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ヘリウムフリーMRIのためのマグネット内蔵型安定化電源の開発 | ヘリウムを100%輸入に頼る日本ではヘリウムフリーMRI用超伝導マグネットの実現は重要な課題である。しかし、その高い運転温度のために完全な超伝導を実現出来ず、僅かに減衰する電流を補償するために非常に高価な超安定化直流外部電源が必要なる上、太いリード線からの熱侵入が冷凍機に負担をかけ、また冷凍機が止まると短時間の内に超伝導リードが焼損するなど、そのマグネットは致命的問題を抱える。本研究では、マグネット内部に大電流が収まるような、極低温・超高真空・高磁場に耐えうる外部電源システムの実現可能性を追求した。本研究ではまず、電源として使用可能なシステムにどの様なものがあるかを調査した。その結果、1990年以降、複数の試みがなされており、フラックスポンプ型電源の多くはマグネット励磁用に、熱電素子に関しては、励磁後の磁場レベル維持に有用であることが分かった。次に、電源では最も重要なパワー素子であるN型MOSFETに関して低温実験を行った。その結果、少なくとも液体窒素温度では正常に動作し、逆に素子のオン抵抗が下がり有用性が高いことが判明、当初の予想以上に使用出来る素子の選択肢が広いことが分かった。そのため我々は、当初の計画を越えてヒトMRI用超電導マグネットへの利用を想定した電源システムの要素技術開発を試みた。具体的には、MOSFETが理想ダイオードとして動作することに注目し、低オン抵抗MOSFETを用いた整流回路を開発、電磁誘導コイルや常伝導マグネットと接続し、その整流回路によりどの程度の電源安定性が得られるかを調べた。加えて、磁場安定性を高めるための磁場モニタリングシステムとして、MgH2を信号源とするNMRプローブを開発、その可能性を調査した。その結果は決して肯定的ではなかったが、MgH2の製造方法などを変えれば、可能性がまだ残っていることが示唆された。ヘリウムを100%輸入に頼る日本ではヘリウムフリーMRI用超伝導マグネットの実現は重要な課題であるが、ごく僅かな電流減衰を補償するために非常に高価な超安定化直流外部電源が必要なる上、太いリード線からの熱侵入が冷凍機に負担をかけ、また冷凍機が止まると短時間の内に超伝導リードが焼損するなど、そのマグネットは致命的問題を抱える。本研究では、マグネット内部に大電流が収まるような、極低温・超高真空・高磁場に耐えうる外部電源システムの実現可能性を追求する。本年度ではまず、電源として使用可能なシステムにどの様なものがあるかを調査した。その結果、過去にされた開発研究として、古くは90年代初頭にパワー素子を用いた超伝導マグネット内直流電源開発の試みがあり(Ise, T. et.al, 1991)、また90年代後半以降、フラックスポンプ(Oomen, MP., et al, 2005; Geng, J. 2017他)や熱電素子(Tosaka, T., 2008;山田他, 2008)を用いた高温超伝導マグネット用電源開発研究が複数見つかった。またフラックスポンプ型電源には複数の種類があり、その多くは発生できる電圧は高いが安定性に欠けるマグネット励磁用に適したものであること、逆に熱電素子に関しては、電圧は低いが安定性には期待できる、励磁後の磁場レベル維持に有用であることが分かった。その他、文献には見当たらなかったが、光電素子の電源への応用にも検討したが、低温には耐えられる可能性はあるものの、大電流に対応するには現実的ではないことが判明した。また、電源では最も重要なパワー素子であるN型MOSFETに関して、低温実験を行い、良好な結果を得た。具体的には、複数のMOSFET素子に大してテスト回路を作成し、液体窒素に浸けてその動作を確認、低温により素子が破壊されることはなく、少なくと実験及び調査の結果、少なくとも液体窒素温度であれば、電源に必要な素子は多く見つかることが判明した。おそらくこれは、今後ますます主流となる電気自動車の開発のために高温に耐えうるパワー素子の開発が進み、逆に低温領域でも動作するようになったためと推測される。加えて、発熱を抑えるために素子の低抵抗化も進んでおり、予想していた以上に素子の選択肢は広いことが分かった。これは、研究開始前に最も懸念されていた、極低温で動作する素子が見つかるかどうか、という大きな問題がほぼ解決されたことを意味しており、研究は計画以上に順調に進んでいると考えている。ヘリウムを100%輸入に頼る日本ではヘリウムフリーMRI用超伝導マグネットの実現は重要な課題である。しかし、その高い運転温度のために完全な超伝導を実現出来ず、僅かに減衰する電流を補償するために非常に高価な超安定化直流外部電源が必要なる上、太いリード線からの熱侵入が冷凍機に負担をかけ、また冷凍機が止まると短時間の内に超伝導リードが焼損するなど、そのマグネットは致命的問題を抱える。本研究では、マグネット内部に大電流が収まるような、極低温・超高真空・高磁場に耐えうる外部電源システムの実現可能性を追求した。本研究ではまず、電源として使用可能なシステムにどの様なものがあるかを調査した。その結果、1990年以降、複数の試みがなされており、フラックスポンプ型電源の多くはマグネット励磁用に、熱電素子に関しては、励磁後の磁場レベル維持に有用であることが分かった。次に、電源では最も重要なパワー素子であるN型MOSFETに関して低温実験を行った。その結果、少なくとも液体窒素温度では正常に動作し、逆に素子のオン抵抗が下がり有用性が高いことが判明、当初の予想以上に使用出来る素子の選択肢が広いことが分かった。 | KAKENHI-PROJECT-17K20106 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K20106 |
ヘリウムフリーMRIのためのマグネット内蔵型安定化電源の開発 | そのため我々は、当初の計画を越えてヒトMRI用超電導マグネットへの利用を想定した電源システムの要素技術開発を試みた。具体的には、MOSFETが理想ダイオードとして動作することに注目し、低オン抵抗MOSFETを用いた整流回路を開発、電磁誘導コイルや常伝導マグネットと接続し、その整流回路によりどの程度の電源安定性が得られるかを調べた。加えて、磁場安定性を高めるための磁場モニタリングシステムとして、MgH2を信号源とするNMRプローブを開発、その可能性を調査した。その結果は決して肯定的ではなかったが、MgH2の製造方法などを変えれば、可能性がまだ残っていることが示唆された。計画では、次年度には開発する電源の基本設計を行い、電源実現に向けた次期プロジェクトを計画立案する予定であったが、使用可能な素子が多く見つかりそうなこと、購入予定であったクライオスタットなどが他の研究期間から借りることができ、経費に余裕が出来たことから、今後、ヒトMRI用超電導マグネットへの利用を想定した簡易な電源システムを開発、小型超電導マグネットを用いた実験を試みる。開発する電源としては、一般的な電磁誘導コイルによる発電とMOSFETを用いた超低抵抗整流回路を計画している。電磁誘導コイルによる発電は、ボルトレベルの大きな電圧が期待できるため、少なくとも励磁用には使用可能であると考えている。励磁終了後の磁場レベル維持に関しては、如何に本システムで高い磁場安定性を達成できるかが最も大きな研究課題となると予想している。加えて、もし経費的にも時間的にも余力があるようなら、直流電流の安定性を充分に高めるための、磁場計測系の開発を試みる。一般的な超安定化電源では、フラックスゲート型の非接触高精度電流センサを用いて電流値を計測し、リアルタイムで電流値にフィードバックをかけるが、マグネット内電源の場合は、高磁場環境のためにフラックスゲート型電流センサが使用できない。そこで、電流値が磁場強度から推定可能なことに注目し、NMRプローブなどを用いて磁場強度を計測することにより、より高精度に電流値を推定することを試みる。(理由)本年度購入予定であったクライオスタットを、他の研究施設より無償で借りることが出来たため。(使用計画)先に述べたように、計画が想定以上に順調に進んでいるため、本プロジェクト内で予定していなかった超電導マグネットを用いた電源開発実験を行う予定である。生じた次年度経費は、その新たな実験のために使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-17K20106 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K20106 |
自家骨髄移植におけP糖蛋白関連多剤耐性細胞の効果的なpurging法の研究 | 昨年度は5μg/mlのCyAを抗癌剤に併用すると有意にCFU-GMコロニー形成を抑制することを明らかにした。骨髄のpurgingの際にコロニー形成が強く抑制されるCyA併用には臨床応用上問題があると考えられ、今年度は漢方薬によってP糖蛋白関連多剤耐性細胞の抗癌剤耐性が細胞レベルで克服できるのかどうかを検討した。【方法】K562/ADM(東京大学鶴尾隆教授より分与)のようにP糖蛋白を過剰に発現している耐性細胞株とK562のように発現していない細胞株に対し、in vitroで各種濃度のdoxorubicinと37°Cで72時間接触させ、増殖した細胞数を計測しコントロール(抗癌剤無添加)との比率をだし、増殖抑制効果を算出した。その時に小紫湖湯または十全大補湯を同時併用して、非併用時と50%細胞増殖抑制に必要な抗癌剤濃度(IC_<50>値)を比較した。【結果と考察】K562/ADMでは0.5μg/mlの小紫胡湯を加えたときのみIC_<50>値が1200ng/mlから400ng/mlに低下し、十全大補湯やG-CSFを加えたときには変化がみられなかった。またこの変化は小紫胡湯を加えてもK562親細胞では認められなかった。この現象がP糖蛋白と関連あるものなのかどうかは現在のところ不明である。これまでに漢方薬によるP糖蛋白関連の耐性克服を検討した研究はみられない。今回の結果はまだpreliminaryであり、今後再実験を経て、再現性を持ったデータを集積したいと考えている。もし小紫胡湯がP糖蛋白関連の耐性克服機能を有するとしたら、副作用はこれまでの耐性克服薬剤よりも少ないことが予想され臨床応用も期待される。昨年度は5μg/mlのCyAを抗癌剤に併用すると有意にCFU-GMコロニー形成を抑制することを明らかにした。骨髄のpurgingの際にコロニー形成が強く抑制されるCyA併用には臨床応用上問題があると考えられ、今年度は漢方薬によってP糖蛋白関連多剤耐性細胞の抗癌剤耐性が細胞レベルで克服できるのかどうかを検討した。【方法】K562/ADM(東京大学鶴尾隆教授より分与)のようにP糖蛋白を過剰に発現している耐性細胞株とK562のように発現していない細胞株に対し、in vitroで各種濃度のdoxorubicinと37°Cで72時間接触させ、増殖した細胞数を計測しコントロール(抗癌剤無添加)との比率をだし、増殖抑制効果を算出した。その時に小紫湖湯または十全大補湯を同時併用して、非併用時と50%細胞増殖抑制に必要な抗癌剤濃度(IC_<50>値)を比較した。【結果と考察】K562/ADMでは0.5μg/mlの小紫胡湯を加えたときのみIC_<50>値が1200ng/mlから400ng/mlに低下し、十全大補湯やG-CSFを加えたときには変化がみられなかった。またこの変化は小紫胡湯を加えてもK562親細胞では認められなかった。この現象がP糖蛋白と関連あるものなのかどうかは現在のところ不明である。これまでに漢方薬によるP糖蛋白関連の耐性克服を検討した研究はみられない。今回の結果はまだpreliminaryであり、今後再実験を経て、再現性を持ったデータを集積したいと考えている。もし小紫胡湯がP糖蛋白関連の耐性克服機能を有するとしたら、副作用はこれまでの耐性克服薬剤よりも少ないことが予想され臨床応用も期待される。 | KAKENHI-PROJECT-06770565 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06770565 |
セラミックス材料のナノスケール変形ダイナミクスと原子構造解析 | TEMその場ナノインデンテーション法、原子分解能STEMと理論計算を併用し,セラミックスにおける変形破壊ダイナミクスと原子構造の研究を行った。ナノインデンテーション法による4H-SiCの微細構造の変形を,TEMによりその場観察を行った.き裂先端の相変態が誘発されることをHRTEMにより観察した.電子線照射により相変態が誘起される性質を利用し、SrNbOxへナノピラーを導入する実験に行った。本研究では、透過電子顕微鏡その場ナノインデンテーション法を用いて実用機能性セラミックス材料における極微視的な変形破壊ダイナミクスのリアルタイム(動的)計測を行い、巨視的な破壊に起因する様々な動的挙動「き裂進展・転位運動・格子欠陥形成・相転移や粒界相互作用」の知見を得る。構造セラミックス材料の信頼性(強度特性、寿命予測、材質劣化、環境順応性)については実用上、最重要課題であるが未だ解決すべき問題が山積している。材料信頼性の向上の実現には、強度や変形破壊に起因するダイナミクスの素因子(発現メカニズム)を微細組織(格子欠陥,粒界構造,不純物分布)さらには原子構造や化学状態(電子状態)と関連づけて材料設計・プロセス技術を制御できるかが鍵となっている。原子・ナノ領域の極微視的「材料強度学」に至っては塑性変形機構(結晶転位論)程度であり、原子ナノレベルき裂発生からマクロレベル損傷破壊に至る変形破壊ダイナミクスの諸現象について学術と工学の両面からも十分に体系化されていない。その理由の一つは、原子・ナノオーダーでの材料の力学計測技術の欠如であった。本研究では、高精度化した透過電子顕微鏡(TEM)ピエゾ駆動ナノインデンターを用いて、実用セラミックスにおける原子ナノ変形破壊挙動をその場観察し、材料強度学への新展開「極微視的ダイナミクスの基礎的知見の導出」を目差す。モデル系として、共有結合性セラミックスである立方晶系窒化ホウ素(c-BN)結晶やイオン結合性セラミックスであるAl2O3結晶を採用した。電顕内その場ナノインデンテーション実験をSiC、c-BNおよびAl2O3結晶を用いて行い、動的な微細結晶構造の変化を捉えることに成功した。初期の変形領域では転位の動的挙動、破壊の段階領域ではクラックの形成過程や伝播挙動を原子スケールで観察にも成功した。本研究では、透過電子顕微鏡その場ナノインデンテーション法を用いて実用機能性セラミックス材料における極微視的な変形破壊ダイナミクスのリアルタイム計測を行い、巨視的な破壊に起因する様々な動的挙動「き裂進展・転位運動・格子欠陥形成・相転移や粒界相互作用」の知見を得る。セラミックス材料の信頼性については実用上、最重要課題であるが未だ解決すべき問題が山積している。材料信頼性の向上の実現には、強度や変形破壊に起因するダイナミクスの素因子を微細組織さらには原子構造や化学状態と関連づけて材料設計・プロセス技術を制御できるかが鍵となっている。原子・ナノ領域の極微視的「材料強度学」に至っては塑性変形機構程度であり、原子ナノレベルき裂発生からマクロレベル損傷破壊に至る変形破壊ダイナミクスの諸現象について学術と工学の両面からも十分に体系化されていない。その理由の一つは、原子・ナノオーダーでの材料の力学計測技術の欠如であった。本研究では、高精度化した透過電子顕微鏡ピエゾ駆動ナノインデンターを用いて、セラミックスにおける原子ナノ変形破壊挙動をその場観察し、材料強度学への新展開「極微視的ダイナミクスの基礎的知見の導出」を目差す。モデル系として、共有結合性セラミックスである立方晶系窒化ホウ素結晶やイオン結合性セラミックスであるAl2O3結晶を採用した。電顕内その場ナノインデンテーション実験をSiC、c-BNおよびAl2O3結晶を用いて行い、動的な微細結晶構造の変化を捉えることに成功した。初期の変形領域では転位の動的挙動、破壊の段階領域ではクラックの形成過程や伝播挙動を原子スケールで観察にも成功した。最先端の超高分解能走査透過型電子顕微鏡と第一原理計算手法を駆使し、ダイヤモンドと立方晶窒化ホウ素同士の接合界面の原子構造、結合メカニズムを、原子レベルで決定することに成功しました。TEMその場ナノインデンテーション法、原子分解能STEMと理論計算を併用し,セラミックスにおける変形破壊ダイナミクスと原子構造の研究を行った。ナノインデンテーション法による4H-SiCの微細構造の変形を,TEMによりその場観察を行った.き裂先端の相変態が誘発されることをHRTEMにより観察した.電子線照射により相変態が誘起される性質を利用し、SrNbOxへナノピラーを導入する実験に行った。研究計画の通り、初年度は電顕内その場ナノインデンテーション実験をSiC、c-BNおよびAl2O3結晶を用いて行い、動的な微細結晶構造の変化を捉えることに成功した。初期の変形領域では転位の動的挙動、破壊の段階領域ではクラックの形成過程や伝播挙動のを原子スケールで観察した。SiCおよびc-BN材料では、塑性変形領域は空間的にもタイムスケール的にも極めて狭く、クラックの形成・伝播が支配的であることが明らかになった。初年度の計画はおおむね順調に進展している材料工学引き続き、成功している電顕その場観察をSiC、c-BNおよびAl2O3結晶にたいして行う。さらにTiO2およびMgOセラミックスにたいしても同様の実験を行う。また、インデンテーション実験を行った試料について、Cs-STEMにより、塑性変形領域で形成された転位の原子スケールの観察および電子状態分析を行う。 | KAKENHI-PROJECT-26820288 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26820288 |
セラミックス材料のナノスケール変形ダイナミクスと原子構造解析 | 同時に、第一原理計算に基づく、電子状態計算のシミュレーションも行う。最終的に、セラミックスの塑性変形過程およびクラックの形成過程・伝播挙動の動的メカニズムを原子スケールで明らかにする。 | KAKENHI-PROJECT-26820288 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26820288 |
長時間作用型核酸医薬(リボン型デコイ)の開発と有効性の検討 | デコイ断端を環状に閉鎖したリボン型デコイは生体内での安定性が高く、NFκBとEtsをブロックするリボン型キメラデコイは、従来型のデコイでは効果のなかった腹腔内投与によって、ラット動脈瘤の進展を予防した。その主なメカニズムはマクロファージの機能の制御で、蛋白分解酵素群の分泌を有意に抑制していた。また、リボン型デコイに改良を加えたハイブリット型デコイの静脈投与ではマウス動脈瘤の縮小効果を認め、全身投与による治療法の可能性が示唆された。デコイ断端を環状に閉鎖したリボン型デコイは生体内での安定性が高く、NFκBとEtsをブロックするリボン型キメラデコイは、従来型のデコイでは効果のなかった腹腔内投与によって、ラット動脈瘤の進展を予防した。その主なメカニズムはマクロファージの機能の制御で、蛋白分解酵素群の分泌を有意に抑制していた。また、リボン型デコイに改良を加えたハイブリット型デコイの静脈投与ではマウス動脈瘤の縮小効果を認め、全身投与による治療法の可能性が示唆された。本年度の研究目的は従来の2重鎖デコイの断端を環状に閉鎖することで分解を遅らせるリボン型デコイの有効性の検討と改良型の開発である。まず動脈瘤の発症・進展に関与する転写因子NFkBとEtsに対するリボン型デコイを合成し、マクロファージ系細胞の培養実験で蛋白分解酵素であるマトリックス・メタロプロテアーゼ(MMP)の分泌抑制効果を検討した。リボン型デコイと従来型デコイは共にMMP-2とMMP-9の分泌を抑制した。さらにリボン型デコイは従来型に比べ有意に強力なMMP-9抑制効果を示した。次にリボン型デコイを使った動脈瘤の低侵襲治療法として、腹腔内投与による治療効果をラット動脈瘤モデルで検討した。ミニポンプで1週間デコイを持続投与すると、従来型デコイ群では効果がなかったが、リボン型デコイ群はコントロール群と比較して有意に動脈瘤の進展を抑制した。病理検査では弾性繊維の破壊を抑制しており、そのメカニズムの検討ではマクロファージの浸潤は抑制しないが、マクロファージが分泌するMMP-9の活性を抑制した。またその他の蛋白分解酵素であるMMP-12、カゼプシンB、カゼプシンKの蛋白発現も抑制しており、マクロファージの機能を制御していると考えられた。従来型は侵襲が伴う動脈瘤への局所投与が必要であったが、リボン型デコイは腹腔内投与で治療効果が得られ、新しい低侵襲治療法となる可能性が示された。さらに静脈内投与を目指してリボン型デコイの改良を進めている。デコイの安定性を高めるため部分的にS化を加えたリボン型デコイをマウス動脈瘤モデルに静脈内投与する実験を実施中であり、次年度もデコイの改良と効果の検討を予定している。NFkBとEtsは動脈瘤の発症・進展に強く関与している転写因子であり、デコイ療法はこれら転写因子の結合活性を阻害し治療効果を発揮する。前年度は2重鎖デコイの断端を環状に閉鎖したリボン型デコイの有効性をラット動脈瘤モデルで評価した。本年度は、このリボン型デコイをさらに改良・インテリジェント化し、臨床応用に向けた研究を進めた。まず前年度に引き続きリボン型デコイの作用メカニズムの検討を培養実験で行った。マクロファージ系細胞にデコイを導入してコラーゲン、エラスチン及び細胞外器質を結合させる酵素の合成能をRCR法で評価した。これらの成果をまとめて論文を作成し、現在投稿中である。次の実験として、これまで評価したリボン型デコイの合成方法を改良することで核酸の部分S化を行い、より効果が強く生体内で安定したデコイを作製した。この部分S化リボン型デコイの静脈投与の有効性をApoEノックアウトマウスにアンジオテンシンIIを持続皮下投与して作成するマウス腹部動脈瘤モデルで検討した。動脈瘤の形成後(アンジオテンシンII投与4週後)に1mg/Kgの部分S化リボン型デコイを1日おきに計3回静脈内投与した。投与後4週目の超音波検査では動脈瘤の縮小効果を認めたが、有意な変化ではなかった。これはデコイ治療の開始時期、投与プロトコールそして投与量が原因と考え、プロトコールを再検討中である。また動脈瘤壁での低い導入効率にも問題があると考えている。そこでデコイをインテリジェント化して構造的に安定性を高めたスペイサー型デコイや徐放性を持つナノ粒子にデコイを封入する方法を開発したので、今後これら新規デコイの有効性も検討していく予定である。動脈瘤に対する無侵襲治療法として、全身投与の可能な核酸医薬(デコイ)の研究開発を行った。これまでに動脈瘤に関与する転写因子NFκBとEtsを阻害するリボン型デコイの腹腔内投与による有効性を動物実験で確認してきたが、作用機序の詳細な検討を進めた。この結果は国際学会(International society of hypertension)で発表し、学術雑誌Molecular Therapyに掲載された。次に、リボン型デコイをベースとして生体内での安定性を高めたスペイサー型NFκBデコイとDDS機能を持ったNFκBデコイ封入ナノ粒子を新規開発したので、その有効性を検討した。デコイ封入ナノ粒子は、ヒト単球系のTHP-1細胞と血管平滑筋細胞のNFκB活性を低用量で低下させ、サイトカイン・ケモカインの産生を有意に抑制した。この細胞実験では特殊な導入方法が不要であり、生体での高い導入効率が期待された。 | KAKENHI-PROJECT-20590251 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20590251 |
長時間作用型核酸医薬(リボン型デコイ)の開発と有効性の検討 | 動物実験はApoE欠損マウスにアンジオテンシンIIを持続皮下投与して作成する動脈瘤モデルを使い、動脈瘤が形成される4週後から新規デコイの静脈投与を週1回行った。コントロール群の血管径は拡張したままだが、どちらの治療群も1週間毎に約10%の瘤径減少が観察された。また静脈内投与された新規デコイは血管外膜側と周囲組織に浸潤したマクロファージに導入されており、肝臓、腎臓そして肺にも蛍光シグナルを認めている。本研究開発ではデコイの改良によって動脈瘤の縮小効果が確認された。臨床では、動脈瘤症例が対象となるため、日常の診療で行える静脈投与によって縮小効果を持つデコイ療法の確立は大きな意義を持っている。さらに血管特異性をデコイに付与できれば、新しい治療法になると考えている。 | KAKENHI-PROJECT-20590251 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20590251 |
鳥類性染色体の遺伝子、進化と分子生態学的研究 | (1)ニワトリ卵母細胞のランプブラッシ染色体上のクロモメア(染色小粒)と反復配列ファミリーとの対応関係:ニワトリの大部分の品種ではW染色体の約65%の領域はXhoIファミリー、EcoRIファミリー反復配列からなるが、ファヨウミ(エジプト種)ではXhoIファミリー含量が約1/6であること、EcoRIファミリーには高反復型と低反復型があることを利用して、両反復配列のプローブを用いて反復回数の異なる品種および個体のランプブラッシ染色体に対して蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を行った。その結果、両反復ファミリーがそれぞれ異なったクロモメアを形成することが示された。(2)ニワトリZ染色体上のDMRT1遺伝子に関する研究:研究協力者のM.Schmid教授,I.Nanda博士(ドイツ、ヴュルツブルグ大学)はこれまでにクローニングされたニワトリZ染色体(雌雄共通の性染色体)上の遺伝子の多くが、ヒトでは9番染色体(常染色体)に存在することに注目した。特にDMRT1遺伝子は、その変異によりヒトではXY性染色体構成を持ちながら表現型が女性化することで、雄性の分化に関与することが推定されており、そのホモログがニワトリではZ染色体上にあることから、ニワトリでも雄性分化に関与するのではないかと推定されている[I.Nandaet al.Nature Genet.21 : 258-259(1999)]。我々はニワトリZ染色体上のDMRT1遺伝子のごく近傍にMHM領域と名づけたBamHI2.2kb配列が反復した部位を見いだし、この配列が雌の1本のZ染色体上では低メチル化修飾で、活発に転写され、転写されたRNAが核内の転写部位近傍のDMRT1遺伝子部位に接するように集積すること、雄の2本のZ染色体上では共に高メチル化修飾を受け、転写されないことを見いだした。このMHM-RNAの集積が雌でのDMRT1遺伝子の転写抑制に関与するのではないかと考え、このモデルを検証するべく実験を進めている。(3)ニワトリW染色体上のWpkci遺伝子の発見と機能解析:雌の5日胚のcDNAライブラリーから、雌胚特異的に発現するクローンを単離し、その塩基配列がPKCI(protein kinase C interacting protein)遺伝子のものと類似していることからWpkciと名づけた。WpkciはW染色体の非ヘテロクロマチン末端部に位置すること、ニワトリのPKCI遺伝子はZ染色体の長腕セントロメア近くに位置することがFISHにより示された。GFP-融合タンパク質としてWpkciをニワトリ胚由来の繊維芽細胞で発現させると核に局在した。雌胚中ではWpkciとPKCIがヘテロダイマーを形成して、PKCI機能を妨げることにより、雌の性分化の引き金が引かれるのではないかと考え、それを実証すべく研究を進めている。(1)ニワトリ卵母細胞のランプブラッシ染色体上のクロモメア(染色小粒)と反復配列ファミリーとの対応関係:ニワトリの大部分の品種ではW染色体の約65%の領域はXhoIファミリー、EcoRIファミリー反復配列からなるが、ファヨウミ(エジプト種)ではXhoIファミリー含量が約1/6であること、EcoRIファミリーには高反復型と低反復型があることを利用して、両反復配列のプローブを用いて反復回数の異なる品種および個体のランプブラッシ染色体に対して蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を行った。その結果、両反復ファミリーがそれぞれ異なったクロモメアを形成することが示された。(2)ニワトリZ染色体上のDMRT1遺伝子に関する研究:研究協力者のM.Schmid教授,I.Nanda博士(ドイツ、ヴュルツブルグ大学)はこれまでにクローニングされたニワトリZ染色体(雌雄共通の性染色体)上の遺伝子の多くが、ヒトでは9番染色体(常染色体)に存在することに注目した。特にDMRT1遺伝子は、その変異によりヒトではXY性染色体構成を持ちながら表現型が女性化することで、雄性の分化に関与することが推定されており、そのホモログがニワトリではZ染色体上にあることから、ニワトリでも雄性分化に関与するのではないかと推定されている[I.Nandaet al.Nature Genet.21 : 258-259(1999)]。我々はニワトリZ染色体上のDMRT1遺伝子のごく近傍にMHM領域と名づけたBamHI2.2kb配列が反復した部位を見いだし、この配列が雌の1本のZ染色体上では低メチル化修飾で、活発に転写され、転写されたRNAが核内の転写部位近傍のDMRT1遺伝子部位に接するように集積すること、雄の2本のZ染色体上では共に高メチル化修飾を受け、転写されないことを見いだした。このMHM-RNAの集積が雌でのDMRT1遺伝子の転写抑制に関与するのではないかと考え、このモデルを検証するべく実験を進めている。(3)ニワトリW染色体上のWpkci遺伝子の発見と機能解析:雌の5日胚のcDNAライブラリーから、雌胚特異的に発現するクローンを単離し、その塩基配列がPKCI(protein kinase C interacting protein)遺伝子のものと類似していることからWpkciと名づけた。WpkciはW染色体の非ヘテロクロマチン末端部に位置すること、ニワトリのPKCI遺伝子はZ染色体の長腕セントロメア近くに位置することがFISHにより示された。 | KAKENHI-PROJECT-10044194 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10044194 |
鳥類性染色体の遺伝子、進化と分子生態学的研究 | GFP-融合タンパク質としてWpkciをニワトリ胚由来の繊維芽細胞で発現させると核に局在した。雌胚中ではWpkciとPKCIがヘテロダイマーを形成して、PKCI機能を妨げることにより、雌の性分化の引き金が引かれるのではないかと考え、それを実証すべく研究を進めている。水野はニワトリのZ染色体上の遺伝子IREBP、ZOV3,Z染色体特異的なMHM領域、Z染色体長腕端部のマクロサテライト配列、W染色体上の偽遺伝子配列EE0.6、W染色体特有のXhoiI,ECoRIファミリー反復配列をクローニングし、マグレガーと共同で染色体上の局在部位を、雌の減数分裂前期のランプブラッシ染色体に対する蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)で決定し、共著論文として発表した[S.Mizuno and H.Macgregor,Cytogenet.Cell Genet.80:149-157(1998),I.Solovei et al.,Chromosome Res.6:323-327(1998)]。水野はIREBP,ZOV3,EE0.6の平胸類の相同配列をダチョウ、エミュからクローニングし、これらが深胸類と70-90%の高い配列相同性をもつことを示した。これらの平胸類の配列をプローブとしてダチョウ、エミュの有糸分裂中期染色体にFISHを行い、これらが1対の相同染色体上に局在していること、ダチョウの雌では一方の染色体上でIREBP遺伝子が欠失していることを明らかにした。これらの結果は、深胸類、平胸類の性染色体が共通の1対の相同染色体から進化してきたこと、ダチョウではW染色体の形態分化が初期段階ではあるが認められることを示すものである(Ogawa et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:4415-4418(1998)]。今後、鳥類と爬虫類の性染色体の起源を調べるため、1998年9-10月に水野(研究協力者、伊藤、寺西とともに)、ガギンスカヤがドイツ、ヴュルツブルグ大学のシュミットの研究室に集まり爬虫類でZW性染色体構成をもつヘビ類のゲノムDNAの調製と染色体標本の作製を行った。一方、ニワトリZ染色体上のMHM領域は雌でのみメチル化修飾のレベルが低く、転写されるが、雄の2本のZ染色体上では共に高メチル化で、転写は不活性である。ZZZ,ZZWの性染色体構成をもつ3倍体ニワトリのMHM領域の転写活性を調べるため水野の研究協力者、寺西は1999年3月にオーストラリアのクィーンズランド大学のピム教授の研究室へ行き、3倍体ニワトリからの組織切片調製、DNA,RNA抽出を行った。(1)ニワトリZ染色体上のDMRT1遺伝子に関する研究研究協力者のM.Schmid教授,I.Nanda博士(ドイツ、ヴェルツブルグ大学)はこれまでにクローニングされているニワトリのZ染色体(雌雄共通の性染色体)上の遺伝子の多くが、ヒトでは9番染色体(常染色体)に存在することに注目した。特にDMRT1遺伝子は、その変異によりヒトではXY性染色体構成を持ちながら表現型が女性化することで、雄性の分化に関与することが推定されており、そのホモログがニワトリではZ染色体上にあることから、ニワトリでも雄性分化に関与するのではないかと推定されている[Nature Genet.21: 258-259(1999)]。我々はニワトリZ染色体上のDMRT | KAKENHI-PROJECT-10044194 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10044194 |
人工適応型エージェントモデルのための進化計算手法の開発およびその応用研究 | 本研究では,人工適応型エージェントシステムの意思決定機構として応用可能な,Deep Neural Network (DNN)およびクラシファイアシステムの開発を行う.DNNは高いデータ認識能力から近年注目を集めており,人間の脳に似た情報処理構造を持つため,エージェントシステムにも適しており,DNNには煩雑な計算が伴い,汎用計算機での利用が難しいため,これを構造最適化することで処理を簡略化する必要がある.また,ルール群を適応的に獲得するクラシファイアシステムが離散的な環境には適しており,本研究ではこれもエージェントシステムに適した改良を行う.さらに,開発したシステムを応用したゲーム理論や電力市場に関するシミュレーションを行うことも目的とする.研究期間内に,(i)ニューラルネットワークの構造最適化手法の開発,(ii)クラシファイアシステムの改良,(iii)応用研究に関する研究成果を上げた.具体的には,(i)ではニューラルネットワークに対する構造最適化手法を拡張することで,主にDNNを対象とした探索的なニューラルネットワークの構造最適化手法を開発した.(ii)ではXCS (eXtended Classifier System)やACS (Anticipatory Classifier System)などのクラシファイアシステムに関して,主にエイリアス問題を解決することにより,人工適応型エージェントの意思決定機構として応用可能なシステムへと改良した.さらに,(iii)として電力市場に関するシミュレーション分析や構造最適化されたDNNの音声データ識別タスクへの適用研究を行っている.また,クラシファイアシステムの一種であるAnticipatory Classifier System (ACS)に関する研究についても一定の成果が得られている.さらに,機械学習の一種である粒子群最適化手法の改良や,社会ネットワーク分析や非協力ゲームへの機械学習の応用研究を行った.当初の計画では,平成28年度にはニューラルネットワークの構造最適化手法に関する研究のみを行う予定であった.研究実績で述べたとおり,平成29年度以降に行う予定であったクラシファイアシステムの改良やその応用研究についても一定の成果が得られている.人工適応型エージェントの基礎技術となる,予測的クラシファイアシステム(ACS)の改良を行った.また,Deep Neural Networkの一種であるDeep Belief Network (DBN)の構造最適化手法の開発に成功した.また,電力市場にクラシファイアシステムを応用した市場分析を行った.構造最適化したDBNの応用研究として,音声認識,高次元時系列データの高精度な処理が必要となるデータ駆動型制御への応用研究などを行っている.一方,意思決定やゲーム理論に関する研究として,意思決定者の選好構造を反映する多目的強化学習の開発や,協力ゲームにおける利得配分方法の電力市場およびサプライチェーンマネジメントへの応用研究を行っている.さらに,統計手法の一種であるトピックモデルの電力市場への応用研究を行った.当初の予定どおり,クラシファイアシステムの改良およびニューラルネットワークの構造最適化手法の開発がおおむね完了しており,ゲーム理論や電力市場への適用研究も順調に進んでいるといえる.さらに,サプライチェーンマネジメントへの適用研究や,機械学習の主な比較手法として多くの文献で扱われる,統計手法の電力市場への応用研究も行っており,十分な研究成果が得られているといえる.本研究では,人工適応型エージェントシステムの意思決定機構として応用可能な,Deep Neural Network (DNN)およびクラシファイアシステムの開発を行う.DNNは高いデータ認識能力から近年注目を集めており,人間の脳に似た情報処理構造を持つため,エージェントシステムにも適しており,DNNには煩雑な計算が伴い,汎用計算機での利用が難しいため,これを構造最適化することで処理を簡略化する必要がある.また,ルール群を適応的に獲得するクラシファイアシステムが離散的な環境には適しており,本研究ではこれもエージェントシステムに適した改良を行う.さらに,開発したシステムを応用したゲーム理論や電力市場に関するシミュレーションを行うことも目的とする.研究期間内に,(i)ニューラルネットワークの構造最適化手法の開発,(ii)クラシファイアシステムの改良,(iii)応用研究に関する研究成果を上げた.具体的には,(i)ではニューラルネットワークに対する構造最適化手法を拡張することで,主にDNNを対象とした探索的なニューラルネットワークの構造最適化手法を開発した.(ii)ではXCS (eXtended Classifier System)やACS (Anticipatory Classifier System)などのクラシファイアシステムに関して,主にエイリアス問題を解決することにより,人工適応型エージェントの意思決定機構として応用可能なシステムへと改良した.さらに,(iii)として電力市場に関するシミュレーション分析や構造最適化されたDNNの音声データ識別タスクへの適用研究を行っている.クラシファイアシステムの改良や,応用研究を計画通り進める.当初の計画ではゲーム理論や電力市場への応用を予定していたが,当初の計画以上に研究を進めることができたため,他の応用分野についても模索する.当初の研究計画通り,昨年度の研究成果に基づいた人工適応型エージェントモデルを開発し,意思決定やゲーム理論への応用研究を行う予定である.当初見積額よりも減額された物品があったことと,当初の研究計画よりも進んだため学会・論文発表が予定よりも回数が多くなったため.当初の研究計画よりも部分的に研究が進んだため学会・論文発表が予定よりも回数が多くなり,前倒し支払い請求を行ったが,当初見積額よりも減額された物品があったため結果として使用額に差が生じた.平成30年度は研究成果の発表を多く行う予定としており,論文発行や学会発表などに使用する予定.実験のための計算機およびその周辺機器の購入. | KAKENHI-PROJECT-16K16354 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K16354 |
PS-tagを用いるOne-stepタンパク質間相互作用検出システムの開発 | 本研究課題では、プロテオーム解析におけるタンパク質の機能解析の支援技術として、独自に開発したポリスチレン親和性ペプチド(PS-tag)を利用した迅速かつ高感度なタンパク質問相互作用検出システムを開発することを目的とした。リガンドタンパク質であるOASSのC末端にPS-tagを遺伝子融合したOASS-C-PS-tagを組換え大腸菌にて発現し、野生型OASSと同様な方法で精製した。また、野生型OASSの表面にPS-tagを2価性架橋剤によってランダムに標識したOASS-R-PS-tagを調製した。3種類のリガンドタンパク質のPSプレートへの固定化量、配向性、および安定性を比較した。ところ、PS-tagを融合または標識されたOASS-C-PS-tagおよびOASS-R-PS-tagは親水性PS plate上に安定かつ高密度に固定化できることが明らかとなった。さらに、Serine Acetyltransferase(SAT)との相互作用を検出したところ、OASS-C-PS-tagおよびOASS-R-PS-tagを固定化したPS plateから強いシグナルが得られた。したがって、PS-tagをリガンドタンパク質に融合または標識することでタンパク質間相互作用をin vitroで高感度に検出できることが明らかとなった。本研究課題では、プロテオーム解析におけるタンパク質の機能解析の支援技術として、独自に開発したポリスチレン親和性ペプチド(PS-tag)を利用した迅速かつ高感度なタンパク質問相互作用検出システムを開発することを目的とした。リガンドタンパク質であるOASSのC末端にPS-tagを遺伝子融合したOASS-C-PS-tagを組換え大腸菌にて発現し、野生型OASSと同様な方法で精製した。また、野生型OASSの表面にPS-tagを2価性架橋剤によってランダムに標識したOASS-R-PS-tagを調製した。3種類のリガンドタンパク質のPSプレートへの固定化量、配向性、および安定性を比較した。ところ、PS-tagを融合または標識されたOASS-C-PS-tagおよびOASS-R-PS-tagは親水性PS plate上に安定かつ高密度に固定化できることが明らかとなった。さらに、Serine Acetyltransferase(SAT)との相互作用を検出したところ、OASS-C-PS-tagおよびOASS-R-PS-tagを固定化したPS plateから強いシグナルが得られた。したがって、PS-tagをリガンドタンパク質に融合または標識することでタンパク質間相互作用をin vitroで高感度に検出できることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-19860042 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19860042 |
塩基性固体合成プロセスに基づく新しい気体透過材料の構築と温室効果ガス分離への応用 | 本研究では「分子ふるい」を可能とする機能膜材料の開発を行い,最終的には,得られる膜を用いた温室効果ガス分離システムを構築する.従来の気体分離膜材料は,透過ガスの選択性と透過性を両立させることは難しかったが,本研究では新たに剛直かつ塩基性の固体材料を設計しこれを気体分離膜材料として用いることで従来の膜材料を凌駕する新たな機能性膜を創成する.開発する新規材料には多数のヘテロ原子と多重結合を導入し,これにより塩基性かつ剛直な材料となるよう分子設計を行った.このようなコンセプトで設計された気体分離膜は特に酸性ガスである二酸化炭素の分離に有効であると考えられる.本研究では「分子ふるい」を可能とする機能膜材料の開発を行い,最終的には,得られる膜を用いた温室効果ガス分離システムを構築する.従来の気体分離膜材料は,透過ガスの選択性と透過性を両立させることは難しかったが,本研究では新たに剛直かつ塩基性の固体材料を設計しこれを気体分離膜材料として用いることで従来の膜材料を凌駕する新たな機能性膜を創成する.開発する新規材料には多数のヘテロ原子と多重結合を導入し,これにより塩基性かつ剛直な材料となるよう分子設計を行った.このようなコンセプトで設計された気体分離膜は特に酸性ガスである二酸化炭素の分離に有効であると考えられる. | KAKENHI-PROJECT-19K12387 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K12387 |
情報化時代における地理情報の利活用に関する研究―「参加型GIS」を事例に― | 平成23年度の研究活動は、地理空間情報の社会における活用に関する事例調査と空間分析を行い、その成果を国内および海外の学会で発表し、学術雑誌への投稿を行った。日本国内を対象とする調査活動は、地域安全活動への地理空間情報およびWebマップ活用を中心に研究を実施し、その成果をRGS-IBG2011にて発表した。また、過年度より継続して分析活動を行なってきた京町家GISデータベースに関する空間分析は、国内の学術雑誌への投稿と海外の論文集への寄稿を行った。両者の分析にあたっては、定量的分析とともに定性的分析も行った。地理空間情報の社会活用に関しては、英語圏における研究動向を参照し、近年の地理情報科学の大きな潮流ともなっている「ネオ地理学」と「ボランタリーな地理空間情報」に関する研究についての調査を実施した。前者については、Webマッピングツールによる地理空間情報の視覚化・情報共有に関する研究を行い、汎用的なサービスを用いて実際にサービス(『亀岡市篠町の住民がつくるWeb版安心・安全地図』『京都市明細図オーバーレイマップ』)を実装するとともに、これらWebマップを活用した実証研究を実施した。後者については、ユーザー参加型の地図作成プロジェクトであるOpenStreetMapに関する事例研究に着手し、ユーザーによって投稿された地理空間情報の時空間的な遷移について定量的に集計したほか、情報の妥当性についても検証を行った。また情報共有過程についても、OpenStreetMapの組織的・制度的側面からのアプローチに基づき整理を行った。上記の実証研究で得られたデータと成果は、地理空間情報の社会活用のあり方として考察を加えるとともに、地理空間情報科学や既存の地理学、さらには周辺領域での基礎的資料としての活用を意図した情報共有手法を確立した。平成22年度は,地理空間情報の社会における活用に関して世界的な動向を中心に研究し,その成果を展望論文として発表した.また,日本国内での実証的研究を進め,国内および海外の学会で発表した.地理空間情報の社会における活用についての調査活動は,市民参加におけるGIS活用を中心に,これまでの研究では明らかにされていなかったWebおよびこれに関連する技術やサービスを中心に,2000年以降の主に英語圏での事例を調査し展望論文としてまとめた.この論文では従来のGISを用いた取り組みにWebを併用することによって,専門知の蓄積のみならず,日常生活やまちづくりに関わる地理空間情報を効率的に収集・蓄積・活用できることが明らかとなった.論文中では,概念的な検討と共に,国内外の先行事例を詳しく検討し,今後予想される展開についても考察した.また,これらの分野で取り上げられている地理空間情報の内容として,従来のGIS研究において中心的であった定量的データのみならず,市民調査等から得られる定性的データを組み合わせて分析することで新たな知見を探索的に発見する質的GISの可能性についても検討した.現在の地理空間情報と重ね合わせ,操作しやすいインターフェースで提供されることにより,景観変遷に関する視覚的研究だけでなく,例えばまちづくりの基礎的な材料になることが期待される.これらの研究は続行中であり,平成23年度にかけて論文執筆を進める予定である.平成23年度の研究活動は、地理空間情報の社会における活用に関する事例調査と空間分析を行い、その成果を国内および海外の学会で発表し、学術雑誌への投稿を行った。日本国内を対象とする調査活動は、地域安全活動への地理空間情報およびWebマップ活用を中心に研究を実施し、その成果をRGS-IBG2011にて発表した。また、過年度より継続して分析活動を行なってきた京町家GISデータベースに関する空間分析は、国内の学術雑誌への投稿と海外の論文集への寄稿を行った。両者の分析にあたっては、定量的分析とともに定性的分析も行った。地理空間情報の社会活用に関しては、英語圏における研究動向を参照し、近年の地理情報科学の大きな潮流ともなっている「ネオ地理学」と「ボランタリーな地理空間情報」に関する研究についての調査を実施した。前者については、Webマッピングツールによる地理空間情報の視覚化・情報共有に関する研究を行い、汎用的なサービスを用いて実際にサービス(『亀岡市篠町の住民がつくるWeb版安心・安全地図』『京都市明細図オーバーレイマップ』)を実装するとともに、これらWebマップを活用した実証研究を実施した。後者については、ユーザー参加型の地図作成プロジェクトであるOpenStreetMapに関する事例研究に着手し、ユーザーによって投稿された地理空間情報の時空間的な遷移について定量的に集計したほか、情報の妥当性についても検証を行った。また情報共有過程についても、OpenStreetMapの組織的・制度的側面からのアプローチに基づき整理を行った。上記の実証研究で得られたデータと成果は、地理空間情報の社会活用のあり方として考察を加えるとともに、地理空間情報科学や既存の地理学、さらには周辺領域での基礎的資料としての活用を意図した情報共有手法を確立した。 | KAKENHI-PROJECT-10J08321 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J08321 |
