを1.5倍にしたホログラムを約41分で計算することが可能となった.また,使用した物体データも約70,000万点の点光源からなる複雑な物体を用いた.用いる隠面処理手法を改良することで,どの視点からも正しい像を観察することが可能となった.再生装置に関しても,修正を加えた.これまで,SUSミラーやアクリルミラーを使用して,出力した計算機合成ホログラムを照明する光を作り出していた.しかし,SUSミラーでは素材が硬すぎるためミラーに縞模様が生じてしまい,アクリルミラーでは柔らかすぎるため,端部がたわんでしまい,計算時のパラメータと異なる参照光にとなり,十分な視域を確保することができなかった.そこで,本年度はSUS素材を型として使用し前面にアクリルミラーを配置することで,再生像にノイズが生じず約170度近い視域の実像を再生することに成功した.前年度までの研究において,計算機合成ホログラムを用いたフルカラー像の実像を広視域で再生できることを確認した.しかし,隠面処理は分割されたホログラム面に対して,単視点の隠面処理された物体データ(3次元の点光源データ)を利用していた.ホログラムからの再生像は,物体とホログラム面を結んだ先に視点が来なければ像を観察することができない.
KAKENHI-PROJECT-24760284
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フルカラー像が表示面より飛び出す計算機合成ホログラムを用いた広視域ディスプレイ
このため,ホログラム面を視点とするホログラムであれば,計算時に分割したセグメントごとに隠面処理された物体データを用意すればよいが,ホログラム面から再生される像が近く,視点がホログラム面から離れている場合は複数のセグメントからの再生像を観察することになる.複数のセグメントから再生される像は,物体データが観察視点から生成された(隠面処理された)データではないため,像の重なりや欠けが生じる恐れがある.本年度の研究では,隠面処理手法を改善し観察点で正しく隠面処理された像が観察できるように,点光源データにホログラム面での計算範囲を加えた.計算範囲の付加には,仮想窓と名付けた領域を設定し仮想窓の2つ端点と点光源データを結んだ直線がホログラム面と交差する範囲を計算範囲とした.この仮想窓は,再生像から等距離となる半円周上に設定しており,約1度刻みに分割している.計算範囲を付与した点光源データ用いて,約77.6 GB (718,080x108,000 pixel)の解像度を有するホログラムの干渉縞を生成した.これまで干渉縞の計算には約90分程度の時間を要していたが,本研究ではさらに約40分の時間が計算に必要となった.これは,仮想窓を用いた点光源データへ計算範囲を付加するために要した時間と,各セグメントの計算に必要な点光源データへ再分配するために要した時間である.生成した干渉縞を出力し,フルカラーの再生像を観察することができた.計算機合成ホログラムを用いた3次元ディスプレイの開発2年目までの研究成果により,本研究の一番の目的であるフルカラーの実像を広い範囲から観察するということが達成できた.しかし,隠面処理に関しては十分な十分な計算が行われておらず,再生像が大きいくなった際には欠けや像の重なりなどが生じる可能性がある.また,シミュレーションソフトの作成が完成されていないため,計算したアルゴリズムの確認は出力装置で出力した後になり効率的に行えない.出力したホログラムのサイズも半径が100 mmのものであり,作成した再生装置を十分に活かしきれていない。(再生装置は半径180 mmまで対応している。)初年度行った干渉縞の計算アルゴリズムの変更により,計算速度の向上が実現されたが,再生される像は単色のままである.本研究では,フルカラーの3D実像を再生することを目的としている.フルカラー像の再生を行うためには,RGB3色の干渉縞を計算することが必要である.本年度構築した計算システムを用いて,各波長の干渉縞を計算し合成することでフルカラーの干渉縞を生成することが可能となる.また,本年度は当初ワイヤーフレームなどの隠面処理を必要とない物体データを用いる予定であったが,実際の出力では約70,000点からなる不複雑なオブジェクトを用いた.これまでの隠面処理手法を改良し,水平視差のみの物体データを出力できるようした.また,カラー像干渉縞にも対応できるよう,カラーの物体データを生成できるよう改良を行った.ただし,初年度は生成した物体データの内赤色のみを使用した計算機合成ホログラムを作成した.また,初年度に作成予定であったシミュレーションは次年度以降に行っていく予定である.最終年度は,隠面処理手法の改善を行う.本研究における再生像は,ホログラム面に近い再生像となっている.像を観察する際,像の後方(または前方)にホログラムがなくてはならない.このため,今回のようなホログラム面に近い像の場合,広い範囲のホログラムからの回折像が一体の像を形成している.これは,ある一領域のホログラムが様々な方向の像の情報持っていることを意味している.しかし,これまでは一領域のホログラムに対してある一視点からの物体データを用いて計算を行っていた.
KAKENHI-PROJECT-24760284
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スーパーアンチゲンと慢性炎症性腸疾患-病因と治療への展開-
スーパー抗原SAとしてブドウ球菌由来のSEB、溶レン菌由来のSPE_S(SPE-A,SPE-C)を用いて、液性免疫を中心にSAに対する健康小児の生体防御機構を検討し、慢性炎症性腸疾患患者と比較した。健康小児の血清中にはSEBおよびSPE_Sに対する特異的IgG抗体が保有されていた。その特異抗体の獲得時期は抗原による違いがみられ、抗体保有率が50%を越えたのはSEBで1歳、SPE-Aで11歳、SPE-Cで6歳であった。また、SAに対する特異抗体を含む血清は、それぞれのSAによるT細胞活性化をその抗体量依存性に特異的に抑制した。一方、γグロブリン製剤もこれらの抗体を含有しており、γグロブリン療法後の血清は、補充された抗体量依存性にそれぞれのSAによるT細胞活性化を抑制した。またrecombinant SEBを用いた検討から、SEBではエピトープが主にC末端aa225-234にあることが判明した。慢性炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎4例,クローン病6例)での検討では、患者はSEB,SPE_Sに対する特異抗体を保有しており、特に抗SEB抗体価は健康小児と較べて高値であった。これらの抗体は健康小児の抗体と同様に,抗体量依存性にSAによるT細胞活性化を抑制した。また,SAに対する患者T細胞の応答性は健康小児と有意差を認めなかったが、クローン病ではSPE-Cに低反応を示す例がみられた。以上の結果から、ヒト血清中に存在する特異抗SA抗体はSAに対する生体防御機構の一つとして生物学的な意義をもつことが判明した。慢性炎症性腸疾患ではその防御機構の破綻は証明できなかったが、健康小児でのデータをもとに、今後膠原病や川崎病などの炎症性疾患で検討を進めることが可能となった。スーパー抗原SAとしてブドウ球菌由来のSEB、溶レン菌由来のSPE_S(SPE-A,SPE-C)を用いて、液性免疫を中心にSAに対する健康小児の生体防御機構を検討し、慢性炎症性腸疾患患者と比較した。健康小児の血清中にはSEBおよびSPE_Sに対する特異的IgG抗体が保有されていた。その特異抗体の獲得時期は抗原による違いがみられ、抗体保有率が50%を越えたのはSEBで1歳、SPE-Aで11歳、SPE-Cで6歳であった。また、SAに対する特異抗体を含む血清は、それぞれのSAによるT細胞活性化をその抗体量依存性に特異的に抑制した。一方、γグロブリン製剤もこれらの抗体を含有しており、γグロブリン療法後の血清は、補充された抗体量依存性にそれぞれのSAによるT細胞活性化を抑制した。またrecombinant SEBを用いた検討から、SEBではエピトープが主にC末端aa225-234にあることが判明した。慢性炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎4例,クローン病6例)での検討では、患者はSEB,SPE_Sに対する特異抗体を保有しており、特に抗SEB抗体価は健康小児と較べて高値であった。これらの抗体は健康小児の抗体と同様に,抗体量依存性にSAによるT細胞活性化を抑制した。また,SAに対する患者T細胞の応答性は健康小児と有意差を認めなかったが、クローン病ではSPE-Cに低反応を示す例がみられた。以上の結果から、ヒト血清中に存在する特異抗SA抗体はSAに対する生体防御機構の一つとして生物学的な意義をもつことが判明した。慢性炎症性腸疾患ではその防御機構の破綻は証明できなかったが、健康小児でのデータをもとに、今後膠原病や川崎病などの炎症性疾患で検討を進めることが可能となった。1.患者血清中の抗SEs抗体価測定(1)溶連菌由来スーパーアンチゲン(SEs)のうちSEA,SEC1,SEC2,SEC3,SEE,SEDの7種を用い,患者血清中の抗体価をELISA法にて測定した.Ig G抗体価に関して急性期,寛解期に分けて検討しているが,現在のところ両者間に著明な差は認めていない.(2)Ig G抗体では現在差を認めていないが症例数を増やして検討する必要がある.また急性期であればIgM抗体が発現している可能性があるため,特に急性期を重点的にIg M抗体についても検討を加える予定である.さらに粘膜での免疫反応が重要な因子と思われるのでIg Aについても検討したい.2.SEsに対する抗体結合特異性の検討バックグランドがあり,明瞭な反応線は得られていないが,コントロールと比較し,患児血清中にSEsと反応する抗体が存在する可能性は高いと思われる(2)SEs,患児血清の濃度をバックグランドが出ないように調整する必要がある.SEsによるT細胞活性化と抗SEs抗体によるT細胞活性化の抑制ELISA法を用い.急性期,回復期の患者血清を混じたリンパ球培養上清で活性価をみている.回復期で活性が低くなる例が多いが,個体差は大きい.回復期に抗体が出現するための結果と考えられる.急性期,回復期での症例数が少なく,また個体差が大きいため,より症例を増やして検討する必要がある.急性期群で増殖能の亢進がみられる.回復期では低下するものが多い.急性期群での増殖能の亢進がみられており,スーパーアンチゲンによる作用と考えられる.回復期で低下するものが多いのは抗体産生による抑制と考えられる.今後(1),(2)につきガンマグロブリン製剤,Myeloma患者由来モノクローナル抗体等を用い,比較する必要がある.
KAKENHI-PROJECT-06670811
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スーパーアンチゲンと慢性炎症性腸疾患-病因と治療への展開-
スーパー抗原SAとしてブドウ球菌由来のSEB、溶レン菌由来のSPEs(SPE-A,SPE-C)を用いて、液性免疫を中心にSAに対する健康小児の生体防御機構を検討し、慢性炎症性腸疾患患者と比較した。健康小児の血清中にはSEBおよびSPEsに対する特異的IgG抗体が保有されていた。その特異抗体の保有率は年齢とともに増加したが、その獲得時期は抗原による違いがみられ、抗体保有率が50%を越えたのはSEBで1歳、SPE-Aで11歳、SPE-Cで6歳であった。これらのSAに対する特異抗体を含む血清は、その抗体量依存性にそれぞれのSAによる免疫活性化を特異的に抑制した。またγグロブリン製剤もこれらの抗体を含有しており、γグロブリン療法後の血清は、補充された抗体量依存性にそれぞれのSAによる免疫活性化を抑制した。またrecombinant SEBを用いた検討から、SEBではエピトープが主にC末端aa225-234にあることが判明した。慢性炎症性腸疾患患児での検討では、患者は抗SA抗体を保有しており、SAに対する患者T細胞の応答性は健康小児とは差を認めなかったが、対照疾患として用いた川崎病患児血清や患児T細胞は、SAに対して特異的な免疫応答を示した。以上の結果から、ヒト血清中に存在する特異抗体はスーパー抗原に対する生体防御機構の一つとして生物学的な意義をもつことが判明したが、慢性炎症性腸疾患ではその防御機構の破綻は証明できなかった。
KAKENHI-PROJECT-06670811
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細胞外基質構成分が肝類洞の毛細血管化に果す役割についての分子生物学的研究
1.ヒト線維化肝のPLP固定凍結標本上の傍類洞部における細胞性(ED-A^+)フィブロネクチン,PG-PI,ラミニンの局在をそれぞれの抗原に特異的なモノクローナル抗体を用いて酵素抗体法にて光顕,電顕にて検討した結果,前二者がディッセ膣に豊富に存在しており、線維化の進展に伴って出現する類洞内皮細胞直下の基底膜様構造に一致してラミニンが出現増加することが判明した。2.フィグロネクチンのED-A領域ならびに共通配列の3'-,および5'-端に対応するオリゴヌクレオチドをプライマーとして、ヒトフィブロネクチンcDNAであるpFHIIIをテンプレートとして、それぞれの部分配列cDNAをPCR法により増幅した。またその際、digoxigemin-II-dUTPをPCR反応に加えることにより非放射性標識プローブを作製した。これらのプローブを用いて慢性肝疾患の肝生検組織標本上でin situハイブリダイゼーション法を施行した結果、ED-A^+mRNAは伊東細胞に、共通部分配列を有するフィグロネクチンmRNAは伊東細胞と肝細胞に局在がみられた。3.ヒト線維化肝の肝生検標本よりRNAzolで総RNAを抽出し、フィブロネクチンED-A領域特異的プライマーを用いてRT-PCR法によりED-A領域の発現を3%アガロースゲル電気泳動上で検討すると、ED-A領域に対応する270bpの単一なバンドが認められた。1.ヒト線維化肝のPLP固定凍結標本上の傍類洞部における細胞性(ED-A^+)フィブロネクチン,PG-PI,ラミニンの局在をそれぞれの抗原に特異的なモノクローナル抗体を用いて酵素抗体法にて光顕,電顕にて検討した結果,前二者がディッセ膣に豊富に存在しており、線維化の進展に伴って出現する類洞内皮細胞直下の基底膜様構造に一致してラミニンが出現増加することが判明した。2.フィグロネクチンのED-A領域ならびに共通配列の3'-,および5'-端に対応するオリゴヌクレオチドをプライマーとして、ヒトフィブロネクチンcDNAであるpFHIIIをテンプレートとして、それぞれの部分配列cDNAをPCR法により増幅した。またその際、digoxigemin-II-dUTPをPCR反応に加えることにより非放射性標識プローブを作製した。これらのプローブを用いて慢性肝疾患の肝生検組織標本上でin situハイブリダイゼーション法を施行した結果、ED-A^+mRNAは伊東細胞に、共通部分配列を有するフィグロネクチンmRNAは伊東細胞と肝細胞に局在がみられた。3.ヒト線維化肝の肝生検標本よりRNAzolで総RNAを抽出し、フィブロネクチンED-A領域特異的プライマーを用いてRT-PCR法によりED-A領域の発現を3%アガロースゲル電気泳動上で検討すると、ED-A領域に対応する270bpの単一なバンドが認められた。
KAKENHI-PROJECT-05670459
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宿主アポトーシス抑制因子を利用したトリパノソーマの生き残り戦略の分子機構
Trypanosomacruzi感染細胞ではFasを介するアポトーシスが抑制され、宿主抑制因子c-FLIPの発現が上昇することを明らかにしてきた。c-FLIPタンパク質はユビキチン-プロテアソーム系により分解されることが知られているが、がん細胞などでは分子内のシステイン残基がニトロソ化されることによりユビキチン化が起こらず、細胞内に蓄積されることが報告されている。そこで、原虫感染細胞においてc-FLIPのニトロソ化が起きるかどうか調べた。ヒト由来培養細胞にT. cruziを感染させ24日培養し、ライセートを調整した。抗c-FLIP抗体により免疫沈降し、上清および沈殿画分について抗ニトロソシステイン抗体でイムノブロットを行った。非感染細胞では沈殿画分にc-FLIPが検出されたがニトロソ化されているものはほとんど認められなかった。一方、感染細胞では沈殿および上清画分にc-FLIPが認められ、上清画分では抗ニトロソシステイン抗体に反応するバンドが検出された。以上より、感染細胞のc-FLIPはニトロソ化が起こっている可能性が示唆された。感染細胞におけるプロテアソーム活性を測定したところ、非感染細胞のKm値は56μM、Vmax値は0.22 RFU min-1 μg-1に対し、感染細胞ではKm値は50μM、Vmax値は1.67 RFU min-1 μg-1であり、Vmax値が感染細胞で高いことが示された。この理由の1つとしては、原虫のプロテアソーム活性も同時に測定されたためと考えられた。以上より、感染細胞でもc-FLIPのユビキチン化は起こり、プロテアソーム活性は非感染細胞よりもむしろ高く、おそらく正常に働いていることが示唆された。c-FLIPがニトロソ化されたことから、原虫感染により活性酸素種の生成が起きている可能性が示された。Trypanosomacruzi感染細胞ではFasを介するアポトーシスが抑制され、宿主抑制因子c-FLIPの発現が上昇することを明らかにしてきた。c-FLIPタンパク質はユビキチン-プロテアソーム系により分解されることが知られているが、がん細胞などでは分子内のシステイン残基がニトロソ化されることによりユビキチン化が起こらず、細胞内に蓄積されることが報告されている。そこで、原虫感染細胞においてc-FLIPのニトロソ化が起きるかどうか調べた。ヒト由来培養細胞にT. cruziを感染させ24日培養し、ライセートを調整した。抗c-FLIP抗体により免疫沈降し、上清および沈殿画分について抗ニトロソシステイン抗体でイムノブロットを行った。非感染細胞では沈殿画分にc-FLIPが検出されたがニトロソ化されているものはほとんど認められなかった。一方、感染細胞では沈殿および上清画分にc-FLIPが認められ、上清画分では抗ニトロソシステイン抗体に反応するバンドが検出された。以上より、感染細胞のc-FLIPはニトロソ化が起こっている可能性が示唆された。感染細胞におけるプロテアソーム活性を測定したところ、非感染細胞のKm値は56μM、Vmax値は0.22 RFU min-1 μg-1に対し、感染細胞ではKm値は50μM、Vmax値は1.67 RFU min-1 μg-1であり、Vmax値が感染細胞で高いことが示された。この理由の1つとしては、原虫のプロテアソーム活性も同時に測定されたためと考えられた。以上より、感染細胞でもc-FLIPのユビキチン化は起こり、プロテアソーム活性は非感染細胞よりもむしろ高く、おそらく正常に働いていることが示唆された。c-FLIPがニトロソ化されたことから、原虫感染により活性酸素種の生成が起きている可能性が示された。平成18年度にはT.cruz感染細胞におけるc-FLIPの発現上昇機構としてその分解系について解析を行った。c-FLIPはshortlivedタンパク質として知られており、ユビキチン-プロテアソーム系で分解されることが報告されている。感染および非感染HT1080細胞からライセートを調製し、抗c-FLIPおよび抗ユビキチン抗体により免疫沈降を行った。SDS電気泳動後、抗ユビキチン抗体あるいは抗c-FLIP抗体でウェスタンブロットを行い、ユビキチン化されたc-FLIPが検出されるかどうか調べた。その結果、感染細胞内のc-FLIPはユビキチン化されたバンドとして検出され、さらに分子量が大きいサイズに複数のバンドが見られていることからポリユビキチン化されていることが示された。しかし、免疫沈降されない上清の画分にも薄いバンドが見られた。次に、感染、非感染細胞におけるプロテアソーム活性について検討した。蛍光標識された合成基質を用い、活性を測定したところ、感染細胞の方が活性が高いという結果が得られた。そこで、Lineweaver-Burkプロットを行い、Km値ならびにVmax値を算出した。非感染細胞のKm値は56μM、Vmax値は0.22RFU min-1 μg-1であったのに対し、感染細胞ではKm値は50μM、Vmax値は1.67RFU min-1 μg-1であった。
KAKENHI-PROJECT-18590398
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18590398
宿主アポトーシス抑制因子を利用したトリパノソーマの生き残り戦略の分子機構
すなわち両者でKm値はほぼ同程度であり、基質に対する親和性は同様であると観察された。また、Vmax値が感染細胞で高いことが示された。この理由の1つとしては、感染細胞内の原虫もプロテアソームを持っていることがわかっており、おそらく原虫のプロテアソーム活性も同時に測定されたためと考えられた。以上より、感染細胞でもc-FLIPのユビキチン化は起こり、プロテアソーム活性は非感染細胞よりもむしろ高く、おそらく正常に働いていることが示唆された。南米型トリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)感染細胞ではdeath receptorを介するアポトーシスが抑制され,宿主抑制因子c-FLIPの発現が上昇していることを明らかにしてきた。c-FLIPタンパク質はユビキチンープロテアソーム系により分解されることが知られているが,がん細胞などでは分子内のシステイン残基がニトロソ化されることによりユビキチン化が起こらず,細胞内に蓄積されることが報告されている。そこで,T.cruziを感染細胞においてc-FLIPのニトロソ化が起きるかどうか調べた。ヒト由来培養細胞にT.cruziを感染させ24日培養し,ライセートを調整した。抗c-FLIP抗体により免疫沈降し,上清および沈殿画分について抗ニトロソシステイン抗体でイムノブロットを行った。非感染細胞では沈殿画分にc-FLIPが検出されたがニトロソ化されているものはほとんど認められなかった。一方,感染細胞では沈殿および上清画分にc-FLIPが認められ,上清画分では抗ニトロソシステイン抗体に反応するバンドが検出された。以上より,感染細胞のc-FLIPはニトロソ化が起こっている可能性が示唆された。感染細胞におけるプロテアソーム活性を測定したところ,非感染細胞のKm値は56μM,Vmax値は0.22RFU min-1 μg-1であったのに対し,感染細胞ではKm値は50μM,Vmax値は1.67RFU min-1 μg-1であり,Vmax値が感染細胞で高いことが示された。この理由の1つとしては,原虫のプロテアソーム活性も同時に測定されたためと考えられた。以上より,感染細胞でもc-FLIPのユビキチン化は起こり,プロテアソーム活性は非感染細胞よりもむしろ高く,おそらく正常に働いていることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-18590398
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18590398
繊維強化積層板の衝撃損傷と残留強度評価に関する基礎的研究
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)積層構造は、比強度や比剛性が重要な設計パラメ-タとなる回転体,飛翔体などの運動物体の構造材料として従来から注目を集めている。現状での最大の問題点は、異物の衝突による衝撃損傷(FOD)とそれによる残留強度の評価の問題である。本研究では、実物での実証試験以前の耐衝撃設計のための材料の選択基準と構造決定に資することを目的として、硬い物体として鋼,アルミを,軟い物体としてシリコンゴムを衝撃体として、これを一方向プリプレグで作られたCFRP積層平板に垂直に低速(非貫通)衝突させ、母材の樹脂の材質,繊維の配向が衝撃損傷に及ぼす影響について調べた。又、損傷後の残留強度を三点曲げ及び四点曲げ疲労試験によって評価した。本研究の主な成果を要約すると次のようになる。1.硬い物体及び柔らかい物体がCFRP積層板に衝突した際の損傷のパタ-ンの特徴が超音波顕微鏡、光学顕微鏡、走査電子顕微鏡による観察から明らかになった。2.界面剥離領域の面積の総計は衝撃エネルギ-比例することを確認した。3.衝突時の動的な荷重ー変位曲線を精度よく測定しうる計測方法を考案した。これによって、材料の吸収エネルギ-の定量的評価を行うことができた。4.損傷材の三点曲げと四点曲げ疲労試験では、損傷の進展のメカニズムに大きな違いがあることが判明した。5.異方性板理論と三次元異方性理論によって、衝撃応答を解析する方法が明らかとなり、衝撃損傷のメカニズムを解明する糸口が拓けた。炭素繊維強化プラスチック(CFRP)積層構造は、比強度や比剛性が重要な設計パラメ-タとなる回転体,飛翔体などの運動物体の構造材料として従来から注目を集めている。現状での最大の問題点は、異物の衝突による衝撃損傷(FOD)とそれによる残留強度の評価の問題である。本研究では、実物での実証試験以前の耐衝撃設計のための材料の選択基準と構造決定に資することを目的として、硬い物体として鋼,アルミを,軟い物体としてシリコンゴムを衝撃体として、これを一方向プリプレグで作られたCFRP積層平板に垂直に低速(非貫通)衝突させ、母材の樹脂の材質,繊維の配向が衝撃損傷に及ぼす影響について調べた。又、損傷後の残留強度を三点曲げ及び四点曲げ疲労試験によって評価した。本研究の主な成果を要約すると次のようになる。1.硬い物体及び柔らかい物体がCFRP積層板に衝突した際の損傷のパタ-ンの特徴が超音波顕微鏡、光学顕微鏡、走査電子顕微鏡による観察から明らかになった。2.界面剥離領域の面積の総計は衝撃エネルギ-比例することを確認した。3.衝突時の動的な荷重ー変位曲線を精度よく測定しうる計測方法を考案した。これによって、材料の吸収エネルギ-の定量的評価を行うことができた。4.損傷材の三点曲げと四点曲げ疲労試験では、損傷の進展のメカニズムに大きな違いがあることが判明した。5.異方性板理論と三次元異方性理論によって、衝撃応答を解析する方法が明らかとなり、衝撃損傷のメカニズムを解明する糸口が拓けた。本研究は様々な材質の異物が繊維強化積層板に衝突した場合の層間剥離を主とする衝撃損傷の発生のメカニズムを考察し、残留強度(衝撃後の圧縮残留強度など)との関係、損傷部の補修による切欠きと充填物が残留強度に及ぼす影響について明らかにすることを目的とする。カーボン繊維強化積層板に5mmあるいは10mmの鋼球を損傷の生じない程度の低速で衝撃を加え、発生する衝撃荷重および積層板のひずみを計測した。この実験結果は異方性弾性積層板理論およびヘルツの接触理論による解析結果とよく一致することがわかった。さらに鋼球を速い速度で衝突させ様々な積層板内に損傷を加えた。これを超音波顕微鏡により積層板内部の層間剥離を観察した。層間剥離の形状は積層板の層間の衝撃面から遠い側の層の繊維方向に大きく広がるピーナッツ状を示す。この形状は積層板理論より得られる層間せん断力の分布形状と類似し、層間剥離は積層板内の応力分布の影響を大きく受けることが予想される。また層間剥離は衝撃面裏側に亀裂をともなっていることが多い。静的に鋼球を押し込んだ場合も同様の傾向を示し、基本的に同じメカニズムで損傷が生じているものと考えられる。しかし鋼球の直径が小さく積層板の厚さが厚い場合に衝撃面裏側に亀裂が見られず層間剥離の形状が円形に近いものが得られた。これにより衝撃損傷特有の発生メカニズムがあることがわかった。次年度では高速衝撃の場合について同様の実験を行い衝撃損傷について考察する。また繊維強化積層板は複雑な破壊現象を示すために、これを明らかにする新たな衝撃応答計測・試験システムを構築する。衝撃損傷をうけた積層板の疲労特性を含めた残留強度を評価し、衝撃損傷との関係を明らかにする。さらに衝突体の種類と衝撃損傷との関係についても調査する予定である。本研究は繊維強化積層板に衝撃を加えた場合の層間剥離を主とする衝撃損傷の発生のメカニズムを考察し、衝撃損傷部あるいは補修部の圧縮残留強度などについて明らかにすることを目的とする。落錘式繰り返し衝撃により、積層板の荷重およびたわみを精度よく求め、損傷評価を可能にするシステムを構築した。これにより積層板に損傷が発生する瞬間に高周波成分の信号が衝撃荷重に重畳することが確認できた。
