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神経細胞の分化と神経伝達物質トランスポーターの発現 | 2.PC12細胞におけるドーパミン・トランスポーター発現の分子生物学的検討DATとNAT各々に特異的なcDNAオリゴマーを合成し、これらを用いてラット脳mRNA分画からRT-PCR法により、各々のクローンをコピーした。PC12細胞分化0日(コントロール)では両者の発現が認められたが、分化7日目(NGF添加後7日)ではDATの発現が非常に強くなったのに対し、NETの発現は殆ど消失していた。この成績は先に報告したPC12細胞の成長円錐に強く発現している抗体反応陽性蛋白がDATであることを強く支持するものである。1.PC12細胞におけるドーパミン・トランスポーターの発現とその動的局在:免疫組織化学的検討神経細胞分化時にドーパミン・トランスポーター(DAT)がどのような発現を示すかを免疫組織化学的に検索した。ドーパミン性神経細胞のモデル細胞としてPC12細胞(hクローン)を用いた。このh株は特にドーパミンとノルエピネフリンの産性能が高いことで知られている。しかし、TATは分化と共に増加するのに対し、ノルエピネフリン・トランスポーター(NET)は逆に低下することから(平成7年度報告)、DA取り込み能にすぐれ、DAT発現をみるのに最適の細胞株であると考えた。PC12細胞に神経成長因子(NGF)を投与すると、円形の未分化細胞は56時間後より微小な突起を伸ばし始め、2日後には成長円錐を持った数本の神経突起を伸ばしていく。7日後になると神経突起はかなり長くなり、且つ複雑な神経線維ネットワークを構成するようになる。突起の先端には大きな成長円錐が認められる。この培養細胞を抗DAT抗体で免疫染色してみると次のような結果が得られた;DATはコントロールでは細胞表面膜に点状に発現する。NGF添加5時間後には細胞の核周囲を中心にその発現の大幅な増加が認められ、さらに微小突起先端及びその基部の細胞性も陽性に染め出される。神経突起が伸長し始めるとその先端の成長円錐表面膜が強陽質に染色され、神経突起内の細胞質には染色陽性の小顆粒が認められる。以上の所見から、次の4点が明らかとなった;(1)DATの発現は神経細胞分化初期に大幅に増加する。(2)DAT蛋白は小顆粒の形で細胞表面に運ばれ、表面膜に組み込まれる。(3)DATを組み込んだ膜の部分から神経突起が伸長を始め、その先端が成長円錐となる。(4)伸長中の神経突起先端の成長円錐へは次々と小顆粒の形でDAT蛋白が運ばれる。神経伝達物質トランスポーター(Tp)はシナプス間隙こ放出された伝達物質を神経週末内へ再取り込みする機能を持ち、シナプス伝達の終息と伝達物質の再供袷に不可欠の重要なシナプス関連蛋白質てある。伝達物質Tpの発現を検索するため、次のような取り組みを展開した。1)神経伝達物質トランスポーターに対するモノクローン抗体の作製伝達物質TpのcDNAを作製して、これらに対するモノクローン抗体を作製した。今回はドーパミンTp(DAT)、セロトニンTp、小胞アミンTpに対する抗体を作製した。2)抗ドーパミン・トランスポーター抗体の特異性の検討DATとエピネフリンTp(NET)のホモロジーか高いため、抗DAT抗体の使用に当たっては、それの厳密な特異性か要求される。このため次のような検討を加えた。 | KAKENHI-PROJECT-07680815 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07680815 |
ヒト心臓幹細胞からの心筋分化誘導法の樹立~心疾患テーラーメイド医療へのシナリオ~ | c-kit陽性ヒト心臓幹細胞(CSC)は心筋や冠血管を再生し、器官の恒常性を維持している。本研究はCSCの心筋分化誘導法の確立を目標とした。先行研究を参考に、生理活性物質を種々の組み合わせでCSCに作用させたが、分化誘導は達成されなかった。方針を転換し、CSCとiPS細胞をトランスウェルで仕切って共培養しつつ、既知の分化誘導を施した。すると、iPS細胞には14日目から、CSCには30日目から拍動細胞塊が現れ、少なくとも2週間以上持続した。CSCからin vitroで拍動細胞を得ることに初めて成功した。作用している因子が同定されれば、従来よりも生理的な心筋の高効率な分化誘導が期待される。開心手術症例から得られる心臓組織片を用いて、c-kit陽性心臓幹細胞を単離・培養した。細胞選別の特異性については、c-kit受容体に対する免疫細胞染色によって確かめた。この細胞を、マトリゲルによりコーティングした24ウェル(ないし96ウェル)皿に播種し、アスコルビン酸、Wnt阻害薬、BMP阻害薬、Nodal阻害薬、レチノイン酸阻害薬、及びトリヨードサイロニンを、種々の組み合わせで、またタイミングを変えつつ作用させ、それぞれ1ヶ月以上ずつ刺激を続けて拍動性の変化が見られるかどうかを日々観察した。また、いくつかのサンプルを選んでRNAを回収し、qRT-PCR法によって心筋への分化傾向の見られる条件を見出そうと試みた。残念ながら、有意に分化の進んでいると思われる細胞が見られず、更に追加の条件として、デキサメサゾン、オキシトシン、シクロスポリン、DMSOを、それぞれ個別に作用させてみたが、これらの条件でも心筋への分化傾向は見出せなかった。前年度に引き続き、開心手術症例の心臓組織片を研究用サンプルとして、c-kitを発現する心臓幹細胞の単離と培養を行った。細胞選別の特異性は、c-kit受容体に対する免疫染色により確認した。心筋分化誘導法として、低吸着性のディッシュを用いた浮遊培養や、細胞の播種密度を変化させた培養系、V字底の96ウェルプレート等を使用した他、Nature Protocols (2014) 9:1662-81に発表された、マウス及びラットのc-kit陽性心臓幹細胞に対する心筋分化誘導法の援用を試みた。また、心筋細胞との共培養による心筋分化誘導を試みるため、予めヒト核抗体による特異染色を確立した上で、ヒト心臓幹細胞とラット心筋細胞との共培養を試した。異なる比率の組み合わせでトライし、心筋細胞そのものの拍動は観察されたが、サルコメア・アクチンに対する染色が不良で、期待した成果は得られなかった。その後、心筋分化のマーカーとしてアルファ・アクチニンの特異的な染色を確立した。c-kit陽性ヒト心臓幹細胞(CSC)は、分裂・分化して心筋や冠血管を再生し、器官の恒常性を維持している。本研究は、CSCの心筋分化誘導法の確立を目標とした。成功すれば、テーラーメイド医療の実現や新規薬剤開発、心筋発生・分化のメカニズム研究等、多方面での応用と発展が見込まれる。まず、成人の開心術時に切離される組織からCSCを単離・培養した。初期の試みとして、転写因子等の遺伝子発現調節によらずに、少数の生理活性物質を作用させて心筋の生成を目指した。先行研究を参考に、マトリゲル上での培養や、心臓発生に重要な因子として、Wntシグナルの抑制、アスコルビン酸による刺激、Nodal及びBMPシグナルの抑制、レチノイン酸の抑制、トリヨードサイロニンによる刺激といった、分化誘導効果が期待される諸条件を、種々の組み合わせでCSCに作用させた。細胞の拍動の有無を心筋分化の指標とした他、定量的RT-PCRにより心筋に特異的な遺伝子の発現を解析したが、上記の条件では分化誘導は達成されなかった。方針を転換し、ヒトiPS細胞を陽性コントロールとして、既存の分化条件を試みたところ、細胞の拍動が観察された。分化誘導されたiPS細胞は、CSCに比して多様な細胞を含み、それらの分泌因子が心筋分化に重要である可能性が想定された。そこで、CSCとiPS細胞を、ポアサイズ0.4マイクロメートルのトランスウェルで仕切って共培養しつつ、分化誘導を施した。すると、iPS細胞には14日目から、CSCには30日目から拍動細胞塊が現れ、少なくとも2週間以上持続した。CSCは、他の細胞と比較して純度と未分化度が高いために、これまでin vitroでの分化誘導は難しいと考えられていたが、今回初めて拍動細胞を得ることに成功した。更に、この分化過程で作用している因子を突き止められれば、高効率な心筋分化誘導が期待される。c-kit陽性ヒト心臓幹細胞(CSC)は心筋や冠血管を再生し、器官の恒常性を維持している。本研究はCSCの心筋分化誘導法の確立を目標とした。先行研究を参考に、生理活性物質を種々の組み合わせでCSCに作用させたが、分化誘導は達成されなかった。方針を転換し、CSCとiPS細胞をトランスウェルで仕切って共培養しつつ、既知の分化誘導を施した。すると、iPS細胞には14日目から、CSCには30日目から拍動細胞塊が現れ、少なくとも2週間以上持続した。CSCからin vitroで拍動細胞を得ることに初めて成功した。作用している因子が同定されれば、従来よりも生理的な心筋の高効率な分化誘導が期待される。 | KAKENHI-PROJECT-25461118 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25461118 |
ヒト心臓幹細胞からの心筋分化誘導法の樹立~心疾患テーラーメイド医療へのシナリオ~ | 前項に記載の通り、本年度も、新たに種々の異なる方法を導入して試みたが、残念ながら、明らかな心筋分化誘導は果たせなかった。循環器内科学、幹細胞生物学、再生医学昨今、iPS細胞の心筋分化誘導については、方法論が確立されて来ており、一部は商業化もされている。iPS細胞をポジティブコントロールとして、こうした方法を心臓幹細胞に転用することで、心筋分化誘導の可能性を探る。そこから、更にプロトコルの最適化を目指す方針である。当初の研究目的で述べた通り、iPS細胞から誘導される心筋と比較し、心臓幹細胞の分化によって得られる心筋細胞の方が、本来の性質を保持していることが期待され、体外でのツールとして用いる場合でも、その有用性が高いと考えられる。ヒト心臓幹細胞の培養と、分化誘導を試行するシステムの確立には成功しているが、これまでに試した条件では明らかな心筋分化誘導を達成出来ておらず、更なる工夫が必要となる。今年度、新たな心臓組織サンプルを得る機会に恵まれず、新鮮組織片からの幹細胞の単離・培養の機会が当初の計画よりも減ったため、この作業に用いる試薬等の経費に差異が生じた。新たなサンプルが得られなかった点については、凍結組織片の使用、及び、既に培養・凍結保存された培養幹細胞を溶解・再培養して研究に用いた。心筋への分化誘導研究が盛んに行われているiPS細胞ないしES細胞の研究者と、学会や研究会等で意見交換したり、研究室を訪れて実験の様子を見学したりして、継続的にヒントを得ている。具体的には、細胞の培養密度や、浮遊培養系の模索、培養皿の形状やコーティングの材質等について検討し、工夫して行く予定である。推進方策で述べた通り、次年度、iPS細胞の分化誘導法の援用を試みる予定で、ポジティブコントロールとしてのiPS細胞の購入や、必要な試薬等の調達に充てる計画である。また、共同研究先であるハーバード大学のPiero Anversa教授の研究室に赴き、同様の実験に携わる研究者らと直接に話し合って解決策を模索する予定で、次年度使用額の一部を渡航費用として使用する計画である。消耗品購入のタイミングの前後により、次年度に僅かに繰越金が生じました。細胞の分化誘導に用いる試薬等に使う予定です。研究計画や、予算の使用計画自体に変更はありません。 | KAKENHI-PROJECT-25461118 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25461118 |
フレキシブル全固体薄膜二次電池の実現に向けたグラファイト負極の革新合成技術 | 電気自動車や携帯機器のバッテリーの革新を目指し、二次電池の全固体化・薄膜化の研究が活発化している。中でも、軽くて柔らかい「フレキシブル全固体薄膜二次電池」は、どこにでも設置できることに加え、積層による高性能化が容易であり、「究極の電池形態」といえる。その実現のための要素技術として、負極材料であるグラファイト薄膜(厚い多層グラフェン)をプラスチック上に合成し、バルク・グラファイト級の負極特性を実証することを目指す。これまで、NiとCの「層交換」により、ガラス基板上に多層グラフェンを低温(500°C)で合成することに成功した。本年度は、当初計画であった「多層グラフェンの低温合成に向けた層交換金属の探索」に加え、「負極特性評価技術の構築」を前倒しで行った。状態図を用いた調査から、Cと層交換する金属触媒の候補として、これまでに検討したCo、Ni以外にFe、Cu、Sn、Sb、Pd、Ag、Pt、Auなどが挙げられた。これらの金属触媒について、非晶質C/金属触媒/石英基板の構造を製膜し熱処理することで、多層グラフェンの合成温度を一通り調査した。その結果、層交換可能金属を周期表の観点から系統的に明らかにするとともに、低温で層交換を発現する可能性のある金属触媒をFe、Co、Niの3種類に絞り込んだ。これらについて、多層グラフェンの結晶成長様態を微分干渉顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、およびエネルギー分散型X線分析(EDX)により評価した結果、Niを用いた層交換において、最も均一な多層グラフェンを低温で合成できることが判明した。プラスチック上合成にはさらなる低温化が必要であるが、プロセスの工夫により実現可能であると考えている。また、負極特性の評価について物質・材料研究機構や産業技術総合研究所と協力し、層交換多層グラフェン薄膜の負極動作を実証した。本年度(1年目)は当初計画(層交換金属の解明)の達成に加え、3年目に行う予定であった負極評価技術の立ち上げについて、物質・材料研究機構や産業技術総合研究所の協力を得ることで完遂した。2年目には、プラスチック上多層グラフェンの合成に向け、「Ni成膜条件の検討」や「Ni中へのC添加(C層挿入)」による層交換温度の低温化を図る。また、負極構造として適した「多層グラフェン/集電体(金属)」構造を得るため、「逆層交換」の検討を行う。3年目には、2年目に調査したパラメータをもとに多層グラフェンを合成し、負極特性の評価を実施する。電気自動車や携帯機器のバッテリーの革新を目指し、二次電池の全固体化・薄膜化の研究が活発化している。中でも、軽くて柔らかい「フレキシブル全固体薄膜二次電池」は、どこにでも設置できることに加え、積層による高性能化が容易であり、「究極の電池形態」といえる。その実現のための要素技術として、負極材料であるグラファイト薄膜(厚い多層グラフェン)をプラスチック上に合成し、バルク・グラファイト級の負極特性を実証することを目指す。これまで、NiとCの「層交換」により、ガラス基板上に多層グラフェンを低温(500°C)で合成することに成功した。本年度は、当初計画であった「多層グラフェンの低温合成に向けた層交換金属の探索」に加え、「負極特性評価技術の構築」を前倒しで行った。状態図を用いた調査から、Cと層交換する金属触媒の候補として、これまでに検討したCo、Ni以外にFe、Cu、Sn、Sb、Pd、Ag、Pt、Auなどが挙げられた。これらの金属触媒について、非晶質C/金属触媒/石英基板の構造を製膜し熱処理することで、多層グラフェンの合成温度を一通り調査した。その結果、層交換可能金属を周期表の観点から系統的に明らかにするとともに、低温で層交換を発現する可能性のある金属触媒をFe、Co、Niの3種類に絞り込んだ。これらについて、多層グラフェンの結晶成長様態を微分干渉顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、およびエネルギー分散型X線分析(EDX)により評価した結果、Niを用いた層交換において、最も均一な多層グラフェンを低温で合成できることが判明した。プラスチック上合成にはさらなる低温化が必要であるが、プロセスの工夫により実現可能であると考えている。また、負極特性の評価について物質・材料研究機構や産業技術総合研究所と協力し、層交換多層グラフェン薄膜の負極動作を実証した。本年度(1年目)は当初計画(層交換金属の解明)の達成に加え、3年目に行う予定であった負極評価技術の立ち上げについて、物質・材料研究機構や産業技術総合研究所の協力を得ることで完遂した。2年目には、プラスチック上多層グラフェンの合成に向け、「Ni成膜条件の検討」や「Ni中へのC添加(C層挿入)」による層交換温度の低温化を図る。また、負極構造として適した「多層グラフェン/集電体(金属)」構造を得るため、「逆層交換」の検討を行う。3年目には、2年目に調査したパラメータをもとに多層グラフェンを合成し、負極特性の評価を実施する。 | KAKENHI-PROJECT-18K18844 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K18844 |
光合成機能統御におけるカルシウムシグナルの発生と伝達の分子生物学的研究 | 本研究の目的は、光合成機能発現におけるカルシウムシグナル発生の分子機構を明らかにする研究の一環として、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)のCa^<2+>流入欠損株(mid1変異株)の致死性を相補する高等植物のcDNAをスクリーニングし、その機能を解析することである。mid1変異株は性フェロモンのシグナルを受けると、Ca^<2+>の流入を行えないので死に至る。本年度はこの性質を利用して、mid1変異株の致死性を機能的に相補できるシロイヌナズナのcDNAライブラリーをスクリーニングした。その結果、1.性フェロモンによる致死性を示さなくなったcDNAライブラリー導入mid1株を4株選択した。さらに二次スクリーニングにより有力な株を1株に絞った。2.この株からプラスミドを単離し、大腸菌で増幅した後、再度mid1変異株に導入した。この再導入株は性フェロモンによる致死性を示さなかった。したがって、このプラスミドに含まれるcDNAそのものがmid1変異を相補していると結論できる。このcDNAをATU2と名付けた。3. ATU2 cDNAの全塩基配列を決定し、構造解析を行った。この解析の結果、ATU2 cDNAは1,850ヌクレオチドから成り、421アミノ酸残基のタンパク質をコードしていた。コンピュータ解析により、このAtu2タンパク質は新規のタンパク質であり、これに関する報告はこれまでないことが明らかとなった。また、Atu2タンパク質は膜貫通ドメインを持つ形質膜タンパク質と予測された。今後、Atu2タンパク質およびその遺伝子のCa^<2+>シグナル発生における役割を研究する。本研究の目的は、光合成機能発現におけるカルシウムシグナル発生の分子機構を明らかにする研究の一環として、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)のCa^<2+>流入欠損株(mid1変異株)の致死性を相補する高等植物のcDNAをスクリーニングし、その機能を解析することである。mid1変異株は性フェロモンのシグナルを受けると、Ca^<2+>の流入を行えないので死に至る。本年度はこの性質を利用して、mid1変異株の致死性を機能的に相補できるシロイヌナズナのcDNAライブラリーをスクリーニングした。その結果、1.性フェロモンによる致死性を示さなくなったcDNAライブラリー導入mid1株を4株選択した。さらに二次スクリーニングにより有力な株を1株に絞った。2.この株からプラスミドを単離し、大腸菌で増幅した後、再度mid1変異株に導入した。この再導入株は性フェロモンによる致死性を示さなかった。したがって、このプラスミドに含まれるcDNAそのものがmid1変異を相補していると結論できる。このcDNAをATU2と名付けた。3. ATU2 cDNAの全塩基配列を決定し、構造解析を行った。この解析の結果、ATU2 cDNAは1,850ヌクレオチドから成り、421アミノ酸残基のタンパク質をコードしていた。コンピュータ解析により、このAtu2タンパク質は新規のタンパク質であり、これに関する報告はこれまでないことが明らかとなった。また、Atu2タンパク質は膜貫通ドメインを持つ形質膜タンパク質と予測された。今後、Atu2タンパク質およびその遺伝子のCa^<2+>シグナル発生における役割を研究する。 | KAKENHI-PROJECT-10170210 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10170210 |
カンキツ類果実におけるコハン症の発現機構とその防止対策 | 1)収穫したハッサ果実に二三の植物油を処理し、それらのコハン症防止効果について実験した。処理に用いた植物油はサフラワー油とコーン油並びにそれらの主成分であるリノール酸である。サフラワー油10%,20%,100%,コーン油20%,100%,リノール酸100%のいずれの処理においても、コハン症の発現が認められなかった。すなわち、ハッサク果のコハン症の発現防止に植物油処理の効果のあることが明らかとなった。植物油を処理した果実の呼吸量を測定した結果、対照区の約1/2であることも併せて明らかにした。2)大谷イヨのコハン症発現の原因の一つが高温日射(高温ストレス)であることを明らかにした。大谷イヨの果面温度が35°C以上になるとコハン症が発現することも今回の研究で明らかになった。高温ストレスによるコハン症発現の防止対策として、樹上の果実をアルミ蒸着寒冷しやで被覆することにより確立することができた。また、大谷イヨの果実を貯蔵する前に、20°Cで5日間処理し、その果実をポリ個装することによりコハン症の発現を防止することができることも併せて明らかにした。3)ネーブルオレンジのコハン症発現の原因の一つが底温(chilling injury)であることが明らかになった。また、低温によるコハン症の発現は未熟果ほど多いことが分かった。さらに、ネーブルオレンジを5°C,相対湿度95%以上で貯蔵することによりコハン症を人為的に発現させることが貯蔵試験から明らかになった。収穫した果実にABA,塩化カルシュウム,カルシュウム,拮抗剤を処理したけれどコハン症発現の防止効果は認められなかった。しかし、樹上の果実に塩化カルシュウムを処理した場合はコハン症発現の防止効果が認められた。1)収穫したハッサ果実に二三の植物油を処理し、それらのコハン症防止効果について実験した。処理に用いた植物油はサフラワー油とコーン油並びにそれらの主成分であるリノール酸である。サフラワー油10%,20%,100%,コーン油20%,100%,リノール酸100%のいずれの処理においても、コハン症の発現が認められなかった。すなわち、ハッサク果のコハン症の発現防止に植物油処理の効果のあることが明らかとなった。植物油を処理した果実の呼吸量を測定した結果、対照区の約1/2であることも併せて明らかにした。2)大谷イヨのコハン症発現の原因の一つが高温日射(高温ストレス)であることを明らかにした。大谷イヨの果面温度が35°C以上になるとコハン症が発現することも今回の研究で明らかになった。高温ストレスによるコハン症発現の防止対策として、樹上の果実をアルミ蒸着寒冷しやで被覆することにより確立することができた。また、大谷イヨの果実を貯蔵する前に、20°Cで5日間処理し、その果実をポリ個装することによりコハン症の発現を防止することができることも併せて明らかにした。3)ネーブルオレンジのコハン症発現の原因の一つが底温(chilling injury)であることが明らかになった。また、低温によるコハン症の発現は未熟果ほど多いことが分かった。さらに、ネーブルオレンジを5°C,相対湿度95%以上で貯蔵することによりコハン症を人為的に発現させることが貯蔵試験から明らかになった。収穫した果実にABA,塩化カルシュウム,カルシュウム,拮抗剤を処理したけれどコハン症発現の防止効果は認められなかった。しかし、樹上の果実に塩化カルシュウムを処理した場合はコハン症発現の防止効果が認められた。 | KAKENHI-PROJECT-61560037 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61560037 |
DNA複製開始反応を時系列で可視化し、その分子機構を明らかとする試み | DNA複製に先立ってその2本鎖構造が解かれる必要がある。一般的には複製開始因子が多量体としてDNAに結合して解くが、ColE2プラスミドの複製開始因子Repは単量体としてDNAに結合し、その2本鎖構造を解く。RepのDNA結合領域とDNAとからなる2本鎖解裂中間体の立体構造を得て、小さいタンパク質がそれ単量体でDNAの2本鎖構造を解く新しい仕組みを明らかとした。DNA複製に先立ってその2本鎖構造が解かれる必要がある。一般的には複製開始因子が多量体としてDNAに結合して解くが、ColE2プラスミドの複製開始因子Repは単量体としてDNAに結合し、その2本鎖構造を解く。RepのDNA結合領域とDNAとからなる2本鎖解裂中間体の立体構造を得て、小さいタンパク質がそれ単量体でDNAの2本鎖構造を解く新しい仕組みを明らかとした。本研究では、大腸菌を宿主とするColE2プラスミドの複製開始因子ColE2-Repタンパク質をターゲットとして、DNA複製開始初期に形成される複製開始複合体を時系列で可視化、追跡し、DNA複製開始反応中に起こるDNA・タンパク複合体の構造変化についての分子基盤を明らかとする事を目的としている。一般的にDNA複製開始反応は多数の因子の関与により多段階で進むため構造生物学的アプローチが困難であるが、ColE2-Repはそれ単体で複製開始反応を進めるための複数の機能を果たす上に比較的低分子量であり、更に反応の各段階を生化学的に分離可能という特徴がある。ゆえに研究目標の達成に適した因子である。本年度は、ColE2-Repの複製開始因子としての機能に注目し、その複製開始点認識機構と2本鎖DNA解裂の分子機構の解明に取り組んだ。本因子は複製開始因子として小型の分子である上に単量体でDNA2本鎖を解く。複製開始因子は一般的に多量体でDNAを解くため、既知の2本鎖DNA解裂機構とは異なる分子機構が想定されていた。RepのDNA結合ドメインとColE2プラスミドの複製開始点ori配列を含む2本鎖DNAとの複合体の結晶構造を得て、連携研究者により蓄積されている機能解析の結果とを併せる事で、小型のタンパク質が単量体でDNA2本鎖を特異的に解裂させる新規機構を提案した(論文投稿中)。本研究では、大腸菌を宿主とするColE2プラスミドの複製開始因子ColE2 Repタンパク質を用いて、DNA複製開始複合体を時系列で可視化、追跡し、DNA複製開始反応中に起こるDNA・タンパク質複合体の構造変化についての分子基盤を明らかとする事を目的としている。一般的にDNA複製開始反応は多数の因子の関与により多段階で進むため構造生物学的アプローチが困難であるが、Repはそれ単体で複製開始反応を進めるための複数の機能を果たす上に比較的低分子量であり、更に反応の各段階を生化学的に分離可能という特徴があり、研究目標の達成に適した因子である。昨年度はRepの複製開始因子としての機能に注目し、本タンパク質による複製開始点認識機構と2本鎖DNA解裂機構の解明に取り組んだ。RepのDNA結合ドメインとColE2プラスミドの複製開始点ori配列を含む2本鎖DNAとの複合体の結晶化に成功し、2本鎖DNA解裂中間体の立体構造を得た。分子量15kDa程の小さなタンパク質が、それ1分子で巧みにDNA2本鎖を解くユニークな仕組みを明らかとした。DNA結合ドメインのN末に保存されたPriCT領域が重要な役割を果たしており、本領域はバクテリアや真核生物のウイルスなどでも保存されている。今年度はその成果を論文発表し(Itou et al. J.Biol.Chem.2015)、次のステップとなるRepによるプライマーRNA合成機構の解明を目指して全長タンパク質での複合体の結晶化に取り組んだが、目的とする結晶を得る事は出来なかった。構造生物学本課題で注目しているColE2-Repは複製開始因子として複製開始点に特異的に結合し、2本鎖DNAを解裂させる。またプライマーゼ活性を有し、自らが露出させた1本鎖DNAを鋳型としてppApGpAの3塩基からなるプライマーRNA合成を行う。合成されたプライマーを用いてDNA合成酵素IがDNA複製を開始する。本研究では、Repによる2本鎖DNA解裂機構と、その後のプライマー合成機構の分子機構の2点に着目している。前者については計画通りに進んでおり、現在論文を投稿中である。本因子によるユニークな2本鎖解裂機構を立体構造に基づいて明らかとした。また本因子はArchaeo-eukaryotic primaseファミリー(AFPs)に属するプライマー合成酵素に保存されていることが分かっていたが機能未知であったPriCT領域と相同な領域を有しており、本領域がDNA2本鎖解裂に関与する新規モチーフである事を初めて明らかとした。その一方、後者については目的とする複合体サンプル調製の条件検討が計画通りに進んでいないため、研究全体の進捗状況としてはやや遅れ気味であると判断した。目的とするタンパク質DNA複合体の結晶を得てColE2-Repによる複製開始点への結合と2本鎖DNA解裂の分子機構を明らかにする事が出来た一方で、研究のもう一つの柱であるプライマーゼによるde novo RNA鎖伸長機構の解明に向けた解析が遅れ気味である。一般的に複製開始因子はアグリゲーションを生じやすく、サンプルを安定に大量調製する事が困難であり、ColE2-Repもその例に漏れない。更に本研究では3元複合体での結晶化という難易度が高い課題に挑戦している。 | KAKENHI-PROJECT-25840027 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25840027 |
DNA複製開始反応を時系列で可視化し、その分子機構を明らかとする試み | 既に得られているColE2-RepのDNA結合領域とDNAとの複合体の立体構造を基に、複合体化に用いるオリゴDNAの鎖長をデザイン出来るのは「強み」であり、今後はRNA鎖合成機構の解明に集中した研究活動を行う。今年度に得た成果と併せて、複製開始点への複製開始因子の結合とDNA2本鎖構造の解裂からプライマーゼによるプライマーRNAの合成といった、DNA複製開始反応に広く普遍的な基礎的なプロセスについての分子機構の解明を目指す。今年度は、目的とする複合体の結晶化実験を行うために適したタンパク質の調製が計画通りに進まなかったため、複合体化に用いる合成DNAの購入費用を次年度へと繰り越した。タンパク質調製条件の検討は進んでおり、そのサンプルを用いて複合体での結晶化実験を次年度に本格化させる。 | KAKENHI-PROJECT-25840027 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25840027 |
高速多層配線網におけるシグナル・インテグリティ検証システム | 本研究課題においては,高速配線網における信号遅延や反射,クロストークを詳細に解析可能とするシミュレータの構築を目指した.このことを実現するために,配線網を3次元構造として扱いながら,次の2つのアプローチを採用した.すなわち,1)時間領域差分法(FDTD)を用いた電磁界解析手法による詳細解析2)配線網のRLCメッシュモデル(集中定数)による詳細解析である.1)によるアプローチの場合,電磁界効果を詳細に解析できる反面,通常の集中定数系シミュレータに比べて,膨大なシミュレーション時間を要する.従って,配線網の分割手法や並列分散処理によるシミュレーションの高速化を目指した.2)によるアプローチでは,SPICE系シミュレータの利用が可能となる.その一方,回路要素が3次元的に構成されるため,インターコネクトを含む回路内の要素数が膨大となり,1)によるプローチ同様,そのシミュレーション時間が非常に膨大となる.そこで,線形回路の極近似手法に基づく回路の縮小化について検討した.この手法では,伝達関数を有理関数として近似した後,主要な支配極とそれに対応する留数を求めることで,ラプラス領域での減次モデルを作成する.このモデルを時間域モデルに変換することにより,SPICE系シミュレータに実装する事を目指した.以上の結果として,配線の高密度化と高周波によるクロストークや信号の遅延・反射等の影響を含めた正確な配線網シミュレーションが可能となった.このことは,基板,配線を含んだ形での回路シミュレーションが可能となることを意味し,実質的なシグナル・インテグリティの検証システム構築に向けての基盤技術となる.今後,集中定数,分布定数,電磁界効果を検証可能とするアナログ/ディジタル混合信号マルチレベルシミュレータの構築を目指す.本研究課題においては,高速配線網における信号遅延や反射,クロストークを詳細に解析可能とするシミュレータの構築を目指した.このことを実現するために,配線網を3次元構造として扱いながら,次の2つのアプローチを採用した.すなわち,1)時間領域差分法(FDTD)を用いた電磁界解析手法による詳細解析2)配線網のRLCメッシュモデル(集中定数)による詳細解析である.1)によるアプローチの場合,電磁界効果を詳細に解析できる反面,通常の集中定数系シミュレータに比べて,膨大なシミュレーション時間を要する.従って,配線網の分割手法や並列分散処理によるシミュレーションの高速化を目指した.2)によるアプローチでは,SPICE系シミュレータの利用が可能となる.その一方,回路要素が3次元的に構成されるため,インターコネクトを含む回路内の要素数が膨大となり,1)によるプローチ同様,そのシミュレーション時間が非常に膨大となる.そこで,線形回路の極近似手法に基づく回路の縮小化について検討した.この手法では,伝達関数を有理関数として近似した後,主要な支配極とそれに対応する留数を求めることで,ラプラス領域での減次モデルを作成する.このモデルを時間域モデルに変換することにより,SPICE系シミュレータに実装する事を目指した.以上の結果として,配線の高密度化と高周波によるクロストークや信号の遅延・反射等の影響を含めた正確な配線網シミュレーションが可能となった.このことは,基板,配線を含んだ形での回路シミュレーションが可能となることを意味し,実質的なシグナル・インテグリティの検証システム構築に向けての基盤技術となる.今後,集中定数,分布定数,電磁界効果を検証可能とするアナログ/ディジタル混合信号マルチレベルシミュレータの構築を目指す. | KAKENHI-PROJECT-13025223 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13025223 |
曲面に関連した特異積分の研究 | 核函数の半径方向の変化度を示す函数h(t)と曲面{x=Φ(|y|)}あるいは{Φ(y)=(y,ψ(|y|))}に関連した特異積分について,Lp有界性およびトリーベル・リゾルキン空間からトリーベル・リゾルキン空間への有界性について,いくつかのよい結果を得た.関連したベクトル値特異積分であるマルチンキエヴィッチ積分あるいは多重線形特異積分においても同様の結果を得た.それらを含め,14件の成果を得た.これらは特異積分の研究進展に寄与するものである.曲面{(x,y)∈Rd×Rn;x=Φ(y)}に関連した特異積分作用素Tf(x)=p.v.∫_{Rn}h(|y|)Ω(y)|y|{-n}f(x-Φ(y))dy, x∈Rdについて,Tの性質を調べた.2年目は,初年度の実績報告で印刷中であった2論文が正式に発刊されたことと,新しい結果を1つ発刊予定と出来たことである.1.研究課題に直接関係した成果として,研究発表欄に記したように次の論文として発刊された.Rough singularintegrals associated to submanifolds,内容としては,回転型の曲面に関連した特異積分に対して,過去取扱不能であった場合にも適用できる結果を得た.3.曲面に直接関連したものではないが,多重線形特異積分である多重線形フーリエマルティプライア-の重み付き有界性を論じる結果を得た.研究発表欄に記したように次の論文として学術雑誌Forum Mathematicumに印刷承認を得ている.1.昨年の研究実施状況報告書での今後の研究推進方策で述べたように,特に,d=n+1,Φ(y)=(y, ψ(|y|))として曲面{(x,y)∈Rd×Rn;x=Φ(y)}に関連した特異積分作用素Tf(x)=p.v.∫_{Rn}h(|y|)Ω(y)|y|{-n}f(x-Φ(y))dy, x∈Rdについて,核函数Ω(y),揺らぎ函数h(t),RnからRdへの写像Φに種々の条件を与えてTの性質を調べ.Lp有界性のみならずTriebel-Lizorkin空間での有界性について一応満足のいく結果を得,学術雑誌に投稿することができた.現在掲載審査中である.3.連携研究者の佐藤秀一氏が,曲面に直接関連したものではないが,ベクトル値特異積分であるLittlewood-Paley函数についての新知見を得た.このように,解析学の基礎分野である実解析について,特異積分に関する新知見を得,貢献することができた.核函数の半径方向の変化度を示す函数h(t)と曲面{x=Φ(|y|)}あるいは{Φ(y)=(y,ψ(|y|))}に関連した特異積分について,Lp有界性およびトリーベル・リゾルキン空間からトリーベル・リゾルキン空間への有界性について,いくつかのよい結果を得た.関連したベクトル値特異積分であるマルチンキエヴィッチ積分あるいは多重線形特異積分においても同様の結果を得た.それらを含め,14件の成果を得た.これらは特異積分の研究進展に寄与するものである.昨年度の「今後の研究推進方策」では,{(i) d=n, Φ(y)=φ(|y|)y'),φ(t)が適当な条件を満たす. (ii) d=n+1, Φ(y)=(φ(|y|)y', ψ(|y|))でφ(t), ψ(t)が適当な条件を満たす}場合に,曲面{(x,y)∈Rd×Rn;x=Φ(y)}に関連した特異積分作用素Tf(x)=p.v.∫_{Rn}h(|y|)Ω(y)|y|{-n}f(x-Φ(y))dy, x∈Rdについて,核函数Ω(y),揺らぎ函数h(t)に適当な条件の下に研究進展を図るということであった.昨年前半,病気療養のため少し遅れたこともあったが,望ましい方向に進展しており,成果も出せているということで,表記のように自己評価した.数学上記(i),(ii)の場合の研究が当初考えていたより大きなもので,もっと深く考察してみる必要があった上,昨年前半に病気のため十分な時間がとれず,研究進行が遅れてしまった.この分の遅れを取り戻すこととしたい.このため,文献調査を行いつつ種々の試行考察を関数近似論への応用(研究分担者北原和明氏担当)を含めて行う.その際,国内の調和解析分野の研究者とのアイデアの交換・討論により研究進展を図る.また,北京師範大のXue准教授・Ding教授とのアイデアの交換・討論もこれまでと同様に引き続き行う.研究実施計画では,曲面{(x,y)∈Rd×Rn;x=Φ(y)}に関連した特異積分作用素Tf(x)=p.v.∫_{Rn}h(|y|) | KAKENHI-PROJECT-23540228 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23540228 |
曲面に関連した特異積分の研究 | Ω(y)|y|{-n}f(x-Φ(y))dy, x∈Rdについて,核函数Ω(y),揺らぎ函数h(t),RnからRdへの写像Φに種々の条件を与えてTの性質を調べた.研究初年度,次年度は次の2つの場合を研究することが目的であった.(i)d=n, Φ(y)=φ(|y|)y'),φ(t)が適当な条件を満たす.(ii) d=n+1, Φ(y)=(φ(|y|)y', ψ(|y|))でφ(t), ψ(t)が適当な条件を満たす.研究目的の(i)の場合について十分な調査研究を行う予定であったが,上記の3番目の論文の研究に興味を惹かれ,そちらに時間と精力を注ぎ,結果として初期の計画遂行に十分な力を尽くせなかったという反省点があり,研究全体としては望ましい進展をしているが,「おおむね順調に進展している」と自己評価した.曲面{(x,y)∈Rd×Rn;x=Φ(y)}に関連した特異積分作用素Tf(x)=p.v.∫_{Rn}h(|y|)Ω(y)|y|{-n}f(x-Φ(y))dy, x∈Rdについて,核函数Ω(y),揺らぎ函数h(t)に適当な条件の下に研究するということであったが,(ii)の場合の研究が当初考えていたより大きなもので,一応の成果を出せたが,(iii)については計画遂行に力を尽くせなかったという反省点があり,研究全体としては望ましい進展をしているが,「おおむね順調に進展している」と自己評価した.研究実施計画では,研究目的の(i)の場合について十分な調査研究を行う予定であったが,むしろ研究目的の(ii)の場合の研究で結果を出せるものがあり,その整理・改良に手をとられ,研究全体としては望ましい進展をしているが,初期の計画に十分な勢力を尽くせなかったという反省点があり,「おおむね順調に進展している」と自己評価した.研究成果を発表する予定であった「2nd East Asian Conference in Harmonic Analysis and Applications」への出席を急病のため急遽取りやめた.ここでの研究発表を踏まえ,既知の結果の調査を行った後に成果のとりまとめを行い論文にまとめる予定であったが,病気療養のためこの部分が遅れたことから未使用額が生じた.2年目の研究目的(i)の調査研究が十分行えなかったので,連携研究者の佐藤秀一氏による結果の再検討など,この分野の文献を精査し,研究目的(i),(ii)併せての研究進展を図る.このため,この分野の文献調査を行いつつ種々の試行考察を関数近似論への応用(研究分担者北原和明氏担当)を含めて行う.その際,国内の調和解析分野の研究者とのアイデアの交換・討論により研究進展を図る.また,北京師範大のXue准教授・Ding教授とのアイデアの交換・討論も引き続き行う.上記(ii)の場合の研究が当初考えていたより大きなもので,もっと深く考察してみる必要があリそれに値することがわかったので,連携研究者の佐藤秀一氏による結果の再検討など,この分野の文献を精査し,研究目的(i),(ii)併せての研究進展を図る.このため,この分野の文献調査を行いつつ種々の試行考察を関数近似論への応用(研究分担者北原和明氏担当)を含めて行う.その際,国内の調和解析分野の研究者とのアイデアの交換・討論により研究進展を図る.また,北京師範大のXue准教授・Ding教授とのアイデアの交換・討論もこれまでと同様に引き続き行う.初年度研究目的(i)の調査研究が十分行えなかったので,連携研究者の佐藤秀一氏による結果の再検討など,この分野の文献を精査し,研究目的(i),(ii)併せての研究進展を図る.このため,この分野の文献調査を行いつつ種々の試行考察を関数近似論への応用(研究分担者北原和明氏担当)を含めて行う.その際,国内の調和解析分野の研究者とのアイデアの交換・討論により研究進展を図る.また,北京師範大のXue准教授・Ding教授とのアイデアの交換・討論も引き続き行う.初年度,2年度と同じく,大部分は国内外の研究集会への参加費用として使用し,一部を参考資料,参考図書,文具類に使用する計画である. | KAKENHI-PROJECT-23540228 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23540228 |
教育の質保証に関する日欧比較研究 | 本研究は、日本とドイツにおける学校教育の質保証と教育格差という課題にどのように対応しうるのかというモデルを構築し、一部地域における実験的検証事例を示すことを目的とした。学校教育の質保証を行う手法として、英米では学校外部評価という事後評価モデルで実施されてきた。しかし近年は英米でも政策変化が看取できる。ドイツ等では利害関係者の参画型モデルによる柔軟な質保証政策が試みられている。本研究は、日本とドイツにおける学校教育の質保証と教育格差という課題にどのように対応しうるのかというモデルを構築し、一部地域における実験的検証事例を示すことを目的とした。学校教育の質保証を行う手法として、英米では学校外部評価という事後評価モデルで実施されてきた。しかし近年は英米でも政策変化が看取できる。ドイツ等では利害関係者の参画型モデルによる柔軟な質保証政策が試みられている。1.学校教育の質保証のための理論的研究(1)米英型の理論研究を整理する。その中で、(ア)アメリカの「効果的な学校effective school」などの実践を行っている学校の理論分析を行っている浜田博文氏(筑波大学)、八尾坂修氏(九州大学)等、日本研究者の分析手法を検討した。また、(イ)イギリスのサッチャー以降の教育改革を分析している佐貫浩氏(法政大学)、窪田真二氏(筑波大学)等イギリス教育研究者の分析手法を検討した。(2)日本における理論分析。諸外国の理論研究動向を踏まえ、日本型の学校教育の質保証理論について選考研究を調査した。2.学校教育の質保証のための実態調査研究(1)日本におけう調査研究。各学校における学校の質保証の事例研究と開発を行う。日本でも参画型モデルを試みているところもある(品川区、杉並区、秋田市等)。さらには学校独自の質保証システムを開発しつつある学校(上越市立高志小学校)もあり、県学力調査においても、平均以上の結果を残している。こうした学校に継続的に訪問調査を行い、参画型モデルの長短について、観察を行った。(2)オランダ型モデルの実態調査研究。オランダ型モデルの有効性について、ドイツにおけるオランダ型モデルの実態分析を行う。本年度は、バーデン・ヴュルテンベルク州、バイエルン州及びノルトライン・ヴェシトファーレン州についての調査を実施した。また、ザールラント州やベルリン市についても調査の有効性を検討した。1.学校教育の質保証のための理論的研究(1)大陸型の理論研究を整理する。その中で、(ア)ドイツの学校外部評価の理論分析を行っている南部初世氏(名古屋大学)等、日本研究者の分析手法を検討した。また、(イ)ヨーロッパレベル並びにOECDレベルにおける政策動向についての分析を、EURYDICE、OECD等の文献およびインターネット情報を基に分析手法を検討した。(2)日本における理論分析。諸外国の理論研究動向を踏まえ、日本型の学校教育の質保証理論について先行研究を調査した。2.学校教育の質保証のための実態調査研究(1)日本における調査研究。各学校における学校の質保証の事例研究と開発を行う。日本でも参画型モデルを試みているところもある(品川区、杉並区、秋田市等)。さらには学校独自の質保証システムを開発しつつある学校(上越市立高志小学校)もあり、県学力調査においても、平均以上の結果を残している。こうした学校に継続的に訪問調査を行い、参画型モデルの長短について、観察を行った。(2)オランダ型モデルの実態調査研究。オランダ型モデルの有効性について、ドイツにおけるオランダ型モデルの実態分析を行う。本年度は、バーデン・ヴュルテンベルク州、ザールラント州についての調査を実施した。とりわけ、バーデン・ヴュルテンベルク州では、学校の外部評価者を対象とした研修会で講師を務め、日本とドイツの学校外部評価のモデルの違いについて説明した。3.研究の途中成果の集約(1)学会での発表。日本教育経営学会及び日本比較教育学会で研究成果の発表を行った。(2)「教育学研究」に論文を掲載した。(3)中間報告書を作成した。本研究は、日本とドイツにおける学校教育の質保証と教育格差という課題にどのように対応しうるのかというモデルを構築し、一部地域における実験的検証事例を示すことを目的とする。「公」依存型の日本並びにドイツは、こうした政策動向から遅れていたと考え、結果として、米英をモデルとする、あるいは安直に追随するような、政策動向を生んできた。これまでNPM型行政手法は米英を中心として分析されてきたが、「私」的活動を中心とする米英モデルではない形のモデルを検証することは、今後の日本の行政手法としても意味があるものと考えられる。今回の研究は米英のNPM型モデルに替わる理論モデルを構想し、日本における実現可能性を示唆することが目的であった。スイスで開催された国際会議への参加(2011年9月)、現地調査並びに文献研究等により以下の点が明らかとなった。学校教育の質保証を行う手法として、米英では学校外部評価という事後評価モデルで実施されてきた。しかし近年は学校外部評価で学校教育の質向上を行うことは、米英でも困難となりつつある。イギリスの学校水準局が改組され業務が縮小されたり、オランダでも学校外部評価が簡素化された。ドイツでも学校外部評価を縮小しないしは廃止し、各学校の質保証並びに教員の質向上へと政策が転換しつつある。その際、教育行政、民間企業、及び学校が、それぞれにある程度の柔軟性をもって学校教育の質保証並びに教員の質向上に向けた協調型のモデル構築へと進んできたことが解明できた。 | KAKENHI-PROJECT-21530851 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21530851 |
