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国際標準SNPシステムの構築に基づくアジア在来家畜集団の遺伝的多様性解析と保全策
ウシは特に重要家畜種であり、閉鎖集団であり近交度の高い我国の黒毛和種に対しても十分な遺伝的多様性の情報が得られるようセカンドシステムの構築も試みた。上記候補96SNPに加え、これらSNPと連鎖の少ないSNPを選出した。DigiTag2法による遺伝子型判定の結果、最終的に128SNPが有用なSNPであることが明らかとなった。平均マーカー間距離25.45Mbp、最小マーカー間距離9.29Mbpであった。この多様性評価用SNPマーカーパネルの有効度を検証するためにBos taurus、Bos indicus各24個体に対して遺伝子型判定を行い、各SNPの遺伝子型頻度及び遺伝子頻度、マイナーアリル頻度(MAF)を算出した。128SNPのMAFの範囲は0.0100.500であり、そのうち70 SNPが0.300以上のMAFを有していた。研究実施計画どおり、ウシ、ブタ、ニワトリともに約300の候補SNPの選出に成功している。また、この選出SNPに対してDigiTag2法を適用したシステム構築も順調に進んでいる。25年度が最終年度であるため、記入しない。予定通りウシ、ブタ、ニワトリのすべての家畜種に対して国際的な遺伝的多様性分析に資する96SNPによる基本システムの構築に成功している。これらの各SNPは概ね遺伝子頻度が0.10.5であり、かつ連鎖がないSNPであることから遺伝的多様性解析に有用なSNPであることも明らかにしている。これに加え、ウシでは遺伝的多様性が低いと思われる我国の黒毛和種に対しても十分な遺伝情報が得られるようにセカンドシステムの構築も試みている。その結果、192SNPに対して検討を行い、最終的に128SNPが有用なSNPであることも明らかにしている。この2つのSNPシステムを用いてBos taurusおよびBos indicusに対する遺伝子型判定も行い、有効なSNPを検討するとともに、各SNPの遺伝情報を構築し一連の遺伝的類縁関係などの解析なども行っている。これらの結果に加え、ウシでは重要形質に関連するSNP多型のシステムへの導入も検討した。特にウシの不良形質7遺伝子に着目して検討したところ、これらの遺伝子型判定が本システム上で十分機能することを明らかにした。このように計画に沿って研究は滞りなく進捗しており、順調に進展していると判断した。継続してSNPシステムの構築を試み、第一次96 SNPシステムを用いた解析を進める。また、家畜の重要形質に関連するSNPの選出を行い、システムに取り入れることが可能か検討する。これは各家畜種に対して、現在・将来的な遺伝的多様性の理解・保持に有効であると考えられる遺伝子多型を選出する。さらに、構築が完成したウシ、ブタ、ニワトリのSNPシステムを用いて実際のアジア在来牛集団に対するSNP解析を試みる。ウシ、ブタ、ニワトリのそれぞれに対し、近縁野生種を含む約20力国の地域集団から各30個体、合計600個体のDNA試料に対しDigiTag2法によるSNP解析を行う。25年度が最終年度であるため、記入しない。平成24年度までに、国際的な遺伝的多様性分析に適するウシ、ブタ、ニワトリのSNP選出に成功した。
KAKENHI-PROJECT-23380165
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23380165
画像処理を用いた固液混相流の流動解析
1.研究目的:固体粒子の水力輸送システムを設計する場合、輸送動力の算定は主として圧力損失を基に行われるが、これは粒子挙動と密接な関係がある。従って、粒子挙動の詳細な検討は安全なシステムを設計するためにも不可欠なものである。本研究は、画像処理を用いて大量のデ-タを収集処理し、これらの結果を基に固液混相流の流動解析を行うことを目的としたものである。2.研究計画:上述の研究目的を達成するために、以下の研究計画を立て実施した。1)ガラスビ-ズを用いて流送実験を行い、締切法により濃度分布を実測するとともに、画像処理により濃度分布の推定を行い、両者を比較する。2)トレ-サ-粒子を用いた流送実験を行い、画像処理により粒子の挙動の解析を行う。3)正確な圧力損失の推定に資するため、空気が混入した場合の圧力損失の測定を行う。3.研究成果:1)撮影された画像は二次元であるので、粒子の重なりを評価するために、粒子を0から12個重ねた状態をビデオ撮影し、この画像を解析することにより、n値化を行う際のしきい値を決定した。この値を用いて画像処理により濃度分布を推定した結果、推定値は実測値とよい一致を示すことが確かめられた。2)トレ-サ-粒子の挙動解析を行った結果、跳躍高さの確率密度関数は2つのピ-クを有し、これらはそれぞれ転動および跳躍粒子の軌跡に対応していることが分った。3)跳躍粒子の運動をモデル化し、粒子挙動のシミュレ-ションを行った結果、シミュレ-ション軌跡から得られる跳躍距離および跳躍高さの確率密度関数は、実験結果とほぼ一致することが確かめられた。4)空気が混入した場合の圧力損失を測定した結果、臨界速度付近の流速では圧力損失の低減が見られること、および圧力損失は分離流モデルでほぼ説明されることを示し得た。1.研究目的:固体粒子の水力輸送システムを設計する場合、輸送動力の算定は主として圧力損失を基に行われるが、これは粒子挙動と密接な関係がある。従って、粒子挙動の詳細な検討は安全なシステムを設計するためにも不可欠なものである。本研究は、画像処理を用いて大量のデ-タを収集処理し、これらの結果を基に固液混相流の流動解析を行うことを目的としたものである。2.研究計画:上述の研究目的を達成するために、以下の研究計画を立て実施した。1)ガラスビ-ズを用いて流送実験を行い、締切法により濃度分布を実測するとともに、画像処理により濃度分布の推定を行い、両者を比較する。2)トレ-サ-粒子を用いた流送実験を行い、画像処理により粒子の挙動の解析を行う。3)正確な圧力損失の推定に資するため、空気が混入した場合の圧力損失の測定を行う。3.研究成果:1)撮影された画像は二次元であるので、粒子の重なりを評価するために、粒子を0から12個重ねた状態をビデオ撮影し、この画像を解析することにより、n値化を行う際のしきい値を決定した。この値を用いて画像処理により濃度分布を推定した結果、推定値は実測値とよい一致を示すことが確かめられた。2)トレ-サ-粒子の挙動解析を行った結果、跳躍高さの確率密度関数は2つのピ-クを有し、これらはそれぞれ転動および跳躍粒子の軌跡に対応していることが分った。3)跳躍粒子の運動をモデル化し、粒子挙動のシミュレ-ションを行った結果、シミュレ-ション軌跡から得られる跳躍距離および跳躍高さの確率密度関数は、実験結果とほぼ一致することが確かめられた。4)空気が混入した場合の圧力損失を測定した結果、臨界速度付近の流速では圧力損失の低減が見られること、および圧力損失は分離流モデルでほぼ説明されることを示し得た。1.研究目的:固体粒子の水力輸送システムを設計する場合、輸送動力の算定は主として圧力損失を基に行われるが、この圧力損失と粒子挙動とは密接な関係がある。本研究は画像処理を用いて、撮影されたビデオ画像から粒子挙動に関する大量のデ-タを収集し、これにより固液混相流の流動を解析することを目的としている。2.研究計画:上記の目的を達成するために、本年度は下記の研究計画のもとで検討を行った。(1)管内の流動状態をビデオ撮影するため、透明アクリル管を用いて供試管を作製する。(2)ガラスビ-ズを用いて流送実験を行い、流動状態のビデオ撮影を行うとともに、締切法により固体粒子の濃度分布を測定する。(3)画像処理により、固体粒子の濃度分布の推定を行い、実験値と比較検討する。(4)移動計測ソフトウェアにより粒子速度を計測し、確率密度関数を求める。3.研究成果:画像処理により濃度分布の推定を行う場合、得られる画像は二次元であるので、奥行き方向の粒子の重なりを定量的に評価する必要がある。ガラスビ-ズを0から12個重ねた状態をビデオ撮影し、この画像を解析することにより、n値化を行う際の各重なりに対する最適しきい値を得た。次にこのしきい値を用いて、撮影されたビデオ画像をn値化し、奥行き方向の粒子の重なりの個数を考慮することにより、固体粒子の管内濃度分布の推定を行った。推定された濃度分布と実験により得られた濃度分布の比較検討を行った結果、両者はほぼ一致することから、画像処理の有効性が確かめられた。
KAKENHI-PROJECT-01460206
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01460206
画像処理を用いた固液混相流の流動解析
また、移動計測ソフトウェアを用いて摺動層流れにおける粒子速度の確率密度関数を求めた結果、分布形状は非対称となり、平均値よりも高速度側に分布のピ-クが現れることが確かめられた。1.研究目的:固体粒子の水力輸送システムを設計する場合、輸送動力の算定は主として圧力損失を基に行われる。この圧力損失は粒子挙動と密接な関係があることから、近年、管内の粒子の挙動を捉えようとする試みが行われている。しかし、これらの解析は統計学的にみて不十分なデ-タ数を基に行われているため、粒子の挙動を情度よく推定するには至っていない。それゆえ、本研究はビデオ画像を処理することにより大量のデ-タを収集し、粒子挙動の解析を行うことを目的としている。2.研究計画:上記の目的を達成するために、本年度は下記の計画を立て実施した。1)管内の平均流速,吐出濃度等を変化させて流送実験を行い、流動状態のビデオ撮影を行う。2)画像処理を用いて粒子の流動軌跡速度ベクトル等を求め、確率論的検討を加える。3)正確な左力損失の推定に資するため、空気が混入した場合の圧力損失の測定を行う。3.研究成果:1)得られた流動軌跡のデ-タから跳躍距離、跳躍高さ、粒子速度等の確率密度関数を求めた結果、以下のことが明らかになった。すなわち、跳躍距離および跳躍高さについては、低流速域では2つのピ-クが見られたが、これらはそれぞれ転動および跳躍粒子の軌跡に対応していることが分かった。粒子速度の分布は、正規分布でほぼ近似し得ることが分った。2)跳躍粒子の運動をモデル化し、粒子間衝突機構を組み入れた粒子挙動のシミュレ-ションを行った結果、シミュレ-ション軌跡から得られる跳躍距離、跳躍高さ、粒子速度等の確率密度関数は、実験結果とほぼ一致することが確かめられた。3)搬送流体を非ニュ-トンスラリ-とし、さらに空気が混入した場合の圧力損失について検討した結果、臨界速度付近の流速では圧力損失の低減が見られること、および圧力損失は分離流モデルでほぼ説明されることを示し得た。
KAKENHI-PROJECT-01460206
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01460206
知的障害者における主観的QOL及びライフプランの構築に関する研究
主観的QOL評価に関しライフプランに関するアンケート調査票を作成し、調査を行った。対象者は知的障害のある成人143名(平均年齢40.8歳)、特別支援学校高等部生徒132名(平均年齢17.3歳)計276名。生活満足度は「とても満足」「少し満足」が併せて75.1%で、成人群が学生群より高かった。10年後に実現したい希望は貯蓄(28.7%)、恋愛結婚(15.7%)、仕事の充実(14.9%)が上位で、成人群で恋愛結婚、学生群で貯蓄の割合が高かった。実現への自信度は貯蓄、仕事の充実に比べ、恋愛結婚が低い傾向にあった。適応状況と支援状況の関係は、SISとVinelandII適応行動尺度を用い分析した。25年度は文献収集とともに、研究目的3(キャリアプランを含む人生設計に関する調査)を中心に研究を進めた。その一環として、主観的QOLを考える上で就労だけに限定されないキャリア教育の観点が必要と考え、生涯教育プログラム参加した知的障害者を対象に、10年後の自分を想定したライフプランに関するアンケート調査を行い実態把握を試み、日本発達障害支援システム学会第12回研究セミナー(東京学芸大学)において、「知的障害者のライフプランに関する調査(1)ー生涯教育プログラム受講者を対象とした10年後の自身を想定してのアンケート調査からー」の内容で発表した。主な結果として、将来への意見聴取に関して7割近くの者が「聞いてほしい」と回答しており、個別支援計画を策定していく上で改めてPerson-Centered Planning(本人主体の計画)の重要性が認識された。また6割以上が将来への不安を感じており、仕事に関しては加齢による影響が出たとしても働き続けられる多様な雇用形態が必要と考える。また援助者に関しては、複数の信頼できるキーパーソン・機関を持つことが必要と思われる。何故なら、悩み・不安の相談場所(多重回答)に関し、家族・親族が37名(37.0%、全調査対象者での回答割合は86%)と圧倒的で、この結果は家族の結びつきが信頼されている表れともいえるが、親が死亡した場合、他の親族との紐帯は不十分になりがちであること(島田他,2002)から、家族以外の相談対象を作っておくことが大切と思われた。10年後の希望に関しては、上位を占めた3項目中、「お金」「仕事」に関しては7割以上が実現可能性を高く考えているのに対し、1位の「恋愛結婚」は4割弱と低くなっている。同項目はライフキャリアの領域であり、この点からもキャリア教育の再考が必要と考える。研究目的(1)主観的(Subjective)QOL評価尺度の開発:先行研究に関する分析をもとに、データ収集を行う予定であるが未着手。研究目的(2)加齢や生活変化等による変化に関する縦断調査:国立コロニーのぞみの園など研究協力は得られる見込みだが未着手。研究目的(3)キャリアプランを含む人生設計に関する調査:、10年後の自分を想定したライフプランに関するアンケート調査による実態把握、昨年度、データ収集した生涯教育プログラム参加の成人知的障害者のデータに加え、特別支援学校高等部における調査を追加し、その結果を第52回特殊教育学会にて、「知的障害児者のライフキャリアプラン構築に関する研究ー成人知的障害者と特別支援学校高等部生徒を対象にー」、「成人期知的障害者のための公開講座「10年後の自分の夢を実現するために生活領域を考える」の2題で発表した。主な結果としては、現状に関しては満足を感じている者が多い一方で将来への不安を感じている者が多い。また10年後の希望に関しては、上位を占めた3項目中、「お金」「仕事」に関しては7割以上が実現可能性を高く考えているのに対し、1位の「恋愛結婚」は4割弱と低くなっている等の結果が得られた、また成人ー学生間の比較では、「余暇・趣味を楽しめる友達を増やしたい」、「学習しいろいろな知識を深める」は、学生>成人なのに対し「地域のサークル、ボランティアへの参加」、「良い環境に住む」は成人>学生であった。将来のQOL(生活の質)の高い地域生活を実現していくためには、キャリア教育においてワークキャリア(就労面)だけでなく、ライフキャリア(地域生活・余暇面)を重視していくべきことが、今回の調査から推察された。研究目的1:主観的生活の質(Subjective QOL)評価尺度の開発:先行研究、特にR.SchalockのSIL(知的障害のある人の支援尺度)を参考に、知的障害当事者が回答できる質問票を作成中研究目的2:加齢や生活変化等による心身の変化に係る縦断研究、国立コロニーのぞみの園など、12年前に調査を実施した施設で行う予定も未着手、今夏以降収集を検討研究目的3:昨年度に引き続き、特別支援学校高等部の生徒を対象に追加調査を実施、その結果の一部を第53回日本特殊教育学会(東北大学)で発表した。主な内容は、(1)10年後に向けての希望に関し「お金を増やしたい」、「仕事がうまくできるようになりたい」、「良い環境に住みたい」の諸項目は、両群共通して上位だが、成人群において、「恋人・結婚相手がほしい」が圧倒的な第1位を占めている、(2)「余暇・趣味を楽しめる友達を増やしたい」、「学習しいろいろな知識を深める」は、学生>成人なのに対し、「地域のサークル、ボランティアへの参加」、「良い環境に住む」は成人>学生であった(3)成人において第1位であった「恋人・結婚」に関し、希望の高さの割には、実現できると考えている割合は5割程度と低い。
KAKENHI-PROJECT-25380782
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25380782
知的障害者における主観的QOL及びライフプランの構築に関する研究
その背景として、学校や家庭における教育の中でかつてはタブー視され、現在も必ずしも肯定的に伝えられない項目であり、それを知的障害当事者が意識している可能性もある等目的1:中高齢知的障害者の生活満足度を中心とした主観的QOL評価尺度の開発、作成、文献研究に加え、特にR.SchalockのSIL(知的障害のある人の支援尺度)を参考に知的障害当事者が回答できる質問票を作成中、いくつかの研究協力先で調査予定目的2:関係施設などと連絡調整し、今夏実施予定、目的3:二度の学会報告と追加データも整ったことを踏まえ、研究誌への投稿論文を執筆中、なお、前年度の報告書に記載した理由に基づき、補助機関延長願を申請し、受理された。研究計画(1)「主観的QOL評価尺度を用いた調査」に関しては、「10年後の自分を想定したライフプランに関するアンケート調査」を前年度に続き調査施設を加えデータ収集を行い、最終結果としてまとめた。対象者は成人群:知的障害のある成人143名(男85・女58)、平均年齢40.8歳(1884歳)、学生群:特別支援学校高等部生徒132名(男93・女39)、平均年齢17.3歳(1518歳)の計276名。諸項目に関し、全体及び成人群VS学生群の比較分析を行った。生活満足度に関し、全体では「とても満足」「少し満足」を併せ75.1%が高い傾向にあり、群間比較ではχ2検定で1%水準の有意差(χ2=8.28,df=3)が認められ、成人群における高満足度の割合が高かった。10年後までに実現したい希望の第1位割合は、全体では「お金」75名(28.7%)、「恋愛結婚」41名(15.7%)、「仕事」39名(14.9%)が上位だった。群間比較では成人群で「恋愛結婚」33名(25%)、学生群で「お金」56名(43.4%)の割合が高く1%水準の有意差(χ2=40.85,df=9)が認められた。研究目的(2)「中高齢知的障害者の適応状況に関する縦断的調査」に関しては、地域移行により、追跡できる対象者が少なかったことから、「適応状態と支援の状況と関係性」に関する横断的調査に切り替え、知的障害のある人の支援尺度(SIS)とvineland-ii適応行動尺度の評定を対象施設に依頼したが、データ回収が若干遅れ分析中である。研究計画(3)「知的障害者のキャリアプランを含む人生設計、自己選択、自己決定の支援に関する調査」に関しては、一部を研究計画(1)の分析に取り入れたものの、独立した形での調査は実施できなかった。文献研究に関しては共同研究者の高橋がまとめたものを含め、最終報告書に反映させる予定である。主観的QOL評価に関しライフプランに関するアンケート調査票を作成し、調査を行った。対象者は知的障害のある成人143名(平均年齢40.8歳)、特別支援学校高等部生徒132名(平均年齢17.3歳)計276名。生活満足度は「とても満足」「少し満足」が併せて75.1%で、成人群が学生群より高かった。10年後に実現したい希望は貯蓄(28.7%)、恋愛結婚(15.7%)、仕事の充実(14.9%)が上位で、成人群で恋愛結婚、学生群で貯蓄の割合が高かった。実現への自信度は貯蓄、仕事の充実に比べ、恋愛結婚が低い傾向にあった。適応状況と支援状況の関係は、SISとVinelandII適応行動尺度を用い分析した。
KAKENHI-PROJECT-25380782
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25380782
光ファイバを用いた睡眠時無呼吸症候群センサの研究開発
(1)光ファイバを用いた無侵襲性の睡眠時無呼吸センサによる測定方法の医学的意義確認本SASセンサによってスクリーニングされた被験者と、JR仙台病院健康管理センタ佐藤研所長の協力を頂いて、パルスオキシメータやポリソムノグラフィー(PSG)検査による測定結果(特にAHI指数)と、本研究で開発したPOFを用いたSASセンサでのAHI測定結果との対比を行った。その結果、本SASはPSGと良い一致を示し、特に低AHI領域での対応が極めて良いことが判明した。(2)本センサによる家庭での一次スクリーニングの有効性検証BMIが25以上(太り気味)の中高年のモニターの方に、本研究で開発したPOFを用いたSASセンサでの就寝時測定を自宅で行ってもらい、睡眠時無呼吸症候群の家庭での一次スクリーニングの有効性の検証を行った。本研究で開発したPOFを用いたSASセンサでAHIが5以上と判定された被験者4名には、JR仙台病院の健康管理センタで、佐藤研医師の研究協力のもとパルスオキシメータやポリソムノグラフィー検査による確定診断を行なって頂いた。その際に本光ファイバ型SASセンサとの同時測定も行い、閉塞性、中枢性,混合型の各SASが良く判別できることが実証された。(3)本センサによるSASのスクリーニングの有効性についての啓蒙上記の結果を医学会(第62回日本交通医学会総会、第49回日本人間ドック学会学術大会)等で佐藤研医学博士と共に連名で学会発表を行い、臨床的立場からの専門家のご意見を伺った。また、9^<th> World Congress on Sleep Apneaという睡眠時無呼吸症の国際会議で論文発表を行い、多くのSASの専門医に本光ファイバ型SASセンサのスクリーニングの有効性をアピールした。光ファイバを用いた睡眠時無呼吸症候群センサ試作1号機を完成(1)プラスチック光ファイバの中で市販品であるエスカ(CK-10、CK-20、CK-30、CK-40)を購入し、最適な光ファイバ材料として、CK-10を選択した。(2)ファイバシートの感度を確保しながら強度を保証できるSCコネクタ接続コード付きファイバシートを開発した。自由に屈曲し、一定の強度を保証するファイバコードと光コネクタを入射側と出射側に取り付けることが可能となった。(3)測定データ自動解析プログラム及び測定系を完成した。1)SASセンサ測定系:測定系については、医療機関仕様の場合光源のパワーレンジとJR仙台病院佐藤健医師の指導の下、医学的な無呼吸、低呼吸、正常呼吸の定義とを突合せ、SN比から光源の最適化を図り、高感度化に成功した。2)測定データ自動解析プログラム:(有)五用設計の斉藤昭仁社長並びに辻村博グループリーダの研究協力を得て、POF解析装置・設計・試作を行った。光センサ(数機種)を制御し、0.1秒程度間隔の計測値を表示及びコンピュータのファイルに保存機能と、通常呼吸、無呼吸及び低呼吸等の区間・回数等を解析を実現した。計測値は0.1秒程度(光パワーメータの機種に依存)の間隔でコンピュータに取り込み、取り込み間隔及び時間(最大12時間)は指定可能で、取り込んだ計測値は,時間軸方向、数値方向それぞれに拡大・縮小表示が可能。コンピュータのメモリに格納された計測値は、a.計測値の平滑化、b.通常呼吸/寝返りの検索、c.低呼吸の検索、d.無呼吸/離床の検索の手順にて、1秒以内で7時間の睡眠データが解析可能である。得られた解析結果は、コンピュータ画面に表示され、各低呼吸、無呼吸、寝返り等のグラフィック表示を画面にスクロール表示可能である。(1)光ファイバを用いた無侵襲性の睡眠時無呼吸センサによる測定方法の医学的意義確認本SASセンサによってスクリーニングされた被験者と、JR仙台病院健康管理センタ佐藤研所長の協力を頂いて、パルスオキシメータやポリソムノグラフィー(PSG)検査による測定結果(特にAHI指数)と、本研究で開発したPOFを用いたSASセンサでのAHI測定結果との対比を行った。その結果、本SASはPSGと良い一致を示し、特に低AHI領域での対応が極めて良いことが判明した。(2)本センサによる家庭での一次スクリーニングの有効性検証BMIが25以上(太り気味)の中高年のモニターの方に、本研究で開発したPOFを用いたSASセンサでの就寝時測定を自宅で行ってもらい、睡眠時無呼吸症候群の家庭での一次スクリーニングの有効性の検証を行った。本研究で開発したPOFを用いたSASセンサでAHIが5以上と判定された被験者4名には、JR仙台病院の健康管理センタで、佐藤研医師の研究協力のもとパルスオキシメータやポリソムノグラフィー検査による確定診断を行なって頂いた。その際に本光ファイバ型SASセンサとの同時測定も行い、閉塞性、中枢性,混合型の各SASが良く判別できることが実証された。(3)本センサによるSASのスクリーニングの有効性についての啓蒙上記の結果を医学会(第62回日本交通医学会総会、第49回日本人間ドック学会学術大会)等で佐藤研医学博士と共に連名で学会発表を行い、臨床的立場からの専門家のご意見を伺った。また、9^<th> World Congress on Sleep Apneaという睡眠時無呼吸症の国際会議で論文発表を行い、多くのSASの専門医に本光ファイバ型SASセンサのスクリーニングの有効性をアピールした。
KAKENHI-PROJECT-19656101
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19656101
クォークグルーオンプラズマ物性の非摂動的研究
本研究では、クォークグルーオンプラズマの非摂動性に基づく物性を非摂動的な方法を用いて研究した。具体的には、クォークグルーオンプラズマ中における輸送係数、有限運動量メソンスペクトル関数を格子ゲージ計算を用いて研究し、有限温度・密度における保存電荷の三次のモーメントを数学的方法と有効模型を用いて解析し、さらに高エネルギー原子核衝突における反応平面に関する電荷不均衡をアノマリー理論を用いて評価した。本研究では、クォークグルーオンプラズマの非摂動性に基づく物性を非摂動的な方法を用いて研究した。具体的には、クォークグルーオンプラズマ中における輸送係数、有限運動量メソンスペクトル関数を格子ゲージ計算を用いて研究し、有限温度・密度における保存電荷の三次のモーメントを数学的方法と有効模型を用いて解析し、さらに高エネルギー原子核衝突における反応平面に関する電荷不均衡をアノマリー理論を用いて評価した。1.QCD相転移はゼロバリオン化学ポテンシャルにおいてはクロスオーバーであり、有限化学ポテンシャルにおいて臨界点が存在すると考えられている。そして、その存在を実験的に確認することは、現在の高エネルギー原子核衝突実験における中心的課題の一つとなっている。しかしながら、その事実を確かめるために提案されてきた実験的観測量の多くは臨界点が二次相転移であるという事実を利用したものであり、高エネルギー原子核衝突における有限時間性や終状態相互作用の効果などを無視した議論に基づいてきた。我々は、高エネルギー原子核衝突においてハドロンは一般に運動量の大きいものほど早くフリーズアウトするということと、臨界点は相図上における等エントロピー軌跡のアトラクターとして振舞うという事実を用いて、実験的に臨界点の存在を確かめるための新しい観測量を提案した。2.熱平衡状態におけるずれ粘性および体積粘性は、最近2つのグループにより、格子ゲージ理論を用いてゲージ場のエネルギー運動量テンソルのスペクトル関数の原点における傾きを求めることによって測定が行われたが、そのスペクトル関数の関数形が知られていないことや虚時間量から実時間量への解析接続の困難から、その値には未だに不定性があり、QCDにおけるそれらの値がAdS/CFT対応における強結合極限で期待される値に近いのかどうかという問題には決着がついていない。この問題を回避するため、我々は虚時間格子上で相関関数を計算することなしに直接粘性を計算する方法を考案し、その方法を実際の格子QCD計算に適用するための基礎研究を行った。1.高エネルギー原子核衝突における完全流体計算の成功により、相転移近傍におけるクォークグルーオンプラズマは強結合系であり、その粘性は非常に小さいことが知られるようになった。しかし、これから一歩進んで粘性を考慮した流体計算を相対論的に行う場合、ナビエ・ストークス方程式を単純に相対論化した方程式では不十分であり、イスラエル・ステュワート形式というエネルギー運動量テンソルの緩和を考慮した理論が必要となることが知られている。この理論には粘性をはじめ多くの輸送係数が現れるが、それらの非摂動的な理論的理解は全く手付かずの状態である。我々は、これらの輸送係数のあるものについて、それらの比が虚時間格子ゲージ計算によって解析接続の手続きを経ずに直接計算できることを見出し、さらに、その量を並列スーパーコンピューター上で数値計算を行うための基礎研究を行った。2.高エネルギー原子核衝突においては、さまざまな量の揺らぎが測定されてきた。その多くは、系が臨界終点の近傍を通過すると揺らぎが増大するという予測に基づいて行われてきた。そして、奇数次の揺らぎのモーメントは消えるという仮定に基づき、偶数次のモーメントが主として測定されてきた。我々は、この今までの暗黙の了解に反し、奇数次のモーメント、特に3次のモーメントは一般に消失せず、その符号は相転移の前後で変化するということをモデルに依らずに示した。そして、以前提案された保存量の揺らぎの理論と組み合わせることにより、保存量の奇数次のモーメントの符号は系が高エネルギー原子核衝突において生成された時の相の情報を担っているということを示した。これは、従来の偶数次のモーメントの理論ではその大きさからしか相についての議論が出来なかったのから比べると、格段に揺らぎという観測量の持つ可能性を拡げたものである。本年度には、まず格子ゲージ計算を前年度までに整備した計算コードを用いて行った。クエンチ近似を採用し、作用としてはプラケット作用を使用した。また、交付申請書に記載したように、虚時間方向に十分な数の格子点を確保するため、虚時間方向の格子間隔が空間方向の格子間隔よりも短い非等方格子を用いることにする。有限温度における中間子状態、緩和係数などの物理に対しては、赤外部からの非摂動的な寄与が重要と考えられるので、虚時間方向だけでなく、空間方向の格子サイズも十分に大きく取って計算を行った。実際の研究内容としては、まず相転移温度以上の温度における有限運動量をもったチャーム中間子のスペクトル関数を、最大エントロピー法を用いて求めた。その結果、有限運動量では、擬スカラーチャンネルにおけるスペクトル関数が抑圧される可能性があること、ベクトルチャンネルで可能な縦横二つのスペクトル関数が異なる可能性があることを見出した。さらに、高エネルギー原子核衝突の理解に必要な、相対論的要請を満たす速度の高階の微分を含むIsrael-Stewart形の流体方程式において導入される粘性と緩和時間を結ぶ比例係数を、Prattによって示唆された方法によって格子上でQCDの第一原理から計算することに成功した。
KAKENHI-PROJECT-20540268
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20540268
クォークグルーオンプラズマ物性の非摂動的研究
また、高エネルギー原子核衝突において生成される強い磁場のクォーク物質に対する効果が話題となっているが、我々はアノマリーによって誘導された有効相互作用に基づいて計算を行い、この効果によってつくられる反応平面に関する電荷不均衡は非常に小さく、STAR実験で観測されている異常は別の物理あるいは電荷不均衡ではない別の原因に起因するはずであることを議論した。
KAKENHI-PROJECT-20540268
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20540268
口腔癌における癌抗原ペプチドを用いた個別的腫瘍抑制戦略
久留米大学免疫学教室が同定した31種類の癌抗原ペプチドのなかで,P56^<lck>およびSART-3癌抗原ペプチドが,口腔扁平上皮癌患者に対する特異的癌ワクチン療法の標的分子になりえる可能性があるかを検討した.対象は,久留米大学医学部歯科口腔医療センターで加療した口腔扁平上皮癌一次症例である.まず,P56^<lck>抗原の発現について抗ウサギモノクロナル抗体を使用して免疫組織化学的に検討したところ,13/27(48%)の陽性率を示した.また,RT-PCR法では口腔扁平上皮癌細胞株(HSC-2,HSC-3,HSC-4,Ca9-22,KUMA-1,SAS)や口腔癌切除組織においてもP56^<lck>およびSART-3分子の発現が確認された.一方,Western blotting法を用いて,SART-3抗原の発現を核分画および細胞質分画でそれぞれ検討したところ,細胞株ではいずれも100%の発現を示した.切除癌組織では,核分画が19/31(61%),細胞質分画では,12/31(39%)の発現率であった.さらにP56^<lck>およびSART-3ペプチドがHLA-24拘束性にCTLを誘導するのかを,ELISA法を用いたIFN-γ産生量の測定にて検討したところ,いずれも口腔扁平上皮癌患者の末梢血からペプチド特異的にCTLを誘導することが確認された.以上の結果に日本人の約6割がHLA-A24を有していることを加味すると,P56^<lck>,SART-3分子が,日本人の口腔扁平上皮癌患者に対する,テーラーメード型ペプチドワクチン療法の標的分子候補になりうる可能性が示唆された.久留米大学免疫学教室が同定した31種類の癌抗原ペプチドのなかで,P56^<lck>およびSART-3癌抗原ペプチドが,口腔扁平上皮癌患者に対する特異的癌ワクチン療法の標的分子になりえる可能性があるかを検討した.対象は,久留米大学医学部歯科口腔医療センターで加療した口腔扁平上皮癌一次症例である.まず,P56^<lck>抗原の発現について抗ウサギモノクロナル抗体を使用して免疫組織化学的に検討したところ,13/27(48%)の陽性率を示した.また,RT-PCR法では口腔扁平上皮癌細胞株(HSC-2,HSC-3,HSC-4,Ca9-22,KUMA-1,SAS)や口腔癌切除組織においてもP56^<lck>およびSART-3分子の発現が確認された.一方,Western blotting法を用いて,SART-3抗原の発現を核分画および細胞質分画でそれぞれ検討したところ,細胞株ではいずれも100%の発現を示した.切除癌組織では,核分画が19/31(61%),細胞質分画では,12/31(39%)の発現率であった.さらにP56^<lck>およびSART-3ペプチドがHLA-24拘束性にCTLを誘導するのかを,ELISA法を用いたIFN-γ産生量の測定にて検討したところ,いずれも口腔扁平上皮癌患者の末梢血からペプチド特異的にCTLを誘導することが確認された.以上の結果に日本人の約6割がHLA-A24を有していることを加味すると,P56^<lck>,SART-3分子が,日本人の口腔扁平上皮癌患者に対する,テーラーメード型ペプチドワクチン療法の標的分子候補になりうる可能性が示唆された.久留米大学で同定された癌抗原ペプチドのなかで,P56^<lck>およびSARI-3癌抗原ペプチドが,口腔扁平上皮癌患者に対する特異的癌ワクチン療法の標的分子になりえる可能性があるかを検討した.対象は,久留米大学医学部歯科口腔医療センターで加療した口腔扁平上皮癌一次症例である.まず,P56^<lck>抗原の発現を抗ウサギモノクロナル抗体を使用して免疫組織化学的に検討したところ,13/27(48%)の陽性率を示した.また,RT-PCR法では口腔扁平上皮癌細胞株(HSC-2,HSC-3,HSC-4,Ca9-22,KUMA-1,SAS)や口腔癌切除組織においてもP56^<lck>およびSART-3分子の発現が確認された.一方,Western blotting法を用いて,SART-3抗原の発現を核分画および細胞質分画でそれぞれ検討したところ,細胞株ではいずれも100%の発現を示した.切除癌組織では,核分画が19/31(61%),細胞質分画では,12/31(39%)の発現率であった.さらにP56^<lck>およびSART-3ペプチドがHLA-24拘束性にCTLを誘導するのかを,ELISA法を用いたIFN-γ産生量の測定にて検討したところ,いずれも口腔扁平上皮癌患者の末梢血からペプチド特異的にCTLを誘導することが確認された.以上の結果に日本人の約6割がHLA-A24を有していることを加味すると,P56^<lck>,SART-3分子が,日本人の口腔扁平上皮癌患者に対する,テーラーメイド型ペプチドワクチン療法の標的分子候補になりうる可能性が示唆された.今後,日本人の約4割が有していると言われる,HLA-A2に関しても,解析を進めていきたい.なお,実際のペプチドワクチンの接種については,現在準備中である.現在久留米大学病院では31種類の癌ペプチドワクチンを癌患者の治療に使用している.
KAKENHI-PROJECT-21792045
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口腔癌における癌抗原ペプチドを用いた個別的腫瘍抑制戦略
実際には患者に対して免疫活性の高い4種類のペプチドワクチンを選択してテーラーメイド型ワクチンとして投与している.久留米大学免疫学教室が同定した癌抗原ペプチドのなかで,P56^<lck>およびSART-3癌抗原ペプチドが,口腔扁平上皮癌患者に対する特異的癌ワクチン療法の標的分子になりえる可能性があるかを検討した.対象は,久留米大学医学部歯科口腔医療センターで加療した口腔扁平上皮癌一次症例である.まず,P56^<lck>抗原の発現について抗ウサギモノクロナル抗体を使用して免疫組織化学的に検討したところ,13/27(48%)の陽性率を示した.また,RT-PCR法では口腔扁平上皮癌細胞株(HSC-2,HSC-3,HSC-4,Ca9-22,KUMA-1,SAS)や口腔癌切除組織においてもP56^<lck>およびSART-3分子の発現が確認された.一方,Western blotting法を用いて,SART-3抗原の発現を核分画および細胞質分画でそれぞれ検討したところ,細胞株ではいずれも100%の発現を示した.切除癌組織では,核分画が19/31(61%),細胞質分画では,12/31(39%)の発現率であった.さらにP56^<lck>およびSART-3ペプチドが肌A-24拘束性にCTLを誘導するのかを,ELISA法を用いたIFN-γ産生量の測定にて検討したところ,いずれも口腔扁平上皮癌患者の末梢血からペプチド特異的にCTLを誘導することが確認された.以上の結果に日本人の約6割がHLA-A24を有していることを加味すると,P56^<lck>,SART-3分子が,日本人の口腔扁平上皮癌患者に対する,テーラーメイド型ペプチドワクチン療法の標的分子候補になりうる可能性が示唆された.今後,日本人の約4割が有していると言われる,HLA-A2に関しても,解析を進めていきたい.現在久留米大学におけるテーラーメイド型ペプチドワクチン療法は,主に膀胱癌,肝臓癌,肺癌,前立腺癌に臨床試験として実施されている.また再燃性前立腺癌には高度先進医療の適応になっている.なお,口腔癌における実際のペプチドワクチンの接種については,現在準備検討中である.
