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触媒充填層反応器における触媒活性のオンライン推定 | 物質収支,熱収支式を無次元化して直交選点法により空間方向を離散化して非線形の常微分方程式に変換し、これに拡張カルマンフィルタを適用することにより、温度、濃度分布を推定することの出来るオブザーバを構成した。なお、触媒の劣化を推定するために、反応速度定数の頻度因子をモデル中の未知パラメータとして、状態変数と同時に推定する方法を開発した。構成したオブザーバの性能をシミュレーションで評価したところ、構成したオブザーバは温度および濃度分布を観測ノイズに影響されず精度良く推定することができ、さらに頻度因子もシミュレータの値と一致し良好な推定性能があることが確認できた。次に、エチレンの完全酸化を行う現有の触媒充填層反応器(長さ90cm、直径2.5cm)に触媒を充填して反応を行い、反応器内35点の測定温度と購入した赤外線ガス分析計にて測定される原料および生成物濃度を観測値として、オブザーバを用いて反応器内温度および濃度分布および頻度因子を推定する実験を行った。その結果、温度および濃度とも実験値に一致し、頻度因子も予備実験で求めた値の±10%の精度で推定でき、満足のいく推定結果が得られた。なお、今回用いた触媒は劣化がみられなかったので、劣化速度の推定までは出来なかった。しかしながら、本研究で用いたオブザーバでは頻度因子をリアルタイムで推定できることから、頻度因子の値を監視することで活性劣化の様子も知ることができると考えている。物質収支,熱収支式を無次元化して直交選点法により空間方向を離散化して非線形の常微分方程式に変換し、これに拡張カルマンフィルタを適用することにより、温度、濃度分布を推定することの出来るオブザーバを構成した。なお、触媒の劣化を推定するために、反応速度定数の頻度因子をモデル中の未知パラメータとして、状態変数と同時に推定する方法を開発した。構成したオブザーバの性能をシミュレーションで評価したところ、構成したオブザーバは温度および濃度分布を観測ノイズに影響されず精度良く推定することができ、さらに頻度因子もシミュレータの値と一致し良好な推定性能があることが確認できた。次に、エチレンの完全酸化を行う現有の触媒充填層反応器(長さ90cm、直径2.5cm)に触媒を充填して反応を行い、反応器内35点の測定温度と購入した赤外線ガス分析計にて測定される原料および生成物濃度を観測値として、オブザーバを用いて反応器内温度および濃度分布および頻度因子を推定する実験を行った。その結果、温度および濃度とも実験値に一致し、頻度因子も予備実験で求めた値の±10%の精度で推定でき、満足のいく推定結果が得られた。なお、今回用いた触媒は劣化がみられなかったので、劣化速度の推定までは出来なかった。しかしながら、本研究で用いたオブザーバでは頻度因子をリアルタイムで推定できることから、頻度因子の値を監視することで活性劣化の様子も知ることができると考えている。反応器の物質収支,熱収支式を基に、オブザーバを設計した。物質収支,熱収支式を直交選点法により空間方向を離散化して非線形の常微分方程式に変換し、これに拡張カルマンフィルタを適用することにより、温度、濃度分布を推定することの出来るオブザーバを構成した。なお、触媒の劣化を表す活性比をモデル中の未知パラメータとして、状態変数と同時に推定する方法をとった。構成したオブザーバの性能を評価するため、シミュレータから計算される、温度分布および濃度分布のうち、3から5点の温度測定値および入口出口濃度の測定値をオブザーバに入力し、状態推定値とシミュレータの状態量との比較を行った。その結果、構成したオブザーバは温度および濃度分布を精度良く推定することができ、さらに触媒活性の経時変化もシミュレータの値と一致し良好な推定性能があることが確認できた。次に、エチレンの完全酸化を行う現有の触媒充填層反応器(長さ90cm、直径2.5cm)に触媒を充填して反応を行い、購入したガス分析計にて生成物濃度を測定して、反応速度の経時変化を測定して、触媒の劣化速度を決定する実験を行なった。その結果、実験開始後約120分後にはエチレンの転化率が反応初期の約半分程度まで低下しているのが確認できた。反応温度および空間速度を変えて実験を繰り返したところ、その劣化速度は反応温度だけでなく空間速度によっても変化することがわかった。反応器の物質収支,熱収支式を基に、昨年度設計したオブザーバーを改良して観測ノイズに強いものを再設計した。物質収支,熱収支式を無次元化して直交選点法により空間方向を離散化して非線形の常微分方程式に変換し、これに拡張カルマンフィルタを適用することにより、温度、濃度分布を推定することの出来るオブザーバを構成した。なお、触媒の劣化を推定するために、反応速度定数の頻度因子をモデル中の未知パラメータとして、状態変数と同時に推定する方法をとった。構成したオブザーバの性能をシミュレーションで評価したところ、構成したオブザーバは温度および濃度分布を観測ノイズに影響されず精度良く推定することができ、さらに頻度因子もシミュレータの値と一致し良好な推定性能があることが確認できた。次に、エチレンの完全酸化を行う現有の触媒充填層反応器(長さ90cm、直径2.5cm)に触媒を充填して反応を行い、反応器内35点の測定温度と購入した赤外線ガス分析計にて測定される原料および生成物濃度を観測値として、オブザーバーを用いて反応器内温度および濃度分布および頻度因子の推定する実験を行った。その結果、温度および濃度とも実験値に一致し、頻度因子も予備実験で求めた値の士10%の精度で推定でき、満足のいく推定結果が得られた。なお、今回用いた触媒は劣化がみられなかったので。 | KAKENHI-PROJECT-15560661 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15560661 |
触媒充填層反応器における触媒活性のオンライン推定 | 劣化速度の推定までは出来なかった。しかしながら、本研究で用いたオブザーバーでは頻度因子をリアルタイムで推定できることから、頻度因子の値を監視することで活性劣化の様子も知ることができると考えている。 | KAKENHI-PROJECT-15560661 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15560661 |
米価下落、生産調整拡大の水田営農への影響と総合的経営安定政策に関する研究 | 米価下落と生産調整拡大のもとで生産調整への対応が稲作経営規模によって異なることを2000年農業センサス結果や実態調査によって検討した。大規模稲作経営では一部には複合化の動きがあるものの概して生産調整離れと計画外流通米の経営面で積極的な位置づけ,一方,小規模層での不作付け,耕作放棄での対応が進展していることを明らかにした。そして,大規模稲作経営の米価下落による所得減が激しく,そのため経営の複合化・多角化と米単作による規模拡大と米の販路拡大という二つの対応に分かれている。その背景には,食糧法下のもとで計画外流通米の増加と定着にある。とくに計画外流通米が中間流通段階を省略した多様な流通形態を生み出し消費者や生産者ニーズに応え,その結果計画外流通米は生産者にとって全階層,全地域での重要な販売形態となったからである。とはいえ,大規模稲作経営は米価下落と大豆,麦作策の不安性により不安定な状況に置かれている。その要因は,稲作経営安定対策の補填も部分的であり,さらに,現行の生産調整金が土地への助成のため助成金の多くが地主の手取となっているからである。したがって,稲作経営の発展には,価格下落に対する経営安定政策の確立とりわけ生産調整が経営の影響を与えるので水田営農に視点を与えた助成金体系の確立が必要となっていることをを論証した。さらに,水田営農確立のためには,水田営農への助成や経営安定対策に加え,米と麦,大豆等への価格,所得水準の是正や水田営農方式の経営的,技術的確立等の諸条件が必要なことを検討し,その条件を明らかにした。米価下落と生産調整拡大のもとで生産調整への対応が稲作経営規模によって異なることを2000年農業センサス結果や実態調査によって検討した。大規模稲作経営では一部には複合化の動きがあるものの概して生産調整離れと計画外流通米の経営面で積極的な位置づけ,一方,小規模層での不作付け,耕作放棄での対応が進展していることを明らかにした。そして,大規模稲作経営の米価下落による所得減が激しく,そのため経営の複合化・多角化と米単作による規模拡大と米の販路拡大という二つの対応に分かれている。その背景には,食糧法下のもとで計画外流通米の増加と定着にある。とくに計画外流通米が中間流通段階を省略した多様な流通形態を生み出し消費者や生産者ニーズに応え,その結果計画外流通米は生産者にとって全階層,全地域での重要な販売形態となったからである。とはいえ,大規模稲作経営は米価下落と大豆,麦作策の不安性により不安定な状況に置かれている。その要因は,稲作経営安定対策の補填も部分的であり,さらに,現行の生産調整金が土地への助成のため助成金の多くが地主の手取となっているからである。したがって,稲作経営の発展には,価格下落に対する経営安定政策の確立とりわけ生産調整が経営の影響を与えるので水田営農に視点を与えた助成金体系の確立が必要となっていることをを論証した。さらに,水田営農確立のためには,水田営農への助成や経営安定対策に加え,米と麦,大豆等への価格,所得水準の是正や水田営農方式の経営的,技術的確立等の諸条件が必要なことを検討し,その条件を明らかにした。米の価格下落(812年で約25%)と生産調整拡大(約38%)が与えた経営、営農、構造面への影響を統計的に把握すると稲作主業農家平均農業所得は,平成7年の392万円から12年の302万円へ23%へ減少した。規模別にみると,稲作単一経営の農業所得を7年と11年とを比較すると,1.52.0haでは,48万円減,35haでは95万円減,510haでは189万円減,1015haでは298万円の減であり,大規模層程,価格下落による農業所得の減少が大きい。しかし,農業経営費を比較すると,1.52.0haが117,35haが112,510haが103,1015haが94というらうに大規模層程,価格下落に対して経営の合理化によって規模拡大やコスト削減等の経営努力を行っている。一方,稲作経営安定対策の効果をみると,12年産の稲作主業農家の補填金は62蔓延であり,所得減の68.8%をカーバーしており価格下落への経営への影響緩和に一定の役割をはたしている。しかし、北陸、東北、北海道での農家,法人等の実態調査によると,価格下落が単年度ではなく継続していることまた生産調整の拡大にともなう経営転換により,経営が不安定になっている例が少なくなく,とくに,設備投資(機械,施設等)の借入金の返済が困難になっている例が少なくない。また,生産調整の拡大の影響については、生産調整助成金の帰属(地主か耕作者)をみると,多くの地域では地主でありこう作者へ帰属する例があっても,助成金の一部であり,生産調整の拡大が大規模経営の経営改善につながっていない。とはいえ,生産調整の配分について大規模層へ軽減する例が広がっており,大規模層の育成を市町村単位で努力している。水田農業を確立するためには,稲作経営安定対策では不十分であり,転作助成金は土地ではなく経営に視点をあてた総合的経営安定政策の確立が望まれる。食糧法下での米流通の最大の変化で,本質的な部分である計画外流通米の増加と要因は計画外流通米が中間流通段階を省略した多様な流通形態を生み出し消費者や生産者のニーズに応えている。 | KAKENHI-PROJECT-13660225 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13660225 |
米価下落、生産調整拡大の水田営農への影響と総合的経営安定政策に関する研究 | また,計画外流通米は生産者にとって全階層,全地域での重要な販売形態となり,その目的も多様であり,販売業者にとっても品揃え,価格対応で不可欠となっている。そのもとで,自主流通米価格低下の要因が備蓄米や計画外流通米を含めた供給量に規定され,自主流通米と計画外流通米価格とは生産段階でも消費者段階でも相互に連動していることを明らかにした。また,12年毎に変化した生産調整システムのもとで,生産調整未達成者,未達成県が定着し,さらに稲以外への作物転作割合も横ばいであり,同時に,生産調整への対応が稲作経営規模によって異なることを2000年農業センサス結果や実態調査によって検討し,大規模稲作経営では一部には複合化の動きがあるものの概して生産調整離れと計画外流通米の経営面で積極的な位置づけ,ヤミ小作化が進展しており、一方、小規模層での不作付け,耕作放棄での対応が進展していることを明らかにした。さらに,米価下落と生産調整拡大のもとで大規模経営のが所得減が激しく,稲作経営安定対策の補填も部分的である。したがって,稲作経営の発展には,価格下落に対する経営安定政策の確立とりわけ生産調整が経営の影響を与えるので水田営農に視点を与えた助成金体系の確立が必要となっていることを明らかにした。さらに,現行の助成金が土地への助成のため助成金の多くが地主の手取となっており,助成金体系は生産調整実施面積への助成ではなく水田営農に焦点に当てた体系へ転換することが必要であることを論証した。さらに,水田営農確立のためには,水田営農への助成や経営安定対策に加え,米と麦、大豆等への価格,所得水準の是正や水田営農方式の経営的,技術的確立等の諸条件を検討した | KAKENHI-PROJECT-13660225 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13660225 |
植物遺伝子発現の柔軟性とシグナル応答の分子機構 | 今年度は、重点領域研究「植物遺伝子発現の柔軟性とシグナル応答の分子機構」の総括班として、2つの計画研究班および15件の公募研究の的確かつ効率的な研究の推進をはかるため、計画策定、研究連絡ならびに成果の評価を行った。まず平成3年6月と7月に総括班幹事会ならびに総括班会議を開き平成3年度の事業内容および平成4年度以降の事業計画について検討した。7月16、17日の2日間にわたり、計画研究班研究者と公募研究者を一同に会した合同研究会議を東京大学で開催し、各研究者の実験計画、準備状況、本重点領域研究における位置付けを中心に討議を行った。合同研究会議終了後引き続いて(7月17日午後)「植物遺伝子発現の特徴を捉える」と題する公開シンポジウムを開いた。参加者は80名を数えた。総括班・計画研究班・公募研究全ての研究者間の連絡と情報交換を目的として、NEWSを1号6号まで発行した。このうちNEWS2号は班員名簿、3号と4号はそれぞれ合同研究会議および公開シンポジウムの要旨である。また計画研究班員と公募研究者全員の平成3年度の研究成果をとりまとめ、NEWS6号に掲載した。この研究成果報告集においては個々の研究が国際的な研究動向の中でどのように位置付けられ、評価されるかという点が明確になるよう配慮し編集した。2つの計画研究班はそれぞれ平成3年12月と平成4年1月に班会議を開き、公募研究者もまじえて今年度の研究の進展状況について討議した。総括班員もこれら2つの班会議に加わり、研究成果の評価を行うとともに、次年度以降重点的に発展させるべきテ-マや研究分担者間の協力関係の調整等について討議を重ねた。総括班幹事会においては、平成4年度の合同研究会議と公開シンポジウムは札幌で開催し、更に本研究の全体的推進を図るため実験技術に関する小ワ-クショップを企画することを決めた。今年度は、重点領域研究「植物遺伝子発現の柔軟性とシグナル応答の分子機構」の総括班として、2つの計画研究班および15件の公募研究の的確かつ効率的な研究の推進をはかるため、計画策定、研究連絡ならびに成果の評価を行った。まず平成3年6月と7月に総括班幹事会ならびに総括班会議を開き平成3年度の事業内容および平成4年度以降の事業計画について検討した。7月16、17日の2日間にわたり、計画研究班研究者と公募研究者を一同に会した合同研究会議を東京大学で開催し、各研究者の実験計画、準備状況、本重点領域研究における位置付けを中心に討議を行った。合同研究会議終了後引き続いて(7月17日午後)「植物遺伝子発現の特徴を捉える」と題する公開シンポジウムを開いた。参加者は80名を数えた。総括班・計画研究班・公募研究全ての研究者間の連絡と情報交換を目的として、NEWSを1号6号まで発行した。このうちNEWS2号は班員名簿、3号と4号はそれぞれ合同研究会議および公開シンポジウムの要旨である。また計画研究班員と公募研究者全員の平成3年度の研究成果をとりまとめ、NEWS6号に掲載した。この研究成果報告集においては個々の研究が国際的な研究動向の中でどのように位置付けられ、評価されるかという点が明確になるよう配慮し編集した。2つの計画研究班はそれぞれ平成3年12月と平成4年1月に班会議を開き、公募研究者もまじえて今年度の研究の進展状況について討議した。総括班員もこれら2つの班会議に加わり、研究成果の評価を行うとともに、次年度以降重点的に発展させるべきテ-マや研究分担者間の協力関係の調整等について討議を重ねた。総括班幹事会においては、平成4年度の合同研究会議と公開シンポジウムは札幌で開催し、更に本研究の全体的推進を図るため実験技術に関する小ワ-クショップを企画することを決めた。 | KAKENHI-PROJECT-03262102 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03262102 |
遺伝子発現から見た粒子状物質の包括的毒性評価 | マクロファージが微細球形粒子と繊維状粒子を貧食したときに、異なる発現が見られる遺伝子を同定し、粒子状物質の吸入毒性発現機序を解明することを目的とした。SDラットから得た肺胞マクロファージを前培養した後、最終濃度が100μg/mlとなるように微細球形酸化チタン(S-TiO2)あるいは、繊維状酸化チタン(F-TiO2)を加えさらに3時間培養した。トリゾールを用いて肺胞マクロファージより全RNAを抽出し、^<33>Pを用いたディファレンシャルーディスプレイを行い、F-TiO2を暴露した肺胞マクロファージに特に強く発現するmRNAを調べた。TAクローニングとDNAシークスエンスの結果により、繊維状粒子状物質を貧食した肺胞マクロファージに特異的に発現する遺伝子としてkrox20/egr-2を同定した。ノーザンハイブリダイゼーション法を用いて、F-TiO2の貧食に伴いkrox-20/egr-2の遺伝子発現が上昇することを確認した。また、都市大気中の粒子状物質を貧食したマクロファージでは、対照値より高いkrox20/egr-2の発現量がみられたが、アスベストや繊維状の酸化チタンに比べ低値を示した。RACE(Rapid Amplification of cDNA Ends)法を用いてkrox20/egr-2の5'上流域を詳しく調べたところ、この遺伝子には少なくても2種類のものが存在することが明らかとなり、ジーンバンクに登録を行った。krox20/egr-2の遺伝子発現は、チロシンリン酸化酵素であるSykキナーゼの阻害剤であるピセタノールの添加によりほぼ完全に抑制されたことにより、krox20/egr-2の発現上昇の機構として、タンパクリン酸化反応が関与している可能性を示した。マクロファージが微細球形粒子と繊維状粒子を貧食したときに、異なる発現が見られる遺伝子を同定し、粒子状物質の吸入毒性発現機序を解明することを目的とした。SDラットから得た肺胞マクロファージを前培養した後、最終濃度が100μg/mlとなるように微細球形酸化チタン(S-TiO2)あるいは、繊維状酸化チタン(F-TiO2)を加えさらに3時間培養した。トリゾールを用いて肺胞マクロファージより全RNAを抽出し、^<33>Pを用いたディファレンシャルーディスプレイを行い、F-TiO2を暴露した肺胞マクロファージに特に強く発現するmRNAを調べた。TAクローニングとDNAシークスエンスの結果により、繊維状粒子状物質を貧食した肺胞マクロファージに特異的に発現する遺伝子としてkrox20/egr-2を同定した。ノーザンハイブリダイゼーション法を用いて、F-TiO2の貧食に伴いkrox-20/egr-2の遺伝子発現が上昇することを確認した。また、都市大気中の粒子状物質を貧食したマクロファージでは、対照値より高いkrox20/egr-2の発現量がみられたが、アスベストや繊維状の酸化チタンに比べ低値を示した。RACE(Rapid Amplification of cDNA Ends)法を用いてkrox20/egr-2の5'上流域を詳しく調べたところ、この遺伝子には少なくても2種類のものが存在することが明らかとなり、ジーンバンクに登録を行った。krox20/egr-2の遺伝子発現は、チロシンリン酸化酵素であるSykキナーゼの阻害剤であるピセタノールの添加によりほぼ完全に抑制されたことにより、krox20/egr-2の発現上昇の機構として、タンパクリン酸化反応が関与している可能性を示した。デイファレンシャル-デイスプレイ法を用いて、マクロファージが微細球形粒子と繊維状粒子を貧食したときに異なる発現が見られる遺伝子を同定し、粒子状物質の吸入毒性発現機序を解明することを目的とし実験を行った。SDラットから得た肺胞マクロファージをRPMI1640(10%FBS)中20時間前培養した後、最終濃度が100μg/mlとなるように微細球形酸化チタン(S-TiO2)あるいは繊維状酸化チタン(F-TiO2)を加えさらに3時間培養した。トリゾールを用いて肺胞マイクロファージより全RNAを抽出し、33pを用いたデイファレンシャル-デイスプレイを行い、F-TiO2を暴露した肺胞マイクロファージに特に強く発現するmRNAを調べた。ゲルより相当するバンドを切り出しPCRにて増幅の後、TAクローニングを行いシークエンスを行った。また、ノーザンハイブリダイゼーションにより、クローニングされたcDNAがデイファレンシャル-デイスプレイにて見いだされた変化に相当することを確認した。F-TiO2を貧食することにより発現する遺伝子が、肺胞マイクロファージの非特異的接着に由来するか否かを、カルチャーデイッシュに接着した肺胞マイクロファージから得た全RNAを用いてノーザンハイブリダイゼーションにより調べた。シークエンス結果をホモロジー検索したところ、F-TiO2貧食時に肺胞マイクロファージに発現する遺伝子がラットkrox-20とほぼ一致した。またノーザンハイブリダイゼーション法を用いて、F-TiO2の貧食に伴いkrox-20の発現が上昇することを確認した。昨年度は、繊維状粒子状物質を貧食した肺胞マクロファージに特異的に発現する遺伝子としてkrox20/egr-2をクローニングした。本年度はkrox20/egr-2の遺伝子発現をマーカーとして、アスベストや都市大気中の粒子状物質の毒性評価を試みるとともに、krox20/egr-2遺伝子の5'上流域の解析を行った。 | KAKENHI-PROJECT-11680563 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11680563 |
遺伝子発現から見た粒子状物質の包括的毒性評価 | 都市大気中の粒子状物質は東京の都心部で電気集塵器を用いて捕集された粒子成分を、アスベストはUICCの標準試料であるクロシドライトを用いた。微小酸化チタン粒子は生体との反応性が低い物質として知られているが、繊維状の酸化チタンはマクロファージにおいて強くkrox20/egr-2を発現させる。アスベストは繊維状粒子状物質の中でも最も毒性が高いことが知られているが、krox20/egr-2の発現量は繊維状酸化チタン粒子に比べて低い値を示した。このことはkrox20/egr-2の発現は、必ずしも粒子の毒性に基づくものではないことを示している。また、都市大気中の粒子状物質を貧食したマクロファージにおいては、対照値より高いkrox20/egr-2の発現量がみられたが、アスベストや繊維状の酸化チタンを貧食したマクロファージに比べ低値を示した。RACE(Rapid Amplification of cDNA Ends)法を用いてkrox20/egr-2の5'上流域を詳しく調べたところ、この遺伝子には少なくても2種類のものが存在することが明らかとなり、ジーンバンクに登録を行った。 | KAKENHI-PROJECT-11680563 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11680563 |
プリオン蛋白と相互作用するCreutzfeldtJakob病病態関連分子の網羅 | 孤発性Creutzfeldt-Jakob病(CJD)における病変分布の選択性に着目し、自験剖検例を用いて異常プリオン蛋白の正常プリオン蛋白に対する病原性の解明およびCJDにおける病態機序の解明ならびにプリオン蛋白本来の機能の解明を行った。平成18年度はCJDの大脳新皮質・脳幹・脊髄・錐体路病変に注目して異常プリオン蛋白沈着との関連性を免疫染色ならびにプリオン蛋白のWestern blot解析(プリオン蛋白型)、プリオン蛋白遺伝子解析を用いて自験剖検例で検討し、正常および異常プリオン蛋白と相互作用する分子群をそれぞれ同定する検討をおこない、学会および英文誌において報告した。特に中枢神経系の各病変部位におけるプリオン蛋白に対するvulnerabilityおよびsusceptibilityについてプリオン蛋白型とプリオン蛋白遺伝子の変異・多型との関連を報告した。続いてプリオン蛋白遺伝子codon129多型とプリオン蛋白型が臨床病理学的表現型におよぼす影響について欧米例との差異について検討・報告した。さらにCJDの病変進展、臨床症状はミクログリアの発現亢進とも関連していることを報告した。また水輸送に関連する細胞膜蛋白であるAquaporinの発現をCJD剖検脳において検討し、CJDにおいて発現が亢進していることを世界で初めて報告した。これらの検討により異常プリオン蛋白の病態発現機序を解明するとともに、有効なプリオン病治療法開発の布石となるべくプリオン病の病態解明に迫るべく検討を進めた。またCJD剖検症例蓄積のため、関連病院と連携してCJD症例の剖検を積極的に行った。臨床経過、画像所見、神経学的所見の詳細な分析、病理所見との対比検討を行うとともに、髄液や脳組織の凍結保存を行い、当地区におけるCJDブレインバンクを構築した。本研究ではCreutzfeldt-Jakob病(CJD)における病変分布の選択性に着目し、異常プリオン蛋白の、正常プリオン蛋白に対する病原性の解明およびCJDにおける病態機序の解明ならびにプリオン蛋白本来の機能の解明を目的としてCJDの病態に関わる分子群の同定を目指している。平成17年度は特に脳幹・脊髄病変に注目して異常プリオン蛋白との関連性について免疫染色を用いて多数例で検討し、正常および異常プリオン蛋白と相互作用する分子群をそれぞれ同定する検討を行った。さらに脳幹部・脊髄における病変のvulnerabilityおよびsusceptibilityについてプロテアーゼ抵抗性プリオン蛋白のタイピングとプリオン蛋白遺伝子のmutationおよびcodon129多型について検討を行った。自験CJD例のcodon129多型解析は大部分がmethionineのhomoであり、異常プリオン蛋白のタイピングでは大部分が1型を示した。これらの結果は欧米CJD例と比べて頻度が大きく異なっていた。免疫染色による検討では異常プリオン蛋白の沈着は、脳幹では四丘体、黒質、橋核、下オリーブ核に多く、脊髄では後角に強かった。今後、大脳半球における検討を加えて、異常プリオン蛋白の病原性とCJDにおける病態機序の解明ならびにプリオン蛋白本来の機能の解明、さらには動物種を越えたプリオン病に共通する病態機序の解明を行っていく予定である。これらの検討により異常プリオン蛋白の病態発現機序を解明、有効なプリオン病治療法開発の布石となるものと考えている。孤発性Creutzfeldt-Jakob病(CJD)における病変分布の選択性に着目し、自験剖検例を用いて異常プリオン蛋白の正常プリオン蛋白に対する病原性の解明およびCJDにおける病態機序の解明ならびにプリオン蛋白本来の機能の解明を行った。平成18年度はCJDの大脳新皮質・脳幹・脊髄・錐体路病変に注目して異常プリオン蛋白沈着との関連性を免疫染色ならびにプリオン蛋白のWestern blot解析(プリオン蛋白型)、プリオン蛋白遺伝子解析を用いて自験剖検例で検討し、正常および異常プリオン蛋白と相互作用する分子群をそれぞれ同定する検討をおこない、学会および英文誌において報告した。特に中枢神経系の各病変部位におけるプリオン蛋白に対するvulnerabilityおよびsusceptibilityについてプリオン蛋白型とプリオン蛋白遺伝子の変異・多型との関連を報告した。続いてプリオン蛋白遺伝子codon129多型とプリオン蛋白型が臨床病理学的表現型におよぼす影響について欧米例との差異について検討・報告した。さらにCJDの病変進展、臨床症状はミクログリアの発現亢進とも関連していることを報告した。また水輸送に関連する細胞膜蛋白であるAquaporinの発現をCJD剖検脳において検討し、CJDにおいて発現が亢進していることを世界で初めて報告した。これらの検討により異常プリオン蛋白の病態発現機序を解明するとともに、有効なプリオン病治療法開発の布石となるべくプリオン病の病態解明に迫るべく検討を進めた。またCJD剖検症例蓄積のため、関連病院と連携してCJD症例の剖検を積極的に行った。臨床経過、画像所見、神経学的所見の詳細な分析、病理所見との対比検討を行うとともに、髄液や脳組織の凍結保存を行い、当地区におけるCJDブレインバンクを構築した。 | KAKENHI-PROJECT-17790576 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17790576 |
水素結合由来のサイコロ型ナノクラスターのキラリティと機能化 | 我々の研究グループは、トリフェニルメチル基のような大きい置換基をもつカルボン酸と一級アミンの組合せから、有機ナノクラスター(4+4)が生成し、サイコロ型水素結合をもつことを発見した。本研究は、このサイコロ型ナノクラスターの構造と機能に関する研究をさらに発展させることを目的とし、得られた成果を以下に列挙する。1.種々のサイコロ型有機ナノクラスターを合成することに成功した。トリフェニルメチル基をもつ有機酸と一級アミンの組合せを様々に変えた結果、例えば、トリフェニルメチル基をもつ方をカルボン酸から一級アミンに変えても、カルボン酸をスルフォン酸や塩化物イオンにさらにホスフォン酸に変えても、サイコロ型ナノクラスターの生成することがわかった。2.ホスフォン酸を用いることでこれまでとは違った水素結合ネットワークを取ることが単結晶X線構造解析より明らかとなった。このネットワークではホスフォン酸に由来する酸素原子の非等価性が顕著となり、これまで得られていた結果以上にクラスターの非対称性が高まって、超分子キラリティーが明確となった。これにより意図のままにアキラルな分子から超分子キラリティーを出現させることができるようになった。3.有機酸としてハロ酢酸のようなできる限り強い酸を用いて、サイコロ型ナノクラスターの生成を調べ、興味ある結果を得ている。3.有機酸としてハロ酢酸のようなできる限り強い酸を用いて、サイコロ型ナノクラスターの生成を調べ、興味ある結果を得ている。4.これらのサイコロ型クラスターの形成は^1H-NMR,VPO,ESI-MSにより溶液中でも形成していることが明らかとなった。これによりこのクラスターは超分子キラリティーの溶液系へと発展する礎となり、機能化の実現に大きく前進したと考える。我々の研究グループは、トリフェニルメチル基のような大きい置換基をもつカルボン酸と一級アミンの組合せから、有機ナノクラスター(4+4)が生成し、サイコロ型水素結合をもつことを発見した。本研究は、このサイコロ型ナノクラスターの構造と機能に関する研究をさらに発展させることを目的とし、得られた成果を以下に列挙する。1.種々のサイコロ型有機ナノクラスターを合成することに成功した。トリフェニルメチル基をもつ有機酸と一級アミンの組合せを様々に変えた結果、例えば、トリフェニルメチル基をもつ方をカルボン酸から一級アミンに変えても、カルボン酸をスルフォン酸や塩化物イオンに変えても、サイコロ型ナノクラスターの生成することがわかった。2.これらのクラスターの単結晶X線構造解析を行い、水素結合を詳細に求めた結果、サイコロのキラリティを決定できることが明らかになった。これらのサイコロには左まわりのものと右まわりのものとがある。これは、アキラルな分子から超分子キラリティーが出現する、非常に珍しい例である。3.カルボン酸と一級アミンからなるクラスターの場合、各面の水素結合を分類した結果、キラルな構造の生成する仕組みが明らかになった。さらに、2種の混合アルキルアミンでもクラスターの生成を確認できた。水素結合網に加え、トリフェニルメチル基の回転方向を分類すると、キラル発生の仕組みがさらに明確になった。4.有機酸としてできる限り強い酸を用いて、サイコロ型ナノクラスターの生成を調べ、興味ある結果を得ている。我々の研究グループは、トリフェニルメチル基のような大きい置換基をもつカルボン酸と一級アミンの組合せから、有機ナノクラスター(4+4)が生成し、サイコロ型水素結合をもつことを発見した。本研究は、このサイコロ型ナノクラスターの構造と機能に関する研究をさらに発展させることを目的とし、得られた成果を以下に列挙する。1.種々のサイコロ型有機ナノクラスターを合成することに成功した。トリフェニルメチル基をもつ有機酸と一級アミンの組合せを様々に変えた結果、例えば、トリフェニルメチル基をもつ方をカルボン酸から一級アミンに変えても、カルボン酸をスルフォン酸や塩化物イオンにさらにホスフォン酸に変えても、サイコロ型ナノクラスターの生成することがわかった。2.ホスフォン酸を用いることでこれまでとは違った水素結合ネットワークを取ることが単結晶X線構造解析より明らかとなった。このネットワークではホスフォン酸に由来する酸素原子の非等価性が顕著となり、これまで得られていた結果以上にクラスターの非対称性が高まって、超分子キラリティーが明確となった。これにより意図のままにアキラルな分子から超分子キラリティーを出現させることができるようになった。3.有機酸としてハロ酢酸のようなできる限り強い酸を用いて、サイコロ型ナノクラスターの生成を調べ、興味ある結果を得ている。3.有機酸としてハロ酢酸のようなできる限り強い酸を用いて、サイコロ型ナノクラスターの生成を調べ、興味ある結果を得ている。4.これらのサイコロ型クラスターの形成は^1H-NMR,VPO,ESI-MSにより溶液中でも形成していることが明らかとなった。これによりこのクラスターは超分子キラリティーの溶液系へと発展する礎となり、機能化の実現に大きく前進したと考える。 | KAKENHI-PROJECT-14045251 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14045251 |
地域包括ケア推進に不可欠なケア専門職のIPW力を向上するIPEプログラムの作成 | 今年度は、昨年度からの補助事業の期間延長を行い、課題として残されたていた本研究の特徴であるIPW・IPEのミックスメソッドによる質的研究結果のまとめと量的研究(質問紙調査)の実施と成果発表を行う予定としていた。しかしながら、実質的には質的研究のデータ分析を継続的行うことと、昨年度に実施した大学教員と指導的な立場にある介護支援専門員に対する介入研究の結果の論文化の準備としてさらなる文献検討とレビューを行った。また学生向けのIPEプログラム開発の一環として、佛教大学総合研究所プロジェクト研究「共生(ともいき)の理念に基づいた保健医療福祉専門職のためのIPEプログラムの開発と評価」と連携して開発し、その成果については報告書としてまとめた。研究期間全体を通じて実施した研究成果として、介護支援専門員のIPWスキルトレーニングの課題として明らかになったことは、現在の現任者教育で行われている事例検討を中心とした研修に加えて、IPWに欠かせないコミュニケーションスキルやグループファシリテーションスキルなど、実際の場面で活用できる実質的なスキルトレーニングを含めたIPEプログラムが必要であるということである。また学生向けのIPEプログラムとしては、高齢多死社会を見据えてエンド・オブ・ライフケアを中心課題とし、保健医療福祉専門職に加えて宗教家含めたIPEプログラムが有用であるということである今年度は介護支援専門員を対象とし、IPWにおいてどのような困難性に直面し対処しているのか、またその経験を踏まえてどのような教育的ニーズがあるのかを明らかにするためにフォーカスグループインタビュー(以下、FGI)を実施した。FGIは、大阪市、北海道釧路市、三重県鈴鹿市の3箇所において、その地域でケアマネジメントを実施している経験年数が5年以上の介護支援専門員を対象とした。対象者は、研究者がこれまでに調査や研究支援等でかかわってきた関係者によって熟練の介護支援専門員を紹介してもらった。FGIは、半構成的質問紙を用いて1箇所あたり2時間程度実施し、その内容を逐語録としてテキストデータ化し、要約的内容分析の手法を用いて分析を実施した。データ分析の結果、介護支援専門員のIPWにおける困難性と対処として、3つのカテゴリーに集約された。介護支援専門員は、「医療専門職とのコミュニケーション」に困難性を感じ、その上で「専門職間の観点・考え方の相違の相互解決」や「ケア対象者を中心とした代弁と調整」をしていることが明らかとなった。この結果から、現任の介護支援専門員に対するIPEとして、基本的なコミュニケーションに加え、医療職とのコミュニケーションスキル、対象者中心アプローチの価値と理念、IPWにおいて葛藤解決スキルに関する教育プログラムが有効であると考えられた。今年度は、ケア専門職のIPW・IPEに関する文献的基礎研究と、IPW・IPEの実態調査として先に報告した介護支援専門員へのフォーカスグループインタビューによるIPWの困難性とIPEのニーズを明らかにする質的研究を実施した。しかし当初予定していた、文献研究と質的研究に基づいて作成した質問紙による全国調査は実施するに至らなかった。その理由として、文献研究がまだ十分ではないことに加えて、質的研究の分析が遅れたことにある。本研究の特徴は、IPW・IPEの実態に関してミックスメソッド、すなわち量的・質的に明らかにすることにあるため、量的研究の実施に向けて準備をして行く予定である。本研究の目的は、地域包括ケアシステム推進に不可欠な在宅医療と介護を一体的に提供できるケア専門職のIPW(Interprofessional Work)力の向上を目指したIPE(Interprofessional Education)プログラムの開発と普及である。昨年度に引き続き、高知県の介護支援専門員を対象とし、IPWにおける困難性に関するフォーカスグループインタビューを実施し、現在追加分析中である。また介護支援専門員を対象としたIPW力向上のためのIPEプログラムを作成し、介護支援専門員への教育的介入と評価を行っている。IPEプログラムは講義と演習を組み合わせた3回シリーズであり1ヶ月に1回を目処に実施した。プログラムの具体的内容は、(1)講義:IPW基礎知識、演習:コミュニケーションスキル(Ture Colors入門講座)、(2)講義:IPWの発展過程と葛藤マネジメント、演習:IPWスキルトレーニング(Ture Colors実践講座:対人関係とコラボレーション、(3)講義:グループとしてのIPW、演習:IPWにおけるグループ・ファシリテーションである。研究対象者は大阪府23名、山梨県19名の介護支援専門員であり、事前・事後(直後、3ヶ月後)評価として、1ENDCOREs(コミュニケーションスキル)、2「IPWコンピテンシー自己評価尺度」(大塚ら,2013)、3多職種チームワーク(松岡ら,2015)の3つのスケールによる自己評価を実施し、現在そのデータを分析中である。今年度は、主に介護支援専門員に対するIPW力向上のためのIPEプログラムの実施と評価を行い、現在その評価として、質問紙による自己評価の分析を現在も引き続き行っており、予定どおりの進行している。一方で、当初予定していた全国の介護支援専門員を対象とした質問紙調査に関しては、昨年度から行っているフォーカスグループインタビューの最終的な分析結果のまとめが遅延していることから、その結果に基づく質問紙の作成が遅れていることから、実施には至っていない状況である。今年度は、主にIPWトレーナーの育成を目指し、大学教員と指導的な立場にある介護支援専門員を対象としたIPWに不可欠なグループ・ファシリテーションのIPWスキルトレーニングを、米国からエキスパートを招聘して実施、その効果の評価を行った。 | KAKENHI-PROJECT-15K03987 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K03987 |
地域包括ケア推進に不可欠なケア専門職のIPW力を向上するIPEプログラムの作成 | IPWスキルトレーニング(グループ・ファシリテーション)は2日間のプログラムであり、ファシリテーションの3本柱であるBe・Set・Doを基盤とし、グループダイナミクスを活用してIPWメンバーの力を引き出すことを目指して、ファシリテーターとして必要な基本的信念と自己モニター力を身につけることを目標としている。参加者は、IPWとIPEに携わる学内外大学教員と介護支援専門員を含めた22名であり、参加者からの事後評価として、IPWトレーナーに対するグループ・ファシリテーションスキル獲得を目的としたIPWスキルトレーニングの有効性を確認することができた。またIPEプログラムの開発の一環として、日本が直面している高齢多死社会における地域包括ケアの推進に欠かせない、エンド・オブ・ライフケアを中心課題としたIPW・IPEプログラム開発の必要性について、International Society of Advance Care Planning & End of Life Care国際学会への参加や、佛教大学総合研究所プロジェクト研究(共生(ともいき)の理念に基づいた保健医療福祉専門職のためのIPEプログラムの開発と評価)との連携をとおして、次期研究課題の検討を行った。昨年度は本研究課題の最終年であったが、最終的な目的・目標を達成するに至らず補助事業期間延長を申請したところである。今年度は、昨年度の課題として残された、本研究の特徴であるIPW・IPEのミックスメソッドによる実態調査として、質的分析結果のまとめ、量的研究(質問紙調査)の実施と成果発表を行う予定である。今年度は、昨年度からの補助事業の期間延長を行い、課題として残されたていた本研究の特徴であるIPW・IPEのミックスメソッドによる質的研究結果のまとめと量的研究(質問紙調査)の実施と成果発表を行う予定としていた。しかしながら、実質的には質的研究のデータ分析を継続的行うことと、昨年度に実施した大学教員と指導的な立場にある介護支援専門員に対する介入研究の結果の論文化の準備としてさらなる文献検討とレビューを行った。また学生向けのIPEプログラム開発の一環として、佛教大学総合研究所プロジェクト研究「共生(ともいき)の理念に基づいた保健医療福祉専門職のためのIPEプログラムの開発と評価」と連携して開発し、その成果については報告書としてまとめた。研究期間全体を通じて実施した研究成果として、介護支援専門員のIPWスキルトレーニングの課題として明らかになったことは、現在の現任者教育で行われている事例検討を中心とした研修に加えて、IPWに欠かせないコミュニケーションスキルやグループファシリテーションスキルなど、実際の場面で活用できる実質的なスキルトレーニングを含めたIPEプログラムが必要であるということである。また学生向けのIPEプログラムとしては、高齢多死社会を見据えてエンド・オブ・ライフケアを中心課題とし、保健医療福祉専門職に加えて宗教家含めたIPEプログラムが有用であるということである今後の研究課題は、まずは介護支援専門員が抱えるIPWの困難性とIPEのニーズを質問紙調査(量的研究)によって明らかかにすることである。 | KAKENHI-PROJECT-15K03987 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K03987 |
宇宙の大規模構造形成を探る超高分解能X線分光センサと極低温動作環境の開発 | 銀河団や宇宙の巨大構造の進化の過程を観測的に明らかにするには,精密X線分光により銀河団ガスの運動の様子を測定することが有効である。本研究では,それを可能にする極低温動作のTES型X線マイクロカロリメータを,人工衛星の微小重力下でも使用可能な断熱消磁冷凍機と一体で開発した。その結果,十分な冷却性能を持つ極低温動作環境を実現し,また磁気的・電気的シールドを工夫することによって,5.9 keVのX線に対してエネルギー分解能6.6±0.3 eV (半値全幅)を達成した。銀河団や宇宙の巨大構造の進化の過程を観測的に明らかにするには,精密X線分光により銀河団ガスの運動の様子を測定することが有効である。本研究では,それを可能にする極低温動作のTES型X線マイクロカロリメータを,人工衛星の微小重力下でも使用可能な断熱消磁冷凍機と一体で開発した。その結果,十分な冷却性能を持つ極低温動作環境を実現し,また磁気的・電気的シールドを工夫することによって,5.9 keVのX線に対してエネルギー分解能6.6±0.3 eV (半値全幅)を達成した。本年度は研究実施計画に沿って3つの研究を行なった。それぞれについて順にまとめる。まず、これまでの知見を踏まえて自作断熱消磁冷凍機で使用する磁性体カプセルを再設計・製作した。その結果50mKまで冷却できるようになり、また80mK以下を15-20時間保持することに成功した。基本的な冷却性能については十分に要求を満たすものを実現できるようになったといえる。しかしながらリサイクル時間についてはあまり改善が見られず、またカプセルの密封が不十分で結晶が漏れるという不具合が発生した。前者について、平成23年度に行なった対策があまり効果がなかったことから、結晶内に這わせる金線の本数を増やして熱伝導度を改善することが重要であることがわかった。後者については、カプセルの継ぎ目を溶接することによって密封性をよくすることが必要であるという結論に至った。次に、自作断熱消磁冷凍機のステージにTES型X線マイクロカロリメータとSQUIDを搭載してセンサとして動作させ、X線信号を検出することに成功した。5.9keVのX線に対するエネルギー分解能は90eVであった。これは半導体検出器を上回る性能であり、動作環境が整いつつあることを示している。ただ、目標性能よりはまだ1桁悪く、主要な原因として、使用したバイアス電源のノイズレベルが高かったこと、外部磁場の遮蔽がまだ不十分であることが示唆された。第三に、ガスギャップ式熱スイッチの試作機の基本特性の評価を行なった。構造部材についてほぼ計算通りのオフ熱伝導度が実現できていることが確かめられたが、機械的な強度に問題があることもわかった。また、ゲッターと熱浴との間の熱伝導の最適化に必要なデータが得られた。平成24年度に超伝導マグネットの周りの磁気シールドを改良して,超伝導遷移端温度計(TES)の転移温度幅が4 mKに,センサ(TES型X線マイクロカロリメータ)のエネルギー分解能は5.9 keVのX線に対して約16 eVにまで改善したことを報告したが,平成25年度はさらなるセンサ性能の改善に取り組んだ。主な改善点は以下の通りである.まずEMC対策として,クライオスタットと駆動装置・計測装置のグラウンディング,それらをつなぐハーネスのシールディングの方法とその施行を一から見直した。これにより,読み出し系のノイズのスペクトルにおいて特定の周波数をもった成分が抑制され,ノイズのRMS値も半分程度に抑えられた。ファラデーケージにすることで外部からのノイズを遮断すると同時に,配線間のクロストークが抑えられたことで改善したと考えられる。また,センサの周りの磁気シールドについて,超伝導体と強磁性体の組合せの順番を変更して,性能がどのように変化するかを調べた。その結果,内側を超伝導体,外側を強磁性体にする方が,若干性能がよくなる傾向が見られることがわかった。以上のような改善を積み重ねることによって,最終的に5.9 keVのX線に対して6.6±0.3 eVのエネルギー分解能を実現することができた。使用した素子は希釈冷凍機での測定で5.6 eVのエネルギー分解能を持つことがわかっており,まだ若干改善の余地は残されているものの,自作断熱消磁冷凍機上でTES型X線マイクロカロリメータを動作させてほぼ希釈冷凍機に匹敵する分光性能を実現できた。まず平成23年度の結果を踏まえて磁性体カプセルの設計を見直し,励磁時の排熱時間を改善するために結晶内に這わせる金線の本数を倍に増やし,結晶漏れを防ぐためにカプセルの継ぎ目を溶接にするといった改良を施して製作した。その結果,最低到達温度40 mK以下,保持時間20時間以上(100 mK以下)という冷却性能を実現すると同時に,結晶漏れを起こさず繰り返し使用できるようになった。センサ動作に十分な冷却性能を持つものを再現性よく製作する方法が確立できたと言える。一方,排熱時間に関しては予想に反して改善が見られなかった。結晶内の熱伝導度が原因ではないことが明確になったと言える。検討の結果,ケースに用いているステンレスの熱容量が大きいことが原因ではないかと考えている。次に,センサの分光性能の改善に取り組んだ。 | KAKENHI-PROJECT-23340043 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23340043 |
