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民俗展示の多言語化のための基礎的研究-東アジアの水産資源を素材として
日韓両国における語彙の調査はほぼ終了しており、今年度は補充調査を残すのみとなっている。ほぼ、当初の研究計画通りに研究が進んでいる。前年度に引き続き、日韓における海産物の呼称から認識の違いについての調査を行った。日本でツブ貝と呼ばれている貝はエゾボラ、ヒメエゾボラ、クビレバイ、燈台ツブ、モッソ貝などである。この日本のツブ貝に対する言葉として韓国にはコルベンイという言葉がある。しかし、コルベンイがさしている貝類は、日本のツブ貝とは生態が違う肉食のツメタガイなどをさしている。さらに、ツメタガイは日本でも食用にされているが地域名として様々な呼ばれ方をしている。コルベンイをツブ貝と訳してしまうことは無理があることがわかった。博物館のキャプションなどで使用する場合は短い言葉でわかりやすく伝えなければならない。今後、翻訳の仕方について考えて行く予定である。また、カタクチイワシの煮干しと辛子明太子について日韓の食文化の関わりについての調査を行った。煮干しは日本から韓国へ、辛子明太子は韓国から日本へ伝わったものであるが、伝わった先でそれぞれ独自の発展を遂げていることがわかった。このような際にも、翻訳にあたっては注意が必要であるとの認識に達した。最終年度に向けて、ウエッブ上での日韓海産物辞典の作成に備えて画像の整理と日韓の魚屋の図の作成を行った。さらに、日本の市場等において、魚の方言についての調査も行った。日本国内の魚の方言も多数あることが再認識された。海産物の日韓両国国における呼称と種名の関係はほぼあきらかになった。また、方言についての調査も行っている。次年度は、多言語化のための基礎資料となる辞典の作成の準備をはじめた。まだ手をつけていない甲殻類の日韓における呼称と種名の調査を行うとともに、今後は地方名についても調査していく予定である。また、それぞれの食品の加工方法も含めて調査する予定である。これらの調査の成果を踏まえて、多言語化のための基礎資料となる辞典の刊行をすすめて行く予定である。今年度はこれまで集めた情報をまとめて、「日韓海洋資源比較辞典」の作成にとりかかる。なるべく多くの人々に利用してもらうために、当初のよていにはなかった、ウエッブによる辞典の公表を進めていく予定である。作成にあたっての補充調査も行う。また、実際の展覧会において、どのように翻訳をすることで、展示の理解が深まるかの検討をはじめる。多言語化のための基礎資料となる辞典の作成を行う。とともに、市場等での地方名などの補充調査を引き続き行う。研究の成果発表の1つとして位置づけている国際展示の準備を行う。
KAKENHI-PROJECT-16H03108
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H03108
デジタル時代における文化産業-ビジネス環境の変化と創造性のマネジメント
コンテンツ産業は、今日では大きな産業となっており、都市再活性化政策、都市間経済競争、国際貿易、国際政治の場でも大きな鍵を握るまでになった。特にハリウッドにおいては、大きな資金力を持つメディア・娯楽系コングロマリットが、創造活動を商品化し世界中に売り込む独自の組織と戦略を持つ。著作権法の拡張、通信に関する規制緩和という政治経済の世界的潮流がこれを推進してきたが、文化政策としてハリウッドに対抗する動きもある情報と通信のデジタル化が進展する中、コンテンツ産業には新たなビジネスモデルの構築が求められている。創造性を維持、育成しながら、どのようなマネジメントが今後求められるかを分析する。コンテンツ産業は、今日では大きな産業となっており、都市再活性化政策、都市間経済競争、国際貿易、国際政治の場でも大きな鍵を握るまでになった。特にハリウッドにおいては、大きな資金力を持つメディア・娯楽系コングロマリットが、創造活動を商品化し世界中に売り込む独自の組織と戦略を持つ。著作権法の拡張、通信に関する規制緩和という政治経済の世界的潮流がこれを推進してきたが、文化政策としてハリウッドに対抗する動きもある「従来型」の広告への疑問が呈されて数年になる。さまざまな近未来型広告手法が編み出される中、エンタテインメント作品と広告とを融合させる「ブランデッド・エンタテインメント」が一つの手法として注目を浴びるようになった。ブランデッド・エンタテインメントは、アメリカのマーケティングにおいては、既に定着したものと言える。その発展には、メディアの多様化、消費者におけるメディア消費パターンの多様化、そしてエンタテインメント業界における変化などの要因が複雑に絡み合ってきた。エンタテインメント業界における制作費の高騰、特にテレビ業界の構造変化と競争激化は、この領域への必要性を大いに高めることとなった。広い意味でのブランデッド・エンタテインメントにおいては、狭義のプロダクト・プレースメントが、依然として重要な地位も占めているものの、新たに、より戦略的、経営の高レベルで扱われるブランデッド・エンタテインメントが浮上してきた。それは「業界」としての形を整えつつあり、コンテンツ制作者たち、メディア、広告主、各種代理店などが、より大きな利益を確保しようとしのぎを削っている。業界内部においては、クリエーティブ・コントロールをめぐり、広告主と制作側とが対立する。特にタレント代理店において、どちらを代表するのか、双方から報酬を受け取ってよいのか、といった、力関係に大きく影響する問題がある。ここに新たな`商売ネタ'を見つけている法律事務所の動きも興味深い。確かに取引金額が大きくなり、契約には、単なる商品露出に関する規定に限らず、商標権、肖像権、著作権、政府の広告規制など多岐にわたる法律分野に目配りする必要がある。また、テレビネットワーク側が、リアリティ番組などに流れるスポンサーのブランデッド・エンタテインメント経費の一部を要求し始めたのは、面白い現象である。本来ならばその費用は、スポット広告費であったはずである、という主張である。ブランドの推奨をさせられるのは表現の自由を損なうことになる、と主張する俳優や作家の組合も、彼らがしばしば行う「経済的利益をねらった芸術的主張」に過ぎない。このような駆け引きと権力争いが続く業界は、混沌とした状況にある。しかし、驚いたことに、ブランデッド・エンタテインメントはおろか、プロダクト・プレースメントの費用対効果測定の試みはほとんどなされていない。伝統的な広告出稿に伴う効果測定とその結果を要求する広告主の常日頃とは合わず、誰もが今のところ気づかぬふりをし続けている。学術研究においては、プロダクト・プレースメントの効果測定の実証的研究が少しずつ積み重なっており、それを統合したフレームワークもようやく提唱されてはいる。しかし、通常の広告効果測定の考え方をベースにしつつ、消費者が作品登場人物、あるいはその俳優にどどれだけ共感できるか、ストーリーにどれだけ入り込めるか、といった新たな変数を加えていかなければならないという課題を残している。すなわち「ブランドと消費者との関係醸成】をあるメディアの文脈からどのように読み取るか、という長期的かつ定性的な側面になると、研究は発展登場である。ブランデッド・エンタテインメントが、戦術的プロダクト・プレースメントにとどまるものではなく、戦略的なブランティングに有効なものであると主張する業界にとっては、その正当化、理論化が待たれるところであろう。本年度は、著作権の違法な使用に対する自己防御として、コンテンツ業界がその商品に埋め込んできたデジタルライツマネジメント(DRM)が、場合によっては、著作権の保護を超える範囲で作品保護に資することにもなっており、その結果として、利用者・消費者の作品に対するアクセスが制限されている状況について調査、考察した。この現象に関連して、特にコンピューター・ゲームの改変と著作権をめぐる日米の一連の訴訟に着目した。1990年代より、コンピューター・ゲームの内容、ゲームの進行などを改変するためのソフトウェアが普及するようになった。これらの製造者を相手とする著作権裁判も日米ともに展開されてきており、アメリカにおいては決定的な判決は出ていないものの、日本においては、改変ソフトはほぼ全面的禁止に至っている。特にアメリカにおける判例では、裁判所がコンピューター・ゲーム産業の経済特性を的確に理解していない。また、そもそも従来の著作権法は、情報の受け手を、情報の受信者、「カウチポテト」的な消費者としてとらえており、彼らが商品と双方向的に関わっていくことで新たな作品を生む担い手となるという事態を想定していない。しかし、デジタル文化時代にあっては、消費者による既存のコンテンツの編集にこそ、新たな創造力が見いだされる。彼らの創造性に各国の著作権法は対応していないことは、大きな問題である。
KAKENHI-PROJECT-18330054
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18330054
デジタル時代における文化産業-ビジネス環境の変化と創造性のマネジメント
本研究では、アクティブな消費者、ミニ著作者たちを今後著作権法上、どのように位置づけていくかを、今後の著作権法上の重要な政策的課題として指摘した。本年度はソニーグループの事例研究を予定していたが、もう少し幅広くコンテンツ制作自体を行う企業について理解を深める必要を感じたため、産業ごとに研究するための研究会を開催し、出版関係、音楽関係、ゲーム関係の各事例についての報告と議論を、メンバーと重ねた。その結果、予想以上に、コンテンツ産業内で、創造的な商品を開発する力が著しく落ちていることが明らかになった。その理由はさまざまであるが、出版・音楽においては、第一次創造者の才能を探し出して商品化するか否かを決定するフィルタリング及びゲートキーピング機能を外注に任せる比率が高すぎるのではないか、内部におけるこのような文化産業にとってもっとも大切な経験、暗黙知などがすり減っていることが原因ではないかと思われた。ゲーム関係については、明確なことは言えないが、いわゆるハリウッド型のブロックバスター的ゲーム開発が主流になってしまったため、リスクをとれず、シリーズものに依存する傾向が強く、新たなイノベーションが起きにくい現状だということは確認できた。また一方で、著作権法、通信・放送関係の法・規制については、各大学(北海道大学、東京大学)の法学研究会において発表し、論文執筆を進めた。著作権法については、著作者人格権を制限する方向での改革が必要であることが明らかになった。これ自体は、若手の法学者の間でも既に言われていることだが、私自身の貢献としては、著作者人格権を制限することの根拠づけ、理論化を、法と経済学の視点から進めたことにある。本年度は、各論としては、第一に、広告表現制作における環境変化(メディアの多様化、視聴者の拡散化、情報のデジタル化などの現象、および企業における広告費の削減、流通と製造業の関係の変化など)が表現制作に及ぼしている関係について分析した。また第二に、毎年進めてきた著作権の経済分析について、著作者人格権の問題に焦点をあてて、デジタル時代における著作者人格権の制限をどのように根拠づけることができるかを調査して論文を執筆した。また、本年度は最終年度にあたるため、全体をまとめ、著書を出版した。同署では、コンテンツ産業全体のグローバルな動向をとらえつつ、各業界の特徴とダイナミクスを、経済学・地理学・法学等における研究成果を利用しながら解説し、創造性にとっての今後の課題を考えた。具体的には、第I部では、文化経済、コンテンツ産業論への入門を行った。コンテンツ産業という新しい言葉により、映画や音楽などの娯楽・文化・メディア産業をひとまとめにとらえるようになってから10年以上にはなるが、このように一つの産業として注目されるようになったのはなぜか。背景にある経済のグローバル化、都市政策の変化などを読み解きながら、コンテンツという財の特徴とそこから導かれる、さまざまな経営上の課題を指摘した。
KAKENHI-PROJECT-18330054
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18330054
非対称構造グレーティング結合器を用いた光Add/Drop回路特性の研究
本研究は,フォトニックネットワークおける光ルータ用のAdd/Drop回路に新しい方法を提案し,その有用性を試作光回路により立証しようとするものである。明らかとなった研究成果の概要は次のとおりである。1)研究の対象とした光Add/Drop回路は、周期的屈折率変動を持つ方向性結合器により構成され、特定波長のみをAdd/Dropする。今回、理論計算により,新しい構造のグレーティング形光結合器を明らかにした。2)理論的に明らかとなった新構造のグレーティング結合器の試作を試みた。光ファイバ側面を研磨して、結合器を作成する方法を試みた。最終的には光結合器を作製し、特性確認するには至っていない。しかしながら、研磨条件の一部を明らかにすることができた。理論的な研究にて明らかとした具体的な成果は以下のとおりである。1.非対称グレーティング結合器ではevenモードとoddモードの100%結合が実現できること、2.対称グレーティング結合器では、従来では知られていない新しい構成により結合率が90%以上に達する領域が存在すること、および3.上記新構造では、結合長を短くできるため素子として有望であること、である。また、光ファイバ側面の研磨により光結合器を作製する取り組みでは、1.光ファイバ側面研磨による結合器の作成では、研磨量の精密制御がむずかしい。さらに、製造精度を向上させる工夫と技術を考案する必要があること、および2.機械研磨のよる研磨量の再現性を確保する検討を計画している、などである。本研究は,フォトニックネットワークおける光ルータ用のAdd/Drop回路に新しい方法を提案し,その有用性を試作光回路により立証しようとするものである。明らかとなった研究成果の概要は次のとおりである。1)研究の対象とした光Add/Drop回路は、周期的屈折率変動を持つ方向性結合器により構成され、特定波長のみをAdd/Dropする。今回、理論計算により,新しい構造のグレーティング形光結合器を明らかにした。2)理論的に明らかとなった新構造のグレーティング結合器の試作を試みた。光ファイバ側面を研磨して、結合器を作成する方法を試みた。最終的には光結合器を作製し、特性確認するには至っていない。しかしながら、研磨条件の一部を明らかにすることができた。理論的な研究にて明らかとした具体的な成果は以下のとおりである。1.非対称グレーティング結合器ではevenモードとoddモードの100%結合が実現できること、2.対称グレーティング結合器では、従来では知られていない新しい構成により結合率が90%以上に達する領域が存在すること、および3.上記新構造では、結合長を短くできるため素子として有望であること、である。また、光ファイバ側面の研磨により光結合器を作製する取り組みでは、1.光ファイバ側面研磨による結合器の作成では、研磨量の精密制御がむずかしい。さらに、製造精度を向上させる工夫と技術を考案する必要があること、および2.機械研磨のよる研磨量の再現性を確保する検討を計画している、などである。本研究は,フォトニックネットワークおける光ルータ用のAdd/Drop回路に新しい方法を提案し,その有用性を試作光回路により立証しようとするものである。明らかにする具体的内容は次のとおりである。1)提案する光Add/Drop回路は、非対称の周期的届折率変動を持つ方向性結合器により構成され,理論計算により,特定波長のみをAdd/Dropする最適構造を明らかにする。2)理論的に明らかにしたパラメータを用いて非対称グレーティング結合器の試作を行い,理論結果を実験的に確認する。パラメータの異なる各種結合器を施策し,理論で求めた最適条件を実験的にも明らかにする。本年度においては、非対称グレーティング結合器の特性を明らかにする理論を構築するため、平面光導波路をモデルに基礎解析を行った。その結果、次の内容が理論的に明らかとなった。1.非対称グレーティング結合器ではevenモードとoddモードの100%結合が実現できること、2.4ポートの結合器では入力ポートに光パワは反射され、他ポートへの結合効率は小さいこと、3.対称グレーティング結合器を用いると、隣接ポートに入力光パワが結合する条件として物理的現象の異なる2つの場合が存在すること、などである。平成15年度においては理論の精度を高めるともに試作による実験的検証を行い、長距離光ファイバを用いた評価実験を行う予定である。本研究は,フォトニックネットワークおける光ルータ用のAdd/Drop回路に新しい方法を提案し,その有用性を試作光回路により立証しようとするものである。明らかにする具体的内容は次のとおりである。1)提案する光Add/Drop回路は、非対称の周期的屈折率変動を持つ方向性結合器により構成され,理論計算により,特定波長のみをAdd/Dropする最適構造を明らかにする。2)理論的に明らかにしたパラメータを用いて非対称グレーティング結合器の試作を行い,理論結果を実験的に確認する。パラメータの異なる各種結合器を試作し,理論で求めた最適条件を実験的にも明らかにする。本年度においては、非対称グレーティング結合器の特性を明らかにする理論を構築するため、光ファイバ結合器での解析を行った。また、結合器実現に向けて、光ファイバの側面研磨による結合器作成を試みた。その結果、次の内容が明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-14550389
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14550389
非対称構造グレーティング結合器を用いた光Add/Drop回路特性の研究
1.非対称グレーティング結合器ではevenモードとoddモードの100%結合が実現できること、2.対称グレーティング結合器では、従来では知られていない新しい構成により結合率が90%以上に達する領域が存在すること、3.上記新構造では、結合長を短くできるため素子として有望であること、および4.光ファイバ側面研磨による結合器の作成では、研磨量の精密制御がむずかしい。さらに、製造精度を向上させる工夫と技術を考案する必要があること、などである。
KAKENHI-PROJECT-14550389
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14550389
散逸系の局在パターン生成における非局所的効果の数理的研究と応用
様々な空間的パターンを記述する反応拡散系に代表される散逸系のモデル方程式において,パターン形成に対応する空間的構造をもった解の存在や安定性が研究されている.今回の研究では,局在パターンとよばれるある領域に拡散物質が集中化する現象において,モデル方程式のもつ非局所的効果の役割を数学的に研究し,その数理的メカニズムを明らかにした.具体的には,2つの未知変数の積分量の和が保存される反応拡散系において,局在パターンを表す定常解の安定性が積分項による非局所効果に依存していることを数学的に証明した.さらにその手法を他のモデル方程式の研究にも応用し,安定性に関する新しい知見を与えた.様々な空間的パターンを記述する反応拡散系に代表される散逸系のモデル方程式において,パターン形成に対応する空間的構造をもった解の存在や安定性が研究されている.今回の研究では,局在パターンとよばれるある領域に拡散物質が集中化する現象において,モデル方程式のもつ非局所的効果の役割を数学的に研究し,その数理的メカニズムを明らかにした.具体的には,2つの未知変数の積分量の和が保存される反応拡散系において,局在パターンを表す定常解の安定性が積分項による非局所効果に依存していることを数学的に証明した.さらにその手法を他のモデル方程式の研究にも応用し,安定性に関する新しい知見を与えた.代表者の森田と分担者の小川は、保存性をもつ反応拡散系とある種の非局所的項をもつ反応拡散方程式が共通した定常問題をもつことに着目して、その線形化固有値問題に関連性があることを明らかにした。また、具体例について大域的分岐構造を数値計算を用いて明らかにした。神保は,正則および特異的領域摂動と電磁波の固有振動数に関する固有値問題を研究し,境界が導体の場合に領域の摂動に関する固有値の漸近公式を2つの場合について調べた.これは磁場の非局所効果と領域の形状との関連を研究する場合に有用な情報を得られることが期待できる。小川は動的パターンの現れる振動場拡散系に着目し、そこで起きるウェーブ不安定化による分岐解析を行った。特に球面上でのパターン選択をより詳細に解析した。拡散系の新たな側面を数学的に明らかにした結果として、今後の研究につながる成果である。宮本は半線型楕円型方程式の解の構造を,分岐理論の視点から研究した。特にノイマン問題の非自明解やディリクレ問題の符号変化解のなす枝の大域性について研究した。数学的に大域的な分岐構造を調べた結果が少なく、この方程式だけでなく、他のモデル方程式系の大域的分岐構造を研究する上で参考になる有益な成果である。町田は超伝導及び超流動現象に関して、ミクロ、メゾ、マクロの階層毎の課題について研究を展開し、ミクロについては密度行列繰り込み群法を利用した超伝導機構解明と原子ガスの新奇量子相の探索、メゾでは、新たに発見された鉄系超伝導体に対する集団励起モードの解析、マクロでは、磁束渦糸のダイナミカルな様相を調べる研究を行った。これらの成果をもとに超伝導モデルの数理的解析と非局所的効果との関連を解明する研究につなげる計画である。代表者の森田は,保存性のある反応拡散系の平衡解の安定性について研究を進めた.この方程式系の平衡解は,非局所項を持つスカラーの反応拡散方程式の定常問題に帰着される.あるタイプの反応項の場合には元の方程式系にも変分構造があり,平衡解に対する線形化固有値問題は自己共役性があることがわかった.そこでスカラーの場合の線形化作用素の固有値と比較する定理を得た.これによって不安定固有値の数が,完全にスカラーの非局所項をもつ場合から決定でき,空間1次元についてはその安定解はノイマン境界条件の場合には定数か単調関数しかあり得ないことが証明できた.こうして,定数解の不安定化によって生じる安定な空間パターンについて,空間1次元の場合には決定できた.神保は,小さな剛性率をもつラメ作用素の固有値の精密な挙動を解析している。この結果は今後,非局所的効果のある非線形の方程式系の解の安定性解析に役立つものと期待できる.小川は,非局所項をもつ3変数の反応拡散系の退化分岐点で,定常解のまわりの振動現象が理解できることを分岐解析の手法で示した.宮本は,非線形楕円型方程式の解の構造を,分岐理論の視点を用いて解明し,円盤領域における安定定常解の形状を研究した.今後この成果をもとに,多次元領域において非局所効果が円盤のような多次元領域において解の形状にどのように影響するかを研究する際に役立つことが期待できる.町田は,鉄系超伝導体の物性を解析し,鉄原子の複数の電子の軌道が秩序化して特徴的な電子構造を与えることを理論的に予言した.超伝導の発現する舞台を明らかにし,超伝導の数理モデルにおいて磁場の非局所的効果が果たす役割を今後解明していく上で重要な研究である.1)研究代表者の森田は分担者の神保と、非局所効果がパターン形成のメカニズムに果たす役割について、研究を進めた。対象とする反応拡散方程式系の平衡解と、対応する単独の非局所項をもつ方程式の平衡解の間の線形化固有値を比較するSpectral Comparisonという手法を発展させて、安定性や不安定性に関する関係を明らかにした。その応用として保存則のある方程式系のクラスでは、安定解の空間的形状が制約されることが証明できた。一方、FitzHugh-Nagumo型の系においては、その非局所項の形を分析する過程で、これまで知られていなかったリャプノフ関数を発見した。
KAKENHI-PROJECT-22340022
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22340022
散逸系の局在パターン生成における非局所的効果の数理的研究と応用
このように非局所項の効果に対する数学的な基礎付けと、大域的な力学系の性質を特徴付けるリャプノフ関数の存在に関する成果が得られた。2)2変数の反応拡散系で拡散不安定化によりパターンが生じることが知られているが、適当な2次元領域では、ロール解(バンド状の解)と六角パターンなどが共存する。小川は、適当な制御入力を印可することで不安定であった六角パターンなど、所望のパターンを安定化させることができることを示した。さらにウェーブ不安定化で現れるパターンにも同様の制御を行い、六角定在波や六角進行波パターンなども安定化することができることを示した。3)宮本はソボレフ優臨界の増大度を持つ様々な楕円型偏微分方程式の解構造を解明した。この方程式の解構造はいくつかの特殊な場合を除き未解明であったが、球領域上の正値解に制限し、解構造の詳しい解析を行うことによって、いくつかの特殊な場合に知られていた性質が、ある程度一般的な非線形項に対しても成り立つことが明らかになった.4)町田はトポロジカル超伝導状態の理論的研究を行い、磁束量子がスピン偏極する等の新しい物理現象を予言することに成功し、これらの結果の背景にある数学的構造について考察した。今年度は,保存則のある反応拡散方程式系とチューリングパターンを生成することが知られているFitzHugh-Nagumo方程式系について主にターゲットを絞り研究した.前者の方程式系の定常問題の安定性の研究から,非局所項の効果によって,空間的な構造を持つ解が安定となることを数学的に証明することに成功した.さらにその解構造の解析から,定常解のモース指数に関する新しい性質を見出すことができた.後者のFitzHugh-Nagumo方程式系については,まず定在波の存在と安定性を研究した.この方程式系の定常問題は,非局所項をもつ楕円型の方程式として特徴づけられる.この定常問題をもとの方程式系と切り離して考えた場合,あるエネルギー汎関数のオイラー・ラグランジュ方程式となることも知られている.こうして定常問題は,このエネルギーの変分問題として研究できる.通常,解の存在や安定性を議論するときに,パラメータに関して制約がつくことが多い.今回の研究では,このようなパラメータに関する条件を緩和することに成功した.また,この定常解の元のシステムにおける安定性と,変分問題における安定性が密接につながっていることが判明し,FitzHugh-Nagumo方程式系におけるパターンの生成に,非局所項が果たす役割が数学的に極めて明確になった.研究代表者を始めとして,各分担者も着実に研究を進めており成果があがっている.25年度が最終年度であるため、記入しない。反応拡散系における非局所効果のパターン形成に果たす役割の重要性はすでに指摘されていたが,それを明らかにする数学的な原理や厳密な証明がなかった.現在研究しているモデル方程式では,チューリング不安定性を起こすことが確かめられる.そのとき非局所効果によって安定解が空間的構造をもつことをきわめて明快に数学的に示すことができた.一方,もう一つの研究対象のギンツブルク・ランダウ方程式については,このような明快な数学的証明まで至っていない.しかし,反応拡散系で得られた知見を発展させる可能性が見えてきたので今後の研究に期待できる.現在の研究をさらに進める一方で,分担者間の連携も深めより高次の研究成果を目指す.25年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22340022
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22340022
がん薬物療法における薬剤誘発性QT延長の遺伝的要因を含めた患者要因
乳がんに対するFEC療法(フルオロウラシル、エピルビシン、シクロフォスファミド)を受ける患者を対象に、治療前後の心電図検査により不整脈およびQT間隔の延長をスクリーニングした。34症例に心電図検査を計127回施行した。FEC療法の1サイクル目から6サイクル目までのすべてのサイクルで治療後のQT延長が有意差をもって示された。臨床上問題となる不整脈は認めなかった。薬剤誘発性QT延長関連遺伝子(KCNQ1,KCNH2)に存在する一塩基多型とQT延長に関連は認めなかった。乳がんに対するFEC療法(フルオロウラシル、エピルビシン、シクロフォスファミド)を受ける患者を対象に、治療前後の心電図検査により不整脈およびQT間隔の延長をスクリーニングした。34症例に心電図検査を計127回施行した。FEC療法の1サイクル目から6サイクル目までのすべてのサイクルで治療後のQT延長が有意差をもって示された。臨床上問題となる不整脈は認めなかった。薬剤誘発性QT延長関連遺伝子(KCNQ1,KCNH2)に存在する一塩基多型とQT延長に関連は認めなかった。概要:がん薬物療法における薬剤誘発性不整脈QT延長の発現の頻度と臨床的要因、QT延長を誘発しやすい抗がん剤あるいは治療プロトコールを明らかにするために、標準プロトコールに基づいて治療をうける患者を対象とし、治療前後の心電図検査によりQT延長の発現についてスクリーニングを行う。QT延長を発現した患者を対象として遺伝子解析を行い、がん薬物療法における薬剤誘発性QT延長の遺伝的要因を明らかにする。結果:当該年度は、乳がんに対するFEC療法(フルオロウラシル、エピルビシン、シクロフォスファミド)を受けた34名と、胆道がん・膵臓がんに対する塩酸ゲムシタビン(GEM)療法を受けた18名を対象として心電図評価を実施し、QT延長を中心とした不整脈異常の頻度を調べた。その結果、FEC療法においては中等度以上であるグレード2以上のQT延長を9名(26%)に認め、一方GEM療法では2名(11%)に認めた。FEC療法では9名のうち2名は重度に分類されるグレード3であった。また、FEC療法の1サイクル目から6サイクル目までのすべてのサイクルで、治療後のQT延長が統計学的有意差をもって示された。これらの患者からはゲノム解析用の血液検体が採取保存されており、当該年度末より既知の薬剤誘発性QT延長関連遺伝子を中心に解析を開始している。来年度も引き続き薬剤誘発性QT延長関連遺伝子を中心に解析を行い、関連の強い遺伝的要因を明らかにする。【概要】がん薬物療法における薬剤誘発性不整脈QT延長の頻度と臨床要因,QT延長を誘発しやすい抗がん剤あるいはレジメンを明らかにするために,乳がんに対するFEC療法(フルオロウラシル,エピルビシン,シクロフォスファミド)および胆道がん・膵臓がんに対する塩酸ゲムシタビン(GEM)療法を受ける患者を対象に,治療前後の心電図により不整脈およびQT間隔の延長をスクリーニングした.今後は遺伝子多型の検索により、薬剤誘発性QT延長の遺伝的要因を明らかにする.【結果】乳がん患者34症例に計131回のFEC療法を行い,QT間隔の評価可能な心電図検査を計127回施行した.FEC療法の1サイクル目から6サイクル目までのすべてのサイクルで,治療後のQT延長が有意差をもって示された:1コース目27例422±16(前)/439±18(後),2コース目28例426±17/438±18,3コース目26例431±19/447±17,4コース目27例434±20/450±18.QT延長のグレード分類の1段階増悪は23回(18%),2段階増悪は1回(1%)に認めた.最悪グレードを各症例の代表値とすると,グレード0は19人,同1は10人,同2は5人,同3は0人であった.化学療法後に臨床上問題となる不整脈は認めなかった.【22年度予定】FEC療法によりQT延長をきたすことが示されたため,保存中のゲノムDNAを用いてKCNQ1,KCNH2,KCNE1,KCNE2,SCN5Aなどの薬剤誘発性QT延長関連遣伝子解析を進める.【概要】がん薬物療法における薬剤誘発性不整脈QT延長の頻度と臨床要因,QT延長を誘発しやすい抗がん剤あるいはレジメンを明らかにするために,乳がんに対するFEC療法(フルオロウラシル,エピルビシン,シクロフォスファミド)および胆道がん・膵臓がんに対する塩酸ゲムシタビン療法を受ける患者を対象に,治療前後の心電図により不整脈およびQT間隔の延長をスクリーニングした.おもな薬剤誘発性QT延長関連遺伝子との関連も調べた・【結果】研究期間中に乳がん患者34症例に153回のFEC療法を行い,うち研究参加の同意を取得できた計131回を対象とし,QT間隔の評価可能な心電図検査を計127回施行した.FEC療法の1サイクル目から6サイクル目までのすべてのサイクルで,治療後のQT延長が有意差をもつて示された:1コース目27例422±16(前)/439±18(後),2コース目28例426±17/438±18,3コース目26例431±19/447±17,4コース
KAKENHI-PROJECT-20590537
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20590537
がん薬物療法における薬剤誘発性QT延長の遺伝的要因を含めた患者要因
目27例434±20/450±18.QT延長の有害事象グレード分類は,グレード0は19人,同1は10人,同2は5人,同3は0人であった.化学療法後に臨床上問題となる不整脈は認めなかった.当該年度では主に,薬剤誘発性QT延長関連遺伝子であるカリウムチャネル遺伝子(KCNQ1, KCNH2)に存在する4つの一塩基多型と各患者のQT延長の程度との関係を調べたが,有意な相関性は認めなかった.なお,塩酸ゲムシタビン療法を受けた症例の解析は中途であるが,明らかなQT延長の傾向を認めていない.研究成果は英語論文として投稿した。
KAKENHI-PROJECT-20590537
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利己的な制限酵素修飾酵素遺伝子のゲノム進化での役割に関する比較ゲノムと実験進化
1.分離後のホスト殺しの条件EcoRIの場合について、修飾酵素と制限酵素の安定性に大差無い事を示した。中毒遺伝子が広まる条件を進化生態学で明らかにした。空間構造の重要性が示された。2.超好熱古細菌ゲノム比較から得られた制限酵素修飾酵素Pyrococcusの挿入ゲノム部分から小麦無細胞タンパク合成系によって制限酵素PahIを同定し精製した。CTACから新規の末端TA3'を作る。修飾酵素M. PahIを精製解析した。GT6mACを生じ、DNAメチル化酵素で最も耐熱性で、初めて熱力学的測定を行った。3.近縁ゲノム比較による多型形成解析黄色ブドウ球菌の1型制限酵素の特異性サブユニットについて、二つの配列認識ドメインの間の組換えを発見した。バラログのクラスターを7株で比較し、「機能故に保存された配列間の相同相互作用によって再編が起きた」と提唱した。Nesseria4株を比較してファージを発見し、そのトランスポゼースで組み込まれた事、ゲノム再編を引き起こした事を推定した。4.制限酵素の攻撃等によるDNA切断とゲノム再編一匹だけ感染した細胞でのファージへの3型制限酵素による損傷が、プロファージの相同組換え機能によって修復される事を示した。1型制限修飾遺伝子によるDNAホモロジー依存相同組み換えが、RecA機能に依存する事を明らかにした。大腸菌の環状染色体DNAの二重鎖切断による線状化を検出する系を作った。組換え変異体で線状染色体を検出した。大腸菌BJ5183株で、相同組換えによる制限酵素切断の修復が高頻度な事を証明した。ホリディー構造の非対称分岐点移動反応をモデル化し、無細胞系でのデータに適用した。5.制限修飾遺伝子の自己増幅。枯草菌染色体上でのBamHI制限修飾遺伝子のタンデムな増幅がBamHI制限酵素に依存して起きることを示した。1.分離後のホスト殺しの条件EcoRIの場合について、修飾酵素と制限酵素の安定性に大差無い事を示した。中毒遺伝子が広まる条件を進化生態学で明らかにした。空間構造の重要性が示された。2.超好熱古細菌ゲノム比較から得られた制限酵素修飾酵素Pyrococcusの挿入ゲノム部分から小麦無細胞タンパク合成系によって制限酵素PahIを同定し精製した。CTACから新規の末端TA3'を作る。修飾酵素M. PahIを精製解析した。GT6mACを生じ、DNAメチル化酵素で最も耐熱性で、初めて熱力学的測定を行った。3.近縁ゲノム比較による多型形成解析黄色ブドウ球菌の1型制限酵素の特異性サブユニットについて、二つの配列認識ドメインの間の組換えを発見した。バラログのクラスターを7株で比較し、「機能故に保存された配列間の相同相互作用によって再編が起きた」と提唱した。Nesseria4株を比較してファージを発見し、そのトランスポゼースで組み込まれた事、ゲノム再編を引き起こした事を推定した。4.制限酵素の攻撃等によるDNA切断とゲノム再編一匹だけ感染した細胞でのファージへの3型制限酵素による損傷が、プロファージの相同組換え機能によって修復される事を示した。1型制限修飾遺伝子によるDNAホモロジー依存相同組み換えが、RecA機能に依存する事を明らかにした。大腸菌の環状染色体DNAの二重鎖切断による線状化を検出する系を作った。組換え変異体で線状染色体を検出した。大腸菌BJ5183株で、相同組換えによる制限酵素切断の修復が高頻度な事を証明した。ホリディー構造の非対称分岐点移動反応をモデル化し、無細胞系でのデータに適用した。5.制限修飾遺伝子の自己増幅。枯草菌染色体上でのBamHI制限修飾遺伝子のタンデムな増幅がBamHI制限酵素に依存して起きることを示した。(1)ゲノム情報からの解析。(1-1)解読ゲノムからの制限修飾遺伝子の探索。ある解読好熱古細菌ゲノム中に、DNAメチル化酵素ホモログを洗い出し、その近隣のORFについて、制限酵素遺伝子候補を絞り、これら候補ORFをPCRでふやし、小麦胚芽のin vitroたんぱく合成系で発現させ、DNA切断活性を検索した。制限酵素を発見し、その反応条件、認識配列、切断位置を決定した。これは、新規の断端をもっていた。ほぼ完全に精製した。(1-2)ゲノム多型形成の痕跡の探索。(2)制限酵素修飾酵素遺伝子の自己増殖とゲノム再編。(2-1)同調的自己増幅誘発。RM遺伝子が増幅したか否かを検討するためのドットブロットによる簡便なアッセイ系を作った。(2-2)制限修飾遺伝子のサブゲノム間転移。大腸菌内での制限修飾酵素遺伝子のプラスミドから染色体への転移が制限酵素活性に依存するかを検討し、結論を得た。(2-3)大規模ゲノム再編。染色体上にPaeR71制限修飾遺伝子と相同なゲノム領域をタンデムに持つ大腸菌を繰り返し植え継ぎ、どのようなゲノムが生き残るかを調べた。(2-4)非染色体DNAに対する制限酵素の攻撃と再編。制限修飾遺伝子の攻撃によってドライブされるDNAの再編を、プラスミドで解析した。(1)ゲノム情報からの解析。(1-1)解読ゲノム中の制限修飾遣伝子の探索。Pyrococcusのゲノム
KAKENHI-PROJECT-15370099
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利己的な制限酵素修飾酵素遺伝子のゲノム進化での役割に関する比較ゲノムと実験進化
配列中に、制限酵素遺伝子候補を探し、小麦胚芽のin vitroたんぱく合成系で発現させDNA切断活性を検討した。複数の活性のうち一つを精製し、至適条件、認識配列、切断サイト、耐熱性を決定した。(1-2)病原細菌ゲノム多型形成の痕跡の探索。Neisseriameningitidisの二つの株のゲノム配列を比較し、新しいゲノム再編機構を推測した。Staphylococcusの多数の株のゲノム配列を比較し、多型の形成機構を推測した。その過程で、CGATを改良した。(1-3)制限修飾系の進化。制限修飾遺伝子が、「ホスト殺し」によって存続するための諸条件を、ポピュレーションダイナミクス手法によって明らかにした。(2)制限酵素修飾酵素遺伝子の自己増殖とゲノム再編。(2-1)増殖サイクル。枯草菌に、増幅が起きた細胞からのゲノムDNAをドナーとして、増幅による形質転換体の頻度の上昇を示唆する予備的な結果を得た。(2-2)自己増幅検出系。制限修飾遺伝子の増幅を検出する系を、蛍光レポーター遺伝子を用いて作った。(2-3)制限修飾遺伝子のサブゲノム間転移。大腸菌での転移が制限酵素活性に依存するかを検討した。(2-4)大規模ゲノム再編。制限修飾遺伝子と対立遺伝子をあわせ持つ大腸菌の植え継ぎを繰り返して、どのようなゲノムが生き残るかを調べた。(2-5)非染色体DNAに対する制限酵素の攻撃と再編。制限修飾遺伝子によるファージおよびプラスミドの攻撃と再編を解析した。(3)仮説と命名法以上をもとに死とゲノムの維持進化について仮説を提唱した。制限修飾酵素などについての新しい命名法を提唱した。
KAKENHI-PROJECT-15370099
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図形マッチング機能を有するビジョンチップの研究
本研究では、特に動画像処理におけるフロントエンド処理として重要な機能といえるテンプレート図形と入力画像とのマッチング機能に焦点をおき、高空間解像度化・高集積度化を目指したビジョンチップアーキテクチャを提案し、LSIへの集積化を実現することを目的とする。具体的には、A)高速視覚の画像特性を用いて単純化された図形テンプレートマッチングアルゴリズムの研究・開発、B)ビジョンチップ上で任意テンプレート図形を生成可能とする高集積化に対応した図形生成機能アーキテクチャの設計、C)テンプレート図形と入力画像の図形マッチング機能アーキテクチャの設計、D)B),C)のアーキテクチャを基にしたビジョンチップの開発を行い、従来集積度向上が困難と考えられてきた、動画像処理において重要な機能である任意の図形テンプレートと入力画像との高速なマッチングを可能とするビジョンチップの開発を行う。平成14年度は、平成13年度に設計したビジョンチップアーキテクチャを実際に試作し、テストボード上でアルゴリズムの性能評価を行った。具体的には以下の研究を行った。1)平成13年度に設計したビジョンチップデバイスを試作した。2)1)で試作されたビジョンチップデバイスをテストボード上に搭載し、その動作チェックを行った。3)テストボード上に対応して、図形マッチングアルゴリズム動作に関する評価を行った。4)試作したテストボードを用いて実画像に対する動作を確認した。5)本研究で提案したアルゴリズム、アーキテクチャについて整理を行い、その体系化を行った。本研究では、特に動画像処理におけるフロントエンド処理として重要な機能といえるテンプレート図形と入力画像とのマッチング機能に焦点をおき、高空間解像度化・高集積度化を目指したビジョンチップアーキテクチャを提案し、LSIへの集積化を実現することを目的とする。具体的には、A)高速視覚の画像特性を用いて単純化された図形テンプレートマッチングアルゴリズムの研究・開発、B)ビジョンチップ上で任意テンプレート図形を生成可能とする高集積化に対応した図形生成機能アーキテクチャの設計、C)テンプレート図形と入力画像の図形マッチング機能アーキテクチャの設計、D)B),C)のアーキテクチャを基にしたビジョンチップの開発を行い、従来集積度向上が困難と考えられてきた、動画像処理において重要な機能である任意の図形テンプレートと入力画像との高速なマッチングを可能とするビジョンチップの開発を行う。平成13年度は、テンプレート図形とのマッチング機能を実現するためのアルゴリズム開発及び、そのピジョンチップアーキテクチャの設計を行った。具体的には以下の研究を行った。1)高速視覚の画像特性を考慮した図形マッチングアルゴリズムを提案した。2)1)で提案したアルゴリズムを高速ビデオ画像を用いてシミュレーション検証した。3)ビジョンチップの全体アーキテクチャの設計を行い、画素毎にある完全並列処理部と、行・列毎にある列並列処理部の機能を明らかにした。4)画素毎に行、列に依存した座標値を比較するための完全並列処理部のアーキテクチャを設計した。5)行、列に依存した座標値に関する演算を行う、列毎にある列並列処理部のアーキテクチャを設計した。6)画像の総和計算を行う出力回路アーキテクチャを設計した。7)4),5),6)を組み合わせた、図形マッチング機能を実現するビジョンチップLSIの設計を行った。本研究では、特に動画像処理におけるフロントエンド処理として重要な機能といえるテンプレート図形と入力画像とのマッチング機能に焦点をおき、高空間解像度化・高集積度化を目指したビジョンチップアーキテクチャを提案し、LSIへの集積化を実現することを目的とする。具体的には、A)高速視覚の画像特性を用いて単純化された図形テンプレートマッチングアルゴリズムの研究・開発、B)ビジョンチップ上で任意テンプレート図形を生成可能とする高集積化に対応した図形生成機能アーキテクチャの設計、C)テンプレート図形と入力画像の図形マッチング機能アーキテクチャの設計、D)B),C)のアーキテクチャを基にしたビジョンチップの開発を行い、従来集積度向上が困難と考えられてきた、動画像処理において重要な機能である任意の図形テンプレートと入力画像との高速なマッチングを可能とするビジョンチップの開発を行う。平成14年度は、平成13年度に設計したビジョンチップアーキテクチャを実際に試作し、テストボード上でアルゴリズムの性能評価を行った。具体的には以下の研究を行った。1)平成13年度に設計したビジョンチップデバイスを試作した。2)1)で試作されたビジョンチップデバイスをテストボード上に搭載し、その動作チェックを行った。3)テストボード上に対応して、図形マッチングアルゴリズム動作に関する評価を行った。4)試作したテストボードを用いて実画像に対する動作を確認した。5)本研究で提案したアルゴリズム、アーキテクチャについて整理を行い、その体系化を行った。
KAKENHI-PROJECT-13023202
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室内空気質改善及び省エネルギー性向上のための建築設備システムの最適化
