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生体内における亜鉛イオンの機能解析を目指した蛍光プローブ分子の開発 | 平成14年度に、本研究により得られた成果を以下にまとめる。1.ZnAF類の改良前年度までに開発した亜鉛蛍光プローブ、ZnAF-1及びZnAF2は、亜鉛イオンに対して高い選択性を示した。また、金属イオンを加えていないときの蛍光強度は、pHを変化させてもほとんど変化しなかったが、亜鉛イオンを加えたときの蛍光強度は、pH7付近から減少し始めるという問題点があった。そのため、細胞がアシドーシス等を起こし、pHが低下したときには、亜鉛イオン濃度の測定が影響を受けると考えられた。そこで、新たに、pHの変化に対する蛍光特性を改良した、ZnAF-1F及びZnAF-2Fを開発した。これらのプローブと亜鉛イオンとの錯体は、pHを6付近まで変化させても蛍光強度がほとんど変化せず、安定した測定が可能であった。2.波長シフト型蛍光プローブZnAF-R類の開発これまでに開発したZnAF類は蛍光強度変化のみで亜鉛イオンの濃度変化を検出している。こうした一励起波長、一蛍光波長の蛍光強度を測定するタイプの蛍光プローブは、色素の局在や退色等が起こると正確な測定が難くなるという問題点があった。これらの影響を減ずる方法として、対象となる分子種が結合または反応することにより、励起波長もしくは蛍光波長が変化し、変化した二つの波長の蛍光強度比をとることにより、測定を行うレシオ測定という手法が存在する。そこで、亜鉛イオンが結合することにより、波長がシフトする亜鉛蛍光プローブの開発を行った。開発されたプローブZnAF-R類は、亜鉛イオンの添加により極大励起波長が短波長側にシフトし、レシオ測定が可能であった。また、培養細胞中の亜鉛イオンの濃度変化をレシオ測定によって、検出することに成功した。平成14年度に、本研究により得られた成果を以下にまとめる。1.ZnAF類の改良前年度までに開発した亜鉛蛍光プローブ、ZnAF-1及びZnAF2は、亜鉛イオンに対して高い選択性を示した。また、金属イオンを加えていないときの蛍光強度は、pHを変化させてもほとんど変化しなかったが、亜鉛イオンを加えたときの蛍光強度は、pH7付近から減少し始めるという問題点があった。そのため、細胞がアシドーシス等を起こし、pHが低下したときには、亜鉛イオン濃度の測定が影響を受けると考えられた。そこで、新たに、pHの変化に対する蛍光特性を改良した、ZnAF-1F及びZnAF-2Fを開発した。これらのプローブと亜鉛イオンとの錯体は、pHを6付近まで変化させても蛍光強度がほとんど変化せず、安定した測定が可能であった。2.波長シフト型蛍光プローブZnAF-R類の開発これまでに開発したZnAF類は蛍光強度変化のみで亜鉛イオンの濃度変化を検出している。こうした一励起波長、一蛍光波長の蛍光強度を測定するタイプの蛍光プローブは、色素の局在や退色等が起こると正確な測定が難くなるという問題点があった。これらの影響を減ずる方法として、対象となる分子種が結合または反応することにより、励起波長もしくは蛍光波長が変化し、変化した二つの波長の蛍光強度比をとることにより、測定を行うレシオ測定という手法が存在する。そこで、亜鉛イオンが結合することにより、波長がシフトする亜鉛蛍光プローブの開発を行った。開発されたプローブZnAF-R類は、亜鉛イオンの添加により極大励起波長が短波長側にシフトし、レシオ測定が可能であった。また、培養細胞中の亜鉛イオンの濃度変化をレシオ測定によって、検出することに成功した。 | KAKENHI-PROJECT-01J05364 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01J05364 |
精神保健福祉士の自立支援評価基準に関するエキスパートシステムの研究 | 精神保健福祉士のケアプラン作成業務については、現在発展している段階であり、ケアプランをいかに作成するかといったサービス計画過程と、その評価基準に関する研究を行った。精神保健福祉士のケアプラン作成のコンピュータ・エキスパート化を試みた。コンピュータ・エキスパートシステムは、わが国のみならず諸外国において、さまざまな領域で開発が進んでいるため、精神科ソーシャルワークの領域での研究が必要であると考えた。精神保健福祉士の作成するケア必要度に基づくケアプラン作成をコンピュータソフト化、エキスパートシステムそして開発するための基礎研究を行った。その結果を踏まえ、精神科ソーシャルワーカー等の専門職による評価・計画・サービス提供のあり方に関して考察を行った。平成14年度、文献情報分析、現状分析を実施し、調査票案を作成した。平成15年度、14年度の文献情報分析を踏まえ、事前調査実施と本調査を行い、その現状分析に入り、総括的研究を行った。既収集の文献分析並びに必要な文献収集により明確になってきたデータ入力項目をコンピュータソフトとして開発した。平成16年度、開発したデータ入力ソフトを利用し、精神病院等において実際に精神障害者の相談援助業務を行っている専門家に対し、業務並びに使用理論、スキルに関する調査を実施した。その研究結果をもとに研究報告書をまとめた。精神保健福祉士のケアプラン作成業務については、現在発展している段階であり、ケアプランをいかに作成するかといったサービス計画過程と、その評価基準に関する研究を行った。精神保健福祉士のケアプラン作成のコンピュータ・エキスパート化を試みた。コンピュータ・エキスパートシステムは、わが国のみならず諸外国において、さまざまな領域で開発が進んでいるため、精神科ソーシャルワークの領域での研究が必要であると考えた。精神保健福祉士の作成するケア必要度に基づくケアプラン作成をコンピュータソフト化、エキスパートシステムそして開発するための基礎研究を行った。その結果を踏まえ、精神科ソーシャルワーカー等の専門職による評価・計画・サービス提供のあり方に関して考察を行った。平成14年度、文献情報分析、現状分析を実施し、調査票案を作成した。平成15年度、14年度の文献情報分析を踏まえ、事前調査実施と本調査を行い、その現状分析に入り、総括的研究を行った。既収集の文献分析並びに必要な文献収集により明確になってきたデータ入力項目をコンピュータソフトとして開発した。平成16年度、開発したデータ入力ソフトを利用し、精神病院等において実際に精神障害者の相談援助業務を行っている専門家に対し、業務並びに使用理論、スキルに関する調査を実施した。その研究結果をもとに研究報告書をまとめた。精神保健福祉士の自立支援評価基準に関するエキスパート・システム開発に向けて、精神障害者の「自立」の定義,自立支援「評価基準」,エキスパート・システムに関して、日本と外国の文献検索を広範に実施した。前研究において使用したGAF(Global Assessment of Functioning機能の全体評価尺度)とともに、わが国に適用できる可能性のある「評価基準」を選別した。その分類は、評価対象と評価内容に応じて二つに大きく分けることができることが分かった。「疾患」を対象に開発された評価尺度と、「障害」を対象として開発された尺度である。前者は、医学的治療を目的として、主として医学的診断分類を行うためのものであり、後者は、障害の程度により「社会的機能」等を評定するものであった。後者の「評価基準」を最終的に選別し、次年度の評価表完成に向けての枠組みをつくることができた。各評価基準の項目からなるエキスパート・システム「入力」に関するシステム構築を行った。次年度に精神保健福祉士に実際に調査を行うときに使用する「入力」システムのC言語によるプログラム開発を開始した。同プログラムは、精神保健福祉士(エキスパート)が行うアセスメントを「入力」し、データ・ベース化するシステムである。次年度に、その調査を実施し、精神保健福祉士(エキスパート)の評価(アセスメント)基準の論理を記録されたデータから推測するために使用される。以上のように、エキスパート・システムに組み込むプログラム開発を行うための、評価基準の広範な文献検索を終了し、精神保健福祉士が実際に行うアセスメントをデータ・ベース化する「入力」システムの開発を行い、次のエキスパートによる実地調査の準備段階を今年度に終了することができた。平成14年度の文献情報分析を踏まえ、平成15年度は文献分析並びに必要な文献収集により明確化にしてきた精神障害者の自立支援に関する評価項目の最終的な特定を行った。調査対象者の属性(年齢、性別、診断名等)、「自立生活能力」「機能の全体的評定尺度(GAF)」等から、その項目が最終的に構成された。そして、自立支援評価基準に関するデータ入力項目のコンピュータソフト言語を使用して、研究開発業者と共同し、完成させる。自立支援専門家が、その項目にそって入力を行うことにより、データが記録される。入力されたデータに基づいて、双方向的にデータ分析結果を自立支援専門家は確認することができる。そこで、16年度に行う最終の専門家(エキスパート)調査への準備を整えた。最終調査方法としては、開発された入力コンピュータシステムを、精神病院等において実際に精神障害者の自立支援相談業務を行っている専門家(エキスパート)が使用し、自立支援を行った結果はモニター・システムに記録される。調査対象者の属性、「自立生活能力」「機能の全体的評価尺度(GAF)」の結果と、「入院者」と「通院者」、「就労者」と「未就労者」等との比較分析を行う。「入院」と「通院」は「自立生活能力」「GAF」において、有意な差がみられるか、「就労者」と「未就労者」に、有意差があるか等を分析する。 | KAKENHI-PROJECT-14310096 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14310096 |
精神保健福祉士の自立支援評価基準に関するエキスパートシステムの研究 | 次の段階として、分析過程とは反対の過程により、先ず「自立生活能力」「GAF」等の結果から、「入院」「通院」、あるいは、「就労支援」「就労準備」等の支援計画を予測することが可能となると考えられる。自立支援専門家の"自立支援ロジック"を読み取り、その"ロジック"をシステムに組み込み、エキスパートシステムを最終的に完成する。最後に、その「自立支援」計画を立てるために、開発したコンピュータ・エキスパートシステムが有効であるか、を検証する。来年度は研究完成年であり、以上の研究結果を報告書にまとめる。研究目的と研究実施概要として、第一は精神障害者の社会復帰を担う精神保健福祉業務におけるケアプラン作成の効率化と質の向上に寄与することであった。精神科ソーシャルワーカーである精神保健福祉士が作成するケアプランは介護保険制度における介護サービス計画とともに、今後の精神障害者の社会復帰には重要な位置付けとなる。精神保健福祉士のケアプラン作成業務については、現在発展している段階であり、ケアプランをいかに作成するかといったサービス計画過程と、その評価基準に関する研究を行った。第二として、精神保健福祉士のケアプラン作成のコンピュータ・エキスパート化を試みた。コンピュータ・エキスパートシステムは、わが国のみならず諸外国において、さまざまな領域で開発が進んでいる。精神科ソーシャルワークの領域での研究が必要であると考えた。本研究では、精神保健福祉士の作成するケア必要度に基づくケアプラン作成をコンピュータソフト化し、エキスパートシステムとして開発するための基礎研究を行った。第三として、精神科ソーシャルワーカー等の専門職により評価・計画・サービス提供のあり方に関して考察を行った。平成14年度、文献情報分析、現状分析を実施し、調査票案を作成した。平成15年度、14年度の文献情報分析を踏まえ、事前調査実施と本調査を行い、その現状分析に入り、総括的研究を行った。既収集の文献分析並びに必要な文献収集により明確になってきたデータ入力項目をコンピュータソフトとして開発した。平成16年度、開発したデータ入力ソフトを利用し、精神病院等において実際に精神障害者の相談援助業務を行っている専門家に対し、業務並びに使用理論、スキルに関する調査を実施した。その研究結果をもとに本研究報告書をまとめ、提出した。 | KAKENHI-PROJECT-14310096 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14310096 |
「手術誘引」の研究 | 2018年8月7日(火)11日(土)、北海道釧路市の支援の元、釧路市観光国際交流センター(www.kushiro-kankou.or.jp/kkc/)にて第5回釧路生命倫理フォーラムが開催されたが、その一部として7日(火)、村岡科研「高度先端医療のELSI」及び粟屋科研「手術誘引の研究」の合同研究会「先端医療と手術誘引]が開催された。具体的には、山下登教授(岡山大学)が「先端医療における医師の説明義務ー日独判例の比較を通してー」と題する報告を行い、村岡潔教授(佛教大学)が「医師の裁量と患者の自己決定」と題する報告を行った。また、打出喜義教授(小松短期大学)が「産婦人科医の視点から手術誘引の動機と目的を分析する」と題する報告を行い、宍戸圭介教授(岡山商科大学)が「手術誘引に関するケース報告」と題する報告を行った。粟屋(岡山商科大学)は「手術誘引研究ー札幌医大心臓移植事件を契機としてー」と題する報告を行った。以下、とくに粟屋報告について記す。広く知られている札幌医大心臓移植(和田移植)事件は、今となっては手術誘引の格好の研究材料である。共同通信による詳細な資料によれば、同事件ではドナー家族に対して心臓摘出手術の誘引があり、レシピエント家族に対しては心臓移植手術の誘引があったと推測される。なお、粟屋は和田教授と一度話したことがあるが、自分には一点の曇りもないとのご主張であった。2019年度はこの札幌医大心臓移植事件を集中的に調べる。また、2017年度に第34回西日本生命倫理研究会で取り上げた「慈恵会医科大学青戸病院事件」や粟屋科研2017年度第2回研究会で取り上げた「熊本大学医学部付属病院事件」との比較も行う。2017年4月、研究代表者が勤務校で学部長に就任した(2019年3月終了)ため、研究のための時間があまり取れなくなり、少し遅れ気味である。2019年度は科研最終年度であるので総まとめを行う。具体的には、「研究実績の概要」で述べたように、札幌医大心臓移植事件を集中的に調べ、さらには、「慈恵会医科大学青戸病院事件」や「熊本大学医学部付属病院事件」との比較も行う。ほか、国内のみならず外国の研究者も招聘してシンポジウム等を開催する。近時、我が国でも過剰医療(過剰検査、過剰診断、過剰投薬、過剰手術など)が問題となりつつあるが、本研究はこの過剰医療、とりわけ過剰手術と連動する(しやすい)「手術誘引」(=手術への意図的な誘い込み)の問題を総合的かつ分析的に研究するものである。具体的には、法的に問題のある(ありそうな)手術誘引のみならず、法的に問題はなくても倫理的に問題のある(ありそうな)手術誘引のケースを裁判例、メディア情報、日常事例などから収集、類型化し、それらへの有効、適切な対応策(解決策)を発案しようとするものである。上記のような基本的視点のもとに、今年度は2回の科研研究会を開催した。また、生命倫理関係の研究会でも報告した。そして、これらによってきわめて重要な気づきを得た。以下、それらを具体的に示す。第1回科研研究会(釧路生命倫理フォーラムの一部、北海道釧路市、2017年8月7日)では手術誘因研究の全体像を確認し、問題点を整理するなどした(粟屋報告及び宍戸報告)。第2回科研研究会(山口県宇部市、2018年3月30日)では「熊本大学医学部付属病院事件」を取り上げ(粟屋報告)、集中的に討議した。ほか、第34回西日本生命倫理研究会(福岡市、2018年3月17日)で「慈恵会医科大学青戸病院事件」を取り上げ(粟屋報告)、参加者とともに集中的に討議した。これらの研究会(及び、それらに基づく各自の個別の思索)を通じての最大の発見(気づき)は、手術誘因自体の歴史は長いが、その全体像はまったく明らかではない(明らかにされていない)ということであった。もう一点、医学(系)研究一般への誘因、とりわけ、手術を含む臨床研究への誘因との比較をしない限り全体像を明らかにすることは難しいという事実も、明らかになった。2018年度はこれらの点を踏まえながら鋭意、研究を進める。2017年4月、研究代表者が勤務校で学部長に就任したため、研究のための時間があまり取れなくなり、少し遅れ気味である。2018年8月7日(火)11日(土)、北海道釧路市の支援の元、釧路市観光国際交流センター(www.kushiro-kankou.or.jp/kkc/)にて第5回釧路生命倫理フォーラムが開催されたが、その一部として7日(火)、村岡科研「高度先端医療のELSI」及び粟屋科研「手術誘引の研究」の合同研究会「先端医療と手術誘引]が開催された。具体的には、山下登教授(岡山大学)が「先端医療における医師の説明義務ー日独判例の比較を通してー」と題する報告を行い、村岡潔教授(佛教大学)が「医師の裁量と患者の自己決定」と題する報告を行った。また、打出喜義教授(小松短期大学)が「産婦人科医の視点から手術誘引の動機と目的を分析する」と題する報告を行い、宍戸圭介教授(岡山商科大学)が「手術誘引に関するケース報告」と題する報告を行った。 | KAKENHI-PROJECT-17K08939 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K08939 |
「手術誘引」の研究 | 粟屋(岡山商科大学)は「手術誘引研究ー札幌医大心臓移植事件を契機としてー」と題する報告を行った。以下、とくに粟屋報告について記す。広く知られている札幌医大心臓移植(和田移植)事件は、今となっては手術誘引の格好の研究材料である。共同通信による詳細な資料によれば、同事件ではドナー家族に対して心臓摘出手術の誘引があり、レシピエント家族に対しては心臓移植手術の誘引があったと推測される。なお、粟屋は和田教授と一度話したことがあるが、自分には一点の曇りもないとのご主張であった。2019年度はこの札幌医大心臓移植事件を集中的に調べる。また、2017年度に第34回西日本生命倫理研究会で取り上げた「慈恵会医科大学青戸病院事件」や粟屋科研2017年度第2回研究会で取り上げた「熊本大学医学部付属病院事件」との比較も行う。2017年4月、研究代表者が勤務校で学部長に就任した(2019年3月終了)ため、研究のための時間があまり取れなくなり、少し遅れ気味である。今年度は、昨年度の遅れを取り戻し、さらなる進展を期す。引き続き、資料収集や分析等を行う。なお、手術を含む臨床研究への誘因との比較も行う。2019年度は科研最終年度であるので総まとめを行う。具体的には、「研究実績の概要」で述べたように、札幌医大心臓移植事件を集中的に調べ、さらには、「慈恵会医科大学青戸病院事件」や「熊本大学医学部付属病院事件」との比較も行う。ほか、国内のみならず外国の研究者も招聘してシンポジウム等を開催する。分担者である村岡潔氏(佛教大学教授)が事情により、使用しなかったため。当該額は2018年度に同氏によって使用される予定である。村岡教授(佛教大学)及び中塚教授(岡山大学)につき、計画通りに研究が進まず、未使用額が発生した。2019年度には計画通り執行する。 | KAKENHI-PROJECT-17K08939 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K08939 |
Neurological mutantsによる脳神経系機能とその疾患に関する研究 | 本総合研究の意図するところは最近の遺伝子レベルの研究技術の進歩と相まっていまや医学生物学の中核的分野となるであろうことが期待されているが、班全体としては厚生省の「難治疾患モデル動物の調査研」班(代表者:吉田孝人)との密接な連携のもとに各々の目的達成に努めると共に、日本疾患モデル動物研究会にたいしては総会における公開発表に参加する等によって組織の強化と発展に盡力した。個々の研究については、先ず寺嶋と御子柴は共同でGoに対する抗体を用いて正常マウスと各種ミュータントマウスの小脳の細胞構築を調べた。その結果、プルキンI細胞を欠損するナーバスマウスの小脳分子層にも均一で強いGo免疫陽性物質があり、Go蛋白はプルキンI細胞以外の細胞成分に局在する。また顆粒細胞の軸索終末に局在すると考えられた。さらにリーラーの分子層は正常の神経回路を保持していると思われた。山口は食虫目スンクスをモデルとしてセロトニンニューロンに加令変化のあることをみた。加藤はRollingマウスナゴヤについて線状体から入力を受ける淡蒼球ニューロン活動が電気生理学的に生化学的所見と合致すると思われる所見を得た。野口は先天的にPRL分泌に障害をもつdw litマウスに加えてhytマウスでもPRL分泌に障害のあることを明らかにした。柏俣はGunnラットの小脳発育障害に対する錫プロトポルフィリンの予防効果について検討し遊離ビリルビンの関与のないことを明らかにした。竹下は、jimpyマウスの脳ミクロソームを種々の分画に分離することからjimpyにミエリンを含む分画を欠くことを実証した。衛藤はTwitcherマウスについて脳血液関門がリボゾームのみならずライボゾームも通過することを認めた。北河はNieman-PcokマウスにDMSOを投与して寿命の延長することをみた。辻はCroマウスが小胞体分画中の47000蛋白が欠失していることを見出した。この蛋白の生理機能について目下検討中である。61年度は研究組織の結成以来間がないので成果は充分ではないが、班員は個々の目的にそいアプローチを進めている。即ち寺島はReelerマウスの大脳皮質の出力系入力系を明らかにしつつあり、加藤はRolling mouse Nagoyaの障害について、大脳基底核について、グルコース代謝の低下を検索している。山口もRolling Tottering等についてシナプトゾームの【Ca^(++)】のとりこみを調べ神経伝達のひき金について研究を進めている。御子柴らは小脳異常マウスについて各種アミノ酸含量、たんぱくパターン,神経伝達物質等のパターン変化を追求している。野口はdw,lit,hyt等成長ホルモン,甲状腺ホルモン等の欠失動物を用いてミエリン形成とオリゴデンドログリアの分化に関連すると思われる液性因子を追求している。柏俣はjjラット小脳で特異的に減少する分子量25万たんぱくを精製しその性質を調べた。竹下はjimpyマウスの長鎖脂肪酸伸長酵素系の異常を解析しているが、4段階反応のうち各種のStepにおける異常を明らかにすべく研究を進めている。衛藤はTwitcherマウスについて酵素補充療法としてリボゾーム法を用い、包理酵素やその摂取の動態を調べた。北川らもニーマンビック症モデルマウスについて骨髄移植等による臓器脂質あるいはスフィンゴミエリナーセ活性の改良をみた。辻はベスタチンフォルフェニシノール等のプロテアーセ特に膜局在性の酵素阻害剤が筋ジストロフィー症の発症抑制を見出し、その機作を知るためにdyマウスCNSミエリン分画中のセリンプロテアーゼ,【Ca^(++)】依存性中性プロテアーセの変化を追求した。総じて本研究組織の結成に基づき分担者個々の研究は相互の情報交換と助言が相まってかなりの進歩をみることができた。モデル動物の中で数多く且重要なneurological mutantsのこんごの研究は遺伝子レベルの研究へと進み、殆んど未知の世界である脳神経機能を解析してゆく大きなアプローチとなることを期待している。疾患モデル動物は医学研究の中でも成人病,がん,免疫患,脳神経系異常疾患その他難治性疾患の解明にとって現在極めて大きな役割を果たしているが,こんごますます必要性が高まり,まさに医学研究発展の鍵であると云って差し支えないものである.日本のこの領域の研究は従来欧米のそれに比べて何ら遜色なく高い水準にあるが,とくにKKNODマウスやSHRラットの如く有用性の高いものがわが国で発見されており,現在も続々と興味あるものが発見され,これらの医学への応用によって日本独自のすぐれた研究が発展しつつある.脳神経系の機能とその異常疾患の研究は中でも疾患モデル動物にまつ処多いのであるが,幸いにもわれわれはマウスラットに於てそれらの異常突然変異体を数多く古くから知っており,また現在も次々に新しいものが見出されている.本研究班はこのような実験研究材料の宝を利用し従来からもそれぞれ著るしい成果をあげている国内の研究者が集まり,相互に情報交換を行うことによって各自の研究を促進させると共に後続の研究者の導入をはかり,わが国におけるこの領域の研究について飛躍発展を期待するべく編成された. | KAKENHI-PROJECT-61304060 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61304060 |
Neurological mutantsによる脳神経系機能とその疾患に関する研究 | その結果,本研究班は中枢神経系の構築の機構やその異常にもとずく各種疾患の成因を次々解明することができ,またそれらにもとずく治療の方法等の開発も進み,格段の成果をあげることができた. 62年度中に発表された成果については以下にリストアップした如くである.また本研究班は本年度で2ヶ年を経過したが,この間日本疾患モデル動物研究会や厚生省の難治疾患モデル動物調査研究グループとも緊密な連結をはかり,後続の研究者の拡大も所期の目的通りに達成されつつあると考えている.残されたあと1ヶ年の研究期間を最大限に活かして医学研究の中核領域としての発展に対する責務を完逐したいと願っている.本総合研究の意図するところは最近の遺伝子レベルの研究技術の進歩と相まっていまや医学生物学の中核的分野となるであろうことが期待されているが、班全体としては厚生省の「難治疾患モデル動物の調査研」班(代表者:吉田孝人)との密接な連携のもとに各々の目的達成に努めると共に、日本疾患モデル動物研究会にたいしては総会における公開発表に参加する等によって組織の強化と発展に盡力した。個々の研究については、先ず寺嶋と御子柴は共同でGoに対する抗体を用いて正常マウスと各種ミュータントマウスの小脳の細胞構築を調べた。その結果、プルキンI細胞を欠損するナーバスマウスの小脳分子層にも均一で強いGo免疫陽性物質があり、Go蛋白はプルキンI細胞以外の細胞成分に局在する。また顆粒細胞の軸索終末に局在すると考えられた。さらにリーラーの分子層は正常の神経回路を保持していると思われた。山口は食虫目スンクスをモデルとしてセロトニンニューロンに加令変化のあることをみた。加藤はRollingマウスナゴヤについて線状体から入力を受ける淡蒼球ニューロン活動が電気生理学的に生化学的所見と合致すると思われる所見を得た。野口は先天的にPRL分泌に障害をもつdw litマウスに加えてhytマウスでもPRL分泌に障害のあることを明らかにした。柏俣はGunnラットの小脳発育障害に対する錫プロトポルフィリンの予防効果について検討し遊離ビリルビンの関与のないことを明らかにした。竹下は、jimpyマウスの脳ミクロソームを種々の分画に分離することからjimpyにミエリンを含む分画を欠くことを実証した。衛藤はTwitcherマウスについて脳血液関門がリボゾームのみならずライボゾームも通過することを認めた。北河はNieman-PcokマウスにDMSOを投与して寿命の延長することをみた。辻はCroマウスが小胞体分画中の47000蛋白が欠失していることを見出した。この蛋白の生理機能について目下検討中である。 | KAKENHI-PROJECT-61304060 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61304060 |
咀嚼時舌運動と食塊咽頭移送の関係の解明 | 本研究の目的は超音波診断装置を用いて咀嚼および嚥下時の舌運動の観察を行うと同時に嚥下内視鏡を用いて咽頭部における食塊移送の関連性を解明することであった.2018年度は過去2年間の研究成果を解析と一部追加実験を行い,本研究の総まとめを行った.まず初めに,摂食嚥下時の舌運動の観察記録を行い,その動態について検討するための研究を行った.本研究の被験者は10名の健常有歯顎者であった.超音波画像検査はBモードとMモードを用いて咀嚼から嚥下に至るまでの一連の舌運動を観察した.被験運動は自由咀嚼と自由嚥下を指示した.被験食品として咀嚼の訓練食品である咀嚼開始食品(プロセスリード,大塚製薬工場)を用いて,一定条件下での咀嚼時舌運動の超音波画像検査を用いた評価法を確立することが出来た.この結果から,咀嚼から嚥下の一連の動作において,嚥下時にはまず舌の挙上運動が認められること,その後,嚥下内視鏡の検査画面上でホワイトアウトが認められ,ホワイトアウトの終了,舌の挙上の解除が行われることが明らかとなった.咀嚼から嚥下に連続する場面において,舌の挙上運動は口腔と咽頭の遮断を示している.また,嚥下内視鏡検査で観察されるホワイトアウトは中咽頭部の収縮を示している.次に,検査法としての信頼性を確認するために,舌運動の超音波画像検査の読影における級内相関係数を用いて検討を行った.その結果,咀嚼および嚥下時のいずれにおいても,本検査法の検者間信頼性は高いことが示された.一方,当初の研究計画では可撤性義歯使用者についても詳細に比較検討する予定であったが,被験者数が十分集まらなかったこと,新しい検査法であることからその信頼性の検討が必要であったことなどから,可撤性義歯使用者についての検討は見送った.しかし,本研究によって摂食嚥下時の一連の舌運動について超音波画像検査の実用性が示された.本研究の目的は超音波診断装置を用いて咀嚼時舌運動の観察・記録を行うと同時に,嚥下内視鏡を用いて咽頭部における食塊移送の動態観察を行い,咀嚼時舌運動と食塊咽頭移送の関連性の解明である.平成28年度は,若年の健常有歯顎者における舌運動と食塊移送の分析を行った.対象は健常有歯顎者の男性9名と女性1名で,平均年齢は28.3歳であった.舌運動の観察はGEヘルスケアジャパン社製の超音波診断装置,LOGIQ Book XP Enhancedおよびマイクロリニア型プローブI739-RSを用いた.さらに,食塊の咽頭移送の観察にはオリンパス社製,嚥下内視鏡,ENF-P4,直径3.4 mmを用いた.各種計測機器を接続し,診断画面上で同時計測と記録を行った.診断画面上での同時計測には同期されたビデオタイマーを用いました.被験食品は大塚製薬工場社製,咀嚼訓練用食品,プロセスリードを用いた.咀嚼開始から初回の嚥下発生までの時間,咽頭流入時間,ホワイトアウト時間,嚥下時に舌が口蓋に接触している時間,咀嚼開始から食品をすべて食べ終えるまでの摂食時間をそれぞれ計測し,各検討項目の時間の長さの相関関係を統計学的に検討した.さらに,嚥下時の舌運動とホワイトアウトの発生順序を検討した.初回嚥下までの時間と摂食時間との間に正の相関,ホワイトアウト時間と咽頭流入時間の間に正の相関をそれぞれ認めた.また,すべての被験者において,ホワイトアウトよりも嚥下時舌運動が先行して観察された.さらに,1名の被験者を除いて,ホワイトアウトは舌が口蓋に接触するまでに観察された.加えて,すべての被験者で,ホワイトアウトの終了よりも遅れて,口蓋から舌が離れることが認められた.以上より,舌運動が嚥下時にまず発生し,その後,咽頭部の収縮が起こり,舌が挙上されるという一連の嚥下時の舌と咽頭部の運動が明らかとなった.現在のところ,本研究課題の遂行に当たって特に目立った問題はない.本研究の目的は超音波診断装置を用いて舌運動の観察を行うと同時に,嚥下内視鏡を用いて咽頭部における食塊移送の動態観察を行い,咀嚼時舌運動と食塊咽頭移送の関連性の解明である.平成29年度は,平成28年度で行った若年の健常有歯顎者における結果を解析し,その成果を95th General Session & Exhibition of IADRにて報告を行った.現在,被験食品としてプロセスリードを用いて,その舌運動の計測を行うにあたり,その計測の信頼性を確認するための追加実験を行っている.その結果,舌背,オトガイ舌筋およびオトガイ | KAKENHI-PROJECT-16K20525 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K20525 |
咀嚼時舌運動と食塊咽頭移送の関係の解明 | 舌骨筋において,各計測項目の点推定値は咀嚼時と嚥下時がそれぞれ,顎下部皮膚表面から舌背までの距離が56.4 mm,65.9 mm,オトガイ舌筋の高径が36.8 mm,43.5 mm,オトガイ舌骨筋の高径が8.8 mm,11.7 mmであった.また,各測定の検者間信頼性ICC(2,3)は0.8840.988の範囲内であった.よって,超音波画像検査を用いて摂食中の舌をリアルタイムに観察することで,舌背だけでなく,オトガイ舌筋およびオトガイ舌骨筋も観察できることが示された.また,それらの計測の検者間信頼性は高いことが示された.本追加実験の成果発表は96th General Session & Exhibition of IADRおよび第24回日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会にて発表予定である.さらに,今年度は当初の計画通り数名の高齢者を対象とした同様の追加実験を行う予定である.追加実験のための高齢者の被験者の確保にやや時間を要している.その他は特に目立った問題はない.本研究の目的は超音波診断装置を用いて咀嚼および嚥下時の舌運動の観察を行うと同時に嚥下内視鏡を用いて咽頭部における食塊移送の関連性を解明することであった.2018年度は過去2年間の研究成果を解析と一部追加実験を行い,本研究の総まとめを行った.まず初めに,摂食嚥下時の舌運動の観察記録を行い,その動態について検討するための研究を行った.本研究の被験者は10名の健常有歯顎者であった.超音波画像検査はBモードとMモードを用いて咀嚼から嚥下に至るまでの一連の舌運動を観察した.被験運動は自由咀嚼と自由嚥下を指示した.被験食品として咀嚼の訓練食品である咀嚼開始食品(プロセスリード,大塚製薬工場)を用いて,一定条件下での咀嚼時舌運動の超音波画像検査を用いた評価法を確立することが出来た.この結果から,咀嚼から嚥下の一連の動作において,嚥下時にはまず舌の挙上運動が認められること,その後,嚥下内視鏡の検査画面上でホワイトアウトが認められ,ホワイトアウトの終了,舌の挙上の解除が行われることが明らかとなった.咀嚼から嚥下に連続する場面において,舌の挙上運動は口腔と咽頭の遮断を示している.また,嚥下内視鏡検査で観察されるホワイトアウトは中咽頭部の収縮を示している.次に,検査法としての信頼性を確認するために,舌運動の超音波画像検査の読影における級内相関係数を用いて検討を行った.その結果,咀嚼および嚥下時のいずれにおいても,本検査法の検者間信頼性は高いことが示された.一方,当初の研究計画では可撤性義歯使用者についても詳細に比較検討する予定であったが,被験者数が十分集まらなかったこと,新しい検査法であることからその信頼性の検討が必要であったことなどから,可撤性義歯使用者についての検討は見送った.しかし,本研究によって摂食嚥下時の一連の舌運動について超音波画像検査の実用性が示された.今後は被験対象者の範囲を広げ,同等の計測をより多く行っていく方針である.また,本年度の研究の結果,下顎運動の計測も必要であることが考えられたため,研究者が所属先研究機関で所有している下顎運動計測機器等も導入してさらに検討を加える予定である.引続き高齢者を対象として追加実験を行っていく予定である.下顎運動計測機器と超音波検査で下顎と舌の咀嚼運動を別に計測した実験系の結果も踏まえて,本研究の成果報告を本年度に行っていく予定である.研究成果発表は2017年3月開催の国際学会で発表を行ったが,費用請求は次年度以降としたため,旅費の請求に関して本年度は0円とした.また,その他の費用として30,000円を計上していたが使用することはなかった.(理由)研究成果発表を2017年3月に開催された95th General Session & Exhibition of IADR(国際学会)で発表したため,旅費として461,444円を計上した.また,開催国米国であったため,ESTA取得が必要であったため,その経費として20,600円を計上した.本年度の消耗品の追加購入はなかった.(使用計画)本研究の最終年度として,学会発表,論文投稿に必要な経費として使用予定である.研究成果発表を国際学会にて行った旅費として使用する.また,消耗品購入費として使用する. | KAKENHI-PROJECT-16K20525 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K20525 |
量子計算モデルとなる希薄ドープ半導体の超低温・高磁場での磁気共鳴法による研究 | 本研究では、希釈冷凍機を用いた超低温・高磁場での電子スピン共鳴(ESR)と核磁気共鳴(NMR)の二重磁気共鳴システムを用いて、動的核偏極(DNP)による核スピン「超偏極」状態を生み出すこととNMR検出感度を従来の二重磁気共鳴用共振器よりも向上させることが肝要である。昨年度はDNPにより最大50%の核偏極を得ることに成功し、新たな共振器デザインを2種類試作してそれぞれESR信号とNMR信号の検出に成功した。そこで本年度は、DNP偏極度をさらに向上させる取り組みとともに、実際に二重磁気共鳴測定に挑戦した。(1)昨年度開発したファブリペロー型共振器に平面型NMRコイルを付加したタイプでは、コイルと試料の間にはNMR用のラジオ波は透過しつつESR用のミリ波は反射するための金薄膜を置く必要がある。この薄膜の最適な厚みを探索した。電気抵抗測定により低温でのskin depthを見積るとともに、実際に異なる数種類の厚さの薄膜を用いてNMR測定を行った。ESR周波数でのskin depthと同じ程度の厚さが良いことがわかった。(2)DNPによる核スピン偏極を効率よく引き起こすために、より磁場均一度の高いマグネットを導入した。併せて、共振器の共振特性の良いところにうまく合わせる手順を見直した結果、核偏極度は80%を超えた。(3)上記の成果をもとに、超低温二重磁気共鳴測定を行った。電子-核二重共鳴(ENDOR)信号の測定に成功し、これによりNMR周波数を割り出した。このNMRコイルを含む回路の共振周波数をこの周波数に合わせておき、DNP状態を作り出したうえでone-shotのNMR測定を行ったところ、DNP-NMRを示唆する信号を得た。(4)抵抗検出型ESR装置を実現するための装置開発を行った。液体ヘリウム温度でESR信号の検出に成功した。二重磁気共鳴測定はほぼ成功しており、本研究にとって非常に重要な成果が得られた。しかしながら、EDMR測定装置開発は実際に極低温でESR測定できるところまですすんだが、EDMR信号検出にはいたっておらず、やや遅れている評価とした。この要因として、昨年度報告のとおり、希釈冷凍機の不具合(コールドリーク)が発生して修理が必要だったうえに、新たなマグネットを導入するために時間を要したことが挙げられる。EDMR測定装置の改善をはかる。そのためにミリ波強度がさらに強いものを入手する必要があるか検討する。また、電極の作成方法の改善については既に検討しており、着実に作業と試験をすすめる。また、DNP-NMR信号の検出の再現性を確かめる必要がある。本研究では、希釈冷凍機を用いた超低温・高磁場での電子スピン共鳴(ESR)と核磁気共鳴(NMR)の二重磁気共鳴システムを用いて、動的核偏極(DNP)による核スピン「超偏極」状態を生みだすことが肝要である。そこで本年は、DNPのための装置開発を主として行った。まず、希釈冷凍機システムに磁場掃引用の常伝導コイルを設置し、素早く磁場を変化させることができるようにした。これにより、リン希薄ドープシリコン試料を用いた超低温ミリ波ESR測定において最大50%の核偏極を得ることに成功した。並行して、NMR検出感度を既存の共振器よりも向上させるために新たなデザインの共振器を試作した。(1)ファブリペロー型共振器に平面型NMRコイルを付加したタイプ:NMRコイルの形状を最適化するため、線の太さやクリアランスといったパラメータを変化させてNMR信号検出感度および最適パルス条件に必要なRF電力を見積もった。NMRコイルを入れた共振器を用いて、量子計算モデルとなる希薄ドープ半導体Si:Pを用いて希釈冷凍機においてESRおよびNMRの両方の信号検出に成功した。特に、ESR測定から、DNPによる核スピン超偏極状態が実現していることが確認された。(2)円筒型共振器を金属薄膜で形成したタイプ:円筒側面にスリットを入れることで利用したいTEモードのみで共振するように工夫した。共振特性を評価し十分に鋭い共振(高いQ値)を持つことがわかった。また、母材である樹脂の熱収縮にともなう共振周波数の温度依存性を室温から2Kまで測定した。最終的に、実際にESRおよびNMRの測定に挑戦し、それぞれの信号検出に成功した。また、抵抗検出型ESR測定(EDMR)を実現するための装置開発にも着手し、設計を開始した。これらの成果を論文、学会発表などで公表した。当初計画通りにあらたな共振器デザインを試作し、実際にESRおよびNMR測定に成功した。EDMR測定装置開発は設計のみの進捗であったが、十分に進展していると考えている。しかしながら、下述の通り、希釈冷凍機の不具合が修理できるかまだわからないため、具体的な装置開発作業は中断している。本研究では、希釈冷凍機を用いた超低温・高磁場での電子スピン共鳴(ESR)と核磁気共鳴(NMR)の二重磁気共鳴システムを用いて、動的核偏極(DNP)による核スピン「超偏極」状態を生み出すこととNMR検出感度を従来の二重磁気共鳴用共振器よりも向上させることが肝要である。昨年度はDNPにより最大50%の核偏極を得ることに成功し、新たな共振器デザインを2種類試作してそれぞれESR信号とNMR信号の検出に成功した。 | KAKENHI-PROJECT-17K05514 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K05514 |
量子計算モデルとなる希薄ドープ半導体の超低温・高磁場での磁気共鳴法による研究 | そこで本年度は、DNP偏極度をさらに向上させる取り組みとともに、実際に二重磁気共鳴測定に挑戦した。(1)昨年度開発したファブリペロー型共振器に平面型NMRコイルを付加したタイプでは、コイルと試料の間にはNMR用のラジオ波は透過しつつESR用のミリ波は反射するための金薄膜を置く必要がある。この薄膜の最適な厚みを探索した。電気抵抗測定により低温でのskin depthを見積るとともに、実際に異なる数種類の厚さの薄膜を用いてNMR測定を行った。ESR周波数でのskin depthと同じ程度の厚さが良いことがわかった。(2)DNPによる核スピン偏極を効率よく引き起こすために、より磁場均一度の高いマグネットを導入した。併せて、共振器の共振特性の良いところにうまく合わせる手順を見直した結果、核偏極度は80%を超えた。(3)上記の成果をもとに、超低温二重磁気共鳴測定を行った。電子-核二重共鳴(ENDOR)信号の測定に成功し、これによりNMR周波数を割り出した。このNMRコイルを含む回路の共振周波数をこの周波数に合わせておき、DNP状態を作り出したうえでone-shotのNMR測定を行ったところ、DNP-NMRを示唆する信号を得た。(4)抵抗検出型ESR装置を実現するための装置開発を行った。液体ヘリウム温度でESR信号の検出に成功した。二重磁気共鳴測定はほぼ成功しており、本研究にとって非常に重要な成果が得られた。しかしながら、EDMR測定装置開発は実際に極低温でESR測定できるところまですすんだが、EDMR信号検出にはいたっておらず、やや遅れている評価とした。この要因として、昨年度報告のとおり、希釈冷凍機の不具合(コールドリーク)が発生して修理が必要だったうえに、新たなマグネットを導入するために時間を要したことが挙げられる。研究の途中で希釈冷凍機に不具合が見つかったため、これを早急に修理しなくてはならないが、いわゆるコールドリークであるため、非常に困難な作業となっている。そのため、並行して、希釈冷凍機を使わない、液体ヘリウム4を用いた温度域で可能な実験および装置開発を先に行うことを検討する。共振器の製作評価と二重磁気共鳴測定装置としての評価、EDMR測定は可能であると考えている。EDMR測定装置の改善をはかる。そのためにミリ波強度がさらに強いものを入手する必要があるか検討する。また、電極の作成方法の改善については既に検討しており、着実に作業と試験をすすめる。また、DNP-NMR信号の検出の再現性を確かめる必要がある。当該年度は、希釈冷凍機の不具合発生に伴って実験計画に変更が生じたため、費用のかかる液体ヘリウム等の寒剤を用いた実験を次年度に行うこととし、一部繰り越しが生じた。使用計画:次年度には寒剤を用いた実験を多く行う計画である。それにともない、研究分担者が実験を集中的に行うための旅費を含めて、次年度に繰り越す。希釈冷凍機の不具合の修理や新しい磁場発生用マグネットの設置などのために液体ヘリウムを用いた実験ができない期間が生じたため、翌年度に一部の実験を延期したため、次年度使用額が生じた。次年度に多く実験を行い、主に寒剤代として使用する計画である。 | KAKENHI-PROJECT-17K05514 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K05514 |
金属結合性および共有結合性アモルファス物質の超高圧下での安定性と結晶への相変態 | 本研究経費の全交付期間中における主な研究成果は以下のとおりである.1.内部欠陥の少ない良質準結晶及び近似結晶は70ギガパスカルまでの超高圧下まで安定であることが明らかとなった.アルミニウム-リチウム-銅系の準結晶や近似結晶でのみ報告された圧力誘起によるアモルファス相への変態は,リチウムの著しい欠損によってアモルファス相よりも密度が低下したためと考えられる.すなわち,密度が低い準結晶は高圧下で不安定となり安定な稠密結晶相へ変態するはずだが,"室温高圧"下では長距離拡散ができす,準安定的にアモルファス相へ変態したと解釈される.また,二次元準結晶と三次元準結晶の圧縮挙動は等方的であることが明らかとなった.高圧力誘起の準結晶内の歪みはフェイゾン歪みよりもフォノン歪みが支配的であることが明らかとなった.2.メカニカル・アロイングによって作成されたアモルファスセレンは,ヘリウム圧力媒体を用いた静水圧下では,約10ギガパスカルで六方晶と中間相の二相の結晶相へ圧力誘起相変態することが明らかとなった.さらに,約17ギガパスカルで中間相は単斜晶へ相変態することが明らかとなった.この結晶化の過程及び圧力は,結晶セレンや蒸着膜アモルファスセレンでの従来の報告とは異なり,常圧での非晶質相の局所構造が圧力誘起結晶化後の高圧結晶相の安定性にも影響を及ぼすことを示唆している.3.炭素一硼素一窒素系アモルファス物質及び多硼化物結晶の70ギガパスカルまでの超高圧下における安定性や圧縮挙動を明らかにした.4.ダイアモンドアンビルセルとYAGレーザー加熱を組み合わせた"高温超高圧"下での相安定性に関する研究が本研究の次のステップとして重要となる.本研究経費の全交付期間中における主な研究成果は以下のとおりである.1.内部欠陥の少ない良質準結晶及び近似結晶は70ギガパスカルまでの超高圧下まで安定であることが明らかとなった.アルミニウム-リチウム-銅系の準結晶や近似結晶でのみ報告された圧力誘起によるアモルファス相への変態は,リチウムの著しい欠損によってアモルファス相よりも密度が低下したためと考えられる.すなわち,密度が低い準結晶は高圧下で不安定となり安定な稠密結晶相へ変態するはずだが,"室温高圧"下では長距離拡散ができす,準安定的にアモルファス相へ変態したと解釈される.また,二次元準結晶と三次元準結晶の圧縮挙動は等方的であることが明らかとなった.高圧力誘起の準結晶内の歪みはフェイゾン歪みよりもフォノン歪みが支配的であることが明らかとなった.2.メカニカル・アロイングによって作成されたアモルファスセレンは,ヘリウム圧力媒体を用いた静水圧下では,約10ギガパスカルで六方晶と中間相の二相の結晶相へ圧力誘起相変態することが明らかとなった.さらに,約17ギガパスカルで中間相は単斜晶へ相変態することが明らかとなった.この結晶化の過程及び圧力は,結晶セレンや蒸着膜アモルファスセレンでの従来の報告とは異なり,常圧での非晶質相の局所構造が圧力誘起結晶化後の高圧結晶相の安定性にも影響を及ぼすことを示唆している.3.炭素一硼素一窒素系アモルファス物質及び多硼化物結晶の70ギガパスカルまでの超高圧下における安定性や圧縮挙動を明らかにした.4.ダイアモンドアンビルセルとYAGレーザー加熱を組み合わせた"高温超高圧"下での相安定性に関する研究が本研究の次のステップとして重要となる. | KAKENHI-PROJECT-11123206 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11123206 |