KAKENHI-PROJECT-63420027
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繊維強化積層板の衝撃損傷と残留強度評価に関する基礎的研究
また衝撃荷重と積層板のたわみから得られる積層板のコンプライアンス応答を損傷の評価基準とすることを提案した。損傷がない場合や進展しない場合はほぼ等しいコンプライアンス応答が得られ、さらに衝撃を加え損傷が発生あるいは進展した後は応答の極大値が大きくなり、容易に衝撃損傷の進展を評価できることがわかった。鋼球により衝撃損傷を発生させた積層板に静的に圧縮荷重および4点曲げを加えれば、損傷のない積層板に比較して著しい強度の低下がみられた。さらに衝撃損傷のある試験片に4点曲げによる疲労試験を行い、試験片の衝撃面側に圧縮応力がかかる場合と、引張応力がかかる場合の2種類について考察した。この結果、衝撃面側に引張応力が作用する場合は衝撃損傷のない試験片とほぼ同じ疲労寿命曲線を描くことがわかった。一方、衝撃面側に圧縮応力が作用する場合には衝撃面の衝突痕からき裂が発生、進展し層間剥離と連結して疲労残留強度が著しく低下することが明らかになった。本研究は繊維強化積層板に衝撃を加えた場合の層間剥離を主とする衝撃損傷の発生メカニズムを考察し、衝撃損傷による圧縮強度低下などについて明らかにすることを目的としている。本年度はまず変形能の高いゴムなどの軟質の衝撃体が積層板に衝突した場合の積層板内部の損傷について検討し、変形能の低い衝撃体に比較して同じ衝撃エネルギ-で衝突させても損傷領域が小さいことがわかった。しかし変形能が低い衝撃体では速度が速くなり貫通すると、損傷領域が減少する傾向があることがわかった。次に耐衝撃構造用のFRP材料の簡便な材料選択のための試験方法として使用する目的で、低速度で高エネルギ-の衝撃を加えることの可能な落錘式試験機を試作した。落錘は付加質量をつけた軟鋼棒であり、棒の2箇所におけるひずみ応答と波動伝播理論により衝撃荷重と試験片のたわみを精度よく計測することができた。実験の結果、損傷パタ-ンが変化しない限り、炭素繊維で強化されたエポキシ樹脂とPEEK樹脂の積層板を比較するとPEEK樹脂の方が単位損傷面積あたりの吸収エネルギ-が大きいことがわかった。積層板の損傷メカニズムを明らかにするために三次元異方性弾性理論により、三層から構成される異方性板が静的および衝撃横荷重をうける場合の応力解析を行った。この結果、層間応力の分布は荷重の作用する面から離れた側の層の異方性の主軸上に最大値が生じることがわかった。また異方性を考慮した高次近似板理論から得られる面内応力から面外応力成分を求める方法について検討した。本研究の最終年度にあたる次年度において、繊維強化積層板の衝撃損傷および損傷後の残留疲労強度低下の機構について実験的および理論的手法によりに詳細に考察する予定である。本研究は様々な材質の異物が繊維強化積層板に衝突した場合の層間剥離と残留疲労強度の関係などを考察することを目的とした。鋼球を衝突させて損傷を発生させた炭素繊維/エポキシ樹脂積層板の三点曲げ疲労試験を行い残留強度を調べた。この結果、損傷により強度が低下し、疑似等方性板に近くなるにつれて強度低下が少ないことがわかった。超音波顕微鏡の観察によって衝撃で発生した積層板内のトランスバ-スクラックがせん断力のために移動するのにともない層間剥離が進展し強度が低下することが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-63420027
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学級構造化方略の時系列的変化と児童の多面的動機づけへの影響メカニズム
目的:これまでの動機づけ研究では、学習に直接かかわる要因、例えば教師による教授方法や、教材の内容、学び方などが、子どもの学習意欲を説明すると考えてきた。一方、実際の教室環境では、子どもは教師-生徒の人間関係や学級風土などの社会的な要因によってさまざまな影響を受けており、社会的環境や文脈の影響を考慮せずに学習意欲について考えることは非現実的であるといえる(e. g.中谷, 2007; Wentzel, & Wigfield, 2009)特に教師の学級構造化への方略は、子どものもつ学習および社会的な動機づけに深く影響しているといえる。本研究では、教師による学級構造化方略という新たな観点から、学級において学業・社会を含む多面的動機づけを促すメカニズムについて検討した。学級構造化について、学級の目標構造という観点から概念化した達成目標理論(Elliot & Dweck, 2006)に基づいて、わが国の教室場面に適用可能な尺度の検討および子どもの動機づけへの影響過程を検討した。方法:公立中学校13年生を対象として、学級の目標構造に関する質問紙を作成、実施した。あわせて、自己価値の随伴性(大谷・中谷, 2010)による尺度、社会的目標(中谷, 2007)を実施した。結果:学級の目標構造化の観点から、教室によって、熟達あるいは遂行という学級の目標構造化が異なる傾向が示された。また学級の目標構造は、子どもの学習過程および多面的目標に影響を与えている可能性が示唆された。目的:これまでの動機づけ研究では、学習に直接かかわる要因、例えば教師による教授方法や、教材の内容、学び方などが、子どもの学習意欲を説明すると考えてきた。一方、実際の教室環境では、子どもは教師-生徒の人間関係や学級風土などの社会的な要因によってさまざまな影響を受けており、社会的環境や文脈の影響を考慮せずに学習意欲について考えることは非現実的であるといえる(e. g.中谷, 2007; Wentzel, & Wigfield, 2009)特に教師の学級構造化への方略は、子どものもつ学習および社会的な動機づけに深く影響しているといえる。本研究では、教師による学級構造化方略という新たな観点から、学級において学業・社会を含む多面的動機づけを促すメカニズムについて検討した。学級構造化について、学級の目標構造という観点から概念化した達成目標理論(Elliot & Dweck, 2006)に基づいて、わが国の教室場面に適用可能な尺度の検討および子どもの動機づけへの影響過程を検討した。方法:公立中学校13年生を対象として、学級の目標構造に関する質問紙を作成、実施した。あわせて、自己価値の随伴性(大谷・中谷, 2010)による尺度、社会的目標(中谷, 2007)を実施した。結果:学級の目標構造化の観点から、教室によって、熟達あるいは遂行という学級の目標構造化が異なる傾向が示された。また学級の目標構造は、子どもの学習過程および多面的目標に影響を与えている可能性が示唆された。目的:本研究では、教師による学級構造化方略という新たな観点から、学級において学業・社会を含む多面的動機づけを促すメカニズムについて検討する。学級構造化方略を、学級内に一定の構造や規範を形成するために教師が行う学業面および社会面に渡る指導行動の方略ととらえ、授業観察と質問紙調査という質・量両面のデータを組み合わせ、教師の学級構造化が、学業・社会を含む児童の適応過程に及ぼす影響について焦点を当てる。平成21年度の研究では、従来の教育心理学的研究ではほとんど焦点が当てられなかった、教師の学級構造化方略の内容について、継時的な授業観察および学級構造化に関する教師インタビューを実施し、学級構造化のために教師はどのような働きかけを行っているかについて検討を行った。方法:大阪府1市内の公立小学校の2年と4年の各1クラスを対象に、特別活動および通常授業において、学級づくりに関わるトピックを扱った授業数回の観察と、学年団による学級づくりのインタビューを実施した。また児童に対して社会的・学業的適応を測定する尺度を1学期および3学期の末に実施した。結果:授業観察記録の検討、および教師へのインタビュー内容の文字起こしを行い、その結果を質的に分析した。学級適応尺度については、量的な分析を行った。質・量のデータを組み合わせ検討した結果、教師の学級構造化の内容によって、児童の適応過程に違いがみられることが示唆された。目的:従来の教育心理学研究では、子どもの意欲を高めるものは、教師による学習指導の仕方や教材の与え方など、学習課題そのものに関わる要因であるととらえられてきた。しかし実際の教室環境のなかでは、教師-生徒の人間関係や学級風土といった社会的な要因も、学習の動機づけを左右するきわめて重要な要因である(Meece,J.,Anderman,E,Anderman,L,2006;中谷,2007)。とりわけ、教師が学期あるいは年間に渡ってどのように学習に向かうクラスの構造を形作るかは、子どものもつ学習および社会的な動機づけに深く影響しているだろう。本研究では、教師による学級構造化方略という新たな観点から、学級において学業・社会を含む多面的動機づけを促すメカニズムについて検討する。学級構造化方略を、学級内に一定の構造や規範を形成するために教師が行う学業面および社会面に渡る指導行動の方略ととらえ、授業観察と質問紙調査という質・量両面のデータを組み合わせ、教師の学級構造化が、学業・社会を含む児童の適応過程に及ぼす影響について焦点を当てる。
KAKENHI-PROJECT-21530684
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学級構造化方略の時系列的変化と児童の多面的動機づけへの影響メカニズム
平成22年度の研究では、教師の学級構造化に関して、どのような方略が存在し、それらは具体的にどのような教授・指導実践であるかについて、質的な検討を中心に行った。方法:大阪府1市内の公立小学校の2年と4年の各1クラスを対象とした通常授業において、学級づくりに関わるトピックを扱った授業数回の観察および学年団による学級づくりのインタビューのデータについて、カテゴリーおよびその文脈に注目しながら、質的に分析した。結果:教師による学級構造化方略の観点から、教室談話の質的データを検討した結果、教師の熟達によってその教師の用いる学級構造化方略のカテゴリーが異なる傾向が示された。またそれは、クラスの児童の学習過程および多面的動機づけに影響を与えている可能性が示唆された。目的:これまでの動機づけ研究では、学習に直接かかわる要因、例えば教師による教授方法や、教材の内容、学び方などが、子どもの学習意欲を説明すると考えてきた。一方、実際の教室環境では、子どもは教師-生徒の人間関係や学級風土などの社会的な要因によってさまざまな影響を受けており、社会的環境や文脈の影響を考慮せずに学習意欲について考えることは非現実申であるといえる(eg.中谷, 2007; Wentzel, & Wigfeld, 2009)特に教師の学級構造化への方略は、子どものもつ学習および社会的な動機づけに深く影響しているといえる。本研究では、教師による学級構造化方略という新たな観点から、学級において学業・社会を含む多面的動機づけを促すメカニズムについて検討する。平成23年度の研究では、学級構造化について、学級の目標構造という観点から概念化した達成目標理論(Elliot & Dweck,2006)に基づいて、わが国の教室場面に適用可能な尺度の検討および子どもの動機づけへの影響過程を検討する。加えて、中学生における自己概念をクラス構造と動機づけを結ぶ媒介要因ととらえ、自己価値の随伴性の点から検討を行った。方法:公立中学校13年生を対象として、学級の目標構造に関する質問紙を作成、実施した。あわせて、自己価値の随伴性(大谷・中谷,2010)による尺度、社会的目標(中谷,2007)を実施した。結果:学級の目標構造化の観点から、教室によって、熟達あるいは遂行という学級の目標構造化が異なる傾向が示された。また学級の目標構造は、子どもの学習過程および多面的目標に影響を与えている可能性が示唆された。関連事項:平成23年度分を含む研究成果について、下記の文献や学会等において成果発表を行った。
KAKENHI-PROJECT-21530684
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光配向性液晶ナノ構造体の作製と発光デバイスへの応用
本研究では,発光材料へ応用可能な光配向性π共役系液晶の開発を目指した。特に,光配向できる色素の探索が,その後のデバイス応用への鍵をにぎるため,光安定性に優れた色素を用いて光応答性の検討を行った。色素として,クマリン6,クマリン153,クマリン337,キナクリドン,ローダミンB,ナイルレッド,DCMを0.1mol%含む液晶系を調製し、アルゴンイオンレーザー光を照射したところ,分子長が長いクマリン誘導体が液晶を効果的に配向変化できることがわかった。さらに、従来のオリゴチオフェンを用いた場合よりも、高強度光照射時においての配向変化時の安定性が高いことが明らかとなった。本研究では,光配向性色素を用いて液晶有機半導体の配向を精密に制御した構造体を調製し,光学物性や光配向挙動を明らかにするとともに,発光素子へ応用することを目的とした。本研究を推進するにあたり,光配向性に優れる色素の探索は最重要課題である。これまでに,光配向性色素としてアントラキノンやオリゴチオフェン誘導体が検討されているだけで,光配向性色素に関する分子設計指針が明らかにされておらず,ほとんど探索が行われていなかった。そこで,新しいアプローチとして,光に対して高い安定性を示すレーザー色素を用いて光配向特性について検討を行ったところ,2011度にクマリン6が液晶の光配向を安定に誘起できる色素であることを見いだした。そこで,2012年度はクマリン骨格に焦点を当て,光配向性について詳細に検討した。クマリン6,クマリン7,クマリン30,クマリン153,クマリン337,クマリン510,クマリン525,クマリン545を0.1mol%含む液晶系を垂直配向させたセルに封入しサンプルとした。サンプルにアルゴンイオンレーザーからの488nmの波長の光を入射して,スクリーン上に形成される回折像から誘起される液晶の配向変化挙動を評価した。クマリン6,クマリン7,クマリン30,クマリン525およびクマリン545を用いると液晶の配向変化に基づく自己位相変調効果により干渉縞が形成されることがわかった。干渉縞形成は,ある閾値以上の光強度が必要なこと,ならびにプローブ光の偏波面が,アルゴンイオンレーザーの入射偏波面と平行方向のみに観測されることから,これまでの色素と同様な光配向特性を示すことがわかった。光配向性におよぼす色素の液晶中における配向状態を知る目的で,二色性を調べたところ,光配向性を示すクマリン誘導体が比較的高い二色性を示すことがわかった。本研究では,発光素子へ応用可能な新しい光配向システムの構築を目的として,色素を用いた配向制御法の構築を行ってきた。本研究を推進するにあたり,光配向性に優れる色素の探索は最重要課題である。これまでに,光配向性色素としてアントラキノンやオリゴチオフェン誘導体が検討されているだけで,光配向性色素に関する分子設計指針が明らかにされておらず,ほとんど探索が行われていなかった。そこで,新しいアプローチとして,光に対して高い安定性を示すレーザー色素を用いて光配向特性について検討を行ったところ,昨年度までに,液晶中で大きな二色性を示すクマリン誘導体が有望であることを見いだした。今年度,色素の構造が配向変化におよぼす効果について,分子計算からのアプローチを行った。Spartan 06により,色素分子の基底状態における, HOMOおよびLUMO電子雲の変化を計算し,各種色素と比較検討したところ,LUMOの電子雲が分子の中央付近にある色素が液晶分子を光配向しやすい傾向があることを見いだした。また,色素探索過程の中で,ジュロリジル骨格を含むクマリン525やクマリン545のような色素分子において,光配向後に配向緩和が起きやすい現象が見られることがわかった。クマリン6とクマリン545は,比較的類似した構造をもち,分子鎖長や液晶中における二色性,HOMOおよびLUMOの電子雲など,ほぼ同様な特徴を示し,大きな違いはみられない。それゆえ,ジュロリジル基を含むクマリン545は,ジエチルアミノ基を含むクマリン6と比較して,分子の平面性が高いことや窒素部位の孤立電子の影響により,色素の励起後の分子間相互作用が変化するため,配向緩和に差が生じやすくなるのではと考えている。本研究では,発光材料へ応用可能な光配向性π共役系液晶の開発を目指した。特に,光配向できる色素の探索が,その後のデバイス応用への鍵をにぎるため,光安定性に優れた色素を用いて光応答性の検討を行った。色素として,クマリン6,クマリン153,クマリン337,キナクリドン,ローダミンB,ナイルレッド,DCMを0.1mol%含む液晶系を調製し、アルゴンイオンレーザー光を照射したところ,分子長が長いクマリン誘導体が液晶を効果的に配向変化できることがわかった。さらに、従来のオリゴチオフェンを用いた場合よりも、高強度光照射時においての配向変化時の安定性が高いことが明らかとなった。本研究では,光配向性色素を用いて液晶有機半導体の配向を精密に制御した構造体を調製し,光学物性や光配向挙動を明らかにするとともに,発光素子へ応用することを目的とした。本研究を推進するにあたり,光配向性に優れる色素の探索は最重要課題である。
KAKENHI-PROJECT-23750213
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23750213
光配向性液晶ナノ構造体の作製と発光デバイスへの応用
これまでに,光配向性色素としてアントラキノンやオリゴチオフェン誘導体が検討されているだけで,光配向性色素に関する分子設計指針が明らかにされておらず,ほとんど探索が行われていなかった。そこで,新しいアプローチとして,光に対して高い安定性を示すレーザー色素を用いて光配向特性について検討を行った。色素として,クマリン6,クマリン153,クマリン337,キナクリドン,ローダミンB,ナイルレッド,DCMを0.1mol%含む液晶系を調製した。垂直配向させたセル内に封入した液晶系サンプルを調製し,アルゴンイオンレーザーからの488nmの波長の光を入射して,誘起される液晶の配向変化挙動をスクリーン上に形成される回折像を通して調べた。クマリン153,クマリン337,キナクリドン,ローダミンB,ナイルレッドおよびDCMにおいては,全く回折像が観られなかったが,クマリン6を用いると干渉縞が形成されることがわかった。これは,液晶の配向変化に基づく自己位相変調効果によるものである。干渉縞形成は,ある閾値以上の光強度が必要なことならびに,プローブ光の偏波面が,アルゴンイオンレーザーの入射偏波面と平行方向のみに観測されることから,これまでのアントラキノンやオリゴチオフェンと同様な光配向特性を示すことがわかった。それゆえ,比較的,分子長が長いクマリン誘導体を用いることにより液晶を光配向できる系を調製可能なことが明らかになった。本研究では,光配向できる色素を開発することが,その後のデバイス応用への鍵をにぎるため,色素探索を一貫して行ってきた。2011度にクマリン6が液晶の光配向を安定に誘起できる色素であることを見いだしたことから,2012年度は,クマリン骨格に焦点を当て,光配向性について詳細に検討した。入手可能な色素として,クマリン6,クマリン7,クマリン30,クマリン153,クマリン337,クマリン510,クマリン525,クマリン545を用いた液晶サンプルにアルゴンイオンレーザーからの488nmの波長の光を入射して,スクリーン上に形成される回折像から誘起される液晶の配向変化挙動を評価した。クマリン153,クマリン337およびクマリン510は,光照射により綺麗な回折像が観られなかったが,クマリン6,クマリン7,クマリン30,クマリン525およびクマリン545を用いると液晶の配向変化に基づく自己位相変調効果により干渉縞が形成されることがわかった。干渉縞形成は,ある閾値以上の光強度が必要なこと,ならびにプローブ光の偏波面が,アルゴンイオンレーザーの入射偏波面と平行方向のみに観測されることから,従来の光配向性色素と同様な光応答性を示すことがわかった。クマリン6,クマリン7,クマリン525およびクマリン545は同程度の光強度で光配向するが,クマリン30を用いた場合には,かなり高い光強度において照射しないと液晶の配向変化は誘起できないことがわかった。分子内でのねじれ構造が光配向に影響を及ぼしているためと考えている。色々なクマリン誘導体を用いることにより,広い波長領域にわたり,液晶を光配向できる系を調製可能なことがわかった。光配向性と色素の構造との関連性に繋がる結果と期待できることから,今後の光配向性色素の分子設計指針のひとつに繋がる成果と評価できる。本研究では,光配向できる色素を開発することが,その後のデバイス応用への鍵をにぎるため,色素探索が最重要である。
KAKENHI-PROJECT-23750213
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23750213
ナノコンポジット複合電析皮膜形成法に関する研究
めっきと同時に進行する水素発生反応の結果,陰極近傍のpHは上昇する.このとき金属イオン同士の相互作用や錯形成により複合化した水酸化物(複水酸化物)が生成するが,その反応経路・生成過程を以下のようにして明らかにした.(1)水晶振動子微小秤量法-電位差滴定法の併用によるZn-Al複水酸化物の生成反応の検討自動滴定装置を用いて弱酸性のめっき浴にアルカリを添加してpH変化を追跡し,同時にめっき液に浸せきした水晶振動子質量センサー上に生成する水酸化物の質量を測定し,複水酸化物生成過程を明らかにした.また,えられた水酸化物の構造・組成などをX線回折装置,FTIR,熱重量分析装置を用いて解析した.Zn-Al系のほか,Ni-Al系,Fe-Al系についてもあわせて検討した.(2)水晶振動子微小秤量法による複合電析時の電極質量変化の追跡水晶振動子微小秤量装置の質量感度は,理論上数十ng/Hzと高精度である.めっき反応に伴う陰極質量変化は電流効率を考慮してFaradayの法則から推測できるが,陰極還元を受けない複水酸化物が取り込まれた場合の陰極質量変化は通過電気量からは推定できない.そこで電解条件・溶液条件を変化させて複水酸化物の生成速度を制御し,そのときの陰極質量変化を水晶振動子微小秤量装置を用いて追跡した.EQCMアナライザーを用いることにより,めっき時の電位-電流-通過電気量の関係と電極重量変化-通過電気量の関係を同時に測定することができ,電気化学反応と電極への付着・脱離現象を区別しての解析が可能となった.めっきと同時に進行する水素発生反応の結果,陰極近傍のpHは上昇する.このとき金属イオン同士の相互作用や錯形成により複合化した水酸化物(複水酸化物)が生成するが,その反応経路・生成過程を以下のようにして明らかにした.(1)水晶振動子微小秤量法-電位差滴定法の併用によるZn-Al複水酸化物の生成反応の検討自動滴定装置を用いて弱酸性のめっき浴にアルカリを添加してpH変化を追跡し,同時にめっき液に浸せきした水晶振動子質量センサー上に生成する水酸化物の質量を測定し,複水酸化物生成過程を明らかにした.また,えられた水酸化物の構造・組成などをX線回折装置,FTIR,熱重量分析装置を用いて解析した.Zn-Al系のほか,Ni-Al系,Fe-Al系についてもあわせて検討した.(2)水晶振動子微小秤量法による複合電析時の電極質量変化の追跡水晶振動子微小秤量装置の質量感度は,理論上数十ng/Hzと高精度である.めっき反応に伴う陰極質量変化は電流効率を考慮してFaradayの法則から推測できるが,陰極還元を受けない複水酸化物が取り込まれた場合の陰極質量変化は通過電気量からは推定できない.そこで電解条件・溶液条件を変化させて複水酸化物の生成速度を制御し,そのときの陰極質量変化を水晶振動子微小秤量装置を用いて追跡した.EQCMアナライザーを用いることにより,めっき時の電位-電流-通過電気量の関係と電極重量変化-通過電気量の関係を同時に測定することができ,電気化学反応と電極への付着・脱離現象を区別しての解析が可能となった.1.水晶振動子微小秤量法-電位差滴定法の併用によるZn-Al複水酸化物の生成反応の検討めっきと同時に進行する水素発生反応の結果,陰極近傍のpHは上昇する.このとき金属イオン同士の相互作用や錯形成により複合化した水酸化物(複水酸化物)が生成するが,その反応経路・生成過程を明らかにする.そこで,自動滴定装置を用いて弱酸性のめっき浴にアルカリを添加してpH変化を追跡し,同時にめっき液に浸せきした水晶振動子質量センサー上に生成する水酸化物の質量を測定し,複水酸化物生成過程を明らかにした.また,えられた水酸化物の構造・組成などをX線回折装置,走査型電子顕微鏡/EDXを用いて解析した.Zn-Al系のほかNi-Al系についてもあわせて検討をおこなった.2.水晶振動子微小秤量法による複合電析時の電極質量変化の追跡水晶振動子微小秤量装置の質量感度は,理論上数十ng/Hzと高精度である.めっき反応に伴う陰極質量変化は電流効率を考慮してFaradayの法則から推測できるが,陰極還元を受けない複水酸化物が取り込まれた場合の陰極質量変化は通過電気量からは推定できない.そこで電解条件・溶液条件を変化させて複水酸化物の生成速度を制御し,そのときの陰極質量変化を水晶振動子微小秤量装置を用いて追跡した.この装置を用いると,めっき時の電位-電流-通過電気量の関係と電極重量変化-通過電気量の関係を同時に測定することができるので,電気化学反応と電極への付着・脱離現象を区別しての解析が可能となった.pH設定値と生成する大きさの関係を検討し,これをもとにして電解条件を設定した.陰極近傍のpHがどのように変化するのか追跡し,同時にめっき後の試料の観察を行った.取り込まれている粒子の粒子径,皮膜内での分布状態,粒子の組成を現有の走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析装置,FTIRなどを用いて検討した.(2)ナノコンポジット複合電析皮膜の作成と評価(Ni-Al系およびその他の系)上述の検討
KAKENHI-PROJECT-13650782
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ナノコンポジット複合電析皮膜形成法に関する研究
結果をもとに電解条件を絞り込み,Ni-Al系めっき浴を用いて皮膜を作成した.えられた試料の表面分析を走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析装置を用いて行い,皮膜の構造解析はX線回折装置を用いて行った.微小硬度計を用いて皮膜の硬さを評価し,ナノコンポジット含有皮膜の硬度は,それを含まないものに比べて3倍程度大きいことがわかった.(3)ナノコンポジット複合電析皮膜形成に適した他の系の探索この目的に適しためっき浴に要求される条件は,(1)めっき時のpH変動が可能であること,(2)生成する複水酸化物の粒径が小さく,還元されにくいこと,などである.めっきに適した系を探索するために,複水酸化物のモデルとなる系について,その生成反応をプルベー図から大まかに予測し,実際に実験で得られた複水酸化物の分析結果と比較して検討した.その結果,プルベー図からの予測に反する例が多いことがわかり,溶液内での複水酸化物生成時の反応熱を測定もしくは予測する新たな方法が必要であることがわかった.これについてはモデルクラスターについての密度汎関数法による軌道計算が有効であることが示唆された.