宇宙の大規模構造形成を探る超高分解能X線分光センサと極低温動作環境の開発 | 平成23年度,TESの超伝導転移の際の転移温度幅が20 mK程度と本来の値よりも数倍広がっているという現象が見られており,磁場の影響が示唆されていた。さらに詳しく調べた結果,超伝導磁石で最大磁場をかけた際に漏れ磁場によってセンサの周りの超伝導シールドが磁場をトラップしてしまい,センサ動作時の性能に影響を与えていると結論するに至った。そこで超伝導磁石の周りの磁気シールドの設計を見直し,励磁した際にも一定の遮蔽効果が得られるようにした。これにより,転移温度幅は4 mKにまで改善し,希釈冷凍機での測定結果と同等の特性が得られるようになった。エネルギー分解能を評価したところ,5.9 keVのX線に対して約16 eV (半値全幅)という結果が得られた。これは平成23年度と比べて5倍程度改善しており,X線CCDと比べて1桁優れている。しかし,まだ本来の性能(5 eV)を実現するには至っておらず,地磁場や超伝導磁石のわずかな漏れ磁場の影響を受けている可能性が考えられる。概ね研究実施計画に沿って進めることができている。センサの性能を改善するところまでは至らなかったが、対策方法を検討するところまでは実施している。25年度が最終年度であるため、記入しない。概ね研究実施計画に沿って進めることができている。断熱消磁冷凍機の磁性体カプセルについては,センサ動作に十分な冷却性能を持つものを再現性よく製作する方法が確立できた。センサの分光性能は,まだ必要な性能を実現するには至っていないものの,平成23年度と比べて大きく改善しており,さらなる対策方法についても検討を行なっている。当初の研究計画に沿って、磁性体カプセルの熱伝導度の改良と、自作断熱消磁冷凍機上でのセンサの性能改善を進める。なお、平成24年度からASTRO-H衛星に搭載されるX線マイクロカロリメータ検出器の試験がJAXAの試験施設等で実施されるので、それにも参加して情報を収集し、本研究におけるセンサの性能改善の参考にする。25年度が最終年度であるため、記入しない。現時点でリサイクル時間を短くすることはできていないが,それを除くとセンサ動作には十分な冷却性能を持ち結晶漏れの起きない磁性体カプセルが実現でき,自作断熱消磁冷凍機は安定に動作している。そこで,今後はセンサの分光性能の改善を最優先課題として取り組む。センサの周りの磁気シールド,電気的ノイズ,センサの温度安定度等を中心に原因究明と対策をしっかりと進め,最終的に自作断熱消磁冷凍機で希釈冷凍機と同等のセンサ動作環境を実現することを目指す。引き続きASTRO-H衛星に搭載されるX線マイクロカロリメータ検出器の試験に参加して情報を収集し,ノイズ対策の参考にする。優先順位2番目として,リサイクル時間を短くするための改良案の検討と製作を試みる。 | KAKENHI-PROJECT-23340043 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23340043 |
白血球麻酔による外科治療の低侵襲化-蛍光遺伝子導入ラット微小循環観察法を用いて- | 白血球を生体内で観察するには何らかの方法で白血球を標識する必要がある。しかし、標識の過程において白血球は活性化されてしまう為、本来の動態を観察するのは困難である。この問題を解決する為我々は緑色蛍光蛋白遺伝子導入ラットを用いたモデルを開発した。麻酔下人工呼吸下に肺微小循環を生体蛍光顕微鏡下に観察、肺微小循環の毛細血管における白血球の通過を可視化した。これを高感度蛍光観察用CCDにて記録、PCにてその軌跡を解析し、白血球の毛細血管通過時間および毛細血管における集積、細静脈における白血球動態を評価するモデルを確立した。このラットにエンドトキシンを静注し、肺微小循環における白血球動態を観察した。エンドトキシン静注後、末梢血での白血球数は減少した。白血球の肺毛細血管通過速度は著明に低下し、毛細血管に集積した。しかし、細静脈でのローリング及び接着は増加しなかった。臓器微小循環での白血球の集積の為に、末梢血での白血球数が低下したと考えられた。肺循環においては、細静脈に白血球の集積がおこる体循環とは異なり、肺循環においては毛細血管に白血球が毛細血管に集積することを、標識による修飾の加わらない状態での白血球の動態をリアルタイムで観察することにより、証明した。このモデルにおいて白血球のcGMP濃度を、NOのドナーであるSNAP等を用い、cAMP濃度はcAMP合成を促進するプロスタグランディンI_2及びcAMP分解を抑制するphosphodiesterase type4阻害薬を用い、増加させ白血球の集積への影響を評価した。白血球を生体内で観察するには何らかの方法で白血球を標識する必要がある。しかし、標識の過程において白血球は活性化されてしまう為、本来の動態を観察するのは困難である。この問題を解決する為我々は緑色蛍光蛋白遺伝子導入ラットを用いたモデルを開発した。麻酔下人工呼吸下に肺微小循環を生体蛍光顕微鏡下に観察、肺微小循環の毛細血管における白血球の通過を可視化した。これを高感度蛍光観察用CCDにて記録、PCにてその軌跡を解析し、白血球の毛細血管通過時間および毛細血管における集積、細静脈における白血球動態を評価するモデルを確立した。このラットにエンドトキシンを静注し、肺微小循環における白血球動態を観察した。エンドトキシン静注後、末梢血での白血球数は減少した。白血球の肺毛細血管通過速度は著明に低下し、毛細血管に集積した。しかし、細静脈でのローリング及び接着は増加しなかった。臓器微小循環での白血球の集積の為に、末梢血での白血球数が低下したと考えられた。肺循環においては、細静脈に白血球の集積がおこる体循環とは異なり、肺循環においては毛細血管に白血球が毛細血管に集積することを、標識による修飾の加わらない状態での白血球の動態をリアルタイムで観察することにより、証明した。このモデルにおいて白血球のcGMP濃度を、NOのドナーであるSNAP等を用い、cAMP濃度はcAMP合成を促進するプロスタグランディンI_2及びcAMP分解を抑制するphosphodiesterase type4阻害薬を用い、増加させ白血球の集積への影響を評価した。緑色蛍光蛋白遺伝子導入ラットにおいて麻酔下に肺微小循環を蛍光顕微鏡下に観察、肺循環の毛細血管における白血球の通過を可視化した。これを高感度蛍光観察用CCDにて記録PCにて解析し,白血球の毛細血管通過時間および毛細血管における集積、細静脈における白血球動態を評価するモデルを確立した。このラットにエンドトキシンを静注し、肺循環においては、細静脈に白血球の集積がおこる体循環とは異なり、毛細血管に白血球が毛細血管に集積することを、標識による修飾の加わらない状態での白血球の動態をリアルタイムで観察することにより、証明した。現在このモデルにおいて白血球のcGMP濃度をNOのドナーであるSNAP等を用い、cAMP濃度はcAMP合成を促進するプロスタグランディン12及びcAMP分解を抑制するphosphodiesterase type4阻害薬を用い、増加させ白血球の集積への影響を評価中である。白血球の生体内で観察するには何らかの方法で白血球を標識する必要がある、しかし、標識の過程において白血球は活性化されてしまう為、本来の動態を観察するのは困難である。この問題を解決する為我々は緑色蛍光蛋白遺伝子導入ラットを用いたモデルを開発した。麻酔下人工呼吸下に肺微小循環を生体蛍光顕微鏡下に観察、肺微小循環の毛細血管における白血球の通過を可視化した。これを高感度蛍光観察用CCDにて記録、PCにてその軌跡を解析し、白血球の毛細血管通過時間および毛細血管における集積、細静脈における白血球動態を評価するモデルを確立した。このラットにエンドトキシンを静注し、肺微小循環における白血球動態を観察した。エンドトキシン静注後、末梢血での白血球数は減少した。白血球の肺毛細血管通過速度は著明に低下し、毛細血管に集積した。しかし、細静脈でのローリング及び接着は増加しなかった。臓器微小循環での白血球の集積の為に、末梢血での白血球数が低下したと考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-15591488 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15591488 |
白血球麻酔による外科治療の低侵襲化-蛍光遺伝子導入ラット微小循環観察法を用いて- | 肺循環においては、細静脈に白血球の集積がおこる体循環とは異なり、肺循環においては毛細血管に白血球が毛細血管に集積することを、標識による修飾の加わらない状態での白血球の動態をリアルタイムで観察することにより、証明した。このモデルにおいて白血球のcGMP濃度を、NOのドナーであるSNAP等を用い、cAMP濃度はcAMP合成を促進するプロスタグランディンI_2及びcAMP分解を抑制するphosphodiesterase type4阻害薬を用い、増加させ白血球の集積への影響を評価した。 | KAKENHI-PROJECT-15591488 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15591488 |
健康概念の哲学・倫理学的総合研究 | 本研究は、曖昧なままにとどまっており、それゆえ様々な混乱の原因ともなっている「健康」概念を、哲学的、倫理学的な観点から再考したものであり、「障害」問題や「エンハンスメント」などの問題のみならず、「健康食品」に関する問題に関しても重要な提言をするに至った。本研究は、曖昧なままにとどまっており、それゆえ様々な混乱の原因ともなっている「健康」概念を、哲学的、倫理学的な観点から再考したものであり、「障害」問題や「エンハンスメント」などの問題のみならず、「健康食品」に関する問題に関しても重要な提言をするに至った。初年度は、基本的な文献収集を行うとともに、健康概念に関する書誌データベースを構築した。また、定期的に読書会を開催し、重要文献に関する知識の共有化を行なった。研究会としては以下の日程で開催した。6月29日於京都女子大学、9月21日於同所、12月25、26日於同所(いずれも京都生命倫理研究会との共催で、本研究プロジェクトの参加メンバーが主たる報告を行なうとともに、医学・法学・宗教学等の研究者を招待し、講演及び意見交換を行なった。)これ以外に、7月14日から16日にかけて島根県出雲市で京都大学倫理学研究室のメンバーを中心に合宿を行い、健康概念に関する報告と討論を行なった。また、2月3日には、来日中のマルクス・ステパニアンス博士(アーヘン工科大学)を京都大学に招いてドイツ憲法と健康概念に関する講演会を開催し、多数の参加者を得た。さらに、2009年4月25日(土)26日(日)に開催された応用哲学会におけるワークショップの開催準備を学内における研究会形式で数回行った。ちなみに、応用哲学会第一回年次研究大会では「健康概念の哲学的・倫理学的再検討(1)」と題し、水谷をオーガナイザーとして、本研究の主要メンバーによるプレゼンテーションを行なっている。以下は、それぞれの題目である。林誓雄「「健康」概念の検討」-ICFとノルデンフェルトの比較を通じて-杉本俊介「健康と幸福」太田徹「病気概念から健康概念へ」小城拓理「健康とソーシャル・キャピタル」二年目となる2009年度においては、前年度からの理論的研究に現実的問題を接続するという試みが遂行された。とりわけ、ノルデンフェルトの『健康の本質』に関する各種の批判的議論は、現実的問題との関わりにおいて理論的批判を行っているものであり、これらの精査は極めて有効であった。具体的な研究成果の公表としては、2009年4月に京都大学で開催された応用哲学会第一回大会において、ワークショップ「健康概念の哲学的倫理学的考察(1)」を研究代表者をオーガナイザーとして開催した。同学会においては、研究分担者の出口も「健康」概念の構築と深く関わる統計学に関して「統計学の哲学の逆襲」と題するワークショップを主催した。まず、ノルデンフェルトの健康概念がWHOの「国際生活機能分類」と比較検討され、健康概念の錯綜は各種め「能力」概念の存在に起因するものであることが明らかとなった。このことは、能力に関する諸概念、例えぼability, capabilityなどについてのメタ倫理学的考察が必須であることを意味する。この考察は、健康概念を社会的構築物であるとする最近の社会学的考察に対して、一定の評価をしつつも、その問題点を明らかにすることにもつながった。ついで、健康概念が社会的な事柄と深く関わるという問題意識は、最近の疫学研究におけるソーシャルキャピタルへの注目、とりわけ社会的格差と健康の相関関係への注目と関連させることになり、この点に関する最新の知見が集積、分析された。さらに、医療の専門家、とりわけ臨床疫学による健康概念の構築の際に用いられる統計学的手法に関しても、科学哲学的な見地から批判的検討を加えるための基礎的考察がなされた。以上めような、純粋に理論的な考察から具体的、現実的問題への架橋は、最終年度における新たな健康概念の提言の作成入ともつながるものであり、その成果は、まずは本年度の公衆衛生学会での研究代表者による招待講演として公表される予定である。最終年度である2010年度においては、前年度までの理論的研究、とりわけノルデンフェルトとブールスの理論の比較検討ということに加えて、新たにK.A.リッチマンの『倫理学と医療の形而上学』を中心とした研究が遂行された。同書は、前二者の義論をふまえて、自らの「埋め込まれた道具主義」という斬新な健康理論を提供しており、これの精査は、本研究の理論的まとめをするにあたってきわめて有効であった。この点での研究成果は、本科学研究費研究と京都生命倫理学会と共催で開催した研究会(12月26-27日)においてワークショップの形で報告され、有意義な討論を行った。昨年度より開始した、健康概念と現実的、具体的諸問題との関係に関する研究成果としては、昨年度までの研究成果を機縁として研究代表者が招待された2010年度日本公衆衛生学会大会におけるシンポジウム報告がある。本報告は、健康食品をめぐる様々な混乱を法的整備により解決しようとする多くの専門家の考えに対し、それの必要性を認めつつも、この問題の根本には健康概念の混乱、とりわけ専門家と素人の間の意思疎通の不備による混乱があることを、科学理論におけるアクターネットワーク理論を用いて指摘したものであるが、その反響は予想外に大きいものであり、その後も多くの報道関係の取材を受けた。 | KAKENHI-PROJECT-20320005 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20320005 |
健康概念の哲学・倫理学的総合研究 | また、本研究の主要部分により獲得された成果は、医療に関わる統計学的問題、とりわけメタアナリシスに関する科学哲学的研究や、独仏の生命倫理学の再検討とドッキングさせることにより、より精緻な概念構築への道を拓いたといってよいであろう。 | KAKENHI-PROJECT-20320005 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20320005 |
老化関連マイクロRNA標的遺伝子の機能解析とがん治療への応用 | 正常線維芽細胞において、PRPF19 siRNAはp53依存的に細胞老化を誘導することを見出した。がん細胞では、PRPF19 siRNAは分裂期細胞死を誘導した。がん細胞では、PRPF19 siRNAはスプライシング異常産物を増加させたが、正常細胞ではほとんど検出されなかった。そのため、PRPF19 siRNAによるスプライシング調節不全ががん抑制に深く関与していることが示唆された。さらに、膵がんゼノグラフトマウスモデルにおいても、PRPF19 siRNAは腫瘍抑制効果を有することが観察され、PRPF19はがん治療の有効な分子標的となることが期待される。PRPF19遺伝子を標的にしたsiRNAによる膵がんなどへの顕著な抗腫瘍効果のメカニズムを明らかにするために、(A)PRPF19 siRNA処理がん細胞におけるpathway解析、(B)PRPF19siRNAによる紡錘体形成阻害、DNAダメージに及ぼす機能解析、(C)PRPF19siRNAによる抗腫瘍効果におけるユビキチン活性の関与の検証、(D)PRPF19siRNAによる抗腫瘍効果におけるスプライシング機能の関与の検証、について実施した。A)については、PRPF19 siRNA処理した正常線維芽細胞および膵がん細胞株PK8のpathway解析をマイクロアレイ(東レ3Dgene)によりトランスクリプトーム解析を行った。その結果をもとに、GO解析を行ったところ、細胞周期、DNAダメージ経路の寄与が明らかになった。また、共通に変化している遺伝子も見られたが、がん細胞と正常線維芽細胞で、顕著なトランスクリプトームの違いが見られた。(B)については、PRPF19siRNAによる細胞周期に及ぼす影響をFACSおよび蛍光細胞周期プローブ「Fucci」を用いた実験で、PRPF19siRNAにより正常細胞はG2/M期に同調するが、がん細胞はG2/M阻害が見られずS期の進行が見られ、それに伴うDNAダメージにより細胞死が誘導された。また、コメットアッセイにより、PRPF19siRNAによるDSB(二本鎖開裂)を示唆するデータが得られた。(C)に関しては、PRPF19遺伝子のUbox, C末,を欠失させたΔU変異型ΔC変異体およびΔUΔC変異体を構築し、これらを安定に発現する線維芽細胞で構築した。その結果、長期間培養で、細胞は老化様の巨大細胞を形成した。以上、平成26年度は、PRPF19の正常線維芽細胞及び膵がんでのsiRNAによる老化誘導のメカニズムの一部を明らかにできた。PRPF19遺伝子を標的にしたsiRNAによる膵臓がんなどへの顕著な抗腫瘍効果のメカニズムを明らかにするために、(A)PRPF19 siRNA処理がん細胞におけるパスウェイ解析、(B)PRPF19siRNAによるDNA損傷、紡錘体形成阻害に及ぼす機能解析、(C)PRPF19siRNAによる抗腫瘍効果におけるスプライシング機能の関与の検証、について実施した。(A)については、PRPF19 siRNAを処理した正常線維芽細胞TIG-3及び膵臓がん細胞株PK-8のマイクロアレイ(東レ3D Gene)によりトランスクリプトーム解析を行った。その結果をもとに、GO解析を行ったところ、細胞周期、DNA修復経路、相同組換えの寄与が明らかになった。特に細胞周期について着目すると、p53/p21経路に違いが見られ、正常細胞ではPRPF19 siRNAによりMDMX/p53制御を介した細胞周期停止が誘導される。(B)については、コメットアッセイを行いPRPF19siRNAによるDSBs(二本鎖切断)を観察した。そして、細胞周期に及ぼす影響をFACS及び蛍光細胞周期プローブ「Fucci」により解析すると、PRPF19 siRNAによりG2/M期に同調した後、正常細胞では細胞周期を停止するが、一方でがん細胞は多核形成やS期への進行が見られ細胞死を誘導することが示唆された。また、(C)に関しては、PRPF19siRNAによるsororin遺伝子のpre-mRNAスプライシング異常を評価した。PRPF19siRNAによりがん細胞ではイントロン含有産物の増加が検出されたが、正常細胞ではほとんど検出されなかった。以上、平成27年度は、PRPF19 siRNAによる膵臓がんの細胞死は、がん細胞特異的なメカニズムによって制御されうることを明らかにできた。ゲノム安定性の維持におけるPRPF19遺伝子の機能を解明し、PRPF19 siRNAの抗腫瘍効果を評価するために、PRPF19siRNAによる細胞周期停止機構、PRPF19 siRNAによるDNA損傷、紡錘体形成阻害に及ぼす機能、がん化によるPRPF19に着目したスプライシング調節の変化、膵臓がんのゼノグラフトマウスモデルにおけるPRPF19siRNAの抗腫瘍効果、について検証し、計画通りに進行しており論文投稿の準備を行っており、極めて順調である。PRPF19の発現抑制による細胞老化誘導機構及び膵がんなどへの抗腫瘍効果を解析するために、(A)PRPF19の発現抑制による細胞周期停止機構、(B)PRPF19の発現抑制によるがん抑制機構、(C)膵がんゼノグラフトマウスモデルにおけるPRPF19siRNAの抗腫瘍効果、について検証した。(A)については、これまで、PRPF19の発現抑制はMDMX/p53制御を介して細胞周期を停止させるという結果が得られていた。しかし、過剰発現実験などのさらなる解析により、PRPF19の発現抑制によるp53活性化において、MDMXの関与だけでは不十分であることがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-26290047 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26290047 |
老化関連マイクロRNA標的遺伝子の機能解析とがん治療への応用 | 一方で、阻害剤を組み合わせた実験により、PRPF19の発現抑制によるスプライシング異常がp53活性化に関与することが示唆された。(B)については、PRPF19の発現抑制は、紡錘体形成阻害を伴った分裂期細胞死を誘導した。そして、この細胞死誘導経路を調べたところ、切断型caspase-3が観察されないため、主要なアポトーシス経路を介していないことが示唆された。さらに、PRPF19の発現抑制はp53の状態に関係なく細胞死を誘導することが明らかになった。(C)については、膵がん細胞を皮下に移植したゼノグラフトマウスモデルにおける局所核酸投与は、一部についてPRPF19siRNAによる抗腫瘍効果が観察された。しかし、同所移植したゼノグラフトマウスモデルにおける全身性核酸投与は、ドラッグデリバリーシステムの問題もあり、腫瘍部へのPRPF19 siRNAのデリバリーが出来なかった。以上、平成28年度は、PRPF19の発現抑制による細胞老化は既知の経路に依存しないことや、一部ではあるがPRPF19 siRNAの抗腫瘍効果を明らかにした。正常線維芽細胞において、PRPF19 siRNAはp53依存的に細胞老化を誘導することを見出した。がん細胞では、PRPF19 siRNAは分裂期細胞死を誘導した。がん細胞では、PRPF19 siRNAはスプライシング異常産物を増加させたが、正常細胞ではほとんど検出されなかった。そのため、PRPF19 siRNAによるスプライシング調節不全ががん抑制に深く関与していることが示唆された。さらに、膵がんゼノグラフトマウスモデルにおいても、PRPF19 siRNAは腫瘍抑制効果を有することが観察され、PRPF19はがん治療の有効な分子標的となることが期待される。(A)から(D)のプロジェクトのうち、(C)の一部の解析の除き、ほぼ計画通りに進行した。ゲノム安定性の維持におけるPRPF19遺伝子の機能を解明するために、(A)PRPF19siRNAによる細胞周期停止機構、(B)PRPF19siRNAによるDNA損傷、紡錘体形成阻害に及ぼす機能、(C)がん化によるPRPF19に着目したスプライシング調節の変化、(D)膵臓がんのゼノグラフトマウスモデルにおけるPRPF19siRNAの抗腫瘍効果、について検証する。(A)PRPF19siRNAによる正常細胞の細胞周期停止は、p53/p21経路依存的に引き起こされ、さらにp53抑制タンパク質であるMDMXの発現を減少させる。そこで、マイクロアレイやMS解析を用いてPRPF19 siRNAによるMDMX発現制御因子を同定する。(B)PRPF19 siRNA | KAKENHI-PROJECT-26290047 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26290047 |
骨髄異形成症候群の関連遺伝子として分離されたMLF1の分子機能解析と臨床評価 | 骨髄異形成症候群(MDS)の段階を経て急性骨髄性白血病(AML)に至るt(3;5)転座から、原因遺伝子NPM-MLF1および野生型MLF1を単離し、機能解析から以下を明らかにした。1.未分化骨髄細胞株およびマウス線維芽細胞株へのNPM-MLF1導入発現は、分化を阻止しアポトーシスによる細胞死を誘導すること、この細胞死はBcl-2の導入共発現により回避されるばかりでなく、細胞は増殖傾向を示すことを見いだした。また、細胞死誘導には(1)細胞質蛋白であるMLFlが、核局在シグナルを有し核-細胞質シャトル蛋白であるNPMとキメラを構成し、核に移行することが必須であり、さらに(2)MLF1蛋白N端にアポトーシス誘導必須ドメインが存在することが解った。また、(3)NPMのN端部位には二量体形成に必要なドメインが存在し、二量体形成によりアポトーシス誘導能は増強される。2.細胞株を用いたRT-PCR法による定量化を各種造血器疾患例に適応し、野生型MLF1の発現傾向を調べた。AMLでは比較的未分化段階およびpost-MDS AMLの約半数において発現レベルの亢進があり、MDSでもRAEB・RAEB-Tの白血病移行頻度が高いハイリスク群で約半数に発現亢進を認め、t(3;5)陰性症例においてもMDS病態と関連してMLF1の発現が亢進する傾向がみられた。また、造血幹細胞の増殖と分化におけるMLF1の動態を、正常骨髄細胞より磁気ビーズにてCD34+幹細胞および各分化系列に分離し検討すると、CD34+細胞にのみ発現を認め、各血球系列への分化に伴い漸次発現が消退した。本研究での所見はNPM-MLF1蛋白は幹細胞に近いレベルで細胞分化を細胞死誘導により阻害することによりMDSという無効造血状態を引き起こし、付加的異常を伴って細胞をがん化に導く多段階発がん機構の一端を示唆する。また、MLF1部N端にアポトーシス誘導必須ドメインが存在することから、NPM-MLF1/MLF1関連伝達系機構を明らかにしたい。骨髄異形成症候群(MDS)の段階を経て急性骨髄性白血病(AML)に至るt(3;5)転座から、原因遺伝子NPM-MLF1および野生型MLF1を単離し、機能解析から以下を明らかにした。1.未分化骨髄細胞株およびマウス線維芽細胞株へのNPM-MLF1導入発現は、分化を阻止しアポトーシスによる細胞死を誘導すること、この細胞死はBcl-2の導入共発現により回避されるばかりでなく、細胞は増殖傾向を示すことを見いだした。また、細胞死誘導には(1)細胞質蛋白であるMLFlが、核局在シグナルを有し核-細胞質シャトル蛋白であるNPMとキメラを構成し、核に移行することが必須であり、さらに(2)MLF1蛋白N端にアポトーシス誘導必須ドメインが存在することが解った。また、(3)NPMのN端部位には二量体形成に必要なドメインが存在し、二量体形成によりアポトーシス誘導能は増強される。2.細胞株を用いたRT-PCR法による定量化を各種造血器疾患例に適応し、野生型MLF1の発現傾向を調べた。AMLでは比較的未分化段階およびpost-MDS AMLの約半数において発現レベルの亢進があり、MDSでもRAEB・RAEB-Tの白血病移行頻度が高いハイリスク群で約半数に発現亢進を認め、t(3;5)陰性症例においてもMDS病態と関連してMLF1の発現が亢進する傾向がみられた。また、造血幹細胞の増殖と分化におけるMLF1の動態を、正常骨髄細胞より磁気ビーズにてCD34+幹細胞および各分化系列に分離し検討すると、CD34+細胞にのみ発現を認め、各血球系列への分化に伴い漸次発現が消退した。本研究での所見はNPM-MLF1蛋白は幹細胞に近いレベルで細胞分化を細胞死誘導により阻害することによりMDSという無効造血状態を引き起こし、付加的異常を伴って細胞をがん化に導く多段階発がん機構の一端を示唆する。また、MLF1部N端にアポトーシス誘導必須ドメインが存在することから、NPM-MLF1/MLF1関連伝達系機構を明らかにしたい。MLF1遺伝子が関与しうる造血細胞系列および分化段階を、各種細胞株および臨床材料をもちいて詳細に検討を加えた。細胞株では巨核球・赤芽球系および未分化T細胞に発現を認めた。K562細胞株を用いたRT-PCR法による定量化を各種造血器疾患例に適応すると、急性骨髄性白血病ではFAB分類におけるM0・M1・M2の比較的未分化な段階およびM6に強発現を示し、MLF1遺伝子はこれらの分化初期段階での何らかの造血機構を担うものと考えられた。骨髄異形成症候群(MDS)ではRA・RAEBに比べ明らかにRAEB-Tで強発現し、MDS病態から白血病移行に伴い発現が漸次増強することを示している。白血病寛解状態から再発およびMDS病態から白血病移行への指標としても臨床応用可能と考えられる。また、上記のMLF1遺伝子分化誘導可能な細胞系を用いて、分化誘導刺激に伴うMLF1発現の消長を定量した。K562細胞を用いたTPA刺激による巨核球への分化誘導では発現量に変化を認めないが、Hemin刺激による赤血球への分化誘導では消退を示した。 | KAKENHI-PROJECT-08457281 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08457281 |
骨髄異形成症候群の関連遺伝子として分離されたMLF1の分子機能解析と臨床評価 | 現在、K562細胞およびG-CSF存在下で顆粒球系への分化能をもつ32D細胞に、NPM/MLF1融合遺伝子、MLF1遺伝子を導入し強制発現させた系を用いて、分化に及ぼす影響を検討中である。さらに、yeast two-hybridsystemをもちいてMLF1に相互作用する二種類の蛋白のcDNAを単離した。これらの蛋白はin vitroおよびin vivoでMLF1とco-precipitationされ真に相互作用蛋白と言える。この蛋白は細胞質に存在し細胞内局在もMLF1と完全に一致した。MLF1相互作用蛋白も含め、MLF1の造血機構における機能を解明したい。1.造血器細胞株にNPM-MLF1、野性型MLF1およびcontrol vectorを過剰発現させ、その形質変化を観察したところ、NPM-MLF1により細胞分化阻害と細胞死が誘導されることを見いだした。また、細胞死は未分化骨髄球系細胞株のみで誘導可能であり、やや分化傾向のある段階では誘導されなかった。細胞死の過程において、アポトーシス関連遺伝子産物の発現が、誘導あるいは阻害されるかを検討した。内在性のアポトーシス関連遺伝子産物については変動を認めないが、過剰発現させた系においてNPM-MLF1による細胞死が救済されることを見いだした。2.MLF1遺伝子発現について、細胞株を用いたRT-PCR法による定量化を各種造血器疾患例に適応すると、AML全体の約25%において強い発現を示し、特に、FAB分類におけるM0・M1・M2の比較的未分化な段階で高頻度に認めた。骨髄異形成症候群(MDS)ではRA・RAEBに比べ明かにRAEB-Tで強発現し、MDS病態から白血病移行に伴い発現が漸次増強することを示した。また、AMLではMLF1強発現群において明かに予後不良であった。3.考察:NPM-MLF1による骨髄系細胞株における細胞死の誘導の実験系から、NPM-MLF1は幹細胞に非常に近い段階で造血系に影響を与えると考えられ、アポトーシス関連遺伝子産物の強制発現により細胞死を回避しうる事実は、t(3;5)転座の臨床病型をin vitroにおいて説明しうる.以上は野性型MLF1の正常造血機構における機能異常の反映と考え、現在、MLF1相互作用蛋白とともに解析中である。また、野性型MLF1遺伝子の臨床的検討から、MDS病態から白血病移行への指標および予後因子としても臨床応用可能と考える。 | KAKENHI-PROJECT-08457281 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08457281 |
臍帯血の抗原特異的低親和性IgEの発見と生後の高親和性化獲得機序の解明とその予防 | Densely Carboxylated Proteinチップを用いて、母乳栄養児と人工栄養児の鶏卵とミルク抗原特異的免疫グロブリンクラススイッチの違いを検討した。人工乳及び混合栄養児の場合、出生後から大量のミルクアレルゲンを経口摂取するため、生後2ヶ月からのクラススイッチが起きて、生後4ヶ月以後には全てのクラスが認められた。これに対して母乳及び混合栄養児の場合、母乳中の微量鶏卵アレルゲンに対するクラススイッチのスピードは遅く、生後4-6ヶ月目で漸くIgG1が検出された。クラススイッチが不十分な時期に、湿疹による経皮抗原感作が起きると、IgE/IgG1比の著明な増加が起きた。平成27年度の当初計画を予定通り実施して、以下の成果を得た。(1)研究項目名:低親和性IgE抗体と高親和性IgE抗体の分別定量法の開発。低親和性IgE抗体と高親和性IgE抗体の分別定量を、固相化した抗原と可溶性抗原との間の競合的結合阻害による親和性評価と、caotropic試薬diethylamineによる結合親和性への影響の受け易さによる評価で検討を進め、低親和性IgE抗体と高親和性IgE抗体の分別定量が可能であることを明確にした。(2)研究項目名:母乳、血液、環境中の抗原定量法の確立。母乳中のアレルゲン量を測定するには、抗原・抗体複合体から抗原を解離させることが不可欠で、そのため抗原解離方法の検討を実施した。母乳の場合は、IgAからの抗原の解離にpapain処理が有効で、ほとんどすべての抗原がIgA抗体から解離して定量できることを明らかにした。一方血液の場合は、主に抗原との親和性の高いIgGであることから、抗原の回収が不十分で引き続きIgGの処理法を検討している。環境中のアレルゲンの定量法、乳児の頬に付着している抗原量の定量では、ELISAによる測定が可能となった。(3)研究項目名:低親和性IgEから高親和性IgEに変換する時期の同定と発症リスク評価。臍帯血から生後2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、12ヶ月までの検体で、母乳を介した鶏卵アレルゲン感作と人工栄養児でのミルクアレルゲン感作の実態を把握した。その結果、ほとんどの乳児が獲得する経口免疫トレランスには、イムノグロブリンクラススイッチが関与することが判明した。一方、湿疹のある乳児群ではIgG1→IgEへのクラススイッチが早期に強力に起きて、低親和性IgEから高親和性IgEへの変換が確認された。研究概要に記載したように、実施計画の3項目において、当初予定した研究が進展している。なお、2)母乳、血液、環境中の抗原定量法の確立において、血液のIgG抗体と抗原の解離反応は、予想に反して困難なことが判明して目標の達成には至らなかった。以上の理由から、概ね順調と判定した本研究では、Densely Carboxylated Protein (DCP)チップを用いて、母乳栄養児と人工栄養児間に見られる鶏卵抗原とミルク抗原特異的免疫グロブリンクラススイッチの違いを検討した。人工乳及び混合栄養児の場合、出生直後から大量のミルクアレルゲンを経口摂取するため、生後2ヶ月の早期からの免疫グロブリンクラススイッチが起きて、生後4ヶ月目以後にはIgG1ーIgG2ーIgG4、とIgG1ーIgEクラススイッチが認められた。特にこれら一連の過程において、IgG1の値の増加がある閾値を超えると、IgG1ーIgEへのクラススイッチと、IgG1ーIgG2へのクラススイッチが、ほぼ同時に起きる事が判明した。これに対して母乳及び混合栄養児の場合、母乳に含まれる微量の鶏卵アレルゲンに対する免疫グロブリンクラススイッチのスピードは遅く、生後4-6ヶ月目で漸くIgG1の有意な検出が可能となる程度であり、この時期に僅かではあるがIgG1ーIgEとIgG1ーIgG2へのクラススイッチが認められるケースがあった。後者のIgG1ーIgG2ーIgG4クラススイッチが不十分な時期に、湿疹による経皮抗原感作が起きると、IgG1ーIgG2へのクラススイッチを伴わないIgG1ーIgEクラススイッチが起きて、IgE/IgG1比の著明な増加が起きた。同じ湿疹者でも、ミルク抗原特異的免疫グロブリンクラススイッチでみられた早期の免疫グロブリンクラススイッチでは、鶏卵アレルゲン感作でみられたようなgE/IgG1比の著明な増加は見られず、抗原特異的免疫グロブリンクラススイッチと湿疹によるクラススイッチの変化との関係が推定された。Densely Carboxylated Proteinチップを用いて、母乳栄養児と人工栄養児の鶏卵とミルク抗原特異的免疫グロブリンクラススイッチの違いを検討した。人工乳及び混合栄養児の場合、出生後から大量のミルクアレルゲンを経口摂取するため、生後2ヶ月からのクラススイッチが起きて、生後4ヶ月以後には全てのクラスが認められた。これに対して母乳及び混合栄養児の場合、母乳中の微量鶏卵アレルゲンに対するクラススイッチのスピードは遅く、生後4-6ヶ月目で漸くIgG1が検出された。クラススイッチが不十分な時期に、湿疹による経皮抗原感作が起きると、IgE/IgG1比の著明な増加が起きた。平成27年度の研究成果を基盤に、平成28年度は当初の目標である3)低親和性IgEから高親和性IgEに変換する時期の同定と発症リスク評価における詳細な解析を実施する予定で、その準備はできている。特にほとんどの乳児が経口免疫トレランスを獲得する中で、56%の乳児が食物アレルギーを発症する理由が、本研究を通して初めて明らかになりつつある。 | KAKENHI-PROJECT-15K15371 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K15371 |
臍帯血の抗原特異的低親和性IgEの発見と生後の高親和性化獲得機序の解明とその予防 | 最終年度として下記の3項目について成果をまとめる。1)低親和性IgE抗体と高親和性IgE抗体の分別定量法の開発。測定方法が確立したことから、これを基盤に臍帯血から生後2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、12ヶ月までの親和性の変化を解析する。2)母乳、血液、環境中の抗原定量法の確立。昨年の研究で血液のIgG抗体と抗原の解離反応は、予想に反して困難なことが判明して目標の達成には至らなかったことから、今年度は、papainに代わるタンパク質分解酵素を試してみたい。3)低親和性IgEから高親和性IgEに変換する時期の同定と発症リスク評価。臍帯血から生後2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、12ヶ月までの検体を用いて評価することで、ほとんどの乳児が獲得する経口免疫トレランスでは、イムノグロブリンクラススイッチが関与し、湿疹のある乳児群では、経口免疫寛容のイムノグロブリンクラススイッチが障害され、IgG1→IgEへのクラススイッチが早期に強力に起きて、低親和性IgEから高親和性IgEへの変換が確認された。平成28年度は、症例を増やして、これらの事実を確認する。生化学,分子生物学前年度未使用額の45,294円は、平成28年度3月末までに納品が完了しているが、支払いが平成28年度4月になったため、計上されている。上記の理由により、平成28年度3月末までに納品された45,294円分を、平成28年度4月に支払を完了する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-15K15371 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K15371 |
テーパー杭を用いたパイルドラフト基礎の鉛直支持力機構に関する研究 | テーパー杭を用いるパイルドラフト基礎の鉛直支持力機構を明らかにするため、主に模型実験を通してテーパー杭と直杭の鉛直支持力の比較検討した。粘性土地盤を模擬し、実験地盤を所定の質量割合の「出雲」ベントナイトと水をミキサーで攪拌して作製した。地盤材料のベーンせん断試験を実施し、得られたせん断強度と含水比、そして地盤作製時の室温との関係を定式化し、重回帰分析を行った結果、良い相関関係が示された。本実験は、二つの載荷土槽を用いて同じ条件の直杭とテーパー杭を同時載荷する方式で行った。模型杭は、長さ200mmで、直杭の直径dは20mm、テーパー杭の先端径は16mmである。ラフトのサイズは160mm×160mm×20mmである。杭の載荷は、2mm/minの等速変位制御で、杭先端が地表面に接する直前からラフト底面が地表面から20mm沈下するまで行った。実験種目は、単杭と2×2本群杭の杭間隔が2d、3dおよび4dの計4セットである。得られた知見:1)直杭の方がテーパー杭より杭先端底面積が大きいため、杭先端が地盤に貫入し始めたときの抵抗力は、前者の方が後者より大きい。しかし、貫入深さがある長さを超えると、両者の抵抗力は逆転し、その後の貫入に伴いその差が次第に大きくなる。2)杭周面抵抗力だけを取り上げてみると、もっと短い貫入深さからテーパー杭の方が直杭を上回っていくことになる。3)群杭1本あたりの杭周面抵抗力は、テーパー杭と直杭の両者とも、単杭の場合の周面抵抗力より小さくなる。4)群杭の杭間隔が大きくなるにつれて、テーパー杭の周面抵抗力が直杭のそれを超える貫入深さが浅くなり、その差は杭間隔3dで単杭とほぼ同じ値となる。5)ラフトが接地する直前における杭先端抵抗力の杭全体抵抗力に対する割合は、テーパー杭では約13%弱であるに対して、直杭では約23%に達している。6)ラフトが接地した時の基礎全体の抵抗値に対して、4本群杭の抵抗力は、テーパー杭の場合は4346%、直杭の場合は3540%を占める。纏めると、パイルドラフトの基礎形式として、テーパー杭が直杭よりも合理的な設計を可能にすることを示唆する結果を得た。テーパー杭を用いるパイルドラフト基礎の鉛直支持力機構を明らかにするため、主に模型実験を通してテーパー杭と直杭の鉛直支持力の比較検討した。粘性土地盤を模擬し、実験地盤を所定の質量割合の「出雲」ベントナイトと水をミキサーで攪拌して作製した。地盤材料のベーンせん断試験を実施し、得られたせん断強度と含水比、そして地盤作製時の室温との関係を定式化し、重回帰分析を行った結果、良い相関関係が示された。本実験は、二つの載荷土槽を用いて同じ条件の直杭とテーパー杭を同時載荷する方式で行った。模型杭は、長さ200mmで、直杭の直径dは20mm、テーパー杭の先端径は16mmである。ラフトのサイズは160mm×160mm×20mmである。杭の載荷は、2mm/minの等速変位制御で、杭先端が地表面に接する直前からラフト底面が地表面から20mm沈下するまで行った。実験種目は、単杭と2×2本群杭の杭間隔が2d、3dおよび4dの計4セットである。得られた知見:1)直杭の方がテーパー杭より杭先端底面積が大きいため、杭先端が地盤に貫入し始めたときの抵抗力は、前者の方が後者より大きい。しかし、貫入深さがある長さを超えると、両者の抵抗力は逆転し、その後の貫入に伴いその差が次第に大きくなる。2)杭周面抵抗力だけを取り上げてみると、もっと短い貫入深さからテーパー杭の方が直杭を上回っていくことになる。3)群杭1本あたりの杭周面抵抗力は、テーパー杭と直杭の両者とも、単杭の場合の周面抵抗力より小さくなる。4)群杭の杭間隔が大きくなるにつれて、テーパー杭の周面抵抗力が直杭のそれを超える貫入深さが浅くなり、その差は杭間隔3dで単杭とほぼ同じ値となる。5)ラフトが接地する直前における杭先端抵抗力の杭全体抵抗力に対する割合は、テーパー杭では約13%弱であるに対して、直杭では約23%に達している。6)ラフトが接地した時の基礎全体の抵抗値に対して、4本群杭の抵抗力は、テーパー杭の場合は4346%、直杭の場合は3540%を占める。纏めると、パイルドラフトの基礎形式として、テーパー杭が直杭よりも合理的な設計を可能にすることを示唆する結果を得た。 | KAKENHI-PROJECT-14655197 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14655197 |
農業の国際化に対応する個別農家の適応行動に対する制度制約の存在状況に関する研究 | 本研究は、日本農業の中でも国際化の動きが最も急速で、しかも全面化している北海道農業を対象にして大規模な実態調査を行って、各個別農家が国際化に即応しようとして模索しつつある新しい展開志向を調査すると共に、そのような国際化への適応の試みが制度的な制約によって阻害されている実態を把渥し、そのような作業を通してとくにつぎの5つの側面、すなわち農地制度、農業金融制度、農畜産物の加工流通制度、農業生産資材の生産流通制度、そして農業関係税制に制度的制約の存在状況を集約・分析して、その打開の方向ならびに可能性を見いださんとするものである。初年度は、共通的素材として北海道の代表的農業地帯である十勝、網走、釧路、根室における総合農協の組合長全員に対して、地域農業の実状を反映したアンケ-ト調査を実施した。その結果、今後の国際化に対処してそれぞれの地域農業はあらゆる手だてを講じて体質強化につとめているが、より根本的には自助努力のみでは限界があり、緊急に農業関連諸制度の改革を行うことが必要不可欠であるという意見が大勢を占めた。最終年度は、道内60カ所にある農業改良普及所単位で大規模農業経営体をリストアップし、北海道農業のフロンティアとして活躍しているそれら大規模経営体の展開規程における特質と、そこにおける障害をいかに切り崩してきたかの吟味を行っている。また、制度的制約にかかわって関係法令に精通した専門家との共同討議を行い、組勘運用、信用、制産調整とペナルティなど、とくに農協と農家との関係の中で問題が生じている場合の多いことを確認した。さらに「農業」問題から「農村」問題へと議論が移ってきている昨今、農地法とリゾ-ト法など農業展開にとって理念が矛盾する場面が生じてきており、今後の農業、農村のあり方を巡る議論が広くなされる必要性のあることを同時に確認した。そのような意味で、本研究を通じてえられた知見をさらに充実させ、なんらかの形で成果の刊行を行い問題提起を試みる予定である。本研究は、日本農業の中でも国際化の動きが最も急速で、しかも全面化している北海道農業を対象にして大規模な実態調査を行って、各個別農家が国際化に即応しようとして模索しつつある新しい展開志向を調査すると共に、そのような国際化への適応の試みが制度的な制約によって阻害されている実態を把渥し、そのような作業を通してとくにつぎの5つの側面、すなわち農地制度、農業金融制度、農畜産物の加工流通制度、農業生産資材の生産流通制度、そして農業関係税制に制度的制約の存在状況を集約・分析して、その打開の方向ならびに可能性を見いださんとするものである。初年度は、共通的素材として北海道の代表的農業地帯である十勝、網走、釧路、根室における総合農協の組合長全員に対して、地域農業の実状を反映したアンケ-ト調査を実施した。その結果、今後の国際化に対処してそれぞれの地域農業はあらゆる手だてを講じて体質強化につとめているが、より根本的には自助努力のみでは限界があり、緊急に農業関連諸制度の改革を行うことが必要不可欠であるという意見が大勢を占めた。最終年度は、道内60カ所にある農業改良普及所単位で大規模農業経営体をリストアップし、北海道農業のフロンティアとして活躍しているそれら大規模経営体の展開規程における特質と、そこにおける障害をいかに切り崩してきたかの吟味を行っている。また、制度的制約にかかわって関係法令に精通した専門家との共同討議を行い、組勘運用、信用、制産調整とペナルティなど、とくに農協と農家との関係の中で問題が生じている場合の多いことを確認した。さらに「農業」問題から「農村」問題へと議論が移ってきている昨今、農地法とリゾ-ト法など農業展開にとって理念が矛盾する場面が生じてきており、今後の農業、農村のあり方を巡る議論が広くなされる必要性のあることを同時に確認した。そのような意味で、本研究を通じてえられた知見をさらに充実させ、なんらかの形で成果の刊行を行い問題提起を試みる予定である。本研究は、日本農業の中でも国際化の動きが最も急速で,しかも全面化している北海道農業を対象にして大規模な実態調査を行って、各個別農家が国際化に即応しようとして模索しつつある新しい展開志向を調査すると共に、そのような国際化への適応の試みの制度的な制約によって阻害されている実態を把握し、そのような作業を通してとくにつぎの5つの側面、すなわち農地制度、農業金融制度、農畜産物の加工流通制度、農業生産資材の生産流通制度、そして農業関係税制に制度的制約の存在状況を集約・分析して、その打開の方向ならびに可能性を見いださんとするものである。本年度は、共通的素材として北海道の代表的農業地帯である十勝,網走,釧路,根室における総合農協の組合長全員に対して,地域農業の実状を反映したアンケ-ト調査を実施した。回答状況は、なんらかの手だてを講じて地域農業活性化に熱心であるとみられる農協管内ほどアンケ-トに回答する割合が高く、回答内容に関しても多岐に渡っている。回答内容を要約すれば、今後の国際化に対処してそれぞれの地域農業はあらゆる手だてを講じて体質強化につとめているが、より根本的には「自助努力」のみでは限りがあり、緊急に農業関係諸制度の改革を行うことが必要・不可欠であるという意見が大勢を占めた。調査分析の作業過程において、あらゆる局面において制度的規制が存在するという実態が明らかにされつつあるが、農業振興のために新しい動きをしようとする場合の制度的制約をクリアするためには、実は関係者個人の努力・能力などの要素が大きな力となっていることが明らかになった。したがって制度的制約についての認識は、同じ制約であっても受けとり方に格差があり一様ではなく、この点についての生理が必要といえる。 | KAKENHI-PROJECT-01450100 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01450100 |
