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社会恐怖の医学思想史に向けて―20世紀の日仏比較研究
本研究の目的は、20世紀初頭に西洋精神医学に導入された「社会恐怖」の概念の歴史と発展を、精神医学史的および概念史的方法により比較・検証することである。半期だけの取り組みとなった平成23年度には、「恐怖」および「不安」の医学的・社会的表象の変遷を跡づけるコーパスの構築に着手するとともに、とりわけ、申請者(立木康介)と研究分担者(DELILLE, Emmanuel)のそれぞれが相手と共有すべき知識・情報を増やすことを最優先課題とした。そのため、申請者は、伝統あるフランス精神医学のなかでも、研究分担者にとってとりわけ重要な参照項であるアンリ・エーおよびアンリ・エレンベルガーの業績を繙き、本研究テーマにかんする資料を収集すると同時に、研究分担者と協力関係にあるフランス国立学術研究センター教授、ピエール=アンリ・カステル氏と学術交流・意見交換を行った。他方、研究分担者は、日本の精神医学史の全体像の理解に向けて旺盛に調査を開始し、精神医学史、民族精神医学(文化横断的精神医学)、恐怖症研究、ひきこもり研究、ならびに仏教思想研究の専門家らと学術交流を重ね、それらの専門家のもとで学術報告を行った。またそのなかで、精神病理現象の日本的な現れとして日本精神医学史の重要テーマのひとつである「憑狐き」(動物憑依)にとくに注目し、文献の収集を開始した。これらの手続きは、本研究の全体、さらには、その上に長期にわたって築かれていく可能性のある先駆的な諸研究(「社会恐怖」の日仏比較研究は精神医学史に前例のない試みである)を支える堅固なコーパスを構築するために不可欠な作業であり、本研究は順調に滑り出したと言える。研究分担者が報告者の予想以上に精力的に研究活動・研究交流を進めたため。研究分担者の就職により、学術振興会の助成を受けての本研究の遂行は、平成24年度4月をもって中断せざるをえない。しかし、これまでの成果をもとに、今後も同じテーマでの研究を研究分担者と共同で進めてゆく予定である。本研究の目的は、20世紀初頭に西洋精神医学に導入された「社会恐怖」の概念の歴史と発展を、精神医学史的および概念史的方法により比較・検証することである。半期だけの取り組みとなった平成23年度には、「恐怖」および「不安」の医学的・社会的表象の変遷を跡づけるコーパスの構築に着手するとともに、とりわけ、申請者(立木康介)と研究分担者(DELILLE, Emmanuel)のそれぞれが相手と共有すべき知識・情報を増やすことを最優先課題とした。そのため、申請者は、伝統あるフランス精神医学のなかでも、研究分担者にとってとりわけ重要な参照項であるアンリ・エーおよびアンリ・エレンベルガーの業績を繙き、本研究テーマにかんする資料を収集すると同時に、研究分担者と協力関係にあるフランス国立学術研究センター教授、ピエール=アンリ・カステル氏と学術交流・意見交換を行った。他方、研究分担者は、日本の精神医学史の全体像の理解に向けて旺盛に調査を開始し、精神医学史、民族精神医学(文化横断的精神医学)、恐怖症研究、ひきこもり研究、ならびに仏教思想研究の専門家らと学術交流を重ね、それらの専門家のもとで学術報告を行った。またそのなかで、精神病理現象の日本的な現れとして日本精神医学史の重要テーマのひとつである「憑狐き」(動物憑依)にとくに注目し、文献の収集を開始した。これらの手続きは、本研究の全体、さらには、その上に長期にわたって築かれていく可能性のある先駆的な諸研究(「社会恐怖」の日仏比較研究は精神医学史に前例のない試みである)を支える堅固なコーパスを構築するために不可欠な作業であり、本研究は順調に滑り出したと言える。研究分担者が報告者の予想以上に精力的に研究活動・研究交流を進めたため。研究分担者の就職により、学術振興会の助成を受けての本研究の遂行は、平成24年度4月をもって中断せざるをえない。しかし、これまでの成果をもとに、今後も同じテーマでの研究を研究分担者と共同で進めてゆく予定である。
KAKENHI-PROJECT-11F01303
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11F01303
イカ類の他者認知と社会構築に関する行動学的研究
本研究では、イカ類の他者認知と社会構築を、アオリイカを主対象に行動学的に読み解くことを試みた。その結果、アオリイカが自種に強い関心を示すこと、同種個体を識別していること、摂餌行動など他個体の振る舞いを注意深く観ていることなどを確認した。また、自種に対する嗜好性や他者を見る視覚能力は孵化後の時間経過に伴い強化、発達することを確認した。さらに、種間比較の観点からトラフコウイカを調べ、他者認知と関連して視覚能力が孵化後に整えられて行くことを確認した。本研究は、イカ類に見られる高次脳機能が社会性に関連して発達したとの発想のもと、同種個体より成るイカ類の複雑な群れの社会について、同種個体を見わける能力、すなわち他者認知をソーシャルブレインズ(社会脳)の視点を導入し、「心の理論」や視覚発達にも注目しつつ読み解くことを目的とした。この目的達成のため、平成24年度は他者認知の発達過程について、前年度の成果も踏まえてアオリイカを対象に調べた。初めに、他者認知の発達について探るため、アオリイカを孵化時より飼育し、経時的に自種および他種であるトラフコウイカを提示して、自種への嗜好性、すなわち種認知の発達過程を観察した。その結果、30日齢より自種に対する接近距離が他種であるトラフコウイカよりも短くなる傾向が見られ始め、種認知が生後発生的に発現する様子が示唆された。次に、他者認識と視線注視の発達について探るため、集団内におけるアオリイカの挙動を経時的に追跡したところ、摂餌場面において、他個体の捕食行動に同調して捕食行動を開始する様子が孵化後初期から認められたことから、他者認識と視線注視が生後の比較的早い段階から発現することが示唆された。さらに、他者認知の基盤となる視覚とそれに関わる脳領域の発達を探るため、孵化後のアオリイカについて、眼と脳を経時的に採集して組織標本を作成し、解剖学的な検討を加えた。その結果、孵化後の時間経過に伴い、レンズ径が増すとともに、視細胞である感悍が伸長し、視精度が高くなって行く様子、視葉が容積を増して行く様子が観察されたことから、視覚能力が生後の時間経過に伴い整えられて行くことが示された。本研究は、イカ類に見られる高次脳機能が社会性に関連して発達したとの発想のもと、同種個体より成るイカ類の複雑な群れの社会について、同種個体を見わける能力、すなわち他者認知をソーシャルブレインズ(社会脳)の視点を導入し、「心の理論」や視覚発達にも注目しつつ読み解くことを目的とした。この目的達成のため、平成25年度は他者認知の種間変異について、アオリイカと比べて社会性レベルが低いコウイカ科のトラフコウイカを対象に調べ、得られた結果をアオリイカと比較した。初めに、他者認知の有無と程度について探るため、トラフコウイカを孵化時より集団飼育し、行動を観察した。その結果、本種は孵化後初期の段階から、同種個体と近接するかたちで静座、分布するなど、同種個体に対して強い嗜好性を示す、すなわち、種認知の能力が示唆された。さらに、孵化後の時間経過にともない、静座に際しての同種個体との距離が伸びるなど、同種への嗜好性に変化も認められ、アオリイカとは異なる側面が見られた。さらに、他者認知の基盤となる視覚能力について探るため、トラフコウイカを孵化時より飼育し、餌生物の視認を基準とした視認距離の測定を行うとともに、眼の網膜について解剖学的検討を加えた。その結果、トラフコウイカは30日齢から110日齢にかけて視認距離が増加すること、それに呼応するように、網膜に分布する視細胞の密度も増加すること、さらには、視細胞の密度分布に局所的な相違が見られることなど、本種の視覚能力が孵化後の時間経過に伴い発達することが示された。本研究では、イカ類の他者認知と社会構築を、アオリイカを主対象に行動学的に読み解くことを試みた。その結果、アオリイカが自種に強い関心を示すこと、同種個体を識別していること、摂餌行動など他個体の振る舞いを注意深く観ていることなどを確認した。また、自種に対する嗜好性や他者を見る視覚能力は孵化後の時間経過に伴い強化、発達することを確認した。さらに、種間比較の観点からトラフコウイカを調べ、他者認知と関連して視覚能力が孵化後に整えられて行くことを確認した。本研究は、イカ類に見られる高次脳機能が社会性に関連して発達したとの発想のもと、同種個体より成るイカ類の複雑な群れの社会について、同種個体を見わける能力、すなわち他者認知をソーシャルブレインズ(社会脳)の視点を導入し、「心の理論」や視覚発達にも注目しつつ読み解くことを目的とした。この目的達成のため、平成23年度は他者認知の機構を、アオリイカを対象に調べた。初めに、自種への嗜好性、つまり種認知について探るため、アオリイカに自種および他種であるコウイカ類とタコ類を提示し、行動を観察した。その結果、アオリイカは自種に対して高い関心を示し、種認知の能力があることが示唆された。次に、アオリイカが群れ内の同種個体を見分けることができるのか調べるため、任意個体の組み合わせによる対面実験を行った。その結果、同一個体に対して時間経過と共に関心が低くなる一方で、新規個体に対しては関心が高くなるという、馴化・脱馴化の過程が観察されたことから、本種が同種個体を識別している可能性が示された。
KAKENHI-PROJECT-23580260
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23580260
イカ類の他者認知と社会構築に関する行動学的研究
また、アオリイカが自種の行動に関心を払い、注視しているのか検証するため、集団状態における摂餌場面を観察した。その結果、アオリイカは集団中の他個体の摂餌行動に触発される形で摂餌が活発する様子、すなわち自種の行動を注意深く観ている様が観察された。さらに、社会的順位といった個体の属性に応じて、アオリイカが自身の行動を変えるのか、「心の理論」に基づく摂餌を巡る対面実験を行った。その結果、自身よりも優位な個体に対峙した時と劣位の個体に対峙した時では、摂餌の抑制と非抑制が見られ、本種が個体属性を踏まえて行動を調整している可能性が示された。当初の年度計画通り、アオリイカの他者認知の発達過程、他者認識に関わる視覚と脳の形成の各項目について、実験、観察を遂行し、相応の成果を得ることができた。また、何れの課題においても、アオリイカの長期間にわたる飼育が必要であったが、これも滞りなく遂行することができた。研究遂行の過程で、研究課題の改変を要するような事態が生じることはなく、研究費もほぼ予定通り執行した。以上より、研究はおおむね順調に進展したと評価できる。当初の年度計画通り、アオリイカの種認知、アオリイカの他個体認識、アオリイカの視線注視、「心の理論」の各項目について、実験、観察を遂行し、相応の成果を得ることができた。また、何れの課題においても、アオリイカの長期間にわたる飼育が必要であったが、これも滞りなく遂行することができた。研究遂行の過程で、研究課題の改変を要するような事態が生じることはなく、主要な物品であるイカ幼体行動装置の購入を含め研究費もほぼ予定通り執行した。以上より、研究はおおむね順調に進展したと評価できる。前年度の成果を踏まえ、平成25年度は他者認知の種間変異を主な課題として研究を進める。具体的には、熱帯性イカ類における他者認知の実態を解明すべく、アオリイカに比べて社会性レベルが低いトラフコウイカを対象として、他者認知の有無を平成23年度の研究手法に準じて調べる。さらに、他者認知の多様性と進化について解析すべく、前述のトラフコウイカで得られた結果と前年度までに得られた結果を対応、分析して、社会構築に関わる認知機構の種間変異とそれらが生じた進化的背景、熱帯海域での異種共存などについて総合的に考察する。また、アオリイカおよびトラフコウイカのバイオロジカルモーションに対する反応と、視覚制御に関わる脳部位である視葉の神経ネットワーク形成についても検討を加える。前年度の成果を踏まえ、平成24年度はアオリイカにおける他者認知の発達過程を主な課題として研究を進める。具体的には、他者認知の発達過程について、孵化後のアオリイカに自種を含む複数のイカ類の画像を提示し、これらへの接近、蝟集の有無に基づき同種を識別、認識する過程を明らかにする。また、これと平行し、同種のバイオロジカルモーションをアオリイカ若齢個体に提示し、提示刺激に対する反応から自種に関わる要素を視認し始める時期を特定する。さらに、他者認識に関わる視覚と脳の形成過程を調べるため、孵化後のアオリイカを定期的に採集して、眼および脳の組織標本を作成して観察する。これに基づき、他者認知に寄与する視覚と情報処理について明らかにする。平成25年度の研究費は、実験個体の飼育、行動観察、眼と脳の組織学的観察などに要する物品費、学会参加に伴う旅費、実験補助に要する謝金などに、当初の予定通り配分して使用する。平成24年度の研究費は、実験個体の飼育、行動観察、眼と脳の組織学的観察などに要する物品費、学会参加に伴う旅費、実験補助に要する謝金などに、当初の予定通り配分して使用する。
KAKENHI-PROJECT-23580260
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23580260
ラット尿細管基底膜側細胞膜(BLM)を用いたエンドセリンのNa・水利尿作用の検討
エンドセリン(ET)の水・Na利尿作用に関して、Oishiらは、AVPにより刺激された水透過性亢進がETにて阻害されるが、ET自体の水透過性に対する作用を否定した。Nadlerらは、ETによるAVPの作用の阻害はPre cAMP siteでPKCとGi蛋白を介して働くと考えた。我々は、Scaleraらの変法を用いて単離したラット腎尿細管基底膜側細胞膜(BLM)を用い、アデニレートシクラーゼ(AC)系に対するETの作用をみた。方法・結果)BLM,Assay Mixture,AVP10^<-8>molにて、十分刺激されたAC系に対し、ETを10^<-5>10^<-12>molの濃度で加え、産生されたcAMPの測定をおこなった。なお反応は37°C、10分間、反応停止は3分間の煮沸にて行い、上清を用いヤマサの測定キットによりcAMPを測定した。ET-1、ET-3の上記濃度内では、ET無添加のものとのcAMP産生量に有意な差はなく、AVPにて刺激されたAC系に対しての抑制作用は認められなかった(下表)。次に同様の方法でETのAC系への直接作用をみたところ、ET-1にては、cAMP産生量に有意な差はみられなかった。考案)今回、AVP刺激下のAC系に対し、ETの作用はみられなかった。我々のBLMでは、PKCが含まれていない可能性が強いことより、この結果は、ETはPKCを介してAC系に作用するというNadlerらの意見を間接的に示唆していると考えられる。また、ETのAC系への直接作用についても、否定的であった。エンドセリン(ET)の水・Na利尿作用に関して、Oishiらは、AVPにより刺激された水透過性亢進がETにて阻害されるが、ET自体の水透過性に対する作用を否定した。Nadlerらは、ETによるAVPの作用の阻害はPre cAMP siteでPKCとGi蛋白を介して働くと考えた。我々は、Scaleraらの変法を用いて単離したラット腎尿細管基底膜側細胞膜(BLM)を用い、アデニレートシクラーゼ(AC)系に対するETの作用をみた。方法・結果)BLM,Assay Mixture,AVP10^<-8>molにて、十分刺激されたAC系に対し、ETを10^<-5>10^<-12>molの濃度で加え、産生されたcAMPの測定をおこなった。なお反応は37°C、10分間、反応停止は3分間の煮沸にて行い、上清を用いヤマサの測定キットによりcAMPを測定した。ET-1、ET-3の上記濃度内では、ET無添加のものとのcAMP産生量に有意な差はなく、AVPにて刺激されたAC系に対しての抑制作用は認められなかった(下表)。次に同様の方法でETのAC系への直接作用をみたところ、ET-1にては、cAMP産生量に有意な差はみられなかった。考案)今回、AVP刺激下のAC系に対し、ETの作用はみられなかった。我々のBLMでは、PKCが含まれていない可能性が強いことより、この結果は、ETはPKCを介してAC系に作用するというNadlerらの意見を間接的に示唆していると考えられる。また、ETのAC系への直接作用についても、否定的であった。
KAKENHI-PROJECT-05670437
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05670437
葉緑体のレドックス代謝を駆動する蛋白質群の弱い分子間相互作用の包括的解析
光合成電子伝達鎖の末端に位置するフェレドキシン(Fd)は、葉緑体の還元同化反応を司る多様な酵素群への電子供与体として働いている。電子授受のパートナーとなる酵素蛋白質群と過渡的な複合体を形成し、分子間電子伝達の速度や収量が優れた生体反応のプロセスに寄与している。この作動原理を理解するために、Fd側と酵素側にどのようなレドックス特性と蛋白質ー蛋白質間相互作用の機能構造要因が備わっているのかを、植物生理学、生化学、構造生物学、生物物理学の観点から明らかにした。得られた知見は、Fdが葉緑体内で多機能の電子伝達蛋白質として生理機能を営むための包括的な理解を与えるものであった。本研究課題で策定した研究を行うための陣容が整い、初年度研究が順調にスタートした。現時点での研究状況を以下にまとめる。1)グルタミン酸合成酵素(GOGAT)とFdの電子伝達複合体の構造解析はほぼ完了した。GOGATの相互作用領域の改変体群を作製してFdとの相互作用力の変化を系統的に調べることにより、この複合体構造の評価を生化学的に進行中である。2)亜硝酸還元酵素(NiR)とFdの電子伝達複合体構造解析はまだ共結晶が得られていないので、条件設定等をさらに精査し、構造解析に結び付ける。大腸菌発現系で生じるFdtono相互作用力が異なるNiRの2成分は、シロヘムへの配位構造の違いによるものであることを示唆する結果が得られている。配位構造の差異がFdとの相互作用力の強弱をもたらす可能性は新しい着想であり、今後この点の検討を深める。3)SiRとFdの電子伝達複合体の構造解析は終了した。SiRの変異体を活用した結晶構造の妥当性を生化学的、生物物理学的に検証している。この一つとしてITCによる分子間相互作用の熱力学解析に着手した。4)Fdからの電子を受容する機能が著しく低下したSiR変異体が数種類得られ、Fdとの溶液状態での相互作用研究をNMR測定で詳細な解析を開始した。5)新奇Fdの立体構造解析に着手した。アポ蛋白質として大腸菌内で大量に蓄積する発現系が完成したので、鉄硫黄クラスターを化学的に再構成する試みを今後行う。6)Fdアフィニティクロマトグラフィーを適用して、Fd:NADPH酸化還元酵素がNADP+の存在により親和性が減少することを見出した。この相互作用低下を引き起こすNADP+の濃度は、葉緑体ストロマの濃度と同レベルのものであり、生理的に重要な現象である可能性が高い。葉緑体のストロマ画分の生理的条件を念頭に入れた解析系統的に行う。本研究課題で策定した2年目の研究状況と実績を以下にまとめる。1)フェレドキシン(Fd)と亜硝酸還元酵素(NiR)との静電的および非静電的相互作用力を変化させたとき、亜硝酸とNH2OHを基質としたときのNiRの酵素反応特性が異なることを見出した。種々の解析を進めて、FdとNiR分子間相互作用は分子間電子伝達反応の効率だけではなく、NiR基質認識の特性を決める要因の一つにもなり、特に酸化還元中心近傍の非静電的相互作用部位の寄与が主要なものであるとの仮説を提案した。2)Fdと亜硫酸還元酵素(SiR)の電子伝達複合体の構造や物性を生化学的、生物物理学的な研究を進めた。ITCによる分子間相互作用の熱力学解析により、エンタルピーとエントロピー変化の両方が寄与していることが明らかになった。また、この相互作用は溶液中の塩濃度で大きな影響を受けることが判明した。この現象を、NMRによるFdのHSQCスペクトル解析によりアミノ酸残基レベルでの検証を進めている。Fdからの電子を受容する機能が低下したSiR変異体においては、この相互作用力が著しく減少していることが確認された。3)高等植物に存在する新奇Fdの構造や機能の研究を進めるため、大腸菌発現系を構築したが、アポ蛋白質として調製された。これに、鉄硫黄クラスターを化学的に再構成する試みを種々の条件で行ったが、まだ良好な結果は得られていない。このFdのホモログは好熱性ラン藻類にも存在するので、その安定性の高い分子種を代替えする準備を進めている。4)Fd:NADPH酸化還元酵素(FNR)とFdとの親和性が、NADP(H)の存在により数十分の一に減少する。この現象をNMR測定により解析し、FdとFNRの接触面を中心とした相互作用の変化があることを突き止めた。ピリジンヌクレオチドによりFNRの接触面の構造変化が起こると推定している。(1)フェレドキシン(Fd)と亜硫酸還元酵素(SiR)の分子間相互作用には、これまで明らかにしてきた静電力によるものに加えて、非電荷アミノ酸残基が関与する部分も相当あることが分かった。特に、SiR側のFdとの相互作用領域に存在する疎水性アミノ酸の置換体の解析からFdとの相互作用力は維持しつつ、酵素反応特性が変化する場合があることが実験的に示された。Fdからの電子の授受が何らかの形で酵素反応における基質認識に関与する可能性が考えられた。(2)FdとFd:NADPH酸化還元酵素との分子間相互作用にも、Fd側の非荷電性のアミノ酸領域が重要な役割を果たしていることを、Fdの系統的変異体を用いて示した。
KAKENHI-PROJECT-24370021
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24370021
葉緑体のレドックス代謝を駆動する蛋白質群の弱い分子間相互作用の包括的解析
特に、熱測定やNMR解析によい、非静電的相互作用の熱力学的理解が進んだ。この成果は論文投稿中である。(3)FNRの基質であるFdとNADP(H)は、互いに負の協働性を有しており、一方の濃度が高まりFNRと強く結合すると、他方とFNRの結合力は弱まる関係にある。この負の協働性を詳しく解析し、その現象が生じるFdとFNRの濃度は生理的な濃度域にあり、葉緑体内でのこの現象が起こる可能性を示した。FNRの各種の部位特異的変異体を用いて、NADP(H)の2'5'ADPのリン酸が結合する部位のFNR変異体が負の協働性を大きく損なわれることを見出した。これはNADP(H)の2'5'ADPのリン酸がFNRに結合すると、そこから遠く離れたFdとの相互作用部位に何らかの構造変化を誘起するアロステリック効果のような現象が起こるのではないかと想定される。(4)Fdファミリーに属するFdC2分子の緑葉内での発現や分布を詳しく解析し、この分子は葉緑体の分化・発達が盛んな部位で多く蓄積することを見出した。この結果は、FdC2ha光合成の電子伝達に直接かかわるよりは、葉緑体の生合成に関与する可能性を示唆するものである。フェレドキシン(Fd)は、[2Fe-2S]クラスターをもつ電子キャリアータンパク質であり、葉緑体の還元同化反応を司る多様な酵素群への電子供与体として働いている。Fdとこれらの酵素群との間では効率的な電子の授受が行なわれており、これは両者が電子伝達複合体を形成して分子間の電子移動に適した分子環境を作り出しているためである。これまでFd:NADPH酸化還元酵素(FNR)及び亜硫酸還元酵素(SiR)とFdとの2種の電子伝達複合体の立体構造を決定したので、最終年度は酵素活性や複合体形成の物理化学的特性を包括的な理解に注力した。結果を以下に記す。1)複合体中ではFdの[2Fe-2S]クラスターは、FNRのフラビンおよびSiRの[4Fe-4S]クラスターとの距離が6から10オングストローム程度に近接しおり、電子移動の媒体になるような構造は認められないので、トンネル効果による電子移動が主要であると結論した。2)FdとFd-依存性酵素との分子間相互作用に着目して、部位特異的変異体の生化学的解析を行った。Fd側の酸性残基群と酵素側の塩基性残基群の網羅的改変により静電力の寄与の重要性を確認し、特に酵素側の改変が電子授受の大きな低下を引き起こすことが判明した。3)Fdと酵素の接触部位に存在する非荷電性残基や疎水性残基の改変では、一律的な酵素反応の変化や複合体の親和力の低下は認められず、非静電的な相互作用力は複合体の最適構造の形成に寄与する微調整の役割を果たしていることが示唆された。4)等温滴定熱測定法で複合体形成の熱力学的パラメーターを求めたところ、Fd/FNRとFd/SiRいずれの場合も自由エネルギーが減少するが、前者は吸熱反応後者は発熱反応であり、複合体形成の熱力学特性に違いがあることが判明した。複合体形成時にFNRの場合は構造変化が誘起され、一方SiRの場合は大きな変化はないことが、この観察と関連するものと現時点では推察できる。光合成電子伝達鎖の末端に位置するフェレドキシン(Fd)は、葉緑体の還元同化反応を司る多様な酵素群への電子供与体として働いている。電子授受のパートナーとなる酵素蛋白質群と過渡的な複合体を形成し、分子間電子伝達の速度や収量が優れた生体反応のプロセスに寄与している。
KAKENHI-PROJECT-24370021
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24370021
正則ヒルベルト空間の巡回ベクトルの研究
本研究課題では、解析関数空間の巡回ベクトルの性質について研究を行い、評価のしやすい条件下での特徴付けを行うことを目的としている。(1)多変数フォック型空間の巡回ベクトルについて研究した。フォック型空間は整関数からなるバナッハ空間で、ベルグマン空間と同様に、体積測度を用いたノルムで定義された空間である。その中で、比較的に緩く減少する関数を荷重に持つ測度で定義される多変数フォック型空間の巡回ベクトルを完全に特徴付けることが出来た。得られた結果は零集合を持たない関数の大部分が巡回ベクトルになるというものである。これらの性質はハーディ空間やベルグマン空間とは大きく異なる。しかし、この結果から、測度の荷重がより強く減少する関数であれば、ベルグマン空間と同じような性質が現れることが推測できる。このケースについては、これから研究を進めていく予定である。(2)多重単位円板上のハーディ空間の巡回ベクトルを考える上で、座標関数の掛け算作用素における不変部分空間の構造解明することは重要な手掛かりとなりうる。そのため、本研究課題を進めるためにも、不変部分空間の構造を解明することは重要である。その中で、Rudin型不変部分空間のランクについて研究を行い、ある条件下でフリンジ作用素におけるランクを決定した。フリンジ作用素におけるランクは不変部分空間のランクと関連しており、そのランクの決定に向けた大きな前進といえる。この結果について、アメリカ数学会で発表を行った。解析関数空間の巡回ベクトルの研究に加え、多変数Hardy空間の不変部分空間についての研究についても十分な結果が出ているため、着実に進展していると考える。今後は、より一般的なフォック型空間の巡回ベクトルの研究を行う。また2重単位開円板上のハーディ空間の不変部分空間、Rudin外部関数の性質について研究を進める。本研究課題では、解析関数空間の巡回ベクトルの性質について研究を行い、評価のしやすい条件下での特徴付けを行うことを目的としている。(1)多変数フォック型空間の巡回ベクトルについて研究した。フォック型空間は整関数からなるバナッハ空間で、ベルグマン空間と同様に、体積測度を用いたノルムで定義された空間である。その中で、比較的に緩く減少する関数を荷重に持つ測度で定義される多変数フォック型空間の巡回ベクトルを完全に特徴付けることが出来た。得られた結果は零集合を持たない関数の大部分が巡回ベクトルになるというものである。これらの性質はハーディ空間やベルグマン空間とは大きく異なる。しかし、この結果から、測度の荷重がより強く減少する関数であれば、ベルグマン空間と同じような性質が現れることが推測できる。このケースについては、これから研究を進めていく予定である。(2)多重単位円板上のハーディ空間の巡回ベクトルを考える上で、座標関数の掛け算作用素における不変部分空間の構造解明することは重要な手掛かりとなりうる。そのため、本研究課題を進めるためにも、不変部分空間の構造を解明することは重要である。その中で、Rudin型不変部分空間のランクについて研究を行い、ある条件下でフリンジ作用素におけるランクを決定した。フリンジ作用素におけるランクは不変部分空間のランクと関連しており、そのランクの決定に向けた大きな前進といえる。この結果について、アメリカ数学会で発表を行った。解析関数空間の巡回ベクトルの研究に加え、多変数Hardy空間の不変部分空間についての研究についても十分な結果が出ているため、着実に進展していると考える。今後は、より一般的なフォック型空間の巡回ベクトルの研究を行う。また2重単位開円板上のハーディ空間の不変部分空間、Rudin外部関数の性質について研究を進める。予定していた出張が都合により延期されたこと、および一部物品の購入を2019年度に延期したために繰り越しが生じた。2019年度支払い請求した分と合わせ、当初の予定通りに使用する。
KAKENHI-PROJECT-18K03335
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K03335
上皮増殖因子レセプタ-の産生制御に関与する細胞内情報伝達機構
1.レセプタ-の産生変異株を用いた解析EGFレセプタ-の発現制御は発現のONーOFFを決定する制御と、EGFや発癌プロモ-タ-TPAなどにより促進される“誘導的"制御機構がある。我々はEGFR遺伝子の発現が見られない肺小細胞癌(SCLC)の細胞株(Lu134)とそれから分離したレセプタ-産生変異株(AD320)を用いてEGFR遺伝子の発現制御の機構を解析した。Lu134をTPA処理するとcーfos、cーjun mRNAの増加が見られたがEGFR mRNA、cーmyc mRNAは検出されなかった。AD320ではEGFR mRNA、cーmyc mRNAともに他のレセプタ-産生細胞と同程度に検出され、EGFやTPAで処理するとEGFR mRNAは約2倍に、またcーjun、cーfos、cーmyc mRNAは数倍以上に増加した。従って、SCLC変異株ではEGFR遺伝子の発現に伴いEGFやTPAによる“誘導的"発現制御系が活性化された。2.PKC阻害剤を用いた解析EGFレセプタ-の産生を制御する情報伝達系へのPKCの関与を検討するために、PKCの調節ドメインに結合しPKC活性を光依存的に阻害するCalphostinーcを用いてEGFレセプタ-リン酸化やEGFが誘導する遺伝子発現への影響を調べた。細胞をCalーc処理すると光依存的にEGFレセプタ-のトレオニン・セリンリン酸化が促進された。特にセリン残基のリン酸化が特徴的に促進された。従って、Calーcはセリンキナ-ゼを活性化し、EGFやTPA処理と異なる作用機作でレセプタ-リン酸化を促進する可能性が示唆された。また、Calーcはレセプタ-のEGF親和性に変化を与えないが、レセプタ-の細胞内取り込みを促進した。Calーcはcーfosやcーjun等の増殖初期応答遺伝子mRNAの顕著な蓄積を誘導した。さらに、核ラン・オン分析により、Calーcは初期応答遺伝子の転写を促進することが示された。Calーcの誘導するリン酸化は、EGFやTPAの誘導するレセプタ-リン酸化とは異なる機作によると考えられるが、どのようなキナ-ゼによるのか、EGFレセプタ-特異的か、PKCが関与するかは明らかではない。このリン酸化促進に伴うcーfosなどの初期遺伝子の発現誘導の機構も明らかでないが従来知られていた情報伝達系とは異なる可能性がある。1.レセプタ-の産生変異株を用いた解析EGFレセプタ-の発現制御は発現のONーOFFを決定する制御と、EGFや発癌プロモ-タ-TPAなどにより促進される“誘導的"制御機構がある。我々はEGFR遺伝子の発現が見られない肺小細胞癌(SCLC)の細胞株(Lu134)とそれから分離したレセプタ-産生変異株(AD320)を用いてEGFR遺伝子の発現制御の機構を解析した。Lu134をTPA処理するとcーfos、cーjun mRNAの増加が見られたがEGFR mRNA、cーmyc mRNAは検出されなかった。AD320ではEGFR mRNA、cーmyc mRNAともに他のレセプタ-産生細胞と同程度に検出され、EGFやTPAで処理するとEGFR mRNAは約2倍に、またcーjun、cーfos、cーmyc mRNAは数倍以上に増加した。従って、SCLC変異株ではEGFR遺伝子の発現に伴いEGFやTPAによる“誘導的"発現制御系が活性化された。2.PKC阻害剤を用いた解析EGFレセプタ-の産生を制御する情報伝達系へのPKCの関与を検討するために、PKCの調節ドメインに結合しPKC活性を光依存的に阻害するCalphostinーcを用いてEGFレセプタ-リン酸化やEGFが誘導する遺伝子発現への影響を調べた。細胞をCalーc処理すると光依存的にEGFレセプタ-のトレオニン・セリンリン酸化が促進された。特にセリン残基のリン酸化が特徴的に促進された。従って、Calーcはセリンキナ-ゼを活性化し、EGFやTPA処理と異なる作用機作でレセプタ-リン酸化を促進する可能性が示唆された。また、Calーcはレセプタ-のEGF親和性に変化を与えないが、レセプタ-の細胞内取り込みを促進した。Calーcはcーfosやcーjun等の増殖初期応答遺伝子mRNAの顕著な蓄積を誘導した。さらに、核ラン・オン分析により、Calーcは初期応答遺伝子の転写を促進することが示された。Calーcの誘導するリン酸化は、EGFやTPAの誘導するレセプタ-リン酸化とは異なる機作によると考えられるが、どのようなキナ-ゼによるのか、EGFレセプタ-特異的か、PKCが関与するかは明らかではない。このリン酸化促進に伴うcーfosなどの初期遺伝子の発現誘導の機構も明らかでないが従来知られていた情報伝達系とは異なる可能性がある。EGFレセプタ-(EGFR)の発現制御は発現のONーOFFを决定する制御と、EGFや発癌プロモ-タ-TPAなどにより促進される“誘導的"制御がある。EGFRを細胞当り1x10^5個持つヒト肺腺癌細胞株A549を用いてEGFやTGFβTPAが誘導するEGFR遺伝子の発現促進の機構をノ-ザンブロット法により解析した。
KAKENHI-PROJECT-02670115
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上皮増殖因子レセプタ-の産生制御に関与する細胞内情報伝達機構
A549細胞を30分間TPA(20ng/ml)で処理するとその後3ー5後間でEGFR mRNAは対照の数倍に増加し、24ー48時間後に対照レベルに復帰した。また、EGF(50ng/ml)で30分間処理するとその後約3ー4時間でEGFR mRNAは約2倍に増加し、8時間後には対照レベルに復帰した。一方、TGFーβ(1ng/ml)は4時間の処理でEGFR mRNAを約1.5倍に増加させた。TGFーβはEGFと共存すると相剰的にEGFR mRNAを増加させた。TPAとEGFの添加後30分にはcーfosとcーjun mRNAの顕著な増加が検出されたが、TGFーβはcーjun mRNAのみを増加させた。従って、TGFーβはEGFやTPAとは異なるシグナル伝達経路を介してEGFR遺伝子の転写を抑制する可能性が示唆された。また、我々はEGFR遺伝子の発現が見られない肺小細胞癌(SCLC)の細胞株(Lu134)からレセプタ-を産生する変異株(AD320)を分離した。この変異株を用いてEGFR遺伝子の発現やcーfos、cーjun、cーmyc遺伝子の発現について検討した。Lu134ではEGF処理によるcーfos、cーjun mRNAの変化は見られなかったが、TPA処理ではcーfos、cーjun mRNAの増加が見られた。EGFRmRNA、cーmyc mRNAはTPA、EGF処理後も検出されなかった。AD320ではEGFR mRNAは他のレセプタ-産生細胞と同程度に検出され、cーmyc mRNAも検出された。AD320ではEGFR mRNAはEGFやTPAで処理すると約2倍に、またcーjun、cーfos、cーmyc mRNAは数倍以上に増加した。従って、SCLC方異系が活性化されることが明らかになった。カルホスチンC(Calーc)は藻類Cladosporiumcladosporioides由来のペリレンキノリン環をもつ物質で、蛋白キナ-ゼC(PKC)の調節ドメインに結合し、in vitroでその活性を光依存的に阻害することが知られている、我々は、上皮増殖因子(EGF)レセプタ-の産生を制御する情報伝達系へのPKCの関与を検討するためにCalーcのEGFレセプタ-リン酸化やEGFが誘導する遺伝子発現への影響を調べ、Calーcが一連のユニ-クな細胞応答を誘導することを見出した。ヒト腺癌細胞はA549及びEGFレセプタ-を重剰産生するヒト扁平上皮癌細胞NAをCalーcで処理すると添加30分後をピ-クに光依存的にEGFレセプタ-のリン酸化が促進された。遮光条件下ではEGFレセプタ-リン酸化は観察されなかった。リン酸化レセプタ-を酸分解しホスフォアミノ酸分析を行なったところEGF処理ではホスホチロシンが検出された。PKCの調節ドメインに結合しPKCを活性化する発癌プロモ-タ-TPA処理ではホスホセリンとホスホトレオニンが検出された。Calーc処理でもホスホセリン/ホスホトレオニンが検出された。またリン酸化レセプタ-をトリプシン分解しHPLCによるホスホペプチド分析を行なった。EGF処理ではトレオニン669とセリン1046/1047のリン酸化、またTPA処理ではトレオニン654とトレオニン669のリン酸化が顕著に促進された。Calーc処理ではトレオニン669とセリン1046/1047、及びトレオニン669ペプチドを含む分画でのセリン残基のリン酸化が顕著に促進された。従って、Calーcはセリンキナ-ゼを活性化し、EGFやTPAとは異なる部位もリン酸化する可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-02670115
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神経系の発生分化に関係する新しい核蛋白質のクローニング
Necdinはニューロン特異的に発現している約45kDaの核蛋白質である。そのcDNAクローンはニューロンへの分化誘導を行ったP19細胞のcDNAライブラリーから得られた。Necdin cDNAをNIH3T3細胞に導入して強制発現させると、細胞増殖が強く抑制される。一方、細胞増殖抑制作用を持つ癌抑制遺伝子産物Retinoblastoma gene product(pRb)やp53は共にDNAウィルス由来のoncoproteinであるSV40 largeT抗原と結合することが知られている。本研究では、まずnecdinの細胞増殖抑制機構をSV40 largeT抗原との結合能を指標にして解析した。COS-1細胞はSV40でtransformされた細胞でlargeT抗原を恒常的に発現している。そこでCOS-1細胞にnecdin cDNAを導入して発現させ抗necdin抗体で免疫沈降を行ったところ、largeT抗原が共沈された。さらに、Two-Hybrid法およびin vitro bindingで両者の結合を確かめてみた。その結果、necdinはlargeT抗原のtransform活性ドメイン依存的に結合することが明らかになった。またTwo-Hybrid法を用いたnecdinのdeletion analysisから、necdinの塩基性アミノ酸領域とそれに続くhydrophobic heptadrepeatを含む領域がlargeT抗原との結合に必要であることも明らかになった。次に、生理的なnecdin結合蛋白質がニューロンあるいはその発生過程で発現しているかをTwo-Hybrid法を用いたスクリーニングで検討した。得られた2種のクローンの一次構造を決定したところ、既に報告されているNEFA及びnucleobindinであることが判明した。これらの蛋白質はHelix-Loop-HelixとLeucine-zipperを含むDNA結合蛋白質であり、これらの蛋白質とnecdinの複合体が生理的なニューロン分化時における細胞周期に関連した遺伝子転写の制御機構に関与している可能性がある。Necdinはニューロン特異的に発現している約45kDaの核蛋白質である。そのcDNAクローンはニューロンへの分化誘導を行ったP19細胞のcDNAライブラリーから得られた。Necdin cDNAをNIH3T3細胞に導入して強制発現させると、細胞増殖が強く抑制される。一方、細胞増殖抑制作用を持つ癌抑制遺伝子産物Retinoblastoma gene product(pRb)やp53は共にDNAウィルス由来のoncoproteinであるSV40 largeT抗原と結合することが知られている。本研究では、まずnecdinの細胞増殖抑制機構をSV40 largeT抗原との結合能を指標にして解析した。COS-1細胞はSV40でtransformされた細胞でlargeT抗原を恒常的に発現している。そこでCOS-1細胞にnecdin cDNAを導入して発現させ抗necdin抗体で免疫沈降を行ったところ、largeT抗原が共沈された。さらに、Two-Hybrid法およびin vitro bindingで両者の結合を確かめてみた。その結果、necdinはlargeT抗原のtransform活性ドメイン依存的に結合することが明らかになった。またTwo-Hybrid法を用いたnecdinのdeletion analysisから、necdinの塩基性アミノ酸領域とそれに続くhydrophobic heptadrepeatを含む領域がlargeT抗原との結合に必要であることも明らかになった。次に、生理的なnecdin結合蛋白質がニューロンあるいはその発生過程で発現しているかをTwo-Hybrid法を用いたスクリーニングで検討した。得られた2種のクローンの一次構造を決定したところ、既に報告されているNEFA及びnucleobindinであることが判明した。これらの蛋白質はHelix-Loop-HelixとLeucine-zipperを含むDNA結合蛋白質であり、これらの蛋白質とnecdinの複合体が生理的なニューロン分化時における細胞周期に関連した遺伝子転写の制御機構に関与している可能性がある。
KAKENHI-PROJECT-07780677
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脳内環境:恒常性維持機構とその破綻
年2回の総括班会議を開催し、領域研究の方向付けの確認、研究者間の情報交換、リソースの共有、共同研究の推進を行った。領域ホームページの開設、ニュースレターを発行して、領域の研究成果の発信につとめた。また、領域研究の取り組み、成果を「脳内環境マップ」を作成した。さらに研究成果について意見交換する場として「脳内環境フォーラム」を開設した。ワークショップ(4回)、国際シンポジウム(4回)を開催し、若手研究者の渡航支援、さらに一般、学生に様々なアウトリーチ活動を推進した。総括班の審査により選定された公募班員4名からの研究提案に対して遺伝子改変マウス作製、抗体作製への支援を行った。平成23年度には、まず8月に領域のホームページを立ち上げ、公開した。また総括班の事務を行うスタッフ1名を雇用した。平成23年10月にキックオフシンポジウムおよび公募説明会を京都で開催した。さらに、平成24年1月には第一回の領域班会議を、一泊二日で熱海で開催した。この班会議には計画班員とその研究室構成員が参加し、すべての計画班員が口頭発表を行った。さらに国際領域アドバイザー2名、学術担当官1名をお迎えし、領域運営と今後の領域推進の方向性について貴重なアドバイスを頂戴した。それに基づき、計画班員全員が総括班の活動に参加することを決定し、役割分担を決め、領域の組織体制を確立した。以下、平成24年度に繰り越した400万円の使途について記載する。当初平成23年度に予定していた国際シンポジウムを、平成22年度採択の領域「シナプス病態」、平成23年度採択の領域「思春期の人間形成支援学」との3領域合同の国際シンポジウム開催(平成24年7月仙台で開催、外国人講演者は同時に開催した夏の班会議でも講演)、第35回日本神経科学大会での共催国際シンポジウム(平成24年9月名古屋で開催)、若手中心の国際シンポジウム(平成24年11月京都で開催)に延期、さらに拡大して実施した。また平成23年度は東日本大震災後の電力使用制限等により、計画班がリソース作製支援に対応できなかったため、実施を平成24年度に延期し、4名の公募班員の研究を支援することになった。班会議・シンポジウム関係では平成25年度夏の班会議を領域アドバイザー、学術調査官、計画班員、新公募班員参加のもとに平成25年8月29日30日、京都市の京都大学芝蘭会館(稲盛ホール・山内ホール)で開催した。一日目は総括班会議、全体会議、公募班員のうち田中、大倉、檜山、富永、富田の5名の研究代表によるワークショップと、特別講演1が行われ、2日目は公募班より柿澤、林、米田、岡村、野中の5名の研究代表、計画班より樋口、内山、高橋の3名の研究代表によるワークショップと特別講演2が行われた。特別講演1は大阪大学山下俊英教授より、特別講演2は東京大学水島昇教授の2名の招聘研究者により行われ、専門領域における最先端の知見をご紹介いただき、闊達なディスカッションが行われた。領域内研究者の今後の活動に大いに動機づけを与えて頂き、大変有意義なワークショップとなった。平成25年度冬の班会議は、平成26年1月8日9日の二日間にわたって、東京都文京区東京ガーデンパレスで開催された。一日目に総括班会議、全体班会議を行い、2日間で57名の班員が口頭発表を行った。アウトリーチ活動として、学会やシンポジウム活動として第35回日本神経科学会大会(2012年9月20日、高橋、木山)、第86回日本薬理学会(2013年3月2123日、山田、中川)、Neuro2013企画シンポジウム(2013年6月20日、山中、樋口)での発表やオーガナイズ、一般向け活動として、高校生の研究室訪問と講義(服部)、中学生への出張講義(服部、木山)、高校生向け講義(高橋、山中)を行った。研究リソースの支援を受けた4名の公募班員について、進捗を評価し適切に領域活動に生かされていることを確認した。ホームページでは11件のプレリリースされた研究成果を掲載し、班員同士の議論の場である脳内環境フォーラムには35件の投稿があった。班会議・シンポジウム関係では平成26年度夏の班会議を領域アドバイザー、学術調査官、計画班員、新公募班員参加のもとに平成26年7月24日25日、名古屋市のウインクアイチで開催した。一日目は総括班会議、全体会議、公募班員によるワークショップ、自然科学研究機構・生理学研究所池中一裕教授による特別講演が行われた。二日目は公募班員及び東京医科歯科大学・難治疾患研究所清水重臣教授の特別講演を行った。12月11日には包括脳ワークショップとして、精神神経疾患の関連する岡澤、門松、喜田、高橋、池中班の5領域で「精神神経疾患に対するアプローチ:各領域の取り組み」と題した合同シンポジウムが開催され、当領域は「脳内環境の解明と神経疾患克服への道」と題した発表を高橋、樋口、山中より行った。平成26年度冬の班会議は、平成27年1月8日9日の二日間にわたって、広島大学応仁会館で開催した。一日目に総括班会議に続き、第2回若手シンポジウムを開催、公募半に属する4名の若手研究者による研究発表が行われた。引き続き全体班会議を行い、2日間で30名の班員が口頭発表を行った。
KAKENHI-ORGANIZER-23111001
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脳内環境:恒常性維持機構とその破綻