KAKENHI-PROJECT-13650782
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エンドトキシンショックにおけるATPのマクロファージ活性化メカニズム
細胞外ATPは、マクロファージ(Mφ)やT細胞などの細胞や組織で免疫反応を引き起こす。しかし、ATP活性化Mφが組織損傷の免疫反応を調整するか不明なままである。そこで、LPS誘導エンドトキシンショックにおけるMφによるATP媒介の炎症反応の役割を検討した。本研究により傷害された組織や細胞から放出されたATPは、Mφを活性化させMIP-2を産生して好中球を遊走する経路が示唆された。しかしながら、この経路は多種のP2purinergic受容体が関与しており更なる検討が必要とされた。細胞外ATPは、マクロファージ(Mφ)やT細胞などの細胞や組織で免疫反応を引き起こす。しかし、ATP活性化Mφが組織損傷の免疫反応を調整するか不明なままである。そこで、LPS誘導エンドトキシンショックにおけるMφによるATP媒介の炎症反応の役割を検討した。本研究により傷害された組織や細胞から放出されたATPは、Mφを活性化させMIP-2を産生して好中球を遊走する経路が示唆された。しかしながら、この経路は多種のP2purinergic受容体が関与しており更なる検討が必要とされた。本研究は、エンドトキシンショックモデルマウスを用いて、エンドトキシンと傷害された細胞から放出されたATPによるMφの活性や敗血症性ショックの発症メカニズムの経路を検討している。本年度は、チオグリコレート(tioglycollate : TG)をマウスに接種し、腹腔内に浸潤したMφ(PEMs)を用いてin vitroで以下を解析した。PEMsをLPSまたはLPS/ATP共刺激培養をおこない、上清中の炎症性因子の産生亢進を測定した。その結果、,IL-1βはLPS刺激またはATP刺激のみでは産生が認められず、LPS/ATP刺激で産生が認められた。TNFαはLPS刺激のみでも産生が認められ、ATP補助の必要が無いと考えられた。それに対して、MIP-2はATP刺激のみでも産生されたことから、ATPによる好中球誘導が示唆された。上記のIの検討より、ATP刺激が関与するIL-1βとMIP-2の産生に関与するシグナル経路を検討した。その結果、両サイトカイン共にフーサイトメーターとインヒビターを用いた解析により、ERK1/2とp38 MAPKの活性化が上昇していた。本検討により、炎症により放出されたATPはLPSと共にMφを活性化して、IL-1βとMIP-2の産生が増加して炎症悪化に繋がると示唆された。今後はマウスモデルを使用して更なる検討を行う予定である。本研究は、エンドトキシンショックモデルマウスを用いて、エンドトキシンと傷害された細胞から放出されたATPによるMφの活性による敗血症性ショックの発症メカニズムの経路を検討した。チオグリコレートをマウスに接種し、腹腔内に浸潤したMφ(PEMs)を用いてATP刺激培養をおこなった。その結果、PEMsはATP刺激によりMIP-2を産生した。ATPは細胞上のP2 purinergic受容体(P2X_<1-7>,P2Y_<1,2,4,6,11-14>)に結合することが知られている。そこで、どのP2 purinergic受容体に結合するか検討した。PEMsは細胞表面上のP2purinergic受容体のP2X_7,P2Y_2,P2Y_4,P2Y_6受容体にATPが結合するとMIP-2が産生されることが明らかになった。またPEMsのATP刺激によるMIP-2産生はERK1/2とp38 MAPKの細胞内シグナルが活性化していた。LPSとD-ガラクトサミン(GaIN)を用いたエンドトキシンショックモデルマウスを使用して、エンドトキシンと細胞外ATPによるMφの好中球誘導を検討した。その結果、LPS/GalN接種したところ血清中にTNFαとMIP-2の急激な上昇が認められ、次にATP、最後にALTの上昇が認められた。また、肝臓内に好中球の増加が認められた。そこで、エンドトキシンによる二次性肝不全をP2X_7受容体欠損マウスとコントロールマウスと比較したが、両マウス群に有意な差は認められなかった。本検討により、敗血症により傷害された細胞から放出されたATPはMφを活性化させMIP-2を産生して好中球を遊走する経路が示唆された。しかしながら、この経路は多種のP2purinergic受容体が関与しており更なる検討が必要とされた。
KAKENHI-PROJECT-21790381
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リンパ組識における網内系細胞の比較免疫組識学的研究
本研究は免疫関連細胞、とくにAccessory cellに属する網内系の細胞サブゼットを免疫組識化学的マ-カ-によって区分し、その機能形態学的実態を明らかにしようとしたものである。主としてSー100蛋白質をマ-カ-として免疫組識化学的研究をおこなった結果、哺乳類リンパ組織においては共通して胚中心内のFollicular dendritic cell(FDC)が、またSー100蛋白質の保有状況に種差がみられたが食細胞、Interdigitating reticulum cell、リンパ洞内皮細胞が陽性であった。とくにSー100 αサブユニットに対するモノクロ-ナル抗体はFDCとリンパ洞内皮細胞のみに陽性であり、これら細胞と他の網内系細胞とのサブセットと区別するための有効なマ-カ-として利用できることがわかった。Sー100蛋白質をFDCのマ-1-としてブタリンパ節の胚中心の形成におけるFDCの関与を検討したところ、胚中心はFDCの出現前に形成され、FDCが胚中心の形成を誘導するとする従来の見解に否定的な結論を得、今後Sー100蛋白質をこの種の研究のマ-カ-として応用するメドを得ることができた。また正常ニワトリの網内系細胞にSー100蛋白質は検出できなかったが、疾病時の少数例のニワトリの脾臓胚中心とフアデリキュウス嚢濾胞にSー100陽性のFDC様細胞が検出できた。今後これら細胞内のSー100蛋白質消長の要因を知ることは興味ある課題である。また、網内系細胞の比較研究の一環として、タイ脾臓内の食細胞の動態、コイ頭腎の食細胞による抗原の処理と抗体産生細胞の動態を明らかにし、さらにニワトリ精巣上体における精子処理に関与する食細胞の起源について新らしい知見を得た。本研究は免疫関連細胞、とくにAccessory cellに属する網内系の細胞サブゼットを免疫組識化学的マ-カ-によって区分し、その機能形態学的実態を明らかにしようとしたものである。主としてSー100蛋白質をマ-カ-として免疫組識化学的研究をおこなった結果、哺乳類リンパ組織においては共通して胚中心内のFollicular dendritic cell(FDC)が、またSー100蛋白質の保有状況に種差がみられたが食細胞、Interdigitating reticulum cell、リンパ洞内皮細胞が陽性であった。とくにSー100 αサブユニットに対するモノクロ-ナル抗体はFDCとリンパ洞内皮細胞のみに陽性であり、これら細胞と他の網内系細胞とのサブセットと区別するための有効なマ-カ-として利用できることがわかった。Sー100蛋白質をFDCのマ-1-としてブタリンパ節の胚中心の形成におけるFDCの関与を検討したところ、胚中心はFDCの出現前に形成され、FDCが胚中心の形成を誘導するとする従来の見解に否定的な結論を得、今後Sー100蛋白質をこの種の研究のマ-カ-として応用するメドを得ることができた。また正常ニワトリの網内系細胞にSー100蛋白質は検出できなかったが、疾病時の少数例のニワトリの脾臓胚中心とフアデリキュウス嚢濾胞にSー100陽性のFDC様細胞が検出できた。今後これら細胞内のSー100蛋白質消長の要因を知ることは興味ある課題である。また、網内系細胞の比較研究の一環として、タイ脾臓内の食細胞の動態、コイ頭腎の食細胞による抗原の処理と抗体産生細胞の動態を明らかにし、さらにニワトリ精巣上体における精子処理に関与する食細胞の起源について新らしい知見を得た。今年度は、抗ウシS-100蛋白ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を用い、鳥類2種(ニワトリ、アヒル)および哺乳類5種(ウシ、ヤギ、ニホンカモシカ、ブタ、モルモット)のリンパ組織内の網内系細胞におけるS-100蛋白質の存在を観察した〔第105回、第106回日本獣医学会(1988)および日本解剖学会第34回東北-北海道連合地方会(1988)発表〕。その結果、ニワトリとアヒルリンパ組織においては神経要素を除き、S-100蛋白陽性細胞は認められないこと(Avian Path、に投稿中)、一方哺乳類においては胚中心内の濾胞樹枝状細胞とTingible-body食細胞が共通してS-100、蛋白陽性であることを見出した。しかし、他の網内系細胞のS-100蛋白保有状況には種差ないし部位差が著名に認められ、これら細胞の機能状態とS-100蛋白の存在との関係については、今後の検討課題となった。また、モルモットリンパ性器官ではユニークな巨大樹枝状組胞がS-100蛋白のサブユニット陽性を示すことをはじめて見出した。本細胞は通常見られる他の食細胞群と異なり、(1)リンパ節では傍辺縁洞皮質域、脾臓においては縁帯流域に限局して分布すること、(2)腸管付属リンパ組織では殆ど検出できないこと、(3)非抗原性物質(コロイダルカーボン)は殆ど摂取しないが、抗原性物質(異種赤血球)は大量に取り込むことなどの特性を示した。本細胞は、リンパ行性ないしは血行性抗原の侵入門戸に限局して分布すること、また食細胞系の新しい1亜群としての性格を示すことから、今後の興味ある追求課題となった。この研究の過程で、魚(タイ)脾臓の食細胞の動態、ニワトリGlobule leucocyteがNatural killer細胞としての性格を有するなどが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-63480090
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リンパ組識における網内系細胞の比較免疫組識学的研究
今年度は2種の家禽(ニワトリ、アヒル)、9種の哺乳類(モルモット、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ヤギ、ウシ、ニホンカモシカ、カニクイザル)のリンパ組織における網内系細胞のS-100蛋白質、さらにそのαおよびβサブユニットの存在についても免疫組織化学的に明らかにし、それらの所見をまとめた(Jpn.J.Vet.Sci.に投稿中)。以上の研究から、鳥類リンパ組織には通常S-100蛋白質陽性の網内系細胞は検出されないこと、哺乳類リンパ組織においては胚中心内の濾胞樹枝状細胞(FDC)とTingibie-body食細胞(TMP)が各動物種に共通してS-100蛋白質を保有していることを明らかにした。哺乳類リンパ組織内の他領域の食細胞、リンパ洞内皮細胞、Tリンパ球のS-100蛋白質の保有状況には種差がみられた。特にαサブユニットの存在は(鳥類およびモルモットを除く)FDCとウシおよびイヌのリンパ洞内皮細胞のマ-カ-として有用である。モルモットのリンパ組織にはS-100蛋白質のαサブユニットを保有する巨大樹枝状細胞(GDC)が存在する。本細胞は抗原の流入域となるリンパ節の辺縁洞下や脾臓の縁帯に局在して分布すること、抗原を一般の洞内食細胞より大量に捕捉すること、抗原捕捉後GDCのS-100蛋白質は陰性を示す様になることを明らかにした。これらの所見から、GDCのS-100蛋白質は抗原の取り込みないしはその後の反応にある役割を演じていることが推察された(解剖学会第49回中部地方会)。生後発生をみると0日齢で、形態は単純であるが、GDCはすでにリンパ器官に出現し、1週齢、脾臓では3週齢で、ほぼ成体のそれと同様の形態と分布を示していた。本研究の過程で、ブタの胸腺内に、すでに報告されている食細胞、胸腺小体の他に、筋様細胞もS-100蛋白質陽性であることを明らかにした(解剖学会第35回東北・北海道連合地方会)。今年度は2種の出禽と9種の哺乳類のリンパ器官内のSー100蛋白質陽性細胞の存在と種差をまとめた(Zool.Sci.,7:1990,Jpn.J.Vet.Sci.,52:1990)ほか、コイ頭腎における免疫関連細胞の研究をおこなった(J.Fish Biol.,13:1990)。これらの研究の結果、哺乳類のリンパ器官では数種のSー100陽性細胞が検出されたが、コイおよび家禽のリンパ造血器官では神経要素を除きSー100陽性細胞を検出することができなかった。しかし、疾病時の少数例のニワトリの脾臓胚中心とフアブリキュウス嚢においてFDC様細胞がSー100蛋白質陽性となった。今後これら細胞内におけるSー100蛋白質消長の要因を検討する必要がある(J.Comp.Pathol.1991)。コイの免疫関連器官の検索から、コイにおいては頭腎が最も重要なリンパ造血性器官であることがわかり、そのリンパ球分布はほとんど頭腎門脈およびそれに続く洞様毛細血管に集中していた。これはリンパ球造血と骨髄造血が分離する系統発生学的傾向の原始的な状態であることが示唆された。抗原(ミョウバン沈澱ウシ血清アルブミン)を投与後頭腎を継時的に観察すると、投与後14日目をピ-クとして抗原を貧食した食細胞の集塊に接してピロニン好性のリンパ系および形質細胞系の細胞の集簇が形成される。抗コイ免疫グロブリンウサギ血清を使用した免疫組織化学的研究から、これら細胞集簇は免疫グロブリン産生細胞を増殖させている原始的胚中心とみなせることが明らかとなった(Fish Shellfish lmmunol.1991)。
KAKENHI-PROJECT-63480090
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63480090
歯科医学教育に関する研究-特に歯科放射線の卒前教育と卒後研修について
歯学・医学の急速な進歩と同時にそれに伴う歯科医学教育を考えなければならない。そこで歯科放射線学の見地から各大学の卒前教育及び卒後教育への関連性ならびに卒後研修の実態をアンケート調査した。また卒後3年以内の歯科医師に対し卒後研修についてのアンケート調査を行いそれを検討した結果1.卒前教育に関しては20年前と比較してみると学生数は大学1校あたりの人数は減少しているが大学数が増えているために総人数は増している。講義内容は増えているが講義時間は減少している。基礎実習ではファントームを使用し防護の点では改善がみられた。現像実習においてもタンク現像から自動現像へと変わっている。教官についてはどの大学でも人員の確保に苦慮しており、なかでも私立は国立に比べ教官数が不足している。教官不足は学生と教官との接触の少なさにつながり情緒教育を含め教育軽視に拍車をかけるものと考える。臨床実習では実習時間の不足と患者撮影実習には法的な問題点もあり、医療行政からの早急な対策が望まれる。2.卒後教育はほとんどの大学で実施されており卒後研修をうける者は大部分が卒後1年目であった。しかし国立は文部省、私立は厚生省とで方式の違いが認められた。指導医については基準がなく速急に充実する必要がある。卒前教育に従事している教官が指導に当たっておりその過重な負担がうかがえ卒前教育の希薄化が考えられる。放射線学の研修内容は抗議がほとんどで数校では撮影実習と症例検討をしている。これについては改善する必要があると考える。3.卒後3年以内の歯科医師のアンケ-と調査では開業に就いても卒前の臨床実習が役立つし卒後研修は大学病院だけでなく、民間においても収容能力や指導体制の整備を図って欲しいとの事であり、今後の課題としては総合的な研修がどこでも行なわれ、研修内容も充実することが必要であると考える。歯学・医学の急速な進歩と同時にそれに伴う歯科医学教育を考えなければならない。そこで歯科放射線学の見地から各大学の卒前教育及び卒後教育への関連性ならびに卒後研修の実態をアンケート調査した。また卒後3年以内の歯科医師に対し卒後研修についてのアンケート調査を行いそれを検討した結果1.卒前教育に関しては20年前と比較してみると学生数は大学1校あたりの人数は減少しているが大学数が増えているために総人数は増している。講義内容は増えているが講義時間は減少している。基礎実習ではファントームを使用し防護の点では改善がみられた。現像実習においてもタンク現像から自動現像へと変わっている。教官についてはどの大学でも人員の確保に苦慮しており、なかでも私立は国立に比べ教官数が不足している。教官不足は学生と教官との接触の少なさにつながり情緒教育を含め教育軽視に拍車をかけるものと考える。臨床実習では実習時間の不足と患者撮影実習には法的な問題点もあり、医療行政からの早急な対策が望まれる。2.卒後教育はほとんどの大学で実施されており卒後研修をうける者は大部分が卒後1年目であった。しかし国立は文部省、私立は厚生省とで方式の違いが認められた。指導医については基準がなく速急に充実する必要がある。卒前教育に従事している教官が指導に当たっておりその過重な負担がうかがえ卒前教育の希薄化が考えられる。放射線学の研修内容は抗議がほとんどで数校では撮影実習と症例検討をしている。これについては改善する必要があると考える。3.卒後3年以内の歯科医師のアンケ-と調査では開業に就いても卒前の臨床実習が役立つし卒後研修は大学病院だけでなく、民間においても収容能力や指導体制の整備を図って欲しいとの事であり、今後の課題としては総合的な研修がどこでも行なわれ、研修内容も充実することが必要であると考える。今年度は歯科放射線学の卒前教育の状態と卒後教育の実態をしるために調査用紙を作成した。その内容は卒前教育においては1:学生総数(その内の男女の数)2:歯科放射線学を担当している教官の数3:講義については総講義時間、放射線講義時間及び講義時期、講義内容等、欠席や遅刻の対応について、学生の評価の方法等4:基礎実習については基礎実習方法や基礎実習時期や時間及び担当教員の数や実習内容5:臨床実習については臨床実習方法や臨床実習を行う学年、臨床実習時間及び内容等、カリキュラムの問題点などである。その結果現時点2、3の知見を得た。学生総数中で女学生数が半数近く認められるのが23枚、目に付いた。残りは3割程度であった。基礎学習の時期は4年の後期から5年の前期にかけてが大部分で認められた。臨床実習においては6学年ほとんどであるが中に5学年の後期からまたは5学年前期からもあった。臨床実習、カリキュラムは現在ほとんどの大学が改定するための見直す時期にきているとのことで具体的には、未だ、ほとんどまとまっていなかった。卒後教育をまったく行っていない大学も数校見られた。またその研修医の評価はどの大学も行っていないようであり、その点をもう少し調査したい。また、当大学の卒業後5年以内の歯科医師に対し卒前卒後の歯科放射線教育が実際の診療にどの様に関わっているかを調査するために調査項目を検討し作成中である。歯学・医学の急速な進歩と同時にそれに伴う歯科医学教育を考えなければならない。そこで歯科放射線学の見地から各大学の卒前教育及び卒後教育への関連性ならびに卒後研修の実態をアンケート調査した。
KAKENHI-PROJECT-05680164
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05680164
歯科医学教育に関する研究-特に歯科放射線の卒前教育と卒後研修について
また卒後3年以内の歯科医師に対し卒後研修についてのアンケート調査を行いそれを検討した結果、1.卒前教育に関しては20年前と比較してみると学生数は大学1校あたりの人数は減少しているが大学数が増えているために総人数は増している。講義内容は増えているが講義時間は減少している。基礎実習ではファントームを使用し防護の点では改善がみられた。現像実習においてもタンク現像から自動現像へと変わっている。教官についてはどの大学でも人員の確保に苦慮しており、なかでも私立は国立に比べ教官数が不足している。教官不足は学生と教官との接触の少なさにつながり情緒教育を含め教育軽視に拍車をかけるものと考える。臨床実習では実習時間の不足と患者撮影実習には法的な問題点もあり、医療行政から早急な対策が望まれる。2.卒後教育はほとんどの大学で実施されており卒後研修をうける者は大部分が卒後1年目であった。しかし国立は文部省、私立は厚生省とで方式の違いが認められた。指導医については基準がなく速急に充実する必要がある。卒前教育に従事している教官が指導に当たっておりその過重な負担がうかがえ卒前教育の希薄化が考えられる。放射線学の研修内容は講義がほとんどで数校では撮影実習と症例検討をしている。これについては改善する必要があると考える。3.卒後3年以内の歯科医師のアンケート調査では開業に就いても卒前の臨床実習が役立つし卒後研修は大学病院だけでなく民間においても収容能率や指導体制の整備を図って欲しいとの事であり今後の課題としては総合的な研修がどこでも行われ研修内容も充実することが必要であると考える。
KAKENHI-PROJECT-05680164
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05680164
Fgf8シグナルによる小脳分化の制御
峡部オーガナイザーFgf8の強いシグナルにより、Ras-ERK経路が活性化されると小脳が分化することを示したが、その活性はすぐに抑制される必要があり、ずっと活性化されると中脳胞の小脳への分化転換は起こらない。Fgf8bとDN-Sprouty2の強制発現の後、DN-Sprouty2の転写をOffにすると中脳胞は小脳へとその運命を変えた。本研究により、小脳が分化するためには、Fgf8bによりRas-ERK経路が活性化され、その後負の制御因子Sprouty2, Sef, MKP3等により、その活性が抑制されることが必要であることが明らかになった。峡部オーガナイザーFgf8の強いシグナルにより、Ras-ERK経路が活性化されると小脳が分化することを示したが、その活性はすぐに抑制される必要があり、ずっと活性化されると中脳胞の小脳への分化転換は起こらない。Fgf8bとDN-Sprouty2の強制発現の後、DN-Sprouty2の転写をOffにすると中脳胞は小脳へとその運命を変えた。本研究により、小脳が分化するためには、Fgf8bによりRas-ERK経路が活性化され、その後負の制御因子Sprouty2, Sef, MKP3等により、その活性が抑制されることが必要であることが明らかになった。強いFgf8シグナルによりRas-ERK経路が活性化されると小脳が分化するが、正常発生、中脳胞での異所的小脳分化の過程を観察するとERKは活性化されたしばらく後に脱リン酸化され、その活性は押さえれれているように見える。そこで、小脳の分化にはERKが活性化され、その後その活性が押さえられる必要があるという仮説のもとに実験を行った。E2のニワトリ胚中脳-後脳部にFgf8bとドミナントネガティブ型Sprouty2(DN-Sprouty2)のエレクトロポレーションを行うと、中脳部ではERKが持続してリン酸化される。マーカー遺伝子の発現、組織構築を観察すると、中脳胞は視蓋として分化していた。Fgf8bとDN-Sprouty2のエレクトロポレーション後17時間たったときにMek阻害剤のU0126ビーズを中脳部に挿入すると、中脳胞に後脳のマーカー遺伝子の発現が誘導された。このことから、小脳の分化にはFgf8bによりRas-ERKが活性化され、その後Ras-ERK経路の負の調節因子によりERKの活性を抑制する必要があることが示された。次年度にTet-offシステムを用いて、共発現後DNSprouty2の発現を抑えると実際に小脳が分化するかどうか確認する。Ras-ERK経路の負の調節因子は複数存在するが、小脳の分化にはSprouty2が最も重要な働きを示しているように見える。Fgf8は中脳後脳境界部(峡部)で発現しており、前の方に中脳視蓋を、後の方に小脳を誘導する。強いFgf8シグナルによりRas-ERK経路が活性化すると小脳が分化することが明らかとなっていたが、ERKの活性をよく見ると、小脳が分化する領域では、かなり早い発生段階で活性が抑えられている。そこで、ERKがずっと活性化された場合、はたして小脳が分化するのかということを、Fgf8bとSprouty2の活性を抑制するドミナントネガティブ型Sprouty2(DN-Sprouty2)のエレクトロポレーションによる強制発現により調べた。中脳胞にFgf8bの強制発現を行うとERKの活性化が起こるが、エレクトロポレーション15時間後にはその活性が落ち始め、中脳胞の分化マーカー、構造ともに小脳の特性を示すようになる。Fgf8bとDN-Sprouty2を強制発現すると、18時間後でもERKの活性はあがっている0中脳胞ではOtx2, Gbx2の発現が混在しているがやがてOtx2だけの発現になり、構造的にも視蓋として分化した。即ち運命転換は起こらない。小脳の分化にはERKがいつたんは活性化され、その後抑えられる必要があるかを見るために、テトラサイクリンでその発現をオフにできるベクターにDN-Sprouty2入れ、Fgf8bと一緒にエレクトロポレーションし、その5.5時間後にテトラサイクリンによりDN-Sprouty2の発現を止めた。その結果、中脳胞ではOtx2の発現が抑制され、後脳特異的なGbx2の発現が誘導され、形態的にも小脳が形成された。本研究により、Ras-ERKシグナルなどの強いシグナルはその活性化と負の制御因子による抑制が非常に重要であることが明らかとなった。即ち、負の制御因子によるシグナル量の調節が正常な発生に非常に重要であることが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-19370090
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19370090
B細胞抗原受容体からの情報伝達と機能発現の制御機構
本研究ではB細胞の生存と分化におけるB細胞抗原受容体からのシグナル伝達の役割及びその制御機構について、Lynキナーゼを中心とするシグナル伝達及びホスファチジルイノシトル系代謝の制御から検討を加えた。Lynキナーゼ欠損マウスと自己赤血球産生性トランスジェニックマウスの掛け合わせでは、B1細胞の異常増加と分化亢進が見られる。本研究ではB1細胞での抗原受容体からのシグナル伝達の制御、特に負の制御機構に異常を来していると考え、シグナル伝達の負の制御に関わる受容体を検索した。その結果、CD5、CD72、FcγRIIBなどの受容体のチロシンリン酸化にLynが深く関与していること、Lyn欠損マウスB細胞においては、これらの受容体の細胞内ITIMのチロシンリン酸化とITIMへのSHP-1フォスファターゼの会合が見られないことがわかった。さらに抗原受容体刺激後での正常B細胞でのチロシンリン酸化タンパクとLyn欠損マウスB細胞でのチロシンリン酸化タンパクのパターンを比較した結果、Lynキナーゼによって抗原受容体刺激後に強くチロシンリン酸化を受ける新たな分子を見出した。分子量及びその抗原性からLy49分子ファミリーと考えられた。B細胞ではB1細胞上のみにLy49様受容体が発現されており、抗原受容体刺激によりチロシンリン酸化を受け、SHP-1がリクルートしてくることがわかった。このLy49様受容体を抗原受容体からSequesterするとB1細胞での増殖と生存が亢進された。以上の結果は、B1細胞では複数の負の制御を行う受容体が存在しその制御にLynキナーゼが重要な働きをしている事を示している。AktはPI3キナーゼを介して活性化され、細胞の増殖と生存を亢進させる。Lyn欠損B細胞ではAktの異常に高く、しかも長期に続く亢進が見られる。Lynキナーゼは自己抗体産生B細胞の増殖、生存に強い負の制御を行っていることが明らかになった。本研究ではB細胞の生存と分化におけるB細胞抗原受容体からのシグナル伝達の役割及びその制御機構について、Lynキナーゼを中心とするシグナル伝達及びホスファチジルイノシトル系代謝の制御から検討を加えた。Lynキナーゼ欠損マウスと自己赤血球産生性トランスジェニックマウスの掛け合わせでは、B1細胞の異常増加と分化亢進が見られる。本研究ではB1細胞での抗原受容体からのシグナル伝達の制御、特に負の制御機構に異常を来していると考え、シグナル伝達の負の制御に関わる受容体を検索した。その結果、CD5、CD72、FcγRIIBなどの受容体のチロシンリン酸化にLynが深く関与していること、Lyn欠損マウスB細胞においては、これらの受容体の細胞内ITIMのチロシンリン酸化とITIMへのSHP-1フォスファターゼの会合が見られないことがわかった。さらに抗原受容体刺激後での正常B細胞でのチロシンリン酸化タンパクとLyn欠損マウスB細胞でのチロシンリン酸化タンパクのパターンを比較した結果、Lynキナーゼによって抗原受容体刺激後に強くチロシンリン酸化を受ける新たな分子を見出した。分子量及びその抗原性からLy49分子ファミリーと考えられた。B細胞ではB1細胞上のみにLy49様受容体が発現されており、抗原受容体刺激によりチロシンリン酸化を受け、SHP-1がリクルートしてくることがわかった。このLy49様受容体を抗原受容体からSequesterするとB1細胞での増殖と生存が亢進された。以上の結果は、B1細胞では複数の負の制御を行う受容体が存在しその制御にLynキナーゼが重要な働きをしている事を示している。AktはPI3キナーゼを介して活性化され、細胞の増殖と生存を亢進させる。Lyn欠損B細胞ではAktの異常に高く、しかも長期に続く亢進が見られる。Lynキナーゼは自己抗体産生B細胞の増殖、生存に強い負の制御を行っていることが明らかになった。本研究では次のような成果を得た。(1)Lynキナーゼ欠損マウスにおける自己免疫病発症のさらなる解明。Lynキナーゼ欠損マウスと自己赤血球に対する自己抗体産生性トランスジェニックマウスを掛け合わせると、その自己免疫性貧血は著明に増悪する。このようなマウスでは、著明なB1細胞の増殖と活性化が見られ、逆にB2細胞は殆ど消滅する。Lynキナーゼの欠損が自己反応性B1細胞の生存、増殖、分化の促進に深く関わっているが明らかとなった。これは、Lynキナーゼの欠損B1細胞では、抗原受容体シグナルを負に制御する機構に破綻が生じたためである。B1細胞でシグナルを負に制御する補助受容体として、従来のCD22,CD72,PIR-B,FcgRIIBの他に、CD5,Ly49が重要な役割を演じていることを示した。Lynキナーゼによるこれら受容体の細胞内ITIMモチーフのリン酸化とSHP1/2などのフォスファターゼのリクルートメントが重要である。(2)BCRシグナルによって特異的にその発現が制御される転写因子FosB、△FosBの転写調節を解析して受容体からのシグナル伝達系と核内遺伝子発現系を一連の反応系としてつなぐ試みを行っている。(3)Golgi膜、小胞体膜輸送に重要な新たな分子PITPnmを我々は単離した。PITPnmがGolgi膜上でPI4Kと会合して、PI代謝の制御を行っていることを示した。
