title
stringlengths
0
199
text
stringlengths
3
3.18k
id
stringlengths
23
32
url
stringlengths
56
65
河川乱流における組織渦の同定法開発と動力学機構の解明
非圧縮性粘性流れの支配方程式は,連続の式とNavier-Stokes方程式で表すことができる.両式をMAC法と部分段階法を組み合わせたアルゴリズムによって解析を行った.このアルゴリズムの特長は,中間速度場を求める発展方程式の非線形項を陽解法の3次精度Adams-Bashforth法,線形の粘性項を陰解法の2次精度Crank-Nicolson法で表すことにより,陽解法によるコンパクト化と陰解法による収束性と数値的安定化を,さらに速度と圧力の分離による解法全体の縮小化を同時に達成したものとなっていることである。圧力のPoisson方程式は4次精度で離散化を行うとともに,新ステップの速度場は,圧力に対しEulerの後退スキームを適用して計算する.なお,圧力のPoisson方程式およびNavier-Stokes方程式におけるCrank-Nicolson法の反復解法には面Gauss-Seidel法を用い,収束判定は平均自乗残差でそれぞれ10 -4,10 -9とした.計算格子には,スタガード格子を採用することが多いが,境界条件の設定を始めプログラミングが煩雑なうえ,一般曲線座標系への拡張や高精度化にあたっては工夫が必要となる.一方,レギュラー格子は解の空間的振動(spurious誤差)の発生が指摘されているものの,物理量を同一点で定義することから特にプログラミングの上で簡便なうえ,高精度化や複雑境界問題に有効な一般曲線座標系への変換が容易という利点を有している.これらを勘案すると,DNSの汎用化にはコンパクトかつハンドリングのよい格子系の選択も重要な要素となることから,本研究ではレギュラー格子を採用し,その適用可能性を確認した.なお,懸念される数値的振動解については不等間隔格子を採用することで除去する.高レイノルズ数流れは、壁面境界付近を除くとあまりレイノルズ数に依存しないことから,この領域には相対的に疎な格子を充てることで,振動解の除去に加え効率的シミュレーションが期待される.不等間隔格子の生成には,計算空間への写像に伴うメトリック(metric)が解析的に得られるなど座標変換による誤差の混入を防ぐ意味から、双曲関数を用いる.なお,壁面付近への格子の配置は,概ね粘性底層およびバッファー層に総格子点数の約1/4が確保できるように設定する.計算は支配方程式を計算空間へ写像したうえで,差分近似を行った.河川乱流で特徴的な平坦河床、縦筋河床、砂堆河床を境界条件として選定し、本アルゴリズムを適用した所、計算値は実測データと良好な一致を示し、計算精度が検証された。さらに、渦同定法を適用し、河川乱流における大規模渦構造、コーナ二次流の解明が図られた。非圧縮性粘性流れの支配方程式は,連続の式とNavier-Stokes方程式で表すことができる.両式をMAC法と部分段階法を組み合わせたアルゴリズムによって解析を行った.このアルゴリズムの特長は,中間速度場を求める発展方程式の非線形項を陽解法の3次精度Adams-Bashforth法,線形の粘性項を陰解法の2次精度Crank-Nicolson法で表すことにより,陽解法によるコンパクト化と陰解法による収束性と数値的安定化を,さらに速度と圧力の分離による解法全体の縮小化を同時に達成したものとなっていることである。圧力のPoisson方程式は4次精度で離散化を行うとともに,新ステップの速度場は,圧力に対しEulerの後退スキームを適用して計算する.なお,圧力のPoisson方程式およびNavier-Stokes方程式におけるCrank-Nicolson法の反復解法には面Gauss-Seidel法を用い,収束判定は平均自乗残差でそれぞれ10 -4,10 -9とした.計算格子には,スタガード格子を採用することが多いが,境界条件の設定を始めプログラミングが煩雑なうえ,一般曲線座標系への拡張や高精度化にあたっては工夫が必要となる.一方,レギュラー格子は解の空間的振動(spurious誤差)の発生が指摘されているものの,物理量を同一点で定義することから特にプログラミングの上で簡便なうえ,高精度化や複雑境界問題に有効な一般曲線座標系への変換が容易という利点を有している.これらを勘案すると,DNSの汎用化にはコンパクトかつハンドリングのよい格子系の選択も重要な要素となることから,本研究ではレギュラー格子を採用し,その適用可能性を確認した.なお,懸念される数値的振動解については不等間隔格子を採用することで除去する.高レイノルズ数流れは、壁面境界付近を除くとあまりレイノルズ数に依存しないことから,この領域には相対的に疎な格子を充てることで,振動解の除去に加え効率的シミュレーションが期待される.不等間隔格子の生成には,計算空間への写像に伴うメトリック(metric)が解析的に得られるなど座標変換による誤差の混入を防ぐ意味から、双曲関数を用いる.なお,壁面付近への格子の配置は,概ね粘性底層およびバッファー層に総格子点数の約1/4が確保できるように設定する.計算は支配方程式を計算空間へ写像したうえで,差分近似を行った.河川乱流で特徴的な平坦河床、縦筋河床、砂堆河床を境界条件として選定し、本アルゴリズムを適用した所、計算値は実測データと良好な一致を示し、計算精度が検証された。さらに、渦同定法を適用し、河川乱流における大規模渦構造、コーナ二次流の解明が図られた。非圧縮性粘性流れの支配方程式は,連続の式とNavier-Stokes方程式で表すことができる.両式をMAC法と部分段階法を組み合わせたアルゴリズムによって解析を行った.
KAKENHI-PROJECT-15560445
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15560445
河川乱流における組織渦の同定法開発と動力学機構の解明
このアルゴリズムの特長は,中間速度場を求める発展方程式の非線形項を陽解法の3次精度Adams-Bashforth法,線形の粘性項を陰解法の2次精度Crank-Nicolson法で表すことにより,陽解法によるコンパクト化と陰解法による収束性と数値的安定化を,さらに速度と圧力の分離による解法全体の縮小化を同時に達成したものとなっていることである。圧力のPoisson方程式は4次精度で離散化を行うとともに,新ステップの速度場は,圧力に対しEulerの後退スキームを適用して計算する.なお,圧力のPoisson方程式およびNavier-Stokes方程式におけるCrank-Nicolson法の反復解法には面Gauss-Seidel法を用い,収束判定は平均自乗残差でそれぞれ10^<-4>,10^<-9>とした.計算格子には,スタガード格子を採用することが多いが,境界条件の設定を始めプログラミングが煩雑なうえ,一般曲線座標系への拡張や高精度化にあたっては工夫が必要となる.一方,レギュラー格子は解の空間的振動(spurious誤差)の発生が指摘されているものの,物理量を同一点で定義することから特にプログラミングの上で簡便なうえ,高精度化や複雑境界問題に有効な一般曲線座標系への変換が容易という利点を有している.これらを勘案すると,DNSの汎用化にはコンパクトかつハンドリングのよい格子系の選択も重要な要素となることから,本研究ではレギュラー格子を採用し,その適用可能性を確認した.なお,懸念される数値的振動解については不等間隔格子を採用することで除去する.高レイノルズ数流れは、壁面境界付近を除くとあまりレイノルズ数に依存しないことから,この領域には相対的に疎な格子を充てることで,振動解の除去に加え効率的シミュレーションが期待される.不等間隔格子の生成には,計算空間への写像に伴うメトリック(metric)が解析的に得られるなど座標変換による誤差の混入を防ぐ意味から、双曲関数を用いる.なお,壁面付近への格子の配置は,概ね粘性底層およびバッファー層に総格子点数の約1/4が確保できるように設定する.計算は支配方程式を計算空間へ写像したうえで,差分近似を行った.非圧縮性粘性流れの支配方程式は,連続の式とNavier-Stokes方程式で表すことができる.両式をMAC法と部分段階法を組み合わせたアルゴリズムによって解析を行った.このアルゴリズムの特長は,中間速度場を求める発展方程式の非線形項を陽解法の3次精度Adams-Bashforth法,線形の粘性項を陰解法の2次精度Crank-Nicolson法で表すことにより,陽解法によるコンパクト化と陰解法による収束性と数値的安定化を,さらに速度と圧力の分離による解法全体の縮小化を同時に達成したものとなっていることである。圧力のPoisson方程式は4次精度で離散化を行うとともに,新ステップの速度場は,圧力に対しEulerの後退スキームを適用して計算する.なお,圧力のPoisson方程式およびNavier-Stokes方程式におけるCrank-Nicolson法の反復解法には面Gauss-Seidel法を用い,収束判定は平均自乗残差でそれぞれ10-4,10-9とした.