また若手研究者の国際学会への参加を助成するTravel Awardに金沢大学医学系大学院生干場義生氏(河崎洋志研究代表)が選出され、北米神経科学学会で発表した。研究リソースについては計画班と公募班で新たに、情報を提供しデータベースを作成した。ホームページでは10件のプレリリースされた研究成果を掲載し、班員同士の議論の場である脳内環境フォーラムには27件の投稿があった。班会議・シンポジウム関係では平成27年度夏のワークショップを領域アドバイザー、学術調査官、計画班員、公募班員参加のもとに平成27年9月24日25日、軽井沢プリンスウェストで開催した。一日目は総括班会議、全体会議、公募班員による研究成果の発表に加え、京都大学大学院理学研究科森和俊教授による特別講演を開催した。二日目は、公募班員の発表、東京大学大学院医学系研究科岡部繁男教授に特別講演をいただいた。二日にわたり、全班員によるポスター発表も行った。平成27年度冬の班会議は、平成28年1月7日8日の二日間にわたって、京都大学医学部芝蘭会館で開催した。一日目は、総括班会議に続き、第3回若手国際シンポジウムを公募班に属する4名の若手研究者の研究発表により行い、加えて外部アドバイザーであるカナダ・ラバル大学Jean-Pierre Julien教授による基調講演会を開催した。二日目は一日目に引き続き班会議を行い、2日間で33名の班員が口頭発表を行った。班会議の閉会に際して、Julien教授による研究発表の総評と、脳内環境領域に対する高い評価を頂いた。年2回の総括班会議を開催し、領域研究の方向付けの確認、研究者間の情報交換、リソースの共有、共同研究の推進を行った。領域ホームページの開設、ニュースレターを発行して、領域の研究成果の発信につとめた。また、領域研究の取り組み、成果を「脳内環境マップ」を作成した。さらに研究成果について意見交換する場として「脳内環境フォーラム」を開設した。ワークショップ(4回)、国際シンポジウム(4回)を開催し、若手研究者の渡航支援、さらに一般、学生に様々なアウトリーチ活動を推進した。総括班の審査により選定された公募班員4名からの研究提案に対して遺伝子改変マウス作製、抗体作製への支援を行った。班会議・シンポジウム関係では平成24年度夏の班会議を、領域アドバイザー、学術調査官、計画班員、新公募班員参加のもとに平成24年7月23日24日、仙台市のTKPガーデンシティ仙台で開催した。一日目は総括班会議、全体会議、公募班員によるワークショップが行われた。二日目は公募班員及びスタンフォード大学のTony Wyss-Coray教授の特別講演を行った。7月25日には包括脳ワークショップとして、「脳内環境」「シナプス病態」「自己制御精神」による脳疾患関連3領域合同国際シンポジウムが開催された。9月20日には第35回日本神経科学大会において共催シンポジウムとして「脳内環境警戒管制システムを担うミクログリア-その破綻による精神・神経疾患-」を海外領域アドバイザーのロンドン大学Gennadij Raivich教授を招聘して開催した。平成24年度冬の班会議は、平成25年1月16日17日の2日間にわたって、京都大学医学部芝蘭会館で開催した。一日目に総括班会議、全体会議を行い、2日間で58名の班員が口頭発表を行った。若手育成プログラムとして、平成24年11月17日に京都平安ホテルにおいて、「脳内環境」の第1回若手国際シンポジウムを開催した。
KAKENHI-ORGANIZER-23111001
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里親不調により里子との離別を体験した里親のメンタルヘルスとそのケアに関する研究
里子との離別という喪失を体験した5名の里親の「負担感」を質的に分析した結果、里親は【児童養護のシステムに対する失望】に下支えされた【里子との離別による激しい情動体験】【痛みを伴う自己洞察による喪失体験の継続的な問い直し】【痛みを伴う自己洞察による喪失体験の受けとめ】【生きる力の再生のための人との繋がりの希求】という一連の「悲嘆のプロセス」を体験しており、「機能不全を起こすリスクの高い小さな共同体としての里親家庭」、「機能不全を起こしている児童養護のシステム」および、「里親をマイノリティとして扱う文化的・社会的力学」の三重構造の中に「マイノリティーである生活者」として置かれていることが示された。里親不調による里子との離別を余儀なくされた5名の里親を対象としたインタビュー内容が質的記述的に分析され、里親の体験の構造を踏まえた「負担感」の支援の要点が以下のごとく明らかとなった。里親不調による里子との離別という大きな喪失体験を余儀なくされた里親の措置変更前後の「負担感」は【児童養護のシステムに対する失望】に下支えされる形での【里子との離別による激しい情動体験】【痛みを伴う自己洞察による喪失体験の継続的な問い直し】【痛みを伴う自己洞察による喪失体験の受けとめ】【生きる力の再生のための人との繋がりの希求】という一連の「悲嘆のプロセス」によってある程度説明が可能であり、里親はそれらを通して傷つき翻弄されるに任せるだけではなく人間として成長し「生きる力の再生」を体験していることが明らかとなった。したがって里親が体験している「負担感」を支援するための要点は、里子との離別に伴う正常な「悲嘆のプロセス」が安全におこなえるような環境や人的資源が提供されることである。また、里親を取り巻く状況と不調による措置変更前後のプロセスを「平和学」で提唱される「直接的暴力」「構造的暴力」「文化的暴力」の概念によって検討した結果、里親の「負担感」を取り巻く構造には「機能不全を起こすリスクの高い小さな共同体としての里親家庭」「機能不全を起こしている児童養護のシステム」および「里親をマイノリティとして扱う文化的力学・社会的要因」の三重の構造があることが示唆された。里親不調による里子との離別という大きな喪失体験を余儀なくされた里親の「語り」を、「負担感」に焦点を当てながら質的記述的に分析し、その体験の構造を検討した。また、里親が社会の中でどのような構造の中に置かれているかを検討しながら、里親の「負担感」の支援に関する要点を整理した。1.里親不調により里子との離別を体験した里親の措置変更前後の「負担感」は「悲嘆のプロセス」によって説明が可能であった。したがって、「負担感」の支援の要点は、離別(喪失)に伴う正常な「悲嘆のプロセス」が安全に行なえるような環境や人的資源が提供されることである。2.里親を取り巻く構造を、「平和学」で提唱される「直接的暴力」「構造的暴力」「文化的暴力」の概念により検討した結果、「機能不全を起こすリスクの高い共同体としての里親家庭」「機能不全を起こしている児童養護のシステム」「里親をマイノリティとして扱う文化的力学・社会的要因」の三重構造があり、特に配慮を欠いた措置変更がおこなわれた場合、里親はそれを児童相談所からの可視的な「直接的暴力」として体験しやすい。そのような「直接的暴力」を下支えする不可視的な「構造的暴力」および「文化的暴力」の力学が、里親が子どもの養育に際して体験する日常の「負担感」に色濃く影響を及ぼし続けていた。3.里親不調により措置変更を経験している里親の「負担感」は、里親が我が国ではマイノリティな存在であるという「環境因子」によって被る「障害」により体験させられているという側面も併せ持っており、措置変更による里子との離別に至る経過の途中もしくは、そのプロセス全体にわたって侵害されているのは、里親の「生活者としての権利」と「生きる力」であった。この様な状況下において、まさに里親はマイノリティとして味わう普遍性のある苦しみを「負担感」として体験しているという認識が支援する側には不可欠である。里子との離別という喪失を体験した5名の里親の「負担感」を質的に分析した結果、里親は【児童養護のシステムに対する失望】に下支えされた【里子との離別による激しい情動体験】【痛みを伴う自己洞察による喪失体験の継続的な問い直し】【痛みを伴う自己洞察による喪失体験の受けとめ】【生きる力の再生のための人との繋がりの希求】という一連の「悲嘆のプロセス」を体験しており、「機能不全を起こすリスクの高い小さな共同体としての里親家庭」、「機能不全を起こしている児童養護のシステム」および、「里親をマイノリティとして扱う文化的・社会的力学」の三重構造の中に「マイノリティーである生活者」として置かれていることが示された。本研究の目的は、(1)里親不調により里子との離別を余儀なくされた「里親」の「語り」の分析をおこなうことにより、里親の負担感に関する体験の構造を明らかにし、(2)子どもにとっての安全な養育環境の大前提である里親のメンタルヘルスとそのケアに関する要点を検討することにある。H23年度は、以下3点について実施した。1.里親不調を体験した里親の手記および全国調査資料を対象としたテキストマイニングによる分析:当事者の主観的体験の構成概念を探索的に検討し、半構成的インタビューの際の妥当な質問項目の検討をおこなった。
KAKENHI-PROJECT-23593477
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23593477
里親不調により里子との離別を体験した里親のメンタルヘルスとそのケアに関する研究
2.研究対象者の選択:研究者が関与する当事者団体である里親会、全国ファミリーホーム連絡協議会の会員、児童養護関連学会の参加者である養育里親(専門里親含む)のうち、「里親不調による措置変更を体験していることを、全国大会(学会)や地方の当事者団体、児童養護、福祉関係の研究会、ワークショップ等で等で自ら公表している者」で、それら学会や研究会のセッション終了後の会場において本研究の趣旨および概略を直接口頭で説明し、研究協力を依頼した。その際、里親不調による措置変更を体験後3年以上経過し、措置解除・変更にいたるプロセスやその当時の思いをある程度冷静に言語化でき、家族や養育中の里子にも悪影響がないと本人が判断していることを確認後、「後日研究協力依頼書および同意書を郵送する旨」を伝え、名刺等の交換をおこない連絡先を把握し、最終的に里親4名よりインタビューの承諾を得た。3.実施した文献検討および里親、小規模居宅型児童養護施設運営者、児童擁護関係団体の役員および、研究者とのディスカッションによる課題の抽出と整理の結果を関連雑誌に投稿した(児童養護とファミリーホーム、vol.2, pp88-93,pp133-139)。里親不調に伴う措置変更を体験した里親へのインタビューに際して、被験者は里子との離別という大きな喪失体験を抱えている上に、マイノリティーとして心理社会的にも傷つき、社会や対人関係から退却的になっている事が当初から予想されていた。そのため、インタビュー自体が新たな外傷体験とならないように、インタビュー手順および倫理的配慮について慎重に検討し、以下の手順を踏んだ。1.一般の人が比較的容易に入手、アクセス可能な里親に関する図書、手記、里親および、ファミリーホーム開設者や行政機関が設置したHP、ブログなど電子媒体の内容を分析した。2.発達障害や知的障害児など、いわゆる育てにくい子どもの養育をおこなっている里親がどのような主観的体験とともに「負担感」を体験しているのかを知るために、日本グループホーム学会が実施し平成21年度独立行政法人福祉機構助成事業の報告書として出版した「障害児の里親促進のための基盤整備事業報告書」の中の養育里親の体験に関する自由記述データ(n=839;163034字)をテキストマイニングの手法により探索的に分析し、発達障害児と身体障害児と健常児では自由記述にどのような質的な違いがあるのかを明らかにした。テキストマイニングの結果を踏まえながら、調査対象とすべき被験者の範囲および、収集すべきデータの質について検討し、里親にとって非侵襲的なインタビューガイドを作成した。研究者が長い専門里親歴があったため、共感的なスタンスで被験者の語りを妨げることなく聴取することが可能であったこと、また里子との離別から時間が経過し、被験者が苦しい胸の内を具体的に語ることが可能な状態に至っていたこと、そして事前に考慮期間を設けていたことや、夫婦一緒の聴取をおこなった結果、リラックスした中でそれぞれの思いが語られたことなどが良質のデータを得ることに繋がった可能性がある。
KAKENHI-PROJECT-23593477
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23593477
医薬品の薬効・毒性標的としてのトランスポーター・アダプターネットワーク
トランスポーターは、薬物分子の生体膜透過に重要な役割を果たす膜タンパク質である。これまで、トランスポーターと薬効や副作用との関係を直接証明した例は乏しい。本研究は、研究代表者が明らかにしたアダプター分子とトランスポーターとの複合体形成に着日し、トランスポーターによる薬物動態、薬効、毒性に及ぼす役割の解明を日的とした。主な研究成果として、トランスポーターOCTNの小腸、肝臓、腎臓、心臓における役割、小腸トランスポーターの薬物吸収に及ぼす役割、アダプターPDZK1による3つの小腸取り込みトランスポーターの制御を解明した。トランスポーターは、薬物分子の生体膜透過に重要な役割を果たす膜タンパク質である。これまで、トランスポーターと薬効や副作用との関係を直接証明した例は乏しい。本研究は、研究代表者が明らかにしたアダプター分子とトランスポーターとの複合体形成に着日し、トランスポーターによる薬物動態、薬効、毒性に及ぼす役割の解明を日的とした。主な研究成果として、トランスポーターOCTNの小腸、肝臓、腎臓、心臓における役割、小腸トランスポーターの薬物吸収に及ぼす役割、アダプターPDZK1による3つの小腸取り込みトランスポーターの制御を解明した。(i)薬物の消化管吸収、(ii)薬物投与による腎毒性、および(iii)がんの治療・診断におけるトランスポーター・アダプターネットワークの役割を解析し、それぞれ以下に示す知見を得た。(i)βラクタム抗生物質cephalexinおよびcefiximeの消化管吸収におけるトランスポーター(oligopeptide transporter, PEPT1)とアダプター(PDZK1およびRab8)の役割を、それぞれpdzk1およびrab8遺伝子欠損マウスを用いin vivoで明らかとした。詳細な解析の結果、PDZK1はPEPT1とcarnitine/organic cation transporter, OCTN2の、Rab8はPEPT1とsodium/glucose cotransporter, SGLT1の制御因子であり、それぞれのトランスポーター基質の消化管吸収に影響することが示された。このうちOCTN2とPDZK1の複合体については、ポリロタキサンと有機カチオンの高分子複合体を用いることにより、PDZK1がOCTN2どうしの分子間距離を形成している可能性を示した。(ii)OCTN2の遺伝子変異マウスを用いることにより腎毒性を示すβラクタム抗生物質cephaloridineの腎分泌にOCTN2が主要な役割を果たすことを示し、liver-typefatty acid binding protein(L-FABP)遺伝子導入マウスが、その腎毒性を鋭敏に検知するツールとして有用であることを証明した。(iii)種々のがん細胞にPEPT1が高発現することを示し、その基質を利用することによりin vivoでがんの診断が可能であることを示した。トランスポーターは医薬品の吸収、分布、代謝、排泄に関わる膜タンパク質であり、近年の研究代表者らの研究から細胞内ではアダプター分子と結合しネットワークを形成することが分かってきた。本年度はそのようなトランスポーターアダプターネットワークに含まれることが明らかとなっているトランスポーターoligopeptide transporter PEPT1/SLC15A1、carnitine/organic cation transporter(OCTN1,OCTN2)の生体内での役割を解明することで同ネットワークの薬効・毒性標的部位としての重要性を以下の観点から明らかとした。(i)PEPT1がβラクタムD-cephalexinのみならずL-cephalexinも輸送し、腫瘍細胞においてはPEPT1阻害効果を持つペプチド化合物が腫瘍増殖抑制効果を示す。(ii)octn1遺伝子欠損マウスを用いたメタボローム解析によりOCTN1は生体内で抗酸化物質エルゴチオネインを輸送することが明らかとなり、OCTN1によるエルゴチオネイン輸送は消化管における酸化ストレスや炎症反応の防御に働く。(iii)OCTN2は心臓の心筋細胞に機能的に発現し、心臓に対してQT延長作用を示す有機カチオン性薬物の臓器内から血液側へのくみ出しに働いている可能性がある。以上の知見は本研究の目的と照らし合わせた時、それぞれ以下の観点から今後の発展が期待される。(i)腫瘍細胞の増殖を抑制する新たな分子標的薬(抗悪性腫瘍薬)の標的分子としてPEPT1ネットワークが重要である可能性を示した。(ii)炎症性腸疾患等の消化管疾患治療の標的としてOCTN1ネットワークを介するエルゴチオネイン輸送が重要である可能性を示した。(iii)不整脈誘発等の心臓に対する副作用を回避する手段の一つとしてOCTN2ネットワークを介する排出輸送が重要である可能性を示した。以上より、本年度はトランスポーターアダプターネットワークの薬効・毒性標的部位としての重要性の一部を解明することができた。消化管刷子縁膜には、薬物を体内に取り込むトランスポーターOATPが発現し機能することが示唆されているが、そのアダプタータンパク質は従来不明であった。本研究では、OATP1Aの典型的基質であるestrone sulfate(E3S)の消化管吸収がPDZアダプターPDZK1の遺伝子欠損マウス(PDZKIKO)で低下していたことをきっかけに解析を進め、PDZK1がOATPIAと直接結合し、その刷子縁膜での発現に必須であることを見いだした。E3Sを野生型とPDZKI KOに経口投与したところ血漿中濃度推移に両者で違いはなかった一方、門脈中E3S濃度はPDZKIKOの方が低かった。この理由として、PDZKIKOではE3Sの消化管吸収と肝臓への取り込みの両方が低下したため、循環血中濃度に両マウスで違いが見られなかったと考えられた。
KAKENHI-PROJECT-20390047
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医薬品の薬効・毒性標的としてのトランスポーター・アダプターネットワーク
そこで、小腸刷子縁膜でのOATPIAの発現を検討したところ、野生型で見られたOATPIAの刷子縁膜での局在がPDZKIKOでほぼ消失していることが免疫染色から確認された。さらに刷子縁膜小胞を用いたwestern blotからも、PDZKlKOでOATPIAの発現低下が確認された。PDZKIとOATPIAの直接的結合は免疫沈降、yeasttwo-hybridで示された。以上の結果とこれまでの研究代表者の実績とを合わせて考えると、PDZK1は多くの取り込みトランスポーターのアダプターであることが示唆され、小腸トランスポーターがPDZK1を介して互いに連動して栄養物の吸収や異物の排出に働く可能性が示唆された。本年度はこの研究業績以外にも、トランスポーターOCTNIの小腸刷子縁膜での機能的発現、筋肉組織でのOCTN2の役割解明、血小板減少治療薬eltrombopagのOATPIB1を介した肝取り込みと体内動態制御を示すことができた。
KAKENHI-PROJECT-20390047
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人工蛋白質を用いたヒドロキシメチルシトシン検出法の開発と脱メチル化挙動の解明
DNAのメチル化は細胞の発生や分化、癌化や様々な疾患に、DNAの脱メチル化は細胞の分化状態のリセットに関与していることが知られている。DNAメチル化はその機構が詳細に解明されている一方、脱メチル化にはいくつかの機構が提唱されてはいるが完全には解明されていない。脱メチル化機構においてヒドロキシメチルシトシンは重要な中間体として注目されているが、その存在量は細胞によって異なり、かつ絶対量がメチルシトシンと比較して少ないため、その検出は難易度が高い。本研究はヒドロキシメチルシトシンの検出を目的として、ヒドロキシメチルシトシンを認識するタンパク質・ペプチドを作製し、DNAとの相互作用を検討した。DNAのメチル化は細胞の発生や分化、細胞の癌化や様々な疾患に、また、DNAの脱メチル化は細胞の分化状態のリセットに関与していることが知られている。DNAメチル化はその機構が詳細に解明されている一方、脱メチル化にはいくつかの機構が提唱されてはいるが完全には解明されていない。脱メチル化機構において、ヒドロキシメチルシトシンは鍵となる重要な中間体として注目されているが、その存在量は細胞によって異なり、かつ絶対量がメチルシトシンと比較して少ないため、その検出は難易度が高い。上記を鑑み、本研究はヒドロキシメチルシトシンの検出およびヒドロキシメチルシトシンを経由する脱メチル化挙動の解明を目指して、ヒドロキシメチルシトシンを認識するタンパク質を作製し、これを用いてヒドロキシメチル化DNAの検出を行う。H27年度は、ヒドロキシメチル化DNAを作製するTETタンパク質に着目して、ヒドロキシメチルシトシンを認識する蛋白質の設計を行った。ヒドロキシメチルシトシンのヒドロキシメチル基はDNAのメジャーグルーブに位置している。いくつかのDNA-TET複合体の構造が報告されており(Xu et al., Cell, 2013, 155, 1545-1555.)、これらの知見を基にヒドロキシメチル化CpG配列の認識に必要な相互作用、および各相互作用間の効果的なネットワークを分子モデリング計算を用いて検討した。これまでの検討および種々の芳香族性アミノ酸残基や疎水性アミノ酸残基に関する検討の結果、側鎖アミノ酸残基としてチロシンが有効であることが示唆された。H27年度はヒドロキシメチル化DNAを認識する人工タンパク質・ペプチドの設計を行った。現在、得られた結果を分子設計にフィードバックして、人工タンパク質・ペプチドの再設計に取り組んでおり、おおむね当初の研究計画通りに進行していると考えている。DNAのメチル化は細胞の発生や分化、細胞の癌化や様々な疾患に、また、DNAの脱メチル化は細胞の分化状態のリセットに関与していることが知られている。DNAメチル化はその機構が詳細に解明されている一方、脱メチル化にはいくつかの機構が提唱されてはいるが完全には解明されていない。脱メチル化機構において、ヒドロキシメチルシトシンは鍵となる重要な中間体として注目されているが、その存在量は細胞によって異なり、かつ絶対量がメチルシトシンと比較して少ないため、その検出は難易度が高い。上記を鑑み、本研究はヒドロキシメチルシトシンの検出およびヒドロキシメチルシトシンを経由する脱メチル化挙動の解明を目指して、ヒドロキシメチルシトシンを認識するタンパク質を作製し、これを用いてヒドロキシメチル化DNAの検出を行うことを目指す。前年度は、ヒドロキシメチル化DNAを作製するTETタンパク質に着目して、ヒドロキシメチル化CpG配列の認識に必要な相互作用、および各相互作用間の効果的なネットワークを分子モデリング計算を用いて検討し、ヒドロキシメチルシトシンを認識する蛋白質の設計を行った。H28年度は上記分子設計の結果を基にペプチドおよびタンパク質を作製した。具体的には標的DNAとのゲルシフト実験、およびゲノムDNAを用いた蛍光偏光測定を行い、得られた結果をフィードバックして水素結合等の複数の相互作用の設計を検討し、分子設計の最適化を行った。さらに、細胞内でのヒドロキシメチル化DNA観測の予備実験として蛍光ラベルを細胞内に導入し、共焦点レーザー顕微鏡(共同利用機器)を用いて条件検討を行っており、現在も進行中である。H28年度は、タンパク質およびペプチドとDNAとの相互作用解析を行い、得られた結果をフィードバックして分子設計の最適化を行った。さらに、翌年度の予備実験として細胞内に導入した蛍光ラベルの検出の条件検討にも取り組んでおり、おおむね当初の研究計画通りに進行していると考えている。DNAのメチル化は細胞の発生や分化、細胞の癌化や様々な疾患に、また、DNAの脱メチル化は細胞の分化状態のリセットに関与していることが知られている。DNAメチル化はその機構が詳細に解明されている一方、脱メチル化にはいくつかの機構が提唱されてはいるが完全には解明されていない。脱メチル化機構において、ヒドロキシメチルシトシンは鍵となる重要な中間体として注目されているが、その存在量は細胞によって異なり、かつ絶対量がメチルシトシンと比較して少ないため、その検出は難易度が高い。上記を鑑み、本研究はヒドロキシメチルシトシンの検出およびヒドロキシメチルシトシンを経由する脱メチル化挙動の解明を目指して、ヒドロキシメチルシトシンを認識するタンパク質を作製し、これを用いてヒドロキシメチル化DNAの検出を行うことを目指す。前年度は分子設計の結果から作製したペプチドおよびタンパク質とヒドロキシメチルシトシンとの相互作用を検討し、疎水性アミノ酸残基側鎖のサイズと形状がヒドロキシメチルシトシンとの相互作用に影響を与えていることを見出した。H29年度は、前年度の結果をフィードバックして、人工蛋白質・ペプチドの分子設計を再検討し、人工蛋白質、ペプチドの機能向上を図った。
KAKENHI-PROJECT-15K05572
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人工蛋白質を用いたヒドロキシメチルシトシン検出法の開発と脱メチル化挙動の解明
作製および取り扱いが容易なペプチドを用いてDNAとの相互作用を検討した結果、本研究のペプチドは、メチル化、ヒドロキシメチル化、非メチル化DNAを識別可能なことが明らかとなった。また、標的DNAとの化学反応による検出・観測を目指して、当該ペプチドをはじめとするプローブ分子とDNAとの化学反応についても検討を行っている。DNAのメチル化は細胞の発生や分化、癌化や様々な疾患に、DNAの脱メチル化は細胞の分化状態のリセットに関与していることが知られている。DNAメチル化はその機構が詳細に解明されている一方、脱メチル化にはいくつかの機構が提唱されてはいるが完全には解明されていない。脱メチル化機構においてヒドロキシメチルシトシンは重要な中間体として注目されているが、その存在量は細胞によって異なり、かつ絶対量がメチルシトシンと比較して少ないため、その検出は難易度が高い。本研究はヒドロキシメチルシトシンの検出を目的として、ヒドロキシメチルシトシンを認識するタンパク質・ペプチドを作製し、DNAとの相互作用を検討した。H27年度は主として、人工タンパク質・ペプチドの分子設計、特にヒドロキシメチル基を認識するアミノ酸残基の分子設計について検討したが、H28年度は本検討から得たアミノ酸残基を導入した人工タンパク質・ペプチドとDNAとの相互作用を検討する。具体的には、ゲルシフト実験や蛍光色素等のラベルを導入した人工タンパク質・ペプチドとDNAを用いた蛍光観察を行う。各実験から標的DNAとの相互作用を定量化し、評価する。併せて、NMR等の分光学測定から構造や相互作用に関する知見を得て分子設計にフィードバックし、人工タンパク質の機能向上を図る。昨年度までは主として、タンパク質・ペプチドとDNAとの相互作用について検討したが、H29年度は本検討から得たタンパク質・ペプチドに蛍光プローブを導入して、細胞内におけるDNAとの相互作用を共焦点レーザー顕微鏡を用いて検出・観測する。検出条件はH28年度から引き続いて検討・最適化し、標的に応じた複数のラベルの同時検出を可能とするため、細胞内の局所的な蛍光スペクトル測定およびスペクトル解析を行う。生体関連化学H27年度は主として分子設計の検討を行い新たな知見を得た。これを基に更に詳細な検討を進めるため、当該部分の研究実施計画を延長して次年度(H28年度)も引き続き設計と改良を行っていくこととした。H28年度は主として分子設計から得られたペプチドおよびタンパク質の構造や分光学的性質、DNAとの相互作用について検討を行った。得られた結果をもとにさらに詳細な検討を進めるため、当該部分の研究実施計画を延長して翌年度(H29年度)も引き続きペプチドおよびタンパク質の改良を行っていくこととした。H27年度の研究実施計画の一部を延長して次年度にも行うため、使用予定であった未使用金額分を次年度(H28年度)の当該実験に使用する。H28年度の研究実施計画の一部を延長して翌年度にも行うため、使用予定であった未使用金額分を翌年度(H29年度)の当該実験に使用する。
KAKENHI-PROJECT-15K05572
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睡眠が食行動と身体活動へ及ぼす影響の検討
2年目の研究は、1年目の研究から、睡眠時間をより実生活条件に近づけて(睡眠不足条件5時間vs.対照睡眠条件8時間)、睡眠時間の短縮が食行動と食嗜好へ及ぼす影響を明らかにすることを目的として研究を実施した.対象者は、睡眠障害のない大学生24名(女性13名、男性11名)とした。1年目と同様の方法で、異なる2つの方法(睡眠不足:5時間睡眠、対照睡眠:8時間睡眠)による無作為クロスオーバー試験で実施した。1施行は連続した4日間で行い、睡眠は自宅で実施した。睡眠以外の生活行動はすべて自由生活とした。体重は1日目と4日目の8時に空腹状態で測定した。食事量と身体活動量は2日目と3日目の平均値を評価した。対象者はすべての食事内容を記録し、写真撮影を行うように指示された。睡眠時間はMTN-220を睡眠時に装着して評価した。主観的な食嗜好の評価にはFCI-Jを用いてCravingを評価した。【結果】睡眠不足条件と対照睡眠条件において、介入時の平均睡眠時間は有意な差が認められた(p<0.01)。群間における体重の変化量は有意な差が認められなかった。1日あたりのエネルギー摂取量(2150±473 vs. 2188±455 kcal)は群間に有意な差は認められなかった。食嗜好の変化は、全体で有意な差は認められなかったが、性別で分類すると女性には変化がなかったが、男性は夜間に脂っこいものの欲求が対照睡眠時と比較して有意に高くなっていた。本研究では、1日あたりのエネルギー摂取量には差が認められなかったものの、睡眠不足による夜間の食嗜好の変化および食事に対する欲求の変化が長期的に観察するとエネルギー摂取量の増加に影響する可能性が示唆された。これから、4日目の血液データの分析、官能検査の分析を行う予定である。報酬系に関わる血液データについても分析プロトコルが構築されたため、これから分析作業を進める予定である。介入研究を終え、最終年度に向けた分析を行うことができるため睡眠不足による食行動と身体活動による影響は2年間で概ね明確にすることができたが、血液データの分析、官能検査の分析を進めることで食事、身体活動との関連について検証を行う予定である。睡眠時間の短縮がエネルギー摂取量と身体活動量へ及ぼす影響を明らかにすることを目的として研究を実施した.対象者は、睡眠障害のない女子学生16名とした。異なる2つの方法(短時間睡眠日:4時間睡眠(26時)、対照日:7時間睡眠(236時))による無作為クロスオーバー試験で実施した。1施行は連続した4日間で行い、睡眠は自宅で実施した。睡眠以外の生活行動はすべて自由生活とした。体重は1日目と4日目の8時に空腹状態で測定した。食事量と身体活動量は2日目と3日目の平均値を評価した。対象者はすべての食事内容を記録し、写真撮影を行うように指示された。睡眠時間は自記式質問票により評価し、食欲は視覚的評価スケールにより起床後から就寝まで1時間おきに評価した。【結果】短時間睡眠日と対照日において、介入時の平均睡眠時間は有意な差が認められた(p<0.01)。群間における体重の変化量は有意な差が認められなかった。短時間睡眠日において、歩数は夜間(182時)に有意に増加した(p<0.05)。3.0 METs以上の活動時間は夜間に有意に増加した。しかしながら、1日のエネルギー摂取量(2065±188 vs. 2022±296 kcal)による朝食のエネルギー摂取量、食欲の主観的評価では群間に有意な差は認められなかった。本研究では、短時間睡眠時に身体活動量が有意に増加したが、食事摂取量は群間に有意な差が認められなかった。血液項目について、レプチンには有意な差は認められなかったが、コルチゾールとインスリンが短時間睡眠日で有意に高い結果が得られた。今後、睡眠時間を変更して追検証していく予定である。当初の予定通り年度内に研究を実施し、いくつか成果報告を行うことができたため2年目の研究は、1年目の研究から、睡眠時間をより実生活条件に近づけて(睡眠不足条件5時間vs.対照睡眠条件8時間)、睡眠時間の短縮が食行動と食嗜好へ及ぼす影響を明らかにすることを目的として研究を実施した.対象者は、睡眠障害のない大学生24名(女性13名、男性11名)とした。1年目と同様の方法で、異なる2つの方法(睡眠不足:5時間睡眠、対照睡眠:8時間睡眠)による無作為クロスオーバー試験で実施した。1施行は連続した4日間で行い、睡眠は自宅で実施した。睡眠以外の生活行動はすべて自由生活とした。体重は1日目と4日目の8時に空腹状態で測定した。食事量と身体活動量は2日目と3日目の平均値を評価した。対象者はすべての食事内容を記録し、写真撮影を行うように指示された。睡眠時間はMTN-220を睡眠時に装着して評価した。主観的な食嗜好の評価にはFCI-Jを用いてCravingを評価した。【結果】睡眠不足条件と対照睡眠条件において、介入時の平均睡眠時間は有意な差が認められた(p<0.01)。群間における体重の変化量は有意な差が認められなかった。1日あたりのエネルギー摂取量(2150±473 vs. 2188±455 kcal)は群間に有意な差は認められなかった。
KAKENHI-PROJECT-17K00931
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睡眠が食行動と身体活動へ及ぼす影響の検討
食嗜好の変化は、全体で有意な差は認められなかったが、性別で分類すると女性には変化がなかったが、男性は夜間に脂っこいものの欲求が対照睡眠時と比較して有意に高くなっていた。本研究では、1日あたりのエネルギー摂取量には差が認められなかったものの、睡眠不足による夜間の食嗜好の変化および食事に対する欲求の変化が長期的に観察するとエネルギー摂取量の増加に影響する可能性が示唆された。これから、4日目の血液データの分析、官能検査の分析を行う予定である。報酬系に関わる血液データについても分析プロトコルが構築されたため、これから分析作業を進める予定である。介入研究を終え、最終年度に向けた分析を行うことができるため1年目から研究を実施することができたが、グレリンとグルコースの分析ができなかったため、2年目の研究で血液項目の分析を進めていきたい。さらに、睡眠不足による食行動と身体活動の反応は性差があることが報告されているため、男性を対象に含めて研究を遂行していく予定である。睡眠不足による食行動と身体活動による影響は2年間で概ね明確にすることができたが、血液データの分析、官能検査の分析を進めることで食事、身体活動との関連について検証を行う予定である。分析を行うための試薬の購入の手続きが間に合わなかったため数万円の残額があったが、平成30年度早々購入する予定である。当該年度で実施した研究による残額が1,901円生じたが、2019年度の血液データ分析等の予算として使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-17K00931
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K00931
アレイ導波路格子を用いた小型バイオ分光センサの開発
2年間の研究期間において,波長分解能の向上と小型化を同時に実現する高性能なアレイ導波路格子(AWG)を用いた小型分光センサを考案した。AWGの導波路中に設けた細溝に液体試料を滴下し,参照液体と液体試料の透過光強度特性を比較することによって,液体試料の濃度を推定する新しい小型分光センサの提案・開発を行った。得られた主要な成果を以下に記述する。1.アレイ導波路格子(AWG)を用いた小型バイオ分光センサの提案と試作試作したチャネル間隔0.4nm,チャネル数80,中心波長1544.4nmの小型AWGバイオ分光センサを用いた濃度測定実験において,酢酸ナトリウム水溶液の調整時の濃度と実験から求まる濃度の差が±0.25wt%になり,センサの有効性を確認した。2.小型AWGバイオ分光センサの精度向上の実現小型AWGバイオ分光センサの高感度化に向けて幅30μmの溝を5本作製した直線導波路の透過率特性を測定した。リアルタイム分光センシングには複数試料挿入溝が有効であることをビーム伝搬法に基づく数値計算と評価実験の両面から実証した。3.可視波長域AWG分光センサの実現測定候補の多い可視波長域の分光センシング実現に向けて可視AWGの設計の最適化を行い,世界で初めて可視AWGの試作・評価を行った。測定対象に合わせて波長帯域400nm,チャネル数8の可視AWGをはじめ,5種類の設計パラメータの素子を評価し,先端物質検出の技術基盤を構築した。4.試作した可視波長域AWG分光センサを用いた環境センシングチャネル間隔12.5nm,チャネル数8,中心波長800nmの可視光AWG小型分光センサの設計・試作を行い,環境試料であるクロロフィルa,bを透過率差1.4dBで識別することに成功した。さらに,極低濃度の液体試料検出に向けてパラボラ導波路を用いた試料挿入溝の提案・設計を行った。2年間の研究期間において,波長分解能の向上と小型化を同時に実現する高性能なアレイ導波路格子(AWG)を用いた小型分光センサを考案した。AWGの導波路中に設けた細溝に液体試料を滴下し,参照液体と液体試料の透過光強度特性を比較することによって,液体試料の濃度を推定する新しい小型分光センサの提案・開発を行った。得られた主要な成果を以下に記述する。1.アレイ導波路格子(AWG)を用いた小型バイオ分光センサの提案と試作試作したチャネル間隔0.4nm,チャネル数80,中心波長1544.4nmの小型AWGバイオ分光センサを用いた濃度測定実験において,酢酸ナトリウム水溶液の調整時の濃度と実験から求まる濃度の差が±0.25wt%になり,センサの有効性を確認した。2.小型AWGバイオ分光センサの精度向上の実現小型AWGバイオ分光センサの高感度化に向けて幅30μmの溝を5本作製した直線導波路の透過率特性を測定した。リアルタイム分光センシングには複数試料挿入溝が有効であることをビーム伝搬法に基づく数値計算と評価実験の両面から実証した。3.可視波長域AWG分光センサの実現測定候補の多い可視波長域の分光センシング実現に向けて可視AWGの設計の最適化を行い,世界で初めて可視AWGの試作・評価を行った。測定対象に合わせて波長帯域400nm,チャネル数8の可視AWGをはじめ,5種類の設計パラメータの素子を評価し,先端物質検出の技術基盤を構築した。4.試作した可視波長域AWG分光センサを用いた環境センシングチャネル間隔12.5nm,チャネル数8,中心波長800nmの可視光AWG小型分光センサの設計・試作を行い,環境試料であるクロロフィルa,bを透過率差1.4dBで識別することに成功した。さらに,極低濃度の液体試料検出に向けてパラボラ導波路を用いた試料挿入溝の提案・設計を行った。平成16年度に行った研究では以下の成果が得られた。1.小型アレイ導波路回折格子(AWG)バイオ分光センサの感度および精度向上の実現小型AWG分光センサの高感度化に向けてダイシング加工の最小幅の溝を5本作製した直線導波路を使用して透過率特性を測定した。1本の試料挿入溝の幅が微小である場合は回折損失が吸収損失・反射損失に比べて2倍程度に抑えられ、吸収特性を拡大して検出したい分光センシングには試料挿入溝の複数化が有効であることを数値計算と評価実験の両面から実証した。2.多波長チャネルを用いた多変量変数解析の光学的アルゴリズムの構築と実証液体試料の簡易挿入方法の検討を加え、データ高速処理用アレイ受光素子を使用して、複数スペクトル同時検出の実現可能性を検証した。1530nmから1560nmまでの波長範囲で、純水の透過率変化の実験値と数値計算の差は平均0.1dBであることを確認し、多変量変数解析のためのシステムおよびアルゴリズムを構築した。3.可視波長域AWGを用いた分光センサの実現測定試料が多い可視波長域の分光センシング用可視AWGの最適化設計を行い、世界で初めて可視波長域AWGの試作・評価を行った。生体物質などの測定対象に合わせて波長帯域幅400nm,チャネル数8の虹色スペクトルを有するAWGを始め5種類の素子を試作し、バイオ分野などの先端物質の検出のための技術基盤を構築した。4.試作AWGバイオ分光センサを用いたリアルタイム生体物質検出試料挿入溝に試料を挿入する操作の簡易化に向けてテスト導波路を試作した。
KAKENHI-PROJECT-16560038
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アレイ導波路格子を用いた小型バイオ分光センサの開発
また、多波長チャネルの情報を同時に取得可能なAWG分光センサの利点を活用するために、吸収特性の異なるクロロフィルa, bに合わせて試料挿入溝を設計した可視AWGを用いて分光センシングを行い、吸光度1.0(光路長1nm)の変化に対して1.4dBの透過率が変化するセンサを実現した。アレイ導波路格子(AWG)の小型分光センサへの適用を提案し,試料挿入溝を作製して高精度な分光センシング手法の原理確認実験を行ってきた。この研究成果をふまえ,本年度に以下の研究を進めたので,得られた主な成果をまとめる。1.可視域小型バイオ分光センサの感度および精度向上の実現試料挿入溝において吸収による影響を拡大するために,透過光の光路長を長く,かつ回折損失を低減させることのできる複数本の試料挿入溝を作製し,高感度化を試みた。可視AWG小型分光センサの入力側スラブ導波路内に幅30μmのダイシング溝を5本形成し,吸光度1.0(光路長1mm)の変化に対し1.5dBの差で識別できる試料挿入溝を実現した。2.多波長チャネルを用いた多変量変数解析の光学的アルゴリズムの構築と実証可視AWG小型分光センサの入力導波路に基板レスバンドパスフィルタ(3.0mm X 0.5mm X 0.02mm)を挿入し,平面光波回路基板に一体化させ,Free Spectrum Rangeごとに生じる余分な次数のスペクトル成分を除去した。さらに,データ高速処理用イメージセンサ(画素数512×58pixels^2)を使用し,多波長チャネルの同時検出を実現した。3.可視域試作AWGバイオ分光センサを用いたリアルタイム環境センシング試作した可視域小型バイオ分光センサとアレイ受光デバイスを組み合わせた液体試料識別実験を行った。試料として環境指標の1つでもあるクロロフィルaとb溶液を選び,異なる吸収極大波長(663nm,645nm)における透過光強度が変化し,吸光度1.0(光路長1mm)に対し1.4dBの差で識別することに成功した。
KAKENHI-PROJECT-16560038
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生物的な動的集団秩序を形成する非生物自己駆動液滴系の研究
これまでの研究により、液滴系の生物的運動を駆動するメカニズムに影響を及ぼすいくつかの重要な因子を発見した。その中で重要なものの一つは気相の有機溶媒濃度である。そこで、気相中の有機溶媒濃度を制御できる装置を開発し、この有機溶媒濃度を通して液滴系の運動を制御できるようにした。この研究の結果、液滴系の運動をON/OFFできる条件を発見することができた。すなわち、気相が飽和状態にあるとき、液滴は運動を停止し、気相中の有機溶媒濃度を低下させると液滴は運動を開始する。しかし、詳細な実験によって一旦液滴が停止した後に再開した運動は、気相が飽和するまでに液滴が呈していた運動とは異なることが明らかになった。これは液滴の運動が気相中の有機溶媒濃度のみに影響されているのではなく、他の要因、例えば液相中の有機溶媒濃度などにも影響を受けていることを示唆している。現在、詳細な実験によってより繊細に液滴系を制御する条件を探索している。もう一つの成果は、本研究で明らかになった生物的液滴運動と同様の運動を示す系が少なくとももう一つあることを明らかにしたことである。この系は化学物質としても、液滴が存在する物理的な環境としても全く異なる系であり、このような系で同様の運動モードを見いだせたことは、本研究でターゲットとしている運動モードの普遍性を示唆しており、重要な知見であると考えられる。この成果はCollids Surf. A, 566, 141-147 (2019)に発表済みである。本研究では、液滴の制御システムの開発し、その利用によって液滴系の運動メカニズムを解明することを計画していた。これまでに気相中の有機溶媒濃度を制御することによって液滴系の運動を制御することに成功しており、ここまでは研究は予定通り進行していると言える。一方で、この制御方法では、液滴系の運動を完全に可逆的に制御できるわけではないことも明らかになってきている。その原因は未だ明らかではないが、気相のみならず液相中の有機溶媒濃度も液滴の運動に影響していることが一因であると考えている。この知見は液滴運動のメカニズムを考察する上で重要な知見であるが、液滴運動を制御するという観点での気相濃度制御に問題があることも示している。また、これまでの研究によって、当初予定していた化学物質系とは異なる化学物質系においても同様の駆動現象が見られることが明らかになった。これはこのような生物的液滴運動が、物質系によらず実現する、普遍的なものであることを示唆している。以上のような知見は液滴運動のメカニズム解明に利用できる重要なものであり、本研究の進展は概ね当初予定の通りであると考えている。本研究によって、気相中の有機溶媒濃度の制御による液滴運動の制御は、可能であるものの、すべての運動モードを自由に実現できるものではないことが明らかになった。よって今後は他の液滴制御方法の開発、例えば液相における有機溶媒濃度の制御なども検討し、より完全な液滴の運動制御を実現することを考えていく。液相中の有機溶媒濃度の制御は、気相中の有機溶媒濃度の制御と基本的には同様の考え方によって実現できる。ただし、実験装置はかなり異なるものが必要となるので、今後はそのような装置開発を行うことになる。さらに、本研究でターゲットとしている液滴運動の普遍性をより明白に示すため、いくつかこれまで利用していない化学物質系の利用も考える。このように、新たに開発する制御法およびこのような新規物質探索によって、液滴の駆動メカニズムのより詳細な解明を目指す。平成29年度には、自己駆動液滴系のメカニズム解明のための実験およびシミュレーション研究を行った。実験では、液滴を展開した状態の気液界面に外部からの空気を緩やかに吹き付ける実験により、液滴集団がこの空気によって清浄化された界面に引きつけられることを明らかにした。この結果は、液滴集団が界面張力によって駆動されていることを強く示唆している。また、液滴に含まれる色素の量によって、液滴の運動様式が異なることも明らかにした。この結果を説明するには未だ実験が足りないが、この新たに発見された不純物効果は、液滴の蒸気圧が運動に影響を与えていることを示唆している。これらの実験結果を踏まえて、液滴集団の振動的振る舞いを説明しうるモデルの一つとして、反応拡散モデルを提案した。このモデルでは、液滴から解け出した有機溶媒によって周囲の界面張力が低下し、それによる界面張力の勾配によって液滴が駆動される。また、液滴間に働くキャピラリー引力を、重ね合わせ近似のもとで定式化し、モデルに取り入れた。さらに、液滴間に短距離の斥力を仮定し、これら3種類の力のもとでの液滴運動を数値シミュレーションによって詳細に調べた。その結果、界面張力と溶解した有機溶媒濃度の関係に、シグモイド型の単純な関数を仮定したとき、界面張力が低濃度の有機溶媒に反応しない範囲が大きいほど、液滴またはそのクラスターに間欠的な運動が誘起され、クラスター全体が振動的運動を開始することが分かった。またシミュレーションによる実験の再現は速度相関関数によっても確認することができた。これらの結果から、液滴の間欠運動が、クラスターの振動的振る舞いと強く関係していることを明らかにすることができた。当初計画にある外部からの摂動を用いたクラスター振動のメカニズム解析には、実験的にある程度成功しており、今後の研究によってより詳細な情報を得ることができると期待している。