腎炎治療薬の標的分子の探索 | オレアノール酸骨格に糖鎖がついたGinsenoside Roの抗腎炎作用を担う標的分子を同定し、Ginsenoside Roが関与する抗腎炎作用の分子機構を明らかとすることにより、標的分子を明らかにすることが出来ると考えられた。Ginsenoside RoをBIAcoreのセンサー表面に固定化して、Ginsenoside Roと結合する分子を探索し、結合した分子を回収後に解析を試みた。BIAcoreセンサーグラムが示したように、腎臓および肝臓の細胞液には、Ginsenoside-Roに結合する画分が存在することが明らかとなった。しかし、Ginsenoside-Roに結合する分子の存在が示唆されたが、回収された蛋白質が微量のため充分な解析が出来なかった。Ginsenoside Roの糖鎖にリンカー化合物を導入しアフィニテイークロマトグラフィー用のゲルを作成した。炎症モデルとして四塩化炭素の投与による急性肝炎モデルを作成した。四塩化炭素の投与により肝炎を起こした組織抽出液をダンス・ホモジナイザーで軽く破壊し、遠心法により核成分を分画した。上清をさらにミクロソーム分画と上清に遠心分離した。各分画をGinsenoside Roアフィニティークロマトグラフィーに適用し、溶出条件を変えて結合する標的分子を粗精製した。粗精製液をポリアクリルアミド電気泳動後に銀染色してバンドを染めた結果、いずれのサンプルにも多数のバンドが認められた。今後、各バンドを分取してアミノ酸配列を同定し、既知の遺伝子・蛋白情報の検索を行う予定である。(研究の目的)近年、腎不全のため透析へと移行する患者は年々増加傾向にあり,慢性糸球体腎炎から腎不全へと至る過程を防ぐ強力な薬の開発が望まれている。ヒトの慢性腎不全に至る大きな原因のひとつである腎炎のうちで最も頻度が高いのがメサンギウム増殖性腎炎である。メサンギウム増殖性腎炎モデルである抗Thy1腎炎ラットに、オレアノール酸系化合物を経口投与すると、尿蛋白排泄低下作用、血漿尿素窒素と血漿クレアチニンの低下作用、糸球体細胞数増加の抑制作用などの抗腎炎作用が観察された。本研究では、オレアノール酸系化合物の中から精製されたGinsenoside Roを中心に抗腎炎作用を担う標的分子を同定し、抗腎炎作用の分子機構を明らかとすることを目的とする。(本年度の研究実施結果)(2)BIAcoreを用いて結合する分子を探索する。オレアノール酸骨格に糖鎖のついたGinsenoside Roの糖鎖を過ヨウ素酸でアルデヒド化し、アルデヒドカプリングを行いセンサーチップのカルボキシル基に固定化する。この固定化リガンドと腎炎組織抽出画分、肝組織抽出画分、各画分の核抽出液の特異的相互作用をBIAcoreにて検出したところ、各画分にセンサーチップと結合する物質を認めた。検出後センサーチップ表面に残された反応物を回収した。オレアノール酸骨格に糖鎖がついたGinsenoside Roの抗腎炎作用を担う標的分子を同定し、Ginsenoside Roが関与する抗腎炎作用の分子機構を明らかとすることにより、標的分子を明らかにすることが出来ると考えられた。Ginsenoside RoをBIAcoreのセンサー表面に固定化して、Ginsenoside Roと結合する分子を探索し、結合した分子を回収後に解析を試みた。BIAcoreセンサーグラムが示したように、腎臓および肝臓の細胞液には、Ginsenoside-Roに結合する画分が存在することが明らかとなった。しかし、Ginsenoside-Roに結合する分子の存在が示唆されたが、回収された蛋白質が微量のため充分な解析が出来なかった。Ginsenoside Roの糖鎖にリンカー化合物を導入しアフィニテイークロマトグラフィー用のゲルを作成した。炎症モデルとして四塩化炭素の投与による急性肝炎モデルを作成した。四塩化炭素の投与により肝炎を起こした組織抽出液をダンス・ホモジナイザーで軽く破壊し、遠心法により核成分を分画した。上清をさらにミクロソーム分画と上清に遠心分離した。各分画をGinsenoside Roアフィニティークロマトグラフィーに適用し、溶出条件を変えて結合する標的分子を粗精製した。粗精製液をポリアクリルアミド電気泳動後に銀染色してバンドを染めた結果、いずれのサンプルにも多数のバンドが認められた。今後、各バンドを分取してアミノ酸配列を同定し、既知の遺伝子・蛋白情報の検索を行う予定である。ヒトの慢性腎不全に至る大きな原因のひとつである腎炎のうちで最も頻度が高いのがメサンギウム増殖性腎炎である。メサンギウム増殖性腎炎モデルである抗Thy1腎炎ラットに、Ginsenoside Roを皮下投与すると、尿蛋白排泄低下作用、血漿尿素窒素と血漿クレアチニンの低下傾向などの抗腎炎作用が観察された。本研究では、Ginsenoside Roを中心に抗炎症作用を担う標的分子を同定し、抗炎症作用の分子機構を明らかとすることを目的とする。(1)Ginsenoside Roの糖鎖を過ヨウ素酸でアルデヒド化し、アルデヒドカプリングを行いセンサーチップのカルボキシル基に固定化する。この固定化リガンドと腎炎組織抽出画分の特異的相互作用をBIAcoreにて検出した。検出後センサーチップ表面に残された反応物を回収し同定を試みた。BIAcoreにて回収できるサンプル量が微小のため充分な解析には至らなかった。 | KAKENHI-PROJECT-12557233 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12557233 |
腎炎治療薬の標的分子の探索 | (2)Ginsenoside Roが腎炎のみならず肝炎にも有効なことから、標的分子の精製と探索にサンプル量を見込める肝炎モデルを作製した。Ginsenoside ROの糖鎖にリンカー化合物を導入しアフィニティークロマトグラフィー用のゲルを作成する。四塩化炭素肝炎ラットの肝織抽出液をGinsenoside Roアフィニティークロマトグラフイーに適用し、溶出条件を変えて結合する標的分子を粗精製中である。粗精製液をポリアクリルアミド2次元電気泳動法にて分画後、TOF-MASにて解析し、各分画のアミノ酸配列を同定し、遺伝子のクローニングを行う予定である。Ginsenoside Roが腎炎のみならず肝炎にも有効なことから、標的分子の精製と探索にサンプル量を見込める肝炎モデルを作製した。Ginsenoside Roの糖鎖にリンカー化合物を導入しアフィニティークロマトグラフィー用のゲルを作成した。四塩化炭素肝炎ラットの肝織抽出液を核画分、細胞質画分とミクロソーム画分に分け、Ginsenoside Roアフィニティークロマトグラフィーに適用した。充分な洗浄後に、Ginsenoside Roを30mg/ml含む緩衝液で特異性の高い画分の溶出を行い、さらに溶出条件を変えて酸性領域と結合する標的分子を溶出し、最後に0.8モルの食塩を含む緩衝液で溶出した。その後、トリス緩衝液にて透析後に凍結乾燥後した。粗精製液をポリアクリルアミド電気泳動法にて分画後、銀染色を行い特異的bandの検出を行なった。各画分に複数のバンドを検出した。Ginsenoside Roで溶出した核画分からは低分子量のバンドを4本検出し、細胞質画分からは多数の非特異的なバンドが検出された。今後、2次元電気泳動にてさらなる解析を行い、TOF-MASにて解析あるいは各分画のアミノ酸配列を同定し、既知のデータベース蛋白質構造と比較検討する。 | KAKENHI-PROJECT-12557233 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12557233 |
新型ヘルペスウイルスの再活性化と膠原病の皮膚病変 | 私どもは、HHV-6の持続感染により膠原病の皮膚病変が惹起あるいは修飾されると考え、そのメカニズムについて明らかにするためのモデルの作製を試みた。持続感染系のモデルとしてヒトリンパ球系細胞株JJHAN,MT-4についてそれぞれHHV-6A(U1102株)、HHV-6B(Z29株)を感染させ、長期継代培養を行った細胞を、HHV-6特異的プライマーを用いてRT-PCR法でHHV-6遺伝子発現を、感染様式をHHV-6特異的単クローナル抗体を用いた酵素抗体法で行い、一部の細胞に持続感染しており、JJHANにU1102株を感染させた場合よりMT-4細胞にZ29株を感染させた場合の方が感染細胞の比率が高いことが示された。感染細胞の比率が高かったHHV-6B(Z29)感染MT-4細胞について、細胞株の性状をDNAマイクロアレイ法で非感染MT-4細胞と比較することによりスクリーニングし、最もup regulationされたIP-10遺伝子についてさらに検討を行った。IP-10遺伝子発現を半定量RT-PCR法で、また培養上清中のIP-10をELISA法で定量を行った。HHV-6持続感染MT-4細胞は非感染細胞と比較して、産生が増加していることが示された。IP-10はCXCサブファミリーに属するケモカインで、活性化T細胞に発現する遺伝子として同定されたサイトカインである。また、IP-10は、ヒトの生体内ではPPDによる遅延型アレルギー反応をきたした皮膚局所の表皮および真皮で発現が確認され、INF-γの局所投与でも同様な反応を示すとされている。膠原病の病態形成においては、Th1/Th2サイトカインバランスはINF-γを含むTh1支配的な方向に傾いていることが示唆されており、このようなHHV-6持続感染細胞によるIP-10産生の増強が皮膚症状の発現ないし増悪に影響を与えていることが考えられた。私どもは、HHV-6の持続感染により膠原病の皮膚病変が惹起あるいは修飾されると考え、そのメカニズムについて明らかにするためのモデルの作製を試みた。持続感染系のモデルとしてヒトリンパ球系細胞株JJHAN,MT-4についてそれぞれHHV-6A(U1102株)、HHV-6B(Z29株)を感染させ、長期継代培養を行った細胞を、HHV-6特異的プライマーを用いてRT-PCR法でHHV-6遺伝子発現を、感染様式をHHV-6特異的単クローナル抗体を用いた酵素抗体法で行い、一部の細胞に持続感染しており、JJHANにU1102株を感染させた場合よりMT-4細胞にZ29株を感染させた場合の方が感染細胞の比率が高いことが示された。感染細胞の比率が高かったHHV-6B(Z29)感染MT-4細胞について、細胞株の性状をDNAマイクロアレイ法で非感染MT-4細胞と比較することによりスクリーニングし、最もup regulationされたIP-10遺伝子についてさらに検討を行った。IP-10遺伝子発現を半定量RT-PCR法で、また培養上清中のIP-10をELISA法で定量を行った。HHV-6持続感染MT-4細胞は非感染細胞と比較して、産生が増加していることが示された。IP-10はCXCサブファミリーに属するケモカインで、活性化T細胞に発現する遺伝子として同定されたサイトカインである。また、IP-10は、ヒトの生体内ではPPDによる遅延型アレルギー反応をきたした皮膚局所の表皮および真皮で発現が確認され、INF-γの局所投与でも同様な反応を示すとされている。膠原病の病態形成においては、Th1/Th2サイトカインバランスはINF-γを含むTh1支配的な方向に傾いていることが示唆されており、このようなHHV-6持続感染細胞によるIP-10産生の増強が皮膚症状の発現ないし増悪に影響を与えていることが考えられた。新型ヘルペスウイルスの再活性化が、皮膚にどのような影響を及ぼすかを明かにすることを目的とし、今年度は、次の2点を中心に研究を行った。1)膠原病患者末梢血からのHHV-6,7の検出:主にSLE・MCTD、皮膚筋炎患者について検討を行ったが、nested-PCR法での高感度の方法でも、HHV-6,7が検出された患者はいなかった。症例数が少ないため、さらに追加して検討している。2)ウイルスの皮膚細胞に及ぼす影響:1の結果、膠原病患者の末梢血でのウイルスの増加を認めなかったことから、2つの可能性を考えた。1つは、末梢血にウイルスが増加するのではなく、皮膚細胞(ケラチノサイト、線維芽細胞等)への感染の影響の可能性である。正常皮膚ケラチノサイト、線維芽細胞にHHV-6A,6Bをin vitroで感染させ、RT-PCR法でearly geneとlate geneの発現をRT-PCR法で検討し、early geneの発現はいずれの細胞でも認めなかったが、late geneはケラチノサイト、線維芽細胞にHHV-6Aを感染させると発現がみられ、さらに、これらの細胞ではapoptosis関連遺伝子のFas, Fas-Lの発現を増強した。このことから、膠原病の皮膚病変へのHHV-6の関与の可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-13672438 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13672438 |
新型ヘルペスウイルスの再活性化と膠原病の皮膚病変 | 他の可能性として、これらのウイルスの感染した細胞が皮膚に局在して存在し、細胞の直接的あるいはサイトカイン等を介する間接的な影響を考え、皮膚由来A431細胞とMT-4細胞、JJhan細胞にそれぞれZ29株(HHV-6B), U1102株(HHV-6A)を感染させたものを、フィルターを介して混合培養しA431細胞での膠原病の自己抗体であるSSA, SSBおよびFas, Fas-Lについて培養3日後にm-RNA発現を検討したが、変化は認めなかった。さらに、検討時期、メッセージを変えて検討している。新型ヘルペスウイルスの再活性化が、皮膚にどのような影響を及ぼすかを明かにすることを目的とし、今年度は、主にウイルスの皮膚細胞に及ぼす影響について検討を行った。(1)HHV-6持続感染モデルの作製:HHV-6、Z29株をMT-4細胞に感染させた後長期に培養を行った。約6ヶ月間の培養の後、HHV-6 early geneとlate geneの発現をRT-PCR法で検討し、両者ともに発現しており、HHV-6、Z29株がMT-4細胞に持続的に感染しているモデルを作製することができた。この感染モデル細胞について、マイクロアレイ法で非感染MT-4細胞とのサイトカインmRNA発現の変化を検討した結果、持続感染細胞では非感染細胞と比較してIL-1α、IL-18、IL-10R、IL-23α、IL-8等の発現が増強していることが判明した。(2)このHHV-6持続感染細胞から分泌されるサイトカインが皮膚ケラチノサイトへの影響を与えている可能性があるため、皮膚ケラチノサイト腫瘍であるA431細胞を用い、この持続感染細胞のA431細胞への影響について検討を行った。培養したA431細胞とHHV-6感染MT-4細胞を混合培養し24時間後、48時間後に細胞を採取しウエスタンブロット法とRT-PCR法で、蛋白発現、遺伝子発現の変化を非感染MT-4細胞をmockとして検討を行った。その結果、SSA(Ro)蛋白発現が混合培養後24時間後でmockと比較し、RT-PCRで検討した遺伝子発現では変化がなかったが、HHV-6持続感染細胞では増強していた。このことは、患者リンパ球へのHHV-6の持続感染および再活性化により、皮膚細胞のSSA(Ro)抗原発現が増強し、膠原病患者での皮膚病変の悪化あるいは疾患自体の増悪に関係している可能性が示された。その他、RT-PCR法で混合培養後のA431細胞について、SSB、Fas、Fas-L、IL-18、TNF-α、IFN-γ、Bcl-2、IL-1β、IL-4、IL-15、IL-1αについてmRNA発現の変化を検討したが、これらでは変化が認めなかった。さらに、ウエスタンブロット法での蛋白発現の変化およびノーザンブロット法によるmRNA変化の定量的を行っているところである。新型ヘルペスウイルスの再活性化が、膠原病の皮膚病変に及ぼす影響を明かにすることを目的とし、研究を行った。今年度は、昨年度報告したHHV-6持続感染モデル(HHV-6、Z29株をMT-4細胞に感染させ持続感染系)についてさらに検討を行った。マイクロアレイ法で非感染MT-4細胞とのmRNA発現の変化を検討した結果、非感染細胞と感染細胞で発現の最も大きな差を示したのはIP-10(interferon-gamma inducible protein 10)と呼ばれるケモカイン遺伝子であった。持続感染細胞と非持続細胞についで、7.5×10^5個/5mlに調整してRMPI 1640 | KAKENHI-PROJECT-13672438 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13672438 |
海洋生物由来抗腫瘍性物質の探索と開発 | 海綿、サンゴ、ホヤなどの海洋生物は、海洋という特殊な環境に生息し物理的防御機能をもたないことから、常に病原微生物の侵襲や他種生物による捕食に脅かされている。したがって、これらの海洋生物は陸上生物とは異なる代謝系をあるいは生体防御系を有すると考えられ、その産生成分には新奇な化学構造を有する抗腫瘍性物質の存在が期待される。本研究において、沖縄サンゴ礁域、伊豆半島、八丈島をはじめ日本各地沿岸で採集した海綿類、腔腸動物、ホヤ類、海藻、軟体動物、棘皮動物、海洋微生物など種々の海洋生物の試料について新規抗腫瘍性物質の探索を行った。抗腫瘍活性物質探索の予備スクリーニングとして、ウニおよびヒトデ受精卵卵割阻害効果や癌細胞増殖阻害効果をin vitroで迅速に検討し、有効と判定された物質はさらに実験腫瘍やヒト腫瘍細胞を用いてin vivoで検討している。その結果、多彩な化学構造を有する種々の新規抗腫瘍性物質:海綿類......テルペノイド(メタクロミン類、ペナステロール)、アルカロイド(プリアノシン類)、ペプチド(テオネラミドF);腔腸動物......ポリエーテル系(パリトキシン誘導体)、テルペノイド(アカリシゼニオリド類);ホヤ類......アルカロイド(エシディデミン);海藻類......テルペノイド(ディクチオラクトン類);軟体動物......マクロリド(ジヒドロハリコンドラミド類);テルペノイド(ラウリンテロール類)、糖タンパク;棘皮動物......トリテルペンオリゴ配糖体類;海洋微生物......ペプチド(シアノビリディン類)などを見出している。今後、顕著な活性を示す抗腫瘍性物質については、さらに作用ならびにその作用機作について詳細に調べるとともに、構造活性相関の観点から化学修飾および化学合成を検討する。また、引き続き海洋生物由来の新規抗腫瘍性物質の探索を継続する。海綿、サンゴ、ホヤなどの海洋生物は、海洋という特殊な環境に生息し物理的防御機能をもたないことから、常に病原微生物の侵襲や他種生物による捕食に脅かされている。したがって、これらの海洋生物は陸上生物とは異なる代謝系をあるいは生体防御系を有すると考えられ、その産生成分には新奇な化学構造を有する抗腫瘍性物質の存在が期待される。本研究において、沖縄サンゴ礁域、伊豆半島、八丈島をはじめ日本各地沿岸で採集した海綿類、腔腸動物、ホヤ類、海藻、軟体動物、棘皮動物、海洋微生物など種々の海洋生物の試料について新規抗腫瘍性物質の探索を行った。抗腫瘍活性物質探索の予備スクリーニングとして、ウニおよびヒトデ受精卵卵割阻害効果や癌細胞増殖阻害効果をin vitroで迅速に検討し、有効と判定された物質はさらに実験腫瘍やヒト腫瘍細胞を用いてin vivoで検討している。その結果、多彩な化学構造を有する種々の新規抗腫瘍性物質:海綿類......テルペノイド(メタクロミン類、ペナステロール)、アルカロイド(プリアノシン類)、ペプチド(テオネラミドF);腔腸動物......ポリエーテル系(パリトキシン誘導体)、テルペノイド(アカリシゼニオリド類);ホヤ類......アルカロイド(エシディデミン);海藻類......テルペノイド(ディクチオラクトン類);軟体動物......マクロリド(ジヒドロハリコンドラミド類);テルペノイド(ラウリンテロール類)、糖タンパク;棘皮動物......トリテルペンオリゴ配糖体類;海洋微生物......ペプチド(シアノビリディン類)などを見出している。今後、顕著な活性を示す抗腫瘍性物質については、さらに作用ならびにその作用機作について詳細に調べるとともに、構造活性相関の観点から化学修飾および化学合成を検討する。また、引き続き海洋生物由来の新規抗腫瘍性物質の探索を継続する。 | KAKENHI-PROJECT-63010043 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63010043 |
援助を求めない家庭に対する子ども家庭支援ネットワークの展開に関する研究 | 本研究は近年イングランドで取り組まれている多職種協働によるチーム・アプローチのプログラムに基づいて、地域に潜在化する「リスクがありながら援助を求めない家庭」に対応する方法をとりあげ、これを日本においても科学的根拠に基づき効果的に実施する方法を明らかにするものである。具体的には東京都こども家庭支援センターを対象に、アンケート調査を実施し、その実態を明らかにした。また援助を求めない家庭を支援する際のソーシャルワークスキルと効果的な要素・影響を及ぼす要因を明らかにするために、グループ・インタビューを実施した。子ども家庭支援センターは地域にネットワークを構築し、これを通して潜在的ニーズを早期にキャッチし、予防活動から虐待対応、親子再統合までの一貫した支援を可能とする地域づくりに取り組んでいる。この子ども家庭支援ネットワークを機能させるためのシステムやマネジメント・多職種協働・アウトリーチ等のソーシャルワークの取り組みについては、これまで検証されてこなかった。本研究の独自の視点は、地域にどのようなシステムをつくり、ネットワークに基づいたソーシャルワークの取り組みを展開すると、援助を求めない家庭にアクセスし、包括的な支援を行うことが可能になるかを明らかにしたところにある。地域に根ざした日常的・継続的なエンパワメントを基盤としながら、さらに多機関連携によりタイミングを創出して介入する課題解決型アプローとを統合化することができるネットワークの形成に関して、特に子どもと家庭に関わる地域関係機関・施設・社会資源間の合意をいかに形成するか、家庭にいかにアセスメントするか、家庭の潜在的なニーズキャッチと的確なアセスメントのための要素を抽出した。これによって、潜在的なニーズを持つ家庭にアクセスし、地域において子どもと家庭の双方を対象に早期から一貫した総合支援を行うことができる。本研究の目的は近年イングランドで取り組まれている多職種協働によるチーム・アプローチのプログラムに基づき、地域に潜在化する「リスクがありながら援助を求めない家庭」に対応する方法を検討することにある。方法として、(1)イングランドの研究者との意見交換、(2)有識者・実践者へのヒアリング、(3)ケース検討、を行った。結果は下記の通りである。住民に身近な市町村は、予防の観点から地域のすべての子どもと家庭を対象にホリスティックな支援システムを構築し、これによって潜在化したニーズをキャッチする。このためにはユニバーサルサービスの質向上と豊富なメニューの拡充が求められており、アウトリーチによって、援助を求めない家庭にも届くようなシステムが必要である。さらにケアは単独ではなく、関連機関・施設・社会資源と連携して実施する。特にネグレクトのように、「リスクがありながら援助を求めない家庭」に対応する際には、ソーシャルワーカーが一貫して全体を把握しマネジメントすることで、子どもが必要としていることをケア担当者に引き継ぐことができ、ステージが変化しても、それぞれの機関・施設が果たす役割を変化させながら、子どもが安心できる環境を確保することができる。市町村の現状をみると、要保護児童対策地域協議会等の虐待防止ネットワークの整備は進んでいるが、子育て支援等のネットワークとリンクしていない場合が多いことから、他領域とつながりにくく、限定された対症療法にしか活用できないものとなっている。関係機関間の共通認識をつくり、ネットワークを用いた積極的な介入を行う上での課題は、アセスメントの専門性の確保・向上、さらにケースによっては親も含めて援助プランを共有することである。本研究は近年イングランドで取り組まれている多職種協働によるチーム・アプローチのプログラムに基づいて、地域に潜在化する「リスクがありながら援助を求めない家庭」に対応する方法をとりあげ、これを日本においても科学的根拠に基づき効果的に実施する方法を明らかにするものである。具体的には東京都こども家庭支援センターを対象に、アンケート調査を実施し、その実態を明らかにした。また援助を求めない家庭を支援する際のソーシャルワークスキルと効果的な要素・影響を及ぼす要因を明らかにするために、グループ・インタビューを実施した。子ども家庭支援センターは地域にネットワークを構築し、これを通して潜在的ニーズを早期にキャッチし、予防活動から虐待対応、親子再統合までの一貫した支援を可能とする地域づくりに取り組んでいる。この子ども家庭支援ネットワークを機能させるためのシステムやマネジメント・多職種協働・アウトリーチ等のソーシャルワークの取り組みについては、これまで検証されてこなかった。本研究の独自の視点は、地域にどのようなシステムをつくり、ネットワークに基づいたソーシャルワークの取り組みを展開すると、援助を求めない家庭にアクセスし、包括的な支援を行うことが可能になるかを明らかにしたところにある。地域に根ざした日常的・継続的なエンパワメントを基盤としながら、さらに多機関連携によりタイミングを創出して介入する課題解決型アプローとを統合化することができるネットワークの形成に関して、特に子どもと家庭に関わる地域関係機関・施設・社会資源間の合意をいかに形成するか、家庭にいかにアセスメントするか、家庭の潜在的なニーズキャッチと的確なアセスメントのための要素を抽出した。これによって、潜在的なニーズを持つ家庭にアクセスし、地域において子どもと家庭の双方を対象に早期から一貫した総合支援を行うことができる。 | KAKENHI-PROJECT-20653035 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20653035 |
脂肪組織由来間質細胞群の細胞分画特性解析と肝修復再生療法の開発 | 本研究では、マウス非培養脂肪組織由来間質細胞群の細胞分画を解析し、その特性を検討した。また、マウス肝疾患モデルを用いて、肝疾患状態に対する効果を検討した。非培養脂肪組織由来間質細胞群には、約1020%のCD45陽性細胞が存在した。CD45陽性細胞は、表面抗原発現解析、遺伝子発現より、M2フェノタイプマクロファージ様の特性を有することを明らかとした。急性肝炎マウスに対する非培養脂肪由来間質細胞群、間質細胞群のCD45陽性細胞分画の投与による治療効果を確認した。非培養脂肪組織由来間質細胞群のCD45陽性細胞分画の炎症修飾能における重要性が示唆された。本研究は、マウスおよびヒト脂肪組織由来間質細胞群の細胞分画を分類し、各細胞分画における肝細胞への分化能、抗炎症効果、抗線維化効果を検討し、肝修復再生療法に有用な細胞分画を同定することを目的する。まず、マウス脂肪組織由来間質細胞についての検討を行った。C57BL/6Jマウス(10-12週齢、雄)の鼠径部より脂肪を採取し、Collagenase type I処理により間質細胞を分離し、非培養脂肪組織由来間質細胞群を得た。獲得した。非培養脂肪組織由来間質細胞群について、急性肝炎マウスモデルに対する治療効果を検討した。急性肝炎マウスには、C57Bl/6マウス(10-12週齢、雌)にConcanavalin A 300 μgを尾静脈投与して作成したマウスモデルを用いた。Concanavalin A投与後3時間後に、非培養マウス脂肪組織由来間質細胞を1x10^5個投与したマウスについて、Concanavalin A投与後24時間において血清を採取、血清AST、ALT、LDH活性を測定した。非培養マウス脂肪組織由来間質細胞を投与したマウスにおいて、細胞を投与しないマウスに比較して、血清AST、ALT、LDH活性は有意に低値を示した。マウス脂肪組織由来間質細胞群に含有される細胞分画について、表面抗原発現解析による分画群の解析を行った。間葉系幹細胞に関連する抗原CD105、CD44、CD90、CD73はそれぞれ15.4%、6.5%、40.3%、16.1%の細胞が発現、また、白血球全般に発現するCD45は14.3%、血管内皮細胞に発現するCD31は21.6%、未成熟血液細胞において発現するCD34は、11.4%の細胞に発現を認めた。次年度以降、表面抗原より分類される各細胞分画の特徴解析に関する基礎データが獲得された。本研究は、脂肪組織由来間質細胞群の細胞分画を分類し、各細胞分画の生物学的特性を解析し、肝疾患における肝修復再生療法に有用な細胞分画を同定することを目的とする。C57Bl/6JあるいはGFPトランスジェニックマウスの鼠径部皮下脂肪組織を採取し、コラゲナーゼtype Iにて酵素処理を行い、間質細胞群を獲得した。C57BL/6Jマウスの腹腔内にDimethylnitrosamineを2回/週、4週間投与したマウスへ、450000個の獲得した非培養脂肪組織由来間質細胞群を、経脾的に投与したマウスにおいて、ラクテック投与コントロールマウスと比較して、投与1日後、11日後の血清ALT、LDH活性値に差を認めず、脂肪組織由来間質細胞群投与の安全性を示した。投与後7日目の肝組織において、炎症細胞集簇部位にGFP陽性細胞の集積を認め、投与脂肪組織由来間質細胞群の炎症部位移行性が確認された。また、マウス脂肪組織由来間質細胞群のCD45陽性細胞とCD45陰性細胞をセルソーターにて分離し、RNAを抽出、DNAマイクロアレイにより遺伝子発現解析を行ったところ、発現遺伝子のheat mapにて両群が異なる発現プロファイルを示すことが示唆された。以上より、脂肪組織由来間質細胞群の肝内炎症部位への遊走性が示された。また、脂肪組織由来間質細胞群の中の白血球表面抗原を発現する細胞分画と発現しない細胞分画についての生物学的特徴の違いが存在する可能性が示された。非培養マウス脂肪組織由来間質細胞群が炎症部位に選択的に集簇することが、慢性肝疾患/肝線維化マウスモデルにて示され、肝疾患における炎症部位への影響があると考えれた。また、CD45陽性の汎白血球抗原を発現する細胞群が、CD45陰性の細胞分画とは異なる遺伝子発現プロファイルを示すことが明らかとなったことより、表面抗原発現の違う脂肪組織由来間質細胞群の細胞分画は、異なる特徴を有する可能性が示唆された。脂肪組織由来間質細胞群における、さまざまな分画の特性解析への基礎的知見が得られた。本研究は、脂肪組織由来間質細胞群の細胞分画を分類し、各細胞分画の生物学的特性を解析し、肝疾患に対する修復再生療法に重要な分画を解明することを目的としている。C57BL/6Jマウスの鼠径部皮下脂肪組織を採取、酵素処理を行い間質細胞を分離した。表面抗原解析では、CD45陽性細胞が1020%含有されていた。脂肪組織由来間質細胞群のCD45+細胞のうち、約50%がCD68を発現し、マクロファージ様発現型を示した。さらに、その90%がCD206を発現するM2 | KAKENHI-PROJECT-26460995 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26460995 |
脂肪組織由来間質細胞群の細胞分画特性解析と肝修復再生療法の開発 | フェノタイプマクロファージが示唆された。脾細胞および末梢血液細胞のCD45+細胞と比較して、脂肪組織由来間質細胞群のCD45+細胞では、Il1b、Tnf、Il23a、Cd80、Il6, Nos2, Il12a, Il12bのM1マクロファージ関連遺伝子の発現が低下し、CD206、CCl22、Ccl24のM2マクロファージ発現が上昇を示した。脂肪組織由来間質細胞群のCD45+細胞とCD45-細胞の遺伝子発現プロファイルをDNAマイクロアレイにて比較検討したところ、CD45+陽性細胞で2884遺伝子が発現上昇、3838遺伝子が発現減弱を示した。発現上昇した遺伝子は、免疫制御に、発現減弱した遺伝子は発生形成に関連を示した。また、脂肪組織由来間質細胞群のCD45+細胞をConA刺激下脾細胞と2時間共培養した後の、脾細胞の遺伝子発現をリアルタイム定量PCRで評価した結果、Ccl3、Tnf、Ifngの発現が低下した。ConA急性肝炎マウスに脂肪組織由来間質細胞群のCD45+細胞を投与したところ、血清ALTの低下を認めた。以上より、脂肪組織由来間質細胞群のCD45+細胞は、抑制性マクロファージ類似の表現型、機能を有し、肝臓の炎症に対して抑制的に作用することが示された。本研究では、マウス非培養脂肪組織由来間質細胞群の細胞分画を解析し、その特性を検討した。また、マウス肝疾患モデルを用いて、肝疾患状態に対する効果を検討した。非培養脂肪組織由来間質細胞群には、約1020%のCD45陽性細胞が存在した。CD45陽性細胞は、表面抗原発現解析、遺伝子発現より、M2フェノタイプマクロファージ様の特性を有することを明らかとした。急性肝炎マウスに対する非培養脂肪由来間質細胞群、間質細胞群のCD45陽性細胞分画の投与による治療効果を確認した。非培養脂肪組織由来間質細胞群のCD45陽性細胞分画の炎症修飾能における重要性が示唆された。脂肪組織由来間質細胞群の肝疾患治療効果の確認、および細胞群性質解析の基礎データが本年度得られた。脂肪組織由来間質細胞群の表面抗原の違いと生物学的特徴の解析を進め、肝修復再生療法に有用な分画の同定、特徴の解明を進める。また、他のマウス肝疾患モデルも用いて、明らかとなった細胞分画のin vivoにおける作用を解析する。医歯薬学マウスおよびヒト脂肪組織由来間質細胞群の分画についての生物学的特徴の解析を進め、肝疾患における治療効果機序を検討する。平成26年度より3ヶ年計画の最終年度が平成28年度にあたり、研究を継続するため。研究計画に従い、脂肪組織由来間質細胞群における肝修復再生療法に有用な細胞分画の同定の研究を進めていく。消耗品、学会発表、謝金等に使用予定である。 | KAKENHI-PROJECT-26460995 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26460995 |
惑星画像データを用いたクレーター飽和密度の研究;小惑星でのレゴリス層の成長過程 | 月の海のクレーター累積個数密度をLunar Orbiterの高解像度写真から解析することにより、月表層地殻の物理的性質に対する制約条件を加えた。月の海に生成されるクレーターのサイズ分布を詳しく調べると、直径が300mから4kmの範囲でサイズ分布の傾き(べき乗指数)が大きく変化することが知られている。一般に、この傾きの急変の原因としては、1.衝突天体そのもののサイズ分布の反映、2.巨大衝突盆地の形成に伴う二次クレーターの影響、3.月地殻の深さ方向の強度変化、4.クレーター形成後の侵食、などが従来提唱されている。本研究では、地域別の詳細なクレーターサイズ分布を解析、比較することによって、これらの仮説の妥当性について検討した。第一に、静かの海と嵐の海の形成年代がほぼ等しい二地域のサイズ分布を比較し、それらが有為に異なることから、1.の仮説を否定した。次に、大型クレーターの近傍と十分遠方でのクレーターサイズ分布を嵐の海について比較し、ほとんど相違が見られないことから、2.の仮説も可能性が低いと判断した。静かの海の二地域、嵐の海の二地域、それぞれのサイズ分布を比較したところ、静かの海と嵐の海では有為な相違がある一方で、同一の海の中では有為な差は認められなかった。従って、本研究によるクレーターサイズ分布の解析結果は仮説3.と調和的である。仮説4.については今回は判定するにたるデータが得られなかったが、大きなクレーターよりも、小さなクレーターほど侵食が早いという仮定から、最近ではほとんど支持されていない。従って、今回の研究結果は、数百mから数kmの範囲のクレーターのサイズ分布が、月地殻の地域的な構造を反映していると解釈される。今後より多くの地域について検討進める必要がある。月の海のクレーター累積個数密度をLunar Orbiterの高解像度写真から解析することにより、月表層地殻の物理的性質に対する制約条件を加えた。月の海に生成されるクレーターのサイズ分布を詳しく調べると、直径が300mから4kmの範囲でサイズ分布の傾き(べき乗指数)が大きく変化することが知られている。一般に、この傾きの急変の原因としては、1.衝突天体そのもののサイズ分布の反映、2.巨大衝突盆地の形成に伴う二次クレーターの影響、3.月地殻の深さ方向の強度変化、4.クレーター形成後の侵食、などが従来提唱されている。本研究では、地域別の詳細なクレーターサイズ分布を解析、比較することによって、これらの仮説の妥当性について検討した。第一に、静かの海と嵐の海の形成年代がほぼ等しい二地域のサイズ分布を比較し、それらが有為に異なることから、1.の仮説を否定した。次に、大型クレーターの近傍と十分遠方でのクレーターサイズ分布を嵐の海について比較し、ほとんど相違が見られないことから、2.の仮説も可能性が低いと判断した。静かの海の二地域、嵐の海の二地域、それぞれのサイズ分布を比較したところ、静かの海と嵐の海では有為な相違がある一方で、同一の海の中では有為な差は認められなかった。従って、本研究によるクレーターサイズ分布の解析結果は仮説3.と調和的である。仮説4.については今回は判定するにたるデータが得られなかったが、大きなクレーターよりも、小さなクレーターほど侵食が早いという仮定から、最近ではほとんど支持されていない。従って、今回の研究結果は、数百mから数kmの範囲のクレーターのサイズ分布が、月地殻の地域的な構造を反映していると解釈される。今後より多くの地域について検討進める必要がある。 | KAKENHI-PROJECT-08740364 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08740364 |
初期胚における筋細胞系譜の決定と分化誘導機構 | 筋細胞の決定、分化の制御、細胞系譜、細胞の発生時期、培養系における分化能などを指標にすると筋芽細胞は幾つかのポピュレーションよりなっている。myotomeに最初に現われるタイプはmyf5-MRF4で決定と分化が制御されており、ついで体幹と四肢に現われる細胞はmyf5-MyoD-myogeninと発現して分化する筋細胞である。さらにE15,16には分化培地に変換しても培養系では分化しない筋芽細胞(MyoD,myogeninは発現する)が存在し、維持されている。さらに発生後期にはmyogenin-1-マウスの四肢にも少量であるがMyoD,MRF4ポジテイブな筋管細胞が現われることから、myogeninがなくともMRF4の発現により分化が進む細胞が存在する可能性が示唆された。bFGFに加えて筋芽細胞を増殖させる新しい因子としてLPAを同定した。LPAはジフテリア毒素で活性が阻害されることからシグナルはGiタイプのGTP結合蛋白を介して入るものと推定され、bFGFとは異なる経路でシグナルが伝えられる。bFGF存在下ではMyoDの発現そのものが抑制されるがLPA存在下ではMyoDの発現は維持されるが、myogeninの発現誘導が抑えられている。また、bFGF存在下ではたとえコンフルエントになっても分化しないがLPA存在下ではコンフルエントになるとmyogeninの発現が誘導され、筋管細胞へと分化する。発生過程におけるbFGF及び、その受容体のMyotomeや肢芽における発現は筋芽細胞の発生初期には強いと報告されているが次いで発現がほとんど確認できなくなる。おそらく細胞の増殖と移動が進み、筋芽細胞が特定の領域を占め、細胞が接触しあうようになるとたとえLPAが存在していても分化し、筋管細胞になると推定される。筋細胞の決定、分化の制御、細胞系譜、細胞の発生時期、培養系における分化能などを指標にすると筋芽細胞は幾つかのポピュレーションよりなっている。myotomeに最初に現われるタイプはmyf5-MRF4で決定と分化が制御されており、ついで体幹と四肢に現われる細胞はmyf5-MyoD-myogeninと発現して分化する筋細胞である。さらにE15,16には分化培地に変換しても培養系では分化しない筋芽細胞(MyoD,myogeninは発現する)が存在し、維持されている。さらに発生後期にはmyogenin-1-マウスの四肢にも少量であるがMyoD,MRF4ポジテイブな筋管細胞が現われることから、myogeninがなくともMRF4の発現により分化が進む細胞が存在する可能性が示唆された。bFGFに加えて筋芽細胞を増殖させる新しい因子としてLPAを同定した。LPAはジフテリア毒素で活性が阻害されることからシグナルはGiタイプのGTP結合蛋白を介して入るものと推定され、bFGFとは異なる経路でシグナルが伝えられる。bFGF存在下ではMyoDの発現そのものが抑制されるがLPA存在下ではMyoDの発現は維持されるが、myogeninの発現誘導が抑えられている。また、bFGF存在下ではたとえコンフルエントになっても分化しないがLPA存在下ではコンフルエントになるとmyogeninの発現が誘導され、筋管細胞へと分化する。発生過程におけるbFGF及び、その受容体のMyotomeや肢芽における発現は筋芽細胞の発生初期には強いと報告されているが次いで発現がほとんど確認できなくなる。おそらく細胞の増殖と移動が進み、筋芽細胞が特定の領域を占め、細胞が接触しあうようになるとたとえLPAが存在していても分化し、筋管細胞になると推定される。 | KAKENHI-PROJECT-06270228 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06270228 |
低エネルギーレーザー照射による歯面処理効果とシーラントの接着性 | 実験方法A.レーザー照射後のエナメル質表層下の観察被験歯のエナメル質表面に繰り返し速度10pps,先端出力50mJ/pulse,接触,注水の条件でレーザー照射を行い,試料断面をSEMおよび偏光顕微鏡にて観察した。B.硬度の測定実験Aと同条件で試料を作製し,レーザー照射面下20・40・60・80μmの深さにおける超微小硬度を測定した。なおコントロールは,非照射部エナメル質で同等の深さの硬度を測定した。結果および考察SEM観察から,レーザー照射後に形成された陥凹部に沿って脱灰性の異なる層が認められた。また,偏光顕微鏡においても同部位に偏光性の異なる層が認められた。この層は白色か淡青色を示し,周囲の負の形態複屈折を示す正常エナメル質とは明らかに異なっていた。硬度の測定では,表層下20・40・60μmの各深さにおいて,レーザー照射群はコントロール群に比べ,有意に硬度低下を示した。またこの硬度低下は,レーザー照射エナメル質表層に近いほど強く認められた。しかし80μmの深さでは,コントロール群とレーザー照射群の間に有意差は認められなかった。この硬度低下の原因については,レーザー照射部直下数10μmに観察されるマイクロクラックの存在が挙げられる。このマイクロクラックは縦横無尽に走り,全体として網目状を形成しているといわれており,これが硬度低下に繋がったと推察できる。以上のことからEr : YAGレーザー照射後のエナメル質は形態変化を起こすだけでなく,その表層下にもエナメル質の構造や物性の変化を起こすことが明らかとなった。●実験方法被験歯の頬測面はあらかじめ耐水シリコンペーパー#1000にて研削した。被験歯のエナメル質表面に繰り返し速度10pps,先端出力30・40・50・60mJ/pulse,接触・非接触,注水の条件でレーザー照射を行い,SEMにて観察した。●結果接触照射:30mJ/pulseでは研磨エナメル質が蒸散されずに照射面に多く残存していた。それ以外の蒸散された部分についてはエナメル小柱構造に基づく微細な凹凸が認められた。40mJ/pulseになると研磨面の残存はほとんど認められなかった。さらに50・60mJ/pulseになるに従い,エナメル質表面は荒れた様相を呈し,照射面にはマイクロクラックを伴う小塊状または鱗片状の形態が認められるようになった。非接触照射:30mJ/pulseでは,照射面に研磨エナメル質の残存が認められた。接触照射の30mJ/pulseと比較すると研磨エナメル質の残存は多かった。この研磨エナメル質の残存は40mJ/pulseにおいてやや減少し,50mJ/pulseでほぼ見られなくなった。60mJ/pulseになるとエナメル質表面は接触照射同様にかなり起伏の激しい様相を呈した。●考察非接触照射あるいは照射エネルギーの低い接触照射では照射面に研磨エナメル質が多く残存していた。このことは照射エネルギーの減弱の結果として説明できる。Er:YAGレーザーの波長は2.94μmで水によく吸収される。このため照射エネルギーが非常に低いか照射面までの距離が離れていると水の影響を受けやすく,そのエネルギーは減弱しやすい。今回の実験においても同様の理由でレーザー照射の不均一が起こったと推察される。今回の実験から均一な照射は非接触照射では難しく,接触照射の方が有効であることが明らかとなった。ただし,接触照射でも照射エネルギーが低すぎると研磨エナメル質が残存し,高すぎるとマイクロクラックを伴う起伏の激しい形態となるため歯面処理に最適な照射エネルギーは,50mJ/pulse前後だと考えられた。実験方法A.レーザー照射後のエナメル質表層下の観察被験歯のエナメル質表面に繰り返し速度10pps,先端出力50mJ/pulse,接触,注水の条件でレーザー照射を行い,試料断面をSEMおよび偏光顕微鏡にて観察した。B.硬度の測定実験Aと同条件で試料を作製し,レーザー照射面下20・40・60・80μmの深さにおける超微小硬度を測定した。なおコントロールは,非照射部エナメル質で同等の深さの硬度を測定した。結果および考察SEM観察から,レーザー照射後に形成された陥凹部に沿って脱灰性の異なる層が認められた。また,偏光顕微鏡においても同部位に偏光性の異なる層が認められた。この層は白色か淡青色を示し,周囲の負の形態複屈折を示す正常エナメル質とは明らかに異なっていた。硬度の測定では,表層下20・40・60μmの各深さにおいて,レーザー照射群はコントロール群に比べ,有意に硬度低下を示した。またこの硬度低下は,レーザー照射エナメル質表層に近いほど強く認められた。しかし80μmの深さでは,コントロール群とレーザー照射群の間に有意差は認められなかった。この硬度低下の原因については,レーザー照射部直下数10μmに観察されるマイクロクラックの存在が挙げられる。このマイクロクラックは縦横無尽に走り,全体として網目状を形成しているといわれており,これが硬度低下に繋がったと推察できる。以上のことからEr : YAGレーザー照射後のエナメル質は形態変化を起こすだけでなく,その表層下にもエナメル質の構造や物性の変化を起こすことが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-12771314 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12771314 |
好中球エラスターゼを標的とした再発難治性急性白血病の病態解明と新規治療開発 | 急性骨髄性白血病(AML)は依然として難治性悪性疾患の一つである。AMLの中では予後良好群とされるcore binding factor-AML(CBF-AML)においても、約40%の症例で再発が認められる現状は克服すべき課題である。本研究では、再発CBF-AML骨髄から同定された好中球エラスターゼ/セリンプロテアーゼの発現異常が白血病細胞ならびに正常造血にもたらす影響について解析することで、CBF-AMLの発症および治療抵抗性獲得との関わり・機序を解明し、白血病治療において正常および変異型好中球エラスターゼ/セリンプロテアーゼ遺伝子が新規治療標的となる可能性について検証を行う。急性骨髄性白血病(AML)は依然として難治性悪性疾患の一つである。AMLの中では予後良好群とされるcore binding factor-AML(CBF-AML)においても、約40%の症例で再発が認められる現状は克服すべき課題である。本研究では、再発CBF-AML骨髄から同定された好中球エラスターゼ/セリンプロテアーゼの発現異常が白血病細胞ならびに正常造血にもたらす影響について解析することで、CBF-AMLの発症および治療抵抗性獲得との関わり・機序を解明し、白血病治療において正常および変異型好中球エラスターゼ/セリンプロテアーゼ遺伝子が新規治療標的となる可能性について検証を行う。 | KAKENHI-PROJECT-19K23912 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K23912 |
栽培ガキの起源種解明のための東アジアに分布するカキ属植物の探索とその多様性解析 | 栽培ガキの起源解明のため、これまで調査していないベトナム北部山岳地域で調査を実施し、果面に柔毛がある果実を発見したが、これらはこれまでに発見した種と同種である可能性が高かった。さらに、中国とタイでも再調査を実施したが、カキの起源に関係する新たな種の発見はなかった。最後に、これまでに調査から栽培ガキに近縁であると考えている“野毛柿"をITSとmatK領域の塩基配列から解析したところ、matK領域の解析からは栽培ガキの起源と報告されたD. glandulosaと同じクラスターに分類されたが、ITS領域の解析からは独立したクラスターを形成した。今後、この差異に関しての再調査が必要であると考えられた。本研究は、東アジアの熱帯・亜熱帯地域に生息するカキ属植物を探索・調査し、これまでの研究から栽培ガキの起源に関与したと考えているDiospyros glandulosa、D.lotus、D.oleiferaおよび研究代表者らが中国の雲南省とベトナムのLong Son省で発見した野毛柿およびHong Cocと呼ばれている栽培ガキに非常に類似した種を中心にして、(1)東アジアにおけるこれらの種の分布域とその多様性を調査すること、(2)これらの種を含めた東アジアに分布するカキ属植物の形態的特性や倍数性の解析やゲノム構造の分子生物学的解析から栽培ガキの起源種を考察することを第一の目的としている。また、これらの近縁野生種から栽培ガキが分化・発生した後の栽培ガキの伝播過程を解析することも、もう一つの大きな目的である。この目的のため、本年度はベトナムの海外共同研究者の協力を得て、ベトナムの北部山岳地域を中心に探索・調査を実施してカキ属植物の分布域と多様性を調査した。また、アメリカの研究協力者とともに、中国、韓国、日本に存在するカキ品種の類縁関係を調査し、それぞれの地域へのカキ伝播と品種発達の過程を考察した。その結果、今回ベトナムで採取したカキ属植物は、matK遺伝子とITS領域の塩基配列の解析から、D.oleiferaとD.glandulosaを含むグループとカキ(D.kaki)が属するグループに分かれることが明らかとなったが、野毛柿との関係は明らかではなかった。また、中国、韓国、日本でのカキ品種の分化は、それぞれの地域で独立して起こった可能性が示唆された。本研究は、東アジアの熱帯・亜熱帯地域に生息するカキ属植物を探索・調査し、これまでの研究から栽培ガキの起源に関与したと考えているいくつかの種と雲南省で発見した野毛柿と呼ばれている栽培ガキに非常に類似した種を中心にして、東アジアにおけるこれらの種の分布域とその多様性を調査するとともに、これらの種を含めた東アジアに分布するカキ属植物の形態的特性や分子生物学的解析から栽培ガキの起源種を考察することを目的としている。この目的のため、本年度は、4月に西北農林科技大学・園芸学院で維持管理されている国家柿遺伝資源圃で、中国での海外共同研究者とともに収集されている中国のカキ属植物の形態特性調査を実施し、カキに近縁であると考えられる種の採取地の情報を収集した。また、10月に再度、国家柿遺伝資源圃に出向き、中国の海外共同研究者とともに収集されているカキ属植物の果実の形態的特性調査を実施するとともに、分子生物学的手法による解析のための試料を採取した。これらの試料は、現在、分析を開始しているところである。さらに、来年度のベトナム北部山岳地域での調査のため、ベトナムの海外共同研究者との詳細な打合せを年度末(3月)に実施した。これにより、ベトナム北部山岳地域でのカキ属植物と中国のカキ属植物との関係を考察し、東アジアでのそれらの種の多様性を解析することが可能となる。ただ、年度当初に計画していた中国四川省周辺地域でのカキ属植物に関する探索・調査は、海外共同研究者と詳細に論議したものの、調査地域を特定することが出来ず、本年度の調査は延期した。本研究は、東アジアの熱帯・亜熱帯地域に生息するカキ属植物を探索・調査し、これまでの研究から栽培ガキの起源に関与したと考えているD. glandulosa、D. lotus、D. oleiferaおよび研究代表者らが中国の雲南省とベトナムのLong Son省で発見した野毛柿およびHong Cocと呼ばれている栽培ガキに非常に類似した種を中心にして、東アジアにおけるこれらの種の分布域とその多様性を調査するとともに、これらの種を含めた東アジアに分布するカキ属植物の形態的特性や分子生物学的解析から栽培ガキの起源種を考察することを目的としている。この目的のため、本年度は、これまでにまだ調査できていなかったベトナム北部山岳地域のCao Bang省とHa Giang省でのカキ属植物を探索し、それら地域でのベトナムのカキ属植物の多様性と分布域を調査した。その結果、栽培ガキ(D. kaki)と思われる海外より導入されたと考えられる栽培種とともに、中国で野毛柿と呼ばれているカキ属植物と同様、果実表面に柔毛がある果実を着生する個体をいくつか発見した。さらに、これらの個体の葉からDNAを抽出後、葉緑体DNAのmatK領域のシークエンスをこれまでに調査したD. glandulosa、野毛柿、栽培ガキの同領域のシークエンスと比較解析したところ、これらのカキ属植物はカキ(D. kaki)グループとD. oleiferaグループに大別され、中国で発見した野毛柿やタイ北部山岳地域で発見したD. glandulosaのグループに分類されるものはなかった。 | KAKENHI-PROJECT-24405024 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24405024 |