電力系統状態推定の実用化に伴なう諸問題の総合的研究 | 本研究における具体的検討課題は、(1)最適観測器配置の決定、(2)動的状態推定の性能評価、(3)階層型状態推定器の構成、(4)中間母線を考慮した推定手法の開発、に大別され、それぞれの成果要旨は次の通りである。1.状態推定に際しての最適観測器配置については、従来よりの開発アルゴリズムを実規模系統に適用し、候補観測器の分散をも考慮する手法が有効なことを明らかにすると共に、観測器冗長度に関する指針を得ることができた。2.実規模系統を用い、動的推定器の詳細な性能評価を実施した結果、静的な場合と比較し、少なくとも数倍の精度向上が可能であるとの知見が得られた。3.階層構造を有する状態推定法に関しては、初めに目的協調法に基づく静的推定に対するアルゴリズムを確立したが、系統一括推定による場合と一致する結果が得られるとの、著しい特徴を有することが明らかとなった。更に、同手法の動的推定への拡張について検討を加え、様々なシミュレ-ションにより、近似的な方法となるものの開発アルゴリズムの有効性が確認された。4.精度向上の観点から不可欠と考えられていた、中間母線の考慮についても考察を加え、階層型推定器においてもその機能を有することが可能となった。最終的な検討の結果、階層型動的推定器が総合的に優れた性能を有していることが明白となった。特に、必ずしも計算機システムの並列化が必須のものではないとの知見が得られ、その有用性が一層明確になったものと考える。更に、各部分系統では小規模の推定計算で済むこととなり、観測器最適配置、推定器最適化機能に加え、異常検出・同定アルゴリズムの適用等についても、その実現が容易なものとなる。本研究における具体的検討課題は、(1)最適観測器配置の決定、(2)動的状態推定の性能評価、(3)階層型状態推定器の構成、(4)中間母線を考慮した推定手法の開発、に大別され、それぞれの成果要旨は次の通りである。1.状態推定に際しての最適観測器配置については、従来よりの開発アルゴリズムを実規模系統に適用し、候補観測器の分散をも考慮する手法が有効なことを明らかにすると共に、観測器冗長度に関する指針を得ることができた。2.実規模系統を用い、動的推定器の詳細な性能評価を実施した結果、静的な場合と比較し、少なくとも数倍の精度向上が可能であるとの知見が得られた。3.階層構造を有する状態推定法に関しては、初めに目的協調法に基づく静的推定に対するアルゴリズムを確立したが、系統一括推定による場合と一致する結果が得られるとの、著しい特徴を有することが明らかとなった。更に、同手法の動的推定への拡張について検討を加え、様々なシミュレ-ションにより、近似的な方法となるものの開発アルゴリズムの有効性が確認された。4.精度向上の観点から不可欠と考えられていた、中間母線の考慮についても考察を加え、階層型推定器においてもその機能を有することが可能となった。最終的な検討の結果、階層型動的推定器が総合的に優れた性能を有していることが明白となった。特に、必ずしも計算機システムの並列化が必須のものではないとの知見が得られ、その有用性が一層明確になったものと考える。更に、各部分系統では小規模の推定計算で済むこととなり、観測器最適配置、推定器最適化機能に加え、異常検出・同定アルゴリズムの適用等についても、その実現が容易なものとなる。本研究では,電力系統の状態推定問題に対して,各種問題解決アルゴリズムの開発と実規模系統への適用,段階構造を持つ推定器の構成と実現,動的推定の実規模系統シミュレーションに基づく性能評価,更に各機能の総合的な性能把握が中心的課題であるが,本年度の研究成果は次の通りである. 1.状態推定機能の実現に際しては,系統内で発電機・負荷を持たない母線の取り扱いがひとつの問題であった.そこで等号制約条件を付加し制約付最適化手段法を適用することにより,従来の手法に修正を加える形でアルゴリズムを完成している.シミュレーションの結果,静的推定の精度に大巾な改善がみられ,またこの方法は,特に後述する段階推定器において有効であるとの見通しが得られた.更に動的推定への拡張が課題である.2.最適観測器配置に関しては,筆者等が開発した静的推定における観測変数の推定法の特性把握を詳細に行った.その結果,推定器精度の観点からは,オフライン計算となるものの非常に有効な方法であるとの結論を得た.なお,実規模系統に対し適用可能なアルゴリズムも完成し,今後更に検討を加える計画である.また誤りデータが存在する場合の可観測性,可検出性,可同定性についてもその解析手法を開発している.3.大規模系統では,段層構造を持つ推定器が必須のものとなるが,筆者等はすでに分割協調理論のうちの目的協調法を適甲した構成法を確立している.そこでこの手法に基づくアルゴリズムを完成し,すでに確立している.そこでこの手法に基づくアルゴリズムを完成し,すでに提案されていた方法との詳細な比較によりその優れた性能が明らかになった.この段層目的推定器についても,動的推定への拡張が63年度以降の課題であったが,評価関数の分解学,理論的な側面からの基本的な検討はすでに終えている.本研究では、電力系統の状態推定問題に対して、各種問題解決アルゴリズムの開発と実規模系統への適用、階層構造を持つ推定器の構成と実現、動的推定の実規模系統シミュレーションに基づく性能評価、更に各機能の総合的な性能把握が中心的課題であるが、本年度の研究成果は次の通りである。 | KAKENHI-PROJECT-62550191 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62550191 |
電力系統状態推定の実用化に伴なう諸問題の総合的研究 | 1.状態推定機能の実現に際しての中間母線の取扱いについては、制約付最適化手法を適用し、前年度に引き続きモデル系統による詳細な検討を行った。その結果、後述する階層型推定器に対しても、中間母線の扱いを無視できないとの知見が得られ、その具体的アルゴリズムを理論的に確立した。2.最適観測器配置については、従来よりの開発アルゴリズムを実規模系統に適用し、その有効性を確認した。特に推定精度に関する指標の値を算定することにより、冗長度についての指針を得ることができ、また候補観測器の標準偏差をも考慮する手法が更に有効であることが、定量的に明らかになった。3.動的な状態推定に対しては、やはり実規模系統を用いシミュレーションを行ったが、静的推定器と比較し、一桁近く精度の向上が可能であるとの知見が得られた。しかし推定器最適化アルゴリズムについては、ランプ状の状態変動を想定しているため、最適化の結果を必ずしもそのまま採用できないとの結論となった。4.階層構造を有する推定法に関しては、前年度完成していた静的アルゴリズムの動的な場合への拡張を検討した。目的関数の分割に対しては、近似的な方法を採用しなければならないが、階層型動的状態推定器の基本的な構成方法を確立することができた。なお、階層型静的推定器については、実規模系統を用い、更に詳細にその性能を把握した。本研究では、電力系統の状態推定問題に対して、各種問題解決アルゴリズムの開発と実規模系統への適用、階層構造を持つ推定器の構成と実現、動的推定の実規模系統シミュレ-ションに基づく性能評価、更に各機能の総合的な性能把握が中心的課題であるが、本年度の研究成果は次の通りである。1.階層構造を有する推定法に関しては、前年度基本的な検討を終えていた動的階層推定アルゴリズムを完成し、実規模系統を含む様々なシミュレ-ションによりその有効性を確認した。評価関数の分割に際し、近似的な方法を採用しなければならなかったが、幾つかの仮定が妥当であることが確認された。特に計算時間に関しては、一括型動的推定の数分の一にまで削減され実用化に対し有用なものとなった。2.状態推定機能におけるいわゆる中間母線の取扱いについても、前年度一括型静的推定器に対し理論的に完成していた方法に基づき、階層型推定器、動的推定器におけるアルゴリズムを確立した。階層推定の場合には、再び近似的な手法が不可欠となったが、実規模系統を含む幾つかのモデル系統での試算の結果、推定精度向上の観点から有効であるとの結論が得られた。3.最後に電力系統状態推定実用化のための、最終的な検討を行った。前年度まで更に本年度の検討により、階層型動的推定器が総合的に優れた性能を有していることが明白となった。特に、必ずしも計算機システムの並列化が必須のものではないとの知見が得られ、その有用性が一層明確になったものと考える。更に、各部分系統では小規模の推定計算で済むこととなり、観測器最適配置、推定器最適化機能に加え、異常検出・同定アルゴリズムの適用等についても、その実現が容易なものとなる。 | KAKENHI-PROJECT-62550191 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62550191 |
火災の前駆的燃焼状況下及び鎮火後のファイヤーデブリスのニオイ測定に関する研究 | ニオイを指標とした火災感知から燃焼残渣物分析までを行う事を目的とした。ニオイの定性・定量測定そして感知には基準のニオイが必要であり、ニオイ基準に木材やプラスチックの酸化熱分解時に発生するニオイを選定した。このニオイ基準を用いて、実大燃焼時のニオイを検証した結果、火災時のニオイ変化を検知できた。燻焼燃焼や火源から離れた位置では、ニオイの変化の方が従来型の火災感知器より早い時間に検知できた。また、室内雰囲気のニオイをベースに設定しニオイ分を除去し、火災によるニオイ変化を明確に示せた。ニオイによる火災感知は、火源から遠い位置や燻焼燃焼のように緩慢に進展する火災に対して特に有効性が高い。火災時には、熱、煙、炎の他にニオイも発生する。人の五感の中でもニオイには明確な指標がないため、熱分解初期に可燃性物質から発生するニオイの質、および強度などの基礎データは、殆ど報告されていない。そこで以前より、木材やプラスチック材料の酸化熱分解時に発生するニオイの変化に関する研究を行ってきており、今年度は、実大規模燃焼実験時に発生するニオイの変化を測定した。なお、緩慢な火災では、ニオイで火災に気づいた事例が多くあることから、急激に発達する火災を想定した実験を行うこととした。燃焼実験の建物は、2.7×2.7×2.4 m(H)の室内に0.3m (H)の天井裏空間を設置した。壁は12.5mmの石膏ボード、天井は9mmの石膏ボード、床面は12mmの合板の上に3mmの化粧合板を張った。建物には、腰高窓および出入口用のドアをそれぞれ設置した。出入口ドアは19cm開いた状態とした。室内には,ソファー(1.2×0.43×0.7m (H))、コミック誌を入れた3段カラーボックス、液晶テレビを置いたテレビ台を設置した。火源は、エゾマツの3×4×30cmの角材48本を井桁に組み上げ、クリブとした。このクリブおよび床面の一部には、合計約400gの灯油を散布し、クリブ下部に着火した。部屋中央の高さ2.55m(天井裏)以外の測定点で、着火直前の0分および着火から1分間で灯油の類似度が上昇したことより、散布した灯油を検出できた。燃焼が進展すると、炭化水素系の類似度が上昇した。これまでの研究では、木材およびプラスチック系材料が酸化熱分解時には、アルデヒド系の類似度が上昇していた。しかし、本実験では、アルデヒド系の類似度の上昇は見られなかった。これは、火災拡大(燃焼)が非常に早く進み、木材の熱分解時に発生するアルデヒド系物質が発生後、短時間で熱分解や酸化したためと考えられる。(1)火災を特徴付けるニオイの選出:建物火災を対象とする際には、内装材や家具などが対象可燃物となる。そのため、一般的に販売されている、ソファー、コミック誌、カラーボックス、ディスプレイ等の生活用品である可燃物が燃焼時に発生するニオイを実規模実験により明らかにした。(2)火災と認識するニオイの定量的測定:緩慢に進展する火災では、アルデヒド系の類似度が上昇することが分かっていたが、急速に進展する火災では、アルデヒド系の類似度ではなく、炭化水素系の類似度が上昇することが分かった。(3)燃焼実験: TG-DTAやコーンカロリメータ試験装置では、緩慢に加熱される火災を対象としているため、今年は、急速に火災が進展する状況での実規模燃焼実験を行い、そこから発生するニオイガスを測定した。火災時に在館者は、ニオイの変化により火災に気づく事が多い。火災現場では、可燃性液体のニオイにより、火災原因調査の補助的な役割となる場合もある。本研究は、ニオイによる火災感知および燃焼残渣物中の可燃性液体の検出手法の開発を目的としている。本年度は、様々な物質の酸化熱分解時に発生するニオイガスを基準に採り、実規模燃焼実験におけるニオイ変化より、火災を示すニオイ基準ガスの選定を行った。燃焼残渣物中の可燃性液体は、灯油と対象として検出を試みた。(1)火災を特徴づけるニオイの選出:木材(7種類)、合成高分子材料(9種類)をそれぞれ一定昇温速度で酸化熱分解させた際のガスをにおい識別装置にて測定した。ニオイの強度が最も高い点(1)とその5分前に採取したガス(2)をそれぞれ、火災を示すニオイとして基準ガスに設定した。(2)火災と認識するニオイの定量的測定:実規模燃焼実験で採取した燃焼残渣物中の灯油を検出するため、常温、温浴による加温、200°C付近まで加熱した場合の3種類の手法を採った。その結果、加熱すると検出の可能性が高いことが分かった。(3)実規模燃焼実験:実規模燃焼実験には木造4畳半2間(出火室A室、隣室B室)を用いた。建物内には家具を設置し、床にはスタイロ畳を敷いた。A室の畳上に灯油1Lを散布後着火し、A室、鴨居(A・B室の間)、B室よりガスを採取した。基準ガスにスギ、PSを採った際、A室、B室共に火災感知器が反応する前の、着火から1分間にスギ及びPSの類似度が上昇し、木質やプラスチック材料から発生するニオイの変化が見られた。スギとPSのそれぞれの基準ガス1と2を比較すると、A室では2の方の類似度が高かったが、B室では殆ど違いは見られなかった。 | KAKENHI-PROJECT-15H02982 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H02982 |
火災の前駆的燃焼状況下及び鎮火後のファイヤーデブリスのニオイ測定に関する研究 | 着火2分後のA室は、PSの類似度が急激に上昇し、タタミの木質系材料から、ポリスチレンフォームへと燃焼・熱分解が移行したとことが分かった。(1)火災を特徴づけるニオイの選出:建物火災を対象とする際には、内装材や家具など、木質系材料から合成高分子材料まで様々な物質を対象とする必要がある。今年度は、各種材料を対象として、酸化熱分解時に発生するニオイガスを基準ガスに選定することにより、既存の悪臭防止法に定められている9種類の基準ガスよりもより明確に火災の指標となる可能性があると考え、実行した。(2)火災と認識するニオイの定量的測定:これまでの研究では、悪臭防止法に定められている9種類の基準ガスのうち、アルデヒド系のニオイに類似性が大きくなることが既に分かっている。しかしながら、酸化熱分解時にアルデヒド系物質を放出しないような合成高分子材料や炭化水素系材料では、アルデヒド系のニオイだけでは、検知することが困難となる。そのため、各種材料の酸化熱分解時のニオイガスのガス濃度を変化させて基準にとることにより、ニオイの強さを定量的に明らかにした。また、可燃性液体の検出では、燃焼残渣物を加熱することにより、可燃性液体成分を放出でき、検出できる可能性が高いことが分かった。(3)燃焼実験:昨年度は、1室で急激に進展する火災を模擬した燃焼実験を行った。今年度は、2間の実大実験を行うことにより、垂れ壁などでニオイガスが一度火災室に溜まる状態から流出していく状態のニオイ変化を実験的に明らかにした。流動距離、温度が変化しても、ニオイの質は大きく変化しないことを明らかとした。ニオイは分子規模の大きさであり、煙は分子が集合した粒子の大きさで形成されている。この事は、ニオイによる火災感知が実用化されれば、既存の熱・煙感知器よりも早い段階で火災を感知できる可能性を示唆している。本研究では、1年目に1室の燃焼拡大に伴う火災感知の状況、2年目に火災室から隣室への燃焼拡大に伴う火災感知の状況を明らかにした。本年度は、75%縮尺の一部二階建ての縮小家屋模型を用いて、その1階室内で火災が発生した際に、隣室及び2階部屋のニオイ変化、ガス濃度変化及び煙・熱感知器の感知状況を実験的に明らかにすることを目的とした。実験は、1.8m×1.8m×1.8m(4畳半部屋の75%縮尺)の模擬空間を3室(1階部分に2室、2階部分に1室)並べた配置とし、出火室(1階)で発生した煙、ガス及び煙は、垂れ壁下を通して隣室に進展し、隣室中央部に設けた開口部(階段スペースを想定)を通り、2階部分へ流れ拡散する構造とした。発生するニオイを捉えるため、実験は可燃物の種類を変えて3回行った。1回目はタオル(綿100%)、2回目はプラスチック製ゴミ箱、3回目は木材クリブをそれぞれ火源材(可燃物)とした。ニオイの解析には、ニオイ基準ガスが必要であり、木材(スギ、ヒノキ等)、プラスチック(ポリエチレン、ABS等)の酸化熱分解時に発生するガスをニオイ基準として用いた(昨年までの研究)。その結果、1回目は火源近傍に設置した煙感知器よりも15秒程度早くニオイの変化が見られた。2階天井に設置したニオイ、ガス、煙及び熱感知器は変化が見られなかった。2回目以降の実験では、1回目に行った燃焼時のニオイが付着しており、これらを除去するため実験開始前のニオイをベースに用いると、2階の熱感知器よりもニオイは早い時間で変化した。以上の事から、ニオイは流動拡散距離がのびても、早くに火災感知が可能であると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-15H02982 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H02982 |
天然物創薬を志向した生物活性天然中分子の高効率全合成 | Palau'amineの短段階合成を達成するために、昨年度はC環上にグアニジノ基を有する環化前駆体をStrecker反応により構築し、このものが強塩基処理によりトランスアザビシクロ[3.3.0]オクタン骨格(D/E環)を与えることを見出した。そこで本年度では、A,B環の基となるピロールカルボン酸部位を導入した環化前駆体でのD/E環構築に取り組んだ。同様の手法によってピロールアミドを導入した環化前駆体を10工程以内で合成した。この環化前駆体を強塩基で処理したところ、期待したD/E環の形成は示唆されたものの、即座に分解し単離することが困難であった。種々検討した結果、C環の基となるC10位のエステル部位をtert-ブチルエステルへと変更することで、D/E環が構築された環化体を単離精製できることを見出した。これにより、ABCDEF環全ての環構造を短工程で構築することが可能となった。現在、palau'amineの構造活性相関研究のため、クロル基とアミノメチル基を除去したpalau'amine誘導体を20工程以内で合成する検討を行なっている。また、palau'amineの短段階全合成を達成するための新たな触媒検討を行い、立体的にかさ高いカルボン酸部位への縮合を強力に促進する新たなDMAP誘導体の開発に成功した。さらに、本年度までに得られたpalau'amine合成の知見を利用し、ピロールの新規変換法の開発や他の天然物の全合成を達成している。以上の研究成果により、平成29年度では国内学会発表39件、国際学会発表3件、招待講演8件、原著論文4報、総説1報、著書1冊の成果を得た。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。Palau'amineの短段階合成を達成するために、CF環グアニジノ基を導入した前駆体でのD/E環構築に取り組んだ。E環に相当するシクロペンタン環上にピラゾール環を縮環させた後、Strecker反応によって含窒素4置換炭素を構築した。ついで、ピラゾリジン環上の二つの窒素にグアニジノ基を導入することで、CF環グアニジの基を導入したD/E環構築前駆体を合成した。この基質に対して強塩基を作用させると、N-N結合の開裂に続くアミドアニオンの付加により、D/E環となるトランスアザビシクロ[3.3.0]オクタン骨格を構築できた。すなわち、palau'amine合成の最大の難関とされる5,5-トランス環の構築を、予めCF環上にグアニジノ基を導入した基質で達成できた。この成果により、第一世代全合成に比べて大幅な工程数の短縮が可能となった。今後は、第一世代合成の半分以下の工程数での全合成の達成を目指す。また、Kansuinine Aの左フラグメント及び右フラグメントの合成を完了し、それらの連結にも成功した。今後は、マクロ環化の検討を行い全合成を達成する予定である。さらに、生物活性天然中分子の機能解析に必要となる蛍光分子の開発研究を行い、独自に開発した1,3a,6a-トリアザペンタレンの最適化および応用研究を展開した。これらの研究成果により、1,3a,6a-トリアザペンタレンが生物活性天然中分子の機能解析研究に有効であることを明らかにできた。以上の研究成果により、平成28年度では国内学会発表34件、国際学会発表1件、招待講演6件の成果を得た。また、原著論文としては査読付き論文7報を発表した。Palau'amineの短段階合成を達成するためには、CF環のグアニジノ基を導入した基質で、トランスアザビシクロ[3.3.0]オクタン骨格(5,5-トランス環)を構築する必要があった。現在までに、ストレッカー反応を用いることで、CF環上にグアニジノ基を導入した基質での含窒素4置換炭素の構築に成功した。この前駆体に対して、第一世代の5,5-トランス環構築反応を適用したところ、5,5-トランス環(D/E環)の構築が確認できた。これにより、palau'amine合成における最大の課題を解決することができたことから、研究はおおむね順調に進展していると判断した。また、Kansuinine Aの左フラングメントと右フラグメントの合成を達成した。また右フラグメントの合成では、更なる合成ルートの最適化を行い、大幅な工程数の削減にも成功した。それらのフラグメントの連結は円滑に進行し、残る課題は最後のマクロ環化のみとなった。以上の結果より、おおむね順調に進展していると判断できる。Palau'amineの短段階合成を達成するために、昨年度はC環上にグアニジノ基を有する環化前駆体をStrecker反応により構築し、このものが強塩基処理によりトランスアザビシクロ[3.3.0]オクタン骨格(D/E環)を与えることを見出した。そこで本年度では、A,B環の基となるピロールカルボン酸部位を導入した環化前駆体でのD/E環構築に取り組んだ。同様の手法によってピロールアミドを導入した環化前駆体を10工程以内で合成した。この環化前駆体を強塩基で処理したところ、期待したD/E環の形成は示唆されたものの、即座に分解し単離することが困難であった。 | KAKENHI-PUBLICLY-16H01156 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-16H01156 |
天然物創薬を志向した生物活性天然中分子の高効率全合成 | 種々検討した結果、C環の基となるC10位のエステル部位をtert-ブチルエステルへと変更することで、D/E環が構築された環化体を単離精製できることを見出した。これにより、ABCDEF環全ての環構造を短工程で構築することが可能となった。現在、palau'amineの構造活性相関研究のため、クロル基とアミノメチル基を除去したpalau'amine誘導体を20工程以内で合成する検討を行なっている。また、palau'amineの短段階全合成を達成するための新たな触媒検討を行い、立体的にかさ高いカルボン酸部位への縮合を強力に促進する新たなDMAP誘導体の開発に成功した。さらに、本年度までに得られたpalau'amine合成の知見を利用し、ピロールの新規変換法の開発や他の天然物の全合成を達成している。以上の研究成果により、平成29年度では国内学会発表39件、国際学会発表3件、招待講演8件、原著論文4報、総説1報、著書1冊の成果を得た。Palau'amineの第二世代合成研究では、CF環上にそれぞれグアニジノ基を導入した基質での5.5ートランス環構築に成功したことから、今後は本法を適用したpalau'amineの短段階全合成および種々の類縁体の迅速な合成を目指す。まずは、活性にあまり影響を及ぼさないと考えられるクロル基および1級アミノメチル基を除去した誘導体を合成し、このものがpalau'amineと同等の活性を有するかについて明らかにする。この誘導体に活性が認められた場合には、本誘導体の15工程以下での合成を達成する。またこれと並行して、palau'amineの類縁天然物であるStyloguanidineの初の全合成を目指す。Kansuinine Aの全合成研究では、左フラグメントと右フラグメントの連結法について更なる効率化を試みる。具体的には、マイクロリアクターを用いたカップリング反応によって、大量合成に適用可能な条件の確立を目指す。本法により十分な量のカップリング体が得られるようになれば、最後のマクロ環化反応の検討を行い全合成を達成する。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-16H01156 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-16H01156 |
アフリカとアジアにおける教育政策改革に対する国際協力の有効性に関する比較研究 | アフリカ、アジアをはじめとする途上国においては、教育開発の主要な課題が初等教育の普及から、学びの改善へと移行している。一方、国際教育協力は、成果を指標化し、途上国がこれらを達成したことを確認した後に資金提供を行う形にシフトしている。しかし、こうした政策重視の成果主義に依拠する国際教育協力は、学びの改善という課題に対して未だ有効性が確立されていない。本研究は、政策-実践-成果との間に、何が、なぜギャップとして存在し、それが埋まらないままにあるかを明らかにし、その解決のための方策として、実地の実践経験と研究成果を、制度構築とあわせて活用することの重要性をアフリカ、アジアの比較において指摘した。研究初年度として、教育分野の国際協力において包括的な教育政策に基づくプログラム型支援を実施している国についての情報をアップデートした。その結果、Education Strategic Planを通じて多数の機関が協調的に支援を行う仕組みが確立していて、日本の国際協力機構(JICA)も事業支援を行っているカンボジアを今年度の研究対象国として取り上げることとした。事前に王立プノンペン大学のチン・シッタ博士、サム・シデス博士と連絡を取り、研究のカウンターパートとして協力していただく合意を取り付けた。現地調査は6月18日から28日にかけて実施し、教育省、国際機関(ユニセフ、EU)、援助機関(世界銀行、アジア開発銀行)、大学研究者、NGOと面談し、情報収集を行い、また学校視察を行った。カンボジアの教育支援プログラムについては、継続的に情報収集を行っている。また、途上国の教育改革を支援する国際教育協力の潮流とその有効性・課題を批判的に検証したこれまでの研究代表者自身による予備的研究をまとめ、日本比較教育学会代49回大会において発表するとともに、英国において当該分野の学会として知名度の高いUKFIET(英国国際教育訓練フォーラム)主催の第12回国際教育開発会議で発表を行った。さらに途上国7カ国から10名の教育行政官を招いて実施した、研究代表者が実施責任者を務めるJICA受託研修事業において、今年度研究成果の一部を紹介し、教育協力プログラムにおける政策分析の重要性について参加者との共通理解を深めることに寄与した。初年度に続き、教育分野の国際協力において、包括的な教育政策に基づくプログラム型支援を実施している国としてネパールを選定した。ネパールは初等教育・中等教育を対象とした学校教育セクター改革プログラムを実施中である。基礎教育の無償普遍化、住民参加の促進、地方教育行政の強化などを進める改革群を、日本のJICAを含む開発援助機関の協調的支援により実施している。援助機関からの資金提供形態は従来のプロジェクト型に加え、各機関が供与する資金をまとめて一括管理するプール型が並行して行われている。プール型資金の供与は今後ますます成果重視に移行していく傾向が見られる。教育の課題は、就学状況の改善に伴い、学びの改善へと移っている。これは、現在ユネスコを中心に策定中の、教育に関する2015年以降の国際的な開発アジェンダに沿った動きでもある。山間部、僻地部が多く、民族・言語的多様性を持つネパールにとって、学びの改善は重要なテーマとなっている。これらは今日の途上国が共通して抱く課題であり、また国際協力の形態も近年の世界的潮流の特徴を持っている。これらから、ネパールの経験から得られる研究成果は、今後の効果的な国際教育協力のあり方に重要な示唆を与える事例となることが期待される。研究に当たっては、トリブバン大学のコイララ教授をはじめとする研究者チームとの協力体制を構築し、また教育省、JICA等援助機関からの効果的な支援を得ながら現地調査を遂行した。研究の中間的成果は日本比較教育学会第50回大会で発表(7月)、他の研究と統合した形で国際比較教育学会(CIES、ワシントンDC、3月)において発表し、また共著論文として発表した。さらにアジア・アフリカからの行政官を研修員として迎えたJICA受託研修事業において、これまでの研究成果を取り入れた講義内容を提供し、政策改革を促す教育分野の国際協力の有効性を検討する上での留意点を整理した。本研究は、教育政策改革を促す国際協力の実例に当たって、1資金供与条件とされる成果指標の妥当性、2政策改革と教育の質改善を繋げる施策の実態、3教育現場の知見を政策改革のプロセスに活用するための手法、について、日本の協力の関与の程度に差がみられるアフリカとアジアの事例を比較検証することを通じて、国際教育協力の有効性を高めるための具体的な方法論を提起することを目的としている。最終年度となる平成27年度は、これまでの研究成果を踏まえて、また2015年という国際開発・国際教育協力の大きな節目となる年として、教育分野を含む新たな開発枠組が策定されたことを踏まえて、当年度の研究を実施した。また、国際教育協力の新たな方法論と有効性について、国際的な教育開発イニシアティブであるGlobal Partnership for Educationの年次会合において関係者と協議した。あわせて、3年間の研究を総括する報告、論文執筆を行った。これらは、日本比較教育学会(6月)、英国国際教育訓練学会(UKFIET)(9月)での研究発表、また招待講演、基調講演として、JICA主催によるEFAグローバルモニタリングレポートシンポジウム(7月)、南部アフリカ比較歴史教育学会(10月)、アフリカ教育研究フォーラム(10月)等での発表の機会を得た。さらに、英文論文1編が著作として刊行図書に盛り込まれた。また、アフリカ、アジアから参加した教育行政官向けの教育政策分析に関わる研修の中で、研究成果を取り入れた講義、ワークショップを実施した。 | KAKENHI-PROJECT-25590039 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25590039 |
アフリカとアジアにおける教育政策改革に対する国際協力の有効性に関する比較研究 | アフリカ、アジアをはじめとする途上国においては、教育開発の主要な課題が初等教育の普及から、学びの改善へと移行している。一方、国際教育協力は、成果を指標化し、途上国がこれらを達成したことを確認した後に資金提供を行う形にシフトしている。しかし、こうした政策重視の成果主義に依拠する国際教育協力は、学びの改善という課題に対して未だ有効性が確立されていない。本研究は、政策-実践-成果との間に、何が、なぜギャップとして存在し、それが埋まらないままにあるかを明らかにし、その解決のための方策として、実地の実践経験と研究成果を、制度構築とあわせて活用することの重要性をアフリカ、アジアの比較において指摘した。研究目的では、1資金供与条件とされる成果指標の妥当性、2政策改革と教育の質改善を繋げる施策の実態、3教育現場の知見を政策改革のプロセスに活用するための手法、とについて比較検証することで、国際教育協力の有効性を高めるための具体的方法論を定期することを挙げている。過去2年間において、カンボジアおよびネパールの2カ国を事例としてこれらについて実践的な研究に取り組むことができた。国際教育協力論最終年度となる平成27年度には、アフリカの事例を取り上げ、これまでの成果と合わせて比較検討を加えつつ、研究成果の総合的なとりまとめを行う。引き続き、これまで構築してきた研究ネットワークを有効に活用し、効率的な研究調査に心がける。研究成果は国内外の学会での発表、ジャーナルへの投稿を通じて広く公開するとともに、研究の実践的成果として、国際教育協力の有効性を高める、という実効性に繋がるための手段を講じる。研究目的に照らして、国際教育協力においてプログラム型支援を実施している国の情報をアップデートした結果、初年度の事例国をカンボジアに決定した。カンボジアについては日本の援助実績、研究実績もある程度蓄積があり、協力関係の構築が比較的容易であったことが順調な進展につながっている。研究目的・研究計画に従い、教育の質的改善に向けての国際教育協力の有効性を、日本の関与のレベルが異なる国々において比較検討するため、今年度実施したカンボジア事例からの成果を踏まえ、来年度は、他の地域(南アジアあるいはアフリカ)での事例研究を行う。研究代表者はこれまでに確立されているこれら他地域の研究者・実務者とのネットワークを通じ、比較研究分析の高い効果が期待できる国を選出する。研究成果については学会・ジャーナル等における発表を行い、他の研究者・専門家からいただいた助言に基づいて、必要に応じて研究計画の修正を行い、最終年度の研究につなげる。 | KAKENHI-PROJECT-25590039 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25590039 |
真菌の先端成長因子の解明と抗真菌薬探索系の構築 | 本研究は、先端成長に必須な輸送因子を可視的に評価するスクリーニング系を構築することにより、真菌の先端成長をつかさどる輸送因子を明らかにすることを行う。具体的には、先端成長に必須な細胞壁分解酵素と緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子を融合したベクターを構築、Candida albicansに導入することにより、先端輸送の評価を行える系を構築する。構築した系における蛍光の局在を指標として、輸送に関わるタンパク質を網羅的に調査する。その中からさらにヒトの細胞の生育には影響のない因子を特定し、先端成長因子の輸送阻害という新規作用機序をもった抗真菌薬開発のための基礎的知見を得る。本研究は、先端成長に必須な輸送因子を可視的に評価するスクリーニング系を構築することにより、真菌の先端成長をつかさどる輸送因子を明らかにすることを行う。具体的には、先端成長に必須な細胞壁分解酵素と緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子を融合したベクターを構築、Candida albicansに導入することにより、先端輸送の評価を行える系を構築する。構築した系における蛍光の局在を指標として、輸送に関わるタンパク質を網羅的に調査する。その中からさらにヒトの細胞の生育には影響のない因子を特定し、先端成長因子の輸送阻害という新規作用機序をもった抗真菌薬開発のための基礎的知見を得る。 | KAKENHI-PROJECT-19K05738 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K05738 |
コミュニケーション能力を重視した国語科教育とPBLとの関係 | 1学会発表において、沖縄高専におけるPBL導入の経緯、授業実践の紹介、全学で取り組む時の問題点、これからの課題等を明らかにした。また、PBL形式の授業とコミュニケーション能力の育成についての関係性を明確にした。2大中逸雄教授(大阪産業大学)や戸倉信樹教授(鳥取環境大学)から、PBLにおけるチーム作りの重要性や学生へのアドバイスの方法についての示唆を受けた。3福田収一教授(東京都立科学技術大学)から、スタンフォード大学との共同研究において、学生がどの様に授業に参加しコミュニケーションを行っていたかを取材し、日米の学生の考え方の違いが影響していることが明確になった。4大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻で実施されている「製品開発設計演習」、知能・機能創成工学専攻で実施されている「創成工学演習」の授業を参観、担当教員の藤田教授・安田教授からPBL実施に伴う問題点等を教授していただき、沖縄高専での授業実践や研究に生かすことができた。5雑誌論文において、「PBL形式の授業がコミュニケーション能力の育成に有意義であること」「コミュニケーション能力の育成に対して社会からの要求があったこと」「PBL形式の授業におけるチーム編成上の留意点やリーダー育成に関する問題点」等を明確にした。6今後は、PBL形式の授業でコミュニケーション能力の育成をしていく場合の評価方法について考察していく予定である。1学会発表において、沖縄高専におけるPBL導入の経緯、授業実践の紹介、全学で取り組む時の問題点、これからの課題等を明らかにした。また、PBL形式の授業とコミュニケーション能力の育成についての関係性を明確にした。2大中逸雄教授(大阪産業大学)や戸倉信樹教授(鳥取環境大学)から、PBLにおけるチーム作りの重要性や学生へのアドバイスの方法についての示唆を受けた。3福田収一教授(東京都立科学技術大学)から、スタンフォード大学との共同研究において、学生がどの様に授業に参加しコミュニケーションを行っていたかを取材し、日米の学生の考え方の違いが影響していることが明確になった。4大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻で実施されている「製品開発設計演習」、知能・機能創成工学専攻で実施されている「創成工学演習」の授業を参観、担当教員の藤田教授・安田教授からPBL実施に伴う問題点等を教授していただき、沖縄高専での授業実践や研究に生かすことができた。5雑誌論文において、「PBL形式の授業がコミュニケーション能力の育成に有意義であること」「コミュニケーション能力の育成に対して社会からの要求があったこと」「PBL形式の授業におけるチーム編成上の留意点やリーダー育成に関する問題点」等を明確にした。6今後は、PBL形式の授業でコミュニケーション能力の育成をしていく場合の評価方法について考察していく予定である。課題に対する主な研究実績を列挙すると以下のようになる。1、全国大学国語教育学会で研究発表(平成16年5月30日)2、スタンフォード大学日本センターにて資料収集(7月13日)アメリカのスタンフォード大学においてPBL形式の授業に取り組み、大中逸雄氏と共同研究を実施したMr.David M.Cannonの紹介を受ける。3、大阪産業大学大学院工学研究科大中逸雄教授と研究打ち合わせ(7月14日)大阪大学・大阪産業大学において、積極的にPBL形式の授業を取り入れてきた大中氏から、コミュニケーション能力を育成するにあたっての留意事項を取材。チーム作りの重要性について示唆を受けた。4、「月刊国語教育研究」No.388に「新たな視点から国語科教育を捉え直す」を発表(8月10日)国語科教育にこれまでなかった視点として、理科系の教育方法の導入を説き、PBL形式の授業を紹介した。5、鳥取環境大学において、授業「プロジェクト研究2・4」の参観、戸倉信樹教授と研究打ち合せ(1月20・27日)実際の授業を参観することで、教員がどのようにチームへのアドバイスをすべきかを明確にできた。6、東京都立科学技術大学福田収一教授と研究打ち合せ(2月14日)東京都立科学技術大学とスタンフォード大学との共同研究で、学生がどの様に授業に参加しコミュニケーションを行っていたかを取材、日米の学生の考え方の違いを克服することの重要性が指摘された。7、教育実践について沖縄工業高等専門学校の国語の授業における実践により、コミュニケーション能力の育成のためには、チーム作り・リーダー育成の重要性が明らかになりつつある。課題に対する主な研究実績を列挙すると以下のようになる。1、京都女子大学宗教・文化研究所の「研究紀要」に、「表現領域への一考察--社会学的見地から」という論文を発表した。(雑誌は平成17年3月発行となっているが、実際の発行が5月以降になったため、前年度の「研究実績」「研究発表」には入れていなかった。本年度の欄に記入させていただく。)コミュニケーション能力の育成に対する社会からの影響を、雑誌「月刊Keidanren」の巻頭言を取り上げることで明らかにした。2、雑誌「高専教育」に「PBL形式を導入した国語科の授業について」という論文を発表、PBL形式を導入した国語の授業実践の紹介とその留意点を明らかにした。特に、チーム編成上の留意点やリーダー育成に関する問題点に言及した。3、平成17年度九州沖縄地区国立工業高等専門学校教員研究集会において、「沖縄高専におけるPBL教育について」と題する特別講演を実施、沖縄高専におけるPBL導入の経緯、授業実践の紹介、全学で取り組む時の問題点、これからの課題等を明らかにした。なお、講演の内容を文章化し報告集にまとめた。 | KAKENHI-PROJECT-16530613 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16530613 |
コミュニケーション能力を重視した国語科教育とPBLとの関係 | 4、大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻で実施されている「製品開発設計演習」の授業を参観、担当教員の藤田教授からPBL実施に伴う問題点等を教授していただき、沖縄高専での授業実践や研究に生かした。5、大阪大学大学院工学研究科知能・機能創成工学専攻で実施されている「創成工学演習」の授業を参観、担当教員の安田教授からPBL実施に伴う問題点等を教授していただき、沖縄高専での授業実践や研究に生かした。 | KAKENHI-PROJECT-16530613 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16530613 |
中耳真珠腫上皮進展におけるランゲルハンス細胞とサイトカインの関与について | 真珠腫上皮の増殖機序におけるサイトカイン、成長因子、その受容体が関与している可能性について調査した。ラットランゲルハンス細胞培養上清を培養表皮細胞に添加した実験では培養表皮細胞の増殖が促進され、培養上清の蛋白分析(Western blotting法)においても、抗マウスIL-1α抗体に反応する蛋白を17kDaに認めたことから、この増殖因子がIL-1αである可能性が示唆された。しかし臨床的検討においてはIL-1aは骨破壊の程度や真珠腫の進展度とは相関せず、上皮下の肉芽の存在に影響されていると云う結果を得た。免疫染色は抗IL-1α抗体、抗TGF-αを用いて行ったが、抗IL-1α抗体では10例中5例に真珠腫上皮の全層にわたって淡く染色され、基底膜付近に強く染色がみられた。また上皮下組織では単球系細胞に染色がみられた。EGF-receptorを受容体とするTGF-αに対する、抗TGF-α抗体では正常皮膚に比べてやや上皮層全体が染色されたものの、有意な差は認められなかった。in situhybridiatonによるEGF mRNAの局在を調べた結果、正常外耳道皮膚において6例中1例にのみ基底細胞層にシグナルを認めたに過ぎなかった。一方真珠腫上皮においては10例中5例において基底細胞層に沿ってシグナルが発現しているのが観察された。EGF-receptor mRNAのシグナルは正常外耳道皮膚においても6例中5例に基底細胞層に発現していたが、真珠腫上皮においては10例全例に、しかも上皮全層にわたって強いシグナルの発現が観察された。上皮層の中でも、とりわけ基底細胞層、傍基底細胞層には強く発現していた。真珠腫上皮の増殖発育機序にはIL-1αやEGF、TGF-αなどリガンドの関与が考えられるが、これらリガンドが過剰に産生されているという所見は得られなかった。むしろそれ以上に重要な因子として、EGF-receptor mRNAの発現が過剰に上皮全層にわたって認められることから、EGF-rceptorの発現様式の違いによることが真珠腫の特徴的な組織学的病態を形作っている可能性が示唆された。真珠腫上皮の増殖機序におけるサイトカイン、成長因子、その受容体が関与している可能性について調査した。ラットランゲルハンス細胞培養上清を培養表皮細胞に添加した実験では培養表皮細胞の増殖が促進され、培養上清の蛋白分析(Western blotting法)においても、抗マウスIL-1α抗体に反応する蛋白を17kDaに認めたことから、この増殖因子がIL-1αである可能性が示唆された。しかし臨床的検討においてはIL-1aは骨破壊の程度や真珠腫の進展度とは相関せず、上皮下の肉芽の存在に影響されていると云う結果を得た。免疫染色は抗IL-1α抗体、抗TGF-αを用いて行ったが、抗IL-1α抗体では10例中5例に真珠腫上皮の全層にわたって淡く染色され、基底膜付近に強く染色がみられた。また上皮下組織では単球系細胞に染色がみられた。EGF-receptorを受容体とするTGF-αに対する、抗TGF-α抗体では正常皮膚に比べてやや上皮層全体が染色されたものの、有意な差は認められなかった。in situhybridiatonによるEGF mRNAの局在を調べた結果、正常外耳道皮膚において6例中1例にのみ基底細胞層にシグナルを認めたに過ぎなかった。一方真珠腫上皮においては10例中5例において基底細胞層に沿ってシグナルが発現しているのが観察された。EGF-receptor mRNAのシグナルは正常外耳道皮膚においても6例中5例に基底細胞層に発現していたが、真珠腫上皮においては10例全例に、しかも上皮全層にわたって強いシグナルの発現が観察された。上皮層の中でも、とりわけ基底細胞層、傍基底細胞層には強く発現していた。真珠腫上皮の増殖発育機序にはIL-1αやEGF、TGF-αなどリガンドの関与が考えられるが、これらリガンドが過剰に産生されているという所見は得られなかった。むしろそれ以上に重要な因子として、EGF-receptor mRNAの発現が過剰に上皮全層にわたって認められることから、EGF-rceptorの発現様式の違いによることが真珠腫の特徴的な組織学的病態を形作っている可能性が示唆された。臨床的にヒト中耳真珠腫の特徴である上皮細胞の旺盛な分裂像とケラチンデブリの堆積,更に骨破壊の中で本研究では真珠腫上皮の分裂と分化におけるランゲルハンス細胞(LC細胞)とサイトカインの関与についての研究を目的とした。抗S-100タンパク抗体を利用した免疫組織学的検索によりヒト中耳真珠腫10症例の上皮内および上皮下にLC細胞の存在を確認したが、諸家の報告に比べて陽性例は少なく、5例に多数のLC細胞を認めたが、残りの5例には有為な増加は認めなかった。これは個々の症例の炎症の程度に依存するものであることと結論された。新生児ラットの上皮より得られたLC細胞を培養し、培養上清を得た。これをあらかじめ培養したラット表皮細胞に添加してDNA合成能をトリチュームサイミヂンの取り込み量によって、蛋白合成能をトリチュームヒスチジンの取り込みによって測定した。また表皮細胞の終末分化についての測定にはトリチュームピュトレシンを添加し測定した。DNA合成能については非添加群に比べ約2倍になったものの、蛋白合成能については変化は見られなかった。トリチュームピュトレシンの取り込みは添加群の方が多く測定された。 | KAKENHI-PROJECT-04671052 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04671052 |