KAKENHI-PROJECT-11470088
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B細胞抗原受容体からの情報伝達と機能発現の制御機構
今後、PITPnmが抗原受容体からのMHCクラスII分子への抗原ペプチドの提示にどのように関わっているかを、PITPnm及びその変異タンパクを高発現したB細胞株を用いて明らかにする。(4)マウスB細胞株WEHI231細胞のBCRシグナルによるアポトーシス誘導には、ミトコンドリアに働く新たに合成されるタンパクが関与していることを示した。現在、この分子の同定を行っている。本研究ではB細胞の生存と分化におけるB細胞抗原受容体からのシグナル伝達の役割及びその制御機構について、Lynキナーゼを中心とするシグナル伝達及びホスファチジルイノシトル系代謝の制御から検討を加えた。Lynキナーゼ欠損マウスと自己赤血球産生性トランスジェニックマウスの掛け合わせでは、B1細胞の異常増加と分化亢進が見られる。本研究ではB1細胞での抗原受容体からのシグナル伝達の制御、特に負の制御機構に異常を来していると考え、シグナル伝達の負の制御に関わる受容体を検索した。その結果、CD5、CD72、FcγRIIBなどの受容体のチロシンリン酸化にLynが深く関与していること、Lyn欠損マウスB細胞においては、これらの受容体の細胞内ITIMのチロシンリン酸化とITIMへのSHP-1フォスファターゼの会合が見られないことがわかった。さらに抗原受容体刺激後での正常B細胞でのチロシンリン酸化タンパクとLyn欠損マウスB細胞でのチロシンリン酸化タンパクのパターンを比較した結果、Lynキナーゼによって抗原受容体刺激後に強くチロシンリン酸化を受ける新たな分子を見出した。分子量及びその抗原性からLy49分子ファミリーと考えられた。B細胞ではB1細胞上のみにLy49様受容体が発現されており、抗原受容体刺激によりチロシンリン酸化を受け、SHP-1がリクルートしてくることがわかった。このLy49様受容体を抗原受容体からSequesterするとB1細胞での増殖と生存が亢進された。以上の結果は、B1細胞では複数の負の制御を行う受容体が存在しその制御にLynキナーゼが重要な働きをしている事を示している。AktはPI3キナーゼを介して活性化され、細胞の増殖と生存を亢進させる。Lyn欠損B細胞ではAktの異常に高く、しかも長期に続く亢進が見られる。Lynキナーゼは自己抗体産生B細胞の増殖、生存に強い負の制御を行っていることが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-11470088
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チェルノブイリ事故後のフィンランド・旧東独における旧ソ連製原発の運用継続と中止
今年度も、各人が担当地域における資料収集およびインタビューを行い、その成果を発表した。さらに、国内外および本研究以外の研究者を交えて研究会や勉強会を重ねた。具体的には、佐藤は、2018年6月に東北大学で行われた比較政治学会にて、自由企画「ヨーロッパにおける『境界』の意味ー隣国の原子力政策とどう向き合うのか」の報告者らと意見交換を行った。同年7月には同志社大学で行われた日本ドイツ学会にて、拙稿が所収された『核開発時代の遺産』(昭和堂、2017年)の出版シンポジウムに、編著者であり研究分担者の木戸ならびに他の著者らと共に参加し、各自の原稿に関するコメントに返答した。8・9月には、フィンランド・スウェーデンにて研究調査を行った。この成果をまとめた論考が、2019年、『北ヨーロッパ研究』にて公表予定である。11月には京都大学で行われた国際ワークショップ"Radiation Diplomacy"に参加し、科学史への知見を深めた。2・3月にはドイツ・コブレンツにある連邦文書館にて、ドイツにおけるウラン濃縮施設建設過程の議論、およびチェルノブイリ原発後の政府内部の動向を探った。3月下旬には、広島で行われた「放射性物質の政治文化史研究会」にて、中川保雄『増補放射線被曝の歴史ーアメリカ原爆開発から福島原発事故までー』(明石書店2011)についての書評コメントを依頼されて行った。この過程で、科学史の研究手法と視座を分析することができ、本研究にも生かされる予定である。木戸は、4月にドイツのフランクフルト・アム・マインにあるドイツ国立図書館にて資料収集を行い、12月には阪神ドイツ文学会にて研究成果報告を行った。ヘルシンキの図書館において、今年から部外者に電子資料へのアクセスができなくなったことに加えて、佐藤の公務が忙しくなり研究との兼ね合いが困難になった。2019年8・9月にフィンランドのロヴィーサ原発周辺およびドイツにて、追加の研究調査を行う。本年度は、各人が担当地域における資料収集およびインタビューを行い、適宜他の研究者も交えて研究会や勉強会を重ねた。具体的には、7月に大阪大学で本研究の詳細な打ち合わせが行われた後、9月に京都、10月に広島において、各国の原子力に関する研究者らを交えて、研究成果を報告し意見交換する勉強会が行われた。佐藤は、2016年10ー11月にヘルシンキの国立図書館と議会図書館、タンペレ大学図書館において研究資料を収集した後、ユヴァスキュラ大学社会科学・哲学学部研究者タピオ・リトマネンのもとで研究滞在を行った。現地において研究報告を行い、現地研究者らと情報交換を行い、かつ研究に必要なネットワークを構築した。加えて、リトマネン氏およびロヴィーサの反対運動中心人物トーマス・ローゼンベリへのインタビューを実施した。貴重な資料を得るとともに、次回の訪問調査協力の確約もまた得られた。木戸は、2017年1、2月にボーフムでドイツのエネルギー産業に関する歴史を概観し、ベルリンで旧東独原子力産業に関する資料を閲覧、ディーター・ホフマン、ライナー・カールシュ、セバスティアン・プフルークバイル各氏に関連のインタビューを行った。現地で研究報告を行うことにより、情報交換および意見交換がなされた。「研究計画」に記載した通り、両者とも、チェルノブイリ事故後のフィンランド・東独における受け止められ方と対応策に関して分析を行った。今年度の研究成果の一部は、特に2017年公刊の本『核開発時代の遺産』(昭和堂)所収の論文および『北ヨーロッパ研究』所収の研究ノートをはじめとして反映されている。上記「研究業績の概要」欄記載の通り、現地資料調査およびインタビューにより、興味深い知見が得られ、その一部を2017年に成果として発表している。ロヴィーサ原発関係者とのインタビューが先方の都合により果たせなかったが、2017年度に行われる次回の訪問調査の協力に関して約束を得ているため、上記のように評価した。本年度は、各人がこれまでに担当地域において行った資料収集およびインタビューにより得られた成果の一部を公に発表し、さらに適宜、国内外および本科研以外の研究者も交えて研究会や勉強会を重ねた。具体的な成果として、主に次の3点が挙げられる:第一に、10月に木戸が共編著者を務める『核開発時代の遺産』(昭和堂)が出版された。本書中において木戸は東ドイツに関して、佐藤はフィンランドに関する章を執筆した。また、本書出版に関連して、韓国から関連研究者を招いた出版記念シンポジウムが、同志社大学で行われた。同シンポジウムにおいて佐藤はフィンランドの原発に関するドキュメンタリー映画を上映、現代のフィンランドの原発事情と放射性廃棄物処分に関する解説を行った。第二に、11月には日本平和学会(於:香川大学)において佐藤の企画した「核開発に対する抵抗活動ー各国の事例に学ぶ:(自由論題部会・パッケージ企画)」が催された。本部会では、木戸が司会を担当し、佐藤はフィンランドに関する報告を行った。第三に、2018年3月にドイツ現代史研究会(京都)でフィンランドより第一線の研究者を招聘して、フォーラム「放射性物質の政治文化史国際比較」が行われた。その際に、佐藤と木戸はそれぞれフィンランド・東ドイツに関する研究報告を行った。続けて、大阪大学においてもフィンランドの放射性廃棄物問題に関する講演会が開かれた。その際、佐藤は司会を務めた。2018年度に予定していた海外研究者を招聘しての講演会を、双方の都合を勘案して、前倒して行った。また、この過程で、フィンランド側との研究に関する協力体制も構築された。
KAKENHI-PROJECT-16K01984
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K01984
チェルノブイリ事故後のフィンランド・旧東独における旧ソ連製原発の運用継続と中止
今年度も、各人が担当地域における資料収集およびインタビューを行い、その成果を発表した。さらに、国内外および本研究以外の研究者を交えて研究会や勉強会を重ねた。具体的には、佐藤は、2018年6月に東北大学で行われた比較政治学会にて、自由企画「ヨーロッパにおける『境界』の意味ー隣国の原子力政策とどう向き合うのか」の報告者らと意見交換を行った。同年7月には同志社大学で行われた日本ドイツ学会にて、拙稿が所収された『核開発時代の遺産』(昭和堂、2017年)の出版シンポジウムに、編著者であり研究分担者の木戸ならびに他の著者らと共に参加し、各自の原稿に関するコメントに返答した。8・9月には、フィンランド・スウェーデンにて研究調査を行った。この成果をまとめた論考が、2019年、『北ヨーロッパ研究』にて公表予定である。11月には京都大学で行われた国際ワークショップ"Radiation Diplomacy"に参加し、科学史への知見を深めた。2・3月にはドイツ・コブレンツにある連邦文書館にて、ドイツにおけるウラン濃縮施設建設過程の議論、およびチェルノブイリ原発後の政府内部の動向を探った。3月下旬には、広島で行われた「放射性物質の政治文化史研究会」にて、中川保雄『増補放射線被曝の歴史ーアメリカ原爆開発から福島原発事故までー』(明石書店2011)についての書評コメントを依頼されて行った。この過程で、科学史の研究手法と視座を分析することができ、本研究にも生かされる予定である。木戸は、4月にドイツのフランクフルト・アム・マインにあるドイツ国立図書館にて資料収集を行い、12月には阪神ドイツ文学会にて研究成果報告を行った。ヘルシンキの図書館において、今年から部外者に電子資料へのアクセスができなくなったことに加えて、佐藤の公務が忙しくなり研究との兼ね合いが困難になった。ひきつづき、現地における資料調査およびインタビューを重視するとともに、成果の公表を目指す。フィンランド研究に関しては、ヘルシンキの国立図書館および2016年に知見を得たロヴィーサの反対運動中心人物ローゼンベリを訪問、旧ソ連製原発ロヴィーサ周辺地域において比較的長期滞在し、施設の視察とインタビューを実施し、新聞等の資料収集を集中して行う。東独研究に関しては、ベルリンにある連邦文書館、ハインリヒ・ベル財団文書館を訪問し、平和革命期の反原発運動に関して、「新フォーラム」や旧東独「緑の党」の動向を含めて研究する。今後は、日本平和学会にて研究成果を公表し、社会還元するとともに、意見交換・情報収集を行う。また、海外から研究者を招聘し、研究会を開く予定である。2018年度は最終年度のため、これまでの分析結果をまとめ、フィンランドと東ドイツの比較研究を論文にまとめるよう努める。また、フィンランドと日本の比較研究に関しても英語で研究をまとめたい。なお、佐藤は丸善出版から『現代ドイツ事典』(2018年11月出版予定)の中でドイツの原発に関する執筆依頼を受けており、既に原稿は提出済である。本研究の成果を発信していきたい。
KAKENHI-PROJECT-16K01984
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直感的に読み取り可能な指向性触覚サイン「DiGITS」の開発
本研究では、触覚を用いて、誰もが直感的に方向を読み取ることのできる触覚サイン「DiGITS」の開発と、その効果について評価を行う。DiGITSの特徴は、・指し示す方向を、触運動時に順目方向と逆目方向で触感の差異を生じるような立体の凹凸パターンによって規定すること・順目方向と逆目方向で生じる触感の差異と、DiGITSの指し示す方向とを対応づけることによって、事前の学習がなくとも、ヒトが意味を解釈できるようにすることにある。DiGITSの実用例として、緊急時の方向表示用途が考えられる。トンネルで火災が起こり、暗闇で目が開けられなくても、DiGITSであれば手探りで非常口の方向を示すことができる。本研究では、触覚を用いて、誰もが直感的に方向を読み取ることのできる触覚サイン「DiGITS」の開発と、その効果について評価を行う。DiGITSの特徴は、・指し示す方向を、触運動時に順目方向と逆目方向で触感の差異を生じるような立体の凹凸パターンによって規定すること・順目方向と逆目方向で生じる触感の差異と、DiGITSの指し示す方向とを対応づけることによって、事前の学習がなくとも、ヒトが意味を解釈できるようにすることにある。DiGITSの実用例として、緊急時の方向表示用途が考えられる。トンネルで火災が起こり、暗闇で目が開けられなくても、DiGITSであれば手探りで非常口の方向を示すことができる。
KAKENHI-PROJECT-19K12661
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K12661
心の諸問題の探求
前年度に引き続き、本研究の当初の目的であった近年の「心の哲学」の議論との接続を性急にはかる前に、ハイデガーの哲学にたいする確固とした理解を得ることが肝要との認識から、主著『存在と時間』に至るまでの彼の試行錯誤の過程を辿り直し、彼の哲学をいわばその内側から、より良く理解するということに専念してきたが、本年度に至り、その作業にもようやく完成の目処が立った。前年度までの研究は、この時期のハイデガーの哲学が持ついくつかの特徴を明らかにした一方で、それらを包括的・統一的に捉える視点を欠いたものであった。しかし本年度においては、この時期の彼の歩みを貫くある一つの筋道が見いだされ、それを軸とした初期ハイデガーの全体像の解明が、明確な目標として設定された。その核となる二つのアイデアのうち、一つは今年の3月に発表済みであり(「実存思想協会」における発表)、もう一つは5月に発表する予定である(「日本哲学会」における発表)。まず前者の発表では、ハイデガーは師フッサールの「現象学」を受容するさいにすでに、『存在と時間』の核心をなす「憂慮」としての人間観を抱いていたということを明らかにした。次に後者の発表では、この時期のハイデガーにとって、この「憂慮」としての人間観は、アリストテレスに由来し後の哲学の歴史を規定していくことになる、ある転倒した人間観にたいする批判という意味合いを持っていた、ということを示す予定である。そしてこうした「憂慮」としての人間観と、アリストテレス解釈との連関が発展していったところに、『存在と時間』が成立するということが、上述した筋道の概要である。当初の計画通り、第1年度は、『存在と時間』(1927年)に結実する初期ハイデガーの思想を包括的に理解することを目標にして、研究を行った。具体的には、1919年から1922年にかけてフライブルク大学で行われた諸講義を解釈した。この「『存在と時間』以前」の時期への注目は、ハイデガー研究における近年のトレンドの一つではあるが、それ自体は何ら一枚岩的なものではなく、この時期にしてすでに見られるハイデガーの語りの内実上の深さ、広さに、研究者たち自身の関心が組み合わさることで、様々なアプローチが混在しており、さらにこの時期の講義群に対する原則的な解釈方針というものがいまだ確立されているとは言い難いため、悪く言えば「言いたい放題」、「言った者勝ち」的な状況が、一部では見受けられるほどである。このような状況のなか、報告者は、解釈を通じて自らが手にしているハイデガー哲学の全体像が、講義テキストのあらゆる細部に適合しているかどうかを、そのつどチェックすることを心がけた。そうした細部のなかには、多くの研究者が見て見ぬ振りをしているかのように素通りしているものもある。その一つに、いくつかの講義で見られる、「否定(Negation)」や「無(Nichts)」といったものに対する考察がある。報告者は、日本現象学会第32回研究大会にて、それらの考察が、この時期のハイデガー哲学の方法に重要な仕方でかかわっていることを示した。この発表原稿は、同学会誌である『現象学年報』への掲載が決定済みである。この研究は、この時期のハイデガー哲学の原則的な解釈方針の確立を目指すものでありつつ、独自の視点を持つものでもあり、上述の状況を鑑みたとき、固有の意義を持っている。当初の研究計画に記載した通り、ハイデガー哲学の心の哲学や関連諸分野に対する現代的意義を明らかにすることを目標にしつつも、まずは彼の哲学に対する徹底した理解を得ることが先決と考え、前年度に引き続き、彼の最初期から『存在と時間』に至るまでの思索の歩みを辿り直し、解釈し、そのアクチュアリティを見定めるということを行ってきた。具体的には、いわゆる「初期フライブルク講義」という、ハイデガーが『存在と時間』の構想段階にあたる1919-23年に行った講義録を網羅的に解釈することを通じて、いかにして彼が同書の「存在の意味への問い」という独特の問題設定に到達したのかということを明らかにすることが目指された。その成果は、彼の独自の術語である「意味」や「地平」、また彼の哲学の方法である「形式的告示」が持つ、これまで十分に論じられてこなかった含意を明らかにするというかたちで、一本の学会発表、および二本の学術論文として発表された。当該年度の成果は、ハイデガーの代名詞ともいうべき「存在の意味への問い」の複雑で動的な構造を解明するという、ハイデガー研究における最重要課題の一つでありながらこれまで研究者たちが必ずしも十分に取り組んでこなかった課題への寄与を、それも彼の最初期の思索を辿り直すことを通じて目指している点で、この分野における十分な意義と重要性を持っているといえる。しかし当該年度の成果は、いまだ途上にある本研究全体の一部分であり、その意義と重要性は、本研究が完成した暁に、十分に明らかになるだろう。前年度に引き続き、本研究の当初の目的であった近年の「心の哲学」の議論との接続を性急にはかる前に、ハイデガーの哲学にたいする確固とした理解を得ることが肝要との認識から、主著『存在と時間』に至るまでの彼の試行錯誤の過程を辿り直し、彼の哲学をいわばその内側から、より良く理解するということに専念してきたが、本年度に至り、その作業にもようやく完成の目処が立った。
KAKENHI-PROJECT-10J05524
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J05524
心の諸問題の探求
前年度までの研究は、この時期のハイデガーの哲学が持ついくつかの特徴を明らかにした一方で、それらを包括的・統一的に捉える視点を欠いたものであった。しかし本年度においては、この時期の彼の歩みを貫くある一つの筋道が見いだされ、それを軸とした初期ハイデガーの全体像の解明が、明確な目標として設定された。その核となる二つのアイデアのうち、一つは今年の3月に発表済みであり(「実存思想協会」における発表)、もう一つは5月に発表する予定である(「日本哲学会」における発表)。まず前者の発表では、ハイデガーは師フッサールの「現象学」を受容するさいにすでに、『存在と時間』の核心をなす「憂慮」としての人間観を抱いていたということを明らかにした。次に後者の発表では、この時期のハイデガーにとって、この「憂慮」としての人間観は、アリストテレスに由来し後の哲学の歴史を規定していくことになる、ある転倒した人間観にたいする批判という意味合いを持っていた、ということを示す予定である。そしてこうした「憂慮」としての人間観と、アリストテレス解釈との連関が発展していったところに、『存在と時間』が成立するということが、上述した筋道の概要である。当初の研究計画に記した研究遂行上の三つの段階のうち第一の基礎的な段階(ハイデガー解釈)に本研究はとどまっているが、それは本研究の遅れを意味するのではなく、むしろ、安易に次の段階に進まず、この段階の研究に十分な時間を割くことこそが、結局は当初の目論みを達成するためのもっとも堅実で確実な方策だと自覚されたからである。このように捉え直された研究全体の構想の枠内では、本研究はおおむね順調に進展している。本研究は、当初の研究計画に記した基礎的段階(ハイデガー解釈)にむしろとどまることこそが、結局は実りある研究につながると考え、研究計画は変更された。今後はこの方針で研究を推し進め、最終的には、『存在と時間』にいたるまでのハイデガーの思索の歩みを、本研究がこれまでに発表してきた独自の成果を含めたかたちで再構成し、さらなる中間成果を学会発表や論文投稿というかたちで公にし、それらをもとに博士論文を執筆する予定である。
KAKENHI-PROJECT-10J05524
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J05524
インプラント周囲炎の治療予後に影響を与える組織特異的幹細胞傷害の可能性を探る
未分化の間葉系幹細胞においても成熟した骨芽細胞においてもLPSの受容体であるTLR-4の発現は低く、LPSによる増殖阻害も20%程度であった。この結果は仮説と解離したので検証実験を行ったところ同様の結果を得た。培養系において、LPSと複合体を形成する可溶性LPB (LPS-binding protein)と可溶性CD14の不足と考えた。LPBとCD14を培養系に添加してLPSによる増殖阻害効果を検討した。効果が顕著になる傾向も認めたが再現性に乏しく、培地の成分を検討して最適な実験条件を確立する。一方、インプラント周囲炎の病因は、インプラント表面へのバイオフィルムの形成とLPSの吸着にある。表面が滑沢な純チタン板と表面に微細構造を付与した純チタン板を材料として、これらに対する各種接着タンパクの吸着性を検討した。接着タンパクはfibronectin (FN), fibrinogen (FGN), von Willebrand factor (vWF), vitronectin (VN)とし、対照としてアルブミン(Alb)として検討した。結果はFGNがもっともチタン表面に吸着しやすく、それは同時に添加したAlbによって阻害されない。ただし、事前にチタン表面にコートされたbovine serum albumin (BSA)によって強力に阻害されることが判明した。FNやvWFもチタンへの親和性は高く血小板はこれらの接着タンパクを介してチタン表面と接着することも明らかになった。LPSについては,増殖阻害実験に用いたP.gingivalis由来LPS抗体が入手できないので吸着度を定量化出来なかった。しかし、E.Coli由来LPS抗体は入手できることから次年度の課題とすることにした。昨年来の細胞増殖に対する効果は、可溶性関連因子の添加によっても大きな改善は見られなかった。具体的には、LPSの情報伝達に関与する因子のなかで細胞内に含まれるもの以外で、細胞外に浮遊性に存在して関与するといわれるLPS-binding protein (LPB)とCD14を培地に適当量添加することで情報伝達をより確実な状態に再構成しようと試みた。しかし、P.gingivlisのLPSが骨芽細胞や骨髄由来間葉系幹細胞の増殖に及ぼす影響に大きな変動は見られなかった。しかし,研究課題のもうひとつの中心である純チタン表面に対する各種接着因子(タンパク)の親和性の違いについては予想外な進捗が見られた。具体的にはFibronectin(FN)やvon Willebrand factor(vWF)やfibrinogen(FGN)などの血漿中に含まれる細胞接着因子が、血漿中にもっとも多く含まれるalbumin(Alb)に対してより高い親和性をもってチタン表面に吸着することを実証できた。vWFやFGNは血小板の接着に大いに関与しているものの骨芽細胞などの付着細胞系の接着にはあまり関与していないと考えられている。一方、幹細胞の接着に重要な役割を果たすとされるvitronectin(VN)に関しては、チタン表面への吸着が相対的に少量であることが判明した。これまではプラスチックディッシュ上での細胞増殖ばかりに目がとらわれていたが、今後は基材をチタンに移して細胞接着という機能面からLPSの増殖に及ぼす影響を検討することで遅れを取り戻したい。順調に進んでいる実験を優先的に実施することで、停滞している課題についても解決の糸口を見出すことが可能なこともある。ここでは、チタン板とLPSの吸着親和性を他の接着因子との相対的な評価をすることを中心に進めたい。具体的には、以下の推進方策を実施する。1) Fibronectin (FN)やvon Willebrand factor(vWF)およびcollagenなどの接着因と比較して、LPSのチタン表面への吸着親和を評価する。LPSは抗体の入手が可能なE. coli由来のものとし、評価方法はそれぞれの特異的抗体をもちいた免疫蛍光染色法(IF)による。2) E. coli由来LPSをチタン表面にコートした状態で、骨芽細胞、骨膜細胞、骨髄・脂肪由来間葉系幹細胞の増殖に及ぼす影響を検討する。3)上記実験系に可溶性因子(LPB (LPS-binding protein)やCD14)を添加して、LPSが細胞増殖に及ぼす影響を検討する。4)上記の実験で、期待した様な明らかな効果が見られた場合、蛍光プローブを使用して細胞内に産生された活性酸素(ROS)を蛍光顕微鏡で検出を試みる。5)チタン表面をコートするLPSの濃度依存性データと細胞増殖のデータを比較検討することにより、相関関係・因果関係を分析する。インプラント周囲炎による歯周組織の破壊が再生力の低下と関連しているのではないかという仮説を立て第一の検証目標を歯肉線維芽細胞や骨膜細胞、骨芽細胞(Saos-2)と骨髄由来間葉系幹細胞(MSC-BM)の間でリポ多糖(LPS)に対する応答性の違いに置いた。1)LPSが細胞増殖に及ぼす影響:各細胞を1x103/wellの細胞密度で96穴プレートに播種し、DMEM+1%FBS培地中(あるいは、MSC-BMはMesenPRO培地中)で24時間のpreincubationの後、48時間LPS(0.01-10 ng/mL)で処理した。細胞数はCell-counting kit-8により比色的に計測した。結果は骨芽細胞の分化度が最も高いSaos-2の増殖活性が最も強くLPSにより阻害され、MSC-BMの感度は低いものであった。しかし、これはそれぞれの細胞の有するdoubling timeによる差が影響している可能性も大きいと思われるため、更なる検討が必要である。
KAKENHI-PROJECT-17K11799
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インプラント周囲炎の治療予後に影響を与える組織特異的幹細胞傷害の可能性を探る
2)フローサイトメーターによるToll-like receptor-4 (TLR4)の発現度評価:LPS-PGに対する特異的受容体として知られているTLR4の発現程度を各細胞種ごとに解析した。その結果、MG63とNHostとMSC-BMはわずかな発現しか認められなかった。Saos-2に関しては、15-30%程度の細胞にTLR4の発現が認められるという結果になった。3)TLR4陽性細胞のクローニング:細胞増殖とTLR4受容体の発現の相関関係を検証するために、MG63細胞からTLR4陽性細胞をクローニングする試みを行った。150以上のクローン化細胞についてフローサイトメーターによる解析を行ったが、クローニング直後に比較的高い陽性率を示した細胞集団についても継代を重ねると親細胞とほとんど変わらないレベルに減少するという結果になった。P. gingivalisのLPSが骨芽細胞や間葉系幹細胞に対して増殖抑制的に作用することは予想通りの結果であった。次年度の進展にとって基盤的データとなった。しかしその反面、年度末に参加した学会において、E. coliのLPSが増殖促進的に作用するという報告に接し、比較検討の必要を感じた。LPSの受容体と言われるTLR4の発現について、上記の細胞種について検討し、高発現しているクローンを釣り上げるという計画を立て実施したものの、TLR4の発現は安定していないようで、得たクローンのTLR4陽性細胞の割合は継代ごとに減少したため、LPS-TLR4のシグナル伝達系の役割を明確にする実験は実施できなかった。ただし、文献的には、LPSの細胞増殖等に及ぼす影響はTLR4を介さずに、同定されていない機能的LPS受容体を介するという報告もあるため、われわれのデータが間違っているわけではないと思われる。今後は、TLR4に限定せずに、LPSの生物学的効果を検討していくことで挽回できると思われる。未分化の間葉系幹細胞においても成熟した骨芽細胞においてもLPSの受容体であるTLR-4の発現は低く、LPSによる増殖阻害も20%程度であった。この結果は仮説と解離したので検証実験を行ったところ同様の結果を得た。培養系において、LPSと複合体を形成する可溶性LPB (LPS-binding protein)と可溶性CD14の不足と考えた。LPBとCD14を培養系に添加してLPSによる増殖阻害効果を検討した。効果が顕著になる傾向も認めたが再現性に乏しく、培地の成分を検討して最適な実験条件を確立する。一方、インプラント周囲炎の病因は、インプラント表面へのバイオフィルムの形成とLPSの吸着にある。表面が滑沢な純チタン板と表面に微細構造を付与した純チタン板を材料として、これらに対する各種接着タンパクの吸着性を検討した。接着タンパクはfibronectin (FN), fibrinogen (FGN), von Willebrand factor (vWF), vitronectin (VN)とし、対照としてアルブミン(Alb)として検討した。
KAKENHI-PROJECT-17K11799