栽培ガキの起源種解明のための東アジアに分布するカキ属植物の探索とその多様性解析 | 一方、タイの海外共同研究者とともにタイに存在するカキ属植物の資料収集とタイ中部地域での調査を実施したが、カキの起源に関係した可能性があると考えられる興味ある種は発見することができなかった。なお、中国での調査・探索に関して、本年度も調査地域を特定することが出来ず、今後の課題となった。本研究は、東アジアの熱帯・亜熱帯地域に生息するカキ属植物を探索・調査し、これまでの研究から栽培ガキの起源に関与したと考えているD. glandulosa、D. lotus、D. oleiferaおよび研究代表者らが中国の雲南省とベトナムのLong Son省で発見した野毛柿およびHong Cocと呼ばれている栽培ガキに非常に類似した種を中心に、これらの種の分布域とその多様性を調査するとともに、東アジアに分布するカキ属植物の形態的特性や分子生物学的解析から栽培ガキの起源種を考察することを目的としている。この目的のため、ベトナムの北部山岳地域に分布するカキ属植物の調査を実施してきたが、これまで採取したカキ属植物はカキ(D. kaki)グループとD. oleiferaグループに大別された。カキグループに属するものは導入された栽培ガキであり、また、Hong Cocと呼ばれていた種もD. oleiferaである可能性が高く、D. glandulosaや野毛柿と近縁の種は発見できなかった。そこで本年度はベトナムでの調査を縮小し、タイ北部山岳地域と野毛柿が分布する中国雲南省を中心として、果実の調査できる期間での探索を予定していた。しかし、8月下旬に中国側共同研究者と調査計画を検討したが、調査地域の特定が困難であるとの結論を得ると同時に、日本側研究者と中国側研究者の日程調整ができなかった。また、タイ側共同研究者との調査地域と日程の調整のため、9月上旬にタイに出張する予定であったが、タイ側共同研究者の突然の急性白血病発症のため、出張そのものを中止せざるを得なくなった。このため、昨年度は予定していた調査を中止し、これまでに採取したいくつかの試料の分析を再度実施し、これまでの解析結果を再確認した。さらに、将来の遺伝資源として、現在日本に存在するカキ属植物の収集・保存に向けた取組を実施した。これまで実施してきた調査結果をまとめるにあたって、最終確認のために必要であると考えていた中国雲南省地域およびタイ北部山岳地域でのカキ属植物の再調査を実施することができなかった。すなわち、中国雲南省の調査は中国側共同研究者との調査計画の検討段階で、調査地域の特定が困難であることが判明したことに加え、日本側研究者と中国側研究者の調査日程の調整が上手くいかなかった。さらに、タイ北部山岳地域の調査については、タイ側共同研究者が突然急性白血病を発症し、調査地域やその日程の検討そのものを実施できなかった。このように、昨年度は計画していた調査を中止せざるを得ない状況となった。ただ、これまで、採取したカキ属植物の類縁関係を再確認できたこと、また、日本に存在する遺伝資源としてのカキ属植物の収集・保存に向けた取組を実施できた意義は大きい。これらの結果を総合的に鑑みて、全体としては「やや遅れている」と評価した。 | KAKENHI-PROJECT-24405024 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24405024 |
大腸癌に対するPARP阻害剤による抗癌剤増感の関連遺伝子の解明と治療への応用 | 平成31年度はMGMT knockout細胞,MMR関連遺伝子knockout細胞およびコントロール細胞からmRNAを抽出し,PCRアレイを用い,DNA修復,抗癌剤耐性に関連した遺伝子の発現変化について検討した.また癌細胞サンプル集NCI-60を用いてPARP阻害剤,TMZの感受性と遺伝子発現を検討した.また,当初は平成31年度に施行予定であった癌細胞サンプル集NCI-60を用いてPARP阻害剤,TMZの感受性と遺伝子発現の検討を施行した.しかし当初予定していたマウスモデルを用いたMGMT発現やMSIとPARP阻害剤,TMZの効果に関する検討は来年施行することとした.本年度は予定していたMGMT knockout細胞,MMR関連遺伝子knockout細胞およびコントロール細胞からmRNAを抽出し,PCRアレイを用い,DNA修復,抗癌剤耐性に関連した遺伝子の発現変化について検討等を施行した.さらに当初は平成31年度に施行予定であった癌細胞サンプル集NCI-60を用いてPARP阻害剤,TMZの感受性と遺伝子発現の検討を施行した.しかし当初予定していたマウスモデルを用いたMGMT発現やMSIとPARP阻害剤,TMZの効果に関する検討は来年施行することとした.マウスモデルを用いたMGMT発現やMSIとPARP阻害剤,TMZの効果に関する検討は来年施行する予定である.10種類の大腸癌細胞株を用い,MGMTの発現についてウエスタンブロット法により確認した.次にMSIについてはマイクロサテライトマーカーを用いたMSI検査に加え,MMR関連遺伝子(MLH1,MSH2,MSH6,PMS2)の発現をウエスタンブロット法で評価した.また,各細胞株のMGMT発現・MSIを確認した後,TMZ単剤,PARP阻害剤単剤,さらにそれらの併用の効果を,Clonogenic survival assay,WST8 assayなどにより評価し,MGMT発現やMSIとPARP阻害剤,TMZ感受性の相関を解析した.PARP-DNA複合体についてはクロマチン結合タンパク質を抽出し,ウエスタンブロット法にて評価した.MGMTknockout細胞株,MMR関連遺伝子(MLH1,MSH2,MSH6,PMS2)knock out細胞をそれぞれもちいて,PARP阻害剤単剤,TMZ単剤,それらの併用における効果,PARP-DNA複合体を評価した.また,フローサイトメトリーを用い,Propidium Iodide(PI)染色,BrdUの取り込み率により細胞周期の解析を,アポトーシスの解析は,Annexin V,PI染色を用いたフローサイトメトリーによる解析,ウエスタンブロット法によるcleaved caspase-3,cleaved-PARPの検出,TUNEL染色により行い,MGMT発現,MSIの役割を検討した.当初から予定していた,大腸癌細胞株を用いPARP阻害剤単剤,TMZ単剤,それらの併用の効果についてMGMTの発現,MSIレベルの点から基礎的な解析を行った.MGMTの発現についてウエスタンブロット法により確認する.次にMSIについてはマイクロサテライトマーカーを用いたMSI検査に加え,MMR関連遺伝子(MLH1,MSH2,MSH6,PMS2)の発現をウエスタンブロット法で評価し,さらに,各細胞株のMGMT発現・MSIを確認した後,TMZ単剤,PARP阻害剤単剤,さらにそれらの併用の効果を,Clonogenic survival assay,WST8 assayなどにより評価し,MGMT発現やMSIとPARP阻害剤,TMZ感受性の相関を解析した。平成31年度はMGMT knockout細胞,MMR関連遺伝子knockout細胞およびコントロール細胞からmRNAを抽出し,PCRアレイを用い,DNA修復,抗癌剤耐性に関連した遺伝子の発現変化について検討した.また癌細胞サンプル集NCI-60を用いてPARP阻害剤,TMZの感受性と遺伝子発現を検討した.また,当初は平成31年度に施行予定であった癌細胞サンプル集NCI-60を用いてPARP阻害剤,TMZの感受性と遺伝子発現の検討を施行した.しかし当初予定していたマウスモデルを用いたMGMT発現やMSIとPARP阻害剤,TMZの効果に関する検討は来年施行することとした.本年度は予定していたMGMT knockout細胞,MMR関連遺伝子knockout細胞およびコントロール細胞からmRNAを抽出し,PCRアレイを用い,DNA修復,抗癌剤耐性に関連した遺伝子の発現変化について検討等を施行した.さらに当初は平成31年度に施行予定であった癌細胞サンプル集NCI-60を用いてPARP阻害剤,TMZの感受性と遺伝子発現の検討を施行した.しかし当初予定していたマウスモデルを用いたMGMT発現やMSIとPARP阻害剤,TMZの効果に関する検討は来年施行することとした.平成30年度はマウス皮下腫瘍モデルを用いた検討を中心に行い,細胞実験で得られた結果を検証する予定であり,平成31年度は,大腸癌の臨床組織検体を用い,MGMT,MMR関連遺伝子の発現,変異の意義について解析し,PARP阻害剤,TMZによる大腸癌治療を臨床応用へと展開するための研究を進める予定である.マウスモデルを用いたMGMT発現やMSIとPARP阻害剤,TMZの効果に関する検討は来年施行する予定である.本年度,MGMT knockout細胞,MMR関連遺伝子knockout細胞およびコントロール細胞からmRNAを抽出し,PCRアレイを用い,DNA修復,抗癌剤耐性に関連した遺伝子の発現変化について検討する予定であったが,できなかったため次年度使用額が生じた.次年度使用額は抗癌剤耐性に関連した遺伝子の発現変化の検討に使用する予定である.当初予定していたマウスモデルを用いたMGMT発現やMSIとPARP阻害剤,TMZの効果に関する検討は来年施行することとしたそのため次年度使用額が生じた. | KAKENHI-PROJECT-17K09389 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K09389 |
一億個オーダの離散粒子反応シミュレーションのためのモデルアルゴリズムとコード開発 | 本研究は、様々な粉粒体工業プロセスにおいて、プラント規模の実用的なシミュレーションを行うことができるソフトウェア開発を目指したものである。それを達成すべくまず初めに、粉粒体プロセスでの様々なトラブル要素を容易に組み込み得る離散要素法(DEM)の最大の欠点である、粒子数に起因するコンピュータ負荷の問題に対して、大容量DEMシミュレーションのための新規モデルであるSimilar Particle Assembly (SPA) modelを導出した。具体的には、対象とする層の粒子に対して、粒子を直径、密度、化学組成などが同じものを1つのグループとして考え、それぞれのグループに関して、その直径のm倍の径を有する粒子系を考える。あるグループに属する粒子とそれに対応するm倍の粒子の周りの空間配位が同じになる相似則を目指す。これを達成するため、粒子の運動方程式で粒子の運動速度が2つの系で同じになるような関係を導いた。このモデルを用いた数値解析を行い、本モデルの妥当性を確認した。次に、より現実な系への適用を考え、粒径分布を有する系に対する粒子-流体間相互作用力のモデル化を行った。このモデル化の検討は、上記のコンピュータ負荷の問題からこれまでほとんどなされていなかったためである。本研究では、これまで一般的に用いられていた、粒子が濃厚な場合のErgun式を用いた計算手法を修正し、まず、個々の粒子に働く力を求め、その後それが流体セル中の流体にどれだけの寄与があるかを計算する、抵抗係数C_Dを用いたWen-Yuタイプに拡張した。この修正・拡張された粒子-流体間相互作用力を用いて粒径分布を有する系の3次元計算を行った。その結果、粒径分布がない場合、粗大粒子の流動化の特徴であるスラッギングが観察されたのに対して、粒径分布を考慮した場合、その効果によって明確なウェーク相を持つ気泡が観察された。本研究は、様々な粉粒体工業プロセスにおいて、プラント規模の実用的なシミュレーションを行うことができるソフトウェア開発を目指したものである。それを達成すべくまず初めに、粉粒体プロセスでの様々なトラブル要素を容易に組み込み得る離散要素法(DEM)の最大の欠点である、粒子数に起因するコンピュータ負荷の問題に対して、大容量DEMシミュレーションのための新規モデルであるSimilar Particle Assembly (SPA) modelを導出した。具体的には、対象とする層の粒子に対して、粒子を直径、密度、化学組成などが同じものを1つのグループとして考え、それぞれのグループに関して、その直径のm倍の径を有する粒子系を考える。あるグループに属する粒子とそれに対応するm倍の粒子の周りの空間配位が同じになる相似則を目指す。これを達成するため、粒子の運動方程式で粒子の運動速度が2つの系で同じになるような関係を導いた。このモデルを用いた数値解析を行い、本モデルの妥当性を確認した。次に、より現実な系への適用を考え、粒径分布を有する系に対する粒子-流体間相互作用力のモデル化を行った。このモデル化の検討は、上記のコンピュータ負荷の問題からこれまでほとんどなされていなかったためである。本研究では、これまで一般的に用いられていた、粒子が濃厚な場合のErgun式を用いた計算手法を修正し、まず、個々の粒子に働く力を求め、その後それが流体セル中の流体にどれだけの寄与があるかを計算する、抵抗係数C_Dを用いたWen-Yuタイプに拡張した。この修正・拡張された粒子-流体間相互作用力を用いて粒径分布を有する系の3次元計算を行った。その結果、粒径分布がない場合、粗大粒子の流動化の特徴であるスラッギングが観察されたのに対して、粒径分布を考慮した場合、その効果によって明確なウェーク相を持つ気泡が観察された。平成13年度は、粒径分布を有した系で、粒子-粒子間相互作用(液架橋力、van der Waals力、静電気力等)を考慮でき、かつ1億個オーダーの離散粒子挙動をシミュレートする方法について検討を行ってきた。議論の結果、上記の条件を満足する方法として下記の仮定に基づく代表粒子モデルを開発した。1)粒子は球形である。2)同一物性(粒経、密度など)を有する複数の粒子からなる粒子群の挙動を、その中心にある1個の粒子(代表粒子と定義する)であらわす。3)代表粒子の運動方程式は、粒子群間の相互作用の積算の形で記述する。上記の仮定に基づいて代表粒子モデルのアルゴリズム開発とコーディングを行った。粒径1mm、粒子数27万個の乾燥粒子および湿潤粒子(液架橋力を考慮)を模擬する代表粒子径3mm(粒子数3万個)および6mm(7500個)の代表粒子モデル計算結果と、1mm(27万個)の従来型DEMシミュレーションを比較した結果、気泡の挙動や圧力変動とも概ね類似の結果が得られ、代表粒子モデルによって大規模粒子系をより計算負荷の低い少数の粒子系でシミュレートできることが示された。ただし、現時点では、代表粒子モデルの最小流動化速度(u_<mf>)が、u_<mf>の若干の増加が認められ、また、代表粒子径を増加させると、層挙動に時間的な遅れが生じる傾向があることも観測された。乾燥粒子系と湿潤粒子系を比較すると、粒子間相互作用の一つである液架橋力が支配的な湿潤系で従来型DEMと代表粒子モデルの挙動が近くなる傾向があった。上記と並行して、より現実的なシミュレーションを目指して、粒子-流体間に働く潤滑力の効果を取り込むための基礎的な検討も行った。 | KAKENHI-PROJECT-13555205 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13555205 |
一億個オーダの離散粒子反応シミュレーションのためのモデルアルゴリズムとコード開発 | 従来、固気系では、潤滑力を無視して計算が行われてきたが、微粒子の場合、潤滑力を考慮すべきであることを明らかにした。粉粒体を扱う工業プロセスにおいて、開発リスクの低減のため、開発技術の事前検証や、開発中に直面した問題の要因解明等、プラント規模のシミュレーションを行うことができるシミュレーションソフトウエアが利用できるようになれば、粉体工業プロセスの飛躍的発展を促す可能性があると考えられる。しかし、粉粒体シミュレーションで有効なDEM法は、Lagrange的に粒子を追跡する手法のため、コンピュータ能力に依存する粒子数の制約を受ける。そこで、本研究ではこれまでの手法と異なり、粒子の運動方程式に着目し、そこから導かれる相似則に基づく新規モデルの導出を試みた。具体的には、対象とする層の粒子に対して、粒子を直径、密度、化学組成などが同じものを1つのグループとして考え、それぞれのグループに関して、その直径のm倍の径を有する粒子系を考える。あるグループに属する粒子とそれに対応するm倍の粒子の周りの空間配位が同じになる相似則を目指す。これを達成するため、粒子の運動方程式で粒子の運動速度が2つの系で同じになるように、m倍径の系では、粒子衝突などの計算ではm倍の径を用いるのに対して、粒子-流体間相互作用力、付着力などの粒子-粒子間相互作用力などの計算ではオリジナルの粒子径を用いるのが、本研究で導出したモデルであり、Similar Particle Assembly(SPA)modelと呼ぶ。本モデルの妥当性を検証するため、付着性粒子および2成分系(2密度)粒子流動層に対してシミュレーションを行った。モデルを用いた場合と用いない場合の比較を行い、良好な一致を得ており、本モデルの妥当性を確認し、国際会議(FLUID-PARTICLE INTERACTIONS VI(Barga, ITALY))で発表した。より現実的なシミュレーションを目指して、粒子-流体間に働く潤滑力の効果を取り込んだモデルを構築し、微粒子から構成される流動層のシミュレーションを行った。その結果、粒子の表面粗度が流動状態に大きく影響を及ぼすことが明らかとなった。さらにポリマー重合プロセスにおける粒子粒子間相互作用の実験的検討を行い、一連の成果を別添資料の通り国内外の学会で発表した。現在は、粒径分布を有する系や3次元など他の系に対する検証を行っている。本研究は、様々な粉粒体工業プロセスにおいて、プラント規模の実用的なシミュレーションを行うことができるソフトウェア開発を目指したものである。そのため、粉粒体プロセスでの様々なトラブル要素を容易に組み込み得る離散要素法(DEM)の最大の欠点であった粒子数に起因するコンピュータ負荷の問題に対して、大容量DEMシミュレーションのための新規モデルであるSimilar Particle Assembly (SPA) modelを導出した。昨年度までにこのモデルの検証を行い、本モデルの妥当性を確認できた。本年度はさらにより現実な系に適用を広げるため、粒径分布を有する系に対する粒子-流体間相互作用力のモデル化を行った。粒径分布を考慮すると必然的に3次元計算となるが、従来、上記のコンピュータ負荷の問題からほとんどなされておらず、粒子-流体間相互作用力のモデル化もほとんどなされていなかったためである。 | KAKENHI-PROJECT-13555205 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13555205 |
視覚系の物体分節過程に関する心理物理学的および脳イメージング法による研究 | 目に映る物体が何であるかを認識するためには、その物体をそれ以外のものから切り分けること(物体分節)が重要である。本研究の目的は、この物体分節の脳内機構を解明することである。本年度は、メタコントラストと呼ばれる知覚現象を利用して、色彩情報に基づく物体分節の脳内過程を調べた。メタコントラストとは、単独で呈示された場合にははっきり見える物体(ターゲット)が、その呈示直後、すぐそばに別の物体(マスク)が呈示されると見えなくなる現象である。この現象は、ターゲットを背景から切り分ける脳内過程が、マスク呈示によって妨害されることで生じると考えられている。研究代表者らはまず心理実験を行い、二物体の色が同じ場合と異なる場合で先行物体の見え方を比べた。その結果、先行物体が見えなくなる現象は、両者の色が同じ場合にのみ生じることを明らかにした。次に、この物体分節が脳のどこで行われているかをfMRI(機能的磁気共鳴画像化法)を用いて調べた。その結果、ターゲットが見えなくなることに相関した脳活動の低下が、第一次視覚野を含む視覚皮質の広い範囲で観察された。興味深いことに、その活動低下の度合いは脳部位によって大きく異なった。物体の位置情報を処理しているとされる背側経路の視覚野では、活動低下は比較的小さく、視覚野間で差がみとめられなかった。これに対して、物体の色彩および形態情報を処理しているとされる腹側経路の視覚野では、高次のV8野で非常に大きな活動低下が見られ、低次のV2野とV3野ではそれに次ぐ大きさの活動低下が見られた。この結果は、色彩情報に基づく物体分節過程には、腹側経路の視覚野間のネットワークが深く関わっていることを示している。以上の成果の一部は、本年度、専門の国際学会で口頭発表済みである。また、近く国際専門誌に投稿し公表する予定である。視対象が何であるかを認識すること(物体認識)は、我々の視覚機能のうちで重要なもののひとつであるが、物体認識を的確に行うためには、目に映る複数の物体を正確に切り分けること(物体分節)が必要である。本研究の目的は、この物体分節過程に関わる脳内メカニズムを解明することである。本年度はとくに、物体分節過程において、物体の色情報がどのように利用されているかを調べた。色情報を手がかりにして背景から物体を切り分ける過程の時空間特性を調べるため、色刺激を用いた視覚マスキング現象を利用した。視覚マスキングとは、単独で呈示された場合にははっきりと知覚される視覚刺激(ターゲット刺激)が、時空間的に近接した別の視覚刺激(マスク刺激)の影響によって知覚されにくくなる現象のことである。今回はとくに、ターゲット刺激とマスク刺激の色の組み合わせによって、マスキングの強度を変化させた。マスキングによって物体分節が阻害される場合、それは脳のどこでどのように起こっているのかを、心理実験および機能的磁気共鳴画像(fMRI)装置による脳活動測定により解析した。本年度の前半では、色覚の心理実験を行う環境を整備するため、専用の刺激呈示システム、測光システム、被験者の反応を取得するシステムを構築した。本年度の後半では、実際に実験を行った。実験の結果、マスキングによってターゲット刺激が見えなくなった場合、第2次視覚野および第3次視覚野の一部で特徴的な活動低下が見られた。この結果は、これらの脳領域が色情報を手がかりにした物体分節において重要なはたらきをしていていることを示唆した。目に映る物体が何であるかを認識するためには、その物体をそれ以外のものから切り分けること(物体分節)が重要である。本研究の目的は、この物体分節の脳内機構を解明することである。本年度は、メタコントラストと呼ばれる知覚現象を利用して、色彩情報に基づく物体分節の脳内過程を調べた。メタコントラストとは、単独で呈示された場合にははっきり見える物体(ターゲット)が、その呈示直後、すぐそばに別の物体(マスク)が呈示されると見えなくなる現象である。この現象は、ターゲットを背景から切り分ける脳内過程が、マスク呈示によって妨害されることで生じると考えられている。研究代表者らはまず心理実験を行い、二物体の色が同じ場合と異なる場合で先行物体の見え方を比べた。その結果、先行物体が見えなくなる現象は、両者の色が同じ場合にのみ生じることを明らかにした。次に、この物体分節が脳のどこで行われているかをfMRI(機能的磁気共鳴画像化法)を用いて調べた。その結果、ターゲットが見えなくなることに相関した脳活動の低下が、第一次視覚野を含む視覚皮質の広い範囲で観察された。興味深いことに、その活動低下の度合いは脳部位によって大きく異なった。物体の位置情報を処理しているとされる背側経路の視覚野では、活動低下は比較的小さく、視覚野間で差がみとめられなかった。これに対して、物体の色彩および形態情報を処理しているとされる腹側経路の視覚野では、高次のV8野で非常に大きな活動低下が見られ、低次のV2野とV3野ではそれに次ぐ大きさの活動低下が見られた。この結果は、色彩情報に基づく物体分節過程には、腹側経路の視覚野間のネットワークが深く関わっていることを示している。以上の成果の一部は、本年度、専門の国際学会で口頭発表済みである。また、近く国際専門誌に投稿し公表する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-04J01062 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04J01062 |
消化管間葉系腫瘍に対する分子標的治療薬耐性のメカニズムの解明 | 消化管間質腫瘍は、分子標的治療薬が高い奏効率を示すことが示された。一方、約2年で半数に耐性が生じることが知られ臨床上問題となっている。細胞株を用いて、遺伝子変異解析を用いた発現解析を行い、IM耐性のメカニズムを明らかにすることを目的とした。GIST細胞株にIM暴露によりIM耐性細胞株を作成する過程において、エキソーム解析を行い、遺伝学的変化を検討した。IM耐性過程におけるGIST細胞株の変化につきエキソーム解析の結果より細胞系統図を作成した。GISTにおけるイマチニブ耐性化は、driver geneであるKITの二次耐性変異が重要な意義をもつことが示唆された。消化管間質腫瘍(GIST)は、KITの機能獲得型変異で発生することが発見され、病因に基づく分子標的治療薬が臨床導入された。高い病勢コントロール率を示す一方で、5年の長期寛解後の治療中止が全例再燃を来すことが報告され問題となっている。また、治療奏功中の切除症例において、切除標本からは、viableなpersistent cellsが確認されている。本研究では、persistent cellsの特徴を明らかにし新規治療法の開発を目的とする。さらに、その先のresistant cellsが出現を誘発しやすい環境等についても検討を行い、二次耐性発生機構を明らかにする事を目的としている。平成27年度には、同一患者で、初発切除とイマチニブ耐性後の切除を行った8ペアー検体を集積し、エキソーム解析を行い先行研究で検出された変異分子と部位について比較を行った。その結果、KITの二次遺伝子変異がdominantに発生していることを確認した。さらに、in vitroの細胞を用いて、イマチニブ上記変異箇所に限定し、10万回以上のリードによるdeep sequenceを行い、その割合の変化を検討する。親株から順を追ってその遺伝子変異がどの段階で出現してきたものか、あるいは元から存在していた変異であるかについての数理学的解析を行い、株発生の系統図を作成できた。さらにその発生に関連する遺伝子変異の候補を数個同定しえた。消化管間質腫瘍(GIST)は、KITの機能獲得型変異で発生することが発見され、病因に基づく分子標的治療薬が臨床導入された。高い病勢コントロール率を示す一方で、5年の長期寛解後の治療中止が全例再燃を来すことが報告され問題となっている。また、治療奏功中の切除症例において、切除標本からは、viableなpersistent cellsが確認されている。本研究では、persistent cellsの特徴を明らかにし新規治療法の開発を目的とする。さらに、その先のresistant cellsが出現を誘発しやすい環境等についても検討を行い、二次耐性発生機構を明らかにする事を目的とした。平成27年度は、ヒト臨床検体ならびにGIST細胞株を用いたエキソーム解析を実施し、結果当初目的となる可能性のある分子を同定し、平成28年度はその変異の意義について機能解析を行う見込みである。そういった点から当初予定した計画に従った実行ができていると考えられる。消化管間質腫瘍(GIST)は、KITの機能獲得型変異で発生することが発見され、病因に基づく分子標的治療薬が臨床導入された。高い病勢コントロール率を示す一方で、5年の長期寛解後の治療中止が全例再燃を来すことが報告され問題となっている。また、治療奏功中の切除症例において、切除標本からは、viableなpersistent cellsが確認されている。本研究では、persistent cellsの特徴を明らかにし新規治療法の開発を目的とする。さらに、その先のresistant cellsが出現を誘発しやすい環境等についても検討を行い、二次耐性発生機構を明らかにする事を目的としている。平成27年度には、in vitroの細胞を用いて、イマチニブ上記変異箇所に限定し、10万回以上のリードによるdeep sequenceを行い、その割合の変化を検討する。親株から順を追ってその遺伝子変異がどの段階で出現してきたものか、あるいは元から存在していた変異であるかについての数理学的解析を行い、株発生の系統図を作成できた。平成28年度には、さらに親株から順を追って耐性化を生じる過程について、それぞれの細胞の発現アレイ解析を行い、persistent cellsさらにresistant cellsの特徴を明らかにした。その結果、persistent cellsにおけるタンパク発現は親株と大きく異なる一方で、耐性株になると元に近い形を示すことを明らかにした。さらには、ヒト臨床検体を用いたエキソーム解析の結果、同一患者の腫瘍における変化が、細胞実験レベルと同様の結果である事を示した。上記結果について、学会発表、論文発表を行い成果報告を行った。消化管間質腫瘍(GIST)は、KITの機能獲得型変異で発生することが発見され、病因に基づく分子標的治療薬が臨床導入された。高い病勢コントロール率を示す一方で、5年の長期寛解後の治療中止が全例再燃を来すことが報告され問題となっている。また、治療奏功中の切除症例において、切除標本からは、viableなpersistent cellsが確認されている。本研究では、persistent cellsの特徴を明らかにし新規治療法の開発を目的とする。さらに、その先のresistant cellsが出現を誘発しやすい環境等についても検討を行い、二次耐性発生機構を明らかにする事を目的とした。 | KAKENHI-PROJECT-15K10098 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K10098 |
消化管間葉系腫瘍に対する分子標的治療薬耐性のメカニズムの解明 | 平成27年度、28年度において、細胞株をイマチニブに暴露することでpersistent cellsさらにresistant cellsを作成しそのタンパク発現の差、遺伝子解析の発生を検討し、persistent cellsでは、発現は親株とは大きく異なるものの遺伝子のレベルでは著変なく、resistant cellsでは、発現は親株とあまり大きな差がないものの遺伝子のレベルでは変化を生じていることを発見し、学会報告、論文報告に繋げることができた。そのため、概ね順調な計画で進められていると判断する。(背景・目的)消化管間質腫瘍(GIST)は、変異KITチロシンキナーゼを標的とした分子標的治療が開発導入され、目覚ましい成果を示した腫瘍である。一方使用に伴い、投与中止後の再燃が必発であり、治療の終了が困難である点といった臨床上の問題点が浮き彫りになってきた。さらには、イマチニブ奏功中に外科切除が行われた切除検体の詳細な検討の結果、viableな腫瘍細胞がごく少量ながらも残存しているといった病理所見を確認している。そのため、イマチニブ治療下のこういった残存腫瘍(dormancyな細胞)が治療終了を不可にしていると考えられ、こういった細胞を標的とした新規治療法の開発が重要である。(結果)1.培養GIST細胞株にイマチニブを暴露することで耐性性GIST細胞株を作成出来る2.イマチニブ暴露下のGIST細胞株は、初期には殆どが、アポトーシスが誘導され細胞死を生じるのに対して、dormancy細胞は増殖せず(Cell cycle解析でS期細胞は殆ど無い3.耐性細胞株では臨床サンプルと同様に、KIT遺伝子に二次遺伝子変異が生じ、KITのリン酸化の抑制化ができていない。臨床サンプルを用いた検討においても同様に、イマチニブ投与後、効果の認める状態でGISTを切除し病理学的に検索すると、様々な程度に抗腫瘍効果が見られるが、アポトーシスを起こし硝子化変性した組織内に、必ず、散在性にKIT弱陽性の腫瘍細胞が確認された。則ち、チロシンキナーゼ阻害剤では腫瘍細胞は全滅を起こさず、この生き残った腫瘍細胞が後に耐性株になると推測される。本研究では、GIST細胞株を用いて耐性耐性獲得のモデルを作成してきた。dormancyな細胞T117では、マイクロアレイ解析による発現解析は親株と異なる一方で、エキソーム解析による遺伝子変異解析ではほぼ差を認めず、epigeneticな違いが示唆される結果であった。消化管間質腫瘍は、分子標的治療薬が高い奏効率を示すことが示された。一方、約2年で半数に耐性が生じることが知られ臨床上問題となっている。細胞株を用いて、遺伝子変異解析を用いた発現解析を行い、IM耐性のメカニズムを明らかにすることを目的とした。GIST細胞株にIM暴露によりIM耐性細胞株を作成する過程において、エキソーム解析を行い、遺伝学的変化を検討した。IM耐性過程におけるGIST細胞株の変化につきエキソーム解析の結果より細胞系統図を作成した。GISTにおけるイマチニブ耐性化は、driver geneであるKITの二次耐性変異が重要な意義をもつことが示唆された。平成28年度は、候補となった分子の遺伝子変異を含むプラスミドを作成し、順に、GIST-T1 | KAKENHI-PROJECT-15K10098 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K10098 |
pH匂配を駆動力とする生理活性物質の新しい連続分離・濃縮法 | アミノ酸の連続分離濃縮を目的として、イオン交換樹脂の移動層型向流接触装置を作成し、その濃縮分離特性を数値シミュレーションおよび実験によって検討した。アミノ酸はその等電点より低いpHにおいては陰イオンとして存在し、陽イオン交換樹脂に吸着される。そこで、移動層内に塔頂から塔底に向かってpHが大きくなるようなpH匂配を形成しておくと、塔頂に向かって行くフィード液中のアミノ酸は、等電点を越えたところで陽イオン交換樹脂に吸着され、下方に運ばれてpHが大きくなると脱着する。この過程が繰り返される事により、塔内のアミノ酸はその等電点に近いpHを持った位置に濃縮してくることになる。まず濃縮特性を調べるために、L-ヒスチジン水溶液をフィードとし塔内のアミノ酸濃度の経時変化を高速液体クロマトグラフィで測定した。この際、フィードの流量は一定としたが、固相の流速は塔の中心部が目的のpHになるように制御した。測定結果をみると、ヒスチジンの濃縮が見られ、その位置も数値シミュレーションとも一致していた。次に分離特性を検討するために、L-ヒスチジンとL-シスチンとの2成分のアミノ酸を含む水溶液を用いて同様の実験を行なった。実験の結果、2種類のアミノ酸はそれぞれカラムの違う位置で濃縮し、分離可能なことが確認された。また、各成分の濃縮位置は、数値シミュレーションの結果とも一致した。アミノ酸の連続分離濃縮を目的として、イオン交換樹脂の移動層型向流接触装置を作成し、その濃縮分離特性を数値シミュレーションおよび実験によって検討した。アミノ酸はその等電点より低いpHにおいては陰イオンとして存在し、陽イオン交換樹脂に吸着される。そこで、移動層内に塔頂から塔底に向かってpHが大きくなるようなpH匂配を形成しておくと、塔頂に向かって行くフィード液中のアミノ酸は、等電点を越えたところで陽イオン交換樹脂に吸着され、下方に運ばれてpHが大きくなると脱着する。この過程が繰り返される事により、塔内のアミノ酸はその等電点に近いpHを持った位置に濃縮してくることになる。まず濃縮特性を調べるために、L-ヒスチジン水溶液をフィードとし塔内のアミノ酸濃度の経時変化を高速液体クロマトグラフィで測定した。この際、フィードの流量は一定としたが、固相の流速は塔の中心部が目的のpHになるように制御した。測定結果をみると、ヒスチジンの濃縮が見られ、その位置も数値シミュレーションとも一致していた。次に分離特性を検討するために、L-ヒスチジンとL-シスチンとの2成分のアミノ酸を含む水溶液を用いて同様の実験を行なった。実験の結果、2種類のアミノ酸はそれぞれカラムの違う位置で濃縮し、分離可能なことが確認された。また、各成分の濃縮位置は、数値シミュレーションの結果とも一致した。 | KAKENHI-PROJECT-63470101 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63470101 |
カオス・フラクタルおよびウェーブレットの研究 | 代表者山口昌哉は,とくにカオスについて,次のような重要な知見を得た。1879年に,代表者は俣野博と共著で,常微分方程式の差分化はきざみ巾Δtが大きいとき,オイラーの差分化は力学系とみてカオスを発生することを証明した。この仕事は,平衡点2つの存在を仮定し,その1つがきわめて安定なことを仮定していた。そこで,代表者は前田陽一と共同で,fのある条件のもとΔtが十分に小であれば,リイとヨ-クの意味のカオスが出ることを示した。この結果は注目すべき結果である。なお,カオスの生起と対称性について研究をすすめている。池田勉は,反応拡散方程式のパルス解について,進行波解も含めてきわめて詳しい結果を得た。岡田至弘は,フラクタルの方法としての,パターン認識に独創的な工学の方法を見つけだし,実用に用いた。代表者山口昌哉は,とくにカオスについて,次のような重要な知見を得た。1879年に,代表者は俣野博と共著で,常微分方程式の差分化はきざみ巾Δtが大きいとき,オイラーの差分化は力学系とみてカオスを発生することを証明した。この仕事は,平衡点2つの存在を仮定し,その1つがきわめて安定なことを仮定していた。そこで,代表者は前田陽一と共同で,fのある条件のもとΔtが十分に小であれば,リイとヨ-クの意味のカオスが出ることを示した。この結果は注目すべき結果である。なお,カオスの生起と対称性について研究をすすめている。池田勉は,反応拡散方程式のパルス解について,進行波解も含めてきわめて詳しい結果を得た。岡田至弘は,フラクタルの方法としての,パターン認識に独創的な工学の方法を見つけだし,実用に用いた。本年度は、特にカオスの応用について、11月に3日間にわたって、豊田自動車の支援によって、国際集会「ハーネッシングオブケイオス」を行った。世界的権威10名程を招待し、日本からも20数名のエキスパートの出席を得て、初めてのカオスの工学的応用の研究集会を行った。ここで、2つの方向、カオスを制御して、ある目的のダイナミックスを作ることおよび、カオスそのものを認識プロセスとして用いるという方向が判明した。この集会は代表者が中心となって催されたが、代表者自身は、社会学における閾値モデルについて考察を進め、外国の雑誌に投稿した。尚これは社会学的調査にも新しい方向を与えている。有木康雄はウェーブレットの工学的応用について研究を進め、中村宏は疲労の問題を引き続き研究している。代表者は今までの成果を岩波書店から、4月に出版した(木上淳、畑政義と共著)。更に、多くの講演会において成果を発表した。尚ウェーブレットについては、実用に供されることが既にはじまっており、その成果を10月に三菱総合研究所において発表していただいた。応用の分野は、化学プラント[反応槽のコントロール]、[音声認識]、[信号処理]、[株価予測]等数多く示された。この場合、ウェーブレットの選び方に多義性のあることから、いくつも用途によって選ぶことができ、その中には数学的な意味で厳密に平均=0の条件が満たされなくとも、十分実用に役に立つことがわかった。例えば、Gabor関数はパラメータを適当にとると、Waveletとして用いることが可能である。フラクタルの応用については今のところ、あまり進展はない。本年度は、今まで代表者の進めていた研究のうち、社会現象における離散モデルについて、Computer and Mathematics with Applications Vol.28,No.10,1994に「Discrete Models is Social Sciences」を発表、更に、代表者自身が1979年に発表した論文が新しく見直され、前田陽一が、微分方程式によっては、きざみ巾をどうとってもカオスがおこることを示した。これは経済学にとって、意味があることである。岡田至弘は、引き続いてフラクタルの情報への応用を研究している。カラー画像の構造記述としての等色線情報を用いて、グラデーション領域を含むカラー画像の領域分割を行った。本手法による領域分割結果から、従来、分割不能として処理されていた。緩やかな色変化を示す領域も、あいまいな領域として分割可能となり、領域をすべて閉じたものとして記述することが可能となった。要するに、この研究では理論の基礎についても、又その応用面についても、一定の進歩を印象づけた一年間であった。本年度は,前年度に得られた前田陽一の結果を代表者も協力して一般化した。^<dx>_<dt>=f(x)について,そのオイラー差分化は,十分小なるΔtに対してリイ・ヨ-クのカオスになるためのf(x)の十分条件が独立な2つの結果として得られた。(On the Discretization of O. D. E., Proc. of ICAM' 95)岡田至弘は,引き続きフラクタルの情報への応用を研究した。要するに,この研究結果はこの方面の研究をそれぞれ進歩させた。 | KAKENHI-PROJECT-05650068 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05650068 |
自己拡張型金属ステントと人工血管を利用した新しい門脈血行再建術 | 血管吻合を施行しない新しい門脈血行再建の可能性を求めるために,自己拡張型金属ステントの圧着力で人工血管を門脈に接着させるとともに,血管内腔の保持にもステントを利用する新しい門脈血行再建を検討した.近年行われつつある大動脈瘤に対するステントグラフトでは高圧による血液漏出が問題となっているが,低圧である門脈では接着部の血液漏出は少ないと予想され,腹圧の上昇による人工血管内腔の圧排,狭小化での閉塞はステント自体の拡張力で回避できると予想された.研究目的として1.手技の確立,安全性の確認2.血流量の確認,人工血管の開存率3.留置したグラフト,特に門脈-人工血管圧着部の壁構造の病理学的判定を行う予定であった.血行再建の方法としては門脈切除後,肝側門脈断端と人工血管および腸管側門脈断端と人工血管を各々3点支持による仮固定を行い,自己拡張型金属ステントをイントロデューサーを介し腸間膜静脈より挿入し,切除した腸間側門脈断端に誘導,内腔側から刺出させた後,人工血管内腔を介し,肝側門脈断端に刺出してステントを解放,門脈内腔にステントを圧着させて血行再建を完成させる方法を採用した.手技の確率を中心に検討を行ったが,人工血管の内腔保持は良好であるが,肝側固定が周囲組織が粗であることからやや不良で,血液漏出が生じる腹圧の変化等で固定部を中心とした屈曲を生じることで人工血管とステントの間に間隙が生じるためで,解放されたステントと人工血管との間に位置の差が存在する場合に生じる.人工血管とステントとの適切な位置関係を検討したが,血液漏出の問題を解決できず,安定した手技の確立には至らないかった.血管吻合を施行しない新しい門脈血行再建の可能性を求めるために,自己拡張型金属ステントの圧着力で人工血管を門脈に接着させるとともに,血管内腔の保持にもステントを利用する新しい門脈血行再建を検討した.近年行われつつある大動脈瘤に対するステントグラフトでは高圧による血液漏出が問題となっているが,低圧である門脈では接着部の血液漏出は少ないと予想され,腹圧の上昇による人工血管内腔の圧排,狭小化での閉塞はステント自体の拡張力で回避できると予想された.研究目的として1.手技の確立,安全性の確認2.血流量の確認,人工血管の開存率3.留置したグラフト,特に門脈-人工血管圧着部の壁構造の病理学的判定を行う予定であった.血行再建の方法としては門脈切除後,肝側門脈断端と人工血管および腸管側門脈断端と人工血管を各々3点支持による仮固定を行い,自己拡張型金属ステントをイントロデューサーを介し腸間膜静脈より挿入し,切除した腸間側門脈断端に誘導,内腔側から刺出させた後,人工血管内腔を介し,肝側門脈断端に刺出してステントを解放,門脈内腔にステントを圧着させて血行再建を完成させる方法を採用した.手技の確率を中心に検討を行ったが,人工血管の内腔保持は良好であるが,肝側固定が周囲組織が粗であることからやや不良で,血液漏出が生じる腹圧の変化等で固定部を中心とした屈曲を生じることで人工血管とステントの間に間隙が生じるためで,解放されたステントと人工血管との間に位置の差が存在する場合に生じる.人工血管とステントとの適切な位置関係を検討したが,血液漏出の問題を解決できず,安定した手技の確立には至らないかった.血管吻合を施行しない新しい門脈血行再建の可能性を求めるために,自己拡張型金属ステントの圧着力で人工血管を門脈に接着させるとともに,血管内腔の保持にもステントを利用する新しい門脈血行再建を検討している.近年行われつつある大動脈瘤に対するステントグラフトでは高圧による血液漏出が問題となっているが,低圧である門脈では接着部の血液漏出は少ないと予想され,腹圧の上昇による人工血管内腔の圧排,狭小化での閉塞はステント自体の拡張力で回避できると予想された.研究目的として1.手技の確立,安全性の確認2.血流量の確認,人工血管の開存率3.留置したグラフト,特に門脈-人工血管圧着部の壁構造の病理学的判定を行っている.血行再建の方法としては門脈切除後,肝側門脈断端と人工血管および腸管側門脈断端と人工血管を各々3点支持による仮固定を行い,自己拡張型金属ステントをイントロデューサーを介し腸間膜静脈より挿入し,切除した腸間側門脈断端に誘導,内腔側から刺出させた後,人工血管内腔を介し,肝側門脈断端に刺出してステントを解放,門脈内腔にステントを圧着させて血行再建を完成させる方法を採用した.現在手技の確率を中心に検討中であるが,人工血管の内腔保持は良好であるが,肝側固定が周囲組織が粗であることからやや不良で,血液漏出が生じうる.腹圧の変化等で固定部を中心とした屈曲を生じることで人工血管とステントの間に間隙が生じるためで,解放されたステントと人工血管との間に位置の差が存在する場合に生じる.安定した手技の確立のために,人工血管とステントとの適切な位置関係を検討中である.血管吻合を施行しない新しい門脈血行再建の可能性を求めるために,自己拡張型金属ステントの圧着力で人工血管を門脈に接着させるとともに,血管内腔の保持にもステントを利用する新しい門脈血行再建を検討した. | KAKENHI-PROJECT-12671178 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12671178 |
自己拡張型金属ステントと人工血管を利用した新しい門脈血行再建術 | 近年行われつつある大動脈瘤に対するステントグラフトでは高圧による血液漏出が問題となっているが,低圧である門脈では接着部の血液漏出は少ないと予想され,腹圧の上昇による人工血管内腔の圧排,狭小化での閉塞はステント自体の拡張力で回避できると予想された.研究目的として1.手技の確立,安全性の確認2.血流量の確認,人工血管の開存率3.留置したグラフト,特に門脈-人工血管圧着部の壁構造の病理学的判定を行う予定であった.血行再建の方法としては門脈切除後,肝側門脈断端と人工血管および腸管側門脈断端と人工血管を各々3点支持による仮固定を行い,自己拡張型金属ステントをイントロデューサーを介し腸間膜静脈より挿入し,切除した腸間側門脈断端に誘導,内腔側から刺出させた後,人工血管内腔を介し,肝側門脈断端に刺出してステントを解放,門脈内腔にステントを圧着させて血行再建を完成させる方法を採用した.手技の確率を中心に検討を行ったが,人工血管の内腔保持は良好であるが,肝側固定が周囲組織が粗であることからやや不良で,血液漏出が生じる.腹圧の変化等で固定部を中心とした屈曲を生じることで人工血管とステントの間に間隙が生じるためで,解放されたステントと人工血管との間に位置の差が存在する場合に生じる.人工血管とステントとの適切な位置関係を検討したが,血液漏出の問題を解決できず,安定した手技の確立には至らなかった. | KAKENHI-PROJECT-12671178 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12671178 |
在日韓国・朝鮮人の生活・文化と適応に関する保健社会学的研究 | 3年間にわたった本研究の最終年度にあたる平成4年度は、これまでに実施した調査研究の成果のとりまとめと報告書の作成に重点を置いた。具体的には、在日韓国朝鮮人という人口集団の生活や文化とその変容過程に焦点をあて、1.韓国朝鮮人の国際的人口移動と在日韓国朝鮮人の歴史的推移、2.日本人および韓国人との比較からみた在日韓国朝鮮人の生活と健康、3.日韓との比較を通しての在日韓国朝鮮人の健康問題と受療状況4.在日韓国朝鮮人の生活文化とアイデンティティの世代差、5.一人暮しの在日韓国朝鮮人高齢者の生活と健康、6.済州島出身の在日韓国朝鮮人の生活過程に関する調査結果をまとめ、7.さらには、これら在日韓国朝鮮人を含めた在日外国人に対する自治体の施策の現状を、全国の市へのアンケート調査にもとづいて考察した。報告書の概要は以下のとおりである。第1論文では、韓国朝鮮人の海外移住に関する歴史的考察を行ない、海外移住韓国朝鮮人の人口の推移を把握し、それらとの関連で在日韓国朝鮮人の位置づけを試みた。第2論文では、在日韓国朝鮮人の生活様式と保健行動に関する調査を日本人と韓国人との比較を通して行ない、それらの健康状態の検討を進めた。第3論文では、医療機関に通院中の慢性疾患患者を対象にして、在日韓国朝鮮人の健康問題を検討し、患者の飲酒、喫煙、労働条件、経済状態などに関する比較を行なった。第4論文では、在日韓国朝鮮人が来日後、どのような生活の変化やライフイベントや健康問題に遭遇し、それらをどのようなソーシャル・ネットワークを通して解決してきたのかを世代別に明らかにした。最終論文では、自治体における在日外国人への保健・福祉・教育施策の動向を概括し、外国人を対象とした諸施策には地域によって差があることを示した。3年間にわたった本研究の最終年度にあたる平成4年度は、これまでに実施した調査研究の成果のとりまとめと報告書の作成に重点を置いた。具体的には、在日韓国朝鮮人という人口集団の生活や文化とその変容過程に焦点をあて、1.韓国朝鮮人の国際的人口移動と在日韓国朝鮮人の歴史的推移、2.日本人および韓国人との比較からみた在日韓国朝鮮人の生活と健康、3.日韓との比較を通しての在日韓国朝鮮人の健康問題と受療状況4.在日韓国朝鮮人の生活文化とアイデンティティの世代差、5.一人暮しの在日韓国朝鮮人高齢者の生活と健康、6.済州島出身の在日韓国朝鮮人の生活過程に関する調査結果をまとめ、7.さらには、これら在日韓国朝鮮人を含めた在日外国人に対する自治体の施策の現状を、全国の市へのアンケート調査にもとづいて考察した。報告書の概要は以下のとおりである。第1論文では、韓国朝鮮人の海外移住に関する歴史的考察を行ない、海外移住韓国朝鮮人の人口の推移を把握し、それらとの関連で在日韓国朝鮮人の位置づけを試みた。第2論文では、在日韓国朝鮮人の生活様式と保健行動に関する調査を日本人と韓国人との比較を通して行ない、それらの健康状態の検討を進めた。第3論文では、医療機関に通院中の慢性疾患患者を対象にして、在日韓国朝鮮人の健康問題を検討し、患者の飲酒、喫煙、労働条件、経済状態などに関する比較を行なった。第4論文では、在日韓国朝鮮人が来日後、どのような生活の変化やライフイベントや健康問題に遭遇し、それらをどのようなソーシャル・ネットワークを通して解決してきたのかを世代別に明らかにした。最終論文では、自治体における在日外国人への保健・福祉・教育施策の動向を概括し、外国人を対象とした諸施策には地域によって差があることを示した。研究目目(1)の「世代間比較および地域比較による在日韓国・朝鮮人の生活適応の過程と変化」に関しては、主として川崎と大阪の2地域で、各種の機関や団体や集団を通して協力が得られた在日韓国・朝鮮人に対するヒアリングを通して進められている。調査はなお進行中で、世代間並びに地域比較の分析もまだなされていないが、面接が終了している226名についての全体的な集計結果によれば、血縁の上では半数以上が本国との密接なつながりを失っており、また言葉に関しても母国の文化が失われつつあるものの、食事などの民族的な生活様式は、6割から8割程度が受け継がれていることが分かった。また、アイデンティティに関する項目では、「自分は韓国・朝鮮人であるという自覚がある」という考えには86.7%のものが「そう思う」と答え、「帰化したい」は10.2%にとどまったが、他方「本国に帰りたい」は12.0%で、「在日韓国・朝鮮人独自の文化をつくりたい」が53.6%、民族の誇りをもって生活している」63.8%の高さが目についた。研究目的(2)の「ライフスタイル、保健行動、主観的健康観と社会的文化的要因との相互関連」については、同一の調査票を用いての在日韓国・朝鮮人と日本人、そして本国の韓国人との比較という方法で進められているが、飲酒頻度、飲酒量、喫煙量、朝食摂取等の「予防的保健行動」の項目では、在日韓国・朝鮮人は日本人や韓国人よりも不良な状態にあり、運動や検診受診などでは、日本人、在日韓国・朝鮮人、そして韓国人という中間の値を示した。また、「症状への対処行動」に関しても、軽微な症状への対処行動を除けば、他のどの健康段階においても、在日韓国・朝鮮人は、日本人や韓国人よりも不良な状態にあることが分かった。なお、職場環境評価では、在日韓国・朝鮮人では、それを「悪い」とするものと「良い」と答えたものの二極に分れている。 | KAKENHI-PROJECT-02551003 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02551003 |
