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多孔性配位高分子を鋳型とした相互貫入ジャングルジム型高分子の精密合成
我々が独自に開発した新規環状多座配位子benzimidazole[3]areneと金属塩とを適切な条件下で錯体形成させることにより、ユニークな細孔構造を有するdouble-porous MOFを合成する。次に、double-porous MOFの細孔内に様々な有機・無機モノマー分子をジアステレオ選択的に導入したのち、細孔内で重合反応を進めることにより、トポロジカル結合高分子を精密合成することを目指す。我々が独自に開発した新規環状多座配位子benzimidazole[3]areneと金属塩とを適切な条件下で錯体形成させることにより、ユニークな細孔構造を有するdouble-porous MOFを合成する。次に、double-porous MOFの細孔内に様々な有機・無機モノマー分子をジアステレオ選択的に導入したのち、細孔内で重合反応を進めることにより、トポロジカル結合高分子を精密合成することを目指す。
KAKENHI-PROJECT-19K22214
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K22214
梯子型銅酸化物の金属-絶縁体転移と超伝導化の研究
本研究では、二本足梯子格子と呼ばれるCu_2O_3面と一次元的なCuO_2鎖をもつ梯子型銅酸化物Sr_<14>Cu_<24>O_<41>について、種々の元素置換によってキャリヤ-濃度を変化させた試料を作製し、その電気的、磁気的性質を調べることによって、この系における超伝導の有無と金属-絶縁体転移の様相を明らかにすることを目的とした。Sr_<14-x>Ca_xCu_<24>O_<41>は,x=0では絶縁体であるが、Caの置換により金属-絶縁体転移が起こり、x≧8.4で金属的になることが分かった。しかし、超伝導は出現しなかった。bond-valence-sumsの計算から、Ca置換による金属化は、キャリヤ-であるホールが電気伝導性の悪いCuO_2鎖から電気伝導性のよいCu_2O_3面に移動したことに因っていることが分かった。また、Cu_2O_3面のホール濃度は高温超伝導体におけるCuO_2面のホール濃度に比べてまだ低く、超伝導の出現のためにはCu_2O_3面へのさらなるホールの供給が必要であると推測された。Sr_<14-x>A_xCu_<24>O_<41>(A=Ca,Ba,Y,La)のx=0の試料で80K付近に観測されていた帯磁率のブロードなピークについては、その起源がよく分かっていなかったが、xの増加とともに削減することが分かった。そして、このピークは、CuO_2鎖のCu^<2+>スピンがスピン一重鎖を組み、スピンギャップを形成することに因っていることが分かった。一方、Cu_2O_3面のCu^<2+>スピンは室温より高温でスピンギャップを形成していることが推測された。また、YやLaの置換によりCuO_2鎖のホールが著しく減少し、CuO_2鎖のCu^<2+>スピン間の反強磁性的相互作用が弱くなり、CuO_2鎖のスピンギャップが削減することが分かった。しかし、そのミクロなメカニズムについては、まだよく分かっていない。本研究では、二本足梯子格子と呼ばれるCu_2O_3面と一次元的なCuO_2鎖をもつ梯子型銅酸化物Sr_<14>Cu_<24>O_<41>について、種々の元素置換によってキャリヤ-濃度を変化させた試料を作製し、その電気的、磁気的性質を調べることによって、この系における超伝導の有無と金属-絶縁体転移の様相を明らかにすることを目的とした。Sr_<14-x>Ca_xCu_<24>O_<41>は,x=0では絶縁体であるが、Caの置換により金属-絶縁体転移が起こり、x≧8.4で金属的になることが分かった。しかし、超伝導は出現しなかった。bond-valence-sumsの計算から、Ca置換による金属化は、キャリヤ-であるホールが電気伝導性の悪いCuO_2鎖から電気伝導性のよいCu_2O_3面に移動したことに因っていることが分かった。また、Cu_2O_3面のホール濃度は高温超伝導体におけるCuO_2面のホール濃度に比べてまだ低く、超伝導の出現のためにはCu_2O_3面へのさらなるホールの供給が必要であると推測された。Sr_<14-x>A_xCu_<24>O_<41>(A=Ca,Ba,Y,La)のx=0の試料で80K付近に観測されていた帯磁率のブロードなピークについては、その起源がよく分かっていなかったが、xの増加とともに削減することが分かった。そして、このピークは、CuO_2鎖のCu^<2+>スピンがスピン一重鎖を組み、スピンギャップを形成することに因っていることが分かった。一方、Cu_2O_3面のCu^<2+>スピンは室温より高温でスピンギャップを形成していることが推測された。また、YやLaの置換によりCuO_2鎖のホールが著しく減少し、CuO_2鎖のCu^<2+>スピン間の反強磁性的相互作用が弱くなり、CuO_2鎖のスピンギャップが削減することが分かった。しかし、そのミクロなメカニズムについては、まだよく分かっていない。
KAKENHI-PROJECT-07237204
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07237204
胸腺腫のモノクロナール抗体による免疫組織学的解析と臨床的予後に関する基礎的研究
前年度までに正常胸腺における構成細胞のモノクロナール抗体による解析で,皮質及び髄質に於ける細胞構成の加令変化を明らかにし報告した.1.今年度は,正常胸腺の検索を更に進め,特に胸腺リンパ球細胞成分の出現頻度を各年令別にパーセント表示できるよう分析を進めた.2.Leu2a(Suppressor)陽性細胞とLeu3a(Helper)陽性細胞比の加令変化を調べると, 319才が最も高値(2.83.3)を示し, 20才以降は末梢血中のH/S細胞比と殆んど変らない動きを示した.このことは20才迄の胸腺組織を場とする免疫活動の活発さを反映しているものと考えられた.3.さらに胸腺腫5症例をモノクロナール抗体を用いて解析し,先に調べた正常胸腺の細胞構築を対照として比較し,本法の診断学的評価を行った.(1)胸腺腫症例は全て上皮性腫瘍細胞にリンパ球が混在する組織像を呈していた.(2)上皮性細胞,リンパ球の割合から,症例1, 2, 3は混合型(LE),症例4は上皮細胞優位型(E)症例5はリンパ球優位型(L)胸腺腫と分けられた.正常胸腺は,対象となっている胸腺腫の年令層に合せて3050才のものを用いた.(3)リンパ球成分は,症例3で正常胸腺皮質に類似した所見を呈した.症例4はOKT6(-)で,著しく髄質類似であった.(4)上皮性細胞成分は,症例2でLeu7陽性が明瞭に示されたが,他の4例では全く認められず, HLA-DR,ケラチン, S-100を合せて比較すると症例1, 3, 4, 5では髄質類似の傾向が示唆された.(5)以上をまとめると胸腺腫の組織亜型により細胞構成を異にしていることが明らかとなり, E型胸腺腫ではその細胞構築は正常胸腺髄質に極めて類似し髄質由来を示唆していた.一方, L型及びLE型胸腺腫では皮質由来の傾向が示唆されていると考えられた.尚一層の症例の積重ねによる解析の必要性がある.本年度は正常胸腺について研究し、特に年令的構造変化を明らかにした。1才から70才迄の82例を検索した。Leu1陽性細胞は髄質優位とされるが2才児迄は陽性細胞は皮質に多いが、髄質の方が陽性度が高い。その後も年令が長じるに従い髄質が皮質とも優位となる。Leu4陽性細胞も2才児迄は皮質優位だが、その後は髄質優位となる。Leu2a陽性細胞は主として皮質に見い出される。髄質にも少数認められる。萎縮が始まっても皮質が残存している時は皮質に認められる。萎縮が強くなり皮・髄が明らかでなくなると少数散在性に認められるのみとなる。Leu3a陽性細胞は始めは皮質に多いが髄質にも多く出現してくるようになる。やがて皮質が萎縮して来たあとも髄質に残存する。萎縮が強くなると髄質にも散在性に認めるのみとなる。皮質T細胞はOKT6がその特異的マーカーとされ、陽性細胞は全ての年令層で皮質優位であるが、髄質にも少数認められた。2才児迄は髄質に小巣状或は散在性にOKT6陽性を認め、これらには細胞形態からリンパ球もあると考えられる。それ以後の年令層では髄質の陽性細胞は樹枝状細胞を除いては著減する。皮質が萎縮性になっても皮質が残存している間はOKT6は存続する。HLA-DR陽性細胞は髄質に多数認められ、皮質では網状に皮質全層が染色され、上皮性細網細胞のネットワークを示すが、萎縮すると減少するが最後迄存続する。ケラチン陽性上皮細胞の密度は髄質に高く、網状に連なって、皮質では散在性に、皮質最外層では連鎖状に認められた。B1、B2、B3陽性細胞は、その細胞形態から上皮性細網細胞が主体を占め、B細胞は殆んどなかった。S-100陽性細胞は樹枝状細胞で、主として髄質に認められ、皮質にはごく少数散在性に認めた。年令的変化は胸腺の微小環境とT細胞両者に認められた。前年度までに正常胸腺における構成細胞のモノクロナール抗体による解析で,皮質及び髄質に於ける細胞構成の加令変化を明らかにし報告した.1.今年度は,正常胸腺の検索を更に進め,特に胸腺リンパ球細胞成分の出現頻度を各年令別にパーセント表示できるよう分析を進めた.2.Leu2a(Suppressor)陽性細胞とLeu3a(Helper)陽性細胞比の加令変化を調べると, 319才が最も高値(2.83.3)を示し, 20才以降は末梢血中のH/S細胞比と殆んど変らない動きを示した.このことは20才迄の胸腺組織を場とする免疫活動の活発さを反映しているものと考えられた.3.さらに胸腺腫5症例をモノクロナール抗体を用いて解析し,先に調べた正常胸腺の細胞構築を対照として比較し,本法の診断学的評価を行った.(1)胸腺腫症例は全て上皮性腫瘍細胞にリンパ球が混在する組織像を呈していた.
KAKENHI-PROJECT-61570664
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61570664
胸腺腫のモノクロナール抗体による免疫組織学的解析と臨床的予後に関する基礎的研究
(2)上皮性細胞,リンパ球の割合から,症例1, 2, 3は混合型(LE),症例4は上皮細胞優位型(E)症例5はリンパ球優位型(L)胸腺腫と分けられた.正常胸腺は,対象となっている胸腺腫の年令層に合せて3050才のものを用いた.(3)リンパ球成分は,症例3で正常胸腺皮質に類似した所見を呈した.症例4はOKT6(-)で,著しく髄質類似であった.(4)上皮性細胞成分は,症例2でLeu7陽性が明瞭に示されたが,他の4例では全く認められず, HLA-DR,ケラチン, S-100を合せて比較すると症例1, 3, 4, 5では髄質類似の傾向が示唆された.(5)以上をまとめると胸腺腫の組織亜型により細胞構成を異にしていることが明らかとなり, E型胸腺腫ではその細胞構築は正常胸腺髄質に極めて類似し髄質由来を示唆していた.一方, L型及びLE型胸腺腫では皮質由来の傾向が示唆されていると考えられた.尚一層の症例の積重ねによる解析の必要性がある.
KAKENHI-PROJECT-61570664
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61570664
ヘルペスウイルス糖タンパク質の2重標的化改変によるがん治療ベクターの特異性の増強
単純ヘルペスウイルス(HSV)を用いた腫瘍溶解性ウイルス療法が有望視されている。私たちは最近、単純ヘルペスウイルス(HSV)の外被糖蛋白質gDに単鎖抗体を挿入することにより、がん細胞表面抗原のみを介して細胞内に侵入する標的化HSVプラットフォームの構築に成功した。本研究では、別の外被糖蛋白質gBもgDと同様に標的化改変を施すことが可能であるかどうかにつき検討を行った。gB蛋白質の様々な部位に単鎖抗体あるいはリガンドを挿入したところ、変異gBの多くは細胞表面に発現することが確認された。さらに、ウイルスの細胞内侵入能を損なわない変異gBも認めたことから、gBの標的化改変の可能性が示唆された。単純ヘルペスウイルス(HSV)を用いたウイルス療法は広く臨床研究が進行中であり、ついに米国FDAにより医薬品として承認される段階にまで至った。今日までの臨床研究で用いられてきた腫瘍溶解性ウイルスは正常細胞にも一旦は侵入(エントリー)してしまう。一方、申請者らは最近、HSVの標的化改変に独自に成功した。ウイルス表面のエンベロープの糖タンパク質gDを本来の受容体に結合不能とすると同時に、epidermal growth factor receptor(EGFR)・carcinoembryonic antigen(CEA)・epithelialcell adhesion molecule(EpCAM)などのがん細胞表面抗原に対する単鎖抗体を挿入することにより、標的がん細胞のみに効率良くエントリーする標的化HSVを構築することに成功した。動物実験では、マウス皮下腫瘍モデルにて標的化ウイルスの腫瘍内投与により強力な抗腫瘍効果を認めた上、標的化ウイルスを経静脈投与するとウイルスの腫瘍への強い集積(正常臓器の100-1,000倍)を認めた。さらにマウスの毒性評価では、標的化ウイルスは野生型ウイルスの致死量の10万倍の粒子数を投与してもマウスに異常を生じないという有望な成果を得た。残る重要な課題として、がん抗原の多くは完全にはがん特異的でなく正常細胞にも多少の発現が見られるという問題がある。そこで本研究では、がん細胞を正常細胞と区別するための標的分子を1つではなく2つ同時に利用することにより、さらに厳密にがん細胞をターゲティングする方法の開発に取り組んだ。本研究の成果は高い治療効果と安全性を両立した革新的なバイオ医薬として臨床医学への実用化が期待できる。さらに、本研究の成果は特異的な遺伝子導入発現の基盤技術として広く医学・生物学研究に応用されうる点、非常に大きな波及効果が見込まれる。単純ヘルペスウイルス(HSV)を用いた腫瘍溶解性ウイルス療法が有望視されている。私たちは最近、単純ヘルペスウイルス(HSV)の外被糖蛋白質gDに単鎖抗体を挿入することにより、がん細胞表面抗原のみを介して細胞内に侵入する標的化HSVプラットフォームの構築に成功した。本研究では、別の外被糖蛋白質gBもgDと同様に標的化改変を施すことが可能であるかどうかにつき検討を行った。gB蛋白質の様々な部位に単鎖抗体あるいはリガンドを挿入したところ、変異gBの多くは細胞表面に発現することが確認された。さらに、ウイルスの細胞内侵入能を損なわない変異gBも認めたことから、gBの標的化改変の可能性が示唆された。遺伝子治療
KAKENHI-PROJECT-15K15144
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K15144
RNAi関連蛋白質の分子機能と分子間相互作用の解析
平成16年度は、細胞抽出液を用いたRISCのin vitro解析を中心行った。HeLa細胞の抽出液を用い、siRNA含有蛋白質複合体の形成について、ゲルシフト分析した。時間経過に伴い、2つの増加する複合体(80Sとその他)と減少する複合体(40Sとその他)を検出し、最終的に最も大きな複合体1つに収斂する事を見出した。その最終複合体について、超遠心によるグリセロール密度勾配分画をしたところ、80Sリボソーム画分に一致し、RNAi関連蛋白質(Dicer, eIF2C, Gemin3,Gemin4,FMR1,p68)もその画分に存在することを抗体検出により確認した。この結果は、米国の研究グループから報告されているハエのRISCの結果と両立する。また、UVクロスリンクによりsiRNA末端に直接結合する蛋白質を検索したところ、200kDa前後に時間経過に伴い減少する交差結合体2つと、60kDa前後に時間経過に伴い増加する交差結合体2つ(新規RNAi成分と考えられる)を検出した。200kDa前後の複合体は免疫沈降試験からDicerと推定できた。同様に、siRNAを導入した細胞から抽出液を調製し、ゲルシフト及び超遠心によりsiRNA含有複合体を分析したところ、80S複合体と40S複合体の2つを検出した。これらはin vitroでsiRNA複合体形成した際に観察された分子量の大きい方からの2つの複合体に相当する。現在、この両複合体画分に対するRISC活性の確認作業を進めているが、まだRISC活性を見出すに至っていない。一方、ハエ胚抽出液を用いた同様な分析では、40Sリボソーム画分にRISC活性が存在することを予備的には確認している。平成15年度は、ヒトのDicer(hDcr)及びeIF2C1(h2C1)蛋白質について解析した。大腸菌での発現が困難であったhDcr、h2C1全長について、バキュロウイルスによる発現を検討したところ、h2C1の発現タンパクは不溶性であったものの、hDcr全長は可溶生で発現可能であった。精製して得られたhDcrは二量体で、長い二本鎖RNAからsiRNAを生成する活性を有していた。この切断活性は明らかに、1つのRNaseIIIドメインだけからなるC末部分断片hDcrの活性と異なっていた。欠失体解析の結果、hDcrのsiRNA生成活性の発現にはN末のヘリカーゼドメインは必要でないが、PAZドメインと2つのRNaseIIIドメインを含むC末側が必要であることが見い出された。これらの結果を考え合わせると、現時点で、siRNAサイズ21塩基の分子物差しは2つのRNaseIIIドメインの間のスペーサー領域で決定しているように思われた。また、h2C1の全長は可溶性発現が困難であったが、RNAiに特徴的なドメインとして同定されている機能不明なPAZドメインは、大腸菌で大量発現が可能であった。精製したPAZドメインについて、RNAとDNAに対する結合活性をゲルシフト分析で試験したところ、その活性はRNAに特徴的で、一本鎖RNAに対して弱く結合し、二本鎖RNAの3'末端2塩基突出の構造を認識し、強く結合することが見い出された。つい最近、ショウジヨウバエのeIF2CホモログであるAgo1とAgo2のPAZドメインの構造とRNA/DNA結合活性の報告がなされたが、eIF2C1のsiRNA型RNA特異的な結合活性は明らかにハエAgoのそれとは異なっていた。平成16年度は、細胞抽出液を用いたRISCのin vitro解析を中心行った。HeLa細胞の抽出液を用い、siRNA含有蛋白質複合体の形成について、ゲルシフト分析した。時間経過に伴い、2つの増加する複合体(80Sとその他)と減少する複合体(40Sとその他)を検出し、最終的に最も大きな複合体1つに収斂する事を見出した。その最終複合体について、超遠心によるグリセロール密度勾配分画をしたところ、80Sリボソーム画分に一致し、RNAi関連蛋白質(Dicer, eIF2C, Gemin3,Gemin4,FMR1,p68)もその画分に存在することを抗体検出により確認した。この結果は、米国の研究グループから報告されているハエのRISCの結果と両立する。また、UVクロスリンクによりsiRNA末端に直接結合する蛋白質を検索したところ、200kDa前後に時間経過に伴い減少する交差結合体2つと、60kDa前後に時間経過に伴い増加する交差結合体2つ(新規RNAi成分と考えられる)を検出した。200kDa前後の複合体は免疫沈降試験からDicerと推定できた。同様に、siRNAを導入した細胞から抽出液を調製し、ゲルシフト及び超遠心によりsiRNA含有複合体を分析したところ、80S複合体と40S複合体の2つを検出した。これらはin vitroでsiRNA複合体形成した際に観察された分子量の大きい方からの2つの複合体に相当する。現在、この両複合体画分に対するRISC活性の確認作業を進めているが、まだRISC活性を見出すに至っていない。一方、ハエ胚抽出液を用いた同様な分析では、40Sリボソーム画分にRISC活性が存在することを予備的には確認している。
KAKENHI-PROJECT-15030207
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15030207
逆説睡眠の発現と抑制に関する脳幹の神経機構についての解析
逆説睡眠の発現を調節する神経性入力を明らにするため、頭部のみを拘束した無麻酔のラットの脳幹からニューロン活動を細胞外記録し、そのニューロンに電気泳動的に投与した種々の薬物の作用を調べた。その結果、以下の点が明らかになった。1)逆説睡眠の発現には、コリン作動性PS-onニューロンと、そのコリン作動性ニューロンによって駆動される非コリン作動性のPS-onニューロンが関与している。それらのニューロンの活動には、モノアミン作動性ニューロンやGABA作動性ニューロンからの脱抑制が重要な役割を担っている。コリン作動性PS-onニューロンへの抑制は、モノアミン(ノルアドレナリン)作動性ニューロンよりも、GABA作動性ニューロンのほうが大きく関わっており、モノアミン(ノルアドレナリン)作動性ニューロンは、コリン作動性ニューロンよりも非コリン作動性ニューロンにより強い抑制をかけていると考えられる。2)逆説睡眠中に、非コリン作動性PS-onニューロンはコリン作動性ニューロンによって賦活され、コリン作動性ニューロンはグルタミン酸作動性の興奮性入力を受けている。3)WPニューロンの覚醒時の活動は、H_1レセプターを介したヒスタミン作動性入力による。ノルアドレナリン、セロトニンは、このタイプのニューロンに対して抑制性に作用する。4)脳幹のモノアミン、コリン作動性ニューロンは、視床下部のオレキシン作動性ニューロンから興奮性入力を受ける。しかし睡眠・覚醒状態の切り換えには、オレキシン作動系よりも、脳幹のモノアミン、コリン作動系が大きく関わっていると考えられる。逆説睡眠の発現を調節する神経性入力を明らにするため、頭部のみを拘束した無麻酔のラットの脳幹からニューロン活動を細胞外記録し、そのニューロンに電気泳動的に投与した種々の薬物の作用を調べた。その結果、以下の点が明らかになった。1)逆説睡眠の発現には、コリン作動性PS-onニューロンと、そのコリン作動性ニューロンによって駆動される非コリン作動性のPS-onニューロンが関与している。それらのニューロンの活動には、モノアミン作動性ニューロンやGABA作動性ニューロンからの脱抑制が重要な役割を担っている。コリン作動性PS-onニューロンへの抑制は、モノアミン(ノルアドレナリン)作動性ニューロンよりも、GABA作動性ニューロンのほうが大きく関わっており、モノアミン(ノルアドレナリン)作動性ニューロンは、コリン作動性ニューロンよりも非コリン作動性ニューロンにより強い抑制をかけていると考えられる。2)逆説睡眠中に、非コリン作動性PS-onニューロンはコリン作動性ニューロンによって賦活され、コリン作動性ニューロンはグルタミン酸作動性の興奮性入力を受けている。3)WPニューロンの覚醒時の活動は、H_1レセプターを介したヒスタミン作動性入力による。ノルアドレナリン、セロトニンは、このタイプのニューロンに対して抑制性に作用する。4)脳幹のモノアミン、コリン作動性ニューロンは、視床下部のオレキシン作動性ニューロンから興奮性入力を受ける。しかし睡眠・覚醒状態の切り換えには、オレキシン作動系よりも、脳幹のモノアミン、コリン作動系が大きく関わっていると考えられる。脳幹のアセチルコリン(ACh)作動性ニューロンの起始核である外背側被蓋核は、逆説睡眠や覚醒の調節に重要な役割を果たしている。この部位のニューロンの一群は、逆説睡眠時に特異的に活動hが上昇する(PS-onニューロン)。別の一群は、逆説睡眠と覚醒時に活動が上昇し徐波睡眠時に活動が低下する(WPニューロン)。そこで、これらのニューロンの活動パターンがどのような神経性入力によって調節されているかを明らかにするため、これらのニューロンに対する、いくつかの神経伝達物質の作用を調べた。頭部に装着した固定用プレートにより、無痛的にラットを脳定位装置に固定し、無麻酔下で脳幹から、睡眠・覚醒サイクルにともなうACh作動性ニューロンの活動を記録した。ACh作動性ニューロンは、活動電位の幅が広いことから、non-ACh作動性ニューロンと区別できる。その結果、1.PS-onニューロンの活動低下(停止)には、セロトニン、ノルアドレナリンといったモノアミン作動性、およびGABA作動性の抑制が関与している。3.WPニューロンの覚醒時の活動は、H_1レセプターを介したヒスタミン作動性入力によって維持され、逆説睡眠時の活動は、グルタミン作動性入力によって引き起こされる。4.WPニューロンの徐波睡眠時の活動低下は、GABA作動性の抑制が関与している。などの点が明らかになった。頭部のみを無痛的に固定したラットの脳幹から記録した、睡眠関連ニューロン(逆説睡眠時に特異的な活動上昇を示すPS-onニューロンと逆説睡眠時と覚醒時に活動上昇するWPニューロン)に対する、抑制性伝達物質の作用を調べた。その結果、ノルアドレナリン、セロトニン、GABAとも、これらのニューロンに抑制性に作用することが明らかになった。次に、これらの作用が、どのようなレセプターを介しているかを明らかにするため、これらの伝達物質のアドニスト、アンタゴニスの作用を調べた。これらのニューロンの自発発火はα_2アゴニストによって抑制された。ノルアドレナリンで抑制された活動は、α_2アンタゴニストで回復した。また、PS-onニューロンの覚醒時の活動停止やWPニューロンの徐波睡眠時の活動低下は、GABA_Aのアンタゴニストであるビキュキュリンで回復した。
KAKENHI-PROJECT-12680797
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12680797
逆説睡眠の発現と抑制に関する脳幹の神経機構についての解析
ビキュキュリンの作用は、コリン作動性ニューロンよりも非コリン作動性ニューロンにより顕著に見られた。また、ヒスタミンはPS-onニューロンに対しては効果がなく、WPニューロンには興奮性に作用した。WPニューロンの活動は、覚醒時のみH_1アンタゴニストで阻害されたことから、ヒスタミンはH_1レセプターを介してWPニューロンの覚醒時の活動の維持に関与していると考えられた。一方、逆説睡眠時の活動は、NMDA、non-NMDAを介したグルタミン作動性入力によって調節されていることが明らかになった。このように、睡眠との関係を明らかにしたニューロンの解析によって、逆説睡眠の調節に関して、従来考えられていたようなモノアミン類の作用も一様でないこと、モノアミン以外にGABAやグルタミン酸なども重要な役割を果たすことなどが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-12680797
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12680797
卵巣癌におけるイレッサ、アバスチンの白金製剤耐性解除の検討
抗VEGF抗体であるアバスチンの卵巣癌に対する効果は、マウスを使った実験で、アバスチン+CDDP併用投与群で有意に増強された。卵巣癌におけるEGFR mutationは29個認めたが、EGFR mutationと臨床治療成績との相関はなかった。また、EGFRより下流標的分子であるAktをターゲットとするagentを検討したところ、再発卵巣癌治療に使われているTopotecanがシスプラチンによって誘導されるAktのリン酸化を抑制し、VEGFの発現も抑制することを明らかにした。抗VEGF抗体であるアバスチンの卵巣癌に対する効果は、マウスを使った実験で、アバスチン+CDDP併用投与群で有意に増強された。卵巣癌におけるEGFR mutationは29個認めたが、EGFR mutationと臨床治療成績との相関はなかった。また、EGFRより下流標的分子であるAktをターゲットとするagentを検討したところ、再発卵巣癌治療に使われているTopotecanがシスプラチンによって誘導されるAktのリン酸化を抑制し、VEGFの発現も抑制することを明らかにした。シスプラチンを耐性株Caov-3細胞と感受性株A2780細胞に添加したところ、1時間で一過性のAktの活性化が見られた。そこで、Akt経路がシスプラチンの治療標的分子に成り得ることが判明した。Gefitinibを添加すると、シスプラチンで活性化されたAktのリン酸化が抑制されたことが判明した。つまり、Gefitinibによりシスプラチンの耐性性が解除されたことが証明された。次にgefitinibをシスプラチン耐性株Caov-3細胞と感受性株A2780細胞に添加し、シスプラチン単剤と併用によるcell viabilityを比較した。Gefitinibを添加すると各濃度のシスプラチンにおいてcell viabilityが低下し、シスプラチンの耐性性が解除され、感受性が増強された。さらにこの効果をin vivoにおいて検討した。シスプラチン耐性株Caov-3細胞をヌードマウスの腹腔内に投与し、シスプラチンおよびGefitinib併用群との抗腫瘍効果を見たところ、シスプラチン単剤群に比して、腹水産生量および播種病巣が抑制され抗腫瘍効果が増強されることがわかった。以上から、gefitinibは、シスプラチンの耐性性を解除することにより抗腫瘍効果を得ることが判明した。VEGFは血管新生因子として重要であるが、抗VEGF抗体であるアバスチン(bevacizumab)の卵巣癌に対する効果について、卵巣癌株A2780を使用し検討した。まず、VEGFのA2780細胞株に対する腫瘍増殖能について、cell viabilityをMTS assayでみたが、VEGFの添加による細胞増殖能に影響はなかった。一方で、ヌードマウス皮下のwound assayと皮下assayでは、VEGFは創傷治癒や血管新生を促進し、アバスチンは抑制した。以上より、アバスチンは、卵巣癌細胞に対する直接的な抗腫瘍効果は期待できないものの、血管新生を抑制することが判明した。次に、A2780細胞株を腹腔内1×10^6個移植させたヌードマウスに、アバスチン単剤投与群、CDDP単剤投与群、アバスチン+CDDP併用投与群での腹膜播種モデルへの影響を見たところ、治療後3週間で、アバスチン+CDDP併用群が有意に腹水産生が抑制され、肉眼的に播種病巣を認めないcomplete responseを得ることが出来た。さらに、維持療法への応用を考え、3週間のアバスチンの追加投与を行ったところ、再発の抑制を認め、生存を延長する効果を認めた。以上から、アバスチンは、シスプラチンとの併用療法により、抗腫瘍効果を高めることが出来、シスプラチン併用治療後の維持療法にも効果があることが判明した。卵巣癌におけるイレッサの標的分子であるEGFRについて、肺癌で示されているようなEGFR mutationの有無について、卵巣癌102症例の病理組織標本を用いてEGFR遺伝子のexon 18、exon 19、exon 21についてダイレクトシークエンス法を用いて調べた。さらに、EGFR、リン酸化Akt、リン酸化ERK抗体で免疫染色を行い、臨床病理学的因子と比較検討した。結果、EGFR mutationは24例に認めた。EGFR mutationと臨床治療成績との相関はなかった。EGFRタンパクの強発現症例では予後が悪い傾向にあった。リン酸化Aktの過剰発現例では有意に無病生存期間の短縮が認められた。イレッサを臨床的に使用出来ない現状の中で、このような卵巣癌のEGFR mutation症例におけるイレッサの臨床的効果の検討は今後必要となってくると考えられる。また、我々の検討では、卵巣癌においては、EGFRより下流標的分子であるAktをターゲットとした分子標的治療がより効果的と考えられる。そこで、我々はAktをターゲットとするagentを検討したところ、再発卵巣癌治療に使われているTopotecanがAktのリン酸化を抑制することを見いだした。再発卵巣癌では、シスプラチン耐性になっていることが多いが、シスプラチン投与によりシスプラチン耐性卵巣癌株Ca-ov3細胞がAktをリン酸化し、apoptosisを抑制することを見いだした。このAktのリン酸化はtopotecanを投与することで抑制され、PARP cleavageを引き起こし、apoptosisを誘導することが判明した。さらに、TopotecanはHIF-1aの核内移行を抑制し、VEGFの発現を抑制することを明らかにした。In vivoの実験では、ヌードマウス腹腔内にCaov3細胞を5X10^6個腹腔内投与し卵巣癌播種モデルを作成した。
KAKENHI-PROJECT-19591946
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卵巣癌におけるイレッサ、アバスチンの白金製剤耐性解除の検討
これにシスプラチン、Topotecanを単剤、併用で投与し見たところ、シスプヲチン耐性卵巣癌株のCaov3に対して、シスプラチン+Topotecan併用投与では、有意に腹水産生を抑制し、播種病巣の抑制を認めた。以上のことから、Aktをターゲットとした分子標的治療の有用性が証明され、Topotecanがこの有用な候補になり得ることを明らかにした。これらの結果は現在、論文投稿中である。
KAKENHI-PROJECT-19591946
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非齧歯類実験動物の核移植由来ES細胞の樹立
ヒト核移植由来ES細胞のモデル作出の目的で実験を行った。サルおよびウサギの核移植では、マウスクローンで効果が認められているTrichostain Aあるいはscriptaidの再構築胚への処理は効果が無いことがわかった。ブタ卵子をレシピエントに用いたサルクローンを実施し、桑実期胚を得た。ウサギES細胞の樹立に成功した。その未分化性維持にはbFGFやActivinが重要な役割を担っている一方で、LIFは未分化性維持に関与していないことが明らかになった。ウサギES細胞がその形態だけでなく未分化性維持機構までもヒトES細胞に類似していることを示している。ヒト核移植由来ES細胞のモデル作出の目的で実験を行った。サルおよびウサギの核移植では、マウスクローンで効果が認められているTrichostain Aあるいはscriptaidの再構築胚への処理は効果が無いことがわかった。ブタ卵子をレシピエントに用いたサルクローンを実施し、桑実期胚を得た。ウサギES細胞の樹立に成功した。その未分化性維持にはbFGFやActivinが重要な役割を担っている一方で、LIFは未分化性維持に関与していないことが明らかになった。ウサギES細胞がその形態だけでなく未分化性維持機構までもヒトES細胞に類似していることを示している。ヒト核移植由来ES細胞のモデル作出の目的で、サルおよびウサギの核移植、およびサル体細胞とウサギ卵子を用いた異種間核移植の実験を行い、一方で、まだ安定した受精卵由来ES細胞のないウサギES細胞の樹立も目指した。ウサギES細胞は、ムチン層が定着していない初期の胚を体外培養して胚盤胞を作出し、内部細胞塊にダメージを与えずに作出することに成功した。樹立および継代には、フィーダー細胞濃度の調整が極めて重要であることを明らかにした。約50回の継代後もテロメラーゼ活性が高いことを証明し、ほぼ無限に近く増殖できることが期待された。サルおよびウサギの核移植実験は、卵丘細胞、線維芽細胞、白血球をドナー細胞として実施した。サルについては、実験群間の卵子の質のぶれが大きく、条件設定が極めて困難であったが、いずれのドナー細胞でも細胞質内注入法でクローン胚を再構築可能で、8あるいは16細胞期まで発生することを確認した。サルの卵子は、活性化処理により変形を生じることが多いので、この活性化方法の改善が必須である。ウサギもいずれのドナー細胞でも良好に発生し、1度の実験でほぼ確実に胚盤胞を作出できた。異種間クローンは、サルの細胞をブタの卵子へ注入した。この実験群も胚盤胞の作出に成功した。今後はそれぞれの胚盤胞の質を高めることにより、ヒトに類似した核移植ES細胞細胞を樹立したい。特に、ウサギについては、受精卵から効率的にES細胞を樹立する系が確立できたので、大いに期待できる。ヒト核移植由来ES細胞のモデル作出の目的で、サルおよびウサギの核移植、およびサル体細胞とブタ卵子を用いた異種間核移植の実験を行い、一方で、昨年度樹立した受精卵由来ウサギES細胞の特性解析も行った。サルおよびウサギの核移植では、マウスクローンで効果が認められているTrichostain Aあるいはscriptaidの再構築胚への処理を行った。いずれも統計的に有意差のある効果は現れなかった。すなわち、サルは8-16細胞期まで発生し、ウサギは胚盤胞まで発生したがその率は改善しなかった。また、最近ヒト核移植由来ES細胞の作出に際して、卵子を用いる倫理的な問題回避のために3前核胚を用いた核移植が提唱され、マウスで成功している。そこでサルでICSI胚を作出し、その第一体細胞分裂M期の胚をレシピエントに用いた核移植クローンを実施した。Nocodazole処理をすることにより、2個の桑実期胚まで得ることができたが、胚盤胞は得られなかった。また、昨年度に引き続き、ブタ卵子をレシピエントに用いたサルクローンを実施した。成体雄の線維芽細胞を用いて1個の胚盤胞を得たが、ES細胞の樹立には至らなかった。昨年度、樹立に成功したウサギES細胞の特性解析も行った。未分化性維持にはbFGFやActivinが重要な役割を担っている一方で、LIFは未分化性維持に関与していないことが明らかになった。実際に、LIF非存在下で長期間培養したウサギES細胞の未分化性は失われなかった。さらにY27632の添加により、効率よく増殖させることができることも判明した。これらの結果は、ウサギES細胞がその形態だけでなく未分化性維持機構までもヒトES細胞に類似していることを示している。
KAKENHI-PROJECT-19300151
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環境R&D政策と内生的経済政長に関する分析
国民経済における長期的な成長動向を展望する際,質の高い学校教育や職場訓練を通じた労働者の技能の向上,さらにそうした労働者によって蓄積される技術知識ストックの規模および技術進歩のスピードが,種々の成長促進的な経済要因の中でも特に重要であることは言うまでもないことである。他方、経済成長に伴って環境汚染という深刻な問題も生起することになる。本研究では、イノベーションを伴う状況のもとで環境と内生的成長に関連する種々の政策問題が理論的・実証的に検討される。主たる研究実績を以下に纏めておくことにする。まず、主たる理論分析としては、R&Dやイノベーションを伴う内生的経済成長モデルに環境汚染の問題を統合し,持続的成長を可能にするような環境政策について検討し、有意義な帰結を導出している。短期的には成長を促進するような研究活動への助成と環境保全税の採用という2つの政策を組み合わせることが必要となり、長期的には、汚染量を抑制しながら成長率を維持する経済システムを構築する必要性を厳密な数理的フレームワークのもとで論じている。さらに、R&D活動と特許の問題、イノベーションと人的資本の蓄積の問題、再生可能資源の動態的システムと成長モデルを統合した一般的なシステムの構築を行い、より広い角度から環境と成長の政策問題を検討している。次に実証分析としては、クズネッツの逆U字仮説について、アジア太平洋諸国における経済発展に伴う所得分配と環境問題の2つの側面から実証分析を試みた。回帰分析の結果・所得分配に関するクズネッツ仮説については、所得レベルを示す変数のパラメータの安定性は低く、他の説明変数を付け加えるなど回帰式を変えれば仮説は支持されなくなるということを明らかにしている。この点については、大気汚染を示す二酸化炭素排出量や水質汚染を示す生化学的酸素要求量における環境クズネッツ曲線のクロス・カントリー分析についても同様であり、常に支持されるわけではないとする結果が得られた。今後の更なる経済成長における平等な所得分配、また工業化に伴って二酸化炭素などの環境汚染物質の排出削減にどう取り組んでいくかが重要な政策課題になることを明らかにしている。さらに、アジア太平洋地域における経済発展と所得分配、成長会計の手法による移行動学の研究OLGモデルを利用した人的資本と成長の理論的・実証的分析等も行い、種々の有意義な帰結を導出した。国民経済における長期的な成長動向を展望する際,質の高い学校教育や職場訓練を通じた労働者の技能の向上,さらにそうした労働者によって蓄積される技術知識ストックの規模および技術進歩のスピードが,種々の成長促進的な経済要因の中でも特に重要であることは言うまでもないことである。他方、経済成長に伴って環境汚染という深刻な問題も生起することになる。本研究では、イノベーションを伴う状況のもとで環境と内生的成長に関連する種々の政策問題が理論的・実証的に検討される。主たる研究実績を以下に纏めておくことにする。まず、主たる理論分析としては、R&Dやイノベーションを伴う内生的経済成長モデルに環境汚染の問題を統合し,持続的成長を可能にするような環境政策について検討し、有意義な帰結を導出している。短期的には成長を促進するような研究活動への助成と環境保全税の採用という2つの政策を組み合わせることが必要となり、長期的には、汚染量を抑制しながら成長率を維持する経済システムを構築する必要性を厳密な数理的フレームワークのもとで論じている。さらに、R&D活動と特許の問題、イノベーションと人的資本の蓄積の問題、再生可能資源の動態的システムと成長モデルを統合した一般的なシステムの構築を行い、より広い角度から環境と成長の政策問題を検討している。次に実証分析としては、クズネッツの逆U字仮説について、アジア太平洋諸国における経済発展に伴う所得分配と環境問題の2つの側面から実証分析を試みた。回帰分析の結果・所得分配に関するクズネッツ仮説については、所得レベルを示す変数のパラメータの安定性は低く、他の説明変数を付け加えるなど回帰式を変えれば仮説は支持されなくなるということを明らかにしている。この点については、大気汚染を示す二酸化炭素排出量や水質汚染を示す生化学的酸素要求量における環境クズネッツ曲線のクロス・カントリー分析についても同様であり、常に支持されるわけではないとする結果が得られた。今後の更なる経済成長における平等な所得分配、また工業化に伴って二酸化炭素などの環境汚染物質の排出削減にどう取り組んでいくかが重要な政策課題になることを明らかにしている。さらに、アジア太平洋地域における経済発展と所得分配、成長会計の手法による移行動学の研究OLGモデルを利用した人的資本と成長の理論的・実証的分析等も行い、種々の有意義な帰結を導出した。今年度に関しては、環境R&D政策と内生的経済成長の問題を、かなりの部分、共同で研究を開始した。研究代表者である大住は、再生可能資源の動態的システムに関する数理的研究とR&Dと内生的,経済成長の問題の理論的研究を行なった。再生可能資源の動態的システムの数理的研究については、コロンビア大学のG.M.Heal教授を訪問し、数度にわたって、ディスカッショオンを行ない、共同論文を執筆中である。具体的には、生産を伴う再生可能資源の動態的モデルにおいて、均衡経路(あるいは最適経路)のOSS(Optimal steady state)への大域的収束性に関する数理的帰結を導出している。R&Dと内生的経済成長の問題については、片桐氏と南充鉉(大住研究室の大学院生)とともに論文を完成し、発表している。その論文の中で、3つの政策が提案されている。第1の政策として、政府がR&D部門で創出されたアイデアを利用して製造される中間財の価格に与える補助を行なうアイデアの創出振興政策が提示される。
KAKENHI-PROJECT-11630045
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環境R&D政策と内生的経済政長に関する分析
次に、第2の政策として、アイデアの価格に補助を与え、アイデアの創出を振興する政策が提示される。第3の政策としてR&D部門の費用の一部に補助を行なうことにより、アイデアの創出を振興する政策が展開される。さらに、大住は伊ヶ崎大理(院生)と環境政策を内生的経済成長の問題を検討し、日本経済学会で共同論文の報告を行なっている。片桐は、単独では、R&Dと内生的経済成長に関する論文を発表し、サイクルが生じる可能性に関する詳細な分析を開始している。大坂は、環境に関する論文を執筆するとともに、環境と成長に関する研究会に出席し、多数のデータを収集し、次年度以降の実証分析を行う準備を着々と整えている。さらに、共同研究を行ない、各自が得た知見について意見を交換した研究代表者である大住は,昨年に引き続いて,再生可能資源の動態的システムに関する数理的研究とR&Dと内生的経済成長の問題の理論的・実証的研究を行なった.再生可能資源の動態的システムの数理的研究については,生産を伴なうような一般的なシステムのもとで.大域的安定性を保証する充分条件を導出している.この件については,コロンビア大学のG.M.Heal教授と共同論文を執筆中である.R&Dと内生的経済成長の問題については,片桐氏と南氏と共同で研究を進めており,「内生的技術進歩に関する理論的,実証的分析」という論文を執筆し,学会で報告した.さらに,南氏と共同で,再生可能資源の動態的システムのもとで複数のOSS(optimal steady state)の存在の可能性も研究しており,それに関する論文も執筆中である.さらに,大坂は,トランスロガリズムによる全要素生産関数の生産性指数計測と,共和分分析(における生産性の擬似変数)や誤差修正モデルによる計量分析という異なる分析手法を用いて,アジア諸国における生産性向上に関する実証分析を行なっている.最後に,大住と大坂は,内生的経済成長に関するBarro,Determinants of Economic Growthを翻訳し,「経済成長の訳定要因-クロスカントリー実証研究」を九州大学出版会から出版する.今年度の研究に関しては、個別的あるいは共同で、環境R & Dと内生的成長の問題が取り組まれた。研究代表者である大住は次のような研究を行った。片桐氏、南氏と共同でR & Dの結果である内生的技術進歩に関する理論的・実証的研究を行った。ジョーンズ型の内生的成長モデルを実証可能なモデルに修正し、併せて、韓国と日本に関してR & Dが経済成長に及ぼす効果を分析した。さらに、池下(大学院生)、伊ヶ崎助手と共同で、再生可能資源の動態的システムと内生的経済成長モデルを統合し、長期的均衡成長経路を中心に分析を行った。このような研究は全く新しいものであり、今後の有望な研究領域になると思われる。さらに、野田(大学院生)と共同で、オーヴァーラッピング・ゼネレーションズ・モデルのフレームワークのもとで、人的資本の蓄積と長期均衡経路の関連について理論的研究を行い、さらに、東アジアの国を対象にして実証分析を行った。
KAKENHI-PROJECT-11630045
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生涯学習制度化の促進要因とプロセスに関する研究--欧州の事例を中心に
本研究においては、主に超国家的機関である欧州連合(EU)が,加盟各国とEUに加盟しない欧州経済地域(EEA)諸国とともに1996年をヨーロッパ生涯学習年に指定し,生涯学習の理念の普及に努め,参加各国がすべての市民に対する生涯学習の機会の保障を政策の重点課題としようとする動きに注目した。教育制度のみならず,公財政の配分,雇用制度,福祉制度の改革を含むこの「生涯学習制度化」を促進する要因として,1)地域統合によりもたらされた行政・財政の地方分権化の進展,2)人的移動の自由化,3)インターネットを含む情報メディアの普及,4)人々の学歴・学習経験の多様化/不均衡,5)雇用機会の不均衡等があることを解明し,EU及びOECDで収集されている既存のデータにより各国の特色を比較分析した。また,EUが生涯学習年事業において実施した加盟各国の国民に対する生涯学習に対する意識調査,学習への投資に対する見返りに関する標本調査等から,生涯学習制度化のプロセスに関する新たな分析の枠組みと調査研究の方法論を学んだ。この研究により,これまで「労働者の継続教育が中心」とみられていた西欧の生涯学習に,学習活動そのものから得られる喜び,人格の発達,余暇の充実,民主主義社会の市民としての自主性の伸長といった観点が付加されつつあることや,生涯学習の基盤としての就学前及び学校教育,学校外青少年教育の重要性が以前にも増して強調されるようになっていることが明らかになった。こうした動きの背景には,日本政府が生涯学習の振興に力を入れていることの影響が強く現われていた。今後は、我が国における生涯学習概念と「生涯学習制度化」の具体的施策のあり方を批判的に考察するためにも,引き続きヨーロッパ生涯学習年事業を題材とし,グローバルな視野から「生涯学習制度化」の方策を考える研究を継続したいと考える。本研究においては、主に超国家的機関である欧州連合(EU)が,加盟各国とEUに加盟しない欧州経済地域(EEA)諸国とともに1996年をヨーロッパ生涯学習年に指定し,生涯学習の理念の普及に努め,参加各国がすべての市民に対する生涯学習の機会の保障を政策の重点課題としようとする動きに注目した。教育制度のみならず,公財政の配分,雇用制度,福祉制度の改革を含むこの「生涯学習制度化」を促進する要因として,1)地域統合によりもたらされた行政・財政の地方分権化の進展,2)人的移動の自由化,3)インターネットを含む情報メディアの普及,4)人々の学歴・学習経験の多様化/不均衡,5)雇用機会の不均衡等があることを解明し,EU及びOECDで収集されている既存のデータにより各国の特色を比較分析した。また,EUが生涯学習年事業において実施した加盟各国の国民に対する生涯学習に対する意識調査,学習への投資に対する見返りに関する標本調査等から,生涯学習制度化のプロセスに関する新たな分析の枠組みと調査研究の方法論を学んだ。この研究により,これまで「労働者の継続教育が中心」とみられていた西欧の生涯学習に,学習活動そのものから得られる喜び,人格の発達,余暇の充実,民主主義社会の市民としての自主性の伸長といった観点が付加されつつあることや,生涯学習の基盤としての就学前及び学校教育,学校外青少年教育の重要性が以前にも増して強調されるようになっていることが明らかになった。こうした動きの背景には,日本政府が生涯学習の振興に力を入れていることの影響が強く現われていた。今後は、我が国における生涯学習概念と「生涯学習制度化」の具体的施策のあり方を批判的に考察するためにも,引き続きヨーロッパ生涯学習年事業を題材とし,グローバルな視野から「生涯学習制度化」の方策を考える研究を継続したいと考える。
KAKENHI-PROJECT-08710204
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上演関連資料を通して見るルイ・ジュヴェの演劇
昨年度に引き続き、フランス国立図書館の演劇部門に出張し、ルイ・ジュヴェコレクションに収められた「演出ノート」の資料調査・研究を行った。平成14年度の研究内容を踏まえ、本研究の最終的な研究成果をより簡潔かつ明瞭にするには、ルイ・ジュヴェの晩年の作品を中心に研究を進めることが望ましいとの考えから、戦後から1951年に没するまでの数年間にジュヴェが演出を手がけた劇作品(ジャン・ジロドゥ『オンディーヌ』、モリエール『ドン・ジュアン』など)を対象に研究を進めた。具体的には、これらの作品の演出に係る演出メモを閲覧し、必要に応じその複製を発注した。また、それら演出作品に係る舞台写真も予算の範囲で新たに購入した。なお、本年度は、研究の最終年度にあたるため、より多くの識者等の意見を参考にし研究成果に反映させる必要から、2003年10月17日から早稲田大学演劇博物館にて開催された「劇場に生きる-舞台人・ルイ・ジュヴェ」展にあわせて、展示に係る図録の編集・出版を行った。また、本研究の成果の一部を、早稲田大学文学研究科紀要第49輯に発表予定の論文「ジャン・ジロドゥ『トロイ戦争は起こらない』試論-1935年の初演関連資料から-」にまとめた。日本にいながらにして.海外の図書館の所蔵する貴重資料を材料とした研究を進めるには、当該資料の目録の把握が不可欠であるが、本研究により、ルイ・ジュヴェ・コレクションの全貌をおおむね把握できたことで、ジュヴェに係るさまざまな研究の成立の余地が生まれたことも収穫の一つと言える。フランスに出張の上、フランス国立図書館(BNF)ルイ・ジュヴェ・コレクションの一部を閲覧し、研究対象に該当する「演出ノート」の絞込みならびに同資料のマイクロフィルムの発注を行った。発注した資料に係るジャン・ジロドゥの戯曲名は、『シャイヨの狂女』、『ベラックのアポロ』、『エレクトル』などである。また。ジロドゥ戯曲の演出コンセプ卜をより多角的に把握する必要から、やはりジュヴェが演出した。ジュール・ロマンの『クノック』のマイクロフィルムも併せて発注した。なお、研究対象資料の原本が、鉛筆での走り書きである場合が多いのに加え、資料形態が薄い紙の裏表にメモが書き込まれたかたちであるなどの理由により、マイクロフィルムでは解読が困難である場合も少なくないことなどから、資料解読のための補助資料として、各戯曲の初演時ならびに再演時に発表された新聞記事スクラップ集の複製も、同図書館が所蔵するものについては発注した。ジロドゥの『シャイヨの狂女』については、入手したマイクロフィルムの資料解読を概ね終了し、デジタル化できる部分についてはこれを行った。これを受けて、同図書館蔵の同戯曲に係る舞台写真アルバムを参照の上、「演出ノート」から読み取れる情報を視覚的に証明しうる写真の発注を行った。この調査の結果の一部は、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館発行の「演劇研究:演劇博物館紀要』第26号に発表予定の論文「オーレリイに託されたもの-ジャン・ジロドゥ『シャイヨの狂女』を考える」の執筆のための資料として活用した。昨年度に引き続き、フランス国立図書館の演劇部門に出張し、ルイ・ジュヴェコレクションに収められた「演出ノート」の資料調査・研究を行った。平成14年度の研究内容を踏まえ、本研究の最終的な研究成果をより簡潔かつ明瞭にするには、ルイ・ジュヴェの晩年の作品を中心に研究を進めることが望ましいとの考えから、戦後から1951年に没するまでの数年間にジュヴェが演出を手がけた劇作品(ジャン・ジロドゥ『オンディーヌ』、モリエール『ドン・ジュアン』など)を対象に研究を進めた。具体的には、これらの作品の演出に係る演出メモを閲覧し、必要に応じその複製を発注した。また、それら演出作品に係る舞台写真も予算の範囲で新たに購入した。なお、本年度は、研究の最終年度にあたるため、より多くの識者等の意見を参考にし研究成果に反映させる必要から、2003年10月17日から早稲田大学演劇博物館にて開催された「劇場に生きる-舞台人・ルイ・ジュヴェ」展にあわせて、展示に係る図録の編集・出版を行った。また、本研究の成果の一部を、早稲田大学文学研究科紀要第49輯に発表予定の論文「ジャン・ジロドゥ『トロイ戦争は起こらない』試論-1935年の初演関連資料から-」にまとめた。日本にいながらにして.海外の図書館の所蔵する貴重資料を材料とした研究を進めるには、当該資料の目録の把握が不可欠であるが、本研究により、ルイ・ジュヴェ・コレクションの全貌をおおむね把握できたことで、ジュヴェに係るさまざまな研究の成立の余地が生まれたことも収穫の一つと言える。
KAKENHI-PROJECT-14710354
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14710354
情報爆発時代に対応する質問応答基盤技術に関する研究
本研究では、情報爆発時代における人に優しい情報アクセスの一手法として質問応答技術を位置づけ、大量かつ多様な文書を知識源とする質問応答に関する基盤技術を確立する。さらに、人に優しいインタフェースという観点から一連の関連する質問文群を適切に解釈し、対話における質問応答処理を行う仕組みについても検討する。情報爆発の量・多様性の両側面に包括的に対応し、さらに、対話環境でも利用可能な質問応答システムを構築する点が本研究の特色である。本年度は、下記の知見を得た。1.任意の型の記述的回答が可能な日本語Web質問応答システム任意の型の記述的回答ができる質問応答の手法について検討をした。具体的には、Q&Aコミュニティサービスの質問・回答事例集合を用いることにより、質問の型分類を行なわない新しいアプローチを提案した。入力された質間文に対して、「記述スタイル」(ある質問の仕方に特有の回答の仕方)が類似する質問事例をコーパスから収集し、対応する回答文の事例集合から回答の記述スタイルに関する特徴表現を動的に取得する。評価実験により提案手法の有効性を示した。2.上記質問応答システムをエンジンとする記述的な回答な可能な英日言語横断質問応答言語の多様性の側面に対応するために、質問の言語とは異なる言語で記述された情報源から答を捜し出す言語横断質問応答(CLQA)について検討した。特に、上記1で構成した日本語質問応答システムを、昨年度提案した、Web文書を用いた名詞句の翻訳手法と機械翻訳とを併用する質問文翻訳方式と組み合わせることにより、英日CLQAシステムが構築できることを示した。3.機械学習を用いた二段階洗練化手法による人物説明記述の抽出質問応答の精度向上を目的として、定義型質問応答の核の一つとなる人物に関する説明記述を精度良く抽出する手法について検討し、同手法により高精度を実現できることを示した.本研究では、情報爆発時代における人に優しい情報アクセスの一手法として質問応答技術を位置づけ、大量かつ多様な文書を知識源とする質問応答に関する基盤技術を確立する。さらに、人に優しいインタフェースという観点から一連の関連する質問文群を適切に解釈し、対話における質問応答処理を行う仕組みについても検討する。情報爆発の量・多様性の両側面に包括的に対応し、さらに、対話環境でも利用可能な質問応答システムを構築する点が本研究の特色である。本年度は、下記の知見を得た。1.Web質問応答における複数検索エンジンの組合せによる精度向上複数の検索エンジンを組合せることにより、情報源の多様性を増す事ができると期待される。そこで検索結果を組み合わせるタイミングに注目し、3手法を比較検討した。その結果、各検索エンジンの出力を個別にQAエンジンで処理し、その解候補を後に併合する方法が効果的であることが分かった。2.Web文書を用いた名詞句の翻訳と機械翻訳とを併用した英日言語横断質問応答機械翻訳システムが持つ翻訳辞書に未収録の語句の翻訳に対応するために、次に示す、Web文書を用いた名詞句の翻訳手法3種を導入する方法を検討した:a)Wikipediaを用いた句の翻訳手法、b)Web検索の結果だけを用いた手法、c)Web検索結果と読みの情報を用いた句の翻訳手法。その有効性をNTCIR-6 CLQAにおいて示した。3.語彙統語パタンと語彙的連鎖によるパッセージ抽出に基づく記述的回答が可能な質問応答定義・理由等の記述的な回答をするnon-factoid型質問応答が期待されている。我々はHanらのモデルをnon-factoid型質問一般に拡張し、回答候補の適切性判定を、a)記述形式の適切さ、ならびに、b)質問内容との関連性の組み合わせにより測ることを検討している。その有効性をNTCIR-6 QACにおいて示した。本研究では、情報爆発時代における人に優しい情報アクセスの一手法として質問応答技術を位置づけ、大量かつ多様な文書を知識源とする質問応答に関する基盤技術を確立する。さらに、人に優しいインタフェースという観点から一連の関連する質問文群を適切に解釈し、対話における質問応答処理を行う仕組みについても検討する。情報爆発の量・多様性の両側面に包括的に対応し、さらに、対話環境でも利用可能な質問応答システムを構築する点が本研究の特色である。本年度は、下記の知見を得た。1.任意の型の記述的回答が可能な日本語Web質問応答システム任意の型の記述的回答ができる質問応答の手法について検討をした。具体的には、Q&Aコミュニティサービスの質問・回答事例集合を用いることにより、質問の型分類を行なわない新しいアプローチを提案した。入力された質間文に対して、「記述スタイル」(ある質問の仕方に特有の回答の仕方)が類似する質問事例をコーパスから収集し、対応する回答文の事例集合から回答の記述スタイルに関する特徴表現を動的に取得する。評価実験により提案手法の有効性を示した。2.上記質問応答システムをエンジンとする記述的な回答な可能な英日言語横断質問応答言語の多様性の側面に対応するために、質問の言語とは異なる言語で記述された情報源から答を捜し出す言語横断質問応答(CLQA)について検討した。特に、上記1で構成した日本語質問応答システムを、昨年度提案した、Web文書を用いた名詞句の翻訳手法と機械翻訳とを併用する質問文翻訳方式と組み合わせることにより、英日CLQAシステムが構築できることを示した。3.機械学習を用いた二段階洗練化手法による人物説明記述の抽出質問応答の精度向上を目的として、定義型質問応答の核の一つとなる人物に関する説明記述を精度良く抽出する手法について検討し、同手法により高精度を実現できることを示した.