KAKENHI-PROJECT-17K05613
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K05613
生物的な動的集団秩序を形成する非生物自己駆動液滴系の研究
また、液滴粒子からの有機溶媒の溶出の重要性も、実験、シミュレーションの双方から明らかにすることができ、当初計画どおりに研究が進捗していると考えている。当初計画から遅れている研究は、液滴周囲の場の可視化であるが、これについても実験装置の構築はほぼ終了しており、予備実験を開始する段階にある。この実験が遅れている理由は、液滴粒子の非常に遅い運動に追随した微小な流動を追跡できる可視化粒子の選定が難しいことである。今後いくつかの可視化粒子を試験し、最適なものを選択した上で本実験を開始する予定である。一方で数値シミュレーションの方は計画よりも進捗しており、結果を投稿できる段階にある。以上を総合して、上記の進捗状況判断とした。これまでの研究により、液滴系の生物的運動を駆動するメカニズムに影響を及ぼすいくつかの重要な因子を発見した。その中で重要なものの一つは気相の有機溶媒濃度である。そこで、気相中の有機溶媒濃度を制御できる装置を開発し、この有機溶媒濃度を通して液滴系の運動を制御できるようにした。この研究の結果、液滴系の運動をON/OFFできる条件を発見することができた。すなわち、気相が飽和状態にあるとき、液滴は運動を停止し、気相中の有機溶媒濃度を低下させると液滴は運動を開始する。しかし、詳細な実験によって一旦液滴が停止した後に再開した運動は、気相が飽和するまでに液滴が呈していた運動とは異なることが明らかになった。これは液滴の運動が気相中の有機溶媒濃度のみに影響されているのではなく、他の要因、例えば液相中の有機溶媒濃度などにも影響を受けていることを示唆している。現在、詳細な実験によってより繊細に液滴系を制御する条件を探索している。もう一つの成果は、本研究で明らかになった生物的液滴運動と同様の運動を示す系が少なくとももう一つあることを明らかにしたことである。この系は化学物質としても、液滴が存在する物理的な環境としても全く異なる系であり、このような系で同様の運動モードを見いだせたことは、本研究でターゲットとしている運動モードの普遍性を示唆しており、重要な知見であると考えられる。この成果はCollids Surf. A, 566, 141-147 (2019)に発表済みである。本研究では、液滴の制御システムの開発し、その利用によって液滴系の運動メカニズムを解明することを計画していた。これまでに気相中の有機溶媒濃度を制御することによって液滴系の運動を制御することに成功しており、ここまでは研究は予定通り進行していると言える。一方で、この制御方法では、液滴系の運動を完全に可逆的に制御できるわけではないことも明らかになってきている。その原因は未だ明らかではないが、気相のみならず液相中の有機溶媒濃度も液滴の運動に影響していることが一因であると考えている。この知見は液滴運動のメカニズムを考察する上で重要な知見であるが、液滴運動を制御するという観点での気相濃度制御に問題があることも示している。また、これまでの研究によって、当初予定していた化学物質系とは異なる化学物質系においても同様の駆動現象が見られることが明らかになった。これはこのような生物的液滴運動が、物質系によらず実現する、普遍的なものであることを示唆している。
KAKENHI-PROJECT-17K05613
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骨髄ニッチによる免疫担当細胞の維持機構
病原体の排除の中心となる免疫担当細胞は、生涯にわたり骨髄で造血幹細胞から産生され続けており、その産生は、ニッチ(niche)と呼ばれる特別な微小環境(場)によって支えられている。私たちは、以前、ニッチを構成する免疫担当細胞の産生の司令塔となる細胞(CAR細胞)を発見した。本研究では、転写因子Foxc1がCAR細胞特異的に発現し、免疫担当細胞を産生するニッチの形成と維持に必須であることを発見した。更に、造血幹細胞ニッチを構成する細胞の数が、造血幹細胞数と同様であるという定説と異なり、遥かに多いことを実証し、CAR細胞の重要性を異なる視点から確認した。骨髄は免疫四次元空間の形成の中枢臓器であり、すべての免疫担当細胞は、骨髄で造血幹細胞から産生され、その種類や数がニッチ(niche)と呼ばれる特別な微小環境(場)によって精緻に制御されているがその機構は明らかでない。私たちは、造血幹細胞の維持や免疫担当細胞の産生に必須であるケモカインCXCL12を高発現し突起を持った細網細胞(CAR細胞)を骨髄で同定し、CAR細胞が脂肪・骨芽細胞前駆細胞であり、造血幹細胞・前駆細胞に必須のニッチ細胞であることを証明した。そこで骨髄とCAR細胞に注目して、免疫担当細胞数の恒常性を維持する機構の解明を目的とした研究を行っている。CAR細胞のニッチとしての機能を維持・調節する分子機構を明らかにするため、私たちは、CAR細胞特異的に発現する遺伝子を検索し、フォークヘッドファミリーに属する転写因子で先天性水頭症の原因遺伝子として知られていたFoxc1がCAR細胞特異的に発現することを見出した。そこで、細胞種特異的遺伝子欠損マウスと脂肪前駆細胞株を用いた解析を行い、Foxc1は、CAR細胞において造血幹細胞と免疫担当細胞の前駆細胞の細胞数を維持するニッチとしての機能の形成と維持、脂肪細胞への分化の抑制に必須であることを明らかにした。これまで、他の組織にも存在する脂肪・骨芽細胞前駆細胞に対して、骨髄でCAR細胞の造血幹細胞・前駆細胞ニッチが形成・維持・調節される分子基盤は全く不明であった。したがって、この発見によって、脊椎動物ではじめて幹細胞・前駆細胞を調節する司令塔であるニッチの形成と維持の分子機構が明らかになった。更に、造血幹細胞と免疫担当細胞の前駆細胞の細胞数の制御においては、Foxc1の活性化や作用によるニッチ機能の調節が重要であることが示され、その分子機構の研究が大きく進展した。骨髄は免疫四次元空間の形成の中枢臓器であり、すべての免疫担当細胞は、骨髄で造血幹細胞から産生され、その種類や数がニッチ(niche)と呼ばれる特別な微小環境(場)によって精緻に制御されているがその機構は明らかでない。私たちは、造血幹細胞の維持や免疫担当細胞の産生に必須であるケモカインCXCL12を高発現し突起を持った細網細胞(CAR細胞)を骨髄で同定し、CAR細胞が脂肪・骨芽細胞前駆細胞であり、造血幹細胞・前駆細胞に必須のニッチ細胞であることを証明した。そこで骨髄とCAR細胞に注目して、免疫担当細胞数の恒常性を維持する機構の解明を目的とした研究を行っている。CAR細胞のニッチとしての機能を維持・調節する分子機構を明らかにするため、私たちは、CAR細胞特異的に発現する遺伝子を検索し、フォークヘッドファミリーに属する転写因子で先天性水頭症の原因遺伝子として知られていたFoxc1がCAR細胞特異的に発現することを見出した。そこで、CAR細胞特異的遺伝子欠損マウスと成体で遺伝子欠損を誘導するマウス、脂肪細胞前駆細胞株を用いた解析を行い、Foxc1は、CAR細胞において造血幹細胞と免疫担当細胞の前駆細胞の細胞数を維持するニッチとしての機能の形成と維持、脂肪細胞への分化の抑制に必須であることを明らかにした。多くの組織に存在すると報告されている脂肪・骨芽細胞前駆細胞に対して、骨髄でCAR細胞の造血幹細胞・前駆細胞ニッチが形成・維持・調節される分子基盤は全く不明であった。したがって、この発見によって、脊椎動物ではじめて多能性幹細胞・前駆細胞を維持するニッチの形成と成体での維持の分子機構が明らかになった。これを基盤に、免疫担当細胞の前駆細胞の細胞数の制御における、Foxc1の活性化や作用機構を含めたニッチの調節機構の検討を進めた。骨髄は免疫四次元空間の形成の中枢臓器であり、すべての免疫担当細胞は、骨髄で造血幹細胞から産生され、その種類や数がニッチ(niche)と呼ばれる特別な微小環境(場)によって精緻に制御されているがその機構は明らかでない。私たちは、造血幹細胞の維持や免疫担当細胞の産生に必須であるケモカインCXCL12を高発現し突起を持った細網細胞(CAR細胞)を骨髄で同定し、CAR細胞が脂肪・骨芽細胞前駆細胞であり、造血幹細胞・前駆細胞に必須のニッチ細胞であることを証明した。そこで骨髄とCAR細胞に注目して、免疫担当細胞数の恒常性を維持する機構の解明を目的とした研究を行っている。CAR細胞のニッチとしての機能を維持・調節する分子機構を明らかにするために、私たちは、CAR細胞特異的に発現する遺伝子を検索し、フォークヘッドファミリーに属する転写因子で先天性水頭症の原因遺伝子として知られていたFoxc1がCAR細胞特異的に発現することを見出した。
KAKENHI-PLANNED-24111003
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骨髄ニッチによる免疫担当細胞の維持機構
CAR細胞特異的遺伝子欠損マウスと成体で遺伝子欠損を誘導するマウスで、造血幹細胞と免疫担当細胞の細胞数が著減しており、Foxc1は、CAR細胞において造血幹細胞と免疫担当細胞の細胞数を維持するニッチの構成と維持に必須であることを明らかにした。多くの組織に存在すると報告されている脂肪・骨芽細胞前駆細胞の中で、骨髄でCAR細胞によって造血幹細胞と免疫担当細胞前駆細胞ニッチが形成・維持・調節される分子機構が明らかになった。これを基盤に、免疫担当細胞の前駆細胞の細胞数の制御における、Foxc1の活性化や作用機構を含めたCAR細胞の免疫担当細胞数の調節機構の検討を進めた。造血幹細胞・前駆細胞ニッチの形成や維持に必須の転写因子は、存在自体不明であった。したがって、Foxc1がCAR細胞特異的に発現し、CAR細胞において、造血幹細胞と免疫担当細胞の前駆細胞のニッチとしての機能の形成と維持・調節、未分化状態の維持に必須であることを明らかにした発見は、脊椎動物ではじめて多能性幹細胞ニッチの形成と維持・調節の分子機構を明らかにし、造血幹細胞・前駆細胞ニッチに特化した細胞系列が存在することをはじめて分子レベルで実証したことになり、画期的である。この成果により、骨髄の微小環境ニッチによる免疫担当細胞の維持機構の解明に向けた研究が大きく進展した。骨髄は免疫四次元空間の形成の中枢臓器であり、すべての免疫担当細胞は、骨髄で造血幹細胞から産生され、その種類や数がニッチ(niche)と呼ばれる特別な微小環境(場)によって精緻に制御されているがその機構は明らかでない。私たちは、造血幹細胞の維持や免疫担当細胞の産生に必須であるケモカインCXCL12を高発現し突起を持った細網細胞(CAR細胞)を骨髄で同定し、CAR細胞が脂肪・骨芽細胞前駆細胞であり、造血幹細胞・前駆細胞に必須のニッチ細胞であることを証明した。そこで骨髄とCAR細胞に注目して、免疫担当細胞数の恒常性を維持する機構の解明を目的とした研究を行った。昨年度までに、私たちは、CAR細胞特異的に発現するフォークヘッドファミリーに属する転写因子Foxc1がCAR細胞特異的に発現することを見出し、Foxc1は、CAR細胞において造血幹細胞と免疫担当細胞の細胞数を維持するニッチの構成と維持に必須であることを明らかにした。一方、骨髄で、CAR細胞が造血幹細胞・前駆細胞のニッチを構成することが明らかになると、その細胞数が造血幹・前駆細胞より遥かに多いので、造血幹細胞ニッチが占有されており生着させるためには、内因性の細胞を除去する必要があるという従来の定説と整合しない問題が生じた。そこで、私たちは、内因性の造血幹細胞の数倍の造血幹細胞を、放射線照射など血液細胞を除去する処置を行わないマウスに経静脈的に移植し、解析したところ、大部分の造血幹細胞が生着し、その細胞数は移植していないマウスの2倍以上に増加した。しかし、自然免疫の主役である骨髄球系細胞前駆細胞の細胞数は増加しなかった。以上より、造血幹細胞のニッチは、骨髄球系細胞前駆細胞のニッチと異なり、内因性の細胞数よりも遥かに多いことが明らかとなった。この成果より、造血幹細胞と造血前駆細胞の細胞数の調節機構の相違が示された。骨髄は免疫四次元空間の形成の中枢臓器であり、すべての免疫担当細胞は、骨髄で造血幹細胞から産生され、その種類や数がニッチ(niche)と呼ばれる特別な微小環境(場)によって精緻に制御されているがその機構は明らかでない。
KAKENHI-PLANNED-24111003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-24111003
マッカイ対応と導来圏に関する研究
トーラス上のダイマー模型と呼ばれる2色グラフに付いて考察した.まず,両立的でないダイマー模型を特性多角形を変化させずに両立的にできることを示した.ダイマー模型へ有限群作用が与えられたとき,対応するトーリック多様体にも標準束への作用が自明になるような形で同じ群が作用することを示した.3次元アフィントーリック多様体とそこへの有限群作用(前述の条件を満たす)が与えられたとき,それらに対応する群作用つきダイマー模型が構成できるかどうかという問題を考察し,多くの場合に肯定的な結果を得た.有限群作用をもつダイマー模型について,植田一石氏,Nolla氏とともに考察した.特に,群作用をもつ格子凸多角形が与えられたとき,対応する群作用つきダイマー模型で両立的なものが構成できるか,という問題について考察した.そのような群作用つきの両立的ダイマー模型が得られれば,トーリック的でない3次元ゴレンシュタイン非商特異点とその非可換クレパント解消の例が得られることになり,重要な問題である.これまでの研究で,群作用を考えない場合には,与えられた凸多角形に対応する両立的ダイマー模型の構成法が得られていた:凸多角形を大きな格子三角形に埋め込み,そこから頂点を一つずつ取り除く(多角形の周及び内部にある格子点のうち,一つの頂点以外の全ての格子点の凸包を取る)という操作を繰り返すと,与えられた多角形を得ることができることに注意する.この操作に対応するダイマー模型の変形を見つけることで,六角形のダイマー模型から出発して与えられた凸多角形に対応する両立的ダイマー模型が構成できる.本年度の考察により,位数が2,3,または4の回転の生成する群の作用する場合には,同様の方法が有効であることがわかった.一方,鏡映を含む群の場合には,同様の操作は有効でないことが明らかになった.そこで,格子多角形に対応する両立的ダイマー模型の構成法を見直し,既知のものとは異なる直接的な構成法を見いだした.この方法を使うと,格子凸多角形への,鏡映を含む任意の有限群作用に対し,対応する群作用つきダイマー模型で両立的なものが構成できることがわかった.トーラス上のダイマー模型と呼ばれる2色グラフに付いて考察した.まず,両立的でないダイマー模型を特性多角形を変化させずに両立的にできることを示した.ダイマー模型へ有限群作用が与えられたとき,対応するトーリック多様体にも標準束への作用が自明になるような形で同じ群が作用することを示した.3次元アフィントーリック多様体とそこへの有限群作用(前述の条件を満たす)が与えられたとき,それらに対応する群作用つきダイマー模型が構成できるかどうかという問題を考察し,多くの場合に肯定的な結果を得た.トーラス上のダイマー模型は両立生と呼ばれる条件を満たすとき,3次元ゴレンシュタインアフィントーリック多様体の可換/非可換クレパント解消を定めるなど,よい性質を持っていることがわかっている.任意の凸格子多角形に対して,それを特性多角形とする両立的ダイマー模型が存在することがわかっている.両立的ダイマー模型は,非退化という性質を持つが,非退化だからといって両立的とは限らない.そこで,非退化なダイマー模型が与えられたとき,その特性多角形を保ったまま両立的にできるか,という問題を考察した.Beil氏および植田氏との共同研究において,非退化なダイマー模型からいくつかの辺をうまく取り去ることによって,特性多角形を変えずにダイマー模型を両立的にできる,ということを証明し,プレプリントとして発表した.非退化ダイマー模型は作りやすい一方,両立性というのは強い条件であり,この研究により両立的ダイマー模型の例が容易に作れることが期待される.また,両立的なダイマー模型の定める箙の道代数は,ネター的かつカラビ・ヤウ的であるという良い性質を持っているが,両立生を仮定しないとネター的とはかぎらない.本研究によって,両立的でないダイマー模型の道代数を両立的なダイマー模型の道代数と比べることができ,その性質を調べることができるものと期待している.群作用を持つダイマー模型については,3次元ゴレンシュタインアフィントーリック多様体への付随する作用について考察した.多角形への作用が位数2の群による裏返し作用の場合,多様体への作用のさせ方は必ずしも多角形への作用から決まらないこと,作用を指定するためにどのようなデータを考えればよいかがわかった.引き続き,有限群作用つきダイマー模型について,連携研究者,研究協力者とともに考察した.まずダイマー模型に作用する群と格子多角形に作用する群の分類に若干食い違いのあることに注意した.ダイマー模型に作用する群はいわゆる壁紙群というものであるが,多角形への作用は行列による作用であり,ダイマー模型への作用が異なっても多角形への作用は等しくなることがある.そのことに注意して,与えられた多角形とその上の群作用について,群作用つきダイマー模型の構成について考察した.これまでの研究で,位数が2,3,4の回転の群の場合,およびいくつかの二面体群に群作用つき両立的ダイマー模型が構成された.なお,二面体群については,抽象的には同型でも格子への作用が同型でない場合があるので注意を要する.格子多角形に群が作用しているとき,対応するゴレンシュタインアフィントーリック多様体のこれらの群作用による商特異点を考えることができる.群作用つき両立的ダイマー模型の構成により,この特異点の非可換
KAKENHI-PROJECT-24540041
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24540041
マッカイ対応と導来圏に関する研究
クレパント解消が構成されたことになる.一方,我々の構成では,群作用がダイマー模型のある面を固定する場合にしか非可換クレパント解消の存在が言えない.その条件を満たさない場合についても計算を行ってみると,クレパント解消を持つ場合があり,ダイマー模型から構成された代数が非可換クレパント解消になっているかどうかという問題,そうでなくても非可換クレパント解消を持つかどうかという問題が残っている.代数幾何学群作用を持つダイマー模型に関する研究が大きく進展した.証明の方針は想定したものとは異なるものになってきているが,ダイマー模型の新たな構成法なども見いだすことができ,いろいろなことが明らかになった.このような結果/進展は研究の目的に合致しており,概ね順調に進展していると判断する.本研究の中で,非退化なダイマー模型からいくつかの辺を取り除いて両立的にできる,という結果を得た.これは,両立的なダイマー模型の存在を示すための役に立ち,特に群作用を持つダイマー模型で両立的なものを作るために役立つと期待できる.また,群作用を持つダイマー模型についての考察も進めており,それまでにわかっていなかったことがいくつか明らかになった.このような結果は研究の目的に合致しており,概ね順調に進展していると判断する.群作用を持つ両立的ダイマー模型の構成について,残っている場合を解決するべく,Nolla氏,植田氏と研究打ち合わせを行う.また,ダイマー模型の両立化とその応用について,Beil氏,植田氏と研究打ち合わせを行う.また,ダイマー模型を用いた,ADHM構成の拡張について,植田氏と議論する.ダイマー模型の高次元化については,植田氏,Craw氏らとともに,模索を続ける.群作用を持つ多角形に対して,群作用を持つ両立的なダイマー模型が構成できるかどうか考え,群作用を持つダイマー模型に関する研究を進める.これはNolla氏と連絡を取りながら行う.両立的でないダイマー模型から定まる箙の道代数については,Beil氏,植田氏と打ち合わせながら研究する.また,ダイマー模型の高次元化については,植田氏,Craw氏,Quintero-Velez氏と協力しながら考察し,実験的な計算などを行う.日程の都合で,計画していた海外出張に行くことができなかった.海外出張(イギリス)を行う.Nolla氏,Beil氏,植田氏,Craw氏,Quintero-Velez氏ら各国の研究者と打ち合わせを行うため,旅費を用いる.また,幅広い分野の知識を用いるため,図書を購入する.実験的な計算などのため,必要なら計算機やソフトウェアを購入する.
KAKENHI-PROJECT-24540041
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24540041
ディスペンサと精密ステージを利用した能動制御微粒子整列
自己整列微粒子は機能デバイスや各種プロセスのマスクに適用できる多様性があるものの,微粒子を分散させた懸濁液から基板を引上げる従来の手法では限られた微粒子を狭い範囲にしか整列できてない.そこで,ディスペンサと精密ステージを組合せて基板上での懸濁液の濡れ広がりを制御し,多様な微粒子を大面積にマスクレスで整列するための方法を提案するとともに,樹脂を用いた反転転写による固定法と研磨工具への応用を検討した.自己整列微粒子は機能デバイスや各種プロセスのマスクに適用できる多様性があるものの,微粒子を分散させた懸濁液から基板を引上げる従来の手法では限られた微粒子を狭い範囲にしか整列できてない.そこで,ディスペンサと精密ステージを組合せて基板上での懸濁液の濡れ広がりを制御し,多様な微粒子を大面積にマスクレスで整列するための方法を提案するとともに,樹脂を用いた反転転写による固定法と研磨工具への応用を検討した.微粒子を分散させた懸濁液を基板上に塗布・乾燥させることで微粒子の自己整列構造を容易に製作することができる.本研究ではディスペンサと精密ステージを組合せて基板上に自由なパターンの自己整列構造を製作する技術の確立を目的とし,今年度は純水を用いた濡れ広がり制御の基礎実験とともに,微粒子パターニングの基礎実験を進めた.ディスペンサの吐出/停止に加え,吐出速度およびノズルと基板の間隔を調整することで濡れ広がり幅を一定に保つ手法を提案するとともに,内径100ミクロンのノズルで濡れ広がりの幅を2mm程度に安定して制御できることを示した.主題である能動制御の基礎を実現できた.次いで,微粒子を含めた懸濁液の塗布による自己整列実験を進めた.直径1ミクロンのシリカ微粒子を水に分散させた懸濁液を用い,まず基板の濡れ性が微粒子整列に強く影響するため親水および疎水基板の両方について検証を行った.親水性基板では広い面積に濡れ広がることから微粒子数が不足する傾向がある一方で,疎水性基板では逆に狭い範囲に微粒子が多層をなす構造が得られた.さらに,吐出と併せてステージの移動を制御することで離散的なドットパターンおよび直線パターンに沿った微粒子構造をマスクレスで製作した.直径2mmの微粒子構造の島が4mm間隔で並んだ構造と直線パターンに沿った構造を製作した.直線パターンの実験では直径1ミクロンの粒子が幅20ミクロンで単層・最密に整列した構造ができた.直線を密に並べることで大面積構造実現の可能性を明らかにした.微粒子自己整列構造の応用についても検討を行い,ガスセンサとしての可能性を明らかにした.特に金属酸化物微粒子を整列させたガスセンサは小型かつ高感度なセンサの可能性を秘めている.微粒子を分散させた懸濁液を基板上に塗布・乾燥させることで微粒子の自己整列構造を容易に製作することができる.本研究ではディスペンサと精密ステージを組合せて基板上に自由なパターンの自己整列構造を製作する技術の確立を目的とし,今年度は大面積化と複雑なパターン生成および微粒子固定法の検討を進めたまず,大面積化のために直線パターンを密に並べる方法を検討した,パターンの間隔が狭いと構造が途切れてしまい,逆に密になると多層化する部分が増すため,この間隔を適切に制御する必要がある.これは必ずしも容易ではなかったが,乾燥速度を遅くして微粒子の拡散を促した結果,1ミクロンのシリカ微粒子を数センチメートル角の範囲に整列できた次いでスパイラル状の運動を与えながら懸濁液を吐出・乾燥させ,自己整列させる方法を検討した.このような形状は回転に伴う流れを生み出すことができ,回転研磨工具に適切なものである.しかし,基板が親水性の場合,パターン幅が数mmまで大きくなるため,ジェット吐出による細線化も併せて検討した.この方法で自己整列構造を積層することで三次元的な構造も製作可能となるさらに,自己整列させた微粒子の固定方法として紫外線硬化樹脂を用いる方法を検討した.微粒子との親和性が異なる樹脂を選択することで,整列微粒子を樹脂に固定しながら微粒子そのものを転写したり,あるいは微粒子の形状のみを転写したりすることができるゼータ電位の影響解明を目指した整列メカニズムのモデル化についても検討を進めた整列構造のさらなる高精度化や,複雑なパターンの創成等が今後の課題として挙げられる微粒子を分散させた懸濁液を基板上に塗布・乾燥させることで微粒子の自己整列構造を容易に製作することができる.本研究ではディスペンサと精密ステージを組合せて基板上に自由なパターンの自己整列構造を製作する技術の確立を目的とし,今年度は大面積化と複雑なパターン生成および微粒子固定法の検討を進めた.特定パターンに沿って微粒子列を形成する制御プログラムを開発し,製作を行った.これまで蓄積してきたディップコーティングによる整列とは条件が異なるため,懸濁液濃度や吐出速度およびステージ動作速度などの適正化を行った.基板上での懸濁液の濡れ広がり現象も複雑であり,これをモデル化することで最終的な微粒子列幅の見積もり方法を検討した.最終的に,所望のパターンに沿った幅数mmの微粒子整列構造を得ることができるようになった.研磨工具への応用を意図し,直径1ミクロンのシリカ微粒子からなる多条のスパイラル構造をシリコン基板上に作成した.次いで,.整列微粒子を別基板に転写するための技術開発を行った.
KAKENHI-PROJECT-21360065
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21360065
ディスペンサと精密ステージを利用した能動制御微粒子整列
光硬化性樹脂を始め,砥石の結合剤にも用いられるフェノール樹脂への転写条件を明らかにした.特徴は,厚みを持たせてゲル化させた樹脂に転写することで元の微粒子構造が多層であってもこれを反転し,微粒子高さを揃えられる点である.白色干渉計を用いて高さ評価を行ったところ,数mmの範囲で数ミクロンの高さ分布が見られた.さらに試作した研磨工具を用いてガラス板の加工実験を行った.回転工具基板と切れ刃面の間の平行度および回転精度が十分でなかったため,一様な研磨痕は見られなかったものの,個々の砥粒(微粒子)の擦過による研磨痕を観察することができた.延性モードに近い研磨痕もあり,工具としての一応の性能を評価することができた.
KAKENHI-PROJECT-21360065
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M2Mデータ管理のためのDHTを用いた多階層仮想化ネットワーク
各種センサデータ等のM2Mビッグデータを効率的に管理運用する技術は将来の生活やビジネスを支える基盤技術と期待されている。しかしながら、逐次的に測定・生成される大量のセンサデータ群をデータセンタ等で一元的に収集・管理する方法は、利用されることのないデータも収集・管理することとなり、効率的ではない。そこで、本研究では、各センサノードにおいて測定データを分散管理し、必要に応じてセンサノードからデータを取得することを可能とする「多階層DHT仮想化ネットワークを用いたセンサデータ分散管理手法」の創出した。これにより、大量のセンサデータを効率的に蓄積、検索することを実現する。各種センサデータ等のM2Mビッグデータを効率的に管理運用する技術は将来の生活やビジネスを支える基盤技術と期待されている。しかしながら、逐次的に測定・生成される大量のセンサデータ群をデータセンタ等で一元的に収集・管理する方法は、利用されることのないデータも収集・管理することとなり、ネットワークやサーバリソースの観点からは効率的ではない。そこで、本研究では、各センサノードにおいて測定データを分散管理し、必要に応じてセンサノードからデータを取得することを可能とする「多階層DHT仮想化ネットワークを用いたセンサデータ分散管理手法」の創出し、プロトタイプ実装し、その有効を実験的に検証することを目的としている。初年度では、実際に発生した地震や放射能漏れ等を対象に実測データをとりよせ、仮想化ネットワークを用いて、分散配置された各センサノードを連結する際のトポロジー構成法について検討を行った。測定されたデータの属性(測定項目種別や測定された値等)に応じて、適切な仮想化ネットワークの数やその形状は異なることが予想されることから、実際の測定データを用いた分析を行うことから、実用的な多階層の仮想化ネットワークの構成法の構築を目指す。また、この段階で仮想ネットワーク上の分散データ管理法として、構造化P2P技術(DHT)の最も簡易なChordを用いた。ここでは簡易な計算機シミュレーション評価により、多階層仮想ネットワークの有効性を検証した。各種センサデータ等のM2Mビッグデータを効率的に管理運用する技術は将来の生活やビジネスを支える基盤技術と期待されている。しかしながら、逐次的に測定・生成される大量のセンサデータ群をデータセンタ等で一元的に収集・管理する方法は、利用されることのないデータも収集・管理することとなり、ネットワークやサーバリソースの観点からは効率的ではない。そこで、本研究では、各センサノードにおいて測定データを分散管理し、必要に応じてセンサノードからデータを取得することを可能とする「多階層DHT仮想化ネットワークを用いたセンサデータ分散管理手法」の創出し、プロトタイプ実装し、その有効を実験的に検証する。平成28年度では、前年度の検討結果と第1次の性能評価結果を踏まえ、センサデータ分散管理手法のOpportunistic Skip Listを用いた方式拡張の詳細化を行った。測定対象や測定データのトラヒックモデルの設定によって、あるいはセンサノード等の配置等の条件によってネットワークの性能は大きく異なることが想定される。そこで、計算機シミュレーションの結果に応じて、適宜方式の改良を行った。また、年度の終盤では、テストベッド用実験装置を用いてテストベッド環境の構築を開始した。各種センサデータ等のM2Mビッグデータを効率的に管理運用する技術は将来の生活やビジネスを支える基盤技術と期待されている。しかしながら、逐次的に測定・生成される大量のセンサデータ群をデータセンタ等で一元的に収集・管理する方法は、利用されることのないデータも収集・管理することとなり、ネットワークやサーバリソースの観点からは効率的ではない。そこで、本研究では、各センサノードにおいて測定データを分散管理し、必要に応じてセンサノードからデータを取得することを可能とする「多階層DHT仮想化ネットワークを用いたセンサデータ分散管理手法」の創出する。各階層ごとに異なる属性のセンサデータを分散配置し、各階層をDHTを用いて構成、各階層間もP2P技術を用いて連結する。これにより、大量のセンサデータを効率的に蓄積、検索することを実現する。さらに、本研究では、提案手法をシミュレーションでの提案方式の特性を検証するため、提案管理技術を実際のセンサネットワーク上にプロトタイプ実装し、性能評価を行う。実際のネットワークを用いての性能検証より、提案方式の有効性を確認する。これまで、「多階層DHT仮想化ネットワークを用いたセンサデータ分散管理手法」の創出、およびシミュレーションによる性能評価については順調に進行してきたが、今年度予定していたプロトタイプの実装およびプロトタイプを用いた性能評価が計画通りに進んでいない。コンセプトレベルのものを実装できるまでのレベルまでの詳細設計ができていないこととがその大きな原因となっている。各種センサデータ等のM2Mビッグデータを効率的に管理運用する技術は将来の生活やビジネスを支える基盤技術と期待されている。しかしながら、逐次的に測定・生成される大量のセンサデータ群をデータセンタ等で一元的に収集・管理する方法は、利用されることのないデータも収集・管理することとなり、ネットワークやサーバリソースの観点からは効率的ではない。そこで、本研究では、各センサノードにおいて測定データを分散管理し、必要に応じてセンサノードからデータを取得することを可能とする「多階層DHT仮想化ネットワークを用いたセンサデータ分散管理手法」の創出した。各階層ごとに異なる属性のセンサデータを分散配置し、各階層をDHTを用いて構成、各階層間もP2P技術を用いて連結する。これにより、大量のセンサデータを効率的に蓄積、検索することを実現する。さらに、本研究では、提案手法をシミュレーションでの提案方式の特性を検証するため、提案管理技術を実際のセンサネットワーク上にプロトタイプ実装し、性能評価を行った。
KAKENHI-PROJECT-26420363
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M2Mデータ管理のためのDHTを用いた多階層仮想化ネットワーク
実際のネットワークを用いての性能検証より、提案方式の有効性を確認した。特に、最終年度では、コンセプトレベルにとどまっていたプロトタイプ実装を実験を行うことができる程度までに完成度を高め、実験的評価を十分に実施することができた。さらに、研究成果の対外発表がいまだ十分に行えていなかったことから、積極的な学会発表と論文投稿を行った。各種センサデータ等のM2Mビッグデータを効率的に管理運用する技術は将来の生活やビジネスを支える基盤技術と期待されている。しかしながら、逐次的に測定・生成される大量のセンサデータ群をデータセンタ等で一元的に収集・管理する方法は、利用されることのないデータも収集・管理することとなり、効率的ではない。そこで、本研究では、各センサノードにおいて測定データを分散管理し、必要に応じてセンサノードからデータを取得することを可能とする「多階層DHT仮想化ネットワークを用いたセンサデータ分散管理手法」の創出した。これにより、大量のセンサデータを効率的に蓄積、検索することを実現する。計画通り、実際の測定データを用いた分析を行うことができ、また実用的な多階層の仮想化ネットワークの構成法の基本検討、さらには簡易な評価ができた。しかしながら、当初想定していなかったネットワーク制御の複雑さやそれに伴う性能劣化が発生することが新たにわかった。初年度全体としてはおおむね順調といえるものの、来年度に向けて当初想定していなかった課題を残した。テストベッド用実験装置Iとテストベッド用実験装置IIおよびIIIを用いてテストベッド環境を完成させ、さらには提案センサデータ分散管理手法を実装したプロトタイプの作製を行う。本プロトタイプは、クロスボー社のMOTE上で実現することとする。まず、本プロトタイプ単体での機能検証を行う。この時点で、これまでの性能評価結果を踏まえて方式のさらなる詳細検討を行う。また、必要に応じて、前年度と同様に計算機シミュレーションでの機能検証および追加の性能評価を行う。コンセプトレベルのものを実装できるまでのレベルまでの詳細設計を行っていきたい。また、プロトタイプの実装およびプロトタイプを用いた性能評価を行っていきたい。さらに、研究成果の対外発表がいまだ十分に行えていないことから、積極的な学会発表と論文投稿を行っていく予定である。情報ネットワーク2年度では、初年度の検討による顕在化した新たな問題「ネットワーク制御の複雑さやそれに伴う性能劣化」について検討を行う。これら課題を解決した後、当初計画にあった、ネットワーク上に分散的に存在するクライアントからのセンサデータ要求内容に応じで、適切にデータ検索・転送を可能とするセンサデータ分散管理手法の検討を行うものとする。テストベット環境の構築が遅れており、支出おくれている。
KAKENHI-PROJECT-26420363
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中学校数学におけるESDの観点からの統計教材研究
本研究を遂行する上で次の3点を基本に考え、研究を行った。(1)環境データ、社会統計データを積極的に数学教材として取り入れる。(2)観察・実験やレポート作成、論述などを行う授業を行い、言葉や式、図、表、グラフ等を用いて論理的に考えたり、表現したり、説明したりする力の育成を重視。(3)ICTを活用して、生徒の表現力・説明力をつける。研究の結果、次のような教材開発を行い、その成果を発表した。次の教材は全て上記(1)(3)に準じている。1.教材開発「きまぐれな2つのサイコロの目の和」2つのサイコロの目の和を実験を通して、生徒自らが収集したデータを基に議論する。その学習の中でデータの収集、整理について、疑問を持ち、信頼ができるかどうかまで、クリティカルに捉える大切さを学ぶことができた。2.教材開発「2人のバスケットボール選手から選ぶ」本教材は、シュートの成績の代表値が同じ2人のバスケットボールの選手から、1人の選手を選ぶという文脈である。散らばり(分散)に注目して考えることの大切さと、生徒がヒストグラムの重要性を再認識できる課題である。四分位数・四分位範囲、箱ひげ図の導入問題としても活用できる問題である。3.教材開発「2つの充電池について」本教材は、同じ代表値やグラフを用いて、4つの違う文脈でそれらを考えるとき、結論が異なることを示した教材である。この教材は、統計を用いて判断するとき、文脈から「統計の何を見るか」、与えられた課題を分析して、何を判断の根拠とすればよいのか、自分で考える事の重要性を生徒が認識できるものである。4.教材開発「自作Excelシート中1統計グラフ」・「自作Excelシート標本調査」2つのエクセルシートは中学校の資料の活用分野で使用するために作成したものである。データを入力することで、度数分布表の作成、代表値(最大、最小値、範囲、平均値、中央値、最頻値)の計算、ヒストグラムや折れ線グラフの作成を自動でできるものである。また、比較、シミュレーションが容易に行え、生徒の操作性も良い。本研究を遂行する上で次の3点を基本に考え、研究を行った。(1)環境データ、社会統計データを積極的に数学教材として取り入れる。(2)観察・実験やレポート作成、論述などを行う授業を行い、言葉や式、図、表、グラフ等を用いて論理的に考えたり、表現したり、説明したりする力の育成を重視。(3)ICTを活用して、生徒の表現力・説明力をつける。研究の結果、次のような教材開発を行い、その成果を発表した。次の教材は全て上記(1)(3)に準じている。1.教材開発「きまぐれな2つのサイコロの目の和」2つのサイコロの目の和を実験を通して、生徒自らが収集したデータを基に議論する。その学習の中でデータの収集、整理について、疑問を持ち、信頼ができるかどうかまで、クリティカルに捉える大切さを学ぶことができた。2.教材開発「2人のバスケットボール選手から選ぶ」本教材は、シュートの成績の代表値が同じ2人のバスケットボールの選手から、1人の選手を選ぶという文脈である。散らばり(分散)に注目して考えることの大切さと、生徒がヒストグラムの重要性を再認識できる課題である。四分位数・四分位範囲、箱ひげ図の導入問題としても活用できる問題である。3.教材開発「2つの充電池について」本教材は、同じ代表値やグラフを用いて、4つの違う文脈でそれらを考えるとき、結論が異なることを示した教材である。この教材は、統計を用いて判断するとき、文脈から「統計の何を見るか」、与えられた課題を分析して、何を判断の根拠とすればよいのか、自分で考える事の重要性を生徒が認識できるものである。4.教材開発「自作Excelシート中1統計グラフ」・「自作Excelシート標本調査」2つのエクセルシートは中学校の資料の活用分野で使用するために作成したものである。データを入力することで、度数分布表の作成、代表値(最大、最小値、範囲、平均値、中央値、最頻値)の計算、ヒストグラムや折れ線グラフの作成を自動でできるものである。また、比較、シミュレーションが容易に行え、生徒の操作性も良い。
KAKENHI-PROJECT-21908023
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公開空地の質的整備水準と効用に関する実験的研究
下記の研究を行った。(1)既往研究の整理特にニューヨーク市における公開空地の質的基準のコントロールと実態について、研究的文献、条例の翻訳、レビューを行った。(2)「公開空地集積地区」における土地利用・市街地環境変容実態調査日比谷公園周辺地区、横浜駅西口地区を対象として、空間変容の経時的把握と問題点の整理のため、当該地区の立体的空間構成の変容過程を電算機3次元CGモデルとして構築した。(3)「公開空地」の質的基準に関するガイドラインの設計およびシミュレーションニューヨークの基準をモデルに、実際に行政運用上採用可能な「公開空地の質的基準」を、基準の主眼・詳細性・厳密性について数段階の異なるモデルを設計し、上記地区において、各質的基準を導入した場合の空間変容プロセスのシミュレーションを行った。結果として、植樹・ベンチ等について単なる設置密度基準を設けるだけでは、良好な公開空地の質は得られず、それらの配置に関する都市デザイン的コントロールを即地的条件に応じて行うことの必要性が明確になった。下記の研究を行った。(1)既往研究の整理特にニューヨーク市における公開空地の質的基準のコントロールと実態について、研究的文献、条例の翻訳、レビューを行った。(2)「公開空地集積地区」における土地利用・市街地環境変容実態調査日比谷公園周辺地区、横浜駅西口地区を対象として、空間変容の経時的把握と問題点の整理のため、当該地区の立体的空間構成の変容過程を電算機3次元CGモデルとして構築した。(3)「公開空地」の質的基準に関するガイドラインの設計およびシミュレーションニューヨークの基準をモデルに、実際に行政運用上採用可能な「公開空地の質的基準」を、基準の主眼・詳細性・厳密性について数段階の異なるモデルを設計し、上記地区において、各質的基準を導入した場合の空間変容プロセスのシミュレーションを行った。結果として、植樹・ベンチ等について単なる設置密度基準を設けるだけでは、良好な公開空地の質は得られず、それらの配置に関する都市デザイン的コントロールを即地的条件に応じて行うことの必要性が明確になった。
KAKENHI-PROJECT-05650577
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微細加工トンネル接合のノイズ
ノイズを測定するためのCoFeB/MgO/CoFGeB強磁性トンネル接合を,酸化時間,熱処理時間,電極材料を系統的に変化させて,既存のマグネトロンスパッタ装置を用いて作製した.また,メタルマスクを用いて最小で100x100μm^2サイズに,フォトリソグラフィを用いて最小で4x4μm^2サイズに微細加工した.これらの素子の1/fノイズ特性を測定し,以下の結果を得た.1.測定電流によるアニーリング効果ノイズ測定の際に印加する電流によりCoFeB/MgO/CoFeB強磁性トンネル接合がアニーリングされノイズ値が変化することを系統的に調べた.ノイズ値は電流印加後10時間で最大値を示した後,徐々に低減し,約80時間で飽和した.これらの結果は電流によりCoFeB内のB原子が移動し,安定状態に至る過程でノイズ値が変化するとして説明した.CoFeBの膜厚を減少させるとノイズ値が上昇した.これはCoFeBとTaの界面において磁気モーメントが減少する効果が伝導特性に顕著に現れたものと解釈した.ノイズ値の膜厚依存性に関しての系統的な実験結果から最適のCoFeB膜厚値が5nmであることを示した.3.CoFeB強磁性電極のB濃度依存性CoFeBのB濃度を系統的に変化させてノイズ特性を比較した.B濃度の上昇とともにノイズ値は上昇した。これはB濃度の上昇により,測定の際に印加する電流によるBの移動などを引き起こすサイトが増大することによるものであると結論した.4.磁気抵抗比とノイズの相関作製した全ての接合の磁気抵抗比とノイズ値の相関を調べた.磁気抵抗比の上昇とともにノイズは低減する傾向を示し,磁気抵抗値50%以上ではほぼ一定のノイズ値を示すことを明らかにした.1.ノイズ測定用トンネル接合の作製ノイズを測定するための強磁性トンネル接合を作製した.既存のマグネトロンスパッタ装置を用いて,Ta(1.5nm)/FeNi(3nm)/Cu(5nm)/FeCo(5nm)/Al(1.6nm)-O/FeCo(4nm)/IrMn(10nm)/NeFe(20nm)の構成の接合を作製した.また,メタルマスクを用いて最小で100x100μm^2サイズに,またフォトリソグラフィを用いて最小で4x4μm^2サイズに微細加工した.2.磁気ノイズ測定装置の立ち上げ強磁性トンネル接合からの磁気ノイズの測定を行うための装置をくみ上げた.既存のベクトルシグナルアナライザに,ローノイズアンプと制御用のパソコンを組み合わせた.またシステム全体を電気磁気シールドルーム内に配置した.これらにより,システムのバックグラウンドのノイズレベルを1x10^<-15>V^2/Hzまで低減することに成功した.また,バッテリ駆動の電源を用いることにより,ラインノイズにより発生する50Hzの高調波のスパイクノイズを無視できるレベルまで低減した.さらに,広い周波数帯域の測定を自動で行うための測定プログラムを作成した.これにより,周波数1Hzから10MHzまでのノイズ測定が可能となった.3.強磁性トンネル接合の磁気的,電気的特性の測定とノイズの周波数依存性の測定強磁性トンネル接合の磁気抵抗効果を測定した.また,同じ素子のノイズの周波数依存性を立ち上げたノイズ測定装置を用いて行った.来年度は特性の異なる素子に対して系統的に測定し,これらの相関を詳細に調べることを予定している.ノイズを測定するためのCoFeB/MgO/CoFGeB強磁性トンネル接合を,酸化時間,熱処理時間,電極材料を系統的に変化させて,既存のマグネトロンスパッタ装置を用いて作製した.また,メタルマスクを用いて最小で100x100μm^2サイズに,フォトリソグラフィを用いて最小で4x4μm^2サイズに微細加工した.これらの素子の1/fノイズ特性を測定し,以下の結果を得た.1.測定電流によるアニーリング効果ノイズ測定の際に印加する電流によりCoFeB/MgO/CoFeB強磁性トンネル接合がアニーリングされノイズ値が変化することを系統的に調べた.ノイズ値は電流印加後10時間で最大値を示した後,徐々に低減し,約80時間で飽和した.これらの結果は電流によりCoFeB内のB原子が移動し,安定状態に至る過程でノイズ値が変化するとして説明した.CoFeBの膜厚を減少させるとノイズ値が上昇した.これはCoFeBとTaの界面において磁気モーメントが減少する効果が伝導特性に顕著に現れたものと解釈した.ノイズ値の膜厚依存性に関しての系統的な実験結果から最適のCoFeB膜厚値が5nmであることを示した.3.CoFeB強磁性電極のB濃度依存性CoFeBのB濃度を系統的に変化させてノイズ特性を比較した.B濃度の上昇とともにノイズ値は上昇した。これはB濃度の上昇により,測定の際に印加する電流によるBの移動などを引き起こすサイトが増大することによるものであると結論した.4.磁気抵抗比とノイズの相関作製した全ての接合の磁気抵抗比とノイズ値の相関を調べた.磁気抵抗比の上昇とともにノイズは低減する傾向を示し,磁気抵抗値50%以上ではほぼ一定のノイズ値を示すことを明らかにした.