中耳真珠腫上皮進展におけるランゲルハンス細胞とサイトカインの関与について | このLC細胞の培養上清をSDS-PAGEならびにWestern Blotting法にて蛋白分析を行なった結果インターロイキン1に相当する17Kdの部位に抗インターロイキン1α抗体に陽性なバンドを認めた。(まとめ)炎症や免疫反応に関与するLC細胞の表皮細胞に及ぼす影響について研究した。その結果LC細胞の培養上清は表皮細胞のDNA合成と終末分化を促進した。その培養上清にはインターロイキン1αが含まれており、その関与が示唆された。中耳真珠腫におけるケラチンデブリの堆積や骨破壊にはランゲルハンス細胞を介したインターロイキン1の影響が考えられる。臨床病態における中耳真珠腫とTGFaの関連について免疫組織学的検索により真珠腫組織におけるTGF-aの存在を確認した。一次抗体としてマウス抗ヒトTGF-aモノクローナル抗体(1:100)(Oncogean Science,USA)を反応させ、次いでストレプトアビジンキット(ヒストファイン)を用い、発色にはDABを使用した。鼓室形成術が行われた中耳真珠腫症例10例を対象とした。5′末端にビオチンラベルしたオリゴヌクレオチドDNAプローブ(40塩基)を各々mRNA EGF,mRNA EGF-receptorに対し製作されたものを使用した。各々プローブの濃度は260ng/mlとした。結果抗TGF-a抗体を用いた免疫染色では正常外耳道皮膚、真珠腫上皮共に顆粒層が他の層に比べて濃染したものの両者の染色性の強い差は認められなかった。EGFmRNAの局在を調べた結果、正常外耳道皮膚において6例中1例にのみ基底細胞層にシグナルを認めたに過ぎなかった。一方真珠腫上皮においては10例中5例において基底細胞層に沿ってシグナルが発現しているのが観察された。EGF-rceptor mRNAのシグナルは正常外耳道皮膚においても6例中5例に基底細胞層に発現していたが、真珠腫上皮においては10例全例に、しかも上皮全層にわたって強いシグナルの発現が観察された。上皮層の中でも、とりわけ基底細胞層、傍基底細胞層には強く発現していた。これらの結果からは、真珠腫上皮内にはEGFやTGF-aなどが正常と比較して異常に存在しているという事はないことが確認されたため、上皮進展にはリガンドの強い刺激による促進作用が影響しているというよりも、受容体の異常な発現が関与している可能性が強く示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-04671052 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04671052 |
空間データ品質評価システムの構築とその適用 | 昨年度までは,本来同一であるべき領域分割図データ間における名称属性,位相構造,空間解像度,境界線形状,境界線位置の相違を半自動的に検出することができ,また,空間解像度および境界線形状を扱う上で,フーリエ変換を利用していることを大きな特徴とするコンピュータシステムの開発を行った。今年度は,まず,このコンピュータシステムを利用し,国土地理院および総務庁統計局によって作成された,東京23区の町丁目界における相違違出という実証的研究を行った。その結果,・総務庁統計局によって作成されたデータに位相構造の相違が多く見られる・北区,文京区,新宿区,葛飾区に関しては,空間解像度あるいは境界線形状に関する不一致が,他の区と比べて顕著に存在している。・すべての区において,程度はごく微少であるが,同一の向きに回転しているというずれが見られる・葛飾区,渋谷区,江東区,大田区,台東区,中央区,品川区に関しては,町丁目界全体が,平行移動的にずれているなど,これら二つの異なった主体によって作成された領域分割図データの間には,無視し得ない相違が存在しているという結果を得た。次に,これらの結果をとりまとめ,地理情報システム学会,および,GIScience2002(地理情報科学分野における最大の審査付き国際学術集会)において発表を行った。これらの発表時における質疑・討論より,本研究で提案してきた手法の異なる二時点において取得される同一地域・同一主題のデータの更新への応用,空間解像度を扱う上でのフーリエ変換以外の手法の利用など,今後進めていくべき研究課題に関する重要な示唆を得た。本年度においては,まず,本来同一であるべきポリゴンデータに生ずる,名称属性,位相構造,境界線形状,境界線位置に関する不一致を検出し,それらの程度を評価する手続きに関する理論的研究を進めた.この手続きのアウトラインについては,既に,学術誌「GIS-理論と応用」において,研究代表者らによって公表されているが,そこにおいて考慮外となっていた問題点を,ポリゴン間の位相構造に基づく評価対象境界線のペアの抽出方法などに関して見出した.次に,計算の高速化・評価結果の安定化など,この手続きの計算機上への実装を行う上での重要な諸パラメータを,テストデータに対する数値実験結果から経験的に導いた.その後,上の結果を踏まえ,C言語および既存GISソフトウェアArc/Info用マクロ言語(AML, Arc Macro Language)を用い,上の手続きを実装した対話的なコンピュータシステムの開発を行った.この開発されたシステムに関しては,その仕様・操作法をまとめ,東京大学空間情報科学研究センターより,ディスカッションペーパー(増山ら,2002)を公表している.このシステムに関しては,東京23区内の二つの区(世田谷区,新宿区)における町丁目界データ(数値地図,センサスマッピングシステムデータ)を題材とし,その試験的適用を行った.その結果,これらデータ間に存在している相違は,境界線形状・位置に関しても,また,位相構造に関しても,決して無視し得ないものであるという知見を得た.今年度は,実証的評価の対象地域を拡大し,また,そこで得られた成果の学会発表を行っていく予定である.昨年度までは,本来同一であるべき領域分割図データ間における名称属性,位相構造,空間解像度,境界線形状,境界線位置の相違を半自動的に検出することができ,また,空間解像度および境界線形状を扱う上で,フーリエ変換を利用していることを大きな特徴とするコンピュータシステムの開発を行った。今年度は,まず,このコンピュータシステムを利用し,国土地理院および総務庁統計局によって作成された,東京23区の町丁目界における相違違出という実証的研究を行った。その結果,・総務庁統計局によって作成されたデータに位相構造の相違が多く見られる・北区,文京区,新宿区,葛飾区に関しては,空間解像度あるいは境界線形状に関する不一致が,他の区と比べて顕著に存在している。・すべての区において,程度はごく微少であるが,同一の向きに回転しているというずれが見られる・葛飾区,渋谷区,江東区,大田区,台東区,中央区,品川区に関しては,町丁目界全体が,平行移動的にずれているなど,これら二つの異なった主体によって作成された領域分割図データの間には,無視し得ない相違が存在しているという結果を得た。次に,これらの結果をとりまとめ,地理情報システム学会,および,GIScience2002(地理情報科学分野における最大の審査付き国際学術集会)において発表を行った。これらの発表時における質疑・討論より,本研究で提案してきた手法の異なる二時点において取得される同一地域・同一主題のデータの更新への応用,空間解像度を扱う上でのフーリエ変換以外の手法の利用など,今後進めていくべき研究課題に関する重要な示唆を得た。 | KAKENHI-PROJECT-13780354 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13780354 |
咬合性外傷を伴う歯周炎の歯槽骨吸収に対する薬物療法の可能性を探る | 歯周炎に罹患している歯に過度な咬合力がかかると急速に歯槽骨吸収を引き起こすと考えられているが、そのメカニズムはいまだ不明な点が多い。そこで本研究では骨芽細胞に発現するメカニカルストレス応答性イオンチャネルTRPV4に着目し、炎症条件下でのメカニカルストレスによる歯槽骨吸収の分子メカニズムの解明と治療法の確立を目的とした。歯周炎に罹患している歯に過度な咬合力がかかると急速に歯槽骨吸収を引き起こすと考えられているが、そのメカニズムはいまだ不明な点が多い。そこで本研究では骨芽細胞に発現するメカニカルストレス応答性イオンチャネルTRPV4に着目し、炎症条件下でのメカニカルストレスによる歯槽骨吸収の分子メカニズムの解明と治療法の確立を目的とした。 | KAKENHI-PROJECT-19K19006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K19006 |
恐慌性障害患者の脳内乳酸に関する研究‐Functional ^1H‐MRS(磁気共鳴スペクトロスコピー)による測定‐ | 平成7年度我々は、脳内に存在する乳酸を直接生化学的に測定できる唯一の非侵襲的方法であり、かつ近年臨床応用が急速に進んできている^1H-MRS(磁気共鳴スペクトロスコピー)を用いて恐慌性障害患者及び正常被検者における脳内乳酸濃度を調べ、更に光刺激を用い視覚皮質を賦活化させることによって、両群における後頭葉領域の乳酸をin vivoで継時的測定し、脳内乳酸の産生及び代謝機構の障害の有無について検討を加える予定であった。そのためまず光刺激装置を自作にて作成し、正常被検者に関して、^1H-MRSを用い脳内乳酸の検出を行った。しかし、脳内乳酸の検出に個体差があり、かつ我々と同じ結果となったとする報告が出ていることから、^1H-MRSを用いた脳内乳酸の検出をあきらめ、^<31>P-MRSを用いて、光刺激前後のクレアチンリン酸(PCr)及び脳内pHの変化を検討することに修正した。そのため本年度は正常被検者のみの測定となった。結果は、光刺激によって、PCrは低下し、脳内pHは上昇することがわかった。以上より、光刺激のよって視覚皮質が活性化され、エネルギーが消費されることが確認された。更に、光刺激によって生じる乳酸の生成による酸の産生よりも、Na/Hアンチポートの活性化による細胞内pHの上昇の効果の方が大きいために、細胞内pHが上昇することがわかった。これらの結果は、これまでに報告されたものが1つにかなく価値のあるものと思われる。今後は、恐慌性障害患者においても同様の検討をしていく予定である。平成7年度我々は、脳内に存在する乳酸を直接生化学的に測定できる唯一の非侵襲的方法であり、かつ近年臨床応用が急速に進んできている^1H-MRS(磁気共鳴スペクトロスコピー)を用いて恐慌性障害患者及び正常被検者における脳内乳酸濃度を調べ、更に光刺激を用い視覚皮質を賦活化させることによって、両群における後頭葉領域の乳酸をin vivoで継時的測定し、脳内乳酸の産生及び代謝機構の障害の有無について検討を加える予定であった。そのためまず光刺激装置を自作にて作成し、正常被検者に関して、^1H-MRSを用い脳内乳酸の検出を行った。しかし、脳内乳酸の検出に個体差があり、かつ我々と同じ結果となったとする報告が出ていることから、^1H-MRSを用いた脳内乳酸の検出をあきらめ、^<31>P-MRSを用いて、光刺激前後のクレアチンリン酸(PCr)及び脳内pHの変化を検討することに修正した。そのため本年度は正常被検者のみの測定となった。結果は、光刺激によって、PCrは低下し、脳内pHは上昇することがわかった。以上より、光刺激のよって視覚皮質が活性化され、エネルギーが消費されることが確認された。更に、光刺激によって生じる乳酸の生成による酸の産生よりも、Na/Hアンチポートの活性化による細胞内pHの上昇の効果の方が大きいために、細胞内pHが上昇することがわかった。これらの結果は、これまでに報告されたものが1つにかなく価値のあるものと思われる。今後は、恐慌性障害患者においても同様の検討をしていく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-07770780 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07770780 |
ドーパミンの非伝達物質機能・サル大脳皮質のシナプス形成維持に果たす役割 | ドーパミンの受容体拮抗薬をラットに投与するとドーパミン線維が唯一分布する前頭前野でシナプス数が減少することが確かめられている。大脳皮質でのドーパミン線維はヒトやサルで著しく発達しているので、ドーパミン受容体拮抗薬の投与により感受性がラットなどとは異なる事が推測された。実際、生後一年のサルではセレネース体重1キログラム当たり0.5mgでは激しい錐体外路症状を呈した。そのため、それ以降の実験では極量を0.1mgとした。サルは実験動物としては貴重であり得がたいので、単に電子顕微鏡での観察以外に受容体結合実験などの研究にも材料として利用するために、半側をホルマリン固定、他側をドライアイスで凍結した。ホルマリン固定からのシナプスの定量化にはリンタングステン酸によるシナプス膜肥厚の観察が必要であり、この技術の改良を行い、ほぼ満足する結果を得ている。さらに、サル大脳皮質は厚さが5ミリにもおよび、直径3ミリのメッシュである通常の電子顕微鏡では一枚の超薄切切片としては観察が不可能である。従って、直径7ミリのメッシュが使えるLEM2000超顕微鏡を使用した。また5ミリの超薄切切片は作製が困難であったが薄切技術の改良に努め、フォルムバ-ル膜を張った7ミリメッシュに積載が可能になった。このようにして現在まで生後一年のサル4頭と生後10年のサル6頭で標本を作製し、シナプスの定量化を行った。その結果前頭前野でも眼窩前頭野といった辺縁系に属する大脳皮質ではドーパミン受容体拮抗薬によるシナプスの減少は観察されなかった。しかし他の部位、とりわけ前頭葉ではシナップス数の減少か認められた。ドーパミンの非伝達物質機能をサル大脳皮質で調べる準備段階としてラットの大脳皮質で唯一ドーパミンを有する前頭前野で以下の実験を行った。ドーパミンD1とD2受容体拮抗薬を投与して前頭前野でシナップス密度変化を定量化した。その結果、前頭前野の部位によって異なるシナップス密度の変化を記録した。即ち前頭前野の部位によりドーパミンの異なるシナップス維持効果が推測された。前頭前野でのドーパミンの異なるシナップス維持効果がサルでも見られるかにかんして現在検討を行っている。また現在大脳皮質ニューロンの細胞体のモンタージュを作成し、胞体に接触するシナップスの特に抑制性と考えられる対称性シナップスの変化を検討中である。ラット前頭前野でのモノアミンによるシナップス維持効果をドーパミンと比べるためにセロトニン、ノルアドレナアリンについても検討したが、結果は意外であった。セロトニンによるシナップスの形成維持効果は生後6週の体知覚領野では大きく、1週間セロトニンをなくすとシナップス密度は30-50%低下する。しかし前頭前野ではセロトニンの除去を行ってもスナップス密度に変化はない。即ち、前頭前野ではシナップスの維持にドーパミンがより大きく関わっていることが示唆された。ノルアドレナリンをなくすとシナップス密度が20数パーセント上昇するが、これはノルアドレナリンによるドーパミンへの抑制作用がなくなったためであると考えられる。今後はドーパミンによるシナップス形成維持効果の前頭前野における部位別の機構を更に詳細に検討したい。また電子顕微鏡に代わるシナップス密度の定量法をシナップス関連蛋白により検討したい。ドーパミンの受容体拮抗薬をラットに投与するとドーパミン線維が唯一分布する前頭前野でシナプス数が減少することが確かめられている。大脳皮質でのドーパミン線維はヒトやサルで著しく発達しているので、ドーパミン受容体拮抗薬の投与により感受性がラットなどとは異なる事が推測された。実際、生後一年のサルではセレネース体重1キログラム当たり0.5mgでは激しい錐体外路症状を呈した。そのため、それ以降の実験では極量を0.1mgとした。サルは実験動物としては貴重であり得がたいので、単に電子顕微鏡での観察以外に受容体結合実験などの研究にも材料として利用するために、半側をホルマリン固定、他側をドライアイスで凍結した。ホルマリン固定からのシナプスの定量化にはリンタングステン酸によるシナプス膜肥厚の観察が必要であり、この技術の改良を行い、ほぼ満足する結果を得ている。さらに、サル大脳皮質は厚さが5ミリにもおよび、直径3ミリのメッシュである通常の電子顕微鏡では一枚の超薄切切片としては観察が不可能である。従って、直径7ミリのメッシュが使えるLEM2000超顕微鏡を使用した。また5ミリの超薄切切片は作製が困難であったが薄切技術の改良に努め、フォルムバ-ル膜を張った7ミリメッシュに積載が可能になった。このようにして現在まで生後一年のサル4頭と生後10年のサル6頭で標本を作製し、シナプスの定量化を行った。その結果前頭前野でも眼窩前頭野といった辺縁系に属する大脳皮質ではドーパミン受容体拮抗薬によるシナプスの減少は観察されなかった。しかし他の部位、とりわけ前頭葉ではシナップス数の減少か認められた。 | KAKENHI-PROJECT-08878140 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08878140 |
認知症高齢がん患者のがん疼痛と倦怠感に関する症状アセスメントモデルの構築 | 治療が優先されがちな急性期病院において、身体状態や疾患だけでなく、身体機能や精神心理機能、社会機能を含めた総合的なアセスメントに基づく看護支援は喫緊の課題である。本研究では、卓越した看護実践および専門分野におけるチーム医療の実践を伝える役割モデルとなる専門看護師の知を基に、科学的根拠および有効な方法論を抽出し、治療を受ける認知症高齢がん患者に対する疼痛と倦怠感における包括的な症状アセスメントモデルの構築を目指す。治療が優先されがちな急性期病院において、身体状態や疾患だけでなく、身体機能や精神心理機能、社会機能を含めた総合的なアセスメントに基づく看護支援は喫緊の課題である。本研究では、卓越した看護実践および専門分野におけるチーム医療の実践を伝える役割モデルとなる専門看護師の知を基に、科学的根拠および有効な方法論を抽出し、治療を受ける認知症高齢がん患者に対する疼痛と倦怠感における包括的な症状アセスメントモデルの構築を目指す。 | KAKENHI-PROJECT-19K11248 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K11248 |
植物の成長制御における膨圧の役割 | 本研究の目的は膨圧変化が成長制御の一つの基本的な機構として働いているかを解明することにある。本年度は、前年度の研究を進展させて、エンドウ芽ばえの成長中の茎(第3節間)から単離したプロトプラストの体積に対するオーキシンの作用を解析した。まず、表皮組織とその内側組織から分けてプロトプラストを分離することによって、両プロトプラストともIAAに反応して膨潤することを明らかにした。濃度-反応曲線の解析から、IAAによる表皮組織プロトプラストの膨潤反応には濃度依存性の異なる2つの反応が存在すること、合成オーキシンのNAAはそのうちの一方だけに有効であることが示唆された。また、IAAに対する感度は表皮組織プロトプラストより内部組織プロトプラストの方が高いことが示された。さらに、内側組織プロトプラストはIAAで膨潤するが、NAAではまったく膨潤しないことを見出した。このことは、内側組織プロトプラストには表皮組織プロトプラスがもつ2つの反応のうち一方だけが関与し、それにはNAAが無効であることを示唆している。オーキシン結合タンパク質1(ABP1)の抗体を用いることによって、ABP1はIAAによって誘導される2つの膨潤反応のうち、少なくとも一方にオーキシン受容体として関与していることを証明することができた。現在、同抗体を用いて、NAA非感受性の反応にもABP1が受容体として関与しているかを明らかにする実験を行っている。本研究から、内生オーキシンのIAAは内側組織の膨圧を高めて、組織張力の維持に働いている可能性が、オーキシンの一つの働きとして浮上してきた。本研究の目的は膨圧変化が成長制御の一つの基本的な機構として働いているかを解明することにある。本年度は主にプロトプラストを用いた研究を行った。まず、インゲンマメ葉枕を用いた研究を進展させ、ABAはイオンの放出を促してプロトプラストの収縮反応を誘導すること、この反応において陰イオンチャンネルが重要な役割を果たしていること、一方、オーキシン(IAA)はイオンの取り込みを促してプロトプラストの膨潤反応を誘導することを明らかにした。これまで得られた結果を論文にまとめた(投稿、審査中)。次に、エンドウの茎(表皮組織)から単離したプロトプラストを用いてIAAの作用を調べ、葉枕のプロトプラストと同様にIAAに反応して膨潤することを明らかにした。この結果から、IAAによる膨潤反応はIAAの成長促進作用に関与していると考えられる。また、得られた結果は膨圧の変化によって成長調節が起こるという仮説を支持している。更に、IAAによる膨潤反応は外液からのイオンの取り込みによることを明らかにし、そのイオン取り込みには、プロトンポンプ、内向き整流性のK^+チャンネルとCl^-/H^+ symporterが関与していることを示す結果を得た。また、膨潤反応は外液のCa^<2+>に依存しないことが分った。したがって、外液のCa^<2+>はIAAのsecond messengerとしては働いていないことになる。すでに、エンドウ茎のプロトプラストはフィトクロムを光受容体とする反応によって膨潤すること、この反応は外液のCa^<2+>に依存することを明らかにしている(Long and Iino,2001)。フィトクロムとIAAによる膨潤反応は異なったメカニズムによると考えられる。本研究の目的は膨圧変化が成長制御の一つの基本的な機構として働いているかを解明することにある。本年度は、前年度の研究を進展させて、エンドウ芽ばえの成長中の茎(第3節間)から単離したプロトプラストの体積に対するオーキシンの作用を解析した。まず、表皮組織とその内側組織から分けてプロトプラストを分離することによって、両プロトプラストともIAAに反応して膨潤することを明らかにした。濃度-反応曲線の解析から、IAAによる表皮組織プロトプラストの膨潤反応には濃度依存性の異なる2つの反応が存在すること、合成オーキシンのNAAはそのうちの一方だけに有効であることが示唆された。また、IAAに対する感度は表皮組織プロトプラストより内部組織プロトプラストの方が高いことが示された。さらに、内側組織プロトプラストはIAAで膨潤するが、NAAではまったく膨潤しないことを見出した。このことは、内側組織プロトプラストには表皮組織プロトプラスがもつ2つの反応のうち一方だけが関与し、それにはNAAが無効であることを示唆している。オーキシン結合タンパク質1(ABP1)の抗体を用いることによって、ABP1はIAAによって誘導される2つの膨潤反応のうち、少なくとも一方にオーキシン受容体として関与していることを証明することができた。現在、同抗体を用いて、NAA非感受性の反応にもABP1が受容体として関与しているかを明らかにする実験を行っている。本研究から、内生オーキシンのIAAは内側組織の膨圧を高めて、組織張力の維持に働いている可能性が、オーキシンの一つの働きとして浮上してきた。 | KAKENHI-PROJECT-12874108 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12874108 |
コンピュータ非依存暗号に関する研究 | 現在、情報セキュリティを確保するために、暗号が広く用いられている。世の中で利用されているすべての暗号は、コンピュータ無しでは動かないといっても過言ではない。例えば、公開鍵暗号方式RSAにしても、共通鍵暗号方式AESにしても、コンピュータを使わずにメッセージの暗号化を行うことは、実用上、考えられない。それに対して、本研究では、コンピュータに依存せず、もっと身近で安価で扱い易い道具を使った暗号プロトコル、すなわちコンピュータ非依存暗号の考案・開発を目的とする。本年度に行った研究によって得られた新たな知見等の成果は以下の通りである。1.前年度において、身近な道具のひとつでスライドパズルの一種である「15パズル」に注目し、15パズルを用いることによって、多人数での安全な計算が実現できることを示した。本年度は、15パズルにより、どのような関数が安全に計算できるのか、あるいは安全に計算できないのかについて解析を行った。具体的には、以下の通りの特徴付けを得ることに成功した。(1)4変数以下の全ての論理関数は15パズルにより安全に計算できる。(2)15パズルにより安全に計算できない5変数の論理関数が存在する。(3)14変数以下の全ての対称関数は15パズルにより安全に計算できる。(4)15パズルにより安全に計算できない15変数の対称関数が存在する。2.量子力学に基づく暗号として、量子暗号が世界中で広く研究されているが、本研究では、より身近で安価な暗号方式の開発を目指し、より古典的なニュートン力学に着目し、ニュートン力学に基づく暗号プロトコルについて検討し、剛体による秘密鍵生成法についての知見を得た。現在、情報セキュリティを確保するために、暗号が広く用いられている。世の中で利用されているすべての暗号は、コンピュータ無しでは動かないといっても過言ではない。例えば、公開鍵暗号方式RSAにしても、共通鍵暗号方式AESにしても、コンピュータを使わずにメッセージの暗号化を行うことは、実用上、考えられない。それに対して、本研究では、コンピュータに依存せず、もっと身近で安価で扱い易い道具を使った暗号プロトコル、すなわちコンピュータ非依存暗号の考案・開発を目的とする。本年度に行った研究によって得られた新たな知見等の成果は以下の通りである。1.これまで、Boer(1989年)や、Crepeau、Kilian(1994年)らの研究により、トランプのカードを用いることで、安全な計算を実現できることが知られている。現在知られているプロトコルで最も効率の良いものは、Stiglicが2001年に開発したAND計算プロトコルであり、このプロトコルを応用すると、XOR安全計算が12枚のカードで実行できる。本研究では、この既存のプロトコルを凌ぐプロトコルを開発することに成功した。すなわち、本研究では、10枚のカードでXOR計算を実現できる極めて単純なプロトコルを考案した。2.本研究では、身近な道具のひとつである「ダイヤル錠」に注目し、ダイヤル錠を用いることによって、多人数での安全な計算が実現できることを示した。すなわち、ダイヤル錠による安全な計算プロトコルを考案した。また、ダイヤル錠によって計算可能な関数の特徴付けの解明を目指し、いくつかの必要条件や十分条件を発見した。現在、情報セキュリティを確保するために、暗号が広く用いられている。世の中で利用されているすべての暗号は、コンピュータ無しでは動かないといっても過言ではない。例えば、公開鍵暗号方式RSAにしても、共通鍵暗号方式AESにしても、コンピュータを使わずにメッセージの暗号化を行うことは、実用上、考えられない。それに対して、本研究では、コンピュータに依存せず、もっと身近で安価で扱い易い道具を使った暗号プロトコル、すなわちコンピュータ非依存暗号の考案・開発を目的とする。本年度に行った研究によって得られた新たな知見等の成果は以下の通りである。1.カードを用いた安全な計算でこれまで最も優れているものは、Stiglicの8枚のカードによるANDプロトコルと、前年度の本研究で開発した10枚のカードによるXORプロトコルである。本年度は、「二等分割ランダムカット」という新しいシャッフル手法を考案し、これを用いることで、6枚のカードによるANDプロトコルおよび4枚のカードによるXORプロトコルの開発に成功した。これらのプロトコルは、現在世界で知られているプロトコルの中で必要なカード枚数が最も少ない効率的なものである。2.前年度ダイヤル錠を用いることによって多人数での安全な計算が実現できることを示したが、本年度は、ダイヤル錠によって計算可能な関数の特徴付けの解明を目指し、対象とする関数と対称関数に限定したときの必要十分条件の導出に成功した。3.身近な道具のひとつである「スライドパズル」に注目し、特に有名な「15パズル」を用いることによって、多人数での安全な計算が実現できることを示した。すなわち、15パズルによる安全な計算プロトコルを考案した。現在、情報セキュリティを確保するために、暗号が広く用いられている。世の中で利用されているすべての暗号は、コンピュータ無しでは動かないといっても過言ではない。例えば、公開鍵暗号方式RSAにしても、共通鍵暗号方式AESにしても、コンピュータを使わずにメッセージの暗号化を行うことは、実用上、考えられない。それに対して、本研究では、コンピュータに依存せず、もっと身近で安価で扱い易い道具を使った暗号プロトコル、すなわちコンピュータ非依存暗号の考案・開発を目的とする。本年度に行った研究によって得られた新たな知見等の成果は以下の通りである。1.前年度において、身近な道具のひとつでスライドパズルの一種である「15パズル」に注目し、15パズルを用いることによって、多人数での安全な計算が実現できることを示した。 | KAKENHI-PROJECT-17650002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17650002 |
コンピュータ非依存暗号に関する研究 | 本年度は、15パズルにより、どのような関数が安全に計算できるのか、あるいは安全に計算できないのかについて解析を行った。具体的には、以下の通りの特徴付けを得ることに成功した。(1)4変数以下の全ての論理関数は15パズルにより安全に計算できる。(2)15パズルにより安全に計算できない5変数の論理関数が存在する。(3)14変数以下の全ての対称関数は15パズルにより安全に計算できる。(4)15パズルにより安全に計算できない15変数の対称関数が存在する。2.量子力学に基づく暗号として、量子暗号が世界中で広く研究されているが、本研究では、より身近で安価な暗号方式の開発を目指し、より古典的なニュートン力学に着目し、ニュートン力学に基づく暗号プロトコルについて検討し、剛体による秘密鍵生成法についての知見を得た。 | KAKENHI-PROJECT-17650002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17650002 |
看護実践の質向上を導く看護支援システム構築に関する研究 | この研究の目的は、看護実践の質向上を導くための看護支援システムの機能を明らかにすることである。初期の看護支援システムは紙を置き換えただけであり、画面数の多さはしばしば看護師の思考過程を阻害していた。我々は、看護師が情報システムから得ている情報とその時の思考過程の関係を明らかにするために、予備調査、事後調査を含め6つの調査を実施した。本調査では31名16病院の看護師を対象とし勤務開始前の情報収集場面を録画しその思考過程を分析した。その結果、看護師の思考プロセスは知識や経験によって異なり、経験のある看護師ほど患者の予後を予測するための情報を必要としているなど、システムから得た情報にも違いが見られた。看護支援システムはこの研究で明らかとなった看護師の思考プロセスに基づいて設計されるべきである。(1)看護実践の質向上を目指す看護支援システム(以下、システム)構築に有用なシステム内容の仕様書を作成する(2)上記のために、平成19年度前に実施した前回科研の本調査結果を再分析することから、今回の本調査へ向けた研究計画を再検討する。そのために予備調査を実施する(3)予備調査を踏まえて平成21年に本調査を実施、これを分析することから、熟練看護師がシステムからどのような情報をなぜ必要と考えて収集しているのか、収集の際にどのようなアセスメントをして看護実践へと結びつけているのかを明らかにする(3)平成22年度は3年間で累積した調査結果から未だ明らかになっていないシステムを操作する熟練看護師の思考パターンを明らかにすることで、システムに必要とされる全体的要件と個別要件を明らかにするこの研究の目的は、看護実践の質向上を導くための看護支援システムの機能を明らかにすることである。初期の看護支援システムは紙を置き換えただけであり、画面数の多さはしばしば看護師の思考過程を阻害していた。我々は、看護師が情報システムから得ている情報とその時の思考過程の関係を明らかにするために、予備調査、事後調査を含め6つの調査を実施した。本調査では31名16病院の看護師を対象とし勤務開始前の情報収集場面を録画しその思考過程を分析した。その結果、看護師の思考プロセスは知識や経験によって異なり、経験のある看護師ほど患者の予後を予測するための情報を必要としているなど、システムから得た情報にも違いが見られた。看護支援システムはこの研究で明らかとなった看護師の思考プロセスに基づいて設計されるべきである。本研究は、看護実践の質向上を導く看護支援システムの構造と機能の仕様書作成を目指している。1年目である平成19年度は、平成20年年度以降の大規模な調査に向けた基盤を整え、具体的な調査計画書を作成するζとを目的とした。小の基盤を整えるために、本研究者らが先に行った平成16年度平成18年度の研究「電子カルテシステムにおける看護実践用語分類の寒態調査及びモデル携築に関する研究」(基盤研究B一般)で既に得られている17施設、48名の看護師の思考過程に関ずるデーダを、看護支援ジステムと看護師の相互関係に焦点を当て再分析した。結果、一連の看護業務の流れの中で看護師がどのように看護支援システムを使用しているのかが一部明らかとなった。問題点としては、看護支援システムが看護業務の支障になっている場合があること、看護師の思考に合わせた看護支援システムになっていないこと、看護師が思考しない看護支援システムがあること等が見出された。しかし、この調査では看護支援システムが十分に整備していない施設の看護師も多数含まれていたために分析に限界があった。そこで、看護支援システムが十分に整備している3施設11名の看護師を対象として面接調査を実施し、看護支援システム乏看護師の相互関係に焦点を当で分析した。結果、看護支援システムが同一であっても看護師の思考次第で看護看護支援システムを効率的に使い適切な看護実践へと繋いでいける場合があること、看護支援システムのなかでも、とりわけ情報収集画面、全体像画面、計画立案画面、実施入力画面の構造を工夫することで、より適切な看護実践を導けるのではないかという点が示唆された。平成20年度の全国調査は、以上判明したことを土台とし、急性期の医療機関において患者群を特定したうえで、個々の患者に対する看護実践過程を、看護支援システムとの関係から、ベテラン看護師と新人看護師の看護実践過程における思考の特徴を比較検討することとしている。看護の質向上を目指した看護支援システム(以下、システム)の機能と構造を探究するための本調査へ向けた研究方法具体化のための予備調査を、2008年5月8日2008年9月3日まで実施した。2医療機関の看護師6名に対して参加観察法と面接法を併用しデータを収集した。結果、本調査の研究方法は、(1)システムとの相互作用が最も多い、勤務前の時間帯に集中して得ることが適切であること、(2)思考しながら情報をシステムから得ているために、思考を声に出してもらうThink Aloud法を使用することが有効であること、(3)システム以外から得られている情報を視野に入れること、(5)研究参加者である看護師がその日初めて受け持つ患者のシステムからの情報収集場面に限定する必要があることが明らかとなった。この予備調査の結果を受けて、熟練看護師の看護実践へと繋げるシステムからの情報収集とその活用に関する本調査を、2008年9月1日2009年2月末まで実施した。結果、全国17施設34名の研究参加者となった看護師からデータを得た。 | KAKENHI-PROJECT-19390550 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19390550 |
看護実践の質向上を導く看護支援システム構築に関する研究 | 分析の結果、実践へと繋げるシステムからの情報収集に伴う思考は、短時間であり最小限の時間で最大の情報を得ようとする努力が見られること、システムからの情報は紙媒体に比して短時間で最大の得たい情報を映像や時系列値から得ていること、システムの画面スクロール機能は、1人の患者に対する必要事項を研究参加者の思考次第で操作できるために効率的に得られている点も判明した。しかし一方で、システムの構造や機能の不具合が思考の妨害をする可能性も見いだされた。本研究では引き続いて、看護実践の質向上をもたらすシステムの構造と機能を、本調査の分析結果から継続的に探究する必要性確認できた。本研究は、看護実践の質向上を目指す看護支援システム(以下システム)構築に有用なシステム内容の仕様書作成を最終的な目的としている。平成21年度は全国17施設34名の熟練看護師を対象として行った前年度までの本調査の結果をさらに深く多面的に分析することで、最終年度となる平成22年度へ向けた研究の方向性と課題を整理することとした。平成21年度実施した分析の視点は、熟練看護師がシステムからどのような情報をなぜ必要と考えて収集しているのか、収集の際にどのようなアセスメントをして看護実践へと結びつけているのか、またシステムの設計が熟練看護師の思考過程に影響しているのかを明らかにすることとした。分析結果からシステムを操作する熟練看護師は、選択的、断片的情報から瞬時のアセスメントのうちに患者の全体統合を行い、観察、処置、援助といった看護実践へと繋げるダイナミックな思考法を用いていると考えられた。個々の患者のアセスメントに必須な選択的、断片的情報が、システム画面により合理的に系統的に仕組まれていれば、看護師の思考を促進させると考えられた。このようなシステム構築を目指していくためには、システムを操作する熟練看護師の思考過程をより質的に深く分析していく必要があること、そのためには新たな調査を実施し、熟練看護師の思考過程を、クリティカルシンキング能力という視点からも追究していく必要があること力吟後の課題として明らかになった。【はじめに】平成22年度は電子カルテの仕様を具体化するために2つの研究を行った。1つは臨床看護師がどのような視点で電子カルテから情報収集しているかを明らかにする質的研究であり、もう1つは看護師の看護診断正確性と看護師の自律性、直観力、CT能力との関係を量的に明らかにする調査である。【方法】質的調査では、電子カルテのデモ画面を作成し、5年以上の臨床経験をもつ看護師6名に対して、実際の勤務開始を想定し情報収集を行ってもらった。対象者は、どのような意図で情報を収集しているのかを自発的に発話してもらいその会話を分析した。量的調査では、12施設187名の看護師を対象とし、個人特性と上記4尺度について自記式質問紙調査を行った。【結果】看護師の情報収集目的は、指示された業務に関することと、指示されていない業務に関することに大別できた。指示されていない業務に関する情報ニーズは対象者によって大きく異なっており、患者に対する関心の強さや自律した臨床判断能力が影響していることが示唆された。質問紙調査からは、看護師の自律性・直観力・クリティカルシンキング能力が臨床経験年数と有意に相関することが明らかとなったが、看護診断 | KAKENHI-PROJECT-19390550 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19390550 |
加齢性記憶障害抑制変異体DC0/+を用いた脳老化分子メカニズムの解明 | 加齢による学習記憶力の低下(加齢性記憶障害)は脳老化の重要な表現型である。我々は世界で初めてとなる加齢性記憶障害の特異的な抑制変異体DC0/+を単離し、PKA活性が加齢性記憶障害を発生させることを明らかにした。本研究では加齢性記憶障害と相関するタンパクの動態をプロテオミクス解析により調べた。その結果、Pyruvate Carboxylase (PCx)に高いホモロージーを持つCG1516によりコードされるタンパクの発現動態とリン酸化動態に加齢性記憶障害との高い相関を見出した。CG1516の機能欠失型変異体を用いて加齢性記憶障害を調べたところ、顕著な加齢性記憶障害の抑制がみられた。さらにPKAの過剰発現による加齢性記憶障害様の記憶障害が、CG1516の機能欠失型変異体ではみられなかった。以上の結果から、加齢に伴うPKA依存性のPCxの活性上昇が加齢性記憶障害の原因であることが示唆された。加齢による学習記憶力の低下(加齢性記憶障害)は脳老化の重要な表現型である。我々は世界で初めてとなる加齢性記憶障害の特異的な抑制変異体DC0/+を単離し、PKA活性が加齢性記憶障害を発生させることを明らかにした。本研究では加齢性記憶障害と相関するタンパクの動態をプロテオミクス解析により調べた。その結果、Pyruvate Carboxylase (PCx)に高いホモロージーを持つCG1516によりコードされるタンパクの発現動態とリン酸化動態に加齢性記憶障害との高い相関を見出した。CG1516の機能欠失型変異体を用いて加齢性記憶障害を調べたところ、顕著な加齢性記憶障害の抑制がみられた。さらにPKAの過剰発現による加齢性記憶障害様の記憶障害が、CG1516の機能欠失型変異体ではみられなかった。以上の結果から、加齢に伴うPKA依存性のPCxの活性上昇が加齢性記憶障害の原因であることが示唆された。加齢に伴う学習・記憶能力の低下(Age-related memory impairment,AMI)は広く種を超えて認められる脳の老化の重要な表現型である。先に我々はAMIが神経ペプチドをコードするamnesiac(amn)遺伝子が関与する、中期記憶形成過程の特異的な低下によることを示した。且つ、AMIの変異体検索から、PKAの触媒部位をコードする遺伝子のヘテロ変異体DC0/+では若いときの正常な記憶を加齢体となっても保持していること、さらにDC0変異体の寿命が正常であることを見出した。行動遺伝学的な解析から、amn遺伝子がコードする神経ペプチドは、恐らく、cAMP合成酵素を抑制し、その結果、DC0-PKA活性を抑制することを明らかにした。加えて、遺伝学的にcAMP/PKA経路活性をキノコ体で上昇させると、DC0変異体とは逆にAMIが促進されること、加齢期間中のcAMP/PKA経路活性ではなく、加齢体となってからのcAMP/PKA活性がAMIの原因となっていることなどを明らかにした。本年度はプロテオミクス解析を行い、加齢に伴うタンパク発現とリン酸化の動態を(AMIが起こる)野生型と(AMIが抑制されている)DC0/+とで比較し、AMIの発現と特異的に相関した発現及びリン酸化の動態を示すタンパクPyruvate Carboxylase(PC)を同定した。現在solのマッピングと同定を行っているところである。この結果を受けて平成20年度はPC変異体を用いて、PCとAMIとの因果関係を調べる予定である。加齢による記憶力の低下(加齢性記憶障害)は脳老化の重要な表現型である。我々はPKA触媒部位の変異体DC0/+で加齢性記憶障害が顕著に抑制されていることを見出した。そこでプロテオミクス解析により加齢に伴うタンパク発現とリン酸化の動態を(AMIが起こる)野生型と(AMIが抑制されている)DC0/+とで比較し、AMIの発現と特異的に相関した発現及びリン酸化の動態を示すタンパクとしてPyruvate Carboxylase(PC)に高いホモロジーを持つCG1516を同定した。CG1516の発現抑制変異体2系統で加齢性記憶障害を調べると、DC0/+と同様、加齢性記憶障害が顕著に抑制されているにも関わらず寿命は正常であった。現在CG1516がPC機能を持っているのか?加齢性記憶障害が抑制されているCG1516の発現変異体はPCの変異体か?加齢性記憶障害はCG1516の発現抑制が原因かを調べている。 | KAKENHI-PROJECT-19300137 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19300137 |
超新星残骸からの硬X線・ガンマ線の研究のとりまとめ | 重点領域「超新星残骸からの硬X線・ガンマ線研究」は、10数テーマのもとに活発な活動を3年間にわたり行なってきた。その中で超新星爆発時の原子核・素粒子反応・電磁流体力学的不安定性の発達・ガンマ線X線発生のXカニズムなどが観測面と理論面から突き合わされ、精度の高い現象論が確立したと言える。ここでこれらの成果をしっかりと取りまとめることは、今後予想される観測面での核ガンマ天体物理学の誕生、また理論面ではスーパーコンピューターなどを駆使した数値天文学の誕生への重要な基礎づけとなる。また本領域以外の、例えば宇宙科学研究所を中心とした「ぎんが」衛星を使ったX線天文学の研究、赤外域における観測とその解析、重点領域「素粒子的宇宙像」で取り上げられた緒テーマとの関連性も大きい。さらに本年度は、打ち上げられたAsTro-Dや、計画立案中のDUET計画との関連も大切になった。これらの本領域内外の理論的・実験的研究間の密接な交流をはかった。総括班会議を2回、小さな研究会を2回、さらに全領域が参加する大会議を3月9、10日に開催し、広い分野から約50の報告がなされた。すでに出版された論文を集め、成果報告書の作成を進めた。重点領域「超新星残骸からの硬X線・ガンマ線研究」は、10数テーマのもとに活発な活動を3年間にわたり行なってきた。その中で超新星爆発時の原子核・素粒子反応・電磁流体力学的不安定性の発達・ガンマ線X線発生のXカニズムなどが観測面と理論面から突き合わされ、精度の高い現象論が確立したと言える。ここでこれらの成果をしっかりと取りまとめることは、今後予想される観測面での核ガンマ天体物理学の誕生、また理論面ではスーパーコンピューターなどを駆使した数値天文学の誕生への重要な基礎づけとなる。また本領域以外の、例えば宇宙科学研究所を中心とした「ぎんが」衛星を使ったX線天文学の研究、赤外域における観測とその解析、重点領域「素粒子的宇宙像」で取り上げられた緒テーマとの関連性も大きい。さらに本年度は、打ち上げられたAsTro-Dや、計画立案中のDUET計画との関連も大切になった。これらの本領域内外の理論的・実験的研究間の密接な交流をはかった。総括班会議を2回、小さな研究会を2回、さらに全領域が参加する大会議を3月9、10日に開催し、広い分野から約50の報告がなされた。すでに出版された論文を集め、成果報告書の作成を進めた。 | KAKENHI-PROJECT-04299102 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04299102 |