KAKENHI-PROJECT-19024033
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19024033
数値流体解析手法を用いたスラスタ性能向上に関する研究
二液式スラスタ内部の燃焼状態を化学反応を伴う3次元数値流体計算により高精度に推定して、解析結果が実際の燃焼試験結果と良く一致することを示し、その結果を用いて改良型噴射孔(インジェクタ)の設計計算を行った。次いで数値解析の演算時間を短縮する手法の開発を試み、上記インジェクタを用いたスラスタの燃焼試験結果と解析結果を比較することで、本手法によるスラスタ設計効率化を達成できる見通しを得た。二液式スラスタ内部の燃焼状態を化学反応を伴う3次元数値流体計算により高精度に推定して、解析結果が実際の燃焼試験結果と良く一致することを示し、その結果を用いて改良型噴射孔(インジェクタ)の設計計算を行った。次いで数値解析の演算時間を短縮する手法の開発を試み、上記インジェクタを用いたスラスタの燃焼試験結果と解析結果を比較することで、本手法によるスラスタ設計効率化を達成できる見通しを得た。まず,ヒドラジン(N2H4)と四酸化二窒素NTO(N2O4)の燃焼反応に関し,窒素,水素,酸素を含む既に検証された素反応を多く集めることにより,詳細反応モデルの構築を行った。この反応モデルは245反応式30科学種を含んでいる。従来の高々4反応程度を解析に組み込んだ所謂総括化学反応モデルでは燃焼室壁温やスラスタ性能が実験値と合わなかったのに較べ,1.燃焼ガス温度が断熱火炎温度に一致すること,2.着火遅れ時間が実験と合致すること,3.燃焼が平衡状態に達した後の化学組成が化学平衡計算によるものと合致すること,から妥当性を検証した。然しこの反応モデルは実際のスラスタの数値解析に適用するには大きすぎるため,O/F(酸化剤/燃料混合比)をパラメータとした時に上記3項目が詳細反応モデルと差を生じない範囲でモデルの縮小化を図り,61反応式23化学種からなる縮小反応モデルを構築した。このモデルを用いてフィルムクーリング型二液式スラスタの数値シミュレーションを実施し,1.燃焼室壁近傍ではヒドラジンが蒸発し徐々に燃焼ガスに取り込まれるため,境界層にはヒドラジン液滴とヒドラジンガスが混在した層を形成して,壁面冷却効果を高めていること,2.フィルムクーリング用ヒドラジンが全て燃焼ガスに取り込まれるドライアウト事象を明確に示すこと,また中心軸付近の火炎構造について,1.着火までにヒドラジンとNTOの蒸発による中間生成物が空間的に一様に分散するため温度的に均一な火炎を形成すること,2.高温の均一火炎が更にヒドラジン・NTOの蒸発を促進させるメカニズムを明らかにした。次に以上の結果を取り込んだ改良型インジェクタの設計計算を行い,噴射口部分の設計パラメーターを決定した。平成1417年度の科学研究費補助金(基盤研究A)による窒化珪素系セラミックススラスタに関する研究から得られた知見を基に、本研究は、スラスタ内部の燃焼状態を化学反応を伴う数値流体計算により推定することで、(従来は数多くの実験に基づく経験則に頼ってきた)燃料噴射口(インジェクタ)などの設計を効率化することを目的どした。平成19年度においてはヒドラジン(N2H4)と四酸化二窒素NTO(N2O4)の燃焼反応に関し61反応式23化学種からなる反応モデルを構築、このモデルを用いてフィルムクーリング型二液式スラスタの数値シミュレーションを実施、燃焼室壁温やスラスタ性能が実験値と良く合致することを示し、この結果を取り込んだ改良型インジェクタの設計計算を行って、噴射口部分の設計パラメーターを決定した。平成20年度においては、上記の3次元数値解析が未だ膨大な演算時間(1ケースの演算に数週間)を要するため、大幅な演算時間短縮を図り、スラスタ設計の実用ツールとしての有用性を増す事を目指した。計算負荷が大きい原因としては、詳細化学反応を数値的に取り扱う場合、反応速度の時間スケールが各反応で異なり演算が滑らかに進まないこと、解く化学種の保存式が増えること、が考えられた。そこで、1.反応機構、2.解析用計算機、3.流体計算中の反応機構解析手法の3点について見直しを行って計算負荷の低減を図り、得られた解析結果と19年度に設計したインジェクタを用いたスラスタの燃焼試験結果との一致の良好性を確認することとした。その結果、1.反応機構の見直し及び2.新たな計算機を用いてのベンチマークテストなどを実施して成果を上げた後、3.新たな手法の適用による解析が可能であることを示した。一方、上記スラスタの燃焼試験を成功裡に実施し、その結果と今後得られる解析結果を比較することで、本手法によるスラスタ設計の更なる効率化を達成する見通しが得られた。
KAKENHI-PROJECT-19569007
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酵母における細胞複製の制御
イノシトールりん脂質の細胞機能における役割,特に細胞複製における役割について研究を行った.イノシトールりん脂質に関与する突然変異株を分離するためにイノシトールりん脂質に対するモノクローナル抗体を作製し,その抗体を電気穿孔法を用いて細胞またはプロトプラスト化した細胞を処理することによって,その抗体に感受性株を単離する方法で開発した.イノシトールりん脂質の中でキーサブスタンスはPIP2であることから,まずPIP2に対する抗体を常法に従って作製した.そしてこの抗体で細胞を処理すると細胞は一時的に増殖を停止する.イノシトールりん脂質の哺乳動物の研究結果から類推すると,細胞周期のG1期に必要ではないかと考えられた.そこで温度感受性でG1期に停止する突然変異株を多数分離した.これらの株について抗体に対する感受性を調べた結果,感受性になった株が5種類と耐性になったが1種類単離することができた.感受性株の内2種類の株は制限温度下でPIP2を電気穿孔法により細胞に導入してやると細胞増殖が回復した.この結果はPIP2が細胞増殖に必要であることを示している.さらに哺乳動物ではイノシトールリン脂質代謝について解析が進みつつあるが不明な点が多い.酵母においてもその生化学的性状を明らかにする必要があるので, PIからPIPを合成するPItinose, PIPからPIP2を合成するPIPkniseの活性の測定法を確立した.またこの逆反応を行うホスファターゼについても同様に行った.さらに中間代謝産物の定量法をも確立し,イノシトールりん脂質の代謝を追究することが可能になった.イノシトールりん脂質の細胞機能における役割,特に細胞複製における役割について研究を行った.イノシトールりん脂質に関与する突然変異株を分離するためにイノシトールりん脂質に対するモノクローナル抗体を作製し,その抗体を電気穿孔法を用いて細胞またはプロトプラスト化した細胞を処理することによって,その抗体に感受性株を単離する方法で開発した.イノシトールりん脂質の中でキーサブスタンスはPIP2であることから,まずPIP2に対する抗体を常法に従って作製した.そしてこの抗体で細胞を処理すると細胞は一時的に増殖を停止する.イノシトールりん脂質の哺乳動物の研究結果から類推すると,細胞周期のG1期に必要ではないかと考えられた.そこで温度感受性でG1期に停止する突然変異株を多数分離した.これらの株について抗体に対する感受性を調べた結果,感受性になった株が5種類と耐性になったが1種類単離することができた.感受性株の内2種類の株は制限温度下でPIP2を電気穿孔法により細胞に導入してやると細胞増殖が回復した.この結果はPIP2が細胞増殖に必要であることを示している.さらに哺乳動物ではイノシトールリン脂質代謝について解析が進みつつあるが不明な点が多い.酵母においてもその生化学的性状を明らかにする必要があるので, PIからPIPを合成するPItinose, PIPからPIP2を合成するPIPkniseの活性の測定法を確立した.またこの逆反応を行うホスファターゼについても同様に行った.さらに中間代謝産物の定量法をも確立し,イノシトールりん脂質の代謝を追究することが可能になった.
KAKENHI-PROJECT-62615507
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62615507
GPCRのシグナル伝達機構の構造生物学的解明
b2ARを、95 %以上の純度、80 %以上の活性割合。90%以上のメチオニン残基のメチル基の13C標識率で調製する手法を確立した。逆アゴニスト結合状態のb2ARのNMRスペクトルでは、概ね9個のメチオニン残基に対応するシグナルが観測された。一方、完全アゴニスト結合状態では、いくつかのシグナルが化学シフト変化および消失した。変異体を用いてシグナルを帰属した結果、リガンド依存的な変化を示したのは、M82、M215、M279であることがわかった。このうち、M82に関しては、逆アゴニスト結合状態で、2個のシグナルを与えていた。これらをM82DおよびM82Uと呼ぶ。一方、formoterol結合状態では、carazolol結合状態とは異なる化学シフトに、1個のシグナルが観測されていた。これをM82Aと呼ぶ。各シグナルの化学シフトと、既知の結晶構造におけるM82の環境に基いて、M82DおよびM82UはGタンパク質を活性化できない不活性化状態に、M82AはGタンパク質を活性化できる活性化状態に対応すると結論した。さらに、リガンドによりefficacyが異なる機構を明らかにするため、さらにアンタゴニスト、弱い部分アゴニスト、強い部分アゴニスト結合状態について、M82のシグナルの変化を解析した。その結果、これらの状態では、逆アゴニスト結合状態と完全アゴニスト結合状態の中間的な化学シフトを持つシグナルが観測され、efficacy依存的に連続的な変化を示した。また、これらのシグナルの化学シフトは、有意に測定温度依存的に変化した。以上のことから、各リガンド結合状態において、#61538;2ARは、M82D、M82Uに対応する不活性化状態と、M82Aに対応する活性化状態の間の平衡にあり、各リガンドのefficacyの違いは、活性化状態の割合の違いに起因することが示された。24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度が最終年度であるため、記入しない。SF-9昆虫細胞にCCR1を大量発現させた上で、膜画分を密度勾配遠心により精製した。CCR1をDDMで可溶化した上で、その直後にMSP1E3を使ってrHDL、に再構成した。得られたrHDLを、His-tagおよび1D4カラムで精製した。得られたCCR1の純度は80%以上、収量は40ugであった。得られたCCR1-rHDLに対して、Gタンパク質とMIP-1αのmonomeric mutantであるP8A/F13Y/E67Qを添加した試料を用いて、GDP-GTP交換アッセイを行った。その結果、MIP-1α濃度依存的にCCR1-rHDLに対する蛍光標識GTP結合量が増大した。したがって、CCR1-rHDLがシグナル伝達活性を保持することが示された。さらに、MIP-1α変異体とCCR1-rHDLの相互作用をSPRで調べた結果、解離定数が約2uMと算出された。次に、アミドプロトン検出型のTCS実験を行った。その結果、L3,A10,C11,C12,T16,F24,Y28,S32,Q34,I41,F42,S47,Q49,V50,C51にラジオ波照射に伴う有意な強度減少が観測された。本実験により得られたCCR1との結合界面と、CCR5との結合界面を比較すると、Q49の近傍は、両方の結合界面に含まれるのに対し、Q30を中心とした領域、およびV59を中心とした領域は、それぞれCCR1,CCR5との結合界面にのみ含まれていた。MIP-1αについて、E57やV63のSNPsが報告されている。これらの残基は、今回の研究で、CCR5特異的な結合部位に存在することが分かった。これらのSNPsが多発性硬化症の症状に与える影響を調べることにより、CCR5とMIP-1αの相互作用が病気の進行に果たす役割について、手掛かりが得られると考えた。b2ARを、95 %以上の純度、80 %以上の活性割合。90%以上のメチオニン残基のメチル基の13C標識率で調製する手法を確立した。逆アゴニスト結合状態のb2ARのNMRスペクトルでは、概ね9個のメチオニン残基に対応するシグナルが観測された。一方、完全アゴニスト結合状態では、いくつかのシグナルが化学シフト変化および消失した。変異体を用いてシグナルを帰属した結果、リガンド依存的な変化を示したのは、M82、M215、M279であることがわかった。このうち、M82に関しては、逆アゴニスト結合状態で、2個のシグナルを与えていた。これらをM82DおよびM82Uと呼ぶ。一方、formoterol結合状態では、carazolol結合状態とは異なる化学シフトに、1個のシグナルが観測されていた。これをM82Aと呼ぶ。各シグナルの化学シフトと、既知の結晶構造におけるM82の環境に基いて、M82DおよびM82UはGタンパク質を活性化できない不活性化状態に、M82AはGタンパク質を活性化できる活性化状態に対応すると結論した。さらに、リガンドによりefficacyが異なる機構を明らかにするため、さらにアンタゴニスト、弱い部分アゴニスト、強い部分アゴニスト結合状態について、M82のシグナルの変化を解析した。
KAKENHI-PUBLICLY-23121511
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-23121511
GPCRのシグナル伝達機構の構造生物学的解明
その結果、これらの状態では、逆アゴニスト結合状態と完全アゴニスト結合状態の中間的な化学シフトを持つシグナルが観測され、efficacy依存的に連続的な変化を示した。また、これらのシグナルの化学シフトは、有意に測定温度依存的に変化した。以上のことから、各リガンド結合状態において、#61538;2ARは、M82D、M82Uに対応する不活性化状態と、M82Aに対応する活性化状態の間の平衡にあり、各リガンドのefficacyの違いは、活性化状態の割合の違いに起因することが示された。24年度が最終年度であるため、記入しない。CCR1に関しては、当初の計画通り、試料調製法を確立した上で、TCS実験によりCCR1上のMIP-1□結合界面の同定に成功した。また、アドレナリン□2受容体に生じる構造変化をNMR解析する方法も確立した。これらに加えて、ヒト□オピオイド受容体についても、rHDL中の脂質二重膜に再構成する方法を確立し、SPR解析によりリガンド結合活性を保持していることを確認できた。今後、ヒト□オピオイド受容体の活性化に伴う構造変化もNMR解析することにより、オピオイドの薬理作用に関する重要な手掛かりが得られると考えている。以上より、当初の計画より進んでいると判断した。24年度が最終年度であるため、記入しない。(1)CCR1やオピオイド受容体のNMR解析条件の確立CCR1やオピオイド受容体について、NMR解析に十分な純度、濃度、安定性の試料が調製できるようにする。活性を確認しながら、N末端やC末端の切除や熱安定変異の導入を行うことにより、収量や安定性の向上を試みる。また、リガンドアフィニティークロマトグラフィーにより、活性体のみを単離する方法も確立する。さらに、安定性が不十分な場合は、reconstituted high density lipoprotein(rHDL)中の脂質二重膜に再構成することも検討する。(2)膜貫通領域のシグナルの観測および帰属CCR1やオピオイド受容体について、膜貫通領域に存在するメチオニン残基のメチル基を選択的に13C標識した標識体を作製して、NMRシグナルの観測を試みる。観測できたら、変異体による帰属を行う。特に、リガンド結合部位近傍や、活性化に伴い大きく構造変化すると考えられるTM5,6の帰属を試みる。次に、アゴニスト結合時、アンタゴニスト結合時、非結合時のシグナルを比較することにより、活性化に伴う構造変化を検出する。さらに、NOEの検出や、13C核の化学シフトに基いて、構造変化の様式の手掛かりを得る。また、シグナルに多型が観測された場合は、機能と無関係な不均一性に由来するものでないことを十分確認した上で、線形解析やZZ-exchangeにより、量比や交換速度を決定する。以上の結果に基いて、細胞外領域へのアゴニストの結合により、CCR1やオピオイドの細胞内領域に生じる構造変化の様式および機構、ならびにG蛋白質やアレスチン等の細胞内エフェクター分子の活性制御の機構を考察する。
KAKENHI-PUBLICLY-23121511
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運動器障害で生じる広範囲慢性痛の病態解明:若齢期の特異性によるバイオマーカー探索
運動器障害をはじめとした神経損傷以外の原因で発症する慢性痛は、病態が複雑で治療法、リハビリテーションが構築されておらず、ADL、QOLの低下を引き起こし、社会的に大きな問題となっている。また、臨床的に線維筋痛症、CRPS Iなどで小児の発症が少ないという報告があり、このような若齢期での発症率の低さは生後の発達過程における何らかの要因が発症に関与している可能性がある。そこで若齢期に着目し、我々の開発したモデルで若齢期処置を行い、行動学的・組織学的・分子生物学的検討を行った。筋損傷による慢性痛モデルにおいて、成熟(生後9週)処置で急性期の痛みの増強後に続く慢性痛がみられたのに対し、若齢(生後3週)処置では急性期の痛みの増強のみで慢性痛は発症しなかった。そこで、若齢と成熟処置での違いが発症要因と関連すると考えられる。そこで、末梢での違いとして障害筋の変化を検討した。組織学的検討において、急性期においては広範囲な筋細胞の壊死が観察された。成熟処置で慢性痛がみられ、若齢処置では慢性痛がみられない慢性期においては、ほぼ正常に近い筋組織像が成熟、若齢処置のどちらも同様にみられた。また、分子生物学的検討において、痛みに違いの出る慢性期においては成熟・若齢処置ともに処置前と同等であった。また、筋の分化・成熟に関与するmyogeninの発現は、処置前より成熟処置では減少、若齢処置ではほぼ同等であった。また、本モデルでは障害部から離れた足底部、さらに反対側まで両側性に痛みが拡がるため、脊髄における変化を分子生物学的に解析したところ、急性期において若齢でのMyogmRNA発現が成熟に比べやや多い傾向にあった。今後、筋の修復過程に注目していくことで、運動器慢性痛のメカニズムの解明と効果的な慢性痛リハビリテーションの基礎の構築につながることが期待される。運動器障害により広範囲に生じる慢性痛のメカニズム解明を進めるために、独自に開発した運動器慢性痛モデルを用いて、慢性痛の発症・維持要因を探る。特に、若齢期において慢性痛が発症しにくいことに注目し、生後の発達過程により変化する因子が関与している可能性を考えている。そこで、行動学的検討を踏まえ、障害部位である筋だけでなく、痛みが広範囲に拡がることから脊髄レベルおよび血液での解析を継時的に行うことにより、慢性痛発症・維持要因の新たなバイオマーカーを提案する。1末梢:筋組織における成熟および若齢期処置後の痛みの発症・拡大・維持の各時期におけるバイオマーカー解析2中枢:脊髄組織における成熟および若齢期処置後の痛みの発症・拡大・維持の各時期におけるバイオマーカー解析3全身性:血液成分における成熟および若齢期処置後の痛みの発症・拡大・維持の各時期におけるバイオマーカー解析上記の目的に対して、モデル作成を行い、そこからの下腿三頭筋筋組織・障害レベルでの脊髄、および、血液サンプルの採取を行い、筋組織で組織学的検討と生化学的検討を行っている。サイトカイン、神経栄養因子など筋損傷および再生に関与する物質の解析として、TNFαをはじめとしてどの要因が関連物質として適切であるかをELISAおよびPCR法を用いて現在試行検討中である。これらの解析により、運動器慢性痛のメカニズムの解明と効果的な慢性痛リハビリテーションの基礎の構築につなげる。本モデルでは末梢筋損傷が長期痛み行動を引き起こすトリガーとなる可能性が考えられるため、障害筋である下腿三頭筋、また、脊髄サンプル・血液サンプルの凍結試料を作成し、サイトカイン、神経栄養因子など筋損傷および再生に関与する物質として、ELISAおよびPCR法による解析を検討中であるが、標的に最適と考えられる物質の決定に時間がかかっており計画から遅れている。運動器障害により広範囲に生じる慢性痛のメカニズム解明を進めるために、独自に開発した運動器慢性痛モデルを用いて、慢性痛の発症・維持要因を探る。特に、若齢期において慢性痛が発症しにくいことに注目し、生後の発達過程により変化する因子が関与している可能性を考えている。そこで、行動学的検討を踏まえ、障害部位である筋だけでなく、痛みが広範囲に拡がることから脊髄レベルおよび血液での解析を継時的に行うことにより、慢性痛発症・維持要因の新たなバイオマーカーを提案する。それにより、運動器慢性痛のメカニズムの解明と効果的な慢性痛リハビリテーションの基礎の構築につなげる。これまでに、筋損傷による運動器慢性痛モデルを9週齢(成熟)および3週齢(若齢)において作成し、末梢における筋損傷が長期痛み行動を引き起こすトリガーとなる可能性が考えられるため、障害筋である下腿三頭筋および反対側の下腿三頭筋の凍結試料を作成した。その凍結試料において、サイトカインであるTNFα、IL10や、MyoD、Myogeninといった筋特異的成長因子、抗酸化酵素(SOD)の解析を行った。また、本モデルでは障害部から離れた足底部、さらに反対側まで両側性に痛みが拡がるため、脊髄凍結試料を作成し、脊髄における可塑性発現の時間的・空間的な拡がりに注目し解析する。そのため、運動器慢性痛モデルを同様に作成し、9週齢(成熟)および3週齢(若齢)において脊髄組織および血液サンプルの採取を行った。これら脊髄組織で、神経栄養因子、サイトカイン、細胞内シグナル伝達系、また、血液サンプルにおいて上記に加えてバイオマーカーを検討中である。脊髄組織で、脊髄での感作や神経の成長に関与すると考えられる神経栄養因子、免疫系に関わるサイトカイン、細胞内シグナル伝達系や、血液サンプルにおいても筋損傷に関与するバイオマーカーを、免疫組織、PCRおよびELISA法により解析を検討中であるが、標的に最適と考えられる物質の決定に時間がかかっており計画から遅れている。
KAKENHI-PROJECT-16K01472
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運動器障害で生じる広範囲慢性痛の病態解明:若齢期の特異性によるバイオマーカー探索
運動器障害をはじめとした神経損傷以外の原因で発症する慢性痛は、病態が複雑で治療法、リハビリテーションが構築されておらず、ADL、QOLの低下を引き起こし、社会的に大きな問題となっている。また、臨床的に線維筋痛症、CRPS Iなどで小児の発症が少ないという報告があり、このような若齢期での発症率の低さは生後の発達過程における何らかの要因が発症に関与している可能性がある。そこで若齢期に着目し、我々の開発したモデルで若齢期処置を行い、行動学的・組織学的・分子生物学的検討を行った。筋損傷による慢性痛モデルにおいて、成熟(生後9週)処置で急性期の痛みの増強後に続く慢性痛がみられたのに対し、若齢(生後3週)処置では急性期の痛みの増強のみで慢性痛は発症しなかった。そこで、若齢と成熟処置での違いが発症要因と関連すると考えられる。そこで、末梢での違いとして障害筋の変化を検討した。組織学的検討において、急性期においては広範囲な筋細胞の壊死が観察された。成熟処置で慢性痛がみられ、若齢処置では慢性痛がみられない慢性期においては、ほぼ正常に近い筋組織像が成熟、若齢処置のどちらも同様にみられた。また、分子生物学的検討において、痛みに違いの出る慢性期においては成熟・若齢処置ともに処置前と同等であった。また、筋の分化・成熟に関与するmyogeninの発現は、処置前より成熟処置では減少、若齢処置ではほぼ同等であった。また、本モデルでは障害部から離れた足底部、さらに反対側まで両側性に痛みが拡がるため、脊髄における変化を分子生物学的に解析したところ、急性期において若齢でのMyogmRNA発現が成熟に比べやや多い傾向にあった。今後、筋の修復過程に注目していくことで、運動器慢性痛のメカニズムの解明と効果的な慢性痛リハビリテーションの基礎の構築につながることが期待される。筋組織でのサイトカイン、神経栄養因子など筋損傷および再生に関与する物質として、ELISAおよびPCR法を用いての検索を継続する。その際、さらに関連文献の検索、関連分野の研究者からの情報も含めて検索の効率を上げる。また、脊髄組織、血液サンプルでの物質の探索も同時にさらに進行させていく。脊髄組織で、脊髄での感作や神経の成長に関与すると考えられる神経栄養因子、免疫系に関わるサイトカイン、細胞内シグナル伝達系や、血液サンプルにおいても筋損傷に関与するバイオマーカーを、免疫組織、PCRおよびELISA法により解析を継続して行っていく。その際、さらに関連文献の検索、関連分野の研究者からの情報も含めて、最適な解析を検討していく。筋組織、脊髄組織、血液サンプルを用いて検索するサイトカイン、神経栄養因子などの関与する物質として、標的に最適と考えられる物質の決定に時間がかかっており、本格的な解析に着手できていないため。慢性痛の発症・維持要因を探る。
KAKENHI-PROJECT-16K01472
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K01472
録音ろう管ネガティブのための光学的音声再生装置の開発
最近,研究代表者らの調査により,録音ろう管からメッキを用いて型をとったネガティブあるいはガルバノと呼ばれる金属管がベルリンの国立民族学博物館に大量に保管されていることが明らかとなった.このネガティブには,19世紀末から20世紀半ばにかけて録音された世界の民族音楽が記録されているが,通常のろう管再生機(蓄音機)では再生が不可能であることから,これらの貴重な音声資料の利用が極めて困難な状態にある.本研究は,これらのネガティブから実時間で音声を再生するため,レーザーを用いた非接触式の光学的音声再生装置を開発することを目的としている.1.小型光学系の開発ネガティブ管は,金属管の内壁の凸状の部分に音声情報が記録されている.その凹凸変化をレーザービームの反射方向の変化として検出するため,半導体レーザー,小型のレンズ,ミラー,ビームスプリッタ,ビーム位置検出素子等を使用し,管の内部に挿入可能な小型の光学系を設計した.また,検出光学系には結像レンズとピンホールからなるリレー光学系を挿入し,不要な散乱光等を効率よく除去し,再生音声のSN比の向上を図った.2.駆動ユニットの開発内径58mmの保持筒にネガティブを挿入し,それを6本のネジにより周囲から固定してネガティブを保持し,この保持筒を直流モータにより回転駆動し,直流モータと保持筒全体を搭載したステージを円筒の軸方向にパルスモータを用いて直線駆動するシステムを開発した.保持筒にはロータリエンコーダを装着し,円筒の回転速度に対応してパルスモータによる直線移動を制御した.3.総合特性の確認と日本の音楽資料の再生以上の各システムを結合させ,光学的音声再生装置としての総合的な動作を確認した.さらに,試作した装置を使っていくつかのネガティブ管から音声の再生に成功した.その中には,1901年にベルリンで録音された新演劇俳優川上音二郎の一座による三味線や琴の演奏が含まれている.最近,研究代表者らの調査により,録音ろう管からメッキを用いて型をとったネガティブあるいはガルバノと呼ばれる金属管がベルリンの国立民族学博物館に大量に保管されていることが明らかとなった.このネガティブには,19世紀末から20世紀半ばにかけて録音された世界の民族音楽が記録されているが,通常のろう管再生機(蓄音機)では再生が不可能であることから,これらの貴重な音声資料の利用が極めて困難な状態にある.本研究は,これらのネガティブから実時間で音声を再生するため,レーザーを用いた非接触式の光学的音声再生装置を開発することを目的としている.1.小型光学系の開発ネガティブ管は,金属管の内壁の凸状の部分に音声情報が記録されている.その凹凸変化をレーザービームの反射方向の変化として検出するため,半導体レーザー,小型のレンズ,ミラー,ビームスプリッタ,ビーム位置検出素子等を使用し,管の内部に挿入可能な小型の光学系を設計した.また,検出光学系には結像レンズとピンホールからなるリレー光学系を挿入し,不要な散乱光等を効率よく除去し,再生音声のSN比の向上を図った.2.駆動ユニットの開発内径58mmの保持筒にネガティブを挿入し,それを6本のネジにより周囲から固定してネガティブを保持し,この保持筒を直流モータにより回転駆動し,直流モータと保持筒全体を搭載したステージを円筒の軸方向にパルスモータを用いて直線駆動するシステムを開発した.保持筒にはロータリエンコーダを装着し,円筒の回転速度に対応してパルスモータによる直線移動を制御した.3.総合特性の確認と日本の音楽資料の再生以上の各システムを結合させ,光学的音声再生装置としての総合的な動作を確認した.さらに,試作した装置を使っていくつかのネガティブ管から音声の再生に成功した.その中には,1901年にベルリンで録音された新演劇俳優川上音二郎の一座による三味線や琴の演奏が含まれている.最近,研究代表者らの調査により,録音ろう管から型を取ったネガティブあるいはガルバノスと呼ばれる金属管がベルリンの民族博物館に大量に保管されていることが明らかとなった.このネガティブには19世紀末から20世紀半ばにかけての世界各地の貴重な民族音楽が記録されているとされているが,通常のろう管再生機は使用できないため,音声再生が全くできない状態にある.本研究は,このろう管ネガティブに記録されている民族音楽を再生するため,レーザー光を用いた非接触式の音声再生装置を開発することを目的としている.1.小型光学系および信号処理システムの設計と試作本研究では,直径5cm程のネガティブ管の内壁に記録されている音声情報をレーザービームの反射方向の変化として検出する.そのために必要な,管の内部に挿入可能な小型の光学系を設計し,試作した.また,検出した反射ビームの方向信号から音声を再生するための信号処理システムを設計,試作した.2.ろう管ネガティブ駆動システムの設計と試作ネガティブの管の内面に接触することなしに,軸の周りに円筒を回転させ,同時に軸方向に一定速度で移動させるためのネガティブ保持機構,軸出し機構,駆動機構を組み合わせた駆動システムを設計し,試作した.3.再生装置の総合的性能評価と民族音楽資料の再生以上の各システムを結合させ,光学的再生装置としての総合的な動作を確認した.さらに,試作した装置を使って,1901年にベルリンで録音された新演劇俳優川上音二郎の一座の演奏する三味線や琴の演奏を含む幾つかのネガティブからの民族音楽の再生に成功した.本研究は,録音ろう管に金属メッキを施すことにより作成された金属製の型であるネガティブから,レーザー光を用いて非接触により音声を再生する手法および装置を開発することを目的としている.
KAKENHI-PROJECT-09555006
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09555006
録音ろう管ネガティブのための光学的音声再生装置の開発
19世紀末から20世紀半ばにかけて録音された世界の民族音楽を記録した貴重なネガティブ管がドイツに大量に保存されていることが最近明らかとなっており,本研究で開発する装置はそのような貴重な音声資料の活用に道を開くことを可能にする.今年度は,昨年度に試作した装置をさらに改良し,装置の特性の向上を行った.1.照射・検出光学系の小型化・高性能化光源に可視領域の半導体レーザーを用いることにより,ネガティブ管に挿入する光学ヘッドの小型化を行った.また,管内部での散乱光が光検出器に混入するのを防ぐため,レンズとピンホールからなるリレー光学系を挿入した.これにより,蛍光灯などの室内照明下でも安定した音声再生が可能となった.2.回転駆動システムの改良回転駆動系の材質および加工精度を改善し,昨年度作成したネガティブの回転駆動系に残っていた機械的な問題点を解決した.これにより,ネガティブ管を安定した速度で回転させることが可能となった.3.トラッキング法の改良レーザービームによる管内面の音声トラックの追尾法として,ネガティブを一定速度で軸方向に駆動する定速トラッキングに加えて,音声トラックからのレーザービームのずれ量を検出してそれを補正することによりトラックを行う自動トラッキングを導入した.これにより,より安定したトラッキングが可能となった.4.再生装置の総合特性の改良以上の改良した各システムを結合し,制御装置の回路パラメータを最適化することにより,全体の動作の安定化と再生音声の改善を図った.