KAKENHI-PROJECT-21792045
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小児腫瘍の臨床病理学的研究
我々は平成8、9粘度、ブリティッシュコロンビア大学(以下UBC,カナダ国バンクーバー市)と小児腫瘍をはじめとする腫瘍につき以下の研究を行った。1)小円形腫瘍の染色体転座検出に係わる研究;横浜市立大学医学部附属病院で採取された未分化小円形細胞よりなる腫瘍のホルマリン固定パラフィン包埋材料をUBC小児病院へ持参し、RT-PCRおよびFISHによる染色体転座の検出を試みた。固定後の材料では核酸の保存状態が不良で、housekeeping遺伝子についても増幅シグナルは得られなかった。しかし、その後習得した方法を用い、新鮮臨床材料から染色体転座を検出することに成功している。2)新たに樹立された細胞株の細胞遺伝学的検討;横浜市立大学にて新たに樹立された培養細胞株RAN-SHOW(10才、男児、膵癌由来細胞株)およびDRY(79才、男、透析関連腎細胞癌由来細胞株)の染色体分析を、バンクーバー一般暴病院において行った。前者においては22番染色体の部分欠失を認めた。これは、いわゆるrhabdoid patternを示す腫瘍に特徴的であり、本細胞株でもin vitoroおよびin vivoでこの所見が見られる。現在、細胞株樹立論文を作成中であり、併せて、染色体移入を行っての形態の変化を検討することを計画中である。後者においては3番染色体短腕上に部分欠失を証明した(del(3p21))。また、腎癌抑制遺伝子von Hippel-Lindau(VHL)の変異は見られなかった。本細胞株はVHL以外の腎癌抑制遺伝子の検討に有用と考えられる。現在、樹立論文を作成中である。3)その他;小児腫瘍の症例の疫学的比較、神経芽種の自然退縮機構の検討を行っている。我々は平成8、9年度、ブリテイッシュコロンビア大学(以下UBC,カナダ国バンクーバー市)と小児腫瘍をはじめとする腫瘍につき以下の研究を行った。1)小円形腫瘍の染色体転座検出に関わる研究;横浜市立大学医学部附属病院で採取された未分化小円形細胞よりなる腫瘍のホルマリン固定パラフィン包埋材料をUBC小児病院へ持参し、RT-PCRおよびFISFによる染色体転座の検出を試みた。固定後の材料では核酸の保存状態が不良で、housekeeping遺伝子についても増幅シグナルは得られなかった。しかし、その後習得した方法を用い、新鮮臨床材料から染色体転座を検出することに成功している。2)新たに樹立された細胞株の細胞遺伝子学的検討;横浜市立大学にて新たに樹立された培養細胞株RAN-SHOW(10才、男児、膵癌由来細胞株)およびDRY(79才、男、透析関連腎細胞癌由来細胞株)の染色体分析を、バンクーバー一般病院において行った。前者においては22番染色体の部分欠失を認めた。これは、いわゆるrhabdoid patternを示す腫瘍に特徴的であり、本細胞株でもin vitroおよびin vivoでこの所見が見られる。現在細胞株樹立論文を作成中であり、併せて、染色体移入を行っての形態の変化を検討することを計画中である。後者においては3番染色体短腕上に部分欠失を証明した(del(3p21))。また、腎癌抑制遺伝子von Hippel-Lindau(VHL)の変異は見られなかった。本細胞株はVHL以外の腎癌抑制遺伝子の検討に有用と考えられる。現在、樹立論文を作成中である。3)その他;小児腫瘍の症例の免疫学比較、神経芽腫の自然退縮機構の検討を行っている。初年度の研究方針としてまず研究室や関連施設を相互に訪問することによって実情を正確に把握することにした。1996年9月に日本側の2名がバンクーバーに出張し1997年3月にカナダ側2名を横浜に招聘して調査を行うと共に、日本病理学会組織分類委員会と合同で小児がんセミナーを行って意見を交換する。1.疫学的研究;ブリテッシュコロンビア大学(UBC)及び小児病院(BCCH)の腫瘍登録センターを訪問して小児腫瘍の資料を調査した。日本のデータについては日本小児がん登録及び病理剖検輯報のまとめを現在行っている。1997年3月に行われる小児がんセミナーで更に問題点を検討する。移民が特に多いバンク-バ地区における人種差について詳しい調査を行いたかったが人種別の資料は作られておらず混血が多く分析が困難であることが判明した。2.細胞遺伝学的研究については神経芽腫、特にマススクリーニングで発見された症例についてNGFリセプターやアポトーシス関連遺伝子、腎癌と腎芽腫についてのVHL遺伝子の検索を行っている。UBCでは白血病についての分子生物学的研究が活発であり、今後情報交換を活発に行っていくことになっている。腎芽腫におけるWT-1遺伝子の異常の検出頻度や突然変異の部位などに日本と欧米で相違が見られるようである。これらにつても検討を行う予定である。3.病理組織学的研究ではマススクリーニングで発見された神経芽腫には幾つかの特色があることが示されているが、更に詳しい検討を行っている。代謝性疾患や感染症に続発する肝腫瘍形態の経時変化について日本及びカナダの症例を検索中である。小児の肝癌は日本やアジアに多く、欧米には少ないとされている。カナダの材料は代謝疾患に続発する症例の頻度が高いので発生機序の研究に有用であると思われた。4.小児白血病の診断・治療については、プロトコール、特に骨髄移植についての情報交換を密にして、相互のデーターが比較検討できるように務めることになった。
KAKENHI-PROJECT-08045068
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小児腫瘍の臨床病理学的研究
我々は平成8、9粘度、ブリティッシュコロンビア大学(以下UBC,カナダ国バンクーバー市)と小児腫瘍をはじめとする腫瘍につき以下の研究を行った。1)小円形腫瘍の染色体転座検出に係わる研究;横浜市立大学医学部附属病院で採取された未分化小円形細胞よりなる腫瘍のホルマリン固定パラフィン包埋材料をUBC小児病院へ持参し、RT-PCRおよびFISHによる染色体転座の検出を試みた。固定後の材料では核酸の保存状態が不良で、housekeeping遺伝子についても増幅シグナルは得られなかった。しかし、その後習得した方法を用い、新鮮臨床材料から染色体転座を検出することに成功している。2)新たに樹立された細胞株の細胞遺伝学的検討;横浜市立大学にて新たに樹立された培養細胞株RAN-SHOW(10才、男児、膵癌由来細胞株)およびDRY(79才、男、透析関連腎細胞癌由来細胞株)の染色体分析を、バンクーバー一般暴病院において行った。前者においては22番染色体の部分欠失を認めた。これは、いわゆるrhabdoid patternを示す腫瘍に特徴的であり、本細胞株でもin vitoroおよびin vivoでこの所見が見られる。現在、細胞株樹立論文を作成中であり、併せて、染色体移入を行っての形態の変化を検討することを計画中である。後者においては3番染色体短腕上に部分欠失を証明した(del(3p21))。また、腎癌抑制遺伝子von Hippel-Lindau(VHL)の変異は見られなかった。本細胞株はVHL以外の腎癌抑制遺伝子の検討に有用と考えられる。現在、樹立論文を作成中である。3)その他;小児腫瘍の症例の疫学的比較、神経芽種の自然退縮機構の検討を行っている。
KAKENHI-PROJECT-08045068
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中世畿内西国における寺院什物帳(文物台帳)と請来遺品(唐物)の統合的研究
本研究は、日本の中世社会(12世紀半ばから16世紀を措定)に受容され、今日の日本文化形成にも多大な影響を与えている大陸からの請来品、いわゆる「唐物(からもの)」が、実際にはどのような文物であり、どのような意識を持って社会に受けとめられていたかを、主に寺社に伝わる史料を用いて明らかにしようとする比較史(資)料論であり、東アジア的視点に立つ文化交流史の研究である。具体的には、宋・元の文物が輸入された地域を全国的視野に立って検討を加え、裏付け史料としては文物台帳としての什物帳を用い、「唐物」受容のありかたを明らかにしたい。また、実際に伝世している文物(唐物)を調査し、比較検討する。本研究は、日本の中世社会(12世紀半ばから16世紀を措定)に受容され、今日の日本文化形成にも多大な影響を与えている大陸からの請来品、いわゆる「唐物(からもの)」が、実際にはどのような文物であり、どのような意識を持って社会に受けとめられていたかを、主に寺社に伝わる史料を用いて明らかにしようとする比較史(資)料論であり、東アジア的視点に立つ文化交流史の研究である。具体的には、宋・元の文物が輸入された地域を全国的視野に立って検討を加え、裏付け史料としては文物台帳としての什物帳を用い、「唐物」受容のありかたを明らかにしたい。また、実際に伝世している文物(唐物)を調査し、比較検討する。
KAKENHI-PROJECT-19K00944
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水産業廃棄物による環境中リン,フッ素の高度除去・資源循環システムの構築
【研究目的】本研究では,フッ素やりんを含んだ地下水,河川水等の生活用水浄化を最終目的とし,未利用資源である貝殻や魚骨などの水産業廃棄物を原料とした水質改善にもちいる機能性材料の開発,フッ素およびりんの資源化プロセスの構築を行った。【成果の概要】(1)りんの資源化反応:無電解めっきプロセスにおいて不可欠なりん化学種である次亜りん酸は,めっきの過程で酸化されて亜りん酸に変化し,その処理・再利用が困難となっている。そこで,アルカリ性において酸素を用いた自動酸化反応を用いることにより,未利用亜りん酸塩を正りん酸塩に変換する要素技術を新規に開発した。(2)フッ素の資源化反応:歯科学の分野で虫歯予防反応として広く知られている,りん酸カルシウムとフッ化物イオンの反応を応用し,溶液中の低濃度フッ化物イオンの濃縮・回収法を検討した。結果,りん酸カルシウム塩の一つであるりん酸水素カルシウム二水和物を用いることにより,溶液中に含まれる数十数百ppbという極めて低濃度のフッ化物イオンをフッ素アパタイトとして濃縮,固定できることを明らかにした。(3)エコテクノロジー的フッ素除去システムの構築:用水中フッ化物イオンの除去法として広く用いられている活性アルミナを用いた吸着法について,その問題点を環境調和(エコテクノロジー)性に基づいて解析した。その結果,回収されたフッ化物イオンが有効利用されていないことが本法の最大の問題点であるとの結論を得,回収されたフッ化物イオンをフッ素資源であるフッ化カルシウムとして回収するプロセスを構築した。(4)水産業廃棄物を用いた未利用りん固定プロセス:化学平衡論的解析に基づき,貝殻の主成分である炭酸カルシウムを酸性りん酸溶液に作用させることにより,液中のりんを90%以上の効率で回収しながら、任意のりん酸カルシウムを合成できるプロセスを見いだした。【研究目的】本研究では,フッ素やりんを含んだ地下水,河川水等の生活用水浄化を最終目的とし,未利用資源である貝殻や魚骨などの水産業廃棄物を原料とした水質改善にもちいる機能性材料の開発,フッ素およびりんの資源化プロセスの構築を行った。【成果の概要】(1)りんの資源化反応:無電解めっきプロセスにおいて不可欠なりん化学種である次亜りん酸は,めっきの過程で酸化されて亜りん酸に変化し,その処理・再利用が困難となっている。そこで,アルカリ性において酸素を用いた自動酸化反応を用いることにより,未利用亜りん酸塩を正りん酸塩に変換する要素技術を新規に開発した。(2)フッ素の資源化反応:歯科学の分野で虫歯予防反応として広く知られている,りん酸カルシウムとフッ化物イオンの反応を応用し,溶液中の低濃度フッ化物イオンの濃縮・回収法を検討した。結果,りん酸カルシウム塩の一つであるりん酸水素カルシウム二水和物を用いることにより,溶液中に含まれる数十数百ppbという極めて低濃度のフッ化物イオンをフッ素アパタイトとして濃縮,固定できることを明らかにした。(3)エコテクノロジー的フッ素除去システムの構築:用水中フッ化物イオンの除去法として広く用いられている活性アルミナを用いた吸着法について,その問題点を環境調和(エコテクノロジー)性に基づいて解析した。その結果,回収されたフッ化物イオンが有効利用されていないことが本法の最大の問題点であるとの結論を得,回収されたフッ化物イオンをフッ素資源であるフッ化カルシウムとして回収するプロセスを構築した。(4)水産業廃棄物を用いた未利用りん固定プロセス:化学平衡論的解析に基づき,貝殻の主成分である炭酸カルシウムを酸性りん酸溶液に作用させることにより,液中のりんを90%以上の効率で回収しながら、任意のりん酸カルシウムを合成できるプロセスを見いだした。【研究目的】本研究はフッ素やりんを含んだ地下水や河川水などの生活用水の浄化を最終目的とし,水浄化に用いる機能性材料を貝殻や骨などの水産業廃棄物を原料に開発し,その利用法について明らかにするものである。本年度は環境中におけるりんおよび水産業廃棄物に関する問題の調査,水産業廃棄物を用いた機能性材料の試作を行った。【成果の概要】1)環境中のりん問題:我が国においてりん資源は大部分を輸入に頼っている。またその資源は枯渇の危険性が指摘されており,現在確認されているりん資源の埋蔵基礎量(回収コスト$100/トン以下)が2066年頃には消費つくされるという予測があるほどである。りんはフッ素アパタイト(Ca_<10>(PO_4)_6F_2)を主成分とするリン鉱石を硫酸で分解することにより生産されるので,環境中りんをフッ素アパタイトあるいはその類似組成の化合物として固定できれば,りんの資源化も可能となるものと結論づけた。2)水産業廃棄物の問題:りんをアパタイトとして資源化するためには,りんの他にカルシウム源が必要である。本研究ではカルシウム源に貝殻などの水産業廃棄物を用いることとした。水産業において,貝殻は大量に発生する未利用資源であり,かきに関する一昨年の統計によると,全生産量20万トンのうち,食用のむき身として出荷されるのはわずかに3万トンであり,残りの17万トンはかき殻として廃棄されている。このかき殻の主成分は炭酸カルシウムであり,これを原料に,りんの資源化に用いる材料の合成を試みた。水産業廃棄物を用いた機能性
KAKENHI-PROJECT-12558073
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12558073
水産業廃棄物による環境中リン,フッ素の高度除去・資源循環システムの構築
材料の試作:かき殻に豚骨を加えて加熱処理を施して合成したセラミックスをりん酸塩溶液中に添加して25°Cで72時間反応させた結果,液中のりんをほぼ100%除去できることが明らかとなった。このセラミックスの主成分のリン酸四カルシウム(TTCP,Ca_4(PO_4)_2O)が溶液中のリン酸イオンと反応して,水酸アパタイト(Ca_<10>(PO_4)_6(OH)_2)を形成したことによりリンを固定できたものと考えられる。水酸アパタイトはリン鉱石の主成分であるフッ素アパタイトと組成,構造とも類似しており,リン生産に転用できることから,この方法によりリンを資源化できると考えられる。【研究目的】本研究では,フッ素やりんを含んだ地下水,河川水等の生活用水浄化を最終目的とし,未利用資源である貝殻や魚骨などの水産業廃棄物を原料とした水質改善にもちいる機能性材料の開発,フッ素およびりんの資源化プロセスの構築を行う。本年度はフッ素,りんの資源化に用いる要素伎術の開発に重点に検討を行い,以下の成果を得た。【成果の概要】りんの資源化反応:無電解めっきプロセスにおいて不可欠なりん化学種である次亜りん酸は,めっきの過程で酸化されて亜りん酸に変化し,その処理・再利用が困難となっている。そこで,アルカリ性において酸素を用いた自動酸化反応を用いることにより,未利用亜りん酸塩を正りん酸塩に変換する要素技術を新規に開発した。フッ素の資源化反応:歯科学の分野で虫歯予防反応として広く知られている,りん酸カルシウムとフッ化物イオンの反応を応用し,溶液中の低濃度フッ化物イオンの濃縮・回収法を検討した。結果,りん酸カルシウム塩の一つであるりん酸水素カルシウム1水和物を用いることにより,溶液中に含まれる数十数百ppbという極めて低濃度のフッ化物イオンをフッ素アパタイトとして濃縮,固定できることを明らかにした。エコテクノロジー的フッ素除去システムの構築:用水中フツ化物イオンの除去法として広く用いられている活性アルミナを用いた吸着法について,その問題点を環境調和(エコテクノロジー)性に基づいて解析した。その結果,回収されたフッ化物イオンが育効利用されていないことが本法の最大の問題点であるとの結論を得,回収されたフッ化物イオンをフッ素資源であるフッ化カルシウムとして回収するプロセスを構築した。【研究目的】本研究では,フッ素やりんを含んだ地下水,河川水等の生活用水浄化を最終目的とし,未利用資源である貝殻や魚骨などの水産業廃棄物を原料とした水質改善にもちいる機能性材料の開発,フッ素およびりんの資源化プロセスの構築を行った。【成果の概要】(1)りんの資源化反応:無電解めっきプロセスにおいて不可欠なりん化学種である次亜りん酸は,めっきの過程で酸化されて亜りん酸に変化し,その処理・再利用が困難となっている。そこで,アルカリ性において酸素を用いた自動酸化反応を用いることにより,未利用亜りん酸塩を正りん酸塩に変換する要素技術を新規に開発した。(2)フッ素の資源化反応:歯科学の分野で虫歯予防反応として広く知られている,りん酸カルシウムとフッ化物イオンの反応を応用し,溶液中の低濃度フッ化物イオンの濃縮・回収法を検討した。
KAKENHI-PROJECT-12558073
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網膜ジストロフィーの原因および病態に関する研究
ヒト網膜ジストロフィーは、臨床所見についてはよく知られているが、発症病理については未だ不明である。網膜ジストロフィー実験モデルの研究が必要な所以である。我々は数種の網膜ジストロフィー実験モデルを作りその病態を検討した。【◯!1】クロロキンを白子熱帯魚コリドラスに投与してクロロキン網膜症を起こすと、神経節細胞、アマクリン細胞、水平細胞にまず膜様封入体が出現するが細胞の崩壊は起こらない。ついで視細胞に封入体が出現して細胞の変性崩壊が起こるが、網膜色素上皮細胞は網膜変性の最終段階まで変化が少なかった。即ちクロロキン網膜症では視細胞の直接障害が生じることを明らかにした。【◯!2】フェノチアジン系薬物の存在下でニワトリ胚網膜色素上皮を培養すると、微絨毛が著しく細長くなりかつ蜂巣状の変化を生じるとともに貧食活性が著しく低下した。同様の変化がカルモジュリン拮抗剤あるいはサイトカラシンBによっても生じた。フェノチアジン網膜症の発症機序に網膜色素上皮細胞微絨毛のアクチン線維の破壊が関係していることが示唆された。【◯!3】重層した培養ニワトリ胚網膜色素上皮にラテックス粒子を貧食させると、上層細胞基底部からの粒子排出が観察された。消化しえない組織片の排出蓄積が原因と推定される網膜ドルーゼ発生機構の裏付けが得られた。【◯!4】ニワトリ網膜色素上皮細胞はプロスタグランジンD合成酵素活性をもつが、神経網膜には活性がなかった。プロスタグランジンDはサイクリックAMPによる貧食阻害に拮抗する特異的なプロスタグランジンであった。この特異性の一致は網膜色素上皮細胞の機能にプロスタグランジンDが関与していることを強く示唆した。【◯!5】ラット網膜色素上皮細胞の微絨毛膜にサイクリックAMPおよびサイクリックGMP合成酵素活性が局在することを明らかにした。貧食活性がサイクリックAMPとサイクリックGMPによる陰陽制御を受けるとする我々の仮説によく一致するものであった。ヒト網膜ジストロフィーは、臨床所見についてはよく知られているが、発症病理については未だ不明である。網膜ジストロフィー実験モデルの研究が必要な所以である。我々は数種の網膜ジストロフィー実験モデルを作りその病態を検討した。【◯!1】クロロキンを白子熱帯魚コリドラスに投与してクロロキン網膜症を起こすと、神経節細胞、アマクリン細胞、水平細胞にまず膜様封入体が出現するが細胞の崩壊は起こらない。ついで視細胞に封入体が出現して細胞の変性崩壊が起こるが、網膜色素上皮細胞は網膜変性の最終段階まで変化が少なかった。即ちクロロキン網膜症では視細胞の直接障害が生じることを明らかにした。【◯!2】フェノチアジン系薬物の存在下でニワトリ胚網膜色素上皮を培養すると、微絨毛が著しく細長くなりかつ蜂巣状の変化を生じるとともに貧食活性が著しく低下した。同様の変化がカルモジュリン拮抗剤あるいはサイトカラシンBによっても生じた。フェノチアジン網膜症の発症機序に網膜色素上皮細胞微絨毛のアクチン線維の破壊が関係していることが示唆された。【◯!3】重層した培養ニワトリ胚網膜色素上皮にラテックス粒子を貧食させると、上層細胞基底部からの粒子排出が観察された。消化しえない組織片の排出蓄積が原因と推定される網膜ドルーゼ発生機構の裏付けが得られた。【◯!4】ニワトリ網膜色素上皮細胞はプロスタグランジンD合成酵素活性をもつが、神経網膜には活性がなかった。プロスタグランジンDはサイクリックAMPによる貧食阻害に拮抗する特異的なプロスタグランジンであった。この特異性の一致は網膜色素上皮細胞の機能にプロスタグランジンDが関与していることを強く示唆した。【◯!5】ラット網膜色素上皮細胞の微絨毛膜にサイクリックAMPおよびサイクリックGMP合成酵素活性が局在することを明らかにした。貧食活性がサイクリックAMPとサイクリックGMPによる陰陽制御を受けるとする我々の仮説によく一致するものであった。
KAKENHI-PROJECT-59440074
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-59440074
法律の効果について二手先を予測するシステム開発に関する研究
本研究の目的は,法律制定後から人の動向を予測するモデルを提案し,数年後に与える社会的,経済的な効果を予測することで政策決定に必要な新たな判断材料を提供することである.本研究においては,法的推論を元に自律的に行動するエージェントを提案し,シミュレーションによる検証を行う.すなわち,関連する複数の法令から論理式を作成し,法的推論に必要なモデル化を行う.研究対象には,雇い止めのような社会的影響があった過去の事例をテーマに取り上げる.マルチエージェントシステムによるシミュレーションの結果,経済格差の広がりを観察するなど,法律施行後の社会を予測することなどが期待できる.本研究の目的は,法律制定後から人の動向を予測するモデルを提案し,数年後に与える社会的,経済的な効果を予測することで政策決定に必要な新たな判断材料を提供することである.本研究においては,法的推論を元に自律的に行動するエージェントを提案し,シミュレーションによる検証を行う.すなわち,関連する複数の法令から論理式を作成し,法的推論に必要なモデル化を行う.研究対象には,雇い止めのような社会的影響があった過去の事例をテーマに取り上げる.マルチエージェントシステムによるシミュレーションの結果,経済格差の広がりを観察するなど,法律施行後の社会を予測することなどが期待できる.
KAKENHI-PROJECT-19K22899
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K22899
顔面冷却による持久的運動能力改善効果は冷却方法の違いにより影響されるか?
顔面冷却の時間や温度について均一性や再現性の高い設定が可能になる新たな顔面冷却システムの開発を試みたが,実現しなかった。そこで,先行研究を参考にし,冷水に浸けたタオルを顔面にあてる方法により顔面冷却を実施することとした。高温環境(温度3035°C,湿度4060%)に設定した人工気候室内で,自転車エルゴメータを用いた自転車こぎ運動を中等度(6080%VO2max)の運動強度で40分実施した。運動中に,顔面冷却をしない条件,短時間(10秒以内)の顔面冷却を2分,4分毎に実施する条件でそれぞれ実験を行い,各種パラメータを比較した。深部体温の指標である鼓膜温に差は認められなかったが,自覚的運動強度において,顔面冷却2分の試行で最も低く維持され,次いで顔面冷却4分の試行が低く,顔面冷却をしない試行では最も高く維持される結果が得られた。高温環境(温度3035°C,湿度4060%)に設定した人工気候室内で,自転車エルゴメータを用いた自転車こぎ運動を中等度(6080%VO2max)の運動強度で40分実施した。運動中に,顔面冷却をしない条件,短時間(10秒以内)の顔面冷却を0°C,20°Cの水温で実施する条件でそれぞれ実験を行い,各種パラメータを比較した。深部体温の指標である鼓膜温に差は認められなかったが,自覚的運動強度において,顔面冷却0°Cの試行で最も低く維持され,顔面冷却20°Cおよび顔面冷却なしの試行では差がみとめられなかった。高温環境(温度3035°C,湿度4060%)に設定した人工気候室内で,自転車エルゴメータを用いた自転車こぎ運動を低強度(4060%VO2max),中等度(6080%VO2max)の運動強度で40分実施した。運動中に,顔面冷却をしない条件と短時間(10秒以内)の顔面冷却を実施する条件でそれぞれ実験を行い,各種パラメータを比較した。顔面冷却の効果に対し,運動強度の違いの影響はみとめられなかった。申請書の研究計画に記載した「課題0.顔面冷却のインターバルや温度を任意に制御できる新たな顔面冷却システムの構築」について,顔面を覆うフェイスマスク,ビニールホース,冷却水循環装置から構成する新たな顔面冷却システムの開発を試みた。しかし,顔面冷却の温度について均一性や再現性において生じた問題を解決することができなかったため,冷水スプレーと扇風機を用いた従来の顔面冷却の方法を採用することとした。申請者は冷水スプレーと扇風機を用いた顔面冷却を先行研究においてすでに経験しているため,顔面冷却の方法を変更しても研究の遂行に問題はない。申請書の研究計画に記載した「課題1.高温環境下における持久的運動能力低下を改善する最適な顔面冷却のインターバルを検証」について,高温環境下における持久的運動中に短時間の顔面冷却を様々なインターバルで行い,それらの結果を比較することで,持久的運動能力の低下を改善する最適なインターバルについて検証するため,予備実験を実施した。実験の実施にあたり,データ収集システムや体温測定用のセンサーを購入し,それらのセッティングを行った。また,冷水スプレーと扇風機を用いた顔面冷却について,そのセッティングと実際の冷却温度や冷却時間の確認を行った。予備実験では,3名の被検者を対象に,高温環境(温度3035°C,湿度4060%)に設定した人工気候室内で,自転車エルゴメータを用いた自転車こぎ運動を中等度(6080%VO2max)の運動強度で疲労困憊まで実施した。運動中に,顔面冷却をしない条件,短時間(10秒以内)の顔面冷却を1分,3分,5分,10分毎に実施する条件でそれぞれ予備実験を行い,現在それらのデータをもとに本実験におけるインターバルを検討している。申請書の研究計画に記載した「課題0.顔面冷却のインターバルや温度を任意に制御できる新たな顔面冷却システムの構築」について,顔面を覆うフェイスマスク,ビニールホース,冷却水循環装置から構成する新たな顔面冷却システムの開発を試みた。しかし,顔面冷却の温度について均一性や再現性において生じた問題を解決することができなかったため,冷水スプレーと扇風機を用いた従来の顔面冷却の方法を採用することとした。新たな顔面冷却システムの開発とそれらの均一性,再現性の確認等に時間を要したため,当初計画に比べるとやや遅れている。なお,申請者は冷水スプレーと扇風機を用いた顔面冷却を先行研究においてすでに経験しているため(Miyazawa et al. Front Physiol 2012; Miyazawa et al. Eur J Appl Physiol 2013),顔面冷却の方法を変更しても研究の遂行に問題はない。顔面冷却の時間や温度について均一性や再現性の高い設定が可能になる新たな顔面冷却システムの開発を試みたが,実現しなかった。そこで,先行研究を参考にし,冷水に浸けたタオルを顔面にあてる方法により顔面冷却を実施することとした。高温環境(温度3035°C,湿度4060%)に設定した人工気候室内で,自転車エルゴメータを用いた自転車こぎ運動を中等度(6080%VO2max)の運動強度で40分実施した。運動中に,顔面冷却をしない条件,短時間(10秒以内)の顔面冷却を2分,4分毎に実施する条件でそれぞれ実験を行い,各種パラメータを比較した。
KAKENHI-PROJECT-17K13197
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K13197
顔面冷却による持久的運動能力改善効果は冷却方法の違いにより影響されるか?
深部体温の指標である鼓膜温に差は認められなかったが,自覚的運動強度において,顔面冷却2分の試行で最も低く維持され,次いで顔面冷却4分の試行が低く,顔面冷却をしない試行では最も高く維持される結果が得られた。高温環境(温度3035°C,湿度4060%)に設定した人工気候室内で,自転車エルゴメータを用いた自転車こぎ運動を中等度(6080%VO2max)の運動強度で40分実施した。運動中に,顔面冷却をしない条件,短時間(10秒以内)の顔面冷却を0°C,20°Cの水温で実施する条件でそれぞれ実験を行い,各種パラメータを比較した。深部体温の指標である鼓膜温に差は認められなかったが,自覚的運動強度において,顔面冷却0°Cの試行で最も低く維持され,顔面冷却20°Cおよび顔面冷却なしの試行では差がみとめられなかった。高温環境(温度3035°C,湿度4060%)に設定した人工気候室内で,自転車エルゴメータを用いた自転車こぎ運動を低強度(4060%VO2max),中等度(6080%VO2max)の運動強度で40分実施した。運動中に,顔面冷却をしない条件と短時間(10秒以内)の顔面冷却を実施する条件でそれぞれ実験を行い,各種パラメータを比較した。顔面冷却の効果に対し,運動強度の違いの影響はみとめられなかった。申請書の研究計画に記載した「課題1.高温環境下における持久的運動能力低下を改善する最適な顔面冷却のインターバルを検証」の本実験,「課題2.高温環境下における持久的運動能力の低下を改善する最適な顔面冷却の温度を検証」の予備実験および本実験,「課題3.高温環境下における顔面冷却が及ぼす持久的運動能力への改善効果に対する運動強度の影響を検証」の予備実験および本実験について,計画書をもとに進めて行く。当該年度は論文投稿料や掲載料が使用されなかったため,次年度使用額が生じた。次年度は消耗品である体温測定用プローブや呼気ガス測定用マウスピースの購入,さらに研究成果発表のための旅費や論文投稿料,掲載料などで使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-17K13197
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中国西部地域農村近代化に関する調査研究-土地・労働力・産業化・インフラを中心に-
中国の中西部地区の農村近代化に関し、以下の知見が得られた:(1)基層財政の自立的基礎は弱く、補助金や交付金への依存度は高い。(2)土地の農外利用が拡大したが、農業の発展に基づく農民生活の向上の見通しが見えない。(3)省内での出稼ぎ、または現地・近所での就職、回郷創業が増加している。(4)貧困地域では正規金融機関の進出が不十分である。(5)小額信貸は帰郷創業者の経営・流動資金を支援していない。(6)農民工の帰郷創業には限界がある。(7)扶貧政策では農民の参加促進、発言力増強策が不十分である。中国の中西部地区の農村近代化に関し、以下の知見が得られた:(1)基層財政の自立的基礎は弱く、補助金や交付金への依存度は高い。(2)土地の農外利用が拡大したが、農業の発展に基づく農民生活の向上の見通しが見えない。(3)省内での出稼ぎ、または現地・近所での就職、回郷創業が増加している。(4)貧困地域では正規金融機関の進出が不十分である。(5)小額信貸は帰郷創業者の経営・流動資金を支援していない。(6)農民工の帰郷創業には限界がある。(7)扶貧政策では農民の参加促進、発言力増強策が不十分である。今年度は四川成都周辺、湖北松滋市、浙江義烏市という西部、中西部、東部の農村地域を調査した。即ち、(1)湖北省調査(調査期間=2009/08/02-08/10:調査者=座間、金山、小松、任、羅)、調査対象=湖北省農業庁、松滋市政府、新農村建設モデル村、専業合作社、竜頭企業など、中国側共同研究者との研究交流、(2)成都・義烏調査(2010/02/28-2010/03/13:座間、金山、小松、任、戴、陳)、成都周辺の近郊県、丘陵地帯の県、山区の県の県政府、郷政府、村民委員会、新農村建設モデル村、専業合作社、竜頭企業、義烏の国際商望城、周辺農村、竜頭企業、郷鎮企業など、中国側研究者との交流、などである。得られた知見は以下の通り。(1)土地問題:土地の国有、集団所有及び土地の農外使用の増大、都市化による土地譲渡価格の値上がりと地方政府主導の都市開発、企業誘致や住宅供給が地方政府の財政収入、地域住民の就業と所得を増大させるメカニズムの存在。従って、都市近郊、中間地域、遠隔地域の経済格差が広がりつつある。(2)労働力:中西部地域の開発や産業化の進展が、現地の雇用の場を創出し、東部地域での出稼ぎ労賃の高騰を生み出している。(3)産業化:地方政府主導の企業誘致により大小様々な企業が農村地域に進出している。しかし立地条件の良い近郊農村、中間地、遠隔地では進出状況に企業規模、企業数、経営の広域性などの格差が見られる。(4)インフラ:新農村建設の政策誘導により、様々なモデル農村が生み出されているが、政府の補助金と地元負担によるため、地元政府と農民の経済力により差異が見られる。また政府主導のためか、村作りが画一的なきらいがある。(5)農村財政:政企分離・政社分離政策にもかかわらず、県や郷鎮では基層政府は依然として経営型政府であり、財政規模は地元経済活動の規模を反映している。今年度は2010年8月22日27日まで湖北省松滋市(座間、金山、任)、陜西省西安市と同市三原県陂西鎮西郊村(小松)、2011年2.月28日3.月12日まで四川省沐川県と金堂県、淅江省永嘉県と文成県(座間、金山、任、小松)で現地調査を行い、四川省社会科学院農村経済研究所、華中師範大学都市与環境科学学院、淅江師範大学農村経済研究所の中国側協力研究者と研究交流を行った。西部、中西部、東部農村を比較することによって西部地域農村の現状と課題が浮き彫りになった。得られた知見は以下の通り。(1)農村財政に関して「分税制」改革以後農村の県や郷鎮の財政、特に自主財源は逼迫のメカニズムが明らかになった。(2)農村の集団的土地所有と都市化と土地流動化をめぐる基層政権の土地経営のメカニズムが明らかになった。(3)沿海地域から紡績・アパレル産業の中部地域への急速的な移転及びその関連効果(農民の現地就職の増加、遠距離出稼ぎの減少など)を確認できた。(4)農村金融、小額貸付の普及状況と問題点が明らかになった。農村信用社の小額貸付事業での四川省の先進性を知るとともに、差別化された金融監督政策と税収政策による小額貸付公司の運営課題、経営性農業生産に対する金融需要と供給のアンバランスなどの問題も明らかになった。(5)西部、中西部での新農村建設、産業化、インフラの進展状況と問題点に関して多くの知見が得られた。(6)西部、中西部、東部農村を比較することによって西部農村の貧しさのマクロ経済的要因と体制的原因が明らかになった。今年度四川、湖北、甘粛、浙江で農村調査を行い、以下の知見が得られた。(1)農村基層財政:分税制や税費改革により財源が削減され、他方で農村のインフラ整備、教育、医療、福祉政策充実要請により歳出が増加した。
KAKENHI-PROJECT-21405028
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中国西部地域農村近代化に関する調査研究-土地・労働力・産業化・インフラを中心に-
それに対応して上級からの交付金・補助金の増加と、「郷財県管」や「省直管県」の財政制度の近代化、スリム化政策が採られている。(2)農村土地問題:都市化・工業化による土地需要の増大、農村からの出稼ぎや非農業就業の拡大による農業労働力の老齢化・女性化の進展の中で、土地の用途別管理と所有制度、使用制度、用途転換と土地利用権の移転の制度的特殊性により、地方政府は開発財源として土地利用権譲渡を利用し、他方土地を収用される農民が十分な補償を受けられない制度的枠組みがある。(3)農村金融:中国の中部、西南部、西北部の三つの県で、地域の経済発展レベルと農村の金融組織の深化との相関関係を明らかにした。また、中国の農村土地と住宅の特別な所有形態により、農民の大口担保信用ができないため、農業の産業化、近代化が阻害されていることを改めて確認できた。(4)農村産業化:湖北・四川両省の農業関連企業の個別ケースの調査研究を通じて、農業産業化経営組織形態の特徴、農業産業化経営組織形態の発展プロセス、中国に進出している日系企業の進出形態、経営行動、日系企業の経営に対する中国からの評価、経営現地化の状況を明らかにした。(5)貧困削減問題:中国西部地域農村での貧困削減政策の実施状況と問題点について、具体的なケースから多くの知見を得た。特に、貧困層農民の置かれている経済的困窮状況とそれに対する諸施策の実態とその一方での充足度の低さが明らかとなった。農民への小額貸款(マイクロファイナンス)の浸透度・普及度を明らかにしたい。
KAKENHI-PROJECT-21405028
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壮年期の進行期婦人科がん患者の配偶者が体験する支援ニーズに基づくケアモデルの構築
本研究は、壮年期にあり化学療法を繰り返し受ける進行期婦人科がん患者の配偶者が体験する支援ニーズに基づいたケアモデルを提案することを目的とした。配偶者に対する面接調査および、先行研究の統合によって、9つの項目から成るケアモデル案を作成した。このケアモデル案は、看護師のグループインタビューによって内容の妥当性は評価された。その一方、看護師が配偶者に関わる機会が少ない現状から、実用化に向けた課題が明確になった。平成25年度の研究計画は、進行期で化学療法を受けている婦人科がん患者の配偶者に面接調査を行い、配偶者の直面している困難とその対処方法からケアニーズを明らかにすることであった。継続比較分析を特徴とするMGTAを分析手法としているため、研究開始前よりデータ収集は今年度で終了せず、来年度前半まで継続する計画であった。計画どおり、今年度は7名の研究参加者に面接調査を行い、同時進行にて分析作業を行った。現時点では「そのとき(再発や死)を意識して過ごす」「コントロールできない病への憤り」「夫婦でも分かり合えない」などの困難や、「自分が引き受ける」「手軽なリソースを使っての情報収集」などの対処の体験を表す約35の概念が明らかになりつつある。これらの生成された概念について、研究者間でその妥当性を確認しながら概念の精錬をはかり、収束化に向けたデータ収集・分析を継続している。平成26年度は、個別面接調査で明らかになった配偶者の体験から医療者に対する支援ニーズを抽出し、ケアモデルの原案を作成する研究計画であった。しかし、昨年は研究参加者が7名にとどまったため、継続してデータ収集を行った。結果として、合計10名の面接調査を行った。得られたデータは昨年度の分析結果で生成された概念と比較分析を行った。分析のプロセスでは適宜、共同研究者と分析の妥当性を検討することで、生成概念の洗練に努めた。その結果、困難と対処を示す16の概念が生成された。配偶者は、療養期間の長短に関わらず<婦人科がんを相手にはどうしようもない><一番欲しい情報は入手できない><化学療法との付き合い方が分からない><妻の苦しみを感じて辛い><男には立ち入れない><妻に分かってもらえない><家事にきりきり舞いする>という困難を拭えず、抱え続けていた。これらの困難に対する対処方法は、<弱みは見せない><化学療法を頼みの綱にする><よかれを思うことを行う>という、全てを自分で抱える方法から、<医療者が傍に居てくれる><周りに打ち明ける>他者に支援を求めることで、<妻の体調の良し悪しを見定める><自分の健康に気を配る>ように、自分自身にできることを考え、力の配分をする方法に変化し、さらには気負いを捨てて<少しのことではめげない><夫婦の生活パターンを作る>方法へと変化していることが明らかになり、本研究は第1段階を終了した。現在は、第2段階のケアモデル原案作成のため、国内外の文献レビューにより、がん患者の男性配偶者に対する看護実践の洗い出しを行っている。今年度は、配偶者に対するケアモデル案を作成し、その評価を行った。まずは、がん治療を受ける患者の配偶者を対象とした論文からケアの要素を抽出した。対象とする国内論文は、医中誌Webを用いて「がん」「配偶者」「看護」をキーワードとした原著論文の検索を行った。海外論文は、CINAHLとPubmedを用い、「cancer」「caregiver or carer」「spouse」「nursing or practice」をキーワードとして検索した。全てのデータベースにおいて、抄録有、2004年2015年の発行年を検索した。検索された論文の中から、研究対象者が40歳65歳かつ化学療法を受ける患者の配偶者であるものを選定した。さらに、これらの文献リストから有用と思われる論文を加え、国内論文11件、海外論文22件の計33件を分析対象とした。対象論文の結果と考察および、我々がこれまでに行った質的調査の結果から、ケアモデル案の構成要素となる配偶者に対するケアの内容を抽出した。これらを共同研究者間で検討を繰り返して類似性の視点でカテゴリ化し、ケアの内容を表すようネーミングし、ケアモデル案を作成した。以上から、ケアモデルの構成要素は、<患者の病状・治療についての情報とツールを提供する><配偶者の新たな役割への適応を支援する><夫婦・家族の関係が良好に保てるよう支援する><配偶者と医療者との良好な関係を構築する><配偶者のサポートニーズの認識と充足を支援する><納得して治療を選択できるよう支援する><配偶者の身体的な健康を支援する><患者の心身の安寧を保証する>の9つが抽出された。次に、がん専門看護師のスーパーバイズおよび婦人科病棟の看護師のグループインタビューにより、ケアモデル案の妥当性・実践可能性を評価した。その結果、構成要素の妥当性は認められたものの、配偶者に関わる機会の少なさから実践可能性における課題が明確になった。本研究は、壮年期にあり化学療法を繰り返し受ける進行期婦人科がん患者の配偶者が体験する支援ニーズに基づいたケアモデルを提案することを目的とした。配偶者に対する面接調査および、先行研究の統合によって、9つの項目から成るケアモデル案を作成した。このケアモデル案は、看護師のグループインタビューによって内容の妥当性は評価された。
KAKENHI-PROJECT-25463451
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25463451
壮年期の進行期婦人科がん患者の配偶者が体験する支援ニーズに基づくケアモデルの構築
その一方、看護師が配偶者に関わる機会が少ない現状から、実用化に向けた課題が明確になった。第1段階の研究計画において、研究参加者を得ることに困難を伴った。その理由として、研究フィールドであるA病院で繰り返し化学療法を受けている患者は、ある程度固定しており、彼らにはすでに研究依頼を終えていたためである。本来は、15名程度の研究参加者を得る予定であったものの、現状として難しいと判断し、10名にとどまった。また、面接調査の期間延長に伴い、全体の研究計画に遅れが生じた。医薬学現在、行っている第2段階の文献の理論的統合を6月末までに終了し、9月までにケアモデル原案の作成を行う。その後は11月までにケアモデル原案の臨床での適応性について、研究倫理審査を経て2か所の医療機関の婦人科病棟で勤務する看護師を対象にグループインタビューを行う。その結果の分析を1月までに終了し、ケアモデルを完成させる。ほぼ当初の計画どおりに進んでいる。MGTAの理論的飽和を判断するためには、面接参加者を合計15人と見込んでいるが、現時点での面接参加者はその半数程度であり、予定よりやや少ない状況である。しかし、来年度前半までには必要なデータを得ることは可能と考えている。計画していた海外学会への参加ができなかったこと、面接調査内容の逐語録作成は研究者が行ったことより、予算を使用しなかった。また、文献の取り寄せ費用が見込みよりも少なかったため。すでに調査フィールドである病院には、面接調査期間延期を依頼し、了承を得ている。8月を目安に面接調査を実行し、理論的飽和の判断が可能になるまでデータ収集と分析を続行する。現在のところ、少なくともあと5名程度は参加者が必要だと考えている。面接調査と並行して10月頃まで婦人科がん患者の配偶者へのケアに関する国内外の文献レビューを行う。11月頃より面接調査のデータ分析結果と文献レビューの結果を統合し、3月頃までにケアモデルの原案を作成する。また、来年度に行うグループインタビューのフィールドを探し、調査実施のための手続きを開始する。ケアモデルには、マーガレットニューマンが提唱する「拡張する意識としての健康」理論の考え方を参考にしたいと考えている。そのため、この理論に精通した講師招致し、実践への活用に関して講義を計画した。講師の交通や謝金に充てたい。25年度は、研究者会議の開催は本学および分担者の大学で行った。そのため、室使用料は不要であった。また、研究者会議の開催を校務による出張の機会に合わせて行ったため、旅費を請求する必要がなかった。さらに、逐語録の作成は研究者自身で行ったために、逐語録作成のために計上していた予算を使用しなかった。26年度は、ケアモデルの作成のために国内外の論文を多数取り寄せる必要がある。また、本年度も日本家族看護学会に参加し、家族ケアに関する最新の知見を得ることで、研究結果に還元させたい。したがって、論文・書籍代、学会参加費用に充てる計画である。
KAKENHI-PROJECT-25463451
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ソフトマテリアルの非線形衝撃応答モデル
柔らかな材料の衝撃応答を理論的に予測するために、固体非線形力学の超弾性理論に減衰特性を記述する分数微分を導入して衝撃応答の減衰挙動を良く説明する理論の構築を行った。この理論を補強するために落錘試験機を開発し、落錘がサンプルに衝突したときの試験を実施した。理論解析は実験結果に良く合うことが分かった。さらに理論の成立する適用範囲、実務に使用するための理論の補正法の導出などを行った。柔らかな材料の衝撃応答を理論的に予測するために、固体非線形力学の超弾性理論に減衰特性を記述する分数微分を導入して衝撃応答の減衰挙動を良く説明する理論の構築を行った。この理論を補強するために落錘試験機を開発し、落錘がサンプルに衝突したときの試験を実施した。理論解析は実験結果に良く合うことが分かった。さらに理論の成立する適用範囲、実務に使用するための理論の補正法の導出などを行った。粘弾性材料の衝撃特性を明らかにすることを目的に落下衝撃試験機を製作して、試験を実施し、特性を明らかにすることを目指した。そのために、(1)試験機の仕様は衝撃試験の重錘を落下させるタイプとして落錘試験機の開発とした。落錘高さは110cm、落錘の大きさは50φ×10mmの円筒、下部ベースにサンプルを置くタイプとする。(2)試験機は落錘を安定に垂直落下させるため、重錘にはガイド棒を取付け、このガイド棒が空気ベアリング内をすべる構造として、棒の大きさ、空気ベアリング容量、空気を送るコンプレッサーの容量を決めて設計を行った。(3)試験機は機械製作メーカに依頼して製作を行った。(4)試験機のデータ計測システムの機器類を購入した。加速度センサ、変位センサ、これらのアンプ、データ取込みのA/D変換器の購入をして計測システムを作りあげた。(5)データの処理・保存システムを強化した。コンピュータ内でデータの処理と保存を行うためにMATLABソフトのData Acquisition Tool Boxを購入し、計算処理・保存システムのMATLABプログラムを作成した。以上により計測システムのかなりの部分を完成させた。次年度は計測システムを完成させ、実験データを採取する予定である。実験を実施し、粘弾性衝撃特性を明らかにする。粘弾性材料の衝撃特性を明らかにすることを目的に落錘試験機を製作して、試験を実施し、その特性を明らかにすることを目指し、次の内容を実施した。(1)試験機器の製作を終了させ、予備実験を行った。一部不具合(落錘の保持部)が発見されたので、それを改良して、再度データ計測を行い、正常に作動することを確認した。これにより落錘試験機の完成をみた。この試験機の命である落錘を固定する支持棒が空気ベアリング中を、滑らかに落下するようにするため、多くの工夫を要した。棒は試験前にある高さに固定されている。この固定保持具が開く状態となり棒が落下する。この解放時にスムーズな動作をしないと、ガタによるノイズ等が入りやすくなる。この調整の改良に時間を要したが、これがうまくいって、装置としての完成をみた。(2)測定データの処理ソフトをMATLABで新に2本作成した。取得後コンピュータ内に格納されているデータのデータ処理項目は多岐に亘るが、その内、ヒステリシスループ作成、波形の時間方向シフトに関するMATLABソフトを作成した。(3)落錘試験機の実験のための仕様書と計画書を作成した。(4)粘弾性材料の落錘試験と3次元固体理論のよる応答の比較と解釈を行った。論文を国際会議に投稿し、発表した。次年度は、完成した試験機により粘弾性材料(特にシリコーンゲル)の特性把握とこの試験を基にした分数階微分モデルへのあてはめを行う。平成24年度は最終研究年度であり、落錘試験機の完成と試験の実施、報告書の完成が主な作業であり、これらすべてを滞りなく完了した。具体的な作業は下記の通りである。(1)落錘試験の予備試験と試験手順書と試験機取扱説明書の作成を行った。(2)株式会社タイカからシリコーンゲルの提供(d=30φ; t=2,4,8mm;ゲル材の種類; α,θ5,θ6,θ7)を受けて落錘試験を実施した。試験条件は1錘の高さ、2ゲル材の種類、3サンプルの厚さである。これらの条件の組み合わせに対して実験を行い、測定データを得た。(3)これまで理論的アプローチで開発してきた有限変形フラクショナル微分モデルの構成式を組込んだ近似衝撃応答解析プログラムソフトを開発して、このソフトによる計算を実施した。この計算結果と実験結果を比較して、相関性を検討した。これにより分数微分モデルの衝撃問題への有効性が確認された。各種の材料と厚さに対して落下衝撃高さに応じた動的応答特性が抽出でき、解析理論が完成した。(4)上記以外に、コンプレッサーの防音対策を行った。落錘の表面の状態による応答の差を見るため落錘棒を新たに製作し、適切な形状を調べた。(5)実験と理論をまとめて報告書を作成し、印刷製本した。粘弾性落錘試験機の開発とデータ計測システムの確立を平成23年度に完了する予定であった。ハードは製作が完了したが運転と予備試験がやや遅れた。
KAKENHI-PROJECT-22560229
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22560229
ソフトマテリアルの非線形衝撃応答モデル
その理由は平成23年10月にハードの一部に不具合が発見されたためで、これの修理に時間をとられた。しかし、平成24年5月迄の研究期間の延長が認められたことにより平成23年度の遅れはほぼ取り戻せた。24年度が最終年度であるため、記入しない。今後は確立した試験システムにより粘弾性体に錘を落下させ、加速度と変位の同時刻波形計測し、別途進行中の分数微分を用いた新しい構成式のモデルの妥当性を評価する基礎データとする。平成24年度には当初の予定を十分に満足させられる見通しであり、実りある最終報告書の完成が見込まれる。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22560229
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22560229
人為起源物質の制御にはたす動的リスク管理手法の開発
(1)動的リスクの概念その意味はi)前以て、手遅れにならぬよう、ii)きめ細かくii)きめ細かくiii)基本的には、市民的決定をめざしてiv)しかしながら、社社会的コスト・ベネフィット比較も留保しつつ、v)適切な科学的根拠を得つつ、vi)有効な技術的手段も用いて、vii)法制度の改変も視野にいれつつ、人間の生存に不可欠な良き自然環境を社会的に保証することである。(2)「動的リスク管理」のいくつかの型純系マスウを用いて、遺伝因子、環境因子、年齢(時間因子)それぞれとメチル水銀の生態内動態を調べた結果、遺伝的選択の観点からは、特定の遺伝的特性をもつ個体から順番に選別されていくことがわかった。(土井)カドミウムによる尿細管機能異常の主要な臨床所見は、ファンコニ-症候群のなかに見られるものと同一である。環境中のカドミウムへの暴露について、カドミウム汚染地域の調査の結果、β_2ーグロブリン濃度が統計的な因果関連において決定的な役割をはたす指標であることが確認された。(斎藤)水道法は水源を汚染する諸活動にたいする規制は考えていない。下水道法も排出するときは放流基準の遵守を定めるが、監視がない。日本では技術優先の金をかける対応が多い。土地利用規制の法的強化が必要である。下水道計画のアセスメントがまず議論されてよい。(阿部)環境・技術リスク問題に対処する意思決定(診断、評価、制御)のための動的管理では対象とするリスク・システムの構造の不確実性と、関係者間の利害の複雑性による意見の相違が合意形成を困難にしている。「見る」ことでこの障害は突破できる。東京都水系におけるトリハロメタンなどによるリスクをさまざまなシナリオに応じて評価し、その結果を視覚的に表示する。(池田)所有が設定されている財は市場で財の価格が成立し、これにしたがうなら、合理的な人はその財を過剰に利用することはありえない。環境資源は所有が設定されていないのでその過剰使用は放置され、経済社会の将来の生産力、人間の生存基盤の減耗を通じて人々の厚生水準を大幅に低下させる。そこで、環境・経済の財産目録、家計簿あるいは、財務諸表を考える。(北畠)動的リスク管理は動的決定問題である。時間軸にそう意思決定者の選好および将来にわたる価値観の問題に対処しなければならない。将来の時点で新たな情報により不確実性が変化したとき、現在の価値観または最適と判断された選択がそのままであるという保証はない。行政の介入が早過ぎても遅過ぎてもコストが発生する。(中村)中間報告書『人為起源物質の制御にはたす動的リスク管理手法の開発』G060ーN19B1(1)動的リスクの概念その意味はi)前以て、手遅れにならぬよう、ii)きめ細かくii)きめ細かくiii)基本的には、市民的決定をめざしてiv)しかしながら、社社会的コスト・ベネフィット比較も留保しつつ、v)適切な科学的根拠を得つつ、vi)有効な技術的手段も用いて、vii)法制度の改変も視野にいれつつ、人間の生存に不可欠な良き自然環境を社会的に保証することである。(2)「動的リスク管理」のいくつかの型純系マスウを用いて、遺伝因子、環境因子、年齢(時間因子)それぞれとメチル水銀の生態内動態を調べた結果、遺伝的選択の観点からは、特定の遺伝的特性をもつ個体から順番に選別されていくことがわかった。(土井)カドミウムによる尿細管機能異常の主要な臨床所見は、ファンコニ-症候群のなかに見られるものと同一である。環境中のカドミウムへの暴露について、カドミウム汚染地域の調査の結果、β_2ーグロブリン濃度が統計的な因果関連において決定的な役割をはたす指標であることが確認された。(斎藤)水道法は水源を汚染する諸活動にたいする規制は考えていない。下水道法も排出するときは放流基準の遵守を定めるが、監視がない。日本では技術優先の金をかける対応が多い。土地利用規制の法的強化が必要である。下水道計画のアセスメントがまず議論されてよい。(阿部)環境・技術リスク問題に対処する意思決定(診断、評価、制御)のための動的管理では対象とするリスク・システムの構造の不確実性と、関係者間の利害の複雑性による意見の相違が合意形成を困難にしている。「見る」ことでこの障害は突破できる。東京都水系におけるトリハロメタンなどによるリスクをさまざまなシナリオに応じて評価し、その結果を視覚的に表示する。(池田)所有が設定されている財は市場で財の価格が成立し、これにしたがうなら、合理的な人はその財を過剰に利用することはありえない。環境資源は所有が設定されていないのでその過剰使用は放置され、経済社会の将来の生産力、人間の生存基盤の減耗を通じて人々の厚生水準を大幅に低下させる。そこで、環境・経済の財産目録、家計簿あるいは、財務諸表を考える。(北畠)動的リスク管理は動的決定問題である。時間軸にそう意思決定者の選好および将来にわたる価値観の問題に対処しなければならない。将来の時点で新たな情報により不確実性が変化したとき、現在の価値観または最適と判断された選択がそのままであるという保証はない。