KAKENHI-PROJECT-04F04074
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プラズマによる血液凝固促進現象の剤型加工(タンパク質機能改変)への展開
本研究は、プラズマによる血液凝固現象として、特にタンパク質凝集現象のメカニズムの理解を進めることを目的としている。以下の1)、及び2)の研究を行うことにより、各プラズマ特性とタンパク質凝集効果との関係を調べた。1)異なる放電条件での低エネルギー大気圧プラズマの特性計測:作動ガスや照射距離等の放電条件を変えて実験を行った際のプラズマの特性計測と解析を行った。プラズマ源としては、研究室において開発された血液凝固作用のある低エネルギー大気圧プラズマを用いた。主な計測としては、発光分光法による活性種計測、印可電圧・電流・電力等の電気特性計測、及びプラズマの発光伝播計測等を行った。また、特別研究員奨励費によりイタリアのConsorzio RFXに滞在し、幾つかのプラズマ装置の特性計測を行い、違いを明確化した。これらの研究活動により、放電形式や放電条件の相違に起因する幾つかのプラズマ特性の相違が明らかとなったことで、プラズマ中の反応過程の理解を進めることができた。2)血清タンパク質への低エネルギー大気圧プラズマ照射実験:1)の研究により得られた知見を元に、放電条件を変化させて生成した特性が異なるプラズマを用いて、血清タンパク質へのプラズマ照射実験を行った。そして、この時のプラズマの特性とタンパク質凝集効果との関係を調べた。結果として、血清タンパク質凝集の様相は放電条件によって異なることが見出され、プラズマ特性の相違と凝集効果の相違の相関関係を解析することで、幾つかのプラズマパラメータと凝集作用との関係が明らかとなった。以上の研究から、特性が異なるプラズマを用いてタンパク質への照射を行うことで、凝集現象の様相を変化させることが可能であることが明らかとなったことで、プラズマによる凝集現象の制御に基づいた剤型加工技術開発に展開されることが期待される。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。本研究は、プラズマによる血液凝固現象として、特にタンパク質凝集現象のメカニズムの理解を進めることを目的としている。以下の1)、及び2)の研究を行うことにより、各プラズマ特性とタンパク質凝集効果との関係を調べた。1)異なる放電条件での低エネルギー大気圧プラズマの特性計測:作動ガスや照射距離等の放電条件を変えて実験を行った際のプラズマの特性計測と解析を行った。プラズマ源としては、研究室において開発された血液凝固作用のある低エネルギー大気圧プラズマを用いた。主な計測としては、発光分光法による活性種計測、印可電圧・電流・電力等の電気特性計測、及びプラズマの発光伝播計測等を行った。また、特別研究員奨励費によりイタリアのConsorzio RFXに滞在し、幾つかのプラズマ装置の特性計測を行い、違いを明確化した。これらの研究活動により、放電形式や放電条件の相違に起因する幾つかのプラズマ特性の相違が明らかとなったことで、プラズマ中の反応過程の理解を進めることができた。2)血清タンパク質への低エネルギー大気圧プラズマ照射実験:1)の研究により得られた知見を元に、放電条件を変化させて生成した特性が異なるプラズマを用いて、血清タンパク質へのプラズマ照射実験を行った。そして、この時のプラズマの特性とタンパク質凝集効果との関係を調べた。結果として、血清タンパク質凝集の様相は放電条件によって異なることが見出され、プラズマ特性の相違と凝集効果の相違の相関関係を解析することで、幾つかのプラズマパラメータと凝集作用との関係が明らかとなった。以上の研究から、特性が異なるプラズマを用いてタンパク質への照射を行うことで、凝集現象の様相を変化させることが可能であることが明らかとなったことで、プラズマによる凝集現象の制御に基づいた剤型加工技術開発に展開されることが期待される。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-17J01536
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情報源の品位に重点を置いた新世代マルチメディアシステムに関する研究
1.超高品位マルチメディアコミュニケーションシステムの検討、高品位要因の評価(1)超高品位マルチメディアコミュニケーションシステムの試作ネットワークを介して高速ファイル転送機能を有する36bits/pel画像表示システムを試作した。内蔵する高速CPUによって画像の高速演算処理が可能で、比較評価実験やテストパターン生成を高速且つ柔軟に処理できる。(2)画像品位に関する検討上記36bits/pel画像表示システムを用いた評価実験により、高い階調性が高度な画像再現を有することが認められ、特に有名画家の絵画に見られるような2次元での表示でありながら奥行き感を知覚させる高度な視知覚効果があることを明らかにした。36bits/pelシステムは写真、印刷品質に迫る高品位画像再現性を有しており、超高品位画像メディア再現に必須な要素となる。(3)音響品位に関する検討高品位音響再現に関係する評価語を評価実験と統計処理により洗い出した。その結果、深々さ、奥行き感などの音響雰囲気の再現性が重要であることを明らかにし、これが波面の再現性、位相、群遅延特性などの物理要因に大きく関係することをつきとめた。上記(2)及び(3)は超高品位マルチメディアコミュニケーションシステムに必須な要素たるものであり、今後これらを融合したシステムの構築に取り組んでいきたい。(4)画質評価尺度の検討画像符号化による画質劣化の状態を客観的に計量する尺度をa)モノクロ動画像、b)カラー静止画像について検討した。モノクロ動画像では「動きの自然さ、滑らかさ」に関する歪み要因によって、カラー静止画像では均等色空間での色差から色相、彩度、明度等の各要素の誤差の「画像輪郭構造の損傷」「空間的なつながり」に関する歪み要因によって各々主観評価値を90%を越す精度で近似できることを明らかにした。今後これらを統合してカラー動画像の画質評価尺度の実現を目指す。2.メディア分析(同期)に関する研究(顔画像からの表情解析)顔画像をフラクタル分析し、目・鼻・口等の顔部品を検出して表情を解析・識別する手法を開発した。フラクタル分析を用いたことで顔画像サイズや傾き、照明の影響を受けず、顔部品の位置を高精度に検出できた。またフラクタル次元値によって各顔部品形状を解析し、笑い、あくび等の表情変化が比較的大きな表情を良好に識別出来た。1.画像品位に関する物理要因として階調性に注目し、36ビット階調表示システムを用いて従来の24ビット階調との比較を心理実験によって行ったところ、「リッチな雰囲気」、「自然な雰囲気」といった高度な評価語による優れた画像再現性が認められ、写真、印刷画像品質に迫る高画質再現性が実現できることが明らかとなった。今後、更に物理要因と心理要因との関連を細かく検討し、各要因間の結びつきなどについて明らかにしていく。2.均等色空間内で顔画像のフラクタル性に注目して特徴抽出を行う手法の検討に着手した。フラクタル次元等のパラメータの解析により、頬の輪郭、目、口の形状解析の可能性が期待できる。解析方法の確立と精度の検討、表情解析、表情記述への応用等の検討を次年度へ継続する。3.動画像品質の客観的評価尺度の実現に取り組み、「動きの自然さ、滑らかさ」に関する歪み要因を用いて主観評価を90%を越す精度で近似できる客観評価尺度を得ることが出来た。ただし、現段階でもモノクロ動画像に対する尺度であり、画像品質を劣化させる条件として特定の符号化を用いているため、評価尺度としての汎用性や信頼性の検討が必要と考えている。これらの点については次年度以降に取り組む。4.音響の品位に関して音の波面の再現性を取り上げ、群遅延等の制御により「音のまとまり」、「奥ゆき感」などの音場雰囲気の再現性を改善できることが確かめられた。5.母音知覚における文脈効果モデル、側音化効果の知覚と音響特性との関係、に関する基礎的研究を行った。文脈効果の大きさと刺激の音韻性との関係を明らかにして文脈効果モデルを構築することができた。また、側音化効果による発音障害をエミュレートする音響モデルを構築し、このモデルを用いて発音された言葉が知覚できる限界とこれを改善するための物理要因の幾つかを明らかにした。1.超高品位マルチメディアコミュニケーションシステムの検討、高品位要因の評価(1)超高品位マルチメディアコミュニケーションシステムの試作ネットワークを介して高速ファイル転送機能を有する36bits/pel画像表示システムを試作した。内蔵する高速CPUによって画像の高速演算処理が可能で、比較評価実験やテストパターン生成を高速且つ柔軟に処理できる。(2)画像品位に関する検討上記36bits/pel画像表示システムを用いた評価実験により、高い階調性が高度な画像再現を有することが認められ、特に有名画家の絵画に見られるような2次元での表示でありながら奥行き感を知覚させる高度な視知覚効果があることを明らかにした。36bits/pelシステムは写真、印刷品質に迫る高品位画像再現性を有しており、超高品位画像メディア再現に必須な要素となる。(3)音響品位に関する検討高品位音響再現に関係する評価語を評価実験と統計処理により洗い出した。その結果、深々さ、奥行き感などの音響雰囲気の再現性が重要であることを明らかにし、これが波面の再現性、位相、群遅延特性などの物理要因に大きく関係することをつきとめた。上記(2)及び(3)は超高品位マルチメディアコミュニケーションシステムに必須な要素たるものであり、今後これらを融合したシステムの構築に取り組んでいきたい。(4)画質評価尺度の検討画像符号化による画質劣化の状態を客観的に計量する尺度を
KAKENHI-PROJECT-07308062
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07308062
情報源の品位に重点を置いた新世代マルチメディアシステムに関する研究
a)モノクロ動画像、b)カラー静止画像について検討した。モノクロ動画像では「動きの自然さ、滑らかさ」に関する歪み要因によって、カラー静止画像では均等色空間での色差から色相、彩度、明度等の各要素の誤差の「画像輪郭構造の損傷」「空間的なつながり」に関する歪み要因によって各々主観評価値を90%を越す精度で近似できることを明らかにした。今後これらを統合してカラー動画像の画質評価尺度の実現を目指す。2.メディア分析(同期)に関する研究(顔画像からの表情解析)顔画像をフラクタル分析し、目・鼻・口等の顔部品を検出して表情を解析・識別する手法を開発した。フラクタル分析を用いたことで顔画像サイズや傾き、照明の影響を受けず、顔部品の位置を高精度に検出できた。またフラクタル次元値によって各顔部品形状を解析し、笑い、あくび等の表情変化が比較的大きな表情を良好に識別出来た。1.超高品位マルチメディアコミュニケーションシステムの検討、高品位要因の評価(1)超高品位マルチメディアコミュニケーションシステムの試作ネットワークを介して高速ファイル転送機能を有する36bits/pel画像表示システムを試作した。内蔵する高速CPUによって画像の高速演算処理が可能で、比較評価実験やテストパターン生成を高速且つ柔軟に処理できる。(2)画像品位に関する検討上記36bits/pel画像表示システムを用いた評価実験により、高い階調性が高度な画像再現を有することが認められ、特に有名画家の絵画に見られるような2次元での表示でありながら奥行き感を知覚される高度な視知覚効果があることを明らかにした。36bits/pelシステムは写真、印刷品質に迫る高品位画像再現性を有しており、超高品位画像メディア再現に必須な要素となる。(3)音響品位に関する検討高品位音響再現に関係する評価語を評価実験と統計処理により洗い出した。その結果、深々さ、奥行き感などの音響雰囲気の再現性が重要であることを明らかにし、これが波面の再現性、位相、群遅延特性などの物理的要因に大きく関係することをつきとめた。上記(2)及び(3)は超高品位マルチメディアコミュニケーションシステムに必須な要素たるものであり、今後これらを融合したシステムの構築に取り組んでいきたい。(4)画質評価尺度の検討画像符号化による画質劣化の状態を客観的に計量する尺度をa)モノクロ動画像、b)カラー静止画像について検討した。モノクロ動画像では「動きの自然さ、滑らかさ」に関する歪み要因によって、カラー静止画像では均等色空間での色差から色相、彩度、明度等の各要素の誤差の「画像輪郭構造の損傷」「空間的なつながり」に関する歪み要因によって各々主観評価値を90%を越す精度で近似できることを明らかにした。今後これらを統合してカラー動画像の画質評価尺度の実現を目指す。2.メディア分析(同期)に関する研究(顔画像からの表情解析)
KAKENHI-PROJECT-07308062
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ホイスラー合金を用いたスピン注入ヘテロ構造の製作とスピン輸送特性の研究
本研究は、ハーフメタル特性に由来する高いスピン偏極率を本質的に有するCo系ホイスラー合金とMgOバリアを組み合わせた、半導体への高効率スピン注入ヘテロ構造デバイス基盤技術を構築すると共に、その優れたスピン輸送特性を実証することを目的にしている。前年度までにCo系ホイスラー合金の一つであるCo_2MnSiを電極材料に用いた強磁性トンネル接合(MTJ)に対し、室温で340%、4.2Kで1800%を超える高いトンネル磁気抵抗(TMR)比を実証した。また、次世代のMOSFETのチャネル材料として期待されるGeに着目し、急峻で平坦なヘテロ界面を有する全層エピタキシャル成長のCo_2MnSi/MgO/Geヘテロ構造の作製法を確立した。強磁性体電極を用いた半導体スピントロニクスデバイスで構成される論理回路の機能を能動的に変えるためには、MOSFETのドレインまたはソース上の強磁性電極をMTJに置換した構造において、MTJのスピン偏極電流による磁化反転技術を利用する方法が考えられる。このスピン偏極電流による磁化反転技術を利用するためには、高品質なMTJが必須なため、当該年度では、Ge基板上に高品質なMTJの作製技術の確立を試みた。MgO中間層を介してGe基板上へ作製したCo_<50>Fe_<50>/MgO/Co_<50>Fe_<50>MTJに対して、MgO中間層の膜厚を10nmとしたMTJでMgO基板上に作製したMTJと同程度のTMR比を実証した。また、MgO中間層の膜厚が1nmとスピン注入に好ましいと考えられる厚みのMTJに対して室温で110%(4.2Kで170%)の良好なTMR比を実証した。この高品質なMTJの実現によってMTJからのスピン注入および、スピン偏極電流による磁化書き換えの実証が期待される。本研究は、ハーフメタル特性に由来する高いスピン偏極率を本質的に有するCo系ホイスラー合金と、MgOバリアを組み合わせた、半導体への高効率スピン注入ヘテロ構造のデバイス基盤技術を構築すると共に、その優れたスピン輸送特性を実証することを目的にしている。現在までに、MgOとの格子ミスマッチの比較的小さいCo_2MnGe(CMG)を用いたCMG/MgO/CMG強磁性トンネル接合(MTJ)に対し、室温で220%、4.2Kで650%の高いトンネル磁気抵抗(TMR)比を実証している。しかし、ハーフメタル特性を十分に引き出すためには、さらに高品質なヘテロ構造を作製し、ハーフメタルギャップ中での状態密度を減少させることが重要となる。そこで、当該年度は、CMGと同様にハーフメタル特性が指摘されているCo_2MnSi(CMS)に着目し、CMS/MgO/CMS MTJ (CMS MTJ)の品質を改善することを試みた。ここでは、CMSとの格子ミスマッチの小さい(0.8%)CoFeバッファ層を導入することにより、MTJ 3層構造の格子ミスマッチを低減し、室温で340%、4.2Kで1800%を超える高いTMR比を得た。一方、半導体中への高効率スピン注入の実証に向けては、次世代のMOSFETのチャネルとして期待されるGeに着目し、急峻で平坦なヘテロ界面を有する全層エピタキシャル成長のCMS/MgO/Geヘテロ構造の作製法を確立した。作製したCMS薄膜はハーフメタルに対する理論値の98%に相当する飽和磁化を有している。構造的・磁気的に高品質なヘテロ接合の実現により、高効率スピン注入の実証が期待される。本研究は、ハーフメタル特性に由来する高いスピン偏極率を本質的に有するCo系ホイスラー合金とMgOバリアを組み合わせた、半導体への高効率スピン注入ヘテロ構造デバイス基盤技術を構築すると共に、その優れたスピン輸送特性を実証することを目的にしている。前年度までにCo系ホイスラー合金の一つであるCo_2MnSiを電極材料に用いた強磁性トンネル接合(MTJ)に対し、室温で340%、4.2Kで1800%を超える高いトンネル磁気抵抗(TMR)比を実証した。また、次世代のMOSFETのチャネル材料として期待されるGeに着目し、急峻で平坦なヘテロ界面を有する全層エピタキシャル成長のCo_2MnSi/MgO/Geヘテロ構造の作製法を確立した。強磁性体電極を用いた半導体スピントロニクスデバイスで構成される論理回路の機能を能動的に変えるためには、MOSFETのドレインまたはソース上の強磁性電極をMTJに置換した構造において、MTJのスピン偏極電流による磁化反転技術を利用する方法が考えられる。このスピン偏極電流による磁化反転技術を利用するためには、高品質なMTJが必須なため、当該年度では、Ge基板上に高品質なMTJの作製技術の確立を試みた。MgO中間層を介してGe基板上へ作製したCo_<50>Fe_<50>/MgO/Co_<50>Fe_<50>MTJに対して、MgO中間層の膜厚を10nmとしたMTJでMgO基板上に作製したMTJと同程度のTMR比を実証した。また、MgO中間層の膜厚が1nmとスピン注入に好ましいと考えられる厚みのMTJに対して室温で110%(4.2Kで170%)の良好なTMR比を実証した。この高品質なMTJの実現によってMTJからのスピン注入および、スピン偏極電流による磁化書き換えの実証が期待される。
KAKENHI-PROJECT-10J00152
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農業生態系の化学的制御に関わる各種生態相関物質の合成と新規農薬リード化合物の探索
1.食用キノコ,エノキタケに含まれるセスキテルペンであるエノキポジンA,B,C,Dの全合成を達成した。2.ワラビに着生する放線菌が生産し,植物に対して強力な不定根形成促進作用を示すスピロ環型ポリケチドであるプテリジン酸A及びBの全合成を完成した。3.タバコ野火病菌が生産するβ-ラクタムアミノ酸型植物毒素タブトキシニン-β-ラクタムの合成を達成した。4.放線菌(Streptomyces alboniger)の気菌糸誘導活性物質であるパママイシン-635Aの南半球部の部分合成を完了した。5.海洋生物クリオネの防御物質であるプテロエノンの合成を達成した。6.ショウジョウバエ(Drosophila ananassae, D.pallidosa)の性フェロモン主成分の効率的簡便合成法を開発した。7.馬糞生息菌が生産する抗菌物質であるコミュニオールA,B,C,D,E,F,Hの全合成を達成するとともに,提唱されていた立体化学を全て訂正した。8.イネいもち病菌が生産する植物毒素ピリキュオールの全合成を完成し,絶対立体配置を決定した。9.ニワトリの餌となる魚粉中に含まれるニワトリ胃潰瘍誘導物質ジゼロシンの効率的短段階合成を開発した。10.ワラビに着生する放線菌が生産する植物発根阻害物質エライオフィリンのマクロジオライド型コアの短段階簡便合成法を確立した。11.その他:土壌中のカビから単離された血管新生阻害物質エポキシキノールA,Bの効率的全合成を達成した。ある種の海藻に含まれるアポトーシス誘導物質である多不飽和共役脂肪酸類の簡便な合成を達成した。ベトナム産高木に含まれるリツェアバーチシロールA,Bの両鏡像体の合成を完成した。1.食用キノコ,エノキタケに含まれるセスキテルペンであるエノキポジンA,B,C,Dの全合成を達成した。2.ワラビに着生する放線菌が生産し,植物に対して強力な不定根形成促進作用を示すスピロ環型ポリケチドであるプテリジン酸A及びBの全合成を完成した。3.タバコ野火病菌が生産するβ-ラクタムアミノ酸型植物毒素タブトキシニン-β-ラクタムの合成を達成した。4.放線菌(Streptomyces alboniger)の気菌糸誘導活性物質であるパママイシン-635Aの南半球部の部分合成を完了した。5.海洋生物クリオネの防御物質であるプテロエノンの合成を達成した。6.ショウジョウバエ(Drosophila ananassae, D.pallidosa)の性フェロモン主成分の効率的簡便合成法を開発した。7.馬糞生息菌が生産する抗菌物質であるコミュニオールA,B,C,D,E,F,Hの全合成を達成するとともに,提唱されていた立体化学を全て訂正した。8.イネいもち病菌が生産する植物毒素ピリキュオールの全合成を完成し,絶対立体配置を決定した。9.ニワトリの餌となる魚粉中に含まれるニワトリ胃潰瘍誘導物質ジゼロシンの効率的短段階合成を開発した。10.ワラビに着生する放線菌が生産する植物発根阻害物質エライオフィリンのマクロジオライド型コアの短段階簡便合成法を確立した。11.その他:土壌中のカビから単離された血管新生阻害物質エポキシキノールA,Bの効率的全合成を達成した。ある種の海藻に含まれるアポトーシス誘導物質である多不飽和共役脂肪酸類の簡便な合成を達成した。ベトナム産高木に含まれるリツェアバーチシロールA,Bの両鏡像体の合成を完成した。農業生態系における生物間の相互作用に関わる各種生態相関物質の合成を実施した。ワラビに着生する放線菌が生産し、植物の根の成長を強力に促進するスピロアセタール型オクタケチド化合物であるpteridic acid AおよびBについては,Evans型の不斉アルドール反応,福山型のアセチレンカップリングおよびHorner-Emmons型のWittig反応を炭素-炭素結合反応として用いることにより,世界初の全合成を達成した。インドから東南アジア地域に自生する植物であるインドセンダンに含まれる昆虫摂食阻害物質azadirachtinについては,全合成達成のために大量供給法の確立が望まれていた2-acetoxy-7-(t-butyldimethylsilyl)oxy-6-methylbicyclo[4.4.0]dec-4-en-3-oneの短工程で再現性のある調製法を確立し,そのシクロペンタジエンとのDiels-Alder反応により定量的に結晶性4環性中間体を得ることに成功した。ゼニゴケから単離されたbergamotane型セスキテルペンであり、azaditachtinに匹敵する昆虫摂食阻害活性を有するclavigerin BおよびCについては、全合成の鍵となるケテン型中間体の[2+2]型環化反応に成功し,現在側鎖部分との連結を進めている。植物毒素ascaulitoxinについては,すべての不斉炭素原子を具備した炭素骨格の形成を完了した。現在、官能基の変換を進めており,全合成の完成も間近い。その他,食用キノコ,エノキタケが生産する抗菌物質であるcuparane型セスキテルペン,enokipodin A-Dについて,Meyersの不斉アルキル化反応を鍵反応として,それらすべてを光学活性体として全合成することに世界で初めて成功した。
KAKENHI-PROJECT-16380075
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農業生態系の化学的制御に関わる各種生態相関物質の合成と新規農薬リード化合物の探索
また,タバコ野火病菌が生産する植物毒素であるtabtoxinine-β-lactamの立体選択的な全合成,クリオネが生産する防御物質pteroenoneの光学活性体の全合成,ある種のカビが生産する血管新生阻害物質epoxyquinolAおよびBの光学活性体の全合成に成功した。昨年度に引き続き,農業生態系における生物間の相互作用に関わる各種の生態相関物質の合成を実施した。まず,ワラビに着生する放線菌が生産し,植物に対して植物ホルモンであるインドール酢酸と同等以上の不定根形成促進作用を示すスピロアセタール型オクタケチド化合物であるpteridic acid AおよびBの全合成を実施した。チオールエステルを用いるアセチレンカップリング反応により,以前の合成を大幅に改良したpteridic acid Aの新規合成法を開発するとともに,スピロアセタール型合成中間体のルイス酸触媒によるエピマー化に成功して,pteridic acid Bの合成も達成した。馬糞中に生息するカビ(Podospora communis)が生産するテトラヒドロフラン型抗菌物質であるcommuniol A-Gの内,まずA-Cの全合成を達成した。さらに,より複雑な化学構造を有するcommuniol Dについて,分子内Michael付加反応を用いた効率的な全合成を達成するとともに,不飽和アルデヒド型側鎖を有するcommuniol Hの全合成も達成した。本合成研究により,communiol A-DおよびHの立体構造決定の誤りを指摘することができた。いもち病菌が生産し,イネに対していもち病様の病態を強力に誘導する植物毒素であるpyricuolの合成を実施し,短工程で光学活性体を全合成することに成功するとともに,未知であったpyricuolの絶対立体配置を決定した。また同時に,pyricuolの生合成経路に関する提案を行った。ショウジョウバエ類のクチクラ層に存在する炭化水素系の性フェロモンの合成研究を実施した。従来の合成法の問題点を考察することにより,短工程で且つ最終生成物の化学純度も高い新規合成法の開発に成功し,種の分化に関わる遺伝生物学的基礎研究のための標品の供給を行った。魚粉に含まれ,ニワトリの砂肝に胃潰瘍を生じさせるgizzerosineの効率的合成法の開発に成功し,応用研究のため標品の供給を行った。1.ワラビに着生する放線菌が生産し,植物に対して強力な不定根形成促進作用を示すスピロ環型ポリケチドであるプテリジン酸A及びBの全合成を完成した(エバンス不斉アルドール反応と福山カップリングを鍵反応とし,既知物質からわずか14工程)。ルイス酸によるスピロアセタール位不斉炭素の異性化に関する考察を行なった。2.馬糞中に生息するカビが生産するテトラヒドロフラン型抗菌物質であるコミュニオールD, E, F, Hの提唱立体化学を改訂し,全合成も達成した。シャープレス不斉ジヒドロキシル化を共通の鍵反応とした。コミュニオールDの合成では,不斉中心の動的・熱力学的収束を伴うオキシマイケル反応により新規な2,8-ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン骨格の構築法を開発した。また,コミュニオールE, Fの合成では,アリルシラン型中間体の分子内環化による新規な2-オキサビシクロ[3.3.0]オクタン骨格の形成法を開発した。3.ニワトリの胃潰瘍形成物質であるジゼロシンの効率的合成法を開発した。
KAKENHI-PROJECT-16380075
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活性酸素シグナル解明のための光制御ピンポイントNO類ドナー
これまでの研究成果を基に活性酸素シグナルの解明に応用するための光制御NO類ドナーを開発する。具体的には、既に開発済みの二光子作動型NOドナーを培養細胞系に適用し、照射条件・濃度条件を検討して細胞内NO放出能を検証する。また、ミトコンドリア局在性官能基の導入によりミトコンドリア特異性を付与するとともにNO放出の高効率化を目指す。さらに、独自の光誘起反応を基に化合物を分子設計し、生理学的条件で使用可能なONOO-ドナーを開発する。培養細胞へ適用可能な光制御HNOドナー開発も目指す。上記の目標のもと、今年度は下記の結果を得た。光制御NOドナーについては、これまでに開発した可視光作動型NOドナーFlu-DNB-DBについて、培養細胞系への適用可能性を検討した。Flu-DNB-DBを予め投与した培養細胞にNO蛍光プローブを投与し、可視光(青色)を照射したところ、NO産生を示す蛍光上昇が観察され、Flu-DNB-DBが培養細胞で可視光作動型NOドナーとして機能することが示された。本化合物での知見を基に、可視光作動型ミトコンドリア局在型光制御NOドナーの分子設計を行った。光制御HNOドナーについては、前年度に合成した多数の自発分解型HNOドナーの誘導体から、効率のよいドナー化合物を選択し、光解除性保護基を導入することで光作動性HNOドナー開発を行った。その結果、解除光照射でドナー化合物が期待通り反応することが確かめられたが、産生されたHNOが、副生成物と反応することが判明し、光解除性保護基の改良が必要であることがわかった。また、前年度までに開発した光作動型HNOドナーについて、暗条件での一定のHNO放出がみられることを考慮しつつ培養細胞系への適用を行ったところ、光照射に依存したHNO由来細胞応答であるCGRP産生上昇を観察することができた。24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度が最終年度であるため、記入しない。これまでの研究成果を基に活性酸素シグナルの解明に応用するための光制御NO類ドナーを開発する。具体的には、既に開発済みの二光子作動型NOドナーを培養細胞系に適用し、照射条件・濃度条件を検討して細胞内NO放出能を検証する。また、ミトコンドリア局在性官能基の導入によりミトコンドリア特異性を付与するとともにNO放出の高効率化を目指す。さらに、独自の光誘起反応を基に化合物を分子設計し、生理学的条件で使用可能なONOO-ドナーを開発する。培養細胞へ適用可能な光制御HNOドナー開発も目指す。上記の目標のもと、今年度は下記の結果を得た。光制御NOドナーについては、これまでに開発した二光子作動型NOドナーFlu-DNBをもとに、長波長クロモフォア部分と光NO放出部分の連結部(リンカー)を検討し、Flu-DNBより長波長かつ高効率で二光子励起NO放出を行うあらたな光作動性NOドナーFlu-DNB-DBを開発した。Flu-DNB-DBは1光子励起の場合、可視光領域の青色光でもNO放出を誘導できることも判明した。ここで得られた知見を今後のミトコンドリア局在型光制御NOドナーの開発に活かすこととした。開発済みの二光子作動型光制御NOドナーFlu-DNBについて培養細胞系でも二光子作動型NOドナーとして機能することが判明した。光制御ONOO-ドナーの開発については、独自に見いだしたONOO-様活性種放出光誘起反応を基に開発した新たな光制御ONOO-ドナーを培養細胞系に適用し、培養細胞内でも光刺激を利用してONOO-放出を誘導できることを示した。光制御HNOドナーについては、より選択性の高いHNO放出反応の探索を行うため、自発分解型HNOドナーの誘導体を多種合成した。これらの化合物の予備的な検討から官能基の種類によりHNO放出能が異なることが判明した。これまでの研究成果を基に活性酸素シグナルの解明に応用するための光制御NO類ドナーを開発する。具体的には、既に開発済みの二光子作動型NOドナーを培養細胞系に適用し、照射条件・濃度条件を検討して細胞内NO放出能を検証する。また、ミトコンドリア局在性官能基の導入によりミトコンドリア特異性を付与するとともにNO放出の高効率化を目指す。さらに、独自の光誘起反応を基に化合物を分子設計し、生理学的条件で使用可能なONOO-ドナーを開発する。培養細胞へ適用可能な光制御HNOドナー開発も目指す。上記の目標のもと、今年度は下記の結果を得た。光制御NOドナーについては、これまでに開発した可視光作動型NOドナーFlu-DNB-DBについて、培養細胞系への適用可能性を検討した。Flu-DNB-DBを予め投与した培養細胞にNO蛍光プローブを投与し、可視光(青色)を照射したところ、NO産生を示す蛍光上昇が観察され、Flu-DNB-DBが培養細胞で可視光作動型NOドナーとして機能することが示された。本化合物での知見を基に、可視光作動型ミトコンドリア局在型光制御NOドナーの分子設計を行った。光制御HNOドナーについては、前年度に合成した多数の自発分解型HNOドナーの誘導体から、効率のよいドナー化合物を選択し、光解除性保護基を導入することで光作動性HNOドナー開発を行った。
KAKENHI-PUBLICLY-23117715
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-23117715
活性酸素シグナル解明のための光制御ピンポイントNO類ドナー
その結果、解除光照射でドナー化合物が期待通り反応することが確かめられたが、産生されたHNOが、副生成物と反応することが判明し、光解除性保護基の改良が必要であることがわかった。また、前年度までに開発した光作動型HNOドナーについて、暗条件での一定のHNO放出がみられることを考慮しつつ培養細胞系への適用を行ったところ、光照射に依存したHNO由来細胞応答であるCGRP産生上昇を観察することができた。24年度が最終年度であるため、記入しない。当初の予定通り、細胞内で利用可能なオルガネラ特異的NOドナーの開発に成功し、応用展開に向けて準備を進めているから。24年度が最終年度であるため、記入しない。光作動性NOドナーおよび光作動性ONOO-ドナーについては、順調に研究が進展していることから、予定通りミト開発を進める。光作動性HNOドナーについては、ごく最近、HNOドナーのHNO放出特異性について新たな知見が報告され、特異性に関する精査を再検討しなければならなくなったことから、HNO放出反応の精査からドナー開発を進めることとし、本年度一部実施した。来年度もこの方針で開発を進める。
KAKENHI-PUBLICLY-23117715
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神経内分泌系におけるLPAシグナルの役割解明に向けた基盤研究
これまでリゾホスファチジン酸(LPA)研究の多くは、神経発生や血管形成、がん成長などを調べたものである。これに対して、神経内分泌系とLPAシグナルの連関に着目した研究は、未だ極めて少ない。われわれは、マウスLpar1が下垂体の性腺刺激ホルモン産生細胞に発現していることを見出したが、視床下部ー下垂体系におけるLPAシグナルの役割の詳細は未解明のままである。本研究では、神経内分泌系におけるLPAシグナルの役割を解明するため、メダカを用いて研究を進めてきた。まず、メダカLPA受容体に関する基礎データを得た。7種類のメダカLPA受容体遺伝子(Lpar1、Lpar2a、Lpar2b、Lpar3、Lpar4、Lpar5b、Lpar6)をクローニングし、それぞれの構造と機能、および発現組織を明らかにした。LPA1およびLPA4の5`非翻訳領域をコードするエクソンを新たに同定した。ほ乳類細胞を用いた発現系により、LPA5bを除くすべてのLPA受容体がLPAに反応し、細胞骨格を変化させることを見出した。神経内分泌系における役割検討のため、脳下垂体におけるLPA受容体遺伝子の発現を調べたところ、Lpar2b、Lpar4、Lpar6がそれぞれ異なるサブセットに発現していることを見出した。これらの発現細胞の同定を進めている。一方、分子進化的考察を進めた。LPA受容体機能に必須のアミノ酸が種々の脊椎動物においてどの程度保存されているかを比較し、各分子の系統解析と合わせて検討したところ、LPA1の進化速度が非常に遅いこと、LPA5の進化速度が非常に早いことが明らかとなった。さらに、LPA生成酵素であるオートタキシンおよびリパーゼH/Iが無顎類のヤツメウナギにおいても存在することがわかった。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。これまでリゾホスファチジン酸(LPA)研究の多くは、神経発生や血管形成、がん成長などを調べたものである。これに対して、神経内分泌系とLPAシグナルの連関に着目した研究は、未だ極めて少ない。われわれは、マウスLpar1が下垂体の性腺刺激ホルモン産生細胞に発現していることを見出したが、視床下部ー下垂体系におけるLPAシグナルの役割の詳細は未解明のままである。本研究では、メダカを用いて、LPA受容体の神経内分泌系における役割を明らかにする。メダカゲノムプロジェクトによりメダカLPA受容体遺伝子の構造は登録されているが、実際に発現している遺伝子の配列は不明である。そこで、本年度は、メダカLPA受容体の遺伝子構造・配列と発現部位、および機能を明らかにした。9個のLPA受容体遺伝子が登録されているが、そのうちの8個がゼブラフィッシュLPA受容体遺伝子と高い相同性を示した。Lpar1、Lpar4、Lpar5の5'側の構造が登録されている遺伝子情報とは異なっており、5`race解析により新たな遺伝子構造を同定した。これによりN末端の配列も登録情報と異なることが明らかとなった。各LPA受容体の種々の組織における発現を調べ、普遍的な発現を示したLpar6以外はそれぞれ部位特異的な発現を示した。クローニングしたLpar1からLpar6まで、いずれもLPAに対する応答性を示した。これらのことから、メダカLPA受容体、Lpar1Lpar6はメダカ生体において機能的であることが明らかになった。今後脳下垂体、視床下部における発現を明らかにする。これまでリゾホスファチジン酸(LPA)研究の多くは、神経発生や血管形成、がん成長などを調べたものである。これに対して、神経内分泌系とLPAシグナルの連関に着目した研究は、未だ極めて少ない。われわれは、マウスLpar1が下垂体の性腺刺激ホルモン産生細胞に発現していることを見出したが、視床下部ー下垂体系におけるLPAシグナルの役割の詳細は未解明のままである。本研究では、神経内分泌系におけるLPAシグナルの役割を解明するため、メダカを用いて研究を進めてきた。まず、メダカLPA受容体に関する基礎データを得た。7種類のメダカLPA受容体遺伝子(Lpar1、Lpar2a、Lpar2b、Lpar3、Lpar4、Lpar5b、Lpar6)をクローニングし、それぞれの構造と機能、および発現組織を明らかにした。LPA1およびLPA4の5`非翻訳領域をコードするエクソンを新たに同定した。ほ乳類細胞を用いた発現系により、LPA5bを除くすべてのLPA受容体がLPAに反応し、細胞骨格を変化させることを見出した。神経内分泌系における役割検討のため、脳下垂体におけるLPA受容体遺伝子の発現を調べたところ、Lpar2b、Lpar4、Lpar6がそれぞれ異なるサブセットに発現していることを見出した。これらの発現細胞の同定を進めている。一方、分子進化的考察を進めた。LPA受容体機能に必須のアミノ酸が種々の脊椎動物においてどの程度保存されているかを比較し、各分子の系統解析と合わせて検討したところ、LPA1の進化速度が非常に遅いこと、LPA5の進化速度が非常に早いことが明らかとなった。さらに、LPA生成酵素であるオートタキシンおよびリパーゼH/Iが無顎類のヤツメウナギにおいても存在することがわかった。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-25116721
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25116721
神経内分泌系におけるLPAシグナルの役割解明に向けた基盤研究
LPA受容体遺伝子構造の解析に時間を取られ、脳下垂体、視床下部を含む脳における発現検討が遅れている。これまでの結果をまとめた論文の投稿と並行し、下垂体や視床下部における発現細胞の同定を早急に進める。このための、下垂体および視床下部マーカーのプローブは作製済である。恒常的にLpar1を発現する遺伝子改変メダカを作製する。
KAKENHI-PUBLICLY-25116721
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25116721
重力場の理論を用いたトポロジカル熱応答現象の解明
空間反転対称性の破れた系においては、ある方向に外場を印加した時と反対方向に印加した時で電流の流れる量が異なる。この現象を電気伝導の非相反性と呼ぶ。非相反性が強い場合の現象は整流効果として知られており、エレクトロニクスに不可欠な要素となっている。本研究ではこの非相反な電気応答を、熱応答および熱電応答を含む形にに拡張する研究を行なった。その結果、(1)物質の電子構造の対称性を反映した少数の関数によって全ての応答係数が記述されること、(2)非相反な応答係数の間に関係式が成り立つこと、および(3)絶対0度で流れる熱流が現れることを見出した。(1)において応答係数を記述する関数の一つはベリー曲率双極子と呼ばれているものであり、時間反転対称性のある系においても幾何学的位相に依存した現象が観測されることから実験的にも注目を集めている。(2)は(1)の性質から導かれる帰結であり、(相反性のある場合の応答である)線型応答係数の間に成り立つヴィーデマン=フランツ則やモット公式に類似の関係式が非相反応答係数間においても成り立つことを示したことになる。また(3)は、非相反応答において流れる熱流が、熱励起ではなく散逸熱の輸送であることから説明できる。この結果を論文として発表した。また重力場と熱応答の関係性として、1次元量子系において時空のひねりを加えた時に現れる熱流を格子模型において調べた。熱流と系の長さの関係を調べた結果、平均準位間隔と温度の大小関係によってべき的な長さ依存性から指数関数的な長さ依存性に変化することを数値的に示した。トポロジカルではない系おける熱応答現象の性質を見出し、それを発表するところまで至ったものの、本来の目的であるトポロジカルな系における熱応答現象に関しては、当初想定していたよりも基本的な性質から調べていく必要があることが分かり、計画を修正したため。現在研究を進めている1次元電子系の結果を朝長ラッティンジャー模型において実現し、それを2次元的に組み合わせることで2次元量子ホール系における熱応答を調べる。また新たな視点として、捩率をふくむ重力場と結合した電子系における熱応答現象を数値的手法によって調べる予定である。量子ホール系などのトポロジカル相においてはトポロジーに由来する特徴的な応答現象が現れる。そのような応答現象のうち熱に関する応答現象を背景時空の変形に対する応答として理解するために、本年度は時空に連続的な捻りを加えた時の電子系の振る舞いを経路積分表示を用いた分配関数の計算により調べた。その結果、周期境界を持つ1+1次元系においては時空の捻りを電子系の有効的なエネルギースペクトルの変化として理解できることを示した。またそれに伴ってフェルミ速度も有効的に変化し、古典的な座標変換と一致する。この変換を量子ホール系の端状態のようなカイラルな1次元電子系に適用した場合、分配関数の変化がエントロピーの増減を導くことを示した。これは量子ホール系において期待される熱ホール伝導度の量子化と整合する。さらにヘリカルな1次元電子系に適用した場合には、時空の捻りが1次元のリング上に自発的な熱流を引き起こすことを示した。これはリング上の1次元電子系に磁場を通した時に観測される永久電流の熱応答版であると考えることができる。上述のトポロジカル相における量子化された熱応答現象の研究に加えて、より広い熱応答現象を取り扱うことのできる手法として、準古典的な解析手法の習得とそれを用いた研究を行った。今年度は特に、空間反転対称性の破れた結晶中の電子系に対してボルツマン方程式を用いて非線形熱流を計算することで、電場や温度勾配などの外場の2次に比例する非相反熱流が現れることを示した。この効果を遷移金属ダイカルコゲナイドなどの電子系において評価し、実験的な検出の可能性について議論した。1次元電子系における重力応答と、空間反転対称性の破れた結晶における非相反熱応答についての研究結果が得られた。また非線形応答を扱う手法として準古典論を用いた研究手法を習得した。空間反転対称性の破れた系においては、ある方向に外場を印加した時と反対方向に印加した時で電流の流れる量が異なる。この現象を電気伝導の非相反性と呼ぶ。非相反性が強い場合の現象は整流効果として知られており、エレクトロニクスに不可欠な要素となっている。本研究ではこの非相反な電気応答を、熱応答および熱電応答を含む形にに拡張する研究を行なった。その結果、(1)物質の電子構造の対称性を反映した少数の関数によって全ての応答係数が記述されること、(2)非相反な応答係数の間に関係式が成り立つこと、および(3)絶対0度で流れる熱流が現れることを見出した。(1)において応答係数を記述する関数の一つはベリー曲率双極子と呼ばれているものであり、時間反転対称性のある系においても幾何学的位相に依存した現象が観測されることから実験的にも注目を集めている。(2)は(1)の性質から導かれる帰結であり、(相反性のある場合の応答である)線型応答係数の間に成り立つヴィーデマン=フランツ則やモット公式に類似の関係式が非相反応答係数間においても成り立つことを示したことになる。また(3)は、非相反応答において流れる熱流が、熱励起ではなく散逸熱の輸送であることから説明できる。この結果を論文として発表した。また重力場と熱応答の関係性として、1次元量子系において時空のひねりを加えた時に現れる熱流を格子模型において調べた。
KAKENHI-PROJECT-17K17604
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K17604
重力場の理論を用いたトポロジカル熱応答現象の解明
熱流と系の長さの関係を調べた結果、平均準位間隔と温度の大小関係によってべき的な長さ依存性から指数関数的な長さ依存性に変化することを数値的に示した。トポロジカルではない系おける熱応答現象の性質を見出し、それを発表するところまで至ったものの、本来の目的であるトポロジカルな系における熱応答現象に関しては、当初想定していたよりも基本的な性質から調べていく必要があることが分かり、計画を修正したため。今年度に得られた時空の捻りに対する応答をを2+1次元の量子ホール系のバルクの場合に拡張するために、そこで得られるべき効果を量子ホール系の波動関数から計算し、量子ホール系の格子模型において数値的に確かめる。また、準古典的な手法を用いることで量子ホール系における電子の流体的描像とそこから得られる応答現象について調べる。現在研究を進めている1次元電子系の結果を朝長ラッティンジャー模型において実現し、それを2次元的に組み合わせることで2次元量子ホール系における熱応答を調べる。また新たな視点として、捩率をふくむ重力場と結合した電子系における熱応答現象を数値的手法によって調べる予定である。今年度行った研究の範囲は主に解析計算のみで遂行できたため、高速な計算機およびソフトウェアが必要とはならず、当初の計画より使用額が少なかった。次年度は、計算機の購入、国内学会および国際研究会への旅費として使用する計画である。今年度は研究計画の修正により計算機を導入した研究を行わなかったため、当初の計画より使用額が少なかった。次年度は、計算機の購入、国内学会および国際研究会への旅費として使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-17K17604
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K17604
超高圧力場におけるホウ素含有クラスター化合物のナノ空間を利用した機能発現