KAKENHI-PROJECT-09555006
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ナノスペース中に束縛されたヘリウム4の超流動状態とその空間サイズ効果
活性炭素繊維(Activated Carbon Fiber ; ACF)は面内サイズ約30Åのナノグラファイトの乱れた3次元ネットワークからなり,ナノポアと呼ばれる内径数数十オングストロームのナノスペースが発達したマイクロポーラスな物質である.そのため3000m^2g^<-1>にも及ぶ非常に大きな比表面積を持ち,様々な物質をそのナノポア中に吸蔵することができる.本研究では,ねじれ振り子法を用いることでACFのナノポア中に吸着した^4Heの超流動密度を測定し,超流動^4Heの空間サイズ効果について検討することを目的とする.平成15年度においては前年度作成・開発を行った高感度のねじれ振り子を用い,ACFに吸着した^4Heの,超流動密度の吸着量依存性の測定を行った.試料であるACFが繊維状の物質であるため,20mKにおけるQ値は62万程度と比較的小さく,ねじれ振り子への試料の固定方法には改善の余地があると思われる.吸着量23.7μmolm^<-2>以下では20mKまでの範囲では超流動は観測されなかった.これはグラファイト上への^4Heの吸着に換算すると1.1層吸着に相当し,グラファイトの場合と同様,第1層吸着は基盤との相互作用のため固相として存在していると考えられる.吸着量23.7μmolm^<-2>において約500mKにナノポア中に吸着した^4Heの超流動転移と思われる周波数シフトが観測された.この超流動転移点は吸着量を増加させても変化せず,30μmolm^<-2>以上の吸着量ではバルクの^4Heの超流動転移が観測されるようになる.ナノポア中の^4Heの超流動転移点が吸着量依存性を示さず,それ以上の吸着量においてバルクの^4Heの超流動転移が観測されることから,吸着量23.7μmolm^<-2>において既にナノポアが^4Heで完全に埋められていると考えられるが,ACFのナノポアの構造モデルとあわせ,より詳細な検討が必要と考えられる.活性炭素繊維(Activated Carbon Fiber ; ACF)は面内サイズ約30Åのナノグラファイトの乱れた3次元ネットワークからなり,ナノポアと呼ばれる内径数十数オングストロームのナノスペースが発達したマイクロポーラスな物質である.そのため3000m^2g^<-1>にも及ぶ非常に大きな比表面積を持ち,様々な物質をそのナノポア中に吸蔵することができる.本研究では,ねじれ振り子法を用いることでACFのナノポア中に吸着した^4Heの超流動状態を測定し,超流動^4Heの空間サイズ効果について検討することを目的とする.平成14年度においては^4Heガスハンドリングシステム,高感度のねじれ振り子,およびその周辺エレクトロニクスの作製・開発を行った.開発したねじれ振り子の4.2Kにおける共鳴周波数,Q値はそれぞれ1214.91615Hz±0.00005Hz,1.6×10^6で,4HeをACFのナノポア表面に1原子層吸着させることで約0.7Hzの周波数変化を観測できた.これは本研究を遂行するのにおいて十分な基本性能を持っているといえる.また,ACFと同程度の,約25Aのナノしペースを持つ多孔質ガラスを用いた研究も開始した.1気圧の下では約1Kで超流動転移が観測された.圧力を加えるにつれ超流動転移温度は減少していくが,バルクの^4Heが固化する領域においても超流動転移と思われる周波数変化が観測された.これはナノスペース中に束縛された^4Heによる超流動と考えられ,ナノスペース中で特異な超流動状態が実現していると考えられる.活性炭素繊維(Activated Carbon Fiber ; ACF)は面内サイズ約30Åのナノグラファイトの乱れた3次元ネットワークからなり,ナノポアと呼ばれる内径数数十オングストロームのナノスペースが発達したマイクロポーラスな物質である.そのため3000m^2g^<-1>にも及ぶ非常に大きな比表面積を持ち,様々な物質をそのナノポア中に吸蔵することができる.本研究では,ねじれ振り子法を用いることでACFのナノポア中に吸着した^4Heの超流動密度を測定し,超流動^4Heの空間サイズ効果について検討することを目的とする.平成15年度においては前年度作成・開発を行った高感度のねじれ振り子を用い,ACFに吸着した^4Heの,超流動密度の吸着量依存性の測定を行った.試料であるACFが繊維状の物質であるため,20mKにおけるQ値は62万程度と比較的小さく,ねじれ振り子への試料の固定方法には改善の余地があると思われる.吸着量23.7μmolm^<-2>以下では20mKまでの範囲では超流動は観測されなかった.これはグラファイト上への^4Heの吸着に換算すると1.1層吸着に相当し,グラファイトの場合と同様,第1層吸着は基盤との相互作用のため固相として存在していると考えられる.吸着量23.7μmolm^<-2>において約500mKにナノポア中に吸着した^4Heの超流動転移と思われる周波数シフトが観測された.この超流動転移点は吸着量を増加させても変化せず,30μmolm^<-2>以上の吸着量ではバルクの^4Heの超流動転移が観測されるようになる.
KAKENHI-PROJECT-14740215
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14740215
ナノスペース中に束縛されたヘリウム4の超流動状態とその空間サイズ効果
ナノポア中の^4Heの超流動転移点が吸着量依存性を示さず,それ以上の吸着量においてバルクの^4Heの超流動転移が観測されることから,吸着量23.7μmolm^<-2>において既にナノポアが^4Heで完全に埋められていると考えられるが,ACFのナノポアの構造モデルとあわせ,より詳細な検討が必要と考えられる.
KAKENHI-PROJECT-14740215
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新しい超音波造影剤ヘリウムガスの基礎的研究と臨床応用
原発性肝癌の診断として超音波検査は重要な役割を果たしてきたが、CT、MRIに比べて造影剤が存在しないという欠点をもっていた。しかし、1984年頃より経動脈的な二酸化炭素を用いた造影エコーが徐々に行われるようになってきたが、二酸化炭素の溶解度が高いため、短時間しか検査できないという欠点をもっていた。そこで我々は、潜函病の治療に用いられ、二酸化炭素より溶解度の低いヘリウムガスを用いて造影エコーができないかと考え、この研究を開始した。ニュージーランドホワイトラビット30尾を使用しその有用性と安全性のを検討した。具体的には、透視下で実験動物の肝臓にヘリウムガスを注入しその安全性を確認した後VX2等の移植腫瘍を使用し、腫瘍の内部にどのくらいの時間ヘリウムガスがとどまるか検討した。その結果ヘリウムガスは0.1ml/kgまでは胃、肝臓、膵臓に組織学的は変化は認められず、またヘリウムガスは二酸化炭素に比べ腫瘍に約4倍長くとどまることがわかった。その為結果を熊大倫理委員会に提出し、使用許可を得たため臨床例への使用を検討中である。原発性肝癌の診断として超音波検査は重要な役割を果たしてきたが、CT、MRIに比べて造影剤が存在しないという欠点をもっていた。しかし、1984年頃より経動脈的な二酸化炭素を用いた造影エコーが徐々に行われるようになってきたが、二酸化炭素の溶解度が高いため、短時間しか検査できないという欠点をもっていた。そこで我々は、潜函病の治療に用いられ、二酸化炭素より溶解度の低いヘリウムガスを用いて造影エコーができないかと考え、この研究を開始した。ニュージーランドホワイトラビット30尾を使用しその有用性と安全性のを検討した。具体的には、透視下で実験動物の肝臓にヘリウムガスを注入しその安全性を確認した後VX2等の移植腫瘍を使用し、腫瘍の内部にどのくらいの時間ヘリウムガスがとどまるか検討した。その結果ヘリウムガスは0.1ml/kgまでは胃、肝臓、膵臓に組織学的は変化は認められず、またヘリウムガスは二酸化炭素に比べ腫瘍に約4倍長くとどまることがわかった。その為結果を熊大倫理委員会に提出し、使用許可を得たため臨床例への使用を検討中である。
KAKENHI-PROJECT-08770736
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08770736
熱力学的解析に基づいた競合状態におけるDNA間結合の特異性に関する研究
本年度の研究は,複数のDNAが溶液中に存在してハイブリダイゼーションするような競合状態の解析を主眼として進めてきた.成果としては,(1)競合状態を解析する実験手法の確立,(2)競合状態において二本鎖の生成割合を予測するモデルの提案の二つに要約できる.まず(1)であるが,競合状態の解析においては,複数種類生成される二本鎖の割合を実験的に計測する必要がある.そこで,FAMという蛍光物質とDabcylと呼ばれるクエンチャー物質を利用することにより,ある特定の二本鎖の生成割合を計測する手法を確立した.次に,上記の実験手法を用いて,二本鎖の生成割合を予測するモデルの提案・検証を行った.予備実験の結果から,二本鎖の安定性の尺度であるTmやΔGminの差が生成割合に寄与していることが分かった.そこで,「生成割合=f(Tm(ΔGmin)の差)」という関数を用いて予測が可能かどうかを検証した.尚,関数fは,熱力学的な考察に基づき,シグモイド関数を変形した関数として定義した.このように定義したモデルを実測値にフィッティングさせ,χ二乗検定によりモデルの当てはまりを計算した結果,30mer以下の比較的短い配列であれば,二本鎖の生成割合を精確に予測できることが示された.また,40mer以上の長い配列であっても,Tmが10°C以上異なっていれば,安定な二本鎖がほぼ100%生成されることが示された.これらの結果は,DNAコンピューティングにおいて熱力学的なシミュレーションを行う際や塩基配列を設計する際に有用なデータとなる.特に,自身の相補配列とのみ結合する特異的な配列を設計する際の指針として上記の結果を用いることが可能であり,DNAコンピューティングにおけるシステマティックな設計論の確立に寄与すると考えられる.本年度の研究業績は以下の二点にまとめられる.1化学実験により,二本のDNAが結合するためのΔGの閾値ΔG^*を明らかにした2全ての塩基配列の組についてΔG>ΔG^*を満たすような塩基配列集合の設計プログラムの実装・公開まず,上記1に関して説明する.当初は,三本のDNAが競合して結合する際に,結合の特異性を満たすΔGの条件も併せて調査する予定であった.しかしながら,科学研究費が申請額の150万円より50万円少ない100万円であったため,二本のDNAが結合する場合のみ調査を行っている.具体的な実験方法に関しては,計画時に述べた通り電気泳動による手法を採用した.これは,当初危惧していた識別能が予想よりも高く,DNA間結合の判定が十分可能だったためである.実験の結果,ΔGによって二本のDNAが結合するか否かを精度よく判定できることが確認された.さらに,バッファの塩濃度が1M,DNAの濃度が1uMという基準的な条件下において,ΔG^*=-14.0kcal/molを閾値として,これを下回った場合に二本のDNAが結合することが明らかとなった.次に,上記2に関して説明する.上記の結果より,お互いに結合しない,つまり結合の特異性を満たす塩基配列を設計する場合,ΔG>ΔG^*という条件を満たす必要があることがわかった.そこで,全ての塩基配列の組についてΔG>ΔG^*を満たすような塩基配列集合を設計するプログラムの実装を行った.PCの環境に出来るだけ依存せずに実行可能なように,Javaアプリケーションとして実装を行い,現在,Web上で公開している本年度の研究は,複数のDNAが溶液中に存在してハイブリダイゼーションするような競合状態の解析を主眼として進めてきた.成果としては,(1)競合状態を解析する実験手法の確立,(2)競合状態において二本鎖の生成割合を予測するモデルの提案の二つに要約できる.まず(1)であるが,競合状態の解析においては,複数種類生成される二本鎖の割合を実験的に計測する必要がある.そこで,FAMという蛍光物質とDabcylと呼ばれるクエンチャー物質を利用することにより,ある特定の二本鎖の生成割合を計測する手法を確立した.次に,上記の実験手法を用いて,二本鎖の生成割合を予測するモデルの提案・検証を行った.予備実験の結果から,二本鎖の安定性の尺度であるTmやΔGminの差が生成割合に寄与していることが分かった.そこで,「生成割合=f(Tm(ΔGmin)の差)」という関数を用いて予測が可能かどうかを検証した.尚,関数fは,熱力学的な考察に基づき,シグモイド関数を変形した関数として定義した.このように定義したモデルを実測値にフィッティングさせ,χ二乗検定によりモデルの当てはまりを計算した結果,30mer以下の比較的短い配列であれば,二本鎖の生成割合を精確に予測できることが示された.また,40mer以上の長い配列であっても,Tmが10°C以上異なっていれば,安定な二本鎖がほぼ100%生成されることが示された.これらの結果は,DNAコンピューティングにおいて熱力学的なシミュレーションを行う際や塩基配列を設計する際に有用なデータとなる.特に,自身の相補配列とのみ結合する特異的な配列を設計する際の指針として上記の結果を用いることが可能であり,DNAコンピューティングにおけるシステマティックな設計論の確立に寄与すると考えられる.
KAKENHI-PROJECT-05J08891
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05J08891
次世代シークエンサーを用いた難聴遺伝子の網羅的解析
難聴の原因遺伝子はおおよそ100種類ぐらい存在すると考えられているが、従来の直接シークエンス法ではスループットが低いため、数遺伝子を解析するのが限界であり、遺伝子変異を検出できない例が多く認められる状況であった。本研究では、次世代シークエンサーを用いることで、難聴の原因候補遺伝子の全塩基配列を決定し、網羅的に解析を行うことで、より診断率を向上させることを計画した。信州大学が従来より管理する日本人難聴遺伝子データベースに登録されている難聴患者216名を対象に、難聴との関連が報告されている112遺伝子のエクソン領域の網羅的解析を行った。その結果、効果的に遺伝子解析が実施され、複数の難聴の原因遺伝子変異を同定することができた。難聴の原因遺伝子はおおよそ100種類ぐらい存在すると考えられているが、従来の直接シークエンス法ではスループットが低いため、数遺伝子を解析するのが限界であり、遺伝子変異を検出できない例が多く認められる状況であった。本研究では、次世代シークエンサーを用いることで、難聴の原因候補遺伝子の全塩基配列を決定し、網羅的に解析を行うことで、より診断率を向上させることを計画した。信州大学が従来より管理する日本人難聴遺伝子データベースに登録されている難聴患者216名を対象に、難聴との関連が報告されている112遺伝子のエクソン領域の網羅的解析を行った。その結果、効果的に遺伝子解析が実施され、複数の難聴の原因遺伝子変異を同定することができた。難聴の原因遺伝子はおおよそ100種類ぐらい存在すると考えられているが、従来の直接シークエンス法ではスループットが低いため、数遺伝子を解析するのが限界であり、遺伝子変異を検出できない例が多く認められる状況であった。本研究では、次世代シークエンサー(ゲノムシークエンサー)を用いることで、難聴の原因候補遺伝子の全塩基配列を決定し、網羅的に解析を行うことで、より診断率を向上させることを計画した。平成22年度は、難聴患者約200名を対象に、コバリスを用いてDNAをおおよそ200塩基に断片化した後に、Agilent社のSureselectを用いた選別法により、候補遺伝子領域を含むDNA断片の濃縮を行う。濃縮後はシークエンス用のアダプターを付加した後に、ブリッジPCRを用いてDNAの増幅を行ない、次世代シークエンサーにより全塩基配列の決定を行なった。Agilent社のSureselect等を用いた候補遺伝子領域の選択的濃縮に際しては、海外の文献や、Hereditary Hearing loss Homepageを参考に、既に報告されている難聴の原因遺伝子や、まだ遺伝子までは明らかになっていない原因座位に対するビオチン化オリゴをカスタム合成し、pull down法により選別した。次世代シークエンサーを用いた遺伝子解析の結果、複数の難聴の原因遺伝子変異を同定しており、現在サンガーシークエンスを用いた確認作業を進めている状況であり、十分な成果が得られており、次年度以降に向けて順調に解析を実施できた。難聴の原因遺伝子はおおよそ100種類ぐらい存在すると考えられているが、従来の直接シークエンス法ではスループットが低いため、数個の遺伝子を解析するのが限界であり、遺伝子変異を検出できない例が多く認められる状況であった。本研究では、次世代シークエンサー(ゲノムシークエンサー)を用いることで、難聴の原因候補遺伝子の全塩基配列を決定し、網羅的に解析を行うことで、より診断率を向上させることを計画した。平成23年度は、前年度までに引き続き、難聴患者約200名を対象に、コバリスを用いてDNAをおおよそ200塩基に断片化した後に、Agilent社のSureselectを用いた選別法により、候補遺伝子領域を含むDNA断片の濃縮を行った。濃縮後はシークエンス用のアダプターを付加した後に、ブリッジPCRを用いてDNAの増幅を行ない、次世代シークエンサーにより全塩基配列の決定を行なった。Agilent社のSureselect等を用いた候補遺伝子領域の選択的濃縮に際しては、海外の文献や、Hereditary Hearing loss Homepageを参考に、既に報告されている難聴の原因遺伝子や、まだ遺伝子までは明らかになっていない原因座位に対するビオチン化オリゴをカスタム合成し、pull down法により選別した。現在サンガーシークエンスを用いた確認作業を進めている状況であるが、200名の難聴患者の解析により、既に230カ所以上の新規ミスセンス変異、17種類のスプライシング変異、5種類のナンセンス変異を同定した。十分な成果が得られており、次年度以降に向けて順調に解析を実施できた。難聴の原因遺伝子はおおよそ100種類ぐらい存在すると考えられているが、従来の直接シークエンス法ではスループットが低いため、数個の遺伝子を解析するのが限界であり、遺伝子変異を検出できない例が多く認められる状況であった。本研究では、次世代シークエンサー(ゲノムシークエンサー)を用いることで、難聴の原因候補遺伝子の全塩基配列を決定し、網羅的に解析を行うことで、より診断率を向上させることを計画した。平成24年度は、前年度までに引き続き、難聴患者約200名を対象に難聴の原因遺伝子54遺伝子を含む112遺伝子の全エクソン領域をAgilent社のSureselectを用い候補遺伝子領域を含むDNA断片の濃縮を行い、シークエンス用のアダプターを付加した後に、次世代シークエンサーにより全塩基配列の決定を行なった。検出された遺伝子変異にお関してはサンガーシークエンスを用いた確認作業を行うとともに家系サンプルを用いた解析を行い、病的変異を多数同定した。
KAKENHI-PROJECT-22249057
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22249057
次世代シークエンサーを用いた難聴遺伝子の網羅的解析
現在までに200名の難聴患者の解析により、既に250カ所以上の新規変異を同定しており成果を取りまとめて論文として報告した。また、典型的な聴力像を有する難聴患者108家系を対象に同様の手法を用いて遺伝子解析を行い、遺伝子型と聴力型の間に相関が有る事を見出すとともに、従来日本人難聴患者から報告の無かった2遺伝子に関して難聴の原因を同定することができた。研究期間全体を通じて次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝子解析の有用性を明らかにすることができた。研究計画当初に予定していた通りにサンガーシークエンスによる確認作業を行い、遺伝子変異が多数同定されつつある。24年度が最終年度であるため、記入しない。次世代シークエンサーにより見出され、サンガーシークエンスにより確認された遺伝子変異に関しては、家系の解析およびコントロールサンプル中での頻度解析などを行うとともに、論文として研究成果を報告する。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22249057
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22249057
2億件超の東日本大震災ツイッターデータからの発言者の役割を反映した時系列話題解析
本研究では東日本大震災後に投稿された2億件に及ぶTwitterデータを対象とし,発言者の役割を反映した時系列話題解析とその評価を行った.発言者と単語の関係を2部グラフで表し,発言者グループを抽出し,それを反映したクラスタリングを行うことで発言者の役割を推定し,解析精度を向上する手法を開発した.アルゴリズムはランダムウォークにより乱択化し,大規模データへの対応も行った.結果として,30分(あるいは1時間)ごとの投稿者と単語の二部グラフを生成し,そのデータに提案手法を適用することで,LDA等の従来手法より精度の高い話題を抽出することが可能であると確認できた.東日本大震災後21日間に投稿された2億件に及ぶTwitterデータ(15G)を対象として,発言者の役割を反映した時系列話題解析とその評価を行っている.まず「1)開発環境整備」として,実験データのクリーニングを行い,発言者と単語の関係を1時間ごとの時系列2部グラフで表現した.さらに「2)時系列話題解析アルゴリズム開発Phase1」として,実験データに対して,オリジナルの特徴抽出手法であるCWCを用いて,各時間ごとの特徴語抽出を行った.特徴語の変化(距離)を時系列で計算することにより,大きく距離が変化した時刻に大きなイベントが発生したと判定し,時系列のイベントの抽出手法を提案した.CWCは高速かつ高性能の特徴抽出アルゴリズムであり,通常の手法(LDA等)ではリーズナブルな時間で解析できないビックデータの解析を行うことができる.特徴語抽出→距離測定→イベント判定を繰り返し行うことで,イベントのより詳細な内容を解析することが可能となっている.また,「3)発言者の役割推定アルゴリズム開発」の開発として, GENETIC ALGORITHMSの一つであるBCヒューリスティックやMedianヒューリスティックを用いて,発言者と単語の時系列2部グラフから話題抽出を行う手法も開発している.従来手法(LDA)との比較を行うことで,高速かつ高精度のソーシャルメディア解析手法を開発を行っている.研究成果を広く公表するために,UCLA(米国)にてSocial Data Analysis Seminarを,チュラルンコン大学(タイ)にて,Big Data Analytics : Method and Applicationsセミナーを実施した.両セミナーとも多くの参加者に恵まれ,UCLA及びタイの研究者と研究の方向性や今後のコラボレーションについて議論する機会を得た.平成27年度は,大規模解析のための開発環境整備[(1)]及び,発言者と単語の2部グラフ生成とそれに基づく発言者の役割推定アルゴリズムの開発・実験[(2)]を行い,時系列話題解析[(3)]にはNMF(Non-negative Matrix Factorization),LDA等の話題抽出手法をオンライン化・乱択化して用いる予定とし,その開発もスタートするという予定であった.大規模解析のための開発環境整備[(1)]としては,2億件のTwitterデータのデータクリーニングを行い,発言者と単語の関係を1時間ごとの時系列2部グラフで表現し,データベースに蓄積する処理を行った.これにより,今後のアルゴリズム開発,実験が非常に容易になった.さらに発言者と単語の2部グラフ生成とそれに基づく発言者の役割推定アルゴリズムの開発・実験[(2)]においては,GENETIC ALGORITHMSの一つであるBCヒューリスティックやMedianヒューリスティックを用いて,発言者と単語の時系列2部グラフから話題抽出を行う手法の開発を行っている.本アルゴリズムは既存手法(LDA)が話題抽出に数時間かかるところを数十秒で実現することを目指したものであり,現在のところ順調に開発が進んでいる.時系列話題解析[(3)]としては,既存手法(LDA)を乱択化するのではなく,オリジナルの特徴抽出手法CWCを開発し,それを適用することで,高速かつ高精度で時系列に話題を抽出できる手法の開発に取り組んでいる.高速なCWCはすでに開発済であり,それを利用した時系列話題抽出手法を28年度に完成させる予定である.東日本大震災後21日間に投稿された2億件強のTwitterデータ(データサイズ約15G)を対象として,発言者の役割を反映した時系列話題解析手法の開発とその評価を行っている.昨年度に実施した1)実験環境整備,2)発言者の役割推定アルゴリズム開発,3)時系列話題解析の結果に基づき,今年度は2)発言者の役割推定アルゴリズムの改良及び,3)時系列話題解析の詳細評価を行った.2)の発言者の役割推定アルゴリズム開発においては,Twitterにおける発言者と発言ワードの関係を2部グラフで表現し,2部グラフの形状を保ったままクラスタリングを行うことでより精度の高い話題抽出が可能となる手法を提案し,実データへの適用を行った.提案手法によって,発言者グループを抽出でき,発言者の役割を反映し精度の高い話題抽出の実現を目指している.3)の時系列話題解析においては,提案手法を実データに適用し,評価を行った.評価はCoherenceというクラスタリングの質を評価するパラメタを用いている.既存手法(ベースラインとしてGibbsLDA)と比較し,Coherenceの高いクラスター(話題)が抽出出来ていることが確認できている.対象データを東日本大震災だけでなく熊本地震にまで広げており,提案手法の汎用性を確認するとともに,災害後のTwitter上の話題発生のモデル化を目指している.研究成果を広く公開するために,学会への論文投稿(ICDMW2016,DH2016,など)や各種Public Lecture(インドネシア大学等)を行っている.また人工知能分野,ビッグデータ解析分野の研究者との交流も積極的に行い,合宿などを通じて,最新の手法・知見の獲得にも務めている.
KAKENHI-PROJECT-15K00314
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K00314
2億件超の東日本大震災ツイッターデータからの発言者の役割を反映した時系列話題解析
平成28年度は,平成27年度に開発した発言者の役割推定アルゴリズムの改良及び,時系列話題解析の詳細評価を行う予定であったが,ほぼ順調に進展したと考える.発言者の役割推定アルゴリズムにおいては,Twitterにおける発言者と発言ワードの関係を2部グラフで表現し,2部グラフの形状を保ったままクラスタリングを行える手法を提案し,それを用いた話題抽出手法の開発を行った.2部グラフの特徴を活かしながらクラスタリングする手法は,世界的に見てもまだ確立されておらず,オリジナリティの高い効果的な手法であると考えている.実際にその手法を2億件強のTwitterデータ(実データ)に適用することで,提案手法の効果を示すことが出来ている.こうした話題抽出の評価は常に困難が伴うが,今年度は,Coherenceというクラスタリングの質を評価するパラメタを用いて,その評価を行っている.Coherenceパラメタを用いて各クラスターの質を数値で表現することで,定量的な評価も実施できている.さらに定性的な評価も実施しており,手法の有効性や改善すべき点などの検討が可能となっている.さらに東日本大震災のみならず熊本地震のTwitterデータまで解析を広げており,手法の汎用性や災害後のTwitter上の話題のモデル化にも着手し始めている.本研究では東日本大震災後に投稿された2億件に及ぶTwitterデータを対象とし,発言者の役割を反映した時系列話題解析とその評価を行った.SNS上の話題構造は曖昧であり,同じ単語(例:「避難」)が複数の話題(「避難生活へ不安」,「原発からの避難」など)に異なった意味(位置付け)で属する場合が多く見られる.この「単語の位置付け」は「誰がどのグループで発言したか」という「発言者の役割」に依存すると考えられる.本研究では,発言者と単語の関係を2部グラフで表し,発言者グループを抽出し,それを反映したクラスタリングを行うことで発言者の役割を推定し,解析精度を向上する手法を開発した.アルゴリズムはランダムウォークにより乱択化し,大規模データへの対応も行った.結果として,30分(あるいは1時間)ごとの投稿者と単語の二部グラフを生成し,そのデータに提案手法を適用することで,LDA等の従来手法より精度の高い話題を抽出することが可能であると確認できた.特に「石油コンビナート爆発」といった決め打ちの単語を用いれば,デマのような特徴的な話題と,それを訂正しようとする話題,さらにそれらの時系列推移を抽出できることを示すことができた.しかし一方で,全く情報が与えられていない段階で新たに発生する特徴的な話題を早期に発見し,その成長パターンを予測することが困難であることも確認できた.今後は,新たに発生する特徴的な話題をいち早く発見し,それがどのような経過をたどるかを予測する手法を開発することで,社会への影響を測ることが可能となり,より的確なソーシャルメディア解析を行えるとの方向性を確認できた.研究成果はICDM,BIGDATA等のトップカンファレンスで発表を行い,最先端の研究者との交流も実施した.招待講演も多数行った.
KAKENHI-PROJECT-15K00314
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転写因子による単球分化制御機構の解明と動脈硬化病変形成への関与の検討
IRF8-KLF4転写因子カスケードが単球分化に必須であることを見出した。IRF8依存性単球分化系においてIRF8は主にプロモーター遠位領域に結合し,エンハンサーを形成・増強することで,単球分化に重要な転写因子であるKLF4を含む単球関連遺伝子の発現を誘導する。IRF8欠損マウスの単核貪食細胞前駆細胞ではKLF4の発現が著減しており、KLF4欠損マウスよりも重度の単球分化不全を示すことがわかった。さらに単核貪食細胞前駆細胞においてIRF8は好中球分化を促進する転写因子であるC/EBPαのクロマチンへの結合を阻害することで、これら前駆細胞における好中球分化能喪失にも寄与することを発見した。単球は生体防御や組織恒常性の維持に必須の免疫細胞であり、骨髄造血幹細胞から単球-樹状細胞前駆細胞(MDP)を経て産生される。しかし単球の分化・産生が分子レベルでどのように制御されるかその詳細は良くわかっていない。本研究では血球細胞特異的に発現する転写因子であるInterferon regulatory factor-8(IRF8)が単球、特に炎症性単球の分化に必須であることを見出した。IRF8欠損マウスでは炎症性単球が存在せず、IRF8欠損マウスのMDPにおいては単球分化に必須の別の転写因子であるKLF4の発現が著しく減少することがわかった。さらにクロマチン免疫沈降シークエンス(ChIP-seq)とトランスクリプトーム解析の統合解析から、IRF8はプロモーター遠位のクロマチンに結合することでのエンハンサーの特徴であるヒストンH3リジン4の単メチル化(H3K4me1)を増強し、KLF4を含む単球関連遺伝子の発現を誘導することが明らかとなった。以上のことから単球分化においてはIRF8-KLF4転写因子カスケードが必須であることを昨年我々は報告した(Kurotaki et al. Blood 2013)。興味深いことに上記の研究を進めていく中でIRF8欠損マウスのMDPは単球にならないばかりか、好中球へと分化してしまうことがわかった。現在はIRF8が如何にして単球分化を促進する一方で好中球分化を抑制するのかその分子機構の解明に取り組んでいる。IRF8-KLF4転写因子カスケードが単球分化に必須であることを見出した。IRF8依存性単球分化系においてIRF8は主にプロモーター遠位領域に結合し,エンハンサーを形成・増強することで,単球分化に重要な転写因子であるKLF4を含む単球関連遺伝子の発現を誘導する。IRF8欠損マウスの単核貪食細胞前駆細胞ではKLF4の発現が著減しており、KLF4欠損マウスよりも重度の単球分化不全を示すことがわかった。さらに単核貪食細胞前駆細胞においてIRF8は好中球分化を促進する転写因子であるC/EBPαのクロマチンへの結合を阻害することで、これら前駆細胞における好中球分化能喪失にも寄与することを発見した。【結果】当該年度においては計画通り順調に研究を遂行することができた。計画にあるようにIRFファミリー分子欠損マウスにおける単球サブセットの解析を行い、IRF8欠損マウスではGr-1陽性単球亜群が骨髄、末梢血、脾臓において消失していることを見出した。一方で、IRF4欠損マウス及びIRF5欠損マウスでは単球の減少や増加は認められなかった。さらにIRF8欠損マウスの骨髄細胞を放射線照射した野生型マウスに移植することで骨髄キメラマウスを作製し、単球の解析を行ったところ、IRF8欠損マウスの表現型と同様にGr-1陽性単球亜群が消失することがわかった。この結果は、IRF8欠損マウスにおけるGr-1陽性単球の消失は骨髄細胞intrinsicであることを示している。次にIRF8-GFPノックインマウスを用いて造血前駆細胞におけるIRF8の発現を解析した。IRF8の発現は造血幹細胞や共通ミエロイド前駆細胞、顆粒球-単球前駆細胞ではほとんど認められず、単球-樹状細胞前駆細胞(MDP)において急激に増加することがわかった。そこで骨髄よりMDPの単離・精製を行い、野生型マウスに養子移入したところ、骨髄移植のデータと一致してIRF8欠損マウス由来のMDPはGr-1陽性単球をほとんど産生できなかった。【意義・重要性】本研究で初めてIRF8がGr-1陽性単球の分化に必須であることを示した。さらにIRF8はMDPで発現することで単球分化を促進していることを見出した。Gr-1陽性単球は自己免疫疾患やがん等の疾患において、疾患の増悪に関与することが知られている。本研究成果はGr-1陽性単球の分化を制御することで、これらの疾患の新たな治療法を提供する可能性がある点で極めて重要である。単球は生体防御及び組織恒常性維持に必須の骨髄由来細胞である。本課題では単球分化の分子メカニズムを転写因子による遺伝子発現制御の観点から明らかにしてきた。
KAKENHI-PROJECT-24790322
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転写因子による単球分化制御機構の解明と動脈硬化病変形成への関与の検討
平成25年度までの結果として、IRF8欠損マウスでは単球-樹状細胞前駆細胞(MDP)においてKLF4の発現が著しく減少しGr-1陽性単球亜群がほぼ消失すること、ミエロイド前駆細胞株を用いた実験から単球分化の際にIRF8はプロモーター遠位のエンハンサー領域に結合することでヒストンH3リジン4の単メチル化(H3K4me1)を増強しKLF4を含む単球関連遺伝子の発現を誘導することなどを計画を大きく前倒しして示してきた。IRF8による単球分化制御機構を解析する中で、IRF8欠損マウス由来MDPは単球の分化能が著しく減少している一方で通常は分化することのない好中球を大量に産生してしまうことがわかった。そこで平成26年度は、IRF8がMDPにおいてどのようにして単球分化促進と好中球分化抑制の両方に機能するのか詳細な解析を行った。以下に主な研究成果を示す。(1)IRF8欠損マウス由来MDPのトランスクリプトーム解析;MDPを単離し、マイクロアレイ解析さらにその結果からパスウェイ解析を行ったところ、IRF8欠損マウスMDPではC/EBPファミリー転写因子が過剰に活性化していることを見出した。(2)IRF8によるC/EBPαの機能抑制;MDPにおいてIRF8がC/EBPαと結合し、それによってC/EBPαのクロマチン結合を阻害することをproximity ligation assayやクロマチン免疫沈降RT-qPCR法により示した。(3)C/EBPの機能抑制によるIRF8欠損マウスにおける好中球過剰産生の抑制;dominant negative C/EBPをIRF8欠損マウス由来骨髄前駆細胞に発現させることで、好中球の過剰産生が抑制されることを示した。免疫学昨年は研究成果を血液学のトップジャーナルであるBlood誌に報告することができた。ほぼ完全に計画に示した研究を遂行することができた。また本研究に関わる研究成果を国内学会(免疫学会、分子生物学会)及び講演(横浜血液集談会)において発表することができた。さらに原著論文としてインパクトファクター9.8点の雑誌に(Blood)本研究に関わる成果を発表することができた。IRF8による単球分化促進及び好中球分化抑制がどのように行われているのか特に生体内に少数しか存在しないMDPを用いて分子レベルの解析を進めていく。次年度も計画通りに研究を遂行することが重要である。具体的にはIRF8が制御すると考えられるMDPからのGr-1陽性単球の分化におけるIRF8の役割の解明を引き続き行う。野生型マウスとIRF8欠損マウスのMDPを分離し、マイクロアレイ解析を行うことで、IRF8の欠損がMDPの遺伝子発現に与える影響を調べる。特に遺伝子発現に広範な影響を与えうる転写因子に注目した解析やGene ontology解析を行う。次に当研究室が保有するIRF8欠損マウスの骨髄細胞に由来する前駆細胞株であるTot2細胞にIRF8を導入することで単球への分化を誘導する。IRF8導入初期において変化のある遺伝子をマイクロアレイにより抽出し、IRF8の結合をChIP-seqにより解析する。この手法によりIRF8が単球分化を誘導する際に直接的に結合し制御する遺伝子を絞り込む。このTot2細胞株の結果とMDPのマイクロアレイデータを統合的に解析し、IRF8欠損マウスMDPで変化がありかつIRF8が直接制御する遺伝子を同定する予定である。その分子が単球分化に必須の役割を持っている可能性が高い。該当なし
KAKENHI-PROJECT-24790322
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血管形成におけるFOXO1の機能解析
血管形成に関与する多くの遺伝子の一つであるFOXO1を血管内皮特異的に欠損させたマウスモデルを用いて、生後に血管形成過程が進行する網膜血管に異常が生じるかを検討した。その結果、血管の伸長抑制、分岐点の増加、tip細胞数の増加などの異常がおこることが分かった。FOXO1蛋白はすべての血管内皮細胞に発現しているが、その細胞内局在を見るとstalk細胞や多くのtip細胞では細胞質に、また一部のtip細胞や毛細血管部分では主に核に局在しており、部位により大きく異なることからFOXO1は血管形成過程にある血管内皮細胞において部位ごとに異なる機能を持つ可能性が示唆された。FOXO1を血管内皮特異的に欠損するマウスを作成し、生後での網膜血管の形成を観察した。その結果、FOXO1欠損により網膜中心からの血管伸長が抑制されること、tip細胞数の増加傾向、tip細胞から伸びる突起の横方向への広がり傾向、分岐数の増加傾向などが示唆された。これらの観察を背景に、正常に伸長しつつある血管のtip細胞におけるFOXO1の細胞内局在および、そのリン酸化レベルを調節するAkt1の活性化について免疫組織学的に検討を加えた。FOXO1はtip細胞の核に局在しており、stalk細胞では核での局在が明らかに低下していた。またT308リン酸化Akt1の局在もまたtip細胞に局在していたことから、FOXO1の局在はAkt1以外の調節機構によって調節されている可能性が示唆された。次に、tip細胞の形成に重要なNotch経路の発現へのFOXO1の関与を明らかにするため、大動脈由来の内皮細胞およびHUVECに対してsiRNA法によってFOXO1の発現を抑制して検討した。ウエスタンブロット法により検討したところJagged1の発現の上昇が認められた。Jagged1に対するmiRNAとして知られているmiRNA-34cの発現を検討したが明らかな変化は見出せなかった。最後にリンパ管形成について検討を開始した。、FOXO1の欠損でang2の発現が低下し、ang2の欠損ではリンパ管形成に異常が起こる。そこでFOXO1を欠損させたマウスの尻尾のリンパ管の形成過程を生後4ー6日令で観察したところ、リンパ管網の形状に異常が観察された血管形成に関与する多くの遺伝子の一つであるFOXO1を血管内皮特異的に欠損させたマウスモデルを用いて、生後に血管形成過程が進行する網膜血管に異常が生じるかを検討した。その結果、血管の伸長抑制、分岐点の増加、tip細胞数の増加などの異常がおこることが分かった。FOXO1蛋白はすべての血管内皮細胞に発現しているが、その細胞内局在を見るとstalk細胞や多くのtip細胞では細胞質に、また一部のtip細胞や毛細血管部分では主に核に局在しており、部位により大きく異なることからFOXO1は血管形成過程にある血管内皮細胞において部位ごとに異なる機能を持つ可能性が示唆された。(1)tip細胞の形態変化in vitroでFOXO1を欠損する血管内皮細胞は、VEGF投与後に正常の内皮細胞が示す形態変化に異常をきたすことが報告されている。生体の血管形成時にその先端に位置するtip細胞はVEGFの濃度勾配を感知して血管の伸長を調節している。このことからtip細胞の形態がFOXO1の欠損により影響を受けると血管伸長をコントロールできないために血管形成に異常が生じる可能性が高い。これを明らかにするため血管特異的にFOXO1を欠損させたP6の網膜の血管内皮細胞をFITC-GS-lectinにて染色後、共焦点レーザー顕微鏡によりtip細胞数、そこから伸びる突起の数、方向等についてジェノタイプによる違いを検討した。まだ予備的ではあるが、FOXO1欠損によりtip細胞数の増加傾向、そこから伸びる突起の数の減少と横方向への広がりの増加傾向が観察された。また血管分岐の増加傾向も認められた。これらの結果についてさらに検体数を増やして確認する予定である。(2)Notch関連分子の発現変動tip細胞の形成を調節する重要な経路であるNotch経路の分子の発現へのFOXO1の影響を検討するため、大動脈由来の内皮細胞でのFOXO1発現抑制時のJagged1、Dll4の発現量をウエスタンブロット法、および定量PCR法にて確認した。FOXO1欠損によりJagged1タンパクは増加傾向を示し、Dll4は変化がなかった。網膜を用いた発現検討ができていないので試料が得られ次第検討する予定である。FOXO1分子を欠損する血管内皮細胞は、in vitroでVEGFによる形態変化応答に異常をきたす。また生体の血管形成時に先端に位置するtip細胞はVEGFの濃度勾配を感知して血管の伸長を調節している。これらのことからFOXO1欠損によるtip細胞の機能異常がおこる可能性がある。このことを検証するためFOXO1を血管内皮特異的に欠損するマウスを作成し生後6日令時での網膜血管の形成を観察した結果、血管伸長の抑制、tip細胞数の増加傾向、tip細胞から伸びる突起の横方向への広がり傾向、分岐数の増加傾向が示された。さらにtip細胞でのFOXO1の細胞内局在および、その局在を調節するakt1のリン酸化レベルを免疫組織化学法にて検討したところ、FOXO1は大部分のtip細胞において核に局在しstalk細胞では細胞質に局在していた。また全活性型のAkt1が認められる少数のtipやstalk細胞ではFOXO1が細胞質に局在していることから、akt1がtipとstalk細胞でのFOXO
KAKENHI-PROJECT-24590258
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24590258
血管形成におけるFOXO1の機能解析
1の局在に大きな関与をしていることが示唆された。このことからFOXO1は少なくともtip細胞において転写調節を行うことにより血管形成過程に影響していると考えられる。これまでにtip細胞に特異的に発現するとされる遺伝子についてFOXO1欠損の影響を調べたところang2、PDGF-Bなどについては有意な発現低下が認められFOXO1による転写調節の可能性が示唆されたが、直接的に転写調節をしているという証明をすることはできなかった。またFOXO1欠損網膜を用いたDNAマイクロアレイ実験を行い上記以外の遺伝子の同定を試みた。さらに生後3日目のマウス尾の真皮リンパ管形成途中でのリンパ管内皮細胞にFOXO1の発現が確認されることからリンパ管の形成過程にも関与していることが示唆された。解剖学・形態形成学マウス大動脈から血管内皮細胞を単離培養し、この培養系を用いてsiRNAを使用してFOXO1の発現抑制ができることはウエスタンブロット法および定量PCRによって確認された。本研究の目的のひとつである、FOXO1欠損マウスのtip細胞においてPDGF-Bが発現抑制される仕組みを明らかにするため、この培養系を用いてPDGF-Bのプロモーター領域を用いたレポーターアッセイを行った。その結果、予期せぬことにsiRNAのネガティブコントロールを細胞に導入するだけでレポーター活性の増加がおこり、FOXO1のsiRNAを導入した場合にはsiRNA処理をしないレベルまでレポーター活性が上昇することが分かった。さらにこの現象はPDGF-BのプロモーターのTATAボックスの直上まで欠失させたレポーターでも観察され、TATAボックスを欠失させると消失した。これらの結果はHUVECでも全く同様であった。これらのことから、siRNA系を用いてFOXO1のPDGF-B転写活性機構を明らかにすることは現時点で不可能であるため、あらたな実験系を再構築する必要に迫られている。他の計画についてはほぼ予定通り進行している。動物飼育施設の汚染のため、マウスを一時的に淘汰し再度クリーンアップするなどの非常事態がおきたため、再度マウスの個体数を増やすのに予想外の時間がかかっていることが大きな遅れの原因となっている。マウスの大動脈からの内皮細胞の培養はおおむね順調に行えるようになったため、細胞培養を用いた実験を優先して行っている。PDGF-Bのプロモーター解析について、内皮細胞にCreアデノウイルスを感染させることによりノックアウト状態を誘導する試みを行ったが、内皮細胞の増殖度に変化が起こるなどのトラブルが頻発するため、siRNAを用いたノックダウンによりFOXO1タンパクレベルを低下させるべく方針変更した。その確認などに時間を要したため当初予想していたよりも進行が遅れている。PDGF-Bの転写活性機構の解明は現時点で困難であるため、tip細胞でのFOXO1の機能解析と、リンパ管形成過程におけるFOXO1の機能解析に重点を移していく。tip細胞においてのみFOXO
KAKENHI-PROJECT-24590258
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増粘剤を用いた経腸栄養剤の胃内固形化における増粘効果の実験的検討
【研究目的】経管栄養患者管理における下痢、胃・食道逆対策として経腸栄養剤を半固形化させる方法が有用であるが、この半固形化法の中でも増粘剤を先に投与し、後に経腸栄養剤を投与して行う胃内固形化法は、細いチューブでも注入可能であり、ベッドサイドでの調製の手間も省ける。そこで、胃内固形化法で実際に半固形化されるか、実験的検討を行った。また増粘剤の多くは、陽イオンの影響を受けるため、イオンを放出し、なお且つ経管栄養患者が使用する可能性がある薬剤について、増粘効果に与える影響を検討した。【方法】37°C、100rpmの振盪下、増粘剤リフラノン75g中に各種経腸栄養剤200mLを滴下した。また、人工胃液50mL中に液状リフラノン75gを加えた中に、同条件で各種経腸栄養剤200mLを滴下した。粘度測定はB型粘度計を用いた。陽イオンを放出する薬剤として、塩化ナトリウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カリウム、酸化マグネシウムを1g/50mLの濃度で水に溶解し、リフラノンで半固形化した各経腸栄養剤に加えた。【結果】リフラノンを先行投与し、後に各種経腸栄養剤を滴下したところ、いずれの経腸栄養剤においてもその粘度は37°C、100rpmの条件下で、約4050%低下した。また、人工胃液中での粘度はさらに低下した。よって、胃内固形化法を行う場合には、通常の半固形化法よりもリフラノンを増量する必要があることが示唆された。また、経腸栄養剤を滴下する速度は、粘度には大きく影響しなかった。陽イオンを放出する薬剤を各経腸栄養剤に加えて、半固形化を行ったところ、いずれの経腸栄養剤でも塩化ナトリウム、乳酸カルシウム、酸化マグネシウムの添加により粘度は低下した。とくに乳酸カルシウムは著しく粘度を低下させ、経腸栄養剤によっては10%以下まで低下した。一方、グルコン酸カリウムは、いずれの経腸栄養剤においてもわずかに粘度を増大させた。【研究目的】経管栄養患者管理における下痢、胃・食道逆対策として経腸栄養剤を半固形化させる方法が有用であるが、この半固形化法の中でも増粘剤を先に投与し、後に経腸栄養剤を投与して行う胃内固形化法は、細いチューブでも注入可能であり、ベッドサイドでの調製の手間も省ける。そこで、胃内固形化法で実際に半固形化されるか、実験的検討を行った。また増粘剤の多くは、陽イオンの影響を受けるため、イオンを放出し、なお且つ経管栄養患者が使用する可能性がある薬剤について、増粘効果に与える影響を検討した。【方法】37°C、100rpmの振盪下、増粘剤リフラノン75g中に各種経腸栄養剤200mLを滴下した。また、人工胃液50mL中に液状リフラノン75gを加えた中に、同条件で各種経腸栄養剤200mLを滴下した。粘度測定はB型粘度計を用いた。陽イオンを放出する薬剤として、塩化ナトリウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カリウム、酸化マグネシウムを1g/50mLの濃度で水に溶解し、リフラノンで半固形化した各経腸栄養剤に加えた。【結果】リフラノンを先行投与し、後に各種経腸栄養剤を滴下したところ、いずれの経腸栄養剤においてもその粘度は37°C、100rpmの条件下で、約4050%低下した。また、人工胃液中での粘度はさらに低下した。よって、胃内固形化法を行う場合には、通常の半固形化法よりもリフラノンを増量する必要があることが示唆された。また、経腸栄養剤を滴下する速度は、粘度には大きく影響しなかった。陽イオンを放出する薬剤を各経腸栄養剤に加えて、半固形化を行ったところ、いずれの経腸栄養剤でも塩化ナトリウム、乳酸カルシウム、酸化マグネシウムの添加により粘度は低下した。とくに乳酸カルシウムは著しく粘度を低下させ、経腸栄養剤によっては10%以下まで低下した。一方、グルコン酸カリウムは、いずれの経腸栄養剤においてもわずかに粘度を増大させた。
KAKENHI-PROJECT-21929012
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21929012
ホメオボックス蛋白質Sixの核-細胞質移行と、細胞周期制御・ガン化との関係
SIX1は乳がん細胞株において広く発現が見られ、悪性度の強いがん細胞ほどその発現が昂進している。また、X線照射時のG2/Mチェックポイントによる増殖停止が、SIX1の強制発現によって回避されることから、細胞周期の調節および増殖制御に深く関与していることが示唆された。分化の道筋が明確で、種々の分化制御因子によって、分化をコントロールできる血球細胞に注目し、SIX1の細胞周期と細胞増殖における役割と、細胞がん化のコントロール因子としての可能性を明らかにするために、血球細胞分化Lineageに伴うSIX1発現の消長とUT-7細胞の分化に伴う発現変動を検討した。SIX1は未分化血球細胞で発現し、赤芽球、骨髄球、巨核球いずれの分化系列においても、分化刺激後2日でその発現が増加し、刺激後4日でいったん低下した後、分化刺激後6日で、再び発現が顕著に増大した。UT-7細胞株においては、増殖培地でのSIX1の発現は顕著であるが、エリスロポイエチンおよびトロンボプラスチンによる分化刺激後2日でSIXの発現が著しく低下した。これらの結果から、血球細胞分化によって、SIX1が一元的に増加ないし減少するのではなく、分化の道筋によって発現量を調節することで、分化状態での増殖をコントロールしている可能性が示された。そのことを実験的に示すために、HL-60細胞にSIX1を強制発現させたときの分化増殖への影響と、UT-7にアンチセンスSIX1を発現させたときの効果を検証している。SIX1は乳がん細胞株において広く発現が見られ、悪性度の強いがん細胞ほどその発現が昂進している。また、X線照射時のG2/Mチェックポイントによる増殖停止が、SIX1の強制発現によって回避されることから、細胞周期の調節および増殖制御に深く関与していることが示唆された。分化の道筋が明確で、種々の分化制御因子によって、分化をコントロールできる血球細胞に注目し、SIX1の細胞周期と細胞増殖における役割と、細胞がん化のコントロール因子としての可能性を明らかにするために、血球細胞分化Lineageに伴うSIX1発現の消長とUT-7細胞の分化に伴う発現変動を検討した。SIX1は未分化血球細胞で発現し、赤芽球、骨髄球、巨核球いずれの分化系列においても、分化刺激後2日でその発現が増加し、刺激後4日でいったん低下した後、分化刺激後6日で、再び発現が顕著に増大した。UT-7細胞株においては、増殖培地でのSIX1の発現は顕著であるが、エリスロポイエチンおよびトロンボプラスチンによる分化刺激後2日でSIXの発現が著しく低下した。これらの結果から、血球細胞分化によって、SIX1が一元的に増加ないし減少するのではなく、分化の道筋によって発現量を調節することで、分化状態での増殖をコントロールしている可能性が示された。そのことを実験的に示すために、HL-60細胞にSIX1を強制発現させたときの分化増殖への影響と、UT-7にアンチセンスSIX1を発現させたときの効果を検証している。
KAKENHI-PROJECT-12215135
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12215135
アラル海周辺地域における水と住民の健康に関する研究
[目的]アラル海縮小に伴う環境変化が小児の健康に及ぼす影響について1995年以来検討を続けてきた.今回,2004年(夏)と2005年(冬)にカザフスタン共和国において周辺住民の健康状態と飲料水との関連に焦点を当てた疫学調査を実施した。[対象と方法]同国カザリンスク地域において,水道水供給地域(A地域)と井戸水利用地域(B地域)において,児童(9-15歳)を対象とした調査を2004年夏(255名),2005年冬(216名)に行った.対象者より飲料水の提供を受け,現地で水質検査キット(柴田科学社製)を用いて,一般細菌群(一),大腸菌群(大)のコロニー数を計測した.消化器系症状(最近4週間の有無)については,質問紙を用いて聞き取りを行った.[結果と考察]A・B地域共に,(一)および(大)のコロニー数は,冬より夏の方が有意に高かった,しかし,どちらのコロニー数とも,夏・冬共に地域間の差は認められなかった。消化器系症状の有無とコロニー数との関連については,夏は,A地域では腹痛と(大),調査したすべての症状と(一)の間に関連が認められ,B地域ではどの項目も認められなかった.冬は,A地域では,腹痛および嘔吐と(大),嘔吐と(一),B地域については,腹痛および吐き気と(大),吐き気と(一)との間に関連がみられた.カザリンスク地域において,水利用対策の見直しおよび飲料水利用に関する健康教育の必要性が示唆された.本研究では、アラル海周辺地域における水源および飲料水の細菌学的汚染の状況と小児の自覚症状との関連について明らかにすることを目的にした。そこで、アラル海に近い地域内から、井戸を主な飲料水源にしている1村をケース、給水施設から給水車により飲料水を購入できる2村をコントロールとして選んだ。平成16年8月に、それぞれの村の診療所にある住民票からランダムサンプリングによって、ケースおよびコントロールから150人ずつ(9歳から15歳まで)計300人抽出し、指定した調査日に診療所にて、質問紙を用いたインタビューを行った。児童の保護者に対して、調査の概要について説明を行い、インフォームドコンセントをとった。調査は、調査項目の季節変動を考慮し、同一の対象集団に対して、平成17年冬:2月にも同一の調査を行った。8月・300人中255人、2月・255人中218人を分析の対象とした。その結果、ケースおよびコントロール地域ともに、2月よりも8月の方が、一般細菌数および大腸菌群数ともに有意に高い値を示した。ケースおよびコントロールの間に優位な差は見られなかった。下痢や腹痛といった自覚症状についても、ケースとコントロール地域で差はみられなかった。コントロールとして選んだ地域では、飲料水購入は月に一度であり、塩素消毒の効果は期待できないことから、井戸水を利用している地域と細菌学的な汚染状況や自覚症状に差がみられなかったと考えられる。同地域の年間を通じた衛生的な水の供給が急がれるとともに、塩素消毒処理や煮沸後に飲料すると行った教育対策の必要性が示唆された。[目的]アラル海縮小に伴う環境変化が小児の健康に及ぼす影響について1995年以来検討を続けてきた.今回,2004年(夏)と2005年(冬)にカザフスタン共和国において周辺住民の健康状態と飲料水との関連に焦点を当てた疫学調査を実施した。[対象と方法]同国カザリンスク地域において,水道水供給地域(A地域)と井戸水利用地域(B地域)において,児童(9-15歳)を対象とした調査を2004年夏(255名),2005年冬(216名)に行った.対象者より飲料水の提供を受け,現地で水質検査キット(柴田科学社製)を用いて,一般細菌群(一),大腸菌群(大)のコロニー数を計測した.消化器系症状(最近4週間の有無)については,質問紙を用いて聞き取りを行った.[結果と考察]A・B地域共に,(一)および(大)のコロニー数は,冬より夏の方が有意に高かった,しかし,どちらのコロニー数とも,夏・冬共に地域間の差は認められなかった。消化器系症状の有無とコロニー数との関連については,夏は,A地域では腹痛と(大),調査したすべての症状と(一)の間に関連が認められ,B地域ではどの項目も認められなかった.冬は,A地域では,腹痛および嘔吐と(大),嘔吐と(一),B地域については,腹痛および吐き気と(大),吐き気と(一)との間に関連がみられた.カザリンスク地域において,水利用対策の見直しおよび飲料水利用に関する健康教育の必要性が示唆された.