民生部門におけるエネルギー消費量が増加する傾向がある。特に、最近の集合住宅の大型化、高層化及び高級化は、家庭部門のエネルギー消費量増加の大きい原因となっている。一方、民生部門のエネルギー問題の対策として、分散型エネルギーシステムが導入されている。本研究では、GAを用いて、集合住宅における設備システムの最適設計を行い、設備システムの省エネルギー性を検討する。まず(Step1)、集合住宅における総エネルギー負荷を計算し、時刻別エネルギー需要を検討する。エネルギー負荷計算は、TRNSYS(冷暖房エネルギー負荷計算)を用いる。次のStepでは、GA(Genetic Algorithm)を用いて、総エネルギー負荷に基づき、設備システムの機種、容量、台数を選定し、最小エネルギー消費で運転が可能なパタンを選ぶ。分散遺伝的アルゴリズムとも呼ばれるMIGAモデルを用いて、最適化された設備システムを提案する。平成20年度の研究では、集合住宅を対象建物とし、TRNSYSを用いて集合住宅における消費冷暖房エネルギー量を予測し、冷暖房エネルギーの日中変化量を検討した。検討を行った予測値に基づき、集合住宅の冷暖房に必要な冷熱、温熱設備機器を選定し、エネルギー消費量が最も少ない設備機器の容量や台数、最適な設備機器の運転パタンを決め、今後の使用可能性を検討した。本研究のように集合住宅を想定した場合、1世帯(4人家族、三つ部屋)に必要な冷暖房設備はヒートポンプの1台のみとなり、ヒートポンプの運用計画を適切に立てることにより、設備機器のコスト問題と省エネルギーが図れた。民生部門におけるエネルギー消費量が増加する傾向がある。特に、最近の集合住宅の大型化、高層化及び高級化は、家庭部門のエネルギー消費量増加の大きい原因となっている。一方、民生部門のエネルギー問題の対策として、分散型エネルギーシステムが導入されている。本研究では、GAを用いて、集合住宅における設備システムの最適設計を行い、設備システムの省エネルギー性を検討する。まず(Step1)、集合住宅における総エネルギー負荷を計算し、時刻別エネルギー需要を検討する。エネルギー負荷計算は、TRNSYS(冷暖房エネルギー負荷計算)を用いる。次のStepでは、GA(Genetic Algorithm)を用いて、総エネルギー負荷に基づき、設備システムの機種、容量、台数を選定し、最小エネルギー消費で運転が可能なパタンを選ぶ。分散遺伝的アルゴリズムとも呼ばれるMIGAモデルを用いて、最適化された設備システムを提案する。平成20年度の研究では、集合住宅を対象建物とし、TRNSYSを用いて集合住宅における消費冷暖房エネルギー量を予測し、冷暖房エネルギーの日中変化量を検討した。検討を行った予測値に基づき、集合住宅の冷暖房に必要な冷熱、温熱設備機器を選定し、エネルギー消費量が最も少ない設備機器の容量や台数、最適な設備機器の運転パタンを決め、今後の使用可能性を検討した。本研究のように集合住宅を想定した場合、1世帯(4人家族、三つ部屋)に必要な冷暖房設備はヒートポンプの1台のみとなり、ヒートポンプの運用計画を適切に立てることにより、設備機器のコスト問題と省エネルギーが図れた。
KAKENHI-PROJECT-08F08400
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アクティブタッチ技能の獲得過程の解明:身体の触運動ダイナミクスからの検討
環境への柔軟な適応の基盤となる知覚において,外界の情報を探索する能動的な身体運動が果たす役割については、以前として未解明な部分が多い。本研究提案は,複雑な刺激情報を選り分け,有用な一群の刺激を浮かび上がらせる身体運動の側面から,実世界における能動触知覚(アクティブタッチ)技能の獲得プロセスの理解を目的とするものである。アクティブタッチ技能の獲得が生活の質に大きく影響する視覚障害児を対象とし、大人になってからの習得が困難であるとされる点字の触読にともなうアクティブタッチ技能の獲得過程における探索的身体運動の変遷を縦断的に検討している。現在、柔軟なワイヤー型の3次元動作解析装置と,複雑な時系列変化の特徴抽出を可能にする非線形解析という道具立てを用いて、予備実験を経て、視覚特別支援学校および盲学校に在籍する8名の児童の縦断的計測を開始している。児童の点字の触読の縦断的データが最終的にすべての揃うのは2020年3月を予定している。現時点での計測済みのデータをもとにした成果報告の学会発表が、2019年にオランダのフローニンゲンにて行われる国際学会International Conference on Perception and Actionにおいて採択されている。また、本研究プロジェクトの一環として、Routledgeから2019年8月に刊行される英文学術書籍“Perception as Information Detection: Reflections on Gibson's Ecological Approach to Visual Perception"の第2章を分担し(20頁)、知覚にともなうアクティブな探索技能を可能にする「媒質」の問題について、視覚と触覚の対比から論じる論文を執筆した。2018年の6月に分担研究者のはこだて未来大学の伊藤精英教授が研究代表者の所属する神戸大学に訪れ、研究打ち合わせおよび予備実験を行うとともに、計測場所の視覚支援学校に訪問して今後の計測に関する打ち合わせを行った。2018年の6月に分担研究者のはこだて未来大学の伊藤精英教授が研究代表者の所属する神戸大学に訪れ、研究打ち合わせおよび予備実験を行うとともに、計測場所の視覚支援学校に訪問して今後の計測に関する打ち合わせを行った。現在、最新の柔軟なワイヤー型センサーと,複雑な時系列変化の特徴抽出を可能にする非線形解析という道具立てを用いて、予備実験を経て、視覚特別支援学校および盲学校に在籍する8名の児童の縦断的計測を開始している。最終的にすべてのデータが揃うのは2020年3月を予定しているが、計測済みのデータをもとにした成果報告の学会発表が、2019年にオランダのフローニンゲンにて行われる国際学会International Conference on Perception and Actionにおいて採択されている。本研究プロジェクトの一環として、Routledgeから出版される英文学術書籍“Perception as Information Detection: Reflections on Gibson's Ecological Approach to Visual Perception"にて、知覚にともなうアクティブな探索技能について論じた論文の公刊が決定しており(2019年8月に公刊)、当初の計画以上とは言えないまでも、おおむね順調に研究が進展していると言える。今年度いっぱいは定期的に縦断的な計測実験を行うとともに、2019年にオランダのフローニンゲンにて行われる国際学会International Conference on Perception and Actionにおいて、計測済みのデータの予備的な分析結果を報告する。今年度末にすべての計測を終えた時点で、速やかにデータ分析を行い、複数の切り口から触読におけるアクティブタッチ技能の獲得に見られる特徴を抽出することから得られた知見を、国際学術論文において報告する。続いて、本年度に購入予定の3次元動作解析システムを用いた探索技能の実験を行うことを計画している環境への柔軟な適応の基盤となる知覚において,外界の情報を探索する能動的な身体運動が果たす役割については、以前として未解明な部分が多い。本研究提案は,複雑な刺激情報を選り分け,有用な一群の刺激を浮かび上がらせる身体運動の側面から,実世界における能動触知覚(アクティブタッチ)技能の獲得プロセスの理解を目的とするものである。アクティブタッチ技能の獲得が生活の質に大きく影響する視覚障害児を対象とし、大人になってからの習得が困難であるとされる点字の触読にともなうアクティブタッチ技能の獲得過程における探索的身体運動の変遷を縦断的に検討している。現在、柔軟なワイヤー型の3次元動作解析装置と,複雑な時系列変化の特徴抽出を可能にする非線形解析という道具立てを用いて、予備実験を経て、視覚特別支援学校および盲学校に在籍する8名の児童の縦断的計測を開始している。児童の点字の触読の縦断的データが最終的にすべての揃うのは2020年3月を予定している。現時点での計測済みのデータをもとにした成果報告の学会発表が、2019年にオランダのフローニンゲンにて行われる国際学会International Conference on Perception and Actionにおいて採択されている。また、本研究プロジェクトの一環として、Routledgeから2019年8月に刊行される英文学術書籍“Perception as Information Detection: Reflections on Gibson's Ecological Approach to Visual Perception"の第2章を分担し(20頁)、知覚にともなうアクティブな探索技能を可能にする「媒質」の問題について、視覚と触覚の対比から論じる論文を執筆した。2018年の6月に分担研究者のはこだて未来大学の伊藤精英教授が研究代表者の所属する神戸大学に訪れ、研究打ち合わせおよび予備実験を行うとともに、計測場所の視覚支援学校に訪問して今後の計測に関する打ち合わせを行った。2018年の6月に分担研究者のはこだて未来大学の伊藤精英教授が研究代表者の所属する神戸大学に訪れ、研究打ち合わせおよび予備実験を行うとともに、計測場所の視覚支援学校に訪問して今後の計測に関する打ち合わせを行った。
KAKENHI-PROJECT-18K12013
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K12013
アクティブタッチ技能の獲得過程の解明:身体の触運動ダイナミクスからの検討
現在、最新の柔軟なワイヤー型センサーと,複雑な時系列変化の特徴抽出を可能にする非線形解析という道具立てを用いて、予備実験を経て、視覚特別支援学校および盲学校に在籍する8名の児童の縦断的計測を開始している。最終的にすべてのデータが揃うのは2020年3月を予定しているが、計測済みのデータをもとにした成果報告の学会発表が、2019年にオランダのフローニンゲンにて行われる国際学会International Conference on Perception and Actionにおいて採択されている。本研究プロジェクトの一環として、Routledgeから出版される英文学術書籍“Perception as Information Detection: Reflections on Gibson's Ecological Approach to Visual Perception"にて、知覚にともなうアクティブな探索技能について論じた論文の公刊が決定しており(2019年8月に公刊)、当初の計画以上とは言えないまでも、おおむね順調に研究が進展していると言える。今年度いっぱいは定期的に縦断的な計測実験を行うとともに、2019年にオランダのフローニンゲンにて行われる国際学会International Conference on Perception and Actionにおいて、計測済みのデータの予備的な分析結果を報告する。今年度末にすべての計測を終えた時点で、速やかにデータ分析を行い、複数の切り口から触読におけるアクティブタッチ技能の獲得に見られる特徴を抽出することから得られた知見を、国際学術論文において報告する。続いて、本年度に購入予定の3次元動作解析システムを用いた探索技能の実験を行うことを計画している計測用のセンサーやソフトウェア、その他備品の価格が当初の計画とは購入時に若干異なったため、799円を次年度使用額として残すことになった。翌年度分として請求した助成金とあわせて、今後の実験に用いる3次元動作解析システムの購入およびオランダで行われる国際学会への研究代表者および研究分担者の渡航費として使用することを計画している。
KAKENHI-PROJECT-18K12013
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X線・中性子・XFELと磁場配向を組み合わせた新規構造解析法の確立
タンパク質微結晶を三次元磁場配向させた試料(Magnetically Oriented Microcrystal Array: MOMA)から高分解能での構造解析が可能であるかどうかは分かっていなかった.そこで,タンパク質などの結晶構造解析において一般的に用いられている放射光X線を利用することで,タンパク質のMOMAからの高分解能での結晶構造解析を目指した.申請者らは10マイクロメートル角以下のニワトリ卵白リゾチームの微結晶を紫外線硬化樹脂中で磁場によって三次元配向させた後に,紫外線照射により結晶周囲の樹脂を硬化させることで配向を固定した試料をSPring-8 BL38B1で解析した.その結果,約1.8 Aでの構造解析に成功し,タンパク質のMOMAからの高分解能での構造解析が可能であることが証明された.上記のMOMA法をリゾチーム以外のタンパク質結晶に応用していくい上で,紫外線硬化樹脂が疎水性であるため,結晶が水に濡れている場合,結晶同士が凝集してしまい結晶が均一分散した懸濁液を作製することができない、という問題が存在していた.そこで,ゼラチンやアガロースなどハイドロゲルを懸濁媒体として利用した.実際にゲルを懸濁媒体として,リゾチーム微結晶のMOMAを作製し,約1.9 Aでの構造解析に成功した.この水溶性ゲルを懸濁媒体として用いた場合の利点として,結晶を乾燥させる必要が無いことに加えて,中性子結晶構造解析への応用が簡単に行えることが挙げられる.つまり,懸濁媒体のゲルを調製するさいに軽水ではなく,重水を使って調製することで中性子回折の軽水素由来のバックグラウンドを低減できる.このバックグラウンドの低減により重水で調整したゲルMOMAの中性子測定で回折点が観測できた.ゲルを用いたMOMAにより数十ミクロン角の結晶から中性子結晶構造解析が可能になると期待できる.翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。タンパク質微結晶を三次元磁場配向させた試料(Magnetically Oriented Microcrystal Array: MOMA)から高分解能での構造解析が可能であるかどうかは分かっていなかった.そこで,タンパク質などの結晶構造解析において一般的に用いられている放射光X線を利用することで,タンパク質のMOMAからの高分解能での結晶構造解析を目指した.申請者らは10マイクロメートル角以下のニワトリ卵白リゾチームの微結晶を紫外線硬化樹脂中で磁場によって三次元配向させた後に,紫外線照射により結晶周囲の樹脂を硬化させることで配向を固定した試料をSPring-8 BL38B1で解析した.その結果,約1.8 Aでの構造解析に成功し,タンパク質のMOMAからの高分解能での構造解析が可能であることが証明された.上記のMOMA法をリゾチーム以外のタンパク質結晶に応用していくい上で,紫外線硬化樹脂が疎水性であるため,結晶が水に濡れている場合,結晶同士が凝集してしまい結晶が均一分散した懸濁液を作製することができない、という問題が存在していた.そこで,ゼラチンやアガロースなどハイドロゲルを懸濁媒体として利用した.実際にゲルを懸濁媒体として,リゾチーム微結晶のMOMAを作製し,約1.9 Aでの構造解析に成功した.この水溶性ゲルを懸濁媒体として用いた場合の利点として,結晶を乾燥させる必要が無いことに加えて,中性子結晶構造解析への応用が簡単に行えることが挙げられる.つまり,懸濁媒体のゲルを調製するさいに軽水ではなく,重水を使って調製することで中性子回折の軽水素由来のバックグラウンドを低減できる.このバックグラウンドの低減により重水で調整したゲルMOMAの中性子測定で回折点が観測できた.ゲルを用いたMOMAにより数十ミクロン角の結晶から中性子結晶構造解析が可能になると期待できる.翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15J02708
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J02708
シグナル伝達におけるミトコンドリア動態の時空間的解析―自然免疫系を切り口として
研究項目「ミトコンドリア動態変化のin vivo時空間的解析」「ミトコンドリアー細胞小器官相互作用のin vivo時空間的解析」については、当初、細胞内ミトコンドリアを高速液中原子間力顕微鏡により観察する計画であった。しかし、生きた細胞を細胞膜外からの走査で観察可能なミトコンドリアは限られ、解析が極めて困難であると、条件検討の過程で考えるに及んだ。本項目は、MDA5-IPS-1シグナル伝達系の、「後」であるミトコンドリアに着目し、その動態変化を把握することを目指すものだったが、細胞へのウイルス感染過程の初期焦点を当てることとした。具体的には、ウイルスが細胞への侵入に利用する宿主細胞側機構である、エンドサイトーシスを解析の対象とした。エンドサイトーシス進行には、諸タンパク質因子に加え、アクチン骨格と膜張力が重要な役割を担うが、その関連の詳細は明らかになっていない。本研究では、ストレッチチャンバーを用いて細胞膜張力を変化させ、高速液中原子間力顕微鏡でクラスリン依存的エンドサイトーシス(CME)を解析した。細胞の張力を亢進させた場合、開口時間が有意に長くなった。CMEは、200-300 nmの開口(U型)が、数秒-数十秒、100 nm程度の開口(Ω型)となる段階を経て、完全に閉じる段階に至ることが所属研究室の先行研究からわかっている。得られた結果を総合すると、U型からΩ型に遷移する過程は、膜張力依存的だと考えられる。U/Ω型に対応する段階の間には、エネルギー的不連続があるとのin silicoの報告があり、膜張力はこの「不連続」を克服する鍵となる要素であると示唆される。現在、より高い時間分解能による観察で得たデータの解析と、この段階の膜変形の責任タンパク質の1つとされるdynaminをノックダウンした細胞の張力を変化させて観察する実験の追加データ取得に取り組んでいる。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。本研究の目的は、細胞によるウイルス二本鎖RNAの認識を担うシグナル伝達経路での、ミトコンドリアの役割を解明することにある。採用第1年目の本年は、ミトコンドリアに至るシグナル伝達経路の活性化機構の解明と、タンパク質や細胞小器官の時空間的解析の技術の開発とに取り組んだ。1.ウイルス二本鎖RNAーMDA5ーIPS-1シグナル伝達経路の活性化機構の解明(1) MDA5は長いウイルス二本鎖RNAを特異的に認識し、リガンド依存的にATPを加水分解する、細胞内センサータンパク質である。野生型および恒常活性変異型のMDA5、また、ATP存在下でリガンドRNAに結合していないMDA5を原子間力顕微鏡で観察し、解析した。恒常活性変異型およびATP加水分解後のMDA5は、野生型およびATP加水分解前に比べ、最小外接円半径が有意に大きかった。(2)単離・精製した上記2種類のMDA5と、下流因子IPS-1とを試験管内で混合し、原子間力顕微鏡によって観察し、解析した。恒常活性変異型は、野生型に比べ、大きな凝集体が多く観察された。他のグループが報告してきた種々のモデルとは異なり、以上の結果と、本研究の従前の結果とは、「野生型MDA5は、ウイルス二本鎖RNAと結合後、ATP加水分解を生じて解離し、その分子構造が『コンパクトな構造』となることで、ミトコンドリア外膜上のIPS-1と結合し、これを活性化する」ことを示唆している。2.生細胞内の動態の時空間的解析に向けた、生細胞観察技術の開発本課題では、高速原子間力顕微鏡を用いてミトコンドリアを中心とした細胞内小器官と、細胞表層の現象との協関を探ることを目指す。モデルとして、神経細胞であるPC-12を選定し、現在、この細胞の観察条件の至適化に取り組んでいる。また、神経成長因子による分化誘導が、細胞骨格や細胞内小器官に及ぼす影響を、蛍光観察により調べている。ウイルス感染への応答において中心的役割を果たすMDA5のシグナル伝達経路は、その活性化機構が不明であった。本研究課題の第1研究項目では、原子間力顕微鏡を用いて分子の形状を可視化する事により、リガンド依存的な構造変化を捉えることに成功した。ウイルス認識からミトコンドリアに至る経路の活性化機構に関して、構造学的観点から新たな知見を提示したといえる。昨年度に取り組んだ研究目的1「ウイルスRNA-MDA5-ミトコンドリア上IPS-1シグナル伝達経路分子機構モデルの、検証と深化」では、細胞質ウイルス二本鎖RNAセンサータンパク質MDA5がミトコンドリア膜上に局在するIPS-1にシグナルを伝達するメカニズムを解明することを目的として実験を遂行し、「コンパクトな構造」をとるMDA5がIPS-1の凝集を誘導するという構造学的新知見を得た。この結果を受け、本年度は、ミトコンドリア外膜上におけるMDA5とIPS-1との相互作用を解析した。蛍光タンパク質Venusに融合したIPS-1を恒常発現するHeLa細胞からミトコンドリアを単離し、野生型または恒常活性変異型MDA5を添加した後に、スライドグラス上に固定して共焦点蛍光顕微鏡で観察した。すると、野生型と変異型との間で、ミトコンドリア上の蛍光シグナルに顕著な差違はみられなかった。
KAKENHI-PROJECT-16J11221
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シグナル伝達におけるミトコンドリア動態の時空間的解析―自然免疫系を切り口として
また、同様に単離したミトコンドリアに野生型または恒常活性変異型MDA5を添加し、遠心分離によってミトコンドリアを回収した後に、結合したMDA5量を抗MDA5抗体を用いたウエスタンブロッティング法により定量解析したところ、やはり野生型・変異型間で結合量に有意差は検出されなかった。この結果は、精製したIPS-1およびMDA5を用いた実験や、in vivoでの感染細胞を用いた先行研究の結果を考え合わせると、単離ミトコンドリア上では恒常活性変異型MDA5がIPS-1を活性化しないことを示す。本実験では、ミトコンドリアを単離することで、ミトコンドリアの何らかの生理的要素が失われ、IPS-1-MDA5間の相互作用に影響したものと考えられる。また、生きた細胞の細胞内小器官および、細胞から単離した細胞小器官の、高速液中原子間力顕微鏡を用いた可視化解析技術を目下開発中である。研究目的Iにかかげた、シグナル伝達モデルの検証と深化に関しては、おおむね達成でき、現在発表準備中である。ミトコンドリア上でのシグナル伝達の様態の観察・解析は、明確な結果を得るに至っていない。本実験では、ミトコンドリアを単離することで、ミトコンドリアの何らかの生理的要素が失われ、IPS-1-MDA5間の相互作用に影響したものと考えられる。当初の予定では、今年度に細胞内のミトコンドリアの高速原子間力顕微鏡(HS-AFM)により観察する方法を確立し、可視化解析を行う予定であったが、技術習得に予想以上の時間を費やしたことから、本年度内における確立には至らなかった。観察条件を検討する中で、生きた細胞内のミトコンドリアを細胞膜外から観察し、解析可能なデータを得るのが想像以上に困難であることも明らかになりつつあるため、単離したミトコンドリアを観察することも検討する予定である。研究項目「ミトコンドリア動態変化のin vivo時空間的解析」「ミトコンドリアー細胞小器官相互作用のin vivo時空間的解析」については、当初、細胞内ミトコンドリアを高速液中原子間力顕微鏡により観察する計画であった。しかし、生きた細胞を細胞膜外からの走査で観察可能なミトコンドリアは限られ、解析が極めて困難であると、条件検討の過程で考えるに及んだ。本項目は、MDA5-IPS-1シグナル伝達系の、「後」であるミトコンドリアに着目し、その動態変化を把握することを目指すものだったが、細胞へのウイルス感染過程の初期焦点を当てることとした。具体的には、ウイルスが細胞への侵入に利用する宿主細胞側機構である、エンドサイトーシスを解析の対象とした。エンドサイトーシス進行には、諸タンパク質因子に加え、アクチン骨格と膜張力が重要な役割を担うが、その関連の詳細は明らかになっていない。本研究では、ストレッチチャンバーを用いて細胞膜張力を変化させ、高速液中原子間力顕微鏡でクラスリン依存的エンドサイトーシス(CME)を解析した。細胞の張力を亢進させた場合、開口時間が有意に長くなった。CMEは、200-300 nmの開口(U型)が、数秒-数十秒、100 nm程度の開口(Ω型)となる段階を経て、完全に閉じる段階に至ることが所属研究室の先行研究からわかっている。得られた結果を総合すると、U型からΩ型に遷移する過程は、膜張力依存的だと考えられる。U/Ω型に対応する段階の間には、エネルギー的不連続があるとのin silicoの報告があり、膜張力はこの「不連続」を克服する鍵となる要素であると示唆される。
KAKENHI-PROJECT-16J11221
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新しいループス腎炎発症機序:血清アミロイドP・オリゴヌクレオソームの役割
ループス腎炎発症にはDNA・ヒストンなどの核抗原を含む免疫複合体の糸球体への沈着が重要と考えられる。しかしながらこの核抗原の糸球体への沈着機序は不明な点が多い。細胞核内においてはヒストン、DNAが互いに強く結合してヌクレオソームを形作っており細胞死において核クロマチンから、freeのヒストン、DNAというよりはオリゴヌクレオソームの形で血中に放出される。これらのヌクレオソームと抗核抗体がICを形成する可能性がより高いと考えられる。本研究ではヌクレオソームが糸球体に沈着しうるか、また血清中の主なるDNA結合蛋白であるアミロイドPがこの沈着にどのように関るかについて検討した。前年度での研究成果をもとに今年度は以下の結果を得た。ラットGBMでは抗ヒトアミロイドPを用いた免疫組織化学ではアミロイドPの存在を確認できなかった。ヒトアミロイドPをラットの左腎に環流したが沈着は確認できなかった。ヒトGBMへのDNA・ヌクレオソームのin vitroでの沈着がSAPによるものであることの確認のためヒトGBMをトリプシン処理した。処理GBMでは抗SAPのELISAでは検出できなかったが抗collagenIVの発現は若干の減弱を見たのみだった。この処理GBMではDNA・ヌクレオソームの沈着が50%程度に減弱した。これらの結果から少なくともヒトにおいては核抗原のGBMへの沈着にアミロイドPが一部関与している可能性が考えられる。ループス腎炎発症にはDNA・ヒストンなどの核抗原を含む免疫複合体の糸球体への沈着が重要と考えられる。しかしながらこの核抗原の糸球体への沈着機序は不明な点が多い。細胞核内においてはヒストン、DNAが互いに強く結合してヌクレオソームを形作っており細胞死において核クロマチンから、freeのヒストン、DNAというよりはオリゴヌクレオソームの形で血中に放出される。これらのヌクレオソームと抗核抗体がICを形成する可能性がより高いと考えられる。本研究ではヌクレオソームが糸球体に沈着しうるか、また血清中の主なるDNA結合蛋白であるアミロイドPがこの沈着にどのように関るかについて検討した。前年度での研究成果をもとに今年度は以下の結果を得た。ラットGBMでは抗ヒトアミロイドPを用いた免疫組織化学ではアミロイドPの存在を確認できなかった。ヒトアミロイドPをラットの左腎に環流したが沈着は確認できなかった。ヒトGBMへのDNA・ヌクレオソームのin vitroでの沈着がSAPによるものであることの確認のためヒトGBMをトリプシン処理した。処理GBMでは抗SAPのELISAでは検出できなかったが抗collagenIVの発現は若干の減弱を見たのみだった。この処理GBMではDNA・ヌクレオソームの沈着が50%程度に減弱した。これらの結果から少なくともヒトにおいては核抗原のGBMへの沈着にアミロイドPが一部関与している可能性が考えられる。ループス腎炎の発症にはDNA・ヒストンなどの核抗原を含む免疫複合体の糸球体への沈着が重要と考えられる。しかしながらこの核抗原の沈着機序については不明な点が多い。ヒストン、DNAは細胞核内においては互いに強く結合してヌクレオソームを形作っている。necrosis、apoptosisなどの細胞死において核クロマチンから、freeのヒストン、DANというよりはオリゴヌクレオソームの形で血中に放出されこのヌクレオソームと抗核抗体がICを形成する可能性がより高いと考えられる。本研究では核抗原としてこのヌクレオソームを用いて、その沈着機序について検討した。血清アミロイドP蛋白(以下SAP)はDNA、ヒストンと結合することが近年明らかとなった。またヒトGBM上にはSAPと同じ抗原性を持つ物質が存在するとの報告がある。このためヒトGBMを単離しELISAを用いてヌクレオソームの結合性を検討したところ、ヌクレオソームはヒトGBMに濃度依存的に結合した。また、SAPにヌクレオソームが結合するかを同様にELISAを用いて検討したところ、やはり濃度依存的にきヌクレオソームがSAPに結合することを確認した(第39回日本腎臓学会総会発表予定)。ループス腎炎はSLEの臓器障害の予後を左右する重要な病態であり、糸球体係蹄壁に免疫グロブリン、補体の沈着が見られることから免疫複合体病と考えられている。SLEは多くの自己抗体、とりわけ核抗原にたいする自己抗体を産生することが特徴である。特に抗dsDNA抗体は腎炎発症に先行して抗DNA抗体の血中抗体価が上昇する、ループス腎炎患者バイオプシーおよびループス自然発症マウスの腎から溶出してきた抗体には抗DNA抗体が含まれることなどからループス腎炎の病態発現にDNA-抗DNA免疫複合体が重要な役割を果たすと考えられてきた。しかしながらどのようにICが糸球体へ沈着するか不明であった。ICの糸球体への沈着機構を明らかにすることはループス腎炎の発症・進展の機序を探る上で重要である。我々(Morioka et al Kidney Int 45:991,1994)あるいは他のグループの研究結果からDNAを含むICの沈着には従来考えられていたような受け身的沈着ではなくGBMに親和性を持つヒストンのような陽性荷電物質を介しての沈着が大きな部分を占めることが明らかとなってきた。
KAKENHI-PROJECT-07670236
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新しいループス腎炎発症機序:血清アミロイドP・オリゴヌクレオソームの役割
細胞核内においてはヒストン、DNAが互いに強く結合してヌクレオソームを形作っておりnecrosis、apoptosisなどの細胞死において核クロマチンから、freeのヒストン、DNAというよりはアリゴヌクレオソームの形で血中に放出される。これらのヌクレオソームと抗核抗体がICを形成する可能性がより高いと考えられる。本研究ではヌクレオソームが糸球体に沈着しうるか、また血清中の主なるDNA結合蛋白であるアミロイドPがこの沈着にどのように関るかについて検討し以下に述べる結果を得たので報告する。1)ループス腎症患者から得られた抗体と牛胸線DNA・鶏由来ヒストンを用いてin vitroにおいてヌクレオソーム-抗DNA抗体複合体を再構成した。このヌクレオソーム-抗DNA抗体複合体をラット腎に還流したところGBMに沿ってこの複合体の沈着を確認した。2)ヒト糸球体基底膜にアミロイドP様物質が存在することを確認した。3)ヒト糸球体基底膜に存在するアミロイドP様物質を介してDNA・ヌクレオソームがヒト糸球体基底膜に沈着する可能性をELISAを用いて示した。
KAKENHI-PROJECT-07670236
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ヒノキ落枝分解菌の分離培養と特性解明
平成29年度に引き続き、ヒノキ林におけるヒノキ落枝の腐朽過程を明らかにする目的の下、ヒノキ枝の腐朽期間が明らかにされた条件下、腐朽過程を定量化できる実験を続けた。具体的には、平成28年7月に長さ20 cm、直径約10 cmヒノキ枝を、市販の洗濯ネット1枚に1つづつ入れ、徳島県阿波市ヒノキ林に、1 m間隔で、斜面傾斜方向に7列、斜面横方向に12列、洗濯ネットをペグで地面に打ち付けて、自然の環境下に置いた。749日後、平成30年7月に27個ヒノキ枝を回収し、ドリルで穴をあけ、木材サンプルをドリル削りかすとして採取し、材密度、ホロセルロース密度、リグニン密度の変化を明らかにした。尚各密度はこの削りかすと両成分の重量を、ドリル穴の体積で除し求めた。さらに、同じヒノキ林にて、ヒノキ伐採後6年、15年、23年経過したヒノキ切株より木材サンプルを採取し、同様に分析した。ヒノキ枝では、749日間置くことにより、材密度は腐朽前の87%に減少した。ホロセルロース密度は設置前の74%に減少した。一方、リグニン密度は設置前に比べ統計的に有意な減少は認められなかった。以上の結果より、ヒノキはホロセルロースが主に分解を受け、リグニンの重量は大きな変化を受けないで腐朽が進行することが知られた。さらに、749日間の設置により、ヒノキ枝より13菌株を得た。内2菌株は、Microporus, Polyporaceaeと示唆される。1菌株はNeoantrodiellaceae, Hymenochaetalesと示唆される。これらの菌は、ITS領域の相同性が高い菌の既往の特性により、白色腐朽の性質を示すと示唆される。ヒノキ林におけるヒノキ落枝の腐朽過程を明らかにする目的の下、ヒノキ枝の腐朽期間が明らかにされた条件下、腐朽過程を定量化できる実験に着手した。具体的には、長さ20 cm、直径約10 cmヒノキ枝を、市販の洗濯ネット1枚に1つづつ入れ、徳島県阿波市ヒノキ林に、1 m間隔で、斜面傾斜方向に7列、斜面横方向に12列、洗濯ネットをペグで地面に打ち付けて、約4か月半、自然の環境下に置いた。その後、26個ヒノキ枝を回収し、重量減少率、ホロセルロース量、リグニン量、エチルアルコール/ベンゼン混液抽出量の変化を明らかにした。重量減少率は平均値5%であり、1%危険率で統計的に有意に、重量が減少していることが知られた。一方、ホロセルロース含量、リグニン含量は、腐朽前各々55%、25%であり、既往の研究の含量と良い一致をみた。その結果、これらヒノキ腐朽程度の判断基準となる木材細胞壁主成分の定量も正しく行われていることが知られた。しかし、これら2つの物質含量の変化は、腐朽の前後で統計的に有意な差が認められなかった。一方、エチルアルコール/ベンゼン混液抽出量は、ヒノキ林に置くことにより、1%危険率で統計的に有意に22%減少したことが知られた。即ち、この期間では、抽出成分量の減少は認められるが、細胞壁成分の分解は認められないことが知られた。既往の研究によりヒノキは抽出成分に含まれている数種の成分の働きにより、シロアリによる食害、木材腐朽菌による腐朽に抵抗する材であることが知られている。抽出成分の減少により、耐蟻耐腐朽性を付与する成分も減少していれば、今後ヒノキを分解する菌を分離培養できる可能性がより高まったと考えられ、適切な途中経過を踏んでいると考えられる。平成28年度研究実施計画は、1-1ヒノキ林におけるヒノキ乾燥枝腐朽進行の定量化、1-2ヒノキ乾燥枝を腐朽する糸状菌の分離培養、の2点を行う予定であった。まず、1-1に関しては、研究実績で記載したようにヒノキ林にヒノキ枝試料を4か月半置いた。平成28年11月21日26個丸太を回収し、まず重量減少率の結果から、重量が減少していることが知られた。一方、ホロセルロース含量、リグニン含量は、腐朽の前後で統計的に有意な差が認められなかった。一方、エチルアルコール/ベンゼン混液抽出量は、ヒノキ林に置くことにより、1%危険率で統計的に有意に22%減少したことが知られた。即ち、この期間では、抽出成分量の変化は認められるが、細胞壁成分の分解は認められないことが知られた。尚、エチルアルコール/ベンゼン混液抽出量に関しては、当初、別の3種類の有機溶媒で抽出し、これらの成分量の変化を、明らかにする予定であった。しかし、ヒノキ枝試料調製過程で、いくつかの材が虫の食害を受けた為、当初計画よりも実験に供した材数は減少した。さらに、他の材の虫の食害を防ぐため、早急に60°C72時間乾燥させた。その結果、生材からの有機溶媒抽出成分の採取はできなかった。そこで、セルロース含量、リグニン含量を定量する過程で必要とされる、エタノールとベンゼンを1:2 (v/v)で混じた溶媒で抽出する過程を、3種類の有機溶媒抽出過程の代替とし、抽出される成分量を、腐朽前後の材に対し比較した。1-2については、菌を8枚のシャーレに分離培養し、継体培養を続けている。
KAKENHI-PROJECT-16K07808
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ヒノキ落枝分解菌の分離培養と特性解明
しかし、上記に記載したように、平成28年11月21日採取の時点では、ヒノキ細胞壁の分解は進行している証拠は得られていないため、得られた菌が、ヒノキ細胞壁分解能量を有するが明確ではない。従って、DNA塩基配列の情報を基に明らかにする実験には着手していない。平成28年度に引き続き、ヒノキ林におけるヒノキ落枝の腐朽過程を明らかにするため、ヒノキ枝の腐朽期間が明らかにされた条件下、腐朽過程を定量化できる実験を続けた。具体的には、平成28年7月に長さ20 cm、直径約10 cmヒノキ枝を、市販の洗濯ネット1枚に1つづつ入れ、徳島県阿波市ヒノキ林に、1 m間隔で、斜面傾斜方向に7列、斜面横方向に12列、洗濯ネットをペグで地面に打ち付けて、自然の環境下に置いた。約12か月後、平成29年7月に、28個ヒノキ枝を回収し、ドリルで穴をあけ、木材サンプルをドリル削りかすとして採取し、重量減少率、ホロセルロース密度、リグニン密度の変化を明らかにした。尚、密度は、各成分の重量を、ドリル穴の体積で除して求めた。さらに、同じヒノキ林にて、ヒノキ伐採後5年、14年、22年経過したヒノキ切株より木材サンプルを採取し、同様に分析した。ヒノキ枝では、約12か月置くことにより、ホロセルロース密度は設置前の81%に減少した。リグニン密度は設置前に比べ殆ど変化は認められなかった。一方、22年経過切株においては、約12か月自然環境に置いたヒノキ枝に比べ、重量減少率、ホロセルロース密度は、さらに小さい値を示した。一方、リグニン密度は、約12か月間自然環境に置いたヒノキ枝に比べ、大きな変化は認められなかった。以上の結果より、ヒノキはホロセルロースが主に分解を受け、リグニンの重量は大きな変化を受けないで腐朽が進行することが知られた。さらに、伐採後14年経過したヒノキ切株より、分離培養菌株2種を得た。ゲノムDNAの塩基配列を基にすると、各々褐色腐朽菌、白色腐朽菌と相同性が高い菌株であることが知られた。平成29年度研究実施計画では、1.ヒノキ細胞壁を腐朽する菌類の取得(1-1ヒノキ林におけるヒノキ乾燥枝腐朽進行の定量化)、2.分離培養した菌の特性解明(2-1ヒノキを用いた腐朽試験)の2点を行う予定であった。まず、1-1に関しては、予定通り進行している。具体的には、研究実績で記載したようにヒノキ林にヒノキ枝試料を約12か月間置いた。平成29年7月11日、28個ヒノキ枝試料を回収した。ヒノキ枝試料では、ホロセルロース密度は約12か月置くことにより設置前の81%に減少した。一方、リグニン密度は設置前に比べ殆ど変化は認められなかった。別途、同じヒノキ林にて、ヒノキ伐採後5年、14年、22年経過したヒノキ切株より木材サンプルを採取し、同様に分析した。切株においては、重量減少率、ホロセルロース密度は、約12か月自然環境に置いたヒノキ枝に比べ、さらに小さい値を示した。2-1に関しては、分離培養菌の取得後の進行が、やや遅れている。具体的には、まず、分離培養に供する木材試料表面の滅菌の仕方を工夫することにより、伐採後14年経過したヒノキ切株より、分離培養菌株2種を得た。ゲノムDNA塩基配列を基にすると各々褐色腐朽菌、白色腐朽菌と相同性が高い菌株であることが知られた。次に、分離培養した菌1種をグルコース、ペプトン、麦芽抽出液による培地、あるいは、ポテトデキストロースによる培地で培養し、JISの腐朽試験菌であるオオウズラタケ、カワラタケと生育速度を比較した。その結果、オオウズラタケ約1/8程度の生育速度であった。腐朽試験は、オオウズラタケの生育速度の場合でも、菌糸の大量調製を含め、約4か月は必要とされる。その為、分離培養した菌の生育速度では、供試菌糸を大量に調製する手順を検討する必要が生じた。
KAKENHI-PROJECT-16K07808
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骨吸収(破骨細胞形成)におよぼす性ホルモンとサイトカインの相互作用
1.マウス骨芽細胞(MC3T3-E1)のアンドロゲンレセプター・代謝・作用MC3T3-E1のアンドロゲンレセプター(AR)は免疫組織染色で核分画に染色され細胞質でのARの染色は僅かであった。^3H-dihydrotesstosterone(DHT)との特異的結合が核分画と細胞質に認められたが、その親和性および結合能は核分画において高かった。MC3T3-E1は5α-reductase活性を有し、testosterone(Te)は活性型のDHTに転換するが、ARとの結合親和性および結合能にTeとDHTの間に差はなかった。また、TeとDHTによる細胞増殖は容量依存性で両者の間で差は認められなかった。結論:骨芽細胞ではTeはDHTに転換するが、骨芽細胞でのアンドロゲン作用はDHTではなくTeが主として発揮していると考えられる。2.In vivoでのIL-4の破骨細胞形成抑制作用ICRマウスにIL-4を3日間投与。IL-4は血清Ca値に何等影響を与えなかったが、破骨細胞の数とその吸収面積を容量依存性に抑制した。また、IL-4はPTHrPによる高Ca血症および破骨細胞の数とその吸収面積の増加を共に抑制した。結論:IL-4の骨吸収抑制作用は破骨細胞前駆細胞から破骨細胞への分化抑制に作用することが示唆された。3.卵巣摘出ラットの破骨細胞に対するIL-4の作用卵巣摘出(OVX)14、28日後、血清Ca,Al-Pおよび血清IL-6は有意に増加した。破骨細胞の数とその吸収面積および骨形成(mineral apposition rate,MAR)もOVXで有意に増加し、エストロゲン低下は高回転の骨代謝を生じる事が示唆された。一方、IL-4の投与はOVX後の血清Ca、Al-Pおよび血清IL-6,破骨細胞の数とその吸収面積の増加、およびMARをすべて抑制した。結論:IL-4はエストロゲン欠落に伴う骨吸収の亢進のみならず骨形成の亢進をも抑制すると考えられる。1.マウス骨芽細胞(MC3T3-E1)のアンドロゲンレセプター・代謝・作用MC3T3-E1のアンドロゲンレセプター(AR)は免疫組織染色で核分画に染色され細胞質でのARの染色は僅かであった。^3H-dihydrotesstosterone(DHT)との特異的結合が核分画と細胞質に認められたが、その親和性および結合能は核分画において高かった。MC3T3-E1は5α-reductase活性を有し、testosterone(Te)は活性型のDHTに転換するが、ARとの結合親和性および結合能にTeとDHTの間に差はなかった。また、TeとDHTによる細胞増殖は容量依存性で両者の間で差は認められなかった。結論:骨芽細胞ではTeはDHTに転換するが、骨芽細胞でのアンドロゲン作用はDHTではなくTeが主として発揮していると考えられる。2.In vivoでのIL-4の破骨細胞形成抑制作用ICRマウスにIL-4を3日間投与。IL-4は血清Ca値に何等影響を与えなかったが、破骨細胞の数とその吸収面積を容量依存性に抑制した。また、IL-4はPTHrPによる高Ca血症および破骨細胞の数とその吸収面積の増加を共に抑制した。結論:IL-4の骨吸収抑制作用は破骨細胞前駆細胞から破骨細胞への分化抑制に作用することが示唆された。3.卵巣摘出ラットの破骨細胞に対するIL-4の作用卵巣摘出(OVX)14、28日後、血清Ca,Al-Pおよび血清IL-6は有意に増加した。破骨細胞の数とその吸収面積および骨形成(mineral apposition rate,MAR)もOVXで有意に増加し、エストロゲン低下は高回転の骨代謝を生じる事が示唆された。一方、IL-4の投与はOVX後の血清Ca、Al-Pおよび血清IL-6,破骨細胞の数とその吸収面積の増加、およびMARをすべて抑制した。結論:IL-4はエストロゲン欠落に伴う骨吸収の亢進のみならず骨形成の亢進をも抑制すると考えられる。破骨細胞の分化・形成・活性に及ぼすIL-4の作用について検討した。1.In vivoでのIL-4の破骨細胞形成抑制作用。(1)EC-G1細胞(PTHrPおよびIL-1産生食道癌細胞株)をヌードマウスに移植し、骨吸収促進、高Ca血症モデルマウス作製。このマウス(n=8)にIL-4,7mug投与すると血中Ca値は4.9±0.7から3.2±0.6mmol(5日目)に減少。(2)組織学的検討ICRマウスにIL-4、3日間投与。IL-4は骨の破骨細胞数と破骨細胞による骨吸収面積を容量依存性に抑制した。またPTHrP0.6nmol/日投与で増加した破骨細胞数および吸収面積をもIL-4(5mug)は抑制し高Ca血症を是正した。その結果、IL-4の骨吸収抑制作用は破骨前駆細胞から破骨細胞の分化、形成抑制によるものか示唆された。2.マウス骨髄幹細胞から破骨細胞分化におよぼすIL-4の作用。
KAKENHI-PROJECT-05670890
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05670890
骨吸収(破骨細胞形成)におよぼす性ホルモンとサイトカインの相互作用
現在in vitroの実験系でIL-4マウス骨髄幹細胞から破骨細胞への分化を抑制する結果が得られている。1.In vivoでのIL-4の破骨細胞形成抑制作用ICRマウスにIL-4を3日間投与。IL-4は血清Ca値に何等影響を与えなかったが、破骨細胞の数とその吸収面積を容量依存性に抑制した。また、IL-4はPTHrPによる高Ca血症および破骨細胞の数とその吸収面積の増加を共に抑制した。結論:IL-4の骨吸収抑制作用は破骨細胞前駆細胞から破骨細胞への分化抑制に作用することが示唆された。2.マウス骨芽細胞(MC3T3-E1)のアンドロゲンレセプター・代謝・作用3.マウス骨芽細胞(MC3T3-E1)に対するIL-4の作用IL-4は骨芽細胞の3H-Tdの取込みおよびIGF産生を促進し、細胞内A1-P活性を抑制した。また、IL-4はPTH依存性細胞内A1-P活性の増加およびcyclic AMP産生を抑制した。結論:IL-4は骨芽細胞の増殖に対しては刺激、その分化に対しては抑制的に作用する。4.卵巣摘出ラットの破骨細胞に対するIL-4の作用卵巣摘出(OVX)14、28日後、破骨細胞の数とその吸収面積および骨形成(mineral apposition rate、MAR)は有意に増加しエストロゲン低下は高回転の骨代謝を生じる事が示唆された。一方、IL-4の投与はOVXラットの破骨細胞の数とその吸収面積の増加、およびMARを抑制した。結論:IL-4はエストロゲン欠落に伴う高回転の骨代謝に対し抑制的に作用すると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-05670890