農業の国際化に対応する個別農家の適応行動に対する制度制約の存在状況に関する研究 | 本研究は、日本農業の中でも国際化の動きが最も急速で、しかも全面化している北海道農業を対象にして大規模な実態調査を行って、各個別農家が国際化に即応しようとして模索しつつある新しい展開志向を調査すると共に、そのような国際化への適応の試みが制度的な制約によって阻害されている実態を把握し、そのような作業を通してとくにつぎの5つの側面、すなわち農地制度、農業金融制度、農畜産物の加工流通制度、農業生産資材の生産流通制度、そして農業関係税制に制度的制約の存在状況を集約・分析して、その打開の方向ならびに可能性を見いださんとするものである。初年度は、共通的素材として北海道の代表的農業地帯である十勝、網走、釧路、根室における総合農協の組合長全員に対して、地域農業の実状を反映したアンケ-ト調査を実施した。その結果、今後の国際化に対処してそれぞれの地域農業はあらゆる手だてを講じて体質強化につとめているが、より根本的には自助就力のみでは限界があり、緊急に農業関連諸制度の改革を行うことが必要不可欠であるという意見が大勢を占めた。最終年度は、道内60カ所にある農業改良普及所単位で大規模農業経営体をリストアップし、北海道農業のフロンティアとして活躍しているそれら大規模経営体の展開過程における特質と、そこにおける障害をいかに切り崩してきたかの吟味を行っている。また、制度的制約にかかわって関係法令に精通した専門家との共同討議を行い、組勘運用、信用、生産調整とペナルティなど、とくに農協と農家との関係の中で問題が生じている場面の多いことを確認した。さらに「農業」問題から「農村」問題へと議論が移ってきている昨今、農地法とリゾ-ト法など農業展開にとって理念が矛盾する場面が生じてきており、今後の農業、農村のあり方を巡る議論が広くなされる必要性のあることを同時に確認した。そのような意味で、本研究を通じてえられた知見をさらに充実させ、なんらかの形で成果の刊行を行い問題提起を試みる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-01450100 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01450100 |
固相合成法を用いた人工糖脂質ライブラリーの構築と新規バイオマテリアルへの展開 | 本年度は、前年度に得られた低分子ヒドロゲル化剤の構造を基に、ヒドロゲル化能に対する構造の最適化を行った。ランダムな化合物群(ライブラリー)の中から有用な材料を見出すというコンビナトリアルアプローチを用いることで、数種類の優れた糖アミノ酸型ヒドロゲル化剤の開発に成功した。また、この最適化の過程や構造解析からは、ヒドロゲル化剤の分子設計指針に関する情報を得た。得られたヒドロゲルは、蒸留水中だけでなく、様々な生理条件下で安定に存在しうることが判明した。また、活性な酵素をその活性を保持したままでこの糖アミノ酸型ヒドロゲル中に包括できることも見出した。これらの結果から、得られたヒドロゲル化は固定化酵素マトリックスなどの新規バイオマテリアルとして有効であることがわかる。得られたヒドロゲル化剤の一部は、温度に応じて巨視的な体積相転移が起こる感温性ヒドロゲルであることを見出した。一部の高分子においてはいくつか報告例があるものの、低分子型(超分子型)ヒドロゲルでこのような体積相転移を見出したのは世界初の例である。構造解析から、このヒドロゲルは水中においてかなり強固な分子間相互作用を有するために加熱しても構造が崩れずに膨潤・収縮を繰り返すことがわかった。また、体積相転移は、糖鎖の水素結合と、水和・脱水和に基づくと考察した。これらの感温性ヒドロゲルは、人工アクチュエーターなどのインテリジェントバイオマテリアルなどとして、今後広く応用されると期待される。本年度は、前年度に得られた低分子ヒドロゲル化剤の構造を基に、ヒドロゲル化能に対する構造の最適化を行った。ランダムな化合物群(ライブラリー)の中から有用な材料を見出すというコンビナトリアルアプローチを用いることで、数種類の優れた糖アミノ酸型ヒドロゲル化剤の開発に成功した。また、この最適化の過程や構造解析からは、ヒドロゲル化剤の分子設計指針に関する情報を得た。得られたヒドロゲルは、蒸留水中だけでなく、様々な生理条件下で安定に存在しうることが判明した。また、活性な酵素をその活性を保持したままでこの糖アミノ酸型ヒドロゲル中に包括できることも見出した。これらの結果から、得られたヒドロゲル化は固定化酵素マトリックスなどの新規バイオマテリアルとして有効であることがわかる。得られたヒドロゲル化剤の一部は、温度に応じて巨視的な体積相転移が起こる感温性ヒドロゲルであることを見出した。一部の高分子においてはいくつか報告例があるものの、低分子型(超分子型)ヒドロゲルでこのような体積相転移を見出したのは世界初の例である。構造解析から、このヒドロゲルは水中においてかなり強固な分子間相互作用を有するために加熱しても構造が崩れずに膨潤・収縮を繰り返すことがわかった。また、体積相転移は、糖鎖の水素結合と、水和・脱水和に基づくと考察した。これらの感温性ヒドロゲルは、人工アクチュエーターなどのインテリジェントバイオマテリアルなどとして、今後広く応用されると期待される。 | KAKENHI-PROJECT-01J10206 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01J10206 |
腸球菌の新たな接合伝達機構による高頻度接合伝達性プラスミドの分子遺伝学的研究 | 1.薬剤耐性プラスミドpMG1は腸球菌から分離され、その接合伝達系が今まで知られているものと異なる可能性が示唆されている。そこで、研究が進んでいるグラム陰性菌のプラスミドでも良く明らかになっていない接合伝達時のtra遺伝子の発現調節機構を明らかにするためにこのプラスミドを用いることにした。接合伝達時の調節機構の存在を明らかにするために接合伝達時に転写量が増加するプラスミド遺伝子をノーザンハイブリダイゼーションで探したところ1つの遺伝子(71ORF2遺伝子)を見いだした。2.遺伝子破壊実験から71ORF2遺伝子は接合凝集塊の形成あるいは安定化に関与していることが明らかになった。3.Tn917によりtra変異株を作製し、その変異体における71ORF2遺伝子の発現を調べたところ、接合伝達に関わらず常に高いレベルで発現しており71ORF2遺伝子が負の制御を受けていることがわかった。4.71ORF2遺伝子が構成的に発現しているtra変異株の1つについて相補性試験やDNA塩基配列の決定を行ったところ新たな遺伝子(75ORF4遺伝子)が71ORF2遺伝子の調節に関与していることがわかった。5.75ORF4遺伝子は71ORF2遺伝子とは逆に接合伝達時に転写が低下する事がわかった。これは75ORF4遺伝子が71ORF2遺伝子と同様に接合伝達時に発現調節を受ける遺伝子であり、71ORF2遺伝子を負に制御する因子であることを裏付けている。6.tra変異株における75ORF4遺伝子の発現を調べたところ、発現しなくなったり、発現が構成的になったりと必ずしも一定ではなく、71ORF2遺伝子の場合とは異なり75ORF4遺伝子は複雑な制御を受けていることが示唆された。1.薬剤耐性プラスミドpMG1は腸球菌から分離され、その接合伝達系が今まで知られているものと異なる可能性が示唆されている。そこで、研究が進んでいるグラム陰性菌のプラスミドでも良く明らかになっていない接合伝達時のtra遺伝子の発現調節機構を明らかにするためにこのプラスミドを用いることにした。接合伝達時の調節機構の存在を明らかにするために接合伝達時に転写量が増加するプラスミド遺伝子をノーザンハイブリダイゼーションで探したところ1つの遺伝子(71ORF2遺伝子)を見いだした。2.遺伝子破壊実験から71ORF2遺伝子は接合凝集塊の形成あるいは安定化に関与していることが明らかになった。3.Tn917によりtra変異株を作製し、その変異体における71ORF2遺伝子の発現を調べたところ、接合伝達に関わらず常に高いレベルで発現しており71ORF2遺伝子が負の制御を受けていることがわかった。4.71ORF2遺伝子が構成的に発現しているtra変異株の1つについて相補性試験やDNA塩基配列の決定を行ったところ新たな遺伝子(75ORF4遺伝子)が71ORF2遺伝子の調節に関与していることがわかった。5.75ORF4遺伝子は71ORF2遺伝子とは逆に接合伝達時に転写が低下する事がわかった。これは75ORF4遺伝子が71ORF2遺伝子と同様に接合伝達時に発現調節を受ける遺伝子であり、71ORF2遺伝子を負に制御する因子であることを裏付けている。6.tra変異株における75ORF4遺伝子の発現を調べたところ、発現しなくなったり、発現が構成的になったりと必ずしも一定ではなく、71ORF2遺伝子の場合とは異なり75ORF4遺伝子は複雑な制御を受けていることが示唆された。1.腸球菌より分離されその接合伝達系が今まで知られているものと異なる可能性が示唆されている薬剤耐性プラスミドpMG1を用い、接合伝達時に発現が誘導される遺伝子を、クローン化したpMG1断片をプローブとしてノーザンハイブリダイゼーションを行うことにより探したところ1つの遺伝子の転写量が接合伝達時に増加することを見いだした。これにより接合伝達信号を検索するための手がかりができた。2.その遺伝子内部の断片をPCRにより増幅し腸球菌に対するスーサイドベクターにクローン化しエレクトロポレーションにより導入することによってその遺伝子が破壊された株を構築した。そして接合伝達に関する表現形を調べたところ固形培地上では親株同様の伝達頻度を示したが液体培地中では1万倍近い伝達頻度の低下が見られた。このことはこの遺伝子が接合凝集塊の安定化に働いているということを示している。3.Tn917によりpMG1のtra突然変異体を分離しpMG1上の挿入部位を決定した。その結果tra遺伝子はプラスミド全体の約半分を占める領域に散在していることがわかった。そのうちとりあえず12株についていろいろな表現形について調べた。その結果7株について前述の遺伝子の転写量が構成的になっていた。このことはこの接合凝集塊の安定化を行っている遺伝子が通常負の調節を受けていることを示唆するものである。(昨年度の研究成果)腸球菌から分離されその接合伝達系が今まで知られているものと異なる可能性が示唆されている薬剤耐性プラスミドpMG1を用い、接合伝達時に転写量が増加するプラスミド遺伝子(71ORF2遺伝子)を見いだした。この遺伝子は接合凝集塊の形成あるいは安定化に関与していることが遺伝子破壊実験から明らかになった。また、Tn917により得られたtra変異株におけるこの遺伝子の発現を調べたところ、接合伝達に関わらず常に高いレベルで発現しており71ORF2遺伝子が負の制御を受けていることがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-11670258 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11670258 |
腸球菌の新たな接合伝達機構による高頻度接合伝達性プラスミドの分子遺伝学的研究 | この結果を受けて平成12年度は(1)71ORF2遺伝子が構成的に発現しているtra変異株について相補性試験やDNA塩基配列の決定を行ったところ新たな遺伝子(75ORF4遺伝子)が71ORF2遺伝子の調節に関与していることがわかった。また75ORF4遺伝子は接合伝達時に71ORF2遺伝子とは逆に転写が低下する事がわかった。これは75ORF4遺伝子が71ORF2遺伝子と同様に接合伝達時に発現調節を受ける遺伝子であり、71ORF2遺伝子を負に制御する因子であることを裏付けている。(2)この結果から71ORF2遺伝子を制御する遺伝子の存在が示唆されたためtra変異株における75ORF4遺伝子の発現を調べたところ、発現しなくなったり、発現が構成的になったりと必ずしも一定ではなく、71ORF2遺伝子の場合とは異なり75ORF4遺伝子は複雑な制御を受けていることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-11670258 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11670258 |
生体内義歯床下圧力動態測定に基づくI-POdインプラント支持効果の検証 | Implant-Supported Partial Overdenture,以下I-POdに加重した際の支台インプラント,直接支台歯に加わる三次元荷重,義歯床下粘膜荷重を同時測定し,各測定部位の荷重に対する支台インプラント本数,設置位置の影響を検討した.直接支台歯に加わる荷重ならびに義歯床下粘膜に加わる荷重は,支台インプラントを設置することにより,支台インプラント無しの場合に比べて有意に減少した.すなわち遊離端欠損部に埋入したインプラントをI-POdの支台として利用することにより,直接支台歯ならびに義歯床下粘膜に加わる荷重の低減効果が発揮されることが定量的に示された.本研究では,近年臨床に導入され注目を浴びているImplant-supported Partial Overdenture;I-POdの有用性の検証とその設計指針を確立することを目的として,申請者らが独自に確立した生体内義歯床下圧力分布測定システムを用いて, I-POdにおける支台インプラントによる支持効果を生体内にて検証し,インプラントの埋入位置,インプラント上部構造の種類,義歯とインプラントの接触条件,義歯設計等について検討することを目的としている.1)機能時のI-POdの義歯床下圧力動態を生体内測定する.2)同一義歯での,各種上部構造,義歯床ーインプラント接触条件における圧力分布から各種条件でのインプラント支持効果を検証する.3)同一被験者において,各種義歯設計(両側処理と片側処理,レジン床義歯と金属床義歯など)における義歯床下圧力動態を検討する.1)ー3)より,I-POdの有効性を検証し,さらに支台インプラント上部構造の種類,義歯床ーインプラント接触条件,義歯設計について生体力学的エビデンスに基づいたI-POd設計指針の確立を目指す.本年度は,コントロールとなる部分床義歯を想定した上部構造が無いバージョンの,生体内義歯床下圧力測定を行った.圧力測定システムおよびシート型触覚センサを用いて義歯床下圧力分布を測定し,その精度について検討した.また,各種上部構造の詳細,および,接触条件の規定を検討を,模型実験にて行った.近年,歯列の部分欠損部顎堤に埋入した少数のインプラントを支持・維持に用いたインプラント支台パーシャルオーバーデンチャー(Implant-Supported Partial Overdenture,以下I-POd)症例が増加している.しかしながら,機能時のI-POdにおける支台インプラント,支台歯および義歯床下粘膜の荷重負担の様相に関しては未解明であり,I-POdの設計指針がないのが現状である.本研究では,下顎片側遊離端欠損模型にてI-POdに加重した際の支台インプラント,直接支台歯に加わる三次元荷重,義歯床下粘膜荷重を同時測定し,各測定部位の荷重に対する支台インプラント本数,設置位置の影響を検討した.下顎第二小臼歯から第二大臼歯までの遊離端欠損模型の第二小臼歯および第二大臼歯相当部の2か所にインプラントを埋入、欠損顎堤部には付加型シリコン印象材製の人工粘膜を付与した.支台インプラント,支台歯荷重は小型水晶圧電式三次元力センサにて測定し、義歯床下内面に粘膜荷重測定用の圧力センサを設置した.荷重は,義歯の第一大臼歯相当部に垂直方向に付与した.直接支台歯に加わる荷重ならびに義歯床下粘膜に加わる荷重は,支台インプラントを設置することにより,支台インプラント無しの場合に比べて有意に減少した.義歯床下粘膜に加わる荷重量は,インプラントを2本設置した場合に大きく減少し,また第二大臼歯部に支台インプラントを1本設置した場合では,第二小臼歯部に設置した場合に比較して有意に減少した.すなわち遊離端欠損部に埋入したインプラントをI-POdの支台として利用することにより,直接支台歯ならびに義歯床下粘膜に加わる荷重の低減効果が発揮されること,さらに支台インプラントを欠損遠心部に設置することで,床下粘膜荷重のより大きい低減効果が得られることが定量的に示された.Implant-Supported Partial Overdenture,以下I-POdに加重した際の支台インプラント,直接支台歯に加わる三次元荷重,義歯床下粘膜荷重を同時測定し,各測定部位の荷重に対する支台インプラント本数,設置位置の影響を検討した.直接支台歯に加わる荷重ならびに義歯床下粘膜に加わる荷重は,支台インプラントを設置することにより,支台インプラント無しの場合に比べて有意に減少した.すなわち遊離端欠損部に埋入したインプラントをI-POdの支台として利用することにより,直接支台歯ならびに義歯床下粘膜に加わる荷重の低減効果が発揮されることが定量的に示された.本研究では,近年臨床に導入され注目を浴びているImplant-supported Partial Overdenture;I-POdの有用性の検証とその設計指針を確立することを目的として,申請者らが独自に確立した生体内義歯床下圧力分布測定システムを用いて, I-POdにおける支台インプラントによる支持効果を生体内にて検証し,インプラントの埋入位置,インプラント上部構造の種類,義歯とインプラントの接触条件,義歯設計等について検討することを目的としている.1)機能時のI-POdの義歯床下圧力動態を生体内測定.2)同一義歯での,各種上部構造,義歯床ーインプラント接触条件における圧力分布から各種条件でのインプラント支持効果を検証.3)同一被験者において,各種義歯設計(両側処理と片側処理,レジン床義歯と金属床義歯など)における義歯床下圧力動態を検討. | KAKENHI-PROJECT-23592833 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23592833 |
生体内義歯床下圧力動態測定に基づくI-POdインプラント支持効果の検証 | 1)ー3)より,I-POdの有効性を検証し,さらに支台インプラント上部構造の種類,義歯床ーインプラント接触条件,義歯設計について生体力学的エビデンスに基づいたI-POd設計指針の確立を目指す.本年度は,1)として,圧力測定システムおよびシート型触覚センサを用いた生体内義歯床下圧力測定を行った.また,2)については,各種上部構造,義歯床ーインプラント接触条件における圧力分布を模型実験にて測定するため,実験用模型の作成,センサのキャリブレーション等を行った.本研究では,1)機能時のI-POdの義歯床下圧力動態を生体内測定.2)同一義歯での,各種上部構造,義歯床ーインプラント接触条件における圧力分布から各種条件でのインプラント支持効果を検証.3)同一被験者において,各種義歯設計(両側処理と片側処理,レジン床義歯と金属床義歯など)における義歯床下圧力動態を検討.以上1)ー3)より,I-POdの有効性を検証し,さらに支台インプラント上部構造の種類,義歯床ーインプラント接触条件,義歯設計について生体力学的エビデンスに基づいたI-POd設計指針の確立を目指すものである.義歯床下圧力測定の方法を確立し,コントロールとなる部分床義歯を想定した上部構造が無いバージョンの,生体内義歯床下圧力測定を行ったが,各種上部構造,義歯床ーインプラント接触条件における生体内床下圧力測定までは至っていない.模型実験にて各種上部構造,義歯床ーインプラント接触条件における圧力分布を測定し,I-POd装着被験者における生体内測定によって得られた生体内圧力動態と比較検討を行っていく予定である.現在はそのうち,模型実験にて,上部構造の種類・サイズおよび接触条件の規定等を検討している.本研究では,1)機能時のI-POdの義歯床下圧力動態を生体内測定.2)同一義歯での,各種上部構造,義歯床ーインプラント接触条件における圧力分布から各種条件でのインプラント支持効果を検証.3)同一被験者において,各種義歯設計(両側処理と片側処理,レジン床義歯と金属床義歯など)における義歯床下圧力動態を検討.以上1)ー3)より,I-POdの有効性を検証し,さらに支台インプラント上部構造の種類,義歯床ーインプラント接触条件,義歯設計について生体力学的エビデンスに基づいたI-POd設計指針の確立を目指すものである.1)については,義歯床下圧力測定の方法を確立したものの,I-POd装着被験者における床下圧力測定までは至っていない.2)については,模型実験にて各種上部構造,義歯床ーインプラント接触条件における圧力分布を測定し,I-POd装着被験者における生体内測定によって得られた生体内圧力動態と比較検討を行っていく予定である.現在はそのうち,模型実験を主に進行中である.本研究では,1)機能時のI-POdの義歯床下圧力動態を生体内測定.2)同一義歯での,各種上部構造,義歯床ーインプラント接触条件における圧力分布から各種条件でのインプラント支持効果を検証.3)同一被験者において,各種義歯設計(両側処理と片側処理,レジン床義歯と金属床義歯など)における義歯床下圧力動態を検討.以上1)ー3)より,I-POdの有効性を検証し,さらに支台インプラント上部構造の種類,義歯床ーインプラント接触条件,義歯設計について生体力学的エビデンスに基づいたI-POd設計指針の確立を目指すものである. | KAKENHI-PROJECT-23592833 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23592833 |
障害者における摂食・嚥下機能訓練とその評価に関する研究 | 従来、術者の経験により評価、判断されてきた嚥下機能訓練の進行度合いを客観的に提示することを目的として、正常有歯顎者と障がい者の試験食品嚥下時の内視鏡画像記録および嚥下音記録を行った。これらの結果を分析し、新たな診断基準を設定した。嚥下音記録から、嚥下の有無、誤嚥の有無の診断を行わせ、その診断精度を求めたところ、正診率は83%であり、スクリーニングテストとしての有用性が確認できた。従来、術者の経験により評価、判断されてきた嚥下機能訓練の進行度合いを客観的に提示することを目的として、正常有歯顎者と障がい者の試験食品嚥下時の内視鏡画像記録および嚥下音記録を行った。これらの結果を分析し、新たな診断基準を設定した。嚥下音記録から、嚥下の有無、誤嚥の有無の診断を行わせ、その診断精度を求めたところ、正診率は83%であり、スクリーニングテストとしての有用性が確認できた。I目的本研究の目的は、嚥下機能の改善の可能性を客観的に提示することであり、従来、術者の経験により評価、判断されてきた嚥下機能訓練の進行度合いを客観的に提示することである。このことは、多職種がかかわることの多い摂食嚥下リハビリテーションにおける共通認識を持った嚥下機能訓練の進行度合いの評価が可能となるものと考える。II方法若年健常有歯顎者5名および嚥下機能訓練を実施している嚥下障害患者3名を被験者とした。咀嚼試験の際の姿勢は、日常、患者が食事に取っている食事姿勢とする。嚥下試験においては、機能訓練効果の結果、無理なく嚥下できることが確認された食品あるいは同様のテクスチャーを有する試験食品、患者あるいは保護者が摂食可能性評価を希望する食品を嚥下試験食品として嚥下試験を行う。嚥下運動時の内視鏡検査には、経鼻的に挿入した耳鼻咽喉科電子ファイバースコープを用いる。嚥下音の観察には、生体信号検出ユニットと加速度型心音マイクを用い、甲状軟骨より側方3cmの部位に両面テープと粘着テープで固定することで聴取する。また、嚥下試験時の頭部の動きは、今回購入した高解像度ビデオカメラにて記録し、内視鏡画像、嚥下音と共に4チャンネル画像処理システムに同時記録する。III結果内視鏡で嚥下運動を記録した際に、ホワイトアウトが観察されるが、これは、嚥下第1音発生と同時期であることが観察できた。また、喉頭の挙上開始と嚥下第一音の発生が同時期であることが観察できた。また、正常嚥下では、嚥下第1音発生に引き続き嚥下第2音が発生し、喉頭蓋付近には食塊の残留が認められなかったが、嚥下障害を有する患者においては、梨状陥凹や喉頭蓋周辺に食塊が残留しており、誤嚥を来しやすい状況になっていることが観察できた。I目的本研究の目的は、嚥下機能の改善の可能性を客観的に提示することであり、従来、術者の経験により評価、判断されてきた嚥下機能訓練の進行度合いを客観的に提示することである。II方法正常有歯顎者5名、障がい者5名を被験者として、試験食品嚥下時の内視鏡画像記録および嚥下音記録を行った。嚥下運動時の内視鏡検査には、経鼻的に挿入した耳鼻咽喉科電子ファイバースコープを用いた。嚥下音の観察には、生体信号検出ユニットを介して超音波診断装置に接続した加速度型心音マイクを用い、甲状軟骨より側方3cmの部位に両面テープと粘着テープで固定することで聴取した。内視鏡画像データおよび嚥下音波形データを今回購入予定の高解像度ビデオデッキを介してデジタル画像データとして、4チャンネル画像処理システムを有するパーソナルコンピュータに取り込み、擬系列の分析を行った。また、嚥下試験時の頭部の動きは、今回購入予定の高解像度ビデオカメラにて記録し、内視鏡画像、嚥下音と共に4チャンネル画像処理システムに同時記録した。さらに、歯科医師30名を被験者として、我々の規定した診断基準を元に、嚥下音記録から、嚥下の有無、誤嚥の有無の診断を行わせ、その診断精度を求めた。III結果と考察内視鏡で嚥下運動を記録した際にホワイトアウトが観察されるが、これは、嚥下第1音発生と同時期であることが観察できた。正常嚥下では明確な2音が観察されるか、2音を合わせた持続時間が316msec以上であった。また、誤嚥時には、明確な咳の音波形を記録するか、呼吸に対応した小さな波形が観察された。以上の結果を基に設定した診断基準の正診率は83%であり、スクリーニングテストとしての有用性が確認できた。 | KAKENHI-PROJECT-19592256 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19592256 |
複言語・複文化活動を通した学びの共同体の構築と有効性:外国語系学部と地域の協働 | 以下のサブテーマにおいて、実践共同体におけるプロジェクトの実践及び効果の評価を試みた:1)英語指導実践:教職志望の大学生が、近隣の小学校において英語活動に参加した際の活動記録や反省会の記録インタビューによって効果を検証し論文を執筆した。;2)中国語プロジェクト:ゼミの学生を対象に、協同学習の手法で中国語による街頭アンケートを実施した。アンケートの作成、翻訳、口頭練習、実践までの過程において、ミニッツペーパおよび振り返りシートを用いて教育効果を測定し、実践の改善点についても分析を加えた。;3)町おこし:福井県越前町熊谷地区等のフィールドミュージアム活動では、引き続き学芸員資格課程履修生、および公共政策ゼミ生が参加し、地域課題の解決に向けた活動を通した異文化コミュニケーション能力、課題解決能力の向上について視覚化を試みた。;4)地域高大連携:地元足羽高校中国語研究会学生と研究分担者が指導する学生、院生が高大共同で活動に参加し、リーダーシップ、サポーターシップ、協調性からその変化を観察した。;5)生態学:「昆虫食」をテーマに卒論を執筆していた学生とともに、東大阪大学で開催された「昆虫料理教室」に参加し広い視野で昆虫食をとらえた卒論を書くことができた。;6)文化遺産の継承教育:今年度もカナダ移民を資源化した地域再生事業をおこなう和歌山県美浜町三尾地区とカナダの日系人社会をつなげるグローカルな学生事業を展開した(例;トロントの日系文化会館、和歌山県人会との共催による日英二言語での動画の上映会、英語「語り部ジュニア」養成講座の合同企画、日系カナダ人のアテンド通訳) ;7)評価:本研究の評価を行うために、学習の動機付けやエンゲージメント、学習方略、異文化理解、ジェネリックスキル等を測定する質問紙を開発し、2019年度の実践での実施、分析の準備を行った。実践を行うフィールドの開拓は進み整備されつつある。具体的な成果としては、卒論やその他の制作物、学会発表等で視覚化されてきている。生態学プロジェクトでは学外活動によって、学生のモチベーションや卒業論文の質の向上が確認され、特に、卒業論文に関しては、規定の16000文字をはるかに超える34000文字の秀逸な論文となった。英語指導に関するプロジェクトに関しては、新たな地域や教育機関が参入し学びのフィールドが拡大された。文化継承教育に関するプロジェクトでは、学生によるプロジェクトの実施にとどまらず、共通の課題意識をもつ国内外の関係者とのネットワークが広がりつつあり、発表の機会や共同研究の萌芽につながり始めている。プロジェクトによっては継続的なテーマで実践に関わることができるフィールドの開拓ができた。中国語プロジェクトは、異なる中国語能力や文化的知識をもつ学生同士が学びの共同体を構築し、中国語による街頭アンケートを行ったことにより、他人と協同する力や中国語でのコミュニケーション能力の醸成に一定の効果があることが看取された。各プロジェクトに参加した学生の学びの成果を、統一の指標での効果が検証していくため、プロジェクト間で共通に測ることができる系統だった評価方法を開発した。さらにプロジェクトによって働きかけた各共同体(児童、地域、受益者、連携者、当事者)に対しても、取り組みが与えた効果を系統的に検証するために、個々のフィールドに適した評価方法を検討している。今後の方策として、引き続き各共同体において複言語活動プログラムの改善を試みながら実践を行いつつ、教育効果を測定する指標を用いて実践活動への参加学生の学び、及び共同体の変容について検証し、成果をまとめ報告する。また新たな形での学びの共同体の開拓可能性を探る。具体的には以下の方法で上記の方策を実現させる。1)実践を進めつつ、包括する形での枠組み(学びの共同体の構築、学習成果の評価)を考える。その実践内容や過程を共有し合う機会を持ち、お互いに示唆を得る。;2)プロジェクトの効果を客観的にする指標として2018年度に開発された共通尺度を用いて、プロジェクトの効果を検証する。;3)実践参加経験が、参加学生、地域、児童の成長等、活動共同体に与えたインパクトなど、各活動に特化した活動効果を評価するために、コンセプトマップ、インタビューやフィールドノート、ルーブリック、アンケートなどを用いて質的なデータを収集し、分析を試みる。;4)複数の分野の教員と学生が既に開拓済みのフィールドや、既に有する資源や機会を生かして協働プロジェクトの可能性を検討し試みる(例:昨年度実施した高大連携現地活動を拡大し、参加の効果や域に与えた影響についての評価を試みる。また、多言語多文化共生を目指して外国語での絵本の読み聞かせプロジェクトを既に実施されているイベント等で試み、今後の活動方法を検討し、新たな活動共同体を開拓する);5)各実践活動の評価結果を、学内外の学会や研究会で発表し、論文や報告書にまとめる。以下のサブテーマにおいて、複言語・複文化活動を通した地域貢献につながる実践共同体を構築し、プロジェクトの実践を試みた。その結果、プロジェクト型学習からの学生が得た学びや共同体側に与えた効果視覚化及び検証を試みた:1)英語指導実践:教職志望の大学生有志が、近隣の小学校において英語活動を実施し、参加学生の活動記録や反省会の記録インタビューによって効果を検証し、学会で発表した。実践共同体に与えた影響については、活動内容のビデオ観察や、参加児童による授業の振り返りを分析した;2)中国語プロジェクト:嵐山公園亀山地区にて、中国語圏からの訪日観光客を対象に中国語で、当該観光客が旅行中に言語面で感じた困難、問題点について聞き取り調査を行った。学びの過程を、振り返りシートを用いてインタビューを行った;3)町おこし:福井県越前町熊谷地区等のフィールド | KAKENHI-PROJECT-17K02907 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K02907 |
複言語・複文化活動を通した学びの共同体の構築と有効性:外国語系学部と地域の協働 | ミュージアム活動に、学芸員資格課程履修生、および公共政策ゼミ生が参加し、地域課題の解決に向けてリーダーシップ、サポーターシップ、協調性から評価した;4)生態学:徳島県名西郡神山町における有機農法を用いて生産した野菜を地域で消費するFood Hubプロジェクトや、兵庫県豊岡市コウノトリの郷公園での日本で地域絶滅したコウノトリの野生復帰の取り組みについてのインタビュー調査を行い、「地産地食」の取り組みや「生物の絶滅」についての卒論が作成された;5)文化遺産の継承教育:戦前からカナダへ出稼ぎ移民を輩出してきた和歌山県美浜町三尾地区にて、地域の住民や行政・教育関係者またカナダの日系団体との連携し、学生が国内外で聞き取り調査を実施した。成果を日英二言語での動画のYoutubeでの公開及び国際学会でのポスター発表を実施した;6)PBLの実践手法の確立の試み:大学コンソーシアム京都のFDフォーラムで、「PBLの組織的な運用・実践」という分科会を運営した。実践を行うフィールドの開拓は進み整備されつつある。具体的な成果としては、卒論やその他の制作物、学会発表等で視覚化されてきている。英語指導に関するプロジェクトに関しては、新たな地域や教育機関が参入し学びのフィールドが拡大された。文化継承教育に関するプロジェクトでは、時宜的に美浜町の日ノ岬・アメリカ村再生事業が本格化し、運営団体としてのNPOも立ち上がるなかで、「美浜町と京都外大の連携協力に関する協定」を締結したり、美浜町およびカナダ、トロントでの研究・教育活動の枠を広げることが実現するなど、飛躍的な進捗も見られた。しかしながら、各プロジェクトに参加した学生の学びの過程を示す記録は、インタビューやアンケートなどで質的なデータは蓄積されているが、実践参加による学生の学びの成果を、プロジェクト間で共通に測ることができる系統だった評価方法が確立されていないので、統一の指標での効果が検証されていない。さらにプロジェクトによって働きかけた各共同体(児童、地域、受益者、連携者、当事者)に対しても、取り組みが与えた効果を系統的に検証する指標も開発することができていない。またプロジェクトによっては継続的なテーマで実践に関わることができるフィールドの開拓ができていない。中国語のプロジェクトでは、中国語の街頭インタビューにおいてアンケートの目的を、中国語圏からの観光客の消費傾向やニーズに応えるために必要な取り組みを把握することに絞るべきか現在検討中である。以下のサブテーマにおいて、実践共同体におけるプロジェクトの実践及び効果の評価を試みた:1)英語指導実践:教職志望の大学生が、近隣の小学校において英語活動に参加した際の活動記録や反省会の記録インタビューによって効果を検証し論文を執筆した。;2)中国語プロジェクト:ゼミの学生を対象に、協同学習の手法で中国語による街頭アンケートを実施した。 | KAKENHI-PROJECT-17K02907 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K02907 |
イノベ-ションと企業価値-医薬品産業の研究- | 日本の大手医薬品企業は2000年以降、大型合併・企業結合、海外のバイオベンチャ-の買収を展開してきた。2000年以降の10年間の期間について経営分析を行った結果、大手医薬品企業の収益性は向上しておらす、ガバナンスコストやのれんの発生が収益性の低下をもたらしたと考えられる。日本の大手医薬品企業は2000年以降、大型合併・企業結合、海外のバイオベンチャ-の買収を展開してきた。2000年以降の10年間の期間について経営分析を行った結果、大手医薬品企業の収益性は向上しておらす、ガバナンスコストやのれんの発生が収益性の低下をもたらしたと考えられる。本年度は欧州のバイオテクノロジー企業、とりわけ、ユニークな発展を遂げているフランス・バイオテクノロジー企業の生成と発展の論理について文献研究を行った。フランス・バイオテクノロジー企業の代表格であるTransgeneを考察することにより、次のことが明らかとなった。Transgeneは薬効探索を確立し、バリューチェーンの支点であるフェーズIIまでも自社で行い、成功確率を高めることにより、大手製薬企業と提携し、その提携をもとに資本市場からの資金調達を行うという資金の循環が形成されている。このことは、株式市場からの資金調達はバイオテクノロジー企業がコンピタンスを強化した結果として生じるのであって、こうした資金循環が生じるためには、まず、サイエンスを強化し、薬効探索を強固にすることである。このような条件がそろって初めて、資本市場からの資金調達が可能になるのである。こうした点を踏まえて、日本のバイオテクノロジー企業を取り巻く環境についてみると、日本の資本市場ではバイオテクノロジー企業に資金を融資するための仕組みが整備されていないことがバイオテクノロジー企業の発展の桎梏あるいはファイナンス・ギャップとして指摘されている。もちろん、融資の仕組みが重要であることは否定できないが、今後、日本のバイオテクノロジー企業が発展していくためには、融資を受けるための前提として、どのようにして研究の質を高め、薬効探索を高めるようなマネジメントを実施していくのかが課題であるといえよう。本年度は、医薬品産業を基礎づけているバイオテクノロジーの事業化について研究した。バィオテクノロジーは遺伝学、免疫学、分子生物学、細胞生物学、構造生物学の原理を適用した技術であり、未だ十分な研究がなされておらず、その成果を期待することが難しい技術である。一方、バイオテクノロジー産業.(医薬品産業を含む)は、専門化した知識が重要なインプットの産業であることから、バイオテクノロジーに関する知識を事業化するには次のような課題があることがわかった。第1に、科学者はセレンディピティ(serendipity:思わぬものを偶然に発見する能力)、自己組織化(self-organizing)、自己言及(self-reference)を重視している。このことは、彼らの知識を事業化するに際して、技術移転機関(technology-transfer offices)が関与すると、この機関が科学者のニーズを十分に理解できず、利益志向で動くことになり、科学者との間にコンフリクトを発生させる。第2に、バイオテクノロジーの発生をみると、バイオテクノロジーは遺伝学と医学研究のような科学における軌道を変更して生み出されたことから、科学者の研究の軌道についても研究しなければならない。第3に、バイオテクノロジー知識の事業化は、サイエンスやテクノロジープッシュがイノベーションの主要な推進力(driver)となっている。しかも、テクノロジー志向であるために未だ市場が存在しない。したがって、そのような状況で生み出された知識については、産業界からすれば、事業化できるという確証を得ることが必要であり、その確証が得られれば、次のプロセスに移行することができる。その意味で、バイオテクノロジーに関する知識は、徹底的な探索と学習プロセス(probe-and-learn process)が求められることから、産業界としてもどのようにして徹底的な探索を行うのかが課題となる。現在、会計学の分野で企業評価を行うためには、企業価値の測定が重視されている。企業価値は、将来キャッシュフローを資本コストで資本還元した現在価値で算出される。しかし、将来キャッシュフローと資本コストは予測の数値であるために、企業価値そのものも予測の範囲にすぎない。しかも、企業価値で測定した場合、業界や企業の特性も考慮されていないために、実態から乖離する傾向がみられる。そこで、本研究では、伝統的な手法で企業評価を行うことにした。その指標は、売上高営業利益率である。この指標は、企業が売れる商品をいかにして生み出して利益を上げているのかを示す指標である。今回の研究では、2005年に合併して誕生したアステラス製薬と経営統合した第一三共に注目した。両社とも合併ないし統合後、売上高は約2倍上昇した。売上原価が売上高に占める売上原価率は、両社とも30%前後で推移している。売上高販管費率についてみると、、アステラス製薬では45%前後で推移しているのに対して、第一三共では、55%前後で推移している。このため、アステラス製薬の売上高営業利益率は25%前後で推移しているが、第一三共では、15%前後で推移していて、両社には約10%の差が生じている。また、第一三共は、2008年度にインドのジェネリック医薬品企業であるランバクシー・ラボラトリーズを買収したために、2009年度には売上高販管費率が64%に上昇し、その結果、売上高営業利益率は10.5%にまで低下している。このように大型合併や統合により、両社には収益性においてかなりの開きがみられており、第一三共では、経営統合や合併にともない、統治費用(ガバナンスコスト)が発生していると推察される。統治費用はどのような原因によって発生したのか、両社の経営組織を考察することが残された課題である。 | KAKENHI-PROJECT-22530393 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22530393 |
イノベ-ションと企業価値-医薬品産業の研究- | バイオテクノロジー分野はIT分野と比べて未だ未解明な領域が横たわっている。バイオテクノロジー分野の研究者にはセレンディピティが重視されており、科学者にとっては、バイオテクノロジーの知識の事業化とは違和感があるように思われる。一方、産業界からすれば、バイオテクノロジー分野の知識の事業化が経済成長の推進力になるという考えがある。このように相反する両者の論理をどのような指標(数値)で捉えることができるのか、未だ方向性が定まっていない。24年度が最終年度であるため、記入しない。経済の活性化のためにバイオテクノロジー分野の知識の事業化だけに重点を置いた政策を推進していくと、知識の源泉としての大学が衰退することになる。まず、大学の研究者の発見・発明を向上させるための仕組みが求あられる。また、大学の知識の事業化に対して研究者がどのように理解しているのかの解明も求められる。しかし、科学が複合化・システム化している今日、大学の知識を事業化しないと経済は衰退することになる。まさに、大学と産業界の相反する両者をどのような論理で統一化するのかが今後の課題である。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22530393 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22530393 |
樹状細胞を標的とした上気道粘膜ワクチン開発-上気道炎と頭頸部癌への応用- | ケモカインCCL20は、樹状細胞の粘膜へ誘導させる作用を有することがわかっている。免疫応答の誘導や制御において、樹状細胞は中心的役割を担っているため、樹状細胞をターゲットにした免疫療法やワクチンは効果的であると考えられる。CCL20の鼻粘膜樹状細胞、および鼻粘膜免疫応答への影響について検討した。マウスに対しリコンビナントCCL20 10μgを経鼻的もしくは経腹腔的に投与し、2日後に鼻粘膜を採取し、免疫組織化学およびフローサイトメトリ?にて樹状細胞について解析した。次にCCL20投与後のマウスに対して、インフルエンザ菌のP6外膜タンパクにて経鼻免疫を行ない、抗原特異的免疫応答について解析した。その結果、経鼻的CCL20投与後、粘膜免疫誘導組織であるNALT(nasal-associated lymphoid tissue)中のCD11c^+樹状細胞が増加した。T細胞、B細胞への影響は明らかではなかった。経鼻免疫後、興味あることに経鼻的CCL20投与では抗原特異的免疫応答が増幅させた。このことからCCL20による樹状細胞をターゲットにした新しい免疫療法・ワクチンの可能性が示唆された。ケモカインCCL20は、樹状細胞の粘膜へ誘導させる作用を有することがわかっている。免疫応答の誘導や制御において、樹状細胞は中心的役割を担っているため、樹状細胞をターゲットにした免疫療法やワクチンは効果的であると考えられる。CCL20の鼻粘膜樹状細胞、および鼻粘膜免疫応答への影響について検討した。マウスに対しリコンビナントCCL20 10μgを経鼻的もしくは経腹腔的に投与し、2日後に鼻粘膜を採取し、免疫組織化学およびフローサイトメトリ?にて樹状細胞について解析した。次にCCL20投与後のマウスに対して、インフルエンザ菌のP6外膜タンパクにて経鼻免疫を行ない、抗原特異的免疫応答について解析した。その結果、経鼻的CCL20投与後、粘膜免疫誘導組織であるNALT(nasal-associated lymphoid tissue)中のCD11c^+樹状細胞が増加した。T細胞、B細胞への影響は明らかではなかった。経鼻免疫後、興味あることに経鼻的CCL20投与では抗原特異的免疫応答が増幅させた。このことからCCL20による樹状細胞をターゲットにした新しい免疫療法・ワクチンの可能性が示唆された。樹状細胞を標的として、すなわち生体内の樹状細胞を活性化することにより効率的に免疫応答を誘導しようという取り組みを行なってきており、非常に有効な戦略であることが、これまでの研究で明らかとなった。今回は樹状細胞そのものを投与した場合に免疫応答が誘導されうるかについて検討した。樹状細胞の細胞株を使用した。in vitroで樹状細胞をインフルエンザ菌の外膜タンパク抗原P6で刺激し、細胞をマウスに対し、経鼻的に投与し、P6特異的免疫応答について検討した。その結果、抗体価の上昇はほとんどなかったが、興味あることにインフルエンザ菌感染は抑制された。その機序として細胞傷害性T細胞の関与が示唆された。また樹状細胞を培養した後の培養上清からexosomeを抽出、精製し、これを経鼻投与することで抗原特異的免疫応答が誘導されうるかについて検討した。その結果、exosomeを投与した場合にはP6特異的抗体価の上昇を認め、インフルエンザ菌感染も抑制された。Exosomeのプロテオーム解析は今後の検討課題であるが、新しい粘膜ワクチンとなりうることが示唆された。樹状細胞を標的として、すなわち生体内の樹状細胞を活性化することにより効率的に免疫応答を誘導しようという取り組みを行なってきており、非常に有効な戦略であることが、これまでの研究で明らかとなった。樹状細胞の増殖因子であるFlt3Lを経鼻的もしくは経腹腔的にマウスに対し投与すると、粘膜免疫誘導組織であるNALTにおいて樹状細胞が著明に誘導された。興味あることに経鼻、腹腔といった投与ルートの違いにより誘導される樹状細胞サブセットが異なっていた。次にFlt3L投与後に、インフルエンザ菌の外膜タンパクP6を経鼻投与すると、Flt3L経鼻投与群において有意にP6特異的免疫応答が誘導され、鼻咽腔からのインフルエンザ菌の排除も促進された。以上のことから、Flt3L経鼻投与は新しい経鼻ワクチンストラテジーとなることが示唆された。免疫応答の司令塔である樹状細胞の活性化を介して、感染予防に有効な免疫応答を誘導しうるような経鼻ワクチンプロトコールの作成を試みた。樹状細胞の増殖因子であるFlt3Lをマウスに対し、単回経鼻投与すると上気道の粘膜免疫誘導組織であるNALTにおいて、成熟樹状細胞が増加した。興味あることに、経腹腔免疫でも樹状細胞は誘導されたが、投与方法により、誘導される樹状細胞サブセットが異なっていた。次にFlt3L投与後にインフルエンザ菌の外膜タンパクP6で3回経鼻免疫を行ない、抗原特異的免疫応答および鼻咽腔からのインフルエンザ菌排除効果について検討した。その結果、経鼻Flt3L+経鼻P6投与により粘膜系IgAおよび全身系IgGが誘導され、インフルエンザ菌のクリアランスも促進された。Flt3Lの経鼻アジュバントとしての有用性が示唆された(Vaccine 2010)。2.NKT細胞と樹状細胞による免疫誘導NKT細胞は樹状細胞の成熟を促進させ、両者の双方向性の細胞間相互作用は免疫応答において重要である。 | KAKENHI-PROJECT-20592002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20592002 |
樹状細胞を標的とした上気道粘膜ワクチン開発-上気道炎と頭頸部癌への応用- | NKT細胞のリガンドであるa-GalCerをアジュバントとして用い、抗原P6とともに経鼻免疫を行ない、抗原特異的免疫応答について検討した。その結果、NALTにおいてNKT細胞および樹状細胞の増加を認め、両者の細胞間協調の場がNALTであることが示唆された。a-GalCerをアジュバントとして用いることで強力な免疫応答が誘導され、インフルエンザ菌の排除効果も著明であった。新しい経鼻ワクチンの可能性が示唆された(Vaccine 2010)。 | KAKENHI-PROJECT-20592002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20592002 |