KAKENHI-PROJECT-16790350
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16790350
東日本大震災後の海洋スポーツ・レジャーの状況分析と復興に関する調査研究
本研究は、東日本大震災後の海洋レジャー活動の現状と復興について考察することを目的とした。海水浴客は2011年より2012年は回復傾向であった。サーフィンポイントは地盤沈下、海岸の消滅など地形の変化が認められた。危険な瓦礫の撤去作業が、自治体、地元サーファーや全国のダイバー・サーファーによるボランティアによって行われていた。活動場所の復興には、環境への配慮はもちろんのこと、インフラ整備や景気浮揚策のみの長期的な展望を欠いた短期志向の戦略展開といった一過性ではない視点が重視される。大津波での壊滅的被害は、多くの人々を海から遠ざける結果となったが、海に携わる関係者により着実に復興の道を歩んでいた。本研究は、体育・スポーツ科学をベースとした野外教育、環境倫理、スポーツ経営管理、心理学、社会学の視点から、東日本大震災後に影響を受けた海洋スポーツ・レジャー(海水浴含む)の状況分析と復興に関して調査を実施し考察を行った。その結果、1サーフィン・ダイビングポイント(フィールド)の物理的変化は24年には復興途中であった仙台新港において駐車場が再オープンし利用者の利便性が向上し、震災前の水準に戻っていた。しかし、場所によっては瓦礫の除去が進まず再開していない。ダイビングは地形の変化に伴い潜水が不可能となった場所もあるが、新たなダイビングポイント(竹浦)が創出されていた。2サーフィン・ダイビング活動に関連した地域との関係は、良い方向に進む場合と新たな問題や課題が指摘される場合があった。ダイビングは、漁業者の世代交代も重なり商業ダイビングが開始されボランティアダイビングから商業ダイビングに発展し良好な関係が築かれていた。サーフィンは、震災直後からの地道な活動実績に加え自治会や観光協会・体育協会などの地域組織との信頼関係や、サーフィンを愛する地域住民の人的ネットワークなどが間接的に行政機関との良好な関係構築に寄与していた。しかし、場所によっては震災後に一時離れた愛好者やサーフィン業者がポイントに戻りルールの再調整などの新たな問題も生じている。3復興と環境倫理は「環境の持続可能性の確保」という点に着目し、スポーツ・レジャー活動が復興という観点から地球環境問題に対してどのような社会的貢献を果たすのかを考察した。スポーツ・レジャー活動を通じた「身体的体験」は被災地の地球環境の大切さを知る「感性の教育」と成り得ることが示唆された。4海水浴入込客数は、各都道府県の統計データを集約し経時変化を分析した。天候など要因が多岐に渡り一概に判断できないが多くの地域で震災前の水準に戻っていない。本研究は、東日本大震災後の海洋レジャー活動の現状と復興について考察することを目的とした。海水浴客は2011年より2012年は回復傾向であった。サーフィンポイントは地盤沈下、海岸の消滅など地形の変化が認められた。危険な瓦礫の撤去作業が、自治体、地元サーファーや全国のダイバー・サーファーによるボランティアによって行われていた。活動場所の復興には、環境への配慮はもちろんのこと、インフラ整備や景気浮揚策のみの長期的な展望を欠いた短期志向の戦略展開といった一過性ではない視点が重視される。大津波での壊滅的被害は、多くの人々を海から遠ざける結果となったが、海に携わる関係者により着実に復興の道を歩んでいた。本研究は、体育・スポーツ科学をベースとして、野外教育学、環境学、心理学、社会学の視点を持って、2011年3月に発生した東日本大震災において被害を受けた海洋スポーツ・レジャー(海水浴含む)を対象に、現地フィールド調査(物理的変化)、半構造化面接法による聞き取り調査の手法によって現状分析を行った。その結果、課題とした1サーフィン・ダイビングポイントの物理的な変化(地盤、構造物、海流等)は、宮城県の仙台新港、菖蒲田海岸、小泉海岸において、経年的な変化の状況を把握することができた。現在も変化が続いていることが確認され継続的な情報収集を続けることが重要である2サーフィン・ダイビングに関する聞き取り調査から、サーファーのボランティア活動の状況や、復興支援などの具体的内容を把握することができた。また、サーフポイントの再開に関しては、地元のサーフショップユニオンなどが、自治体との地道な努力により再開にこぎつけている現状を確認できた。その結果から、自治体との関連についての調査の必要性を認識し、25年に研究分担者を追加して詳細な調査を実施することとした。ボランティアダイバーの状況についても、岩手県南三陸町の現地調査から現地の実態を把握することができた。ダイビングによる復興と新たなレジャー産業の算出という側面からの考察が重要である3海水浴に関する調査については、入込客の統計データによる入込客の推移と、現地調査から、震災直後の諸条件により、日本海側の一部で一時的な入込客増などが発生していたことなどについての現状把握と考察が重要である4復興に向けた環境倫理・環境啓発に関する考察については、各地で行われている復興に関して、海洋スポーツの視点からみて、単なる観光の為の復興や、場当たり的なものではない、人と観光産業が自然環境との共存という意味合いについて考えることが重要であり、検討を継続している。本研究は、東日本大震災後に影響を受けた海洋スポーツ・レジャー(海水浴を含む)の状況分析と復興に関して、体育・スポーツ科学をベースとした野外教育、環境倫理、心理学、社会学などの視点から質的・量的調査を実施し考察を行った。平成26年度は、震災前後の海水浴に関する調査を実施し、震災前後での海水浴経験について明らかにすることができた。
KAKENHI-PROJECT-24500710
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24500710
東日本大震災後の海洋スポーツ・レジャーの状況分析と復興に関する調査研究
研究期間全体を通しての成果は1サーフィン・ダイビングのポイントの物理的変化については、サーフィンポイントにおいては、多くの場所で再開がなされ駐車場やトイレ等の施設が整備され利便性が向上していた。しかし、自治体によっての対応の違いが見られた。2サーフィン・ダイビング活動に関した地域との関係については、ダイビングにおいて、新たなダイビング事業の開始など漁業者との良好な関係が見られ震災をきっかけに東北の海でのダイビングが推進したと考えられる。サーフィンにおいて、復興当初は、自治体との協力による早期再開や施設の整備など順調に進んでいたが施設の整備などが進むにしたがって、一時休止していた人や新規参入業者などを含めて、新たな課題が生まれている。3復興と環境倫理は、「環境の持続可能性の確保」という点に着目し、スポーツ・レジャー活動が復興という観点から地球環境問題に対してどのような社会的貢献を果たすのかを考察した。スポーツレジャー活動を通じた「身体的体験」は、被災地の地球環境の大切さを知る「感性の教育」となり得ることが示唆された。4海水浴の入込客数に関しては、全国の統計データを集約し時系列変化を分析した。天候要因等の影響を受けるために一概に判断できないが、多くの地域で震災前の水準には戻っていない。また、宮城、岩手、福島の海水浴場の再開は、まだ、十分に行われていない。今後の課題としては、復興に関する地元住民の意識の違いをどう調整していくかということになるであろう。野外教育スポーツ心理学研究計画の目的達成度は、1サーフィン・ダイビンポイントの物理的な状況については、25年度の現地調査にても状況が把握され、計画以上に達成されている。ダイビングでは、気仙沼市の竹浦ポイントの解放が行われ、現地潜水調査を実施した。また、潜水ボランティアの継続状況も把握することができた。26年度も現地との良好な関係があり継続的活動情報を入手でき計画以上に進展している。2行政との関係は、現地調査結果による状況の把握と問題点の整理が進んでいる。しかし、サーフィンは新たな課題も発生していることから継続調査が必要である。ダイビングは漁業者との関係について考察し達成度は高い。3海水浴調査は全国自治体が公表している入込客データの集約は概ね終了し分析を行っている。しかし、質問紙調査は、福島原発問題が関連していることから、海水浴場の入込客と再開に関する問題の所在が、原子力発電にフォーカスされ原発の賛否として捉えられてしまうことが懸念された。また、海水浴場の入込客低下の為営業を取りやめた宿泊施設も多数あり、サンプリング問題も含め25年度の調査実施を見送った。この点において遅れている。4サーフィン・ダイビングショップの経営状態調査に関して、サーフィン調査は研究分担者が9月に退職したことと、商業ベースの再開が遅れていることから26年度での調査に変更を行った。現地調査による研究成果及び復興と環境倫理との考察は計画以上に進展している。しかし、質問紙調査計画のみが遅れているが、原発問題の影響があり慎重な対応することは重要であるとの判断は正しいと感じている。
KAKENHI-PROJECT-24500710
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24500710
動脈硬化治療の新しい標的:マクロファージ転写因子MafB
動脈硬化巣では、マクロファージの集積が認められ、動脈硬化の進展に関与している。マクロファージ活性化のメカニズム解明は、動脈硬化の抑制に重要であると考えられる。そこで我々は、近年マクロファージの分化および活性化に重要な役割を果たす転写因子MafBに注目し(EMBO J2000;19:1987-1997)、動脈硬化進展との関係を検討した。マウス腹膜マクロファージRAW264.7細胞を用いて、MafBの働きを解析したところ、MafBはマクロファージのアポトーシスに関与していた。またMafBを過剰発現させるとLOX1(oxidized LDL receptor1)およびスカベンジャー受容体CD36のメッセンジャーRNAの増加が見られた。逆にshRNAを用いてMafBをノックダウンするとこれらの発現を抑制した。またヒト冠動脈粥腫切除標本では、粥腫プラーク周辺にMafBを強発現したマクロファージおよび泡沫細胞を認めた。さらに急性冠症候群患者に血栓吸引療法を行い、得られた標本を解析すると、やはりMafB陽性マクロファージを認めた。これより冠動脈動脈硬化およびプラーク破綻にMafBが関与していることが示唆された。MafBの働きをさらに解析するために、MafBドミナントネガティブマウスを作成中した。MafB欠損マウスは後脳の発達障害により、生まれて直ぐに無呼吸で死亡するため(Nat Neurosci 2003;6:1091-1100)、解析には用いることはできない。現在、MafBドミナントネガティブマウスの表現形を解析しており、アポE欠損マウスとの交配により、動脈硬化進展におけるMafBの役割を明らかにする。動脈硬化巣では、マクロファージの集積が認められ、動脈硬化の進展に関与している。マクロファージ活性化のメカニズム解明は、動脈硬化の抑制に重要であると考えられる。そこで我々は、近年マクロファージの分化および活性化に重要な役割を果たす転写因子MafBに注目し(EMBO J 2000;19:1987-1997)、動脈硬化進展との関係を検討した。マウス腹膜マクロファージRAW264.7細胞を用いて、MafBの働きを解析したところ、MafBはマクロファージのアポトーシスに関与していた。またMafBを過剰発現させるとLOX1(oxidized LDL receptor 1)およびスカベンジャー受容体CD36のメッセンジャーRNAの増加が見られた。逆にshRNAを用いてMafBをノックダウンするとこれらの発現を抑制した。またヒト冠動脈粥腫切除標本では、粥腫内にMafBを強発現したマクロファージおよび泡沫細胞を認めた。さらに急性冠症候群患者に血栓吸引療法を行い、得られた標本を解析すると、やはりMafB陽性マクロファージを認めた。これより冠動脈動脈硬化およびプラーク破綻にMafBが関与していることが示唆された。MafBの働きをさらに解析するために、現在MafB dominant negativeマウスを作成中である。MafB欠損マウスは後脳の発達障害により、生まれて直ぐに無呼吸で死亡するため(Nat Neurosci 2003;6:1091-1100)、解析には用いることはできない。動脈硬化巣では、マクロファージの集積が認められ、動脈硬化の進展に関与している。マクロファージ活性化のメカニズム解明は、動脈硬化の抑制に重要であると考えられる。そこで我々は、近年マクロファージの分化および活性化に重要な役割を果たす転写因子MafBに注目し(EMBO J2000;19:1987-1997)、動脈硬化進展との関係を検討した。マウス腹膜マクロファージRAW264.7細胞を用いて、MafBの働きを解析したところ、MafBはマクロファージのアポトーシスに関与していた。またMafBを過剰発現させるとLOX1(oxidized LDL receptor1)およびスカベンジャー受容体CD36のメッセンジャーRNAの増加が見られた。逆にshRNAを用いてMafBをノックダウンするとこれらの発現を抑制した。またヒト冠動脈粥腫切除標本では、粥腫プラーク周辺にMafBを強発現したマクロファージおよび泡沫細胞を認めた。さらに急性冠症候群患者に血栓吸引療法を行い、得られた標本を解析すると、やはりMafB陽性マクロファージを認めた。これより冠動脈動脈硬化およびプラーク破綻にMafBが関与していることが示唆された。MafBの働きをさらに解析するために、MafBドミナントネガティブマウスを作成中した。MafB欠損マウスは後脳の発達障害により、生まれて直ぐに無呼吸で死亡するため(Nat Neurosci 2003;6:1091-1100)、解析には用いることはできない。現在、MafBドミナントネガティブマウスの表現形を解析しており、アポE欠損マウスとの交配により、動脈硬化進展におけるMafBの役割を明らかにする。
KAKENHI-PROJECT-18790488
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18790488
脳内酸化ストレスに対する麻酔薬の抗酸化機序の解明
68週齢の雄Slc : ddYクリーンマウスに中枢神経興奮薬であるペンチレンテトラーゾール60mg/kgbody weightを腹腔内投与すると痙攣が出現し,1時間後の大脳中央部において酸化傷害の指標であるMDA産生量が増加し、3時間後の海馬において酸化ストレスの指標であるHO-1遺伝子発現が増加した。次にペンチレンテトラゾール投与15分前に麻酔薬であるミダゾラム70mg/kgbody weightおよびフェノバルビタール25mg/kgbody weightを投与すると、痙攣、MDAおよびHO-1の増加がすべて抑制された。さらに致死量のペンチレンテトラゾール100mg/kgbody weightを使用した場合では、フェノバルビタールでは痙攣は抑制できなかったにも関わらず、HO-1の発現およびMDA産生は抑制された。中枢神経興奮薬をマウスに投与したところ,脳に酸化反応が認められた。酸化反応の指標としては,HO-1遺伝子発現が鋭敏であり,麻酔薬の影響を調べるのに有用な脳酸化モデルであることが示された。さらに,この方法を用いて静脈麻酔薬であるミダゾラムとフェノバルビタールの脳酸化反応への影響を調べた結果,ミダゾラムとフェノバルビタールは脳において,抗酸化用を有していることが示唆された。また、麻酔薬の抗酸化作用は痙攣の抑制に関与しない可能性が示唆された。68週齢の雄Slc : ddYクリーンマウスに中枢神経興奮薬であるペンチレンテトラーゾール60mg/kgbody weightを腹腔内投与すると痙攣が出現し,1時間後の大脳中央部において酸化傷害の指標であるMDA産生量が増加し、3時間後の海馬において酸化ストレスの指標であるHO-1遺伝子発現が増加した。次にペンチレンテトラゾール投与15分前に麻酔薬であるミダゾラム70mg/kgbody weightおよびフェノバルビタール25mg/kgbody weightを投与すると、痙攣、MDAおよびHO-1の増加がすべて抑制された。さらに致死量のペンチレンテトラゾール100mg/kgbody weightを使用した場合では、フェノバルビタールでは痙攣は抑制できなかったにも関わらず、HO-1の発現およびMDA産生は抑制された。中枢神経興奮薬をマウスに投与したところ,脳に酸化反応が認められた。酸化反応の指標としては,HO-1遺伝子発現が鋭敏であり,麻酔薬の影響を調べるのに有用な脳酸化モデルであることが示された。さらに,この方法を用いて静脈麻酔薬であるミダゾラムとフェノバルビタールの脳酸化反応への影響を調べた結果,ミダゾラムとフェノバルビタールは脳において,抗酸化用を有していることが示唆された。また、麻酔薬の抗酸化作用は痙攣の抑制に関与しない可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-23592989
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23592989
樹体内木部圧ポテンシャル測定によるさし木発根率の推定
約60種の針葉樹及び広葉樹のXPP(本部圧ポテンシャル)を測定し,さし木発根との関係を追求した.XPPは圧室法によって1年目にはさし木親木を正午頃, 2年目には同じさし木からの採穂によって,日の出前に,いずれも年57回測定した.さし木はミストかん水装置のある野外のさし木床に春と初夏にさしつけ,秋に掘り取り, XPPとさし木発根率の関係を調べ次の結果を得た.1.さし木親木のXPPと発根率の関係. 1年のうちでは8月のXPPが最も低い. XPPと発根の関係は68月で相関が高い.発根率を良し,普通,不良に分け,春ざし,夏ざしを針葉樹,広葉樹及び常緑樹,落葉樹別に分け,さしつけ時の3月, 6月, 8月, 11月及び年平均ポテンシャルとの関係をみるといずれも発根のよい樹種はポテンシャルが高く,発根不良樹種でポテンシャルが低いことがわかった.常緑樹は落葉樹に比べXPPの年変化が少なく,着葉の有無がXPPに強く影響している.同じ科内樹種のXPPの月別変化は着葉形態が同じ場合にはかなり類似した.2.さし木のXPPと発根率の関係.さし木のXPPはさしつけ後徐々に, 1カ月あたりから回復した型と回復せずそのまま低下した型がみられた.前者は発根率がみられ,後者はほとんど枯死した. XPPと発根率の相関はさしつけ後1カ月以降徐々に高くなった.常緑針葉樹ではさしつけ時から高い相関がみられた.枝葉の含水率とXPPの関係は多くの樹種で平行関係がみられた.土壌の乾燥につれてXPPは低下した.上述の結果は約60種に及ぶ多数の材料を用いたものであるが, XPPは測定時期によっても,また, 1日のうちの時間によって変るので今後は同種についてより多くの材料を用いての実験が望まれる.また,同一さし木から57回も小枝や葉の採取は光合成器官を減少させ,発根に少なからず影響を及ぼすことが考えられるので, XPPの測定方法の改良,開発が今後の課題であろう.約60種の針葉樹及び広葉樹のXPP(本部圧ポテンシャル)を測定し,さし木発根との関係を追求した.XPPは圧室法によって1年目にはさし木親木を正午頃, 2年目には同じさし木からの採穂によって,日の出前に,いずれも年57回測定した.さし木はミストかん水装置のある野外のさし木床に春と初夏にさしつけ,秋に掘り取り, XPPとさし木発根率の関係を調べ次の結果を得た.1.さし木親木のXPPと発根率の関係. 1年のうちでは8月のXPPが最も低い. XPPと発根の関係は68月で相関が高い.発根率を良し,普通,不良に分け,春ざし,夏ざしを針葉樹,広葉樹及び常緑樹,落葉樹別に分け,さしつけ時の3月, 6月, 8月, 11月及び年平均ポテンシャルとの関係をみるといずれも発根のよい樹種はポテンシャルが高く,発根不良樹種でポテンシャルが低いことがわかった.常緑樹は落葉樹に比べXPPの年変化が少なく,着葉の有無がXPPに強く影響している.同じ科内樹種のXPPの月別変化は着葉形態が同じ場合にはかなり類似した.2.さし木のXPPと発根率の関係.さし木のXPPはさしつけ後徐々に, 1カ月あたりから回復した型と回復せずそのまま低下した型がみられた.前者は発根率がみられ,後者はほとんど枯死した. XPPと発根率の相関はさしつけ後1カ月以降徐々に高くなった.常緑針葉樹ではさしつけ時から高い相関がみられた.枝葉の含水率とXPPの関係は多くの樹種で平行関係がみられた.土壌の乾燥につれてXPPは低下した.上述の結果は約60種に及ぶ多数の材料を用いたものであるが, XPPは測定時期によっても,また, 1日のうちの時間によって変るので今後は同種についてより多くの材料を用いての実験が望まれる.また,同一さし木から57回も小枝や葉の採取は光合成器官を減少させ,発根に少なからず影響を及ぼすことが考えられるので, XPPの測定方法の改良,開発が今後の課題であろう.1.さし木発根率とその親木の水分状態をみるため、圧室法によって約60種の木部圧ポテンシャルを1年間にわたって測定し次の結果を得た。(1)春ざし、夏ざしともその親木のポテンシャルは8月に最低値を示す樹種が多く、発根率と月別ポテンシャルの関係では6、8月は他の月に比べやや高い傾向を示した。(2)発根率を良、普通、不良に分け、春ざし、夏ざしを針葉樹、広葉樹及び常緑樹、落葉樹別に分け、さしつけ時の3月,6月,8月,11月及び年平均ポテンシャルとの関係をみるといずれも発根のよい樹種はポテンシャルが高く、発根不良樹種ではポテンシャルが低いことがわかった。また、常緑と落葉樹のポテンシャルの月別変化をみると、常緑樹は落葉樹に比べポテンシャルの変化が少なく着葉の有無がポテンシャルに強く影響していると考えられた。しかし、対応した各グループ内の樹種数が一定でなく精確な検討はできなかった。
KAKENHI-PROJECT-61560171
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61560171
樹体内木部圧ポテンシャル測定によるさし木発根率の推定
(3)同一科内に属する樹種のポテンシャルの月別変化をみると着葉形態(常緑、落葉)が同じ場合にはかなり類似することがわかった。(4)各樹種より採穂した5本の試料は採穂後ほぼ3分以内にポテンシャルの測定を終えたが、この時間内でも時間経過とともにポテンシャルが低下するもの、あまり変動しないもの、また同じ樹種でも低下、変動の仕方が月により異なり一定の傾向はみられなかった。2.鉢植えしたスギクローンをガラス室内に入れ、かん水した鉢とかん水しない鉢を設けポテンシャルの変動を調べた実験ではかん水スギのポテンシャルは徐々に増加した後ほぼ一定値に達したが、無かん水区では徐々に減少した。これはポテンシャルが土壌水分に影響され、水分が不足すると樹体内で水欠差を生じポテンシャルが減少すると考えられた。3.62年度はさし木発根率とその親木の採穂後の時間経過に伴うポテンシャルの変化の仕方について調査し、発根とポテンシャルの樹種特性を明らかにしたい。
KAKENHI-PROJECT-61560171
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61560171
低周波放電のプロセスプラズマとしての適用とその制御法の開発
集積回路などにおけるプラズマを利用したドライプロセス技術は、ほとんどRFなど高周波電界を使って行なわれる。しかし、高周波では行なうことができない、低周波放電プラズマの特徴を生かした独自のプロセスと、それの制御法の開発がほとんど行なわれておらず、本研究の目的はこの点に付いて実験的に研究を行なうことにある。現在までに、窒化シリコン薄膜を50Hz低周波プラズマCVDで基板非加熱で良質な膜が大面積に均一に堆積できることを見出してきた。このメカニズムの究明を行なうことで低周波プラズマのプロセスへの応用が可能となる。この点に関して63年度の研究成果から、低周波プラズマの特徴であるイオンの可動性とプラズマの断続性が重要な役割をしていることが明らかになってきた。結果の要約として、1)プラズマ中の原子・分子イオンの堆積膜への射突による埋め込みで高密度薄膜形成がなされ、更にイオンの持つ運動エネルギーの射突後の原子再配列エネルギーへの変換による化学量論的な組成への薄膜生成、2)またプラズマ中の生成物(イオン、励起・解離・ラジカル種)の低周波プラズマの断続による発生消滅の結果として、プラズマ発生電圧とプラズマ維持電圧の上昇に伴うプラズマ内の電子エネルギー上昇によるガス分子の効率的な解離が、生成薄膜の物性的評価とプラズマ内電子エネルギー測定などから得られた。これらの事実から低周波プラズマCVDによる基板非加熱条件による良質薄膜堆積が可能ではないかと考えられる。これらをふまえ、高温での堆積が条件と考えられているダイヤモンドライクカーボン薄膜の堆積を低周波非加熱プラズマCVDでH_2+CH_4混合ガスを材料として薄膜堆積した結果、この薄膜が天然ダイヤの物性(電気的・工学的・物理的)に近い物であり、上記の考えが間違いではないことが認められた。今後の研究課題として、このプラズマの制御法について研究を進める予定である。集積回路などにおけるプラズマを利用したドライプロセス技術は、ほとんどRFなど高周波電界を使って行なわれる。しかし、高周波では行なうことができない、低周波放電プラズマの特徴を生かした独自のプロセスと、それの制御法の開発がほとんど行なわれておらず、本研究の目的はこの点に付いて実験的に研究を行なうことにある。現在までに、窒化シリコン薄膜を50Hz低周波プラズマCVDで基板非加熱で良質な膜が大面積に均一に堆積できることを見出してきた。このメカニズムの究明を行なうことで低周波プラズマのプロセスへの応用が可能となる。この点に関して63年度の研究成果から、低周波プラズマの特徴であるイオンの可動性とプラズマの断続性が重要な役割をしていることが明らかになってきた。結果の要約として、1)プラズマ中の原子・分子イオンの堆積膜への射突による埋め込みで高密度薄膜形成がなされ、更にイオンの持つ運動エネルギーの射突後の原子再配列エネルギーへの変換による化学量論的な組成への薄膜生成、2)またプラズマ中の生成物(イオン、励起・解離・ラジカル種)の低周波プラズマの断続による発生消滅の結果として、プラズマ発生電圧とプラズマ維持電圧の上昇に伴うプラズマ内の電子エネルギー上昇によるガス分子の効率的な解離が、生成薄膜の物性的評価とプラズマ内電子エネルギー測定などから得られた。これらの事実から低周波プラズマCVDによる基板非加熱条件による良質薄膜堆積が可能ではないかと考えられる。これらをふまえ、高温での堆積が条件と考えられているダイヤモンドライクカーボン薄膜の堆積を低周波非加熱プラズマCVDでH_2+CH_4混合ガスを材料として薄膜堆積した結果、この薄膜が天然ダイヤの物性(電気的・工学的・物理的)に近い物であり、上記の考えが間違いではないことが認められた。今後の研究課題として、このプラズマの制御法について研究を進める予定である。
KAKENHI-PROJECT-63632501
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63632501
〈日系人〉カテゴリーの生成と動態―現代世界の人類学的研究
交付申請書に明記した「研究の目的」について、下記のとおり予定になかった新たな知見を得たこともあり、既存の人類学的議論における本研究の位置づけの明確化については充分に達成できなかったものの、「日系人」という集団名をめぐる広範な事例をもとに、集団カテゴリーと移民共同体の構築・変遷のプロセスの関係を人種や民族の論理に関する議論と照らし合わせつつ歴史に即して考察するという目的はおおむね計画通りに進展した。「研究実施計画」に関しては、交付申請書記載のとおり1.議論枠組みの精緻化、2.史資料調査、3.現地調査それぞれについて下記のとおり研究を実施した。1.議論枠組みの精緻化2.史資料調査計画通り、戦後政治史、外交史関連の文献や外交史資料の検討を通じて、占領期から1960年ごろまでの日本政府にとっての「移民」の位置づけを考察し、論文として発表した。「海外日系人大会」などのイベントや国際協力機構(旧国際協力事業団)の事業のような公的な動きだけでなく、表立って語られていないなかで日本政府が「日系人」をどのような存在とみなし関わってきたのかを明らかにすることで、「日系人」カテゴリーの歴史のなかで見過ごされてきた一面を埋めるものと言える。3.現地調査アルゼンチン・ブエノスアイレスでの調査、メキシコでの調査ともに、文字史料の収集、インタビュー(人数、時間)を行ない、計画以上の成果を得た。とくに今回集中的に行なったインタビューを通じて、他の方法では得ることのできない貴重な知見・情報を多数得ることができた。これらの成果は次年度に論文として発表する。また今回の調査によって現地の研究者との交流も深まり、今後の相互協力、共同研究の道も大きく開かれた。「日系人」という名の使用の歴史が「日系人」という集団をめぐる現実をその集団の名前の使用を通して生みだされ、左右される様相を「日系人」に即して明らかにするという目的に即して、交付申請書に記述した5つの課題は以下のとおり進行された。(1)未収集の資料も残されているが、日本で収集可能な政府機関及びその外郭団体の資料の多くを収集し、それを基に「日系人」の使用状況を年表にまとめる作業に着手している。(2)「海外日系人大会」開催経緯における「日系人」カテゴリーの成立について考察し、研究ノートとして『移民研究年報』に発表した。掲載後、移民学会の複数の会員から同稿を積極的に評価するコメントを得ている。(3)調査予定地に変更はあったものの、サンパウロおよびブエノスアイレスにおける日系社会の現状に関する調査を行ない、とくにブエノスアイレスにおいては世代ごとの呼称と認識の差異、とくに第二世代による"Nisei"(スペイン語)の名の下新たな運動、組織化の動きという重要な論点を取りだした。その一部は『生存学』2号に発表した論文にも言及した。この論点の発展は2010年度以降の課題のひとつとなる。(4)第15回パンアメリカン大会(於:モンテビデオ)に参加した結果、(3)と同じく「日系」という語に対する現在の日系人内での認識の差異、とくに青年層にみられる変化とその背景という論点が抽出された。この点は、大会日程中、南米の各日系社会の現在の中心人物、および青年層のリーダー数人に対して行なった聞き取りから得られた。これらは今後展開すべき議論において重要となる。また2011年に行なわれる第16回にも参加する予定である。(5)以上の成果は「日系人カテゴリーの動態」年表に追加しており、随時更新中である。平成22年度は、(1)民族的カテゴリーをめぐる人類学的議論、(2)「日系人カテゴリー」の同一性の論理、(3)南米とくにアルゼンチン日系人の歴史、という3つのレベルで研究を進めた。このうち(1)は交付申請書に記載した研究実施計画の(1)議論枠組みの精緻化に、(3)は(2)現地調査及び資料分析に対応し、(2)は両方の作業にかかわる論点となる。それぞれについて以下の成果を得た。(1)論文や口頭の形で発表するにはいたらなかったものの、「系譜」や「出自」というタームを中心的な概念として議論を発展させた親族(関係)論の研究動向のサーベイを行い、親族研究が明らかにしてきた集団的現実と「日系人」のそれとの比較の可能性を模索した。これにより、新生殖技術や国際養子縁組などに焦点をあてた近年の親族論を通して、人種・民族論と親族論が同じ俎上で論じるべき問題を孕んでいるという着想を得た。(2)については、アルゼンチン・ブエノスアイレス州の日系人コミュニティでの約2ヶ月間の調査を通じて、前年度の調査では把握できなかった世代、居住地、職業による「日系人」「日系社会」の捉え方、関わり方の違いが明らかになった。また、先行研究が報告しているブラジルの二世の活動・主張と、アルゼンチンの二世の活動・主張の同時性、共通性と差異も確認された。以上は一世から二世へと日系社会の中心が移り変わる時期に顕在化した日系社会の混乱、改革を訴える言説に注目したもので、これにより、「日系人」を事例とし、広く移民研究において世代間での集団的同一性の継承に関する議論を展開する基礎を固めた。交付申請書に明記した「研究の目的」について、下記のとおり予定になかった新たな知見を得たこともあり、既存の人類学的議論における本研究の位置づけの明確化については充分に達成できなかったものの、「日系人」という集団名をめぐる広範な事例をもとに、集団カテゴリーと移民共同体の構築・変遷のプロセスの関係を人種や民族の論理に関する議論と照らし合わせつつ歴史に即して考察するという目的はおおむね計画通りに進展した。
KAKENHI-PROJECT-09J08689
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J08689
〈日系人〉カテゴリーの生成と動態―現代世界の人類学的研究
「研究実施計画」に関しては、交付申請書記載のとおり1.議論枠組みの精緻化、2.史資料調査、3.現地調査それぞれについて下記のとおり研究を実施した。1.議論枠組みの精緻化2.史資料調査計画通り、戦後政治史、外交史関連の文献や外交史資料の検討を通じて、占領期から1960年ごろまでの日本政府にとっての「移民」の位置づけを考察し、論文として発表した。「海外日系人大会」などのイベントや国際協力機構(旧国際協力事業団)の事業のような公的な動きだけでなく、表立って語られていないなかで日本政府が「日系人」をどのような存在とみなし関わってきたのかを明らかにすることで、「日系人」カテゴリーの歴史のなかで見過ごされてきた一面を埋めるものと言える。3.現地調査アルゼンチン・ブエノスアイレスでの調査、メキシコでの調査ともに、文字史料の収集、インタビュー(人数、時間)を行ない、計画以上の成果を得た。とくに今回集中的に行なったインタビューを通じて、他の方法では得ることのできない貴重な知見・情報を多数得ることができた。これらの成果は次年度に論文として発表する。また今回の調査によって現地の研究者との交流も深まり、今後の相互協力、共同研究の道も大きく開かれた。
KAKENHI-PROJECT-09J08689
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波動方程式に関連する偏微分方程式の解の波面集合の伝播に関する研究
偏微分方程式の初期値問題を考察する場合,その解の特異性を決定することは重要な問題の一つである.特に,波動方程式に代表される双曲型偏微分方程式においては特異性の伝播に関する問題が有名である.これは,双曲型偏微分方程式の特徴の一つで,解の初期値に与えられた特異性が時間の経過とともに方程式固有の法則で伝わっていく現象のことである.特異性をもつ位置とその原因となる方向をペアにした波面集合に焦点をあて,非線形波動方程式の解の初期値に波面集合の意味での特異性を仮定したとき,時間が経つにつれて,どの位置に,どの程度の強さの特異性が現れるかを調べる研究を行う.偏微分方程式の初期値問題を考察する場合,その解の特異性を決定することは重要な問題の一つである.特に,波動方程式に代表される双曲型偏微分方程式においては特異性の伝播に関する問題が有名である.これは,双曲型偏微分方程式の特徴の一つで,解の初期値に与えられた特異性が時間の経過とともに方程式固有の法則で伝わっていく現象のことである.特異性をもつ位置とその原因となる方向をペアにした波面集合に焦点をあて,非線形波動方程式の解の初期値に波面集合の意味での特異性を仮定したとき,時間が経つにつれて,どの位置に,どの程度の強さの特異性が現れるかを調べる研究を行う.
KAKENHI-PROJECT-19K03570
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K03570
本研究の主要な目的は,日本の健康政策研究を,大規模な医療・介護情報の整備という第1段階から,「文理融合」による「因果推論に裏付けられた科学的根拠」の創出と実装という第2段階へと推し進めることにある.第1に,大規模な行政管理データに自然実験を応用する定量分析と,AIや機械学習によるテキストマイニング等の定性分析とを組み合わせ,新たな健康政策の評価方法を開拓する.第2に,学際的な研究チームの編成・協働のあり方についてのベンチマークを形成する.第3に,団塊世代が全員後期高齢者になる2025年問題,団塊ジュニアが高齢化する2040年問題に対処するため,研究成果の実装についてのテンプレートを示す.本研究の主要な目的は,日本の健康政策研究を,大規模な医療・介護情報の整備という第1段階から,「文理融合」による「因果推論に裏付けられた科学的根拠」の創出と実装という第2段階へと推し進めることにある.第1に,大規模な行政管理データに自然実験を応用する定量分析と,AIや機械学習によるテキストマイニング等の定性分析とを組み合わせ,新たな健康政策の評価方法を開拓する.第2に,学際的な研究チームの編成・協働のあり方についてのベンチマークを形成する.第3に,団塊世代が全員後期高齢者になる2025年問題,団塊ジュニアが高齢化する2040年問題に対処するため,研究成果の実装についてのテンプレートを示す.