電気陰性度差の小さな軽元素同士の組合せからなる化合物は、強固な共有結合ネットワークからなる「隙間」の大きい結晶構造を有しており、1次元(トンネル)、2次元(層間)、3次元(クラスター空隙、空洞)チャンネルの利用が可能となる。本研究では、超高圧合成法をツールとして、ホウ素とイオウ原子を主成分としたrigidな格子空隙に種々のゲスト種を導入した新物質の探索を行った。Ca-B-S系については2種類の高圧相CaB_2S_4-II、CaB_2S_4-IIを合成し、CaサイトにEu^<2+>を置換した蛍光体の発行特性を調べた。励起・発光スペクトルを観測した結果、CaB_2S_4-II、CaB_2S_4-IIはいずれも緑色発光を示した。特に、BS_4四面体の多段連結からなるマクロテトラヘドラル構造を有するCaB_2S_4-Iは505nmにピーク波長をもつ強い緑色発光を示した。300480nmに幅広い励起バンドをもつことから、青色LEDで励起可能な新材料であることが見出された。一方、Caサイトがより高配位構造となるCaB_2S_4-IIの発光特性は、CaB_2S_4-Iとは異なり、2つの発光ピークが観測された。この2相ではEu^<2+>が置換するCaサイトの配位環境が大きく異なり、マクロテトラヘドラル構造によって形成される構造内のナノ空間が、発光特性のような機能発現において、特異な場を与えていることが示された。Eu^<2+>以外の他の希土類イオンもドープ可能であり、構造内ナノ空間に様々な発光中心を導入できることが明らかとなった。本研究では、超高圧合成法やマイクロ波合成法をツールとして、ホウ素とイオウからなるrigidな格子空隙に種々のゲスト種を導入した新物質の探索を行い、材料科学における新機軸の提唱を目指す。今年度は、種々の三元系A-B-S(A:1価金属、2価金属イオン)における、BS_4四面体の連結からなるマクロテトラヘドロン形成物質の探索を行った。Ca-B-S系については仕込み組成比をCaS:B_2S_3=1:1とし、圧力を3GPaとした時にはCaB_2S_4-I、4GPa以上の時はCaB_2S_4-IIが得られた。このうち、高圧相であるCaB_2S_4-IIは立方晶系の単位格子を持ちBS_4四面体は頂点共有によって3次元的に連結しmacro-tetrahedronを形成しない。一方、これより低圧側で生成するCaB_2S_4-I相は、単結晶が得られず、構造解明が困難であったが、粉末試料に直接法とRietveld解析を試行錯誤することで、その構造が明らかになった。CaB_2S_4-Iは正方晶系の単位格子を持ち、BS_4四面体の頂点共有により孤立した3段型ピラミッドの[B_<10>S_<20>]^<10->-macro-tetrahedronを形成する。3段型ピラミッドのmacro-tetrahedronが結晶構造中で孤立して存在している化合物はこれまでに報告例がなくCaB_2S_4-Iにおいて初めて見いだされた。両構造では、Ca^<2+>イオンの配位環境が異なることから、Eu^<2+>等の発光中心をドープして発光特性を調べた結果、輝度の高い緑色発光を確認した。電気陰性度差の小さな軽元素同士の組合せからなる化合物は、強固な共有結合ネットワークからなる「隙間」の大きい結晶構造を有しており、1次元(トンネル)、2次元(層間)、3次元(クラスター空隙、空洞)チャンネルの利用が可能となる。本研究では、超高圧合成法をツールとして、ホウ素とイオウ原子を主成分としたrigidな格子空隙に種々のゲスト種を導入した新物質の探索を行った。Ca-B-S系については2種類の高圧相CaB_2S_4-II、CaB_2S_4-IIを合成し、CaサイトにEu^<2+>を置換した蛍光体の発行特性を調べた。励起・発光スペクトルを観測した結果、CaB_2S_4-II、CaB_2S_4-IIはいずれも緑色発光を示した。特に、BS_4四面体の多段連結からなるマクロテトラヘドラル構造を有するCaB_2S_4-Iは505nmにピーク波長をもつ強い緑色発光を示した。300480nmに幅広い励起バンドをもつことから、青色LEDで励起可能な新材料であることが見出された。一方、Caサイトがより高配位構造となるCaB_2S_4-IIの発光特性は、CaB_2S_4-Iとは異なり、2つの発光ピークが観測された。この2相ではEu^<2+>が置換するCaサイトの配位環境が大きく異なり、マクロテトラヘドラル構造によって形成される構造内のナノ空間が、発光特性のような機能発現において、特異な場を与えていることが示された。Eu^<2+>以外の他の希土類イオンもドープ可能であり、構造内ナノ空間に様々な発光中心を導入できることが明らかとなった。
KAKENHI-PUBLICLY-22013001
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-22013001
胚性幹細胞(ES細胞)を用いた人工神経の開発
ゼラチン処理したプレートにESQ feeder細胞を播種し培養した。1日後、mouse ES細胞を1x10^6 cells/dishとなるようにfeeder細胞上に播種し、ES細胞を増殖させた。3日毎に、継代培養してES細胞を増殖させた。増殖させたES細胞をI型コラーゲンチューブに包埋し、SCIDマウスの坐骨神経に作った欠損部に移植した(in vivoでの細胞の分化を観察)。トリプシン・EDTA処理によってfeeder細胞の除外率やES細胞の回収率・生細胞率の安定化によって、前年度の結果よりも安定した結果を残した。定量的観察には至っていないが、再生組織のmRNA (betaNGF、retinoic acid, etc.)分析によれば細胞移植によって神経再生が促進されていることが示唆された。しかし、移植後2週の組織形態は様々で一定の傾向を示さなかった。一方、長期間経過すると、母床の細胞侵入が著しく、移植片の運命や影響を十分に観察することは困難であった。また、電気生理学的に細胞移植群と無細胞実験群の比較を行ったところ、両群には有意差はなかった。以上の結果から、細胞移植の効果を示唆するデータは、生化学的検索や組織学的観察によっては得られる場合があるものの、電気生理的つまり機能的には得がたいことが分かった。さらに、サンプル数は限られているものの、様々なサイトカインの追加投与の効果も検索したが、上記の結果とあきらかな違いはなかった。よって、本実験系では実質的な神経再生に応用できるES細胞の使い方は明らかにならなかった。ゼラチン処理したプレートにESQ feeder細胞を播種し培養した。1日後、mouse ES細胞を1x10^6cells/dishとなるようにfeeder細胞上に播種し、ES細胞を増殖させた。3日毎に、継代培養してES細胞を増殖させた。増殖させたES細胞をI型コラーゲンチューブに包埋し、一部はin vitroで培養し、残りはSCIDマウスの坐骨神経に作った欠損部に移植した(in vivoでの細胞の分化を観察)。しかし、in vitroの群を観察したところ、細胞密度や形態に大きなばらつきがあった。また、in vivoの神経欠損部移植群も移植後1-2週では局所の組織形態は様々で一定の傾向を示さなかった。一方、長期間経過すると、母床の細胞侵入が著しく、移植片の運命や影響を十分に観察することは困難であった。よって、本実験から有効な神経誘導方法を確立するにはES細胞の増殖方法を厳格に標準化しなければならないことが明らかになった。細胞準備が安定しない原因を調査するために、各処理段階を精査したところ、トリプシン・EDTA処理によってfeeder細胞の除外率やES細胞の回収率・生細胞率などに大きくばらつきがあることが判明した。そこで、同処理を一定にするための様々な試みを行い、比較的安定した手技を確立することができた。さらに、サンプル数は限られているものの、安定した細胞を使って坐骨神経に移植した組織を組織学的に観察した。形態学的には、初期の結果よりも安定した結果を残していることを確認した。また、移植後長期経つと再生軸索を認めた。定量的観察には至っていないが、今後は再生組織のmRNA(betaNGF、retinoic acid, etc.)分析を行う予定である。そして、対照群も作製し、ES細胞による神経再生の可能性を検討したい。ゼラチン処理したプレートにESQ feeder細胞を播種し培養した。1日後、mouse ES細胞を1x10^6 cells/dishとなるようにfeeder細胞上に播種し、ES細胞を増殖させた。3日毎に、継代培養してES細胞を増殖させた。増殖させたES細胞をI型コラーゲンチューブに包埋し、SCIDマウスの坐骨神経に作った欠損部に移植した(in vivoでの細胞の分化を観察)。トリプシン・EDTA処理によってfeeder細胞の除外率やES細胞の回収率・生細胞率の安定化によって、前年度の結果よりも安定した結果を残した。定量的観察には至っていないが、再生組織のmRNA (betaNGF、retinoic acid, etc.)分析によれば細胞移植によって神経再生が促進されていることが示唆された。しかし、移植後2週の組織形態は様々で一定の傾向を示さなかった。一方、長期間経過すると、母床の細胞侵入が著しく、移植片の運命や影響を十分に観察することは困難であった。また、電気生理学的に細胞移植群と無細胞実験群の比較を行ったところ、両群には有意差はなかった。以上の結果から、細胞移植の効果を示唆するデータは、生化学的検索や組織学的観察によっては得られる場合があるものの、電気生理的つまり機能的には得がたいことが分かった。さらに、サンプル数は限られているものの、様々なサイトカインの追加投与の効果も検索したが、上記の結果とあきらかな違いはなかった。よって、本実験系では実質的な神経再生に応用できるES細胞の使い方は明らかにならなかった。
KAKENHI-PROJECT-15659354
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15659354
芸術団体の創造活動の自律性を高める助成のありかた~英国のアーツカウンシル制度研究
アーツカウンシル・イングランド(以下、ACE)の制度運用の手法研究を通じ、芸術団体の創造活動の自律性を高め、かつレジリエンスを獲得させるための助成制度のありかたを、その制度設計や運用、体制、さらに芸術団体との関わり等から明らかにする。芸術団体の多くは、活動資金を公的助成に依存する傾向が強い。ACEは、各組織の創造活動を尊重する一方で、活動継続のためにリスク軽減策の提示を義務化し、組織の運営体制や企画決定の各プロセスの開示も求め、公的助成を受けることに対する社会への説明責任を果たすことを促している。これらを実現する具体的な手法を明らかにし、助成に携わる人材像にも注目することが本研究の特徴を成す。アーツカウンシル・イングランド(以下、ACE)の制度運用の手法研究を通じ、芸術団体の創造活動の自律性を高め、かつレジリエンスを獲得させるための助成制度のありかたを、その制度設計や運用、体制、さらに芸術団体との関わり等から明らかにする。芸術団体の多くは、活動資金を公的助成に依存する傾向が強い。ACEは、各組織の創造活動を尊重する一方で、活動継続のためにリスク軽減策の提示を義務化し、組織の運営体制や企画決定の各プロセスの開示も求め、公的助成を受けることに対する社会への説明責任を果たすことを促している。これらを実現する具体的な手法を明らかにし、助成に携わる人材像にも注目することが本研究の特徴を成す。
KAKENHI-PROJECT-19K00260
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K00260
鎖状イミドの不斉結晶の光反応解析と絶対不斉合成反応
本研究は、結晶状態での特性を利用した光反応の解析を目的とした。結晶中の分子はトポケミカル則に従って反応するため、溶液中とは異なる反応様式を示す。その中で最も特徴的な現象は、アキラルな基質の形成する不斉結晶のキラリティーのみを不斉源として利用する絶対不斉合成である。我々はイミド側鎖にアルケニル基を有する種々のアキラルな酸イミドを合成し、X線構造解析により結晶中での分子構造や結晶構造を明らかにした。さらに、それらの光反応を解析し、以下に示す事実を明らかにした。1.アルケニル部位及び窒素原子上の置換基を種々変化させ、10種類の鎖状イミドを合成した。溶液中及び固相状態での光反応を検討したところ、溶液中では全て効率よく反応し分子内2+2付加反応によりオキセタンが生成するのに対し、固相では、6種類の基質が光反応に活性であった。本研究費で購入したFT-IRを用いて構造解析や反応の追跡を行った。2.単結晶の得られた基質のX線結晶構造解析により、イミド部位が(E,E)配座の基質は反応部位(カルボニルとアルケン)が接近して(2.8-3.1Å)ほぼ並行に配置されているのに対し、反応に不活性な分子のイミドは(E,Z)配座を呈しており、反応部位は4Å以上の距離に置かれていた。配座は置換基によりほぼ関連性があり、分子内でのC-H-π相互作用がその配座を決定する大きな要因の一つである。(E,Z)配座はオキセタン形成に適さない原子配置であるが、固相中でだけアルケンによる水素引き抜き反応が新たに観測された。3.鎖上イミドの中で3種類の基質が不斉結晶を形成することを見出した。光学活性なオキセタンの光学純度を決定し、低い転化率と低温での反応により高い光学純度の生成物が得られた。4.得られた光学活性オキセタンのカルボニル基をチオカルボニル基に換え、X線の異常分散法を用いて絶対構造を決定することで、アキラルなイミド螺旋の絶対構造を決定した。5.イミド側鎖にチオフェニル基を導入した基質についても同様に検討し新たにビラジカルを経由する絶対不斉合成例を見出すことができた。本研究により、外的な不斉源を全く用いず結晶のキラリティーだけを不斉源とする絶対不斉合成の新しい例が見出され、その一般性と不斉合成の分野での有用性が明らかになった。本研究は、結晶状態での特性を利用した光反応の解析を目的とした。結晶中の分子はトポケミカル則に従って反応するため、溶液中とは異なる反応様式を示す。その中で最も特徴的な現象は、アキラルな基質の形成する不斉結晶のキラリティーのみを不斉源として利用する絶対不斉合成である。我々はイミド側鎖にアルケニル基を有する種々のアキラルな酸イミドを合成し、X線構造解析により結晶中での分子構造や結晶構造を明らかにした。さらに、それらの光反応を解析し、以下に示す事実を明らかにした。1.アルケニル部位及び窒素原子上の置換基を種々変化させ、10種類の鎖状イミドを合成した。溶液中及び固相状態での光反応を検討したところ、溶液中では全て効率よく反応し分子内2+2付加反応によりオキセタンが生成するのに対し、固相では、6種類の基質が光反応に活性であった。本研究費で購入したFT-IRを用いて構造解析や反応の追跡を行った。2.単結晶の得られた基質のX線結晶構造解析により、イミド部位が(E,E)配座の基質は反応部位(カルボニルとアルケン)が接近して(2.8-3.1Å)ほぼ並行に配置されているのに対し、反応に不活性な分子のイミドは(E,Z)配座を呈しており、反応部位は4Å以上の距離に置かれていた。配座は置換基によりほぼ関連性があり、分子内でのC-H-π相互作用がその配座を決定する大きな要因の一つである。(E,Z)配座はオキセタン形成に適さない原子配置であるが、固相中でだけアルケンによる水素引き抜き反応が新たに観測された。3.鎖上イミドの中で3種類の基質が不斉結晶を形成することを見出した。光学活性なオキセタンの光学純度を決定し、低い転化率と低温での反応により高い光学純度の生成物が得られた。4.得られた光学活性オキセタンのカルボニル基をチオカルボニル基に換え、X線の異常分散法を用いて絶対構造を決定することで、アキラルなイミド螺旋の絶対構造を決定した。5.イミド側鎖にチオフェニル基を導入した基質についても同様に検討し新たにビラジカルを経由する絶対不斉合成例を見出すことができた。本研究により、外的な不斉源を全く用いず結晶のキラリティーだけを不斉源とする絶対不斉合成の新しい例が見出され、その一般性と不斉合成の分野での有用性が明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-07804039
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07804039
低次元酸化物ナノ材料の高次構造と機能の融合
高次に構造設計および制御された低次元酸化物ナノ構造体を、自己組織化的に多様な基材表面へ直接形成させ、低次元ナノ構造と材料物性とを共生させることで優れた環境調和機能や生体適合性などの多機能を獲得した構造-機能融合マテリアルの創出とその機能応用を目的とした研究を実施し、以下の知見を得た。金属Tiおよび合金を化学処理することで表面に得たポーラスナノネットワーク構造では、ナノシート構造表面のリン酸およびカルシウムイオン吸着量は低い一方、比較的高い温度で処理し、ナノチューブ(TNT)を主構造とした表面で高い事を見いだし、リン酸カルシウムなどの易析出性など生体適合性表面を構築する指針を得た。紫外線照射中のラジカル発生量を電子スピン共鳴(ESR)により測定した結果、照射単位面積当たりの活性酸素ラジカル生成量は通常の光触媒であるチタニアナノ粒子に比較して大きく、熱処理で更に向上させることに成功した。特異な低次元ナノ構造-物理光化学機能共生に基づく融合マテリアルの創成へ向け、多層CNTをコアとしTNTをシェルとした1次元コアシェル型ナノコンポジット創成に初めて成功した。このナノコンポジットではメチレンブルー(MB)有機色素吸着特性に優れると共に、紫外光照射では優れた光触媒分解特性を示すなど、低次元異方ナノ複合構造の優位性を実証した。チタニアナノチューブの格子構造レベルでの制御を元素固溶法により行い、固溶型TNTでは純粋なTNT同様に高いMB色素吸着特性を示し、特に2種類の元素固溶TNTではより著しいMB吸着特性を認めた。更に可視光照射条件下でも高い光触媒特性を示し、化学組成および特有な層状化合物状の結晶構造などに由来した効果と考察し、格子レベル融合により極めて優れた環境機能が融合したナノマテリアル創成に成功した。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。低次元構造を持つ酸化物ナノマテリアルはその物性と構造の協奏的相関により多彩な機能を示す。本研究では低次元酸化物ナノ構造を多様な基材表面へ自己組織化的に直接形成させると共に多様な物質と構造融合化を図ることで、優れた環境適合性、エネルギー創製機能や生体適合性などの高次機能性ナノ表面を有する融合マテリアルの構築を目的とし、平成25年度は計画に基づいた研究を行い以下の知見を得た。金属Tiおよび合金を115MのNaOH及びKOH水溶液中、室温から110°C程度までの低温で処理することでナノシート・ナノチューブを骨格としたポーラスナノネットワーク構造をこれら基材表面へ形成した。室温などの低温でTi表面に形成したナノネットワーク表面を持つ試料では未処理Ti表面に比較して細胞増殖性が向上すると共に、ナノレベル足場構造に対応して細胞接着性も向上するなど、本プロセス・材料の優位性を確認した。ナノ表面への骨形成主要元素であるリン酸およびカルシウムイオンの吸着能を評価した結果、比較的高い温度で処理し、ナノチューブ構造を主構造としたナノネットワーク表面で高い事を見いだした。本材料の骨格をなす構造のひとつであるチタニアナノチューブについて有機分子吸着能を調べ、構造特異性に加え、静電的効果に基づいて向上すること、共存元素にも依存して変化すること、光化学反応性にも寄与することを見いだし、材料の特徴と優位性を示した。高次に構造設計および制御された低次元酸化物ナノ構造体を、自己組織化的に多様な基材表面へ直接形成させ、低次元ナノ構造と材料物性とを共生させることで優れた環境調和機能や生体適合性などの多機能を獲得した構造-機能融合マテリアルの創出とその機能応用を目的とした研究を実施し、以下の知見を得た。金属Tiおよび合金を化学処理することで表面に得たポーラスナノネットワーク構造では、ナノシート構造表面のリン酸およびカルシウムイオン吸着量は低い一方、比較的高い温度で処理し、ナノチューブ(TNT)を主構造とした表面で高い事を見いだし、リン酸カルシウムなどの易析出性など生体適合性表面を構築する指針を得た。紫外線照射中のラジカル発生量を電子スピン共鳴(ESR)により測定した結果、照射単位面積当たりの活性酸素ラジカル生成量は通常の光触媒であるチタニアナノ粒子に比較して大きく、熱処理で更に向上させることに成功した。特異な低次元ナノ構造-物理光化学機能共生に基づく融合マテリアルの創成へ向け、多層CNTをコアとしTNTをシェルとした1次元コアシェル型ナノコンポジット創成に初めて成功した。このナノコンポジットではメチレンブルー(MB)有機色素吸着特性に優れると共に、紫外光照射では優れた光触媒分解特性を示すなど、低次元異方ナノ複合構造の優位性を実証した。チタニアナノチューブの格子構造レベルでの制御を元素固溶法により行い、固溶型TNTでは純粋なTNT同様に高いMB色素吸着特性を示し、特に2種類の元素固溶TNTではより著しいMB吸着特性を認めた。更に可視光照射条件下でも高い光触媒特性を示し、化学組成および特有な層状化合物状の結晶構造などに由来した効果と考察し、格子レベル融合により極めて優れた環境機能が融合したナノマテリアル創成に成功した。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。本研究の主眼である低温溶液化学プロセスに基づく材料合成およびそのチューニングについては順調に進み、予定していた生体適合性機能のひとつである無機イオン吸着能やその機構、更には有機物質との相互作用についても検証することができ、特に後者では共存元素が及ぼす影響など、当所予測とは異なる新たな知見を得ることが出来た。
KAKENHI-PUBLICLY-25107704
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25107704
低次元酸化物ナノ材料の高次構造と機能の融合
一方で、本研究を実施する主要設備のある建物が本年度後半に耐震改修工事が行われ(10月3月上旬)、この間一部の実験室ならびに装置移動、装置稼働停止が行われたことから、一部実験(電気的な補償によるプロセスならびにナノ構造表面形成への効果)が充分に遂行できなかった。平成26年度は本研究の最終年度であることから、これまで見いだしたナノポーラス表面構造の融合機能評価として光化学機能性の検証を継続し、ナノ構造酸化物およびそれから構築されるナノポーラス表面の融合機能に立脚した環境・生体適合性共生のための指針構築を行う。更には、低次元ナノ構造酸化物およびそれを基礎としたナノ構造表面について、多様な有機分子、タンパク質および無機化合物(HApなど)との融合マテリアルの創製、構造評価と機能・機構検証についても行う。特に界面表面・分子レベルでの融合構造を構築するため、低次元ナノ構造体の表面への配向構造制御プロセスの構築に加え、ナノ酸化物自体の構造修飾法(無機イオン修飾・有機修飾)の検討と検証を進め、これら結果とこれまでの成果を総括する。
KAKENHI-PUBLICLY-25107704
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25107704
系統差に着目した過剰肋骨の遺伝学的解析
過剰肋骨は催奇形性試験で胎仔に観察される骨格所見であるが、その成因は不明であり、リスク評価上の課題となっている。申請者はこれまで薬剤誘発性モデルラットを構築し、ホメオボックス遺伝子が成因である可能性を突き止めた。本研究は自然発生性に過剰肋骨を生じるラット系統の解析等を行い、その成因を明らかにすることで、先天異常の機序解明と毒性試験やリスク評価への貢献を目指すものである。過剰肋骨は催奇形性試験で胎仔に観察される骨格所見であるが、その成因は不明であり、リスク評価上の課題となっている。申請者はこれまで薬剤誘発性モデルラットを構築し、ホメオボックス遺伝子が成因である可能性を突き止めた。本研究は自然発生性に過剰肋骨を生じるラット系統の解析等を行い、その成因を明らかにすることで、先天異常の機序解明と毒性試験やリスク評価への貢献を目指すものである。
KAKENHI-PROJECT-19K17339
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癌細胞におけるサイトカイン産生能を標的とした細胞死誘導
一方、DU-145,PC-3の2種類の前立腺癌細胞におけるtumor necrosis factor (TNF)による殺細胞性はNF kappa B(NFκB)のデコイにより阻害されることが示され、細胞におけるNFκBの活性がTNF-αによる殺細胞性と密接に関連することが明らかとなった。次に各種サイトカイン産生膀胱癌細胞に対し、NFκ-Bの拮抗物質である1κBをアデノウイルスベクターにより細胞内に移入すると、サイトカイン産生が著明に抑制されると共に、apotosisが誘導させることが判明した(Human Gene Terapy, 10: 37-47, 1999)。以上の結果は癌の増殖・進展にサイトカインが密接に関連しており、サイトカイン産生における転写因子の一つであるNFκBの抑制が細胞のapotosis誘導に寄与する可能性が示されたものと考えられる。一方、DU-145,PC-3の2種類の前立腺癌細胞におけるtumor necrosis factor (TNF)による殺細胞性はNF kappa B(NFκB)のデコイにより阻害されることが示され、細胞におけるNFκBの活性がTNF-αによる殺細胞性と密接に関連することが明らかとなった。次に各種サイトカイン産生膀胱癌細胞に対し、NFκ-Bの拮抗物質である1κBをアデノウイルスベクターにより細胞内に移入すると、サイトカイン産生が著明に抑制されると共に、apotosisが誘導させることが判明した(Human Gene Terapy, 10: 37-47, 1999)。以上の結果は癌の増殖・進展にサイトカインが密接に関連しており、サイトカイン産生における転写因子の一つであるNFκBの抑制が細胞のapotosis誘導に寄与する可能性が示されたものと考えられる。転写活性因子の蛋白であるnuclear factor-kappa B(NF-κB)は生体における免疫あるいは炎症反応の主要な調節因子として注目されている。一方、腫瘍細胞におけるサイトカインの産生はその増殖・進展に関連したシグナル伝達を説明する因子として重要である。本研究では、サイトカイン産生腫瘍に注目し、これら細胞における転写活性物質であるNF-κBを細胞レベルで抑制することにより、細胞に生じる影響につき検討した。サイトカイン産生膀胱癌細胞株(KU-19-19)および腎細胞癌株(KU-19-20)を標的細胞とした。NF-κBの拮抗蛋白であるI-κBαのcDNAをアデノウイルス・ベクターにより遺伝子導入し、その際の細胞増殖を観察した。また培養土清中の各種サイトカイン濃度を測定した。細胞障害を来したものには、fragmented DNA ELISAおよびTunel法によりapoptosis誘導の可能性を検討した。サイトカイン産生腫瘍であるKU-19-19、およびKU-19-20細胞に対しI-κB cDNAをアデノウイルス・ベクターによりtransfection後48時間において著明な細胞障害か認められた。フローサイトメトリーによるbromodeoxyuridine標識率の解析では濃度依存的にI-κBをtransfectionした群に標識率の低下が認められ、培養上溝中の各種サイトカイン濃度も著明に減少した。またfragmented DNA ELISAおよびTunel法の解析では、I-κBをtransfectionした群にapoptosisが誘導されているものと考えられた。転写活性因子であるNF-κBを拮抗蛋白であるI-κBのtransfectionにより抑制することにより、サイトカイン産生腫瘍細胞においてapoptosisが誘導された。このことは、サイトカイン産生腫瘍においては、その産生のシグナルを抑制することにより何らかのdeath signalが生じる可能性を示唆するものと考えられた。サイトカイン産生腫瘍のモデルとして、膀胱癌由来細胞KU-19-19と腎細胞癌由来細胞KU-19-20の樹立に成功した。KU-19-19が顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)により、またKU-19-20は顆粒球マクロプァージコロニー刺激因子(GM-CSF)およびインターロイキン-6(IL-6)により自己増殖するすることが判明下。これらサイトカイン産生ヒト癌細胞を標的として、nuclear factor kappa B(NFκB)の競合物質であるI Kappa B(IκB)をアデノウイルスベクターによりtransfectionすると各種サイトカイン産生の抑制とともに、細胞死の誘導が惹起されることが判明した。I Kappa B(IκB)をアデノウイルスベクターによりtransfectionした際における各種アポトーシス関連moleculeをDNAチップにより検討すると、インスリン様増殖因子(IGF)の著明な増加が観察された。一方、これらサイトカイン産生を示した2種類の細胞におけるインターロイキン-1受容体競合物質(IL-1ra)とインターロイキン-1βconverting enzyme(ICE)の発現を検討するとサイトカイン非産生腫瘍に比しその発現が低下しており、IL-1raをアデノウイルスペクターによりこの細胞にtransfectionすると、増殖抑制および細胞死が誘導された。以下の結果は細胞のアポトーシス抑制にサイトカイン産生能が関与しょいている可能性を示すものである。
KAKENHI-PROJECT-10671493
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高齢者の運動能力定量化に関する基礎的研究(高齢者の心肺予備能力を含む運動能力測定法の確立と評価のための基準値の作成
60歳以上の高齢者にも安全でかつ高齢者の生活に則し、心肺機能の予備能力をも含めた運動能力測定法を確立し、これらの方法によって、高齢者の運動処方の検討やトレーニングの効果の判定を行う道を拓くことを目的に、高齢者を対象にself-paced step testとバッテリーテストを実施し、高齢者の体力の数値化と体力の現状を検討した。self-paced steptestは、高さ20cmの台を用い、各個人について"ゆっくり""普通""やや速い"の速度でステップテストを行い。この間の心拍数と仕事量(対象者の体重とステップ数、台高から求めた)の関係から一定仕事量(4.5kgm/kg/mm)における心拍数を求めた。一方各被験者の予測最高心拍数を(220-年齢)。によって求め、この一定仕事量における心拍数が最高心拍数の何%に相当するかによって、各人の運動能を測る指標とした。またバッテリーテストは、閉眼片足立ち、座位ステッピング、長座位体前屈、垂直とび、握力、息こらえの比較的身体的負担の少ない6項目から成り、総合得点(各項目ごとに1点から5点の得点を与える)も計算した。男子135名、女子145名に行ったself-paced steptestの結果から、年齢(X)と心拍数の予測最高心拍数に対する増加率(%HR4.5)(Y)の関係を求めたところ男子Y=1.06X-28.5、女子Y=0.76X+3.34といずれも有意な相関が得られ、%HR4.5は、心拍応答の差として定量化できること、また普通の速さでのステップ時心拍数が最高心拍数の何%であるかを求め予備心拍能とした場合、男子60.7%、女子54.5%であり、この数値を用いることによって心拍予備能を各人について数値化出来ることが示唆された。バッテリーテストは男子368名、女子527名に実施し、男女とも年齢に伴って全項目で成績が低下したが、体力の低下は、体力要素によさて異なり、複雑な神経支配を必要とする項目や体重移動を伴う項目で大きかった。60歳以上の高齢者にも安全でかつ高齢者の生活に則し、心肺機能の予備能力をも含めた運動能力測定法を確立し、これらの方法によって、高齢者の運動処方の検討やトレーニングの効果の判定を行う道を拓くことを目的に、高齢者を対象にself-paced step testとバッテリーテストを実施し、高齢者の体力の数値化と体力の現状を検討した。self-paced steptestは、高さ20cmの台を用い、各個人について"ゆっくり""普通""やや速い"の速度でステップテストを行い。この間の心拍数と仕事量(対象者の体重とステップ数、台高から求めた)の関係から一定仕事量(4.5kgm/kg/mm)における心拍数を求めた。一方各被験者の予測最高心拍数を(220-年齢)。によって求め、この一定仕事量における心拍数が最高心拍数の何%に相当するかによって、各人の運動能を測る指標とした。またバッテリーテストは、閉眼片足立ち、座位ステッピング、長座位体前屈、垂直とび、握力、息こらえの比較的身体的負担の少ない6項目から成り、総合得点(各項目ごとに1点から5点の得点を与える)も計算した。男子135名、女子145名に行ったself-paced steptestの結果から、年齢(X)と心拍数の予測最高心拍数に対する増加率(%HR4.5)(Y)の関係を求めたところ男子Y=1.06X-28.5、女子Y=0.76X+3.34といずれも有意な相関が得られ、%HR4.5は、心拍応答の差として定量化できること、また普通の速さでのステップ時心拍数が最高心拍数の何%であるかを求め予備心拍能とした場合、男子60.7%、女子54.5%であり、この数値を用いることによって心拍予備能を各人について数値化出来ることが示唆された。バッテリーテストは男子368名、女子527名に実施し、男女とも年齢に伴って全項目で成績が低下したが、体力の低下は、体力要素によさて異なり、複雑な神経支配を必要とする項目や体重移動を伴う項目で大きかった。
KAKENHI-PROJECT-63580108
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門戸開放政策と中国外交官の対応―清国外交官の国際認識
20世紀初め、中国の外交官らはアメリカの提唱する門戸開放政策に応じることで領土や主権の保持を目指した。本研究は外務部の対外アピール手段であったPeking Daily Newsの分析を行ない、中国の門戸開放政策への認識を示す事例として、1909年の日本との満洲懸案交渉とロシアとのハルビン協定に注目した。中国はロシアとハルビン協定を締結し、ロシアが北満洲における中国の主権を認め門戸開放政策に従ったものと喧伝し、日本にも南満洲での門戸開放遵守を要求した。このハルビン協定に関し、アメリカと中国は異なった思惑を有しており、そこには中国の門戸開放政策に対する認識や中国外交の性格が反映されていた。本年度はまず、前年度末に香港大学で調査・収集を行なったPeking Daily Newsの分析を行なった。この新聞が刊行された時期(1909年5月)、清朝は日本との満洲問題に関わる外交問題を仲裁裁判に付託する意向を示し、日本を牽制しており、日本に清朝の主権の尊重と門戸開放主義の南満洲への適用を主張していた。Peking Daily Newsというこの英字新聞でも、仲裁裁判への付託の正当性や門戸開放主義の適用をアピールする論説が目立っており、同時期の他の外国新聞への反論も多い。外国新聞の関連記事と照らし合わせ、清朝の国際的アピールの様相を確認するとともに、清朝および日、英、米の外交文書を調査、交渉経緯とこれらの記事との関係を整理中である。また、本年度は上海図書館で1909年頃に外務部侍郎であった鄒嘉来の日記を調査した。上海図書館には彼の日記の1908年1910年部分が所蔵されているが、1909年は制度改革が落ち着くとともに、外務部に性格的変化が窺われる時期である。この時期の鄒嘉来の日記の分析を通じ、日本との交渉を清朝サイドから確認するとともに、外務部の変化について検討した。また、この時期の仲裁裁判への付託や門戸開放主義への対応を検討するにあたり、これまで申請者が研究してきた19世紀後半の国際法受容や国際情勢への認識・姿勢と比較することで、1909年ごろの清朝外務部の国際認識・対応の性格を捉えるとともに、19世紀から20世紀に至る清朝外交の変容とその特質を理解できると考え、19世紀の清朝外交官の薛福成の国際法や国際情勢に対する認識および彼の対応について再検討を加えた。20世紀初め、中国の外交官らはアメリカの提唱する門戸開放政策に応じることで領土や主権の保持を目指した。本研究は外務部の対外アピール手段であったPeking Daily Newsの分析を行ない、中国の門戸開放政策への認識を示す事例として、1909年の日本との満洲懸案交渉とロシアとのハルビン協定に注目した。中国はロシアとハルビン協定を締結し、ロシアが北満洲における中国の主権を認め門戸開放政策に従ったものと喧伝し、日本にも南満洲での門戸開放遵守を要求した。このハルビン協定に関し、アメリカと中国は異なった思惑を有しており、そこには中国の門戸開放政策に対する認識や中国外交の性格が反映されていた。1年目の本年度は、国内外での史料収集を重点的に行なった。まず、海外における調査は次の2件の史料調査がその中心となった。1件目は北京大学所蔵の『呉宗濂信稿』(全11冊)の閲覧であり、19091911年に駐イタリア公使を務めた清国外交官の呉宗濂が、その公使在任期間中に外務部や他の外交官に送った書簡の内容を検討した。2件目は香港大学所蔵のThe Peking Daily Newsの調査である。The Peking Daily Newsは1909年に外務部が対外広報手段として発行しはじめた英字新聞である。今回の調査では、The Peking Daily Newsの発刊当初の部分(1909年5月初めから6月末まで)と、その前身であるThe Chinese Public Opinionの1908年5月初めから1909年4月末の全期間について、広告を含めた全紙面のデータを収集することが出来た。国内では『清代軍機処電報档案彙編』所収の電報や『申報』、『東方雑誌』などの新聞雑誌などから、孫宝埼・陸徴祥・劉式訓ら在外公使や本国の外政担当者の門戸開放主義や自開商埠政策に関する言動を取り出し、整理を進めた。また、東洋文庫所蔵の鄒嘉来『儀若日記』の調査を行なった。鄒嘉来は長年外務部司員を務めた人物であり、清国をめぐる国際環境が大きく変わる日露戦争前後の時期について、『儀若日記』の内容を調査し、外務部周辺の動きやその認識を検討した。また、門戸開放の前提として20世紀初頭に注目されることとなった領事裁判権撤廃問題とそのための法制改革について、先行研究やFOなど関連の外交史料を収集するとともに、同じく門戸開放主義への対応として在華外国人の地位について考察したものである顧維鈞の論文The Status of Aliens in China(1912年)に分析を加えた。本研究は、20世紀初頭にアメリカによって提唱され、長らく列強の対華政策の基本となった門戸開放政策について、中国外政担当者の認識・対応を検討するものである。すでに指摘されるように、20世紀初めの中国の外政担当者は対外開放により列強の勢力均衡を促し、領土や主権の保持を図ろうとしていた。アメリカの提唱する門戸開放政策に対応することが喫緊の課題であったのである。
KAKENHI-PROJECT-24720317
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24720317
門戸開放政策と中国外交官の対応―清国外交官の国際認識
本研究では、とくに1909年頃の中国外交に焦点を当てることにしたが、それは清米独三国同盟の試みが失敗し、袁世凱が失脚した直後のこの時期、外務部では依然として人的・制度的近代化改革が進んでおり、また先行研究によれば清末の外交文書(『清季外交史料』所収)の中に「主権」の語が登場する頻度が格段に増加するのが1909年であるという。つまり、中華民国の民族主義的近代外交につながる変容をこの時期に認めることができる。このため、本研究では、この時期の外務部の変化を示す動きとして、まず対外アピールの手段の一つであったPeking Daily Newsの分析を行ない、同時に外交官らの当該時期の日記を中国で調査した。その結果、日本との満洲懸案問題のハーグ仲裁裁判所への付託問題に焦点を当てることとした。この問題が、当時アメリカが中心となっていた仲裁裁判制度の受容にも関わり、中国外交の国際法受容および門戸開放政策の利用にも関わるからである。最終年度は、ハーグ仲裁裁判への付託問題について日・英・米の外交文書や新聞等を調査するとともに、この交渉と対になっていたロシアとのハルビン協定締結交渉について、中国とアメリカの動きを検討し、それまでの研究成果を学会で報告した。さらに追加の史料を収集し、中米両者の思惑の違いから、この時期の中国外交の変化について見通しを得た。中国近代外交史初年度に日中関係の緊張を受け、夏に予定していたPeking Daily Newsの調査を年度末に変更したしたため、初年度にある程度行なうはずであった当該新聞の分析が本年度に持ちこされた。ただ、Peking Daily Newsの分析や鄒嘉来の日記の調査・分析を通じ、1909年前後の清朝外務部の門戸開放主義への対応について、仲裁裁判への付託という彼らの行動を、19世紀後半からの国際法・国際情勢への認識・姿勢との比較から検討する視点を得られた。以前の研究課題との連続性をもった具体的な事例を設定できたことで、最終年度の研究の方向性を見出すことはできたとは考えている。よって、「やや遅れている」と評価した。やや遅れているとした理由は、1年目の研究計画の中で特に重視していた香港大学でのThe Peking Daily Newsの調査が3月下旬になり、データの収集だけで終わってしまい、年度内に内容の分析にまで進むことができなかったことがある。この香港大学での調査時期が3月下旬になってしまった背景には、2012年9月の中国における反日デモの影響がある。この反日風潮の高まりをうけ、9月下旬に予定していた別の研究計画に関わる北京での調査を延期したため、本研究計画を含む2012年度の中国での調査計画を全体的に見直さざるを得なかった。さらに、学内業務との調整の必要もあり、結局、香港での調査は3月下旬に行なわざるを得なかったからである。なお、先行研究によれば、The Peking Daily Newsは北京の国家図書館にも所蔵されているはずであり、1997年時点ではその原史料の閲覧・複写が可能であった。しかし、2012年8月に報告者が国家図書館を訪れた際には、マイクロ化がなされていないことを理由に閲覧を許可されなかった。このため、この史料のデータ収集は香港大学での調査を待つこととなった。もう一つの理由として、北京大学で調査した『呉宗濂信稿』が期待したほどの内容を含むものではなかったことがある。在外公館の実務の実態や辛亥革命時の対応などについて、興味深い内容を含むものであったが、呉宗濂の国際情勢に対する認識に関する情報は限られていた。
KAKENHI-PROJECT-24720317
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海洋温暖化がエイ類の生物量、分布および行動生態に及ぼした影響の解明
本研究では近年の温暖化傾向がエイ類に与えている具体的な影響について検証することを目的として調査を行った。その結果,モデル海域である有明海でのエイ類の分布特性と種組成,東アジア河口域生態系におけるエイ類の分布状況について新たな知見を得ることができ,有明海および東アジア河口域との共通種についてリストアップすることができた。それらの生物情報に基づき,温暖化により西日本に卓越したと考えられたナルトビエイの分布,日周行動,行動と水温との関係について解析した。ナルトビエイは従来から少なくとも九州沿岸域には分布していたが,冬季の平均的な水温が上昇傾向にあることから繁殖・摂餌場に近い深場で越冬可能となり,徐々にその分布を本州西部にまで拡大した可能性があること等を明らかにした。本研究では近年の温暖化傾向がエイ類に与えている具体的な影響について検証することを目的として調査を行った。その結果,モデル海域である有明海でのエイ類の分布特性と種組成,東アジア河口域生態系におけるエイ類の分布状況について新たな知見を得ることができ,有明海および東アジア河口域との共通種についてリストアップすることができた。それらの生物情報に基づき,温暖化により西日本に卓越したと考えられたナルトビエイの分布,日周行動,行動と水温との関係について解析した。ナルトビエイは従来から少なくとも九州沿岸域には分布していたが,冬季の平均的な水温が上昇傾向にあることから繁殖・摂餌場に近い深場で越冬可能となり,徐々にその分布を本州西部にまで拡大した可能性があること等を明らかにした。本研究は、干潟河口域におけるエイ類の分布特性と生物量およびエイ類相の変遷を明らかにした上で、なぜエイ類による二枚貝の漁業被害が目立つようになったのかを明らかにするため、海洋温暖化により卓越するようになった種の行動生態を解明することを目的としたものである。最終的には、海洋温暖化がエイ類の生物量、分布および行動に及ぼした具体的な影響を解明し、様々な環境変化に順応した管理方策を築くための基礎とすることを目指す。平成20年度の研究成果は以下の通りである。(1)有明海において、種々の伝統漁法を利用してエイ類を採集し、同定・測定・解析等を行った。その結果、夏季には湾奥部で数種のアカエイ属、ナルトビエイ、トビエイが優占し、湾中央部では周年ウチワザメ、コモンサカタザメ等が優占することがわかった。これらエイ類全体の生物量は、過去に比べて増加した可能性がある。(2)ビニールチューブ製のダート式タグを用いたエイ類の標識放流調査を繰り返し行い、再捕データを蓄積した。(3)東アジア河口域生態系におけるエイ類の分布状況とその変遷を明らかにするため、これまでほとんど調査されたことがなかった中国大陸沿岸域(香港、海南島沿岸域等)でトビエイ亜目のエイ類を採集し、生物測定と同定を行った。これらの海域ではエイ類の種多様性が高く、同定の困難な種が多く出現したことから、可能な限り文献を収集して検討を重ねた結果、既存の知見に基づき外部形態のみで同定を行うことは出来ないことが明らかとなった。そのため、mtDNAによる判別を試みた。(4)深刻な漁業被害をもたらしているナルトビエイをモデルとして行動調査を行った。その結果、少なくとも夏季の間は、一日の大半の時間を浅海域(表層から水深6mの範囲)で過ごしていたことがわかった。本研究は、干潟河口域におけるエイ類の分布特性と生物量および種組成の変遷を明らかにし、海洋温暖化により卓越するようになった種の行動生態を解明することを目的としたものである。本年度の研究成果は以下の通りであった。(1)有明海において、種々の伝統漁法を利用したエイ類の採集調査を継続した。漁獲物の種同定・計測・解析等を行った結果、アカエイ、シロエイ、ナルトビエイ、トビエイ、ウチワザメ、コモンサカタザメ等が優占することがわかった。これらエイ類の全魚類に対する構成比は、過去に比べて増加した可能性がある。(2)東アジア河口域生態系におけるエイ類の分布状況とその変遷を明らかにするため、これまでほとんど調査されたことがなかった中国の海南島沿岸域でエイ類の採集調査を行った。中国沿岸海域ではトビエイ亜目の種多様性が高く、同定の困難な種も多く出現したことから、文献を収集して検討を重ねるとともに、mtDNAを用いた種判別を行った。その結果、日本側には出現していないオナガエイおよびアカエイ属の一種または数種が生息すること、中国沿岸の南部海域ではズグエイが優占することなどが明らかになった。(3)平成21年度の春季は、例年よりも水温の低い期間が長く続いたことにより、ナルトビエイの有明海への来遊が遅れたものと思われた。また、夏季に有明海で採集されたナルトビエイは例年よりも少なく、ナルトビエイによる二枚貝への甚大な食害被害は報告されなかった。これらのことから、夏季の水温が高いことよりも、河口域への移動時期(春先)の水温変動が、ナルトビエイの干潟河口域(有明海)への移入を決定づける可能性があるものと考えられた。本研究は、干潟河口域におけるエイ類の分布特性と生物量および種組成の変遷と海洋温暖化により卓越するようになったと考えられる種の行動生態を解明することを目的としたものである。本年度の研究成果は以下の通りであった。
KAKENHI-PROJECT-20580205
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20580205
海洋温暖化がエイ類の生物量、分布および行動生態に及ぼした影響の解明
1.有明海に出現することが明らかとなったトビエイ亜目の合計9種をリストアップし,有明海がトビエイ亜目の種多様性の高い海域であることを解明した。2.アカエイ科アカエイ属では外部形態が酷似した種が多かったことから,形態学的検討に加えてmtDNAを用いた種判別を行い,確実な同定を可能にした上で,これらの種の簡易的な検索方法を確立した。3.知見が乏しかった東アジア河口域生態系におけるエイ類の分布状況を明らかにするため、中国大陸沿岸域のトビエイ亜目を採集し,有明海と同様に種多様性が高いこと,日本側には出現していないオナガエイおよびアカエイ属の数種が生息することなどを明らかにした。また,有明海で新たに見つかったアリアケアカエイは,中国大陸側からは出現しなかった。共通種として生物量が多かったのは,アカエイ,ズグエイ,ナルトビエイ等であった。4.トビエイ亜目のうち南方海域にその分布が偏っているものは,ナルトビエイとズグエイであり,アカエイは生息可能な水温帯が広く,その分布域は寒冷な海域から温暖な海域にまで広く及ぶことがわかった。これらエイ類の繁殖場として河口域が重要であることを解明したが,各種がそれぞれ毎年同じ河口域に回帰するのかどうかは今後の課題となった。ナルトビエイの行動生態を調査した結果,海洋温暖化により繁殖場である河口域からそれほど遠くない沖合の海域で越冬可能となったことにより,有明海等の西日本でその生物量が卓越するようになった可能性が高いことがわかった。
KAKENHI-PROJECT-20580205
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化学振動系における化学波動の光誘起