青枯病菌の宿主植物における認識機構と病原性発現機構の解明 | 宿主植物へ侵入した青枯病菌は、細胞間隙でコロニー化後、増殖を行う。その後導管へ侵入し、増殖を行い、植物体全体へ広がることが明らかとなった。細胞間隙でのコロニー化には、感染直後に青枯病菌からタイプIII分泌系を介して分泌されるエフェクターと宿主植物との相互作用が必要である。コロニー化した青枯病菌の細胞間隙での増殖には、侵入3時間以内の宿主植物との相互作用が必要である。本相互作用により、宿主植物は抵抗性誘導の有無を決定し、その結果、青枯病菌の増殖の有無が決定される。細胞間隙で増殖が可能となった青枯病菌は、侵入3時間後から導管へ侵入するまでの間に、タイプIIIエフェクターを分泌して宿主植物に新たな反応を誘導し、青枯病発病の有無を決定する。この相互作用で発病が可となった場合には、青枯病菌は導管へ侵入し増殖を行い、菌体外多糖(EPS)等の病原力因子の生産・分泌を行い、感染植物を発病させる。一方、本相互作用で発病が不可となった場合でも、青枯病菌は、発病可の場合と同様に導管へ侵入し増殖・移行することができるが、感染植物は発病しない。本相互作用には、宿主植物のシグナル伝達系に関与するtranslationally controlled tumor protein、elicitor-inducible LRR receptorlike proteinおよびreceptor protein kinase-like protein等の遺伝子の発現が関与している。細胞間隙に生存する青枯病菌と宿主植物とのいずれの相互作用にも、hrp遺伝子群にコードされたタイプIII分泌系を介して分泌されるエフェクターが関与している。hrp遺伝子群の発現はHrpBに支配されており、hrpBの発現はPrhAに負に制御されている。貧栄養下である細胞間隙ではprhAの発現が行われないため、hrp遺伝子群の発現が誘導され、その結果、青枯病菌と宿主植物との相互作用がおこり、青枯病菌のコロニー化、細胞間隙での増殖および青枯病発病の有無の決定が行われる。一方、富栄養下の導管ではPrhAの発現が誘導され、その結果、hrp遺伝子群の発現が抑制されて、EPS生産が行われ、青枯病菌の発病力が量的に決定される。青枯病菌R.solanacearumによる青枯病の病徴発現に大きな影響を与える青枯病菌の宿主における増殖について、タイプIII分泌タンパク質PopAタンパク質を用いて、その詳細について検討した。R.solanacerum OE1-1(OE1-1)のpopABCオペロン欠損株ΔABCは、OE1-1と同様に、タバコ葉に侵入後はげしく増殖しタバコに病原性を示した。一方、恒常的発現プロモーターの下流にpopAを有するpPapaのΔABC形質転換株Δpapaは、in vitroではΔABCやOE1-1と同様に増殖したが、タバコでの増殖と移行は抑制され病原性を示さなかった。RT-PCRにより、popAの発現はOE1-1では侵入3時間後から、Papaでは侵入直後から認められ、侵入3時間後までに発現したPopAタンパク質はR.solanacearumの増殖能・移行能を負に制御する能力を有していると考えられた。OE1-1では3時間後からその発現が認められるために、Δpapaは欠損株であるために、青枯病菌の侵入直後の増殖は影響を及ぼされないと考えられた。すなわち、侵入3時間後までのR.solanacearumと宿主との相互作用により、宿主での菌の増殖と移行が決定され、R.solanacearumの病原性が調節されると考えられた。そこで、OE1-1トポランスポゾン(Tn)変異株の中から、in vitroではOE1-1と同様に増殖するが、タバコでは増殖できないMINEを選抜した。TnはMINEゲノムのSigma70をコードするrpoDの3'に挿入されており、塩基配列の解析から、変異Sigma70の共通配列Region2.2の5番目のアルギニン以降のアミノ酸がトランスポゾン由来の塩基に基づくと推測された。Sima70の変異によるhrp遺伝子の発現にへの影響は認められなかった。Region2.2のアルギニン残基はSigma70の選択性に関与しておると考えられており、sigma70の変異により、タバコでの増殖に必要な因子の転写が制御されると考察された。宿主植物へ侵入した青枯病菌は、細胞間隙でコロニー化後、増殖を行う。その後導管へ侵入し、増殖を行い、植物体全体へ広がることが明らかとなった。細胞間隙でのコロニー化には、感染直後に青枯病菌からタイプIII分泌系を介して分泌されるエフェクターと宿主植物との相互作用が必要である。コロニー化した青枯病菌の細胞間隙での増殖には、侵入3時間以内の宿主植物との相互作用が必要である。本相互作用により、宿主植物は抵抗性誘導の有無を決定し、その結果、青枯病菌の増殖の有無が決定される。細胞間隙で増殖が可能となった青枯病菌は、侵入3時間後から導管へ侵入するまでの間に、タイプIIIエフェクターを分泌して宿主植物に新たな反応を誘導し、青枯病発病の有無を決定する。この相互作用で発病が可となった場合には、青枯病菌は導管へ侵入し増殖を行い、菌体外多糖(EPS)等の病原力因子の生産・分泌を行い、感染植物を発病させる。 | KAKENHI-PROJECT-13039012 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13039012 |
青枯病菌の宿主植物における認識機構と病原性発現機構の解明 | 一方、本相互作用で発病が不可となった場合でも、青枯病菌は、発病可の場合と同様に導管へ侵入し増殖・移行することができるが、感染植物は発病しない。本相互作用には、宿主植物のシグナル伝達系に関与するtranslationally controlled tumor protein、elicitor-inducible LRR receptorlike proteinおよびreceptor protein kinase-like protein等の遺伝子の発現が関与している。細胞間隙に生存する青枯病菌と宿主植物とのいずれの相互作用にも、hrp遺伝子群にコードされたタイプIII分泌系を介して分泌されるエフェクターが関与している。hrp遺伝子群の発現はHrpBに支配されており、hrpBの発現はPrhAに負に制御されている。貧栄養下である細胞間隙ではprhAの発現が行われないため、hrp遺伝子群の発現が誘導され、その結果、青枯病菌と宿主植物との相互作用がおこり、青枯病菌のコロニー化、細胞間隙での増殖および青枯病発病の有無の決定が行われる。一方、富栄養下の導管ではPrhAの発現が誘導され、その結果、hrp遺伝子群の発現が抑制されて、EPS生産が行われ、青枯病菌の発病力が量的に決定される。 | KAKENHI-PROJECT-13039012 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13039012 |
歯周炎患者の免疫応答の特異性(歯周病原性細菌特異的反応と自己交叉反応の相関について) | 〈I〉歯周炎患者の感染源特異的免疫応答OPF18はPorphyromonas gingivalisに特異的な細胞表層抗原を認識するモノクローナル抗体で、患者血中にはOPF18に対する抗イディオタイプ抗体が誘導されていることが今までの研究から示唆されている。菌体の超音波破砕物から、OPF18に対するアフィニティークロマトグラフィにより対応抗原物質(OPF18-Ag)の精製を行った。種々の解析の結果から、抗原エピトープはN-アセチルグルコサミンを含む糖から構成されていること、OPF18-Agは菌体の外膜表層に局在することが示された。OPF18-Agに対する歯周炎患者および健常者それぞれ10名の血清抗体か測定した。全菌体を抗原とした時と比較してOPF18-Agを抗原とした場合は、より特異性高く患者を識別できる傾向が認められた。IgGサブクラス別に検討したところ、いずれの患者もIgG2抗体を保有していたが、その他のサブクラスに関しては患者間に著しい多様性が認められた。病期・病態との相関については例数がまだ少ないこともあって一定の傾向を見い出すには至らなかった。〈II〉歯周炎患者における自己交叉反応性の誘導に関する研究P.gingivalisから大腸菌hsp60に相当する分子量60kDの物質をATPアガロースを用いたアフィニティー精製と逆相HPLCにて単離した。このP.gingivalis hs60と大腸菌hsp60および結核菌の相同物質であるhsp65を抗原として患者ならびに健常者の血清抗体価をELISA法で測定した。大腸菌hsp60と結核菌hsp65に対する抗体価は相関する傾向を示したが、患者・健常者の群間で有意差は認められなかった。P.gingivalis hsp60に対していずれの被検血清も微弱な反応した示さず、また他菌のhspに対する抗体価と相関を示さなかった。歯周炎におけるP.gingivalisの感染に際してhsp60は主要抗原になっておらず、したがって本菌のhsp60を介して自己交叉反応性が誘導される可能性は少ないものと推察された。〈I〉歯周炎患者の感染源特異的免疫応答OPF18はPorphyromonas gingivalisに特異的な細胞表層抗原を認識するモノクローナル抗体で、患者血中にはOPF18に対する抗イディオタイプ抗体が誘導されていることが今までの研究から示唆されている。菌体の超音波破砕物から、OPF18に対するアフィニティークロマトグラフィにより対応抗原物質(OPF18-Ag)の精製を行った。種々の解析の結果から、抗原エピトープはN-アセチルグルコサミンを含む糖から構成されていること、OPF18-Agは菌体の外膜表層に局在することが示された。OPF18-Agに対する歯周炎患者および健常者それぞれ10名の血清抗体か測定した。全菌体を抗原とした時と比較してOPF18-Agを抗原とした場合は、より特異性高く患者を識別できる傾向が認められた。IgGサブクラス別に検討したところ、いずれの患者もIgG2抗体を保有していたが、その他のサブクラスに関しては患者間に著しい多様性が認められた。病期・病態との相関については例数がまだ少ないこともあって一定の傾向を見い出すには至らなかった。〈II〉歯周炎患者における自己交叉反応性の誘導に関する研究P.gingivalisから大腸菌hsp60に相当する分子量60kDの物質をATPアガロースを用いたアフィニティー精製と逆相HPLCにて単離した。このP.gingivalis hs60と大腸菌hsp60および結核菌の相同物質であるhsp65を抗原として患者ならびに健常者の血清抗体価をELISA法で測定した。大腸菌hsp60と結核菌hsp65に対する抗体価は相関する傾向を示したが、患者・健常者の群間で有意差は認められなかった。P.gingivalis hsp60に対していずれの被検血清も微弱な反応した示さず、また他菌のhspに対する抗体価と相関を示さなかった。歯周炎におけるP.gingivalisの感染に際してhsp60は主要抗原になっておらず、したがって本菌のhsp60を介して自己交叉反応性が誘導される可能性は少ないものと推察された。 | KAKENHI-PROJECT-05671595 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671595 |
チトクロムbc_1並びにb_6/f複合体の分子構築 | 1.ウシ心筋ミトコンドリアからチトクロムbc_1複合体を単離する方法を改良し、実働日数の短縮と収率の筒上に成功した。この標品を用いて各種の結晶化を試みたが、X線回析像をうるに十分な結晶はえられなかった。2.ユーグレナ・チトクロムb__-c__-_1複合体をサブミトコンドリア粒子より精製した。そのサブユニット構成はチトクロムb__-、c__-_1、鉄・硫黄蛋白質を含む10ケから成り、他の生物のものととくに大きい差はなかった。しかしそのチトクロムc__-_1のα吸収帯は561nmにあり、またそのビリジンヘモクロムも553nmで、一般のC型チトクロムに比べ、いずれも長汲長側にシフトしていた。これはこの生物のチトクロムC_<553>の性質と類似しており、そのヘム近辺のアミノ酸配列から、ヘムを結合する2つのシステインの中1つがPheに置換しているためであることが判明した。3.これを確認するためユーグレナのc__-_1に対応するcDNAを取り出し、その全塩基配列を決定した。このものは243アミノ酸から成るc__-_1のポリペプチドをコードする領域を含んでいた。ヘム近辺の構造から前項の事実を確認した。さらにこのc__-_1は鉄の配位子、c__-との反応部位、膜結合領域のいずれも他のc__-_1に比べて保存するものであった。4.酵母チトクロムc__-_1のC末端部を遺伝子操作によって変異させ、これが電子伝達能や複合体IIIへの組み込みにどう影響するか検討した。疎水性部位がこれらに重要な役割を果すことを示した。5.らん藻よりチトクロムb__-_6f複合体を精製し、そのサブユニット構成、活性などを検討した。また、らん藻のチラコイド膜から調製した酸化酵素はb_6fからC_<553>を経て電子を受けとり水にすることが判明し、らん藻におけるb_1f複合体が光合成のみならず、呼吸においても共通の電子伝達中間体であることが示された。1.ウシ心筋ミトコンドリアからチトクロムbc_1複合体を単離する方法を改良し、実働日数の短縮と収率の筒上に成功した。この標品を用いて各種の結晶化を試みたが、X線回析像をうるに十分な結晶はえられなかった。2.ユーグレナ・チトクロムb__-c__-_1複合体をサブミトコンドリア粒子より精製した。そのサブユニット構成はチトクロムb__-、c__-_1、鉄・硫黄蛋白質を含む10ケから成り、他の生物のものととくに大きい差はなかった。しかしそのチトクロムc__-_1のα吸収帯は561nmにあり、またそのビリジンヘモクロムも553nmで、一般のC型チトクロムに比べ、いずれも長汲長側にシフトしていた。これはこの生物のチトクロムC_<553>の性質と類似しており、そのヘム近辺のアミノ酸配列から、ヘムを結合する2つのシステインの中1つがPheに置換しているためであることが判明した。3.これを確認するためユーグレナのc__-_1に対応するcDNAを取り出し、その全塩基配列を決定した。このものは243アミノ酸から成るc__-_1のポリペプチドをコードする領域を含んでいた。ヘム近辺の構造から前項の事実を確認した。さらにこのc__-_1は鉄の配位子、c__-との反応部位、膜結合領域のいずれも他のc__-_1に比べて保存するものであった。4.酵母チトクロムc__-_1のC末端部を遺伝子操作によって変異させ、これが電子伝達能や複合体IIIへの組み込みにどう影響するか検討した。疎水性部位がこれらに重要な役割を果すことを示した。5.らん藻よりチトクロムb__-_6f複合体を精製し、そのサブユニット構成、活性などを検討した。また、らん藻のチラコイド膜から調製した酸化酵素はb_6fからC_<553>を経て電子を受けとり水にすることが判明し、らん藻におけるb_1f複合体が光合成のみならず、呼吸においても共通の電子伝達中間体であることが示された。動植物のエネルギー生産と密に関連するミトコンドリアや葉緑体の電子伝達系の中で,ウシ心筋ミトコンドリアのチトクロムb__ーc__ー^1舶合体の結晶化を試みる目的で,精製法に検討を加えた結果,電気泳動的にはいる一つの感があるが,膜濃縮法で小さい乍らも結晶性固体をえた.現在,さらに改良を加えつつある段階である.一方c__ー.ナ_<1.ニ>複合体の結晶化を試みているが,大量精製が必要で,現在その中間時点に来ている.前回とは異り,今立は硫安法を採用する予定.さてユーグレナは動物とも植物ともいわれる特異な分類群に属していて,そのチトクロムc__ーはヘム結合に特異な性質を示している.そこでこのチトクロムb__ーc__ー.ナ_<1.ニ> | KAKENHI-PROJECT-62470148 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62470148 |
チトクロムbc_1並びにb_6/f複合体の分子構築 | 複合体を抽出精製したところ, b__ーの含量が約半分(ウシのに比べて)で,これは精製途上でヘムが脱離したためと思われる.ところがそのb__ーc__ー.ナ_<1.ニ>複合体の〓吸収スペクトルを検討したところ,通常のc__ー.ナ_<1.ニ>はその2帯が5523nmにあるのに対し,このものは560nm近辺にあることが強く示唆され,これはc__ーと同様に特異なヘム結合様式をもっていることを強く示唆すると結論した.そこでその化学的背景を証明するためユーグレナc__ー.ナ_<1.ニ>を単離精製し,そのN末端構造やヘムペプチドを取り出し46残基の構造を決めたところ,果して通常は2つのチオエーテル結合があるべきところ,唯一つの結合しかもっておらず, ーFーAーPーCーHーの構造を示しFがCに置換って存在することが判明した.電子伝達機構の解明の一助となると思われる.いいかえればCの硫黄原子は電子伝達に関与しないことを意味する.一方酵母のチトクロムc__ー.ナ_<1.ニ>のC末端部の変異により,疎水部の必須部位の特定に成功し,さらにc__ー.ナ_<1.ニ>分子の酸性領域の必須部位の特定にも成功した. b.ナ_<6.ニ>/fはプレクトネマより精製し,これがチトクロム酸化酵素に電子をわたすことを確認した.ウシ心筋ミトコンドリアのチトクロムbc_1複合体の新しい単離精製法を開発した。從来法に比べ可溶化の時に蛋白濃度を高くし、冷凍操作を省くことにより時間短縮に成功し、合算3日で完了することができた。このものはSDS-PAGEで他のものと本質的に変らず、硫安やPEGによる結晶化に用いることができた。チトクロムc_1複合体はこれより単離可能であったが良好な結晶はえられなかった。前年度につづいてユーグレナのチトクロムc_1のヘム結合様式が異常であることを確認するため、ユーグレナのポリA^+RNAからcDNA発現ライブラリーを作成し、ユーグレナのチトクロムc_1に対する抗体を用いて対応するDNA画分を選別した。その中で872塩基対からなるcDNAのクローンの単離ができ、それが243アミノ酸残基から成る成熟c_1をコードするものであることを確認できた。そしてこのものが異常なヘム結合様式を示す部分に-F-A-P-C-H-なる配列をもつことを確認し、蛋白質の構造決定からの予測と一致した。即ち普通のC型ヘム結合様式ではFがCである。またこの全一次構造の決定により他のc_1の構造との比較も可能となり、チトクロムCとの反応に必須とされる2つの負電荷部位、C末端部の膜結合部位はユーグレナc_1でも保存されていた。從って進化的考察も行えることとなりユニークな位置を占めることも判った。一方藍藻より単離したb_6/f複合体はチトクロム酸化酵素に電子をわたすことにより呼吸を行うことを示唆したが、その時の中間電子伝達体としてチトクロムC553が関与するらしいことを示すことができた。C550は関与しない。これらのことから暗所では藍藻はNAD(P)Hよりb_6/fを経てC553、そしてチトクロム酸化酵素へと電子をわたし酸素を水に変えていることが判明した。本年は酵母C_1の変異に進展がなかった。 | KAKENHI-PROJECT-62470148 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62470148 |
膵酵素阻害薬メシル酸ガベキサートによる血管障害の発現機序解明および予防策の確立 | 【研究目的】メシル酸ガベキサートは、膵疾患や汎発性血管内血液凝固症(DIC)に対して広く用いられているトリプシン様セリン蛋白分解酵素阻害剤であるが、副作用として投与部位の血管痛や、刺入した血管に沿った静脈炎や潰瘍、壊死などの重篤な血管障害をきたすことがあり、臨床上大きな問題となっている。しかしながら、血管障害の発現機序ならびに予防策に関する基礎的研究はこれまで皆無であった。本研究では、メシル酸ガベキサートによる直接的な血管内皮細胞障害に着目し、発現機序に関する検討を行った。【研究方法】メシル酸ガベキサートを培養ブタ大動脈血管内皮細胞に曝露し、細胞生存率の変化をWST-8法により測定した。細胞死の評価はTUNEL染色法、DNA電気泳動法、トリパンブルー染色法ならびにPI(propidium iodine)染色法により行った。【研究成果】メシル酸ガベキサート(0.5mM-5mM)の曝露により、濃度および時間依存的に血管内皮細胞の障害が惹起された。一方、メシル酸ガベキサートの同種同効薬であるメシル酸ナファモスタットならびにメシル酸には細胞障害作用はなかった。メシル酸ガベキサートにより障害された細胞は、トリパンブルー染色およびPI染色に陽性であったが、TUNEL染色には陰性であり、DNA断片化は認められなかった。メシル酸ガベキサートによる細胞障害は、抗酸化剤であるα-tocopherol、ラジカル消去剤であるedarabon、mannitolおよびdimethylthioureaによって抑制されず、カルシウムキレーターであるEGTAおよびBAPTA-AM、一酸化窒素合成酵素阻害剤L-NAME、カスパーゼ阻害剤も保護作用を示さなかった。以上の結果から、メシル酸ガベキサートは血管内皮細胞に対して、曝露から数分後より細胞膜を直接的に障害し、ネクローシスを引き起こすことが明らかとなった。【研究目的】メシル酸ガベキサートは、膵疾患や汎発性血管内血液凝固症(DIC)に対して広く用いられているトリプシン様セリン蛋白分解酵素阻害剤であるが、副作用として投与部位の血管痛や、刺入した血管に沿った静脈炎や潰瘍、壊死などの重篤な血管障害をきたすことがあり、臨床上大きな問題となっている。しかしながら、血管障害の発現機序ならびに予防策に関する基礎的研究はこれまで皆無であった。本研究では、メシル酸ガベキサートによる直接的な血管内皮細胞障害に着目し、発現機序に関する検討を行った。【研究方法】メシル酸ガベキサートを培養ブタ大動脈血管内皮細胞に曝露し、細胞生存率の変化をWST-8法により測定した。細胞死の評価はTUNEL染色法、DNA電気泳動法、トリパンブルー染色法ならびにPI(propidium iodine)染色法により行った。【研究成果】メシル酸ガベキサート(0.5mM-5mM)の曝露により、濃度および時間依存的に血管内皮細胞の障害が惹起された。一方、メシル酸ガベキサートの同種同効薬であるメシル酸ナファモスタットならびにメシル酸には細胞障害作用はなかった。メシル酸ガベキサートにより障害された細胞は、トリパンブルー染色およびPI染色に陽性であったが、TUNEL染色には陰性であり、DNA断片化は認められなかった。メシル酸ガベキサートによる細胞障害は、抗酸化剤であるα-tocopherol、ラジカル消去剤であるedarabon、mannitolおよびdimethylthioureaによって抑制されず、カルシウムキレーターであるEGTAおよびBAPTA-AM、一酸化窒素合成酵素阻害剤L-NAME、カスパーゼ阻害剤も保護作用を示さなかった。以上の結果から、メシル酸ガベキサートは血管内皮細胞に対して、曝露から数分後より細胞膜を直接的に障害し、ネクローシスを引き起こすことが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-19923040 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19923040 |
δ-アミノレブリン酸合成酵素アイソザイムの合成および細胞内局在化のヘムによる調節 | 1.ラット赤血球型δ-アミノレブリン酸(ALA)合成酵素の精製とその性質:ラット網状赤血球よりALA合成酵素を活性を有する限定分解産物として精製した。すなわち、溶血液から硫安分画、パパイン消化、ゲル濾過、ヒドロキシアパタイトおよびQセファロースカラムクロマトグラドフィー、次いてCoA-アガロースによるアフィニティークロマトグラフィーを行い精製した。なお、精製過程ではヘモグロビンの凝集を防ぐため界面活性剤の添加が必須であった。最終標品はSDSゲル電気永動上ほぼ均一で、その分子量は49,000であった。(肝酵素では51,000)。肝酵素と比べ、スクシニルCoAに対するKmがやや低く、またスクシニルCoAによる基質阻害もみられない。しかし、グリシンに対するKmや最適DHには差がなく、ヘムによる阻害も認められた。2.肝,網状赤血球およびその他の組織のALA合成酵素の免疫化学的比較:オクタロニー法や免疫滴定法で、坑ニワトリ肝ALA合成酵素坑体はニワトリ赤血球型酵素並びにラット肝型酵素と部分交叉反応を示すが、坑ラット肝ALA合成酵素坑体はラット赤血球型酵素ともニワトリ両型酵素とも交叉反応を示さないことが確かめられた。Western blot analysisでは、ラット赤血球型酵素が極めて弱いながら坑ラット肝酵素坑体と反応することが知られた。また、腎およびハーダー腺のALA合成酵素は坑肝酵素坑体によって肝酵素と同一分子量のものとして検出され、両者は肝型であろうと推定された。3.ニワトリ肝および赤芽球のALA合成酵素cDNAの比較およびmRNAのNorthern blot analysis:ニワトリ肝および赤芽球のλgtllライブラリーより得たALA合成酵素クローンの塩基配列および推定されるアミノ酸配列の比較,肝および赤芽球poly(A)【^+RNA】画分の両型酵素cDNAプローブによるNorthern blotanalysisなどより、肝型および赤血球型ALA合成酵素は別々の遺伝子の産物であることが確められた。1.ラット赤血球型δ-アミノレブリン酸(ALA)合成酵素の精製とその性質:ラット網状赤血球よりALA合成酵素を活性を有する限定分解産物として精製した。すなわち、溶血液から硫安分画、パパイン消化、ゲル濾過、ヒドロキシアパタイトおよびQセファロースカラムクロマトグラドフィー、次いてCoA-アガロースによるアフィニティークロマトグラフィーを行い精製した。なお、精製過程ではヘモグロビンの凝集を防ぐため界面活性剤の添加が必須であった。最終標品はSDSゲル電気永動上ほぼ均一で、その分子量は49,000であった。(肝酵素では51,000)。肝酵素と比べ、スクシニルCoAに対するKmがやや低く、またスクシニルCoAによる基質阻害もみられない。しかし、グリシンに対するKmや最適DHには差がなく、ヘムによる阻害も認められた。2.肝,網状赤血球およびその他の組織のALA合成酵素の免疫化学的比較:オクタロニー法や免疫滴定法で、坑ニワトリ肝ALA合成酵素坑体はニワトリ赤血球型酵素並びにラット肝型酵素と部分交叉反応を示すが、坑ラット肝ALA合成酵素坑体はラット赤血球型酵素ともニワトリ両型酵素とも交叉反応を示さないことが確かめられた。Western blot analysisでは、ラット赤血球型酵素が極めて弱いながら坑ラット肝酵素坑体と反応することが知られた。また、腎およびハーダー腺のALA合成酵素は坑肝酵素坑体によって肝酵素と同一分子量のものとして検出され、両者は肝型であろうと推定された。3.ニワトリ肝および赤芽球のALA合成酵素cDNAの比較およびmRNAのNorthern blot analysis:ニワトリ肝および赤芽球のλgtllライブラリーより得たALA合成酵素クローンの塩基配列および推定されるアミノ酸配列の比較,肝および赤芽球poly(A)【^+RNA】画分の両型酵素cDNAプローブによるNorthern blotanalysisなどより、肝型および赤血球型ALA合成酵素は別々の遺伝子の産物であることが確められた。 | KAKENHI-PROJECT-60570105 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60570105 |
超高真空半溶融ダイカスト法に関する基礎研究 | 地球温暖化防止や省エネルギなどのため、Al合金やMg合金の利用が進みつつあるが、これらの材料は溶接性が悪いためダイカスト法による加工が要望されている。しかし、従来のダイカスト法では、高信頼性製品を製造することは容易ではない。本研究では、新しいダイカスト法として超高真空ダイカスト法について検討し、以下のような結果を得た:(1)提案する新しいゲートシールによりキャビティ部を黒鉛型で7kPa,金型で3kPaまで減圧できることを確認した。これは従来の実用化真空度の最高値以上ではあるが、目標とした1kPaは達成できなかった。より高真空にするには黒鉛の通気性への対応と金型設置部等の加工精度を上げる必要がある。(2)キャビティ部を7kPaに減圧した真空ダイカストにより製作した試験片のポロシティ欠陥は、大気圧ダイカストと比較して、著しく減少し、機械的性質も倍増することが分かった。(3)大気ダイカストとは異なり真空ダイカストではより低温の金型でも表面性状が良いことが分かった。(4)X線による湯流れの可視化に成功し、真空ダイカストではゲートからキャビティへの流入角度がより垂直になる点は大気ダイカストと異なるものの、著しい違いがないことが分かった。(5)湯流れの可視化結果とシミュレーション結果を比較し、真空の影響より鋳型と溶湯との濡れの影響が大きいことが分かり、これを考慮したシミュレーションソフトをほぼ開発した。(6)本提案のゲートシールの利用を含めた新たな真空ダイカスト法により高品質ダイカスト品を製造できる可能性がある。地球温暖化防止や省エネルギなどのため、Al合金やMg合金の利用が進みつつあるが、これらの材料は溶接性が悪いためダイカスト法による加工が要望されている。しかし、従来のダイカスト法では、高信頼性製品を製造することは容易ではない。本研究では、新しいダイカスト法として超高真空ダイカスト法について検討し、以下のような結果を得た:(1)提案する新しいゲートシールによりキャビティ部を黒鉛型で7kPa,金型で3kPaまで減圧できることを確認した。これは従来の実用化真空度の最高値以上ではあるが、目標とした1kPaは達成できなかった。より高真空にするには黒鉛の通気性への対応と金型設置部等の加工精度を上げる必要がある。(2)キャビティ部を7kPaに減圧した真空ダイカストにより製作した試験片のポロシティ欠陥は、大気圧ダイカストと比較して、著しく減少し、機械的性質も倍増することが分かった。(3)大気ダイカストとは異なり真空ダイカストではより低温の金型でも表面性状が良いことが分かった。(4)X線による湯流れの可視化に成功し、真空ダイカストではゲートからキャビティへの流入角度がより垂直になる点は大気ダイカストと異なるものの、著しい違いがないことが分かった。(5)湯流れの可視化結果とシミュレーション結果を比較し、真空の影響より鋳型と溶湯との濡れの影響が大きいことが分かり、これを考慮したシミュレーションソフトをほぼ開発した。(6)本提案のゲートシールの利用を含めた新たな真空ダイカスト法により高品質ダイカスト品を製造できる可能性がある。地球温暖化防止や省エネルギなどのため、特に自動車や航空機等の輸送機械において、Al合金やMg合金の利用が進みつつあるが、これらの材料は溶接性が悪いためダイカスト法による加工が要望されている。しかし、従来のダイカスト法では、信頼性の高い製品を製造することは容易ではない。そこで本研究では、新しいダイカスト法として超高真空ダイカストの可能性を明らかにするため、以下を実施する予定である。・提案する新しいゲートシールによる高真空の実現を確認する。・ゲート形状と湯流れの関係をX線透過法による直接観察と数値シミュレーションにより比較し、望ましいゲート形状、シミュレーション精度、問題点を明らかにする。・上記を参考にして高真空ダイカストに適用できるシミュレーション法を明らかにする。・新しい高真空ダイカストによる試験片の品質(欠陥、機械的性質等)を明らかにする。・上記を総合して提案するゲートシール式高真空ダイカスト法の有効性を確認する。なお、申請段階では半溶融ダイカストも含めていたが、研究費が申請額よりかなり減額されたため、除外することにした。本年度は、現有装置に、新たに真空ポンプ、真空タンク等を追加設置した。また、シミュレーションソフトを開発した。そして、X線による可視化実験を実施し、シミュレーションとの比較を行った。その結果、可視化実験で溶湯流動を精度良く観察可能できることおよび精度の良いシミュレーションのためには表面張力効果を考慮する必要があることが分かった。しかし、予定していた到達真空度10Paを実現できなかった。この原因は、使用黒鉛にかなりの通気性があるためであり、現在、この問題を解決するため、鋳型表面処理について検討している。また、キャビティ部における凝固体には欠陥が非常に多く、これは鋳型温度が低いためであることが原因と考えられ、鋳型の温度制御を検討している。地球温暖化防止や省エネルギなどのため、Al合金やMg合金の利用が進みつつあるが、これらの材料は溶接性が悪いためダイカスト法による加工が要望されている。しかし、従来のダイカスト法では、高信頼性製品を製造することは容易ではない。本研究では、新しいダイカスト法として超高真空ダイカスト法について検討し、以下のような結果を得た: | KAKENHI-PROJECT-17560654 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17560654 |
超高真空半溶融ダイカスト法に関する基礎研究 | (1)提案する新しいゲートシールによりキャビティ部を黒鉛型で7kPa,金型で3kPaまで減圧できることを確認した。これは従来の実用化真空度の最高値以上ではあるが、目標とした1kPaは達成できなかった。より高真空にするには黒鉛の通気性への対応と金型設置部等の加工精度を上げる必要がある。(2)キャビティ部を7kPaに減圧した真空ダイカストにより製作した試験片のポロシティ欠陥は、大気圧ダイカストと比較して、著しく減少し、機械的性質も倍増することが分かった。(3)大気ダイカストとは異なり真空ダイカストではより低温の金型でも表面性状が良いことが分かった。(4)X線による湯流れの可視化実験では真空ダイカストではゲートからキャビティへの流入角度がより垂直になる点は大気ダイカストと異なるものの、著しい違いは観察できなかった。(5)湯流れの可視化結果とシミュレーション結果を比較し、真空の影響より鋳型と溶湯との濡れの影響が大きいことが分かり、これを考慮したシミュレーションソフトを開発した。(6)本提案のゲートシールの利用を含めた新たな真空ダイカスト法により高品質ダイカスト品を製造できる可能性がある。 | KAKENHI-PROJECT-17560654 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17560654 |
東アジア先史時代における生業の地域間比較研究 | 東アジア各地域の先史時代生業資料、なかでも採集と農耕にかかわる植物遺存体の検索と集成を進め、生業に深く関わる遺跡立地のありかたを日本各地域、韓国、ロシア極東で実地調査し、各地域の生業の実態と特徴、地域間の関係の究明を進めた。また生業研究の現状を把握するために日本各地と中国、韓国、ロシアの研究者12名を招いて「東アジアの生業形態」と題する研究会を3年度にわたって実施し、討論を通じて生業研究の方向について有益な示唆を得た。本研究の主要な成果は弥生時代農耕研究の基礎となる植物遺体の集成と検討である。すでに1981年に他の研究者が224遺跡について集成を行っているが、今回その後の発掘調査から260遺跡について集成し、その結果弥生時代農耕がいちじるしく水田農耕にかたよることを明確にした。朝鮮半島についても同じ作業を行い108遺跡の植物遺体出土例を集成した。両者の比較から朝鮮半島の初期農耕では南部においても水田稲作に匹敵するほど畠作の比重が高いこと、15世紀の文献史料によりこの傾向が近世まで続くこと、弥生農耕が原郷の朝鮮半島農耕から水田稲作の比重を高める方向に変容していること等を新たに明らかにした。採集についてはドングリ類、クルミ、クリなどの出土事例から、日本列島と朝鮮半島および東北アジアの生業における採集の重要性を確認するとともに地域間に明らかな差異のあることを確かめた。このほか縄文時代の生業についてはこれまでの認識以上に遺跡立地との相関関係が強いことを明らかにしえた。このほかの時代、地域についても採集、初期農耕の地域的特徴や地域間関係を解明する基礎的研究を行い、民俗考古学的方法により狩猟活動のあり方を解明する方法論を深化させた。なお予定外のことではあったが、大正時代に採取された朝鮮半島平壌の炭化米を再発見し、年代測定とDNA分析を行い、紀元前後の朝鮮半島北部での稲作資料を学界に提供できた。東アジア各地域の先史時代生業資料、なかでも採集と農耕にかかわる植物遺存体の検索と集成を進め、生業に深く関わる遺跡立地のありかたを日本各地域、韓国、ロシア極東で実地調査し、各地域の生業の実態と特徴、地域間の関係の究明を進めた。また生業研究の現状を把握するために日本各地と中国、韓国、ロシアの研究者12名を招いて「東アジアの生業形態」と題する研究会を3年度にわたって実施し、討論を通じて生業研究の方向について有益な示唆を得た。本研究の主要な成果は弥生時代農耕研究の基礎となる植物遺体の集成と検討である。すでに1981年に他の研究者が224遺跡について集成を行っているが、今回その後の発掘調査から260遺跡について集成し、その結果弥生時代農耕がいちじるしく水田農耕にかたよることを明確にした。朝鮮半島についても同じ作業を行い108遺跡の植物遺体出土例を集成した。両者の比較から朝鮮半島の初期農耕では南部においても水田稲作に匹敵するほど畠作の比重が高いこと、15世紀の文献史料によりこの傾向が近世まで続くこと、弥生農耕が原郷の朝鮮半島農耕から水田稲作の比重を高める方向に変容していること等を新たに明らかにした。採集についてはドングリ類、クルミ、クリなどの出土事例から、日本列島と朝鮮半島および東北アジアの生業における採集の重要性を確認するとともに地域間に明らかな差異のあることを確かめた。このほか縄文時代の生業についてはこれまでの認識以上に遺跡立地との相関関係が強いことを明らかにしえた。このほかの時代、地域についても採集、初期農耕の地域的特徴や地域間関係を解明する基礎的研究を行い、民俗考古学的方法により狩猟活動のあり方を解明する方法論を深化させた。なお予定外のことではあったが、大正時代に採取された朝鮮半島平壌の炭化米を再発見し、年代測定とDNA分析を行い、紀元前後の朝鮮半島北部での稲作資料を学界に提供できた。今年度は各地域の資料の実状把握と資料の収集に努めた。時代ごと・地域ごとの調査・研究の内容はつぎのとおりである。旧石器時代については、周辺とは異なる環境要因に基づき後期旧石器時代の環日本海に想定される共通の生業構造の解明を目的に、九州の旧石器時代資料、韓国の済州島、江原道等各地の旧石器時代資料を調査した。新石器時代については、農耕開始直前の生業の実態を知るために日本の九州と北海道の縄文時代後期晩期資料、韓国の新石器時代末青銅器時代はじめの南江ダム水没地内一部遺跡の資料を調査した。農耕開始以後については、とくに韓国青銅器時代と日本弥生時代の生業とその社会的背景の異同を確かめるために、韓国では南江ダム水没地内の青銅器時代前期の畠跡や集落、栽培植物遺体、漁労関係資料、大邱地域の青銅器原三国時代の水田跡、蔚山地域の水田跡の資料等を、日本では九州・東海・関西の弥生時代資料を調査し、東南アジアではベトナムのドンソン文化期の土製支脚に含まれる稲籾の調査を進めている。また関西地域の旧石器弥生時代の自然環境と生業資料、北海道のアイヌとそれ以前の生業資料、マタギ等の現生狩猟技術等を調査した。調査では多数の写真資料、発掘調査資料を得、また生業とそれにかかわる生態的、社会的背景を調べるために中国、韓国の発掘調査報告書の調査も行ったが、整理の多くとデータベース化は次年度以降に残されている。これら調査の成果の一部は論文、口頭発表などで公表した。各地域、時代の資料の収集と調査研究を進めるとともに、研究の最先端を明らかにする研究会を開催した。 | KAKENHI-PROJECT-12410104 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12410104 |
東アジア先史時代における生業の地域間比較研究 | 旧石器時代については九州地域における中期後期旧石器時代の植物資源開発の様相に関する基礎的研究を行い、九州南部地域では後期旧石器時代初頭に、他地域とはことなっていち早く植物質食料を重視する生業戦略が始まっている可能性の高いことが推定された。縄文時代については後期の貝塚遺跡の資料収集を進めて農耕開始の前提の把握に務め、北方地域の生業に関しては北海道とロシア沿海州での発掘調査に関連して、生業関係資料の収集、研究を行った。中国、東南アジアについても狩猟、採集のほか農耕関係資料の収集と研究を進めている。農耕開始以後については、前年に引き続き弥生時代併行期の韓国と日本の農耕の比較研究、栽培植物資料出土例の集成を進め、水田類型の相違、水田稲作と畑作の比重の違いを明らかにしている。これら調査研究とともに、生業研究の現状と問題点を把握するために各地の研究者を招き研究発表と討論会を実施した。後期旧石器時代の陥し穴猟の事例発表では数、配列、植生推定などから複数集団による計画的猪猟の可能性が強調され、沿海州の貝塚遺物の分析から狩猟、採集、漁撈の細部の変化と生態環境の変化それに伴う農耕の開始が論じられ、水田稲作について西日本と東北地方の初期水田の立地の類型化と相違、水田と農具の実態に基づく日本列島内と中国、韓国との比較、東北地方における水稲導入による生業の再編の特質が明確にされるなどの成果をあげた。各地域・時代の資料の収集と分析を進め、また研究の最先端を把握するための研究会を開催した。旧石器時代・縄文時代についてはとくに陥し穴猟の分析を行い、一部を論文(佐藤)と口頭(今村)により発表した。北方地域(北海道・沿海州)については資料調査と発掘資料の分析を行い、一部を口頭発表するとともに、関連論文を印刷中である。東南アジアについてはベトナムの稲作資料の研究を進めている。弥生時代の農耕については引き続き植物遺体集成を行っているが、検索対象が膨大で完成には至っていない。朝鮮半島の初期農耕についても栽培植物遺体の資料集成を進め、農耕集落・耕地遺跡のあり方を弥生時代のそれと比較し、水田や畠の異同を検討し、成果の一部は印刷中である。これら調査研究とともに、生業研究の現状と問題点解明のために、海外からも研究者を招き研究発表(<1>縄文時代の動物資源、<2>東北日本の弥生・続縄文の生業、<3>古墳時代の畑作、<4>韓国新石器時代の生業、<5>中国新石器時代の生業)と討論を行った。<1>では動物遺体分析による生業のありかたを、<2>では該地域・時代の農耕の評価、<3>では北関東を中心とする畑作農耕の実態、<4>と<5>では該地域・時代の生業研究の現状が論じられた。本研究の最終年度で、これまでに進めてきた狩猟・採集・農耕にかんする調査と研究を進め、また資料収集を継続するとともに、その点検と分析を行い、生業研究の研究会を開催した。とくに弥生時代遺跡出土植物種実と朝鮮半島遺跡出土植物遺体資料について、発掘調査報告書に再度当たり、データの誤り・漏れを点検し、植物図鑑等と照合して植物名称の誤りがないかなどをチェックし、データ・ベース原稿作成を進めた。これによって現在入手できる発掘調査報告書などの資料にもとづく弥生時代200数十遺跡、朝鮮半島100遺跡前後に関するほぼ完全なデータ・ベースの作成に漕ぎつけた。 | KAKENHI-PROJECT-12410104 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12410104 |
固有ジョセフソン接合超格子を利用したナノ超伝導スピントロニクスデバイスの創製 | ビスマス系高温超伝導体に内在する固有ジョセフソン接合と磁性体で構成される磁性体/固有ジョセフソン接合超格子ハイブリッド構造を作製し,同構造におけるスピン依存輸送特性について研究した。特に,マイクロマグネティックス解析により,観測された臨界電流の磁場依存性が,磁性体の磁区構造に密接に関係することかにした。これにより,同接合超格子の新しいスピントロニクスデバイス応用への可能性を示した。ビスマス系高温超伝導体に内在する固有ジョセフソン接合と磁性体で構成される磁性体/固有ジョセフソン接合超格子ハイブリッド構造を作製し,同構造におけるスピン依存輸送特性について研究した。特に,マイクロマグネティックス解析により,観測された臨界電流の磁場依存性が,磁性体の磁区構造に密接に関係することかにした。これにより,同接合超格子の新しいスピントロニクスデバイス応用への可能性を示した。本研究は,銅酸化物高温超伝導体に内在するナノ構造に起因した固有ジョセフソン接合に着目し,同接合超格子と強磁性体からなる積層構造を作製することにより,従来の超伝導素子やスピントロニクス素子にはない機能を探究するとともにそれを利用したデバイス開発を目指すものであり,H21年度は,以下の成果を得た.(1)高品質Bi_2Sr_2CaCu_2O_y(BSCCO)単結晶を用いたCo(100nm)/Au(20nm)/BSCCOハイブリッド構造を電子線並びに光リソグラフィ,イオンエッチング技術により再現性良く作製することに成功した.(2)Co/Au/BSCCOハイブリッド構造において,層に平行な方向から磁場を印加すると,BSCCO内の個々の固有ジョセフソン接合の臨界電流は,4.2Kから臨界温度近傍にわたる広い温度領域でCo膜の磁化特性に対応した磁場依存性を示した.また,そのとき多数の接合の臨界電流が同様な磁場依存性をもつことがわかった.これは,スピン偏極電子が多数の接合にわたりトンネル伝導していることを示唆する結果といえる.(2)Co/Au/BSCCO長方形メサ構造を作製し,その長辺方向並びに長辺と垂直な方向から磁場を印加したところ,異なる臨界電流の磁場依存性が観測され,臨界電流の磁場依存性がCo膜の磁区構造と密接に関係していることを見出した.本研究の成果は,平成22年8月に米国において開催される応用超伝導国際会議において発表する予定である.本研究は,銅酸化物高温超伝導体に内在するナノ構造に起因した固有ジョセフソン接合に着目し,同接合超格子と強磁性体からなる積層構造を作製することにより,従来の超伝導素子やスピントロニクス素子にはない機能を探究するとともにそれを利用したデバイス開発を目指すものであり,H22年度は77Kにおける固有ジョセフソン接合のスピン伝導特性を中心に評価し,以下の成果を得た.(1)高品質Bi_2Sr_2CaCu_2O_y(BSCCO)単結晶を用いた正方形(面積5×5μm^2)並びに長方形(面積2×13μm^2)のCo(100nm)/Au(20nm)/BSCCOハイブリッド構造を電子線並びに光リソグラフィ,イオンエッチング技術により再現性良く作製することに成功した.(2)正方形試料において,層に平行な方向から磁場を印加すると,BSCCO内の個々の固有ジョセフソン接合の臨界電流の磁場依存性は,磁場の掃引方向に依存してCoの磁気特性に対応したヒステリシスを示した.(3)長方形試料においては,長辺に対し磁場を平行に印加した場合と垂直に印加した場合では異なる臨界電流の磁場依存性を示した.試料と同形状のCoの磁気特性をマイクロマグネティックスシミュレーションにより解析したところ,観測された臨界電流の磁場依存性は,Coの磁化特性及び磁区構造と密接に関連しており,磁壁面積の減少により固有接合の臨界電流が抑圧されることを見出した.この結果は,固有接合におけるスピン伝導を外部磁場で制御で制御可能なことを示唆しており,固有ジョセフソン接合をスピンデバイス応用する上で重要な知見である.本研究は,銅酸化物高温超伝導体に内在するナノ構造に起因した固有ジョセフソン接合に着目し,同接合超格子と強磁性体からなる積層構造を作製することにより,従来の超伝導素子やスピントロニクス素子にはない機能を探究するとともにそれを利用したデバイス開発を目指すものであり,H23年度は77Kにおける固有ジョセフソン接合のスピン伝導特性の観測並びにその解析を行い,以下の成果を得た.高品質Bi_2Sr_2CaCu_20_y(BSCCO)単結晶を用いた正方形(面積5×5μm^2)並びに長方形(面積2×13μm^2)のCo(100nm)1Au(20nm)1BSCCOハイブリッド構造における固有ジョセフソン接合の臨界電流は,試料構造及び磁場印加方向により異なる磁場依存性が観測された.長方形試料の長辺に垂直に磁場を印加した場合は,ヒステリシスを伴う50%以上の臨界電流の変化が見られた.臨界電流の大きな抑圧は,ジョセフソン効果とスピン注入効果の相互作用によるものであり,スピン注入の影響を明らかにするために試料と同形状のCoのマイクロマグネティックスシミュレーションを行った.その結果,観測されたヒステリシスを伴う臨界電流の磁場依存性は,Coの磁化反転過程(回転磁化過程,磁壁移動過程)に依存することを見出した.この結果は,固有接合におけるスピン伝導を外部磁場で制御で制御可能なことを示唆しており,固有ジョセフソン接合をスピンデバイス応用する上で重要な知見である. | KAKENHI-PROJECT-21360142 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21360142 |