KAKENHI-PROJECT-03202109
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人為起源物質の制御にはたす動的リスク管理手法の開発
行政の介入が早過ぎても遅過ぎてもコストが発生する。(中村)中間報告書『人為起源物質の制御にはたす動的リスク管理手法の開発』G060ーN19B1
KAKENHI-PROJECT-03202109
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多階層ネットワークに基づく遺伝子間の非線形相互作用のモデル化と代謝解析への応用
従来、遺伝子は原因因子として個別に機能や現象への関与が研究されてきた。しかし近年では遺伝子はその他の様々な遺伝子や生体内分子との相互作用単位として、特定条件下での込み入った制御を通して対象の疾患・表現型・機能と関わっていると考えられている。本研究課題では遺伝子を階層的に絡み合う様々な分子間ネットワークの構成要素と位置づけ、既知の各分子の定量的情報と各分子ネットワークの既知情報に基づき遺伝子の非線形な相互作用を解析する。特に、現在利用可能になってきた様々なデータを互いに関連づけ階層的な生体内分子ネットワークの理解へ貢献する解析手法開発を行う。本課題では、蓄積されつつある既知の分子間ネットワークの情報を用いて遺伝子間の非線形な相互作用をモデル化し、複数の遺伝子と表現型の複雑な関係性の理解を目指す。本年度は総説やブックチャプターを通してグラフマイニング技術や前年度までに得られた代謝系の遺伝子解析に関する結果の公開を行った。また、分子ネットワークを扱うためのデータマイニング・機械学習法について、主にグラフ構造をなすデータに関する統計推論に関して基礎研究を行った。創薬において標的に対するリード化合物探索時のスクリーニングなどで、主に部分構造や化学的特性の有無を表すフィンガープリントで特徴づけされた表現を用いた統計処理を行う。この際、トポロジーに関する部分の情報、つまり、部分グラフ構造の有無によって分子グラフを特徴づけする場合の一般的統計推論の検討を行った。このグラフマイニングに関する基礎理論は分子グラフの特徴づけにとどまらず、ネットワーク等のグラフ構造を扱うあらゆる場合で技術的に重要な役割を担うと期待できる。代謝ネットワークにおける酵素遺伝子間の非線形相互作用については初年度を中心に遺伝子発現量、代謝産物量、と代謝系ネットワークの構造の関係を定量的に解析する手法の確立から実際の分析までを行った。特に、E.coli K12MG1655株の同時計測データを用いて、各々の酵素遺伝子のネットワーク様の相互作用が、遺伝子・タンパク質(酵素)・代謝産物の調整にどのように影響するかを分析するモデル化を行い、論文として発表を行った。本年度はこれと並行して行った研究として、遺伝子発現量について各アレイ(測定条件)と各遺伝子の両方の観点から類似している遺伝子とアレイの部分セットを列挙計算するバイクラスタリングに関する成果を論文およびウェブサービスとして発表した。結果は冗長かつ複雑な出力であるため、ネットワーク様の相互関係として視覚的な出力も行った。同時に、ネットワーク構造(グラフのトポロジー)のデータを統計的に解析する手法に関する基礎研究を行い、論文として投稿することができた。また遺伝子欠損株の測定データとネットワーク構造とを統計的に関連付ける手法については、ネットワークの信頼性分析理論に基づき、より良いモデルの検討を引き続き行っている。得られた成果は今後の研究に引継ぎ、遺伝子という構成要素がネットワーク構造を介して非線形に作用する現象を緻密に分析できるようなモデルやデータ解析手法を追及していく予定である。ネットワーク構造が多階層で複雑に相互作用する現象は、生物現象だけにとどまらない。こうした他の様々な現象の分析にも汎用的に使えるような技術基盤の確立のためには、実データのモデル化による検証と並行して、情報科学的にも様々な技術課題の解決が必要である。本課題の実施により基礎研究面でも今後解決していくべき様々な重要な発展的研究課題を得ることができた。従来、遺伝子は原因因子として個別に機能や現象への関与が研究されてきた。しかし近年では遺伝子はその他の様々な遺伝子や生体内分子との相互作用単位として、特定条件下での込み入った制御を通して対象の疾患・表現型・機能と関わっていると考えられている。本研究課題では遺伝子を階層的に絡み合う様々な分子間ネットワークの構成要素と位置づけ、既知の各分子の定量的情報と各分子ネットワークの既知情報に基づき遺伝子の非線形な相互作用を解析する。特に、現在利用可能になってきた様々なデータを互いに関連づけ階層的な生体内分子ネットワークの理解へ貢献する解析手法開発を行う。本課題では、蓄積されつつある既知の分子間ネットワークの情報を用いて遺伝子間の非線形な相互作用をモデル化し、複数の遺伝子と表現型の複雑な関係性の理解を目指す。本年度は代謝ネットワークにおける遺伝子間相互作用について研究を行った。代謝系における各遺伝子の発現制御、その遺伝子産物の生成量、またその遺伝子産物が触媒する反応の産物の量、の関係は予想以上に複雑であることが近年示されてきた。この関係をより定量的に理解するために遺伝子発現量、タンパク質量、代謝産物量、代謝フラックスなど関係する量を同時に定量する研究も行われている。そこで、E. coli K12 MG1655株のストレス応答に対する遺伝子発現と代謝産物のプロファイルに基づき、代謝関連遺伝子の発現制御と各代謝反応の生成物量変化がどのように代謝ネットワーク構造と関係しているのかを定量的に理解するためのモデル化を行った。(1)代謝ネットワークにおいて発現プロファイルから見て最も連動していると考えられる代謝経路を同定する、(2)その経路上の遺伝子の発現プロファイルに基づきターゲット産物を同定する、という手順で、特定の代謝産物の量の制御に関わっている遺伝子・経路モジュールの同定・解析を行い、論文として報告した。この解析のために、細胞内で活性化されている代謝経路を代謝関連遺伝子の発現量から順位付けして出力する我々が以前開発した計算法の拡張を行った。また、各代謝産物の生成に関わっている遺伝子群を共制御関係とネットワーク構造に基づき「スコープ」として同定し、系全体の挙動を代表するような「スコープの最小セット」について解析を行った。
KAKENHI-PROJECT-23710233
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多階層ネットワークに基づく遺伝子間の非線形相互作用のモデル化と代謝解析への応用
この結果、局所的制御と同時に、代謝ネットワーク上で離れた関係にある産物まで影響が及ぶケースも発見され、遺伝子間に起こり得る複雑な相互作用の一端を明らかにした。本年度は前年度の研究や事前調査から生じた技術的課題について、主に対象である分子ネットワークを情報科学的に取り扱うためのグラフマイニングおよびグラフデータを対象とした機械学習法の研究に力を入れた。これらで得られた技術的進展と知見をフィードバックすることで、遺伝子間の相互作用モデリングを行う予定である。本課題では遺伝子間の非線形な相互作用の理解のために複数の遺伝子欠損株の計量データの利用に基づくモデル化を考えていたが、本年度は既知ネットワークと種々の定量可能な量との関係性を主に単一株について解析した。既知の分子ネットワークから遺伝子間の複雑な相互関係を理解するという課題目標達成の点においては十分貢献するものであり実り多い成果と言えるが、当初計画の推進という点において十分に満足いく達成度とは言えない。本年度は研究代表者の所属変更のため、本課題の推進の一時中断を余儀なくされ、また研究環境・設備の変化や再準備にかかる労力の点でも影響が大きかった。本年度に得られたデータマイニングや機械学習に関する技術的進展を元にして、微生物欠損株の遺伝子発現解析およびその他の遺伝子間の非線形作用モデルについて研究を行う予定である。特に遺伝子ネットワークの相互作用未知の部分の情報を、蓄積されている欠損株に関する各種の計測情報等から補いつつ、系全体の非線形な挙動について予測する機械学習モデルの構築、および、現状のデータでどれくらいの説明が可能なのかを検証できる枠組み作りを目指す。また、実際のデータを有効に解析する上では、機械学習・データマイニングに関する基礎技術の検討が必要であると考えられるため、引き続き基礎研究にも力を入れる予定である。部分的な研究計画の遅れの主原因である研究代表者の所属変更の影響については本年度内で研究環境や設備も整ったため、次年度以降は当初計画であった欠損株データの利用に焦点を当て、既知分子ネットワークを用いた遺伝子間相互関係の理解を改めて推進していく予定である。また、関係する研究者と連絡を密にすることで、研究環境の変化による当初計画の推進に関わる影響を最小にしていきたい。一方で、研究環境の変化を積極的にプラスに働かせるべく、本課題で解析対象とするデータを柔軟に幅広く求めていく予定である。遺伝子間の複雑な相互関係の対象として、当初計画の時点では酵母欠損株の定量データを用いる予定であったが、特に、ヒトゲノムにおける変異間の相互関係など、定量データと既知分子ネットワークが十分にできる他の系も積極的に研究対象として考慮していく予定である。本年度の研究費について研究計画時に予定していた旅費計画についての変更により一部年次使途計画にも必要が生じた。また具体的な研究計画についても環境変化により変更が必要となり、予定していた備品について本年度購入を見送ることになった。
KAKENHI-PROJECT-23710233
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多分岐高分子を利用する高強度イオンゲルの開発・制御と環境調和型材料への展開研究
プロトン性ILを緩衝剤とする非プロトン性IL中でのゲル化機構の研究をおこない、プロトン性ILを用いた高分子反応における反応速度制御法を確立した。この方法を、イオン液体中において反応末端の異なる二種の4分岐ポリエチレングリコール(Tetra-PEG)の反応に応用することで、耐熱性・力学強度に優れた高強度テトラペグイオンゲルを開発することに成功した。次に、高強度テトラペグイオンゲル薄膜を調製し、そのガス透過選択性および二酸化炭素吸収特性を評価し、イオンゲル薄膜の優れた二酸化炭素選択分離膜としての性能を実証した。水系とは全く異なるイオン液体中での4分岐ポリエチレングリコール(Tetra-PEG)のゲル反応機構を酸塩基反応と化学反応速度論に基づき体系化し、ゲル力学特性の自在制御法を確立した。また、生成したゲルに対して小角中性子散乱(SANS)、高角X線回折(WAXD)、動的光散乱(DLS)および時分割SANSにより網目構造・ダイナミクスを調べた。以下、それぞれについて、より詳しく述べる。(1)イオン液体中でのTetra-PEGゲル化反応メカニズム解明とその精密制御:Tetra-PEGゲルの機械的強度は、ゲル化時間によって劇的に変化する。水系では、1pHによってNH2基の活性を制御することで、ゲル化速度を自由に制御できること2活性なNH2基の割合が酸塩基平衡によって決定されること、が明らかになっている。しかしながら、水中とは異なり、一般的な非水系IL中には解離性のプロトンが存在しないため、pHによる反応制御が不可能であった。そこで、カチオン内に解離性のプロトンを持つ、溶媒と類似構造のプロトン性イオン液体をプロトン供与体として溶媒中に加えることでNH2基の活性を制御し、ゲル化の反応性・時間を溶液反応論的に制御することに成功した。(2)種々の散乱法によるイオン液体中の高分子網目構造解析:イオンゲルの網目構造をSANSにより研究し、ハイドロゲルと類似の均一網目構造であることを確認した。また、微細構造をWAXDにより研究し、MDシミュレーションと組み合わせることで、Tetra-PEGのイオン液体への溶媒和構造についての詳細な解析を行った。さらに、時分割DLSによるゲル化過程における網目の形成過程の研究や、ゲル化時間を制御して調製したイオンゲルについて時分割SANS測定を行い、ゲル化過程における構造変化(網目サイズの変化)について詳細な解析を行った。本研究では、4分岐ポリエチレングリコール(Tetra-PEG)鎖を骨格とする均一網目を用いた高強度ハイドロゲル(溶媒:水)の開発・研究をイオン液体(IL)系に拡張し、高性能イオンゲルの創成を目指すことを目的としていた。平成26年度は、4分岐ポリエチレングリコール(テトラペグゲル)のゲル化反応速度論、網目欠陥制御と網目欠陥含有ゲル網目の構造解析、テトラペグイオンゲル高強力薄膜の開発と二酸化炭素分離能評価などを行った。以下に、その概要を述べる。イオン液体(IL)は不揮発性や難燃性、熱的・化学的安定性等の特徴を有し、さらに、二酸化炭素等の酸性ガスを選択的に吸収する。多孔質材料にILを充填したIL支持膜(SILM)は、圧力差によってILが漏出するという問題点が存在する。高分子でイオン液体をゲル化させたイオンゲル膜も研究が進んでいるが、その力学強度・耐熱性は未だ不足しており、幅広い温度・圧力下で利用できるゲルの開発が望まれていた。我々は最近、IL中において反応末端の異なる二種の4分岐ポリエチレングリコール(Tetra-PEG)を反応させることで、耐熱性・力学強度に優れた高強度イオンゲル(テトラペグイオンゲル)を開発することに成功した。さらに、水系において緩衝溶液法によるpH調節で反応を制御する方法を参考にし、プロトン性ILを緩衝剤とする非プロトン性IL中のゲル化機構を解析することで、プロトン性ILを用いた反応速度の制御法を確立した。この方法により強力薄膜を調製し、そのガス透過選択性および二酸化炭素吸収特性を評価した。イオン液体(IL)は不揮発性、難燃性、熱的・化学的安定性等の特徴を有し、さらには二酸化炭素等の酸性ガスを選択的に吸収する性質を有する。本研究では、我々の研究グループが開発した、4分岐ポリエチレングリコール(Tetra-PEG)鎖を骨格とする均一網目を用いた高強度ハイドロゲル(溶媒:水)の開発・研究をイオン液体(IL)系に拡張し、高性能イオンゲルの創成と応用を目指すことを目的とした。我々は、すでにIL中において反応末端の異なる二種の4分岐ポリエチレングリコールを反応させることで、耐熱性・力学強度に優れた高強度イオンゲル(テトラペグイオンゲル)を開発することに成功していたが、反応効率や反応速度制御に難があり、ガス分離膜等に応用可能な十分な力学強度をもつ薄膜の作成の実現には至っていなかった。そこで、本研究では、4分岐ポリエチレングリコール(テトラペグゲル)のゲル化反応速度論、網目欠陥制御と網目欠陥含有ゲル網目の構造解析、プロトン性IL緩衝剤の開発、プロトン性ILを用いた反応速度の制御法を確立し、テトラペグイオンゲル高強力薄膜の開発と二酸化炭素分離能評価、強力イオンゲル薄膜の調製、および、そのガス透過選択性および二酸化炭素吸収特性の評価などを行った。特に平成27年度においては、テトラペグゲルのゲル化反応化学の速度論的研究および二酸化炭素分離能の評価を行った。
KAKENHI-PROJECT-25248027
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25248027
多分岐高分子を利用する高強度イオンゲルの開発・制御と環境調和型材料への展開研究
これらの成果は、アメリカ化学会高分子専門誌等に掲載され、イオン液体を媒体とする高分子ゲルの調製法のみならず、反応化学、分析化学、分離科学等に大きな貢献をした。プロトン性ILを緩衝剤とする非プロトン性IL中でのゲル化機構の研究をおこない、プロトン性ILを用いた高分子反応における反応速度制御法を確立した。この方法を、イオン液体中において反応末端の異なる二種の4分岐ポリエチレングリコール(Tetra-PEG)の反応に応用することで、耐熱性・力学強度に優れた高強度テトラペグイオンゲルを開発することに成功した。次に、高強度テトラペグイオンゲル薄膜を調製し、そのガス透過選択性および二酸化炭素吸収特性を評価し、イオンゲル薄膜の優れた二酸化炭素選択分離膜としての性能を実証した。当初の計画であった、1イオン液体中でのTetra-PEGゲル化反応メカニズムとその精密制御、2中性子散乱実験を基軸としたイオンゲル中の高分子網目構造(ナノスケール構造)、3イオン液体中の高分子溶媒和とそれを支配する高分子ー溶媒相互作用の抽出(ミクロスケール構造)、について、1のゲル化反応メカニズムとその精密制御と3の高分子ー溶媒相互作用の研究は順調に進んでおり、予想以上の成果をあげている。2の中性子散乱実験を基軸としたイオンゲル中の高分子網目構造の研究については、いまだ重水素化4分岐ポリエチレングリコールの調製に成功していないため、平成27年度以降の懸案である。一方で、目的達成のため、以下のような関連研究を平行して行い、多くの成果を得た。(1)テトラペグハイドロゲルのゲル反応機構の速度論を解明、(2)網目欠陥を制御したテトラペグハイドロゲルの調製と小角中性子散乱を用いた構造による構造と網目欠陥度(網目の反応率)の関係解明。(3)フェノール樹脂のゲル化反応過程の計算機実験による熱硬化性樹脂の不均一構造の制御の研究。これらを総合すると、現在までの研究達成度は約70%で、やや遅れている。27年度が最終年度であるため、記入しない。高分子物理当初目標である、従来溶媒にはないILの特徴(蒸発しない、極限環境下でも失活しない、導電性、二酸化炭素の選択的溶解性など)を付加した全く新規のゲル材料を提案するために、我々が開発したプロトンイオン液体によるイオン液体系の緩衝溶液法を駆使して、より反応度の高い高強力イオンゲル薄膜の調製を目指す。そして、得られた膜の構造解析や力学強度試験、二酸化炭素分離試験を行うことで、分離膜のさらなる性能向上を実現する。一方、低誘電率溶媒中で高膨潤するゲルの開発とその構造解析、高角X線散乱および計算機実験によるセルロースのモデル系であるグルコースのイオン液体中での溶媒和構造の研究、などイオン液体中での高分子の物性解明という基礎学問的な観点からの研究を行い、イオン液体中における高分子溶液論の確立をめざす。ハイドロゲルと異なり、緩衝液によるプロトン濃度の制御ができないイオン液体系ではTetra-PEGの反応性、反応時間、力学特性等は溶媒種や溶液条件に強く依存し、特に、その反応時間はイオンゲルの材料展開における薄膜化過程において重要な因子である。典型的な非水系イオン液体であるイミダゾリウム型イオン液体を溶媒とした場合、混合からゲル化までの時間は1分程度と極端に短く、イオンゲルの成型や薄膜化は困難を極め、Tetra-PEGのゲル化
KAKENHI-PROJECT-25248027
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25248027
高温条件下でのイチゴ四季成り性品種の品質低下の機構解明と克服に関する研究
イチゴは,卸売価額が1,500億円と国産果実ではミカンに次いで高く,最も重要な園芸作物の一つである.現在,日本で栽培されているイチゴの品種のほとんどは一季成り性品種であることから,夏秋季には海外から生鮮果実を輸入している.国産果実に対する需要は大きく,産業振興のためにも夏秋季にも果実生産できる四季成り性品種の導入が求められていが,高温による奇形果,果実サイズや糖度の低下という品質の問題が生じている.特に近年は夏が異常に暑くなる傾向があり,栽培現場では深刻な問題となっている.高温による品質の低下は,一般に,奇形については受精不良(不稔によって痩果が発達しない),果実サイズや糖度の低下は早期成熟が原因であるとされており,品質低下の報告は国内でみられるが,その発生機構は明らかではない.そこで本研究ではこれまでの知見に基づいて,夏秋季に栽培することを目的とした四季成り性品種を供試して,高温条件下での果実品質の低下機構を解明するとともに,克服のための技術開発に資する知見を得ることを目的とした.昼温/夜温を27/22°C(高温)と22/17°C(低温)に設定した2台のファイトトロン内で栽培して生育を比較した.いずれの温度においても,葉の発生やランナーの発生は正常で,高温の方が旺盛な傾向が認められた.一方,生殖成長は,温度に関わらず開花したものの,その後の果実の成熟(肥大や着色)が進まない現象が認められた.この原因として,花粉の不稔,受粉不良,受精不良,果実肥大に必要なオーキシンが生成されなかったことなどが推察されたが,原因の特定には至らなかった.イチゴは,卸売価額が1,500億円と国産果実ではミカンに次いで高く,最も重要な園芸作物の一つである.現在,日本で栽培されているイチゴの品種のほとんどは一季成り性品種であることから,夏秋季には海外から生鮮果実を輸入している.国産果実に対する需要は大きく,産業振興のためにも夏秋季にも果実生産できる四季成り性品種の導入が求められていが,高温による奇形果,果実サイズや糖度の低下という品質の問題が生じている.特に近年は夏が異常に暑くなる傾向があり,栽培現場では深刻な問題となっている.高温による品質の低下は,一般に,奇形については受精不良(不稔によって痩果が発達しない),果実サイズや糖度の低下は早期成熟が原因であるとされており,品質低下の報告は国内でみられるが,その発生機構は明らかではない.また,非クライマクテリック型であるイチゴの成熟に関する知見として,オーキシンとアブシシン酸(ABA)が成熟をそれぞれ遅延,促進すること,無関係と考えられてきたエチレンも関与する可能性があることが国外での研究で明らかになっている.そして,これら植物ホルモンの合成や,シグナル伝達および着色・軟化に関わる下流の遺伝子が成熟に関わっていると考えられている.そこで本研究ではこれらの知見に基づいて,夏秋季に栽培することを目的とした四季成り性品種を供試して,高温条件下での果実品質の低下機構を解明するとともに,克服のための技術開発に資する知見を得ることを目的とする.材料として`なつあかり'と`すずあかね'を供試した.日長は自然日長とし,温度区として対照区(18°C/25°C)と高温区(28°C/35°C)を設けた.高温区の花房発生は,`なつあかり'では抑制され,`すずあかね'は促進されたことから,収量は`すずあかね'の方が多かった.果実サイズは,対照区と比較して高温区の方が小さく,従来と同様の傾向が認められた.高温条件下において,花器の成長が十分でなかったことが原因と考えられる奇形果の発生が認められた.具体的には,対照区と比較して,萼が大きく,花糸が短く,花柱が茶色の花が咲いた.このような花の場合,花粉の稔性が低かったか,雌蕊が枯死していたためか,受精が不良となったと考えられる.イチゴの場合,正常な受精をした痩果がオーキシンを生合成し,果実の成長を促進させることが知られているが,本研究では,受精不良が原因となり,奇形花が発生したと考えられる.このような果実はサイズが小さく,品質などを分析するうえで十分な量でなかった.また,高温と短日の組み合わせによる花芽分化の発生が停止したことが原因として考えられる収穫のない時期があった.イチゴは,卸売価額が1,500億円と国産果実ではミカンに次いで高く,最も重要な園芸作物の一つである.現在,日本で栽培されているイチゴの品種のほとんどは一季成り性品種であることから,夏秋季には海外から生鮮果実を輸入している.国産果実に対する需要は大きく,産業振興のためにも夏秋季にも果実生産できる四季成り性品種の導入が求められていが,高温による奇形果,果実サイズや糖度の低下という品質の問題が生じている.特に近年は夏が異常に暑くなる傾向があり,栽培現場では深刻な問題となっている.
KAKENHI-PROJECT-16K07585
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07585
高温条件下でのイチゴ四季成り性品種の品質低下の機構解明と克服に関する研究
高温による品質の低下は,一般に,奇形については受精不良(不稔によって痩果が発達しない),果実サイズや糖度の低下は早期成熟が原因であるとされており,品質低下の報告は国内でみられるが,その発生機構は明らかではない.また,非クライマクテリック型であるイチゴの成熟に関する知見として,オーキシンとアブシシン酸(ABA)が成熟をそれぞれ遅延,促進すること,無関係と考えられてきたエチレンも関与する可能性があることが国外での研究で明らかになっている.そして,これら植物ホルモンの合成や,シグナル伝達および着色・軟化に関わる下流の遺伝子が成熟に関わっていると考えられている.そこで本研究ではこれらの知見に基づいて,夏秋季に栽培することを目的とした四季成り性品種を供試して,高温条件下での果実品質の低下機構を解明するとともに,克服のための技術開発に資する知見を得ることを目的とする.材料としてイチゴの四季成り性品種である`なつあかり'と`すずあかね'を供試した.日長は自然日長とし,温度区として対照区(25°C/18°C)と高温区(30°C/25°C)を設けた.株の成長は対照区で旺盛な傾向が認められたが,イチゴは涼温で成長が促進されるという従来の知見と一致した.果実については,高温条件下において,十分な果実の発達が認められなかった.この原因として,高温が原因で花托が小さくなったことに加え,雄しべや雌しべなどの生殖器官が正常に機能していなかったことが考えられる.花托が小さかったことについては,高温では細胞の肥大が十分でなかったことが予測される.また,イチゴの場合,正常な受精をした痩果がオーキシンを生合成し,果実の成長を促進させることが知られているが,花粉の稔性が低かったか,雌しべが正常に機能していなかったために不受精となり,オーキシンの生合成量が低くなり,このことも果実が肥大しなかった原因となったことが予想される.以上のように,高温条件下では花器の異常が誘発されるために,果実の発達が不良となり,品質や収量が低下することが明らかとなった.イチゴは,卸売価額が1,500億円と国産果実ではミカンに次いで高く,最も重要な園芸作物の一つである.現在,日本で栽培されているイチゴの品種のほとんどは一季成り性品種であることから,夏秋季には海外から生鮮果実を輸入している.国産果実に対する需要は大きく,産業振興のためにも夏秋季にも果実生産できる四季成り性品種の導入が求められていが,高温による奇形果,果実サイズや糖度の低下という品質の問題が生じている.特に近年は夏が異常に暑くなる傾向があり,栽培現場では深刻な問題となっている.高温による品質の低下は,一般に,奇形については受精不良(不稔によって痩果が発達しない),果実サイズや糖度の低下は早期成熟が原因であるとされており,品質低下の報告は国内でみられるが,その発生機構は明らかではない.そこで本研究ではこれまでの知見に基づいて,夏秋季に栽培することを目的とした四季成り性品種を供試して,高温条件下での果実品質の低下機構を解明するとともに,克服のための技術開発に資する知見を得ることを目的とした.昼温/夜温を27/22°C(高温)と22/17°C(低温)に設定した2台のファイトトロン内で栽培して生育を比較した.いずれの温度においても,葉の発生やランナーの発生は正常で,高温の方が旺盛な傾向が認められた.一方,生殖成長は,温度に関わらず開花したものの,その後の果実の成熟(肥大や着色)が進まない現象が認められた.この原因として,花粉の不稔,受粉不良,受精不良,果実肥大に必要なオーキシンが生成されなかったことなどが推察されたが,原因の特定には至らなかった.28年度に収穫できた果実に関しては,計画通りに糖や酸などの成分分析を進めたり,果実の成熟に関わる植物ホルモンの含量を測定したりする.対照区と高温区の果実を供試して両者の差異を調べ,高温条件下での果実品質の低下となっている原因を明らかにする.また,28年度で認められた花器の異常について,異常発生の詳細なメカニズムについて検討する.
KAKENHI-PROJECT-16K07585
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エポキシドからの遠隔不斉転写を基盤とするカスケード型中員環形成反応の開発
最終年度となる本年度は,これまでの実績に基づき,[3+4]アニュレーションによる七員環および八員環形成法を天然物合成へ応用するごとにより,本手法の合成化学的有用性を検証することとし,標的天然物として,特異な三環構造から注目を集めているAsteriscanolide,含酸素八員環骨格を有するLauralleneそしてトリノルグアヤン骨格を持つClavukerin Aに着目した.1. Asteriscanolideの合成戦略は,全ての置換基を備えたシクロペンテニルアシルシランを三炭素単位,そしてシクロヘプテノンのエノレートを四炭素単位として用い,生成するビシクロ体の架橋鎖の酸化的開裂により八員環とした後,ラクトン化を含む官能基変換により短工程で合成を行うものである.実際,[3+4]アニュレーションは予想通り進行することが明らかになった.2. Lauralleneの含酸素八員環骨格は2-シクロヘプテノンのエノレートを四炭素単位とする[3÷4]アニュレーション,続く架橋鎖の酸化的開裂により立体選択的かつ高収率で構築することができた。特に注目すべきは,速度論的にも熱力学的にも不利と考えられているα,α'-トランス置換エーテル構造を選択的に形成できる点である.さらに,側鎖の可能基変換を経てCrimminsの中間体に導くことに成功し,Lauralleneの形式全合成を達成した.3.エポキシシラン転位と[3+4]アニュレーションおよびシリル基の1,4-0-to-0転位を組み合わせた新規七員環形成反応を用いて立体選択的に七員環骨格を形成した後,側鎖の官能基変換を経てClavukerin Aの合成中間体に導くこ乏に成功し,形式全合成に成功した.前年度までに得られた成果に基づき,エポキシシランを有するエノレートを四炭素単位とする[3+4]アニュレーション,いわゆる第2世代のタンデム[3+4]アニュレーション/エポキシシラン転位の詳細な反応条件の検討を行った結果,以下のような知見が得られた.(1)第2世代のアニュレーションの鍵となるシリル基の酸素原子から酸素原子への1,4-転位とアニオニックオキシCope転位との競合に対する,シリル基上の置換基の効果について検討した.その結果,tert-butyldimethylsilyl基の場合,対カチオンがリチウムでは,Cope転位が優先したが,対カチオンをカリウム置き換えると,1,4-転位体とCope転位体がほぼ同収率で得られた.一方,phenyldimethylsiyl基やtert-butyldiphenylsilyl基のようなフェニル基を有する場合は,1,4-転位が優先し,目的とするタンデム[3+4]アニュレーション/エポキシシラン転位体が主成績体として得られたが,一部,再度1,4-転位が起こった後,Cope転位がおこった成績体も副生した.(2)エポキシシラン転位における不斉転写の基礎となる,キラルカルバニオンの立体化学的安定性に関する研究を,キラルα-ニトリルカルバニオンを基質として用い検討した.その結果,カルバモイルオキシ基による安定化効果は,それほど大きくはなく,エポキシシラン転位における不斉転写の多くの部分は転位の協奏的過程によるものである可能性が高まった.最終年度となる本年度は,これまでの実績に基づき,[3+4]アニュレーションによる七員環および八員環形成法を天然物合成へ応用するごとにより,本手法の合成化学的有用性を検証することとし,標的天然物として,特異な三環構造から注目を集めているAsteriscanolide,含酸素八員環骨格を有するLauralleneそしてトリノルグアヤン骨格を持つClavukerin Aに着目した.1. Asteriscanolideの合成戦略は,全ての置換基を備えたシクロペンテニルアシルシランを三炭素単位,そしてシクロヘプテノンのエノレートを四炭素単位として用い,生成するビシクロ体の架橋鎖の酸化的開裂により八員環とした後,ラクトン化を含む官能基変換により短工程で合成を行うものである.実際,[3+4]アニュレーションは予想通り進行することが明らかになった.2. Lauralleneの含酸素八員環骨格は2-シクロヘプテノンのエノレートを四炭素単位とする[3÷4]アニュレーション,続く架橋鎖の酸化的開裂により立体選択的かつ高収率で構築することができた。特に注目すべきは,速度論的にも熱力学的にも不利と考えられているα,α'-トランス置換エーテル構造を選択的に形成できる点である.さらに,側鎖の可能基変換を経てCrimminsの中間体に導くことに成功し,Lauralleneの形式全合成を達成した.3.エポキシシラン転位と[3+4]アニュレーションおよびシリル基の1,4-0-to-0転位を組み合わせた新規七員環形成反応を用いて立体選択的に七員環骨格を形成した後,側鎖の官能基変換を経てClavukerin Aの合成中間体に導くこ乏に成功し,形式全合成に成功した.
KAKENHI-PROJECT-18032049
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脳血管内皮細胞でのストア作動性Ca流入経路の分子実体と機能の一分子可視化解析
脳血管内皮細胞は血液脳関門を構成する主要な構成細胞であり、脳血管内皮細胞の正常な細胞増殖は血液脳関門の機能維持において需要な役割を果たすと考えられる。我々は脳血管内皮細胞の細胞増殖・細胞死制御において細胞内遊離Ca^<2+>濃度変化が重要な役割を担うことを明らかにしていることから、本検討では脳血管内皮細胞におけるストア作動性Ca^<2+>流入(SOCE)を介した細胞内Ca^<2+>動態について検討した。本年度の検討によりウシ脳血管内皮細胞株t-BBEC117において主に機能発現するOrai, STIMのサブタイプはOrai1及びSTIM1であり、CRACチャネルを構成しSOCEを担うことを明らかにした。細胞増殖に対するCRACチャネルの寄与を詳細に検討するために、t-BBEC117に対して細胞周期同調培養を行った。その結果、他の細胞周期と比較してG2/M期の細胞群において有意にSOCE活性が低下することが明らかとなった。この細胞周期依存的なSOCE活性低下の原因を検討するために、細胞周期依存的なイオンチャネル発現変化を解析したところG2/M期においてOrai2の発現がmRNA及びタンパクレベルで有意に上昇していた。また、G2/M期におけるSOCE活性低下はsiRNAによるOrai2発現抑制により消失した。以上の結果より、G2/M期においてOrai2発現が増加しSOCEに対して抑制的に作用することが明らかとなった。細胞周期依存的なSOCE活性低下が細胞周期進行に及ぼす影響を検討するために、Orai2発現抑制細胞における細胞周期分布を解析した。その結果、対照群と比較して、発現抑制細胞においてG0/G1期の割合が有意に減少していることが明らかとなった。またMTT法によりOrai2発現抑制細胞における細胞増殖を検討したところ、対照群と比較して有意に細胞増殖が減少した。以上の結果より、Orai2は細胞周期依存的にSOCE活性を変化させ細胞周期進行を制御することで、正常な細胞増殖に寄与することが明らかとなった。当初の計画通りに脳血管内皮細胞株t-BBEC117におけるOrai1/STIM1の機能発現とそれらにより構成されるCa^<2+>シグナルの生理機能を明らかにすることができ、加えてOrai2の新たな生理機能を示唆する結果を得ることができたため。t-BBEC117において、主としてOrai1により構成されるSOCEに対してOrai2がどのような機構を介して抑制的に作用しているかを検討する必要がある。そこで、Orai1とOrai2がヘテロ他量体を形成しイオンチャネルを形成するという考えの下、Orai1及びOrai2蛍光標識体をt-BBEC117へ導入し全反射蛍光顕微鏡による一分子レベルでの可視化解析を行う。また、各細胞周期におけるOraiの寄与をより詳細に検討するためにセルソーターを使用することで細胞を回収し、Orai2発現抑制細胞における細胞周期移行の時間を解析することで、Orai2がどの細胞周期において機能を果たすかを検討する。脳血管内皮細胞は血液脳関門を構成する主要な構成細胞であり、脳血管内皮細胞の正常な細胞増殖は血液脳関門の機能維持において大きな役割を果たすと考えられる。細胞増殖制御において細胞内遊離Ca^<2+>濃度変化が重要な役割を担うことから、脳血管内皮細胞におけるストア作動性Ca^<2+>流入(SOCE)を介した細胞内Ca^<2+>動態について検討した。本年度の検討によりウシ脳血管内皮細胞株t-BBEC117において主に機能発現するOrai, STIMのサブタイプはOrai1及びSTIM1であり、CRACチャネルを構成しSOCEを担うことを明らかにした。細胞増殖に対するCRACチャネルの寄与を詳細に検討するために、t-BBEC117に対して細胞周期同調培養を行った。その結果、他の細胞周期と比較してG2/M期の細胞群において有意にSOCE活性が低下することが明らかとなった。この細胞周期依存的なSOCE活性低下の原因を検討するために、細胞周期依存的なイオンチャネル発現変化を解析したところG2/M期においてOrai2の発現が有意に上昇していた。また、細胞周期依存的なSOCE活性低下はOrai2発現抑制により消失した。このことから、G2/M期においてOrai2発現が増加しSOCEに対して抑制的に作用することが明らかとなった。細胞周期依存的なSOCE活性低下が細胞周期進行に及ぼす影響を検討するために、Orai2発現抑制細胞における細胞周期分布を解析した。その結果、対照群と比較して、発現抑制細胞においてGO/G1期の割合が減少していることが明らかとなった。またMTT法によりOrai2発現抑制細胞における細胞増殖を検討したところ、対照群と比較して有意に細胞増殖が減少した。以上の結果より、Orai2は細胞周期依存的にSOCE活性を変化させ細胞周期進行を制御することで、正常な旨細胞増殖に寄与することが明らかとなった。脳血管内皮細胞は血液脳関門を構成する主要な構成細胞であり、脳血管内皮細胞の正常な細胞増殖は血液脳関門の機能維持において需要な役割を果たすと考えられる。我々は脳血管内皮細胞の細胞増殖・細胞死制御において細胞内遊離Ca^<2+>濃度変化が重要な役割を担うことを明らかにしていることから、本検討では脳血管内皮細胞におけるストア作動性Ca^<2+>流入(SOCE)を介した細胞内Ca^<2+>動態について検討した。
KAKENHI-PROJECT-13J10244
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脳血管内皮細胞でのストア作動性Ca流入経路の分子実体と機能の一分子可視化解析
本年度の検討によりウシ脳血管内皮細胞株t-BBEC117において主に機能発現するOrai, STIMのサブタイプはOrai1及びSTIM1であり、CRACチャネルを構成しSOCEを担うことを明らかにした。細胞増殖に対するCRACチャネルの寄与を詳細に検討するために、t-BBEC117に対して細胞周期同調培養を行った。その結果、他の細胞周期と比較してG2/M期の細胞群において有意にSOCE活性が低下することが明らかとなった。この細胞周期依存的なSOCE活性低下の原因を検討するために、細胞周期依存的なイオンチャネル発現変化を解析したところG2/M期においてOrai2の発現がmRNA及びタンパクレベルで有意に上昇していた。また、G2/M期におけるSOCE活性低下はsiRNAによるOrai2発現抑制により消失した。以上の結果より、G2/M期においてOrai2発現が増加しSOCEに対して抑制的に作用することが明らかとなった。細胞周期依存的なSOCE活性低下が細胞周期進行に及ぼす影響を検討するために、Orai2発現抑制細胞における細胞周期分布を解析した。その結果、対照群と比較して、発現抑制細胞においてG0/G1期の割合が有意に減少していることが明らかとなった。またMTT法によりOrai2発現抑制細胞における細胞増殖を検討したところ、対照群と比較して有意に細胞増殖が減少した。以上の結果より、Orai2は細胞周期依存的にSOCE活性を変化させ細胞周期進行を制御することで、正常な細胞増殖に寄与することが明らかとなった。当初の計画通りに脳血管内皮細胞株t-BBEC117におけるOrai1/STIM1の機能発現とそれらにより構成されるCa^<2+>シグナルの生理機能を明らかにすることができ、加えてOrai2の新たな生理機能を示唆する結果を得ることができたため。t-BBEC117において、主としてOrai1により構成されるSOCEに対してOrai2がどのような機構を介して抑制的に作用しているかを検討する必要がある。そこで、Orai1とOrai2がヘテロ他量体を形成しイオンチャネルを形成するという考えの下、Orai1及びOrai2蛍光標識体をt-BBEC117へ導入し全反射蛍光顕微鏡による一分子レベルでの可視化解析を行う。また、各細胞周期におけるOraiの寄与をより詳細に検討するためにセルソーターを使用することで細胞を回収し、Orai2発現抑制細胞における細胞周期移行の時間を解析することで、Orai2がどの細胞周期において機能を果たすかを検討する。当初の計画通りに脳血管内皮細胞株t-BBEC117におけるOrai1/STIM1の機能発現とそれらにより構成されるCa^<2+>シグナルの生理機能を明らかにすることができたため。t-BBEC117において、主としてOrai1により構成されるSOCEに対してOrai2がどのような機構を介して抑制的に作用しているかを検討するために、全反射蛍光顕微鏡を使用してOrai1及びOrai2蛍光標識体を一分子レベルで可視化解析する。また、各細胞周期におけるOraiの発現をより詳細に検討するためにEACSセルソーターを使用することで細胞を回収し実験に使用する。
KAKENHI-PROJECT-13J10244
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企業の女性技術者人材活用に関する実証的研究ー卒後含む工学女子長期キャリア教育構想
本研究では、企業、女性技術者に対する調査から、企業の人材活用状況、女性活躍推進整備、両立支援制度、女性技術者のキャリア継続・形成等に関して、業界別特徴を明らかにした。また、元技術職の再就職希望者に対する調査から、キャリアの再構築、離職者の再就職の障壁など、キャリア形成の可能性を明らかにした。これらの研究成果を基盤とし、キャリア教育プログラムの一環として、工学系女子学生が女性技術者として定着・活躍できるキャリア支援講座を設計・実践するとともに、女性技術者への再就職支援システムを試行的に設計した。1高専を卒業した技術者が就労する企業に対して、女性技術者の雇用に関する郵送調査を実施し、14の企業および団体より回答を得た。2高専を卒業した女性技術者が活躍する企業10社に対して、その人材活用等に関してヒアリング調査を実施した。また、同企業に勤務する女性技術者に対しても、キャリア形成に関してヒアリング調査を実施した。3高専における企業説明会等を利用し、企業に対して女性技術者の雇用、活用に関して積極的に情報収集に努め、109社からの回答および情報を蓄積した。4女性技術者キャリア冊子vol.4(高専を卒業した、高専教員・技術職員特集)を完成させ、全国高専、教育関係者、関連学界、女子卒業生等に送付し、研究成果を広く公表した。各機関・各自において有効に活用されている。5企業の女性技術者人材活用および女性技術者のキャリア形成に関して、研究成果を学会等にて発表した。内田由理子「活躍する女性技術者を育成するために」(平成25年度電気学会全国大会シンポジウム)、山本孝子「女子卒業生の再就職状況」(高専教育研究フォーラム)6研究成果を生かした高専女子キャリア支援講座の講演を行った。内田由理子「高専女子卒業生に学ぶ」(神戸高専)、「輝く女性技術者であり続けるために」(沖縄高専)、「男女がともに働くために」(宇部高専)、「工学系女子が歩む卒後の働き方・生き方に学ぼう」(東京高専)、「男女共同参画時代を生きるために」(奈良高専)1高専を卒業した技術者が就労する企業に対して、女性技術者の雇用に関する調査を実施した。書面調査では41社、ヒアリング調査では81社より回答を得て、情報を蓄積した。2高専を卒業した女性技術者10名に対して、キャリア形成に関してヒアリング調査を実施した。3女性技術者キャリア冊子vol.5(高専卒業生が活躍している企業特集)作成の準備を行った。4企業の女性技術者人材活用および女性技術者のキャリア形成に関して、研究成果を論文執筆した。「女性技術者育成のための女子キャリア教育」、日本高専学会、日本高専学会誌Vol.19 No.2,pp.29-30、2014年5企業の女性技術者人材活用および女性技術者のキャリア形成に関して、研究成果を学会発表した。「多様な業界での女性技術者のキャリア形成」、日本工学教育協会、平成26年度第62回年次大会、平成26年8月29日於広島大学。「香川高専高松・詫間両キャンパス協同の女性技術者育成のための取り組み」、日本高専学会、日本高専学会第20回年会講演会講演論文集、39頁40頁、平成25年8月30日、於函館市国際水産・海洋総合研究センター。6企業の女性技術者人材活用および女性技術者のキャリア形成に関して、関連教育機関にて講演を行った。「女性技術者育成のための女子キャリア教育」(独)国立日本高専機構,平成26年度全国高専教育フォーラムAP26_3_3,8月21日、於金沢大学。「工学系女子学生のキャリアパスを考える」、女子学生のキャリア形成支援セミナー、名古屋工業大学、平成26年7月2日於名古屋工業大学。「輝く女性技術者であり続けるためにーキャリア形成と高専生活ー」、女子学生のためのキャリア支援講演会、鹿児島高専、平成26年8月1日於鹿児島高専。「女性技術者のキャリア形成」、女性技術者のキャリア形成に関する講演会、茨城高専、平成26年8月6日於茨城高専。1.高専を卒業した技術者が就労する企業に対して、女性技術者の就労に関するヒアリング調査、郵送調査を実施した。主な調査内容は採用状況、配属、上位職登用、就労継続、キャリア形成、女性の活躍推進、家庭との両立支援制度、再雇用制度等である。2.高専女子卒業生の技術職者、技術職離職者に対するヒアリング調査、郵送調査を実施した。主な調査内容は就労継続状況、職場の子育て・介護支援制度、仕事と家庭との両立の工夫、離職理由、再就職状況、高専教育等である。3.「高専卒女性技術者キャリア冊子vol.4」(A4版24ページ)、「高専卒女性技術者キャリア冊子vol.5」(A4版24ページ)、を作成し発行した。前者は進学者のキャリアパスの観点から高専教員・技術職員特集号とした。掲載者は10名である(函館高専一般科目数学、明石高専都市システム工学科、群馬高専教育研究支援センター、津山高専教育研究支援センター、八戸高専物質工学科、弓削商船高専商船学科、奈良高専電子制御工学科、大分高専技術部、苫小牧港線物質工学科、富山港線技術室)。後者は従前より女性技術者のキャリア形成に積極的な企業特集号とした。
KAKENHI-PROJECT-25360060
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企業の女性技術者人材活用に関する実証的研究ー卒後含む工学女子長期キャリア教育構想
掲載企業等は10社である(酉島製作所、日本分光、GEヘルスケア・ジャパン、シスメックス、ダイキン工業、ブラザー工業、国際ソフトウェア、NTTデータフロンティア、日東分析、周南市役所)。冊子は、高専女子学生に対する進路指導、キャリア教育に活用してもらうために、全国の高専校長・進路指導担当者、高専関係者へ送付した。4.キャリア教育プログラムの構築の一環として、就労継続意識とワークライフバランスに焦点を当てた工学系女子キャリア支援講座を設計し、十数校の高専にて実施した。また、技術者再就職支援システムを試行的に設計した。本研究では、企業、女性技術者に対する調査から、企業の人材活用状況、女性活躍推進整備、両立支援制度、女性技術者のキャリア継続・形成等に関して、業界別特徴を明らかにした。また、元技術職の再就職希望者に対する調査から、キャリアの再構築、離職者の再就職の障壁など、キャリア形成の可能性を明らかにした。これらの研究成果を基盤とし、キャリア教育プログラムの一環として、工学系女子学生が女性技術者として定着・活躍できるキャリア支援講座を設計・実践するとともに、女性技術者への再就職支援システムを試行的に設計した。高専を卒業した技術者が就労する企業に対して、書面調査、ヒアリング調査を実施し、データを蓄積することができた。また、高専を卒業した女性技術者にヒアリング調査を実施し、キャリア形成に関するデータを蓄積することができた。女性技術者キャリア冊子vol.5(高専卒業生が活躍している企業特集)の作成に着手した。企業からの情報提供が大幅に遅れたため、発行は2015年6月を予定している。女性学、歴史教育学電子会議を活発に行いながら、蓄積してきた調査データの分析を行う。それを踏まえ、工学系女子学生キャリア教育プログラム、工学系高等教育機関における再就職支援策を立案する。また、女性技術者キャリア冊子vol.5、vol.6の発行に努める。高専を卒業した技術者が就労する企業に対して、郵送調査、ヒアリング調査を行い、計133社のデータを集積することができた。また、女性技術者9名に対してもヒアリング調査を実施し、キャリア形成に関するデータを集積することができた。女性技術者キャリア冊子vol.4(高専を卒業した、高専教員・技術職員特集)を完成させ、全国高専、教育関係者、関連学界、女子卒業生等に送付し、研究成果を広く公表した。各機関・各自において有効に活用されている。企業の女性技術者人材活用および女性技術者のキャリア形成に関して、研究成果を学会発表や全国高専のキャリア支援講座の講演にて生かしている。冊子発行が次年度に変更(就職活動スケジュールの大幅変更のため、企業からのデータ提出が年度末あるいは次年度に入ってから)となったため、発行にともなう印刷費、謝金、通信費等が繰り越しとなった。電子会議を活発に行いながら、調査対象企業、女性技術者、再就職希望者を決定し、調査分担、スケジュールを決定し、調査を実施する。その結果を踏まえ、工学系女子学生キャリア教育プログラム、工学系高等教育機関における再就職支援策を立案する。また、女性技術者キャリア冊子vol.5の発行に努める。繰越額は、次年度当初に変更となった冊子発行に使用する。研究分担者に分配した旅費50000円に対して、46940円の執行であったため。
KAKENHI-PROJECT-25360060
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線虫の休眠誘導フェロモンに関する化学的研究
自活性土壌線虫Caenorhabditis elegansには休眠現象が知られており,生育密度の増加によるフェロモン濃度の上昇,食餌の枯渇に応答して生育を一時的に停止し,耐性幼虫を形成する。この耐性幼虫形成に関してはTGF-β様ペプチドおよびインスリン様ペプチドを起点とした2つの情報伝達経路が知られている。しかしながら,休眠誘起の直接要因であるフェロモンの正体は未だ明らかにされていない。そこで本研究では,"フェロモン合成不全突然変異線虫"を使用することでバイオアッセイの大幅な改善を図り,ごく微量に存在すると考えられる休眠誘導フェロモンの単離を試みるごとにした。【バイオアッセイ系の改善】培地濃度、飼育温度、フェロモン合成不全株daf-22の有効性を検討した。その結果、培地濃度は通常の飼育培地の1/4濃度が最適であること(餌シグナルの軽減)、飼育温度は25°Cが最適であること(耐性幼虫形成に対する温度要因の関与)、使用する株はdaf-22が極めて有効であること(バックグラウンドの軽減)が明らかとなった。【フェロモンの化学的性質】まず,従来法に従って培養濾液を煮詰め、エタノールで抽出・乾固することによりフェロモン粗抽出物を得た。これをプロテイナーゼK処理し、フェロモン活性が残存するかどうかを検討した。その結果、処理後も同様のフェロモンが認められたことから、フェロモンは非タンパク性の物質であることが判明した。次いで、フェロモンの一次精製法を検討したところ、有機溶媒には分配されないものの、活性炭に吸着することが判明した。さらに、中性条件下でイオン交換樹脂への吸着を検討したところ、QMAに吸着したことから、本物質は酸性非タンパク性物質であると考えられた。現在、ゲル濾過による精製を試みている。自活性土壌線虫Caenorhabditis elegansには休眠現象が知られており,生育密度の増加によるフェロモン濃度の上昇,食餌の枯渇に応答して生育を一時的に停止し,耐性幼虫を形成する。この耐性幼虫形成に関してはTGF-β様ペプチドおよびインスリン様ペプチドを起点とした2つの情報伝達経路が知られている。しかしながら,休眠誘起の直接要因であるフェロモンの正体は未だ明らかにされていない。そこで本研究では,"フェロモン合成不全突然変異線虫"を使用することでバイオアッセイの大幅な改善を図り,ごく微量に存在すると考えられる休眠誘導フェロモンの単離を試みるごとにした。【バイオアッセイ系の改善】培地濃度、飼育温度、フェロモン合成不全株daf-22の有効性を検討した。その結果、培地濃度は通常の飼育培地の1/4濃度が最適であること(餌シグナルの軽減)、飼育温度は25°Cが最適であること(耐性幼虫形成に対する温度要因の関与)、使用する株はdaf-22が極めて有効であること(バックグラウンドの軽減)が明らかとなった。【フェロモンの化学的性質】まず,従来法に従って培養濾液を煮詰め、エタノールで抽出・乾固することによりフェロモン粗抽出物を得た。これをプロテイナーゼK処理し、フェロモン活性が残存するかどうかを検討した。その結果、処理後も同様のフェロモンが認められたことから、フェロモンは非タンパク性の物質であることが判明した。次いで、フェロモンの一次精製法を検討したところ、有機溶媒には分配されないものの、活性炭に吸着することが判明した。さらに、中性条件下でイオン交換樹脂への吸着を検討したところ、QMAに吸着したことから、本物質は酸性非タンパク性物質であると考えられた。現在、ゲル濾過による精製を試みている。