KAKENHI-PROJECT-15560445
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15560445
先端グラフェンNEMS技術を基盤とする革新的熱フォノンエンジニアリング素子の創製
原子層材料グラフェンNEMS(ナノ電子機械システム)技術と、ビーム径0.3 nmの収束He+ビームによってグラフェンを直接ミリング加工するシングルナノメータ加工技術を融合させ、宙吊りにした両持ちグラフェン梁(長さ・幅100 nm1ミクロンスケール)上に直径3 4 nmのナノ孔の2次元アレイ(グラフェンフォノニック結晶:GPnC)素子を高速で作製することに成功した。また、GPnC構造におけるフォノニックバンドギャップ形成の様子を大規模有限要素解析と原子スケールフォノン計算によって明らかにした。サスペンデッド状態にした大面積CVDグラフェン薄膜上に、収束ヘリウムイオンビームを用いて2次元ナノ孔アレイを形成する方法でグラフェンフォノニック結晶構造を作製した。ナノ孔の直径および孔の間隔を縮小するために、ヘリウムイオンビームのドーズ量とビームピッチの最適化を行った結果、ナノ孔の直径34nm、ナノ孔間隔(孔の中心間隔)9nmと、孔寸法・間隔ともにシングルナノメータレベルで加工することに成功した。さらに、このナノ孔アレイを介した電気伝導特性の温度依存性を測定し、室温で十分な電流密度が得られること、および低温でトランスポートギャップが増大することを見出した。このことは、形成したナノ孔の周辺に点欠陥領域が形成され、実効的なナノ孔間隔を狭めていることを示唆している。さらに、CVDグラフェン膜中の結晶粒界、あるいは表面残留不純物などに起因すると考えられる局所的な孔不形成が生じるケースが見つかり、今後の歩留まり改善に向けたグラフェン膜の均一性向上の課題も見つかった。また、幅の異なる極細グラフェンナノリボン(GNR)のヘテロ接合構造に対して、非平衡分子動力学(NEMD)による解析を行い、熱バイアスの極性の切り替えによって、ヘテロ接合付近でフォノン局在分布に顕著な変化が現れ、熱整流作用が生じることを見出した。収束ヘリウムイオンビームによるグラフェンフォノニック結晶構造作製、および非平衡分子動力学(NEMD)を基づく大規模シミュレーションによるグラフェンフォノニックヘテロ接合構造/熱整流素子の設計・解析、ともに、ほぼ当初の計画通りに進展している。数ミクロンスケールの大面積グラフェンNEMSを安定的に作製するプロセスを開発し、シリコン基板上に電極付き大面積グラフェン両持ち梁NEMS構造(幅・長さ4 μm)を作製した。その大面積グラフェン両持ち梁をビーム径0.3 nmの収束ヘリウムイオンビームを用いて直接ミリング加工することにより、ナノ孔直径3 - 4 nm、孔間隔10 nmの2次元周期ナノ孔構造(グラフェンフォノニック結晶)を形成することに成功した。イオンビーム加工に要した時間は約7分であり、加工中のドリフトによる2次元構造の乱れは無視できるほど小さいことを確認した。また、3次元有限要素法を用いたグラフェンフォノニック結晶のシミュレーションから、形成されるフォノニックバンドギャップの帯域と孔寸法・間隔依存性を明らかにした。作製したグラフェンフォノニック結晶素子の2端子電気特性を室温150 Kの温度領域で測定し、隣接するナノ孔間ネック領域での量子閉じ込め効果に起因する室温でのバンドギャップ形成と、低温でのトランスポートギャップ増大を観測した。これはヘリウムイオンビーム裾によってナノ孔周辺に生じた局所的ダメージ(点欠陥)に起因するものと考えられる。また、原子レベルでのナノ孔形状乱れを取り入れたアトムスケールフォノン分散スペクトル計算を実施し、ナノ孔周辺での形状乱れに伴うフォノン空間分布の変化が孔エッジから数原子の範囲に留まり、フォノン分散関係への影響も小さいことを見出した。原子層材料グラフェンNEMS(ナノ電子機械システム)技術と、ビーム径0.3 nmの収束He+ビームによってグラフェンを直接ミリング加工するシングルナノメータ加工技術を融合させ、宙吊りにした両持ちグラフェン梁(長さ・幅100 nm1ミクロンスケール)上に直径3 4 nmのナノ孔の2次元アレイ(グラフェンフォノニック結晶:GPnC)素子を高速で作製することに成功した。また、GPnC構造におけるフォノニックバンドギャップ形成の様子を大規模有限要素解析と原子スケールフォノン計算によって明らかにした。H28年度に構築したシングルナノメータ孔アレイ形成技術を駆使して、コヒーレント熱フォノンに対して作用するグラフェンフォノニック結晶構造と、粒子的性質の熱フォノンに対して有効なフォノンブロッカーを、2本の平行サスペンデッドグラフェンナノリボン(熱電対)上に集積化した新奇ナノゼーベック素子を試作する。グラフェンのアンビポーラ特性を利用して、2つのトップゲートの電圧の極性を逆に設定し、熱電対チャネルの電子と正孔キャリア密度をそれぞれのゲート電極で変調する。試作した素子の特性評価においては、ナノスケール・拡張3ω法による熱電変換特性評価を行う。また、グラフェンフォノンへテロ接合構造をベースとした熱整流素子基本構造を作製する。ヘテロ構造チャネルを流れる熱流コンダクタンスと両端に加える熱バイアスの相関、およびその熱バイアス極性依存性を測定して、熱整流効率を評価する。ナノエレクトロニクス、NEMS
KAKENHI-PROJECT-16K13650
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K13650
顎機能障害を伴う咀嚼筋疲労の分子イメージング
実験的かみしめにより咬筋・外側翼突筋に急性疲労を誘発し、筋疲労による筋細胞内の代謝物の濃度を非侵襲的経時的に観察し、分子機能情報を取得することを目的として研究を行った。外側翼突筋を被験筋として考えたのは、疲労時に健常者T2時間あるいは高エネルギーリン酸化合物信号強度に差があると考えているためである。過去の多くの研究によれば、上頭と下頭は活動する時期が相反しており上頭は閉口相と咬合相に、下頭は開口相に活動するという報告が多数で、上頭と下頭を区別して分析する必要が予想されたため、外側翼突筋のうち上頭に対象を限局して前年度より研究を進めてきた。筋機能MRIに関しては外側翼突筋などの深部筋活動であっても、高い空間分解能を有する特性のため非侵襲的に定量評価が可能であり、予備実験における筋機能MRIによる咬筋と外側翼突筋T2時間の推移を検討したところ、外側翼突筋上頭のT2時間は比較的高値を示す結果が得られた。一方、外側翼突筋上頭対象の31P-MRSに関して、信号収集用リンコイル(直径17cm)を用いて、外側翼突筋上頭領域に興味領域設定が逸脱することが無いよう最大限配慮しながら位置付けし試験的信号取得を行った結果、比較的深層に位置する外側翼突筋上頭を対象筋とした31P-MRSによるクレアチンリン酸(PCr)信号強度、無機リン(Pi)信号取得は困難との結論に至った。このことから被験筋を表層に位置する咬筋・側頭筋・顎二腹筋として研究を進めることとした。研究の目標として顎機能障害を伴う咀嚼筋疲労を、筋機能MRI・31P-MRSを用いた分子イメージングでとらえる。これにより、被験筋の実験的かみしめにより咀嚼筋に急性疲労を誘発し、疲労による筋細胞内の代謝物の濃度を非侵襲的経時的に観察し、分子機能情報を取得する。顎機能障害患者対象の筋機能MRIを咀嚼筋分析に適応した研究は非常に少なく、健常者を対象とした報告(Yamaguchi S et al. Oral Diseases 2011)はあるが、咀嚼筋疲労からの回復期を検討したものではない。現時点の対象筋である咬筋・側頭筋・顎二腹筋に関しては、最適最大筋腹断面の設定について予備実験を実施し、撮影協力施設と議論を重ねてきた。「臨床研究に関する倫理指針」の見直し(平成26年12月22日告示)を経て、平成30年4月1日臨床研究法が施行された、本年度初めより対応を開始した。