網膜疾患モデル動物を用いた網膜内神経ステロイドの産生と視機能調節機能の解析 | 失明などの重篤な障害を引き起こす網膜変性疾患は、神経細胞の障害が進む原因不明の疾患であり、その多くは有効な治療がない.本研究は、神経変性疾患の研究につながる基礎的研究と言う位置づけで、網膜における神経ステロイドの役割を分子生物学的および組織化学的手法を用いて解析を行った.様々な神経ステロイドを合成する酵素の網膜内での局在を調べるための抗体を作製し、正常な網膜における酵素の発現を調べた.これらの結果は、今後網膜変性疾患のモデル動物などを用いた研究結果との比較解析などを行うことにより、網膜変性疾患の原因究明、治療法の確立などへと展開することが期待できる.失明などの重篤な障害を引き起こす網膜変性疾患は、神経細胞の障害が進む原因不明の疾患であり、その多くは有効な治療がない.本研究は、神経変性疾患の研究につながる基礎的研究と言う位置づけで、網膜における神経ステロイドの役割を分子生物学的および組織化学的手法を用いて解析を行った.様々な神経ステロイドを合成する酵素の網膜内での局在を調べるための抗体を作製し、正常な網膜における酵素の発現を調べた.これらの結果は、今後網膜変性疾患のモデル動物などを用いた研究結果との比較解析などを行うことにより、網膜変性疾患の原因究明、治療法の確立などへと展開することが期待できる.網膜変性疾患は,失明などの視機能障害を引き起こす神経変性疾患の一つであり,その主な原因は網膜神経細胞のアポトーシスである。これらの網膜変性の発症機序の解明や,神経細胞の保護・再生療法の開発には,モデル動物系統の確立や,実験的に網膜変性を引き起こす手法などを通して研究が進められているが,神経ステロイドが網膜変性に対してどのような作用機序で関与しているのかについては,未だ十分な解明には至っていない。本研究では,網膜内で産生される神経ステロイドの一連の代謝経路を統合的に解析し,網膜疾患モデルにおける神経ステロイドの産生およびその変化をとらえることによって,網膜変性疾患の作用機序と網膜内神経ステロイドの連関,さらに神経ステロイドの視機能調節に果たす役割を明らかにすることを目的としている。本年度においては,まず正常ラット網膜を用いて各種ステロイド代謝酵素の局在を明らかにするために,これまでにウサギに免疫することによって得た抗血清を精製し,その抗体の特異性について検討を行なった。これまでに得た抗ステロイド代謝酵素抗体は,aromatase,5α-reductase type I,type II,5β-reductase,3α-hydroxysteroid dehydrogenase(3α-HSD),3β-HSD,CYP17であり,それぞれ動物組織ホモジネートを用いたウエスタンブロット法を行なった。また,5α-reductaseはtype I,IIといったisoformが子在するため各抗体の交差性の確認に,培養細胞にそれぞれのステロイド代謝酵素を強制発現させる系を作成し,それらを用いたウエスタンブロットにより検討をおこなっており,これによって抗体を用いた免疫組織化学法により各種ステロイド代謝酵素の網膜における発現,局在等を明らかにすることが可能となる。さらに胎生期からの一連の発生過程における神経ステロイドの役割,変性網膜と正常網膜との比較解析などから神経変性疾患の研究につながる基礎的研究として重要な意義があると考える。失明などの重篤な視機能障害を引き起こす網膜変性疾患は、アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患と同様に神細胞死の常によって発症して進行性に神経細胞の障害が進む因不明の疾患でありその多くは有効な治療がない。本研究では、近年アルツハイマーの研究などで大きな注目を集めているように神経変性疾患に見られるステロイドの脳内神経細胞の保護作用が、網膜変性疾患に対しても当てはまり同様な作用をステロイドが発揮するのではないかという視点から、網膜における神経ステロイドの割および性疾患における神経ステロイドの作用機序について、分子生物学および組織化学的手法を用いて解析することを目的としている。本年度では、正常ラット網膜を用いて各種ステロイド代謝酵素の局在を明らかにするために、これまでにウサギに免疫することによって得た抗血清を精製し、その抗体の特異性について検討を行なった。これまでに得た抗ステロイド代謝酵素抗体は、aromatase, 5α-reductase type I, type II, 5β-reductase, 3α-hydroxysteroid dehydroenase(3α-HSD)3-HSD, CYP17であり、それぞれ動物組織ホモジネートを用いたウエスタンブロット法を行なった。また、5α-reductaseはtype I, IIといったisoformが存在するため各抗体の交差性の確認に細胞にそれぞれのステロイド代謝酵素を強制発現させる系を作成し、それらを用いたウエスタンブロットにより検討をおこなっており、これによって抗本を用いた免疫組織化学法により各種ステロイド代謝酵素の網膜における発現、局在等を明らかにすることが可能となる。さらに胎生期からの一連の発生過程における神経ステロイドの役割、変性網膜と正常網膜との比較解析などから神経変性疾患の研究につながる基礎的研究として重要な意義があると考える。これらの正常網膜での結果を基にして、網膜変性疾患のモデル動物などを用いて、網膜変性過程におけるステロイド代謝酵素と産生される神経ステロイドの関与、作用機序の解明へと展開していくことを計画している。 | KAKENHI-PROJECT-19791284 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19791284 |
ファージを用いた細菌間コミュニケーションの特異的な制御方法の確立 | 水処理現場における課題である窒素除去効率の改善には、複合系における特定細菌のシグナル伝達を活性化し、細菌間コミュニケーションを促進させることが重要となる。しかしながら、集団中の特定細菌のみのコミュニケーションを促進する手法は確立されていない。これまでの研究成果から、溶菌ファージによって特定細菌の膜小胞産生・シグナル放出を誘導する可能性が見出された。そこで本研究では、溶菌ファージを用いて、複合系中の特定細菌のコミュニケーションを制御する方法の確立を目指す。水処理現場における課題である窒素除去効率の改善には、複合系における特定細菌のシグナル伝達を活性化し、細菌間コミュニケーションを促進させることが重要となる。しかしながら、集団中の特定細菌のみのコミュニケーションを促進する手法は確立されていない。これまでの研究成果から、溶菌ファージによって特定細菌の膜小胞産生・シグナル放出を誘導する可能性が見出された。そこで本研究では、溶菌ファージを用いて、複合系中の特定細菌のコミュニケーションを制御する方法の確立を目指す。 | KAKENHI-PROJECT-19J20550 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19J20550 |
オーストラリアの乾燥環境勾配に沿った染色体数減数現象の解析 | 29年度は、9月に南オーストラリア州、クイーンスランド州、ニューサウスウェールズ州にて、現地調査と試料の採集を行った。南オーストラリアでは、28年度にサンプリングができなかった分布域の北部および西部の半島部を中心に調査と試料の採集を行った。これらの試料は28年度に採取した試料とともにブラキコーム・リニアリローバ複合体の系統解析に使用した。29年度に採取したサンプルを加えた結果は、葉緑体DNA10,000bpによる系統樹、核DNAのITS領域による系統樹ともに28年度に得られた結果と矛盾することはなく、他殖型でn=2の染色体数を持つブラキコーム・ダイクロモゾーマティカが他の植物と基部で分かれて姉妹群となるものであった。クイーンスランド州、ニューサウスウェールズ州では東海岸地域を中心にn=9の染色体数を持つ植物3種と、西部の乾燥地域を中心にn=36を持つ植物6種をサンプリングし、DNA解析用、RNAseq解析用のサンプルと種子を採取した。28年度の採取したリニアリローバ複合体以外の同属植物の21種を加えた系統解析を行った。外群にはB. rigidulaを用いた。その結果、リニアリローバ複合体は系統樹の基部で分岐し、他の21種と姉妹群を形成した。この結果は、n=2のブラキコーム・ダイクロモゾーマティカを含むリニアリローバ複合体は、本属の成立の早い時期に分化した植物群から生じたものであり、他の同属植物とは近縁ではないことを意味する。しかし、まだ本年度に採取した他の種を加えていないので結論を出すには時期尚早であり、30年度での解析を待つ必要がある。28年度はサンプルの種子発が順調にいかず、29年7月まで研究期間を延長したが、29年度の野外調査は9月であったために、計画にはほとんど影響はなかった。30年度は、これまで得られた種の系統解析を重点的に行うとともに、RNAseqによるゲノム解析を行う。野外調査は西オーストラリアを中心に行う予定である。本年度は、9月に南オーストラリアでの現地調査およびゲノム解析用の試料採集を行った。現地調査は、n=2のブラキコーム・ダイクロモゾーマティカの分布の中心であるポートオーガスタ周辺で行い、ブラキコーム・ダイクロモゾーマティカを含むブラキコーム・リニアリローバ複合体について、異なる染色体数を持つサイトレースの分布域を網羅する25集団、約500個体をDNA解析用にサンプリングし、また2000個を越える種子の採取ができた。サンプリングした個体の乾燥葉よりDNAを抽出し、各集団の代表個体について葉緑体DNAの約10,000bpと核DNAのITS領域の配列決定を行った。これらの個体については、採取した種子を発芽させ、染色体数の確認を行った。系統解析の結果、葉緑体DNAで得られた系統樹では、n=2の他殖型ブラキコーム・ダイクロモゾーマティカと他のn=4, 5, 6, 8の自殖型植物とは姉妹群の関係にある事が明らかになった。核ITS領域による系統樹も上記の結果を支持するものであった。細胞学的知見と合わせて考えると、先に分化した他殖型が交雑によって染色体を他方の系統に供給することで、染色体数が増加する方向に進化したことが示唆された。また、分岐年代推定の結果、この群の多様化は45万年前以降に起きたことが示された。2月には、メルボルン州立植物園の植物標本庫において、ブラキコーム属植物の標本調査を行った。また、まだ入手していない種については次年度の系統解析用に標本の一部を分譲してもらった。平成28年9月、南オーストラリア調査において採取した個体の生育状況の悪さが、想定以上に採取個体のゲノム解析の結果に影響することが発覚した。研究遂行上、この影響を排除する必要があるため、発芽条件の検討に4ヶ月を要した。29年度は、9月に南オーストラリア州、クイーンスランド州、ニューサウスウェールズ州にて、現地調査と試料の採集を行った。南オーストラリアでは、28年度にサンプリングができなかった分布域の北部および西部の半島部を中心に調査と試料の採集を行った。これらの試料は28年度に採取した試料とともにブラキコーム・リニアリローバ複合体の系統解析に使用した。29年度に採取したサンプルを加えた結果は、葉緑体DNA10,000bpによる系統樹、核DNAのITS領域による系統樹ともに28年度に得られた結果と矛盾することはなく、他殖型でn=2の染色体数を持つブラキコーム・ダイクロモゾーマティカが他の植物と基部で分かれて姉妹群となるものであった。クイーンスランド州、ニューサウスウェールズ州では東海岸地域を中心にn=9の染色体数を持つ植物3種と、西部の乾燥地域を中心にn=36を持つ植物6種をサンプリングし、DNA解析用、RNAseq解析用のサンプルと種子を採取した。28年度の採取したリニアリローバ複合体以外の同属植物の21種を加えた系統解析を行った。外群にはB. rigidulaを用いた。その結果、リニアリローバ複合体は系統樹の基部で分岐し、他の21種と姉妹群を形成した。この結果は、n=2のブラキコーム・ダイクロモゾーマティカを含むリニアリローバ複合体は、本属の成立の早い時期に分化した植物群から生じたものであり、他の同属植物とは近縁ではないことを意味する。 | KAKENHI-PROJECT-16H05762 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H05762 |
オーストラリアの乾燥環境勾配に沿った染色体数減数現象の解析 | しかし、まだ本年度に採取した他の種を加えていないので結論を出すには時期尚早であり、30年度での解析を待つ必要がある。28年度はサンプルの種子発が順調にいかず、29年7月まで研究期間を延長したが、29年度の野外調査は9月であったために、計画にはほとんど影響はなかった。28年度の研究期間を29年7月末まで延長することにより、28年度に計画していた研究は終了した。この延長による29年度計画への影響はほとんどなかった。30年度は、これまで得られた種の系統解析を重点的に行うとともに、RNAseqによるゲノム解析を行う。野外調査は西オーストラリアを中心に行う予定である。 | KAKENHI-PROJECT-16H05762 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H05762 |
動き検出用の高並列拡張命令セットの研究 | 複雑化する動画像符号化の汎用プロセッサでの高速処理実現に向け、小範囲高効率動き探索に対応するSIMD混載のスーパースカラ型データパス構成と、そのメモリ間のボトルネックを軽減するタイル/ライン両アクセス対応キャッシュメモリ構成と、これらの構成に基づく拡張命令を示した。また、構成検討の過程で、小範囲の高効率探索機能を活かす新規の動き検出処理法に加え、分割候補に対する分散特徴を活用したインター予測コスト評価低減法を提案し符号化時間を半減できることを示した。さらに、タイル/ライン両アクセス対応のキャッシュメモリにより、大規模な行列計算における一次キャッシュのミス率が1桁2桁低減されることを示した。【動き検出法改良】高効率ながら既存のSIMD拡張命令による高速化が困難なH.265参照ソフトウェア搭載の動き検出法TZsearchに対し、新たなSIMD拡張命令の追加による高速化法を探った。具体的には、SIMDの高並列性を活かせるように予測による方向限定探索を導入することで疎らな探索の低減を試みた。その結果、圧縮率の低下を2%以下に抑えながら、探索密度を1.5倍以上に高められることを明らかにできた。【タイル・ライン両アクセス対応の一次キャッシュの設計】昨年度示した基本構成にアドレス変換機構を付加することで、処理対象画像の横幅を2のべき乗サイズに収めればプロセッサ側からは従来のラスタ形式データと全く同じアドレス順でアクセス可能になることを示した。また、2ウェイ・ライトスルー構成で論理設計を行った。具体的には、VDECの0.18μm CMOSセルライブラリ使用による論理合成まで行い、性能低下要因となるアドレス割り振り切替とラスタラインアドレス生成ステージのレイテンシを1サイクル以内に抑えられることを明らかにした。【高並列拡張命令セットの制定】最小値抽出命令に次探索のためのロード領域のシフト量設定機能を付加した上でスーパースカラも利用することにしてスクエアサーチの処理時間を評価し直した。その結果、昨年度の結果の倍の従来比3倍以上にまで高速化されることを明らかにできた。また、タイル・ライン両アクセス対応キャッシュのタイルアクセス機能を利用した転置命令を設けることで、DCTや2次元データ処理高速化に有効な転置を既存命令に比べ4倍以上高速化できることを示した。【SIMD型高並列データパスの設計】これまでに制定した拡張命令セットに対応するデータパスの主要部分に位置付けられるキャッシュメモリインタフェースのパーミュテーションネットワーク、高並列処理の中核であるSAD演算部からなるデータパスとその制御回路の両方の論理設計を終えた。【動き検出法改良】現行提案法をベースに以下の2点の改良を試みた.11次探索の高効率化:H.265参照ソフトウェア(HEVC HM8.0)に3階層粗密探索を組み込み1次探索に対する拡張テンプレートの適用法を探ったものの、効果的な適用法を見つけるには至らなかった。2正方形パタンの中心点探索省略: 3×3点の正方形パタンの中心点を省略するデータパス向き8点スクエアサーチを評価し、1割程度演算量が増加するものの、探索精度の低下が生じないことを示した。【タイル・ライン両アクセス対応の一次キャッシュの提案】ラスタ走査とサブブロックアクセスを両立するキャッシュメモリの構成提案と概略設計を行った。1サブブロックアクセス対応の格納形式開発:4×4画素のタイルデータをSkewed Array形式で格納し、16画素幅ラインと4×4画素タイルアクセスの両立とタイル転置機能を提供するキャッシュメモリ構成を明らかにした。2提案キャッシュの論理設計を試み、ミスヒット検出、置換機能の設計上の課題を明らかにした。【SIMD型高並列データパスの基本設計】1高並列拡張命令セット仕様の検討:2サブブロック分の最小値検出を同時実行する命令を定め、1割演算量の増加する8点スクエアサーチと組み合わせても、従来法に比べ1.5倍高速化できることを示した。2高並列SAD演算部構成検討:8画素幅サブブロックとその内包サブブロックの構成ラインに対し,8探索点分(8×8=64並列)のSAD演算とその演算結果の最小値検出とを並行実行可能な構成の基本設計を行った.3レジスタ構成の検討:演算対象レジスタのライン割り当てを基に,最小限の容量のレジスタ(128ビットレジスタ17本)により、可変ブロックサイズ対応のSAD演算が完結できることを示した。【動き検出法改良】8×8を超えるブロックの探索において、探索中心から4ないし8画素以上離れた非近傍探索点に対してサブサンプリング画像を用いる一方、8×8以下のブロックの探索を近傍主体とすることで、参照画像のアクセスレートを23割低減しながら、SAD演算量を数分の一にまで低減できることを明らかにした。【タイル・ライン両アクセス対応の一次キャッシュの設計】通常アクセスモードとタイル・ライン両アクセスモードの切り替え、タイル単位のタグ割り当てによるタグメモリ容量低減などに加え、構成の最適化を進めた。その結果、ダイレクトマップ・4KBの容量の一次キャッシュの論理設計を9割がた終え、30%程度のハードウェア規模増で済むことを示した。【HEVCに対応するSIMD型高並列データパスの設計】これまで検討してきたライン単位の並列処理構成から、既存の汎用プロセッサのSIMD演算機構との共通性の高い8×4ブロック単位のSIMD並列処理をベースとする構成に全面的に見直した。 | KAKENHI-PROJECT-24500059 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24500059 |
動き検出用の高並列拡張命令セットの研究 | 具体的には、ベクトルレジスタのバイト単位のアドレス修飾機能と256ビット単位のアクセスデータのバレルシフト機能、HEVCの大ブロック探索を可能とするベクトルレジスタの8番地までに対する番地間ローテーション機能、ブロック単位のSAD結果を必要なタイミングで書き込み読み出し可能とするFIFO機能などを、既存のSIMDデータパスに追加する構成に変更した。さらに、この構成に基づくSIMD命令とスカラ命令を静的に同時実行するスーパスカラ構成として、論理設計を8割がた完成させた。【高並列拡張命令セットの制定】データパスの設計と並行して8×4ブロック単位のSIMD並列処理をベースとする32ビット語長の拡張命令を一式(8命令)制定した。また、これらの命令を組み合わせることで、x86プロセッサのMPSADBW命令をベースとした探索処理に比べ、45倍程度高速化できることをシミュレーションにより明らかにした。【動き検出法・動き補償法改良】符号化対象ブロックの予測ユニット(PU)候補に対する動き検出の要否を分散値の大小により判定する手法を考案し、符号化の全処理時間を2から3割低減できることを明らかにした。【タイル・ライン両アクセス対応の一次キャッシュの設計】キャッシュラインサイズを4バイトに抑えた簡易版をシンプルスカラシミュレータに組み込み、前年度までに設計した4階層Z-order構成と従来の理想的なMorton-order構成との性能比較を行った。その結果として、4階層構成が理想的なMorton-order構成に劣らない性能を備えていることを明らかにした。【HEVCに対応するSIMD型高並列データパスの設計と高並列拡張命令セットの制定】前年度までに設計した動き検出対応のSIMDデータパスに、4x4サイズのブロックに対応する高効率のDCT演算機構を組み込み、従来のx86プロセッサ構成に比べ4倍以上高速化できることを示した。さらに、追加した高効率のDCT演算機構に対応するDCT演算命令のサブセットを示した。【チップの設計試作】前年度から継続中の論理設計を完了させて、VDECの0.18μmCMOSプロセスによりマスクパタンレイアウトを行った。これにより得た5mm×2.5mmのマスクパタンにより、チップの試作を行った。以下の4つの事情により、目標としたレベルのLSIチップの試作・評価に基づく拡張命令セットの制定と有効性検証が十分にできなかったためである。1昨年度からの構成設計、論理設計の遅れを挽回するだけの設計スキルがなかった。2マスクパタンレイアウトのノウハウが不足していたことから、完成までに当初予定の数倍の時間を要した。3動画像符号化高速化には必要不可欠との判断から追加することとした高効率DCT演算機能の設計が間に合わず、試作チップに組み込めなかった。4納入が年度末にずれ込んだ結果、試作チップの試験を全く行えなかった。複雑化する動画像符号化の汎用プロセッサでの高速処理実現に向け、当初目的の高効率動き検出の確立を、より大きな効果を得るためにインター予測モード適用可否判定の高効率化を含めるまでに研究範囲を拡大した。 | KAKENHI-PROJECT-24500059 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24500059 |
形状仮説および変化点仮説への2重累積和統計量に基づく総合的接近法とその様々な応用 | 従来、統計学の二つの異なるテーマとして研究されてきた形状制約と変化点仮説を統一的に論じた。さらに、単調仮説、凸性仮説、S字性仮説という3種の形状制約仮説に統一的な接近法を与えた。それらはそれぞれ、ステップ、スロープ、変曲点変化モデルに対応する。形状の概要を知ると同時に、変化点を知るのは副作用自発報告や、用量反応解析等の実際問題でも大変有用である。さらに、広く1母数指数分布族を一貫した手法で扱うことに成功した。これらの意味で、真に総合的研究と言える。前年度に行った独立なPoisson系列に対する凹性仮説検定に関する研究の拡張を行った。前年度は凹性検定の完全類に属する統計量のうち、2重累積和に基づく規準化最大対比を取り上げ、帰無仮説の下での完備十分統計量の組を与えた同時分布を、条件付き分布の積へ分解する新たな理論を完成させた。さらに、その理論に基づいて、条件を満たす変数の標本空間とその確率を逐次的に構成する効率の良い正確アルゴリズムを得た。その際、応用場面として、医薬品副作用自発報告のモニタリングを想定したため、時系列の到着間隔は等間隔とした。今年度は、応用場面として、より一般に用量反応曲線の一般線形モデルに対する適合度検定を想定した。この場合、到着間隔に当たる用量水準は一般に不等間隔になり、それへの対処が必要となった。そこで、逐次的に確率分布を構成するための逐次変数に関する不等式の再構成を行った。ここで、逐次変数が不等式を満たす全ての整数として定義できないことが、確率分布の逐次構成法を前年度に比し大変困難なものとしたが、それを解決しソフト化も行った。併せて、用量反応解析で想定されることの多い2項分布への拡張も行った。さらに、次年度に行う予定であった、2元表データプロファイル解析について、大規模データを扱う必要性からストッピングルールの定式化を行い、副作用モニタリングデータに試行的に適用した。これらの結果については、2012年度応用統計学会、2012年度国際計算機学会(20th International Conference on Computational Statistics)で発表すると共に、Prof. F. Pesarin (University of Padova)、Prof. S. Mejza (Poznan University of Life Science)等と研究交換を行った。前年度までに行った独立なPoisson系列に対する凸性仮説に関する研究を、用量反応解析で多用される2項分布系列に拡張し、さらに1母数指数分布族全体に一般化する道筋を付けた。まず、凸性検定の完全類に属する統計量のうち、2重累積和に基づく規準化最大対比を取り上げ、帰無仮説の下での完備十分統計量の組を与えた同時分布を条件付き分布の積へ分解する理論を完成させた。とくに事象の生起する時間あるいは場所が不等間隔の場合を想定し、条件変数を満たす標本空間とその確率を逐次的に計算する効率の良い正確アルゴリズムを得た。逐次的に確率分布を構成する際には、等間隔では問題とならない、逐次変数に関する整数条件を確保するのに様々な工夫を行い、不等式の再構成を行っている。この確率分解定理により、通常困難とされる多重和分を効率よく計算する漸化公式が得られた。当初、研究は等間隔ポアソン時系列を対象として開始したが、今年度は、応用場面としてより一般に用量反応解析を想定したため、変化点推測と同時に適合度検定も対象とした。そこで新たに、適合度検定としてより高い検出力の期待される累積χ二乗統計量の理論を構成し、最大対比統計量との比較を行った。その結果、変化点推測としては最大対比統計量が優れ、適合度検定としては予想通り累積χ二乗統計量の優れることが確認出来た。さらに、これらの統計量の2元表データプロファイル解析への組み込みも行った。これらの成果は、別に記すように海外の国際会議および国内の統計関連学会連合大会その他で発表した他、応用統計学会誌の研究論文として掲載された。従来、統計学の二つの異なるテーマとして研究されてきた形状制約と変化点仮説を統一的に論じた。さらに、単調仮説、凸性仮説、S字性仮説という3種の形状制約仮説に統一的な接近法を与えた。それらはそれぞれ、ステップ、スロープ、変曲点変化モデルに対応する。形状の概要を知ると同時に、変化点を知るのは副作用自発報告や、用量反応解析等の実際問題でも大変有用である。さらに、広く1母数指数分布族を一貫した手法で扱うことに成功した。これらの意味で、真に総合的研究と言える。医薬品副作用自発報告のモニタリングを想定し、独立なPoisson系列の平均に対する凸性仮説とスロープ変化点仮説の検定理論および解析方法に関する研究を行った。凸性検定の完全類に属する統計量のうち、まず、2重累積和に基づく基準化最大対比を取り上げ、それが同時にスロープ変化点仮説に対するエフィシェントスコア検定であることを示した。この場合、帰無仮説の下での完備十分統計量は系列の総和と発生時刻を重みとする線形和の組となる。このうち系列の総和だけを与えた条件付き分布は多項分布で、それが相続く2項分布の積に分解されることはよく知られている。しかしながら、総和に併せて荷重和が条件変数となる分布についてよく知られた結果は無い。そこで、成分統計量の2階マルコフ性に基づき、同時分布を条件付き分布の積へ分解する理論を完成させた。 | KAKENHI-PROJECT-23500362 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23500362 |
形状仮説および変化点仮説への2重累積和統計量に基づく総合的接近法とその様々な応用 | これは、単に本ケースの分布を与えたのみならず、このような条件付き分布を求めるための方法論をも与えるものであり、分割表を含め様々な応用場面がある。次に、その理論に基づいて、条件変数を満たす標本空間とその確率を逐次的に計算する効率の良い正確アルゴリズムを得、そのソフト化を行った。副作用自発報告の例では系列の大きさが100に達し、標本空間が爆発して同時分布に基づく解析は不可能であり、この逐次法は不可欠である。これらの途中経過については、2011年度応用統計学会、2011年度国際統計学会(58th Session of International Statistical Institute)で発表するとともに、Prof. L. Hothorn (Leibniz University of Hannover)、Prof. S. Mejza (Poznan University of Life Science)等と研究交換を行っている。「形状制約および変化点仮説への2重累積和統計量に基づく総合的接近法とその様々な応用」について研究し、ほぼ予定通り遂行出来た。本研究は以下に述べる3点に関し、真に総合的研究と言える。(1)従来、統計学の二つの異なるテーマとして研究されてきた形状制約と変化点仮説を統一的に論じた。(2)単調仮説、凸性仮説、S字性仮説という3種の形状制約を統一的に論じた。これらはそれぞれ、ステップ、スロープ、変曲点という3種の変化点モデルに対応する。(3)当初、独立なポアソン系列の変化点解析から出発し、2項分布系列を経て、最終年度には1母数指数分布族へと一般化した。これにより、分布の制約が解消され、分割表解析も可能となった。かかる総合化を可能にしたのは、基礎統計量としての1・2・3重累積和の発見である。これらがそれぞれ、1・2・3階マルコフ性を有することから、系統的、正確、かつ効率の良い検定統計量分布計算のアルゴリズムが得られた。これにより、かかる公式が無ければ法外な年数を要する計算を数分で実行出来ることとなった。さらに本研究は、理論のみならず、変化点解析、用量反応解析という実際的問題に適用でき、有用である。とくに、研究のきっかけとなったポアソン系列の変化点解析は、実際に医薬品機構において副作用自発報告のモニタリングに応用されている。この場合、何らかの理由によって増加傾向となった副作用をいち早く検出すると同時に、その最初である変化点を推測することは極めて大事である。このように、形状制約および変化点仮説の総合化は、応用上も極めて有意義である。なお、単純累積和は統計的工程管理において古くから研究、活用されている。本研究はそれを2・3重累積和に拡張したという意義も有する。統計科学医薬品副作用自発報告のモニタリングを対象として開始した凹性仮説検定を用量反応曲線一般線形モデル適合度検定へ拡張する研究を行った。用量反応曲線としてパラメトリックモデルの提案はいろいろあるが、現実問題に良く適合する例は多くない。とくに、パラメトリックモデルはリスク評価をデータの無い超低用量に外挿する際に多大の誤差を蒙る。この問題は、癌原生動物試験で許容用量を推測する場合に生じる。 | KAKENHI-PROJECT-23500362 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23500362 |
ナノ凝集界面によるコレステリックブルー相の安定化と高速ディスプレイ応用 | コレステリックブルー相(BP)液晶は三次元構造を形成するが、熱的に不安定で限られた温度範囲においてのみ発現する。このBP液晶の欠陥部位に金ナノ粒子を導入することにより、BP発現温度範囲を拡大した。さらに、光学的に等方的であるBP液晶を利用した偏光無依存光変調素子の実現し、カー効果による屈折率変調度を調べ、金ナノ粒子の導入により未導入時比べて大きな屈折率変調が可能であることを明らかにした。本研究では、ブルー相(BP)液晶内の欠陥部位の凝集界面に金ナノ粒子(NP)を分散し、このBPの安定化とその三次元構造を利用した偏光無依存光変調素子の実現を目指した。BP液晶にスパッタリング法を用いてNPを添加し、BPの熱安定性を評価した。金ナノ粒子の添加によって、昇温過程でBPの発現温度範囲が拡大し熱力学的なBPの安定化が確認できた。またBPの発現温度範囲はNPの導入量に比例して拡大しており、高濃度のNPの添加により、BPを不安定化する配向欠陥がより多く排除されたと考えた。一方、過剰にNPを添加した試料ではブルー相I(BP I)の温度範囲は拡大するがブルー相II (BPII)が消失し、BP IとBP IIの単位体積に占める配向欠陥の割合の違いが関係するものと考えられる。等方相、BP I、BP IIおよびコレステリック(Ch)相の各々におけるNPの分散性を、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)の観察により評価した。等方相およびBPI、IIでは、金ナノ粒子のLSPRに起因する明瞭な吸収ピークが観測されたが、Ch相ではその他の相に比べ吸収ピークのブロード化と長波長シフトが起こり、NPの分散状態が各々のキラル相の秩序構造に依存することが明らかとなった。屈折率の電界依存性を評価するために、ファブリ・ペローエタロンの空隙にBP液晶を導入し、BP IIにおいて透過ピーク波長の電界依存性を調べた。その結果、NPの添加の有無にかかわらず、電界印加により屈折率が低下しその変化量は低電界領域においてほぼ電界の2乗に比例するカー効果が確認された.また、NP添加していない場合、電界強度4.4 V/μmでBPからCh相へ転移したのに対して、NP添加BPIIにおいては、電界誘起Ch相転移が見られず、比較的高電界の印加が可能となり、0.011(8.48 V/μm)と大きな屈折率変調が実現できた.コレステリックブルー相(BP)液晶は三次元構造を形成するが、熱的に不安定で限られた温度範囲においてのみ発現する。このBP液晶の欠陥部位に金ナノ粒子を導入することにより、BP発現温度範囲を拡大した。さらに、光学的に等方的であるBP液晶を利用した偏光無依存光変調素子の実現し、カー効果による屈折率変調度を調べ、金ナノ粒子の導入により未導入時比べて大きな屈折率変調が可能であることを明らかにした。三次元螺旋周期構造を有するコレステリックブルー相(BP)の安定化を図り、高速応答性偏光無依存光変調デバイスの開発を目的として研究を行った。先ず、BP液晶の実用化の最大の問題であるBP発現温度範囲の拡大を試みた。手法としては、我々が提案した金属ナノ粒子分散法、すなわち、金、銀、パラジウムなどの金属ナノ粒子をBP液晶に添加することでBPの発現温度範囲を拡大する方法を用い、本年度は、金ナノ粒子の濃度を変化させた場合のBPの発現温度範囲について検討を行った。その結果、BPの発現温度範囲は金ナノ粒子の濃度の増大に伴って拡大することを確認した。また、比較的粒子濃度が低領域においては、BP IIの発現温度範囲がBP Iに比べてより大きく拡大されているのに対し、ある程度以上粒子を添加するとBP IIが消失しBP Iのみの発現温度範囲が拡大することが明らかとなった。BP IIは本来BP Iに比べて不安定であることを考慮すると、金ナノ粒子の濃度が低い場合は安定化効果を顕著に受けるが、濃度が高くなると再びBP IIが不安定になり消失したものだと考えられる。上記安定化手法を用いて、これまで提案したBP液晶の光学的等方性を利用した偏光無依存屈折率変調素子の特性改善を試みた。特に、動作特性の改善のために、駆動周波数により誘電異方性が反転する二周波駆動液晶を用いて屈折率変調範囲の拡大を検討した。また、高分子安定化による屈折率変調範囲の拡大も検討し、特に、光重合時に電界を印加して、前もって格子をひずませることによる特性改善方法を提案し、その有効性を検討した。コレステリックブルー相液晶の実用上最大の問題であるBP発現温度範囲の拡大を、金属微粒子の分散により達成し、その詳細な条件を明らかにしている。さらに、偏光無依存光変調素子を作製し、二周波駆動という新し駆動方法を導入することにより屈折率変調範囲拡大に成功しており、おおむね今年度の目的は達成されたものと考える。今回、微粒子分散によりBP液晶の安定化を図ったが、さらに、高分子安定化手法も検討し、偏光無依存屈折率変調の変調範囲拡大を進める。具体的には、今回予備的な成果を出した、光重合時の電界印加方法の詳細を検討する。今年度、金属微粒子の分散によるBP液晶の安定化が当初予想以上に効率的に結果を得ることができ材料費等の出費を大幅に抑えることが可能となった。そこで、次年度は、当初予定してる波長チューナブルデバイスの作製において、現在長高速応答性を確認しつつあるコレステリック分散がたデバイスの作製も含めて研究を推進する。 | KAKENHI-PROJECT-23656221 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23656221 |
発酵食品の機能性に寄与するアミノ酸代謝物の網羅的解析と機能性食品開発への応用 | 近年,米の消費量の低下が顕著となり,米の用途拡大が求められている。本研究では,新規米麹の開発を目的とし,アジアのさまざまな糖化微生物を用いて調製した米発酵物の成分分析および機能性調査を行った。本年度は,これまでに用いてきた8種類の微生物以外に5種類の糖化微生物による結果を加え,成分分析および機能性評価の結果についてまとめ,用いる微生物種による成分変化の差異や生理活性の有無を調べることにより,各米発酵物の実用性を検討した。成分分析においては,糖化微生物種の近縁性によって糖化能やアミノ酸生成能に相関が見られるかに着目したが,一定の傾向はあるものの例外も存在していることから,一概に法則性があるという結論には至らなかった。機能性評価の一つとして測定したDPPHラジカル活性では,試験した13種の微生物の酢酸エチル抽出物のなかでAs. awamoriに最も強い活性が見出された。また、As. oryzaeの3種で活性が大きく異なり、総ポリフェノール含量と相関することが示された。脂肪分解活性測定においては,M. pilosus,R. oligosporusおよびS. fibrigeraのメタノール画分および水画分に活性が見出された。本結果から,これらの微生物による米の発酵によって,水溶性の脂肪分解活性物質が生成されていることが明らかになった。発酵により生成される物質として知られるアミン化合物の脂肪分解活性を測定したところ,オクトパミンに高い活性が見出されたため,現在,活性物質の探索をアミン化合物に着目して行っている。本研究では、発酵食品の健康機能の機構をアミノ酸代謝物に着目して解明することを目指している。また、新規米発酵食材の開発も同時に進めていく予定である。平成28年度は本研究初年度のため、予備的な研究としてAb. corymbiferaおよびMu. circinelloidesを用いた米発酵物の調製とその成分調査を行い、また、抗酸化活性の再現性を確認した。その結果、Ab. corymbiferaの還元糖量は3mg/g-凍結乾燥物量、Mu. circinelloidesは0.2 mg/g-凍結乾燥物量であった。また、アミノ酸含量に関しては、Ab. corymbiferaが9.7 mg/g-凍結乾燥物量、Mu. circinelloidesは8 .3mg/g-凍結乾燥物量であった。ポリフェノール含量に関しては、Ab. corymbifearは5.2 mg/g-凍結乾燥物量、Mu. cillcinelloidesは9.25 mg/g-凍結乾燥物量であり、これまでの結果をおおよそ再現した。抗酸化活性は両発酵物の酢酸エチル抽出物を用いて、DPPHラジカル消去活性測定法により行い、Ab. corymbiferaのEC50は10.2mg/ml、Mu. circinelloidesのEC50は9.4mg/mlであり、おおよそ再現した。また、28年度はAb. corymbiferaおよびMu. circinelloidesを用いて米麹の試作を行うための準備を行った。来年度には米麹の試作を行い、甘酒等の食品開発に利用できるかの適正試験を行っていき、その製品の成分および機能性解析も実施する予定である。当初の計画では、米発酵物のアミの酸代謝物の網羅的解析を始める予定であったが、28年度には行うことができなかったため、少し遅れていると判断した。本研究では、発酵食品の健康機能の機構をアミノ酸代謝物に着目して解明することを目的とし、新規米発酵食材の開発を同時に進めている。平成29年度は、これまで(29年度以前)に用いていた菌種以外に、醤油コウジカビであるAs.sojae、焼酎コウジカビであるAs. awamori、紅コウジカビであるMo. pilosusの米発酵物を調製し、それらの還元当量、アミノ酸含量、ポリフェノール含量および抗酸化活性を測定した。還元当量に関してはMo. pilosusで最も高く、現在市販されている米麹に用いられているAs. oryzaeに比べても高い値を示した。また、アミノ酸含量に関しては、As. sojaeで高い値を示した。ポリフェノール含量はAs.sojae>Mo. pilosus>As. awamoriの順に高かった。抗酸化活性に関しては、Mo. pilosus>As. sojae>As. awamoriの順であった。マウスを用いた抗肥満作用の検討では、Mu.circinelloidesを用いた発酵物において高い活性があることが分かった。この評価系では過去に抗肥満作用が報告されているAs.oryzaeにおいて活性は見られなかった。よって、Mu.circinelloides発酵物にはAs. ory発酵物には含まれない抗肥満作用成分があることが示唆された。今後は、各米発酵物に含まれる抗酸化活性成分を同定し、アミノ酸代謝物との関連性について考察を行う。また、Mu.circinelloides発酵物に含まれる抗肥満作用成分の探索を培養細胞系およびマウスを用いた実験により行う。本実験についても、アミノ酸代謝物との関連性についての考察を行う。また、本成分の機能性成分としての可能性についても検討する。申請書の計画では、米発酵物の機能性成分とアミノ酸代謝物との関連性を網羅的解析によって明らかにする予定であったが、29年度には開始できなかったため、少し遅れていると判断した。近年,米の消費量の低下が顕著となり,米の用途拡大が求められている。 | KAKENHI-PROJECT-16K16298 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K16298 |
発酵食品の機能性に寄与するアミノ酸代謝物の網羅的解析と機能性食品開発への応用 | 本研究では,新規米麹の開発を目的とし,アジアのさまざまな糖化微生物を用いて調製した米発酵物の成分分析および機能性調査を行った。本年度は,これまでに用いてきた8種類の微生物以外に5種類の糖化微生物による結果を加え,成分分析および機能性評価の結果についてまとめ,用いる微生物種による成分変化の差異や生理活性の有無を調べることにより,各米発酵物の実用性を検討した。成分分析においては,糖化微生物種の近縁性によって糖化能やアミノ酸生成能に相関が見られるかに着目したが,一定の傾向はあるものの例外も存在していることから,一概に法則性があるという結論には至らなかった。機能性評価の一つとして測定したDPPHラジカル活性では,試験した13種の微生物の酢酸エチル抽出物のなかでAs. awamoriに最も強い活性が見出された。また、As. oryzaeの3種で活性が大きく異なり、総ポリフェノール含量と相関することが示された。脂肪分解活性測定においては,M. pilosus,R. oligosporusおよびS. fibrigeraのメタノール画分および水画分に活性が見出された。本結果から,これらの微生物による米の発酵によって,水溶性の脂肪分解活性物質が生成されていることが明らかになった。発酵により生成される物質として知られるアミン化合物の脂肪分解活性を測定したところ,オクトパミンに高い活性が見出されたため,現在,活性物質の探索をアミン化合物に着目して行っている。29年度以降には、米発酵物のアミノ酸代謝物の網羅的解析をダンシルクロライド法を用いて行う。また、発酵物の機能性評価を行い、アミノ酸代謝物と機能性との関連を調査する。また、新規米発酵食品の開発に向け、Ab. corymbiferaおよびMu. circinelloidesを用いた新規米麹製造の最適条件の検討やそれによる機能性の変化についての詳細を調査する。今後、調製した米発酵物の脂質分解活性およびその活性成分の探索を行う。また、マウスを用いた抗肥満作用との関連性について検討する。これらの結果におけるアミノ酸代謝物との関連について討議する。次年度に実施する必要のある実験が発生したため。アミノ酸代謝物の網羅的解析のためのダンシルクロライド試薬の購入のために使用する。 | KAKENHI-PROJECT-16K16298 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K16298 |
細胞支持基盤の弾性調節による初代培養脂肪・肝臓・骨格筋細胞の長期間機能保持の試み | 昨年度までの研究で、3T3-L1脂肪細胞が細胞外基質の弾性を認識し、インスリン刺激に対する応答が変化することを明らかにし、インスリン抵抗性発生のメカニズムの一つとして細胞外基質の弾性という物理的性状が関与することを示した。そこで今年度は、細胞外基質密度という弾性とは別個の物理的性状が脂肪細胞のインスリン応答性に及ぼす影響について調べた。脂肪組織の弾性と一致させたゲルに様々な濃度の細胞外基質を分布させ、3T3-L1脂肪細胞のインスリン応答性およびアディポカイン分泌能を調べた。細胞外基質密度の上昇と共にインスリンシグナルは減弱し、インスリン刺激によるGLUT4の細胞膜挿入も抑制された。また脂肪細胞に慢性炎症が発生し、MCP-1分泌が増加した。以上の結果より、インスリン抵抗性発生のメカニズムの一つとして、密度という細胞外基質の物理的性状が関与することが初めて示された。初代培養細胞に先立ち、継代細胞である3T3-L1脂肪細胞の細胞機能が、細胞外基質の弾性を脂肪組の弾性に合致させることによりどのように変化するか、をまず調べた。脂肪組織の弾性を模したゲル上では、プラスチック・ガラスなどの通常の培養条件と異なり、3T3T-L1脂肪細胞におけるGLUT1発現が完全に消失し、糖輸送担体の発現パターンが初代培養脂肪細胞に類似のものとなった。初代培養脂肪細胞より操作が容易で、より長期間にわたりインスリン刺激への応答性を示す3T3T-L1脂肪細胞において、細胞外基質の弾性を脂肪組織の弾性と一致させることにより初代培養脂肪細胞類似の細胞機能が得られたことから、ゲルを用いることで3T3T-L1脂肪細胞が生体内の脂肪細胞の挙動を再現するツールとなる可能性が示唆された。そこでゲル上の3T3T-L1脂肪細胞におけるインスリン作用を解析した。脂肪組織の弾性に合致したゲル上では3T3T-L1脂肪細胞におけるインスリンシグナル伝達物質の発現が増加し、さらにインスリン刺激によってこれらの分子の活性も増加した。その結果、ゲル上ではインスリン刺激によるGLUT4の細胞膜挿入が増強し、これらの細胞におけるインスリン感受性が増した。2型糖尿病に見られるインスリン抵抗性においては、脂肪細胞におけるインスリン作用が減弱することが知られている。したがって脂肪組織のおけるインスリン抵抗性発生のメカニズムの一つとして、細胞外基質の物理的性状が初めて示された。昨年度までの研究で、3T3-L1脂肪細胞が細胞外基質の弾性を認識し、インスリン刺激に対する応答が変化することを明らかにし、インスリン抵抗性発生のメカニズムの一つとして細胞外基質の弾性という物理的性状が関与することを示した。そこで今年度は、細胞外基質密度という弾性とは別個の物理的性状が脂肪細胞のインスリン応答性に及ぼす影響について調べた。脂肪組織の弾性と一致させたゲルに様々な濃度の細胞外基質を分布させ、3T3-L1脂肪細胞のインスリン応答性およびアディポカイン分泌能を調べた。細胞外基質密度の上昇と共にインスリンシグナルは減弱し、インスリン刺激によるGLUT4の細胞膜挿入も抑制された。また脂肪細胞に慢性炎症が発生し、MCP-1分泌が増加した。以上の結果より、インスリン抵抗性発生のメカニズムの一つとして、密度という細胞外基質の物理的性状が関与することが初めて示された。 | KAKENHI-PROJECT-21650119 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21650119 |