KAKENHI-PROJECT-14656045
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14656045
歴史資産を擁する都市域を対象とした地域情報システムの構築に関する日仏共同研究
本研究は、歴史資産を有する日仏の都市を対象に、2003年度から2005年度の3年間にわたって実施された。歴史都市を形成する土地利用、不動産、建築、文化財、景観、住民属性などに関する複合的な情報を一元的にマネージできる仕組みをつくり、歴史資産の活用に資する新たな情報基盤を構築することを目的としている。既存のGISデータベースの上に新たな調査を行って抽出された歴史資源をレイヤリングして地域の情報データベースを作成するとともに、GPSを用いた来街者の追跡調査から観光動態と把握する。また、CGによる景観シミュレーションや景観保全に関する制度の比較研究を行った。こうした作業を行うため、我国では、鎌倉、金沢、小田原、横浜等、フランス(仏語圏)においては、ニース、リエージュ、ナンシー、リヨン等においてケーススタディを実施し、歴史資産のマッピングとデジタルアーカイブづくりを行った。対象地域における悉皆調査によって歴史資産を抽出するとともに、近代建築遺産や産業遺産の評価付けなどを行い、新たな歴史資産のカテゴリーを確認した。本研究の実施に際しては、日仏の研究機関、自治体を結ぶ研究プラットホームの構築も大きな課題で、2003年以来、東京、京都、鎌倉、金沢、横浜、名古屋において一連の「日仏都市会議」を開催し、両国の関係者の間で、研究成果を発表し、都市の歴史資源、景観、エスニシティ等について議論を深めた。本研究は、歴史資産を有する日仏の都市を対象に、2003年度から2005年度の3年間にわたって実施された。歴史都市を形成する土地利用、不動産、建築、文化財、景観、住民属性などに関する複合的な情報を一元的にマネージできる仕組みをつくり、歴史資産の活用に資する新たな情報基盤を構築することを目的としている。既存のGISデータベースの上に新たな調査を行って抽出された歴史資源をレイヤリングして地域の情報データベースを作成するとともに、GPSを用いた来街者の追跡調査から観光動態と把握する。また、CGによる景観シミュレーションや景観保全に関する制度の比較研究を行った。こうした作業を行うため、我国では、鎌倉、金沢、小田原、横浜等、フランス(仏語圏)においては、ニース、リエージュ、ナンシー、リヨン等においてケーススタディを実施し、歴史資産のマッピングとデジタルアーカイブづくりを行った。対象地域における悉皆調査によって歴史資産を抽出するとともに、近代建築遺産や産業遺産の評価付けなどを行い、新たな歴史資産のカテゴリーを確認した。本研究の実施に際しては、日仏の研究機関、自治体を結ぶ研究プラットホームの構築も大きな課題で、2003年以来、東京、京都、鎌倉、金沢、横浜、名古屋において一連の「日仏都市会議」を開催し、両国の関係者の間で、研究成果を発表し、都市の歴史資源、景観、エスニシティ等について議論を深めた。2003年度における研究は日仏の当該機関の居力を下敷きに、以下の手順を追って実施された。-建築・都市遺産とそのガバナンス、情報システム化に関する既往研究のまとめとその体系化(2003年4-8月)-フランス文化省における歴史都市政策とその情報管理に関する調査(9月)-鎌倉(長谷・山之内・雪ノ下)のGIS化とその分析(8-12月)-金沢(金沢城周辺地区)のGIS化とその分析(10-3月)-小田原中心市街地のGIS化ならびにGPSの利用(4-10月)-ナンシー(旧市街)のGIS化とその分析(9-12月)-フランスの歴史都市(リヨン・エクス=アン=プロヴァンス、ボルドー・リール)における歴史地区の実態調査とその情報管理システムに関する調査(1月)-工場群等を含んだ日仏の密集市街地の比較研究(横浜・リヨン・トルコワン、サン=ドニ)(10-3月)また、日仏間における研究は、以下の会議、ワークショップにて報告され、議論を行なった。-近代遺産とそのガバナンスをめぐる日仏都市会議実施(京都:5月26-27日、東京:5月29-30日)-金沢ワークショップ(11月10-11日)-ナンシー・ワークショップ(11月24日)上記の研究から得られた成果は以下の通りである。1.地籍単位での都市形成を明らかにし、土地所有・建造物の建設サイクル・建築形態等の経年変化と地区単位での建築・空地・緑地などの広がりを組み合わせたGISデータベースの作成(ケーススタディ都市としての鎌倉・金沢・小田原・ナンシー)2.地域の悉皆調査による建築状態の把握と、新たな近代遺産の発見、ならびにリスト化(とりわけ我国における近代和風建築の発見)3.近代建築遺産に対する重点施策の立ち上げとその保護技術の開発(文化財クラスとはなりえない町並みや建築群に対する施策)4.歴史資産を有した都市間での情報と人材の交換に対する新たな施策の立ち上げ(日仏間の共同データベースの開発)5.近代に形成された密集市街地の把握と建築遺産を介した地域ガバナンスに対する知見の獲得(地域データベースの活用による新たな都市活性化プログラムの策定)本研究は、歴史都市の主として建築資産をデータベース化し、その積極的活用を目指した制度的・技術的方法論を構築し、日本とフランスの事例を比較しながらそのノウハウの交換、人材交流の基盤をつくることを目的としている。2004年度は、鎌倉と金沢を主たる対象地として、建築物の悉皆調査、ヒアリング調査、地籍図・登記簿調査、実測調査、GISデータベース化作業等により近代和風建築の分布状況とその保全について考察した。鎌倉での調査結果からは、近世の社寺を中心とする都市構造の上に、性質が異なる近代住宅群が重層し、特有の都市景観が形成されたことがわかった。
KAKENHI-PROJECT-15360327
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歴史資産を擁する都市域を対象とした地域情報システムの構築に関する日仏共同研究
金沢での調査結果からは、大正期から昭和初期に建てられた近代和風住宅群の固有の建築的特徴が明らかとなった。また、GISにより多種類の資料や情報を重ね合わせる作業からは、土地利用形態の変遷の可視化など、より都市の歴史性を反映した地域計画の可能性が示唆された。GISデータベースは、建築意匠や構法など、都市固有の調査項目を設定することにより、都市開発や歴史的環境保全を総合的に考えていく上で有効な方法となることが明らかとなった。また、日仏比較研究のプラットフォームとして、鎌倉-ニース会議(6月)、金沢-ナンシー会議(11月)、横浜-リヨン会議(2月)と3回の国際会議を開催した。都市インフラストラクチュア、土地利用、地籍管理、生態系等の都市管理システムの観点から問題を提起し、建築物データ、文化財分布、緑地やオープンスペースなど悉皆的な情報基盤が、日本においてもより戦略的に構築すべきである点が確認された。建築資産を含めた文化資源再利用のプログラム化に向けて、今後もさらに取り組んでいきたい。2005年度は、前年度に実施したケーススタディとしての金沢・鎌倉の都市情報基盤づくりを発展させ、他地域との比較、その制度面での拡充を行った。なかでも、GIS基盤の制作、景観シミュレーション、諸制度との擦り合わせが主たる作業となり、京都、熊本、松江についても現地関係者(自治体・大学)歴史資源と都市情報基盤との関係を考察した。フランスにおいてはナンシー、パリを検討の対象とし、文化省での研究会議を実施している。我国では、景観法の施行により、地域における景観計画への要望が急速に高まっていることを踏まえ、都市情報基盤が景観づくりにどこまで寄与するかをチェックできた点で、今回の作業は有効であった。また、個々の歴史的建造物について焦点を絞り、実測や文献調査から抽出したデータをデジタルアーカイブに入力する作業を進めた。とりわけ20世紀の近代建築遺産について、重要度の如何を問わず、悉皆的にデータベースを作成し、その経年的変化を記録する仕組みづくりが大きな課題となった。また、一昨年以来発展させてきた日仏研究のプラットホーム構築の延長として、名古屋シンポジウム(2005年11月)、パリ・シンポジウム(2006年1月)を実施し、日仏の関係者(ベルギーからの発表者も含む)を集めて、成果の交換を行った。デジタルアーカイブ、景観制度、保全技術、産業遺産が主たるテーマとなり、この3年間の整理と、今後の展望について議論を交わした。2005年度は研究の最終年であるため、下半期は成果の出版に向けてまとめと整理の作業を行った。出版は、2006年11月を予定している。
KAKENHI-PROJECT-15360327
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ライダーおよび地上モニタリングネットワークによるエアロゾル動態解明
エアロゾルの植物影響、健康影響の基礎データとなるエアロゾルの分布を様々な時間空間スケールで把握することを目的として、ライダーネットワーク観測および山岳部を含む地上観測を実施した。ラマン散乱ライダーから、黄砂、硫酸塩など、海塩に加えて、ブラックカーボンを推定する手法を開発し分布の特徴を解析した。また、長期間のライダーデータを疫学研究に提供した。山岳における連続観測とサンプリングを行いエアロゾルの動態、組成、混合状態を解析した。エアロゾルの植物影響、健康影響の基礎データとなる、東アジア地域のエアロゾル濃度分布を数時間から年々変化までの様々な時間スケールで把握することを目的として、ライダーネットワークおよび山岳における地上モニタリング装置による通年観測を行うとともに、大気汚染モニタリング局等のデータを活用する。これらの観測と高分解能地域化学輸送モデルを用いてエアロゾル(硫酸塩、ブラックカーボン、黄砂、海塩など)の分布と動態を解析し、イベント毎のエアロゾルの輸送の特徴や、地域毎のエアロゾル分布の気候学的な特徴を明らかにする。また、植物影響、健康影響研究にデータを提供して連携することによって、植物影響、健康影響の指標となるパラメータと時間スケールを明らかにする。エアロゾルの植物影響、健康影響の基礎データとなるエアロゾルの分布を様々な時間空間スケールで把握することを目的として、ライダーネットワーク観測および山岳部を含む地上観測を実施した。ラマン散乱ライダーから、黄砂、硫酸塩など、海塩に加えて、ブラックカーボンを推定する手法を開発し分布の特徴を解析した。また、長期間のライダーデータを疫学研究に提供した。山岳における連続観測とサンプリングを行いエアロゾルの動態、組成、混合状態を解析した。エアロゾルの植物影響、健康影響の基礎データとなる東アジア地域のエアロゾルの濃度分布を数時間から年々変化までのさまざまな時間スケールで把握するために、20地点に展開されている既存のライダーネットワークおよび地上モニタリングネットワークによる連続観測を行うことを目的とする。本年度は、既存ライダーネットワークのうち、つくば、辺戸岬、ソウルのライダーにラマン散乱受信系を追加し、従来の2波長(1064nm,532nm)の後方散乱と偏光解消度(532nm)の測定に加えて、独立に532nmの消散係数を測定するための装置の製作を行った。また、ラマン散乱データを含む解析アルゴリズムを開発し、水溶性エアロゾル、ミネラルダスト、海塩に加えてブラックカーボンを分離してそれぞれの濃度分布を推定できることを示した。また、従来モニタリングデータの無い山岳部においてエアロゾル濃度を通年観測するために、光学粒子カウンタシステムを整備し、榛名山に設置して観測を開始した。さらに、既存の大気汚染モニタリング局のデータや中国の大気汚染指標(API)のデータを定常的に収集するとともに、これらのデータから領域スケールの現象と局所的な汚染を分離する手法等の検討を行った。この他、高分解能の領域化学輸送モデル(CFORS)を、気象庁の数値予報データを境界値として国立環境研究所において定常運転し、ライダーネットワークデータ、地上モニタリングデータとの比較解析を行った。フイターネットワーク,山岳観測を含む地上観測,既存の大気汚染モニタリンクネットワーク,地域化学輸送モデルを用いてエアロゾルと動態を把握し,地域毎のエアロゾル種,エアロゾル濃度の気候学的な特徴,イべント毎のエアロゾル濃度変化などを明らかにすることを目的とする。特に気象条件に依存する様々な時間空間スケールのエアロゾル濃度分布の変化に注目し,植物影響,健康影響の指標となるパラメータと時間スケールを検討する。ライダーネットワークはこれまでの先行研究で構築されたもので,2波長(532nm,1064nm)偏光(532nm)ライダーが東アジアの約20地点に展開され通年連続観測が行われている。本研究では,エアロゾルの性状をより良く把握するために,新たにネットワークの主要な地点(福江島,辺戸岬,松江,ソウル)のライダーにラマン散乱受信器(607nm)を追加する改良を加え連続観測を開始した。ラマン散乱の測定は夜間に限られるが,黄砂,水溶性エアロゾルに加えてブラックカーボンの分布を推定することが可能となった。一方,榛名山,新穂高,駒ヶ岳に通年観測が可能な光パーティクルカウンターを設置し連観測を開始した。また,新穂高では土アロゾルのサンプリング預を行った。本新学術領域研究で航空機観測が行われた2009年10月には,黄砂および大汚染性エアロゾルの地スケールの移流が観測ネットワークにより捉えられた。観測データを領域化学輸送モデルと地較してエアロゾルの発生輸送を解析した。さらに,航空機観測,地上の化学分析等のテータと合わせた解析を進めている。この他,ライダーによる過去の継続的なデータを健康影響研究に利用るためのデータ処理手法を検討し,,2003年以降の長崎のデータについて地上の黄砂と大気汚染性エアロゾルの消散係数の時系列データを作成して健康影響研究班に提供した。東アジアの20地点に展開する2波長偏光ライダーネットワークの主要な観測地点のライダーにラマン散乱受信システム(波長607nm)を追加する改良を、昨年度までに実施した、つくば、辺戸岬、福江島、松江、ソウルに加えて、タイ国ピマイについて実施した。これらの地点で夜間のラマン散乱測定を含む自動連続観測を行った。また、その他の地点についても、2波長偏光ライダー(1064nmと532nmの後方散乱と532nmの偏光解消度)のデータを連続的に取得した。ラマン散乱を含む観測データから、雲、エアロゾルの判定マスク、消散係数、後方散乱係数、ライダー比、偏光解消度を導出するデータ処理システムを構築した。また、リアルタイム表示および解析データを共有するためのサーバーを整備した。
KAKENHI-PLANNED-20120006
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ライダーおよび地上モニタリングネットワークによるエアロゾル動態解明
取得したライダーデータを解析し、ライダー比、偏光解消度等の統計的な分布を調べた。また、水溶性エアロゾル、ブラックカーボン、黄砂、海塩の分布を推定するアルゴリズムの検討を行った。一方、高分解能の領域化学輸送モデルCFORSを、気象庁の数値予報データを境界値として定常運転した。観測された主要なエアロゾルイベントについて現象の解析を行うとともに、黄砂および大気汚染エアロゾルの消散係数の解析データを健康影響研究に提供した。また、ライダーデータで同化した黄砂輸送モデルと地上観測を比較し、黄砂消散係数と黄砂のPM2.5との間に高い相関があることを明らかにした。山岳観測では、榛名山、北アルプス(新穂高ロープウェイ頂上駅)、中央アルプス(駒ヶ岳ロープウェイ頂上駅)の粒子カウンタによる観測を継続して実施した。榛名山においてはエアロゾルサンプル採取と分析も行った。山岳観測および地上モニタリング局のデータを取得、解析し、アーカイブした。また、光粒子カウンタに偏光測定を加えて非球形粒子を判別して測定する手法を開発した。前年度までに本研究で整備したつくば、辺戸岬、ソウル、福江島、松江、タイ国ピマイのラマン散乱測定を含む東アジアのライダーネットワーク(全20地点)により、エアロゾルの分布と動態を通年連続して観測した。ラマン散乱から得られる消散係数と2波長の後方散乱係数、1波長の偏光解消度からエアロゾル種(硫酸エアロゾル、海塩、黄砂、ブラックカーボン)を分離して、それぞれの分布を導出した。一方、山岳域(北アルプス新穂高岳、中央アルプス駒ヶ岳、榛名山)において光学式粒子計数器(OPC)によるエアロゾルの通年観測を行った。また、エアロゾルの採取も行い、電子顕微鏡およびエネルギー分散型X線解析装置による解析を行った。さらに、粒子毎に散乱強度と偏光特性を測定する偏光OPCを整備し、福岡と松江で観測を開始した。ライダーネットワーク、山岳観測および既存の地上モニタリングネットワークにより中国大陸から輸送されるエアロゾルの立体構造が捉えられた。事例解析の結果、大気汚染性エアロゾルと黄砂の混合や、輸送における山岳の影響、上空を輸送される黄砂の混合層活動による地上へ輸送などが明らかにされた。また、電顕解析では内部混合したエアロゾルが高い頻度で観測された。一方、ライダーから得られる黄砂と大気汚染性エアロゾルの消散係数を健康影響研究に提供するとともに、光学的なパラメータ(消散係数)と重量濃度の関係について(A02-P06課題と連携して)検討した。その結果、黄砂消散係数はPM2.5中のFe濃度と良い相関があり、黄砂消散係数がPM2.5の黄砂成分と良い相関を持つことが実証された。これによって、黄砂消散係数が健康影響における黄砂の指標のひとつとして妥当であることが裏づけられた。つくば、辺戸岬、ソウル、福江島、松江、タイ国ピマイの6地点のラマン散乱測定を含む
KAKENHI-PLANNED-20120006
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ヒドロゲナーゼ遺伝子の解析による水田土壌中の水素生成菌群集の生態解明
本研究は、水田土壌の水素生成菌群集の多様性と動態を明らかにすることを目的とし、水素生成に関わる酵素[FeFe]-ヒドロゲナーゼのhydA遺伝子を対象にした分子生物学的な手法による解析を行った。本研究より、水田土壌には[FeFe]-ヒドロゲナーゼを有する多様な微生物が生息し、それらの菌は安定した群集構造を形成していることが明らかになった。一方で、土壌中での嫌気的な有機物分解に伴い、hydAを転写した菌群の構成は大きく変化することを示し、水田土壌の有機物分解過程において、水素生成を担う菌群とその水素生成活性は土壌条件によって変化することが示唆された。水素は、嫌気的な有機物分解過程で生じる極めて重要な中間代謝産物であり、その生成、消費反応は最終分解過程であるメタン生成反応を制御する。本研究では、水素生成を担う[FeFe]-ヒドロゲナーゼのhydA遺伝子を対象とした解析により、水田土壌の水素生成菌群集の生態を明らかにすることを目的とした。(1) hydA遺伝子を対象としたPCR-DGGE法による群集構造解析手法を確立し、水田より継時的に採取・抽出した土壌DNAを対象として水素生成微生物群集構造を解析した。時期で異なるバンドや地点ごとに異なるバンドが一部検出されたものの、DGGEバンドパターンは年間を通じて大きく変化せず、水素生成微生物群集構造は年間を通じて安定していることが示唆された。(2)水田土壌に稲わらを添加して嫌気湛水培養実験を行った。hydA転写産物のクローンライブラリー解析を行った結果、DeltaproteobacteriaおよびFirmicutesのhydAと相同性の高い配列が多く得られたが、培養日によりその割合は大きく変化した。よって、土壌の還元状態の変化や稲わら分解に伴い、水田土壌の水素生成菌群集の活性は変化することが推察された。(3)水田土壌から水素生成微生物の分離を試みた。hydA遺伝子を保有する菌が集積し、それらは全て水素生成能を持つことが確認された。一方でhydAは検出されないが水素生成能を有する菌も集積し、[FeFe]-ヒドロゲナーゼ以外の反応により水素生成が起こることも示唆された。以上より、水田土壌の水素生成微生物群集の群集構造は年間を通じて安定していることや、活性を有する水素生成微生物は土壌条件により変化すること、[FeFe]-ヒドロゲナーゼが水素生成に関わっていることが明らかになった。本研究は、水田土壌の水素生成菌群集の多様性と動態を明らかにすることを目的とし、水素生成に関わる酵素[FeFe]-ヒドロゲナーゼのhydA遺伝子を対象にした分子生物学的な手法による解析を行った。本研究より、水田土壌には[FeFe]-ヒドロゲナーゼを有する多様な微生物が生息し、それらの菌は安定した群集構造を形成していることが明らかになった。一方で、土壌中での嫌気的な有機物分解に伴い、hydAを転写した菌群の構成は大きく変化することを示し、水田土壌の有機物分解過程において、水素生成を担う菌群とその水素生成活性は土壌条件によって変化することが示唆された。水素は、水田土壌などの嫌気的な環境中の有機物分解過程で生じる極めて重要な中間代謝産物であり、その生成、消費反応は最終分解過程であるメタン生成反応を制御する。水素の生成、消費反応を触媒する酵素ヒドロゲナーゼの中で、活性部位に2つのFeを持つ[FeFe]-ヒドロゲナーゼは水素生成反応を担っている。本研究では、水田土壌微生物の[FeFe]-ヒドロゲナーゼhydA遺伝子を対象とした分子生態学的手法を用いた研究により、水素生成菌群集の生態を明らかにすることを目的とする。今年度は、これまでに報告されている[FeFe]-ヒドロゲナーゼhydA遺伝子を対象にしたプライマーセット3種類を用いてPCR条件、クローンライブラリー解析を行い、水田土壌試料の解析に最適なプライマーセットを検討した。すなわち、プライマーhydF1/hydR1、FeFe-272F/FeFe-427R、HydH1f/HydH3rを用いてPCR条件を検討した後、これらのPCR産物を用いてクローンライブラリー解析を行った。各プライマーセットの間で検出される微生物群とその割合を比較したが、主要な微生物群が共通しており検出範囲にも大きな差はないと考えられた。そのため、HydH1f/HydH3rを以下の解析で使用することとした。落水および湛水期に採取した水田土壌を対象に解析を進めた結果、多様な分類群に属する細菌と相同性の高いFeFe-ヒドロゲナーゼ遺伝子を検出した。特に、Dehalococcoides、Clostridiales、Desulfovibrionalesに属する細菌のもつFeFe-ヒドロゲナーゼ遺伝子と高い相同性を持つクローンが、検出数はそれぞれで異なっていたものの、落水および湛水土壌のいずれについても多数得られた。したがって、これらに属する菌群が、水田土壌において水素生成反応の一部を担うことが示唆された。本研究では、初年度にこれまでに[FeFe]-ヒドロゲナーゼhydA遺伝子を対象にしたプライマーセットを用いてPCR、クローンライブラリー解析を行い、水田土壌試料の解析に最適なプライマーセットを検討することを計画していた。このステップが最も大切であり、時間もかかることは予想していたが、平成24年度中にこの段階をクリアすることができ、順調に研究が進んでいると言える。平成25年度は、検討したプライマーセットによる群集構造解析法(DGGE法、T-RFLP法、DNAマイクロアレイ法など)を検討、確立する。
KAKENHI-PROJECT-24780318
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ヒドロゲナーゼ遺伝子の解析による水田土壌中の水素生成菌群集の生態解明
室内培養実験を行い、土壌の逐次的な還元過程、メタン生成活性の変化と水素生成菌群集の活性の変化、その関係性をRNAを対象とした解析により解明を試みる。また、安定同位体でラベルした植物遺体を利用したStable Isotope Probing (SIP)法により、土壌中で植物遺体の分解に関わる水素生成菌群を明らかにする。合わせて、水田土壌より水素生成菌を集積、分離し、その菌学的特徴を明らかにする。以上より、水田土壌中の[FeFe]-ヒドロゲナーゼ水素生成菌群集の生態を明らかにする。研究計画に則り研究費を使用する。すなわち、土壌の室内培養実験や嫌気性菌の培養に必要な一般ガラス器具、RNA抽出や群集構造解析に必要な消耗品類、SIP法による解析に必要な消耗品類、その他消耗品を中心に使用する。また、機器のメンテナンス、得られた成果を学会等で発表するための旅費や、学術雑誌への投稿料などにも使用する。
KAKENHI-PROJECT-24780318
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食道癌における線維芽細胞増殖因子受容体(KGFR)の発現と局在および分子標的治療
近年の分子標的治療薬の進歩は目覚ましく、増殖因子受容体に関連した薬剤は臨床応用され、その効果も確認されている。そこで分子標的治療分野では比較的後進の食道癌でもこれらの治療が応用できると考え、細胞増殖や血管新生に重要な役割を果たしているkeratinocyte growth factor receptor (KGFR)の食道癌における役割に着目した。KGFRが食道癌の増殖に関与しているのか、KGFRを阻害することにより食道癌の増殖が抑制できる可能性があるのかについて研究を進め、分子標的治療法としての将来性につき検討した。近年の分子標的治療薬の進歩は目覚ましく、増殖因子受容体に関連した薬剤は臨床応用され、その効果も確認されている。そこで分子標的治療分野では比較的後進の食道癌でもこれらの治療が応用できると考え、細胞増殖や血管新生に重要な役割を果たしているkeratinocyte growth factor receptor (KGFR)の食道癌における役割に着目した。KGFRが食道癌の増殖に関与しているのか、KGFRを阻害することにより食道癌の増殖が抑制できる可能性があるのかについて研究を進め、分子標的治療法としての将来性につき検討した。独自に作製した、KGFRに対する特異的ポリクローナル抗体を用いて、培養食道癌細胞4系統(TE-1、8、11)におけるKGFRタンパクの発現を確認した。十分なインフォームドコンセントを得た後、当施設において切除されたヒト食道癌組織と近傍の正常組織の新鮮凍結標本を作製し、同部のホルマリン固定パラフィン包埋組織切片を作製した。ヒト食道癌組織と正常組織の新鮮凍結標本を用いてRT-PCRを行ない、KGFR mRNAの発現を確認した。KGFRに対するジゴキシニゲン標識cRNAプローブ(riboprobe)を作製し、ヒト食道癌組織上でKGFR mRNAの発現を確認し、KGFRの産生細胞を同定した。上記のKGFR抗体を用いて、食道癌組織と正常食道組織のホルマリン固定パラフィン包埋組織におけるKGFRタンパクの局在を検討した。また、連続切片上で細胞増殖マーカーであるKi-67を用いた染色を行ない、比較検討した。さらに細胞分化のマーカーとしてCytokeratin 20で染色を行ない、それぞれの局在に相関があるか検討した。KGFR mRNA、タンパクとも全ての培養細胞にみとめられ、KGFRタンパクの局在は癌真珠の中心部に向かうほど豊富にみとめられた。食道癌組織におけるKGFRの発現は腫瘍の分化度と有意な相関がみとめられた。ligandであるKGFの発現はリンパ管侵襲、リンパ節転移と有意な相関がみとめられた。これまでの経過としては、KGFR抗体を用いて、培養食道癌細胞3系統(TE-1、8、11)におけるKGFRタンパクの発現を確認し、ヒト食道癌組織と正常組織の新鮮凍結標本を用いたRT-PCRでは、KGFR mRNAの発現を確認した。ヒト食道癌組織上でKGFRmRNAの発現を確認し、KGFRの産生細胞を同定した。上記のKGFR抗体を用いて、食道癌組織と正常食道組織のホルマリン固定パラフィン包埋組織におけるKGFRタンパクの局在を検討した。また、連続切片上で細胞増殖マーカーであるKi-67を用いた染色を行ない、比較検討したところ、KGFRタンパクの局在は癌真珠の中心部に向かうほど豊富にみとめられた。食道癌組織におけるKGFRの発現は腫瘍の分化度と有意な相関がみとめられた。ligandであるKGFの発現はリンパ管侵襲、リンパ節転移と有意な相関がみとめられた。以上の結果をふまえた上でさらに以下の検討を行った。3.総合評価、学会・論文発表実験結果と食道癌の組織型・肉眼型・深達度・リンパ節転移などの臨床病理学的所見、および予後とを比較検討したところ、KGFR、KGFのいずれも予後との関連は認めなかったが、KGFRは肉眼型と、KGFはリンパ管浸襲およびリンパ節転移と有意な相関があった。
KAKENHI-PROJECT-20790975
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20790975
糖代謝活性を応用した癌幹細胞の新規同定法の開発
(目的)癌幹細胞では糖代謝活性が低下しているという仮説を設定し,蛍光標識グルコース誘導体2-NBDGを用いて,細胞内グルコースの低下した細胞群を分離し,新たな癌幹細胞の同定法を確立する.(意義)従来の癌幹細胞同定法は,CDマーカーとSP細胞の2つによって主になされてきたが,未だ癌幹細胞が見いだせていない癌腫が多数あることと,網羅的な手法であるため効率性の面で問題があった.この様な状況のなかで癌幹細胞の新規同定法を開発することは,これらの問題点を克服する可能性があるという点で大きな意義がある.(研究の進捗状況)当教室の主たる治療対象である胆道癌の細胞株を用いて,初期条件の設定を目的とした予備実験とマウス皮下移植実験を行った.(1)ソーティング精度の検証:FACSで検討を行い95%以上の目的細胞集団の分離率が得られた.(2)2-NBDGの至適濃度の検証:細胞株ごとの測定可能濃度の検討をした.(3)2-NBDG反応時間と蛍光強度の検討:4060分以上の反応時間で蛍光強度がプラトーに達した.(4)2-NBDG反応後の保存条件による蛍光強度の変化の検討:冷却保存することで代謝・排出による蛍光強度の減弱の回避が可能であった(細胞解析から分離まで.(5)動物実験:通常培養した胆道癌細胞株を対象に蛍光強度の強弱により細胞群の分離を行い,各々の細胞群をNOD/SCIDマウスに皮下移植した,腫瘍の生着率および経時的変化について検討し、腫瘍細胞の生着率、腫瘍増殖能力に有意差は認められなかった。In vitroにおいて、分離細胞群で増殖能力の比較を行ったが差は認められなかった。現時点では、2-NBDGを用いた糖代謝活性の差のみでは癌幹細胞様細胞集団を同定することは困難と考えられた。(はじめに)従来の癌幹細胞同定法は,CDマーカーとSP細胞の2つによって主になされてきたが,未だ癌幹細胞が見いだせていない癌腫が多数あることと,網羅的な手法であるため効率性の面で問題があった.この様な状況のなかで従来の方法とは異なる視点から癌幹細胞の新規同定法を開発することは大きな意義がある.(目的)癌幹細胞では糖代謝活性が低下しているという仮説を設定した.蛍光標識グルコース誘導体2-NBDGを用いて,各癌細胞株の細胞内グルコース濃度に応じて細胞群を分離することで糖代謝活性に基づいた癌幹細胞の同定法を確立する.(結果)本年度は初期条件の設定を目的とした予備実験とマウス皮下移植実験を行った.(1)FACSおよび蛍光顕微鏡にて2-NBDGの癌細胞株内への取り込みを確認した.(2)2-NBDGの至適濃度の検証:各癌細胞株における測定可能濃度を検討し,20μm/mL以上が解析可能な濃度であることを確認した.(3)2-NBDG反応時間と蛍光強度の検討:2-NBDG各濃度において4060分以上の反応時間で蛍光強度がプラトーに達するのを確認した.(4)2-NBDG反応後の保存条件による蛍光強度の変化の検討:4°C冷却保存1時間後に蛍光強度の減弱が抑制された(2-NBDG反応後から細胞分離までの一定時間,蛍光強度を一定に維持し得ることが確認できた).(5)動物実験:通常培養した癌細胞株に2-NBDG処理を行い,蛍光強度の強弱に応じて細胞群を分離し,各々の細胞群をNOD/SCIDマウスに皮下移植した.現在、腫瘍の生着率および経時的変化について検討中である.(目的)癌幹細胞では糖代謝活性が低下しているという仮説を設定し,蛍光標識グルコース誘導体2-NBDGを用いて,細胞内グルコースの低下した細胞群を分離し,新たな癌幹細胞の同定法を確立する.(意義)従来の癌幹細胞同定法は,CDマーカーとSP細胞の2つによって主になされてきたが,未だ癌幹細胞が見いだせていない癌腫が多数あることと,網羅的な手法であるため効率性の面で問題があった.この様な状況のなかで癌幹細胞の新規同定法を開発することは,これらの問題点を克服する可能性があるという点で大きな意義がある.(研究の進捗状況)当教室の主たる治療対象である胆道癌の細胞株を用いて,初期条件の設定を目的とした予備実験とマウス皮下移植実験を行った.(1)ソーティング精度の検証:FACSで検討を行い95%以上の目的細胞集団の分離率が得られた.(2)2-NBDGの至適濃度の検証:細胞株ごとの測定可能濃度の検討をした.(3)2-NBDG反応時間と蛍光強度の検討:4060分以上の反応時間で蛍光強度がプラトーに達した.(4)2-NBDG反応後の保存条件による蛍光強度の変化の検討:冷却保存することで代謝・排出による蛍光強度の減弱の回避が可能であった(細胞解析から分離まで.(5)動物実験:通常培養した胆道癌細胞株を対象に蛍光強度の強弱により細胞群の分離を行い,各々の細胞群をNOD/SCIDマウスに皮下移植した,腫瘍の生着率および経時的変化について検討し、腫瘍細胞の生着率、腫瘍増殖能力に有意差は認められなかった。In vitroにおいて、分離細胞群で増殖能力の比較を行ったが差は認められなかった。現時点では、2-NBDGを用いた糖代謝活性の差のみでは癌幹細胞様細胞集団を同定することは困難と考えられた。
KAKENHI-PROJECT-21659298
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21659298
ジェット変貌効果をプローブとしたクォーク・グルオン・プラズマ物性の研究
欧州原子核共同研究機構(CERN)の大型ハドロン加速器(LHC)を用いた、陽子+陽子及び、鉛+鉛原子核衝突実験(ALICE)に参加し、超相対論的重イオン衝突実験におけるクォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)状態の性質に関する研究を行った。多くの核子(陽子、中性子)のつまった原子核同士の衝突で期待されるQGP生成と同時に、核子の内部構造であるクォーク同士の初期散乱によるジェットの生成量が、幾何学的な核子+核子衝突の重ね合わせに比べ大きく抑制される効果「ジェット・クエンチング」を低い横運動量領域ではっきりと確認し、高い横運動量領域ではその抑制効果が小さくなっている事が分かった。宇宙初期の状態とも言われるこの高温高密度状態のQGP物質中で、高エネルギーのクォークがどのようにエネルギーを損失するのかに関する手がかりが見つかりつつある。クォーク物質の流体的な状態とも言われるこのQGP状態の、集団運動的な効果を研究するために、衝突の反応平面に対する荷電粒子の方位角異方性の粒子種依存性、横運動量依存性、中心衝突度依存性等を測定した。この終状態における方位角異方性の測定によって、衝突初期の幾何学的形状(初期形状の統計的揺らぎを含む形状)の異方性を起源として、流体的かつ集団運動的な発展がどのように進むかを調べ、そのQGP状態の流体的膨張の様子を明らかにした。また、高エネルギークォークのエネルギー損失の大きさは、衝突初期の形状によって作られるQGP中の通過距離に依存すると考えられるので、この方位角異方性とクォークのエネルギー損失の方向との関係を調べる事により、クォークのエネルギー損失によるジェットの変貌が方位角異方性に大きく寄与している分かった。当該研究課題である、ジェット変貌効果をプローブとしたクォークグルオンプラズマ物性の解明のためには、プローブとなるジェットを、LHC-ALICE実験において、高効率、高精度で測定することが重要となるが、そのために必要となるEMCAL検出器およびDCAL検出器のシミュレーションを行った。その際、アメリカのローレンスバークレー国立研究所のPeter Jacob博士のグループに参加し、多く議論することで研究を進めた。DCAL検出器のシミュレーションでは、ジェット事象、特にDi-Jet事象の高精度測定において、LHC-ALICE実験にDCAL検出器を新設することが如何に重要であるかということを示し、同研究結果によって、DCAL検出器の設計パラメータの決定が行われた。また、同検出器は2010年度から、建設が始まる予定である。CERN-LHC加速器を用いたALICE実験において、世界最高エネルギーでの鉛・鉛原子核衝突実験(核子対あたり重心系エネルギー2.76TeV)、および陽子・陽子衝突実験(重心系エネルギー7TeV)を行った。申請時の計画と比較すると、LHC加速器のトラブルにより、約1年遅れでの実験であったが、順調にデータを収集することが出来た。ジェット変貌効果をプローブとしたQGP物性の研究において、まずは、用いるジェットの性質を理解する事が重要となるため、7TeV陽子・陽子衝突実験データを、二粒子方位角相関の粒子多重度依存性に着目して解析し、日本物理学会において報告した。この解析は、本研究課題に用いるプローブの理解だけでなく、重イオン衝突実験データの解析における比較対象の理解という重要な意味を持つ。重イオン衝突実験データの解析については、現在までに、荷電粒子の方位角異方性の測定を行い、その結果を日本物理学会において報告を行った。方位角異方性は、重イオン衝突における初期状態の性質を反映した測定量として注目されており、先行実験であるRHICでは、相対論的流体力学模型により良く説明されている。しかし、QGP物性の理解には、様々なエネルギー領域、システムにおける統一的理解が重要であり、この意味に於いて、RHICに比べ、十倍以上もの衝突エネルギーを用いるLHCでの楕円的方位角異方性測定は、流体力学模型による記述の妥当性をテストするだけでなく、QGPの状態方程式や粘性といった熱力学的性質を理解する上で非常に重要である。さらに、ジェット変貌効果には、QGP中を通過する事によるジェット自体の変化だけでなく、QGPの流体的性質に起因する方位角異方性との重ね合わせ、もしくは相互作用の結果として、観測されると考えられるため、本研究課題の遂行において、粒子方位角異方性の測定は必要不可欠である。欧州原子核共同研究機構(CERN)の大型ハドロン加速器(LHC)を用いた、陽子+陽子及び、鉛+鉛原子核衝突実験(ALICE)に参加し、超相対論的重イオン衝突実験におけるクォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)状態の性質に関する研究を行った。多くの核子(陽子、中性子)のつまった原子核同士の衝突で期待されるQGP生成と同時に、核子の内部構造であるクォーク同士の初期散乱によるジェットの生成量が、幾何学的な核子+核子衝突の重ね合わせに比べ大きく抑制される効果「ジェット・クエンチング」を低い横運動量領域ではっきりと確認し、高い横運動量領域ではその抑制効果が小さくなっている事が分かった。宇宙初期の状態とも言われるこの高温高密度状態のQGP物質中で、高エネルギーのクォークがどのようにエネルギーを損失するのかに関する手がかりが見つかりつつある。クォーク物質の流体的な状態とも言われるこのQGP状態の、集団運動的な効果を研究するために、衝突の反応平面に対する荷電粒子の方位角異方性の粒子種依存性、横運動量依存性、中心衝突度依存性等を測定した。この終状態における方位角異方性の測定によって、衝突初期の幾何学的形状(初期形状の統計的揺らぎを含む形状)の異方性を起源として、流体的かつ集団運動的な発展がどのように進むかを調べ、そのQGP状態の流体的膨張の様子を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-09J03884
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J03884
ジェット変貌効果をプローブとしたクォーク・グルオン・プラズマ物性の研究
また、高エネルギークォークのエネルギー損失の大きさは、衝突初期の形状によって作られるQGP中の通過距離に依存すると考えられるので、この方位角異方性とクォークのエネルギー損失の方向との関係を調べる事により、クォークのエネルギー損失によるジェットの変貌が方位角異方性に大きく寄与している分かった。
KAKENHI-PROJECT-09J03884
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J03884
救急領域におけるノンテクニカルスキル教育コース(NoTAM)についての研究
救急医療におけるノンテクニカルスキル教育コース(NoTAM:Non-Technical skills for Acute Medicine)を開発し、効果検証を行った。受講後の意識調査では、チーム医療への理解が深まりチームパフォーマンスの向上が期待されるとの回答が得られた。実診療の評価では、患者受入れまでのブリーフィングは改善が認められたが、医師や看護師のノンテクニカルスキル、トータルチームパフォーマンスには有意な変化を認めなかった。一回の講習会受講では意識の変容をもたらすことは可能であるが、行動の変容には至らなかった。今後、NoTAMを繰り返し受講するとともに実診療にいかす活動が必要である。本研究は、救急領域におけるノンテクニカルスキルを習得するための目標、方策、評価からなる教育コース(NoTAM:Non-Technical Skills for Acute Medicine)を策定し、その効果を検証することを目的としたものである。初年度にあたる平成27年度は、コース受講前のノンテクニカルスキルの評価をおこなうことと、NoTAM教育コースの策定を計画しており、それぞれについて下記のことを実施した。1.大阪市立大学医学部附属病院救命救急センターの医師および看護師を対象とし、NoTAM受講前の救急診療・外傷初期診療におけるノンテクニカルスキルを評価する。救命救急センターの救急室にビデオカメラとマイクを設置し、患者搬入時の画像を録画録音できるようにした。また、録画した映像を保存し、診療にあたった医師、看護師らのノンテクニカルスキルを評価できるようにした。平成28年1月から3月までに3か月間の搬入患者238例の画像を集積した。平成28年度にこれらの画像から教育コース受講前のノンテクニカルスキルを評価する予定である。2.CPACを受講した経験をもつ医師4名と看護師2名でプロジェクトチームを構成し、ノンテクニカルスキルを指導するための、CRMに基づく教育コース(NoTAM)を策定する。医師3名と看護師3名からなるプロジェクトチームを立ち上げ、教育コースの内容を策定した。具体的には、プログラムの内容、講義スライド、教材としてのビデオ画像作成のためのシナリオ作りを行った。平成28年度に教育コースを実施する予定である。教育コース受講前の診療映像の録画を行うことができており、平成27年度の予定「1.大阪市立大学医学部附属病院救命救急センターの医師および看護師を対象とし、NoTAM受講前の救急診療・外傷初期診療におけるノンテクニカルスキルを評価する。」を行うことができている。教育コースのプログラムや内容の策定を進めており、平成27年度の予定「2.CPACを受講した経験をもつ医師4名と看護師2名でプロジェクトチームを構成し、ノンテクニカルスキルを指導するための、CRMに基づく教育コース(NoTAM)を策定する。」を行うことができている。本研究は、救急領域におけるノンテクニカルスキルを習得するための目標、方策、評価からなる教育コース(NoTAM:Non-Technical Skills for Acute Medicine )を策定し、その効果を検証することを目的としたものである。平成27年度に、コース受講前の医師および看護師のノンテクニカルスキルの評価を行うことと、NoTAM教育コースの策定を行った。コース受講前の評価として、平成28年1月から3月までの3か月間の大阪市立大学医学部附属病院救命救急センターに救急搬入された患者238名に対する、初期診療の画像を集積した。また、講義、ビデオ、グループディスカッション、シミュレーションからなるNoTAMコースを策定した。ビデオとしては外傷患者、CPA患者の初期診療におけるノンテクニカルスキルが学べる内容のものを作成した。平成28年年度は策定したコースの開催と、受講後のノンテクニカルスキルの評価のためのビデオ撮影を実施した。具体的には、平成28年11月、12月に合計6回のNoTAMコースを開催し、それぞれ医師34名、看護師2名が受講し、合計31名の医師と看護師が受講した。また、緊急手術時のノンテクニカルスキルを習得させるための教材作りのために、神戸医療機器開発センター(MEDDEC)において外傷手術のビデオ撮影を実施した。さらに、平成29年1月から3月にかけて搬入されてきた外傷、疾患、CPA患者に対する初期診療の内容をビデオ撮影した。平成29年度はコース受講前後の医療スタッフの診療内容(ビデオ撮影したもの)を評価し、コース受講が、医療スタッフのノンテクニカルスキル、診療内容におよぼす効果について検証する。平成27年度の予定として以下の2項目を設定していたが、いずれも実施することができた。【1.大阪市立大学医学部附属病院救命救急センターの医師および看護師を対象とし、NoTAM受講前の救急診療・外傷初期診療におけるノンテクニカルスキルを評価する。】:平成28年1月から3月に救急搬送された患者238名に対する初期診療をビデオ撮影した。【2.CPACを受講した経験をもつ医師4名と看護師2名でプロジェクトチームを構成し、ノンテクニカルスキルを指導するための、CRMに基づく教育コース(NoTAM)を策定する。】:救命救急センターの医師3名と看護師3名でプロジェクトチームをつくり、教育コースの概略を検討した。平成28年度は下記の内容を実施することとしており、予定通り実施できた。【1.大阪市立大学医学部附属病院救命救急センターの医師および看護師を対象としてNoTAMを実施する。】:平成27年度に計画したNoTAM教育コースを作成し、平成28年11月と12月に合計6回、31名の受講生に対しコースを開催した。またコース受講後の変化を評価するため、平成29年1月から3月までの救急搬送された患者の初期診療をビデオ撮影した。
KAKENHI-PROJECT-15K08853
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K08853
救急領域におけるノンテクニカルスキル教育コース(NoTAM)についての研究
成果の具体的内容:平成27年度に策定したNoTAM(Non-Technical Skills for Acute Medicine)コースの効果検証のため、大阪市立大学医学部附属病院救命救急センターに搬送された重症患者(外傷、救急疾病、院外心停止)に対する初期診療内容を全症例ビデオ撮影した。平成28年1-3月を受講前、平成29年1-3月を受講後とし救命救急センターの医師のうち、いずれの時期にも在席し、リーダーとしての役割を果たした3名を抽出、彼らが診療を主導する症例を受講前と受講後27例ずつ無作為に抽出した。これら54症例のビデオ映像を2名の評価者で評価し、ノンテクニカルスキルの変化や診療内容の質の変化について比較した。ノンテクニカルスキルの評価では、ブリーフィングの内容で向上が認められたが、リーダーシップやコミュニケーションの内容には有意な変化を認めなかった。また、診療の質の改善効果は確認できなかった。得られた成果の意義と重要性:今回策定したNoTAMコースは講義と2回の模擬診療、グループディスカッションからなるもので、受講生参加型のコースである。このようなシミュレーションコースは手技等において教育的効果のあることが報告されている。また、チームワークにおけるノンテクニカルスキルについても有効とする報告もあるが、今回の救急初期診療における検討では、診療開始時のブリーフィングのみに有効性が確認できた。外傷、疾病、院外心停止に対する救急初期診療は一定の標準化されたものがあるが、重症症例においては、その診療課程で、状況評価、意思決定が重要となる。今回の検討結果では、単回のNoTAMコース受講では、実診療で確認しえる効果は得られなかった。このため、より効果的なノンテクニカルスキルの習得には、繰り返しの教育と実診療でのノンテクニカルスキルを意識した実践が必要であると考えられる。救急医療におけるノンテクニカルスキル教育コース(NoTAM:Non-Technical skills for Acute Medicine)を開発し、効果検証を行った。受講後の意識調査では、チーム医療への理解が深まりチームパフォーマンスの向上が期待されるとの回答が得られた。実診療の評価では、患者受入れまでのブリーフィングは改善が認められたが、医師や看護師のノンテクニカルスキル、トータルチームパフォーマンスには有意な変化を認めなかった。一回の講習会受講では意識の変容をもたらすことは可能であるが、行動の変容には至らなかった。今後、NoTAMを繰り返し受講するとともに実診療にいかす活動が必要である。研究計画に記載したとおりに研究を進める予定である。平成28年度は、大阪市立大学医学部附属病院救命救急センターの医師および看護師を対象としてNoTAMを実施する。
KAKENHI-PROJECT-15K08853
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K08853
乾物生産量と蒸発散量の計測に基づく共生窒素固定量の推定法確立に向けての基礎的研究
乾物生産量(W)と蒸発散量(ET)との計測値から共生窒素(N)固定量を評価する可能性と方法について検討を行い,下記の結果を得た.1.ラッカセイの根粒着生系統Terapoto ^+nodと非着生系統Terapoto ^-nodを供試して,両系統の乾物生産量(W)-蒸発散量(ET)関係を比較した.乾物生産量が一定値以上になったときTerapoto ^+nodはTerapoto ^-nodで認められたW-ET関係よりも同一のWに達するのに多くのETを必要とするようになった.また,両系統間のET差はN差法によって推定されたN固定量と高い相関関係にあった.2.蒸散係数の律速要因を解明することは,WとETの計測から共生N固定量を評価するに際して重要な課題である.ダイズ品種フクユタカを4月下旬から10月初旬まで9時期に分けて播種・栽培し,蒸散係数の変動と気象要因の関係を検討した.蒸散係数と生育期間中の平均飽差との間には有意な相関関係が認められ,フクユタカにおける比例係数として9.1g g^<-1> hPa^<-1>(30hPa条件下で273g g^<-1>)を得た.3.根粒非着生系統T201に接木することによって窒素固定の多少が蒸散係数に影響しないように配慮して,原産地を異にするダイズ17系統の蒸散係数を比較した.供試系統の蒸散係数は324から266g g^<-1>の範囲にあり,多くの場合において有意差を検出することはできなかった.また,前年度に引き続いて蒸散/光合成比(ΔTr/ΔPn)は必ずしも蒸散係数変動の良い指標とはなりえないことが示唆された.乾物生産量と蒸発散量の計測から共生窒素固定量を推定する方法について検討を行い、以下の結果を得た。1.ダイズの根粒非着生系統T201と根粒着生系統T202とを数種の窒素条件下で栽培した。乾物生産量と蒸発散量の間の直線関係に注目したとき、両系統の間の無効蒸発散量(乾物生産量が0のときの蒸発散量)に差異が認められ、またこの差に相当する乾物消費コストと共生窒素固定量との問に比例関係を認めた。根粒着生および共生窒素固定量に差異を誘導することを目的として、ソラマメとラッカセイを多窒素と少窒素の2条件で栽培したときにも上記と同様の関係が認められた。乾物消費コストと共生窒素固定量の間の比例関係から推定した窒素固定コストは約210MJ/kg Nであった.2.現在窒素分析中であるが、ダイズの根粒非着生系統「En1282」、正常系統「エンレイ」、および超着生系統「作系4号」の間の「乾物生産量-蒸発散量関係」に差異が認められた。また、ヘアリーベッチを少窒素および多窒素条件下で栽培したときにおいても「乾物生産量-蒸発散量関係」に違いが認められた。3.葉切除によってC/F比を物理的に制御したとき、蒸散係数は有意に増加した。また、乾物生産量と蒸発散量の問に認められる直線関係における比例係数(蒸散係数)は生育ステージとともに変化し、さらにこの変化は生育ステージの進展に伴うC/F比の増大と関連づけられた。4.裸地面蒸発量に関連する気象要因としては、とくに日射量と飽差の影響が大きいことがわかった。現在、圃場でソラマメを栽培し、生育に伴う裸地面蒸発量の変化とその関連要因を調査中である。前年度から引き続き,乾物生産量(W)と蒸発散量(ET)との計測値から共生窒素(N)固定量を評価する可能性と方法について検討を行い,下記の結果を得た.1.N固定量が無(根粒非着生系統)少(多N条件下で生育させた植物)であったときのET_<W=0>(Wが0のときを仮定した蒸発散量ET)は地面蒸発量(E_0)にほぼ対応することが確認でき,また非N固定植物におけるET_<W=0>はE_0の計測値で代用できることが再確認された.2.供試年度および供試系統の違いを込みにして解析した場合においても,ダイズ実験の範囲内においては,根粒着生系統のET_<W=0>とE_0の差[ET_<W=0>-E_0]はN固定量と有意な(P<0.001)比例関係を示した.3.湿潤土壌におけるE_0,および減率蒸発過程にあるE_0(E'_0)を日射量(kWh m^<-2>)と平均飽差(hPa)および土壌水分値から推定するための基本式を作成した.ただし,潅水(降雨)後一時的に土壌表層に湿潤層が形成された場合においては実測値からの誤差が大きかったことから,予測精度の向上へ向けてさらなる改良の余地が残された.なお,ダイズ生長に伴う地表面微気象変化とE_0との関係については台風被害のため十分な成果を得るには至らなかった.4.N固定植物におけるET_<W=0>をETから蒸散量(TR)を差し引くことにより,またTRは蒸散係数(TC)にWを乗じることによって推定することを考案し,TCの律速要因の解明を試みた.