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マウス片側精巣外傷後に誘導される反対側精巣のリンパ球浸潤と造精障害の解析
片側精巣外傷モデルにおける反対側精巣炎は、C3H/He,A/Jマウスとも、精巣細胞の反復皮下注射によって誘導される自己免疫性精巣炎に比べ、明らかに発症率が低く、炎症の程度も弱いことが組織学的観察でわかった。しかし、精巣外傷の2日前にサイクロフォスファマイドを投与すると、外傷後40日において、精巣抗原に対する遅延型反応・液性免疫とも、コントロール群に比して増強し、反対側精巣炎が激しく起こった。このことは正常下においては、精巣細胞抗原に対する自己免疫応答は抑制されているが、免疫抑制剤であるサイクロフォスファマイド前処置により、精巣抗原に対する免疫抑制が逆に外れてしまったことを示唆している。また、同じ外傷処置をしているにも関わらず、激しい精巣炎を起こすマウスと精巣炎が全く発症しないマウスとに二分され、軽度精巣炎が起こりにくい傾向にあった。その理由として疾患発症(=精巣へのリンパ球浸潤)にいたる過程では抵抗性があるものの、一度精巣へのリンパ球の浸潤と精子形成障害が発症すると、その後の精巣内の炎症を抑制する機構が働きにくい組織環境であることが考えられる。精巣細胞の反復注射による自己免疫精巣炎はC3H/He,A/Jマウスとも高率に発症したが、この精巣外傷モデルにおける疾患感受性はA/JマウスのほうがC3H/Heよりも高かった。今後は感受性の高いA/Jマウスにおいて、この外傷性精巣炎モデルの解析を進めていく予定である。外傷を受けた片側精巣と反対側精巣の両者の形態変化の場をヘマトキシリン-エオジン染色にて経時的に観察するとリンパ球浸潤は外傷側精巣にはほとんど見られないことがわかった。外傷側の精細管は消失し成熟ライデッヒ細胞も認められず、カルシウム沈着と線維芽様細胞の増殖で占められ精子肉芽腫の発症もなかった。それに比し反対側精巣は外傷処置後4週以降に軽度リンパ球浸潤が直精細管周囲に認められた。しかし浸潤程度は精巣細胞感作の精巣炎モデルよりも遥かに軽度であり、組織像はリンパ球浸潤よりも精子形成障害のほうが顕著であることがわかった。免疫組織学的に浸潤白血球の分画を調べるとCD4T細胞、CD8T細胞、B細胞、マクロファージなどが混在していることがわかった。また免疫組織学的に炎症細胞から分泌されているサイトカインを調べるとIFN-rが陽性であることがわかった。血清テストステロンは特にコントロール群と比べて有意に低下はしていないので反射側精巣のライデッヒ細胞は障害をうけておらず寧ろ外傷側で消失したライデッヒ細胞機能を代償していることが推察された。今後は反射側精巣へのリンパ球浸潤と造精障害が自己免疫性のものかどうか調べるために精巣に外傷を受けたマウスのリンパ節細胞および脾細胞を健常マウスに全身または局所投与しレシピエント精巣の組織反応を観察する予定である。片側精巣外傷モデルにおける反対側精巣炎は、C3H/He,A/Jマウスとも、精巣細胞の反復皮下注射によって誘導される自己免疫性精巣炎に比べ、明らかに発症率が低く、炎症の程度も弱いことが組織学的観察でわかった。しかし、精巣外傷の2日前にサイクロフォスファマイドを投与すると、外傷後40日において、精巣抗原に対する遅延型反応・液性免疫とも、コントロール群に比して増強し、反対側精巣炎が激しく起こった。このことは正常下においては、精巣細胞抗原に対する自己免疫応答は抑制されているが、免疫抑制剤であるサイクロフォスファマイド前処置により、精巣抗原に対する免疫抑制が逆に外れてしまったことを示唆している。また、同じ外傷処置をしているにも関わらず、激しい精巣炎を起こすマウスと精巣炎が全く発症しないマウスとに二分され、軽度精巣炎が起こりにくい傾向にあった。その理由として疾患発症(=精巣へのリンパ球浸潤)にいたる過程では抵抗性があるものの、一度精巣へのリンパ球の浸潤と精子形成障害が発症すると、その後の精巣内の炎症を抑制する機構が働きにくい組織環境であることが考えられる。精巣細胞の反復注射による自己免疫精巣炎はC3H/He,A/Jマウスとも高率に発症したが、この精巣外傷モデルにおける疾患感受性はA/JマウスのほうがC3H/Heよりも高かった。今後は感受性の高いA/Jマウスにおいて、この外傷性精巣炎モデルの解析を進めていく予定である。
KAKENHI-PROJECT-11770893
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自己組織化ナノチューブハイドロゲルによるバイオ分離デバイス創出
室温下、pHに応答して形成可能な自己組織化ナノチューブハイドロゲルの開発に成功した。ナノチューブ同士が形成する三次元網目構造のナノ・マイクロ空間、ナノチューブ自身の一次元中空シリンダー(ナノチャネル)といった2つの独立した空間を有するナノチューブハイドロゲルをキャピラリー内に充填し、バイオ高分子の電気泳動分離を行った。イメージング技術を駆使し、内径約8nmのナノチャネルがDNAの高効率分離場として機能することを実証した。室温下、pHに応答して形成可能な自己組織化ナノチューブハイドロゲルの開発に成功した。ナノチューブ同士が形成する三次元網目構造のナノ・マイクロ空間、ナノチューブ自身の一次元中空シリンダー(ナノチャネル)といった2つの独立した空間を有するナノチューブハイドロゲルをキャピラリー内に充填し、バイオ高分子の電気泳動分離を行った。イメージング技術を駆使し、内径約8nmのナノチャネルがDNAの高効率分離場として機能することを実証した。自己組織化ナノチューブハイドロゲルのライブラリ構築を行った。疎水部メチレン鎖の両端に親水部としてグルコースとオリゴグリシンを有する非対称くさび形脂質群を設計・合成し、水中における自己集合挙動及びゲル化能を詳細に検討した。メチレン鎖の長さ、グリシン残基数の違いが自己集合形態に大きな影響を及ぼすことを見出した。グリシン残基の末端がカルボキシル基の場合、脂質分子(0.1wt%)を水中で100°Cに加熱溶解後、室温まで徐冷すると水媒体がゲル化することが分かった。各種電子顕微鏡観察、粉末X線回折やIR等の分光化学的測定により、ハイドロゲル内では内径10nm以下、長さが数μ数十μmに及ぶ単分子膜ナノチューブが形成していることが明らかとなった。また、グリシン残基の末端がアミンの場合、脂質分子(0.1wt%)を弱酸性水媒体に分散させ、水酸化ナトリウムの添加により弱アルカリにするだけで、水媒体が瞬時にゲル化することが分かった。室温下、pH変化を駆動力とするナノチューブハイドロゲル形成に世界で初めて成功した。また、アゾベンゼンを連結した脂質分子群が光照射によるアゾベンゼン部位のトランスーシス構造異性化によりナノチューブを形成することが明らかとなり、光刺激応答性ナノチューブの開発にも成功した。ナノチューブハイドロゲルには、ナノファイーバーから成る従来の高分子架橋ハイドロゲルや超分子ハイドロゲルが持ち得ない2つの空間、即ちナノチューブ同士が形成する3次元網目空間とナノチューブ自身の1次元中空シリンダーが存在することを実証した。実際、両空間に生体高分子を固定化し、変性剤に対する耐性を検討したところ、網目空間に固定化した生体高分子は瞬時に変性が生じたのに対し、中空シリンダーに固定化した生体高分子は内径サイズに依存して変性が強く抑制されていることが分かった。両空間の生体高分子の束縛度の違いを反映した結果であり、分離の選択性に大きな影響を及ぼすことが示唆された。エチレンジアミンの両端にオリゴグリシンとアゾベンゼンをそれぞれアミド結合を介して連結した両親媒性モノマー分子群を設計・合成し、水中において自己集合させたところ、内径10-20nmの固体状二分子膜構造からナノチューブ群を形成することが明らかとなった。得られたナノチューブに紫外光を照射すると、固体状態にも関わらず二分子膜内でアゾベンゼン部位がトランスーシス構造異性化を起こし、それに伴いナノチューブが内径数nm以下のシリンダー状ナノファイバーへと形態変化することを見出した。さらに可視光を照射すると、アゾベンゼン部位の可逆的なシスートランス構造異性化に伴い、シリンダー状ナノファイバーが中空構造を持たないヘリカルナノテープへと形態変化することが分かった。これにより、ナノチューブの中空シリンダーに包接したゲスト分子を光照射によってバルク水中へと放出可能であることも明らかとなった。平成21年度に開発したpH駆動型ナノチューブハイドロゲル化剤(=カチオン性非対称双頭型脂質分子モノマー)とゲスト分子として塩基性アミノ酸を包接した上記の光刺激応答性ナノチューブをキャピラリー内に充填した。検出窓から紫外光続いて可視光を照射し、光刺激応答性ナノチューブの形態変化により放出した塩基性アミノ酸がカチオン性非対称双頭型脂質分子モノマーを中和することで、キャピラリー内でナノチューブハイドロゲルを形成させることに成功した。ナノチューブハイドロゲルを実装したキャピラリーを用いて、DNAの電気泳動分離を試みたが、分離の再現性が得られなかった。ナノチューブ同士が形成する3次元網目空間のサイズの不均一性及びハイドロゲルの収縮・相分離が原因であることが推定された。そこで、ナノチューブの1次元中空シリンダー(ナノチャネル)におけるDNAの泳動について、蛍光顕微鏡観察と蛍光共鳴エネルギー移動を組み合わせた手法を用いて詳細に検討した。ナノチャネルにおけるDNAの拡散係数の値が、塩基数に依存することが明らかとなり、ナノチューブ1本によるDNAの分離デバイス創出の可能性を新たに提示することが出来た。
KAKENHI-PROJECT-21710117
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細管式等速電気泳動用走査型UV検出装置の製作と分離過程の解析への応用
等速電気泳動法では分離ゾ-ンのpHやイオン強度が成分毎に異なるため、細管式ゾ-ン電気泳動法などに較べると分離条件の最適化が難しいといわれている。筆者は等速電気泳動法の分離過程及び定常状態をシミュレ-トするソフトウエアを開発し、多くの試料についてその妥当性について検討し、コンピュ-タ-支援による分離条件最適化を試みている。分離条件最適化にあたってはまず分離過程と分離時間に影響を与える因子について詳しく検討する必要がある。過去3成分系までの分離挙動を明らかにし、2および3成分系については5%以下の誤差で分離時間の実測値と理論値が一致する事がわかっている。一般にn成分の場合についても同様な解析法を確立する必要があるが、成分数が増加するにつれ分離に必要な細管の長さが増加するため、当面の課題としてより長い細管中で分離過程を追跡する装置が必要であった。今回の補助により、従来の倍に当たる細管長32cmに渡って分離過程を追跡する走査型等速電泳動装置を製作する事ができた。本装置は紫外光源および検出器を一体としてパルスモ-タ-駆動のリニアヘッドに装着し細管を走査し、分離過程のUVスペクトルを測定するものである。本装置作製にあたり、必要な部品およびデ-タ取り込みと制御に使用するマイクロコンピュ-タ等を購入した(別紙)。また製作した装置を使用して4成分系試料の分離過程を測定し理論値と比較検討したところ、筆者らの開発したMSPRモデルが4成分系においても非常によく実測結果にフィットする事が明らかになった。また分離時間に影響を与える因子のうち組成比や成分数の影響について明確な結論を得ることができた。等速電気泳動法では分離ゾ-ンのpHやイオン強度が成分毎に異なるため、細管式ゾ-ン電気泳動法などに較べると分離条件の最適化が難しいといわれている。筆者は等速電気泳動法の分離過程及び定常状態をシミュレ-トするソフトウエアを開発し、多くの試料についてその妥当性について検討し、コンピュ-タ-支援による分離条件最適化を試みている。分離条件最適化にあたってはまず分離過程と分離時間に影響を与える因子について詳しく検討する必要がある。過去3成分系までの分離挙動を明らかにし、2および3成分系については5%以下の誤差で分離時間の実測値と理論値が一致する事がわかっている。一般にn成分の場合についても同様な解析法を確立する必要があるが、成分数が増加するにつれ分離に必要な細管の長さが増加するため、当面の課題としてより長い細管中で分離過程を追跡する装置が必要であった。今回の補助により、従来の倍に当たる細管長32cmに渡って分離過程を追跡する走査型等速電泳動装置を製作する事ができた。本装置は紫外光源および検出器を一体としてパルスモ-タ-駆動のリニアヘッドに装着し細管を走査し、分離過程のUVスペクトルを測定するものである。本装置作製にあたり、必要な部品およびデ-タ取り込みと制御に使用するマイクロコンピュ-タ等を購入した(別紙)。また製作した装置を使用して4成分系試料の分離過程を測定し理論値と比較検討したところ、筆者らの開発したMSPRモデルが4成分系においても非常によく実測結果にフィットする事が明らかになった。また分離時間に影響を与える因子のうち組成比や成分数の影響について明確な結論を得ることができた。
KAKENHI-PROJECT-01540482
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MOS型リアルタイム医用検出装置の研究
MOS型リアルタイム医用検出装置画像読み出し速度の向上とノイズの低減を図る研究を行った。C-MOSチャージアンプには、各チャージアンプのアンプノイズを減らす目的でCollerated double sampling circuitを、各アンプ間のばらつきによる固定パターンノイズを減らす目的でOffset variance compensation circuitを設けた。露光後の素子の出力波形から、立ち上がり時間、立ち下がり時間はそれぞれ400nsec,600nsecであり、フレームレートとしては約15フレーム/秒となった。400μm厚のヨウ化セシウムシンチレータを3mm厚の光ファイバープレートを介して、フォトダイオードアレイ受光面にコーティングしてX線用2次元検出器を試作し、特性評価を行った。画像解像度は設計通り、2.5lp/mmの分解能を得た。ノイズレベルは約1.5mV rmsで、飽和電圧は1.8V、ダイナミックレンジは1200:1であった。積分時間・出力信号電圧特性では、積分時間が0.16秒以下で歪みがみられる以外ではほぼ直線性が認められた。照射線量・出力信号電圧特性では、約3桁の直線性が示された。管電圧60kV、管電流5mA、フレームレート2/秒での手指の画像はFCRと比較して遜色ない画質であった。金属性プロペラをチョッピングモータで回転させ、ディテクタを様々な状態で動作させて、動画に関する特性を評価した。15フレーム/秒以上の読み出し速度では、残像が観察された。単位検出器を組み合わせて大面積化を図る研究を行った。単位検出器を直接密着させる方法により試作装置を完成した。単位検出器の受光面をウェハの角に位置させるように回路設計に変更を加え、4つの検出器の受光面を密着させることで、10cm×10cmの受光面を作成した。デッドスペースに関しては、ソフトウェア的に処理することとした。受光面の後方に回路部分をまとめることで,無数の単位検出器を密着させることが可能となる。MOS型リアルタイム医用検出装置画像読み出し速度の向上とノイズの低減を図る研究を行った。C-MOSチャージアンプには、各チャージアンプのアンプノイズを減らす目的でCollerated double sampling circuitを、各アンプ間のばらつきによる固定パターンノイズを減らす目的でOffset variance compensation circuitを設けた。露光後の素子の出力波形から、立ち上がり時間、立ち下がり時間はそれぞれ400nsec,600nsecであり、フレームレートとしては約15フレーム/秒となった。400μm厚のヨウ化セシウムシンチレータを3mm厚の光ファイバープレートを介して、フォトダイオードアレイ受光面にコーティングしてX線用2次元検出器を試作し、特性評価を行った。画像解像度は設計通り、2.5lp/mmの分解能を得た。ノイズレベルは約1.5mV rmsで、飽和電圧は1.8V、ダイナミックレンジは1200:1であった。積分時間・出力信号電圧特性では、積分時間が0.16秒以下で歪みがみられる以外ではほぼ直線性が認められた。照射線量・出力信号電圧特性では、約3桁の直線性が示された。管電圧60kV、管電流5mA、フレームレート2/秒での手指の画像はFCRと比較して遜色ない画質であった。金属性プロペラをチョッピングモータで回転させ、ディテクタを様々な状態で動作させて、動画に関する特性を評価した。15フレーム/秒以上の読み出し速度では、残像が観察された。単位検出器を組み合わせて大面積化を図る研究を行った。単位検出器を直接密着させる方法により試作装置を完成した。単位検出器の受光面をウェハの角に位置させるように回路設計に変更を加え、4つの検出器の受光面を密着させることで、10cm×10cmの受光面を作成した。デッドスペースに関しては、ソフトウェア的に処理することとした。受光面の後方に回路部分をまとめることで,無数の単位検出器を密着させることが可能となる。5cm×5cmの単位センサの試作に成功した。これはC-MOSフォトダイオードチップ,C-MOSチャージアンプおよびC-MOS垂直シフトレジスタ部,C-MOS水平シフトレジスタ部の3種類のチップからなる。受光面のC-MOSフォトダイオードチップは200ミクロン平方のシリコンダイオード素子をウエハ-ス上に微細加工技術により256×256個配列したものである。画像の読みだしは水平,垂直のC-MOSシフトレジスタによって、水平、垂直方向のスイッチを開閉することによって、各素子の電荷をビデオラインに流して行く。この際、水平方向のビデオラインの一本毎にアンプ(C-MOSチャージアンプ)を設けることでノイズの低減を図った。水平方向の走査一回毎に、垂直方向一列の各フォトダイオード中の電荷がチャージアンプに読み込まれ、この積算された電荷を順次スキャンして出力する。読み出し速度は現状では4フレーム/秒,飽和電荷に対するノイズ値は1/5000である。消費電力を低減するため,すべてを5V単一駆動とした。画像処理用の簡易プログラムを作成し、パーソナルコンピュータ上でリアルタイム表示を可能にした。紙シンチレータをファイバープレートを介して密着させ,70KVX線を用いて撮像した結果、良好なリアルタイム画質が得られた。光子検出率約70%であった。空間分解能用チャートを撮影した結果、センサのフォトダイオードピッチである200μの理論限界値である2.5本/mmを問題なく達成した。また、厚さ1cmのアクリル製バーガーファントム内の直径0.8mm、深さ0.5mmの穴を分解することができた。
KAKENHI-PROJECT-07457196
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MOS型リアルタイム医用検出装置の研究
これは同時に計測した空間分解能200μのCR用イメージングプレートに比較して優れていた。本年度は主として、画像読み出し速度の向上とノイズの低減を図る研究を行った。CMOSチャージアンプには、各チャージアンプのアンプノイズを減らす目的でCollerated double sampling circuitを、各アンプ間のばらつきによる固定パターンノイズを減らす目的でOffset variance compensation circuitを設けた。露光後の素子の出力波形から、立ち上がり時間、立ち下がり時間はそれぞれ400nsec,600nsecであり、読み出し速度は素子あたり約1μ秒となった。256×256個の素子に対しては0.066秒を要し、垂直シフトレジスタのスキャン速度としては1MHz、フレームレートとしては約15フレーム/秒となった。400μm厚のヨウ化セシウムシンチレータを3mm厚の光ファイバープレートを介して、フォトダイオードアレイ受光面にコーティングしてX線用2次元検出器を試作し、特性評価を行った。シンチレータ変換効率は500光子/X線光子、開口率は約60%、フォトダイオード変換効率は約50%であった。画像解像度は設計通り、2.51p/mmの分解能を得た。ノイズレベルは約1.5mVrmsで、飽和電圧は1.8V、ダイナミックレンジは1200:1であった。管電圧60kV、管電流5mA、フレームレート2/秒での手指の画像はFCRと比較して遜色ない画質であった。X線管電圧60kVp、X線管電流0.5mA、フレームレート15フレーム/sec、ディテクタ面線量率2.5mR/secで十分な画質が得られたが、透視レベルの線量率ではノイズレベル以下の信号しか得られなかった。今後感度を2桁向上させる必要がある。また、大面積化についても、来年度の研究に備え、フレキケーブルやバンフを用いる方法などの予備的検討を行った。5cm×5cmの単位検出器の、静止画像における画質評価、動画像の読み出し速度評価を行った。積分時間・出力信号電圧特性では、積分時間が0.16秒以下で歪みがみられる以外ではほぼ直線性が認められた。照射線量・出力信号電圧特性では、約3桁の直線性が示された。Darkノイズ特性では、概ね積分時間に相閑してRMS値が上昇しており、設計より高いノイズ値が観察された。空間分解能に関しては、照射X線強度に関わらず、画素サイズから得られる理論値通りの結果を得た。動画に関する以下の評価系を作成した。X線線源の照射口とディテクタ受光面との間に、金属性プロペラをとりつけたチョッピングモータを設置し、このプロペラを回転させた状態で、ディテクタを様々な状態で動作させる。出力されたアナログ信号をA/D変換してパソコン上に表示し、スキャンコンバータを用いてNTSC信号変換後、ビデオテープに録画した。X線撮影を行いながら、回転数速度を上げていくと、15フレーム/秒以上の読み出し速度では、残像が観察された。
KAKENHI-PROJECT-07457196
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07457196
心臓ネットワーク数理モデルの構築と分岐解析による交互脈の制御
本研究では,心臓の数理モデルを用いて交互脈の発生メカニズムを解明した.心室筋はペースメーカ細胞からの信号により動いているが,本研究では(1)ペースメーカ細胞が信号を作る場合,(2)心室筋細胞へ正常な信号が入力されたと仮定した場合,の2つについて調査した.結果として,カリウム・イオンの細胞内外への通りやすさの異常により交互脈が発生し,更なる変化で心停止へと至ることが分かった.本年度は下記の2点に焦点を絞り,研究を行った.1.数理モデルの作成とその解析甲殻類の心臓数理モデルにおいて,小細胞(small cell)と大細胞(large cell)間で作り出され,心筋細胞へ入力される自励振動のリズムについて研究を行った.細胞体と樹状突起を分けた2コンパートメントモデルを作成し,電気シナプス及び化学シナプスモデルを用いて2つの細胞を結合した数理モデルを用いた.文献で示された波形では実験結果とずれが生じていたので,研究協力者の助言を基にパラメータ値の調整を行い,正常なパラメータ値(各種イオン電流のコンダクタンス値)において実験に近い波形を出すことに成功した.そこから,イオンチャネル病などの疾病によりイオン電流の流入に異常が生じた場合を想定して,それらのコンダクタンス値を変化させた場合の出力(大細胞の樹状突起部の膜電位)を計算した.結果として,小細胞の細胞体のカリウムイオンのコンダクタンス値が下がることにより,交互脈が発生することがわかった.更にコンダクタンス値が下がると,バースト発火数が減少しやがては脈が1回跳ぶ現象が発生し,心臓にとって好ましくない状況が発生することを明らかにした.2.交互脈の抑制昨年と今年の数理心臓モデルの解析により,イオン電流の流入の異常が発生すると交互脈が起こることを明らかにした.そこで,パラメータ値の制御によりこの交互脈を抑制する手法を提案した.具体的には,交互脈は力学系における周期倍分岐に対応するので,安定性に関する評価関数を構築し,その関数値が大きくなると制御が入り,自動的にパラメータを調整し,交互脈の発生(周期解の周期倍分岐による不安定化)を防ぐことに成功した.本年度は下記の2点に焦点を絞り,研究を行った.1.心筋数理モデルの解析ラットの心臓数理モデルであるLuo-Rudyモデルを用いて,細胞外カリウムイオン濃度が上昇し,時間非依存カリウムイオン電流の平衡電位が高くなれば交互脈が発生することを初年度に明らかにした.本年度は更に詳しい解析を行った.結果として,時間非依存カリウムイオン電流の平衡電位が与える影響の中で,特に時間非依存カリウム電流の不活性ゲートが重要であることを明らかにした.更には,6種類の各種イオン電流の変化と細胞の膜電位の変化は相互に影響を与え合うので,1種類のイオン電流のみが膜電位に影響を与えると仮定し,それらの組合せを詳細に調べた.結果として,時間依存・時間非依存カリウム電流と膜電位の影響のみで交互脈が発生することを明らかにした.2.リズム発生器の解析甲殻類の心臓数理モデルを用いて,心筋細胞に送られるリズムの発生について解析を行った.昨年度に小細胞の細胞体のカリウムイオンのコンダクタンス値が下がることにより,交互脈が発生することを明らかにした.しかし,交互脈から心停止に至る現象をモデルで再現できていなかった.本年度は,電気シナプスモデルとして,更に詳細なモデルを使用することにより,小細胞の細胞体のカリウムイオンのコンダクタンス値が下がることのみで正常脈から交互脈を経て心停止へと至る現象を再現することができた.1.は心筋細胞へ正常なリズム信号が入力されたシステム,2.はリズムを作り出すシステムの解析結果である.いずれの場合もカリウムイオンに関するパラメータが交互脈の発生に寄与していることがわかった.イオンチャネル病などで異常が生じた場合には,特にカリウムイオンに注目することにより,重篤な状態となることを未然に防ぐことが可能であることが数理モデルを用いた結果より分かる.本研究では,心臓の数理モデルを用いて交互脈の発生メカニズムを解明した.心室筋はペースメーカ細胞からの信号により動いているが,本研究では(1)ペースメーカ細胞が信号を作る場合,(2)心室筋細胞へ正常な信号が入力されたと仮定した場合,の2つについて調査した.結果として,カリウム・イオンの細胞内外への通りやすさの異常により交互脈が発生し,更なる変化で心停止へと至ることが分かった.本年度は下記の2点に焦点を絞り,研究を行った.1.数理モデルの作成とその解析ペースメーカ細胞から刺激電流が流れて心筋細胞へ伝わる部分のモデル化を行った.心筋細胞モデルとしては従来型のLuo-Rudyモデルを使用したが,細胞の膜電位の値によって系が切り替わるハイブリッド系(不連続系)での記述となっていた.数値計算,特に分岐解析を行う場合は,ハイブリッド系は非常に煩雑な計算が必要となるために,シグモイド関数を用いて連続系への変換を行った.各種パラメータ平面で観測される現象が元の不連続系と提案した連続系で変化がないことを確認し,変換がうまくいったことを示した.その修正した式を用いて解析を行った結果,細胞外カリウムイオン濃度が上がると交互脈が起こることがわかった.これらの結果は,ペースメーカ細胞からの電流が正常であっても,心筋細胞の細胞外カリウムイオン濃度が高まると交互脈が起こることを示している.2.解析の高速化
KAKENHI-PROJECT-23500367
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23500367
心臓ネットワーク数理モデルの構築と分岐解析による交互脈の制御
GPU(Graphics Processing Unit)を用いて分岐解析用のプログラム(簡略版)を開発した.従来のCPUを用いて並列化を行った場合よりも約50倍の高速化を実現できた.解析結果も正しいことを確認した.更にはFPGA(Filed Programmable Gate Array:書き換え可能なLSI)を用いた高速化にもチャレンジし,簡単なシステムの解析を行い,CPUよりも約100倍の高速化が得られることを確認した.これらの結果を,分岐解析アルゴリズムに適用することにより,詳細な解析を高速で行うことが可能となる.それらは心臓数理モデルに限らずに,数理モデル一般に適用することが可能であり,モデル解析の高速化が可能となる.本年度は下記の2点に焦点を絞り,研究を行った.1.交互脈の抑制交互脈は周期倍分岐により発生することが知られている.本年度は,Dobsonらによって提案されたclosest bifurcationの概念を基に,分岐による解の不安定化を制御するために新たなアルゴリズムを開発した.具体的には分岐集合に沿ってベクトル場を形成し,安定なパラメータ領域内のある点から出発し,分岐に当たった点における法線ベクトルを求める.次に,始めのパラメータ値からその法線ベクトル方向に変化させて同様の処理を繰り返すことにより,最も近い分岐点が求まる(closest bifurcationという).動作パラメータ値から最も近い分岐点の方向とは逆方向にパラメータを動かすことにより,分岐から最も遠いパラメータ値を求めることが可能となる.提案手法を心筋細胞モデルに適用し,交互脈の発生点からパラメータ値を遠ざけることに成功した.2.FPGAを用いた解析の高速化初年度において,簡単な数理モデルに対してFPGA上に分岐解析ツールの構築を行った.本年度は,複雑な数式で記述される神経細胞モデルのシミュレータをFPGA上に構築した.ルックアップテーブルの作成や,ハードウェア用の数値解析アルゴリズムを実装した.結果としてCPUよりも高速に演算できる専用シミュレータの開発に成功した.更に,心臓の刺激伝導系モデルのシミュレータをFPGA上に作成し,並列処理を行うことによりCPUよりも約20倍の高速化を達成できた.システム工学心筋細胞に人工的なシナプス電流を入力した数理モデルの解析を通して,死の予兆と言われている交互脈の発生要因の一つとして「細胞外カリウムイオン濃度の上昇」を平成23年度に特定した.これらの解析では,心筋細胞への入力が一定であるという仮定であったが,平成24年度は小細胞と大細胞間のネットワークにより心筋細胞へ入力されるリズムの変化を考察した.結果として,「細胞外カリウムイオン濃度の下降」が,交互脈を生ずることを明らかにした.すなわち細胞外のカリウム濃度は上昇しても下降しても異なるメカニズムで交互脈が発生する可能性があることが分かった.数値計算の高速化では,FPGAを用いた簡略化分岐解析プログラムを作成し,ソフトウェアを用いた並列処理よりも約30倍の高速化を実現できた.