法制度見直し前には倫理指針に基づく実施・指導体制であったところ、見直し後には法律に基づく実施・指導体制へと変更を余儀なくされるため、臨床研究法の定義である、「医薬品等を人に対して用いることにより、当該医薬品等の有効性又は安全性を明らかにする研究」に該当する特定臨床研究かどうか、IRBと綿密な打ち合わせを行った。平成31年3月期日のjRCTへの入力及び地方厚生局への必要書類提出までを念頭におき議論を重ねる必要が生じたものの最終的には「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に基づいた臨床研究として実施する結論に至った。咀嚼筋疲労は患者の訴える疲労感や疼痛強さ等から判断され、客観的かつ定量的な評価法は乏しく、生理学的情報と生化学的情報が統合された診断法の確立は急務である。我々のこれまでの研究では、顎顔面形態に骨格的非対称を示さない健常者咬筋では、T2時間、PCrならびにPi信号強度に関して、ほぼ左右差が認められないことが示されている。顎機能障害を有する顎変形症患者を被験対象としてリクルートし、咬筋、側頭筋、顎二腹筋等に被験筋を絞って、筋機能MRIおよびMRSデータ取得を進める予定である。九州大学病院の顎変形症患者ならびに公募健常ボランティアを対象としたプロトコールはすでに臨床研究倫理審査委員会の承認は受けており、現在、撮影協力施設である福岡歯科大学病院における臨床研究倫理審査委員会の修正申請完了段階である。骨格筋活動評価のゴールドスタンダードである筋電図法による測定結果との関連については,四肢の筋で相関が認められるとの報告があるのに対して、咀嚼筋については十分な検証されていないため、咀嚼筋活動に伴うT2値延長と筋電図測定値との関係も含め、検証と検討を加えていく。将来的には、表面筋電図、筋機能MRIとMRSを用いた咀嚼筋の疲労の定量的測定法を、診断ならびに治療結果の評価に加え、さらには矯正歯科領域の不正咬合という病態の解明を、生化学的側面から展開したいと考えている。咀嚼筋疲労は顎機能障害の一般的プロブレムであり,その発症継続化因子の1つにクレンチング(咬みしめ)がある。咀嚼筋疲労は医療のエンドポイントである「生活の質の向上」に大きく関わっているにも関わらず,客観的かつ定量的な評価法は乏しい。顎機能障害を呈する顎変形症患者を対象とした筋機能MRIにおいて、仮説1-1:治療前の筋機能MRIにおいて,持続かみしめ前後の咀嚼筋の横緩和時間(T2値)は一過性に上昇する。また,左右側でT2値に有意差がある。
KAKENHI-PROJECT-17K11939
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K11939
顎機能障害を伴う咀嚼筋疲労の分子イメージング
仮説1-2:31P-MRSを用いて評価した場合,持続かみしめ前後の咀嚼筋の高エネルギーリン酸化合物のうち、PCrは一過性に減少し、Piは一過性に増加する。また,左右側で信号強度に有意差がある。仮説2-1:顎機能障害患者の治療後は,横緩和時間(T2値)は治療前に比べ減少を示し,左右差を認めない。仮説2-2:顎機能障害患者の治療後は,高エネルギーリン酸化合物のうち、PCrは治療前に比べ増加を示しPiは治療前に比べ減少を示し,左右差は認めない。平成29年度は、研究分担者の所属する撮影施設設置の1.5TのMRI装置(Intera Achieva、フィリップス社製)を用いて、外側翼突筋を対象とした筋機能MRI(T2時間)およびMRS(PCr, Pi)の試験的データ取得を予備的に行った。病院臨床研究倫理審査委員会に本研究を申請し、対象患者の選定や説明と同意、診断、評価など研究手法の妥当性の受審の準備を進め、倫理審査委員会承認後は、介入研究を開始予定である。患者にとって侵襲のない検査法である筋機能MRIおよびMRSを用いて,生理学的情報・生化学的情報を同時に取得し比較することができる,分子イメージングによる新たな画像診断手法は妥当であるかを検証し,咀嚼筋疲労診断法を確立することは重要である。顎機能障害を伴う咀嚼筋疲労を,筋機能MRI・31P-MRSを用いた分子イメージングでとらえる。主要エンドポイントはクレアチンリン酸(PCr)信号強度、無機リン(Pi)信号強度・横緩和時間(T2値)とする。外側翼突筋は臼歯の早期接触・干渉などがあると、安静のはずの外側翼突筋は一気に緊張し、他の閉口筋も活性が上昇し、筋の痛み、違和感、疲労などの筋症状が発生するリスクが高まる。平成29年度は実験的かみしめにより外側翼突筋に急性疲労を誘発し,疲労による筋細胞内の代謝物の濃度を非侵襲的に経時観察し,分子機能情報を取得の可否を検証した。過去の多くの研究によれば、上頭と下頭は活動する時期が相反しており上頭は閉口相と咬合相に、下頭は開口相に活動するという報告が多数である。そのため外側翼突筋上頭に着目し実験を行った。筋機能MRIに関しては外側翼突筋などの深部筋活動であっても、高い空間分解能を有する特性のため非侵襲的に定量評価が可能であり、健常被験者3名それぞれのmfMRIによる咬筋と外側翼突筋T2時間の推移を検討したところ、外側翼突筋上頭のT2時間は比較的高値を示す結果が得られた。一方、外側翼突筋上頭対象の31P-MRSに関して、直径10cm小型コイルでは深度に対する感度能力の不足が考慮されたため、信号収集用リンコイル(直径17cm)を用いて、外側翼突筋上頭領域に興味領域設定が逸脱することが無いよう最大限配慮しながら位置づけし試験的信号取得を行った。その結果、外側翼突筋上頭を対象筋とした31P-MRSによるクレアチンリン酸(PCr)信号強度、無機リン(Pi)信号取得は困難との結論に至った。実験的かみしめにより咬筋・外側翼突筋に急性疲労を誘発し、筋疲労による筋細胞内の代謝物の濃度を非侵襲的経時的に観察し、分子機能情報を取得することを目的として研究を行った。外側翼突筋を被験筋として考えたのは、疲労時に健常者T2時間あるいは高エネルギーリン酸化合物信号強度に差があると考えているためである。過去の多くの研究によれば、上頭と下頭は活動する時期が相反しており上頭は閉口相と咬合相に、下頭は開口相に活動するという報告が多数で、上頭と下頭を区別して分析する必要が予想されたため、外側翼突筋のうち上頭に対象を限局して前年度より研究を進めてきた。筋機能MRIに関しては外側翼突筋などの深部筋活動であっても、高い空間分解能を有する特性のため非侵襲的に定量評価が可能であり、予備実験における筋機能MRIによる咬筋と外側翼突筋T2時間の推移を検討したところ、外側翼突筋上頭のT2時間は比較的高値を示す結果が得られた。
KAKENHI-PROJECT-17K11939
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K11939
都市住民による観光およびレクリエーション行動の空間パターンに関する研究