KAKENHI-PROJECT-15658103
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15658103
乾物生産量と蒸発散量の計測に基づく共生窒素固定量の推定法確立に向けての基礎的研究
その結果,種間に見られるTC差異は大きいものの,少なくともダイズの系統間にみられる差異はさほど大きくない可能性があること,また光合成/蒸散比(ΔPn/ΔTr)は必ずしもTC変動の良い指標とはなりえないことがわかった.さらに,生育の進展およびsink/source制御に伴うTC変動の説明要因としてLWR, LAR, C/F比が有効であった.乾物生産量(W)と蒸発散量(ET)との計測値から共生窒素(N)固定量を評価する可能性と方法について検討を行い,下記の結果を得た.1.ラッカセイの根粒着生系統Terapoto ^+nodと非着生系統Terapoto ^-nodを供試して,両系統の乾物生産量(W)-蒸発散量(ET)関係を比較した.乾物生産量が一定値以上になったときTerapoto ^+nodはTerapoto ^-nodで認められたW-ET関係よりも同一のWに達するのに多くのETを必要とするようになった.また,両系統間のET差はN差法によって推定されたN固定量と高い相関関係にあった.2.蒸散係数の律速要因を解明することは,WとETの計測から共生N固定量を評価するに際して重要な課題である.ダイズ品種フクユタカを4月下旬から10月初旬まで9時期に分けて播種・栽培し,蒸散係数の変動と気象要因の関係を検討した.蒸散係数と生育期間中の平均飽差との間には有意な相関関係が認められ,フクユタカにおける比例係数として9.1g g^<-1> hPa^<-1>(30hPa条件下で273g g^<-1>)を得た.3.根粒非着生系統T201に接木することによって窒素固定の多少が蒸散係数に影響しないように配慮して,原産地を異にするダイズ17系統の蒸散係数を比較した.供試系統の蒸散係数は324から266g g^<-1>の範囲にあり,多くの場合において有意差を検出することはできなかった.また,前年度に引き続いて蒸散/光合成比(ΔTr/ΔPn)は必ずしも蒸散係数変動の良い指標とはなりえないことが示唆された.
KAKENHI-PROJECT-15658103
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15658103
欧米マルクス学派が提起する体系の、現代資本主義分析への適用可能性
マルクス経済学の理論を応用して、現代資本主義分析を行うことがこの研究の目的である。とりわけ、欧米マルクス学派の手法を日本の理論水準から検証し、これを実証分析に適用する、という試みは日本のマルクス経済学においては新たな試みであり、学問的貢献が期待できると考えた。この目的を達成するために、3年間研究を行い、以下の研究成果を得た。1.実証分析の観点から欧米マルクス学派の体系を理論的に整理・分類する欧米マルクス学派の理論は、日本とはかなり異なっており、より実証に適した体系となっている。しかし理論的緻密さには欠けており、その点は日本の方が進んでいる。したがって、日本の理論水準から欧米の体系を整理し分類した。その際、Single System、Dual Systemという二つの体系に沿って分類した点も新たな意義であると考えられる。上記に沿って整理した体系を実際に実証に適用したとき、価値や価格はどのような形で現れるのかを検討・整理した。3.現代日本経済における利潤率、剰余価値率、資本の有機的構成の計測最終的に、これらの体系を使って利潤率、剰余価値率、資本の有機的構成を計測した。その結果、1980年以降、利潤率が低落しているが、これは資本の有機的構成が高くなったためであるということがわかった。マルクス経済学の理論を応用して、現代資本主義分析を行うことがこの研究の目的である。とりわけ、欧米マルクス学派の手法を日本の理論水準から検証し、これを実証分析に適用する、という試みは日本のマルクス経済学においては新たな試みであり、学問的貢献が期待できると考えた。この目的を達成するために、3年間研究を行い、以下の研究成果を得た。1.実証分析の観点から欧米マルクス学派の体系を理論的に整理・分類する欧米マルクス学派の理論は、日本とはかなり異なっており、より実証に適した体系となっている。しかし理論的緻密さには欠けており、その点は日本の方が進んでいる。したがって、日本の理論水準から欧米の体系を整理し分類した。その際、Single System、Dual Systemという二つの体系に沿って分類した点も新たな意義であると考えられる。上記に沿って整理した体系を実際に実証に適用したとき、価値や価格はどのような形で現れるのかを検討・整理した。3.現代日本経済における利潤率、剰余価値率、資本の有機的構成の計測最終的に、これらの体系を使って利潤率、剰余価値率、資本の有機的構成を計測した。その結果、1980年以降、利潤率が低落しているが、これは資本の有機的構成が高くなったためであるということがわかった。17年度においては、欧米マルクス学派の実証分析を分類するとともに、その理論的な課題について検証した。学派ごとに明確に分類できるわけではなく、同じ学派に分類したものの中でも多々異なっている点があるものの、1新解釈派(論者:Dumenil、Foley、Levy)、2新解釈派に近いもの(論者:Mohun、Moseley)、3正統派に近いもの(論者:Shaikh、Kalmans、Wollff)を随時検討した。上記のうち1および2に属するものは、いわゆるシングルシステムアプローチを採用しており、日本のマルクス学派とは対照的である。シングルシステムアプローチにおいては、一般的な方法よりも、剰余価値率、資本の有機的構成、生産的労働の比率を比較的簡単に算出できるので、実証分析に適用しやすいという特徴を持っている。こうして算定された剰余価値率、資本の有機的構成、生産的労働の比率から利潤率の推移を説明するが、これは近代経済学にはないものだけに貴重である。しかしシングルシステムアプローチは従来の方法とは違うだけに、それが持つ理論的整合性については厳しく検証される必要がある。この点を検証した結果が、「欧米マルクス学派の実証分析にかんする一考察」(東)である。一方、欧米にも従来の方法に近いツールを使った分析は存在する。その場合、剰余価値率は実現された価格単位と生産に投下された価値(の価格表示)の二種類で算出される。この場合、生産において対象化された労働が実際にどのように評価されて市場に現れるのかということを表現できる。とりわけシングルシステムアプローチでは、労働生産性の変化がそのまま価格として現れてしまうため、生産性の上昇が価値を低下させるというメカニズムが捨象されてしまう危険性がある。この点に関しては17年度には成果として発表できなかったが、18年度の早い時期に佐藤が発表する予定である。18年度においては、前年度の研究を受け継ぎ以下の考察まで完了した。1.利潤率および剰余価値率を価値タームと価格タームで分析する際の違いを確定するとともに両者の特徴を析出する。2.シングルシステムアプローチを採用する欧米の論者間の分析方法の違いを確定するとともに、それぞれの論者の方法の長所・短所を析出する。3.日本の先行研究との比較。4.日本における公式統計の組み換え。5.シングルシステムアプローチにもとづく日本の利潤率計算。このように、理論的考察と実証分析を行なったわけであるが、とりわけ18年度前半においては、前年度に行なえなかった理論的考察(上記13)を実施し、後半においては実証分析(上記45)を実施した。その結果、次ページに記載する2本の論文を成果として発表することができた。佐藤論文では、欧米マルクス学派における研究をもとに、価値タームの計測と価格タームの計測による違いを確定することに重点が置かれた。
KAKENHI-PROJECT-17530152
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17530152
欧米マルクス学派が提起する体系の、現代資本主義分析への適用可能性
とりわけ技術変化に伴う資本の生産性が価値と価格にどのように反映されるのかという点に注目し、実証分析への足がかりをつくった。東論文では、価格タームで利潤率を計測することに重点が置かれ、マルクス学派的観点から日本の公式統計を組み替え、1980年2005年の利潤率の傾向を分析した。本年度後半から実証分析を開始したとはいえ、理論的考察の領域においても、新たに分析を進めなければならない課題が出てきている。中でも、非マルクス経済学における利潤率、経済成長、資本蓄積、景気循環に対する理論との対比はきわめて不十分なままである。したがって、最終年度となる19年度は、一方で実証分析を進めるとともに、理論的考察についても並行して進める予定である。交付申請書に記載したように、本研究はマルクス経済学の利点を活かした実証分析を行うことである。とりわけ19年度は、利潤額、固定資本額の確定を行う予定であったが、残念ながらすべてを終了することはできなかった。それはいくつかの困難があったからである。まず利潤についてであるが、これは国民経済計算における営業余剰といくつかの点で異なっているが、この点をより明確にしなければならなかった。18年度において、生産的労働と不生産的労働の区別、生産的部門と不生産的部門の区別などの理論的な区分は行ったものの、混合所得や帰属収入などの考え方についての考察が遅れてしまった。一方、固定資本についても会計上の減価償却が固定資本減耗を正しく表現していないことは多くの薪究者が指摘している。しかしこれに代わる概念と額の明確化が困難であった。こうした理由から、実証分析を行う、という当初の目的を19年度中に果たすことはできなかったが、以下のような成果を得るとともに、今後につなげることができた。まず、価値を実測することの困難性を明らかにするとともに、価格概念であってもいわゆる近経とは違う考え方ができることを明らかにした。それにもとづく実証分析の方法論を明確にすることができた。これについては、論文「投下労働量による剰余価値率分析の批判的検証とSingle System」として公表するに至った。他方、今年度半ばに、一定の実証分析の成果を公表できるめどをたてることができた。19年度中という目標は遅れたものの、すでに研究誌、書籍などにおける公表に向けて具体的に動き出している。
KAKENHI-PROJECT-17530152
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NMRで読み解くアミロイドの形成と分解のメカニズム
蛋白質のアミロイド化は、神経変性疾患等の重篤な疾患と関わっている。本研究ではその様な疾患の病態を左右するアミロイド構造多形の形成メカニズムについて、酵母プリオン蛋白質Sup35を用いて解明した。Sup35NMの揺らぎや部分構造に着目した数種のNMR測定から、Sup35NMは配列上に二箇所のアミロイド形成開始点を持ち、片方が選択されることで構造多形が生じることを明らかにした。また、WT Sup35NMの一部にコンパクトな部分構造を発見し、その部分構造が片側の開始点領域を含んでいた。つまりWTでは片側の開始点が不活性な状態にあることで、安定してもう片側が選択されていることが分かった。本研究の目的は、アミロイドの形成過程と分解過程の全体像を、核磁気共鳴法を用いて、構造生物学的視点で捉えることであり、本年度ではモデルタンパク質として酵母のプリオンタンパク質Sup35を用い、アミロイド形成過程に着目した研究を行った。アミロイド形成のメカニズムのヒントはモノマー及び、アミロイド形成中間体であるオリゴマーに潜んでいると考えられる。そこでモノマー及びオリゴマーの揺らぎや部分構造の観察を重点的に行ったところ、アミロイド形成中間体であるオリゴマー内に、オリゴマー相互作用とは別の分子間相互作用があることを飽和移動差NMR測定により発見した。その特殊な相互作用はアミロイド内では分子間相互作用のコアとなる部分であり、そこがアミロイド形成起点である事が考えられた。また、モノマーの揺らぎを捉えるため、15N-1H NOE測定を行ったところ、Sup35はC末端側半分に大きな揺らぎが集中しており、N末端側半分は天然変性領域と考えられている部分にも関わらず、比較的揺らぎが少なく、部分構造が存在することが示唆された。更にCLEANEX-PM測定から、ペプチド結合部のアミド水素と溶媒の水素との交換速度を見積もった。C末端側の揺らぎの大きな部分では、非常に早い交換速度が観察されたが、揺らぎの少ないN末端側にも一部、比較的速い交換速度を持つ部分を発見した。この領域はアミロイド形成に非常に重要であることが示されているアスパラギン残基が集中する部分であり、また先の飽和移動差NMR測定で見つかった特殊な分子間相互作用の位置とも一致した。これらの結果から考えられるのは、天然変性であるはずのSup35は、N末端側に部分構造が存在し、比較的コンパクトな揺らぎの少ない構造を持っている。しかし、この部分にも表面に露出し、溶媒水素との早い交換を示す部分があり、そこがアミロイド形成の起点となっている。本研究の目的は酵母プリオンタンパク質Sup35NMを用い、アミロイドの形成過程のメカニズムを、核磁気共鳴(NMR)測定で構造生物学的に捉えることである。前年度までの研究で主にタンパク質の揺らぎに着目したNMR測定を行った結果、アミロイド形成開始点と考えられる領域をN末端と中央付近の二箇所に発見した。本年度ではその開始点の検証及びWTにおいてN末端側の開始点が常に選択される理由の探求を行った。まず発見したアミロイド形成開始点を検証するため、アミノ酸変異による開始点の破壊を試みた。アミロイド形成にはアスパラギン残基が重要な役割を持つと考えられる為、アスパラギンをアラニンに置換する変異を導入し、アミロイド構造の変化を確認した。中央領域は2残基置換により開始点の破壊に成功した。N末端側は比較的領域が広いため少数の置換では破壊は困難であったが、3残基置換でも部分的な開始点の破壊が見られた。この結果は、2領域がアミロイド形成開始点であるということを支持するものである。次に常磁性緩和促進NMR法を用いてSup35NMモノマーの大まかな部分構造を調べた。その結果、Sup35NMはこれまでの報告では二次構造をほとんど持たない天然変性蛋白質であるとされていたが、一部に比較的コンパクトな部分構造を持つことが示された。中央付近のアミロイド形成開始点はそのコンパクトな領域に含まれており、N末端の開始点は含まれていなかった。以上の研究から。WTのSup35NMがN末端側の開始点を常に選択し、N末端側にアミロイドコアを作るのはこの部分構造が中央付近の開始点をマスクしている為であることが示され、アミノ酸置換によるアミロイド構造多形の誘導は部分構造の破壊や開始点への立体障害の導入によって導かれている可能性が示唆された。蛋白質のアミロイド化は、神経変性疾患等の重篤な疾患と関わっている。本研究ではその様な疾患の病態を左右するアミロイド構造多形の形成メカニズムについて、酵母プリオン蛋白質Sup35を用いて解明した。Sup35NMの揺らぎや部分構造に着目した数種のNMR測定から、Sup35NMは配列上に二箇所のアミロイド形成開始点を持ち、片方が選択されることで構造多形が生じることを明らかにした。また、WT Sup35NMの一部にコンパクトな部分構造を発見し、その部分構造が片側の開始点領域を含んでいた。つまりWTでは片側の開始点が不活性な状態にあることで、安定してもう片側が選択されていることが分かった。本研究の目的は、アミロイドの形成過程と分解過程の全体像を、核磁気共鳴法を用いて、構造生物学的視点で捉えることであり、本年度ではモデルタンパク質として酵母のプリオンタンパク質Sup35を用い、アミロイド形成過程に着目した研究を行った。アミロイド形成のメカニズムのヒントはモノマー及び、アミロイド形成中間体であるオリゴマーに潜んでいると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-23770193
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23770193
NMRで読み解くアミロイドの形成と分解のメカニズム
そこでモノマー及びオリゴマーの揺らぎや部分構造の観察を重点的に行ったところ、アミロイド形成中間体であるオリゴマー内に、オリゴマー相互作用とは別の分子間相互作用があることを飽和移動差NMR測定により発見した。その特殊な相互作用はアミロイド内では分子間相互作用のコアとなる部分であり、そこがアミロイド形成起点である事が考えられた。また、モノマーの揺らぎを捉えるため、15N-1H NOE測定を行ったところ、Sup35はC末端側半分に大きな揺らぎが集中しており、N末端側半分は天然変性領域と考えられている部分にも関わらず、比較的揺らぎが少なく、部分構造が存在することが示唆された。更にCLEANEX-PM測定から、ペプチド結合部のアミド水素と溶媒の水素との交換速度を見積もった。C末端側の揺らぎの大きな部分では、非常に早い交換速度が観察されたが、揺らぎの少ないN末端側にも一部、比較的速い交換速度を持つ部分を発見した。この領域はアミロイド形成に非常に重要であることが示されているアスパラギン残基が集中する部分であり、また先の飽和移動差NMR測定で見つかった特殊な分子間相互作用の位置とも一致した。これらの結果から考えられるのは、天然変性であるはずのSup35は、N末端側に部分構造が存在し、比較的コンパクトな揺らぎの少ない構造を持っている。しかし、この部分にも表面に露出し、溶媒水素との早い交換を示す部分があり、そこがアミロイド形成の起点となっている。本研究の目的は、アミロイドの形成過程と分解過程の全体像を、核磁気共鳴法を用いて、構造生物学的視点で捉えることである。これまでの研究により形成過程について、これまでに報告されていない画期的な知見を得ることに成功した。次年度では、分解過程についての研究に着手することが出来る状態である。本研究の目的は、アミロイドの形成過程と分解過程の全体像を、核磁気共鳴法を用いて、構造生物学的視点で捉えることである。本年度の研究により形成過程について、これまでに報告されていない画期的な知見を得ることに成功した。次年度から、残りの分解過程についての研究に着手することが出来る状態であり、達成度は計画どおり進んでいる。酵母細胞内ではSup35アミロイドの分解が行われている。特にHSP104が重要であることはよく知られている。その分解過程を観察するには細胞内にあるアミロイドのスペクトルを得るのが最良の方法である。しかし、この方法の困難な点は、どのようにしてNMRで測定可能な量の15Nラベルアミロイドを酵母内に導入するかということである。申請者が考える方法は15Nラベル培地で培養している酵母にSup35を大量発現させ、その酵母に細胞外から少量のアミロイドを導入し、それを核として15NラベルSup35アミロイドを形成させるというものである。酵母細胞内ではSup35アミロイドの分解が行われている。特にHSP104が重要であることはよく知られている。その分解過程を観察するには細胞内にあるアミロイドのスペクトルを得るのが最良の方法である。しかし、この方法の困難な点は、どのようにしてNMRで測定可能な量の15Nラベルアミロイドを酵母内に導入するかということである。
KAKENHI-PROJECT-23770193
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絵本「ちびくろサンボ」の英米日における受容と評価の歴史に関する比較研究
平成15年度においては、日本の児童文学史における児童文学の理想像と本作品との関連について考察に取り組んだ。子どものために大人が書く児童文学の場合の文学らしさの概念がどのような形で形成され、その過程に本作品がどのように関わるのかを、日本の児童文学研究史を考慮することで、見極めようとした。また、その際、社会における文学表現と、教育、啓蒙、報道などとの関連について、あらためて考察を試みた。また、日本国内では歴史的社会的に黒人に対する人種差別の意識が希薄であると言えるが、その中で本作品はいかに受容されてきているかということに注目して研究行った。16年度は、2度にわたってロンドンとエディンバラの図書館で関連資料にあたった。また、今日英語圏に見られる多民族状況のなかで本作品の評価の変遷をそれぞれの地域における多文化社会の成熟という観点から改めて見直した。英国に関しては、第二次世界大戦後の移民史において、アフリカ系住民とインド系住民がどのように社会に受け入れられてきたかを検討し、本作品の評価の変遷との関連をさぐった。また、最近新しい版が出版されているアメリカ合衆国における本作品の評価史を再検討した。さらに、すでに論文として発表したものを含めて、全体としてポスト・コロニアリズムの観点から本作品の歴史的意味づけと今日作品として流通する上での評価をまとめて、名古屋大学大学院国際関係研究科に学位論文「隠れた教材としての『ちびくろサンボ』-英国、アメリカ合衆国、日本における受容と評価について」として提出した。17年度においては、2005年8月にダブリンで開催された国際児童文学学会の研究大会に参加し、海外の最新の研究成果と動向を知る機会を得た。また、博士学位論文には盛り込むことのできなかったいくつかの点について、新たな資料を収集することができた。とくにニューヨーク市立図書館における資料の収集では、これまでに日本では紹介されていない新たな資料を発掘することができた。平成15年度においては、日本の児童文学史における児童文学の理想像と本作品との関連について考察に取り組んだ。子どものために大人が書く児童文学の場合の文学らしさの概念がどのような形で形成され、その過程に本作品がどのように関わるのかを、日本の児童文学研究史を考慮することで、見極めようとした。また、その際、社会における文学表現と、教育、啓蒙、報道などとの関連について、あらためて考察を試みた。また、日本国内では歴史的社会的に黒人に対する人種差別の意識が希薄であると言えるが、その中で本作品はいかに受容されてきているかということに注目して研究行った。16年度は、2度にわたってロンドンとエディンバラの図書館で関連資料にあたった。また、今日英語圏に見られる多民族状況のなかで本作品の評価の変遷をそれぞれの地域における多文化社会の成熟という観点から改めて見直した。英国に関しては、第二次世界大戦後の移民史において、アフリカ系住民とインド系住民がどのように社会に受け入れられてきたかを検討し、本作品の評価の変遷との関連をさぐった。また、最近新しい版が出版されているアメリカ合衆国における本作品の評価史を再検討した。さらに、すでに論文として発表したものを含めて、全体としてポスト・コロニアリズムの観点から本作品の歴史的意味づけと今日作品として流通する上での評価をまとめて、名古屋大学大学院国際関係研究科に学位論文「隠れた教材としての『ちびくろサンボ』-英国、アメリカ合衆国、日本における受容と評価について」として提出した。17年度においては、2005年8月にダブリンで開催された国際児童文学学会の研究大会に参加し、海外の最新の研究成果と動向を知る機会を得た。また、博士学位論文には盛り込むことのできなかったいくつかの点について、新たな資料を収集することができた。とくにニューヨーク市立図書館における資料の収集では、これまでに日本では紹介されていない新たな資料を発掘することができた。本年度は、日本国内で出版された『ちびくろサンボ』の諸版の視覚資料を網羅的にデータベース化して、その上で、テキストと視覚表現に関する比較研究を行ってきた。データべース化することによってディテイルの比較が、より容易になりつつある。日本の児童文学史における児童文学の理想像と本作品との関連については、これまでにもたびたび論じられてきた。本年度においては、純粋に文学と呼ばれるときの、つまり特殊な読者を想定しない、逆に言えば普遍という概念で特定された洗練された読者を想定する大人の文学における文学の自己規定に対して、子どものために大人が書く児童文学の場合の文学らしさの概念がどのような形で形成され、その過程に本作品がどのように関わるのかを、日本の児童文学研究史を考慮することで、見極めようとした。また、その際、社会における文学表現と、教育、啓蒙、報道などとの関連について、あらためて考察を試みた。具体的には、先行研究の中でも差別解放運動論の研究者による反差別運動の批判的研究の立場から『ちびくろサンボ』評価論争を論じている文献に対して、個人的には意図せずに差別にもとづいて生活してしまう植民地主義を検証するという形で、本作品を批判する論拠が可能であることを、評価/批判の言説の中から抽出することを試みている。歴史的社会的に黒人に対する人種差別の意識が希薄な日本国内での受容研究の一環として行っているが、アメリカ合衆国における反差別論争の歴史と関わっているため、アメリカ合衆国における人種間題の歴史および児童文学観の評価の問題も、あらためて研究が深まったと思われる。本年度においては、今日英語圏に見られる他民族状況のなかで、いかに各民族の自意識と国家としての同化という相反する要素が形成されてきたかに注目し、本作品の評価の変遷をそれぞれの地域における多文化社会の成熟という観点から改めて見直した。
KAKENHI-PROJECT-15520238
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15520238
絵本「ちびくろサンボ」の英米日における受容と評価の歴史に関する比較研究
原作が最初に出版された英国に関しては、第二次世界大戦後の移民史において、アフリカ系住民とインド系住民がどのように社会に受け入れられてきたかを検討し、本作品の評価の変遷との関連をさぐった。また、最近になってさらに新しい版が出版されているアメリカ合衆国における本作品の評価史を再検討し、最近の版がどのような評価を受けているかをふまえて、アフリカ系アメリカ人および、インド系アメリカ人にとっての自己認識との関連において、本作品がどのように位置づけられているのかを、歴史的な変遷とも関連づけて論じた。さらに、本作への影響が指摘されている19世紀に出版された先行する絵本や、当時の小説の挿絵などとの影響関係について、図像学的観点から比較検討した。その際、人種や西欧文化が描いたアフリカ、インドの表象については、多数の例証を追加ことができた。また、今年度はこれまでにすでに論文として発表したものを含めて、全体としてポスト・コロニアリズムの観点から本作品の歴史的意味づけと現代作品としての評価をまとめて、名古屋大学大学院国際関係研究科に学位論文として提出した。本年度においては、2005年8月にダブリンで開催されたInternational Research Society for Children's Literature(国際児童文学学会)の研究大会に参加し、日本および海外の最新の研究成果と動向を知る機会を得た。また、多くの研究者との交流から、今後の新たな研究計画を定めるための指針をえることができた。また、3月に提出した博士学位論文には盛り込むことのできなかったいくつかの点について、新たな資料を収集することができた。具体的には、昨年はしばらく絶版となっていた国内版、1953年岩波書店刊行『ちびくろ・さんぼ』(光吉夏弥訳、フランク・ドビアス絵)が、他の出版社から復刻再版されたことから、その経緯と国内での反響を調査した。その結果、当作品の挿絵画家Frank Dobiasについてほとんど知られていないことがわかり、あらためて研究に着手した。国内では公的機関には全くほかの資料は収集保存されておらず、1927年にアメリカ合衆国で出版された原作も、意欲的に資料を収集しているスコットランド国立図書館にも、ニューヨーク市立図書館にも保存されていない。同画家のほかの作品もあまり数は残っていない。本年度はその中からニューヨーク市立図書館の蔵書となっている数点に関して画像を収集しており、現在分析の途中である。結果は平成18年度中に発表する予定である。また、日本国内におけるこの作品の受容の変遷、とくに昨年の旧版の復刻に見られるような根強い人気は、一面で日本の特徴を表していると同時に、児童文学における評価と出版・流通の問題の重要性をあらためて示していると考えられる。海外の大会に参加した経験から、このような問題を国内だけでなく、国際的な場で問題提起する必要を感じており、来年度には国際的な場での研究成果の発表を果たす予定で準備中である。
KAKENHI-PROJECT-15520238
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妊娠期の睡眠障害への介入効果~自律神経指標を用いた検討
妊婦の睡眠習慣の特徴としては,起床時刻が遅く,昼寝を毎日平均30分程度確保しているほか,テレビ視聴が長時間におよぶ妊婦では,ほぼテレビをつけっぱなしにしていることが想定された.スマートホンの使用も多く,毎日10時間以上使用している妊婦もあり,情報通信機器が過度に使用されている場合があることが示された.自律神経機能測定では,2割以上の妊婦で肉体的疲労度,精神的ストレスが高いことが明らかとなった.妊娠期にみられる睡眠障害に対しては,使用できる薬剤の制限から薬物的治療が困難な場合も多いが,非薬物的トリートメントにより,睡眠障害や妊娠期の合併症が改善できる可能性が示唆された.妊娠中には,不眠症,レストレスレッグス症候群,睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害をしばしば合併する.しかし,妊婦の診療において睡眠障害について問診されることは少なく,睡眠の問題を有しながらも,相談や治療につながらないケースも多い.妊婦の睡眠障害は,母体への身体的・精神的負荷となるが,胎児にも影響を与えうることから,治療が必要となる.さらに,妊娠期にはこれらの睡眠障害に対する薬物治療のオプションに乏しい現実がある.治療効果のエビデンスレベルは必ずしも高いとは言えず,客観的指標を用いた検討が求められている.不眠などの睡眠障害が遷延すると,交感神経シフトによる睡眠の質的低下の身体的コンディショニングが形成され,不眠が慢性化し,血圧などの身体面への影響も起こりやすくなる.出産後に児の睡眠覚醒リズムが形成されるまでの過程においては,母親は児の睡眠覚醒に合わせた生活となることから,睡眠は量的にも質的にもさらに低下する.このような妊娠期から出産後の育児期までの長期間にわたる母親の睡眠の問題に対しては,妊娠中にスクリーニングと医学的アプローチを開始することが合理的と考えられる.初年度の研究においては,妊婦に配布する睡眠問診票を作成し,睡眠障害をスクリーニングし,治療的介入を必要とする妊婦を有効に抽出する手法を確立するとともに,睡眠障害を有する妊婦における睡眠障害の程度を量的・質的に評価し,身体面への影響,特に自律神経指標についての生理的検討を行った.自律神経機能検査装置(TAS9 VIEW,YKC社製)にて安静時の脈拍測定を行うことで得られる各種自律神経パラメータの本研究における有用性についても検討した.自律神経パラメータの測定機材の入手については予定通りに実施できているが,睡眠障害の評価,胎児の状態の評価を行うための機材について,当初予定の機材では期待する成果が十分に得られない可能性が考慮されたため,機種の再検討を行った.このため,一部の睡眠評価の実施開始に遅れを生じているが,2年度目において必要な検討を行う準備はすでに整えており,研究計画に沿って今後の研究を実施する予定である.妊娠中には,不眠症,レストレスレッグス症候群,睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害をしばしば合併する.妊娠中の生理的な変化に加えて,妊娠に伴う生活上のストレスなども睡眠障害の原因となりうる.しかし,睡眠の問題を有していても,妊婦健診などにおいて睡眠について問診されることは少なく,睡眠の問題が相談や治療につながらないケースが多い.妊婦の睡眠障害は,母体への身体的・精神的負荷となるほか,胎児にも影響を与えうる.不眠などの睡眠障害が遷延すると,交感神経シフトによる睡眠の質的低下の身体的コンディショニングが形成され,不眠が慢性化し,血圧などの身体面への影響も起こりやすくなる.出産後に児の睡眠覚醒リズムが形成されるまでの過程においては,母親は児の睡眠覚醒にあわせた生活となることから,睡眠は量的にも質的にもさらに低下する.このような妊娠期から出産後の育児期までの長期間にわたる母親の睡眠の問題についてもスクリーニングを継続して行っている.初年度に睡眠障害をスクリーニングする方法として確立した睡眠問診票を用いて,妊婦健診を受診した妊婦を対象に,睡眠障害のスクリーニングを実施し,自律神経パラメータを継続的に測定している.今年度は約60例の測定を行っており,ストレス度,血管年齢についての測定を妊娠中に毎月実施し,経過を追跡した.睡眠問診票において,長時間のテレビ視聴や,午睡過多の妊婦が多いことも明らかとなった.また,同意が得られた妊婦については,出産後の母子の睡眠状態についての追跡を来年度継続して実施する.妊婦を対象とした,睡眠障害のスクリーニング調査,自律神経パラメータ測定をおおむね予定通りに実施している.引き続き来年度に測定を継続するとともに,一部同意が得られている妊婦における出産後の母子の睡眠評価を予定通り実施できる見通しである.妊娠中には,睡眠の問題をしばしば併存する.妊娠に伴う生理的な変化に加えて,妊娠に伴う生活上のストレスなども睡眠の問題の背景となる.しかし,睡眠の問題を有していても,妊婦健診などにおいて睡眠について問診されることは少なく,睡眠の問題の現状について把握されることも少ない.妊婦の睡眠の問題は,母体への身体的・精神的負荷となる.不眠や睡眠習慣の不良が遷延すると,交感神経シフトによる睡眠の質的低下の身体的コンディショニングが形成され,不眠が慢性化することも想定されている.
KAKENHI-PROJECT-15K11741
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K11741
妊娠期の睡眠障害への介入効果~自律神経指標を用いた検討
出産後に児の睡眠覚醒リズムが形成されるまでの過程においては,母親は児の睡眠覚醒にあわせた生活となることから,睡眠は量的にも質的にもされに低下することから,妊娠期の母親の睡眠の問題についての把握は重要である.初年度にスクリーニング方法として確立した睡眠問診表を用いて,妊婦健診を受診した妊婦を対象とした睡眠の問題を同定したところ,平均起床時刻は午前7時31分,午睡時間は一日平均35分で,就業していない妊婦が大半というバイアスはあるものの,睡眠習慣の特徴が示された.また,情報通信機器の使用時間は,テレビが一日平均4.8時間,スマートフォンが平均3.7時間であった.また自律神経パラメータは,妊娠期を通じてMSI(精神的ストレス度),PSI(身体的ストレス度)がともに高く,自律神経バランスは慢性ストレスもしくは疲労状態と判断され,妊娠期の慢性的な自律神経バランスの不良状態が示された.妊婦の睡眠習慣の特徴としては,起床時刻が遅く,昼寝を毎日平均30分程度確保しているほか,テレビ視聴が長時間におよぶ妊婦では,ほぼテレビをつけっぱなしにしていることが想定された.スマートホンの使用も多く,毎日10時間以上使用している妊婦もあり,情報通信機器が過度に使用されている場合があることが示された.自律神経機能測定では,2割以上の妊婦で肉体的疲労度,精神的ストレスが高いことが明らかとなった.妊娠期にみられる睡眠障害に対しては,使用できる薬剤の制限から薬物的治療が困難な場合も多いが,非薬物的トリートメントにより,睡眠障害や妊娠期の合併症が改善できる可能性が示唆された.初年度の検討を継続するとともに,症例の確保を進める.研究に同意が得られる妊婦が予定より少ないと想定される場合,あるいは継時的フォローにおいて脱落が生じるようであれば,対象者のリクルートについての対策も予定する.機材の運用については,すでに運用している自律神経機材の効率的運用をすすめ,必要に応じて機材の補完,検査人員の確保について考慮する.初年度,2年目の検討を継続するとともに,症例の確保に加え,得られた睡眠障害についてのデータの解析を進める.機材の台数により検査可能症例数が制限されるため,機材のさらなる効率的運用を進め,必要に応じて検査人員をさらに確保する.また,自律神経パラメータの継時的変化についての解析もあわせて進める.看護学主たる研究機材のうち,睡眠評価に関連する物品の購入の一部,ならびに研究に関連する旅費の支出を次年度に行うこととなったため.睡眠評価ならびに自律神経評価に関連する一部物品の購入,研究に関連する旅費の支出,研究論文の作成に関連する費用の支出の一部を次年度に行うこととなったため.次年度において,初年度に当初予定していた一部の必要な機材の購入,関連する物品の購入,打ち合わせ,学会発表の旅費を使用する計画である.次年度において,初年度に当初予定していた一部の必要な機材・物品の購入,打ち合わせ・学会発表の旅費,論文作成のために費用を使用する計画である.