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05670890
化学発癌機構及びその危険性予知に関する総合的研究
本研究は化学発癌の機構を解明し、その結果を用いて、これら化学物質曝露による発癌の危険性を予知できる方法を確立することを目的とする。化学発癌はDNA損傷が契機であると考え、DNA付加物生成、一重鎖切断をDNA損傷の指標とした。平成5年度においてはチトクロームP450が発癌物質の作成にどのように関与するかを検討した。酵母のプラスミドに外来のP-450遺伝子を組み込み、その外来P-450により化学物質を代謝させ、生成された代謝産物が酵母のDNAに付加物を生成するか否かを観察した。P-450の種類によって生成されたDNA付加物が異なり、代謝活性の相違により発癌可能性が異なることが推察された。これらの結果については、Experientia(vol.51,1995)に掲載の予定である。一方、リボヌクレオチドレダクターゼ(RNR)はDNA合成に必要なデオキシリボヌクレチオドを産生している酵素であり、RNR1,2,3によりコードされているが、RNR3はDNA損傷時にのみ、顕著に誘導される。従って、RNR3の誘導を検出することにより、DNA損傷の有無を知ることができると考えられる。RNR3のプロモーター領域にlacZ遺伝子を繋げたレポータープラスミドを酵母に導入し、RNR3の誘導をβ-ガラクトシダーゼの活性で定量できる方法を開発した。RNR3-lacZのレポータープラスミドpYE3を作製した。4NQO曝露においては、P450の有無にかかわらず、β-ガラクトシダーゼ活性は曝露開始後、増加し4時間でプラトーになった。P450を発現している系における2-AF曝露においては、曝露開始6-8時間でβ-ガラクトシダーゼ活性はピークとなった。以上の結果から、今回構築した方法はDNA損傷を検出するうえで、簡便かつ有効な方法であると考えられた。本研究は化学発癌の機構を解明し、その結果を用いて、これら化学物質曝露による発癌の危険性を予知できる方法を確立することを目的とする。化学発癌はDNA損傷が契機であると考え、DNA付加物生成、一重鎖切断をDNA損傷の指標とした。平成5年度においてはチトクロームP450が発癌物質の作成にどのように関与するかを検討した。酵母のプラスミドに外来のP-450遺伝子を組み込み、その外来P-450により化学物質を代謝させ、生成された代謝産物が酵母のDNAに付加物を生成するか否かを観察した。P-450の種類によって生成されたDNA付加物が異なり、代謝活性の相違により発癌可能性が異なることが推察された。これらの結果については、Experientia(vol.51,1995)に掲載の予定である。一方、リボヌクレオチドレダクターゼ(RNR)はDNA合成に必要なデオキシリボヌクレチオドを産生している酵素であり、RNR1,2,3によりコードされているが、RNR3はDNA損傷時にのみ、顕著に誘導される。従って、RNR3の誘導を検出することにより、DNA損傷の有無を知ることができると考えられる。RNR3のプロモーター領域にlacZ遺伝子を繋げたレポータープラスミドを酵母に導入し、RNR3の誘導をβ-ガラクトシダーゼの活性で定量できる方法を開発した。RNR3-lacZのレポータープラスミドpYE3を作製した。4NQO曝露においては、P450の有無にかかわらず、β-ガラクトシダーゼ活性は曝露開始後、増加し4時間でプラトーになった。P450を発現している系における2-AF曝露においては、曝露開始6-8時間でβ-ガラクトシダーゼ活性はピークとなった。以上の結果から、今回構築した方法はDNA損傷を検出するうえで、簡便かつ有効な方法であると考えられた。本研究は化学発癌の機構を解明し、その結果を用いて、これら化学物質曝露による発癌の危険性を予知できる方法を確立することを目的とする。化学発癌はDNA損傷が契機であると考え、DNA付加物生成、一重鎖切断をDNA損傷の指標とした。我々は既にDNA付加物生成を発癌性のある芳香属アミノ化合物投与ラットに於て検出している。この発癌の本体はチトクロームP450により代謝されたN-hydroxy化合物ではないかと推察されている。本年度においてはチトクロームP450が発癌物質の作成にどのように関与するかを検討した。酵母のプラスミドに外来のP-450遺伝子を組み込み、その外来P-450により化学物質を代謝させ、生成された代謝産物が酵母のDNAにどのような影響を与えるかを観察した。2種の異なる性質のP-450遺伝子(CYP1A1またはCYP2B5)を組み込んだ酵母に芳香属アミノ化合物(4,4-メチレンビス-(2-クロロアニリン)(MBOCA)を曝露させた。CYP1A1を組み込んだ酵母においては、3種の代謝物が検出され、その生成は8時間まで直線的に増加した。そして3種のDNA付加物の生成が確認された。この付加物生成は酵母にMBOCAを1時間曝露させただけで観察された。CYP2B5におけるDNA付加物生成はCYP1A1よりも顕著であった。しかもP-450の種類によって生成されたDNA付加物が異なることから、代謝活性の相違により発癌可能性が異なることが推察された。これらの結果については、衛生学会誌(vol49.No1,1994)に発表の予定である。
KAKENHI-PROJECT-05454222
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化学発癌機構及びその危険性予知に関する総合的研究
現在、次の段階として、DNA付加物生成がDNA損傷時に誘導される酵素(ligase及びribonucleotide reductase-3(RNR-3))に及ぼす影響に関する実験を実施中である。本研究は化学発癌の機構を解明し、その結果を用いて、これら化学物質曝露による発癌の危険性を予知できる方法を確立することを目的とする。化学発癌はDNA損傷が契機であると考え、DNA付加物生成、一重鎖切断をDNA損傷の指標とした。一方、リボヌクレオチドレダクターゼ(RNR)はDNA合成に必要なデオキシリボヌクレオチドを産生している酵素であり、RNR1,2,3によりコードされているが、RNR3はDNA損傷時にのみ、顕著に誘導される。従って、RNR3の誘導を検出することにより、DNA損傷の有無を知ることができると考えられる。RNR3のプロモーター領域にlacZ遺伝子を繋げたレポータープラスミドを酵母に導入し、RNR3の誘導をβ-ガラクトシダーゼの活性で定量できる方法を開発した。DNAに損傷を与える物質である4NQO,HUでRNR3mRNAが誘導されたが、2-アミノフルオレン(2-AF)では誘導されなかった、P4501A1を導入した酵母においては、2-AF曝露により、RNR3mRNAの誘導が検出された。従って、2-AFの代謝物質によりRNR3mRNAが誘導されることがわかった。さらに、RNR3-lacZのレポータープラスミドpYE3を作製した。4NQO曝露においては、P450の有無にかかわらず、β-ガラクトシダーゼ活性は曝露開始後、増加し4時間でプラトーになった。P450を発現している系における2-AF曝露においては、曝露開始6-8時間でβ-ガラクトシダーゼ活性はピークとなった。以上の結果から、今回構築した方法はDNA損傷を検出するうえで、簡便かつ有効な方法であると考えられた。
KAKENHI-PROJECT-05454222
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05454222
汎用コミュニケーションエイドと利用管理分析を統合するWebベースシステムの開発
本研究の目的は、従来から開発してきた汎用コミュニケーションエイドVCANのカスタマイズ支援と利用管理を統合したWebシステムの開発である。カスタマイズ支援システムは、ページ設定、ボタンパレット、プレビューの3画面からなり、エイド画面の新規作成と変更ができる。利用管理システムは、ユーザ管理システムおよびデータ転送システムからなる。前者は各利用者の個人情報、画像・音声データ、構造ファイルを管理し、後者はカスタマイズ支援システムで作成した構造ファイルと画像・音声データ(エイド情報)を情報端末に転送する。端末にVCANアプリケーションをインストールしておけば、エイド情報に基づいてVCANが動作する。1.フィールド実験:何人かの利用者(知的障害児、広汎性発達障害児など)に対して、開発したシステムで個別のVOCA(音声出力コミュニケーションエイド)を作製し、特別支援学校や家庭での教育に用いた。2.実験結果の分析:各利用者のコミュニケーション能力の発達に応じて、頻繁にVOCAを更新した結果、使用場面、使用語彙数、コミュニケーション意欲(自立性)のすべてにおいて改善が認められた。3.カスタマイズ支援システムの改善:前年度に開発した試作システムはパーソナルコンピュータ上で動作し、かつ基本的な機能だけを実現した。今年度はそれをベースとして、webサイトでカスタマイズできるシステムを試作し、その動作を確認した。4.データ管理システムの開発:統合システムでは、利用者のデータ管理はすべて共通サーバで行う。そのために、VOCAデータベースとその管理システムを試作した。さらに、カスタマイズ支援システムで作成したデータのサーバーへのアップロード、サーバから端末へのダウンロードを行うシステムも試作した。本研究の目的は、従来から開発してきた汎用コミュニケーションエイドVCANのカスタマイズ支援と利用管理を統合したWebシステムの開発である。カスタマイズ支援システムは、ページ設定、ボタンパレット、プレビューの3画面からなり、エイド画面の新規作成と変更ができる。利用管理システムは、ユーザ管理システムおよびデータ転送システムからなる。前者は各利用者の個人情報、画像・音声データ、構造ファイルを管理し、後者はカスタマイズ支援システムで作成した構造ファイルと画像・音声データ(エイド情報)を情報端末に転送する。端末にVCANアプリケーションをインストールしておけば、エイド情報に基づいてVCANが動作する。1.基本機能の再検討:従来のフィールド実験結果から、汎用VOCAがもつべき基本機能について再検討した。その結果、汎用VOCAの構造は、従来と同じように、XMLファイルでページ単位で管理することにした。各ページは、1)ページ番号、2)レイアウト種別、3)ボタン数、4)各ボタンの情報(名称、位置、大きさ、画像ファイル名、音声ファイル名、次のページ番号)の情報から構成される。XMLファイルを用いているため、拡張性もある。2.フィールド実験:特別支援学校等における障がい児のコミュニケーション支援を継続して行った。3.カスタマイズ支援システムの試作:中間ユーザ(保護者、担任教師、作業療法士、言語聴覚士など)が簡単に汎用VOCAをカスタマイズできるWebベースの支援システムを開発するために、まず必要とされる基本機能と操作性について検討した。その結果、ボタンを作成するパレット、ページを作成するパレット、および動作を確認するエミュレータ機能が必要と考えた。そこで、パーソナルコンピュータで動作する支援システムを試作し、上記の機能の詳細設計を行った。そのシステムを用いて従来からの支援児のVOCAを作成し、その操作性を評価した。4.iOS端末で動作する汎用VOCAの試作:従来開発してきたVOCAシステムを基盤として、カスタマイズ支援システムで作成した構造ファイル(XMLファイル)に基づいて、iOS端末(iPhone, iPod touch, iPad)で動作する汎用VOCAアプリケーションを開発した。従来からの支援児のVOCAを移行して、その動作を確認した。1.カスタマイズ支援システム:基本的なシステムの試作を完了した。入力画面は1)ページ設定、2)ボタンパレット、3)プレビューの3つからなる。ページ設定では、ページ新規作成ないし既存ページの選択を行う。ボタンパレットでは、ひとつのボタンに、画像、音声、リンク先を属性を与えることができる。選択後、プレビューのボタンのひとつをクリックすれば、その属性がそのボタンに与えられる。プレビューでは、ボタンの追加、サイズ変更、VOCAのエミュレートなどを行うことができる。2.ユーザ管理システム:データ管理はユーザごとに行い、各ユーザにはユーザIDを与える。各ユーザ領域では、個人情報、画像ファイル、音声ファイル、エイド情報が保管・管理される。エイド管理では、複数のエイドを管理できる。各エイドにはエイドIDが与えられ、その構造ファイルがバージョン管理される。3.データ転送システム:ユーザが使用する端末には、まずVCANアプリケーションをインストールする。このアプリケーションは構造ファイルの内容に従ってVOCAを動作するソフトウェアである。そのユーザ端末上でVCANを動作するには、まず端末から管理システムにログインし、必要とするエイドの構造ファイルを選択する。最後にそれを端末にインタネット経由でダウンロードする。以上3つのシステムを試作し、現在フィールド実験で使用しているいくつかのエイドと同じものを作成して、すべての機能が正常に動作することを確認した。支援技術本研究の目的は、コミュニケーションエイドをカスタマイズする支援システムとデータ管理を統合したwebベースのシステム開発である。この2年間で、webベースのカスタマイズ支援システムとサーバでのデータ管理システムの試作、およびPCベースのログデータ分析システムの試作が完了している。この進捗状況は当初の予定通りである。また、試作のVOCAを使ったフィールド実験も順調に進んでいる。1.研究の目的:本研究の目的は、先行研究の成果として得られた「汎用VOCAの基本機能」をもつタブレット端末で動作するVOCAを開発することである。さらに、実際のVOCAの利用上必要とされる次の2つのサブシステムも開発する:
KAKENHI-PROJECT-24500641
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汎用コミュニケーションエイドと利用管理分析を統合するWebベースシステムの開発
1)中間ユーザである支援者・教師・保護者などが簡単に汎用VOCAを作製・改訂できるWebベースのカスタマイズ支援システム;2)利用者のVOCA使用記録を管理し、かつコミュニケーション能力評価を行う管理・分析システム。2.達成状況:上記の目的で述べたシステムの開発段階は次の通りである:1)タブレット端末で動作するVOCAについては、iOS端末(iPhone, iPod touch, iPad)で動作するアプリケーションを開発した。さらに、サーバからXMLファイルなどのVOCAデータを端末にダウンロードするシステムも試作し、動作を確認した;2)Webベースのカスタマイズ支援システムについては、その機能について検討し、パーソナルコンピュータで動作する支援システムを試作した。そのWebベース化がH25年度の課題である;3)VOCA使用記録の管理、およびコミュニケーション能力評価を行う管理・分析システムについては、記録する内容について検討し、従来の汎用VOCAで実際に記録をとっている。使用記録を簡単に分析して、その結果を可視化するシステムを試作した。ただし、パーソナルコンピュータで動作するシステムである。H25年度の課題は、本格的な評価システムの開発である。今年度は最終年度であることから、カスタマイズ支援・データ管理・ログデータ分析を統合したwebベースシステムの試作を目指す。すでに各サブシステムのプロトタイプは完成していることから、その改良および全体の統合がひとつの課題である。もうひとつの課題はログデータ分析システムのwebベース化である。時間があれば、それも統合システムに組み入れたい。1.iOS端末で動作する汎用VOCAについて:1)各利用者のVOCAデータを管理するデータベースシステムの開発;2)データベースから端末へダウンロードするシステムの開発;3)カスタマイズ支援システムからデータベースにアップロードするシステムの開発。2.Webベースのカスタマイズ支援システム:1)パーソナルコンピュータで動作する支援システムのWebベース化。3.VOCA使用記録の管理、およびコミュニケーション能力評価を行う管理・分析システム:1)iOS端末で動作する汎用VOCAのアプリケーションに使用記録機能を追加;2)簡易使用記録分析・可視化システムのWeb化;
KAKENHI-PROJECT-24500641
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ヒト摩擦音の原理解明とその臨床応用手法の開発に関する研究
数値流体力学計算から導き出される歯茎摩擦音発音時の空気の流れと,その流れから発生する音を求め,歯茎摩擦音の数理モデル構築手法として提案した.さらに,口腔医療領域における発音変化,障害に対して,適応するために必要な要素技術として,可視化情報プラットフォームを構築し,具体的には,口腔内形状変化,形状特性の違いから,気流,音源の違いを知識として蓄積していくことが可能となった.これにより,大規模数値計算による数理モデルを用いた,歯茎発音変化の知識体系化を実現するための基盤が完成した.数値流体力学計算から導き出される歯茎摩擦音発音時の空気の流れと,その流れから発生する音を求め,歯茎摩擦音の数理モデル構築手法として提案した.さらに,口腔医療領域における発音変化,障害に対して,適応するために必要な要素技術として,可視化情報プラットフォームを構築し,具体的には,口腔内形状変化,形状特性の違いから,気流,音源の違いを知識として蓄積していくことが可能となった.これにより,大規模数値計算による数理モデルを用いた,歯茎発音変化の知識体系化を実現するための基盤が完成した.本研究では、発音時に発生する空気の流れを、数値流体力学シミュレーションを用いて可視化し、音源位置に関してはPowell音源を計算することで同定し、さらに音源から発生する音が空気中をどのように伝わって遠方場まで到達するか、について明らかにすることを目的としている。さらにそれを臨床応用するため、簡単にシミュレーション結果を医療現場に配信する技術開発も並行して行っている。本年度の研究実施計画においては、2項目に区分しており、1つ目の波動方程式を用いた計算手法に関するものであるが、本年度は2重極音源に関して、格子解像度の異なるLES解析を行い、流体計算精度により流体音の予測精度の違いに関する評価をはじめに行った。その結果、7千万格子程度が必要であることが明らかになった。また、非常に大規模な流体力データを、如何に音響計算コードに渡すかに関する検討を行っている。これは、現在どのような商用アプリケーションでも実用化されていない。2つ目の3次元プリンターを用いた実態モデル作成と、それから歯科用圧接技術を用いた透明レジンによる3次元気道モデル作成に成功している。風洞実験に関しては、今年からCNRSと共同で取り組む準備を初めており、実際のヒトの口腔形状に限定するのではなく、より単純化した機械的な形状を用いた数値流体計算と風洞実験結果を対照し、多様な口腔形状に関して考慮に入れた取り組みも行ってきている。また、その成果は、共著ではあるがAcoustics08にて発表する。現在、本研究に興味を持ったCNRS研究者との国際共同研究に発展してきている。本研究を1年終えたことで、新たに重要な要素が明らかになりつつある。それは、口腔形状をある程度単純化し計上パラメータを組み合わせたモデルに関してシミュレーションを行い、それをデータベース化し蓄積することで、あらゆる口腔形状に適応可能な理論を構築することができる可能性が考えられ始めてきた。ヒト摩擦音を流体力学的視点から捉え、その現象が単純に乱流から発せられる音ではなく、ある特徴をもった渦の運動から生じているという仮説を立てることができた。すなわち、正常咬合のヒトの場合、上顎前歯先端部に音源が存在し、さらに前歯角度の変化によって音源の強度、分布が大きく変化することを流れの数値計算による可視化によって明らかになった。本研究では約七千万の六面体格子を生成し、流れ場をLES解析によって算出し、前歯表面における圧力変動を求めた。表面の圧力変動のみから遠方場における圧力変動を求めた結果、低周波(四千ヘルツ)までであれば正確に求められることが分かった。さらに、三百万格子を用いて求めたLighthillテンソルの2回微会値をヘルムホルツ方程式に与え、それを有限要素法により解いた。その結果、可聴領域の音は導出されなかった。これは、小規模格子を用いたことによる4重極音源の精度不足が原因と考えられた。そこで、七千万格子の場合を試みたが、受け渡すデータが数十テラバイトを超過することになり、現実的に実行が困難であった。一方で、本研究費により、フランスCNRSとの共同研究が開始され、JSPSフェローにフランスCNRS常勤研究者が採用され、さらに、日仏共同大学院プログラムから博士課程大学院生が9ヶ月間派遣された。この研究共同では、前歯部単純形状から同じレイノルズ数の流れをLES解析によって求め、乱流インテンシティーや圧力損失などから・乱流が生じていることが明らかとなった。また、前歯部後流に壁面が沿うような場合には乱流インテンシティーの増大が見られた。
KAKENHI-PROJECT-19700420
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19700420
モダニズム建築のオーセンティシティに関する研究:オランダ等の保存再生事例を通じて
1920年代から60年代にかけてコンクリートや鉄、ガラスなどを用いて建設された、いわゆるモダニズム建築の保存・再生の際に問題となるオーセンティシティの概念に着目し、そのあり方について、オランダなど欧米における事例を調査し考察・分析した。その結果、モダニズム建築の保存・再生は、従来重視されていた材料のオーセンティシティを守るのが難しく、新たに設計者の意図や透明性といったモダニズム建築特有のオーセンティシティが重視されている傾向にあること、従来ヨーロッパで忌避されてきた復元(再建)もしばしば行われていることなど、モダニズム建築の保存・再生に特有の問題が明らかになった。主な研究対象とする1920年代から1960年代のモダニズム建築のうち、特に史的評価が高くまた保存状態の優れた事例について、その保存、修復あるいは改修について報告・分析する文献資料を収集・整理、国内および海外調査に必要な準備資料を作成した。同資料に基づきオランダ、ベルギー、日本等における主要事例について現状を確認・調査すると共に、保存・再生に至るまでの経緯など事実関係を知りうる資料・文献を現地調査・収集した。当該年度は、ベルギーにおける最近の保存・改修事例であるLeuvenのGroot Begijnhof地区、Campusbibliotheek Arenbergほかについて見学・調査した。オランダでは、デルフト工科大学所蔵の関連資料収集を行うと共に、Schroderhuis、Van Nelle fabriek、Rietveld Academie等の保存・活用事例を調査した。国内事例に関しては、京都府立鴨沂高等学校、大丸心斎橋店,大阪歌舞伎座ほか、最近解体が決定、あるいは今後の保存の在り方が問題となっている事例を中心に見学・調査した。今年度の調査により、同じ世界遺産でもSchroderhuisでは、オリジナルの材料は取替えても、デザインのオーセンティシティを維持しようとしている一方、Groot Begijnhofでは、増築部分でオリジナル部分のオーセンティシティを損なわない繊細なデザインを加えていることが確認された。またVan Nelleでは、元工場をオフィスに改修しているが、モダニズム建築特有の全面ガラスのファサードを損なわないよう室内設計することで、オーセンティシティへの配慮と維持がなされている。これに対し、日本ではオーセンティシティの概念そのものが検討されておらず、特に材料のオーセンティシティへの意識は低く、レプリカを作ることも厭わない様子が明らかになった。1920年代から60年代にかけてコンクリートや鉄、ガラスなどを用いて建設された、いわゆるモダニズム建築の保存・再生の際に問題となるオーセンティシティの概念に着目し、そのあり方について、オランダなど欧米における事例を調査し考察・分析した。その結果、モダニズム建築の保存・再生は、従来重視されていた材料のオーセンティシティを守るのが難しく、新たに設計者の意図や透明性といったモダニズム建築特有のオーセンティシティが重視されている傾向にあること、従来ヨーロッパで忌避されてきた復元(再建)もしばしば行われていることなど、モダニズム建築の保存・再生に特有の問題が明らかになった。主な研究対象とする1920年代から1960年代のモダニズム建築のうち、特に史的評価が高くまた保存状態の優れた事例について、その保存、修復について報告・分析する文献資料を収集・整理し、国内および海外調査に必要な準備資料を作成した。同資料に基づき、オランダ、アメリカ、日本ほかにおける主要事例について現状を確認・調査するとともに、保存・再生に至るまでの経緯など事実関係を知りうる資料・文献を現地調査・収集した。当該年度は、ドイツ・スイスにおける最近の保存・改修事例であるMuesum der KulturenBasel、Museum Kueppersmuehleほかの事例を訪問、その保存・改修方法について見学・調査した。オランダではデルフト工科大学が所蔵する保存・改修事例に関する資料の収集を行うとともに、Pakhuis De Zwijger、Zonnestraal、Sonsbeekほか、世界遺産に登録されているオランダ各地に点在する要塞やアムステルダム近郊の軍用基地跡等、近代産業遺産の保存・活用事例を調査した。アメリカでは、中西部に点在するミースやF.L.ライトによる20世紀を代表する近代建築のほか、シカゴ派の高層建築等の保存・再生事例を見学調査した。国内事例に関しては、京都会館、旧東京中央郵便局、国際文化会館ほか、近年保存の在り方が問題となった事例を中心に見学・調査した。今年度の事例調査で、日本はもとよりアメリカと比較してもオランダにおける保存・再生の手法は多様で、史的評価の高い建築でさえ、必ずしも材料等のオーセンティシティに拘らない事例が少なからず存在することが確認された。これについての実証には更なる資料収集・事例調査が必要になるが、欧米および日本におけるモダニズム建築のオーセンティシティと保存・再生の問題を明らかにしていくためのよき材料を得られたと考える。主な研究対象とする1920年代から1960年代のモダニズム建築のうち、特に史的評価が高くまた保存状態の優れた事例について、その保存あるいは改修について報告・分析する文献資料を収集・整理、国内および海外調査に必要な準備資料を作成した。同資料に基づき、オランダ、日本における主要事例について現状を確認・調査すると共に、保存・再生にいたるまでの経緯など事実関係を知りうる資料・文献を現地調査した。当該年度は、国内における最近の保存改修事例を中心に見学・調査、分析・考察を行った。東京、迎賓館赤坂離宮では、明治42年、片山東熊設計により東宮御所(後、赤坂離宮)として建てられ、戦後、迎賓館として村野藤吾によって改修された経緯についての調査状況を確認した。平成18年の大規模改修工事後、現在も継続している貴重な修復現場を見学調査した。
KAKENHI-PROJECT-24656363
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24656363
モダニズム建築のオーセンティシティに関する研究:オランダ等の保存再生事例を通じて
また、東京駅丸の内駅舎およびステーションホテルを内覧、約10年間にわたる同修復・保存プロジェクトの経緯について調査、重要文化財の保存・活用の在り方について分析・考察した。最終年度として、初年度からの当該年度までの調査資料のデータベースを統合し、1920年代から1960年代までのオランダを中心とした欧米におけるモダニズム建築の保存・再生の事例調査結果を国、年代ごとにまとめ、日本の調査事例と比較検討した。加えて、モダニズム建築の保存・再生に関する国や自治体の制度のあり方、モダニズム建築に関する学術団体DOCOMOMOの活動のあり方、既往研究の研究方法など、モダニズム建築の保存・再生を取り巻く環境についての調査結果をまとめ、分析・考察のうえ、総合的にモダニズム建築のオーセンティシティおよび保存・再生の問題を明らかにした。近代建築史オランダ、ベルギー、日本等における主要なモダニズム建築の保存・再生事例に関して、可能な限り資料収集し、相当数の事例について現地見学・調査を行うことができた。特にベルギーにおけるモダニズム建築の保存・再生の事例調査にも、オランダの保存・再生・活用事例と共通してかなり自由度があるもの、また街並み全体を保存しながらも単なる凍結保存ではなく施設として活用する事例が少なからずあることが確認された。今年度の事例調査により、日本と比較してオランダだけでなくベルギーにおける保存・再生の手法もまた多様で、史的評価の高い建築でさえ、必ずしも材料等のオーセンティシティのみに拘らない事例が存在することが確認された。引き続き調査が必要だが、モダニズム建築におけるオーセンティシティの在り方を検討する有意義な調査・資料を得ることができた。オランダ、アメリカ、日本等における主要なモダニズム建築の保存・再生事例に関して、可能な限り資料収集し、相当数の事例について現地見学・調査を行うことができた。特にアメリカにおけるモダニズム建築の保存・再生の事例調査により、オランダにおける保存・再生・活用のあり方がアメリカに比較してかなり自由度があることが確認された。引き続き調査が必要だが、モダニズム建築におけるオーセンティシティの在り方を検討する有意義な調査・資料を得ることができた。国内外におけるモダニズム建築の保存・再生事例に関する文献・資料の収集・調査を継続するとともに、日本国内の主要事例について共同で現地調査を実施する。海外資料収集・事例調査についても、引き続きオランダを中心とした欧米の主要事例について共同で現地調査を行い、現状を確認するとともに、保存・再生にいたるまでの議論や実施の経緯を知りうる記録文書や資料(新聞・雑誌・公式サイトなど)の調査・収集をする。また、必要に応じて関係者のインタビュー調査を行う。特にオランダについては、同国におけるモダニズム建築の保存・再生の手法の多様性と各事例におけるオーセンティシティの捉え方の関係に注目し、日本や他の欧米諸国の事例と比較しつつさらなる検討・考察を進めたいと考えている。
KAKENHI-PROJECT-24656363
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24656363
高速相変化光メモリ-材料の固体合成と材料特性
本研究では、薄膜における固体反応による相形成の基礎的知見、人工格子薄膜における化合物形成、カルコゲン系非晶質における結晶化過程などに関して実験的検討を加えた。主な成果を以下に要約する。(1)MnーGa系非晶質薄膜における相形成Ga量が80at%以上のGaーMn2元系薄膜の結晶化過程において形成される化合物相の幾何学的特性に関して、透過電顕観察およびフラクタル理論からの検討を行なった。結晶相の幾何学的形状は組成により、D=1.7なるフラクタルクラスタ-から、非フラクタルな二次元エ-デンクラスタ-への遷移を示した。新しい機能材料創製法の一つとして、原子寸法オ-ダ-の薄膜を積層した人工格子膜における固体反応による化合物形成を、Pt/Mn/Sb多層膜について検討した。多重積層周期の採用と適当な熱処理の選定などにより、形成相の種類、結晶学的配向性の制御が可能であることが明かとなった。(3)カルコゲン系非晶質薄膜の結晶化過程と電気、光学特性新しい光記録材料の可能性を検討するために、硫黄S系カルコゲン非晶質薄膜をとりあげ、SbーSおよびSbーSーGe系に関して、組成が非晶質構造、結晶化過程、伝導特性および光学的性質におよぼす効果などを調べた。組成は非晶質における結合状態、バンド構造の変化をもたらし、薄膜の伝導特性、光特性に大きな影響を与えることが知られた。S系カルコゲン非晶質薄膜は他のカルコゲナイドと同様応用上極めて興味ある材料特性を示すことが明かとなった。本研究では、薄膜における固体反応による相形成の基礎的知見、人工格子薄膜における化合物形成、カルコゲン系非晶質における結晶化過程などに関して実験的検討を加えた。主な成果を以下に要約する。(1)MnーGa系非晶質薄膜における相形成Ga量が80at%以上のGaーMn2元系薄膜の結晶化過程において形成される化合物相の幾何学的特性に関して、透過電顕観察およびフラクタル理論からの検討を行なった。結晶相の幾何学的形状は組成により、D=1.7なるフラクタルクラスタ-から、非フラクタルな二次元エ-デンクラスタ-への遷移を示した。新しい機能材料創製法の一つとして、原子寸法オ-ダ-の薄膜を積層した人工格子膜における固体反応による化合物形成を、Pt/Mn/Sb多層膜について検討した。多重積層周期の採用と適当な熱処理の選定などにより、形成相の種類、結晶学的配向性の制御が可能であることが明かとなった。(3)カルコゲン系非晶質薄膜の結晶化過程と電気、光学特性新しい光記録材料の可能性を検討するために、硫黄S系カルコゲン非晶質薄膜をとりあげ、SbーSおよびSbーSーGe系に関して、組成が非晶質構造、結晶化過程、伝導特性および光学的性質におよぼす効果などを調べた。組成は非晶質における結合状態、バンド構造の変化をもたらし、薄膜の伝導特性、光特性に大きな影響を与えることが知られた。S系カルコゲン非晶質薄膜は他のカルコゲナイドと同様応用上極めて興味ある材料特性を示すことが明かとなった。カルコゲン系化合物薄膜の中には非晶質-結晶間の相変化が1μs以下の極めて短時間で完了するものが存在し、相変化型光記録材料として注目されている。本研究ではこのようなカルコゲン系薄膜をとりあげ、高速相変化相の固体合成法と高速相変化の機構を検討することを目的とする。本年度の課題はTe-Ge系についてイオンビ-ムスパッタリング法によりナノメ-タ-オ-ダ-の積層周期をもつ多層膜の成膜技術を確立することとし、以下の点について検討を進めた。1.イオンビ-ムスパッタ装置の改良:積層周期をナノメ-タ-オ-ダ-で制御しながら多層膜をスパッタ法で作製するために、二基のイオン源を備えた成膜装置を試作した。これら二基のイオン源により二種類の板状タ-ゲットを交互にスパッタすることにより任意の積層周期をもつ多層膜を得ることができる。例えば、Ar^+イオンを用い、引出電圧7kVとした場合、2x10^<-4>Torrの真空下で、Pt,Ge,Teに対してそれぞれ、2.8,2.5,3.0nm/min程度の成膜速度が得られ、上記の目的に十分対応できるものである。2.成膜条件の設定と積層膜の試作:Te(6N)およびGe(6N)小片を円板状に配置したタ-ゲットを用い種々の積層周期をもつTe/Ge多層膜をガラス基板状に成膜した。積層膜全体の平均組成は、Te/Ge層厚を1/110/1と変化させることによりTe-60at%GeTe-13at%Geの範囲で調整した。各構成層の厚さは1-10nmとし、総積層数は20とした。室温基板上に成膜された多層膜はX線的にはアモルファス状であった。また、低角度域のX線回折パタ-ンには超格子による1次ないし3次ピ-クが認められ、ステップモデルによる解析の結果、ほぼ目的の構造を有する積層超薄膜が作製できたことが確認された。現在、これら積層膜に対して高分解能透過電顕による詳細な組織観察がすすめられている。
KAKENHI-PROJECT-01550556
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高速相変化光メモリ-材料の固体合成と材料特性
カルコゲン系化合物薄膜の中には非晶質一結晶間の相変化が1μs以下の極めて短時間で完了するものが存在し、有望な相変化型光記録材料として注目されている。本研究ではこの種の化合物薄膜をとりあげ、新しい高速相変化膜の探索、合成およびその相変化機構を検討することを目的としている。初年度にはいくつかのカルコゲン系合金についてイオンビ-ムスパッタ法による成膜技術を確立した。本年度では新しい合金系の選定とそれに関する非晶質一部結間の相変化挙動を明らかにし相変化型光記録材料とての可能性を検討することを目標とした。1.合金系の選定いくつかのカルコゲン(S,Se,Te)系化合物に関して、安全性、環境に対する影響などを考慮し、S系化合物における薄膜を検討することとした。これに非晶質形成能大きいSbを加え、SーSb系を主合系しと、さらにこの系に対する第3元素の効果を知るためにGe添加を検討した。2.SーSbーGe系非晶質薄膜の結晶化と光学特性Sb|-^<2-|>S|-^<3-|>粉末を圧粉成形したタ-ゲット上にSb,Ge小片をのせイオンビ-ムスパッタ法により室温基板上にS(20ー75at%)ーSb(80ー20at%)ーGe(1ー10at%)薄膜を作製した。得られた膜は非晶質であったが、573K程度までの昇び温過程にあいて結晶化し、Sb_2S_3,Sbなどが形成された。示差熱分析および電気低抗測定の結果、結晶化温度は500ー550Kで、見かけの活性化エネルギは3.2ー3.5eVであり、また非晶質、結晶相ともに半導体的な電気的特性を示した。透過電顕の加熱ステ-ジでの観察の結果、薄膜組成により結晶化速度が異なり、膜のSb,Ge量が増加する傾向があることがわかった。さらに、結晶化にともなう薄膜のレ-ザ-光(λ=830nm)に対する透過率も組成に依存し、高Sb,Ge量の膜ほど大きい変化率(50%)を示した。これらより、S系カルコゲン化合物においても相変化型記録薄膜としての可能性が見いだされたと言える。S,Te,Se等のカルコゲン元素を含む非晶質は、熱的、電気的あるいは光学的な外的因子によりその構造を大きく変化するなど興味ある物性をしめすものが多い。とくに、非晶質ー結晶間の相変化速度がきわめて速い薄膜では相変化型の大容量情報記録材料の候補として注目されている。しかし、これまで取り上げられた材料は主要元素として、Te,Seを含有しており、安全性の点で問題が指摘されている。本研究ではこの立場から、硫黄S系のカルコゲナイドを検討することとした。非晶質形成能と特性制御の観点からとくに、SbーS,SbーSーGe系をとりあげた。イオンビ-ムスパッタ法により作製した薄膜について、組成が非晶質講造、結晶化過程、電気伝導および光学的特性におよぼす効果を示差走査熱量分析、X線回析、透過電顕観察などにより検討した。非晶質構造はSbーS,SーSなる原子鎖の四面体的な配位により特徴づけられ、組成によりその結合欠陥量が変化した。また、伝導特性は半導体的であり、バンドギャップが組成に依存すると推定された。光学的には、近赤外領域で透明で光吸収端の波長は膜組成により大きく変化し、Sb_2S_3の化学量論組成より過剰なSb,S,Ge原子の存在により長波長側へ移動した。結晶化により形成される相も膜組成に依存し、Sb量が多い場合には、SbとSb_2S_3の二相組織となったが、低Sb組成、およびGe添加の膜ではそれぞれSb_2S_3、Sbの単相組織となった。前者では結晶化に伴う大きな光透過率の減少が見いだされた。これらの結果より硫黄S系カルコゲナイド非晶質も他のカルコゲナイドと同様応用上興味ある材料特性を示すことが明かとなった。
KAKENHI-PROJECT-01550556
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六方晶金属・合金の室温クリープにおける転位メカニズムの検討
六方晶金属の室温クリープにおける緩和機構について、モデル材としてZnを用いて実験的研究を行った。EBSD解析から粒界付近において約5°の格子回転が観察され、粒界に転位がパイルアップしていること、光学顕微鏡観察からすべり線が隣の粒へ伝播していないこと、そしてAFM観察から粒界すべりによるステップが明らかとなった。これより、粒界にパイルアップした転位が、分解・吸収され、粒界転位が粒界すべりを引き起こすというメカニズムが考えられた。六方晶金属の室温クリープにおける緩和機構について、モデル材としてZnを用いて実験的研究を行った。EBSD解析から粒界付近において約5°の格子回転が観察され、粒界に転位がパイルアップしていること、光学顕微鏡観察からすべり線が隣の粒へ伝播していないこと、そしてAFM観察から粒界すべりによるステップが明らかとなった。これより、粒界にパイルアップした転位が、分解・吸収され、粒界転位が粒界すべりを引き起こすというメカニズムが考えられた。本研究は、六方晶金属に生じる室温クリープのメカニズムを解明することを最終目的とし、典型的な六方晶金属でありc/aの異なるCP-Ti、Mg、Znの圧延焼鈍材料を試料として、TEM観察によりクリープ変形中に働く転位の特徴を調査した。クリープ試験後行ったTEM観察の結果、六方晶金属のすべてにおいて同様な、直線的に配列した転位列を観察した。CP-Ti、Znにおいては、パイエルスポテンシャルが低いすべり系が働いていることが確認できたが、Mgにおいては、底面すべりと柱面すべりのそれぞれ一方のみが活動している粒が観察された。どの場合でも、同一粒内で、すべり系は二つ同時には働いておらず、一つの粒内で活動しているすべり系は一つのみであることが分かった。したがって、室温クリープでは、対称性が少ない六方晶系のため、例えば、底面すべりのみが活動する場合、転位の切りあいは発生せず、転位の動きを阻害するものがないことから、クリープ変形を継続できると考えることができる。しかしながら、一つの粒で一つのすべり系しか働かないならば、何らかの緩和機構が働かない限り、粒界には転位が堆積していくはずである。一方、変形の見かけの活性化エネルギーは10-18kJ/molと非常に小さかった。それにもかかわらず、粗大粒試料ではではクリープ変形が継続しなかったため、このことからも粒界での緩和機構が必要であることが分かった。今後、粒界での緩和機構が解明する必要がある。室温クリープは、チタン、マグネシウムを含む六方晶金属及び合金に特有の変形メカニズムである。現時チタン合金は宇宙航空用構造材料として広く使用され、特にファスナー材としても使用されるようになってきており、クリープによる緩和は構識物の破壊に繋がる恐れがあり、室温クリープはエ業的に重要な問題となっている。我々は、室温クリープ領域では、粒内で一つのすべり系のみが働き、転位の切り合いが起こらず、加工硬化が顕著に現れないため、クリープ変形が持続する、ということを明らかにしてきた。しかし対称性の乏しい六方晶において、たった一つのすべり系ではフォンミーゼスの条件を満たすことができず、粒界に堆積した転位は何らかのメカニズムで緩和される必要がある。そこで本研究は、室温クリープ領域で起こる転位の緩和構を解明するために行った。種々の粒径を持つ純亜鉛(99.995%)を試料とし、室温クリープの粒径依存性の調査、室温クリープ試験後にEBSDとAFMを用いて粒界近傍の変形を観察した。その結果、以下のような結論を得た。(1)室温クリープにぱ、粒径が粗大になるとひずみ量が低下するという粒径依存性が存在する。(2)亜鉛の室温クリープ領域の見かけの活性化エネルギーは18kJ/molであり、通常の拡散が起こりにくい。(3)粒界近傍に転位が堆積し、約5度の格子回転が観察された。(4)室温クリーフで粒界すべりが観察され、0.24μmのすべり量が測定された。室温クリープは、チタン、マグネシウムを含む六方晶金属及び合金に特有の変形メカニズムである。現在チタン合金は宇宙航空用構造材料として広く使用され、特にファスナー材としても使用されるようになってきており、クリープによる緩和は構造物の破壊に繋がる恐れがあり、室温クリープは工業的に重要な問題となっている。我々は、六方晶金属において、室温クリープ領域では、粒内で一つのすべり系のみが働き、転位の切り合いが起こらず、加工硬化が顕著に現れないため、クリープ変形が持続する、ということを明らかにしてきた。しかし対称性の乏しい六方晶において、たった一つのすべり系ではフォンミーゼスの条件を満たすことができず、粒界に堆積した転位は何らかのメカニズムで緩和される必要がある。そこで本研究は、室温クリープ領域で起こる転位の緩和機構を解明するため、モデル材としてZnを用いてEBSD解析、光学顕微鏡観察そしてAFM観察を行った。EBSD解析結果から粒界付近において約5°Cの格子回転が観察され、粒界に転位がパイルアップしていること、光学顕微鏡観察からすべり線が隣の粒へ伝播していないこと、そしてAFM観察から粒界すべりによるステップが明らかとなった。粒界にパイルアップした転位を分解・吸収する緩和機構が働いており、分解された粒界転位が粒界すべりを引き起こすというslip induced grain boundary slidingのメカニズムが働いていることが考えられた。
KAKENHI-PROJECT-18360342
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六方晶金属・合金の室温クリープにおける転位メカニズムの検討
そして、この粒界における転位の分解・吸収が室温クリープを律速しており、20kJ/molという非常に低い見かけの活性化エネルギーをもたらしていると考えられた。
KAKENHI-PROJECT-18360342
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移植片対腫瘍効果に関する基礎的及び臨床的研究