教育の質保証に関する日欧比較研究 | ただし、各利害関係者が柔軟性をもって取り組んでいるため、明示的な一元化は困難となっている。日本への示唆となるモデル構築までは至らず、政策の方向性を示唆することができたという段階である。今後は有効な事例を積み上げる作業へと進むことが必要となる。 | KAKENHI-PROJECT-21530851 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21530851 |
社会におけるメディアの役割:東・東南アジアの国際比較研究の視点から | 東アジア、東南アジアにおけるトランスナショナルなメディア・コンテンツの流通を見ると、先進国のメディア産業が途上国の人々の価値観を支配するという、単純な「文化帝国主義論」では分析しきれない現状が惹起している。アメリカ、EUと挑戦者グループ(日本、香港・中国、韓国、ロシア、オーストラリアなど)との間で、現在ソフトパワーの覇権をかけた争いが地球規模で展開している。われわれのフィールド調査の結果、東アジア・東南アジア諸国では、それぞれの国の政治経済状況による差異は存在するものの、1990年の冷戦終結以後急速なメディア産業の発展とソフトパワーの世界市場への組み込みが進行していることがわかった。東アジア、東南アジアにおけるトランスナショナルなメディア・コンテンツの流通を見ると、先進国のメディア産業が途上国の人々の価値観を支配するという、単純な「文化帝国主義論」では分析しきれない現状が惹起している。アメリカ、EUと挑戦者グループ(日本、香港・中国、韓国、ロシア、オーストラリアなど)との間で、現在ソフトパワーの覇権をかけた争いが地球規模で展開している。われわれのフィールド調査の結果、東アジア・東南アジア諸国では、それぞれの国の政治経済状況による差異は存在するものの、1990年の冷戦終結以後急速なメディア産業の発展とソフトパワーの世界市場への組み込みが進行していることがわかった。1.全体の理論枠組みの構築:研究課題全体の理論枠組みを構築するため、研究代表者・分担者それぞれの方法論からの議論を提起し、理論面での議論を深めた。2.東・東南アジアにおける現地調査・資料調査と資料分析研究課題に関わる下記の現地調査を実施した。(1)アジア社会の構造変化と文化伝達の変遷について、日流・韓流・華流の現象分析と文化受容の社会的側面、社会構造の比較研究を行うために、韓国コンテンツ振興院(ソウル)において韓国のコンテンツ振興政策に関する聞き取り調査を行った。また、韓国コンテンツ振興院に併設されているコンテンツ制作人材を育成する教育施設の概要を調査した。(2)アジア社会の構造変化とジェンダーについて、メディアの社会的役割を分析するために、マレーシアのメディアとジェンダーについて、政治に注目して研究を行った。とくに政治とセックスに関する事件や話題に関連する報道について、政治家のセックス・スキャンダルに関する新聞記事の取り上げ方について、マレーシア現地で資料収集とヒアリング調査を進めた。(3)東南アジア(とくにインドネシア)の市民社会におけるTVの位置づけと役割について分析するために、インドネシアの地方テレビ放送の動向について、首都圏の放送局とバリ州の放送局に焦点をあてて調査した。首都圏については華人系のDaai TV、バリ州についてはBali TVをケースとして、関係者へのインタビューの他、番組内容のモニタリングもおこなった。1.全体の理論枠組みの構築:研究課題全体の理論枠組みを構築するため、研究代表者・分担者それぞれの方法論からの議論を提起し、理論面での議論を深めた。2.東・東南アジアにおける現地調査・資料調査と資料分析研究課題に関わる下記の現地調査を実施した。(1)アジア社会の構造変化と文化伝達の変遷について、日流・韓流・華流の現象分析と文化受容の社会的側面、社会構造の比較研究を行うために、昨年度韓国コンテンツ振興院(ソウル)において聞き取り調査を行った韓国のコンテンツ振興政策の結果を分析するともに、アジアにおけるテレビ番組流通に関する文献を収集し聞き取り調査の裏付けを行った。(2)アジア社会の構造変化とジェンダーについて、メディアの社会的役割を分析するために、マレーシアのメディアとジェンダーについて、政治に注目して研究を行った。とくに政治とセックスに関する事件や話題に関連する報道について、政治家のセックス・スキャンダルに関する新聞記事の取り上げ方について、マレーシア現地で資料収集とヒアリング調査を進めた。(3)東南アジア(とくにインドネシア)の市民社会におけるTVの位置づけと役割について分析するために、インドネシアの地方テレビ放送の動向について、首都圏の放送局とバリ州の放送局に焦点をあてて調査した。首都圏については華人系のDaaiTV、バリ州についてはBali TVをケースとして、関係者へのインタビューの他、番組内容のモニタリングもおこなった。1.全体の理論枠組みの構築:研究課題全体の理論枠組みを構築するため、研究代表者・分担者それぞれの方法論からの議論を提起し、理論面での議論を深めた。北東アジア・東南アジアにおけるトランスナショナルなテレビ番組の受容の状況を見る時、先進国のメディア産業がそのコンテンツを発展途上国に売り込み、発展途上国の人々の価値観を支配するといった「文化帝国主義」の枠組みだけでは、分析しきれない事態が生じている。トランスナショナルな「読者共同体」成立をとらえる理論的枠組みとして、トムリンソンの『文化帝国主義』における議論を整理した。2.東・東南アジアにおける現地調査・資料調査と資料分析研究課題に関わる下記の現地調査を実施した。(1)アジア社会の構造変化と文化伝達の変遷について、日流・韓流・華流の現象分析と文化受容の社会的側面、社会構造の比較研究を行うために、一昨年度韓国コンテンツ振興院(ソウル)において聞き取り調査を行った韓国のコンテンツ振興政策の結果を分析するともに、アジアにおけるテレビ番組流通に関する文献を収集し聞き取り調査の裏付けを行った。(2)アジア社会の構造変化とジェンダーについて、メディアの社会的役割を分析するために、マレーシアのメディアとジェンダーの関係について、ルック・イースト政策に注目して研究を行った。マレーシア現地で資料収集とヒアリング調査を進めた。(3)東南アジア(とくにインドネシア)の市民社会におけるTVの位置づけと役割について分析するために、インドネシアの地方テレビ放送の動向について、首都圏の放送局とバリ州の放送局に焦点をあてて調査した。首都圏については華人系のDaaiTV、バリ州についてはBali TVをケースとして、関係者へのインタビューの他、番組内容のモニタリングもおこなった。 | KAKENHI-PROJECT-22330156 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22330156 |
社会におけるメディアの役割:東・東南アジアの国際比較研究の視点から | 1.研究の理論枠組みの構築:研究課題全体の理論枠組みを構築するため、研究代表者はマス・メディア論、言説分析などの方法論、研究分担者は地域研究とそれぞれの領域からの議論を深めた。東アジア、東南アジアにおけるトランスナショナルなテレビ番組の受容状況を見ると、先進国のメディア産業が途上国のメディアコンテンツを席巻し、途上国の人々の価値観を支配するというような、単純な「文化帝国主義論」では分析しきれない現状が惹起している。トランスナショナルな、メディアコンテンツの流通をとらえる理論枠組みを、トムリンソンの『文化帝国主義』やカルチュラル・スタディズの業績に沿って整理した。加えて、日韓中の政治的関係の悪化が、これらの文化交流にどのような影響を与えるかについても、考察を加えた。2.東・東南アジアにおける現地調査・資料調査と資料分析:前年度に引き続き、研究課題に関わる下記の現地調査を実施した。1)東アジアにおける社会の構造変化と文化交流の変遷について、日流・韓流・華流の相互作用の現況を把握するために、中国・上海市復旦大学新聞学院と上海メディアグループでの現地調査を実施した。2)マレーシアにおいては、同国の社会変動の中でジェンダーイメージとメディアの役割に関する現地資料を収集し分析した。3)インドネシアにおいては、昨年度に引き続き民間放送のネットワーク化の実態を地方局を中心に現地調査した。2014年に誕生したジョコ・ウィドド政権は、経済の首都圏偏重をあらため地方の活性化を狙っている。放送事業を監督する中央および地方の放送委員会(独立行政委員会)は2002年放送法の理念を尊重し、放送行政の民主化を推進する姿勢にいる。デジタル化への対応から放送法の改正が急がれているが、巨大メディア資本と地方放送派との駆け引きが現政権においてどのように展開していくかを分析した。1.研究の理論枠組みの構築研究課題全体の理論枠組みを構築するため、研究代表者はマス・メディア論、言説分析などの方法論、研究分担者は地域研究とそれぞれの領域からの議論を深めた。東アジア、東南アジアにおけるトランスナショナルなテレビ番組の受容状況を見ると、先進国のメディア産業が途上国のメディアコンテンツを席巻し、途上国の人々の価値観を支配するというような、単純な「文化帝国主義論」では分析しきれない現状が惹起している。トランスナショナルな、メディアコンテンツの流通をとらえる理論枠組みを、トムリンソンの『文化帝国主義』やカルチュラル・スタディズの業績に沿って整理した。2.東・東南アジアにおける現地調査・資料調査と資料分析前年度に引き続き、研究課題に関わる下記の現地調査を実施した。 | KAKENHI-PROJECT-22330156 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22330156 |
全方向撮影動画を用いた振返り学習のためのイントラネットシステム開発と授業実践 | 年度進行に従って各学年のクラス別に扱えるデジタルポートフォリオシステムを開発した。多視点からの画像を同時に撮影して取り込めるようにして,作業の方法を示範と簡単に比較して自己確認することができる。また,作品を多視点から撮影してシームレスに回転閲覧可能なデータセットとして記録して,先々の授業等で利用可能とした。使用するカメラの性能を最大限に発揮できる条件と撮影方法を示すテンプレートを開発した。年度進行に従って各学年のクラス別に扱えるデジタルポートフォリオシステムを開発した。多視点からの画像を同時に撮影して取り込めるようにして,作業の方法を示範と簡単に比較して自己確認することができる。また,作品を多視点から撮影してシームレスに回転閲覧可能なデータセットとして記録して,先々の授業等で利用可能とした。使用するカメラの性能を最大限に発揮できる条件と撮影方法を示すテンプレートを開発した。以下の各項目について実施した。(1)デジタルポートフォリオシステムこれまでに作成したデジタルポートフォリオシステムでは,学習者が記入する「課題」や「反省」等の内容とアップしたファイルを見ることができたが,特定の学年のクラスに対して単年度でしか運用できなかった。当該年度では,これを年度に制限されない形態で各学年のクラス別に扱えるように改良を進めた。また,下記に示す"自己確認システム"と"撮影システム"を融合させて,一体化したデジタルポートフォリオシステムにまとめていくための検討を進めてシステム開発の見通しを得た。(2)作業の自己確認システムこれまでに作成した自己確認システムでは,作業を正面,横,上の3視点から別々にできるだけ同時に撮影してデータ保管し,比較したい視点からの撮影動画を選択して閲覧するようにしていた。当該年度では,複数台のカメラを同期させて撮影できるようにし,さらにこれまでより速い動作であっても明瞭な撮影ができる高速撮影動画を用いるようにした。これを時間分割して多数の静止画に分割して制御することで,多視点から撮影した映像を途切れることなく連続した動画のままで,視点を自由に変えながら比較して見られるようにした。(3)作品の撮影システムこれまでに作成した撮影システムでは,作品をターンテーブルに置き,短時間で撮影するために,ターンテーブルを止めることなく回転させたままで動画撮影していた。その動画を時間分割して多数の静止画に分割して制御することで,マウス操作によってさまざまな視点からの静止画を連続的に見ることができるようにしていた。当該年度では,ターンテーブルを木材加工で扱う本立てなどが十分に載る程度の大きさと丈夫さにした。安価なウェブカメラしか準備できない場合でも,その性能を最大限に発揮できる条件と撮影方法を検討した。一方,高解像度の画像を使えるようにして利用範囲を広げた。以下の各項目について実施した。(1)デジタルポートフォリオシステムこれまでに作成したデジタルポートフォリオシステムを年度に制限されない形態で各学年のクラス別に扱えるように改良を進めた。また,下記に示す"自己確認システム"と"撮影システム"を融合させて,一体化したデジタルポートフォリオシステムにまとめていくためのシステム開発を進めた。(2)作業の自己確認システム作成してきた自已確認システムにおいて,複数台のカメラを同期させて撮影できるようにし,さらにこれまでより速い動作であっても明瞭な撮影ができる高速撮影動画を用いるようにした。これを多数の静止画に時間分割して制御することで,多視点から撮影した映像を途切れることなく連続した動画のままで,視点を自由に変えながら比較して見られるための改良をした。また,3Dカメラの撮影画像の活用を検討した。(3)作品の撮影システムこれまでに作成した撮影システムにおいて,ターンテーブルを木材加工で扱う本立てなどが十分に載る程度の大きさと丈夫さのものにし,大小2種類のターンテーブルを選択使用できるようにして,汎用性を広げた。移動する被写体のカメラ撮影画像を解析して,使用するカメラの性能を最大限に発揮できる条件を簡単に設定できるようにした。また,マイクロスコープの撮影画像の利用を検討した。(4)ハイビジョン撮影システムハイビジョン撮影画像を,デジタルポートフォリオシステムの構成の一部として組み込み,授業研究のツールとしても利用可能にするためのシステム構成の検討をした。以下の各項目について実施した。(1)デジタルポートフォリオシステムデジタルポートフォリオシステムを年度に制限されない形態で各学年をクラス別に扱えるようにし,特定の児童生徒について追跡可能とした。さらに,下記に示す"自己確認システム"や"撮影システム"で撮影した画像を取り込めるようにして,デジタルポートフォリオシステムに一体化した。これにより実際の小中学校などの現場で使用可能にできた。(2)作業の自己確認システム従来のシステムでは,カメラを接続したパソコンを3セット用いて,正面,横,上の3方向から作業を撮影してデータ保管し,比較したい撮影方向を選択して閲覧するようにしている。これをカメラの接続をUSB2.0からギガイーサに変更することで,1台のパソコンに3台のカメラを接続して同時に多方向から撮影できるようにした。撮影した画像はすぐに静止画に分割することができ,視点を自由に変えながら比較して見られるようにするための動画データを従来に比べて短時間で1セットのデータを作成保存できるようにした。(3)ハイビジョン撮影システム授業全体の様子や板書の文字,および作品の細部を鮮明に撮影するためには,ハイビジョン撮影が欠かせない。しかし,ハイビジョン撮影の必要性を改めて検討した結果,数百万画素程度のWebカメラを使用するならば,ほとんどの場面で必要な解像度が得られることを確認することができた。(4)小中学校での実践授業映像の活用方法を検討した。はんだ付けについては作業は動画で,はんだ付けの状態はアップの静止画で十分効果があった。 | KAKENHI-PROJECT-21500931 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21500931 |
全方向撮影動画を用いた振返り学習のためのイントラネットシステム開発と授業実践 | かんながけ作業では超スロー動画が効果的であることを確認できた。 | KAKENHI-PROJECT-21500931 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21500931 |
ノイラミニダーゼ阻害薬を用いたインフルエンザの発症予防 | 【方法】医療従事者を発端としたインフルエンザの院内発症事例において、医療従事者に対するオセルタミビルの接触後予防内服効果を検討した。【事例】2005年5月15日以降、外科病棟において、ワクチン接種歴のある複数の医療従事者がA型インフルエンザに罹患した。18日から、一時的な病院運営制限、医療従事者全員へのマスク着用などの緊急対策に加えて、発症者と接触した医療従事者および患者へ抗インフルエンザ薬(オセルタミビル、ザナミビル)の予防投与を行ったところ、新規発生はすみやかに減少し、24日以降認められなくなった。最終的に、39名(医療従事者26名、患者13名)がインフルエンザウイルス抗原陽性、その他23名の医療従事者が発熱のため就業停止となったが、全員軽快した。抗原解析の結果、今回分離されたウイルスは、ワクチン株から軽度変異したA香港型(H3N2)であることが判明した。なお、本事例においては、当初から保健所・東京都・厚生労働省に報告し指示を仰いだ。【結果】インフルエンザ抗原陽性あるいは発熱のため就業停止となった医療従事者は、予防内服を行わなかった44名中43名(主に18日以前)、行った646名中6名(18日以降)であった(p<0.001)。【考察】本事例において、接触後予防(postexposure prophylaxis)として医療従事者がノイラミニダーゼ阻害薬を内服することは、効果的であると考えられた。今回は、(1)ワクチン接種者から拡大したこと、(2)ワクチン効果の望めない時期に発生したこと、(3)変異型ウイルスが原因であったことから、やむを得ず予防内服を実施したが、予防内服の適応の可否は乱用防止のためその都度慎重に検討されるべきである。また、感染拡大当初はマスク着用などの一般的な感染対策が徹底されていなかったために、予防内服の効果は過大評価された可能性がある。以上の主旨を第21回日本環境感染学会総会のシンポジウム(2006年2月25日、台場)において発表した。インフルエンザの流行期には、その潜伏期間中に入院し、入院後に発症(いわゆる持ち込み)する患児が発端者となり、小児病棟内でインフルエンザが流行することがある。ノイラミニダーゼ阻害薬の投与が家族内や高齢者施設内でのインフルエンザ伝播防止に有効とされているが、院内感染防止にノイラミニダーゼ阻害薬を使用した報告はない。2002-2003年のインフルエンザシーズンに、関東圏の2つの病院の小児病棟においてインフルエンザの院内発症があり流行の拡大が懸念されたため、途中から保護者の同意を得て、流行終息目的でオセルタミビルの予防内服(2mg/kg/dose、最高75mg/dose、1日1回、710日間)を実施した。患者の持ち込みによりインフルエンザが院内発症した事例は3回(A型1回、B型2回)あり、のべ29名の患児が病棟においてインフルエンザ患者に接触した。インフルエンザ発症者はオセルタミビル(治療量)を内服し、隔離した。3事例を通して、予防内服を行わなかった16例のうち11例(69%)がインフルエンザを発症した。一方、接触24時間以内にオセルタミビル予防内服を開始した13例では、インフルエンザの発症はなかった。予防内服による副反応は認められなかった。以上の内容を、感染症学雑誌(78:262-269,2004)で「小児病棟における、インフルエンザ接触者へのオセルタミビル予防内服効果」というタイトルで報告し、本研究費を投稿料などに充てた。また、同内容を第36回日本小児感染症学会総会(2004年11月12日、東京)のイブニングセミナーで「インフルエンザの臨床予防と治療の問題点抗インフルエンザ薬による予防」というタイトルで講演した。なお、家族内発症における予防内服については対象事例がなかったため、その必要性も含め次年度に繰り越す予定である。【方法】医療従事者を発端としたインフルエンザの院内発症事例において、医療従事者に対するオセルタミビルの接触後予防内服効果を検討した。【事例】2005年5月15日以降、外科病棟において、ワクチン接種歴のある複数の医療従事者がA型インフルエンザに罹患した。18日から、一時的な病院運営制限、医療従事者全員へのマスク着用などの緊急対策に加えて、発症者と接触した医療従事者および患者へ抗インフルエンザ薬(オセルタミビル、ザナミビル)の予防投与を行ったところ、新規発生はすみやかに減少し、24日以降認められなくなった。最終的に、39名(医療従事者26名、患者13名)がインフルエンザウイルス抗原陽性、その他23名の医療従事者が発熱のため就業停止となったが、全員軽快した。抗原解析の結果、今回分離されたウイルスは、ワクチン株から軽度変異したA香港型(H3N2)であることが判明した。なお、本事例においては、当初から保健所・東京都・厚生労働省に報告し指示を仰いだ。【結果】インフルエンザ抗原陽性あるいは発熱のため就業停止となった医療従事者は、予防内服を行わなかった44名中43名(主に18日以前)、行った646名中6名(18日以降)であった(p<0.001)。【考察】本事例において、接触後予防(postexposure prophylaxis)として医療従事者がノイラミニダーゼ阻害薬を内服することは、効果的であると考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-16790591 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16790591 |
ノイラミニダーゼ阻害薬を用いたインフルエンザの発症予防 | 今回は、(1)ワクチン接種者から拡大したこと、(2)ワクチン効果の望めない時期に発生したこと、(3)変異型ウイルスが原因であったことから、やむを得ず予防内服を実施したが、予防内服の適応の可否は乱用防止のためその都度慎重に検討されるべきである。また、感染拡大当初はマスク着用などの一般的な感染対策が徹底されていなかったために、予防内服の効果は過大評価された可能性がある。以上の主旨を第21回日本環境感染学会総会のシンポジウム(2006年2月25日、台場)において発表した。 | KAKENHI-PROJECT-16790591 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16790591 |
ドイツ語圏の教育評価に関する総合的研究 | 本年度は、最終年度として、ドイツ語圏における教育と評価に関する総合的考察を行った。その成果は、以下の通りである。第一に、ドイツ語圏の教育評価における能力観の歴史的検討である。1960年代の能力論に端を発するドイツ語圏の学力/能力(Leistung)概念が、PISA調査の前後からコンピテンシーにとってかわられることに着目した。1960年代のドイツを代表する教育学者であったクラフキと、教育心理学者であったインゲンカンプらのLeistung概念を検討したうえで、それは能力の要素化、数値化を主張するコンピテンシーを新たな能力概念とする心理学的な文脈から批判されていることを指摘した。第二に、ドイツ語圏の教育において重要な概念であるBildung(陶冶や人間形成と訳される)が、理念的には相対する「評価」という、しかし教育の営みにおいては欠くことのできない、またPISA以降とりわけ重要とされる領域が、いかに共存してきたのか、あるいはどのような問題を含むのかといった点から検討した。第三にBildung(同上)概念とアビトゥアと呼ばれる後期中等教育修了資格試験(アビトゥア)を検討し、PISA以降のBildung概念の多様化、アビトゥア制度の現行の問題点を明らかにした。ドイツのアビトゥアの問題は日本の大学入試と共通の問題を有している。高大接続は教育における大きな問題であり、教育評価の領域において最も制度的で、最も改革困難だと考えられる。本研究期間を通して、ドイツ語圏で浸透しつつあるコンピテンシーに基づく教育とその評価に関して、批判的検討を行った。その結果、教育の成果を数値化することによって、教育学の重要概念であるBildungの多様化、教育の心理学化の問題、そしてそれが高大接続改革にまで及んでいることを指摘することができた。平成24年度に引き続き、本年度もドイツ語圏におけるコンピテンシー概念についての研究を、主にドイツ語圏の研究者へのインタビュー調査ならびに研究に関する意見交換、討議を中心に進めた。以下にその概略を示す。ドイツ国際教育研究所のJean-Paul Reeff氏とは、コンピテンシーについて討議した。Karl-Heinz Gruberウィーン大学教授からは、オーストリアの教育改革の現状について意見聴取を行った。Rothar Wiggerドルトムント工科大学教授とはコンピテンシー概念についての意見交換を行った。Andreas Gruschkaフランクフルト大学教授からは、コンピテンシー批判についての情報を得ることができた。このような調査によって、ドイツ語圏の教育の現状におけるコンピテンシー概念の位置についてより詳細な知見を得ることができた。本年度は、大きく理論研究と制度研究を行ったと考えられる。前者の理論研究については、「ドイツ語圏における教育パラダイムの転換ー教育スタンダード策定の中央集権化と広域化ー」(『教育目標・評価学会紀要』第22号、2012年、pp.43-52)にまとめた。本論文では、ドイツ語圏において教育スタンダードの実施の拡大・浸透する現象が、一方では国家あるいは各州や教育機関に集権化する傾向を含んだものであることを指摘した。それは、ドイツ、オーストリア、スイスのドイツ語圏地域の教育スタンダードの定義および実際のドイツ語の教育スタンダードを比較検討することで明らかになった。教育スタンダードの導入が、同地域の教育パラダイムの転換とみなされるほどにインパクトがあることにも言及した。後者の制度研究については、「ドイツ語圏の中等教育改革に関する一考察ーオーストリアにおけるNeue Mittelschuleの取り組みー」(『甲南女子大学研究紀要人間科学編』第49号、pp.1-10)にまとめた。本論文では、ドイツ語圏の中でもオーストリアの中等教育改革に注目した。PISAなどの結果から子どもの学力低下が問題となっている同国が、学力向上のために、教育スタンダードおよび教育スタンダードテストの実施だけでなく、長年ドイツ語圏地域の教育問題とされてきた分岐型教育制度(10歳段階での早期選抜)の改革に着手し、Neue Mittelschuleという、これまでのHauptschuleに代わる新しい学校種に改編している状況およびその問題点を指摘した。当該年度は、育児休業の取得に伴い、研究を中断していた。休業期間が終了したので、平成27年度より研究を再開する。PISAが開始されて15年以上が経過した。この平成27年度の研究においては、コンピテンシーに基づく教育改革への批判的検討を、以下の3点の視点から主に行った。1PISAへの適応と加速化/PISA調査の結果に強く影響を受け、そこで指摘された問題をカリキュラムや教育制度の改革などによって改善することに一層取り組んでいる状態、その国や地域の状況を「PISA型教育改革」と呼ぶことにした。本研究においては、「PISA型教育改革」の詳細を、ドイツ・オーストリア・スイスのカリキュラム改革や統計調査の不備などに焦点を当てて検討した。そこでは、2000年代(仮に第1期とする)よりも2010年代(同じく、第2期とする)において、PISAの影響がより強化され、PISAあるいはOECDが求める教育のあり方への適応と加速化が、カリキュラムやテストの増加などによって認められた。2「教育と知識学会」の設立/さらに、その第2期に入った2010年に「PISA型教育改革」を批判するために「教育と知識学会」(Gesellschaft fuer Bildung und Wissen,以下、GBWと略称)が、ドイツ語圏の教育学者たちが中心となって設立されたことに本研究では着目した。このような動きを見ると、日本におけるPISAを一連とした諸改革への批判的な動向は非常に弱いと言わざるを得ない。3変容するBildung/PISA開始 | KAKENHI-PROJECT-24730678 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24730678 |
ドイツ語圏の教育評価に関する総合的研究 | 以降、ドイツ語圏の教育はその伝統的な概念である「Bildung」をゆさぶられてきた。この点については、Bildung概念の変容を歴史的に概観したうえで、この概念のあいまいさや、Bildungと「PISA型教育改革」は共存可能であるか否かなどについて検討した。平成27年度は、主にPISA型教育改革の是非に関する理論研究に従事した。日本において弱いと言わざるを得ないPISA型教育改革に対する批判的な研究動向を確認することができた。また、ドイツ語圏の教育に伝統的に存在してきたBildung概念の変容の史的展開やBildungを主張する論者とコンピテンシーによる教育を主張する論者の相違などを検討した。ただし、育児中のため、また年度途中からの妊娠期間のため、海外での現地調査などは不可能となった。平成28年3月29日から平成29年3月31日まで、出産および育児に伴い休業していたため、研究は一時中断していた。出産・育児休業を取得していたため本年度は、PISA型教育改革が進行する現在において、それに対抗しうる教育実践、教育評価のあり方を、日本とドイツの比較という視点から探究した。ドイツのドルトムント工科大学では、Theory and Practice of Non-"Evidence-based" Educational Assessment in Japanというタイトルで招待講演を行った。ここでは、日本の教育実践史において、かつて子どもの学びの姿をとらえ、教育的に評価し、同時に彼らを指導する教師の試行錯誤の方法を書きとめた生活綴方や実践記録の方法史を取り上げた。これらは、PISAに代表されるエビデンスベースの教育改革に対抗しうるものとして、なおかつ、これらの方法が、現職教育にも資するものとしてとらえることができる。加えて、日本の生活綴方とドイツの作文教育の比較検討の結果、いずれにもコンピテンシーによるカリキュラム改革の影響が散見された。例えば、国語の教科書は「読む」「書く」「聞く」といった要素型のコンピテンシーによって構成されていることなどがそれにあたる。しかしながら、このような共通性は、両国の作文教育をその歴史や伝統を越えて共通化することはできず、日本においては子どもの心情を表現する指導が、ドイツにおいては物語を創造する指導が行われていることが明らかになった。本年度の一連の研究では、ドイツ語圏の教育評価を検討するうえで、日本の教育評価および教育実践をドイツで紹介することによって得た両国の相違性および共通性を相対的にとらえることができた。ドイツ語圏、日本ともにPISAなど大規模学力調査の影響が教科書レベルまで及んでいることが明らになった一方で、それによっては共通化されない、本研究が射程に入れている教育実践の多様な実態を明らかにすることができた。育児休暇を取得後、子育てと両立しながらの教育・研究への復帰には主に二つの困難があった。第一に、長期の海外出張ができないこと。 | KAKENHI-PROJECT-24730678 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24730678 |
フラビン酵素の高次構造と電子移動反応 | ブタ腎臓中鎖アシル-CoAデヒドロゲナーゼ(MACD)は補酵素としてFADを持つフラビン依存型の酵素である。MACDは分子量約19万の4量体酵素であり、サブユニットあたり1分子のFADを結合している。MACDは脂肪酸のβ-酸化の初発段階,すなわちアシル-CoAチオエステルを酸化してtrans-2-エノイル-CoAを生成する反応を触媒する酵素である。今回,アシル鎖C6-C10のものを特異的に触媒するブタ由来のMACDおよびその基質アナログ(3S-C8-CoA)との複合体のX線構造解析を行い,活性部位における'タンパク-基質-補酵素'の相互作用を調べた。アシル鎖C8基質の3位のCをSで置き換えた3S-C8-CoAは,MCADに結合し,遷移状態アナログを生成する。3S-C8-CoAは酵素活性部位において,基質と同様に,反応過程の初期段階である2位のプロトンの引き抜きを受け,アニオン型リガンドとして配位する。この複合体は,基質の3位水素がFADにヒドリドとして移動する前段階に対応する。酸化型FADのイソアロキサジン環と3S-C8-CoAのS1,C1^*,O1^*,C2^*,S3^*で構成される平面は互いに平行で,この平面に垂直な方向から見ると、FADのN10,C10,C4A,N5位が、3S-C8-CoAのO1^*,C1^*,C2^*,S3^*位とそれぞれ重なっていた。また4箇所の間で,酸化型イソアロキサジン環のLUMOとアニオン型3S-C8-CoAのHOMOが適切な対称性をもって重なっており、電荷移動錯体の形成が定性的に説明できる。このHOMO-LUMO相互作用が、イソアロキサジン環とリガンドとの空間配置を決定する安定化要因になるとともに,基質からフラビン環へのヒドリドの移動がこの相互作用を通して起こると考えられる。ブタ腎臓中鎖アシル-CoAデヒドロゲナーゼ(MACD)は補酵素としてFADを持つフラビン依存型の酵素である。MACDは分子量約19万の4量体酵素であり、サブユニットあたり1分子のFADを結合している。MACDは脂肪酸のβ-酸化の初発段階,すなわちアシル-CoAチオエステルを酸化してtrans-2-エノイル-CoAを生成する反応を触媒する酵素である。今回,アシル鎖C6-C10のものを特異的に触媒するブタ由来のMACDおよびその基質アナログ(3S-C8-CoA)との複合体のX線構造解析を行い,活性部位における'タンパク-基質-補酵素'の相互作用を調べた。アシル鎖C8基質の3位のCをSで置き換えた3S-C8-CoAは,MCADに結合し,遷移状態アナログを生成する。3S-C8-CoAは酵素活性部位において,基質と同様に,反応過程の初期段階である2位のプロトンの引き抜きを受け,アニオン型リガンドとして配位する。この複合体は,基質の3位水素がFADにヒドリドとして移動する前段階に対応する。酸化型FADのイソアロキサジン環と3S-C8-CoAのS1,C1^*,O1^*,C2^*,S3^*で構成される平面は互いに平行で,この平面に垂直な方向から見ると、FADのN10,C10,C4A,N5位が、3S-C8-CoAのO1^*,C1^*,C2^*,S3^*位とそれぞれ重なっていた。また4箇所の間で,酸化型イソアロキサジン環のLUMOとアニオン型3S-C8-CoAのHOMOが適切な対称性をもって重なっており、電荷移動錯体の形成が定性的に説明できる。このHOMO-LUMO相互作用が、イソアロキサジン環とリガンドとの空間配置を決定する安定化要因になるとともに,基質からフラビン環へのヒドリドの移動がこの相互作用を通して起こると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-12020249 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12020249 |
ゲノム解析による1児のみに口蓋裂の発現した10組の双生児に対する分子遺伝学的検討 | 本学歯学部付属病院顎口腔機能治療部に通院している双生児のうち1児にのみ口蓋裂の発現した10組の双生児に対して、口蓋裂を有するもの(口蓋裂群)と有さないもの(非口蓋裂群)それぞれから末梢血を採取し、ディファレンシャルmRNAディスプレイ法(以下DD法と略す)による分子遺伝学的解析を行った。DD法で得られた口蓋裂群特異的遺伝子断片は順次PCR反応を行った。さらにデータベース上で既知の情報と照会したところ、これら断片の一部にはMSX1、RARA、PAX9、AP2をはじめとした顎顔面発生の制御に関与するとされてる遺伝子やすでに口蓋裂発生の候補と報告されている遺伝子やその遺伝子と相同性の高い遺伝子が含まれ、さらに複数の未知の遺伝子断片が含まれることが確認された。II.口蓋裂群特異的cDNAの全長単離DD法で得られた口蓋裂群特異的遺伝子断片のうち特定された未知のものを利用し、5'-RACE法によりcDNAの全長を得た。さらにこれらcDNAをテンプレートしてランダムプライミング法により放射能標識したプローブを口蓋裂群と非口蓋裂群それぞれのtotal mRNA試料とハイブリダイゼーションさせることでノーザンブロッティングを行い口蓋裂群と非口蓋裂群との間で異なった発現パターンを示すことを確証した。III.解析結果の比較検討10組の双生児において、口蓋裂群・非口蓋裂群の両群の間で発現パターンが著しく異なる未の遺伝子が見出された。これら遺伝子について、口蓋裂発症の遺伝的要因である可能性を含め順次分子遺伝学的および統計的検討を行った。*患者本人および保護者に本研究の趣旨を理解していただき同意を得た上で末梢血の採取を行った。また、関係者の人権および利益の保護には十分な配慮を図った。A.末梢血を用いたDD法による分子遺伝学的解析本学歯学部附属病院顎口腔機能治療部に通院している双生児に対し,口蓋裂を有するもの(口蓋裂群)と有さないもの(非口蓋裂群)それぞれから,患者本人および保護者に対し本研究の趣旨を理解して頂き,同意を得た上で末梢血の採取を行った.採取した末梢血に対し,下記の要領でDD法による分子遺伝学的解析を行った.(1)DD法による口蓋裂群特異的遺伝子断片の単離10組の双生児の末梢血から抽出したmRNAからcDNAを合成した後,PCR反応を行った.その後,PCR産物を電気泳動し,オートラジオグラフィを行い,口蓋裂群特異的バンドをゲルから切り出し,2回目のPCRを最初のPCRと同じ条件で行い,電気泳動後,最初のDDと同じ位置のバンドを切り出した.このPCR産物をpUC系のベクターにサブクローニングし,シークエンサーにより塩基配列を決定した.(2)染色体局在の決定DD法で得られた口蓋裂群特異的遺伝子断片を順次ラジエーションハイブリッドパネルをテンプレートとしてPCR反応を行い,コンピュータ上で既知の情報と照らし合わせることにより,染色体局在を知ることができる.II.口蓋裂群特異的cDNAの全長単離DD法で得られた遺伝子断片をプローブとしてcDNAライブラリースクリーニング法,あるいは遺伝子断片の塩基配列をもとにプライマーを設計し,5'-RACE法によりcDNAの全長の単離を行った.*なお本研究においては,患者本人および保護者に本研究の趣旨を理解して頂き同意を得た上で,末梢血の採取を行い,関係者の人権および利益の保護には十分配慮することとする.本学歯学部付属病院顎口腔機能治療部に通院している双生児のうち1児にのみ口蓋裂の発現した10組の双生児に対して、口蓋裂を有するもの(口蓋裂群)と有さないもの(非口蓋裂群)それぞれから末梢血を採取し、ディファレンシャルmRNAディスプレイ法(以下DD法と略す)による分子遺伝学的解析を行った。DD法で得られた口蓋裂群特異的遺伝子断片は順次PCR反応を行った。さらにデータベース上で既知の情報と照会したところ、これら断片の一部にはMSX1、RARA、PAX9、AP2をはじめとした顎顔面発生の制御に関与するとされてる遺伝子やすでに口蓋裂発生の候補と報告されている遺伝子やその遺伝子と相同性の高い遺伝子が含まれ、さらに複数の未知の遺伝子断片が含まれることが確認された。II.口蓋裂群特異的cDNAの全長単離DD法で得られた口蓋裂群特異的遺伝子断片のうち特定された未知のものを利用し、5'-RACE法によりcDNAの全長を得た。さらにこれらcDNAをテンプレートしてランダムプライミング法により放射能標識したプローブを口蓋裂群と非口蓋裂群それぞれのtotal mRNA試料とハイブリダイゼーションさせることでノーザンブロッティングを行い口蓋裂群と非口蓋裂群との間で異なった発現パターンを示すことを確証した。III.解析結果の比較検討10組の双生児において、口蓋裂群・非口蓋裂群の両群の間で発現パターンが著しく異なる未の遺伝子が見出された。これら遺伝子について、口蓋裂発症の遺伝的要因である可能性を含め順次分子遺伝学的および統計的検討を行った。*患者本人および保護者に本研究の趣旨を理解していただき同意を得た上で末梢血の採取を行った。また、関係者の人権および利益の保護には十分な配慮を図った。 | KAKENHI-PROJECT-12771269 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12771269 |
高品質で安全な農水産物の乾燥システムの構築 | 低コストで安全と高品質を保持した農水産物の最適乾燥方法ならびに乾燥食品を確立・開発することを目的に,数種類の農水産物の基礎特性を様々な条件下で測定した。試料の乾燥特性は,熱風乾燥法,減圧乾燥法,マイクロ波加熱乾燥法などの乾燥方法を用いて測定した。最適な乾燥モデルを求めるとともに,乾燥方法および乾燥条件が試料の品質に及ぼす影響を調査した。また,熱物性値や密度,テクスチャーも測定した。低コストで安全と高品質を保持した農水産物の最適乾燥方法ならびに乾燥食品を確立・開発することを最終目的に研究活動を遂行した。平成24年度は,試料として米飯や豆類の他,ホタテ貝柱などの乾燥特性を測定した。このうち,調理済みインゲン豆の乾燥では,試料豆を3種類の乾燥方法:熱風乾燥法,減圧乾燥法,マイクロ波加熱乾燥法で乾燥させ,試料の乾燥特性を数段階の条件で測定した。熱風乾燥過程における試料の含水率変化は,含水率70%以上では指数モデル,含水率70%以下では球モデルによる計算値とよく一致した。真空乾燥およびマイクロ波加熱乾燥過程における試料含水率変化を指数モデルによって予測することができた。さらに,乾燥試料の復水特性も測定し,復水時における試料の含水率変化が球モデルで予測できることを明らかにした。また,白花豆に関しては熱風乾燥特性と減圧乾燥特性を測定した。白花豆の熱風乾燥過程は減率乾燥第二段からなり,拡散方程式における無限平板モデルにより熱風乾燥過程における試料の含水率変化を予測することができた。また,白花豆の熱風乾燥過程は,減率乾燥第一段であり,指数モデルが適用された。各乾燥過程における乾燥速度定数および水分拡散係数の温度依存性を調べた。さらに,乾燥過程における試料の体積変化も調査した。乾燥方法や乾燥条件が白花豆の品質に及ぼす影響を検討し,白花豆の最適乾燥方法を提案した。物性については乾燥米飯のテクスチャーを測定した。その際,数種類の方法で乾燥させた乾燥米飯を復水させ,復水後の試料のテクスチャーを測定した他,官能評価も行った。これらの結果より乾燥米飯のテクスチャー・品質におよぼす乾燥方法の影響を調べた。また,水産物やダイコン,サトイモなどの熱物性値を非定常プローブ法により測定するとともに,得られた熱物性値を用いて加熱シミュレーションを試みた。低コストで安全と高品質を保持した農水産物の最適乾燥方法ならびに乾燥食品を確立・開発することを目的に,数種類の農水産物の基礎特性を様々な条件下で測定した。試料の乾燥特性は,熱風乾燥法,減圧乾燥法,マイクロ波加熱乾燥法などの乾燥方法を用いて測定した。最適な乾燥モデルを求めるとともに,乾燥方法および乾燥条件が試料の品質に及ぼす影響を調査した。また,熱物性値や密度,テクスチャーも測定した。本研究の最終目的は,低コストで安全と高品質を保持した農水産物の最適乾燥方法ならびに乾燥食品を確立・開発することである。そのための基礎として,(1)農水産物を数種類の方法で乾燥させ,熱・水分移動機構を理論的に把握する,(2)操作条件と品質特性との関係を定性的且つ定量的に把握する,(3)乾燥過程における物性変化を測定し,これら値の予測モデルの構築やデータベース化を図る,(4)「(1)(3)」に基づき乾燥シミュレーションを行う,(5)官能評価や組織構造観察による乾物の評価,また,微生物試験や投入エネルギー・コスト計算も行い,乾燥方法と品質との関係を総合的に検証する。平成23年度は,農産物試料として米飯や豆類,サツマイモを主として用い,これらの乾燥実験を実施した。具体的には,本年度は,熱風乾燥法,減圧乾燥法,マイクロ波加熱乾燥法による各試料の乾燥特性を測定した。また,試料のテクスチャー測定も行って,乾燥処理法と力学特性との関係を調べた。測定結果の一例として,米飯の乾燥に関しては,熱風および減圧乾燥法双方において,試料の乾燥速度は,温度が高いほど速く,含水率の減少とともに減少する傾向が得られた。さらに試料の含水率変化を予測する乾燥モデルを把握し,乾燥速度定数の温度依存性も定量的に把握した。また,米飯のマイクロ波加熱乾燥は恒率乾燥期間と減率乾燥期間から構成されることが明らかにした。そのほか,乾燥操作に関連する物性として熱物性値を非定常プローブ法により測定した。試料としては水産物を中心にサツマイモ,ニンジンなどの野菜も用い,同条件におけるこれらの試料の3種類の熱物性値;熱伝導率,熱拡散率,比熱を同時に得た。これらの熱物性値と温度や水分との関係を調べ,これらの熱物性値の推算モデルを把握した。さらに,得られた熱物性値を用いて,熱移動現象に関する数値計算も試みた。おおむね順調に進んでいるが,一部,実験器具や機器・装置の不具合や故障などがあり,研究の進捗がやや遅れている。得られたデータの整理・解析に関してはおおむね順調に進んでいる。数値計算に関しては,まだまだ解決すべき課題がある。平成24年度は引き続き試料を変えて前年度と同様の乾燥実験を実施するが,今年度は真空凍結乾燥や真空マイクロ波加熱乾燥,冷風乾燥も実施する。数値解析に関しては,数値解析ソフトのオプションモジュールを追加購入するなどして,試料の熱や物質の移動に関する数値計算を試み,熱と水分の移動機構を理論的に把握することを試みる。 | KAKENHI-PROJECT-23780261 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23780261 |
高品質で安全な農水産物の乾燥システムの構築 | その他,テクスチャーアナライザーを用いて試料のテクスチャーを測定し,これらの値を組織構造との関係を明らかにするとともに,この結果を踏まえ乾燥中に試料表面に発生するケースハードニング防止策を検討する。乾燥特性に関して得られた知見や乾物の品質評価などの成果を取り纏めるとともに,成果の発表を行う。平成23年度は用いる試料の種類が当初想定していたよりも少なかったため,次年度に使用する予定の研究費が生じた。そのため,この予算も含め,試料をはじめ,機材などの物品費や旅費(国内出張,国外出張)に研究費を使用予定である。 | KAKENHI-PROJECT-23780261 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23780261 |