KAKENHI-PROJECT-23500367
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海水の溶存炭酸許容過飽和度の測定
石灰石(CaCO_3)の海水への溶解は、海水のpHを変えることなく二酸化炭素(CO_2)の海水への吸収量を増大させうる。しかし、表面海水がCaCO_3に関して過飽和であるため表面海水にCaCO_3が溶解するはずがないと、今日まで考えられてきた。しかし、CaCO_3に関して表面海水が過飽和であるのは、CaCO_3の表面海水への溶解の結果であるという、今までの考え方とは全く逆の発想から本研究を実施した。東北中国地方の各地点で、表面海水の溶存炭酸過飽和度の測定を行い、朝ー昼ー夕ー夜の日変化および夏ー秋ー冬の季節変化の様子を観測した。その結果、海水の溶存炭酸過飽和度の変化は大変大きく、海水の溶存炭酸許容過飽和度がなお一層高いことが明らかになった。次に、室内実験においてCaCO_3に関して過飽和である表面海水がさらにCaCO_3を溶解しうることを確認し、海水の溶存炭酸過許容飽和度の測定を実施した。その結果、大気CO_2濃度が高いほど、海水の溶存炭酸過許容飽和度が高いことも分かった。それゆえ、CaCO_3の海水への溶解に伴う大気CO_2の海水への吸収が全く考慮されてこなかった、大気CO_2濃度に関する各国の政府機関や研究者の将来予測においては大きく見積もり過ぎている可能性が大きく、「Problem of missing sink」と呼ばれるCO_2の吸収源問題の解明においても海洋が担っている可能性が大きくなってきた。石灰石(CaCO_3)の海水への溶解は、海水のpHを変えることなく二酸化炭素(CO_2)の海水への吸収量を増大させうる。しかし、表面海水がCaCO_3に関して過飽和であるため表面海水にCaCO_3が溶解するはずがないと、今日まで考えられてきた。しかし、CaCO_3に関して表面海水が過飽和であるのは、CaCO_3の表面海水への溶解の結果であるという、今までの考え方とは全く逆の発想から本研究を実施した。東北中国地方の各地点で、表面海水の溶存炭酸過飽和度の測定を行い、朝ー昼ー夕ー夜の日変化および夏ー秋ー冬の季節変化の様子を観測した。その結果、海水の溶存炭酸過飽和度の変化は大変大きく、海水の溶存炭酸許容過飽和度がなお一層高いことが明らかになった。次に、室内実験においてCaCO_3に関して過飽和である表面海水がさらにCaCO_3を溶解しうることを確認し、海水の溶存炭酸過許容飽和度の測定を実施した。その結果、大気CO_2濃度が高いほど、海水の溶存炭酸過許容飽和度が高いことも分かった。それゆえ、CaCO_3の海水への溶解に伴う大気CO_2の海水への吸収が全く考慮されてこなかった、大気CO_2濃度に関する各国の政府機関や研究者の将来予測においては大きく見積もり過ぎている可能性が大きく、「Problem of missing sink」と呼ばれるCO_2の吸収源問題の解明においても海洋が担っている可能性が大きくなってきた。
KAKENHI-PROJECT-02804045
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02804045
オープンスペースとしての都市内境内空間の形態的特徴と緑化・防災への貢献
大都市の市街地に分布する寺社境内を対象として空間データを整備し,その数密度や面積,敷地形状の複雑性,接道状況からみた開放性,分布パターン,住民からの最近隣距離,緑量,建物配置からみた有効空地の集約性,周辺建物からの延焼の危険性といった様々な形態的特徴を分析し,寺院と神社,公園との形態特性の差異を明らかにするとともに,小規模なオープンスペースとして都市緑化・防災問題への貢献の可能性について考察する。大都市の市街地に分布する寺社境内を対象として空間データを整備し,その数密度や面積,敷地形状の複雑性,接道状況からみた開放性,分布パターン,住民からの最近隣距離,緑量,建物配置からみた有効空地の集約性,周辺建物からの延焼の危険性といった様々な形態的特徴を分析し,寺院と神社,公園との形態特性の差異を明らかにするとともに,小規模なオープンスペースとして都市緑化・防災問題への貢献の可能性について考察する。本年度は,大都市における寺社境内の現況を計量的側面から把握するために,大阪市と名古屋市における境内敷地のデータベースを構築した。データ作成に際しては,既存の地図データを基にして,CAD上で手作業により境内敷地のポリゴンを入力した。また,大阪市については,東京都23区における寺社境内に関する既存データと比較するために,人口データと公園ポリゴンのデータも併せて整備した。寺院と神社,および東京都23区・大阪市・名古屋市の3都市間での比較解析の結果,以下ような知見が得られた。1.分布密度を比較すると,いずれの都市においても,寺院は神社より数密度が2倍程度高く,境内の総面積も大きい。2.ポリゴンの重心の位置をもとに,寺社境内の分布パターン(凝集型・ランダム型・均等型)を「最近隣指標(R指標)」によって判定すると,いずれの都市においても,寺院は凝集型の配置であり,神社は比較的ランダム型に近い配置である。3.境内の敷地形状の複雑性を計測する指標として,面積と周長の二乗比で表される「形態係数」を用いると,寺院と神社の敷地形状の複雑性には大きな差異はみられない。4.接道率(敷地の周長のうち街路に接している長さの割合)を計量すると,3都市すべてにおいて,寺院は神社よりも接道率が低く,寺院境内は街路に対して閉鎖的で,神社境内はより開放的な空間であるといえる。5.大阪市についてみると,敷地面積が1,000m^2以下の寺社境内は,同面積の公園の2倍以上存在し,都市空間に対して小規模な空地を数多く提供している。また,住民からの最近隣距離の平均値は,公園と寺社境内を合わせると132mであり,公園単独の場合よりも33%程度低減し,身近な防災空地として活用の可能性がある。本研究は,大都市の市街地に分布している寺社境内に焦点を当て,その分布特性と敷地形状や建物配置の形態的特性を抽出し,民間空地としての境内を今後の緑地・防災計画に資するための基礎的知見を得ることを目的としている。前年度までは,東京23区・大阪市・京都市・名古屋市を対象として境内データの整備と分析を行ってきたが,本年度はこれら4都市に加えて,新たに神戸市における神社境内の敷地・建物・緑地ポリゴンを作成し,5都市間での比較分析を行った。その結果,以下に示すような知見が得られた。(1)数密度を比較すると,いずれの都市においても神社より寺院の方が高い。また,面積比は各都市間でのばらつきはあるが,寺社境内の面積を合計すると,都市面積の概ね1%程度である。(2)寺社境内の分布パターン(凝集型・ランダム型・均等型)を最近隣指標によって判定すると,すべての都市において,寺院よりも神社のほうがランダム型に近い分布パターンを示す。(3)境内の敷地形状の複雑性を把握するために,面積と周長の二乗比で表される形態係数を用いると,5都市間および寺院・神社間では大きな差異はみられない。(4)接道率(敷地の周長のうち街路に接している長さの割合)を比較すると,その平均値は,すべての都市において寺院境内よりも神社境内のほうが高く,街路に対して開放的である。(5)境内がオープンスペースとして機能しうる有効な空地をどれだけ備えているかを把握するために,神戸市のデータを対象に,半径rの円が掃過可能な面積を計量してみると,それぞれの半径における有効空地の面積は,寺院境内よりも神社境内のほうが大きい値を示す。また,緑被率も神社境内のほうが高い傾向にある。以上のように,寺院と神社では都市内分布と境内の形態特性には差異がみられ,定量的には,神社境内のほうが寺院境内よりも都市内空地としての利活用の可能性が高いことが確認できた。本年度は,東京23区・大阪市・京都市・名古屋市における寺社境内の敷地・建物・緑地ポリゴンデータの再整備を図るとともに,神戸市における境内のデータを新たに作成した。これら5都市間で数密度・面積比・分布パターン・形態係数・接道率を指標として形態的特性を分析した結果,以下のような知見が得られた。(2)「数密度および境内面積の総和を比較すると,いずれの都市においても神社より寺院の方が高い。(2)敷地ポリゴンの重心の位置をもとに,寺社境内の分布パターンを「最近隣指標」によって判定すると,5都市すべてにおいて,寺院がより凝集型分布に近く,神社のほうがよりランダム型分布に近い。(3)街路に対する開放性を把握するために,接道率(境内敷地の周長のうち街路に接している長さの割合)の平均を計量すると,すべての都市において寺院境内よりも神社境内のほうが高い。
KAKENHI-PROJECT-20560597
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20560597
オープンスペースとしての都市内境内空間の形態的特徴と緑化・防災への貢献
(4)オープンスペースとしての利活用の可能性を把握するために,境内の敷地形状の複雑性を面積と周長の二乗比で表される「形態係数」によって計量すると,5都市間および寺院・神社間では,大きな差異はみられない。また,特に寺社境内を災害時の一時避難場所として利活用する場合を想定して,「有効空地」を半径rの円が掃過可能な領域と定義し,神戸市における寺社境内の敷地・建物ポリゴンデータを対象として計測した。掃過円の半径rを0.5mから14mに設定して計量すると,有効空地の面積は寺院境内よりも神社境内のほうが大きい。以上の計量結果から,市街地内の神社は寺院よりも数・総面積ともに少ないが,ランダム分布に近いうえに接道率も高く,有効空地の面積も大きい。すなわち,定量的には神社境内のほうが都市生活者に公平かつ開放的で有効な空地を提供できるという意味で,都市内オープンスペースとしての利活用の可能性が高いことが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-20560597
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20560597
アラジン-1を標的とした新規敗血症治療法の開発
敗血症は病原体感染により引き起こされる全身性炎症反応症候群である。敗血症の治療を行う上では病原体の排除を行いつつ過剰な炎症応答を回避するという緻密な制御が必要とされる。自然免疫応答は感染防御の最前線を担い、炎症の誘導に働くことから、自然免疫応答の活性化制御機構を明らかにすることは敗血症の病態の理解と人為的制御法の開発において重要である。アラジンー1は肥満細胞や骨髄系細胞などの自然免疫応答を担う細胞に発現し、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜型受容体であり、細胞内領域に抑制性シグナルを伝達するITIMアミノ酸配列を持つ。アラジンー1は肥満細胞ではIgE受容体やTLR2受容体のシグナル経路を抑制することにより、生体では全身性および局所アナフィラキシーや皮膚炎を抑制するアレルギー抑制分子として働く。アラジンー1がTLR2シグナルを抑制することから、アレルギー応答以外に感染症における役割を明らかにするため、盲腸結紮穿刺法(Ceacum ligation and puncture, CLP)による腹膜炎モデルを検討した。その結果、野生型マウス(WT)がCLP後72時間で全例死亡するのに対し、アラジンー1欠損マウス(KO)では約50%のマウスが生存し、生存率が有意に亢進した。しかし、腹腔中の細菌数に有意差はなく、腹腔に浸潤する好中球および炎症性単球数にも有意差はなく、量的な違いは見出されなかった。しかし、炎症性サイトカインを定量解析したところ、IL-6およびTNFなど炎症性サイトカイン産生はKOの腹腔中で有意に低く、逆に抗炎症性サイトカインであるIL-10産生はKOで有意に亢進していた。以上の結果から、アラジンー1を欠損すると、細菌の排除に影響を与えることなく、炎症のみを抑制することが示唆された。腹膜炎モデルにおいて、アラジン1が欠損すると細菌の排除に影響与えることなく、抗炎症性サイトカイン産生の亢進、さらに炎症性サイトカイン産生の低下が観察された。この結果から、アラジンー1の機能を阻害抗体など用いて人為的に阻害することで、細菌排除に影響を与えることなく、抗炎症反応を亢進して炎症反応を抑制して敗血症の病態を改善できる可能性が示唆された。今後はIL-10産生の亢進が病態に関与するかを抗IL-10抗体を用いて検証し、IL-10産生細胞をフローサイトメトリー法で検証する。また、アラジンー1が抑制するシグナル経路を解析し、IL-10産生をinvitroで解析する。すでに樹立ずみの抗マウスアラジンー1抗体は敗血症モデルで治療効果を示さなかったため、新たに抗アラジンー1抗体産生ハイブリドーマを樹立し、治療効果を検証する。敗血症は病原体感染により引き起こされる全身性炎症反応症候群である。敗血症の治療を行う上では病原体の排除を行いつつ過剰な炎症応答を回避するという緻密な制御が必要とされる。自然免疫応答は感染防御の最前線を担い、炎症の誘導に働くことから、自然免疫応答の活性化制御機構を明らかにすることは敗血症の病態の理解と人為的治療法の開発において重要である。Allergin-1は肥満細胞や骨髄系細胞などの自然免疫応答を担う細胞に発現し、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜型受容体であり、細胞内領域に抑制性シグナルを伝達するITIM配列を持つ。Allergin-1は肥満細胞ではIgE受容体やTLR2受容体シグナル経路を抑制することにより、アレルギー抑制分子として働く。Allergin-1がTLR2シグナルを抑制することから、感染におけるAllergin-1の役割を明らかにするため盲腸結紮穿孔法(CLP)による腹膜炎モデルを検討した。その結果、野生型(WT)マウスがCLP後72時間で全例死亡するのに対しKOでは約50%のマウスが生存することを見出し、WTと比較してKOでは生存率が有意に亢進した。CLP後2時間と早期において、腹腔内細菌数が有意に減少していることから、KOマウスではBacterial clearance能が亢進することで生存率が亢進すると考えられた。しかし、腹腔への好中球の遊走には有意な差が見られないことから、Allergin-1は好中球または単球マクロファージの機能を抑制していることが推察された。In vitiroの解析から、Allergin-1が発現する肥満細胞、好中球、単球、樹状細胞をTLR4リガンドまたはTLR2リガンドで刺激すると炎症性サイトカイン産生がKOで有意に亢進する結果を得た。また、生化学的解析から、Allergin-1はTLR4下流のシグナルを抑制することを見出した。Allergin-1が敗血症の病態を悪化させる原因にTLRシグナルを抑制することでBacteria clearanceを抑制している可能性を見出した。敗血症は病原体感染により引き起こされる全身性炎症反応症候群である。敗血症の治療を行う上では病原体の排除を行いつつ過剰な炎症応答を回避するという緻密な制御が必要とされる。自然免疫応答は感染防御の最前線を担い、炎症の誘導に働くことから、自然免疫応答の活性化制御機構を明らかにすることは敗血症の病態の理解と人為的制御法の開発において重要である。アラジンー1は肥満細胞や骨髄系細胞などの自然免疫応答を担う細胞に発現し、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜型受容体であり、細胞内領域に抑制性シグナルを伝達するITIMアミノ酸配列を持つ。
KAKENHI-PROJECT-17H04362
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H04362
アラジン-1を標的とした新規敗血症治療法の開発
アラジンー1は肥満細胞ではIgE受容体やTLR2受容体のシグナル経路を抑制することにより、生体では全身性および局所アナフィラキシーや皮膚炎を抑制するアレルギー抑制分子として働く。アラジンー1がTLR2シグナルを抑制することから、アレルギー応答以外に感染症における役割を明らかにするため、盲腸結紮穿刺法(Ceacum ligation and puncture, CLP)による腹膜炎モデルを検討した。その結果、野生型マウス(WT)がCLP後72時間で全例死亡するのに対し、アラジンー1欠損マウス(KO)では約50%のマウスが生存し、生存率が有意に亢進した。しかし、腹腔中の細菌数に有意差はなく、腹腔に浸潤する好中球および炎症性単球数にも有意差はなく、量的な違いは見出されなかった。しかし、炎症性サイトカインを定量解析したところ、IL-6およびTNFなど炎症性サイトカイン産生はKOの腹腔中で有意に低く、逆に抗炎症性サイトカインであるIL-10産生はKOで有意に亢進していた。以上の結果から、アラジンー1を欠損すると、細菌の排除に影響を与えることなく、炎症のみを抑制することが示唆された。腹膜炎モデルにおいて、アラジン1が欠損すると細菌の排除に影響与えることなく、抗炎症性サイトカイン産生の亢進、さらに炎症性サイトカイン産生の低下が観察された。この結果から、アラジンー1の機能を阻害抗体など用いて人為的に阻害することで、細菌排除に影響を与えることなく、抗炎症反応を亢進して炎症反応を抑制して敗血症の病態を改善できる可能性が示唆された。Allergin-1がin vivoでbacteria clearanceに抑制的に働く責任細胞を同定する。さらにAllergin-1が抑制するシグナル経路を明らかにする為、すでに樹立済みであるAllergin-1/MyD88ダブルノックアウト(DKO)マウスを用いてCLPの生存率を検証する。さらに、すでに樹立済みの抗マウスAllergin-1モノクローナル抗体を用いてこれらの敗血症治療効果を明らかにする。今後はIL-10産生の亢進が病態に関与するかを抗IL-10抗体を用いて検証し、IL-10産生細胞をフローサイトメトリー法で検証する。また、アラジンー1が抑制するシグナル経路を解析し、IL-10産生をinvitroで解析する。すでに樹立ずみの抗マウスアラジンー1抗体は敗血症モデルで治療効果を示さなかったため、新たに抗アラジンー1抗体産生ハイブリドーマを樹立し、治療効果を検証する。
KAKENHI-PROJECT-17H04362
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H04362
コンドライト構成物質の熱履歴及び母天体の形成過程に関する研究
平成1618年度の研究実績は以下のとおりである.1.熱変成作用の研究:各種コンドライト中の金属鉱物及びスピネル族鉱物の特徴を詳細に記載,分析し,従来珪酸塩鉱物から得られている知見を参照しながらコンドライトの熱履歴を明らかにした。これらの鉱物はコンドライトの熱変成度の最も有効な指標となることを提唱した。特に金属鉄については組織と組成が熱変成度に極めて敏感であること、またそれらの変化傾向を定量的に見積もる方法を提唱した。最近提唱された変成度の新分類基準とも一致することも明らかになった。スピネル族鉱物については変成度と組成の関係を定量的に明らかにした他、コンドルールが溶融する以前の情報を持っている可能性を始めて示唆した。2.衝撃変成作用の研究:CBグループに属するGujba隕石を詳細に研究し,炭素質コンドライトから初めて,衝撃変成作用を反映する高圧鉱物を発見した。その特徴及び普通コンドライトとの比較により,同隕石の隕石母天体に加わった衝撃圧力,衝突過程の物理条件を明らかにした。また、シリカ鉱物も新たに発見したが、これは原始太陽系星雲内での凝縮分別作用の結果であると考えられる。このようにこの種の炭素質コンドライトは前駆物質形成から母天体に至るまでの間に従来考えられていた以上にダイナミックな作用を受けていることが明らかになった。以上,得られた成果は国際隕石学会、国際鉱物学会および国立極地研究所の隕石シンポジウムで発表した。また研究発表欄にあるような論文としてまとめた。平成1618年度の研究実績は以下のとおりである.1.熱変成作用の研究:各種コンドライト中の金属鉱物及びスピネル族鉱物の特徴を詳細に記載,分析し,従来珪酸塩鉱物から得られている知見を参照しながらコンドライトの熱履歴を明らかにした。これらの鉱物はコンドライトの熱変成度の最も有効な指標となることを提唱した。特に金属鉄については組織と組成が熱変成度に極めて敏感であること、またそれらの変化傾向を定量的に見積もる方法を提唱した。最近提唱された変成度の新分類基準とも一致することも明らかになった。スピネル族鉱物については変成度と組成の関係を定量的に明らかにした他、コンドルールが溶融する以前の情報を持っている可能性を始めて示唆した。2.衝撃変成作用の研究:CBグループに属するGujba隕石を詳細に研究し,炭素質コンドライトから初めて,衝撃変成作用を反映する高圧鉱物を発見した。その特徴及び普通コンドライトとの比較により,同隕石の隕石母天体に加わった衝撃圧力,衝突過程の物理条件を明らかにした。また、シリカ鉱物も新たに発見したが、これは原始太陽系星雲内での凝縮分別作用の結果であると考えられる。このようにこの種の炭素質コンドライトは前駆物質形成から母天体に至るまでの間に従来考えられていた以上にダイナミックな作用を受けていることが明らかになった。以上,得られた成果は国際隕石学会、国際鉱物学会および国立極地研究所の隕石シンポジウムで発表した。また研究発表欄にあるような論文としてまとめた。本年度の研究実績は以下のとおりである.1)難揮発性包有物とコンドルールの研究:各種コンドライト中の包有物の分析を行い,さらに学外研究者との共同研究による希土類元素などの微量元素分析,酸素同位体分析をあわせ,包有物やコンドルールの原始太陽系星雲内における形成過程の詳細を検討した.特に,カンラン石に富む包有物は従来はあまり研究対象となってこなかったが,これらはメリライトなどを含むより難揮発性の包有物とコンドルールを成因的につなぐ重要な構成物質であることが明らかになってきた.2)熱変成作用の研究:各種コンドライト中の金属鉱物,硫化鉱物,酸化鉱物,シリカ鉱物,燐酸塩鉱物などの特徴を詳細に記載,分析し,従来珪酸塩鉱物から得られている知見を参照しながらコンドライトの熱履歴を明らかにした.これらの鉱物(特に金属鉄とスピネル)はコンドライトの熱変成作用の定量的指標になることが明らかになった.またこれらの鉱物はコンドライトの変成度の最も有効な指標となることも明らかにした.3)衝撃変成作用の研究:衝撃変成作用を反映する高圧鉱物の記載,分析に基づいて,太陽系初期の天体衝突現象を検討した,特に高圧鉱物が逆転移している現象を初めて発見し,その転移速度を議論した,また隕石母天体に加わった衝撃圧力,衝突天体の物理条件を明らかにした.以上,得られた成果は国際隕石学会およびアメリカで開かれたシンポジウムで発表した.また国内の鉱物学会でも発表を行った.本年度の研究実績は以下のとおりである.1)難揮発性包有物とコンドルールの研究:各種コンドライト中の難揮発性包有物の分析を行い,難揮発性包有物やコンドルールの原始太陽系星雲内における形成過程の詳細を検討した.特に,従来はあまり研究対象となってこなかった普通コンドライト中の難揮発性包有物を詳細に検討し,炭素質コンドライト中のものと類似の環境で形成したことを明らかにした.2)熱変成作用の研究:各種コンドライト中の金属鉱物及びスピネル族鉱物の特徴を詳細に記載,分析し,従来珪酸塩鉱物から得られている知見を参照しながらコンドライト熱履歴を明らかにした.これらの鉱物はコンドライトの熱変成度の最も有効な指標となることを提唱した.特に金属鉄は300°C以下の熱履歴も保持していることが明らかとなった.