本研究では振動化学反応系に光照射することにより、化学波動の光誘起とその機構および化学波動の移動に対する光効果について調べた。1.振動化学反応系として基本的なBelousov-Zhabotinskii(BZ)反応を選び、触媒としてはRu(bpy)_3^<2+>を用いた。ペトリ皿中で薄層(約2mm)にしたBZ反応溶液に、特別な形(円形、三角形、四角形、星形)にあけたオ-プニングを通して近紫外光を照射した。化学波動の生成と移動はこの光照射で同時に励起されるRu(bpy)_3^<2+>からのりん光を写真で記録することにより観測した。2.光照射後約30sで用いたオ-プニングの形に対応した化学波動が光照射領域と光照射されない影の領域の境界で発生し、内側に向かって移動し始める。引き続いて新しい波動が境界で周期的に生成し、最後にパタ-ンの中心で消滅することが観測された。円波動の位置の時間に対するプロットから、円波動は約47sの等間隔で発生し、その移動速度はほぼ一定で3.4mm/minと求められた。また、この実験で観測された四角などの直線だけから成る化学波動は最初の観測例である。これらの移動は、波動を構成する各辺が内側に向かって同じ速度で移動し、それぞれ対応する角で衝突して消滅することが明らかにされた。3.境界近くの影領域で溶液の酸化還元電位の変化を測定し、境界での化学波動の光誘起との相関を調べたところ、化学波動の発生周期が影の溶液の振動周期とほぼ一致した。この結果から化学波動の光誘起機構として、溶液の振動で影の領域が酸化状態になった時に酸化的な化学波動が境界で発生し、還元性の光照射領域へ移動すると考えられる。4.Ar^+レ-ザ-を用い、振動反応中におけるRu(bpy)_3^<2+>のりん光の強度変化とりん光寿命を測定した。現在、振動化学反応に対する光効果の機構を励起状態を含めた素反応レベルで検討している。本研究では振動化学反応系に光照射することにより、化学波動の光誘起とその機構および化学波動の移動に対する光効果について調べた。1.振動化学反応系として基本的なBelousov-Zhabotinskii(BZ)反応を選び、触媒としてはRu(bpy)_3^<2+>を用いた。ペトリ皿中で薄層(約2mm)にしたBZ反応溶液に、特別な形(円形、三角形、四角形、星形)にあけたオ-プニングを通して近紫外光を照射した。化学波動の生成と移動はこの光照射で同時に励起されるRu(bpy)_3^<2+>からのりん光を写真で記録することにより観測した。2.光照射後約30sで用いたオ-プニングの形に対応した化学波動が光照射領域と光照射されない影の領域の境界で発生し、内側に向かって移動し始める。引き続いて新しい波動が境界で周期的に生成し、最後にパタ-ンの中心で消滅することが観測された。円波動の位置の時間に対するプロットから、円波動は約47sの等間隔で発生し、その移動速度はほぼ一定で3.4mm/minと求められた。また、この実験で観測された四角などの直線だけから成る化学波動は最初の観測例である。これらの移動は、波動を構成する各辺が内側に向かって同じ速度で移動し、それぞれ対応する角で衝突して消滅することが明らかにされた。3.境界近くの影領域で溶液の酸化還元電位の変化を測定し、境界での化学波動の光誘起との相関を調べたところ、化学波動の発生周期が影の溶液の振動周期とほぼ一致した。この結果から化学波動の光誘起機構として、溶液の振動で影の領域が酸化状態になった時に酸化的な化学波動が境界で発生し、還元性の光照射領域へ移動すると考えられる。4.Ar^+レ-ザ-を用い、振動反応中におけるRu(bpy)_3^<2+>のりん光の強度変化とりん光寿命を測定した。現在、振動化学反応に対する光効果の機構を励起状態を含めた素反応レベルで検討している。
KAKENHI-PROJECT-01540369
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01540369
新規アディポサイトカインomentinの心血管病に対する作用解明と獣医療への応用
<背景・目的>私の研究テーマは“新規アディポサイトカインomentinの心血管病に対する作用解明と獣医療への応用"である。これまでに脂肪組織は単にエネルギーを貯蔵する場として考えられていたが、近年多くの生理活性物質アディポサイトカインを産生・分泌することが認識され始めている。新規アディポサイトカインの1つであるomentinは主に健常者の内臓脂肪組織に多く発現する。多くの疫学調査において、肥満症による血中omentin濃度の低下が高血圧症やアテローム性動脈硬化症などの心血管疾患の発症率増加と相関することが報告されている。これらのことから私はomentinが肥満に併発する心血管疾患の進展に関わるとの仮説を立て研究を行ってきた。当研究室では1omentinが摘出血管組織の内皮細胞に作用し一酸化窒素(NO)を放出し血管を拡張させること、さらに2omentinが血管内皮細胞において抗炎症作用を有することを明らかにしていた。また私はこれまでに3omentinが血管平滑筋細胞(SMCs)において抗炎症作用を有すること、4omentinがSMCs遊走を抑制すること、5omentin急性静脈内投与がアゴニストによる昇圧作用を抑制すること、6omentin長期間腹腔内投与がmonocrotaline誘発ラット肺高血圧を抑制することを明らかにした。また7omentinが制癌薬doxorubicinによる心筋芽細胞死を抑制することも明らかにした。本年度はomentinの糖代謝産物methylglyoxalによる血管内皮細胞死に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、研究を進めた。<結果>ヒト臍帯静脈血管内皮細胞においてomentinはmethylglyoxalによる活性酸素種産生を介したcleaved caspase-3発現誘導を抑制することで細胞死を抑制することを初めて明らかにした。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。Omentinは内臓脂肪組織中に発現する新規アディポサイトカインであるが、肥満症患者で血漿中濃度が低下しているため、私はomentinが肥満に併発する高血圧症の進展に関わるのではないかとの仮説を立て研究を行ってきた。今年度は、1omentinが血管平滑筋細胞(SMCs)の増殖・遊走を介した血管壁リモデリングに及ぼす影響を明らかにすること、2omentin慢性投与の高脂肪食給餌マウスに及ぼす影響を明らかにすることを目的として、研究を進めた。結果、1Omentinはplatelet-derived growthfactor-BB誘導性NADPH oxidase/reactive oxygen species (ROS)/p38/heat shock protein27経路の活性化を阻害することで、SMCs遊走を抑制した。さらにomentinはin vivoにおいても新生内膜肥厚を抑制した(Kazama et al., Am J Physiol-Heart Circ Physiol. In press)。これらの結果から、omentinがin vitroのみならずin vivoにおいても高血圧発症に関わる重要な病態プロセスである血管壁リモデリングの進展を阻害することが初めて明らかになった。2Omentin慢性投与は、マウス大動脈において高脂肪食負荷により増加したROS産生と炎症性タンパク質VCAM-1発現を抑制した。これらの結果から、omentinは肥満による血管の初期病変である炎症性反応を抑制する可能性が示唆された。今年度の実験結果により、omentinがin vitroやin vivoにおいて高血圧症の進展に関わる重要な血管病態プロセスを抑制することが明らかになったことから、高血圧・心不全モデル動物においてもomentinの抑制効果が期待され更なる検討が必要である。<背景・目的>Omentinは主に健常者の内臓脂肪組織に多く発現する新規アディポサイトカインである。疫学調査において、肥満症による血中omentin濃度の低下が高血圧症やアテローム性動脈硬化症などの心血管疾患の発症率増加と相関するという報告は非常に多い。このことから私はomentinが肥満に併発する心血管疾患の進展に関わるのではないかとの仮説を立て研究を行ってきた。本年度は、1omentin長期間投与のラット肺高血圧に及ぼす影響を明らかにすること、2omentinの心筋細胞死に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、研究を進めた。<背景・目的>私の研究テーマは“新規アディポサイトカインomentinの心血管病に対する作用解明と獣医療への応用"である。これまでに脂肪組織は単にエネルギーを貯蔵する場として考えられていたが、近年多くの生理活性物質アディポサイトカインを産生・分泌することが認識され始めている。新規アディポサイトカインの1つであるomentinは主に健常者の内臓脂肪組織に多く発現する。多くの疫学調査において、肥満症による血中omentin濃度の低下が高血圧症やアテローム性動脈硬化症などの心血管疾患の発症率増加と相関することが報告されている。これらのことから私はomentinが肥満に併発する心血管疾患の進展に関わるとの仮説を立て研究を行ってきた。当研究室では1omentinが摘出血管組織の内皮細胞に作用し一酸化窒素(NO)を放出し血管を拡張させること、さらに2omentinが血管内皮細胞において抗炎症作用を有することを明らかにしていた。また私はこれまでに3omentinが血管平滑筋細胞(SMCs)において抗炎症作用を有すること、4omentinがSMCs遊走を抑制すること、5omentin急性静脈内投与がアゴニストによる昇圧作用を抑制すること、6omentin長期間腹腔内投与がmonocrotaline誘発ラット肺高血圧を抑制することを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-13J03703
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新規アディポサイトカインomentinの心血管病に対する作用解明と獣医療への応用
また7omentinが制癌薬doxorubicinによる心筋芽細胞死を抑制することも明らかにした。本年度はomentinの糖代謝産物methylglyoxalによる血管内皮細胞死に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、研究を進めた。<結果>ヒト臍帯静脈血管内皮細胞においてomentinはmethylglyoxalによる活性酸素種産生を介したcleaved caspase-3発現誘導を抑制することで細胞死を抑制することを初めて明らかにした。本年度はomentin長期間処置がラットにおいてmonocrotaline誘発肺高血圧を抑制することを明らかにし、海外の学会で発表した(American Heart Association High Blood Pressure Research Scientific Session 2014)後、論文にまとめ公表した(Biochem Biophys Res Commun. 2014)。この結果と過去の我々の結果から、in vitro, ex vivoおよびin vivoにおけるomentinの高血圧症に対する血管保護作用が明らかになったため、次にomentinの心臓における作用を検討した。そしてomentinがdoxorubicinによる心筋細胞死を抑制することを明らかにし、学会で発表した(第27回北里大学バイオサイエンスフォーラム)後、論文にまとめ公表した(Biochem Biophys Res Commun. 2015)。さらにこれまでのomentinに関する研究成果を総説として論文にまとめ公表した(Nippon Yakurigaku Zasshi. 2015)。このように着実にデータを出し成果をまとめ、国内外での学会発表も積極的に行っていることから、おおむね順調に進展していると評価した。27年度が最終年度であるため、記入しない。現在までのところ肥満動物におけるomentinの作用は明らかになっていない。今後は高脂肪食給餌マウスや肥満猫などの血圧及び血中omentin濃度を測定し、相関関係を検討していく。27年度が最終年度であるため、記入しない。高脂肪食餌マウスにomentinを慢性投与した実験では高脂肪14週間給餌では血圧が上昇しないなどの問題点ががあった。今後は、ピロリジンアルカロイドであるモノクロタリン誘発性肺高血圧ラットや、アンテトラサイクリン系の抗腫瘍性抗生物質であるドキソルビシン誘発性心機能障害マウスなどの高血圧・心不全モデル動物を使用してornentin慢性投与の作用を詳しく検討していく。
KAKENHI-PROJECT-13J03703
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研究成果活用・健康生活・省察を基盤とした公衆衛生看護実践能力修得プログラムの開発
【目的】本研究の目的は、保健師課程の学生を対象に、研究成果活用、健康生活実践、省察的実践の各能力を総合的に習得する教育プログラムを開発することである。【方法】プログラムは、研究者間で協議し、3回の試行と修正を経て開発された。各学生は、3年生前期の3か月間に3つの学習課題に取り組む。倫理的配慮について、研究においては成績判定後に記録類を用い、参加者の成績には一切関係がないこと等を事前に口頭と文書で説明し、同意書を得た。【結果】前後のアウトカム評価では、参加者の対人支援・地域支援における多様な能力が有意に高まっていた。【結論】本プログラムは今後、大学院教育や現任教育への適用可能性がある。1)研究成果活用・健康生活実践・省察的実践の能力修得プログラム試案を作成し、予備調査を行った。(1)研究成果活用能力:文献検討、ワークシートの作成(2)健康生活実践能力:文献検討、ワークシートの作成(3)省察的実践能力:文献検討、ワークシートの作成(4)学部生・新任保健師各々に適用する修得プログラムの構成と内容を検討(5)プログラムの仮説の妥当性について、実践現場の実態調査より検討した。2)各能力の測定用具を検討した。(1)研究成果活用能力評価尺度:2012年予備調査結果と専門家パネルとの協議より作成(2)健康生活実践能力評価尺度:文献検討(ブレスロー1965、森本1987等)より作成(3)省察的実践能力評価尺度:2012年予備調査結果と専門家パネルとの協議より作成(4)プログラム全体の評価方法について協議した。1.平成25(2013)年度に作成した研究成果活用・健康生活実践・省察的実践の能力取得プログラム試案を改訂し、保健師課程学生20名に実施した。データ収集方法は、(1)健康生活実践・研究成果活用のワークシート、(2)リフレクションシート、(3)グループワーク・個別面談の記録、(4)介入前後の到達度評価であり、成績評価終了後分析中である。また、A市の新人保健師・指導保健師研修にもプログラムの応用版を試行した。2.プログラム仮説の妥当性、および(1)研究成果活用能力、(2)健康生活実践能力、(3)省察的実践能力を評価するための尺度・指標の開発について検討し、現任保健師への実態調査を行った(中国・四国地方の自治体の常勤保健師1/2抽出、回収数982(56.9%)、有効回答962(55.8%))。1.初年度の2013年に研究成果活用・健康生活実践・省察的実践の能力取得プログラム試案を作成後、保健師課程学生に適用し(2013・2014・2015年度各20名)、研究班で協議して改訂を継続している。データ収集方法は(1)健康生活実践・研究成果活用のワークシート、(2)リフレクションシート、(3)グループワーク・個別面談の記録、(4)介入前後の到達度評価である。随時分析し、学会発表を行っている。2.A市の新人保健師・指導保健師研修にもプログラムの応用版を実施。A市が前後評価をして学会発表を行った。3.プログラムの有効性を支持するために、1研究成果活用力、2健康生活実践力、3省察的実践力の高さが保健師の実践能力の高さと関連するかどうかについて、現任保健師への質問紙調査を行い、結果を分析した。同時に123を評価するための尺度・指標の開発を行い、それらについて随時学会発表を行った。データ収集はおおむね順調であるが、質的データが多いことから分析に時間を要し、論文作成と普及のための活動が遅れている。近年、健康課題の多様化・深刻化に伴い、保健師に求められる役割が拡大・高度化している。本研究の目的は、保健師課程の学生を対象に、高度な公衆衛生看護実践の基礎となる成果活用、健康生活実践、省察的実践の各能力を総合的に習得する教育プログラムを開発することである。同時に各能力の評価指標の開発、及び各能力の実態と関連要因についても検討し、プログラムに反映する。プログラムは研究者間で協議し3回の試行と修正を経て開発された。プログラムの学習目標は「生涯を通じたContinuing Professional Developmentの土台となる学び方を学ぶ」である。各学生は3年生前期の3か月間に3つの学習課題、研究成果活用・健康生活実践・省察的実践に取り組む。プログラム実施期間中の授業は、初回の課題説明、1か月後と2か月後のグループ・セッション、3か月終了時の個別面接で構成されている。プログラム試行の参加者は、2013から2015年度の学部選択制の保健師課程学生60人であった。プログラムのアウトカム評価は、2013/2014年度の学生に実施し、実施前後の「保健師に求められる実践能力のミニマムリクワイアメンツ到達度の自己評価」、プロセス評価は、期間中参加者が記載したワークシート等の記録を用いて行った。倫理的配慮について、研究では成績判定後に記録類を用い、参加者の成績には一切関係がないこと等を事前に口頭と文書で説明し、同意書を得た。プログラムを実施した結果、以下の結果に示す一定の効果が確認された。前後のアウトカム評価では、参加者の対人支援・地域支援における多様な能力が有意に高まっていた。
KAKENHI-PROJECT-25671016
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研究成果活用・健康生活・省察を基盤とした公衆衛生看護実践能力修得プログラムの開発
さらに、参加者の学習プロセスにおいては、日常の健康生活実践についてリフレクションと研究成果活用が習慣化することによって、保健指導の対象者への理解と効果的な接近方法への気づきが促進されていたことが確認された。【目的】本研究の目的は、保健師課程の学生を対象に、研究成果活用、健康生活実践、省察的実践の各能力を総合的に習得する教育プログラムを開発することである。【方法】プログラムは、研究者間で協議し、3回の試行と修正を経て開発された。各学生は、3年生前期の3か月間に3つの学習課題に取り組む。倫理的配慮について、研究においては成績判定後に記録類を用い、参加者の成績には一切関係がないこと等を事前に口頭と文書で説明し、同意書を得た。【結果】前後のアウトカム評価では、参加者の対人支援・地域支援における多様な能力が有意に高まっていた。【結論】本プログラムは今後、大学院教育や現任教育への適用可能性がある。研究の骨格となるプログラム試案作成・試行を経て、改訂・実施を行ったこと、ワークシートや評価表類の開発も進められたことから、おおむね順調と判断した。3年間でデータ収集・分析した結果をまとめ論文投稿を進める。また、ホームページやワークショップを通してプログラムの普及を図る。地域看護学(公衆衛生看護学)・プログラムを更新し(保健師課程学生用)、応用版(自治体保健師用)を開発し、普及に向けた方策を検討する。・プロセス評価のために、リフレクションの質評価指標を新たに開発する(参加者のポートフォリオ、期間中のリフレクション・記録の質的評価)。・アウトカム評価(測定用具を用いたプログラム実施前後の評価)に用いる評価尺度の信頼性・妥当性の検討を行う。研究の骨格となるプログラム試案、ワークシート、評価表の検討を行えたことから、おおむね順調と判断した。当初計画の遅延による。改訂したプログラムの分析・評価に想定以上に時間を要しており、予定していた成果発表と普及(論文作成、ホームページの充実、ワークショップ等)が遅れている。プログラムのテキストや媒体作成が昨年度内にできず繰り越したため。分析会議、文献検討に基づく考察、成果発表に費やす。3)プログラムの試行と改訂(1)新任保健師対象に1自治体で試行(岡山市を予定)(2)学部生対象に1大学で試行(岡山大学)、他のフィールドも継続検討する。(3)プロセス評価(参加者のポートフォリオと期間中の記録による質的評価)(4)プログラムの企画評価とそれに基づく改訂4)測定用具の試行と改訂、プログラム全体の評価指標の整備(1)アウトカム評価(測定用具を用いたプログラム実施前後の参加者評価)(2)開発した評価尺度の信頼性・妥当性の検討(3)プログラム全体で用いる評価指標の検討と整備プログラムのテキストや媒体作成、それに伴う人件費、及び成果発表に使用する。プログラムのテキストや媒体作成、機器購入が昨年度内にできず繰り越したため。プログラムのテキストや媒体作成、機器購入、それに伴う人件費、および成果発表に使用する。
KAKENHI-PROJECT-25671016
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仮想空間のチームスポーツを介したコミュニケーションスキルの知的学習支援
人間と自然なコミュニケーションが行えるような人工的なエージェント・ロボットの実現は、人工知能の分野において重要な課題の1つである。本研究では、仮想空間におけるチームスポーツなどの社会的な状況を設定して、言語・非言語コミュニケーションの分析・モデル化を行った上で、実際に仮想空間のエージェントや人間酷似型アンドロイドにおいてその機能を実装した。まず、チームスポーツにおいてリアルなコミュニケーションができるチームメートとしてのエージェントの実現に取り組んだ。大画面上に構築した複数エージェントとバスケットボールを行う環境において、Wizard-of-Oz方式を用いて、音声とジェスチャのやりとりを収録した。特にパスを行う際には、音声とジェスチャの両方が使われる可能性があるが、言語表現だけでなく韻律的なパターンにも着目して分析を行った。その結果、ゲームを通じてコミュニケーションが確立されるにつれて、振る舞いに変化が見られた。特に、ゲームの進行に応じて、単純な発話から複雑な発話が用いられるようになるとともに、励ましなどのタスク以外の発話の割合も増える傾向があることが明らかになった。また、音声とジェスチャを用いた共同行為のパターンも確認した。次に、受付・ガイドや傾聴(話し相手)などの社会的な役割を想定した上で、言語及び非言語によるコミュニケーションが行える自律型アンドロイドの実現に取り組んだ。受付・ガイドにおいては、複数の人が到来することを想定し、どのように視線配布を行い、対話を開始するのか検討を行った。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。大型の全周囲型のディスプレイによる仮想空間においてチームスポーツのゲームを行う環境を構築し、そこでエージェントと円滑なコミュニケーションを行うためのシステムを研究開発している。これまでバスケットボールを主に想定し、ジェスチャーや動作のパターンの分析と認識を扱ってきたが、本年度は音声コミュニケーションを導入し、Wizard of Oz方式に基づいて被験者との対話データの収集と分析を行った。その結果、ゲームで必要なパスなどの指示を行う場合と、成功時の喜びや失敗時の励ましなどの感情表現を行う場合に分類でき、その時間的・韻律的なパターンも明らかにすることができた。また、収集した対話データに基づいて音声認識も実装した。これらの研究成果は、国際会議で発表を行うとともに、論文誌でも発表を行っている。さらに、人間どうしのコミュニケーションにおいて視線配布が重要な役割を果たしていることに着目し、センサーを用いて視線を頑健に検出し、それに基づいていつ誰にむかって発話しているのか推定する方法の研究も行った。この研究成果は、上記のような仮想エージェントだけでなく、複数の人間とインタラクションを行う人間型ロボットにおいても実装を進めている。このように本研究は、エージェントやロボットとの自然なインタラクションを実現する上で、音声言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションを融合するための基盤を与えるものである。国際会議や論文誌への投稿・発表を着実に進めている。人間と自然なコミュニケーションが行えるような人工的なエージェント・ロボットの実現は、人工知能の分野において重要な課題の1つである。本研究では、仮想空間におけるチームスポーツなどの社会的な状況を設定して、言語・非言語コミュニケーションの分析・モデル化を行った上で、実際に仮想空間のエージェントや人間酷似型アンドロイドにおいてその機能を実装した。まず、チームスポーツにおいてリアルなコミュニケーションができるチームメートとしてのエージェントの実現に取り組んだ。大画面上に構築した複数エージェントとバスケットボールを行う環境において、Wizard-of-Oz方式を用いて、音声とジェスチャのやりとりを収録した。特にパスを行う際には、音声とジェスチャの両方が使われる可能性があるが、言語表現だけでなく韻律的なパターンにも着目して分析を行った。その結果、ゲームを通じてコミュニケーションが確立されるにつれて、振る舞いに変化が見られた。特に、ゲームの進行に応じて、単純な発話から複雑な発話が用いられるようになるとともに、励ましなどのタスク以外の発話の割合も増える傾向があることが明らかになった。また、音声とジェスチャを用いた共同行為のパターンも確認した。次に、受付・ガイドや傾聴(話し相手)などの社会的な役割を想定した上で、言語及び非言語によるコミュニケーションが行える自律型アンドロイドの実現に取り組んだ。受付・ガイドにおいては、複数の人が到来することを想定し、どのように視線配布を行い、対話を開始するのか検討を行った。人間型ロボットとのインタラクションにおいても研究を展開していく予定である。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15F15049
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15F15049
沖縄産マンゴーのブランド力強化のための栽培履歴情報システムの普及要件に関する研究
本研究は、他地域産マンゴーとの比較分析や国内外の生産者段階での栽培履歴情報のIT活用型蓄積・開示システムの実態調査に基づく比較研究を行い、沖縄産マンゴーのブランド力の強化と言う観点から、生産者段階で品質や栽培履歴等の情報蓄積とその開示が行える生産情報システムを普及するための基本要件について検討し提言することを目的としている。調査研究の結果、得られた知見は次のとおりである。(1)沖縄県内のマンゴー生産者は、栽培履歴情報の蓄積・開示を前提としたトレーサビリティシステムの導入によるブランド力の強化を促進しようとするインセンティブが働いていない。(2)沖縄県産マンゴーの購買者は、生産者のこだわりや果実の外見からでは判断できないような情報の提供を求めている。(3)前提の厳しい試論的な推計であるが、栽培履歴の情報化に伴いマンゴー生産者に発生する費用と時間は、平均売上額の1%強程度、自家労働時間の7%弱と見積もられる。(4)沖縄県産マンゴーのトレーサビリティシステムを直ちに構築することは、生産者の経営意識や経営管理手法、生産者も含めた全関係者に発生する追加的な作業時間や経費等に対する負担感が阻害要因となって実現性に乏しい。(5)品質比較調査の結果、沖縄県産マンゴーは、食味において、他産地産のマンゴーとの差別化を可能とする独自性を有している。以上のことから、栽培履歴情報システムの普及要件は次のとおりである。(1)既存の流通方法や経路にとらわれず、具体的な便益が直裁に認識され得るような新たなマンゴー販売システムの開発と実運用が求められる。(2)「沖縄産」としての品質保証をするため、独自の認証制度の創設かGAPや有機認証等の既存の認証制度の活用が必要である。(3)「ネットワーク社会」の利便性を日常の実生活の中で特段の意識をすることなく体感できるような地域の情報インフラの整備が必要である。本研究は、他地域産マンゴーとの比較分析や国内外の生産者段階での栽培履歴情報のIT活用型蓄積・開示システムの実態調査に基づく比較研究を行い、沖縄産マンゴーのブランド力の強化と言う観点から、生産者段階で品質や栽培履歴等の情報蓄積とその開示が行える生産情報システムを普及するための基本要件について検討し提言することを目的としている。調査研究の結果、得られた知見は次のとおりである。(1)沖縄県内のマンゴー生産者は、栽培履歴情報の蓄積・開示を前提としたトレーサビリティシステムの導入によるブランド力の強化を促進しようとするインセンティブが働いていない。(2)沖縄県産マンゴーの購買者は、生産者のこだわりや果実の外見からでは判断できないような情報の提供を求めている。(3)前提の厳しい試論的な推計であるが、栽培履歴の情報化に伴いマンゴー生産者に発生する費用と時間は、平均売上額の1%強程度、自家労働時間の7%弱と見積もられる。(4)沖縄県産マンゴーのトレーサビリティシステムを直ちに構築することは、生産者の経営意識や経営管理手法、生産者も含めた全関係者に発生する追加的な作業時間や経費等に対する負担感が阻害要因となって実現性に乏しい。(5)品質比較調査の結果、沖縄県産マンゴーは、食味において、他産地産のマンゴーとの差別化を可能とする独自性を有している。以上のことから、栽培履歴情報システムの普及要件は次のとおりである。(1)既存の流通方法や経路にとらわれず、具体的な便益が直裁に認識され得るような新たなマンゴー販売システムの開発と実運用が求められる。(2)「沖縄産」としての品質保証をするため、独自の認証制度の創設かGAPや有機認証等の既存の認証制度の活用が必要である。(3)「ネットワーク社会」の利便性を日常の実生活の中で特段の意識をすることなく体感できるような地域の情報インフラの整備が必要である。沖縄県は国内最大のマンゴー産地であるとともに、国内唯一の亜熱帯地域で収穫されることから、沖縄県の地理的イメージと合致するとともに、完熟状態で出荷されるため食味の評価も極めて高い。しかし、卸売市場の平均単価は、他県産マンゴーの約9割程度であり、沖縄産マンゴーのブランド力は、他県産のものに較べて優位な状態にあるとは言えない。また、沖縄産マンゴーの市場外流通量は約60%に達することから、過去の食品事故にみられるように個別生産者段階での事故が沖縄産マンゴー全体のブランド力を損なってしまうことが強く危惧される。本研究は,他地域産マンゴーとの比較分析や国内外の生産者段階での栽培履歴情報のIT活用型蓄積・開示システムの実態調査に基づく比較研究を行い、沖縄産マンゴーの生産者段階で品質や栽培履歴等の情報蓄積とその開示が行える生産情報システムを運用するための基本要件について検討し提言することを目的としている。本年度の研究成果は、以下の通りである。第一に、県内のマンゴーの栽培実態に関する現地調査を宮古・石垣で実施した。その結果見いだされた課題等は次のとおりである。1.(1)家族経営が主体であること、(2)収穫期のピークが7月中旬から8月中旬に集中すること、(3)すでに優良生産者は顧客を確保していること、等のため、生産者の規模拡大や販路の拡大意欲が旺盛ではない。2.マンゴー栽培の普及過程における生産者の主導的役割が大きく、ともすれば、行政や関係団体が指導力を十分発揮し得ない。第二に、栽培履歴情報システムに関わる関連事例の調査として、IT関係の専門家・栽培履歴情報を実運用している生産者や市場関係者等を招聘して研究会を2回(9月、1月)実施した。
KAKENHI-PROJECT-16380153
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16380153
沖縄産マンゴーのブランド力強化のための栽培履歴情報システムの普及要件に関する研究
研究会の概要は次のとおりである。1.第1回:2004年9月25日開催。研究会講師は越塚登(東京大学)、原耕造(JA全農)。2.第2回:2005年1月22日開催。研究会講師は片山寿伸(農業生産法人片山りんご有限会社)、中幸雄(横浜丸中青果(株))。第三に、マンゴーの品質に関する比較分析を目的に、6月8月に7回に分けて、マンゴー62個(宮崎産19個、沖縄産43個)の糖度・pH・カリウム濃度・食味の調査をした。その結果、両者の間には統計的な有意差はないことが分かった。本研究は,他地域産マンゴーとの比較分析や国内外の生産者段階での栽培履歴情報のIT活用型蓄積・開示システムの実態調査に基づく比較研究を行い、沖縄産マンゴーの生産者段階で品質や栽培履歴等の情報蓄積とその開示が行える生産情報システムを運用するための基本要件について検討し提言することを目的としている。本年度の研究成果は、以下の通りである。第一に、本島北部で県内のマンゴーの栽培実態に関する現地調査を、また、青森県弘前市で光センサー糖度計の実使用状況等に関する聞き取り調査を実施した。調査結果の概要等は次のとおりである。1.本島北部では、一部の生産者を除き、栽培技術の陶冶には極めて熱心であるが技芸を競う風潮が強いため、生産規模の拡大や販路の拡大意欲に結びついていない。2.マンゴー果実個体毎の糖度表示は、商品の差別化を志向するという点で生産者による栽培履歴情報蓄積の契機になると判断されるが、「食せば分かる」式の旧来然とした生産者の自己完結型発想が根強く、生産現場での理解が得られない。第二に、沖縄ブランドと栽培履歴情報システムの関わりという観点から、行政関係者、IT関係の専門家・栽培履歴情報を実運用している生産者や市場関係者等を招聘して研究会を3回(8月、9月、11月)実施した。研究会の概要は次のとおりである。1.第1回:2005年8月13日開催。研究会講師は上地哲(デジタルあじまぁ)。2.第2回:2005年9月24日開催。研究会講師は伊藤孝博(株式会社イー・有機生活)。3.第3回:2005年11月1日開催。研究会議師は野口正幸(株式会社伊勢丹MD統括部食品営業部)第三に、マンゴーの品質に関する比較分析を目的に、5月8月に7回に分けて、マンゴー54個(宮崎産34個、沖縄産20個)の糖度・pH・カリウム濃度・食味の調査をした。なお、2005年は沖縄産マンゴー史上最大の不作年であった。本研究は,他地域産マンゴーとの比較分析や国内外の生産者段階での栽培履歴情報のIT活用型蓄積・開示システムの実態調査に基づく比較研究を行い、沖縄産マンゴーの生産者段階で品質や栽培履歴等の情報蓄積とその開示が行える生産情報システムを運用するための基本要件について検討し提言することを目的としている。本年度の研究成果は、以下の通りである。第一に、生産情報システムの普及要件としてのユビキタス技術の活用可能性を探ると伴に外国産の中では最も卸売市場価格の高い豪州産マンゴーの農場段階での品質管理の動向について、東京並びに豪州クイーンズランド州にて現地調査を実施した。調査結果の概要等は次のとおりである。
KAKENHI-PROJECT-16380153
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16380153
廃棄物を原料とした多孔性無機材料の創製と評価
アルミおよびアルミ合金材料から金属アルミを再生する工程で発生するアルミ化合物と液晶製造工程から発生するリン酸廃液を原料にして、ミクロ孔を有する多孔性材料であるAlPO_4-5(リン酸アルミ縮合物の一種)の水熱合成を試みた。AlPO_4-5の水熱合成時の際に構造規定剤として用いられる有機アミンの種類と添加量の影響について検討を行った。反応温度453K、反応時間24hの反応条件下で、アルミドロスからAlPO_4-5を合成することが可能であった。実験で用いたアルミドロスにはAIPO_4-5に変換されない成分、たとえば石英や酸化鉄が不純物として含まれていたが、アルミドロスをふるい分けし粒子径の大きい石英を分離することによって、AlPO_4-5の収率を高めることが可能であった。アルミドロスからのAlPO_4-5合成を行う場合、トリエチルアミンが構造規定剤として最も適していた。トリエチルアミンの添加量には最適値が存在し、AlPO_4-5合成のための最適な調整条件は、Al_2O_3:P_2O_5:SDA:H_2O=1:1:0.8:40であった。トリエチルアミンの添加量が最適値から離れると、AIPO_4-5のほかにAlPO_4-34が副生成したり、細孔構造を持たないリン酸アルミが副生成する傾向が見られた。AlPO_4-5結晶内に残存するSDAを、結晶構造を壊すことなく除去するための熱処理は、823K(付近で行うことが望ましいことが明らかになった。この研究では、アルミおよびアルミ合金材料から金属アルミを再生回収する工場で発生するアルミ化合物や粗製塩化マグネシウムを用いて、ハイドロタルサイトやアルポ(リン酸アルミ縮合物)のような多孔性無機材料を合成し、得られた無機材料の物性を明らかにすることを目的としている。ハイドロタルサイトは、結晶中に存在する陽電荷のためにイオン交換可能な陰イオン(炭酸イオン、塩化物イオンなどを保持しており、陰イオン交換材料として機能する。今年度はハイドロタルサイトの合成条件の確立と得られた生成物の物性評価を行った。ハイドロタルサイトの合成条件を確立するために、予備試験として試薬を用いてハイドロタルサイトを合成し、Mg:Al=2:13:1の比率の水溶液をNa_2CO_3水溶液中にpHを1011に維持しながら添加反応させると、ハイドロタルサイトが結晶化することを明らかにした。反応物質の比率、pH、反応時間、反応温度を変化させてハイドロタルサイトを合成する条件を検討し、Mg/Al比=2.5、pH10.5、反応時間2日間、反応温度常温が適当であった。試薬から合成しても、アルミドロスのような廃棄物を原料としても同様のハイドロタルサイトを得ることが可能であった。ハイドロタルサイトの物性の評価では、得られたハイドロタルサイトの熱物性、結晶構造、細孔径分布、比表面積、陰イオン交換特性などの物理的および化学的性質を明らかにした。陰イオン交換特性の研究では、ヒ酸、亜ヒ酸、クロム酸、セレンのような水溶液中で陰イオン種を形成し、毒性の高い物質に着目して研究を行い、これらの陰イオン種がハイドロタルサイトに強く陰イオン交換捕捉されることを明らかにした。アルミおよびアルミ合金材料から金属アルミを再生する工程で発生するアルミ化合物と液晶製造工程から発生するリン酸廃液を原料にして、ミクロ孔を有する多孔性材料であるAlPO_4-5(リン酸アルミ縮合物の一種)の水熱合成を試みた。AlPO_4-5の水熱合成時の際に構造規定剤として用いられる有機アミンの種類と添加量の影響について検討を行った。反応温度453K、反応時間24hの反応条件下で、アルミドロスからAlPO_4-5を合成することが可能であった。実験で用いたアルミドロスにはAIPO_4-5に変換されない成分、たとえば石英や酸化鉄が不純物として含まれていたが、アルミドロスをふるい分けし粒子径の大きい石英を分離することによって、AlPO_4-5の収率を高めることが可能であった。アルミドロスからのAlPO_4-5合成を行う場合、トリエチルアミンが構造規定剤として最も適していた。トリエチルアミンの添加量には最適値が存在し、AlPO_4-5合成のための最適な調整条件は、Al_2O_3:P_2O_5:SDA:H_2O=1:1:0.8:40であった。トリエチルアミンの添加量が最適値から離れると、AIPO_4-5のほかにAlPO_4-34が副生成したり、細孔構造を持たないリン酸アルミが副生成する傾向が見られた。AlPO_4-5結晶内に残存するSDAを、結晶構造を壊すことなく除去するための熱処理は、823K(付近で行うことが望ましいことが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-15656232
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15656232
状況から想起する感性情報をモデル化するためのロールプレイ対話システムの構築
本研究では,データセット構築およびユーザ実験を通じたシステム構築が重要となる.H30年度は,感性情報に関するメタデータの整形および対話のストーリー拡充に要するシステムを複数構築した.まず,発話と状況および感情を有する複数媒体のデータを解析し,フォーマットの再定義をした.創作者と継続して連携し,キャラクタのロールに着目して類似プロットを検索するシステムを構築した.また,ユーザの指定したパラメータに応じて,分散表現を用いて,Web上の既存ストーリーから新たなストーリーを得るためのシステムを構築した.現在,画像と言語間から得られる感性情報を,ユーザから収集する新手法の整備を進めている.シナリオデータの整形およびデータ拡充に関する手法を発展させた.データ解析過程でユーザ実験方法に対して初期計画時よりも効率的な方法の着想を得たため,複数のシステム構築を並行して進めており,おおむね順調に進んでいるといえる.今後,継続して状況を表すシナリオの拡充をし,新たなシステムをユーザ実験用に整備する.併せて実験拡大のための部分公開の準備を進める.本課題の基礎となる対話システムのための共通トピックおよびシナリオを作成し,メタデータの収集方法についての枠組みを構築した.感性情報を多分に含む創作物のシナリオ解析について,創作者と連携し,プロット制作に関する対話型システムの構築をして重要な成果を得た.複合感性情報をモデル化する方法について国際会議で発表した.ユーザの思考および意思決定に関して,複数人のユーザが介在する環境を想定したシステムの構築をし,国際会議へ投稿した.ロールプレイ対話システムの整備については研究遂行上一部進行方法の順序を変更したが,システムの基礎となるメタデータの整備,解析,拡充のための手法構築は想定以上に進んだため,おおむね順調に進んでいるといえる.本研究では,データセット構築およびユーザ実験を通じたシステム構築が重要となる.H30年度は,感性情報に関するメタデータの整形および対話のストーリー拡充に要するシステムを複数構築した.まず,発話と状況および感情を有する複数媒体のデータを解析し,フォーマットの再定義をした.創作者と継続して連携し,キャラクタのロールに着目して類似プロットを検索するシステムを構築した.また,ユーザの指定したパラメータに応じて,分散表現を用いて,Web上の既存ストーリーから新たなストーリーを得るためのシステムを構築した.現在,画像と言語間から得られる感性情報を,ユーザから収集する新手法の整備を進めている.シナリオデータの整形およびデータ拡充に関する手法を発展させた.データ解析過程でユーザ実験方法に対して初期計画時よりも効率的な方法の着想を得たため,複数のシステム構築を並行して進めており,おおむね順調に進んでいるといえる.H29年度はロールプレイ対話の基礎となるデータを構築し,フォーマット標準化とデータ拡充に対する知見を得た.H30年度は,対話システムの整備とデータの統計量について詳細な調査をする.今後,継続して状況を表すシナリオの拡充をし,新たなシステムをユーザ実験用に整備する.併せて実験拡大のための部分公開の準備を進める.本年度,状況を規定する画像とユーザの着目部分の関係性の実験に関するシステム構築を進める中で,ユーザ実験方法の新たな着想を得て,次年度に,実験用の予算を一部繰越すことが効果的であると考えたため.
KAKENHI-PROJECT-17K17809
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植食性昆虫の寄主転換は寄生蜂の多様化に寄与するか:連続的種分化の検証
植食性昆虫の寄主転換が植食性昆虫の寄生者の多様化にも波及するかどうかを調べるため,鱗翅目ホソガ科のクルミホソガのホストレースをモデル系として研究を行った.その結果,クルミホソガの主要な寄生蜂であるワタナベコマユバチ(膜翅目:コマユバチ科)にはクルミレースに寄生していた個体とネジキレースに寄生していた個体間で遺伝的分化は見られなかった.大多数のワタナベコマユバチはクルミレースに寄生しており,この傾向はクルミレースとネジキレースの同所集団でも変わらなかったことから,寄生蜂は寄主昆虫の寄主植物を頼りに寄生を行っている可能性が示唆された.植食性昆虫の寄主転換が植食性昆虫の寄生者の多様化にも波及するかどうかを調べるため,鱗翅目ホソガ科のクルミホソガのホストレースをモデル系として研究を行った.その結果,クルミホソガの主要な寄生蜂であるワタナベコマユバチ(膜翅目:コマユバチ科)にはクルミレースに寄生していた個体とネジキレースに寄生していた個体間で遺伝的分化は見られなかった.大多数のワタナベコマユバチはクルミレースに寄生しており,この傾向はクルミレースとネジキレースの同所集団でも変わらなかったことから,寄生蜂は寄主昆虫の寄主植物を頼りに寄生を行っている可能性が示唆された.クルミホソガの両ホストレースが同所的に分布する地点(岡山)と,クルミレースのみが分布する地点(山形),ネジキレースのみが分布する地点(京都)のそれぞれからマインを採集し,クルミホソガの寄生蜂であるAneurobracon philippinensis(膜翅目:コマユバチ科)を得た.これらのサンプルからゲノムDNAを抽出しミトコンドリアCOI遺伝子とND5遺伝子の部分配列を用いて系統解析を行ったところ,クルミレースを寄主とするA. philippinensisとネジキレースを寄主とするA. philippinensisの間には,明瞭には区別されなかった.クルミホソガの両ホストレース間にはミトコンドリア遺伝子に明瞭な遺伝的に分化が見られるが,A. philippinensisにはこのような遺伝的分化が見られなかったことから,クルミレースとネジキレースのそれぞれに寄生しているA. philippinensisは,遺伝的に均一な集団であるか,ごく最近に分化したため,十分に遺伝的分化が生じていない集団どうしである可能性が示唆された.そこで,より鋭敏に両ホストレース由来のA. philippinensis間の遺伝的分化を調べるため,Amplified Fragment Length Polymorphism(AFLP)マーカーによる解析を試み,現在データの解析を行っているところである.次に,寄生蜂A. philippinensisの産卵選好性を調べるため,クルミホソガの幼虫がどのような齢期のときに寄生を行うかを観察した.その結果,全5齢のクルミホソガ齢期のうち,1から3齢の間では寄生自体は可能であることが明らかとなった.ただし,1-2齢と3齢期で,クルミホソガ幼虫が形成するマインの形状が異なるため,産卵効率は1-2齢時の方が高いことが示された.よって,クルミレースおよびネジキレースの1-2齢期のマインが形成された寄主植物葉を用意することで,寄生蜂A. philippinensisの産卵選好性を定量化する手法が確立された.植食性昆虫の寄主転換が植食性昆虫の寄生者の多様化にも波及するかどうかを調べるため,鱗翅目ホソガ科のクルミホソガAcrocercops transectaのホストレースの系をモデルとして研究を行った.クルミホソガは潜葉性の蛾類でであり,クルミ科の植物を寄主とする祖先的なクルミレースと,ツツジ科のネジキを寄主とするネジキレースからなる.本研究ではまず,両レースが同所的,異所的に分布する複数地点からクルミホソガのマイン(幼虫が葉に潜っている部分)を採集し,成虫まで飼育することでホストレース間の寄生率や寄生蜂の構成比率を比較した.その結果,2つのホストレース間では,寄生率には有意な差は見られなかったが,得られた寄生蜂種には,ホストレース間で明瞭な違いが見られた.クルミレースではコマユバチ科の寄生蜂が多数を占めたのに対し,ネジキレースではヒメコバチ科が多数を占めた.それだけでなく,オニグルミから採集したマインからはワタナベコマユバチAneurobracon philippinensisが,ノグルミから得られたマインからはChoeras属の1種が主に得られ,同じクルミレース内でも寄主植物による寄生蜂種の明瞭な違いが見られた.そこで,このような寄生蜂種の違いをもたらす至近要因を調べるため,クルミホソガのマインを形成させたクルミ葉とネジキ葉を用いた寄生蜂の産卵選好性実験の手法の確立を試み,ワタナベコマユバチに関しては適切に実験系を確立した.さらに,ワタナベコマユバチに関してクルミレース,ネジキレースのそれぞれから得られたサンプルをミトコンドリアのCOI領域を用いて系統解析を行ったところ,両レースから得られたワタナベコマユバチは配列情報からは区別されなかった.以上の結果は,寄生蜂が寄主のホストレースを明瞭に区別して利用していることを示している.平成23年度の科研費の交付直後に研究代表者の異動(基礎生物学研究所・研究員から京都府立大学・助教)があり,研究環境の整備に時間がかかったため.24年度が最終年度であるため、記入しない。遺伝解析については,サンプル数と地点数を増やし,データを増強して日本産個体群の遺伝構造がつかめるようにする.