KAKENHI-PROJECT-19H05487
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H05487
心筋細胞の増殖分化におけるSUMO化依存的なクロマチン構造変換機構の解析
外的シグナルに応答し細胞の増殖や分化を統合する制御機構の理解は重要であるが不明な点が多い。この制御機構に必須な因子として我々はARIP4を発見し、新たにプロモーター上で細胞周期制御因子E2F6と相互作用することを見出した。ARIP4の複合体を精製したところ,選択的オートファジーのレセプターp62と複合体を形成していること,細胞外環境に応答してp62依存的にARIP4がオートファジーで分解されることを発見した。本研究は外的環境に応答するクロマチン構造変換を明らかにする上で極めて重要で有り,細胞増殖分化とクロマチン構造変換を統合して理解する上で極めて重要な知見だと考えられる。組織の形成や未分化細胞の維持、癌化といった現象の解明には細胞の分化と増殖を統合する制御機構の理解が重要である。細胞の分化、増殖は厳密に調節された転写機構によって制御されているが、これら両者の統合的な制御機構については不明な点が多い。この制御機構に必須な転写制御領域のクロマチン構造変換機構の解析は、分化と増殖のエピジェネティック制御を理解する上でも重要な課題の一つとなっている。我々はSUMO化依存的にクロマチン構造変換するARIP4を発見し、新たにプロモーター上で細胞周期制御複合体E2F6複合体と相互作用することを見出した。本研究では細胞周期制御複合体と結合するARIP4の細胞分化過程における分子機構を明らかにすると共にその生理的意義を明らかにすることを目的とした。本年度は特に、ゲノムワイドなE2F6とARIP4の複合体の挙動を明らかにするために、培養細胞を用いてゲノムワイドに結合を調べる手法であるChIP-seqを行うと共に、クロマチンの構造変換をゲノムワイドに調べることができるFAIRE-seqを行った。その結果、ARIP4は全ゲノムに対して約5000箇所の結合が見られ、それらの80%以上がプロモーター領域に結合した。さらにARIP4を欠損させた場合、ARIP4の結合領域の約70%でクロマチンがDNA切断酵素感受性、すなわちクロマチンが開いていることが判明した。この結果は、ARIP4が遺伝子発現制御に関わると共にクロマチンを閉じる過程に関わっていることを強く示唆する。またE2F6の標的遺伝子に対して調べたところ幾つかの遺伝子においてARIP4が特異的に結合していることが判明した。このことからE2F6とARIP4は細胞内で確かに複合体を形成しクロマチン制御を行っていると考えられる。組織の発生分化や細胞の恒常性維持、その破綻によっておきる癌化といった現象の解明には細胞の分化と増殖を制御する機構の理解が重要である。細胞の分化と増殖は転写制御を介した遺伝子発現の調節によってそれぞれ制御されているが、これら両者を総合的に制御する機構については未だ不明である。この制御機構に必須な転写制御領域のクロマチン構造変換機構の解析は、分化と増殖のエピジェネティック制御を理解する上でも重要な課題の一つとなっている。これまでに我々はSUMO化依存的クロマチン構造変換因子ARIP4を精製および同定し、プロモーター上で細胞周期制御複合体E2F6複合体と相互作用することを見出した。本研究ではE2F6-ARIP4複合体形成の細胞分化過程での役割を明らかにし、生理的意義を解明することを目的とした。本年度は特にE2F6-ARIP4複合体の調節機構を明らかにする上で、(1)細胞外環境に応答してARIP4が選択的オートファジーを介した分解されること、(2)その分解機構がARIP4複合体に含まれるp62/SQSTM1依存的であること、さらに(3) p62のUBA domainとARIP4の内部に含まれる90アミノ酸の領域が特異的に強く結合することを明らかにした。これらの結果は、心筋組織ではストレス環境下においてこの複合体がARIP4の分解によって解離するため、標的遺伝子のプロモーター構造が開き遺伝子発現が起きやすい状況が作り出されることを示唆している。これらを踏まえ、次年度ではこの複合体制御の生理的な意義と心臓組織での具体的な標的の探索、さらにES細胞の心筋分化系を応用してARIP4複合体の細胞内局在とその制御機構について明らかにする。昨年度にゲノムワイドの解析を行い、ARIP4の核内での主要な機能を明らかにすることができた。それらの情報を踏まえ、本年度は生化学的にARIP4複合体の解析を本年度行った。その結果、構成因子の同定およびその機能解析のうち主要構成因子であるp62の役割を明らかにすることができ、それらを論文として報告した。この解析から、ARIP4は細胞外の環境ストレスを認識し速やかに分解を受けることが明らかとなって。つまりその分解によって細胞は環境へ適応するための遺伝子発現を可能にするクロマチン構造変換を生じることが示唆された。心筋細胞の初代培養および心筋組織での生化学的な解析は十分なサンプル量を確保するのが困難であったため、今回はES細胞分関係および培養細胞での解析を行ったことから、完全に申請計画通りには遂行はできていないが、実験的な困難を回避し、他の方法に迅速に切り替えることにより効率よく重要な知見を得ることができたと考えている。そのため概ね順調に計画を遂行できていると判断した。細胞の分化と増殖を制御する機構の理解は,これまで明らかになっていない組織の発生分化や細胞の恒常性維持の本質的な制御、例えば個々の細胞分化にともなって組織がどのように形作られていくのか,またその破綻によっておきる癌のような疾患の解明につながる。
KAKENHI-PROJECT-26440015
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26440015
心筋細胞の増殖分化におけるSUMO化依存的なクロマチン構造変換機構の解析
細胞の分化と増殖は遺伝子発現によって厳密に調節されているが、両者が相互作用を伴いながら総合的に制御しているのか,独立の調節機構なのかは未だ不明である。この細胞の分化と増殖の制御に必須な転写制御領域のクロマチン構造変換機構の解析は,分化と増殖のエピジェネティック制御を理解する上でも重要な課題の一つとなっている。これまで過去2年間で我々はSUMO化依存的クロマチン構造変換因子ARIP4を精製および同定し、プロモーター上で細胞周期制御複合体E2F6複合体と相互作用することを見出した。本研究ではE2F6-ARIP4複合体形成の細胞分化過程での役割を明らかにし、生理的意義を解明することを目的とした。本年度は特にE2F6-ARIP4複合体の調節機構を明らかにする上で,(1)この複合体にウイルスタンパク質E1Bが強く結合すること,(2)そのE1Bの細胞内局在がp62依存的であること,(3)さらにE1BがARIP4複合体構成因子のなかでp62の細胞内の機能を阻害していること,を明らかにした。これらの結果は,ARIP4複合体がウイルスの標的複合体であることを意味している。ウイルスは感染した細胞の増殖や分化,細胞死などを制御するために宿主タンパク質の中でもそれらの制御に重要な因子に強く結合する。すなわちARIP4が細胞において増殖および分化の制御に中心的な役割を担っており,そのためにウイルスタンパク質の標的になっていると考えられる。外的シグナルに応答し細胞の増殖や分化を統合する制御機構の理解は重要であるが不明な点が多い。この制御機構に必須な因子として我々はARIP4を発見し、新たにプロモーター上で細胞周期制御因子E2F6と相互作用することを見出した。ARIP4の複合体を精製したところ,選択的オートファジーのレセプターp62と複合体を形成していること,細胞外環境に応答してp62依存的にARIP4がオートファジーで分解されることを発見した。本研究は外的環境に応答するクロマチン構造変換を明らかにする上で極めて重要で有り,細胞増殖分化とクロマチン構造変換を統合して理解する上で極めて重要な知見だと考えられる。本年度は予定していたARIP4の結合領域のゲノムワイドな解析を行い多くの情報と知見を得ることに成功した。またE2F6の標的遺伝子上にE2F6とARIP4の複合体形成を確認できたことから概ね目標は達成できた。次年度に予定している組織を用いた実験のためにはクロマチン免疫沈降法等の実験法の最適化が必要であるが、それについても培養細胞を用いた実験系と、少ない個体数による予備実験にて進行中である。平成28年度は主にマウスES細胞分化系におけるARIP4-E2F6複合体の解析を行う予定である。培養細胞、マウス胚心臓組織を用いてARIP4の相互作用因子およびクロマチンでの結合様式を明らかにした上で、細胞の増殖と分化の過程をより詳細に細胞レベルで解析することを目的としてES細胞を用いた解析を行う。ES細胞の心筋分化系は確立された実験系で有り、障害はない。
KAKENHI-PROJECT-26440015
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非平衡開放系としての分子機械モデル構築
本研究は、非平衡開放系としての分子機械のエネルギー変換のメカニズムを理解することを目的とするものである。特に、仕事をするためには変位と力の相空間上で考えた時に行き帰りの経路が異なる、すなわち相空間上でループを描く必要があるという点に着目する。この点に着目して実験系を工夫しつつ研究を進めることで、現実に起きている現象をしっかりと観察し、その本質をとらえて、理論モデルを作成することができる。また、数値計算などの手法も援用し理解を深める。実験系としては、実際の分子機械を用いることも考えられるが、われわれがこれまで行ってきた非平衡開放系の実験系を工夫することにより、制御が容易なモデル系を構築できると考えられる。そのようなモデル系における化学-機械エネルギー変換の機構を調べることで分子機械の実空間モデルを物理的に理解することを目的として研究を進めた。具体的には次にあげる成果が得られた。・化学振動反応であるBZ反応の微小液滴の自発的運動に関して、内部の流れを観察することによってそのメカニズムを明らかにした。・水/アルコール系におけるアルコール液滴の自発的運動に関して、環境の温度を変化させることによって運動の様子が異なることを見出した。この現象をもとにして反応拡散系に基づいて自発的運動を説明するモデルの妥当性を考察した。・油、水、界面活性剤系において、ゲルの生成とカップルして液滴が自発的に変形、運動するような系を見出し、生物におけるブレブ形成と比較しながら議論した。本研究では、非平衡開放系としての分子機械のエネルギー変換のメカニズムを理解することを大きな目的とする。特に、仕事をするためには変位と力の相空間上で考えた時に行き帰りの経路が異なる、すなわち相空間上でループを描く必要があるという点に着目する。この点に着目して、実験系を工夫しつつ研究を進めることで、現実に起きている現象をしっかりと観察し、その本質をとらえて、理論モデルを作成することができる。また、数値計算などの手法も援用し理解を深める。実験系としては、実際の分子機械を用いることも考えられるが、われわれがこれまで行ってきた非平衡開放系の実験系を工夫することにより、制御が容易なモデル系を構築できると考えられる。そのようなモデル系における化学-機械エネルギー変換の機構を調べることで分子機械の実空間モデルを物理的に理解することを目的として研究を進めた。具体的には次にあげる成果が上がった。・水-アルコール系において、アルコールが水面を自発的に運動する現象を見出し、その不安定性の機構について議論した。・界面活性剤水溶液中で、油滴が自発的に運動する系に関して、数理モデルを構築し、基板表面の状態と油滴の運動の関係について数値シミュレーションにより再現した。・化学エネルギーから自発的運動が生み出される系に関して、どのようなメカニズムによってエネルギーの変換が起こるかを、実験事実を考慮に入れながら議論をおこない、自発的、あるいは外的に与えられる非対称性が大切であると結論付けた。本研究は、非平衡開放系としての分子機械のエネルギー変換のメカニズムを理解することを目的とするものである。特に、仕事をするためには変位と力の相空間上で考えた時に行き帰りの経路が異なる、すなわち相空間上でループを描く必要があるという点に着目する。この点に着目して実験系を工夫しつつ研究を進めることで、現実に起きている現象をしっかりと観察し、その本質をとらえて、理論モデルを作成することができる。また、数値計算などの手法も援用し理解を深める。実験系としては、実際の分子機械を用いることも考えられるが、われわれがこれまで行ってきた非平衡開放系の実験系を工夫することにより、制御が容易なモデル系を構築できると考えられる。そのようなモデル系における化学-機械エネルギー変換の機構を調べることで分子機械の実空間モデルを物理的に理解することを目的として研究を進めた。具体的には次にあげる成果が得られた。・化学振動反応であるBZ反応の微小液滴の自発的運動に関して、内部の流れを観察することによってそのメカニズムを明らかにした。・水/アルコール系におけるアルコール液滴の自発的運動に関して、環境の温度を変化させることによって運動の様子が異なることを見出した。この現象をもとにして反応拡散系に基づいて自発的運動を説明するモデルの妥当性を考察した。・油、水、界面活性剤系において、ゲルの生成とカップルして液滴が自発的に変形、運動するような系を見出し、生物におけるブレブ形成と比較しながら議論した。
KAKENHI-PROJECT-17049017
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弾性表面波デバイス設計のための新解析法確立の研究
従来、弾性表面波デバイスの波動論的理論解析では金属薄膜の導波・屈折効果が無視されていた。本研究担当者は、それらの効果を考慮した新解析法を提案した。本研究は、新解析法の妥当性及び適用限界を明確にすることを目的としている。このため、弾性表面波ビーム圧縮用薄膜ホーンとトランスバーサル形フィルタを例にとり、数値計算と実験により検討する計画をたてた。以下に得られた成果の概略を述べる。1.ビーム圧縮用薄膜ホーンまず、ビーム幅を15波長から3波長に圧縮するパラボリックテイパ-形とリニアテイパ-形ホーンのパワー伝達効率を数値計算により検討した。その結果、パラボリック形ホーンの最適ホーン長は、従来の光線モデルにより求まる長さより大幅に短くなることが示された。例えば、YX L iNbO_3基板を用いる場合、新解析法により求まる長さは130波長てせあり、光線モデルによる長さは220波長である。リニア形ホーンの場合、損失が-0.5dB以下になるホーン長は数100波長と長くなる。一般に、最適ホーン長は、基板の電気機械結合係数が小さいほど、また咲く度異方性係数が-1に近づくほど長くなる。次に、送・受波用すだれ状電極間に3波長幅導波路の両端にホーンを接続した形状の薄膜を設けたデバイスを試作し、挿入損のホーン長依存性を測定した。測定結果と理論計算結果の差は2dB以内とよく一致し、本研究の解析法がホーンの設計に有用であることが確認された。2.トランスバーサル形フィルタフィルタ電極形状を設計し、電極形成用精密ホトマスクをメーカに発注するにとどまった。今後、研究を続け、周波数特性を理論と実験により比較検討し、フィルタの精密な設計への新解析法の有用性を検討していく。従来、弾性表面波デバイスの波動論的理論解析では金属薄膜の導波・屈折効果が無視されていた。本研究担当者は、それらの効果を考慮した新解析法を提案した。本研究は、新解析法の妥当性及び適用限界を明確にすることを目的としている。このため、弾性表面波ビーム圧縮用薄膜ホーンとトランスバーサル形フィルタを例にとり、数値計算と実験により検討する計画をたてた。以下に得られた成果の概略を述べる。1.ビーム圧縮用薄膜ホーンまず、ビーム幅を15波長から3波長に圧縮するパラボリックテイパ-形とリニアテイパ-形ホーンのパワー伝達効率を数値計算により検討した。その結果、パラボリック形ホーンの最適ホーン長は、従来の光線モデルにより求まる長さより大幅に短くなることが示された。例えば、YX L iNbO_3基板を用いる場合、新解析法により求まる長さは130波長てせあり、光線モデルによる長さは220波長である。リニア形ホーンの場合、損失が-0.5dB以下になるホーン長は数100波長と長くなる。一般に、最適ホーン長は、基板の電気機械結合係数が小さいほど、また咲く度異方性係数が-1に近づくほど長くなる。次に、送・受波用すだれ状電極間に3波長幅導波路の両端にホーンを接続した形状の薄膜を設けたデバイスを試作し、挿入損のホーン長依存性を測定した。測定結果と理論計算結果の差は2dB以内とよく一致し、本研究の解析法がホーンの設計に有用であることが確認された。2.トランスバーサル形フィルタフィルタ電極形状を設計し、電極形成用精密ホトマスクをメーカに発注するにとどまった。今後、研究を続け、周波数特性を理論と実験により比較検討し、フィルタの精密な設計への新解析法の有用性を検討していく。
KAKENHI-PROJECT-06650388
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06650388
東アジア成長都市の伝統様式を活かした持続型コンパクトシティの形態研究
実施の過程:平成22年度は精選の文献資料を調査し、特に平成21年度に作成した東南アジア諸都市に関するデータベースを補足した。また、研究の主な対象地であるベトナム・ハノイにおいて調査を実施した。この第4調査(2010年12月)は平成21年度の第3調査に続き、データを補足するために広汎な社会実験的な調査を中心に行った。街路スペースおよび街路に面した建築の空間・機能設計を明らかにするために、生活様式、日常活動、時間表および地区住民にこの地区で生活するための様々な価値評価に関するヒアリング調査を行い、実態を明らかにした。これらの結果から、住民の視点から見た地域密着型の保護・改善・発展のあり方を考察した。さらに、第4調査時に、付加的な比較調査としてホーチミンと香港において、伝統的な生活様式による高密度居住地における現地調査を1週間実施した。調査方法は地区の伝統的な居住建築様式、地区の構造、街区構造、歩道上の生活活動の写真、街路スペースおよび街路前部建築について実測した。今年度の成果:研究の主要な調査地ハノイ旧市街:第4調査より、下記について実態を明らかにした。住民の生活空間は狭い(平均8.8m^2/人)。住民はベンダーや露店のサービスを利用またはリラックスする為に街路前部の空間をよく利用する(平日平均2.5時間/日/人;休日平均2.2時間/日/人)。この実態は歩道の高密な活動の証明でもある。日常活動・時間表的に、住民は2つのタイプがある。第1タイプは高齢者および退職者である。このタイプの住民のほとんどは、1日に少数のトリップを行る(平均3トリップ/日、基本的に徒歩)。第2タイプは若者や中年の就職者である。このタイプの住民のほとんどは1日に多数のトリップを行る(平均6トリップ/日,基本的にバイクで)ホーチミンと香港の調査地点:この調査より、精選された街路の図面および建築様式、都市空間構成、高密な活動や時間的機能変化の写真についてのデータベースを作成した。アジアでのコンパクトな居住様式や都市の類型を整理するために、文献資料と既往研究に基づき、東アジア及び東南アジアの都市における伝統的な都市居住の建築様式と生活様式、高密度な都市空間に関する網羅的なレビューを行ない、アジアの高密度居住の建築様式に関するデータベースの作成に着手した。更に、ミクロなスケールから見たコンパクトな居住様式に関する調査として、アジアの高密度でコンパクトな居住地の典型としてベトナム・ハノイ市を対象にした現地調査を実施した。現地調査は、2009年9月、12月、2010年2月の3回にわたって実施し、まず、ハノイ都心部の旧市街地、フランス植民地時代の開発地、近代化以降に開発された郊外住宅地から典型的な高密度居住街区を抽出し、街区・街路構成等の把握と比較を行ない、その特徴点を整理した。更に、旧市街地では更に高密度な街区や街路の構成とそこでの高密度な居住環境や生活実態を把握するために、旧市街地の典型的な高密度街区を抽出し、測量調査と生活者へのアンケート調査を実施し、伝統的なチューブハウスの建築様式、街区・街路の空間構成と生活実態を明らかにした。加えて、高密度な街路の利用実態を把握するために、街路上でのビデオ撮影とアンケート調査を実施した。その結果、高密度な地区内での街路等公共空間の時間帯による利用法の変化が狭い家屋での過密な居住を補う役割を可能とし、街路空間が単なる交通機能ではなく、コンパクトな地区での生活機能の一部を担う空間として利活用されている実態を明らかにした。また、他の高密度都市との比較のために、マレーシア・クアラルンプール、シンガポール、タイ・バンコクにおける中華街の伝統的な高密度居住地の空間構成等を整理した。実施の過程:平成22年度は精選の文献資料を調査し、特に平成21年度に作成した東南アジア諸都市に関するデータベースを補足した。また、研究の主な対象地であるベトナム・ハノイにおいて調査を実施した。この第4調査(2010年12月)は平成21年度の第3調査に続き、データを補足するために広汎な社会実験的な調査を中心に行った。街路スペースおよび街路に面した建築の空間・機能設計を明らかにするために、生活様式、日常活動、時間表および地区住民にこの地区で生活するための様々な価値評価に関するヒアリング調査を行い、実態を明らかにした。これらの結果から、住民の視点から見た地域密着型の保護・改善・発展のあり方を考察した。さらに、第4調査時に、付加的な比較調査としてホーチミンと香港において、伝統的な生活様式による高密度居住地における現地調査を1週間実施した。調査方法は地区の伝統的な居住建築様式、地区の構造、街区構造、歩道上の生活活動の写真、街路スペースおよび街路前部建築について実測した。今年度の成果:研究の主要な調査地ハノイ旧市街:第4調査より、下記について実態を明らかにした。住民の生活空間は狭い(平均8.8m^2/人)。住民はベンダーや露店のサービスを利用またはリラックスする為に街路前部の空間をよく利用する(平日平均2.5時間/日/人;休日平均2.2時間/日/人)。この実態は歩道の高密な活動の証明でもある。日常活動・時間表的に、住民は2つのタイプがある。第1タイプは高齢者および退職者である。このタイプの住民のほとんどは、1日に少数のトリップを行る(平均3トリップ/日、基本的に徒歩)。第2タイプは若者や中年の就職者である。このタイプの住民のほとんどは1日に多数のトリップを行る(平均6トリップ/日,基本的にバイクで)
KAKENHI-PROJECT-09F09084
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09F09084
東アジア成長都市の伝統様式を活かした持続型コンパクトシティの形態研究
ホーチミンと香港の調査地点:この調査より、精選された街路の図面および建築様式、都市空間構成、高密な活動や時間的機能変化の写真についてのデータベースを作成した。
KAKENHI-PROJECT-09F09084
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PTSDモデル動物におけるNFκBを標的としたバイオマーカー探索研究
PTSDのモデルストレスを負荷したラットの脳MRI形態解析を行い、萎縮部位でのバイオマーカー探索を目指した。モデルストレスにはsingle-prolonged stress(拘束2時間・強制水泳20分・エーテル麻酔を連続負荷)を用いた。画像データをVBM解析した結果、両視床・感覚野に有意な委縮を認め(PTSDモデル:n=18, Sham:n=17; setlevel p<0.001, cluster-FWE corrected P<0.05)、同部位において活性化ミクログリアのマーカーであるIba-1の免疫反応増大を認めた。これによりミクログリアの活性化が萎縮に関与していることが示唆された。心的外傷後ストレス障害(Post-traumatic stress disorder; PTSD)は重度のストレス暴露後に発症するとされている疾患である。患者を対象としたVoxel-based morphometry (VBM)解析においては前部帯状回や島皮質、扁桃体、海馬などに萎縮の報告がある。一方で、上記は患者を標的とした後ろ向き解析であり、疾病に先立つストレスによって生じた変化なのか、患者側の素因による形態差なのか判然としない側面がある。我々は上記についてストレスとの因果関係を検証するため、PTSDモデルストレスを負荷した動物での頭部MRI画像におけるVBM解析を行った。【結果】両側視床腹側、右側視覚野、右側扁桃体などに萎縮を認めた。(実験群;n=7,対照群;n=9 uncorrectedP<0.001)【考察】動物を用いた実験では年齢・性別・ストレス内容・生育環境のいずれも完全にマッチしており、ヒトを対象としたものよりも検出力が高いと推察される。しかし、今回の研究ではヒトによる疾患研究と機能的に同じ部位が必ずしも検出されていない。疾患の病態生理にはストレスの影響のみではなく、遺伝的なストレスへの脆弱性を議論する必要はあると思われた。PTSDのモデルストレスを負荷したラットの脳MRI形態解析を行い、萎縮部位でのバイオマーカー探索を目指した。モデルストレスにはsingle-prolonged stress(拘束2時間・強制水泳20分・エーテル麻酔を連続負荷)を用いた。画像データをVBM解析した結果、両視床・感覚野に有意な委縮を認め(PTSDモデル:n=18, Sham:n=17; setlevel p<0.001, cluster-FWE corrected P<0.05)、同部位において活性化ミクログリアのマーカーであるIba-1の免疫反応増大を認めた。これによりミクログリアの活性化が萎縮に関与していることが示唆された。中央研究室MRI実験室にある横置き型MRI(Agilent社製,横置き型マグネット,7.04T,ボア径310mm )を用いて実験を開始している。今年度の研究進度は本機を用いて解析を行うための撮影条件の検証に留まっている。動物種(ラット・マウス)による条件変化、T1強調、T2強調、T2*強調など撮影方法、生体・灌流固定後などの条件を変化させ検証を行った。また、コイルの性能による変化が大きいためRFコイルを購入しボリュームコイルと比較し撮影条件を検証した。結論として、良好な解像度を得るためには潅流固定を行い、フッ素系不活性液体(フロリナート3M社TM)のような電気絶縁性が非常に高い液体に浸漬してアーチファクトを取り除くことで良好な解像度とコントラストを得られることが判明した。また、撮影条件についてはT2強調(スピンエコーもしくはファーストスピンエコーによる撮影)が灰白質・白質・脳脊髄液のコントラストを得るために必要と判明している。生体条件では外耳道から内耳の空気によるアーチファクトが大きく、扁桃体部分に影ができてしまい、voxel based morphometryを用いた解析に見合う画像が得られない。この解析方法は均質な信号が要求されるため、結論として潅流固定を行い、頭蓋骨ごと脳を摘出してフロリナートに浸漬し、脳を傷つけずにアーチファクトを減らして撮影することが重要である。蒸気に加えてボリュームコイルでT2強調による撮影を行えば良好なコントラストを得やすいと考えられる。心的外傷後ストレス障害(PTSD)におけるヒトを対象とした画像研究はすでに発表されており、前部帯状回・海馬・偏桃体などに委縮の報告がある。しかし、ヒト対象の研究においては上記変化とストレスとの因果関係を議論する上で、生育歴や個々の遺伝素因などの制限がある。上記を回避する方策として、PTSDのストレスモデルをもちいた動物実験が企画された。また、Voxel-based morphometry(VBM)解析はMRI画像をもちいた解析protocolとして、とくに網羅的・探索的に解析することが可能であり、研究者側のバイアスが入りにくい解析と考えられている。上記解析方法を用いてモデルストレスにより直接的に変化がおこる脳部位を画像研究手法を用いて検証した。PTSDのモデルストレスとしてはsingle-prolonged stress(拘束2時間・強制水泳20分・エーテル麻酔を連続負荷)を用い、ストレス7日後に灌流固定し頭蓋骨ごと取り出した脳のMRIを撮影した。比較対象にはエーテル麻酔のみ負荷し、同様に脳のMRIを撮影した。本研究によりストレスと脳委縮の因果関係は明瞭と考えられる。また、モデルストレスは恐怖・学習よりも身体面における要素が強いと考えられ、身体感覚を中心とした入力系における過剰入力があったと推察される。加えて、視床についてはグルタミン酸による神経伝達が行われている場所であり、グルタミン酸の過剰入力が神経細胞死をもたらす可能性はあったのではないかと考えている。
KAKENHI-PROJECT-24791225
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24791225
PTSDモデル動物におけるNFκBを標的としたバイオマーカー探索研究
精神医学動物MRIの撮影条件の決定に約1年間の年月を要旨、本格的なデータ採取の開始が遅延してしまっている。また、現段階の研究内容では統計処理を行った結果の信頼性は不十分であり、さらなる実験個体数の増加が必要となっている。・他の研究者との兼ね合いでMRI装置の使用時間が制限を受けている面があり、当初よりの遅れにつながっている。撮影プロトコールの工夫により今後は効率化を目指したい。・精神科関連の研究においては生体でのMRI撮影プロトコールが一般的であるが、左記のプロトコールでは解析に耐えうる良好な画像を得られないという結論に至るまで非常に長い時間を要した。実験個体数を増やし実験群・対照群それぞれ個体数を20匹程度とすることを目標とする。また、血液中のコルチコステロンを測定し、これを共変量としてMRIデータとあわせた解析も企画する。VBMは全脳網羅的解析であるため、有意差が出にくい解析であるため、上記を遂行した上で、扁桃体等に関心領域を設定したより検出力の高い解析も企画する。上記の後、余力があれば顕微鏡解析による形態的変化に関する検証を行う予定である。今年度決定した撮影プロトコールを基に、PTSDのモデルストレスを負荷した個体と対照個体の撮影を重ね、比較し検討する(撮影プロトコール決定後はMRIによる解析はスムーズに進むと考えている)。比較する手法はvoxel based morphometryによる網羅的解析を検討している。有意な結果が出れば同部位を免疫組織化学などの手法を用いて顕微鏡による解析を行う(NF-κB、グルココルチコイド受容体など)。動物MRI撮影に際して高精細な画像が必要となり、撮影条件の決定に約1年程度要した。結果として、約1年程度の研究計画の遅延を生じ、このため未使用額が発生した。動物MRIの実験個体数を増やす必要があり、動物代20万円程度画筆用と見込まれる。また、コルチコステロン血中濃度測定が必要とされており、試薬代に20万円程度が必要である。解析ソフトウェアの維持費に20万円程度が必要と見込まれる。顕微鏡解析のため、共焦点レーザー顕微鏡のメンテナンスのために40万円程度が必要と見込まれる。その他、諸々の実験試薬やデータ保存のための消耗品、学会発表の旅費、論文の出版に際する諸費用など20万円程度は必要と見込んでいる。MRI使用料として年間40万円程度、動物購入費として40万円60万円程度。試薬購入費として20万円程度。その他消耗品として20万円程度を検討している。
KAKENHI-PROJECT-24791225
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24791225
非小細胞肺癌における新規バイオマーカーの探索的研究
白金製剤は、DNAに損傷を加えることで抗がん効果を発揮するため、腫瘍の遺伝子修復能は、白金製剤の感受性に影響を与えると推察される。本研究では、白金製剤を用いた術後補助化学療法を施行した非小細胞肺癌切除症例を対象とし、遺伝子修復にかかわるRad51、ERCC1蛋白発現と予後の関連について検討した。ERCC1陽性症例は有意に無再発生存が良好であった。Rad51蛋白発現と無再発生存に有意な関連を認めず、Rad51、ERCC1蛋白発現と全生存に有意な関連は認めなかった。白金製剤の感受性により予後の違いが生じるのではないかと想定したが、全生存との関連は得られなかった。白金製剤は非小細胞肺癌に対するKey Drugであり、これまでにも白金製剤の効果を予測するバイオマーカーの研究が行われているが、実地臨床において確立されたものはない。白金製剤は、DNAに損傷を加えることにより、抗がん効果を発揮すると考えられている。そのため、腫瘍の遺伝子修復能は、白金製剤の感受性に影響を与える因子であると推察される。過去に我々は、in vitroの検討で、非小細胞肺癌におけるDNA二重鎖切断修復にかかわるRad51蛋白発現、ヌクレオチド除去修復にかかわるERCC1蛋白発現と、白金製剤の感受性に相関を認めることを報告した。特に両蛋白の発現を評価することがより効有効な効果予測因子となると考えられた。一方、治療を行われた患者でこの手法が有効な効果予測因子となり得るかは現時点では不明である。今回、白金製剤を用いた術後補助化学療法を施行した、非小細胞肺癌完全切除症例76例を対象として、Rad51蛋白発現、ERCC1蛋白発現と、白金製剤の感受性の関連性について検討した。パラフィン包埋された切除標本を用い、腫瘍部におけるERCC1、Rad51蛋白発現を免疫抗体染色法にて評価を行った。76症例のうちERCC1陽性症例、Rad 51陽性症例はそれぞれ43例、45例であった。また、今回対象とした76例の臨床病理学的因子、予後について追跡を行った。今後は、ERCC1、Rad51蛋白発現のプロファイルと、臨床病理学的因子、予後との関連について解析を行い、ERCC1、Raad51蛋白発現の意義について評価を行う予定である。白金製剤は、DNAに損傷を加えることにより、抗がん効果を発揮すると考えられている。そのため、腫瘍の遺伝子修復能は、白金製剤の感受性に影響を与える因子であると推察される。過去に我々は、in vitroの検討で、非小細胞肺癌におけるDNA二重鎖切断修復にかかわるRad51蛋白発現、ヌクレオチド除去修復にかかわるERCC1蛋白発現と、白金製剤の感受性に相関を認めることを報告した。一方、治療を行われた患者で有効な効果予測因子となり得るかは現時点では不明である。今回、白金製剤を用いた術後補助化学療法を施行した非小細胞肺癌完全切除症例76例を対象とし、Rad51蛋白発現、ERCC1蛋白発現と、白金製剤の感受性の関連性について検討した。パラフィン包埋された切除標本を用い、腫瘍部におけるERCC1、Rad51蛋白発現を免疫抗体染色法にて評価を行った。ERCC1陽性症例、Rad 51陽性症例はそれぞれ43例、45例であった。今回対象とした76例の臨床病理学的因子、予後について追跡を行った。全症例の平均年齢は64歳、男性/女性:47/29例、腺癌/扁平上皮癌/その他:54/17/5例であった。病理病期IB期/II期/III期:14/30/32例であった。全症例の5年無再発生存率48.4%、5年全生存率76.4%であった。Rad51蛋白発現、ERCC1蛋白発現と予後の検討を行った。ERCC1陽性症例は、陰性症例と比較し、有意に無再発生存が良好であった(p=0.02)。Rad51蛋白発現と無再発生存に有意な関連は認めなかった。また、Rad51蛋白発現、ERCC1蛋白発現と全生存に有意な関連は認めなかった。過去に非小細胞肺癌の腫瘍部におけるERCC1、Rad51蛋白の発現が低い症例では、白金製剤の感受性が高いとの報告がある。白金製剤の感受性が高ければ、白金製材による術後補助化学療法により予後の改善につながるのではないかと仮説を立てていたが、今回の結果からは、全生存の改善につながるような結果は得られなかった。白金製剤は、DNAに損傷を加えることで抗がん効果を発揮するため、腫瘍の遺伝子修復能は、白金製剤の感受性に影響を与えると推察される。本研究では、白金製剤を用いた術後補助化学療法を施行した非小細胞肺癌切除症例を対象とし、遺伝子修復にかかわるRad51、ERCC1蛋白発現と予後の関連について検討した。ERCC1陽性症例は有意に無再発生存が良好であった。Rad51蛋白発現と無再発生存に有意な関連を認めず、Rad51、ERCC1蛋白発現と全生存に有意な関連は認めなかった。白金製剤の感受性により予後の違いが生じるのではないかと想定したが、全生存との関連は得られなかった。現時点まで免疫染色により蛋白発現の評価、臨床データ収集が終了している。今後は、解析を行うことにより、一定の結果が得られるものと考えられる。呼吸器外科得られた蛋白発現のプロファイルと臨床データの関連について解析を行う。また、他の遺伝子修復に関わる蛋白発現(BRCA1等)についても検討を行っていく。
KAKENHI-PROJECT-26860124
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26860124
遺伝子発現を負に制御する分子機構
研究代表者は、グルタチオンーSートランスフェラーゼ遺伝子(GST-P)の発現制御機構について研究し、転写を負に制御するサイレンサーおよび制御因子の存在を明らかにしてきた。本研究においては、クローニングした制御因子の機能解析および転写に制御的に働く作用ドメインの解析を試みた。1)サイレンサー結合蛋白質Nuclear Factor1(NF1)はファミリーを形成しているが、この中のNF1-Aが制御活性を有していることを明らかにした。さらに不活性化ドメインの同定を行った。3)NF1-Bについては3種類のスプライシングアイソフォームの存在を明らかにし、これらの転写調節に及ぼす影響について検討し、状況に応じて正負両方の機能を持つことを明らかにした。4)他の2つのファミリー、NF1-CおよびNF1-Xと上記のNF1-A、NF1-Bの4つのNF1ファミリーについて、DNA結合性の検討を行い4種間の性質の違いを明らかにした。5)NF1の核移行シグナルを同定した。その結果、4種のアイソフォームに共通して存在する2つの核移行シグナルを同定した。6)GST-P遺伝子サイレンサーに結合するC/EBPファミリーの一つC/EBPδは、C/EBPδ遺伝子の下流に存在する自分自身の結合部位を介して、転写が活性化された後、ファミリーに属するC/EBPδやCHOP10により、同じ部位を介して転写が抑制されることを明らかにした。7)GST-P遺伝子のサイレンサーには、もう一つの未知蛋白質が結合することをすでに明らかにしているが、酵母のシステムにより、亜鉛フィンガーをDNA結合ドメインに持つ数種類の転写因子を同定した。研究代表者は、グルタチオンーSートランスフェラーゼ遺伝子(GST-P)の発現制御機構について研究し、転写を負に制御するサイレンサーおよび制御因子の存在を明らかにしてきた。本研究においては、クローニングした制御因子の機能解析および転写に制御的に働く作用ドメインの解析を試みた。1)サイレンサー結合蛋白質Nuclear Factor1(NF1)はファミリーを形成しているが、この中のNF1-Aが制御活性を有していることを明らかにした。さらに不活性化ドメインの同定を行った。3)NF1-Bについては3種類のスプライシングアイソフォームの存在を明らかにし、これらの転写調節に及ぼす影響について検討し、状況に応じて正負両方の機能を持つことを明らかにした。4)他の2つのファミリー、NF1-CおよびNF1-Xと上記のNF1-A、NF1-Bの4つのNF1ファミリーについて、DNA結合性の検討を行い4種間の性質の違いを明らかにした。5)NF1の核移行シグナルを同定した。その結果、4種のアイソフォームに共通して存在する2つの核移行シグナルを同定した。6)GST-P遺伝子サイレンサーに結合するC/EBPファミリーの一つC/EBPδは、C/EBPδ遺伝子の下流に存在する自分自身の結合部位を介して、転写が活性化された後、ファミリーに属するC/EBPδやCHOP10により、同じ部位を介して転写が抑制されることを明らかにした。7)GST-P遺伝子のサイレンサーには、もう一つの未知蛋白質が結合することをすでに明らかにしているが、酵母のシステムにより、亜鉛フィンガーをDNA結合ドメインに持つ数種類の転写因子を同定した。申請者は、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST-P)遺伝子の発現制御機構について研究し、転写を負に制御するサイレンサーおよび抑制因子の存在を明らかにしてきた。また、ビタミンDレセプター(VDR)の標的配列をゲノムから単離したところ、その断片が負の調節能力を有していることを明らかにしてきた。そこで本研究ではGST-P遺伝子のサイレンサー結合蛋白質の機能ドメインの解析およびVDRの標的遺伝子の単離について検討し、以下のことを明らかにした。1)サイレンサー結合蛋白質Nuclear Factor(NF1)はファミリーを形成しているが、この中のNF1-Aが抑制活性を有していることを明らかにした。さらに不活性化ドメインの同定を行った。また、NF1-Aのゲノムクローンを単離し全ゲノム構造を明らかにした。2)NF1-Bについては3種類のスプライシングアイソフォームの存在を明らかにし、これらの転写調節に及ぼす影響について検討し、状況に応じて正負両方の機能を持つことを明らかにした。さらに、負の活性を示す機能ドメインのマッピングも行った。3)他の2つのファミリー、NF1-CおよびNF1-Xと上記のNF1-A、NF1-Bの4つのNF1ファミリーについて、DNA結合性の検討を行い4種間の性質の違いを明らかにした。4)すでに単離したVDR標的断片が負に制御していると思われる遺伝子のクローニングを行い、数種のアイソフォームを単離した。これらの組織における発現は多様性を示した。また、この標的断片には甲状腺ホルモンレセプターも作用し、VDRとは逆に正の制御を示した。ビタミンDと甲状腺ホルモン両方に正負に制御される遺伝子の存在は極めて珍しく、その作用機作の解明は今後の課題である。申請者は、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST-P)遺伝子の発現制御機構について研究し、転写を負に制御するサイレンサーおよび抑制因子の存在を明らかにしてきた。また、ビタミンDレセプター(VDR)の標的配列をゲノムから単離したところ、その断片が負の調節能力を有していることを明らかにしてきた。そこで本研究ではGST-P遺伝子のサイレンサー結合蛋白質の機能ドメインの解析およびVDRの標的遺伝子の単離について検討し、本年度については、以下のことを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-09672227
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09672227
遺伝子発現を負に制御する分子機構
1)サイレンサー結合蛋白質Nuclear Factor 1(NF1)はファミリーを形成しているが、この中のNF1-Aが抑制活性を有していることを明らかにした。さらに不活性化ドメインの同定を行った。また、NF1-Aに相互作用する因子の検索を酵母のシステムを用いて行い、候補となるいくつかのクローンを同定した。2)さらにNF1ファミリーの作用機構を明らかにする目的でNF1のアンチセンスmRNAを発現するstable transformantの作製を行った。3) GST-P遺伝子のサイレンサーには、もう一つの未知蛋白質が結合することをすでに明らかにしているが、酵母のシステムを用いてその候補となる遺伝子を単離した。その結果、Cに富むDNA配列に結合する複数の転写因子が働いている可能性が明らかとなった。4)すでに単離したVDR標的断片はVDRにより負に制御されているが、この標的断片には甲状腺ホルモンレセプターも作用し、VDRとは逆に正の制御を示した。詳細な解析の結果、断片内の3つのエレメントを使い分けることにより、2種の制御がなされていることが明らかとなった。申請者は、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST-P)遺伝子の発現制御機構について研究し、転写を負に制御するサイレンサーおよび抑制因子の存在を明らかにしてきた。本年度は、GST-P遺伝子のサイレンサー結合蛋白質の機能ドメインの解析および新たな結合タンパク質のクローニングを行い、以下のことを明らかにした。1)サイレンサー結合蛋白質Nuclear Factor 1(NF1)はファミリーを形成しているが、この中のNF1-Aが抑制活性を有していることを明らかにした。さらに不活性化ドメインの同定を行った。さらに、NF1-Bの機能ドメイン解析を行い、プロモーターにより、活性化する場合と転写を抑制する場合の2面性があることを明らかにした。さらに、NF1-C,NF1-Xを含め4種類のアイソフォームの結合性の差、発現パターンの変化もあわせて検討した。2)NF1は核内に存在する転写因子である。そこで核移行シグナルを同定した。その結果、4種のアイソフォームに存在する2つの核移行シグナルを同定した。これらは、おのおの単独でもある程度の核移行性を示すが、完全な移行には両方を必要とし、従来とは異なる様式が推定された。3)GST-P遺伝子のサイレンサーには、もう一つの未知蛋白質が結合することをすでに明らかにしているが、酵母のシステムを用いてその候補となる遺伝子を単離した。その結果、亜鉛フィンガーをDNA結合ドメインに持つ数種類の転写因子を同定した。これらはいずれも特異的にDNAに結合することにより、目的のクローンを得た可能性が極めて高いと推察された。
KAKENHI-PROJECT-09672227
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09672227
脊髄functional MRIを用いた疼痛の定量評価法の確立
われわれは末梢神経損傷後のラット脳神経活動の経過をfunctional MRIで評価した.Functional MRIでは坐骨神経圧挫損傷1週後に有意差を認めた部位の範囲は,3, 6週後にかけて縮小した.一方で,9週後には新たに扁桃と海馬で有意な血流の増加が見られるようになった.また,c-Fosによる免疫組織科学的染色では,functional MRIで血流量の増加を示した部位で,c-Fosが活性化している結果を得ることができた.本研究により,末梢神経損傷後の脳神経活動の変化をfunctional MRIにより捉えることができた.この結果は,組織学的評価と矛盾しなかった.脊髄のfMRIは撮像対象が小さいため、従来のボリュームコイルでは十分な解像度が得られなかった。その問題点を解消する為に表面コイルを作成し撮像試験を行った。作成した表面コイルを用いて撮像したMR画像は、これまでのボリュームコイルを用いて得られたMR画像に比して、解像度が高く、信号雑音比も高いものであった。この表面コイルを用いたfMRI撮像条件の調整を行っている。ラットの坐骨神経損傷モデルの作成には脳血管クリップを用いた圧挫損傷を加えることで、一定した神経損傷を加えられることが明らかとなった。神経損傷手技に習熟することで均一な神経損傷モデルの作成が可能となることが期待できる。昨年度作成した表面コイルでの撮像では、撮像範囲の辺縁の像に歪みが生じていた。この問題点を解消するために、表面コイルと体積コイルを組み合わせた撮像法をもちいて撮像を行ったところ、歪みの少ない像が得られた。麻酔条件の確立、体幹固定装置の作成、坐骨神経圧座損傷主義の習熟により、MRI撮像および評価に必要な条件が整った。昨年度作成した表面コイルと、体積コイルを組み合わせた撮像法を新たに開始した。この撮像法により、撮像対象に均一な励起パルスを付与できるため、より鮮明な画像が得られた。昨年度課題となっていた撮像時の対象の体動と麻酔深度についは、体幹固定装置を作成し、吸入麻酔薬の投与量調整により安定した撮像が可能となった。血管クリップを用いた坐骨神経損傷主義は確立しており、安定した神経損傷モデルを作成できている。神経刺激条件について、条件を変えながら撮像を行い、至適な条件を模索している。本研究の目的は、疼痛刺激に対する反応を脊髄におけるfunctinal MRIで評価することである。脊髄は通常functional MRIが適応される脳よりも小さく、また腹腔臓器や筋肉といった器官とも接しているため動きのアーチファクトや磁場の不均一性の影響を受けやすい。小さな対象物を高い解像度で撮像するために表面コイルを使用して撮像する方式を考案して試行していたが、磁場の不均一性による影響を排除しきれなかった。そこで表面コイルと体積コイルを組み合わせる方式を考案した。これにより磁場の均一性が向上し、より精度の高い画像が得られることが期待できる。脊髄という小さな観測対象の撮像を行うため表面コイルを用いた撮像法を試行していたが、得られた画像の解像度は向上したが磁場不均一性によるアーチファクトが大きかった。この課題を克服するためこれまでに作成した表面コイルに体積コイルを組み合わせる方式を考案し、撮像条件の確立にむけて実験を行っている。われわれは末梢神経損傷後のラット脳神経活動の過程をfunctional MRIで評価することを目的に研究を行った.末梢神経損傷モデルとして,坐骨神経を脳血管用に用いられるクリップにより圧挫損傷したラットを作成した.このラットを経時的にfunctional MRIを撮像した.MRIは動物用の7.04 Tの横置き型MRI装置とサーフェイスコイルを用いて撮像した.Functional MRIの手法としては,超常磁性造影剤を投与した後に,functional MRI taskとして足底部に刺入した刺激電極を通電している時と通電していない時にT2*強調像を撮像し,そのデータを解析ソフトで解析した.一般線形モデル解析により刺激の有無による信号強度の相違の定量的評価としてT値を求めた.この値によりカラーマップを作成した.これにより,それぞれの脳部位における血流の変化を捉えることができた.またそれぞれの時期に対応したラットの脳を摘出し,c-Fosの免疫組織科学染色を行い,脳神経の活動状態を評価した.Functional MRIの結果として坐骨神経圧挫損傷1週後に扁桃や大脳基底核,前帯状回で有意差を認めた.そして3, 6週後にかけて有意差のある脳神経部位の範囲は縮小した.しかし,9週後には扁桃と海馬で有意差が新たに見られるようになった.免疫組織科学的染色による評価では,これらの部位で,刺激後にc-Fosが活性化している結果を得ることができた.本研究により,末梢神経損傷後の脳神経活動の変化をfunctional MRIにより捉えることができた.この結果は,組織学的評価と矛盾しなかった.また,超常磁性造影剤はfunctional MRIを撮像する上で有用であった.われわれは末梢神経損傷後のラット脳神経活動の経過をfunctional MRIで評価した.Functional MRIでは坐骨神経圧挫損傷1週後に有意差を認めた部位の範囲は,3, 6週後にかけて縮小した.一方で,9週後には新たに扁桃と海馬で有意な血流の増加が見られるようになった.また,c-Fosによる免疫組織科学的染色では,functional MRIで血流量の増加を示した部位で,c-Fosが活性化している結果を得ることができた.