44歳から64歳までの固形腫瘍患者で、化学療法や放射線療法に抵抗性となった患者を対象に、フルダラビン/エンドキサン、フルダラビン/ブスルファン、フルダラビン/TBIを前処置とし、シクロスポリン/メソトレキサートによるGVHD予防にて同種末梢血幹細胞移植を施行した。症例は計8名(膵癌5例、胃癌・大腸癌・腎癌各1例)である。7例において完全キメラの状態を確認した。100日以内の移植関連死亡は認められず、最良総合効果は、膵癌の4例にPRを認めた。GVHDは、急性3例、慢性は3例中1例に認められた。100日以内の腫瘍死は3例、100日以降が2例であった。現在評価可能の6例において、100日以内の移植関連死は認められず、8例中7例において完全キメラを達成した。以上より、本療法は固形腫瘍患者に対しても安全に施行することが可能であった。腎癌およびその他の固形癌に対して、本療法は国内外にて積極的に行われつつある。また奏功率とGVHDの強い相関も示されている。進行期膵臓癌は極めて予後が悪いが、今回5症例中4症例でPRという極めて有望な成績が得られた。今後は腎癌、膵臓癌については症例数を増やし、どのような病態で同種末梢血幹細胞移植療法が有効なのか、その因子の同定を行う予定である。GVHDと抗腫瘍効果の密接な関係を認めることから、抗腫瘍効果は腫瘍特異抗原よりminor histocompatibility抗原を介して起きている可能性が高いと推測される。したがって、抗腫瘍効果が確認された症例で、ドナーとレシペントのminor histocompatibility抗原の差違の有無を検討中である。44歳から64歳までの固形腫瘍患者で、化学療法や放射線療法に抵抗性となった患者を対象に、フルダラビン/エンドキサン、フルダラビン/ブスルファン、フルダラビン/TBIを前処置とし、シクロスポリン/メソトレキサートによるGVHD予防にて同種末梢血幹細胞移植を施行した。症例は計8名(膵癌5例、胃癌・大腸癌・腎癌各1例)である。7例において完全キメラの状態を確認した。100日以内の移植関連死亡は認められず、最良総合効果は、膵癌の4例にPRを認めた。GVHDは、急性3例、慢性は3例中1例に認められた。100日以内の腫瘍死は3例、100日以降が2例であった。現在評価可能の6例において、100日以内の移植関連死は認められず、8例中7例において完全キメラを達成した。以上より、本療法は固形腫瘍患者に対しても安全に施行することが可能であった。腎癌およびその他の固形癌に対して、本療法は国内外にて積極的に行われつつある。また奏功率とGVHDの強い相関も示されている。進行期膵臓癌は極めて予後が悪いが、今回5症例中4症例でPRという極めて有望な成績が得られた。今後は腎癌、膵臓癌については症例数を増やし、どのような病態で同種末梢血幹細胞移植療法が有効なのか、その因子の同定を行う予定である。GVHDと抗腫瘍効果の密接な関係を認めることから、抗腫瘍効果は腫瘍特異抗原よりminor histocompatibility抗原を介して起きている可能性が高いと推測される。したがって、抗腫瘍効果が確認された症例で、ドナーとレシペントのminor histocompatibility抗原の差違の有無を検討中である。
KAKENHI-PROJECT-14030063
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14030063
宿主特異的毒素に依存する病原糸状菌の植物感染の分子病理学に関する日・米共同研究
1.AM毒素およびACT毒素生成アルタ-ナリアの北米分布:太平洋を隔てた北米東部のリンゴ栽培地域に斑点落葉病が近年突発し蔓延中であり、その病原体が日本で最初に発見されたAM毒素I生成菌(Alternaria alternata apple pathotype)と同じグル-プに属することを単離毒素分子の化学的特性から証明した。なを、ACT毒素生成アルタ-ナリアに関しては、調査研究続行中である。2.宿主特異的毒素(HST)の感染場面での役割:第一次作用点を異にする3群のHST((1)AK毒素、ACT毒素、(2)AM毒素、(3)ACR毒素、HMT毒素などの作用過程を光、代謝阻害剤、化学修飾剤処理で解剖分析して、胞子発芽時のHSTの病理的役割は細胞壊死を引き起こすことではなく、宿主細胞の動的抵抗反応の始動を抑制して遺伝子型特異的に受容性を誘導することにあるとする確証を得た。3.いもち病菌の感染誘導因子:いもち病菌病原性保持菌株の胞子発芽液から例外なく、非病原性アルターナリアの感染を誘導する因子が酢酸エチル抽出され、各種クロマトグラフィ-で精製した。その作用(感染誘導、原形質膜障害、壊死)は病原菌の宿主範囲のイネ、オオムギ、コムギ、イタリアンライグラスだけに認められた。イネ品種ーいもち病菌レ-ス間の特異性決定ではなく、寄生における両生物間の基本的親和性に関与する宿主識別因子であることが明らかとなった。4.毒素レセプタ-の単離・精製:(1)エンバクVictoria blight病菌毒素のvictorin抗体から抗idiotype抗体の作成に成功した。本抗体は「victorin毒素と結合する部位」に対して結合する抗体なので、レセプタ-単離に極めて有効なプロ-ブである。(2)抵抗性および感受性ナシ細胞膜画分を単離し、微量のAK毒素を添加すると感受性ナシ画分のみに添加毒素の減少がみられ、AK毒素レセプタ-の存在が示唆された。超微量毒素の検出・定量のために、AK毒素のカルボニル基をカルボジイミド法によりキャリア-蛋白質(BSA)にカップリングし、得られたAK毒素ーBSAをモルモットに皮下注射し、AK毒素抗体を調製中である。5.病原菌の毒素生成機構と分子生物学的解析:(1)トウモロコシ北方斑点点病菌レ-ス1のHC毒素の生産は1遺伝子座(Tox2)によって支配されている。このサイクリック・テトラペプチド毒素の合成酵素(HTSー1とHTSー2)を純化し,それぞれの分子量を220,000と160、000ダルトンと決定した。(2)HTSー1酵素を部分的にコ-ドしているcDNAをクロ-ニングした。HTSー1酵素遺伝子は毒素生成菌株だけに存在する22kbDNAの一部を構成し、Tox2はgene clusterであるらしい。(3)非リボゾ-ムペプチド合成酵素研究法を本共同研究者Walton博士から技術移転をうけてリンゴ斑点落葉病菌にAM毒素の合成酵素を追求中で、構成アミノ酸依存性のATPーPP交換反応が検出された。一方、(4)ナシ黒斑病菌のAK毒素合成酵素遺伝子、病原性遺伝子のクロ-ニングに向けて、アルタ-ナリアの高頻度形質転換系を確立した。形質転換マ-カ-としてAspergillus nidulanstrpCプロモタ-制御下のハイグロマイシンB抵抗性遺伝子を組み込んだプラスミドベクタ-pDH25に、A.alternataの染色体ゲノム当たり約200コピ-存在するrDNA遺伝子配列を挿入してプラスミドベクタ-pDH25の約20倍の形質転換頻度を有する系を確立した。なを、rDNAベクタ-が形質転換体の染色体rDNA領域に相同的に組み込まれることを確認した。この高頻度形質転換系を用いて、変異相補による毒素生産遺伝子の単離が実験的に可能となった。予備テストとして、A.alternataの生産するメラニン色素の生合成遺伝子を単離し、本法の有効性を示した。6.宿主植物の抵抗性と毒素:HC毒素に対するトウモロコシの反応は一対の遺伝子Hm1で支配され抵抗性が優性である。この酵素学的基盤として、HC毒素解毒酵素が検出され,抵抗性系統のHm1にトランスポゾンを挿入することによりその活性が消失した。7.2年間にわたる共同研究で、この領域の分子病理学の研究最前線を確実に前進・拡大し、本研究グル-プは世界のトップを走っていると自負するが、最終目的の解明にはなお程遠く、飛躍的進展を図るために本国際共同研究体制を継続し、毒素生合成と受容体の分子生物学に焦点を絞り、研究展開すべきであるとの合意に達した。1.AM毒素およびACT毒素生成アルタ-ナリアの北米分布:太平洋を隔てた北米東部のリンゴ栽培地域に斑点落葉病が近年突発し蔓延中であり、その病原体が日本で最初に発見されたAM毒素I生成菌(Alternaria alternata apple pathotype)と同じグル-プに属することを単離毒素分子の化学的特性から証明した。なを、ACT毒素生成アルタ-ナリアに関しては、調査研究続行中である。2.宿主特異的毒素(HST)の感染場面での役割:第一次作用点を異にする3群のHST((1)AK毒素、ACT毒素、(2)AM毒素、
KAKENHI-PROJECT-02044099
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02044099
宿主特異的毒素に依存する病原糸状菌の植物感染の分子病理学に関する日・米共同研究
(3)ACR毒素、HMT毒素などの作用過程を光、代謝阻害剤、化学修飾剤処理で解剖分析して、胞子発芽時のHSTの病理的役割は細胞壊死を引き起こすことではなく、宿主細胞の動的抵抗反応の始動を抑制して遺伝子型特異的に受容性を誘導することにあるとする確証を得た。3.いもち病菌の感染誘導因子:いもち病菌病原性保持菌株の胞子発芽液から例外なく、非病原性アルターナリアの感染を誘導する因子が酢酸エチル抽出され、各種クロマトグラフィ-で精製した。その作用(感染誘導、原形質膜障害、壊死)は病原菌の宿主範囲のイネ、オオムギ、コムギ、イタリアンライグラスだけに認められた。イネ品種ーいもち病菌レ-ス間の特異性決定ではなく、寄生における両生物間の基本的親和性に関与する宿主識別因子であることが明らかとなった。4.毒素レセプタ-の単離・精製:(1)エンバクVictoria blight病菌毒素のvictorin抗体から抗idiotype抗体の作成に成功した。本抗体は「victorin毒素と結合する部位」に対して結合する抗体なので、レセプタ-単離に極めて有効なプロ-ブである。(2)抵抗性および感受性ナシ細胞膜画分を単離し、微量のAK毒素を添加すると感受性ナシ画分のみに添加毒素の減少がみられ、AK毒素レセプタ-の存在が示唆された。超微量毒素の検出・定量のために、AK毒素のカルボニル基をカルボジイミド法によりキャリア-蛋白質(BSA)にカップリングし、得られたAK毒素ーBSAをモルモットに皮下注射し、AK毒素抗体を調製中である。5.病原菌の毒素生成機構と分子生物学的解析:(1)トウモロコシ北方斑点点病菌レ-ス1のHC毒素の生産は1遺伝子座(Tox2)によって支配されている。このサイクリック・テトラペプチド毒素の合成酵素(HTSー1とHTSー2)を純化し,それぞれの分子量を220,000と160、000ダルトンと決定した。(2)HTSー1酵素を部分的にコ-ドしているcDNAをクロ-ニングした。HTSー1酵素遺伝子は毒素生成菌株だけに存在する22kbDNAの一部を構成し、Tox2はgene clusterであるらしい。(3)非リボゾ-ムペプチド合成酵素研究法を本共同研究者Walton博士から技術移転をうけてリンゴ斑点落葉病菌にAM毒素の合成酵素を追求中で、構成アミノ酸依存性のATPーPP交換反応が検出された。一方、(4)ナシ黒斑病菌のAK毒素合成酵素遺伝子、病原性遺伝子のクロ-ニングに向けて、アルタ-ナリアの高頻度形質転換系を確立した。形質転換マ-カ-としてAspergillus nidulanstrpCプロモタ-制御下のハイグロマイシンB抵抗性遺伝子を組み込んだプラスミドベクタ-pDH25に、A.alternataの染色体ゲノム当たり約200コピ-存在するrDNA遺伝子配列を挿入してプラスミドベクタ-pDH25の約20倍の形質転換頻度を有する系を確立した。なを、rDNAベクタ-が形質転換体の染色体rDNA領域に相同的に組み込まれることを確認した。この高頻度形質転換系を用いて、変異相補による毒素生産遺伝子の単離が実験的に可能となった。予備テストとして、A.alternataの生産するメラニン色素の生合成遺伝子を単離し、本法の有効性を示した。6.宿主植物の抵抗性と毒素:HC毒素に対するトウモロコシの反応は一対の遺伝子Hm1で支配され抵抗性が優性である。
KAKENHI-PROJECT-02044099
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02044099
高等教育機関の新設・統廃合に関する比較社会学的研究
本年度は、4年制大学と短期大学の入学定員割れおよび統廃合の要因を分析するための理論作りおよび実証データの作成・分析を行った。さらに、大学・短大の設置者である学校法人の新設統廃合の分析も行った。そのために以下の3種類のデータ・ベースを作成した。第1に、各大学に関して昭和61年度の定員充足率、社会的評価(偏差値等)、構成員の特性(研究状況、年齢分布、学歴等)、就職状況などの属性的情報を収集した。第2に、昭和24年度以降新設統廃合された大学および短大の学部別の入学定員数と在籍者数を調べた。第3に、昭和25年以降の学校法人の許可と廃止の状況について調べた。さらに、以上の数量的情報を補うため、各大学の学校案内の収集や関係者へのインタビュー調査を行なった。その結果、以下の新たな知見が得られた。1.定員割れしている大学は27校ある。2.定員割れの要因を、経営戦略、内部組織特性、外部環境特性の3つの観点から検討した結果、地方所在で小規模で偏差値ランクが低いという傾向がみられた。3.さらに、伝統的な女子教育を支えた学部で定員割れが目立っている。4.廃止となった45校の短大の平均存続年数は、14.2年であった。国立私立別では、それぞれ26.7年、17.4年、12.7年で私立の短大が設置されてから最も早く廃止される比率が高い。5.昭和50年当時の学校数で廃校数を割った廃校率をみると、短大のそれは2.9%で、幼稚園の4.2%、小学校の4.9%、中学校の4.5%、高等学校の5.9%についで高い値となっている。しかし、大学の廃校率は0.2%で、相対的にみてかなりひくい。6.高等教育への参入以前、それらの学校法人の約8割は各種学校や高等学校などなんらかの学校経営していた。これは特に短期大学に参入した学校法人に著しい。本年度は,高等教育機関の入学者定員割れ状況および新設統廃合の要因を分析するための理論作りおよび実証データの作成・分析を行った.すなわち各高等教育機関(特に短大)に関して昭和61年度の定員充足率,社会的評価(偏差値等),構成員の特性(研究状況・年齢分布・学歴等),就職状況などの属性的情報を収集しデータ・ベースを作成し,昭和35年度以降統廃合された高等教育機関の一覧表を作成し,さらに統廃合された高等教育機関を日本地図にプロットした.アメリカ合衆国に関しても同様のデータを作成し,さらに日本に関しては,以上の情報を補うため,各大学が出した文書資料を収集し,関係者へのインタビュー調査を実施した.その結果,以下の新たな知見が得られた.(1)統廃合の多いアメリカの高等教育機関の共通点として,小規模(学生数1000人以下),無名で基本財産をもたない授業料依存型の新設の短大,または教養中心のリベラルアーツ・カレッジ,または宗教系大学という特徴があげられること.逆につよい大学の特徴として,私立よりは公立,立地条件が良いこと,創立年が古いこと(100年以上の伝統をもつ大学はほとんど廃止されていない),威信の高い大学院をもっていること.(2)日本の高等教育機関の統廃合に関しては, 4年制大学では実質的に廃止校は存在しないけれども,短大に関しては42校あること,また,短大の統廃合の重要な原因の1つとして学生の定員割れがあること.各短大の定員割れの要因を,経営戦略,内部組織特性,外部環境特性の3つの観点から検討した結果,小規模で,設立年が浅く,偏差値ランクが低く,小都市にある短大に多いということ.(3)中国四国地方に所在する短大のインタビュー調査の結果,多角経営,学科の新設・改組,推薦制度の活用,男女共学化,等々の生き残り戦略が取られていること.本年度は、4年制大学と短期大学の入学定員割れおよび統廃合の要因を分析するための理論作りおよび実証データの作成・分析を行った。さらに、大学・短大の設置者である学校法人の新設統廃合の分析も行った。そのために以下の3種類のデータ・ベースを作成した。第1に、各大学に関して昭和61年度の定員充足率、社会的評価(偏差値等)、構成員の特性(研究状況、年齢分布、学歴等)、就職状況などの属性的情報を収集した。第2に、昭和24年度以降新設統廃合された大学および短大の学部別の入学定員数と在籍者数を調べた。第3に、昭和25年以降の学校法人の許可と廃止の状況について調べた。さらに、以上の数量的情報を補うため、各大学の学校案内の収集や関係者へのインタビュー調査を行なった。その結果、以下の新たな知見が得られた。1.定員割れしている大学は27校ある。2.定員割れの要因を、経営戦略、内部組織特性、外部環境特性の3つの観点から検討した結果、地方所在で小規模で偏差値ランクが低いという傾向がみられた。3.さらに、伝統的な女子教育を支えた学部で定員割れが目立っている。4.廃止となった45校の短大の平均存続年数は、14.2年であった。国立私立別では、それぞれ26.7年、17.4年、12.7年で私立の短大が設置されてから最も早く廃止される比率が高い。
KAKENHI-PROJECT-62510137
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62510137
高等教育機関の新設・統廃合に関する比較社会学的研究
5.昭和50年当時の学校数で廃校数を割った廃校率をみると、短大のそれは2.9%で、幼稚園の4.2%、小学校の4.9%、中学校の4.5%、高等学校の5.9%についで高い値となっている。しかし、大学の廃校率は0.2%で、相対的にみてかなりひくい。6.高等教育への参入以前、それらの学校法人の約8割は各種学校や高等学校などなんらかの学校経営していた。これは特に短期大学に参入した学校法人に著しい。
KAKENHI-PROJECT-62510137
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ウニ生殖周期の変異性の生態学的、集団遺伝学的解明
北海道におけるエゾバフンウニの生殖周期は海域によって異なる。本研究は遺伝学的な分化の有無を東北太平洋の個体群も含めて明らかにする。東北太平洋沿岸での本種の生殖周期は北海道日本海タイプと一致した。異なる生殖周期と1万年前以降に成立した海流、水温、コンブ属褐藻の分布とは対応する。しかし、遺伝学的な有意差は認められなかった。北海道南部太平洋産稚仔は、高水温により成長が著しく停滞するために宮城県中部沿岸には加入できないと考えられた。北海道におけるエゾバフンウニの生殖周期は海域によって異なる。本研究は遺伝学的な分化の有無を東北太平洋の個体群も含めて明らかにする。東北太平洋沿岸での本種の生殖周期は北海道日本海タイプと一致した。異なる生殖周期と1万年前以降に成立した海流、水温、コンブ属褐藻の分布とは対応する。しかし、遺伝学的な有意差は認められなかった。北海道南部太平洋産稚仔は、高水温により成長が著しく停滞するために宮城県中部沿岸には加入できないと考えられた。東北地方太平洋沿岸のエゾパフンウニの生殖周期を明らかにするために、岩手県広田湾の水深0.51mにおいて、殻径35mm以上のエゾパフンウニ成体を毎月10個体ずつ素潜りで採集した。採集したウニの殻径、体重、生殖巣重量を測定し、生殖巣指数(生殖巣重×100/体重)を求めた。また、生殖巣の小片を20%ホルマリンで固定し、常法に従ってパラフィン包埋して6μm厚の切片を作製し、マイヤーのヘマトキシリンとエオシンで二重染色した。そして、生殖細胞の形成過程から回復期、成長期、成熟前期、成熟後期、放出期の5つの発達段階に区分した。生殖巣指数は、9月10月に20以上のピークへ達し、11月に4未満へと急激に低下、3月以降水温の上昇にともなっで上昇する年周期を示した。生殖巣の発達段階は生殖巣指数の変化に対応して、9月10月に成熟後期の個体が優占、11月に放出期へと移行、1月2月に回復期、3月5月には成長期が占めた。広田湾のエゾパフンウニは北海道日本海と同様に、水温が20°Cから13°Cへと低下する10月に年1回産卵することが明らかになった。エゾバフンウニの生殖周期は北海道沿岸において、日本海型、オホーツク海・東部太平洋型、噴火湾・南部太平洋型の3タイプに区分され、海域間で移植しても原産海域の生殖周期は少なくとも3年間は維持される。タイプが異なる海域における本種個体群間の遺伝学的な分化の有無を、東北太平洋における生殖周期を含めて明らかにする。北海道の生殖周期を異にする3海域と東北太平洋の計7地区から各約50個体を入手し、顎骨伸筋からDNAを抽出し、mtDNAのCOI領域361塩基およびNDI領域262塩基の配列を決定し、地区間の変異性の有無を検定した。また、2007年11月から翌年10月までのほぼ毎月1回、宮城県大谷沿岸の水深0.51mでエゾバフンウニ約10個体を採集した。そして、生殖巣指数(生殖巣重量×100/体重)を求め、成熟段階を肉眼により未成熟期、成熟期、放出期に区分した。エゾバフンウニの生殖周期は、現在の環境が形成された1万年前以降に成立した海流、水温およびコンブ属褐藻の分布に対応していた。しかし、mtDNAの配列の変異性には海域間で有意な差は認められず、出現数の多いハプロタイプは4海域以上で共有され、海域による特異性は認められなかった。したがって、2領域の塩基配列にもとづくならば、現在のエゾバフンウニには海域毎に遺伝学的に独立した個体群が生じるほど地史的時間が経過していないと考えられる。大谷における生殖周期は、生殖巣指数が2008年3月から9月の18.6のピークへと上昇した後、10月に5以下へと急激に低下し、年1回秋産卵の北海道日本海型に類似した。しかし、南部太平洋型である14月に成熟期をもつ個体が20%の頻度で出現した。このことは、東北太平洋沿岸におけるエゾバフンウニ個体群は北海道日本海型と南部太平洋型が混在している可能性を示している。これまでの研究で、生殖周期の異なる海域に分布するエゾバフンウニ集団間で、mtDNAの変異性には有意差がみとめられないことが明らかになった。他の形質での相違の有無を明らかにするため、北海道南部太平洋の4月採苗と北海道日本海の8月に採苗した人工種苗群を、それぞれ8ヶ月後(殻径13.4mm)および10ヶ月後(12.2mm)に宮城県石巻市沿岸の海水を用いて同一環境で1年以上飼育した。日本海産と太平洋産種苗は原産海域を反映して、それぞれ秋季と春季に産卵する生殖周期を維持した。生殖巣指数の季節変化も生殖周期の相違を反映して両群で明瞭に異なった。年齢形質となる生殖板外縁部に形成される黒色帯の形成時期は、日本海産種苗では6月10月であり、他の月は白色帯を形成した。しかし、南部太平洋産種苗は黒色帯が2月11月までの長期間にわたりほぼ全個体で形成され、12月と1月にのみ約50%の個体で白色帯の形成がみとめられた。年間成長率は同一の食物条件であるにもかかわらず南部太平洋産種苗で低く、特に高水温の夏季に負の成長が顕著にみとめられた。
KAKENHI-PROJECT-20580193
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ウニ生殖周期の変異性の生態学的、集団遺伝学的解明
前年度の研究で宮城県最北部気仙沼大谷沿岸では、南部太平洋型の特徴である14月に成熟する個体が全体の20%の比率で出現した。しかし、北海道南部太平洋産種苗は、原産地より明らかに高い宮城県中部沿岸の水温には適応できず、日本海産種苗に比較して成長を顕著に停滞させることから東北太平洋南部には侵入できないものと考えられた。
KAKENHI-PROJECT-20580193
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都市高速道路の複数均一料金圏間の料金合理的調整法
都市高速道路の料金は、基本的には償還原則から決定される。しかし、料金設定が不適当であると道路機能が十分発揮されないばかりか、都市活動全般に悪影響を与えることになるので、現在の料金制度は、利用交通の特性と料金徴収の容易性を考慮して均一料金が採用されている。ネットワーク規模が小さく、1つの均一料金圏で対応できる場合は、料金圏半径や料金額の設定が主な研究課題であった。しかし、都市高速道路の拡充・延伸とともに、検討改題は多様化複雑化し、とくに京阪神都市圏のように多核型の都市圏においては、複数の均一料金圏をもち、料金圏相互の料金の設定・調整が重要となる。本研究では、複数の均一料金圏を持つ都市高速道路の料金設定において生じる諸問題を体系的に整理し、都市圏構造を考慮した料金体系の合理的な設定・調整方法を検討した。昭和62年度、昭和63年度の成果をまとめると以下のようである。【○!1】均一料金圏内の路線をプール採算制で運用するため、路線間の密接関連性の規定概念を明らかにするとともに、関連性の数値的評価指標として、補完性係数、代替性係数の評価式を新たに提案した。そして、阪神高速道路網を対象に、新規路線と既存路線の密接関連性について具体的な数値計算を行ない、その妥当性を検討した。【○!2】将来の阪神高速道路網を対象に、オーバーラップ料金決定問題を数理最適化問題として定式化するとともに数値計算を実行する。まず、需要固定の場合について計算し、つぎにOD需要が変動する場合へと拡張した。以上の結果から、密接関連性からみたプール採算性の是非、オーバラップ料金を含む料金体系の合理的設定方法について考察し、最終的に研究成果報告書としてとりまとめた。都市高速道路の料金は、基本的には償還原則から決定される。しかし、料金設定が不適当であると道路機能が十分発揮されないばかりか、都市活動全般に悪影響を与えることになるので、現在の料金制度は、利用交通の特性と料金徴収の容易性を考慮して均一料金が採用されている。ネットワーク規模が小さく、1つの均一料金圏で対応できる場合は、料金圏半径や料金額の設定が主な研究課題であった。しかし、都市高速道路の拡充・延伸とともに、検討改題は多様化複雑化し、とくに京阪神都市圏のように多核型の都市圏においては、複数の均一料金圏をもち、料金圏相互の料金の設定・調整が重要となる。本研究では、複数の均一料金圏を持つ都市高速道路の料金設定において生じる諸問題を体系的に整理し、都市圏構造を考慮した料金体系の合理的な設定・調整方法を検討した。昭和62年度、昭和63年度の成果をまとめると以下のようである。【○!1】均一料金圏内の路線をプール採算制で運用するため、路線間の密接関連性の規定概念を明らかにするとともに、関連性の数値的評価指標として、補完性係数、代替性係数の評価式を新たに提案した。そして、阪神高速道路網を対象に、新規路線と既存路線の密接関連性について具体的な数値計算を行ない、その妥当性を検討した。【○!2】将来の阪神高速道路網を対象に、オーバーラップ料金決定問題を数理最適化問題として定式化するとともに数値計算を実行する。まず、需要固定の場合について計算し、つぎにOD需要が変動する場合へと拡張した。以上の結果から、密接関連性からみたプール採算性の是非、オーバラップ料金を含む料金体系の合理的設定方法について考察し、最終的に研究成果報告書としてとりまとめた。都市高速道路の料金は,基本的には償還原則から決定されるが,料金体系の設定が不適当であると,道路の機能が十分発揮されないばかりか,都市活動全般に悪影響を与えることになるので,現在の料金制度は,利用交通の特性と料金徴収の容易性を考慮して均一料金制が採用されている.ネットワークの規模が小さく, 1つの均一料金圏だけで対応できる場合は,料金圏半径や料金額の設定方法が主な研究課題であった.しかし,都市高速道路の拡充・延伸とともに,料金体系に関わる検討課題は多様化,複雑化してきており,とくに,京阪神都市圏のように複数の核都市を持つ多核型の都市圏においては,複数の均一料金をもつことになるため,料金圏相互の料金の設定・調整が重要となる.そこで本研究では,複数の均一料金圏を持つ都市高速道路の料金設定において生じる諸問題を体系的に整理し,都市圏構造を考慮した料金体系の合理的な設定・調整方法を検討した. 62年度に得られた主な成果を要約すると,次のとおりである.(1)均一料金圏内の路線をプール採算制で運用するためには,路線間に密接な関連が認められなければならない.そこで,密接関連性の規定概念を明らかにするために,従来の関連性評価指標の持つ問題点を文献資料により体系的に整理した.(2)関連性の数値的評価指標として,補完性係数,代替性係数の評価式を新たに提案した.
KAKENHI-PROJECT-62550391
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62550391
都市高速道路の複数均一料金圏間の料金合理的調整法
そして,阪神高速道路網を対象に,新規路線と既存路線の密接関連性について具体的な数値計算を行ない,その妥当性を検討した.(3)2つ以上の均一料金圏が接する(あるいは交わる)場合の料金区界付近の料金設定のうち,とくに,料金圈の重なりが大きい場合の料金設定法に関して,数理最適化手法の適用による問題の定式化を行なった.都市高速道路の料金は、基本的には償還原則から決定されるが、料金体系の設定が不適当であると、道路の機能が十分発揮されないばかりか、都市活動全般の悪影響を与えるので、現在の料金制度は、利用交通の特性と料金徴収の容易性を考慮して均一料金性が採用されている。道路網の規模が小さく、1つの均一料金圏だけが存在する場合は、料金圏の半径や料金額の設定が主な研究課題であった。しかし、都市高速道路の拡充・延伸とともに、料金体系に関わる検討課題は多様化、複雑化してきている。そこで、複数の均一料金圏をもつ都市高速道路の料金設定における諸問題を体系的に整理し、都市圏構造を考慮した料金体系の合理的な設定・調整方法を検討するために63年度は次の手順で研究を進めた。(1)複数の料金圏をプール採算性により運用することの是非に関する理論的根拠を明確にするために、路線間の密接関連性の議論を料金圏間の密接関連性へと展開した。関連性の定義を再考し、数量的な評価指標を提案するとともに、将来の京阪神都市圏における高速道路網の料金圏の関連性について数値的な検討を加えた。(2)将来の阪神高速道路網を対象に、オーバーラップ料金決定のための最適化問題の数値計算を実行した。まず、需要固定の場合について計算し、つぎにOD需要が変動する場合へと拡張する。そして、問題の感度分析を通じて、オーバーラップ部の料金の変化が、ネットワーク全体の交通パターンおよび料金収入に及ぼす影響について考察した。(3)オーバーラップ料金額により、高速道路の利用パターンは変化するが、それによる密接関連性指標への影響について、数値的検討を行った。その結果を通して、密接関連性からみたプール採算性の是非、オーバーラップ料金を含む料金体系の合理的設定方法について考察し、最終的に研究成果報告書をとりまとめた。
KAKENHI-PROJECT-62550391
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エントロピー変化に依存しない新規自由エネルギー変化予測手法の開発
本研究の目的は、フラグメント分子軌道法で得られるフラグメント間相互作用エネルギーと、エントロピー-エンタルピー補償側を利用することで、エントロピー変化を用いることなく阻害剤と蛋白質間の自由エネルギーを予測する手法の開発である。その前段階として、フラグメント分子軌道計算によるフラグメント間相互作用エネルギーとエンタルピー変化との間に高い相関関係を有する必要があることから、種々の阻害剤-蛋白質間の複合体系における阻害剤のエンタルピー変化とフラグメント間相互作用エネルギーとの間にどの程度の相関があるかを検証する必要がある。本年度は主としてHIVプロテアーゼ阻害剤系に関する計算を実行し、フラグメント間相互作用エネルギーとエンタルピー変化との相関を確認したところ、R2 = 0.5326という相関が得られた。さらに、各阻害剤の電荷によってフラグメント間相互作用エネルギーの結果が大きく変化したことから、電荷が0と+1に阻害剤の分類を行った。これらのフラグメント間相互作用エネルギーとの相関関係を確認すると、R2 = 0.8071というさらに良好な相関値が+1の電荷を有する阻害剤複合体で得られた。この結果より、阻害剤分子全体の電荷はフラグメント間相互作用エネルギーに大きな影響を与えることから、電荷の異なる阻害剤複合体においては、電荷ごとに阻害剤を分類して検討する必要があると考えられる。現在、HIVプロテアーゼ阻害剤の系に関するドッキングシミュレーションとその活性予測および直接トロンビン阻害剤の系におけるエンタルピー変化とフラグメント間相互作用エネルギーとの間の相関検証を行っているところである。本年度は、先述の自由エネルギー予測を達成するための前段階として、HIVプロテアーゼ阻害剤の系における、フラグメント間相互作用エネルギーとエンタルピー変化との間の相関に関して検討を行った。タンパク質構造データバンクから、文献に報告されているHIVプロテアーゼとその阻害剤複合体の構造を23個ダウンロードし、DiscoveryStudioViewer、MOEにより構造修正を行った。複合体にはアンプレナビル、ネルフィナビル、ダルナビル、サキナビル、構造最適化では分子力場としてCHARMmを用いた。計算機はスーパーコンピューター「京」を、ソフトウェアにABINIT-MPを用い、MP2/6-31G並びにMP2/6-31G*の計算レベルの下、計算を実施した。計算によって得られた蛋白質-阻害剤間のフラグメント間相互作用エネルギーの和と文献中のエンタルピー変化との相関を求め、どの程度の相関関係が成立しているかを検討した。フラグメント間相互作用エネルギーとエンタルピー変化との相関を確認したところ、R2 = 0.5326という相関が得られた。また、各阻害剤の電荷によってフラグメント間相互作用エネルギーの結果が大きく変化したことから、電荷が0と+1に阻害剤の分類を行い、フラグメント間相互作用エネルギーとの相関関係を確認すると、R2 = 0.8071というさらに良好な相関値が+1の電荷を有する阻害剤複合体で得られた。この結果より、阻害剤分子全体の電荷はフラグメント間相互作用エネルギーに大きな影響を与えることから、電荷の異なる阻害剤複合体系においては、電荷ごとに阻害剤を分類して検討する必要があると考えられる。現在進めているHIVプロテアーゼ阻害剤およびFimH阻害剤に関する活性予測を進め、これを完結させる。ただし、HIVプロテアーゼ阻害剤については文献での報告例が膨大である一方、トレーニングセットの数は文献報告例に限られることから、どの程度の範囲まで予測モデルを拡張できるかも合わせて検討する。そのほか、現在検討を行っている直接トロンビン阻害剤の系についても阻害活性とフラグメント間相互作用エネルギーとの相関を計算する。もし相関が低い場合はどのような点に問題があるのかを考察し、必要であれば再計算を行う。その他、等温滴定型カロリメトリーにより自由エネルギー、エンタルピー、エントロピー変化が測定されている論文をいくつか取得していることから、これらについても同様に計算を行い、相関の検証を行う予定である。フラグメント分子軌道計算において、ある程度構造や電荷がそろっていれば、フラグメント間相互作用エネルギーとエンタルピー変化との間には良好な相関が得られることが、これまでの計算経験からわかっている。一方、本計算は真空中で計算を行っており、静電相互作用が大きな値を示すことから、阻害剤の電荷によってフラグメント間相互作用エネルギーが大きく変化する。それゆえ、阻害剤の電荷は同じもの同士に分類して検討する必要がある。また、結晶構造間の構造の歪みも相互作用に大きく影響するため、結晶構造間のRMSDなどを計算し、これを考慮してフラグメント分子軌道計算を行う必要がある。本研究の目的は、フラグメント分子軌道法で得られるフラグメント間相互作用エネルギーと、エントロピー-エンタルピー補償側を利用することで、エントロピー変化を用いることなく阻害剤と蛋白質間の自由エネルギーを予測する手法の開発である。その前段階として、フラグメント分子軌道計算によるフラグメント間相互作用エネルギーとエンタルピー変化との間に高い相関関係を有する必要があることから、種々の阻害剤-蛋白質間の複合体系における阻害剤のエンタルピー変化とフラグメント間相互作用エネルギーとの間にどの程度の相関があるかを検証する必要がある。本年度は主としてHIVプロテアーゼ阻害剤系に関する計算を実行し、フラグメント間相互作用エネルギーとエンタルピー変化との相関を確認したところ、R2 = 0.5326という相関が得られた。さらに、各阻害剤の電荷によってフラグメント間相互作用エネルギーの結果が大きく変化したことから、電荷が0と+1に阻害剤の分類を行った。これらのフラグメント間相互作用エネルギーとの相関関係を確認すると、R2 = 0.8071というさらに良好な相関値が+1の電荷を有する阻害剤複合体で得られた。
KAKENHI-PROJECT-18K06615
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K06615
エントロピー変化に依存しない新規自由エネルギー変化予測手法の開発
この結果より、阻害剤分子全体の電荷はフラグメント間相互作用エネルギーに大きな影響を与えることから、電荷の異なる阻害剤複合体においては、電荷ごとに阻害剤を分類して検討する必要があると考えられる。現在、HIVプロテアーゼ阻害剤の系に関するドッキングシミュレーションとその活性予測および直接トロンビン阻害剤の系におけるエンタルピー変化とフラグメント間相互作用エネルギーとの間の相関検証を行っているところである。本年度は、先述の自由エネルギー予測を達成するための前段階として、HIVプロテアーゼ阻害剤の系における、フラグメント間相互作用エネルギーとエンタルピー変化との間の相関に関して検討を行った。タンパク質構造データバンクから、文献に報告されているHIVプロテアーゼとその阻害剤複合体の構造を23個ダウンロードし、DiscoveryStudioViewer、MOEにより構造修正を行った。複合体にはアンプレナビル、ネルフィナビル、ダルナビル、サキナビル、構造最適化では分子力場としてCHARMmを用いた。計算機はスーパーコンピューター「京」を、ソフトウェアにABINIT-MPを用い、MP2/6-31G並びにMP2/6-31G*の計算レベルの下、計算を実施した。計算によって得られた蛋白質-阻害剤間のフラグメント間相互作用エネルギーの和と文献中のエンタルピー変化との相関を求め、どの程度の相関関係が成立しているかを検討した。フラグメント間相互作用エネルギーとエンタルピー変化との相関を確認したところ、R2 = 0.5326という相関が得られた。また、各阻害剤の電荷によってフラグメント間相互作用エネルギーの結果が大きく変化したことから、電荷が0と+1に阻害剤の分類を行い、フラグメント間相互作用エネルギーとの相関関係を確認すると、R2 = 0.8071というさらに良好な相関値が+1の電荷を有する阻害剤複合体で得られた。この結果より、阻害剤分子全体の電荷はフラグメント間相互作用エネルギーに大きな影響を与えることから、電荷の異なる阻害剤複合体系においては、電荷ごとに阻害剤を分類して検討する必要があると考えられる。現在進めているHIVプロテアーゼ阻害剤およびFimH阻害剤に関する活性予測を進め、これを完結させる。ただし、HIVプロテアーゼ阻害剤については文献での報告例が膨大である一方、トレーニングセットの数は文献報告例に限られることから、どの程度の範囲まで予測モデルを拡張できるかも合わせて検討する。そのほか、現在検討を行っている直接トロンビン阻害剤の系についても阻害活性とフラグメント間相互作用エネルギーとの相関を計算する。もし相関が低い場合はどのような点に問題があるのかを考察し、必要であれば再計算を行う。その他、等温滴定型カロリメトリーにより自由エネルギー、エンタルピー、エントロピー変化が測定されている論文をいくつか取得していることから、これらについても同様に計算を行い、相関の検証を行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-18K06615
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K06615
ゲイト・モーフィングによる不整地2足走行の研究
1.走行制御の基礎実験として,身長127cm,体重31kg,全12自由度の人間型2足ロボットHRP-2LRを用いて,平地における走行,横走行,うさぎ跳び,片足飛び(けんけん)などの動作を実現した.ここで実現できた走行速度は時速0.58kmであった,走行の高速化を図るため,つま先にバネを挿入する改造を行いHRP-2LTとした.つま先バネを利用する走行パターン生成プログラムを開発し,これによって時速3kmの走行が可能であることをシミュレータ上で確認した.また,両脚ジャンプの実験を行い,空中期0.1s,床面からの高さ約3cmのジャンプを実現した.高速走行時にロボットの姿勢が乱れる問題に対処するため,腰Yaw軸を追加したHRP-2LYを開発した.Yaw軸周りの角運動量を胴体の回転により補償することによって,安定な時速3kmの走行が実現できることをシミュレーションにより確認した.2.ゲイト・モーフィングの考え方に基づき,ZMPの未来軌道の時間伸縮によってバランスを維持する安定化制御方式を検討した.これに基づき安定化制御付きのパターンジェネレータを開発し,シミュレーション上の2足歩行で±3cmの凹凸路面を踏破可能なことを確認した.3.従来のロボットの人間に比べ不自然な走行を改善するため,出力零化制御に基づく走行制御法を提案し,予め計算したパターンを用いることなくシミュレーション上で不整地上の走行と,時速10kmの安定な走行を実現した.1.走行制御の基礎実験として,身長127cm,体重31kg,全12自由度の人間型2足ロボットHRP-2LRを用いて,平地における走行,横走行,うさぎ跳び,片足飛び(けんけん)などの動作を実現した.ここで実現できた走行速度は時速0.58kmであった,走行の高速化を図るため,つま先にバネを挿入する改造を行いHRP-2LTとした.つま先バネを利用する走行パターン生成プログラムを開発し,これによって時速3kmの走行が可能であることをシミュレータ上で確認した.また,両脚ジャンプの実験を行い,空中期0.1s,床面からの高さ約3cmのジャンプを実現した.高速走行時にロボットの姿勢が乱れる問題に対処するため,腰Yaw軸を追加したHRP-2LYを開発した.Yaw軸周りの角運動量を胴体の回転により補償することによって,安定な時速3kmの走行が実現できることをシミュレーションにより確認した.2.ゲイト・モーフィングの考え方に基づき,ZMPの未来軌道の時間伸縮によってバランスを維持する安定化制御方式を検討した.これに基づき安定化制御付きのパターンジェネレータを開発し,シミュレーション上の2足歩行で±3cmの凹凸路面を踏破可能なことを確認した.3.従来のロボットの人間に比べ不自然な走行を改善するため,出力零化制御に基づく走行制御法を提案し,予め計算したパターンを用いることなくシミュレーション上で不整地上の走行と,時速10kmの安定な走行を実現した.走行制御の基礎実験として,身長127cm,体重31kg,全12自由度の人間型2足ロボットHRP-2LRを用いて走行,横走行,うさぎ飛び,片足飛び(けんけん)などの動作を実現した.実現された走行動作は接地期0.3s,空中期0.06s,平均速度0.58km/hであり,床面に凹凸の存在しない平地上で実験を行ったものである.走行の高速化をはかるため,HRP-2LRの足部にバネを挿入する効果についてシミュレーションを行い,適切なバネ定数を決定した.このバネ定数を実現するために,板バネ,ねじりコイルばね等を検討し,ねじりコイルばねを用いることで,必要なバネ定数と動作範囲が得られることを見出した.これを用いて走行中にはバネによるエネルギーの吸収・開放を行う一方,歩行中には通常の足部として機能するメカニズムを設計し,HRP-2LRの足部にこの機能を付加する改造工事を行った.ゲイト・モーフィングによる走行安定化制御の基礎的な解析として,目標軌道の時間スケーリング変化によるダイナミクスへの影響をシミュレーションにより検討し,適切な軌道パラメータの時間スケーリングによって有望な制御性能を得られる見通しを得た.加えて,足部と床面との接地特性を考慮した制御系の設計とシミュレーションをいくつか行い,その性能を評価した.また,人間型の走行ロボットにおける足首の制御論的な意味を考察するため,簡略化したモデルを用いて出力零化に基づく走行制御系を設計し,上半身の姿勢変化による速度制御,足首の構造によるエネルギー効率の違いをシミュレーションにより検討した.この結果,足部なしの点接触の走行に比較して,足部を持ったロボットのほうがエネルギー効率に優れていることが示された.つま先にバネをもつ走行ロボットHRP-2LTに対応した走行パターンジェネレータの開発を行った.つま先バネの特性を生かした走行を行うことによって,現状の関節モータを変更することなく,時速3km(支持期間0.3s,跳躍期間0.06s,一歩0.3m)の走行が可能なことを確認した.さらに,シミュレータ上で関節角度再生だけによる時速3kmの走行が可能なことを確認した.ただし,現状では姿勢の乱れが大きいため実機による実験を行う前に適切な安定化制御系を構築する必要がある.次に,ゲイトモーフィングの考え方を用い,ZMPの未来軌道の時間伸縮によってバランスを維持する安定化制御方式を検討した.その結果,予見制御に基づく歩行パターン生成システムに逆システムを追加し,ZMPの未来軌道の位相を適切にコントロールすることでバランス制御が可能なことを見出した.この手法をパターンジェネレータとして実装し,シミュレーション上で±3cmの凹凸路面を踏破できることを確認した.
KAKENHI-PROJECT-16360129
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16360129
ゲイト・モーフィングによる不整地2足走行の研究
一方,出力零化制御に基づく人間型ロボットの走行運動制御系を構築し,2次元シミュレーション上で時速10kmの安定した連続走行を実現した.この手法は,目標時間軌道をまったく用いずにロバストな走行運動を作り出せる点できわめて有望である.ハードウェアに関しては足部に既存のCFRPを用いた義足を取り付けるアダプターの開発,および,HRP-2LTのオーバーホールを行った.また,2足走行ロボットに要求される大トルクの出力に適した減速装置を考案し,試作を行って基礎的な原理を確認した.つま先にバネをもつ走行ロボットHRP-2LTを実際に走行させる予備実験として,爪先バネを利用した両脚ジャンプの実験を行い,空中期0.1s,床面からの足裏高さ約3cmのジャンプを実現した.また,ジャンプ実験の際にCPUがハングアップを起こす問題について,各種ノイズ対策を施すことにより解決した.また,走行パターンジェネレータの改良を行い,時速3km(支持期間0.3s,跳躍期間0.06s,一歩0.3m)の走行に関して,関節速度限界までの余裕が昨年度より大きなパターンを作成した.また,シミュレータ上でロボットの姿勢が乱れる問題に関しては,腰Yaw軸を追加し,Yaw軸周りの角運動量を胴体の回転により補償することによって,安定した走行が実現できることを確認した.さらにこれを実現するために,新たに腰Yaw軸ユニットと自立走行を可能とするバッテリーを追加した走行ロボットHRP-2LYを試作した.従来の研究に見られる人間の走行と比較して不自然な走行を改善し,より人間に近い自然な走行を実現するために,人間の走行運動を直感的に解釈して得られた出力関数を設定し,出力零化制御を行うことであらかじめ人間型ロボットの関節軌道を与えることなく自然な走行運動を実現できることを鉛直2次元平面内の数値シミュレーションにより示した.また,設定した出力関数中において走行を実現する上で重要な変数を選択し学習により最適化することで,多少の不整地面においても走行が実現できることを数値シミュレーションにより確認した.