在日韓国・朝鮮人の生活・文化と適応に関する保健社会学的研究 | 本研究の第2年度目は,在日韓国・朝鮮人の生活適応や健康に関する実態把握を目的とし,以下に示す多角的な調査に実施に重点が置かれた,くわえて,在日韓国・朝鮮人の人口推移に関する資料収集と分析も実施した.1.地域住民調査(1)健康と生活に関する調査......神奈川県川崎市在住の在日韓国・朝鮮人と,同地域の日本人との各100人ずつを対象として配票留置調査を実施した.両群を比較した結果,(1)主観指標からみた健康水準は,在日韓国・朝鮮人の方が低い傾向にあった.(2)就労男性では,在日韓国・朝鮮人の方が劣悪な労働環境を訴える傾向にあった.(3)疾病の罹患予防や早期発見にかかわる保健行動は,日本人の方がより望ましい行動をとる傾向が示された.(2)在日韓国・朝鮮人の生活適応過程と変化に関する調査......まず,川崎および大阪の在日韓国・朝鮮人の多住地域を選定し,当該地域の関係諸団体に対するヒアリングを数回にわたりおこなった.その成果をふまえて,前項の調査対象者のうち在日韓国・朝鮮人に対してのみ自記式調査を実施した.その結果,母国との人的つながり,ハングル使用,ソ-シャルネットワ-ク,アイデンテティの側面で,1世,2世,3世の間に差が生じていることが示された.2.患者調査川崎および大阪・神戸において在日韓国・朝鮮人が多く来院している医療機関4施設をフィ-ルドとし,肝臓病で受診中の在日韓国・朝鮮人の患者と日本人の患者計約160人を対象として自記式調査を実施した.その結果,発症後の受療行動や疾病管理行動において,両群間に差のあることが示唆された.3.以上のほか,1世ひとり暮し老人および自治体を対象とした調査に着手しており,実査を継続中である.3年間にわたった本研究の最終年度にあたる平成4年度は,これまでに実施した調査研究の成果のとりまとめと報告書の作成に重点を置いた。具体的には、在日韓国朝鮮人という人口集団の生活や文化とその変容過程に焦点をあて, 1.韓国朝鮮人の国際的人口移動と在日韓国朝鮮人の歴史的推移, 2.日本人および韓国人との比較からみた在日韓国朝鮮人の生活と健康, 3.日韓との比較を通しての在日韓国朝鮮人の健康問題と受療状況, 4.在日韓国朝鮮人の生活文化とアイデンティティの世代差, 5.一人暮しの在日韓国朝鮮人高齢者の生活と健康, 6.済州島出身の在日韓国朝鮮人の生活過程に関する調査結果をまとめ, 7.さらには,これら在日韓国朝鮮人を含めた在日外国人に対する自治体の施策の現状を,全国の市へのアンケート調査にもとづいて考察した。報告書の概要は以下のとおりである。第1論文では,韓国朝鮮人の海外移住に関する歴史的考察を行ない,海外移住韓朝鮮人の人口の推移を把握し,それらとの関連で在日韓国朝鮮人の位置づけを試みた。第2論文では,在日韓国朝鮮人の生活様式と保健行動に関する調査を日本人と韓国人との比較を通して行ない,それらの健康状態の検討を進めた。第3論文では,医療機関に通院中の慢性秀患患者を対象にして,在日韓国朝鮮人の健康問題を検討し,患者の飲酒,喫煙,労働条件,経済状態などに関する比較を行なった。第4論文では,在日韓国朝鮮人が来日後,どのような生活の変化やライフイベントや健康問題に遭遇し,それらをどのようなソーシャル・ネットワークを通して解決してきたのかを世代別に明らかにした。最終論文では,自治体における在日外国人への保健・福祉・教育施策の動向を概括し,外国人を対象とした諸施策には地域によって差があることを示した。 | KAKENHI-PROJECT-02551003 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02551003 |
途上国におけるコンファインドメーソンリー建物の耐震性向上 | 通路型開口の存在によりコンファインドメーソンリー壁体の水平耐力は減少し,その程度は偏在開口の場合がより大きい。これに対し鉄筋コンクリート造の縦枠で補強すれば,壁体の耐震性能を大きく改善できる。特に,縦枠に加えて横枠を配置すれば,無開口の壁体をも上回るせん断強度を与えることができることを明らかにした。また,れんが単体の強度に対して目地モルタルの強度が極端に低い場合には,壁体のせん断ひび割れ強度,せん断終局強度を推定するパラメータとしてプリズム強度を採用することには注意が必要であることを指摘した。本研究では,通路型開口の存在が枠組組積造壁体の耐震性能に及ぼす影響を把握するとともにその補強方法の提案を行うことにより,途上国における大規模地震災害リスクの軽減に貢献することを目的としている。本年度は,開口部周辺をRC造の枠材で補強した試験体を2体製作し,一定の鉛直荷重下において繰返しの水平加力実験を行った。試験体はれんが壁体の強度が高い場合を想定し,壁体の目地に比較的強度の高いモルタルを用いた。この実験により得られた結果と,過去の実験結果を用い,通路型開口の存在が枠組組積造壁体の耐震性能に及ぼす影響ならびに鉄筋コンクリート枠材による補強の効果について検討を行った。また,鉄筋コンクリート枠材によるせん断補強効果を表現するため,組積造壁体の斜め圧縮力と鉄筋コンクリート造の縦枠材ならびに横枠材の引張力により構成されるアーチ機構に基づいた強度算定式を適用し,その妥当性について実験結果と比較検討を行った。以上の研究により得られた結果を以下にまとめて示す。(1)窓型開口試験体では拘束柱・縦枠に太径の主筋を用いることで変形性能の改善が見られた。しかし,通路型開口試験体では窓型開口試験体ほどではなかった。(2)プリズム強度が高くなるほど,せん断ひび割れ荷重の実験値,最大荷重実験値ともに線形的に増大した。(3)本年度の2体の試験体のせん断終局強度は,アーチ機構に基づいた計算値で概ね評価できた。通路型開口の存在によりコンファインドメーソンリー壁体の水平耐力は減少し,その程度は偏在開口の場合がより大きい。これに対し鉄筋コンクリート造の縦枠で補強すれば,壁体の耐震性能を大きく改善できる。特に,縦枠に加えて横枠を配置すれば,無開口の壁体をも上回るせん断強度を与えることができることを明らかにした。また,れんが単体の強度に対して目地モルタルの強度が極端に低い場合には,壁体のせん断ひび割れ強度,せん断終局強度を推定するパラメータとしてプリズム強度を採用することには注意が必要であることを指摘した。本研究では,通路型開口の存在が枠組組積造壁体の耐震性能に及ぼす影響を把握するとともにその補強方法の提案を行うことにより,途上国における大規模地震災害リスクの軽減に貢献することを目的としている。本年度は,通路型開口の周辺を小断面の鉄筋コンクリート造枠材で補強した試験体2体を設計製作し,一定の鉛直荷重下において繰返し水平荷重の載荷実験を行った。この実験により得られた結果と,過去の実験結果ならびに本研究の予備実験で得られた実験結果を用い,通路型開口の存在が枠組組積造壁体の耐震性能に及ぼす影響ならびに鉄筋コンクリート枠材による補強の効果について検討を行った。また,鉄筋コンクリート枠材によるせん断補強効果を表現するため,組積造壁体の斜め圧縮力と鉄筋コンクリート造の縦枠材ならびに横枠材の引張力により構成されるアーチ機構に基づいた強度算定式を考案し,その妥当性について実験結果と比較検討を行った。以上の研究により得られた結果を以下にまとめて示す。(1)偏在開口を有する試験体では,加力方向によって鉄筋コンクリート枠材による補強効果に違いが見られた。(2)開口部の周辺を鉄筋コンクリート造の縦枠材で補強した試験体は,正加力側では無開口の試験体をも上回る最大荷重を示した。(3)縦枠材に加えて横枠材を配置した試験体では,より高い補強効果が得られた。(4)考案したせん断終局強度の算定式は過大評価を与えた。計算精度の向上が今後の課題である。本研究では,通路型開口の存在が枠組組積造壁体の耐震性能に及ぼす影響を把握するとともにその補強方法の提案を行うことにより,途上国における大規模地震災害リスクの軽減に貢献することを目的としている。これまでの研究では,壁体の目地に通常のモルタルを用いてきたが,本年度は消石灰入りのモルタルを用いた2体の試験体により,れんが壁体の強度が低い条件下で開口部周辺をRC造の枠材で補強した場合の効果を実験的に検討した。また,本年度の実験により得られた結果と過去の実験結果を用い,通路型開口の存在が枠組組積造壁体の耐震性能に及ぼす影響ならびに鉄筋コンクリート枠材による補強の効果について検討を行った。さらに,本研究では鉄筋コンクリート枠材によるせん断補強効果を表現するため,組積造壁体の斜め圧縮力と鉄筋コンクリート造の縦枠材ならびに横枠材の引張力により構成されるアーチ機構に基づいた強度算定式を考案してきたが,その妥当性について実験結果と比較検討するとともに数値解析を試行した。以上の研究により得られた結果を以下にまとめて示す。(1)プリズム強度よりもモルタル強度の方がせん断ひび割れ強度,せん断終局強度と良い相関を示した。(2)2体の試験体のせん断終局強度実験値は,強度算定式による計算値の0.39倍0.56倍であり,強度算定式は過大評価を与えた。 | KAKENHI-PROJECT-24510257 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24510257 |
途上国におけるコンファインドメーソンリー建物の耐震性向上 | 今後,数値解析による力の流れ等を取り入れて強度算定式の精度向上を検討する必要がある。建築構造・材料研究の2年目にあたる平成25年度は,鉄筋コンクリート造枠材による補強の効果は補強される側のれんが造壁体の強度にも依存すると考えられることから,その影響を明らかにすることを目的とした。予定どおり,壁体試験体2体の実験を実施し,既往の実験結果と合わせて比較検討を実施することができた。その結果,通路型開口を有する枠組組積造壁体のせん断強度はれんが壁体の強度に依存するが,その影響は適用した強度算定式により概ね推定できることを明らかにすることができた。あと1年の研究により,一設計法を提案できる可能性がある。研究の初年度にあたる平成24年度は,通路型開口により枠組組積造壁体の耐震性能がどれだけ低下するかを把握するとともに,開口回りを鉄筋コンクリート造枠材により補強する方法の効果を実験的に検討することを目的とした。予定どおり,壁体試験体2体の実験を実施し既往の実験結果と合わせて比較検討を実施することができた。その結果,通路型開口の存在により枠組組積造壁体のせん断強度は低下するが,本研究で検討対象としている鉄筋コンクリート造枠材の配置のし方によっては,その強度低下を十分にカバーできることを明らかにすることができた。あと2年の研究により,実用技術として提案できる可能性がある。これまで概ね順調に研究が進展しているため,今後も研究計画どおりに進めたい。これまで,れんが壁体の強度の影響について有意義な検討ができたが,途上国では極めて低強度の目地モルタルが使用されることがあり,その場合にも検討している補強法が有効かどうかを明らかにする必要がある。また,これに並行して,鉄筋コンクリート造枠材による補強効果の算定精度の向上のため,数値解析法等を適用し,考案した力学モデルの妥当性を検証したい。これまで概ね順調に研究が進展しているため,今後も研究計画どおりに進めたい。鉄筋コンクリート造枠材による補強の効果は補強される側のれんが造壁体の強度にも依存すると考えられる。設計法を提案するためにはその影響を明らかにする必要があり,研究の2年目にあたる平成25年度はこれに取り組む。具体的には,壁体の強度を変動因子とした試験体を2体製作し破壊実験を行う。これに並行して,鉄筋コンクリート造枠材による補強効果の算定精度の向上のため,初年度に考案した力学モデルの修正を行う。研究遂行のため数値解析ソフト等を導入したいが,翌年度の助成金だけでは不足する可能性が生じた。翌年度の助成金と合わせて,数値解析ソフト等の導入に使用する計画である。該当なし | KAKENHI-PROJECT-24510257 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24510257 |
地域と学校の連携に関する史的研究〜昭和恐慌下における学校の社会的位相〜 | 本研究、地域と学校の連携に関する史的研究昭和恐慌下における学校の社会的位相は、昭和恐慌を画期とした、学校の社会的位相を明らかにすることを目的とした。これまでの成果を結論的に言うならば、第一次大戦後において興隆した個人化された大衆社会は、都市部におけるそのさらなる進展の一方で、農村部においては反動的に、再び伝統的な共同体志向を醸造し、国家もまた恐慌下統治政策として、民衆を再度「地域」に眠り込ませる政策を展開した。その際、地域再編の論理を旧来型の「名望家支配」から、「中堅人物」の育成へとシフトさせながら、その実質を担保するため、学校の地域化、或いは、地域の学校化を推進してゆくことになった。その具体的展開は、農山漁村経済更正運動によってなされた。この農山漁村経済更正運動(農林省)は、内務省の主導する「国民更生運動」と相克関係にあったとは言え、その人的資源の開拓において地域と学校の連携を重視する点で、共通の認識を示していた。上述した連携は、二つの側面から推進された。一つは、社会教育の徹底(教化団体の指導・育成)による地域の教育化、或いは地域の学校化と呼ぶべき側面である。他方は、学校教育における郷土教育の導入や実業補修学校の整備・強化による、教育・学校の地域化、或いは生活化である。昭和戦前期における学校と地域の連携は、ある側面において現在もなお一つの「理想」とされ、戦後の「コミュニティづくり運動」(自治省)を経て、いま、生涯学習体系の整備として、酷似した状況が展開されている。昭和恐慌期におけるひとづくり志向は、いわば「開かれた学校」を標傍する生涯学習体系下における学校の社会的位相と酷似しているのであり、価値の混迷する現代において、その価値の統合という発想を伏在させながら、ともに示唆深い歴史状況を示していると言えるのである。本研究は、昭和恐慌を画期とした、学校の社会的を明らかにすることを目的としている。これまでの成果を結論的に言うならば、第一次大戦後において興隆した個人化された大衆社会は、再び伝統的な共同体を志向し、国家もまた恐慌下統治政策として、民衆を再度「地域」に眠り込ませる政策を展開する。その際、地域再編の論理を旧来型の「名望家支配」から、「中堅人物」の育成へとシフトしながら、その実質を担保するため、学校の地域化、或いは、地域の学校化を推進してゆくことになった。その具体的展開は、農山漁村経済更正運動によってなされた。この農山漁村経済更正運動下における地域と学校の連携は、次の二つの側面から推進された。一つは、社会教育の徹底(教化団体の指導・育成)による地域の教育化、或いは地域の学校化と呼ぶべき側面である。他方は、学校教育における郷土教育の導入や実業補修学校の整備・強化による、教育・学校の地域化、或いは生活化である。昭和戦前期における学校と地域の連携は、ある側面において現在なお一つの「理想」とされ、戦後の「コミュニティづくり運動」(自治省)を経て、いま、生涯学習体系の整備過程において再志向されていると言える。我が国においては、人心の乱れや不安定な社会状況を乗り切る際には、必ずと言って良いほど「地域」が着目され、課題の解消のために、「地域」が内包する伝統主義的矯正力、或いは伝統主義的拘束力を学校との連携によって教育化するという方法に依存すると言わざるを得ない。今後は以上の成果を踏まえ、地方文書等を史・資料としながら、昭和戦前期の学校と地域の連携が、「批判」のための思想的土壌を欠落させ、全体主義を補完した歴史経験について考究してゆきたい。本研究、地域と学校の連携に関する史的研究昭和恐慌下における学校の社会的位相は、昭和恐慌を画期とした、学校の社会的位相を明らかにすることを目的とした。これまでの成果を結論的に言うならば、第一次大戦後において興隆した個人化された大衆社会は、都市部におけるそのさらなる進展の一方で、農村部においては反動的に、再び伝統的な共同体志向を醸造し、国家もまた恐慌下統治政策として、民衆を再度「地域」に眠り込ませる政策を展開した。その際、地域再編の論理を旧来型の「名望家支配」から、「中堅人物」の育成へとシフトさせながら、その実質を担保するため、学校の地域化、或いは、地域の学校化を推進してゆくことになった。その具体的展開は、農山漁村経済更正運動によってなされた。この農山漁村経済更正運動(農林省)は、内務省の主導する「国民更生運動」と相克関係にあったとは言え、その人的資源の開拓において地域と学校の連携を重視する点で、共通の認識を示していた。上述した連携は、二つの側面から推進された。一つは、社会教育の徹底(教化団体の指導・育成)による地域の教育化、或いは地域の学校化と呼ぶべき側面である。他方は、学校教育における郷土教育の導入や実業補修学校の整備・強化による、教育・学校の地域化、或いは生活化である。昭和戦前期における学校と地域の連携は、ある側面において現在もなお一つの「理想」とされ、戦後の「コミュニティづくり運動」(自治省)を経て、いま、生涯学習体系の整備として、酷似した状況が展開されている。 | KAKENHI-PROJECT-11710151 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11710151 |
地域と学校の連携に関する史的研究〜昭和恐慌下における学校の社会的位相〜 | 昭和恐慌期におけるひとづくり志向は、いわば「開かれた学校」を標傍する生涯学習体系下における学校の社会的位相と酷似しているのであり、価値の混迷する現代において、その価値の統合という発想を伏在させながら、ともに示唆深い歴史状況を示していると言えるのである。 | KAKENHI-PROJECT-11710151 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11710151 |
核融合炉用低放射化制御材料に関する基礎研究 | 今年度は過去3年間の結果の考察と追加実験研究を行った。その結果、低放射化材料の開発に際し検討されるべき事項として、以下のようにまとめられた。1)Fe-Cr-Ni系鋼について、照射下で粒界におけるNiの顕著な偏析とCr濃度の低下を同定し、偏析と同時に粒界移動が起こり、これら現象は照射点欠陥の粒界への流入に支配されることを中性子照射および電子線照射実験から明らかにした。また、高速中性子照射により約50dpaで数%のスエリングが生ずることを観察した。これらのことから、改良型316ステンレス鋼は、国際熱核融合実験炉(ITER)のように短期的には照射量(30dpa程度)が少なく、放射化レベルも低い場合には低スエリングのため核融合炉構造材として使用可能である。2)各種低放射化オーステナイトFe-Cr-Mn系鋼を200°Cで中性子照射後、機械的性質と合金組成の関係を調べ、Fe-10%Cr-(20-25)%Mn-3%AlおよびFe-10%Cr-30%Mn鋼が良好な性質を示し、また、Al添加により照射下における相安定性が向上することを明らかにした。また、Fe-Cr-Mn系改良AMCR合金鋼を高速中性子で420°C、520°C及び600°Cで32-36dpaまで照射後、密度測定からスエリングを評価した結果、Fe-12%Cr-11%Mn-0.5%Si-1.4%Wに0.3%Cを添加した鋼が耐スエリング特性に優れているが、相安定性に欠けることを確認し、炭素添加がある程度スエリング抑制および相安定に効果的であることが判明した。以上の結果から、Fe-Cr-Mn系高マンガン鋼の場合は、電磁場、強度等の核融合炉の環境を考慮すると魅力ある材料である。しかし、第一壁材料の様に500°C以上の高温度に曝せれる場合は、相安定性の観点から不適と判断され、核融合、炉のバックアップ材など200°C以下の低温度での構造材料としてのみ利用可能と評価された。3)低放射化Fe-(9-12)Cr-2W鋼をFFTFで高速中性子照射後の機械的性質に及ぼすB、Y、Al添加の効果を調べ、スエリング非常に低く100dpaでも問題にならない程度であった。MoやMbに代わってWやV元素の添加により降伏強度や抗張力は十分維持できるが、DBTTが照射で上昇することが明らかにされた。従って、オーステナイト系ステンレス鋼に代わる第一壁材料あるいはブランケット構造材として低放射化フェライト鋼が実証炉等中期的には有望であるがDBTTを改善する必要する必要がある。これまでの実験から、機械的性質、耐照射特性を考慮するとFe-(9-12)%Cr-2%W鋼が最適と判断される。ただし、核変換で生成するヘリウムの靭性-脆性遷移温度(DETT)上昇が大きいためそのヘリウム効果の解決が重要であることが指摘された。4)低放射化材料として将来最も期待されている、バナジウム及びバナジウム合金の照射化の合金組成変化として、核変換(n,r)による組成変化が中性子照射により起こることを見い出し、特にバナジウムではCrおよびTiが生成することをEDS分析からはじめて明らかにした。現在、V-4Cr-4Ti合金が耐照射特性に優れている低放射化合金として有望視されてが、長期間の使用中に核変換でCr新たに生成されるため合金成分が変化し、その結果、材料特性が大きく影響される可能性が有ることが明かになり、今後この核変換元素の効果の更なる研究が必要であることが指摘された。5)照射現象に関する基礎的知見として、(a)Vと同様に核変換により、WがReさらにOs元素に変化する事が同定され、低放射化フェライト鋼に添加されているWがこの核変換でその性質が大きく影響されること、(b)電子線/Heイオン同時照射実験から、Heは原子空孔と強く相互作用し、空孔型積層欠陥四面体がボイド核生成サイトとなる。また、TiおよびPの微量添加によりスエリング、および粒界偏析が抑制されるが、ボイド数密度は増大すること、さらに(c)ステンレス鋼の粒界は照射中移動と濃度変化が起こり、粒界移動はエピタキシアル的に成長に起因する事を明らかにした。今年度は過去3年間の結果の考察と追加実験研究を行った。その結果、低放射化材料の開発に際し検討されるべき事項として、以下のようにまとめられた。1)Fe-Cr-Ni系鋼について、照射下で粒界におけるNiの顕著な偏析とCr濃度の低下を同定し、偏析と同時に粒界移動が起こり、これら現象は照射点欠陥の粒界への流入に支配されることを中性子照射および電子線照射実験から明らかにした。また、高速中性子照射により約50dpaで数%のスエリングが生ずることを観察した。これらのことから、改良型316ステンレス鋼は、国際熱核融合実験炉(ITER)のように短期的には照射量(30dpa程度)が少なく、放射化レベルも低い場合には低スエリングのため核融合炉構造材として使用可能である。2)各種低放射化オーステナイトFe-Cr-Mn系鋼を200°Cで中性子照射後、機械的性質と合金組成の関係を調べ、Fe-10%Cr-(20-25)%Mn-3%AlおよびFe-10%Cr-30%Mn鋼が良好な性質を示し、また、Al添加により照射下における相安定性が向上することを明らかにした。また、Fe-Cr-Mn系改良AMCR | KAKENHI-PROJECT-05044071 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05044071 |
核融合炉用低放射化制御材料に関する基礎研究 | 合金鋼を高速中性子で420°C、520°C及び600°Cで32-36dpaまで照射後、密度測定からスエリングを評価した結果、Fe-12%Cr-11%Mn-0.5%Si-1.4%Wに0.3%Cを添加した鋼が耐スエリング特性に優れているが、相安定性に欠けることを確認し、炭素添加がある程度スエリング抑制および相安定に効果的であることが判明した。以上の結果から、Fe-Cr-Mn系高マンガン鋼の場合は、電磁場、強度等の核融合炉の環境を考慮すると魅力ある材料である。しかし、第一壁材料の様に500°C以上の高温度に曝せれる場合は、相安定性の観点から不適と判断され、核融合、炉のバックアップ材など200°C以下の低温度での構造材料としてのみ利用可能と評価された。3)低放射化Fe-(9-12)Cr-2W鋼をFFTFで高速中性子照射後の機械的性質に及ぼすB、Y、Al添加の効果を調べ、スエリング非常に低く100dpaでも問題にならない程度であった。MoやMbに代わってWやV元素の添加により降伏強度や抗張力は十分維持できるが、DBTTが照射で上昇することが明らかにされた。従って、オーステナイト系ステンレス鋼に代わる第一壁材料あるいはブランケット構造材として低放射化フェライト鋼が実証炉等中期的には有望であるがDBTTを改善する必要する必要がある。これまでの実験から、機械的性質、耐照射特性を考慮するとFe-(9-12)%Cr-2%W鋼が最適と判断される。ただし、核変換で生成するヘリウムの靭性-脆性遷移温度(DETT)上昇が大きいためそのヘリウム効果の解決が重要であることが指摘された。4)低放射化材料として将来最も期待されている、バナジウム及びバナジウム合金の照射化の合金組成変化として、核変換(n,r)による組成変化が中性子照射により起こることを見い出し、特にバナジウムではCrおよびTiが生成することをEDS分析からはじめて明らかにした。現在、V-4Cr-4Ti合金が耐照射特性に優れている低放射化合金として有望視されてが、長期間の使用中に核変換でCr新たに生成されるため合金成分が変化し、その結果、材料特性が大きく影響される可能性が有ることが明かになり、今後この核変換元素の効果の更なる研究が必要であることが指摘された。5)照射現象に関する基礎的知見として、(a)Vと同様に核変換により、WがReさらにOs元素に変化する事が同定され、低放射化フェライト鋼に添加されているWがこの核変換でその性質が大きく影響されること、(b)電子線/Heイオン同時照射実験から、Heは原子空孔と強く相互作用し、空孔型積層欠陥四面体がボイド核生成サイトとなる。また、TiおよびPの微量添加によりスエリング、および粒界偏析が抑制されるが、ボイド数密度は増大すること、さらに(c)ステンレス鋼の粒界は照射中移動と濃度変化が起こり、粒界移動はエピタキシアル的に成長に起因する事を明らかにした。本年度は、米国および日本での当初計画に沿った実験研究により、次の主なる成果を得ることが出来た。1.低放射化オーステナイトFe-Cr-Mn系鋼を200°C、0.04dpaまで中性子照射後、機械的性質と合金組成の関係を調べ、Fe-10%Cr-(20-25)%Mn-3%AlおよびFe-10%Cr-30%Mn鋼が良好な性質を示し、また、Al添加により照射下における相安定性が向上することを明らかにした。2.Fe-Cr-Mn系改良AMCR合金鋼を高速中性子で420°C、520°C及び600°Cで32-36dpaまで照射後、密度測定からスエリングを評価した結果、Fe-12%Cr-11%Mn-0.5% | KAKENHI-PROJECT-05044071 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05044071 |
エリスロポエチンレセプターからのチロシンリン酸化を介した細胞内情報伝達機構の解析 | 私達はこれまでに,エリスロポエチン(エポ)レセプターのC末端領域はPhosphatidylinositol3-kinase(PI3K)と結合することを見出しているが,この領域が増殖刺激伝達以外のどのような機能を担っているかを検討するため,この領域を欠如したレセプターおよび細胞内膜近位部の点突然変異によりJak2キナーゼ活性化能を失ったレセプターを,BaF3細胞に発現させエポ刺激によるヘモグロビンの発現を指標に赤芽球系への分化誘導能の検討を行った.その結果,PI3Kとの結合能を有するレセプターのC末端領域は分化誘導にも必要でなく,Jak2活性化能を有する膜近位部がやはり分化にも必要であることが判明した(投稿準備中).また,私達はエポレセプターC末端領域の機能を探る過程で,SH2領域を有するチロシンホスファターゼであるHematopoietic cell phosphatase(HCP)が,やはりこの領域のチロシンリン酸化に依存してエポレセプターと結合することを見出した(Blood85:87-95,1995).この結合は,C末端領域による増殖刺激抑制に関与している可能性が高く,今後より詳細な検討を要する.エポ刺激によるRas/MAPキナーゼ経路活性化につき検討したところ,エポ刺激はRas活性化に関与しているShcのチロシンリン酸化とGrb2/Ashとの結合を誘導することを見出した.これらの現象はC末端部を欠いたレセプターではほとんど認められなかった.さらに,エポ刺激はRasの下流にあるMAPキナーゼの活性化ももたらしたが,この活性化もやはりレセプターのC末端領域に依存性を示した.これらのことよりエポレセプターはShcのチロシンリン酸化とGrb2/Ashとの結合を介してRas/MAPキナーゼ経路を活性化すると考えられる.しかし,この経路の活性化は増殖シグナル伝達に必須ではないレセプターのC末端領域に依存しており,レセプターからのシグナル伝達における意義の解明は今後の課題である(J.Biol.Chem.269:29962-69,1994).私達はこれまでに,エリスロポエチン(エポ)レセプターのC末端領域はPhosphatidylinositol3-kinase(PI3K)と結合することを見出しているが,この領域が増殖刺激伝達以外のどのような機能を担っているかを検討するため,この領域を欠如したレセプターおよび細胞内膜近位部の点突然変異によりJak2キナーゼ活性化能を失ったレセプターを,BaF3細胞に発現させエポ刺激によるヘモグロビンの発現を指標に赤芽球系への分化誘導能の検討を行った.その結果,PI3Kとの結合能を有するレセプターのC末端領域は分化誘導にも必要でなく,Jak2活性化能を有する膜近位部がやはり分化にも必要であることが判明した(投稿準備中).また,私達はエポレセプターC末端領域の機能を探る過程で,SH2領域を有するチロシンホスファターゼであるHematopoietic cell phosphatase(HCP)が,やはりこの領域のチロシンリン酸化に依存してエポレセプターと結合することを見出した(Blood85:87-95,1995).この結合は,C末端領域による増殖刺激抑制に関与している可能性が高く,今後より詳細な検討を要する.エポ刺激によるRas/MAPキナーゼ経路活性化につき検討したところ,エポ刺激はRas活性化に関与しているShcのチロシンリン酸化とGrb2/Ashとの結合を誘導することを見出した.これらの現象はC末端部を欠いたレセプターではほとんど認められなかった.さらに,エポ刺激はRasの下流にあるMAPキナーゼの活性化ももたらしたが,この活性化もやはりレセプターのC末端領域に依存性を示した.これらのことよりエポレセプターはShcのチロシンリン酸化とGrb2/Ashとの結合を介してRas/MAPキナーゼ経路を活性化すると考えられる.しかし,この経路の活性化は増殖シグナル伝達に必須ではないレセプターのC末端領域に依存しており,レセプターからのシグナル伝達における意義の解明は今後の課題である(J.Biol.Chem.269:29962-69,1994). | KAKENHI-PROJECT-06671076 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06671076 |
難治性喘息における抗炎症性脂質メディエーターの治療応用への可能性 | 臨床において喘息患者におけるオメガ3脂肪酸摂取の有効性を示した報告は散見されるが未だ詳細な機序については明らかではない。我々は卵白アルブミン(OVA)曝露感作およびダニ誘発性喘息マウスモデルにおいてオメガ3脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)を投与しその有効性を検討したところ、両マウスモデルにおいて好酸球性気道炎症ならびに肺内における炎症性サイトカインの発現抑制を認めた。そこで我々はこれらのモデルにEPAを投与して、肺内におけるEPA由来代謝産物を始めとした脂質メディエーターのprofileを検討し、抗炎症作用に関与する脂質の探索・同定をおこなった。この検討には連携研究者有田誠先生らの協力のもと脂肪酸代謝産物を高感度に検出することができるLC-MS/MSを用いて包括的メタボローム解析を行った。その結果、抗炎症作用に関わる可能性があるEPA代謝産物がいくつか候補として挙げられ、これらの化合物を同モデルに投与してその効果を評価した。ダニ誘発マウスモデルに対してこれらの候補化合物の有効性は認められなかった。一方OVA曝露感作喘息マウスモデルに対して候補化合物を投与したところ、その一つである12OH-17,18-EpETEが好酸球気道炎症を抑制した。さらに投与後の肺におけるeotaxin-1のmRNAの発現が抑制されていることを確認した。さらにヒト気道上皮細胞株をIL-4, IL-13用いて刺激したところ12OH-17,18-EpETE存在下ではeotaxin-1の産生が抑制されることを明らかにした。以上のことからOVA曝露感作喘息マウスモデルにおいてEPA代謝産物12OH-17,18-EpETEはEotaxin-1抑制を介して好酸球性気道炎症を抑制する可能性が考えられた。臨床において喘息患者におけるオメガ3脂肪酸摂取の有効性を示した報告は散見されるが未だ詳細な機序については明らかではない。我々は卵白アルブミン(OVA)曝露感作およびダニ誘発性喘息マウスモデルにおいてオメガ3脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)を投与しその有効性を検討したところ、両マウスモデルにおいて好酸球性気道炎症ならびに肺内における炎症性サイトカインの発現抑制を認めた。そこで我々はこれらのモデルにEPAを投与して、肺内におけるEPA由来代謝産物を始めとした脂質メディエーターのprofileを検討し、抗炎症作用に関与する脂質の探索・同定をおこなった。この検討には連携研究者有田誠先生らの協力のもと脂肪酸代謝産物を高感度に検出することができるLC-MS/MSを用いて包括的メタボローム解析を行った。その結果、抗炎症作用に関わる可能性があるEPA代謝産物がいくつか候補として挙げられ、これらの化合物を同モデルに投与してその効果を評価した。ダニ誘発マウスモデルに対してこれらの候補化合物の有効性は認められなかった。一方OVA曝露感作喘息マウスモデルに対して候補化合物を投与したところ、その一つである12OH-17,18-EpETEが好酸球気道炎症を抑制した。さらに投与後の肺におけるeotaxin-1のmRNAの発現が抑制されていることを確認した。さらにヒト気道上皮細胞株をIL-4, IL-13用いて刺激したところ12OH-17,18-EpETE存在下ではeotaxin-1の産生が抑制されることを明らかにした。以上のことからOVA曝露感作喘息マウスモデルにおいてEPA代謝産物12OH-17,18-EpETEはEotaxin-1抑制を介して好酸球性気道炎症を抑制する可能性が考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-26670421 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26670421 |
膵β細胞グルタミン酸シグナルの生理学的・病態生理学的役割の解明 | 食後に腸管から分泌されるインクレチンはcAMPシグナルを介してグルコース濃度依存的にインスリン分泌を促進する。最近、研究代表者らはグルコース代謝により産生されたグルタミン酸がインスリン顆粒内に取り込まれることがインクレチン/cAMPシグナルによるインスリン分泌に必須であることを明らかにした。しかしながら、インスリン顆粒内のグルタミン酸がどのようにしてインスリン分泌を促進するのか、そのメカニズムは依然として不明である。本研究では、網羅的プロテオミクスの手法により、膵β細胞のグルタミン酸シグナルによるインスリン分泌を増強する機構を明らかにし、その生理学的ならびに病態生理学的意義を解明することを目的とする。本年度は以下の研究を行った。(1)グルタミン酸シグナルの標的分子の同定とその役割の解明:前年度に引き続き、候補分子および候補分子と相互作用し開口分泌に関与するとの報告がある分子を発現するベクターの作製を進めた。(2)グルタミン酸トランスポーターのin vitroにおける生理学的役割の解明:前年度に引き続き、VGLUT1、VGLUT2およびVGLUT3のノックアウトβ細胞株(KO細胞)におけるインスリン分泌特性を解析した。KO細胞に野生型VGLUT1を遺伝子導入で発現させることにより、インクレチンによるインスリン分泌の回復を認めた。(3)グルタミン酸シグナルの病態生理学的役割の解明:肥満糖尿病モデルラットから単離した膵島を用いてメタボローム解析を行い、代謝物のプロファイルを正常系統と比較した。食後に腸管から分泌されるインクレチンはcAMPシグナルを介してグルコース濃度依存的にインスリン分泌を促進する。研究代表者らはグルコース代謝により産生されたグルタミン酸がインスリン顆粒内に取り込まれることがインクレチン/cAMPシグナルによるインスリン分泌に必須であることを明らかにした。しかしながら、インスリン顆粒内のグルタミン酸がどのようにしてインスリン分泌を促進するのか、そのメカニズムは依然として不明である。本研究は、網羅的プロテオミクスの手法により代表者らが樹立した小胞型グルタミン酸トランスポーターノックアウトβ細胞株を用いた解析により、膵β細胞のグルタミン酸シグナルによるインスリン分泌を増強する機構を明らかにし、その生理学的ならびに病態生理学的意義を解明するものである。平成28年度は以下の3つの点を中心に検討を行った。(1)グルタミン酸シグナルの標的分子の同定とその役割の解明:安定同位体標識したアミノ酸を含む培地で培養した膵β細胞株MIN6から精製したインスリン顆粒画分を質量分析計で解析し、変化のあった多数のタンパク質を同定した。(2)グルタミン酸トランスポーターのin vitroにおける生理学的役割の解明:研究代表者らが樹立したVGLUTのノックアウトβ細胞株を用いて、グルコース刺激やインクレチン刺激によるインスリン分泌について検討した。(3)グルタミン酸シグナルの病態生理学的役割の解明:当研究室で最近確立された肥満・糖尿病モデルラットや肥満モデルラットなどから単離した膵島を用いて、グルコース刺激やインクレチン刺激によるインスリン分泌を解析した。また、グルコースの安定同位体である[U-13C]-グルコースを用いたメタボローム解析によりグルタミン酸を含む代謝産物を測定した。当初の計画通りに計画が進捗している。食後に腸管から分泌されるインクレチンはcAMPシグナルを介してグルコース濃度依存的にインスリン分泌を促進する。最近、研究代表者らはグルコース代謝により産生されたグルタミン酸がインスリン顆粒内に取り込まれることがインクレチン/cAMPシグナルによるインスリン分泌に必須であることを明らかにした。しかしながら、インスリン顆粒内のグルタミン酸がどのようにしてインスリン分泌を促進するのか、そのメカニズムは依然として不明である。本研究では、網羅的プロテオミクスの手法により、膵β細胞のグルタミン酸シグナルによるインスリン分泌を増強する機構を明らかにし、その生理学的ならびに病態生理学的意義を解明することを目的とする。今年度は、(1)比較プロテオーム解析によるグルタミン酸シグナルの標的分子を同定した。同定された標的分子の候補となる分子のインクレチンによるインスリン分泌増強における生理学的役割を明らかにするため、siRNAによるその分子のノックダウンのインクレチンによるインスリン分泌に対する効果を調べた。また、候補分子を発現するベクターを作製し、膵β細胞株に発現させてウエスタンブロットによりタンパクの発現を確認した。このベクターを用いて、他の開口分泌関連分子との相互作用など候補分子の機能を解析することが可能である。(2) VGLUTsのノックアウトβ細胞株を用いて、インクレチンによるインスリン分泌実験やレスキュー実験について検討した。(3)肥満・糖尿病モデルZFDMラット及び肥満モデルZFラットなどから単離した膵島を用いて、グルコース刺激やインクレチン刺激によるインスリン分泌と同時にメタボローム解析によりグルタミン酸を含む細胞内代謝物の含量について正常系統と比較検討を行った。さらに、細胞膜透過性グルタミン酸前駆体であるジメチルグルタミン酸の処置によるインスリン分泌増強について検討した。(理由)計画通り、(1)標的分子の候補となる分子のsiRNAによるノックダウンのインクレチンによるインスリン分泌に対する効果を調べた。その結果、ノックダウンによりインクレチンによるインスリン分泌が抑制された。また、候補分子を発現するベクターを作製し、膵β細胞株MIN6に発現させてウエスタンブロットによりタンパクの発現を確認した。このベクターを用いて、他の開口分泌関連分子との相互作用など候補分子の機能を解析することが可能である。(2) VGLUTsのノックアウトβ細胞株を用いて、グルコースやインクレチンによるインスリン分泌実験やレスキュー実験について検討した。 | KAKENHI-PROJECT-16K09751 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K09751 |
膵β細胞グルタミン酸シグナルの生理学的・病態生理学的役割の解明 | その結果、VGLUTsのノックアウトβ細胞株(triple KO)においてインクレチンによるインスリン分泌が減少され、外因的に導入された野生型Slc17a7またはSlc17a6遺伝子によってレスキューされたため当初の計画以上に進展している。食後に腸管から分泌されるインクレチンはcAMPシグナルを介してグルコース濃度依存的にインスリン分泌を促進する。最近、研究代表者らはグルコース代謝により産生されたグルタミン酸がインスリン顆粒内に取り込まれることがインクレチン/cAMPシグナルによるインスリン分泌に必須であることを明らかにした。しかしながら、インスリン顆粒内のグルタミン酸がどのようにしてインスリン分泌を促進するのか、そのメカニズムは依然として不明である。本研究では、網羅的プロテオミクスの手法により、膵β細胞のグルタミン酸シグナルによるインスリン分泌を増強する機構を明らかにし、その生理学的ならびに病態生理学的意義を解明することを目的とする。本年度は以下の研究を行った。(1)グルタミン酸シグナルの標的分子の同定とその役割の解明:前年度に引き続き、候補分子および候補分子と相互作用し開口分泌に関与するとの報告がある分子を発現するベクターの作製を進めた。(2)グルタミン酸トランスポーターのin vitroにおける生理学的役割の解明:前年度に引き続き、VGLUT1、VGLUT2およびVGLUT3のノックアウトβ細胞株(KO細胞)におけるインスリン分泌特性を解析した。KO細胞に野生型VGLUT1を遺伝子導入で発現させることにより、インクレチンによるインスリン分泌の回復を認めた。(3)グルタミン酸シグナルの病態生理学的役割の解明:肥満糖尿病モデルラットから単離した膵島を用いてメタボローム解析を行い、代謝物のプロファイルを正常系統と比較した。平成29年度以降は以下の通り検討を行う。(1)グルタミン酸シグナルの標的分子の同定とその役割の解明:平成28年度に引き続き、比較プロテオーム解析によるグルタミン酸シグナルの標的分子の同定を行う。同定された標的分子の候補となる分子のインクレチンによるインスリン分泌における生理学的役割を明らかにするため、siRNAによりノックダウンした細胞株あるいはゲノム編集により候補分子をノックアウトした細胞株を用いてインスリン分泌およびその動態を解析する。(2)グルタミン酸トランスポーターのin vitroにおける生理学的役割の解明:平成28年度に引き続きVGLUT1、VGLUT2およびVGLUT3のノックアウトβ細胞株を用いて、グルコース刺激やインクレチン刺激によるインスリン分泌およびその動態を解析する。 | KAKENHI-PROJECT-16K09751 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K09751 |
ポジトロン断層法を用いた身体運動時筋活動レベルの同定 | 本研究ではポジトロン断層法(Positron Emission Tomography:PET)と表面筋電図を用いて、ランニング時における骨格筋の18F-fluoro-deoxy-glucose(18F-FDG)の取り込みと筋活動の関係について検討した。昨年度までに骨格筋に取り込まれた^<18>F-FDGは骨格筋の筋活動を反映する可能性を報告した。今年度の研究目的は、方法論上の問題であるPET画像とMRI画像の同一ソフトウエア上での解析についてであった。結果は、同一のコンピュータディスプレイ上に両画像を移すことが可能になった。この成果は、科研費により購入したソフトウエアにより、MRI測定装置からパソコン上へのデータ変換により可能になった。この方法論の改善により、飛躍的にPETのデータ解析の精度と速度が改善された。大量のデータをより迅速に処理するための研究が、今後本研究課題にも必要であるが、今回の研究はその基盤となった。本研究ではポジトロン断層法(Positron emission tomography : PET)および表面筋電図を用いて、ランニング時における骨格筋の18F-fluoro-deoxy-glucose (18F-FDG)の取り込みと筋活動の関係について検討した。PETの被検者は運動群7名と対照群6名であった。筋電図実験の被検者は7名であった。PET実験の運動は35分間の平地でのランニングであり、運動中の心拍数は毎分140-150拍に保たれた。運動開始後15分目に18F-FDG (1.0-2.3 mCi)を静注した。PETの測定は運動終了20分後に開始した。対照群は18F-FDG (1.0-1.5 mCi)投与20分後にPETの測定を開始した。筋電図実験では秒速2.02.5mでのランニング中の筋活動(IEMG:積分値筋電図)を観察した。PET実験において運動群では足部および下腿の筋の18F-FDGの取り込みが、上腕・胸部・背部の筋に比べ3倍以上であった。対照群の18F-FDGの取り込みは、ランニング群のような特徴は認められなかった。腓腹筋内側頭と腓腹筋外側頭の18F-FDG取り込みを比較してみると、腓腹筋内側頭の方が有意に高い値を示した。またランニング中のIEMGも腓腹筋内側頭が腓腹筋外側頭に比べ有意に高い値を示した。大腿四頭筋では大腿直筋の18F-FDGの取り込みが他の三筋に比べ有意に低い値を示した。大腿直筋のIEMGは内側広筋および外側広筋に比べ有意に低い値を示した。以上の結果から骨格筋に取り込まれた18F-FDGは筋活動を反映する可能性が示唆された。本研究ではポジトロン断層法(Positron Emission Tomography:PET)と表面筋電図を用いて、ランニング時における骨格筋の18F-fluoro-deoxy-glucose(18F-FDG)の取り込みと筋活動の関係について検討した。昨年度までに骨格筋に取り込まれた^<18>F-FDGは骨格筋の筋活動を反映する可能性を報告した。今年度の研究目的は、方法論上の問題であるPET画像とMRI画像の同一ソフトウエア上での解析についてであった。結果は、同一のコンピュータディスプレイ上に両画像を移すことが可能になった。この成果は、科研費により購入したソフトウエアにより、MRI測定装置からパソコン上へのデータ変換により可能になった。この方法論の改善により、飛躍的にPETのデータ解析の精度と速度が改善された。大量のデータをより迅速に処理するための研究が、今後本研究課題にも必要であるが、今回の研究はその基盤となった。 | KAKENHI-PROJECT-09780035 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09780035 |