酵母の新規イオン輸送体の解析とオルガネラ膜のイオン輸送体測定技術の基盤構築 | 出芽酵母の液胞膜に局在性を示す陽イオンチャネルYVC1のチャネル活性の測定を酵母巨大化法とオルガネラ膜を用いたパッチクランプ測定技術の併用によって行った。yvc1欠損酵母の液胞膜に高等生物のオルガネラ膜に発現するイオンチャネルを異種発現させることにより、これまで機能解析が困難であったイオンチャネルの機能解析を行った。本研究によって、YVC1の還元剤による活性制御機構を明らかにした。さらに、yvc1欠損酵母を用いることによってヒトのリソソームに発現するTPC2チャネルの機能解析が可能であることを見出した。本研究では、酵母の巨大化法と細胞内小器官を用いたパッチクランプ法の併用により、酵母液胞膜に局在するCa2+チャネルYVC1の機能解明、yvc1欠損株の液胞膜に真核生物の細胞内小器官に局在するイオン輸送体を導入発現して機能解析することをめざした。動物において痛みや温度などの刺激に応答するイオンチャネルTRPのホモログチャネルであるYVC1は、動物TRPチャネルの分子機構を解明するための重要な研究対象である。測定電極の先端に液胞膜の断片を移しとるexcised-patch法を用いた単一チャネル測定を行った。その結果、細胞質側のCa2+によってYVC1チャネルが活性化するのとは反対に、液胞内のCa2+によってチャネル活性が低下する特性を見出した。yvc1欠損株にヒト細胞のリソソームに局在することが知られているTPCN2チャネルに緑色蛍光タンパク質GFPを融合したTPCN2-GFPを形質導入し、共焦点顕微鏡を用いて観察したところ、yvc1欠損株の液胞膜から蛍光シグナルを検出した。さらに、TPCN2チャネルを発現した酵母液胞膜を用いてパッチクランプ解析を行ったところ、液胞内から細胞質に向かって透過するNa+電流を検出したがK+電流は検出されなかったため、TPCN2はNa+選択性の高いチャネルであることを見出した。さらに、細胞質側に該当する測定溶液にホスファチジルイノシトール-3,5二リン酸(PI(3,5)P2)と添加したところ、TPCN2チャネルの活性化を確認した。また、シロイヌナズナのゴルジ体に発現する陰イオン輸送体CLC-dを酵母細胞に形質導入したところ、酵母液胞膜への発現が確認されたため、ゴルジ体に局在するイオン輸送体の異種発現系として酵母液胞膜を用いることが可能と考えられた。本研究では、酵母の巨大化法と細胞内小器官パッチクランプ法の併用により、酵母液胞膜に局在するCa2+チャネルYVC1の機能の解明を行う。さらに、yvc1欠損株の液胞膜から見出された新規陰イオン輸送体の解析と遺伝子の同定行う。YVC1は、動物において痛みや熱などの刺激に応答するTRPチャネルのホモログチャネルであり、TRPチャネルの分子メカニズムを解明するための重要な研究対象である。1YVC1のパッチクランプ解析により、還元剤によってYVC1が大きな活性を示すことを見出した。さらに、S-S結合を形成するシステイン残基をセリンに置換した変異チャネルを作成して還元剤の影響を検討した。その結果、C末端領域に存在するシステイン残基を置換した変異チャネルでは還元剤による活性化能が消失していた。以上より、C末端領域のシステイン残基が還元剤による活性化に関与していることを明らかにした。yvc1欠損株の液胞膜を用いたパッチクランプ解析により、硝酸イオンを選択的に透過する輸送体の存在が示唆された。本輸送体の同定のため、候補輸送体遺伝子の欠損株を作成してパッチクランプ解析を行った。その結果、yhl008c欠損株では硝酸イオンの透過活性が消失したことからYHL008cが酵母液胞膜における主要な陰イオン輸送体であることが示唆された。2パッチクランプ実験に用いる巨大化酵母に輸送体タンパク質を高発現させるために、酵母の巨大化操作によって輸送体タンパク質遺伝子の発現が誘導される発現系の構築をめざしている。DNAマイクロアレイ解析により、巨大化操作によって遺伝子発現量が5倍以上に上昇する遺伝子を5つ検出した。これらの候補遺伝子のプロモーター領域をクローニングしたプラスミドベクターを構築する。本研究では、酵母の巨大化法と酵母液胞膜を用いたパッチクランプ法の併用により、酵母液胞膜に局在するCa2+チャネルYVC1の機能解明、yvc1欠損株の液胞膜に真核生物の細胞内小器官に局在するイオン輸送体を導入発現して機能解析することをめざした。動物においてセンサータンパク質として機能するイオンチャネルTRPのホモログチャネルであるYVC1は、動物TRPチャネルの分子機構を明らかにするための重要な研究対象である。これまでに細胞質内の還元剤によってYVC1チャネルが活性化されることが報告されていたが、どのような分子機構によって活性化しているかは未知であった。本研究では、YVC1チャネルのシステイン残基をセリン残基に置換して還元剤による活性化の有無を確認したところ、C末端領域のシステイン残基が活性に重要であることを見いだした。また、リン脂質がYVC1の活性化を抑制する可能性を示唆するデータが得られた。yvc1欠損株にシロイヌナズナのゴルジ体に発現する陰イオンCLCDに緑色蛍光タンパク質GFPを融合したCLCD-GFPを形質導入し、共焦点顕微鏡を用いて観察したところ、yvc1欠損株の液胞膜から蛍光シグナルを検出した。さらに、CLCDチャネルを発現した酵母液胞膜を用いてパッチクランプ解析を行ったところ、細胞質から液胞内に向かって透過するCl-電流を検出した。 | KAKENHI-PROJECT-24580135 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24580135 |
酵母の新規イオン輸送体の解析とオルガネラ膜のイオン輸送体測定技術の基盤構築 | 以上より、ゴルジ体に局在するイオン輸送体の異種発現系として酵母液胞膜を用いることが可能と考えられた。本研究では、酵母の巨大化法と細胞内小器官を用いたパッチクランプ法の併用により、酵母液胞膜に局在するCa2+チャネルTRPY1の機能解明、trpy1欠損株の液胞膜に真核生物の細胞内小器官に局在するイオン輸送体を導入発現して機能解析することをめざした。高等動物において外環境からの刺激に応答するイオンチャネルTRPのホモログチャネルであるTRPY1は、動物TRPチャネルの分子機構を解明するための重要な研究対象である。これまでにTRPY1が還元剤によって活性化が報告されているが、その活性化機構の詳細は未知のままである。本研究では還元剤が作用するアミノ酸残基を同定するために、細胞質に露出したN末端とC末端のシステイン残基をセリン残基に置換して活性を測定したところ、C末端のシステインをセリンに置換した変異チャネルでは還元剤による活性化が消失した。また、その変異チャネルではCa2+による活性化には変化は見られなかった。測定電極の先端に液胞膜の断片を移しとるexcised-patch法を用いた単一チャネル測定を行い、野生型TRPY1と変異TRPY1を比較したところ、単一チャネルのコンダクタンスに違いは見られなかった。次に、各種のホファチジルイノシトールリン酸を細胞質側に添加したところ、PI(3)PによってTRPY1の活性化が半分程度に減少した。その一方、PI(3,5)P2とPIでは活性に変化は見られなかった。TRPY1は、高浸透圧に応答して液胞内から細胞質へCa2+を放出することが知られているため、イクオリンを用いた細胞内Ca2+検出実験を行った。その結果、PI(3)Pを脱リン酸化してPIを生合成するSac1脱リン酸化酵素の欠損株では液胞内からのCa2+放出がみられなかった。このことより、PIPの蓄積がTRPY1活性を抑制することが推察された。trpy1欠損株の液胞膜にシロイヌナズナの陰イオンチャネルCLC-Dを導入発現して機能解析したところCLC-DのClイオンの透過を確認した。出芽酵母の液胞膜に局在性を示す陽イオンチャネルYVC1のチャネル活性の測定を酵母巨大化法とオルガネラ膜を用いたパッチクランプ測定技術の併用によって行った。yvc1欠損酵母の液胞膜に高等生物のオルガネラ膜に発現するイオンチャネルを異種発現させることにより、これまで機能解析が困難であったイオンチャネルの機能解析を行った。本研究によって、YVC1の還元剤による活性制御機構を明らかにした。さらに、yvc1欠損酵母を用いることによってヒトのリソソームに発現するTPC2チャネルの機能解析が可能であることを見出した。本年度の研究により、細胞質内の還元剤によるYVC1チャネル活性化の分子機構の詳細を明らかにした。また、シロイヌナズナのゴルジ体に局在する陰イオン輸送体CLC-dを酵母に形質導入して局在を検討したところ、酵母液胞膜への局在を確認した。シロイヌナズナのゴルジ体に局在するイオン輸送体CLC-dが酵母に導入発現した場合に、酵母液胞膜に局在することが明らかとなり、さらにCl-を選択的に透過することが示された。 | KAKENHI-PROJECT-24580135 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24580135 |
リメディアル教育の為の「英語基礎知識テスト」の作成 | 本研究では、英語初級者における文法用語などのメタ言語の認識度を調査し、英語習熟度との関係を検証する為に「基礎知識テスト」を作成した。その結果、対象となった1180名の大学生の初級英語学習者の多くが副詞や冠詞といった基本的な文法用語が認識できないことが確認できた。さらに、「基礎知識テスト」の結果と英語習熟度テストの結果に有意な相関関係が認められたことから、日本人大学生の初級英語学習者にとって、英語を学ぶための文法用語などのメタ言語が理解できないことが英語習得の障害となっている可能性が示唆される。本研究では、英語初級者における文法用語などのメタ言語の認識度を調査し、英語習熟度との関係を検証する為に「基礎知識テスト」を作成した。その結果、対象となった1180名の大学生の初級英語学習者の多くが副詞や冠詞といった基本的な文法用語が認識できないことが確認できた。さらに、「基礎知識テスト」の結果と英語習熟度テストの結果に有意な相関関係が認められたことから、日本人大学生の初級英語学習者にとって、英語を学ぶための文法用語などのメタ言語が理解できないことが英語習得の障害となっている可能性が示唆される。近年、大学生の英語力低下が懸念される中、英語リメディアル教育の必要性が高まっている。しかし、一般的な英語能力試験では、初級レベルの学生はほとんど不正解という場合も少なくなく、「全体と比較して習熟度が低い」という以外の情報は得られない。本研究は、こうした学生が英語学習に必要な用語(メタ言語)などの基礎知識をどれだけ理解できるのかを測定しようとするものである。初級レベルの英語学習者の基礎知識をより細かく把握し、教材作成や授業改善に反映させることを目標としている。本研究は、先行研究をもとに作成、実施したパイロットテストを、対象者の人数、および習熟度レベルを広げて拡張したものである。23年度は、まずテストの修正、改良を行った。改良点は大きく分けて2種類あり、パイロット研究でほぼ全員が正解した項目を削除し、少し難易度の高い項目を増やことで難易度を調整したことと、パイロット研究の学会発表で得られた指摘点、疑問点を改善する為の項目を増やしたことである。採点の利便性を考慮し、テストはマークシート方式の選択問題としたが、通常のテストのように4択に止まらず、例えば品詞の問題であれば基本的な品詞全てを選択肢に設定した。テストは、23年度後期の後半に、1、2年生対象の英語の授業37クラスで実施し、705名のデータを得ることができた。データはRemarkOfficeOMRを使用して集計し、Winstepsで分析した。簡易分析では、Winstepsで得られた学習者能力と英語習熟度テスト(TOEIC Bridge)のスコアにある程度の相関関係が認められ、中でもリーディングセクションとの相関関係が一番強い(r=.66)という結果になった。今後、さらに項目および対象者分析を行ってmisfit(回答パターンがおかしい)項目や対象者を除去するなどの作業を行うことで、より正確なデータを出していく必要がある。本年度は文法性判断項目を加えた『基礎知識テスト』を、前年度とは異なる大学で524名を対象に実施し、合計有効データは1180名分となった。英語習熟度テストは、それぞれの大学がカリキュラムの一部として実施しているテストを使用し、23年度に実施した大学では639名のTOEIC Bridgeスコア、今年度実施の大学では86名のVELCテストスコアが入手できた。メタ言語知識を表すスコアは、『基礎知識テスト』結果のラッシュ分析によって得られた受験者能力推定値を使用した。習熟度テストスコアとメタ言語知識の相関は以下の通りであった:TOEIC Bridgeリスニング(r = .52)、リーディング(r = .66)、合計(r = .64)、VELC Testリスニング(r = .65)、リーディング(r = .80)、合計(r = .79)。リーディングセクションとの相関が一番高い結果は先行研究と同じであり、メタ言語知識が語彙や文法などの正確さと関連が高いことを示しているといえる。『基礎知識テスト』の結果から、対象者の多くが品詞など基本的なメタ言語を認識できないことが明らかになった。英文の文法的間違いを見つけることが困難であり、間違いを正しく説明した文を選ぶことはさらに難しいということも判明した。本研究の結果から、英語の授業や教科書の日本語での説明を理解出来ない大学生が多数存在すると推定できる。近年、会話力が注目され、文法や文法用語などが軽視される傾向にある。しかし、日本のように生活でほとんど英語を使用しない環境では、明示的知識を養い、暗示的知識をサポートしなければ、会話の上達も難しい。高校でも英語での授業が開始される中、理解できない部分を自分で調べる必要性も増すであろう。日本人英語学習者にとってのメタ言語や明示的知識の重要性に関しては、更なる研究が必要である。テストの実施時期が後期であったことで、2年生の英語受講者が前期よりも著しく少なく、実施したクラス数に対しての学生数が当初予定していたよりも少なかった。しかし、簡易分析ではテストの信頼性に問題ないという数値が出ており、データ量としては十分であるといえる。24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度は、集計したデータの分析、および結果の学会発表、論文発表を行っていく。さらに、研究者代表者の所属大学異動に伴う学生の変化に対応するために項目を増やしたテストを実施し、そのデータも結果に反映させていく。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-23820079 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23820079 |
分裂酵母収縮環のin vitro収縮系を用いた細胞質分裂の機構解明 | 分裂酵母細胞ゴーストを用いた収縮環の微細構造の解析。ゴーストをガラス面に貼付けてからunroofingし、内部の収縮環を露出させた。これをgelsolin処理してアクチンフィラメントを除去した。この操作により、アクチンフィラメントにうずもれていたミオシンを観察することができた。ミオシンはフィラメント状になっており、フィラメント同士がくっつき合っていた。これらがミオシンであることを確認するため、分裂酵母からミオシンを精製してフィラメント形成を試みた。収量が低いため不確かな部分もあるが、ミオシンフィラメントと思われる構造を確認した。これらは収縮環中のミオシンフィラメント様の構造に類似していた。さらに収縮環におけるミオシンの配置を確認するために、軽鎖Mlc1とC末端にタグをつけたミオシンを細胞内で発現させ、細胞ゴーストを作製し、蛍光抗体法でミオシンを可視化した。非常に興味深い染色パターンが得られたが、フィラメントの配置の説明がつかないので、タグの場所を変えたミオシンの発現コンストラクトを作製しているところである。カエル未受精卵抽出液を用いた収縮環形成過程の研究。アフリカツメガエル未受精卵から抽出液を調製し、油中に懸濁して人工脂質膜小胞を作った。小胞内のアクチンは蛍光アクチンの添加により可視化した。アクチンが脂質膜付近で重合してフィラメントとなり、同じく小胞中に形成されるX-bodyに向かって流れることを見いだした。流れたアクチンはX-body近辺で脱重合した。この流れにはミオシンATPase活性も関与していた。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。分裂酵母のcdc25変異株細胞にミオシン軽鎖-GFPを発現させ、細胞壁溶解酵素処理により細胞壁を除いてスフェロプラストとし、収縮環形成を確認してから界面活性剤処理により細胞ゴースト(収縮環-細胞膜複合体)を単離した。これにATPを加えると収縮環の収縮がおこるが、ATP, CTP, ITP, GTPはこの順で収縮速度が遅くなり、非水解性のAMPPNPでは収縮がおこらなかった。ミオシンATPaseの阻害剤存在化や、ミオシン重鎖変異株myo2-E1と欠損株myo3Δの2重変異株では収縮は起こらかった。このためミオシンATPase活性が収縮に働いている事が分かった。またATP添加で起こる収縮は生きた細胞中の収縮環の収縮の20-30倍という速い速度だった。この結果は生細胞中では収縮を遅くする制御系が存在することを示唆し、あらたな研究課題が生じた。収縮の際、収縮環はゴーストの細胞膜から離れて収縮した。収縮環と細胞膜の接点構造の解明も新たな研究課題である。収縮中にアクチン繊維は脱重合したか少なくとも小単位に解離したが、アクチン繊維安定化物質を加えた実験により、脱重合そのものは収縮に必須でないことがわかった。また分裂酵母のアクチン繊維架橋タンパク質IQGAPとフィンブリンを大腸菌で発現/精製しそれぞれゴーストに加えて収縮環を収縮させたところ収縮は阻害された。これは適度な繊維の架橋が収縮環の構造維持と収縮に必要である事を示している。収縮環が収縮せずに停止する分裂停止変異株cps1細胞から単離したゴーストの収縮環は正常な速度で収縮した。分裂酵母細胞ゴーストを用いた収縮環の微細構造の解析。ゴーストをガラス面に貼付けてからunroofingし、内部の収縮環を露出させた。これをgelsolin処理してアクチンフィラメントを除去した。この操作により、アクチンフィラメントにうずもれていたミオシンを観察することができた。ミオシンはフィラメント状になっており、フィラメント同士がくっつき合っていた。これらがミオシンであることを確認するため、分裂酵母からミオシンを精製してフィラメント形成を試みた。収量が低いため不確かな部分もあるが、ミオシンフィラメントと思われる構造を確認した。これらは収縮環中のミオシンフィラメント様の構造に類似していた。さらに収縮環におけるミオシンの配置を確認するために、軽鎖Mlc1とC末端にタグをつけたミオシンを細胞内で発現させ、細胞ゴーストを作製し、蛍光抗体法でミオシンを可視化した。非常に興味深い染色パターンが得られたが、フィラメントの配置の説明がつかないので、タグの場所を変えたミオシンの発現コンストラクトを作製しているところである。カエル未受精卵抽出液を用いた収縮環形成過程の研究。アフリカツメガエル未受精卵から抽出液を調製し、油中に懸濁して人工脂質膜小胞を作った。小胞内のアクチンは蛍光アクチンの添加により可視化した。アクチンが脂質膜付近で重合してフィラメントとなり、同じく小胞中に形成されるX-bodyに向かって流れることを見いだした。流れたアクチンはX-body近辺で脱重合した。この流れにはミオシンATPase活性も関与していた。27年度が最終年度であるため、記入しない。収縮環の収縮条件の基本的検討はほぼ達成した。すなわち収縮のヌクレオチド要求性、pH依存性、Caイオン依存性、II型ミオシンの必要性、アクチン脱重合の不要性、トロポミオシンの必要性、アクチンフィラメント架橋タンパク質による収縮調節などを明らかにした。さらにin vitroの収縮は細胞内での収縮の速度に比べて20倍以上速いことが分かった。このことは新たな問題を提起した。即ち細胞内では収縮速度を遅く調節する機構が存在するだろうという事である。 | KAKENHI-PUBLICLY-25117522 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25117522 |
分裂酵母収縮環のin vitro収縮系を用いた細胞質分裂の機構解明 | さらに本収縮系を用いて収縮環の収縮力の測定が可能ではないかと考えられる。これについては既に研究を開始し、3つの方法を試みているところである。また本収縮系は細胞質成分を排除してあるため、収縮環が露出しており、これを用いて収縮環の微細構造を解明できるのではないかと考えている。これについても3つの方法(エッチングレプリカ法、臨界点乾燥法、クライオEM)により試料を作製し、条件検討を行っている。現在、ゴーストの膜が物理的障害になっており内部がよく見えず苦戦している。また収縮環の完全単離は目標の一つで、それができればプロテオーム解析も可能になる.現在、部分的に可能になっているが、単離される割合が低いため、これも条件検討を行っている。27年度が最終年度であるため、記入しない。分裂酵母細胞ゴーストを用いた収縮環の微細構造の解析。ゴーストを凍結割断して内部の収縮環が見えるようにし、エッチングレプリカ法によりその微細構造を観察する.またはゴーストを基質にはりつけてからunroofingし、内部の収縮環が見えるようにし、エッチングレプリカ法によりその微細構造を観察する.また同様の試料を臨界点乾燥し、収縮環の微細構造を観察する.いずれの方法においてもアクチンフィラメントをゲルソリン処理によって除いた物も作製し、ミオシンの観察を試みる。分裂酵母細胞ゴーストを用いた収縮環の収縮力の測定。ゴーストの膜の破れ目から2本のガラス針を差し込んでATPを加え、収縮環を収縮させて発生する力を測定する.また、ゴースト内に2つのビーズを導入して光ピンセットで操り、収縮環を収縮させて発生する力を測定する.さらにゴースト内の収縮環の間に油滴を顕微注入し、収縮環を収縮させて油滴を変形させる力として収縮力を測定する。収縮環の収縮ならびに収縮速度の制御系の研究。分裂酵母から分裂期の細胞質を調製し、細胞ゴーストに加えて収縮環の収縮速度を測定する.また温度感受性の分裂停止変異株からゴーストを調製し、収縮環の収縮性を見ることによって収縮開始の制御系を探る。カエル卵抽出液を用いた収縮環形成過程の研究。アフリカツメガエル卵の抽出液を調製し、油中に懸濁するかリポソームに封入して細胞質ドロップレットを作製する。まずはこの中でのアクチンの動きを観察する。ドロップレット中のアクチンがドロップレット膜に結合する条件を探り、アクチンの運動によってドロップレットが変形あるいは収縮する条件を探る。 | KAKENHI-PUBLICLY-25117522 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25117522 |
漫画に対する画像処理 (漫画の特徴を考慮した検索とリターゲティング) | (1)近似最近傍探索手法の提案ベクトルの探索について,近年はプロダクト量子化を用いた手法が盛んに研究されている.これは,ベクトルを短い添え字集合のコードに変換し,さらに転地インデックス構造と組み合わせて検索を行うものである.これらの手法はテストデータベースに対し高速・高精度な探索を可能とするが,様々なパラメータチューニングが必要である,およびデータ構造が複雑になるという欠点があった.私はそれを解決するため,ハッシュテーブルを用いて,コードに対し直接近いものを計算するデータ構造とアルゴリズムを提案した.提案手法はコードさえ設計すればそれ以上のパラメータ調整が必要でない,実用的に有効なものである.提案手法はコンピュータビジョン分野で最も権威のある国際会議であるInternational Conference on Computer Visionに採録された。また、その内容は国内学会である映像メディア処理シンポジウムにても発表され、学生論文賞を受賞した。(2)お絵かき支援手法の論文採録従来,漫画をはじめ絵をうまく「描く」という行為は訓練を必要とする技術であった.一方で,画像処理技術を用いれば絵を描くユーザに対し描画行為を支援することができるかもしれない.私はリファレンス画像のストローク情報を伝搬させることでユーザの創造性を刺激し,絵描きを支援する技術を提案した.提案手法は従来のドローイング支援手法に比べ,ストロークレベルでの対応,変形の度合いをユーザ自身が決めることができる,実際に変形させるか裏に表示する提案にするかを選ぶことができる,などの利点がある.提案手法はコンピュータグラフィクス分野において二番目に権威のあるIEEE Transactions on Visualization and Computer Graphicsに採録が決定された.27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。研究の目的である漫画に対するスケッチ検索の実現,及び漫画に対する応用的画像処理に向けて,私は今年度に以下の四つを実現した.(1)スケッチ検索の基本となる,漫画に対するエッジベース画像特徴料の記述・比較方式を提案した.これは漫画の内容に踏み込んで検索を行う世界で初めての取り組みである.これにより,現在急速に発展しており今後も市場が拡大していくであろう電子漫画の領域において,従来にない検索を行うことが可能となる.現在中規模のデータセットにおいて実現した内容を論文投稿して結果を待っている段階にある.(2)効率的なインデクス構造の構築.数百万枚などの大規模な漫画画像を扱うためには,より効率的なインデクス構造を作る必要がある.現在,プロダクト量子化を基本とした新しいインデクス構造を考えており,論文投稿準備中である.(3)お絵かき支援技術.漫画の応用処理を考える上で,漫画を「描く」行為に注目した時,電子技術を用いてお絵かきを支援することが考えられる.私は今年度にマイクロソフトリサーチアジアに研究インターンに行き,描き手の想像力を刺激しお絵かきを支援するシステムを提案した.この内容は実験が全て終わり,論文投稿準備中にある.(4)漫画の応用処理.私は自身の研究に加え,現在研究室で漫画を研究するグループを率いて研究指導・共同研究を行っている.現在後輩との共同研究として「漫画の領域選択」「イラスト画像の類似度を考慮した可視化とブラウジング」の研究を行った.これらの内容は現在論文投稿し結果を待っている.研究の目的である漫画に対するスケッチ検索の実現,及び漫画に対する応用的画像処理に向けて,私は今年度に以下の三つを実現した.(1)スケッチによる漫画検索:私は昨年度に提案したスケッチによる漫画画像検索手法をより高速・省メモリ化(objectnessと直積量子化の導入)した.これにより,総計21800ページの漫画画像データに対するスケッチ検索を60ms程度,8GB程度のメモリ消費で行うことができることを示した.これらについて,昨年度の内容が国際会議ICIPに採録され,またHCGシンポジウムにて和文投稿した内容が最優秀インタラクティブ発表賞を受賞した.その内容について現在和文論文誌に投稿中であり,また上記の改良を加えたものを現在英文論文誌に投稿準備中である.(2)近似最近傍探索手法の提案:ベクトルの探索そのものにも焦点を当て,数学的・理論的に探索を高速化する研究も行った.近年の最新の手法は様々なパラメータチューニングが必要である,およびデータ構造が複雑になるという欠点があった.私はそれを解決するため,ハッシュテーブルを用いて,直積量子化コードに対し直接近いものを計算するデータ構造とアルゴリズムを提案した.提案手法はコードさえ設計すればそれ以上のパラメータ調整が必要でない,実用的に有効なものである.現在国際会議に投稿中である.(3)データセットの構築:私を含む相澤研究室漫画グループは,非営利の漫画書籍収集団体との交渉を通じて,研究目的でパブリックに利用できる漫画画像データセット,「Manga109」を構築した.これは一冊平均200ページほどの漫画単行本109冊から成り,全てプロフェッショナルの漫画家によって描かれ出版されたものである.漫画画像処理研究の分野において,このようなプロによる大量の画像を含むデータセットは存在せず,世界で初めて成し遂げられたものである.(1)近似最近傍探索手法の提案ベクトルの探索について,近年はプロダクト量子化を用いた手法が盛んに研究されている.これは,ベクトルを短い添え字集合のコードに変換し,さらに転地インデックス構造と組み合わせて検索を行うものである.これらの手法はテストデータベースに対し高速・高精度な探索を可能とするが,様々なパラメータチューニングが必要である,およびデータ構造が複雑になるという欠点があった. | KAKENHI-PROJECT-13J07696 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13J07696 |
漫画に対する画像処理 (漫画の特徴を考慮した検索とリターゲティング) | 私はそれを解決するため,ハッシュテーブルを用いて,コードに対し直接近いものを計算するデータ構造とアルゴリズムを提案した.提案手法はコードさえ設計すればそれ以上のパラメータ調整が必要でない,実用的に有効なものである.提案手法はコンピュータビジョン分野で最も権威のある国際会議であるInternational Conference on Computer Visionに採録された。また、その内容は国内学会である映像メディア処理シンポジウムにても発表され、学生論文賞を受賞した。(2)お絵かき支援手法の論文採録従来,漫画をはじめ絵をうまく「描く」という行為は訓練を必要とする技術であった.一方で,画像処理技術を用いれば絵を描くユーザに対し描画行為を支援することができるかもしれない.私はリファレンス画像のストローク情報を伝搬させることでユーザの創造性を刺激し,絵描きを支援する技術を提案した.提案手法は従来のドローイング支援手法に比べ,ストロークレベルでの対応,変形の度合いをユーザ自身が決めることができる,実際に変形させるか裏に表示する提案にするかを選ぶことができる,などの利点がある.提案手法はコンピュータグラフィクス分野において二番目に権威のあるIEEE Transactions on Visualization and Computer Graphicsに採録が決定された.私の研究計画である(1)漫画画像特徴量記述,(2)効率的インデクス,(3)大規模実装,のうち,2013年度に(1)を実現し,2014年度に(2),および(3)のためのデータセットの構築を終えたため,おおむね順調である.27年度が最終年度であるため、記入しない。提案した特徴量,インデクス構造,構築したデータベースを用いて,大規模実装を実現する.加えて,それをデータソースとして用いた,応用的漫画画像処理も追及する.私の研究計画である(1)漫画画像特徴量記述,(2)効率的インデクス,(3)大規模実装,のうち,(1)を実現し論文投稿中であり, (2)について論文投稿準備中である.また発展的な内容としてその他の応用処理の内容も論文投稿準備中である.よっておおむね順調に進展しているといえる.27年度が最終年度であるため、記入しない。効率的インデクス構造の内容をより深く掘り下げ,より大規模なデータベースで実験を試す.またそれを漫画画像に適用し,大規模な漫画画像に対し検索を実現する.さらに,発展的な漫画応用処理についても引き続き研究を続ける. | KAKENHI-PROJECT-13J07696 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13J07696 |
妊娠が神経障害性疼痛を抑制する新しい機序の解明;GABAの動態に注目して | 日本では20%の国民が慢性疼痛を有し、健康寿命を延ばすために難治性の神経障害性疼痛への対応が社会的に求められている。我々は、妊娠が痛み閾値を上昇させることに着目し、様々な痛みと同様に神経障害性疼痛も分娩直前に抑制されることを明らかにした。またその機序に脊髄後角が大きく関わり、活性化したグリア細胞を抑制することが重要であることも示している。これらの成果を発展させ、神経障害性疼痛時に脊髄で減弱されることが明らかであるγ-アミノ酪酸(GABA)抑制系に着目し、妊娠が神経障害性疼痛を抑制するメカニズムの解明を目的とし、これまでの成果とともに新たな神経障害性疼痛の治療薬の開発に繋げようとするものである。日本では20%の国民が慢性疼痛を有し、健康寿命を延ばすために難治性の神経障害性疼痛への対応が社会的に求められている。我々は、妊娠が痛み閾値を上昇させることに着目し、様々な痛みと同様に神経障害性疼痛も分娩直前に抑制されることを明らかにした。またその機序に脊髄後角が大きく関わり、活性化したグリア細胞を抑制することが重要であることも示している。これらの成果を発展させ、神経障害性疼痛時に脊髄で減弱されることが明らかであるγ-アミノ酪酸(GABA)抑制系に着目し、妊娠が神経障害性疼痛を抑制するメカニズムの解明を目的とし、これまでの成果とともに新たな神経障害性疼痛の治療薬の開発に繋げようとするものである。 | KAKENHI-PROJECT-19K09365 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K09365 |
比較認知ゲノム科学の確立に向けて-比較認知科学と比較ゲノム科学のクロストーク- | ヒト以外の霊長類の「遺伝子(ゲノム)」と「心」の研究成果を有機的に融合させることで、「ヒトとは何か?」を明らかにしようとする「比較認知ゲノム科学」の立ち上げに寄与すべく、萌芽的研究を実施した。その結果、嗅覚受容体遺伝子の多型解析、味覚受容体遺伝子の多型解析と行動実験、およびチンパンジー二卵性双生児の行動発達において予備的な成果を得ることができた。ヒト以外の霊長類の「遺伝子(ゲノム)」と「心」の研究成果を有機的に融合させることで、「ヒトとは何か?」を明らかにしようとする「比較認知ゲノム科学」の立ち上げに寄与すべく、萌芽的研究を実施した。その結果、嗅覚受容体遺伝子の多型解析、味覚受容体遺伝子の多型解析と行動実験、およびチンパンジー二卵性双生児の行動発達において予備的な成果を得ることができた。比較認知実験の対象としてチンパンジー(地域特異的亜種集団を含む)とニホンザルを対象とした遺伝的背景の網羅的検出と集団特性に注目した感覚特性の検出を試みた。まず、霊長類研究所と熊本県宇城市にあるチンパンジーサンクチュアリ宇土で暮らしている個体を対象とした比較シークエンス解析を行い、味覚受容体や嗅覚受容体について個体や集団に特有の一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism, SNP)を検出した。味覚受容体については表現型に差異があると予想されるSNPを持つ個体群を対象に、対立遺伝子を持つ個体群を対照として比較認知実験を行った。チンパンジー、ニホンザルで特定の苦味(Phenylthiocarbamide、PTC)に応答しないであろう遺伝子型を保持している集団について、リンゴ片を用いた単純選択課題により、遺伝子型に対応した応答を検出することができた。しかし、遺伝子型と対応しない個体もあることが判明したため、苦味の検出閾の簡便な測定法の開発を試みている。さらに、高知県のいち動物公園で暮らしている二卵性双生児のチンパンジーの行動の発達過程を縦断的に観察している。ゲノム解析と連携しての研究の可能性を検討している。比較認知実験の対象としてチンパンジーとニホンザルを対象とした研究を推進した。遺伝的背景の網羅的検出と集団特性に注目した感覚特性の検出を目指し、前年度の味覚刺激実験を継続した。まず、チンパンジーの亜種間で味覚受容体の遺伝子に多くの違いがあることがわかっているため、これらについてゲノムレベルでの解析をさらに発展させた。その結果、東亜種と西亜種で明瞭なゲノム差が生じていることが判明し、味覚の認知的側面にも影響を与える可能性が示唆された。また、特に東亜種の個体についてフィールドで得られた試料の解析にも着手した。また、ニホンザルについては味覚受容体TAS2R16に特異的な変異を発見し、生化学的実験と行動実験によりヤナギの樹皮に含まれるサリシンを認識するのがニホンザルではこの受容体だけを用いていることを示した。また、ニホンザルのこの苦味認知能はヒトに比べて約十倍感度が低いことがわかった。さらに、チンパンジーにおける「におい感受性」の個体差の遺伝的バックグラウンドを解明する目的で嗅覚受容体遺伝子の多型解析を行った。嗅覚受容体遺伝子としてはヒト特異的に偽遺伝子化している可能性の高い70遺伝子を選抜して研究を行った。プライマーを遺伝子近傍領域に作製して、シーケンス解析を15個体に関して終了した。予備的な結果ながら、8遺伝子において少なくとも1個体以上において挿入・欠失型の変異を保有していた。このタイプの変異を持つアリルは偽遺伝子化していることが予想されるので、それらの嗅覚受容体遺伝子に関しては「においの感受性」の個体差を生み出しうる事を明らかにした。また、高知県のいち動物公園で順調に成長している二卵性の双子チンパンジー乳児についての行動観察を縦断的に実施した。乳母代わりの個体の存在が両方の子どもの生存に大きく寄与していることなどが明らかとなった。二卵性でかつ雌雄であるためふたりの間の個性が顕著にありつつある。将来的にはこれらの個体を含む親子についてもゲノム解析を進めるべく検討を続けている。 | KAKENHI-PROJECT-22650053 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22650053 |
脳腫瘍のレーザー治療を確立するための脳光温熱生体数値シミュレーションモデルの開発 | 【数式モデルの確立】生体組織のパラメータとして、光に関して拡散係数、吸収係数、屈折率、温熱に関して比熱、熱伝導率の計測を開始した。光輸送方程式、生体伝熱方程式は有限差分法、有限要素法、境界要素法での計算を行い、verificationは従来研究で使用されているそれぞれの式の解法との比較、また適切な条件での解析解との比較を行って検証を開始したその後、Cadaverや脳組織ファントムによる計測を行い、より臨床に近い状況で各種パラメータの修正を行った。Cadaverは凍結献体から採取したのち常温に戻し、白質と灰白質に対して厚さT=0.5/0.75/1.0/1.25/1.5mmにスライスした試料を作成する。波長の異なる6種類の半導体レーザー(λ=808/850/915/940/980/1064nm)とパワーメータ、積分球を用いて光物性値を測定した。脳腫瘍組織についても同様の測定を開始し、データを蓄積中である。【MRI情報に基づく光・熱拡散シミュレーションの精緻化】血液灌流量測定はガドリニウム造影灌流画像化法などの手法を利用した血液灌流量の測定を行い、実測灌流量の温度依存性を求めた。Thermal Clearance法により、血流による持ち去り熱量から推定される実効灌流量とMRIによる実測灌流量の関係を回帰多項式として得る。得られた灌流量の温度依存性、ならびに熱的作用のある実効灌流量とMRIの実測灌流量の関係は、これまでの生体熱伝導方程式解析における温度分布推定における不確定要素であった、実効灌流量とその温度依存性を明らかにするものである。この検討により、これまで困難であったレーザー光・熱拡散シミュレーションモデルによるレーザー治療の治療計画が行えることとなる。献体脳組織、脳腫瘍組織における、比熱、熱伝導率、光吸収係数、光散乱などのデータ収集は順調に進んでいる。また、MRIをもちいた熱の持ち去りに関する研究で、heat transfer rateの算出に成功したことは大きな進歩である。今度はin-vivo in-vitroの収集データを合わせ、シミュレーションモデルの構築と理論的裏付けを行う。数式モデルの同定について、本提案では基礎方程式として、光輸送方程式および生体伝熱方程式の2つを用いる。また、計測する生体組織のパラメータは、光に関して拡散係数、吸収係数、屈折率、温熱に関して比熱、熱伝導率を考慮する。光輸送方程式、生体伝熱方程式は有限差分法、有限要素法、境界要素法での計算を行い、verificationは従来研究で使用されているそれぞれの式の解法との比較、また適切な条件での解析解との比較を行って判断する。実現象への適用は最初脳組織の白質・灰白質をモデルとした静的ファントムに適用し、動物摘出臓器および動物実験へと適用を広げ、MRIの温度モニタリングとの比較により、血液と髄液の流れによる熱の持ち去りを考慮した動的ファントムでvalidationの判断を行う。そこで、コンピュータシミュレーションの不確かさを低減しかつ医療に応用するために、異なる組み合わせの光・熱物性値を複数用いたシミュレーションを事前に行い、これをデータベース化して、動的脳組織のファントムを用いたリアルタイム温度モニタリングの情報と比較することで、効率的かつ安全な温熱領域を与えるレーザー制御パラメータに逐次更新するプログラムを作成した。またMRIを用いたリアルタイム温度モニタリングを行った。MRIを用いた温度計測の具体的な方法としては、水分子を構成する水素原子核(プロトン)の磁気共鳴周波数の温度依存性を利用する。この磁気共鳴周波数の温度係数は-0.01ppm/°Cであることがこれまでの研究で明らかにされている。このわずかな変化を検出するために一定のエコー時間を持つ勾配磁場エコー法と呼ばれる撮像シーケンスを用いて、周波数の変化を巨視的磁化ベクトルの位相の変化として検出して行った。シミュレーションモデルの構築、生体情報の収集は順調に行っている。【数式モデルの確立】生体組織のパラメータとして、光に関して拡散係数、吸収係数、屈折率、温熱に関して比熱、熱伝導率の計測を開始した。光輸送方程式、生体伝熱方程式は有限差分法、有限要素法、境界要素法での計算を行い、verificationは従来研究で使用されているそれぞれの式の解法との比較、また適切な条件での解析解との比較を行って検証を開始したその後、Cadaverや脳組織ファントムによる計測を行い、より臨床に近い状況で各種パラメータの修正を行った。Cadaverは凍結献体から採取したのち常温に戻し、白質と灰白質に対して厚さT=0.5/0.75/1.0/1.25/1.5mmにスライスした試料を作成する。波長の異なる6種類の半導体レーザー(λ=808/850/915/940/980/1064nm)とパワーメータ、積分球を用いて光物性値を測定した。脳腫瘍組織についても同様の測定を開始し、データを蓄積中である。【MRI情報に基づく光・熱拡散シミュレーションの精緻化】血液灌流量測定はガドリニウム造影灌流画像化法などの手法を利用した血液灌流量の測定を行い、実測灌流量の温度依存性を求めた。Thermal Clearance法により、血流による持ち去り熱量から推定される実効灌流量とMRIによる実測灌流量の関係を回帰多項式として得る。得られた灌流量の温度依存性、ならびに熱的作用のある実効灌流量とMRIの実測灌流量の関係は、これまでの生体熱伝導方程式解析における温度分布推定における不確定要素であった、実効灌流量とその温度依存性を明らかにするものである。 | KAKENHI-PROJECT-17H04307 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H04307 |
脳腫瘍のレーザー治療を確立するための脳光温熱生体数値シミュレーションモデルの開発 | この検討により、これまで困難であったレーザー光・熱拡散シミュレーションモデルによるレーザー治療の治療計画が行えることとなる。献体脳組織、脳腫瘍組織における、比熱、熱伝導率、光吸収係数、光散乱などのデータ収集は順調に進んでいる。また、MRIをもちいた熱の持ち去りに関する研究で、heat transfer rateの算出に成功したことは大きな進歩である。Cadavarを用いた熱光に関する物理的変量の計測、これら情報を活用したファントムの作成から、レーザー発振装置の制御システムを完成させる。今度はin-vivo in-vitroの収集データを合わせ、シミュレーションモデルの構築と理論的裏付けを行う。 | KAKENHI-PROJECT-17H04307 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H04307 |
プロセッサ-・アレイによる超高速デ-タ収集システムの開発研究 | 高エネルギ-物理学実験の規模は年々拡大し,デ-タ収集系に対する要請も高度化している。発生するデ-タ量・頻度とも膨大になり、単に転送速度を高めれば解決するという訳には行かなくてっている。実時間にデ-タ補正・圧縮を行うとともに,デ-タ取得の判定を行う知的処理系が必要になる。マイクロプロセッサを多数配置することによりかかる処理系を開発した。プロセッサアレイには英国INMOS社のトランスピュ-タチップを採用した。このチップは4本の通信回線を内蔵しており、非常にコンパクトにアレイを組むことができる。具体的に性能を評価するため、ヒリスタンVENUS実験に組み込んだ。中央ドリフトチェンバ-のヒット情報からパタ-ン認識により有用な粒子飛跡を検出する。そのために必要なデ-タを取り込むインタ-フェ-スモジュ-ル等のハ-ドウエアおよびプロセッサアレイのソフトウエアを開発した。インタ-フェ-スモジュ-ルは、汎用のCPUモジュ-ルと専用のインタ-フェ-ス部分からなる。専用のインタ-フェ-ス部を開発するだけで任意の実験に本システムを組み込む事が可能である。プロセッサアレイは現在20個余りのCPUを接続してテストを行っている。この数は今後任意に拡張可能である。アレイが全体で一つのシステムとして効率よく稼働するために必要な分散型基本ソフトの開発も進行中である。このソフトも同様なアレイシステムで共通に使用できる。アレイの処理結果はFASTBUSのマスタ-に通知される。このシステムに実際の実験デ-タを入力して測定を行った結果,大型計算機では1事象あたり20ミリ秒程度かかっていたものに対し数ミリ秒での処理を達成した。これは実験からの要請を満たしている。この研究を進めるにあたり次世代のデ-タ処理系のあり方を考える研究会を開催し全国の研究者の参加をえた。又、この結果は米国での高エネルギ-物理学計算処理国際会議で報告される。高エネルギ-物理学実験の規模は年々拡大し,デ-タ収集系に対する要請も高度化している。発生するデ-タ量・頻度とも膨大になり、単に転送速度を高めれば解決するという訳には行かなくてっている。実時間にデ-タ補正・圧縮を行うとともに,デ-タ取得の判定を行う知的処理系が必要になる。マイクロプロセッサを多数配置することによりかかる処理系を開発した。プロセッサアレイには英国INMOS社のトランスピュ-タチップを採用した。このチップは4本の通信回線を内蔵しており、非常にコンパクトにアレイを組むことができる。具体的に性能を評価するため、ヒリスタンVENUS実験に組み込んだ。中央ドリフトチェンバ-のヒット情報からパタ-ン認識により有用な粒子飛跡を検出する。そのために必要なデ-タを取り込むインタ-フェ-スモジュ-ル等のハ-ドウエアおよびプロセッサアレイのソフトウエアを開発した。インタ-フェ-スモジュ-ルは、汎用のCPUモジュ-ルと専用のインタ-フェ-ス部分からなる。専用のインタ-フェ-ス部を開発するだけで任意の実験に本システムを組み込む事が可能である。プロセッサアレイは現在20個余りのCPUを接続してテストを行っている。この数は今後任意に拡張可能である。アレイが全体で一つのシステムとして効率よく稼働するために必要な分散型基本ソフトの開発も進行中である。このソフトも同様なアレイシステムで共通に使用できる。アレイの処理結果はFASTBUSのマスタ-に通知される。このシステムに実際の実験デ-タを入力して測定を行った結果,大型計算機では1事象あたり20ミリ秒程度かかっていたものに対し数ミリ秒での処理を達成した。これは実験からの要請を満たしている。この研究を進めるにあたり次世代のデ-タ処理系のあり方を考える研究会を開催し全国の研究者の参加をえた。又、この結果は米国での高エネルギ-物理学計算処理国際会議で報告される。高エネルギー実験でのデータ収集システムにとって、大量データの収集には、高速のデータ転送を可能にする方法よりも、事象の選択をより厳密に行い不必要な事象データを採らない事が重要である。このデータ収集の段階で、リアルタイムに事象データを超高速で解析し、事象の選別を行うために、プロセッサー・アレイを応用したシステムを開発している。今年度には、プロセッサー・アレイの基本的性能の評価と各要素マイクロプロセッサー内で走らせるプログラムのシュミレーションを大型計算機上で行い、必要なプロセッサー・アレイの大きさの推定を行った。アレイの要素プロセッサーとしては、英国INMOS社のトランスピューターT800を選定した。8個のT800を2次元格子形に並べ、相互にT800のもつ、4つのシリアルポートを用いて接続したシステムで、データの分配、各CPUでの演算及びその結果の転送などのテストを行った。これによると、データの転送方法、T800同志の接続の仕方によって性能が大きく左右されることがわかった。更に、各T800に使う補助メモリーがアクセス時間の遅いDRAMでは、充分な処理能力が発揮されない事から、速いアクセスのSRAMに変更した。一方、解析ソフトウェアのシュミレーションから、解析に要する時間は、T800の20倍の能力をもつFACOM M780上で約20ミリ秒かかることから、解析処理を5ミリ秒以下にするには、このT800を80台以上を並列で動かさなければならないことがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-63460019 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63460019 |
プロセッサ-・アレイによる超高速デ-タ収集システムの開発研究 | 今年度の開発研究の結果をもとに、来年度には、全体設計が行え、可能なかぎり多数のT800を用いて、初期の目標の性能をもつシステムを作り、評価試験を行う予定である。尚、平成元年3月に、「次世代データ収集処理に関する研究会」を主催し、約100名の参加者により、本研究課題を含めて、活発な討論が行われた。高エネルギ-実験におけるデ-タ収集系では大量の発生するデ-タを高速に転送することも必要であるが、それらのデ-タの中から必要とされるものを選び出す判断を高速に行うことが何にもまして重要である。プロセッサアレイ(以下アレイと略す)をベ-スとして、デ-タ収集の段階で実時間にそれらの判定を行うシステムを開発している。今年度は、昨年度に行ったアレイの基本性能の評価と、大型計算機で行ったシミュレ-ションの結果に基づいて、実際にトリスタンVENUS測定器に組み込むシステムの設計及び製作、アレイ上のプログラム開発を行った。処理すべきデ-タはFASTBUS規格のモジュ-ルからプロセッサモジュ-ルを通して読み出される。このモジュ-ルは英国INMOS社製プロセッサT800トランスピュ-タを搭載した汎用CPUユニットと専用のインタ-フェ-スユニットに分かれている。CPUユニットは非常にコンパクトに設計されており、専用インタ-フェ-ス部分のみ用意すれば、さまざまな方面に応用することができる。すでにいくつかの実験での使用が検討され、問い合わせがきている。プロセッサモジュ-ルで読みとられたデ-タは高速リンクを通してアレイに送られる。より高速かつ確実にデ-タを転送するため、長距離となる部分ではECL規格のリンクを採用した。アレイでは現在20個以上のT800が並べられ、並列処理によるデ-タの正否の判定のためのプログラムが開発されている。このようなアレイはこれまで一般的でなかったため我々は汎用分散型基本ソフトの構築に重点においている。これらの基本ソフトは今後アレイを使ったシステムの共通のものとして利用できる。このアレイに実験デ-タを読みとらせ処理を行った結果、当初の目標である1事象あたり数ミリ秒の処理速度を達成した。以上で本システムの設計開発は完了したので、今後全面的に実装し、ソフトウエアの充実をはかる。 | KAKENHI-PROJECT-63460019 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63460019 |