KAKENHI-PROJECT-16360129
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16360129
植物の栄養感知に関わるシグナル伝達のリアルタイム可視化解析
このプロジェクトにおいて、我々は新しい低発光水平イメージングシステムを開発した。この新しいシステムは、自然な成長段階を経て生息する植物の根がもつ蛍光タンパク質が低発光イメージングをするためのものである。この新しい植物イメージングシステムを使うと、成長過程にある植物の根の二色蛍光イメージングを可能にしたり、生息する植物の組織内に存在する個々の細胞を区別することができる。よって、新しいイメージングシステムは最初に定めた4つのおもな目的を達成したことになる。その四つの目的とは、i)水平方向に育つ植物の観察をすること。ii)根の組織全体に存在する個々の細胞を区別できること。iii)培地の状態を変更しながら、成長中の根を少なくとも10時間以上の間に渡ってイメージングできること。iv)二色発光イメージングを可能にすること。以上。成長過程の植物の根のホウ酸濃度とその分布をイメージングするための指示薬を東京大学藤原徹先生のグループと共同で開発している。これまでに、ホウ酸に高い親和性で特結合するペプチド配列は知られていなかったが、その存在は有望視されていた(Transue et al. Bioconjug. Chem.2006)。本研究では、ホウ酸に結合する7から12残基の短いアミノ酸配列をファージディスプレイ法でスクリーニングした。168の候補配列には通常のモチーフ検索では明らかな共通配列は見られなかったが、詳細な解析により2残基以上連続するプロリン、セリン、スレオニンが多く存在することが明らかになった。ホウ酸はcis配置の水酸基のペアに強く相互作用することが知られている。現在16配列について親和性をさらに詳細に解析している。さらに、魚住信之先生(東京大学)日び隆雄先生(福井県立大学)らのグループと共同して植物体内でのKAT1カリウムチャネルの活性化をイメージングするための指示薬を開発した。この指示薬はsplit-GFPの補完を利用している。この指示薬の植物への適応と改良を進めている。また、生育中の植物を微小な光の下でイメージングするための顕微鏡を自作している。この顕微鏡は重力に対して自然な方向に置かれた状態で成長が観察できるように水平方向に設置されている。さらに、この顕微鏡のために培養液や気体の交換のできる新しいイメージングチャンバーを開発している。イメージングのための観察光としては定常的な光励起を行うことなく植物の根の長時間観察を行うために生物発光を選択した。この顕微鏡では微弱光での観察に適したEMCCDを用いている。550umから数ミリメーターでの視野での観察が可能であり、多色イメージングを行うための電動フィルターホイールを装備している。このプロジェクトにおいて、我々は新しい低発光水平イメージングシステムを開発した。この新しいシステムは、自然な成長段階を経て生息する植物の根がもつ蛍光タンパク質が低発光イメージングをするためのものである。この新しい植物イメージングシステムを使うと、成長過程にある植物の根の二色蛍光イメージングを可能にしたり、生息する植物の組織内に存在する個々の細胞を区別することができる。よって、新しいイメージングシステムは最初に定めた4つのおもな目的を達成したことになる。その四つの目的とは、i)水平方向に育つ植物の観察をすること。ii)根の組織全体に存在する個々の細胞を区別できること。iii)培地の状態を変更しながら、成長中の根を少なくとも10時間以上の間に渡ってイメージングできること。iv)二色発光イメージングを可能にすること。以上。
KAKENHI-PROJECT-18056002
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18056002
為替管理とその貿易収支に及ぼす影響 : バングラデシュ経済のグローバル化と日本の役割
70年代、80年代のアジア諸国の急速存経済成長は、輸出志向の国際貿易政策が重要な経済政策であること示した。その後の研究により、経済発展のどの段階にある国であっても、輸出競争力の強化が高い経済成長の基本的条件となることが示された。また輸出競争力に大きな影響を与えるのは為替レートであり、実質為替レートを反映した輸出競争力の強さで輸出部門を中心に成長を実現する例と、過大な為替レートを維持し非輸出部門を中心に成長する例があること、知られている。今年度は、引き続き、バングラデッシュの為替管理をめぐる経済環境およびその特徴を解析し、国際貿易競争力の特徴分析、インフレの主要因の解析、金融自由化と長期貨幣需要要因分析、貨幣流通速度の計測とその要因分析などをを行った。これらの成果は、各々、関連する専門誌に投稿中である。今年度は、この他に、インド、バングラデッシュおよびパキスタン間の経済取引を開放化し、統合することによる各国の便益、費用を計測するためのCGEモデルを構築した。大インド圏での経済統合は、政治的には問題の多いところであるが、各国が独自に抱える貧困、経済的脆弱性、地域格差問題などを解決するためには、そのような経済統合の合意に向けて何らかの一歩を踏み出すことが必要であることは認識されている。本研究は、その可能性を経済的メリットから分析し、克服すべき課題を浮き彫りにしたものである。過去には、T.A.Srinivasanによってそのような経済統合のメリットを分析した研究があるが、本研究ではこれとの比較研究が可能になるように諸条件を設定している。焦点は、自由な経済取引を妨げている各国の障害を取り除くことによる様々な便益を計測することである。この研究成果は、来年度の環太平洋国際地域学会東京大会で発表する予定である。70年代、80年代のアジア諸国の急速な経済成長は、輸出志向の国際貿易政策が重要な経済政策であること示した。その後の研究により、経済発展のどの段階にある国であっても、輸出競争力の強化が高い経済成長の基本的条件となることが示された。また輸出競争力に大きな影響を与えるのは為替レートであり、実質為替レートを反映した輸出競争力の強さで輸出部門を中心に成長を実現する例と、過大な為替レートを維持し非輸出部門を中心に成長する例があることも知られている。バングラデシュは輸出志向であり、比較的高い競争力を持つことが知られている。しかしその強さを実現する要因についての研究は、なされていない。この研究では、南アジア諸国の国際競争力を複数の指標により比較し、統計的な手法によりその決定要因を推定した。研究の成果として、全ての比較指標において経済の輸出志向性、実質内外価格差、名目内外価格差が決定要因と推定されることが示された。この事よりバングラデシュの経済政策は過去20年の間に、輸出競争力を強化するために適切な為替政策が取られるように適切に修正されてきたと言える。今後の課題としては、輸出競争力の決定に関する非価格的要因も含め、更に詳細な要因の分析が必要である。70年代、80年代のアジア諸国の急速存経済成長は、輸出志向の国際貿易政策が重要な経済政策であること示した。その後の研究により、経済発展のどの段階にある国であっても、輸出競争力の強化が高い経済成長の基本的条件となることが示された。また輸出競争力に大きな影響を与えるのは為替レートであり、実質為替レートを反映した輸出競争力の強さで輸出部門を中心に成長を実現する例と、過大な為替レートを維持し非輸出部門を中心に成長する例があること、知られている。今年度は、引き続き、バングラデッシュの為替管理をめぐる経済環境およびその特徴を解析し、国際貿易競争力の特徴分析、インフレの主要因の解析、金融自由化と長期貨幣需要要因分析、貨幣流通速度の計測とその要因分析などをを行った。これらの成果は、各々、関連する専門誌に投稿中である。今年度は、この他に、インド、バングラデッシュおよびパキスタン間の経済取引を開放化し、統合することによる各国の便益、費用を計測するためのCGEモデルを構築した。大インド圏での経済統合は、政治的には問題の多いところであるが、各国が独自に抱える貧困、経済的脆弱性、地域格差問題などを解決するためには、そのような経済統合の合意に向けて何らかの一歩を踏み出すことが必要であることは認識されている。本研究は、その可能性を経済的メリットから分析し、克服すべき課題を浮き彫りにしたものである。過去には、T.A.Srinivasanによってそのような経済統合のメリットを分析した研究があるが、本研究ではこれとの比較研究が可能になるように諸条件を設定している。焦点は、自由な経済取引を妨げている各国の障害を取り除くことによる様々な便益を計測することである。この研究成果は、来年度の環太平洋国際地域学会東京大会で発表する予定である。
KAKENHI-PROJECT-02F00290
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02F00290
窒素に基づく地球大気・マントルの進化に関する研究
本研究では、窒素から眺めた地球大気・マントルの進化史を理解するために、窒素のふるまいに関する基礎データとして、窒素の気相/液相分配(珪酸塩メルトへの溶解度)、固相/液相分配(珪酸塩メルトと輝石間の分配)の2点について実験をおこなった。窒素の溶解度に関しては、温度(1300°C-1600°C)圧力(窒素分圧が0.5-1000気圧)の他に酸素分圧(IWバッファーの2桁下-10桁上)を大きく変えて実験をおこなった。窒素分圧依存性はリニアーでヘンリーの法則が成り立っている。温度依存性は小さい。実験条件の範囲内で酸素分圧依存性はみられず、窒素の溶解度はほぼアルゴンの溶解度に等しい。これらの実験結果はすべて、窒素が分子状態で珪酸塩メルトに溶解していることを示唆している。また、酸化的な雰囲気下で気相中に質量数30の窒素分子を過剰に加えておこなった実験では、メルトへの溶解時に窒素の同位体交換がおこらないことが示された。これは窒素が分子状態で溶解していることの直接的な証拠である。固相/液相分配の実験はピストンシリンダー型の装置を用いて、1万5千気圧、1350°C-1270°Cの条件で珪酸塩メルト-輝石結晶のペアを合成しておこなった。鉱物分離の後、それぞれのフェイズの中の希ガスと窒素の濃度を分析して分配係数を求めた。得られた固相/液相分配係数は、窒素で0.06、アルゴンで0.11で大差はなかった。以上ふたつの実験結果を総合して考えると、火成活動によって窒素と希ガスの分別はあまり生じないと結論づけられる。したがって、現在の地球大気とマントルの窒素/アルゴン36の比(1万と100万)が2桁も異なっていることは、火成活動による窒素と希ガスの脱ガス過程の差ではなく、他の過程(たとえばコア形成の際の金属鉄の寄与)を考える必要がある。本研究では、窒素から眺めた地球大気・マントルの進化史を理解するために、窒素のふるまいに関する基礎データとして、窒素の気相/液相分配(珪酸塩メルトへの溶解度)、固相/液相分配(珪酸塩メルトと輝石間の分配)の2点について実験をおこなった。窒素の溶解度に関しては、温度(1300°C-1600°C)圧力(窒素分圧が0.5-1000気圧)の他に酸素分圧(IWバッファーの2桁下-10桁上)を大きく変えて実験をおこなった。窒素分圧依存性はリニアーでヘンリーの法則が成り立っている。温度依存性は小さい。実験条件の範囲内で酸素分圧依存性はみられず、窒素の溶解度はほぼアルゴンの溶解度に等しい。これらの実験結果はすべて、窒素が分子状態で珪酸塩メルトに溶解していることを示唆している。また、酸化的な雰囲気下で気相中に質量数30の窒素分子を過剰に加えておこなった実験では、メルトへの溶解時に窒素の同位体交換がおこらないことが示された。これは窒素が分子状態で溶解していることの直接的な証拠である。固相/液相分配の実験はピストンシリンダー型の装置を用いて、1万5千気圧、1350°C-1270°Cの条件で珪酸塩メルト-輝石結晶のペアを合成しておこなった。鉱物分離の後、それぞれのフェイズの中の希ガスと窒素の濃度を分析して分配係数を求めた。得られた固相/液相分配係数は、窒素で0.06、アルゴンで0.11で大差はなかった。以上ふたつの実験結果を総合して考えると、火成活動によって窒素と希ガスの分別はあまり生じないと結論づけられる。したがって、現在の地球大気とマントルの窒素/アルゴン36の比(1万と100万)が2桁も異なっていることは、火成活動による窒素と希ガスの脱ガス過程の差ではなく、他の過程(たとえばコア形成の際の金属鉄の寄与)を考える必要がある。本年度は、窒素の玄武岩メルトへの溶解度は酸素分圧にどのように依存するかを調べる実験をおこなった。雰囲気をコントロールできる炉の中で玄武岩メルトをつくり、窒素ガスと数時間平衡に置いたのち急冷した。できた玄武岩ガラス中の窒素濃度を分析し、それと雰囲気中の窒素ガス分圧とを比較することにより、窒素の溶解度を求めた。炉の中に、窒素ガスと同時にCO、CO_2ガスを流して酸素分圧を10^<-5>気圧から10^<-11>気圧までコントロールした。また窒素ガスは、質量数15の窒素のみを成分とする窒素ガス(^<15>N^<15>N)でラベルしたものを用い、過剰な^<15>Nの量を分析することにより、大気窒素の二次的な混入の影響を避ける工夫をした。窒素の溶解度は、ヘンリーの定数として、mol/g/atmという単位で求めた。得られた窒素の溶解度は、摂氏1300度のとき、(2-18)x10^<-9>mol/g/atmである。これは同時に測定したアルゴンの溶解度と比較すると数倍高い。また、酸素分圧が下がるほど窒素の溶解度が高くなる傾向が見られるものの、今回実験に用いた酸素分圧の範囲においては、桁がかわるほど著しい依存性は見られなかった。窒素の溶解形態に関しては面白い知見が得られた。
KAKENHI-PROJECT-07454138
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07454138
窒素に基づく地球大気・マントルの進化に関する研究
もとの窒素ガスは同位体的には非平衡であり、質量数30の窒素分子だけが過剰な状態にある。酸素分圧が比較的高い雰囲気で作成した試料から抽出したガスには同位体非平衡が残っていたが、酸素分圧が低い条件で作った試料から抽出したガスは既に平衡化していた。このことは窒素がメルトに溶解する際に一度解離したことを示唆する。窒素の溶解形態に顕著な違いが見られるのに、溶解度の酸素分圧依存性が強くないのは不思議である。さらなる実験が必要である。本研究では、窒素から眺めた地球大気・マントルの進化史を理解するために、窒素のふるまいに関する基礎データとして、窒素の気相/液相分配(珪酸塩メルトへの溶解度)、固相/液相分配(珪酸塩メルトと輝石間の分配)の2点について実験をおこなった。窒素の溶解度に関しては、温度(1300°C-1600°C)圧力(窒素分圧が0.5-1000気圧)の他に酸素分圧(IWバッファー2桁下-10桁上)を大きく変えて実験をおこなった。窒素分圧依存性はリニアーでヘンリーの法則が成り立っている。温度依存性は小さい。実験条件の範囲内で酸素分圧依存性はみられず、窒素の溶解度はほぼアルゴンの溶解度に等しい。これらの実験結果はすべて、窒素が分子状態で珪酸塩メルトに溶解していることを示唆している。また、酸化的な雰囲気下で気相中に質量数30の窒素分子を過剰に加えておこなった実験では、メルトへの溶解時に窒素の同位体交換がおこらないことが示された。これは窒素が分子状態で溶解していることの直接的な証拠である。固相/液相分配の実験はピストンシリンダー型の装置を用いて、1万5千気圧、1350°C-1270°Cの条件で珪酸塩メルト-輝石結晶のペアを合成しておこなった。鉱物分離の後、それぞれのフェイズの中の希ガスと窒素の濃度を分析して分配係数を求めた。得られた固相/液相分配係数は、窒素で0.06、アルゴンで0.11で大差はなかった。以上ふたつの実験結果を総合して考えると、火成活動によつて窒素と希ガスの分別はあまり生じないと結論づけられる。したがって、現在の地球大気とマントルの窒素/アルゴン36の比(1万と100万)が2桁も異なっていることは、火成活動による窒素と希ガスの脱ガス過程の差ではなく、他の過程(たとえばコア形成の際の金属鉄の寄与)を考える必要がある。
KAKENHI-PROJECT-07454138
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07454138
軽元素同位体制御工学の実現に向けたダイヤモンドの物性解明
同位体制御した結晶材料は、シリコンでは材料物性そのものは不変であるが、ダイヤモンドで12C純化した結晶は物質中最高の熱伝導がさらに1.5倍になるなど、「別物質」のような物性を有する。本研究では弾性・熱、光学、電子・量子に関して、物性そのものにフォーカスして計測・解析を行い、同位体制御の効果が物性に及ぼす影響を研究している。「ありふれた軽元素から極めて有用な物質創生」を視野に、同位体に関する知見を得ることを目的として研究を進めた。同位体制御合成に関しては、昨年度見出した高品質ダイヤモンド成長条件を用いて、12C(99.95%)の自立結晶の成長に成功した。また13Cと12Cとの存在比を意図的に制御した結晶を、0.1mm以上の厚みで作製することに成功した。弾性・熱物性に関して、格子定数、弾性定数精密計測の展開として、最近の注目材料である高濃度ドープダイヤモンドの計測を行った。電気抵抗率が1015変化するのに対し、弾性定数はC11で-0.42%の変化に留まるなど、興味深い知見が得られた。光学物性に関して、深紫外CWレーザーを用いた極低温下フォトルミネッセンス(PL)測定により、12Cと13Cの励起子(エキシトン)発光を評価した。その結果、ダイヤモンドのフォノンおよびエキシトンに対する同位体効果を精密に定量することに成功した。電気電子物性計測用に、12C層のみ、13C層のみの厚膜エピタキシャル層および、60nm超薄膜の積層構造を形成した。スウェーデンのウプサラ大学において、飛行時間法(Time of flight)によるキャリア移動に関する実験を実施した。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。同位体制御した結晶材料は、シリコンでは材料物性そのものは不変であるが、ダイヤモンドで12C純化した結晶は物質中最高の熱伝導がさらに1.5倍になるなど、「別物質」のような物性を有する。本研究では弾性・熱、光学、電子・量子に関して、物性そのものにフォーカスして計測・解析を行い、同位体制御の効果が物性に及ぼす影響を研究している。「ありふれた軽元素から極めて有用な物質創生」を視野に、同位体に関する知見を得ることを目的とする。以下、項目ごとに概要を記載する。A-0)同位体制御ダイヤモンド合成:既合成の13C高温高圧基板(試料サイズは2mm角強)を計測のために、レーザー切断による切出し(表面(001)(00-1)、側面(110)(-110)(-1-10)(1-10))及び研磨加工を実施し、光学的計測を実施した。A-1)弾性・熱物性:格子の基本データとして、温度を±0.01°Cに制御した4結晶対称反射型モノクロによる超高測定精度を有するX線回折装置で、かつ各種補正及びブラッグ角依存補正関数を正確に求め、ダイヤモンドの超精密格子定数計測を行うことが可能になった。天然組成の高温高圧による絶縁性結晶で、これまでの最高精度(小数点以下7桁)で格子定数3.5670616Aを求めることができた。高精度かつ共焦点可能なラマン分光によりダイヤモンドの格子振動に関するマッピング計測を実施し、本年度は天然組成結晶で有効性を確認した。A-2)光学物性:高温高圧法によって作製された(001)面と(111)面ダイヤモンド(12C)に対して,極低温下における一軸性応力下フォトルミネッセンス・微分吸収分光法を行い、両実験結果の比較・検討を行った。本研究によって、ダイヤモンドの自由励起子遷移が一軸性応力によって分裂することが初めて観測された。項目ごとに進捗を記載する。A-0)同位体制御ダイヤモンド合成:既合成の13C高温高圧基板(試料サイズは2mm角強)を計測のために、レーザー切断による切出し及び研磨加工を実施し光学的計測を実施した。光学的に異質な部分が同位体濃縮結晶中に含有されており、測定に影響を及ぼした。今後、含有物の除去と併せて、最適条件で成長したCVD結晶の利用を検討していく。A-1)弾性・熱物性:格子の基本データとして、温度を±0.01°Cに制御した4結晶対称反射型モノクロによる超高測定精度を有するX線回折装置で、かつ各種補正及びブラッグ角依存補正関数を正確に求め、ダイヤモンドの超精密格子定数計測を行うことが可能になった。天然組成のHPHT絶縁結晶で、これまでの最高精度(小数点以下7桁)で格子定数3.5670616Aを求めることができ、計測手法として確立することができたので、今後同位体材料に展開する。A-2)光学物性: 12Cダイヤモンドの自由励起子遷移の応力依存性を実験的に得ることができたので,理論と比較することにより12Cダイヤモンドの物性定数の抽出を行っているところである.これらは同位体効果を抽出するための基盤的知見に繋がると考えている。A-3)電気・量子物性:本年度の計画外である。同位体制御した結晶材料は、シリコンでは材料物性そのものは不変であるが、ダイヤモンドで12C純化した結晶は物質中最高の熱伝導がさらに1.5倍になるなど、「別物質」のような物性を有する。本研究では弾性・熱、光学、電子・量子に関して、物性そのものにフォーカスして計測・解析を行い、同位体制御の効果が物性に及ぼす影響を研究している。
KAKENHI-PROJECT-16H03861
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H03861
軽元素同位体制御工学の実現に向けたダイヤモンドの物性解明
「ありふれた軽元素から極めて有用な物質創生」を視野に、同位体に関する知見を得ることを目的とする。以下、項目ごとに概要を記載する。A-0)同位体制御ダイヤモンド合成:酸素を高濃度に供給する成長条件を適用することで、ダイヤモンド厚膜の結晶性を向上できることを見出し、この条件で12C同位体濃縮ダイヤモンド厚膜を成長できる条件を見出した。A-1)弾性・熱物性:超精密測定による格子定数に関して、12C,13C同位体制御ダイヤモンド結晶の計測を実施し、補正項の関連で、従来格子定数は小さく評価されていることが明らかになった。またブリルアン振動法を用いた13C同位体制御ダイヤモンドの弾性定数計測を行い、微小な差を計測することが出来た。A-2)光学物性:深紫外CWレーザーを用いて12Cと13Cのフォトルミネッセンス(PL)スペクトルの温度依存性を評価した。CWレーザーにより極低温励起子を生成することが可能となり、非常に線幅の細いPLスペクトルから12Cと13Cのバンドギャップ差を精密同定することに成功した。また12C/13C超格子試料の時間分解PLスペクトルを世界で初めて取得し、その時間ダイナミクスに関する考察を行った。A-3)電気量子物性:バルク及び薄膜に関して、移動度計測を低温から高温まで実施し、同位体制御の電子物性への依存性を計測するべく、ホール計測のための素子形成プロセスを実施した。項目ごとに進捗を記載する。A-0)同位体制御ダイヤモンド合成:酸素を高濃度に供給する成長条件を適用することで、ダイヤモンド厚膜の結晶性を向上できることを見出した。この条件で12C同位体濃縮メタンを原料に用いることで、12C同位体濃縮ダイヤモンド厚膜を成長できる条件を見出した。A-1)弾性・熱物性: H28年に計測技術を確立した超精密測定による格子定数に関して、12C,13C同位体制御ダイヤモンド結晶の計測を実施した。過去の計測結果と、比較評価することが出来た。補正項の関連で、従来格子定数は小さく評価されていることが明らかになった。またブリルアン振動法を用いた13C同位体制御ダイヤモンドの弾性定数計測を行い、微小な差を計測することが出来た。例として、弾性定数C11は1075.4GPaと計測され、文献値に比べてわずかに-0.3%であることなどが判明した。A-2)光学物性:深紫外CWレーザーを用いて12Cと13Cのバンドギャップ差の精密評価を行うことができたので、本内容については現在論文に取り纏めているところである。また、12C/13C超格子試料の時間分解PL測定については実験結果が出始めたばかりであり、条件を振って実験を行うことで、そのキャリアダイナミクスの解明に取り組んでいる。A-3)電気量子物性:バルク及び薄膜に関して、移動度計測を低温から高温まで実施し、同位体制御の電子物性への依存性を計測するべく、ホール計測のための素子形成プロセスを実施した。次年度計測を行う予定である。同位体制御した結晶材料は、シリコンでは材料物性そのものは不変であるが、ダイヤモンドで12C純化した結晶は物質中最高の熱伝導がさらに1.5倍になるなど、「別物質」のような物性を有する。
KAKENHI-PROJECT-16H03861
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分子レベル制御による細胞膜タンパク質の生体電子移動過程高速化の研究
本研究課題の目的である、生体電子移動の高速化へ向けて、鉄還元細菌Shewanellaをモデル細胞として用い、その細胞外電子移動をその場観察するための分光、ならびに電気化学的手法の開拓を行った。これまでにも、微生物の界面電子移動機構については、精製タンパク質や遺伝子解析を用いた研究が盛んに行われている。一方で、in-vivo条件下において細胞膜上で機能するタンパク質の働きを直接捉えることは実験的に大きな困難を伴うため、多くの点でその機構は未解明のままであり、報告されている電子移動機構の多くは、推測の域を出ないものになっていた。以上の観点から、本研究員は微生物アノード電流密度の向上を目的として、該当分野のモデル微生物である鉄還元細菌Shewanellaを研究対象に、生体電気化学、ならびに分光学的手法の開拓を行うことで、in-vivo電子移動機構にこれまで3年間迫ってきた。その中で、in-vivo電子移動追跡法を開拓し、世界で初めて膜タンパク質の電気化学シグナルの帰属をタンパク質レベルで決定し、EET追跡法の確立を行った。これらの成果は総説執筆の依頼を受け、書籍RecentTrend in Electrochemical Science and Technologyの中の一章として掲載されている。本年度、これまでに開拓したin-vivo電子移動追跡法を基に本研究員は鉄還元細菌Shewanella自己分泌物であるフラビンのEETにおける役割を検討した。フラビン分子によってEETが10倍程度直ちに高速化することが既報において実験的に確かめられており、微生物と電極の間をフラビン分子が電子メディエーターとして拡散・往復する「シャトリングモデル」がそのEET高速化機構として考えられていた。しかし、この高速化モデルには膜タンパク質からフラビンへの間に大きなエネルギー障壁があり、電子移動が熱力学的にほとんど進まないという決定的な矛盾があった。そこで、本研究員がフラビン分子と膜タンパク質の相互作用に関して、in-vivo電気化学の手法を用いることで詳細に調べたところ、膜タンパク質のひとつMtrCとフラビン分子が特異的に相互作用していること、さらにそのMtrCと相互作用しているフラビン分子の量が微生物代謝電流値と正比例の関係にあることを実験的に確かめた。さらにこのような膜シトクロムとフラビン分子の相互作用は、既存のフラビン結合サイトを持っていない膜タンパク質を持つ他微生物においても普遍的な現象であることがその後の実験から明らかになっており、新たなフラビン分子結合サイトの発見に繋がる、生化学の分野において極めて学術的意義の高い成果となることが期待される。本研究員はこの他にも、微生物が集団内で長距離の電子移動過程を媒介する機構にin-vivo電子移動追跡法を基に迫り、微生物燃料電池など実用的な分野へ貢献する成果を世界的学術雑誌であるBioelectrochemistryにおいて発表した。また、EET機構の成果を基に鉄パイプライン防蝕技術の共同開発をJX日鉱日石エネルギー株式会社と行っている。申請者は、今年度の研究において最近微生物燃料電池の分野で盛んに研究されているモデル微生物である鉄還元微生物Shewanellaを用いて、微生物と電極界面における電子移動反応の動力学を分子レベルで検討した。その結果、これまで長年に渡り直接的な証明がなされていなかったShewanella細胞の酸化還元波という電気シグナルの帰属に世界で初めて成功し、その成果を世界的な学術雑誌であるChemBioChemに報告した。具体的な内容としては、まず計画書に書いたようにShewanella細胞内中でも細胞外内膜に存在するシトクロムの吸収スペクトルだけを観測するシステムを用いて、細胞膜シトクロムの活性中心であるヘム鉄と酸素、ならびに一酸化炭素との反応を直接的に分光追跡した。ここで、一酸化炭素とシトクロムが反応すると酸化還元電位は大きく安定化するので、反応後の細胞膜シトクロムを電気化学的に評価してやると、観測していた酸化還元波が一酸化炭素との反応に伴い、期待した酸化還元電位の安定化を示した。以上の結果は、酸化還元波が細胞膜シトクロムに帰属されることを直接的に示す初めて結果となる。さらに、我々は培養条件を工夫することで微生物が一層から二層程度の厚さで電極に張り付いた電極を作成し、その時の酸化還元波を解析した。その結果、これまでわかっていなかった生細胞における電子移動過程の動力学や細胞表面におけるシトクロムの表面被覆率を明らかにすることに成功した。また、以上の成果に基づいて、現在までに研究が大きく進展している。生細胞を用いてシトクロム電子移動過程の温度依存性を検討したところ、5Kという非常に小さい温度変化によって電子移動速度が急速に上昇するという現象を発見した。さらにこのような電子移動速度の加速現象は、9個ある細胞膜シトクロムのうちの一つを遺伝子破壊した際には全く観測されなかった。このことは、細胞膜に存在するシトクロム群が協同的に電子移動機能を発現していることを示す初めての結果であり、燃料電池の実働を考える際に重要な温度条件における知見として重要であるため、現在マイクロアレーなどの分子生物学低手法を用いてより詳細に検討を行っている。本研究課題の目的である、生体電子移動の高速化へ向けて、鉄還元細菌Shewanellaをモデル細胞として用い、その細胞外電子移動をその場観察するための分光、ならびに電気化学的手法の開拓を行った。Shewanella菌は、細胞膜表面に局在化したシトクロムを介して、細胞外に存在する電極などの固体物質に電子を放出することが報告されている。しかし、生細胞は種々の酸化還元分子をその外部に分泌することから、生細胞の電気化学シグナルを特定の蛋白質に帰属し、かつその細胞外電子移動過程を追跡することは困難であった。
KAKENHI-PROJECT-09J08864
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分子レベル制御による細胞膜タンパク質の生体電子移動過程高速化の研究
そこで、申請者は、シトクロムの活性中心であるヘム鉄がNOに高い反応性を有することに着目し、ヘム鉄-NO錯体を生細胞において形成させることで、シトクロム酸化還元特性を選択的に変調させることに成功した。さらに、細胞外シトクロムの遺伝子破壊株を用いることによって、電気化学シグナルのタンパク質レベルでの同定を行った。その結果、細胞膜タンパク質複合体であるOmcA-MtrCAB複合体が直接型電子移反応を媒介し、その電子移動過程が分泌酸化還元分子と比較して100倍以上もの速度で進行することを明らかにした。以上の成果は、Electrochemica Acta(Elsevir)にフルペーパーとして受理された。また、申請者は、長距離電子伝達経路構築によって微生物代謝電流値を増加させる目的で様々な導電物質と微生物の相互作用を検討した。その結果、Shewanella菌が酸化鉄や硫化鉄など自然界に豊富に存在する鉱物材料と共存する環境において、細胞外電子伝達能が飛躍的に向上すること、そして微生物の代謝過程に由来する電流値が100倍程度にまで大幅に増大する現象を見出した。分光学的ならびに電気化学的解析より、この現象が、微生物が鉄鉱物の金属や半導体特性を利用することでシトクロムを介した長距離電子伝達経路の形成に由来することを明らかにした。これまで、細胞外電子移動の効率化を目的とし、電子メディエーターの添加や電極の表面修飾法が用いられてきた。酸化鉄や硫化鉄のような豊富に存在している鉄固体材料によって電流密度が大幅に増加したことは、環境調和型エネルギー変換システムへの構築に向けて、重要な知見であると考えられる。本研究課題の目的である、生体電子移動の高速化へ向けて、鉄還元細菌Shewanellaをモデル細胞として用い、その細胞外電子移動をその場観察するための分光、ならびに電気化学的手法の開拓を行った。これまでにも、微生物の界面電子移動機構については、精製タンパク質や遺伝子解析を用いた研究が盛んに行われている。一方で、in-vivo条件下において細胞膜上で機能するタンパク質の働きを直接捉えることは実験的に大きな困難を伴うため、多くの点でその機構は未解明のままであり、報告されている電子移動機構の多くは、推測の域を出ないものになっていた。以上の観点から、本研究員は微生物アノード電流密度の向上を目的として、該当分野のモデル微生物である鉄還元細菌Shewanellaを研究対象に、生体電気化学、ならびに分光学的手法の開拓を行うことで、in-vivo電子移動機構にこれまで3年間迫ってきた。その中で、in-vivo電子移動追跡法を開拓し、世界で初めて膜タンパク質の電気化学シグナルの帰属をタンパク質レベルで決定し、EET追跡法の確立を行った。これらの成果は総説執筆の依頼を受け、書籍RecentTrend in Electrochemical Science and Technologyの中の一章として掲載されている。
KAKENHI-PROJECT-09J08864
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硫黄酸化細菌のチオシアン加水分解酵素の活性発現調節の解析
本研究ではThiobacillus thioparusのチオシアン分解活性の発現及び制御機構を解明することを目的として、菌体内のチオシアン加水分解酵素の量的変動及び本酵素の阻害剤に対する反応性を調べた。チオシアン加水分解酵素の比活性は、別の利用可能な生育基質であるチオ硫酸が存在することによって低下し、酵素蛋白質の細胞内レベルも高い相関で変動した。さらに酵素タンパクの合成も抑制されていることが明かとなった。以上の結果、本菌のチオシアン分解活性がチオ硫酸によって阻害されるのは蛋白合成での抑制によるものであることが示された。今後は、分解酵素遺伝子の解析を進めることが、本研究で得られた成果をさらに発展させるのに有効であると考えられる。本酵素活性は低濃度のシアン化物によって非拮抗的及び可逆的に阻害される。また、カルボニル基に作用するヒドロキシルアミンによっても阻害を受けることから、活性発現にはカルボニル基が重要な役割を持つことが示唆されている。そこでカルボニル試薬であるborohydride、およびシアンならびにチオシアンの構造類似体であるチオニトロベンゼンシアニド(TNBC)についてその阻害効果を調べた。その結果、本酵素はTNBCよって強く阻害されその部位は活性中心とは異なることが明かとなった。一方、borohydrideはシアン化物やTNBCとは異なる部位で阻害的に作用することが示された。シアン及びTNBCは本酵素に対しともにきわめて低い濃度で作用し、しかも基質と構造が共通することから、酵素の活性中心の近傍あるい活性発現に重要な機能を持つ部位に作用することが考えられる。今後は、基質特異性などの検討を加え酵素化学的な解析も進め、本酵素の作用機作をさらに明かにすることが必要と思われる。本研究ではThiobacillus thioparusのチオシアン分解活性の発現及び制御機構を解明することを目的として、菌体内のチオシアン加水分解酵素の量的変動及び本酵素の阻害剤に対する反応性を調べた。チオシアン加水分解酵素の比活性は、別の利用可能な生育基質であるチオ硫酸が存在することによって低下し、酵素蛋白質の細胞内レベルも高い相関で変動した。さらに酵素タンパクの合成も抑制されていることが明かとなった。以上の結果、本菌のチオシアン分解活性がチオ硫酸によって阻害されるのは蛋白合成での抑制によるものであることが示された。今後は、分解酵素遺伝子の解析を進めることが、本研究で得られた成果をさらに発展させるのに有効であると考えられる。本酵素活性は低濃度のシアン化物によって非拮抗的及び可逆的に阻害される。また、カルボニル基に作用するヒドロキシルアミンによっても阻害を受けることから、活性発現にはカルボニル基が重要な役割を持つことが示唆されている。そこでカルボニル試薬であるborohydride、およびシアンならびにチオシアンの構造類似体であるチオニトロベンゼンシアニド(TNBC)についてその阻害効果を調べた。その結果、本酵素はTNBCよって強く阻害されその部位は活性中心とは異なることが明かとなった。一方、borohydrideはシアン化物やTNBCとは異なる部位で阻害的に作用することが示された。シアン及びTNBCは本酵素に対しともにきわめて低い濃度で作用し、しかも基質と構造が共通することから、酵素の活性中心の近傍あるい活性発現に重要な機能を持つ部位に作用することが考えられる。今後は、基質特異性などの検討を加え酵素化学的な解析も進め、本酵素の作用機作をさらに明かにすることが必要と思われる。チオシアンはコークス製造時の廃液に多量に含まれ、これはCODの原因物質であることから微生物による処理が広く行われている。このチオシアンを単一エネルギー源として利用する事の出来るイオウ酸化細菌Thiobacillus thioparusはチオシアンを硫化カルボニルとアンモニアに加水分解する酵素を細胞内に持つ。本酵素蛋白質はチオシアンを生育基質とした時にのみ合成され、チオ硫酸ではその合成が抑制される誘導酵素であり、また精製された酵素蛋白質はシアン化物によって強く活性阻害を受ける。両物質ともチオシアンを処理する活性汚泥中には廃水成分として高濃度に存在することから、本研究平成5年度においてはこれらの物質が菌体内のチオシアン分解酵素の誘導や酵素活性に与える影響を中心に調べた。1.T.thioparusのwhole cell系では、チオ硫酸の添加によりチオシアン分解はただちに停止した。免疫学的解析により、菌体内の本酵素蛋白のレベルが低下することが明かとなり、その結果チオシアンの分解が阻害を受けることが示唆された。チオ硫酸は精製酵素標品に対しては阻害作用を全く示さないことから、本酵素蛋白質の合成反応における何らかの関与が予想された。尚、本研究平成5年度において申請した超音波破砕機は、予定通り購入されT.thioparusの細胞破砕液の調整に使用されている。2.チオシアン加水分解酵素の精製酵素標品に対する各種阻害剤の影響を検討したところヒドロキシアミンによっても阻害効果がみられる事が明かとなった。この結果、本酵素の活性発現にはカルボニル基が重要な役割をもつ事が示唆された。本研究ではThiobacillus thioparusのチオシアン分解活性の発現及び制御機構を解明することを目的として、菌体内のチオシアン加水分解酵素の量的変動及び本酵素の阻害剤に対する反応性を調べた。チオシアン加水分解酵素の比活性は、別の利用可能な生育基質であるチオ硫酸が存在することによって低下し、酵素蛋白質の細胞内レベルも高い相関で変動した。さらに酵素タンパクの合成も抑制されていることが明かとなった。
KAKENHI-PROJECT-05806010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05806010
硫黄酸化細菌のチオシアン加水分解酵素の活性発現調節の解析
以上の結果、本菌のチオシアン分解活性がチオ硫酸によって阻害されるのは蛋白合成での抑制に因るものであることが示された。今後は、分解酵素遺伝子の解析を進めることが、本研究で得られた成果をさらに発展させるのに有効であると考えられる。本酵素活性は低濃度のシアン化物によって非拮抗的及び可逆的に阻害される。また、カルボニル基に作用するヒドロシイルアミンによっても阻害を受けることから、活性発現にはカルボニル基が重要な役割を持つことが示唆されている。そこでカルボニル試薬であるborohydride、およびシアンならびにチオシアンの構造類似体であるチオニトロベンゼンシアニド(TNBC)についてその阻害効果を調べた。その結果、本酵素はTNBCによって強く阻害されその部位は活性中心とは異なることが明かとなった。一方、borohydrideはシアン化物やTNBCとは異なる部位で阻害的に作用することが示された。シアン及びTNBCは本酵素に対しともにきわめて低い濃度で作用し、しかも基質と構造が共通することから、酵素の活性中心の近傍あるいは活性発現に重要な機能を持つ部位に作用することが考えられる。今後は、基質特異性などの検討を加え酵素化学的な解析も進め、本酵素の作用機作をさらに明かにすることが必要と思われる。
KAKENHI-PROJECT-05806010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05806010
新規抗動脈硬化因子 神経型NO合成酵素の血管壁遺伝子発現調節機構の解明
【目的】一酸化窒素(NO)合成酵素には、内皮型(eNOS)・誘導型(iNOS)・神経型(nNOS)の3種類のアイソフォームが存在する。eNOSやiNOSが動脈硬化において重要な役割を果たすことは広く知られているが、nNOSの役割は不明である。申請者は、nNOSも血管病変に発現し抗動脈硬化因子として機能することを初めて報告した。本研究では、nNOSの血管壁遺伝子発現調節機構を解明することを目的とした。【方法と結果】1.マウス頚動脈結紮モデル及びラットバルーン傷害モデルにおいて、傷害後の血管壁細胞にnNOS蛋白の発現が認められた。2.ラット大動脈平滑筋培養細胞において、アンジオテンシンII及びインターロイキン-1βは、nNOS mRNA及び蛋白の発現を有意に増加させた。この増加は、Nuclear factor-κB(NF-κB)阻害薬によって有意に抑制された。【総括】我々は、本研究において、(1)nNOSが傷害後の血管病変に誘導されること、(2)その機序にはアンジオテンシンII、インターロイキン-1β、PDGFなどの炎症性/増殖性刺激が関与していること、(3)さらにNF-κBやMAPKを介したシグナル伝達経路が血管壁nNOS発現において重要であることを明らかにした。本研究は、「神経系では恒常的に発現するnNOSが、血管系では発現調節を受けている」ことを初めて見出し、血管壁細胞におけるnNOSの発現調節機構を詳細に解明した点で学術的に意義があると考えられた。【目的】一酸化窒素(NO)合成酵素には、内皮型(eNOS)・誘導型(iNOS)・神経型(nNOS)の3種類のアイソフォームが存在する。eNOSやiNOSが動脈硬化において重要な役割を果たすことは広く知られているが、nNOSの役割は不明である。申請者は、nNOSも血管病変に発現し抗動脈硬化因子として機能することを初めて報告した。本研究では、nNOSの血管壁遺伝子発現調節機構を解明することを目的とした。【方法と結果】1.マウス頚動脈結紮モデル及びラットバルーン傷害モデルにおいて、傷害後の血管壁細胞にnNOS蛋白の発現が認められた。2.ラット大動脈平滑筋培養細胞において、アンジオテンシンII及びインターロイキン-1βは、nNOS mRNA及び蛋白の発現を有意に増加させた。この増加は、Nuclear factor-κB(NF-κB)阻害薬によって有意に抑制された。【総括】我々は、本研究において、(1)nNOSが傷害後の血管病変に誘導されること、(2)その機序にはアンジオテンシンII、インターロイキン-1β、PDGFなどの炎症性/増殖性刺激が関与していること、(3)さらにNF-κBやMAPKを介したシグナル伝達経路が血管壁nNOS発現において重要であることを明らかにした。本研究は、「神経系では恒常的に発現するnNOSが、血管系では発現調節を受けている」ことを初めて見出し、血管壁細胞におけるnNOSの発現調節機構を詳細に解明した点で学術的に意義があると考えられた。【目的】【方法と結果】1.血管壁nNOSアイソフオームの同定nNOSにはαとμの少なくとも2種類のアイソフォームが存在する。これらのアイソフォームを特異的に認識するprimerを作製し、ラット大動脈平滑筋培養細胞においてRT-PCRを行ったところ、両アイソフォームの発現が認められた。2.血管壁nNOS発現調節機構の検討ラット大動脈平滑筋培養細胞をAngiotensin II(10^<-7>M)で24時間刺激すると、RT-PCR及びWertern blot解析によるnNOSαmRNA及び蛋白レベルが有意に増加した。IL1-β(10μg/ml)刺激も同様に、nNOSαmRNA及び蛋白レベルを有意に増加させた。一方、両刺激はnNOSμの発現は逆に有意に低下させた。【総括】平成14年度の成果として、(1)ラット大動脈平滑筋培養細胞に発現するnNOSアイソフォームを同定し、さらに(2)炎症性刺激(Angiotensin II/IL1-β)が同細胞のnNOS発現を有意に増加させることを明らかにすることが出来た(結果の一部を2003年3月の日本循環器学会で発表予定)。平成15年度は、血管壁nNOS発現の分子機構をさらに解析し、加えて血管病変におけるNOSアイソフォームの相互連関を明らかにして、抗動脈硬化機構としての血管壁NOSシステムの意義の全容の解明を目指す予定である。【目的】我々は、神経型NO合成酵素(nNOS)が新規抗動脈硬化因子として機能することを見出した(FASEB J.2002)。本研究では、血管壁細胞におけるnNOSの発現調節機構を解明することを目的とした。【方法】ラット大動脈平滑筋培養細胞を実験に使用した。nNOS mRNAの発現はRT-PCRで、nNOS蛋白の発現はWestern blotで評価した。【総括】平成15年度の成果として、PDGFがMAP kinaseを介して血管平滑筋細胞のnNOS発現を増加させること、及びAngiotensin II/Interleukin-1betaもNF-kBを介して同細胞のnNOS発現を増加させることを明らかにすることが出来た。神経系では恒常的に発現するnNOSが、血管系では炎症性/増殖性刺激によって発現調節を受けていることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-14570096
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14570096
インド洋西域島嶼社会における包摂・接合・分離をめぐる共和制と多元問題の共同研究
本研究は、フランス共和制の下で併合ないし独立を経験すると共に、政治・外交・経済及び人の移動の点で17世紀から強い結びつきを保持しているインド洋西域島嶼社会において、国家的制度の変遷及び人びとの生活の営みを通し、文化的・社会的な人びとの集合的差異の形成が、多元性と言う共和制に対する脅威として表出される脈絡及びその脅威に対する制度的・日常的な応答を、臨地調査と文献調査に基づいて、包摂・接合・分離の位相から解明することを目的とする。インド洋西域島嶼社会は、フランス共和制の影響を受けながらも、共和制・連合制・海外県と異なる組織形態及び異なる文化的基盤を持つため、上記の問題を検証する点で好適である。本研究は、フランス共和制の下で併合ないし独立を経験すると共に、政治・外交・経済及び人の移動の点で17世紀から強い結びつきを保持しているインド洋西域島嶼社会において、国家的制度の変遷及び人びとの生活の営みを通し、文化的・社会的な人びとの集合的差異の形成が、多元性と言う共和制に対する脅威として表出される脈絡及びその脅威に対する制度的・日常的な応答を、臨地調査と文献調査に基づいて、包摂・接合・分離の位相から解明することを目的とする。インド洋西域島嶼社会は、フランス共和制の影響を受けながらも、共和制・連合制・海外県と異なる組織形態及び異なる文化的基盤を持つため、上記の問題を検証する点で好適である。
KAKENHI-PROJECT-19KK0021
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FISH法,SKY法とゲノムアレイを用いた中枢神経悪性リンパ腫の染色体転座の解析
当教室で確立したパラフィン包埋切片を用いた組織FISH法(Nomura K et al. Genes Chromosomes Cancer 2002;33:213)を用いて,8症例を解析対象として,初発および再発の中枢神経悪性リンパ腫(CNSL)の特異的IGH転座と遺伝子再構成を検討した.IGH-CCND1,IGH-BCL2,IGH-c-MYCの融合シグナルの有無およびBCL3スプリット,BCL6スプリット,IGHスプリットの有無について組織FISH法を施行し,1例にBCL6スプリットを認めたが,他の症例では融合シグナル,スプリットいずれも認めていない.さらにこれらの症例のうち1例にCXCL13の発現を確認した.一方,臨床所見については,中枢神経悪性リンパ腫の治療は全脳照射やメソトレキセート(MTX)大量療法等の報告がなされているが,特に再発性CNSLの予後は極めて不良であり,生存期間(OS)中央値、無増悪生存期間(PFS)中央値はそれぞれ6ヶ月,5ヶ月以内である.今回,ガンマナイフを施行した再発性CNSLの6症例(原発は頭蓋内が2例,全身性が4例)を解析し,治療効果については完全寛解(CR)が4例,部分寛解(PR)と不変(SD),予後については初回GKRからのPFS中央値は11ヶ月,OS中央値は17ヶ月と良好な結果を得た(International Journal of Hematology 2007;85:333).現在,予後を含めた臨床像と染色体異常との関連についても検討を加えている.当教室で確立したパラフィン包埋切片を用いた組織FISH法(Nomura K et al.Genes Chromosomes Cancer 2002;33:213)を用いて,25症例を解析対象として,初発および再発の中枢神経悪性リンパ腫(CNSL)の特異的IGH転座と遺伝子再構成を検討中である.平成18年度の時点で8例について,IGH-CCND1,IGH-BCL2,IGH-c-MYCの融合シグナルの有無およびBCL3スプリット,BCL6スプリット,IGHスプリットの有無について組織FISH法を施行し,1例にBCL6スプリットを認めたが,他の症例では融合シグナル,スプリットいずれも認めていない.一方,臨床所見については,中枢神経悪性リンパ腫の治療は全脳照射やメソトレキセート(MTX)大量療法等の報告がなされているが,特に再発性CNSLの予後は極めて不良であり,生存期間(OS)中央値、無増悪生存期間(PFS)中央値はそれぞれ6ヶ月,5ヶ月以内である.今回,ガンマナイフを施行した再発性CNSLの6症例(原発は頭蓋内が2例、全身性が4例)を解析し,治療効果については完全寛解(CR)が4例,部分寛解(PR)と不変(SD),予後については初回GKRからのPFS中央値は11ヶ月,OS中央値は17ヶ月と良好な結果を得た(International Journal of Hematology, in press).今後,予後を含めた臨床像と染色体異常との関連についても検討を加える予定である.当教室で確立したパラフィン包埋切片を用いた組織FISH法(Nomura K et al. Genes Chromosomes Cancer 2002;33:213)を用いて,8症例を解析対象として,初発および再発の中枢神経悪性リンパ腫(CNSL)の特異的IGH転座と遺伝子再構成を検討した.IGH-CCND1,IGH-BCL2,IGH-c-MYCの融合シグナルの有無およびBCL3スプリット,BCL6スプリット,IGHスプリットの有無について組織FISH法を施行し,1例にBCL6スプリットを認めたが,他の症例では融合シグナル,スプリットいずれも認めていない.さらにこれらの症例のうち1例にCXCL13の発現を確認した.一方,臨床所見については,中枢神経悪性リンパ腫の治療は全脳照射やメソトレキセート(MTX)大量療法等の報告がなされているが,特に再発性CNSLの予後は極めて不良であり,生存期間(OS)中央値、無増悪生存期間(PFS)中央値はそれぞれ6ヶ月,5ヶ月以内である.今回,ガンマナイフを施行した再発性CNSLの6症例(原発は頭蓋内が2例,全身性が4例)を解析し,治療効果については完全寛解(CR)が4例,部分寛解(PR)と不変(SD),予後については初回GKRからのPFS中央値は11ヶ月,OS中央値は17ヶ月と良好な結果を得た(International Journal of Hematology 2007;85:333).現在,予後を含めた臨床像と染色体異常との関連についても検討を加えている.