KAKENHI-PROJECT-26462245
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26462245
脊髄functional MRIを用いた疼痛の定量評価法の確立
本研究により,末梢神経損傷後の脳神経活動の変化をfunctional MRIにより捉えることができた.この結果は,組織学的評価と矛盾しなかった.作成した表面コイルを用いて脊髄のfMRI撮像に必要な撮像条件の設定を行っている。実際に撮影を行う際には、体動が大きく影響を及ぼすため、麻酔方法や麻酔深度の調整を行っている。また体動による影響を軽減させるため、体幹を固定する装置の作成を検討している。坐骨神経損傷モデルの作成については、脳血管クリップを用いることで安定した神経損傷モデルの作成が可能となっている。神経刺激条件については、撮像条件確立の後にfMRIで得られる像を確認しながら調整を行う必要がある。神経刺激方法及び神経刺激条件について、今後撮像と解析を繰り返し確立してゆく。末梢神経損傷後に経時的に脊髄functional MRIを撮像し、末梢神経再生に伴う脊髄レベルでの神経活動を解析し、末梢神経回復過程の神経伝導軽度の変化を観察する。同時に、より中枢側である脳においても、末梢神経損傷後の疼痛刺激に対するfunctional MRI信号の変化を評価する。脊髄と脳のfunctional MRI信号の変化を比較することで、末梢神経損傷後の疼痛に対する中枢神経の反応を詳細に解明できることが期待できる。脳については組織学的評価も行ってゆく方針である。表面コイルと体積コイルを組み合わせた撮像方法での撮像条件を確立し、坐骨神経圧座損傷を加えた後の脊髄における痛覚刺激に対する反応を経時的に撮像し解析する。整形外科学表面コイルを用いた脊髄fMRI撮像条件を確立した後に、神経刺激方法、刺激条件の設定を行う。末梢神経損傷後に経時的に脊髄fMRIを撮像し、末梢神経再生に伴うMR信号の変化を解析する。また、作成した表面コイルを用いることで、脳のfMRIについても精細に描出できる事が確認できた。脊髄fMRIに加えて末梢神経損傷後の疼痛刺激に対する脳のfMRIでの信号変化を評価することで、疼痛に対する中枢神経の反応を評価できる可能性があるため、坐骨神経損傷後の脳のfMRI画像の変化についても解析を行ってゆく。MRI撮像と並行して組織学的評価を行う方針としている。組織学的評価のために免疫組織染色を行う予定であり、そのための薬品や機器が必要となる。染色法など評価法の検討を行った後に必要な薬剤を購入する予定であったため、そのための購入費用を確保していたが、年度内の購入ができなかったため次年度使用額が生じた。これまでのfunctional MRI撮像法から大きく変更を加えたため、再度撮像条件そのものの確立が必要となった。これにより研究の進捗に遅れが出たため予定していた物品の購入が遅れたため。生じた次年度使用額については上記の組織学的評価を行うための薬品や機器等の購入を含め、28年度に適正に利用する。実験の進捗に沿って次年度に適正に使用する。実験動物の購入、MRI撮像に必要な麻酔薬および造影剤の購入、免疫組織学的染色に必要な薬剤の購入および論文作成時の英文校正にかかる費用等として使用する計画である。
KAKENHI-PROJECT-26462245
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EBウイルスLMP1癌蛋白によるp16^<INK4a>/RB経路阻害機構の解明
p16^<INK4a>/RB経路は癌抑制機構として中心的な役割を担っており、逆にその経路の遮断は細胞癌化の必須条件となっている。EBウイルスのLMP1癌蛋白は、p16^<INK4a>/RB経路の活性化に必須な転写因子をCRM1依存的に核外に移行させ失活させることにより、p16^<INK4a>/RB経路を遮断する。LMP1は核外移行シグナルを有する他の蛋白には作用しないことから、LMP1により誘導される核外移行には何らかの標的特異性が存在すると考えられる。我々は、LMP1によるp16^<INK4a>/RB経路の阻害機構の詳細を明らかにし、その阻害機構を標的とした特異性が高く副作用の少ないEBV関連悪性腫瘍の治療法開発に役立たせることを目的として研究を行い、以下の研究結果を得た。(i)LMP1の機能ドメインであるCTAR1とCTAR2の2つのドメインを介してMEKキナーゼが恒常的に活性化されることがLMP1による標的蛋白(E2F4)の核外移行誘導に必要である。(ii)LMP1の発現によりE2F4のN-末端より68番目と70番目のアミノ酸の近傍にCRM1が結合するようになり、このことがLMP1によるE2F4の核外移行に必須である。(iii)MEKによりリン酸化されない変異型E2F4でもLMP1による核外移行が誘導されることから、CRM1蛋白そのものかもしくはE2F4とCRM1の結合を促進するコファクターがMEKによりリン酸化されることがLMP1によるE2F4の核外移行誘導に必要であることが示唆された。(iv)LMP1の細胞内ドメインと類似性があるCD40を恒常的に活性化してもLMP1によって起こる標的蛋白の核外移行は見られなかった。このことから、LMP1による標的蛋白の核外移行誘導機構を標的とした薬剤はCD40の機能を阻害することにはならないので、免疫系の低下などの副作用を引き起こさない有効な治療法につながると期待出来る。p16^<INK4a>/RB経路は癌抑制機構として中心的な役割を担っており、逆にその経路の遮断は細胞癌化の必須条件となっている。EBウイルスのLMP1癌蛋白は、p16^<INK4a>/RB経路の活性化に必須な転写因子をCRM1依存的に核外に移行させ失活させることにより、p16^<INK4a>/RB経路を遮断する。LMP1は核外移行シグナルを有する他の蛋白には作用しないことから、LMP1により誘導される核外移行には何らかの標的特異性が存在すると考えられる。我々は、LMP1によるp16^<INK4a>/RB経路の阻害機構の詳細を明らかにし、その阻害機構を標的とした特異性が高く副作用の少ないEBV関連悪性腫瘍の治療法開発に役立たせることを目的として研究を行い、以下の研究結果を得た。(i)LMP1の機能ドメインであるCTAR1とCTAR2の2つのドメインを介してMEKキナーゼが恒常的に活性化されることがLMP1による標的蛋白(E2F4)の核外移行誘導に必要である。(ii)LMP1の発現によりE2F4のN-末端より68番目と70番目のアミノ酸の近傍にCRM1が結合するようになり、このことがLMP1によるE2F4の核外移行に必須である。(iii)MEKによりリン酸化されない変異型E2F4でもLMP1による核外移行が誘導されることから、CRM1蛋白そのものかもしくはE2F4とCRM1の結合を促進するコファクターがMEKによりリン酸化されることがLMP1によるE2F4の核外移行誘導に必要であることが示唆された。(iv)LMP1の細胞内ドメインと類似性があるCD40を恒常的に活性化してもLMP1によって起こる標的蛋白の核外移行は見られなかった。このことから、LMP1による標的蛋白の核外移行誘導機構を標的とした薬剤はCD40の機能を阻害することにはならないので、免疫系の低下などの副作用を引き起こさない有効な治療法につながると期待出来る。
KAKENHI-PROJECT-16021242
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16021242
サマリウム、イッテルビウムを含む重い電子系化合物における局在-非局在の研究
4f^5-4f^6の電子状態を取り得るサマリウム(Sm)を含む化合物において磁性-非磁性転移の詳細を調べるため、SmB_6について系統的な圧力下NMR(核磁気共鳴)測定を行った。常圧と1.5,2.5GPaの圧力下においてスピン-格子緩和時間T_1の温度依存性を測定した結果、特に100K以下で系統的な圧力変化が観測された。そこから絶縁体ギャップの圧力変化を求めたところ、これまで電気抵抗測定からの報告よりも急峻に減少することが分かった。これは、T_1が圧力増加に伴って絶縁体ギャップが減少する効果だけでなく、Sm価数が2価(非磁性)から3価(磁性)への移り変わりも反映するからだと考えられる。NMR測定によってSmB_6の高圧下状態が調べられたのは本研究が初めてであり、その結果は論文と、国際会議(CSMAG'10、ICHE 2010)にて報告した。2)単結晶試料を用いた^<11>B-NMR測定SmB_6の常圧下NMRの報告では、低温領域におけるT_1の値に差異があり、その原因は不明であった。しかし、本研究で単結晶試料の角度を磁場に対して精度よく制御した測定を行ったところ、T_1の値に異方性があることが明確になった。このことが、全角度の平均値が得られる粉末試料測定と、ある特定の角度成分のみが抽出される単結晶試料測定との間に生じた差異の一因であると結論された。3)超高圧下^<11>B-NMR測定SmB_6の磁性-非磁性転移は過去の報告から7-10GPaとされており、この臨界圧力近傍での超高圧下NMR測定を実現するため、産業技術総合研究所(竹下直研究員)や千葉大学(小堀洋教授)との共同研究を行った。平成22年度中盤より幾度か千葉大学を訪問し、超高圧の発生を試みたが、残念ながらNMR測定には至っていない。現在もなお、高圧発生技術の改善に取り組んでいる。4f^5-4f^6の電子状態を取り得るサマリウム(Sm)系化合物において磁性-非磁性転移の詳細を調べるため、圧力印加にて磁性-非磁性転移の制御が可能な数少ないSm系化合物であるSmB_6について、系統的な圧力下NMR(核磁気共鳴)測定を行ってきた。・低圧力領域下における^<11>B-NMR測定常圧下、1.5GPaの高圧下において1.5250Kの温度領域にてスピン-格子緩和時間の測定を行うと同時に、測定と解析方法の習得を行った。SmB_6の高圧下NMR測定の報告は過去に殆どない。これまでの報告(X線吸収測定)では、約1GPaの圧力印加によってSmの平均価数が2.6からほぼ3に変化するとの報告があるが、今回の測定の結果、1.5GPaの圧力印加ではスピン相関や絶縁体ギャップの大きさに顕著な変化は現れないことが分かった。現在進行中の2.5GPaでの測定結果を合わせて、7月に開催される国際会議(CSMAG'10)にて報告する予定である。^<11>B-NQR(核四重極共鳴)測定の試行SmB_6における^<11>B-NQR周波数は1MHz以下と非常に低く難しいため、これまでその直接観測に成功した例は無い。しかし、そこからはSm価数に関する情報など非常に有益な情報が得られると期待されるため、本研究課題においてその直接観測を試みている。^<11>B-NMRスペクトル測定より、NQR周波数は約0.57MHzと見積もられた。これは、過去の他グループによる報告に一致している。これまでの幾度かの試みから、約1NHzまでの低周波領域における測定は可能であることが分かった。今後、信号強度を高めるため、測定試料の量を増やすなど工夫を加えて、より低周波領域の測定に臨む。4f^5-4f^6の電子状態を取り得るサマリウム(Sm)を含む化合物において磁性-非磁性転移の詳細を調べるため、SmB_6について系統的な圧力下NMR(核磁気共鳴)測定を行った。常圧と1.5,2.5GPaの圧力下においてスピン-格子緩和時間T_1の温度依存性を測定した結果、特に100K以下で系統的な圧力変化が観測された。そこから絶縁体ギャップの圧力変化を求めたところ、これまで電気抵抗測定からの報告よりも急峻に減少することが分かった。これは、T_1が圧力増加に伴って絶縁体ギャップが減少する効果だけでなく、Sm価数が2価(非磁性)から3価(磁性)への移り変わりも反映するからだと考えられる。NMR測定によってSmB_6の高圧下状態が調べられたのは本研究が初めてであり、その結果は論文と、国際会議(CSMAG'10、ICHE 2010)にて報告した。2)単結晶試料を用いた^<11>B-NMR測定SmB_6の常圧下NMRの報告では、低温領域におけるT_1の値に差異があり、その原因は不明であった。しかし、本研究で単結晶試料の角度を磁場に対して精度よく制御した測定を行ったところ、T_1の値に異方性があることが明確になった。このことが、全角度の平均値が得られる粉末試料測定と、ある特定の角度成分のみが抽出される単結晶試料測定との間に生じた差異の一因であると結論された。3)超高圧下^<11>
KAKENHI-PROJECT-09F09036
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09F09036
サマリウム、イッテルビウムを含む重い電子系化合物における局在-非局在の研究
B-NMR測定SmB_6の磁性-非磁性転移は過去の報告から7-10GPaとされており、この臨界圧力近傍での超高圧下NMR測定を実現するため、産業技術総合研究所(竹下直研究員)や千葉大学(小堀洋教授)との共同研究を行った。平成22年度中盤より幾度か千葉大学を訪問し、超高圧の発生を試みたが、残念ながらNMR測定には至っていない。現在もなお、高圧発生技術の改善に取り組んでいる。
KAKENHI-PROJECT-09F09036
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法廷での法律家の言語使用と通訳由来の言語的変容およびその影響についての研究
要通訳裁判員裁判が公正に行われるためには、原発言と通訳プロダクトの等価性の担保が重要になる。本研究では、裁判で法律家が被告人質問や証人尋問の際に使用する言語表現が通訳を介することによってどう変容するか分析し、その影響について検討した。刑事事件を多く手掛ける弁護士と経験豊かな法廷通訳人の協力を得、アンケート調査や検討会での議論を行い、多くの問題点や解決策を明らかにした。その成果はガイドラインとして1冊の冊子にまとめ上げた。当研究のテーマは裁判で法律家が被告人質問や証人尋問の際に使用する言語表現が通訳を介することによってどう変容するか分析し、その影響について検討することである。これには法律実務家との協働が不可欠であるが、日弁連で司法通訳問題に取り組んでいる弁護士を中心に、複数の法律家と検討会を開催し、通訳の問題について議論することができた。さらに、弁護士の法廷尋問における戦術や法廷通訳に関する意識について問うアンケートを行ったが、これに対しても、多くの回答が得られ、法律家の認識の実態が明らかになった。法律実務家の戦略としての言語使用に関しては、法廷尋問技術に関する教育用のDVDを中心に多くの法律家向けの教材から具体的な例を抽出し、それらの言語表現を使用する意義や法廷尋問における効果について、法律家のグループと検討することができた。また、法律家や通訳者たちとの議論のためのデータは、大学や大学院の通訳コースの学生やプロの通訳者たちから、通訳実験やディスカッションを通して入手することができた。これらのデータを言語学的に分析するとともに、法廷質問・尋問における通訳を介したコミュニケーションに伴う困難性や問題点について、法律家と通訳者が互いの認識を確認しあう機会も持つことができた。以上の研究成果は、応用言語学の国際学会であるAILAの大会(8月、ブリスベン)で口頭発表すると共に、法と言語学会の学会誌(第2号、3月)に論文として発表した。当研究のテーマは裁判で法律家が被告人質問や証人尋問の際に使用する言語表現が通訳を介することによってどう変容するか分析して、その影響について検討することである。これには要通訳裁判の経験が豊富な法律実務家およびプロの法廷通訳人との協働が不可欠である。昨年度に引き続き今年度も、司法通訳問題に取り組んでいる複数の弁護士と、英語と中国語の司法通訳人との検討会を開催し、通訳の問題についてさらに議論を深めることができた。今年度は、法廷での尋問に加え、弁護人接見時の言語使用と通訳問題にも分析対象を広げ、実際の接見現場での典型的な会話の流れをシナリオの形にし、それに基づいて通訳を介することで生じる問題について議論した。また、今年度は分析対象の言語を増やすために、上記検討会から得られた研究の結果について、経験豊富なスペイン語の司法通訳人(法言語学の研究に携わる大学教員でもある)にスペイン語の通訳に関する問題点に関してコメントしてもらった。それにより、上記2言語およびスペイン語の3言語について、法廷での尋問における言語使用の特徴と通訳を介した際の問題点についてまとめることができた。当研究の目的は、法廷尋問における法律家の質問形式が通訳を介することでどのように影響を受けるかを明らかにし、法律家に対して、どのような話し方をすれば発話の効果を維持でき、円滑にコミュニケーションを図れるのか、具体的に提言することである。昨年度構築した法律実務家とプロの司法通訳人との連携体制に基づき、今年度は分析対象を広げるとともに、さらに議論を深めることができたこと、そして、当研究における法律実務家たちの協力を通し、要通訳司法手続きにおけるコミュニケーションが内包する問題についての認識が法律実務家の間でさらに広がったことは、当研究の大きな成果である。今年度は、パイロット研究としての位置づけであった昨年度の研究成果を土台に、多くの法廷質問・尋問および弁護人接見時における言語表現に焦点を当てて分析し、かなりの分量の成果物としてまとめることができ、2年目としては予定通りの成果が上げられた。また、日本語の言い回しを訳出した英語表現について英語母語話者が持つ印象についてアンケートや法廷実験を通して検証することも予定していたが、実験を行うことはできず、数名の英語母語話者へのインタビューによってデータを得るに留まった。研究成果については、国際学会と国内学会での口頭発表と大学論集への投稿をすることができた。当研究のテーマは裁判で法律家が被告人質問や証人尋問の際に使用する言語表現が通訳を介することによってどう変容するか分析するとともに、その影響について検討することである。これには要通訳裁判の経験が豊富な法律実務家およびプロの法廷通訳人との協働が不可欠である。本研究でも、複数の法律実務家とプロの通訳人(英語、中国語、スペイン語)の参加により、それが実現できた。今年度は、最終年度として、昨年度までに行った法廷での尋問の際や弁護人接見時に通訳を介することで生じる問題についての議論と分析結果を総括し、それを1冊のガイドライン『法律家の質問・尋問と通訳要通訳裁判で注意すべきこと』(全74ページ)にまとめた。このガイドラインは、第1部が「法廷での質問・尋問に関する注意」、第2部が「接見時の通訳のあり方」となっているが、第3部として「通訳人の倫理」という章を設け、通訳人の倫理についても法律家の注意を喚起できる内容にした。
KAKENHI-PROJECT-26370514
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26370514
法廷での法律家の言語使用と通訳由来の言語的変容およびその影響についての研究
また、今年度は、韓国から同分野の研究の第一人者であるLee Jieun教授(梨花女子大学)を招へいし、本研究の協力者である法律実務家たちとの研究会(12月2日)を開催して情報交換するとともに、2016年度法と言語学会年次大会(12月3日)に基調講演者として招待し、韓国の司法通訳の研究についての最新情報を提供いただいた。要通訳裁判員裁判が公正に行われるためには、原発言と通訳プロダクトの等価性の担保が重要になる。本研究では、裁判で法律家が被告人質問や証人尋問の際に使用する言語表現が通訳を介することによってどう変容するか分析し、その影響について検討した。刑事事件を多く手掛ける弁護士と経験豊かな法廷通訳人の協力を得、アンケート調査や検討会での議論を行い、多くの問題点や解決策を明らかにした。その成果はガイドラインとして1冊の冊子にまとめ上げた。当研究の目的は、法廷尋問における法律家の質問形式が通訳を介することでどのように影響を受けるかを明らかにし、法律家に対して、どのような話し方をすれば発話の効果を維持でき、円滑にコミュニケーションを図れるのか、具体的に提言することである。今年度、多くの法律実務家の協力を得、今後もその協力体制を維持することができる状況になったことは、大きな成果である。さらに、これまで法律家には全く意識されていなかった、法廷質問・尋問での言い回しが通訳によって変容する可能性について、法律家の関心を喚起することができ、当研究の重要性について理解を得ることができた。今年度いくつか焦点を当てて分析した法廷質問・尋問での言語表現は、非常に典型的なもので、初年度のパイロット研究としては予定通りの成果が上げられた。研究成果についても、予定通り、国際学会での口頭発表と法言語学関連の学会誌への論文投稿という形で公表することができた。過去2年間の研究の成果をまとめたものを法律実務家向けのガイドブックとして印刷製本し、弁護士を中心とする法律実務家と司法通訳人に配布する。その作成に当たっては、これまで協力関係にあった法律実務家や司法通訳人を中心に意見を徴収し、必要に応じてさらなる検討会を開催し、ガイドブックに盛り込む内容の修正、補充を行う。また、当研究と同分野で法と言語の問題を研究している韓国の研究者を招き、12月に開催予定である「法と言語学会」の年次大会において、互いの研究成果を披露し、研究の次のステップに向けての議論をおこなう機会を設ける予定である。その他の研究成果公表については、エジンバラ(イギリス)で開催されるコミュニティ通訳翻訳をテーマとする国際学会での口頭発表と、国内の関連分野の学会誌(『法と言語』第3号)への論文投稿を予定している。法言語学今年度行ったパイロット研究をもとに、さらに多くの法廷質問・尋問での言語表現を取り上げ、通訳実験や通訳者と法律家を交えてのでディスカッションを行っていく。さらに次のステップとして、実際の外国語話者が法廷に立った場合にどのような現象が起きるかを検証する。これには英語のネイティブ・スピーカーに参加してもらう。法律家の日本語の言い回しを訳出した英語表現について、どのような印象を受けるか、またはどのような反応をするかを確認するために、アンケート調査や実験を通してデータを収集する。実験は、訳出が困難と思われる質問表現を盛り込んだ小シナリオを作成し、ネイティブ・スピーカーに被告人や証人の役をやってもらい、どのような反応が返ってくるかを検証する。
KAKENHI-PROJECT-26370514
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26370514
ヒト膠芽腫における新規アポトーシス抑制因子の発現と放射線感受性に関する研究
脳腫瘍の中で、もっとも予後不良である膠芽腫の放射線に対する抵抗性の解析を行うべく、放射線治療が施行された膠芽腫患者の組織を用いて、アポトーシス抑制因子であるSurvivinに着目し実駿を行った。新規アポトーシス抑制因子であるSurvivinは、腫瘍および胎児組織のみに発現するという特徴を持ち、将来的に分子標的治療の有用な標的蛋白として注目されている。またcaspaseを介したアポトーシス経路を抑制する事により放射線抵抗性と関連していると考えられている。今回腫瘍組織のSurvivin発現率と、術後に放射線治療を施行した症例での予後との相関に関し解析した。対象は1982年2005年に群馬大学附属病院・国立高崎病院・前橋赤十字病院で放射線治療が施行された膠芽腫患者66例で、観察期間は中央値12ケ月、放射線治療の総線量は平均60Gyであった。Survivinの発現は免疫組織化学的手法を用い、核および細胞質内の発現を解析した。発現率および発現強度を用い下記のごとく0-3段階でのSurvivin Scoreで評価した(0:発現なし、1:発現率が50%未満、2:発現率50%以上で強度が弱から中、3:発現率50%以上で強度が強)。核内Survivin score:3の12症例での3年生存率は0%であり、Survivin score:2以下の54症例での11.6%に比べ、有意に予後不良であった(P=0.0003).細胞質内のSurvivin scoreでは予後との相関は認められなかった。また広範囲の摘出術を施行した症例(P=0.02)や、化学療法を施行した症例(P=0.04)で有意に予後良好であった。多変量解析では核内でのSurvivin scoreが、最も強い予後不良因子であった。膠芽腫の放射線治療において核内Survivinは予後不良因子であり、放射線抵抗性である可能性が示唆された。脳腫瘍の中で、もっとも予後不良である膠芽腫の放射線に対する抵抗性の解析を行うべく、放射線治療が施行された膠芽腫患者の組織を用いて、アポトーシス抑制因子であるSurvivinに着目し実駿を行った。新規アポトーシス抑制因子であるSurvivinは、腫瘍および胎児組織のみに発現するという特徴を持ち、将来的に分子標的治療の有用な標的蛋白として注目されている。またcaspaseを介したアポトーシス経路を抑制する事により放射線抵抗性と関連していると考えられている。今回腫瘍組織のSurvivin発現率と、術後に放射線治療を施行した症例での予後との相関に関し解析した。対象は1982年2005年に群馬大学附属病院・国立高崎病院・前橋赤十字病院で放射線治療が施行された膠芽腫患者66例で、観察期間は中央値12ケ月、放射線治療の総線量は平均60Gyであった。Survivinの発現は免疫組織化学的手法を用い、核および細胞質内の発現を解析した。発現率および発現強度を用い下記のごとく0-3段階でのSurvivin Scoreで評価した(0:発現なし、1:発現率が50%未満、2:発現率50%以上で強度が弱から中、3:発現率50%以上で強度が強)。核内Survivin score:3の12症例での3年生存率は0%であり、Survivin score:2以下の54症例での11.6%に比べ、有意に予後不良であった(P=0.0003).細胞質内のSurvivin scoreでは予後との相関は認められなかった。また広範囲の摘出術を施行した症例(P=0.02)や、化学療法を施行した症例(P=0.04)で有意に予後良好であった。多変量解析では核内でのSurvivin scoreが、最も強い予後不良因子であった。膠芽腫の放射線治療において核内Survivinは予後不良因子であり、放射線抵抗性である可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-18790870
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18790870
使命に基づく総合的なソフトウェア信頼性評価法に関する研究
ソフトウェア信頼度成長モデル(SRGM)を構築する際の考え方を取り入れて,ソフトウェアの稼動中に不安全状態に陥ることを考慮した安全性評価モデルを,マルコフ過程を用いて構築した.特に,動作中の不安全状態は,システムの安全監視プログラムによって認知できる状況を想定した.このモデルから,「任意の時刻でソフトウェアが不安全な状態には陥っていない確率」を表すソフトウェア安全度を導出した.これにより,ソフトウェアの安全性管理を,科学的アプローチにより実施できる可能性を示唆した.また,従来のSRGMと同様に,デバッグ回数とソフトウェア安全性評価の関係を把握するモデルも提案した.また,前年度議論したソフトウェア可用性評価モデルをさらに発展させて,以下の研究成果を得た.1.2つのハードウェアシステムを1つのソフトウェアシステムで制御している2ユニットコンピュータシステムに対して,ソフトウェアの信頼度成長過程を考慮したシステムの可用性評価モデルを構築した.特に,「単位時間当りに処理可能な計算量の平均値」と定義される計算アベイラビリティという処理性の評価尺度を導出し,ソフトウェアの信頼度成長過程とシステムの処理性能の関係について議論した.2.Unixシステムなどの複数のユーザが同時に利用可能なシステムを想定して,ソフトウェアに対するデバッグ回数および同時に使用しているユーザ数とソフトウェア可用性評価の関係を把握するモデルを提案した.3.本モデルに基づいて,品質評価基準にソフトウェア・アベイラビリティを導入したソフトウェアの最適リリース問題について議論した.4.フォールト修正困難度の上昇傾向を,テストチームのデバッグ能力を表している完全デバッグ率に反映させて,ソフトウェア可用性評価モデルを再構築した.動作・不動作状態を繰り返すソフトウェアの時間的・確率的挙動を,マルコフ過程として捉えて状態遷移図を描いた.このとき,デバッグ作業によるソフトウェア信頼度成長過程,フォールト修正困難度の上昇傾向および不完全デバッグ環境を考慮した.マルコフ解析を実施して,まず(1)瞬間ソフトウェア・アベイラビリティ,(2)平均ソフトウェア・アベイラビリティ,(3)区間ソフトウェア信頼度,および(4)条件付き平均利用可能時間の4つのソフトウェア可用性評価尺度を導出した.これらは,それぞれ(1)任意の時刻においてソフトウェアが動作可能である確率,(2)稼働時間区間に対するソフトウェアが動作可能である時間の割合,(3)任意の時間区間で継続的にソフトウェアが利用可能である確率,および(4)ソフトウェアが利用,可能であるときのその後の利用可能時間の平均,と定義される.次に以下の状況を考慮した.ユーザが認知するソフトウェア故障は,使用中にシステムダウンとなったとき,あるいはユーザが使用したいときにシステムが利用できないときのいずれかである.そこで,先の状態遷移図を基に,ユーザの使用/不使用状況を考慮した状態遷移図を再描画した.この図を元にマルコフ解析を実施し,(5)使用中の失望確率,および(6)修復中の失望確率という新たな2つのソフトウェア可用性評価尺度を導出した.これらは,それぞれ(5)ある時刻にソフトウェアシステムを使用しているとき,その後ユーザの使用が中断される確率,および(6)ある時刻にソフトウェアが修復中であるとき,その後ユーザ使用が発生したときにソフトウェアが使用できない確率,と定義される.上記6つの評価尺度を用いたソフトウェアの可用性解析を実施し,本評価手法の妥当性・有効性を検討した.ソフトウェア信頼度成長モデル(SRGM)を構築する際の考え方を取り入れて,ソフトウェアの稼動中に不安全状態に陥ることを考慮した安全性評価モデルを,マルコフ過程を用いて構築した.特に,動作中の不安全状態は,システムの安全監視プログラムによって認知できる状況を想定した.このモデルから,「任意の時刻でソフトウェアが不安全な状態には陥っていない確率」を表すソフトウェア安全度を導出した.これにより,ソフトウェアの安全性管理を,科学的アプローチにより実施できる可能性を示唆した.また,従来のSRGMと同様に,デバッグ回数とソフトウェア安全性評価の関係を把握するモデルも提案した.また,前年度議論したソフトウェア可用性評価モデルをさらに発展させて,以下の研究成果を得た.1.2つのハードウェアシステムを1つのソフトウェアシステムで制御している2ユニットコンピュータシステムに対して,ソフトウェアの信頼度成長過程を考慮したシステムの可用性評価モデルを構築した.特に,「単位時間当りに処理可能な計算量の平均値」と定義される計算アベイラビリティという処理性の評価尺度を導出し,ソフトウェアの信頼度成長過程とシステムの処理性能の関係について議論した.2.Unixシステムなどの複数のユーザが同時に利用可能なシステムを想定して,ソフトウェアに対するデバッグ回数および同時に使用しているユーザ数とソフトウェア可用性評価の関係を把握するモデルを提案した.3.本モデルに基づいて,品質評価基準にソフトウェア・アベイラビリティを導入したソフトウェアの最適リリース問題について議論した.4.フォールト修正困難度の上昇傾向を,テストチームのデバッグ能力を表している完全デバッグ率に反映させて,ソフトウェア可用性評価モデルを再構築した.
KAKENHI-PROJECT-13780365
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13780365
中国古典戯曲総合データベースの発展的研究
中国古典戯曲全文データベース・古典戯曲関連用語データベース・周辺資料データベースおよび曲律分析システムなどを包含する「中国古典戯曲総合データベース」の実現に向け、データの整備および分析理論・手法の考究とシステムの開発を進めた。本研究期間内にはMediaWikiに基づくデータベースシステムを初期的に完成させ、各種文献のデジタル化・校訂・整理を進めるとともに、それらをデータベースに登録するスキーマを策定した。また『中原音韻』テーブルに基づく曲韻表示システムを作成し、中国古典戯曲総合データベースを初期的に公開した。中国古典戯曲全文データベース・古典戯曲関連用語データベース・周辺資料データベースおよび曲律分析システムなどを包含する「中国古典戯曲総合データベース」の実現に向け、データの整備および分析理論・手法の考究とシステムの開発を進めた。本研究期間内にはMediaWikiに基づくデータベースシステムを初期的に完成させ、各種文献のデジタル化・校訂・整理を進めるとともに、それらをデータベースに登録するスキーマを策定した。また『中原音韻』テーブルに基づく曲韻表示システムを作成し、中国古典戯曲総合データベースを初期的に公開した。(1)曲律分析システムの改善・実用化音韻処理テーブルを構築するため、既に入力済みの『中原音韻』の校正を完了させ、既存の『広韻』テキストデータに基づく音韻テーブルの作成作業を進めた。分析システムについては、研究分担者・師が、パターンマッチングによるテキスト分析手法の開発を進めた。(2)戯曲全文データの拡充既に入力済みの『六十種曲』・『元曲選』等を試験的に校正したところ、本文の入力精度が高く校正を要しないことが判明した。このため、研究資金をテキストデータの入力や必要な文献資料・機材の購入により多く充てることとし、新規に『盛明雑劇』・『同二集』・『雑劇三集』および『風月錦嚢』を入力した。これと平行して、入力済みの弋陽腔伝奇十種の中から、優先的に翻刻作業を進める四種のテキストを選定し、校訂作業に着手した。(3)戯曲用語データベースの設計・構築『劇説』の校注翻訳作業を通じて戯曲用語解説の作成・集積を進めるとともに、『詩詞曲語辞匯釈』を電子テキスト化した。また、各種戯曲用語辞典・白話語彙辞書の見出し語の一覧をデータベース化することで、著作権を侵害しない範囲で本データベースの学術的利用価値を高められるとの認識が得られたため、それら辞典・辞書類のリストアップも進めた。データベースのアプリケーションには、検討の結果、Wikipedia等で使われるMediaWikiが、ポピュラーなインターフェイスで、かつMySQL+Perlによって構築されていることから、採用が妥当であるとの結論を得た。(4)周辺資料全文データの統一フォーマットの開発研究集会における検討の結果、フォーマットの開発にあたり、まず、サンプルとなるテキストデータが必要であるとの結論が得られたため、まず、入力済みの清代の筆記小説『堅瓠集』の校訂作業を進めた。以上を通じて、研究基盤の確立という、初年度における目標を達成したものと考える。(1)曲律分析システムの改善・実用化前年度に校訂を完了した『中原音韻』および既存の『広韻』テキストデータに基づき、音韻テーブルの作成作業を進め、テーブルのスキーマを完成させ、初期的にテーブルを完成させた。音韻分析システムについては、研究分担者・師が、ウェブ公開を睨んだ実用的システムの開発に着手した。(2)戯曲全文データの拡充前年度までに電子テキスト化したデータのうち、データのフォーマットや翻刻に遺漏が見られる『孤本元明雑劇』・『盛明雑劇』について、校訂作業を進めた。これと平行して、弋陽腔伝奇の校訂作業を進め、異体字の置き換え・曲牌の補完などに関する統一方針を策定した。。(3)戯曲用語データベースの設計・構築初年度の研究を通じて確立された、各種戯曲用語辞典・白話語彙辞書の見出し語一覧のデータベース化という方針に基づき、『近代漢語大詞典』・『中国曲学大辞典』等の見出し語一覧の電子テキストを進めた。下半期においては、独自のサーバを立ち上げ、MediaWikiによる戯曲用語データベースのプロトタイプを稼働させ、研究メンバーによるシステムの評価・改善に着手した。(4)周辺資料全文データ清代の筆記小説『堅瓠集』について、初期的な校訂作業を完了し、テキストデータを仮公開した。以上を通じて、最終年度の成果報告およびデータベースの公開に向けた研究の深化という本年度の目標は達成されたものと考える。研究最終年度にあたる2010年度には、最終的な成果の公表に向けた研究作業を進めた。(1)曲律分析システムの改善・実用化前年度に引き続き、研究分担者・山下が『中原音韻』に基づく音韻処理用テーブルの改善を進め、下半期において研究分担者・師がMediaWiki上で動作する音韻情報表示プログラムを作成した。(2)戯曲全文データの拡充新たに『元曲選外篇』を委託入力し、『元曲選』・『孤本元明雑劇』・『六十種曲』などについて、データベース登録に向け、異体字の統一・カテゴリ情報の付与等、最終的整形作業を行った。また、明代、金陵富春堂本によって刊行された、弋陽腔系とされる伝奇の校訂作業を進め、『白袍記』・『東窓記』・『韓湘子昇仙記』三種の翻刻本を完成させた。(3)データベースの設計・構築データベースシステムに採用したMediaWikiの諸機能とユーザビリティを検討し、データベースのスキーマおよび戯曲全文・辞書項目・目録など各種データの登録フォーマットを決定した。
KAKENHI-PROJECT-20520338
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20520338
中国古典戯曲総合データベースの発展的研究
(4)データの登録と成果の公開以上の作業を通じて解決された課題等について、論文・口頭発表を通じて公表した。また、データベースへのデータ登録を進め、中国古典戯曲総合データベースを初期的に一般公開した。以上を通じて、中国古典戯曲総合データベースの一般公開と拡充、およびその作業を通じた情報工学と人文学の融合的研究の展開という本研究の初期の目的は達成されたと考える。
KAKENHI-PROJECT-20520338
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20520338
アジアにおける国際法の受容過程
20年度において、申請時の研究計画通りに、東アジアにおける国際法受容過程をめぐり研究を進めていた。昨年度の研究実績を踏まえた上で、そのうち最も基礎に当たる部分--戦争観の受容過程に重点を据えて考察を展開していた。本研究は、幕末から明治末期にかけて日本に舶来した欧米国際法書物に示された戦争観を整理した上で、日本国際法学における戦争観の形成過程を辿り、十九世紀末頃から二十世紀初頭にかけての戦時国際法研究の概況を解明した。取り上げる人物は、東京大学、京都大学、早稲田大学、一橋大学などで国際法講座を担当する専門国際法学者-有賀長雄、高橋作衛、中村進午、寺尾亨、千賀鶴太郎の五人-を中心に据えた一方、大学や専門学校で国際法を教える専任教師ではないが、国際法を専攻したことがあり、かつ国際法的戦争観に関する研究書や学術論文を公刊した広義の国際法学者も視野に入れた。研究素材としては、当時の国際法教科書・専門研究書・講義録、そして国際法関連の学会誌や専門誌に掲載された学術論文・時論・講演などを網羅的に取り上げた。暫定的結論として、欧米からの戦時国際法知識の受容は、国家政策に奉仕し、緊迫した国際情勢に活用しなければならないという形而下なる目的に動機付けられることが多く、実用主義的な態度が顕著に現れた。他方、1890年代を境として、輸入された欧米国際法学的戦争観に大きな転換が見られる。それ以前に翻訳された国際法体系書は、戦争原因追究論に立脚する形で説いているものが多かったが、それ以降は、原因不問論や戦争法外視の主張が主流となった。しかし、欧米から受容した国際法知識は、日本の国際法学者の学説形成において重大な意義を有するにもかかわらず、彼等の法観念を完全に規定したものではなかった。専門国際法学者と広義の国際法学者は、自国の状況に応じて欧米学説を解釈し修正を施しながら自らの学説を練り上げていくことが多かったのである。19年度において、計画通りに、欧米国際法に対する日中両国の受容姿勢の全体像を把握するための基本的な枠組みを築いてみた。ただし、国際法のすべての分野にわたって考察を行うのが無理なので、その最も基礎に当たる部分-戦争観-の受容過程に重点を据えて研究を進めていた。西洋については、19世紀国際法大家の著作を中心に読み漁り、当時主流的地位を占めたいわゆる法実証主義と無差別戦争観の実相を探り出してみた。日本については、幕末からの外交文書、政府要人の回顧録、在野知識人や国際法学者の著作を渉猟した。それに基づき、彼等が抱いた戦争観を六つの基準で類型化したうえで、主体別の戦争観の異同、時期別の戦争観の変遷、国際法観と国際秩序観ないし文明観との関連性、戦争観における二重基準などについて考察を行ってみた。中国については、華夷思想の下での「征討戦争」観から、19世紀の「西洋の衝撃」の下での平等な国同士間の戦争観への転換過程に重心をおき、歴史的分析を行った。中国の伝統的な戦争観は、「文明国による非文明国の征服や開化」という点において、欧米における植民地主義の論理構造に通じる側面をもつことに発見した。暫定的な結論として、明治日本は基本的に欧米の無差別戦争論を受け入れたが、それが、帝国日本へと変身する契機ともなった。清末中国は、伝統的戦争観を維持しようとするだけに、そこにある自身の位置づけが逆転されたため、辛い思いをした。日中両国の受容過程における差異の発生原因は、タイムラグの問題に尽きるのではなく、むしろ両国の知的体質や、国際秩序のあり方に対する基本発想の違いにあるのではないかと思われる。本研究は、欧米、中国、日本の三つのパースペクティブの相互交錯の中で、戦争観の問題を、主体別、時期別、国別に考察してみるものとして、この分野での草分けの作業と言えるだろうと考えている。20年度において、申請時の研究計画通りに、東アジアにおける国際法受容過程をめぐり研究を進めていた。昨年度の研究実績を踏まえた上で、そのうち最も基礎に当たる部分--戦争観の受容過程に重点を据えて考察を展開していた。本研究は、幕末から明治末期にかけて日本に舶来した欧米国際法書物に示された戦争観を整理した上で、日本国際法学における戦争観の形成過程を辿り、十九世紀末頃から二十世紀初頭にかけての戦時国際法研究の概況を解明した。取り上げる人物は、東京大学、京都大学、早稲田大学、一橋大学などで国際法講座を担当する専門国際法学者-有賀長雄、高橋作衛、中村進午、寺尾亨、千賀鶴太郎の五人-を中心に据えた一方、大学や専門学校で国際法を教える専任教師ではないが、国際法を専攻したことがあり、かつ国際法的戦争観に関する研究書や学術論文を公刊した広義の国際法学者も視野に入れた。研究素材としては、当時の国際法教科書・専門研究書・講義録、そして国際法関連の学会誌や専門誌に掲載された学術論文・時論・講演などを網羅的に取り上げた。暫定的結論として、欧米からの戦時国際法知識の受容は、国家政策に奉仕し、緊迫した国際情勢に活用しなければならないという形而下なる目的に動機付けられることが多く、実用主義的な態度が顕著に現れた。他方、1890年代を境として、輸入された欧米国際法学的戦争観に大きな転換が見られる。
KAKENHI-PROJECT-07J07832
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07J07832
アジアにおける国際法の受容過程
それ以前に翻訳された国際法体系書は、戦争原因追究論に立脚する形で説いているものが多かったが、それ以降は、原因不問論や戦争法外視の主張が主流となった。しかし、欧米から受容した国際法知識は、日本の国際法学者の学説形成において重大な意義を有するにもかかわらず、彼等の法観念を完全に規定したものではなかった。専門国際法学者と広義の国際法学者は、自国の状況に応じて欧米学説を解釈し修正を施しながら自らの学説を練り上げていくことが多かったのである。
KAKENHI-PROJECT-07J07832
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07J07832
原核生物の細胞死誘導と抑制因子の構造生物学的及び生化学的解析
プラスミドDNAはバクテリア宿主の中で維持保守する機構を有し、toxinとantitoxinと呼ばれる二種類の蛋白質で制御されている。近年のバクテリアゲノムの網羅的研究により、その宿主染色体上にもこれらの遺伝子セットが数種存在することが明らかとなってきたが、様々なtoxinのバクテリアへの毒性とそのantitoxinによる不活性化機構はいまだ不明な点が多い。申請者は、大腸菌の遺伝子産物の一つであるYoeB(toxin)とYefM(antitoxin)の分子機構に注目し研究を進めた。大腸菌で共発現、共精製を経て得られたYoeB-YefM蛋白質複合体の結晶化に成功し、2.0Å分解能で立体構造解析した。また生化学的実験の結果から、YoeBは実際にRNase活性を有し、プリン塩基の3'側のRNA鎖を切断することが明らかとなった。さらに立体構造に基づく変異体YoeBの作製によって、RNA切断に関与するYoeBの活性残基を特定することができた。これらの一連の解析によって観察されたYefMによるYoeBのRNase活性の阻害とは、YoeBの非活性型コンフォメーションへの誘導であると結論づけることができた。この結果から、YoeBがその非活性型へ誘導不可能と考えられる変異体を作製することができた。実際に、このYoeB変異体の発現は、YefM発現下でもバクテリアの生育を阻害し続けた。これは、一連の解析によって得られた結果を実証するものであり、toxinとantitoxinを利用した細胞死誘導とドラッグデザインへの可能性を示唆するものである。プラスミドDNAはバクテリア宿主の中で維持保守されるためのシステムを持っており、addiction modulesと呼ばれるtoxinとantitoxinの二種類の蛋白質で制御されている。近年のバクテリアゲノムの網羅的研究によって、その宿主染色体上にもtoxinとantitoxinの遺伝子セットが数種存在することが明らかとなってきた。しかしながら、様々なtoxinのバクテリアへの毒性とそのantitoxinによる不活性化機構はいまだ不明な点が多い。申請者は、大腸菌の遺伝子産物の一つであるYoeB(toxin)とYefM(antitoxin)の分子機構の研究を進めた。大腸菌で共発現、共精製を経て得られたYoeB-YefM蛋白質複合体の結晶化に成功し、2.0Å分解能で立体構造解析した。YoeB-YefM複合体は1:2のヘテロ三量体を形成していた。YoeBはRNase Saなどに類似した構造を持っているが、その予測される活性部位の構造は大きく異なっていた。YefMは新規構造であり、その非対称二量体構造の一方のC末端ペプチドで排他的にYoeBを包み込むように複合体を形成していた。生化学的実験の結果から、YoeBは実際にRNase活性を有し、プリン塩基の3'側のRNA鎖を切断することが明らかとなった。また、立体構造に基づく変異体YoeBの作製によって、RNA切断に関与するYoeBの活性残基を特定することができた。さらにYoeB単独の構造解析によって、YoeB活性部位のコンフォメーション変化を誘導するYefMの阻害機構を解明することができた。これらの構造的情報に基づいて、YoeBのプリン塩基の認識とそのRNA鎖切断機構を考察することができた。プラスミドDNAはバクテリア宿主の中で維持保守する機構を有し、toxinとantitoxinと呼ばれる二種類の蛋白質で制御されている。近年のバクテリアゲノムの網羅的研究により、その宿主染色体上にもこれらの遺伝子セットが数種存在することが明らかとなってきたが、様々なtoxinのバクテリアへの毒性とそのantitoxinによる不活性化機構はいまだ不明な点が多い。申請者は、大腸菌の遺伝子産物の一つであるYoeB(toxin)とYefM(antitoxin)の分子機構に注目し研究を進めた。大腸菌で共発現、共精製を経て得られたYoeB-YefM蛋白質複合体の結晶化に成功し、2.0Å分解能で立体構造解析した。また生化学的実験の結果から、YoeBは実際にRNase活性を有し、プリン塩基の3'側のRNA鎖を切断することが明らかとなった。さらに立体構造に基づく変異体YoeBの作製によって、RNA切断に関与するYoeBの活性残基を特定することができた。これらの一連の解析によって観察されたYefMによるYoeBのRNase活性の阻害とは、YoeBの非活性型コンフォメーションへの誘導であると結論づけることができた。この結果から、YoeBがその非活性型へ誘導不可能と考えられる変異体を作製することができた。実際に、このYoeB変異体の発現は、YefM発現下でもバクテリアの生育を阻害し続けた。これは、一連の解析によって得られた結果を実証するものであり、toxinとantitoxinを利用した細胞死誘導とドラッグデザインへの可能性を示唆するものである。
KAKENHI-PROJECT-17770101
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17770101