時計機構の障害と関連した精神疾患の発現機構とその治療 | 生物時計の異常が関係していると考えられる疾患において、生物時計のどの機能が異常か、それをどう治療するかを目標とした。1.動物を用いた実験的研究。光周動物ゴ-ルデンハムスタ-を用いて光周反応性と過去の光経験や個体の発達段階との関連性を立証した。ラットで飼育環境の違いによって、フリ-ランニングリズムの周期が変化すること、松果体リズムは母のリズムはメラトニンを介して子に伝達されることが示された。短日低照度条件下のラットと概日リズムは後退し、光パルスで前進するので、季節性感情障害の動物モデルになる。2.ヒトの時間生物学。隔離室内で被検者は光に対し位相反応曲線があることを確認。健常者の夜間メラトニン分泌の光抑制には個体差があり、光感受性が東洋人で低いと考えられる所見をえた。経口摂取不能の経管栄養の患者では、間欠投与で、グルコ-ス、インスリン、NEFAだけでなく血中コルチゾ-ルのリズムも移動することから、食餌摂取パタ-ンが同調因子となることがわかった。重症脳障害児でリズム異常があることから、時計機構の脳内部位を推定できることも知った。3.臨床研究。マスメディアを通じての広告により、季節性感情障害の全国施設共同研究を実施、46例の症例を得、この発症と季節との関係、臨床症状の特徴などを諸外国の報告と比較検討した結果、共通点が多いが、日本の症例は男女比が1:1.4で比較的男も多いことがわかった。光照射装置の試作、共同購入し、これらに光パルス療法を適用し有効性を確認した。この他、睡眠相遅延症候群、自閉的登校拒否児、リズムの崩れた老人性痴呆などにも光療法が有効であることがわかった。体温リズムの分析により,種々のうつ病患者で、光療法によりリズムの前進が認められるが、臨床効果とは必ずしも相関しないことがわかった。生物時計の異常が関係していると考えられる疾患において、生物時計のどの機能が異常か、それをどう治療するかを目標とした。1.動物を用いた実験的研究。光周動物ゴ-ルデンハムスタ-を用いて光周反応性と過去の光経験や個体の発達段階との関連性を立証した。ラットで飼育環境の違いによって、フリ-ランニングリズムの周期が変化すること、松果体リズムは母のリズムはメラトニンを介して子に伝達されることが示された。短日低照度条件下のラットと概日リズムは後退し、光パルスで前進するので、季節性感情障害の動物モデルになる。2.ヒトの時間生物学。隔離室内で被検者は光に対し位相反応曲線があることを確認。健常者の夜間メラトニン分泌の光抑制には個体差があり、光感受性が東洋人で低いと考えられる所見をえた。経口摂取不能の経管栄養の患者では、間欠投与で、グルコ-ス、インスリン、NEFAだけでなく血中コルチゾ-ルのリズムも移動することから、食餌摂取パタ-ンが同調因子となることがわかった。重症脳障害児でリズム異常があることから、時計機構の脳内部位を推定できることも知った。3.臨床研究。マスメディアを通じての広告により、季節性感情障害の全国施設共同研究を実施、46例の症例を得、この発症と季節との関係、臨床症状の特徴などを諸外国の報告と比較検討した結果、共通点が多いが、日本の症例は男女比が1:1.4で比較的男も多いことがわかった。光照射装置の試作、共同購入し、これらに光パルス療法を適用し有効性を確認した。この他、睡眠相遅延症候群、自閉的登校拒否児、リズムの崩れた老人性痴呆などにも光療法が有効であることがわかった。体温リズムの分析により,種々のうつ病患者で、光療法によりリズムの前進が認められるが、臨床効果とは必ずしも相関しないことがわかった。9月22日, 23日,東京私学会館において,本研究班の第1回会合を行い,公開にて22題に上る研究発表があった(第2回臨床時間生物学研究会を兼ねた).参加者80名.各分担研究者の従来からのデータを提示すると共に今後の研究方向を討論した.この中,主なものを拾うと,基礎的研究では,飼育環境の違いによるラットのフリーランニングリズムの変化,ストレスのフリーラン周期に及ぼす影響,明暗周期短縮によるラットサーカディアンリズムの位相後退モデルなど,臨床的研究では,サーカジアンリズムの同調機序,夜間血清メラトニンレベルに及ぼす光の影響,深部体温によるヒトの概日リズム測定の方法,ヒト日内リズム発現における食事の役割,季節性うつ病の症例における生体リズム,光パルス療法と躁うつ病,睡眠相遅延症候群の治療をめぐって,などがある.これらの演題についての討議の結果,季節性うつ病および睡眠相遅延症候群に対する光パルス療法の効果を確認するため,同一仕様の光照射装置を数施設で購入し,上記の他種々のうつ病にも適用することとなり,北海道松下電工試作の2500ルックスの装置が,滋賀医科大学他の施設に設置された.目下,適切な症例を選定してデータを蓄積中である.生物時計の異常が関係していると考あられる疾患において、生物時計のどの機能が異常か、それをどう治療するかを目標とした。1.動物を用いた実験的研究。光周動物ゴ-ルデンハムスタ-を用いて光周反応性と過去の光経験や個体の発達段階との関連性を立証した。ラットで飼育環境の違いによって、フリ-ランニングリズムの周期が変化すること、松果体リズムは母のリズムはメラトニンを介して子に伝達されることが示された。 | KAKENHI-PROJECT-62304044 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62304044 |
時計機構の障害と関連した精神疾患の発現機構とその治療 | 短日低照度条件下のラットの概日リズムは後退し、光パルスで前進するので、季節性感情障害の動物モデルになる。2.ヒトの時間生物学。隔離室内で被検者は光に対し位相反応曲線があることを確認。健常者の夜間メラトニン分泌の光抑制には個体差があり、光感受性が東洋人で低いと考えられる所見を得た。経口摂取不能の経管栄養の患者では、間欠授与で、グルコ-ス、インスリン、NEFAだけでなく血中コルチゾ-ルのリズムも移動することから、食餌摂取パタ-ンが同調因子となることがわかった。重症脳障害児でリズム異常があることから、時計機構の脳内部位を推定できるこも知った。3.臨床研究。マスメディアを通じての広告により、季節性感情障害の全国多施設共同研究を実施。46例の症例を得、この発症と季節との関係、臨床症状の特徴などを諸外国の報告と比較検討した結果、共通点が多いが、日本の症例は男女比が1:1.4で比較的男も多いことがわかった。光照射装置を試作、共同購入し、これらに光パルス療法を適用し有効性を確認した。この他、睡眠相遅延症候群、自閉的拒否児、リズムの崩れた老人性痴法痴呆など12も光療法が有効であることがわかった。体温リズムの分析により、種々のうつ病患者で、光療法によりリズムの前進が認められるが、臨床効果とは必ずしも相関しないことがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-62304044 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62304044 |
100場面会話による言語行動の地域差についての研究 | 本研究は、言語行動の枠組みに基づいて100場面の「場面設定会話」を収録し、それを主な資料とすることで、日本語方言における言語行動の地域差を明らかにしようとするものである。これまで宮城県をフィールドとして『生活を伝える被災地方言会話集』14で培ってきた方法論を軸に、全国の4地域(宮城・東京・大阪・大分)において、目的別言語行動の枠組みに基づく100場面会話を収録する。そして、それらの比較・分析によって言語行動の地域差を解明する。その際、補助的な方法として、会話の性質を取り入れた多人数面接調査の結果や、全国800地点の地理的分布調査の結果を合わせ用い、言語行動の地域差を多角的に考察する。本研究は、言語行動の枠組みに基づいて100場面の「場面設定会話」を収録し、それを主な資料とすることで、日本語方言における言語行動の地域差を明らかにしようとするものである。これまで宮城県をフィールドとして『生活を伝える被災地方言会話集』14で培ってきた方法論を軸に、全国の4地域(宮城・東京・大阪・大分)において、目的別言語行動の枠組みに基づく100場面会話を収録する。そして、それらの比較・分析によって言語行動の地域差を解明する。その際、補助的な方法として、会話の性質を取り入れた多人数面接調査の結果や、全国800地点の地理的分布調査の結果を合わせ用い、言語行動の地域差を多角的に考察する。 | KAKENHI-PROJECT-19K00640 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K00640 |
細胞膜に結合する天然物リガンドの分子プローブ化を基軸とした化学シグナル解析 | 本年度は、抗真菌性ポリエンマクロラクタムheronamide Cの安定化誘導体の合成を実施した。Heronamide Cの作用機作解析を困難にしていると考えられる要因の一つに、光照射条件、および酸素雰囲気下での熱条件に対するポリエンマクロラクタム骨格の高い反応性がある。実際、その反応性を確認するために、今回、heronamide Cをラマンイメージング測定条件に付したところ、レーザー照射下でheronamide C由来のシグナルの減少が確認された。ポリエンマクロラクタム骨格の高い反応性には、光照射条件、酸素雰囲気下での熱条件のいずれに対しても、C16-C17位オレフィンの存在が大きく関わっていることが示唆されている。そこで、分子力場計算によって、分子のコンフォメーションに大きな違いが無いことが想定されたC16-C17位部分飽和体(C16-C17オレフィンを飽和させた誘導体)をデザインし、これまでに確立したフラグメント構築法とポリエンマクロラクタム環化法を駆使して、その合成に成功した。また、紫外線照射条件に対して、このC16-C17位部分飽和体がheronamide Cより高い安定性を持っていることを確認した。現在、本部分飽和体のNMRを用いたコンフォメーション解析、生物活性試験、およびラマンイメージング用レーザー照射条件への耐性を検討している。一方、heronamide Cとその細胞内標的と考えられる脂質分子との間にキラル認識があるかどうかを確認するために、heronamide Cの光学異性体の合成も実施し、今年度は2種類の重要中間体の合成まで行った。Heronamide Cのラマンイメージング測定条件に対する安定性を実際に評価できたこと、また、本年度に計画していたheronamide CのC16-C17位部分飽和体の合成を完了し、光照射に対する安定性を確認できたことは、重要な成果だと言えるため、おおむね順調に進展していると評価した。一方、予定していたC29位トリフルオロメチル化体の合成はまだ完了していない。これは、このトリフルオロメチル基を有するC14-C15位フラグメントの合成が予想に反して困難であったことに起因しているが、既に幾つかの解決策を検討しており、次年度には合成と評価が可能であると見込まれる。合成したC16-C17位部分飽和体のコンフォメーション解析、生物活性試験、およびラマンイメージング用レーザー照射条件への耐性の確認が先ず必要である。予想通り抗真菌活性が保持されていれば、本化合物を用いたラマンイメージング解析などの細胞内/細胞膜内局在解析を実施すると共に、より特徴的なラマンシグナルを与えるジインプローブの合成とこれを用いた細胞内/細胞膜内局在解析を併せて検討する。一方、予想に反してC16-C17位部分飽和体に活性が無かった場合でも、本化合物は良いネガティブコントロール化合物となり得るため、その物性や脂質二重膜に対する結合能、および細胞内/細胞膜内局在などに関してheronamide Cとの違いを明らかにし、heronamide Cの活性発現の本質に迫る。前年度に合成を計画したC29位トリフルオロメチル化誘導体も、引き続き合成と評価を実施する。Heronamide Cの活性発現に生体分子とのキラル認識が関わっているかを確認するためのheronamide C光学異性体の合成も継続して行う。合成が出来次第、抗真菌活性の確認と、ラマンイメージング解析などを用いた細胞内/細胞膜内局在解析を実施する。これらの検討結果を基に、最も適切と判断された分子を真菌細胞に投与して、heronamide Cの真菌内での時空間的挙動を探る。本年度は、抗真菌性ポリエンマクロラクタムheronamide Cの安定化誘導体の合成を実施した。Heronamide Cの作用機作解析を困難にしていると考えられる要因の一つに、光照射条件、および酸素雰囲気下での熱条件に対するポリエンマクロラクタム骨格の高い反応性がある。実際、その反応性を確認するために、今回、heronamide Cをラマンイメージング測定条件に付したところ、レーザー照射下でheronamide C由来のシグナルの減少が確認された。ポリエンマクロラクタム骨格の高い反応性には、光照射条件、酸素雰囲気下での熱条件のいずれに対しても、C16-C17位オレフィンの存在が大きく関わっていることが示唆されている。そこで、分子力場計算によって、分子のコンフォメーションに大きな違いが無いことが想定されたC16-C17位部分飽和体(C16-C17オレフィンを飽和させた誘導体)をデザインし、これまでに確立したフラグメント構築法とポリエンマクロラクタム環化法を駆使して、その合成に成功した。また、紫外線照射条件に対して、このC16-C17位部分飽和体がheronamide Cより高い安定性を持っていることを確認した。現在、本部分飽和体のNMRを用いたコンフォメーション解析、生物活性試験、およびラマンイメージング用レーザー照射条件への耐性を検討している。一方、heronamide Cとその細胞内標的と考えられる脂質分子との間にキラル認識があるかどうかを確認するために、heronamide Cの光学異性体の合成も実施し、今年度は2種類の重要中間体の合成まで行った。Heronamide Cのラマンイメージング測定条件に対する安定性を実際に評価できたこと、また、本年度に計画していたheronamide CのC16-C17位部分飽和体の合成を完了し、光照射に対する安定性を確認できたことは、重要な成果だと言えるため、おおむね順調に進展していると評価した。一方、予定していたC29位トリフルオロメチル化体の合成はまだ完了していない。 | KAKENHI-PUBLICLY-18H04603 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-18H04603 |
細胞膜に結合する天然物リガンドの分子プローブ化を基軸とした化学シグナル解析 | これは、このトリフルオロメチル基を有するC14-C15位フラグメントの合成が予想に反して困難であったことに起因しているが、既に幾つかの解決策を検討しており、次年度には合成と評価が可能であると見込まれる。合成したC16-C17位部分飽和体のコンフォメーション解析、生物活性試験、およびラマンイメージング用レーザー照射条件への耐性の確認が先ず必要である。予想通り抗真菌活性が保持されていれば、本化合物を用いたラマンイメージング解析などの細胞内/細胞膜内局在解析を実施すると共に、より特徴的なラマンシグナルを与えるジインプローブの合成とこれを用いた細胞内/細胞膜内局在解析を併せて検討する。一方、予想に反してC16-C17位部分飽和体に活性が無かった場合でも、本化合物は良いネガティブコントロール化合物となり得るため、その物性や脂質二重膜に対する結合能、および細胞内/細胞膜内局在などに関してheronamide Cとの違いを明らかにし、heronamide Cの活性発現の本質に迫る。前年度に合成を計画したC29位トリフルオロメチル化誘導体も、引き続き合成と評価を実施する。Heronamide Cの活性発現に生体分子とのキラル認識が関わっているかを確認するためのheronamide C光学異性体の合成も継続して行う。合成が出来次第、抗真菌活性の確認と、ラマンイメージング解析などを用いた細胞内/細胞膜内局在解析を実施する。これらの検討結果を基に、最も適切と判断された分子を真菌細胞に投与して、heronamide Cの真菌内での時空間的挙動を探る。 | KAKENHI-PUBLICLY-18H04603 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-18H04603 |
3Dプリンタで造形したツールによる摩擦攪拌接合学習教材の作製 | 研究目的:本研究では,次世代の画期的な接合技術として注目されている摩擦攪拌接合(FSW=Friction Stir Welding)を用いる。摩擦攪拌接合はフライス盤のような工作機械等があれば容易に実施出来る技術で実用化されているにも関わらず,実際に実施している処を見ることは皆無であり,動画教材等もほとんど無く,一般にもあまり知られていない。そこで,出先機関でも実際に体験学習出来るように治具等を手持ち可能な形状と軽量化を目指し,さらに,板状軟質材による無負荷擬似突き合わせ接合を実施出来る装置を開発する。また, 3Dプリンタ造形の樹脂FSWツールを用いることにより,単純形状から複雑形状までのプローブと,板状軟質材による無負荷擬似接合実験で攪拌状態がどの様に変化するかを観察する事が出来れば,新型FSWツールの開発にも期待できる。研究方法:各治具は安定した接合体が得られるように,接合体を確実に拘束出来るよう工夫し,軽量化も考え高硬度アルミ合金材を多用したベースプレートを基に交換が容易に出来るよう,治具同士の補完および,各部品の共通化を行い部品点数削減に努力する。マシニングセンタを用いて異色軟質材接合実験を試行し適正接合条件等の調査を行う。各種樹脂FSWツールによる擬似接合実験にて攪拌状態を観察する。各条件にて得られた接合体を,切断し断面観察等を行う。研究成果:3Dプリンタ造形樹脂FSWツールとプラスチック粘土による,擬似FSW突き合わせ実験が可能である事が確認された。汎用フライス盤で施工できる主軸回転速度1,500min^<-1>以下の条件で内部欠陥の無い状態で実施出来ることを確認した。単純形状から複雑形状までのプローブによる無負荷擬似接合実験で攪拌状態がどの様に変化するかを観察する事ができ,授業や技術者養成研修等,各種人材養成に役立つと期待できる。2016年3月4日平成27年度実験・実習技術研究会in西京(山口大学吉田キャンパス)で,研究成果を口頭発表した。研究目的:本研究では,次世代の画期的な接合技術として注目されている摩擦攪拌接合(FSW=Friction Stir Welding)を用いる。摩擦攪拌接合はフライス盤のような工作機械等があれば容易に実施出来る技術で実用化されているにも関わらず,実際に実施している処を見ることは皆無であり,動画教材等もほとんど無く,一般にもあまり知られていない。そこで,出先機関でも実際に体験学習出来るように治具等を手持ち可能な形状と軽量化を目指し,さらに,板状軟質材による無負荷擬似突き合わせ接合を実施出来る装置を開発する。また, 3Dプリンタ造形の樹脂FSWツールを用いることにより,単純形状から複雑形状までのプローブと,板状軟質材による無負荷擬似接合実験で攪拌状態がどの様に変化するかを観察する事が出来れば,新型FSWツールの開発にも期待できる。研究方法:各治具は安定した接合体が得られるように,接合体を確実に拘束出来るよう工夫し,軽量化も考え高硬度アルミ合金材を多用したベースプレートを基に交換が容易に出来るよう,治具同士の補完および,各部品の共通化を行い部品点数削減に努力する。マシニングセンタを用いて異色軟質材接合実験を試行し適正接合条件等の調査を行う。各種樹脂FSWツールによる擬似接合実験にて攪拌状態を観察する。各条件にて得られた接合体を,切断し断面観察等を行う。研究成果:3Dプリンタ造形樹脂FSWツールとプラスチック粘土による,擬似FSW突き合わせ実験が可能である事が確認された。汎用フライス盤で施工できる主軸回転速度1,500min^<-1>以下の条件で内部欠陥の無い状態で実施出来ることを確認した。単純形状から複雑形状までのプローブによる無負荷擬似接合実験で攪拌状態がどの様に変化するかを観察する事ができ,授業や技術者養成研修等,各種人材養成に役立つと期待できる。2016年3月4日平成27年度実験・実習技術研究会in西京(山口大学吉田キャンパス)で,研究成果を口頭発表した。 | KAKENHI-PROJECT-15H00333 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H00333 |
論理推論を基にした合理的秘密分散プロトコルの安全性検証法の構築 | 本研究課題は,合理的秘密分散プロトコルの安全性を検証するための論理推論体系の構築を目的として遂行された.この目的を実現するためのアプローチとして,ネットワーク参加者らの知識に関する推論やプロトコルの実行過程を,一階述語論理や知識論理をもとにした論理言語によって表現する方法が採用された.また,プロトコルの実行過程を対象とするモデルを与え,先に与えた論理体系に対する健全性が検討された.本研究は,合理的秘密分散プロトコルの安全性検証法を,論理推論をもとに構築することを目的とする.昨年度に引き続き,今年度は,これまで研究代表者らによって構築したpublic annnouncement logicの派生体系を用いて,目的とする論理体系の構築を目指した.特に,合理的秘密分散プロトコルにおけるコイン投げの結果などの確率論的概念の表現などを対象に研究を進めた.そのためのアプローチとして,今年度は動的様相を用いない代わりに一階述語論理を用いた言語による定式化を行った.本研究の中心課題である合理的秘密分散プロトコルの安全性検証法については,今年度中にその成果を発表するまでには至らず,現在,国際会議論文としてまとめ,投稿の準備をしている段階である.しかしながら,先述の確率論的概念の定式化の研究を通じて,本研究課題に関連する暗号プロトコルの確率論的・計算論的な安全性証明を行うための論理体系を考える上でも有用であることが分かり,その研究成果を国際会議や国内の研究集会などで発表した.また,それまでに得られた論理体系は,合理的秘密分散プロトコルの安全性証明のみならず,1980年代後半に暗号プロトコルの安全性証明手法として考案されたBAN論理のアイデアを,public announcement logicやdynamic epistemic logicなどを用いて再構成するというアイデアを得ることができた.今後の研究の展開として,こうしたアイデアをもとに,合理的秘密分散プロトコルを含めたより一般的な暗号プロトコルを対象に,ネットワーク参加者らの知識の形成過程と安全性との関係を論理推論体系によって明らかにすることを計画している.本研究課題は,合理的秘密分散プロトコルの安全性を検証するための論理推論体系の構築を目的として遂行された.この目的を実現するためのアプローチとして,ネットワーク参加者らの知識に関する推論やプロトコルの実行過程を,一階述語論理や知識論理をもとにした論理言語によって表現する方法が採用された.また,プロトコルの実行過程を対象とするモデルを与え,先に与えた論理体系に対する健全性が検討された.本研究は、合理的秘密分散プロトコルの安全性検証法を、数理的技法の一つである論理推論を基に構築することを目的とする。そのための方法として、これまでゲーム理論や数理論理学の分野で研究されてきたプレイヤーの意思決定過程の論理的分析手法を用いる。今年度は、Halpernらによって最初に提案された最も基本的な合理的秘密分散プロトコルを対象に、その分析を行うための論理推論体系の構築を目指した。そのためにまず、他の参加者の行動を推測して自らの利益を最大化させるような意思決定過程を、論理言語によって記述することを目標とした。より具体的には、各参加者の持つ利得関数(プロトコルを実行し終わった時に得られる利得を定める関数)や、コイン投げの結果、さらにはシェアの送付の有無を論理式として表現し、また、これらの事実に関して各参加者がどのような知識を持っているのかや、さらには「他の参加者が知っていることを別の参加者が知っている」といった知識に関する表現を行いうる論理体系の構築を進めた。本年度は、これを知識論理を基に行った。また一方で、このプロトコルの実行過程においては、シェアの送付や各自のコイン投げの結果を他の参加者に伝えるといった情報交換があるため、これを論理言語で表現することも必要となる。以上で述べた要請を満たすものとして、本研究では、代表者によって提案されたpublic announcement logicの派生体系を基に行った。本年度は、代表者らによって先に構築したpublic announcement logicの派生体系を基に、目的とする論理体系の構築を目指した。しかしながら、コイン投げの結果を表現する上で必要となる確率論的な概念を、命題様相論理の一種であるpublic announcement logicのような比較的表現力の弱い体系で行うことが難しく、未だプロトコル分析のために十分な論理体系の構築を進めている段階である。また、合理的秘密分散プロトコルの研究の進展が続いていることから、その研究の調査を行う必要もあり、当初予定していた論理体系の構築を一通り完成するまでに至ることができなかった。今年度に実施した研究から、目的とする論理体系を構築するためには、特に確率論的な概念をいかに表現するかが課題となっている。当初はpublic announcement logicを基にこれを進めてきたが、平成25年度では、より表現力の強い論理体系を基にすることも視野に入れた研究の遂行を予定している。ここでは特に、Dynamic epistemic logicや、述語論理への拡張を最初の検討課題として考えている。また、論理体系の構築ができたところで、目標としていたマルチパーティプロトコルへと対象を広げることも目指す。さらに、これらの成果を国際会議や雑誌論文等の媒体で発表することを目標に進める。今年度は、当初目標としていた論理体系の構築まで到達できなかったことから、平成25年度は、なるべく多くの研究成果の発表を目指している。そのための国際会議発表の旅費などに研究費の一部を充てる予定である。また、引き続き、文献調査のための研究資料の購入も計画している。 | KAKENHI-PROJECT-24700022 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24700022 |
3次元アフィン空間の非射影的コンパクト化 | 第2ベッチ数1をもつ3次元複素アフィン空間の非射影的コンパクト化(X, Y)については,境界因子Yがnefの場合は,指数2以下の高々ゴレンスタイン端末特異点を持つ3次元ファノ多様体によるコンパクト化の分類に帰着されることが分かる.特に,指数2の場合は(X, Y)の構造は解明されているが,指数1の場合は,具体的な例(モデル)は在する者の,最終的な構造の決定までは至ることが出来なかった.しかし,境界因子を詳細に解析する事により,境界の位相的・代数的構造と全体空間の位相的・代数的構造との関連について結果を得た.Yがnon-nefの場合は,古島によって構成された無限個の例について,解析的な不変量を定義し,具体的にその不変量を求めた.第2ベッチ数1をもつ3次元複素アフィン空間の非射影的コンパクト化(X, Y)については,境界因子Yがnefの場合は,指数2以下の高々ゴレンスタイン端末特異点を持つ3次元ファノ多様体によるコンパクト化の分類に帰着されることが分かる.特に,指数2の場合は(X, Y)の構造は解明されているが,指数1の場合は,具体的な例(モデル)は在する者の,最終的な構造の決定までは至ることが出来なかった.しかし,境界因子を詳細に解析する事により,境界の位相的・代数的構造と全体空間の位相的・代数的構造との関連について結果を得た.Yがnon-nefの場合は,古島によって構成された無限個の例について,解析的な不変量を定義し,具体的にその不変量を求めた.複素3次元アフィン空間の非射影的コンパクト化(X,Y)の境界因子Yは既約とする。そのとき、Yは非正規・非射影的代数曲面である事が知られている。Yの正規化モデルSについて、詳細に調べ、次の一般的事実が分った、まず、Xの第3ベッチ数が零の仮定のもと、Sは有理射影曲面であること、Yの非正規点集合Eは非特異有理曲線のチェインであることが証明できた。また、Yおよび正規化曲面Sの、解析的(コホモロジカルな性質)位相的(ベッチ数等)な構造もある程度解明できた。一方、3次元コンパクト複素多様体Xについては、依然、詳細な構造は決定できていないが、モイシェゾン多様体に関する文献調査により、位相的、解析的構造解明に必要な新情報を入手できた。また、平成19年7月に開催された多変数関数論の国際シンポジューム(葉山シンポジューム)にて、研究の理解者である、バイロイト大学(ドイツ)のペターネル教授と議論し知見を得る事ができた。平成19年12月に開催された富山大学での多変数関数論冬セミナーにて、招待講演を行う機会が与えられ、講演後、近接分野の研究者との研究討議を行った。更に、熊本大学で開催した「複素多様体セミナー」に参加した研究者との研究討議も有効であった、研究過程で得られたアイデアを、商特異点を有するある種のアフィン曲面のコンパクト化の分類に応用し、新たな結果を得た。この結果は、ドイツの数学雑誌[Abh.Math.Sem.Hamburg]に投稿し、受理された。以上のように、研究計画に沿って着実に成果が得られている。第2ベッチ数1,第3ベッチ数0,をもつ3次元複素アフィン空間の非射影的コンパクト化(X,Y)の分類について,特に,境界因子Yが「nef」のとき,Xはゴレンスタイン端末特異点を持つ,インデックスが2以下の3次元ファノ多様体による,3次元アフィン空間のコンパクト化(V,A)の分類に帰着されることが知られている.Vのインデックスが2の場合は,(V,A)はすでに分類済みである.そこで,残る場合である,インデックスが1の場合について研究を行った.向井氏およびIskovskih氏により,Vの種数gは2<g<11であることが知られている.g=10の場合には,そのようなファノ多様体の中に3次元アフィン空間を含むものが存在することから,次の予想:「インデックスが1の場合はg=10であろう」を立て,その解決に向けて研究した.残念ながら現在までに完全には解決できていない.その困難性は,Vの第3ベッチ数を知るすべがないこと,および,Vの特異点の型が特定できないことにある.そこで,Vの第3ベッチ数が1という仮定の下で,コンパクト化(V,A)の分類を試み,次の結果を得た.(i)Vの特異点は(-2,0)型のcDuVal特異点をもつ.(ii)境界因子Aは有理曲面である(iii)Vは円滑化(smoothing)可能であることが,並河氏によって知られている,Vの平滑化をV'とおくとき,V'の種数はg=10であこのことから,Vの種数もg=10であることが示せ,(V,A)が決定された.ベッチ数に関する強い条件の下ではるが,研究は前進した. | KAKENHI-PROJECT-19540041 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19540041 |
電顕凍結技法のための超高真空エッチング・チェンバーの試作 | 標題の目的を達成するため下記のような経過で研究が行われた. [60年度]1.冷凍ポンプおよび超高真空計の型式の選定:超高真空室の実施設計に並行して,以下のような主要部品の型式の選定が行われた.(1)冷凍ポンプ, CRYO-U6クライオポンプ,アルバック・クライオ(株)(2)超高真空計, GI-N5およびヌードゲージWIN-N_3,日本真空技術(株) 2.超高真空エッチング・チェーンバーおよび試料挿入棒の実施設計3.超高真空室の"焼きだし"およびメタルシールの検討昭和61年1月31日,上記部品の購入および試作部品の納入が完了し,ただちに試験運転に入った.[61年度]1.真空度の連続監視と冷凍機の保守管理コストの検討2.応用実験と効果の検討[62年度]1.超高真空室試料台の加熱方法の基礎的実験2.試作装置の有効な利用[総括と今後の展望]幸いメーカーの協力が得られ, 10^<-9> Torrレベルのエッチング・チェンバーを実現することが出来た.今後,可能ならば試料割断面のみを速やかに昇華温度まで加熱し,試料の全体と試料台とは低温に保たれるような機構を開発したいと考えている.それによって今回実現したクリーン真空が一層有効に利用されることになろう.標題の目的を達成するため下記のような経過で研究が行われた. [60年度]1.冷凍ポンプおよび超高真空計の型式の選定:超高真空室の実施設計に並行して,以下のような主要部品の型式の選定が行われた.(1)冷凍ポンプ, CRYO-U6クライオポンプ,アルバック・クライオ(株)(2)超高真空計, GI-N5およびヌードゲージWIN-N_3,日本真空技術(株) 2.超高真空エッチング・チェーンバーおよび試料挿入棒の実施設計3.超高真空室の"焼きだし"およびメタルシールの検討昭和61年1月31日,上記部品の購入および試作部品の納入が完了し,ただちに試験運転に入った.[61年度]1.真空度の連続監視と冷凍機の保守管理コストの検討2.応用実験と効果の検討[62年度]1.超高真空室試料台の加熱方法の基礎的実験2.試作装置の有効な利用[総括と今後の展望]幸いメーカーの協力が得られ, 10^<-9> Torrレベルのエッチング・チェンバーを実現することが出来た.今後,可能ならば試料割断面のみを速やかに昇華温度まで加熱し,試料の全体と試料台とは低温に保たれるような機構を開発したいと考えている.それによって今回実現したクリーン真空が一層有効に利用されることになろう.計画調書に記載した60年度研究計画の項目ごとに実績を報告する。(研究発表目録は関連研究論文である)1・エッチング・チェンバーの設計と試作(外崎,松尾,鷲岳)(1)He冷凍ポンプの実用能力の試験と型式の選定検討の結果,アルバック・クライオ社製のCRYO-U6型を選定した。(2)高真空用シール系の実施設計当初高真空用メタルシールの採用を計画していたが、既設本体部分とエッチング・チェンバーの連絡部分が従来のバイトン○-リングとならざるを得ず、したがって全てのシール系をそれに合わせることにした。(3)試料交換棒の機構と可動部分シールの実施設計エッチング・チェンバーを本体の後部に接続し、He冷凍ポンプを水平位に設置することとした。したがって試料交換棒の延長が680mm、直径8.0mmと決められ、細部の実施設計が行われた。(4)現有の真空蒸着装置(JFD-7000)との結合工事61年2月28日、エッチング・チェンバーおよび附属装置の加工が終了し、山形大学医学部解剖学第一講座内において試運転を開始した。3月17日現在エッチング・チェンバーの真空度は3×【10^(-8)】Torr、中心トラップの温度20Kを達成している。60年度において導入されたクライオポンプの性能、耐久性、運転コストについて研究がつづけられ、新たに白色光束による試料加熱法のための装置の試作と応用効果の評価が試られた。1.クライオポンプの真空能力:61年2月以来、JFD-7000真空蒸着装置に、U-6型クライオポンプ(日本真空)を連結し、ほぼ一年間連続運転を行なった。高真空チェンバーの真空度は常に【10^(-8)】レベルを示し、前室を排気する油拡散ポンプのクリーンアップにより【10^(-9)】レベルを示した。62年1月、U-6型の圧縮器の回転異常が発見され、メーカーによるヘリウムガスの注入とピストンリングの交換が行われ、正常に復した。運転開始から最初の調整まで約6000時間の連続運転が行われたことにより、真空性能および耐久性についてはほぼ予想通りであると判断された。2.白色光束加熱装置の試作と応用:高真空チェンバー内の凍結試料を常に-17°C以下の低温に保ち、一方、試料割断面のみを加熱して、いわゆるエッチング効果を起こさせる方法が、本研究において開発された。ハロゲンランプの白色光を望遠鏡型集光器によりチェンバーの直上に導き、直径約5mmの光束ガラス層を通して、試料割断面に照射した。 | KAKENHI-PROJECT-60870001 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60870001 |
電顕凍結技法のための超高真空エッチング・チェンバーの試作 | 従来の加熱方法では、試料台をヒーターにより加熱し、試料温度を-100°Cまで上昇させるので、試料内部からの昇華ガスにより割断面の微細構造が破壊される現象が認められていた。本法では、その欠点を克服し、さらに超高真空度の効果として、より低温においてエッチング効果が得られたものと判断された。62年度においては、以上の成果を応用し、微細構造研究の実効をあげる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-60870001 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60870001 |
アラル海流域の環境資源再生と生物多様性保全計画のためのシナリオアプローチ | 中央アジア乾燥地における粗放な大規模潅漑農業がもたらしたアラル海の大幅縮小と分断をはじめとする、さまざまな環境破壊に対して、これまでにえられているデータをGISにとりまとめ、特に「自然立地にもとづく生物資源環境修復」「広域の水循環システムへの配慮」「ランドスケープエコロジーにもとづく生物多様性保全」に着目した環境資源再生シナリオを複数試作し、本共同研究者だけでなく現地科学者を含む専門家により、それぞれの利点と課題および実行可能性に関する評価結果を明らかにすることを目的とする。地域の持続可能な生物資源保全に関するシナリオアプローチとその基礎となる現地調査とGISデータベースの構築に着手した。地質図と植生や土壌などに基づいた生態区分図のデジタイズ、デジタル地形モデルと気象関連のデータ、さらにこれらとNOAA/AVHRR 10days compositを組み合わせて自然立地および資源環境評価をインタラクティブにできるシステムを作成した。現地調査によって,北アラルと南アラルの間の粗放なダム建設と崩壊で大幅な環境変動が発生していることが判明した。また、自然立地によって農業生産の動向が大幅に異なることが判明した。トルキスタン地域では持続的に伝統的灌漑農業が健在である一方、クジルオルダでは農業はかなり縮小したが水は大量採取され、下流のカザリンスク地域では大規模灌漑農業はほぼ崩壊していた。一方で、カザリンスク地域において、この地域で絶滅したと考えられていたペリカンの繁殖を確認した。中央アジア乾燥地における粗放な大規模潅漑農業がもたらしたアラル海の大幅縮小と分断をはじめとする、さまざまな環境破壊に対して、これまでにえられているデータをGISにとりまとめ、特に「自然立地にもとづく生物資源環境修復」「広域の水循環システムへの配慮」「ランドスケープエコロジーにもとづく生物多様性保全」に着目した環境資源再生シナリオを複数試作し、本共同研究者だけでなく現地科学者を含む専門家により、それぞれの利点と課題および実行可能性に関する評価結果を明らかにすることを目的とする。地域の持続可能な生物資源保全に関するシナリオアプローチとその基礎となる現地調査とGISデータベースの構築に着手した。地質図と植生や土壌などに基づいた生態区分図のデジタイズ、デジタル地形モデルと気象関連のデータ、さらにこれらとNOAA/AVHRR 10days compositを組み合わせて自然立地および資源環境評価をインタラクティブにできるシステムを作成した。現地調査によって,北アラルと南アラルの間の粗放なダム建設と崩壊で大幅な環境変動が発生していることが判明した。また、自然立地によって農業生産の動向が大幅に異なることが判明した。トルキスタン地域では持続的に伝統的灌漑農業が健在である一方、クジルオルダでは農業はかなり縮小したが水は大量採取され、下流のカザリンスク地域では大規模灌漑農業はほぼ崩壊していた。一方で、カザリンスク地域において、この地域で絶滅したと考えられていたペリカンの繁殖を確認した。中央アジア乾燥地における粗放な大規模灌漑農業がもたらしたアラル海の大幅縮小と分断をはじめとする、さまざまな環境破壊に対して、これまでに得られているデータをGISにとりまとめ、特に「自然立地にもとづく生物資源環境修復」「広域の水循環システムヘの配慮」「ランドスケープエコロジーにもとづく生物多様性保全」に着目した環境資源再生シナリオを複数試作し、本共同研究者だけでなく現地科学者を含む専門家により、それぞれの利点と課題およびフィジビリティに関する評価結果を明らかにしようとしている。本年度はおもに(1)シルダリア川デルタ域およびアラル海旧湖底における土壌調査とその成果のGIS化、(2)NOAA/AVHRR、SPOT/HRV、などを用いて、マルチスケールのリモートセンシングによるアラル海および周辺の海域と植生変動のモニタリング、(3)クジルオルダ大規模農場地区における水利用実態の現地調査などを行った。土壌分布と植生回復状況は土地の堆積状況やシルダリア川からの河川水流入状況の履歴、干上がってからの経過年数などによっておおきな影響を受けていることが明らかとなった。小アラルと大アラルの間のダム建設とその崩壊にともなう大規模な環境変動の実態もリモートセンシングによってその一端を明らかにすることができた。クジルオルダ農場における水利用実態調査によって、水利用に関するシナリオ作成に必要なパラメータのデータ採取ができた。中央アジア乾燥地における粗放な大規模潅漑農業がもたらしたアラル海の大幅縮小と分断をはじめとする、さまざまな環境破壊に対して、これまでにえられているデータをGISにとりまとめ、特に「自然立地にもとづく生物資源環境修復」「広域の水循環システムへの配慮」「ランドスケープエコロジーにもとづく生物多様性保全」に着目した環境資源再生シナリオを複数試作し、本共同研究者だけでなく現地科学者を含む専門家により、それぞれの利点と課題および実行可能性に関する評価結果を明らかにすることを目的とする。地域の持続可能な生物資源保全に関するシナリオアプローチとその基礎となる現地調査とGISデータベースの構築に着手した。地質図と植生や土壌などに基づいた生態区分図のデジタイズ、デジタル地形モデルと気象関連のデータ、さらにこれらとNOAA/AVHRR 10days compositを組み合わせて自然立地および資源環境評価をインタラクティブにできるシステムを作成した。現地調査によって,北アラルと南アラルの間の粗放なダム建設と崩壊で大幅な環境変動が発生していることが判明した。また、自然立地によって農業生産の動向が大幅に異なることが判明した。トルキスタン地域では持続的に伝統的灌漑農業が健在である一方、クジルオルダでは農業はかなり縮小したが水は大量採取され、下流のカザリンスク地域では大規模灌漑農業はほぼ崩壊していた。一方で、カザリンスク地域において、この地域で絶滅したと考えられていたペリカンの繁殖を確認した。 | KAKENHI-PROJECT-11460153 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11460153 |
実験的局所脳虚血による大脳障害機序:細胞反応の経時的変化 | 大脳梗塞を実験動物の実験的梗塞像から臨床に応用出来るまでに把握できるモデル作製は難しい。今回のモデルではこれまでのモデルとは相違した方法を採用して開頭を行わないで、作った脳虚血病変部の中心から離れた周辺部での浮腫が病変形成時にその後の治癒に大きな役割を果たすか脊髄及び関連した末梢神経と後根神経節について脊髄を取り巻くクモ膜が左右するかについて検討した。まず虚血周辺部を構成する神経組織に生存する多くの神経細胞に可逆性を認める場合中心部梗塞巣に大きな影響が及ぶ。しかし虚血病巣特に周辺部にあるグリア細胞も傷害されてしまうようななかで血管が生きられない状況に陥ってしまうと梗塞巣は縮小出来なくなるし、軟化巣として形成されて残存する。しかし、活性化している神経細胞とそれに反応するグリア細胞とがその場に存在していると相互の協力関係から再生つまり神経細胞突起に再生が見られることから神経の可塑性が復帰することが多いことが示唆できた。しかし、この様な状況下であっても波状的脳脊髄液圧の急激な上昇がそこにある時には、特に抑制状態から開放されたときに受けた梗塞巣には改善はない。この時の指標に今回見いだした脊髄神経節の出血はこれまで指摘されることのなかった脳脊髄液圧の変動と血圧とに関連する指標として形態上の変化から示唆できた。これまで脊髄の変化について、形態学的に把握できない状態にあったことが、脳自体の変化が進行していく中で脳自体の治療のみでは初期に発生する運動機能障害を放置することによって障害された運動機能は改善されないまま放置状態になるか、何らかのリハビリが行われて改善がなされたとしてもその成因を把握できないままになっていた。今回の対麻痺のような改善に役立つ情報の提供はさらに機能面で対応した病態像が把握されていなければ治療も対処療法を行って行かざるをえない。大脳梗塞を実験動物の実験的梗塞像から臨床に応用出来るまでに把握できるモデル作製は難しい。今回のモデルではこれまでのモデルとは相違した方法を採用して開頭を行わないで、作った脳虚血病変部の中心から離れた周辺部での浮腫が病変形成時にその後の治癒に大きな役割を果たすか脊髄及び関連した末梢神経と後根神経節について脊髄を取り巻くクモ膜が左右するかについて検討した。まず虚血周辺部を構成する神経組織に生存する多くの神経細胞に可逆性を認める場合中心部梗塞巣に大きな影響が及ぶ。しかし虚血病巣特に周辺部にあるグリア細胞も傷害されてしまうようななかで血管が生きられない状況に陥ってしまうと梗塞巣は縮小出来なくなるし、軟化巣として形成されて残存する。しかし、活性化している神経細胞とそれに反応するグリア細胞とがその場に存在していると相互の協力関係から再生つまり神経細胞突起に再生が見られることから神経の可塑性が復帰することが多いことが示唆できた。しかし、この様な状況下であっても波状的脳脊髄液圧の急激な上昇がそこにある時には、特に抑制状態から開放されたときに受けた梗塞巣には改善はない。この時の指標に今回見いだした脊髄神経節の出血はこれまで指摘されることのなかった脳脊髄液圧の変動と血圧とに関連する指標として形態上の変化から示唆できた。これまで脊髄の変化について、形態学的に把握できない状態にあったことが、脳自体の変化が進行していく中で脳自体の治療のみでは初期に発生する運動機能障害を放置することによって障害された運動機能は改善されないまま放置状態になるか、何らかのリハビリが行われて改善がなされたとしてもその成因を把握できないままになっていた。今回の対麻痺のような改善に役立つ情報の提供はさらに機能面で対応した病態像が把握されていなければ治療も対処療法を行って行かざるをえない。当初の研究計画を実行するにあたり、実験動物及びその手技の検討を行った。実験動物は、生後100日から750日のWKY(3例).SD(20例).SHR(5例)について梗塞巣を作成した。この際の検討項目として、手術時の生存年齢、性別、痲酔方法(ネンブタール、ハロタン)同腹例を採用した。術後生存日数は、30分から7日までであった。剖検後梗塞巣の経時的変動、クモ膜下出血、脊髄根神経節出血について検討した。その結果、従来文献的には成熟ラットとして一括されてきた対象の実験動物は種、年齢、性別、血圧、実験方法(痲酔方法および挿入ナイロン糸の太さ)によりその結果が散在しており、特に病変の広がりや予後に大きな相違があったが、今回の成績からなかでも年齢に依って病変が異なることを明らかにした。従って、来年度の研究計画には以上の点に配慮して実験方法を計画している。年齢では、血圧および生理機能の成熟が安定する同腹の雄で生後150日のWKYにハロタン痲酔下で4-0ナイロン糸を用いた梗塞巣の実験を進めて行きたい。さらに、本年度の実験で注目すべき発見として脊髄根神経節の出血が高頻度に出現していたことである。この事実は、これまで報告がなく、大脳における脳脊髄圧の亢進および血圧の変動(Cushing reflex)に関連した病理像と推察され、来年度はこの機序について検討を進めたい。実験的脳梗塞を開頭されていない状態で、高い再現性を持つ病変、血流の再開通が容易に見られ安定した成果が期待できるモデル梗塞をこれまでの方法を改良したZea Longaら(1989)の方法を用いた。 | KAKENHI-PROJECT-04454354 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04454354 |
実験的局所脳虚血による大脳障害機序:細胞反応の経時的変化 | そのなかで年齢、種、性別、麻酔薬と使用時間などが問題となった。年齢によって病変が異なって作られることを明らかにした。種別では同じ年齢の同じ性の動物でも麻酔薬の種類で異なることを示唆できた。この様な状況は、最後まで挿入したナイロン糸を留置した病巣を大脳基底核あるいはarea 8(穿通する領域)に神経細胞の変性が散在性に出現するが、少数の神経細胞の変性がみられる群とさらに大脳基底核あるいはarea 8に擬固壊死(汎一壊死)が見られ少数の神経細胞の変性は、皮質にみられることがある群と右基底核、area 8および皮質に広範な擬固壊死を認めるがACA領域は保存されている群の3群に分けた。そのなかで永久群では時間の経緯と共に病巣に変化が見られたが、中心病巣に対して周辺病巣の改善内容程度によって左右されていた。このことは、一時的な閉塞によってこの変化が著しく早く改善され外観上あまり変化が見られなかったことと好対象の変化であった。この様な変動は、グリア細胞の変動だけからでは判断できなかったことを周辺の浮腫の推移と深い関係があり、なかでも可逆的状況を保持できた神経細胞の動態に大いに影響されていたことが推察できた。一時的梗塞では、脊髄後根神経節には出血を見いだすことは出来なかった。しかし、永久梗塞のなかで麻酔下から24時間後に覚醒するさいに急激に大脳内の脳脊髄液圧と血圧の変動を受けて出血していたことが推察できた。しかし、膵臓の病理像に特別な変化は見られなかった。なかでも静脈への影響が急激であったと思われる例では、脊髄後索に出血を認めている。この様な状況から脊髄空洞症の発生機序を考える際の大切な情報であると考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-04454354 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04454354 |