KAKENHI-PROJECT-18890161
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18890161
イオンチャネルの機能に対する水の役割
電位依存性イオンチャネルの開閉時間は溶液の物理的な特性(粘性・浸透圧)により決定されているが、脂質2重膜の物理的性質は動作時間に関与していない。イオンチャネルが水溶液中で機能する所以である。非電解質添加によりイカK電流の時間経過は緩やかになるが、この効果はイカNaチャネルの開閉の時間経過が遅くなることと同様に、溶液粘性の効果により説明できる。更にKチャネルは高浸透圧溶液中で、開きやすくなるという新たな事実が判明した。これは重要な知見である。Kチャネルは高浸透圧ストレス(イオンチャネル・ポア)から水を取り除くような力が加わると閉じやすくなるというのが従来の定説であるが、それと逆方向である。イカKチャネルで得られた、この発見に対して幾つかの疑問点がある。単一のイカKチャネル(遅延性整流Kチャネル)が、浸透圧増加により開き易くなった(Kチャネルは開状態で、水の含量が減少するか、ポア内容積が減少する)のか、別種のKチャネルが高浸透圧下で軸索膜に新たに発現したかは現時点では明確に出来なかった。構造データベース(PDB)のデータを用い、Kチャネル(KcsA)のポア内構造をコンピュータにより調べた結果、その内容積は蔗糖による浸透圧効果により求められる開状態で容積減少「水60分子程度」と同程度の値を持ち、浸透圧効果で得られる値が、ポアの内容積の変化により説明できることを確認した。電位依存性イオンチャネルの開閉時間は溶液の物理的な特性(粘性・浸透圧)により決定されているが、脂質2重膜の物理的性質は動作時間に関与していない。イオンチャネルが水溶液中で機能する所以である。非電解質添加によりイカK電流の時間経過は緩やかになるが、この効果はイカNaチャネルの開閉の時間経過が遅くなることと同様に、溶液粘性の効果により説明できる。更にKチャネルは高浸透圧溶液中で、開きやすくなるという新たな事実が判明した。これは重要な知見である。Kチャネルは高浸透圧ストレス(イオンチャネル・ポア)から水を取り除くような力が加わると閉じやすくなるというのが従来の定説であるが、それと逆方向である。イカKチャネルで得られた、この発見に対して幾つかの疑問点がある。単一のイカKチャネル(遅延性整流Kチャネル)が、浸透圧増加により開き易くなった(Kチャネルは開状態で、水の含量が減少するか、ポア内容積が減少する)のか、別種のKチャネルが高浸透圧下で軸索膜に新たに発現したかは現時点では明確に出来なかった。構造データベース(PDB)のデータを用い、Kチャネル(KcsA)のポア内構造をコンピュータにより調べた結果、その内容積は蔗糖による浸透圧効果により求められる開状態で容積減少「水60分子程度」と同程度の値を持ち、浸透圧効果で得られる値が、ポアの内容積の変化により説明できることを確認した。Naチャネルは脂質二重相膜に支持されて機能している膜蛋白質であるが、脂質二重層膜の物理的性質ではなく、周りの水溶液の物理的状態により、その機能が影響を受けることを世界に先駆けて発見していたが、その分子的な機構を蛋白質科学の視点に立って明らかにした。イカ巨大神経線維の細胞内灌流標本を用いて、細胞内外に高濃度の非電解質を含む溶液を流すと、Naチャネルに関するイオン電流やゲート電流の時間経過は遅くなる。分子量の異なる非電解質による時間経過の変化を詳細に解析した結果、この現象を溶液の粘性と浸透圧の効果に分離することが出来た。電位駆動型のNaチャネルの電位センサーは溶液の粘性によりその動作時間が決定され、水やイオンを通すポア部分は溶液の浸透圧の影響を受けることを明らかにした。これらの現象は、電位センサー及びその支えとなる周りの構造は親水性で揺らぎの大きな構造を持つことを示している。ポアは比較的堅い構造を持ち、非電解質を大きさにより選別できる構造を持っていることが明らかになった。このような実験データに基づき、高次構造データを利用し分子機構の解明を目指す計算機を用いた研究も開始している。本研究は生体における水の役割一端を示しているもので、本研究で明らかになった現象は、蛋白質が真空中ではなく水の中で機能していることに由来し、生体分子機械の動作原理の一つを示している。本研究のうち、ヤリイカ巨大神経線維の実験は京都府与謝郡伊根町にある生理学研究所・伊根実験室で行った。電位依存性イオンチャネルの開閉時間は溶液の物理的な特性(粘性・浸透圧)により決定されている。イオンチャネル蛋白質が真空中ではなく水の中で動作するゆえんである。一方で、脂質2重膜の物理的性質は動作時間に関与していない。本研究では、Naチャネル及びKチャネルの動作時間に対する非電解質効果をイカ巨大軸索を用いた実験で詳細に調べ、両者における効果の差違から、イオンチャネルの構造特にポアの構造に対する新たな情報を得ることを目指した。特に、既に発表されているKチャネル・ポアの3次元構造に則して、非電解質・水のポアに対する効果を理論的に解析することを目指した。実際の実験データでは、電位センサーに対する粘性の効果は、Na及びKチャネルで同様に観察される。これはイオンチャネルの電位依存性開過程はタンパク質の揺らぎの特性に根ざした構造変化であることで説明できた。ポアに対する効果は、Naチャネルでは浸透圧増加で閉じ易くし、逆にKチャネルでは開き易くした。Kチャネルでは水を含むポア内容積が、常識とは逆に開状態では小さくなることを示している。
KAKENHI-PROJECT-12670053
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12670053
イオンチャネルの機能に対する水の役割
Kチャネル・ポアの3次元構造に則して考えると、可能なモデルである。
KAKENHI-PROJECT-12670053
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イノラートを用いた回転選択的オレフィン化反応の体系化と機能性分子の合成
イノラートを用いた回転選択的オレフィン化反応を精査するため、アルキン酸エステルのオレフィン化を行い、一般性を検討した。また、応用展開として、得られたオレフィンの分子内環化を試みた。まず、イノラートとアルキン酸エステルとの反応を行ったところ、アルコキシ基がoutward回転したE-オレフィンが高収率・高立体選択的に得られた。すなわち、アルコキシ基はアルキニル基に比べより強い電子受容性基として機能したことになる。また、本反応が高い基質一般性を有していることが明らかになった。次に、得られたオレフィンの分子内環化を試みた。まず、DMF中炭酸銀を触媒とすると、選択的に5-exo環化が進行しテトロン酸が得られた。一方、塩化メチレン中炭酸銀に加え酢酸(ブレンステッド酸)を共存させることにより、選択的6-endo環化が進行しピロンを得ることに成功した。さらに本環化反応の応用として、両環化体の細胞毒性を評価した。その結果、TES置換のテトロン酸が最も強い毒性を示し、そのIC_<50>は24.7μMであった。以上、イノラートを用いたアルキン酸エステルのオレフィン化反応において、高度な回転選択性の制御を実現し、アルキニル基に比ベアルコキシ基がより強い電子供与性基であることを明らかにした。また、得られたオレフィンの分子内環化を行い、テトロン酸とピロンの選択的合成に成功した。本反応は、短工程で調製可能なエンインカルボン酸から簡便な操作でテトロン酸とピロンを作り分けることのできる、有用な手法と考えられる。イノラートを用いた回転選択的オレフィン化反応を精査するため、硫黄置換基およびアルキンによる幾何異性制御を試みた。まず、イノラートとα-アルキルチオケトンとの反応を行ったところ、1-アルキルチオエチル基がinward回転したZ-オレフィンが高収率・高立体選択的に得られた。すなわち、硫黄置換基は電子受容性基として機能したことになる。次に、アルキノンのオレフィン化を試みたところ、アルキニル基がoutward回転したオレフィンを高い立体選択性で得た。一方、アルキン酸エステルを基質とした場合には、アルキニル基がinward回転、アルコキシル基がoutward回転したオレフィンが得られた。つまり、電子供与性基としての強さは、アルコキシル基>アルキニル基>アルキル基の順となることが明らかとなった。これらの実験結果に対し、理論化学計算による解析を試みた。α-チオケトンおよびアルキノンのオレフィン化における遷移状態を密度汎関数法で求め、さらにNBO(Natural Bond Orbitals)解析を行った。その結果、α-チオケトンからZ-オレフィンを与える遷移状態6ではオキセテンの開裂するσ(C-O)軌道とアルキルチオエチル基のσ*(G-S)軌道との間に二次軌道相互作用が確認でき、硫黄置換基の電子受容性が示された。また、アルキノンからE-オレフィンを与える遷移状態7ではオキセテンの開裂するσ*(C-O)軌道とアルキンのπ(C-C)軌道との間に二次軌道相互作用が見られ、アルキニル基の電子供与性を確認することに成功した。以上、イノラートを用いたαチオケトン、アルキノン及びアルキン酸エステルのオレフィン化反応において、高度な回転選択性の制御を初めて実現した。また、理論化学計算により、遷移状態における二次軌道相互作用が、選択性発現に重要な役割を果たしていることを明らかにした。イノラートを用いた回転選択的オレフィン化反応を精査するため、アルキン酸エステルのオレフィン化を行い、一般性を検討した。また、応用展開として、得られたオレフィンの分子内環化を試みた。まず、イノラートとアルキン酸エステルとの反応を行ったところ、アルコキシ基がoutward回転したE-オレフィンが高収率・高立体選択的に得られた。すなわち、アルコキシ基はアルキニル基に比べより強い電子受容性基として機能したことになる。また、本反応が高い基質一般性を有していることが明らかになった。次に、得られたオレフィンの分子内環化を試みた。まず、DMF中炭酸銀を触媒とすると、選択的に5-exo環化が進行しテトロン酸が得られた。一方、塩化メチレン中炭酸銀に加え酢酸(ブレンステッド酸)を共存させることにより、選択的6-endo環化が進行しピロンを得ることに成功した。さらに本環化反応の応用として、両環化体の細胞毒性を評価した。その結果、TES置換のテトロン酸が最も強い毒性を示し、そのIC_<50>は24.7μMであった。以上、イノラートを用いたアルキン酸エステルのオレフィン化反応において、高度な回転選択性の制御を実現し、アルキニル基に比ベアルコキシ基がより強い電子供与性基であることを明らかにした。また、得られたオレフィンの分子内環化を行い、テトロン酸とピロンの選択的合成に成功した。本反応は、短工程で調製可能なエンインカルボン酸から簡便な操作でテトロン酸とピロンを作り分けることのできる、有用な手法と考えられる。
KAKENHI-PROJECT-08J04914
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地域発展・政府の役割・社会構造-フィリピンと他のアジア諸国との比較研究-
本研究班の活動は、フィリピンにおける経済・社会発展の現況を明らかにし、他の東南アジア諸国との比較によりその発展の固有パターンを解明することを目標としている。平成7年度においては、急速に変化しつつあるフィリピン社会・経済の諸側面について、各メンバーがそれぞれのテーマにそって研究活動を行ない、その成果を公刊した(11,参照)。研究実績の概要は以下のとおりである。1)福井は、フィリピンにおける農地改革や緑の革命が稲作農村における所得水準・所得分配におよぼした影響を数置的に推計すると同時に、農村制度(土地・労働・信用)がどのように変化し、それが農家経済にどのような影響を与えたのかを理論的、実証的に解明した。また、フィリピンにおける青果物流通システムをタイ国と比較し、フィリピンでは「スキ」と呼ばれる「顧客関係」がより重要な役割を果たしていることを明らかにした。2)永田は、フィリピンにおける森林の減少を横断面データを用いて計量的に分析し、森林減少が、森林面積、非農林地面積、森林の質、首都マニラからの距離などの因子によって説明されることを明らかにした。3)永野は、80年代半ば頃から顕著になってきたフィリピン砂糖産業の衰退が、従来の砂糖きび農園主と農園労働者との間のパトロンニクライエント関係を急速に弛緩させ、農園労働者がNGOなどの支援を受け自立しようとする試みが増加していることをケース・スタディーにより明らかにした。本研究班の活動は、フィリピンにおける経済・社会発展の現況を明らかにし、他の東南アジア諸国との比較によりその発展の固有パターンを解明することを目標としている。平成7年度においては、急速に変化しつつあるフィリピン社会・経済の諸側面について、各メンバーがそれぞれのテーマにそって研究活動を行ない、その成果を公刊した(11,参照)。研究実績の概要は以下のとおりである。1)福井は、フィリピンにおける農地改革や緑の革命が稲作農村における所得水準・所得分配におよぼした影響を数置的に推計すると同時に、農村制度(土地・労働・信用)がどのように変化し、それが農家経済にどのような影響を与えたのかを理論的、実証的に解明した。また、フィリピンにおける青果物流通システムをタイ国と比較し、フィリピンでは「スキ」と呼ばれる「顧客関係」がより重要な役割を果たしていることを明らかにした。2)永田は、フィリピンにおける森林の減少を横断面データを用いて計量的に分析し、森林減少が、森林面積、非農林地面積、森林の質、首都マニラからの距離などの因子によって説明されることを明らかにした。3)永野は、80年代半ば頃から顕著になってきたフィリピン砂糖産業の衰退が、従来の砂糖きび農園主と農園労働者との間のパトロンニクライエント関係を急速に弛緩させ、農園労働者がNGOなどの支援を受け自立しようとする試みが増加していることをケース・スタディーにより明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-07203109
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MRIを用いたスポーツ心臓および病的心臓の形態的・機能的比較-容量負荷型、圧負荷型について-
心形態・機能の運動に対する適応と病的な適応についてMRIを用いて比較検討した。被検者はスポーツ心臓群、病的心臓群、対照群とし、容量負荷型スポーツ心臓の代表として競技ランナー(S-V:5名)、圧負荷型として重量挙げ選手(S-P:5名)、また、容量負荷型心疾患の代表として拡張型心筋症患者(DCM:5名)、圧負荷型心疾患として肥大型心筋症患者(HCM:5名)、および対照群として一般健康成人(C:5名)を用いた。General Electric社製核磁気共鳴断層撮影装置を用い、各心周期で必要なMRI画像を撮影し、コンピュータ処理を行った。得られた画像より最大拡張末期径(Dd)、最大収縮末期径(Ds)、左室後壁厚(LVPWT)、心室中隔壁厚(IVST)などの形態的情報や、左室拡張末期容量(LVEDV)、左室収縮末期容量(LVESV)、一回拍出量(SV)、左室内径短縮率(FS)、壁応力(R/Th)などの機能的指標を求めた。主な結果としてS-V群ではR/Thは正常範囲内であったが、FSは有意に減少していた(p<0.05)。DCM患者ではR/Thは有意に増大(p<0.01)し、FSは有意に減少していた(p<0.01)。S-P群ではFSは正常範囲内であったが、R/Thは有意に減少していた(p<0.01)。HCM患者ではFSは正常範囲内であったが、R/Thは有意に減少していた(p<0.01)。以上のことより、安静時ではS-V群とDCM群、S-P群とHCM群とが似通った形態・機能を示しており、心筋に対する負荷条件の違いによって適応状況も異なることが示唆された。しかしながら、運動時における心機能の適応については不明な点が多く今後の検討が必要であろう。心形態・機能の運動に対する適応と病的な適応についてMRIを用いて比較検討した。被検者はスポーツ心臓群、病的心臓群、対照群とし、容量負荷型スポーツ心臓の代表として競技ランナー(S-V:5名)、圧負荷型として重量挙げ選手(S-P:5名)、また、容量負荷型心疾患の代表として拡張型心筋症患者(DCM:5名)、圧負荷型心疾患として肥大型心筋症患者(HCM:5名)、および対照群として一般健康成人(C:5名)を用いた。General Electric社製核磁気共鳴断層撮影装置を用い、各心周期で必要なMRI画像を撮影し、コンピュータ処理を行った。得られた画像より最大拡張末期径(Dd)、最大収縮末期径(Ds)、左室後壁厚(LVPWT)、心室中隔壁厚(IVST)などの形態的情報や、左室拡張末期容量(LVEDV)、左室収縮末期容量(LVESV)、一回拍出量(SV)、左室内径短縮率(FS)、壁応力(R/Th)などの機能的指標を求めた。主な結果としてS-V群ではR/Thは正常範囲内であったが、FSは有意に減少していた(p<0.05)。DCM患者ではR/Thは有意に増大(p<0.01)し、FSは有意に減少していた(p<0.01)。S-P群ではFSは正常範囲内であったが、R/Thは有意に減少していた(p<0.01)。HCM患者ではFSは正常範囲内であったが、R/Thは有意に減少していた(p<0.01)。以上のことより、安静時ではS-V群とDCM群、S-P群とHCM群とが似通った形態・機能を示しており、心筋に対する負荷条件の違いによって適応状況も異なることが示唆された。しかしながら、運動時における心機能の適応については不明な点が多く今後の検討が必要であろう。
KAKENHI-PROJECT-05780064
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05780064
マルチエージェントモデルによる国際政治秩序変動の研究
国際関係論の重要分野である秩序変動の研究を、近年世界的に注目を集めているマルチエージェント技法を用いて行った。理論的観念的なレベルにとどまらず、政府内、住民集団間、国家間等さまざまなレベルの国際関係の事例についての実証研究に用いるためにモデル構築をおこなった。構築したモデルは、具体的な事象について高い再現性を示すことに成功し、それらの成果を書籍や論文のかたちで公表できた。本研究は、国際関係論における理論と方法としてマルチエージェント・シミュレーション(以下MAS)の可能性を追求する。これまで、山影進・服部正太(編著)『コンピュータのなかの人工社会』(2002)や山影進『人工社会構築指南』(2007)、山本和也『ネイションの複雑性』(2007)といった形で成果を示してきたMASを、国際秩序の変動という重要課題に適用して、国際関係論においてMAS技法の導入をさらにすすめるものである。また、本研究を進めることにより、MASが既に導入され始めた社会科学の他分野との意思疎通や連携強化、国際関係論の研究・教育に特化して-層利用しやすいマルチエージェントシミュレータの開発にも資することもめざしている。国際政治秩序の変動は、覇権の交代や帝国の盛衰といった数世紀にわたる問題や、国際通貨制度の変化や国際環境レジームの生成といった世代単位の問題が従来から注目されてきた。さらに、破綻国家や内戦・地域紛争をめぐる問題など国家を相対化する問題にも関心が高まっている。このようなアナーキー(無政府)という状態で秩序が生成・変動・崩壊する問題へのアプローチとして、ミクロなレベルにおける主体(エージェント)の相互作用をマクロなレベルにおける創発(秩序生成)に関連づけるMASは非常に有望な研究手法である。しかし現状では、日本でも海外でも、MASは、抽象度の高いモデルの解析にとどまっており、現実の秩序変動と結びつけられた研究はほとんどない。このような欠点を克服し、この技法の特徴を活かした国際政治秩序変動の研究の前進が必要とされている。以上のような学術的背景を受けて、本研究は、第一に、国家や国家自体を構成する下部主体などの各種の行為主体(エージェント)どうしの相互作用から自己組織化されるものとして国際政治秩序を捉え、国際関係論で重要な-角を占めている秩序研究の新しい方向を開拓する。第二に、最近注目され始めたMAS技法の可能性を最大限に引き出すことにより、国際政治秩序変動の構造と過程を、モデル分析と実証研究と具体的に関連づけながら、解明しようとするものである。これにより、国際関係論の方法としてのMASの有用性を示そうとするものである。国際関係論の重要分野である秩序変動の研究を、近年世界的に注目を集めているマルチエージェント技法を用いて行った。理論的観念的なレベルにとどまらず、政府内、住民集団間、国家間等さまざまなレベルの国際関係の事例についての実証研究に用いるためにモデル構築をおこなった。構築したモデルは、具体的な事象について高い再現性を示すことに成功し、それらの成果を書籍や論文のかたちで公表できた。本本研究の目的は、国際関係論の重要分野である秩序についての研究をすすめつつ、マルチエージェントシミュレーション技法の可能性を追求することである。シミュレーションモデル分析と実証研究を具体的に関連づけながら、国際政治秩序変動の解明をめざしている。(A)(1)国際関係論でのこれまでのマルチエージェントシミュレーション研究の問題点の批判、(2)にも関わらずこの技法がもつ大きな可能性の指摘、そして(3)研究計画全体のありかたについて提言については、学会で発表し学術論文として公表することができた。(B)本研究では、(1)「合意形成」(2)「人工国家」(3)「国際社会」それぞれの問題領域において、モデル分析と実証研究を進める。(1)合意形成については、政府内での意思決定についてのモデルの構築とシミュレーションをすすめており、近く公表できる段階にある。(2)人工国家についても、アフリ力諸国の国民統合と分離運動についてのモデル構築が進んでおり、またナショナリズム運動についてのモデル構築も完了し、近く公表できる段階にある。(3)国際社会については、近年の国際関係論において大きなテーマとなっている国際規範変動についてのモデルを構築し、具体事例に基づいた実証研究と関連づけ、学術論文として公表した。さらに国内体制と平和の関係について探求するモデルの構築を新たに始めている。(C)シミュレータについても、組み込み関数やインターフェイスを改良することにより大幅な機能強化を行うことができた。本研究の目的は、国際関係論の重要分野である秩序変動についての研究をすすめつつ、マルチエージェントシミュレーション技法の可能性を追求することである。シミュレーションモデル分析と実証研究を具体的に関連づけながら、国際政治秩序変動の解明をめざしている。社会科学におけるマルチエージェントシミュレーションの可能性を追求した学術創成研究の成果をふまえ、それを国際関係論の分野で活かすとともに、逆にここで得た成果を社会科学全体におけるマルチエージェントシミュレーションの可能性を広げるために活かし、シミュレータの機能の向上にもフィードバックさせていくことをねらいとしている。本研究では、(1)対外政策形成過程および外交交渉の動態、(2)国家形成・分裂をめぐる集団や組織の動態(3)国家とそれ以外の主体からなる国際社会における秩序変動に焦点を当て、モデル分析と実証研究を進めている。(1)については、日米通商交渉についての実証研究を完了し公表した。米政府内の意思決定のモデルについても近く公表できる段階にある。(2)については、アフリカ諸国の国民統合と分離運動についての研究が完了し公表した。ナショナリズム運動についてのモデル構築も近く公表できる段階にある。
KAKENHI-PROJECT-20243011
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20243011
マルチエージェントモデルによる国際政治秩序変動の研究
(3)については、政府および非政府組織の相互作用による秩序変動のモデルを構築し、実証研究を進めている段階である。またアフリカにおける国際組織のふるまいについての実証研究を完了し公表した。本研究で開発しているシミュレータを用いた解説書を英文書籍として公表することもでき、シミュレータそのものについても、出力機能を大幅に拡張し、シミュレーションの表現力を向上させることができた。本研究の目的は、国際関係論の重要分野である秩序変動についての研究をすすめつつ、マルチエージェントシミュレーション技法の可能性を追求することである。シミュレーションモデル分析と実証研究を具体的に関連づけながら、国際政治秩序変動の解明をめざしている。学術創成研究の成果をふまえ、また、ここで得た成果を社会科学全体でのマルチエージェントシミュレーションの可能性を広げるために活かし、シミュレータの機能の向上にもフィードバックさせていくことをねらいとしている。本研究では連携研究者、研究協力者とともに(1)対外政策形成過程および外交交渉の動態、(2)国家形成・分裂をめぐる集団や組織の動態、(3)国家とそれ以外の主体からなる国際社会における秩序変動に焦点を当て、モデル分析と実証研究を進めている。(1)については、政策決定者の意思決定過程における利得構造のはたらきについてのモデル構築を完了した。(2)については、アフリカ諸国の国民統合と分離運動についての研究を書籍として発表し、研究成果をもとに現実の政策が政治状況にどう影響与えるのかについての分析に踏み込んだ。(3)については、社会ネットワークの形状と政策拡散の関係についておよび多様な国家間関係についてのモデル構築を完了した。昨(2010)年末にはワークショップを開催し研究成果の一部を発表して、日本の関係研究者と討議をおこない有益な助言を得ることができた。本研究で開発しているシミュレータそのものについても、新たな組み込み関数や出力様式が加わり、さらに主体間の相互作用の計算が格段に高速化され、主体間のより複雑なモデル構築が可能となった。本研究の目的は、国際関係論の重要分野である秩序変動についての研究をすすめつつ、マルチエージェントシミュレーション技法の可能性を追求することである。シミュレーションモデル分析と実証研究を具体的に関連づけながら、国際政治秩序変動の解明をめざしている。学術創成研究の成果をふまえ、また、ここで得た成果を社会科学全体でのマルチエージェントシミュレーションの可能性を広げるために活かし、シミュレータの機能の向上にもフィードバックさせていくことをねらいとしている。本研究では、連携研究者および研究協力者とともに(1)対外政策形成過程および外交交渉の動態(2)国家形成・分裂をめぐる集団や組織の動態(3)国家とそれ以外の主体からなる国際社会における秩序変動に焦点を当て、モデル分析と実証研究を進めている。
KAKENHI-PROJECT-20243011
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20243011
両生類変態期の肝細胞における遺伝子発現プログラムの再編成についての研究
両生類の変態現象の中で肝細胞での変化は甲状腺ホルモンによる幼生型遺伝子発現の成体型への再編成過程と捉えることが出来る。なぜなら、肝実質細胞は変態期に代謝系の大きな変化を示すが、その細胞系譜は幼生細胞から連続しているからである。本研究では肝細胞における遺伝子発現様式がどのように、そして如何にして変化するかを明らかにするため、変態期に制御される遺伝子群のcDNAを単離同定することを目的とした。変態最盛期、そして変態前期肝臓よりそれぞれcDNAライブラリーを作製し、さらに前者から後者を差し引いたサブトラクトされたcDNAライブラリーを構築した。差ハイブリダイゼーション法により、変態期にその量が増加するmRNAに対応するcDNAクローンを多数単離することに成功した。ノーザンハイブリダイゼーション法によりこれらの遺伝子の発現様式を調べたところ、変態期の様々な時期にその発現が増加してくることが明らかになった。さらに、甲状腺ホルモンによる発現誘導を試みたところ、これらの遺伝子群は早期誘導型と遅延誘導型の2種類に分類できることが明らかになった。また、変態最盛期に一過的に発現するM3遺伝子を発見した。M3遺伝子は肝臓の肝実質細胞でのみ発現しており、その塩基配列から予想されるアミノ酸配列と相同性の高い既知タンパク質はなく、新種のものであった。さらに、この遺伝子は成体肝細胞では甲状腺ホルモンにより誘導されないことが明らかになった。M3cDNA断片を用いてライブラリーを再スクリーニングし、完全長のcDNAを得ることに成功した。今後、塩基配列決定によりさらに多くのcDNAの同定を行うとともに、M3遺伝子構造を調べ変態における発現調節機構を明らかにする予定である。両生類の変態現象の中で肝細胞での変化は甲状腺ホルモンによる幼生型遺伝子発現の成体型への再編成過程と捉えることが出来る。なぜなら、肝実質細胞は変態期に代謝系の大きな変化を示すが、その細胞系譜は幼生細胞から連続しているからである。本研究では肝細胞における遺伝子発現様式がどのように、そして如何にして変化するかを明らかにするため、変態期に制御される遺伝子群のcDNAを単離同定することを目的とした。変態最盛期、そして変態前期肝臓よりそれぞれcDNAライブラリーを作製し、さらに前者から後者を差し引いたサブトラクトされたcDNAライブラリーを構築した。差ハイブリダイゼーション法により、変態期にその量が増加するmRNAに対応するcDNAクローンを多数単離することに成功した。ノーザンハイブリダイゼーション法によりこれらの遺伝子の発現様式を調べたところ、変態期の様々な時期にその発現が増加してくることが明らかになった。さらに、甲状腺ホルモンによる発現誘導を試みたところ、これらの遺伝子群は早期誘導型と遅延誘導型の2種類に分類できることが明らかになった。また、変態最盛期に一過的に発現するM3遺伝子を発見した。M3遺伝子は肝臓の肝実質細胞でのみ発現しており、その塩基配列から予想されるアミノ酸配列と相同性の高い既知タンパク質はなく、新種のものであった。さらに、この遺伝子は成体肝細胞では甲状腺ホルモンにより誘導されないことが明らかになった。M3cDNA断片を用いてライブラリーを再スクリーニングし、完全長のcDNAを得ることに成功した。今後、塩基配列決定によりさらに多くのcDNAの同定を行うとともに、M3遺伝子構造を調べ変態における発現調節機構を明らかにする予定である。変態は甲状腺ホルモンにより引き起こされる体の作り変え過程であるが、そこでは甲状腺ホルモンレセプターを介した遺伝子発現カスケード反応だけでなく、細胞間相互作用、他のホルモンの関与なで複雑な機構が存在すると考えられる。本研究では個々の素過程を明らかにするため、変態期にその発現が誘導される遺伝子を明らかにすることを目的としている。現在までに、候補のcDNAクローンを多数単離することに成功している。その一部については変態期における発現様式及び甲状腺ホルモン依存性についてすでに明らかにしている。その結果、これらの遺伝子は甲状腺ホルモン作用後数時間以内に発現する初期発動遺伝子と24時間以上遅れて発現してくる後期発動遺伝子の2種類に分類できることが明らかになった。ある後期発動遺伝子の一つは変態最盛期に一過的に発現するものであった。興味あることに、この遺伝子は成体肝細胞では甲状腺ホルモンにより誘導することができなかった。その部分塩基配列を決定し、予想されるアミノ酸配列とのホモロジー検索を行ったところ、該当するものがなく未知の遺伝子であることがわかった。今後、さらに幾つかのcDNAクローンについてその塩基配列を決定するとともに、これらの遺伝子の発現調節について明らかにしようと考えている。平成4年度の研究から両生類変態期に誘導される遺伝子の種類が非常に多いということが明らかになり、実際に多くの候補cDNAクローンを単離することに成功した。これ以上網羅的に単離することは得策でないと考え、変態期に発現様式の異なるいくつかのクローンを選択し、集中的に調べることにした。(1)これまでに得られたcDNAクローンのうち変態期に一過的に発現するM3クローンについて初代培養肝細胞を用いて甲状腺ホルモンによる発現誘導を試みたところ、幼生期肝細胞ではそのmRNAが増加するが、成体の肝細胞では非常に低いレベルのままであった。(2)M3遺伝子は肝実質細胞で特異的に発現していることがin situハイブリダイゼーション法により明らかになった。(3)M3cDNAクローンの部分塩基配列を決定し、既知遺伝子とのホモロジー検索を行った。予想されるアミノ酸配列とホモロジーの高いものはなかった。(4)完全長のM3cDNAを単離するため、変態期最盛期の肝cDNAライブラリーの再スクリーニングを行い単離に成功した。
KAKENHI-PROJECT-04640659
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両生類変態期の肝細胞における遺伝子発現プログラムの再編成についての研究
これらの結果はM3遺伝子の発現が甲状腺ホルモン-受容体系だけで制御されているのではなく、変態によって生じた未知の因子が不可逆的に遺伝子発現様式を変化させていることを示唆している。今後、それぞれのcDNAクローンについてさらに調べ変態期に制御される遺伝子群の実体を明らかにすることを計画している。
KAKENHI-PROJECT-04640659
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パワーポージングのリラクセーション効果と安全性の検証:クロスオーバー試験
心身がリラックスすると呼吸が穏やかになり,心拍,血圧,及び酸素消費量が低下する。これをリラクセーション反応と呼び,この反応を意識的に引き出す方法がリラクセーション技法である。リラクセーション技法のなかでも,呼吸法は比較的習得が容易で,短時間で効果を得ることができるため,臨床場面でも活用されている。一方,新たなリラクセーション技法であるパワーポージングが,緊張をとく方法として注目されている。がん治療中の不安や抑うつの改善など,看護の領域でも活用されることが期待されるが,臨床に応用するには,まだ十分なエビデンスが確立されていない。本研究の目的は,パワーポージングを臨床で用いられている呼吸法と比較することによって,そのリラクセーション効果や安全性を検証することである。本年度実施した予備調査では,呼吸法は従来の研究結果と同様に自律神経活動全体が活性化され,主観的評価においては負の感情を改善する効果が示された。power posingは副交感神経活性のみが高まり,主観的評価においては負の感情を改善する効果があることが示された。呼吸法とpower posingはどちらもリラクセーション効果があると明らかになったが,交感神経の活性を高めるのは呼吸法のみであり交感神経への影響に大きな違いがあることが明らかになった。本年度は予備的実験を行い,パワーポージングは呼吸法と違い,交感神経活動を鎮静化させることがわかった。パワーポージングが臨床において,安全なリラクセーション技法となる可能性を確信するとともに,この結果を日本看護科学学会で発表した。次年度は,心拍変動リアルタイム解析システム(GMS社:Mem Calc / Bonary Light)を用いてリアルタイムに解析し,ノイズの混入,ウオッシュアウトの確認をしながらデータを収集する。また,順序効果,時期効果を分析によって,クロスオーバーデザインが適切であったことを確認し,結果をより確かなものにする。心身がリラックスすると呼吸が穏やかになり,心拍,血圧,及び酸素消費量が低下する。これをリラクセーション反応と呼び,この反応を意識的に引き出す方法がリラクセーション技法である。リラクセーション技法のなかでも,呼吸法は比較的習得が容易で,短時間で効果を得ることができるため,臨床場面でも活用されている。一方,新たなリラクセーション技法であるパワーポージングが,緊張をとく方法として注目されている。がん治療中の不安や抑うつの改善など,看護の領域でも活用されることが期待されるが,臨床に応用するには,まだ十分なエビデンスが確立されていない。本研究の目的は,パワーポージングを臨床で用いられている呼吸法と比較することによって,そのリラクセーション効果や安全性を検証することである。本年度実施した予備調査では,呼吸法は従来の研究結果と同様に自律神経活動全体が活性化され,主観的評価においては負の感情を改善する効果が示された。power posingは副交感神経活性のみが高まり,主観的評価においては負の感情を改善する効果があることが示された。呼吸法とpower posingはどちらもリラクセーション効果があると明らかになったが,交感神経の活性を高めるのは呼吸法のみであり交感神経への影響に大きな違いがあることが明らかになった。本年度は予備的実験を行い,パワーポージングは呼吸法と違い,交感神経活動を鎮静化させることがわかった。パワーポージングが臨床において,安全なリラクセーション技法となる可能性を確信するとともに,この結果を日本看護科学学会で発表した。次年度は,心拍変動リアルタイム解析システム(GMS社:Mem Calc / Bonary Light)を用いてリアルタイムに解析し,ノイズの混入,ウオッシュアウトの確認をしながらデータを収集する。また,順序効果,時期効果を分析によって,クロスオーバーデザインが適切であったことを確認し,結果をより確かなものにする。心拍変動がリアルタイムで解析できるシステムの機種を再考したため,購入時期が予定よりも遅れ3月になり,支払いが4月になったため。
KAKENHI-PROJECT-18K10145
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若年女性の子宮頸がん検診受診率や子宮頸がん発症の推移とその要因の前向き調査
若年女性における子宮頸がん検診受診率や子宮頸がん発症の推移とその要因の前向き調査を行うために、2つの異なる出生コホートに参加した妊婦を対象とし、妊娠初期の子宮頸がん検診の結果を比較した。BOSHIコホート対象者におけるパパニコロウ分類での要精検率は、20-24歳3.2%、25-29歳1.0%、30-34歳0.8%、35-39歳1.0%であり、エコチル調査宮城ユニットセンター対象者コホート1899人分のデータでのベセスタ分類に基づく要精検率は20-24歳8.9%、25-29歳2.7%、30-34歳3.1%、35-39歳3.8%であった。本研究は本年度、エコチル調査の宮城県対象者を中心に登録を行った。平成23年末までに6,712名の妊婦の参加があった。ベースラインデータの登録は4712人で、対象者の身長・非妊時体重の中央値とその4分位範囲は158.0(154.0-162.0)cm、52.0(48.0-58.0)kgであった。参加者の基礎特性は先行研究の結果とほぼ同等であった。平成23年の人口動態総覧の第4表から、全国での出産時の母体年齢は30.7歳であるが、宮城県の同値は30.2歳となっており、本分析結果の30.1歳は宮城県の値とほぼ同値で、また調査自体への同意率も説明者の85%と高く、年齢構成・同意率の面から、対象地域の妊婦の代表性をほぼ有しているものと考えられた。本研究では、子宮頸がん検診におけるベセスタ分類での細胞診の結果を896人分集積した。NILM 866人(96.7%)、ASC-US 8人(0.9%)、ASC-H 1人(0.1%)、LSIL 10人(1.1%)、HSIL 11人(1.2%)であり、要精検率は3.3%であった。先行のBOSHI研究の頻度は670人中、NILMが652人(97.3%)、ASC-USが17人(2.2%)、LSILが2人(0.3%)、HSILが1人(0.2%)であり、要精検率は2.9%と両集団で有意差を認めなかった(p=0.7)。一方、各年代におけるベセスタ分類に基づく要精検率は20-24歳5.8%、25-29歳2.4%、30-34歳2.3%、35-39歳2.6%であった。パパニコロウ分類におけるBOSHI研究の要精検率(20-24歳3.2%、25-29歳1.0%、30-34歳0.8%、35-39歳1.0%)や先行研究(20-24歳1.8%、25-29歳1.0%、30-34歳0.9%、35-39歳1.0%)に比較して高いが、年代ごとに同様の傾向を示していた。本研究では、エコチル調査の宮城県対象者を中心に登録作業を行った。エコチル調査は宮城県内で平成26年2月末までに9,181名の妊婦の参加があった。ベースラインデータの登録は5,939人で、対象者の身長と分娩直前の体重の中央値とその4分位範囲は158.0(154.0-162.0)cm、63.7(58.4-70.0)kgであった。エコチル調査の宮城県での参加者の基礎特性は先行研究の結果やの結果とほぼ同等であった。本研究では、子宮頸がん検診における細胞診の結果はのべ1899人分を集積しており、本対象者の平均年齢は30.6歳であった。平成23年の人口動態総覧の第4表から、出産時の母体年齢は30.7歳であるが、宮城県の同値は30.2歳となっており、本分析結果の30.6歳はこの値とほぼ同値で、宮城県の代表性を損ねていないと考えられる。また、調査自体への同意率も説明者の85%と高く、年齢構成・同意率の面から、対象地域の妊婦の代表性を大幅には損ねていないものと考えられた。24年度の結果は896人中、NILM 866人(96.7%)、ASC-US 8人(0.9%)、ASC-H 1人(0.1%)、LSIL 10人(1.1%)、HSIL 11人(1.2%)で、要精検率は3.3%であった。25年度の結果は、1899人分の集積では、NILM 1818人(95.7%)、ASC-US 17人(0.9%)、ASC-H 5人(0.3%)、LSIL 33人(1.7%)、HSIL 26人(1.4%)であり、べセスタ分類に基づく要精検率は4.2%であった。各年代におけるベセスタ分類に基づく要精検率は20-24歳8.9%、25-29歳2.7%、30-34歳3.1%、35-39歳3.8%であった。
KAKENHI-PROJECT-23590771
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若年女性の子宮頸がん検診受診率や子宮頸がん発症の推移とその要因の前向き調査
若年女性における子宮頸がん検診受診率や子宮頸がん発症の推移とその要因の前向き調査を行うために、2つの異なる出生コホートに参加した妊婦を対象とし、妊娠初期の子宮頸がん検診の結果を比較した。BOSHIコホート対象者におけるパパニコロウ分類での要精検率は、20-24歳3.2%、25-29歳1.0%、30-34歳0.8%、35-39歳1.0%であり、エコチル調査宮城ユニットセンター対象者コホート1899人分のデータでのベセスタ分類に基づく要精検率は20-24歳8.9%、25-29歳2.7%、30-34歳3.1%、35-39歳3.8%であった。本研究は本年度、BOSHI研究のデータベース上でプレリミナリーな解析を行った。BOSHI研究は平成23年10月末までで1576人の妊婦をリクルートし新規リクルートメントを終了している。BOSHI研究では婦人科疾患有病・既往者は495人あり、うち子宮筋腫有病者・既往者は82人であった。子宮頸がん検診における細胞診の結果は1412人中、Class I 7人(0.5%)、Class II1412人(98.3%)、Class IIIa 8人(0.6%)、Class IIIb 7人(0.5%)、Class IV 0人、Class V 0人であった。ベセスダ分類における結果報告は2009年より開始され、データの存在した670人中、NILMが652人(97.3%)、ASC-USが17人(2.2%)、LSILが2人(0.3%)、HSILが1人(0.2%)であった。本集団におけるパパニコロウ分類に基づく要精検率は1.2%と2001年に行われた宮城県における集団検診での要精検率0.8%に比較して有意ではないものの高い傾向を示し(p=0.1)、1993年から2002年までの10年間に宮城県内を含む10施設で行われた28,616例の妊婦における要精検率1.1%と有意な差を認めなかった(p=0.8)。また、各年代における要精検率は20-24歳3.2%、25-29歳1.0%、30-34歳0.8%、35-39歳1.0%であり、先行研究(20-24歳1.8%、25-29歳1.0%、30-34歳0.9%、35-39歳1.0%)と同様の傾向を示した。各調査における、頸がん検診データのデータベース化は順調に進んでいる。BOSHI研究のベースラインデータはほぼ完成しており、先行研究とほぼ同様の結果が得られることが確認された。今後の追跡調査のベースラインデータとして十分に使用に耐えうることが確認された。今年度はエコチル調査部分のデータベースの整備を主に継続するとともに、BOSHI研究部分の追跡調査も行う。今後、データーベースの精度向上と追跡調査が行われる。一部ベセスダ分類のデータがデータベース上に未収載のため、追跡調査時にチェックを行う。新年度からはエコチル調査部分のデータベースの整備に取りかかる予定である。次年度使用額は今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額と合わせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成24年度請求額と合わせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-23590771
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23590771
東アジアにおける米国社会科教育論の受容とインパクト
日本の社会科研究者は,カリキュラム開発や授業改善などについて示唆を得ることを目的に,米国社会科の諸理論の一部を優先的に,とくに心理的・実証的な成果に比べて工学的・開発的な成果を意図的に選択し,受容してきた。このような傾向が見られる背景として,日本の社会科研究者は,1「研究」と「開発」を相互補完的な関係で捉えていること,2「研究者」と「実践者」は連携・協働して解題解決や授業改善に努めるべきと認知していること,3このような日本人研究者の研究観が海外の研究動向の摂取基準にも影響を与えたこと,などが考えられる。本年度は,米国社会科研究者の研究成果と方法論が日本の社会科研究者にどのような影響を与えているかを調査・検討した。具体的には,全国社会科教育学会と日本社会科教育学会の学会役員121名に調査票調査を実施し,57%の回答を得た。その結果,大きく以下の傾向性を明らかにするをことができた。1.日本の社会科研究者は,米国の社会科理論やカリキュラム開発・指導法開発の成果(おもに1970年代まで)の影響を一定程度受けているが,方法論での影響は小さい。とくに現代米国(おもに1980年代以降)で普及してきた実証的・経験的な研究の影響は明確には確認できない。2.日本の社会科研究者は,米国の社会科理論やカリキュラム開発・指導法開発の成果に学び,日本の社会科カリキュラムや授業改善に役立てようとしている。米国の研究・開発の動向を,グローバルな研究動向の把握としてはもちろん,機能的でナショナル・ローカルな問題関心から捉えようとしている。3.日本の社会科研究者は,実証的・経験的な研究よりも,規範的・開発的な研究を志向する傾向にある。これは,日本の研究者が参照する米国の成果や人物・理論は,米国で規範的・開発的な研究が盛んだった1960年代から70年代までのそれに集中することと符合している。上のような傾向性がみられる背景として,日本の社会科研究者は,1「研究と開発」を相互に結びついた相互補完的な関係で捉えていること,2「研究者と実践者」は連携・協働して課題解決や授業改善に務めるべきと認知していること,などの理由が指摘できる。このような日本の傾向性は,3「研究」と「開発」を質的に異なるアプローチとして区別して捉え,4「実践者」は「研究者」が記述・説明すべき対象として見做される欧米の状況とは対照的である。本研究の成果は,第61回全国社会科教育学会全国大会(岐阜大学)の自由研究発表で報告した。米国の社会科教育の理論と方法が日本の社会科研究に与えたインパクトに関して,3本の論文をまとめ,発表することができた。第1に「量的な調査」の総括である。日本社会科教育学会と全国社会科教育学会の役員らに対して行ったアンケート調査の結果,とくに選択式回答の結果にもとづいて日本の研究者の問題関心,テーマ,研究方法,米国社会科の受容の状況を検討し,1「研究」と「開発」を一体的に捉えようとする姿勢,21を通して教育実践の改善に寄与しようとする傾向性が明らかとなった。本成果は,日本教科教育学会誌(日本教科教育学会)に投稿し,掲載が決定された。第2に「質的な調査」の総括である。上の調査で得られた自由記述の内容にもとづいて日本の研究者に認知されている研究方法論の課題や改善の方向性について検討したところ,1研究体系の構築かー現場のニーズ重視か,2現行制度に準拠した実践的研究かー現行制度を対象化した批判的研究かなどの,問題関心の対立の構図が明らかとなった。本成果は,大阪大谷大学紀要に投稿し,掲載された。今後は,日本と同様に米国の社会科教育の理論と方法の影響を受けた韓国,中国等にも研究対象を広げ,米国のインパクトの比較研究に発展させたい。日本の社会科研究者は,カリキュラム開発や授業改善などについて示唆を得ることを目的に,米国社会科の諸理論の一部を優先的に,とくに心理的・実証的な成果に比べて工学的・開発的な成果を意図的に選択し,受容してきた。このような傾向が見られる背景として,日本の社会科研究者は,1「研究」と「開発」を相互補完的な関係で捉えていること,2「研究者」と「実践者」は連携・協働して解題解決や授業改善に努めるべきと認知していること,3このような日本人研究者の研究観が海外の研究動向の摂取基準にも影響を与えたこと,などが考えられる。本研究の目的は,東アジアにおける米国社会科教育論の受容とインパクトについて解明することである。本年度の成果は,大きく以下の3点に集約できる。第1に,米国社会科を主導する研究者・実践者の「教科観・研究方法論」について,聞き取り調査を実施できた点である。W.パーカーをパイロット版に調査を開始するとともに,引き続いてC.オマホニー,B.バンスレッドライト,T.ソーントンらの教科観・方法論について,約60分にわたるインタビューを実施できた。本データは,すでに文字起こしを終えている。第2に,日本における米国の「教科論・研究方法論」の受容について,聞き取り調査を実施できた点である。全国社会科教育学会を拠点に,社会科研究の方法論を学的に確立するとともに,米国の社会科教育論を先導的に導入してきた森分孝治から聞き取りを行い,約3時間30分にわたるオーラルヒストリーを収集できた。本データは,部分的には分析を終えている。
KAKENHI-PROJECT-23653297
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23653297
東アジアにおける米国社会科教育論の受容とインパクト
第3に,日本における米国の「教科論・研究方法論」のインパクトについて,文献調査を実施できた点である。全国社会科教育学会の学会誌『社会科研究』(1号70号)に掲載された論文では,米国社会科の思想や方法がどのように選択,加工・解釈され,導入されているかを量的・質的に調査し,大きな傾向性を引き出すことができた。以上の研究から,日本の社会科教育研究者は,(1)米国の「教科論・研究方法論」を主体的・自立的に受容してきたこと,(2)そして米国とは異なる独自の体系(エンジニアリングとしての規範的・原理的研究)を確立してきたこと,(3)その性格には学習指導要領の法的拘束力や国家の教育権の大きさが影響していることが,明らかとなっている。過去2か年にわたって,以下のことが解明されている。1年次は,米国の社会科研究者の問題意識と方法論を,インタビュー調査を通して質的に把握し,傾向性の説明に努めた。2年次は,日本の社会科研究者の問題意識と方法論を,調査票調査を通して量的に把握し,その特色を解明できた。このように日米それぞれの視点から社会科教育研究の理論と方法を把握し,相互に動向・状況を比較できる段階に至っている。また米国→日本に対する研究上のインパクトも,データとして確定できている。以上のように当初に意図した研究は計画どおりに進んでいるため,「おおむね順調に進展している」と評価した。「おおむね順調に進展している」と判断した理由は,大きく3点ある。第1に,東アジアにおける米国社会科教育論の受容とインパクトが,「日本と米国」との関係に限られてはいるが,その実態がおおよそ解明されてきた点である。その成果は,公開シンポジウムや学会誌において,すでに報告できている。第2に,1の解明が,インタビューと文献調査の両面から進んできた点である。データの特性に偏りがでないように,(1)(学会誌に文献データとして記述された)客観的な事実と,(2)(当事者の声として語られる)主観的な理解の両面から,日本における米国社会科教育論の受容を描きだすことができた。第3に,日本と中韓のケースを比較する基礎的なデータがそろった点である。現段階では,日本の研究動向を集中的に分析することで,米国社会科教育論の受容を説明する枠組みを,仮説的ながらも構築できた。次年度以降,この仮説を手がかりに,東アジア各国の社会科教育研究の特色に迫っていく見通しを持つことができた。3年次の平成25年度は,大きく2つの研究を推進する。第1に,日本に留まらない東アジア各国への米国社会科の影響を調査する。現段階では,韓国または中国の社会科研究者にターゲットを絞って,日本で実施した調査と同様の調査を行うことを予定している。この調査を通して,1米国→日本と2米国→中国・韓国ではインパクトの量や質にどのような違いがあるか,またなぜそうのような違いが生じたかについて解明していく。第2に,これまでの研究成果を整理・体系化し,論文として公刊する。1年次に実施した米国の研究者に対するインタビュー調査,2年次に実施した日本の研究者に対する調査票調査の成果をまとめ,日本の教科教育学が培ってきた成果の強みと特色,ならびに将来にむけて乗り越えていくべき方法論上の課題について提起する。現段階では,日本教科教育学会の学会誌への投稿を予定している。今後の研究の進め方を,年度に分けて述べる。平成24年度第1に,我が国における米国社会科教育論の受容とインパクトについて,引き続きデータを収集する。