ロジウム(II)-イリド複合体を反応性分子素子とする連続型分子骨格構築法の開発
本年度は、ロジウム(II)-カルボニルイリド複合体を反応性分子素子とする連続型分子骨格構築法の開発を検討し、以下の成果を得た。1.N-フタロイルアミノ酸を架橋配位子として組み込んだロジウム(II)カルボキシラート錯体を用い、α-ジアゾ-β-ケトエステルをカルボニルイリド前駆体とする不斉1,3-双極付加環化反応を検討した。その結果、フタルイミド基の水素原子を塩素原子で置換した錯体Rh_2(S-TCPTTL)_4を触媒に用いると種々のフェニルアセチレンやエトキシアセチレンを求双極子剤とする分子間付加環化反応において極めて高いエナンチオ選択性(最高98%ee)を実現できることが分かった。本反応はスチレン誘導体あるいはN-メチルインドールを求双極子剤とする不斉1,3-双極付加環化反応にも適用可能であり、完璧なエキソ選択性および極めて高いエナンチオ選択性(最高99%ee)で付加環化体が得られることを見出した。2.エステルカルボニルイリドの1,3-双極付加環化反応を機軸とするザラゴジン酸Cの第二世代合成で得られた知見を基に、分子内にケトカルボニル基をもつα-ジアゾエステルのカルボニルイリド形成を経る1,3-双極付加環化反応を鍵反応とするザラゴジン酸炭素類縁体の合成を達成した。また、α-ジアゾケトンのカルボニルイリド形成を経る分子内1,3-双極付加環化反応を鍵反応とするポリガロリド類のコア構造構築を達成した。本年度は、ロジウム(II)-カルボニルイリド複合体を反応性分子素子とする連続型分子骨格構築法の開発を検討し、以下の成果を得た。1.N-フタロイルアミノ酸を架橋配位子として組み込んだロジウム(II)カルボキシラート錯体を用い、α-ジアゾ-β-ケトエステルをカルボニルイリド前駆体とする不斉1,3-双極付加環化反応を検討した。その結果、フタルイミド基の水素原子を塩素原子で置換した錯体Rh_2(S-TCPTTL)_4を触媒に用いると種々のフェニルアセチレンやエトキシアセチレンを求双極子剤とする分子間付加環化反応において極めて高いエナンチオ選択性(最高98%ee)を実現できることが分かった。本反応はスチレン誘導体あるいはN-メチルインドールを求双極子剤とする不斉1,3-双極付加環化反応にも適用可能であり、完璧なエキソ選択性および極めて高いエナンチオ選択性(最高99%ee)で付加環化体が得られることを見出した。2.エステルカルボニルイリドの1,3-双極付加環化反応を機軸とするザラゴジン酸Cの第二世代合成で得られた知見を基に、分子内にケトカルボニル基をもつα-ジアゾエステルのカルボニルイリド形成を経る1,3-双極付加環化反応を鍵反応とするザラゴジン酸炭素類縁体の合成を達成した。また、α-ジアゾケトンのカルボニルイリド形成を経る分子内1,3-双極付加環化反応を鍵反応とするポリガロリド類のコア構造構築を達成した。
KAKENHI-PROJECT-17035002
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17035002
レアメタルの回収効率性に関する実態調査とモデル分析
レアメタルを使用している小型家電を回収する福岡県の広域モデル事業を調査し、特にボックス回収が行われている自治体の現場を数多く視察した。回収量を増やすには、魅力的な政策と工夫が必要である。一方、資源循環を考慮したミクロ経済学の意思決定モデルを構築した。消費者がボックス回収とピックアップ回収を選択できる場合、前者の面倒さが高まると、通常のごみ料金が高くなったとしてもボックス回収分は増えない。第2年度かつ最終年度である平成24年度は、(1)使用済み小型家電の自主的な回収モデル事業の調査、(2)離島におけるごみ処理体制の調査、(3)これまでの調査の成果を踏まえた記録や論文の発表、(4)学会等での口頭発表、などを行った。(1)に関しては、前年度に調査した国・福岡県の広域回収モデル事業に引き続き、香川県丸亀市における自主予算に基づくボックス回収の取り組みを調査した(クリーンセンター丸亀での担当者との意見交換、市内5カ所のボックス内の開示)。また、東京都練馬区の豊玉リサイクルセンターでの(同区で実施されている)ボックス回収に関するヒアリングや、関東地区(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の家電量販店3社が連携する店頭回収に関するヒアリングも行った。(2)に関しては、前年度に調査した長崎県対馬市と鹿児島県屋久島町における小型家電回収をきっかけに、鹿児島県の種子島で同種の回収事業ができるかどうか、西之表市と南種子町におけるごみの分別と処理の実態を調査した。中種子町を含む3市町合併構想の破談、および新たなごみ処理施設の建設をめぐって紛糾した経緯などから、現在一つの離島で2つのごみ処理体制が存在する。そのような状況下で、資源循環の効率性を高めるような方策を追究する(継続中)。(3)については、前年度の現地調査の詳細とそれに基づく論考を、紀要『西南学院大学経済学論集』に2部作として発表した。また、ミクロ経済学を利用したモデル分析の成果を、学会での講演論文集の形で公表した。(4)については、調査の成果に基づいた政策的考察および経済モデル分析を、国際シンポジウム、廃棄物資源循環学会、産学官の連絡会議、ワークショップなどの、聴衆が異なるいくつかの場において口頭発表した。レアメタルを使用している小型家電を回収する福岡県の広域モデル事業を調査し、特にボックス回収が行われている自治体の現場を数多く視察した。回収量を増やすには、魅力的な政策と工夫が必要である。一方、資源循環を考慮したミクロ経済学の意思決定モデルを構築した。消費者がボックス回収とピックアップ回収を選択できる場合、前者の面倒さが高まると、通常のごみ料金が高くなったとしてもボックス回収分は増えない。第1年度である平成23年度は、(1)国・福岡県による使用済み小型家電の広域回収モデル事業の調査、(2)民間企業(ソニー(株))と地元自治体(福岡市、北九州市)による小型電子機器の回収モデル事業の調査、(3)東日本大震災に伴う災害廃棄物の回収・分別の調査とその関連付け、(4)理論モデルの構築と学会等での発表、などを行った。(1)については、先駆的にモデル事業に取り組んでいた福岡県筑後市・大木町・大牟田市を皮切りに、福岡県久留米市・田川市・新宮町、佐賀県基山町、長崎県対馬市・島原市、熊本県熊本市・八代市、宮崎県宮崎市、鹿児島県屋久島町、東京都江東区・八王子市(平成23年度は福岡県の事業に編入)を調査した。特に、各所に回収ボックスを設置している12の自治体での取り組みに注目し、各地に出向き担当者と意見交換し、実際にボックスに入っているものを見せていただき、集積施設などを細かに視察した。(2)については、自治体担当者との対面およびメールでの意見交換に加えて、商業施設に設置されたすべての回収ボックス(98カ所)の視察を実施した。(3)に関しては一見関係がなさそうであるが、対象物を速やかに回収・分別し一定期間保存のうえ、できるだけ再資源化しなければならない点で、共通する課題が多いと考える。2011年8月2426日に、宮城県庁・仙台市役所・東北大学でヒアリングを行い、同県気仙沼市・南三陸町・石巻市・仙台市の仮置き場を視察した。また、2012年3月1216日に、同県女川町・石巻市・東松島市・松島町・塩竈市・多賀城市・名取市の仮置き場を視察した。(4)に関しては、モデル分析と上記視察の暫定的な成果を、環境経済・政策学会、廃棄物資源循環学会、東アジアの環境問題の国際シンポジウムなどで口頭発表した。また、論文や活動記録を紙面にて発表した。国・福岡県による使用済み小型家電の広域回収モデル事業の調査については、特にボックスを設置する回収方法に注目したうえで、すべての実施自治体を訪問することができた。これは、あらかじめ福岡県環境部の職員と協力関係を築いていたことが大きく、事前の先方との意思疎通がうまくいった。もちろん、ヒアリング項目の作成・送付や回収物を見たいボックスの選定は自分で行ったが、調査を重ねるにしたがって他の自治体での取り組みを紹介できるようになり、お互いに得ることが多くなった。また、このような調査を進める中で、自治体によってはボックス回収だけではなくピックアップ回収(不燃ごみと同じ袋に入れる、ごみの分別回収時に別の箱を用意する、など)を併用しているところも知り、考察の幅を広げることができた。例えば、ピックアップがメインでボックスはサブ(市民の意識向上の一手段)のところ、ボックスでやっていたがほとんど集まらないので最近ピックアップもやり始めたところなどが存在する。
KAKENHI-PROJECT-23730263
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レアメタルの回収効率性に関する実態調査とモデル分析
自治体がそれぞれ抱えている固有の事情や回収の進捗に応じて、取り組みの内容を変えていく点は実にダイナミックであり、理論的に思考し政策提言をする上で大変勉強になる体験である。一方、モデル分析や調査の成果の発表に関して、少しずつではあるが進めることができた。当初の研究実施計画では、第1年度に研究発表することを想定していなかったが、以前論文でふれた、グッズとバッズの論理的整理と包括的な取り扱いに関して数理分析を一歩進め、発表へとつなげることができた。また、進行中のもう一つの研究課題(経済学と環境システム工学の文理融合研究)と並行する形で、廃棄物の処理に対する個人の主観が経済的成果にどのように影響を及ぼすかについて理論モデルを試案し、発表している。第2年度である平成24年度は、(1)前年度の調査内容の整理と論文化、(2)今年度実施されている回収モデル事業のフォローアップおよび新規調査、(3)理論的考察の追究および回収量の要因分析の試み、などに従事する。(1)に関しては、回収ボックスの写真を含め、蓄積された調査データが膨大であるため(視察したボックスは290カ所)、これまで取り組んでいた整理作業をスピードアップし、実際の政策運営に役立つような記録、および回収の量と質に関する実証研究論文((3)と関連)に仕上げて公表する。(2)については現在、小型家電とそれに内蔵されている希少資源の回収・再資源化を促進する法律が審議に入っているため、過去にモデル事業を実施した自治体の多くが継続することはもちろん(福岡県の広域回収では参加した全自治体が自主財源で継続)、新たに回収に取り組む自治体も増えてきている。したがって、ユニークな新規の回収事業についても、可能な範囲で調査する。(3)に関しては、現在進めている理論的考察とともに、(1)の過程で整理されたデータをもとに、ボックスによる回収量にどのような要因が効いているかを定性的・定量的に分析する。ボックス毎の回収量を記録している自治体とそうでない自治体があるので、すべての実態を検証できるわけではないが、一部の自治体の協力を得てケーススタディを行うだけでも価値がある。さらに、研究代表者が中心となって平成23年度に立ち上げた、「福岡環境学際フォーラム」でともに活動しているメンバーからのアドバイスを参考に、発表論文の質を高めていく。同フォーラムには多くの分野の研究者が集まっており、レアメタルの効率的回収や災害廃棄物の適正処理についても、引き続き視察や議論を行う。その成果としての論文等を、各種学会や紙面において随時発表する。現地調査と研究発表に要する旅費に440,000円、文具・PC関連の消耗品や研究関連書籍などの物品費に200,000円、資料・成果物の印刷・複写・郵送などその他費目に100,000円を支出する予定である。なお、このうち40,000円分は、前年度からの繰り越し分である。
KAKENHI-PROJECT-23730263
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ステビア属植物における形態・生態・染色体の進化傾向:分子系統学的アプローチ
本研究の目的は、ヒヨドリバナ連に属するメキシコ産ステビア属、およびその近縁属系統関係を分子系統学的アプローチによって推定し、これらの属において形態・生態・染色体の進化の間にどのような相関があったかを明らかにすることである。matKを用いた系統推定では、Carphocaete属(n=12)がステビア属の外群であり、n=12が祖先的染色体数であることが示された。またこれまでステビア属に近縁と考えられてきたAgeratum属(n=10)は、n=10を持つ他の多くの属と同じクレードに属し、ステビア属との類似は平行進化の結果であることが示された。またn=13を持つMcvaugiellaはステビア属のクレードには属さず、n=17を持つ属から派生したことが明らかになった。Carphocaete属とステビア属を含むクレード、n=10のクレード、n=17のクレードは、フジバカマ連の系統発生の初期に放散的に分化したことが示唆された。ステビア属内種間の系統推定を行うために、ITSの配列決定を行った。その結果、1年草のS.aschenborniana (n=12)が最初に、木本性の群(n=12)が次に分岐し、続いて多年草の2つの群が分岐することが示された。多年草の一方の群はn=12の種を含み、他方の群はn=11,12の種を含む。これらの配列から推定された系統樹にもとづいて形質復元を行なった結果、染色体数の減数と世代時間の短縮が相関していること、染色体数が減数してもゲノムサイズは減少しないこと、1年草化と自殖性の進化が相関していること、花の小型化は1年草化・自殖性と相関しないことが明らかになった。本研究の目的は、ヒヨドリバナ連に属するメキシコ産ステビア属、およびその近縁属系統関係を分子系統学的アプローチによって推定し、これらの属において形態・生態・染色体の進化の間にどのような相関があったかを明らかにすることである。matKを用いた系統推定では、Carphocaete属(n=12)がステビア属の外群であり、n=12が祖先的染色体数であることが示された。またこれまでステビア属に近縁と考えられてきたAgeratum属(n=10)は、n=10を持つ他の多くの属と同じクレードに属し、ステビア属との類似は平行進化の結果であることが示された。またn=13を持つMcvaugiellaはステビア属のクレードには属さず、n=17を持つ属から派生したことが明らかになった。Carphocaete属とステビア属を含むクレード、n=10のクレード、n=17のクレードは、フジバカマ連の系統発生の初期に放散的に分化したことが示唆された。ステビア属内種間の系統推定を行うために、ITSの配列決定を行った。その結果、1年草のS.aschenborniana (n=12)が最初に、木本性の群(n=12)が次に分岐し、続いて多年草の2つの群が分岐することが示された。多年草の一方の群はn=12の種を含み、他方の群はn=11,12の種を含む。これらの配列から推定された系統樹にもとづいて形質復元を行なった結果、染色体数の減数と世代時間の短縮が相関していること、染色体数が減数してもゲノムサイズは減少しないこと、1年草化と自殖性の進化が相関していること、花の小型化は1年草化・自殖性と相関しないことが明らかになった。本研究は、分子系統学的手法でステビア属およびその近縁植物の系統関係を推定することにより、染色体数、交配システム、世代時間などが進化の過程でどのように相関して変化したかを明らかにすることを目的としている。本年度はその第1年度にあたり、以下の研究を行った。(1)葉緑体上にあり、属内レベルの系統解析に有用だと考えられるmatK遺伝子をPCRで増幅した。既知のプライマーでは安定して増幅されなかったので、増幅された配列をもとにinternalprimerを設計した。このプライマーを用いて、まずステビア属数種とその近縁属の配列を決定し、系統解析をすすめている。このレベルではmatK遺伝子の配列は系統学的に利用できるサイト変異の情報を提供することがわかった。系統解析の結果、染色体数が減少したことが示唆された。しかしまだ、配列決定が完了した種数が限られている。現在20種ほどについての配列決定作業が進行中であり、この作業が終われば系統関係についてはっきりした結論が得られる見通しである。(2)染色体数n=11,12の変化がくりかえし起きた可能性が示唆された。そこでさらに詳しく染色体数を調査したところ、近縁種間でn=11,12の変化がみられるだけでなく、S. oliganoidesという種内に両者の多型が見い出された。n=11,12の多型が2倍体レベルで広く維持されている可能性があり、さらに検討を必要とする。本研究の目的は、ヒヨドリバナ連に属するメキシコ産ステビア属、およびその近縁属の系統関係を分子系統学的アプローチによって推定し、これらの属において形態・生態・染色体の進化の間にどのような相関があったかを明らかにすることである。
KAKENHI-PROJECT-07454235
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07454235
ステビア属植物における形態・生態・染色体の進化傾向:分子系統学的アプローチ
matKを用いた系統推定では、Carphocaete属(n=12)がステビア属の外群であり、n=12が祖先的染色体数であることが示された。またこれまでステビア属に近縁と考えられてきたAgeratum属(n=10)は、n=10を持つ他の多くの属と同じクレードに属し、ステビア属との類似は平行進化の結果であることが示された。またn=13を持つMcvaugiellaはステビア属のクレードには属さず、n=17を持つ属から派生したことが明らかになった。Carphocaete属とステビア属を含むクレード、n=10のクレード、n=17のクレードは、フジバカマ連の系統発生の初期に放散的に分化したことが示唆された。ステビア属内種間の系統推定を行うために、ITSの配列決定を行った。その結果、1年草のS.aschenborniana(n=12)が最初に、木本性の群(n=12)が次に分岐し、続いて多年草の2つの群が分岐することが示された。多年草の一方の群はn=12の種を含み、他方の群はn=11,12の種を含む。これらの配列から推定された系統樹にもとづいて形質復元を行なった結果、染色体数の減数と世代時間の短縮が相関していること、染色体数が減数してもゲノムサイズは減少しないこと、1年草化と自殖性の進化が相関していること、花の小型化は1年草化・自殖性と相関しないことが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-07454235
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原子核内における核子相関の実験的検証
原子核内における核子相関を定量的に理解することは、現代の原子核物理学における主要命題の一つである。我々は、核子相関の中でも特に重要であるテンソル相関について、それが原子核中で作用している姿を実験的に観測することを目指している。テンソル相関は、その本質として核内の陽子・中性子(pn)ペアの相対運動量分布にスピン依存性をもたらすことが期待されていた。本研究では、高分解能(p,d+p)反応測定という手法を適用することで核内のpnペアをそのスピン状態も含めて実験的に観測し、上述のテンソル相関の振る舞いを検証した。本年度は東北大学CYRIC施設において、4Heに対する(p,d+p)測定に向けた検出器の開発・実験セットアップの組み上げを完了した。具体的には、散乱陽子・重陽子を検出するためのdE-E検出器の開発、冷却ガス標的システムの調整・改良などを主に遂行した。そして、実際に4He原子核に対して入射エネルギー80MeVにおける(p,d+p)反応スペクトルを取得した。得られた実験データをインパルス近似計算と組み合わせて解析を行った結果、pnペアの相対運動量が上がるに従い、スピン1(平行)に組んだペアの割合が増大するというテンソル相関の特徴と符合する兆候を見出すことに初めて成功した。これらの成果は、既に会議等において広く公表し、実験・理論研究者双方から良い反響を得ている状況である。以上により本申請の目標は一通り達成された。今後の発展として、実験データと核構造理論計算とをより定量的に比較するために、(p,d+p)反応の核反応理論計算のさらなる精緻化が望まれている。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。原子核内における核子相関を定量的に理解することは、現代の原子核物理学における主要命題の一つである。我々は、核子相関の中でも特に重要であるテンソル相関について、それが原子核中で作用している姿を実験的に観測することを目指している。テンソル相関は、その本質として核内の陽子・中性子(pn)ペアの相対運動量分布にスピン依存性をもたらすことが期待されていた。本研究では、高分解能(p,d+p)反応測定という手法を適用することで核内のpnペアをそのスピン状態も含めて実験的に観測し、上述のテンソル相関の振る舞いを検証した。本年度は東北大学CYRIC施設において、4Heに対する(p,d+p)測定に向けた検出器の開発・実験セットアップの組み上げを完了した。具体的には、散乱陽子・重陽子を検出するためのdE-E検出器の開発、冷却ガス標的システムの調整・改良などを主に遂行した。そして、実際に4He原子核に対して入射エネルギー80MeVにおける(p,d+p)反応スペクトルを取得した。得られた実験データをインパルス近似計算と組み合わせて解析を行った結果、pnペアの相対運動量が上がるに従い、スピン1(平行)に組んだペアの割合が増大するというテンソル相関の特徴と符合する兆候を見出すことに初めて成功した。これらの成果は、既に会議等において広く公表し、実験・理論研究者双方から良い反響を得ている状況である。以上により本申請の目標は一通り達成された。今後の発展として、実験データと核構造理論計算とをより定量的に比較するために、(p,d+p)反応の核反応理論計算のさらなる精緻化が望まれている。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-16H06627
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ジェットエンジンタービンブレードの金属組織学に基づく余命推定技術の確立
実機使用した単結晶Ni基超合金の第一段高圧タービンブレードについて,各断面、各部位の(001)および(100)のコーティング層から冷却孔近傍までの詳細な組織観察を行い,ブレードに負荷される温度、応力および応力方向の推定を試みた。その結果、部位によってγ'相の形状が大きく異なり、ラフト構造の形成方向から、ブレードには回転に伴う遠心力以上に高い熱応力が負荷されていることが明らかとなった。さらにブレードに単純時効を施し,立方体状を保持していた部位のγ'相の形状変化に基づき、ブレード内部においても高い応力環境下にあることを示し、実機稼働環境の推定に金属組織学的知見が活用可能であることを明示した。当該年度は,平成24年度中に作成した試験片,すなわち,ブレード先端,中央,付け根部のリーディングエッチからトレーリングエッチへかけて(100)に平行に6等分に切り出し,(001)および(100)の鏡面仕上げ材について,購入した電解腐食機器により腐食を実施した。その上で,これらについて,電子顕微鏡を用い,表面から内部冷却孔へ向け,等間隔にて組織観察を実施した。その結果,各部位,各断面により,γ'相の形状が大きく異なることを示し,部位によってラフト構造の形成が認められ,その形成方向はブレード長手方向と平行および垂直方向に大別されることを明らかにした。さらに,ラフト構造の形成分布および方向はブレードの二次方位が異なる場合,大きく差異が生じることを見出している。現在,ブレード各部位の方位解析,EBSD解析を始めるとともに,組織形状の定量化を行うための手法に関する準備を実施している。実機使用した単結晶Ni基超合金の第一段高圧タービンブレードについて,各断面、各部位の(001)および(100)のコーティング層から冷却孔近傍までの詳細な組織観察を行い,ブレードに負荷される温度、応力および応力方向の推定を試みた。その結果、部位によってγ'相の形状が大きく異なり、ラフト構造の形成方向から、ブレードには回転に伴う遠心力以上に高い熱応力が負荷されていることが明らかとなった。さらにブレードに単純時効を施し,立方体状を保持していた部位のγ'相の形状変化に基づき、ブレード内部においても高い応力環境下にあることを示し、実機稼働環境の推定に金属組織学的知見が活用可能であることを明示した。当該年度は本研究の試験片となる実機使用した第一段高圧タービンブレードを入手,実験試料としての適用材の選定を行った.30個のブレードについて,ブレード先端部の研磨を,機械研磨機を用いて行い,鏡面仕上げにした後,X線ラウエ背面反射法を用いて方位解析を実施した.その後,ブレード先端方向への方位が[001],ブレードのリーディングエッジとトレーリングエッジを結んだ線を基準とし,二次方位である[100]の方向を3種類選定し,当該研究試料として決定した.各試料は,基準線と平,基準線から反時計方向に23度および43度回転している.選定ブレードを放電加工機を用いて(001)と平行に先端から付け根部へ向けて,均等に8分割した.さらに分割した試料について,(100)と平行に,リーディングエッジからトレーリングエッジにかけて,6等分に切り出した.各ブレード切断試料の先端,中央部,付け根部を先行して,エポキシ樹脂に埋め込んだ後,(001)および(100)両面を機械研磨にて鏡面仕上げとした.各試料の大きさに合わせ,電解腐食条件を選定した後,電解腐食を行って,母相であるγ相を溶解した.なお,研磨器材は従来装置にて実施したものの,老朽化した腐食機器の不調により,最終試験片表面状態が異なっているため,平成25年度早期に腐食機器を購入して,再度表面調整を行う予定である.現在,走査電子顕微鏡を用いて,基準線と平行な試料(以降0度試験片と呼ぶ)について,各断面,各部位の表面近傍から冷却孔内部に向けての組織観察を終了している.その結果,部位によって強化相であるγ'相は初期形状である立方体状が失われている部位が多数存在し,応力負荷履歴を示すラフト構造を形成していることが明らかとなった.その形成方向はブレード長て方向に対して垂直および平行方向が混在し,複雑な応力負荷環境にあることが金属組織学的に明示された.本研究では、ジェットエンジンにて実機使用した単結晶Ni基超合金の第一段高圧タービンブレードについて、詳細な組織観察を実施し、金属組織学的知見に基づいて、実機稼働中の温度・応力および応力方向の推定を実施した。組織観察は、ブレード先端、中央、付け根部の腹および背側のリーディングエッジからトレーリングエッジへかけて、約7mm間隔の位置において、ブレード表面のコーティング層から内部冷却孔へ5mm間隔の各部位での(001)および(100)について、SEMを用いて実施した。その結果、部位によってNi基超合金の強化相であるγ'相の形態が大きく異なり、背側に比べ、腹側でより形態変化が進展していた。さらに、クリープひずみが導入された際に形成される、板状ラフト構造が各部に観察された。ラフト構造の形成方向は、トレーリングエッジ部ではブレード長手方向と垂直方向の(001)と平行であるのに対し、他の部位では(010)と平行となっていた。したがって、実機稼動中のブレードには、トレーリングエッジではブレード長手方向の引張応力が主応力であるのに対し,他の部位では熱応力によるブレード内部方向への引張応力あるいは多軸の圧縮が生じていると推測された。一方、付け根部および内部冷却孔近傍では大半のγ'相は立方体状であり、組織形態からの応力推定は困難であった。
KAKENHI-PROJECT-24760589
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24760589
ジェットエンジンタービンブレードの金属組織学に基づく余命推定技術の確立
そこで、クリープひずみが付与された試料に対し、高温で単純時効を施した際、ラフト構造を形成するとした知見を活用し、ブレード各試料に単純時効を実施した。その結果、リーディングエッジ側内部、付け根部表面近傍で、板状ラフト構造の形成が生じたことから、低温環境下で回転および冷却に伴う高い応力が負荷されていると推察された。以上の結果から、γ'相の形態に基づくブレードの温度・応力および応力方向の定性的な推定が可能であることを明らかにした。金属組織学現状,申請時に記述した研究実施内容とほぼ同内容の進捗状況となっている。現状,申請時に記述した平成24年度の研究実施計画とほぼ同内容の進捗状況となっている.研究計画にて予定している方位解析および組織の定量化を実施するとともに,定性的なブレード実機使用環境の推定結果を整理する予定である。また,これまでに得られた組織形態について積極的に学会等で発表を行い,当該分野の研究者と議論を深め,研究推進に必要な情報収集をしていく計画である。一方で,当該研究の進捗により,実機使用環境の温度,応力状態に関する定性化から定量化のためには,同一材料での実験室レベルにおけるクリープ試験および各試験片の組織観察,定量化が必要であることが明らかとなった。これらに該当する実験テーマの設立へ本研究結果を反映させて行く予定である。研究計画にて予定している通りに実験,研究が進捗しており,平成25年度にも研究計画調書に基づいて,研究を推進する予定である.なお,ブレード表面状態と内部組織との関連性についても注目する必要性を感じ,表面状態も記録した上で,金属組織と比較検討を実施する.また,今後,得られた結果について,各学会等での学会発表,論文発表を積極的に進め,国内外の研究者,技術者と研究結果に関する議論を行い,研究推進のための必要な情報収集をしていく計画である.データ収集結果を踏まえ,次年度に多く予定されている研究成果発表および情報収集のための国内および国際会議出席することとし,本年度に繰り越すこととしたため。○ソフトウエア30,000円●試験片研磨関連消耗品50,000円□国際会議参加登録費350,000円□国際会議旅費600,000円□国内学会旅費100,000■論文投稿および英文校正費150,000円■印刷費40,000円次年度繰り越しが生じた理由:購入希望を予定していた電解エッチング装置のモデルチェンジ予定,またPCのOSが更新時期に当たることを事前掌握ができたため,本年度に繰り越すこととしたため.研究費使用予定:○ブレード表面状態記録用デジタルカメラ,接写装置購入500,000円○試験片腐食用の電解エッチング装置購入400,000円○画像解析用PCおよびソフトウエア400,000円○試験片研磨関連消耗品200,000円□学会発表旅費500,000円□国内学会参加費50,000円□国際会議参加登録費150,000円■論文投稿および英文校正費100,000円
KAKENHI-PROJECT-24760589
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24760589
逆ひも状ミセルによる非極性・低極性溶媒のレオロジー制御
界面活性剤分子を非極性・低極性溶媒に溶解させると、親水基を内部に集合させた分子集合体である逆ミセルが形成される。用いる界面活性剤の分子構造を変えることによりμmオーダーの長さを有するひも状ミセルを形成させることができ、溶液の増粘・ゲル化がおこる。本研究では従来ほとんど研究がされていなかった非イオン界面活性剤を用い、レオロジー測定、小角X線散乱測定を用いて非極性・低極性溶媒の増粘・ゲル化が生じる条件を調べた。その結果、界面活性剤の分子量と少量の水の可溶化が逆ひも状ミセル形成に対し重要な因子であることを見いだした。本研究の成果は医薬品、化粧品、流体輸送、潤滑などへ応用可能である。循環系での水ベース流体輸送の低エネルギー化に貢献するDR剤として用いられるひも状ミセルは界面活性剤分子同士の自己集合により形成されるため、ポンプなどで剪断を受けて結合が切断されても自発的に再構築が行われる自己修復機能を有する。一方、原油輸送や潤滑油においてもはDR剤あるいは粘度調整剤として高分子が添加されるが、循環利用により高分子鎖の切断により性能を失っていく。さらに、オイルクレンジング剤などの油剤ベースの化粧品製剤でも有効な高分子増粘剤が限られており、さらに十分な使用感を得られないという問題がある。これらの問題を解決するために、本研究においては非極性/低極性溶媒中における逆ひも状ミセルの形成を行い、高分子添加剤に替わる粘度調整剤としての機能を見いだすことを目的とした。前年度まではジグリセリンアルキルエーテルの炭化水素中での会合挙動を調べ、濃度、温度などのパラメータを変えたときにミセルの一次元方向の成長の仕組みを明らかにした。今年度は会合傾向を高めるために分子量を高めたデカグリセリンジオレイン酸エステル(DGDO)を用いて逆ひも状ミセルの形成を試みた。ヘキサデカン溶液において濃度が20wt%以上で溶液は非ニュートン性を示し、動的粘弾性測定より得られた貯蔵および損失弾性率の周波数依存性極性が交差する粘弾性体の挙動を示した。また、この挙動はMaxwellモデルによって表されるため、逆ひも状ミセルの形成が強く示唆された。小角X線散乱測定による集合体構造解析を行った。25°CにおけるX線の散乱曲線をGIFT(Generalized Indirect Fourier Transform)法により解析したところ、シリンダー状構造に由来する二体間距離分布関数(pair-distance distribution function)が得られ、逆ひも状ミセルが得られていることが示された。界面活性剤分子を非極性・低極性溶媒に溶解させると、親水基を内部に集合させた分子集合体である逆ミセルが形成される。用いる界面活性剤の分子構造を変えることによりμmオーダーの長さを有するひも状ミセルを形成させることができ、溶液の増粘・ゲル化がおこる。本研究では従来ほとんど研究がされていなかった非イオン界面活性剤を用い、レオロジー測定、小角X線散乱測定を用いて非極性・低極性溶媒の増粘・ゲル化が生じる条件を調べた。その結果、界面活性剤の分子量と少量の水の可溶化が逆ひも状ミセル形成に対し重要な因子であることを見いだした。本研究の成果は医薬品、化粧品、流体輸送、潤滑などへ応用可能である。循環系での水ベース流体輸送の低エネルギー化に貢献するDR剤として用いられるひも状ミセルは界面活性剤分子同士の自己集合により形成されるため、高分子DR剤と異なり、ポンプなどで剪断を受けて結合が切断されても自発的に再構築が行われる自己修復機能を有する。一方、原油輸送や潤滑油においてもはDR剤あるいは粘度調整剤として高分子が添加されるが、循環利用により高分子鎖の切断により性能を失っていく。さらに、オイルクレンジング剤などの油剤ベースの化粧品製剤でも有効な高分子増粘剤が限られており、さらに十分な使用感を得られないという問題がある。これらの問題を解決するために、本研究においては非極性/低極性溶媒中における逆ひも状ミセルの形成を行い、高分子添加剤に替わる粘度調整剤としての機能を見いだすことを目的とした。ジグリセリンアルキルエーテルは炭化水素中でジグリセリン基同士が水素結合によって自己集合し、水の添加なしで逆ミセルを形成し、小角X線散乱測定による集合体構造解析を行った。25°CにおけるX線の散乱曲線をGIFT(Generalized Indirect Fourier Transform)法により解析したところ、逆ミセルは濃度5%において棒状であり、濃度増加とともにその長軸長さの増大が見られた。また溶液の粘性率は濃度に対して一次関数的に増大し、球状コロイドのモデルから計算した増粘挙動より大きな増粘の程度を示したことから、棒状逆ミセルの形成が確認できた。温度の影響は75°Cまで上昇させると逆ミセルの長軸の長さは大きく減少し、また微量の水の添加によっては逆に長軸の長さは増大した。これらのことは温度上昇による親水基の脱水和と水和水による親水基間の水和力の増大による臨界充填パラメータの変化により説明できた。ひも状ミセルは界面活性剤などの両親媒性分子が自己集合することで形成される高分子鎖のように長く、柔軟性の高い分子集合体である。機械力による鎖の破壊に対して自己修復能を有することや、溶液を増粘・ゲル化させることが特徴である。水中におけるひも状ミセル形成に対して、無極性・低極性溶媒中で逆ひも状ミセルが形成される例は少なく、油剤の粘度調整やゲル化の必要な潤滑油、化粧品、医薬品などへの利用が期待されている。
KAKENHI-PROJECT-24550149
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逆ひも状ミセルによる非極性・低極性溶媒のレオロジー制御
前年度まではポリグリセリンアルキルエーテルの炭化水素中での会合挙動を調べ、濃度、温度などのパラメータを変えたときにミセルの一次元方向の成長の仕組みを明らかにし、溶液の増粘挙動との関係を明らかにした。最終年度は両親媒性ブロックコポリマーであるポリ(オキシアルキレン)ペンタエリスリチルエーテル(PPE)を用いてオイルゲル化挙動及び逆ミセル構造を調べた。PPEは炭化水素に溶解せず、芳香族炭化水素およびエステル油へ溶解し、少量の水の添加によりオイルゲルが得られることがわかった。また、芳香族炭化水素よりもエステル油中においてより高い増粘効果が得られ、エステル油の分子構造にも増粘挙動は大きく依存することがわかった。最も増粘効果の高いデカン酸イソプロピル(IPD)系において、小角X線散乱スペクトルをGIFT(Generalized Indirect Fourier Transform)法により解析したところ、シリンダー状構造に由来する二体間距離分布関数が得られ、逆ひも状ミセルが得られていることが示された。また、水の添加量増加にともないミセルの直径及び長軸長さがともに大きくなることが分かった。これは、水がミセルのコア部に可溶化されることで長軸及び直径を変化させたこと、コア部に可溶化した水が親水基間の相互作用を増大させてミセルの会合を促進したためだと考えられる。また、エステル油の分子構造もミセルの形状やサイズに影響することが分かった。分子集合系科学今年度は非極性・低極性溶媒中での逆ひも状ミセルのキャラクタリゼーションと溶液の粘弾性特性解析を行う計画をたてた。その結果、逆ミセルの一次元方向の成長に伴う増粘挙動と高粘度溶液の粘弾性特性を明らかにすることができ、目的を概ね達した。今年度は非極性・低極性溶媒中での逆ひも状ミセルの形成条件の抽出を行い、逆ひも状ミセルのキャラクタリゼーションを行う計画をたてた。その結果、界面活性剤濃度と温度による逆ミセルの一次元方向の成長に対する影響を明らかにすることができ、初年度の計画については目的を概ね達した。逆ひも状ミセルの形成に関する界面活性剤及び溶媒分子構造とミセル構造との関係を明らかにする。得られた知見を用いて溶液の増粘特性の向上を図る。ほとんどのリオトロピック液晶で見いだされている両親媒性分子集合体の構造対称性に関する理論をミセルについても提案する。前年度から引き続いて逆ひも状ミセルの形成に関する界面活性剤及び溶媒分子構造とミセル構造との関係とそれに対する温度、pH、電解質添加、微量の水分量などのパラメータとの関係を明らかにする。また、その知見を用いて、ほとんどのリオトロピック液晶で見いだされている両親媒性分子集合体の構造対称性に関する理論をミセルについても提案する。該当なし
KAKENHI-PROJECT-24550149
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アクアツーリズムの環境社会学的研究
本研究では、“アクアツーリズム"と呼ばれる新しい観光の論理と仕組みを明らかにすることを目的とした。アクアツーリズムは次のユニークな特徴を持っている。すなわち、マスツーリズムが前提としてきた観光客の自由や自発性を著しく制限した観光であるにもかかわらず、観光客はそれをむしろ歓迎し、そのことがアクアツーリズムの魅力とさえなっていることである。ここでいう観光客の自由や自発性の制限というのは、従来の観光研究および観光政策において強い説得力を持っている“観光客のマナー"を遵守させるための規制とは異なって、地元コミュニティにおいて共有されている“ローカルなルール"を遵守させるものであった。というのは、アクアツーリズムが対象とする地域の湧水や洗い場は、その利用と管理のあり方をめぐって地元コミュニティのさまざまなルールや規範が内包されたコモンズであり、そこには住民の“権利"が存在しているからである。その権利とは次のようなものである。湧水利用は上水道とは違い水そのものは無料である。だが、誰もが利用できるわけではない。ではどのように利用権を確立しているかといえば、水場の管理(掃除)を担うことで利用権を確立させていた。住民は当番制で週に1度程度掃除をする。それらの管理義務を担うことで水場を利用する権利が地域社会の人びとから承認されていたのである。つまり、水場の利用権は管理義務とセットだということである。であるならば、行政が水場を観光資源に活用する際に住民が反対したり、利用をやめてしまう理由は、しばしば批判されるように住民が保守的だからとか、非協力的だからではない。そうではなく、水場にある“ローカルなルール"を破壊してしまうからなのである。本研究では、水場にある“ローカルなルール"を解明し、住民の利用する“権利"を壊さないようなアクアツーリズムを模索する必要性を論じている。本研究の目的は、地域社会が取り組みはじめたアクアツーリズムの論理とその仕組みを明らかにすることである。アクアツーリズムは次の興味深い特徴を持っている。すなわち、近代観光が前提としてきた観光客の自由や自発性を著しく制限した観光であるにもかかわらず、観光客はそれをむしろ歓迎し、そのことがアクアツーリズムの魅力とさえなっていることである。本年度は初年度でもあり、この特徴を分析の手掛かりとしながら、主要な事例地におけるデータ収集と先行研究における本研究の位置を把握することに重点を置いてきた。暫定的に得られた知見をまとめておこう。アクアツーリズムは、観光の対象が“水"という自然でもあるため、エコツーリズムと親和性が高いと考えられてきた。しかし、次の点で決定的な違いがある。よく知られているようにエコツーリズムは欧米型の自然観が埋め込まれたツーリズムであるから、人びとの手の入らない自然が望ましく、自然の希少性や生物多様性を評価するモデルをつくってきた。それに対して、アクアツーリズムが対象とするのは、地域社会に現存する湧水や洗い場といった人びとの手が入り続けた自然であり、いまなお現場の人びとの生活に欠かせない“コモンズ"でもある。このような現場の人びとの自然観がアクアツーリズムの魅力の形成にも寄与していることが想定される。というのも、アクアツーリズムに取り組む地域社会は、人びとの生活資源が観光資源化することに強い抵抗を示したり、観光利用によって“コモンズ"が壊れることがないようにさまざまな工夫をしていることが分かってきたからである。一方のアクアツーリズムに参加する観光客にとっても、地域の“コモンズ"であることに価値を見出していた。観光客は、ただ水辺を眺めたり、湧水を味わうことに満足しているわけではなかったからである。次年度からは、アクアツーリズムの論理の内実に迫っていくことになるだろう。初年度ではあるが、外部からの原稿依頼や国際学会での発表などの要請を受け入れるかたちで研究を暫定的にでもまとめる必要に迫られた。それらの成果は、次年度以降に公表されるものもあるが、これらの機会を生かすことで、研究を当初の計画以上に進めることができた。本年度は後に詳しく説明するようにコモンズの“排除性"という機能に注目し、分析を行った。前年度で検討したように、アクアツーリズムが対象とする地域の湧水や洗い場は地域の人びとのコモンズであることが観光資源としても意味を持ってきたのだが、それらを手入れしてきた管理組織は著しく弱体化しているため、アクアツーリズムに乗り出すにあたって、管理組織を強化するか、あるいは別の組織に管理を肩代わりさせる必要が生じるようになっている。すなわち、アクアツーリズムの現場では、地域のコモンズを開放することが政策的にも期待されるようになっているのである。ここで悩ましいことは、コモンズをただ開放すればよいかといえば決してそうではないことである。コモンズはある集団内で同質な構成員に限定されていたからこそ、合理的な資源管理が成り立ってきたからである。つまり、コモンズに内在する“排除性"という機能こそが資源管理能力を高めてきたのである。しかしながら、管理組織の弱体化という現実をふまえてみれば、資源管理に関心を示す異質で多様な担い手を新たに招き入れる必要があり、そうすると規範や規制の共有化は難しく、一時的であれ管理能力は低下することになってしまう。コモンズの資源管理能力を高めようとすれば、排除性を強めればよいのだが、そうすると新たな担い手を受け入れることが難しくなる。アクアツーリズムが対象とするような現代的なコモンズはこのような矛盾を抱えていることが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-16K21489
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アクアツーリズムの環境社会学的研究
そのうえで、コモンズを開放するにあたってもコモンズの排除性を損なうことなくどのように新たな担い手を受け入れることができるのか、各地の管理組織の論理の分析を行った。外部からの原稿依頼や国際学会での発表依頼といったかたちで、本研究の成果を暫定的にでもまとめる場が与えられたことによって、研究を前進させることができた。本研究では、“アクアツーリズム"と呼ばれる新しい観光の論理と仕組みを明らかにすることを目的とした。アクアツーリズムは次のユニークな特徴を持っている。すなわち、マスツーリズムが前提としてきた観光客の自由や自発性を著しく制限した観光であるにもかかわらず、観光客はそれをむしろ歓迎し、そのことがアクアツーリズムの魅力とさえなっていることである。ここでいう観光客の自由や自発性の制限というのは、従来の観光研究および観光政策において強い説得力を持っている“観光客のマナー"を遵守させるための規制とは異なって、地元コミュニティにおいて共有されている“ローカルなルール"を遵守させるものであった。というのは、アクアツーリズムが対象とする地域の湧水や洗い場は、その利用と管理のあり方をめぐって地元コミュニティのさまざまなルールや規範が内包されたコモンズであり、そこには住民の“権利"が存在しているからである。その権利とは次のようなものである。湧水利用は上水道とは違い水そのものは無料である。だが、誰もが利用できるわけではない。ではどのように利用権を確立しているかといえば、水場の管理(掃除)を担うことで利用権を確立させていた。住民は当番制で週に1度程度掃除をする。それらの管理義務を担うことで水場を利用する権利が地域社会の人びとから承認されていたのである。つまり、水場の利用権は管理義務とセットだということである。であるならば、行政が水場を観光資源に活用する際に住民が反対したり、利用をやめてしまう理由は、しばしば批判されるように住民が保守的だからとか、非協力的だからではない。そうではなく、水場にある“ローカルなルール"を破壊してしまうからなのである。本研究では、水場にある“ローカルなルール"を解明し、住民の利用する“権利"を壊さないようなアクアツーリズムを模索する必要性を論じている。引き続き、アクアツーリズムに取り組む事例地にて調査を継続し、論文執筆や学会報告を続けていく。すでに選定している事例地が農山漁村地域にやや偏りがあるため、都市部や市街地地域でのアクアツーリズムの事例にも視野を広げながら調査を進めていく必要がある。今年度は本研究課題の最終年度となるため、成果を仕上げることに専念する予定である。現地での調査も継続するが、成果を形づくるための補足的な調査に留めることにしたいと考えている。本研究の成果は最終的には学術図書の執筆を目標としている。当初の計画より研究が進展し、次年度の初めに国際学会で発表するための渡航費用を支払う必要が生じたことから、途中で一部前倒し請求をし、その残金が生じたため。国際学会で発表するための渡航費用の支払いおよび追加調査のため、一部前倒し請求をし、その残金が生じたため。次年度もフィールド調査に重点を置くため、その旅費として支出予定である。
KAKENHI-PROJECT-16K21489
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光化学変換素子創製のための有機光起電力発生材料を用いた新しい湿式系光電極の開発