超弾性マルチフォース・スクウエアー・アーチワイヤーによるエッジワイズ法の改良 | 現在、最も広く普及しているストレートアーチワイヤーエッジワイズ法を生物学的基盤に基ずいた矯正治療法に改良し、より合理的な矯正治療法を確立する目的で本研究を行った。まず、日本人のためのストレートワイヤーブラケット、チューブを製作するための基準値を算出するために、現代日本人成人男女正常咬合者各23症例の模型を厳選し、三次元測定装置(模型計測及びデータ処理は小野測定器株式会社に依頼)により測定し、日本人の基準値を得た。同時に、日本人成人男女正常咬合者の平均的アーチフォームを男女別に算出、図形化し、プリフォームドアーチワイヤー製作のための基準を得た。算出された結果に従って上下中切歯から第二大臼歯までの日本人のためのプリアジャステッドブラケット、チューブ、上下男女別の超弾性マルチフォース・ニッケル-チタン・スクウェアー・アーチワイヤーを設計し、トミ-株式会社にその製作を依頼した。次いで、新しく製作したアーチワイヤーの超弾性特性を正確に把握するために、自動3点曲げ試験機を特注してワイヤーの特性を検査することとした。一方、現在矯正材料メーカー各社から市販されている超弾性アーチワイヤーと新しく製作したアーチワイヤーとの理工学的特性を比較検討するために歯科理工学教室の協力を得て、引張試験、曲げ試験を行った。他方、新しく製作したブラケット、チューブ、超弾性マルチフォース・スクウェアー・アーチワイヤーをタイポドントに適用し、I、II、III、級の不正咬合に対する矯正治療のフォースシステムを検討した。今後、これらを臨床に応用してその効果を検討する。現在、最も広く普及しているストレートアーチワイヤーエッジワイズ法を生物学的基盤に基ずいた矯正治療法に改良し、より合理的な矯正治療法を確立する目的で本研究を行った。まず、日本人のためのストレートワイヤーブラケット、チューブを製作するための基準値を算出するために、現代日本人成人男女正常咬合者各23症例の模型を厳選し、三次元測定装置(模型計測及びデータ処理は小野測定器株式会社に依頼)により測定し、日本人の基準値を得た。同時に、日本人成人男女正常咬合者の平均的アーチフォームを男女別に算出、図形化し、プリフォームドアーチワイヤー製作のための基準を得た。算出された結果に従って上下中切歯から第二大臼歯までの日本人のためのプリアジャステッドブラケット、チューブ、上下男女別の超弾性マルチフォース・ニッケル-チタン・スクウェアー・アーチワイヤーを設計し、トミ-株式会社にその製作を依頼した。次いで、新しく製作したアーチワイヤーの超弾性特性を正確に把握するために、自動3点曲げ試験機を特注してワイヤーの特性を検査することとした。一方、現在矯正材料メーカー各社から市販されている超弾性アーチワイヤーと新しく製作したアーチワイヤーとの理工学的特性を比較検討するために歯科理工学教室の協力を得て、引張試験、曲げ試験を行った。他方、新しく製作したブラケット、チューブ、超弾性マルチフォース・スクウェアー・アーチワイヤーをタイポドントに適用し、I、II、III、級の不正咬合に対する矯正治療のフォースシステムを検討した。今後、これらを臨床に応用してその効果を検討する。 | KAKENHI-PROJECT-06454588 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06454588 |
日露共同気球実験による超高エネルギー銀河宇宙線の観測 | 平成10年度の気球実験はロシア側の事情により行わず、データ解析に重点をおいた。これまで日ロ共同気球実験は平成7年度より7機の放球を行い、6機の回収に成功した。そのため、平成10年度はデータ解析のためのコンピューター環境の整備に重点をおき、エネルギー決定システムの構築、検出効率シュミレーションのプログラム作成を行った。その結果、4機分のデータ解析がほぼ終了し、これらの結果は研究成果にもまとめてあるように、Nuclear Phys.,COSPAR prceedingsに報告した。特筆すべきことは、陽子成分は過去の観測結果(JACEE,SOKOL他)とよく一致しているが、ヘリウム成分はファクター2程度強度が低い。我々の結果と低エネルギー領域の過去のデータを接続させると、陽子成分とヘリウム成分のエネルギースペクトルは大体平行で、ベキは微分形で2.8であった。平成10年度の気球実験はロシア側の事情により行わず、データ解析に重点をおいた。これまで日ロ共同気球実験は平成7年度より7機の放球を行い、6機の回収に成功した。そのため、平成10年度はデータ解析のためのコンピューター環境の整備に重点をおき、エネルギー決定システムの構築、検出効率シュミレーションのプログラム作成を行った。その結果、4機分のデータ解析がほぼ終了し、これらの結果は研究成果にもまとめてあるように、Nuclear Phys.,COSPAR prceedingsに報告した。特筆すべきことは、陽子成分は過去の観測結果(JACEE,SOKOL他)とよく一致しているが、ヘリウム成分はファクター2程度強度が低い。我々の結果と低エネルギー領域の過去のデータを接続させると、陽子成分とヘリウム成分のエネルギースペクトルは大体平行で、ベキは微分形で2.8であった。 | KAKENHI-PROJECT-10117211 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10117211 |
重力方向への動作における重心軌道形成の最適化に関する研究-着座動作に着目して | 本年度においては、第一研究として座面幅による影響について検証した。すなわち、自分自身の身体幅と比較して座面幅を認識しているのか、そして座面幅を認識した上で座面幅に適切な運動軌道が選択されるのかについて検討した。健常成人10名(年齢22.3±2.8歳、身長: 171.3±6.1 cm、体重: 65.8±7.9 kgw)を対象とした。座面幅条件の規定には座位臀幅を測定し、その時の幅を座面幅100%条件とした。座面幅条件は80、90、100、110、120%の計5条件とし、座面高は昇降台によって各被験者の腓骨頭の高さになるよう設定した。データ解析にはMATLAB (Math Work社製)を使用し,独自に作成したプログラムにて解析した。アンケート結果における各座面幅条件での最頻値は座面幅80%条件で"狭い"と回答したのが全体の50%、座面幅90%条件で"少し狭い"が50%、座面幅100%条件で"普通"が40%、座面幅110%条件で"少し広い"が50%、座面幅120%条件で"広い"が60%と座面幅の増加に伴って"広い"と認識する傾向を示した。座面幅と体重心軌道の関係性については、座面幅毎による体重心軌道長、床反力first peak、平均体重心速度、所要時間に有意差は認められなかった。アンケート調査においては、座面幅の増加に伴って"広い"と認識する傾向を示しており、着座動作遂行においては身体幅に対しての座面幅を認識している上で運動軌道が形成されていることが示された。しかしながら、体重心軌道と座面幅による関連性は示されず、環境を認識しているにも関わらずその環境に適当な運動戦略は選択されなかった。つまり、座面幅情報による"安全性"についての影響は少なく、むしろ他の座面幅要因となる座椅子までの距離や座面材質が着座動作戦略に影響する可能性が示唆された。着座動作を検証するにあたり我々は座椅子装置を独自に作成しその特性について十分に吟味した上で座面幅による影響について着座動作を検証している。また、本研究は"安全性"が重力方向への運動軌道形成である着座動作においては優先されるという仮説のもと実施している。そのため、測定の中で"安全性"についての情報が被験者へ遮断されるよう測定手順についても設定した。さらに、座椅子要因は複数存在し、階層的に座椅子要因の影響を検証する上で、本研究ではまず座面幅による影響について検証している。上記内容を考慮するべく期間を要しており、これらが統制されたため次年度研究は上記設定のまま検証することが可能となる。日常生活動作の運動軌道形成においては周囲の環境認知による情報を元に、その場の環境に拘束されながらも限られた運動自由度の中でエネルギーコストを最小化するべく運動軌道を形成している。そのため、我々は座椅子要因によって着座動作戦略が異なる仮説を元に座面幅との関連性について検証した。しかしながら、座椅子要因は複数存在するため今後は坐椅子との距離、座面材質による影響について検証する。座椅子との距離においては、座椅子までの距離が遠くなるため積極的に不安定性をつくりださなければ転倒してしまう。そして不安定性が増加することは衝撃力増加を招き"安全性"が侵されてしまう。この点は高齢者の着座動作における転倒、または危険回避戦略を獲得する上で体重心水平移動の関連要素を明らかにすることは重要と考えている。また、座面材質は衝撃力を物理的に緩衝する要素であり、外部接地によって安定化を図る身体接触型安定化課題においては重要な検証課題である。特に、実際には座面材質が柔らかいも視覚的には硬く認識できるよう座面を工夫することで環境認知と運動戦略の関係性を明らかにする。本年度においては、第一研究として座面幅による影響について検証した。すなわち、自分自身の身体幅と比較して座面幅を認識しているのか、そして座面幅を認識した上で座面幅に適切な運動軌道が選択されるのかについて検討した。健常成人10名(年齢22.3±2.8歳、身長: 171.3±6.1 cm、体重: 65.8±7.9 kgw)を対象とした。座面幅条件の規定には座位臀幅を測定し、その時の幅を座面幅100%条件とした。座面幅条件は80、90、100、110、120%の計5条件とし、座面高は昇降台によって各被験者の腓骨頭の高さになるよう設定した。データ解析にはMATLAB (Math Work社製)を使用し,独自に作成したプログラムにて解析した。アンケート結果における各座面幅条件での最頻値は座面幅80%条件で"狭い"と回答したのが全体の50%、座面幅90%条件で"少し狭い"が50%、座面幅100%条件で"普通"が40%、座面幅110%条件で"少し広い"が50%、座面幅120%条件で"広い"が60%と座面幅の増加に伴って"広い"と認識する傾向を示した。座面幅と体重心軌道の関係性については、座面幅毎による体重心軌道長、床反力first peak、平均体重心速度、所要時間に有意差は認められなかった。 | KAKENHI-PROJECT-18K10755 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K10755 |
重力方向への動作における重心軌道形成の最適化に関する研究-着座動作に着目して | アンケート調査においては、座面幅の増加に伴って"広い"と認識する傾向を示しており、着座動作遂行においては身体幅に対しての座面幅を認識している上で運動軌道が形成されていることが示された。しかしながら、体重心軌道と座面幅による関連性は示されず、環境を認識しているにも関わらずその環境に適当な運動戦略は選択されなかった。つまり、座面幅情報による"安全性"についての影響は少なく、むしろ他の座面幅要因となる座椅子までの距離や座面材質が着座動作戦略に影響する可能性が示唆された。着座動作を検証するにあたり我々は座椅子装置を独自に作成しその特性について十分に吟味した上で座面幅による影響について着座動作を検証している。また、本研究は"安全性"が重力方向への運動軌道形成である着座動作においては優先されるという仮説のもと実施している。そのため、測定の中で"安全性"についての情報が被験者へ遮断されるよう測定手順についても設定した。さらに、座椅子要因は複数存在し、階層的に座椅子要因の影響を検証する上で、本研究ではまず座面幅による影響について検証している。上記内容を考慮するべく期間を要しており、これらが統制されたため次年度研究は上記設定のまま検証することが可能となる。日常生活動作の運動軌道形成においては周囲の環境認知による情報を元に、その場の環境に拘束されながらも限られた運動自由度の中でエネルギーコストを最小化するべく運動軌道を形成している。そのため、我々は座椅子要因によって着座動作戦略が異なる仮説を元に座面幅との関連性について検証した。しかしながら、座椅子要因は複数存在するため今後は坐椅子との距離、座面材質による影響について検証する。座椅子との距離においては、座椅子までの距離が遠くなるため積極的に不安定性をつくりださなければ転倒してしまう。そして不安定性が増加することは衝撃力増加を招き"安全性"が侵されてしまう。この点は高齢者の着座動作における転倒、または危険回避戦略を獲得する上で体重心水平移動の関連要素を明らかにすることは重要と考えている。また、座面材質は衝撃力を物理的に緩衝する要素であり、外部接地によって安定化を図る身体接触型安定化課題においては重要な検証課題である。特に、実際には座面材質が柔らかいも視覚的には硬く認識できるよう座面を工夫することで環境認知と運動戦略の関係性を明らかにする。研究初年度であり、成果発表については次年度以降となるため旅費の使用が予定よりも少なった。また、被験者がボランティアでの協力となったため謝金の支出がなかった。加えて、消耗品等の購入が最小限となったことが、次年度使用額が生じた理由である。次年度においては、成果発表および情報収集のための学会参加を積極的に行い、適切な謝金の支払い、計画的な消耗品の購入に努める。 | KAKENHI-PROJECT-18K10755 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K10755 |
NF-kappaB経路におけるユビキチンシグナリングの構造機能解析 | NF-κBはすべての動物の細胞に存在し、炎症反応や細胞増殖、アポトーシスなどに関わる様々な遺伝子の転写を誘導する重要な転写因子である。NF-κBの活性化にはユビキチンが重要な役割を果たしている。NF-κBの活性化因子であるNEMOのユビキチン結合ドメインUBANは、NEMO以外にもABIN1,ABIN2,ABIN3,Optineurinに保存されているが、これらはNF-κBを活性化するものもあれば、反対に不活性化するものもある。本研究ではこれまでNEMOとABIN-1のUBANドメインについて、そのコイルドコイル構造のホモダイマーに対して直鎖状ユビキチン鎖が両側から対称的に2分子結合した結晶構造を解析し、さらにABIN-1ホモダイマーに対し直鎖状ユビキチン鎖1分子が片側だけに結合した複合体の結晶構造を得ている。しかし、直鎖状ポリユビキチン鎖のUBANドメインへの結合が、NEMOの全体構造あるいはNEMOと相互作用するタンパク質群ネットワーク全体にどのような影響を与え、IKK複合体の活性化を引き起こすかが未解明の課題である。NEMOと直鎖状ユビキチンの構造解析結果から、直鎖状ユビキチンの結合がNEMOのコイルドコイル構造の超らせんのピッチを緩めることが分かったが、それがNEMOのN末端に結合したIKKα/βキナーゼに及ぼす影響を調べるためには、NEMOの全体構造さらにはIKK複合体全体構造を解析する必要がある。そこで平成23年度は、スタンフォード放射光研究所(SSRL)でのPhoton Factory震災枠ビームタイムを利用して、X線小角散乱ビームラインBL4-2でNEMO全体のX線溶液散乱データ測定を試みたが、サンプルのアグリゲーションのため解析することは出来なかった。NF-κBはすべての動物の細胞に存在し、炎症反応や細胞増殖、アポトーシスなどに関わる様々な遺伝子の転写を誘導する重要な転写因子である。NF-κBの活性化にはユビキチンが重要な役割を果たしている。NF-κBの活性化因子であるNEMOのユビキチン結合ドメインUBANは、NEMO以外にもABIN1, ABIN2, ABIN3, Optineurinに保存されているが、これらはNF-κBを活性化するものもあれば、反対に不活性化するものもある。NEMOのUBANドメインとの結合はK63結合ユビキチンに比べて直鎖状ユビキチンの方が100倍以上強い。K63結合や直鎖状ユビキチン鎖への親和性はABIN-1,2,3の間でも差が見られる。ABIN(A20 binding inhibitor of NF-κB signaling)はA20およびNEMOと結合し、NF-κB経路を負に調節する。A20はRIP(receptor interacting protein)に結合したK63結合ポリユビキチン鎖を除去してK48結合ポリユビキチン鎖を付加する酵素であり、RIPを分解することによってNF-κB経路のシグナル伝達を抑制する。本研究ではNEMOとABIN-1のユビキチン鎖への親和性の違いを詳細に解析するため、これらのUBANドメインのポリユビキチン鎖との結合特異性を、X線結晶構造解析を初めとする生物物理学的手法により解明する。平成21年度はABIN-1のUBANドメインと直鎖状ユビキチン鎖との複合体の結晶構造解析に成功し、立体構造に基づいてNEMOによる直鎖状ユビキチン鎖の認識機構との詳細な比較を行なった。NF-κBはすべての動物の細胞に存在し、炎症反応や細胞増殖、アポトーシスなどに関わる様々な遺伝子の転写を誘導する重要な転写因子である。NF-κBの活性化にはユビキチンが重要な役割を果たしている。NF-κBの活性化因子であるNEMOのユビキチン結合ドメインUBANは、NEMO以外にもABIN1, ABIN2, ABIN3, Optineurinに保存されているが、これらはNF-κBを活性化するものもあれば、反対に不活性化するものもある。NEMOのUBANドメインとの結合はK63結合ユビキチンに比べて直鎖状ユビキチンの方が100倍以上強い。K63結合や直鎖状ユビキチン鎖への親和性はABIN-1,2,3の間でも差が見られる。ABIN (A20 binding inhibitor of NF-κB signaling)はA20およびNEMOと結合し、NF-κB経路を負に調節する。本研究ではNEMOとABIN-1のユビキチン鎖への親和性の違いを詳細に解析するため、これらのUBANドメインのポリユビキチン鎖との結合特異性を、X線結晶構造解析を初めとする生物物理学的手法により解明する。これまでNEMOとABIN-1のUBANドメインについて、そのコイルドコイル構造のホモダイマーに対して直鎖状ユビキチン鎖が両側から対称的に2分子結合した結晶構造を得ている。平成22年度はABIN-1ホモダイマーに対し直鎖状ユビキチン鎖1分子が片側だけに結合した複合体の結晶構造解析に成功し、UBANドメインとユビキチン鎖の結合モル比について等温滴定熱量計を用いた詳細な解析を行った。NF-κBはすべての動物の細胞に存在し、炎症反応や細胞増殖、アポトーシスなどに関わる様々な遺伝子の転写を誘導する重要な転写因子である。NF-κBの活性化にはユビキチンが重要な役割を果たしている。NF-κBの活性化因子であるNEMOのユビキチン結合ドメイン | KAKENHI-PROJECT-09F09312 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09F09312 |
NF-kappaB経路におけるユビキチンシグナリングの構造機能解析 | UBANは、NEMO以外にもABIN1,ABIN2,ABIN3,Optineurinに保存されているが、これらはNF-κBを活性化するものもあれば、反対に不活性化するものもある。本研究ではこれまでNEMOとABIN-1のUBANドメインについて、そのコイルドコイル構造のホモダイマーに対して直鎖状ユビキチン鎖が両側から対称的に2分子結合した結晶構造を解析し、さらにABIN-1ホモダイマーに対し直鎖状ユビキチン鎖1分子が片側だけに結合した複合体の結晶構造を得ている。しかし、直鎖状ポリユビキチン鎖のUBANドメインへの結合が、NEMOの全体構造あるいはNEMOと相互作用するタンパク質群ネットワーク全体にどのような影響を与え、IKK複合体の活性化を引き起こすかが未解明の課題である。NEMOと直鎖状ユビキチンの構造解析結果から、直鎖状ユビキチンの結合がNEMOのコイルドコイル構造の超らせんのピッチを緩めることが分かったが、それがNEMOのN末端に結合したIKKα/βキナーゼに及ぼす影響を調べるためには、NEMOの全体構造さらにはIKK複合体全体構造を解析する必要がある。そこで平成23年度は、スタンフォード放射光研究所(SSRL)でのPhoton Factory震災枠ビームタイムを利用して、X線小角散乱ビームラインBL4-2でNEMO全体のX線溶液散乱データ測定を試みたが、サンプルのアグリゲーションのため解析することは出来なかった。 | KAKENHI-PROJECT-09F09312 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09F09312 |
記述問題の信頼性の検討-同じ日本語学習者の異なる種類の作文は同様に評価されるか- | 作文を使って「書く能力(Writing ability)」を評価する際に、その得点に関して誤差要因として働くものとして、書き手(writer)、題目(topic)、形式(mode)、時間制限(time-limit)、テスト状況(examination situation)、評定者(rater)および、評価の方法や観点、その配点などがあげられる。日本語学習者の書く能力を評価する際に、その信頼性に影響を与えると考えられるこれらの要因に関して実証的に検討する研究会を立ち上げ、多方面から検討を行ってきた。異なるトピックについて書いた同一学習者の作文を独立に評価したとき、トピック問の相関は日本人を対象にした結果に比べれば高い相関係数が得られたが、選抜試験として用いるためには必ずしも十分な信頼性が得られなかった。さらに異なる文の種類に関しても、同一学習者に両方のタスクを与え、比較を行った結果、相関係数が0.6程度であった。このことから、一方の作文の評価から他方を予測するには、誤差が大きく、問題があることを指摘した。さらに、大学での勉学生活では意見文のみならず、参考図書など長い文を読んで要約文を香いたり、図や表の説明を書いたり、実験の手順を書く等、さまざまな文章を書くことが求められる。試験の波及効果を考えたとき、意見文のみを書かせる固定した方法にも問題があることを示した。研究会では、日本留学試験の記述問題に限らず、図の説明文など大学の勉学の中で要求される文章も取り上げ、評価の揺れに関する条件に関して、多くのデータに基づき分析を行った。同じ作文を全体的総合評価で1つの得点で評価したとき、評価者間の不一致の原因が把握できず、トレーニングによって一致させることが困難であった。また観点別分析評価のなかのいくつかの観点とは関連性が高いが、合計点とは必ずしも一致しないことを指摘した。意見文と説明文に関して、語彙や文の構造などの側面から作文の評価との関連性を追及し、いずれも客観的指標との相関は必ずしも高くなく、評価に影響を及ぼす質的側面を指標化するためにはさらに検討が必要であることがわかった。作文を使って「書く能力(Writing ability)」を評価する際に、その得点に関して誤差要因として働くものとして書き手(writer)、題目(topic)、形式(mode)、時間制限(time-limit)、テスト状況(examination situation)、評定者(rater)および、評価の方法や観点、その配点などがあげられる。日本留学試験「記述問題」では、受験者に2つのトピックのうち一方を選ばせ、さらに2つの意見を提示し、そのいずれに賛成するか、根拠を挙げて意見文を20分以内に400字で書くように指示される。この方法で妥当な「書く能力(Writing ability)」が測れるのか、実証的に検討を行った。まず、書き手の要因として練習効果を取り上げた。練習をしていない日本語学校の受講者は、20分で400字を書くことが難しく、段落構成なども低い評価をされた。それに対し、事前に「記述問題対策講座」を受講した学習者は、早いスピードで400字を埋めることができるようになり、内容も意見を述べ、それに対する根拠を2ないし3上げ、最後に結論を書くといったまとまった文章が書けるようになる。このことから、練習をすることによって、比較的短時間に学習者の得点をあげることができ、学習者間の幅を小さくしていると結論づけた。また、異なるトピックについて書いた同一学習者の作文を独立に評価したとき、さらに異なる文の種類に関しても、同一学習者に両方のタスクを与え、比較を行った結果、相関係数が0.6から0.7であった。このことから、一方の作文の評価から他方を予測するには、誤差が大きく、日本留学試験のような重要な決定に関わる試験の方法として、2つの異なるトピックから一方を選ぶ方法は問題があることを指摘した。さらに、大学での勉学生活では意見文のみならず、参考図書など長い文を読んで要約文を書いたり、図や表の説明を書いたり、実験の手順を書く等、さまざまな文章を書くことが求められる。試験の波及効果を考えたとき、意見文のみを書かせる固定した方法にも問題があることを示した。これらの実証研究を行うにあたり、3名の日本語教師に謝金を支払い、評価を依頼した。なお、「書く能力(Writing ability)」の評価に関する文献を収集し、まとめる作業をおこなっている。作文を使って「書く能力(Writing ability)」を評価する際に、その得点に関して誤差要因として働くものとして、書き手(writer)、題目(topic)、形式(mode)、時間制限(time-limit)、テスト状況(examination situation)、評定者(rater)および、評価の方法や観点、その配点などがあげられる。日本語学習者の書く能力を評価する際に、その信頼性に影響を与えると考えられるこれらの要因に関して実証的に検討する研究会を立ち上げ、多方面から検討を行ってきた。異なるトピックについて書いた同一学習者の作文を独立に評価したとき、トピック問の相関は日本人を対象にした結果に比べれば高い相関係数が得られたが、選抜試験として用いるためには必ずしも十分な信頼性が得られなかった。さらに異なる文の種類に関しても、同一学習者に両方のタスクを与え、比較を行った結果、相関係数が0.6程度であった。このことから、一方の作文の評価から他方を予測するには、誤差が大きく、問題があることを指摘した。さらに、大学での勉学生活では意見文のみならず、参考図書など長い文を読んで要約文を香いたり、図や表の説明を書いたり、実験の手順を書く等、さまざまな文章を書くことが求められる。 | KAKENHI-PROJECT-17652050 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17652050 |
記述問題の信頼性の検討-同じ日本語学習者の異なる種類の作文は同様に評価されるか- | 試験の波及効果を考えたとき、意見文のみを書かせる固定した方法にも問題があることを示した。研究会では、日本留学試験の記述問題に限らず、図の説明文など大学の勉学の中で要求される文章も取り上げ、評価の揺れに関する条件に関して、多くのデータに基づき分析を行った。同じ作文を全体的総合評価で1つの得点で評価したとき、評価者間の不一致の原因が把握できず、トレーニングによって一致させることが困難であった。また観点別分析評価のなかのいくつかの観点とは関連性が高いが、合計点とは必ずしも一致しないことを指摘した。意見文と説明文に関して、語彙や文の構造などの側面から作文の評価との関連性を追及し、いずれも客観的指標との相関は必ずしも高くなく、評価に影響を及ぼす質的側面を指標化するためにはさらに検討が必要であることがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-17652050 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17652050 |
パワー半導体用beta-Ga2O3のハライド気相成長法による高速製膜技術の開発 | ハライド気相成長法により、ワイドギャップ半導体材料として有望なGa2O3の結晶成長を検討した。サファイアc面基板にオフ角度を導入することで、異種基板上のβ-Ga2O3の成長で従来問題であった面内回転ドメインの発生が著しく抑制されることを明らかにした。また、550°C程度の低温ではGa2O3の結晶構造は基板に依存し、サファイアc面基板上ではα-Ga2O3、GaNやAlNのc面上ではε-Ga2O3の単結晶膜が成長することを見出した。(1)成長炉の仕様変更まず、β-Ga2O3の成長に適するように既存装置の改造を行った。具体的には、使用するガスに合わせてマスフローコントローラや配管系統を変更した。また、HVPE炉内の高温領域で酸素原料が触れる可能性のある部分をすべて酸化物部材で構成した。さらに、排気系には水分を含んだ塩化物が堆積し、強腐食性の塩酸が生じる可能性があるため、腐食対策を実施した。(2)成長の確認まず、酸素原料として酸素ガスを用いてβ-Ga2O3のHVPE成長を試みた。ガリウム原料としては、同反応炉内でHClガスとGa融液との反応で生じさせたGaClを用いた。基板上に形成された膜のX線回折測定を行うことにより、β-Ga2O3が単相で合成できることが確認できた。(3)成長条件とリアクタ内部構造の改善上述のようにβ-Ga2O3のHVPE成長が可能であることを確認したものの、当初は基板上に粉末が堆積するのみで膜成長は得られなかった。これは、GaClとO2との反応によるβ-Ga2O3の析出反応は平衡定数が大きく、気相反応が起こりやすいためと考えられる。そこで、原料供給条件やリアクタ内部の構造(ガス流の制御)の見直しを行った。その結果、粉末の発生を抑制することに成功し、膜成長を実現することができた。その際、成長速度としては少なくとも数十um/hが可能であり、従来報告されているMBE等によるβ-Ga2O3の成長速度をはるかに上回ることを明らかにした。(1)異種基板上のβ-Ga2O3のHVPE成長β-Ga2O3のHVPE成長はGaClとO2との反応により行うが、この反応の平衡定数はGaNのHVPEと比較してかなり大きい。そのため、当初は粉末が堆積するのみで膜成長は見られなかった。しかし、原料ガス供給方法を改良することにより、膜成長を実現した。改良した成長装置および成長条件を用いてサファイアc面基板上に成長させたβ-Ga2O3膜は、MBEなど他の成長方法で報告されているのと同様に(-201)の面外配向を有することを明らかにした。(2) (-201)配向β-Ga2O3の高速成長HVPEによる(-201)配向β-Ga2O3の成長速度の、GaClおよびO2原料供給分圧を調査した。成長速度は、GaCl分圧およびO2分圧に対して単調に増加し、250um/hを超える成長速度が得られることを見出した。これは、MBE等で従来報告されている値の100倍以上に相当する。ただし、成長速度が大きいほど表面が荒れる傾向があり、今後の改善が必要である。(3)オフ基板を用いた面内配向制御HVPEにより(-201)配向のβ-Ga2O3が得られたものの、X線極点図により面内配向を調べたところ、他の成長方法で報告されているのと同様に、面内で60度ずつ回転した6種類のドメインが混在していることがわかった。これは、基板の面内回転対称性がエピ層のそれよりも高いためと考えられる。そこで、c面サファイア基板にオフ角度を導入し、面内の回転対称性を減ずることで回転ドメインの発生を抑制する方法を考案した。実験の結果、オフ角が僅か2度でもドメインが6種類から3種類に減少し、しかもオフ方向に沿ったピークの強度が増し、その他のピーク強度は減少した。この傾向はオフ角度の増加と共に促進され、5度以上では単結晶ライクな極点図が得られることがわかった。本研究のターゲット物質はβ-Ga2O3であるが、Ga2O3には他にも幾つかの準安定相の存在が知られている。一般に、どの構造のGa2O3が成長するかは成長条件によって異なる。成長条件を適切に制御し、β-Ga2O3を選択的に成長させるためには、そのような成長条件の把握がなにより重要である。そこで、成長温度や基板を様々に変化させ、成長条件と得られる結晶構造との相関を調べた。サファイアc面基板上では、成長温度520-600°Cで単相かつ単結晶のα-Ga2O3が成長することを明らかにした。650°C以上の温度ではβ-Ga2O3を成長することが出来る。α-Ga2O3が成長する理由は、基板のサファイアと同じコランダム構造をとることにより弾性エネルギーを低減できるためと考えている。α-Ga2O3はβ-Ga2O3と同様にワイドギャップ半導体であるだけでなく、同じコランダム構造をとる他の酸化物と混晶やヘテロ構造をつくることによりバンドエンジニアリングや磁性等の新規機能を実現することが提案されている。そのような材料をHVPEで高速成長可能なことを見出したことは非常に重要である。GaN, AlNのc面基板上では、成長温度515-620°Cで単相かつ単結晶のε-Ga2O3が成長することを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-25420307 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25420307 |
パワー半導体用beta-Ga2O3のハライド気相成長法による高速製膜技術の開発 | ε-Ga2O3が成長するのは、その空間群が基板のGaNやAlNと同じP63mcに属するためと考えられる。高温X線測定の結果、β-Ga2O3への転移はおよそ700°C以上で始まり、α-Ga2O3よりもかなり安定性が高いことがわかった。ε-Ga2O3はこれまで粉末合成のごく限られた報告しかなされておらず、そのバンドギャップすら不明であった。しかし、今回得られた単結晶膜を用いることで、β-Ga2O3とほぼ同等の4.9 eVであることも明らかにした。ハライド気相成長法により、ワイドギャップ半導体材料として有望なGa2O3の結晶成長を検討した。サファイアc面基板にオフ角度を導入することで、異種基板上のβ-Ga2O3の成長で従来問題であった面内回転ドメインの発生が著しく抑制されることを明らかにした。また、550°C程度の低温ではGa2O3の結晶構造は基板に依存し、サファイアc面基板上ではα-Ga2O3、GaNやAlNのc面上ではε-Ga2O3の単結晶膜が成長することを見出した。実験開始当初は気相反応による粉末発生などの問題が起こったものの、成長条件やリアクタ内部構造の見直しにより改善し、膜成長が実現し、さらにGaN並みの高速成長が可能なことを見出した。β-Ga2O3のパワーデバイス応用では、所定の耐圧を確保するために厚膜成長が必要になることも考えられ、高速成長が可能なことを見出した意義は大きい。さらに、将来的には、HVPEによる大口径β-Ga2O3自立基板の作製も視野に入ってくる。また、異種基板上の成長は当初はホモエピ成長に備えた条件出し的な位置づけのつもりであったが、前述したようにオフ基板を用いることで、面内回転ドメインの発生を効果的に抑制できることを初めて見出した。異種基板上のβ-Ga2O3の面内回転ドメインの発生は、HVPEに限らず他の成長法においても長年の懸案であり、その制御に成功した例は無かったが、今回、単結晶薄膜化に向けて大きく前進したといえる。c面サファイア基板は近年の白色LEDの普及に伴って大面積・高品質のものが安価に入手できる。c面サファイア基板上で上記のような技術が可能であることを見出したことは工業的にも価値がある。なお、β-Ga2O3バルク基板上のホモエピの検討も併せて行っており、基板と同じX線半値幅を示すホモエピ層が得られることを確認している。現在、より詳細な結晶欠陥の評価を行っている。以上の理由から、本研究は概ね順調に進展していると考えられる。酸化物半導体の結晶成長前述したように、c面サファイアオフ基板を用いることでβ-Ga2O3層の面内配向を制御できることがわかったが、その具体的なメカニズムは明らかになっていない。まずはより詳細なグレイン構造をEBSD等によって明らかにするのと同時に、成長開始界面の具体的な結合構造を検討していく必要がある。これにより、面内配向のさらなる改善に向けた知見が得られると期待される。また、本手法によるβ-Ga2O3膜には、別の面外配向をもつドメインが若干検出される。そのため、特に成長初期過程における成長条件の最適化が必要である。当該のドメインはβ-Ga2O3層と基板との界面付近に局在していることがわかっており、厚膜化によっても低減が可能な見通しを得ている。また、X線ロッキングカーブの半値幅がまだ非常に広く、結晶性向上の検討も必要である。転位や積層欠陥等の状況を調べることも重要である。それにより、高品質化の指針が得られると期待される。 | KAKENHI-PROJECT-25420307 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25420307 |
生物活性体をめざした新しい含セレンヘテロ環化合物の合成 | セレナゾールおよびセレナジンに各種置換基を付与するため、我々が合成法を開発した種々のセレン導入試薬を用いて、合成を試み、いくつかの成果を得た。さらに、それらの一部では生物活性も検討した。また、新しいシクロブテン誘導体の合成法を見出した。1.セレナゾール、セレナジン類の新規合成合成試薬として、我々が簡便な合成法を開発したセレノアミド、セレノ尿素、セレナアザジエン等を原料とし、種々の標的化合物を合成した。セレノ尿素から各種の置換基を付与したセレナゾール、セレナジン類の新規合成法を開発した。また、セレノアミド、あるいはセレノ尿素から誘導したセレナアザジエンからも新しい種々の標的化合物の合成に成功した。また、それらの生成は再環化反応をしていることなど、それらの反応についても詳細に検討した。α位に活性なメチレン基を持つセレノアミドは通常のセレノアミドと異なる反応をする。すなわち、α,β-不飽和ケトンとの反応では予想されたセレナジンを与えなく、セレニンを与えることも見出した。その結果については今年の化学会で報告したが、今後さらに深く検討の予定である。これら合成したセレナゾール、セレナジンの生物活性についても検討し、いくつかの高活性体を見出した。2.インセレノラートを用いる環状化合物の合成インセレノラートとα,β-不飽和ケトンとの反応では、当初、ジヒドロセレノフェンの生成を予想していたが、生成物のX線構造解析から、四員環化合物であるシクロブテン誘導体が生成することがわかった。これらの反応は活性官能基であるヘテロクムレン、クムレンを経由することを明らかにした。さらに、インセレノラートの誘導体である2-アルケニルエチニルセレニドからはアレニルセレノケテンを経由してシクロブテン誘導体を与えることも見出した。さらに、これらの結果を踏まえ、セレン原子を含む小員環化合物の合成へと展開している。セレナゾールおよびセレナジンに各種置換基を付与するため、我々が合成法を開発した種々のセレン導入試薬を用いて、合成を試み、いくつかの成果を得た。さらに、それらの一部では生物活性も検討した。また、新しいシクロブテン誘導体の合成法を見出した。1.セレナゾール、セレナジン類の新規合成合成試薬として、我々が簡便な合成法を開発したセレノアミド、セレノ尿素、セレナアザジエン等を原料とし、種々の標的化合物を合成した。セレノ尿素から各種の置換基を付与したセレナゾール、セレナジン類の新規合成法を開発した。また、セレノアミド、あるいはセレノ尿素から誘導したセレナアザジエンからも新しい種々の標的化合物の合成に成功した。また、それらの生成は再環化反応をしていることなど、それらの反応についても詳細に検討した。α位に活性なメチレン基を持つセレノアミドは通常のセレノアミドと異なる反応をする。すなわち、α,β-不飽和ケトンとの反応では予想されたセレナジンを与えなく、セレニンを与えることも見出した。その結果については今年の化学会で報告したが、今後さらに深く検討の予定である。これら合成したセレナゾール、セレナジンの生物活性についても検討し、いくつかの高活性体を見出した。2.インセレノラートを用いる環状化合物の合成インセレノラートとα,β-不飽和ケトンとの反応では、当初、ジヒドロセレノフェンの生成を予想していたが、生成物のX線構造解析から、四員環化合物であるシクロブテン誘導体が生成することがわかった。これらの反応は活性官能基であるヘテロクムレン、クムレンを経由することを明らかにした。さらに、インセレノラートの誘導体である2-アルケニルエチニルセレニドからはアレニルセレノケテンを経由してシクロブテン誘導体を与えることも見出した。さらに、これらの結果を踏まえ、セレン原子を含む小員環化合物の合成へと展開している。活性官能基を持った1,3-セレナゾールおよび1,3-セレナジンの新規合成我々が報告した高い生理活性を持つ4-ヒドロキシ-1,3-セレナジンはヒドロキシ基を持っているが、そのヒドロキシ基をセレナジンから外すと生理活性は全くなかった。置換基としてヒドロキシ基を持つことにその活性に重要なポイントであると考える。セレンを含むヘテロ環化合物についての報告は少ないが、水酸基、カルボニル基、カクボキシル基、アミノ基等の活性基を付与した新しい含セレンヘテロ環の合成を目指した。N,N-無置換セレノ尿素をセレナアザジエンに変換し、そのジエンとα-クロロアセチルクロリドとの反応から2位にアミノ基さらに4位にカルボニル基を持った1,3-セレナジンである1,3-セレナゾール-5-カルボン酸およびその誘導体の新規合成に成功した。その反応について詳細に検討し、その成果について論文に報告した。その化合物の生理活性についは今後検討の予定である。また、N,N'-置換セレノ尿素とα,β-不飽和カルボン酸クロリドとの反応を検討し、同様に、2位にアミノ基さらに4位にカルボニル基を持った1,3-セレナジン-4-オンの合成について検討し、その成果を論文に報告の予定である。また、我々の既報の方法で合成した1,3-セレナゾール-4-オンは細胞(BV-2 Cell)の酸化窒素に対し、また酸化窒素の生成に対しての抑制効果があることも分った。その他、新規ヘテロ環化合物の合成とその特性に関しての研究を継続中である。 | KAKENHI-PROJECT-15550030 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15550030 |
生物活性体をめざした新しい含セレンヘテロ環化合物の合成 | (申請研究は継続中)本年度は前年に引き続き、セレナゾールおよびセレナジンに各種置換基を付与するため、我々が合成法を開発した種々のセレン導入試薬を用いて、合成を試み、いくつかの成果を得た。さらに、それらの一部では生物活性も検討した。それらをまとめ、以下に示す。1.セレナゾール、セレナジン類の新規合成合成試薬として、我々が簡便な合成法を開発したセレノアミド、セレノ尿素、セレナアザジエン等を原料とし、種々の標的化合物を合成した。セレノ尿素から各種の置換基を付与したセレナゾール、セレナジン類の新規合成法を開発した。また、セレノアミド、セレノ尿素から誘導されるセレナアザジエンからも新しい種々の標的化合物の合成に成功した。また、それらの反応で転移反応を経由する反応など、その反応も詳細に検討した。α位に活性なメチレン基を持つセレノ尿素は通常のセレノ尿素と異なる反応をする。すなわち、α,β-不飽和ケトンとの反応では予想されたセレナジンを与えなく、セレニンを与えることを見い出した。その結果については今年の化学会で報告するが、今後さらに深く検討の予定である。これら合成したセレナゾール、セレナジンについてはその生物活性についても検討し、いくつかの高活性体を見出している。2.インセレノラートを用いる環状化合物の合成当初、インセレノラートの反応はジヒドロセレノフェンをターゲットとしていたが、生成物のX線構造解析から、小員環化合物であるシクロブテン誘導体が生成することがわかった。この反応は活性官能基であるヘテロクムレン、クムレンを経由することを明らかにした。その他、インセレノラートを用いた合成によるセレン原子を含む小員環化合物の合成へと展開している。ヘテロクムレンの一つであるイソセレノシアナートの化学についても検討した。 | KAKENHI-PROJECT-15550030 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15550030 |
リフラクトリーメタルの有機溶媒浴を用いた電析 | 単体タングステンまたはタングステン合金を室温付近で電析する技術の開発を目的に、種々の有機溶媒およびWイオン源を組み合わせた浴からのW電析の可能性を調べた。その結果、溶媒中に酸素を含む分子が含まれる場合、金属Wの電析は困難であることが示唆された。AlCl3を50%以上含む1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド溶液にWCl4やK3W2Cl9とは異なるW塩を溶解させた浴からは、単体Wの電析には至らなかったものの、Wを10%以上含有するAl-W合金を電析することができた。この合金膜は緻密で平滑であり、単体Alよりも大幅に高い耐食性をした。単体タングステンまたはタングステン合金を室温付近で電析する技術の開発を目的に、種々の有機溶媒およびWイオン源を組み合わせた浴からのW電析の可能性を調べた。その結果、溶媒中に酸素を含む分子が含まれる場合、金属Wの電析は困難であることが示唆された。AlCl3を50%以上含む1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド溶液にWCl4やK3W2Cl9とは異なるW塩を溶解させた浴からは、単体Wの電析には至らなかったものの、Wを10%以上含有するAl-W合金を電析することができた。この合金膜は緻密で平滑であり、単体Alよりも大幅に高い耐食性をした。タングステンは難加工性の材料として知られるが、近年、デバイスの小型化や高性能化のため、微細形状化のニーズが高まっている。微細構造形成技術として、電析法の適応が考えられるが、タングステンは水溶液から単体金属として電析できないため、タングステンの電析技術は十分に確立されていない。本研究では、タングステンの単体金属を100 °C付近で電析する技術の確立を目指し、有機溶媒を電解浴として用いる電析法について検討を行った。ジメチルスルホンに6価または4価の塩化タングステン(WCl6またはWCl4)を溶解させた浴からのタングステン電析を試みた。ただし、これらのタングステン塩のジメチルスルホンへの溶解度は低いため、支持電解質として塩化リチウムまたは塩化アルミニウムを浴に加えた。支持塩として塩化リチウムを用いた場合、WCl6およびWCl4のどちらの塩を用いた際にも、タングステンの電析は認められなかった。一方、支持塩として塩化アルミニウムを用い場合には、WCl6を溶解させた浴からはタングステン電析は起こらなかったが、WCl4を溶解させた浴からは、タングステンを含有する非晶質の電析物が得られた。真空中で熱処理を施した結果、電析物は結晶化し、XRDにより酸化タングステンが検出された。したがって、電析したタングステンは、金属状態にまで還元されていたわけではなかったことが明らかとなった。金属タングステンを電析するためには、酸素を含まない溶媒を用いる必要があることが示唆された。タングステンは難加工性の材料として知られるが、近年、デバイスの小型化や高性能化のため、微細形状化のニーズが高まっている。微細構造形成技術として、電析法の適応が考えられるが、タングステンは水溶液から単体金属として電析できないため、これらの金属の電析技術は十分に確立されていない。本研究では、タングステンを100 °C付近で電析する技術の確立を目指し、有機溶媒を電解浴として用いる電析法の開発を行った。前年度までの研究により、電析浴中に酸素を含む分子が含まれる場合、金属タングステンの電析が困難であることが示唆された。そこで、酸素を含まない分子からなる溶媒を電析浴として用い、金属タングステン電析の可能性を調べた。アセトニトリルを溶媒に用いた場合、塩化タングステンの溶解度が低く、電析には至らなかった。イオン液体を用いた場合には、単体タングステンを電析させることはできなかったが、これまでに報告例のない様々な組成のタングステン合金を電析させることができた。電析物中のタングステン含有率は、電析条件により調整が可能であることを確認した。電析条件の最適化により、密着性が高く、緻密で平滑な合金膜を得ることができた。得られたタングステン合金は、多くの場合、アモルファスであった。いくつかの合金については耐食性試験を行い、タングステンの固溶により、塩化物イオン存在下での耐食性が大幅に向上することが明らかとなった。材料電気化学タングステン電析に適すると考えられる溶媒の選定基準について知見を得ることができたが、実際にタングステン電析が可能な溶媒を特定するには至っていない。さらなる溶媒およびタングステン塩の組み合わせの検討が必要である。タングステン電析が可能な浴を見つけることを目的に、様々な溶媒およびタングステン塩の組み合わせを検討する。さらに、より緻密で平滑なタングステン膜を、より高い電流密度で電析することを目指し、電析条件の最適化を行う。 | KAKENHI-PROJECT-25630327 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25630327 |