電子線励起による化合物半導体の選択的結晶成長に関する研究 | 本研究はIII-V族化合物半導体結晶の薄膜作製技術と微細加工技術を一体化させて、新しい半導体極微構造の作製技術とその応用分野を開発することを目的としている。この目的に沿ってまず、集束度の極めて高い電子線を励起源とする選択的な結晶成長技術の研究の必要性を述べ、本研究では基板表面を電子線により改質することで電子線照射部分に結晶薄膜の成長を選択的に誘起していく方法を追究することを述べている。具体的には、As系のIII-V族化合物の表面上に、酸化膜が酸化・還元雰囲気中で比較的容易に形成ないし除去できることに着目し、GaAs酸化膜をマスク層として用い、それに電子線照射と化学ビームエピタキシャル法(CBE法)を組み合わせたGaAs系極微構造の作製と物性評価を行った。GaAs酸化膜としては、GaAs(100)基板表面に化学エッチングにより形成される酸化膜、およびGaAs(100)基板にエピタキシャルさせたGaAs層上に酸素雰囲気下で形成される酸化膜、の二種類の酸化膜をマスク層として用いた場合についての選択的成長を検討した。その結果、電子線照射とそれに続く試料の熱アニールによりGaAs酸化膜の選択的な除去が可能であり、そうした特定部分のGaAs成長速度が相対的に増大することを見出した。そして、この現象の実験的な解明と制御を通して、この手法の利点と問題点について考察した。利点としては、この手法の簡便性を指摘したが、一方、問題点として選択成長温度におけるGaAs酸化膜(非照射部分)の不安定性について考察を行った。この問題点を克服することを念頭に、新しいマスク層としてAlGaAs表面の酸化膜に着目し、同様の手法でGaAsの選択的結晶成長を実験的に検討した結果、Al-O結合がGa-O結合に比べて熱的に安定であることを反映して、マスク層が成長基板温度においても昇華せず、そのような部分のGaAsエピタキシャル成長が阻害されることを見出した。本研究はIII-V族化合物半導体結晶の薄膜作製技術と微細加工技術を一体化させて、新しい半導体極微構造の作製技術とその応用分野を開発することを目的としている。この目的に沿ってまず、集束度の極めて高い電子線を励起源とする選択的な結晶成長技術の研究の必要性を述べ、本研究では基板表面を電子線により改質することで電子線照射部分に結晶薄膜の成長を選択的に誘起していく方法を追究することを述べている。具体的には、As系のIII-V族化合物の表面上に、酸化膜が酸化・還元雰囲気中で比較的容易に形成ないし除去できることに着目し、GaAs酸化膜をマスク層として用い、それに電子線照射と化学ビームエピタキシャル法(CBE法)を組み合わせたGaAs系極微構造の作製と物性評価を行った。GaAs酸化膜としては、GaAs(100)基板表面に化学エッチングにより形成される酸化膜、およびGaAs(100)基板にエピタキシャルさせたGaAs層上に酸素雰囲気下で形成される酸化膜、の二種類の酸化膜をマスク層として用いた場合についての選択的成長を検討した。その結果、電子線照射とそれに続く試料の熱アニールによりGaAs酸化膜の選択的な除去が可能であり、そうした特定部分のGaAs成長速度が相対的に増大することを見出した。そして、この現象の実験的な解明と制御を通して、この手法の利点と問題点について考察した。利点としては、この手法の簡便性を指摘したが、一方、問題点として選択成長温度におけるGaAs酸化膜(非照射部分)の不安定性について考察を行った。この問題点を克服することを念頭に、新しいマスク層としてAlGaAs表面の酸化膜に着目し、同様の手法でGaAsの選択的結晶成長を実験的に検討した結果、Al-O結合がGa-O結合に比べて熱的に安定であることを反映して、マスク層が成長基板温度においても昇華せず、そのような部分のGaAsエピタキシャル成長が阻害されることを見出した。本年度は、本研究の中核をなす設備である電子線ビ-ム励起型MOMBE装置について、詳細な設計を行い、これに適したシステムを作製した。また、研究を進めるにあたっての準備として電子線を利用した各種の半導体プロセスについて検討を行った。以下にこれらの概要をまとめる。1.設計作製した電子線ビ-ム励起型MOMBE装置の主な特徴は次の通りである。(1)10^<ー7>Torr以下の高真空の成膜室を本体として、準備室と結合した系である。(2)電子ビ-ム源は0.5μmφ以下に集束したビ-ムを成長基板上に走査照射できる。(3)III族、V族およびその他の有機金属化合物原料を基板上に導入するためのノズルが備わっている。(4)成膜中に原料からのハイドロカ-ボンの発生・汚染を防止するための水素ラジカル発生装置が付置されている。これに原料ガス供給系を付置して全システムを完成した。2.本研究を進めるにあたっての準備として、電子線による欠陥の発生、金属膜の描画など電子線を利用した各種の半導体プロセスについて検討を行った。その結果、特に有機金属化合物を原料として使用する場合に、結晶中への炭素の混入の可能性があり、その抑制が重要な課題の1つになることが判明した。現在、その対策として、結晶成長中に水素ラジカルを照射することが有効であると考えているが、炭素を含有しないガリウム原料についても検討し、当初計画のトリエチルガリウムの他に、三塩化ガリウムを使用することもできるようにして、次年度からの本格的な結晶成長に対して万全の準備を行っている。 | KAKENHI-PROJECT-03402023 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03402023 |
電子線励起による化合物半導体の選択的結晶成長に関する研究 | 本年度は、前年度に設計、作製した電子線ビーム励起型の有機金属分子線エピタキシー(MOMBE)装置を用いて、目的とする選択的結晶成長を達成するために必要な改良を行うと共に、動作の確認と予備的な成長を行った。まず、電子線照射が結晶成長におよぼす効果を、特に次の3点に留意した。(1)電子線照射の結晶成長への効果として局部的な温度上昇の効果も期待出来るが,分解能の点から望ましくないと考え,電子線の電流密度が十分小さい電子銃を用いる必要があること、(2)排気系からの振動が成長系に伝わり電子線の分解能が低下することへの対策、(3)低温での成長を行う必要性から、有機金属化合物原料を用いる場合に予想される炭素混入に対する対策。これらに対する対策として、(1)については、原理の確認に主眼を置くこととしてビーム径に関しては不十分であるがビーム径0.2μm、加速電圧10kV、ビーム電流0.6nAの電子銃を用いることにより、(2)に対しては成長系とポンプ系をフレキシブルチューブにより連結することにより、さらに(3)に対しては、当初III族原料としてトリエチルガリウム(TEGa)、V族原料としてアルシン(AsH_3)を用いることを計画しているが、紫外線ランプ励起により活性化した反応性の高い水素を成長中に導入する機構を備えることにより対応することとし、さらに炭素を含まない原料として三塩化ガリウム(GaCl_3)を利用することを想定して、原料温度制御系、配管材質などへの配慮を行った。以上の検討に基づき装置の細部の設計と改良を行い、装置の基本動作として、成長室の到達真空度が1×10^<19>Torr以下であること、電子ビームの電流値が設計通りであることおよび掃引が可能であることを確認した。また、GaAs選択成長の基礎実験としてTRGaを用いたGaの選択成長に取りかかった。1.電子線照射による選択成長のための予備実験として、GaAs(100)基板上に、トリエチルガリウム(TEGa)と1000°Cで熱分解したアルシン(AsH_3)を原料に用いるGaAsのケミカルビームエピタキシー(CBE)成長を行い、成長過程解明のための基礎データを得た。また、35Kでのフォトルミネッセンス測定とホール測定による評価から、成長温度の低下に伴い炭素の取り込みが増加することが明らかになった。2.電子線照射とCBE法を組み合わせた選択成長に成功した。手順は次の通りである。まず、10^<-7>Torr真空中、室温において、GaAs基板上に電子線を照射する。次いで、熱分解AsH_3照射下で基板表面のサーマルクリーニングを行った後、CBE法によりGaAsの成長を行った。基板温度250500°C、成長時間1時間において、電子線照射部に高さ1060nmで断面形状の急峻な選択的結晶成長を達成した。この選択成長層の厚さは電子線照射量と共に増加し、高照射量では飽和する傾向がみられた。電子線照射により、GaAs基板表面の改質が行われたため、選択成長したと考えている。選択成長層の表面形状は、成長温度を上げることにより平坦化するが、電子線照射部以外の箇所の成長速度が速くなり、選択性が悪くなる。今後、電子線の照射の条件(加速電圧、電流密度)、照射環境(基板温度等)の最適化が重要と考えられる。3.新しい方法として、AsH_3を熱分解せずに、同様の選択成長を基板温度500°Cで行ったところ、選択成長を見いだした。 | KAKENHI-PROJECT-03402023 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03402023 |
組織的構造を伴う乱流拡散火災の遠方音場の離散渦法による特性評価 | 本研究では,乱流拡散火災の燃焼音の発生機構を解明する手掛りを得るための実験研究と数値実験を行った.得られた結果を以下に要約する.実験研究: (1)組織的構造に支配される火災では,その発生周波数に対応して,温度とイオン電流の変動に卓越したスペクトルが観察され,組織的構造を有しない火災と著しく特性が異なる.(2)温度およびイオン電流の変動と遠方音場の変動の間には,組織的構造の発生周波数で極めて強い相関が存在し,粗大渦火災に起因する燃焼音が発生する.(3)ノズル出口中心から半径560mmの子午線上の遠方音場における平均および変動音圧の測定とスペクトル解析から,パイロット火災から下流に発達する火災がある低速一様流側では組織構造の有無にかかわらず平均音圧レベルはほぼ等しく,高速一様流側では組織的構造のある火災で幾分高いこと,また,子午線上天頂に近付くほど低周波変動成分が単越してくることなどの指向性が存在する.数値実験:離散渦法を用いて,組織的構造に支配される平面せん断流中の離散渦の時間的場所的分布状況を数値計算し,流れ場の平均および変動特性の把握が可能なことを示した.つぎに得られた離散渦の分布に基づき,個々の離散渦に2KHzの単極点音源の性質を与え,これに下流方向のイオン電流実効値分布に対応した音源強さを付与して,半径560mmの子午線赤道上での遠方音場を時間の関数として装置的に積分した.この場合,組織渦は下流への対流移動とともに隣接する組織渦と全体してスケールを増し,対応する卓越周波数が減少するので,流れの方向の任意の点を中心にその代表点におけるせん断層の隔をとり,その範囲内に分布し運動する離散渦からの寄与のみを求めた.その結果,ノズル出口から35mm下流における代表点における数値積分から得られた卓越周波数が,実験的に測定された組織渦の卓越周波数とよく一致することがわかった.本研究では,乱流拡散火災の燃焼音の発生機構を解明する手掛りを得るための実験研究と数値実験を行った.得られた結果を以下に要約する.実験研究: (1)組織的構造に支配される火災では,その発生周波数に対応して,温度とイオン電流の変動に卓越したスペクトルが観察され,組織的構造を有しない火災と著しく特性が異なる.(2)温度およびイオン電流の変動と遠方音場の変動の間には,組織的構造の発生周波数で極めて強い相関が存在し,粗大渦火災に起因する燃焼音が発生する.(3)ノズル出口中心から半径560mmの子午線上の遠方音場における平均および変動音圧の測定とスペクトル解析から,パイロット火災から下流に発達する火災がある低速一様流側では組織構造の有無にかかわらず平均音圧レベルはほぼ等しく,高速一様流側では組織的構造のある火災で幾分高いこと,また,子午線上天頂に近付くほど低周波変動成分が単越してくることなどの指向性が存在する.数値実験:離散渦法を用いて,組織的構造に支配される平面せん断流中の離散渦の時間的場所的分布状況を数値計算し,流れ場の平均および変動特性の把握が可能なことを示した.つぎに得られた離散渦の分布に基づき,個々の離散渦に2KHzの単極点音源の性質を与え,これに下流方向のイオン電流実効値分布に対応した音源強さを付与して,半径560mmの子午線赤道上での遠方音場を時間の関数として装置的に積分した.この場合,組織渦は下流への対流移動とともに隣接する組織渦と全体してスケールを増し,対応する卓越周波数が減少するので,流れの方向の任意の点を中心にその代表点におけるせん断層の隔をとり,その範囲内に分布し運動する離散渦からの寄与のみを求めた.その結果,ノズル出口から35mm下流における代表点における数値積分から得られた卓越周波数が,実験的に測定された組織渦の卓越周波数とよく一致することがわかった. | KAKENHI-PROJECT-62550150 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62550150 |
ラット腎尿細管基底膜側細胞膜(BLM)におけるアドレノメジュリン(AM)受容体の特性 | <目的>ヒト褐色細胞腫より発見されたadrenomedullin (AM)は、血小板cAMP及び血管平滑筋cAMPの上昇を介して降圧効果を発揮する新しいペプチドであり、構造上強力な血管拡張作用を持つcalcitonin gene-related peptide(CGRP)及びamylinとホモロジーを有することが知られている。近年、AMはCGRPと同様に腎組織に存在すること、また腎機能調節に関与することなどが報告されている。そこで今回、BLMを用いてAM,CGRP,amylinのcAMP産生に及ぼす効果を比較し、受容体の存在優位性について検討した。<方法>BLMを単離し、以下の実験を行った。(1) BLMにおけるcAMP産生に及ぼす三者ペプチドの比較(2) (1)に対するAM受容体拮抗剤AM [22-52]の抑制効果(3) (1)に対するCGRP受容体拮抗剤CGRP[8-37]の抑制効果(4) (1)に対するamylin受容体拮抗剤amylin [8-37]の抑制効果<結果> (1) AM,CGRP,amylinの三者ペプチドは濃度・時間依存性にcAMPを上昇させ、EC_<50>濃度はそれぞれ10^<-9>M,10^<-7>M,10^<-7>Mであった。(2) AM及びCGRP依存性cAMPに対するAM [22-52]のIC_<50>濃度は、それぞれ10^<-6>Mであったが、amylin依存性cAMPに対する抑制効果は認めなかった。(3) AM,CGRP,amylin依存性cAMPに対するCGRP[8-37]のIC_<50>濃度は、それぞれ5X10^7M,5X10^7M,10^<-6>Mであった。(4)三者ペプチド依存性cAMPに対してamylin [8-37]の抑制効果は認めなかった。<考察>AM受容体の存在優位性とamylinのCGRP受容体を介する情報伝達機構の存在が示唆された。また、AM [22-52]は非選択的にAM又はCGRP受容体に結合している可能性が考えられた。<目的>ヒト褐色細胞腫より発見されたadrenomedullin (AM)は、血小板cAMP及び血管平滑筋cAMPの上昇を介して降圧効果を発揮する新しいペプチドであり、構造上強力な血管拡張作用を持つcalcitonin gene-related peptide(CGRP)及びamylinとホモロジーを有することが知られている。近年、AMはCGRPと同様に腎組織に存在すること、また腎機能調節に関与することなどが報告されている。そこで今回、BLMを用いてAM,CGRP,amylinのcAMP産生に及ぼす効果を比較し、受容体の存在優位性について検討した。<方法>BLMを単離し、以下の実験を行った。(1) BLMにおけるcAMP産生に及ぼす三者ペプチドの比較(2) (1)に対するAM受容体拮抗剤AM [22-52]の抑制効果(3) (1)に対するCGRP受容体拮抗剤CGRP[8-37]の抑制効果(4) (1)に対するamylin受容体拮抗剤amylin [8-37]の抑制効果<結果> (1) AM,CGRP,amylinの三者ペプチドは濃度・時間依存性にcAMPを上昇させ、EC_<50>濃度はそれぞれ10^<-9>M,10^<-7>M,10^<-7>Mであった。(2) AM及びCGRP依存性cAMPに対するAM [22-52]のIC_<50>濃度は、それぞれ10^<-6>Mであったが、amylin依存性cAMPに対する抑制効果は認めなかった。(3) AM,CGRP,amylin依存性cAMPに対するCGRP[8-37]のIC_<50>濃度は、それぞれ5X10^7M,5X10^7M,10^<-6>Mであった。(4)三者ペプチド依存性cAMPに対してamylin [8-37]の抑制効果は認めなかった。<考察>AM受容体の存在優位性とamylinのCGRP受容体を介する情報伝達機構の存在が示唆された。また、AM [22-52]は非選択的にAM又はCGRP受容体に結合している可能性が考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-07770914 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07770914 |
生体分子系に対する振動状態理論の開発と応用 | 振動分光法は,分子間相互作用を鋭敏に観測し,分子構造とダイナミクスを明らかにできる手法であるが,スペクトルの解釈が容易でない.本研究では,生体分子の振動スペクトルを定量的精度で計算できる新しい方法を開発する.1非調和性,2生体環境の動的効果,3計算コストをバランス良く考慮した計算手法を考案し,プログラムに実装する.重み平均法によるナイロン6に対する振動解析を実施した.分子動力学(MD)計算と,最近,我々が開発した重み平均法を用いて,含水に伴うナイロン6の高分子構造を調べた.含水とともにナイロン6内部に水クラスターが成長し,その信号が差スペクトルに現れることが計算と実験の比較から分かった.本手法は,水和にともなう生体分子の構造解析にも応用可能であり,有望な手法であることが示された.また、PtCOの基音の振動バンドがArマトリックスにおいて消失する機構を解明した.高精度電子状態計算と非調和振動解析を用いて,PtCOとArPtCOの振動スペクトルを計算した.その結果,ArがPtCOに強く結合することで,PtCO変角振動の基音が消失するが,一方で,倍音はその強度を変えないことが分かった.Ar付加により,基音の強度が変化する理由を双極子モーメントと電子密度へ立ち返り,詳細に調べた.Arマトリックスと気相の実験結果が異なる謎は,このような異常な希ガス効果が原因であることを解明した.QM/MM法をGENESISへ実装した。QM/MM法は,化学的に重要な領域を高精度な量子化学(QM)計算で扱い,それ以外の生体環境を力場関数(MM)により扱うマルチスケールモデルである.理研で開発しているMD計算プログラムGENESISにQM/MM法を実装した.また,効率よく安定構造を探索するアルゴリズムと,安定構造近傍での非調和振動計算を実装した.29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。振動分光法は,分子間相互作用を鋭敏に観測し,分子構造とダイナミクスを明らかにできる手法であるが,スペクトルの解釈が容易でない.本研究では,生体分子の振動スペクトルを定量的精度で計算できる新しい方法を開発する.1非調和性,2生体環境の動的効果,3計算コストをバランス良く考慮した計算手法を考案し,プログラムに実装する.我々が独自に開発した振動擬縮退摂動(VQDPT2)法をプロトン化水クラスターH+(H2O)4に応用した.従来,H+(H2O)4はEigen型と考えられたが,最近,低波数領域まで赤外スペクトルが観測され,1700 - 2500 cm-1の領域で実験とEigen型の調和振動計算が全く合わないため,Zundel型が混在する疑いが持たれた.そこで,非調和性を考慮したVQDPT2法を用いて,Eigen型とZundel型の赤外スペクトルを計算した.Eigen型では,調和スペクトルにはない1700 - 2500 cm-1の一連のバンドが再現され,実験とよく一致した.一方,Zundel型では,水素結合領域の強いバンドが約200 cm-1ずれ,さらに3600 cm-1付近の3本のピークは実験の2本のピークと形状が異なっていた.従って,実験で得られる異性体はEigen型と結論できた.最近,実験により,ポリペプチドに対する高分解能の振動スペクトルを取得することが可能になった.しかし,ポリペプチドは膨大な準安定構造を持つため,振動スペクトルから構造を同定するのは困難である.本研究では,広い構造空間を効率良く探索できるレプリカ交換分子動力学法(REMD)と非調和性を考慮したVQDPT2を組み合わせた方法を開発した.5残基ペプチドSIVSFの最安定構造を探索し,NH/OH伸縮領域の振動スペクトルを計算した.計算と実験のスペクトルは良く一致し,SIVSFの分子構造を決定することが出来た.単分子系に対する非調和計算は予定通り進み、論文が出版できた。さらに、複雑な分子系の計算も順調に進み、論文が近く受理される見通しである。振動分光法は,分子間相互作用を鋭敏に観測し,分子構造とダイナミクスを明らかにできる手法であるが,スペクトルの解釈が容易でない.本研究では,生体分子の振動スペクトルを定量的精度で計算できる新しい方法を開発する.1非調和性,2生体環境の動的効果,3計算コストをバランス良く考慮した計算手法を考案し,プログラムに実装する.重み平均法によるナイロン6に対する振動解析を実施した.分子動力学(MD)計算と,最近,我々が開発した重み平均法を用いて,含水に伴うナイロン6の高分子構造を調べた.含水とともにナイロン6内部に水クラスターが成長し,その信号が差スペクトルに現れることが計算と実験の比較から分かった.本手法は,水和にともなう生体分子の構造解析にも応用可能であり,有望な手法であることが示された.また、PtCOの基音の振動バンドがArマトリックスにおいて消失する機構を解明した.高精度電子状態計算と非調和振動解析を用いて,PtCOとArPtCOの振動スペクトルを計算した.その結果,ArがPtCOに強く結合することで,PtCO変角振動の基音が消失するが,一方で,倍音はその強度を変えないことが分かった.Ar付加により,基音の強度が変化する理由を双極子モーメントと電子密度へ立ち返り,詳細に調べた.Arマトリックスと気相の実験結果が異なる謎は,このような異常な希ガス効果が原因であることを解明した.QM/MM法をGENESISへ実装した。QM/MM法は,化学的に重要な領域を高精度な量子化学(QM)計算で扱い,それ以外の生体環境を力場関数(MM)により扱うマルチスケールモデルである. | KAKENHI-PUBLICLY-16H00857 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-16H00857 |
生体分子系に対する振動状態理論の開発と応用 | 理研で開発しているMD計算プログラムGENESISにQM/MM法を実装した.また,効率よく安定構造を探索するアルゴリズムと,安定構造近傍での非調和振動計算を実装した.現在,単一の構造に留まらず,動的に構造が揺らいでいる,柔らかい分子系を対象とした方法の開発に取り組んでいる.以前,MD計算から動的に重要な構造を取り出し,各構造の振動スペクトルを量子化学計算により求め,それらの和を取ることでスペクトルを求める重み平均法を提案した.この方法をスフィンゴミエリン脂質二重膜へ応用し,アミドIバンドの解析に成功した.現在,この方法を発展させ,非調和性が強いアミドAバンドと水分子のOH伸縮バンドが解析できるようにしている.この方法を高分子ポリアミドと水分子の相互作用解析へ応用する.また,生体高分子を対象とするため,量子化学計算と古典力場のハイブリッドであるQM/MM法を開発している.QM/MM法は,化学的に重要な領域を高精度な量子化学(QM)計算で扱い,それ以外の生体環境を力場関数(MM)により扱うマルチスケールモデルである.理研で開発しているMD計算プログラムGENESISにQM/MM法を実装した.また,L-BFGS-Bアルゴリズムを実装することで効率よく安定構造を探索することが可能となり,さらに,安定構造近傍での非調和ポテンシャルを求め,振動解析を実行することが可能になった.開発した方法を光駆動型プロトンポンプであるバクテリオロドプシン(BR)へ応用する.極性残基と内部水で構成される水素結合ネットワークの振動状態を計算し,プロトン移動のダイナミクスを明らかにする.また,ポリペプチドのアミドバンドを計算し,疾病の原因となるアミロイド繊維やその前駆体であるペプチドの分析を目指す.29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-16H00857 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-16H00857 |
多極性有機化合物によるペロブスカイト太陽電池電荷輸送層の制御 | 本研究は,有機無機ハイブリッド太陽電池研究における基礎研究と応用研究を見据えて,低分子有機半導体分子の分子設計とその機能発現のナノレベルの解析を行う.中村研究室における有機薄膜太陽電池および電子顕微鏡によるナノ解析に関する知見を,プリンタブル太陽電池における界面物性制御化合物の設計・合成に結びつけるべく実施する.鉛ペロブスカイト太陽電池開発ではペロブスカイト型立方結晶成長の制御が最大の問題となっているが,これに関する研究はまだ殆ど進んでいない.特に光電変換層の成膜においては,急速すぎる結晶成長,それにともなう構造欠陥の多い膜形成,水分や溶媒による結晶の劣化防止などが必須であるが,これらに関してこれまで報告された知見はすべからく経験的である.本年度はLungerich博士がこれまで取り組んできた大型の平面型有機低分子の研究を展開して,基板上に単一金属原子をひとつひとつ置く手法を検討し,鉛,白金,パラジウム,ニッケルを持つ金属ポルフィリンをグラフェン上に置いて電子線照射を行うとそこから金属原子が飛び出して,グラフェンの上を動き回ることが分かった.さらに温度を変えながら動きを見てその移動を統計処理した.具体的には原子がどのようにして動き集合するかを原子分解能電子顕微鏡と結晶構造解析手法を併用して解明し,もってペロブスカイト結晶の形成原理を明らかにし,結晶成長の合理設計を実現する.平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。エネルギー資源に乏しい我が国にとって,太陽光の利用に関する基礎研究は極めて重要な課題である.本研究は,有機無機ハイブリッド太陽電池研究における基礎研究と応用研究を見据えて,低分子有機半導体分子の分子設計とその機能発現のナノレベルの解析を行う.中村研究室における有機薄膜太陽電池および電子顕微鏡によるナノ解析に関する知見を,プリンタブル太陽電池における界面物性制御化合物の設計・合成に結びつけるべく実施する.プリンタブル太陽電池の実用化に向けての課題は(1)光電変換材料開発,(2)結晶成長とナノ構造の解析・理論予測,(3)電荷輸送およびインターレーヤー材料開発に大別できる.本研究では,主として(2)および(3)について研究を進める.太陽電池デバイス内における電荷輸送には,有機半導体の結晶成長とナノ構造の制御が鍵となっている.これまでの研究によって,励起したペロブスカイト微結晶からのキャリアーの抽出及び微結晶の表面修飾による安定性の向上が,適切に設計した有機半導体を用いることで同時に達成可能であるとの仮説が得られている.研究初年度は,高分解能電子顕微鏡を用いてナノレベルでの二次元結晶化の機構に関する基盤的情報を得るために,フラーレン金属誘導体のカーボンナノチューブ内での配列を制御の制御に取り組んだ.その結果,真空中で分子を揮発させる温度や時間が結晶の構造制御に重要な鍵となっていることを見いだし,電子顕微鏡による構造同定を行った.高分解電子顕微鏡による結晶化の機構解析という,当初予想を超えたアプローチの発見に至った.本研究は,有機無機ハイブリッド太陽電池研究における基礎研究と応用研究を見据えて,低分子有機半導体分子の分子設計とその機能発現のナノレベルの解析を行う.中村研究室における有機薄膜太陽電池および電子顕微鏡によるナノ解析に関する知見を,プリンタブル太陽電池における界面物性制御化合物の設計・合成に結びつけるべく実施する.鉛ペロブスカイト太陽電池開発ではペロブスカイト型立方結晶成長の制御が最大の問題となっているが,これに関する研究はまだ殆ど進んでいない.特に光電変換層の成膜においては,急速すぎる結晶成長,それにともなう構造欠陥の多い膜形成,水分や溶媒による結晶の劣化防止などが必須であるが,これらに関してこれまで報告された知見はすべからく経験的である.本年度はLungerich博士がこれまで取り組んできた大型の平面型有機低分子の研究を展開して,基板上に単一金属原子をひとつひとつ置く手法を検討し,鉛,白金,パラジウム,ニッケルを持つ金属ポルフィリンをグラフェン上に置いて電子線照射を行うとそこから金属原子が飛び出して,グラフェンの上を動き回ることが分かった.さらに温度を変えながら動きを見てその移動を統計処理した.具体的には原子がどのようにして動き集合するかを原子分解能電子顕微鏡と結晶構造解析手法を併用して解明し,もってペロブスカイト結晶の形成原理を明らかにし,結晶成長の合理設計を実現する.平成29年度の成果をもとに,2)結晶成長とナノ構造の解析・理論予測,(3)電荷輸送およびインターレーヤー材料開発に資するナノサイエンスの展開を図る.平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-17F17702 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17F17702 |
ロシア・チュヴァシにおけるト占の歴史人類学的研究 | 時代の趨勢によって変わりうる合理的な知識に対して、チュヴァシでは卜占が継続して社会的な暗黙知となっている。つまり、いちいち明確に説明されなくても、ある特定の状況では皆がそれと知ることのできるような事柄として、卜占の知識が広く共有されている。人々の生活で主要な位置を占める合理的な知識に対して、卜占は残された適所を埋めるというよりも、むしろ両者が有機的に重なって、時代に応じた日常の思考を形作っている。時代の趨勢によって変わりうる合理的な知識に対して、チュヴァシでは卜占が継続して社会的な暗黙知となっている。つまり、いちいち明確に説明されなくても、ある特定の状況では皆がそれと知ることのできるような事柄として、卜占の知識が広く共有されている。人々の生活で主要な位置を占める合理的な知識に対して、卜占は残された適所を埋めるというよりも、むしろ両者が有機的に重なって、時代に応じた日常の思考を形作っている。当該年度の前半は、主に文献資料を使って、チュヴァシで卜占や妖術の理解が形成されるにいたった歴史・文化的背景をたどった。その中でも特に、卜占や治病術に用いられる呪文を手掛かりに、チュヴァシの口碑・口承文芸におけるヴォルガ川の表象について考察を行った。その成果は、2009年7月31日と8月1日に神戸大学で行われた合同研究会で報告し、続いて10月には現地のロシア・チュヴァシ共和国でも発表した(本人はビザ発給にトラブルが生じたため、現地参加できず)。これらの発表の際に得られたコメントを参考にした上で、さらに考察を加えて論文の形にしたものを『北方人文研究』誌に投稿したところ、第3号(2010年3月)に掲載された。年度の後半には、ソ連時代に行われた農業集団化や、ソ連崩壊後の農業経営のあり方等の歴史的経緯をふまえつつ、社会主義時代から今日に至るまで人々の経験してきたことがらが、どのように記憶となって形成され、今日の行為につながっているのかについて考察を深めた。2010年2月中旬から3月中旬にかけて、チュヴァシ共和国のチェボクサルィ市とモルガウシ地方を中心に追加調査を行い、これまでに集めてきたデータの補充と見直しを進めた。調査では、1)歴史的文献資料の収集、2)現在における卜占や民間療法の実践についての実態調査、3)現地における政治・経済の動熊にそれぞれ焦点を当てて、調査活動を行った。この調査から得られた結果については今後の考察の対象となるが、それまでにデータをもとに進めてきた考察の結果を、2010年3月20日に国立民族学博物館で行われた国際会議"Ideals, Narratives and Practices of Modernities in Former and Current Socialist Countries"において報告した。春から夏にかけては、調査に必要な手続きを進めながら、主に文献による研究とその整理を行った。9月から10月半ばまでの1カ月半の間、ロシアのチュヴァシ共和国内の数か所で、卜占及び宗教的儀礼に関する実地調査と資料収集を行った。その間に、現地の研究機関が組織して開かれた国際会議「ユーラシア文明史におけるチュヴァシの言語とエトノス」に参加し、チュヴァシ人の信仰形成過程の歴史的解釈を試みる内容の報告を行った。チュヴァシで行った報告内容をベースとし、現地で得られたフィードバックや、収集してきた資料を反映させたうえで、年末から年始にかけて『ユーラシア世界』(東京大学出版から発行予定)所収の分担論文を執筆した。これは、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、チュヴァシ人住民とロシア正教会の間に生じていた葛藤を糸口として、東西文明の関係のあり方を捉え直そうとするものである。またこれと並行して、かつて社会主義に基づく国家運営を行った(あるいは現在行っている)国々の近代化の経験が、今日における人々の生活をどのように形作っているかを扱った論文集の、編集作業を行った。自らその中の1章として担当した、チュヴァシにおける農業集団化の記憶に関する論文を英訳し、さらに文化人類学の学問的背景と照らし合わせて考察した論文を、民族学博物館の『研究報告』に投稿、掲載された。当初の計画通り、春から夏にかけては、昨年までに収集した資料データを整理し、成果報告の論文にまとめる準備を進めた。9月初旬より1カ月間は、ロシア・チュヴァシ共和国のチェボクサルィに滞在し、最終的な調査を行った。現地では、昨年の調査に引き続き、北部のモルガウシ地区と、南部にあるバトィレフ地区を回って、聞き取り調査の補充を行った。今回の調査では、主に昨年までに集めたデータを確かめ、その変動の具合について確認する作業を行った。今回の調査によって確認されたことは、次のような事柄である。卜占のように、旧来から存続する手段に頼るべき事態が生じた時、その依頼者の行為の動機を支えているものは、ソ連時代に導入された境界設定のように、過去の経験に基づくものである。ただし卜占のような既存の制度をどのように活用するかは、その都度生じる行為者同士の関係に応じて変わってくる。このことについて、事例をまじえて論考を行った結果は、明石書店から出版された『社会主義的近代化の経験ー幸せの実現と疎外』所収の論文でまとめた。一方で、現代の卜占のあり方を形作る土台となった歴史についても、現地の文書館等で集めた資料を使って論考をまとめた。 | KAKENHI-PROJECT-21720316 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21720316 |
ロシア・チュヴァシにおけるト占の歴史人類学的研究 | 「複合する視線-チュヴァシの在来宗教とロシア正教会」と題する論文が、シリーズ『ユーラシア世界』(東京大学出版会)から近日刊行される予定である。また、当該の内容については、北海道大学文学部で開かれる歴史文化研究会においても報告を行う。 | KAKENHI-PROJECT-21720316 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21720316 |
第五世代移動通信システム向けM2M通信方式に関する研究 | 29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-16J08682 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J08682 |
戦後日本の夜間中学とその生徒:ポスト・コロニアルの東アジア社会変動論の視座から | 本研究は、1947年から現在に至る日本の夜間中学とその生徒の実態、及び、それらの変遷を明らかにするとともに、散逸・劣化の危機に瀕している夜間中学校関連の膨大な一次史料を収集・整理し、電子媒体化することにより、将来にわたって研究者・関係者が広く活用しうる形式で保存し、適切な基準に基づいて公開した。本研究は、全国夜間中学校研究会60周年記念事業と位置づけられ、同研究会の全面的な協力の下に実施された。下記の5点の研究を実施した。1全国夜間中学校研究会等の1950年代以降の基本資料(大会資料集、同記録集、調査報告書等)を収集・整理した。電子化・公開を視野に入れ、より保存状態のよい資料の捜索・収集に心掛けた。収拾した資料は1950年代から2013年までの史料で、計約600点である。2すでに所在を確認している資料のうち、散逸・劣化のリスクが特に高いものを収集した。主に1950年代1960年代の資料で、その数は約600点、1のそれと合わせて1200点となる。3収集した資料の一部を、公開に向け、パイロット的に電子媒体化の作業を行った。そこで生じたいくつかの技術的問題点とその解決法について、専門業者との打ち合わせを実施した。41956年以前の夜間中学校資料の分析・整理に基づき、論文「戦後日本における夜間中学校の卵生と確立:19471955年」を執筆し、『神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要』に投稿した。本紀要は2013年度末に刊行予定だったが、若干遅れ、近刊予定である。なお当初、1968年以前の夜間中学校の実態について一括して分析する予定だったが、各種資料踏査の結果、まず1956年以前の時期区分で総括することが妥当と判断するに至った。5夜間中学校の生徒の中で大きな位置を占める中国残留日本人の生活史と意識について、Tong Yan and Shinichi Asano "Blood and country :chugoku zanryu koji, nationality and the koseki"David Chapman and Karl Jacob Krogness ed.Japan's household registrationsystem and citizenship, Routledgeを出版した。本年度は、下記の9点の研究を実施した。1個別の学校に関する史料も含め、夜間中学関係の史料を新たに約2000点収集し、整理・検討の上、必要に応じて約1000点について電子化・保存作業を実施した。2全国夜間中学校研究会と連携し、各資料の歴史記録的・学術的・教育実践的価値を吟味・評価する研究会を2回(東京・神戸)実施した。32015年度に予定している全国夜間中学校研究大会関係の史料公開に向け、技術的課題、及び、著作権・肖像権等の諸課題を検討し、最も適切な公開方針について関係者・関係機関と継続的に審議した。4第60回全国夜間中学校研究大会(11月27ー28日)において、史料の保存作業の進行状況について中間報告を実施した。5福岡市の自主夜間中学において調査・資料収集を実施した。6三重県上野市崇広中学校において1950年代に存在した夜間中学校の調査・資料収集を実施した。7夜間中学校の生徒の中で大きな位置を占める中国残留日本人の生活史と意識について、約30名の当事者からインタビュー調査を行った。8同じく中国残留日本人に関して、浅野慎一「中国残留日本人孤児をめぐる諸論点と先行研究の批判的検討(上篇・下篇)『神戸大学大学院人間発達環境学研究科紀要』8巻1号・2号の2本の論文を発表した。9研究課題の副題にあるポスト・コロニアルの東アジア社会変動論の視座を確立する作業として、「国土のグランドデザインと『生活圏としての地域社会』」に関する報告(地域社会学会第2回研究例会)、及び、記事報告(『地域社会学会会報』187号)を行った。本研究の目的は、戦後日本の夜間中学校とその生徒の実態、及び、変遷を明らかにするとともに、散逸・劣化の危機に瀕している夜間中学校関連の厖大な一次資料を収集・整理し、電子媒体化することにより、将来にわたって研究者・関係者が広く活用しうる形式で保存し、適切な基準に基づいて公開することにある。平成27年度は、主に4つの成果を得た。1DVD「60年の歩み:全国夜間中学校研究会大会史料集成-1954年度2014年度」を刊行し、全国の夜間中学校、及び、その設置主体地域の教育委員会に頒布した。全国夜間中学校研究会は、全国の夜間中学校が結集する組織であり、その60年にわたる大会関係史料はいわば戦後日本の夜間中学校とその生徒の実態・歴史を把握するための最も基本的・総括的な一次史料である。本DVDには、166種の史料(PDF6751頁)を収録した。また収録に際しては、厖大な汚損・破損箇所を必要に応じ可能な限り電子的に修復・復元した。2既に廃校になった学校も含め、主に近畿・中国地方の個別の夜間中学校関係史料を収集・整理し、全国夜間中学校研究会との連携の下、それらの記録的・学術的・教育実践的価値を吟味し、約2300種の史料を電子媒体に加工して保存する作業を行った。32015年11月4日、京都市立洛友中学校において全国夜間中学校研究会をはじめ、各地の関係者・当事者とともに本研究課題に関する研究会を開催し、討論を深めた。またメーリングリストで日常的に本研究課題の推進に関する会議・研究交流を実施した。 | KAKENHI-PROJECT-25380673 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25380673 |
戦後日本の夜間中学とその生徒:ポスト・コロニアルの東アジア社会変動論の視座から | 4主に関東の個別の夜間中学校関係史料を1万種以上、収集し、既に入手した諸史料との重複・汚損破損状況、及び、電子媒体の必要性等に関する点検・確認作業を実施した。当初計画では、DVDによる公開は平成28年度に行う予定であったが、平成27年度に前倒しで実施することができた。またその前提作業として、著作権・肖像権等に十分留意し、当事者・関係者との緊密な協議をふまえ、公開基準を確定できた。これにより、公開を前提としない保存用データの選択基準も明確になり、最終年度である次年度の研究にも十分な見通しをつけることができた。さらに当初想定していなかった電子的資料保存の専門家の全面的な協力の下、劣化・汚損・破損が著しい古い諸資料をかなりの程度、電子的に復元することができた。これは今後の当該分野の研究の中長期的推進にとって、大きな基盤を据える成果である。また公開を前提とせず、主に劣化・散逸の危機から救済し、電子媒体として保存することを目的とした史料収集も、全国の諸機関・諸個人の協力の下、当初予定を大きく上回る規模で進展している。1950年代に夜間中学校に大きな足跡を残した故人の遺族からも貴重な史料提供を受け、従来、その存在が知られていなかった歴史的史料も多数、入手することができた。研究の過程で、公立夜間中学校の学校数の変遷等の基本的な史実についても、従来の一般的認識の誤謬・限界を発見しえた。その他、各地域・個別学校の実態について得られた知見は極めて多い。本研究の目的は、戦後日本の夜間中学校とその生徒の実態、及び、それらの変遷を明らかにするとともに、散逸・劣化の危機に瀕している夜間中学校関連の厖大な一次史料を収集・整理し、電子媒体化することにより、将来にわたって研究者・関係者が広く活用しうる形式で保存し、適切な基準に基づいて公開することにあった。研究期間全体を通じて、主に4つの成果を得た。1『60年の歩みー全国夜間中学校研究会大会史料集成:1954年度2014年度(DVD)』の刊行。全国夜間中学校研究会は、全国の夜間中学校が結集する組織であり、その60年にわたる大会関係史料・約170件を収録した。2『夜間中学関係史料目録』の刊行。本目録は、全国12の学校・個人が所蔵する夜間中学関係史料・計7000件以上を収録した。3『夜間中学校関係史料・電子保存システム(仮称)』の構築。特に重要と思われる史料・約4400件を電子媒体の形で保存し、検索・閲覧しうるシステムである。なお2017年度の全国夜間中学校理事会で本システムの正式名称が確定される。4『夜間中学関係史料目録(詳細板)(電子媒体)』の構築。最終年度である2016年度の成果は、2・3・4である。また、以上の作業をふまえ、夜間中学、その生徒の中で大きな位置を占める中国残留日本人・帰国者、および東アジアの社会変動に関する学術論文・著作等の発表、及び、従来確認されていなかった夜間中学関係の貴重な史料の発掘も行った。本研究は、1947年から現在に至る日本の夜間中学とその生徒の実態、及び、それらの変遷を明らかにするとともに、散逸・劣化の危機に瀕している夜間中学校関連の膨大な一次史料を収集・整理し、電子媒体化することにより、将来にわたって研究者・関係者が広く活用しうる形式で保存し、適切な基準に基づいて公開した。 | KAKENHI-PROJECT-25380673 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25380673 |
潜在能力と女性のウェルビーイングに関するインドと日本の比較考察研究 | 平成23年度は、アモラン・マジュムダーラ博士との精力的な共同研究により、おおむね順調に研究を遂行することができた。女性のリプロダクティブ・ヘルスに関する行動を分析対象とし、潜在能力アプローチがどのような点において、女性の出産活動に影響を及ぼすのかに着目、インドと日本のデータを用いて実証分析を行い、それらを用いて、論文を作成することができた。今回の実証研究では、インドの事例については、インドのデータ(Indian National Family Health Survey-3(2006))を活用し、インドの州間の女性の出産行動における差異の有無について分析した。理想的な子どもの数と実際の子どもの数の間の乖離に着目した独自の分類法に基づき分析した。分析の結果、理想的な子どもの数と実際の出産数の間の差異要因には、個人の属性に加えて、地域社会が規定する女性の生活上の制約条件の中身や程度をも色濃く反映していることを見出すことができた。また、日本の事例については、インドの事例と同様に、日本人女性の出産行動について、JGSSデータを活用して分析した。分析の結果、日本人女性の出産行動に関して、近年の経済停滞要因や伝統的な家長制度という価値観が社会要因として少なからず影響を与えていること、日本人女性はインド人女性に比べて、潜在的な能力を満たす外的環境に恵まれていることが示唆される結果を見出した。比較的順調に研究を進めることができた。研究初年度ということで、まず、人間開発と潜在能力アプローチに関する理論に基づく研究フレームワークの構築に取り組んだ。とくに、女性のリプロダクティブ・ヘルスに関する行動を分析対象とし、潜在能力アプローチがどのような点において、女性の出産活動に影響を及ぼすのかに着目、主要論点を整理するとともに、概念化を試みた。この概念化作業を踏まえて、実証研究を進めた。まず、インドのデータ(Indian National Family Health Survey-3(2006))を活用し、インドの州間の女性の出産行動における差異の有無について分析した。理想的な子どもの数と実際の子どもの数の間の乖離に着目した独自の分類法を考案し、分析に適用することができた。この分類方法を生かしてデータ分析を行った結果、理想的な子どもの数と実際の出産数の間の差異を左右するものとして、個人の属性に加えて、地域社会が規定する女性の生活上の制約条件の程度や中身をも色濃く反映したものであることを見出すことができた。同様にして、日本人女性の出産行動についても、JGSSデータを活用しての分析に着手した。分析の結果、日本人女性の出産行動に関して、近年の経済停滞要因や伝統的な家長制度という価値観が社会要因として少なからず影響を与えていることが示唆され、今後の研究につながる初期的な知見を得ることができた。平成23年度は、アモラン・マジュムダーラ博士との精力的な共同研究により、おおむね順調に研究を遂行することができた。女性のリプロダクティブ・ヘルスに関する行動を分析対象とし、潜在能力アプローチがどのような点において、女性の出産活動に影響を及ぼすのかに着目、インドと日本のデータを用いて実証分析を行い、それらを用いて、論文を作成することができた。今回の実証研究では、インドの事例については、インドのデータ(Indian National Family Health Survey-3(2006))を活用し、インドの州間の女性の出産行動における差異の有無について分析した。理想的な子どもの数と実際の子どもの数の間の乖離に着目した独自の分類法に基づき分析した。分析の結果、理想的な子どもの数と実際の出産数の間の差異要因には、個人の属性に加えて、地域社会が規定する女性の生活上の制約条件の中身や程度をも色濃く反映していることを見出すことができた。また、日本の事例については、インドの事例と同様に、日本人女性の出産行動について、JGSSデータを活用して分析した。分析の結果、日本人女性の出産行動に関して、近年の経済停滞要因や伝統的な家長制度という価値観が社会要因として少なからず影響を与えていること、日本人女性はインド人女性に比べて、潜在的な能力を満たす外的環境に恵まれていることが示唆される結果を見出した。 | KAKENHI-PROJECT-10F00316 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10F00316 |