KAKENHI-PROJECT-16540435
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16540435
コンドライト構成物質の熱履歴及び母天体の形成過程に関する研究
スピネル族鉱物は500°C程度の変成温度を保持していることも明らかとなった.3)衝撃変成作用の研究:CBグループに属するGujba隕石を詳細に研究し,炭素質コンドライトから初めて,衝撃変成作用を反映する高圧鉱物を発見した.特にコーカサイトとカルシウムに富むざくろ石は初めての報告となった.この特徴及び普通コンドライトとの比較により,同隕石の隕石母天体に加わった衝撃圧力,衝突過程の物理条件を明らかにした.以上,得られた成果は国際隕石学会およびアメリカで開かれた月惑星シンポジウムで発表した.また国内の鉱物学会でも発表を行った.本年度の研究実績は以下のとおりである.1)熱変成作用の研究:各種コンドライト中の金属鉱物及びスピネル族鉱物の特徴を詳細に記載,分析し,従来珪酸塩鉱物から得られている知見を参照しながらコンドライトの熱履歴を明らかにした。これらの鉱物はコンドライトの熱変成度の最も有効な指標となることを提唱した。特に金属鉄については組織と組成が熱変成度に極めて敏感であること、またそれらの変化傾向を定量的に見積もる方法を提唱した。最近提唱された変成度の新分類基準とも一致することも明らかになった。スピネル族鉱物については変成度と組成の関係を定量的に明らかにした他、コンドルールが溶融する以前の情報を持っている可能性を始めて示唆した。2)衝撃変成作用の研究:CBグループに属するGujba隕石を詳細に研究し,炭素質コンドライトから初めて,衝撃変成作用を反映する高圧鉱物を発見した。その特徴及び普通コンドライトとの比較により,同隕石の隕石母天体に加わった衝撃圧力,衝突過程の物理条件を明らかにした。また、シリカ鉱物も新たに発見したが、これは原始太陽系星雲内での凝縮分別作用の結果であると考えられる。このようにこの種の炭素質コンドライトは前駆物質形成から母天体に至るまでの間に従来考えられていた以上にダイナミックな作用を受けていることが明らかになった。以上,得られた成果は国際隕石学会、国際鉱物学会および国立極地研究所の隕石シンポジウムで発表した。また研究発表欄にあるような論文としてまとめた。
KAKENHI-PROJECT-16540435
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大臼歯形状にもとづくアジア・アフリカのヒトと類人猿の進化に関する分析的研究
本研究では、中国産のギガントピテクスやオランウータン、台湾産のオナガザル類、インドネシア産の人類化石など、アジアの類人猿を中心とした霊長類歯牙化石を対象に、3次元形状分析を実施した。とくに南中国から出土するギガントピテクスの大臼歯については、研究の現状を確認し、中国の研究者との共同研究体制を確立した上で、マイクロCTデータをもとにした形状分析を行い、現生類人猿や化石人類などのデータと比較して、歯冠エナメル質が全体に厚いが分布は咬合面付近に偏るなどの特徴を明らかにした。本研究では、中国産のギガントピテクスやオランウータン、台湾産のオナガザル類、インドネシア産の人類化石など、アジアの類人猿を中心とした霊長類歯牙化石を対象に、3次元形状分析を実施した。とくに南中国から出土するギガントピテクスの大臼歯については、研究の現状を確認し、中国の研究者との共同研究体制を確立した上で、マイクロCTデータをもとにした形状分析を行い、現生類人猿や化石人類などのデータと比較して、歯冠エナメル質が全体に厚いが分布は咬合面付近に偏るなどの特徴を明らかにした。本研究では、アジア・アフリカ地域を中心として、化石人類および化石類人猿について、大臼歯歯冠三次元形態を詳細に比較分析し、各種の特徴を明らかにすることを目的としている。それによって同地域の化石人類・類人猿各種間の系統関係について大臼歯形状の観点からどのようなことが言えるのかを吟味するとともに、大臼歯形状の各特長の適応的意義の解釈を深めることを目指すものである。平成22年度は、中国産化石オランウータン大臼歯のマイクロCTデータの取得と、台湾における化石霊長類資料の状況確認などを実施した。中国・広西チワン族自治区の布兵盆地から出土した化石オランウータンの大臼歯資料を研究する広西民族博物館の王領博士を日本へ招聘し、マイクロCT撮影を実施した。布兵盆地では高度の異なる複数の洞窟遺跡から約100万年以上前から数十万年前という年代幅のあるオランウータン化石が出土しており、この時間的変遷を追うことによって中国におけるオランウータンの進化に関して重要な知見が得られるものと期待される。なお王傾博士のスケジュールの都合により平成22年度中の招聘が可能でなくなったため、招聘は平成23年に実施した。また平成22年10月には台湾・台中の国立自然科学博物館を訪問し、台南周辺域から出土する霊長類化石の状況を確認した。その結果、類人猿化石は存在しないものの、人骨資料も若千存在し、今後歯の資料を得られる可能性もあるということが分った。国内の現生霊長類資料についてもさらにマイクロCT撮影を進め、データの分析も進めた。これらの結果をまとめて、平成22年9月に開催された国際霊長類学会において成果発表した。また10月の日本人類学会大会においてはすでに得られていたギガントピテクス大臼歯の分析結果を予報として報告した。本研究では、アジア・アフリカ地域を中心として、化石人類および化石類人猿について、大臼歯歯冠三次元形態を詳細に比較分析し、各種の特徴を明らかにすることを目的としている。それによって同地域の化石人類・類人猿各種間の系統関係について大臼歯形状の観点からどのようなことが言えるのかを吟味するとともに、大臼歯形状の各特長の適応的意義の解釈を深めることを目指すものである。平成23年度はとくに中国産化石類人猿のデータ取得を進めた。平成23年6月には中国・北京の中国科学院古脊椎与古人類研究所を訪問し、広西チワン族自治区崇左地域から発掘されたギガントピテクス化石の観察と研究相談をおこなった。この際に同研究所内に新設されたマイクロCT撮影装置の状況についても確認し、精度面に関して意見交換した。今後は同研究所内の装置の精度確認についても協力することとし、十分な精度が達成された場合には、同研究所においてCT撮影が実施できる見通しが得られた。また平成24年2月から3月にかけて、同研究所の張穎奇博士が来日し、マイクロCT撮影を実施し、データの分析方針についても意見交換をした。本研究の主目的は大臼歯3次元形状の機能適応的な意義をより詳細に吟味することであるが、大臼歯形状は形成過程の時間的・空間的な制約の中で形作られるものであるため、歯の形成過程などについても理解を深める必要がある。こうした観点から平成23年度は歯牙資料に見られる形成痕に関する先行研究などについて文献調査し、その成果を学会発表した。本研究では、アジア・アフリカ地域を中心として、化石人類および化石類人猿について、大臼歯歯冠三次元形態を詳細に比較分析し、各種の特徴を明らかにすることを目的としている。それによって同地域の化石人類・類人猿各種間の系統関係について大臼歯形状の観点からどのようなことが言えるのかを吟味するとともに、大臼歯形状の各特長の適応的意義の解釈を深めることを目指すものである。平成25年度も引き続き中国産化石類人猿のデータ取得を進めた。平成25年7月には中国・北京の中国科学院古脊椎与古人類研究所を訪問し、広西チワン族自治区崇左地域から発掘されたギガントピテクス化石の観察と研究相談をおこなった。これらのギガントピテクス化石研究については、エナメル質分布特徴および小臼歯形状の時代変化について平成25年中に国際誌Quaternary Internationalの特集号に2編の論文を発表した。またこの過程で中国南部に見られる霊長類相全体の変遷についての論文発表にも参加した。
KAKENHI-PROJECT-22770242
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大臼歯形状にもとづくアジア・アフリカのヒトと類人猿の進化に関する分析的研究
これらの研究およびギガントピテクス歯冠サイズの時代変化に関する検討結果を国内学会において発表した。このほか、インドネシア産化石資料や台湾産化石資料のマイクロCT撮像およびデータの分析を進めたほか、平成26年1月にはミャンマー古生物調査に参加し、類人猿化石産出の可能性のある中新世後期の地層の路頭のサーベイをおこなった。本研究では、アジア・アフリカ地域を中心として、化石人類および化石類人猿について、大臼歯歯冠三次元形態を詳細に比較分析し、各種の特徴を明らかにすることを目的としている。それによって同地域の化石人類・類人猿各種間の系統関係について大臼歯形状の観点からどのようなことが言えるのかを吟味するとともに、大臼歯形状の各特長の適応的意義の解釈を深めることを目指すものである。平成24年度も引き続き中国産化石類人猿のデータ取得を進めた。平成24年5月、12月には中国・北京の中国科学院古脊椎与古人類研究所を訪問し、広西チワン族自治区崇左地域から発掘されたギガントピテクス化石の観察と研究相談をおこなった。また平成24年7月には同研究所の張穎奇博士が来日し、小臼歯標本についてマイクロCT撮影を実施し、データの分析方針についても意見交換をした。これらのギガントピテクス化石研究については、平成24年5月の北京における国際シンポジウムおよび国内学会において成果の一部を発表した。このほか平成24年9月にはインドネシア・ジャカルタを訪問し、フローレス原人の歯牙資料の観察・分析を実施し、平成25年2月にはミャンマー古生物調査に参加し、類人猿化石産出の可能性についても情報収集した。本研究の主目的は大臼歯3次元形状の機能適応的な意義をより詳細に吟味することであるが、歯の形成過程などについても理解を深める必要があり、歯牙資料に見られる形成痕に関する先行研究などについての文献調査を平成24年度も継続し、その成果を平成25年3月に学会発表した。ほぼ研究計画どおりに遂行しているため25年度が最終年度であるため、記入しない。ほぼ計画通りに遂行しているため平成24年度は予定通りこれまで得られたマイクロCTデータの分析をさらに進めると同時に、インドネシア化石資料の分析についても進めていく。平成25年度に成果をまとめていくためにも、平成24年度中から成果の一部を学会発表・論文化などしていく。25年度が最終年度であるため、記入しない。平成25年度は本研究課題の最終年度となるため、中国産化石類人猿のデータの分析をさらに進め、全体のまとめをする。国内の研究協力者も交えて研究結果について協議し、データの分析結果をまとめて、学会において発表する。また年度内に論文作成して投稿する。
KAKENHI-PROJECT-22770242
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Mathematical analysis of species coexistence and segregating pattern formation
平成29年度が最終年度であるため、記入しない。平成29年度が最終年度であるため、記入しない。平成29年度が最終年度であるため、記入しない。平成29年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-16H07254
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各種プロテアーゼ活性による炎症性腸疾患の病態制御機構の解明
クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease; IBD)の病態には、炎症性サイトカインの重要性が広く認知されており、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)などの蛋白分解酵素がその活性化調節に関与していることが報告されている。研究代表者らは、MMPの活性化を制御している線維素溶解系(線溶系)因子群に着目し、線溶系阻害剤を投与することによる病態制御-炎症性サイトカインの分泌抑制、そして白血球の組織中への動員抑制を試みた。デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)大腸炎モデルマウスを作製し、さらに線溶系阻害剤を投与することにより、血液中のMMP活性の抑制、サイトカイン濃度の低下が認められること、白血球の腸管粘膜への浸潤抑制、腸管構造の維持、炎症抑制に効果があることを明らかにした。本研究では,クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患(IBD)の病態には,白血球あるいは間質細胞が分泌する(TNFαなどの)炎症性サイトカインの重要性が広く認知されており、その活性化調節には、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)などの蛋白分解酵素の関与が報告されていることに着目した。そして、MMPの活性化を制御している線維素溶解系(線溶系)因子群を(線溶系阻害剤を投与することにより)制御し、炎症性サイトカインの分泌抑制、そして白血球の組織中への動員を抑制する可能性を有することから、新規IBD治療法開発の基盤形成までをその目的の範疇とする。今年度の研究で、研究代表者らは、2%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)溶液を飲水させることによるDSS大腸炎モデルマウスを作成し、血液中においてMMPの活性化とサイトカイン血中濃度増加が認められること、さらに線溶系阻害剤を投与することにより、白血球の腸管粘膜への浸潤抑制,腸管構造の維持,炎症抑制に効果があること明らかにした。現在、線溶系阻害剤が末梢血中のどの血球成分に作用することで炎症性サイトカインの分泌抑制を引き起こしているのかをより評価し,さらに,線溶系抑制に伴うMMP活性抑制の結果として,IBD病態改善に至るまでの分子メカニズム,シグナルpathwayを解明することで,線溶系阻害剤の作用機序を明らかにすることを目的として研究を継続している。MMP阻害剤は、欧米での治験で深刻な副作用のために臨床応用が中止されており、また、本研究はそれに変わる新たな新規治療薬の可能性を示唆するものとして重要な役割を担っている。クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease; IBD)の病態には、炎症性サイトカインの重要性が広く認知されており、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)などの蛋白分解酵素がその活性化調節に関与していることが報告されている。研究代表者らは、MMPの活性化を制御している線維素溶解系(線溶系)因子群に着目し、線溶系阻害剤を投与することによる病態制御-炎症性サイトカインの分泌抑制、そして白血球の組織中への動員抑制を試みた。デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)大腸炎モデルマウスを作製し、さらに線溶系阻害剤を投与することにより、血液中のMMP活性の抑制、サイトカイン濃度の低下が認められること、白血球の腸管粘膜への浸潤抑制、腸管構造の維持、炎症抑制に効果があることを明らかにした。クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患(IBD)の病態には、白血球あるいは間質細胞が分泌する炎症性サイトカインの重要性が広く認知されている。代表者らは、プラスミン等の線維素溶解系(線溶系)因子の亢進が、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の活性化を促し、末梢組織中への白血球動員と一部の炎症性サイトカインの分泌を促進することを報告した。本研究の目的は、線溶系阻害剤による炎症性サイトカイン抑制効果・IBD病態改善効果を解析することで線溶系によるIBD病態制御の分子機構を解明することにあり、この結果を応用して新規IBD治療法開発の基盤形成を目指すものである。平成23年度は、C57BL/6Jマウスを用いてデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導性マウス腸炎モデルを作製してプラスミン阻害剤の効果について解析をおこなった。DSS飲水投与開始と共にプラスミン阻害剤を連日投与した群とコントロール群を作製し、体重の経時的変化、生存率、血便、下血などについて比較した。その結果、プラスミン阻害剤投与群とコントロール群において体重、生存率、腸管内の炎症の指標となる血便、下血、いずれも有意な差を示した。さらに解剖をおこない、大腸組織および血液を回収して解析に用いた。組織切片を作製し病理組織像について比較したところ、プラスミン阻害剤投与群とコントロール群投与群において粘膜層に有意な相違を認めた。ELISA法により大腸組織ならびに血液中の炎症性サイトカイン量を測定したところ、炎症性サイトカインの値に有意差を認めた。以上のことから、線溶系因子群が炎症性腸疾患においてプロテアーゼ活性に影響を及ぼしていることが示唆された。この結果を踏まえ、線溶系シグナルによるIBD病態制御の分子メカニズムについて更なる解析を実施中である。デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導性マウス腸炎モデルの条件検討、MMP9遺伝子欠損マウスを用いたDSS腸炎モデルによる予備実験の実施を経て、プラスミン阻害剤による本実験の実施となった。また、プラスミン阻害剤は、研究協力者であり東京大学医科学研究所服部浩一
KAKENHI-PROJECT-23791501
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23791501
各種プロテアーゼ活性による炎症性腸疾患の病態制御機構の解明
准教授に試薬調製のプロトコールを頂いて行っているため、濃度調整などは必要なく、当初の仮説通りの結果を出すことができた。また、研究の遂行にあたって、服部准教授の研究室でのアドバイスを頂いて行うことが可能な体制にあること、及び、研究の施設が整っていたためである。プラスミン阻害剤に期待通り腸炎の抑制効果が確認できたので、研究計画の大幅な見直しは無い。実験データの再現性、正確性を維持する上でも、同じ実験を数回繰り返す必然性もあり平成24年度は,平成23年度の実験を繰り返し行う予定である.次に,当初の計画通り以下の実験を行う.(1)各種炎症性サイトカインの産生分泌抑制効果を評価すること、(2)消化管上皮組織に対する白血球の浸潤抑制効果を評価することを主な細目とし、プラスミン阻害剤による潰瘍性大腸炎、クローン病病態改善効果を総合的に明らかにすることを中心に研究を進める。本研究は動物実験を主体としていることから、各種近交系、特殊系マウス等の使用を予定しており、従ってこれらのマウス購入費用(年間30万円)が必要となる。さらに、マウス投与用の薬剤及び試薬類、細胞培養用サイトカイン及び培地やウシ胎児またはウマ血清等の試薬、フローサイトメトリーによる細胞表面抗原解析用及び病理組織免疫染色用の抗体(年間50万円)、サイトカイン(年間30万円)およびプロテアーゼの血中濃度測定用のenzyme linked immunosorbent assay (ELISA)キット等(年間40万円)は、実験データの再現性、正確性を維持する上でも、同じ実験を数回繰り返す必然性もあり、いずれも不可欠な消耗品である。病理組織作成については、本研究室利用、一部の病理組織標本及びELISAでの測定が困難な線維素溶解系因子、サイトカインの血中濃度測定については一部業者委託を行っている。尚、備品は本学に設置された既存の機器が利用可能であるため本年度はまだ購入の予定はない。また,各種データ入力などの補助として謝金を計上している.これに加え、国内の学会の研究発表及び参加費用、研究資料収集のための通信費、これらはいずれも研究継続上の必要経費と考えられ、合計額としては本研究費用として妥当なものと判断し,計上する.平成23年度末に購入する予定であったELISAが欠品であったため,入荷を待った上で平成24年度に購入する予定である.