子宮内膜および子宮内膜症の再構築に関する研究 | クモ膜下出血後の脳血管攣縮に対して使用されているROCK inhibitorであるfasudildihydrochlorideが、子宮内膜症間質細胞のα-SMA、ROCK-I、ROCK-IIの発現を抑制することによりmyofibroblastへの分化とcontractilityを抑制し、瘢痕形成を抑制すること、また、G2/M期の細胞周期を停止させ細胞増殖を抑制しapoptosisを誘導することを解明した。Fasudil dihydrochlorideは副作用が少なく、安全性が高い薬剤であり、不妊症の原因となる子宮内膜症による癒着や瘢痕形成を標的とした治療薬としての新たな有用性を発見した。クモ膜下出血後の脳血管攣縮に対して使用されているROCK inhibitorであるfasudildihydrochlorideが、子宮内膜症間質細胞のα-SMA、ROCK-I、ROCK-IIの発現を抑制することによりmyofibroblastへの分化とcontractilityを抑制し、瘢痕形成を抑制すること、また、G2/M期の細胞周期を停止させ細胞増殖を抑制しapoptosisを誘導することを解明した。Fasudil dihydrochlorideは副作用が少なく、安全性が高い薬剤であり、不妊症の原因となる子宮内膜症による癒着や瘢痕形成を標的とした治療薬としての新たな有用性を発見した。子宮内膜症は、癒着や瘢痕化を特徴とし、その結果、不妊症や慢性骨盤痛等の症状が出現する。我々は、tissue remodelingの観点から子宮内膜症における瘢痕形成について検討し、正常子宮内膜間質細胞に比べて子宮内膜症間質細胞のcontractilityは増強しており、より瘢痕化しやすいことを報告してきた。Fasudil dihydrochlorideは、Rho-kinase (Rock) inhibitorであり、従来より血管拡張薬としてクモ膜下出血後の脳血管攣縮に使用されている。今回、子宮内膜症による瘢痕化に対するFasudilの有効性について子宮内膜症性間質細胞のcollagen gel三次元培養法を用いて検討した。卵巣子宮内膜症性嚢胞の手術時(n=5)に、文書による患者の同意を得て嚢胞壁を採取し、子宮内膜症性間質細胞を分離・培養した。Type Icollagen溶液内に6×10^5 cell/mlの細胞濃度になるように子宮内膜症性間質細胞を懸濁した。37°Cで2時間培養してgel化させた。Tappingしてcollagen gelをdishから浮遊させ、Fasudil (1-100μg/ml)を添加し、10%血清存在下で培養した。48時間後にgelの表面積を測定した。さらにcollagen gelの収縮メカニズムについて解明するため、瘢痕形成の際に生じるmyofibroblastのマーカーであるα-smooth muscle actin及びcontractilityに関与するRho A、ROCK 1、ROCK 2の発現をwestern blot法を用いて検討した。細胞増殖能はBrdu取り込みにより評価した。Fasudilの添加により、濃度依存性にcollagen gelの収縮は抑制された。また、Fasudil dihydrochlorideの添加によりα-SMA、ROCK 1、ROCK 2の蛋白発現が著明に抑制され、細胞増殖能は71%に抑制された。Fasudilはα-SMA、ROGK1、ROCK2の発現を抑制することにより、子宮内膜症性間質細胞のmyofibroblastへの分化とcontractilityを抑制すること、細胞増殖を抑制することが判明した。Fasudilは、子宮内膜症の瘢痕を標的とした薬剤として有用な可能性が示唆された。子宮内膜症は、癒着や瘢痕化を特徴とし、その結果、不妊症や慢性骨盤痛等の症状が出現する。私は、tissue remodelingの観点から子宮内膜症における瘢痕形成について検討し、正常子宮内膜間質細胞に比べて子宮内膜症間質細胞のcontractilityは増強しており、より瘢痕化しやすいことを報告してきた。Fasudildihydrochlorideは、Rho-kinase(Rock)inhibitorであり、従来より血管拡張薬としてクモ膜下出血後の脳血管攣縮に使用されている。子宮内膜症による瘢痕化に対するFasudilの有効性について子宮内膜症性間質細胞のcollagen gel三次元培養法を用いて検討した。卵巣子宮内膜症性嚢胞の手術時(n=5)に、文書による患者の同意を得て嚢胞壁を採取し、子宮内膜症性間質細胞を分離・培養した。Type Icollagen溶液内に6×105cell/mlの細胞濃度になるように子宮内膜症性間質細胞を懸濁した。37°Cで2時間培養してgel化させた。Tappingしてcollagen gelをdishから浮遊させ、Fasudil dihydrochloride(1-100μg/ml)を添加し、10%血清存在下で培養した。48時間後にgelの表面積を測定した。さらにcollagen gelの収縮メカニズムについて解明するため、瘢痕形成の際に生じるmyofibroblastのマーカーであるα-smooth muscle actin(α-SMA)及びcontractilityに関与するRhoA、ROCK1、ROCK2の発現をwestern blot法を用いて検討した。細胞増殖能はBrdu取り込みにより評価した。Fasudil dihydrochlorideの添加により、濃度依存性にcollagengelの収縮は抑制された。また、Fasudil dihydrochlorideの添加によりα-SMA、ROCK1、ROCK2の蛋白発現が著明に抑制され、細胞増殖能は71%に抑制された。 | KAKENHI-PROJECT-22791536 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22791536 |
子宮内膜および子宮内膜症の再構築に関する研究 | Fasudil dihydrochlorideはα-SMA、ROCK1、ROCK2の発現を抑制することにより、子宮内膜症性間質細胞のmyofibroblastへの分化とcontractilityを抑制すること、細胞増殖を抑制することが判明した。Fasudil dihydrochlorideは、子宮内膜症の瘢痕を標的とした薬剤として有用な可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-22791536 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22791536 |
OLETFにおけるNIDDM原因遺伝子のポジショナルキャンディデートクローニング | ・肥満QTLとして検出されたNidd6のポジショナルキャンディデートであるPnlip遺伝子については、9.8kbの5'上流隣接領域、13.1kbのエクソン/イントロン領域および3.6kbの3'下流隣接領域をOLETFとF344でダイレクトシーケンスし、多型について解析した。その結果、転写開始点の上流3.4kbの位置に、F344アリルに比べOLETFアリルにおいてサイズが長いVNTR多型が検出された。そこで、Nidd6 QTLで、OLETFとは異なるアリルを有することがQTL解析により判明しており、Pnlip遺伝子発現レベルがOLETFに比べ減少しているBNとLETOについても、上記多型部分のシーケンス解析を行った。その結果、OLETFより短くF344と同じサイズであり、Pnlip遺伝子についての発現レベルの増加がOLETF特異的であることに加えて、当該遺伝子のVNTR多型はOLETFに特異的な多型を示すことが明らかになった。Ins1遺伝子では、プロモーター領域に同様なVNTR多型が存在し、それが骨格筋、脂肪組織および膵での発現レベルに影響を及ぼすことで糖尿病発症につながっているらしいとの報告がなされており、今回の発見は興味深いものである。また、NIDDM QTLとして検出されたNidd2のポジショナルキャンディデートであるPgc1遺伝子についても、発現レベルの増加がOLETFにおいて観察されることに加えて、イントロン領域に多くのSNP多型が存在していることが明らかにされた。・Nidd6および2のゲノム領域内で組み換えが生じている(コンジェニックxF344)xコンジェニックのバッククロス交雑群からの雄選抜個体12匹およびサブコンジェニック11系統を用いることで、Nidd6については、D1Rat90とD1Rat225の間の2.3cMの領域にQTLをファインマッピングした。さらに、Nidd2については、D1Rat1とD1Rat3の間の1.2cMの領域に存在することが明らかにされた。・上記、新規組み換えバックスロス交雑個体を用いることで、ファインマッピングされたNidd6 QTLがPnlip遺伝子のVNTR多型および発現レベルの変化と共分離していることが明らかにされた。また、Nidd2のファインマッピングされた領域にPgc1遺伝子が存在することが明らかにされた。・これらの結果より、PnlipおよびPgc1遺伝子がNidd6およびNidd2 QTLの原因遺伝子であるかもしれないという状況証拠が得られた。・肥満QTLとして検出されたNidd6のポジショナルキャンディデートであるPnlip遺伝子については、9.8kbの5'上流隣接領域、13.1kbのエクソン/イントロン領域および3.6kbの3'下流隣接領域をOLETFとF344でダイレクトシーケンスし、多型について解析した。その結果、転写開始点の上流3.4kbの位置に、F344アリルに比べOLETFアリルにおいてサイズが長いVNTR多型が検出された。そこで、Nidd6 QTLで、OLETFとは異なるアリルを有することがQTL解析により判明しており、Pnlip遺伝子発現レベルがOLETFに比べ減少しているBNとLETOについても、上記多型部分のシーケンス解析を行った。その結果、OLETFより短くF344と同じサイズであり、Pnlip遺伝子についての発現レベルの増加がOLETF特異的であることに加えて、当該遺伝子のVNTR多型はOLETFに特異的な多型を示すことが明らかになった。Ins1遺伝子では、プロモーター領域に同様なVNTR多型が存在し、それが骨格筋、脂肪組織および膵での発現レベルに影響を及ぼすことで糖尿病発症につながっているらしいとの報告がなされており、今回の発見は興味深いものである。また、NIDDM QTLとして検出されたNidd2のポジショナルキャンディデートであるPgc1遺伝子についても、発現レベルの増加がOLETFにおいて観察されることに加えて、イントロン領域に多くのSNP多型が存在していることが明らかにされた。・Nidd6および2のゲノム領域内で組み換えが生じている(コンジェニックxF344)xコンジェニックのバッククロス交雑群からの雄選抜個体12匹およびサブコンジェニック11系統を用いることで、Nidd6については、D1Rat90とD1Rat225の間の2.3cMの領域にQTLをファインマッピングした。さらに、Nidd2については、D1Rat1とD1Rat3の間の1.2cMの領域に存在することが明らかにされた。・上記、新規組み換えバックスロス交雑個体を用いることで、ファインマッピングされたNidd6 QTLがPnlip遺伝子のVNTR多型および発現レベルの変化と共分離していることが明らかにされた。また、Nidd2のファインマッピングされた領域にPgc1遺伝子が存在することが明らかにされた。・これらの結果より、PnlipおよびPgc1遺伝子がNidd6およびNidd2 QTLの原因遺伝子であるかもしれないという状況証拠が得られた。 | KAKENHI-PROJECT-16012229 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16012229 |
磁気圏イオン密度・速度分布解析から算出される太陽共鳴散乱光の検出器系基礎技術開発 | 地球極城電離層から磁気圏に向けて放出される酸素イオンの撮像可能性を研究した。この酸素イオン流の存在は衛星観測により良く知られてきたが、流れの経路を大局的に調べるために撮像を行わなければならない。撮像の為にどの程度の明るさの光学系が必要か、背景光の混入を防ぐためにどの様な素子が必要かを検討した。酸素イオンによる共鳴散乱の明るさの見積もりには、太陽により直接照らされる効果の他に電離層F層に存在する酸素イオンからの反射光の影響を見積もった。また、酸素イオンが光源に対して流れる事によるドップラーシフトの影響を考慮した。あけぼの衛星による観測をモデル化して極域上空に存在する酸素イオンからの共鳴散乱光強度を求めたところ、その輝度が0.01-1.0レイリーであることが解った。さらに地球磁気圏尾部に存在する酸素イオンの撮像可能性について研究した。磁気圏尾部における酸素イオンの存在は数年前まで知られていなかったが、磁気圏探査衛星ジオテイルがローブ領域において温度が極めて低く、かつ高密度の酸素イオンの存在を確認した。この酸素イオンを撮像することが出来れば磁気圏尾部の全貌を捉えることが出来るため、磁気圏のダイナミクスを研究する上で大きな進歩となる。酸素イオンは太陽に対して相対運動をしているため、その共鳴散乱の波長がドップラーシフトを受ける。しかし酸素イオンは834A∃の近辺に3本の共鳴散乱線を持ちそれらが互いに極めて近い。従って相対運動によるドップラーシフトを受けても再び別の輝線と共鳴散乱を行うことが出来る。この効果を取り入れ共鳴散乱の効率を表すgファクターを計算した。この結果、光の強度は0.1-10Rayleigh程度であることが確かめられた。0.1Rayleighの光1Re(地球半径)空間分解能で撮像するためには25センチ口径の望遠鏡で約10分間の露出を行えば可能であり、この研究により磁気圏尾部の撮像が原理的に可能であることが示された。地球極城電離層から磁気圏に向けて放出される酸素イオンの撮像可能性を研究した。この酸素イオン流の存在は衛星観測により良く知られてきたが、流れの経路を大局的に調べるために撮像を行わなければならない。撮像の為にどの程度の明るさの光学系が必要か、背景光の混入を防ぐためにどの様な素子が必要かを検討した。酸素イオンによる共鳴散乱の明るさの見積もりには、太陽により直接照らされる効果の他に電離層F層に存在する酸素イオンからの反射光の影響を見積もった。また、酸素イオンが光源に対して流れる事によるドップラーシフトの影響を考慮した。あけぼの衛星による観測をモデル化して極域上空に存在する酸素イオンからの共鳴散乱光強度を求めたところ、その輝度が0.01-1.0レイリーであることが解った。さらに地球磁気圏尾部に存在する酸素イオンの撮像可能性について研究した。磁気圏尾部における酸素イオンの存在は数年前まで知られていなかったが、磁気圏探査衛星ジオテイルがローブ領域において温度が極めて低く、かつ高密度の酸素イオンの存在を確認した。この酸素イオンを撮像することが出来れば磁気圏尾部の全貌を捉えることが出来るため、磁気圏のダイナミクスを研究する上で大きな進歩となる。酸素イオンは太陽に対して相対運動をしているため、その共鳴散乱の波長がドップラーシフトを受ける。しかし酸素イオンは834A∃の近辺に3本の共鳴散乱線を持ちそれらが互いに極めて近い。従って相対運動によるドップラーシフトを受けても再び別の輝線と共鳴散乱を行うことが出来る。この効果を取り入れ共鳴散乱の効率を表すgファクターを計算した。この結果、光の強度は0.1-10Rayleigh程度であることが確かめられた。0.1Rayleighの光1Re(地球半径)空間分解能で撮像するためには25センチ口径の望遠鏡で約10分間の露出を行えば可能であり、この研究により磁気圏尾部の撮像が原理的に可能であることが示された。まず研究の端緒として、磁気圏に比べ高密度状態にあるプラズマ圏ヘリウムイオンからの太陽極端紫外線の共鳴散乱光の見積を行い、比較的観測者に近く、また密度が高い領域の大局的撮像技術の可能性を確かめた。更に低密度状態の磁気圏に対しては、高S/N検出器設計に必要な磁気圏全体のプラズマ密度・速度分布を統計的に解析する為に、GEOTAIL衛星搭載のプラズマ計測器による粒子データ(プラズマの密度・速度・温度)に加え、磁場・電場(強度、方向変動)、軌道データも参照し、プラズマシート、マグネトシース、ローブ、マントルの各領域を自動判定する為のしきい値を決定し、そこにおけるプラズマ密度・速度を統計的にまとめた。ここでは当初の目標より高い空間・時間分解能により領域を決定出来た事が評価出来る。また、ケーススタディーとして、磁気圏ローブ中で観測される多成分低温イオン流の密度、速度分布を詳細に決定した。この現象では、電場ドリフトによる速度フィルター効果により、イオン種間でエネルギーが分別されている事実に基づき、プロトンと酸素イオンを判別し、それらの速度・密度分布を決定した。現研究では地球電離圏起源と思われる酸素・ヘリウムイオンの分布が重要であるので、その速度の統計的空間分布解析をも行いつつある。次年度以降では、これら重イオンの密度空間分布を統計的に調べ、太陽共鳴散乱光算出を行う上でのパラメータとする。一方、実験室設備としては、極端紫外光放射装置を組み上げ、カウントデータ処理系を導入し、光学系機器開発の為の実験環境を整えた。 | KAKENHI-PROJECT-07640585 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07640585 |
磁気圏イオン密度・速度分布解析から算出される太陽共鳴散乱光の検出器系基礎技術開発 | 特に、現有の真空チャンバー内の測定機器の制御用インターフェースの開発・整備を行い、データ取得のディジタル化と自動化が可能となりつつある。本年度は地球極域電離層から磁気圏に向けて放出される酸素イオンの撮像可能性を研究した。この酸素イオン流の存在は衛星観測により良く知られてきたが、流れの経路を大局的に調べるために撮像を行わなければならない。撮像の為にどの程度の明るさの光学系が必要か、背景光の混入を防ぐ為にどの様な素子が必要かを検討した。酸素イオンによる共鳴散乱の明るさの見積もりには、太陽により直接照らされる効果の他に電離層F層に存在する酸素イオンからの反射光の影響を見積もった。また、酸素イオンが光源に対して数キロ数10キロメートル/秒で流れる事によるドップラーシフトの影響を考慮した。あけぼの衛星による高度2000-6000kmにおける酸素イオンの密度測定をもとに酸素イオンの分布とその流れの速度をモデル化して極域上空に存在する酸素イオンからの共鳴散乱光強度を求めたところ、その輝度が0.01-1.0レイリーであることが解った。撮像に必要な光学系の大きさは背景光(地球コロナからのライマンα放射で約10キロレイリー)を酸素イオンからの光に対してどれだけ遮る事が出来るかにより変化する。現有の技術でフィルターによる背景光の除去率が、同じ輝度の酸素イオンからの共鳴散乱光に対して1/1000であるとした時、酸素イオン分布を0.1地球半径の空間分解能、1秒の時間分解能で月軌道から撮影しようとすると口径10mの望遠鏡が必要であることが解った。望遠鏡の口径を現実的な1m程度に抑える為には先の除去率を100万分の1から1000万分の1にしなければならない。この除去率を実現するために、フィルターに加えて水素吸収セル、あるいはライマンα線の反射率を抑えた反射鏡を新たに開発しなければならない事が解った。本年度は地球磁気圏尾部に存在する酸素イオンの撮像可能性について研究した。磁気圏尾部における酸素イオンの存在は数年前から知られていなかったが、磁気圏探査衛星ジオテイルがローブ領域において温度が極めて低く、かつ高密度の酸素イオンの存在を確認した。この酸素イオンはビームとなって地球から尾部方向に流出しており、その速度は地球から離れるに従って速くなる。この酸素イオンを撮像することが出来れば磁気圏尾部の全貌を捉えることが出来るため、磁気圏のダイナミクスを研究する上で大きな進歩となる。酸素イオンは太陽に対して相対運動をしているため、その共鳴散乱の波長がドップラーシフトを受ける。共鳴散乱線の幅は数十ミリÅであり、また太陽光中の対応する輝線の幅も同程度であるため、大きなドップラーシフトを受けると共鳴散乱の効率が極めて悪くなる。ヘリウムイオンなどの様に共鳴散乱線を一本しか持たないイオン種では太陽に対して50km/s以上の相対速度を持つと実質的に共鳴散乱を行うことが出来ない。しかし酸素イオンは834Åの近辺に3本の共鳴散乱線を持ちそれらが互いに極めて近い。また太陽光中の輝線も一価及び二価の酸素イオンに対応する輝線が9本あり、従って相対運動によるドップラーシフトを受けても再び別の輝線と共鳴散乱を行うことが出来る。この効果を取り入れ共鳴散乱の効率を表すgファクターを計算した。 | KAKENHI-PROJECT-07640585 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07640585 |
1979年度から1987年度間の海外日本人学校における障害児教育の歴史的研究 | 本研究は、1979年度から1987年度までの日本人学校史を障害児教育の視点から再構築する上での基礎的資料を得るために、日本政府が障害児教育担当教員を派遣する以前に、学校独自に当該教員を採用し、日本人学校における当該教員配置の必要性を実証したシンガポール日本人学校に着目した。その結果、文献調査と、当時の経緯を知る関係者を対象とした聞き取り調査あるいは質問紙調査により、(1)同校での障害児教育着手の主な経緯、(2)学校側が対象児の就学希望に対応した背景にある日本人学校の特徴が明らかになった。本研究は、1979年度から1987年度までの日本人学校史を障害児教育の視点から再構築する上での基礎的資料を得るために、日本政府が障害児教育担当教員を派遣する以前に、学校独自に当該教員を採用し、日本人学校における当該教員配置の必要性を実証したシンガポール日本人学校に着目した。その結果、文献調査と、当時の経緯を知る関係者を対象とした聞き取り調査あるいは質問紙調査により、(1)同校での障害児教育着手の主な経緯、(2)学校側が対象児の就学希望に対応した背景にある日本人学校の特徴が明らかになった。日本政府が、国会の答弁で、日本人学校への障害児教育担当教員を派遣することにはじめて言及したのは1988年度であった。この国会でとりあげられた当該教員の派遣先はニューヨーク日本人学校であった。その前年に、シンガポール日本人学校が独自に障害児教育担当教員を採用していたことは、日本人学校への当該教員の派遣の必要性を裏づけるものであったと捉えられる。同教員の採用経緯について、派遣教員による実践記録をみると、その内容が個別の事例に特化したものであったり、派遣教員の任期の短さに制約を受けたものであったため分析することが困難であるという課題があった。また、日本人学校は外国にあり、当事者や学校関係者が帰国や第三国へ移動することもあり、当時の史料が散逸・消失する恐れが高く、関係者が存命中にデータを収集することが急務の課題であった。このような状況を踏まえ、平成21年度は、まず、シンガポール日本人学校の障害児教育着手の経緯について明らかにするために、これまでに得られた資料の分析を行い、その結果を当時の関係者に送付し、確認の必要が生じた事項については再調査・分析を行った。その結果、同校で障害児教育着手の契機となった児童の入学願書が1979年度に提出された背景には、対象児の学齢始期が1980年度であったという個人的な要因と、対象児の入学願書を提出する1979年度に日本国内で全員就学の動向を背景とした養護学校義務制が実施されたという社会的な要因の一致がみられた。あわせて、対象児のきょうだいが事例校に在籍していたという個人的な要因のあったことも明らかになった。同校で保護者の付き添い等を条件に受け入れの検討がなされた経緯については、地域の状況や学校運営の実態等に影響を受けていた可能性が示唆されたため、この点については今後検討する予定である。本年度は、昨年度に明らかにされた2つの研究課題、(1)障害のある子どもの入学希望先が現地校ではなく日本人学校であったという事実の背後にある地域の状況、(2)同校が入学希望に対応することとなった学校運営の実態について解明することに焦点をおいた。本研究の対象時期の資料によると、受入国であるシンガポール政府は、自国民の教育を受ける権利について十分に保障しきれていなかった。この状況に加え、この間の在留邦人は、長期滞在者の占める割合が最大99.5%(最小98.5%)であり、かつ、民間企業関係者の占める割合が最大94.2%(最小88.4%)であった。経済状況の影響を受けやすい民間企業関係者が多かったことは、受入国の教育制度へ自らの教育要求を反映させるための継続的な働きかけを行いにくくするものであったと考察される。ただし、保護者の大半が長期滞在の民間企業関係者であることをもって、私立である日本人学校に、障害のある子どもの入学希望が出されやすいとは判断できなかった。日本人学校に対する日本政府の公的補助について分析したところ、日本国内の公立学校と同等とはいえないものの、私立学校に対して行われる以上の公的補助が実施されていた。特に、日本人学校の教員確保を支援する教員派遣制度では、日本国内法で定められる教員数の約8割を目安に、国公立学校等からの教員派遣経費が全額公的に補助されていた。実質上「公立学校」として保護者に受け取られやすい状況であったといえる。他方、学校が障害のある子どもの入学希望に対応した背景には、学校側に校長をはじめとした日本国内で公務員の身分を有す派遣教員がいた。同校における保護者等の自助努力に支えられた障害児教育萌芽期の資料からは、これらの教員を介して、障害のある子どもに関する日本人学校での教育機会の重要性が、学校運営委員会においても理解されるようになったことが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-21730727 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21730727 |
日本語母語話者の英語発話の韻律特性のモデル化と語学学習システムへの応用 | 本研究課題では,日本語母語話者のための英語韻律学習システムの基盤となる英語修正手法を構築することを目的とし,その確立に取り組んだ.まず日本語母語話者と英語発話の韻律について定量的な知見を得た.次に,得られた知見を音声再合成システムにおける変換モデルに取り入れることで,学習者の韻律を英語らしく修正して出力するシステムの構築を目指した.本研究課題では,日本語母語話者のための英語韻律学習システムの基盤となる英語修正手法を構築することを目的とし,その確立に取り組んだ.まず日本語母語話者と英語発話の韻律について定量的な知見を得た.次に,得られた知見を音声再合成システムにおける変換モデルに取り入れることで,学習者の韻律を英語らしく修正して出力するシステムの構築を目指した.日本語母語話者の英語発話に関する従来の発話学習システムは、(rとlの違いのような)音素の発話に関する学習システムが主流であり、(イントネーションのような)韻律に関する学習システムは、現在のところ発展途上である。本研究は、韻律に関する発話学習に重点をおいた効果的な英語発話学習システムの開発を目指す。本システムは、学習者が英語発話をすると、イントネーションを英語母語話者のように変換し、教示する機能を持つ点に特徴がある。25年度に,日本語話者の英語発話の韻律特徴について文型とアクセント句に基づいた分析を行った.分析結果として、日本語母語話者は、名詞、疑問詞、否定詞はintensity(強さ)が弱く、機能語でintensityが強かった。この知見は、日本語母語話者の英語発話には、日本語の韻律特徴が表れていると説明される。英語教育に関連する分野では,日本語母語話者の英語発話において,英語母語話者にはどこか不自然に感じられる特徴は,韻律にあることが明らかになっている.しかし,教育現場において,韻律の教授が困難であることより,あまりなされてこなかった.また,関連する英語の韻律学習システムも,学習者とモデルとなる発話の音響特徴のベクトルの差異を示すものが多く,学習者は,自分の発話が英語母語話者とどれほど異なるか理解できるが,発話をどのように修正すればよいかわからないことが多かった.本研究課題では,日本語母語話者の英語発話の韻律特徴の定量的な知見に基づく,日本語話者のための英語発話の韻律学習システムの構築を目指した.音声分析再合成システムを用いて,日本語母語話者の英語発話音声について,英語らしい発話に修正し,合成音声として出力するシステムを目標とした.25年度にて,日本語母語話者の英語発話の韻律を分析し,日本語話者の英語発話をモデル化した.26年度は,そのモデルを音声再合成システムSTRAIGHTの変換モデルに組み入れた.分析により得られたモデルをそのまま使用した.いくつかの日本語母語話者のサンプルを入力したところ,出力される再合成音声は,主観的には,元音声と比べ,韻律の変化は聞き取れた.これからシステム化に向けて,韻律パラメータの3要素と英語らしさの関係の解明や,再合成音声の精度など,さらなる課題を明らかにした.26年度が最終年度であるため、記入しない。音声言語情報処理26年度が最終年度であるため、記入しない。日本語母語話者の英語発話の韻律特徴の分析を行ってきた。25年度は、時間長、ピッチに加え、パワーの分析を行うことにより、日本語母語話者の韻律特徴のモデル化を完成させることができた。また、26年度の研究の方針を固めた。これにより、おおむね計画通りに研究は進展している。25年度で得られた知見より、日本語母語話者の英語発話のモデル化を行い、その特徴を修正する方向に韻律変換を行い、再合成音声を作成する。まず、日本語母語話者の英語発話の韻律特徴を元に、その特徴を修正するパラメータ値を決定する。そのパラメータ値に基づき、音声合成システムSTRAIGHTを用いて、再合成音声を作成する手法を確立する。次に、日本語母語話者の英語発話について、韻律変換を行う。日本語母語話者の英語発話をSTRAIGHTに入力すると、それぞれの単語について、韻律特徴を分析し、適切な韻律が実現できているかについて評価する。加えて、本手法の有効性を主観評価実験で検証を行う。この評価により、主観評価が高くなるようにモデルのパラメータの調整を行う。最後に、提案手法について、発話学習システムにつながるアルゴリズムの構築を目指す。 | KAKENHI-PROJECT-25880025 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25880025 |
小規模集落におけるリスクリダクションの叡智を生かした環境構築に関する研究 | 日本の生きつづけてきた小規模集落(高齢化率40%以上かつ50世帯以下の集落)には、震災・災害に対する備え「リスクリダクション(危険低減)」の叡智があると仮説し、その仕組みと集落の空間構成を把握し、「リスクリダクション」の叡智を「営み」「場所」「かたち」の関係性から明らかにすることを通して、小規模集落の「環境構築」の構造を明らかにする事を目的とする。そして、究極の目的として集落が抱えている問題の本質的な解決をめざす持続的計画手法を実践的に構築する。そして、究極の目的として集落が抱えている問題の本質的な解決を実践的に構築する。本研究は、日本の生きつづけてきた小規模集落(高齢化率40%以上、50世帯以下)には、震災・災害に対する備え「リスクリダクション(危険低減)」の叡智があると仮説し、その仕組みと集落の空間構成を把握し、「リスクリダクション」の叡智を「営み」「場所」「かたち」の関係性から明らかにすることを通して、小規模集落の「環境構築」の構造を明らかにする事を目的とする。昨年度と同様に、「営み」「場所」「かたち」の「営み」を中心に兵庫県香美町高坂集落及び兵庫県上郡町皆坂(かいさか)集落の現地調査を行った。6月には、皆坂集落で懇談会を開催、集落の生活実態の調査を行った。7月、10月には、高坂集落伝統行事の現地調査を行い、「かたち」は、9月に皆坂集落の地形及び水系の現地調査を行い、11月に神戸芸術工科大学において、齊木崇人と研究協力者の橋本で、今後の高坂集落及び皆坂集落の生活実態調査と空間構成の調査の報告会と今後の研究の進め方について、意見交換を行った。「場所」について、東日本大震災で被害を受けた、岩手県両石市の調査を齊木崇人が行い、震災計画が集団移転をする集落のリスクリダクションの叡智を生かした復興計画であるかについて実態調査を行った。日本の生きつづけてきた小規模集落(高齢化率40%以上かつ50世帯以下の集落)には、震災・災害に対する備え「リスクリダクション(危険低減)」の叡智があると仮説し、その仕組みと集落の空間構成を把握し、「リスクリダクション」の叡智を「営み」「場所」「かたち」の関係性から明らかにすることを通して、小規模集落の「環境構築」の構造を明らかにする事を目的とする。そして、究極の目的として集落が抱えている問題の本質的な解決をめざす持続的計画手法を実践的に構築する。そして、究極の目的として集落が抱えている問題の本質的な解決を実践的に構築する。本研究は、日本の生きつづけてきた小規模集落(高齢化率40%以上、50世帯以下)には、震災・災害に対する備え「リスクリダクション(危険低減)」の叡智があると仮説し、その仕組みと集落の空間構成を把握し、「リスクリダクション」の叡智を「営み」「場所」「かたち」の関係性から明らかにすることを通して、小規模集落の「環境構築」の構造を明らかにする事を目的とする。今年度は、「営み」「場所」「かたち」の「営み」を中心に兵庫県香美町高坂集落の現地調査を行った。7月、10月に伝統行事の現地調査を行い、村が伝統行事を継承する事が大きな課題であると共に、伝統行事が村の維持の為に一つのツールとして使えるのではないかと仮説を立てる事ができた。「かたち」は、5月に高坂集落の水系を齊木崇人が現地調査を行い、集落の周辺にある水系が村の基盤を維持していることが分かった。また、11月に上郡町黒石、市原皆坂集落の生活実態の調査を実施した。「場所」について、研究協力者の橋本が、集落のコミュニティ形成についての調査を行い、むらづくりの方向性を示した。また、東日本大震災で被害を受けた、岩手県両石市の調査を齊木崇人と上原三知が行い、震災復興からリスクリダクションの叡智を生かした復興のコミュニティ再生の実態と復興計画の実態調査を行った。研究の初年度である為、7月に神戸芸術工科大学で齊木崇人浦山隆一渋谷鎮明鎌田誠史で、研究の説明と意見交換を行い、本研究の重要性と今後の方向性を話し合った。本研究は、日本の生きつづけてきた小規模集落(高齢化率40%以上、50世帯以下)には、震災・災害に対する備え「リスクリダクション(危険低減)」の叡智があると仮説し、その仕組みと集落の空間構成を把握し、「リスクリダクション」の叡智を「営み」「場所」「かたち」の関係性から明らかにすることを通して、小規模集落の「環境構築」の構造を明らかにする事を目的としてきた。初めの研究は、兵庫県香美町高坂集落を事例に小規模集落の村づくりの取り組みであり、次いでの研究は東日本大震災被害と影響を受けた茨城県の集落の立地選定と持続の仕組みに見るリスクリダクションに関する研究である。両者の比較考察を通して、様々な自然災害や社会の経済格差の中で、自然生態と調和しつつ生き続けている小規模集落の立地選定に見るリスクリダクションの叡智を再度把握する事ができた。加えて、近代以降、それぞれの時代の科学や技術力で未来を計画してきた私たちは、その都度、予測不可能な様々な災害やリスクに遭遇してきた。そのリスクは社会が進歩すればするほど増大してきたと言ってよい。しかし伝統的な集落では立地条件に深く制御され、古いと言われるコミュニティが多様なリスクに対応して生きてきた。そのコミュニティが今生まれ変わりつつある。新しい人々を受け入れて長期的なリスクへの対応が始まっている。新しい協同のあり方や共に助け合う仕組みの兆しが生まれつつある。 | KAKENHI-PROJECT-24560775 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24560775 |
小規模集落におけるリスクリダクションの叡智を生かした環境構築に関する研究 | その兆しは行政が経済的支援を続ける事でリスクを回避する事とは対照的に、コミュニティ自らが災害や危機を察知し日常の対応の延長として機敏に対処している事を学ぶ事ができる。今後の研究課題として、集落の立地選定と地域コミュニティの運営から見た持続的環境共存の構造を明らかにしていきたい。都市・農村計画昨年度と同様に、「営み」「場所」「かたち」の「営み」を中心に兵庫県香美町高坂集落及び兵庫県上郡町皆坂(かいさか)集落の現地調査を行った。6月には、皆坂集落で懇談会を開催、集落の生活実態の調査を行い、交通の課題、治安の問題、人口減少、伝統行事の継承問題といった、問題・課題が分かった。また、7月、10月には、高坂集落伝統行事の現地調査を行った。「かたち」は、9月に皆坂集落の地形及び水系の現地調査を行い、山に囲まれた集落の谷線の水系が通っており、山に芝刈りに行くための道や、休耕田、先人が残した炭焼き釜を調査する事ができた。11月に神戸芸術工科大学において、齊木崇人と研究協力者の橋本で、今後の高坂集落及び皆坂集落の生活実態調査と空間構成の調査の報告会と今後の研究の進め方について、意見交換を行い、中山間地域の集落において、水系と地形、伝統、生活が集落の空間構成に大きな意味をもたらしている事を確認した。また、その集落空間の構成を先人が残した叡智が残っている事を報告した。「場所」について、研究協力者の橋本が、平成25年6月から平成26年3月まで、継続して高坂集落及び皆坂集落のコミュニティ形成についての現地調査を行った。また、東日本大震災で被害を受けた、岩手県両石市の調査を齊木崇人が行い、震災計画が集落のリスクリダクションの叡智を生かした復興計画であるかについて実態調査を行い、安全と集落の伝統及びリスクリダクションの叡智との地域の葛藤を感じる事が出来た。これらの調査結果を基に、中山間地域の集落がどのような空間構成原理を持ち、コミュニティが形成されているかを、現地調査、資料収集から考察を行い、まとめが順調に進んでいるといえる。平成24年度は兵庫県但馬地域の現地調査・聞き取り調査を通じて研究課題を進めた「営み」「場所」「かたち」の「営み」を中心に兵庫県香美町高坂集落の現地調査を行った。7月、10月に伝統行事の現地調査を行い、「かたち」は、5月に高坂集落の水系を齊木崇人が現地調査を行い、集落周辺をはしる水系が存在する事が分かり、地図に落とし込む事で、水系が集落空間や人々の暮らしの基盤となっていることが分かり、村の歴史を紐解くことが出来た。11月に上郡町黒石、市原皆坂集落の生活実態の調査を実施した。「場所」について、研究協力者の橋本が、集落のコミュニティ形成についての調査を行った。限界集落化しつつある、高坂集落のむらづくりの方向性を衆目評価で村の人達にむらづくりの提案を行い、実践した。そして、研究代表者や分担者が現在まで蓄積してきた集落の研究・調査資料をもとに、調査対象地の選定を行い、集落空間が持続し秩序づけられてきた空間の特性を比較・考察し、小規模集落が持つリスクリダクションの叡智を生かした環境構築の構造を読むことが出来た。また、研究分担者と研究協力者との研究会を神戸芸術工科大学で行い共有化を図った。調査対象地の選定においては、兵庫県が実践している「小規模集落元気作戦」で、村の持続に取り組んでいる集落を中心に行い。また、図書館、各市町村への資料収集を行い現地の研究分担者・協力者とともに研究を行った。 | KAKENHI-PROJECT-24560775 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24560775 |
顧客の意思決定を考慮に入れた競合的在庫問題とその解析 | 本研究は,顧客(消費者)の意思決定を考慮に入れた供給者側における競合的在庫問題を数理的にモデル化し,各供給者の利益最大化の基準の下で最適な振る舞いがどのような戦略になるのかを追求することを目的としている。今年度の研究は,平成18年度に行なった供給者の立場とは逆に,供給者の販売量を考慮した上での顧客の購買行動についての問題を,非O和ゲームとして定式化し,顧客側に関する戦略を平衡戦略により明確にした。既存研究では,消費者側の行動がすでに確率分布で与えられた状況の下での競合的在庫問題として数理的にモデル化し,最適発注量に関する平衡点を導出されている点を,本研究では,供給者および消費者を意思決定者として捉えた意思決定を伴う数理モデルとして定式化した。消費者側には,製品の購入費用,購入先までの移動に伴う移動費用,購入できなかった場合の機会損失に関する費用,ロイヤリティに関する費用の和を最小にするという基準を採用し,一方の供給者側には,発注,在庫保持,不足,販売を考慮した利益の最大化を基準に採用することにより,より現実的な形でモデル化している。このようなモデルでは様々なバリエーションが考えられるが,今年度は昨年度提案したモデルの消費者の数に関する一般化として,2つの供給者と一様に分布した出発時刻をもつ複数の消費者に対する競合的在庫問題を提案し,その問題に対する数理的モデルの構築化,供給者の利益最大化の下での安定した平衡戦略の導出,およびそれらについての考察を行なった。本研究で得られた結果により,現実社会における消費者行動の妥当性が確証された。供給者および消費者の数がともに一般的な場合についても考察を行なってきたが,抽象的なモデル化は可能であるものの具体的な平衡点の導出には至っていない。本研究は、顧客(消費者)の意思決定を考慮に入れた供給者側における競合的在庫問題を数理的にモデル化し、各供給者の利益最大化の基準の下で最適な振る舞いがどのような戦略になるのかを追求することを目的としている。今年度の研究では、平成16年度および平成17年度において文部科学省科学研究費補助金を受けた研究『合併、提携や市場参入を考慮に入れた競合的在庫問題のモデル化とその解析』の研究成果をもとに、供給者側の意思と消費者側の意思を競合的在庫問題としてどのように数理的モデルへ組み込むべきかについてモデル構築に関する検討を行った。これまでの研究においては消費者側の行動がすでに与えられた状態において競合的在庫問題として数理的にモデル化し、最適発注量に関する平衡点を導いてきたが、本研究では、供給者側および消費者側の両方において意思決定を伴うモデルとして定式化している。そこで、消費者側には、製品の購入費用、購入先までの移動に伴う移動費用、様々な供給先へ移動しても購入できなかった場合のダメージに関する費用の和を最小にするという基準を採用した。一方、供給者側は発注、在庫保持、不足、販売に伴う費用において利益最大化について追求した。今年度は主に供給者側が2つ、消費者側が2つで、需要量が既知である場合についての競合的在庫問題に対し、モデル化を行い、供給者側および消費者側の平衡戦略を導いた。モデル上の仮定のシンプルさが非常に単純な平衡戦略を与えており、予想できうる結果を確証づけられた。本研究は,顧客(消費者)の意思決定を考慮に入れた供給者側における競合的在庫問題を数理的にモデル化し,各供給者の利益最大化の基準の下で最適な振る舞いがどのような戦略になるのかを追求することを目的としている。今年度の研究は,平成18年度に行なった供給者の立場とは逆に,供給者の販売量を考慮した上での顧客の購買行動についての問題を,非O和ゲームとして定式化し,顧客側に関する戦略を平衡戦略により明確にした。既存研究では,消費者側の行動がすでに確率分布で与えられた状況の下での競合的在庫問題として数理的にモデル化し,最適発注量に関する平衡点を導出されている点を,本研究では,供給者および消費者を意思決定者として捉えた意思決定を伴う数理モデルとして定式化した。消費者側には,製品の購入費用,購入先までの移動に伴う移動費用,購入できなかった場合の機会損失に関する費用,ロイヤリティに関する費用の和を最小にするという基準を採用し,一方の供給者側には,発注,在庫保持,不足,販売を考慮した利益の最大化を基準に採用することにより,より現実的な形でモデル化している。このようなモデルでは様々なバリエーションが考えられるが,今年度は昨年度提案したモデルの消費者の数に関する一般化として,2つの供給者と一様に分布した出発時刻をもつ複数の消費者に対する競合的在庫問題を提案し,その問題に対する数理的モデルの構築化,供給者の利益最大化の下での安定した平衡戦略の導出,およびそれらについての考察を行なった。本研究で得られた結果により,現実社会における消費者行動の妥当性が確証された。供給者および消費者の数がともに一般的な場合についても考察を行なってきたが,抽象的なモデル化は可能であるものの具体的な平衡点の導出には至っていない。 | KAKENHI-PROJECT-18710135 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18710135 |
エスニック・ツーリズムによる民族間関係の再編―中国雲南省回族社会の事例から | 本研究の目的は、回族によるイスラーム復興運動の一環であった回族集住地域の景観のイスラーム化が、政府による少数民族地域の経済発展を目的とした観光開発と結びつき展開してきたプロセスを描き出し、そこで創出される観光活動を媒介とした民族関係の再編を明らかにすることである。前年度までの調査によって、沿岸部との経済的格差がみられる少数民族が集住する雲南省などの少数民族集住地域の経済発展および少数民族の国民統合を主な目的とした政府主導での民族観光開発が行われてきたことにより、従来非ムスリムが訪れることの少なかった回族集住地域に国内外から多くの観光客がやって来るようになってきた状況が明らかになってきた。ただし、現地の回族をはじめとするムスリムたちの間には、礼拝を行う宗教活動場所への観光客の訪問に対する反発がある一方で、この機会をイスラームを布教するために積極的に利用しようとする傾向もみられた。また、昆明市でのテロ事件を機に、民族観光を推進する傾向にあった中国政府が回族集住地域における民族観光を抑圧し始めた状況が明らかになった。しかし一方で、それにより知名度のなかった回族集住地域が耳目を集めることとなり、一層多くの非ムスリム観光客を集めている。2018年度は、さらに中国政府の当該地域での観光政策、宗教政策の実施状況を調査した。「イスラームの中国化」を推し進める現政権下において、民族観光をイスラームの布教の場として利用することはもちろん、民族観光自体もその実施が困難になりつつある状況が明らかになった。最終年度にあたる当該年度は、これまでの成果を国際会議や国内の学会や研究会での口頭発表、および英語論文、日本語共著として発表した。本研究の目的は、回族によるイスラーム復興運動の一環であった回族集住地域の景観のイスラーム化が、政府による少数民族地域の経済発展を目的とした観光開発と結びつき展開してきたプロセスを描き出し、そこで創出される観光活動を媒介とした民族関係の再編を明らかにすることである。当該研究目的を達成するために報告者は、雲南省紅河州沙甸区の回族集住地域において活発化する民族観光に関するフィールドデータに基づき、観光開発を契機とする民族間関係の変化を明らかにしてきた。雲南省などの少数民族が集住する国境地域には、沿岸部との経済的格差がみられ、それは特に少数民族集住地域において顕著な傾向にある。そのため、雲南省では少数民族集住地域の経済発展および少数民族の国民統合を主な目的とした政府主導での民族観光開発が行われてきた。その結果、調査地である従来非ムスリムが訪れることの少なかった回族集住地域に国内外から多くの観光客がやって来るようになった。現地の回族をはじめとするムスリムたちの間には、礼拝を行う宗教活動場所への観光客の訪問に対する反発がある一方で、この機会をイスラームを布教するために積極的に利用しようとする傾向もみられる。当該年度はコンフリクトをはらみながら、こうした民族観光開発に伴う変化にホスト社会がいかに対処しようとしてきたのかを改革・開放以降の宗教復興との関連から明らかにすることを試みてきた。その成果は、国内外の学会での口頭発表、および共著、日本語論文などとして発表した。研究計画は、おおむね順調に進展している。第一に、今後の調査において調査地の人びとに協力いただけることになった。そのため、来年度以降の研究計画の実施においても大きな問題はないものと考えられる。また、当該年度においては、国内外で英語および日本語で成果発表を積極的に実施した。それらからのフィードバックおよびそこで構築できた国内外の研究者とのネットワークは、来年度以降の研究を発展させていくうえで有益なものである。以上の理由から、当該年度は研究が順調に進んだものとみなしうる。本研究の目的は、回族によるイスラーム復興運動の一環であった回族集住地域の景観のイスラーム化が、政府による少数民族地域の経済発展を目的とした観光開発と結びつき展開してきたプロセスを描き出し、そこで創出される観光活動を媒介とした民族関係の再編を明らかにすることである。前年度までの調査によって、沿岸部との経済的格差がみられる少数民族が集住する雲南省などの少数民族集住地域の経済発展および少数民族の国民統合を主な目的とした政府主導での民族観光開発が行われてきたことにより、従来非ムスリムが訪れることの少なかった回族集住地域に国内外から多くの観光客がやって来るようになってきた状況が明らかになってきた。ただし、現地の回族をはじめとするムスリムたちの間には、礼拝を行う宗教活動場所への観光客の訪問に対する反発がある一方で、この機会をイスラームを布教するために積極的に利用しようとする傾向もみられた。2017年度は、引き続き、中国雲南省昆明市および紅河州のモスクと回族を中心としたムスリム・コミュニティにおいて、ムスリム社会における非ムスリム観光客の受け入れ状況について現地調査を実施した。そこから、昆明市でのテロ事件を機に、民族観光を推進する傾向にあった中国政府が回族集住地域における民族観光を抑圧し始めた状況が明らかになった。しかし一方で、それにより知名度のなかった回族集住地域が耳目を集めることとなり、一層多くの非ムスリム観光客を集めている。当該年度は、ムスリム・コミュニティ内だけではなく、政府との間にもコンフリクトをはらみつつ展開する民族観光の現場において、回族たちがいかに観光客の増加にいかに対処してきたのかを、改革・開放以降の回族のエスニシティの変化との関係から明らかにすることを試みてきた。その成果は、国内外の学会での口頭発表、および英語論文、中国語共著、日本語共著として発表した。研究計画は、おおむね順調に進展している。 | KAKENHI-PROJECT-16K16674 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K16674 |
エスニック・ツーリズムによる民族間関係の再編―中国雲南省回族社会の事例から | 昨年から継続してフィールドワークを実施し、現地における民族観光のあり方の変化についてデータを収集することができた。また、2017年度は、2つの国際学会に参加し、英語および中国語で発表するとともに、英語論文、中国語共著、日本語共著としてその成果を発表してきた。そのため、当該年度は研究成果の国際化を図るとともに、研究成果の現地への還元を積極的に実施してきたといえる。以上の理由から、当該年度は研究が順調に進んだとみなしうる。本研究の目的は、回族によるイスラーム復興運動の一環であった回族集住地域の景観のイスラーム化が、政府による少数民族地域の経済発展を目的とした観光開発と結びつき展開してきたプロセスを描き出し、そこで創出される観光活動を媒介とした民族関係の再編を明らかにすることである。前年度までの調査によって、沿岸部との経済的格差がみられる少数民族が集住する雲南省などの少数民族集住地域の経済発展および少数民族の国民統合を主な目的とした政府主導での民族観光開発が行われてきたことにより、従来非ムスリムが訪れることの少なかった回族集住地域に国内外から多くの観光客がやって来るようになってきた状況が明らかになってきた。ただし、現地の回族をはじめとするムスリムたちの間には、礼拝を行う宗教活動場所への観光客の訪問に対する反発がある一方で、この機会をイスラームを布教するために積極的に利用しようとする傾向もみられた。また、昆明市でのテロ事件を機に、民族観光を推進する傾向にあった中国政府が回族集住地域における民族観光を抑圧し始めた状況が明らかになった。しかし一方で、それにより知名度のなかった回族集住地域が耳目を集めることとなり、一層多くの非ムスリム観光客を集めている。2018年度は、さらに中国政府の当該地域での観光政策、宗教政策の実施状況を調査した。「イスラームの中国化」を推し進める現政権下において、民族観光をイスラームの布教の場として利用することはもちろん、民族観光自体もその実施が困難になりつつある状況が明らかになった。最終年度にあたる当該年度は、これまでの成果を国際会議や国内の学会や研究会での口頭発表、および英語論文、日本語共著として発表した。当該年度は、調査地におけるモスクを中心としたコミュニティに焦点を当てて研究を進めてきた。しかし、現地ムスリム社会はモスクを中心としたコミュニティに還元できるわけではない。そのため、現地のより多様なアクターに焦点を当てた調査を次年度以降は実施していく必要がある。また、当該年度は、主に民族観光に関する先行研究を参照枠として研究成果を発表してきた。その一方で、エスニシティに関わる理論的検討の実施は不十分であった。それを踏まえ、次年度以降は、民族誌的事例の分析からいかに既存のエスニシティ論を拡大していけるかを考察していく。本研究プロジェクトでは、これまで2年間、フィールドワークを実施すると共に、その成果を国内外の学会や内外の雑誌論文、書籍として発表してきた。最終年度となる来年度は、これまでの調査データをまとめ、補足的調査をするとともに、政府の民族観光政策に関する文献資料調査を実施する。 | KAKENHI-PROJECT-16K16674 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K16674 |