本研究は行動地理学の立場から、都市居住者が外出型レジャー、すなわち観光およびレクリエーション行動において示す空間移動のパターン(空間パターン)について調査・分析することを目的とする。事例調査は、都市居住者の中でも余暇時間が長く、レジャーの形態が多様であることが予測される東京の大学生を対象に実施した。東京大都市圏にはレジャーの場となる地域や施設が豊富であり、居住者は必然それらと接する機械も多い。とりわけそれらを享受し易い立場にある大学生のレジャーの実態を調査することは、レジャーによる空間パターンの多様性を解析する上においても重要な意味を持つと考えた。また、一般的な事例として以前より蓄積してきた中年層に対する実態調査のデータとの比較を試みることにより、その特殊性を浮き彫りにすることも可能である。事例調査では外出型レジャーの実態に関する調査と題して、日本大学文理学部における2年生以上の学生に対してアンケートを実施した。アンケートでは習い事や飲み屋に行くこと、ゲームなど日常的な行動の範疇に入るレジャーについてはそれぞれの回数や目的地を回答させ、非日常的な行動の範疇に入る旅行・行楽については目的地ごとに時期や主要目的、同行者等を回答させる形式とした。現在、得られたデータの集計中であるが、その集計データに基づいて大学生の日常的および非日常的な行動それぞれの空間パターンを分析し、さらに両者を総合することで外出型レジャー全般によって生じる空間パターンの重層的な構造を明らかにする。また、アンケートでは回答者の居住地や授業・アルバイト時間、レジャーの経費等の情報についても回答を得ており、これらのクロス集計によって行動者の属性の差異によって生じる空間パターンの相違についても分析を試みたい。本研究は行動地理学の立場から、都市居住者が外出型レジャー、すなわち観光およびレクリエーション行動において示す空間移動のパターン(空間パターン)について調査・分析することを目的とする。事例調査は、都市居住者の中でも余暇時間が長く、レジャーの形態が多様であることが予測される東京の大学生を対象に実施した。東京大都市圏にはレジャーの場となる地域や施設が豊富であり、居住者は必然それらと接する機械も多い。とりわけそれらを享受し易い立場にある大学生のレジャーの実態を調査することは、レジャーによる空間パターンの多様性を解析する上においても重要な意味を持つと考えた。また、一般的な事例として以前より蓄積してきた中年層に対する実態調査のデータとの比較を試みることにより、その特殊性を浮き彫りにすることも可能である。事例調査では外出型レジャーの実態に関する調査と題して、日本大学文理学部における2年生以上の学生に対してアンケートを実施した。アンケートでは習い事や飲み屋に行くこと、ゲームなど日常的な行動の範疇に入るレジャーについてはそれぞれの回数や目的地を回答させ、非日常的な行動の範疇に入る旅行・行楽については目的地ごとに時期や主要目的、同行者等を回答させる形式とした。現在、得られたデータの集計中であるが、その集計データに基づいて大学生の日常的および非日常的な行動それぞれの空間パターンを分析し、さらに両者を総合することで外出型レジャー全般によって生じる空間パターンの重層的な構造を明らかにする。また、アンケートでは回答者の居住地や授業・アルバイト時間、レジャーの経費等の情報についても回答を得ており、これらのクロス集計によって行動者の属性の差異によって生じる空間パターンの相違についても分析を試みたい。
KAKENHI-PROJECT-06780140
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06780140
糖鎖による小胞体品質管理の分子機構と生理機能制御
本研究では,出芽酵母とシロイヌナズナを用いた分子遺伝学的や生化学的解析によって,糖鎖修飾を介した小胞体品質管理の分子機構を明らかにすることを目的とした。出芽酵母を用いた解析では,異常糖タンパク質小胞体関連分解(ERAD)において基質認識にあずかるMnllpが,protein disulfide isomerase(PDI)とジスルフィド結合を介して相互作用することを見いだした。そして,Mnllp-PDI相互作用がERADに必要であることを明らかにした。また,ERADの基質認識におけるタンパク質の高次構造異常と糖鎖構造との関連を解析するための新規ERAD基質として,出芽酵母における代表的なERAD基質であるCPY*を改変してCPYのユニットがタンデムにつながったCPY*-CPYとCPY*-CPY*を開発した。これら新たに構築した基質を用いた解析によって,分解シグナルとなるN結合型糖鎖修飾が高次構造が異常となるドメインに存在することが,ERADにおける基質認識に必要であることが示された。シロイヌナズナを用いた解析では,動物細胞において糖鎖を介した小胞体品質管理にあずかる因子であるcalnexin/calreticulin,EDEM,OS9等のシロイヌナズナホモログに関する欠失変異体を作製した。この結果,AtCNX1とAtCRT1を共に欠損すると生育が遅延することを示唆する結果を得た。また,植物細胞における新規ERAD基質としてAtCPY*-GFPを開発し,出芽酵母とは異なり,AtCPY*-GFPのERADには糖鎖修飾が必要ないことを示した。本研究では,出芽酵母とシロイヌナズナを用いた分子遺伝学的や生化学的解析によって,糖鎖修飾を介した小胞体品質管理の分子機構を明らかにすることを目的とした。出芽酵母を用いた解析では,異常糖タンパク質小胞体関連分解(ERAD)において基質認識にあずかるMnllpが,protein disulfide isomerase(PDI)とジスルフィド結合を介して相互作用することを見いだした。そして,Mnllp-PDI相互作用がERADに必要であることを明らかにした。また,ERADの基質認識におけるタンパク質の高次構造異常と糖鎖構造との関連を解析するための新規ERAD基質として,出芽酵母における代表的なERAD基質であるCPY*を改変してCPYのユニットがタンデムにつながったCPY*-CPYとCPY*-CPY*を開発した。これら新たに構築した基質を用いた解析によって,分解シグナルとなるN結合型糖鎖修飾が高次構造が異常となるドメインに存在することが,ERADにおける基質認識に必要であることが示された。シロイヌナズナを用いた解析では,動物細胞において糖鎖を介した小胞体品質管理にあずかる因子であるcalnexin/calreticulin,EDEM,OS9等のシロイヌナズナホモログに関する欠失変異体を作製した。この結果,AtCNX1とAtCRT1を共に欠損すると生育が遅延することを示唆する結果を得た。また,植物細胞における新規ERAD基質としてAtCPY*-GFPを開発し,出芽酵母とは異なり,AtCPY*-GFPのERADには糖鎖修飾が必要ないことを示した。小胞体は,分泌経路におけるタンパク質の合成の場であると共に,品質管理の場となっている。近年,小胞体の分子シャペロンに加えて,タンパク質の糖鎖修飾が小胞体品質管理において重要な役割をはたしていることが明らかになってきた。本研究では,出芽酵母とシロイヌナズナを用いた分子遺伝学的や生化学的解析によって,糖鎖修飾を介した小胞体品質管理の分子機構を明らかにすることを目的とする。本年度は,酵母小胞体における異常糖タンパク質の分解(ERAD)にあずかるマンノシダーゼファミリーのタンパク質Mnl1pの複合体形成と基質認識の解析の第一歩として,Mnl1pの膜結合性の解析を行った。その結果,Mnl1pはN末端にシグナル配列を持っており,小胞体内腔側の可溶性タンパク質であることが示された。本研究ではまた,シロイヌナズナの小胞体マンノシダーゼファミリーの解析も行った,シロイヌナズナゲノム中に見いだされた小胞体マンノシダーゼファミリーの遺伝子5種のcDNAとGFPとの融合遺伝子を構築し,シロイヌナズナ培養細胞を用いた一過的発現実験によってその局在を調べた。その結果,3種は小胞体に,2種はゴルジ体に局在していることを示唆する結果が得られた。これらタンパク質の機能を明らかにするため,T-DNA挿入による欠失変異株の作製も行った。現在までに,すべての遺伝子で破壊株が得られており,これら単独の欠損はシロイヌナズナの生育に影響を与えないことが示された。本研究は,出芽酵母とシロイヌナズナを用いた分子遺伝学的や生化学的解析によって,糖鎖修飾を介した小胞体品質管理の分子機構を明らかにすることを目的としている.酵母小胞体において異常糖タンパク質の小胞体関連分解(ERAD)にあずかる,マンノシダーゼファミリーのタンパク質Mnl1pが,protein disulfide isomerase (PDI)と相互作用することが明らかとなった.変異株を用いた解析によって,Mnl1pとPDIとの相互作用はS-S結合によるものとS-S結合非依存のものの2つがあることが示された.また,PDIとの相互作用に欠損をもつMnl1p変異株がERADに欠損を示すことから,Mnl1pとPDIとの相互作用がERADに必要であることが示唆された.