KAKENHI-PROJECT-23653297
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23653297
マクロ孔シリカビーズを担体としたリチウム同位体濃縮用充填剤の開発と分離性能解析
核融合炉ブランケット材であるリチウムの同位体濃縮に用いる置換クロマトグラフィー法の分離性能の向上を研究目的とした。物質移動過程をバルク流れ,境膜移動,粒内拡散,吸脱着から成ると仮定し,計算モデルおよび計算コードを開発した。開発した計算コードにより充填剤粒径が分離性能に及ぼす影響を評価した。ベンゾ15クラウン5のキシレン溶液を多孔質シリカビーズの細孔内に含浸保持させて吸着剤を調整した。吸着剤を充填したカラムの破過実験結果をもとに,理論段相当高さを藤根の式により見積もったところ,理論段相当高さは吸着剤粒径とともに小さくなり,吸着剤粒径を小さくすることで分離性能を向上できることが確かめられた。平成25年度は,多孔質シリカビーズを担体として吸着材を開発することと,開発した吸着材についてその分離性能の評価をカラム試験にて行うことが課題であった。Liの同位体分離能を有するクラウンエーテルとしてbenzo-15-crown-5(Merck Chemicals)を採用し,そのキシレン溶液を多孔質シリカビーズ(富士シリシア化学)の細孔内に含浸保持させることにより充填剤とした。多孔質シリカビーズとしては,平均細孔径が100 nmで,粒径が60,100,250μmの3種類を用い,粒径が分離性能に及ぼす影響を考察した。これらの吸着材をそれぞれ,クロマト用ステンレスカラム(GLサイエンス,充填長25 cm,内径4 mm)に充填した。カラムの充填率(空隙率)は水の圧入により求めた。これらのカラムに,0.05 mol/LのLiCl溶液を0.25 ml/minの流量で通液し,流出液を一定時間毎に分取し,それらのLi濃度を原子吸光光度計(島津製作所,AA-6200)で測定することで,カラムに対するLi溶液の破過曲線を得た。破過曲線のモーメント解析により,平均滞留時間と分散の値を得た。分散の値は,粒径が60 μmの場合が最も小さく0.9 min2となり,吸着材粒径の増加とともに単調増加となった。カラムの理論段相当高さ(HETP)を藤根の式により見積もったところ,粒径が60 μmの場合においてHETP値が約0.2 mmとなった。HETP値は吸着材粒径とともに小さくなり,吸着材粒径を小さくすることで分離性能を向上できることが確かめられた。平成24年度に開発した解析手法により,HETP値の考察を行ったところ,本研究の条件では,粒内拡散の寄与は軸方向分散の寄与と同程度か,それよりも小さくなり,吸着材粒径を小さくした効果が十分に認められた。核融合炉ブランケット材であるリチウムの同位体濃縮に用いる置換クロマトグラフィー法の分離性能の向上を研究目的とした。物質移動過程をバルク流れ,境膜移動,粒内拡散,吸脱着から成ると仮定し,計算モデルおよび計算コードを開発した。開発した計算コードにより充填剤粒径が分離性能に及ぼす影響を評価した。ベンゾ15クラウン5のキシレン溶液を多孔質シリカビーズの細孔内に含浸保持させて吸着剤を調整した。吸着剤を充填したカラムの破過実験結果をもとに,理論段相当高さを藤根の式により見積もったところ,理論段相当高さは吸着剤粒径とともに小さくなり,吸着剤粒径を小さくすることで分離性能を向上できることが確かめられた。DT核融合の燃料であるトリチウムはリチウムの同位体である6Liと中性子との核反応により生産せねばならない。6Liの天然存在比は7.6 %程度であり,例えば固体ブランケットでは6Liを4090 %程度にまで同位体濃縮しなければならない。本研究の目的は,核融合炉ブランケット材であるリチウムの同位体濃縮に用いる置換クロマトグラフィー法の分離性能の向上である。これは,マクロ孔を有するシリカビーズを担体とした同位体分離用充填剤の新規に開発することと,独自に開発する分離性能解析手法により充填剤の粒径および平均細孔径が分離性能に与える影響を評価し最適化することによって行う。平成24年度は,分離性能解析手法の開発を中心に行った。従来の解析モデルは,粒内拡散が律速であることを前提条件として,総括物質移動係数をパラメータとして溶液相の濃度分布のみを計算するものである。この様なモデルでは,充填剤の粒子径や細孔径が物質移動速度に及ぼす影響を評価することができない。そこで,置換クロマトグラフィーの物質移動過程をバルク流れ,境膜移動,粒内拡散,吸脱着から成ると仮定し,これら全ての素過程を境界条件により接続して直接計算するモデルを開発した。カラム内および充填剤粒子内を空間的に差分化して常微分方程式で表わす物質収支式を立て,これと平衡関係式を連立させて数値的に濃度分布を計算した。ここで,表層近傍のみが多孔質である担体を用いた吸着剤を外層多孔質型吸着剤と呼ぶ。試みに外層多孔質型吸着剤を用いた場合のクロマトグラムを計算したところ,展開距離およびHETPを短縮でき,置換クロマトグラフィー法によるリチウム同位体分離に有用であることがわかった。触媒作製のため当初使用予定であった実験室(名古屋大学工学部6号館同位体分離実験室)が耐震工事により平成24年10月まで使用不能であった。この工事は補正予算により急遽行われたため,代わりの実験室を準備することができなかった。そのため,予定を組み替えて調整した。
KAKENHI-PROJECT-24760697
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マクロ孔シリカビーズを担体としたリチウム同位体濃縮用充填剤の開発と分離性能解析
具体的には,平成25年度に実施予定であった分離性能解析手法の開発を平成24年度に行い,吸着剤の作製と置換クロマトグラフィー実験を平成25年度に行うこととした。分離性能解析手法の開発については,置換クロマトグラフィーの物質移動過程をバルク流れ,境膜移動,粒内拡散,吸脱着から成ると仮定し,これら全ての素過程を境界条件により接続して直接計算するモデルの開発が完了し,充填剤の粒子径や細孔径が物質移動速度に及ぼす影響を評価することが可能となった。また,開発したモデルおよび計算コードにより,外層多孔質型の吸着剤を用いた場合のクロマトグラムを試算したところ,展開距離およびHETPを短縮でき,置換クロマトグラフィー法によるリチウム同位体分離に有用であることがわかった。この成果は,平成25年度に実施予定の吸着剤作製に指針を与えるものであり,当初予定していた以上の成果を得た。以上より,年度間のバランスを考慮したとして,全研究計画に渡る達成度の自己評価は45 %程度である。やや遅れているものの,平成25年度に鋭意努力することで挽回することは可能である。平成25年度は,触媒の作製および置換クロマトグラフィー法によるリチウム同位体の分離実験を行うとともに,最終年度としてのまとめが必要である。触媒の作製については,富山大学水素同位体科学研究センターの田口明講師の協力を得られることとなり,円滑・合理的な遂行を期待できる。これにより,平成24年度に実験室を使用できなかったために生じた遅れを取り戻すことで計画している。また,平成24年度に分離性能評価手法を確立しているので,吸着剤の粒子径や細孔径,温度や流量などの運転条件が分離性能に及ぼす影響を評価することができる。したがって,その成果を利用することで,実験を効率的に行うことが可能と考えている。触媒の作製においては,必要な装置として,ロータリーエバポレータ・EYELA,N-1000(211千円),真空ポンプ・EYELA,EVP-1100(197千円)を整える。吸着剤担体や吸着剤の費用としては600千円程度を予定している。置換クロマトグラフィー実験においては,必要な装置として,プランジャーポンプ・EYELA,KP-12-13(400千円),フラクションコレクタ・EYELA,DC-1500(368千円),リミタ付圧力計・日本精密科学,NPG-250L(100千円)を整える。また,クロマトカラムや金属製配管・バルブ等に200千円程度必要である。成果報告は,2013年10月にフランスで開催される国際会議「TRITIUM2013」(700千円),日本原子力学会秋の大会(50千円),同位体科学会(30千円)にて行うことを予定している。
KAKENHI-PROJECT-24760697
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現代日韓関係における文化交流現象の拡大と文化交流政策の変化に関する研究
本研究では昨年度に引き続き、現代日韓関係における文化交流の事業および現象について、その特徴的な動向を析出すべく調査研究を行った。特に今年度は、1998年10月の「段階的開放」政策に端を発する、韓国での日本大衆文化開放政策が飛躍的に展開しつつあることを踏まえ、各種の情報の集積・分析を行うとともに、実際に政策決定に関与したセクターへのインタビュー、研究者との討論を精力的に行った。結果、映画やテレビ番組制作、ポピュラー音楽、出版などの大衆文化交流領域で、日韓両国間の民間企業による文化産品の交流や共同制作といった動きが急速に進展していることに加えて、日韓両国政府や文化交流専門機関等の公的機関、地方自治体等が行う文化交流事業にも、大衆文化的要素を多くとりこんだ新しい型のものが目立って増加しつつあるなど、大衆文化領域と何らかの関連をもつ文化交流の活性化が先ず確認された。その一方で、伝統文化や生活文化等を紹介する従来型の文化交流事業や、日本と韓国の市民団体の交流といった、かならずしも大衆文化領域と直結しない分野の交流においても、両国国民の関心や参加が従来にまして高まっていることが明らかとなった。ただし現時点でのこうした傾向をもって、1998年以後の両国の文化交流政策が目標としてきた「国民的交流」が達成されつつあるといえるか、あるいは単なる「日韓交流バブル現象」に過ぎないのか、という議論をめぐっては、まだ結論を下せる状態にはない。2002年サッカーW杯共催にむけ、大型ではあっても一過性の強いイベント型交流事業が注目を集めがちな中で、むしろこれを永続的な交流への契機にしようとする試みは、まだ端緒についたばかりである。今後はこうした点に注目しながら、日本国際政治学会文化交流分会での成果報告等を経つつ、さらに検討を継続する予定である。国内社会の対日感情のわだかまりを理由に日本との大衆文化交流を拒否しつづけてきた韓国政府は、金大中政権下の98年10月を境に日本大衆文化の「段階的開放」政策に転じ,その後も矢継ぎ早の実施を続け今に至っている。文化交流政策における韓国側のこうした変化について、本研究の今年度の調査では複数時点の世論調査結果を収集・検討した結果、これらの変化は現代韓国社会の対日感情の急速な改善を反映した結果としてよりも、世論に先行して政府部内から提示された政策的判断として理解するほうがより適切であることが明らかになった。そこで韓国の対日文化交流政策の決定過程について、各種報告書や新聞記事の収集、インタビューなどから精密に追跡したところ、現段階では「外交政策セクター」「文化政策セクター」と「大統領のリーダーシップ」が各々の政策目標を達成しようとして駆け引きを行うというモデルの説明能力が比較的高い、との知見を得た。このモデルを援用することで、特に金大中政権の成立当初には、日本に対しては「未来志向」の関係を標榜する大統領のリーダーシップが全面に押し出されながらも、実際には日韓漁業交渉や歴史認識問題等の懸案事項に対処するための「切り札」として大衆文化開放を位置づけようとする外交通商部と、大衆文化産品の正面開放によって海賊版の流通を阻止し、同時に国内文化産業の活性化や市場拡大を促そうとする文化観光部との間で見解の対立が存在していたという状況構造を、明確に把掘することができた。一方、開放政策の根拠としてたびたび指摘されながらこれまで実態の把握が十分になされていなかった「文化交流現象」、すなわち非公式的な文化流入の実態についても、開放政策を機に関連諸機関が行った各種調査報告を収集することで全体的な像が浮かび上がりつつあり、全体をより包括的な研究成果として来年度に発表しうるよう、更に準備を重ねている。本研究では昨年度に引き続き、現代日韓関係における文化交流の事業および現象について、その特徴的な動向を析出すべく調査研究を行った。特に今年度は、1998年10月の「段階的開放」政策に端を発する、韓国での日本大衆文化開放政策が飛躍的に展開しつつあることを踏まえ、各種の情報の集積・分析を行うとともに、実際に政策決定に関与したセクターへのインタビュー、研究者との討論を精力的に行った。結果、映画やテレビ番組制作、ポピュラー音楽、出版などの大衆文化交流領域で、日韓両国間の民間企業による文化産品の交流や共同制作といった動きが急速に進展していることに加えて、日韓両国政府や文化交流専門機関等の公的機関、地方自治体等が行う文化交流事業にも、大衆文化的要素を多くとりこんだ新しい型のものが目立って増加しつつあるなど、大衆文化領域と何らかの関連をもつ文化交流の活性化が先ず確認された。その一方で、伝統文化や生活文化等を紹介する従来型の文化交流事業や、日本と韓国の市民団体の交流といった、かならずしも大衆文化領域と直結しない分野の交流においても、両国国民の関心や参加が従来にまして高まっていることが明らかとなった。ただし現時点でのこうした傾向をもって、1998年以後の両国の文化交流政策が目標としてきた「国民的交流」が達成されつつあるといえるか、あるいは単なる「日韓交流バブル現象」に過ぎないのか、という議論をめぐっては、まだ結論を下せる状態にはない。2002年サッカーW杯共催にむけ、大型ではあっても一過性の強いイベント型交流事業が注目を集めがちな中で、むしろこれを永続的な交流への契機にしようとする試みは、まだ端緒についたばかりである。今後はこうした点に注目しながら、日本国際政治学会文化交流分会での成果報告等を経つつ、さらに検討を継続する予定である。
KAKENHI-PROJECT-11720045
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血栓性動脈硬化の経時的変化と臨床への影響について
心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患は急性発症も多く、再発リスクも高いため、発症予測が重要である。発症予測に対してさまざまな検討がなされてきた中、我々は、一般的な発症リスクとされる脂質プラークではなく、無症候性血栓症に引き続きおこる治癒血栓について検討を行った。血栓は血管内腔側に付着し治癒するため、治癒血栓は層構造をなす。剖検の冠動脈において治癒血栓と考えられる層構造をシリウスレッド染色で同定したところ、狭窄病変の約3割に治癒血栓を認め、光干渉断層像(OCT)で高い検出力を示した。本研究により、今後は臨床的、経時的に治癒血栓を検討することが可能になり、発症予測に繋がると考えられる。平成27年度は剖検心における冠動脈の光干渉断層計(OCT)および組織像での層構造の解析を施行した。これまでに50%以上の狭窄を有する154ペアのOCT画像-組織標本を得ている。層構造を評価するために、組織標本はHE染色だけでなく、シリウスレッド染色を行い、偏光顕微鏡下で観察を行った。その結果、OCTにおける内膜の層構造が、組織標本における層構造と高い精度で一致していることを確認することができた。これにより、冠動脈の動脈硬化による内腔狭窄は、マクロファージや脂質の沈着によって始まるとされる典型的な動脈硬化だけでなく、冠動脈内膜がなんらかの要因により層構造を有することで、内腔狭窄が進行する例もあるということが証明された。ここまでの成果をすでに論文執筆に取り組んでおり、近日投稿予定である。また、第80回日本循環器学会学術集会にて本研究成果の発表を行った。しかしながら、内膜の層構造の本質についてはまだ明らかにできていないため、これからさらなる研究が必要である。研究者は、この層構造がプラーク破裂やびらんによって引き起こされた無症候性血栓の治癒構造物であると考えており、血栓由来の層構造であることを証明できれば、動脈硬化の血栓原説と関わる重大な証拠となり、また、生体内ですでに臨床応用されているOCTを用いて血栓層構造を観察するができるようになることで、経時的観察が可能となる。それにより、治癒血栓がそのどうに内腔狭窄に寄与し、虚血性心疾患に関わるかを明らかにすることができると考えている。動物実験を行い、血栓の治癒過程についてのOCT所見を収集する予定であるが、動物実験の準備に時間を要しているため。しかしながら、剖検症例における実験は順調であり、全くの遅延ではないと考えている。冠動脈の動脈硬化の一因と考えられる治癒血栓について、その成り立ち、形態学的特徴、亜分類、臨床上の特徴・意義について検討を行っている。これまで、虚血性心疾患における冠動脈プラークは脂質性プラークに焦点が当てられ、プラーク破裂やプラークの脆弱性、脂質沈着のメカニズムについての研究・報告が多く成されてきた。しなしながら、冠動脈内イメージングの発展により生体内で冠動脈の断層像を精密に得られるようになり、脂質プラークだけでなく、プラークには層構造を呈しながら冠動脈狭窄が進行していく病態があることが明らかになってきた。これらは、内皮細胞障害や無症候性プラーク破裂に伴う血栓形成が繰り返されることによる層構造と考え、治癒血栓も虚血性心疾患の一因ではないかと考えている。以上より、まずは治癒血栓の組織学的特徴を光干渉断層像との比較により生体内で同定することを第一の目標とし、研究を遂行中である。現在、血栓形成および血栓の特徴についての組織学的解析および臨床例における画像解析は順調に遂行中である。動物実験においては今後の検討課題であるが、まずは剖検症例において冠動脈の動脈硬化病変における治癒血栓の同定、組織と光干渉断層像との比較による治癒血栓の特徴の定義を行い、それを公表することで、動脈硬化の新たな分野の研究基盤になると考えている。具体的には、治癒血栓はHE標本だけでは同定が困難であり、シリウスレッド染色の偏光像を用いて同定を行い、対応する光干渉断層像においても同部位に層構造を高頻度で呈することが示された。同様の層構造が認められる臨床症例を今後は研究対象としてその患者背景や予後を検討予定である。動物実験は、時間的制限もあり、遂行準備段階であるが、その他の剖検症例を用いた組織学的検討および画像との比較検討や、臨床例における検討は順調に遂行中であり、やや遅れているを選択した。急性心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患は生命を脅かす疾患であり、急性発症も多く再発リスクも高いため、発症予測が重要である。発症予測に対してはさまざまな検討がなされてきたが、いまだに確立していない。その理由の一つに、急性心筋梗塞の発症様式には、脂質性プラークの破綻による血栓症以外にも、無症候性血栓症や内膜びらんに伴う血栓症など、様々な発症様式があることが挙げられる。また、安定狭心症においても、脂質性プラークの増大だけではなく、無症候性血栓症やびらんに伴う血栓症が内腔狭窄に関わっていると考えられる。我々は、無症候性血栓症に引き続きおこる治癒血栓に焦点を当て、本研究を遂行した。血栓は治癒すると線維性プラークとの区別が困難となるため、まずは、剖検試料を用いた冠動脈プラークにおける治癒血栓の同定や、光干渉断層像(OCT)における治癒血栓像の同定を行った。無症候性血栓症では血管内腔側に血栓が付着し、治癒血栓は層構造をなすと考えられる。
KAKENHI-PROJECT-15K19393
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血栓性動脈硬化の経時的変化と臨床への影響について
剖検の冠動脈における層構造をシリウスレッド染色で同定したところ、50%以上の狭窄病変114病変に対して32病変(28%)で層構造を認めた。また、治癒血栓をOCTで同定し、組織と比較した結果、OCTは治癒血栓に対して高い検出力を有していた(感度:81%、特異度:98%、陽性的中率:93%、陰性的中率:93%)。OCTで治癒血栓を検出することが可能であれば、今後は臨床的、経時的に評価することができるようになる。治癒血栓の臨床的意義を検討することで、虚血性心疾患の再発予測、インターベンションの際の治療決定等に役立てることができると考える。心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患は急性発症も多く、再発リスクも高いため、発症予測が重要である。発症予測に対してさまざまな検討がなされてきた中、我々は、一般的な発症リスクとされる脂質プラークではなく、無症候性血栓症に引き続きおこる治癒血栓について検討を行った。血栓は血管内腔側に付着し治癒するため、治癒血栓は層構造をなす。剖検の冠動脈において治癒血栓と考えられる層構造をシリウスレッド染色で同定したところ、狭窄病変の約3割に治癒血栓を認め、光干渉断層像(OCT)で高い検出力を示した。本研究により、今後は臨床的、経時的に治癒血栓を検討することが可能になり、発症予測に繋がると考えられる。剖検例における本研究成果を発表することで、臨床に普及しているOCT検査に新たな知見が加えられることとなるため、早期に発表することが望ましいと考えている。そのためには、論文執筆、投稿が欠かせないため、それらを優先的に行い、その上で、層構造の成分解析を行っていく方針である。今後もこれまでと同等に研究を推進していく予定であり、動物実験においても時間的制限が解除されれば遂行できると考えている。循環器領域予定していた動物実験が次年度に持ち越しになったため。今年度は研究遂行と並行して論文投稿準備を行ったため、経費のかかる実験や学会発表が行えなかったため。予定通り実験を遂行する予定である。成果発表が重要であるため、次年度も論文投稿とともに積極的に学会発表や研究を遂行していく予定である。
KAKENHI-PROJECT-15K19393
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「災害の痕跡」の災害遺産化に関する基礎的研究
我が国は災害が頻発し,それらの災害の痕跡は,被災者の痛みの象徴と捉えられ,「負」の遺産として復興計画から排除・除去される傾向がある。しかし痕跡は,その土地の固有の歴史を実証するもので,世界的にも災害遺産として見直され始めている。本研究は被災地の復興にあたり,「負」の遺産とされがちな災害や産業遺産の痕跡(遺構)について,雲仙普賢岳噴火災害,中越地震,東日本大震災を通してプロセスを把握した。また社会情勢によって価値が大きく転換した炭鉱遺産について,当時の再生計画や解体状況を調査した。20年あまりの間に遺構を残す風土が醸成されていること,長期的な視点での価値判断が求められることが明らかとなった。平成26年度は東日本大震災の復興に寄与することを視野に入れ,普賢岳火砕流および中越地震の遺構に関する調査を行った。普賢岳火砕流に関しては大野木場小学校,みずなし本陣の家屋遺構,中越地震に関しては妙見土砂崩落現場,木籠水没家屋を対象とした。調査方法は新聞データベースから災害に関する記事の抽出,議会議事録の収集,普賢岳火砕流に関しては長崎大学高橋名誉教授から各種住民会議や検討委員会の議事録の提供を受け,それらをもとに時系列を整理した。中越地震に関しては現地調査,さらに木籠集落の自治会長や,当時の県職員,中越防災安全推進機構への聞き取り調査を行い,前後関係や関係者の確認を行った。その上で要因をハード面,規制面,費用面,心情面に分類して保存までにクリアした事項を整理した。この調査から保存された災害遺構は,災害が発生してから遺構が公開されるまで長い年月を要すことが明らかとなった。原因は保存への合意だけでなく,維持管理や整備の計画を,地域住民,行政機関,中間支援者,土地の所有者等と長い間協議しながら公開に至っているからである。心情面は復興段階に入って初期に方向性に関して合意しており,早い合意がなければその後の長期間の調整に耐えられないと言える。合意にあたっては被災市町村や地域住民の声や活動が,保存決定に大きく関わっている。加えて,中間支援者の存在も重要である。災害が発生した後,当事者は生活再建に必死になる。第三者である大学や社団法人,委員会等の団体の活動無しには保存に至らない。今回の調査の中でも,妙見土砂崩落現場の保存を積極的に訴えたのは社団法人であり,大野木場小学校被災校舎の保存に関しても検討委員会であった。公開に耐えられる復原やその後の維持のための財源に関しては,新潟県中越地震の復興基金は,計画に対する審査体制やメニュー,使い方に柔軟性があり有効であったと位置づけている。平成26年度の成果から,災害遺産を保全していくには事前位置づけが重要という知見を得たことから,平成27年度は当初より予定していた炭鉱都市の調査に加え,1.災害遺構の復興準備計画における位置づけを,昨年度に引き続き中越地震を経験した新潟県長岡市,復興準備計画の先進地と位置づけられる静岡県内自治体を対象に検証した。2.炭鉱都市については負の遺産から肯定的遺産となっている炭鉱遺産の保存経緯を調査した。まず1の復興準備計画の位置づけについては,静岡県では被害想定と公共施設耐震化率から自治体を類型化し,抽出して県の指針と比較考察した。結果,静岡県では県と各自治体の復興準備計画がほぼ同内容で,県が主導となって策定されており,自治体固有の指針はほとんど見られなかった。静岡県と新潟県を比較すると,建築物に対する事前復興項目に関しては特記すべき相違点はなく,地震火災に対しては,静岡県は火災が発生しないような体制づくりや指導が計画されているのに対し,新潟県では発火後の速やかな消火活動のための整備や体制づくり,避難体制の整備等が主に記載されている。全般に静岡県は官主導の傾向が強く,新潟県は官民連携した体制づくりを志向している。両県ともに復興準備計画には災害遺産については全く触れられておらず,生命維持に主眼が置かれている。現状の文化的な資産や景観的な資産についても同様に触れられていないことが明らかとなった。2の炭鉱遺産については北海道から福岡,長崎,佐賀,熊本,沖縄を調査した。閉山直後の負の遺産という認識は減っており,多くの自治体が資料館を開設し,NPO等と連携したツアーや体験等の博物館活動を行っている。今年度は資料収集整理の他,遺産として価値付けされているもののリストアップ,観光ルートやイベント等観光資源としての活用実態,行政・元労働者(職員・鉱員)への聞き取りを行った。当時のことを知る人を探す活動は継続しているが,想定よりも進んでいない。転出者を別のルートで追跡したいと考えている。炭鉱に関しては居住者は比較的話を聞くことができたが,当時計画を策定した役所関係者に辿りつけない状況である。今年度までの調査でネットワークが増えたため,こちらも新たなルートで探す予定である。28年度は2011年に発生した東日本大震災の整理,産業遺産である炭鉱および鉱山集落の調査,2016年に発生した熊本地震について調査をおこなった。東日本大震災については,発災直後からメディアを通して多くの災害遺構が注目された。しかし復旧復興を進める上で処理が優先されたため,災害廃棄物として扱われ,多くが撤去されたのは周知のところである。災害遺構について結果が保存・解体に問わず,保存が検討された事例を朝日新聞記事データベースにて「東日本大震災遺構」のキーワードで記事の検索を行い,抽出できたものをさらにそのキーワードで検索して経緯を整理した。
KAKENHI-PROJECT-26360067
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「災害の痕跡」の災害遺産化に関する基礎的研究
また保存にあたって組織された復興庁,3.11震災伝承研究会,自治体のHPから支援制度や活動等を収集した。その結果,東日本大震災は,有識者よる保存価値の提示や自治体での委員会の設置,復興庁による財政的支援,それらに裏付けられた方針決定延期という選択肢等,災害遺構の保存を考えていく上での枠組みや進め方についての素地が形成されたといえる。災害遺構のうち被災建物については複数の建物について保存が決定し,復興計画の一メニューとして定着してきつつある。復興庁の支援条件も保存の際の枠組みを示した。また遺構によっては保存反対者が多いケースがある。今回の方針決定延期という選択肢が示されたことも特筆すべきである。今後の課題として,学術的価値の検討や評価の場を,自治体の諮問機関として早期に設置する枠組みが望まれる。産業遺産については全国の網羅的な調査を行い,各企業集落の企業内での位置づけが地域に与えた影響が多いという仮説を得た。来年度は予定に加え,創業の地や主力鉱など企業ごとに横断的な比較考察を行う。代表者の親の介護のため,産業遺産調査のまとめが29年度に持ち越した。被災地の調査について熊本地震の災害遺構の把握に緊急性があると捉え,優先した。2017年度は地震対策の先進県と想定される静岡県と,二度の大地震を経験している新潟県に対してアンケート調査を行った。分析にあたっては災害対策指数という指標を用いて,カテゴリーごとの防災への取り組みを見た。世帯構成別では内閣府の調査等でも一般に単身者は取り組んでいないが,新潟県では単身者であっても高い数値を示した。高額な費用が伴う,耐震工事については両県とも低く,さらに自身の家屋の耐震性についてもあいまいであることが分かった。海外の遺産活用についてはニュージーランドのクライストチャーチの調査を行った。ここでは,直接的遺構として橋などが検討中で大学などは震災ミュージアムを兼ねた再建が検討されている。中心部ではダウンサイジングと合わせた復興が図られている。最も被害が大きかった場所は,鎮魂の場としてまたレクリエーションの場として公園化が図られ,負のイメージは少ない。産業遺産に関して,炭鉱都市の変遷を,住宅地図を用いて福岡県筑豊地域と長崎県の島嶼部で行った。筑豊地域は閉山時期が昭和40年前後と早かったため,失業者対策費や地域振興補助金を用いた工業団地の誘致や道路建設が数多く行われ,特に生産施設は駅に近接しているため,壊される傾向が強い。島嶼部はビルド鉱として存続したが,近年まで操業の池島,全島離村の端島を除いて,産業施設はほとんどなくなっている。炭鉱住宅についても木造は大島で数棟見られるのみで,RC造の炭鉱住宅は社宅や公営住宅へ移行している。両地域とも産業遺産を活かす観点は近年までなく,代替産業を模索するも男子雇用型の誘致に成功したのは大島での造船業のみで,他は人口が大きく減少している。労働者の減少に伴って娯楽施設や商業施設も減り,日用品店や理髪店,寺社仏閣などが炭鉱開削前からの集落を中心に残存している。産業転換にあたっては古い集落を拠点とした再構成を考えるべきことが抽出された。
KAKENHI-PROJECT-26360067
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26360067
AChエステラーゼ阻害活性を持つアルカロイドの探索と不斉全合成研究
近年、高齢者の急増により、有効かつ安全な記憶障害改善薬の開発が急務となっている。アセチルコリンエステラーゼ(AChE)の働きを抑制することにより、脳内のアセチルコリン量を増加させ、記憶障害を改善することができる。本研究では、植物成分からの分離・精製と化学合成により、AChE阻害活性を有するアルカロイド(塩基成分)の創製を目的とした。その結果、植物より数多くの新規アルカロイドの単離に成功し、またそれらアルカロイドの効率的全合成を達成した。近年、高齢者の急増により、有効かつ安全な記憶障害改善薬の開発が急務となっている。アセチルコリンエステラーゼ(AChE)の働きを抑制することにより、脳内のアセチルコリン量を増加させ、記憶障害を改善することができる。本研究では、植物成分からの分離・精製と化学合成により、AChE阻害活性を有するアルカロイド(塩基成分)の創製を目的とした。その結果、植物より数多くの新規アルカロイドの単離に成功し、またそれらアルカロイドの効率的全合成を達成した。1.LycopodiumアルカロイドCermizine類の不斉全合成2.新規LycopodiumアルカロイドLycoposerramine-V, Wの不斉全合成光学活性な3-methyl cyclohexanoneを原料としてJohnson-Claisen転位、Knoevenagel反応、Ring Closing Metathesisを用いてLycoposerramine-Vの2種のジアステレオマーの合成に成功した。合成品のデータを天然物と比較することにより天然物の立体配置を決定した。Lycoposerramine-Vの3位に水酸基を持ち、ピペリジン窒素がメチル体である新規アルカロイドLycoposerramine-WについてもSml_2を用いた分子内Reformatsky反応を用いて合成し、天然物の立体配置を決定するに至っだ。3.AChエステラーゼ阻害作用を有する新規アルカロイドの徹底的追求種々のヒガンバナ科植物の詳細な成分探索を行い、ナツズイセン(Lycoris squamigera)より2種、ショウキズイセン(Lycoris traubii)より1種、マユハケオモト(Haemanthus albiflos)より1種、タイワンオモト(Crinum asiaticum ver. sinicum)より2種、新規アルカロイドを単離し、その構造を決定した。得られた合成品、各種誘導体、天然物について、今後薬理活性評価を行っていく。1.新規アルカロイドLycoposerramine-Cの不斉全合成当研究室で単離・構造決定した新規アルカロイドLycoposerramine-Cの全合成研究を行った。Evansの不斉補助基を有するクロトンアミド体を出発物質とし、細見-櫻井反応、CBS還元等を用いて不斉炭素を立体選択的に構築後、Pauson-Khand反応を用いて二環性シクロペンテノンを得た。さらにケトンの不斉還元、フェニルビニルスルホキシドを用いたクライゼン転位により4級不斉炭素を構築した。その後、ヘンリー反応を用いて窒素を導入後、分子内光延反応により9員環を構築した。現在、Lycoposerramine-Cの全合成まであと2段階のところまで合成を達成している。今後、全合成を達成し、合成中間体を含めた薬理活性評価を行い、構造活性相関の検討、さらなる誘導体の合成等を行っていく予定である。サフロールを出発原料とし、オレフィンのジヒドロキシル化、NBSを用いたハロゲン化に続く増炭反応等を用いて、Diels-Alder反応のジエノフィルに相当する左フラグメントの合成を完了した。続いて、ジエンに相当する右フラグメントの合成を試みた。フランとジヒドロピロールからなる2環性化合物を右フラグメントとして設定し、現在、フランへの増炭反応の検討中である。今後、右フラグメントの合成を達成し、左フラグメントと縮合後、鍵反応となるDiels-Alder反応の検討をおこなう予定である。
KAKENHI-PROJECT-19790089
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19790089
PD-ECGFを標的とした分子イメージング剤の開発
血管新生因子である血小板由来血管内皮細胞増殖因子(PD-ECGF)は、Thymidine Phosphorylase(TP)と同一タンパク質であること、さらにその酵素活性は、腫瘍の血管新生、浸潤、転移と関連があることが明らかとなっている。またTPが、正常組織に比べ様々な固形腫瘍において高レベルで発現することが古くから知られている。本研究では、PD-ECGFの発現すなわち腫瘍における血管新生をin vivoで選択的にイメージングできる放射性薬剤の開発を目的とした。放射性薬剤には、TP阻害活性の高いピリミジン誘導体を設計し標識合成を行うために、TPの基質であるチミン、5-フルオロウラシル(5-FU)のC-11標識合成法の確立、さらには本合成法を応用して高いTP阻害活性を有する化合物の標識化の検討を実施した。新規な前駆体β-アミノアクリルアミド誘導体を合成し、この前駆体をアルカリ金属塩としとトリホスゲンとの反応による迅速なチミン、5-FUの合成に成功した。本合成法を[C-11]ホスゲンに応用したところ[C-11]チミン、[C-11]5-FUの迅速かつ簡便な標識合成法の開発に成功した。この迅速、簡便合成法を用いたピリミジン環形成によるTP阻害活性化合物の合成検討を行っているが、現在のところ成功に至っていない。しかし、6位のヘテロ置換基に着目し、ホスゲンを用いて環化反応しうるジアミノ標識前駆体を合成し、[C-11]ホスゲンとの反応の結果、再現性良くC-11標識TP阻害化合物の合成を達成した。今後、C-11標識TP阻害化合物を用いたPD-ECGFすなわち血管新生イメージングが期待される。血管新生因子である血小板由来血管内皮細胞増殖因子(PD-ECGF)は、Thymidine Phosphorylase(TP)と同一タンパク質であること、さらにその酵素活性は、腫瘍の血管新生、浸潤、転移と関連があることが明らかとなっている。またTPが、正常組織に比べ様々な固形腫瘍において高レベルで発現することが古くから知られている。本研究では、PD-ECGFの発現すなわち腫瘍における血管新生をin vivoで選択的にイメージングできる放射性薬剤の開発を目的とした。薬剤には、TP阻害活性の高いピリミジン誘導体を設計し標識合成を行うために、まずTPの基質であるチミン、5-フルオロウラシル(5-FU)のC-11標識合成法を確立することとした。これまでピリミジン骨格はウレアおよびチオウレア誘導体を用いるカップリング反応によって合成されてきた。カルボニル化試薬として活性なボスゲン類を用いれば、より簡便に緩和な条件で収率よくピリミジン骨格の形成が可能であると考え、β-アミノアクリルアミド誘導体を新規に合成し、これらの前駆体とトリホスゲンとの反応によるチミン、5-FUの合成を検討した。アルデヒドに対してアンモニアを作用させシッフ塩基を経由する方法により新規な前駆体の合成に成功した。この新規前駆体をアルカリ金属塩とし、トリホスゲンとの反応の結果、定量的にチミン、高収率で5-フルオロウラシルを与えることに成功した。そこで、本合成法を[C-11]ホスゲンに応用したところ[C-11]チミン、[C-11]5-FUの迅速かっ簡便な標識合成に成功した。今後、本[C-11]ピリミジン骨格標識法を用いて、TP阻害化合物の標識化を目指し、血管新生イメージング剤としての検討を行う予定である。血管新生因子である血小板由来血管内皮細胞増殖因子(PD-ECGF)は、Thymidine Phosphorylase(TP)と同一タンパク質であること、さらにその酵素活性は、腫瘍の血管新生、浸潤、転移と関連があることが明らかとなっている。またTPが、正常組織に比べ様々な固形腫瘍において高レベルで発現することが古くから知られている。本研究では、PD-ECGFの発現すなわち腫瘍における血管新生をin vivoで選択的にイメージングできる放射性薬剤の開発を目的とした。放射性薬剤には、TP阻害活性の高いピリミジン誘導体を設計し標識合成を行うために、TPの基質であるチミン、5-フルオロウラシル(5-FU)のC-11標識合成法の確立、さらには本合成法を応用して高いTP阻害活性を有する化合物の標識化の検討を実施した。新規な前駆体β-アミノアクリルアミド誘導体を合成し、この前駆体をアルカリ金属塩としとトリホスゲンとの反応による迅速なチミン、5-FUの合成に成功した。本合成法を[C-11]ホスゲンに応用したところ[C-11]チミン、[C-11]5-FUの迅速かつ簡便な標識合成法の開発に成功した。この迅速、簡便合成法を用いたピリミジン環形成によるTP阻害活性化合物の合成検討を行っているが、現在のところ成功に至っていない。しかし、6位のヘテロ置換基に着目し、ホスゲンを用いて環化反応しうるジアミノ標識前駆体を合成し、[C-11]ホスゲンとの反応の結果、再現性良くC-11標識TP阻害化合物の合成を達成した。今後、C-11標識TP阻害化合物を用いたPD-ECGFすなわち血管新生イメージングが期待される。
KAKENHI-PROJECT-18790908
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地殻構造のランダム不均質性による地震波の振幅の揺らぎに関する研究
本研究では、地殻構造の短波長ランダム不均質性に起因する地震波の振幅の揺らぎ(ばらつき)の特徴を、観測データの解析、数理散乱モデルの構築、数値シミュレーションに基づいて探究する。また、その研究成果を踏まえ、強震動予測における最大地動振幅評価の不確定性を見積もる。具体的には、高感度地震観測網(Hi-net)により浅発地震の波形記録が大量に集積されている西南日本を研究対象地域とし、観測記録の解析から地震波の振幅のばらつきの特徴を明らかにする、地殻構造の短波長ランダム不均質性の特徴を推定する、地震波の振幅のばらつきを評価する数理散乱モデルを構築する、3次元地震動シミュレーションに基づいて観測結果の再現を試みるとともに震源近傍の地震波の振幅のばらつきを推定する、最大地動振幅の予測に使用されている距離減衰式の不確定性を評価することなどを目指す。当該年度は、中国地方の地殻内を伝播する高周波数(1 Hz以上)のP波およびS波の振幅のばらつきの周波数・震源距離依存性について検討するために、ダブルカップル型点震源を用いた地震動シミュレーションに基づいて、P波とS波の振幅のばらつきの周波数・距離依存性の方位角による変化を定量的に評価した。地震動シミュレーションには海洋研究開発機構の地球シミュレータを使用した。高周波数の地震波の振幅のばらつきの大きさは、強震動予測における予測精度と密接に関係することから、近年になって周波数・距離依存性についての定量的な評価が必要とされている。ここでは、当該年度の研究の進捗状況を具体的に得られた成果を中心にしてまとめる。地震動シミュレーションの結果、P波振幅とS波振幅のばらつきは、震源距離とともに増大し、高周波数ほどその特性が顕著であることが確認された。測定された振幅は、震源輻射係数から期待される値(以下、振幅の期待値)をほぼ中心にしてばらつく。ばらつきの大きさの絶対値は振幅の期待値に概ね比例する。すなわち絶対値は、震源輻射の節にあたる方向で小さく、震源輻射の腹にあたる方向で大きくなる。ダブルカップル型の見掛け輻射パターンは、2-4 Hz程度以上の周波数帯になると、特にS波において、地殻構造のランダム不均質性による散乱作用のため比較的小さい震源距離(15 km程度)から不明瞭になる。このような地震波の振幅のばらつきの特徴は、震源近傍における強震動予測においてその不確定性として考慮されることが望ましい。なお、現状では、空間密度の限られた地震観測網の記録からは本研究と同様の評価は困難である。このため、将来的には、震源近傍における稠密な地震観測とそのデータの解析による検証が必要であると考えられる。当初の研究計画に従って、主に以下の研究をすすめる。高密度地震観測網(Hi-net)で収録された地震波形の解析から、中国地方の地殻内を伝播する高周波数のP波およびS波の振幅のばらつきの周波数・震源距離依存性を明らかにする。具体的には、防災科学技術研究所の高感度地震観測網により主に中国地方で収録された地殻内地震の波形を解析し、P波およびS波の振幅のばらつきの周波数・震源距離依存性の詳細を明らかにする。ランダム不均質媒質中における地震波の伝播特性に関する数値解析的な研究として、差分法による3次元地震動シミュレーションを実施する。この研究には、Takemura et al. (2015)による3次元地震動シミュレーションのコードを改良して使用し、東京大学地震研究所の計算機システムおよび海洋研究開発機構の地球シミュレータを利用する。地震動シミュレーションは、ランダム不均質媒質のパラメタの設定値を大きく振って実施し、観測データの解釈だけでなく、数理モデルの予測精度の検証等にも役立てる。地震波の振幅のばらつきを評価する数理散乱モデルを構築する。ダブルカップル型輻射パターンの震源距離による崩れを多重散乱モデルにより評価し、その上に振幅のばらつきを重畳させる。最終的には、観測結果と比較して数理散乱モデルの再現性の検証を目標とする。本研究では、地殻構造の短波長ランダム不均質性に起因する地震波の振幅の揺らぎ(ばらつき)の特徴を、観測データの解析、数理散乱モデルの構築、数値シミュレーションに基づいて探究する。また、その研究成果を踏まえ、強震動予測における最大地動振幅評価の不確定性を見積もる。具体的には、高感度地震観測網(Hi-net)により浅発地震の波形記録が大量に集積されている西南日本を研究対象地域とし、観測記録の解析から地震波の振幅のばらつきの特徴を明らかにする、地殻構造の短波長ランダム不均質性の特徴を推定する、地震波の振幅のばらつきを評価する数理散乱モデルを構築する、3次元地震動シミュレーションに基づいて観測結果の再現を試みるとともに震源近傍の地震波の振幅のばらつきを推定する、最大地動振幅の予測に使用されている距離減衰式の不確定性を評価することなどを目指す。当該年度は、中国地方の地殻内を伝播する高周波数(1 Hz以上)のP波およびS波の振幅のばらつきの周波数・震源距離依存性について検討するために、ダブルカップル型点震源を用いた地震動シミュレーションに基づいて、P波とS波の振幅のばらつきの周波数・距離依存性の方位角による変化を定量的に評価した。地震動シミュレーションには海洋研究開発機構の地球シミュレータを使用した。
KAKENHI-PROJECT-18K03786
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K03786
地殻構造のランダム不均質性による地震波の振幅の揺らぎに関する研究
高周波数の地震波の振幅のばらつきの大きさは、強震動予測における予測精度と密接に関係することから、近年になって周波数・距離依存性についての定量的な評価が必要とされている。ここでは、当該年度の研究の進捗状況を具体的に得られた成果を中心にしてまとめる。地震動シミュレーションの結果、P波振幅とS波振幅のばらつきは、震源距離とともに増大し、高周波数ほどその特性が顕著であることが確認された。測定された振幅は、震源輻射係数から期待される値(以下、振幅の期待値)をほぼ中心にしてばらつく。ばらつきの大きさの絶対値は振幅の期待値に概ね比例する。すなわち絶対値は、震源輻射の節にあたる方向で小さく、震源輻射の腹にあたる方向で大きくなる。ダブルカップル型の見掛け輻射パターンは、2-4 Hz程度以上の周波数帯になると、特にS波において、地殻構造のランダム不均質性による散乱作用のため比較的小さい震源距離(15 km程度)から不明瞭になる。このような地震波の振幅のばらつきの特徴は、震源近傍における強震動予測においてその不確定性として考慮されることが望ましい。なお、現状では、空間密度の限られた地震観測網の記録からは本研究と同様の評価は困難である。このため、将来的には、震源近傍における稠密な地震観測とそのデータの解析による検証が必要であると考えられる。当初の研究計画に従って、主に以下の研究をすすめる。高密度地震観測網(Hi-net)で収録された地震波形の解析から、中国地方の地殻内を伝播する高周波数のP波およびS波の振幅のばらつきの周波数・震源距離依存性を明らかにする。具体的には、防災科学技術研究所の高感度地震観測網により主に中国地方で収録された地殻内地震の波形を解析し、P波およびS波の振幅のばらつきの周波数・震源距離依存性の詳細を明らかにする。ランダム不均質媒質中における地震波の伝播特性に関する数値解析的な研究として、差分法による3次元地震動シミュレーションを実施する。この研究には、Takemura et al. (2015)による3次元地震動シミュレーションのコードを改良して使用し、東京大学地震研究所の計算機システムおよび海洋研究開発機構の地球シミュレータを利用する。地震動シミュレーションは、ランダム不均質媒質のパラメタの設定値を大きく振って実施し、観測データの解釈だけでなく、数理モデルの予測精度の検証等にも役立てる。地震波の振幅のばらつきを評価する数理散乱モデルを構築する。ダブルカップル型輻射パターンの震源距離による崩れを多重散乱モデルにより評価し、その上に振幅のばらつきを重畳させる。最終的には、観測結果と比較して数理散乱モデルの再現性の検証を目標とする。
KAKENHI-PROJECT-18K03786
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フランス16世紀から18世紀における演劇表現の変遷過程の研究
本研究は、17世紀を絶頂期として、その前後16世紀から18世紀にかけて成立したフランス演劇の伝統の変遷を総合的に探ることを主たる目的として出発した。これによって、16世紀の人文主義演劇からバロック演劇、古典主義演劇、さらに18世紀啓蒙時代の演劇へと移行する過程が解明されると考えたからである。こうして得た知見の一つは、16世紀の静的な「哀歌」の演劇から動的なバロック演劇への移行には、劇場建築の発展と遠近法を駆使した上演舞台が大いに関係したことである。つまり美しい詩を聞かせるだけでなく、「真実らしく」て目も楽しませるスペクタクル性豊かな芝居を作ったのである。それが行き過ぎると荒唐無稽なものも多くなり「真実らしさvraisemblance」から離れ、折からCorneilleらによって開発された深い心理描写の作劇法に変わっていく。そのとき戯曲は修辞法rhetoriqueを尊び、各種の「規則」を重んじて自らを縛り、スペクタクル性をむしろ二の次にした。これが古典主義演劇であろう。さらに“vraisemblance"を追求したところから、例えば17世紀に見られる“stance"も次の世紀には消滅し、より日常会話的なものへと変化していく。このようにいくつか浮かび上がってきた変遷過程の特徴をまとめれば、1618世紀のフランス演劇は常に底流で「真実らしさ」の追求をし、そのために各時代ともさまざまな「規則」や「制約」を設け、そこから逆にレトリックも発達したようにも思えることである。なお今後、「各論」を堀り下げながら、全体的な、より確固たる結論を得るように努めたい。我々の研究費補助金採用は追加が決定されたため、その交付は時期がかなり遅く(平成3年11月),実質的な研究期間は4カ月と極めて少なかった。そのため研究がはかばかしくは進展しなかったことを告白せざるを得ない。それでも、12月24日(火)には地方からの研究分担者も参加して、現在の16、17、18世紀の演劇研究の動向、今後の演劇表現研究の方向づけなどについて活発に討議した。演劇表現という言葉で表されるものは広いが、あまり枠を定めずに各研究者の関心事をそれぞれ探究し、それを総合するということで方向づけができた。演劇理論、戯曲形態、舞台表現の三本柱に分けるなどの枠づけをすると、各研究者の自由な発想の研究成果が損なわれるからできるだけ区分は避けたい。1617世紀の悲劇、悲喜劇に多く見られる「スタンスstance(一種の叙情詩)」も18世紀になると消滅している。それは18世紀には、古典劇時代の「真実らしさvraisemblance」をより多く求めたからに他なるまいが、このように16世紀、17世紀の表現と次の18世紀の表現形式とにつながらないものも多いし、逆に17世紀と18世紀に見られる心理描写などの作劇法dramaturgieは16世紀にはまだ存在しなかった。このように各世紀間の共通点、相異点を綿密に調査分析する必要がある。そこで、今後はまず戯曲の中に現れた「修辞法rhetorique」の違いから考察する。そのために、フランスの国立図書館に未刊の戯曲のマイクロフィルムを注文しているー注文が遅かったのでまだ到着していないーが、これらが到着次第、購入できたプリント版と合わせて、詳細に分析したい。機械器具として購入したスキャナ-も、その時に大いに本領を発揮して活躍してくれるだろう。本研究は、17世紀を絶頂期として、その前後16世紀から18世紀にかけて成立したフランス演劇の伝統の変遷を総合的に探ることを主たる目的として出発した。これによって、16世紀の人文主義演劇からバロック演劇、古典主義演劇、さらに18世紀啓蒙時代の演劇へと移行する過程が解明されると考えたからである。こうして得た知見の一つは、16世紀の静的な「哀歌」の演劇から動的なバロック演劇への移行には、劇場建築の発展と遠近法を駆使した上演舞台が大いに関係したことである。つまり美しい詩を聞かせるだけでなく、「真実らしく」て目も楽しませるスペクタクル性豊かな芝居を作ったのである。それが行き過ぎると荒唐無稽なものも多くなり「真実らしさvraisemblance」から離れ、折からCorneilleらによって開発された深い心理描写の作劇法に変わっていく。そのとき戯曲は修辞法rhetoriqueを尊び、各種の「規則」を重んじて自らを縛り、スペクタクル性をむしろ二の次にした。これが古典主義演劇であろう。さらに“vraisemblance"を追求したところから、例えば17世紀に見られる“stance"も次の世紀には消滅し、より日常会話的なものへと変化していく。このようにいくつか浮かび上がってきた変遷過程の特徴をまとめれば、1618世紀のフランス演劇は常に底流で「真実らしさ」の追求をし、そのために各時代ともさまざまな「規則」や「制約」を設け、そこから逆にレトリックも発達したようにも思えることである。なお今後、「各論」を堀り下げながら、全体的な、より確固たる結論を得るように努めたい。本研究は、17世紀を絶頂期として、その前後16世紀から18世紀にかけて成立したフランス演劇の伝統の変遷を総合的に探ることを主たる目的として出発した。これによって、16世紀の人文主義演劇からバロック演劇、古典主義演劇、さらに18世紀啓蒙時代の演劇へと移行する過程が解明されると考えたからである。
KAKENHI-PROJECT-03301056
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03301056
フランス16世紀から18世紀における演劇表現の変遷過程の研究