将来衛星多点観測ミッションを実現する小型・高性能な新型プラズマ波動観測器 | 地球の極域上層において、電離した大気が宇宙空間へ流出する現象が知られており、このような地球電離大気の流出現象の解明は重要な課題である。流出機構の解明には小型衛星によるプラズマ波動の多点観測が必要であるが、現在用いられている観測器は比較的大型であり小型衛星に搭載するためには観測器の小型化が不可欠である。そこで本研究はプラズマ波動観測器専用チップを設計することで、衛星ミッションに使用可能な性能を持つ小型プラズマ波動観測器の実現を目的とする。地球の極域上層において、電離した大気が宇宙空間へ流出する現象が知られており、このような地球電離大気の流出現象の解明は重要な課題である。流出機構の解明には小型衛星によるプラズマ波動の多点観測が必要であるが、現在用いられている観測器は比較的大型であり小型衛星に搭載するためには観測器の小型化が不可欠である。そこで本研究はプラズマ波動観測器専用チップを設計することで、衛星ミッションに使用可能な性能を持つ小型プラズマ波動観測器の実現を目的とする。 | KAKENHI-PROJECT-19K23464 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K23464 |
差異の生成に関する言語人類学的研究:ボリビア東部低地の先住民言語政策とその帰結 | 本研究の目的は、ボリビア・チキタニア地方において「正しい先住民言語」が生成するメカニズムを言語人類学的に明らかにし、対象を取り巻く様々な差異のあり方を明らかにすることである。そのために本年度に行った研究の内容と成果は次の通りである。1.学会発表や研究者との交流を通したデータの整理・検討を行った。日本・スペイン・ラテンアメリカ学会(CANELA)定期大会では、ボリビア国家・チキタノ語(ベシロ語)教師・カトリック実践の影響関係について発表を行なった。多言語社会研究会では、CANELAで行なった発表の内容に未検討のデータの分析を加え、より広く文化人類学・言語人類学における儀礼研究への接合を試みた。ボリビア低地人類学・歴史学・考古学学会年次大会では、先住民言語教育と民族誌家の関係について発表を行った。これらの発表から、政府のイデオロギーとベシロ語(チキタノ語)政策の関係や、CANELAで取り上げたカトリック実践(「説教」)の口頭の発話と識字実践の中間的なあり方、といった問題を意識しながら研究を進めるべき、という示唆を得ることができた。2.国内外での資料収集と内容の検討、文献を通した理論研究を行った。特に、チキタニア地方の複雑な歴史の空白期間(イエズス会追放以降)を埋め、かつ歴史学と人類学の架橋を目指す野心的な著作の検討は、「脱植民地化」を目指す政府のもとで行われているベシロ語(チキタノ語)政策を対象とする本研究にとっても、チキタニアの歴史をどう理解するかを考えるうえで、大いに刺激となった。3.チキタニア地方に滞在し、ベシロ語話者・教師のある男性の生い立ちなどについて聞き取りを行った。これにより、現在のチキタノ語(ベシロ語)教育を、一人のチキタノ語(ベシロ語)教師が様々な領域と関連づけてどのように認識しているのか、その位置付け方を知ることができた。本年度の進捗状況に関しては「おおむね順調に進展している」と言える。理由としては次の3点が挙げられる。1.当初予定していたボリビアの低地人類学・歴史学・考古学学会定期大会に加え、CANELAや多言語社会研究会での口頭発表を遂行し、今後取り組むべき課題がより明確となった。2.当初予定していた文献・資料を通した研究を行った結果、チキタニア地方の歴史とチキタノ語(ベシロ語)政策の関係をどのように捉えるか、という新たな課題を発見することができた。3.当初予定していたチキタノ語(ベシロ語)教育の現状などについての現地調査を行うことができた。この調査で行ったベシロ語話者・教師の生い立ちなどに関する聞き取りで得られたデータは、今日のチキタノあるいはチキタノ語(ベシロ語)教育をどのように理解するかという点において、個人の語りという観点から、その歴史にアプローチする可能性を示してくれるものであった。翌年度は、本年度までの成果をもとに学会等で発表を行い、単著ブックレットなど研究成果を執筆・投稿しながら、博士論文の執筆に取り掛かる。加えて、ボリビアでチキタノ語(ベシロ語)やチキタノ語(ベシロ語)教育の現状や歴史について調査を行いながら、引き続き資料の収集に取り組む。同時に、博士論文の執筆に取り組む。本研究の目的は、ボリビア・チキタニア地方において「正しい先住民言語」が生成するメカニズムを言語人類学的に明らかにし、対象を取り巻く様々な差異のあり方を明らかにすることである。そのために本年度に行った研究の内容と成果は次の通りである。1.学会発表を通したデータの整理・検討を行った。日本文化人類学会定期大会ではチキタノ語教育政策の複数の層の相互作用によって「正しいチキタノ語」が生成していく過程について発表を行った。ラテンアメリカ学会定期大会では、チキタノ語政策と当地の政治状況について、政治的・社会的にあいまいな立ち位置にあるチキタノ語教師のあり方について発表を行った。松下幸之助国際スカラシップフォーラムでは、矛盾や不安定さを含むチキタノ語政策の現状について発表を行った。これらの発表から、チキタノ語政策の対象社会全体における位置づけを意識して研究を進めるべき、という示唆を得た。2.資料収集・文献を通した理論研究を行った。特に書評を投稿中のボリビア低地のグアラニ語政策に関する民族誌は、国のグアラニ語政策をローカル、ナショナル、トランスナショナルなレベルの相互作用の過程として論じるものであり、現地調査で得たデータをいかに論じるか、という点に関して参考となっただけでなく、言語人類学という枠を超えて政治人類学などより様々な人類学の分野に本研究を位置付ける可能性を見出せた。3.チキタニア地方に滞在し、地元のカトリック教会、先住民典礼組織カビルド、行政、住民等の参加で行われる聖週間の様子や、当地の「チキタノ文化」再興を目指す協働の動きに関する民族誌的調査を行った。これにより、宗教的領域におけるチキタノ語のあり方を理解するには複数のアクターの協働を注視することが重要であることが分かった。このことは、地域的文脈を重視する国のチキタノ語政策を理解するうえでも重要な視角となるだろう。本年度の進捗状況に関しては「おおむね順調に進展している」と言える。理由としては次の3点が挙げられる。1.当初予定していた一連の口頭発表を遂行しただけでなく、そのフィードバックを通じて「先住民言語政策の対象社会全体における位置づけを明らかにする」という取り組むべき課題がより明確となった。 | KAKENHI-PROJECT-17J05388 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J05388 |
差異の生成に関する言語人類学的研究:ボリビア東部低地の先住民言語政策とその帰結 | 2.当初予定していた言語人類学を中心とする文献・資料を通した理論研究を行った結果、政治人類学などより様々な人類学の分野に本研究を理論的に位置付ける可能性を見出せた。3.当初予定していたボリビアでの資料収集とチキタノ語話者・チキタノ語政策関係者への聞き取りに加え、当地の聖週間や「チキタノ文化」再興の動きに関する民族誌的調査を行うことができた。チキタノ語政策は地域の社会的・文化的文脈の重視を要請する国の制度との関連から実践されるものであるため、調査地の様々なアクターが集合的に参与するキリスト教儀礼や、「チキタノ文化」再興を目指す当地の諸アクターの協働の動きの調査を行えたことは意義があった。これにより、1.で述べた「先住民言語政策の対象社会全体における位置づけを明らかにする」という新たに発展した課題に取り組むための足掛かりを得ることが出来た。本研究の目的は、ボリビア・チキタニア地方において「正しい先住民言語」が生成するメカニズムを言語人類学的に明らかにし、対象を取り巻く様々な差異のあり方を明らかにすることである。そのために本年度に行った研究の内容と成果は次の通りである。1.学会発表や研究者との交流を通したデータの整理・検討を行った。日本・スペイン・ラテンアメリカ学会(CANELA)定期大会では、ボリビア国家・チキタノ語(ベシロ語)教師・カトリック実践の影響関係について発表を行なった。多言語社会研究会では、CANELAで行なった発表の内容に未検討のデータの分析を加え、より広く文化人類学・言語人類学における儀礼研究への接合を試みた。ボリビア低地人類学・歴史学・考古学学会年次大会では、先住民言語教育と民族誌家の関係について発表を行った。これらの発表から、政府のイデオロギーとベシロ語(チキタノ語)政策の関係や、CANELAで取り上げたカトリック実践(「説教」)の口頭の発話と識字実践の中間的なあり方、といった問題を意識しながら研究を進めるべき、という示唆を得ることができた。2.国内外での資料収集と内容の検討、文献を通した理論研究を行った。特に、チキタニア地方の複雑な歴史の空白期間(イエズス会追放以降)を埋め、かつ歴史学と人類学の架橋を目指す野心的な著作の検討は、「脱植民地化」を目指す政府のもとで行われているベシロ語(チキタノ語)政策を対象とする本研究にとっても、チキタニアの歴史をどう理解するかを考えるうえで、大いに刺激となった。3.チキタニア地方に滞在し、ベシロ語話者・教師のある男性の生い立ちなどについて聞き取りを行った。これにより、現在のチキタノ語(ベシロ語)教育を、一人のチキタノ語(ベシロ語)教師が様々な領域と関連づけてどのように認識しているのか、その位置付け方を知ることができた。本年度の進捗状況に関しては「おおむね順調に進展している」と言える。理由としては次の3点が挙げられる。1.当初予定していたボリビアの低地人類学・歴史学・考古学学会定期大会に加え、CANELAや多言語社会研究会での口頭発表を遂行し、今後取り組むべき課題がより明確となった。2.当初予定していた文献・資料を通した研究を行った結果、チキタニア地方の歴史とチキタノ語(ベシロ語)政策の関係をどのように捉えるか、という新たな課題を発見することができた。3.当初予定していたチキタノ語(ベシロ語)教育の現状などについての現地調査を行うことができた。この調査で行ったベシロ語 | KAKENHI-PROJECT-17J05388 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J05388 |
卵巣癌治療における宿主免疫変化の包括的解析を用いた新規免疫化学療法の検討 | 卵巣癌の腫瘍局所でのがん免疫逃避機構について、腫瘍検体を用いて11個の免疫抑制因子(免疫抑制因子および免疫細胞分画)を調べ、それらの結果を定量化し階層的クラスター解析を行った結果、予後が分かれるクラスターを発見し、免疫状態に合わせた個別の治療が有用である可能性が示唆された。さらに抗がん剤による同機構への影響を網羅的遺伝子発現解析を行い、免疫関連の転写因子と免疫抑制シグナル因子の発現を確認し、同シグナル阻害剤と抗がん剤の併用療法をの有用性を確認した。卵巣癌に対する術前化学療法前後での腫瘍組織における遺伝子発現マイクロアレイデーターを元にした、化学療法別のサブ解析にて、パクリタキセルおよびカルボプラチン投与によって、一部データーは異なるものの、概ね免疫関連遺伝子が上昇していることがわかった。そのなかで腫瘍浸潤や血管新生に関わる転写因子活性を示唆する遺伝子群の変化も認めた。そこで、卵巣癌細胞株を用いて、化学療法によりこれらの転写因子や免疫関連因子の変化を検討した結果、遺伝子発現マイクロアレイ解析結果と一致しており、さらにこの転写因子を遺伝子発現抑制法(siRNA)で抑制すると、それらの発現も低下したことから、この転写因子が化学療法により活性促進が生じたと考えられた。また、この遺伝子がサイトカインにより誘導されることから、サイトカインの受容体を同様にsiRNAで阻害しても遺伝子発現変化が見られなかったことから、サイトカイン非依存的に化学療法で、この遺伝子発現が上昇していることが示唆された。卵巣癌の腫瘍局所でのがん免疫逃避機構について、腫瘍検体を用いて11個の免疫抑制因子(免疫抑制因子および免疫細胞分画)を調べ、それらの結果を定量化し階層的クラスター解析を行った結果、予後が分かれるクラスターを発見し、免疫状態に合わせた個別の治療が有用である可能性が示唆された。さらに抗がん剤による同機構への影響を網羅的遺伝子発現解析を行い、免疫関連の転写因子と免疫抑制シグナル因子の発現を確認し、同シグナル阻害剤と抗がん剤の併用療法をの有用性を確認した。進行卵巣癌に対する術前化学療法投与前後における腫瘍組織を用いた発現マイクロアレイデータ解析によって、腫瘍局所では、免疫に関わる100種類以上の遺伝子と10種類以上の遺伝子群が上昇することがわかった。特に免疫細胞分画に関わるCD3,CD8遺伝子が有意に上昇していることから、化学療法によって、腫瘍局所に免疫細胞浸潤が促進されている可能性があり、すなわち免疫活性化が生じている可能性が示唆さられた。さらにこれらのpair解析にて化学療法後にCD8遺伝子発現(キラーT細胞浸潤を示す)が上昇しない症例は短期間で再発するが、上昇する症例は再発しない傾向にあることが示された。さらに、免疫を抑制的に作用させる制御性T細胞のマスター遺伝子FOXP3遺伝子や免疫抑制性副シグナル受容体PD-1(PDCD1)の発現変化の解析において、治療後に低下する症例はやはり有意に再発しなかった。実際に当科で手術後に化学療法を行い2回目の手術を行った症例20例を対象として、それぞれ摘出腫瘍の病理切片の免疫組織染色にて、2度目の手術治療後に再発する症例は抗がん剤投与後2回目の手術の組織中のCD8T細胞浸潤は上昇しておらず、逆に無再発症例はCD8Tsaibouga高度に浸潤していた。また、FOXP3の免疫染色でも、無再発症例は低下傾向であった。即ち、化学療法によりある種の免疫活性が腫瘍局所に誘導され予後改善に寄与している可能性があるが、一方で全く反応しない症例は予後不良となる可能性が示された。化学療法前後の、発現マイクロアレイデータ解析から、予想以上に多くの免疫に関連した遺伝子および遺伝子群(Signature)が抽出された。その中でも最も期待していたCD8(キラーT細胞分画)が大きく動いており、その動きが再発などの臨床情報とクロスリンクすることを示すことができた。またこのデータを裏づけるように、他のT細胞CD分画やT細胞受容体関連遺伝子やHLA関連遺伝子も大きく動いていたことから、単に化学療法は一時的に全身の免疫力を落とす(免疫細胞数が減少する)、という臨床データー上の作用だけではなく、腫瘍局所では、ダイナミックに免疫反応が誘導されている可能性が示された。そこで、卵巣癌組織を用いて上記のタンパク発現を検討した結果、腫瘍浸潤キラーT細胞診順と再発との相関を導き出すことができ、発現マイクロアレイ解析の結果と同様の結果を示すことができた。以上から、当初の計画通り実行できており、今回の結果は腫瘍局所における化学療法の免疫学的作用の一端を解明することができたと考えられるので、上記評価とした。今回の研究で検討した化学療法は、卵巣癌の第一選択薬であるパクリタキセルとカルボプラチンであったが、臨床的に改善を期待したいのは、第2,3選択薬である。そのため今後の研究の推進方策として、ゲムシタビンやイリノテカンなどのこれまでと機序のことなった化学療法についても、今回と同様に検討を行いたい。即ち、今回の検討で第1選択薬との併用を、今後においては第2,第3選択薬の補助薬となるような免疫療法のシーズを探索し、綜合的に卵巣癌患者の予後改善を目指す基礎的検討を行いたい。また研究資材としては、今回の検討で使用したマイクロアレイ遺伝子チップよりもより高精度かつ遺伝子セットも増量されたチップが安価で購入が可能となっており、解析対象となる遺伝子が格段に増えることとなるため、より有意な遺伝子や遺伝子群(gene signature)をさらに多く抽出することが可能となる。また、免疫に関わる遺伝子にカスタマイズしたチップをオーダーメイドをすることにって、より安価で効率的に遺伝子解析ができると考えている。 | KAKENHI-PROJECT-24791701 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24791701 |
卵巣癌治療における宿主免疫変化の包括的解析を用いた新規免疫化学療法の検討 | 今回得られた知見は、卵巣癌患者検体を持ちた観察研究であり、さらに確実な内容にするために、卵巣癌細胞株を用いたin vitro実験や、マウスを用いたin vivo実験を用いた機能的研究へと発展させていき、将来的には、特に、FOXP3やPD-1シグナル阻害と化学療法を併用するような新たな治療法の開発に結び付けたい。該当なし | KAKENHI-PROJECT-24791701 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24791701 |
半構造パタンマイニングによる糖鎖構造の分析 | 本研究の当初目標は、糖鎖データベースから特徴的な構造パタンを抽出するマイニング手法を開発し、糖鎖構造と機能の解明に寄与することとした。しかしながらアルゴリズムの開発が困難であったため、ネットワーク構造の解析,及び、その機能の解析のための新たな手法の開発を行うことを新たな目標とした。この目標に対して(1)糖鎖関連パスウェイ解析、及び、(2)糖鎖遺伝子解析を容易にする手法の研究開発を行った。(1)グラフノードクラスタリングの新たな統計モデルの構築を行った。従来法は最適なクラスタ数の決定問題やスケーラビリティに関する問題、あるいは統計モデルの場合、クラスタ内でエッジが密・クラスタ間でエッジが疎となるクラスタが必ずしも得られないという問題がある。本研究では、これらの問題に対し1最適クラスタ数の自動決定、2従来法より高速、3クラスタ内でエッジが密・クラスタ間でエッジが疎、の3点を実現するクラスタリングモデルを提案・実装した。(2)バイクラスタリングと呼ばれる遺伝子発現解析手法とその出力結果の解析を容易にするツールの開発を行った。バイクラスタリングは特定の実験条件下で共発現する遺伝子群を発見する手法として広く研究されており、近年では頻出アイテムセットマイニングを応用した手法が他手法に比べてパフォーマンスが高いことが示されている。しかしながら頻出アイテムセットマイニングに基づくアルゴリズムは冗長な出力をもつため個々の結果の解釈が困難になるという問題があった。本研究では、従来法では発見することが出来ない重要なバイクラスタも列挙し、結果を非冗長かつコンパクトな重み付きネットワーク構造に集約する手法を提案し実装して公開した。以上の(1)(2)により糖鎖関連パスウェイの解析、及び、糖鎖遺伝子の解析を従来よりも容易に行うことを可能にした。(抄録なし)当初計画では、頻出パタンマイニングアルゴリズムについて研究を行い、頻出グラフパタンの探索空間(列挙木)において、探索中に一定数以上の子パタンを持つ親パタン(ハブパタン)を発見する効率的なアルゴリズムを開発し、糖鎖構造の解析を行う予定であった。しかしながら、探索中にハブパタンを発見するアルゴリズムの開発が困難であったため、マイニングアルゴリズムに共通する出力の冗長性排除と膨大な出力の要約を行う問題に対する知見を得るために、頻出アイテムセットマイニングを応用した遺伝子発現解析手法の開発を行うことにした。またそれにより糖鎖関連遺伝子の解析を行うことを目標とした。この課題設定のもと、本年度は頻出アイテムセットマイニングを応用した新しいバイクラスタ列挙手法と列挙されたバイクラスタの要約を行うツールの開発を行った。バイクラスタリングは、行列から特定の条件を満たす部分行列を抽出する技術として研究されている。マイクロアレイのデータセットは、行方向に遺伝子、列方向に実験条件をとることでテーブル形式のデータ(以下、発現行列)として表現できるため、バイクラスタリングは遺伝子発現解析に応用され、数多くのアルゴリズムが開発されている。しかしながら、既存の多くのバイクラスタリング手法は、重要なバイクラスタを探索中に見落とす可能性があるため、今回、頻出アイテムセットマイニングを応用して重要なバイクラスタを完全列挙する新しいアルゴリズムを開発した。さらに、列挙されたバイクラスタから統計的に有意なものだけをフィルタリングし、結果を遺伝子ネットワークとして要約するツールの開発を行い、Webサイトとして公開した。今回提案したバイクラスタリング手法が、競合手法よりも生物学的に重要な遺伝子群を多く発見できることを確認した。その結果をふまえ、糖鎖関連遺伝子の解析に着手した。本研究の当初目標は、糖鎖データベースから特徴的な構造パタンを抽出するマイニング手法を開発し、糖鎖構造と機能の解明に寄与することとした。しかしながらアルゴリズムの開発が困難であったため、ネットワーク構造の解析,及び、その機能の解析のための新たな手法の開発を行うことを新たな目標とした。この目標に対して(1)糖鎖関連パスウェイ解析、及び、(2)糖鎖遺伝子解析を容易にする手法の研究開発を行った。(1)グラフノードクラスタリングの新たな統計モデルの構築を行った。従来法は最適なクラスタ数の決定問題やスケーラビリティに関する問題、あるいは統計モデルの場合、クラスタ内でエッジが密・クラスタ間でエッジが疎となるクラスタが必ずしも得られないという問題がある。本研究では、これらの問題に対し1最適クラスタ数の自動決定、2従来法より高速、3クラスタ内でエッジが密・クラスタ間でエッジが疎、の3点を実現するクラスタリングモデルを提案・実装した。(2)バイクラスタリングと呼ばれる遺伝子発現解析手法とその出力結果の解析を容易にするツールの開発を行った。バイクラスタリングは特定の実験条件下で共発現する遺伝子群を発見する手法として広く研究されており、近年では頻出アイテムセットマイニングを応用した手法が他手法に比べてパフォーマンスが高いことが示されている。しかしながら頻出アイテムセットマイニングに基づくアルゴリズムは冗長な出力をもつため個々の結果の解釈が困難になるという問題があった。本研究では、従来法では発見することが出来ない重要なバイクラスタも列挙し、結果を非冗長かつコンパクトな重み付きネットワーク構造に集約する手法を提案し実装して公開した。以上の(1)(2)により糖鎖関連パスウェイの解析、及び、糖鎖遺伝子の解析を従来よりも容易に行うことを可能にした。当初計画では、糖鎖構造解析のための効率的なグラフマイニングアルゴリズムの開発を行う予定であった。しかしながら、効率的なアルゴリズムの開発が困難であったため、テーマ変更してマイクロアレイからバイクラスタを抽出するマイニングアルゴリズムの開発を行った。 | KAKENHI-PROJECT-12J04552 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J04552 |
半構造パタンマイニングによる糖鎖構造の分析 | 開発したアルゴリズムが、既存のアルゴリズムより生物学的に有意なバイクラスタを多く生成することを確認した。成果は、webサーバーとして公開し、またジャーナルに論文を投稿中である。これらの成果は、糖鎖関連遺伝子の解析にも役立つものと期待でき、進展があったと考えている。槍鎖の構造・機能間の多様性を理解するためには、糖鎖の部分構造情報と糖鎖関連遺伝子情報を結びつけることが重要であると考えている。本年度は遺伝子解析ツールの開発を行ったものの、効率的なグラフマイニングアルゴリズムの開発が出来なったため別の視点からグラフ構造の解析について再度検討する必要がある。そこで、半教師付き学習のラベル伝搬アルゴリズムやリンク伝搬アルゴリズムを応用することで糖鎖構造の機能や予測を行うことを目標に、研究を推進する予定である。(抄録なし) | KAKENHI-PROJECT-12J04552 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J04552 |
トランスナショナル・ローの法理論の研究ーグローバルな土地収奪を事例としてー | 研究1年目にあたる本年度は、トランスナショナル・ローの理論につき、その理論的な精緻化の方向性を見定めるとともに、今後の事例研究に向けた準備作業を開始することができた。まず、理論研究については、我が国および欧米諸国の近時の研究を広範にレビューするとともに、国際的な学会・研究会に参加し(2018年4月、5月、及び2019年3月)、国外の研究者と議論を深めることで、検討の方向性を見定めることができた。すなわち、新たな法学方法論を考察する理論としてのトランスナショナル・ローという大筋の課題設定を踏まえ、日本の文脈及び国際的な文脈それぞれに合わせた理論的考察の方向性を見出すことができた。次に、事例研究については、土地収奪を専門として研究をする国外の研究者と、国際的な学会・研究会の機会において意見交換を行うことを通じて、事例研究の切り口・方法について検討を重ねるとともに、事例研究の実施に必要なネットワークも得ることができた。更に、諸外国において、事例研究に伴う問題として、調査研究方法そのものに伴う植民地主義的バイアスが活発な議論の対象となっていることを見出し、不可欠の新たな論点の設定も行うことができた。本研究は、トランスナショナル・ローという研究動向について理論的に考察し、その有用性を土地収奪の問題を主たる事例としつつ検討することを目的としている。本年度は、理論研究及び事例研究の両面において、以下の進展を得た。まず、理論研究については、以下の二点の進展があった。第一に、新たな法学方法論を考察する理論としてのトランスナショナル・ローという課題設定につき、国際的な議論動向に照らした場合、思弁的な検討を行うというよりも、越境的契約の規律や国際機関・国際NGO等による規範形成活動の整序といった、個別具体的な問題について事例を介して検討を進めていくことがスダンダードな研究方法であることを明らかにできた。第二に、我が国における議論の文脈とトランスナショナル・ローの理論との関係を考察し、新たな法学方法論を考察するという大枠の課題設定の意義を確認しつつ、関連する先行研究について整理することが出来た。上記の二点は、何れも次年度以降の研究公表の基礎を提供する不可欠のものである。次に、事例研究については、以下の二点の進展があった。第一に、土地収奪に関わる規範形成に参画するフォーラム・アクターについて把握することができ、今後の事例研究の検討対象を絞ることができた。第二に、事例研究と関連して、事例研究の実施方法そのものに伏在する植民地主義的バイアスに関する関心が高まっていることも、諸外国の研究者との意見交換から把握することができた。本問題は、日本の研究者として国際的な議論に参画していくにあたり検討が必要なものであり、その問題の存在を把握できたことは有益であった。上記の二点は、今後事例研究を実施するために不可欠な進展である。最後に、これらの基盤構築作業に留まらず、端緒的な研究成果の公表も行うことが出来た。以上のように、本研究課題は概ね順調に進展している。今後は、理論研究については、学会・研究会での報告や論文執筆に研究の力点を移し、研究成果の公表を行い、研究へのフィードバックを得るとともに、それを通じて、国外の研究者との強固な研究ネットワークの構築をも図ることを目指す。その際、前年度の研究において、理論的視座の精緻化を着実に進めるためには思弁的な検討に留まらず個別の事例・分野に着目しつつ多角的に光を当てることが必要であることが明らかとなったため、報告・執筆に際しては、トランスナショナル・ローの問題状況がよく現れている事例を取り扱うことでこれを行うこととする。具体的には、土地収奪と密接に関連する事例でもある食糧安全保障に関わる国際的規律、途上国における伝統知の保護とバイオ・パイラシーの問題、労働者保護の国際的な規律の展開について夫々取り扱いつつ、理論的枠組のさらなる精緻化を目指す。また、それらの検討と並行して、国際的な研究ネットワークの構築と諸外国の研究者との意見交換を継続し、トランスナショナル・ローという新規の分野を今後研究していく足場をより確実なものとする。また、事例研究については、前年度の研究から得た研究対象の確定を承け、実際にインタビュー調査等を交えた研究作業に入る。具体的には、前年度に実施することのできなかった国連食糧農業機関イタリア本部、コロンビア大学持続可能な開発研究センター並びに世界銀行へインタビュー調査を実施し、それらを足がかりとしつつ、継続的に土地収奪に関連する諸アクターとの意見交換を進めていく。最後に、事例研究を進める上での方法論につき、倫理的観点から考察を深めるという新たな課題について、検討に着手する。検討に際しては、諸外国におけるポスト植民地主義の研究動向を中心として議論の大筋を掴むところから開始し、日本の研究者として如何なる立場を取りうるのかについて慎重に考察を進めていく。研究1年目にあたる本年度は、トランスナショナル・ローの理論につき、その理論的な精緻化の方向性を見定めるとともに、今後の事例研究に向けた準備作業を開始することができた。まず、理論研究については、我が国および欧米諸国の近時の研究を広範にレビューするとともに、国際的な学会・研究会に参加し(2018年4月、5月、及び2019年3月)、国外の研究者と議論を深めることで、検討の方向性を見定めることができた。すなわち、新たな法学方法論を考察する理論としてのトランスナショナル・ローという大筋の課題設定を踏まえ、日本の文脈及び国際的な文脈それぞれに合わせた理論的考察の方向性を見出すことができた。 | KAKENHI-PROJECT-18J01251 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J01251 |
トランスナショナル・ローの法理論の研究ーグローバルな土地収奪を事例としてー | 次に、事例研究については、土地収奪を専門として研究をする国外の研究者と、国際的な学会・研究会の機会において意見交換を行うことを通じて、事例研究の切り口・方法について検討を重ねるとともに、事例研究の実施に必要なネットワークも得ることができた。更に、諸外国において、事例研究に伴う問題として、調査研究方法そのものに伴う植民地主義的バイアスが活発な議論の対象となっていることを見出し、不可欠の新たな論点の設定も行うことができた。本研究は、トランスナショナル・ローという研究動向について理論的に考察し、その有用性を土地収奪の問題を主たる事例としつつ検討することを目的としている。本年度は、理論研究及び事例研究の両面において、以下の進展を得た。まず、理論研究については、以下の二点の進展があった。第一に、新たな法学方法論を考察する理論としてのトランスナショナル・ローという課題設定につき、国際的な議論動向に照らした場合、思弁的な検討を行うというよりも、越境的契約の規律や国際機関・国際NGO等による規範形成活動の整序といった、個別具体的な問題について事例を介して検討を進めていくことがスダンダードな研究方法であることを明らかにできた。第二に、我が国における議論の文脈とトランスナショナル・ローの理論との関係を考察し、新たな法学方法論を考察するという大枠の課題設定の意義を確認しつつ、関連する先行研究について整理することが出来た。上記の二点は、何れも次年度以降の研究公表の基礎を提供する不可欠のものである。次に、事例研究については、以下の二点の進展があった。第一に、土地収奪に関わる規範形成に参画するフォーラム・アクターについて把握することができ、今後の事例研究の検討対象を絞ることができた。第二に、事例研究と関連して、事例研究の実施方法そのものに伏在する植民地主義的バイアスに関する関心が高まっていることも、諸外国の研究者との意見交換から把握することができた。本問題は、日本の研究者として国際的な議論に参画していくにあたり検討が必要なものであり、その問題の存在を把握できたことは有益であった。上記の二点は、今後事例研究を実施するために不可欠な進展である。最後に、これらの基盤構築作業に留まらず、端緒的な研究成果の公表も行うことが出来た。以上のように、本研究課題は概ね順調に進展している。今後は、理論研究については、学会・研究会での報告や論文執筆に研究の力点を移し、研究成果の公表を行い、研究へのフィードバックを得るとともに、それを通じて、国外の研究者との強固な研究ネットワークの構築をも図ることを目指す。その際、前年度の研究において、理論的視座の精緻化を着実に進めるためには思弁的な検討に留まらず個別の事例・分野に着目しつつ多角的に光を当てることが必要であることが明らかとなったため、報告・執筆に際しては、トランスナショナル・ローの問題状況がよく現れている事例を取り扱うことでこれを行うこととする。具体的には、土地収奪と密接に関連する事例でもある食糧安全保障に関わる国際的規律、途上国における伝統知の保護とバイオ・パイラシーの問題、労働者保護の国際的な規律の展開について夫々取り扱いつつ、理論的枠組のさらなる精緻化を目指す。 | KAKENHI-PROJECT-18J01251 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J01251 |
ゼブラフィッシュ摘出脳脊髄標本を利用した眼球運動とロコモーションの統合機構の解明 | 状況依存的な行動は感覚入力によって惹起される複数の基本的運動プログラムの統合により実現される。眼球運動と体幹運動(ロコモーション)が協調・統合される過程の神経活動記録のための動物モデルとしてゼブラフィッシュ脳眼球脊髄摘出標本を確立し、眼球運動とロコモーションの統合機構の解明を目指した。しかし前年度の研究において、ゼブラフィッシュ成魚では血流遮断後、視蓋および前脳の反応性の低下が著しく脳眼球脊髄摘出標本から満足のいく神経活動を安定して記録することが難しかった。そこで今年度は、ゼブラフィッシュに代えメダカでの脳眼球脊髄摘出標本の作製に着手した。同標本では、視蓋等への電気刺激により良好な神経応答を観察できたが、現段階では視覚刺激による十分な応答を視蓋に誘発できていない。そこで摘出標本による光記録の前段階として、無麻酔非動化したメダカ成魚の視蓋における視覚応答の時空間パターンを、膜電位感受性色素RH1691を用いた光計測システムにより記録した。生体の下方からサイン波状明暗が変化する縞模様を縞と直行する向きに動かしながら提示し、視蓋における神経活動を、実時間光計測法によって記録した。視蓋の比較的限局した部位に縞模様の時間周波数に一致した神経活動が記録された。また無麻酔で体幹の運動を部分的に拘束したメダカにおいて、同様の視覚刺激によって、縞模様の移動方向に応じたロコモーションが惹起されることを確認した。環境や周囲の状況に応じた行動は感覚入力によって惹起される複数の基本的運動プログラムの統合により実現される。しかしこの神経機構については殆ど知られていない。今回眼球運動と体幹の協調運動をモデルとして感覚運動統合過程の神経基盤を明らかにしたい。研究は2段階で計画した。第一段階では正常動物におけるこれらの感覚運動統合機構を詳細に調べる。第二段階では、各種疾病モデル動物や変異体について同様の神経機構を調べる。双方の神経機構の相同を明らかにすることによって、神経回路および分子機構レベルでの感覚運動統合の神経機序を明らかにすると同時に、臨床応用の可能性も探りたい。今年度は第一段階のうちで、ゼブラフィッシュの摘出脳脊髄標本の作製方法と、その標本における神経活動のリアルタイム光計測法の確立を計画していた。成熟動物での摘出脳脊髄標本は、ヤツメウナギ成魚や、成熟カメで成功している。しかし酸素需要が高いと考えられるゼブラフィッシュ成魚では、当初の計画と異なり摘出脳脊髄標本の作製が難航した。そこで同じ小型魚類でゼブラフィッシュ同様、当初の研究目的に適うメダカ(Oryzias latipes)にモデル動物を変更し、計画通り、摘出脳脊髄標本の作製方法を確立した。またこの標本での視蓋や脊髄の神経活動を光計測する方法についてもほぼ完成することができ、22年度以降の予定である、正常動物ならびに各種疾病モデル動物等の眼球運動ロコモーションの統合機構を明らかにしていくための準備が整ったと考えている。状況依存的な行動は感覚入力によって惹起される複数の基本的運動プログラムの統合により実現される。眼球運動と体幹運動(ロコモーション)が協調・統合される過程の神経活動記録のための動物モデルとしてゼブラフィッシュ脳眼球脊髄摘出標本を確立し、眼球運動とロコモーションの統合機構の解明を目指した。しかし前年度の研究において、ゼブラフィッシュ成魚では血流遮断後、視蓋および前脳の反応性の低下が著しく脳眼球脊髄摘出標本から満足のいく神経活動を安定して記録することが難しかった。そこで今年度は、ゼブラフィッシュに代えメダカでの脳眼球脊髄摘出標本の作製に着手した。同標本では、視蓋等への電気刺激により良好な神経応答を観察できたが、現段階では視覚刺激による十分な応答を視蓋に誘発できていない。そこで摘出標本による光記録の前段階として、無麻酔非動化したメダカ成魚の視蓋における視覚応答の時空間パターンを、膜電位感受性色素RH1691を用いた光計測システムにより記録した。生体の下方からサイン波状明暗が変化する縞模様を縞と直行する向きに動かしながら提示し、視蓋における神経活動を、実時間光計測法によって記録した。視蓋の比較的限局した部位に縞模様の時間周波数に一致した神経活動が記録された。また無麻酔で体幹の運動を部分的に拘束したメダカにおいて、同様の視覚刺激によって、縞模様の移動方向に応じたロコモーションが惹起されることを確認した。 | KAKENHI-PUBLICLY-21115513 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-21115513 |
直交異方性平板を対象とする波動制御理論の構築 | 本研究では,これまでに提案されている平板構造物の波動制御法を,直交異方性平板の場合にまで拡張することを目的としている.まず,伝達マトリクス法によって直交異方性矩形平板の動特性を記述することから始め,平板が直交異方性を有する場合はcut-on周波数が2つ存在することを明らかにした.さらに,当該構造物に対して,フィードフォワード制御とフィードバック制御の両面から,波動制御理論を体系的に構築した.本研究では,これまでに提案されている平板構造物の波動制御法を,直交異方性平板の場合にまで拡張することを目的としている.まず,伝達マトリクス法によって直交異方性矩形平板の動特性を記述することから始め,平板が直交異方性を有する場合はcut-on周波数が2つ存在することを明らかにした.さらに,当該構造物に対して,フィードフォワード制御とフィードバック制御の両面から,波動制御理論を体系的に構築した.波動制御法は,構造物にダンピングを付加するのではなく,モード励振の元凶となる反射波を除去することで,全振動モードの不活性化を可能とする.さらに,構造物中のある領域に流入する波動を除去することにより,無振動状態の生成を実現する.本研究ではこれまでに等方性構造物を対象に展開されてきた波動制御理論を,直交異方性を有する構造物の場合にまで拡張することを目的としている.当該年度において得られた成果は以下の通りである.(1)等方性平板の場合,cut-on周波数(波動の種類が変化する周波数.具体的には,波動項の指数関数の肩が実数から虚数に転じる,あるいは実数から複素数に転じる周波数)は1種類のみであったが,直交異方性平板の場合は2種類のcut-on周波数が存在することが明らかになった.したがって,直交異方性平板における波動は,2つのcut-on周波数によって分割された3つの帯域において,異なる特性を持つことが明らかになった.さらに,波動解の基本的な構成は等方性平板の場合と変わらないことから,従来の波動フィルタリング法を比較的容易に転用できることが明かになった.(2)直交異方性平板を対象にフィードフォワード型波動制御法を提案し,当該手法の有用性を数値解析の観点から立証した.当該制御系を構築する際には,常に振動を抑制するために,cut-on周波数によって分割される帯域ごとに,適切な波動項を抑制対象に選択する必要があることを明らかにした.この結果は,今年度に行われるDynamics and Design Conference 2010において発表予定である.波動制御法は,構造物にダンピングを付加するのではなく,モード励振の元凶となる反射波を除去することで,全振動モードの不活性化を可能とする.さらに,構造物中のある領域に流入する波動を除去することにより,無振動状態の生成を実現する.本研究ではこれまでに等方性構造物を対象に展開されてきた波動制御理論を,直交異方性を有する構造物の場合にまで拡張することを目的としている.当該年度において得られた成果は以下の通りである.(1)直交異方性平板を対象にフィードバック型波動制御法を提案し,当該手法の有用性を数値解析の観点から立証した.当該制御系を構築する際には,フィードフォワード型波動制御法の場合と同様に,cut-on周波数によって分割される帯域ごとに,適切な波動項を抑制対象に選択する必要があることを明らかにした.特に,無振動状態の生成については,ゲイン特性の漸近線レベルを抑制することが重要であるため,制御則の切り替えは重要である.(2)一般に波動制御則は,ラプラス演算子の有理関数によって記述されることはなく,非因果的な制御則となる場合が多い.また,フィードバック制御の場合,系の安定性を担保する必要がある.そこで,本研究では,根軌跡およびナイキスト線図によって手法そのものの安定性を議論した後に,コロケーション条件の下に無条件安定が保証されているDVDFB制御(Direct Velocity and Displacement Feedback)をクラスタ制御にまで展開し,指定された周波数を対象に波動吸収が達成できる手法を提案した. | KAKENHI-PROJECT-21760170 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21760170 |
豚の腸管免疫に関する研究-粘膜関連リンパ組織由来リンパ球の性状- | 1.豚腸上皮間リンパ球(iIEL)の分離はマウスでの方法に準じて行った。すなわち,回腸口から回腸側に約1mから2mの部分を採取し,洗浄した後パイエル板を除去し,細切してiIEL分離液(5%Glucose,5mMEDTA加PBS)を加え,37°Cで15分間振盪し,ついで洗浄・細胞の回収を繰り返し,PBSに再浮遊させ,グラスウ-ルカラムにかけて未吸着細胞を回収した。その結果,10ml容積の腸断片から約5x10^7個の生細胞が得られた。次に,腸断片から粘膜固有層リンパ球(LPL)を分離するためD,分離液(0.015%コラゲナーゼ2%FCS加PBS)中で,37°C,75分間振盪し,200メッシュ上で濾過した後,腸断片をすりつぶし,PBSで洗浄回収した。濾過した細胞浮遊液はグラスウ-ルカラムにかけ,比重遠心法によりリンパ球を回収した。その結果,10ml湿潤容積の腸断片から約2x10_7個の細胞が得られた。2.iIELおよびLPLについてCD4,CD8,Surface Ig(SIg)の陽性細胞率を脾臓リンパ球と比較した。豚脾臓リンパ球ではCD4,CD8,SIgの陽性率はそれぞれ,13.7%,19.5%,31.2%であった。一方,iIEL,LPLともにSIg陽性細胞はほとんど観察されなかった。CD4の特異蛍光は弱く,陽性細胞率はiIELで10.3%,LPLで14.7%であった。CD8の特異蛍光はCD4と比較して強く、その陽性細胞率はiTELで52.3%,LPLでは26.6%であり,iIELで極めて高い陽性率を示した。以上のように,豚iIELおよびLPLは分解可能であり,また材料も豊富に採取できることから,比較医学上からもその利用が有用と考えられた。また,サプレッサー/細胞障害性T細胞とされるCD8陽性細胞率がiIELで極めて高いことは,経口免疫寛容などの点から極めて興味深い所見である。1.豚腸上皮間リンパ球(iIEL)の分離はマウスでの方法に準じて行った。すなわち,回腸口から回腸側に約1mから2mの部分を採取し,洗浄した後パイエル板を除去し,細切してiIEL分離液(5%Glucose,5mMEDTA加PBS)を加え,37°Cで15分間振盪し,ついで洗浄・細胞の回収を繰り返し,PBSに再浮遊させ,グラスウ-ルカラムにかけて未吸着細胞を回収した。その結果,10ml容積の腸断片から約5x10^7個の生細胞が得られた。次に,腸断片から粘膜固有層リンパ球(LPL)を分離するためD,分離液(0.015%コラゲナーゼ2%FCS加PBS)中で,37°C,75分間振盪し,200メッシュ上で濾過した後,腸断片をすりつぶし,PBSで洗浄回収した。濾過した細胞浮遊液はグラスウ-ルカラムにかけ,比重遠心法によりリンパ球を回収した。その結果,10ml湿潤容積の腸断片から約2x10_7個の細胞が得られた。2.iIELおよびLPLについてCD4,CD8,Surface Ig(SIg)の陽性細胞率を脾臓リンパ球と比較した。豚脾臓リンパ球ではCD4,CD8,SIgの陽性率はそれぞれ,13.7%,19.5%,31.2%であった。一方,iIEL,LPLともにSIg陽性細胞はほとんど観察されなかった。CD4の特異蛍光は弱く,陽性細胞率はiIELで10.3%,LPLで14.7%であった。CD8の特異蛍光はCD4と比較して強く、その陽性細胞率はiTELで52.3%,LPLでは26.6%であり,iIELで極めて高い陽性率を示した。以上のように,豚iIELおよびLPLは分解可能であり,また材料も豊富に採取できることから,比較医学上からもその利用が有用と考えられた。また,サプレッサー/細胞障害性T細胞とされるCD8陽性細胞率がiIELで極めて高いことは,経口免疫寛容などの点から極めて興味深い所見である。 | KAKENHI-PROJECT-07660421 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07660421 |
超臨界流体下での高分子の動的粘弾性測定と振動印加熱延伸 | 超臨界流体下で応力測定が可能な装置を作製した。超臨界二酸化炭素下でポリフッ化ビニリデンフィルムを延伸すると大気圧下に比べて応力が低下して大きな変形回復性を示すようになるのに対して、ガスバリア性フィルムでは材料中に含まれている水が抽出されることで逆に応力が低下することが見出された。また、ポリプロピレンフィルム試料を二酸化炭素下で配向結晶化させると、大気圧下では剪断方向に対して平行方向に長いフィブリル構造が形成されるが、2MPaの二酸化炭素雰囲気下では剪断誘起相分離が発現して、剪断方向に対して垂直方向に長い密度揺らぎに由来するマイクロメートルオーダーのバンド状構造が形成されることが見出された。超臨界二酸化炭素雰囲気下で高分子フィルム試料に振動を印加できる装置の試作を行うとともに、装置完成後の適切な温度・圧力条件の探索のために既設の超臨界延伸装置を用いて超臨界二酸化炭素雰囲気下での高分子の変形・回復性について調べた。1)振動印加装置の試作では、既設の大延伸可能な超臨界延伸装置に対してモーターと歯車の異なる装置を組み立て、また、チャックにヒズミゲージを取り付けて動的ひずみ測定器で信号を検出することで微小変形に対する応力測定を可能にした。2)超臨界二酸化炭素雰囲気下での高分子の変形・回復性については、既設の大変形可能な超臨界延伸機を用いて、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルム試料をひずみ100%延伸して延伸ー変形回復挙動を調べた。大気圧下ではネッキングを生じてほとんど変形回復性を示さないのに対して、高圧CO2雰囲気下ではネッキングせずに試料全体で均一に伸長して、その後の変形回復により残留ひずみが約35%になるまで大きく収縮することが見出された。四つ葉状のHv光散乱像が観察されるPVDF球晶を大気圧下あるいは低圧CO2下で延伸すると球晶がフィブリル化するために赤道方向に長いストリーク状の散乱像が観察されるのに対して、5MPaよりも高い高圧CO2雰囲気下では球晶構造に由来する四つ葉状散乱が得られ、歪み100%の塑性領域まで延伸したにも関わらず、フィブリル化せずに球晶構造が維持されることが明らかになった。小角X線散乱の結果から、大気圧下で得られた試料ではフィブリル構造に由来する赤道方向へのストリーク状散乱像が得られたのに対して、高圧CO2雰囲気下ではラメラ晶間の非晶領域が引き伸ばされて形成された空隙による子午線方向に長い散乱像が得られたことから、ラメラスタックの秩序性が保たれることが示唆された。超臨界流体下で応力測定が可能な装置を作製した。超臨界二酸化炭素下でポリフッ化ビニリデンフィルムを延伸すると大気圧下に比べて応力が低下して大きな変形回復性を示すようになるのに対して、ガスバリア性フィルムでは材料中に含まれている水が抽出されることで逆に応力が低下することが見出された。また、ポリプロピレンフィルム試料を二酸化炭素下で配向結晶化させると、大気圧下では剪断方向に対して平行方向に長いフィブリル構造が形成されるが、2MPaの二酸化炭素雰囲気下では剪断誘起相分離が発現して、剪断方向に対して垂直方向に長い密度揺らぎに由来するマイクロメートルオーダーのバンド状構造が形成されることが見出された。超臨界二酸化炭素雰囲気下で高分子フィルム試料に振動を印加できる装置の試作を行うとともに、既設の超臨界延伸装置を用いて装置完成後の適切な温度・圧力条件の探索を行った。1)振動印加装置の試作では、大延伸可能な超臨界延伸装置のモーターと歯車を取りかえ、チャックにヒズミゲージを取り付けて動的ひずみ測定器で信号を検出することで微小変形に対する応力測定を可能にした。この装置に種々の振動子を取り付けて、フィルム試料への周期的な振動を印加できる可能性について調べた。2)既設の超臨界延伸機を用いて、種々の二酸化炭素圧力下においてポリプロピレン(PP)フィルム試料に二酸化炭素を十分に含浸させた後に、二酸化炭素雰囲気下で溶融させ、結晶化できる温度に冷却した後に剪断を印加して等温熱処理することで、配向結晶化させた。大気圧下では剪断方向に対して平行方向にフィブリル構造が形成されるが、2MPaの二酸化炭素雰囲気下では剪断誘起相分離が発現して、剪断方向に対して垂直方向に密度揺らぎに由来するマイクロメートルオーダーのバンド状構造が形成されることを見出した。二酸化炭素雰囲気下での剪断誘起相分離の発現は、PPと二酸化炭素の分子運動性の違いで動的非対称性が生じたことによると考えられる。剪断誘起相分離を経て得られた結晶化PPでは、結晶化度が73%の高結晶化度となり、融解温度も大気圧下で得られた試料に比べて5°C以上も上昇することがわかった。剪断誘起相分離により結晶化が誘発され、促進されたために、高結晶化度かつ高融点の結晶化PPが得られたと考えられる。ポリプロピレン(PP)フィルム試料に二酸化炭素を十分に含浸させた後に、二酸化炭素雰囲気下で溶融させ、結晶化できる温度に冷却した後に剪断を印加して等温熱処理することで、配向結晶化させた。大気圧下では剪断方向に対して平行方向にフィブリル構造が形成されるが、2MPaの二酸化炭素雰囲気下では剪断誘起相分離が発現して、剪断方向に対して垂直方向に密度揺らぎに由来するマイクロメートルオーダーのバンド状構造が形成されることが見出された。二酸化炭素雰囲気下での剪断誘起相分離の発現は、PPと二酸化炭素の分子運動性の違いで動的非対称性が生じたことによると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-24550246 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24550246 |