アデノウイルスベクターを用いた損傷中枢神経伝導路の再生誘導 | 哺乳動物の中枢神経伝導路は,従来再生しないとされるが,平成10,11年度の本研究により,従来の定説を覆して,極めて著しい再生が起こることが明かとなった.その中で,再生が起こる例と,起こらない例との間で,グリオーシスが極めて重要な役割を果たしており,グリオーシスを抑制できれば,例え成ラットでも,極めて良好な再生が可能であることが明かとなった.これに着目し,遺伝子導入により,細胞周期を調整できれば,グリオーシスを抑制し,著明な再生が可能になると考えた.そこで着目したのが,Nijmegen breakage syndromeで変異を認めるNBS1である.NBS1はB-cell lymphomaの抑制遺伝子である可能性があり,抑制遺伝子であるかどうかを検討した.結果は予想に反して,否定的な結果となった.アデノウイルスベクターは,細胞周期調節遺伝子を脳・脊髄に導入する手段であり,実際に脊髄注入を行った.その結果,脊髄の局所のみでなく,脈絡叢や大脳基底核など,広い範囲にわたって,その発現が確認された.従って適切な細胞周期調節遺伝子が導入されれば,グリオーシスが抑制され,著明な再生が誘導される可能性は依然大きいと考えられる.またアデノウイルスベクターによる毒性はなく,投与量を適正に設定すれば,特に中枢神経への直接の注入の場合には,安全であると考えられた.本研究によりアデノウイルスベクターは,将来,脳脊髄損傷の治療手段として極めて有望であることが明かとなった.哺乳動物の中枢神経伝導路は,従来再生しないとされるが,平成10,11年度の本研究により,従来の定説を覆して,極めて著しい再生が起こることが明かとなった.その中で,再生が起こる例と,起こらない例との間で,グリオーシスが極めて重要な役割を果たしており,グリオーシスを抑制できれば,例え成ラットでも,極めて良好な再生が可能であることが明かとなった.これに着目し,遺伝子導入により,細胞周期を調整できれば,グリオーシスを抑制し,著明な再生が可能になると考えた.そこで着目したのが,Nijmegen breakage syndromeで変異を認めるNBS1である.NBS1はB-cell lymphomaの抑制遺伝子である可能性があり,抑制遺伝子であるかどうかを検討した.結果は予想に反して,否定的な結果となった.アデノウイルスベクターは,細胞周期調節遺伝子を脳・脊髄に導入する手段であり,実際に脊髄注入を行った.その結果,脊髄の局所のみでなく,脈絡叢や大脳基底核など,広い範囲にわたって,その発現が確認された.従って適切な細胞周期調節遺伝子が導入されれば,グリオーシスが抑制され,著明な再生が誘導される可能性は依然大きいと考えられる.またアデノウイルスベクターによる毒性はなく,投与量を適正に設定すれば,特に中枢神経への直接の注入の場合には,安全であると考えられた.本研究によりアデノウイルスベクターは,将来,脳脊髄損傷の治療手段として極めて有望であることが明かとなった.本研究のデータをとるにあたり、まず1,ラット脊髄損傷モデルの作製、2,作製したアデノウイルスベクターの濃縮・精製、3,アデノウイルス感染による目的遺伝子の発現部位・量・期間を決定する必要がる。平成10年度科学研究費にて購入したオリンパス製手術用顕微鏡によって、ラット脊髄損傷モデルを作成することが可能となった。そして同時期に購入した超遠心機によって、アデノウイルスベクターを生体内投与できるよう濃縮精製を行うことが可能になったことを確認した。これを受けて、Lacz発現アデノウイルスベクターを感染させることによって、今回使用予定のCAGプロモーター発現アデノウイルスベクターの感染・発現効率ならびに至適感染効率の決定を現在行っている。ラット脊髄損傷モデルは、まずナイフによる鋭利な切断のみを用いる。そして、Lacz発現アデノウイルスベクターは切断面、切断部よりも頭似及び尾側の3種に分けて投与を行い、その発現が、投与局所なのか、あるいは神経細胞体までも上行性に発現が及ぶのかを、脳・脊髄を一塊に摘出してβ-Galにて染色して確認する。脊髄の損傷部位に関しては、早期より各種炎症細胞浸潤が励起され、小血管新生が引き起こされ、結果として神経再生が阻害されることも示唆される。この様な機序解明にも繁がると考えられることから、M-CSF遺伝子投与による生体内への影響をin vivoで検討した論文、ならびに血管新生を引き起こすVEGFの生体内における機序を検討した論文作製にも今回の科学研究費を使用した。今年度では、主に設備を充実させえることが可能になり、アデノウイルスベクター感染の生体内での発現を確認するところまで可能となった。次年度は、さらに神経栄養因子発現アデノウイルスベクターを作製し、その効果について検討する予定である。神経を効率よく再生させるためには、神経軸索の伸長促進とワーラー変性による神経細胞死の抑制が必要となってくる。また、従来のアデノウイルスベクターの問題点も判明した。(1)アデノウイルスベクターの改変ラット脊髄モデルを作製し、アデノウイルスベクターの感染実験を試みているが、我々が意図した部位に特異的に発現させることは困難であり、本研究の実験をさらに進めるためには、アデノウイルスベクターを改変することが、至急必要となった。そこで、現在意図した脊髄損傷部位に十分な発現を得られることが可能なアデノウイルスベクターを他施設と共同で作製中である。(2)損傷軸索の伸長を促進させる因子の同定損傷軸索の伸長をより効率よく促進しうる因子として、L2、BDNFなどの因子を推定している。 | KAKENHI-PROJECT-10470293 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10470293 |
アデノウイルスベクターを用いた損傷中枢神経伝導路の再生誘導 | 軸索の伸長を促進させると考えられる因子の発現を、まずメッセンジャーRNAレベルで検討するために、損傷部位組識よりRNAを抽出し、更にRT-PCR法を行うことを試みた。しかし、以上の検討を行うには多サンプルを均一な条件下で効率よく、遺伝子増幅を行うことが必要である。そこで、本年度科研費を利用してロボサイクラー型のPCR装置を購入し、現在上記実験系を行いながら遺伝子導入実験に利用する目的因子の同定を試みる。(3)神経細胞死の機序解明神経軸索が損傷を受けた際のワーラー変性を予防することは極めて重要である。我々は、神経細胞死の機序解明の過程で、その手がかりを得られると考え、細胞周期やテロメア活性などと密接な関係を持つ遺伝子修復因子の一つであるナイミーヘン染色体不安定性症候群原因遺伝子(NBS1)に着目し、まず、このNBSIの遺伝子変異の有無を頭蓋内各種脳腫瘍において検討を加えた。しかし明らかな遺伝子変異は検出されず(Anticancer Research:2000,in press)、新たな因子の検討を鋭意進めている。哺乳動物の中枢神経伝導路は,従来再生しないとされるが,平成10,11年度の本研究により,従来の定説を覆して,極めて著しい再生が起こることが明かとなった.その中で,再生が起こる例と,起こらない例との間で,グリオーシスが極めて重要な役割を果たしており,グリオーシスを抑制できれば,例え成ラットでも.極めて良好な再生が可能であることが明かとなった.これに着目し,遺伝子導入により,細胞周期を調整できれば,グリオーシスを抑制し,著明な再生が可能になると考えた.そこで着目したのが,Nijmegen breakage syndromeで変異を認めるNBS1である.NBS1はB-cell lymphomaの抑制遺伝子である可能性があり,抑制遺伝子であるかどうかを検討した.結果は予想に反して,否定的な結果となった.アデノウイルスベクターは,細胞周期調節遺伝子を脳・脊髄に導入する手段であり,実際に脊髄注入を行った.その結果,脊髄の局所のみでなく,脈絡叢や大脳基底核など,広い範囲にわたって,その発現が確認された.従って適切な細胞周期調節遺伝子が導入されれば,グリオーシスが抑制され,著明な再生が誘導される可能性は依然大きいと考えられる.またアデノウイルスベクターによる毒性はなく,投与量を適正に設定すれば,特に中枢神経への直接の注入の場合には,安全であると考えられた.本研究によりアデノウイルスベクターは,将来,脳脊髄損傷の治療手段として極めて有望であることが明かとなった. | KAKENHI-PROJECT-10470293 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10470293 |
父性オルガネラオートファジーの選択性を制御する新規アダプターの解析 | 線虫受精卵においては精子に由来するミトコンドリア等の父性オルガネラがオートファジーにより選択的に消去され,この現象はアロファジーと呼ばれている.われわれはアロファジーを制御する因子の探索から,ALLO-1とIKKE-1という二つの因子を同定し,詳しい機能解析を行ってきた.ALLO-1はオートファジーアダプターとして働く新規因子で,父性ミトコンドリア周囲にオートファジー関連因子を局在化させるために必須であった.また,IKKE-1は哺乳類のTBK1やIKKepsilonに相同性を示すキナーゼで,ALLO-1と物理的に相互作用した.また,キナーゼドメインの変異体はikke-1変異体を相補できないことから,キナーゼ活性がアロファジーに必須であることが明らかとなった.さらに,生化学的な解析から,ALLO-1がリン酸化タンパク質であること,このリン酸化の一部はIKKE-1に依存することを見出した.また,受精卵から回収したGFP-ALLO-1の質量分析からリン酸化部位の同定にも成功し,この部位のリン酸化がALLO-1の機能に重要であることを示した.これらの結果は哺乳類TBK1による選択的オートファジー経路の制御メカニズムと類似性があり,TBK1ファミリーキナーゼによる制御は選択的オートファジー経路の共通原理である可能性が示唆された.これらの成果は本年度原著論文として発表した(Sato, et al, Nature Cell Biology 2018).一方で,本研究で同定したALLO-1上のリン酸化部位以外にもIKKE-1のリン酸化基質が存在する可能性を示す結果も得たため,プロテオミクスによりikke-1変異体でリン酸化レベルが低下するププチドの同定を試みている.29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。申請者らは,線虫受精卵において精子から持ち込まれた父性オルガネラを基質とする新たな選択的オートファジー経路を発見し,allophagyと命名した.さらにそこに関わる新規オートファジーアダプターの候補ALLO-1と関連キナーゼを見出し,解析を行ってきた.本年度はALLO-1と関連キナーゼの物理的相互作用を酵母ツーハイブッリド法や線虫受精卵における免疫沈降法により確認した.また,免疫沈降産物の質量分析も行い,これら二つの因子の強い相互作用が検出されたことから,ALLO-1と関連キナーゼは安定な複合体を形成していることが示唆された.関連キナーゼの変異体の表現型解析を行った結果,allo-1変異体と類似の表現型を示したことから,ALLO-1と関連キナーゼは同じ経路で機能していると考えられた.一方,父性オルガネラの認識機構についても解析を行った.選択的オートファジー経路では基質のユビキチン化が認識シグナルとなっているケースが報告されている.ALLO-1には既知のユビキチン認識モチーフは存在しないが,人為的にユビキチン化された構造を誘導するとその部位にALLO-1が局在化することが判明した.また,ユビキチン化された構造はALLO-1依存的にオートファジーによって分解されることも明らかとなった.これらの結果から,allophagyにおいてもALLO-1が基質上のユビキチン化を認識することによって局在化し,それにより基質の周囲に局所的なオートファジーが誘導されるというモデルが考えられた.さらにALLO-1と相互作用する因子の同定を目的に,酵母ツーハイブッリド法(一次スクリーニング)とノックダウンによる表現型解析(二次スクリーニング)を行った.しかし,今回のスクリーニングではallophagyへ影響を与える因子の同定には至らなかった.ALLO-1と関連キナーゼの物理的相互作用の解析や一連の表現型解析が終了し,これら二つの因子が選択的オートファジーの初期ステップで協働して機能する因子であることを証明できた.また,ALLO-1の局在化にユビキチンが関与していることを新たに見出し,基質認識機能を解明するための重要な手がかりを得た.線虫受精卵においては精子に由来するミトコンドリア等の父性オルガネラがオートファジーにより選択的に消去され,この現象はアロファジーと呼ばれている.われわれはアロファジーを制御する因子の探索から,ALLO-1とIKKE-1という二つの因子を同定し,詳しい機能解析を行ってきた.ALLO-1はオートファジーアダプターとして働く新規因子で,父性ミトコンドリア周囲にオートファジー関連因子を局在化させるために必須であった.また,IKKE-1は哺乳類のTBK1やIKKepsilonに相同性を示すキナーゼで,ALLO-1と物理的に相互作用した.また,キナーゼドメインの変異体はikke-1変異体を相補できないことから,キナーゼ活性がアロファジーに必須であることが明らかとなった.さらに,生化学的な解析から,ALLO-1がリン酸化タンパク質であること,このリン酸化の一部はIKKE-1に依存することを見出した.また,受精卵から回収したGFP-ALLO-1の質量分析からリン酸化部位の同定にも成功し,この部位のリン酸化がALLO-1の機能に重要であることを示した.これらの結果は哺乳類TBK1による選択的オートファジー経路の制御メカニズムと類似性があり,TBK1ファミリーキナーゼによる制御は選択的オートファジー経路の共通原理である可能性が示唆された. | KAKENHI-PUBLICLY-16H01191 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-16H01191 |
父性オルガネラオートファジーの選択性を制御する新規アダプターの解析 | これらの成果は本年度原著論文として発表した(Sato, et al, Nature Cell Biology 2018).一方で,本研究で同定したALLO-1上のリン酸化部位以外にもIKKE-1のリン酸化基質が存在する可能性を示す結果も得たため,プロテオミクスによりikke-1変異体でリン酸化レベルが低下するププチドの同定を試みている.ALLO-1による基質認識機構の詳細を明らかにするため,ALLO-1とユビキチンの直接の相互作用を検討する.さらに,引き続きALLO-1と相互作用する因子の同定を目指す.酵母ツーハイブッリド法のスクリーニング規模を大きくするとともに,質量分析による結合タンパク質の同定も行う.また,関連キナーゼのリン酸化基質の同定も試みる.野生型とキナーゼ変異体の受精卵を用い,質量分析によるリン酸化ペプチドの大規模定量プロテオミクスを行う予定である.これら解析で同定された因子についてはノックダウンによる表現型解析を行い,候補因子を絞り込む.29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-16H01191 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-16H01191 |
核内レセプターによる転写制御機構の解析 | ステロイド、甲状腺ホルモン核内レセプター群はリガンド依存性転写制御因子であり、リガンドである脂溶性ホルモンおよび脂溶性ビタミンの信号を遺伝情報に伝達する。このような核内レセプターを介する情報伝達系は組織の分化、増殖に代表される高次生命現象の制御に中心的な役割を果たしている。本研究では核内レセプターによる転写制御を分子レベルで明らかにすることを目的に複数の視点から解析を進めた。1)核内レセプター転写促進に関わる共役転写因子の検索および同定核内レセプターには転写を促進する領域が2箇所存在(AB,E領域)し、各々組織特異的な機能を有することが知られている。そこでビタミンD(VDR)、エストロゲン(ER)、アンドロゲンレセプター(AR)のAB,E領域を酵母転写制御因子GAL4のDNA結合領域に連結し、このキメラタンパクを用い、各領域特異的に作用する共役転写因子をYeastを使ったtwo hybrid systemにより哺乳類cDNAライブラリーから検索した。その結果各々有望な10数個のクローンを得ることに成功した。現在これらクローンについて解析を加えている。2)核内レセプターと基本転写因子との相互作用の検討上記のGAL4とのキメラタンパクあるいはfull length VDR, ER, ARやその欠失タンパクを大腸菌発現ベクターに組み込み、各種タンパクの発現に成功した。また既に得られているTFIIBタンパクとの相互作用を検討する系の確立を行なった。ステロイド、甲状腺ホルモン核内レセプター群はリガンド依存性転写制御因子であり、リガンドである脂溶性ホルモンおよび脂溶性ビタミンの信号を遺伝情報に伝達する。このような核内レセプターを介する情報伝達系は組織の分化、増殖に代表される高次生命現象の制御に中心的な役割を果たしている。本研究では核内レセプターによる転写制御を分子レベルで明らかにすることを目的に複数の視点から解析を進めた。1)核内レセプター転写促進に関わる共役転写因子の検索および同定核内レセプターには転写を促進する領域が2箇所存在(AB,E領域)し、各々組織特異的な機能を有することが知られている。そこでビタミンD(VDR)、エストロゲン(ER)、アンドロゲンレセプター(AR)のAB,E領域を酵母転写制御因子GAL4のDNA結合領域に連結し、このキメラタンパクを用い、各領域特異的に作用する共役転写因子をYeastを使ったtwo hybrid systemにより哺乳類cDNAライブラリーから検索した。その結果各々有望な10数個のクローンを得ることに成功した。現在これらクローンについて解析を加えている。2)核内レセプターと基本転写因子との相互作用の検討上記のGAL4とのキメラタンパクあるいはfull length VDR, ER, ARやその欠失タンパクを大腸菌発現ベクターに組み込み、各種タンパクの発現に成功した。また既に得られているTFIIBタンパクとの相互作用を検討する系の確立を行なった。 | KAKENHI-PROJECT-07258223 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07258223 |
三階の偏微分方程式系の接触幾何学 | 本研究課題の目的は、高階の偏微分方程式系を意識した微分方程式系の接触幾何学の一般論をさらに追及することにある。前年度明示的に表現した2階の接触変換群の表示(広島大学:澁谷一博氏、吉元鷹彦氏との共同研究)を足掛かりとして、興味深い方程式系の発掘を模索した。結果として、一般の接触変換群の作用のもとでは、古典的なモンジューアンペール方程式以外に不変な方程式のカテゴリーは(本質的に)存在しないことがわかった。それ故、この方向性の継続は、変換群の制限に伴う、制御接触変換群の作用のもとでの不変な方程式系の発掘に置き換わる。つまりは、変換群の作用が制約されていることに伴い、モンジューアンペール以外の(ある意味横断的な)不変軌道が見つからないかという問いである。これに関連して、いくつか具体例におけるデモンストレーションを行い、群作用の観点から、作用させる対象である方程式は(設定上)多項式型であるのに対して、作用する変換は有理式型であるというギャップをどのように両立させて議論を進めるかという問題点をクリアにすることができた。ある意味で多項式環と有理関数体が混在している状況であるが、このような種々の理由から、群作用の分析に対して、トライアンドエラーのような直接的な試みではなかなかうまくはいかないと思われるので、代数(記号的方法など古典型不変式環の理論)を中心とした関連分野の適用も視野に入れ、研究を行っている。接触変換群もしくはその作用に視点を移すという試みから、制御接触変換群の作用を考えることが本質的な課題となることや作用においてどこに難点があるかなど、問題背景が当初よりだいぶ明瞭になってきたという利点はあるものの、これといった顕著な新規性をもった結果はまだ与えられていない。このような点を踏まえ、補助事業期間を延長させていただくことにした。今年度は代数的不変式論の適用など、関連分野との交錯を中心的に模索し、何かしらのまとまった指針、もしくは興味深い軌道(方程式系)の発掘をはじめとした見通しの良い結果を与えることが出来るように努力していきたいと考える。自分一人でできる事には限界があるので、引き続き長年の共同研究者(広島大学:澁谷一博氏とその学生)との定期的かつ活発な議論を通して、ひとつでも多くの成果をあげるため、研究遂行に取り組んでいきたいと考えている。本研究課題では、Darboux、Goursat、Monge、E. Cartan等によって構築された二階の偏微分方程式系の接触幾何学といういわば古典理論としての伝統を引き継ぎ、高階とりわけ三階の偏微分方程式系の接触幾何学の構築ならびに展開を目的としている。研究代表者の研究実績として、以下のものが挙げられる。本研究プログラムの目的達成のための第一歩として、まずは上記に述べた先人等による二階までの古典理論の三階への自然な移行ともいえる幾何学的枠組みを明確に定義し、さらにその枠組みに沿って三階の偏微分方程式系の基礎理論を展開するという研究を、すっきりとした明瞭な形にまとめ上げることができた。具体的には二階の単独型方程式においてよく知られている双曲型、放物型、楕円型方程式に相当する方程式系のカテゴリーを階別冪零Lie環を用いて明確に表現し、特に単独型方程式(余次元1のケース)と3つの連立型方程式(余次元3のケース)という2種類の方程式のクラスに対して、このLie環によるカテゴリー分けを行うことで、これら三階の偏微分方程式系が与える世界を幾何学的観点から見通しの良いものにすることができた。この結果はカテゴリーごとに扱っている方程式系に対して、解の豊富な存在性、解空間の有限次元性などの特徴が得られるという意味で大変興味深いものと考えている。さらには上記に挙げた単独型方程式(余次元1のケース)と3つの連立型方程式(余次元3のケース)の間に幾何学的双対性があるという事実も発見することができた。本研究成果について研究集会で講演することで、当該分野の研究者からこの結果に関する質問やコメントを通して、今後の当該分野の研究展望も見えてきた。このような当該分野の研究者との活発な研究交流を通した研究の進展も実績と考える。研究実績の概要においても述べたように、まずは研究遂行の第一歩としていわゆる基礎理論としての幾何学的枠組みもしくはそれを実現する幾何学的理論を明確に定式化し、それを研究結果として確立できたことは大変良かったと考えている。またこの論文を投稿するにあたりブラッシュアップ、いわゆる推敲作業において、いくつかの問題点が整理され、さらなる具体的課題が見つかった点もよかったと思う。このことは次年度以降の研究につなげていきたいと考えている。本研究課題の目的は、微分方程式を幾何学的な立場から解析する偏微分方程式の接触幾何学という分野において、これまである一定の成果が得られている1階もしくは2階のケースの結果を参考に、より高階とりわけ3階の偏微分方程式の幾何学的解析を行うというものである。当該年度においては、3階の偏微分方程式系の接触幾何学を展開するために、初年度で与えた幾何学的定式化(骨組み)を基軸に、その肉付けを与えることを目的として研究に取り組んだ。特に具体的な方程式系もしくはクラスで、定式化した理論と何らかの意味で相性がよいものを見つけることで、理論としての厚みが増すのでその点に留意した。結果としては、単独型方程式系と3つの連立型方程式系という一般的な方程式系において、前年度に与えた階別冪零Lie環を用いた4クラスへの分類に伴う各クラスのモデル方程式に関して、前年度は最も単純な線形方程式しか基本的にはモデル方程式として与えていなかったが、当該年度においてはそれを含むもう少し一般的な方程式系のクラスに拡張することに成功した。 | KAKENHI-PROJECT-15K21058 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K21058 |
三階の偏微分方程式系の接触幾何学 | これは線形方程式系にある程度の項(具体的にはある種の関数)を付け加えても、その分類のモデル方程式として扱えるというある種の不変性を与えるものである。またこの分類において、特に単独型方程式の場合は、方程式の定義関数に対して定義することができる、ある種の二種類の共変式を用いれば、上記の分類との対応が計算できるということに気づいた。これらの結果は前年度の結果をまとめたプレプリントに一緒にまとめたほうが良いと判断したため、その論文を現在ブラッシュアップしている。当該年度では、理論の肉付けを与えるような具体的な方程式系を与えるという意味において、若干一般化したある一定の方程式系のクラスを導くことができたものの、それら方程式系のクラスが各々の分類リストに属するという基本的な対応関係を除いては、それ以上の興味深い事実の発見、もしくはそれらを体系化するところまでは至らなかった。特に3つの連立型方程式系において、解の求積が可能と期待されるある方程式系のクラスがあるのだが、そのクラスにおいて幾何学的にも興味深い構造を与えてくれるだろうと期待させる、いわば雛形となる方程式を作ることには成功したのだが、計算の複雑性のため実際に解を構成することはできなかった。これは2階から3階にオーダーが上がることに伴って、計算するパラメーターの数が増えたことが原因である。このような事は、無論容易に想定されることではあるものの、実際に遂行してみると、予想以上に計算の複雑性が感じられ、ある程度単純な方程式に関しても解の構成が難しいと考えざるを得ないこととなった。したがって別方向のアプローチなど何か工夫をしないと、解の観点からの研究は難しいと感じさせられた。本研究課題の目的は,特に高階の偏微分方程式系を意識した微分方程式系の接触幾何学の一般論をさらに追及することにある。当該年度においては、昨年度主に計算の複雑性等から、思うように対象とする方程式系の構造解析が推し進められなかった反省点を踏まえ、微分方程式そのものというよりもむしろその(接触)変換群のほうに対象を移すことで、変換構造の明示的研究から興味深い方程式系の発見を目指した研究を行うアプローチをとることで、この停滞状況を打破しようと試みた。この研究について、共同研究者の澁谷一博氏(広島大学)ならびに大学院生の吉元鷹彦氏(広島大学)と議論を交わすうち、彼らもこの課題に興味を抱くようになり、共同でこの方向からのアプローチの研究を推し進めることとなった。まずはこの方面の歴史的背景とも関わるベックルント型定理の主張である、一未知関数の二階以上の接触変換は一階の接触変換から持ち上がるという結果に関連し、リフト変換の視点から多変数一未知関数の二階の接触変換を明示的に構成することを試み、これを完遂した。また同時に制御変換の視点から、あえて0階からの接触リフトも明示的に構成し、その差が何であるかも把握する研究も行った。ここにはルジャンドル変換などの重要な変換が見え隠れする。 | KAKENHI-PROJECT-15K21058 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K21058 |
環境ストレス-胎盤形成-胎児 オートファジーとアポトーシスによる細胞死の視点から | 胎盤形成に重要な役割を果たす絨毛外栄養膜細胞が低酸素状態において母体への浸潤能が増加するが、その機能にオートファジーが大きく寄与することを世界に先駆けて初めて明らかにすることができた。胎盤形成に重要な役割を果たす絨毛外栄養膜細胞が低酸素状態において母体への浸潤能が増加するが、その機能にオートファジーが大きく寄与することを世界に先駆けて初めて明らかにすることができた。今回の研究では、生殖現象とくに胎盤形成におけるAP(オートファジー)とアポトーシスによる細胞死を新たな視点から比較することを目的とした。はじめに、我々はEVT(絨毛外栄養膜細胞)細胞に注目した。なぜなら、EVT細胞の浸潤不全(=EVTの細胞死の増加)は胎盤の形成異常と密接に関与することが分かっており、胎盤の低形成が低出生体重児に関連することも知られているからである。臨床において、胎盤の低形成を認める最も重篤な疾患のひとつは、妊娠高血圧症候群(PIH)であることが知られている。そこで、EVT細胞の浸潤が妊娠維持機構に最も重要な機構の一つであると考えられるため、申請者はi)妊娠初期のEVT細胞の浸潤不全=流産、ii)妊娠中期のEVT細胞の浸潤不全=妊娠高血圧症候群(早期型)と考え、今年度はi)を中心に検討を行なった。これまでに申請者は、1)低栄養状態・低酸素状態・低グルコース状態においてPrimary EVT細胞にAPが発生することを、蛋白発現・電顕・蛍光顕微鏡可視化モデルの全てにおいて証明した。また、EVTセルラインにおいても、先述のストレス下1236時間でAPが誘導された。2)APの抑制(抑制薬剤およびタンパク発現レベル)により1)のストレス状況下でのEVTセルラインの浸潤が低下を認めた。3)浸潤に関与するメカニズムとして、APを抑制するとEVT細胞内のMMP発現の低下を認めた。4)実際の妊娠初期組織におけるEVT細胞にAPが起こっていること、を確認している。これまでの結果は仮定i)妊娠初期のEVT細胞の浸潤不全=流産、を支持するものであると考える。今年度は、この結果を発展させ、胎盤形成への関与を詳細に検討する予定である。これまでの成果にて、相馬賞(目本胎盤学会)および、Good presentation賞(日本産婦人科学会)を受賞した。今回の研究では、生殖現象とくに胎盤形成におけるAP(オートファジー)とアポトーシスによる細胞死を新たな視点から比較することを目的とした。はじめに、我々はEVT(絨毛外栄養膜細胞)細胞に注目した。なぜなら、EVT細胞の浸潤不全(=EVTの細胞死の増加)は胎盤の形成異常と密接に関与することが分かっており、胎盤の低形成が低出生体重児に関連することも知られているからである。臨床において、胎盤の低形成を認める最も重篤な疾患のひとつは、妊娠高血圧症候群(PIH)であることが知られている。そこで、EVT細胞の浸潤が妊娠維持機構に最も重要な機構の一つであると考えられるため、申請者はi)妊娠初期のEVT細胞の浸潤不全=流産、ii)妊娠中期のEVT細胞の浸潤不全=妊娠高血圧症候群(早期型)と考え、今年度はi)を中心に検討を行なった。これまでに申請者は、1)低栄養状態・低酸素状態・低グルコース状態においてPrimaly EVT細胞にAPが発生することを、蛋白発現・電顕・蛍光顕微鏡可視化モデルの全てにおいて証明した。また、EVTセルラインにおいても、先述のストレス下12-36時間でAPが誘導された。2)APの抑制(抑制薬剤およびタンパク発現レベル)により1)のストレス状況下でのEVTセルラインの浸潤が低下を認めた。3)浸潤に関与するメカニズムとして、APを抑制するとEVT細胞内のMMP発現の低下を認めた。4)実際の妊娠初期組織におけるEVT細胞にAPが起こっていること、を確認している。これまでの結果は仮定i)妊娠初期のEVT細胞の浸潤不全=流産、を支持するものであると考える。今年度は、この結果を発展させ、胎盤形成への関与を詳細に検討する予定である。これまでの成果にて、相馬賞(日本胎盤学会)および、Good presentation賞(日本産婦人科学会)を受賞した。 | KAKENHI-PROJECT-19791139 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19791139 |
被災道路網の回復管理支援システムの構築 | 本研究の目的は、被災を前提とした道路交通網の回復・管理を支援するシステムの構築である。前年度には都市レベルと地域レベルを対象として、(1)都市レベルの大規模道路網ネットワークの道路網容量の算定とカット行列およびODカット行列の算定手法の開発と(2)地域レベルで都市間の時間距離行列に基づく被災道路網の最適復旧モデルを構築した。本年度は都市レベルでは主として道路網の交通処理能力からみた交通需要抑制策、災害時における発生・集中可能交通量について検討し、特に緊急車両を考慮した震災時に処理し得る発生・集中可能交通量を算定するアルゴリズムを開発した。また、地域レベルでは、前年度に開発した被災道路網の最適復旧モデルをさらに発展させて、道路網の被災リンクが回復するにつれて交通の迂回経路の変化を分割配分シミュレーションにより探索する方法を組み込み、かつ複数の復旧班の協力を考慮したGAによる被災道路網の復旧スケジュールを検討するモデルを構築した。以上、2年度にわたる研究において、都市レベルおよび広域レベルにおける被災道路網の回復管理支援システムを構成する基礎的な方法論を構築することができた。本研究の目的は、被災を前提とした道路交通網の回復・管理を支援するシステムの構築である。前年度には都市レベルと地域レベルを対象として、(1)都市レベルの大規模道路網ネットワークの道路網容量の算定とカット行列およびODカット行列の算定手法の開発と(2)地域レベルで都市間の時間距離行列に基づく被災道路網の最適復旧モデルを構築した。本年度は都市レベルでは主として道路網の交通処理能力からみた交通需要抑制策、災害時における発生・集中可能交通量について検討し、特に緊急車両を考慮した震災時に処理し得る発生・集中可能交通量を算定するアルゴリズムを開発した。また、地域レベルでは、前年度に開発した被災道路網の最適復旧モデルをさらに発展させて、道路網の被災リンクが回復するにつれて交通の迂回経路の変化を分割配分シミュレーションにより探索する方法を組み込み、かつ複数の復旧班の協力を考慮したGAによる被災道路網の復旧スケジュールを検討するモデルを構築した。以上、2年度にわたる研究において、都市レベルおよび広域レベルにおける被災道路網の回復管理支援システムを構成する基礎的な方法論を構築することができた。本研究の目的は、被災を前提に交通網の回復を最適管理する支援システムを構築することである。この目的に対する本年度の研究は都市レベルと地域レベルを対象として、(1)都市レベルの大規模道路網ネットワークの道路網容量の算定とカット行列およびODカット行列の算定手法の開発、(2)地域レベルでは都市間時間距離に基づく被災道路の最適復旧モデルの構築、を行った。大規模道路網ネットワークは札幌都市圏を対象として、道路網容量の算定とカットを探索する手法を開発し、さらに一方通行街路を含むネットワークについての適用可能性、さらに災害時における被害道路区間の影響による発生・集中可能交通量の算定を可能とするアルゴリズムの開発を行った。これらの結果は、災害時における道路網容量の低下に対応した交通量の管理・需要抑制策の検討するシステムの構築を可能とする。一方、地域レベルでは災害による交通途絶が地域に与える影響を実際の地震災害について把握した。その結果を踏まえて、被災道路が地域交通網の時間距離を増加させる度合を視覚的に把握する累積頻度曲線法を開発した。さらに、この累積頻度曲線を用いて、都市間の時間距離の増加を最小にし、最終的に被災前の曲線に最短で復旧するGAによる道路ネットワーク災害復旧モデルを構築した。今後の課題は、時間距離だけでなく、OD交通量と時間距離を合わせた指標を用いた最適復旧モデルを作成することである。本研究の目的は、被災を前提とした道路交通網の回復・管理を支援するシステムの構築である。前年度には都市レベルと地域レベルを対象として、(1)都市レベルの大規模道路網ネットワークの道路網容量の算定とカット行列およびODカット行列の算定手法の開発と(2)地域レベルで都市間の時間距離行列に基づく被災道路網の最適復旧モデルを構築した。本年度は都市レベルでは主として道路網の交通処理能力からみた交通需要抑制策、災害時における発生・集中可能交通量について検討し、特に緊急車両を考慮した震災時に処理し得る発生・集中可能交通量を算定するアルゴリズムを開発した。また、地域レベルでは、前年度に開発した被災道路網の最適復旧モデルをさらに発展させて、道路網の被災リンクが回復するにつれて交通の迂回経路の変化を分割配分シミュレーションにより探索する方法を組み込み、かつ複数の復旧班の協力を考慮したGAによる被災道路網の復旧スケジュールを検討するモデルを構築した。以上、2年度にわたる研究において、都市レベルおよび広域レベルにおける被災道路網の回復管理支援システムを構成する基礎的な方法論を構築することができた。 | KAKENHI-PROJECT-08650617 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08650617 |
宇宙の揺らぎと構造の進化、その背後にある物理の究明 | 郡は原始ブラックホールがダークマターになる可能性についての条件を精査するにあたり、初期宇宙の早期物質優勢期におけるブラックホールの生成機構を定式化した。密度ゆらぎが小さい場合、輻射優勢期より物質優勢期に多く作られる傾向があることを示した。樽家は昨年度に引き続き、コールドダークマターハロー形成時に現れるシェルクロッシングと呼ばれる現象をラグランジュ摂動論を用いて記述、ヴラソフ-ポアソンシミュレーションとの詳細な比較を行なった。また、N体シミュレーションをもとにハロー形成後の位相空間構造を解析、自己相似解との比較を通して位相空間に現れるコールドダークマター特有の性質を調べた。川崎は宇宙のバリオン数を説明するアフレック・ダイン機構において、原始ブラックホールが生成されることを示した。さらに数値シミュレーションによってアクシオン・ストリングがスケーリング則からずれることを明らかにした。千葉はすばる望遠鏡の超広視野カメラのサーベイ観測に基づいて、暗黒物質のトレーサーである銀河系古成分恒星系の解析を行い、その空間分布やサブ構造に知見が得られた。アクシオンが暗黒物質となるシナリオにおいて,崩壊定数が大統一理論のスケールにある場合にはアクシオンの存在量が初期振幅の微調整なしでは多くなりすぎるという問題があった.そこで高橋はQCDスケール以下の低エネルギーインフレーションにおいてはアクシオン場の確率分布がBunch-Davies分布に従い,そのため微調整なしに観測されている暗黒物質存在量を説明できることを示した.すべてのメンバーが活発に暗黒物質の性質,模型,分布や構造形成に関する研究を順調に行なうことで着実に研究成果をあげている.郡は次世代ガンマ線望遠鏡CTAを用いた将来の矮小銀河の観測において、WIMPダークマターの対消滅に起因するガンマ線の検出が期待される。その予想される観測データの理論テンプレートを整備する。樽家は,位相空間から見たコールドダークマターの非線形構造形成について、特に、シェルクロッシング後の速度成分に現れる渦度の生成・発達に注目し、解析計算とヴラソフ-ポアソンシミュレーションとの比較を行う。また、前年度で明らかになったコールドダークマターハローの位相空間構造を、より観測銀河に近いサブハローを用いてどこまで明らかにできるか、N体シミュレーションによる解析を行う。川崎は,物質優勢期に生成される比較的小質量の原始ブラックホールが暗黒物質になる可能性を調べる。千葉は,引き続き銀河系古成分恒星系の理論解析を行って、暗黒物質の正体に関する制限を与える。高橋は自己相互作用する暗黒物質候補として隠れたセクターのモノポールについてその生成過程および実験的な含意について明らかにする.ダークマターの正体に迫るためには初期宇宙での生成,元素合成および宇宙背景輻射への影響,重力進化による構造形成,標準理論を超える物理といった多角的なアプローチが必須である.本研究計画において様々な角度からダークマターに関する研究を行った.郡は川崎と共に,ダークマターの対消滅によって放出される高エネルギーハドロンがビッグバン元素合成時に作られた軽元素の存在量を変えてしまう可能性を調べた。特に最近のCooke et al. (2014)による極めて不定性の少ない重水素の観測値を採用することなどにより、対消滅断面積の上限値に関して,これまで知られている値より数倍程度厳しい制限を得た.川崎は暗黒物質粒子の初期宇宙における対消滅が宇宙背景放射の非等方性に与える影響を考え、最新の観測データから対消滅断面積に対して制限を得た。この制限は銀河内の暗黒物質分布に依存しないという利点がある。樽家はコールドダークマターの重力的クラスタリングに関して、ヴラソフ-ポアソン方程式にもとづく新しい解析的計算手法の開発を進めた.高橋は川崎とともに,隠れたセクターにおけるモノポールがWitten効果によってアクシオンの進化に与える影響を調べ,アクシオン存在量および等曲率揺らぎが抑制されることを明らかにした.千葉は銀河やそれよりも小さな空間スケールにおける暗黒物質の存在形態に着目し,銀河系やアンドロメダ銀河の衛星銀河である矮小楕円体銀河に付随する暗黒物質ハローの内部密度分布を、メンバー星の詳細な動力学解析に基づいて決定した。そして、その内側の面密度がある一定のユニバーサルな値を取ることをはじめて見つけた。伊部は宇宙項および超対称性の破れのスケールに関する観測・実験結果から,R-対称性の破れの機構が超対称の破れのスケールに下限をもたらす可能性について調べた.ダークマターの正体に迫るため,様々な観点から分担者および連携研究者により研究を遂行することができた.具体的には,超対称性理論には最も軽いR-parity negativeの粒子がダークマターの候補であるが,そのR対称性と現在の加速膨張を引き起こす宇宙項との間の研究,アクシオンダークマターの初期宇宙進化,ダークマターの対消滅および崩壊が引き起こす元素合成および宇宙背景輻射への影響,ダークマターの重力進化についての理論構築,および矮小楕円体銀河におけるダークマター分布の観測による決定といった多岐にわたり研究を行うことで当初の計画通りダークマターに関する新たな知見を得ることができた.本研究計画の目的はダークマター密度揺らぎの重力進化に関する深い理解を得ることによりダークマターの正体を突き止め,その背後にある基本物理法則を解き明かす事である.本年度は各メンバーの研究成果を以下に説明する.高橋はスニュートリノインフレーション模型を構築したほか,複数のアクシオンが関わる現象として,clockwork QCDアクシオン模型の宇宙論的考察を行った.特に相転移に伴い複雑な構造の位相欠陥が生じることを示し,その崩壊による重力波が将来検出可能であることを示した.川崎はダブルインフレーション模型が小スケールで大きな曲率揺らぎを生成し、それによって宇宙初期に原始ブラックホール作られるシナリオに基づいて、原始ブラックホールが暗黒物質を説明できることを示した。 | KAKENHI-PLANNED-15H05889 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-15H05889 |
宇宙の揺らぎと構造の進化、その背後にある物理の究明 | 樽家は、修正重力理論を含むより広範な宇宙モデルにおいて、大規模構造の非線形重力進化を摂動的に取り扱う数値スキームを開発した。本手法により、従来の解析的手法では計算が困難な場合でも、パワースペクトルなどの統計量が高速に理論予言できるようになった。郡は電荷を持つ重い長寿命の粒子が、宇宙マイクロ波背景放射と銀河の形成に与える影響を調べた。最新の観測データを用い、その重い荷電長寿命粒子の存在比について、その寿命の関数として、これまで知られているより厳しい上限を得た。千葉は、暗黒物質のミッシングサテライト問題に新しい知見を得るべく、すばる望遠鏡の超広視野カメラを用いた観測データに基づいて、系統的な銀河系衛星銀河探査を行い、2つの新しい矮小銀河を発見した。そして、この発見が暗黒物質の正体にどのような制限が付けられるか解析を行った。横崎は隠れたゲージ対称性がハイパーチャージと大きなキネティックミキシングを持つとき、標準模型の3つの力が高いエネルギースケールで統一することを2ループレベルで示した。各研究メンバーがダークマターに関して多角的観点から研究を遂行しており,研究計画通りに着実に進行しているといえる.今後は更に異なる研究計画班(A01, A03班および観測班)との連携を深め,ダークマターの本質に迫ることで宇宙の加速・減速膨張の背後にある基本物理法則へ向けて研究を進めていきたい.高橋はインフラトンとダークマターをアクシオンで統一的に説明する模型を構築し,そのパラメター空間を詳細に調べることで将来の太陽アクシオン実験およびCMB観測で検証可能であることを示した,川崎は宇宙初期に原始ブラックホールを生成するインフレーション模型を構築し、この模型がLIGOで発見された重力波イベントと宇宙の暗黒物質の両方を説明することができることを示した。樽家は構造形成の非線形段階に現れるシェルクロッシングと呼ばれるコールドダークマター特有の現象をラグランジェ摂動論を用いて記述することに成功した。また、N体シミュレーションを用いてシェルクロッシング後に現れるコールドダークマターの位相空間構造を定量化することで、ハロー外縁部の構造が自己相似解でよく記述できることを見出した。郡は,IceCube実験が報告した100TeVから数PeVのエネルギーを持つ高エネルギーニュートリノが持つ複雑なスペクトルの特徴を崩壊するダークマターによってフィットするモデルを提案した。千葉は暗黒物質の正体に知見を得るために、銀河系周囲の暗黒物質構造を反映している矮小衛星銀河の探査を行い、幾つかの新しい銀河を発見した。また、その発見率が冷たい暗黒物質の予言と矛盾しないことが分かった。伊部はstrong CP problemの解であると期待されるPeccei-Quinn機構に対する再考察行った。 | KAKENHI-PLANNED-15H05889 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-15H05889 |
リンパ組織構築化とT細胞活性化を同時に担う分子による免疫システム賦活化機構の解析 | 免疫機構を利用したがん治療を有効に行なうためには、宿主が担癌状態あるいは抗癌剤投与により免疫不全状態にあることを想定し、宿主のもつ生体防御能を最大限に発揮させるための工夫を図ることが必要不可欠である。その為には、個々の免疫担当細胞の機能を増強するための研究が重要であることは論を待たない。これまでに私どもは、リンホトキシン(lymphotoxin)ノックアウトマウスを用いた研究から、リンホトキシンが脾臓の細胞構築化(T細胞領域とB細胞領域の分離化)やリンパ節形成といったリンパ組織構築作用をもつサイトカインであることを明らかにしてきた。すなわち、リンホトキシンは個々の免疫担当細胞に直接作用して免疫調節を行うのではなく、免疫担当細胞に「反応の場」を提供し、それによって免疫担当細胞の相互作用をコントロールするはたらきを持つ。本研究では、リンホトキシン受容体の下流ではたらくリン酸化酵素NF-kB-inducing kinase(NIK)のT細胞における役割を解析し、NIKがTCR/CD3の下流でNF-kBの活性化に重要な役割をはたすことを明らかにした。すなわち、NIKはリンパ組織構築化とT細胞活性化を同時に担う分子であり、その作用を利用して、がん免疫を最大限に発揮させる可能性が示唆された。免疫機構を利用したがん治療を有効に行なうためには、宿主が担癌状態あるいは抗癌剤投与により免疫不全状態にあることを想定し、宿主のもつ生体防御能を最大限に発揮させるための工夫を図ることが必要不可欠である。その為には、個々の免疫担当細胞の機能を増強するための研究が重要であることは論を待たない。これまでに私どもは、リンホトキシン(lymphotoxin)ノックアウトマウスを用いた研究から、リンホトキシンが脾臓の細胞構築化(T細胞領域とB細胞領域の分離化)やリンパ節形成といったリンパ組織構築作用をもつサイトカインであることを明らかにしてきた。すなわち、リンホトキシンは個々の免疫担当細胞に直接作用して免疫調節を行うのではなく、免疫担当細胞に「反応の場」を提供し、それによって免疫担当細胞の相互作用をコントロールするはたらきを持つ。本研究では、リンホトキシン受容体の下流ではたらくリン酸化酵素NF-kB-inducing kinase(NIK)のT細胞における役割を解析し、NIKがTCR/CD3の下流でNF-kBの活性化に重要な役割をはたすことを明らかにした。すなわち、NIKはリンパ組織構築化とT細胞活性化を同時に担う分子であり、その作用を利用して、がん免疫を最大限に発揮させる可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-14030059 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14030059 |