KAKENHI-PROJECT-23870037
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植食性昆虫の寄主転換は寄生蜂の多様化に寄与するか:連続的種分化の検証
寄生蜂の産卵選好性に関しては,未交尾のメス個体を用いた実験系は確立できているが,雄と交配させてから産卵選好性実験を行う実験系に改良する.24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-23870037
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ポピュラーカルチャーの映像資料作成と編集・教材化・公開にかかわる方法論研究
本研究は、ポピュラーカルチャーの現場体験を映像化するとともに、その成果を社会学教育の教材として使用するための方法論を探るプロジェクトとして実施されたものである。最終年度である2007年度には、これまでの研究を受ける形で、映像社会学についての数度の研究会を開催し、ポピュラーカルチャーをめぐる映像化の意義とその活用法について、実際に授業で映像を使用した経験についての報告をうけつつ、検討をくわえた。また、社会調査時におけるインタビュー等において、映像を記憶喚起の材料として使用することの可能性についても議論をふかめることができた。2008年2月には、これまでの研究の総括的な場として、映像の学術使用および映像アーカイブの方法について、2日間にわたる公開研究シンポジウムを開催した。初日の映像の学術的使用のシンポジウムでは、社会学の研究者以外にも人類学や言語学、動物行動学などの若手研究者の参加をえて、広く学術研究における映像使用の可能性について議論を深めることができた。また、2日目に開催した映像アーカイブのシンポジウムでは、国内の主要なアーカイブの関係者やアーカイブについての研究者等の参加をえて、映像(特にポピュラーカルチャーにかかわる)の保存および活用の現状の課題を共有するとともに、アーカイブのかかえる諸問題について議論を深めることができた。以上、3年間にわたる共同研究を通じて、ポピュラーカルチャーを軸に、映像の学術的分野における活用と、映像保存の可能性について、これまでにない新たな知見を生み出すことができたと考えている(成果の詳細については、「報告書」を参照されたい)。本年度、当研究プロジェクトでは、主に1.ポピュラーカルチャーを対象とした映像資料のパイロット版作成および、2.人文・社会科学における映像研究・実践のマッピングを行なった。1.に関連して、伊藤公雄と山中千恵が、それぞれイタリアと韓国において、また、国内では、丹羽が首都圏で、さらに京大・阪大のメンバーにより関西圏で、調査および撮影をおこなった。その撮影素材を利用して作成されたものを含むパイロット版の一部は、映像作成の過程などを理解するため研究メンバー自身がその作成(企画構成・調査・撮影・編集)に関わった。そのために、映像作家の藤岡幹嗣氏を講師として招き、撮影および編集などの講習を受けた。出来上がったパイロット版を研究素材に、文字を中心とした記録では捉えきれなかったポピュラーカルチャーの社会性を明らかにするとともに、映像を用いた社会学的分析の可能性とその方法論についての検討を行なった。また、映像作品を共同で作成するという教育的な意義についても議論された。2.に関しては、社会学以外の人文・社会科学の諸分野において、映像というものがどのように研究され、また利用されてきたのか、ということを研究し、マッピングを試みた。さしあたっては、『電子メディアを飼いならす』(せりか書房、2005)の編著者である飯田卓氏と原知章氏を講師とした研究会を開催し、文化人類学が映像というものとどのように対峙しているのかを議論した。平成18年度は、前年度の作業を継続し、ポピュラーカルチャーの現場におもむき撮影(具体的には、日本および米国のミュージシャンへのインタビューやストリート文化などを対象に撮影を行った)を行い、それをもとに編集作業を実施した。その上で、制作された作品を学生に鑑賞させ、意見等を聴取する作業を行った。作業と並行する形で、4月29日、7月9日、10月1日、12月17日に、共同研究者を交えての研究会を開催した。共同研究会と連動させる形で、11月4-5の両日には、大阪市立大学都市文化研究センターとの共催で、京都精華大学交流センターの協力のもとに、「ムービング・イメージと社会-映像社会学の可能性」と題する国際シンポジウムを開催した。このシンポジウムには、国内の映像社会学や映像人類学の研究者に加えて、複数の映像作家、日本および韓国の映像NPOグループや韓国の大学院生、フランスの大学院生など約70名が参加した。2日間にわたって行われたワークショップや討論会においては、それぞれの映像作品の上映と、上映作品をめぐる討論が行われるとともに、映像を用いた調査研究の技法、教育実践、教材作成の可能性、さらに映像のアーカイブの可能性など、映像社会学研究とその応用についての多面的な課題をめぐって熱心な討論が行われた。本シンポジウムは、本研究の中間総括的な意味をもつものであると同時に、国際的・国内的な映像社会学研究やポピュラーカルチャー研究の交流の場としても大きな意義をもつものであったと考えられる(この成果は『国際シンポジウムムービング・イメージと社会-映像社会学の可能性報告要旨集』、全64頁としてまとめられている)。本研究は、ポピュラーカルチャーの現場体験を映像化するとともに、その成果を社会学教育の教材として使用するための方法論を探るプロジェクトとして実施されたものである。最終年度である2007年度には、これまでの研究を受ける形で、映像社会学についての数度の研究会を開催し、ポピュラーカルチャーをめぐる映像化の意義とその活用法について、実際に授業で映像を使用した経験についての報告をうけつつ、検討をくわえた。また、社会調査時におけるインタビュー等において、映像を記憶喚起の材料として使用することの可能性についても議論をふかめることができた。2008年2月には、これまでの研究の総括的な場として、映像の学術使用および映像アーカイブの方法について、2日間にわたる公開研究シンポジウムを開催した。初日の映像の学術的使用のシンポジウムでは、社会学の研究者以外にも人類学や言語学、動物行動学などの若手研究者の参加をえて、広く学術研究における映像使用の可能性について議論を深めることができた。
KAKENHI-PROJECT-17653046
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17653046
ポピュラーカルチャーの映像資料作成と編集・教材化・公開にかかわる方法論研究
また、2日目に開催した映像アーカイブのシンポジウムでは、国内の主要なアーカイブの関係者やアーカイブについての研究者等の参加をえて、映像(特にポピュラーカルチャーにかかわる)の保存および活用の現状の課題を共有するとともに、アーカイブのかかえる諸問題について議論を深めることができた。以上、3年間にわたる共同研究を通じて、ポピュラーカルチャーを軸に、映像の学術的分野における活用と、映像保存の可能性について、これまでにない新たな知見を生み出すことができたと考えている(成果の詳細については、「報告書」を参照されたい)。
KAKENHI-PROJECT-17653046
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脳脊髄液のメタボローム解析を用いた双極性障害の病態解明に関する研究
双極性障害患者および年齢等を合致させた健常者の脳脊髄液のメタボローム解析を実施した結果、双極性障害患者のイソクエン酸濃度が健常者と比較して有意に高い事を発見した。また、双極性障害患者の死後脳を用いた研究から、イソクエン酸の代謝酵素イソクエン酸脱水素酵素(IDH)のサブタイプ(IDH3A)の遺伝子発現やタンパク発現が双極性障害患者群で減少していることを見出した。IDH3Aは細胞のミトコンドリア内にあるクエン酸回路に存在することから、今回の発見は、双極性障害の脳では、ミトコンドリア内のクエン酸回路のIDH3Aの減少により、イソクエン酸濃度が高くなっていると推測される。双極性障害は、統合失調症と並ぶ代表的な精神疾患であるが、その病因は未だ不明である。今回、双極性障害患者および年齢等を合致させた健常者の脳脊髄液のメタボローム解析を実施した結果、双極性障害患者のイソクエン酸濃度が健常者と比較して有意に高い事を発見した。また、双極性障害患者の死後脳を用いた研究から、イソクエン酸の代謝酵素イソクエン酸脱水素酵素(IDH: Isocitrate dehydrogenase)のサブタイプ(IDH3A)の遺伝子発現やタンパク発現が双極性障害患者群で減少していることを見出した。また、ラットに4週間気分安定薬(リチウムやバルプロン酸)を投与し、ラットCSFのメタボロミクス解析を実施しても、イソクエン酸濃度は変化しなかったことから、服薬の影響は低いと推測された。IDH3Aは細胞のミトコンドリア内にあるクエン酸回路に存在することから、今回の発見は、双極性障害の脳では、ミトコンドリア内のクエン酸回路のIDH3Aの減少により、イソクエン酸濃度が高くなっていると推測される。今回の研究成果は、これまで提唱されている双極性障害のミトコンドリア異常仮説を支持する重要な成果である。今回の研究成果は、精神医学の権威ある雑誌にアクセプトされ、掲載された。双極性障害は、統合失調症と並ぶ代表的な精神疾患であるが、その病因は未だ不明である。今回、共同研究先(スウェーデン)で採取した双極性障害患者および年齢等を合致させた健常者の脳脊髄液のメタボローム解析を実施した結果、双極性障害患者のイソクエン酸濃度が健常者と比較して有意に高い事を発見した。また、双極性障害患者の死後脳を用いた研究から、イソクエン酸(クエン酸の異性体であり、アコニターゼによりcis-アコニック酸から生成され、イソクエン酸脱水素酵素によって、α-ケトグルタル酸に代謝される)の代謝酵素イソクエン酸脱水素酵素(IDH: Isocitrate dehydrogenase)のサブタイプ(IDH3A)の遺伝子発現やタンパク発現が双極性障害患者群で減少していることを見出した。IDH3Aは細胞のミトコンドリア内にあるクエン酸回路(生体内で好気的代謝に関する最も重要な生化学反応回路である。解糖や脂肪酸のβ酸化によって生成されるアセチルCoAがこの回路に組み込まれ、ATPや電子伝達系で用いられるNADHなどが生成され、効率の良いエネルギー生産を可能にしている)に存在することから、今回の発見は、双極性障害の脳では、ミトコンドリア内のクエン酸回路のIDH3Aの減少により、イソクエン酸濃度が高くなっていると推測される。今回の研究成果は、これまで提唱されている双極性障害のミトコンドリア異常仮説を支持する重要な成果である。さらに、同患者の血清のメタボロミクス解析を実施した結果、CSF同様クエン酸回路の異常が関与していることが示唆された。以上の結果より、双極性障害患者では脳だけでなく、末梢においてもクエン酸回路の異常が関わっている可能性が示唆された。双極性障害患者および年齢等を合致させた健常者の脳脊髄液のメタボローム解析を実施した結果、双極性障害患者のイソクエン酸濃度が健常者と比較して有意に高い事を発見した。また、双極性障害患者の死後脳を用いた研究から、イソクエン酸の代謝酵素イソクエン酸脱水素酵素(IDH)のサブタイプ(IDH3A)の遺伝子発現やタンパク発現が双極性障害患者群で減少していることを見出した。IDH3Aは細胞のミトコンドリア内にあるクエン酸回路に存在することから、今回の発見は、双極性障害の脳では、ミトコンドリア内のクエン酸回路のIDH3Aの減少により、イソクエン酸濃度が高くなっていると推測される。さらに、CSFを用いたメタボロミクス解析を実施したので、データ解析を行い、論文をまとめる。精神神経科学
KAKENHI-PROJECT-15K15423
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K15423
SLE、強皮症及び慢性関節リウマチ発症の遺伝要因としてのDMA、B遺伝子の研究
本研究ではRA、PSS、SLEについて、DM遺伝子の疾患感受性遺伝子としての可能性を検討し、さらに臨床所見との関連を検討した。正常群(77名)ではDMA*0101-0103のアリルが検出された。DMA*0102とDMB*0101間に強い正の相関がみとめられた。日本人では白人と比べてDMA*0102、DMB*0101が少なく、DMB*0102、0103が増加しており、明白な分布差がみられた。RA(91名)ではDMA*0101が52.2%と増加傾向であった。RAで増えているDRB1*0405とDMB*0101との間にはχ^2=3.02の弱い相関があり、RAでのDMB*0101の増加傾向はDRB1*0405に伴う二次的なものと考えられた。疾患感受性ハプロタイプとしてDRB1*0405-[TAP2B-DMA*0102-DMB*0101]が感受性に、DRB1*0802-DMB*0103が抑制的に働いていると考えられる。臨床所見との関連ではDMB*0102群でr-SSA抗体陽性率が高く(27.3%)、エズリン系80KD抗原に対する抗体はDMA*0102群の61.5%で認められた。又、DMA*0102群では尿蛋白陽性率が高値を示した(44%)。リウマチ因子との関連はなかった。PSS全体ではDMB*0103が20.0%と対照と比べて有意に減少していた。DMB*0101はDiffuse型(DS)で70.0%、Sc1-70群(Sc1)で68.2%と有意に増加していた。DS群やSc1群で増えているDRB1*1502とDMB*0101との間には有意な相関があり、DMB*0101の増加傾向はDRB1*1502に伴う二次的なものと考えられた。DS群、Sc1群の感受性ハプロタイプとしてC4BQ0-DRB1*1502-DMB*0101が考えられる。PSSでは、DMB*0103と肺繊維症の間に有意な負の相関があった。肺繊維症とTNF、HSP-70との関連を検討したが有意な相関はみられなかった。SLE51名の検討では、DMA、DMBの頻度に対照群と比べて優位な差はなかった。抗DNA抗体陽性群では、DMB*0101が増加し(p=0.045)、SS-A群でも増加傾向があった。今回の検討では、新たなDM alleleはみつからなかった。本研究ではRA、PSS、SLEについて、DM遺伝子の疾患感受性遺伝子としての可能性を検討し、さらに臨床所見との関連を検討した。正常群(77名)ではDMA*0101-0103のアリルが検出された。DMA*0102とDMB*0101間に強い正の相関がみとめられた。日本人では白人と比べてDMA*0102、DMB*0101が少なく、DMB*0102、0103が増加しており、明白な分布差がみられた。RA(91名)ではDMA*0101が52.2%と増加傾向であった。RAで増えているDRB1*0405とDMB*0101との間にはχ^2=3.02の弱い相関があり、RAでのDMB*0101の増加傾向はDRB1*0405に伴う二次的なものと考えられた。疾患感受性ハプロタイプとしてDRB1*0405-[TAP2B-DMA*0102-DMB*0101]が感受性に、DRB1*0802-DMB*0103が抑制的に働いていると考えられる。臨床所見との関連ではDMB*0102群でr-SSA抗体陽性率が高く(27.3%)、エズリン系80KD抗原に対する抗体はDMA*0102群の61.5%で認められた。又、DMA*0102群では尿蛋白陽性率が高値を示した(44%)。リウマチ因子との関連はなかった。PSS全体ではDMB*0103が20.0%と対照と比べて有意に減少していた。DMB*0101はDiffuse型(DS)で70.0%、Sc1-70群(Sc1)で68.2%と有意に増加していた。DS群やSc1群で増えているDRB1*1502とDMB*0101との間には有意な相関があり、DMB*0101の増加傾向はDRB1*1502に伴う二次的なものと考えられた。DS群、Sc1群の感受性ハプロタイプとしてC4BQ0-DRB1*1502-DMB*0101が考えられる。PSSでは、DMB*0103と肺繊維症の間に有意な負の相関があった。肺繊維症とTNF、HSP-70との関連を検討したが有意な相関はみられなかった。SLE51名の検討では、DMA、DMBの頻度に対照群と比べて優位な差はなかった。抗DNA抗体陽性群では、DMB*0101が増加し(p=0.045)、SS-A群でも増加傾向があった。
KAKENHI-PROJECT-09670470
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09670470
SLE、強皮症及び慢性関節リウマチ発症の遺伝要因としてのDMA、B遺伝子の研究
今回の検討では、新たなDM alleleはみつからなかった。本研究はRAについて遺伝子を中心にMHCクラスII、III領域を検討し、その遺伝要因を検討した。RA11名、正常対照群77名についてDM遺伝子のRFLPを検討した。DMA*0101-0103、DMB0101*0103のアリルが検出され、日本人RAではDMA*0101が79.7%、*0102が17.6%、DMB*0101が52.2%、*0103が25.8%であった。アリル頻度に対照とくらべて有意な差はなかったが、表現型の頻度をみるとDMB*0101が81.3%と対照群の70.1%とくらべてわずかに増加していた。正常群で、HLA-DRとDMとの相関をみると、RAで増えているDRB1*0405とDMB*0101との間でx_2=3.02の弱い相関があり、RAでのDMB*0101の増加傾向はDRB1*0405に伴う二次的なものと考えられた。その他の相関としては、DRB1*0803とDMA*0102及びDMB*0102、DRB1*0406とDMB*0102、DRB1*1502とDMB*0101及び*0103の相関がある事があった。補体との相関では、C4A2とDMB*0101及び*0103、C4A3とDMA*0102との相関があった。RAで増加していたC4B5はDMA*0102と弱く相関し、C4AQ0はDMB*0101と相関する事がわかった。TAPとの相関では、TAP2BとDMA*0102及びDMB*0101、*0103との相関がみられ、TAP2EとDMB*0101及びDMB*0102との相関がみとめられた。DMAとBの間では、DMA*0102とDMB*0101との間に強い正の相関がみとめられた。RA患者のデーターベースを作成し、DM多型と臨床所見を検討した結果では、リウマチ因子との関連はなく、DMA*0102と蛋白尿との間及びDMB*0102とSS-A抗体との間に有意な相関を認めた。RAの発症因子としては、DRB1が主たる遺伝要因で、DM及びTAPは二次的マーカーと考えられる。但、蛋白尿やSS-A抗体とDMとの相関があり、病態形成や自己抗体の出現、薬剤に対する反応性にDMが関与している可能性があり、今後の検討が必要と考えられる。本研究はPSS、SLEについて遺伝子を中心にMHCクラスII、III領域を検討し、その遺伝要因を検討した。PSS55名についてDM遺伝子のRFLPを検討し、正常対照群77名と比較検討した。PSS全体ではDMA*0101が86.4%、*0102が13.6%、DMB*0101が60.0%、*0102が20.0%、*0103が20.0%であり、DMB*0103が対照とくらべて有意に減少していた。表現型の頻度をみるとDMB*0101が83.6%とわずかに増加し、*0103は38.2%と減少していたが、いずれも有意な差ではなかった。Diffuse型(DS)ではDMB*0101が70.0%と有意に増加し、scl-70群(Scl)でも68.2%と有意に増加していた。この増加は表現型でも同様であった。正常群で、HLA-DRとDMとの相関をみるとDS群やScl群で増えているDRBl*1502とDMB*0101との間で有意な相関があり、DMB*0101の増加傾向はDRBl*1502に伴う二次的なものと考えられた。補体との相関では、C4A2とC4BQ0がDS、Sclで増加しており、C4AQ0がLimited型(LS)、Scl-70陰性群で増加していた。C4A2、C4BQ0はDRBl*1502と相関しており、DRBl*1502に伴う二次的なものと考えられた。一方SLE51名の検討では、DMA*0101が82.4%、*0102が17.6%、DMBl*0101が55.9%、*0102が17.6%、*0103が26.5%と対照群と比べて有意な差はなかった。抗DNA抗体陽性群では陰性群に比し、DMB*0101の表現型が増加していた(88.0%対70.1%、p=0.045)。日本人SLEで増加しているDRBl*1501とDMとの間に相関はなかった。
KAKENHI-PROJECT-09670470
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第三期役者評判記の有用性に関する総合的研究
本研究は『歌舞伎評判記集成第三期』の対象となる安永期から享和期(1772-1804)の役者評判記について、用字の問題、諸本異同の問題等の諸問題を分析し、江戸文化を理解する上で、文化情報として役者評判記をいかに活用するかという情報活用のあり方を提示することを目的としている。あわせて正確な翻字本文を材料に、的確に情報を引き出すためのシステムを構築するものである。平成30年度には、基礎作業となるD作業(校訂本文の完成・解題素案の作成)、および、D作業からあぶり出された諸課題の分析、検討を行った。具体的には、(1)役者評判記の用語と用字の問題分析、(2)役者評判記の諸本に関わる問題分析、(3)役者評判記の活用に関わる基礎研究課題の事例収集を行い、それぞれの諸課題について検討し、また事例に応じて原本の再調査を行いつつ、校訂本文の精度を高め、次段階となるE原稿の作成を進めた。研究成果は『歌舞伎評判記集成第三期第二巻』として、安永5年安永7年にいたる計11点の役者評判記の校訂本文および解題を公開した。総合情報書庫の構築に関しては、評判記本文の全文検索システムを評判記原本の画像と翻字本文を連動させたシステムを構築。デジタル本文アノテーションシステムと連携したテキストアーカイブシステムにバージョンアップした。これにより、刊行した冊子本文と原本画像とが連動して、相互に確認ができるようになった。また、第三期翻字作業のより高度な情報環境を確保し、翻字効率ならびに精度を上げるための基礎データとして、『歌舞伎評判記集成』第二期・第三期のデジタルテキストの作成を開始。第二期に関しては、デジタルテキストをほぼ完成させた。上記作業を統括し、問題点の整理検討を行うため、6月には研究協力者を含めた全体会を持ち、また、6回(6月、7月、9月、11月、12月、3月)の事務局会議を行った。昨年度に引き続き、(1)役者評判記の用語と用字の問題分析、(2)役者評判記の諸本に関わる問題分析、(3)役者評判記の活用に関わる基礎研究課題の事例収集を行い、それぞれの諸課題について検討を進めている。『歌舞伎評判記集成第三期第二巻』の公刊に加え、(1)については野口隆「翻字の諸問題その一」として、(3)については齊藤千恵「『歌舞伎評判記集成第三期』翻字作業におけるデジタルデータ活用」として成果を公表(詳細は「10.研究発表」の項目参照)している。(2)については水田かや乃企画「役者評判記展」(前期「八文字屋本の成立とその特徴」2018年5月27日8月19日、後期「冊子体役者評判記から一枚摺役者評判記、役者評判絵へ」2018年10月20日2019年1月31日、於園田学園女子大学近松研究所)を開催したほか、すでに出版された『歌舞伎評判記集成』第一期・第二期(万治明和期(1658-1772))の新出役者評判記を視野に入れた書誌調査を開始するなど、着実に成果を重ねている。昨年度の研究成果を踏まえ、3点の課題について、さらに研究を継続する。本年度は『歌舞伎評判記集成第三期第三巻』所収対象の計12点の役者評判記の校訂本文および解題の精度をあげ、E原稿(校訂本文・解題の確定)を作成するとともに、第三巻以降に所収予定の役者評判記のD作業(校訂本文の完成・解題素案の作成)を続行しつつ、諸課題の分析、検討に取り組む。外題・人名・用語索引のためのアノテーション付与について、引き続き作業を進め、また第一期のデジタルテキストの作成も実施する。本研究は『歌舞伎評判記集成第三期』の対象となる安永期から享和期(1772-1804)の役者評判記について、用字の問題、諸本異同の問題等の諸問題を分析し、江戸文化を理解する上で、文化情報として役者評判記をいかに活用するかという情報活用のあり方を提示することを目的としている。あわせて正確な翻字本文を材料に、的確に情報を引き出すためのシステムを構築するものである。平成29年度は、基礎作業となるD作業(校訂本文の完成・解題素案の作成)、および、D作業からあぶり出された諸課題の分析、検討を行った。具体的には、(1)役者評判記の用語と用字の問題分析、(2)役者評判記の諸本に関わる問題分析、(3)役者評判記の活用に関わる基礎研究課題の事例収集を行い、それぞれの諸課題について検討し、また、事例に応じて原本の再調査を行いつつ、校訂本文の精度を高め、次段階となるE原稿の作成を進めた。研究成果は『歌舞伎評判記集成第三期第一巻』として、安永2年安永4年にいたる計10点の役者評判記の校訂本文および解題を公開した。総合情報書庫の構築に関しては、評判記本文、全文検索システムの改良を行ないつつ、安永2年4年の作品10点の校訂本文をシステムに搭載した。また、全文検索システムには、アノテーションシステム付与システム、語彙データベース蓄積システムを付加してしており、演劇用語に対して、シソーラスが成長するよう工夫した。なお、本文検索システムは、パスワード付で、研究分担者間の共同利用を開始した。
KAKENHI-PROJECT-17K02454
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第三期役者評判記の有用性に関する総合的研究
上記作業を統括し、問題点の整理検討を行うため、5月には研究協力者を含めた全体会を持ち、また、6回(5月、6月、9月、10月、12月、3月)の事務局会議を行った。目標としていた対象とする役者評判記の3分の1量にはいたらなかったが、第一段階の作業として、(1)役者評判記の用語と用字の問題分析、(2)役者評判記の諸本に関わる問題分析、(3)役者評判記の活用に関わる基礎研究課題の事例収集という3点の課題について、慎重な検討過程を経ることにより、今後の課題の明確化につながる有効な事例研究を行うことができた。本文検索・索引システムについては、アノテーション付与の後に、遅延が生じる不具合が残る。作業スピードを上げて、効率よくシステムを働かせるための工夫が必要であり、次年度の課題となった。本研究は『歌舞伎評判記集成第三期』の対象となる安永期から享和期(1772-1804)の役者評判記について、用字の問題、諸本異同の問題等の諸問題を分析し、江戸文化を理解する上で、文化情報として役者評判記をいかに活用するかという情報活用のあり方を提示することを目的としている。あわせて正確な翻字本文を材料に、的確に情報を引き出すためのシステムを構築するものである。平成30年度には、基礎作業となるD作業(校訂本文の完成・解題素案の作成)、および、D作業からあぶり出された諸課題の分析、検討を行った。具体的には、(1)役者評判記の用語と用字の問題分析、(2)役者評判記の諸本に関わる問題分析、(3)役者評判記の活用に関わる基礎研究課題の事例収集を行い、それぞれの諸課題について検討し、また事例に応じて原本の再調査を行いつつ、校訂本文の精度を高め、次段階となるE原稿の作成を進めた。研究成果は『歌舞伎評判記集成第三期第二巻』として、安永5年安永7年にいたる計11点の役者評判記の校訂本文および解題を公開した。総合情報書庫の構築に関しては、評判記本文の全文検索システムを評判記原本の画像と翻字本文を連動させたシステムを構築。デジタル本文アノテーションシステムと連携したテキストアーカイブシステムにバージョンアップした。これにより、刊行した冊子本文と原本画像とが連動して、相互に確認ができるようになった。また、第三期翻字作業のより高度な情報環境を確保し、翻字効率ならびに精度を上げるための基礎データとして、『歌舞伎評判記集成』第二期・第三期のデジタルテキストの作成を開始。第二期に関しては、デジタルテキストをほぼ完成させた。上記作業を統括し、問題点の整理検討を行うため、6月には研究協力者を含めた全体会を持ち、また、6回(6月、7月、9月、11月、12月、3月)の事務局会議を行った。昨年度に引き続き、(1)役者評判記の用語と用字の問題分析、(2)役者評判記の諸本に関わる問題分析、(3)役者評判記の活用に関わる基礎研究課題の事例収集を行い、それぞれの諸課題について検討を進めている。『歌舞伎評判記集成第三期第二巻』の公刊に加え、(1)については野口隆「翻字の諸問題その一」として、(3)については齊藤千恵「『歌舞伎評判記集成第三期』翻字作業におけるデジタルデータ活用」として成果を公表(詳細は「10.研究発表」の項目参照)している。(2)については水田かや乃企画「役者評判記展」(前期「八文字屋本の成立とその特徴」2018年5月27日8月19日、後期「冊子体役者評判記から一枚摺役者評判記、役者評判絵へ」2018年10月20日
KAKENHI-PROJECT-17K02454
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中国の民主化運動に関する考察 - 「右派」の視点から
中国で1957年に起こった整風運動と反右派闘争について、以下の点を中心に全体像や含意を明らかにした。1一連の過程はどのように進められたか、2現在につながる民主化要求につながる論点の分析、3「右派」の分類、処分、名誉回復の実態、41957年の事例を基に、その後の民主化運動と比較する事で一党支配下における民主化のメカニズムと限界を考察、5名誉回復された元「右派」たちが現在起こしている損害賠償請求の実態とその含意、650年以上前の反右派闘争および「右派」は現在の中国政治にどのような影響を及ぼし続けているか。研究内容:(1)前年度に引き続き、反右派闘争の実態解明を行った。2012年秋に中国・北京で資料収集を行い、多数の資料を入手したことを受け、これまでの成果をさらに充実させた。(2)鄧小平時代の民主化、自由化の動向について考察した。1957年における議論の論点(表現・言論の自由、非共産党員の政治参加等)との比較検討を行った。意義・重要性:(1)反右派闘争に関する研究を深めることができた。中国では、反右派闘争をめぐる最高指導者層の動きといった核心的な資料は入手不可である。しかし昨年秋の訪中により、学術論文や回顧録等の資料が予想外に多いことが判明した。日本や欧米の中国研究ではまだ取り上げられていないこれらの文献を利用することにより、数多くの新事実を盛り込むことができた。(2)鄧小平時代の民主化運動は、1957年との共通点が非常に多い。共産党の一党支配に起因する核心的な論点については、ほぼ同じであることが確認された。このことから、一党支配下において「上から」の自由化が不可避となる理由、「上から」の自由化が「下から」の民主化要求をもたらすプロセスが明らかになり、1957年が中国の民主化運動の原型であることが裏付けられた。一方、相違点も大きい。鄧小平時代は政治体制改革が不可避であり、当局は民主化要求を封じ込めつつも、制度改革を前進させてきた。その結果、中国共産党員、すなわち体制内の改革派と非共産党員の民主化要求が同じ方向を目指すケースが生じ、この要素が鄧小平時代の民主化運動の中核を形成していることが明らかになった。また、権利意識に目覚めた国民の増加によって一党支配への不満も増大し、インターネット利用者の拡大は共産党の関与できない政治的空間の拡大をもたらしている。これらの変化が現在の民主化要求運動のアクターを多様化させる可能性があることも示唆された。研究内容:中国における言論弾圧としての反右派闘争(1957年)について、その前後の時期の政治動向を含め、どのようなプロセスで弾圧が進められたかを中心に全体像を考察した。(1)まず、中国で行われた同様の大衆動員型政治運動と比較すると、その手法で多くの類似点が見られるものの、最大の相違点として言論活動を初めて罪状として処罰対象にしたことが挙げられる。反右派闘争で言論活動を処罰するため、労働教養制度(司法手続き不要の無期限拘留)が作られ、現在に至る言論統制の基本的枠組みが形成された。(2)次に、この時期には政治や社会の問題への対応として党内改革が模索されていたが、そこでの論点(党と政治の分離など)は現在まで続いている政治改革の議論と基本的に同一であることが明らかになった。これは、一党支配の問題処理能力の限界を示すものである。(3)最後に、1956年から57年には民主化に関わる議論が共産党内外から数多く表明された。この論点は、その後の民主化要求運動の論点とほぼ同一であり、現代中国の民主化運動の原点でもあることが明らかにされた。意義、重要性:反右派闘争については回顧録がほとんどである中で、政治学的な考察を行う事ができた。さらに本研究は、大衆動員型政治運動の事例研究、現代中国における言論統制、政治改革議論、民主化運動の原点などの重要な事柄について重要な知見を提供することができた。中国で1957年に起こった整風運動と反右派闘争について、以下の点を中心に全体像や含意を明らかにした。1一連の過程はどのように進められたか、2現在につながる民主化要求につながる論点の分析、3「右派」の分類、処分、名誉回復の実態、41957年の事例を基に、その後の民主化運動と比較する事で一党支配下における民主化のメカニズムと限界を考察、5名誉回復された元「右派」たちが現在起こしている損害賠償請求の実態とその含意、650年以上前の反右派闘争および「右派」は現在の中国政治にどのような影響を及ぼし続けているか。研究内容:(1)1956年1957年の中国政治について、中国の民主化運動の先行研究を検証し、関連文献を分析した。建国初期の中国では、建国前(中華民国時代)の知識人らが重要な役割を果たしており、1956年という時期には学術分野における自由化が提唱されるとともに、中国共産党と知識人との間に、民主化を示唆するような動きもみられた。この時期に交わされた論点は、1957年春の整風の中で表明され、その後弾圧された民主化要求の論点と同じである。同じ論点が異なる対応を導き出した要因についても考察した。(2)反右派闘争について、発生から終結までの詳細な経緯、「右派」にされるまでのプロセスや手続き、処分内容、刑事罰ではなく行政罰が導入される経緯について調べた。
KAKENHI-PROJECT-23530139
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中国の民主化運動に関する考察 - 「右派」の視点から
また、1958年から始まった「右派」の名誉回復について、背景や手順を調べた。研究の意義・重要性:(1)膨大な数の先行研究に加え、中国語の一次資料(回顧録等)を大量に利用したことにより、従来の先行研究よりも実証的かつ包括的に考察することができた。その中で、民主化の論点がどのように推移していったのか、明らかにすることができた。(2)「上から」の自由化を一転して弾圧した反右派闘争は、中国現代史の中でも未解明な部分が最も多い出来事である。一次資料を駆使してさまざまな部分を明らかにしていったことは、非常に重要なことであると思われる。また当時の「右派」は現在の中国における民主化運動の根源的な存在であるにもかかわらず、先行研究が皆無といってもよい現状で、本研究は意味のある視座を提供できたと考える。研究内容:1先行研究と回顧録等の原資料を精査する事により、反右派闘争を中心とする政治現象の全体像を解明した。特に、政治運動全体がどのような段取りで進められたのかという部分は先行研究でも明示されていないため、その点を明らかにできたことにより、他の大衆動員型政治との比較検討を可能にした。2反右派闘争は中国で初めて言論を罪として厳罰を科した事例であり、断罪された「言論」は現在の民主化運動の論点そのものであることを明らかにした。その点に着目しながら、中国における民主化運動を捉え直し、現在までの動向をまとめた。また、ポスト毛沢東時代に入って名誉回復を遂げた元「右派」たちが現在起こしている損害賠償訴訟について、現状と含意を考察した。意義、重要性:1について、未だ未解明な部分の多い1957年の政治現象を明らかにできたという政治史としての意義がある。同時に、中国の政治運動のパターンがソ連スタイルの踏襲であることも明確になり、比較政治学分野に対しても新たな知見を提供できると思われる。2について、中国における民主化運動の流れをより根源的に理解するための一助となり、現在、「新公民権運動」として広まりつつある新たな民主化運動について貴重な視座を提供する事ができる。また、元「右派」が現在の中国政治に及ぼす影響力というのは、今後の貴重な検討課題となるだろう。現代中国政治・1957年と鄧小平時代の民主化運動の比較を行ったが、一党支配下における政治的民主化の限界、という当初の目的については、まだ不十分であり、さらなる考察を要する。・北京への調査旅行により、反右派闘争関連の資料を大量に入手し、予想外の成果を得たものの、研究計画全体として遅れが生じる結果となった。・これまでの研究成果を論文の形で発表することができなかったことは非常に残念である。3年の期間を経て、反右派闘争に関する研究については一定の成果があったが、それらを研究成果として発表できなかった。また、反右派闘争に関する研究に時間をかけすぎたため、反右派闘争以降の言論統制、党内政治改革、民主化要求運動へのつながりといった重要な部分については、まだ不十分な点がある。1957年の中国の政治状況について、先行研究と文献を精査し、民主化運動の原点としての視点から考察した。また、反右派闘争そのものに関する研究も、大量の文献資料を駆使して概ね達成できた。民主化運動のメカニズム、および「右派」の意義等については作業中であり、次年度に持ち越すこととなった。したがって、全体としては、交付申請書の「研究目的」に掲げた4つの目標のうち、半分については達成できた。
KAKENHI-PROJECT-23530139
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プラズマフィラメント型酸素イオン源の開発
現在,マイクロエレクトロニクスの中心を占める超LSIはミクロン,単位の微細加工を必要とするため,いくつかの新しいデバイス制作法が開発,導入されている.なかでも,イオン注入法は超LSIの製造過程の基盤として最も重要なものである.このイオン注入装置には,従来Freemanイオン源が用いられている.しかし,半導体デバイス製造能率の向上を図るために,注入イオン量の増加およびイオン源の長寿命化が要求されている.一般に,大電流イオン源は,金属の熱陰極を用い,低ガス圧力,大きい放電電流で運転されているので,熱陰極の寿命が短く,結果としてイオン源の寿命は熱陰極で制限される.すなわち, Freemanイオン源のように,プラズマ発生室内に熱陰極が存在するイオン源は,熱陰極にイオンが衝突するために,熱陰極がスパッタリングによって短時間に削り取られ,それによって寿命が決ってしまう.そこで,プラズマ生成室内に熱陰極がないイオン源が注目されてきた.マイクロ波イオン源は,この条件を満たしているが, 1)生成イオン電流密度が増加できない,2)放電電極の汚れによる絶縁破壊およびその洗浄に時間がかかる,という問題点がある.本研究では,現在稼働中のイオン注入装置のイオン源部のみを取り替え可能で,かつ長寿命のイオン源を開発するために, Freemanイオン源の金属の熱陰極の代わりに,プラズマを用いるプラズマ・フィラメントイオン源の開発を行った.プラズマ・フィラメントイオン源は, Freemanイオン源と比較した場合,消耗部分がなく長寿命化が可能であり,またFreemanイオン源では実現が難しい酸素等の活性ガスでもイオン生成が可能であり,現在稼働中のイオン注入装置のイオン源部のみの改良により,イオン注入装置にそのまま取り付けが可能であるという利点を持っている.また大型にすれば大電流イオン源としての開発が可能である.現在,マイクロエレクトロニクスの中心を占める超LSIはミクロン,単位の微細加工を必要とするため,いくつかの新しいデバイス制作法が開発,導入されている.なかでも,イオン注入法は超LSIの製造過程の基盤として最も重要なものである.このイオン注入装置には,従来Freemanイオン源が用いられている.しかし,半導体デバイス製造能率の向上を図るために,注入イオン量の増加およびイオン源の長寿命化が要求されている.一般に,大電流イオン源は,金属の熱陰極を用い,低ガス圧力,大きい放電電流で運転されているので,熱陰極の寿命が短く,結果としてイオン源の寿命は熱陰極で制限される.すなわち, Freemanイオン源のように,プラズマ発生室内に熱陰極が存在するイオン源は,熱陰極にイオンが衝突するために,熱陰極がスパッタリングによって短時間に削り取られ,それによって寿命が決ってしまう.そこで,プラズマ生成室内に熱陰極がないイオン源が注目されてきた.マイクロ波イオン源は,この条件を満たしているが, 1)生成イオン電流密度が増加できない,2)放電電極の汚れによる絶縁破壊およびその洗浄に時間がかかる,という問題点がある.本研究では,現在稼働中のイオン注入装置のイオン源部のみを取り替え可能で,かつ長寿命のイオン源を開発するために, Freemanイオン源の金属の熱陰極の代わりに,プラズマを用いるプラズマ・フィラメントイオン源の開発を行った.プラズマ・フィラメントイオン源は, Freemanイオン源と比較した場合,消耗部分がなく長寿命化が可能であり,またFreemanイオン源では実現が難しい酸素等の活性ガスでもイオン生成が可能であり,現在稼働中のイオン注入装置のイオン源部のみの改良により,イオン注入装置にそのまま取り付けが可能であるという利点を持っている.また大型にすれば大電流イオン源としての開発が可能である.1実験装置の大型化への改良(1)設計-発注-組み立て-試験2電源及び制御系の整備(1)設計-発注-組み立て-試験3イオン源の設計・製作4実験:プラズマフィラメント型酸素イオン源について寿命試験高圧引き出し及び質量分析、並びに酸素イオン静成試験を行った。(1)寿命試験:陰極としてBa【O_2】,Arが人を用いて約300時間の連続運転が可能であることを確認した。(日本物理学会1985年、秋の分科会千葉大)(2)高圧引き出し及び質量分析:Arガスを用いた場合、15Kv引き出し、90°磁場偏向型質量分析器を用いた。【Ar^+】のピーク値で10mA/【cm^2】(ISIAT′85東京)(3)酸素イオン生成試験:Arガス及びNeガスをプラズマ、フィラメントに用いたNeガスの場合:【O^+】,【O(^+_2)】イオンの他に【O^(++)】イオンが得られる(IPAT′85ミュンヘン)プラズマ・フィラメント型イオン源は、長寿命(300時間以上)で、酸素イオン生成が可能であることは、前年度までに報告してある。本年度は、イオン注入用イオン源に要求されるイオン種、及び、イオンビーム量について、実用化を目的として、As【H_3】、P【F_3】、B【F_3】、及び【O_2】を用いて実験を行った。尚、イオン・ビームは40KVで引き出し、90゚磁場偏向型質量分析器で質量分析した質量スペクトルのピークの値である。Iisはイオン源でのアーク放電電流である。(1)【As^+】イオン:【As^+】イオンは、As【H_3】ガス=1.9SCCM、Iis=1.7(A)で約10(mA)の【As^+】イオン電流値を確認した。(2)【P^+】及び【B^+】イオン:【P^+】
KAKENHI-PROJECT-60890010
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プラズマフィラメント型酸素イオン源の開発
イオンは【PF_3】ガス=0.65SCCM、Iis=2.0(A)で、【B^+】イオンは【BF_3】ガス=1.3SCCM、Iis=3.0(A)で各々約3(mA)の【P^+】、及び【B^+】イオン電流値を確認した。(3)【O^+】イオン:【O^+】イオンは【O_2】ガス=1.2SCCM、Iis=2.0(A)で約3(mA)の【O^+】イオン電流値を確認した。現有、実験装置では排気系、及び電源装置関係に制限があるため充分なイオン電流値を得ることは不可能である。今後、実用化のためには大型の排気系、及び電源装置が必要である。
KAKENHI-PROJECT-60890010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60890010
モルモット心筋の発生および生後発育に伴う電気的特性および収縮機構の変化-Ion channel の変化と収縮へのCa^<2+>-sourceの変化-
表題の通りの研究を各発育段階のモルモットを用いて行った。使用したモルモット心筋は胎生期、出生直後の新生児、および成熟動物から得た。これらの心筋を用いて以下の結果と結論を得た。1)心筋の電気的特性の変化静止膜電位、活動電位立ち上がり速度、およびオーバーシュートは胎生期に日令の増加に伴って増加した。活動電位持続時間は左心房筋では胎生中期から後期にかけて減少しその後は成熟期まで増加したが、右心室筋では胎生期から出生直後まで減少し生後は増加した。即ち活動電位波形は主として胎生期に大きな変化を遂げること、その変化は心臓の部位によって異なることを明らかにした。また、活動電位持続時間およびオーバーシュートに対する各種薬物の作用を検討し、カルシウムチャネルを抑制する薬物は胎生期で作用が強く、ナトリウムチャネルを抑制する薬物は成熟心筋で作用が強い、などの知見から『モルモット心筋の活動電位はCa^<2+>依存型(胎生期)からNa^+依存型(成熟期)へと変化する』と結論した。2)心筋の収縮特性の変化収縮の外液Ca^<2+>に対する感受性は胎生期で高いこと、細胞内カルシウム貯蔵部位(SR)からのCa^<2+>の遊離を抑制する薬物(ryanodine,cyclopiazonic acid.等)に対する感受性は成熟心筋の方が高いこと、Na^+-Ca^<2+>交換機構に作用する薬物(低Na^+溶液、amiloride,ouabain,等)に対する感受性は胎生期心筋の方が高く成熟心筋には殆ど作用しないこと、などの多くの興味深い知見が得られ、総合して『モルモット心筋の発達に伴って収縮制御機構としてのSRの役割が増加し、逆にNa^+-Ca^<2+>交換機構のそれは減少する』と結論した。表題の通りの研究を各発育段階のモルモットを用いて行った。使用したモルモット心筋は胎生期、出生直後の新生児、および成熟動物から得た。これらの心筋を用いて以下の結果と結論を得た。1)心筋の電気的特性の変化静止膜電位、活動電位立ち上がり速度、およびオーバーシュートは胎生期に日令の増加に伴って増加した。活動電位持続時間は左心房筋では胎生中期から後期にかけて減少しその後は成熟期まで増加したが、右心室筋では胎生期から出生直後まで減少し生後は増加した。即ち活動電位波形は主として胎生期に大きな変化を遂げること、その変化は心臓の部位によって異なることを明らかにした。また、活動電位持続時間およびオーバーシュートに対する各種薬物の作用を検討し、カルシウムチャネルを抑制する薬物は胎生期で作用が強く、ナトリウムチャネルを抑制する薬物は成熟心筋で作用が強い、などの知見から『モルモット心筋の活動電位はCa^<2+>依存型(胎生期)からNa^+依存型(成熟期)へと変化する』と結論した。2)心筋の収縮特性の変化収縮の外液Ca^<2+>に対する感受性は胎生期で高いこと、細胞内カルシウム貯蔵部位(SR)からのCa^<2+>の遊離を抑制する薬物(ryanodine,cyclopiazonic acid.等)に対する感受性は成熟心筋の方が高いこと、Na^+-Ca^<2+>交換機構に作用する薬物(低Na^+溶液、amiloride,ouabain,等)に対する感受性は胎生期心筋の方が高く成熟心筋には殆ど作用しないこと、などの多くの興味深い知見が得られ、総合して『モルモット心筋の発達に伴って収縮制御機構としてのSRの役割が増加し、逆にNa^+-Ca^<2+>交換機構のそれは減少する』と結論した。
KAKENHI-PROJECT-05670107
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糸球体内血栓形成におけるセレクチンの関与及び糖転移酵素の関与
セレクチン及びそのリガンド糖鎖は炎症の発症・進展に重要な働きをしている。また、一般の炎症のみならず血管内凝固においても白血球の浸潤が深くかかわっている。進行性腎障害において血栓形成はその重要な増悪因子の一つであるが、血栓形成を伴う腎障害における接着分子の関与特にセレクチンやリガンド糖鎖を発現する糖転移酵素の関与については十分に解明されていない。ラット糸球体内血栓形成腎炎モデルを用いて、セレクチン及び合成糖鎖の治療効果について検討した。その結果、糸球体内血栓形成は、白血球浸潤及びP-セレクチンに依存性であり、P-セレクチンは白血球-内皮細胞の接着及び血小板を介する白血球-白血球の接着に関与し、糸球体内血栓形成に深く関与していることが証明された。本モデルに対するスルファチド誘導体(SKK600374)の治療効果は、糸球体内への白血球や血小板の浸潤及び糸球体内血栓形成において、ともに有意な阻害活性を示し、抗P-セレクチン抗体とほぼ同等の阻害活性を確認した。これらの結果よりスルファチド誘導体は、セレクチン阻害薬として臨床応用が期待でき、特に進行性の腎障害における新たな治療の可能性を持つことが示された。次に、セレクチンのリガンド糖鎖の発現に重要である糖転移酵素のひとつであるN-acetylglucosamine-6-o-sulfotransferaseの発現及びこの酵素により誘導される糖鎖抗原の発現を胎児腎組織において検討した。この結果、(1)N-acetylglucosamine-6-o-sulfotransferaseのmRNAの発現は上皮細胞において強く認められるが、この酵素により誘導される6-sulfo Lewis Xや6-sulfo sialyl Lewis Xなどの糖鎖抗原は腎では認められなかった。この事実より、腎におけるセレクチンのリガンド糖鎖の発現には、フコース転移酵素やシアル酸転移酵素がより重要である可能性が示唆された。セレクチン及びそのリガンド糖鎖は炎症の発症・進展に重要な働きをしている。また、一般の炎症のみならず血管内凝固においても白血球の浸潤が深くかかわっている。進行性腎障害において血栓形成はその重要な増悪因子の一つであるが、血栓形成を伴う腎障害における接着分子の関与特にセレクチンやリガンド糖鎖を発現する糖転移酵素の関与については十分に解明されていない。ラット糸球体内血栓形成腎炎モデルを用いて、セレクチン及び合成糖鎖の治療効果について検討した。その結果、糸球体内血栓形成は、白血球浸潤及びP-セレクチンに依存性であり、P-セレクチンは白血球-内皮細胞の接着及び血小板を介する白血球-白血球の接着に関与し、糸球体内血栓形成に深く関与していることが証明された。本モデルに対するスルファチド誘導体(SKK600374)の治療効果は、糸球体内への白血球や血小板の浸潤及び糸球体内血栓形成において、ともに有意な阻害活性を示し、抗P-セレクチン抗体とほぼ同等の阻害活性を確認した。これらの結果よりスルファチド誘導体は、セレクチン阻害薬として臨床応用が期待でき、特に進行性の腎障害における新たな治療の可能性を持つことが示された。次に、セレクチンのリガンド糖鎖の発現に重要である糖転移酵素のひとつであるN-acetylglucosamine-6-o-sulfotransferaseの発現及びこの酵素により誘導される糖鎖抗原の発現を胎児腎組織において検討した。この結果、(1)N-acetylglucosamine-6-o-sulfotransferaseのmRNAの発現は上皮細胞において強く認められるが、この酵素により誘導される6-sulfo Lewis Xや6-sulfo sialyl Lewis Xなどの糖鎖抗原は腎では認められなかった。この事実より、腎におけるセレクチンのリガンド糖鎖の発現には、フコース転移酵素やシアル酸転移酵素がより重要である可能性が示唆された。セレクチン及びそのリガンド糖鎖は炎症の発症・進展に重要な働きをしている。また、一般の炎症のみならず凝固においても白血球の浸潤が大変重要である。進行性腎障害における接着分子の関与は重要な研究対象であるが、血栓形成を伴う腎障害におけるセレクチンやリガンド糖鎖を発現する糖転移酵素の関与については十分に解明されていない。本研究ではまず、ラット糸球体内血栓形成腎炎を用いた動物実験において、セレクチンを介する白血球や血小板の接着が糸球体内血栓形成を惹起するかどうか、について検討した。ラット糸球体内血栓形成腎炎は、LPSで前処置したラットに家兎抗ラットGBM抗体を静注して作成した。その結果、1,ラット糸球体内血栓形成腎炎では、糸球体内にP-セレクチンの発現を認めたが、L-セレクチンのリガンドやE-セレクチンは認めない2,Cyclophosphamideにて血中の白血球を完全に除去すると、糸球体内血栓形成がほぼ完全に抑制される3,抗P-セレクチン抗体を投与すると、有意に糸球体内への白血球や血小板の浸潤が抑制され、約50%の血栓形成抑制効果を認める、ことが判明し、P-セレクチンは白血球-内皮細胞の接着及び血小板を介する白血球-白血球の接着に関与し、糸球体内血栓形成に重要であることが証明された。次に、セレクチンのリガンド糖鎖の発現に重要である糖転移酵素のひとつであるN-acetylglucosamine-6-o-
KAKENHI-PROJECT-10670994
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糸球体内血栓形成におけるセレクチンの関与及び糖転移酵素の関与
sulfotransferaseの発現及びこの酵素により誘導される糖鎖抗原の発現を胎児腎組織において検討した。この結果、1,N-acetylglucosamine-o-sulfotransferaseのmRNAの発現は上皮細胞において強く認められるが、この酵素により誘導される6-sulfo LewisXや6-sulfo sialylLewisXなどの糖鎖抗原は腎上皮細胞では認められなかった。この事実より、腎におけるセレクチンのリガンド糖鎖の発現には、フコース転移酵素やシアル酸転移酵素がより重要である可能性が示唆された。セレクチン及びそのリガンド糖鎖は炎症の発症・進展に重要な働きをしている。また、一般の炎症のみならず血管内凝固においても白血球の浸潤が深くかかわっている。進行性腎障害において血栓形成はその重要な増悪因子の一つであるが、血栓形成を伴う腎障害における接着分子の関与特にセレクチンやリガンド糖鎖を発現する糖転移酵素の関与については十分に解明されていない。昨年度の動物実験の結果から、(1)ラット糸球体内血栓形成腎炎は、糸球体内への白血球浸潤に完全に依存性であり、(2)抗P-セレクチン抗体により、有意に糸球体内への白血球や血小板の浸潤が抑制される、ことが判明し、P-セレクチンは白血球-内皮細胞の接着及び血小板を介する白血球-白血球の接着に関与し、糸球体内血栓形成に深く関与していることが証明された。この結果に基づいて、本モデルを用いて、近年合成されたスルファチド誘導体(SKK600374)の血栓形成を伴う腎障害における抗炎症効果及び血栓抑制効果について検討した。その結果以下のようなデータを得た。(A)スルファチド誘導体(SKK600374)は、in vitroにおいて、特にP-/L-セレクチンに対して強い阻害活性を示し、シアリルルイスX四糖より有意に高い阻害活性を示した。(B)本モデルに対するSKK600374の、in vivoでの治療効果は、糸球体内への白血球や血小板の浸潤及び糸球体内血栓形成において、ともに有意な阻害活性を示し、抗P-セレクチン抗体とほぼ同等の阻害活性を確認した。これらの結果よりスルファチド誘導体は、セレクチン阻害薬として臨床応用が期待でき、特に進行性の腎障害における新たな治療の可能性を持つことが示された。