KAKENHI-PROJECT-17370067
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17370067
糖鎖による小胞体品質管理の分子機構と生理機能制御
シロイヌナズナを用いた解析では,糖鎖を認識する小胞体の分子シャペロンであるカルネキシンとカルレティキュリンに関する変異株の作製も行った.シロイヌナズナゲノム中には,2つのカルネキシン遺伝子(AtCNX1とAtCNX2)と3つのカルネキシン(AtCRT1,AtCRT2,AtCRT3)が存在する.これらの単独の破壊株は致死とはならず,また,AtCNX1とAtCNX2を共に欠損しても致死とはならない.一方,AtCNX1とAtCRT1を共に欠損すると生育が遅延することを示唆する結果を得た.また,シロイヌナズナにおける新規ERAD基質としてAtCPY^*-GFPを構築し,これがERAD経路で分解されることを示した.一方出芽酵母とは異なり,AtCPY^*-GFPのERADにはN結合型糖鎖修飾は必要ないことが示された.本研究は、出芽酵母とシロイヌナズナを用いた分子遺伝学的・生化学的解析によって、糖鎖修飾を介した小胞体品質管理の分子機構を明らかにすることを目的としている。前年度までに、酵母小胞体において異常糖タンパク質の小胞体関連分解(ERAD)にあずかるマンノシダーゼMnl1pが、protein disulfide isomerase (PDI)と相互作用することを明らかにしてきた。本年度は、PDIとの相互作用に欠損を持つMnl1p変異体の解析を行い、Mnl1pとPDIとの相互作用はMnl1pの機能発現に必要であることを示した。また、出芽酵母には4種類のPDIホモログが存在するが、PDIとは異なり、これらはMnl1pとは相互作用しないことが示された。本研究では、ERADにおける基質認識機構を解析するための新規ERAD基質として、出芽酵母の代表的なERAD基質であるCPY*を元にして、CPYのユニットがタンデムにつながったCPY*-CPYとCPY*-CPY*を開発した。そして、CPY*のERADシグナルとなるN結合型糖鎖を除去した変異体を用いた解析によって、ERADシグナルとなるN結合型糖鎖は、高次構造が異常なユニットに存在することが必要であることを示した。シロイヌナズナを用いた解析では、酵母のERADにおいて糖鎖認識に関与すると考えられているYos9pのシロイヌナズナホモログAtOS9と、酵母タンパク質マンノース転移酵素との間で相同性の高いドメインを持つAt2g25110について解析を行った。これらの遺伝子破壊株は生育可能であるとともに、At2g25110が小胞体に局在していることが示された。
KAKENHI-PROJECT-17370067
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17370067
パラメトリックモデルを用いた非ガウス型確率過程の高次統計量の組み合わせによる情報抽出
本研究は先ず、次数の異なった統計量の組み合わせによって非ガウス型確率過程を特徴付るパラメータの推定式表現を理論的に得るため、非ガウス型確率過程をポアソンインパルス列で駆動される線形システムの出力過程、いわゆるショット雑音としてモデル化した。次に、線形システムの出力過程、即ちショット雑音を離散化して離散線形システムを得た後、抽出すべきポアソンインパルス列のパラメータの推定式表現を離散システムのパラメータと離散化過程の2つの異なった次数の統計量の組合せにより得た。なお、統計量の次数は2次以上を用いるものとし、また高次統計量の推定の信頼性を考慮して基本的に次数の低い統計量から順次用いるものとした。具体的には2次と3次、及び2次と4次の統計量を用い、現実から逸脱しない範囲での組合せを考えた。一方、実際的側面では方法の妥当性及び有効性を検証するため、計算機によるモンテカルロシミュレーションを行った。そこでは、非ガウス型確率過程としてポアソンショット雑音のパラメータを離散化過程の異なった次数の統計量の組合せによって推定する問題を取り扱った。その結果、確率過程の周辺分布が平均値を中心に非対称の場合、つまり一般にショット雑音の密度が低い場合には2次と3次の組み合わせが有効であり、また一方対称の場合、つまりショット雑音の密度が高い場合には3次統計量が零に近づくことから、2次と4次の組み合わせが有効となることが示された。他の組み合わせについては今後の課題である。本研究は先ず、次数の異なった統計量の組み合わせによって非ガウス型確率過程を特徴付るパラメータの推定式表現を理論的に得るため、非ガウス型確率過程をポアソンインパルス列で駆動される線形システムの出力過程、いわゆるショット雑音としてモデル化した。次に、線形システムの出力過程、即ちショット雑音を離散化して離散線形システムを得た後、抽出すべきポアソンインパルス列のパラメータの推定式表現を離散システムのパラメータと離散化過程の2つの異なった次数の統計量の組合せにより得た。なお、統計量の次数は2次以上を用いるものとし、また高次統計量の推定の信頼性を考慮して基本的に次数の低い統計量から順次用いるものとした。具体的には2次と3次、及び2次と4次の統計量を用い、現実から逸脱しない範囲での組合せを考えた。一方、実際的側面では方法の妥当性及び有効性を検証するため、計算機によるモンテカルロシミュレーションを行った。そこでは、非ガウス型確率過程としてポアソンショット雑音のパラメータを離散化過程の異なった次数の統計量の組合せによって推定する問題を取り扱った。その結果、確率過程の周辺分布が平均値を中心に非対称の場合、つまり一般にショット雑音の密度が低い場合には2次と3次の組み合わせが有効であり、また一方対称の場合、つまりショット雑音の密度が高い場合には3次統計量が零に近づくことから、2次と4次の組み合わせが有効となることが示された。他の組み合わせについては今後の課題である。
KAKENHI-PROJECT-05780212
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05780212
フランス第三共和政における議会政治史研究-「選出職」と「議会政治」の政治文化-
本年度はまず、昨年度から着手していた研究課題「第三共和政前期(1870-1914年)における議会活動の規範」に引き続き従事し、その成果を雑誌『西洋史学』に投稿した。この論考では、議会制度と活動の変化と、それにともなう議会活動を規定する規範の変遷に着目することで、制度と実践、そして政治文化の三者が相互に弁証法的な関係を結びながら展開していく過程を描き、それを「議員の専門職化」の議論のなかに位置づけた。この研究は当初の計画を一定程度修正してなされたものであるが、それによって、法制度と実際の政治過程から生じた議会優位をその特徴とする従来の「議会共和政」像に対し、むしろ政治文化のレベルで新しい「議会政治の政治文化」をうみだしたことこそ、その特質とする独自の観点をえることができた。続けて本年度の後半には、パリ第1大学近現代史研究所で半年間の在外研究に従事した。渡仏後は、新しい研究課題「第三共和政前期における議員の歴任」に着手した。この課題の目標は、第三共和政で一般的になったとされる「議員の歴任」(一例として、地方議会議員がその後国会議員を務める)という実践を規定した政治文化を明らかにし、それをより広く、政治文化の複合体としての「議会共和政」に位置づけることを目標としている。それにあたり、まず国会と地方議会の法制度を中心とした性格の差異に着目し、かつ南仏ブーシュ=デュ=ローヌ県の議員歴を調査することで、同地における上記の実践の特質を明らかにした。そして同県の県議会で広く議論されたいくつかの問題を軸にすえて考察を進めた。なお、この研究に必要となる史料については、フランス滞在中に史料調査を行い、とくに同県に関する地方行政機関や警察による文書を中心に渉猟した。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。本研究は、「議会共和政」と位置づけられてきたフランス第三共和政の議員に着目し、その議会政治をつかさどる政治文化を明らかにするものである。本年度は、研究計画のうち通時的な側面である議員の政治的経験の問題を前提に、下院における議会活動に焦点をあてた。その際に検討対象としたのは、第三共和政前期において大きな問題となった「常任委員会体制」の導入(1882-1902年)をめぐる議論であった。まずは、それをめぐる言説の分析を行い、この導入をめぐる議論において、議員のキャリア形成が多元的である「古い議会政治の規範」と、一元化された議員のキャリア形成を核とする「新しい議会政治の規範」の存在を確認した。この成果の一部は、「2014年度広島史学研究会大会西洋史部会」にて口頭報告を行った。