日本と韓国における庭園を中心にした緑地の比較文化的研究 | 伝統的庭園については、三国時代百済の都・扶余の宮南池と、統一新羅時代の都・慶州の雁鴨池、さらには李氏朝鮮時代の都・ソウルの王宮や寺院の庭園を中心に調査を進めた。これらの庭園の全体的傾向として、建物と庭園の関係および庭園構成の中心となる水景の構成手法等において、日本の庭園との間に大きな違いが見られた。すなわち、日本の庭園では池や流れが、多くの場合不整形でより自然な汀線や流路に形づくられるのに対して、韓国のこれらの庭園では、特に建物に近い池の護岸や流れが人工的に加工された切石によって整形に形づくられる。一方、建物などの人工物から離れた部分、あるいは亭と呼ばれるような建物の周辺ではそうした加工はほとんど見られず、自然状態のままであることが多い。このことは庭園内の植え込みでも同様で、ほとんどの植え込みはその周囲を矩形の切石などできっちりと縁取られるが、その中の植物については自然な生長に任される。したがって、韓国の庭園では、建物など人の生活域により近い所は人為的に構成されるのに対して、そこから離れるとできる限り自然のままにしておく傾向があり、人為と自然との差が著しいと言えよう。韓国の庭園に見られるこうした傾向は、建物などの人工的部分から庭の前景、中景、遠景部分、さらには庭園の外に広がるより自然的な世界へと段々と推移して行く構成をもつことの多い日本の庭園とは大きく異なるものである。また、日本の伝統的庭園では多くの手を加えながらもより自然に見せようとする点も韓国の庭園と大きく異なるところである。上記の庭園文化の底辺を成し、またその背景ともなる庶民の生活空間である集落空間については、慶尚北道清道地域、慶尚南道河東地域、全羅北道金提地域、全羅南道海南地域を中心に、その伝統的集落について調査を進めた。集落の立地選定は風水思想にもとづいて、地形を第1とし、水、方位を第2、第3の条件としてきた。したがって、稜線を背にした立地を選ぶためには家屋が北面することもある。日本の集落では地形条件によって家屋が北面することはなく、ほとんどの家屋は南面を原則としている。韓国が地形を重視するのに対して、日本では方位を重視するということができる。一戸一戸の屋敷地は不整形であり、また屋敷囲いもそれに従って曲折する。この不整形な形態は起伏の少ない平地型集落でも同様であり、韓国の空間の大きな特徴のひとつである。また、韓国の屋敷囲いの多くは石・土塀であり、生垣や屋敷林の多い日本の農家の屋敷囲いに比べてより閉鎖的である。屋敷囲いの閉鎖性は都市住宅でも同様であり、その背景としては集落立地がそうであるように囲いによって気を溜める考えがあるであろうし、また地縁よりも血縁を基本にした社会であることも係わるであろう。韓国の農家の建物は、小さな窓戸を除いて他を壁で囲んだ閉鎖的な房と開放的な大庁やマルとから成る。閉鎖的な房は部屋の内と外とを明確に分け、房の中から外を眺める意識は見られない。一方、開放的な大庁やマルは建物の内に居ながら外の空間と一体化し得る場である。こうした対照的なふたつの部屋からなる韓国の部屋構成は、日本の農家には見られないもので、日本の農家の部屋はむしろその中間で、軒が深く、部屋は大きな障子で段階的に区切られ、建物の内と外の空間が連続的に変化する構成と言うことができよう。こうした建物の違いは、庭の構成に大きな影響を及ぼす。韓国の農家の庭の植栽は房から眺めるかたちの構成は見られず、庭の周囲を縁取るものであり、また主屋前の植栽は、門や舎廊棟方向からの視線を遮るための配植である。こうした植栽は、部屋の中から眺めることを中心にして構成される日本の農家の植栽と極めて対照的である。また、韓国農家の門の周辺や主屋前の植栽などにみられる対植は部分的にしても左右対称な構成を示すものであり、それを避ける日本の植栽とは対照的である。上述した集落の立地や農家の庭の構成、さらには王宮の庭園にみられた特徴には、韓国の自然条件、とくにその老年期地形と寒冷で乾燥した気候が基本的な背景となり、それに道教や儒教などが係わり、また中国文化も影響しているものと考えられた。伝統的庭園については、三国時代百済の都・扶余の宮南池と、統一新羅時代の都・慶州の雁鴨池、さらには李氏朝鮮時代の都・ソウルの王宮や寺院の庭園を中心に調査を進めた。これらの庭園の全体的傾向として、建物と庭園の関係および庭園構成の中心となる水景の構成手法等において、日本の庭園との間に大きな違いが見られた。すなわち、日本の庭園では池や流れが、多くの場合不整形でより自然な汀線や流路に形づくられるのに対して、韓国のこれらの庭園では、特に建物に近い池の護岸や流れが人工的に加工された切石によって整形に形づくられる。一方、建物などの人工物から離れた部分、あるいは亭と呼ばれるような建物の周辺ではそうした加工はほとんど見られず、自然状態のままであることが多い。このことは庭園内の植え込みでも同様で、ほとんどの植え込みはその周囲を矩形の切石などできっちりと縁取られるが、その中の植物については自然な生長に任される。 | KAKENHI-PROJECT-63041029 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63041029 |
日本と韓国における庭園を中心にした緑地の比較文化的研究 | したがって、韓国の庭園では、建物など人の生活域により近い所は人為的に構成されるのに対して、そこから離れるとできる限り自然のままにしておく傾向があり、人為と自然との差が著しいと言えよう。韓国の庭園に見られるこうした傾向は、建物などの人工的部分から庭の前景、中景、遠景部分、さらには庭園の外に広がるより自然的な世界へと段々と推移して行く構成をもつことの多い日本の庭園とは大きく異なるものである。また、日本の伝統的庭園では多くの手を加えながらもより自然に見せようとする点も韓国の庭園と大きく異なるところである。上記の庭園文化の底辺を成し、またその背景ともなる庶民の生活空間である集落空間については、慶尚北道清道地域、慶尚南道河東地域、全羅北道金提地域、全羅南道海南地域を中心に、その伝統的集落について調査を進めた。集落の立地選定は風水思想にもとづいて、地形を第1とし、水、方位を第2、第3の条件としてきた。したがって、稜線を背にした立地を選ぶためには家屋が北面することもある。日本の集落では地形条件によって家屋が北面することはなく、ほとんどの家屋は南面を原則としている。韓国が地形を重視するのに対して、日本では方位を重視するということができる。一戸一戸の屋敷地は不整形であり、また屋敷囲いもそれに従って曲折する。この不整形な形態は起伏の少ない平地型集落でも同様であり、韓国の空間の大きな特徴のひとつである。また、韓国の屋敷囲いの多くは石・土塀であり、生垣や屋敷林の多い日本の農家の屋敷囲いに比べてより閉鎖的である。屋敷囲いの閉鎖性は都市住宅でも同様であり、その背景としては集落立地がそうであるように囲いによって気を溜める考えがあるであろうし、また地縁よりも血縁を基本にした社会であることも係わるであろう。韓国の農家の建物は、小さな窓戸を除いて他を壁で囲んだ閉鎖的な房と開放的な大庁やマルとから成る。閉鎖的な房は部屋の内と外とを明確に分け、房の中から外を眺める意識は見られない。一方、開放的な大庁やマルは建物の内に居ながら外の空間と一体化し得る場である。こうした対照的なふたつの部屋からなる韓国の部屋構成は、日本の農家には見られないもので、日本の農家の部屋はむしろその中間で、軒が深く、部屋は大きな障子で段階的に区切られ、建物の内と外の空間が連続的に変化する構成と言うことができよう。こうした建物の違いは、庭の構成に大きな影響を及ぼす。韓国の農家の庭の植栽は房から眺めるかたちの構成は見られず、庭の周囲を縁取るものであり、また主屋前の植栽は、門や舎廊棟方向からの視線を遮るための配植である。こうした植栽は、部屋の中から眺めることを中心にして構成される日本の農家の植栽と極めて対照的である。また、韓国農家の門の周辺や主屋前の植栽などにみられる対植は部分的にしても左右対称な構成を示すものであり、それを避ける日本の植栽とは対照的である。上述した集落の立地や農家の庭の構成、さらには王宮の庭園にみられた特徴には、韓国の自然条件、とくにその老年期地形と寒冷で乾燥した気候が基本的な背景となり、それに道教や儒教などが係わり、また中国文化も影響しているものと考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-63041029 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63041029 |
生体内新規鍵物質エンドセリン(1-31)の生理機能:ケモカイン作用と未梢循環制御 | 生体内に存在する平滑筋収縮物質の中でこれまでで最も強力な作用を示す物質は、21個のアミノ酸からなるペプチドホルモンのET(1-21)で、他にこれに関連する生理活性ペプチドは存在しないと信じられてきた。しかし我々は最近31個のアミノ酸からなる新規生理活性ペプチドのET(1-31)が、肥満細胞に由来するキマーゼによってBigETから形成されることを確認した。本年度の研究において、ET(1-31)とET(1-21)の好酸球に対するケモカイン作用をマウスを用いたin vivoレベルで検討した。その結果、ET(1-31)とET(1-21)は局所のエオタキシンとIL-5レベルを増加させ、好酸球を最も強く遊走させた。一部弱いながらも好中球の遊走も認められたが、リンパ球の遊走作用はほとんど認められなかった。好酸球の遊走に先立ってエオタキシンが誘導されることから、好酸球の遊走に直接関与するケモカインは、エオタキシンであると考えられ、また好酸球の遊走後にIL-5が上昇することから、局所の好酸球の活性化にはIL-5が関与すると推定された。なおエオタキシンの誘導と、好酸球の遊走は、エンドセリンAレセプターのアンタゴニストでほぼ完全に抑制され、エンドセリンレセプターの関与が推定された。なお、エオタキシンの誘導能においてET(1-31)とET(1-21)は同程度の強さを示したが、IL-5の誘導においては、ET(1-31)の方がET(1-21)よりも強い誘導能を示した。生体内に存在する平滑筋収縮物質の中でこれまでで最も強力な作用を示す物質は、21個のアミノ酸からなるペプチドホルモンのET(1-21)で、他にこれに関連する生理活性ペプチドは存在しないと信じられてきた。しかし我々は最近31個のアミノ酸からなる新規生理活性ペプチドのET(1-31)が、肥満細胞に由来するキマーゼによってBigETから形成されることを確認した。本年度の研究において、ET(1-31)とET(1-21)の好酸球に対するケモカイン作用をマウスを用いたin vivoレベルで検討した。その結果、ET(1-31)とET(1-21)は局所のエオタキシンとIL-5レベルを増加させ、好酸球を最も強く遊走させた。一部弱いながらも好中球の遊走も認められたが、リンパ球の遊走作用はほとんど認められなかった。好酸球の遊走に先立ってエオタキシンが誘導されることから、好酸球の遊走に直接関与するケモカインは、エオタキシンであると考えられ、また好酸球の遊走後にIL-5が上昇することから、局所の好酸球の活性化にはIL-5が関与すると推定された。なおエオタキシンの誘導と、好酸球の遊走は、エンドセリンAレセプターのアンタゴニストでほぼ完全に抑制され、エンドセリンレセプターの関与が推定された。なお、エオタキシンの誘導能においてET(1-31)とET(1-21)は同程度の強さを示したが、IL-5の誘導においては、ET(1-31)の方がET(1-21)よりも強い誘導能を示した。 | KAKENHI-PROJECT-13024258 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13024258 |
ニフェジピン歯肉増殖発症機構の解明 | 1.ニフェジピンと歯肉増殖との因果関係を細胞外マトリックスの主成分であるグリコサミノグリカン(GAG)に注目し、生化学的に解明するのが目的である。2.実験動物は生後20日齢の雄、Fischer系SPFラットを用いた。対照群は普通粉末飼料を自由摂取させ、実験群1(NF250)は普通粉末飼料に1kgあたりニフェジピン粉末を250mgを添加し自由摂取させ、実験群2(NF500)は普通粉末飼料1kgあたりニフェジピン粉末を500mgを添加し、自由摂取させ歯肉増殖を起こした。ニフェジピン投与ラットの増殖歯肉ならびにニフェジピン非投与ラット歯肉からGAGを抽出し、その後セルロースアセテート膜電気泳動法とクロマトスキャナーによりGAGの定性、定量を行い両者のGAGを比較した。3.抽出した両者のGAGとして、ヒアルロン酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸に相当する画分が濃染され、歯肉中には4種のGAGが含まれることが確認された。4.各GAGを定量した結果、ヒアルロン酸とデルマタン硫酸が主要GAG成分であり、ヘパラン硫酸とコンドロイチン硫酸は微量成分であった。総GAG量はNF5000>NF250対照群の順であり、対照群と比較してNF250で約2倍、NF500で約5倍増加していた。各GAG画分量では、ヒアルロン酸は、NF250では対照群の約3倍、NF500では約7倍増加していた。一方デルマタン硫酸は、NF250では対照群の約1.6倍、NF500では約4倍増加していた。このようにヒアルロン酸とデルマタン硫酸はNF250ならびにNF500では対照群と比較して増加が顕著であった。ヘパラン硫酸とコンドロイチン硫酸でも、対照群よりNF250ならびにNF500において微増傾向を示した。1.ニフェジピンと歯肉増殖との因果関係を細胞外マトリックスの主成分であるグリコサミノグリカン(GAG)に注目し、生化学的に解明するのが目的である。2.実験動物は生後20日齢の雄、Fischer系SPFラットを用いた。対照群は普通粉末飼料を自由摂取させ、実験群1(NF250)は普通粉末飼料に1kgあたりニフェジピン粉末を250mgを添加し自由摂取させ、実験群2(NF500)は普通粉末飼料1kgあたりニフェジピン粉末を500mgを添加し、自由摂取させ歯肉増殖を起こした。ニフェジピン投与ラットの増殖歯肉ならびにニフェジピン非投与ラット歯肉からGAGを抽出し、その後セルロースアセテート膜電気泳動法とクロマトスキャナーによりGAGの定性、定量を行い両者のGAGを比較した。3.抽出した両者のGAGとして、ヒアルロン酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸に相当する画分が濃染され、歯肉中には4種のGAGが含まれることが確認された。4.各GAGを定量した結果、ヒアルロン酸とデルマタン硫酸が主要GAG成分であり、ヘパラン硫酸とコンドロイチン硫酸は微量成分であった。総GAG量はNF5000>NF250対照群の順であり、対照群と比較してNF250で約2倍、NF500で約5倍増加していた。各GAG画分量では、ヒアルロン酸は、NF250では対照群の約3倍、NF500では約7倍増加していた。一方デルマタン硫酸は、NF250では対照群の約1.6倍、NF500では約4倍増加していた。このようにヒアルロン酸とデルマタン硫酸はNF250ならびにNF500では対照群と比較して増加が顕著であった。ヘパラン硫酸とコンドロイチン硫酸でも、対照群よりNF250ならびにNF500において微増傾向を示した。1.ニフェジピンと歯肉増殖との因果関係を細胞外マトリックスの主成分であるグリコサミノグリカン(GAG)に注目し、生化学的に解明するのが目的である。2.ニフェジピン投与ラットの増殖歯肉ならびにニフェジビン非投与ラットの歯肉からGAGを通法にて抽出し、その後セルロースアセテート膜電気泳動法とクロマトスキャナーによりGAGの定性、定量を行い両者のGAGを比較検討した。3.抽出した両者のGAGをセルロースアセテート膜電気泳動により分離しアルシアンブルーで染色した結果、ヒアルロン酸、ヘバラン硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸に相当する画分が濃染され、歯肉中には4種のGAGが含まれることが確認された。4.各GAGを定量した結果、ヒアルロン酸とデルマタン硫酸が主要GAG成分であり、ヘパラン硫酸とコンドロイチン硫酸は微量成分であった。5.更に歯肉GAGの生合成過程についてもH-グルコサミンを用いて、in vitroにおける取り込み実験による観察を行う予定である。1.ニフェジピンと歯肉増殖との因果関係を細胞外マトリックスの主成分であるグリコサミノグリカン(GAG)に注目し、生化学的に解明するのが目的である。2.実験動物は生後20日齢の雄、Fischer系SPFラットを用いた。対照群は普通粉末飼料を自由摂取させ、実験群1(NF250)は普通粉末飼料に1kgあたりニフェジピン | KAKENHI-PROJECT-10671974 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10671974 |
ニフェジピン歯肉増殖発症機構の解明 | 粉末を250mgを添加し自由摂取させ、実験群2(NF500)は普通粉末飼料1kgあたりニフェジピン粉末を500mg添加し、自由摂取させ歯肉増殖を起こした。ニフェジピン投与ラットの増殖歯肉ならびにニフェジピン非投与ラット歯肉からGAGを抽出し、その後セルロースアセテート膜電気泳動法とクロマトスキャナーによりGAGの定性、定量を行い両者のGAGを比較した。3.抽出した両者のGAGとして、ヒアルロン酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸に相当する画分が濃染され、歯肉中には4種類のGAGが含まれることが確認された。4.各GAGを定量した結果、ヒアルロン酸とデルマタン硫酸が主要GAG成分であり、ヘパラン硫酸とコンドロイチン硫酸は微量成分であった。総GAG量はNF5000>NF250>対照群の順であり、対照群と比較してNF250で約2倍、NF500で約5倍増加していた。各GAG画分量では、ヒアルロン酸は、NF250では対照群の約3倍、NF500では約7倍増加した。一方デルマタン硫酸は、NF250では対照群の約1.6倍、NF500では約4倍増加していた。このようにヒアルロン酸とデルマタン硫酸はNF250ならびにNF500では対照群と比較して増加が著明であった。ヘパラン硫酸とコンドロイチン硫酸でも、対照群よりNF250ならびにNF500において微増傾向を示した。 | KAKENHI-PROJECT-10671974 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10671974 |
セミソリッドプロセッシング法を応用した金属間化合物の成形とその機械的特性 | 一般に,金属間化合物は熱的に構造が安定であるため耐熱構造材料として期待されている.しかし,高温高強度であるが故に,熱間加工が困難であり,常温においても延性はほとんどなく,難加工材料とされている.出発材料を金属間化合物の組成を有する混合金属粉末とすれば,低融点側金属の溶解によって液相が生成し,固液相共存のスラリーとなる.そのスラリーに成形加工を施せば,金属間化合物を低温度・低成形力で成形することが可能と考えられる.そこで本研究では,Al_3Ni相が主組織となるAl-(4044)mass%Ni混合粉末を出発材料とし,混合粉末を種々の昇温速度で加熱し,金属間化合物組成となるスラリーの生成過程について調べた.その結果,低昇温速度ほど,低温度で液相が生成され,液相とNiとの反応における発熱量は高くなり,その凝固組織はAl_3Ni相が主となることが判明した.したがって,液相が生成し固液相共存のスラリーとなる.そのスラリーに成形加工を施すと金属間化合物を低温度・低成形力で成形することが明らかにした.そこで,得られた成形体の高温強度特性を検討した.燃焼合成反応終了後に成形を行なった成形体ではAl3Niの金属間化合物が主組織となり,高試験温度においても高強度を示す.また,燃焼合成反応前に成形を行なって得られる成形体は,共晶組織であるが,熱処理を施すと,金属間化合物組織となり,いずれも,耐熱材料として適当であることを見いだした.一般に,金属間化合物は熱的に構造が安定であるため耐熱構造材料として期待されている.しかし,高温高強度であるが故に,熱間加工が困難であり,常温においても延性はほとんどなく,難加工材料とされている.出発材料を金属間化合物の組成を有する混合金属粉末とすれば,低融点側金属の溶解によって液相が生成し,固液相共存のスラリーとなる.そのスラリーに成形加工を施せば,金属間化合物を低温度・低成形力で成形することが可能と考えられる.そこで本研究では,Al_3Ni相が主組織となるAl-(4044)mass%Ni混合粉末を出発材料とし,混合粉末を種々の昇温速度で加熱し,金属間化合物組成となるスラリーの生成過程について調べた.その結果,低昇温速度ほど,低温度で液相が生成され,液相とNiとの反応における発熱量は高くなり,その凝固組織はAl_3Ni相が主となることが判明した.したがって,液相が生成し固液相共存のスラリーとなる.そのスラリーに成形加工を施すと金属間化合物を低温度・低成形力で成形することが明らかにした.そこで,得られた成形体の高温強度特性を検討した.燃焼合成反応終了後に成形を行なった成形体ではAl3Niの金属間化合物が主組織となり,高試験温度においても高強度を示す.また,燃焼合成反応前に成形を行なって得られる成形体は,共晶組織であるが,熱処理を施すと,金属間化合物組織となり,いずれも,耐熱材料として適当であることを見いだした.研究初年度として、セミソリッドプロセッシングを利用した金属間化合物の成形を行うために、まず、合金スラリーの生成過程を調べた。(1)加熱法による合金スラリーの生成出発材料を種々の組成でAl/Ni混合粉末とし、まず、低融点のアルミニウムが溶融し、固相ニッケルと反応して合金化した。そして、Al/Ni混合粉末を種々の加熱速度で等速加熱し、金属組織学的に合金相の生成過程を明らかにした。また、Al-(2856)mass%Ni合金において1127K以上の温度で液相とAl_3Ni_2相の共存状態するので、この共存域で等温加熱した際のスラリーの生成過程を調べた。(2)合金スラリー生成に及ぼす機械的撹拌の影響スラリーの粘性は固相粒子の形状およびその割合(固相率)にもよるが、スラリーを攪拌することによって粘性の急変するチクソトロピー(揺変性)が変化し、攪拌速度(せん断ひずみ速度)が高いほど、高固相率で低粘性のスラリーとなる。そこで、等温加熱法によって生成したスラリーに機械的撹拌を加え、スラリー中の固相率変化を明らかにした。これまでに,セミソリッドブロセッシングを利用して金属間化合物の成形を行うために、まず、出発材料を種々の組成でAl/Ni混合粉末とし,種々の昇温速度で加熱した際のAl-Ni間の反応による、合金スラリーの生成過程を調べた結果,まず,Al-Ni間で固相反応し,合金組成がAl-Al3Ni共晶組成になる部分から液相が生成する.この固相反応では,発熱反応をともなうため,加熱温度以上に温度上昇し,アルミニウムの融点以下でも液相が生成し,スラリー状態となる.このような傾向は昇温速度が低いほど顕著であった.そして各反応について反応速度論から確証した.スラリーの生成後、凝固して組織観察すると,一部に未溶解のNi相が残存するが,Al3Ni2相が形成し,この相を包囲するAl3Ni相とその周囲にAl-Al3Niの共晶組織となっていることから,出発材料を混合粉末として加熱すると,高融点金属の金属間化合物を,十分低温で生成することが明らかとなった. | KAKENHI-PROJECT-11650749 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11650749 |
セミソリッドプロセッシング法を応用した金属間化合物の成形とその機械的特性 | そこで,同様な手法を利用して,実機による金属間化合物の成形を試みた.成形は後方押出し形式のダイカスト法とし,Al3Ni相が主要組織となるAl-4044mass%Niの混合粉末を,一定の昇温速度で加熱し,合金スラリーが生成する時点で加工することにより,金属間化合物が形成して,成形が可能であることを見いだした.出発材料を金属間化合物の組成を有する混合金属粉末とすれば,低融点側の融解によって液相が生成し固液相共存のスラリーとなる.そのスラリーに成形加工を施すと金属間化合物を低温度・低成形力で成形することが可能であることをこれまでの研究で明らかにした.そこでAl_3Ni相が主組織となるAl-42mass%Ni合金を同様な方法で作製し,成形体の高温強度特性を検討した.燃焼合成反応前に成形を行なった成形体では室温(300K)において降伏応力が高く,延性は低いが,熱処理による組織の均一化処置を行なうことによって降伏応力は低下し,延性が増加した.試験温度が高くなると,降伏応力は低下し,延性は増大するが1073Kでは,一部の共晶組織が融解するため,.延性は減少しする.燃焼合成反応終了後に成形を行なった成形体ではいずれの試験温度においても高い延性を示す.また,試験温度の上昇に伴い変形応力は低下するが,573K以上では,棒状Al_3Ni相と共晶組織が変形過程で金属間化合物に組織変化するため,降伏応力は低下し,延性は著しく増加する.しかし,燃焼合成反応前に成形を行なって得られる成形体は高温強度が高く,耐熱材料として適当であるが,燃焼合成反応終了後に成形を行なった成形体では,成形後に金属間化合物組織となるため,Al-42mass%Ni合金では,1000K近傍でSemi-solid processing法により作製した成形体を,熱間加工により二次成形し,金属間化合物組織とすれば,高温高強度の耐熱材料として十分有効な材料として期待ができる. | KAKENHI-PROJECT-11650749 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11650749 |
幼児の対人関係がコミュニケーションに及ぼす影響 | まず、幼稚園における子どもの人間関係とコミュニケーションの関係について検討した。子ども同士の相互作用の中で、特にいざこざに注目してみたところ、その発生頻度が次第に増加していくことがわかった。これは一面で相互作用の活発化を表すものであるが、子ども同士の関係が質的に変化していることを示唆するものでもある。このことは幼稚園において収集した事例の分析によって裏付けられた。子どものいざこざは偶発的なものから、次第に目的をもった意図的なものへと変化しており、それは子ども個人の発達と、子ども同士の人間関係の変化によるものであると考えられた。次に家庭における子どもの人間関係に注目した。家庭内で起こった子どもの熱傷の事例を集め、その要因の一つとして子どもを中心とする人間関係に注目した。年齢とともに熱傷の発生頻度とその原因は大きく変化しているが、家庭内のコミュニケーションがその発生と予防にかかわっていると思われた。乳児期や幼児前期には、子どものコミュニケーション能力が未発達であるため、大人の予想しない事故が起こる。3歳ごろから、大人が注意を促すことによって事故発生を防ぐことができるようになり、4歳以後は、器具の正しい扱い方を教えることによって、熱傷の発生を防ぐことができると思われた。子ども集団におけるいざこざと、家庭における熱傷事故の事例を通して、子ども同士、あるいは子どもと大人のコミュニケーションがそうした事態の発生に深く関与していることが明らかとなった。そしてコミュニケーションの発達によって、いざこざや事故の様態がどのように変化するかがわかった。まず、幼稚園における子どもの人間関係とコミュニケーションの関係について検討した。子ども同士の相互作用の中で、特にいざこざに注目してみたところ、その発生頻度が次第に増加していくことがわかった。これは一面で相互作用の活発化を表すものであるが、子ども同士の関係が質的に変化していることを示唆するものでもある。このことは幼稚園において収集した事例の分析によって裏付けられた。子どものいざこざは偶発的なものから、次第に目的をもった意図的なものへと変化しており、それは子ども個人の発達と、子ども同士の人間関係の変化によるものであると考えられた。次に家庭における子どもの人間関係に注目した。家庭内で起こった子どもの熱傷の事例を集め、その要因の一つとして子どもを中心とする人間関係に注目した。年齢とともに熱傷の発生頻度とその原因は大きく変化しているが、家庭内のコミュニケーションがその発生と予防にかかわっていると思われた。乳児期や幼児前期には、子どものコミュニケーション能力が未発達であるため、大人の予想しない事故が起こる。3歳ごろから、大人が注意を促すことによって事故発生を防ぐことができるようになり、4歳以後は、器具の正しい扱い方を教えることによって、熱傷の発生を防ぐことができると思われた。子ども集団におけるいざこざと、家庭における熱傷事故の事例を通して、子ども同士、あるいは子どもと大人のコミュニケーションがそうした事態の発生に深く関与していることが明らかとなった。そしてコミュニケーションの発達によって、いざこざや事故の様態がどのように変化するかがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-05780002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05780002 |
3.3キロトン液体アルゴン・タイム・プロジェクション・チェンバ-の建設 | 1985年、CERNのRubbia教授を中心としてグラン・サッソ-地下実験所に宇宙から飛来するニュ-トリノ検出のための大型液体アルゴン・タイム・プロジェクション・チェンバ-を建設する計画が作られた。これは、ICARUS計画と呼ばれ、初め3.3キロトンのもの建設が予定されていた。しかし、1988年の中頃次のような3段階を経て大型(3.3キロトン)の液体アルゴンTPCを実現することになった。第一段階23トン級の小型液体アルゴンTPCを2台建設しグランサソ-地下実験所でニュ-トリノ観測の為のバックグラウンド測定を行なう。第二段階300トン級の液体アルゴンTPCを建設し太陽ニュ-トリノの観測を始める。第三段階当初の目的である3.3キロトン級の液体アルゴンTPCを建設し、核子崩壊、宇宙ニュ-トリノの観測を始める。しかし、その後の経過を見ると、実際に建設されつつあるのは現状では23トン級液体アルゴン1台のみであるが、ようやくその建設も終わり現在CERNでそのテストがなされつつある。また、全体の構想も変り、第二段階の太陽ニュ-トリノ観測としても300トンは小さすぎ1キロトンの液体アルゴンTPCを建設すべきであるとの声もある。更に、第三段階として考えられている3.3キロトン級液体アルゴンTPCの建設は核子崩壊実験用としては小さすぎるとして現状ではほとんど無視されているように見える。以上のような情勢の変化にたいして、23トンのモデル実験からは、1)液体アルゴンの純度については極めて簡単な方式で電子に対する減衰長が1meter又はそれ以上のものが得られており大いに自信を強めている。2)信号の読みだし方式についてはCERNの得意とするところで問題はないがグリッド線の断線には悩まされているようである。3)トリガ-信号として何を使用すべきかかは位置精度の向上のために極めて重要であるが、我々日本側としては液体アルゴン中での発光の利用を考えており、その基礎研究を開始した処である。4)日欧両グル-プで独自の純度モニタ-を開発し、それぞれの特長を利用して使用している。このように、時間は掛かったもののテスト実験の分野では、液体アルゴンTPCの技術的裏付けが蓄積されつつある。そのため、CERNに於いてなされつつある最終テスト実験に成功した後、ICARUSグル-プとしてどのような方向を取るべきかについてはa)この小型液体アルゴンTPCを直接素粒子実験に使用することが提案されたり、b)太陽ニュ-トリノ観測用の1キロトン液体アルゴンTPCの建設が考えられたりしておりしており、いまの処まだはっきりしていないが、その方向は遅くともここ数カ月中に決定されよう。このような現状にあって、我々は、液体アルゴン中ではニュ-トリノによる反跳電子の検出(ν_eとν共に可能)と共に、次のようなKの逆β崩壊が起き、ν_eのみを選択的に検出することが可能である。このことは、液体アルゴンTPCの顕著な特長で、この検出器のみでニュ-トリノ振動に対する結論を得ることが可能である。このような観点ら、我々は、太陽ニュ-トリノ観測用の1キロトンの液体アルゴンTPCが建設されることを第一に望んでいおり、次でその際のニュ-トリノに対するトリガ-信号として我々が提案している液体アルゴンからの発光が使用されることを希望しており、かつ、その方面を分担したいと考えている。1985年、CERNのRubbia教授を中心としてグラン・サッソ-地下実験所に宇宙から飛来するニュ-トリノ検出のための大型液体アルゴン・タイム・プロジェクション・チェンバ-を建設する計画が作られた。これは、ICARUS計画と呼ばれ、初め3.3キロトンのもの建設が予定されていた。しかし、1988年の中頃次のような3段階を経て大型(3.3キロトン)の液体アルゴンTPCを実現することになった。第一段階23トン級の小型液体アルゴンTPCを2台建設しグランサソ-地下実験所でニュ-トリノ観測の為のバックグラウンド測定を行なう。第二段階300トン級の液体アルゴンTPCを建設し太陽ニュ-トリノの観測を始める。第三段階当初の目的である3.3キロトン級の液体アルゴンTPCを建設し、核子崩壊、宇宙ニュ-トリノの観測を始める。しかし、その後の経過を見ると、実際に建設されつつあるのは現状では23トン級液体アルゴン1台のみであるが、ようやくその建設も終わり現在CERNでそのテストがなされつつある。また、全体の構想も変り、第二段階の太陽ニュ-トリノ観測としても300トンは小さすぎ1キロトンの液体アルゴンTPCを建設すべきであるとの声もある。更に、第三段階として考えられている3.3キロトン級液体アルゴンTPCの建設は核子崩壊実験用としては小さすぎるとして現状ではほとんど無視されているように見える。以上のような情勢の変化にたいして、23トンのモデル実験からは、1)液体アルゴンの純度については極めて簡単な方式で電子に対する減衰長が1meter又はそれ以上のものが得られており大いに自信を強めている。2)信号の読みだし方式についてはCERNの得意とするところで問題はないがグリッド線の断線には悩まされているようである。3)トリガ-信号として何を使用すべきかかは位置精度の向上のために極めて重要であるが、我々日本側としては液体アルゴン中での発光の利用を考えており、その基礎研究を開始した処である。4)日欧両グル-プで独自の純度モニタ-を開発し、それぞれの特長を利用して使用している。 | KAKENHI-PROJECT-63044138 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63044138 |
3.3キロトン液体アルゴン・タイム・プロジェクション・チェンバ-の建設 | このように、時間は掛かったもののテスト実験の分野では、液体アルゴンTPCの技術的裏付けが蓄積されつつある。そのため、CERNに於いてなされつつある最終テスト実験に成功した後、ICARUSグル-プとしてどのような方向を取るべきかについてはa)この小型液体アルゴンTPCを直接素粒子実験に使用することが提案されたり、b)太陽ニュ-トリノ観測用の1キロトン液体アルゴンTPCの建設が考えられたりしておりしており、いまの処まだはっきりしていないが、その方向は遅くともここ数カ月中に決定されよう。このような現状にあって、我々は、液体アルゴン中ではニュ-トリノによる反跳電子の検出(ν_eとν共に可能)と共に、次のようなKの逆β崩壊が起き、ν_eのみを選択的に検出することが可能である。このことは、液体アルゴンTPCの顕著な特長で、この検出器のみでニュ-トリノ振動に対する結論を得ることが可能である。このような観点ら、我々は、太陽ニュ-トリノ観測用の1キロトンの液体アルゴンTPCが建設されることを第一に望んでいおり、次でその際のニュ-トリノに対するトリガ-信号として我々が提案している液体アルゴンからの発光が使用されることを希望しており、かつ、その方面を分担したいと考えている。 | KAKENHI-PROJECT-63044138 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63044138 |
家政学における「いのち/生命倫理」観の構築 | 平成13年度は、以下の諸点を中心に研究を進めた。1)関連する学会・研究会・ネットワークヘの家政学者の関与の仕方生命倫理学会・日本死の臨床研究会・学校における生命倫理教育ネットワークに所属している研究者は、倫理学・哲学・法学・医学・看護学・杜会学関係が多数を占めており、家政学関係の研究者はごく少数であった。申請者が所属する新潟大学生命倫理研究会のメンバー構成も、ほば同様であり、個人・家族の「いのち」をめぐる視点からの研究はほとんどなされていなかった。2)"生命倫理"の捉え方家政学者に対する調査を実施するための準備として、収集した文献及び関係者へのヒアリングをもとにして"生命倫理"の定義・解釈について整理した。その結果、現段階では、"生命倫理"が"医療倫理"と同義に解釈される傾向にあり、欧米の影響を強く受けている様子がうかがえた。また、生命倫理法の制定へ向けた動きは、生殖補助医療(ART)と発生操作研究のあり方を軸に進んでいることが明らかとなった。3)ヒアリングと調査票の設計(1)生命倫理の研究者に対するヒアリング倫理学・哲学・法学・医学・看護学・宗教学の関連研究をしている研究者に対して、ヒアリングを実施した。また、関連するシンポジウムや研究会に参加して、研究者の関心の動向について情報を収集した。(2)家政学・家庭科教育学の研究者に対するヒアリングと調査票の設計家政学原論・家族関係学・家庭科教育の聯を中心に、「いのち」や「生命倫理」の捉え方についてヒアリングを実施した。その結果をふまえて、関係者に対する意識調査の調査票を設計した。現在、プレテストを終え、本調査に向けて調査票の修正作業を実施している。平成12年度は、以下の諸点を中心に研究を進め、それぞれ一定の成果が得られた。1)家政学分野における見解の整理家政学関連、特に家政学原論や家政学史・家政哲学に関する文献にあたり、家政学者がこれまで「いのち/生命倫理」をどう捉えてきたのか検索したが、該当する記述は現在のところ発見できていない。「生命」は、「生命の再生産」に関わる記述としては見られるが、他の語義に関連した表現としては用いられていなかった。学会誌も同様である。2)他分野における見解の整理生命倫理学会の『生命倫理』は、法律関係・医療関係・社会科学関係からのアプローチが多数をしめていた。日本死の臨床研究会の『死の臨床』は、医療関係からのアプローチが中心であった。いずれも、家政学的視点で「いのち/生命倫理」について検証したものは見受けられなかった。その他の分野に関しては、継続して調査中である。3)ホームページに投稿された意見の分析NHK-BSが作成・管理しているインターネット・ホームページ『地球法廷』の、"脳死"に関する投稿意見をデータベース化して分析した。賛成派・条件付き賛成派・反対派のそれぞれに意見が分かれて論議されていた。一般論としての意見と、「自分」や「家族」に当てはめての意見とが表裏一体となって現れたほか、現代に生きる我々が求めようとしている死生観が、大きく揺らいでいる様子がうかがえた。以上の結果に加え、現在も収集した文献のデータベース化を継続して実施している。これらの結果をふまえて、来年度は家政学者に対する意識調査を実施する予定である。平成13年度は、以下の諸点を中心に研究を進めた。1)関連する学会・研究会・ネットワークヘの家政学者の関与の仕方生命倫理学会・日本死の臨床研究会・学校における生命倫理教育ネットワークに所属している研究者は、倫理学・哲学・法学・医学・看護学・杜会学関係が多数を占めており、家政学関係の研究者はごく少数であった。申請者が所属する新潟大学生命倫理研究会のメンバー構成も、ほば同様であり、個人・家族の「いのち」をめぐる視点からの研究はほとんどなされていなかった。2)"生命倫理"の捉え方家政学者に対する調査を実施するための準備として、収集した文献及び関係者へのヒアリングをもとにして"生命倫理"の定義・解釈について整理した。その結果、現段階では、"生命倫理"が"医療倫理"と同義に解釈される傾向にあり、欧米の影響を強く受けている様子がうかがえた。また、生命倫理法の制定へ向けた動きは、生殖補助医療(ART)と発生操作研究のあり方を軸に進んでいることが明らかとなった。3)ヒアリングと調査票の設計(1)生命倫理の研究者に対するヒアリング倫理学・哲学・法学・医学・看護学・宗教学の関連研究をしている研究者に対して、ヒアリングを実施した。また、関連するシンポジウムや研究会に参加して、研究者の関心の動向について情報を収集した。(2)家政学・家庭科教育学の研究者に対するヒアリングと調査票の設計家政学原論・家族関係学・家庭科教育の聯を中心に、「いのち」や「生命倫理」の捉え方についてヒアリングを実施した。その結果をふまえて、関係者に対する意識調査の調査票を設計した。現在、プレテストを終え、本調査に向けて調査票の修正作業を実施している。 | KAKENHI-PROJECT-12780073 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12780073 |
カーボンナノホーンのサイズ制御と化学修飾による標的がん治療薬剤の作製及び生体応用 | 本研究では、CNHの集合体(100 nm)から個々のナノホーンあるいは微小CNHの集合体(20-50 nm, S-CNH)を酸化分離法により大量分離することに成功した。分離したS-CNHの生体内環境での分散性、ステルス性、標的指向性を改善するために多重化学修飾を行った。細胞実験結果から、S-CNHをポリエチレングリコール修飾することにより、マクロファージの貪食を抑制させ、標的物質付加によるがん細胞内への取り込みを増進させることができた。さらに、抗がん剤シスプラティンを内包したS-CNHを多重化学修飾により多機能化させたS-CNH DDSを構築し、in vivoで、生体内動態を調べ、標的癌組織への取り込みと癌治療効果を評価した。本研究では、CNHの集合体(100 nm)から個々のナノホーンあるいは微小CNHの集合体(20-50 nm, S-CNH)を酸化分離法により大量分離することに成功した。分離したS-CNHの生体内環境での分散性、ステルス性、標的指向性を改善するために多重化学修飾を行った。細胞実験結果から、S-CNHをポリエチレングリコール修飾することにより、マクロファージの貪食を抑制させ、標的物質付加によるがん細胞内への取り込みを増進させることができた。さらに、抗がん剤シスプラティンを内包したS-CNHを多重化学修飾により多機能化させたS-CNH DDSを構築し、in vivoで、生体内動態を調べ、標的癌組織への取り込みと癌治療効果を評価した。22年度は本研究計画した通り進展し、目標とした二つの成果が得られた。●微小ナノホーン集合体(s-CNH)を大量分離する技術の確立カーボンナノホーン(CNH)集合体は高い物質吸着能力を有し、物質の内包と徐放が容易であるということから、キャリアーとして薬物送達システム(ドラックデリバリーシステム:DDS)への応用が期待されている。しかし、CNHが極めて安定であるため生体内に投与後分解しづらく、また集合体サイズ(約100nm)が大きいため体外排出するのが難しいという問題がある。したがって従来のCNH集合体を更に微小化が必要である。本研究では、強酸(H2SO4とHNO3)を用いてCNH集合体を処理することにより、微小集合体ナノホーンの大量分離が成功した。様々な実験を行い、CNHの壁を壊れず酸化しすぎないように、CNHの大量分離が出来る最適な条件を得た。電子顕微鏡(TEM)及びRaman分光器により、元の集合体と比べ、分離したs-CNHの構造は大きく損傷していないことを明らかにした。また、ダイナミック光散乱光度計で測定した結果により、分離したCNH集合体のサイズは20-50nmであることが分かった。●ステルス性を高める修飾に成功CNH集合体を化学修飾しないまま血管内投与される場合は異物と認識され、免疫細胞などに貪食されるため、がん組織等の病変部へ蓄積が難しくなっている。本研究ではs-CNHを生体適合性高い高分子のポリエチレングリコール(PEG)で非共有結合的に修飾した。マイクロファージ貪食細胞を用いて、修飾したs-CNHのステルス性をin vitroで検証した。分離したS-CNH(20-50nm)は元のCNH(100nm)より細胞への取り込み量が少ない。PEGで修飾することにより、s-CNHはほとんどマイクロファージ細胞に取り込まないことが分かった。23年度は本研究計画の通り進展し、目標とした三つの成果が得られた。(1)標的分子葉酸を用いて、小さいサイズ(S-CNH)と通常サイズ(L-CNH)のナノホーンの修飾に成功した。(2)CNHの細胞内の取り込み量の定量化に成功ナノカーボン物質の細胞内の取り込み量を定量するには、今まではナノカーボンに蛍光物質を付けて定量する方法がある。修飾法により、そのナノカーボンの性質が変化され、付けた蛍光物質は細胞培養液にナノカーボンから離れる可能性があり、正確定量には幾つかの問題があった。本研究では、まず、CNHの黒い粒という特徴を利用することにより、光学顕微鏡で細胞内取り込みしたCNHの相対量を観察法で見積りできた。そして、CNHの近赤外光吸収特性を利用した定量方法を確立した。細胞溶解剤と超音波破砕機を組み合わせ、最適な細胞-CNHの分散液を得られ、光吸収スペクトルで細胞に内包したCNHの量を正確に測定することが可能になった。(3)CNHの細胞内の取り込み量が化学修飾や、サイズに依存することを明らかにした。具体的に、PEGで修飾したS-CNHはマクロファージ細胞への取り込み量が少なく、葉酸で修飾したS-CNHは標的癌細胞へ(KB細胞)の取り込み量が大きくなるという優れた特性があることを見いだした。一方、L-CNHはPEG機能化した効果が多少あるが、葉酸の効果があまり見られなかった。得られた結果を論文にまとめて、現在英文誌「SMALL]に掲載確定である。本研究では、CNH集合体の単分離化によるサイズ制御とその単離したCNHへの化学修飾により、選択的に癌患部に到達可能な新機能性ナノカーボン材料の作製を試み、それらのin vitro、in vivo試験により、その癌治療の効果を検証する。昨年度まで小さいサイズのナノホーン(S-NH)を通常の集合体(L-NH)からの大量分離することに成功した。 | KAKENHI-PROJECT-22510119 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22510119 |
カーボンナノホーンのサイズ制御と化学修飾による標的がん治療薬剤の作製及び生体応用 | 作製したS-NHは粒径30-50nmのサイズであり、細胞レベルでの実験を行った結果、S-NHはマクロファ-ジ細胞への取り込み量が少なく、化学修飾により標的癌細胞への取り込み量が大きいというDDSとして優れた特性があることを明らかにした。本年度は、研究計画の通り進展し、目標とする三つの成果が得られた。(1)独自なプロセスを用いて、S-NHがPBSなどのイオン溶液中に再凝集し易いという問題を解決し、S-NHの表面に抗がん剤CDDP、PEG及び標的分子EGFを多重修飾に成功した。(2)多重修飾したナノホーンが細胞に対してどのような影響を及ぼすのかを調べた結果、S-NHはL-NHと共に毒性が非常に低いことを明らかにした。(3)担癌マウスを用いて、修飾したナノホーンが癌組織に選択的に到達できるがどうかを確認し、がん治療効果を検証した。その結果、L-NHを用いる場合と比べ、多重修飾したS-NHを担癌マウスに静脈投与することにより、腫瘍の増大速度は減少したことが分かった。この研究により、ナノホーンDDSの実用化研究を加速する事が期待できる。前年度は本研究テーマが計画通り進展し、目標とする成果が得られた。DSPE-PEGと標的分子葉酸を用いて、小さいサイズ(S-CNH)と通常サイズ(L-CNH)のナノホーンの修飾に成功した。そして、修飾したCNHの細胞内の取り込み量を定量化し、CNHの細胞内の取り込み量が化学修飾や、サイズに依存することを明らかにした。この結果を論文にまとめて、現在英文誌[SMALL]に掲載確定である24年度が最終年度であるため、記入しない。今年は更に化学修飾方法を改良し、担癌マウスを用いて、多機能化したs-CNHの標的機能の評価及び生体への影響を調べる。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22510119 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22510119 |