KAKENHI-PROJECT-23791501
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CaO含有溶融スラグと溶鉄との平衡ならびにスラグ成分の活量
高清浄鋼の精錬に不可欠な取鍋内での脱酸、脱硫においてカルシア系スラグは重要な役割を果たす。CaO-Al_2O_3系はカルシア系スラグの基本系である。製鋼用スラグを対象とするような高温度において、スラグ成分の活量の絶対値を精度良く求めるためには実験上かなりの困難を伴うことが予想される。この意味で、各成分の活量の絶対値を測定せずに、それらの比率のみから活量を求めることができれば測定はかなり容易になる。一方、高温物理化学の研究におけるボトルネックの一つには反応容器の問題がある。容器材料による試料の汚染や反応への影響をさける為、反応に対して不活性な耐熱材料を得るため苦心されてきた。これに対して本研究では、反応容器としてCaSるつぼを自作し、このCaSるつぼを積極的に利用して反応を進行させる手法をとり、CaO-Al_2O_3系スラグとFe-Al-S合金との平衡を1600°Cにおいて測定した。本系の平衡関係は次式の反応で規定され、一定の酸化物組成においては、溶鉄中のAlとSの活量の積(h_<Al>^2・h_S^3)は一定値となった。CaO-Al_2O_3-CaSsat.3成分系におけるGibbs-Duhemの関係と上記の反応平衡とを組み合わせることにより導出した関係式を利用し、この活量の積とスラグ組成の関係よりスラグ中のCaO及びAl_2O_3の活量を決定した。この活量の計算過程においては、スラグ系の状態図と溶鉄中のAlとSの活量系数に関する熱力学的データのみが必要である。これらは比較的精度の高いデータといえる。これら以外には、上記の反応の平衡定数を含め、本質的に他の研究者の報告による各種の反応の自由エネルギーや平衡定数の値を必要としないため、利用する熱力学的データに含まれる誤差の影響を受けずに活量を決定することができた。高清浄鋼の精錬に不可欠な取鍋内での脱酸、脱硫においてカルシア系スラグは重要な役割を果たす。CaO-Al_2O_3系はカルシア系スラグの基本系である。製鋼用スラグを対象とするような高温度において、スラグ成分の活量の絶対値を精度良く求めるためには実験上かなりの困難を伴うことが予想される。この意味で、各成分の活量の絶対値を測定せずに、それらの比率のみから活量を求めることができれば測定はかなり容易になる。一方、高温物理化学の研究におけるボトルネックの一つには反応容器の問題がある。容器材料による試料の汚染や反応への影響をさける為、反応に対して不活性な耐熱材料を得るため苦心されてきた。これに対して本研究では、反応容器としてCaSるつぼを自作し、このCaSるつぼを積極的に利用して反応を進行させる手法をとり、CaO-Al_2O_3系スラグとFe-Al-S合金との平衡を1600°Cにおいて測定した。本系の平衡関係は次式の反応で規定され、一定の酸化物組成においては、溶鉄中のAlとSの活量の積(h_<Al>^2・h_S^3)は一定値となった。CaO-Al_2O_3-CaSsat.3成分系におけるGibbs-Duhemの関係と上記の反応平衡とを組み合わせることにより導出した関係式を利用し、この活量の積とスラグ組成の関係よりスラグ中のCaO及びAl_2O_3の活量を決定した。この活量の計算過程においては、スラグ系の状態図と溶鉄中のAlとSの活量系数に関する熱力学的データのみが必要である。これらは比較的精度の高いデータといえる。これら以外には、上記の反応の平衡定数を含め、本質的に他の研究者の報告による各種の反応の自由エネルギーや平衡定数の値を必要としないため、利用する熱力学的データに含まれる誤差の影響を受けずに活量を決定することができた。高清浄度鋼の精錬に不可欠な取鍋内での脱酸、脱硫において、CaO含有溶融スラグは重要な役割をはたす。一方、高温物理化学の研究におけるボトルネックのひとつに反応容器の問題がある。容器材料による試料の汚染や、反応への影響を避けるため、反応に対して不活性な耐熱材料を得るため苦心されてきた。これに対して、本研究では反応容器としてCaSるつぼを自製し、このCaSを積極的に利用して反応を進行させる手法を用いた。本年度は、溶鉄とカルシウムアルミネート系スラグの平衡関係を測定した。油圧プレス成型装置(CIP)によりCaSるつぼを静水圧成型し、これを本年度購入した温度調節装置を組み込んだ電気炉を用いて焼成した。得られたCaSるつぼの室温におけるアセトンを用いた浸透テストによれば、成型圧力3,000kgf/【cm^2】、1550°C、24時間の焼成をしたものでは、6時間後においてもアセトンの浸透は認められなかった。このようにして自製したCaSるつぼを用い、CaO-【Al_2】【O_3】系スラグとFe-Al-S合金との平衡測定を1600°Cにおいて行なった。実験後のるつぼの観察結果によれば、若干のスラグの浸透が認められたものの、高温での使用に十分耐えうることがわかった。また、反応保持時間を5時間とすれば、スラグ-メタル間の平衡が達成されれることが確認された。
KAKENHI-PROJECT-61550495
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61550495
CaO含有溶融スラグと溶鉄との平衡ならびにスラグ成分の活量
このように結果はおおむね良好であるが、測定回数がなお不十分であるため、補足実験を62年度にも遂行する予定である。高清浄度鋼の精錬に不可欠な取鍋内での脱酸,脱硫において,カルシア系スラグは重要な役割を果たす.一方,高温物理化学の研究におけるボトルネックのひとつに反応容器の問題がある.容器材料による試料の汚染や,反応への影響を避けるため,反応に対して不活性な耐熱材料を得るため苦心されてきた.これに対して,本研究では反応容器を積極的に利用して反応を進行させる手法を用いた.即ち, CaSルツボを自作し,これを用いて, CaO-Al_2O_3系スラグとFe-Al-S合金との平衡を1600°Cにおいて測定した.本系の反応平衡は次式で規定され,一定のスラグ組成においては,溶鉄中のAlとSの活量の積(a^2_<Al>・a^3_S)は一定値となった.CaO-Al_2O_3-CaSsat.3成分系におけるGibbs-Duhemの関係を発展させることにより導出した関係式を利用し,この活量の積とスラグ組成の関係より,スラグ中のCaO及びAl_2O_3の活量を決定した.この際, CaOの積分の開始点としては, CaO飽和のa_<cao>=1が利用できたが, Al_2O_3の場合にはaAl_2O_3=1が使えず, CaAl_2O_4の生成反応の自由エネルギー変化の値を用いる必要があった.ただし,測定範囲を溶融スラグ組成域に限定せず,固相域にまで拡張することにより,状態図さえ分かっていれば,本系の平衡関係を規定する上記の反応の平衡定数の値をも含め,他の研究によるいかなる熱力学的データーの援用を受けることなく,スラグ中の各成分の活量を決定することが可能である.高清浄度鋼の精錬に不可欠な取鍋内での脱酸、脱硫において、カルシア系スラグは重要な役割を果たす。一方、高温物理化学の研究におけるボトルネックの一つに反応容器の問題がある。容器材料による試料の汚染や反応への影響をさける為、反応に対して不活性な耐熱材料を得るため苦心されてきた。これに対して本研究では,反応容器を積極的に利用して反応を進行させる手法を用いた。即ち、CaSるつぼを自作し、これを用いて、CaO-Al_2O_3系スラグとFe-Al-S合金との平衡を1600°Cにおいて測定した。本系の反応平衡は次式で規定され、一定のスラグ組成においては、溶鉄中のAlとSの活量の積(hAl^2・hS^3)は一定値となった。CaO-Al_2O_3-CaS sat.3成分系におけるGiabbs-Duhemの関係を発展させることにより導出した関係式を利用し、この活量の積とスラグ組成の関係より、スラグ中のCaO及びAl_2O_3の活量を決定した。前年度までは、測定範囲を溶融スラグ組成域に限定していたが、今年度はこれを固相域にまで拡張したため、状態図さえわかっていれば、本系の平衡関係を規定する上記の反応の平衡定数の値をも含め、他の研究によるいかなる熱力学的データの援用を受けることなく、スラグ中の各成分の活量を決定することができた。
KAKENHI-PROJECT-61550495
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61550495
自己組織化の臨界現象とマイクロ・ナノ流動場形成に関する研究
本研究は,原子・分子の相互作用と自己組織化の視点から流動場形成メカニズムを究明することを目的としている.溶媒に分散する溶質(原子,分子,イオン)の運動により,系全体の流動が誘発されるメカニズムについて,微細構造を観察するとともに理論的考察を深め,現象の本質を明らかにする.離散粒子の運動を非平衡統計力学の枠組みで定式化し,自己組織化臨界現象の観点から秩序形成のメカニズムについて学理の構築を目指す.本研究の結果から,生体現象を模倣するバイオミメティクス,エネルギー変換,新奇な流体駆動原理の創出につながる萌芽的な研究課題に挑戦する.具体的に,(1)微細加工により作製する100nm幅の金属細線に電子電流を印加し,電流密度に対する電気抵抗の値を計測して線が破断に至るときの電流電圧特性から,電子電流が金属原子の流動を駆動する臨界点を見出す;(2)マイクロ流路を用いて電解質溶液中のイオン電流密度に対する溶媒の流動発生を可視化し,イオン強度と流速および圧力勾配を解析し,それらの関係を明らかにしてイオン電流が溶媒の流動を駆動する臨界点を見出す;(3)ミクロからマクロへの現象の発展を非平衡散逸系における自己組織化臨界現象として定式化する.平成30年度は,電子線描画装置を用いることにより線幅500nmの線形状を作成し,実験環境を整備した.引き続き,線幅100nmの金属細線を作製し,微小電流計測装置により計測・記録し,エレクトロマイグレーションによる線の破断を電子顕微鏡で観察する.また,マイクロ流路中において駆動される電気流体力学流れについてイオン強度と印加電圧の影響について調べ,流速がイオン濃度に比例することが確かめられたことから,イオン電流が流体に対する巨視的な体積力となることが明らかとなった.さらに,独自の微細加工技術によりマイクロ・ナノ流路を作製し,電気的に駆動される流動現象を可視化した.微細加工技術による,100nmオーダの細線を描画することに成功したことから,金属細線の作製が可能となり,エレクトロマイグレーションを計測・評価する環境が整った.計測の実行にまでは至らなかったが,引き続き,実験を行うことが可能となった.電気流体力学流れについては,さまざまな流路形状において流動場の生成が可能となった.流速に対するイオン濃度と印加電圧の相関も明らかにされたことから,引き続きその臨界点を探ることは現実的に可能と考えられる.今後は,電子線描画装置を用いて100nm幅の金属細線の作製を目指すとともに微小電流計測を実行する.細線破断時の応答特性と破断後の電子顕微鏡像から臨界現象に対する理論モデルの構築を行う.印加電圧に対する微小電流応答と細線の破断時間から現象の細部を推察する.一方,マイクロ・ナノ流路における電気流体力学流れについても,流動場形成のダイナミクスをイオン電流の応答特性に注目して自己組織化臨界現象の観点からモデル化する.臨界点を境界として微視的スケールから巨視的スケールの現象へと発展する様子を究明する.本研究は,原子・分子の相互作用と自己組織化の視点から流動場形成メカニズムを究明することを目的としている.溶媒に分散する溶質(原子,分子,イオン)の運動により,系全体の流動が誘発されるメカニズムについて,微細構造を観察するとともに理論的考察を深め,現象の本質を明らかにする.離散粒子の運動を非平衡統計力学の枠組みで定式化し,自己組織化臨界現象の観点から秩序形成のメカニズムについて学理の構築を目指す.本研究の結果から,生体現象を模倣するバイオミメティクス,エネルギー変換,新奇な流体駆動原理の創出につながる萌芽的な研究課題に挑戦する.具体的に,(1)微細加工により作製する100nm幅の金属細線に電子電流を印加し,電流密度に対する電気抵抗の値を計測して線が破断に至るときの電流電圧特性から,電子電流が金属原子の流動を駆動する臨界点を見出す;(2)マイクロ流路を用いて電解質溶液中のイオン電流密度に対する溶媒の流動発生を可視化し,イオン強度と流速および圧力勾配を解析し,それらの関係を明らかにしてイオン電流が溶媒の流動を駆動する臨界点を見出す;(3)ミクロからマクロへの現象の発展を非平衡散逸系における自己組織化臨界現象として定式化する.平成30年度は,電子線描画装置を用いることにより線幅500nmの線形状を作成し,実験環境を整備した.引き続き,線幅100nmの金属細線を作製し,微小電流計測装置により計測・記録し,エレクトロマイグレーションによる線の破断を電子顕微鏡で観察する.また,マイクロ流路中において駆動される電気流体力学流れについてイオン強度と印加電圧の影響について調べ,流速がイオン濃度に比例することが確かめられたことから,イオン電流が流体に対する巨視的な体積力となることが明らかとなった.さらに,独自の微細加工技術によりマイクロ・ナノ流路を作製し,電気的に駆動される流動現象を可視化した.微細加工技術による,100nmオーダの細線を描画することに成功したことから,金属細線の作製が可能となり,エレクトロマイグレーションを計測・評価する環境が整った.計測の実行にまでは至らなかったが,引き続き,実験を行うことが可能となった.電気流体力学流れについては,さまざまな流路形状において流動場の生成が可能となった.流速に対するイオン濃度と印加電圧の相関も明らかにされたことから,引き続きその臨界点を探ることは現実的に可能と考えられる.
KAKENHI-PROJECT-18K18825
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K18825
自己組織化の臨界現象とマイクロ・ナノ流動場形成に関する研究
今後は,電子線描画装置を用いて100nm幅の金属細線の作製を目指すとともに微小電流計測を実行する.細線破断時の応答特性と破断後の電子顕微鏡像から臨界現象に対する理論モデルの構築を行う.印加電圧に対する微小電流応答と細線の破断時間から現象の細部を推察する.一方,マイクロ・ナノ流路における電気流体力学流れについても,流動場形成のダイナミクスをイオン電流の応答特性に注目して自己組織化臨界現象の観点からモデル化する.臨界点を境界として微視的スケールから巨視的スケールの現象へと発展する様子を究明する.
KAKENHI-PROJECT-18K18825
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超音波を用いた被曝のない骨年齢推定法の検討と顎骨成長ポテンシャルの予測
本研究の目的は、超音波を用いて橈骨または指骨での骨端軟骨(成長板)の骨化程度を、被曝を必要とせず非侵襲的に評価する手法を確立するため、超音波によって得られた波形および解析画像と手部X線写真から算出される骨年齢との回帰式を求め、それを用いた骨成熟評価の臨床応用を行うことである。まず、イスラエルSunlight社の超音波による骨年齢測定装置である"BonAge"を用いて獨協医科大学小児科と協力し、男女119名の左側の橈骨および尺骨での"BonAge"の測定結果と、同時に撮影した手部X線写真からTW2法およびCASMAS法で求めた骨年齢とを比較した結果、有意で高い相関が認められた。本装置は、手首関節部の骨幅と超音波伝達速度(SOS)を測定することにより骨年齢を算出している。しかし、算出までのアルゴリズムが不明であり、日本人での評価に関しては標準化または換算式の作成が必要で、測定部位についての検討も必要であると考えられた。次いで、超音波透過法を利用して波形および画像の解析を行った。手部の三部位での波形および利便性から、今後は第三指中節骨で計測することとした。この部位で10MHzの超音波診断装置と7および5MHzのトランスデューサーを用い、骨癒合前と後の被験者において、同時に撮影した手部X線写真での癒合状態と超音波透過量の比較を行った。さらに、2本のアクリル棒の間隙を変化させ、透過波の画像および波形の検討した結果、超音波透過量と間隙量は正の相関が認められた。間隙が大きくなると特に焦点無しのトランスデューサーで高い相関が認められた。本研究の結果から、超音波を用いて非侵襲的に骨成熟度を評価できることが明らかとなった。今後の展開として、多くの被験者において測定を行い、上・下顎骨の残余成長量の予測値と実際の値を比較し、予測精度の検討を行う予定である。本研究の目的は、超音波を用いて橈骨または指骨での骨端軟骨(成長板)の骨化程度を、被曝を必要とせず非侵襲的に評価する手法を確立するため、超音波によって得られた波形および解析画像と手部X線写真から算出される骨年齢との回帰式を求め、それを用いた骨成熟評価の臨床応用を行うことである。まず、イスラエルSunlight社の超音波による骨年齢測定装置である"BonAge"を用いて獨協医科大学小児科と協力し、男女119名の左側の橈骨および尺骨での"BonAge"の測定結果と、同時に撮影した手部X線写真からTW2法およびCASMAS法で求めた骨年齢とを比較した結果、有意で高い相関が認められた。本装置は、手首関節部の骨幅と超音波伝達速度(SOS)を測定することにより骨年齢を算出している。しかし、算出までのアルゴリズムが不明であり、日本人での評価に関しては標準化または換算式の作成が必要で、測定部位についての検討も必要であると考えられた。次いで、超音波透過法を利用して波形および画像の解析を行った。手部の三部位での波形および利便性から、今後は第三指中節骨で計測することとした。この部位で10MHzの超音波診断装置と7および5MHzのトランスデューサーを用い、骨癒合前と後の被験者において、同時に撮影した手部X線写真での癒合状態と超音波透過量の比較を行った。さらに、2本のアクリル棒の間隙を変化させ、透過波の画像および波形の検討した結果、超音波透過量と間隙量は正の相関が認められた。間隙が大きくなると特に焦点無しのトランスデューサーで高い相関が認められた。本研究の結果から、超音波を用いて非侵襲的に骨成熟度を評価できることが明らかとなった。今後の展開として、多くの被験者において測定を行い、上・下顎骨の残余成長量の予測値と実際の値を比較し、予測精度の検討を行う予定である。本研究は,超音波を用いて橈骨などの骨端軟骨(成長板)の骨化程度を,被曝を必要とせず非侵襲的に評価する手法を確立するため,超音波によって得られた波形および画像による解析結果から手部X線写真から算出される骨年齢との回帰式を求め,上・下顎骨の成長ポテンシャル(残余成長量)予測精度を調べることである.本年度は,基礎的検討としてイスラエルSunlight社の超音波による骨年齢測定装置である"BonAge"をわが国で唯一保有している獨協医科大学小児科と協力してデータ採取し検討を行った.本研究の主旨と測定にはあたっては侵襲もないことをよく説明し,同意を得たうえで超音波による測定を行った.対象は成熟度の評価が必要とされた男女合わせて37名である.測定部位は左側の橈骨および尺骨とした.そのうちの10例における測定者間誤差は0.54±0.36歳,17例における測定間誤差は,0.51±0.42歳であった.また,同時に撮影した手部X線写真を用いて,日本人標準TW2法(RUS法)およびCASMAS法により骨年齢を評価し,両者の結果と超音波法による測定結果とを比較した.その結果,超音波法とTW2法,CASMAS法との相関係数は有意であり,それぞれr=0.89,r=0.85であった.本装置は,手首関節部の骨幅と超音波伝達速度(SOS)を測定することにより,骨年齢を算出している.
KAKENHI-PROJECT-16592037
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超音波を用いた被曝のない骨年齢推定法の検討と顎骨成長ポテンシャルの予測
しかし,算出までのアルゴリズムは不明であり,日本人での評価に関しては標準化または換算式の作成が必要であると思われ,さらに測定部位についての検討も必要であると考えられた.本研究の目的は、超音波を用いて橈骨などの骨端軟骨(成長板)の骨化程度を、被曝を必要とせず非侵襲的に評価する手法を確立するため、超音波によって得られた波形および解析画像と手部X線写真から算出される骨年齢との回帰式を求め、上・下顎骨の成長ポテンシャル(残余成長量)の予測精度について検討を行うことにある。本年度は、昨年度に引き続きイスラエルSunlight社の超音波による骨年齢測定装置である"BonAge"を用いて獨協医科大学小児科と協力し、成熟度の評価が必要とされた男女合わせて70名を対象として、データの採取および検討を行った。測定部位は左側の橈骨および尺骨とした。同時に撮影した手部X線写真を用いて、日本人標準TW2法(RUS法)およびCASMAS法により骨年齢を評価し、両者の結果と超音波法による測定結果を比較した。その結果、超音波法とTW2法、CASMAS法との相関係数は有意であり、それぞれr=0.90,r=0.87であった。本装置は、手首関節部の骨幅と超音波伝達速度を(SOS)を測定することにより、骨年齢を算出している。しかし、算出までのアルゴリズムが不明であり、日本人での評価に関しては標準化または換算式の作成が必要であること、加えて測定部位についての検討も必要であると考えられた。そこで、第三中節骨、栂指末節骨、橈骨の各部位について、超音波の波形の分析を行った。今年度は成人を対象に骨化後においての検討を行ったが、さらに今後は骨の癒合する前の披験者におけるデータの分析を予定している。本研究の目的は、超音波を用いて椀骨または指骨での骨端軟骨(成長板)の骨化程度を、X線などの被曝を必要とせず非侵襲的に評価する手法を確立することである。原理として、超音波によって得られた波形および解析画像と手部X線写真から算出される骨年齢との回帰式を求めて骨成熟度を評価するものである。超音波によって骨成熟評価を行うことが可能になれば、健常小児を治療対象とすることの多い矯正歯科臨床での応用が可能になる。今年度は、超音波透過法を利用して波形および画像の解析を行った。7MHzの超音波によって、骨癒合前および癒合後の被験者の指骨における部位ごとの波形を求め、超音波速度(SOS)の測定を行った。この測定結果および利便性を考慮し、今後の検討は第三中節骨部で行うこととした。この部位の透過波の画像を得るために、超音波診断装置を用いて検討を行った。周波数は診断装置が10MHzで、トランスデューサーは7MHzおよび5MHzのものを用い、骨癒合前と後の被験者において、同時に撮影した手部X線写真での癒合状態と超音波透過量の比較を行った。さらに、間隙の量と超音波透過量との相関関係を調べるため、2本のアクリル棒の間隙を変化させ、透過波の画像および波形を得て検討を行った。また、焦点の有無による画像の違いについても比較した。間隙の大きさと超音波の透過量については相関が認められたが、間隙が小さい時には焦点有りのトランスデューサーで高い相関が認められた。逆に、間隙が広くなると焦点無しのトランスデューサーで高い相関が認められた。本研究の結果から、超音波を用いて非侵襲的に骨成熟度を評価できることが明らかとなった。今後の展開として、多くの被験者において測定を行い、上・下顎骨の残余成長量の予測値と実際の値を比較し、本手法による予測精度の検討を行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-16592037
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開発途上国における災害看護学教育を通した防災意識および行動の変容
開発途上国の看護学生の防災意識と行動変容のための災害看護学教育を明らかにし,災害看護の視点から国際協力のあり方を検討することを目的に,2年間にわたってニカラグアで調査を行った。1年目は,看護学校と看護系大学の学生171名,看護職30名から災害看護学に関する質問紙調査の回答を得た。これらの対象に,災害看護学に関する講義を実施し,看護系大学の学生及び看護職には,さらに集団災害医療訓練のためのエマルゴトレーニングシステムを用いて机上シミュレーションを行い,その後に再度質問紙調査を実施して災害意識の変化の有無を検討した。看護学生については,災害に対して何もできない,我慢しなければならない,自然の報復だ,などの受動的回答が減少するとともに,防災教育や普及が看護師の仕事であるという災害による被害の予防を意識した回答が増加していた。2年目は,講義および机上シミュレーションに加えて,地域実習を実施し,その前後に質問紙調査を行った。地域実習については,前年に教育を受けた看護系大学の3年生(15年度の対象)も加えて学生計56名,看護師34名を対象とし,地域実習に合わせて作成した質問紙を用いて調査を行うとともに,グループワークの発表内容についても分析した。その結果,地域実習の導入により,学生および看護師に共通して地域の健康問題や防災上の問題点,地域防災における看護師の役割が具体的に提示されることがわかった。2年間の調査結果から,災害看護学教育として,机上シミュレーションの導入によって,災害意識について変化がみられるとともに,地域実習により具体的な行動がイメージされることが分かり,今後の行動変容の可能性が示唆された。社会基盤が脆弱な開発途上国では,災害の被害を最小限にとどめるために地域防災を志向した災害看護学教育が有効であり,今後の国際看護協力の課題となりうると考えられた。開発途上国の看護学生の防災意識と行動変容のための災害看護学教育を明らかにし,災害看護の視点から国際協力のあり方を検討することを目的に,2年間にわたってニカラグアで調査を行った。1年目は,看護学校と看護系大学の学生171名,看護職30名から災害看護学に関する質問紙調査の回答を得た。これらの対象に,災害看護学に関する講義を実施し,看護系大学の学生及び看護職には,さらに集団災害医療訓練のためのエマルゴトレーニングシステムを用いて机上シミュレーションを行い,その後に再度質問紙調査を実施して災害意識の変化の有無を検討した。看護学生については,災害に対して何もできない,我慢しなければならない,自然の報復だ,などの受動的回答が減少するとともに,防災教育や普及が看護師の仕事であるという災害による被害の予防を意識した回答が増加していた。2年目は,講義および机上シミュレーションに加えて,地域実習を実施し,その前後に質問紙調査を行った。地域実習については,前年に教育を受けた看護系大学の3年生(15年度の対象)も加えて学生計56名,看護師34名を対象とし,地域実習に合わせて作成した質問紙を用いて調査を行うとともに,グループワークの発表内容についても分析した。その結果,地域実習の導入により,学生および看護師に共通して地域の健康問題や防災上の問題点,地域防災における看護師の役割が具体的に提示されることがわかった。2年間の調査結果から,災害看護学教育として,机上シミュレーションの導入によって,災害意識について変化がみられるとともに,地域実習により具体的な行動がイメージされることが分かり,今後の行動変容の可能性が示唆された。社会基盤が脆弱な開発途上国では,災害の被害を最小限にとどめるために地域防災を志向した災害看護学教育が有効であり,今後の国際看護協力の課題となりうると考えられた。本研究の目的は,どのような災害看護学教育を行なえば開発途上国の看護学生の防災意織と行動変容が起こるか明らかにし,災害看護の視点から国際協力のあり方を検討することにある。調査地は開発途上国であり,毎年自然災害による被害が多いニカラグアとして,研究対象はニカラグアの看護学生および看護職者とした。研究の1年目である平成15年度は同国内の看護学校と看護系大学の学生および看護職を対象として災害意識に関する質問紙調査を行い,学生171名,看護職30名から回答を得た。これらの対象に対して,災害看護学に関する講義を実施し,看護系大学の学生および看護職にはさらに集団災害医療訓練のためのエマルゴトレーニングシステムを用いて机上シミュレーションを行ない,その後に再度質問紙調査を実施して災害意織の変化の有無を検討した。看護学生については災害に対して何もできない,我慢しなければならない,自然の報復だ,などの受動的な回答が減少するとともに,防災教育や普及が看護師の仕事である,という災害による披害の予防を意織した回答が増加していた。これに対して,同国ではコミュニティに対して指導する立場にある看護職の防災教育や普及は看護師の仕事と考える率がシミュレーション実施後もあまり変動がなく,あるべき姿から考える学生と,自分自身が行っていないという現実から考える看護職との違いが示唆された。研究の2年目には,どのような教育によりさらに大きな変化が期待されるかを検討するため,地域での実習による意織と行動の変化について調査することを計画している。どのような災害看護学教育を行えば開発途上国の看護学生の防災意識と行動変容が起こるかを明らかにし,災害看護の視点から国際協力のあり方を検討することを目的に,15年度の調査に引き続き,2年目の調査を実施した。15年度と同様に調査対象地はニカラグアとし,研究対象はニカラグアの看護系大学学生と看護師とした。
KAKENHI-PROJECT-15592222
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15592222
開発途上国における災害看護学教育を通した防災意識および行動の変容
災害看護に関する教育内容は,15年度の講義および机上シミュレーションという内容に加えて,コミュニティを使用しての地域実習を実施した。講義および机上シミュレーション教育の対象は看護系大学2年生と看護師とし,これらの教育の前後に1年目の調査時に使用したものと同じ内容の質問紙を用いて調査を行った。その後に看護系大学の3年生(15年度の対象)も加えて学生計56名,看護師34名を対象に地域実習を実施し,地域実習に合わせて作成した質問紙を用いて調査を行うとともに,グループワークの発表内容についても分析した。その結果,講義や机上シミュレーションによる意識の変化だけでなく,地域実習の導入により,学生および看護師に共通して地域の健康問題や防災上の問題点,地域防災における看護師の役割が具体的に提示されることがわかった。1年目(15年度)および2年目(16年度)の調査結果から,災害看護学教育として,机上シミュレーションの導入によって,災害意識について変化がみられるとともに,地域実習により具体的な行動がイメージされることが分かり,今後の行動変容の可能性が示唆された。社会基盤が脆弱な開発途上国では,災害の被害を最小限にとどめるために地域防災を志向した災害看護学教育が有効であり,今後の国際看護協力の課題となりうると考えられた。
KAKENHI-PROJECT-15592222
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規制回避問題を中心としたリース会計制度の理論的・実証的研究
本研究は、上場企業におけるリース情報開示の実態を明らかにし、そして(脚注情報ではなく)その資産化がリース会計規制の理念に照らして重要であるのならば、制度の運用局面において、いかにして各企業の開示方法をそのように誘導するかを検討することを目的としている。そのために、研究期間中においては、まず(1)個別企業のファイナンス・リース利用実態と企業の業績および財政状況との関連、(2)個別・連結ベースそれぞれのファイナンス・リース利用実態と諸財務指標のいわゆる連単倍率との関連を検討し、ファイナンス・リース利用の財務的誘因を明らかにした。そして(1)では一般的に負債比率が高く、かつ営業実績の低調な企業がリースを利用することが明らかとなった。この結果をベースとして、諸外国におけるリース利用実態との比較を行うべく、2000年度においては海外において数回の学会発表を行い、広く意見を求め、従来会計の分野ではほとんど見受けられない、実態データに基づく個別事象ベースでの国際比較を行う。さらに、(2)についてはわが国に特徴的な財務報告制度と関連することであり、同じく2000年度に数回国内の学会発表により意見を求めた後に研究成果を公表する予定である。この結果と、非上場企業ではすでにファイナンス・リースの資産化を実際に行っている企業もあることなどを加味しながら、資産化の普及に向けての課題を議論し、その成果についても公表予定である。なお成果公表の遅れは、主としてデータ収集および整理に予想以上に時間を費やしたことによる。従来わが国では、確定決算主義の影響もあり、連結財務諸表よりも個別財務諸表の方が、制度及び情報利用者によって重視されてきた。先ごろわが国でもようやく連結財務諸表中心へと会計制度が移行したが、過去の慣習に従って経営者が意志決定を行うのであれば、統計的にも有意性を示す何かがあるはずである。一般にリースにはオフバランス効果があるといわれ、欧米等でも企業によるその性質の利用が、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの選択との関係で、実証的に明らかにされてきた。我が国では、未だファイナンス・リースの資産化は強制されておらず、かつオペレーティング・リースの利用は少なくとも上場企業においては極めて限定的である。こうした中、リースの近似的オフバランス効果を検討する対象として、連単倍率を選択し、企業が個別財務諸表を重視するならば、情報利用者に負債として捉えられるリースを、脚注レベルでも連結ベースでの開示を望むという仮説を立てた。そこで、上場全企業についてこれらに関する財務数値をデータベース化していったが、我が国の市販の財務データベースは例外なく個別ベースの数値であり、紺結ベースのものはない。また、リース情報を入手可能な市販データベースも存在していない。こうした中、未だ検証結果を提示してはいないが、こうしたデータセットの構築は未だ他で行われておらず、その意義は大きいと考える。本研究は、上場企業におけるリース情報開示の実態を明らかにし、そして(脚注情報ではなく)その資産化がリース会計規制の理念に照らして重要であるのならば、制度の運用局面において、いかにして各企業の開示方法をそのように誘導するかを検討することを目的としている。そのために、研究期間中においては、まず(1)個別企業のファイナンス・リース利用実態と企業の業績および財政状況との関連、(2)個別・連結ベースそれぞれのファイナンス・リース利用実態と諸財務指標のいわゆる連単倍率との関連を検討し、ファイナンス・リース利用の財務的誘因を明らかにした。そして(1)では一般的に負債比率が高く、かつ営業実績の低調な企業がリースを利用することが明らかとなった。この結果をベースとして、諸外国におけるリース利用実態との比較を行うべく、2000年度においては海外において数回の学会発表を行い、広く意見を求め、従来会計の分野ではほとんど見受けられない、実態データに基づく個別事象ベースでの国際比較を行う。さらに、(2)についてはわが国に特徴的な財務報告制度と関連することであり、同じく2000年度に数回国内の学会発表により意見を求めた後に研究成果を公表する予定である。この結果と、非上場企業ではすでにファイナンス・リースの資産化を実際に行っている企業もあることなどを加味しながら、資産化の普及に向けての課題を議論し、その成果についても公表予定である。なお成果公表の遅れは、主としてデータ収集および整理に予想以上に時間を費やしたことによる。
KAKENHI-PROJECT-10730066
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10730066