その後、「常任委員会体制」導入をめぐる議員の投票行動の分析に着手した。その結果、この導入過程は、政体の急進化と、世代交代にともなう議員の民主化を背景とした、「古い議会政治の規範」に対する「新しい議会政治の規範」の弁証法的な形成と浸透の過程であったことを明らかにした。このような一元的なキャリア形成規範の誕生は、議員の民主化、急進化、世代交代を背景とした議員の職業化の発露であったのである。くわえて本年度には、政治家を主体とした日本におけるフランス史の最新の研究に対する書評(『史林』97巻4号)と、数年前に物故したフランス史の大家の代表作に関する小論(『西洋史学』254号)を執筆し、両者とも、本研究の遂行において重要な示唆を受けるものであったと評価している。本年度はまず、昨年度から着手していた研究課題「第三共和政前期(1870-1914年)における議会活動の規範」に引き続き従事し、その成果を雑誌『西洋史学』に投稿した。この論考では、議会制度と活動の変化と、それにともなう議会活動を規定する規範の変遷に着目することで、制度と実践、そして政治文化の三者が相互に弁証法的な関係を結びながら展開していく過程を描き、それを「議員の専門職化」の議論のなかに位置づけた。この研究は当初の計画を一定程度修正してなされたものであるが、それによって、法制度と実際の政治過程から生じた議会優位をその特徴とする従来の「議会共和政」像に対し、むしろ政治文化のレベルで新しい「議会政治の政治文化」をうみだしたことこそ、その特質とする独自の観点をえることができた。続けて本年度の後半には、パリ第1大学近現代史研究所で半年間の在外研究に従事した。渡仏後は、新しい研究課題「第三共和政前期における議員の歴任」に着手した。この課題の目標は、第三共和政で一般的になったとされる「議員の歴任」(一例として、地方議会議員がその後国会議員を務める)という実践を規定した政治文化を明らかにし、それをより広く、政治文化の複合体としての「議会共和政」に位置づけることを目標としている。それにあたり、まず国会と地方議会の法制度を中心とした性格の差異に着目し、かつ南仏ブーシュ=デュ=ローヌ県の議員歴を調査することで、同地における上記の実践の特質を明らかにした。そして同県の県議会で広く議論されたいくつかの問題を軸にすえて考察を進めた。なお、この研究に必要となる史料については、フランス滞在中に史料調査を行い、とくに同県に関する地方行政機関や警察による文書を中心に渉猟した。本年度は、当初計画していた方策をやや変更して対象に迫ることとなった。
KAKENHI-PROJECT-14J03811
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J03811
フランス第三共和政における議会政治史研究-「選出職」と「議会政治」の政治文化-
そのため、史料調査およびその読解に予定以上に時間を割くこととなり、結果として研究成果を論文のかたちで公表するという本年度の最大の課題を達成することができなかった。そのため、「やや遅れている」と評価する。27年度が最終年度であるため、記入しない。まずは、本年度の遅れを取り戻すべく、研究成果を論文にまとめることから着手する。その後、フランスでの在外研究に従事し、これまでの国会議員の研究から離れて、地方議会議員に着目する。地方議会議員に関連する諸史料の調査と読解を進めることが、当面の課題となろう。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-14J03811
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J03811
方射光X線による高圧下での含水珪酸塩マグマの構造の解明
本年度も高エネルギー物理学研究所の大型放射光施設(PF-AR)の高輝度X線を利用して、高圧下での含水珪酸塩メルトの回折パターンを収集した。特に、昨年度から開発・改良した単結晶ダイヤモンドのスリーブとPtの蓋をカプセルとして使うことにより、含水メルトの封入を完璧に行い、効率的にX線回折パターンを収集した。このセルではX線の通過経路には圧媒体のボロンエポキシとヒーターであるグラファイト、それにダイヤモンドスリーブという比較的原子番号の小さい物質からなるものを配置しているため、非常に効率的に回折パターンの収集が可能である。このようなセルの改良により、世界で初めて含水メルトで、メルトの構造を求めるのに絶え得るX線回折パターンの収集に成功したといえる。実験は、MgO-SiO_2-H_2O系でMg/Si比を1.0,1,5,2.0と変化させたもので行った。圧力範囲は3-5 GPaである。結果は、特に干渉関数から得られる中距離構造を反映していると考えられるFSDP(first sharp diffraction peak)が系統的に組成、圧力で変化している様子が観察され、これはSiO_2ネットワークの分断の様子を反映していると考えられる。これ以外の情報についても現在解析中である。このように、メルトの構造解析に耐えうるかなり質のいいデータ収集に成功したが、その反面、かなりの確率で実験回収後ダイヤモンドにクラックが入っており、この点はまだセル等をさらに改善する必要がある。本研究の成果は2006年秋に開催されたアメリカ地球物理学会(AGU)で発表してきたとともに、現在論文執筆も進めている。上記の研究以外にもいくつかの研究に携わり、その投稿論文は研究発表欄に示している。本年度は高輝度光科学研究センター大型放射光施設(SPring-8)の高輝度X線を利用して、高圧下での含水珪酸塩メルトの回折パターンを収集することを試みた。含水メルトであるため、試料は金属カプセル等に封入する必要があるが、一般的に使っている貴金属カプセル(Pt,Au)ではX線の吸収が大きく回折線を見ることができない。今回はAgPdのカプセルを採用し、さらに肉厚を従来の半分の50mmにすることにより、解析に耐えうるパターンをとることに成功した。今回は8GPa付近、1750Kで2種類の組成(M/Si=2.0,1.8)の含水マグネシウム珪酸塩メルトの測定を行い、解析の結果、両者でSi-Siの距離が大きく異なることを見いだした。これはSiO_4四面体の連結構造がそれぞれのメルトで異なっていることを意味する。また、比較対象として、MgSiO_3ガラスの実験も行った。常温常圧の実験では以前に報告されているMgSiO_3メルトの結果と比較した結果_ほぼ同様の解析結果が得られ、今回の測定、及び解析が妥当なものであることが示された。また、14GPaまで加圧、その後600Kまで温度上昇した結果、SiO_4四面体距離には大きな変化が見られなかったが、Si-Si距離に関しては大きな変化が見られ、四面体どうしの結合角が圧縮により減少する様子が観察された。今後はさらに組成・圧力を変化させて、メルトの構造を観察していく予定である。上記の研究以外にも共同研究としていくつかの研究に携わり、その投稿論文は研究発表欄に示してある。本年度は高エネルギー物理学研究所の大型放射光施設(PF-AR)の高輝度X線を利用して、高圧下での含水珪酸塩メルトの回折パターンを収集した。特に、この実験では含水メルトであるため試料を完全に封入する必要があり、今回は単結晶ダイヤモンドのスリーブとPtの蓋を使うことにより、効率的にX線回折パターンを収集することを試みた。このカプセルでは、X線の通過部分はダイヤモンドだけで、上下のX線に対して不必要な部分にはPtを用いている。結果は良好で、以前のAgPd(貴金属は含水試料の封入材としては非常に優れており、またその中で比較的X線吸収効率の小さいものとして採用)をカプセルとして使った実験と比較して、収集時間は3分の1程度に短縮でき、かつ回折線もカプセルが単結晶ダイヤモンドであるため、非常にきれいなプロファイルが得られるようになった。また、以前のAgPdでは融点が低く、含水珪酸塩メルトの融点に比べて少し高いだけであり、実験に困難を要したが、この点はダイヤモンド及びPtはAgPdより十分融点が高く、実験の成功確率も格段に改善された。ただ、単結晶ダイヤモンドスリーブは高価であり、そのため実験ごとに回収して再利用する必要があるが、かなりの確率で実験後ダイヤモンドにクラックが入っており、この点はセル等をさらに改善する必要がある。またこれに関係した研究として、MgSiO_3組成の含水メルトの熔融関係をマントル遷移層に相当する13-18GPaの条件下で明らかにし、この条件下でMgSiO_3成分は非調和融解をし、リキダス相としてSiO_2 stishoviteを晶出することを明らかにした。このことはマントル遷移層での融解に水が加われば、非常にMgO成分に富むマグマに分化していくことを示している。上記の研究以外にもいくつかの研究に携わり、その投稿論文は研究発表欄に示している。本年度も高エネルギー物理学研究所の大型放射光施設(PF-AR)の高輝度X線を利用して、高圧下での含水珪酸塩メルトの回折パターンを収集した。