再生神経細胞の軸索ガイダンスにおける麻酔薬の関与 | 平成30年度は、我々が独自に開発した培養細胞に持続的に圧を負荷できる細胞培養装置を用いて、骨髄間葉系幹細胞および骨髄間葉系幹細胞から分化誘導した神経細胞に対する圧負荷の影響について検討を行った。継代培養した骨髄間葉系幹細胞に対して、成長因子などを含む培養液に交換することによって分化誘導すると同時に0.02MPa(約150mmHgに相当)の圧を負荷した。分化誘導6時間後に観察した骨髄間葉系幹細胞は、圧負荷を行っていない細胞と比較して、細胞体はやや膨張し、神経突起の伸長は抑制されていた。分化誘導29時間後、骨髄間葉系幹細胞の細胞体はやや扁平拡大し神経突起の伸長はほとんど見られなかった。この結果から、骨髄間葉系幹細胞に圧を負荷することによって、骨髄間葉系幹細胞から神経細胞への分化誘導も阻害される可能性が形態学的に示唆された。さらに、圧負荷による骨髄間葉系幹細胞のアポトーシス誘導の有無について検討した。つまり、活性化Caspase-3/7を認識するモチーフをDNAカレーションdyeに結合させた試薬を使用して、圧負荷時におけるCaspase-3/7の発現を蛍光顕微鏡にて観察した。その結果、圧負荷によって神経突起伸長が抑制された細胞にアポトーシスの誘導は見られなかった。骨髄間葉系幹細胞から神経細胞への分化誘導時に負荷している圧が不安定であるため、順調に実験が進行しないことが原因している。圧負荷装置を開発した人のアドバイスを受けながら圧負荷実験を進めていきたいと考えている。平成28年度は、骨髄幹細胞から分化誘導した神経細胞の神経突起の伸長に対する全身麻酔薬の影響について検討した。つまり、マウス骨髄間葉系幹細胞に成長因子などを含む培養液に交換することによって神経細胞に分化誘導した後、全身麻酔薬を添加し24時間後の神経突起の伸長を顕微鏡下に撮影した写真を画像解析ソフト(Image J)を用いて計測した。全身麻酔薬は、プロポフォール(1μM500μM)、ケタミン(10μM1mM)、ペントバルビタール(10μM1mM)について調べた。尚、プロポフォールは低濃度で低濃度にて神経保護作用が見られたとの報告があるため、1μM、2μM、3μMと詳細に検討した。その結果、低濃度プロポフォールの添加により著しい伸長増強作用は見られなかった。しかしながら高濃度プロポフォール添加では軽度伸長抑制作用が見られた。ケタミン、ペントバルビタールは100μM以下の濃度では有意な神経突起伸長の抑制作用は見られなかったが、100μM以上の高濃度では神経突起伸長の抑制が見られた。以上の結果より、臨床で使用する全身麻酔薬は分化誘導後の神経細胞の神経突起伸長を抑制しないことが明らかとなった。また、分化誘導後48時間、72時間と長時間作用させたが結果は同様であったことから、作用時間による変化はないと考えられた。以上の結果から、平成29年度以降はセマフォリン3Aやネトリン-1などの軸索ガイダンス因子の分化誘導後神経細胞の神経突起伸長への影響について調べ、抑制作用がみられた場合には全身麻酔薬がそれらの作用にどのように影響するかについて検討する予定である。また、分化誘導後神経細胞に圧を負荷した場合の神経突起伸長の反応についても検討を行う予定である。本研究を実施するために必要な備品類(培養設備、撮影装置など)は既に現有している上に、マウス骨髄間葉系幹細胞から神経細胞への分化誘導はすでに確立した技術であったため、これまでの実験に大きな支障はなくおおむね順調に推移している。平成29年度は、骨髄幹細胞から分化誘導した神経細胞の神経突起の伸長に対する軸索ガイダンス因子および全身麻酔薬プロポフォールの影響について検討した。つまり、マウス骨髄間葉系幹細胞に成長因子などを含む培養液に交換することによって神経細胞に分化誘導した後、軸索ガイダンス因子(セマフォリン3A,ネトリンー1)および全身麻酔薬プロポフォールを添加し約5,24時間後の神経突起の伸長及び神経突起分枝について形態学的に検討した。顕微鏡下に撮影した写真を画像解析ソフト(Image J)にて計測した。全身麻酔薬プロポフォールは昨年度の研究結果より高濃度では神経突起抑制作用が認められたため、低濃度1μM、3μM、5μMにて検討した。その結果、10 pM濃度以上のセマフォリン3Aは、分化誘導後神経細胞の神経突起および成長円錐の形態と崩壊させる像が観察された。また、10 pMのセマフォリン3A存在下に1μM5μM濃度のプロポフォールを添加すると、崩壊の進行は止まりやや改善する傾向が認められた。一方、ネトリンー1を200 ng/mlの濃度で添加したところ神経突起の分枝数がやや増加する傾向が見られたが、その後3μMプロポフォールを作用させても大きな変化は認めなかった。以上の結果から、反発性軸索ガイダンス因子であるセマフォリン3Aは神経軸索の伸長を抑制し、低濃度の全身麻酔薬プロポフォールはその抑制作用を改善する傾向が認められた。一方、神経軸索の誘因または反発作用を有するとされている軸索ガイダンス因子のネトリンー1は、神経突起の伸長には影響はなく神経突起の分枝数を増加させたものの、プロポフォールはこれらに影響を及ぼさなかった。平成30年度以降は、すでに作製済みである培養神経細胞に圧を負荷できる装置を用いて、再生神経細胞に圧を負荷させその形態学的変化さらには遺伝子発現の変化について検討していく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-16K11753 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K11753 |
再生神経細胞の軸索ガイダンスにおける麻酔薬の関与 | 骨髄間葉系幹細胞から神経細胞への分化誘導法はすでに確立しており、大きな実験の失敗はほとんどなかったため、概ね順調に進展しているものと考える。平成30年度は、我々が独自に開発した培養細胞に持続的に圧を負荷できる細胞培養装置を用いて、骨髄間葉系幹細胞および骨髄間葉系幹細胞から分化誘導した神経細胞に対する圧負荷の影響について検討を行った。継代培養した骨髄間葉系幹細胞に対して、成長因子などを含む培養液に交換することによって分化誘導すると同時に0.02MPa(約150mmHgに相当)の圧を負荷した。分化誘導6時間後に観察した骨髄間葉系幹細胞は、圧負荷を行っていない細胞と比較して、細胞体はやや膨張し、神経突起の伸長は抑制されていた。分化誘導29時間後、骨髄間葉系幹細胞の細胞体はやや扁平拡大し神経突起の伸長はほとんど見られなかった。この結果から、骨髄間葉系幹細胞に圧を負荷することによって、骨髄間葉系幹細胞から神経細胞への分化誘導も阻害される可能性が形態学的に示唆された。さらに、圧負荷による骨髄間葉系幹細胞のアポトーシス誘導の有無について検討した。つまり、活性化Caspase-3/7を認識するモチーフをDNAカレーションdyeに結合させた試薬を使用して、圧負荷時におけるCaspase-3/7の発現を蛍光顕微鏡にて観察した。その結果、圧負荷によって神経突起伸長が抑制された細胞にアポトーシスの誘導は見られなかった。骨髄間葉系幹細胞から神経細胞への分化誘導時に負荷している圧が不安定であるため、順調に実験が進行しないことが原因している。研究代表者が平成29年4月より徳島文理大学に転出するため、実験設備の整備が不十分のためすぐに実験を開始できない可能性がある。実験がすぐに再開できないと判断した場合には、研究分担者と連絡および意見交換をしながら本研究計画の実験を一部遂行してもらう予定である。実験分担者は以前同様の実験系を用いた研究を共同で行っていた経緯から実験遂行には問題はないと考えられる。今後は、培養神経細胞に圧負荷をかけて実験を行わなければならないが、新しく作製した圧負荷装置を用いて実験を行うのは初めてであり実験が順調に進行しない可能性が考えられる。新しい装置の作成に関与した人にアドバイスをしてもらいながら、実験がうまく推移するようにしたいと考えている。圧負荷装置を開発した人のアドバイスを受けながら圧負荷実験を進めていきたいと考えている。本年度は、これまで使用していた試薬が多く残っていたためそれらを使用し実験をおこなった。新しく購入した消耗品がほとんどなかったため、次年度使用額が生じた。(理由)培養に使用する試薬類はこれまで持参していたものを使用したこと、圧負荷装置もすでに概ね作製していたため、これらに金銭負担がなかったためと考える。(使用計画)来年度は、初めて行う実験系であるため、アドバイスを受けるために作製者を招聘ために費用が必要と考える。また、データ処理のためのパソコンなどを購入する予定である。さらに、遺伝子発現解析まで進んだ場合には、その解析に多額の金額がかかると考えている。(理由)圧負荷装置は現有のものを使用しており金銭的負担がなく、培養実験およびデータ解析に必要な消耗品の購入のみであったこと。(使用計画)来年度は、圧負荷装置の修正および遺伝子発現解析に多額の金銭的負担があるものと考えている。 | KAKENHI-PROJECT-16K11753 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K11753 |
マントル最下部の不均質構造に関する研究 | 本研究は日本国内に設置された微小振動観測網を群列地震観測網(Seismic Array)として利用し,地球深部を起源とする微弱な地震波を検出し,それを解析することによって地球深部の構造を解明を目指したものである.本研究では主として日本列島大アレーのデータで観測された未知の地震波位相の解析を行った.この未知位相は当初マントル最下部D"層に起源を持つ位相と推定したが,解析を進めるうちに,この未知位相は下部マントル深さ12001300kmの速度不連続面からの反射波(P_<1200>PP又はPP_<1200>P)であることが明らかになった.本研究では,従来研究されていなかったPPPの先行波を利用して,下部マントル内の速度不連続面を解析した.この解析によって以下の事が解明された.1)South Sandwich Islandsを震源とする地震からP_<1200>PPが観測され,南米北部か北米北部の下のいずれかの地域の深さ1200kmに速度不連続面が存在すると推定された.最近の3次元速度構造の結果から南米北部は,沈み込んだプレートが12001300kmまで達していると考えられ,プレート先端の深さとP_<1200>PPの反射点の深さがほぼ一致している.2)Santiagoで発生した地震でも同様の地震が見られた.これより,アフリカ南端沖またはインド南端沖の地域の深さ1300kmに速度不連続面が存在すると推定される.このうえインド南端沖は,P'P'先行波の解析から深さ約1250kmに速度不連続面があるとされていた場所とほぼ一致している.このような下部マントルの地震波速度不連続面の原因は,高圧実験等で検証されていない未知の相転移がグローバルに下部マントルに存在する,沈み込んだプレートの物質が部分的に相転移を起こしているの両説が考えられるが、いずれかの説を支持する決定的な証拠はない.この解明には,より多くの観測事実を更に積み上げることが必要であり,この方面の研究を今後も推進したい.本研究は日本国内に設置された微小振動観測網を群列地震観測網(Seismic Array)として利用し,地球深部を起源とする微弱な地震波を検出し,それを解析することによって地球深部の構造を解明を目指したものである.本研究では主として日本列島大アレーのデータで観測された未知の地震波位相の解析を行った.この未知位相は当初マントル最下部D"層に起源を持つ位相と推定したが,解析を進めるうちに,この未知位相は下部マントル深さ12001300kmの速度不連続面からの反射波(P_<1200>PP又はPP_<1200>P)であることが明らかになった.本研究では,従来研究されていなかったPPPの先行波を利用して,下部マントル内の速度不連続面を解析した.この解析によって以下の事が解明された.1)South Sandwich Islandsを震源とする地震からP_<1200>PPが観測され,南米北部か北米北部の下のいずれかの地域の深さ1200kmに速度不連続面が存在すると推定された.最近の3次元速度構造の結果から南米北部は,沈み込んだプレートが12001300kmまで達していると考えられ,プレート先端の深さとP_<1200>PPの反射点の深さがほぼ一致している.2)Santiagoで発生した地震でも同様の地震が見られた.これより,アフリカ南端沖またはインド南端沖の地域の深さ1300kmに速度不連続面が存在すると推定される.このうえインド南端沖は,P'P'先行波の解析から深さ約1250kmに速度不連続面があるとされていた場所とほぼ一致している.このような下部マントルの地震波速度不連続面の原因は,高圧実験等で検証されていない未知の相転移がグローバルに下部マントルに存在する,沈み込んだプレートの物質が部分的に相転移を起こしているの両説が考えられるが、いずれかの説を支持する決定的な証拠はない.この解明には,より多くの観測事実を更に積み上げることが必要であり,この方面の研究を今後も推進したい.本研究は地球深部で反射して到達する微弱な地震波を,多点の観測点の記録を用いて新しいスタッキング処理法を行いSN比の良い記録を作り,それをもとにその反射波の起源となった地震波速度不連続面の構造を解明しようとするものである,ここで開発した新しい処理法を用いて,マントル最下部からの反射波の研究に用いる予定であったが,研究の途中で,従来はその存在が知られていなかった下部マントルの深さ1200kmのところにある地震波速度不連続面を発見するに至った.そのため,本来の研究のうち,新しい波形重合手法の開発に重点を置き,この手法を用いて下部マントルの速度不連続の解析を優先させた.波形重合の手法は,観測計器の位相特性を補正するものであり,この下部マントルからの微弱な位相の検出によって,その有用性が検証された. | KAKENHI-PROJECT-07640544 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07640544 |
マントル最下部の不均質構造に関する研究 | 下部マントルからの反射波の解析から分かったことは,この1200kmの速度連続面は南米北部に存在すること.この地域は従来の研究から,下部マントルに沈み込むプレートが深さ約1300kmにまで達していることが分かっていること.更に,従来からの研究によるとこの地域の他にもいくつかの地域について下部マントルの深さ9001000kmに微小な速度不連続があり,それらはすべて沈み込むプレートが下部マントルにまで及んでいる地域であること.などが明らかになった.そのため,この1200kmからの反射波は沈み込むプレートの底で反射してくる地震波であると推定される.この反射波の存在は本来の研究対象のマントル最下部の不均質領域(D"層)成因についても大きな知見を与えるものと見られる.つまり,D"層の起源について,地球核から派生したものとする説と,沈み込んだスラブが変成したものとする説が現在併存しているが,この反射波はスラブが下部マントルまで沈み込んでいるとの直接的な証拠を与え,スラブ起源とする説に大きな支持を与える.本研究は日本国内に設置された微小地震観測網を群列地震観測網(Seismic Array)として利用し,地球深部を起源とする微弱な地震波を検出し,それを解析することによって地球深部の構造を解明を目指したものである.本研究では日本列島大アレー(J-Array)のデータで観測された未知の地震波位相を解析することを中心として行われた.当初,この未知位相はマントル最下部D"層に起源を持つ位相と推定し,この位相の解析によってマントル最下部の構造が解明されると予想された.しかし,詳細な解析を進めるうちに,この未知位相は下部マントル深さ12001300kmの速度不連続面からの反射波(P_<1200>PP又はPP_<1200>P)であることが明らかになった.本研究では,従来行われていなかったPPPの先行波を利用して,下部マントル内の速度不連続面を解析した.この解析によって以下の事が解明された.1)South Sandwich Islandsを震源とする地震からP_<1200>PPが観測され,南米北部か北米北部の下のいずれかの地域の深さ1200kmに速度不連続面が存在すると推定された.最近の3次元速度構造の結果から南米北部は沈み込んだプレートが12001300kmまで達していると考えられ,プレート先端の深さとほぼ一致している.2)Santiagoで発生した地震でも同様の地震が見られ,アフリカ南端沖またはインド南端沖の地域の深さ1300kmに速度不連続面が存在すると推定される.このうちインド南端沖は,P'P'先行波の解析から深さ約1250kmに速度不連続面があるとされていた場所とほぼ一致している.このような下部マントルの地震波速度不連続面の原因は,高圧実験等で検証されていない未知の相転移がグローバルに下部マントルに存在する,沈み込んだプレートの物質が相転移しているの両説が考えられるが,それぞれに矛盾する観測事実があり,いずれかの説を支持する決定的な証拠はない.下部マントルの速度不連続面の解明には,より多くの観測事実を今後とも積み上げることが必要であり,この方面の研究を推進したい. | KAKENHI-PROJECT-07640544 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07640544 |
PTH様骨形成化合物の新規スクリーニングシステムの構築 | PTH(副甲状腺ホルモン)は骨粗鬆症を始めとする骨疾患治療薬として注目されている。しかしPTHは、高価であり、副作用による投与制限という課題を抱えている。そこで本研究計画では、PTHの骨形成作用を代替する低分子化合物をスクリーニングするシステム開発への知見の集約を目指した。PTHへの反応性を有する骨芽細胞株としてSaOS2がスクリーニングに有用であることが明らかとなった。またPTHの標的分子を探索した結果、Wnt5aが候補遺伝子であると見出された。したがって、Wnt5a遺伝子プロモーター活性を指標にしたスクリーニングシステムの開発が、骨形成を促進する低分子化合物の探索に活用できると示唆された。1.骨芽細胞株SaOS2が、PTHの反応性の検討に適してると考えられたので、PTH刺激により発現誘導される遺伝子群の関与をSaOS2細胞において検討した。特に骨形成に関わりが示唆されている分子の中で、Wnt5aの発現が上昇することが確認された。そこで、Wnt5aのアデノウイルスを作製し、SaOS2細胞にWnt5aを過剰発現した結果、Wnt5aの過剰発現がSaOS2細胞の石灰化を明らかに促進させることが見出された。したがって、PTHは、骨芽細胞に作用すると、Wnt5aの発現を増加させ、その結果、骨形成を促進させていることが推察された。2.PTHの骨形成作用を代替する低分子化合物の探索するシステムを開発するために、Wnt5a遺伝子プロモーター領域を、ルシフェラーゼレポーター遺伝子に組み込んだコンストラクトを作製した。次に、このコンストラクトとピューロマイシン耐性遺伝子プラスミドをSaOS2細胞にトランスフェクションし、ピューロマイシン存在下の培地にて培養し、Wnt5a遺伝子プロモーター=ルシフェラーゼを恒常的に発現するSaOS2細胞株を選択した。選択された細胞クローンのルシフェラーゼ活性を指標に、細胞株の決定を実施した。この細胞株は、PTHの作用を代替できる低分子化合物の選出に効果的であると期待される。3.骨芽細胞がPTHに反応性を理解するためには、骨芽細胞の分化過程におけるPTH受容体の発現調節機構を明らかにする必要がある。そこで、骨芽細胞分化能を有するMC3T3-E1細胞およびC3H10T1/2細胞にBMP2を作用させ、PTH受容体の発現を検索した。その結果、BMP2刺激により、PTH受容体が著明に誘導させることが示された。次に骨形成に必須な転写因子Runx2を過剰発現させ、PTH受容体発現への効果を検討したところ、Runx2によってもPTH受容体の発現が誘導された。PTH(副甲状腺ホルモン)は骨粗鬆症を始めとする骨疾患治療薬として注目されている。しかしPTHは、高価であり、副作用による投与制限という課題を抱えている。そこで本研究計画では、PTHの骨形成作用を代替する低分子化合物をスクリーニングするシステム開発への知見の集約を目指した。PTHへの反応性を有する骨芽細胞株としてSaOS2がスクリーニングに有用であることが明らかとなった。またPTHの標的分子を探索した結果、Wnt5aが候補遺伝子であると見出された。したがって、Wnt5a遺伝子プロモーター活性を指標にしたスクリーニングシステムの開発が、骨形成を促進する低分子化合物の探索に活用できると示唆された。1.スクリーニングシステムの開発に必要な骨芽細胞株の決定多くの骨芽細胞株あるいはその前駆細胞株では、PTHレセプターの発現が少ない、あるいはPTH刺激によりその発現低下するため、PTHの骨形成作用を的確に検討できない。またマウス初代骨芽細胞にPTHを持続的に作用させるとその石灰化は著しく抑制されることが報告されている。本研究で開発を目指すスクリーニングシステムの構築には、PTH刺激に的確な反応性を有する骨芽細胞株の選択と、適切なPTH刺激の条件の確立が不可欠である。そこでアリザリンレッド染色による石灰化を指標にしてPTHに反応する骨芽細胞株を探索した結果、SaOS細胞にPTHを2分処理した場合に強力に骨芽細胞への分化誘導されることを見出した。2. PTH標的遺伝子の候補群の同定SaOS細胞株を用いて、PTH処理群および非処理群からRNAを採取し、Microarray解析用のサンプルを調整し、Microarrayを実施した。得られたMicroarray解析のデータをゲノムデータベース、遺伝子疾患データベース、WISHデータベースなどのバイオインフォマティクス的情報と比較検討し、PTHの標的遺伝子候補群を絞り込んだ。またこれらPTH標的遺伝子候補の発現動態をリアルタイムPCRにて確認した。PTHの標的遺伝子として知られているRANKLの発現誘導も認めているので、本研究での解析の確実性は高いと判断される。平成24年度で予定していた、1)スクリーニングシステムの開発に必要な骨芽細胞株の決定、2)Microarray解析によるPTH標的遺伝子の同定に関して、所期の目的を果たす研究成果を得たので、本研究計画はおおむね良好に進展していると思われた。1.Microarray解析により選択したPTH標的遺伝子の生物学的意義を検討する。具体的には、マウス初代骨芽細胞の分化過程におけるそれぞれの標的遺伝子の発現をリアルタイムPCR解析により検索し、骨芽細胞の分化との相互関連を検討する。骨芽細胞の分化は、Runx2、アルカリフォスファターゼ、Bsp、オステオカルシン、DMP1の発現および石灰化を指標に検索する。2.当該プロモーター活性との相互関連の検討 | KAKENHI-PROJECT-24659824 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24659824 |
PTH様骨形成化合物の新規スクリーニングシステムの構築 | Microarray解析により絞りこまれたPTHの標的遺伝子候補のプロモーター解析を実施し、得られた結果を動物細胞でのハイスループットアッセイの構築に活用する。3.スクリーニングシステムの構築上記で同定したPTH標的遺伝子のレポーター遺伝子にVenus標識したNeo遺伝子を組み込んだ後に、上記の実験1で選択した骨芽細胞株にトランスフェクションする。恒常的発現株の選択は、ネオマイシン耐性でVenusの蛍光強度を指標に実施する。次に、恒常的発現株クローンに、PTHを作用させ、ルシフェラーゼ活性の増加率を測定し、細胞株の有効性を評価する。平成24年度でのリアルタイムPCR解析が、予算的に予定計画より順調に進んだため、使用予定の研究費用が若干、少なくなった。平成25年度にリアルタイムPCR解析を再確認する実験を設定し、当該費用を使用する。当初、平成25年度に予定していた研究費用は、当初の研究計画に充当する。 | KAKENHI-PROJECT-24659824 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24659824 |
ガリウム結晶熱中性子検出器による環境中性子時系列計測と太陽フレア相関 | 高感度熱中性子検出器を使用して環境中熱中性子を測定することにより、たとえば核燃料施設などの臨界安全監視の信頼性向上に寄与するほか、太陽フレア活動と環境中の熱中性子との相関関係についても貴重な情報が得られると期待される。しかしながら、熱中性子検出器の感度が不充分なため、特に時系列測定には高感度熱中性子検出器の開発が強く望まれる。GSO結晶は、近年実用化されたシンチレータであり、電子線や中高エネルギー陽子などのエネルギー測定に適すると報告されている。結晶中に含まれるGd元素は熱中性子捕獲断面積が非常に大きく、結晶の密度も大きいため、GSO結晶を熱中性子検出器として使用すれば高感度測定が可能になると期待できる。実用化の際の問題点は、中性子/ガンマ線の分離を効率良く行う点である。そこで、GSO結晶をプラスチックシンチレータで囲み、両シンチレータからの信号の時間差を利用することが考えられる。この時間差は、プラスチックシンチレータ中での中性子減速時間に相当し、数十ナノ秒程度であると考えられる。ADCでGSO信号の波高を測定すると同時にTACで時間差を測り、遅延時間ゲートのタイミングを遅くしつつ、GSO中性子応答スペクトルの強度変化を詳細に調査した。その結果、15ナノ秒の遅延時間によりガンマ線事象の除去が可能となることがわかった。中性子感度についてはまだ不充分であり、幾何学的形状の最適化を図る必要がある。一方、時系列測定に関しては、ADCのクロック周波数を直接読み込む方法を用いたシステムを開発した。NaIシンチレータにより^<137>Csからのガンマ線時系列測定に成功した。近年実用化されたGSO結晶は、熱中性子に対して高い検出効率を有するシンチレータであることが我々の最近の研究から分かっており、環境中性子と太陽フレアとの相関を調べることを可能にすると期待される。しかしながら、ガンマ線に対しても高い感度を持ち、中性子/ガンマ線の織別も難しいため、バックグランド除去が実用化のための大きな問題となっている。今年度は、GSO結晶シンチレータを環境中性子測定器として実用化することを目標にして、中性子/ガンマ線の識別のための研究を行った。GSOによる中性子検出は、中性子捕獲反応に続く遷移カスケードの最終過程に放出される内部転換電子を測定することに基づくので、原理的にはGSO単独での中性子/ガンマ線分離は不可能である。そこで、GSO結晶をプラスチックシンチレータで囲み、両信号の遅延同時計数により中性子事象とガンマ線事象とを分離する手法を試みた。TACを使用して時間相関を詳細に調べた結果、15ナノ秒の遅延時間でガンマ線事象をほぼ完全に分離できることがわかった。このことにより、GSOの熱中性子応答スペクトルにおけるピーク構造が更に明確になり、中性子/ガンマ線分離の成功とともに中性子検出の精度を向上させることもできた。一方では、モンテカルロシミュレーションコードを開発し、微視的な調査も行った。プラスチックシンチレータに誘起される波高スペクトルは、モンテカルロ計算によるフォールディングスペクトルとよく一致しており、中性子スペクトロメータとしても使用可能であることが分かった。来年度は、数10keVの中性子を測定できるように装置を改良し、時系列測定を試みる。高感度熱中性子検出器を使用して環境中熱中性子を測定することにより、たとえば核燃料施設などの臨界安全監視の信頼性向上に寄与するほか、太陽フレア活動と環境中の熱中性子との相関関係についても貴重な情報が得られると期待される。しかしながら、熱中性子検出器の感度が不充分なため、特に時系列測定には高感度熱中性子検出器の開発が強く望まれる。GSO結晶は、近年実用化されたシンチレータであり、電子線や中高エネルギー陽子などのエネルギー測定に適すると報告されている。結晶中に含まれるGd元素は熱中性子捕獲断面積が非常に大きく、結晶の密度も大きいため、GSO結晶を熱中性子検出器として使用すれば高感度測定が可能になると期待できる。実用化の際の問題点は、中性子/ガンマ線の分離を効率良く行う点である。そこで、GSO結晶をプラスチックシンチレータで囲み、両シンチレータからの信号の時間差を利用することが考えられる。この時間差は、プラスチックシンチレータ中での中性子減速時間に相当し、数十ナノ秒程度であると考えられる。ADCでGSO信号の波高を測定すると同時にTACで時間差を測り、遅延時間ゲートのタイミングを遅くしつつ、GSO中性子応答スペクトルの強度変化を詳細に調査した。その結果、15ナノ秒の遅延時間によりガンマ線事象の除去が可能となることがわかった。中性子感度についてはまだ不充分であり、幾何学的形状の最適化を図る必要がある。一方、時系列測定に関しては、ADCのクロック周波数を直接読み込む方法を用いたシステムを開発した。NaIシンチレータにより^<137>Csからのガンマ線時系列測定に成功した。 | KAKENHI-PROJECT-09878093 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09878093 |
デジタル・アーカイブを活用した最盛期義太夫節浄瑠璃作品の総合的研究 | 未翻刻浄瑠璃作品の諸本調査・翻刻・出版を進めつつ、これまでの翻刻成果をデジタル・アーカイブ化した浄瑠璃本文および節付を、文学・言語・音曲等、多角的な視点から研究の俎上に乗せる。その成果を以て、最盛期義太夫節浄瑠璃作品の、古浄瑠璃時代から現代まで続く浄瑠璃史のみならず、日本文学・文化史上への、新たな位置付けを実現すること、またその研究成果を国内および国際学会等で発信することを目指す。未翻刻浄瑠璃作品の諸本調査・翻刻・出版を進めつつ、これまでの翻刻成果をデジタル・アーカイブ化した浄瑠璃本文および節付を、文学・言語・音曲等、多角的な視点から研究の俎上に乗せる。その成果を以て、最盛期義太夫節浄瑠璃作品の、古浄瑠璃時代から現代まで続く浄瑠璃史のみならず、日本文学・文化史上への、新たな位置付けを実現すること、またその研究成果を国内および国際学会等で発信することを目指す。 | KAKENHI-PROJECT-19H01233 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H01233 |
肝細胞癌特異的キラーT細胞の誘導及び腫瘍退縮抗原遺伝子の同定 | CTLの自己腫瘍細胞株に対する細胞障害能は予想どうり特異的に認められ、MHC拘束性に腫瘍退縮抗原が存在することを示唆された。しかし、MLTCにおけるCTLの自己腫瘍細胞株に対する増殖性が顕著ではなかった。この点でThierry Boonらによって報告されたメラノーマとは異なっているからだと考えられる。その一つとして腫瘍細胞からCTLに伝えられるCTLの増殖のためのメッセージが不足もしくは欠失しているためだと考えられる。最近ではこのメッセージャーの一つがB細胞の活性化抗原で接着分子であるB7及びB70抗原で、これがリガンドであるCTL上のCD28抗原と反応することによりCTLの増殖を促すことが他の腫瘍において報告されている。今回、我々が用いたHAK-1A/BにはこのB7及びB70抗原が発現されていなかった。今後の課題として、このような抗原を遺伝子導入により発現させることによりCTLの増殖性を改善することが必要と考えられた。CTLの自己腫瘍細胞株に対する細胞障害能は予想どうり特異的に認められ、MHC拘束性に腫瘍退縮抗原が存在することを示唆された。しかし、MLTCにおけるCTLの自己腫瘍細胞株に対する増殖性が顕著ではなかった。この点でThierry Boonらによって報告されたメラノーマとは異なっているからだと考えられる。その一つとして腫瘍細胞からCTLに伝えられるCTLの増殖のためのメッセージが不足もしくは欠失しているためだと考えられる。最近ではこのメッセージャーの一つがB細胞の活性化抗原で接着分子であるB7及びB70抗原で、これがリガンドであるCTL上のCD28抗原と反応することによりCTLの増殖を促すことが他の腫瘍において報告されている。今回、我々が用いたHAK-1A/BにはこのB7及びB70抗原が発現されていなかった。今後の課題として、このような抗原を遺伝子導入により発現させることによりCTLの増殖性を改善することが必要と考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-06771009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06771009 |
衛星からの合成開口レーダー観測を利用した東北タイ天水田における水稲生産量の推定 | 食糧安全保障などの面から,衛星リモートセンシングを利用した農業生産動向の把握技術の開発が急務とされている.本研究では生産変動が大きい東南アジアのタイ,ラオス,インドネシアにおいて,SARによる水稲の観測手法の有効性を検証した.その結果,葉面積指数や収量を直接推定するには課題が多いものの,SAR画像の経時的な変化に基づき,葉面積生長や収量を予測することは可能であるとの結論を得た.また移植日の推定はかなりの精度で可能であり,それに基づき水稲の生育収量モデルを走らせることにより,収量予測が可能であることも示した.平成25年度は当初計画したインドネシアに加え,ラオスの衛星画像も入手できたため,研究対象地を2か所とし,主に検証用のデータ収集を中心に研究を進めた.衛星画像の入手が可能となったインドネシア・チタルム川下流域に相当する地域,およびラオス・ナムグム川流域に相当する地域から,各30筆の農家水田を選定し,水稲の移植日の確認,葉面積計測,収量データの収集などを行った.葉面積計測は衛星との同時観測を実施し,生育期間に約2週間おきの計4回の計測を行った.まず衛星画像の後方散乱係数σの推移から,水田と思われる思われる個所(一度水域と同等のσを示し,その後植物体の散乱によりσが増加するところ)の抽出を行った.その結果抽出された個所は,インドネシアでは水田域とよく対応したが,ラオスでは対応がやや悪く,さらなる検討が必要と考えられた.これはインドネシアでは開発が進み,水田区画が大きく,木などの衛星観測阻害物が少ないのに対し,ラオスの状況は逆であるためだと考えられた.逆にこのことは,インドネシアであっても水田の区画が小さく,他の土地利用と混在する河川の上流域においては,本手法の適用に関してさらなる検討が必要であることを示唆している.こうした問題があるものの調査対象地の水田における実測の移植日と,衛星からの推定値は,両地域において対応が非常によく,本手法により水田と特定できる個所においては,移植日の推定が可能であると考えられた.また,実測値を用いて瘍面積の成長率と水稲収量を比較したところ,密接な関係が得られたため,σを用いて葉面積が推定できれば,収量の推定まで可能であると考えられた.食糧安全保障などの面から,衛星リモートセンシングを利用した農業生産動向の把握技術の開発が急務とされている.本研究では生産変動が大きい東南アジアのタイ,ラオス,インドネシアにおいて,SARによる水稲の観測手法の有効性を検証した.その結果,葉面積指数や収量を直接推定するには課題が多いものの,SAR画像の経時的な変化に基づき,葉面積生長や収量を予測することは可能であるとの結論を得た.また移植日の推定はかなりの精度で可能であり,それに基づき水稲の生育収量モデルを走らせることにより,収量予測が可能であることも示した.ウボンラチャタニ稲研究所およびコンケン稲研究所より,農家圃場で行っている水稲栽培試験データを収集した.コンケン県に関する2011年のLadersatデータを入手し,解析を開始した.2011年度に行った現地農家圃場約200筆における水稲の葉面積指数(LAI),草丈,成熟期乾物重,収量および雑草乾物重を用いて,衛星データとの解析を行ったところ,SARデータにおける後方散乱係数(σ0)との相関が高いのは草丈であることが分かった.それに反してLAIとの相関は低く,現地では農家により雑草の生育量が大きく異なり,このことがSARによるLAIの推定精度を低下させていると推察された.ウボンラチャタニ県フアドン村に位置する農家水田にて,イネのLAIや草丈に関するデータを集めたものの新規衛星データの入手が困難になったため,調査対象地として共同研究の実績があるインドネシアを選定した.既に交渉が終わり,平成25年度からの調査が決定している.水稲の生育シミュレーションモデルに基づく衛星リモセンデータの利用について,アメリカで行われたA Community on Ecosystem Service and Ecosystem Marketsにおいて報告を行い,また,リモートセンシングを利用した水稲の品種判別にかんする研究について,タイで行われたAsian Conference on Remote Sensingにて報告を行った.食糧安全保障などの面から,衛星リモートセンシングを利用した農業生産動向の把握技術の開発が急務とされている.現在,可視光近赤外領域を利用した研究が進んでいるが,雲により観測回数が限られるという問題を抱えているため,天候に左右されない合成開口レーダー(SAR)を利用した観測が有望視されている.本研究では生産変動が大きい東南アジアにおいて,SARによる観測手法の有効性を検証した.タイ東北部コンケンにて農家圃場の水稲生育関連項目の計測を行いLADERSATによる後方散乱係数σ0との関係を解析した.σ0は水稲草丈との有意な相関が得られたものの,葉面積指数(LAI)や収量などとの相関は低く,栽植方式や雑草などの干渉によるものと考えられた.LAI推定に関しては,COSMO SkyMedのSAR画像を用いてラオスにても検証を行ったが,推定精度は不十分な基準であった.しかしながらσ0の経時的な増加を解析することにより,葉面積増加速度および水稲収量の予測も可能であることを示した.インドネシアおよびラオスにおいては,経時的なSAR画像の推移に基づいて移植日の推定を行い,十分な精度で推定できることを明らかにした.また推定された移植日を用いて稲の生育収量シミュレーションモデルを走らせることによって,水稲の収量も予測可能であることを示した.作物 | KAKENHI-PROJECT-24780012 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24780012 |
衛星からの合成開口レーダー観測を利用した東北タイ天水田における水稲生産量の推定 | タイでの衛星画像の入手が困難となったため,研究の遅延が予測されたが,インドネシアに加え,ラオスの衛星画像が入手でき,一気に研究が進んだため.解析および公表などは順調に推移しているものの,予定していた衛星画像が手に入らず,調査地の変更を余儀なくされた.しかしながら新たに選定した調査地との交渉が順調に進み,課題内容は問題なく遂行できる見込みとなったため,おおむね順調に進展しているとした.25年度の研究により,対象地域において葉面積の成長率が推定できればある程度の収量予測が可能であることがわかかったため,本年度はσを用いた葉面積もしくはその成長率の推定へと研究を進め,水稲収量予測の可能性について検討を行う.検討の結果をもとに,申請者らが開発したリモートセンシングによる分光反射計測を組み込んだイネの生育・収量予測モデルを,合成開口レーダー技術を組み込んだ物へと改良を行い,その精度を検証する.インドネシアのチタルム川を対象に衛星データの収集および農家圃場の調査を行い,衛星リモセンによるSAR画像との関連性について解析を行う.衛星データに関してはチタルム川観測網データーベースにアクセスし,そこから入手する予定である.農家圃場調査に関しては同国のボゴール農科大学講師Iskandar Lubi博士と交渉済みであり,サポートを受ける予定となっている.研究対象地の研究機関(ボゴール農科大学,ラオス国立大学)との共同研究として進めたため,旅費や謝金の削減が可能となったため.計測のフォローアップとしての渡航を計画しており,ラオスもしくはインドネシアへの渡航費に割り当てる予定である.インドネシアのチタルム川流域においてケチャマタン(郡)単位の行政データを収集する.水稲に関するデータを抽出し,SARデータから計算した後方散乱係数σ0との関係を解析する.またチタルム川下流のCikarang県およびKarawang県において農家圃場の現地調査を行い,水稲の生育データを収集し,これについてもσ0との関係を解析する.解析により得られた成果を学会等にて報告を行う. | KAKENHI-PROJECT-24780012 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24780012 |
干しスルメイカの最適調理条件の検索 | 干しスルメイカを水戻しすると、物理化学物性とミクロ構造上どんな変化をもたらすか?概要摂氏4度(Aグループ)と40度(Bグループ)で干したスルメをそれぞれ水に漬け、更にアルカリ溶液に浸し、その物理化学物性と組織構造上の変化を観測した。水含みの体重はAの方がBより著しく大であった。この膨潤法では、破裂の圧力並びにエネルギーの点でBは遙かにAより顕著であった。又、AのSDS-PAGEパターンが生スルメイカとほぼ同等であったのに対し、Bのそれはより低い分子量をもつ多量の破片を生じた。なお、蒸留水に浸したときは、BのSDS-PAGEパターンに大きな変化はみられなかったが、光学顕微鏡で組織構造を分析すると、筋肉繊維束が観測された。また、Bの筋肉繊維はアルカリ溶液で膨潤されると水浸透がすすむ。AとBのグループについて蒸留水での浸水時間と温度の関連を実験した。Aの場合、AMPとIMPの含有量は摂氏60,20,5,95の順で多かった。Bの場合、同含有量は摂氏60,95,20,5の順で多かった。干しスルメイカを水戻しすると、物理化学物性とミクロ構造上どんな変化をもたらすか?概要摂氏4度(Aグループ)と40度(Bグループ)で干したスルメをそれぞれ水に漬け、更にアルカリ溶液に浸し、その物理化学物性と組織構造上の変化を観測した。水含みの体重はAの方がBより著しく大であった。この膨潤法では、破裂の圧力並びにエネルギーの点でBは遙かにAより顕著であった。又、AのSDS-PAGEパターンが生スルメイカとほぼ同等であったのに対し、Bのそれはより低い分子量をもつ多量の破片を生じた。なお、蒸留水に浸したときは、BのSDS-PAGEパターンに大きな変化はみられなかったが、光学顕微鏡で組織構造を分析すると、筋肉繊維束が観測された。また、Bの筋肉繊維はアルカリ溶液で膨潤されると水浸透がすすむ。AとBのグループについて蒸留水での浸水時間と温度の関連を実験した。Aの場合、AMPとIMPの含有量は摂氏60,20,5,95の順で多かった。Bの場合、同含有量は摂氏60,95,20,5の順で多かった。目的:低温で乾燥させたスルメ(低温スルメ)と高温で乾燥させたスルメ(高温スルメ)を調製し、乾燥法の違いによって、水で戻したスルメとアルカリで戻したスルメの吸水性、色、および物性の違いを調べることを目的とした。また、スルメを戻す過程でおこるたんぱく質の組成変化、組織構造変化も調べ、乾燥法によってスルメの吸水性や物性の異なる原因を検討した。方法:スルメイカの外套膜を2等分して、一方は4°Cで、他方は40°Cで、乾燥させ、スルメを調製した。スルメを体軸に対して45度に1x3cmの長方形に切り、測定試料とした。戻し方はまず、水に12時間浸漬し、次に10mM炭酸カリウム水溶液(pH11.0)に12時間浸漬後、6時間再度水に浸漬しアルカリを除いた。このようにして戻したスルメを水戻し低温(高温)スルメ、アルカリ戻し低温(高温)スルメとし、これらの吸水性、物性、色差、電気泳動によるたんぱく組成、光学顕微鏡による組織構造を調べた。結果と考察:水戻しにより低温スルメは重さが2.5倍、高温スルメは2倍に、アルカリ戻しによりそれぞれ4倍、3.4倍になり、低温スルメは高温スルメより吸水性が高かった。破断応力及び破断エネルギーはアルカリ戻しをすると、水戻しより格段に低くなったが、水戻しでもアルカリ戻しでも高温スルメは低温スルメより有意に高く、硬かった。b値は高温スルメが低温スルメより有意に高く、メイラード反応が進んでいることが示唆された。高温スルメの電気泳動パターンから乾燥中にタンパク分解が起こっていることが推察された。低温スルメの電気泳動パターンは生イカのそれとほぼ同様であったが、水戻しすると高温スルメの泳動パターンとほぼ同様になった。アルカリ戻し低温スルメ、高温スルメの泳動パターンは水戻しのそれと殆ど変わらなかった。組織構造は水戻し低温スルメでは筋原繊維が個々に乾燥していたが、水戻し高温スルメでは束になって乾燥している様子がみられた。アルカリ戻しをすると、どちらのスルメも多量の水が浸透し、隙間が観察されたが、その度合いは低温スルメの方が大きかった。以上の結果から、高温スルメが低温スルメより硬いのは、高温スルメの乾燥中にメイラード反応とタンパク分解によるミオシンの変性および分解がおこり、これが吸水性の低下や筋肉繊維の束の形成を引き起こしていることが原因の1つとして考えられた。干しスルメイカの水もどしに与える温度と時間の影響について-天日乾燥と温風乾燥の比較-目的:前回は天日乾燥と温風乾燥によるスルメイカの呈味成分が異なることを報告した。今回はこれらの干しスルメを水につけて軟化させると同時にだしも利用することを目的として水温および浸漬時間と浸漬液中の呈味成分量との関係を検討した。方法:06°Cで乾燥させた天日乾燥スルメと3540°Cで乾燥させた温風乾燥スルメを5%(w/w)となるように5,20,60°C水中で24時間まで、95°Cで1時間まで浸水した。 | KAKENHI-PROJECT-14580159 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14580159 |
干しスルメイカの最適調理条件の検索 | スルメイカについては膨潤度と硬さを測定し、戻し汁ついては遊離アミノ酸量、ATP関連化合物量、乳酸量を測定した。結果および考察:膨潤度については、天日乾燥と温風乾燥とも生イカのように膨潤するのは5,20°Cで戻したもので、戻す前の干しスルメイカの2.3倍になった、60°Cで戻したものはいったん1.68倍に増加し、24時間後は1.4倍で落ち着いた。95°Cで戻したものは最大1.6倍しか増えなかった。一方厚みについては戻す前の干しスルメイカは1.52mmであったが、膨れると46mm近くの厚さになる。硬さについては、天日乾燥と温風乾燥とも5,20,60°Cは30分間後の破断荷重が顕著に減少し、1時間後ほぼ同じ値になった、95°Cの方は10分後に減少し、破断荷重はやや大きかった。遊離アミノ酸の浸出量は5,20°Cに比べ60°Cは1時間後から倍近くの量が浸漬水に溶出している。そして60,95°Cと高温になるほど溶出が多かった。浸漬液中のATP関連化合物量については、天日乾燥では60,20,5,95°Cの順にAMP,IMP含量が多い、温風乾燥では60,95,20,5°Cの順に多い。酸味を呈する乳酸はては、温風乾燥は天日乾燥より1.7倍に含まれた。 | KAKENHI-PROJECT-14580159 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14580159 |