今年度得た知見の一つは、16世紀の静的な「哀歌」の演劇から動的なバロック演劇への移行には劇場建築の発展、言い換えれば遠近法を駆使した上演舞台が大いに関係したのではないかということである。つまりただ耳で美しい詩を聞かせるだけでなく、「真実らしく」て目も楽しませる技術を生かしてスぺクタクル性豊かな芝居を作ったのである。それが行き過ぎると荒唐無稽なものも多くなり「真実らしさvraise7blance」から離れ、折からCorneilleらによって開発された深い心理描写の作劇法に変わっていく。そのとき戯曲は修辞法Rhetoriqueを尊び、各種の「規則」を重んじて自らを縛り、スペクタクル性をむしろ二の次にした。これが古典主義演劇であろう。さらに“vrasisemblance"を追求したところから、例えば17世紀に見られる"Stanc"も次の世紀には消滅し、より日常会話的やものへと変化していく。こうしていくつか浮かび上がってきた変遷過程の特徴をまとめれば、1618世紀のフランス演劇は常に底流で「真実らしさ」の追求をし、そのために各時代ともさまざまな「規則」や「制約」を設け、そこから逆にレトリックも発達したように思えることである。なお今後、「各論」を掘り下げながら、全体的な、より確固たる結論を得るように努めたい。
KAKENHI-PROJECT-03301056
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航空機用先進複合材料の成形プロセスに関するマルチスケールモデリング
本研究では複合材料の成形に関して、樹脂の流動特性から界面における分子構造までを系統的に扱い検討を行った。具体的には(1)分子動力学による界面の結合構造に関する数値シミュレーション(2)粒子法による濡れ性を考慮した成形シミュレーション(3)比較的簡単な構造を有する繊維集合体への樹脂の含浸シミュレーション(4)結合力要素を利用した繊維・マトリックス界面特性に関する数値シミュレーション(5)繊維・樹脂の濡れ性に関する実験的評価(6)比較的簡単な構造を有する繊維集合体への樹脂の含浸の実験的評価(7)異なる化学構成を有する界面の機械的特性に関する実験による評価の7つの研究テーマを実施した。本研究では複合材料の成形に関して、樹脂の流動特性から界面における分子構造までを系統的に扱い検討を行った。具体的には(1)分子動力学による界面の結合構造に関する数値シミュレーション(2)粒子法による濡れ性を考慮した成形シミュレーション(3)比較的簡単な構造を有する繊維集合体への樹脂の含浸シミュレーション(4)結合力要素を利用した繊維・マトリックス界面特性に関する数値シミュレーション(5)繊維・樹脂の濡れ性に関する実験的評価(6)比較的簡単な構造を有する繊維集合体への樹脂の含浸の実験的評価(7)異なる化学構成を有する界面の機械的特性に関する実験による評価の7つの研究テーマを実施した。1.官能基の結合密度と結合長変化に伴う界面結合構造変化に関する分子シミュレーション(計算)複合材料においては繊維・樹脂界面における応力伝達が力学特性の良否を左右する。この部分に強固な結合をもたせるためには、充分な長さと密度のクロスリンクが必要となると考えられている。クロスリンクとは繊維表面から生えた樹脂のひげのようなものであり、繊維とは共有結合にてつながれている。この共有結合を得るために、通常の繊維表面には官能基を付与し、分子間の結合力を高め、樹脂を吸着させる。このように十分に樹脂密度が高い状態では、樹脂による化学反応が生じ、共有結合が生じる。このたがいに吸引する力こそ濡れ性といわれるものであり、これが界面の良否に直結する。本研究では古典分子動力学と分子軌道法を組み合わせることで界面の反応プロセスをモデル化し、分子レベルから繊維・樹脂間の界面結合性および硬化特性について議論した。2.異なるサイジング剤が塗布された繊維に対する樹脂の濡れ性に関する実験的評価(実験)CFRP界面には強固な吸着を得るために、サイジング剤による特殊な化学処理がなされている。このサイジング剤にはいくつかの種類があり、これにより界面の特性が変化する。このサイジング剤の違いと界面の濡れ性との関係について、単繊維強化複合材料の破断過程をもとに検討を進めた。界面が強固な場合には、破断数が岡部・武田モデルと一致し、脆弱な場合、界面の応力伝達が不十分で、破断数がきわめて少なくなる。また、現在は、サイジング剤による破断数変化だけでなく、繊維を多湿な条件下に暴露し、特性を変化させたときの濡れ性についても検証を行っている。さらに、十分に強固な繊維・樹脂界面が得られた際の、積層板等における巨視的な横方向破壊および衝撃破壊特性についても有限要素法・SPH法を駆使し、検討を行っている。粒子法による濡れ性を考慮した成形シミュレーションの構築従来はダルシー則を仮定した有限体積法によって流動シミュレーションが行われてきた。これらは樹脂の流動を正確に追いかけるのに適していない。我々は短繊維複合材料における射出成形シミュレーションを題材として、粒子法を適用し、従来の連続体手法では得られないいくつかのメリットを明らかにしている。この手法は樹脂含浸といったマイクロスコピックなテーマには極めて適しており、本研究により新たな学術的な展開も期待できる。また、従来の手法は繊維・樹脂界面の濡れ性が考慮されておらず、この効果を評価することが出来ない。我々は2体間ポテンシャルを援用した新たな手法を開発しており、従来に比べて非常に簡単に濡れ性を考慮することができる。以上の結果を論文として纏め、論文として投稿した。また、以上の内容について、実験と計算の直接比較を行った。この実験と計算の直接比較を行うことで、モデルの定量性だけでなく、実験では直接観察できなかったマルチスケールな動的特性も容易に評価することができる。比較に用いた実験に関しては京都大学の北條教授のグループが行ったマイクロ流路を利用した、微視的流れの直接観察に関するものである。この比較結果は大変良く一致し、かつ、繊維束内の流れは、繊維・樹脂界面の濡れ性と繊維配置構造の両面に影響を受けることを明らかにした。さらに、実際の織物複合材内部における繊維束に近い状況を模擬した解析を行い、繊維・樹脂界面の濡れ性を変化させたときの解析を行い、複合材成形に関する知見を得ることが出来た。航空機においては、軽量化を目的に先進複合材料の積極的な適用に期待がかけられている。中でも、国産旅客機では、尾翼をResin Transfer Molding(RTM)によって成形するという革新的な手法を採用している。RTMは人手によって積層する従来の手法と異なり、樹脂を流動させ含浸させるため、複雑な構造にも対応でき、かつ低コストである。一方、レオロジーや繊維・樹脂界面の濡れ性に強く依存するため、材料内部の微視構造のコントロールが難しいという問題点がある。特に、界面欠陥やその周辺のボイドは構造全体の強度に直結するため、定量的評価が必要不可欠である。さらに、上記界面の濡れ性は繊維・樹脂界面における分子構造に強く影響を受ける。つまり、分子レベルでの材料構造についての検討も必要である。
KAKENHI-PROJECT-22360352
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22360352
航空機用先進複合材料の成形プロセスに関するマルチスケールモデリング
本研究では複合材料の成形に関して、樹脂の流動特性から界面における分子構造までを系統的に扱い検討を行った。具体的には(1)分子動力学による界面の結合構造に関する数値シミュレーション(2)粒子法による濡れ性を考慮した成形シミュレーション(3)比較的簡単な構造を有する繊維集合体への樹脂の含浸シミュレーション(4)結合力要素を利用した繊維・マトリックス界面特性に関する数値シミュレーション(5)繊維・樹脂の濡れ性に関する実験的評価(6)比較的簡単な構造を有する繊維集合体への樹脂の含浸の実験的評価(7)異なる化学構成を有する界面の機械的特性に関する実験による評価の7つの研究テーマを実施し、成果は論文として公刊および投稿中であるた。一連の研究により、それぞれの研究分野が持つスケールを理解したうえで、それらを階層化することによって体系づけ、かつ橋渡しするといった複合材料における学際研究の基盤が確立されたと考える。今後は以上の成果をもとに実際の材料開発に活かしていきたい。分子シミュレーションと樹脂流動解析に関しては、当初の予定を上回るペースにて進んでいる。一方、これに基づく界面特性の定量評価に関しては、実験データの取得が難しく、難航している。出来うる限り早く計画にキャッチアップしたいと考えている。したがって、全体を通してみると「おおむね順調に進展している。」と考える。24年度が最終年度であるため、記入しない。分子シミュレーションと樹脂流動解析に関しては、これまでの計画通りに進め、早い段階で完成させたい。また、得られた成果を出来るだけ早い段階で論文として纏め、数多く投稿したいと考えている。一方、界面特性の定量評価に関しては、焦らず、着実にデータを取得したいと考えている。また、この内容でも論文として纏め、学術誌に投稿したいと考えている。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22360352
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成層圏‐対流圏結合系における極端気象変動の現在・過去・未来
成層圏-対流圏結合系の内部・外部各変動の力学的関連性について、データ解析および数値モデル実験によって総合的に研究を行った。対流圏の変動が成層圏の変動に影響を与えているだけでなく、成層圏での波の反射や成層圏での大気循環・オゾン量の変動が対流圏での寒波の発生や降水量・気温の変動にそれぞれ影響を及ぼしうることを明らかにした。これらは対流圏の気候変動の理解にもインパクトを与える結果である。研究手法をもとに構築された1)データ解析班、2)大気循環力学モデル・統計理論班、3)大気大循環モデル・数値予報モデル班、4)気象研究所気候モデル班、の4班からなる研究体制のもとに、多重の時間空間スケールで変動・変化する成層圏-対流圏結合系での極端気象について、現象の記述と力学過程の理解から最先端モデルによる予測まで総合的に研究を推進している。それぞれの班の平成24年度の具体的な研究実績は以下の通りである。1)データ解析班:○再解析データを用いて、QBO(成層圏準二年周期振動)の運動量収支診断および成層圏突然昇温の予測可能性に関する研究を進めた。CMIP5の代表的な過去再現・将来予測実験について、初期解析を開始した。2)大気循環力学モデル・統計理論班:○大気循環力学コアモデルを高速に実行することを目指し、基盤となる数値ライブラリの整備を行った。○アンサンブル数値予報データを用いて、成層圏の極渦変動に伴う北極上空気温の予測可能性変動を解析し、成層圏での予測可能時間が月毎に大きく異なることを示した。3)大気大循環モデル・数値予報モデル班:○大気大循環モデルにおける2次元移流スキームの改良および非静力学モデルの定式化の再検討を行った。○2012年の12月の寒波の原因が、成層圏プラネタリー波の反射によって発生したブロッキングであることを示し、プラネタリー波の反射が北太平洋域でのブロッキング形成と関連する可能性を指摘した。○成層圏突然昇温生起前後に関して、中間圏上部までの高度領域を対象とする詳細な力学的解析を行った。4)気象研究所気候モデル班:○気象研気候モデルを用いた産業革命前実験、完新世中期実験、最終氷期最盛期実験について、有効位置エネルギーと運動エネルギーおよびそれらの変換項の空間分布から、それぞれの時期の気候の特徴を抽出した。○上記の各実験における成層圏突然昇温の再現性について調べた。研究手法をもとに構築された1)データ解析班、2)大気循環力学モデル・統計理論班、3)大気大循環モデル・数値予報モデル班、4)気象研究所気候モデル班、の4班からなる研究体制のもとに、多重の時間空間スケールで変動・変化する成層圏-対流圏結合系での極端気象について、現象の記述と力学過程の理解から最先端モデルによる予測まで総合的に研究を推進している。それぞれの班の平成25年度の具体的な研究実績は以下の通りである。1)データ解析班:○エルニーニョ・南方振動(ENSO)および成層圏準二年周期振動(QBO)に関連した北半球冬季成層圏の年々変動を再解析データを用いて調べ、冬季平均の極渦の形状および成層圏突然昇温の頻度が、ENSO/QBOに非線型に依存することを明らかにした。○同様の解析をCMIP5データにも拡張し、再現性の検討した。2)大気循環力学モデル・統計理論班:○成層圏突然昇温を記述する低次元モデルにおいて、カオス的時間変動の性質が不安定周期軌道の性質から理解しうることを示した。○領域気象モデルを用いて成層圏ー対流圏結合系における内部変動に関する理想化数値実験を行い、赤道QBOに似た振動現象を得た。3)大気大循環モデル・数値予報モデル班:○アンサンブル再予報実験を行い、2009年の分裂型成層圏突然昇温の予測可能性について解析した。○成層圏における惑星規模波の反射とブロッキング発生との関連について事例解析を行った。○中間圏赤道域半年周期振動の年々変動について力学的解析を実施した。4)気象研究所気候モデル班:○産業革命前と完新世中期の気候再現実験を行い、オゾンの化学・輸送過程を(含む/含まない)実験で結果を比較し、完新世中期の極域の地上気温変化に太陽軌道要素の変化に伴うオゾンの変化が寄与している可能性を指摘した。○熱帯対流圏界層や中高緯度低気圧発達について、気象研気候モデルと他のCMIP5実験結果との比較解析を行った。研究手法をもとに構築された1)データ解析班、2)メカニスティックモデル・統計理論班、3)大気大循環モデル・数値予報モデル班、4)気象研究所気候モデル班、の4班からなる研究体制のもとに、多重の時間空間スケールで変動・変化する成層圏-対流圏結合系での極端気象について、現象の記述と力学過程の理解から最先端モデルによる予測まで総合的に研究を推進している。各班の平成26年度の研究実績は以下の通りである。1)データ解析班:○成層圏突然昇温(SSW)の頻度がENSO/QBOに非線形に依存することを再解析データを用いて明らかにした。○北半球冬季成層圏の東西平均場のENSO/QBOに伴う年々変動は再解析データ間でよく一致するが、惑星規模波動によるフラックスの相違は比較的大きいことを示した。2)メカニスティックモデル・統計理論班:○モデルの精度検証のために、風下波の非線形定常解の高精度計算法を開発した。
KAKENHI-PROJECT-24224011
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成層圏‐対流圏結合系における極端気象変動の現在・過去・未来
○赤道大気を理想化した鉛直二次元モデルにおいて、計算領域などによらずQBO的振動がロバストに存在することを明らかにした。3)大気大循環モデル・数値予報モデル班:○衛星データを追加したデータ同化実験とアンサンブル再予報実験を行い、追加観測の効果を調べた。○成層圏で反射して下方伝播する惑星規模波が対流圏循環に及ぼす影響を再解析データを用いて解析した。○冬季成層圏循環の予測可能性の月毎の変動特性を気象庁一ヶ月アンサンブル予報結果を用いて調べた。○SSW生起前後の全球的な大気大循環について衛星データを用いて解析した。4)気象研究所気候モデル班:産業革命前と完新世中期の気候再現実験においてオゾン化学輸送過程を含む/含まない実験を比較し、太陽軌道要素の違いによる上部成層圏オゾン分布の違いが、南極域地上付近の気温に最大1.7度程度の差を生じさせることを示した。また,過去千年の気候再現実験において、北半球環状モードなどに関して解析した。研究手法をもとに構築された4班からなる研究体制のもとに、多重の時間空間スケールで変動・変化する成層圏-対流圏結合系での極端気象について、現象の記述と力学過程の理解から最先端モデルによる予測まで総合的に研究を推進している。各班の平成27年度の研究実績は以下の通りである。1)データ解析班:○気象庁長期再解析データおよびCMIP5の多数モデルデータにおいて、成層圏突然昇温(SSW)の頻度やその際の極渦形状を調べ、CMIP5モデルデータではSSW(特に極渦が伸長・分裂するもの)の頻度がより少ないことを示した。○気象庁1ヶ月予報データでSSWの予測可能性を検討し、極渦が伸長・分裂する際の予報誤差が大きいことを明らかにした。2)メカニスティックモデル・統計理論班:○モデルの高速化のために、大規模並列環境に対応した球面調和関数変換ライブラリを開発した。○赤道大気を理想化した鉛直二次元モデルにおいて、湿潤対流と重力波に伴う運動量輸送過程を明らかにした。3)大気大循環モデル・数値予報モデル班:○再解析データの解析により、SSW後に形成される対流圏循環偏差が惑星規模波の成層圏での伝播特性に依存することを見出した。○アンサンブル予報実験結果の解析から、2009年の成層圏極渦分裂の予測には、その直前における成層圏惑星規模波の振る舞いを正しく予測することが重要であることを見出した。○衛星データを用いて、SSW前後の下部熱圏領域までの全球的子午面循環の変動特性を解析した。4)気象研究所気候モデル班:気象研気候モデルを用いて、オゾンの化学輸送過程を含んだ最終氷期最盛期の気候再現アンサンブル実験を実施し、オゾンの化学輸送過程を含まない場合との比較を行った。熱帯対流圏界層における上昇流とその気候変化ついて、気象研気候モデルと他のCMIP5実験結果データとの比較解析を行った。またこのモデルで予報されるSSWについても対流圏との関係を調べた。(理由)研究手法をもとに構築された4つの班それぞれについて、各班内で分担者・連携研究者が密に協力して研究を推進し、論文発表も順調に行っている。また、4つの班全体での相互的なデータ、研究情報の共有もスムーズに行えている。研究手法をもとに構築された4班からなる研究体制のもとに、多重の時間空間スケールで変動・変化する成層圏-対流圏結合系での極端気象について、現象の記述と力学過程の理解から最先端モデルによる予測まで総合的に研究を推進した。
KAKENHI-PROJECT-24224011
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戦後青少年教育の研究―戦前との連続性および「官製」的運動の展開に着目して―
本研究では、まずは戦後青少年(教育)施策の展開における末次一郎の関与、関わって右派人脈および戦前以来の青年団関係者との密接な関係がその過程にあることが明らかとなった。次は青年団全国組織である日本青年団協議会に対する、政府および保守・右派勢力からの左傾化抑制を目論んだ介入の存在と、右派・左派及び戦前・戦後の青年団関係者の結節点に寒河江善秋があり、中道的な位置で雑誌編集等を積極的に行っていたことが示唆された。本年度は主に3つの研究活動を実施した。1青少年育成国民会議および中央青少年団体連絡協議会、日本青年奉仕協会の機関誌等の閲覧および複写等による資料・情報収集。21をふまえつつ、それら団体関係者を中心に末次一郎および寒河江善秋らとの関係についてのインタビューおよび資料収集。3研究方法論であるライフストーリー(オーラルヒストリー)についての理論的検討。これら13の成果は、日本社会教育学会第59回研究集会自由研究発表において、「戦後青少年(教育)施策の展開に関する一考察ー主に1970年代までの青少年団体施策決定の過程に着目してー」と題して報告した。ここでは昨年3月に第10回筑波大学教育学会にて行った発表を深化させ、特に末次一郎が深く関わったことが推測される、1970年代までの青少年団体施策決定の過程に関して、関係雑誌等のテキスト、さらには関係者からのインタビューを活用し、その詳細を明らかにすることを試みた。結果、末次がどのようにして青少年行政に深く介入していったのか、その人脈およびその形成過程、末次が関わった戦後青(少)年施策、特に青少年団体施策決定についての概要を明らかにした。また、方法論として、施策決定過程の理解においては、文献に依拠するのみならず、政治史研究にならったオーラルヒストリーアプローチの可能性を本発表を通して示すものとなった。従前の社会教育史研究において等閑視されてきた、戦後における青少年(教育)施策決定に際しての右派人脈および戦前以来の内務・文部官僚出身者らとの密接な関係を明らかにしたものであり、かつ方法論としてのオーラルヒストリーアプローチの可能性を示したことが本年度の研究において、特筆すべき部分である。本年度は主に4つの研究活動を実施した。1寒河江善秋の山形における青年団活動に関するインタビューおよび書信類の複写・撮影および解読2寒河江の日本産業開発青年協会を拠点とした活動に関わる雑誌類の閲覧・閲覧、3末次一郎関係の公文書閲覧・撮影、4研究方法論であるライフストーリー(オーラルヒストリー)についての理論的検討。これら13の成果は、平成25年9月に日本社会教育学会第60回研究大会自由研究発表において、「戦後青少年団体の展開と青年団運動ー寒河江善秋の周辺に着目してー」と題して報告した。前年度までに戦後青少年(教育)施策における末次一郎の役割の大きさを明らかにしたが、その過程で気づかされたのが、日本青年団体協議会(日青協)副会長も務めた寒河江善秋の存在感と末次との密接な関係であった。当発表では、末次と寒河江との関係の深化以降、日青協においていかなる変化が生じたのか、特に寒河江とその周辺の動向・言行に焦点化しつつ解明した。結果、寒河江が日青協において、中道、あるいは保守・右派勢力の結節点となったこと、その際、反共キリスト教系団体MRAの日青協執行部への浸透があったこと、寒河江が1960年代半ばに戦前戦後の青年団運動に関わる人脈を結びつけるに貢献したこと、結果として末次との関係は、晩年一定の距離が開いた可能性が示唆された。これら成果は本研究において特筆すべき成果である。なお、上記4については、日本社会教育学会プロジェクト研究「社会教育研究における方法論の検討」世話人として、2013年6月開催の日本社会教育学会六月集会および9月の第60回研究大会双方で開催されたシンポジウムにおいて、プロジェクトの趣旨および成果についての報告を行うため登壇した。また、12月には同プロジェクト第5回研究会にて、「社会教育実践史研究におけるナラティヴの位相ー予備的考察ー」と題して報告した。本研究では、まずは戦後青少年(教育)施策の展開における末次一郎の関与、関わって右派人脈および戦前以来の青年団関係者との密接な関係がその過程にあることが明らかとなった。次は青年団全国組織である日本青年団協議会に対する、政府および保守・右派勢力からの左傾化抑制を目論んだ介入の存在と、右派・左派及び戦前・戦後の青年団関係者の結節点に寒河江善秋があり、中道的な位置で雑誌編集等を積極的に行っていたことが示唆された。本年度はまず解散した青少年育成国民会議、活動が休止状態である中央青少年団体連絡協議会に関わる所蔵資料を財団法人日本青年館資料室にて所在を確認。以後、複数回にわたって両団体に関わる雑誌『青少年』『中青協ニュース』等の雑誌記事を閲覧・複写した。次に、日本青年団協議会の1960年代以降における末次一郎らの介入について、当時の日本青年団協議会関係者関係者にインタビューを実施し、内容を音声データにて記録した。その後、筑波大学附属図書館等にて雑誌『月刊社会教育』『社会教育』『青少年問題』の1950年代から1960年代の青少年施策をめぐる記事を閲覧・複写し、その内容を検討した。これらをふまえ、本年度の研究成果は、2012年3月10日に開催された第10回筑波大学教育学会での自由研究発表として「戦後における青(少)年団体の展開に関する一考察ー主に1960年代までの「官製」的組織・運動に着目してー」と題して発表した。
KAKENHI-PROJECT-23730722
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戦後青少年教育の研究―戦前との連続性および「官製」的運動の展開に着目して―
本年度の研究により、1951年に占領下公認の下に組織された中央青少年団体連絡協議会から1967年に結成される青少年育成国民会議へと継承されていく、青少年健全育成事業の展開とそこに関わる青(少)年団体及び人脈について、主にキーパンソンとなる末次一郎に焦点づけながら明らかにすることができた。具体的には、(1)末次がどのようにして青少年行政に深く介入していったのか、その過程、(2)末次の人脈と主に戦前期からの日本青年館・大日本連合青年団関係者との結びつきについて、(3)末次が関わった戦後青(少)年施策、特に青少年団体に関わるものについて整理できた。これらは従前、社会教育(史)研究からは等閑視されてきた内容であり、特に戦前期からの日本青年館関係者やその流れを汲む文部官僚らとのつながりについての着目は、本年度研究において特筆すべき部分である。本年度は昨年度、震災の影響で滞った、日本青年館関係者、青少年育成国民会議関係者、日本青年奉仕協会関係者へのインタビューを複数回実施し、それら団体と末次一郎および寒河江善秋らとの関わりを確認することができた。また、上掲団体に関わる機関誌等の閲覧・複写、資料収集も順調に進んでいる。研究成果の発表については日本社会教育学会第59回研究集会自由研究発表で行い、十分な反応を得た。平成25年度に学会誌等への投稿を準備している。震災の影響により日本青年奉仕協会関係者、旧文部省関係者等へのアポイントが取りづらく、インタビューが必ずしも計画通りに実施することができなかったものの、本年度は主に公立図書館に所蔵されていない資料の閲覧・複写、収集を重点的に実施し、その面で多大な成果をあげた。これにより関係者にインタビューを実施するに当たっての準備がより精緻化されたと評価できる。なお、3月に発表した学会発表の内容は、ノートとして次年度学内紀要等に発表予定である。本年度の研究成果をふまえ、さらにインタビューデータを蓄積する。本年度は特に青少年育成国民会議関係者および1970年代に青少年教育担当であった元文部省職員らにインタビューを実施する。研究成果は日本社会教育学会および筑波大学教育学会において発表をし、学会誌等へ投稿する。また、インタビューデータは報告集として発刊する。昨年度の研究成果をふまえ、末次一郎関係者へのインタビュー、また昨年度実施できなかった旧文部省関係者、日本青年奉仕協会関係者等へのインタビューを積極的に行う。研究成果を日本社会教育学会、筑波大学教育学会等において発表をし、『日本社会教育学会紀要』等の学会誌に投稿する。昨年度末に筑波大学教育学会において発表した内容をノート化して学内紀要等に掲載させる。関係者へのインタビュー、資料の閲覧・複写、学会発表等に際して必要となる旅費・宿泊費、資料整理に関わる研究協力者謝金、音声データ・画像データ保存用のメモリ、外付けハードディスク等のデータ保存機器、関わる資料の購入費、資料の複写費等に加え、報告書の印刷代を要する。関係者へのインタビュー、資料の閲覧・複写、学会発表に際して必要となる旅費・宿泊費、資料整理に関わる研究協力者謝金、音声データ・画像データ保存用のメモリ、外付けハードディスク等の機器、関わる資料の購入費、資料の複写費等を要する。
KAKENHI-PROJECT-23730722
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23730722
脱神経後の筋細胞と知覚神経終末の変化について
これまでにラットの坐骨神経切断後の脱神経筋、パチニ小体の形態的検索の結果、脱神経筋の変性とこれに続く再生筋細胞の出現があることが判明した。また,脱神経後のパチニ小体においては,小体内の神経終末は変性消失するが、その周辺の内外棍細胞は維持されることなどの知見を得た。さらに臨床例の脱神経筋、脱神経後のパチニ小体の構造変化についても同様な知見を得た。また、これらの基礎研究の結果に新たな屍体解剖結果を加味して、現在治療不可能とされている臨床例の神経麻痺に対する新しい手術法である血管柄付神経移植の応用を開始し、世界に先駆けた長い(30cm)遊離血管柄付深腓骨神経移植術の腕神経叢麻痺への応用(J.Reconstr. Microsurg.12:131-141,1996)、長い(20cm)神経付き遊離神経血管柄付大腿直筋または腹直筋移植術(Plast.Reconstr. Surg.,94:421-430,1994,& Plast.Reconstr.Surg.Jan.1997)の陳旧性顔面神経麻痺への応用を、海外に先駆けて独自に完成させた。また、これまでの実験的、臨床的成果より新たに"分割した神経血管柄付筋移植術"を臨床的に開発し、一期的な複数の筋の機能再建が可能となり、顔面神経麻痺(J.Reconstr. Microsurg.,accepted)と腕神経叢麻痺のより複雑な動的再建術が開発された。さらに、これまでの実験結果から得られた結果をもとに、臨床例の陳旧性顔面神経麻痺、完全型腕神経叢麻痺など難治性神経麻痺に対する血管柄付神経移植術を確立した(The 12th International Synposium of Reconstructive Microsurgery,Singapore,Feb.1996にて発表)。これらの新たな神経筋の機能再建術とその臨床応用の成果は、これまで不可能とされていた脊髄損傷後の四肢の知覚・運動機能の回復を目標とした再建術の完成につながる可能性がでてきている。これまでにラットの坐骨神経切断後の脱神経筋、パチニ小体の形態的検索の結果、脱神経筋の変性とこれに続く再生筋細胞の出現があることが判明した。また,脱神経後のパチニ小体においては,小体内の神経終末は変性消失するが、その周辺の内外棍細胞は維持されることなどの知見を得た。さらに臨床例の脱神経筋、脱神経後のパチニ小体の構造変化についても同様な知見を得た。また、これらの基礎研究の結果に新たな屍体解剖結果を加味して、現在治療不可能とされている臨床例の神経麻痺に対する新しい手術法である血管柄付神経移植の応用を開始し、世界に先駆けた長い(30cm)遊離血管柄付深腓骨神経移植術の腕神経叢麻痺への応用(J.Reconstr. Microsurg.12:131-141,1996)、長い(20cm)神経付き遊離神経血管柄付大腿直筋または腹直筋移植術(Plast.Reconstr. Surg.,94:421-430,1994,& Plast.Reconstr.Surg.Jan.1997)の陳旧性顔面神経麻痺への応用を、海外に先駆けて独自に完成させた。また、これまでの実験的、臨床的成果より新たに"分割した神経血管柄付筋移植術"を臨床的に開発し、一期的な複数の筋の機能再建が可能となり、顔面神経麻痺(J.Reconstr. Microsurg.,accepted)と腕神経叢麻痺のより複雑な動的再建術が開発された。さらに、これまでの実験結果から得られた結果をもとに、臨床例の陳旧性顔面神経麻痺、完全型腕神経叢麻痺など難治性神経麻痺に対する血管柄付神経移植術を確立した(The 12th International Synposium of Reconstructive Microsurgery,Singapore,Feb.1996にて発表)。これらの新たな神経筋の機能再建術とその臨床応用の成果は、これまで不可能とされていた脊髄損傷後の四肢の知覚・運動機能の回復を目標とした再建術の完成につながる可能性がでてきている。ラットの坐骨神経切断後の脱神経筋、パチニ小体の形態的検索の結果、脱神経筋の変性とこれに続く再生筋細胞の出現があることが判明した。また、脱神経後のパチニ小体においては、小体内の神経終末は変性消失するが、その周辺の内棍細胞は維持されることなどの知見を得た。さらに臨床例の脱神経筋、脱神経後のパチニ小体の構造変化についても同様な知見を得つつある。平成6年度の研究の実績概要としては、実験的な検索に加えて、臨床的な術式の開発が主となりつつある。特に臨床例の腕神経叢麻痺、新鮮神経神経麻痺に対する新しい血管柄付神経移植の応用を開始しており、いくつかの術式が論文掲載されつつある。また、これまでの実験結果から得られた結果をもとに、現在その治療法の開発が追及されつつある臨床例の陳旧性顔面神経麻痺、完全型腕神経叢麻痺など難治性神経麻痺の血管柄付神経移植術の適応と新しい術式を決定しつつある。その第1段階としては、臨床例の陳旧性神経麻痺に対する新しい再建術式として、われわれはこれまでに長い(30cm)遊離血管柄付深腓骨神経移植術、長い(20cm)神経付き遊離神経血管柄付大腿直筋移植術などを開発した。
KAKENHI-PROJECT-06671496
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06671496
脱神経後の筋細胞と知覚神経終末の変化について
この方法は、陳旧性顔面神経麻痺の治療法として新しい“大腿直筋移植による一期的再建術"を完成し、Plast.Reconstr.Surg.に掲載された。これまでにラットの坐骨神経切断後の脱神経筋、パチニ小体の形態的検索の結果、再生筋細胞の出現とパチニ小体の神経終末の変性消失、内外棍細胞の維持などの知見を得た。さらに臨床例の脱神経筋、脱神経後のパチニ小体の構造変化についても知見を得ている。平成7年度は屍体解剖結果をもとに、臨床例では腕神経叢麻痺、新鮮神経神経麻痺に対する血管柄付神経移植の応用を開始し、これまでに長い(30cm)遊離血管柄付深腓骨神経移植術の腕神経叢麻痺への応用(J. Reconstr. Microsurg., Jan. 1996)、長い(20cm)神経付遊離神経血管柄付大腿直筋移植術(Plast. Reconstr. Surg., 94 : 421-430, 1994)または腹直筋移植術の陳旧性顔面神経麻痺への応用(Plast. Reconstr. Surg. accepted in 1995)を、海外に先駆けて独自に完成させた。また、これまでの実験結果から得られた結果をもとに、現在その治療法の開発が追及されつつある臨床例の陳旧性顔面神経麻痺、完全型腕神経叢麻痺など難治性神経麻痺に対する血管柄付神経移植術の適応を決定中(The 12th International Synposium of Reconstructive Microsurgery, Singapore, Fed. 1996にて中間発表)である。さらに、これまでの実験的、臨床的成果より単一の移植筋を分割することによって複数の神経血管柄付筋移植片とできることが判明したので、現在、一期的な複数筋移植による顔面神経麻痺と腕神経叢麻痺の動的再建術を開発中である。これまでにラットの坐骨神経切断後の脱神経筋、パチニ小体の形態的検索の結果、再生筋細胞の出現とパチニ小体の神経終末の変性消失、内外棍細胞の維持などの知見を得た。さらに臨床例の脱神経筋、脱神経後のパチニ小体の構造変化についても知見を得た。また、これらの基礎研究の結果と屍体解剖結果をもとに、臨床例の神経麻痺に対する新しいオリジナルな手術法である血管柄付神経移植の応用を開始し、世界に先駆けたい長い(30cm)遊離血管柄付深腓骨神経移植術の腕神経叢麻痺への応用(J.Reconstr.Microsurg.12:131-141,1996)、長い(20cm)神経付き遊離神経血管柄付大腿直筋または腹直筋移植術(Plast.Reconst.Surg.,94:421-430,1994,&Plast.Reconstr.Surg.Jan.1997)の陳旧性顔面神経麻痺への応用を、海外に先駆けて独自に完成させた。また、これまでの実験的、臨床的成果より新たに"分割した神経血管柄付筋移植術“を臨床的に開発し、一期的な複数の筋の機能再建が可能となり、顔面神経麻痺(J.Reconstr.Microsurg.,accepted)と腕神経叢麻痺のより複雑な動的再建術が開発された。さらに、これまでの実験結果から得られた結果をもとに、臨床例の陳旧性顔面神経麻痺、完全型腕神経叢麻痺など難治性神経麻痺に対する血管柄付神経移植術を確立した(The 12th International Synposium of Reconstructive Microsurgery, Singapore, Feb.1996にて発表)。
KAKENHI-PROJECT-06671496
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06671496
消化器癌の腹膜転移の予防-とくに基底膜破壊の防御を中心に-
癌転移巣形成のメカニズムの解明は、癌細胞の基底膜への接着、着床そして基底膜の破壊の防止が転移予防につながることを明らかにした。そこでまずlaminin receptorの形態学的観察を行い、receptorは常時発現しているわけではないこと。また細胞表面全体に発現しているわけではないことを明らかにしえ、receptorの発現が癌細胞の増殖周期と関連していることを推測させた。つぎにin vivoでのreceptor ligandの投与で転移抑制が可能か検討した。lamininの単独投与では生存日数は減少した。lamininとmitomycinCの併用投与では有意に生存日数の延長をみた。そしてこれらの走査電顕的観察では明らかな着床細胞数の差異を確認でき、antiadhesion therapyの可能性を確認できた。lamininとlaminin receptorとの至適配合比は不明で、余剰のlamininが転移促進に作用し、実際的でないことからlamininの細胞接着部位のアミノ酸配列のみを合成したYIGSRをもちい同様の検討を行った。しかしYIGSRの投与ではlaminin投与の実験系のような効果を全く確認できず、癌細胞の種による差異が推測でき、anti-adhesion therapyの臨床応用のためにはreceptor ligandの開発の必要が痛感された。つぎに基底膜破壊の防御を中心にした転移抑制の検討のため、TIMP(Tissue Inhibitor of Metalloproteinase)とMMP(Matrix Metallo-Proteinase)について播種性転移巣形成過程のdynamicsのなかでその変化を観察した。MMPは増殖・浸潤した癌細胞周囲に観察された。TIMPは腹膜に癌細胞の着床がはじまる時期にはすでに漿膜下層で増強し、癌細胞の基底膜穿破や漿膜下層での増殖の時期には漿膜下層での更なる増強と、浸潤癌細胞の周囲に観察された。TIMPの増強は癌細胞の転移・浸潤と期を一にしてみられ、かつMMPとのバランスにより転移・浸潤の性質が規定されることから、転移抑制蛋白としての有用性が示唆された。癌転移巣形成のメカニズムの解明は、癌細胞の基底膜への接着、着床そして基底膜の破壊の防止が転移予防につながることを明らかにした。そこでまずlaminin receptorの形態学的観察を行い、receptorは常時発現しているわけではないこと。また細胞表面全体に発現しているわけではないことを明らかにしえ、receptorの発現が癌細胞の増殖周期と関連していることを推測させた。つぎにin vivoでのreceptor ligandの投与で転移抑制が可能か検討した。lamininの単独投与では生存日数は減少した。lamininとmitomycinCの併用投与では有意に生存日数の延長をみた。そしてこれらの走査電顕的観察では明らかな着床細胞数の差異を確認でき、antiadhesion therapyの可能性を確認できた。lamininとlaminin receptorとの至適配合比は不明で、余剰のlamininが転移促進に作用し、実際的でないことからlamininの細胞接着部位のアミノ酸配列のみを合成したYIGSRをもちい同様の検討を行った。しかしYIGSRの投与ではlaminin投与の実験系のような効果を全く確認できず、癌細胞の種による差異が推測でき、anti-adhesion therapyの臨床応用のためにはreceptor ligandの開発の必要が痛感された。つぎに基底膜破壊の防御を中心にした転移抑制の検討のため、TIMP(Tissue Inhibitor of Metalloproteinase)とMMP(Matrix Metallo-Proteinase)について播種性転移巣形成過程のdynamicsのなかでその変化を観察した。MMPは増殖・浸潤した癌細胞周囲に観察された。TIMPは腹膜に癌細胞の着床がはじまる時期にはすでに漿膜下層で増強し、癌細胞の基底膜穿破や漿膜下層での増殖の時期には漿膜下層での更なる増強と、浸潤癌細胞の周囲に観察された。TIMPの増強は癌細胞の転移・浸潤と期を一にしてみられ、かつMMPとのバランスにより転移・浸潤の性質が規定されることから、転移抑制蛋白としての有用性が示唆された。1、laminin receptorと結合したlaminin抗体で検出する方法によるlamininーlaminin receptor complexの免疫組織学的観察から、laminin receporは(1)すべての癌細胞で一様に観察されたわけではない。(2)免疫電顕的には細胞表面全体にみられたわけではない。これらの結果から1)Ehrlich腹水癌はlaminin receptorが少ない。2)特殊な細胞状態でのみreceptorは発現する。3)whole lamininであるためreceptorと結合できるリガンドが少ない。4)polyclonal抗lamini抗体であるため競合する。などが示唆された。2、lanininの単純投与は走査電顕的観察ではコントロ-ルに比し、より早期から(5日目)癌細胞の腹膜への着床を示し、また生存日数は有意に減少し、laminin投与は転移単形成を促進することが示された。3、担癌体へのlaminin投与によるlaminin receptorの封じ込めとmitomycin cの併用投与により有効な殺細胞効果がえられるのか検討から、(1)lamininの早期(3日目より1日目)、頻回(1回より3回)、多量(10μmより100μg)投与で生存日数の延長がみられ、(2)laminin10μg+mitomycin c10μgの隔日3回投与でもmitomycin Cの単独投与に比し生存日数に有意差を認めた。
KAKENHI-PROJECT-03670617
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03670617
消化器癌の腹膜転移の予防-とくに基底膜破壊の防御を中心に-
(3)走査電顕的にも併用投与群で着床細胞数はmitomycin C単独投与に比し明らかに少なかった。(4)また癌細胞移植後7日目に可及的に腹水を排除し浮遊癌細胞を減じたマウスでの検討では、コントロ-ル、laminin単独投与、laminin+mitomycin C併用投与、mitomycin C単独投与各群で生存日数に差はみられなかった。これらから癌細胞receptorと結合し、receptorを飽和するlaminin量に至適量が存在することが明かとなった。またlamininは着床癌細胞に結合できないことが推測でき、さらに単独投与したlamininは癌細胞増殖の場への着床を促し、結果として増殖を促進し、生存日数に関与していることが示唆された。1、Ehrlich腹水癌細胞のlaminin receptorとlamininの結合は、結合したlamininを検出する方法でみるかぎり、すべての癌細胞で同時に生じてはいないこと。また、lamininとmitomycin Cの併用投与で、laminin 10μgと100μgの1回投与では有意に100μg投与で生存期間の延長が得られたが、laminin10μgの3回投与のほうがより長期の生存が得られたこと。さらにlamininの単独投与ではむしろ生存期間の短縮をみたこと。これらを総合すると、laminin receptor ligandとしてlamininをもちいた接着障害による腹膜移転の予防は、(1)laminin receptor数(癌細胞数)と至適量のlaminin(over doseにならない)の投与。(2)上記投与量を複数回投与することによる全receptorの飽和が条件であり、lamininの総投与量が多ければより効果的であるとはいえない。そして余剰のlamininは増殖、転移を促し、むしろ危険であると思われた。2、laminin分子中receptorとの結合部位とされるアミノ酸配列を有するpeptideが合成されている。それらのなかですでにマウスメラノーマで肺転移形成を抑制したとして報告されているYIGSRpentapeptideをもちい、同様の検討を加えた。その結果、(1)YIGSR10μg、100μg、500gμ、1000gとmitomycin C 10μgの併用投与のいずれでも、mitomycin C 10μgの単独投与以上の生存期間の延長は得られず、有効に作用しているとはいえなかった。(2)YIGSRの単独投与では、lamininのような生存期間の短縮はみられなかった。これらの結果から(1)Ehrlich腹水癌ではYIGSRが結合できるreceptor siteが存在しない。(2)YIGSRの投与量が少ない。(3)YIGSRの投与とmitomycinの投与間隔(本実験では2時間の間隔)に問題が残されている。などが考えられた。
KAKENHI-PROJECT-03670617
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『エピジェネティック遺伝』の人為的誘導と解析
piRNA依存的なエピジェネティック遺伝を解析するため、以下の研究を遂行した。1Dnmt3L遺伝子のアンチセンス発現による人為的piRNA発現マウスの解析:Dnmt3L遺伝子のアンチセンス鎖を発現するトランスジェニック(TG)マウスにおけるpiRNAを介した遺伝子サイレンシングのメカニズムについての詳細な解析を継続しておこなった。piRNAを介したサイレンシングレベルの異なるふたつのラインの比較をおこなった。2piRNAを介したエピジェネティック遺伝における分子機構の解析:piRNA依存的な遺伝子発現制御機構の基盤となる、piRNA産生の分子機構についての研究をおこなった。poly(A)-specific ribonuclease-like domain-containing 1 (PNLDC1)が、昆虫においてpre-piRNAのトリマーとして機能することが報告された。マウスにおいてもpiRNAの産生機構に関与しているかどうかを明らかにするため、その欠損マウスを作成し解析をおこなった。その結果、PNLDC1は胎生期および生後のpre-piRNAのトリマーとして機能することが明かとなった。また、胎生期ではDNAメチル化に、生後では精子成熟に必須なMIWIの発現が低下することも見出した。欠損マウスでは、減数分裂期および減数分裂後の分裂停止が混在し、前者の組織像はpiRNAを産生できないMILI欠損マウスの、後者の組織像はMIWI欠損マウスの組織像に類似していた。このように、PNLDC1は、トリマーとして、精子形成の複数の段階において機能することが明らかになった。平成29年度が最終年度であるため、記入しない。平成29年度が最終年度であるため、記入しない。1インプリント遺伝子へのpiRNA依存的DNAメチル化誘導:MIWI2プロモーターによって母性インプリント遺伝子であるPeg10およびSnrpnのアンチセンス遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを作成した。これらのトランスジェニックマウスにおいてトランスジーンが発現していることを確認し、正常な雌マウスとを交配することにより、子マウスに異常を来すかどうかの解析をおこなった。しかし、残念ながら顕著な異常は認めることができなかった。2ヒストン修飾酵素およびその関連遺伝子のpiRNA依存的DNAメチル化誘導:ヒストンH3K4のメチル化に関与するMLL遺伝子ファミリーと、それらと協調して機能するAsh2LのpiRNA依存的人為的な雄性生殖細胞におけるDNAメチル化誘導による発現抑制を試みた。予備的な発現解析からMLL14のいずれもが候補として適切であることが確認できたため、これらのアンチセンス鎖をMIWI2プロモーター制御下において発現するトランスジェニックマウスの作成をおこなった。MLL2のアンチセンスを発現するマウスにおいて、産仔の異常が存在するのではないかという予備的な成果をえることができた。3ヒストン修飾酵素を発現するトランスジェニックマウスの作成と解析:H3K9me2を特異的に脱メチル化する酵素であるjhdm2a、および、H3K27me3を脱メチル化する酵素であるjmjd3を精子形成過程において発現するトランスジェニックマウスを作成し、それぞれのトランスジーンの発現を確認した。1インプリント遺伝子へのpiRNA依存的DNAメチル化誘導の実験において、トランスジーンを発現するマウスを作成することができたが、残念ながら、その子孫において異常を認めることができなかった。詳細に検討したところ、piRNA依存的な遺伝子発現抑制が生じていないことが明らかになった。従前の研究から、研究開始当初には十分に実現可能であると考えていたが、それに至らなかったことから、その理由の解明をおこなう必要が生じてきた。一方、2ヒストン修飾酵素およびその関連遺伝子のpiRNA依存的DNAメチル化誘導、および、3ヒストン修飾酵素を発現するトランスジェニックマウスの作成と解析については、トランスジェニックマウスの作成を終了し、解析を開始することができたので、ほぼ順調に進捗したと考えている。piRNA依存的なエピジェネティック遺伝を解析するため、以下の研究を遂行した。1Dnmt3L遺伝子のアンチセンス発現による人為的piRNA発現マウスの解析:Dnmt3L遺伝子のアンチセンス鎖を発現するトランスジェニック(TG)マウスにおけるpiRNAを介した遺伝子サイレンシングのメカニズムについての詳細な解析をおこなった。piRNA依存的に遺伝子発現を抑制するTGマウスを詳細に解析したところ、二箇所にアンチセンス鎖が挿入されていることが明らかになった。一方はpiRNAクラスターと呼ばれる領域、他方はそうではない領域であった。意外なことに、piRNAクラスターではない領域に挿入されたトランスジーンの方が遺伝子発現抑制に重要であった。さらなる解析により、遺伝子挿入部位のみでなく、挿入された遺伝子数が重要であるという結果を得ることができた。この結果は、piRNA産生にあたらしい知見を開くものである。2piRNAを介したエピジェネティック遺伝における分子機構の解析:piRNA依存的な遺伝子発現制御機構の詳細を明らかにするため、レトロトランスポゾン遺伝子のDNAメチル化とヒストン修飾についての解析をおこなった。その結果、piRNAによる遺伝子発現抑制に重要な機能を有するMIWI2は、ジメチル化ヒストンH3K4(H3K4me2)の脱メチル化を介してpiRNA依存的なDNAメチル化に関与していることが明らかになった。当初計画案に含まれていた「ヒストン修飾酵素およびその関連遺伝子のpiRNA依存的DNAメチル化誘導」、および、「ヒストン修飾酵素を発現するトランスジェニックマウスの作成と解析」については、当該マウスの作成ならびにその解析をおこなった。残念ながら、両者とも顕著な表現型が認められなかったことから、これらの研究は中断した。
KAKENHI-PROJECT-15H02509
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H02509
『エピジェネティック遺伝』の人為的誘導と解析
一方、本研究の基礎となったアンチセンスDNMT3L遺伝子を発現するトランスジェニックマウスの解析は、予想外の進展を見せている。また、本研究の分子基盤としてきわめて重要な位置づけとなるpiRNA依存的なDNAメチル化とヒストン修飾についての網羅的解析を進めている。piRNA依存的なエピジェネティック遺伝を解析するため、以下の研究を遂行した。1Dnmt3L遺伝子のアンチセンス発現による人為的piRNA発現マウスの解析:Dnmt3L遺伝子のアンチセンス鎖を発現するトランスジェニック(TG)マウスにおけるpiRNAを介した遺伝子サイレンシングのメカニズムについての詳細な解析を継続しておこなった。piRNAを介したサイレンシングレベルの異なるふたつのラインの比較をおこなった。2piRNAを介したエピジェネティック遺伝における分子機構の解析:piRNA依存的な遺伝子発現制御機構の基盤となる、piRNA産生の分子機構についての研究をおこなった。poly(A)-specific ribonuclease-like domain-containing 1 (PNLDC1)が、昆虫においてpre-piRNAのトリマーとして機能することが報告された。マウスにおいてもpiRNAの産生機構に関与しているかどうかを明らかにするため、その欠損マウスを作成し解析をおこなった。その結果、PNLDC1は胎生期および生後のpre-piRNAのトリマーとして機能することが明かとなった。また、胎生期ではDNAメチル化に、生後では精子成熟に必須なMIWIの発現が低下することも見出した。欠損マウスでは、減数分裂期および減数分裂後の分裂停止が混在し、前者の組織像はpiRNAを産生できないMILI欠損マウスの、後者の組織像はMIWI欠損マウスの組織像に類似していた。このように、PNLDC1は、トリマーとして、精子形成の複数の段階において機能することが明らかになった。【現在までの進捗状況】に記載のとおり、1インプリント遺伝子へのpiRNA依存的DNAメチル化誘導の実験において、piRNA依存的DNAメチル化誘導が想定どおりに進捗しなかったことから、実験システムの最適化が必要であると判断した。以前の研究において、内在性の遺伝子であるDNMT3Lを、DNMT3Lのアンチセンス鎖を発現させることによりpiRNA依存的にDNAメチル化誘導し、遺伝子サイレンシングを生じせしめることができることを明らかにしている。しかし、そのシステムがうまくいかなかったことから、そのDNAメチル化がどのように生じているのかを詳細に検討することが必要であると考えられた。
KAKENHI-PROJECT-15H02509
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H02509