十六世紀イギリスの大学演劇文化とその商業演劇的展開に関する研究 | 本研究は16世紀イングランドのケンブリッジ大学、及びオクスフォード大学における学生演劇の文化史的、演劇史的な意義を一次史料に基づいて再構築し、その全体像を描くと共に、両大学の学生演劇文化が、ロンドンや地方都市の商業演劇にどのように接ぎ木され、展開していったかを明らかにした。この研究は16世紀イングランドのケンブリッジ大学及びオクスフォード大学における学生演劇の文化史的、演劇史的意義を一次史料に基づいて再構築するものであるが、今年度は以下の研究計画に基づいて行った。(1)文学作品の分析:Gabriel Harveyを揶揄したと思われる劇Pedantiusはケンブリッジ大学で1580年代に上演された劇だが、その劇に関する分析と、それがロンドンの文化へとどう接ぎ木されていたかということに関する分析。特にロンドンにおいてEdmund Spenserと騎士道ロマンスがどんな文化的役割を果たしたかを考察する研究計画だった。(3)地方及びロンドンにおける文化的環境に関する調査。それによって対象となる文学作品のコンテクストを探る。本研究は16世紀イングランドのケンブリッジ大学、及びオクスフォード大学における学生演劇の文化史的、演劇史的な意義を一次史料に基づいて再構築し、その全体像を描くと共に、両大学の学生演劇文化が、ロンドンや地方都市の商業演劇にどのように接ぎ木され、展開していったかを明らかにした。2008(平成20)年度においては、ケンブリッジ大学におけるGabriel HarveyとEdmund SpenserのEarl of Leicesterを巡る関係を踏まえた上で、Edward ForcetのPedantiusやThomas Nashe vs. Harvey論争を扱い、大学での友人・敵対関係が、どのような形でロンドンでのHarvey批判につながっていったのかをケンブリッジ大学古文書館にて調査した。その結果、Pedantiusの政治性がプロテスタント武闘派との関連で浮き彫りになってきたという成果は大きい。この点については稿を起こして論文に纏める予定である。また、Nathaniel Woodesの作品について、彼が大学時代にどのような人脈を築き、その人脈を基にしてノリッジで市長や地方有力者の庇護下でどのような演劇活動を行っていたのかを明らかにした。この成果を得るために、ノリッジのノーフォーク記録保管所に残されている市議会記録、及び教区記録などを再調査した。その成果は、"Nathaniel Wooodes, Foxeian Martyrology, and the Radical Protestants of Norwich in the1570s," Reformation13(2008)として発表された。ReformationはTyndale Societyの国際ジャーナルであり、John N.Kingが編集長を務め、Andrew Hadfield, Patrick Collinsonなどの碩学がreaderを務める歴史・神学・文学のinterdisciplinaryな雑誌である。この論文によって、大学が地方演劇と緊密な関係性をもっていたことだけでなく、大学演劇から商業演劇への展開について新しい事実を公表できたことは、イギリス演劇研究史上重要なことだと思われる。今年度の研究の大きな目的は、大学学寮の社会的構造に焦点を当て、卒業後に大学出身の作家が貴族や地方有力者を核にして形成する文学サークルが、どのような地方人脈によって成立し得たのかを詳細に検証することであったが、次の三点で大きな成果があった。すなわち、(1)ケンブリッジ大学古文書館の史料から劇作家John Fletcherの新しい史料を発見し、これによって学寮における人脈のミッシング・リンクが新たに補われた。それと同時に、この発見によってJohn Fletcherの評伝研究における三百年間もの誤解を解くことができたことは非常に意義深いと思われる。この発見については秋田大学で行われた「宗教とチューダー朝演劇の成立」第24回研究会(2009年11月14日)において発表を行った。またこの発見に関する論文を纏め、Oxford University PressのNotes and Queriesに投稿した。現在審査中である。(2)ロンドンに上京した大学出身の劇作家たちが遭遇することになったロンドンの文化的状況を解明し、教員や学生たちを結ぶネットワークがどのように都市の文学サークルへと発展しうるかを考察したことである。とりわけ、ロンドンにおいて活況を呈していた騎士道ロマンスが大学才人の劇作家によってどのように受容され、活用されていったかを跡づけた。この点については2009年10月4日筑波大学にて開催されたシェイクスピア学会のセミナー「ロマンティック・リバイバル-騎士道ロマンスとエリザベス朝文学」において、「ロンドン大衆劇場における騎士道的英雄1570-90」と題して研究発表を行った。(3)Lincolnshire Archiveにて調査を行い、劇作家John Lylyの弟Peter Lylyが、別の学寮出身者で同郷カンタベリー出身者の後輩を、自分の務める文法学校に引っ張った事実の発見により、地縁によるネットワークの一部が解明されたことも有意義であった。以上。(1)文学作品の分析:Gabriel Harveyを巡る論争とプロテスタント・ミリタリストの人脈を中心に作品の分析を行い、ロンドンにおけるEdmund Spenserと騎士道ロマンスの文化的役割と絡めつつPedantius(1581)という大学演劇について、またロンドンにおける民衆騎士道ロマンス演劇の復興とからめつつRichard RobinsonのAssertio inclytissimi Arturii regis Britanniae(1582)について分析した。その成果はInternational Shakespeare Conference、日本シェイクスピア協会の学会、及び日本中世英語英文学会の全国大会の研究発表やシンポジウム、またStudies in English Literatureの研究論文という形で発表した。(2)大学学寮及び地方都市の演劇関係一次史料の調査:ケンブリッジ大学古文書館における裁判記録や学寮出納簿の調査を行った過程で、劇作家John Fletcherに関する一次史料を発見した。これはFletcherに関する従来の定説を覆す史料であり、学寮と都市の関係性を探るにも第一級の貴重な史料である。 | KAKENHI-PROJECT-20520256 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20520256 |
十六世紀イギリスの大学演劇文化とその商業演劇的展開に関する研究 | その研究成果を纏めEarly Theatreにおいて発表した。(3)地方史に関する第二次史料の調査:地方人脈が大学の文化的環境の中でどのような役割を果たしていたかを様々な側面から明らかにするために、地方史(特にイースト・アングリア地方及びケント地方)に関する第二次史料を渉猟した。その結果、特にロンドンへ流入する劇作家たちは、地方人脈を経て、Privy Councilのメンバーとの繋がりを持つことが判明し、現在、Marlowe及びWatson,Spenser,Lylyといった大学才人たちのロンドンにおける活動とPrivy Councilとの関連について論文を執筆中である。平成23年度において実施した研究の成果は以下の通りである。(1)ケンブリッジとオクスフォードの大学出身学生が執筆した演劇や散文を主な史料として用いながらロンドンにおいて彼らが職業劇団に関わり、都市文化を変えていく様子を論文として纏め、『ロンドン物語:メトロポリスを巡るイギリス文学の700年』の一章として発表した。(2)ノリッジにあるノーフォーク記録文書館において史料を調査した。とりわけ地方都市と学寮との密接な関係だけでなく、人物同士の関係をも解明することのできる1570年代のケンブリッジ大学史料についての考察を行い、現在、論文に纏めている。(3)ロンドンの商業演劇を保護していた枢密院顧問官や枢密院の議事録について調査を行うとともに、二次文献の渉猟を行い、とりわけ枢密院と強い関係があったことで知られる劇作家たちが、どのように大学演劇文化の商業演劇的展開に関わったかを考察した。事例研究を通して枢密院庇護の一つの実態を明らかにする論文を執筆し、その成果を学会論文集に発表の予定である。本研究では16世紀イングランドのケンブリッジ大学、及びオクスフォード大学における学生演劇の文化史的、演劇史的な意義を一次史料に基づいて再構築し、その全体像を描くと共に、両大学の学生演劇文化が、ロンドンや地方都市の商業演劇にどのように接ぎ木され、展開していったかを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-20520256 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20520256 |
ロコモティブ・シンドローム合併心臓血管病の早期診断とハイブリッド運動療法の介入 | 骨格筋減少や筋力低下、骨量減少、関節軟骨変性による日常運動機能の低下が将来の要支援率や要介護率を高める病態概念を「ロコモティブ・シンドローム」と呼ぶ。心血管病検診者と慢性心血管病入院患者におけるロコモティブ・シンドローム診断調査の結果、女性患者は准高齢者年齢(6574歳)前からロコモティブ・シンドロームを合併している可能性が示唆された。久留米大学開発のハイブリッド・トレーニングシステムを用いた膝屈伸運動を6ヶ月間行った慢性心血管病患者の下肢運動機能は向上し、重症下肢虚血バージャー病患者では末梢循環不全の改善と虚血性潰瘍の治癒を認めた(研究-1)慢性心臓血管病入院患者におけるロコモティブ症候群合併静態調査は現在まで約150名の対象者に実施しており、一方で一般健診者約220名を対象とした比較静態調査も実施した。男性健診者においてロコモティブ症候群合併調査に十分な協力が得られなかったため、現時点では75歳以下の女性対象者間に限定した結果ではあるが、同年齢層の入院患者群において有意な上腕周囲径の低下、大腿周囲径の低下、四肢骨格筋量の低下、握力の低下、下肢伸展筋力の低下、立位移動能力の低下(TUGテストにおける移動所要時間の延長)、骨密度の低下(若年者平均値割合の低下)を認め、ロコモティブ症候群を高率に合併している状況が示唆された。(研究-2)慢性心臓血管病の外来患者10名に対し、「ハイブリッド・トレーニングシステム」を用いた下肢伸展屈曲運動療法を実施した。慢性心不全例6名、末梢動脈疾患例4名を内訳として6か月間の予定実施期間を満了できた対象者は9名(9割)であった。慢性心不全例では実施6か月後の胸部レントゲン写真で半数に心胸郭比の低下、血液検査で半数にNT-proBNP値の低下を認めた。慢性の末梢動脈疾患例(閉塞性動脈硬化症3例、バージャー病1例)ではバージャー病例において疼痛の軽快や皮膚潰瘍の改善を認めている。当包括医療費支払い制度方式(DPC)対象病院として「機能評価係数II」の上昇を目指す実状においては入院期間の短縮化は避けられず、ロコモティブ症候群合併検査時間の確保が容易でないことや、近年の入院患者内訳における高齢化(80歳以上の患者数割合の増加)が適応対象者数を減らしていることなどが達成速度を低下させる要因となっている。外来での「ハイブリッド・トレーニングシステム」を用いた下肢伸展屈曲運動療法研究は、入院患者および外来患者に対する通常心臓リハビリテーション実施環境の合間を縫って実施している。専用機器2台を用いて2名の理学療法士協力の下で実施しており、同実施期間中においては合計3名が実施数の限界であることが実施数の増加速度を低下させる要因となっている。(研究-1)「ロコモティブ症候群合併静態調査」は現在まで、慢性心臓血管病入院患者約170名、一般健診者約230名に実施している。本年度実施した2回目の検診で男性健診者データを増やすことができたため、前年度とは異なり、男女両群におけるデータ解析が可能となった。平均年齢60.1歳の女性患者は平均年齢61.5歳の女性健常人に比べて上腕周囲径と大腿周囲径が短く、握力の低下、歩行速度の低下、骨密度の低下、低栄養状態を認めた。平均年齢64.4歳の男性患者は平均年齢61.2歳の男性健常人に比べ、握力の低下を認めるのみで、他の評価項目には有意差を認めなかった。慢性心血管病の女性患者は、准高齢者年齢65歳に至る以前からロコモティブ症候群を合併しているかもしれず、早期からの予防対策が必要であることが示唆された。(研究-2)「ハイブリッド・トレーニングシステムを用いた下肢伸展屈曲運動療法の安全性と効果についての検討」については慢性心臓血管病の外来患者14名に実施終了しており、現在も実施中である。慢性心不全例8名、末梢動脈疾患例6名を内訳として6か月間の予定実施期間を満了できた対象者は12名(85.7%)であった。慢性心不全例では実施6か月後の胸部レントゲン写真で半数に心胸郭比の低下、血液検査で半数にNT-proBNP値の低下を認めた。慢性の末梢動脈疾患例(閉塞性動脈硬化症4例、バージャー病2例)では閉塞性動脈硬化症例において末梢血流増加の急性効果と歩行距離の延長を1例に、バージャー病例においては疼痛の軽快や皮膚潰瘍の改善を2例に認めている。「ロコモティブ症候群合併静態調査」は、2回目の検診実施で検診者群の対象者数増加が得られたが、その一方で当包括医療費支払い制度方式(DPC)対象病院ゆえの「機能評価係数II」上昇を目指す現状においては依然、入院期間の短縮化が避けられず、さらに本年度は入院疾患や患者年齢が検査対象外であることも多く、入院患者群の対象者数増加があまり得られなかった。外来での「ハイブリッド・トレーニングシステム」を用いた下肢伸展屈曲運動療法研究は、入院患者および外来患者に対する通常心臓リハビリテーション実施環境の合間に理学療法士協力の下で実施している実情に変わりはなく、前年度と同様の実施者数伸びに至った。研究-1:ロコモティブ症候群合併静態調査慢性心臓血管病入院患者計203名、一般健診者計228名に実施した。女性患者は女性健診者に比べて骨格筋指標の低下、上腕周囲径・大腿周囲径・下腿周囲径の短縮、握力の低下、歩行速度の低下、骨密度の低下を認めた。 | KAKENHI-PROJECT-15K08757 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K08757 |
ロコモティブ・シンドローム合併心臓血管病の早期診断とハイブリッド運動療法の介入 | 男性患者は男性健診者に比べ、歩行速度の低下を認めた。骨代謝変化についてVitamin Dや酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼー5bの血中濃度を測定した。入院患者と一般健診者の測定結果に有意差なく、骨密度や血中アルブミン値、カルシウム値との相関性も認めなかった。これらはロコモティブ症候群の早期診断項目にはふさわしくないのかもしれない。さらにELISA法による筋原性サイトカイン(マイオカイン)の計測実験も行った。過去の報告を参考に、Myostatin、IGF-1、erythropoietinの血清濃度とサルコペニア診断項目(骨格筋指標、握力)との相関性を男性入院患者13名、女性入院患者20名で評価したところ、女性群でmyostatin濃度と握力に正相関を認めた。今回、歩行速度との相関性を評価できていないが、myostatin血中濃度がサルコペニア階層診断のバイオマーカーとなる可能性が示唆された。研究-2:ハイブリッド・トレーニングシステムを用いた下肢伸展屈曲運動療法の安全性と効果の検討本年は対象患者数・研究参加同意者数が少なかったため実施数の増加が得られず、最終的に慢性心不全患者8名、末梢動脈疾患患者6名に研究を実施した。慢性心不全患者の半数にNYHA分類症状の軽減、心胸郭比の低下、NT-proBNP値の低下を認めた。閉塞性動脈硬化症4例中1例に歩行距離延長を認めたのに対し、バージャー病の全2例において疼痛の軽減・消失、皮膚潰瘍の改善を認めた。禁煙以外に効果的な治療法を認めない現状において、新たな治療戦略となる可能性が示唆された。骨格筋減少や筋力低下、骨量減少、関節軟骨変性による日常運動機能の低下が将来の要支援率や要介護率を高める病態概念を「ロコモティブ・シンドローム」と呼ぶ。心血管病検診者と慢性心血管病入院患者におけるロコモティブ・シンドローム診断調査の結果、女性患者は准高齢者年齢(6574歳)前からロコモティブ・シンドロームを合併している可能性が示唆された。久留米大学開発のハイブリッド・トレーニングシステムを用いた膝屈伸運動を6ヶ月間行った慢性心血管病患者の下肢運動機能は向上し、重症下肢虚血バージャー病患者では末梢循環不全の改善と虚血性潰瘍の治癒を認めた当初予定していた実施方法に問題は認めていない。予想実施数を少々下回っているものの、一年を通じての毎月の実施数に大きな変動なく、比較的安定実施ができている。引き続き対象数を増やし、これまでに蓄積した血液サンプルを用いた測定実験の平行実施にも今後取り組んで行く。当初予定していた実施方法に問題は依然認めていない。予想実施数を少々下回っているものの、一年を通じての毎月の実施数に大きな変動なく、比較的安定実施ができている。引き続き対象数を増やすことに尽力する一方で、これまでに蓄積した血液サンプルを用いた測定実験を中心に今後は取り組んで行く。循環器内科、カテーテル治療、血管新生療法、心血管疾患リハビリテーション当初の予想実施数を少々下回り、血液サンプルによるmyokine等の測定実験を一度に行うための十分数に至らなかったため、実験物品購入のための使用予定金額に到達しなかった。2回目の検診実施に多くの労力を注ぐことになった結果、前年度までに集積した血液サンプルによるmyokine等の測定実験の十分な実施に至らず、実験物品購入のための使用予定金額に到達しなかった。初回実験の実施に十分数の血液サンプルが蓄積出来次第、実験遂行に向けた実験物品購入に充てる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-15K08757 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K08757 |
画像技術応用と統計的解析による表面疲労き裂分布の検出と余寿命評価に関する研究 | 実用高靭性構造材料であり、近年、金属系の先進材料として各種自動車部品や産業機械に広く使用されつつある球状黒鉛鋳鉄を用いて、高サイクル疲労試験を行い、表面に多数発生する微小分布き裂の発生・進展特性を画像処理技術と統計的解析により考察して、平滑材の疲労に対する余寿評価の基礎資料を得ることを目的として、実験的・統計的に考察した。今年度得られた主な研究実績をまとめると以下のようになった。1.レプリカ法による表面連続観察と画像処理技術を用いて,微小表面分布き裂を検出・測定して、破断寿命を決定する最大き裂(主き裂)を特定した。2.主き裂の発生起点を表面と破面の詳細な観察により特定して、起点が主に表面直下に存在する鋳造欠陥としての微視的引け巣であることを確認した。起点欠陥部の応力軸に直角方向の面積をAとすると、√A=60160μmであった。3.起点欠陥部を任意形状き裂と考えた場合の応力拡大係数K_<Imax>とき裂発生寿命N_1との間には負の相関があることが分った。4.表面き裂進展速度da/dNをき裂半長aまたは応力拡大係数範囲△Kで整理すると、高応力振幅ではき裂進展の初期段階でばらつきが大きくda/dNの増加・減少を繰返しながら,次第にその振幅を収束して進展する傾向があった。一方,低応力振幅ではda/dNは初期段階で一度減少して極小値を示してから、aまたは△Kの増加とともに増加する傾向があった。5.本研究で定義した発生寿命N_1、進展過程寿命N_pおよび破断寿命N_fの分布は3母数ワイブル分布で表示できた。名寿命分布のばらつきの程度を表す変動係数ηはaの増加とともに減少し、高応力レベルの方が低応力レベルの場合よりηはより小さかった。6.N_1とN_fとの間の順位相関係数Zは非常に小さく、材料や応力振幅によらずZ<0.3であったが,aの増加とともにZは増加して2a≧700μmとなるZ≒1となった。実用高靭性構造材料であり、近年、金属系の先進材料として各種自動車部品や産業機械に広く使用されつつある球状黒鉛鋳鉄を用いて、高サイクル疲労試験を行い、表面に多数発生する微小分布き裂の発生・進展特性を画像処理技術と統計的解析により考察して、平滑材の疲労に対する余寿評価の基礎資料を得ることを目的として、実験的・統計的に考察した。今年度得られた主な研究実績をまとめると以下のようになった。1.レプリカ法による表面連続観察と画像処理技術を用いて,微小表面分布き裂を検出・測定して、破断寿命を決定する最大き裂(主き裂)を特定した。2.主き裂の発生起点を表面と破面の詳細な観察により特定して、起点が主に表面直下に存在する鋳造欠陥としての微視的引け巣であることを確認した。起点欠陥部の応力軸に直角方向の面積をAとすると、√A=60160μmであった。3.起点欠陥部を任意形状き裂と考えた場合の応力拡大係数K_<Imax>とき裂発生寿命N_1との間には負の相関があることが分った。4.表面き裂進展速度da/dNをき裂半長aまたは応力拡大係数範囲△Kで整理すると、高応力振幅ではき裂進展の初期段階でばらつきが大きくda/dNの増加・減少を繰返しながら,次第にその振幅を収束して進展する傾向があった。一方,低応力振幅ではda/dNは初期段階で一度減少して極小値を示してから、aまたは△Kの増加とともに増加する傾向があった。5.本研究で定義した発生寿命N_1、進展過程寿命N_pおよび破断寿命N_fの分布は3母数ワイブル分布で表示できた。名寿命分布のばらつきの程度を表す変動係数ηはaの増加とともに減少し、高応力レベルの方が低応力レベルの場合よりηはより小さかった。6.N_1とN_fとの間の順位相関係数Zは非常に小さく、材料や応力振幅によらずZ<0.3であったが,aの増加とともにZは増加して2a≧700μmとなるZ≒1となった。 | KAKENHI-PROJECT-03650077 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03650077 |
低温プラズマを用いた表面ナノ構造制御技術による高効率光触媒酸化チタンの創製 | マグネトロン型低温プラズマ装置を用いて、酸化チタン微粒子薄膜をアルゴンプラズマ処理した後、大気開放せず連続して窒素プラズマ処理を行った。アルゴンプラズマ処理と窒素プラズマ処理を全て同条件で行った結果、微粒子への窒素ドーピングが起こり、Ti-N結合が形成することを明らかにした。酸化チタン薄膜の連続プラズマ処理により、アナターゼ結晶型は変化せず、酸化チタンの結晶転移は認められなかった。しかしアナターゼ(101)面の半値幅は処理時間に伴って増加し、連続プラズマ処理により結晶格子歪が増大することがわかる。結晶格子歪の増大は、結晶格子内におけるTi-N結合形成及び酸素欠陥形成によると考えられる。酸素欠陥形成については、連続プラズマ処理後にドナー密度が増大することから確認した。連続プラズマ処理薄膜は可視光吸収を示し、可視光吸収は処理時間に伴って増加した後、減少した。また可視光応答性は、可視光吸収特性に依存して可視光吸収最大の処理時間で最大となった。窒素ドープ酸化チタンのエネルギーバンドの理論解析結果との対応から、可視光応答化酸化チタンではバンドギャップの狭窄化をもたらすのに十分な窒素ドーピングによるTi-N結合が形成していると推測される。放電時間の増加に伴ってTi-N結合分率は増大する傾向を示したが、可視光応答性は減少したことからTi-N結合分率の最適値が存在することが考えられる。すなわちTi-N結合分率が増大しても、酸素欠陥の形成が顕著となるために、可視光応答性発現を抑制すると推測される。本研究において、低温プラズマ処理による酸化チタン微粒子表面ナノ構造制御により、Ti-N結合形成の促進と酸素欠陥形成の抑制が実現可能であることを明らかにし、酸化チタン微粒子の可視光応答性を発現させ、高効率光触媒の創製を実現させた。マグネトロン型低温プラズマ装置を用いて、酸化チタン微粒子薄膜をアルゴンプラズマ処理した後、大気開放せず連続して窒素プラズマ処理を行った。アルゴンプラズマ処理と窒素プラズマ処理を全て同条件で行った結果、微粒子への窒素ドーピングが起こり、Ti-N結合が形成することを明らかにした。酸化チタン薄膜の連続プラズマ処理により、アナターゼ結晶型は変化せず、酸化チタンの結晶転移は認められなかった。しかしアナターゼ(101)面の半値幅は処理時間に伴って増加し、連続プラズマ処理により結晶格子歪が増大することがわかる。結晶格子歪の増大は、結晶格子内におけるTi-N結合形成及び酸素欠陥形成によると考えられる。酸素欠陥形成については、連続プラズマ処理後にドナー密度が増大することから確認した。連続プラズマ処理薄膜は可視光吸収を示し、可視光吸収は処理時間に伴って増加した後、減少した。また可視光応答性は、可視光吸収特性に依存して可視光吸収最大の処理時間で最大となった。窒素ドープ酸化チタンのエネルギーバンドの理論解析結果との対応から、可視光応答化酸化チタンではバンドギャップの狭窄化をもたらすのに十分な窒素ドーピングによるTi-N結合が形成していると推測される。放電時間の増加に伴ってTi-N結合分率は増大する傾向を示したが、可視光応答性は減少したことからTi-N結合分率の最適値が存在することが考えられる。すなわちTi-N結合分率が増大しても、酸素欠陥の形成が顕著となるために、可視光応答性発現を抑制すると推測される。本研究において、低温プラズマ処理による酸化チタン微粒子表面ナノ構造制御により、Ti-N結合形成の促進と酸素欠陥形成の抑制が実現可能であることを明らかにし、酸化チタン微粒子の可視光応答性を発現させ、高効率光触媒の創製を実現させた。高密度プラズマを生成して、電子温度・電子密度制御が可能なマグネトロン型低温プラズマ装置を試作した。負にバイアスしたカソードと、接地したアノードからなる平行電極間に各電極面に平行な磁界を印加することにより、カソード近傍で高密度プラズマが発生することを確認した。プラズマ装置本体に、トリプルプローブ、発光分析、プラズマガス分析の各システムを装備させ、各データを取得して動作を確認した。TiO_2微粒子(平均粒径20nm)を1M酢酸溶液に懸濁させ、ポリエチレングリコールを混合してTiO_2ペーストを調製した。スピンコート法・スクリーン印刷法によりガラス板上にペーストを塗布し、空気中で400°C、30min焼結を行い、TiO_2微粒子薄膜を調製した。カソード側にTiO_2薄膜をセットし、アルゴンプラズマ処理(圧力0.1Torr、放電出力30100W、放電時間520min)の後、引き続き同条件にて窒素プラズマ処理を行った。プラズマ処理酸化チタンは可視光吸収を示し、XPS測定によりN_<ls>ピークを確認した。放電出力3050WではN-O、N-H、N-N結合に起因するN_<ls>ピークからなるブロードなピークが認められ、TiO_2微粒子表面の吸着水がアルゴンプラズマにより十分除去されずに、窒素プラズマ処理されたと考えられる。吸着水の存在は、アルゴンプラズマ発光スペクトルにおいて、616nm、486nm付近にそれぞれO及びHに起因するピークが認められたことより支持される。放電出力が70100Wでは、Ti-N結合に起因するN_<ls>ピークが認められた。窒素プラズマ発光スペクトルにおいて453nm付近にTiによるピークが認められたことより、Ti-N結合形成が支持される。プラズマ処理TiO_2微粒子の光触媒特性はメチレンブルー水溶液とキセノンランプを用いて評価した。 | KAKENHI-PROJECT-15360394 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15360394 |
低温プラズマを用いた表面ナノ構造制御技術による高効率光触媒酸化チタンの創製 | 光触媒特性は未処理よりも100Wプラズマ処理で増大したことより、マグネトロン型低温プラズマ装置によるTiO_2の高密度プラズマ処理の有効性が明らかとなった。1.酸化チタン微粒子凝集薄膜の低温アルゴン/窒素プラズマ連続処理の検討マグネトロン型低温プラズマ装置を用いて、酸化チタン微粒子凝集薄膜をアルゴンプラズマ処理した後、連続して窒素プラズマ処理を行った。放電出力100200W、放電時間5min25minとし、アルゴンプラズマ処理と窒素プラズマ処理は全て同条件で行った。メチレンブルーを微粒子表面に吸着させた後、420nmカットフィルター及び750nm赤外線カットフィルターを通過した可視光を照射させた。メチレンブルーの分解率はプラズマ連続処理により増大しており、プラズマ連続処理により可視光応答性が発現した。可視光応答性は放電時間5minで最大値を示した。放電出力100200W、放電時間525minのいずれの条件においても、N=O結合、N-O結合、N-OH結合、N-E結合、N-N結合だけでなく、Ti-N結合に起因するピークも認められた。放電時間の増加に伴ってTi-N結合分率は増大する傾向を示したが、可視光応答性は減少したことからTi-N結合分率の最適値が存在することが考えられる。2.低温プラズマ処理微粒子凝集薄膜の半導体特性の検討プラズマ処理前後での酸化チタン微粒子凝集薄膜のフラットバンド電位はモット・ショットキープロット測定より評価した。フラットバンド電位は、アルゴンプラズマ処理のみでは上昇したが、アルゴン/窒素プラズマ連続処理後では低下した。また直線勾配は、アルゴンプラズマ処理のみでは増大したが、アルゴン/窒素プラズマ連続処理後では殆ど変化しなかった。直線勾配の増大は通常半導体ではドナー密度の低下に関係するとされているが、プラズマ処理酸化チタンの場合については、今後検討する必要がある。マグネトロン型低温プラズマ装置を用いて、酸化チタン微粒子薄膜をアルゴンプラズマ処理した後、大気開放せず連続して窒素プラズマ処理を行った。放電出力100W、処理時間2min10minとし、アルゴンプラズマ処理と窒素プラズマ処理を全て同条件で行った結果、プラズマ処理時間に伴って薄膜表面が平滑化する傾向を示すことをAFM観察から確認でき、プラズマにより表面エッチングが起こることを明らかにした。XPSN_<1s>スペクトルからプラズマ連続処理によりTi-N結合に起因するピークが出現することは認められるが、処理時間10minでもN-O結合、N-H結合、C-N結合などに起因するピークも出現することから、酸化チタン表面の吸着水・不純物の除去が不十分といえる。酸化チタン薄膜のプラズマ連続処理により、アナターゼ結晶型は変化せず、酸化チタンの結晶転移は認められなかった。しかしアナターゼ(101)面の半値幅は処理時間に伴って増加し、プラズマ連続処理により結晶格子歪が増大することがわかる。結晶格子歪の増大は、結晶格子内におけるTi-N結合形成及び酸素欠陥形成によると考えられる。プラズマ連続処理薄膜は可視光吸収を示し、処理時間5minで可視光吸収が最大となった。 | KAKENHI-PROJECT-15360394 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15360394 |
都市計画での建物現況調査に革新的技術を導入する際に発生する課題に関する実証的研究 | 都市計画法に基づく都市計画基礎調査の一環で定期的に行われる建物現況調査は,調査員が現地に赴いて外観目視により建物1棟毎の用途等を記録し,帰還後にGIS(地理情報システム)等で建物形状データに紐付けする作業を経てデータ化されるため,手間とコストがかかる調査である.一方で近年,調査を支援する様々な革新的技術が利用できるようになってきているが,実務では活用が進んでいない.その一因として,革新的技術を建物現況調査に導入する際の効果や課題についての十分な検証が行われていないことが指摘できる.そこで本研究は,建物現況調査への革新的技術の導入可能性の検証を目的とした実証実験と,これまでの調査技術に関する資料の体系的整理やアンケート調査等といったシーズとニーズ両方面からの体系的・総合的な検証を通じて,建物現況調査に対して革新的技術を導入する際に発生する課題を形式知として得ることを目的とする.初年度の検討として,実際の実務作業を担うことが多い民間会社の担当者へのヒアリングを実施した.これより現地調査の主流が,既存資料の活用による机上調査とそこで判明しなかった建物についての現地調査を組み合わせで実施すること等がわかった.そこで,その現地調査の正確性や時間効率性などを検証するために,千葉工業大学の学生を対象とした模擬調査を実施し,調査対象建物に対する情報提示の有無等により正確性や効率性が異なることが明らかとなった.また,基礎調査関係の資料の電子化の手始めとして,過去の実施要領策定時の資料の電子化に着手した.模擬調査を行う等,順当に検討を進めている.また,ニーズの把握については,コンサルタントへのインタビュー調査を進めたことにより,研究の方向性を固められたことが大きい.今後は,今回実施した模擬調査については,異なる革新的技術を用いた場合の調査を行うことで,使う場合と使わない場合とでの比較や技術の組み合わせによる効率化に関する考察をを行う予定である.また,ニーズ側の調査については,自治体へのアンケートやインタビュー調査の実施や,コンサルタントへのインタビュー調査の継続な実施などを通じて,知見の蓄積を図る.都市計画法に基づく都市計画基礎調査の一環で定期的に行われる建物現況調査は,調査員が現地に赴いて外観目視により建物1棟毎の用途等を記録し,帰還後にGIS(地理情報システム)等で建物形状データに紐付けする作業を経てデータ化されるため,手間とコストがかかる調査である.一方で近年,調査を支援する様々な革新的技術が利用できるようになってきているが,実務では活用が進んでいない.その一因として,革新的技術を建物現況調査に導入する際の効果や課題についての十分な検証が行われていないことが指摘できる.そこで本研究は,建物現況調査への革新的技術の導入可能性の検証を目的とした実証実験と,これまでの調査技術に関する資料の体系的整理やアンケート調査等といったシーズとニーズ両方面からの体系的・総合的な検証を通じて,建物現況調査に対して革新的技術を導入する際に発生する課題を形式知として得ることを目的とする.初年度の検討として,実際の実務作業を担うことが多い民間会社の担当者へのヒアリングを実施した.これより現地調査の主流が,既存資料の活用による机上調査とそこで判明しなかった建物についての現地調査を組み合わせで実施すること等がわかった.そこで,その現地調査の正確性や時間効率性などを検証するために,千葉工業大学の学生を対象とした模擬調査を実施し,調査対象建物に対する情報提示の有無等により正確性や効率性が異なることが明らかとなった.また,基礎調査関係の資料の電子化の手始めとして,過去の実施要領策定時の資料の電子化に着手した.模擬調査を行う等,順当に検討を進めている.また,ニーズの把握については,コンサルタントへのインタビュー調査を進めたことにより,研究の方向性を固められたことが大きい.今後は,今回実施した模擬調査については,異なる革新的技術を用いた場合の調査を行うことで,使う場合と使わない場合とでの比較や技術の組み合わせによる効率化に関する考察をを行う予定である.また,ニーズ側の調査については,自治体へのアンケートやインタビュー調査の実施や,コンサルタントへのインタビュー調査の継続な実施などを通じて,知見の蓄積を図る.模擬調査にかかる費用が想定外に安価にすんだことや,対象地域が1地域だったことにより旅費がかからなかったこと,作業補助の人件費を作業実態との関係で執行しなかったことによる.これらについては,次年度実施する模擬調査等の実施にあたり有効に活用することにしたい. | KAKENHI-PROJECT-18K04501 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K04501 |
キラルな多孔性金属錯体がもたらす高輝度円偏光発光と高効率高選択的反応空間 | 前年度の結果を踏まえ、本年度は無機物質が有する特性の一つであるプラズモン共鳴効果の利用による有機色素の発光特性向上を目指し、検討をまず行ってきた。研究を進めていく過程で円偏光発光の観測には、さらに高輝度な発光特性が必要なことがわかった。そこで、有機無機複合体において特有の効果すなわち各物質の協調による新たな光物性評価と円偏光発光特性評価に関して検討した。発光特性を有する金ナノ粒子と量子ドットに有機色素を複合した新規な有機無機複合物質を合成した。その結果、色素と金属ナノ粒子間のエネルギー移動発現が観測され、色素と金属ナノ粒子間の距離を制御することでダイナミクスをコントロールできることを明らかにした。また金属配位らせん状有機色素を合成したところ、金属配位による蛍光強度の増加およびらせん状構造により、有機小分子における近赤外円偏光発光特性では現状、最高値の優れた円偏光発光特性発現に成功した。当初のプラズモン共鳴を用いた蛍光増強では円偏光発光観測には輝度が充分ではなかった。そこで本年度再度、有機無機協調による光物性特性に関して再検討を行う必要があった。一方、有機無機複合体における円偏光発光特性に関しては本年度知見を得ることができた。円偏光発光特性に関しては知見が得られたが、有機無機協調による光物性に関して再検討が必要であったことから当初の予定より遅れている。本年度の知見を基に再度、有機無機複合体を合成し、複合協調による発光特性に関して議論する。その後、多孔性金属錯体に展開する。また本年度得られた金属配位らせん状有機色素の円偏光発光特性を参考に多孔性金属錯体と金属ナノ粒子複合体での円偏光発光発現に関して検討する。本研究はキラルMOFを作製し、キラル化合物特有の光物性の一つである円偏光発光を、不斉空間およびホスト-ゲスト特性を用いて高輝度円偏光発光を発現することが目的である。本年度は、キラルMOFを構築するための基盤となる不斉ポルフィリンの合成およびゲスト分子として用いる銀ナノ粒子の合成を行った。ポルフィリン合成は、まずポルフィリン合成前駆体となるジピロメタンを合成した。得られたジピロメタンを用いて一般的にポルフィリン合成に用いられているLindsey法を用いてポルフィリンを合成した。得られたポルフィリンに不斉アルキル基をポルフィリンに導入することとした。しかしながら反応が効率的に進行しなかったため、収率が極めて低くなった。そこでキラルアルキル基を有するジピロメタンを合成した後ポルフィリンを合成する経路に変更することと。そこで、ポルフィリン骨格の前駆体ジピロメタンに不斉源となるキラルアルキル鎖をまず導入し、その後ポルフィリン合成を行うこととした。そこで不斉ジピロメタンを合成した。一方、銀ナノ粒子の作製も行った。既存の方法を利用し行ったところ合成に成功した。動的光散乱測定から数ナノメートルの均一サイズで合成できていることがわかった。合成した銀ナノ粒子を用いてMOFへの導入検討を行った。その際MOFにはキラルアルキル基を導入していないただのポルフィリンMOFを用いて検討を行った。MOF構築の際、銀ナノ粒子を混入して作製した。得られたMOFの蛍光スペクトル測定を行ったところ、銀ナノ粒子に伴う蛍光の輝度の上昇が観測された。当初計画していたキラルポルフィリンを用いたキラルMOFの合成は完了していないものの、翌年完了を計画していたMOFへの銀ナノ粒子導入の条件確立を完了し、また銀ナノ粒子導入に伴う蛍光増強が観測された。以上のことから本研究はおおむね順調に進行していると考えられる。前年度の結果を踏まえ、本年度は無機物質が有する特性の一つであるプラズモン共鳴効果の利用による有機色素の発光特性向上を目指し、検討をまず行ってきた。研究を進めていく過程で円偏光発光の観測には、さらに高輝度な発光特性が必要なことがわかった。そこで、有機無機複合体において特有の効果すなわち各物質の協調による新たな光物性評価と円偏光発光特性評価に関して検討した。発光特性を有する金ナノ粒子と量子ドットに有機色素を複合した新規な有機無機複合物質を合成した。その結果、色素と金属ナノ粒子間のエネルギー移動発現が観測され、色素と金属ナノ粒子間の距離を制御することでダイナミクスをコントロールできることを明らかにした。また金属配位らせん状有機色素を合成したところ、金属配位による蛍光強度の増加およびらせん状構造により、有機小分子における近赤外円偏光発光特性では現状、最高値の優れた円偏光発光特性発現に成功した。当初のプラズモン共鳴を用いた蛍光増強では円偏光発光観測には輝度が充分ではなかった。そこで本年度再度、有機無機協調による光物性特性に関して再検討を行う必要があった。一方、有機無機複合体における円偏光発光特性に関しては本年度知見を得ることができた。円偏光発光特性に関しては知見が得られたが、有機無機協調による光物性に関して再検討が必要であったことから当初の予定より遅れている。まず、本年度得られたキラルアルキル鎖を導入したジピロメタンを用いてポルフィリンの合成を完了する。得られたポルフィリンを用いてキラルMOFを合成する。X線構造解析から内部構造を決定し光物性評価を行う。次に、本年度確立したMOFへの銀ナノ粒子導入手法を用いて銀ナノ粒子導入キラルMOFの合成を行う。X線構造解析を行い、内部構造を明らかにする。銀ナノ粒子導入が導入されていない場合は、報告されている他の手法を用いて検討する。 | KAKENHI-PROJECT-17K14476 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K14476 |
キラルな多孔性金属錯体がもたらす高輝度円偏光発光と高効率高選択的反応空間 | 次に光物性評価を行う。銀ナノ粒子導入に伴う蛍光増強を中心に検討する。最終的に円偏光発光特性評価を行う。円偏光発光が観測されなかった場合、MOF作製の際にキラル分子を柱状配位子として用い、異方性を上昇させることとする。その後、高輝度円偏光発光発現を目指す。さらに、合成したキラルMOFを用いて不斉光反応のための触媒へと展開していく予定である。本年度の知見を基に再度、有機無機複合体を合成し、複合協調による発光特性に関して議論する。その後、多孔性金属錯体に展開する。また本年度得られた金属配位らせん状有機色素の円偏光発光特性を参考に多孔性金属錯体と金属ナノ粒子複合体での円偏光発光発現に関して検討する。今年度合成完了し、大量に合成するつもりであったキラルポルフィリンの合成がうまく進行しなかったため、そのため大量合成ができなかった。またキラルMOFの合成、またその大量合成も本年度できず、来年度にすることになった。したがって、そのために利用する予定であった使用額を来年度に利用することとなった。当初、有機無機複合キラル多孔性配位高分子の光、電子物性の評価、励起ダイナミクス評価および円偏光発光特性を評価するため、大量合成を予定していた。そのための大量試薬購入および耐圧反応器を購入する予定であった。しかしながら、予定とは異なり、再度有機無機協調による光物性および円偏光特性発現に関して再度検討することになった。そのため当初必要としていた器具、試薬の購入ができなくなったため。次年度は本年度、得られた結果をもとに円偏光発光材料への展開を考慮した新規有機無機複合体の合成および物性評価に必要な試薬や器具、また成果報告のための旅費に利用する。 | KAKENHI-PROJECT-17K14476 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K14476 |
血管内皮特異的制御性T細胞とB細胞誘導による動脈硬化の制御法の開発 | 血管内皮抗原(HSP65)により誘導される動脈硬化モデルマウスにおいて、B細胞除去療法に加えて、HSP65を併用することで、抗原特異的なリンパ球のの増殖能やサイトカイン(MCP-1やIL-6、TNFα、IL-10など)産生能が低下した結果、動脈硬化における免疫反応が抑制され、結果、動脈硬化が抑制されることを発見した。そのメカニズムとして、HSP65抗原特異的な制御性T細胞と制御性B細胞が体内で誘導されていて、それらの細胞はマクロファージが産生するTGF-bによる体内に誘導されることが明らかになった。なお、B細胞除去療法単独あるいはHSP65単独投与では効果を認めなかった。動脈硬化は代表的な国民の生活習慣病であり、他の生活習慣病(脳梗塞、心筋梗塞など)とも密接に関連があるが、その治療法の確立はいまだ確立されていない。現在、医療費の高騰や保険医療の財政的な破綻の問題は国家の財政において重要な課題となっており、生活習慣病を予防することで、国民の医療費を減らすこともまた、社会的には急務であると考えられている。一方で、自己免疫疾患とは、自身の蛋白質(抗原)に対して免疫反応が活性化された結果、抗原を含む臓器の炎症や機能不全を起こす疾患であるといわれている。現在の治療法(免疫抑制療法)は自己免疫に加えて、感染免疫も抑制するために、易感染性という重篤な治療の副作用が臨床上問題となっている。申請者らはこれまで感染免疫に影響を与えずに自己免疫異常のみを選択的に抑制する治療法(抗原選択的免疫抑制療法)を複数のモデルマウスを使用し、確立してきた。本研究では、動脈硬化は動脈硬化の主な原因抗原が原因で起こる異常な免疫反応の結果起こるといったすでに確立している概念に基づいて、動脈硬化モデルマウスを用いて、動脈硬化の主な原因抗原を探索し、血管内皮抗原に伴う免疫異常のみを選択的に抑制する治療法の確立および基盤の創生を目的とした。最終的には動脈硬化の治療法の開発、臨床応用を目指す。そのためにはどういった免疫細胞が動脈硬化の進展に強く関わっているのかや本治療において、どのような免疫細胞が強く関与しているのかについても検討を行う。動脈硬化における血管内皮抗原における免疫応答の役割を確認するために、LDL受容体欠損マウスにHSP65を免疫したところ、HSP65の免疫により動脈硬化が加速されることがわかりました。動脈硬化が加速したモデルでは、HSP65に対して特異的な免疫反応は有意に活性化されていましたが、それ以外の非特異刺激に対しては有意な活性化は認めませんでした。HSP65に特異的な免疫反応が動脈硬化を進行されるモデルマウスを使用して、制御性T細胞を除去するためにCD25抗体をHSP65で免疫する前に投与したところ、動脈硬化の進行を認め、また、HSP65に特異的な免疫反応が有意に活性化されておりました。このことから制御性T細胞が本モデルマウスにおいて、HSP65に特異的な免疫反応を抑制していることがわかりました。次にマクロファージの働きを検討するためにマクロファージを除去するためのクロドロネートを用いてHSP65免疫前と後で使用したところ、使用前後に関係なく、動脈硬化の進行は抑制されました。マクロファージが本モデルマウスにおいて、病態の促進に関与していることがわかりました。このことから、本モデルマウスにおける各免疫細胞の機能は本年度で明らかになりました。一方で、課題なのは、動脈硬化巣における各免疫細胞の機能評価が困難であり、確立できていないという点です。現時点では、動脈硬化巣の免疫細胞をプールし、免疫細胞のmRNAレベルや蛋白レベルでのサイトカインの発現の経時的変化を検討する方法で検討しております。その結果、MCP-1やIL-6の産生能は増加し、IL-10も増加することを認めました。これらの発現はCD25抗体を使用した実験では発現は上昇し、クロドロネートを用いた実験では逆に低下を認めました。FACSによる解析あるいは免疫細胞の種類にわけてmRNAや蛋白レベルを検討は今後の検討課題です。研究の目的:自己免疫疾患とは、自身の蛋白質(抗原)に対して免疫反応が活性化された結果、抗原を含む臓器の炎症や機能不全を起こす疾患である。現行の治療法(免疫抑制療法)は自己免疫に加えて感染免疫も抑制する為、易感染性という重篤な治療の副作用が臨床上問題となっている。申請者らはこれまで感染免疫に影響を与えずに自己免疫異常のみを選択的に抑制する治療法(抗原選択的免疫抑制療法)を複数のモデルマウスを使用し確立してきた。一方、動脈硬化は血管内皮の抗原に対する免疫反応が活性化することで起こると言われている。本研究では動脈硬化モデルマウスを用いて動脈硬化の主な原因抗原を探索し、血管内皮抗原に伴う免疫異常のみを選択的に抑制する治療法の確立および基盤の創生を目的とする。実施内容:血管内皮抗原(HSP65)により誘導される動脈硬化モデルマウスにおいて、B細胞除去療法に加えて、HSP65を併用することで、抗原特異的なリンパ球のの増殖能やサイトカイン(MCP-1やIL-6、TNFα、IL-10など)産生能が低下した結果、動脈硬化における免疫反応が抑制され、結果、動脈硬化が抑制されることを発見した。そのメカニズムとして、HSP65抗原特異的な制御性T細胞と制御性 | KAKENHI-PROJECT-16K19156 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K19156 |