微視的その場観察による接着接合材の苛酷湿潤環境下における疲労劣化損傷機構の解明 | 実機の樹脂接着部材を用いて強度試験を行い実働水環境での長期使用により強度低下が生じることを明らかとした.フーリエ変換赤外分光光度計測により樹脂の加水分解率を測定した.最低強度保持率と加水分解率の間には良い相関があることがわかった.実機の強度低下は走行距離により定量評価できることも明らかにし,10万kmの走行距離で強度保持率は約0.5であった.実機を模擬できる吸水劣化試験条件を明確にするため,新品樹脂試験片の促進試験を実施た.結果として60°C30日間の浸漬が実機の10万kmに対応することを明らかとした.また,実機と模擬試験の強度低下率と加水分解率の関係は良く一致し,促進試験の有効性が確認できた.接着接合材の基礎的疲労強度特性を取得するために,エポキシ系樹脂を用いた薄板接合疲労試験片を作製し,基礎的疲労強度データの取得を行った.その場観察用の吸水劣化槽の性能が予定のレベルに達しなかったため,適宜吸水劣化させた接着接合材の疲労強度特性を取得し,温度ならびに時間の上昇とともにバルクの疲労強度が低下することが明らかとなった.一方,実験を行っいく過程において吸水劣化の程度についての問題が生じた.水環境温度は実環境以上に上昇させることは可能で有り,加速試験は行える.しかしながら,加速試験の妥当性についての疑義が生じたため,自動車技術会の委員会と共同で実機における劣化状態の調査を本研究の計画に取り込むこととした.5年ならびに10年経過した廃車の接着部から試験片を作製し強度低下割合を調べるとともに赤外線吸収スペクトル(IR)測定を行い,エポキシ樹脂の加水分解程度の定量的測定を行った.この調査により,加水分解割合と強度低下はある程度関連性があるともに,実機の劣化状態レベルが判明し,劣化材作成の指針が得られた.実機の樹脂接着部材を用いて強度試験を行い実働水環境での長期使用により強度低下が生じることを明らかとした.フーリエ変換赤外分光光度計測により樹脂の加水分解率を測定した.最低強度保持率と加水分解率の間には良い相関があることがわかった.実機の強度低下は走行距離により定量評価できることも明らかにし,10万kmの走行距離で強度保持率は約0.5であった.実機を模擬できる吸水劣化試験条件を明確にするため,新品樹脂試験片の促進試験を実施た.結果として60°C30日間の浸漬が実機の10万kmに対応することを明らかとした.また,実機と模擬試験の強度低下率と加水分解率の関係は良く一致し,促進試験の有効性が確認できた.接着接合材疲労試験片を作製し,疲労試験の実施準備を行った.従来の薄板材のスポット溶接材やレーザー溶接材と同様に,接着接合材は接合端面において,応力特異性を示すため接着面積の大小の影響を見極める必要が生じた.そのため,疲労試験片作成に先立って,特異応力場解析を行った.その結果,接着面端部において極度の応力集中が生じ,接着層の内自由表面近傍の一部のみが荷重分担することが明らかとなった.この結果,接着剤自由表面ならびに接着面積の形状が重要な因子になるため,バラツキの少ない疲労試験片作成のための手順の確立に予想外の時間が掛かってしまったが,本年度中にほぼ確立された.微視的その場観察の高精度化のためのレーザー変形を利用した変位制御システムの構築は予定通り終了した.一方,吸水劣化槽については,樹脂を浸けただけでは不十分であることがわかり,撹拌装置等の設置が必要であるため完成には至っていない.局所変形定量化システムの高分解能化については,従来金属材料に対して有用であった既存システムの改良により,樹脂材料についてもその荷重負荷に伴う変形量をより正確に測定する手法がほぼ確立された.接着接合材の基礎的疲労強度特性としては,エポキシ系樹脂による薄板接合試験により取得できた.従来研究として行われている厚板の接着接合試験片との強度比較において特に顕著な差異は生じないことが明らかとなった.接着界面近傍の詳細な応力解析を実施することで,接着面積によらず接着端の特異応力場によって強度が支配されることになり板厚依存性が現れないことを明らかにした.昨年度実施した実機の接合部材の劣化調査を参考に環境槽の条件を種々変化させ劣化現象が起こり,強度低下することは明らかとなったが,必ずしも実働状態の再現が困難であったためメカニズムの解明までは至らなかった.材料強度学研究実績の概要に示したように,当初の計画通り進展しない点がある.計画通りに進捗しなかった項目は吸水劣化状態をその場観察するための原子力顕微鏡付属吸水劣化槽についてである.樹脂を浸けただけでは不十分であることがわかり,撹拌装置等の設置が必要であるため吸水性能が所定のレベルに達していない.その他の項目はほぼ予定通り進捗しており,微視的その場観察の高精度化のためのレーザー変形を利用した変位制御システムの構築は予定通り終了した.また,局所変形定量化システムの高分解能化については,従来金属材料に対して有用であった既存システムの改良により,樹脂材料についてもその荷重負荷に伴う変形量をより正確に測定する手法がほぼ確立された一方,模擬吸水状態の妥当性を検討するために,当初の予定になかった実機における劣化状態の調査を行った.その結果により実機の劣化状態レベルが判明し,劣化材作成の指針が得られており,試験条件に関しての進捗状況は十分である.研究実績の概要に示したように,当初の計画通り進展しない点がある.計画通りに進捗しなかった項目は以下の通りである. | KAKENHI-PROJECT-24656090 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24656090 |
微視的その場観察による接着接合材の苛酷湿潤環境下における疲労劣化損傷機構の解明 | 1疲労試験片の作成において,従来の薄板材のスポット溶接材やレーザー溶接材と同様に,接着接合材は接合端面において,応力特異性を示すため接着面積の大小の影響を見極める必要が生じた.そのため,疲労試験片作成に先立って,特異応力場解析を行った.その結果,接着面端部において極度の応力集中が生じ,接着層の内自由表面近傍の一部のみが荷重分担することが明らかとなった.この結果,接着剤自由表面ならびに接着面積の形状が重要な因子になるため,バラツキの少ない疲労試験片作成のための手順の確立に予想外の時間が掛かってしまった.その結果,本年度は疲労強度特性を取得するところまで行えなかった.2吸水劣化状態をその場観察するための原子力顕微鏡付属吸水劣化槽については,樹脂を浸けただけでは不十分であることがわかり,撹拌装置等の設置が必要であるため完成には至っていない.その他の項目はほぼ予定通り進捗しており,微視的その場観察の高精度化のためのレーザー変形を利用した変位制御システムの構築は予定通り終了した.また,局所変形定量化システムの高分解能化については,従来金属材料に対して有用であった既存システムの改良により,樹脂材料についてもその荷重負荷に伴う変形量をより正確に測定する手法がほぼ確立された本年度により,吸水劣化槽以外の項目については完成しており,また,実機相当の環境状態を実現するための指針も得られているので,強制湿潤化状態でのバルク名疲労特性を取得する.それに併せて,荷重負荷状態での疲労き裂進展近傍変形場を原子間力顕微鏡で観察し,接着樹脂材料の疲労損傷機構の解明を目指す.吸水状態は試験片毎のバラツキが大きいと予測されるので,赤外線吸収スペクトル(IR)測定を用いてそれぞれの試験片の加水分解割合と局所硬度測定により劣化状態の定量的評価を行った上で,疲労強度・機構の統計的な処理を行うことで,劣化の影響を明確にする.本年度により,吸水劣化槽以外の項目については完成しており,今後,まず,乾燥状態でのバルク名疲労特性を取得する.それに併せて,荷重負荷状態での疲労き裂進展近傍変形場を原子間力顕微鏡で観察し,乾燥下での接着樹脂材料の疲労損傷機構の解明を目指す.その後,吸水劣化させた樹脂接着材料における疲労試験を実施し,吸水による接着強度の劣化を定量的に評価する.吸水状態は試験片毎のバラツキが大きいと予測されるので,統計的な処理を行うとともに,局所硬度測定により劣化状態の定量的評価を試みる.購入を予定していた物品の納期が遅れたため,次年度の購入としたため次年度使用額が生じた.購入予定の物品を購入するともに,疲労試験片の作成や治具の作成を行う.改良を行った高分解能局所変形定量化システムに対して,実時間での解析を実施可能とするため画像解析用高速コンピュータを購入し,高速化を目指す.初年度達成できなかった吸水劣化槽について撹拌装置等の付属装置を購入し設置することで,環境の均質化を目指す.原子間力顕微鏡による微視的観察のための消耗品ならび破面観察のための走査型電子顕微鏡用消耗品の購入を行う.その他,研究成果の発表を国内外で行う予定である. | KAKENHI-PROJECT-24656090 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24656090 |
脂質ラフトを場とする免疫監視の破綻と自己免疫病発症 | 抑制型低親和性IgG受容体FcgRIIBはB細胞及び骨髄球系細胞に発現し、これらの細胞に発現する細胞活性化型受容体群、B細胞受容体、高親和性IgG受容体FcgRI、低親和性受容体FcgRIIIからの陽性シグナルを負に制御して過剰な免疫反応を回避し自己免疫発症を抑える働きがある。FcgRIIB遺伝子欠損マウスは他の免疫抑制性遺伝子の欠失、過剰な抗原暴露等に際して容易に全身性自己免疫病態を発症する事から、代表的ヒト全身性自己免疫疾患である全身性エリテマトーデスにおける疾患感受性FcgRIIB遺伝子多型が検索され、京極、土屋、徳永らにより構造遺伝子変異FCGR2B c.695T>Cが見いだされた。同一塩基置換はFcgRIIBの膜貫通部ほぼ中央にある232IleをThrに変換する。本田らはFc受容体架橋による細胞活性化シグナルの発信機構と同受容体の脂質ラフト移行の関連を調べ、Fc受容体膜貫通部位が脂質ラフトの空間的融合を引き起こす事を証明し、さらに、脂質ラフトに常在するSrc型チロシンキナーゼの相互活性化が生じてシグナル発信が始まるという作業仮説を提唱していた。本田らは上述のFcgRIIB膜貫通部位多型が受容体の脂質ラフト会合を変化させてそのB細胞機能抑制の能力に影響を与える可能性を考え、FcgRIIB自然に欠失したヒトB細胞株、ST486に各々の受容体をレトロウイルスベクターを用いて発現し機能解析を行なった。その結果、Ile232Thrの置換によって静時及び種々の刺激下におけるFcgRIIBの脂質ラフトへの移行が減弱する事、同時にB細胞機能抑制の能力が減弱することが分かった。即ち、SLEに関連するFcgRIIB232Thr発現細胞では正常型232Ile発現細胞に比較してPIP3蓄積及びその下流のAkt活性下、カルシウム流入等が増強しB細胞の過剰な活性化が生じる。この観察はFcgRIIB232Thrを有するSLEにおけるB細胞の異常活性化の分子機構の一部を説明する可能性がある。FcgRIIB Ile232Thr置換は脂質ラフト会合に影響し機能を変容する事が示された初めての例であり、疾患関連多型分子の機能解析の重要性を例示する知見となった。抑制型低親和性IgG受容体FcgRIIBはB細胞及び骨髄球系細胞に発現し、これらの細胞に発現する細胞活性化型受容体群、B細胞受容体、高親和性IgG受容体FcgRI、低親和性受容体FcgRIIIからの陽性シグナルを負に制御して過剰な免疫反応を回避し自己免疫発症を抑える働きがある。FcgRIIB遺伝子欠損マウスは他の免疫抑制性遺伝子の欠失、過剰な抗原暴露等に際して容易に全身性自己免疫病態を発症する事から、代表的ヒト全身性自己免疫疾患である全身性エリテマトーデスにおける疾患感受性FcgRIIB遺伝子多型が検索され、京極、土屋、徳永らにより構造遺伝子変異FCGR2B c.695T>Cが見いだされた。同一塩基置換はFcgRIIBの膜貫通部ほぼ中央にある232IleをThrに変換する。本田らはFc受容体架橋による細胞活性化シグナルの発信機構と同受容体の脂質ラフト移行の関連を調べ、Fc受容体膜貫通部位が脂質ラフトの空間的融合を引き起こす事を証明し、さらに、脂質ラフトに常在するSrc型チロシンキナーゼの相互活性化が生じてシグナル発信が始まるという作業仮説を提唱していた。本田らは上述のFcgRIIB膜貫通部位多型が受容体の脂質ラフト会合を変化させてそのB細胞機能抑制の能力に影響を与える可能性を考え、FcgRIIB自然に欠失したヒトB細胞株、ST486に各々の受容体をレトロウイルスベクターを用いて発現し機能解析を行なった。その結果、Ile232Thrの置換によって静時及び種々の刺激下におけるFcgRIIBの脂質ラフトへの移行が減弱する事、同時にB細胞機能抑制の能力が減弱することが分かった。即ち、SLEに関連するFcgRIIB232Thr発現細胞では正常型232Ile発現細胞に比較してPIP3蓄積及びその下流のAkt活性下、カルシウム流入等が増強しB細胞の過剰な活性化が生じる。この観察はFcgRIIB232Thrを有するSLEにおけるB細胞の異常活性化の分子機構の一部を説明する可能性がある。FcgRIIB Ile232Thr置換は脂質ラフト会合に影響し機能を変容する事が示された初めての例であり、疾患関連多型分子の機能解析の重要性を例示する知見となった。脂質ラフトは細胞膜上の機能微小ドメインであり情報伝達の起点として注目されている。種々の受容体はリガンド結合時に脂質ラフトに会合するがその機構は不明である。申請者はSLEに連関する抑制型Fc受容体FcγRIIB膜貫通部多型の機能解析を行い、同受容体が脂質ラフト移行の障害を呈しその免疫細胞活性化抑制機能が弱く、自己免疫発症の原因となりうることを示した。脂質ラフト移行に異常がある疾患連関受容体の報告はこれまでに無く、SLE発症の分子基盤、ならびに受容体の脂質ラフト移行のメカニズム解明に重要な知見と考えられる。さらに、抑制受容体CD72多型を複数同定し、その細胞外部分の構造変化をもたらす多型(スプライス変異をもたらすイントロン多型)がSLE腎症発症に負に連関することを見いだし、その分子機構を解析している。 | KAKENHI-PROJECT-16590976 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16590976 |
脂質ラフトを場とする免疫監視の破綻と自己免疫病発症 | Src family tyrosine kinase (SFK)の新たな活性調節機構解明、運動および極性形成に重要なその細胞内再分布の機構解明を目的としてSFK SH2-SH3をbaitとする2-hybrid cloningを行いポリプロリン配列及びRINGfinger様を持つ新たな微小管会合分子(仮にPPRと呼ぶ)を単離した。同分子は細胞の遊走方向に配向する微小管上に存在し、しかも安定化アセチルチュブリンと今日局在することから、安定化微小管をマークする新規分子であること、あるいは微小管の方向性を持った安定化を促進する新規調節分子であることが強く示唆された。抑制型低親和性IgG受容体FcgRIIBはB細胞及び骨髄球系細胞に発現し、これらの細胞に発現する細胞活性化型受容体群、B細胞受容体、高親和性IgG受容体FcgRI、低親和性受容体FcgRIIIからの陽性シグナルを負に制御して過剰な免疫反応を回避し自己免疫発症を抑える働きがある。FcgRIIB遺伝子欠損マウスは他の免疫抑制性遺伝子の欠失、過剰な抗原暴露等に際して容易に全身性自己免疫病態を発症する事から、代表的ヒト全身性自己免疫疾患である全身性エリテマトーデスにおける疾患感受性FcgRIIB遺伝子多型が検索され、京極、土屋、徳永らにより構造遺伝子変異FCGR2B c.695T>Cが見いだされた。同一塩基置換はFcgRIIBの膜貫通部ほぼ中央にある232IleをThrに変換する。本田らはFc受容体架橋による細胞活性化シグナルの発信機構と同受容体の脂質ラフト移行の関連を調べ、Fc受容体膜貫通部位が脂質ラフトの空間的融合を引き起こす事を証明し、さらに、脂質ラフトに常在するSrc型チロシンキナーゼの相互活性化が生じてシグナル発信が始まるという作業仮説を提唱していた。本田らは上述のFcgRIIB膜貫通部位多型が受容体の脂質ラフト会合を変化させてそのB細胞機能抑制の能力に影響を与える可能性を考え、FcgRIIB自然に欠失したヒトB細胞株、ST486に各々の受容体をレトロウイルスベクターを用いて発現し機能解析を行なった。その結果、Ile232Thrの置換によって静時及び種々の刺激下におけるFcgRIIBの脂質ラフトへの移行が減弱する事、同時にB細胞機能抑制の能力が減弱することが分かった。即ち、SLEに関連するFcgRIIB232Thr発現細胞では正常型232Ile発現細胞に比較してPIP3蓄積及びその下流のAkt活性下、カルシウム流入等が増強しB細胞の過剰な活性化が生じる。この観察はFcgRIIB232Thrを有するSLEにおけるB細胞の異常活性化の分子機構の一部を説明する可能性がある。FcgRIIB Ile232Thr置換は脂質ラフト会合に影響し機能を変容する事が示された初めての例であり、疾患関連多型分子の機能解析の重要性を例示する知見となった。 | KAKENHI-PROJECT-16590976 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16590976 |
外部導体系プラズマ閉じ込めの最適化に関する研究 | 本研究計画の目的は定常核融合炉の可能性を有する外部導体系トーラスのプラズマ閉込めに関する最適化の方法を研究する事である.この目的に沿って理論・実験双方から研究を進めている.1.理論的には本年度は平面軸ヘリカル系トーラスでの磁気流体的ベータ限界値の解析を計算機コードにより行い,又プラズマ閉込め,特に粒子閉込めについても計算機コードを開発し,解析を行った.(1)MHD,粒子閉込め両方についてポロイダル磁場の制御によってどのように変化するかを調べ,いわゆるβτの積の最大,最適な制御範囲について知見を得た事は大きな成果であった.(2)又ヘリカル系トーラスのコンパクト化についても種々の方法を検討,例えばラプラス解によりアスペクト比が3前後の磁場配位が実現可能である事がわかった.又コイル巾の変調(トーラスの内側で電流の集中する方式)を用いてコイルアスペクト比に依存しない対称性の良い磁場配位を見出した事も大きな収獲であった.2.実験としては(1)小型トカマクナヘリカル磁場によるエルゴデイック層の研究を行い,エルゴデイック層におけるプラズマの粒子,熱の輸送,プラズマ電位構造について詳細な研究が行われ,ヘリカル磁場の増大に伴ってヘリカルダイバータ構造へ遷移していく過程が明らかにされた.(2)又周辺プラズマ計測法としてのLiビームプローブ測定機を完成し,ヘリオトロンE装置に適用し,磁気面周辺部のプラズマの構造や,ゆらぎのレベルの測定が初めて行われ興味ある結果を得ている.ダイバータプラズマ構造についても調べられつつある.現在さらに高密度プラズマへも適用できるビームプローブ法について研究中である.(3)その他直線ミラー装置を用いてエンドプレートによるプラズマ電位制御を行い電場形成の基礎過程を実験研究しており,又ビームプローブ(金属原子ビーム)によるプラズマ電位計測法の開発研究も進展中である.本研究計画の目的は定常核融合炉の可能性を有する外部導体系トーラスのプラズマ閉込めに関する最適化の方法を研究する事である.この目的に沿って理論・実験双方から研究を進めている.1.理論的には本年度は平面軸ヘリカル系トーラスでの磁気流体的ベータ限界値の解析を計算機コードにより行い,又プラズマ閉込め,特に粒子閉込めについても計算機コードを開発し,解析を行った.(1)MHD,粒子閉込め両方についてポロイダル磁場の制御によってどのように変化するかを調べ,いわゆるβτの積の最大,最適な制御範囲について知見を得た事は大きな成果であった.(2)又ヘリカル系トーラスのコンパクト化についても種々の方法を検討,例えばラプラス解によりアスペクト比が3前後の磁場配位が実現可能である事がわかった.又コイル巾の変調(トーラスの内側で電流の集中する方式)を用いてコイルアスペクト比に依存しない対称性の良い磁場配位を見出した事も大きな収獲であった.2.実験としては(1)小型トカマクナヘリカル磁場によるエルゴデイック層の研究を行い,エルゴデイック層におけるプラズマの粒子,熱の輸送,プラズマ電位構造について詳細な研究が行われ,ヘリカル磁場の増大に伴ってヘリカルダイバータ構造へ遷移していく過程が明らかにされた.(2)又周辺プラズマ計測法としてのLiビームプローブ測定機を完成し,ヘリオトロンE装置に適用し,磁気面周辺部のプラズマの構造や,ゆらぎのレベルの測定が初めて行われ興味ある結果を得ている.ダイバータプラズマ構造についても調べられつつある.現在さらに高密度プラズマへも適用できるビームプローブ法について研究中である.(3)その他直線ミラー装置を用いてエンドプレートによるプラズマ電位制御を行い電場形成の基礎過程を実験研究しており,又ビームプローブ(金属原子ビーム)によるプラズマ電位計測法の開発研究も進展中である. | KAKENHI-PROJECT-62050023 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62050023 |
暗闇での物体追跡と画像復元の研究 | 本研究では、暗闇での物体追跡と画像復元を実現するため、ベイズ推定の枠組みを用いて対象の運動と参照画像を同時に推定する手法を提案した。ぶれのある画像に対しては、運動推定により得られたパラメータを用いてぶれ補正を行うようにした。その結果、シミュレーションではPSNRが-6dBまでの動画像、実環境では被写体照度0.01lx以下の暗闇環境で撮影した動画像に対し、物体追跡と画像復元を行うことができた。さらに、画像復元のための最適フレームレートを調査し、比較的ノイズが少ないときは高いフレームレートが、ノイズが多いときには低いフレームレートのほうが良いことがわかった。平成24年度は,前年度に構築した暗闇での物体追跡と画像復元を実現するための対象の運動と参照画像を同時に推定する手法を拡張し,回転や奥行き方向への動きに対応できるようにしたほか,カラー画像にも対応できるようにした.対象の回転等への対応は、対象の運動を二次元の並進運動から平面アフィン変換に拡張することで実現した。また、カラー画像への対応は、モノクロ画像と同じアルゴリズムをカラー画像の各チャネルに適用することで実現した.人工的に生成した画像による評価実験では,円形軌道を描いて並進移動する対象が含まれるPSNRが-6.0dBの入力画像を100枚合成することで,13.2dB(元の9.1倍)まで画質を改善した.画像合成によりガウシアンノイズは10倍に低減されると期待されるため,その効果の分とトラッキング誤差からくる画像の劣化を合わせた結果であると考えられる.また,単純テンプレートマッチング(TM)およびローパスフィルタを伴ったテンプレートマッチング(LPF-TM)との比較実験を行い,提案手法が最も高い位置精度と復元精度を持つことを示した.回転運動を含む対象について,モノクロカメラおよびカラーカメラを用いて実験を行った.照明を消した夜間のオフィス環境で撮影し,光源はコンピュータのディスプレイのみであった.実験の結果,回転を含む運動にも追従できることが示された.また,画像合成により色情報も復元できることも示された.平成25年度は、ぶれを含む画像について、運動推定により得られたパラメータを用いてぶれ補正を行う手法を、回転や奥行き方向への動きにも拡張し、ぶれのない復元画像を得られるようにした。さらに、動画像のフレームレートを変えて、運動推定とぶれ補正を行うシミュレーション実験を行い、トラッキング性能と復元精度のトレードオフについて調査した。実験の結果、フレームレートが低いと、ノイズは低減されるが、画像にはややぶれが残る。フレームレートが大きいと、画像はよりシャープになるが、ノイズは増える傾向となった。PSNRの評価尺度での最適フレームレートは、画像に付加されるノイズの量によって変わり、ノイズは多くなるほど最適フレームレートが低くなることが分かった。さらに実画像を用いた実験を行い、回転運動を含む対象について、ぶれ補正によりぶれのない復元画像を得ることができた。また、このときのノイズ量と対象の運動速度に対する相対フレームレートが、シミュレーションにおける最適フレームレートの値とほぼ同じであることが確かめられた。このほか、画像の事前分布を導入することによるトラッキング性能の変化について調査したが、事前分布を導入してもトラッキング性能は変わらないかむしろ悪化することがわかった。一方、画像復元においては事前分布の導入が復元画像のノイズを減らし、画質を改善することが分かった。本研究では、暗闇での物体追跡と画像復元を実現するため、ベイズ推定の枠組みを用いて対象の運動と参照画像を同時に推定する手法を提案した。ぶれのある画像に対しては、運動推定により得られたパラメータを用いてぶれ補正を行うようにした。その結果、シミュレーションではPSNRが-6dBまでの動画像、実環境では被写体照度0.01lx以下の暗闇環境で撮影した動画像に対し、物体追跡と画像復元を行うことができた。さらに、画像復元のための最適フレームレートを調査し、比較的ノイズが少ないときは高いフレームレートが、ノイズが多いときには低いフレームレートのほうが良いことがわかった。平成23年度は,暗闇での物体追跡と画像復元を実現するため,ベイズ推定の枠組みを用いて対象の運動と参照画像を同時に推定する手法を構築した.勾配を計算する際に,局所解に落ちないように,入力画像に強いローパスフィルタをかけた後に差分を取るようにすることで,より広い探索を行えるようにした.また,ぶれのある画像に対しては,運動推定により得られたパラメータを用いてぶれ補正を行うようにした.提案手法の有効性を実証するため,人工的に生成した画像でのシミュレーションと実画像を用いた実験を行った.シミュレーションでは,人工的に生成した入力画像(モノクロ8ビット階調,512×512画素)を用いた.対象は256×256画素のlena画像とし,100フレームで半径100画素の円軌道を1周するものとした.画像には平均0,標準偏差σのガウシアンノイズを付加し,画素値が8ビットに収まるようにゲインとオフセットを調整した.推定に利用する範囲は128×128画素とした.ぶれのない画像でのシミュレーションでは,PSNRが-6dBまでの入力画像に対し,画像復元を行うことができた.また,提案手法は他の手法に比べて推定軌跡の誤差が小さくなった.実画像を用いた実験では、IEEE1394モノクロカメラGrasshopper(Point Gray Research Inc.)で書籍の表紙を撮影し,画像サイズ640×480の右半分を切り出して使用した.フレームレート60fps,フレーム数100で,カメラから対象までの距離は約150cmであった.トラッキングと復元の領域は128×128画素とした. | KAKENHI-PROJECT-23650082 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23650082 |
暗闇での物体追跡と画像復元の研究 | その結果,被写体照度0.01lx以下(照度計の測定限界)の暗闇環境で撮影した動画像に対し,物体追跡と画像復元を行うことができた.研究の目的に掲げていた対象の三次元運動への対応や、カラー画像への対応が達成できており、順調に進展しているといえる。当初の計画では、計算機シミュレーションまでの予定であったが、実画像を用いた実験まで行うことができた。次年度は最終年度であるため、残った課題のうち特に重要度の高い、背景と対象の自動分離、および対象が複数ある場合への対応を優先的に行う。さらに、事前分布を考慮した推定や、オクルージョンへの対応についても検討を行う。また、これまでの研究成果を国内会議や国際会議に投稿し、研究成果を国内外に発信する。次年度は、カラー画像への対応、回転等のより高い自由度の運動を仮定した実験、背景が存在する場合の領域分割などを行うとともに、実画像を用いた実験をより多くの対象物に対して行い、提案手法の有効性を確実なものにする。これまでよりさらに高度なアルゴリズムを検証するため、高速な実験用計算機を購入する。また、成果発表のための国内旅費・海外旅費、および学会参加費に使用する。次年度の研究費の主な使途として、前年度の成果の国内学会、国際会議での発表が挙げられる。また、精度の高い照度計や新しい高速カメラ、および実験用PCの購入を予定している。 | KAKENHI-PROJECT-23650082 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23650082 |
密度汎関数理論に基づく非調和フォノン物性の数値的研究 | 昨年度までに開発したself-consistent phonon (SCP)法に基づく自由エネルギー計算を立方晶および正方晶SrTiO3へ適用し、両者の自由エネルギー比較によって構造相転移温度の第一原理予測を行った。その結果、Tc = 80 Kという実験結果(105 K)と良く一致する値を得た。また、SCP法において原子振動の量子効果を無視する古典近似を用いると転移温度が170Kとなる事を明らかにし、ペロブスカイト酸化物の構造相転移における量子効果の重要性を数値的に実証した。また、熱電材料であるテトラへドライトCu12Sb4S13に見られる格子熱伝導の弱い温度依存性の起源を明らかにするために第一原理解析を行った。その結果、Cu原子の大振幅(ラットリング)振動モードの昇温に伴うハード化によって高温域における熱伝導の温度依存性が弱まる事を明らかにした。更に、高温域ではバンド的伝導とホッピング的伝導の両者が共存している事を実証した。以上の成果をもとに論文発表(発表済1本、採択済:1本)と学会発表(16件、うち招待講演6件)を行った。本研究計画の過程で開発を行った理論手法は、その多くが既にALAMODEパッケージに実装済みであり、未実装部分に関しても順次追加予定である。この計算パッケージによって、これまで困難だった有限温度効果を考慮したフォノン、熱伝導、自由エネルギー計算が可能になり、セラミックス材料や熱電材料などのフォノン物性が高い精度で予測可能になった。今後も適用例の更なる拡大が期待できる。本課題では原子振動の非調和効果を考慮した第一原理フォノン計算手法の開発を行っている。まず3次非調和効果によるフォノン振動数シフトの大きさを定量的に解析するため、非調和性の強い立方晶SrTiO3をテストケースとして計算を行った。計算手順としては、はじめに自己無撞着フォノン(SCP)法を用いて4次非調和効果による振動数シフトを非摂動的に計算し、続けて3次非調和項由来の最低次の自己エネルギーを摂動的に考慮した。その結果、3次非調和効果でフォノン振動数が全体的にソフト化し、その大きさは強誘電性(FE)ソフトモードとゾーン境界におけるAFDソフトモードで特に顕著であることを明らかにした。また、3次非調和補正の自己エネルギーの振動数依存性を解析したところ、低振動数領域で自己エネルギーの実部がほぼ一定になる事を確認した。これは自己エネルギーに対する静的近似を正当化するための重要な根拠となり得る。さらにHSEハイブリッド汎関数に基づく高精度な非調和フォノン計算にも成功し、LDAやPBE、PBEsol汎関数で問題であった実験結果からのずれが大幅に改善された。4次非調和効果が強いと考えられる熱電材料SnSeとI型クラスレートBa8Ga16Ge30について、SCP法に基づく応用計算を並行してして行った。クラスレートでは4次非調和効果によってラットリング振動の振動数がハード化し、その結果音響フォノンの散乱強度が下がるため熱伝導率が上昇することを明らかにした。さらに、実験で報告されているラットリング原子の可動域と熱伝導率の相関関係を定量的に説明するためには、4次非調和効果を考慮する必要があるという結論を得た。これらの成果をもとに論文発表(投稿中:2本)と学会発表(8件、うち招待講演4件)を行った。当初の予定通り、クラスレートにおけるゲスト可動域と4次非調和性、および熱伝導率の関連性を微視的に理解することが出来た。SnSeの高温相(CMCM構造)についても、計画していた通りに4次非調和性を考慮した熱伝導率計算を完了したが、熱伝導率の計算結果が実験値からずれており、その原因解明に当初の予想より多くの時間を要している。3次非調和効果による振動数シフトを非摂動的に取り扱うためのコード開発はまだ中途段階であるが、今年度の研究結果から自己エネルギーに対する静的近似を正当化する根拠が得られたのは大きな進展であると言える。今年度も引き続き原子振動の非調和効果を考慮した第一原理格子動力学法の開発と応用計算を行った。まず、self-consistent phonon(SCP)法を自由エネルギー計算に展開し、従来の準調和近似(QHA)では無視されるフォノン-フォノン相互作用を考慮可能な自由エネルギー計算コードを作成した。さらに、improved self-consistent phonon (ISC)法に基づいて3次・4次非調和効果を同時に考慮する方法も開発した。これらの手法をQHAが破綻するScF3へ適用し、大きな負熱膨張とその温度依存性を定量的に説明することに成功した。また、クラスレート化合物における熱伝導のガラス的温度特性の起源の第一原理解析を行い、低温(20 K)で見られる熱伝導率のディップやプラトーは、強いフォノン-フォノン散乱さえ考慮すれば、構造の乱れが無くても説明できることを明らかにした。その一方で、高温では局在フォノンによるホッピング伝導の寄与が無視できなくなる可能性を実験と計算結果との詳細な比較により示した。本プロジェクトの主題の一つである3次非調和効果の非摂動計算手法についても、継続して開発を進めている。当初の予想よりも計算コストが高くなったため、計算アルゴリズムの見直しを行い、少なくとも2倍の高速化に成功した。また、圧縮センシングを用いて3次非調和項をスパース化することで計算効率の劇的な改善が見込まれるため、そのためのプログラム整備(API開発)にも注力した。さらに、ペロブスカイトを対象に、非調和フォノンが電子格子相互作用を介してバンドギャップに与える効果の解析を行った。 | KAKENHI-PROJECT-16K17724 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K17724 |
密度汎関数理論に基づく非調和フォノン物性の数値的研究 | 以上の成果をもとに論文発表(発表済4本、投稿中:1本)と学会発表(9件、うち招待講演4件)を行った。また、開発した計算プログラムの一部を計算パッケージALAMODEの機能として公開した。今年度は非調和効果を考慮した自由エネルギー計算やALAMODEパッケージのAPI作成など当初の計画以上に進展した項目があり、また3次非調和効果の非摂動的な扱いや電子格子相互作用の解析などにも十分な進展が見られた。その一方で、SnSeの熱伝導率が計算と実験で一致しない問題は決着しておらず、またスピン自由度による熱伝導率低減メカニズムの解析も十分な進展には至らず、次年度へ持ち越すこととなった。これらを総合的に判断すると、プロジェクト全体の進捗は概ね順調であるといえる。昨年度までに開発したself-consistent phonon (SCP)法に基づく自由エネルギー計算を立方晶および正方晶SrTiO3へ適用し、両者の自由エネルギー比較によって構造相転移温度の第一原理予測を行った。その結果、Tc = 80 Kという実験結果(105 K)と良く一致する値を得た。また、SCP法において原子振動の量子効果を無視する古典近似を用いると転移温度が170Kとなる事を明らかにし、ペロブスカイト酸化物の構造相転移における量子効果の重要性を数値的に実証した。また、熱電材料であるテトラへドライトCu12Sb4S13に見られる格子熱伝導の弱い温度依存性の起源を明らかにするために第一原理解析を行った。その結果、Cu原子の大振幅(ラットリング)振動モードの昇温に伴うハード化によって高温域における熱伝導の温度依存性が弱まる事を明らかにした。更に、高温域ではバンド的伝導とホッピング的伝導の両者が共存している事を実証した。以上の成果をもとに論文発表(発表済1本、採択済:1本)と学会発表(16件、うち招待講演6件)を行った。本研究計画の過程で開発を行った理論手法は、その多くが既にALAMODEパッケージに実装済みであり、未実装部分に関しても順次追加予定である。この計算パッケージによって、これまで困難だった有限温度効果を考慮したフォノン、熱伝導、自由エネルギー計算が可能になり、セラミックス材料や熱電材料などのフォノン物性が高い精度で予測可能になった。今後も適用例の更なる拡大が期待できる。次年度以降も非調和効果を非摂動的に取り扱うフォノン計算手法・コードの開発と応用計算による妥当性の検証作業を遂行する。また、スピン自由度による熱伝導率低減メカニズムの解析に当初の計画通り着手する。前述のSnSeにおける実験結果と計算結果の不一致については、本研究課題のみならず第一原理フォノン計算や熱電材料コミュニティにとっても大きな問題であるため、その原因については計算精度や実験結果の信頼性を含めて多角的に検討する。最終年度は3次非調和効果の非摂動計算方法を完成させ、さらに電子格子相互作用がバンドギャップや輸送特性に与える影響の解析をさらに進めることを最重要課題として研究を遂行する。 | KAKENHI-PROJECT-16K17724 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K17724 |
キラルルイヌ酸を用いるエナミド類の不斉求核反応 | エナミド、エンカルバメートは、求電子剤として多く用いられている基質であるが、求核剤としてはその反応性の低さのためほとんど有機合成に用いられている例がない。当研究室では、アルデヒドへのエンカルバメートの触媒的不斉付加反応について既に報告している。しかしながら、ケトンに対する付加反応はこれまで例がない。ケトンに対する付加反応は有機合成化学上有用な3級アルコールを合成でき、これをさらにエナンチオ選択的に行うことができれば、その利用価値はさらに大きくなる。一般にケトンはアルデヒドと比較して反応性は乏しく、触媒的不斉付加反応に用いられている例は少ない。そこで筆者らは、1,2-ジケトンを用いることでその問題を克服することとした。種々の触媒存在下エンカルバメートとジケトンの反応を検討した結果、Ni(II)塩とキラルなジアミン配位子(例えば1,2-ジフェニルエチレンジアミン由来のキラルジアミン)を用いると良好な収率、選択性で目的物が得られることを見いだした。特筆すべき点として、通常の触媒的不斉反応が微量の水の存在により選択性等に大きな変化を与えるのに対して、今回開発した反応は水の混入に対し寛容でありほとんど影響を受けないことが分かった。例えば、金属塩として金属水和物を用いた場合においても、無水金属塩を用いた場合の結果とほぼ変わらないことが分かった。これらの結果は、真に有効な触媒的不斉反応に有用な指針を与えるものである。エナミド、エンカルバメートは、求電子剤として多く用いられている基質であるが、求核剤としてはその反応性の低さのためほとんど有機合成に用いられている例がない。当研究室では、アルデヒドへのエンカルバメートの触媒的不斉付加反応について既に報告している。しかしながら、ケトンに対する付加反応はこれまで例がない。ケトンに対する付加反応は有機合成化学上有用な3級アルコールを合成でき、これをさらにエナンチオ選択的に行うことができれば、その利用価値はさらに大きくなる。ケトンは一般に、アルデヒドと比較して反応性が低いため、触媒的不斉付加反応に用いられている例は数少ない。そこで、今回筆者はエンカルバメートのケトンへの不斉付加反応を研究した。ケトンとしては2座での配位が可能である1,2-ジケトンを用いた。アルデヒドやイミンに対する付加反応において良好に機能した銅触媒を用いたが、選択性は低くとどまった。そこで種々の金属塩とジアミン配位子との錯体を触媒として反応を検討したところ、ニッケル塩、特にNi(OTf)_2を用いた際に良好なエナンチオ選択性が観察された。この時の反応の遷移状態についての知見を得るべく、錯体のX線結晶構造解析を行ったところ、NiBr_2とジアミンリガンドとの錯体においては正四面体構造、NiI_2とジアミンリガンドとの錯体においては正八面体構造をそれぞれ形成していることが分かった。さらに以前用いていた銅触媒との反応性の比較を行ったところ、銅触媒においては反応は早いが選択性が低く、ニッケル触媒においては反応は遅いが選択性が高いという知見を得ることができた。現在、開発したニッケル触媒を用いて不活性アルデヒドへの付加反応など、他の反応への展開も検討している。エナミド、エンカルバメートは、求電子剤として多く用いられている基質であるが、求核剤としてはその反応性の低さのためほとんど有機合成に用いられている例がない。当研究室では、アルデヒドへのエンカルバメートの触媒的不斉付加反応について既に報告している。しかしながら、ケトンに対する付加反応はこれまで例がない。ケトンに対する付加反応は有機合成化学上有用な3級アルコールを合成でき、これをさらにエナンチオ選択的に行うことができれば、その利用価値はさらに大きくなる。一般にケトンはアルデヒドと比較して反応性は乏しく、触媒的不斉付加反応に用いられている例は少ない。そこで筆者らは、1,2-ジケトンを用いることでその問題を克服することとした。種々の触媒存在下エンカルバメートとジケトンの反応を検討した結果、Ni(II)塩とキラルなジアミン配位子(例えば1,2-ジフェニルエチレンジアミン由来のキラルジアミン)を用いると良好な収率、選択性で目的物が得られることを見いだした。特筆すべき点として、通常の触媒的不斉反応が微量の水の存在により選択性等に大きな変化を与えるのに対して、今回開発した反応は水の混入に対し寛容でありほとんど影響を受けないことが分かった。例えば、金属塩として金属水和物を用いた場合においても、無水金属塩を用いた場合の結果とほぼ変わらないことが分かった。これらの結果は、真に有効な触媒的不斉反応に有用な指針を与えるものである。 | KAKENHI-PROJECT-04F04711 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04F04711 |
超高エネルギー宇宙由来ニュートリノに対する大型チェレンコフ光検出器の感度増大 | 1020eVを超える超高エネルギー宇宙線の起源を明らかにするためにその宇宙線由来の超高エネルギーニュートリノを捕らえることが有効である。このニュートリノに対する大型チェレンコフ光検出器の感度を上げる手法を開発した。バックグラウンドである大気ミューオン束とニュートリノ信号からの単一ミューオンは一見似たように見えるが、粒子軌跡の進行方向のチェレンコフ光の分布に違いが見られることが分かった。この違いを利用することでより多くのニュートリノ信号を得ることができる。1020eVを超える超高エネルギー宇宙線の起源を明らかにするためにその宇宙線由来の超高エネルギーニュートリノを捕らえることが有効である。このニュートリノに対する大型チェレンコフ光検出器の感度を上げる手法を開発した。バックグラウンドである大気ミューオン束とニュートリノ信号からの単一ミューオンは一見似たように見えるが、粒子軌跡の進行方向のチェレンコフ光の分布に違いが見られることが分かった。この違いを利用することでより多くのニュートリノ信号を得ることができる。本研究の目的は現在世界最高の検出器体積を誇るIceCube検出器を用いて、10^<20>eVを超える超高エネルギー宇宙線からの超高エネルギーニュートリノを世界に先駆けて捕らえることで、未だ謎に包まれたままの超高エネルギー宇宙線の起源の解明に迫ることである。この目的のために、今まであまり活かされていなかった波形データ情報を用いた高精度のニュートリノ事象再構築を行ったり、現在の超高エネルギーニュートリノ探索において最も大きな系統誤差である氷の不定性を取り除く事等により超高エネルギーニュートリノに対する感度を上げる。今年度は上記の目的を達するための準備としてより良いと思われている新しい氷モデルを用いたシミュレーションデータを製作した。この新しい氷のモデルは各光検出器に装着されているLEDからの光を用いて実験的に決められている。また、波形データを活かすためには、より正確なバックグラウンドモデルの構築が必要となる。このために当初計画していた経験的なモデル構築をやめ、より詳細なシミュレーションデータ(CORSIKA)を用いることにした。このCORSIKAデータの問題は超高エネルギーの宇宙線バックグラウンドでは生成されるミューオンの多重度が大きくなり、シミュレーション生成に莫大な時間がかかる。この問題を回避するために、幾つかのミューオンを束ねるシンニング法を開発した。このようにして生成されたシミュレーションデータを用いて、上記目的を達する予定である。本研究の目的は現在世界最高の検出器体積を誇るIceCube検出器を用いて、10^<20>eVを超える超高エネルギー宇宙線からの超高エネルギーニュートリノを世界に先駆けて捕らえることで、未だ謎に包まれたままの超高エネルギー宇宙線の起源の解明に迫ることである。この目的のために、今まであまり活かされていなかった波形データ情報を用いた高精度のニュートリノ事象再構築を行ったり、現在の超高エネルギーニュートリノ探索において最も大きな系統誤差である氷の不定性を取り除く事等により超高エネルギーニュートリノに対する感度を上げる。今年度は昨年度に作成した氷の性質を改善して作成したモンテカルロデータを用いて、超高エネルギーニュートリノ信号とバックグラウンドである大気ミューオン束により発せられる光量分布に違いがないかを検証した。その結果、運動方向の光量分布に違いが表れることが分かり、この違いを利用することで、信号をバックグラウンドから切り分けることができる事が分かった。また、検出器の端を通過する事象に対しては再構築が上手くいかないことが分かっていたが、波形データを利用した再構築法を用いることにより正しく事象再構築が行えることが分かった。現在、これらの改善されたデータ解析手法を用いて2010-2011年にIceCubeで取得されたデータを解析中である。期待される超高エネルギーニュートリノ信号は約1事象/年と求まった。 | KAKENHI-PROJECT-22740141 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22740141 |
高分子鎖を自在に築きあげる精密重合:形態に基づく機能創発を目指して | 高分子鎖はモノマーが多数連結した巨大分子であり,その繋がり方は高分子鎖の絡み合いや集合挙動などに影響を与える。中でも環状高分子は,末端がないというトポロジー的制約を持ち,対応する直鎖状ポリマーとは異なる物性や集合構造から興味が持たれる。本研究では,申請者がこれまで独自に展開してきた「環拡大カチオン重合」をより発展させ,環状高分子側鎖官能基の拡張および誘導体合成とともに,環状高分子の物理的特徴の解明を行った。平成28年度は以下2点で成果を得た。(1)環状高分子側鎖官能基の拡張および誘導体合成環状高分子鎖の官能基に加え,環状高分子を基盤とした誘導体へと展開を図った。カチオン重合性の異なる種々アルキル基を有するビニルエーテルでも,環拡大成長反応が進行することを明らかにした。加えて,環融合を起こした環状ポリマーを二官能性ビニルエーテルで架橋を進行させると,環状高分子をベースとしたゲルが構築可能であることを明らかにした。(2)環状高分子の物理的特徴の解明上記(1)で展開したビニルエーテルを利用し,バルクでの環状高分子のガラス転移温度,並びに溶液中での感温性を,直鎖状高分子と比較して調べた。その結果,バルクでは環状高分子は直鎖状高分子と比較して自由体積が小さいことに起因してガラス転移温度が小さいことがわかった。一方,有機溶媒中では環状高分子が直鎖状高分子と比較して溶媒和に寄与可能な溶媒分子の数が少なくなることから,曇点や上限臨界溶解温度が小さくなることが分かった。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。合成高分子において,例え構成単位の化学的組成が同一の場合でも高分子鎖のかたち(トポロジー)が異なると特徴的な性質を発現しうる。特に`末端がない'という奇異な特徴を持つ「環状」高分子は,古くから高分子科学者を魅了し続けているものの,環状高分子とその誘導体の効率的で簡便な合成法は未だ少ない。本研究では,申請者がこれまで独自に開発してきた環拡大リビングカチオン重合を展開し,効率的かつ簡便に環状高分子を得ることを目的とする。平成26年度は,以下3点で成果を得た。(1)単分散に近い環状高分子を得る手法の確立:単分散の環状高分子を得づらいという従来の問題に対し,分子間反応を抑えるため希釈下の重合条件を検討し,分子間反応を抑えることで単分散に近い高分子を得ることが出来た。(2)環状高分子が動的に共有結合を組み替えていることの発見:従来の環状高分子は一旦合成するとその形が共有結合で固定されたままである。申請者は,本重合で触媒存在下環状ポリマーを希釈すると活性点同士が分子内で動的に組みかわり,時間とともに単分散に近くなることを見出した。これは,環状高分子の動的変換を実現することに繋がる。(3)環状高分子側鎖に対する官能基導入:環状高分子に特徴的な機能を発現させる予備検討として,モノマーに各種機能基(水酸基,アミノ基,開始剤等)の保護基を導入し,それらモノマーを用いて環拡大重合を行なった。その結果各種モノマーで環状高分子が得られ,機能性基を側鎖に有する環状高分子を合成可能と分かった。本研究員は,環状高分子を簡便かつ効率的に合成する手法として,「環拡大リビングカチオン重合(RE-LCP)」を見出した。本手法は,ヘミアセタールエステル結合を環状分子内に組み込み,ルイス酸触媒を用いて可逆的に炭素カチオンと対アニオンを発生させ,ビニルエーテル(VE)を挿入し大環状構造の高分子を得る手法である。ブロック共重合が可能なほど本質的な重合制御性は高く,得られる高分子鎖は環状であることがわかっているが,重合中に環状ポリマー同士が融合し分子量分布が大きくなる問題があった。そこで本年度は,分子量の揃った環状高分子の合成手法を確立すると共に,環状グラフト共重合体の構築に取り組んだ。平成27年度は,以下2点で成果を得た。(1)分子量の揃った環状高分子の精密合成:従来,分子間の高分子間反応により単分散の環状高分子を得づらいという問題があったが,分子間反応を抑えるため希釈条件で行うと重合が進行しないというトレードオフの関係にあった。本研究員は本問題を解決する手法として,巧みに重合後に分子内反応を誘発する“後希釈"を考案した。本手法では,触媒存在下環状ポリマーを希釈すると活性点同士が分子内で動的に組みかわり,分子量分布の広い環状高分子が,一定の分子量に収斂していき,時間とともに単分散に近くなることを見出した。(2)環状グラフト共重合体の構築:ナノスケールのドーナツ状高分子である環状グラフト共重合体は,その環サイズを反映した自己組織化構造を形成すると期待される。そこで,環拡大リビングカチオン重合で用いるVEに対して,リビングラジカル重合(LRP)開始点を導入し環拡大重合することで,環状高分子型の開始剤を合成した。本高分子鎖を用いてメタクリル酸メチル(MMA)のLRPを行うことで,環状主鎖骨格から多数の高分子鎖が側鎖に連結した環状グラフト共重合体の合成を達成した。平成27年度は,最終年度に予定している環状高分子からさらに派生する環状高分子誘導体の構築に向けて,その基盤となる手法を確立できた。具体的には,単分散に近い環状高分子を得る手法を確立した点,環状高分子側鎖にグラフト鎖を導入出来た点は,今後の研究展開の鍵となるであろう。以上の理由より,当該研究はおおむね順調に進展していると判断される。 | KAKENHI-PROJECT-14J02544 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J02544 |