KAKENHI-PROJECT-15K11741
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心理臨床家の養成における「臨床実践指導」に関する開発的研究
こころの問題が複雑化・深刻化している現代において、臨床心理士をはじめとする専門家、心理臨床家には、高度な専門性が求められている。心理臨床家の養成の難しさは、内面的な心と心の使い方、あるいは全人格に関わる生き方について、いわゆる教育指導が可能かという本質的な課題を提起する点にある。直接の人間関係による臨床実践をつうじて生成する学問、学問を基盤に臨床実践を行う心理臨床家、という学問と臨床実践の相互不可分な専門性の中で、従来の知識伝授型の教育過程とは異なる「臨床実践指導」の在り方に焦点を当てることになった。そこで、臨床心理士の養成と資格取得後の教育研修、ならびに臨床実践指導者の養成に関する教育訓練、教育研修の仕組みや在り方と、その指導内容や方法について検討がなされ、大学院附属心理教育相談室など臨床実践指導機関の役割や位置づけ、大学院教育カリキュラムにおける臨床実践指導の位置と在り方を討議する中、新しい臨床実践指導のパラダイム(従来の「講義-演習-実習」から「実習-演習-講義」への変換)が示された。これは、高度専門職業人として不可欠な倫理教育も含んでおり、臨床実践に根ざしたボトムアップ型の重要性が認識されることになった。このような技術だけではない臨床実践技能の質をどう担保し高めるかという点が、心理臨床家の養成において焦点であり、かつ臨床心理士有資格者にとっては生涯学習的なテーマである。本研究を通して、臨床実践指導の本質が問い直され、その特徴として、指導を受ける側と指導者側との双方向的な視点の重要性も明らかにされた。なお、京都大学大学院教育学研究科では、平成16年度から「臨床実践指導者養成コース」という独立した博士課程が設置され、「臨床実践指導学講座」が新設される運びとなっている。こころの問題が複雑化・深刻化している現代において、臨床心理士をはじめとする専門家、心理臨床家には、高度な専門性が求められている。心理臨床家の養成の難しさは、内面的な心と心の使い方、あるいは全人格に関わる生き方について、いわゆる教育指導が可能かという本質的な課題を提起する点にある。直接の人間関係による臨床実践をつうじて生成する学問、学問を基盤に臨床実践を行う心理臨床家、という学問と臨床実践の相互不可分な専門性の中で、従来の知識伝授型の教育過程とは異なる「臨床実践指導」の在り方に焦点を当てることになった。そこで、臨床心理士の養成と資格取得後の教育研修、ならびに臨床実践指導者の養成に関する教育訓練、教育研修の仕組みや在り方と、その指導内容や方法について検討がなされ、大学院附属心理教育相談室など臨床実践指導機関の役割や位置づけ、大学院教育カリキュラムにおける臨床実践指導の位置と在り方を討議する中、新しい臨床実践指導のパラダイム(従来の「講義-演習-実習」から「実習-演習-講義」への変換)が示された。これは、高度専門職業人として不可欠な倫理教育も含んでおり、臨床実践に根ざしたボトムアップ型の重要性が認識されることになった。このような技術だけではない臨床実践技能の質をどう担保し高めるかという点が、心理臨床家の養成において焦点であり、かつ臨床心理士有資格者にとっては生涯学習的なテーマである。本研究を通して、臨床実践指導の本質が問い直され、その特徴として、指導を受ける側と指導者側との双方向的な視点の重要性も明らかにされた。なお、京都大学大学院教育学研究科では、平成16年度から「臨床実践指導者養成コース」という独立した博士課程が設置され、「臨床実践指導学講座」が新設される運びとなっている。本研究の目的は、臨床心理士の養成と資格取得後の教育研修、ならびに臨床実践指導者の養成に関する教育訓練・教育研修の仕組みや在り方とその指導内容や方法について、その理念と研究課題の再検討を行うことである。そのための方法として、今年度は、まず、大学・学会等の組織と地域性に配慮した検討グループを構成し、2回にわたる合同会議を開催した(8月に京都にて、また12月に秋田にての開催)。これら2回の会議を通して、・臨床心理士の養成をめぐって各地域あるいは各教育機関がいかなる課題を抱えているのか、その現状確認ならびに課題確認。・また、今後どのような角度・立場からの研究協力者が必要とされるのかといった組織作りにおける課題。の検討を行った。また、これらの討議を踏まえて、各構成メンバーの本研究課題における位置づけおよび役割の明確化を行い、今後の研究の方向性の大枠作成を図った。なお、我々は既に、平成13年8月に開催された第1回合同会議の結果をまとめており、「京都大学大学院教育学研究科附属臨床教育実践研究センター紀要第5号(2002年3月31日発行)」に掲載予定である。臨床心理士の養成と資格取得後の教育研修、ならびに臨床実践指導者の養成に関する教育訓練・教育研修の仕組みや在り方とその指導内容や方法について、その理念と研究課題の再検討を本研究の目的としている。その中で、臨床心理士は、実際にクライエントに会うという実践中心から考えて、新しい臨床実践指導のパラダイム、従来の「講義-演習-実習」と「実習-演習-講義」への変換などが検討された。今年度は特に、倫理教育をどのように位置付けるか、どのように行うかについて、集中的に討議された。具体的には、カリキュラムの見直しの必要性や、倫理についても実践の中から具体的な例を出しつつ考えていくボトムアップ型の重要性などが示された。
KAKENHI-PROJECT-13610131
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心理臨床家の養成における「臨床実践指導」に関する開発的研究
また、附属実習施設の機能の再評価について、社会的機関としての基本整備事項、心理臨床家養成・指導者養成に関する教育訓練・研修期間としての基本整備事項、研究機関としての基本整備事項が検討され、臨床心理士の養成をめぐって、臨床心理士会、資格認定協会、学会の三団体が、固有の区分けのもとに、資格更新の内容をどのようにステップアップしていくのか、あるいは教育研修システムの見直しなどについて合同討議していく必要性が確認された。臨床心理士の養成と資格取得後の教育研修、ならびに臨床実践指導者の養成に関する教育訓練・教育研修の仕組みや在り方とその指導内容や方法について、その理念と研究課題の再検討を本研究の目的としている。今年度は、最終年度にあたり、これまでの研究成果から、改めて臨床実践の学である心理臨床に特有の臨床実践指導についてより踏み込んだ検討がなされた。具体的には、臨床実践指導者の立場からと臨床実践指導を受けた立場からの双方の視点を含んだ検討を行った。主な検討内容は、臨床心理士養成に関わる指定校に併設されている心理教育相談室の社会的機能や運営の整備の問題、臨床心理士の資格認定および更新の問題、そして、これらの問題を検討する基盤となる臨床実践指導の方法・成果の評価の問題などである。臨床実践指導の特異性とは、臨床心理士の専門技能が、知識や技術のみならず人間的な資質が問われる点にある。そのため、どのような指導を行っていくのか、または受けていくのかについては、指導者の立場と指導を受ける立場の双方が、この専門技能に対する感受性を豊かにしておく必要があることが話し合われた。専門家として来談者と心の問題に取り組んでいくこと自体、臨床実践指導の重みがあるが、臨床心理士の教育・研修に不可欠であるスーパーヴィジョンやケースカンファレンスなどが、高度な教養知と臨床知および職業倫理が培われる「場」あるいは「器」が大きな意味を持つことが確認された。「臨床実践指導」自体を研究することは、心理臨床実践においてだけではなく、臨床心理学という学問的基盤を問い直す取り組みに繋がるものとなった。
KAKENHI-PROJECT-13610131
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ゼオライト空洞中の銀カルコゲナイドマイクロクラスタ-のイオン構造と熱的安定性
ナトリウムイオンを含有するゼオライトを、25°Cの硝酸銀水溶液に3時間浸し、ナトリウムイオンを銀イオンに置換させ、110°Cで乾燥した。銀イオンの置換量を銀滴定により正確に決定した。この様に調整した銀型ゼオライトを、パイレックスガラス製の試験管に入れ、10^<-5>Torrの減圧下で、電気炉を用いて350°Cまで加熱し、完全脱水し、無水の銀型ゼオライトを調整した。ゼオライト中の銀と、丁度セレン化銀(Ag_2Se)の組成よりもわずかに多めのセレンを測りとり、純アルゴンガスで置換したグロ-ブボックス中で無水の銀型ゼオライトの入っている試験管に移し入れ、10^<-5>Torrの減圧下で封じた。電気炉で300°Cに保ち、一昼夜かけてセレンをゼオライト空洞中に吸蔵させた。吸蔵後、電気炉で230°Cに保ち、水素ガスで還元した。これらの操作で得られた試料は黒色であった。セレンを吸蔵した銀型ゼオライトを、グロ-ブボックス中で試験管から取出し、示差熱分析(DTA)測定用のアルミニウム容器に移し取り、クリンプした後、DTA測定装置にセットし、窒素ガス気流(40ml/min.)中で10°C/min.の速さで、500°Cまで昇温した。水素ガス還元した銀型ゼオライト試料のDTAの結果には、107°Cおよび140°Cに明瞭な吸熱変化が現れた。Ag_2Se粉末をメノウ乳鉢で粉砕して得られたDTAの結果には138°Cにだけ吸熱変化の起こることが見出された。このことは、水素ガス還元した銀型ゼオライトに出現した140°Cでの吸熱変化は、Ag_2Seに対応していることを示唆しており、本実験方法により、ゼオライト空洞中に、Ag_2Seマイクロクラスタ-が生成されたものと考えられる。また、ゼオライトに見られる107°Cの吸熱変化は、マイクロクラスタ-に固有のもののように思われる。高エネルギ-物理学研究所で行ったゼオライト空洞中のAg_2SeのセレンK-吸収端でのEXAFS測定から、吸熱変化の起こる140°Cを境に、EXAFSパタ-ンに明瞭な変化が起こるのが見出された。ナトリウムイオンを含有するゼオライトを、25°Cの硝酸銀水溶液に3時間浸し、ナトリウムイオンを銀イオンに置換させ、110°Cで乾燥した。銀イオンの置換量を銀滴定により正確に決定した。この様に調整した銀型ゼオライトを、パイレックスガラス製の試験管に入れ、10^<-5>Torrの減圧下で、電気炉を用いて350°Cまで加熱し、完全脱水し、無水の銀型ゼオライトを調整した。ゼオライト中の銀と、丁度セレン化銀(Ag_2Se)の組成よりもわずかに多めのセレンを測りとり、純アルゴンガスで置換したグロ-ブボックス中で無水の銀型ゼオライトの入っている試験管に移し入れ、10^<-5>Torrの減圧下で封じた。電気炉で300°Cに保ち、一昼夜かけてセレンをゼオライト空洞中に吸蔵させた。吸蔵後、電気炉で230°Cに保ち、水素ガスで還元した。これらの操作で得られた試料は黒色であった。セレンを吸蔵した銀型ゼオライトを、グロ-ブボックス中で試験管から取出し、示差熱分析(DTA)測定用のアルミニウム容器に移し取り、クリンプした後、DTA測定装置にセットし、窒素ガス気流(40ml/min.)中で10°C/min.の速さで、500°Cまで昇温した。水素ガス還元した銀型ゼオライト試料のDTAの結果には、107°Cおよび140°Cに明瞭な吸熱変化が現れた。Ag_2Se粉末をメノウ乳鉢で粉砕して得られたDTAの結果には138°Cにだけ吸熱変化の起こることが見出された。このことは、水素ガス還元した銀型ゼオライトに出現した140°Cでの吸熱変化は、Ag_2Seに対応していることを示唆しており、本実験方法により、ゼオライト空洞中に、Ag_2Seマイクロクラスタ-が生成されたものと考えられる。また、ゼオライトに見られる107°Cの吸熱変化は、マイクロクラスタ-に固有のもののように思われる。高エネルギ-物理学研究所で行ったゼオライト空洞中のAg_2SeのセレンK-吸収端でのEXAFS測定から、吸熱変化の起こる140°Cを境に、EXAFSパタ-ンに明瞭な変化が起こるのが見出された。
KAKENHI-PROJECT-03246201
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大規模海岸構造物による海岸侵食の制御法とその適用
大規模海岸構造物による海岸侵食の機構から,その侵食制御法を展開し,適用性について検討したが,得られた成果は次のように要約される。1.大規模海岸構造物による海岸侵食は,(1)沿岸漂砂の阻止,(2)構造物による波浪の変形とそれによる海浜流の形成,(3)侵食対策工による反射波の発生による主要要因によって発生することと数値シミュレ-ションによって明確にした。ついで,その侵食制御の基本的条件を究明し,海岸の安定化を目的として安定海浜の形成理論に立脚した海岸侵食制御論として安定海浜工法を展開した。2.海浜変形予測のための数値モデルを波浪変形,海浜流および漂砂・海底地形変動の協同現象としての取扱いによる3ーDモデルを構築し,さらに漂砂の分級作用を導入した長期海浜変形モデルを構築した。3ーDモデルにおいては,砕波帯における混合拡散保数の導入を試みるとともに,それによって安定海浜の形成過程を究明するとともに,長期海浜変形モデルによっては大規模構造物による海浜変形の予測を試み,それらの適用性を明らかにした。数値シミュレ-ションにより安定海浜の形成に伴う海底地形の変化と海浜流の発生についても詳細に検討し,安定海浜工法の適用性に言及することができた。3.現地海岸への適用に当っては,大潟海岸に試験施工中のヘッドランド周辺の海底地形の変化を調べるとともに,その予測を試みた。さらに,河口デルタの形成,縮少過程を究明し,デルタ地形の縮少に伴う海岸侵食についても考察した。これらの成果を基にして,大規模海岸構造物による海岸侵食制御の方法論を展開し,安定海浜の形成による侵食制御を目的とする安定海浜工法を提案し,その適用性を見出すことができた。大規模海岸構造物による海岸侵食の機構から,その侵食制御法を展開し,適用性について検討したが,得られた成果は次のように要約される。1.大規模海岸構造物による海岸侵食は,(1)沿岸漂砂の阻止,(2)構造物による波浪の変形とそれによる海浜流の形成,(3)侵食対策工による反射波の発生による主要要因によって発生することと数値シミュレ-ションによって明確にした。ついで,その侵食制御の基本的条件を究明し,海岸の安定化を目的として安定海浜の形成理論に立脚した海岸侵食制御論として安定海浜工法を展開した。2.海浜変形予測のための数値モデルを波浪変形,海浜流および漂砂・海底地形変動の協同現象としての取扱いによる3ーDモデルを構築し,さらに漂砂の分級作用を導入した長期海浜変形モデルを構築した。3ーDモデルにおいては,砕波帯における混合拡散保数の導入を試みるとともに,それによって安定海浜の形成過程を究明するとともに,長期海浜変形モデルによっては大規模構造物による海浜変形の予測を試み,それらの適用性を明らかにした。数値シミュレ-ションにより安定海浜の形成に伴う海底地形の変化と海浜流の発生についても詳細に検討し,安定海浜工法の適用性に言及することができた。3.現地海岸への適用に当っては,大潟海岸に試験施工中のヘッドランド周辺の海底地形の変化を調べるとともに,その予測を試みた。さらに,河口デルタの形成,縮少過程を究明し,デルタ地形の縮少に伴う海岸侵食についても考察した。これらの成果を基にして,大規模海岸構造物による海岸侵食制御の方法論を展開し,安定海浜の形成による侵食制御を目的とする安定海浜工法を提案し,その適用性を見出すことができた。本年度の研究成果を分担課題ごとに要約すれば,次のようである。1)海岸侵食制御の方法論大規模海岸構造物の設置により、【○!1】沿岸漂砂の阻止、および【○!2】構造物による波浪とそれによる海浜流場の変化が起り、海岸侵食が発生する。これらの過程を数値シミュレ-ション、水理実験によって確かめ、海岸を安定化させる方法論を検討した。その結果、沿岸漂砂の存在の有無により、動的および静的に安定な海浜群を原理的に形成させることができることがわかり、海岸侵食制御の方法論を確立することができた。その具体的な工法は安定海浜工法といわれる。2)安定海浜の形成過程とその予測海浜変形の数値モデルとして、1D,2Dモデルの改良を行った。この場合、波浪の変形モデルとして緩勾配方程式を基本とするもの(土屋、山下)とソリトンを主要素とする方程式系(安田)とを用いた。さらに、前者による波浪変形モデルに海浜流、海浜変形(海底地形変化)との連立系としての3D海浜変形モデルを開発し、基本的な境界條件に対して本モデルの適用性を確かめた。3)海岸侵食制御法の適用性に関する実験1)で示した侵食制御の方法論に従って、沿岸漂砂の阻止、波浪・海浜流場の変化の2つの要因ごとの海岸侵食を具体的に発生せしめ、それらの制御法の具体的な工法の適用性を確かめた。ついで、両者が共存する場合の侵食制御についても検討し、実験的にそれらの適用性を確かめることができた。これらの実験結果のうち、波浪・海浜流物の変化については、2)で開発した数値モデルでその実態の究明とともに、モデルの適用性を検討することができた。なお、若干の改良の余地が残されているが、現地海岸への適用も可能であることが示された。また、1D,2D海浜変形モデルによって、汀線変化の実態を追算することができたが、漂砂量則中の係数などさらに検討すべき点が残された。本年度の研究成果を分担課題ごとに要約すれば、次のとおりである。1)海岸侵食制御法の適用性の実験および現地海岸への適用
KAKENHI-PROJECT-01850121
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大規模海岸構造物による海岸侵食の制御法とその適用
大規模な構造物による海岸侵食の制を法として、安定海浜工法を適用した場合の海浜変形と安定海浜の形形成過程について実験的研究を行った。ヘッドランドの構造をいかに造るかが問題であるが、安定海浜の形成を確かめることができた。一方、現地海岸では現在試験施工が若干遅れているので、ヘッドランド周辺における海浜流と安定海浜の形成過程における海浜流および漂砂の変化を数値シミュレ-ションにより検討し、ヘッドランドの構造との関係を明らかにした。2)安定海浜群も形成予測昨年度構築した3D海浜変形予測モデルにより、安定海浜の形成過程に関する実験結果を解析し、漂砂量測を若干修正することにより、かなり現象を究明することができることを見出した。できれば、スケ-ル効果の現点から、3次元海浜変形の現地実験が要望された。一方、1Dおよび2D海浜変形モデルによる安定海浜の形成過程の予測を行ったが、砕波帯内における波浪の取扱いがさらに必要となったので、砕波帯内における波浪の変形モデルについて研究した。その結果、砕波帯における波浪の伝播に伴う海底摩擦、Reynolds応力を導入した波浪の変形モデルを構築した。また、1Dおよび2D海浜変形モデルにより、大規模海岸構造物による海岸侵食に対して、それが安定化できるための境界条暖の規模、配置について検討した。その結果、安定海浜群の配置に対しては、かなりの自由度があり、後地の利用と関係させて、海岸線の線形構造を定めるべきであることがわかった。最終年度として,本研究のとりまとめを次のように実施した。1)海浜変形予測モデルの検証(追加)3D海浜変形予測モデルの適用性をさらに検討するために,砂れんが形成されない条件において海浜変形の水理実験を行い,数値シミュレ-ション結果と比較し,また沿岸漂砂の阻止および構造物による波浪変形の両者による海浜変形の予測の場合に対しても実験的研究を追加して,3D海浜変形予測モデルの適用性を確かめた。2)安定海浜工法の適用性大潟海岸における安定海浜工法の適用に対しては,ヘッドランドの完成に伴う海浜変形を新規に購入したプロファイラ-によって測定し,その結果を3D海浜変形予測モデルによって追算して比較検討することにしたが,試験施工が遅れたので,その途中での海底地形の変化を実測した。一方,数値シミュレ-ションによって,ヘッドランドの設置によって安定海浜がどのように形成されるかを詳細に検討した。3)海岸侵食制御の方法論これらの研究を総合して,大規模海岸構造物による海浜変形機構とその予測から,その制御法として安定海浜の形成による方法を再検討した。とくに,ヘッドランドの設置位置が砕波帯内にある場合には,適当なサンドバイパス工法の併用を必要とすることから,その場合の方法論を3D海浜変形予測モデルの援用によって究明することができた。以上により、本研究において提案した海岸侵食制御の方法論を総括した。
KAKENHI-PROJECT-01850121
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鍼治療とツボ押しの組合せによるツボ刺激の降圧効果に関するランダム化比較試験
近年、鍼治療やツボ押しによる降圧効果が報告され、その機序に関するエビデンスも蓄積されつつあるが、鍼治療とツボ押しのどちらの方が有効か、また鍼治療とツボ押しの組合せはいずれか単独のツボ刺激よりも有効に働くのかは明らかにされておらず、これらの効果の相違を証明するためには無作為化比較試験が必要であると考えた。そこで本研究では地域住民を対象に、2×2 factorial designランダム化比較試験により、鍼治療とツボ押しならびにそれらの組合せによるツボ刺激の降圧効果の違いを明らかにすることを目的とする。近年、鍼治療やツボ押しによる降圧効果が報告され、その機序に関するエビデンスも蓄積されつつあるが、鍼治療とツボ押しのどちらの方が有効か、また鍼治療とツボ押しの組合せはいずれか単独のツボ刺激よりも有効に働くのかは明らかにされておらず、これらの効果の相違を証明するためには無作為化比較試験が必要であると考えた。そこで本研究では地域住民を対象に、2×2 factorial designランダム化比較試験により、鍼治療とツボ押しならびにそれらの組合せによるツボ刺激の降圧効果の違いを明らかにすることを目的とする。
KAKENHI-PROJECT-19K16991
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K16991
希土類窒化物を前駆体とした高機能触媒特性の発現
1)種々の希土類窒化物の調製法の検討希土類アミドの熱分解法によるYbN、EuNの調製については、イミドを経由して、それぞれ773Kおよび573Kにおいてほぼ定量的に希土類窒化物が生成することがわかった。またPrN、CeN、NdNなどの調製では、アンモニアガスによる希土類金属あるいは水素化物の窒化反応によっておこなった。これらの窒化物のうち、たとえばCe金属とアンモニアの反応によるCeNの調製は、ステンレス製反応管を用い523K、12hの条件でおこなった。反応の様子はCeに対して用いるアンモニア量によって著しく変化した。窒化反応はCe水素化物(CeH_x)の生成と競争的に進行し、アンモニア量が増えるにしたがって、水素化物の生成が顕著になった。ここで生成した水素化物については、さらにアンモニアと反応して窒化物に転化することがわかった。このことより希土類窒化物の効率的な調製法として、希土類水素化物を出発原料とする方法についても検討した。2)窒化物によるアンモニア吸蔵とその特性YbNやEuN窒化物に吸蔵されるアンモニアには少なくとも二つのタイプが存在し、一つは表面吸着の分子状アンモニアであるのに対して、もう一つは窒化物と反応してバルク中に分解した状態で存在することがTPDより示唆された。このことはXRDによっても確かめられた。さらに吸蔵アンモニアについては、赤外分光法より窒化物中に吸蔵されたアンモニアは分解し窒素はアジドとして存在することを示めす吸収が観測された。一方、水素については今のところ特定できていないが、軽アンモニアのほか重アンモニア(ND_3)を併用して検討したところアミドを生成している可能性が示唆された。イッテルビウムやユウロピウムなどの希土類アミドを熱分解して得られる希土類窒化物(YbN,EuN)をアンモニアで処理すると、表面形態や構造・組織の変化を伴いながら、ベンゼン水素化においてはシクロヘキセンへの高い選択的水素化能が発現するようになることを新たに見出した。そこで本研究では、次の三点について検討した。(1)熱分解の条件変化による窒化物形成の最適化(2)希土類窒化物のアンモニア処理による表面構造変化の特定と触媒活性発現の解明(3)ベンゼンの選択的水素化反応について、反応機構や速度論的に解明その結果、Yb,Euアミドを出発原料にして熱分解すると、それぞれ923K、723Kで立方晶のYbN,EuNが定量的に得られた。熱分解して得られたYbNに室温でアンモニアガスを接触させると、窒化物は直ちに多量のアンモニア吸蔵し、アンモニア吸蔵量は最大でNH_3/YbN=0.3に達することがわかった。アンモニアとの反応温度を297K,473K,573Kに上げるに従って、吸蔵量は減少する傾向を示した。また473K,573Kで反応後、温度を297Kに変えるとアンモニア吸蔵は増し297Kに相当する吸量にまで増加することがわかった。このことは、ここで見られるアンモニア吸蔵には吸着タイプのものがある程度含まれていることが示唆され、吸蔵アンモニアは少なくとも二つのタイプで窒化物中に存在すると思われる。触媒作用については、アンモニアを吸蔵することによってベンゼンの部分水素化反応に対する選択的な触媒作用が発現し、シクロヘキセンが高収率で得られることがわかった。1)種々の希土類窒化物の調製法の検討希土類アミドの熱分解法によるYbN、EuNの調製については、イミドを経由して、それぞれ773Kおよび573Kにおいてほぼ定量的に希土類窒化物が生成することがわかった。またPrN、CeN、NdNなどの調製では、アンモニアガスによる希土類金属あるいは水素化物の窒化反応によっておこなった。これらの窒化物のうち、たとえばCe金属とアンモニアの反応によるCeNの調製は、ステンレス製反応管を用い523K、12hの条件でおこなった。反応の様子はCeに対して用いるアンモニア量によって著しく変化した。窒化反応はCe水素化物(CeH_x)の生成と競争的に進行し、アンモニア量が増えるにしたがって、水素化物の生成が顕著になった。ここで生成した水素化物については、さらにアンモニアと反応して窒化物に転化することがわかった。このことより希土類窒化物の効率的な調製法として、希土類水素化物を出発原料とする方法についても検討した。2)窒化物によるアンモニア吸蔵とその特性YbNやEuN窒化物に吸蔵されるアンモニアには少なくとも二つのタイプが存在し、一つは表面吸着の分子状アンモニアであるのに対して、もう一つは窒化物と反応してバルク中に分解した状態で存在することがTPDより示唆された。このことはXRDによっても確かめられた。さらに吸蔵アンモニアについては、赤外分光法より窒化物中に吸蔵されたアンモニアは分解し窒素はアジドとして存在することを示めす吸収が観測された。一方、水素については今のところ特定できていないが、軽アンモニアのほか重アンモニア(ND_3)を併用して検討したところアミドを生成している可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-17042019
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17042019
ミエリン変性疾患解明に向けたミエリンとニューロンの新たな相互関係の解明
カナバン病は中枢神経の白質変性症の一つであり,原因遺伝子aspartoacylase (Aspa)の変異により引き起こされる.カナバン病モデルとして期待されているAspaノックアウト(AspaKO)ラットを用いて,中枢神経のシンプルな白質である視神経に着目し,病態解明を行った.4, 8, 12週齢のAspaKOラットのホモ型および対照ラット(野生型)の視神経を採材し,組織学的評価および透過型電子顕微鏡観察を行った.また,視神経のパラフィン切片に対して各種グリア細胞に対する免疫組織化学染色(PDGFRα, Olig2, GFAP)を行った.またPLP, MBPなどのミエリン関連蛋白やGFAP, AQP4に対するRT-PCRを行い,ミエリン関連蛋白に対するウエスタンブロッティング(WB)を行った.4週齢のAspaKOラットで空胞形成が,透過型電子顕微鏡ではミエリンの水腫状変化がみられ,ミエリン形成障害が示唆された.4週齢のAspaKOラットでは野生型対照ラットと比べ,PDGFRα(オリゴデンドロサイト前駆細胞マーカー)陽性細胞数が有意に増加し, 8週齢では減少傾向にあった.Olig2(オリゴデンドロサイトマーカー)陽性細胞数も同様の所見が観察された.また, 4, 8週齢でGFAP(アストロサイトマーカー)の染色性の低下がみられた. RT-PCRでは, 8週齢のAspaKOラットでMBP(ミエリン塩基性蛋白質)とGFAPのmRNA発現が有意に減少し, WBでは4週齢のAspaKOラットでMBP蛋白の有意な減少, 4, 8週齢でGFAP蛋白の有意な減少がみられた.以上より, AspaKOラットの視神経では,ヒトのカナバン病と同様に空胞病変とミエリンの水腫状変化が認められ,アストロサイト機能障害,オリゴデンドロサイトの分化異常が示唆された.平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。【背景】本研究は,dmyラットおよびTRMラットの病態を比較検討することにより,ミエリン崩壊のメカニズムの詳細を解明することを目的とした.【結果・考察】1dmyラットでは脊髄腹索を中心にミエリンの崩壊が観察され,TRMラットでは脊髄白質において腫大した軸索が認められた.2TRMラットでは対照ラットと比較して、NF-Hの染色性に大きな違いは認められなかったが,dmyラットの脊髄腹索,側索ではNF-Hが凝集している軸索が認められた.これらのことから,両ミュータントラットで軸索の機能障害がおこっていることが示唆された.3TRMラットでは対照ラットと比較して,GLUT1の染色性に大きな変化は認められなかったが,dmyラットの脊髄腹索,側索では腫大したオリゴデンドロサイトでGLUT1の発現上昇が認められた.4dmyラットの脳脊髄液では物質Aおよび物質Bの有意な減少が認められ,TRMラットでは物質Aおよび物質Bの有意な増加が認められた.これらの結果から,両ミュータントラットで細胞内のエネルギー産生異常に関連するオリゴデンドロサイトの機能的な変化が起こっていることが示唆された.4TRMラットでは対照ラットと比較してOlig2およびNkx2.2の染色性に差は認められなかったが,7,8週齢のdmyラットの脊髄腹索においてNkx2.2強陽性OPCが有意に減少した.5dmyラットでは対照ラットと比較して,オリゴデンドロサイトのPLP mRNAの発現が減弱しており,TRMラットではPLP陽性の突起の伸長が悪く,未熟な形態をしたオリゴデンドロサイトが多数認められた.以上より,両ミュータントラットではオリゴデンドロサイトの分化・成熟・機能異常が生じていることが示された.予定していたdmyラットとTRMラットの解析は,新たに生化学的な解析も追加して,おおむね順調に進展している.dmyラットはミトコンドリアのマグネシウムチャネルであるMRS2遺伝子の変異により発症する.マイクロアレイ解析によって,dmyラットの病変進展時に伴ってTribbles homolog 3 (Trib3)が発現上昇することを見いだした.さらにリアルタイムPCR法,免疫組織化学およびウエスタンブロッティング法によって,Tribおよびその蛋白TRB3はdmyラットにおいて顕著な発現上昇を示すが,他のミエリンミュータントであるmvラットおよびVFラットでは発現変動を示さないことを明らかにし,Trib3は病変が顕著となるよりも初期に発現上昇すること,主に神経細胞とオリゴデンドロサイトにおいて発現することを明らかにした.以上の結果より,dmyラットは酸化ストレスや小胞体ストレスを受けており,それらのストレスによりTrib3の発現が上昇した可能性が示唆された.これらの成果をPLoSOne誌に発表した.VFラットの原因遺伝子Dopey1の機能を明らかにする目的で,全身諸臓器におけるDopey1の発現をRT-PCR法にて検討した.Dopey1発現は中枢神経系に加えて,幾つかの実質臓器においても発現しており,その役割が注目された.現在,免疫組織化学およびin situ hibridization法を用いて発現細胞を同定し,その役割を解析している.dmyラットの病変進展時に伴ってTribbles homolog 3 (Trib3)が発現上昇することを見いだし,これらの成果をまとめ,PLoS One誌に発表することができた.TRMラットについては,詳細な電顕観察を着手している.VFラットの原因遺伝子と相互作用する因子を同定する目的で,免疫沈降法の予備検討も行っており,おおむね順調に進展している.Dopey
KAKENHI-PROJECT-15H04595
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ミエリン変性疾患解明に向けたミエリンとニューロンの新たな相互関係の解明
1欠損によるミエリン変性モデルVFラットの詳細な病態解析およびDOPEY1蛋白の機能解析を行った.1VFラットの病態解析: 10週齢のVFホモ型発症ラット3匹,野生型対照ラット6匹を4%パラホルムアルデヒドで浸漬固定後,パラフィン包埋し,組織切片を作製した.作製した切片に対してオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)マーカーPdgfrα(血小板由来成長因子受容体)mRNAに対するin situ hybridizationを行い,Pdgfrα陽性細胞数をカウントした.2DOPEY1蛋白の機能解析:野生型対照ラットの脳ライセートから,共免疫沈降法によりDOPEY1蛋白複合体を精製した. SDS化したDOPEY1蛋白複合体に対してWestern blot法と銀染色を行った.銀染色で検出されたバンドを細切してLC/MS解析を行い,DOPEY1蛋白と相互作用する蛋白の同定を行った.同定された蛋白に対する逆共免疫沈降法を行った.その結果,1脊髄Pdgfrα陽性OPC数は,野生型対照ラットと比較してVFホモ型発症ラットで,増加傾向にあった.2DOPEY1蛋白と複合体を形成している蛋白としてFibromodulinやADP-ribosylation factor-like protein 2 (ARL2)を候補蛋白として実験を進めたが,DOPEY1蛋白との結合性を証明することができなかった.カナバン病モデルAspaノックアウトラットの病態解析を行った.ホモ型の大脳,小脳,脊髄といった中枢神経系の広範囲で空胞形成が認められた.ホモ型ラットでは脊髄全体のミクログリアと脊髄灰白質のアストロサイトの活性化がみられ,脊髄全体で未熟オリゴデンドロサイトの増加および成熟オリゴデンドロサイトの減少も認められた.透過型電子顕微鏡では,脊髄の白質および灰白質の軸索内でミトコンドリアの腫大や増数,軸索の水腫,ミエリンの離解が認められた.白質の水腫状となった軸索内に,電子密度の高い糸くず状およびドーナツ状の異常な構造物も散見された.自然発症カナバン病モデルであるTRMラットの解析に加えて,Aspaノックアウトラットの病態解析に着手し,興味深い結果を得ている.また,VFラットの原因遺伝子Dopey1と相互作用する因子の同定のために,免疫沈降法を進めており,おおむね順調に進展している.カナバン病は中枢神経の白質変性症の一つであり,原因遺伝子aspartoacylase (Aspa)の変異により引き起こされる.カナバン病モデルとして期待されているAspaノックアウト(AspaKO)ラットを用いて,中枢神経のシンプルな白質である視神経に着目し,病態解明を行った.4, 8, 12週齢のAspaKOラットのホモ型および対照ラット(野生型)の視神経を採材し,組織学的評価および透過型電子顕微鏡観察を行った.また,視神経のパラフィン切片に対して各種グリア細胞に対する免疫組織化学染色(PDGFRα, Olig2, GFAP)を行った.
KAKENHI-PROJECT-15H04595
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超高圧電力系統における事故時復旧操作のエキスパ-トシステム化
本研究では、超高圧電力系統に停電事故が発生した場合の復旧操作を支援するエキスパ-トシステムの開発を行った。以下に成果をまとめる。1。電力会社の超高圧系統給電操作細則を分析し、電気所が全停電と自断の各々について復旧操作の基本となるル-ルを抽出した。そしてこれらのル-ルに基づいてエキスパ-トシステムの知識ベ-スを構築した。これにより、常時の系統の運用形態に沿った復旧操作が可能となり、その復旧手順は実際の系統復旧操作に近いものとなった。また、細則の自断の場合のル-ルを新たにシステムに組み込んだため、系統全停電だけでなく、さまざまな部分停電にも対応でき、初期電源の種々のパタ-ンや、故障機器がある場合でも対応する事が可能になった。2。細則中の給電指令を整理、分類した。これに優先順位を定めることにより、給電指令の自動選択を可能にした。この自動選択は機能としては非常に限られたものであるに関らず、人間が考えるのとはほぼ同様な選択を行うことができる。機能が単事であるため、系統設備の変更などに伴う給電指令の追加、削除などの変更が容易である。事故状態によって優先順位が変化するような優先順位をはっきりと定めることができないタイプの給電指令については、復旧方針決定モ-ドにおいて操作員が復旧過程の各時点で優先順位を決定することができる。また、操作員の給電指令選択の支援を行うだけでなく、給電指令の変更、復旧方針の選択など、操作員の思考も柔軟に取り入れることができる。3。細則の復旧操作だけでは復旧できない停電範囲を、細則の復旧の流れにできるだけ沿うような給電指令による復旧操作を追加することで復旧可能にした。この方法での成功は、本システムの今後の更なる機能拡張へ向けての有用な指針を与えるものと考える。今後の課題として、潮流状態のチェック、過電圧の抑制等の機能追加を行う予定である。本研究では、超高圧電力系統に停電事故が発生した場合の復旧操作を支援するエキスパ-トシステムの開発を行った。以下に成果をまとめる。1。電力会社の超高圧系統給電操作細則を分析し、電気所が全停電と自断の各々について復旧操作の基本となるル-ルを抽出した。そしてこれらのル-ルに基づいてエキスパ-トシステムの知識ベ-スを構築した。これにより、常時の系統の運用形態に沿った復旧操作が可能となり、その復旧手順は実際の系統復旧操作に近いものとなった。また、細則の自断の場合のル-ルを新たにシステムに組み込んだため、系統全停電だけでなく、さまざまな部分停電にも対応でき、初期電源の種々のパタ-ンや、故障機器がある場合でも対応する事が可能になった。2。細則中の給電指令を整理、分類した。これに優先順位を定めることにより、給電指令の自動選択を可能にした。この自動選択は機能としては非常に限られたものであるに関らず、人間が考えるのとはほぼ同様な選択を行うことができる。機能が単事であるため、系統設備の変更などに伴う給電指令の追加、削除などの変更が容易である。事故状態によって優先順位が変化するような優先順位をはっきりと定めることができないタイプの給電指令については、復旧方針決定モ-ドにおいて操作員が復旧過程の各時点で優先順位を決定することができる。また、操作員の給電指令選択の支援を行うだけでなく、給電指令の変更、復旧方針の選択など、操作員の思考も柔軟に取り入れることができる。3。細則の復旧操作だけでは復旧できない停電範囲を、細則の復旧の流れにできるだけ沿うような給電指令による復旧操作を追加することで復旧可能にした。この方法での成功は、本システムの今後の更なる機能拡張へ向けての有用な指針を与えるものと考える。今後の課題として、潮流状態のチェック、過電圧の抑制等の機能追加を行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-03650229
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多変数のゼータ関数の数論的性質の研究
本研究では、ゼータ関数という、整数論の研究において非常に重要な関数の性質について研究することを目的とした。とくに本研究課題においては、多変数のゼータ関数について、主にその解析的側面からの研究を行った。主な結果としては、Wittenの仕事をベースに定義されたWittenゼータ関数の多変数化したもの、また荒川恒男氏および金子昌信氏によって定義されたArakawa-Kanekoゼータ関数とよばれるものについて、その数論的な性質を考察し、それまで知られていなかった性質などについて成果を得た。研究発表欄にある通り、多変数のWittenゼータ関数に関して、連携研究者の松本耕二氏、小森靖氏との共同研究に関して、3本の論文が出版された。一つ目はこれまで執筆してきた多変数のWittenゼータ関数に関する一連の論文の5番目にあたるもので、とくに例外型Lie代数に付随するゼータ関数を扱っている。これまで他の研究者によって予想されていた特殊値の表示を明示的に与えるなど、大きな成果を含んでいる。2つ目は本来の半単純Lie代数に付随するものとしてWittenゼータ関数が定義されていたが、それをLie群に付随するゼータ関数に拡張したことが重要な点である。実際、Weyl群の作用を精密に考察することで、これまで得られていなかった、Wittenゼータ関数の特殊値に関する表示も得られ、この分野の発展に貢献した。3つ目はこれらの一般化と見られる、超平面配置に付随するゼータ関数も定義し、その特殊値も計算することができた。これらはそれまでの3人の共同研究に継続的な研究結果と見られるものである。さらにEuler-Zagier型の2重ゼータ関数に関する平均値定理に関する松本氏との共著論文も出版された。この結果は、Riemannゼータ関数の平均値定理の二重化と見られるもので、これまでこの方面の研究はほとんどなされていなかった。本研究を皮切りに、最近、この分野の研究者達によって、多重化や一般化がなされて、大きな発展が期待されている。計画していた、多変数のWittenゼータ関数に関する研究については、研究論文も出版されて、順調に進展している。また連携研究者の古庄英和氏を含めたp進多重L関数に関する論文:に関しても、2015年度に,数学の専門誌Selecta Math.にacceptされた。こちらの研究も順調に進んでいる。本年度は研究計画で述べた多変数のp進多重L関数に関する論文(連携研究者の古庄英和氏、小森靖氏、松本耕二氏との共著論文)が出版された。この研究の関連として、いわゆるp進多重ポリログ、p進多重Lポリログの負の整数点での値と、多変数のp進多重L関数の値の関係に関する研究を継続している。またEuler型の複素多重ゼータ関数の特異点解消に関する論文(連携研究者の古庄英和氏、小森靖氏、松本耕二氏との共著論文)も出版された。この研究は、これまでに荒川恒男氏と金子昌信氏によって定義されたArakawa-Kanekoゼータ関数との関連が興味深く、特に負の整数点での関係が明示的に得られることを目標に研究を続けている。実際、その観点からの派生的な研究の一つとして、小森氏との共同研究で、二次の一般線形群に付随する荒川-金子型ゼータ関数の構築に成功して、論文として公表し、既に日本数学会の欧文紀要(J. Math. Soc. Japan)への掲載が決定した。この結果は、既知の結果をかなり幅広く含むものとして評価できるものであると考えられる。また昨年度からの継続として、金子昌信氏とのポリベルヌーイ数の研究において、その補間関数としての新たなゼータ関数を構成し、その性質から、いわゆるポリベルヌーイ数のduality公式を一般化することができた。これについても既にNagoya J. Math.に掲載が決定しており、この分野の研究の基礎的な部分の発展事項として評価されている。その関連として、金子氏および櫻井ふみ氏との共同研究で、ポリベルヌーイ多項式に関するduality公式も証明することができ、その論文のJ. Theor. NombresBordeauxへの掲載が決定した。またH. Bachmann氏との多重Eisenstein級数の研究についても論文を発表することができた。研究実績の項でも述べたように、以下の3本の論文の掲載が決定した:これらの結果を鑑み、当初の研究計画が順調に進展していると考えられる。最終年度に得られた研究成果としては、多変数Witten型ゼータ関数の解析的な理論に関する成果、荒川-金子ゼータ関数に関する継続的な研究成果、さらに関連として、多重Eisenstein級数の満たす関係式の導出、古典的なテータ関数の変換公式を用いた、双曲線関数を含む多重級数の関係式の導出などがあげられる。まず、多変数Witten型ゼータ関数については、ランクの低いルート系に関するものについての特異点解消について、望ましい結果が得られて、連携研究者の古庄氏、小森氏、松本氏との共著論文として発表したものが数理研講究録別冊から出版される。さらには、小森氏、松本氏との共同研究で、ポアンカレ多項式を用いた非自明な関数関係式の導出に成功し、例えばこれまで得られていなかったA_3型ルート系に付随するゼータ関数の特殊値の導出に成功した。この結果は専門誌に投稿中である。
KAKENHI-PROJECT-15K04788
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多変数のゼータ関数の数論的性質の研究
荒川-金子ゼータ関数に関する結果については、既に出版が決まっている2本の論文をもとに、金子昌信氏との共同研究が継続しており、関数としての双対性をもとにした新たな多重ゼータ値の間の関係式への応用が得られ、現在金子氏とともに、共著論文としてまとめている。多重Eisenstein級数の満たす関係式については、年度内にH. Bachmann氏との共著論文が出版された。現在の継続的に研究を続けている。さらに古典的なテータ関数の変換公式を用いた、双曲線関数を含む級数の関係式として、1970年代にB. Berndt氏によって得られている結果の一般化が得られ、既に専門誌への掲載が決定している。その二重化類似も得られ、その結果についても専門誌への掲載が決定している。これらの結果はさらなる発展が期待できるため、今後も研究を継続していく。本研究では、ゼータ関数という、整数論の研究において非常に重要な関数の性質について研究することを目的とした。とくに本研究課題においては、多変数のゼータ関数について、主にその解析的側面からの研究を行った。主な結果としては、Wittenの仕事をベースに定義されたWittenゼータ関数の多変数化したもの、また荒川恒男氏および金子昌信氏によって定義されたArakawa-Kanekoゼータ関数とよばれるものについて、その数論的な性質を考察し、それまで知られていなかった性質などについて成果を得た。研究実績の項目で述べた研究の継続に加えて、九州大学の金子昌信氏との共同研究も進んでおり、2015年度に1本の論文をarXivに発表した:また2016年度に入ってすぐに下記の論文をarXivに発表した:また小森氏と取り組んでいるGL_2(C)に付随する荒川-金子ゼータ関数およびポリベルヌーイ多項式に関する研究も継続的に行っていく。本課題の最終年度である29年度に向けて、現在取り組んでいるものをさらに進展させたいと考えている。一つには、小森氏、松本氏と取り組んでいる多変数のWitten型ゼータ関数の関数関係式について、取り一層の研究を深めていきたい。現在新たな視点からの研究に取り組んでおり、いくつかの非自明な結果を得ている。これらを精査して、一般論を構築し、29年度に論文として発表することを目標としている。またp進多重ゼータ関数およびポリベルヌーイ数に関連して行っている共同研究に関しても継続的に取り組んでいく。代数学本来、使用予定だったフランスへの研究出張旅費について、他の費用による補助をうけることができたため、その分を次年度に繰り越す28年度3月にフランス・Lille第一大学で開催された日仏二国間共同研究集会`French- Japanese Zeta Functions'に、参加・講演の予定であったが、校務の都合で急に出席できないことになったため、その分の繰越額が発生した。次年度、新たにフランスへの研究出張を予定しているため、旅費の一部として充当する予定である。29年度5月6月に、ドイツ・マックスプランク数学研究所に滞在し、同研究所滞在中の研究者との共同研究を予定している。この繰越額をその旅費・滞在費として使用する。既に招聘も確定しており、そのための具体的な手続きに入っている。
KAKENHI-PROJECT-15K04788
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癌患者の各種免疫調整剤(BRMS)に対する感受性スクリーニングに関する研究
各種免疫賦活剤は従来から副作用のない抗癌剤として多用されてきた。しかし、その効果に対しては疑問視する報告もみられる。抗菌剤に使用にあたっては感受性試験が通常おこなわれる。免疫療法剤においても感受性試験、すなわち、使用対象の患者の免疫状態を考慮した至適投与法、量の検討が必要である。今回、すでにおこなわれた比較試験をもとにいかなる免疫パラメータが治療前の患者の免疫能を評価するために有用かを検討し、これらの妥当性を確認するため癌免疫外科研究会の協力を得てprospective studyを企画した。結果1)従来から有用な免疫パラメータと考えられているリンパ球数、リンパ球幼弱化絶対数、皮内反応、栄養指数等は術前値のみの多寡で評価は困難で薬剤使用中の推移で評価する必要がある。2)投与前の免疫パラメータとしてはLNTに対するHLA class1(All.B7CW3)が有効な指標と考えられた。3)患者末梢血全血アッセイ法によるサイトカイン産生能からTh_1Th_2バランス評価の検討からは免疫療法剤の添加培養によりTh_2からTh_1に変動するものだけでなく約1/3の症例においてはTh_1からTh_2に変化するものもみられた。以上のような結果より、免疫賦活剤の使用にあたっても画一的な使用は避けるべきであり、患者の免疫状態をサイトカイン産生量などから評価し、responderを選別し、使用中の免疫能の変動の有無を評価し、適正な使用をおこなうべきと考えられた。本研究において確定的な免疫パラメータは選定不能であったが、HLA class1、末梢血のサイトカイン産生能などがresponder選別のため有用な候補と考えられた。今年度はBRM_sのうちOK-432を用いたtrialの解析をおこない以下の結論が得られた。(1)組織学的解析の結果:腫瘍内侵潤リンパ球の高度なものが予後良好でかつこれらの症例においては第2群以上のリンパ節転移が抑制され、転移率が対照群に比し510%低下し、転移度が著明に減少していた。BRM_sの術前腫瘍内投与の意義はリンパ節再発の予防にあると考えられた。(2)免疫パラメ-タ解析の結果:術前のリンパ球数が多く、かつ、皮内反応高値例において予後の改善が見られる傾向にあった。皮内反応では投与前後における変動重要でSuPS皮内反応で陽転例、陽性不変例、陰性不変例、陰転例の順に予後が良好であった。(3)HLA class Iの検討結果:対象例のうち2年以上生存例においてHLA class Iを検討してみた結果、SuPS反応陽性例はA_2、Bw_<51>保有例に多く、前後で陽転化するものはA_<11>保有例に多かった。また、組織学的所見と対比すると予後良好であった。OK-432局注群のリンパ球浸潤高度群ではA_<11>保有率が有意に高率であった。2.responderと考えられた対象患者のリンパ球機能検査(1)各種BRM_s添加培養上清サイトカインの測定およびリンパ球細胞障害活性の測定の結果:現在、胃癌症例を中心に検討中であるがγ-INF産生能とNK活性の間に相関がみられたがTNF産生能の間には相関が得られていない。いずれも検討症例が少数でありHLA typeとこれらcytokine産生能、細胞障害活性の検討は来年度に症例を増やし検討していく。各種免疫賦活剤は従来から副作用のない抗癌剤として多用されてきた。しかし、その効果に対しては疑問視する報告もみられる。抗菌剤に使用にあたっては感受性試験が通常おこなわれる。免疫療法剤においても感受性試験、すなわち、使用対象の患者の免疫状態を考慮した至適投与法、量の検討が必要である。今回、すでにおこなわれた比較試験をもとにいかなる免疫パラメータが治療前の患者の免疫能を評価するために有用かを検討し、これらの妥当性を確認するため癌免疫外科研究会の協力を得てprospective studyを企画した。結果1)従来から有用な免疫パラメータと考えられているリンパ球数、リンパ球幼弱化絶対数、皮内反応、栄養指数等は術前値のみの多寡で評価は困難で薬剤使用中の推移で評価する必要がある。2)投与前の免疫パラメータとしてはLNTに対するHLA class1(All.B7CW3)が有効な指標と考えられた。3)患者末梢血全血アッセイ法によるサイトカイン産生能からTh_1Th_2バランス評価の検討からは免疫療法剤の添加培養によりTh_2からTh_1に変動するものだけでなく約1/3の症例においてはTh_1からTh_2に変化するものもみられた。以上のような結果より、免疫賦活剤の使用にあたっても画一的な使用は避けるべきであり、患者の免疫状態をサイトカイン産生量などから評価し、responderを選別し、使用中の免疫能の変動の有無を評価し、適正な使用をおこなうべきと考えられた。本研究において確定的な免疫パラメータは選定不能であったが、HLA class1、末梢血のサイトカイン産生能などがresponder選別のため有用な候補と考えられた。今年度の研究の主眼はBRM投与症例における至適パラメ-タの検索およびそれらの臨床応用への検討にあった。投与症例の検討は関係機関の協力を得て全国レベルでおこなった。1.BRM投与における至適パラメ-タの検討研究者らの属す癌免疫外科研究会宿主要因検討委員会のアンケ