血管内皮特異的制御性T細胞とB細胞誘導による動脈硬化の制御法の開発 | B細胞が体内で誘導されていて、それらの細胞はマクロファージが産生するTGF-bによる体内に誘導されることが明らかになった。なお、B細胞除去療法単独あるいはHSP65単独投与では効果を認めなかった。血管内皮抗原(HSP65)により誘導される動脈硬化モデルマウスにおいて、B細胞除去療法に加えて、HSP65を併用することで、抗原特異的なリンパ球のの増殖能やサイトカイン(MCP-1やIL-6、TNFα、IL-10など)産生能が低下した結果、動脈硬化における免疫反応が抑制され、結果、動脈硬化が抑制されることを発見した。そのメカニズムとして、HSP65抗原特異的な制御性T細胞と制御性B細胞が体内で誘導されていて、それらの細胞はマクロファージが産生するTGF-bによる体内に誘導されることが明らかになった。なお、B細胞除去療法単独あるいはHSP65単独投与では効果を認めなかった。HSP65抗原に特異的な免疫抑制療法の有効性を確認していく実験と平行して実験の技術を向上させていきます。具体的にはT細胞除去抗体であるCD4抗体やCD8抗体を使用したり、B細胞除去抗体としてCD20抗体を使用する。抗体投与に引き続きHSP65を隔日投与で6日間投与を行います。現時点では動脈硬化巣に浸潤している免疫細胞のmRNAレベルや蛋白レベルでのサイトカインの発現の経時的変化を検討はH28年の実験により可能になりましたので、、MCP-1やIL-6、IL-10に関して検討を行います。また、除去抗体とHSP65の併用療法により、実際に、HSP65抗原に特異的な免疫抑制が行われているのかどうか検討します。HSP65抗原に特異的な免疫抑制療法の治療過程においては、マクロファージから大量のTGFbが産生され、それに続いてTGFb依存性にHSP65抗原特異的な制御性T細胞と制御性B細胞が体内で誘導され、それらの細胞が炎症局所に集積して炎症を抑制しているかどうか、仮説を検証します。免疫学元々は物品費(おもにFACSの抗体や除去抗体など)が主な直接経費であったが、実験の遅れにより、抗体を使用する実験(もともとH29年度に実施予定)は先延ばしになっていることで抗体の購入も遅らせている。H29年度に実験の進行に伴い、物品費を使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-16K19156 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K19156 |
MRSAの地域内伝播様式の解析と早期封じ込め対策の確立 | メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の分離率は医療機関で感染対策が十分に行われているかどうかの指標とされている。近年、遺伝子検査を行うことで、分離されたMRSAの由来が同一か否かを判断することが可能になっている。今回、長野県内の医療機関で分離されたMRSAの遺伝子検査を行い、MRSAの長野県内での伝播様式の調査を行った。長野県は大きく4つの地区に分けられる。分離されたMRSAは特定の地区で同一由来株の伝播が多いことがわかった。また、同一由来株の伝播が多い地区ではMRSAの分離率が高く、MRSAの水平伝播は地域の問題として対応しなければならないと考えられる。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は感染症治療を考える上で重要な薬剤耐性菌であり、MRSAの院内伝播の有無は施設内の感染対策の指標となる。一般的にはMRSAの新規発生が多い場合には院内伝播を疑うが、実際にはそれぞれの患者から検出されたMRSAが水平伝播したものなのか、もともと患者が保菌していたものなのかはわからない。検出されたMRSAが同一由来株なのか否かはMRSAの遺伝子検査を行い、分子疫学解析を行うことが必要である。今回、PCR-based ORF Typing(POT法)を用いることで、長野県内で検出されたMRSAの分子疫学解析を行い、県レベルでのMRSAの伝播様式の解明を行い、今後の感染対策に利用する。2015年9月1日から9月30日までに長野県内の42施設で検出されたMRSAの保存を各施設で行った。施設により検出菌の数に差があったが合計365株(平均8.8株)を収集し、そのすべての株に対してPOT法を行い、POT値を算出した。POT値から、それぞれの施設で検出されたMRSAが院内で水平伝播をしているのか、由来が別のMRSAが同時期に検出されたのかについての評価を行った。今後はPOT値から同一由来株と推定されるMRSAについて、それぞれを長野県の地域ごとのマッピングを行い、病院間でのMRSAの伝播経路を特定する。その結果をそれぞれの病院に報告し、長野県内の感染対策に利用する。また、平成28年度も研究に参加可能な施設を募り、再度MRSAの収集し、検査を行うMRSAの株数を増やす予定ことでより詳細な検討を行う予定となっている。予定通りの期間で、長野県内で検出されたMRSAの収集を行った。また収集を行ったMRSAのすべてに対してPOT法による遺伝子解析を終了している。その結果をもとに、それぞれの施設で検出されたMRSAが院内で水平伝播している可能性があるのかどうかの評価を行っている。本研究ではPCR-based ORF Typing(POT法)を用いることで、長野県内で検出されたMRSAの遺伝子解析を行い、県レベルでのMRSAの伝播様式の解析を行っている。平成27年度は、2015年9月1日から9月30日までに長野県内の42施設で検出されたMRSA365株の収集および遺伝子解析を行った。平成28年度は平成27年度の遺伝子解析の結果をもとに、長野県内で検出されたMRSAの分布の推定を行った。長野県は大きく4つの地域に分けられるが、そのうち中信地域と南信地域で共通の型のMRSAが多数検出されていることが判明した。その一方で、北信地域と東信地域では、他の地域と共通した型が少ないことも確認された。この結果は、長野県内において中信地域と南信地域は中央線を介して人の移動が多いという社会的背景とも合致している。また、北信地域と東信地域は共通の新幹線の沿線ではあるものの、人の移動としては首都圏との行き来が中心になっていることを反映していると考えられる。平成28年度は菌株の収集期間を延長し、2016年8月1日から9月30日までに長野県内の52施設で検出されたMRSAの収集を行った。MRSA949株を収集し、そのすべての株にPOT法を行い、POT値を算出した。平成29年度は、平成28年度の収集株について同様の検討を行い、県レベルでのMRSAの分布をまとめる。また、病院間でのMRSAの伝播についても検討を行う予定である。検討するMRSAの株数を増やすため、平成27年度と比較してMRSAの収集期間を延長した。また参加施設も平成27年度と比較して増えたため、収集・保存したMRSAの株数が想定を上回った(平成27年度が365株、平成28年度が949株)。POT法を行う株数が増えたため、検査の終了までに時間を要した。POT法による検査は終了しているため、平成29年度は得られた結果からMRSAの伝播様式の解析を行う予定である。本研究ではPCR-based ORF Typing (POT法)を用いることで、長野県内で検出されたMRSAの遺伝子解析を行い、県レベルでのMRSAの伝播様式の解析を行った。平成27年度は、2015年9月1日から9月30日までに長野県内の42施設で堅守されたMRSA365株の収集を行い、遺伝子解析を行った。平成28年度は2016年8月1日から9月30日までに長野県内の52施設で検出されたMRSA949株の収集を行い、遺伝子解析を行った。遺伝子解析の結果はPOT値として集計した。 | KAKENHI-PROJECT-15K15234 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K15234 |
MRSAの地域内伝播様式の解析と早期封じ込め対策の確立 | 平成29年度は、平成27年度および28年度に収集及び遺伝子解析を行った結果から、同一由来株の可能性がある株の水平伝播を検討した。長野県は大きく4つの地域に分けられる。長野県内で行われているサーベイランスの結果で、分離されたStaphylococcus aureusに対してMRSAの占める割合は中信地区、南信地区で多く、東信地区、北信地区で少ないことがわかっている。北信地区と東信地区とでは流行株の傾向に統一性は見られなかった。その一方で、中信地区と南信地区とではMRSAの流行株に同じ傾向がみられらた。また、各地区の分離された同一POT値のMRSAの数を見ると、南信地区において1種類のMRSAが分離MRSAの35%を占めていることが確認された。このことは、南信地区においてMRSAの水平伝播が多く起こっていることが示唆され、その結果MRSAの分離頻度が高いと考えられた。年次変化では、2015年に分離数が上位の株は、2016年でも多く分離されている一方、2015年には長野県内でほとんど分離されていないが2016年に分離数が増えている株が存在していた。さらにその株は一つの病院だけではなく、長野県内の複数の病院で分離されていた。このことは、ひとたび新規MRSAが長野県内に入ってきた場合には、病院を超えて水平伝播することを示唆している。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の分離率は医療機関で感染対策が十分に行われているかどうかの指標とされている。近年、遺伝子検査を行うことで、分離されたMRSAの由来が同一か否かを判断することが可能になっている。今回、長野県内の医療機関で分離されたMRSAの遺伝子検査を行い、MRSAの長野県内での伝播様式の調査を行った。長野県は大きく4つの地区に分けられる。分離されたMRSAは特定の地区で同一由来株の伝播が多いことがわかった。また、同一由来株の伝播が多い地区ではMRSAの分離率が高く、MRSAの水平伝播は地域の問題として対応しなければならないと考えられる。POT法による検査が終了している菌株について、長野県内における伝播経路を特定する。また、さらなるMRSAの収集を行い、それらの菌株に対してPOT法を行う。2年間に収集したMRSAの遺伝子解析結果から、あらためて長野県内におけるMRSAの伝播経路を検討する。それぞれの施設の地理的条件、患者移動、医療者の移動なども加味し、MRSAの伝播を抑制する方策を立案する。POT法による検査結果から、長野県内で検出されたMRSAの分布を解析し、県内におけるMRSAの伝播形式を特定する。その結果から、それぞれの施設の地理的条件、患者移動、医療者の移動なども加味し、MRSAの伝播を抑制する方策を立案し、各施設に報告する。得られた結果から長野県だけでなく他地域でも重要となる事柄をまとめ、学会発表や論文を通して報告する。感染症当初計画で見込んでいたよりも実際に収集したMRSAの株数が少なかったため、輸送費や試薬費などに次年度使用額が生じた。当初計画で見込んでいたよりも安価に研究が進んだため、次年度使用額が生じた。再度、MRSAの収集を行う。平成27年度の結果から収集できるMRSAの株数が予測できるため、収集期間を延長してより多くのMRSAを収集し、検査を行う。次年度使用額は平成28年度請求額と合わせて消耗品費として使用する。次年度使用額は平成29年度に消耗品として使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-15K15234 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K15234 |
単一サブ10nm微細構造のためのマルチ同時解析装置の開発 | 昨年度に作製した円盤状シリコン微細構造につき、直径および厚さを変化させたものを作製し、電気特性に現れる階段構造の幅がどのように変化するかを検討した。<シリコン基板-下地酸化膜-多結晶シリコン薄膜-自然酸化膜>構造の基板を用意し、フェリティンと呼ばれる蛋白質を配置し、その中に含まれる鉄コアを熱処理により取り出し、表面に形成されるシリコン自然酸化膜を除去後、鉄コアをマスクとして多結晶シリコン薄膜を塩素中性粒子ビームでエッチング加工することで、下地酸化膜上にサブ10nmシリコンナノディスク構造を作製した。このとき、多結晶シリコン薄膜の厚さを2.5nm5nmで変化させることにより、ナノディスクの厚さを変化させた。一方、自然酸化膜除去条件を制御することにより、ナノディスクの直径を812nm程度の範囲で制御することに成功した。これらのナノディスク構造について、室温において、導電性探針を用いた原子間力顕微鏡を用いてクーロン階段の観測を行った。導電性ダイヤモンド探針を用い、画像をスキャンしたのちに探針をナノディスク位置に置き電流-電圧特性を測定したところ、すべてのナノディスクについて、階段状の特性が得られた。その階段の幅は、ナノディスクの直径にはほとんど依存せず、厚さに強く依存することが分かった。これは、ナノディスクが量子井戸的な振る舞いを見せていることを意味する。すなわち、ナノディスクは厚さ方向に非常に小さく、電子の波動関数の広がりよりも薄いため、厚さ方向に電子閉じ込めが起こり、電子準位が厚さの影響を受けたと考えられる。シリコン微細構造の作製を行った。<シリコン基板-下地酸化膜-シリコン薄膜-自然酸化膜>構造の基板を用意し、生体超分子をマスクとして表面の自然酸化膜およびシリコン薄膜部分を中性粒子ビームでエッチング加工することで、下地酸化膜上にサブ10nmシリコンナノディスク構造を作製した。このナノディスク構造について、ケルビン力顕微鏡(KFM)を用いた電荷蓄積実験をおこなった。まず探針-試料間に電圧を印加した状態でタッピングモードで観測を行い、ナノディスクに正または負の電荷を蓄積した。次にKFMモードで観測を行い、電荷蓄積が起こっていることが確認された。このことより、ナノディスクは電荷蓄積が可能であることが示された。さらに、ナノディスク構造について、25Kの低温下および室温において、導電性探針を用いた原子間力顕微鏡を用いてクーロン階段の観測を行った。探針をナノディスクのない場所に置いて、探針-基板間にバイアス電圧を印加し、電流-電圧特性を調べたところ、電流は観測されなかった。これは、ナノディスク作製過程で酸化膜状に酸塩化物が堆積したためと考えられる。一方、探針をナノディスク位置に置き同様の実験を行うと、階段状の電流-電圧特性が得られた。この階段特性の幅は、ナノディスクサイズや酸化膜厚から予想されるクーロン階段の幅と一致する。つまり、この階段特性はクーロン階段であり、ナノディスクは量子ドットとして機能することが示された。昨年度に作製した円盤状シリコン微細構造につき、直径および厚さを変化させたものを作製し、電気特性に現れる階段構造の幅がどのように変化するかを検討した。<シリコン基板-下地酸化膜-多結晶シリコン薄膜-自然酸化膜>構造の基板を用意し、フェリティンと呼ばれる蛋白質を配置し、その中に含まれる鉄コアを熱処理により取り出し、表面に形成されるシリコン自然酸化膜を除去後、鉄コアをマスクとして多結晶シリコン薄膜を塩素中性粒子ビームでエッチング加工することで、下地酸化膜上にサブ10nmシリコンナノディスク構造を作製した。このとき、多結晶シリコン薄膜の厚さを2.5nm5nmで変化させることにより、ナノディスクの厚さを変化させた。一方、自然酸化膜除去条件を制御することにより、ナノディスクの直径を812nm程度の範囲で制御することに成功した。これらのナノディスク構造について、室温において、導電性探針を用いた原子間力顕微鏡を用いてクーロン階段の観測を行った。導電性ダイヤモンド探針を用い、画像をスキャンしたのちに探針をナノディスク位置に置き電流-電圧特性を測定したところ、すべてのナノディスクについて、階段状の特性が得られた。その階段の幅は、ナノディスクの直径にはほとんど依存せず、厚さに強く依存することが分かった。これは、ナノディスクが量子井戸的な振る舞いを見せていることを意味する。すなわち、ナノディスクは厚さ方向に非常に小さく、電子の波動関数の広がりよりも薄いため、厚さ方向に電子閉じ込めが起こり、電子準位が厚さの影響を受けたと考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-18760049 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18760049 |
要素技術の再構成・再解釈に着眼したニューラルネット音声認識システムの高度化 | 本年度は、非言語情報の違いに頑健な特徴量表現に着目したニューラルネットワーク音声認識に関する研究を行った.現在の音声認識の精度はニューラルネットワークを用いた音声認識の出現により高いものとなってきたが,雑音や話者の違いなどに起因する非言語情報により認識性能が低下するという問題がある.そのため,非言語情報を適切に取り扱う枠組みがニューラルネットワーク音声認識においても非常に重要であると言える.従来の生成モデルに基づくアプローチは,生成モデルのパラメータの意味づけの容易さによって,非言語情報の操作に対する大きなバックグラウンドを持つ.これに対してニューラルネットワークは高い性能を持つが,非常に複雑なモデル構造を持つため,パラメータの意味づけと操作が直感的でなく困難であるという問題があった.そこで,非言語情報,特に話者の違いに対する理論的バックグラウンドを持つ音声の構造的表象をニューラルネットワークにより計算する手法を提案した.これは,構造的表象の要素である分布間距離をニューラルネットワークによる識別的アプローチにより推定するものである.これにより,音声学的知見をニューラルネットワークへ導入することが可能となり幅広い応用が可能となった.提案した手法の有効性を特徴量ドメイン,音響モデルドメインにおける従来手法に導入することで評価し,それぞれのドメインにおいて従来のアプローチを越える性能が実現できた.27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。本年度では,自動音声認識の精度向上を目的として,1)従来の特徴量関連技術の延長としてのニューラルネットベースの特徴量の設計と,2)話者性に頑健な認識器の設計を行った.1.ニューラルネットによる特徴量の再設計としては,音声認識に限らず,情報科学の分野で用いられることの多い距離基準であるバタチャリヤ距離をニューラルネットを用いた識別モデルベースによる拡張を行った.これにより,従来の生成モデルをベースとして用いられていたがために実用上の制約の大きかったこの距離基準を,柔軟に利用することが可能となった.また,これを応用することにより,構造的表象と呼ばれる特徴量の拡張を行った.構造的表象は,音響イベントの関係性のみをモデル化することにより,話者不変性を実現することを目的とする.すなわち,人間は音声の「/あ/」や「/い/」などの絶対的な情報ではなく,相対的な距離,構造によって言語情報を表現,理解しているというものである.これをニューラルネットベースの距離基準で表現することにより,従来困難であった,発話の中に含まれていない音響イベント間の距離も推定することが可能となった.2.話者性に頑健な認識器の設計では,話者コードと呼ばれる話者の情報を表現するベクトルを効率的に学習する手法を提案し,これにより話者の違いを柔軟に吸収することが可能となった.話者コードはニューラルネット音響モデルの適応手法の一つであるが,その性質上,話者に依存/非依存部の同時学習が困難であった.そこで,話者コードをダミーのノードからのネットワークの出力として再定義することで,話者依存/非依存部を効率的に同時に学習することが可能となった.本年度は、非言語情報の違いに頑健な特徴量表現に着目したニューラルネットワーク音声認識に関する研究を行った.現在の音声認識の精度はニューラルネットワークを用いた音声認識の出現により高いものとなってきたが,雑音や話者の違いなどに起因する非言語情報により認識性能が低下するという問題がある.そのため,非言語情報を適切に取り扱う枠組みがニューラルネットワーク音声認識においても非常に重要であると言える.従来の生成モデルに基づくアプローチは,生成モデルのパラメータの意味づけの容易さによって,非言語情報の操作に対する大きなバックグラウンドを持つ.これに対してニューラルネットワークは高い性能を持つが,非常に複雑なモデル構造を持つため,パラメータの意味づけと操作が直感的でなく困難であるという問題があった.そこで,非言語情報,特に話者の違いに対する理論的バックグラウンドを持つ音声の構造的表象をニューラルネットワークにより計算する手法を提案した.これは,構造的表象の要素である分布間距離をニューラルネットワークによる識別的アプローチにより推定するものである.これにより,音声学的知見をニューラルネットワークへ導入することが可能となり幅広い応用が可能となった.提案した手法の有効性を特徴量ドメイン,音響モデルドメインにおける従来手法に導入することで評価し,それぞれのドメインにおいて従来のアプローチを越える性能が実現できた.当初の予定では,ニューラルネットの構造の自動決定の研究を行う予定であったが,これは,先行研究により構造決定は直近のクリティカルな課題ではないと判断したためである.そのため,方向を修正し,音響モデルの話者適応を通してニューラルネットの制御に重点を置いて研究をおこなった.これは,従来の要素技術をニューラルネットにいかに適用するかという本研究の方針から逸脱はしておらず,今後の研究計画においても大きく方針転換する必要はないと考えている.そのため,研究課題の達成度としては概ね予定通りと述べて差し障りない.27年度が最終年度であるため、記入しない。今後,ニューラルネット音響モデルと特徴量の統合的な最適化を行う.具体的にはニューラルネットにより拡張した構造的表象を特徴量としてニューラルネット音響モデルの話者性の制御を行う.既に実験的に従来主流であったI-vectorなどの話者性を表現する特徴量に加えてニューラルネットにより計算した構造的表象を導入することでより良い結果が得られることがわかっている.この構造的表象と後段の音響モデルはどちらもニューラルネットで構築した場合,これらを統合的に最適化することが可能となる.また,並行してニューラルネットを利用した話者性の表現を様々な分野に応用する.これは,音声認識に限らない. | KAKENHI-PROJECT-14J09167 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J09167 |
要素技術の再構成・再解釈に着眼したニューラルネット音声認識システムの高度化 | 例えば,話者識別,言語学習,音声合成等が考えられる.我々のグループはこれらの要素技術のノウハウを既に保持しているため,困難ではないと考える.これに伴い,今後さらに大規模な計算資源が必要となる見込みである.そこで,計算機を増強することでこれに対応する.27年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-14J09167 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J09167 |
アモルファス凝集からアミロイド線維への構造転移に伴う熱揺らぎの解明 | 1.モデル蛋白質として用いた鶏卵白リゾチームのアモルファス凝集からアミロイド線維への構造転移について研究を行った。生体に存在するポリリン酸の一種であるテトラポリリン酸が効率よくリゾチームの凝集を促進することを見出した。更に、アモルファス凝集が起こる臨界濃度で効率よくアミロイド線維が形成されやすくなることを見出した。熱量測定による解析から、テトラポリリン酸のリゾチームへの結合後、蛋白質分子は、脱水和された構造的に揺らぎの大きい状態となり、攪拌などの刺激を与えるとアモルファス凝集を回避してアミロイド線維へと構造転移することを明らかにした(論文投稿中)。2.パーキンソン病関連の蛋白質αシヌクレインのアモルファス凝集からアミロイド線維への構造転移に関する研究を行った。アミロイド線維形成は、用いたリン酸塩濃度に大きく依存し、低濃度(1mM以下)と高濃度領域(200mM以上)でアミロイド形成反応が促進され、中濃度(1100mM)領域では、アミロイド線維形成が抑制されることが分かった。解析の結果、低濃度領域では蛋白質の等電点効果により、高濃度ではリン酸塩の塩析効果にアミロイド線維形成が促進され、中濃度領域ではリン酸塩の塩溶効果によって阻害されることを明らかにした(論文投稿準備中)。3.酸性性条件下でのβ2ミクログロブリンのアミロイド形成に関する研究を行った(共同研究)。透析アミロイドーシスの原因蛋白質β2ミクログロブリンのアミロイド形成に及ぼす温度と塩効果を相図としてまとめた(論文受理)。また、β2ミクログロブリンのアミロイド形成に及ぼすポリリン酸の効果を明らかにした(論文投稿中)。4.中性条件下での加熱によるβ2ミクログロブリンアミロイド形成に関する研究を行った(共同研究)。アミロイド形成に伴う熱応答を熱力学的に解析した(論文投稿準備中)。1.鶏卵白リゾチームのアモルファス凝集からアミロイド線維への構造転移に関する研究は、実験を終了し現在論文投稿中。2.αシヌクレインのアモルファス凝集からアミロイド線維への構造転移に関する研究は、実験をほぼ終了し現在論文投稿準備中。3.β2ミクログロブリンのアミロイド形成に関する3つの共同研究は、一つは論文として受理され、もう2つは論文投稿中。4.現在、アルツハイマー病関連のアミロイドβペプチドとII型糖尿病関連の膵島アミロイドポリペプチドを用いたアミロイド研究を進めている。1ー3に関しては、予定通り研究が進んだが、本プロジェクトで一番成果を出したい研究4に関しては際立った成果はまだ得られていない。1.パーキンソン病関連のαシヌクレインアミロイド線維形成に関する論文を投稿する。2.進展が遅れているアルツハイマー病関連のアミロイドβペプチドとII型糖尿病関連の膵島アミロイドポリペプチドのアミロイド形成に伴う熱揺らぎの研究に精力的に取り組んで遅れを取り戻す。2019年度内に実験を終わらせて、結果を論文にまとめる予定である。また研究全般の結果を総説としてまとめる予定である。1.最初に、モデル蛋白質として用いた鶏卵白リゾチームのアモルファス凝集からアミロイド線維への構造転移を調べた。当初、NaClを加えて蛋白質の構造転移を促進する予定でしたが、生体内に存在するポリリン酸の一種であるテトラポリリン酸が効率よく蛋白質凝集を促進することを見出した。テトラポリリン酸の蛋白質分子への結合後、蛋白質分子は、構造変化を伴いながらアモルファス凝集となる。アモルファス凝集が起こる臨界点(蛋白溶解度がブレイクする点)で効率よくアミロイド線維が形成されやすくなることがわかった。熱量測定から、テトラポリリン酸の蛋白質分子への結合は、エントロピー駆動で、続いて起こる凝集反応は、エンタルピー駆動であることがわかった。これは、テトラポリリン酸の結合後、蛋白質分子は、脱水和された不安定な構造となり、次にアモルファス凝集へと反応が進むことを示唆する結果である。蛋白質の脱水和された構造的に揺らぎの大きい状態に攪拌などの刺激を与えるとアモルファス凝集を回避して、アミロイド線維形成が促進されることが明らかになった。2.次に、パーキンソン病関連の蛋白質αシヌクレインのアモルファス凝集とアミロイド線維との競合反応を調べた。競合反応は、用いたリン酸バッファー濃度に大きく依存し、低濃度と高濃度領域でアミロイド線維反応が促進され、中濃度(1100 mM)領域では、アミロイド線維が抑制されることがわかった。解析の結果、低濃度領域では蛋白質の等電点効果により、高濃度ではリン酸バッファーの塩析効果によりアミロイド線維形成が促進され、中濃度領域ではリン酸バッファーの塩溶効果によって阻害されることが明らかになった。モデル蛋白質として用いた鶏卵白リゾチームの結果が予想より順調に得られ、現在、論文執筆段階に来ている。当初、蛋白質凝集を引き起こす塩としてNaClを考えていたが、4つのリン酸が直線状に結合したテトラポリリン酸が効率よく(低濃度)で蛋白質凝集を引き起こすことを見出し、その後実験が順調に進んだ。次にを取り組んだαシヌクレインのアミロイド線維形成の実験も順調に進んだ。蛋白質実験で通常よく用いられるリン酸バッファーの濃度を変えることで、αシヌクレインの塩析ー塩溶効果、等電点凝集効果を検出することができ、アモルファス凝集とアミロイド線維の競合反応を解析することができた。 | KAKENHI-PROJECT-17K07363 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K07363 |
アモルファス凝集からアミロイド線維への構造転移に伴う熱揺らぎの解明 | 1.モデル蛋白質として用いた鶏卵白リゾチームのアモルファス凝集からアミロイド線維への構造転移について研究を行った。生体に存在するポリリン酸の一種であるテトラポリリン酸が効率よくリゾチームの凝集を促進することを見出した。更に、アモルファス凝集が起こる臨界濃度で効率よくアミロイド線維が形成されやすくなることを見出した。熱量測定による解析から、テトラポリリン酸のリゾチームへの結合後、蛋白質分子は、脱水和された構造的に揺らぎの大きい状態となり、攪拌などの刺激を与えるとアモルファス凝集を回避してアミロイド線維へと構造転移することを明らかにした(論文投稿中)。2.パーキンソン病関連の蛋白質αシヌクレインのアモルファス凝集からアミロイド線維への構造転移に関する研究を行った。アミロイド線維形成は、用いたリン酸塩濃度に大きく依存し、低濃度(1mM以下)と高濃度領域(200mM以上)でアミロイド形成反応が促進され、中濃度(1100mM)領域では、アミロイド線維形成が抑制されることが分かった。解析の結果、低濃度領域では蛋白質の等電点効果により、高濃度ではリン酸塩の塩析効果にアミロイド線維形成が促進され、中濃度領域ではリン酸塩の塩溶効果によって阻害されることを明らかにした(論文投稿準備中)。3.酸性性条件下でのβ2ミクログロブリンのアミロイド形成に関する研究を行った(共同研究)。透析アミロイドーシスの原因蛋白質β2ミクログロブリンのアミロイド形成に及ぼす温度と塩効果を相図としてまとめた(論文受理)。また、β2ミクログロブリンのアミロイド形成に及ぼすポリリン酸の効果を明らかにした(論文投稿中)。4.中性条件下での加熱によるβ2ミクログロブリンアミロイド形成に関する研究を行った(共同研究)。アミロイド形成に伴う熱応答を熱力学的に解析した(論文投稿準備中)。1.鶏卵白リゾチームのアモルファス凝集からアミロイド線維への構造転移に関する研究は、実験を終了し現在論文投稿中。2.αシヌクレインのアモルファス凝集からアミロイド線維への構造転移に関する研究は、実験をほぼ終了し現在論文投稿準備中。3.β2ミクログロブリンのアミロイド形成に関する3つの共同研究は、一つは論文として受理され、もう2つは論文投稿中。4.現在、アルツハイマー病関連のアミロイドβペプチドとII型糖尿病関連の膵島アミロイドポリペプチドを用いたアミロイド研究を進めている。1ー3に関しては、予定通り研究が進んだが、本プロジェクトで一番成果を出したい研究4に関しては際立った成果はまだ得られていない。モデル蛋白質として用いた鶏卵白リゾチームのアミロイド線維形成の結果を論文にまとめる。パーキンソン病関連のαシヌクレインのアミロイド線維形成の結果を論文にまとめる。アルツハイマー病関連のアミロイドβペプチドとII型糖尿病関連の膵島アミロイドポリペプチドのアミロイド線維形成とアモルファス凝集の研究に進む。1.パーキンソン病関連のαシヌクレインアミロイド線維形成に関する論文を投稿する。2.進展が遅れているアルツハイマー病関連のアミロイドβペプチドとII型糖尿病関連の膵島アミロイドポリペプチドのアミロイド形成に伴う熱揺らぎの研究に精力的に取り組んで遅れを取り戻す。2019年度内に実験を終わらせて、結果を論文にまとめる予定である。また研究全般の結果を総説としてまとめる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-17K07363 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K07363 |
感応性金属酵素中心モデルの構築と機能発現 | oxy-PHMのモデル錯体合成をおこない、分子状酸素との反応について検討した。生成した単核銅(II)エンドオン型スーパーオキソ錯体は温度を上げると、配位子フェネチル側鎖のベンジル位の水酸化反応を誘起した。モリブデン酵素モデルとして、配位原子を酸素、硫黄、セレンと系統的に変えた錯体を合成し、電子構造や反応性との関連を系統的に調べた。鉄酵素モデル錯体を合成し、触媒能を検討した。過酸化水素を酸化剤として、アルケンのジオール化が進行する系を構築した。アミン存在下ではアミノアルコール化が、1,5-ジエンを用いると、酸化的環化反応が進行し、テトラヒドロフランが生成した。モリブデン水酸化酵素のモデルとして、スルフィド基やセレニド基を持つモリブデン(IV)錯体を合成し、末端配位子の効果を系統的に議論した。結晶構造解析や紫外可視分光計や共鳴ラマン分光計などを用いた分光学的性質などのシュミュレーションからモリブデン錯体の電子構造解析をおこなった。この結果、末端配位子がオキソからスルフィド、セレニドへと変化するにつれて、LUMO+3のエネルギー順が下がり、LUMO+2の軌道とエネルギー順位が入れ替わることが明らかとなった。電荷遷移もこの順で長波長側に観測されることと一致した。スルフィド基やセレニド基を持つモリブデン(VI)錯体も合成し、NMRや紫外可視スペクトルなどの分光学的性質における末端配位子の効果を系統的に議論した。DFT計算により、それらの三次元構造も求めて、末端配位基との結合長についても考察を加えた。三級リンに対する原子移動を速度論的に解析した結果、末端配位子が酸素→硫黄→セレンになるにつれて反応速度が飛躍的に増加することを明らかとした。タングステン類似対も合成してその分光学的性質や原子移動能を評価し、モリブデン錯体の方がより高活性であることを見出した。オスミウム(VI)錯体を合成し、これを触媒とするアルケンのジオール化反応を入手容易な過酸化水素を酸化剤としておこなった。末端アルケンから内部アルケンまでのジオール化反応が効率よく進行した。また、電子求引基を持つアルケンから電子供与基を持つアルケンまで幅広い基質に適用できた。使用するキレート配位子により安定度が増した錯体では、触媒の耐久性が向上しより高い触媒回転数を示した。1,5-ジアザシクロオクタン骨格に2-ピリジルエチル基を導入した配位子を持つ単核銅(II)エンドオン型スーパーオキソ錯体の反応性について検討した。低温、アセトン溶液中でTEMPOH (4-hydroxy-2,2,6,6-tetramethyl-piperidine)を加えると、基質からスーパーオキソ錯体への水素原子移動反応が進行し、単核銅(II)-ヒドロペルオキシド錯体が生成した。同条件下でフェノール誘導体を加えると、単核銅(II)フェノレート錯体が生成した。また、反応系中から過酸化水素が約50%の収率で得られたことから、本反応はプロトン移動反応を律速段階として進行していることが示唆された。また、フェロセン誘導体などとの反応により、スーパーオキソ錯体の一電子還元電位を見積もるとともに、ペルオキソ錯体を生成させた。配位原子を酸素、硫黄、セレンと系統的に変えた等構造をとるジオキソ-、オキソ-スルフィド-、オキソ-セレニド-モリブデン(VI)錯体を合成した。オキソースルフィド錯体およびオキソーセレニド錯体は三級リンへの選択的な硫黄あるいはセレン原子移動反応を示した。原子移動速度はSe > S >> Oの順で速くなり、酸素とセレンの原子移動では10000倍違っていた。スルフィドやセレニド基を持つ錯体のLUMOの成分には硫黄とセレンの寄与がそれぞれ34%、35%程度含まれるのに対し、ジオキソ錯体では9%しか酸素は寄与せず、このことが原子移動反応性を支配していると結論した。すでに合成に成功したアルケンのシスジオール化を触媒するオスミウム錯体をに用いると、脂肪族アルケンから電子求引基含有アルケンまで様々なアルケンに対して選択的なシスアミノアルコール化が進行した。各種分光学的手法や計算化学から、この反応における活性酸化剤はオスミウム(V)ーオキソーアミナト錯体であると結論した。モリブデン酵素活性中心生成のモデル化をおこなった。ジオキソモリブデン(VI)状態の補因子モデルとして、カルボン酸メチルエステルを置換基に持つジチオレン錯体を用いた。メタノールやベンジルアルコールなどの単純なアルコールをアポ酵素モデルとして、Camphorsulfonic acid存在下、-40°Cで補因子モデルと反応させるとアルコラトと一つのオキソ基が置換したオキソアルコラトモリブデン(VI)活性中心モデル錯体が生成した。生成したモリブデン錯体は紫外可視、マススペクトルによって同定した。エタノラトが配位した錯体については、低温下での結晶化に成功し結晶構造を決定した。活性中心モデル錯体は540 nm付近に2000 M-1 cm-1以上のモル吸光係数を持つ強い吸収帯をもつが、配位アルコラトによって吸収位置は大きく変化しなかった。ヘキサンチオールをアポ酵素モデルとして用いた時には、-60°C以下でアルコールとの反応と同様にオキソ基との置換がおこり、オキソ(ヘキサンチオラト)モリブデン(VI)錯体が生成した。 | KAKENHI-PLANNED-24109015 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-24109015 |
感応性金属酵素中心モデルの構築と機能発現 | この錯体は639 nmに強い吸収帯を持ち、アルコラト錯体の吸収帯よりも大きく長波長シフトしていた。これらの構造をDFT計算により最適化してモデル錯体の電子状態を明らかにし、これらの吸収はHOMO-1からLUMOへの電荷遷移に帰属した。すでに合成に成功したアルケンのシスジオール化を触媒するオスミウム置換鉄酵素モデル錯体を用いると、過酸化水素を酸化剤としてさまざまな1,5-ジエンの酸化的環化反応が進行し、シス配置のテトラヒドロフラン環が生成した。環化反応における基質依存性や五価オスミウム酸化活性種と1,5-ジエンとの量論反応を分光学的に追跡することにより、反応機構を推定した。本研究計画では、「感応性金属酵素中心モデルの構築と機能発現」と題して、酵素触媒サイクル中に存在する準安定化学種を感応性化学種として積極的にとらえることを目的としている。すなわち、感応性モデル錯体を合成し、外部刺激応答性を調べ、機能発現(特に化学的反応性)まで展開する。モリブデン酵素モデルに関して、触媒サイクル中の準安定な活性中心モデル錯体を低温条件で単離・構造決定することに成功した。各種分光法の測定や計算化学により電子状態を決定したことは本領域の概念に一致する。人工金属酵素の開発では、アルケンのシスジオール化を触媒するrieske dioxygenaseのオスミウムモデル錯体を合成し、過酸化水素を酸化剤として、酵素基質以外のジエンの酸化的環化反応に成功した。この結果は、本課題の人工金属酵素のモデルによる機能発現に一致する。テルピリジンとフェニルピリジンを用いて1つの置換活性部位を有する新規な有機金属オスミウム(III)錯体を合成し、アルケンのジオール化反応について検討した。シクロヘキセン、スチレン、ケイ皮酸メチルはシス選択的にジオール化された。またpH 4において、1-オクテンとtrans-3-オクテンでは1-オクテンの方がより効率良くにジオール化されたのに対し、pH 8ではtrans-3-オクテンの方が1-オクテンより効率的にジオール化された。このことから本反応における位置選択性はpH依存的であることが示された。アミンを窒素源とするジアミノ化反応を開発するため、N4系四座配位子のオスミウム(III)-ジトリフラート錯体とアミンとの反応について検討した。オスミウム(III)-ジトリフラート錯体とシクロヘキシルアミンとの反応では、可視領域に強い吸収(λ= 465, 585 nm)が現れ、ESI-MSにより、トリフラート配位子の一つがシクロヘキシルアミンと置換したモノアミン付加体であることが確認された。配位不飽和な錯体として、フェノラートとβージケチミネートを組み合わせた酸化還元活性なトリアニオン性四座配位子とハロゲン化物イオンを有する5配位ロジウム(III)錯体を合成した。錯体は1H NMRやX線結晶構造解析などの分光学的手法によって同定した。酸化還元電位などの性質が溶媒の極性の違いによって影響を受け、溶媒と中心金属との相互作用があることが示唆された。さらに、以前合成した6配位ロジウム(III)錯体の場合に比べて、この錯体はCーH結合のアミノ化反応や酸素化反応により高い活性を示すことが明らかとなった。本研究計画では、「感応性金属酵素中心モデルの構築と機能発現」と題して、酵素触媒サイクル中に存在する準安定化学種を感応性化学種として積極的にとらえることを目的としている。 | KAKENHI-PLANNED-24109015 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-24109015 |
数理科学の微分方程式の応用解析学的研究 | 数理科学の常・偏微分方程式系の解及び解空間の構造の研究が目的であり、殊にパラメーターに依存したその構造の変化の解析が主眼である。この方向に沿って、以下の研究を行った。1。量子力学の方程式系:(1)Schrodinger作用素、Pauli作用素の摂動による固有値の分布を調べた。(2)Dirac方程式の散乱作用素からもとのポテンシャルを再構成する逆散乱問題について研究した。2。流体方程式系:流体が自由表面を持つ時のBoussinesq方程式による熱対流問題を考察した。熱伝導解の安定性を調べ、計算機援用証明法によってRayleigh数、Marangoni数の大きな変化にも応じた固有値の動きを追跡する事が出来、その変化に応じた不安定性を証明した。これらを用いて定常分岐が起っていることの証明が出来る。更にHopf分岐が起っている事の証明を行いつつある。解空間の大域的な分岐構造の解明をめざして、いかなる解析的基礎理論及び計算機援用証明法が必要かを研究し始め、パラメーターの値に対応した解の存在を保証する判定法を提出した。3。可解格子模型・量子群:頂点作用素による格子模型の研究を進め、ヤン・バクスター方程式の楕円関数解に付随する量子群を定義した。Fronsdalは、楕円型量子群を通常のアフィン量子群と代数としては同じものであって、twistorと呼ばれる元で`ゲージ変換'された余積を持つ準Hopf代数として理解するというideaを提唱した。このようなtwistorを、普遍R行列の無限積の形で構成した。これによってvertex型・face型の楕円型量子群の存在が統一的に確立された。4。力学系:余次元3の退化したホモクリニック軌道からの分岐を調べ、その開折により無限個のホモクリニック倍分岐が起こることを示した。その後このようなホモクリニック倍分岐の集積がベクトル場の2パラメータ族で安定に起こり得ることの数学的な証明が得られた。数理科学の常・偏微分方程式系の解及び解空間の構造の研究が目的であり、殊にパラメーターに依存したその構造の変化の解析が主眼である。この方向に沿って、以下の研究を行った。1。量子力学の方程式系:(1)Schrodinger作用素、Pauli作用素の摂動による固有値の分布を調べた。(2)Dirac方程式の散乱作用素からもとのポテンシャルを再構成する逆散乱問題について研究した。2。流体方程式系:流体が自由表面を持つ時のBoussinesq方程式による熱対流問題を考察した。熱伝導解の安定性を調べ、計算機援用証明法によってRayleigh数、Marangoni数の大きな変化にも応じた固有値の動きを追跡する事が出来、その変化に応じた不安定性を証明した。これらを用いて定常分岐が起っていることの証明が出来る。更にHopf分岐が起っている事の証明を行いつつある。解空間の大域的な分岐構造の解明をめざして、いかなる解析的基礎理論及び計算機援用証明法が必要かを研究し始め、パラメーターの値に対応した解の存在を保証する判定法を提出した。3。可解格子模型・量子群:頂点作用素による格子模型の研究を進め、ヤン・バクスター方程式の楕円関数解に付随する量子群を定義した。Fronsdalは、楕円型量子群を通常のアフィン量子群と代数としては同じものであって、twistorと呼ばれる元で`ゲージ変換'された余積を持つ準Hopf代数として理解するというideaを提唱した。このようなtwistorを、普遍R行列の無限積の形で構成した。これによってvertex型・face型の楕円型量子群の存在が統一的に確立された。4。力学系:余次元3の退化したホモクリニック軌道からの分岐を調べ、その開折により無限個のホモクリニック倍分岐が起こることを示した。その後このようなホモクリニック倍分岐の集積がベクトル場の2パラメータ族で安定に起こり得ることの数学的な証明が得られた。数理科学の常・偏微分方程式系の解及び解空間の構造の研究が目的であり、殊にパラメーターに依存したその構造の変化の解析が主眼である。この方向に沿って量子力学の方程式系、流体力学の方程式系、可解格子模型及び量子群、力学系と分岐理論に関して以下の研究を行った。1.作用素論:2次元の磁場内のPauli作用素のスペクトルの下端である0は、無限多重度の固有値であるが、電場のポテンシャルによる摂動を加えた時、この0の周りでの固有値の漸近分布を、磁場が回転対称な場合等に調べた。2.流体方程式系:自由表面を持つBenard-Marangoni熱対流問題を研究し、熱伝導解の不安定性をRayleigh数、Marangoni数の変化に対応して解明した。それは線形化作用素の実部が最大の固有値の動きを、パラメーターの変化に対応して追跡する計算機支援証明法によって行った。3.可解格子模型(1)Andrews-Baxter-ForresterのRSOS模型のSln型に対する頂点作用素のボゾン化を構成した。(2)不変微分作用素の研究で、duali pairとそれに付随するCapelli恒等式の研究を行った。4.力学系:ヴェクトル部のホモクリニック倍分岐の研究を行い、orbit-flip型のホモクリニック軌道を持つ場の族では、無限回の同分岐及びその集積が起こりうることを示唆する結果を得た。数理科学の常・偏微分方程式系の解及び解空間の構造の研究が目的であり、殊にパラメーターに依存したその構造の変化の解析が主眼である。 | KAKENHI-PROJECT-08404007 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08404007 |
数理科学の微分方程式の応用解析学的研究 | この方向に沿って、以下の研究を行った。1。量子力学の方程式系:(1)スペクトルがバンド構造をもつようなモデルに対して、電場を摂動として加えたとき、スペクトルの間隙に離散的固有値が現れる。その漸近分布を調べた。(2)時間に依存する電磁場を持つDirac方程式の散乱作用素からもとのポテンシャルを再構成する逆散乱問題について研究した。2。流体方程式系:圧縮性粘性流体の熱対流問題を考察した。圧縮性のために平衡解、従ってその周りでの線形化方程式系も複雑になり解析的理論は極めて限られていた。Rayleigh数が小さい時の線形安定性及び線形作用素の楔性が示せた。更に固有値・固有関数の計算を行い、不安定性を起すパラメーターの値の特定を行うと共に、平面の間隔が小さくなった極限でのBoussinesq近似へのその漸近性等を得た。分岐を証明するには、質量保存を記述する方程式の非線形性が高く、分岐理論の拡張が必要である。3。可解格子模型・量子群:頂点作用素による格子模型の研究を進め、ヤン・バクスター方程式の楕円関数解に付随する量子群を定義した。Fronsdalは、楕円型量子群を通常のアフィン量子群と代数としては同じものであって、twistorと呼ばれる元で`ゲージ変換'された余積を持つ準Hopf代数として理解するというideaを提唱した。このようなtwistorを、普遍R行列の無限積の形で構成した。これによってvertex型・face型の楕円型量子群の存在が統一的に確立された。4。解の特異性の伝搬:偏微分方程式の解の特性の伝播の研究を行った。特に時間依存型Schrodinger方程式の初期値問題に対する解の特異性の伝播および解の平滑化効果について考察した。波束やFBI変換等の超局所解析を用いた証明方法を考案し、現在それを用いてより詳細な解の特異性の構造を明らかにしつつある。 | KAKENHI-PROJECT-08404007 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08404007 |
小児がん経験者が発達危機を克服するためのレジリエンス育成モデルの構築 | 多くの小児がん経験者は,晩期合併症や,療養生活を通した心の問題や就労・自立などの社会的問題を抱えている.小児がん経験者の発達危機として復学・進学・就職を取り上げ,復学できた小児がん経験者,復学と進学ができた小児がん経験者,復学・進学・就職ができた小児がん経験者で,レジリエントな人格が育成される過程を,重層的輻輳的に分析する.各危機での保護要因が脆弱性要因の解決をうながす強さを育てていること,過去の危機(復学)へのレジリエントな反応と対処が,自己効力感を育て,次の危機(進学)に際してのレジリエントな反応を引き出すことができ,危機にうまく対処できることを実証する.多くの小児がん経験者は,晩期合併症や,療養生活を通した心の問題や就労・自立などの社会的問題を抱えている.小児がん経験者の発達危機として復学・進学・就職を取り上げ,復学できた小児がん経験者,復学と進学ができた小児がん経験者,復学・進学・就職ができた小児がん経験者で,レジリエントな人格が育成される過程を,重層的輻輳的に分析する.各危機での保護要因が脆弱性要因の解決をうながす強さを育てていること,過去の危機(復学)へのレジリエントな反応と対処が,自己効力感を育て,次の危機(進学)に際してのレジリエントな反応を引き出すことができ,危機にうまく対処できることを実証する. | KAKENHI-PROJECT-19K11104 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K11104 |
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