高分子鎖を自在に築きあげる精密重合:形態に基づく機能創発を目指して | 高分子鎖はモノマーが多数連結した巨大分子であり,その繋がり方は高分子鎖の絡み合いや集合挙動などに影響を与える。中でも環状高分子は,末端がないというトポロジー的制約を持ち,対応する直鎖状ポリマーとは異なる物性や集合構造から興味が持たれる。本研究では,申請者がこれまで独自に展開してきた「環拡大カチオン重合」をより発展させ,環状高分子側鎖官能基の拡張および誘導体合成とともに,環状高分子の物理的特徴の解明を行った。平成28年度は以下2点で成果を得た。(1)環状高分子側鎖官能基の拡張および誘導体合成環状高分子鎖の官能基に加え,環状高分子を基盤とした誘導体へと展開を図った。カチオン重合性の異なる種々アルキル基を有するビニルエーテルでも,環拡大成長反応が進行することを明らかにした。加えて,環融合を起こした環状ポリマーを二官能性ビニルエーテルで架橋を進行させると,環状高分子をベースとしたゲルが構築可能であることを明らかにした。(2)環状高分子の物理的特徴の解明上記(1)で展開したビニルエーテルを利用し,バルクでの環状高分子のガラス転移温度,並びに溶液中での感温性を,直鎖状高分子と比較して調べた。その結果,バルクでは環状高分子は直鎖状高分子と比較して自由体積が小さいことに起因してガラス転移温度が小さいことがわかった。一方,有機溶媒中では環状高分子が直鎖状高分子と比較して溶媒和に寄与可能な溶媒分子の数が少なくなることから,曇点や上限臨界溶解温度が小さくなることが分かった。平成26年度は,今後予定している環状高分子から派生する機能性環状高分子の構築に向けて,その基盤となる手法を確立できた。具体的には,単分散に近い環状高分子を得る手法を確立した点,高分子側鎖に機能基を導入出来た点は,今後の研究展開の鍵となるであろう。加えて,ルイス酸の刺激で環状ポリビニルエーテルが動的にサイズ変換されることは,当初申請者が予測していなかった結果であり,今後の展開へ興味が持たれる。以上の理由より,当該研究はおおむね順調に進展していると判断される。上述の平成27年度の結果に基づき,平成28年度は環状構造から派生する誘導体の合成と,それら高分子の環状構造に基づく機能の発現を目指す。(1)さまざまな環状グラフト共重合体の合成:環拡大重合がブロック共重合可能である点,さらに後希釈法で単峰性環状高分子の合成が可能になった点を活かすと,例えば環の半分がグラフト鎖を持つ環状高分子や,側鎖のグラフト鎖がブロック共重合体となった高分子を合成する。それらをAFM等で測定することにより,環状高分子一分子での形態や,環状高分子が積層し自己組織化した構造体の観察を予定している。(2)環状ブロック共重合体の構築:本環拡大重合が多様なビニルエーテルを用い種々の環状高分子を与えることに着目し,これらをブロック重合することにより,異なる性質を有するセグメントが環に配置したジブロックを得る。これらを溶液やバルクでの挙動を観測し,直鎖と比較してどのように異なるかを明らかにする。さらに,これまでに例のない環状トリブロック共重合体の合成及び物性測定にも挑戦する。28年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-14J02544 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J02544 |
高校野球選手に見られる投球障害肩に対する三次元動作解析 | 研究対象は当初予定の32チーム約100名の投手から、最終的に22チーム80名の投手に変更され、調査を実施した。調査方法のうち(1)アンケート調査および全員の診察・レントゲン検査は対象80名に対して施行し得た。(2)投球動作の三次元解析については現在、対象者を順次呼び出しあるいは訪問によって解析を続行中である。現在までの結果は主に(1)によるものである。投球時の肩痛の既往がある選手は38.8%,現在投球時痛がある選手は12.5%であった。Relocationtestは肩の痛みや痛みの既往と有意な関連があったが、個々の病態との特異性はなかった。全身関節過可動性と肩関節動揺性は肩の痛みや、理学検査上の異常とは関連がなく、投球障害には無関係であるように思われた。肩峰の形態と肩の痛みやimpingement signはとくに関連性はなかった。但し,type II群には有意に肩甲上腕関節後面の圧痛が少ないことが判明した。以上の概要を第12回日本肩関節学会で報告した。研究対象は当初予定の32チーム約100名の投手から、最終的に22チーム80名の投手に変更され、調査を実施した。調査方法のうち(1)アンケート調査および全員の診察・レントゲン検査は対象80名に対して施行し得た。(2)投球動作の三次元解析については現在、対象者を順次呼び出しあるいは訪問によって解析を続行中である。現在までの結果は主に(1)によるものである。投球時の肩痛の既往がある選手は38.8%,現在投球時痛がある選手は12.5%であった。Relocationtestは肩の痛みや痛みの既往と有意な関連があったが、個々の病態との特異性はなかった。全身関節過可動性と肩関節動揺性は肩の痛みや、理学検査上の異常とは関連がなく、投球障害には無関係であるように思われた。肩峰の形態と肩の痛みやimpingement signはとくに関連性はなかった。但し,type II群には有意に肩甲上腕関節後面の圧痛が少ないことが判明した。以上の概要を第12回日本肩関節学会で報告した。 | KAKENHI-PROJECT-06771131 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06771131 |
比較の手法によるイスラ-ム都市性の総合的研究(宗教・民族運動と都市) | 本年度はK班として研究活動を行なう最終年度であるが、以下のような成果をあげることができた。1。東南アジア・イスラ-ム宗教・民族運動関係の文献資料の整理とデ-タ・ベ-ス化を行なった。およそ千点におよぶ資料の書誌学的情報のコンピュ-タ入力を完了した。(中村光男)2。アメリカ統治期のフィリピン・ムスリムに関する第一次資料を入手し、整理中である(早瀬普三)3。イラン近現代政治運動に関する第一次資料およびペルシャ語学術雑誌を入手して、現在整理中でありコンピュ-タ入力によるデ-タ・ベ-ス化を準備中である。4。平成2年7月1819日、M,O,V班との合同研究会を開催し、イスラ-ム都市および宗教・民族運動の地域性に関して報告・討議を行ない、秋の全体集会の準備を行なった。5。平成2年11月27日12月2日、全体集会および国際会議に研究分担者全員参加し、とくに全体集会の第7セッション「イスラ-ム都市の地域間比較」をM班と協力して組織した。6。平成3年2月13日、鹿児島大学南太平洋海域研究センタ-およびV班との共催にて、シンポジウム「東南アジアのイスラ-ム」およびポスト・シンポジウム「イスラ-ム世界のなかの東南アジア」を開催し、多数の参加者をみた。このシンポジウムの成果は平成3年度中に公刊の予定である。7。K班の研究分担者全員が平成3年度中に公刊される予定の『イスラ-ムの都市性事典』の分担執筆を通じて本プロジェクトにおける研究成果の発表を行なう予定である。本年度はK班として研究活動を行なう最終年度であるが、以下のような成果をあげることができた。1。東南アジア・イスラ-ム宗教・民族運動関係の文献資料の整理とデ-タ・ベ-ス化を行なった。およそ千点におよぶ資料の書誌学的情報のコンピュ-タ入力を完了した。(中村光男)2。アメリカ統治期のフィリピン・ムスリムに関する第一次資料を入手し、整理中である(早瀬普三)3。イラン近現代政治運動に関する第一次資料およびペルシャ語学術雑誌を入手して、現在整理中でありコンピュ-タ入力によるデ-タ・ベ-ス化を準備中である。4。平成2年7月1819日、M,O,V班との合同研究会を開催し、イスラ-ム都市および宗教・民族運動の地域性に関して報告・討議を行ない、秋の全体集会の準備を行なった。5。平成2年11月27日12月2日、全体集会および国際会議に研究分担者全員参加し、とくに全体集会の第7セッション「イスラ-ム都市の地域間比較」をM班と協力して組織した。6。平成3年2月13日、鹿児島大学南太平洋海域研究センタ-およびV班との共催にて、シンポジウム「東南アジアのイスラ-ム」およびポスト・シンポジウム「イスラ-ム世界のなかの東南アジア」を開催し、多数の参加者をみた。このシンポジウムの成果は平成3年度中に公刊の予定である。7。K班の研究分担者全員が平成3年度中に公刊される予定の『イスラ-ムの都市性事典』の分担執筆を通じて本プロジェクトにおける研究成果の発表を行なう予定である。 | KAKENHI-PROJECT-02207101 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02207101 |
生物多様性保全社会の形成者を育てる理科教育の推進に関する研究 | 山口県下の小学校教員2名と中学校理科教員2名とで,理科教育における系統的な環境教育の在り方に関する基本方針を確認し,在り方を検討するため,それぞれの校種の作業班を立ち上げた。小学校作業班では,各教科書会社の理科の教科書と教師用指導書を精査し,教材作成を行った。その際,生物多様性や生態系サービスの中心概念と地球環境との関連を意識させた上で,持続可能な発展のために生物多様性を保全することがいかに大切であるかを子供たちに認識させ,理解させる授業が可能となるように配慮した。また,子どもたちの環境保護に対する意識の変容を調べるため,アンケート項目の検討も行った。小学校作業班では,理科の教科書と教師用指導書の精査に手間取ったこともあり,平成23年度に実施できたのは,ここまでであった。実際の授業の実施とその効果の検証は,次年度に持ち越すこととなった。中学校作業班では,現行の教科書をベースに,教材作成を行った。また,DVDを含むマルチメディアの活用も積極的に取り入れた。年間授業計画の関係上,年度末になったが,マルチメディアを駆使した授業を試行的に実施し,生徒たちの反応から改善点を見い出すことができた。なお,中学校作業班では,各教科書会社の理科の教科書と教師用指導書を精査することは,次年度の課題とした。平成23年度の研究では,教科書,教師用指導書その他の書籍および資料の収集を行い,それらの精査を通じて得た知見を教材作成に活かすことを目指したが,それらの精査に手間取ったため,研究の成果は企画した教材の一部を作成することにとどまった。教材を整備した上でそれらを活用した授業を行い,その効果を検証するとともにその成果を公表することは,今後の課題である。山口県下の小学校教員2名と中学校理科教員2名とで,理科教育における系統的な環境教育の在り方に関する基本方針を確認し,在り方を検討するため,それぞれの校種の作業班を立ち上げた。小学校作業班では,各教科書会社の理科の教科書と教師用指導書を精査し,教材作成を行った。その際,生物多様性や生態系サービスの中心概念と地球環境との関連を意識させた上で,持続可能な発展のために生物多様性を保全することがいかに大切であるかを子供たちに認識させ,理解させる授業が可能となるように配慮した。また,子どもたちの環境保護に対する意識の変容を調べるため,アンケート項目の検討も行った。小学校作業班では,理科の教科書と教師用指導書の精査に手間取ったこともあり,平成23年度に実施できたのは,ここまでであった。実際の授業の実施とその効果の検証は,次年度に持ち越すこととなった。中学校作業班では,現行の教科書をベースに,教材作成を行った。また,DVDを含むマルチメディアの活用も積極的に取り入れた。年間授業計画の関係上,年度末になったが,マルチメディアを駆使した授業を試行的に実施し,生徒たちの反応から改善点を見い出すことができた。なお,中学校作業班では,各教科書会社の理科の教科書と教師用指導書を精査することは,次年度の課題とした。平成23年度の研究では,教科書,教師用指導書その他の書籍および資料の収集を行い,それらの精査を通じて得た知見を教材作成に活かすことを目指したが,それらの精査に手間取ったため,研究の成果は企画した教材の一部を作成することにとどまった。教材を整備した上でそれらを活用した授業を行い,その効果を検証するとともにその成果を公表することは,今後の課題である。 | KAKENHI-PROJECT-23653301 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23653301 |
X線結晶構造解析による新規農薬デザイン | 本研究では、代表的な農薬代謝酵素である昆虫由来グルタチオン転移酵素(GST)を標的として研究を進めている。申請者は、これまでにカイコGSTファミリーの1種であるbmGSTu2が有機リン剤(ダイアジノン)へのグルタチオン抱合反応を触媒すること、bmGSTu2のカイコ組織局在性、ダイアジノンのグルタチオン抱合体の同定、そしてbmGSTu2のX線結晶構造解析などを行なってきた。平成30年度は、前年に得られたX線結晶構造解析結果をもとにbmGSTu2分子中のアミノ酸残基Phe13、Tyr107、Ile118、Tyr119、Phe211が基質結合部位を構成していることを部位特異的アミノ酸置換法ならびに酵素反応測度論的解析法を用いて発見した。次に、ゲノム編集技術(TALEN)によりbmGSTu2ノックアウトカイコの作製に成功した。すなわち、SV40核移行シグナル、hsp90プロモーターそしてGFP遺伝子を有するドナーベクターをbmGSTu2遺伝子中に挿入することでbmGSTu2遺伝子を破壊した。野生型カイコと比較した際、得られたbmGSTu2遺伝子ノックアウトカイコにおいて、有機リン剤(ダイアジノン)に対するLD50値の低下が観察された。これは、当該ノックアウトカイコ体内において、bmGSTu2によりダイアジノンが代謝されないためにLD50値低下がおこったものと推察された。また、当該ノックアウトカイコ体内においてアセチルコリン量が増加していることが明らかとなった。当該ノックアウトカイコ中、bmGSTu2はアセチルコリンエステラーゼへ不可逆的に結合し、アセチルコリンエステラーゼはアセチルコリンを代謝できない機能不全に陥っていることが示唆された。ゲノム編集技術(TALEN)によりbmGSTu2ノックアウトカイコの作製に成功した。得られたノックアウトカイコを用いて、有機リン剤(ダイアジノン)に対するLD50値の観察、そしてアセチルコリン量の測定を行なった。平成31年度は、bmGSTu2分子内に存在するグルタチオン結合、二量体形成部位、プロトンリレーに関与するアミノ酸残機を同定する。また、カイコ・ダイアジノン耐性ならびに感受性系統間へのダイアジノンを投与し、両系統間のbmGSTu2発現量の動態比較を行う。さらに、コナガならびにハスモンヨトウ由来GSTu2ホモログのX線結晶構造を解析する予定である。平成29年度は、農薬代謝酵素であるグルタチオン転移酵素(GST)のX線立体構造を解析し、基質認識機構を調査することを目的としている。具体的には、(1)カイコunclassified GST2(bmGSTu2)の結晶化、(2)bmGSTu2のX線結晶構造解析、(3)bmGSTu2の基質認識部位の同定について試みた。(1)について、bmGSTu2の組換えタンパク質を大腸菌内にて作製し電気泳動的に均一に精製した。この精製酵素を用いてapo-bmGSTu2ならびにグルタチオン- bmGSTu2の結晶作製を試みた。その結果、apo-bmGSTu2結晶を得ることに成功した。グルタチオン- bmGSTu2の複合体結晶は未だ得られていない。そこで、共結晶そしてソーキング法を用いて複合体結晶作成を試みが、複合体結晶は平成29年度中に得ることはできなかった。(2)に関して、得られたapo-bmGSTu2結晶をもとに、Hg原子を浸透させた重原子同形置換法により結晶構造解析を行なった。SPring8にて回折データを取得後、分解能1.68オングストローム、R-work=18.65%そしてR-free=22.10%の条件まで精密化を進めることができた。(3)について、他GST構造との重ね合わせにより、5個の残基を基質結合に関与するアミノ酸として見出した。アミノ酸残基を部位特異的アミノ酸置換法により当該アミノ酸残基をAlaへ変異した。各酵素変異体の組換え酵素を大腸菌にて発現し、精製した。すでに完成しているアッセイ法により、それぞれの変異が活性に及ぼす影響について調査した。その結果、いずれの変異酵素においても大幅な活性低下が観察された。以上、これらのアミノ酸残基はbmGSTu2活性に重要であることが示された。平成29年度におけるbmGSTu2に関する研究の進捗については、apo-bmGSTu2の結晶化ならびにX線結晶構造解析に成功した。これにより、bmGSTu2分子中のグルタチオン結合部位、基質結合部位、二量体形成部位、プロトンリレー関連部位の構造学的解析が可能となった。bmGSTu2の基質結合部位を立体構造的に解析し、基質結合に重要なアミノ酸残基を推定した。また、部位特異的アミノ酸置換法ならびに酵素化学的速度論的解析を用いて、基質結合に重要なアミノ酸残基を同定した。本研究では、代表的な農薬代謝酵素である昆虫由来グルタチオン転移酵素(GST)を標的として研究を進めている。申請者は、これまでにカイコGSTファミリーの1種であるbmGSTu2が有機リン剤(ダイアジノン)へのグルタチオン抱合反応を触媒すること、bmGSTu2のカイコ組織局在性、ダイアジノンのグルタチオン抱合体の同定、そしてbmGSTu2のX線結晶構造解析などを行なってきた。平成30年度は、前年に得られたX線結晶構造解析結果をもとにbmGSTu2分子中のアミノ酸残基Phe13、Tyr107、Ile118、Tyr119、Phe211が基質結合部位を構成していることを部位 | KAKENHI-PROJECT-17K19272 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K19272 |
X線結晶構造解析による新規農薬デザイン | 特異的アミノ酸置換法ならびに酵素反応測度論的解析法を用いて発見した。次に、ゲノム編集技術(TALEN)によりbmGSTu2ノックアウトカイコの作製に成功した。すなわち、SV40核移行シグナル、hsp90プロモーターそしてGFP遺伝子を有するドナーベクターをbmGSTu2遺伝子中に挿入することでbmGSTu2遺伝子を破壊した。野生型カイコと比較した際、得られたbmGSTu2遺伝子ノックアウトカイコにおいて、有機リン剤(ダイアジノン)に対するLD50値の低下が観察された。これは、当該ノックアウトカイコ体内において、bmGSTu2によりダイアジノンが代謝されないためにLD50値低下がおこったものと推察された。また、当該ノックアウトカイコ体内においてアセチルコリン量が増加していることが明らかとなった。当該ノックアウトカイコ中、bmGSTu2はアセチルコリンエステラーゼへ不可逆的に結合し、アセチルコリンエステラーゼはアセチルコリンを代謝できない機能不全に陥っていることが示唆された。ゲノム編集技術(TALEN)によりbmGSTu2ノックアウトカイコの作製に成功した。得られたノックアウトカイコを用いて、有機リン剤(ダイアジノン)に対するLD50値の観察、そしてアセチルコリン量の測定を行なった。平成29年度はグルタチオンーbmGSTu2複合体の結晶を得ることできなかった。平成30年度は、結晶化条件を細かくし、引き続き複合体結晶の作製を試みる。また、グルタチオン結合、基質結合部位、二量体形成部位、プロトンリレーに関与するアミノ酸残基を同定する。さらに、ゲノム編集技術によりbmGSTu2ノックアウトカイコを作製する予定である。平成31年度は、bmGSTu2分子内に存在するグルタチオン結合、二量体形成部位、プロトンリレーに関与するアミノ酸残機を同定する。また、カイコ・ダイアジノン耐性ならびに感受性系統間へのダイアジノンを投与し、両系統間のbmGSTu2発現量の動態比較を行う。さらに、コナガならびにハスモンヨトウ由来GSTu2ホモログのX線結晶構造を解析する予定である。次年度使用額「21,284円」が生じた。次年度において、bmGSTu2分子内に存在するグルタチオン結合、二量体形成部位、プロトンリレーに関与するアミノ酸残機を同定することを目的とし、関連試薬を購入するため次年度使用額が生じた。 | KAKENHI-PROJECT-17K19272 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K19272 |
トリプルセキュリティーシステムによる超細胞特異的遺伝子送達システム | 遺伝子送達システムにおける標的疾患細胞に対する特異性を多重セキュリティーシステムによって高めること目標とした。具体的にはポリエチレンイミン主鎖にシグナル応答性ペプチドを導入し、疎水相互基も導入したキャリアーを開発し、大きく細胞標的シグナル応答性を向上させることに成功した。さらに、血中での安定性を高めるために、PEG鎖をがん組織周辺でのpH低下に応答して切除できるように組み込むことで、正常細胞条件に比して1300倍という極めて高い遺伝子発現の活性化を実現できた。遺伝子治療における副作用を大きく低減するために、送達システムにおける標的疾患細胞(本研究ではがん細胞)に対する特異性を多重のセキュリティーシステムを設けることで高めること最終目標とした。まず、正常細胞での遺伝子転写が起こらないように、人工遺伝子キャリアと遺伝子の複合体において発現を効率よく抑制できるキャリアの開発を実施し、主鎖にポリカチオンを用い、さらに疎水相互作用を導入することで、極めて遺伝子抑制が高く、しかも、これまで開発したものに比べ高効率にがん細胞に取り込まれるキャリアを実現した。さらに、血中での安定性を高めて肝臓や脾臓における細網内皮系での補足を抑制するために、ポリエチレングリコール(PEG)鎖を導入した。得られた複合体は高塩濃度下、血清存在下でも安定であった。ただし、がん細胞での取り込みの低下を招いたため、がん組織周辺でのpH低下に応答してPEG鎖を切除できるキャリアを設計し、開発した。具体的には、芳香族イミン結合でキャリアに導入したところ、pHが7.4ではPEG鎖は安定であったが、がん組織周辺部のpHとされる6.5においては10分で80%が切除された。これにより、がん部でのみ細胞に織り込まれる多重セキュリティーシステムの開発に成功した。実際にがん細胞に適用したところ、pH7.4の正常細胞条件に比して1300倍という極めて高い遺伝子発現の活性化を実現できた。これは、これまで報告されたがん細胞特異的な遺伝子キャリアとしては、正常細胞との特異性において最も高い性能である。遺伝子送達システムにおける標的疾患細胞に対する特異性を多重セキュリティーシステムによって高めること目標とした。具体的にはポリエチレンイミン主鎖にシグナル応答性ペプチドを導入し、疎水相互基も導入したキャリアーを開発し、大きく細胞標的シグナル応答性を向上させることに成功した。さらに、血中での安定性を高めるために、PEG鎖をがん組織周辺でのpH低下に応答して切除できるように組み込むことで、正常細胞条件に比して1300倍という極めて高い遺伝子発現の活性化を実現できた。本研究では、これまで開発してきた細胞内プロテインキナーゼに応答して遺伝子を解放できいる遺伝子送達システムにおいて、その血中安定性と細胞取り込み効率の向上を目ざすことを目的としている。具体的には、まず、遺伝子制御型キャリヤーと遺伝子の複合体の安定化を実現し、これに熱応答デバイスとして金ナノロッドを混合して被覆した粒子の開発を最終目標とする。今年度は、まず、複合体の安定化の検討としてPEG鎖の導入、疏水基の導入の検討を行った。その結果、PEG鎖の場合は、導入率を高くするほど安定化は達成できるが遺伝子の抑制能が低下することが明らかとなった。一方、疎水基ではコレステロールなどの導入により複合体を劇的に安定化させることが可能となった。一方、体内動態の検討より、複合体のままでは肝臓への集積が著しいことがわかり、被覆の重要性が明らかとなった。金ナノロッドの検討では、その表面の被覆により疎水化、親水化いずれも達成でき、前記複合体と混合可能なロッドの調製が可能となった。複合体のシリカ被覆の検討はH24年度になっているが、シリカ被覆を達成するための複合体の安定化と金ナノロッドの修飾法の開発が達成できており、本システム構築のためのかなりのハードルが克服できたといえる。したがって、おおむね順調に進展しているとした。本年度はシリカ被覆の検討を主に行う。被覆はそのシリカ層形成速度と時間に依存して厚さと放出速度が変化する。そこで、まず、ナノクリスタル法で薬物のナノ結晶を調製し、これをモデルとしてシリカ層の最適化条件を決定する。その際、各被覆粒子を細胞とマウスを用いて動態とがんへの集積性を評価する。その後、H23年度に調製h詩t複合体を被覆し、細胞とマウスで評価する。H24年度は、粒子の調製において、種々の被覆粒子を調製せねばならず、また、その都度、細胞とマウスでの評価を行うため、予算の大部分は合成用試薬類、生化学用試薬類、細胞実験用消耗品類、実験用マウスなどの消耗物品類に使用する。また、成果の発表のため学会への参加費と旅費、論文の掲載料、英文校正料にも使用する。 | KAKENHI-PROJECT-23650290 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23650290 |
直交多項式論とランダム行列の理論の確率論的研究 | 千代延はこの研究プロジェクトにおいて直交多項式の理論やランダム行列の理論において重要な役割をはたすゼゲの定理の確率論からの取り扱いを追求した。その結果ゼゲの定理そのものをしめすことはできなかったが確率論的に興味深いある極限公式をしめした。それはゼゲの定理において対数ポテンシャルであるものをより滑らかなポテンシャルにかえたものについてなりたつ一般的な公式である。青本は超幾何関数と超平面配置との関係をあたえるジャコビの等式をあたえた。また対数ポテンシャルをもとスツルムリウビル作用素の熱核が超平面配置に付随するヰーナー積分で表示されることを示した。それは無限次元におけるガウスマニン接続の公式を与えるものである。Gelfand-Graevによって研究された超幾何関数、とくにLambert seriesに対する特異性およびモノドロミーを調べた。杉浦はGinzburg-Landau連続場模型に関するギブス測度の混合性、確率発展にかんするエルゴード性、境界に近いスピン値の平均評価をしめした。千代延はこの研究プロジェクトにおいて直交多項式の理論やランダム行列の理論において重要な役割をはたすゼゲの定理の確率論からの取り扱いを追求した。その結果ゼゲの定理そのものをしめすことはできなかったが確率論的に興味深いある極限公式をしめした。それはゼゲの定理において対数ポテンシャルであるものをより滑らかなポテンシャルにかえたものについてなりたつ一般的な公式である。青本は超幾何関数と超平面配置との関係をあたえるジャコビの等式をあたえた。また対数ポテンシャルをもとスツルムリウビル作用素の熱核が超平面配置に付随するヰーナー積分で表示されることを示した。それは無限次元におけるガウスマニン接続の公式を与えるものである。Gelfand-Graevによって研究された超幾何関数、とくにLambert seriesに対する特異性およびモノドロミーを調べた。杉浦はGinzburg-Landau連続場模型に関するギブス測度の混合性、確率発展にかんするエルゴード性、境界に近いスピン値の平均評価をしめした。本研究は数学においては確率論、作用素論、量子確率論、直交多項式論、ポテンシャル論、また物理においては量子カオス、2次元重力場理論などおおくの分野と関連する。そこで本研究を遂行するにあたりなによりも大事なのはこれらの分野の研究者と可能な限り多くの意見交換の機会を持つことである。幸い、代表者と各分担者はそれぞれ異る専門をもちながらも量子カオスという対象に強い関心をもち、また各地の研究者との共同での研究の気運も起きている。今年度は、研究補助費を用いて、京都大学の高橋陽一郎氏や東京工業大学の白井朋之氏、東京大学の楠岡成雄氏、舟木直久氏、慶応大学の田村要造氏と頻繁に研究連絡を行なった。その結果、千代延はランダム行列の理論と直行多項式の理論の交差するJohanssonの仕事の確率論からの解釈の試みから出発し、確率論的により一般化した形で独立確率変数に対するひとつの極限公式を得た。それは無限次元における結果であり、一次元の場合をふくんでいる。杉浦は、実数全体のうえの連続関数のうえのギプス測度の性質について調べ、それについてのエルゴード定理にあたるいくつかの結果を得た。すなわちミキシング性を証明した。青本は、超幾何関数の研究の延長として、ランダム行列の研究を開始し、青本自身が得た超幾何関数の定理を無限次元化することにより、ひとつの変分公式を得、それをlogポテンシャルをもつSchrodinger方程式の解のFeynman-Kac公式による表現(経路積分)に対する応用を得た。3人は研究補助費により、日本の各地で開かれるシンポジウムに参加し、得られた成果を発表した。このように、研究の打ち合せ、文献による調査、論文の執筆、成果の発表など本研究の遂行において、研究補助費を、補助条件にしたがって、十分に活用した。昨年度の報告にも記したとおり、本研究は数学においては確率論、作用素論、直交項式論、ポテンシャル論、また物理においては量子カオス、2次元重力場理論などおおくの分野と関連する。そこで本研究を遂行するにあたりなによりも大事なのはこれらの分野の研究者と可能な限り多くの意見交換の機会を持つことである。幸い、代表者と各分担者はそれぞれ異なる専門をもちながらも量子カオスという対象に強い関心をもち、また各地の研究者との共同での研究の気運も起きている。今年度は、研究補助費を用いて、筑波大学の南就将氏や東京工業大学の白井朋之氏、東京大学の楠岡成雄氏、舟木直久氏、慶応大学の田村要造氏と頻繁に研究連絡を行なった。その結果、千代延は、昨年度に得られたランダム行列の理論と直行多項式の理論の交差するJohanssonの仕事の確率論からの解釈の結果をさらに拡張し、確率論的により一般化した形で独立確率変数に対するひとつの極限公式を得た。それについての論文を完成させて、現在投稿中である。杉浦は、実数全体のうえの連続関数のうえのギブス測度の性質について調べ、それについてのエルゴード定理にあたるいくつかの結果、特に対数的ソボレフ不等式を証明した。それについての論文は、現在投稿中である。青本は、超幾何関数の研究の延長として、ランダム行列の研究を開始し、青本自身が得た超幾何関数の定理を無限次元化することにより、ひとつの変分公式を得、それをlogポテンシャルをもつSchrodinger方程式の解のFeynman-Kac公式による表現(経路積分)に対する応用を得た。それについて、論文を完成させ、現在投稿中である。3人は研究補助費により、日本の各地で開かれるシンポジウムに参加し、得られた成果を発表した。 | KAKENHI-PROJECT-10640114 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10640114 |
直交多項式論とランダム行列の理論の確率論的研究 | このように、研究の打ち合わせ、文献による調査、論文の執筆、成果の発表など、研究の遂行において研究補助費を補助条件にしたがって、十分に活用した。昨年度の報告にも記したとおり、本研究は数学においては確率論、作用素論、直交項式論、ポテンシャル論、また物理においては量子カオスなどおおくの分野と関連する。そこで本研究を遂行するにあたりなによりも大事なのはこれらの分野の研究者と可能な限り多くの意見交換の機会を持つことである。幸い、代表者と各分担者はそれぞれ異る専門をもちながらも量子カオスという対象に強い関心をもつ。今年度は、研究補助費を用いて、筑波大学の南就将氏や東京大学の楠岡成雄氏、舟木直久氏、慶応大学の田村要造氏と頻繁に研究連絡を行なった。その結果、千代延は、昨年度に得られたランダム行列の理論と直行多項式の理論の交差するJohanssonの仕事の確率論からの解釈の結果をさらに拡張し、確率論的により一般化した形で独立確率変数に対するひとつの極限公式を得た。それについての論文を本年度発表した。この結果についてさらにさまざまな拡張を考察している。杉浦は、実数全体のうえの連続関数のうえのギブス測度の性質について調べ、それについてのエルゴード定理にあたるいくつかの結果、特に対数的ソボレフ不等式を証明した。青本は、超幾何関数の研究の延長として、ランダム行列の研究を開始し、青本自身が得た超幾何関数の定理を無限次元化することにより、ひとつの変分公式を得、それをlogポテンシャルをもつSchrodinger方程式の解のFeynman-Kac公式による表現(経路積分)に対する応用を得た。それについて、論文を発表した。3人は研究補助費により、日本の各地で開かれるシンポジウムに参加し、得られた成果を発表した。このように、研究の打ち合わせ、文献による調査、論文の執筆、成果の発表など、研究の遂行において研究補助費を補助条件にしたがって、十分に活用した。 | KAKENHI-PROJECT-10640114 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10640114 |
湖沼の季節的食物網の定量化と安定性解析 | 1.トンレサップ湖における食物網データ解析トンレサップ湖の主要魚種について調査された、胃内容物データ・安定同位体データの収集・整理を行い、その情報をもとに季節的な水位変化および生態系サイズの変化にともなう各種魚類の食性変化パターンの解析を行った。さらに、生態系のサイズの季節的変化が食物網の安定性に及ぼす影響に関する理論モデルを構築した。これらの結果を論文にまとめ、国際学術誌に公表した。2.食物網内のキーストーン相互作用の特定手法の開発湖沼における長期モニタリングのデータを活用し、生態系の生産性および水質、動物プランクトン、魚類等の動態との相互作用の実態を分析し、湖沼を特徴づける重要な要素の一つである生産性がボトムアップによって特徴づけられる生態系要素間の因果関係によって駆動されていることを明らかにした。これらの結果を論文にまとめ、国際学術誌に公表した。トンレサップ湖を中心とした調査データ収集および解析が予定通り進んでいる。長期生態系モニタリング情報が利用可能な湖沼に分析の対象を拡大し、データ収集・解析を進める。1.トンレサップ湖における食物網データ解析乾季(2-4月)、乾季-雨季移行期(5-8月)、雨季(9-11月)、雨季-乾季以降会(12-1月)ごとに、トンレサップ湖の主要魚種について調査された、胃内容物データの収集および整理を行った。また、その情報をもとに季節的な水位変化および生態系サイズの変化にともなう、各種魚類の食性変化パターンの解析を行った。2.食物網内のキーストーン相互作用の特定手法の開発食物網の動態を決めるうえで、キーストーンとなる種および相互作用を特定するための手法の開発を行った。具体的には、対象とする食物網をモデル化し、その食物網内で相互作用する2種の組み合わせを順々に取り出し、資源を除く食物網の他の種から切り離された場合に、注目する2種の動態が不安定化するかどうかを基準に不安定因子を特定する。また、本結果をまとめ国際学術誌に公表した。予定通り、野外食物網の観測情報の取得および解析を進めた。また、食物網内のキーストーン相互作用の特定手法の開発に関する研究は、予定を前倒しして進めた。1.トンレサップ湖における食物網データ解析トンレサップ湖の主要魚種について調査された、胃内容物データ・安定同位体データの収集・整理を行い、その情報をもとに季節的な水位変化および生態系サイズの変化にともなう各種魚類の食性変化パターンの解析を行った。さらに、生態系のサイズの季節的変化が食物網の安定性に及ぼす影響に関する理論モデルを構築した。これらの結果を論文にまとめ、国際学術誌に公表した。2.食物網内のキーストーン相互作用の特定手法の開発湖沼における長期モニタリングのデータを活用し、生態系の生産性および水質、動物プランクトン、魚類等の動態との相互作用の実態を分析し、湖沼を特徴づける重要な要素の一つである生産性がボトムアップによって特徴づけられる生態系要素間の因果関係によって駆動されていることを明らかにした。これらの結果を論文にまとめ、国際学術誌に公表した。トンレサップ湖を中心とした調査データ収集および解析が予定通り進んでいる。計画通り進める。特に、収集した魚類の食性情報に加えて、安定同位体データもあわせながら、季節的に生態系サイズが大きな変動をする場合に生物群集構造やその安定性に関する性質がどのように変化するかについての研究を確実に進める。長期生態系モニタリング情報が利用可能な湖沼に分析の対象を拡大し、データ収集・解析を進める。研究を効率的に進めるために、キーストーン相互作用検出に関わる手法開発を前倒しで実施したため、基礎的なデータ収集を次年度に行う必要があるため。データ整理・解析を優先するため、当初予定していた成果発表のための国際学会参加等を次年度に行うことにしたため。 | KAKENHI-PROJECT-17K15056 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K15056 |
ウェットレーザドーピング技術の創生 | 炭化シリコン(4H型SiC)へのレーザードーピングで観測されるドーピング不純物の異常に速い拡散現象の機構の調査、およびSiCデバイスの製造において当該技術でなければできないオーム性金属接触の形成工程への応用性の調査を主に実施した。用いたレーザーはエキシマレーザーで、波長253ナノメートルの約50ナノ秒の幅のパルス光を出力するものである。拡散係数については、アルミニウムを予めイオン注入したSiCにレーザー照射を行った場合のアルミニウムの再分布を二次イオン質量分析法により測定して拡散係数を求めた。一方、レーザー照射時のSiCの温度を二色温度法計測系を構築して計測するとともに、シミュレーションによって得られる温度を参考に決定した。これらの測定結果より、レーザー照射によりSiCの表面は昇華温度付近まで上昇していること、またこの温度付近では電気炉加熱を用いた低温域での拡散係数の外挿から得られる値よりも約6桁も大きくなることがわかった。オーム性金属接触の形成に向けたドーピングにはレーザーパワーの尖塔値を低く抑えるとともにパルス幅を大きくすることで、ドーピング層の蒸発によるSiC表面の欠損を抑制すると同時にドーピングの表面からの深さを大きくでき、その結果、金属の接触抵抗を小さくすることができることがわかった。そこで光パルス幅拡張器を構成したレーザー照射実験系を新たに構築した。条件の最適化を図った結果、10のマイナス6乗台の極めて小さな接触抵抗をもつ電極を熱的安定性の高いチタンを用いて形成できることがわかった。低い接触抵抗をもつ金属/SiCオーム性接触を形成するためのレーザードーピング指針を策定し、光パルス拡張器という当初計画になかった実験装置を新たに構築することによって、オーム性接触抵抗のトップデータを提示した。このデータは論文としても認められた。また、得られたデータはデバイス応用から求められる値を十分に満足するものであり、本研究で提案、創出したドーピング方法の実用性も主張できた。ほぼ計画どおりに実施する。実用性をさらに拡張できることを示すためには、pn接合ダイオードの形成が可能であることを示すことが必要である。既にその可能性を示す実験結果を公表しているが、ダイオード特性の内、耐電圧特性が十分でない。今後、耐電圧の高い接合障壁型ダイオード(JBSダイオード)を設計、試作して、動作をデモンストレーションする計画である。・今年度は,ウエットレーザードーピングの基礎特性を調査することを主たる目的として研究を実施した.4H-SiCとしてより技術的障壁の高いp型ドーピングを試みた.塩化アルミニウム水溶液中に浸した4H-SiC半導体にフッ化クリプトン・エキシマレーザを照射するとAlをドーピングできるがドーピング深さが浅いという課題があった.この課題を解決するために,レーザーのパルス幅伸長器を用いてパルス幅を約50nsから100nsに伸長した結果,pn接合の深さ(ドーピング深さ)を約90nmから130nmまで概ね1.5倍に増大できることがわかった.・デバイス応用の可能性を調査するために,接合障壁型ショットキー(JBS)ダイオードを試作した.Alのドーピングは,塩化アルミニウム水溶液中での照射法を用い,パルス幅伸長器を用いずに照射した.試作したダイオードの順方向特性および逆方向回復特性から本手法を用いることによって大幅にプロセス工程を短縮してJBSダイオード作製できることを示した.一方,逆方向の電流阻止能力はドーピングの効果を確認できなかった.これは,ドーピング深さが浅いためであると推察している.・ドーピング深さを増大させるもう一つの方法として,SiC表面に堆積したアルミニウム薄膜にレーザーを照射する方法を新たに考案し調査した結果,レーザー照射によってアルミニウムプラズマが表面近傍に発生していること,50ns程度の短パルスレーザーの照射でもドーピング深さを0.2ミクロン程度まで増大できること,溶液を用いる場合に比べてドーピング密度を増大できることがわかった.・ドーピング深さを増大させるもう一つの方法として,基板を数百度に昇温することも有効であることがわかった.・電子顕微鏡を使ってpn接合深さを簡便に計測できることを見出した.これは今後の研究に有用である.レーザー照射中のその場温度計測を目指したpn接合温度センサー開発に関しては,若干の遅れが出ている.一方,ドーピング基礎特性の調査については,本手法を実用化する上で最も大きな課題のひとつであるドーピング深さの増大について,パルス幅の伸長,溶融したドーピング源の生成と利用,基板の昇温という3つの方法が有効であることを見出すことができ,予想以上の成果と言える.また,JBSダイオードの作製が可能であることを実証できた点も大きな成果であると言える.代表者らは,リン酸中で炭化シリコン(SiC)半導体にレーザ光を照射するとリンがSiC内部にドーピングされn型となり良好なpn接合を形成できることを見出したのを契機に研究を進め,液体窒素やアンモニア水中で照射すると窒素を,塩化アルミニウム水溶液中で照射するとアルミニウムをドーピングでき,n型,p型層を作れることを示ししてきた. | KAKENHI-PROJECT-16H02342 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H02342 |
ウェットレーザドーピング技術の創生 | 本研究はこれを発展させ,(1)ドーピングの密度と深さを制御する技術,および(2)サブミクロンの大きさで選択した領域へドーピングする技術を開発し,(3)素子製造への適用性を実証し,SiC素子製造へ応用できる新しいドーピング技術を創生することを目的としている.研究は,フッ化クリプトン(KrF)エキシマレーザーを用いて進めた.n型ドーピングについては,リン酸中,アンモニア水中の照射でそれぞれPおよびNを,またSiCの表面に成膜した窒化シリコン膜への両者によってNをある程度深くドーピングでき,良好なpn接合ダイオードを形成できることがわかった.一方,p型については,塩化アルミニウム中の照射,あるいは,表面に成膜したAlへの照射でAlをドーピングできることがわかった.Al薄膜への照射実験における発光解析を行った結果,照射した表面の近傍にAlの高密度プラズマが生成されることがわかった.このプラズマが表面を加熱して不純物元素を表面から内部へ拡散させているという機構を推定した.溶液中では発光が弱いことから,プラズマの消滅が速く,そのため拡散深さが小さいと推察される.pn接合ダイオードを試作し,カーブトレーサで評価した結果,耐圧が実用化水準の6割程度に留まっている.改善にはドーピング深さの拡大が必要であると判断した.そこで,レーザーパルス幅を拡張する光学機構を新たに構築して長パルス化した.それにより複数回照射が可能になり,拡散深さを増大できることがわかった.レーザー照射時の温度シミュレーション,レーザー条件を変化させたときのドーピングデータの収集,拡散定数の抽出と異常拡散係数に対する考察,pn接合ダイオードの試作とカーブトレーサによる電気特性の評価という当該年度当初に計画した調査ををほぼ順調に実施した.民間企業から高い関心が寄せられ,実用化検討に必要な性能仕様を明確にすることができたことは,当初計画を超えた成果であると言える.炭化シリコン(4H型SiC)へのレーザードーピングで観測されるドーピング不純物の異常に速い拡散現象の機構の調査、およびSiCデバイスの製造において当該技術でなければできないオーム性金属接触の形成工程への応用性の調査を主に実施した。用いたレーザーはエキシマレーザーで、波長253ナノメートルの約50ナノ秒の幅のパルス光を出力するものである。拡散係数については、アルミニウムを予めイオン注入したSiCにレーザー照射を行った場合のアルミニウムの再分布を二次イオン質量分析法により測定して拡散係数を求めた。一方、レーザー照射時のSiCの温度を二色温度法計測系を構築して計測するとともに、シミュレーションによって得られる温度を参考に決定した。これらの測定結果より、レーザー照射によりSiCの表面は昇華温度付近まで上昇していること、またこの温度付近では電気炉加熱を用いた低温域での拡散係数の外挿から得られる値よりも約6桁も大きくなることがわかった。オーム性金属接触の形成に向けたドーピングにはレーザーパワーの尖塔値を低く抑えるとともにパルス幅を大きくすることで、ドーピング層の蒸発によるSiC表面の欠損を抑制すると同時にドーピングの表面からの深さを大きくでき、その結果、金属の接触抵抗を小さくすることができることがわかった。そこで光パルス幅拡張器を構成したレーザー照射実験系を新たに構築した。条件の最適化を図った結果、10のマイナス6乗台の極めて小さな接触抵抗をもつ電極を熱的安定性の高いチタンを用いて形成できることがわかった。低い接触抵抗をもつ金属/SiCオーム性接触を形成するためのレーザードーピング指針を策定し、光パルス拡張器という当初計画になかった実験装置を新たに構築することによって、オーム性接触抵抗のトップデータを提示した。このデータは論文としても認められた。 | KAKENHI-PROJECT-16H02342 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H02342 |