KAKENHI-PROJECT-15654074
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15654074
方射光X線による高圧下での含水珪酸塩マグマの構造の解明
特に、昨年度から開発・改良した単結晶ダイヤモンドのスリーブとPtの蓋をカプセルとして使うことにより、含水メルトの封入を完璧に行い、効率的にX線回折パターンを収集した。このセルではX線の通過経路には圧媒体のボロンエポキシとヒーターであるグラファイト、それにダイヤモンドスリーブという比較的原子番号の小さい物質からなるものを配置しているため、非常に効率的に回折パターンの収集が可能である。このようなセルの改良により、世界で初めて含水メルトで、メルトの構造を求めるのに絶え得るX線回折パターンの収集に成功したといえる。実験は、MgO-SiO_2-H_2O系でMg/Si比を1.0,1,5,2.0と変化させたもので行った。圧力範囲は3-5 GPaである。結果は、特に干渉関数から得られる中距離構造を反映していると考えられるFSDP(first sharp diffraction peak)が系統的に組成、圧力で変化している様子が観察され、これはSiO_2ネットワークの分断の様子を反映していると考えられる。これ以外の情報についても現在解析中である。このように、メルトの構造解析に耐えうるかなり質のいいデータ収集に成功したが、その反面、かなりの確率で実験回収後ダイヤモンドにクラックが入っており、この点はまだセル等をさらに改善する必要がある。本研究の成果は2006年秋に開催されたアメリカ地球物理学会(AGU)で発表してきたとともに、現在論文執筆も進めている。上記の研究以外にもいくつかの研究に携わり、その投稿論文は研究発表欄に示している。
KAKENHI-PROJECT-15654074
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15654074
20世紀の芸術表象における〈演劇性〉についての総合的研究
1.本研究の目的のひとつは、〈演劇性〉という概念を鍛え直すことを通じて、20世紀の芸術表象を総合性に理解することを可能にするような理論的モデルを構築することにあったが、その目的は、なによりも本来の演劇ジャンルにおける(1)メタ・シアタ-空間の理論化、(2)観客や受け手の存在を含んだ受容空間のモデル化という二つの作業を通じて充分に実現されたと言える。とりわけ、こうした理論化作業が、たえず具体的な演劇作品(『天守物語』、『ハムレット』、『かもめ』)の実践的な分析へとフィ-ドバックされ、言わば現場において検討されたことの意味はきわめて大きい。こうした実践的な分析には、ヴィデオ機作などを用いた映像的分析が実験的に行われ、そうした技術的な分析方法論の確立に関してもこれまでにない知見が得られた。2.また、この理論的な作業と平行して、そこで得られた知見を様々な分野の芸術表象に実際に適用して分析を行い、20世紀芸術の演劇的な本質を明らかにする作業が行われた。音楽、映像、文学、美術、パフォ-マンスなど多くのジャンルが取り上げられ、各ジャンルの個別性と同時に、それを超えた一般的な認識論ー実践論的な枠組みが抽出された。その結果として、〈演劇性〉のモデルと不可分に連接した問題としての言語表象の(演劇性〉という新しい問題圏が浮上してきた。(演劇性〉のモデルのいっそう深化のために探索しなければならない地平が、言語と身体という二重の問題圏の重なりのうちに垣間見られたことは、将来の研究の発展への大きな展望となった。3.以上により、本研究は、表象文化論という視座からの総合的、相関的な芸術研究の豊かな可能性を開示するという大きな成果をもたらしたと総括することができる。1.本研究の目的のひとつは、〈演劇性〉という概念を鍛え直すことを通じて、20世紀の芸術表象を総合性に理解することを可能にするような理論的モデルを構築することにあったが、その目的は、なによりも本来の演劇ジャンルにおける(1)メタ・シアタ-空間の理論化、(2)観客や受け手の存在を含んだ受容空間のモデル化という二つの作業を通じて充分に実現されたと言える。とりわけ、こうした理論化作業が、たえず具体的な演劇作品(『天守物語』、『ハムレット』、『かもめ』)の実践的な分析へとフィ-ドバックされ、言わば現場において検討されたことの意味はきわめて大きい。こうした実践的な分析には、ヴィデオ機作などを用いた映像的分析が実験的に行われ、そうした技術的な分析方法論の確立に関してもこれまでにない知見が得られた。2.また、この理論的な作業と平行して、そこで得られた知見を様々な分野の芸術表象に実際に適用して分析を行い、20世紀芸術の演劇的な本質を明らかにする作業が行われた。音楽、映像、文学、美術、パフォ-マンスなど多くのジャンルが取り上げられ、各ジャンルの個別性と同時に、それを超えた一般的な認識論ー実践論的な枠組みが抽出された。その結果として、〈演劇性〉のモデルと不可分に連接した問題としての言語表象の(演劇性〉という新しい問題圏が浮上してきた。(演劇性〉のモデルのいっそう深化のために探索しなければならない地平が、言語と身体という二重の問題圏の重なりのうちに垣間見られたことは、将来の研究の発展への大きな展望となった。3.以上により、本研究は、表象文化論という視座からの総合的、相関的な芸術研究の豊かな可能性を開示するという大きな成果をもたらしたと総括することができる。1.本年度の前半期は、理論グル-プを中心として月23回の研究会を集中的に行い、表象理論一般の観点から<演劇性>の理論モデル構築の作業に取り組んだが、20世紀芸術の美術、音楽、演劇、映像、文学の各ジャンルの前衛芸術運動において、それまでの19世紀的な<演劇性>の枠組みを大きく打ち破る<演劇性>が確立されていることを、具体的な作品に即して実証した。同時に、その新しい<演劇性>における観客や受け手の存在の重要性が確認され、その次元を含んだ新しいモデルが構築されつつある。2.後半期においては、本科学研究費によって購入したヴィデオ機材一式による演劇作品の映像的分析が試行され、とりわけ当研究グル-プの一人(渡邊)による泉鏡花『天守物語』の演劇空間の創出を、稽古から上演へと至る一貫した変容のプロセスとして記録・分析する作業が行われ、その結果<演劇性>とそれを生み出す時代との表象的な関連の分析の方法論が確立された。3.また、以上の全体的な作業と平行して、定例の研究会を通じて個別的な領域における研究も行われ、多くの成果を得たが、そのうちの主なものをあげるとすれば、(1)音楽--エリック・サティ、現代作曲家近藤譲の音楽における演劇的構造の解明、(2)文学--フロ-ベルの小説の構造についてのフランス人研究家との交流、ロシア・東欧圏の現代小説の表象空間の分析、(3)美術--現代美術のモデルニテ(現代性)と演劇性との関連の解明、現代作家荒川修作の作品の演劇的構造の解明、(4)舞台芸術--ベケットの研究、『タンホイザ-』、『ハムレット』などの比較構造的研究、(5)映像--成瀬巳喜男と映画美術の研究、などがある。第2年次は、シェイクスピアの『ハムレット』をめぐって、「メタ・シアタ-」の構造によって明らかになる「演劇性」についての共同研究を行った。
KAKENHI-PROJECT-01450006
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01450006
20世紀の芸術表象における〈演劇性〉についての総合的研究
その主要なテ-マは、1.「メタ・シアタ-」の言説構性、2.「演劇についての演劇」の歴史的定位、3.「メタ構造」と20世紀の前衛、4.前衛とサブ・カルチャ-、5.映画における「バックステ-ジ物」、6.引用のパフォ-マンス、7.『ハムレット』における劇と演劇性、であり、これらの研究を通じて、権力の劇における「演劇性」の構造と作用を分析した。20世紀の前衛芸術において、「物語」の空無化と「言説」の脱構築がすすんだ後で、それまでは、空疎な物語=劇と因習的な表現=言語とみなされてきた「19世紀型」の音楽劇が、「劇場芸術」として新たに見直され、優れた舞台演出家の手によって再生したのは、「劇」の真実と「演劇」の虚構といった、従来は無批判に受け入れられてきた考えそのものの修正を迫っているものである。この観点から、19世紀後半から、20世紀初頭の音楽劇の現代における演奏・演出・受容が、本研究の一つのコア-となった。「演劇性」にとって「演技」や「演技者=俳優」の問題は基底的であるが、その意味でも、チェホフの『かもめ』は、「演劇についての演劇」の問題群そのものと言える。特に「演劇性」をめぐる考察において、従来ともすれば見落とされがちな「言語」の問題が、「劇中劇」の言語表象とその劇的・演劇的作用、この戯曲のモデルとも言うべき「ヴォ-ドヴィル構造」、劇中で話題となる「文学論」などを通じて明らかになったのは、大きな収穫であった。『ハムレット』『かもめ』の映像資料作成に際して、舞台の映像的記録に関する従来の探究が理論的にも一歩進められた。