KAKENHI-PROJECT-10670994
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扁桃体神経活動が霊長類の顔認知および顔認知神経回路に及ぼす影響
扁桃体が腹側視覚野とどのように協調して、顔の視覚情報処理を実現しているか、知覚、神経情報処理、神経回路の3つの側面から統合的に明らかにすることを目的とし、ヒト同様側頭葉が発達したマカクザルを対象として、申請者らがこれまで開発した広範囲で神経活動を計測するECoG記録法と、最新の化学遺伝学による脳活動操作とイメージングの融合技術によりアプローチする。本研究の成果は、現状の顔視覚情報処理の理解において、パラダイムシフトをもたらすとともに、ヒトのコミュニケーションの神経機構やその破綻の理解、そしてヒトの認知機能を模す人工知能への応用においても重要な意義をもたらす。扁桃体が腹側視覚野とどのように協調して、顔の視覚情報処理を実現しているか、知覚、神経情報処理、神経回路の3つの側面から統合的に明らかにすることを目的とし、ヒト同様側頭葉が発達したマカクザルを対象として、申請者らがこれまで開発した広範囲で神経活動を計測するECoG記録法と、最新の化学遺伝学による脳活動操作とイメージングの融合技術によりアプローチする。本研究の成果は、現状の顔視覚情報処理の理解において、パラダイムシフトをもたらすとともに、ヒトのコミュニケーションの神経機構やその破綻の理解、そしてヒトの認知機能を模す人工知能への応用においても重要な意義をもたらす。
KAKENHI-PROJECT-19K07811
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K07811
トランスジェニックマウスによるUCP3の糖尿病・肥満における病態生理的意義の解明
エネルギー代謝調節系は摂食調節系とエネルギー消費調節系から成り、そのバランスの異常は糖尿病や肥満につながる.骨格筋は糖脂質代謝の主要な臓器の一つであり、また全身のエネルギー消費の約4割に相当するが、その分子機構の研究が遅れている。我々は骨格筋に高濃度な脱共役蛋白質3(UCP3)を同定している。本研究では骨格筋UCP3遺伝子発現調節機構と、UCP3の骨格筋過剰発現トランスジェニックマウス(Tgマウス)によりUCP3の機能的意義を、検討した。in vivoで脂肪酸により骨格筋のUCP3遺伝子発現が増加するが、脂肪酸がPPARのアゴニストであるので、PPARの関与が示唆される。in vitroの系の骨格筋L6細胞で、PPARδアゴニストのL-165041によりUCP3遺伝子発現が増加し、PPARαアゴニストおよびPPARγアゴニストで増加しないこと、L6細胞の主なPPARがPPARδであることを明らかにし、その遺伝子発現調節機構におけるPPARδの関与を明らかにした。in vivoの骨格筋でもPPARの中でPPARδが主であり、同様の機序の関与が示唆された。muscle creatinine kinaseプロモーターで骨格筋特異的UCP3過剰発現Tgマウスを作製した。UCP3発現は最高発現の系統で、mRNAで18倍、蛋白で15倍であった。通常食でTgマウスは対照マウスに比校して特に有意な形質を示さなかった。高脂肪食ではTgマウスの体重は対照マウスより約15%に有意に減少し、高脂肪食負荷の4週間の体重増加はTgマウスで約50%低下した。副精巣周囲白色脂肪組織重量は約20%低下したが、他の組織の重量で有意差が認められず、体重低下が主に白色脂肪組織重量の低下によることが示唆された。摂食量と体温は有意差を示さなかったが、酸素消費量は約25%の有意な増加を示しており、体重の有意な低下はエネルギー消費の有意な増加によると考えられる。Tgマウスの耐糖能は対照マウスに比校して有意な改善を示した。血中の糖、脂質の濃度や組織学的検討で特に有意差を認めなかった。以上より、生理的刺激によるUCP3の発現誘導の範囲の誘導により、肥満の条件でエネルギー消費増加、体重減少の作用が認められた。我々のTgマウスと同程度の発現誘導は薬剤でも可能と考えられるので、薬剤によりUCP3の活性を増強することの、肥満・糖尿病治療への応用の可能性が示唆された。エネルギー代謝調節系は摂食調節系とエネルギー消費調節系から成り、そのバランスの異常は糖尿病や肥満につながる.骨格筋は糖脂質代謝の主要な臓器の一つであり、また全身のエネルギー消費の約4割に相当するが、その分子機構の研究が遅れている。我々は骨格筋に高濃度な脱共役蛋白質3(UCP3)を同定している。本研究では骨格筋UCP3遺伝子発現調節機構と、UCP3の骨格筋過剰発現トランスジェニックマウス(Tgマウス)によりUCP3の機能的意義を、検討した。in vivoで脂肪酸により骨格筋のUCP3遺伝子発現が増加するが、脂肪酸がPPARのアゴニストであるので、PPARの関与が示唆される。in vitroの系の骨格筋L6細胞で、PPARδアゴニストのL-165041によりUCP3遺伝子発現が増加し、PPARαアゴニストおよびPPARγアゴニストで増加しないこと、L6細胞の主なPPARがPPARδであることを明らかにし、その遺伝子発現調節機構におけるPPARδの関与を明らかにした。in vivoの骨格筋でもPPARの中でPPARδが主であり、同様の機序の関与が示唆された。muscle creatinine kinaseプロモーターで骨格筋特異的UCP3過剰発現Tgマウスを作製した。UCP3発現は最高発現の系統で、mRNAで18倍、蛋白で15倍であった。通常食でTgマウスは対照マウスに比校して特に有意な形質を示さなかった。高脂肪食ではTgマウスの体重は対照マウスより約15%に有意に減少し、高脂肪食負荷の4週間の体重増加はTgマウスで約50%低下した。副精巣周囲白色脂肪組織重量は約20%低下したが、他の組織の重量で有意差が認められず、体重低下が主に白色脂肪組織重量の低下によることが示唆された。摂食量と体温は有意差を示さなかったが、酸素消費量は約25%の有意な増加を示しており、体重の有意な低下はエネルギー消費の有意な増加によると考えられる。Tgマウスの耐糖能は対照マウスに比校して有意な改善を示した。血中の糖、脂質の濃度や組織学的検討で特に有意差を認めなかった。以上より、生理的刺激によるUCP3の発現誘導の範囲の誘導により、肥満の条件でエネルギー消費増加、体重減少の作用が認められた。我々のTgマウスと同程度の発現誘導は薬剤でも可能と考えられるので、薬剤によりUCP3の活性を増強することの、肥満・糖尿病治療への応用の可能性が示唆された。エネルギー代謝調節系は糖尿病・肥満の病態生理で重要な役割を果たし、その不均衡は糖尿病や肥満をもたらす。エネルギー代謝調節は摂食調節とエネルギー消費調節から成るが、摂食調節の分子機構に関してはレプチンが同定され、著明な進歩が認められるが、一方、エネルギー消費調節の分子機構に関する研究は遅れていた。
KAKENHI-PROJECT-12671110
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トランスジェニックマウスによるUCP3の糖尿病・肥満における病態生理的意義の解明
骨格筋は全身エネルギー消費の約4割を占めるが、我々は骨格筋のエネルギー消費調節に関与する可能性のある分子として脱共役蛋白質3(UCP3)を同定し、骨格筋で高濃度であることを報告してきた。我々はUCP3の遺伝子発現調節におけるPPARδの関与などを明らかにしてきたが、UCP3の作用については明らかではなかった。今回、我々は骨格筋特異的にUCP3を約18倍に過剰発現するトランスジェニックマウス(Tgマウス)を作製した。通常食の条件では、Tgマウスの体重は対照マウスに比べて低下傾向にあったが、有意差を示さなかった。高脂肪食の負荷を行ったところ、Tgマウスの体重は対照マウスに比べて、有意に低かった。さらに、エネルギー消費を測定したところ、Tgマウスで、対照マウスに比べて有意に高くなっていた。本研究の結果より、高脂肪食下におけるUCP3によるエネルギー消費亢進と体重低下が明らかになった。最近、グラキソのグループにより、約66倍の非生理的な程度の骨格筋UCP3の過剰発現Tgマウスで、通常食、及び肥満誘導食のpalatable dietの双方で、エネルギー消費の増大と体重減少が報告されているが、我々の本研究により、生理的な程度のUCP3の過剰発現でも、肥満の条件では、UCP3が体重増加抑制作用を示すことが明らかになり、UCP3の糖尿病・肥満における治療的意義が示された。(目的)エネルギー代謝調節系は摂食調節系とエネルギー消費調節系から成る。骨格筋は全身のエネルギー消費の約4割に相当するが、その分子機構の研究が遅れている。我々は骨格筋に高濃度に発現するUCP3を新規に同定した。本研究では骨格筋特異的UCP3過剰発現Tgマウスを作製・解析し、エネルギー消費調節におけるUCP3の意義の解明を行った。(方法)mouse muscle creatinine kinaseプロモーターの下流にマウスUCP3cDNAを発現する骨格筋特異的UCP3過剰発現Tgマウスを作製した。(結果)UCP3発現の最も高い系統は遺伝子発現レベルで18倍、蛋白レベルで15倍であった。通常食では体重は対照マウスに比較して有意な低下を示さず、その他に特に有意な形質を示さなかった。高脂肪食ではTgマウスの体重は対照マウスに比較して約15%の有意な減少を示し、高脂肪食負荷の4週間の体重増加は、Tgマウスで約50%低下していた。副精巣周囲白色脂肪組織重量は約20%低下していた。他の組織の重量には、有意差が認められなかった。高脂肪食下でも摂食量はTgマウスと対照マウスで有意差を認めなかった。Tgマウスの体温は有意差を示さなかったが、酸素消費量は約25%の有意な増加を示した。糖負荷試験およびインスリン負荷試験でTgマウスの耐糖能は対照マウスに比較して有意な改善を示した。通常食と高脂肪食の条件で、血中の糖、脂質の濃度は特に有意差を認めなかった。組織学的検討で特に異常を認めなかった。(結論)高脂肪食でTgマウスで対照マウスに比較して、有意な体重の低下、有意な副精巣周囲白色脂肪組織重量の低下、高脂肪食期間中の体重増加の著明な低下、有意なエネルギー消費の増加、耐糖能の改善が認められ、摂食量、体温に関しては有意差を認めなかった。体重の低下は、有意なエネルギー消費の増加によるものであると考えられた。生理的刺激によるUCP3の発現誘導の範囲の誘導でも、肥満の条件では、エネルギー消費増加、体重減少の作用が認められることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-12671110
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12671110
オートファジーによる細胞内タンパク質の品質管理
オートファジーはリソソームを分解の場とする非特異的なバルク分解システムである。昨年度に続き、基底レベルのオートファジーの細胞内浄化作用について検討した。オートファゴソーム形成に必須なAtg5を全身で欠損するマウスは出生直後に深刻な栄養不良に陥り致死となるが、このマウスは出生時にすでに肝や一部の神経細胞内にユビキチン陽性封入体が蓄積していることが判明した。そこでより進んだステージの解析の目的に、神経特異的Atg5ノックアウトマウスを作製した。このマウスは生直後の栄養飢餓には問題なく耐えることができるが、生後4週目より進行性の運動障害(失調性歩行やfoot clasping reflexなど)を呈するようになった。病理組織学的解析では神経系広範囲にわたる神経細胞内封入体形成、軸索腫大、および大脳皮質錐体細胞や小脳プルキンエ細胞の脱落を認めた。オートファジーが欠損した際に、どのような形状のユビキチン化タンパク質が蓄積してくるかを検討した。まず全身の組織で約30%がノックアウトとなるようなモザイクマウスの肝をユビキチン抗体で染色したところ、KO細胞で蓄積しているのは凝集体だけではなく、細胞質全体のユビキチン化タンパク質であることが判明した。さらに成獣の肝細胞で誘導的にAtg5遺伝子をノックアウトする実験を行ったところ、最初に現れる異常は細胞質全体のユビキチン化タンパク質であり、遅れて凝集体が出現することがわかった。つまり、オートファジーの直接の基質は凝集体そのものではなく、むしろ可溶性のタンパク質であると考えられた。以上のことから、誘導されるオートファジーは飢餓適応として重要であるが、基底レベルの恒常的オートファジーは生理的な状態での細胞内全体の品質管理機構として、特に神経細胞や肝細胞では変性を抑制する重要な細胞機能であると考えられた。オートファジーはリソソームを分解の場とする、細胞質成分の非特異的な分解システムである。私達は、全身のオートファゴソームが蛍光標識されるモデルマウスを作製し、オートファジーの活性は通常は低いものの、絶食時の成体マウスや出生直後の新生児の全身で顕著に誘導されることを示した。新生児は経胎盤栄養の突然の遮断による生理的な飢餓状態ある。そこでオートファジー不能マウス(Atg5欠損マウス)を作製したところ、このマウスは出生直後に深刻な栄養不良に陥ることが明らかとなった。すなわち、オートファジーは、栄養飢餓時に細胞が自身の一部を分解し栄養素であるアミノ酸を内因的に供給するための重要な生理的機構であると考えられた。一方で、オートファジーは必ずしも誘導されなくとも恒常的に低レベルでおこっている減少である。そこで、この恒常的オートファジーの意義を知るために、Atg5ノックアウトマウス新生児の細胞内異常タンパク質の蓄積を解析した。その結果、このマウスでは神経や肝細胞内にユビキチン陽性のタンパク質凝集体が蓄積していることが観察された。これは胎生期の低いレベルのオートファジーも、細胞内タンパク質の品質管理として重要な働きをしていることを示している。さらに神経特異的Atg5ノックアウトマウスを作製したところ、このマウスは4週目頃より神経変性疾患様の運動機能異常を呈するようになり、広範囲の神経細胞内にユビキチン陽性封入体が観察された。以上のことから、誘導されるオートファジーは飢餓適応として、基底レベルの恒常的オートファジーは細胞内品質管理機構としてそれぞれ異なった生理的重要性をもつものと理解される。オートファジーはリソソームを分解の場とする非特異的なバルク分解システムである。昨年度に続き、基底レベルのオートファジーの細胞内浄化作用について検討した。オートファゴソーム形成に必須なAtg5を全身で欠損するマウスは出生直後に深刻な栄養不良に陥り致死となるが、このマウスは出生時にすでに肝や一部の神経細胞内にユビキチン陽性封入体が蓄積していることが判明した。そこでより進んだステージの解析の目的に、神経特異的Atg5ノックアウトマウスを作製した。このマウスは生直後の栄養飢餓には問題なく耐えることができるが、生後4週目より進行性の運動障害(失調性歩行やfoot clasping reflexなど)を呈するようになった。病理組織学的解析では神経系広範囲にわたる神経細胞内封入体形成、軸索腫大、および大脳皮質錐体細胞や小脳プルキンエ細胞の脱落を認めた。オートファジーが欠損した際に、どのような形状のユビキチン化タンパク質が蓄積してくるかを検討した。まず全身の組織で約30%がノックアウトとなるようなモザイクマウスの肝をユビキチン抗体で染色したところ、KO細胞で蓄積しているのは凝集体だけではなく、細胞質全体のユビキチン化タンパク質であることが判明した。さらに成獣の肝細胞で誘導的にAtg5遺伝子をノックアウトする実験を行ったところ、最初に現れる異常は細胞質全体のユビキチン化タンパク質であり、遅れて凝集体が出現することがわかった。つまり、オートファジーの直接の基質は凝集体そのものではなく、むしろ可溶性のタンパク質であると考えられた。以上のことから、誘導されるオートファジーは飢餓適応として重要であるが、基底レベルの恒常的オートファジーは生理的な状態での細胞内全体の品質管理機構として、特に神経細胞や肝細胞では変性を抑制する重要な細胞機能であると考えられた。
KAKENHI-PROJECT-17028056
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17028056
キャップカーボネートの堆積速度と全球凍結直後の環境変動
アフリカナミビアに分布する原生代後期の氷河堆積物を覆うラストフ層の連続的な岩石サンプリングを行った。ラストフ層には10数回にわたる炭酸塩岩鉱物の量が変化するサイクルが見られる。採取した試料のイリジウム含有量の測定から、このサイクルに合った変動が確認された。このイリジウムの量が堆積速度を反映したものだとすると、炭酸塩鉱物の堆積速度が周期的に変動する変化が周期的に繰り返したと結論される。アフリカナミビアに分布する原生代後期の氷河堆積物を覆うラストフ層の連続的な岩石サンプリングを行った。ラストフ層には10数回にわたる炭酸塩岩鉱物の量が変化するサイクルが見られる。採取した試料のイリジウム含有量の測定から、このサイクルに合った変動が確認された。このイリジウムの量が堆積速度を反映したものだとすると、炭酸塩鉱物の堆積速度が周期的に変動する変化が周期的に繰り返したと結論される。平成20年度は、本研究で使用する分析試料の採取、地質学的・堆積学的調査をナミビアで行った。ナミビア北部には全球凍結が起こったとされる原生代後期の氷河堆積物の地層が広く分布している。さらにこの氷河堆積物の上位には炭酸塩岩が厚く堆積している。ナミビア北部コワリブ川周辺で、ドロマイト主体の炭酸塩岩・カルサイト主体の炭酸塩岩・粘土鉱物層のサイクルが観察できるラストフ層(キャップカーボネート)について詳細な地質学的な調査と試料採取を行った。特に本研究で重要となる周期的に挟まれる粘土鉱物層については、この炭酸塩岩の周期的な組成変化と当時の海洋環境あるいは全球凍結ともいわれる氷河時代の影響を読み解く上で重要な物証であると考えられる。この粘土鉱物層の産状・分布を中心に地質学的・堆積学的調査を行い、10数回あるサイクルについて本研究で必要となる分析試料を十分な量採取することができた。首都から遠い場所でキャンプを長期間行い、岩石試料の採取にはエンジン付のロードカッターを使用するなど困難も多かったが、200kg近い岩石試料をナミビア首都まで運ぶことができた。採取した試料についてはナミビア地質調査所において日本へ輸送及び研究の許可の手続きを取り、日本へ輸送を行った。現在京都大学総合博物館において採取地点のデータとともに整理保管している。平成20年度は計画においてもともと地質調査および試料採取の年であり、分析及び研究成果の発表は予定されていなかった。平成21、22年度において平成20年度に採取したこれらの試料の組成・組織を中心に分析を行い、重金属データなどと元素組成の周期的な変動の分析を総合し、堆積速度の復元や海洋環境の変動、CCD仮説の検証など、全球凍結仮説に関わるさまざまな理解を目指す.2008年度採取した岩石試料について、基礎的な記載及び重金属元素の定量分析を2009年度も引き続き行った。まず基礎的な記載として岩相や堆積サイクルに対応して薄片を作成し、構成鉱物の粒子の形状や二次的な変質等の検討を行い、特に周期的に炭酸塩岩に挟まれる粘土鉱物層についても薄片観察を行った。岩石試料の重金属元素の定量分析については、炭酸塩岩の岩相変化のサイクルと対応するように試料を選び、試料を粉末に加工した。研究目的の主となる堆積速度の見積もりについてはイリジウムの定量分析が重要で、この値の変化に基づいて検討することができるのであるが、測定試料の点数が多いこともあり測定を依頼している研究所での測定データがまだ出揃っていない。このデータの測定結果を待って論文を仕上げたい。また、2009年度に購入した数値計算ソフト(MATLAB)を使用して、過去の研究で得られている炭素・酸素同位体比、蛍光X線分析装置によってカルシウム、マグネシウム、珪素、マンガン、鉄、ストロンチウムなどの元素のデータを再整理し、試料が抜けていた区間について、2008年度採取した試料からのデータを追加してこれらのデータをまとめた。これらもイリジウムの測定データによって堆積速度の見積もりの結果を待って、対比や堆積モデルを発表したい。2009年度については近年の全球凍結仮説に関する研究をまとめるとともに、現在得られている分析データの範囲内で、炭酸塩岩の溶解やCCDの浅海化を含む堆積モデルとの検討を行った。検討の内容については著書「最新地球史がよくわかる本」の全球凍結に関する部分で、現在の研究で明らかになっていることとして反映されている。2010年度は、岩石試料(2008年度アフリカナミビア共和国で採取)について、イリジウム含有量の定量分析を行うことができた。2009年度に行う予定であったが、放射化分析のための研究炉が稼動できない状態であったためイリジウム含有量の定量分析データが得られないまま2010年度を迎えた。2010年10月になってからようやく研究炉のマシンタイムを割いていただけることになり、スタンダード2点を含む岩石試料22点の測定をしていただいた。研究炉が停止していたこともあり分析依頼が集中しているということで、予定していた測定点数より少なかったため、少ない分析点数で堆積速度を見積もるために工夫が必要となった。イリジウム含有量を地層の厚さ方向に積算した値から堆積速度を見積もることが最終的な目標であるので、2cm間隔で連続的に粉末化した岩石試料を均等に混合し、測定区間に含まれるイリジウム含有量の積算値を少ない分析試料点数で得られるようにした。また、イリジウム含有量が少ない場合測定できないことになるので、試料である炭酸塩岩を酢酸で溶かしイリジウム含有量について有意な測定値が出やすいようにした。炭酸塩岩粉末
KAKENHI-PROJECT-20606003
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キャップカーボネートの堆積速度と全球凍結直後の環境変動
試料を連続的に混合し、堆積サイクルの明瞭な区間でギャップなく粉末試料を用意した。これを酢酸によって溶解作業を行い、乾燥した試料を石英管に封入してイリジウム含有量の放射化分析を行った。年度末に測定データが得られ、現在堆積速度のモデルについて検討中である。
KAKENHI-PROJECT-20606003
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ウェルデッド絡み目の有限型不変量とその図形的解釈
絡み目の一般化であるウェルデッド絡み目に対して,絡み目の有限型不変量の拡張はGoussarov,Polyak,ViroやBar-Natan,Dancsoによる先行研究が知られている.絡み目の場合,有限型不変量の図形的(幾何的)な解釈の研究手段として,Habiroによるクラスパー理論が知られている.一方,ウェルデッド絡み目の有限型不変量の図形的解釈の研究に関しては,幾つかの試みはあるものの満足のいく結果は得られていない。本研究では,ウェルデッド絡み目の有限型不変量の図形的解釈の研究の為に,Habiroのクラスパー理論のウェルデッド絡み目版と見なせるものを新たに定め,ウェルデッド絡み目の有限型不変量の図形的解釈を与えることを目標とする.研究代表者はグルノーブル大学のMeilhan氏との共同研究で,ウェルデッド(ストリグ)絡み目に対し,有限型不変量を保存する局所変形(これを,Wk-moveと呼ぶ)を定める事に成功した.ここで,定義に用いたクラスパーは,HabiroのCkクラスパーと本質的に異なるため,Wkクラスパーと呼ぶ事にする.今年度は,9月にMeilhan氏を訪問し,また3月にMeilhan氏を招聘することで,研究交流をはかり,本研究の進展に役立てた.今年度は,昨年度得られた結果「ウェルデッド・ストリング絡み目のWk同値類は,群の構造を持つ.」を踏まえて,研究を進め,ウェルデッド・ストリング結び目の群をAlexander多項式を用いて完全に特徴つけることに成功した.また,昨年度の「今後の研究の推進方策」で記述した通り,Wk+1同値なウェルデッド(ストリング)絡み目は,Wk同値であることも証明できた.研究計画書に沿って,ほぼ予想通りに研究が進んでいる.平成31年度も,研究交流・成果発表の為の国内出張(大阪,京都,九州)及び海外出張(グルーノーブル,ワシントン)を行い,本研究の進展に役立てる.Meilhan氏との共同研究で得られたWk-moveは,Wk-treeやW-arrowを用いて定義される.Meilhan氏との共同研究では,Wk-treeやW-arrowの変形に関して,Arrow calculasというものも定義した.これは,Habiro氏のクラスパー理論のウェルデッド版を構築する鍵となるもので,応用範囲も広い.今後は,研究計画通りにGoussarov-Habiro予想のウェルデッド版の解決に取り組む事と並行して,Arrow calculasを用いて新しい問題にも取り組みたい.絡み目の一般化であるウェルデッド絡み目に対して,絡み目の有限型不変量の拡張はGoussarov,Polyak,ViroやBar-Natan,Dancsoによる先行研究が知られている.絡み目の場合,有限型不変量の図形的(幾何的)な解釈の研究手段として,Habiroによるクラスパー理論が知られている.一方,ウェルデッド絡み目の有限型不変量の図形的解釈の研究に関しては,幾つかの試みはあるものの満足のいく結果は得られていない。本研究では,ウェルデッド絡み目の有限型不変量の図形的解釈の研究の為に,Habiroのクラスパー理論のウェルデッド絡み目版と見なせるものを新たに定め,ウェルデッド絡み目の有限型不変量の図形的解釈を与えることを目標とする.研究代表者はMeilhan氏との共同研究で,ウェルデッド(ストリグ)絡み目に対し,有限型不変量を保存する局所変形(これを,Wk-moveと呼ぶ)を定める事に成功した.ここで,定義に用いたクラスパーは,HabiroのCkクラスパーと本質的に異なるため,Wkクラスパーと呼ぶ事にする.今年度は,国内4回,海外1回の出張を行い,他の研究者との研究交流をすることで,本研究の進展に役立てた.今年度は,Wkクラスパーの研究をHabiroのクラスパー理論と対比させながら研究を進める事で,以下の定理を得た.定理:ウェルデッド・ストリング絡み目のWk同値類は,群の構造を持つ.これは,研究計画調書で予想した通りの結果であり,ここで用いた議論は,Wkクラスパー理論の土台を固める事になると期待する.研究計画調書に記載の通り,ほぼ計画通りの成果が得られた.絡み目の一般化であるウェルデッド絡み目に対して,絡み目の有限型不変量の拡張はGoussarov,Polyak,ViroやBar-Natan,Dancsoによる先行研究が知られている.絡み目の場合,有限型不変量の図形的(幾何的)な解釈の研究手段として,Habiroによるクラスパー理論が知られている.一方,ウェルデッド絡み目の有限型不変量の図形的解釈の研究に関しては,幾つかの試みはあるものの満足のいく結果は得られていない。本研究では,ウェルデッド絡み目の有限型不変量の図形的解釈の研究の為に,Habiroのクラスパー理論のウェルデッド絡み目版と見なせるものを新たに定め,ウェルデッド絡み目の有限型不変量の図形的解釈を与えることを目標とする.研究代表者はグルノーブル大学のMeilhan氏との共同研究で,ウェルデッド(ストリグ)絡み目に対し,有限型不変量を保存する局所変形(これを,Wk-moveと呼ぶ)を定める事に成功した.ここで,定義に用いたクラスパーは,HabiroのCkクラスパーと本質的に異なるため,Wkクラスパーと呼ぶ事にする.今年度は,9月にMeilhan氏を訪問し,また3月にMeilhan氏を招聘することで,研究交流をはかり,本研究の進展に役立てた.今年度は,昨年度得られた結果「ウェルデッド・ストリング絡み目のWk同値
KAKENHI-PROJECT-17K05264
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ウェルデッド絡み目の有限型不変量とその図形的解釈
類は,群の構造を持つ.」を踏まえて,研究を進め,ウェルデッド・ストリング結び目の群をAlexander多項式を用いて完全に特徴つけることに成功した.また,昨年度の「今後の研究の推進方策」で記述した通り,Wk+1同値なウェルデッド(ストリング)絡み目は,Wk同値であることも証明できた.研究計画書に沿って,ほぼ予想通りに研究が進んでいる.平成30年度も,研究交流・成果発表の為の国内出張(大阪,京都,九州)及び海外出張(グルーノーブル,ワシントン)を行い,本研究の進展に役立てる.具体的な研究目標としては,当初の計画通り,次の予想の解決を目指す.予想:Wk+1同値なウェルデッド(ストリング)絡み目は,W_k同値である.平成31年度も,研究交流・成果発表の為の国内出張(大阪,京都,九州)及び海外出張(グルーノーブル,ワシントン)を行い,本研究の進展に役立てる.Meilhan氏との共同研究で得られたWk-moveは,Wk-treeやW-arrowを用いて定義される.Meilhan氏との共同研究では,Wk-treeやW-arrowの変形に関して,Arrow calculasというものも定義した.これは,Habiro氏のクラスパー理論のウェルデッド版を構築する鍵となるもので,応用範囲も広い.今後は,研究計画通りにGoussarov-Habiro予想のウェルデッド版の解決に取り組む事と並行して,Arrow calculasを用いて新しい問題にも取り組みたい.年度末に海外出張を計画していたが,研究代表者の所属異動により,スケジュールの都合がつかなくなった.次年度の出張に繰り込む予定である.本務の都合により,予定していた海外出張を中止したり,短縮したことが大きな理由である.
KAKENHI-PROJECT-17K05264
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視聴覚刺激処理における視聴覚相互作用
非侵襲的脳機能画像法(機能的MRI)を用いて「読唇効果」の神経基盤を明らかにし、Dynamic Cousal Modeling解析法により、「読唇効果」に関与する脳領域間の機能的結合変化を定量した。機能的MRIで、「読唇効果」に関与する領域として描出された右の下前頭回に経頭蓋直流刺激法(tDCS)により干渉を与え、その機能性を確認した。非侵襲的脳機能画像法(機能的MRI)を用いて「読唇効果」の神経基盤を明らかにし、Dynamic Cousal Modeling解析法により、「読唇効果」に関与する脳領域間の機能的結合変化を定量した。機能的MRIで、「読唇効果」に関与する領域として描出された右の下前頭回に経頭蓋直流刺激法(tDCS)により干渉を与え、その機能性を確認した。対面コミュニケーションにおいては、言語のみならず、五感からさまざまな情報を集約することが必須である。唇の動きを槻察することにより音声理解が高まる現象(読唇効果)は、視聴覚統合の一例として知られている。平成21年度は、非侵襲的脳機能画像法(機能的MRI)を用いて「読唇効果」の視聴覚情報統合に関連する領域を描出した。健常被験者を対象とし、音声(母音)と母音を発音する顔の動きによつて構成されたビデオの母音識別課題を遂行させた。実験中に提示した音声は、聞き取りにくくなるよう4段階に音量S/N比を操作し、実際の聞き取りにくさは、母音識別課題の遂行成績で確認した。S/N比の減少に反して音声理解のperformlanceが維持さる条件で、これと相関する活動が観察されたとき、この脳領域が読唇効果に関与すると考え、実験を行った。この方法により、右の下前頭回が「読唇効果」に関与することが示唆された。本研究の成果は、Thc39thAnnual Meeting of the Socicty fbr Neuroscienccにてポスター発表を行った。対面コミュニケーションにおける発話のような複数の属性を持つオブジェクトの認識において、どのような機能連関によって視聴覚情報が統合されるのか、その神経基盤はいまだ明らかになっておらず、本研究の成果は、視聴覚統合過程解明の一助となる新しい知見といえる。平成22年度には、先の機能的MRI実験で描出した脳領域に、経頭蓋直流刺激法(tDCS)を用いて干渉を与えることにより、統合過程における機能性を確認する実験を予定しており、既に実験準備が整っている。活動領域が担う機能の解明に用いるtDCSは比較的新しい解析手法であり、多感覚統合機能への適用は例がない。この点でも、視聴覚統合研究に新しい視点を与えることが期待できる。対面コミュニケーションにおいては、言語のみならず、五感からさまざまな情報を集約することが必須である。唇の動きを観察することにより音声理解が高まる現象(読唇効果)は、視聴覚統合の一例として知られている。平成22年度は、Dynamic Cousal Modeling (DCM)解析を用い、平成21年度に非侵襲的脳機能画像法(機能的MRI)を用いて「読唇効果」に関与する脳領域として描出された右の下前頭回と、言語処理過程に関与する領域として描出した左右の上側頭溝および左の下前頭回の間で起こる機能的結合変化の定量を行った。その結果、読唇効果の増加に伴い、左の上側頭葉から左右の下前頭回への結合が強くなることが明らかになった。また、読唇効果に関与すると考えられる右の下前頭回に、経頭蓋直流刺激法(tDCS)を適用することにより、この領域の「読唇効果」への影響を確認するため、平成21年度の機能的MRI実験で使用した母音識別課題(音声(母音)と母音を発音する顔の動きによって構成され、音声は音量S/N比により、聞き取り難さが4段階に設定されている。)を用い、tDCSによる干渉中の課題遂行成績を比較した。その結果、右の下前頭回に陰極の干渉を与えた場合にのみ、成績の低下が観察された。これらの結果から、「読唇効果」に右の下前頭回が関与し、左の上側頭溝と結合を強めることにより、「読唇効果」が生じることが明らかになった。現在、これらの結果を論文にまとめている。tDCSを活動領域が担う機能の解明に用いる解析手法は新しく、多感覚統合機能への適用はこれまでに例がない。本研究結果は、機能的fMRIにおける視聴覚統合研究に新たな手法を提案すると共に、新しい視点を与えると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-21700299
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21700299
認知的コントロールの基盤を探る:記憶抑制機能への多面的アプローチ
本研究は,認知的コントロールのメカニズムを明らかにすることを目的とした.記憶抑制については,再認による検索誘導性忘却,Think/No Think課題を用いて自己情報に関する意図的忘却,また記憶に付随する感情情報の変化について検討を進めた.さらに,思考抑制課題を用いた抑うつ傾向と抑制機能が関連,加齢における反応抑制機能の低下,また認知コントロールに関わる身体情報の関与を見いだした.また,コントロールと対になる心の機能である自動的処理の側面についても,統計的学習が可能なことを見いだした.本研究は,認知的コントロールのメカニズムを明らかにすることを目的とした.記憶抑制については,再認による検索誘導性忘却,Think/No Think課題を用いて自己情報に関する意図的忘却,また記憶に付随する感情情報の変化について検討を進めた.さらに,思考抑制課題を用いた抑うつ傾向と抑制機能が関連,加齢における反応抑制機能の低下,また認知コントロールに関わる身体情報の関与を見いだした.また,コントロールと対になる心の機能である自動的処理の側面についても,統計的学習が可能なことを見いだした.本研究は、ヒトの認知的コントロールの機能、特に記憶の抑制機能に焦点を当て、かつ、認知心理学、認知神経科学、比較認知心理学、社会心理学の知見を援用し、そのメカニズムを解明しようとするものである、基本的な認知記憶研究手法に加えて、記憶の抑制機能といった認知的コントロールが、ヒト特殊がどうか、また認知的情報のみならず社会的情報がどのように関わっているか、またエピソード記憶想起に関する近年の理論的展開を踏まえるといった多面的アプローチによって進めていくものである。本年度は、主として、記憶抑制機能については、Think/No-Thinkパラダイムを用いて、特に感情情報を伴った情報の意図的抑制効果はみられたが両要因の効果の確定はさらなる実験を要する。また、展望的記憶におけるコントロール機能の検討を行い、メンタルモデルが重要な要因であることを見いだした.さらに記憶抑制が人間独自の機能かどうかを検討するために、サルを対象としたワーキングメモリ課題を実施中である。検索誘導制忘却における抑制機能については、目撃場面を念頭に置いて顔認知における記憶抑制機能を検討した。これらの認知的コントロール機能の脳内基盤について文献検討等の結果、社会的認知とも関連している帯状回前部(ACC)・後部(PCC)と前頭葉背外側部・眼窩部などが関与していると考えられた。次年度に向けて、行動実験とともに、これら認知的なコントロールと抑制に関する脳部位の機能解析を行う計画を検討した。本研究は.ヒトの認知的コントロールの機能特に記憶の抑制機能に焦点を当て,かつ「認知心理学,認知神経科学,比較認知心理学,社会心理学の知見を援用し,そのメカニズムを解明しようとするものである.基本的な認知記憶研究手法に加えて記憶の抑制機能といった認知的コントロールが,ヒト特殊かどうか,また認知的情報のみならず社会的情報がどのように関わっているか,またエピソード記憶想起に関する近年の理論的展開を踏まえるといった多面的アプローチによって進めていくものである.本年度は,主として,記憶抑制機能については,Think/No-Thinkパラダイムを用いて,特に感情情報を伴った情報の意図的抑制について検討を進めた.感情価,覚醒度を操作した実験をこない,覚醒度の影響を見いだしたが,さらに検討を要する.また,展望的記憶における前頭前野のコントロール機能の関連を見いだした.検索誘導制忘却における抑制機能については,再認課題を用いて想起手がかりを操作し,干渉効果との違いを検討した.また,抑うつ傾向の高い人を対象にした抑制効果を検討した結果,抑制意図そのものの有無というメタ認知的要因の影響を見いだした.一方,コントロール機能の働かない自動的過程についても視覚的統計学習を用いて検討した結果,順序情報を潜在的に学習・記憶していることを見いだした.これらの認知的コントロール機能に関する研究成果について,次年度は学会でのシンポジウムで発表することを計画した.本研究は,ヒトの認知的コントロールの機能,特に記憶の抑制機能に焦点を当て,かつ,認知心理学,認知神経科学,比較認知心理学等の知見を援用し,そのメカニズムを解明しようとするものである.本年度は以下の点についての検討を行った.記憶抑制機能については,Think/ No-Thinkパラダイムを用いて感情情報を伴った情報の意図的抑制について検討を進めた結果,意図的な抑制をすることによって感情価が変化する可能性が示された.ただし,記憶の抑制結果については明確な結果が見いだせなかったことから,方法も含めて再検討の必要があると考えられる.また,潜在指標として眼球運動を用いた研究を行ったが,分析手法を含めて測定についての検討を進めた.関連した情報の検索が抑制されるという検索誘導性忘却については,これまで用いられてきた再生ではなく再認による検索訓練でも生じることを示した.また,検索誘導性忘却を展望記憶課題において発見し、報告した.さらに,より現実場面における検索誘導性忘却を目撃証言において検討した.神経基盤に関する研究については,認知制御と抑制に関わる神経メカニズムに関する理解を深めるため,展望記憶の想起,内受容感覚,文章理解と情動などの視点から,fMRIを用いた画像研究および神経心理研究を実施した.これらの研究を通して,前頭葉内でのネットワークに課題による質的な違いがあることや,認知制御に身体情報が活用されるいくつかの事実を明らかにすることができた.本研究は,認知的コントロールの機能,すなわち必要な情報のみに注目し不要な情報を抑制するメカニズムはどのようなものなのかを明らかにすることを目的としている.記憶抑制機能については,検索誘導性忘却およびThink/No-Thinkパラダイムを用いた意図的忘却について検討を行った.
KAKENHI-PROJECT-21330168
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21330168
認知的コントロールの基盤を探る:記憶抑制機能への多面的アプローチ
検索誘導性忘却研究では,学習段階に続く検索訓練段階において(手がかり再生),思い出すべき情報と類似した情報との競合が生じ,類似情報の抑制が行われると考えられており,再認など単に情報を提示するのみでは忘却が生じないと考えられてきた.しかし,競合情報が存在する場合には,再認課題でも忘却が生じることを見いだした.意図的忘却に関するThink/No-Thinkパラダイムを用いた研究の目的は人が不快な記憶を抑制できるかどうかという点である.これまでの研究では一般的な記憶研究で用いられる刺激(単語など)が中心であったが,重要な点は自分が体験した記憶の抑制が見られるかどうかとことであり,自己情報に関する意図的抑制を検討した結果,自己情報についても抑制が可能であることが示された.また,未来の記憶(展望的記憶)において検索誘導性忘却が生じることを見いだし,過去の記憶想起に関わる抑制機能だけでなく,未来の展望に関する抑制メカニズムを示唆する結果を得た.加齢に伴う抑制機能の変化について,反応の抑制を反映するSimon課題および空間的に近接した情報の抑制を必要とするflanker課題実施中の脳機能を近赤外光(NIRS)を用いた手法によって検討した.その結果,高齢者は特に反応抑制機能が低下すること,また両課題が反映する脳領域は異なっているから,同じ抑制といっても異なるメカニズムがあることを明らかにした.抑制に関わる認知的制御の背景ににあるエージェンシー感覚との関連から,身体感覚と情動機能との関連を示唆する結果を得た.おおむね予定通り進んではいるが,実験手続きなどの方法論的検討も並行して進めている.24年度が最終年度であるため、記入しない。今年度は,日本心理学会においてシンポジウムを行うことで,分担研究者および関連分野の研究者との意見交換を行うことができた.まだ参加者は150名を超える人数となり,一般の関心が高いことも明らかとなった.より広い視点からの検討を進めることで,本研究の意義を再確認したい.24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-21330168
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21330168
バクテリアルトランスロケーションのパラセルラールートの解析と重症度評価法の開発
[方法](1)Wistar系雄性ラットを絶食コントロール群、DKT投与群に分け、BTの発症、炎症性サイトカイン、病理組織変化、apoptosisに対する検討を行った。(2)Wistar系雄性ラットをコントロール群、CPT-11投与群、大建中湯(DKT)投与群に分け、病理組織変化、apoptosis、炎症性サイトカインに対する検討を行った。(3)Wistar系雄性ラットをコントロール群、CPT-11投与群に分け、下痢・体重変化、病理組織変化、炎症性サイトカイン、腸管電気抵抗、TJタンパク(Claudin-1, Occludin, ZO-1)、TJmRNAに対する検討をおこなった[結果](1)絶食によりBTの発症、炎症性サイトカインの上昇、腸管粘膜障害、apoptosisをみとめ、DKTの投与による予防効果をみとめた。(2)CPT-11投与群で、腸管粘膜障害、apoptosis、炎症性サイトカインの上昇を認め、DKT投与群で予防効果を認めた。(3)CPT-11投与群で、下痢・体重減少、腸管粘膜障害、炎症性サイトカインの上昇、小腸電気抵抗上昇、大腸電気抵抗低下、TJタンパク発現減、Claudin-1mRNAの上昇、OccludinmRNAの低下を認めた[結論]絶食によりBTの発症、CPT-11投与により腸管粘膜障害、炎症、電気抵抗の変化、TJタンパク発現の減弱、mRNAの変化が確認され、DKTによるBT、腸管粘膜障害、炎症、apoptoslsの予防効果が確認された[方法](1)Wistar系雄性ラットを絶食コントロール群、DKT投与群に分け、BTの発症、炎症性サイトカイン、病理組織変化、apoptosisに対する検討を行った。(2)Wistar系雄性ラットをコントロール群、CPT-11投与群、大建中湯(DKT)投与群に分け、病理組織変化、apoptosis、炎症性サイトカインに対する検討を行った。(3)Wistar系雄性ラットをコントロール群、CPT-11投与群に分け、下痢・体重変化、病理組織変化、炎症性サイトカイン、腸管電気抵抗、TJタンパク(Claudin-1, Occludin, ZO-1)、TJmRNAに対する検討をおこなった[結果](1)絶食によりBTの発症、炎症性サイトカインの上昇、腸管粘膜障害、apoptosisをみとめ、DKTの投与による予防効果をみとめた。(2)CPT-11投与群で、腸管粘膜障害、apoptosis、炎症性サイトカインの上昇を認め、DKT投与群で予防効果を認めた。(3)CPT-11投与群で、下痢・体重減少、腸管粘膜障害、炎症性サイトカインの上昇、小腸電気抵抗上昇、大腸電気抵抗低下、TJタンパク発現減、Claudin-1mRNAの上昇、OccludinmRNAの低下を認めた[結論]絶食によりBTの発症、CPT-11投与により腸管粘膜障害、炎症、電気抵抗の変化、TJタンパク発現の減弱、mRNAの変化が確認され、DKTによるBT、腸管粘膜障害、炎症、apoptoslsの予防効果が確認された1.1 LPS及び病原性大腸菌による障害腸上皮のcell lineであるCaco2をLPSにて障害し、claudin、occludin、ZO-1などのtight junctionを形成するタンパク質やリン酸化MLCをreal time PCRによって定量中である。さらにRAB 13、JRABをreal time PCRによる定量及びTERを測定中である。腸上皮のcell lineであるCaco2を5-FU、CPT 11にて障害し、LPSによる障害と平行して検討中である。claudin、occludin、ZO-1などのtight junctionを形成するタンパク質やリン酸化MLCをreal time PCRによる定量中であるほか、RAB 13、JRABをreal time PCRによる定量及びTERを測定中である。2.5-FU、CPT-11によるラット腸管障害モデル生後6週のWister ratにCPT-11を腹腔内投与し、腸間膜リンパ節培養によるBTの発症、病理組織標本による腸管粘膜障害、real time PCRを用い腸管由来の炎症性サイトカインの有意な上昇が確認され、CPT-11投与によるBTモデルが確立された(第108回日本外科学会定期学術集会2008年5月15日発表予定)。現在、このモデルに大建中湯及びHeat shock proteinを投与し、BT抑制効果の検討を行っている。大建中湯投与によって、腸管粘膜障害や腸管由来の炎症性サイトカインが抑制されることが既に確認されている。さらにclaudin、occludin、ZO-1などのtight junctionを形成するタンパク質やリン酸化MLCをreal time PCRによって定量中である。【目的】腸管粘膜integrityを検討してBacterial Transloation(BT)に対する臨床応用可能な新しいモニタリング法と予防法を開発する。【方法】(1)Wistar系雄性ラットを絶食コントロール群、DKT投与群に分け、BTの発症、炎症性サイトカイン、病理組織変化、apoptosisに対する検討を行った。(2)Wistar系雄性ラットをコントロール群、CPT-11投与群、大建中湯(DKT)投与群に分け、病理組織変化、apoptosis、炎症性サイトカインに対する検討を行った。(3)Wistar系
KAKENHI-PROJECT-19591485
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19591485
バクテリアルトランスロケーションのパラセルラールートの解析と重症度評価法の開発
雄性ラットをコントロール群、CPT-11投与群に分け、下痢・体重変化、病理組織変化、炎症性サイトカイン、腸管電気抵抗,Tight junction(TJ)タンパク(Claudin-1,0ccludin,ZO-1)、TJ mRNAに対する検討をおこなった。【結果】(1)絶食によりBTの発症、炎症性サイトカインの上昇、腸管粘膜障害、apoptosisをみとめ、DKTの投与による予防効果をみとめた。(2)CPT-11投与群で、腸管粘膜障害、apoptosis、炎症性サイトカインの上昇を認め、DKT投与群で予防効果を認めた。(3)CPT-11投与群で、下痢・体重減少、腸管粘膜障害、炎症性サイトカインの上昇、小腸電気抵抗上昇、大腸電気抵抗低下、TJタンパク発現減、Claudin-1mRNAの上昇、Occludin mRNAの低下を認めた。【結論】絶食によりBTの発症、CPT-11投与により腸管粘膜障害、炎症、電気抵抗の変化、TJタンパク発現の減弱、mRNAの変化が確認され、DKTによるBT、腸管粘膜障害、炎症、apoptosisの予防効果が確認された。
KAKENHI-PROJECT-19591485
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民俗展示の多言語化のための基礎的研究-東アジアの水産資源を素材として
前年度に引き続き、日韓における海産物の呼称から認識の違いについての調査を行った。日本でツブ貝と呼ばれている貝はエゾボラ、ヒメエゾボラ、クビレバイ、燈台ツブ、モッソ貝などである。この日本のツブ貝に対する言葉として韓国にはコルベンイという言葉がある。しかし、コルベンイがさしている貝類は、日本のツブ貝とは生態が違う肉食のツメタガイなどをさしている。さらに、ツメタガイは日本でも食用にされているが地域名として様々な呼ばれ方をしている。コルベンイをツブ貝と訳してしまうことは無理があることがわかった。博物館のキャプションなどで使用する場合は短い言葉でわかりやすく伝えなければならない。今後、翻訳の仕方について考えて行く予定である。また、カタクチイワシの煮干しと辛子明太子について日韓の食文化の関わりについての調査を行った。煮干しは日本から韓国へ、辛子明太子は韓国から日本へ伝わったものであるが、伝わった先でそれぞれ独自の発展を遂げていることがわかった。このような際にも、翻訳にあたっては注意が必要であるとの認識に達した。最終年度に向けて、ウエッブ上での日韓海産物辞典の作成に備えて画像の整理と日韓の魚屋の図の作成を行った。さらに、日本の市場等において、魚の方言についての調査も行った。日本国内の魚の方言も多数あることが再認識された。海産物の日韓両国国における呼称と種名の関係はほぼあきらかになった。また、方言についての調査も行っている。次年度は、多言語化のための基礎資料となる辞典の作成の準備をはじめた。多言語化のための基礎資料となる辞典の作成を行う。とともに、市場等での地方名などの補充調査を引き続き行う。研究の成果発表の1つとして位置づけている国際展示の準備を行う。海産物のうち、魚類、海藻類、貝類について、その呼称について日韓両国においてフィールド調査を行った。その結果魚類についてはイワシ、エイ、イシモチ、タイ、タチウオ、カレイについて、日韓の間でその呼称について大きな認識の違いがあることがわかった。例えば、韓国においてはカタクチイワシとキビナゴを同じ「ミョルチ」と認識している一方で、カタクチイワシとマイワシは全く別物と認識していることがわかった。日本では、マイワシもカタクチイワシも同じ「イワシ」と認識している。海藻類は、韓国では日本に比べて食べている種類が多くまた、養殖している種類も多い。たとえば、日本においては普段アオノリは1種類と認識しているが、韓国においては数種類のアオノリを認識していることがわかった。また、養殖においては、日本では養殖していないヒジキ、アオノリの養殖が盛んであった。韓国においては、海藻が生の状態で多く流通していることも日本と大きな違いであり、その加工法・食べ方も日本とは大きく違う。貝類についても、韓国は日本に比べて多くの種類の貝を食用としていることがわかった。また、日本では養殖をしていないアワビの養殖が多く行われていた。韓国で養殖されたヒジキ、アワビの多くは日本に輸出されている。海産物の種名と呼称の関係をみていくことで、博物館のおける民俗展示の多言語化に寄与するだけでなく、両国の食文化の比較になることもあきらかとなってきた。海産物のうち魚類・海藻類・貝類について、日韓両国における呼称と種名の関係がある程度明らかとなってきた。多言語化のための基礎資料となる辞典の刊行に向けて準備が整いつつある。日韓の魚屋、市場等で調査を行うとともに、日韓両国で作られ、流通している魚醤についての調査を行った。これまでの日韓の調査を通じてわかったことは以下の通りである。たとえば、「イワシ」という和名の魚はいない。ニシン目ニシン亜科の複数の魚の総称であり、日本ではマイワシ、ウルメイワシ、カタクチイワシの三種類が利用されているイワシ」という言葉を聞いてどのイワシを思い浮かべるかは個人によって違う。日本人同士で「イワシ」について話していてもすれ違いが生じている可能性が十分にある。翻訳以前の問題といえよう。それに対し韓国語でマイワシとカタクチイワシとマイワシは明確にわけている。私の勤務する博物館にも干鰯づくりのジオラマがある。そこに「イワシ」とは書いてあるが、マイワシともカタクチイワシとも書いていない。さて、このジオラマの多言語化(韓国語への翻訳)を考えるとしよう。干鰯の「イワシ」は何か、マイワシなのか、カタクチイワシなのか、あるいはウルメイワシなのか。干鰯についてかかれた文献の多くには、ただ「イワシ」とのみ書かれている。日本語では「イワシ」としておく分には問題はない。しかし、韓国語に翻訳するならば白黒はっきりする必要が生じてくる。「イワシ」を例に紹介したが、このような例は事欠かない。生活文化を翻訳するためにはまず、自国の文化を知り、なおかつ相手の文化を知らなくてはならない。展示には伝えたい事がある。そのための1つの手段が解説やキャプションである。それらは、読む人の事を考えて書くべきものである。読む人の事を考えて、どのように翻訳すれば展示を理解してもらえるか考える。多言語化にはその作業が必要であろう。これはなかなか大変な作業であるが、その作業を通して自らの文化を見直し、相手の文化を理解することができるようになるのではないだろうか。
KAKENHI-PROJECT-16H03108
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