ケイ素化合物の構造と反応性に関する理論的研究 | 本研究では、ケイ素系化合物の構造と反応性に関して理論化学的な見地から以下の研究を行った。ベンゾジシラシクロブテンの開環によって生成するベンゾジシラブタジエンとアセチレン分子の間にディールス・アルダー型の反応が極めて低い活性化エネルギーで起こり、Si-C結合が生成してアセチレンの3重結合が一部切れることを理論的に予言した。この反応の律速は、前半の開環反応にある。また中間体であるベンゾジシラブタジエンは実験的に観測されていないが、理論計算からこれを予言した。また、ジシラベンゼンに関して、そのデュワー型構造からベンゼン型に開環する反応について、対称許容の反応が対称禁制の反応よりもエネルギー的に有利に起こることを密度汎関数法と多配置解析より明らかにした。ベンゼン型ジシラベンゼンとアセチレンのディールス・アルダー型反応が極めて低い活性化エネルギーで起こることも予言した。本研究では、ケイ素系化合物の構造と反応性に関して理論化学的な見地から以下の研究を行った。ベンゾジシラシクロブテンの開環によって生成するベンゾジシラブタジエンとアセチレン分子の間にディールス・アルダー型の反応が極めて低い活性化エネルギーで起こり、Si-C結合が生成してアセチレンの3重結合が一部切れることを理論的に予言した。この反応の律速は、前半の開環反応にある。また中間体であるベンゾジシラブタジエンは実験的に観測されていないが、理論計算からこれを予言した。また、ジシラベンゼンに関して、そのデュワー型構造からベンゼン型に開環する反応について、対称許容の反応が対称禁制の反応よりもエネルギー的に有利に起こることを密度汎関数法と多配置解析より明らかにした。ベンゼン型ジシラベンゼンとアセチレンのディールス・アルダー型反応が極めて低い活性化エネルギーで起こることも予言した。 | KAKENHI-PROJECT-11120223 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11120223 |
肝腫瘍に対するラジオ波凝固療法の基礎的研究 | <研究結果>H-E染色上、ラジオ波凝固療法(以下:RFA)後の焼灼部は層構造を呈し、この層構造は直後から3日目までの間に3層から5層に変化していた。焼灼部辺縁では細胞萎縮、核の縮小化と核クロマチン濃縮などの形態変化が経時的に進行し、24時間以後の標本では周囲正常部と明瞭に区別されるようになった。定量評価ではRFA直後と2時間後、2時間後と24時間後の肝細胞密度増加、核縮小化が統計的に有意であった(P<0.01,Mann-Whitney U-test:細胞密度,Student's t-test:核サイズ)。核濃度は直後と比較して24時間後に統計学的有意な上昇を示した(p<0.01,Student's t-test)。TUNEL染色ではRFA直後には陽性細胞が認められず、2時間後の標本では、中心部に相当するH-E染色上の第1層、第2層の一部で陽性を示した。24時間以後の標本では辺縁部に相当する第3層、第4層までTUNEL陽性域が拡大した。辺縁部のTUNEL陽性率は経時的に上昇し(P<0.01,analysis of variance:ANOVA)、7日目には全ての細胞が陽性を示した。HIF-α染色では、FEA直後からH-E染色上の形態変化の見られる領域に一致して陽性を示していた。特に辺縁部第3層、第4層では陽性率が極めて高く、持続的な強い虚血状態にあることが判明した。生化学的検討では、辺縁部組織のDNA電気泳動で24時間後に初めて明瞭なDNA ladder formationが検出された。Caspase-3活性はRFA直後、2時間後では低値を示し、24時間後、3日後で著明な上昇を示していた。<結論>RFA後の焼灼部辺縁は、形態学的にも生化学的にもアポトーシスの条件を満たしていた。辺縁部におけるアポトーシス誘導と経時的形態変化観察の結果を総合的に判断すると、病理学的な治療効果範囲判定は24時間以後に行うのが確実な手法と考えられた。その際の判定には、煩雑な生化学的手法を用いなくともH-E染色のみで十分判定可能である。ただし、TUNEL染色を併用すれば一層精度の高い治療効果範囲判定が可能である。<方法>成犬9頭の肝臓に30W/6分間のRFAを計30回実施し、2時間後、24時間後、3日後、7日後に肝臓を摘出し、5頭は屠殺直前にRFAを追加した。アポトーシスの形態学的証明にはH-E染色の他、核の縮小化と核クロマチン濃縮を定量評価した。アポトーシスに特徴的な細胞萎縮は単位面積当たりの肝細胞数増加にて評価した。TUNEL免疫染色でDNA断片化を、虚血評価にはHIF-α染色を行った。生化学的検討としてDNA ladder formationを証明するためDNAを電気泳動し、Caspase-3活性を測定した。<結果>H-E染色上、焼灼部は層構造を呈し、直後から3日目までに3層から5層に変化した。焼灼部辺縁では細胞萎縮、核の縮小化と核クロマチン濃縮などの形態変化を認めた。定量評価では直後・2時問後・24時間後の肝細胞密度増加、核縮小化が有意であった(p<0.01)。核濃度は24時間後に有意な上昇を示した(p<0.01)。TUNEL染色では2時間後に第1・2層で陽性を示し、24時間以後は第3・4層まで陽性域が拡大した。辺縁部の陽性率は経時的に上昇し(p<0.01)、7日目に全ての細胞が陽性を示した。HIF-α染色では直後からH-E染色上の形態変化の見られる領域に一致して陽性を示し、第3・4層で陽性率が高かった。辺縁部のDNA電気泳動で24時間後に初めてDNA ladder formationが検出された。Caspase-3活性は直後、2時間後で低値を示し、24時間後、3日後で著明に上昇した。<結論>RFA後の焼灼部辺縁は形態学的・生化学的にアポトーシスの条件を満たしていた。辺縁部におけるアポトーシス誘導と経時的形態変化の結果から、病理学的効果判定は24時間以後に行うのが確実と考えられた。判定はH-E染色のみで可能であるが、TUNEL染色を併用すれば一層精度の高い効果判定が可能である。<研究結果>H-E染色上、ラジオ波凝固療法(以下:RFA)後の焼灼部は層構造を呈し、この層構造は直後から3日目までの間に3層から5層に変化していた。焼灼部辺縁では細胞萎縮、核の縮小化と核クロマチン濃縮などの形態変化が経時的に進行し、24時間以後の標本では周囲正常部と明瞭に区別されるようになった。定量評価ではRFA直後と2時間後、2時間後と24時間後の肝細胞密度増加、核縮小化が統計的に有意であった(P<0.01,Mann-Whitney U-test:細胞密度,Student's t-test:核サイズ)。核濃度は直後と比較して24時間後に統計学的有意な上昇を示した(p<0.01,Student's t-test)。 | KAKENHI-PROJECT-14770437 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14770437 |
肝腫瘍に対するラジオ波凝固療法の基礎的研究 | TUNEL染色ではRFA直後には陽性細胞が認められず、2時間後の標本では、中心部に相当するH-E染色上の第1層、第2層の一部で陽性を示した。24時間以後の標本では辺縁部に相当する第3層、第4層までTUNEL陽性域が拡大した。辺縁部のTUNEL陽性率は経時的に上昇し(P<0.01,analysis of variance:ANOVA)、7日目には全ての細胞が陽性を示した。HIF-α染色では、FEA直後からH-E染色上の形態変化の見られる領域に一致して陽性を示していた。特に辺縁部第3層、第4層では陽性率が極めて高く、持続的な強い虚血状態にあることが判明した。生化学的検討では、辺縁部組織のDNA電気泳動で24時間後に初めて明瞭なDNA ladder formationが検出された。Caspase-3活性はRFA直後、2時間後では低値を示し、24時間後、3日後で著明な上昇を示していた。<結論>RFA後の焼灼部辺縁は、形態学的にも生化学的にもアポトーシスの条件を満たしていた。辺縁部におけるアポトーシス誘導と経時的形態変化観察の結果を総合的に判断すると、病理学的な治療効果範囲判定は24時間以後に行うのが確実な手法と考えられた。その際の判定には、煩雑な生化学的手法を用いなくともH-E染色のみで十分判定可能である。ただし、TUNEL染色を併用すれば一層精度の高い治療効果範囲判定が可能である。 | KAKENHI-PROJECT-14770437 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14770437 |
インターグロウス構造のマルチモルフィズムと構造物性-水素吸蔵材料を中心に | 近年,Ni-H電池のRE(希土類)-Ni系負極材料はA2B7型(プロトタイプ:La2Ni7)であり,類似の構造を持つ2種類の物質が単位胞レベルで周期的に積層したブロック層(AB5およびA2B4ブロック)からなるインターグロウス(IG)構造をもつが,僅かな合金元素量の相違でブロック構造が全く異なるIG化合物が形成されることを見出した.特異なブロック構造を持つIG化合物の方が通常構造の化合物より優れた水素吸放出特性を示すことを発見するに至り,IG構造のブロック層の組み換えによりIG化合物の物性を大きく変え得るとの着想を得,可能な限り,異なる系の異なるブロック構造を有するIG化合物をSTEM原子直接観察,第一原理計算を駆使して,探索,発見し,ブロック組み換えを支配する因子,その支配因子により決定される組み換えブロック構造を解明し,その水素吸放出特性に及ぼすブロック組み換え効果を系統的に論じ,IG化合物のマルチモルフィズムと構造物性を明らかにすることを目的とする.本年度は,RE2Ni7型,RE5Ni19型化合物およびその中間組成化合物(RE2Ni7とRE5Ni19の組み合わせブロック構造を持つRE3Ni11型化合物で等Ni組成ラインに沿って種々のMg量を持つ試料)に集中して実験研究を行った(RE=La, Nd, Sm). RE5Ni19型合金では,予想できるRENi3型,RE2Ni7型,RE5Ni19型ブロック層に加えてRE3Ni11型ブロック層も含まれる場合が観察できたが,相と呼べるほど長周期性を持つ構造は発見することが出来なかった.STEM内元素分析によりブロック組み換えブロックは必ずMg量の多寡を含み,(RE,Mg)2Ni4ユニット層の収縮がブロック構造出現の最大の決定因子であると結論できる.近年,Ni-H電池のRE(希土類)-Ni系負極材料はA2B7型(プロトタイプ:La2Ni7)であり,類似の構造を持つ2種類の物質が単位胞レベルで周期的に積層したブロック層(AB5およびA2B4ブロック)からなるインターグロウス(IG)構造をもつが,僅かな合金元素量の相違でブロック構造が全く異なるIG化合物が形成されることを見出した.特異なブロック構造を持つIG化合物の方が通常構造の化合物より優れた水素吸放出特性を示すことを発見するに至り,IG構造のブロック層の組み換えによりIG化合物の物性を大きく変え得るとの着想を得,可能な限り,異なる系の異なるブロック構造を有するIG化合物をSTEM原子直接観察,第一原理計算を駆使して,探索,発見し,ブロック組み換えを支配する因子,その支配因子により決定される組み換えブロック構造を解明し,その水素吸放出特性に及ぼすブロック組み換え効果を系統的に論じ,IG化合物のマルチモルフィズムと構造物性を明らかにすることを目的とする.本年度はRE2Ni7型,RE5Ni19型化合物に集中して実験研究を行った(RE=La, Nd, Sm).ブロック組み換え構造の出現にはMgが優先占有することによる(RE,Mg)2Ni4ユニット層の収縮が重要な役割を果たしていると考えられ,Mg添加量だけでなく,REの原子半径やブロック構造の中のRENi5ユニット層の数も重要な変数である.Nd-Ni-Mg系およびSm-Ni-Mg系RE2Ni7型合金でブロック組み換えを伴うIG化合物が発見できた.RE5Ni19型合金でも何らかのブロック組み換えが起こるもののIG化合物としての相同定には至っていない.STEM内元素分析によりブロック組み換えブロックはわずかにMgを多く含むことが明らかとなった.また,STEM原子直接観察からIG化合物の結晶構造解析(空間群)に成功した.当初,IG化合物の発見はNd-Ni-Mg系RE2Ni7型合金だけに限られるかもしれないとの危惧があったが,Sm-Ni-Mg系RE2Ni7型合金でも見出され,Nd-Ni-Mg系およびSm-Ni-Mg系RE5Ni19型合金でも何らかのブロック組み換えが起こることが確かめられ,IG化合物のマルチモルフィズムも一般性を確かめることができた.RE2Ni7型合金でのブロック層の組み換えは,予想通りであったがRENi3型とRE5Ni19型ブロック層のインターグロウス構造であるが,RE5Ni19型合金では,予想できるRENi3型,RE2Ni7型,RE5Ni19型ブロック層に加えてRE3Ni11型ブロック層も含まれる場合が観察できており,RE2Ni7相とRE5Ni19相の組成の間に未知なる組成を持つ化合物が擬2元系で存在する可能性を大いに示唆するものである.また,ブロック相組み換えを伴うIG化合物については,可逆的に吸蔵・放出可能な水素量のサイクル変化に着目しつつ10サイクルまでの水素化特性の評価を行う予定であり.水素化でのユニット層レベルでの局所的な異方性弾性格子歪の蓄積と水素吸蔵特性の相関を得るべく,水素化その場X線回折による弾性歪評価ができるよう現有PCTの改造を行い,予備的な測定が行える状況にまで達している.近年,Ni-H電池のRE(希土類)-Ni系負極材料はA2B7型(プロトタイプ:La2Ni7)であり,類似の構造を持つ2種類の物質が単位胞レベルで周期的に積層したブロック層(AB5およびA2B4ブロック)からなるインターグロウス(IG)構造をもつが,僅かな合金元素量の相違でブロック構造が全く異なるIG化合物が形成されることを見出した. | KAKENHI-PROJECT-17K18987 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18987 |
インターグロウス構造のマルチモルフィズムと構造物性-水素吸蔵材料を中心に | 特異なブロック構造を持つIG化合物の方が通常構造の化合物より優れた水素吸放出特性を示すことを発見するに至り,IG構造のブロック層の組み換えによりIG化合物の物性を大きく変え得るとの着想を得,可能な限り,異なる系の異なるブロック構造を有するIG化合物をSTEM原子直接観察,第一原理計算を駆使して,探索,発見し,ブロック組み換えを支配する因子,その支配因子により決定される組み換えブロック構造を解明し,その水素吸放出特性に及ぼすブロック組み換え効果を系統的に論じ,IG化合物のマルチモルフィズムと構造物性を明らかにすることを目的とする.本年度は,RE2Ni7型,RE5Ni19型化合物およびその中間組成化合物(RE2Ni7とRE5Ni19の組み合わせブロック構造を持つRE3Ni11型化合物で等Ni組成ラインに沿って種々のMg量を持つ試料)に集中して実験研究を行った(RE=La, Nd, Sm). RE5Ni19型合金では,予想できるRENi3型,RE2Ni7型,RE5Ni19型ブロック層に加えてRE3Ni11型ブロック層も含まれる場合が観察できたが,相と呼べるほど長周期性を持つ構造は発見することが出来なかった.STEM内元素分析によりブロック組み換えブロックは必ずMg量の多寡を含み,(RE,Mg)2Ni4ユニット層の収縮がブロック構造出現の最大の決定因子であると結論できる.本年度はRE2Ni7型,RE5Ni19型化合物に集中して実験研究を行ったが,RE2Ni7型,RE5Ni19型化合物およびその中間組成化合物(例えばRE2Ni7とRE5Ni19の組み合わせブロック構造を持つRE3Ni11型化合物で等Ni組成ラインに沿って種々のMg量を持つ試料)の実験も開始しており,順次,IG化合物のマルチモルフィズムが検証できる状況にある.実験的に安定に存在するブロック組み換えIG化合物が複数検証できているため,計算によりこれを確かめ,更に可能なブロック組み換え構造の安定性の予測に繋げたい.具体的には,SQSモデルを用いて,上記の中間組成を有する合金系のIG化合物について全エネルギーをVASP計算により求め,予想できる可能なブロック組み換え構造の安定性を予測し,ブロック組み換え(マルチモルフィズム)を支配する因子,その支配因子により決定される組み換えブロック構造を解明する.これまですべて当初計画よりも順調に進展しており,特筆すべき研究計画の変更や研究遂行上の問題点はない.また,実験で求めた水素吸蔵特性と第一原理計算で求まる水素の安定格子位置及びそのエネルギーから水素吸放出特性に及ぼすブロック組み換え効果を系統的に論じ,IG化合物のマルチモルフィズムと構造物性を明らかにする.中華人民共和国西安交通大学材料科学科Z. Wu博士とA2B7型をはじめとするIG化合物系水素吸蔵合金の特性改善に関して継続的に議論を行っている.議論の成果を共同研究の証として国際専門雑誌(Science and Technology of Advanced Materials)に投稿,掲載した.さらにこのマルチモルフィズムという新規概念に従った特性改善手法についての共同研究も進展している.中華人民共和国西安交通大学材料科学科Z.Wu博士とA2B7型水素吸蔵合金の特性改善に関して継続的に議論を行っている.これまでの議論の成果を共同研究の証として国際専門雑誌(International Journal of Hydrogen Energy)に投稿,掲載した.さらにこのマルチモルフィズムという新規概念に従った特性改善手法についても共同研究を開始し,概念の共有化など着実に研究を進めている. | KAKENHI-PROJECT-17K18987 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18987 |
有機テルル化合物を用いる新しい有機合成反応の研究 | 1.4価のTe化合物を用いる反応:i)アリールテルリン酸無水物を用いオレフィンヘテルル官能基を導入する反応を開発した。即ちアルコール、酢酸など水酸基を持つ化合物共存下のオキシテルリニル化、カルバミン酸エステル共存下のアミノテルリニル化、およびアルキルあるいはアラルキルニトリル共存下のアミドテルリニル化が位置および立体選択的に収率よく進行する事を発見した。これらの反応は分子間のみならず分子内の5ー7員のエーテル環、窒素環化合物の合成にも有効に利用できる。さらに後二者の反応を高温で行なうと、導入したPhTe(O)基が分子内S_N2置換され、それぞれ2ーオキサゾリジノンおよび2ーオキサゾリジン環を生じる。これらはオレフィンから、one-potで上記の重要なヘテロ環化合物を位置および立体選択的に得る優れた反応である。ii) (P-CH_3OC_6H_4)Teを電子担体として用いるチオアミドの電解酸化について研究し支持塩、溶媒など反応条件により活性種が変化し、ニトリルまたは1,2,4ーチアジアゾールが選択的に得られる事を発見した。iii) BF_3・O(C_2H_5)_2存在下アリルシランと上記テルリニル化剤と反応させアミンと処理すると極性反転生成物に相当するアリルアミンが得られる事を発見した。iv) Te(II)化合物のTe(IV)化合物への容易な変換とハロゲン親和性を利用した新規シクロプロパン化およびアルキリデン化反応を開発した。2.PhTeHの還元能と反応性について研究し基質特異性と反応の機構を明らかにした。ZnI_2触媒存在下アセタールは収率よくエーテルに還元され、アルデヒド、ケトンはアルキルまたはベンジルTMSエーテルと反応してエーテルを与える。3.極めて求核性が高く、やわらかいTe塩基を含む複合反応剤PhTeABu^i_2について研究し、α、βー不飽和カルボニル化合物への1,4ー付加、生成するAlエノラートのアルドール縮合、テルロキシド脱離を経てαー置換ーα、βー不飽和カルボニル化合物を得る反応を開発した。1.4価のTe化合物を用いる反応:i)アリールテルリン酸無水物を用いオレフィンヘテルル官能基を導入する反応を開発した。即ちアルコール、酢酸など水酸基を持つ化合物共存下のオキシテルリニル化、カルバミン酸エステル共存下のアミノテルリニル化、およびアルキルあるいはアラルキルニトリル共存下のアミドテルリニル化が位置および立体選択的に収率よく進行する事を発見した。これらの反応は分子間のみならず分子内の5ー7員のエーテル環、窒素環化合物の合成にも有効に利用できる。さらに後二者の反応を高温で行なうと、導入したPhTe(O)基が分子内S_N2置換され、それぞれ2ーオキサゾリジノンおよび2ーオキサゾリジン環を生じる。これらはオレフィンから、one-potで上記の重要なヘテロ環化合物を位置および立体選択的に得る優れた反応である。ii) (P-CH_3OC_6H_4)Teを電子担体として用いるチオアミドの電解酸化について研究し支持塩、溶媒など反応条件により活性種が変化し、ニトリルまたは1,2,4ーチアジアゾールが選択的に得られる事を発見した。iii) BF_3・O(C_2H_5)_2存在下アリルシランと上記テルリニル化剤と反応させアミンと処理すると極性反転生成物に相当するアリルアミンが得られる事を発見した。iv) Te(II)化合物のTe(IV)化合物への容易な変換とハロゲン親和性を利用した新規シクロプロパン化およびアルキリデン化反応を開発した。2.PhTeHの還元能と反応性について研究し基質特異性と反応の機構を明らかにした。ZnI_2触媒存在下アセタールは収率よくエーテルに還元され、アルデヒド、ケトンはアルキルまたはベンジルTMSエーテルと反応してエーテルを与える。3.極めて求核性が高く、やわらかいTe塩基を含む複合反応剤PhTeABu^i_2について研究し、α、βー不飽和カルボニル化合物への1,4ー付加、生成するAlエノラートのアルドール縮合、テルロキシド脱離を経てαー置換ーα、βー不飽和カルボニル化合物を得る反応を開発した。1.酸化反応についてはアリールテルリン酸無水物(混合酸無水物を含む)による種々の新反応を開発した.酢酸中オレフィンと反応させるとアセトキシテルリニル化が起こる.ここでフェニルテルリニル基は求電種としてMarkovnikov則に従うトランス付加を起こす.反応はBF_3Et_2O等Lewis酸により促進される.分子内の適当な位置にOH基を持つオレフィンは同じ反応条件下閉環し環状エーテルを与える.反応系中にアルコール,カルバミン酸エステル等求核性反応剤が共存すると,それらが酢酸の代りに付加するオキシあるいはアミノテルリニル化反応を発見した.反応生成物は還元しテルリドとして単離する.アミノテルル化反応を高温で行なうと更に分子内S_N2閉環が起こりTe基が脱離し2_-オキサゾリドンが生じる.この新反応によりオレフィンから1 potかつnetーcis付加で2_-オキサゾリジノン誘導体を高収率で合成できる.酢酸の代りにCF_3CO_2H,CF_3SO_3Hなどを用いると著しく反応性が高まり,特に後者では触媒が不要である. | KAKENHI-PROJECT-62470023 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62470023 |
有機テルル化合物を用いる新しい有機合成反応の研究 | 同じ反応条件下ニトリルを溶媒として用いるとRitter反応類似のアミドテルリニル化が起こりアミドを生じることを発見した.この場合も反応温度を上げると分子内S_N2反応が起こり, 2_-オキサゾリン環が得られる.つまりオレフィンから1 potかつ選択的に2_-オキサゾリン誘導体を合成できる新反応を開発した.2.hardーsoft反応剤としてフェニルテルロスタナン(PhTeSnBu_3)について研究した.ケイ素類似体に比べかなり安定で取扱いやすいがやや反応性が低い.しかし触媒等反応条件の選択による類似の反応性が発現することを明らかにした.3.ベンゼンテルロールの還元反応については詳細に研究し官能基選択性と1電子移動により進行する反応であることを明らかにした.4.PhTeTePhとI_2から容易に得られるベンゼンヨウ化テルレニルの反応について研究した.5.不斉合成反応へのTe化合物の利用についても研究を開始した.1.高い酸化数のTeを含む有機化合物を利用する合成反応:(1)CH_3CN中BF_3・(C_2H_5)_2O存在下PhTe(O)OCOCF_3(I)とオレフィンを反応させることによりアミドテルル化反応を開発した。この反応は我々が先に発見したアルコールあるいはカルバメートとLewis酸触媒存在下Iおよび類似のテルリニル試薬とオレフィンとのオキシテルル化、アミノテルル化と類似の新反応でありRitter反応とも関連が深い。反応はMarkovnikov則に従って室温で進行し、最初生成するエピオキシテルロニウムイオンにCH_3CNがNで求核攻撃しイミノール誘導体を生じ、環元、加水分解後ケト化してβーフェニルテルロアセトアミドを与えると考えられる。反応を高温(6570°C)で行なうと更にアミドのO原子によるPhTe=O基の分子内S_N2置換が起こり2ーオキサゾリン誘導体が生じることを発見した。反応は極めて高い立体選択性をもって進行し見かけ上二重結合にシス付加が起こり2ーオキサゾリン環が形成される。CH_3CN以外のアルキルおよびアリールニトリルも同様に反応する。本反応はオレフィンからone-potで2ーオキサゾリン誘導体を合成する優れた方法である。(2)(p-CH_3OC_6H_4)ー_2Teをmediatorとして用いるチオアミドの電解酸化について研究し、溶媒等反応条件により選択的にニトリルあるいはチアジアゾール誘導体が得られる事を発見し、Te(IV)化合物を含む反応機構を明らかにした。(3)BF_3・(C_2H_5)_2O存在下上記テルリニル化剤とアリルシランとの反応後アミンと処理する事により、極性反転に相当する反応を経てアリルアミンが得られる事を発見した。(4)Te(II)のTe(IV)への容易な変換とハロゲン親和性を利用した新規縮合反応を開発した。2.含Te酸塩基復合反応剤としてi-Bu_2AlTePhが穏和な条件下α、βー不飽和カルボニル化合物に付加する事を発見した。この反応とAldo縮合、テルロキシド脱離を組合せてαー置換ーα、βー不飽和カルボニル化合物を合成する反応を開発した。 | KAKENHI-PROJECT-62470023 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62470023 |
小学校高学年児童のストレス対処力とソーシャルサポートの互恵性および活用との関連 | 本研究では、小学校高学年児童のストレス対処力(SOC)とソーシャルサポートの互恵性ならびに活用との関連を検証することを目的とした。一連の研究を通して、1年間の児童のストレス対処力の向上には1学期と3学期における友人との互恵的なソーシャルサポートの授受が関連していること、また、児童の適応的なストレス対処の過程において、ストレス対処力のレベルによって対処時に活用されるソーシャルサポートに違いがあることが明らかになった。本研究の目的は2点あり、1点目は小学校高学年児童のストレス対処力(Sense of Coherence: SOC)の変動と友人間におけるソーシャルサポート授受のバランスとの関連を明らかにすること、2点目は小学校高学年児童のストレス対処力(以下SOC)のレベルとストレス対処の過程において活用したソーシャルサポートとの関連を明らかにすることである。そこで平成27年度は、小学校高学年児童を対象として、児童のSOCと友人間におけるソーシャルサポートの授受に関する縦断調査、ならびに、児童のSOCとストレス対処の過程において活用したソーシャルサポートに関する横断調査を実施した。縦断調査については、関東地方A県B市の公立小学校4校に通う46年生児童938名を対象とし、無記名自記式の質問紙を用いた調査を13学期の各学期に1回ずつ合計3回実施した。各回の調査では、属性、SOC、友人の属性、友人から受領したソーシャルサポート、友人に提供したソーシャルサポート、健康状態について回答を得た。また横断調査については、同じく前述の児童938名を対象として無記名自記式の質問紙を用いた調査を3学期に実施し、属性、SOC、ストレッサー、ストレッサーの影響性およびコントロール可能性、受領したソーシャルサポートの源と内容、ストレス対処方略、健康状態について回答を得た。今後は各調査で得たデータの解析を進め、小学校高学年児童の心身の健康を維持増進するうえで重要なストレス対処力(SOC)について、SOCレベルの変動と友人間におけるソーシャルサポートの互恵性との関連、ならびに、SOCレベルとストレス対処の過程におけるソーシャルサポートの活用との関連を児童の健康状態をふまえて検証する。平成27年度内の遂行を計画した「小学校高学年児童のSOCレベルの変動と友人間におけるソーシャルサポートの互恵性に関する研究」については、標本の抽出を経て縦断調査を実施し、データの収集と整理を進めた。データの解析を終えることができなかった点で進行に若干の遅れが生じている。他方で、平成28年度内の遂行を計画している「小学校高学年児童のSOCレベルとストレス対処の過程におけるソーシャルサポートの活用に関する研究」については、標本の抽出を経てすでに平成27年度内に横断調査を実施し、当初の計画以上に進展している。これら各研究の進捗状況から、一連の本研究はおおむね順調に進展していると判断する。最終年度は、前年度に実施した縦断調査および横断調査によって得られたデータの解析を進め、以下の知見を得た。まず、高学年児童における1年間のストレス対処力(Sense of Coherence: SOC)の変動と友人間のソーシャルサポート授受のバランスとの関連について、児童のSOCは1学期よりも2学期さらに3学期にかけて高くなる一方で、1学期時点での友人とのサポート授受のバランスは児童の2学期と3学期のSOCに影響を及ぼさないことが示された。他方で、1学期と3学期において友人と互恵的なサポートの授受を行っている児童は、友人に提供するサポートが友人から受領するサポートよりも多い児童に比べて1学期と3学期のSOCがそれぞれ高いことが認められた。また、高学年児童のSOCのレベルとストレス対処の過程で受領したソーシャルサポートとの関連について、高レベル群では父親と先生から、低レベル群ではきょうだいと友人からのサポートをそれぞれ豊富に受領している児童ほど精神的な健康状態が良好であることが示された。さらに両群に共通して、影響度が大きく統制の可能性が高いと認知しているストレッサーを抱える児童は、影響度が小さいと認知しているストレッサーを抱える児童よりも、解決に向けた対処行動や原因を探る対処行動をとりやすいこと、高レベル群ではさらに、周囲の者に助言や協力を求める対処行動をとりやすいことが認められた。以上のとおり本研究では、小学校高学年児童のストレス対処力(SOC)の向上には1学期と3学期に友人と互恵的なソーシャルサポートを授受できることが重要であること、また、ストレス対処の過程では、児童におけるストレッサーの影響の大きさと統制感の高さが解決に向けた対処行動を促す一方で、ストレス対処力(SOC)のレベルによって対処時に活用するソーシャルサポートの源に違いがあることを明らかにした。本研究では、小学校高学年児童のストレス対処力(SOC)とソーシャルサポートの互恵性ならびに活用との関連を検証することを目的とした。一連の研究を通して、1年間の児童のストレス対処力の向上には1学期と3学期における友人との互恵的なソーシャルサポートの授受が関連していること、また、児童の適応的なストレス対処の過程において、ストレス対処力のレベルによって対処時に活用されるソーシャルサポートに違いがあることが明らかになった。平成28年度は、まず「小学校高学年児童のSOCレベルの変動と友人間におけるソーシャルサポートの互恵性に関する研究」については、平成27年度に収集・整理したデータの解析を進めて検証し成果を報告する。また、平成28年度内の遂行を計画している「小学校高学年児童のSOCレベルとストレス対処の過程におけるソーシャルサポートの活用に関する研究」についても、データの解析を進めて検証し成果を報告する予定である。両研究の成果をふまえ、小学校高学年児童のストレス対処力(SOC)の安定化とストレス対処の過程における機能について、ソーシャルサポートの授受との関係から具体的な提言を導き、本研究を計画どおりに遂行する見込みである。健康社会学 | KAKENHI-PROJECT-15K21341 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K21341 |
負荷依存的なCa2+シグナルが骨格筋肥大・サルコペニアに与える影響 | 超高齢社会である日本において、加齢による骨格筋量・筋力の低下(サルコペニア)は喫緊の社会的・医学的課題である。本研究では、申請者が開拓してきた"負荷依存的なCa2+シグナルの活性化による筋肥大促進機構"に着目する。そして、この分子機構の破綻がサルコペニアを誘引するという仮説を検証し、サルコペニアに対する創薬技術基盤を構築する。具体的には、負荷依存的なCa2+シグナルが筋肥大促進因子mTORを活性化する分子機構、mTORと協調して活性化される負荷/Ca2+シグナル依存的な遺伝子発現ネットワーク、Ca2+シグナルの機能不全/改善がサルコペニアに与える影響、の3つを解析する。超高齢社会である日本において、加齢による骨格筋量・筋力の低下(サルコペニア)は喫緊の社会的・医学的課題である。本研究では、申請者が開拓してきた"負荷依存的なCa2+シグナルの活性化による筋肥大促進機構"に着目する。そして、この分子機構の破綻がサルコペニアを誘引するという仮説を検証し、サルコペニアに対する創薬技術基盤を構築する。具体的には、負荷依存的なCa2+シグナルが筋肥大促進因子mTORを活性化する分子機構、mTORと協調して活性化される負荷/Ca2+シグナル依存的な遺伝子発現ネットワーク、Ca2+シグナルの機能不全/改善がサルコペニアに与える影響、の3つを解析する。 | KAKENHI-PROJECT-19K24306 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K24306 |
「士大夫」阪口五峰からみる明治漢詩 | 本研究は、明治漢詩人阪口五峰の漢詩文集『五峰遺稿』から知られる五峰を中心とする人物関係に着目し、彼らに関連する資料の悉皆調査を目指している。本年度の研究成果の主要なものは、以下の通りである。(一)阪口五峰と小野湖山に関する「贈答詩」の調査:1、国立国会図書館、五先賢の館等での資料調査イ『小野湖山翁小傳』、ロ『名家長寿實歴談』、ハ『湖山楼十種』、ニ『湖山近稿』続集、ホ『賜研楼詩』巻一巻五、ヘ『湖山老後詩』2、『湖山老後詩』の下、「雙龍園詩」と題する五言律詩四首を発見した。(二)阪口五峰と鱸(鈴木)松塘に関する「贈答詩」の調査:1、国立国会図書館、新潟県立図書館等での資料調査イ『松塘小稿』、ロ『松塘詩鈔』、ハ『房山楼詩』、ニ『房山楼集』、ホ『超海集』、ヘ『房山楼集別集』、ト『房山楼集遺集』、チ『松塘釣閣七十寿詞』、リ『快説続々記』2、『房山楼集遺集』巻二の中、「酬五峯詞宗見贈次其韻」と題する七言律詩二首を発見した。阪口五峰と小野湖山に関する「贈答詩」、阪口五峰と鱸(鈴木)松塘に関する「贈答詩」の調査は順調に進展している。ただし、小野湖山から阪口五峰宛の詩作はまだ発見していない。本研究は、明治漢詩人阪口五峰の漢詩文集『五峰遺稿』から知られる五峰を中心とする人物関係に着目し、彼らに関連する資料の悉皆調査を目指している。本年度、新たな文献資料を得ることができ、これにより、(一)阪口五峰と鱸(鈴木)松塘に関する「贈答詩」、(二)阪口五峰と小野湖山に関する「贈答詩」(継続調査)、更に(三)阪口五峰と日下部鳴鶴に関する「贈答詩」、(四)阪口五峰と巖谷一六に関する「贈答詩」の調査も進めていきたいと考えている。今後の研究については、以上の4点を中心に行う。研究の進捗状況から順次、論文や口頭発表のかたちで成果を公表する。本研究は、明治漢詩人阪口五峰の漢詩文集『五峰遺稿』から知られる五峰を中心とする人物関係に着目し、彼らに関連する資料の悉皆調査を目指している。本年度の研究成果の主要なものは、以下の通りである。(一)阪口五峰と尾崎行雄に関する「贈答詩」の調査:1、国立国会図書館での資料調査2、神奈川県相模原市にある尾崎咢堂記念館、三重県伊勢市にある尾崎咢堂記念館で訪問調査を実施した。3、相模原市立博物館で寄贈された資料文献900点を調査した。4、「尾崎行雄を全国に発信する会」の方々にインタビューをし、同会及び相模原市立博物館に資料・文献に関する情報提供を求めており、継続して調査中である。(二)阪口五峰と吉田東伍に関する「贈答詩」の調査:1、新潟県立図書館での資料調査2、吉田東伍記念博物館、及び吉田文庫で資料調査を実施した。しかし、該当する文献が見つかっていないが、阪口五峰と吉田東伍との書簡(3通)や年賀状(2枚)などの資料文献の撮影ができた。特に年賀状の2枚の中の1枚にて、阪口五峰の漢詩2首(七言絶句)が新たに判明した(『五峰遺稿』に未収録)。3、吉田東伍『松雲詩草』の目次を整理し、『新潟県文人研究』第20号に論文を寄稿した。4、吉田東伍が阪口五峰に添削を依頼した漢詩集原稿という先行文献があり、継続して調査中である。一、当初計画段階では、把握していなかった所蔵機関(相模原市立博物館と吉田文庫)と新しい阪口五峰の漢詩2首の確認ができた。二、阪口五峰と尾崎行雄に関する「贈答詩」の調査が未完だが、二人の漢詩による交流を確認することができたし、阪口五峰は『咢堂詩存』(一部分)の評者になっていることを確認できた。三、阪口五峰と吉田東伍との交流は、書簡や年賀状にとどまらず、吉田東伍から阪口五峰に漢詩集の添削を依頼したことが新たに分かってきた。本研究は、明治漢詩人阪口五峰の漢詩文集『五峰遺稿』から知られる五峰を中心とする人物関係に着目し、彼らに関連する資料の悉皆調査を目指している。本年度の研究成果の主要なものは、以下の通りである。(一)阪口五峰と小野湖山に関する「贈答詩」の調査:1、国立国会図書館、五先賢の館等での資料調査イ『小野湖山翁小傳』、ロ『名家長寿實歴談』、ハ『湖山楼十種』、ニ『湖山近稿』続集、ホ『賜研楼詩』巻一巻五、ヘ『湖山老後詩』2、『湖山老後詩』の下、「雙龍園詩」と題する五言律詩四首を発見した。(二)阪口五峰と鱸(鈴木)松塘に関する「贈答詩」の調査:1、国立国会図書館、新潟県立図書館等での資料調査 | KAKENHI-PROJECT-17K13383 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K13383 |
「士大夫」阪口五峰からみる明治漢詩 | イ『松塘小稿』、ロ『松塘詩鈔』、ハ『房山楼詩』、ニ『房山楼集』、ホ『超海集』、ヘ『房山楼集別集』、ト『房山楼集遺集』、チ『松塘釣閣七十寿詞』、リ『快説続々記』2、『房山楼集遺集』巻二の中、「酬五峯詞宗見贈次其韻」と題する七言律詩二首を発見した。阪口五峰と小野湖山に関する「贈答詩」、阪口五峰と鱸(鈴木)松塘に関する「贈答詩」の調査は順調に進展している。ただし、小野湖山から阪口五峰宛の詩作はまだ発見していない。本研究は、明治漢詩人阪口五峰の漢詩文集『五峰遺稿』から知られる五峰を中心とする人物関係に着目し、彼らに関連する資料の悉皆調査を目指している。本年度、新たな所蔵機関や文献資料を得ることができ、これにより、(一)阪口五峰と尾崎行雄に関する「贈答詩」、(二)阪口五峰と吉田東伍に関する「贈答詩」の未完調査は継続し、更に(三)阪口五峰と小野湖山に関する「贈答詩」、(四)阪口五峰と鱸松塘に関する「贈答詩」の調査も進めていきたいと考えている。今後の研究については、以上の4点を中心に行う。研究の進捗状況から順次、論文や口頭発表のかたちで成果を公表する。本研究は、明治漢詩人阪口五峰の漢詩文集『五峰遺稿』から知られる五峰を中心とする人物関係に着目し、彼らに関連する資料の悉皆調査を目指している。本年度、新たな文献資料を得ることができ、これにより、(一)阪口五峰と鱸(鈴木)松塘に関する「贈答詩」、(二)阪口五峰と小野湖山に関する「贈答詩」(継続調査)、更に(三)阪口五峰と日下部鳴鶴に関する「贈答詩」、(四)阪口五峰と巖谷一六に関する「贈答詩」の調査も進めていきたいと考えている。今後の研究については、以上の4点を中心に行う。研究の進捗状況から順次、論文や口頭発表のかたちで成果を公表する。次年度使用額が生じた理由:本年度の計画を効率よく実施し、本来二泊三日の調査旅行を一泊二日にしたためである。使用計画:本年度、当初計画段階では、把握していなかった所蔵機関のことが分かってきたため、新たな所蔵機関や文献資料を得ることができ、これにより、次年度に下記のような調査旅行:(一)相模原市立博物館の継続調査:阪口五峰と尾崎行雄に関する「贈答詩」、(二)吉田文庫の継続調査:阪口五峰と吉田東伍に関する「贈答詩」の調査も進めていきたいと考えている。 | KAKENHI-PROJECT-17K13383 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K13383 |
ジャトロファ種子に含まれるカテコール型リグナン・ネオリグナンの抗癌活性 | 1.ジャトロファ種子に含まれるネオリグナンのイソアメリカノールAを使用することでヒト乳がん細胞のMCF7とヒト乳腺細胞MCF10Aの通常細胞での増殖抑制効果を比較した。その結果、イソアメリカノールAでの癌細胞増殖抑制効果の特異性が示された。2.これまでイソアメリカノールAでの長期効果によってMCF7では細胞周期G2/Mアレストを誘導し、フローサイトメトリー法にてイソアメリカノールAでの短期作用においてもMCF7細胞においてG2/Mアレストを誘導することを明らかにした。3.マイクロアレー法による細胞分裂の中期に関与することが示唆されており、蛍光免疫染色法にて染色体と微小管結合に関与するオーロラB遺伝子を指標に短期イソアメリカノールAによるMCF7細胞での細胞分裂異常(モノポーラースピンドル形成)を明らかにした。4.イソアメリカノールA作用がもたらす乳癌で注目されるエストロゲンレセプターalphaとbetaの発現を調べることで、エストロゲンレセプターalpha / betaの発現比が減少することを明らかとした。5.ジャトロファ種子には抗癌作用を持つイソアメリカノールAの他に腫瘍形成を促進する活性を持つことで知られているホルボールも含まれることが知られており、ヒト子宮頸癌Hela細胞においてイソアメリカノールAのもたらす効果をマイクロアレー法にて調査したところ、ホルボールエステルのレセプターであるProtein Kinase C betaの発現を減少させることを明らかとした。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。1.カテコール型リグナン・ネオリグナン類の化学合成:カフェ酸エチルを無水THF中でDIBAL-Hによって還元し、カフェイルアルコールを得た。これをアセトン-トルエン中で炭酸銀により脱水素重合させ、イソアメリカノールAを得た。2.カテコール型リグナン・ネオリグナン類の分離・精製:カテコール型リグナン・ネオリグナン類の化学合成が予定通りに進まない場合に備えて、ジャトロファ種子からの分離・精製を行った。ジャトロファ種子は、ソックスレー抽出器を用いて、ヘキサン、酢酸エチル、メタノールによる逐次抽出を行った。メタノール抽出画分は、二層分配し、各種クロマトグラフィーにより分離・精製を行い、8種類のカテコール型リグナン・ネオリグナンを単離・同定した。3.抗酸化作用と抗癌作用:ジャトロファ種子でソックスレー法の抽出や二層分配を行い、最終的にメタノール抽出法と酢酸エチル抽出法でそれぞれさらに有機層と水層の4区画に分けた。その4区画からポリフェノール量を調べるためにFolin-Ciocalteu法を行い、また抗酸化作用を調べるためにthe 1,1-diphenyl-2-picryl-hydrazyl (DPPH) radical scavenging法を行った。また更に、その4区画をHuH-7(ヒト肝癌細胞)やMCF-7(ヒト乳癌細胞)に添加し、それぞれの抗癌作用について調べ、その4区画すべてにおいて濃度依存的な癌細胞増殖抑制効果があることを明らかにした。さらにポリフェノール量と抗酸化作用の特に高かったメタノール抽出有機層に含まれるイソアメリカノールAのMCF-7での高濃度での特異的増殖抑制効果、またHela(ヒト子宮頸癌細胞)における低濃度での特異的増殖抑制効果を明らかとし、論文投稿した(Natural Product Communications, 2017)。おおむね、順調に進展している。1.ジャトロファ種子に含まれるネオリグナンのイソアメリカノールAを使用することでヒト乳がん細胞のMCF7とヒト乳腺細胞MCF10Aの通常細胞での増殖抑制効果を比較した。その結果、イソアメリカノールAでの癌細胞増殖抑制効果の特異性が示された。2.これまでイソアメリカノールAでの長期効果によってMCF7では細胞周期G2/Mアレストを誘導し、フローサイトメトリー法にてイソアメリカノールAでの短期作用においてもMCF7細胞においてG2/Mアレストを誘導することを明らかにした。3.マイクロアレー法による細胞分裂の中期に関与することが示唆されており、蛍光免疫染色法にて染色体と微小管結合に関与するオーロラB遺伝子を指標に短期イソアメリカノールAによるMCF7細胞での細胞分裂異常(モノポーラースピンドル形成)を明らかにした。4.イソアメリカノールA作用がもたらす乳癌で注目されるエストロゲンレセプターalphaとbetaの発現を調べることで、エストロゲンレセプターalpha / betaの発現比が減少することを明らかとした。5.ジャトロファ種子には抗癌作用を持つイソアメリカノールAの他に腫瘍形成を促進する活性を持つことで知られているホルボールも含まれることが知られており、ヒト子宮頸癌Hela細胞においてイソアメリカノールAのもたらす効果をマイクロアレー法にて調査したところ、ホルボールエステルのレセプターであるProtein Kinase C betaの発現を減少させることを明らかとした。これまでの実験でイソアメリカノールAによるヒト乳癌細胞(MCF-7とMDA-MB-231)、ヒト肝癌細胞(HuH-7)、ヒト子宮頸癌(HeLa)の増殖抑制効果について検証し、その方法は確立している。3,3'-ビスデメチルピノレジノール、アメリカノールA、イソプリンセピン、プリンセピンなどのカテコール型リグナン・ネオリグナン類を同様の方法にて行い、増殖抑制効果は、cell counting kit (wako)を用いて検証する。また、イソアメリカノールAによるヒト子宮頸癌(HeLa)への細胞増殖抑制メカニズムの解明をする。イソアメリカノールAで処理、及びコントロールのHeLa細胞をタネル染色し、アポトーシス誘導作用を分析する。 | KAKENHI-PROJECT-17H06914 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H06914 |
ジャトロファ種子に含まれるカテコール型リグナン・ネオリグナンの抗癌活性 | それら2つの細胞をホルムアルデヒドで固定したのち、ヨウ化プロピジウムで染色し、フローサイトメトリー分析にてイソアメリカノールAがHeLa細胞に対する細胞周期アレスト作用を調べる。さらに、イソアメリカノールAで処理、及びコントロールのHeLa細胞を回収し、マイクロアレイ解析・分析を行う。そして、マイクロアレイ結果から、イソアメリカノールA処理によって細胞に2倍以上発現が増加した因子、また半分以下に減少した因子に焦点をあて、ウェスタンブロット法やリアルタイムPCR法でタンパク質や遺伝子レベルでの発現比較を確認する。最終的に、選択した増殖抑制が最も高かったカテコール型リグナン・ネオリグナンで最も増殖抑制効果を示したヒト癌細胞を用い、タネル染色、フローサイトメトリー分析、マイクロアレイ分析、ウェスタンブロット法やリアルタイムPCR法を行う。カテコール型リグナン・ネオリグナンの抗癌メカニズムを明らかにする。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-17H06914 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H06914 |