代替フロン類の輸送性質の測定 | 本研究は,成層圏におけるオゾン層の破壊や,対流圏における温室効果などの地球的規模の環境破壊に関与しない新しい代替フロン類の輸送性質(粘性率と熱伝導率)を,気液両相にわたって精密に測定し,信頼できる実測値を提供するとともに,最終的には世界各国で公表される代替フロン類の熱物性デ-タを収集,解析,評価し,熱物性の最確値と最良相関式を決定することを目的として実施した。研究の対象物質は,従来最も汎用されてきた規制対象フロンCFC11(CCl_3F),CFC12(CCl_2F_2)の有力な代替物質の候補であるHCFCー22,HFCー134a,HFCー143a,HCFCー123,HCFCー123a,HCFC141b,HCFCー142bである。気相の熱伝導率の一部以外は,従来使用してきた装置を用いて測定を行った。気相の熱伝導率については,従来使用してきた装置に加えて,新しく非定常熱線型の装置を試作した。当該科学研究費補助金の大部分は新しい装置の製作に充当した。1)気相の熱伝導率測定のために新しく非定常熱線型セルを設計,製作し,295K,0.1MPaにおける空気を用いて装置の検定を行った。その結果信頼できる空気の熱伝導率最確値と3%以内で一致した。2)同心円筒型熱伝導率セルを用いて上記の代替物質の気相における熱伝導率を測定し,実測値に基づき相関式を作成した。実験結果は国際会議および学術雑誌を通じて報告した。3)液相の熱伝導率については,非定常熱線セルを用いてHCFCー123をよびHCFCー141bの測定を行った。4)気相の粘性率についてはHCFCー22(CHClF_2)を一成分とする数種類の混合気体について常圧における測定を行い,種々の推算法との比較を行った。5)液相の粘性率についてはHCFCー123,123a,141bを対象として293343K0.1100MPaの範囲で測定を行い,圧力効果を表現する相関式を作成した。本研究は,成層圏におけるオゾン層の破壊や,対流圏における温室効果などの地球的規模の環境破壊に関与しない新しい代替フロン類の輸送性質(粘性率と熱伝導率)を,気液両相にわたって精密に測定し,信頼できる実測値を提供するとともに,最終的には世界各国で公表される代替フロン類の熱物性デ-タを収集,解析,評価し,熱物性の最確値と最良相関式を決定することを目的として実施した。研究の対象物質は,従来最も汎用されてきた規制対象フロンCFC11(CCl_3F),CFC12(CCl_2F_2)の有力な代替物質の候補であるHCFCー22,HFCー134a,HFCー143a,HCFCー123,HCFCー123a,HCFC141b,HCFCー142bである。気相の熱伝導率の一部以外は,従来使用してきた装置を用いて測定を行った。気相の熱伝導率については,従来使用してきた装置に加えて,新しく非定常熱線型の装置を試作した。当該科学研究費補助金の大部分は新しい装置の製作に充当した。1)気相の熱伝導率測定のために新しく非定常熱線型セルを設計,製作し,295K,0.1MPaにおける空気を用いて装置の検定を行った。その結果信頼できる空気の熱伝導率最確値と3%以内で一致した。2)同心円筒型熱伝導率セルを用いて上記の代替物質の気相における熱伝導率を測定し,実測値に基づき相関式を作成した。実験結果は国際会議および学術雑誌を通じて報告した。3)液相の熱伝導率については,非定常熱線セルを用いてHCFCー123をよびHCFCー141bの測定を行った。4)気相の粘性率についてはHCFCー22(CHClF_2)を一成分とする数種類の混合気体について常圧における測定を行い,種々の推算法との比較を行った。5)液相の粘性率についてはHCFCー123,123a,141bを対象として293343K0.1100MPaの範囲で測定を行い,圧力効果を表現する相関式を作成した。本研究は、成層圏におけるオゾン層の破壊などの環境問題に関与しない新しい代替フロン類の輸送性質(粘性率、熱伝導率)を気液両相にわたって精密に測定し、信頼できる実測値を得ることも目的として実施した。液相の粘性率と熱伝導率および気相の粘性率については、研究代表者らが従来開発してきた装置をそのまま使用して研究を行った。気相の熱伝導率については従来用いてきた装置が十分ではないので今年度新しく非定常熱線法に基づく装置を試作することにし、現在製作中である。本年度交付された科学研究費補助金は新しい装置を製作するために充当した。本年度の研究成果の概要は次の通りである。1)気相の熱伝導率測定のために新しく非定常熱線型セルを設計し、製作した。熱線の温度上昇の時間変化を精密に測定し、1秒間におよそ200点のサンプリングを行うために、パ-ソナルコンピュ-タ-式、A/D変換ボ-ド等を購入し、現在電子計測回路を製作中である。 | KAKENHI-PROJECT-01550740 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01550740 |
代替フロン類の輸送性質の測定 | 2)液相の熱伝導率については既存の非定常熱線型セルを用いてHCFC123およびHCFC1416の熱伝導率を温度298348K、圧力0.1100MPaの範囲で測定した。実測値に基づき種々の相関法と理論の有効性について検討した。3)気相の粘性率については転下球型粘度計を用いて、新しいフロンを含む2成分非共沸混合系(HCFC22+HFC134a)と(HCFC22+HFC143a)の粘性率を298348K、常圧で測定した。4)液相の粘性率については落下円筒型粘度計を用いて、HCFC123、HCFC123a、HCFC1416の粘性率を298323K、0.1120MPaの範囲で測定した。5)これらの新しい物性値デ-タは、従来使用されてきた環境問題に関わるフロン類の物性値と比較され、代替品としての可能性を検討した。前年度に引続き,本研究では成層圏におけるオゾン層の破壊などの環境問題に関与しない新しい代替フロン類の粘性率と熱伝導率を気液両相にわたり、精密に測定することを目的として研究を行った。気相の熱伝導率については、従来使用してきた装置に加えて、新しく非定常熱線型の装置を試作した。本年度の研究成果の概要は次の通りである。1)気相の熱伝導率を測定するために,新しく非定常熱線型のセルを試作し,装置の健全性を295K,0.1MPaにおける空気を用いて確認した。新しく製作した装置で絶対測定したところ,空気の熱伝導率の最確値と3%以内で一致することが判明したので今後高圧下での測定を行う予定である。2)同心円筒型セルを用いてHCFCー123および(HCFCー22+HCFCー141b)系の気相における熱伝導率を313343K,0.12.7MPaの範囲で測定し,熱伝導率と温度,圧力との関係を表現する相関式を作成した。3)気相の粘性率について,HFCー134aと(HFCー152a+HCFC142b)系について,常圧下293313Kで粘性率を測定し,混合気体の粘性率に関する推算法との比較を行った。4)HFCー134aとHCFCー123について,世界各国で報告されている粘性率,熱伝導率に関する実測値を収集,整理,解析し,デ-タの比較を行った。一般に熱力学性質と比較して,粘性率や熱伝導率のデ-タは乏しく,また測定者による不一致が著しいことが判明した。今後はさらに世界のデ-タ収集を続け,最も確からしいデ-タに基づいて新しい代替フロンの輸送性質に関する最確値および最良相関式を作成する。研究の成果は国際エネルギ-機関のワ-クショップや国際会議で報告し,世界的に認可され得る物性値を統一的に管理し,各国に流布する。 | KAKENHI-PROJECT-01550740 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01550740 |
NMRスペクトルの画像化による脳の機能的代謝マップ | 脳組織の生理的活動は、細胞の代謝活動を伴っている。したがって、脳組織の活動によって生じる代謝物質の変化を知ることは、脳の機能を明らかにするために、ぜひとも必要である。脳の活動に際して変化する代謝物質は、高エネルギー燐化合物、乳酸などの他に、グルタミン酸などの、伝達に関連する物質が挙げられる。NMRは生体内のリン化合物のほか、プロトンに由来する信号を検出することが可能であることから、脳組織の代謝活動を非侵襲的に研究するための方法として優れている。本実験では動物の脳を対象とし、プロトン信号をできるだけ限局した領域から検出することによって、脳組織における局所的代謝活動およびその変化を調べた。その結果、家兎の脳における視床核を含む局所領域(約8ミリメートル立方)から、Nアセチルアスパラギン酸(NAA)に由来する比較的強い信号を検出することに成功した。局所選択性については、ファントムモデルを用いることによって評価し、良い局所選択性能を示す事を確かめることができた。この方法に基づき、吸息気中の酸素分圧を減らすことによって、脳組織中の乳酸濃度が増大することを確かめた。一方、局所酸素分圧の減少によって、脳局所血液流量が変化することが予想されることから、対照部位にレーザードップラー血流計のプローブを刺入することによって、局所血液流量の変化を同時に測定した。その結果、酸素不足により脳局所血流量が増大することが明らかとなった。局所乳酸濃度の増大が直接あるいは間接に局所の血流量を調節していると考えられる。脳組織の生理的活動は、細胞の代謝活動を伴っている。したがって、脳組織の活動によって生じる代謝物質の変化を知ることは、脳の機能を明らかにするために、ぜひとも必要である。脳の活動に際して変化する代謝物質は、高エネルギー燐化合物、乳酸などの他に、グルタミン酸などの、伝達に関連する物質が挙げられる。NMRは生体内のリン化合物のほか、プロトンに由来する信号を検出することが可能であることから、脳組織の代謝活動を非侵襲的に研究するための方法として優れている。本実験では動物の脳を対象とし、プロトン信号をできるだけ限局した領域から検出することによって、脳組織における局所的代謝活動およびその変化を調べた。その結果、家兎の脳における視床核を含む局所領域(約8ミリメートル立方)から、Nアセチルアスパラギン酸(NAA)に由来する比較的強い信号を検出することに成功した。局所選択性については、ファントムモデルを用いることによって評価し、良い局所選択性能を示す事を確かめることができた。この方法に基づき、吸息気中の酸素分圧を減らすことによって、脳組織中の乳酸濃度が増大することを確かめた。一方、局所酸素分圧の減少によって、脳局所血液流量が変化することが予想されることから、対照部位にレーザードップラー血流計のプローブを刺入することによって、局所血液流量の変化を同時に測定した。その結果、酸素不足により脳局所血流量が増大することが明らかとなった。局所乳酸濃度の増大が直接あるいは間接に局所の血流量を調節していると考えられる。機能的に不均質な糸である筋肉及び脳の機能についてその局部的な機能を知るには、非侵襲的方法による研究の意義が大きい。脳の局在機能の非侵襲的な検出には、ポジトロンエミッション断層装置(PET)が成功を収めた。一方同様に非侵襲的方法であるNMR及びそれによるトモグラフィーは、放射性同位原素を用いることなく、生体内代謝及び機能物質を検出することができるという特徴を持っている。本研究ではこれまでに傾斜磁場を用いる局所選択^1H-NMRスペクトルによって、低酸素時のウサギの脳の代謝状態の変化を調べた。局所選択はStimulated Echo法(VOSYパルス系列)により、大脳基底核群を選び、その選択領域の大きさは約0.5mlであった。また必要に応じて水信号の抑制を行った。用いたエコー時間の範囲は200270ミリ秒である。その結果、水、Nアセチルアスパラギン酸、総クレアチン、コリン類、及び乳酸などの信号と、その低酸素による変化を観測することができた。レーザー血流計のセンサーを、スペクトル選択領域の反対側に刺入し、脳の同じ組織における血流速度及び流量を同時に測定した。その結果、局所における乳酸の増加は、低酸素及びそれに伴って生じる局所血液循環の低下の両者が同時に進行したことによって生じることが明らかとなった。すなわち循環血液中の酸素分圧の低下だけでは脳組織の乳酸量はあまり増大しない。このような知見は従来考えられてきたものと異なっている。今後はさらに機能的画像及びスペクトル変化の画像化を試みる予定である。機能的に不均質な系である筋肉及び脳の機能についてその局部的な機能を知るには、非侵襲的方法による研究の意義が大きい。脳の局在機能の非侵襲的な検出には、ポジトロンエミッション断層装置(PET)が成功を収めた。一方同様に非侵襲的方法であるNMR及びそれによるトモグラフィーは、放射性同位原素を用いることなく、生体内代謝及び機能物質を検出することができるという特徴を持っている。本研究ではこれまでに傾斜磁場を用いる局所選択^1H-NMRスペクトルによって、低酸素時のウサギの脳の代謝状態の変化を調べた。局所選択はStimulated Echo法(VOSYパルス系列)により、大脳皮質および視床核群を選び、その選択領域の大きさは約0.5mlであった。また必要に応じて水信号の抑制を行い、水、Nアセチルアスパラギン酸、総クレアチン、コリン類、及び乳酸などの信号と、その低酸素による変化を観測することができた。 | KAKENHI-PROJECT-05558098 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05558098 |
NMRスペクトルの画像化による脳の機能的代謝マップ | レーザー血流計のセンサーを、スペクトル選択領域の対側に刺入し、脳の同じ組織における血流速度及び血流量を同時に測定した。その結果、局所におけるエネルギー状態の変化は、低酸素及びそれに伴って生じる局所血液循環の変化の両者が関与して生じることが明らかとなった。すなわち循環血液中の酸素分圧の低下は、循環血液量の増大によって補われ、脳組織の乳酸量は低酸素によってもあまり急激には増大しない。今後は更に機能的画像及びスペクトル変化の画像化を試みる予定である。脳組織の生理的活動は、細胞の代謝活動を伴っている。したがって、脳組織の活動によって生じる代謝物質の変化を知ることは、脳の機能を明らかにするためには、ぜひとも必要である。脳の活動に際して変化する代謝物質は、高エネルギーリン化合物、乳酸などの他に、グルタミン酸などの、伝達に関連する物質が挙げられる。NMRは生体内のリン化合物のほか、プロトンに由来する信号を検出することが可能であることから、脳組織の代謝活動を非侵襲的に研究するための方法として優れている。本実験では動物の脳を対象とし、プロトン信号をできるだけ限局した領域から検出することによって、脳組織における局所的代謝活動およびその変化を調べた。その結果、家兎の脳における視床核を含む局所領域(約8ミリメートル立方)から、Nアセチルアスパラギン酸(NAA)に由来する比較的強い信号を検出することに成功した。局所選択性については、ファントムモデルを用いることによって評価し、良い局所選択性能を示す事を確かめることができた。この方法に基づき、吸息気中の酸素分圧を減らすことによって、脳組織中の乳酸濃度が増大することを確かめた。一方、同部位においてレーザードップラー血流計を用い、局所脳血流量の変化を同時記録した。この結果、局所乳酸濃度は局所脳酸素供給量の減少に応じて増加することが明らかとなった。また、増大した局所乳酸濃度が直接あるいは間接に局所の血流量を調節していることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-05558098 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05558098 |
レドックス代謝制御における核-細胞質クロストークとアポトーシス誘導機構の解明 | 細胞は、酸化ストレスによって惹起されるレドックス代謝制御により、様々な応答を引き起こす。そのひとつとして細胞死(アポトーシス)誘導があり、これまでの研究から、アポトーシスを制御するいくつかのキナーゼ群は細胞質から細胞核に移行すること、そして核に存在する細胞死関連因子をリン酸化することでアポトーシスを誘導することを見出した。さらにこの核移行を阻害するとアポトーシスが抑えられることから、これらキナーゼ群の核移行がアポトーシス誘導の本質であるという今までにない全く新しいモデルを提唱している。本研究では、この核移行が酸化ストレスで惹起されるアポトーシスの本質であるメカニズムの詳細を明らかにすることを通してレドックス代謝制御機構を理解し、その破綻ががんを始めとする酸化ストレス関連疾患とどのように関わっているかに迫り、さらにその知見を機軸とした診断と治療への応用の可能性を追求した。細胞は、酸化ストレスによって惹起されるレドックス代謝制御により、様々な応答を引き起こす。そのひとつとして細胞死(アポトーシス)誘導があり、これまでの研究から、アポトーシスを制御するいくつかのキナーゼ群は細胞質から細胞核に移行すること、そして核に存在する細胞死関連因子をリン酸化することでアポトーシスを誘導することを見出した。さらにこの核移行を阻害するとアポトーシスが抑えられることから、これらキナーゼ群の核移行がアポトーシス誘導の本質であるという今までにない全く新しいモデルを提唱している。本研究では、この核移行が酸化ストレスで惹起されるアポトーシスの本質であるメカニズムの詳細を明らかにすることを通してレドックス代謝制御機構を理解し、その破綻ががんを始めとする酸化ストレス関連疾患とどのように関わっているかに迫り、さらにその知見を機軸とした診断と治療への応用の可能性を追求した。酸化ストレスにおけるアポトーシス誘導に関わる新規遺伝子の網羅的探索を目的として、shRNA発現ライブラリーを用いたスクリーニング系を構築した。様々な試行錯誤を経て、細胞にshRNA発現ライブラリーを導入後、酸化ストレス刺激によりアポトーシスから逃れた細胞を回収して、いかなる遺伝子に発現抑制が起きているかを調べていくという作業仮説で実験を進めた。その結果、アポトーシス関連遺伝子の候補として32クローンを同定し、そのなかで最も細胞死誘導に関与している遺伝子としてTAF1という分子を見出した。TAF1は基本転写因子の中核をなす分子であり、そのアポトーシス誘導における機能解析を進めるために、マイクロアレイによる発現解析を行った。その結果、TAF1に制御されている分子群においてp27の発現が細胞死誘導に関わっていることを見出した。また酸化ストレスによるc-Ab1の核-細胞質シャトリング機構についても研究を進めた。c-Ab1は14-3-3と結合することによって不活性の状態で細胞質にとどまっているが、細胞に酸化ストレスが加わると、14-3-3から解離し核に移行した後に活性化し、細胞死(アポトーシス)を誘導する。c-Ab1 Thr735のリン酸化は14-3-3結合モティーフでありc-Ab1の局在制御に重要であるが、Thr735をリン酸化するキナーゼが不明であった。そこで、Thr735特異的リン酸化抗体とcDNAライブラリーファージを用いたスクリーニングによりc-Ab1 Thr735をリン酸化するキナーゼの同定を試みた。その結果、TTKが細胞内でThr735をリン酸化するキナーゼであることを明らかにした。さらにTTKをノックダウンするとc-Ab1の核内集積が起こり、酸化ストレスによるc-Ab1依存的なアポトーシスが促進したことから、c-Ab1を細胞質内に留めることで酸化ストレスによるアポトーシスに抵抗性を示すというTTKの新たな機能が示唆された。腫瘍壊死因子TNF-αによって引き起こされる酸化ストレスを中心に、レドックス代謝制御におけるキナーゼの働きを引き続き検証した。その中で、PKCδがTNF-αの刺激に伴って、細胞質から核に移行することを見いだした。この移行はキナーゼ活性依存的であり、NF-κBの構成因子であるRelA/p65の活性に関わっていることを突き止めた、PKCδは核内でRelA/p65と複合体を形成し、その転写活性を正に制御している。またTNF-αによる細胞死誘導がPKCδの活性阻害によって有意に抑制された。以上のことより、PKCδはRelA/p65の活性を介して、サイトカインによる酸化ストレスによって惹起されたアポトーシス誘導を抑制するという新たな働きを見いだした。我々はさらにTNF-αによる細胞内シグナリングに中心的な役割を果たすRelA/p65の機能について、特にその活性化に必須であるSer276のリン酸化に着目した。まず、Ser276特異的リン酸化抗体とcDNAライブラリーファージを用いたスクリーニングによりRelA/p65 Ser276をリン酸化するキナーゼの同定を試みた。その結果、Pim-1が細胞内でSer276をリン酸化するキナーゼであることを明らかにした。興味深いことに、Pim-1はSer276をリン酸化することによってRelA/p65の活性を制御するだけでなく、その発現の安定性にも寄与していることが判明した。Pim-1はさらにRelA/p65 Ser276のリン酸化を介してTNF-αによって誘導されるアポトーシスを有意に抑制していることが明らかとなった。癌の進展と密接に関わっている細胞内シグナル経路の一つとして、NF-kappaBシグナルが知られている。この標的遺伝子の大部分が細胞生存に関与しており、多くの癌でこのシグナルが活性化している。 | KAKENHI-PROJECT-20390091 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20390091 |
レドックス代謝制御における核-細胞質クロストークとアポトーシス誘導機構の解明 | このシグナルを抑制することが出来れば、癌の進展や転移を抑えることが出来る可能性が高まる。NF-kappaBを構成する転写因子の一つであるRelA/p65はリン酸化などの多様な翻訳後修飾を受け転写活性が制御されている。なかでもセリン276残基のリン酸化はRelA/p65のDNA結合活性を亢進すると共に、転写コアロベーターCBP/p300との結合を誘導することから、RelA/p65の転写能を活性化する重要な修飾であることが明らかになってきた。しかしこのリン酸化を担うキナーゼははっきりしない。そこでこのキナーゼを同定するためにラムダファージによるSer276リン酸化特異的抗体を用いた発現クローニングを行い、候補となるキナーゼの同定を試みた。その結果Pim-1を同定した。Pim-1はTNFalphaなどのサイトカインによる酸化ストレス刺激によりRelA/p65をリン酸化し、その転写活性能を亢進するとともに、SOCS-1によるRelA/p65のユビキチン化を抑制し、安定化に寄与していることが明らかとなった。さらにPim-1によるNF-kappaBの活性化は、TNFalpha依存的な細胞死(アポトーシス)誘導を抑制していることが示唆された。以上の結果、Pim-1によるSer276のリン酸化は、RelA/p65の活性化のみならず安定化にも寄与することで、NF-kappaBシグナルを正に制御していることが示唆された。多くの癌でPim-1の過剰発現や活性化が報告されていることから、Pim-1が癌の分子標的となることが期待される。 | KAKENHI-PROJECT-20390091 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20390091 |
死後脳DNA chip解析に基づいた神経新生関連統合失調症候補遺伝子の同定 | DNA chip解析により、13qに位置し、転写因子をコードするKLF5遺伝子の発現量が、統合失調症死後脳前頭前野においてコントロール群よりも減少していることを見出した。さらに、その結果に基づき、378名の健常者および328名の統合失調症患者の血液サンプルを用いてKLF5遺伝子と統合失調症との相関研究をおこなったころ、KLF5遺伝子プロモーター上のSNPと統合失調症との有意な相関をみとめた。また、その相関をみとめた-1593T/CSNPについて統合失調症死後脳における発現量を検討したところ、-1593T/C SNPはKLF5遺伝子の発現量に影響を及ぼしていることを見出した。さらに統合失調症の血液サンプルを用いた遺伝子配列解析をおこなったところ、一つの一塩基変異はコントロール群においてはみられず、統合失調症においてのみみられた。さらにKLF5遺伝子の脳における発現分布について免疫組織学的な検討をおこなったところ、グルタミン酸ニューロンに多く発現していることを見出した。これまでにKLF5遺伝子は、MAPキナーゼカスケートに位置することが報告されており、MAPキナーゼカスケードは脳においてはシナプス可塑性に重要であることが知られている。これらのことは、KLF5遺伝子がグルタミン酸ニューロンのシナプス可塑性にかかわる可能性を示している。本研究において、KLF5遺伝子が統合失調症と相関したことは、統合失調症においてはグルタミン酸神経伝達に障害があるのではないかというグルタミン酸神経伝達仮説を支持するものであり、その障害にKLF5遺伝子が関わっていることを示唆するものである。以上の結果は、現在欧文雑誌に掲載予定である。これまでの統合失調症死後脳前頭前野を用いたDNA chip解析の結果から、統合失調症において発現が減少しており、かつ有力な統合失調症候補遺伝子座と考えられている8p、13q、22qに位置する遺伝子として、6つの遺伝子を同定した。さらに、統合失調症患者と健常対照者由来の血液サンプルから得られたDNAにより、既知のSNPを用いた遺伝子相関研究をおこなった結果、それらの遺伝子のうち13qに位置し、転写因子をコードしている遺伝子について、プロモーター領域に存在する一つのSNPと統合失調症との有意な相関をみとめた。さらに、そのプロモーター上のSNPは同遺伝子の発現に影響を及ぼしている可能性があることを、死後脳前頭前野を用いたタンパク定量により見出した。また、ダイレクトシークエンス法による遺伝子配列解析をおこない、同遺伝子のプロモーター及びエクソン領域について新たな遺伝子多型を検索した結果、プロモーター上に位置する一塩基の変異を二つ検出した。そのうち一つの変異については健常対照群にみられず、統合失調症患者にのみみとめた。また、同遺伝子のヒト脳における発現はこれまでに報告されていなかったため、死後脳切片を用いて組織学的な検討をおこなった。その結果、同遺伝子は、統合失調症の病態に大きく関わると推測されているグルタミン酸作動性ニューロンに豊富に発現していることを見出した。これらの手法については論文「DNAアレイと脳バンク」(分子精神医学、2006)に報告した。DNA chip解析により、13qに位置し、転写因子をコードするKLF5遺伝子の発現量が、統合失調症死後脳前頭前野においてコントロール群よりも減少していることを見出した。さらに、その結果に基づき、378名の健常者および328名の統合失調症患者の血液サンプルを用いてKLF5遺伝子と統合失調症との相関研究をおこなったころ、KLF5遺伝子プロモーター上のSNPと統合失調症との有意な相関をみとめた。また、その相関をみとめた-1593T/CSNPについて統合失調症死後脳における発現量を検討したところ、-1593T/C SNPはKLF5遺伝子の発現量に影響を及ぼしていることを見出した。さらに統合失調症の血液サンプルを用いた遺伝子配列解析をおこなったところ、一つの一塩基変異はコントロール群においてはみられず、統合失調症においてのみみられた。さらにKLF5遺伝子の脳における発現分布について免疫組織学的な検討をおこなったところ、グルタミン酸ニューロンに多く発現していることを見出した。これまでにKLF5遺伝子は、MAPキナーゼカスケートに位置することが報告されており、MAPキナーゼカスケードは脳においてはシナプス可塑性に重要であることが知られている。これらのことは、KLF5遺伝子がグルタミン酸ニューロンのシナプス可塑性にかかわる可能性を示している。本研究において、KLF5遺伝子が統合失調症と相関したことは、統合失調症においてはグルタミン酸神経伝達に障害があるのではないかというグルタミン酸神経伝達仮説を支持するものであり、その障害にKLF5遺伝子が関わっていることを示唆するものである。以上の結果は、現在欧文雑誌に掲載予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18790830 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18790830 |
Toll-like receptor 10のリガンド探索および機能解析 | TLR10の機能を解析するためにTLR10を293T細胞に発現させた、その結果TLR10はリポプロテインによるTLR2を介したNF-κB誘導を阻害することが明らかとなった。このことからTLR10はTLR2を競争的に阻害し、炎症を抑制することが示唆された。TLR10の機能を解析するためにTLR10を293T細胞に発現させた、その結果TLR10はリポプロテインによるTLR2を介したNF-κB誘導を阻害することが明らかとなった。このことからTLR10はTLR2を競争的に阻害し、炎症を抑制することが示唆された。Toll-like receptor(TLR)と呼ばれる一連の受容体ファミリーは、細菌の様々な菌体成分を認識し、炎症反応を誘導することが報告されている。これまでにTLR1からTLR11まで報告されているが、その中でTLR10はいまだにそのリガンドや機能が明らかとなっていない。本研究はTLR10の機能解析を目的としている。TLR10はリポプロテインを認識するTLR1, 2, 6に配列が近いことから、TLR10とリポプロテインの関連性をまず検討した。TLR10の全長を293T細胞に発現させ、リポプロテインで刺激したところ、炎症反応の誘導は見られなかった。TLR10のTIRドメインを欠損させたTLR10をTLR2と共に293T細胞に発現させたところ、TLR2を介したリポプロテインによる炎症反応の誘導が抑えられた。このことからTLR10はTLR2の補受容体として機能していると考えられた。TLR10の発現がTLR2を介したポプロテインの炎症誘導を促進するかを検討するために全長のTLR10をTLR2と共に293T細胞に発現させた。予想に反して全長のTLR10の発現はリポプロテインによる炎症誘導を阻害した。このことからTLR10はTLR2のリポプロテイン認識を阻害することが示唆された。TLR10の機能を解析するためにSiRNAによるノックダウンを試みたが、THP-1細胞、293T細胞においてTLR10をノックダウンするに至らなかった。またマイコプラズマの生菌がTLR2非依存的な経路でも炎症反応を誘導することを見出した。この反応がTLR10に関与しているかも今後検討したい。Toll-like receptor(TLR)は、細菌の様々な菌体成分を認識し、炎症反応を誘導する。TLR1からTLR11までが報告されているが、TLR10はいまだにそのリガンドや機能が明らかとなっていない。前年度の研究からTLR10はMycoplasmaのリポプロテインを認識し、リポプロテインがTLR2に認識されて起こる炎症誘導を阻害することが示唆された。本年度はTLR10の機能を解析するためにsiRNAによるノックダウンを試みたが、THP-1細胞、293T細胞においてTLR10をノックダウンするに至らなかった。またリポプロテインとTLR10の結合を表面プラズモン共鳴センサーで測定するためにFLAGタグをつけたTLR10を発現させたが、解析に必要な十分な収量を得ることが出来なかった。M.pneumoniaeの生菌がTLR2非依存的な経路でTNF-αやIL-1βを誘導することが明らかとなったため、TLR10の関与を検討した。IL-1βの誘導はinflammasomeに依存的で、TLR10に非依存的であった。TNF-αの誘導にTLR10が関与しているかを現在検討中である。Helicobacter pyroliは胃潰瘍などの炎症を起こすが、H.pyroliのLPSには炎症誘導能はなく、炎症誘導因子はわかっていない。我々はH.pyroliのリポプロテインがTLR2を介し炎症を誘導することを見出した。またMycoplasmaのリポプロテインと同様にTLR10はこのリポプロテインによるTLR2からの炎症誘導を阻害した。Toll-like receptor(TLR)は、細菌の様々な菌体成分を認識し、炎症反応を誘導する。TLR1からTLR11までが報告されているが、TLR10はいまだにそのリガンドや機能が明らかとなっていない。前年度までの研究からTLR10はMycoplasmaのリポプロテインを認識し、リポプロテインがTLR2を介して誘導する炎症誘導を阻害することが示唆された。本年度は昨年度に引き続きTLR10の機能を解析するためにsiRNAによるノックダウンを試みたが、THP-1細胞においてTLR10をノックダウンするに至らなかった。またリポプロテインとTLR10の結合を表面プラズモン共鳴センサーで測定するためにFLAGタグをつけたTLR10を発現させたが、解析に必要な十分な収量を得ることが出来なかった。Mycoplasma pneumoniaeはヒトに肺炎を起こす細菌である。前年度の研究からM. pneumoniaeの接着がTLR2非依存的な経路でTNF-αやIL-1βを誘導することが明らかとなったため、TLR10の関与を検討した。しかしながら、M. pneumoniaeの接着が誘導する炎症誘導はTLR10非依存的であった。我々はこの接着による炎症誘導が、ATPとP2X7receptorに依存的であることを見出し、Immunologyに発表した。 | KAKENHI-PROJECT-20790342 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20790342 |
間葉系幹細胞シートを用いた脳梗塞モデルに対する神経再生研究 | 近年、脳梗塞に対する新規治療法として幹細胞移植は期待されており、失った神経機能を回復させる可能性が示唆されている。これらの多くは移植細胞浮遊液の経静脈・経動脈・直接脳内注入として報告されているが、細胞浮遊液を用いた移植方法は移植細胞を罹患部に十分に生着させることの困難さや、肺や肝臓における移植細胞のトラップ現象などの問題点が挙げられる。中枢神経系における細胞治療において、移植細胞を罹患部に非侵襲的に十分移植することは重要な課題であり、適切な移植方法は依然として不明である。罹患部に十分な移植細胞を生着維持させるための新たな新規治療方法の開発は、中枢神経領域における再生治療の進歩につながる。新規細胞移植治療として、我々は温度応答性培養皿を用いて他家脂肪由来間葉系幹細胞シートを作成した。一過性中大脳動脈閉塞ラットによる脳梗塞モデルラットを作成し、罹患虚血脳に対して細胞シート移植を行った。細胞シート移植群と対照群を作成し行動解析を行い、細胞シート移植による神経機能の改善の有無を評価した。また、移植後の脳組織における血管新生、神経再生、移植細胞の挙動を組織学的に評価した。細胞シート移植群で対照群と比較して行動解析における神経機能の有意な改善が認められた。細胞シート移植において罹患側の脳表に有意な機能的血管新生が認められた。移植した脂肪由来間葉系幹細胞は移植脳表から罹患脳深部へ遊走し、ホスト脳内の新生血管壁にペリサイトとして生着した。温度応答性培養皿を用いて作成した細胞シートは、scaffoldを用いることなく温度変化のみで細胞シート化が可能である。従来移植方法と異なり、多臓器で細胞がトラップされず、罹患部に直接非侵襲的に移植可能である。脳梗塞モデルに対する間葉系幹細胞シート移植は血管新生と神経再生を有意に誘導し、障害された神経機能を有意に回復させた。2019年3月末の時点で、本研究において当初より予定していた実験内容の施行は計画通りに進められている。現時点までに得られたデータをもとに国内外の学会で発表を行い、現時点での課題や問題点を確認した。また、得られたデータをもとに、国際学術誌へ投稿を行い、2018年9月にJournal of Neurosurgeryに受理された。得られた実験データをもとに結果を考察し、起こった結果に関するメカニズムの更なる究明を行う。今後は、新規データをもとに、学術雑誌への投稿を行う予定である。また、本研究成果で得られた事実を基礎として、基礎実験の拡大、新規疾病への応用拡大を検討していく。我々は、ラット脂肪由来の間葉系幹細胞シートを用いて、脳虚血モデルに対する神経再生に関して検討を行った。また、ASC細胞シート移植により惹起された新生血管はホストの脳内血管と吻合しており、機能血管であることが示唆された。神経再生の観点からも、DCX陽性細胞を染色してみると、細胞シート移植群はVehicleと比較して有意にSVZとSGZにおけるDCX陽性細胞が増加していた。同様に脳表におけるDCX、SOX2陽性細胞を染色し、移植後の脳で神経再生が起こっている可能性を発見した。神経再生、血管新生の半定量的評価、経時的評価として、移植後の脳(細胞シートを含む)を採取し、RT-PCRによる血管関連mRNAや神経再生関連のmRNAの測定を行った。結果として、移植翌日から神経再生や血管新生を誘導するようなmRNAの上昇が認められており、細胞シート移植がそのinitiationを行っている可能性がある。また、慢性期である移植後28日目においてもこれらのmRNAの上昇が有意に認められており、他家移植ではあるものの比較的長期にも治療効果が維持されている可能性があることが分かった。2018年3月末の時点で、本研究において当初より予定していた実験内容の施行は計画通りに進められている。現時点までに得られたデータをもとに国内、国際での学会発表を行い、現時点での課題や問題点を確認した。現在は、不足していると思われる実験データや、得られた結果に対する課題、考察を踏まえて、更に必要な実験データの収集、実験計画の修正などを行っているところである。近年、脳梗塞に対する新規治療法として幹細胞移植は期待されており、失った神経機能を回復させる可能性が示唆されている。これらの多くは移植細胞浮遊液の経静脈・経動脈・直接脳内注入として報告されているが、細胞浮遊液を用いた移植方法は移植細胞を罹患部に十分に生着させることの困難さや、肺や肝臓における移植細胞のトラップ現象などの問題点が挙げられる。中枢神経系における細胞治療において、移植細胞を罹患部に非侵襲的に十分移植することは重要な課題であり、適切な移植方法は依然として不明である。罹患部に十分な移植細胞を生着維持させるための新たな新規治療方法の開発は、中枢神経領域における再生治療の進歩につながる。新規細胞移植治療として、我々は温度応答性培養皿を用いて他家脂肪由来間葉系幹細胞シートを作成した。一過性中大脳動脈閉塞ラットによる脳梗塞モデルラットを作成し、罹患虚血脳に対して細胞シート移植を行った。細胞シート移植群と対照群を作成し行動解析を行い、細胞シート移植による神経機能の改善の有無を評価した。また、移植後の脳組織における血管新生、神経再生、移植細胞の挙動を組織学的に評価した。細胞シート移植群で対照群と比較して行動解析における神経機能の有意な改善が認められた。細胞シート移植において罹患側の脳表に有意な機能的血管新生が認められた。移植した脂肪 | KAKENHI-PROJECT-17K18132 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18132 |
間葉系幹細胞シートを用いた脳梗塞モデルに対する神経再生研究 | 由来間葉系幹細胞は移植脳表から罹患脳深部へ遊走し、ホスト脳内の新生血管壁にペリサイトとして生着した。温度応答性培養皿を用いて作成した細胞シートは、scaffoldを用いることなく温度変化のみで細胞シート化が可能である。従来移植方法と異なり、多臓器で細胞がトラップされず、罹患部に直接非侵襲的に移植可能である。脳梗塞モデルに対する間葉系幹細胞シート移植は血管新生と神経再生を有意に誘導し、障害された神経機能を有意に回復させた。2019年3月末の時点で、本研究において当初より予定していた実験内容の施行は計画通りに進められている。現時点までに得られたデータをもとに国内外の学会で発表を行い、現時点での課題や問題点を確認した。また、得られたデータをもとに、国際学術誌へ投稿を行い、2018年9月にJournal of Neurosurgeryに受理された。得られた実験データをもとに結果を考察し、それらの得られた結果を肯定することができるような追加実験データ、起こった結果に関するメカニズムの究明に関して更なる追加実験を行う。本研究における脳梗塞に対する神経再生能に関して、学会発表を行う。また得られた結果をもとに論文化を進めていく。得られた実験データをもとに結果を考察し、起こった結果に関するメカニズムの更なる究明を行う。今後は、新規データをもとに、学術雑誌への投稿を行う予定である。また、本研究成果で得られた事実を基礎として、基礎実験の拡大、新規疾病への応用拡大を検討していく。支払い請求額を前倒しする必要が無いよう、本年度使用できる範囲での使用計画を立てて研究を行った。その結果、適切な範囲での残額となった。次年度に繰り越し、実験に必要な物品、学会発表費用などにあてることで更なる実験の発展を期待する。支払い請求額を前倒しする必要が無いよう、本年度使用できる範囲での使用計画を立てて研究を行った。その結果、適切な範囲での残額となった。次年度に繰り越し、実験に必要な物品、学会発表費用などにあてることで更なる実験の発展を期待する。 | KAKENHI-PROJECT-17K18132 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18132 |
繰り返しによらずに時空間を同時分解する軟X線イメージングスペクトロスコピーの開発 | 時分割軟X線スペクトロスコピーと2次元空間イメージングを両立させた,「時分割イメージングスペクトロスコピー法」の開発を行った。波長分散した(位置によって波長の異なる)軟X線を試料に照射し,光電子顕微鏡を用いて試料上のそれぞれの位置から放出される電子の2次元強度分布を測定することによって,分光器を掃引することなく,軟X線吸収スペクトルの2次元空間分布を一度に得ることができる。この手法を,大気中であらかじめレーザーを照射したPt/Co/Pt薄膜に適用したところ,レーザースポットの内外で異なる吸収スペクトルが得られ,開発した手法の妥当性が確認できた。軟X線イメージングスペクトロスコピー法を開発するために,以下の研究を実施した。(1)集光光学系の構築2.5:1の縮小率をもつトロイダルミラーを製作し,既存のミラーホルダーと組み合わせることによって,出射スリットの位置において1.5 mm程度の範囲に波長分散した軟X線を,試料位置に500μm程度に集光する光学系を構築した。(2)軟X線イメージングスペクトロスコピーの実証Si基板上に10μm間隔でCuグリッドが描かれたテスト試料に,集光光学系によって集光した波長分散軟X線を照射し,放出される電子を光電子顕微鏡でイメージングすることによって,軟X線イメージングスペクトロスコピーの実証を行った。(1)集光光学系の構築予定通りトロイダルミラーの製作とミラーホルダーへの組み込みが完了し,出射スリット位置における軟X線を試料位置に正しく集光できることが確認された。また,既存のミラーホルダーの調整機構はこの目的に対して十分な精度を有することが確認できた。(2) X線イメージングスペクトロスコピーの実証光電子顕微鏡によって10μm間隔のグリッドが明瞭に観測されるとともに,Cu L吸収端付近の軟X線に対し,Cuグリッドから放出される電子の強度が,吸収端前後で大きく変化することが確認された。軟X線イメージングスペクトルスコピー法の実証実験として,大気中であらかじめレーザーを照射することで,場所によって異なる化学状態になっていることが予想されるPt/Co/Pt薄膜を用いた測定を行った。300μm程度の視野の中に780 eV付近(CoのL吸収端に対応する)で10 eV程度のエネルギー幅を有する波長分散した軟X線を照射し,薄膜上のそれぞれの位置における軟X線の吸収量に比例して放出される電子を,光電子顕微鏡を用いて位置分解して一度に取り込んだ。これによって,軟X線吸収スペクトルを分光器を掃引することなく測定することができる。得られたデータを,レーザースポットの内側と外側,それぞれについて足し合わせ,軟X線のエネルギー(軟X線が鉛直方向に波長分散しているので,試料上の上下方向の位置に対応)に対してプロットすることによって,レーザースポットの内外それぞれに対する軟X線吸収スペクトルを得た。得られたスペクトルは,レーザースポットの外側では典型的なCo金属の特徴を示したのに対し,内側では高エネルギー側に特徴的なサテライト構造が見られ,レーザーによるCoの酸化を強く示唆している。このようなレーザースポットの内外での軟X線スペクトルの違いは,通常の単色光と光電子顕微鏡を用いた位置分解吸収スペクトル測定でも確認され,今回開発した軟X線イメージングスペクトロスコピー法の原理を実証することができた。さらに,この手法を化学反応の時空間同時分析に応用するために,100μm程度のドメイン構造を有することが知られているPdRh合金に対して,PdおよびRhの吸収端近傍で位置分解した軟X線吸収スペクトルの測定を行った。時分割軟X線スペクトロスコピーと2次元空間イメージングを両立させた,「時分割イメージングスペクトロスコピー法」の開発を行った。波長分散した(位置によって波長の異なる)軟X線を試料に照射し,光電子顕微鏡を用いて試料上のそれぞれの位置から放出される電子の2次元強度分布を測定することによって,分光器を掃引することなく,軟X線吸収スペクトルの2次元空間分布を一度に得ることができる。この手法を,大気中であらかじめレーザーを照射したPt/Co/Pt薄膜に適用したところ,レーザースポットの内外で異なる吸収スペクトルが得られ,開発した手法の妥当性が確認できた。静的なイメージングスペクトルスコピー法の実証に引き続き,最終的な開発目標である時分割測定の実現を目指して,光電子顕微鏡のカメラの高速化を行う。これによって,10 ms以下での連続測定を可能にする。さらに,開発した軟X線時分割イメージングスペクトロスコピー法を表面化学反応の時空間同時観察に応用する。具体的な測定対象としては,Rh上における一酸化窒素(NO)と水素(H2)の反応,もしくはCuの酸化反応を予定している。放射光科学,表面科学トロイダルミラーの製作に予定以上の金額が必要となったが,現有のミラーホルダーがそのまま利用できたことによって,真空部品等の支出が抑えられたのと,打合せ等の旅費が比較的少額で済んだため。実験のための単結晶試料や反応ガス,真空部品の購入に充てる。 | KAKENHI-PROJECT-15K13631 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K13631 |