KAKENHI-PROJECT-01570758
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癌患者の各種免疫調整剤(BRMS)に対する感受性スクリーニングに関する研究
-ト調査(昭和58、59年度胃癌症例を対象)によりT.P≧5.9,Alb≧4.0,Ly数≧1200(術前値)がBRMの至適投与条件と想定された。2.PSK腫瘍内投与の解析PSKの術前腫瘍内投与により1年生存率87.6%と、control群の74.5%にくらべ有意に良好であった。本治療法はOKー432同様リンパ節転移率を低下させていた。腫瘍増殖局所所見につき組織学的検討中であるがnaturalな反応としての局所浸潤リンパ球の多少により治療効果の差が予想された。3.BRMを用いた末梢血リンパ球の添加培養によるスクリ-ニングOKー432,PSK,MYー1等のBRMの患者末梢血リンパ球の添加培養上清中のγーIFN産生量、TNF産生量は癌の進行度によらず患者により差をみとめた。NK活性、LAK活性の上昇もみとめ、これらの上昇はγーIFN産生量との正の相関をみとめた。また、これは3種の皮内反応(PPD,SuーPS,OKー432)のスコア-と相関をみとめ皮内反応がスクリ-ニングに有効と考えられた。以上の成績をふまえ、癌免疫外科研究会を母体に胃癌症例を対象に免疫パラメ-タ(宿主要因)を再検討する目的でBRM至適投与に関する研究を本年5月スタ-ト予定としている。1.胃癌患者における末梢血リンパ球の各種免疫賦活剤添加培養によるcytokine産生からみたresponderの検出(1)各種免疫賦活剤(OKー432,PSK,MYー1)を調整リンパ球に添加、培養上清中のcytokine(TNF,ILー2,IFNーγ)を測定、OKー432は他剤に比し、有意にcytokine産生を促進したが、これらの内にも産生の高度のものと低い2群いわかれresponder,nonーresponderの選別に有効と考えられた。(2)皮内反応とcytokine産生能:皮内反応をPPD,SuPS,OKー432を用いて検討陽性度をスコア化し、cytokine産生能と相関を求めたところ、正の相関をみとめ、簡便な皮内反応がscreeningに有用と考えられた。PSK,MYー1等に関するresponder検出:PSKに関しては免疫抑制状態の解除が作用機序の本態といわれている。これらのresponderの検出には免疫抑制状態の定量化が必要と考えられ、現在、IAP等の定量とともに患者血清、正常人リンパ球、PSKを用いた系で抑制解除の可否によるscreening法を検討中。2.各種パラメ-タを指標とした癌患者治療への応用(1)皮内反応、IAP等を指標に免疫療法の選択の是否につき現在、2つのプロトコ-ルにより、全国レベル及び岡大第一外科関連病院においてrandomized trialを施行中である。結果については23年後に公表出来る予定である。
KAKENHI-PROJECT-01570758
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01570758
中国における各方言に対する言語評価及び言語政策
本研究は、中国人大学生の言語評価に関する研究である。調査対象地は北京・天津・上海・杭州の4都市、対象方言は普通話と主要方言、その他各調査地点の言語状況に合わせて幾つかの方言を設定した。評価語としては、「上品である」、「親近感を覚える」、「柔らかである」、「豪快である」、「細やかである」、「実用的である」、「美しい」、「かっこいい」、「好きである」という言語を評価する上で比較的イメージしやすいと思われる9項目を設定した。その統計結果を通して、以下の傾向を得ることができた。(1)北方方言群が豪快で、南方方言群が繊細であるといった地域言語間におけるイメージのステレオタイプの実態が明らかになった。(2)全体的に見ると、普通話には実用性、母方言には親近感を強く覚える傾向にあるが、母方言に対する評価では、北方は上品さを感じないのに対し、南方では豪快さを感じないと言うことが明らかになった。(3)言語威信には、伝統文化による影響や地域の政治や経済による影響などといった多様な側面が含まれることが明らかになった。(4)上海語のイメージは北へ行くほど低くなる、或いは湖南語に対する評価は南北で分かれるといった言語評価における地域変容の実態が明らかになった。(5)各方言の中心地までの物理的距離と中国人大学生が各方言に対して持つ心理的距離の関係には、等距離関係、疎遠関係、親近関係の3タイプがあることが明らかになった。(6)中国人大学生の言語使用は、インフォーマルな場面ほど母方言の使用が多く、フォーマルな場面ほど普通話の使用が多くなり、そして、杭州の大学生の言語シフト状況は同じく考何地域に位置する上海よりも北方の北京、天津に近いことが明らかになった。(7)普通話が全調査地点において高い言語威信を維持している実態が判明し、それは中国政府が進める教育、マスコミ、行政における普通話普及政策がもたらした結果を反映したものと見ることができ、今後の中国における言語政策の行方を予測する上でも重要な意味を持つものと思われる。本研究は、中国人大学生の言語評価に関する研究である。調査対象地は北京・天津・上海・杭州の4都市、対象方言は普通話と主要方言、その他各調査地点の言語状況に合わせて幾つかの方言を設定した。評価語としては、「上品である」、「親近感を覚える」、「柔らかである」、「豪快である」、「細やかである」、「実用的である」、「美しい」、「かっこいい」、「好きである」という言語を評価する上で比較的イメージしやすいと思われる9項目を設定した。その統計結果を通して、以下の傾向を得ることができた。(1)それぞれの方言に対する評価は、南北で一致を見せるものもあれば、全く異なるものもある。(2)言語評価には経済的威信の影響を色濃く受けるものと文化的威信の影響を色濃く受けるもの、そして心理的要因の影響を色濃く受けるものが存在する。(3)普通話に対する評価には4地点において共通するものがある。(4)ある方言に対する評価では、自己評価と他者評価との間に大きな差が見られる。(5)他者方言に対する心理的距離は、該当言語を母語とする地域との物理的距離と比較的密接に関わっている。(6)人々がイメージする「かっこいい」言語には、該当言語を母語とする地域が有する経済的威信を羨望したものと、該当言語を母語とする地域が有する歴史的背景からイメージされる「男性的な魅力」という2種類存在すると考えられる。(7)北京人大学生と上海人大学生のお互いの母語に対する相互評価にはかなりの差が存在する。本研究は、中国人大学生の言語評価に関する研究である。調査対象地は北京・天津・上海・杭州の4都市、対象方言は普通話と主要方言、その他各調査地点の言語状況に合わせて幾つかの方言を設定した。評価語としては、「上品である」、「親近感を覚える」、「柔らかである」、「豪快である」、「細やかである」、「実用的である」、「美しい」、「かっこいい」、「好きである」という言語を評価する上で比較的イメージしやすいと思われる9項目を設定した。その統計結果を通して、以下の傾向を得ることができた。(1)北方方言群が豪快で、南方方言群が繊細であるといった地域言語間におけるイメージのステレオタイプの実態が明らかになった。(2)全体的に見ると、普通話には実用性、母方言には親近感を強く覚える傾向にあるが、母方言に対する評価では、北方は上品さを感じないのに対し、南方では豪快さを感じないと言うことが明らかになった。(3)言語威信には、伝統文化による影響や地域の政治や経済による影響などといった多様な側面が含まれることが明らかになった。(4)上海語のイメージは北へ行くほど低くなる、或いは湖南語に対する評価は南北で分かれるといった言語評価における地域変容の実態が明らかになった。(5)各方言の中心地までの物理的距離と中国人大学生が各方言に対して持つ心理的距離の関係には、等距離関係、疎遠関係、親近関係の3タイプがあることが明らかになった。(6)中国人大学生の言語使用は、インフォーマルな場面ほど母方言の使用が多く、フォーマルな場面ほど普通話の使用が多くなり、そして、杭州の大学生の言語シフト状況は同じく考何地域に位置する上海よりも北方の北京、天津に近いことが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-06J53232
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J53232
中国における各方言に対する言語評価及び言語政策
(7)普通話が全調査地点において高い言語威信を維持している実態が判明し、それは中国政府が進める教育、マスコミ、行政における普通話普及政策がもたらした結果を反映したものと見ることができ、今後の中国における言語政策の行方を予測する上でも重要な意味を持つものと思われる。
KAKENHI-PROJECT-06J53232
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J53232
熱帯林再生のためのフタバガキ科樹木の造林技術開発に関する研究
本研究は、熱帯アジアの草地、荒廃地等の無立木地への環境造林を想定し、現地の複合した環境ストレスに耐性のあるフタバガキ科樹木種を選び出し、種に適合した育苗・植栽法を提示することを目的とした。タイ国ナラティワート県の砂質土壌の荒廃地に設置した試験地での調査および実験室での解析により以下の成果を得た。(1)試験地の裸地とAcacia mangium林内に設置した各種の環境因子を測定するセンサーとデータロガーを用いて連続測定を行い、被陰によりAcacia mangium林内の環境が植栽木にとって改善されていることがわかった。(2)光硬化処理(苗畑で植栽前に日覆いを取り苗木に強い光にあてる処理)により、フタバガキ科樹木6種(Dipterocarpus obtusifolius, Hopea odorata, Shorealeprosula, S.roxburghii, Shorea sp., Neobalanocarpus heimii)の苗木の活着率を高められることがわかった。(3)Acacia属樹木6種の高温耐性を光合成や光阻害への適応により評価し、nurse treeの候補樹種が得られた。(4)フタバガキ科樹木のDipterocarpus obtusifoliusは、砂質土壌の荒廃地での成長が良く、露天光下での光合成能力が高いことがわかった。(5)先行造林法(裸地の環境ストレスに耐性のない目的樹種を造林するため、耐性があり成長が早い種をnurse treeとして先に植え、その樹間に目的樹種を植える方法)により、フタバガキ科樹木の苗木の活着率を高められることがわかった。本研究は、熱帯アジアの草地、荒廃地等の無立木地への環境造林を想定し、現地の複合した環境ストレスに耐性のあるフタバガキ科樹木種を選び出し、種に適合した育苗・植栽法を提示することを目的とした。タイ国ナラティワート県の砂質土壌の荒廃地に設置した試験地での調査および実験室での解析により以下の成果を得た。(1)試験地の裸地とAcacia mangium林内に設置した各種の環境因子を測定するセンサーとデータロガーを用いて連続測定を行い、被陰によりAcacia mangium林内の環境が植栽木にとって改善されていることがわかった。(2)光硬化処理(苗畑で植栽前に日覆いを取り苗木に強い光にあてる処理)により、フタバガキ科樹木6種(Dipterocarpus obtusifolius, Hopea odorata, Shorealeprosula, S.roxburghii, Shorea sp., Neobalanocarpus heimii)の苗木の活着率を高められることがわかった。(3)Acacia属樹木6種の高温耐性を光合成や光阻害への適応により評価し、nurse treeの候補樹種が得られた。(4)フタバガキ科樹木のDipterocarpus obtusifoliusは、砂質土壌の荒廃地での成長が良く、露天光下での光合成能力が高いことがわかった。(5)先行造林法(裸地の環境ストレスに耐性のない目的樹種を造林するため、耐性があり成長が早い種をnurse treeとして先に植え、その樹間に目的樹種を植える方法)により、フタバガキ科樹木の苗木の活着率を高められることがわかった。本研究は、熱帯アジアの草地、荒廃地等の無立木地への環境造林を想定し、現地の複合した環境ストレスに耐性のあるフタバガキ科樹木種を選び出し、種に適合した育苗・植栽法を提示することを目的としている。本年度は、タイ国ナラティワート県の砂質土壌の荒廃地に、タイ国天然資源環境省国立公園・野生生物保護局のタニット・ヌイム氏と共同で試験地を設置し以下の成果を得た。(1)環境ストレスの推定および森林による環境緩和効果の解析のため、試験地の裸地と既存のAcacia mangium林内に、光合成有効光量子束密度、全天日射量、紫外線量、気温、湿度、土壌温度、土壌水分、地下水位のセンサーとデータロガーを設置し、連続測定を開始した。(2)光硬化処理(苗畑で植栽前に日覆いを取り苗木に強い光にあてる処理)の効果を明らかにするため、フタバガキ科樹木6種(Dipterocarpus obtusifolius, Hopea odorata, Shorea leprosula, S.roxburghii, Shorea sp., Neobalanocarpus heimii)の光硬化処理(4ヵ月)をした苗木としなかった苗木を育てた。2003年10月に、裸地と林内にそれぞれの苗木を植えた。その結果、どの種でも光硬化処理をすると植栽3ヵ月後の苗木の活着率が高くなった。(3)根切り処理(育苗の際、根を切って育苗ビニルポットに移すことにより、造林に適した根系を誘導する処理)の効果を明らかにするため、フタバガキ科樹木3種(Hopea odorata, S.roxburghii, Anisoptera sp.)の根切り苗と無処理苗を作り、4ヶ月間育苗した後、10月に裸地にそれぞれの苗木を植えた。その効果は今のところ明らかでない。(4)2004年度の光硬化処理試験、先行造林試験のための苗木の準備をした。
KAKENHI-PROJECT-15405043
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熱帯林再生のためのフタバガキ科樹木の造林技術開発に関する研究
本研究は、熱帯アジアの草地、荒廃地等の無立木地への環境造林を想定し、現地の複合した環境ストレスに耐性のあるフタバガキ科樹木種を選び出し、種に適合した育苗・植栽法を提示することを目的としている。本年度は、タイ国ナラティワート県の砂質土壌の荒廃地に設置した試験地での調査および実験室での解析により以下の成果を得た。(1)環境ストレスの推定および森林による環境緩和効果の解析のため、試験地の裸地と既存のAcacia mangium林内に設置した各種の環壌因子を測定するセンサーとデータロガーを用いて、連続測定を行った。(2)光硬化処理(苗畑で植栽前に日覆いを取り苗木に強い光にあてる処理)の効果を明らかにするため昨年度に植栽したフタバガキ科樹木6種(Dipterocarpus obtusifolius, Hopea odorata, Shorea leprosula, S.roxburghii, Shorea sp., Neobalanocarpus heimii)の苗木の成長を測定した。その結果、どの種でも光硬化処理をすると苗木の活着率が高くなったが、樹高の成長の差は明瞭でなかった。(3)根切り処理(育苗の際、根を切って育苗ビニルポットに移すことにより、造林に適した根系を誘導する処理)の効果を明らかにするため昨年度に植栽したフタバガキ科樹木3種(Hopea odorata, S.roxburghii, Anisoptera sp.)の苗木の成長を測定した。根切り処理の効果はなかった。(4)先行造林法(裸地の環境ストレスに耐性のない目的樹種を造林するため、耐性があり成長が早い種を先に植え、その樹間に目的樹種を植える方法)の確立のため、Acacia属樹木6種の高温耐性を評価した。その結果、Acacia mangiumは、昼38°C、夜33°Cの高温条件でも昼30°C、夜25°Cの条件と比較して成長や光合成の低下が少ないことがわかった。本研究は、熱帯アジアの草地、荒廃地等の無立木地への環境造林を想定し、現地の複合した環境ストレスに耐性のあるフタバガキ科樹木種を選び出し、種に適合した育苗・植栽法を提示することを目的としている。本年度は、タイ国ナラティワート県の砂質土壌の荒廃地に設置した試験地での調査および実験室での解析により以下の成果を得た。(1)試験地の裸地とAcacia mangium林内に設置した各種の環境因子を測定するセンサーとデータロガーを用いて連続測定を行い、被陰によりAcacia mangium林内の環境が植栽木にとって改善されていることがわかった。(2)光硬化処理(苗畑で植栽前に日覆いを取り苗木に強い光にあてる処理)により、フタバガキ科樹木6種(Dipterocarpus obtusifolius, Hopea odorata, Shorealeprosula, S.roxburghii, Shorea sp., Neobalanocarpus heimii)の苗木の活着率を高められることがわかった。(3)Acacia属樹木6種の高温耐性を光合成や光阻害への適応により評価し、nurse treeの候補樹種が得られた。(4)フタバガキ科樹木Dipterocarpus obtusifoliusは、砂質土壌の荒廃地での成長が良く、露天光下での光合成能力が高いことがわかった。(5)先行造林法(裸地の環境ストレスに耐性のない目的樹種を造林するため、耐性があり成長が早い種をnurse treeとして先に植え、その樹間に目的樹種を植える方法)により、フタバガキ科樹木の苗木の活着率を高められることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-15405043
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マウス胚の前後軸形成におけるBMPシグナルの役割とそのタンパク挙動の解明
遠位臓側内胚葉(以下DVE)の形成には、これまでBMPシグナルの消失とNodal/Activinシグナルの増加が働いていると示してきた。しかし、BMPシグナルが消失しているBMP受容体タイプ2型(BMPR2)欠損マウス(宮園浩平博士より供与)、BMPR2とActivin受容体タイプ2b型との二重変異マウスではDVEが消失する。この一見矛盾に見える結果の原因がprimitive endodermからviscera1 endoderm (extraembryonic visceral endoderm)を経てembryonic visceral endodermへの分化にBMPシグナルが必須であるためであることを明らかにした。また、これまで胚体外外胚葉からシグナルが出ており(以下ExEシグナル)、これがDVE形成を抑制していることが報告されていた。これまで我々はDVE形成時にBMPシグナルが消失していること・BMP4や:BMP8bなどが胚体外外胚葉で発現していること・BMP活性を有するKSRがDVE形成を抑制していることを示していた。これよりExEシグナルはBMPシグナルではないかと推測されたので、これを証明するためDVEを異所形成する実験系でBMPシグナルを経時的に観察、また移植実験を行うことによりBMPシグナルがDVE形成を抑制することを明らかにし、これまで謎であったExEシグナルの正体であることも明らかにした。BMP受容体タイプ2型(BMPR2)欠損マウス(宮園浩平博士より供与)、BMPR2とActivin受容体タイプ2b型との二重変異マウス、BMPR2とNodalとの二重変異マウスの解析を通し、Bmpシグナルが前後軸形成の最初である遠位臓側内胚葉(DVE)の形成に必須であることが示された。しかし、野生型胚でBmpシグナルをリン酸化型Smad1(p-Smad1)の免疫染色法を用いてモニターするとDVEの形成時期以前ではp-Smad1が存在するにもかかわらず、DVE形成開始とともにp-Smad1が消失していた。この時期部位特異的なBmpシグナルがDVEの形成に必須なのかを調べるため異所的なDVE形成が起こる野生型胚の胚体外外胚葉を取り除いた胚及びLefty1欠損マウス胚を用いてp-Smad1の染色領域を調べてみた。その結果、DVEが形成される部位ではp-Smad1が異所的に消失していることがわかった。これよりDVE形成にはBmpシグナルが時期部位特異的にON/OFFとなることの重要性が示された。更に、これまでの報告ではDVE形成にはNodalシグナルが重要であると示されてきていたが、Nodal系シグナル(ActivinやTGFβシグナル)をモニターするリン酸化型Smad2(p-Smad2)の免R染色法を用いて調べると臓側内胚葉全体で存在していることがわかり、Nodalシグナル特異的に阻害するLeftyが存在してもこのp-Smad2は存在していること。Lefty1が欠損しているとp-Smad2の量が多くなり、DVE領域が広がること。異所的なActivinによりDVE領域が広がること。これらよりDVE形成時にNodalシグナルはDVE細胞の量を制御し、DVEの形成にはActivinシグナルが働いていることが明らかとなった。遠位臓側内胚葉(以下DVE)の形成には、これまでBMPシグナルの消失とNodal/Activinシグナルの増加が働いていると示してきた。しかし、BMPシグナルが消失しているBMP受容体タイプ2型(BMPR2)欠損マウス(宮園浩平博士より供与)、BMPR2とActivin受容体タイプ2b型との二重変異マウスではDVEが消失する。この一見矛盾に見える結果の原因がprimitive endodermからviscera1 endoderm (extraembryonic visceral endoderm)を経てembryonic visceral endodermへの分化にBMPシグナルが必須であるためであることを明らかにした。また、これまで胚体外外胚葉からシグナルが出ており(以下ExEシグナル)、これがDVE形成を抑制していることが報告されていた。これまで我々はDVE形成時にBMPシグナルが消失していること・BMP4や:BMP8bなどが胚体外外胚葉で発現していること・BMP活性を有するKSRがDVE形成を抑制していることを示していた。これよりExEシグナルはBMPシグナルではないかと推測されたので、これを証明するためDVEを異所形成する実験系でBMPシグナルを経時的に観察、また移植実験を行うことによりBMPシグナルがDVE形成を抑制することを明らかにし、これまで謎であったExEシグナルの正体であることも明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-18060025
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18060025
原子価異性を鍵段階とするオン/オフ型機能性有機ビスマス化合物の構築
1.本課題平成10年度においては、複数のビスマス原子を分子内に有する有機ビスマス化合物の機能化をめざし、ひとつの展開として非イオン型水溶性ビスマス化合物を合成した。さらに、ビスマス原子上にキラリティを有するビスムチンおよびビスムトニウム化合物の合成法を確立し、キラルなビスマス化合物の基本的な物性を明らかにした。2.非イオン型水溶性ビスマス化合物は例えば造影剤や抗菌剤としての利用が期待されているが、これまでその合成例はなかった。芳香環にN,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノスルホニル基を有するトリアリールビスムチンを合成してその水溶性を調べた結果、オルトおよびパラ位に同官能基を持つビスムチンが中性条件下で高い水溶性を示すことが明かとなった。さらに、昨年度の本研究課題で確立した手法-スルホニル基のポリオルトリチオ化-を本系に適用して、上記官能基を有するフェニレン架橋型オリゴビスムチン(ビスマス原子;24個)をワンポットで合成し、その水溶性について評価した。3.ビスマス原子上のキラリティは学術的にも興味が持たれるが、今回、ビスマス上にキラリティを有する非対称テトラアリールビスムトニウム塩の合成法を確立した。オルト位にオキサゾリン置換基を有するビスムトニウム塩の場合、^1H-NMRではビスマス上のキラリティを反映したジアステレオトピックなシグナルが観測されるが、このシグナルをVT-NMRにより追跡することで、ビスマス上における立体化学的な挙動と対イオンや溶媒の極性との関係を明らかにした。1.本課題平成9年度においては、複数のビスマス原子を分子内に有する各種有機ビスマスオリゴマーの合成法を新たに開拓し、可視紫外吸収スペクトルの測定を指標として合成した化合物群の光学特性を検討した。2.分子内に2個のビスマス原子を有するアリールビスムタンの合成法を確立する目的で、ジメタロベンゼンとジフェニルビスマスハライドとの反応を詳細に検討した結果、反応条件および用いる塩基をうまく組み合わせることにより、ビスマスを2、3、4個含むフェニレン架橋型ビスムタンオリゴマーがワンポットで同時に得られることを見いだした。得られた3価化合物は塩化スルフリルとの反応によりそれぞれ定量的に5価ビスマスポリハライドへと変換される。3.スルホンアミド基のオルトリチオ化を利用した従来にないタイプのポリビスマス化合物合成法を確立した。すなわち、適当量の塩基をトリス(オルト-N,N-ジエチルスルファモイルフェニル)ビスムタンに作用させることにより、ビスマス原子を24個を含む放射状ビスマスオリゴマーが好収率で得られた。本反応をさらに展開し、分子内にビスマス原子10個を含むビスマスデンドリマ-の合成および単離に初めて成功した。4.得られた一連の化合物の可視吸収スペクトル測定の結果、3価、5価いずれの原子価においてもフェレニン架橋によるパイ電子の共役安定化はそれほど大きくないことが明かとなった。また、両原子価の間で吸収特性の顕著な変化は認められず、原子価異性によるスイッチ機能を発現するには置換基の修飾などの工夫が必要があると考えられる。1.本課題平成10年度においては、複数のビスマス原子を分子内に有する有機ビスマス化合物の機能化をめざし、ひとつの展開として非イオン型水溶性ビスマス化合物を合成した。さらに、ビスマス原子上にキラリティを有するビスムチンおよびビスムトニウム化合物の合成法を確立し、キラルなビスマス化合物の基本的な物性を明らかにした。2.非イオン型水溶性ビスマス化合物は例えば造影剤や抗菌剤としての利用が期待されているが、これまでその合成例はなかった。芳香環にN,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノスルホニル基を有するトリアリールビスムチンを合成してその水溶性を調べた結果、オルトおよびパラ位に同官能基を持つビスムチンが中性条件下で高い水溶性を示すことが明かとなった。さらに、昨年度の本研究課題で確立した手法-スルホニル基のポリオルトリチオ化-を本系に適用して、上記官能基を有するフェニレン架橋型オリゴビスムチン(ビスマス原子;24個)をワンポットで合成し、その水溶性について評価した。3.ビスマス原子上のキラリティは学術的にも興味が持たれるが、今回、ビスマス上にキラリティを有する非対称テトラアリールビスムトニウム塩の合成法を確立した。オルト位にオキサゾリン置換基を有するビスムトニウム塩の場合、^1H-NMRではビスマス上のキラリティを反映したジアステレオトピックなシグナルが観測されるが、このシグナルをVT-NMRにより追跡することで、ビスマス上における立体化学的な挙動と対イオンや溶媒の極性との関係を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-09740469
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09740469
KLF4遺伝子が制御する脂肪分化抑制機構の解明と新規骨再生治療戦略の確立
体性幹細胞は、我々の体の様々な組織に存在し、組織の恒常性や機能の維持に寄与していることが知られている。体性幹細胞は、胚性幹細胞(ES細胞)やiPS細胞とは異なり、限られた細胞にのみ分化する能力を持っているが、自家移植が可能なこと、移植後もがん化のリスクがほぼないなどのメリットがある。中でも、本研究課題が研究対象とする間葉系幹細胞は、骨髄を始め脂肪組織、歯髄などに存在しており、脂肪、骨、軟骨への分化能を持つ体性幹細胞である。近年、再生医療への応用が期待され盛んに研究が進められている。研究代表者が所属する研究室では、ヒト骨髄由来単核球細胞からCD90およびCD271共陽性細胞を単一細胞として単離することで、増殖能、脂肪・骨分化能の異なる3つのサブタイプ(REC, MEC, SEC)が得られることを報告している。本研究課題では、それらサブタイプの中から、Kruppel-like factor 4(KLF4)遺伝子が最も高発現しているヒトMSCサブタイプ(MEC)を用いて、KLF4の機能を解析し、またそれによって制御される分化制御の分子メカニズムを解明することを目的とする。本年度は、当初の研究計画に沿い、KLF4の発現抑制実験を行った。その結果、KLF4の発現抑制により、細胞増殖速度の促進および脂肪・骨への分化の促進が観察された。これらのことから、KLF4はMECの細胞分裂、分化を抑制する役割を担っていることが示唆される。これまでの間葉系幹細胞におけるKLF4遺伝子の研究に関しての報告は少ない。特に、分化能との関係については、主にマウス脂肪前駆細胞株を用いた報告が多い。そこで、本研究では、報告のあるデータについても検証の必要があると考え、MECを用いて分化誘導時のKLF4遺伝子発現に関する基礎データの再検証を行った。その結果、概ね報告のあるデータと一致していることを確認した一方、細胞増殖や分化の抑制に関する知見は本研究で得られた知見である。したがって、本研究課題の目的に関して概ね順調であると判断する。今後の研究については、当初の計画どおり遂行する。具体的には、KLF4の発現抑制したMECにおいて活性化しているシグナルパスウェイを探索する。コントロールと比較し、差の見られたシグナルパスウェイに対する低分子化合物等を用いて当該パスウェイを阻害あるいは活性化することで検証する。体性幹細胞は、我々の体の様々な組織に存在し、組織の恒常性や機能の維持に寄与していることが知られている。体性幹細胞は、胚性幹細胞(ES細胞)やiPS細胞とは異なり、限られた細胞にのみ分化する能力を持っているが、自家移植が可能なこと、移植後もがん化のリスクがほぼないなどのメリットがある。中でも、本研究課題が研究対象とする間葉系幹細胞は、骨髄を始め脂肪組織、歯髄などに存在しており、脂肪、骨、軟骨への分化能を持つ体性幹細胞である。近年、再生医療への応用が期待され盛んに研究が進められている。研究代表者が所属する研究室では、ヒト骨髄由来単核球細胞からCD90およびCD271共陽性細胞を単一細胞として単離することで、増殖能、脂肪・骨分化能の異なる3つのサブタイプ(REC, MEC, SEC)が得られることを報告している。本研究課題では、それらサブタイプの中から、Kruppel-like factor 4(KLF4)遺伝子が最も高発現しているヒトMSCサブタイプ(MEC)を用いて、KLF4の機能を解析し、またそれによって制御される分化制御の分子メカニズムを解明することを目的とする。本年度は、当初の研究計画に沿い、KLF4の発現抑制実験を行った。その結果、KLF4の発現抑制により、細胞増殖速度の促進および脂肪・骨への分化の促進が観察された。これらのことから、KLF4はMECの細胞分裂、分化を抑制する役割を担っていることが示唆される。これまでの間葉系幹細胞におけるKLF4遺伝子の研究に関しての報告は少ない。特に、分化能との関係については、主にマウス脂肪前駆細胞株を用いた報告が多い。そこで、本研究では、報告のあるデータについても検証の必要があると考え、MECを用いて分化誘導時のKLF4遺伝子発現に関する基礎データの再検証を行った。その結果、概ね報告のあるデータと一致していることを確認した一方、細胞増殖や分化の抑制に関する知見は本研究で得られた知見である。したがって、本研究課題の目的に関して概ね順調であると判断する。今後の研究については、当初の計画どおり遂行する。具体的には、KLF4の発現抑制したMECにおいて活性化しているシグナルパスウェイを探索する。コントロールと比較し、差の見られたシグナルパスウェイに対する低分子化合物等を用いて当該パスウェイを阻害あるいは活性化することで検証する。
KAKENHI-PROJECT-18K07846
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K07846
マウスにおける有効なコンディショナル・ジーンターゲッティング法の開発
従来のジーンターゲッティングでは、生殖細胞系列において導入された標的遺伝子の変異は、その個体の発生・発達を通じて全ての体細胞に伝搬される。そのため、発生において重要な機能を持つ遺伝子のノックアウトマウスは、胎生期に致死となり、成体における遺伝子機能の解析は困難であった。この問題点を解決するために、生体内の特定の組織・細胞、或いは発生の特定の時期に特異的に標的遺伝子に変異を導入するための手法の開発が、本研究の目的である。基本的な手法としては、PI_aファージ由来のCre組換え酵素とその認識配列であるloxPによるシステムを用い、トランスジーンCAG-SLacZを用いて、LacZ遺伝子の発現による組織・細胞の青染により、Creの発現によるloxP間の組換え・欠失を同定することにより、各種手法の有効性を解析した。まず、Cre遺伝子を組み込んだ組換えアデノウイルスを作製し、これを感染させることにより、マウス成体内の各種組織特異的なジーンターゲッティング法の開発に成功した。この手法の樹立により、マウスの皮膚、消化管、肺、肝臓、膵臓の各組織の上皮細胞特異的に標的遺伝子に変異を導入することが可能となった。次に、我々はCre遺伝子を各種組織特異的に発現するトランスジェニック・マウスを作製し、これを用いることにより、皮膚の基底細胞(K14プロモーター)、小脳プルキンエ細胞(PCP2プロモーター)、嗅神経細胞(OMPプロモーター)等の各種細胞特異的に標的遺伝子に変異を導入可能なシステムの樹立に成功した。これらトランスジェニック・マウスを用いたシステムは、高い特異性を示すと同時に、その効率も極めて高いものであった。従来のジーンターゲッティングでは、生殖細胞系列において導入された標的遺伝子の変異は、その個体の発生・発達を通じて全ての体細胞に伝搬される。そのため、発生において重要な機能を持つ遺伝子のノックアウトマウスは、胎生期に致死となり、成体における遺伝子機能の解析は困難であった。この問題点を解決するために、生体内の特定の組織・細胞、或いは発生の特定の時期に特異的に標的遺伝子に変異を導入するための手法の開発が、本研究の目的である。基本的な手法としては、PI_aファージ由来のCre組換え酵素とその認識配列であるloxPによるシステムを用い、トランスジーンCAG-SLacZを用いて、LacZ遺伝子の発現による組織・細胞の青染により、Creの発現によるloxP間の組換え・欠失を同定することにより、各種手法の有効性を解析した。まず、Cre遺伝子を組み込んだ組換えアデノウイルスを作製し、これを感染させることにより、マウス成体内の各種組織特異的なジーンターゲッティング法の開発に成功した。この手法の樹立により、マウスの皮膚、消化管、肺、肝臓、膵臓の各組織の上皮細胞特異的に標的遺伝子に変異を導入することが可能となった。次に、我々はCre遺伝子を各種組織特異的に発現するトランスジェニック・マウスを作製し、これを用いることにより、皮膚の基底細胞(K14プロモーター)、小脳プルキンエ細胞(PCP2プロモーター)、嗅神経細胞(OMPプロモーター)等の各種細胞特異的に標的遺伝子に変異を導入可能なシステムの樹立に成功した。これらトランスジェニック・マウスを用いたシステムは、高い特異性を示すと同時に、その効率も極めて高いものであった。神経系における有効なコンディショナルジーンターゲティング法の確立のため、種々の実験を行った。その研究業績の主なるものは以下の通りである。リコンビナントアデノウイルスによるCre遺伝子の導入・発現法の確立SRαプロモーターの下流につないだCre遺伝子を持つリコンビナントアデノウイルスを作成した。次いでこれを2つのloxP配列にはさまれたlacZ遺伝子が、その染色体上に挿入された培養細胞に感染されることにより、Cre遺伝子発現と発現されたCre組換え酵素の活性を検討した。その結果、m.o.i30で感染を行ったところ、48時間以内に培養皿中の全て細胞でlox配列間の組換えが誘導されることを確認した。これにより、リコンビナントアデノウイルスによるCre遺伝子発現系が確立された。神経系特異的にCre遺伝子を発現するトランスジェニックマウスの樹立Cre遺伝子をネスチン遺伝子のプロモーター及びPCP2遺伝子のプロモーターの下流つなぎ、トランスジェニックマウスを作成した。現在、これらのマウスでCre遺伝子が神経上皮特異的(ネスチン遺伝子プロモーター)及び小脳プルキンエ細胞特異的(PCP2遺伝子)に発現していることを確認している。標的遺伝子へのloxP配列の導入IP3R遺伝子を始めとする数種の遺伝子のコンディショナルターゲティングを目的として、マウス染色体DNAライブラリーより遺伝子を単離し、loxP配列を持つコンディショナル・ターゲティングベクターの作成を行った。本研究は、従来のジーンターゲティング法にバクテリオファージP1のCre/LoxPシステムを応用し、任意に変異導入を誘導でき、且つ汎用性の高いコンディショナルジーンターゲッティング法を確立することを目的としている。そのために本年度は、全身多臓器に応用可能で、且つ高い発現を示す二つのCre遺伝子の導入法の開発を試みた。第一の方法はアデノウイルスベクターを用いるものである。マウスの体内の殆どの組織で、非常に高いレベルの遺伝子発現を誘導するCAGGS及びSRαプロモーターの顆粒にCre組換え酵素遺伝子を連結し、これを持つ組換えアデノウイルスを作成した。
KAKENHI-PROJECT-07458216
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07458216
マウスにおける有効なコンディショナル・ジーンターゲッティング法の開発
次いでこのウイルスによるCre遺伝子の発現を、LoxP配列に挟まれたレポーター遺伝子を持つ培養細胞を用いて解析したところ、感染後48時間後には全ての細胞でLoxP配列間の切り出しが観察された。そこで、これらのウイルスをAPC遺伝子内に1対のLoxP配列が挿入された変異マウスの大腸内に注入し、その経過を観察したところ、約4週間で大腸腺腫の発生が高頻度で観察された。この腺腫ではLoxP配列に挟まれたAPC遺伝子が欠失していることが確認され、この組み換えアデノウイルスを用いたin vivoでのCre遺伝子導入法が確立された。第二の方法は、体内の各組織で発現可能なプロモーターの下流にCre遺伝子を繋いだトランスジェニックマウスと標的遺伝子内にLoxP配列を挿入したマウスを交配し、コンディショナルジーンターゲッティング用マウスを作成し、変異導入を誘導する方法である。この手法に関して本年度は、L7プロモーター、OMPプロモーター等、計8種のプロモーターの下流にCre遺伝子を連結し、トランスジェニックマウスの樹立を試みた。現在、これらのマウスを解析中である。本研究は、バクテリオファージPlのCre/loxPシステムを従来のジーンターゲティング法に応用し、標的遺伝子に任意に変異を導入でき、且つ汎用性の高いコンディショナル・ターゲティング法を確立することを目的としている。そのために全身多臓器に応用可能で、且つ高い発現を示す二つのCre遺伝子の導入法を開発した。第一の方法はアデノウイルスベクターを用いる方法で、昨年度この方法により消化管において遺伝子変異が導入可能であることを示したが、本年度はさらに対象を広げ、肝臓膵臓胆管上皮において変異導入が可能であることを示した。第二の方法は、Cre遺伝子を持つトランスジェニックマウスを用いる方法であり、ウイルス感染による方法に比べて特異性が高い手法である。本年度我々はK14(ケラチン14、皮膚特異的)、L7(プルキンエ細胞特異的),OMP(嗅神経上皮特異的)プロモーターの下流にCre遺伝子を連結したトランスジェニックマウスを作製し、さらにPO蛋白(シュワン細胞特異的)、MBP(オリゴデンドロサイト特異的)プロモーターを用いたマウスを他の研究室より導入し、これらのマウスでのCre蛋白による、組織特異的な変異導入を解析した。その結果、K14,L7及びPO蛋白プロモーターに連結したCre遺伝子を持つトランスジェニックマウスのいくつかで標的遺伝子に対し極めて特異性の高い変異導入が確認された。又、新たな標的遺伝子としてβ-カテニンを選び、コンディショナル・ノックアウトマウスの樹立に成功した。
KAKENHI-PROJECT-07458216
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ヒト食道癌における所属リンパ節での癌関連遺伝子メチル化の解析
腫瘍関連遺伝子メチル化の検索にあたり、超常磁性シリカビーズを用いてDNAを吸着し、同一チューブ内で全処理を行い、量子ドットを用いた定量的な測定を行う新たな手法を導入した。これによりDNA量の少ない検体での安定した検出が可能となった。食道扁平上皮癌の手術標本から腫瘍と正常組織、切除全リンパ節での4つの腫瘍関連遺伝子のメチル化率を検討したが、今回の症例数では統計学的に有為な結果は得られなかった。腫瘍関連遺伝子メチル化の検索にあたり、超常磁性シリカビーズを用いてDNAを吸着し、同一チューブ内で全処理を行い、量子ドットを用いた定量的な測定を行う新たな手法を導入した。これによりDNA量の少ない検体での安定した検出が可能となった。食道扁平上皮癌の手術標本から腫瘍と正常組織、切除全リンパ節での4つの腫瘍関連遺伝子のメチル化率を検討したが、今回の症例数では統計学的に有為な結果は得られなかった。食道癌においては、腫瘍の悪性度が高く、局所が根治的に切除されリンパ節転移を認めなかった場合にも、早期に再発を来す症例を経験する。このような症例の予後を予測する上で、肺の腺癌などで指摘されている腫瘍関連遺伝子のメチル化の関与を明らかにする事を目的とし、2000年2004年の間に当院において根治的に食道癌切除術を施行した症例のうち、リンパ節転移を認めなかった症例を抽出し、再発を来した5例と年齢、性別、ステージなどを可及的にマッチさせた対象群5例を選択した。現在、腫瘍部、正常部、リンパ節の各々につき、食道癌で特異な腫瘍関連遺伝子のメチル化の有無をPCRを用いて解析中である。今後、各遺伝子のメチル化と再発、予後などの相関について検討を加える。また、食道癌のリンパ節転移に関しては、過去の手術切除症例において非連続的に進展することが知られ、他の癌腫では有用であるセンチネルリンパ節診断の精度は低いと考えられている。また跳躍転移の存在が、術前診断や治療方針、手術術式の決定を困難にしている。このようなリンパ節転移の進展様式の解明のため、上記症例の一部についてすべての切除リンパ節(平均約100個/症例)について、組織学的な診断に先駆けた変化の発見を目指し、病理学的に転移を認めないリンパ節での腫瘍関連遺伝子のメチル化をPCRを用いて検索中である。今後、リンパ節転移の進展様式を分子生物学的な見地から解析、検討を加える。1998年から2006年までに当院において食道切除術を施行された食道扁平上皮癌症例のうち、予後追跡可能な症例について検討した。一部解析結果が再現性に乏しかったため、研究協力者であるJohns Hopkins大学Dr. Malcolm Blockの協力のもと、新たな手法を取り入れ、同大施設を用いて行った。1)リンパ節転移に関与する腫瘍関連遺伝子のメチル化を検索するため、高度のリンパ節転移を認めた症例と、主病巣の深達度に対して比較的転移が少なかった症例を選択し、パラフィン包埋スライドからDNAの抽出を行い、対象腫瘍関連遺伝子についてMethylation Specific PCRを行った。2)複雑なリンパ流を持つとされる食道癌において、リンパ節転移の進展形式を分子生物学的に検索する事を目的に、頚、胸、腹3領域リンパ節郭清を行った症例(切除リンパ節数平均135個)のうち、1個のみに転移を認めた5症例について、全てのリンパ節での腫瘍関連遺伝子についてMethylation Specific PCRを行った。その結果、今回の解析範囲内で、腫瘍とリンパ節において転移と相関すると考えられる遺伝子のメチル化は指摘できなかった。腫瘍本体においてメチル化の見られた遺伝子自体が一定しなかったため、症例数を増やして追加解析を行う必要があると考えられ、対象症例の選択について検討中である。
KAKENHI-PROJECT-20790971
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胃粘膜上皮細胞type2シクロオキシゲナーゼの発現調節に関する分子生物学的検討
(1)マウスtype2シクロオキシゲナーゼに対する特異抗体の作製-type2シクロオキシゲナーゼのC端アミノ酸フラグメントを合成し、ラビットに免疫してポリクローナル抗体を作製した。ELISAでの検討では1万倍希釈にてペプチドフラグメントを認識しうる特異抗体であり、現在、ウエスタンブロット、免疫染色が可能か否か検討中である。(2)マウス胃粘膜粘液上皮細胞の単層培養系の確立-プライマリーカルチャー系の確立はきわめて困難であり、現在、温度感受性SU40LT抗原を用いた、トランスジェニックマウスから、上皮細胞の培養系を得るべく努力している。(3)マウスにおける実験潰瘍モデルの作成と、シクロオキシゲナーゼ発現の検討-マウス胃漿膜下に20%酢酸を注入し実験胃潰瘍を作製した。組織学的には潰瘍作製後2日5日目が活動期であり、10日20日目が治療期で3040日で瘢痕化した。実験潰瘍発症直後より40日目までtype1シクロオキシゲナーゼ遺伝子発現はノーザン分析でまったく変化を認めなかった。一方、ノーザン分析ではtype2シクロオキシゲナーゼの発現も認めないがpolymerase chaine reaction法を用いてmRNAの半定量も行うと、type2シクロオキシゲナーゼ遺伝子は、潰瘍の急性期に一致してその発現量が増加した。現在シクロオキシゲナーゼ活性及び特異抗体を用いたtypeシクロオキシゲナーゼ蛋白の発現について、解析中である。(1)マウスtype2シクロオキシゲナーゼに対する特異抗体の作製-type2シクロオキシゲナーゼのC端アミノ酸フラグメントを合成し、ラビットに免疫してポリクローナル抗体を作製した。ELISAでの検討では1万倍希釈にてペプチドフラグメントを認識しうる特異抗体であり、現在、ウエスタンブロット、免疫染色が可能か否か検討中である。(2)マウス胃粘膜粘液上皮細胞の単層培養系の確立-プライマリーカルチャー系の確立はきわめて困難であり、現在、温度感受性SU40LT抗原を用いた、トランスジェニックマウスから、上皮細胞の培養系を得るべく努力している。(3)マウスにおける実験潰瘍モデルの作成と、シクロオキシゲナーゼ発現の検討-マウス胃漿膜下に20%酢酸を注入し実験胃潰瘍を作製した。組織学的には潰瘍作製後2日5日目が活動期であり、10日20日目が治療期で3040日で瘢痕化した。実験潰瘍発症直後より40日目までtype1シクロオキシゲナーゼ遺伝子発現はノーザン分析でまったく変化を認めなかった。一方、ノーザン分析ではtype2シクロオキシゲナーゼの発現も認めないがpolymerase chaine reaction法を用いてmRNAの半定量も行うと、type2シクロオキシゲナーゼ遺伝子は、潰瘍の急性期に一致してその発現量が増加した。現在シクロオキシゲナーゼ活性及び特異抗体を用いたtypeシクロオキシゲナーゼ蛋白の発現について、解析中である。
KAKENHI-PROJECT-05670473
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食行動の制御に関わる脳内システム間神経連絡の役割
食べ物の記憶を思い出す際に、脳の中のどのような情報伝達経路が働くかを調べた。ヒトや動物は食後に体調不良を経験すると、その食べ物の味を危険なものとして記憶し、嫌いになる。これを味覚嫌悪学習という。この味覚嫌悪学習が成立すると、脳の中の情報伝達経路の活動が変化することがわかった。したがって、味覚嫌悪学習による食行動の変化(好き・摂取から嫌い・忌避へ)に、脳内での情報処理の変化が関わっていることが示唆される。食べ物の記憶を思い出す際に、脳の中のどのような情報伝達経路が働くかを調べた。ヒトや動物は食後に体調不良を経験すると、その食べ物の味を危険なものとして記憶し、嫌いになる。これを味覚嫌悪学習という。この味覚嫌悪学習が成立すると、脳の中の情報伝達経路の活動が変化することがわかった。したがって、味覚嫌悪学習による食行動の変化(好き・摂取から嫌い・忌避へ)に、脳内での情報処理の変化が関わっていることが示唆される。食行動の脳内機構の解明を目指して、食行動の制御要因である食物記憶・おいしさ・栄養状態が相互に作用しあうメカニズムを明らかにすることを目的に研究を行った。本年度は食物記憶に関与する扁桃体とおいしさに関与する脳内報酬系との間の神経連絡に着目した。食物記憶の実験モデルである味覚嫌悪学習に、扁桃体から脳内報酬系への神経投射が関与しているかどうかを、マンガン造影MRI法を用いて検討した。まず、ラットの扁桃体基底外側核にガイドカニューレを留置した。回復後、ラットに味覚嫌悪学習を獲得させるために、味溶液を摂取させた後で、内蔵不快感を引き起こす塩化リチウムの腹腔内投与を行い、条件づけを施した。条件づけの2日後にテストを行った。扁桃体基底外側核にマンガンを注入し、30分後に条件刺激である味溶液を呈示して、味に対する嫌悪の記憶を想起させた。さらに30分後に麻酔を施し、MRI装置で撮像を行った。ガイドカニューレの刺入位置を起点に、0.5mm厚の冠状断MR像を取得したこの撮像を1時間毎に4回繰り返した。MR画像においてマンガンの存在部位の輝度は上昇する。またマシガンは活性化したニューロンによって、順行性に輸送される。本実験では、扁桃体中心核や腹側淡蒼球の輝度が時間とともに上昇する傾向を観察した。このことから、嫌な味の記憶を想起する際に、扁桃体基底外側核から中心核や腹側淡蒼球への投射経路が活性化することが示唆された。また、高精度のMR画像を得るために、ラットの頭部を固定する器具を開発した。来年度はこの固定具について特許の取得を目指す予定である。食物記憶の想起時における扁桃体遠心性投射経路の活動をマンガン造影MRI法で明らかにすること目的とした。マンガン造影MRI法は、MRIの造影剤の一つであるマンガンがCa^<2+>チャネルを介して活性化した神経細胞に取り込まれ、軸索に沿って運ばれるという特徴を利用したものであり、活性化したニューロンの遠心性投射を可視化することができる。前年度までにおいて、味覚嫌悪学習の記憶を想起した場合は、想起しなかった場合に比べて、扁桃体基底外側核から扁桃体中心核と腹側淡蒼球へのマンガンの移動が多いことを示す結果が得られた。これらの結果は、食物記憶の想起時に扁桃体基底外側核から扁桃体中心核や腹側淡蒼球へ投射するニューロンが活性化することを示唆している。今年度においてさらに実験を重ね、得られたデータをより詳細に解析したところ、腹側淡蒼球と考えていた領域が実際にはIPACといわれる脳部位と分界条床核であることがわかった。組織学的実験によって、扁桃体基底外側核からIPACや分界条床核へ密な投射が存在するが、腹側淡蒼球へは疎な投射しかないことがわかった。また、島皮質、嗅周囲皮質、梨状皮質といった大脳皮質領域への投射ニューロンも活性化することがわかった。IPAC、分界条床核、島皮質は味覚関連行動に関与することが報告されているが、嗅周囲皮質や梨状皮質については味覚への関与はこれまでに報告されていない。本研究課題によって、食物記憶(味覚嫌悪学習の記憶)の想起時に、扁桃体基底外側核から大脳基底核(側坐核、IPAC、分界条床核)と大脳皮質(島皮質、嗅周囲皮質、梨状皮質)という2つの大きな方向性をもって情報が伝達されることが明らかにされた。これらの結果は、食物記憶の想起による行動の表出には多様な神経情報伝達経路が関与していることを示しており、それぞれの経路がどのような役割を担っているのかを調べていく必要がある。
KAKENHI-PROJECT-22700748
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疾患関連リプログラミングによる前立腺癌不均一性の獲得機構