超臨界流体下での高分子の動的粘弾性測定と振動印加熱延伸 | 剪断誘起相分離を経て得られた結晶化PPは高結晶化度となり、融解温度も大気圧下で得られた試料に比べて5°C以上も上昇することがわかった。剪断誘起相分離により結晶化が促進されたために、高結晶化度かつ高融点の結晶化PPが得られたと考えられる。ポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルム試料を大気圧下で延伸するとネッキングを生じてほとんど変形回復性を示さないのに対して、高圧二酸化炭素雰囲気下では応力が著しく低下してネッキングせずに試料全体で均一に伸張して、その後の変形回復により残留ひずみが小さくなることが見出された。小角X線散乱の結果から、大気圧下で得られた試料ではフィブリル構造に由来する赤道方向へのストリーク状散乱像が得られたのに対して、高圧二酸化炭素雰囲気下ではラメラ晶間の非晶領域が引き延ばされて形成された空隙による子午線方向に長い散乱像が得られたことから、ラメラスタックの秩序性が保たれることが示唆された。それに対して、ガスバリア性材料では応力の低下は見られず、逆に材料中に含まれている水が二酸化炭素により抽出されることで応力が低下することも見出された。高分子物性本研究テーマである高分子に弾性変形域内で振動を印加させるという発想を、高分子を塑性変形域で変形させた後の変形回復性を明らかにするという研究に発展させることができた。その発展的な研究を行うことで、超臨界二酸化炭素雰囲気下において結晶性高分子のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を変形させると大きく変形回復するという、平成24年度とは全く異なる新しい現象を見出すことができた。超臨界延伸機を用いて、1)高圧二酸化炭素雰囲気下で溶融高分子フィルムの配向結晶化をさせることを可能にさせた、2)ある二酸化炭素圧力下でポリプロピレンを配向結晶化させると剪断誘起相分離が生じることを見出すことができた、3)剪断誘起相分離を経て配向結晶化させることで高融点かつ高結晶化度のポリプロピレン結晶を作製することができた、ことから新材料創製としての研究は順調に進展していると言える。また、振動印加装置の試作でも、大微小変形に対する応力測定が可能になり、振動子を取り付けてフィルム試料への周期的な振動の印加できる可能性を確認している段階まで進んでいることから、順調に進展していると言える。平成24ー25年度に試作した装置を調整して、超臨界流体下でフィルム試料への周期的な振動を印加して、その応答を検出することで貯蔵弾性率や損失弾性率の動的粘弾性測定を可能にさせる。また、装置の改造により振動印加中に延伸させることも可能にさせる。平成24年度の成果から得られたポリプロピレンの配向結晶化の知見、平成25年度の成果から得られたポリフッ化ビニリデンの変形回復性の知見に基づいて、種々の二酸化炭素圧力、温度において振動印加させて動的粘弾性測定を行い、ポリプロピレンの剪断誘起相分離やポリフッ化ビニリデンの変形回復性が生じる条件と動的粘弾性特性の関係について調べる。振動印加させた得られたポリプロピレン結晶やポリフッ化ビニリデン結晶の高次構造や物性の特異性について考察する。平成24年度に試作した装置を調整して、超臨界流体下でフィルム試料への周期的な振動を印加して、その応答を検出することで貯蔵弾性率や損失弾性率の動的粘弾性測定を可能にさせる。また、装置の改造により振動印加中に延伸させることも可能にさせる。 | KAKENHI-PROJECT-24550246 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24550246 |
インスリン抵抗性と高血圧に関する実験的研究-血管平滑筋Caチャンネル異常の検討 | 1.目的:インスリン/インスリン抵抗性の、高血圧発症、維持における役割と機序を血管壁細胞内Ca^<++>代謝の観点から検討する。2.方法:(1)ラット大動脈ラセン条片にFura-2を負荷し、平滑筋、内皮細胞内Ca^<++>濃度,([Ca^<++>]i)と張力を同時測定し、norepinephrine (NE)存在下でインスリンの効果を検討した。(2)Wistarラットに3U/kg/dayのインスリンを浸透圧ミニポンプにて4週間皮下に持続投与した後に、内皮を剥離した大動脈ラセン条片を作製し、[Ca^<++>]iと張力を同時に測定した。(3)20週齢の雄性Zucker肥満ラット(ZF群)の大動脈ラセン条片において、KCl、phenylephrine(PE)、セロトニン(5-HT)投与による平滑筋内[Ca^<++>]iと張力変化を同時測定した。対照として同週齢のZuckerleanラット(ZL群)を用いた。3.結果:(1)インスリンの累積投与はNEによる収縮を濃度依存性に弛緩し、平滑筋[Ca^<++>]iを減少させた。内皮保存標本においてインスリンは内皮の[Ca^<++>]iの上昇および静止張力の下降を惹起し、この反応はL-NMMAにより拮抗された。(2)インスリン投与群(I群)の静止時[Ca^<++>]iは有意に低く、KCl、PEによる[Ca^<++>]iの上昇、発生張力の増加も対照群に比べ抑制されていた。(3)ZF群の血圧はZL群に比べ有意に高く、ZF群の大動脈の、KCl、PE、5-HTによる発生張力、[Ca^<++>]iの上昇はZL群に比べ著しく亢進していたが、BAY K 8644を追加投与してもZL群に比ベあまり亢進しなかった。4.結論:インスリンは内皮依存性、非依存性の血管弛緩作用を有する。内皮依存性作用はNOの遊離を介し、内皮非依存性作用は平滑筋細胞内Ca^<++>濃度の減少を伴う。このインスリンの血管弛緩作用は生体で起こり得る程度のインスリン濃度でも認められる。しかし、インスリン抵抗性を有するZucker肥満ラットでは、逆に、種々の血管作動物質に対する張力、平滑筋内[Ca^<++>]iの増加反応が亢進しており、これは血管平滑筋細胞の電位依存性Caチャンネルの機能亢進に関連することが示唆された。1.目的:インスリン/インスリン抵抗性の、高血圧発症、維持における役割と機序を血管壁細胞内Ca^<++>代謝の観点から検討する。2.方法:(1)ラット大動脈ラセン条片にFura-2を負荷し、平滑筋、内皮細胞内Ca^<++>濃度,([Ca^<++>]i)と張力を同時測定し、norepinephrine (NE)存在下でインスリンの効果を検討した。(2)Wistarラットに3U/kg/dayのインスリンを浸透圧ミニポンプにて4週間皮下に持続投与した後に、内皮を剥離した大動脈ラセン条片を作製し、[Ca^<++>]iと張力を同時に測定した。(3)20週齢の雄性Zucker肥満ラット(ZF群)の大動脈ラセン条片において、KCl、phenylephrine(PE)、セロトニン(5-HT)投与による平滑筋内[Ca^<++>]iと張力変化を同時測定した。対照として同週齢のZuckerleanラット(ZL群)を用いた。3.結果:(1)インスリンの累積投与はNEによる収縮を濃度依存性に弛緩し、平滑筋[Ca^<++>]iを減少させた。内皮保存標本においてインスリンは内皮の[Ca^<++>]iの上昇および静止張力の下降を惹起し、この反応はL-NMMAにより拮抗された。(2)インスリン投与群(I群)の静止時[Ca^<++>]iは有意に低く、KCl、PEによる[Ca^<++>]iの上昇、発生張力の増加も対照群に比べ抑制されていた。(3)ZF群の血圧はZL群に比べ有意に高く、ZF群の大動脈の、KCl、PE、5-HTによる発生張力、[Ca^<++>]iの上昇はZL群に比べ著しく亢進していたが、BAY K 8644を追加投与してもZL群に比ベあまり亢進しなかった。4.結論:インスリンは内皮依存性、非依存性の血管弛緩作用を有する。内皮依存性作用はNOの遊離を介し、内皮非依存性作用は平滑筋細胞内Ca^<++>濃度の減少を伴う。このインスリンの血管弛緩作用は生体で起こり得る程度のインスリン濃度でも認められる。しかし、インスリン抵抗性を有するZucker肥満ラットでは、逆に、種々の血管作動物質に対する張力、平滑筋内[Ca^<++>]iの増加反応が亢進しており、これは血管平滑筋細胞の電位依存性Caチャンネルの機能亢進に関連することが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-05670597 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05670597 |
海水中の溶存有機物の光分解過程におけるラジカル類の役割解明 | 本年度は、昨年度に引き続き1)海水中一酸化窒素(NO)の測定法の開発を行った。すなわち、海水中で光化学的に発生したNOを化学プローブ(4,5-diminofluorescein)を用いて捕捉した後、HPLC-蛍光検出法で測定する方法を開発した。NOと4,5-diaminofluoresceinとの反応速度定数は、室内実験から(6.28±0.45)×10^6M^<-1>s^<-1>と見積もった。この方法は、海水試料5mLを分析に用い、pMからnMレベルのNOを検出可能である。検出限界は25nMであった。この方法を用いて、2)瀬戸内海海水(2008年8月及び10月の豊潮丸航海時に採取)および黒瀬川河川水(2008年10月採取)中NOの光化学的生成速度を求めたところ、それぞれ(5.3-32)×10^<-12>および(0.09.4-300)×10^<-12>Ms^<-1>であった。さらに、亜硝酸や硝酸などの栄養塩、過酸化水素、溶存有機炭素、溶存酸素などを測定した。これらのデータをもとに発生機構に関して考察した結果、海水および河川水中のNOの主な発生源は、亜硝酸イオンであることが明らかとなった。次に、3)上記の海水試料を用いて、ヒドロキシルラジカル(OH)の光化学的発生速度を測定した結果、(167-375)×10^<-12>Ms^<-1>であった。OHの発生源を調べたところ、すべての海水試料において、90%以上のOHは未同定の物質から発生したことが分かった。これはおそらく溶存有機物からの光化学的生成に因ると考えられる。最後に、4)3年間の溶存有機物の光分解過程にかかわるラジカル類の役割解明に関する研究成果をまとめ、2編の論文を作成し(投稿中)、1回の学会発表を行い、また最終報告書を作成した。1.広島湾海水中の溶存有機物(DOM)の光分解過程に関する研究広島湾海水中DOMの主要発生源の一つである植物プランクトンからのDOM発生量及び有機物組成、分子量分布を解明するため、渦鞭毛藻およびラフィド藻を一定期間培養し、培養液中に放出された蛍光性溶存有機物(FDOM)を3次元蛍光マトリクス分析法およびゲルろ過高速液体クロマトグラフィー蛍光検出法(HPLC-FD)により調べた。その結果、渦鞭毛藻からは分子量数十万のタンパク質様物質が、ラフィド藻からは分子量2000-3000の海洋性腐植様物質が、特に多く放出されていることが確認された。次に、これらの有機物に擬似太陽光照射装置を用いて光照射を行い、その光分解過程を調べた。分子量数十万のタンパク質様物質は、速やかに光分解し、低分子量化されることが、一方海洋性腐植様物質は最初は速やかに分解するが、その後分解速度が大きく減少するような、二段階の減少傾向を示すことがわかった。したがって、これら二つのFDOMは異なった光化学特性を有すること、そして海洋性腐植様物質は光分解されにくいため、海水中に残存する可能性が考えられた。従来、腐植物質は微生物による分解も遅いと考えられているため、難分解性DOMとして、海水中DOMの大きな部分を占めている可能性がある。2.海水中一酸化窒素(NO)測定装置の試作本年度は、海水中NOを誘導体化した後、濃縮分離し、HPLC-FD法により測定する装置の開発を行った。すなわち、海水1L中に含まれるNOを市販の蛍光試薬と反応させ、発生した蛍光物質を海水から固相抽出した。HPLCにプレカラムを用いて再濃縮で1000倍程度濃縮した後、HPLC-FDにより定量することにした。現段階は、NOと蛍光試薬との反応率や、濃縮・分離のさいの回収率を検討して、高感度測定が可能なように諸条件を設定しているところである。1.広島湾海水中のOHラジカルの存在状態に関する研究海水中の溶存有機物の光分解過程で、酸化剤として最も重要な役割を果たすと考えられるOHラジカルの存在状態を研究した。2007年春季および夏季に、広島大学生物生産学部の豊潮丸に乗船し、広島湾海水を採取してOHラジカルなどの活性酸素種の分析を行った。溶存有機炭素や亜硝酸などの化学成分も分析し、CTDデータなども併せて、OHラジカルの発生・消失過程を解析した。その結果、OHラジカルの発生速度、消失速度定数、定常状態濃度、寿命は、それぞれ56-146 nMhr^<-1>、260-400 x10^4 s^<-1>、3-9.7 x 10^<-18>M、0.23-0.38μsであった。これらの値は、米国の研究者が別の分析法で測定した値とほぼ同レベルであった。次にOHラジカルの発生源を調べたところ、亜硝酸、過酸化水素、硝酸などの光分解による寄与は、9-75%であり、残りの25-91%は未同定の物質(おそらく腐植物質などの溶存有機物)から発生することが明らかとなった。特に広島湾奥部の太田川河口域では、未同定の物質からの寄与が大半を占めることから、河川から供給される物質がラジカル発生過程に深く関与することが示唆された。(現在論文作成中)2.海水中過酸化水素および一酸化窒素の新規分析法の開発 | KAKENHI-PROJECT-18310010 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18310010 |
海水中の溶存有機物の光分解過程におけるラジカル類の役割解明 | 海水中の過酸化水素の新規分析法を開発した。開発したのはフェントン反応を利用したHPLC分離一蛍光分析法であり、検出感度は数nMと高感度で船上での分析が可能である。従来の分析法と比較したところ、分析値がほぼ1対1に対応した。論文を作成し,現在投稿中である。次に、海水中一酸化窒素に関して、これを誘導体化した後、濃縮分離し、HPLC-FD法により測定する装置の開発を前年度に引き続き行った。本年度は、高感度測定が可能なように諸条件を設定し、海水への分析応用性を確認した。本年度は、昨年度に引き続き1)海水中一酸化窒素(NO)の測定法の開発を行った。すなわち、海水中で光化学的に発生したNOを化学プローブ(4,5-diminofluorescein)を用いて捕捉した後、HPLC-蛍光検出法で測定する方法を開発した。NOと4,5-diaminofluoresceinとの反応速度定数は、室内実験から(6.28±0.45)×10^6M^<-1>s^<-1>と見積もった。この方法は、海水試料5mLを分析に用い、pMからnMレベルのNOを検出可能である。検出限界は25nMであった。この方法を用いて、2)瀬戸内海海水(2008年8月及び10月の豊潮丸航海時に採取)および黒瀬川河川水(2008年10月採取)中NOの光化学的生成速度を求めたところ、それぞれ(5.3-32)×10^<-12>および(0.09.4-300)×10^<-12>Ms^<-1>であった。さらに、亜硝酸や硝酸などの栄養塩、過酸化水素、溶存有機炭素、溶存酸素などを測定した。これらのデータをもとに発生機構に関して考察した結果、海水および河川水中のNOの主な発生源は、亜硝酸イオンであることが明らかとなった。次に、3)上記の海水試料を用いて、ヒドロキシルラジカル(OH)の光化学的発生速度を測定した結果、(167-375)×10^<-12>Ms^<-1>であった。OHの発生源を調べたところ、すべての海水試料において、90%以上のOHは未同定の物質から発生したことが分かった。これはおそらく溶存有機物からの光化学的生成に因ると考えられる。最後に、4)3年間の溶存有機物の光分解過程にかかわるラジカル類の役割解明に関する研究成果をまとめ、2編の論文を作成し(投稿中)、1回の学会発表を行い、また最終報告書を作成した。 | KAKENHI-PROJECT-18310010 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18310010 |
腎近位尿細管におけるNa^+依存性グルコース輸送体(SGLT1, SGLT2)の発現 | 腎近位尿細管、小腸粘膜におけるグルコースの再吸収は、Na^+依存性グルコース輸送体(管腔膜)による細胞内への“登り坂輸送"とNa^+非依存性グルコース輸送体(側底膜)を介する血管側への“下り坂輸送"の2段階上皮膜輸送によって行われる。腎近位尿細管の管腔膜には2種類のNa^+依存性グルコース糖輸送体アイソフォーム(SGLT1,SGLT2)が、側底膜には、2種類のNa^+非依存性グルコース糖輸送体アイソフォーム(GLUT1,GLUT2)が同定されている。これらの糖輸送体の欠損、発現量不足、機能不全は、糸球体濾液中のグルコース再吸収不良を引起こし糖尿の原因になる。本年は、Na^+非依存性グルコース輸送体アイソフォーム(GLUT1)の発現誘導を、新生児期ラットの成長に合わせて調べた。初めに、ラットGLUT1 mRNAに対する特異的cDNAプローブを作成し、生後5,10,15日齢ラットの腎皮質から抽出したRNAにおいて、ノーザンプロット解析を行った。GLUT1 mRNA発現量の成長に伴う変化は、100%(5d),118%(10d),132%(15d)であった。糖質コルチコイドによる発現促進作用を調べるため、4,14日齢ラットにBetamethasone(60μq/100g body wt.)を腹腔内投与し、24時間後に腎臓を摘出した。GLUT1 mRNAは、5日齢で3.8倍に増加し、15日齢では2.6倍に増加した。昨年の結果と総合すると、ラット腎Na^+依存性/非依存性グルコース輸送体遺伝子は、新生児初期(5日齢)にすでに発現し、その発現量は成長とともに増加した。Betamethasone投与は、新生児期ラット腎皮質のSGLTl, SGLT2, GLUT1 mRNAsの発現誘導に効果があり、未成熟な近位尿細管の多い5日齢ラット腎において特に発現誘導効果が大きかった。腎近位尿細管、小腸粘膜におけるグルコースの再吸収は、Na^+依存性グルコース輸送体(管腔膜)による細胞内への“登り坂輸送"とNa^+非依存性グルコース輸送体(側底膜)を介する血管側への“下り坂輸送"の2段階上皮膜輸送によって行われる。腎近位尿細管の管腔膜には2種類のNa^+依存性グルコース糖輸送体アイソフォーム(SGLT1,SGLT2)が、側底膜には、2種類のNa^+非依存性グルコース糖輸送体アイソフォーム(GLUT1,GLUT2)が同定されている。これらの糖輸送体の欠損、発現量不足、機能不全は、糸球体濾液中のグルコース再吸収不良を引起こし糖尿の原因になる。本年は、Na^+非依存性グルコース輸送体アイソフォーム(GLUT1)の発現誘導を、新生児期ラットの成長に合わせて調べた。初めに、ラットGLUT1 mRNAに対する特異的cDNAプローブを作成し、生後5,10,15日齢ラットの腎皮質から抽出したRNAにおいて、ノーザンプロット解析を行った。GLUT1 mRNA発現量の成長に伴う変化は、100%(5d),118%(10d),132%(15d)であった。糖質コルチコイドによる発現促進作用を調べるため、4,14日齢ラットにBetamethasone(60μq/100g body wt.)を腹腔内投与し、24時間後に腎臓を摘出した。GLUT1 mRNAは、5日齢で3.8倍に増加し、15日齢では2.6倍に増加した。昨年の結果と総合すると、ラット腎Na^+依存性/非依存性グルコース輸送体遺伝子は、新生児初期(5日齢)にすでに発現し、その発現量は成長とともに増加した。Betamethasone投与は、新生児期ラット腎皮質のSGLTl, SGLT2, GLUT1 mRNAsの発現誘導に効果があり、未成熟な近位尿細管の多い5日齢ラット腎において特に発現誘導効果が大きかった。腎皮質(近位尿細管)におけるNa^+依存性グルコース輸送体(SGLT1,SGLT2)の発現を、mRNAと蛋白レベルで調べた。最初に、新生児期のWistarラットを用い、成長に比例するSGLT1とSGLT2 mRNAの発現量を調べた。SGLT1とSGLT2 mRNAの発現量(15日齢)は、5日齢ラットに比べ、それぞれ6倍と2倍に増加した。この発現が、糖質コルチコイドの作用を受けるかどうかを調べるために、鉱質コルチコイドの作用が弱い合成ホルモンbethamethazone (60μg/100g,i.p.)を5日齢と15日齢ラットに投与し、24時間後の変化を調べた。SGLT1とSGLT2 mRNAの発現量(5日齢)は、それぞれ9倍と6倍に増加し、SGLT1とSGLT2 mRNAの発現量(15日齢)は、ともに約2倍に増加した。以上の結果から、新生児期のSGLT1とSGLT2 mRNAの発現量は、日齢とともに増加し、部分的に糖質コルチコイドの調節を受けることが明らかになった。さらに、SGLT1とSGLT2の蛋白レベルでの発現量を調べるため、ラットSGLT1とSGLT2のc末端の一部を使い、抗体(ウサギとマウス)を作製した。抗体価はそれぞれ5倍と10倍であった。次年度(平成10年)に、糖尿病併発時の腎近位尿細管におけるSGLT1とSGLT2の発現量の変化を調べる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-09670054 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09670054 |
腎近位尿細管におけるNa^+依存性グルコース輸送体(SGLT1, SGLT2)の発現 | 腎近位尿細管、小腸粘膜におけるグルコースの再吸収は、Na^+依存性グルコース輸送体(管腔膜)による細胞内への“登り坂輸送"とNa^+非依存性グルコース輸送体(側底膜)を介する血管側への“下り坂輸送"の2段階上皮膜輸送によって行われる。腎近位尿細管の管腔膜には2種類のNa^+依存性グルコース糖輸送体アイソフォーム(SGLTl,SGLT2)が、側底膜には、2種類のNa^+非依存性グルコース糖輸送体アイソフォーム(GLUT1,GLUT2)が同定されている。これらの糖輸送体の欠損、発現量不足、機能不全は、糸球体濾液中のグルコース再吸収不良を引起こし糖尿の原因になる。本年は、Na^+非依存性グルコース輸送体アイソフォーム(GLUT1)の発現誘導を、新生児期ラットの成長に合わせて調べた。初めに、ラットGLUT1 mRNAに対する特異的cDNAプローブを作成し、生後5,10,15日齢ラットの腎皮質から抽出したRNAにおいて、ノーザンブロット解析を行った。GLUT1 mRNA発現量の成長に伴う変化は、100%(5d),118%(10d),132%(15d)であった。糖質コルチコイドによる発現促進作用を調べるため、4,14日齢ラットにBetamethasone(60μg/100g body wt.)を腹腔内投与し、24時間後に腎臓を摘出した。GLUT1 mRNAは、5日齢で3.8倍に増加し、15日齢では2.6倍に増加した。昨年の結果と総合すると、ラット腎Na^+依存性/非依存性グルコース輸送体遺伝子は、新生児初期(5日齢)にすでに発現し、その発現量は成長とともに増加した。Betamethasone投与は、新生児期ラット腎皮質のSGLT1,SGLT2、GLUT1 mRNAsの発現誘導に効果があり、未成熟な近位尿細管の多い5日齢ラット腎において特に発現誘導効果が大きかった。 | KAKENHI-PROJECT-09670054 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09670054 |
半導体低次元構造における励起子分子の局在化と光学利得の生成機構 | 本研究では、ワイドギャップ半導体の中でも最も大きな励起子分子効果が期待できるZnS系量子井戸構造を設計・作製し、低次元系励起子分子の輻射再結合過程を利用した紫外半導体レーザ構造の作製を試みた。特に、励起子分子の結合エネルギーと局在化の度合いを定量的に評価し、励起子分子に対する量子閉じ込め効果の最適化と励起子分子の局在化が光学利得生成に与える効果を明らかにすることを目的とした。まず、減圧有機金属気相成長法により、混晶量子井戸層のCdの組成比と量子井戸層幅を変化させて作製した一連のCd_xZn_<1-x>S-ZnS量子井戸レーザ構造に対して、励起子分子発光の励起スペクトルの測定を行った。その結果、励起子分子の2光子吸収過程が明瞭に観測され、励起子共鳴とのエネルギー差より励起子分子の結合エネルギーを定量的に評価した。現在までに、その結合エネルギーとして最大値約34meVが得られた。この値はZnS薄膜における励起子分子結合エネルギー(8.0meV)の約4倍であり、室温における熱エネルギー(26meV)を上回っている.次に、一連の試料を用いて共振器構造を作製し、光励起下でのレーザ発振特性を測定したところ、Cdの組成比がx=0.22、井戸層幅がl.6nmの試料において約240K程度まで励起子分子の輻射再結合過程に基づいた誘導放出を観測することができた。この上限温度は、これまでに励起子分子による誘導放出として報告されているものの中では最も高い。また、励起子分子による誘導放出が生じている場合、そのしきい値と励起子分子の局在化の度合いはほとんど無関係であることが明らかにされた。従って、励起子分子による誘導放出機構を室温においても達成するためには、今後、その結合エネルギーの更なる増大(少なくともLOフォノンエネルギー(40meV)以上)が必要不可欠であると考えられる。本研究では、ワイドギャップ半導体の中でも最も大きな励起子分子効果が期待できるZnS系量子井戸構造を設計・作製し、低次元系励起子分子の輻射再結合過程を利用した紫外半導体レーザ構造の作製を試みた。特に、励起子分子の結合エネルギーと局在化の度合いを定量的に評価し、励起子分子に対する量子閉じ込め効果の最適化と励起子分子の局在化が光学利得生成に与える効果を明らかにすることを目的とした。まず、減圧有機金属気相成長法により、混晶量子井戸層のCdの組成比と量子井戸層幅を変化させて作製した一連のCd_xZn_<1-x>S-ZnS量子井戸レーザ構造に対して、励起子分子発光の励起スペクトルの測定を行った。その結果、励起子分子の2光子吸収過程が明瞭に観測され、励起子共鳴とのエネルギー差より励起子分子の結合エネルギーを定量的に評価した。現在までに、その結合エネルギーとして最大値約34meVが得られた。この値はZnS薄膜における励起子分子結合エネルギー(8.0meV)の約4倍であり、室温における熱エネルギー(26meV)を上回っている.次に、一連の試料を用いて共振器構造を作製し、光励起下でのレーザ発振特性を測定したところ、Cdの組成比がx=0.22、井戸層幅がl.6nmの試料において約240K程度まで励起子分子の輻射再結合過程に基づいた誘導放出を観測することができた。この上限温度は、これまでに励起子分子による誘導放出として報告されているものの中では最も高い。また、励起子分子による誘導放出が生じている場合、そのしきい値と励起子分子の局在化の度合いはほとんど無関係であることが明らかにされた。従って、励起子分子による誘導放出機構を室温においても達成するためには、今後、その結合エネルギーの更なる増大(少なくともLOフォノンエネルギー(40meV)以上)が必要不可欠であると考えられる。励起子分子の輻射再結合過程、即ち、励起子分子を始状態として励起子を終状態とした光学遷移過程は本来的に反転分布状態にあり、同時にその過程には極めて大きな振動子強度が期待される。従って、この励起子分子の輻射再結合過程を利用することにより、高性能かつ高効率なレーザダイオードの実現が期待される。本研究では、ワイドギャップ半導体の中でも最も大きな励起子分子効果が期待できるZnS系量子井戸構造を設計・作製し、低次元系励起子分子の輻射再結合過程を利用した紫外半導体レーザ構造の作製を試みた。特に、励起子分子の結合エネルギーと局在化の度合いを定量的に評価し、励起子分子に対する量子閉じ込め効果の最適化と励起子分子の局在化が光学利得生成に与える効果を明らかにすることを目的とした。減圧有機金属気相成長法により作製した一連のCd_xZn_<1-x>S-ZnS量子井戸レーザ構造に対して、励起子分子の2光子吸収過程の測定を行った結果、現在までに、その結合エネルギーとして最大値約34meVが得られた。この値はZnS薄膜における励起子分子結合エネルギー(8.6meV)の約4倍であり、室温における熱エネルギー(26meV)を上回っている。また、励起子分子の2光子共鳴位置により、観測された励起子分子発光は局在状態を介したものであることが明らかにされた。 | KAKENHI-PROJECT-09650359 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650359 |
半導体低次元構造における励起子分子の局在化と光学利得の生成機構 | さらに、この試料を用いて共振器構造を作製し、光励起下でのレーザ発振特性を測定したところ、約200K程度まで励起子分子の輻射再結合過程に基づいた誘導放出を観測することができた。この上限温度は、これまでに励起子分子による誘導放出として報告されているものの中では最も高い。励起子分子による誘導放出を室温においても達成するためには、今後、その結合エネルギーの更なる増大(目標値40meV以上)と局在化の制御との双方から検討する必要があるものと考えられる。本研究では、ワイドギャップ半導体の中でも最も大きな励起子分子効果が期待できるZns系量子井戸構造を設計・作製し、低次元系励起子分子の輻射再結合過程を利用した紫外半導体レーザ構造の作製を試みた。特に、励起子分子の結合エネルギーと局在化の度合いを定量的に評価し、励起子分子に対する量子閉じ込め効果の最適化と励起子分子の局在化が光学利得生成に与える効果を明らかにすることを目的とした。まず、減圧有機金属気相成長法により、混晶量子井戸層のCdの組成比と量子井戸層幅を変化させて作製した一連のCd_xZn_<1-x>S-ZnS量子井戸レーザ構造に対して、励起子分子発光の励起スペクトルの測定を行った。その結果、励起子分子の2光子吸収過程が明瞭に観測され、励起子共鳴とのエネルギー差より励起子分子の結合エネルギーを定量的に評価した。現在までに、その結合エネルギーとして最大値約34meVが得られた。この値はZnS薄膜における励起子分子結合エネルギー(8.0meV)の約4倍であり、室温における熱エネルギー(26meV)を上回っている。次に、一連の試料を用いて共振器構造を作製し、光励起下でのレーザ発振特性を測定したところ、Cdの組成比がx=0.22、井戸層幅が1.6nmの試料において約240K程度まで励起子分子の輻射再結合過程に基づいた誘導放出を観測することができた。この上限温度は、これまでに励起子分子による誘導放出として報告されているものの中では最も高い。また、励起子分子による誘導放出が生じている場合、そのしきい値と励起子分子の局在化の度合いはほとんど無関係であることが明らかにされた。従って、励起子分子による誘導放出機構を室温においても達成するためには、今後、その結合エネルギーの更なる増大(少なくともLOフォノンエネルギー(40meV)以上)が必要不可欠であると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-09650359 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650359 |
がん代謝とエピゲノムコード是正による血管新生阻害薬の耐性克服 | がん細胞の薬剤耐性にはその特異的代謝の関与が示唆されている。本研究では、HDAC阻害剤であるトリコスタチンA(TSA)がエピジェネティック調節によって腎細胞癌(RCC)の偏った代謝を改善できるか、またその代謝シフトがRCCの第一選択薬であるスニチニブ(SU)の薬剤耐性に寄与するかどうか検討した。その結果、TSAはRCCの酸化的リン酸化を増加させ、アミノ酸や核酸の産生を抑制した。電子伝達系の複合体I阻害剤であるメトホルミンは、SUとTSAの増殖に対する併用効果を有意に減弱した。以上より、エピジェネティック調節薬はがん細胞の代謝調節により細胞死を誘導する可能性が示された。本研究は血管新生阻害薬の耐性化の機構にがん特異的な代謝変化が寄与する可能性を確かめ、またその克服を目指すことを目的としている。薬物抵抗性の高い腎細胞がんに対して検討を行った。まずは非腫瘍近位尿細管由来細胞株(HK-2)を対照として、腎細胞がん細胞株(786-O)の代謝状態を比較した。がん細胞では一般に解糖系が亢進して代謝回転が高まるため、糖取込能が高いとされる。Intactな細胞における糖取込みを2-DGアッセイで確認した結果、786-OはHK-2の1.5倍程度に有意に糖取込みを増加させた。また、細胞内代謝物の一斉分析するための条件検討を行い、786-O細胞で約50種の代謝物を検出する系を立ち上げた。一方、代謝の異常はエピゲノムの異常に起因するという観点からエピジェネティック治療薬が抗がん薬抵抗性を解除する可能性が期待されている。そこで現在臨床で用いられるvolinostatと同様に強力なヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害活性を持つtrichostain A(TSA)を用いてSUとの併用効果を検討した。その結果、SU単独時と比較してTSAの併用により増殖抑制やアポトーシス誘導作用が強まった。併用効果は相加的であったが、この傾向は786-Oを含む3つのヒト腎細胞がん株で同様であり、確かな効果と考えられた。TSAによるアセチル化修飾を受ける因子にがん抑制遺伝子をコードするp53が存在するが、TSA群では確かにアセチル化p53(活性化体)の発現が高まり、p53により転写促進される下流経路の亢進が確認された。p53は代謝調節にも関係が深い因子である。そこでTSAによるp53誘導を期待し、CE-TOFMSを用いて24時間薬物曝露後の786-Oの細胞内代謝物の一斉分析を実施した。その結果、TSAは解糖系・アミノ酸代謝・ヌクレオチド代謝を全体的に抑制する傾向を示した。Sunitnib耐性株での検討は当初もっと早期に取り掛かる予定であったが、予想よりも耐性化が生じづらく、H27度は検討できなかった。現在、sunitnib長期曝露下で順調に育ちつつあるため、H28年度にまとめて検討する。がん細胞の特徴的な代謝変化はヒストン修飾等のエピゲノム変化により実現する可能性が報告されている。逆にエピジェネティック薬を活用してがん代謝を調節できるかもしれない。前年度までに腎細胞がんに対するスニチニブ(SU)耐性化に対してhistone deacetylase (HDAC)阻害薬のトリコスタチンA(TSA)がSU感受性を高めることを確認したが、H28年度は主にメタボローム解析を中心に検討した。まず細胞内代謝物の一斉分析を行い、多変量解析を行った。非腫瘍細胞であるHK-2と腎細胞がんの786-Oとで比較したところ、intactな状態では明らかな代謝組成の差異がみられた。786-OにおいてはTSA曝露によってその濃度依存的に代謝組成が変化した。すなわちTSAは全体的な傾向としてはがん細胞に多い嫌気的な代謝からミトコンドリア依存性の酸化的リン酸化の向きにシフトさせた。ミトコンドリア酸化的リン酸化の寄与をcomplex I阻害剤(metformin)によって確認したところ、TSAとの併用効果をみとめたSUの増殖抑制は有意に減弱した。一方、このようなTSAの作用が、TSAにより発現制御を受ける遺伝子変化とどのように関係するのか確認するため、786-OのTSA曝露後のトランスクリプトーム解析とメタボローム解析の結果を比較した。発現が5倍以上変動した遺伝子群の中で代謝に関係する因子は11遺伝子に絞られ、その中でエネルギー産生に関わるミトコンドリアクレアチンキナーゼ(mtCK)に着目した。mtCKはTSAで20倍程度上昇していた。RNAiによりmtCKをノックダウンし薬物感受性への影響を確認したところ、やはり併用による増殖抑制作用が有意に減弱した。以上の結果より、TSAはがん細胞の代謝を調節し、このような代謝変化がSU感受性増強作用の一機序となることが確認された。がん細胞の薬剤耐性にはその特異的代謝の関与が示唆されている。本研究では、HDAC阻害剤であるトリコスタチンA(TSA)がエピジェネティック調節によって腎細胞癌(RCC)の偏った代謝を改善できるか、またその代謝シフトがRCCの第一選択薬であるスニチニブ(SU)の薬剤耐性に寄与するかどうか検討した。その結果、TSAはRCCの酸化的リン酸化を増加させ、アミノ酸や核酸の産生を抑制した。電子伝達系の複合体I阻害剤であるメトホルミンは、SUとTSAの増殖に対する併用効果を有意に減弱した。以上より、エピジェネティック調節薬はがん細胞の代謝調節により細胞死を誘導する可能性が示された。 | KAKENHI-PROJECT-15K19161 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K19161 |
がん代謝とエピゲノムコード是正による血管新生阻害薬の耐性克服 | H27年度の検討より、SUの併用薬としてHDAC阻害薬のTSAが候補に挙がった。28年度はこれを受けて以下の検討を実施する。1)実際にSUと併用した際のメタボロミクスを実施し、アポトーシス感受性に対する代謝変化の関与を検証する。2)高容量のSU曝露により樹立したSU耐性細胞株に対して、SUとTSAの併用効果を増殖、アポトーシス、代謝における変化から確認する3)TSAの作用によって変化する遺伝子群とメタボローム解析により変動する代謝経路の関係性について、クラスター解析等を駆使して集約的に評価し、前年度に観測されたp53のアセチル化誘導に起因する経路を含め、TSAの作用点となるターゲット経路を客観的・定量的に探索する。4)3)と関連して、他のHDAC阻害薬の活用性や他の血管新生阻害薬への応用性を含めて耐性克服手段を提案する。応用薬理学 | KAKENHI-PROJECT-15K19161 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K19161 |
カルコゲナイドガラスの低エネルギー励起のラマン散乱・テラヘルツ電磁波分光 | 本年度は,ラマン散乱・テラヘルツ電磁波分光によるカルコゲナイドガラスの低エネルギー励起の研究を行った.●他成分カルコゲナイドガラス試料の作製溶融状態からのクエンチ、真空蒸着、ガス中蒸着、気相成長などの種々の成長法に様々な温度での熱処理を組みあわせて、バルクガラス、アモルファス薄膜、単結晶、微粒子などの様々な形態を持つGe-Se,Ge-Bi-Se, Ge-Sb-Se試料を作製し、ラマン分光、フーリエ分光、テラヘルツ電磁波分光測定用に仕上げた。●低波数ラマンスペクトルとフラジリティとの関係前年度の研究成果を踏まえて、様々なネットワークガラスにおけるネットワークの結合性とガラスのフラジリティとの関係を明らかにした。●フロッピーモードの構造的な解釈局所構造の振動モードの温度変化の研究成果から、ネットワーク中のフロッピーモードが空間自由度を持つ構造ユニットに局在し、フロッピー領域のネットワーク全体への浸透は、ガラスのマクロなフロッピー的な振る舞いを決定することを見いだした。●研究成果発表研究成果を国内の学会、研究会での発表したことと共に、外国の大学研究機関との交流や計3件の招待講演、16件の論文発表を行った。本年度は,ラマン散乱によるカルコゲナイドガラスの低エネルギー励起の研究を行った.・他成分カルコゲナイドガラス試料の作製溶融状態からのクエンチ、真空蒸着、ガス中蒸着、気相成長などの種々の成長法に様々な温度での熱処理を組みあわせて、バルクガラス、アモルファス薄膜、単結晶、微粒子などの様々な形態を持つGe-Se,Ge-Bi-Se,Ge-Sb-Se試料を作製し、ラマン分光、フーリエ分光、テラヘルツ電磁波分光測定用に仕上げた。・低波数ラマンスペクトル測定法の確立レーザー部品、検出システム関連のソフトを購入するより、ラマン測定システムが最適な条件での使用ができた。3cm^<-1>からのラマンスペクトルを系統的に研究できることは当システムの特徴である。・低波数ラマンスペクトルとフラジリティとの関係・低波数ラマンスペクトルから、ガラスのフラジリティに関係する量を見出し、ガラス力学特性の研究について新たな切り口を開けた。・研究成果発表・研究成果を国内の学会、研究会での発表したことと共に、外国の大学研究機関との交流や「第18回アモルファスおよび微結晶半導体国際会議」で発表した。本年度は,ラマン散乱・テラヘルツ電磁波分光によるカルコゲナイドガラスの低エネルギー励起の研究を行った.●他成分カルコゲナイドガラス試料の作製溶融状態からのクエンチ、真空蒸着、ガス中蒸着、気相成長などの種々の成長法に様々な温度での熱処理を組みあわせて、バルクガラス、アモルファス薄膜、単結晶、微粒子などの様々な形態を持つGe-Se,Ge-Bi-Se, Ge-Sb-Se試料を作製し、ラマン分光、フーリエ分光、テラヘルツ電磁波分光測定用に仕上げた。●低波数ラマンスペクトルとフラジリティとの関係前年度の研究成果を踏まえて、様々なネットワークガラスにおけるネットワークの結合性とガラスのフラジリティとの関係を明らかにした。●フロッピーモードの構造的な解釈局所構造の振動モードの温度変化の研究成果から、ネットワーク中のフロッピーモードが空間自由度を持つ構造ユニットに局在し、フロッピー領域のネットワーク全体への浸透は、ガラスのマクロなフロッピー的な振る舞いを決定することを見いだした。●研究成果発表研究成果を国内の学会、研究会での発表したことと共に、外国の大学研究機関との交流や計3件の招待講演、16件の論文発表を行った。 | KAKENHI-PROJECT-11740173 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11740173 |
胆道閉鎖症に対する新しい治療法としての胆管細胞移植の研究 | 【目的】胆道開鎖症の総胆管の内腔は肥厚し、肉眼的には閉塞しているが、肥厚線維化した胆管上皮細胞が増殖能を有するのか、また、正常な胆管上皮細胞と比べて変化していないかどうかについて検討した。【方法】胆道閉鎖症3例に対し、手術中に採取した肝外胆道索状物組織を採取後直ちにHanks液(pH7.2)に浮遊、洗浄して1mm以下の砕片とし、4型collagenでcoatingした35mm培養皿に静置して10%Nuserumを含んだDulbecco's modified Eagle medium(DMFM)とHamF-12mediumにepidermal growthfactorとinsulin、forskolinを添加した培養液で、37°Cに保たれたCO2インキュベーターでprimary cultureを行った。隔日に培養液を交換し、primary culture後20日目に胆管上皮細胞がコロニーを形成している部分のコラーゲンを切離して1型コラーゲンでcoatingした培養皿に単層培養した。継代後7日目にcytokeratin 7(CK7)抗体で免疫細胞化学染色を行い、CK7陽性細胞の形態を観察してコロニーが何個存在するかカウントした。【結果】全例から胆管上皮様の細胞が出現し、コロニーを形成した。コロニー数は3例に差はなく、400倍視野で平均1.2±0.07群であった。胆管上皮様の細胞はCK7抗体による免疫細胞染色で陽性となり、この細胞が胆管上皮であることが示された。また、継代した細胞は位相差顕微鏡による形態観察で胆管上皮細胞であった。【総括】1.胆道閉鎖症の肝外胆道索状物から胆管上皮細胞が培養でき、培養された上皮細胞は継代を3回繰り返した後も増殖能が保たれている正常細胞であった。2.培養した胆管上皮細胞はCK7陽性細胞であり、胆道閉鎖症は何らかの外因により胆管の構造が破壊されたものであると考えられた。初代培養後3週目に胆管上皮細胞がコロニーを形成している部分のコラーゲンを切離し、新しい培養皿に移して継代培養する予定であったが、細織学的検索を行ったところ、残念ながらいずれも培養途中で細胞が死滅してしまい、線維化を生じていた。その原因として考えられるのは、上皮細胞増殖因子(EGF)、またはinsulinのいずれかに問題があると考えられたため、本年度はこれらを各種変更しながら再度挑戦する予定である。【目的】胆道開鎖症の総胆管の内腔は肥厚し、肉眼的には閉塞しているが、肥厚線維化した胆管上皮細胞が増殖能を有するのか、また、正常な胆管上皮細胞と比べて変化していないかどうかについて検討した。【方法】胆道閉鎖症3例に対し、手術中に採取した肝外胆道索状物組織を採取後直ちにHanks液(pH7.2)に浮遊、洗浄して1mm以下の砕片とし、4型collagenでcoatingした35mm培養皿に静置して10%Nuserumを含んだDulbecco's modified Eagle medium(DMFM)とHamF-12mediumにepidermal growthfactorとinsulin、forskolinを添加した培養液で、37°Cに保たれたCO2インキュベーターでprimary cultureを行った。隔日に培養液を交換し、primary culture後20日目に胆管上皮細胞がコロニーを形成している部分のコラーゲンを切離して1型コラーゲンでcoatingした培養皿に単層培養した。継代後7日目にcytokeratin 7(CK7)抗体で免疫細胞化学染色を行い、CK7陽性細胞の形態を観察してコロニーが何個存在するかカウントした。【結果】全例から胆管上皮様の細胞が出現し、コロニーを形成した。コロニー数は3例に差はなく、400倍視野で平均1.2±0.07群であった。胆管上皮様の細胞はCK7抗体による免疫細胞染色で陽性となり、この細胞が胆管上皮であることが示された。また、継代した細胞は位相差顕微鏡による形態観察で胆管上皮細胞であった。【総括】1.胆道閉鎖症の肝外胆道索状物から胆管上皮細胞が培養でき、培養された上皮細胞は継代を3回繰り返した後も増殖能が保たれている正常細胞であった。2.培養した胆管上皮細胞はCK7陽性細胞であり、胆道閉鎖症は何らかの外因により胆管の構造が破壊されたものであると考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-17659555 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17659555 |
肺癌特異的αβT細胞受容体遺伝子を導入したγδT細胞を用いた肺癌のCTL治療 | 免疫療法は新たな治療法のひとつとして期待されているが、現状では十分な効果を得るには至っていない。肺癌患者において、腫瘍抗原に対するアビディティの高いCTLを樹立することは非常に困難であることが知られている。アビディティの高いCTLからTCR遺伝子をクローニングして、レトロウイルスベクターを用いて患者の末梢血のリンパ球に導入して腫瘍特異的CTLを作製し、細胞移入治療を実現することを目的として本研究を実施した。肺癌患者の腫瘍組織から肺癌細胞株F1121Lを樹立し、手術時に採取・凍結保存していた自己のリンパ節リンパ球と共培養を繰り返すことにより癌精巣抗原であるKK-LC1をHLA-B15拘束性に認識するCTLクローンH1/10を樹立した。TCRα鎖およびβ鎖をクローニングし、翻訳効率の高いlinkerである2AでTCRα鎖(Vα1)とTCRβ鎖(Vβ19)をつなぎ、PHXレトロウイルスベクターに組み込んだ。末梢血からPBMCを採取しゾレドロン酸とIL-2で刺激してγδT細胞を増殖させ、これに上記TCRαβ遺伝子のみを導入した。KK-LC1陽性のF1121LおよびをKK-LC1ペプチドをパルスしたF1121-EB-virus transformedB cellに特異的に傷害活性とサイトカイン産生を示し、この反応は抗MHC class I抗体添加により阻害された。さらにSCID mouseを用いて、TCRαβ-CD8移入γδT細胞の養子免疫モデルを作成し、抗原特異的なin vivoでの腫瘍増殖抑制効果が得られた。肺癌患者末梢血からPBMCを採取し、5μMのゾレドロン酸と1000IU/mlのIL-2を用いてγδT細胞を培養し、15名の肺癌患者にγδT細胞移入治療を実施した。この研究成果をもとに、今後肺癌特異的CTL由来のTCRを患者末梢血γδT細胞に導入し、肺癌に対する細胞治療法を開発する。免疫療法は新たな治療法のひとつとして期待されているが、現状では十分な効果を得るには至っていない。肺癌患者において、腫瘍抗原に対するアビディティの高いCTLを樹立することは非常に困難であることが知られている。アビディティの高いCTLからTCR遺伝子をクローニングして、レトロウイルスベクターを用いて患者の末梢血のリンパ球に導入して腫瘍特異的CTLを作製し、細胞移入治療を実現することを目的として本研究を実施した。肺癌患者の腫瘍組織から肺癌細胞株F1121Lを樹立し、手術時に採取・凍結保存していた自己のリンパ節リンパ球と共培養を繰り返すことにより癌精巣抗原であるKK-LC1をHLA-B15拘束性に認識するCTLクローンH1/10を樹立した。TCRα鎖およびβ鎖をクローニングし、翻訳効率の高いlinkerである2AでTCRα鎖(Vα1)とTCRβ鎖(Vβ19)をつなぎ、PHXレトロウイルスベクターに組み込んだ。末梢血からPBMCを採取しゾレドロン酸とIL-2で刺激してγδT細胞を増殖させ、これに上記TCRαβ遺伝子のみを導入した。KK-LC1陽性のF1121LおよびをKK-LC1ペプチドをパルスしたF1121-EB-virus transformedB cellに特異的に傷害活性とサイトカイン産生を示し、この反応は抗MHC class I抗体添加により阻害された。さらにSCID mouseを用いて、TCRαβ-CD8移入γδT細胞の養子免疫モデルを作成し、抗原特異的なin vivoでの腫瘍増殖抑制効果が得られた。肺癌患者末梢血からPBMCを採取し、5μMのゾレドロン酸と1000IU/mlのIL-2を用いてγδT細胞を培養し、15名の肺癌患者にγδT細胞移入治療を実施した。この研究成果をもとに、今後肺癌特異的CTL由来のTCRを患者末梢血γδT細胞に導入し、肺癌に対する細胞治療法を開発する。 | KAKENHI-PROJECT-21659327 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21659327 |
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