メディア上にみられるクローン病に関する医療情報の質の評価 | クローン病とは全消化管に炎症性の潰瘍が生じる難病である.治療に際しては,医療提供者(医師など)から患者へクローン病の実態や治療法などの医療情報の提供を行う.その一方で,患者は自分自身でもメディアから医療情報を直接取り込んでいる.このようなメディア上の医療情報には科学的根拠を欠くものや個別具体的には適用できない治療法などがあり,実際の医療現場で混乱を来たすことがある.そこで,専門的観点からみたメディア上におけるクローン病に関する医療情報の検証が必要と考えた.本研究ではメディアとして新聞をとりあげてクローン病に関する新聞記事の検索を行い,メディアを通じて大衆へ直接提供されるクローン病に関する医療情報の実態を明らかにする.さらにその医療情報の質の評価を行い,クローン病に関する医療情報が適切に報道されているかの検証を行う.平成30年度は研究対象紙として読売新聞,朝日新聞,毎日新聞をとりあげ,各々の新聞記事検索ソフトであるヨミダス歴史館,聞蔵II,毎索を用いてクローン病に関する新聞記事を検索した.まず各々の新聞記事検索ソフトにて可及的長期間の検索を行ったが,古い記事は件数も少ないうえに内容も乏しく,今日的な医療情報の評価としては直近の20年間程度の検索期間で必要十分なことが明らかとなった.そのため検索期間は1999年1月1日から2018年12月31日の20年間とした.また検索キーワードとして「クローン病」,「Crohn's disease」,その略号である「CD」,また「炎症性腸疾患」,「Inflammatory Bowel Disease」,その略号である「IBD」などを用いて検索を試み比較検討を行ったが,研究対象記事件数の確保,研究目的に合致した記事の正確な抽出の観点からみても,検索キーワードは「クローン病」で十分であることが明らかになった.平成30年度では研究対象となる新聞記事の概略の確認を目的として研究を遂行した.対象とした新聞は読売新聞,朝日新聞,毎日新聞である.各紙独自の新聞記事データベースを用いて,検索期間を1999年1月1日から2018年12月31日の20年間,検索キーワードを「クローン病」として検索した.検索の概略を各紙別に示す.1.読売:ヨミダス歴史館244件,2.朝日:聞蔵IIfor libraries 292件,3.毎日:毎索49件上記の検索によって,新聞記事データベースの検索過程の評価,検索期間の決定,検索キーワードの選定を行った.しかし,検索記事数が多かったために当初の研究計画にて予定していた全記事の精査が終了せず,類型化の条件の決定が完了しなかったことから,研究対象とする記事の確定に至らなかった.平成30年度では研究対象となる新聞記事の概略の確認を目的として研究を遂行した.対象とした新聞は読売新聞,朝日新聞,毎日新聞である.各紙独自の新聞記事データベースを用いて,検索期間を1999年1月1日から2018年12月31日の20年間,検索キーワードを「クローン病」として検索した.検索記事数を各紙別に示す.1.読売:ヨミダス歴史館244件,2.朝日:聞蔵IIfor libraries 292件,3.毎日:毎索49件上記の検索によって,新聞記事データベースの検索過程の評価,検索期間の決定,検索キーワードの選定を行った.しかし,検索記事数が多かったために当初の研究計画にて予定していた全記事の精査が終了せず,類型化の条件の決定が完了しなかったことから,研究対象とする記事の確定に至らなかった.クローン病とは全消化管に炎症性の潰瘍が生じる難病である.治療に際しては,医療提供者(医師など)から患者へクローン病の実態や治療法などの医療情報の提供を行う.その一方で,患者は自分自身でもメディアから医療情報を直接取り込んでいる.このようなメディア上の医療情報には科学的根拠を欠くものや個別具体的には適用できない治療法などがあり,実際の医療現場で混乱を来たすことがある.そこで,専門的観点からみたメディア上におけるクローン病に関する医療情報の検証が必要と考えた.本研究ではメディアとして新聞をとりあげてクローン病に関する新聞記事の検索を行い,メディアを通じて大衆へ直接提供されるクローン病に関する医療情報の実態を明らかにする.さらにその医療情報の質の評価を行い,クローン病に関する医療情報が適切に報道されているかの検証を行う.平成30年度は研究対象紙として読売新聞,朝日新聞,毎日新聞をとりあげ,各々の新聞記事検索ソフトであるヨミダス歴史館,聞蔵II,毎索を用いてクローン病に関する新聞記事を検索した.まず各々の新聞記事検索ソフトにて可及的長期間の検索を行ったが,古い記事は件数も少ないうえに内容も乏しく,今日的な医療情報の評価としては直近の20年間程度の検索期間で必要十分なことが明らかとなった.そのため検索期間は1999年1月1日から2018年12月31日の20年間とした.また検索キーワードとして「クローン病」,「Crohn's disease」,その略号である「CD」,また「炎症性腸疾患」,「Inflammatory Bowel Disease」,その略号である「IBD」などを用いて検索を試み比較検討を行ったが,研究対象記事件数の確保,研究目的に合致した記事の正確な抽出の観点からみても,検索キーワードは「クローン病」で十分であることが明らかになった.平成30年度では研究対象となる新聞記事の概略の確認を目的として研究を遂行した.対象とした新聞は読売新聞,朝日新聞,毎日新聞である.各紙独自の新聞記事データベースを用いて,検索期間を1999年1月1日から2018年12月31日の20年間,検索キーワードを「クローン病」として検索した.検索の概略を各紙別に示す | KAKENHI-PROJECT-18K11980 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K11980 |
メディア上にみられるクローン病に関する医療情報の質の評価 | .1.読売:ヨミダス歴史館244件,2.朝日:聞蔵IIfor libraries 292件,3.毎日:毎索49件上記の検索によって,新聞記事データベースの検索過程の評価,検索期間の決定,検索キーワードの選定を行った.しかし,検索記事数が多かったために当初の研究計画にて予定していた全記事の精査が終了せず,類型化の条件の決定が完了しなかったことから,研究対象とする記事の確定に至らなかった.平成30年度では研究対象となる新聞記事の概略の確認を目的として研究を遂行した.対象とした新聞は読売新聞,朝日新聞,毎日新聞である.各紙独自の新聞記事データベースを用いて,検索期間を1999年1月1日から2018年12月31日の20年間,検索キーワードを「クローン病」として検索した.検索記事数を各紙別に示す.1.読売:ヨミダス歴史館244件,2.朝日:聞蔵IIfor libraries 292件,3.毎日:毎索49件上記の検索によって,新聞記事データベースの検索過程の評価,検索期間の決定,検索キーワードの選定を行った.しかし,検索記事数が多かったために当初の研究計画にて予定していた全記事の精査が終了せず,類型化の条件の決定が完了しなかったことから,研究対象とする記事の確定に至らなかった.(理由)研究対象記事選択のために用いる記事検索ソフトとして,平成30年度は当初予定した有料の記事検索ソフトを使用せず,各新聞社が無償で提供している記事検索ソフトを使用した.そのため,有料記事検索ソフト使用料として計上した予算などで残金が生じた.(使用計画)次年度以降は,新聞記事のさらなる追加のために有料記事検索ソフトを用いて再検索を行い,研究対象記事の確認を行う予定である.その際に残金を使用する予定である. | KAKENHI-PROJECT-18K11980 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K11980 |
終脳特異的細胞接着分子テレンセファリンによる樹状突起フィロポディア形成機構の解明 | 樹状突起フィロポディアは発達期の神経細胞に多く見られるダイナミックな構造であり、スパインの前駆体と考えられている。しかしながらその形成機構、スパインへの移行過程さらにはシナプス可塑性における役割についてはほとんどわかっていない。テレンセファリン(TLCN)は免疫グロブリンスーパーファミリーに属する細胞接着分子であり、哺乳類の終脳神経細胞(特にスパインをもった神経細胞)に特異的に発現している。これまでに私たちのグループが中心となって、TLCNの終脳特異的転写調節機構、樹状突起選択的局在機構などを解明してきたが、その機能についての研究は遅れていた。平成17年度の研究によって、TLCNの生理的機能に関する以下の新知見を得た。(1)発達期の海馬神経細胞においてTLCNは樹状突起フィロポディアに高濃度存在しているが、成熟したスパインでは発現が減少している。(2)TLCN遺伝子欠損マウスでは樹状突起フィロポディア数が野生型マウスに比べて有意に少なく、スパインへの移行が早くなっている。(3)海馬初代培養神経細胞にTLCNを過剰発現させると、樹状突起フィロポディア数の劇的な増加が見られる。TLCNは、樹状突起のシャフトから新たにフィロポディアを形成、維持するとともに、スパインからフィロポディアへの逆方向の移行も誘導できる。(4)TLCNによるフィロポディア形成は、TLCNの細胞外及び細胞内の両方の領域が必要である。(5)成体のTLCN遺伝子欠損マウスの海馬神経細胞では、野生型に比べてスパインが大きくなっており、より安定なシナプス構造を形成している。以上の結果からTLCNは、スパインへの成熟を遅らせ、可塑的かつ動的な樹状突起フィロポディアを維持することにより、『脳のやからかさ』を保つユニークな分子であることが明らかとなった。樹状突起フィロポディアは発達期の神経細胞に多く見られるダイナミックな構造であり、スパインの前駆体と考えられている。しかしながらその形成機構、スパインへの移行過程さらにはシナプス可塑性における役割についてはほとんどわかっていない。テレンセファリン(TLCN)は免疫グロブリンスーパーファミリーに属する細胞接着分子であり、哺乳類の終脳神経細胞(特にスパインをもった神経細胞)に特異的に発現している。これまでに私たちのグループが中心となって、TLCNの終脳特異的転写調節機構、樹状突起選択的局在機構などを解明してきたが、その機能についての研究は遅れていた。平成17年度の研究によって、TLCNの生理的機能に関する以下の新知見を得た。(1)発達期の海馬神経細胞においてTLCNは樹状突起フィロポディアに高濃度存在しているが、成熟したスパインでは発現が減少している。(2)TLCN遺伝子欠損マウスでは樹状突起フィロポディア数が野生型マウスに比べて有意に少なく、スパインへの移行が早くなっている。(3)海馬初代培養神経細胞にTLCNを過剰発現させると、樹状突起フィロポディア数の劇的な増加が見られる。TLCNは、樹状突起のシャフトから新たにフィロポディアを形成、維持するとともに、スパインからフィロポディアへの逆方向の移行も誘導できる。(4)TLCNによるフィロポディア形成は、TLCNの細胞外及び細胞内の両方の領域が必要である。(5)成体のTLCN遺伝子欠損マウスの海馬神経細胞では、野生型に比べてスパインが大きくなっており、より安定なシナプス構造を形成している。以上の結果からTLCNは、スパインへの成熟を遅らせ、可塑的かつ動的な樹状突起フィロポディアを維持することにより、『脳のやからかさ』を保つユニークな分子であることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-17024063 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17024063 |
Pー450の活性部位構造の解析 | 部位特異的にアミノ酸置換したPー450camのCO結合型およびO_2結合型の紫外共鳴ラマンスペクトルを測定しFeーCーO伸縮振動,FeーCーO変角振動,OーO伸縮振動を測定し、次の結果を得た。(1)Pー450camの252番目のスレオニンをグリシン,セリン,アラニン,バリン,プロリンに置換したPー450の変異体のFeーCO伸縮振動は、それぞれ,472,476,480,483,487cm^<ー1>であった。天然型では481cm^<ー1>である。又、天然型で558cm^<ー1>だったFeーCーO変角振動は、変異体ではそれぞれ556、559、558、560cm^<ー1>であった。(2)FeーCO伸縮振動の結果から、Pー450camの酸素ポケットは、グリシン、セリン、アラニン、スレオニン、バリン、プロリンの順に立体障害により小さくなっている事が示唆された。この順番はアミノ酸側鎖の大きさの順序と大体一致しており、252番目のアミノ酸は配位したCOのすぐ近くに存在し、配位したCOの幾何学構造を変化させているという事で説明がついた。(3)天然型の251番目のアミノ酸はアスパラギン酸であるが、X線結晶構造解析の結果、178番目のリジン、186番目のアルギニンとのイオン結合により、酸素ポケットの構造を保持していると考えられるが、251番をアラニンに置換した変異Pー450camでは、FeーCO伸縮振動は486cm^<ー1>であり、配位したCOへの立体障害が非常に大きくなった事が判った。(4)Pー450camに配位したOーOの伸縮振動は、天然型では1141cm^<ー1>だが、252番目をセリン、アラニン、プロニンに置換した変異体、251番をアラニンに置換した変異体では、各々1137、1134、1136、1139cm^<ー1>であった。これは252番目のスレオニンは配位したO_2と特異的な相互作用をしている可能性を示唆する。部位特異的にアミノ酸置換したPー450camのCO結合型およびO_2結合型の紫外共鳴ラマンスペクトルを測定しFeーCーO伸縮振動,FeーCーO変角振動,OーO伸縮振動を測定し、次の結果を得た。(1)Pー450camの252番目のスレオニンをグリシン,セリン,アラニン,バリン,プロリンに置換したPー450の変異体のFeーCO伸縮振動は、それぞれ,472,476,480,483,487cm^<ー1>であった。天然型では481cm^<ー1>である。又、天然型で558cm^<ー1>だったFeーCーO変角振動は、変異体ではそれぞれ556、559、558、560cm^<ー1>であった。(2)FeーCO伸縮振動の結果から、Pー450camの酸素ポケットは、グリシン、セリン、アラニン、スレオニン、バリン、プロリンの順に立体障害により小さくなっている事が示唆された。この順番はアミノ酸側鎖の大きさの順序と大体一致しており、252番目のアミノ酸は配位したCOのすぐ近くに存在し、配位したCOの幾何学構造を変化させているという事で説明がついた。(3)天然型の251番目のアミノ酸はアスパラギン酸であるが、X線結晶構造解析の結果、178番目のリジン、186番目のアルギニンとのイオン結合により、酸素ポケットの構造を保持していると考えられるが、251番をアラニンに置換した変異Pー450camでは、FeーCO伸縮振動は486cm^<ー1>であり、配位したCOへの立体障害が非常に大きくなった事が判った。(4)Pー450camに配位したOーOの伸縮振動は、天然型では1141cm^<ー1>だが、252番目をセリン、アラニン、プロニンに置換した変異体、251番をアラニンに置換した変異体では、各々1137、1134、1136、1139cm^<ー1>であった。これは252番目のスレオニンは配位したO_2と特異的な相互作用をしている可能性を示唆する。 | KAKENHI-PROJECT-01635002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01635002 |
カドミウム環境汚染地住民にみられる尿細管障害と骨代謝異常の性差 | カドミウム環境汚染による健康障害を早期に防止するために、カドミウム暴露による健康影響の男性と女性の差異(性差)を検討した。富山県神通川流域カドミウム汚染地住民を対象に、尿細管機能ならびに骨代謝に関する検討を行い、以下の結果を得た。1.対象151人(男70人、女81人、5671歳)のβ_2-microglobulin排泄率(FEβ_2-m)の平均値(範囲)は、男4.58(0.1559.4)%、女3.97(0.265.3)%であり、男女ともに著しい高値を呈し、β_2-mの高度の尿細管再吸収障害を認めた。2.尿細管におけるβ_2-m再吸収障害の程度と関連して、尿酸・カルシウム・リン・グルコ-ス・重炭酸イオンなどの再吸収も障害されており、多発性近位尿細管機能異常症と診断した。3.リンおよび重炭酸イオン再吸収低下による低リン血と代謝性アシド-シスをFEβ_2-m30%以上の高度尿細管障害12例(男7、女5)に認め、更に血清アルカリホスファタ-ゼ活性が上昇している9例(男6、女3)を潜在性尿細管性骨軟化症と診断した。4.手骨X-PのMD法による骨萎縮度の程度は、尿細管障害が高度となるにしたがい、男女ともにΣGSID,MCIの低下を認めたが、女性の低下がより顕著であった。5.高度尿細管障害11例(女性)を対象に血中ビタミンD代謝物(1.25(OH)_2、25(OH)D]のレベルと尿細管障害との関連を検討した。25(OH)D値は3例が低値、8例が正常下限値であった。1.25(OH)_2D値は7例で測定し得たが、6例が正常範囲内であった。1.25(OH)_2Dと糸球体濾過値ならびにFEβ_2-mとの間に、それぞれ正(r=0.802)、負(r=-0.829)の有意な(p<0.05)相関関係が得られた。この結果より、カドミウムによる尿細管障害においては、その程度が高度となれば、尿細管における1.25(OH)_2Dの産生低下がおこることを明らかにした。ビタミンD代謝異常については、症例を増加し、更に詳細な検討が必要である。カドミウム環境汚染による健康障害を早期に防止するために、カドミウム暴露による健康影響の男性と女性の差異(性差)を検討した。富山県神通川流域カドミウム汚染地住民を対象に、尿細管機能ならびに骨代謝に関する検討を行い、以下の結果を得た。1.対象151人(男70人、女81人、5671歳)のβ_2-microglobulin排泄率(FEβ_2-m)の平均値(範囲)は、男4.58(0.1559.4)%、女3.97(0.265.3)%であり、男女ともに著しい高値を呈し、β_2-mの高度の尿細管再吸収障害を認めた。2.尿細管におけるβ_2-m再吸収障害の程度と関連して、尿酸・カルシウム・リン・グルコ-ス・重炭酸イオンなどの再吸収も障害されており、多発性近位尿細管機能異常症と診断した。3.リンおよび重炭酸イオン再吸収低下による低リン血と代謝性アシド-シスをFEβ_2-m30%以上の高度尿細管障害12例(男7、女5)に認め、更に血清アルカリホスファタ-ゼ活性が上昇している9例(男6、女3)を潜在性尿細管性骨軟化症と診断した。4.手骨X-PのMD法による骨萎縮度の程度は、尿細管障害が高度となるにしたがい、男女ともにΣGSID,MCIの低下を認めたが、女性の低下がより顕著であった。5.高度尿細管障害11例(女性)を対象に血中ビタミンD代謝物(1.25(OH)_2、25(OH)D]のレベルと尿細管障害との関連を検討した。25(OH)D値は3例が低値、8例が正常下限値であった。1.25(OH)_2D値は7例で測定し得たが、6例が正常範囲内であった。1.25(OH)_2Dと糸球体濾過値ならびにFEβ_2-mとの間に、それぞれ正(r=0.802)、負(r=-0.829)の有意な(p<0.05)相関関係が得られた。この結果より、カドミウムによる尿細管障害においては、その程度が高度となれば、尿細管における1.25(OH)_2Dの産生低下がおこることを明らかにした。ビタミンD代謝異常については、症例を増加し、更に詳細な検討が必要である。 | KAKENHI-PROJECT-01602505 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01602505 |
脂肪組織由来マルチプルリスクファクター疾患遺伝子の検索と食環境による発現制御 | 病態発症の危険因子及び抑制因子の両方向から、マルチプルリスクファクター疾患遺伝子の検索をモデル動物を用いたin vivo実験により行った。その結果、脂肪組織から分泌されるアディポネクチンが、マルチプルリスクファクター症候群の主要病態である脂肪肝やインスリン抵抗性の発症と改善に深く関わっていることが明らかとなった。そこで食事性insulin sensitizerで、アディポネクチン産生を亢進するドコサヘキサエン酸を構成脂質として含む海洋資源由来フォスファチジルコリン(DHA-PC)を用いて、肥満モデルOLETFラットを用いた病態生理学的検討を行った。特に脂質代謝脂質代謝の中心臓器である肝臓において、DHA-PC摂取に対するOLETFラットの応答を遺伝子発現変動で評価した。まずDHA-PCを摂取したOLETFラットでは、内臓脂肪と肝臓脂質の蓄積が改善した。その作用機序としては、血中のアディポネクチン濃度上昇により肝臓における脂質合成酵素活性及び遺伝子発現の抑制が認められ、また脂肪酸分解系酵素活性及び遺伝子発現の亢進も認められた。それらの変動は転写因子のうち、脂質合成系を制御するSREBP1cおよび脂質分解系に関与するPPAR deltaの発現変動を介していることが示唆された。よって本研究により、アディポネクチンの血中濃度を食環境で制御することはメタボリックシンドローム発症の予防・改善に有効であることが示された。病態発症の危険因子及び抑制因子の両方向から、マルチプルリスクファクター疾患遺伝子の検索をモデル動物を用いたin vivo実験により行った。その結果、脂肪組織から分泌されるアディポネクチンおよびTNF-alphaが、マルチプルリスクファクター症候群の主要病態である脂肪肝やインスリン抵抗性の発症と改善に深く関わっていることが明らかとなった。そこで食事性insulin sensitizerで、アディポネクチン産生を亢進する共役リノール酸を用いて、2型糖尿病モデルZuckerラットを用いた病態生理学的検討を行った。特に全身の糖・脂質代謝に重要な働きをする骨格筋において、共役リノール酸摂取に対するZuckerラットの応答を遺伝子発現変動で評価した。まず共役リノール酸を摂取したZuckerラットでは、インスリン抵抗性が改善し、肝臓における遺伝子発現低下に伴って骨格筋におけるTNF-alphaタンパク質量が低下することが示された。また血中のアディポネクチン濃度上昇により、骨格筋におけるアディポネクチンレセプター遺伝子の発現亢進、脂肪酸合成系遺伝子(FAS, SCD)の発現抑制が認められ、また脂訪酸分解系遺伝子(AC02,CPT1b, UCP3)の発現亢進も認められた。更に炎症性ケモカインであるMCP-1の骨格筋における遺伝子発現も低下することが示された。脂訪酸分解系遺伝子の発現を調節しているPPARsの発現に関しては、alpha異性体の発現亢進が認められた。よって本研究により、アディポネクチンおよびTNF-alphaの遺伝子発現を食環境で制御することはメタボリックシンドローム発症の予防・改善に有効であることが示された。病態発症の危険因子及び抑制因子の両方向から、マルチプルリスクファクター疾患遺伝子の検索をモデル動物を用いたin vivo実験により行った。その結果、脂肪組織から分泌されるアディポネクチンが、マルチプルリスクファクター症候群の主要病態である脂肪肝やインスリン抵抗性の発症と改善に深く関わっていることが明らかとなった。そこで食事性insulin sensitizerで、アディポネクチン産生を亢進するドコサヘキサエン酸を構成脂質として含む海洋資源由来フォスファチジルコリン(DHA-PC)を用いて、肥満モデルOLETFラットを用いた病態生理学的検討を行った。特に脂質代謝脂質代謝の中心臓器である肝臓において、DHA-PC摂取に対するOLETFラットの応答を遺伝子発現変動で評価した。まずDHA-PCを摂取したOLETFラットでは、内臓脂肪と肝臓脂質の蓄積が改善した。その作用機序としては、血中のアディポネクチン濃度上昇により肝臓における脂質合成酵素活性及び遺伝子発現の抑制が認められ、また脂肪酸分解系酵素活性及び遺伝子発現の亢進も認められた。それらの変動は転写因子のうち、脂質合成系を制御するSREBP1cおよび脂質分解系に関与するPPAR deltaの発現変動を介していることが示唆された。よって本研究により、アディポネクチンの血中濃度を食環境で制御することはメタボリックシンドローム発症の予防・改善に有効であることが示された。 | KAKENHI-PROJECT-06J07705 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J07705 |
多光源波長掃引による高速分布型光ファイバセンサの研究 | 本研究の目的は、複数の半導体レーザを用い、注入電流変調による狭帯域波長掃引を利用した光周波数多重法式に基づく分布型光ファイバセンシングを実施することにより、分布センシング要する測定時間を大幅に短縮する事である。分布帰還型半導体レーザの電流変調特性を実測した。分布帰還型半導体レーザは電流を注入する事でレーザ光を発振させるが、この注入電流を増減させると、レーザ光の出力強度だけでなく、発振波長も僅かに変化する。この波長変化は静的に電流を変化させた場合は、増減させた電流の変化量にほぼ比例する。一方、正弦波信号や鋸歯状波信号を用いて電流変調した場合においては、波長変化量と電流変化量は線形に対応しなくなる。本研究では所与の電流変調信号に対して得られる波長変化信号を把握する事は必須である。また、半導体レーザの注入電流制御に混入する雑音や、駆動温度のドリフトにより、発振波長に短期的な雑音や長期的なふらつきが生じる恐れがある。初年度は、偏波保持ファイバを用いた不等光路長マッハ・ツェンダ干渉計を用いて高分解能な瞬時波長の測定を行なった。さらに研究を進め、昨年度には、実際に複数の半導体レーザを導入した、光周波数多重化方式型の分布センシングシステムを構成し、低反射率のファイバブラッググレーティング(FBG)をセンサヘッドとした分布センシングを実際に行った。本年度は、昨年度構成したセンサシステムの実証実験結果を国際会議で発表した。また、電流変調によって掃引される半導体レーザの瞬時波長を正確に把握するための光学系を改善した。本研究の目的は複数の半導体レーザを用い、注入電流変調による狭帯域波長掃引を利用した光周波数多重化方式に基づく分布型光ファイバセンシングを実現することにより、分布センシングに要する測定時間を大幅に短縮する事である。本年度に行なった研究は以下の通りである。分布帰還型半導体レーザの電流変調特性を実測した。分布帰還型半導体レーザは電流を注入する事でレーザ光を発振させるが、この注入電流を増減させると、レーザ光の出力強度だけでなく、発振波長も僅かに変化する。この波長変化は静的に電流を変化させた場合は、増減させた電流の変化量にほぼ比例する。一方、正弦波信号や鋸歯状波信号を用いて電流を変調した場合においては、波長変化量と電流変化量は線形に対応しなくなる。本研究では所与の電流変調信号に対して得られる波長変化信号を把握する事は必須である。また、半導体レーザの注入電流制御に混入する雑音や、駆動温度のドリフトにより、発振波長に短期的な雑音や長期的なふらつきが生じる恐れがある。本年度はこれを測定し、評価を行った。電流変調下における分布帰還型半導体レーザの瞬時波長の推定は以下のようにして達成した。偏波保持ファイバを用いた不等光路長マッハ・ツェンダ干渉計を用いて高分解能な瞬時波長の測定を行なった。変調に用いる信号には正弦波を採用し、変調後に得られる発振波長の短期的な雑音と長期的なふらつきの両方を測定した。測定の結果、短期的な雑音は0.08 pmであり、長期的なふらつきは0.1 pm以内である事が分かった。正弦波信号を用いた半導体レーザの注入電流変調下における発振波長の短期的な雑音と長期的なふらつきは充分小さい事がわかった。また、1台の半導体レーザを光源としたセンシングシステムを構成した。本研究の目的は複数の半導体レーザを用い、注入電流変調による狭帯域波長掃引を利用した光周波数多重化方式に基づく分布型光ファイバセンシングを実現することにより、分布センシングに要する測定時間を大幅に短縮する事である。本年度に行なった研究は以下の通りである。光周波数多重化方式型の分布センシングシステムを構成し、低反射率のファイバブラッググレーティング(FBG)をセンサヘッドとした分布センシングを実際に行った。光周波数多重化方式では、光源の波長を掃引し、FBGと反射光と参照光の干渉信号を解析する事で反射位置毎の信号を分離する。構成したシステムでは、光源の波長掃引手段として半導体レーザの注入電流変調を用いている。静的な注入電流変化においては、電流の変化量と波長の変化量はほぼ線形に対応しているが、動的な電流変調下においては非線形な対応となる。そこで、波長変化量を監視するためのファイバ干渉計を導入し、そこから得た情報を元に非線形性を補正した。その結果、非線形性を補正する前のセンサ出力からは位置毎の信号を分離する事は不可能であったが、補正後のセンサ出力からは位置毎の信号を分離する事が可能であることが確認できた。ファイバ上の異なる位置に複数の圧電素子を用いて振動を印加した環境下で測定試験を行った。この結果、各振動をクロストーク無で独立に測定することができ、高速な分布センシングが実現できていることが実験的に確認できた。1台の半導体レーザを用いて構成したセンシングシステムにより、高速な分布センシングを行うことが確認できた。また、センサヘッドとして用いているファイバブラッグレーティングについても、数値シミュレーションを用いて、より最適な設計の検討をすすめていている。本研究の目的は、複数の半導体レーザを用い、注入電流変調による狭帯域波長掃引を利用した光周波数多重法式に基づく分布型光ファイバセンシングを実施することにより、分布センシング要する測定時間を大幅に短縮する事である。本年度に行った研究は以下の通りである。 | KAKENHI-PROJECT-15K06130 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K06130 |
多光源波長掃引による高速分布型光ファイバセンサの研究 | 複数の半導体レーザを導入した、光周波数多重化方式型の分布センシングシステムを構成し、低反射率のファイバブラッググレーティング(FBG)をセンサヘッドとした分布センシングを実際に行った。光周波数多重化方式では、光源の波長を掃引し、FBGと反射光と参照光の干渉信号を解析する事で反射位置毎の信号を分離する。光源の波長掃引手段として半導体レーザの注入電流変調を用いている。昨年度までは、単一の半導体レーザのみを光源として用いていたが、本年度では、複数の半導体レーザを導入した。複数の半導体レーザから出射された光を光ファイバカプラで合成し、これをセンサの読み出しに用いた。各半導体レーザは異なる周波数で変調されており、センサからの反射光と参照光を重ね合わせて干渉させると、得られる干渉信号は異なる基本周期を持つ周期信号の重ね合わせとなる。各レーザ事の基本周期に応じて周波数空間で適切なフィルタを施し合成された干渉信号を光源毎の信号へと分離する。実際に構成したセンサシステムを用いて、固体振動の測定を試みる実証実験を実施した。読み出し光の合成と信号処理による分離を行い、各光源毎にセンサの読み出しが独立に実行できる事を確認した。複数の半導体レーザを導入した新たなセンサシステムで成功裏にシステムの動作確認実験が実行された。本研究の目的は、複数の半導体レーザを用い、注入電流変調による狭帯域波長掃引を利用した光周波数多重法式に基づく分布型光ファイバセンシングを実施することにより、分布センシング要する測定時間を大幅に短縮する事である。分布帰還型半導体レーザの電流変調特性を実測した。分布帰還型半導体レーザは電流を注入する事でレーザ光を発振させるが、この注入電流を増減させると、レーザ光の出力強度だけでなく、発振波長も僅かに変化する。この波長変化は静的に電流を変化させた場合は、増減させた電流の変化量にほぼ比例する。一方、正弦波信号や鋸歯状波信号を用いて電流変調した場合においては、波長変化量と電流変化量は線形に対応しなくなる。本研究では所与の電流変調信号に対して得られる波長変化信号を把握する事は必須である。また、半導体レーザの注入電流制御に混入する雑音や、駆動温度のドリフトにより、発振波長に短期的な雑音や長期的なふらつきが生じる恐れがある。初年度は、偏波保持ファイバを用いた不等光路長マッハ・ツェンダ干渉計を用いて高分解能な瞬時波長の測定を行なった。さらに研究を進め、昨年度には、実際に複数の半導体レーザを導入した、光周波数多重化方式型の分布センシングシステムを構成し、低反射率のファイバブラッググレーティング(FBG)をセンサヘッドとした分布センシングを実際に行った。本年度は、昨年度構成したセンサシステムの実証実験結果を国際会議で発表した。また、電流変調によって掃引される半導体レーザの瞬時波長を正確に把握するための光学系を改善した。まず、構成した光周波数多重化方式型の分布センシングシステを用い、低反射率のファイバブラッググレーティングをセンサヘッドとして分布センシングの試行を行う。その後、光源の追加、最適なセンサヘッドの再設計と試作、及び取得信号の解析方法の改良に進む。センサヘッドとして用いるファイバブラッググレーティングについて、長尺化、チャープ化、ランダム化を検討する。 | KAKENHI-PROJECT-15K06130 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K06130 |
卑金属多機能不斉触媒の創製と効率的不斉分子変換反応の開発 | フェノール誘導体を基質とする酸化カップリング反応は、フェノール誘導体の反応性が低く、高活性な一電子酸化作用を有する金属触媒を用いると位置選択性の制御が困難となり、炭素ー酸素結合形成カップリングや脱芳香族化反応といった副反応が起こることから、触媒的かつエナンチオ選択的な例は一例のみである。キラルビフェノール類は不斉配位子や不斉有機分子触媒に利用されており、またその骨格は生物活性を示す天然物にも見受けられるため、その合成法の開発は強く求められている。本研究では、オキソバナジウム錯体のLewis酸性を高めた6,6'位臭素置換二核バナジウム錯体を用いて、高い位置選択性とエナンチオ選択性でフェノール誘導体の不斉酸化カップリングを達成し、対応するキラルビフェノールを最高93%収率、98% eeで得ることに成功した。本反応のバナジウム触媒の再酸化剤には空気中の酸素を使用しており、得られる共生成物は水のみのクリーンな反応系である。触媒構造の最適化検討では、単核バナジウム錯体では当該反応は全く促進されないことがわかり、二核錯体の特異的な反応促進効果が観測された。反応機構研究においては、反応溶液が不均一系(反応基質と触媒が反応溶媒に完全に溶解していない)であったため、詳細な解析は困難であったものの、二種類の反応基質を用いるヘテロカップリング反応から得られた結果を考慮すると、本反応はラジカル-ラジカル機構で進行していると予想される。本研究成果はアメリカ化学会のThe Journal of Organic Chemistry誌に掲載済みであり、掲載巻のカバーアートに選ばれた。平成29年度が最終年度であるため、記入しない。平成29年度が最終年度であるため、記入しない。フェノール誘導体を基質とする酸化カップリング反応は、フェノール誘導体の反応性が低く、高活性な一電子酸化作用を有する金属触媒を用いると位置選択性の制御が困難となり、炭素ー酸素結合形成カップリングや脱芳香族化反応といった副反応が起こることから、触媒的かつエナンチオ選択的な例は一例のみである。キラルビフェノール類は不斉配位子や不斉有機分子触媒に利用されており、またその骨格は生物活性を示す天然物にも見受けられるため、その合成法の開発は強く求められている。本研究では、オキソバナジウム錯体のLewis酸性を高めた6,6'位臭素置換二核バナジウム錯体を用いて、高い位置選択性とエナンチオ選択性でフェノール誘導体の不斉酸化カップリングを達成し、対応するキラルビフェノールを最高93%収率、98% eeで得ることに成功した。本反応のバナジウム触媒の再酸化剤には空気中の酸素を使用しており、得られる共生成物は水のみのクリーンな反応系である。触媒構造の最適化検討では、単核バナジウム錯体では当該反応は全く促進されないことがわかり、二核錯体の特異的な反応促進効果が観測された。反応機構研究においては、反応溶液が不均一系(反応基質と触媒が反応溶媒に完全に溶解していない)であったため、詳細な解析は困難であったものの、二種類の反応基質を用いるヘテロカップリング反応から得られた結果を考慮すると、本反応はラジカル-ラジカル機構で進行していると予想される。本研究成果はアメリカ化学会のThe Journal of Organic Chemistry誌に掲載済みであり、掲載巻のカバーアートに選ばれた。平成29年度が最終年度であるため、記入しない。平成29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-17H06834 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H06834 |
光を用いた非侵襲的かつ低コストで行える関節診断技術の開発 | 本研究では、近赤外光を用いた非侵襲的、かつ低コストで関節診断を行える装置、及び診断技術の開発を行う。具体的には近赤外励起ラマン分光装置ならび近赤外分光装置を一体化させた関節診断装置を開発する。さらに、開発した装置による変形性膝関節症モデルラットやウサギの膝関節、大腿骨、脛骨部位の評価を行いながら関節診断技術の開発を行い、関節診断装置を改良しながら診断の精度を高める。本研究では、近赤外光を用いた非侵襲的、かつ低コストで関節診断を行える装置、及び診断技術の開発を行う。具体的には近赤外励起ラマン分光装置ならび近赤外分光装置を一体化させた関節診断装置を開発する。さらに、開発した装置による変形性膝関節症モデルラットやウサギの膝関節、大腿骨、脛骨部位の評価を行いながら関節診断技術の開発を行い、関節診断装置を改良しながら診断の精度を高める。 | KAKENHI-PROJECT-19K09633 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K09633 |
非アルキメデス的付値体上のバナッハ空間論の研究 | 本年度の研究目的に沿ってまず実数体や複素数体上のバナッハ空間について、いろいろ図書,論文等の文献により現在世界で研究されていることについて理解を深めた。さらにそれらのことをもとにして、非アルキメデス的付値体上の線形位相空間やバナッハ空間についての文献についての理解の深めた。また学会,シンポジウム等にも参加し討論等を通して,この分野についての現状等の把握につとめた。これらのことを通して、本年度特に研究したことは、バナッハ空間のある種の分解についてである。すなわち,Kを完備な非アルキメデス付値体とし,EをK上のバナッハ空間,L(E,E)をEからEへの連続線形写像の集合とする。列(Pn)<L(E,E)は次の条件をみたすとき,EのSchauder分解という。このとき,次のことが成り立つことを示した。[1]Schauder分解(Pn)は1に強収束するが一様収束ではない,ある種の性質をもった列である。[2]Kが球完備でEがGrothendieck空間のとき,EはSchauder分解をもたない。これらの結果を主定理にもつ論文をまとめ、The Rocky Mountain Journal of Mathematicsに投稿し受理された。さらに,K上のバナッハ空間Co,l^∞,l^∞/Coの部分空間が直交直和分解(ヒルベルト空間のように内積による直交概念とは異なり、非アルキメデスバナッハ空間特有の直交概念である。)をもつための条件について研究し、いくつかの結果を導びいた。これもまた発表の予定でいる。本年度の研究目的に沿ってまず実数体や複素数体上のバナッハ空間について、いろいろ図書,論文等の文献により現在世界で研究されていることについて理解を深めた。さらにそれらのことをもとにして、非アルキメデス的付値体上の線形位相空間やバナッハ空間についての文献についての理解の深めた。また学会,シンポジウム等にも参加し討論等を通して,この分野についての現状等の把握につとめた。これらのことを通して、本年度特に研究したことは、バナッハ空間のある種の分解についてである。すなわち,Kを完備な非アルキメデス付値体とし,EをK上のバナッハ空間,L(E,E)をEからEへの連続線形写像の集合とする。列(Pn)<L(E,E)は次の条件をみたすとき,EのSchauder分解という。このとき,次のことが成り立つことを示した。[1]Schauder分解(Pn)は1に強収束するが一様収束ではない,ある種の性質をもった列である。[2]Kが球完備でEがGrothendieck空間のとき,EはSchauder分解をもたない。これらの結果を主定理にもつ論文をまとめ、The Rocky Mountain Journal of Mathematicsに投稿し受理された。さらに,K上のバナッハ空間Co,l^∞,l^∞/Coの部分空間が直交直和分解(ヒルベルト空間のように内積による直交概念とは異なり、非アルキメデスバナッハ空間特有の直交概念である。)をもつための条件について研究し、いくつかの結果を導びいた。これもまた発表の予定でいる。 | KAKENHI-PROJECT-02640109 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02640109 |
C.ムフ政治思想の教育学的射程 | 現在、日本では18歳選挙権の導入や高校生の政治活動の一部解禁に伴い、政治や市民性のあり方を模索する動きが更なる高まりをみせている。この動向において、熟議アプローチにもとづくシティズンシップ教育は注目を集めてきた。教育学においてシャンタル・ムフの政治思想は、このアプローチを批判する際の理論的根拠として機能してきた。しかしながら、ムフの政治思想に対する理解は一面的であり、教育学におけるその射程が明らかになっているとはいえない。そこで本研究は、ムフの政治思想を全体的に把握し、その教育学における射程を検討する。現在、日本では18歳選挙権の導入や高校生の政治活動の一部解禁に伴い、政治や市民性のあり方を模索する動きが更なる高まりをみせている。この動向において、熟議アプローチにもとづくシティズンシップ教育は注目を集めてきた。教育学においてシャンタル・ムフの政治思想は、このアプローチを批判する際の理論的根拠として機能してきた。しかしながら、ムフの政治思想に対する理解は一面的であり、教育学におけるその射程が明らかになっているとはいえない。そこで本研究は、ムフの政治思想を全体的に把握し、その教育学における射程を検討する。 | KAKENHI-PROJECT-19K23329 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K23329 |
対称性破壊型配位集積化による多孔性ゲルの創製 | 本研究「対称性破壊型配位集積化による多孔性ゲルの創製」では、分子レベルで構造制御された高対称性の金属錯体超分子多面体(Metal-organic polyhedral: MOP)を構築素子とし、対称性を破壊する異方的な連結により錯体ネットワークを構築することで、配位高分子ゲルを創製することを目的とする。特に、ゲルが本質的に有するマクロスケールでのレオロジーと、MOPが本質的に有する内部空間を用いた分子レベルでの吸着能を同期的に発動させる全く新しい多孔性ゲルを創出する。さらに、MOPの有する内部空間にガス分子を吸着させることで、固相、液相を有するゲルに気相での制御を導入することが可能になり、物質の三態が全て融合した全く新しい材料創出へと導く。今年度は昨年度同様ロジウム二核パドルウィール錯体を基本骨格とした、立方八面体構造を有するMOP([Rh2L2]12: L =イソフタル酸誘導体)を用いた。特に、イソフタル酸誘導体のなかでも5位に存在する置換基Rが小さい誘導体を用いた(R = H, or OH)。これら分子は、溶解度が極端に低くゲル化に適していないと考えられるが、ロジウム二核錯体の軸位を事後修飾的に他の分子を積極的に配位させることで溶解度を向上させることに成功した。特に、プロリンなどのアミノ酸も配位させることが可能であり、キラリティーを導入することに成功した。また、OH基を用いて事後修飾的に有機反応を起こすことも可能であり、これら成果をまとめてJ. Am. Chem. Soc誌に報告した。また、このロジウム錯体の軸位を用いた事後修飾反応により、置換基Rがもっとも小さいイソフタル酸を有するMOPを溶解させ、ビスイミダゾール分子を用いて超分子重合により反応させることでコロイド粒子やゲルを合成することが可能であり、吸着機能を大きく向上させることに成功した。この成果はAngew. Chem. Int. Ed誌に報告した。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。本研究「対称性破壊型配位集積化による多孔性ゲルの創製」では、分子レベルで構造制御された高対称性の金属錯体超分子多面体(Metal-organic polyhedral: MOP)を構築素子とし、対称性を破壊する異方的な連結により錯体ネットワークを構築することで、配位高分子ゲルを創製することを目的とする。特に、ゲルが本質的に有するマクロスケールでのレオロジーと、MOPが本質的に有する内部空間を用いた分子レベルでの吸着能を同期的に発動させる全く新しい多孔性ゲルを創出する。さらに、MOPの有する内部空間にガス分子を吸着させることで、固相、液相を有するゲルに気相での制御を導入することが可能になり、物質の三態が全て融合した全く新しい材料創出へと導く。今年度は昨年度同様ロジウム二核パドルウィール錯体を基本骨格とした、立方八面体構造を有するMOP([Rh2L2]12: L =イソフタル酸誘導体)を用いた。特に、イソフタル酸誘導体のなかでも5位に存在する置換基Rが小さい誘導体を用いた(R = H, or OH)。これら分子は、溶解度が極端に低くゲル化に適していないと考えられるが、ロジウム二核錯体の軸位を事後修飾的に他の分子を積極的に配位させることで溶解度を向上させることに成功した。特に、プロリンなどのアミノ酸も配位させることが可能であり、キラリティーを導入することに成功した。また、OH基を用いて事後修飾的に有機反応を起こすことも可能であり、これら成果をまとめてJ. Am. Chem. Soc誌に報告した。また、このロジウム錯体の軸位を用いた事後修飾反応により、置換基Rがもっとも小さいイソフタル酸を有するMOPを溶解させ、ビスイミダゾール分子を用いて超分子重合により反応させることでコロイド粒子やゲルを合成することが可能であり、吸着機能を大きく向上させることに成功した。この成果はAngew. Chem. Int. Ed誌に報告した。本研究「対称性破壊型配位集積化による多孔性ゲルの創製」では、分子レベルで構造制御された高対称性の金属錯体超分子多面体(Metal-organic polyhedral: MOP)を構築素子とし、対称性を破壊する異方的な連結により錯体ネットワークを構築することで、配位高分子ゲルを創製することを目的とする。特に、ゲルが本質的に有するマクロスケールでのレオロジーと、MOPが本質的に有する内部空間を用いた分子レベルでの吸着能を同期的に発動させる全く新しい多孔性ゲルを創出する。さらに、MOPの有する内部空間にガス分子を吸着させることで、固相、液相を有するゲルに気相での制御を導入することが可能になり、物質の三態が全て融合した全く新しい材料創出へと導く。今年度はロジウム二核パドルウィール錯体を基本骨格とした、立方八面体構造を有するMOP([Rh2L2]12: L =イソフタル酸誘導体)を用いた。ビスイミダゾール系配位子を用いてロジウム二核パドルウィール錯体の軸位に配位させMOPを超分子重合により連結することで有機溶媒を含んだソルボゲルの合成に成功した。動的光散乱測定によりその詳細な自己集合過程を解明し、このゲル化反応が速度論的に補足された準安定状態を経由していることが明らかとなった。本成果はNature Communications誌に発表した。 | KAKENHI-PUBLICLY-17H05367 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-17H05367 |
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