前立腺の上皮細胞は平滑筋細胞からのパラクライン刺激により形態的・機能的に成熟した分化状態を維持している。しかし、間質リモデリングが生じると上皮細胞の分化状態が二次的に破綻し、前立腺癌の発生に寄与すると考えられる。ヒト前立腺癌患者由来線維芽細胞との共培養によりヒト前立腺幹・前駆細胞モデルBPH-1における癌抑制遺伝子GSTP1 mRNA発現量は有意に低下した。また、去勢により誘導される間質リモデリング周囲の管腔構造が崩壊したエリアにおいてもGSTP1 mRNA発現量は低値を示した。間質リモデリングの誘導が上皮細胞における癌抑制遺伝子発現を減少させ、前立腺癌の発生に寄与している可能性が示唆された。本年度は、前立腺間質における線維芽細胞の多様性がヒト前立腺幹・前駆細胞モデルBPH-1に与える目的で、複数の前立腺癌患者の組織から初代培養して得られた線維芽細胞とBPH-1細胞とのin vitro共培養実験を施行した。実験には市販されている正常ヒト前立腺間質細胞PrSCを比較対象細胞とし、摘出手術材料より初代培養にて単離したヒト前立腺癌患者由来線維芽細胞pcPrF-M5, pcPrF-M6, pcPrF-M7を用いた。Falconセルカルチャーインサートを用いたin vitro共培養実験では、BPH-1に対してPrSC, pcPrF-M5, pcPrF-M6, pcPrF-M7それぞれを組み合わせて4日間の共培養を行った後に、BPH-1細胞の細胞増殖率、分泌タンパク質量の変化を比較検討した。その結果、pcPrF-M5とpcPrF-M7はBPH-1細胞の増殖率を有意に促進させた。BPH-1細胞からのTGFb1産生量はpcPrF-M6との共培養群で有意に増加した。BPH-1細胞からのVEGF産生量はpcPrF-M6との共培養群で有意に増加した。しかし、pcPrF-M5, pcPrF-M7との共培養群ではBPH-1細胞からのVEGF産生量が有意に低下した。BPH-1細胞からのIL-6産生量は全ての共培養群で有意に増加した。その中でもpcPrF-M6と共培養したBPH-1細胞からのIL-6産生量はBPH-1細胞単独群に比較して10倍以上に増加した。以上の結果より、我々が独自に作製した癌患者由来線維芽細胞はヒト前立腺幹・前駆細胞モデルBPH-1に対してパラクライン的に作用することが判明した。我々は、複数の前立腺癌患者の組織から初代培養して得られる線維芽細胞を独自のCAFsパネルとして収集している。これらCAFsパネルに含まれる線維芽細胞の性状は極めて不均一であり、ヒト前立腺幹・前駆細胞モデルBPH-1に対するパラクライン作用も細胞毎に異なると考えた。結果は予想通りで、我々は正常ヒト前立腺間質細胞PrSCはBPH-1細胞との相互作用が生じないものの、癌患者由来線維芽細胞はBPH-1細胞に対して細胞増殖刺激を与えたり、細胞分化にも影響することを見出した。つまり、本検討で示された前立腺上皮細胞が共培養する線維芽細胞の性状に強く影響を受けるという事実は、前立腺癌の発生に疾患関連リプログラミングが重要な役割を担っていることを示唆する、非常に有用な知見となった。昨年度に引き続き本年度も、複数の前立腺癌患者の組織から初代培養して得られた線維芽細胞とヒト前立腺幹・前駆細胞モデルBPH-1細胞とのin vitro共培養実験を施行した。前立腺癌組織からの線維芽細胞の初代培養は継続して行っており、昨年度に使用した線維芽細胞とは異なる6つの線維芽細胞を追加検討した。Falconセルカルチャーインサートを用いたin vitro共培養実験では、BPH-1細胞に対してpcPrF-M10, pcPrF-M11, pcPrF-M18, pcPrF-M23, pcPrF-M24, pcPrF-M26それぞれを組み合わせて4日間の共培養を行った後に、BPH-1細胞の細胞増殖率、分泌タンパク質量の変化を比較検討した。その結果、pcPrF-M11およびpcPrF-M18はBPH-1細胞の増殖率を有意に促進させた。BPH-1細胞からのIL-6産生量は全ての共培養群で有意に増加した。その中でもpcPrF-M11と共培養したBPH-1細胞からのIL-6産生量はBPH-1細胞単独群に比較して15倍以上に増加した。癌抑制遺伝子TP53 mRNA発現量は、PrSCおよびpcPrF-M7との共培養群で有意に減少した。一方、pcPrF-M11およびpcPrF-M24との共培養群でTP53 mRNA発現量は有意に増加した。癌抑制遺伝子PTEN mRNA発現量は、pcPrF-M7との共培養群でのみ有意に減少した。一方、pcPrF-M18, pcPrF-M24, pcPrF-M26との共培養群でPTEN mRNA発現量は有意に増加した。以上の結果より、癌患者由来線維芽細胞が産生・分泌するパラクライン因子には、BPH-1細胞の増殖を促進する細胞増殖因子やサイトカインとは別に、癌抑制遺伝子の発現変化のようなBPH-1細胞の分化状態に関与する何らかの因子が存在している可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-15K10583
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疾患関連リプログラミングによる前立腺癌不均一性の獲得機構
昨年度に引き続き、本年度も順調に前立腺癌組織からの線維芽細胞の初代培養を継続し、独自のCAFsパネルで使用可能な線維芽細胞が10種類を超えた。これら複数の線維芽細胞との共培養によりBPH-1細胞がどのような挙動を示すのか、細胞増殖への影響、サイトカイン産生量への影響、そして癌抑制遺伝子の発現への影響を予定通り検討することができた。癌抑制遺伝子の発現に影響した線維芽細胞とBPH-1細胞の組み合わせについてBPH-1細胞からDNAを抽出し、現在、TP53およびPTEN遺伝子のDNAメチル化解析を施行中である。本年度は、ヒト前立腺幹・前駆細胞モデルBPH-1細胞とラット胎生期泌尿生殖洞間充織細胞rUGMとのin vivo共移植実験を施行した。移植から12週間目にホストマウスを去勢した後、7, 14, 28日目にマウスを屠殺した。また、マウスを去勢してから14日目に20 mg DHTペレットを皮下に埋設し、7日目にマウスを屠殺した。前立腺様の管腔構造を構築したBPH-1細胞における癌抑制遺伝子のmRNA発現量はLCMを用いて、正常腺管および管腔構造が崩壊したエリアを分取し、mRNA抽出後にTaqMan probeを用いたデジタルPCRを施行した。その結果、去勢後速やかに間質リモデリングが誘導されたものの、アンドロゲン付加後7日目には間質リモデリングの割合が有意に低下した。次に、BPH-1細胞により構築される前立腺様の管腔構造は去勢後速やかに崩壊し始め、その割合は経時的に増加した。なお、アンドロゲン付加後7日目でも管腔構造の崩壊は回復しなかった。前立腺様の管腔構造を構築したBPH-1細胞における癌抑制遺伝子のmRNA発現量であるが、正常腺管に比較して管腔構造が崩壊したエリアではTP16およびGSTP1 mRNA発現量が低値を示した。次に、体内アンドロゲン濃度との関係を検討したところ、正常腺管におけるTP16およびGSTP1 mRNA発現量は偽手術群よりも去勢群で低値を示した。一方、管腔構造が崩壊したエリアにおいてはGSTP1 mRNA発現量だけが去勢群で低値を示した。以上の結果より、前立腺増殖性疾患で観察される間質リモデリングのような構造的変化が生じると、正常腺管を構築する上皮細胞に対して周囲の間質(線維芽細胞)が産生・分泌するパラクライン因子が、上皮細胞の増殖を刺激するだけでなく、上皮細胞の分化状態をも変化させてしまう可能性が示唆された。前立腺の上皮細胞は平滑筋細胞からのパラクライン刺激により形態的・機能的に成熟した分化状態を維持している。しかし、間質リモデリングが生じると上皮細胞の分化状態が二次的に破綻し、前立腺癌の発生に寄与すると考えられる。ヒト前立腺癌患者由来線維芽細胞との共培養によりヒト前立腺幹・前駆細胞モデルBPH-1における癌抑制遺伝子GSTP1 mRNA発現量は有意に低下した。また、去勢により誘導される間質リモデリング周囲の管腔構造が崩壊したエリアにおいてもGSTP1 mRNA発現量は低値を示した。間質リモデリングの誘導が上皮細胞における癌抑制遺伝子発現を減少させ、前立腺癌の発生に寄与している可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-15K10583
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細胞外べシクルGPMVs の生化学的特徴の解析と生体機能素材への応用
これまでに確立した大量調整法を用いて作製した大量のGPMVsについて、精製および濃縮方法を検討し、核酸(RNA)、タンパク質、糖鎖、の網羅的解析を行っている。また、GPMVsの生細胞への作用の解析も並行して進めている。今後はさらに、GPMVsへの核酸やタンパク質等の導入方法の検討も考えており、GPMVsの保健医療分野への応用を期待している。これまでに確立した大量調整法を用いて作製した大量のGPMVsについて、精製および濃縮方法を検討し、核酸(RNA)、タンパク質、糖鎖、の網羅的解析を行っている。また、GPMVsの生細胞への作用の解析も並行して進めている。今後はさらに、GPMVsへの核酸やタンパク質等の導入方法の検討も考えており、GPMVsの保健医療分野への応用を期待している。
KAKENHI-PROJECT-19J20051
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19J20051
意識活動におよぼす視床網様核の役割
(目的)ForelーH野は上位痙攣中枢からの下向性インパルスの伝導路であること、他方、脳幹賦活系と密接な関係を持ち新皮質の発作性興奮に対して促進機能を有することが陣内、六川によって報告されている。FFHは解剖学的には神経線維束が主体をなし、神経細胞(subthalamic reticular nucleus)も少数存在する。我々はこのFFH細胞に投射する神経細胞を皮質・皮質下核・小脳・脳幹部にわたって解剖学的に調べる一方、電気生理学的に確認した。(方法)1.逆行性軸索輸送法(HRP法)成熟ネコ7匹のFFHにHRPを定位的・電気泳動的に注入し、全例Mesulam( ́82)によるテトラメチルベンチジン法を行い逆行性に標識される細胞の局在を調べた。2.電気生理学的アプロ-チ生熟ネコ16匹の前S状回、ForelーH野、中脳網様体、吻側橋網様核、Nucl. reticularis gigantcellularisに刺入し、刺激および記録を行った。(結果および結論)1.ForelーH野細胞は新皮質および脳幹網様体から投射を受ける。2.新皮質からの投射は同側の前・後S状回第V層で、十字溝の中点部分に多い。3.中脳網様体からの投射は同側のみであるが、4.橋および延髄網様体からの投射は両側性である。5.てんかん性興奮に重要な役割を有するとして説明されている脳幹網様体のefferent pathwaysへのForelーH野の介在が示唆される。(目的)ForelーH野は上位痙攣中枢からの下向性インパルスの伝導路であること、他方、脳幹賦活系と密接な関係を持ち新皮質の発作性興奮に対して促進機能を有することが陣内、六川によって報告されている。FFHは解剖学的には神経線維束が主体をなし、神経細胞(subthalamic reticular nucleus)も少数存在する。我々はこのFFH細胞に投射する神経細胞を皮質・皮質下核・小脳・脳幹部にわたって解剖学的に調べる一方、電気生理学的に確認した。(方法)1.逆行性軸索輸送法(HRP法)成熟ネコ7匹のFFHにHRPを定位的・電気泳動的に注入し、全例Mesulam( ́82)によるテトラメチルベンチジン法を行い逆行性に標識される細胞の局在を調べた。2.電気生理学的アプロ-チ生熟ネコ16匹の前S状回、ForelーH野、中脳網様体、吻側橋網様核、Nucl. reticularis gigantcellularisに刺入し、刺激および記録を行った。(結果および結論)1.ForelーH野細胞は新皮質および脳幹網様体から投射を受ける。2.新皮質からの投射は同側の前・後S状回第V層で、十字溝の中点部分に多い。3.中脳網様体からの投射は同側のみであるが、4.橋および延髄網様体からの投射は両側性である。5.てんかん性興奮に重要な役割を有するとして説明されている脳幹網様体のefferent pathwaysへのForelーH野の介在が示唆される。ラット視床網様核の構造と細胞の特徴について調べた。250gから300gの体重のラットを1%パラフォルムアルデハイドと1%グルテアルデハイド固定液で潅流固定した後、50mmの厚さで切片を作製した。H-E染色後、鏡検し、同定した。視床網様核は外髄板との形態を成しており、視床の外側、背外側、および前面を取り囲んでいた。大きさは、約2.5×3.0×2.5mmであった。この大きさは定位脳手術台の上ではBregmaから後方へ1.3から3.8mm、正中から外側へ0.9から3.9mm、骨表面より深さ4.6から7.1mmに位置していた。視床網様核は内包を経由する大脳皮質への求心線維および遠心線維によって不規則な形状に分割され、この網状構造がこの核の名称の由来であることが理解できる。視床網様核は形状が複雑で、吻側における前核群との境界は不明瞭であり、尾側においては背外側から視床後核群に移行していた。また腹側では狭を介して不確帯に移行していた。これらの区別には、視床網様核が粗な細胞密度であるのに対して他方は密であることが鑑別となった。視床網様核の細胞の形状や大きさにはバリエーションがあるが、最も一般的と思われる特徴は以下のごとくであった。約15×10mmの小さな紡鍾形をしており枝は中心部に位置していた。各細胞は極性があり、ほぼ全て視床と皮質との結線に直交するように配列していた。細胞密度は1.39×10^5/mm^3であり、不確帯が1.74×10^5/mm^3であるのに対して、来年度より、上記核内にガラス微小管を挿入し、神経標式物質を注入し、神経連絡を調べる予定である。今回われわれは視床網様核の尾端に位置してこの核と解剖生理学的な関係で注目されているForel-H野を研究対象とした。すなわちForel-Hの神経線維連絡をHRPを用いた逆行性標識により調べた。成熟ネコ4匹のForel-
KAKENHI-PROJECT-63570683
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意識活動におよぼす視床網様核の役割
H野に定位的に電気泳動法を用いてHRPを注入し、以下の部位に標識を認めた。前S状回、後S状回、視索上核、視床下部前野、視床下部背側野、中脳網様体、吻側橋網様核、橋中心灰白質、下前庭核そして疑核に細胞が認められた。また下視床脚に標識神経線維を認めた。すなわち大脳皮質運動知覚野、視床下部、網様体賦活系と解剖学的連絡を有する。このうち運動野(分野4)および運動前野(分野6)である前S状回、一次体知覚野である後S状回に着目し、1匹のネコで逆行性標識細胞の局在を調べた。矢状断で観察し以下の結果を得た。1.標識細胞は総計105個でうちわけは前S状回81個(77%)、後S状回24個(23%)であった。2.十字溝全長(約7.50mm)を含む注入側皮質を矢状断にて4等分し、正中から外側へ向けてA,B,C,Dとすると標識細胞の比率はそれぞれA47.6%、B39.0%、C6.7%、D6.7%と内側部に比較的限局していた。3.同様の矢状断にて非注入側皮質には標識細胞は認められなかった。4.細胞は主に第V層に標識された。5.皮質を表面皮質と溝皮質に分けると前S状回に標識された81個の細胞は表面皮質11個、溝皮質70個、後S状回の24個は表面皮質1個、溝皮質23個であり、したがって総計105個中12個(11%)のみが表面皮質で93個(89%)は溝皮質すなわち内部に分布していた。錐体路の起始細胞は分野4とその背側に続く一次体知覚野に多く、分野4では十字溝の内部に最も多いといわれる。われわれの得た結果との類似は興味深い。(目的)ForelーH野は上位痙攣中枢からの下向性インパルスの伝導路であること、他方、脳幹賦活系と密接な関係を持ち新皮質の発作性興奮に対して促進機能を有することが陣内、六川によって報告されている。FFHは解剖学的には神経線維束が主体をなし、神経細胞(subthalamic reticular nucleus)も少数存在する。我々はこのFFH細胞に投射する神経細胞を皮質・皮質下核・小脳・脳幹部にわたって解剖学的に調べる一方、電気生理学的に確認した。(方法)1.逆行性軸索輸送法(HRP法)成熟ネコ7匹のFFHにHRPを定位的・電気泳動的に注入し、全例Mesulam( ́82)によるテトラメチルベンチジン法を行い逆行性に標識される細胞の局在を調べた。2.電気生理学的アプロ-チ成熱ネコ16匹の前S状回、ForelーH野、中脳網様体、吻側橋網様核、Nucl.reticularis gigantcellularisに刺入し、刺激および記録を行った。(結果および結論)1.ForelーH野細胞は新皮質および脳幹網様体から投射を受ける。2.新皮質からの投射は同側の前・後S状回第V層で、十字溝の中点部分に多い。3.中脳網様体からの投射は同側のみであるが、4.橋および延髄網様体からの投射は両側性である。5.てんかん性興奮に重要な役割を有するとして説明されている脳幹網様体のefferent pathwaysへのForelーH野の介在が示唆される。
KAKENHI-PROJECT-63570683
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脳科学の飛躍的な発展を目指す次世代信号処理技術の開発
視覚刺激や聴覚刺激の伴う脳活動の変化をEEGによって計測し、BCIなどのインターフェースへ応用されている。しかし、脳解析で利用されているFFTでは、信号の微小変化を可視化するための時間分解能と周波数分解能が不足している。NHAは、申請者等が発明した解析法で、フーリエ変換に比べ、10万100億倍以上の精度向上が見込まれている。そこで、ASSRでよく利用されている40Hzの帯域で、微小変化する聴覚刺激に起因するEEGの計測信号を用いてFFTとNHAで比較実験を行った。その結果、NHAを用いると40Hz41Hzで連続的に微小変化する変調信号の影響を誤差が1%以下の精度で解析できることがわかった。視覚刺激や聴覚刺激の伴う脳活動の変化をEEGによって計測し、BCIなどのインターフェースへ応用されている。しかし、脳解析で利用されているFFTでは、信号の微小変化を可視化するための時間分解能と周波数分解能が不足している。NHAは、申請者等が発明した解析法で、フーリエ変換に比べ、10万100億倍以上の精度向上が見込まれている。そこで、ASSRでよく利用されている40Hzの帯域で、微小変化する聴覚刺激に起因するEEGの計測信号を用いてFFTとNHAで比較実験を行った。その結果、NHAを用いると40Hz41Hzで連続的に微小変化する変調信号の影響を誤差が1%以下の精度で解析できることがわかった。本研究では、工学系で広く利用されているアナログ信号のフーリエ変換(FFT)に比べ、10万100億倍以上の精度の向上が見込まれるNHA(Non Harmonic Analysis:申請者等が考案した非周期信号のフーリエ変換式への最小二乗法の適用に基づく周波数分析法)を拡張し、1次元をはじめとした多次元の不等間隔データを正確に解析する信号解析ソフトウェアを開発し、脳科学の分野でも利用されている光トポグラフィーや、脳波計(Electroencephalogram:EEG)などの脳機能マッピング装置に応用する。特にこのようなソフトウェア技術によって、不等間隔計測データを正確に解析し、生体内部の様々なノイズに強く、特定の動作に伴う信号を抽出するための信号解析法を確立ため、当該年度は以下の項目に関して検討を行った。11次元不等間隔サンプリングデータの信号解析法の開発現在の等間隔サンプリングデータで成功したNHAを不等間隔のサンプリングデータに応用する。NHAは最小二乗法を用いたカーブフィッテングの手法を取り入れているが、目的値に近い周波数を初期値として与えなければならず、これは連続信号のフーリエ変換を数値解析的に、台形積分を用いることで解決した。22次元不等間隔サンプリングデータへの拡張2次元では、連続信号のフーリエ変換式が2重積分になる。これは数値解析的に、隣接する3点の離散データの体積を求める問題と等価になるため、領域分割問題のドロネー三角形分割を用いて、初期値を計算し、任意の不等間隔サンプリングデータにも対応した2次元NHAを開発した。本研究では、工学系で広く利用されているアナログ信号のフーリエ変換(FFT)に比べ、10万100億倍以上の精度の向上が見込まれるNHA(Non Harmonic Analysis:申請者等が考案した非周期信号のフーリエ変換式への最小二乗法の適用に基づく周波数分析法)を拡張し、1次元をはじめとした多次元の不等間隔データを正確に解析する信号解析ソフトウェアを開発し、脳科学の分野でも利用されている光トポグラフィーや、脳波計(Electroencephalogram:EEG)などの脳機能マッピング装置に応用した。特にこのようなソフトウェア技術によって、不等間隔計測データを正確に解析し、生体内部の様々なノイズに強く、特定の動作に伴う信号を抽出するための信号解析法を確立した。総合領域当初予定していた、計測装置のチャンネル間の冗長性の集約に関しては、次年度に行うことにした。以下の検討を行う。3計測装置のチャンネル間の冗長性の集約・・・一般に、計測装置の各チャンネル間の中心点を中心に感度分布が得られるため、中心点から離れた位置の脳情報ほど観測し難くなり、また計測信号間に情報の重なりが見られてしまう。これを2次元NHAによって周波数特性を正確に解析し、各チャンネル間の冗長性を集約する。4空間的分解能を補う正確な補間技術・・・冗長性を集約した各チャンネルの計測データから、チャンネル間に非定常的な空間方向の変動を仮定し、NHAによって空間的な波の形状を決定することで空間的分解能を補う、より正確な補間技術を開発する。5客観評価と連携した新しい脳の反応モデルの検討・・・発火反応部位を正確に推定するためには、ある部位の発火によって時空間的に広がる微小な反応を追跡する必要がある。4によって得られる空間的に密な信号に対して、時間方向にもNHAを適用することで微小な変化を検知し、信号源を推定する技術を開発する。また、脳波情報に対して本手法を適用することで得られた信号源の位置と、解剖学的知見等から特定されている信号源の位置を比較することで、客観的に脳の反応モデルの妥当性を検討する。計測装置のチャンネル間の冗長性の集約を行う実験計画を遅らせたため。次年度以降に遅れが生じた実験を行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-25540053
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小児がん患児(者)のResilience:サポートとの関連
研究の目的は、1)日本の小児がん患者のresilience(弾力性)を米国と比較する、2)弾力性の向上法を解明する、3)平成1214年までの研究結果の妥当性を高めるための追加調査を行う、4)弾力性を高める支援を構築することであった。研究方法は、前回同様、半構成化面接と自己概念・ソーシャルサポートマップの質問紙によるケーススタディー法で行い、パターン適合法で解析した。協力者は前回の1118歳の小児がん患者16名とその母親であった。調査結果は次の通りであった。1.告知された患者の弾力性の高め方は米国と類似していた。診断時の親の病気への前向きな姿勢が患児に希望を与え弾力性を高めていた。弾力性の高め方は初発の患者は退院時期に、再発者は入院の早期に、学校にもどるための勉強に取り組むなど病気の経過で相違がみられた。2.未告知の患者は将来の目的が不明確だったが弾力性を高める可能性はみられた。3.自己概念では中学生の患者に高得点群の母親が多く、ソーシャルサポートでは小学生に高得点群の母親が多かった。ソーシャルサポートの高得点群の患者は自己概念も高かった。考察として、小児がん患者が前向きに病気と共存していくために、将来の希望をもてるような医療、地域、社会の積極的な関わりが必要であることが示唆された。親に対して診断時に前向きな姿勢で子どもを支援できるような勇気づけや自己概念や社会的交流を高める環境作りが大切である。小児がん患者は同年代の仲間とともに思春期を生きることで弾力性を高めていることから、この時期の発達課題を達成できるような支援が必要である。また、病気の経過に応じた個別性のある支援も必要である。今後この研究を小児がん長期生存者に継続し、小児がん患者のQOLを高める継続的な支援方略を構築したい。さらに、他の健康障害をもつ子どもや幅広い分野で支援を必要としている子どものQOLを高める支援につなげたいと思っている。研究の目的は、1)日本の小児がん患者のresilience(弾力性)を米国と比較する、2)弾力性の向上法を解明する、3)平成1214年までの研究結果の妥当性を高めるための追加調査を行う、4)弾力性を高める支援を構築することであった。研究方法は、前回同様、半構成化面接と自己概念・ソーシャルサポートマップの質問紙によるケーススタディー法で行い、パターン適合法で解析した。協力者は前回の1118歳の小児がん患者16名とその母親であった。調査結果は次の通りであった。1.告知された患者の弾力性の高め方は米国と類似していた。診断時の親の病気への前向きな姿勢が患児に希望を与え弾力性を高めていた。弾力性の高め方は初発の患者は退院時期に、再発者は入院の早期に、学校にもどるための勉強に取り組むなど病気の経過で相違がみられた。2.未告知の患者は将来の目的が不明確だったが弾力性を高める可能性はみられた。3.自己概念では中学生の患者に高得点群の母親が多く、ソーシャルサポートでは小学生に高得点群の母親が多かった。ソーシャルサポートの高得点群の患者は自己概念も高かった。考察として、小児がん患者が前向きに病気と共存していくために、将来の希望をもてるような医療、地域、社会の積極的な関わりが必要であることが示唆された。親に対して診断時に前向きな姿勢で子どもを支援できるような勇気づけや自己概念や社会的交流を高める環境作りが大切である。小児がん患者は同年代の仲間とともに思春期を生きることで弾力性を高めていることから、この時期の発達課題を達成できるような支援が必要である。また、病気の経過に応じた個別性のある支援も必要である。今後この研究を小児がん長期生存者に継続し、小児がん患者のQOLを高める継続的な支援方略を構築したい。さらに、他の健康障害をもつ子どもや幅広い分野で支援を必要としている子どものQOLを高める支援につなげたいと思っている。研究の目的は1)小児がん患者のresilienceを日本と米国とで比較する、2)小児がん患者の弾力性の高め方を理解する、3)小児がん患者のresilienceを高めるための支援を医療関係者、家族、学校との間で共有する、4)研究結果の妥当性を高めることである。研究方法は質的研究と量的研究の組み合わせによる三角測量方法を使用し、平成13年14年までにインタビューでえた1118歳の小児がん患者7人のデータをHinds & MartinのThe self-sustaining process(小児がんの患者が自分を強めていく過程)と比較するパターン適合法で解析を行った。その結果は次の通りであった。1.自分の病気を正しく理解していた患者は米国の患者と同様に弾力性が高かく、弾力性を高めるプロセスも米国の患者と類似していた。また、初発の患者は退院時期に、再発の患者は治療期間中に退院後の学校や勉強について現実的に考えるなど、病気の経過と治療時期で弾力性の高め方に相違がみられた。2.自分の病気を正しく理解していなかった患者には弾力性を高める可能性がみられたが、対象者数が少ないため追試の必要性があると考えられた。3.量的調査から得られたデータは対象者が7人と少数であるため解析は行わなかった。
KAKENHI-PROJECT-15592296
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小児がん患児(者)のResilience:サポートとの関連
また、親からのデータに関しても同様であり、追試することにより対象者数を増やす必要性があると考えられた。以上により、前回の研究調査を継続する目的で施設への調査依頼を行った。現在、1箇所の施設が確定し、2箇所は回答を待っている状況である。また、支援グループの会に出席し九州地方の患児やその家族への支援の状況や情報をえた。このことにより研究の方向性がより明確にされこれに関する文献レビューを継続している。研究の目的は、1)小児がん患者のresilienceを日本と米国とで比較する、2)小児がん患者の弾力性の高め方を理解する、3)研究結果の妥当性を高める、4)小児がん患者のresilienceを高めるための支援を医療関係者、家族、学校との間で共有することである。研究方法は、質的研究と量的研究で、解析方法は平成13年14年までにインタビューで得られた1118歳の小児がん患者7人のデータをHinds & MartinのThe self-sustaining process(小児がんの患者が自分を強めていく過程)と比較するパターン適合法で行った。その結果は次の通りであった。自分の病気を正しく理解していた患者は、1)弾力性を高めるプロセスが米国の患者と類似していた、2)再発患者は初発患者より早期に退院後の学校や勉強についての希望をもって入院生活を送っていた、3)再発患者は初発時の入院生活での身体的・精神的経験が彼らの弾力性を高めていた。このことから、初発の患者は治療終了後には弾力性が高められ、将来の困難にも立ち向かうことができると考えられる。また、希望を持つことが、小児がん患者のresilienceを高めていると考えられる。4)自分の病気を正しく理解していなかった患者は、弾力性を高める可能性があると思われた。自分の病気に対して正しい知識を持っていれば、ソーシャルサポートを得られより効果的に弾力性を高めることが出来るのではないかと考えられる。これらの研究結果の妥当性を高めるため、さらに、患者とその親から得らた量的調査のデータを解析するために、30名を目的に現在データ収集中である。現在までに14名のデータを収集した。研究の目的は1)小児がん患者のresilience(弾力性)を日米間で比較する、2)患者の弾力性の向上法を解明する、3)患者の弾力性を高める支援を構築する、4)平成12年14年までの研究結果の妥当性を高めるために追加調査を行うことであった。研究方法は、前回と同じ面接と質問紙によるケース・スタディー法で行った。前回の1118歳の小児がん患者7名と平成15年17年の9名(計16名)の調査結果は次の通りであった。1.病名を告げられた患者の弾力性の向上方法は米国の患者と類似していた。親の病気への前向きな姿勢が患児に希望を与え弾力性を高めていた。弾力性の高め方は、初発の患者は退院ごろに、再発の患者は入院の早期に学校にもどるための勉強に取り組むなど、病気の経過で相違がみられた。2.告知されなかった患者の将来への希望は明確ではなかったが、弾力性を高める可能性はみられた。3.自己概念の高得点群の母親の場合に高得点群は中学生に多かった。ソーシャルサポートの高得点群の母親の場合に小学生に高得点群が多かった。また、ソーシャルサポートの高得点群の患者は低得点群より自己概念が高かった。
KAKENHI-PROJECT-15592296
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好熱及び好冷菌酵素を題材とした蛋白質の揺らぎと機能に関する理論的研究
昨年度に引き続き酵素活性の示適温度が異なる二種類のアミラーゼタンパク質(AHA:低温活性、PPA:常温活性)をモデルとし、酵素活性おけるタンパク質の揺らぎの効果を分子論的に明らかにすることを目指し研究を行った。本年度は、特にタンパク質の熱揺らぎを考慮した新規のQM/MM自由エネルギー法の改良を行った。QM/MM自由エネルギー法でこれまで一般的であったクラスター系での計算ではなく、長距離の静電相互作用をより正確に計算するEwald法を導入した。また、これまでわずかなサンプルから計算されてきた平均ポテンシャルに必要なサンプル数に対する評価も行った。これらにより、QM/MM計算とサンプリングのためのMD計算が完全に分離され、精度の良い計算が可能となった。さらに、hessian計算の導入も行い、この計算法での遷移状態の探索を可能にした。これにより、構造最適化だけでなく新しいQM/MM計算での化学反応の計算が可能となった。また、酵素反応機構の解析についても二つの酵素反応の違いについて新たな知見を得ることに成功した。AHAもPPAもともにα-1,4グルコシド結合の解離と水の付加の二段階の加水分解反応により起こると考えられている。一段階目の反応が終わり二段階目の反応が起こるには水が解離した結合の間に入る必要があるが、これをWeighted Histogram Analysis Method(WHAM)により求めた。そして、この段階が化学反応に特に重要な役割を果たしていることを突き止めた。さらに、昨年度のエントロピー計算の信頼性を高めるためにより長時間のシミュレーションを行い、その評価を行い結果のまとめを行っている。本年度は、研究計画に従い低温活性のAlteromonashaloplanctis α-Amylase(AHA)及び常温活性のPig pancreatic α-Amylase(PPA)に対して基質結合に伴う蛋白質の揺らぎの変化と既存のQM/MM法による酵素内化学反応のエネルギー計算を行った。また、蛋白質の揺らぎを取り入れた酵素内化学反応の計算を行うために既存のQM/MM法を改良したプログラムの開発をした。蛋白質の揺らぎについては、AHA及びPPAにおける蛋白質の揺らぎの違いを定性的に見積もるためMDを行いRoot Mean Square Fluctuation(RMSF)を計算し、AHAとPPAを比較した。次に、基質結合に伴う蛋白質の揺らぎの変化と自由エネルギー変化の温度依存性を見積もるためにQuasiharmonic Approximationにより基質結合時と基質非結合時のエントロピー変化を計算し比較した。その際、これまで蛋白質全体に対してのみ行われていたQuasiharmonic Approximationをアミノ酸残基ごとに分割する方法を考案し、基質結合時のエントロピー変化についてより分子論的な視点から調べた。すると、PPAでは基質結合とともに活性サイト周辺のアミノ酸残基のエントロピーが大きく低下するのに対し、AHAではそれほど大きな違いは見られなかった。この結果は、PPAでは蛋白質が基質をより強く捕まえていることを示していると考えられる。酵素内化学反応の計算では、AHAおよびPPAに対して既存のQM/MMにより化学反応における反応経路に沿ったポテンシャルエネルギーの計算を行った。AHAもPPAもともにα-1,4グルコシド結合の解離と水の付加の二段階の加水分解反応により起こると考えられているが、α-1,4グルコシド結合の解離の際のポテンシャルエネルギーの障壁はそれほど大きくなさそうであることがわかった。昨年度に引き続き酵素活性の示適温度が異なる二種類のアミラーゼタンパク質(AHA:低温活性、PPA:常温活性)をモデルとし、酵素活性おけるタンパク質の揺らぎの効果を分子論的に明らかにすることを目指し研究を行った。本年度は、特にタンパク質の熱揺らぎを考慮した新規のQM/MM自由エネルギー法の改良を行った。QM/MM自由エネルギー法でこれまで一般的であったクラスター系での計算ではなく、長距離の静電相互作用をより正確に計算するEwald法を導入した。また、これまでわずかなサンプルから計算されてきた平均ポテンシャルに必要なサンプル数に対する評価も行った。これらにより、QM/MM計算とサンプリングのためのMD計算が完全に分離され、精度の良い計算が可能となった。さらに、hessian計算の導入も行い、この計算法での遷移状態の探索を可能にした。これにより、構造最適化だけでなく新しいQM/MM計算での化学反応の計算が可能となった。また、酵素反応機構の解析についても二つの酵素反応の違いについて新たな知見を得ることに成功した。AHAもPPAもともにα-1,4グルコシド結合の解離と水の付加の二段階の加水分解反応により起こると考えられている。一段階目の反応が終わり二段階目の反応が起こるには水が解離した結合の間に入る必要があるが、これをWeighted Histogram Analysis Method(WHAM)により求めた。そして、この段階が化学反応に特に重要な役割を果たしていることを突き止めた。さらに、昨年度のエントロピー計算の信頼性を高めるためにより長時間のシミュレーションを行い、その評価を行い結果のまとめを行っている。
KAKENHI-PROJECT-08J01123
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J01123
初年次教育を中心とする継続型教育プログラムの開発と質的保証に関する国際比較研究
本研究では以下のような研究成果を修めた。第1に、初年次教育と隣接教育プログラムの概念整理である。初年次教育の教育内容や方法には、画一的な世界標準は存在せず、導入される大学の状況や必要性に応じてカスタマイズされる。初年次教育の中心的要素は、「1年生を、"組織的に(全学もしくは学部レベルで)"、大学生活と大学での学習に"円滑に移行"させ、"成功"に水路づける」というペダゴジーにある。つまり、円滑に中等教育からの"移行"をはかることが、初年次教育の最も重要なテーマである。導入教育は、教育内容には専門領域への導入が含まれていることを勘案すれば、初年次教育の一つの類型と位置づけられる。主に、専門教育の修得を重視する大学で実施される。リメディアル教育の内容は、中等教育段階で身につけておくべきものであり、本来学士課程教育プログラムには含まれないが、課外で学生を支援する内容を含んでいる。第2に、初年次教育の学士課程教育の中での位置づけである。近年、キャリア教育と初年次教育の近似性や共通性が指摘される。4年間を通しての学士課程教育の目的との位置関係で俯瞰してみると、両者は非常に近い関係にある。初年次教育は、学士課程教育という観点から考えるならば、独立し、完結したプログラムとみなすよりも、2年生から4年生まで学生たちに様々な刺激を与えつつ、卒業後の"職業生活に移行"させることに"接続"していく点が重要である。こうした動向は、アメリカ、イギリス、オーストラリア等の成熟社会型の先進諸国である程度共通している。大学が問われるのは、「学士課程教育」を通じて、卒業の時点で学生たちにラーニングアウトカム(学習成果)を証明することである。学士課程の到達水準を明示し、その目標を達成する。初年次教育はこうした課題達成に向けて、学生たちの学習やキャリア形成の方向性を定める第一段階としての機能が期待されている。本研究では以下のような研究成果を修めた。第1に、初年次教育と隣接教育プログラムの概念整理である。初年次教育の教育内容や方法には、画一的な世界標準は存在せず、導入される大学の状況や必要性に応じてカスタマイズされる。初年次教育の中心的要素は、「1年生を、"組織的に(全学もしくは学部レベルで)"、大学生活と大学での学習に"円滑に移行"させ、"成功"に水路づける」というペダゴジーにある。つまり、円滑に中等教育からの"移行"をはかることが、初年次教育の最も重要なテーマである。導入教育は、教育内容には専門領域への導入が含まれていることを勘案すれば、初年次教育の一つの類型と位置づけられる。主に、専門教育の修得を重視する大学で実施される。リメディアル教育の内容は、中等教育段階で身につけておくべきものであり、本来学士課程教育プログラムには含まれないが、課外で学生を支援する内容を含んでいる。第2に、初年次教育の学士課程教育の中での位置づけである。近年、キャリア教育と初年次教育の近似性や共通性が指摘される。4年間を通しての学士課程教育の目的との位置関係で俯瞰してみると、両者は非常に近い関係にある。初年次教育は、学士課程教育という観点から考えるならば、独立し、完結したプログラムとみなすよりも、2年生から4年生まで学生たちに様々な刺激を与えつつ、卒業後の"職業生活に移行"させることに"接続"していく点が重要である。こうした動向は、アメリカ、イギリス、オーストラリア等の成熟社会型の先進諸国である程度共通している。大学が問われるのは、「学士課程教育」を通じて、卒業の時点で学生たちにラーニングアウトカム(学習成果)を証明することである。学士課程の到達水準を明示し、その目標を達成する。初年次教育はこうした課題達成に向けて、学生たちの学習やキャリア形成の方向性を定める第一段階としての機能が期待されている。1海外における初年次教育の動向調査2004年6月に米国マウイで開催された第17回国際初年次教育学会に参加し、日本の初年次教育について報告を行うとともに、各種の部会に出席し、世界の初年次教育に関する情報収集及び意見交換を行った。また、2005年2月に米国、豪州及びスコットランドから初年次教育の研究者を招聘し、神戸及び東京で初年次教育に関する国際シンポジウムを開催した。2大学生の大学適応に関する調査平成1315年度科学研究費補助金基盤研b究(B)(1)(研究課題:「ユニバーサル高等教育における導入教育と学習支援に関する研究」研究代表者:濱名篤)に引き続き、大学生の学術面・社会面に関する大学への適応調査を実施し、得られたデータの各種分析を行った。3質問紙調査実施準備のための学生グループフォーカス・インタビュー調査学生の大学適応に関する追跡調査をさらに拡充、実施するためのフォーカス・グループ・インタビューを以下のとおり実施した。(1)工業系:八戸工業大学(濱名、川嶋)10月28日(2)人文・社会科学系:目白大学(川島、杉谷)11月30日4学会報告等調査を川嶋、濱名は、大学教育学会第26回大会(北海道大学04.6.1213)のラウンドテーブル「初年次教育・導入教育」において、「なぜ、近年日本で初年次教育が注目されるようになったのか」という報告を行った。
KAKENHI-PROJECT-16330159
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初年次教育を中心とする継続型教育プログラムの開発と質的保証に関する国際比較研究
その他、濱名は、山形大学教養教育FDフォーラム(04.8.6)で「初年次教育の可能性と課題」、広島大学FDフォーラム(05.3.18)で「高大接続と学習支援」というテーマで、研究成果にっいて報告を行っている。高校から大学への"移行"過程における「適応」-「不適応」は、学習面と人間関係(社会的結合)においてとらえていくことができる。本研究では、大学生のこれらの側面における適応過程を、同一対象者に対するパネル調査を実施し、その適応過程の変化と、それらの変化を規定する要因を分析している。本年度は、1年生の4月、6月、10月、の3時点のデータ分析に基づき、以下のことを明らかにした。第1に、入学直後の新入生の経験や意識が、半年後の適応状況と高い相関があり、入学直後の適応促進が学習面でも人間関係面でも非常に重要であることである。こうした適応状況は、高校時代の成績や入試区分にあまり関係ないがみられず、高校時代成績不振であった者に一定のハンディがみられる程度で、むしろ高校時代が順調に進んでいたと適応的意識を持っていたかどうかや、入学時に大学での学習への期待感の多寡の方が影響する。第2に、大学入学直後に、「入学して良かった」「大学生活への期待」など、肯定的な感情を喚起できるか否かが、半年後の適応に大きく影響している。第3に、新入生の大学生活への適応においては、学習面と人間関係面での適応の相関が高い。第4に、適応の持続については、いったん適応した者の継続率は全般的に高いものの、学習面での適応については、3分の1の者が「上昇(不適応→適応)」または「下降(適応→不適応)」と流動性が高く、入学時の適応を持続させる教育プログラムや経験を提供することが有効である。今後、2、3,4年時と実施していく調査結果を加え、これらの適応過程のメカニズムをさらに明らかにし、継続型プログラムの必要な構成条件について明らかにしていく。本研究では以下のような研究成果を修めた。第1に、初年次教育と隣接教育プログラムの概念整理である。初年次教育の教育内容や方法には、画一的な世界標準は存在せず、導入される大学の状況や必要性に応じてカスタマイズされる。初年次教育の中心的要素は、「1年生を、"組織的に(全学もしくは学部レベルで)"、大学生活と大学での学習に"円滑に移行"させ、"成功"に水路づける」というペダゴジーにある。つまり、円滑に中等教育からの"移行"をはかることが、初年次教育の最も重要なテーマである。導入教育は、教育内容には専門領域への導入が含まれていることを勘案すれば、初年次教育の一つの類型と位置づけられる。主に、専門教育の修得を重視する大学で実施される。リメディアル教育の内容は、中等教育段階で身につけておくべきものであり、本来学士課程教育プログラムには含まれないが、課外で学生を支援する内容を含んでいる。第2に、初年次教育の学士課程教育の中での位置づけである。近年、キャリア教育と初年次教育の近似性や共通性が指摘される。4年間を通しての学士課程教育の目的との位置関係で俯瞰してみると、両者は非常に近い関係にある。初年次教育は、学士課程教育という観点から考えるならば、独立し、完結したプログラムとみなすよりも、2年生から4年生まで学生たちに様々な刺激を与えつつ、卒業後の"職業生活に移行"させることに"接続"していく点が重要である。こうした動向は、アメリカ、イギリス、オーストラリア等の成熟社会型の先進諸国である程度共通している。
KAKENHI-PROJECT-16330159
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食道癌術後補助療法としてのNY-ESO-1総蛋白を用いた癌免疫療法
今回の計画の基礎となる「進行食道癌患者に対するNY-ESO-1蛋白を用いたワクチン療法第一相臨床試験」に参加した13症例の解析では、重篤な副作用は見られなかった。臨床反応を見るとともに、ワクチン投与前後におけるNY-ESO-1特異的抗体反応、CD4/CD8T細胞反応を解析したところ、主腫瘍やそのほかの腫瘍に何らかの縮小効果の見られた症例は4症例存在し、これら症例すべてで抗体価の上昇がワクチン早期より確認され、同時にCD4T細胞反応が検出できた。さらに、CD8T細胞反応も検出された。すべての患者において、CD4およびCD8T細胞の反応性を示す部位をNY-ESO-1総蛋白より重複する連続ペプチドを作成することにより解析すると、抗体反応部位も含めてNY-ESO-1蛋白の中央部約70個のアミノ酸配列部に、高度免疫反応惹起部位が存在することが明らかとなった。180個のアミノ酸からなるNY-ESO-1総蛋白を作成する際に、100個以下であればE.Coliを用いなくともペプチド合成器にて作成可能であるため、現在「食道癌術後補助療法としてのNY-ESO-1総蛋白を用いた癌免疫療法」に向けては、上記高度免疫反応惹起部位によるCHP併用ワクチンとすることとした。進行食道癌術前化学療法後根治術施行症例中、切除標本中の転移リンパ節数が4個以上の症例を対照とし、現在すでに60例においてNY-ESO-1発現の有無にて無再発生存率を比較した。これら症例に対してワクチン投与を行い、この無再発生存率の改善を目指す。実際には、この対照無再発生存曲線と、ワクチン症例の無再発生存曲線とを比較することとなる。また、臨床試験を遂行しながら、ワクチンを投与しない症例を対照群に加えていくこととなる。また、蛋白より重複する連続ペプチドによるワクチン投与も別に計画している。先行した「進行食道癌患者に対するNY-ESO-1蛋白を用いたワクチン療法第一相臨床試験」のデータを下に、安定した供給を得るために、ワクチン方法について改正を繰り返している。NY-ESO-総蛋白よりも高度免疫反応惹起部位である一部分の蛋白で十分であることが判った。また、投与対照群の確定も進めている。今回の計画の基礎となる「進行食道癌患者に対するNY-ESO-1蛋白を用いたワクチン療法第一相臨床試験」に参加した13症例の解析では、重篤な副作用は見られなかった。臨床反応を見るとともに、ワクチン投与前後におけるNY-ESO-1特異的抗体反応、CD4/CD8T細胞反応を解析したところ、主腫瘍やそのほかの腫瘍に何らかの縮小効果の見られた症例は4症例存在し、これら症例すべてで抗体価の上昇がワクチン早期より確認され、同時にCD4T細胞反応が検出できた。さらに、CD8T細胞反応も検出された。すべての患者において、CD4およびCD8T細胞の反応性を示す部位をNY-ESO-1総蛋白より重複する連続ペプチドを作成することにより解析すると、抗体反応部位も含めてNY-ESO-1蛋白の中央部約70個のアミノ酸配列部に、高度免疫反応惹起部位が存在することが明らかとなった。180個のアミノ酸からなるNY-ESO-1総蛋白を作成する際に、100個以下であればE.Coliを用いなくともペプチド合成器にて作成可能であるため、現在「食道癌術後補助療法としてのNY-ESO-1総蛋白を用いた癌免疫療法」に向けては、上記高度免疫反応惹起部位によるCHP併用ワクチンとすることとした。進行食道癌術前化学療法後根治術施行症例中、切除標本中の転移リンパ節数が4個以上の症例を対照とし、現在すでに60例においてNY-ESO-1発現の有無にて無再発生存率を比較した。これら症例に対してワクチン投与を行い、この無再発生存率の改善を目指す。実際には、この対照無再発生存曲線と、ワクチン症例の無再発生存曲線とを比較することとなる。また、臨床試験を遂行しながら、ワクチンを投与しない症例を対照群に加えていくこととなる。また、蛋白より重複する連続ペプチドによるワクチン投与も別に計画している。先行した「進行食道癌患者に対するNY-ESO-1蛋白を用いたワクチン療法第一相臨床試験」のデータを下に、安定した供給を得るために、ワクチン方法について改正を繰り返している。NY-ESO-総蛋白よりも高度免疫反応惹起部位である一部分の蛋白で十分であることが判った。また、投与対照群の確定も進めている。(1)「食道癌患者の対象の改訂」術後アジュバントとしてNY-ESO-1蛋白ワクチンを使用する場合に、StageIII、IVa食道癌根治手術症例を対象にした。しかし、1)術前補助療法なしstage III食道癌根治手術症例では、NY-ESO-1発現腫瘍患者の無再発生存率が非常に良好であること、2)ほとんどの食道進行癌患者に対し行っている術前化学療法後の根治手術症例では、転移リンパ節個数が3個以下であれば無再発生存率が非常に良好であること、が最近明らかになった。このため、術前化学療法後進行食道癌根治手術症例で転移リンパ節個数が4個以上、のNY-ESO-1発現腫瘍患者を対象とすることとした。この症例群におけるNY-ESO-1発現の有無での無再発生存率の差を解析したところ、差はなかった。(2)「細胞性免疫モニタリング法の改訂」患者末梢血中CD8陽性
KAKENHI-PROJECT-17390366
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食道癌術後補助療法としてのNY-ESO-1総蛋白を用いた癌免疫療法
T細胞をNY-ESO-1組み換え型アデノウイルス・ワクチニアウイルスを用いた細胞にて、あるいはNY-ESO-1 mRNAを導入した樹状細胞にて刺激・反応させ,IFNγ産生細胞をELISPOT法にて検出することにより、NY-ESO-1特異的反応を解析する、という方法では結果が不安定であることが分かった。そこで、重複する連続NY-ESO-1ペプチドを付加した細胞を抗原提示細胞とした新規測定方法に変更した。(3)「NY-ESO-1蛋白を用いた進行食道癌症例に対する臨床第一相試験」すでに6例の食道癌患者が参加した。重篤な副作用はまったく見られておらず、免疫学的モニタリングとしての液性免疫は全例でNY-ESO-1抗体価の上昇が見られた。細胞性免疫は、上記新規評価法にてNY-ESO-1特異的CD4,8T細胞反応の上昇が見られる症例を確認した。臨床効果としては、腫瘍の消褪が見られる患者も存在した。先行した「進行食道癌患者に対するNY-ESO-1蛋白を用いたワクチン療法第一相臨床試験」を終了した。ワクチンにより重篤な副作用は見られず、ほぼ全例においてNY-ESO-1特異的抗体価の上昇とCD4,CD8T細胞の反応が誘導された。臨床所見では、食道癌8症例においては、ほぼ腫瘤が完全消失した1例、腹腔内腫瘤に対しては無効であったが胸腔内腫瘤が縮小した2例が観察された。また、前立腺癌4症例では、血中PSA値が3例において反応し、悪性黒色腫1症例においては腫瘤のアポトーシスが観測された。これら結果を元に、NY-ESO-1ワクチン療法を術後アジュバントとして使用する計画を立てている。NY-ESO-1ワクチン療法を術後アジュバントとして使用するため、対照症例の検討を行った。対象を進行食道癌術前化学療法後根治術施行症例とした時の無再発生存曲線を作成し、40例においてNY-ESO-1発現の有無にて比較した。切除標本中の転移リンパ節数が4個以上の症例では、術後1年以内に約80%が再発した。これら症例に対してワクチン投与を行い、この無再発生存率の改善を目指す。実際には、この対照無再発生存曲線と、ワクチン症例の無再発生存曲線とを比較することとなる。また、臨床試験を遂行しながら、ワクチンを投与しない症例を対照群に加えていくこととなる。術後アジュバントとして使用するためのNY-Eso-1組換え蛋白は、NYのLudwig癌研究所において新たに作成中であるが、昨年10月作成したNY-ESO-1蛋白80mgにエンドトキシンの混入が見られ、再作成後投与する。
KAKENHI-PROJECT-17390366
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