アゾラ(アカウキクサ)の交雑と突然変異系統の遺伝・分子生物学的研究 | 1.オオアカウキクサ(A.japonica Franch et Sav.)は日本固有種と思われる。Azolla属の同定には生殖器官の携帯が重要であるけれど,多くのアゾラはなかなか生殖器官をつくらない。そこで,酵素のアイソザイムやDNAの多型性による化学分類によって日本各地から集めたオオアカウキクサの種別を試みた。平成6年度は三重県と愛知県から集めたものと国際稲研究所のコレクションを用いてRAPD(Random primer Polymorphic DNA)でDNAの相似性を調べた。その結果,本邦産オオアカウキクサには少なくとも2種類のものがあることがわかった。一つはA.filiculoidesに近いもので,もう一つはA.rubraに近かった。兵庫県と自然博物館の鈴木武は我々とは独立にアイソザイム分析をに基づいて本邦産オオアカウキクサには少なくとも2種類があること見つけていた。そこで鈴木武と共同研究を行った。採集株の交換を行い,供試株を増やした。RAPDの分析結果はアイソザイム分析結果と一致し,A.filiculoidesに近いものは,大阪,奈良,京都南部,筑後に分布し,A.rubraに近いものは関東,北陸,山陰,四国に分布していた。2.A.filiculoides大阪株が5月に多数の大小胞子のう果をつけたので,それからF1個体を採取した。その後生存できた約50株についてSKD(shikimic dehydrogenase),PGI(Phosphoglucoisomerase),PCM(Phosphoglucmutase),EST(Esterase)のアイソザイムを調べた。ESTについては親と異なったアイソザイム型を示し,ヘテロ接合体であることが判った。1.オオアカウキクサ(A.japonica Franch et Sav.)は日本固有種と思われる。Azolla属の同定には生殖器官の携帯が重要であるけれど,多くのアゾラはなかなか生殖器官をつくらない。そこで,酵素のアイソザイムやDNAの多型性による化学分類によって日本各地から集めたオオアカウキクサの種別を試みた。平成6年度は三重県と愛知県から集めたものと国際稲研究所のコレクションを用いてRAPD(Random primer Polymorphic DNA)でDNAの相似性を調べた。その結果,本邦産オオアカウキクサには少なくとも2種類のものがあることがわかった。一つはA.filiculoidesに近いもので,もう一つはA.rubraに近かった。兵庫県と自然博物館の鈴木武は我々とは独立にアイソザイム分析をに基づいて本邦産オオアカウキクサには少なくとも2種類があること見つけていた。そこで鈴木武と共同研究を行った。採集株の交換を行い,供試株を増やした。RAPDの分析結果はアイソザイム分析結果と一致し,A.filiculoidesに近いものは,大阪,奈良,京都南部,筑後に分布し,A.rubraに近いものは関東,北陸,山陰,四国に分布していた。2.A.filiculoides大阪株が5月に多数の大小胞子のう果をつけたので,それからF1個体を採取した。その後生存できた約50株についてSKD(shikimic dehydrogenase),PGI(Phosphoglucoisomerase),PCM(Phosphoglucmutase),EST(Esterase)のアイソザイムを調べた。ESTについては親と異なったアイソザイム型を示し,ヘテロ接合体であることが判った。1・本邦産アゾラ...オオアカウキクサ(A.japonica NAKAI)のコレクションのアイソザイムを調べた結果、三重県南部、愛知県南部で採取したものは西日本から採取したものと違いA.filiculoides(ヨーロッパ産)よりA.rubra(New Zealand産)に近いことがわかったので、採集地域をさらにひろげるとともにDNAの分析をRAPD(Random Amplification Polymorchic DNA)法で分析した。これは10くらいの塩基を持つプライマーでDNAをPCRで増殖してから、電気泳動でDNA断片を分け、いろいろなバンドの有無でDNAの相同性を調べる方法である。この結果アイソザイムの分析で示されたと同様に、本邦産A.japonicaにはすくなくとも2の系統があることがわかった。ひとつは関西・九州からのもので、A.filiculoidesに近く、もうひとつは三重県南部、愛知県南部で採取したもので、A.rubraに近い。今後さらに系統を集め、両者の分布を調べる予定である。2・アゾラの突然変異株をうる目的でアゾラのX線照射を行った。3000-4000Rが適当であることがわかった。3の生き残り個体が得られたので、同様な研究行っている大阪府立大学に送って、選択圧をかける予定である。3・A.filiculoidesの自家受粉によるF1世代個体をIRRI(国際稲研究所)より取り寄せた。まずこのDNAのRAPDによる分析をおこなったが、差がなかった。これは取り寄せた株がA.filiculoidesであったことを確認するもので、今後特定の遺伝子DNAの分析で分離比などの検討行う予定である。1.オオアカウキクサ(A.japnica Franch et Sav.)は日本固有種と思われる。Azolla属の同定には生殖器官の形態が重要であるけれど,多くのアゾラはなかなか生殖器官をつくらない。そこで,酵素のアイソザイムやDNAの多型性による化学分類によって日本各地から集めたオオアカウキクサの類別を試みた。平成7年度は三重県と愛知県から集めたものと国際稲研究所のコレクションを用いてRAPD(Random primer Polymorphic DNA)でDNAの相似性を調べた。その結果,本邦産オオアカウキクサには少なくとも2種類のものがあることがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-06454071 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06454071 |
アゾラ(アカウキクサ)の交雑と突然変異系統の遺伝・分子生物学的研究 | 一つはA.filiculoidesに近いもので,もう一つはA,rubraに近かった。兵庫県「人と自然博物館」の鈴木武は我々とは独立にアイソザイム分析をに基づいて本邦産オオアカウキクサには少なくとも2種類があること見つけていた。そこで鈴木武と共同研究を行った。採集株の交換を行い,供試株を増やした。RAPDの分析結果はアイソザイム分析結果と一致し,A.filiculoidesに近いものは,大阪,奈良,京都南部,筑後に分布し,A.rubraに近いものは関東,北陸,山陰,四国に分布していた。2.A.filiculoides大阪株が5月に多数の大小胞子のう果をつけたので,それからF1個体を採取した。その後生存できた約50株についてSKD(shikimic dehydrogenase), PGI(Phosphoglucoisomerase), PGM(Phosphoglucmutase), EST(Esterase)のアイソザイムを調べた。ESTについては親と異なったアイソザイム型を示し,ヘテロ接合体であることが判った。 | KAKENHI-PROJECT-06454071 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06454071 |
「あかり」近赤外線分光データに基づく氷の変性過程の研究 | 新しい波長較正を適用して「あかり」IRCの銀河面星生成領域を中心とした近赤外線スペクトルの解析を行った。まずIRCのslit-less分光による銀河面サーベイにより発見された2つの若い天体候補の赤外線スペクトルを詳細に解析した。この結果、H2OおよびCO2氷の吸収線の他に、4.6ミクロン帯にみられる幅広い吸収は、150K程度の一酸化炭素のガスの吸収とXCNと同定される物質の吸収でよく説明されることがわかった。これらの特徴は若い天体に固有のものであるが、一方、Herschel衛星による観測では遠赤外線では放射が検出されておらず、近赤外線から遠赤外線にかけてのエネルギー分布は背景星である可能性を示唆する。この2つの天体が存在する領域には、特に星生成領域は検出されていない一方、深い吸収を示すような濃い星間雲も存在せず、若い星か背景星かを確定するには、さらに高い波長分解脳の観測が必要であるとの結論に達した。これらと並行して、新しい波長較正に基づくスペクトルを用い、銀河面内の複数の星生成領域の氷に吸収バンドの解析を行い、星生成過程の進行とともに、CO2氷がH2O氷と比較して減少していく傾向があることを示す結果を得た。さらに3.3, 3.4ミクロンにみられる、芳香族および脂肪族に起因する輝線バンドと進化の関係を調べ、脂肪族が進化とともに減少している傾向があることも得た。星生成の進行とともに、星間の氷および有機物が変成していくことを観測的に初めて示す結果を得た。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。本年度は、まずIRC分光データの波長較正を改善し、より精度の高い波長較正を得たスペクトルの導出を可能とした。これに基づき、「あかり」IRCの銀河面星生成領域を中心とした近赤外線スペクトルの解析を進めた。この中で、Extended Green Object (EGO)と呼ばれる4ミクロン帯に超過放射のある一つの天体の解析を行い、一酸化炭素(CO)の基底振動遷移輝線がこの超過の原因であることを明らかにした。また輝線を生じているガスには水素が少ないことが示めされ、同時にCOの輝線が1000km/sを超える速度で青色偏移していることが示唆された。これらの特徴は超新星残骸Cas Aでみられたスペクトルの特徴と類似しており、この天体が超新星残骸である可能性が示唆される。しかし、当該の領域には電波で超新星残骸の兆候がみられるものの、赤外線の分布には超新星残骸とみられる構造的な特徴はなく、本天体の同定はさらに詳細な観測が必要であると結論づけられた。また「あかり」IRCのslit-less分光による銀河面サーベイにより、2つの若い天体候補を発見した。これらの天体は、H2OおよびCO2氷の吸収線の他に、150K程度の一酸化炭素のガスの吸収とXCNと同定される4.6ミクロンを中心にした幅広い吸収バンドが存在する。これらの特徴は若い天体に固有のものであるが、一方、Herschel衛星による観測では遠赤外線では放射が検出されておらず、近赤外線から遠赤外線にかけてのエネルギー分布は背景星である可能性を示唆する。現在この天体のスペクトルの詳細解析を進めている。これらの研究と並行して、「あかり」IRCの銀河面星生成領域の近赤外線分光観測データの解析を進め、進化とともに氷の組成が変化している可能性を見出した。現在さらに詳細な解析を進めている。IRC分光データの波長較正を見直し、より精度が高く、信頼性の高い波長較正を導いた。この新しい波長較正に基づいた分光データを基に解析を順調に進めている。この解析の中で、超新星残骸と示唆される天体を見出し、そのスペクトルの詳細解析を行い、学術雑誌に査読論文として発表した。また2つの若い天体候補を発見し、詳細解析を進めている。同時に近赤外線スペクトルの解析も行い、星生成領域の進化に伴い、氷の組成が変化している可能性を見出すなど、今後詳細解析が必要なものの、順調に成果を上げている。新しい波長較正を適用して「あかり」IRCの銀河面星生成領域を中心とした近赤外線スペクトルの解析を行った。まずIRCのslit-less分光による銀河面サーベイにより発見された2つの若い天体候補の赤外線スペクトルを詳細に解析した。この結果、H2OおよびCO2氷の吸収線の他に、4.6ミクロン帯にみられる幅広い吸収は、150K程度の一酸化炭素のガスの吸収とXCNと同定される物質の吸収でよく説明されることがわかった。これらの特徴は若い天体に固有のものであるが、一方、Herschel衛星による観測では遠赤外線では放射が検出されておらず、近赤外線から遠赤外線にかけてのエネルギー分布は背景星である可能性を示唆する。この2つの天体が存在する領域には、特に星生成領域は検出されていない一方、深い吸収を示すような濃い星間雲も存在せず、若い星か背景星かを確定するには、さらに高い波長分解脳の観測が必要であるとの結論に達した。これらと並行して、新しい波長較正に基づくスペクトルを用い、銀河面内の複数の星生成領域の氷に吸収バンドの解析を行い、星生成過程の進行とともに、CO2氷がH2O氷と比較して減少していく傾向があることを示す結果を得た。 | KAKENHI-PUBLICLY-16H00934 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-16H00934 |
「あかり」近赤外線分光データに基づく氷の変性過程の研究 | さらに3.3, 3.4ミクロンにみられる、芳香族および脂肪族に起因する輝線バンドと進化の関係を調べ、脂肪族が進化とともに減少している傾向があることも得た。星生成の進行とともに、星間の氷および有機物が変成していくことを観測的に初めて示す結果を得た。若い星候補のIRC近赤外線スペクトルに対して実験室データに基づいた詳細な吸収線のフィットを行い、他の観測データも加えて、その天体が真に若い天体であるかを十分に吟味する。また、星生成領域の近赤外線分光スペクトルのより精密なモデルフィットを進め、これまで示唆されている傾向を定量的に確認する。新しく較正されたより精度の高いスペクトルを用いて、銀河系内星形成領域のIRCスペクトルデータの詳細な解析を進め、氷の変成過程等を定量的に明らかにする。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-16H00934 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-16H00934 |
パーキンソン関連疾患のレボドパ治療抵抗性症状に対する磁気刺激治療の開発 | パーキンソン病の非薬物治療としての磁気刺激療法に関する研究を行い以下の成果を得た。歩行障害について客観的な測定系を確立し早期の患者さんでもあるパラメータに異常が出ることを発見した。磁気刺激による効果はばらつきが大きいためより効果的な刺激方法を探索を試みた。即ち、単一部位刺激でなく多数部位刺激や、脳の賦活状態を変えて刺激するなど様々な方法を試みたがこれまで以上に効果が出る方法は見出すことができなかった。この原因を探索するためにも磁気刺激で何が刺激され、どのように効果が出るのかという科学的疑問に答えるための研究も行った。その結果、刺激する強度を微調整することでよりよい効果出ることを見出した。本年度はパーキンソン病におけるレボドパ治療抵抗性症状の一つである歩行障害についての生理学的な計測システムの確立を行った。運動障害において歩行障害は一つ重要な臨床指標である。歩行についてより客観的な測定を目指すため歩行解析システムを構築しパーキンソン症候群を呈する患者において試験的に歩行解析を実施した。使用したシステムは圧センサーシート(ウォークWay MW-1000(アニマ社):120 x 480 cm)である。歩行の時間・距離因子の評価のみならず圧計測により設置部位や足圧中心の軌跡も評価可能ある。さらに通常の4倍のサイズのシートを用いることでより長距離での評価(進行方向のブレなど)が可能となる。下図は健康成人とパーキンソン症候群の歩行の差である。パーキンソン症候群ではストライドの減少、歩隔の増加が認められており、歩行障害を定量的に評価することが可能となっている。また磁気刺激効果のメカニズム解明のためコントローラブル経頭蓋磁気刺激装置を用いた基礎的な生理学実験を行った。神経修飾法の一つである連合性対刺激について同装置を用いて探索的に条件検索を行い一次運動野内の異なるシナプス回路がどのように神経可塑性誘導に関わっているか検討している。これにより効果的な神経修飾プロトコール開発のための生理学的基盤が明らかにできると考えている。効果的なプロトコールの開発と、難治性の神経症状の測定方法の確立に関して研究を進めており概ね順調に進行している。本研究ではパーキンソン病・パーキンソン関連疾患におけるレボドパ治療抵抗性症状に対する磁気刺激治療の開発を目的としている。そのためレボトパ治療抵抗性症状などのパーキンソン関連運動脳症状の客観的測定方法の開発、効果的刺激プロトコールの探索、多数部位刺激による効果の検討、磁気刺激効果のメカニズムの解明という4つのアプローチにより研究を行っている。昨年度までにレボドパ治療抵抗性症状の一つである歩行障害の客観的測定方法を確立し発表した(Yozu, Hamada et al, 2017)。また磁気刺激効果のメカニズムの解明の一環として新しい強力な磁気刺激法(QPS)を用いた改善機序を解明するためにQPSによる使用依存的運動学習への効果を検討した。結果はQPS5という運動野興奮性を上昇させる方法では使用依存的運動学習が促通された。多数部位刺激については探索的に行ったものの単部位刺激とくらべ著明な効果を認めなかった。さらにより効果的な刺激プロトコール探索として新しいコントローラブル経頭蓋磁気刺激装置を用いた基礎的な生理学実験により一部の運動学習への経頭蓋磁気刺激による効果は、連合性ペア刺激を用いた場合に限ってコントローラブル刺激装置を用いてもあまりかわらないという結果が得られた。従ってコントローラブル刺激装置による効果は少なくとも使用依存的な運動学習については従来の装置を用いても変わらないことが示された。また国際共同研究としてイギリス・オーストラリアの研究機関とともに磁気刺激効果に関するばらつきの研究を行いBrain stimulation誌に発表した。被験者リクルートを含め概ね順調に進展していると考える。本研究の目的はパーキンソン病・パーキンソン関連疾患におけるレボドパ治療抵抗性症状に対する磁気刺激治療開発である。そのためレボドパ治療抵抗性症状について、パーキンソン病における客観的測定方法の開発、効果的刺激プロトコールの探索、多数部位刺激による効果の検討、磁気刺激治療効果のメカニズム解明という4つのアプローチによる研究を行った。昨年度までに歩行障害の客観的測定方法を確立し、今年度は探索的にパーキンソン病・パーキンソン病関連疾患において同測定系を用いて歩行障害について検討した。その結果、ある課題においてパーキンソン病では比較的早期から歩行パラメータに変化があることが分かった(未発表データ)。これが意味するところの検討は継時的な変化を追うことが必要であるとともに、今回の結果は少数例の検討であり今後も症例を蓄積して検討を進める予定である。多数部位刺激による効果の検討についていくつかの刺激部位の組み合わせで探索的に検討したものの、より強力な効果を得ることはできなかった。効果的刺激プロトコール探索ならびに磁気刺激治療効果メカニズムの解明の一環として、刺激強度が神経修飾法の効果に与える影響を検討し、最適刺激強度が個々人で異なることが判明した(Sasaki et al., Brain Stimulation, 2018)。以上の探索的結果を踏まえ、実際に治療効果が最も得られる刺激法の探索を行い治療応用に向けた基礎的研究を今後も検討するための画期的な示唆が得られた。パーキンソン病の非薬物治療としての磁気刺激療法に関する研究を行い以下の成果を得た。歩行障害について客観的な測定系を確立し早期の患者さんでもあるパラメータに異常が出ることを発見した。磁気刺激による効果はばらつきが大きいためより効果的な刺激方法を探索を試みた。 | KAKENHI-PROJECT-15K19476 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K19476 |
パーキンソン関連疾患のレボドパ治療抵抗性症状に対する磁気刺激治療の開発 | 即ち、単一部位刺激でなく多数部位刺激や、脳の賦活状態を変えて刺激するなど様々な方法を試みたがこれまで以上に効果が出る方法は見出すことができなかった。この原因を探索するためにも磁気刺激で何が刺激され、どのように効果が出るのかという科学的疑問に答えるための研究も行った。その結果、刺激する強度を微調整することでよりよい効果出ることを見出した。本年度に確立した歩行解析装置を用い、さらに明らかとなった神経修飾の神経生理学的基盤に基づき、今後はパーキンソン病をはじめとする神経疾患患者において神経修飾法による歩行障害への影響を検討する予定である昨年度までに当初予定していたとおりQPSによる運動学習効果があることを確かめた。最終年度は予定通り効果的な刺激プロトコールの探索の一貫としてコントローラブル刺激装置を用いたQPSによる運動学習効果を検討する。また磁気刺激効果のメカニズムの解明の一つとして小脳適応学習および使用依存的学習両者への効果を連合性ペア刺激を用いて検討し磁気刺激による運動学習改善・阻害効果について明らかにする。さらに歩行障害を呈するパーキンソン病患者に対して探索的に刺激を行い歩行パラメタに変化を認めるか検討することを予定している。神経内科当初予定していた解析ソフト購入について他の研究費で賄うことができたため当初予定していた物品費購入について他の研究費で賄うことができたため被験者謝金、消耗品の購入に充てる予定被験者謝金、消耗品購入に充てる予定 | KAKENHI-PROJECT-15K19476 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K19476 |
臨床応用を目指したエンドセリンの基礎的研究 | エンドセリンの小動物(イヌ)循環器疾患における役割を明らかにするために、遺伝子およびペプチドレベルから包括的に解析を行った。1)遺伝子レベルでの解析:エンドセリンの3つのisoform(ET-1、ET-2、ET-3)の全長cDNAをクローニングし塩基配列の決定を行った。その結果、イヌの3つエンドセリンisoformのペプチド構造(アミノ酸配列)はヒトのものと一致した。また、臓器におけるmRNAの発現パターンもヒトのものに類似しており、ET-1は肺でET-2は消化管で高発現が認められた。2)循環器疾患の病態へのエンドセリン(ET-1)の関与:種々の循環器疾患(心臓糸状虫症、僧帽弁逆流、三尖弁逆流、心室中隔欠損症、および動脈管開存症)に罹患した犬の血中ET-1濃度を測定したところ有意に高値を示した。特に心臓糸状虫症罹患犬の血中ET-1濃度は6.9±2.7pg/m1で、健常犬の1.4±0.3pg/mlに比べ約4倍の高値を示した。僧帽弁逆流、三尖弁逆流、心室中隔欠損症、および動脈管開存症罹患犬の血中濃度は、それぞれ、4.9±2.3pg/ml、3.6±0.7pg/ml、4.1±1.5pg/mlおよび2.6±1.Opg/mlであった。血中ET-1濃度が高値を示した心臓糸状虫症罹患犬において、各臓器におけるET-1mRNAの発現解析をReal-time PCR法により行ったところ、肺と心臓において発現量の著しい増加が確認された。ヒトの一部の肺や心疾患において、その病態の増悪に先行して血中ET-1濃度の上昇が観察されている。この上昇は、肺の毛細血管内皮や心筋でのET-1発現量・産生量の増加によるものと考えられており、また、増加したET-1は肺毛細血管壁や心筋壁のリモデリングを惹起させ、病態のさらなる増悪に関与していると考えられている。従って、ヒトの肺や心臓疾患において、血中ET-1濃度は予後判断の1つのマーカーとして有望視されている。今回の研究において、イヌの肺や心疾患においてもヒトと同様にこれらの臓器でのET-1発現量の増加、血中濃度の上昇が認められ、イヌにおいてもET-1の病態への関与が示された。また、血中ET-1濃度がヒトと同様に予後判断マーカーとして用いられる可能性が指摘された。エンドセリンの小動物(イヌ)循環器疾患における役割を明らかにするために、遺伝子およびペプチドレベルから包括的に解析を行った。1)遺伝子レベルでの解析:エンドセリンの3つのisoform(ET-1、ET-2、ET-3)の全長cDNAをクローニングし塩基配列の決定を行った。その結果、イヌの3つエンドセリンisoformのペプチド構造(アミノ酸配列)はヒトのものと一致した。また、臓器におけるmRNAの発現パターンもヒトのものに類似しており、ET-1は肺でET-2は消化管で高発現が認められた。2)循環器疾患の病態へのエンドセリン(ET-1)の関与:種々の循環器疾患(心臓糸状虫症、僧帽弁逆流、三尖弁逆流、心室中隔欠損症、および動脈管開存症)に罹患した犬の血中ET-1濃度を測定したところ有意に高値を示した。特に心臓糸状虫症罹患犬の血中ET-1濃度は6.9±2.7pg/m1で、健常犬の1.4±0.3pg/mlに比べ約4倍の高値を示した。僧帽弁逆流、三尖弁逆流、心室中隔欠損症、および動脈管開存症罹患犬の血中濃度は、それぞれ、4.9±2.3pg/ml、3.6±0.7pg/ml、4.1±1.5pg/mlおよび2.6±1.Opg/mlであった。血中ET-1濃度が高値を示した心臓糸状虫症罹患犬において、各臓器におけるET-1mRNAの発現解析をReal-time PCR法により行ったところ、肺と心臓において発現量の著しい増加が確認された。ヒトの一部の肺や心疾患において、その病態の増悪に先行して血中ET-1濃度の上昇が観察されている。この上昇は、肺の毛細血管内皮や心筋でのET-1発現量・産生量の増加によるものと考えられており、また、増加したET-1は肺毛細血管壁や心筋壁のリモデリングを惹起させ、病態のさらなる増悪に関与していると考えられている。従って、ヒトの肺や心臓疾患において、血中ET-1濃度は予後判断の1つのマーカーとして有望視されている。今回の研究において、イヌの肺や心疾患においてもヒトと同様にこれらの臓器でのET-1発現量の増加、血中濃度の上昇が認められ、イヌにおいてもET-1の病態への関与が示された。また、血中ET-1濃度がヒトと同様に予後判断マーカーとして用いられる可能性が指摘された。今年度は犬のエンドセリンcDNAのクローニングを5'および3'-RACE PCR法により行った。1)犬エンドセリン-1(ET-1)cDNAクローニングで得られたET-1 cDNAはpoly(A)配列を除き1,935bpであり、202アミノ酸残基から成る前駆体タンパク質をコードする606bpの翻訳領域を含んでいた。この前駆体タンパク質には、ET1領域に加え、endothelin familyの前駆体タンパク質に共通して認められるbig formおよびendothelin-like peptide領域が確認された。 | KAKENHI-PROJECT-17580271 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17580271 |
臨床応用を目指したエンドセリンの基礎的研究 | RT-PCR法により臓器におけるPPET2 mRNAの発現解析を行ったところ、検索した十二指腸、結腸、胃、肺、肝臓、脾臓、子宮、卵巣、精巣および腎臓で発現が確認された。2)犬エンドセリン-2(ET2)cDNAクローニングで得られたET-2 cDNAはpoly(A)配列を除き1,195bpであり、178アミノ酸残基から成る前駆体タンパク質をコードする537bpの翻訳領域を含んでいた。この前駆体タンパク質には、ET2領域に加え、endothelin familyの前駆体タンパク質に共通して認められるbig formおよびendothelin-like peptide領域が確認された。RT-PCR法により臓器におけるPPET2 mRNAの発現解析を行ったところ、検索した十二指腸、結腸、胃、肺、肝臓、子宮、卵巣、精巣および腎臓で発現が確認され、脾臓では確認されなかった。犬エンドセリン-3(ET3)cDNAのクローニングについては現在行っている。<イヌにおける検討>1.イヌエンドセリン-3(ET-3)のクローニングイヌET-3の全長cDNAはpoly(A) tailを除き1976bpから構成されていた。コンピューターによる解析からcDNA上には198アミノ酸をコードする594bpのオープンリーディングフレームが確認された。3'非翻訳領域にはmRNAの不安定性に関わるATTTA配列が1コピー存在していた。塩基配列から想定されたET-3前駆体タンパク質上には、ET-3、bigET-3、ET-3 like peptide領域が確認された。イヌET-3前駆体タンパク質のアミノ酸レベルでの相同性は、ヒト、マウスおよびラット間でそれぞれ65.6、59.8および58.8%であった。2.イヌ臓器におけるreal-time PCRによるET mRNA発現量の定量イヌET-3 mRNAの発現は検索したすべての臓器(心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、胃、大腸、小腸、子宮、精巣)で確認された。特に肺では、その他の臓器に比べ101000倍高値を示した。3.イヌ循環器疾患におけるETの役割イヌ心臓糸状虫症に罹患したイヌの各臓器におけるETのmRNA発現量を健康犬のものと比較検討した。ET-2およびET-3では、各臓器おける発現量は健康犬と罹患犬の間に有意な差は認められなかったが、ET-1では心臓と肺で罹患犬が有意に高値を示した。血中ET-1濃度も罹患犬で有意に高値を示した。<ネコにおける検討>1.ネコエンドセリンcDNAのクローニングネコET-1、ET-2のcDNAのクローニングを行い塩基配列からペプチドの構造を検討したところ、ネコET-1ペプチドは他の哺乳動物のET-1ペプチドと比較し1アミノ酸異なっていることが明らかになった(ET-2は同一)。2.腎不全ネコの腎臓におけるETの発現得られた塩基配列の情報を基にプライマーを設計した後、PCR法により腎疾患(慢性腎不全)に罹患したネコの腎臓におけるET-1およびET-2 mRNAの発現レベルを解析し、健康なネコの腎臓での発現と比較した。その結果、慢性腎不全に罹患したネコの腎臓では双方のmRNAの発現が増加していた。ヒトにおいてETは、循環器疾患や腎疾患の病態増悪因子の1つとして考えられているが、今回得られた結果から、ETがイヌやネコの疾患においても同様の役割を果たしている可能性が示された。1)特異性の高い抗エンドセリン抗体の作製と高感度迅速アッセイ系の検討イヌET-1ペプチドのアミノ酸配列はヒトやマウスと同一であることが明らかになっている。 | KAKENHI-PROJECT-17580271 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17580271 |
象牙質露出歯および緊密咬合症例へのポーセレン・ラミネートベニア修復の応用 | ポーセレン・ラミネートベニア修復は歯髄、歯列に障害を与えずに審美性を回復させる術式である。ベニアに直接負荷がかからず接着面積の大きい上顎前歯では支台歯の接着面積の一部が象牙質であっても象牙質前処理を施すことによって、ベニアの破折や脱落といった障害が起こらないことがほぼ明らかになった。一方、象牙質が露出しやすく、かつ咬合による負荷が加わる下顎前歯ではベニアの破折や脱落が危惧され、適応から除外されている。そこで下顎中切歯を用いて、非被覆型の支台歯形成(エナメル質のみ)を行い、各支台歯に合わせて作製したポーセレン・ラミネートベニアをトータルエッチングした支台歯に合着用レジンで接着させた。さらに唇側のC-E junctionから歯頸部1/3までの象牙質を露出させ、各支台歯に合わせて作製したベニアをトータルエッチングした支台歯、または象牙質に象牙質前処理剤を施した支台歯に合着用レジンで接着させた試験片も作製した。2時間後各試験片に繰り返し圧縮荷重(25時間,9万回)を負荷させた。形成をエナメル質にとどめた試験片には、負荷後のベニアに破折や脱離などは認められなかった。また露出した象牙質にトータルエッチングのみを行った場合、負荷後同部位のベニア表面に破折や剥離が観察された。一方、根面まで露出した象牙質に象牙質前処理剤を施した試験片の負荷後の表面には破折などの変化は認められなかった。(第72回IADRで発表)。これは象牙質前処理剤を使用することで象牙質との接着強さが大きくなり、エッチングしたエナメル質の場合に匹敵する程で、これがベニアの破折を防ぐ結果となったと考えられる。以上の結果から、下顎前歯の場合も上顎歯と同じように接着対象がエナメル質あるいは象牙質であっても象牙質前処理剤を施せば、ポーセレン・ラミネートベニア修復を行うことが可能であることが示唆された。ポーセレン・ラミネートベニア修復は歯髄、歯列、咬合に傷害を与えずに審美性を回復させる有用性の高い術式である。最近の報告によると支台歯の接着面全体がエナメル質の場合、ベニアは破折や脱落といった傷害が起こらないことがほぼ明らかになった。一方、象牙質が多く露出した症例ではベニアの破折や脱落が危惧され、適応から除外されている。これは、ベニアが歯質に強固に保持されていないためだと考えられる。そこで上顎中切歯を用いて、唇側歯顎部1/3のみの象牙質を露出させ、各支台歯に合わせて作製したベニアをトータルエッチングした支台歯に合着用レジンで接着させて試験片とした。2時間後各試験片に、繰り返し圧縮荷重(25時間、9万回)を負荷させた。負荷後象牙質の露出した部位のベニア表面に顕著な破折や剥離が観察された。一方、露出した象牙質に象牙質前処理剤を施した試験片の負荷後の表面には破折などの変化はみられなかった(第71回IADRで発表した)。さらに、ベニアが破析や剥離しない理由を見つけるため、接着強度試験を行なった。ポーセレンをエッチングしたエナメル質(ヒト抜去上顎中切歯)に合着させ、2時間後の剪断による接着強さを測定した。また、エッチングした象牙質との剪断接着強さおよび2種類の象牙質前処理剤(Impervabond primer,Multipurpose primer)を用いて処理した象牙質との剪断接着強さも測定した。象牙質前処理剤を使用することで象牙質との接着強度が象牙質前処理剤を使用しない場合より大きく、エッチングしたエナメル質の場合に匹敵する程であり、これがベニアの破折を防ぐ結果となったと考えられる(第2回国際歯科材料学会議で発表した)。以上の結果から、象牙質に象牙質前処理剤を使用することによって、ポーセレン・ラミネートベニア修復を象牙質の露出した上顎の症例に行うことが可能であることが可能であることが示唆され、適応範囲の拡大が期待できると思われる。ポーセレン・ラミネートベニア修復は歯髄、歯列に障害を与えずに審美性を回復させる術式である。ベニアに直接負荷がかからず接着面積の大きい上顎前歯では支台歯の接着面積の一部が象牙質であっても象牙質前処理を施すことによって、ベニアの破折や脱落といった障害が起こらないことがほぼ明らかになった。一方、象牙質が露出しやすく、かつ咬合による負荷が加わる下顎前歯ではベニアの破折や脱落が危惧され、適応から除外されている。そこで下顎中切歯を用いて、非被覆型の支台歯形成(エナメル質のみ)を行い、各支台歯に合わせて作製したポーセレン・ラミネートベニアをトータルエッチングした支台歯に合着用レジンで接着させた。さらに唇側のC-E junctionから歯頸部1/3までの象牙質を露出させ、各支台歯に合わせて作製したベニアをトータルエッチングした支台歯、または象牙質に象牙質前処理剤を施した支台歯に合着用レジンで接着させた試験片も作製した。2時間後各試験片に繰り返し圧縮荷重(25時間,9万回)を負荷させた。形成をエナメル質にとどめた試験片には、負荷後のベニアに破折や脱離などは認められなかった。 | KAKENHI-PROJECT-05671603 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671603 |
象牙質露出歯および緊密咬合症例へのポーセレン・ラミネートベニア修復の応用 | また露出した象牙質にトータルエッチングのみを行った場合、負荷後同部位のベニア表面に破折や剥離が観察された。一方、根面まで露出した象牙質に象牙質前処理剤を施した試験片の負荷後の表面には破折などの変化は認められなかった。(第72回IADRで発表)。これは象牙質前処理剤を使用することで象牙質との接着強さが大きくなり、エッチングしたエナメル質の場合に匹敵する程で、これがベニアの破折を防ぐ結果となったと考えられる。以上の結果から、下顎前歯の場合も上顎歯と同じように接着対象がエナメル質あるいは象牙質であっても象牙質前処理剤を施せば、ポーセレン・ラミネートベニア修復を行うことが可能であることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-05671603 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671603 |
心線維芽細胞由来CNPの心筋リモデリングにおける役割とその治療的意義の解明 | 本申請研究では、心臓筋繊維芽細胞由来CNPの心筋リモデリングにおける役割とそこに関わる分子機序を、CNP及びGC-Bの心臓構成細胞特異的ノックアウトマウスなどの遺伝子改変動物を駆使して明らかにし、その心肥大及び心不全発症予防における意義を示すことを目的とした。筋繊維芽細胞特異的CNPノックアウトマウスでは圧負荷による心肥大がコントロールのマウスと比べて増悪した。筋繊維芽細胞由来CNPが病的心筋リモデリングに保護的に働いている可能性が示唆された。本申請研究では、心臓筋線維芽細胞由来CNPの心筋リモデリングにおける役割とそこに関わる分子機序を、CNPおよびGC-Bの心臓構成細胞特異的ノックアウトマウスなどの遺伝子改変動物を駆使して明らかにし、その心不全治療・予防における意義を示すことを目的とする。本年度はまず筋線維芽細胞に発現するperostin-cre (Postnn-cre)マウスとCNPflox/floxマウスを交配し、心臓筋線維芽細胞特異的CNPノックアウトマウス(CNP cmfKO)を作製し、このマウスに大動脈縮窄による圧負荷モデルを作製し、病的心筋リモデリングにおける心線維細胞由来CNPの意義をに解析した。現時点でCNP cmfKOは対照マウスと比べて圧負荷による心肥大、心筋リモデリングが増悪していることを見出しており、さらに詳細な解析を加えている。またGC-Bflox/floxマウスとalpha-MHC-creマウスを交配させて心筋細胞特異的GC-Bノックアウトマウス(GC-B cKO)も作成し、同様に圧負荷を行ったが、CNP cmfKOのような心筋リモデリング抑制は認められていない。このことは心臓筋線維芽細胞由来CNPの心筋リモデリング抑制効果は、パラクライン因子としての心筋細胞への作用が主体ではない可能性を示唆している。そこで、心臓筋線維芽細胞由来CNPのオートクライン作用を検討するために現在Postnn-creマウスとGC-Bflox/floxマウスを交配し、心臓筋線維芽細胞特異的GC-B KOマウス(GC-B cmfKO)の作成を開始した。三種類の心臓構成細胞特異的CNP-GC-Bシステムノックアウトマウスを作製し、その病的心筋リモデリングにおける意義を圧負荷心モデルで解析しており、おおむね予定通りの進捗状況である。本申請研究では、心臓筋繊維芽細胞由来CNPの心筋リモデリングにおける役割とそこに関わる分子機序を、CNP及びGC-Bの心臓構成細胞特異的ノックアウトマウスなどの遺伝子改変動物を駆使して明らかにし、その心不全・予防における意義を示すことを目的とする。本年度は、前年度に引き続き、筋繊維芽細胞に発現するperiostin-cre(Postn-cre)マウスとCNP-floxマウスとの掛け合わせにより作製した筋繊維芽細胞特異的CNPノックアウトマウス(CNP cmfKO)を用いた大動脈縮窄による圧負荷モデル(TACモデル)での心肥大、病的心筋リモデリングについて、N数を増やした解析を行っており、CNP cmfKOにおいて心肥大、病的心筋リモデリングの増悪を認めている。またCNPの受容体であるGC-B-floxマウスとalpha-MHC-creマウスを交配させた心筋特異的GC-Bノックアウトマウス(GC-B cmKO)でのTACモデルを用いた心肥大・心筋リモデリングに対する効果の有無についての検討に関しても、preliminaryな検討ではGC-B cmKOのTACで心肥大・病的心筋リモデリングの増悪は認めていないが、N数を増やして、更なる解析を進行中である。これらのpreliminaryな結果から、心筋線維芽細胞由来CNPが圧負荷による心肥大・病的心筋リモデリングに対して保護効果を示し、その効果は心筋細胞へのCNPの直接的な作用ではないことが考えられ、心筋線維芽細胞自身にオートクライン、パラクライン的に作用する可能性を考えperiostin-creマウスとGC-B-floxマウスとの掛け合わせによる筋線維芽細胞特異的GCBノックアウトマウス(GC-B cmfKO)が得られてきており、其れについて、TACモデルを作製し、心肥大・病的心筋リモデリングへの影響について検討を開始している。本申請研究では、心臓筋繊維芽細胞由来CNPの心筋リモデリングにおける役割とそこに関わる分子機序を、CNP及びGC-Bの心臓構成細胞特異的ノックアウトマウスなどの遺伝子改変動物を駆使して明らかにし、その心肥大及び心不全発症予防における意義を示すことを目的とした。筋繊維芽細胞特異的CNPノックアウトマウスでは圧負荷による心肥大がコントロールのマウスと比べて増悪した。筋繊維芽細胞由来CNPが病的心筋リモデリングに保護的に働いている可能性が示唆された。今後以下の検討を行う予定である。1、CNP cmfKO, GC-B cKO, GC-B cmfKOの圧負荷心における心臓リモデリングのさらに詳細な検討を生化学的、分子生物学的、組織学的手法にて行う。また下流の遺伝子発現変化およびそこに関わるメカニズムを解析していく。2、上記3モデルマウスに心筋梗塞モデルやアンジオテンシンII負荷モデルを作製し、同様に心筋リモデリングの差異を検討する。3、CNP過剰発現マウスを用いて心筋リモデリングにおけるCNPの作用とその機序を検討する。4、CNPノックアウトラット由来心筋細胞および心線維芽細胞を用いて心臓局所におけるCNPの心筋リモデリングにおける作用とその分子機序をin vitroでも解析する。循環器内科学 | KAKENHI-PROJECT-15K19377 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K19377 |
化学プロセスにおけるエネルギーの有効利用(総括班) | 本年度は研究の最終年度に当たるため総括班においては当初から「まとめ」のことを考えて以下に述べるような3回の会合を行った。〔第1回〕昭和61年7月5日、於ホテル京阪(京都)最終年度の研究の基本方針、英文報告書のまとめ方の基本方針について討議し、1)全体を5グループにわけ、各グループは50頁以上、全体で300頁程度になることを了承した。2)発表論文の単なる集合の形はとらず、各省では内容を幾つかのグループに分類して各グループのタイトルについての国内外の研究状況をサーベイを行うと同時にそのタイトルの所に含まれる論文の位置付けを行う方針をとることにした。昭和61年度研究成果発表の方針の検討を行った。〔第2回〕昭和61年10月24日、於ホテル京阪(京都)総合総括班の英文報告書に関する方針の報告を行った。プロセス班の英文報告書の内容および形式について討論し、作成のスケジュールを決定した。昭和61年度の成果報告会は公開とし、化学工学協会、日本化学会などにも告示して行うことを決定した。〔第3回〕昭和62年1月30日、於京大会館(京都)英文報告書の各章、節、項の検討を行い、各項の頁数、執筆者名などを3月末までに確定することを承認した。昭和62年10月開催予定の総合シンポジュームについて方針を検討した。本年度は研究の最終年度に当たるため総括班においては当初から「まとめ」のことを考えて以下に述べるような3回の会合を行った。〔第1回〕昭和61年7月5日、於ホテル京阪(京都)最終年度の研究の基本方針、英文報告書のまとめ方の基本方針について討議し、1)全体を5グループにわけ、各グループは50頁以上、全体で300頁程度になることを了承した。2)発表論文の単なる集合の形はとらず、各省では内容を幾つかのグループに分類して各グループのタイトルについての国内外の研究状況をサーベイを行うと同時にそのタイトルの所に含まれる論文の位置付けを行う方針をとることにした。昭和61年度研究成果発表の方針の検討を行った。〔第2回〕昭和61年10月24日、於ホテル京阪(京都)総合総括班の英文報告書に関する方針の報告を行った。プロセス班の英文報告書の内容および形式について討論し、作成のスケジュールを決定した。昭和61年度の成果報告会は公開とし、化学工学協会、日本化学会などにも告示して行うことを決定した。〔第3回〕昭和62年1月30日、於京大会館(京都)英文報告書の各章、節、項の検討を行い、各項の頁数、執筆者名などを3月末までに確定することを承認した。昭和62年10月開催予定の総合シンポジュームについて方針を検討した。 | KAKENHI-PROJECT-61040030 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61040030 |
神経細胞の分化と神経伝達物質トランスポーターの発現 | 神経伝達物質トランスポーター(Tp)はシナプス間隙に放出された伝達物質を神経終末内へ再取り込みする機能を持ち、シナプス伝達の終息と伝達物質の再供給に不可欠の重要なシナプス関連蛋白質である。伝達物質Tpの発現を検索するため、次のような取り組みを展開した。1)神経伝達物質トランスポーターに対するモノクローン抗体の作製伝達物質TpのcDNAを作製して、これらに対するモノクローン抗体を作製した。今回はドーパミンTp(DAT)、セロトニンTp、小胞lアミンTpに対する抗体を作製した。2)抗ド-バミン・トランスポーター抗体の特異性の検討DATとエピネフリンTp(NET)のホモロジーが高いため、抗DAT抗体の使用に当たっては、それの厳密な特異性が要求される。このため次のような検討を加えた。(1)線状体と小脳皮質のシナプトゾーム分画に抗DAT抗体を用いてウエスタン・ブロットを行った。DATが特異的に存在する線状体分画のみに抗体が認識する蛋白が存在した。(2)抗原としたDATのcDNAを前半(ホモロジーは高い)、と後半(ホモロジーは低い)に分けたペプチドを作製し、抗DAT抗体に対し吸収テストを行った。後半のcDNAのみか吸収能を発揮した。(1)(2)の結果より、今回得られた抗DAT抗体は、DATのみを認識するDAT特異的な抗体であると考えられた。3)PC12細胞におけるDATの発現とその動的局在神経細胞分化時におけるDATの発現とその細胞内の動的局在を、PC12細胞を用いて免疫組織化学的に検索した。PC12細胞に神経成長因子(NGF)を投与し、神経細胞を分化させる。この時のDAT発現の検索から次のことが明らかとなった。(1)DATの発現は神経細胞分化初期は細胞体で大幅に増強される。(2)DATは小顆粒の形で表面膜へ運ばれる。DATを組み込んだ形質膜の部位から、神経突起の伸長が始まる。(3)成長円錐表面膜に、最初からDATを組み込んだ形で、神経突起は伸長する。神経伝達物質トランスポーター(Tp)はシナプス間隙に放出された伝達物質を神経終末内へ再取り込みする機能を持ち、シナプス伝達の終息と伝達物質の再供給に不可欠の重要なシナプス関連蛋白質である。伝達物質Tpの発現を検索するため、次のような取り組みを展開した。1)神経伝達物質トランスポーターに対するモノクローン抗体の作製伝達物質TpのcDNAを作製して、これらに対するモノクローン抗体を作製した。今回はドーパミンTp(DAT)、セロトニンTp、小胞lアミンTpに対する抗体を作製した。2)抗ド-バミン・トランスポーター抗体の特異性の検討DATとエピネフリンTp(NET)のホモロジーが高いため、抗DAT抗体の使用に当たっては、それの厳密な特異性が要求される。このため次のような検討を加えた。(1)線状体と小脳皮質のシナプトゾーム分画に抗DAT抗体を用いてウエスタン・ブロットを行った。DATが特異的に存在する線状体分画のみに抗体が認識する蛋白が存在した。(2)抗原としたDATのcDNAを前半(ホモロジーは高い)、と後半(ホモロジーは低い)に分けたペプチドを作製し、抗DAT抗体に対し吸収テストを行った。後半のcDNAのみか吸収能を発揮した。(1)(2)の結果より、今回得られた抗DAT抗体は、DATのみを認識するDAT特異的な抗体であると考えられた。3)PC12細胞におけるDATの発現とその動的局在神経細胞分化時におけるDATの発現とその細胞内の動的局在を、PC12細胞を用いて免疫組織化学的に検索した。PC12細胞に神経成長因子(NGF)を投与し、神経細胞を分化させる。この時のDAT発現の検索から次のことが明らかとなった。(1)DATの発現は神経細胞分化初期は細胞体で大幅に増強される。(2)DATは小顆粒の形で表面膜へ運ばれる。DATを組み込んだ形質膜の部位から、神経突起の伸長が始まる。(3)成長円錐表面膜に、最初からDATを組み込んだ形で、神経突起は伸長する。1.ドーパミン・トランスポーター抗体の特異性の検討先に得られた抗ドーパミン・トランスポーター(DAT)抗体については、DATとノルエピネフリントランスポーター(NET)とのホモロ-ジ-が高いため、その特異性を厳密に検討する必要がある。この点について次の2つの手法を用いて検索した。(1)線状体にはDATが、小脳皮質にはNATが各々特異的に存在するとされている。この両者のシナプトゾーム分画に抗DAT抗体を用いてウエスタン・ブロットを行った。ただし小脳皮質NAT濃度は非常に低いと考えられるため、線状体分画に対し1050倍蛋白濃度の試料を用いた。線状体分画では低蛋白濃度でも反応バンドが認められたが、小脳皮質分画では高濃度分画においても認識される蛋白は何も見出されなかった。(2)前回用いた抗原ペプチド(ペプチド-1)の前半(DATとNATに共通のアミノ酸構成)と後半(DATに特異的なアミノ酸構成)に分けた2種類の合成ペプチドを作製し、これらを用いて抗DAT抗体の吸収テストを行った。ペプチド-1と後半ペプチドは吸収能を発揮したが、前半ペプチドは殆ど吸収能を示さなかった。(1)(2)の結果より、今回得られた抗DAT抗体はNETに反応せず、DATのみを認識するDAT特異的な抗体であると考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-07680815 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07680815 |
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