本年度は、ペリレン系材料(n型半導体)およびフタロシアニン系材料(p型半導体)を用いた有機二重層系で湿式系光電極素子の開発研究を行った。以下に、研究実績の概要を示す:(1)真空蒸着法により、ITO基板上に、ペリレン誘導体、コバルトフタロシアンニンを順に積層したものを光電極素子とした。可視光照射下では、固(コバルトフタロシアンニン)/液(水)界面に酸化力が発生するため、結果として、光アノード電流の発生を伴って光誘起の酸素発生が起こることを明らかにした。本光電極系は750nm以下の広範な可視光エネルギーを効率的に吸収でき、さらに、本系は二重層の内部構造(p-n接合界面の形成)を反映した光物理過程を介して効率的なキャリアー移動を実現する等の特長を有する。本研究により、可視全域の光エネルギーに応答する光触媒系を有機材料により創出でき、さらに酸素の発生をももたらす初めての例を示すに至った。(2)また、n型半導体としてフラーレン、p型半導体として無金属フタロシアンニンを用いて二重層フィルムを作製した場合、固(無金属フタロシアンニン)/液(水)界面で光アノード反応が起こることがわかった。酸素発生は認めらなかったが、新規な湿式系光アノードとして機能発現することを見いだした。(3)さらに、n型半導体(ペリレン誘導体、もしくはフラーレン)とp型半導体(無金属フタロシアンニン)の積層順を上述の(1)や(2)の場合と逆にすると、固(n型半導体)/液(水)界面で光誘起の還元反応が起こることも明らかにした。特に、フラーレンをn型半導体として用いた場合には、触媒サイトの結合により水素発生が光誘起できることも明らかにした。本年度は、ペリレン系材料(n型半導体)およびフタロシアニン系材料(p型半導体)を用いた有機二重層系で湿式系光電極素子の開発研究を行った。以下に、研究実績の概要を示す:(1)真空蒸着法により、透明ガラス電極基板上に、ペリレン誘導体、無金属フタロシアンニンを順に積層したものを光電極素子とした。可視光照射下で、固(無金属フタロシアンニン)/液(水)界面に酸化力が発生するため、結果として、光触媒的酸化(還元剤:チオール)が誘起され、非常に高い光アノード電流が生じた。本光電極系は、750nm以下の広範な可視光エネルギーを効率的に吸収でき、さらに、二重層の内部構造(p-n接合界面の形成)を反映した光物理過程を介して効率的なキャリアー移動を実現する等の特長を有する。従来の光触媒は無機半導体が大半であり、かつ、通常、500nm以下の可視光にしか応答しない例がほとんどであるが、本研究により、可視全域に応答する光触媒系を有機分子により創出できたことから、光電気化学や光触媒の研究分野における今後の展開に大きな波及効果をもたらす結果に至った。(2)ペリレン誘導体/無金属フタロシアンニン系光電極のフタロシアンニン表面に貴金属酸化物(触媒)を結合すると、水酸化物イオンの酸化により酸素発生が起こることを見いだした。本電極反応を動的に解析したところ、酸素発生過程が律速段階を構成していることがわかり、効率的な酸素発生のためには、光電極への活性な触媒の結合が必要であるが明らかとなった。本年度は、ペリレン系材料(n型半導体)およびフタロシアニン系材料(p型半導体)を用いた有機二重層系で湿式系光電極素子の開発研究を行った。以下に、研究実績の概要を示す:(1)真空蒸着法により、ITO基板上に、ペリレン誘導体、コバルトフタロシアンニンを順に積層したものを光電極素子とした。可視光照射下では、固(コバルトフタロシアンニン)/液(水)界面に酸化力が発生するため、結果として、光アノード電流の発生を伴って光誘起の酸素発生が起こることを明らかにした。本光電極系は750nm以下の広範な可視光エネルギーを効率的に吸収でき、さらに、本系は二重層の内部構造(p-n接合界面の形成)を反映した光物理過程を介して効率的なキャリアー移動を実現する等の特長を有する。本研究により、可視全域の光エネルギーに応答する光触媒系を有機材料により創出でき、さらに酸素の発生をももたらす初めての例を示すに至った。(2)また、n型半導体としてフラーレン、p型半導体として無金属フタロシアンニンを用いて二重層フィルムを作製した場合、固(無金属フタロシアンニン)/液(水)界面で光アノード反応が起こることがわかった。酸素発生は認めらなかったが、新規な湿式系光アノードとして機能発現することを見いだした。(3)さらに、n型半導体(ペリレン誘導体、もしくはフラーレン)とp型半導体(無金属フタロシアンニン)の積層順を上述の(1)や(2)の場合と逆にすると、固(n型半導体)/液(水)界面で光誘起の還元反応が起こることも明らかにした。特に、フラーレンをn型半導体として用いた場合には、触媒サイトの結合により水素発生が光誘起できることも明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-15750110
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15750110
コーチング心理学に基づいた女性の就労支援プログラム開発と有効性の検討
昨年の調査結果から、経済的課題解決の必要性や子どもに対する影響への懸念などに加え、自己実現への不安や模索なども新たな就労要因として検討課題に追加する必要性が示された。また、就労支援コーチングプログラムを実施したところ、セルフコーチングの技法によるワークの実践は、自己の強みやリソースへの気づき、就労の障害要因からの視点の転換などに一定の効果があることが示された。そこで本年度は就労を希望する対象者自身が必要とするタイミングで活用でき、就労支援者も使用できる就労支援セルフコーチング指導者マニュアルの作成に向けて、セルフコーチングの介入効果を評価するための尺度の開発を試みた。その結果、「目標達成の選択肢を自由に考える」、「モチベーションを高め維持する」、「事実を観察し目標を設定する」、「目標達成の障害へのとらわれからの解放」という4因子構造を持つセルフコーチング尺度が作成された。セルフコーチング尺度全体ではα=.911であり内的整合性の一定基準を満たしていた。セルフコーチング尺度と社会情動スキル尺度(SES)、職場内自尊感情、一般的自己効力感尺度との間にも有意な正の関連性が示され、先延ばし尺度得点との間では負の有意な相関が示されたことから、セルフコーチング得点が高いほど効力感や自尊心が高く、実行力が高いことが明らかになった。求職中の女性は、セルフコーチング得点が無職者や主婦に比べ高く、セルフコーチングスキルやEQなど、自己の感情調整をはかり自己の強みを活かしながら、やるべきことを先延ばしにしていない。一方、無職の女性はすべて他の女性より低得点であった。今回対象となった女性の無職の理由は様々だが、セルフコーチング介入によって求職活動へとつながる可能性があると考えられる。研究計画では海外の子育て離職者の支援プログラムの聞き取り調査を行う予定であったが日程調整の問題で実施できていないこと、個別コーチングを実施できていないことなどから遅れていると判断した。海外で成功している子育て離職女性に対する就労支援プログラムの事例を参考に就労支援セルフコーチングマニュアルの作成を試みる。情動的コーチングと解決志向コーチングを用いた集団式および個別のコーチングの実践を行う。その実践の効果を、今年度作成したセルフコーチング尺度を活用するとともに再就労活動エフィカシー尺度を作成し評価する。出産、育児などのライフイベントにより離職した女性に対して再就労に支援のための質問紙作成の基礎的資料の収集を目的として、関連する文献検討、自由記述式アンケート調査による検討を行った。その結果、女性の就労促進に効果を与える可能性があるものとして、経済的課題解決の必要性の高さ、女性自身の育った家庭状況特に母親の就労状況、夫婦関係特に夫の就労への理解度、子どもに対する影響への懸念、保育園などの社会的支援の利用可能性、自己実現への模索などが影響要因として挙げられた。経済的課題解決の必要性や子どもに対する影響への懸念などは古くから多くの研究で就労の影響要因として指摘されているが、保育園などの社会的支援の利用可能性への認識、自己実現への不安や模索なども新たな要因として検討課題に追加する必要性が示された。また、就労支援コーチングプログラムの開発のために、就労を目指そうとする女性のためのコーチングセミナーを地域と連携して実施した。18名の参加者を対象としてセルフコーチングの集団式ワークショップを行い、質問のスキルや承認のスキルを就労の認識の明確化や行動化への意欲向上につなげる試みを行った。その結果、セルフコーチングの技法によるワークの実践は、自己の強みやリソースへの気づき、就労の障害要因からの視点の転換などに一定の効果があることが示されたが、長期的効果の確認についても検討していく必要性が指摘された。一方、就労への認識や再就労への不安などに年代による違いなど個別性の問題が認められ、対象者の支援の在り方を工夫する必要があることも明らかになった。研究計画では、出産、育児などのライフイベントにより離職し在宅の女性とその後再就職した女性を対象としていたが、2017年度はまだ復職していない女性のみを対象とした調査であった。また、介入方法もセルフコーチングによるプログラムを用いており、情動的コーチングと解決志向コーチングの1対1コーチングの方法については、その手続きの検討にとどまり実施できていない。そのため遅れていると判断した。昨年の調査結果から、経済的課題解決の必要性や子どもに対する影響への懸念などに加え、自己実現への不安や模索なども新たな就労要因として検討課題に追加する必要性が示された。また、就労支援コーチングプログラムを実施したところ、セルフコーチングの技法によるワークの実践は、自己の強みやリソースへの気づき、就労の障害要因からの視点の転換などに一定の効果があることが示された。そこで本年度は就労を希望する対象者自身が必要とするタイミングで活用でき、就労支援者も使用できる就労支援セルフコーチング指導者マニュアルの作成に向けて、セルフコーチングの介入効果を評価するための尺度の開発を試みた。その結果、「目標達成の選択肢を自由に考える」、「モチベーションを高め維持する」、「事実を観察し目標を設定する」、「目標達成の障害へのとらわれからの解放」という4因子構造を持つセルフコーチング尺度が作成された。セルフコーチング尺度全体ではα=.911であり内的整合性の一定基準を満たしていた。
KAKENHI-PROJECT-17K04449
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K04449
コーチング心理学に基づいた女性の就労支援プログラム開発と有効性の検討
セルフコーチング尺度と社会情動スキル尺度(SES)、職場内自尊感情、一般的自己効力感尺度との間にも有意な正の関連性が示され、先延ばし尺度得点との間では負の有意な相関が示されたことから、セルフコーチング得点が高いほど効力感や自尊心が高く、実行力が高いことが明らかになった。求職中の女性は、セルフコーチング得点が無職者や主婦に比べ高く、セルフコーチングスキルやEQなど、自己の感情調整をはかり自己の強みを活かしながら、やるべきことを先延ばしにしていない。一方、無職の女性はすべて他の女性より低得点であった。今回対象となった女性の無職の理由は様々だが、セルフコーチング介入によって求職活動へとつながる可能性があると考えられる。研究計画では海外の子育て離職者の支援プログラムの聞き取り調査を行う予定であったが日程調整の問題で実施できていないこと、個別コーチングを実施できていないことなどから遅れていると判断した。今年度実施できていない海外で成功している子育て離職女性に対する就労支援プログラム開発のための観察・聞き取り調査を実施する。そして再就職した女性に対するインタビュー調査を行い、離職中にとらえていた再就労の阻害要因とその対処、再就労したことによる新たな課題など現在の認識を中心にインタビューおよびアンケート調査を実施する。今年度収集した就労促進関連要因に関する質問項目を含め検討を行う。その結果を用いて再就労活動エフィカシー尺度を作成し、その妥当性・信頼性を検討する。また、今年度実施できていない再就職した女性に対するインタビュー調査を行い、集団式コーチングプログラムと情動的コーチングと解決志向コーチングを用いた1対1コーチングの実践を行い、介入プログラムの開始前と後に、介入の効果を確かめるためのアセスメントを実施していく。海外で成功している子育て離職女性に対する就労支援プログラムの事例を参考に就労支援セルフコーチングマニュアルの作成を試みる。情動的コーチングと解決志向コーチングを用いた集団式および個別のコーチングの実践を行う。その実践の効果を、今年度作成したセルフコーチング尺度を活用するとともに再就労活動エフィカシー尺度を作成し評価する。今年度計画していたアンケートの実施や聞き取り調査を実施できておらず、次年度に持ち越した。そこで次年度は次のような使用計画を立てている。米国子育て離職女性に対する就労支援プログラムの観察・聞き取り調査のための旅費、再就職した女性に対するインタビューデータ処理のための人件費、就労支援のためのアンケート調査のための調査依頼費、情報収集及び研究成果報告のための学会出張費予定していた海外の子育て離職女性に対する就労支援プログラムを視察する日程調整がうまくいかず実施できなかった。
KAKENHI-PROJECT-17K04449
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K04449
パラジウム水素化物の超伝導と同位元素効果
1.超伝導転移温度Tcは膜厚に依存するのでスパッター膜を作る場合、膜厚を制御する必要があり膜厚モニタ(日本真空社製)が購入された。2.パラジウムターゲットを用い、アルゴンガス中に適当量の水素ガス(【H_2】)を導入しPdHxスパッター膜を作製した。水素ガスをアルゴンがスに対して相対的に増加させていくとスパッタリング速度が遅くなり同じ膜厚の試料を得るのに時間が長くなる。このため基板の温度もそれぞれ異っているものと思われる。3.水素ガス(【H_2】)を10%100%まで変化させて作製されたPdHxスパッター膜の電気抵抗が測定されたがいずれの試料も1.4K以上で超伝導を示さなかった。これは水素原子が十分な量(X>0.7)パラジウム膜に侵入しなかったことを意味する。原因としてはスパッター時間が長くなると基板の温度が高くなるためと考えられる。基板の温度のコントロールが必要である。4.ニオブをターゲットとして水素ガス(【H_2】)および重水素ガス(【D_2】)を用いてNbHx,NbDxスパッター膜を作製し、電気抵抗の測定によりTcの変化を調べた。(1)TcはNbHx,NbDxともに水素ガス(【H_2】,【D_2】)の増加により減少する。(2)これらの膜のX線回折から格子定数【A_0】を測定したところ水素原子の侵入の増加とともに【A_0】は増加する。このことに対応してTcが下っていることが分った。(3)吸収された水素の濃度の決定は重要なことであるがまだ十分できていない。現在試料の加熱により脱離してくる水素原子の量を質量分析器で分析し濃度を決定することを試みている。(4)水素ガス(【H_2】)および重水素ガス(【D_2】)を導入して作製されたスパッター膜で格子定数が等しい膜同志のTcを比較すると重水素が吸収された方が明らかにTcが下ることが見い出された(同位元素効果)。1.超伝導転移温度Tcは膜厚に依存するのでスパッター膜を作る場合、膜厚を制御する必要があり膜厚モニタ(日本真空社製)が購入された。2.パラジウムターゲットを用い、アルゴンガス中に適当量の水素ガス(【H_2】)を導入しPdHxスパッター膜を作製した。水素ガスをアルゴンがスに対して相対的に増加させていくとスパッタリング速度が遅くなり同じ膜厚の試料を得るのに時間が長くなる。このため基板の温度もそれぞれ異っているものと思われる。3.水素ガス(【H_2】)を10%100%まで変化させて作製されたPdHxスパッター膜の電気抵抗が測定されたがいずれの試料も1.4K以上で超伝導を示さなかった。これは水素原子が十分な量(X>0.7)パラジウム膜に侵入しなかったことを意味する。原因としてはスパッター時間が長くなると基板の温度が高くなるためと考えられる。基板の温度のコントロールが必要である。4.ニオブをターゲットとして水素ガス(【H_2】)および重水素ガス(【D_2】)を用いてNbHx,NbDxスパッター膜を作製し、電気抵抗の測定によりTcの変化を調べた。(1)TcはNbHx,NbDxともに水素ガス(【H_2】,【D_2】)の増加により減少する。(2)これらの膜のX線回折から格子定数【A_0】を測定したところ水素原子の侵入の増加とともに【A_0】は増加する。このことに対応してTcが下っていることが分った。(3)吸収された水素の濃度の決定は重要なことであるがまだ十分できていない。現在試料の加熱により脱離してくる水素原子の量を質量分析器で分析し濃度を決定することを試みている。(4)水素ガス(【H_2】)および重水素ガス(【D_2】)を導入して作製されたスパッター膜で格子定数が等しい膜同志のTcを比較すると重水素が吸収された方が明らかにTcが下ることが見い出された(同位元素効果)。
KAKENHI-PROJECT-60213004
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60213004
ストリゴラクトン生合成の調節メカニズムに関する研究
ストリゴラクトン(SL)は、植物自身の生長制御と同時に、植物の生長を促す有用微生物(AM菌、根粒菌)、植物の生長を阻害する根寄生植物との相互作用にも関与していることから、農業生産性の向上に資する極めて重要な生理活性物質である。リンや窒素がSL生産・分泌に影響を与えることが明らかになっているものの、リンや窒素がSL生産・分泌をどのように制御しているのか詳細は不明である。本研究では、SL生合成の制御における、植物ホルモン、スクロース、およびリン(P)の相互作用の解明を行うことにより、未だに不明な点が多いSL生合成の調節メカニズムの解明を目的として研究を行ってきた。本年度、所属の変更に伴い、これまで使用していたものとは異なる土壌資材および植物培養環境下で、シロイヌナズナ(Col-0およびSL生合成/受容シグナル伝達欠損変異体)を培養したところ、植物体の生育が非常に良好となり(地上部バイオマスの増加)、地上部枝分かれの数が顕著に増加した。しかしながら残念なことに、内生SL含量の顕著な低下が認められた。AM菌の宿主植物では、リン酸欠乏条件下でSLの分泌が促進される。一方、AM菌の非宿主であるシロイヌナズナでは、リン酸欠乏では内生SL含量が増加しないことが報告されていた。今回、ナズナの生育が良好であったことから、土壌養分がリッチな条件であったことが推察される。すなわち、シロイヌナズナも、栄養条件に反応し、SL生産の制御を受けている可能性が示唆された。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。イネのストリゴラクトン(SL)生産において、リン(P)とサイトカイニン(CK)は阻害的に作用することを明らかにしている。そこで、PとCKがどのように相互作用してSL生産に影響を与えているのかを明らかにするために、PおよびCKが、CK生合成・受容/シグナル伝達関連遺伝子の発現に与える影響を検討した。その結果、PおよびCK処理によって発現が上昇した遺伝子が、CK生合成関連遺伝子IPT18では4つ、シグナル伝達関連遺伝子typeA-RR110では2つあることが判明した。また、オーストラリアでサンプリングしたエンドウの地上部からストリゴラクトンの同定を試みた。その結果、既知ストリゴラクトンは見つからなかったが、新奇ハイドロキシカーラクトン酸と推定されるピークが検出された。更に、SL生合成関連遺伝子の機能を一部明らかにすることができた。これまでSL生合成経路が一部分明らかにされたナズナおよびイネに加えて、根寄生植物Striga,トマト、トウモロコシのMAX1(SL生合成遺伝子の一つ)を酵母で発現させ、その機能を調べたところ、全てのMAX1はカーラクトン(CL)からカーラクトン酸(CLA)を生成すること、CL, CLAを基質にしても他の既知SL(その植物が生産しているSL)が生成されないことが明らかになった。更に、イネのCYP7111A2では、CLおよびCLAから18-OH-CLAが生成され、トマトMAX1では、4-OH-CLAおよび18-OH-CLAが生成されることを明らかにした。ストリゴラクトンを含めた植物ホルモンを分析するための機械であるLC-MS/MSの原因不明の故障が何度も起こったり、平成27年度3月に完了した研究室の引っ越し時に植物ホルモンの内標などが紛失するなどの予期せぬトラブルはあったが、確実に結果をだし、筆頭論文が2報掲載されたため。ストリゴラクトン(SL)は、植物自身の生長制御と同時に、植物の生長を促す有用微生物(AM菌、根粒菌)、植物の生長を阻害する根寄生植物との相互作用にも関与していることから、農業生産性の向上に資する極めて重要な生理活性物質である。リンや窒素がSL生産・分泌に影響を与えることが明らかになっているものの、リンや窒素がSL生産・分泌をどのように制御しているのか詳細は不明である。本研究では、SL生合成の制御における、植物ホルモン、スクロース、およびリン(P)の相互作用の解明を行うことにより、未だに不明な点が多いSL生合成の調節メカニズムの解明を試みている。SL生合成欠損変異体は、植物地上部において過剰な枝分れの表現形を示す。一方で、地上部少分枝品種などは知られていない。このような中、ダイズにおいて少分岐品種が選抜され、共同研究先である北大のグループがその原因遺伝子の探索を試みた。しかしその形質は環境に左右されやすく、ファインマッピングまでは至らなかったが、少分岐に関わる責任遺伝子の候補が見つかった。今後は、この少分枝品種において、SLおよび他の植物ホルモンの内生量などを精査することにより、SL生産・分泌制御の解明を行う。一般的なダイズ品種を用いて、既知SLの同定を行った。その結果、典型的な四環性SLであるorobancholおよびorobanchyl acetate、非典型的SLであるcarlactonoic acidがダイズの根および根浸出液から検出された。これまで、イネでは、典型的な植物ホルモンであるサイトカイニンはSL生産・分泌に対して負に制御することを明らかにしていた。このサイトカイニンによる負の制御は、イネだけでなくトマトでも起こることを確認した。ストリゴラクトン(SL)は、植物自身の生長制御と同時に、植物の生長を促す有用微生物(AM菌、根粒菌)、植物の生長を阻害する根寄生植物との相互作用にも関与していることから、農業生産性の向上に資する極めて重要な生理活性物質である。
KAKENHI-PROJECT-15J40043
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J40043
ストリゴラクトン生合成の調節メカニズムに関する研究
リンや窒素がSL生産・分泌に影響を与えることが明らかになっているものの、リンや窒素がSL生産・分泌をどのように制御しているのか詳細は不明である。本研究では、SL生合成の制御における、植物ホルモン、スクロース、およびリン(P)の相互作用の解明を行うことにより、未だに不明な点が多いSL生合成の調節メカニズムの解明を目的として研究を行ってきた。本年度、所属の変更に伴い、これまで使用していたものとは異なる土壌資材および植物培養環境下で、シロイヌナズナ(Col-0およびSL生合成/受容シグナル伝達欠損変異体)を培養したところ、植物体の生育が非常に良好となり(地上部バイオマスの増加)、地上部枝分かれの数が顕著に増加した。しかしながら残念なことに、内生SL含量の顕著な低下が認められた。AM菌の宿主植物では、リン酸欠乏条件下でSLの分泌が促進される。一方、AM菌の非宿主であるシロイヌナズナでは、リン酸欠乏では内生SL含量が増加しないことが報告されていた。今回、ナズナの生育が良好であったことから、土壌養分がリッチな条件であったことが推察される。すなわち、シロイヌナズナも、栄養条件に反応し、SL生産の制御を受けている可能性が示唆された。関連研究で若手Bの科研費が採択された。そのため仕事量は更に増えることが予想される。そのため、技術補佐員を雇うなどし、本課題の研究が遅れないようにする。当初の計画では、過剰な枝分れを生じると予想される糖シグナリング関連遺伝子のノックアウト株のSLおよび他の植物ホルモンの内生量などを精査する予定であったが、ノックアウト株作成がうまくいかなかった。そのため、少枝分品種として選抜されたダイズ品種を用いた実験に変更し、SL生産・分泌制御の解明をめざす。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15J40043
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活火山の潜在的活動度評価の試み
岩手山、秋田駒ケ岳を含む岩手県北部・秋田県北東部の火山地域及びその周辺に6点の臨時観測点を設置した。既存の定常観測点と合わせ構成される稠密観測網データに基づいて、火山地域及びその周辺の詳細な深部構造、微小地震活動特性が明らかになった。P波,S波及びPg,【P^*】等の後続波の到達時刻データを用いて、この地域の地殻構造が調べられた。その結果、コンラッド面の深さは約18km、モホ面の深さはおよそ34km程度で北に向って深くなっている等、詳細な地下構造が明らかになった。またP波及びS波到達時刻データを用いた三次元インバース法による解折では、火山体下に顕著なP波、S波低速度域が存在し、それは火山体直下からおよそ100km程度の深さの深発地震面付近に迄達している。火山体直下では周囲に較べて【V_p】/【V_s】比も顕著に大きな値をもつことも見出された。観測点近傍で発生した地震のコーダ波を用いて、地震波減衰構造が調べられた。その結果、この地域及びその周辺のコーダQ値空間分布が推定された。解析された224hzの周波数範囲で、火山地域下に顕著な低Q域存在すること、かつその低Q域の分布範囲及びその形状が明らかにされた。火山地域下で発生する微小地震の深さ分布が調べられ、過去に比較的大きな内陸被害地震の発生した非火山地域ではおよそ20km程度の深さ迄微小地震が分布するのに対して、火山地域ではせいぜい十数km程度迄の地殻浅部にしか分布していないことが明らかになった。以上、岩手山、秋田駒ケ岳等の火山体下の詳細な深部構造、浅発微小地震活動特性が明らかになり、現在作業中の比抵抗分布の解析も含め、火山の潜在的活動度を評価する上で、これらの情報が重要な指標となり得ることが確かめられた。岩手山、秋田駒ケ岳を含む岩手県北部・秋田県北東部の火山地域及びその周辺に6点の臨時観測点を設置した。既存の定常観測点と合わせ構成される稠密観測網データに基づいて、火山地域及びその周辺の詳細な深部構造、微小地震活動特性が明らかになった。P波,S波及びPg,【P^*】等の後続波の到達時刻データを用いて、この地域の地殻構造が調べられた。その結果、コンラッド面の深さは約18km、モホ面の深さはおよそ34km程度で北に向って深くなっている等、詳細な地下構造が明らかになった。またP波及びS波到達時刻データを用いた三次元インバース法による解折では、火山体下に顕著なP波、S波低速度域が存在し、それは火山体直下からおよそ100km程度の深さの深発地震面付近に迄達している。火山体直下では周囲に較べて【V_p】/【V_s】比も顕著に大きな値をもつことも見出された。観測点近傍で発生した地震のコーダ波を用いて、地震波減衰構造が調べられた。その結果、この地域及びその周辺のコーダQ値空間分布が推定された。解析された224hzの周波数範囲で、火山地域下に顕著な低Q域存在すること、かつその低Q域の分布範囲及びその形状が明らかにされた。火山地域下で発生する微小地震の深さ分布が調べられ、過去に比較的大きな内陸被害地震の発生した非火山地域ではおよそ20km程度の深さ迄微小地震が分布するのに対して、火山地域ではせいぜい十数km程度迄の地殻浅部にしか分布していないことが明らかになった。以上、岩手山、秋田駒ケ岳等の火山体下の詳細な深部構造、浅発微小地震活動特性が明らかになり、現在作業中の比抵抗分布の解析も含め、火山の潜在的活動度を評価する上で、これらの情報が重要な指標となり得ることが確かめられた。
KAKENHI-PROJECT-61025006
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分離肺循環を用いた局所麻酔薬の薬理作用に関する研究
局所麻酔薬リドカインの肺血管,血液ガス値に及ぼす影響ならびに肺への取り込みを調べるため, 2頭の犬を用いて分離肺循環の実験系を確立した.〔分離肺循環の方法〕犬をGOF麻酔下に開胸し,左上葉ならびに心臓葉を切除し,左下葉の気管支にチューブを挿入して右肺との分離換気を行なった.左肺下葉動精脈に灌流用および圧測定用のカテーテルを留置し,もう一頭の犬の股静脈血をポンプを用いて一定流量で左下葉肺動脈に送血し,左肺静脈からドナー犬の外頭静脈へ返血した.送血カニューレよりリドカインを微量注入器により投与した.左下葉を50%酸素で換気し,リドカインの血中濃度が40μg/ml以下では肺動脈圧,肺静脈圧,血液ガス値の変化はなかった. 4070μg/mlでは肺動脈圧,肺静脈圧は軽度増加し, 140μg/mlでは肺血管は有意に収縮した.この時肺静脈のPo_2が有意に増加した.この高濃度リドカインによる肺血管収縮は肺血管に対する直接作用と考えられた.また肺静脈Po_2の増加が生じていることよりこの肺血管収縮は低酸素状態にある肺血管により強く生じている可能性が考えられる.そこで3%酸素による低酸素換気下で同様の実験を行うと,リドカインはより低濃度で肺血管を収縮させることが分った.アンジオテンシンにはこの低酸素による肺血管収縮増強作用は認められなかったので,リドカインの特異的な作用と考えられる.リドカインの肺への取り込みは,リドカイン注入1分後で約50%, 3分以降では20%以下に低下した.この取り込みはリドカインの血中濃度により差がなかったことより単純拡散が主であり,飽和的な取り込みは少ないと考えられる.またこのような肺への取り込みには,血液PH,蛋白結合などの因子が関与している可能性がある.局所麻酔薬の肺血管抵抗、肺内シャントに及ぼす影響ならびに肺への取込みを調べるため、分離肺循環を用いて以下に記すような実験系を確立した。開胸犬を用いて、左下葉の肺動静脈に送脱血用のカニューレを挿入した。送血カニューレより末梢1cmのところで肺動脈圧を測定した。左下葉肺静脈の末梢にカテーテルを挿入し、肺静脈圧を測定した。動物用灌流ポンプを用いてもう一頭の犬の大腿静脈より脱血し、左下葉肺動脈に送血した。肺静脈よりの血液はもう一頭の犬の外頸静脈にもどした。送脱血量は電磁流量計により測定したがその差は10%以内であった。左下葉気管支にカニュレーションし50%酸素で換気した。送血カニューレより局所麻酔薬を微量注入器により投与し、脈動脈圧、肺静脈圧の変動を調べた。脈動脈側と肺静脈側の血液を採取することによりシャント率を求めた。局所麻酔薬の血中濃度をTDXにより測定し、肺動脈側と肺静脈側の濃度の差より局所麻酔薬の肺への取込みを測定した。現段階では、確定的なことは言えないが、局所麻酔薬リドカインの大量注入では肺静脈が収縮し、また肺内シャントには一定の傾向がないように思われる。更にリドカインの肺への取込みは注入初期には非常に大きいが、10分後にはほとんど取り込まれなくなり、また注入終了後には、肺より血中へすみやかに放出された。今後、局所麻酔薬投与時の肺静脈中のカテコールアミンの濃度、α、βブロッカー前処置による肺循環動態の変動などを観察し、局所麻酔薬投与による肺循環系の変動の機序を解明していく予定である。さらに左下乗気管支を10%酸素で換気し、低酸素状態での局所麻酔薬の肺血管に対する作用、肺への取込みについて検討していく予定である。局所麻酔薬リドカインの肺血管,血液ガス値に及ぼす影響ならびに肺への取り込みを調べるため, 2頭の犬を用いて分離肺循環の実験系を確立した.〔分離肺循環の方法〕犬をGOF麻酔下に開胸し,左上葉ならびに心臓葉を切除し,左下葉の気管支にチューブを挿入して右肺との分離換気を行なった.左肺下葉動精脈に灌流用および圧測定用のカテーテルを留置し,もう一頭の犬の股静脈血をポンプを用いて一定流量で左下葉肺動脈に送血し,左肺静脈からドナー犬の外頭静脈へ返血した.送血カニューレよりリドカインを微量注入器により投与した.左下葉を50%酸素で換気し,リドカインの血中濃度が40μg/ml以下では肺動脈圧,肺静脈圧,血液ガス値の変化はなかった. 4070μg/mlでは肺動脈圧,肺静脈圧は軽度増加し, 140μg/mlでは肺血管は有意に収縮した.この時肺静脈のPo_2が有意に増加した.この高濃度リドカインによる肺血管収縮は肺血管に対する直接作用と考えられた.また肺静脈Po_2の増加が生じていることよりこの肺血管収縮は低酸素状態にある肺血管により強く生じている可能性が考えられる.そこで3%酸素による低酸素換気下で同様の実験を行うと,リドカインはより低濃度で肺血管を収縮させることが分った.アンジオテンシンにはこの低酸素による肺血管収縮増強作用は認められなかったので,リドカインの特異的な作用と考えられる.リドカインの肺への取り込みは,リドカイン注入1分後で約50%, 3分以降では20%以下に低下した.
KAKENHI-PROJECT-61480335
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分離肺循環を用いた局所麻酔薬の薬理作用に関する研究
この取り込みはリドカインの血中濃度により差がなかったことより単純拡散が主であり,飽和的な取り込みは少ないと考えられる.またこのような肺への取り込みには,血液PH,蛋白結合などの因子が関与している可能性がある.
KAKENHI-PROJECT-61480335
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61480335
血清中リトドリン濃度を指標とした双胎妊娠患者への切迫早産治療法の適正化
リトドリンは子宮選択的β_2刺激剤であり、切迫流・早産の治療薬として用いられている。双児妊娠患者は、単児妊娠患者に比べて切迫流・早産の危険性が高いため、診断初期からリトドリンが投与されている。しかし、経験的な投与はときに過量投与を招き妊婦の肺水腫や胎児頻拍などの副作用を招く場合があることが指摘されている。また、双児妊娠患者を対象としたリトドリン薬物体内動態についての報告は少ない。本研究では双児妊娠患者を対象とし、血清中リトドリン濃度を指標とした治療指針を作成することを最終的な目的とし、投与量と血清中濃度との関係を検討した。対象は2005年2月から2006年7月までの間に治療を受け、文書により同意を得た双児妊娠患者で、年齢は32.1±4.1歳、入院時体重61.7±10.8kg、リトドリン投与開始時の妊娠週数27.7±2.6週(mean±SD)の14人である。検討項目は、妊娠週数、リトドリン投与量、血清中リトドリン濃度、さらに、各患者の分娩した日から数えて13日前の血清中リトドリン濃度である。血清中濃度はHPLCにより測定した。本研究は天使病院倫理委員会の承認を得た。結果として、対象患者の分娩した週数の平均とSDは、35.3±1.1(範囲:32.936.7)週と早産であった。リトドリン投与量の平均とSDは、2.4±1.2μg/min/kgであり、測定した99点の血清中リトドリン濃度は、96.0±53.4ng/mLであった。投与量と血清中濃度との関係は有意な正の相関(y=42.3x-5.11,r=0.915,p<0.001)を示した。一方、分娩前の血清中リトドリン濃度は46.8290ng/mLと6倍の差が認められた。したがって、このような大きな個体差の要因を解明する必要があることが判明した。今後、さらに対象患者を集め検討していく予定である。リトドリンは子宮選択的β_2刺激剤であり、切迫流・早産の治療薬として用いられている。双児妊娠患者は、単児妊娠患者に比べて切迫流・早産の危険性が高いため、診断初期からリトドリンが投与されている。しかし、経験的な投与はときに過量投与を招き妊婦の肺水腫や胎児頻拍などの副作用を招く場合があることが指摘されている。また、双児妊娠患者を対象としたリトドリン薬物体内動態についての報告は少ない。本研究では双児妊娠患者を対象とし、血清中リトドリン濃度を指標とした治療指針を作成することを最終的な目的とし、投与量と血清中濃度との関係を検討した。対象は2005年2月から2006年7月までの間に治療を受け、文書により同意を得た双児妊娠患者で、年齢は32.1±4.1歳、入院時体重61.7±10.8kg、リトドリン投与開始時の妊娠週数27.7±2.6週(mean±SD)の14人である。検討項目は、妊娠週数、リトドリン投与量、血清中リトドリン濃度、さらに、各患者の分娩した日から数えて13日前の血清中リトドリン濃度である。血清中濃度はHPLCにより測定した。本研究は天使病院倫理委員会の承認を得た。結果として、対象患者の分娩した週数の平均とSDは、35.3±1.1(範囲:32.936.7)週と早産であった。リトドリン投与量の平均とSDは、2.4±1.2μg/min/kgであり、測定した99点の血清中リトドリン濃度は、96.0±53.4ng/mLであった。投与量と血清中濃度との関係は有意な正の相関(y=42.3x-5.11,r=0.915,p<0.001)を示した。一方、分娩前の血清中リトドリン濃度は46.8290ng/mLと6倍の差が認められた。したがって、このような大きな個体差の要因を解明する必要があることが判明した。今後、さらに対象患者を集め検討していく予定である。
KAKENHI-PROJECT-19923076
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19923076
遷移・典型元素による不活性結合活性化型新規触媒反応と普遍元素による代替手法の開発
2年目の研究課題は、(1)前年度で明らかになった銅を用いたトリフルオロメチル化反応の更なる展開(基質一般性の確認、トリフルオロメチル銅錯体の市販試薬からの調製、触媒量の銅試薬を用いた脱炭酸反応の更なる効率化)、及び(2)研究計画で実施予定であった新規触媒による脱水素的クロスカップリング反応及びアミノ化・エーテル化反応の開発と普遍元素による置換であった。このうち、(2)の反応の達成には困難が伴うことが判明したため、(1)の研究に注力することとした。まず、基質一般性の検討を行ったところ、既存の類似錯体を経由する反応に比べて、温和な条件下で反応が進行し、高い収率にて目的のトリフルオロメチル化された芳香族化合物を得ることに成功した。また、既存の反応では困難な種々の官能基を持った基質に対しても問題なく反応が進行した。次に、トリフルオロメチル銅錯体の市販試薬からの調製を試みたところ、安価な試薬の組み合わせでトリフルオロメチル銅錯体が系中にて生成可能である事が判明した。この条件を用いることで、グローブボックスなしでのトリフルオロメチル化反応が可能になり、本反応の応用可能性が飛躍的に向上した。また、本反応はパーフルオロアルキル基の温和な条件下での導入にも適用可能であることが示された。なお、触媒量の銅試薬を用いた脱炭酸反応の更なる効率化に関しては、種々検討したものの満足のいく結果を得ることはできなかった。しかしながら、上記で達成されたトリフルオロメチル化反応は既存の反応に比べて十分な基質適用範囲及び温和な反応条件を有しており、本研究により十分な実績を挙げることができたと判断した。1年目の研究課題は、米国イリノイ州イリノイ大学アーバナシャンペーン校のHartwig教授の元で、酸素を再酸化剤とする新規触媒的脱水素的クロスカップリング反応を開発し、上記で達成された触媒的脱水素的クロスカップリング反応をアミノ化・エーテル化反応へと応用することであった。しかしながら、種々検討の結果、上記反応の達成には困難が伴うことが判明した。そこで、新たな研究の展開として銅触媒を用いたトリフルオロメチル基の脱炭酸型クロスカップリングを試みることとした。トリフルオロメチル基は医薬品や有機触媒等によく見られる重要な官能基の一つであり、化合物の安定性の向上や活性の増大に寄与することが知られている。このトリフルオロメチル基を導入する方法としては、四フッ化硫黄や三フッ化砒素などを用いた反応が古典的に知られているが、試薬の毒性や効率の面で問題を抱えていた。一方、炭素-炭素結合を生成する上で重要であるクロスカップリング反応によく用いられるパラジウム触媒では、トリフルオロメチル基の導入が難しいことが知られている。また、銅を触媒とする反応はいくつか報告があるものの、用いる試薬の価格や基質の適用範囲等に問題を抱えていた。そこで、私は安価に入手可能で低毒性なトリフルオロ酢酸塩を用いた脱炭酸型クロスカップリングの検討を開始した。その結果、触媒量の配位子を添加することで、現在までに40-50%の収率にて目的物を得ることに成功している。また、反応機構解析を目的として中間体の単離及び反応性の検討を行った結果、本反応が副生成物であるヨウ化物の塩によって阻害されること、脱炭酸過程が律速段階であること、及び脱炭酸後に生成するトリフルオロメチル銅が室温においてもクロスカップリング反応を進行させることを明らかとした。現在本反応のさらなる反応性の改善及び収率の向上に向けた取り組みを行っている。2年目の研究課題は、(1)前年度で明らかになった銅を用いたトリフルオロメチル化反応の更なる展開(基質一般性の確認、トリフルオロメチル銅錯体の市販試薬からの調製、触媒量の銅試薬を用いた脱炭酸反応の更なる効率化)、及び(2)研究計画で実施予定であった新規触媒による脱水素的クロスカップリング反応及びアミノ化・エーテル化反応の開発と普遍元素による置換であった。このうち、(2)の反応の達成には困難が伴うことが判明したため、(1)の研究に注力することとした。まず、基質一般性の検討を行ったところ、既存の類似錯体を経由する反応に比べて、温和な条件下で反応が進行し、高い収率にて目的のトリフルオロメチル化された芳香族化合物を得ることに成功した。また、既存の反応では困難な種々の官能基を持った基質に対しても問題なく反応が進行した。次に、トリフルオロメチル銅錯体の市販試薬からの調製を試みたところ、安価な試薬の組み合わせでトリフルオロメチル銅錯体が系中にて生成可能である事が判明した。この条件を用いることで、グローブボックスなしでのトリフルオロメチル化反応が可能になり、本反応の応用可能性が飛躍的に向上した。また、本反応はパーフルオロアルキル基の温和な条件下での導入にも適用可能であることが示された。なお、触媒量の銅試薬を用いた脱炭酸反応の更なる効率化に関しては、種々検討したものの満足のいく結果を得ることはできなかった。しかしながら、上記で達成されたトリフルオロメチル化反応は既存の反応に比べて十分な基質適用範囲及び温和な反応条件を有しており、本研究により十分な実績を挙げることができたと判断した。
KAKENHI-PROJECT-09J02686
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J02686
日米大学生のコミュニケーション・スタイルの比較及びそのデータを使った教材の開発
日米の大学生(18歳23歳)に対して各種の状況を含むコミュニケーション・スタイルに関する調査(会話完成テスト)を行い、調査で得た回答(データ)の分析を行った。さらに、データを利用して、日米のコミュニケーション・スタイルに関する教材を開発し、教材の試行を行った。具体的な研究の手順及び成果は次のようであった。1.日本語と英語で同じ内容のコミュニケーション・スタイルに関する調査用紙を作成し、日本語の調査用紙は日本人学生に、英語の用紙は米国人学生に与えて、回答(データ)を収集した。データは、日本側は白鴎大学、信州大学、清泉女学院短期大学のそれぞれの学生から、米国側は、コロラド大学どアマースト大学の学生から収集した。2.データの分析による日米大学生の相違は、文化背景から説明し得るものであった。又、データ分析は、中部地区英語教育学会「紀要29」及び「紀要30」で発表した。3.データを使ったConsciousness Raising手法による教材を開発し、その教材を白鴎大学、信州大学と米国のウエルズリー大学の学生の学生で試行し、教材の有効性を証明した。この教材は、平成13年秋出版予定となっている。教材の特長は,調査で得た日米の回答(データ)を、学生が読んで,考えで、議論し、発見するという点で、キーワードとして次の3点を挙げることが出来る。4.本研究の展開として、コミュニケーション・スタイルの違いによって不快を生じるケースを特定する調査用紙(会話完成テスト)を作成し、快・不快の観点からの日米ミュニケーション・スタイル研究に着手した。日米の大学生(18歳23歳)に対して各種の状況を含むコミュニケーション・スタイルに関する調査(会話完成テスト)を行い、調査で得た回答(データ)の分析を行った。さらに、データを利用して、日米のコミュニケーション・スタイルに関する教材を開発し、教材の試行を行った。具体的な研究の手順及び成果は次のようであった。1.日本語と英語で同じ内容のコミュニケーション・スタイルに関する調査用紙を作成し、日本語の調査用紙は日本人学生に、英語の用紙は米国人学生に与えて、回答(データ)を収集した。データは、日本側は白鴎大学、信州大学、清泉女学院短期大学のそれぞれの学生から、米国側は、コロラド大学どアマースト大学の学生から収集した。2.データの分析による日米大学生の相違は、文化背景から説明し得るものであった。又、データ分析は、中部地区英語教育学会「紀要29」及び「紀要30」で発表した。3.データを使ったConsciousness Raising手法による教材を開発し、その教材を白鴎大学、信州大学と米国のウエルズリー大学の学生の学生で試行し、教材の有効性を証明した。この教材は、平成13年秋出版予定となっている。教材の特長は,調査で得た日米の回答(データ)を、学生が読んで,考えで、議論し、発見するという点で、キーワードとして次の3点を挙げることが出来る。4.本研究の展開として、コミュニケーション・スタイルの違いによって不快を生じるケースを特定する調査用紙(会話完成テスト)を作成し、快・不快の観点からの日米ミュニケーション・スタイル研究に着手した。日米の大学生(18歳23歳)に対して各種の状況を含むコミュニケ-ション・スタイルに関する調査(会話完成テスト)を行い、調査で得た回答(データ)の分析を行った。さらに、デ-タを効率的に利用して、Consciousness Raisingの手法による、学習者自らが日米のコミュニケーション・スタイルにおける相異を発見する教材を開発し、教材の試行を行った。データ収集は、日本側は信州大学2年生、清泉短期大学2年生他、米国側は、コロラド大学とアーモスト大学の学生であった。教材の試行は、信州大学の学生と米国のウエレスリ-大学の学生に対して行った。具体的な研究の手順は次のように行った。1.日本語と英語で同じ内容のコミュニケ-ション・スタイルに関する調査用紙を作成した。2.日本語の調査用紙は日本人学生に、英語の用紙は米国人学生に与えて、回答(デ-タ)を収集した。3.デ-タの分析・調査の整理を行った。4.デ-タを使ったConsciousness Raising手法による教材を開発し、その教材を信州大学の学生で試行した。5.米国側デ-タを提供している研究協力者を通して、同じ内容の教材を米国ウエレスリ-大学で日本語を学ぶ学生に教材として試用した。6.新たな観点からコミュニケ-ション・スタイルに関する調査用紙(会話完成テスト)の作成の検討を始めた。新たな観点とは、コミュニケ-ション・スタイルの違いによって不快を生じるケ-スを特定することであり、平成12年以降の研究に組み込む予定である。日米の大学生(18歳23歳)に対して各種の状況を含むコミュニケーション・スタイルに関する調査(会話完成テスト)を行い、調査で得た回答(データ)の分析を行った。さらに、データを利用して、日米のコミュニケーション・スタイルに関する教材を開発し、教材の試行を行った。具体的な研究の手順及び成果は次のようであった。1.日本語と英語で同じ内容のコミュニケーション・スタイルに関する調査用紙を作成し、日本語の調査用紙は日本人学生に、英語の用紙は米国人学生に与えて、回答(データ)を収集した。データは、日本側は白鴎大学、信州大学、清泉女学院短期大学のそれぞれの学生から、米国側は、コロラド大学とアマースト大学の学生から収集した。2.データの分析による日米大学生の相違は、文化背景から説明し得るものであった。又、データ分析は、中部地区英語教育学会「紀要29」及び「紀要30」で発表した。
KAKENHI-PROJECT-11680299
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11680299
日米大学生のコミュニケーション・スタイルの比較及びそのデータを使った教材の開発
3.データを使ったConsciousness Raising手法による教材を開発し、その教材を白鴎大学、信州大学と米国のウエルズリー大学の学生の学生で試行し、教材の有効性を証明した。この教材は、平成13年秋出版予定となっている。教材の特長は,調査で得た日米の回答(データ)を、学生が読んで,考えて、議論し、発見するという点で、キーワードとして次の3点を挙げることが出来る。4.本研究の展開として、コミュニケーション・スタイルの違いによって不快を生じるケースを特定する調査用紙(会話完成テスト)を作成し、快・不快の観点からの日米ミュニケーション・スタイル研究に着手した。
KAKENHI-PROJECT-11680299
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11680299