KAKENHI-PROJECT-01450006
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01450006
中国の対ASEAN文化外交の実像とその政治社会的な影響に関する調査研究
本研究は、2000年代後半以降の中国の文化外交の展開をふまえ、ASEAN諸国のうちタイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア、ベトナム、カンボジア、ミャンマー7カ国における中国の文化外交の実態とその影響について現地研究者の協力を得て調査した。とくに「孔子学院」開設をめぐる背景や運営とその影響等を検討した。総括として、これらの諸国では「孔子学院」の制度化の状況も受講生の属性も異なり、受講者数ではタイやフィリピンを除き盛況とはいえないが、マレーシアの場合は組織横断的に活動している。「孔子学院」とは別に、中国の文化外交は地方政府を含め多面的に進展しており、若い世代に肯定的な対中認識が醸成されている。本研究は、平成25年度に中国の文化外交について先行研究を検討する一方、ASEAN諸国におけるその近年の動向について調査した。首藤は、フィリピン、ベトナム、タイ、マレーシア、ミャンマー、インドネシアにおける予備調査をとりまとめ、毛利は中国の文化外交の展開について、中国側の近年の研究動向を調べた。また、平成26年1月24日に筑波大学において、本科研は青山瑠妙教授(早稲田大学)による「中国のアジア外交とパブリック・ディプロマシー」と題する公開セミナーを主催した。上記の各国別調査報告をまとめたところ、いずれも独自性と発展性のある視点が指摘されており、平成26年度にさらに調査分析を進めていけば、新しい成果が出せる可能性が大きいと期待できる。なお、文化外交の分析対象について、タイとマレーシアのペーパーは、実質的に孔子学院を通した中国の文化外交の展開を対象としているが、フィリピンのペーパーは、中国の春節祝賀、CCTV等のメディア、大学間の提携交流(とくに孔子学院)、研究者レベルの交流、中国とフィリピンの地方都市間の交流等も対象としてとりあげている。また、ベトナムのペーパーは、政府間交流や共産党間交流よりも、民間交流関係のほうが良好であること、中国の文化的ソフトパワーは、貿易、メディアおよび観光産業を通してベトナムに影響を及ぼしていると指摘しており、興味深い。平成26年度の研究では、全体の焦点をどの程度収斂させるかをさらに検討して、文化外交の手段とその内容について、より精緻な分析枠組を共有する必要がある。本研究は平成26年度中に、中国の文化外交の近年の顕著な動向について調査を進め、12月に中間報告会を開催した。首藤は、昨年度に引き続き、ベトナム、タイ、マレーシア、ミャンマー、インドネシアにおける海外研究協力者との連絡調整を行い、また平成26年8月には、インドネシアにおいて華人系団体の中国文化保持と伝播に関する役割について調査した。毛利は中国の文化外交の展開について、中国側の研究動向を調べるとともに、中国の文化外交、広報外交戦略の政策的展開について資料を収集した。こうした研究成果をもとに、平成26年12月23日にチュラロンコン大学(タイ、バンコク)において、本科研の共同研究者のうち、ミャンマー担当者が欠席した以外は、全員が参加して公開セミナーを行った。首藤が本研究の目的と研究対象の構成について説明し、次に毛利が中国の対ASEAN文化外交政策の展開について報告を行い、続けて、フィリピン、マレーシア、ベトナム、インドネシア、タイにおける中国の文化外交の近年の展開、およびそれぞれの社会での認識についての報告が行われた。それぞれの報告からは、中国のASEAN諸国に対する文化外交の具体的な展開が顕著になっていること、それは政府間の交流促進協定等公的な関係の進展による面もあるが、むしろ商業的関係、メディアによる広報活動、さらにそれぞれの社会に根差す華人系団体が進める中国文化やメディア活動があることが具体的に指摘された。中国の対ASEAN文化外交が今後一層本格的になると予想されるが、ASEAN各国社会の内部において、こうしたさまざまな認識があることを抽出できたことは興味深い。こうした視点を今後さらに精緻化していく必要がある。本研究は、2000年代後半から中国が公共外交の一環として文化外交を展開するようになったことをふまえ、ASEAN諸国のうちタイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア、ベトナム、カンボジア、ミャンマー7カ国を対象に中国の文化外交の状況とその社会経済的な影響について、それぞれ現地研究者の協力を得て調査した。とくに、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシアにおいては、「孔子学院」開設をめぐる背景や運営とその影響等について現地調査を行った。ベトナムとミャンマーには「孔子学院」がないため、より広範な中国の文化交流の状況とその影響について考察した。総括として、件数や規模からみて中国が最も力を入れているのはタイ(14件)であり、次にインドネシア(6件)とフィリピン(4件)、そしてマレーシアとカンボジア(各1件)である。受講生数ではタイとフィリピンが盛況であるが、マレーシアやインドネシア(3件を調査)では、他大学や政府機関、国軍機関等にも「出向」しており、現地中国語新聞の報道も多く多面的に活動している。受講生の多くは非中国系であり、中国系受講生が多いタイやカンボジアとは異なる。一方、ベトナムは歴史的に中国文化を受容し適応しており、中国文化はすでに内部化されている。そして、共産党間の関係で中国における官僚の研修等が行われている。カンボジアの場合、「孔子学院」の機能は限定的である。むしろ、中国からの教育援助や中国系工場、中国製品を通して中国文化に接することが圧倒的に多い。さらに、これらの諸国で、「孔子学院」を開設したのと並行して、領事館の新設や地方政府レベルでの文化交流なども積極的に進めてきた。こうした近年の文化外交の多面的な進展のなかで、ASEAN諸国の若い世代には中国に肯定的な認識が醸成されている。それは中国の文化外交の成果ともいえるが、しかし「孔子学院」のみの成果だとはいえない。
KAKENHI-PROJECT-25301018
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25301018
中国の対ASEAN文化外交の実像とその政治社会的な影響に関する調査研究
本研究は、2000年代後半以降の中国の文化外交の展開をふまえ、ASEAN諸国のうちタイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア、ベトナム、カンボジア、ミャンマー7カ国における中国の文化外交の実態とその影響について現地研究者の協力を得て調査した。とくに「孔子学院」開設をめぐる背景や運営とその影響等を検討した。総括として、これらの諸国では「孔子学院」の制度化の状況も受講生の属性も異なり、受講者数ではタイやフィリピンを除き盛況とはいえないが、マレーシアの場合は組織横断的に活動している。「孔子学院」とは別に、中国の文化外交は地方政府を含め多面的に進展しており、若い世代に肯定的な対中認識が醸成されている。中国の対ASEAN文化外交に関する基本的な動向は、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム、マレーシアについては、ほぼ把握できた段階にある。ただ、ミャンマーに関する研究がまだ進んでいないため、この点について最終年度には成果を出せるようにしたい。国際関係論平成27年度は最終年度であるため、中国側からの対ASEAN文化外交戦略について、その外交政策の形成と展開についてまとめる一方、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム、マレーシア,ミャンマーにおいて中国の文化外交の顕著な動向はどのようなものであり、それは現地社会でどのように受容されているか、もしくは警戒されているかについて、ASEAN諸国側の認識をまとめる。当初想定していた対象国のうち、カンボジアについて、現地の研究者をまだ見出していない。カンボジアでの調査をどのように進めるか、2年目には具体的に決める必要がある。その他の国については、それぞれの現地調査が独自の視点を提供しており、2年目の研究に期待が持てる。第1の理由は、ミャンマーでの現地調査に充てていた旅費が平成26年度は未使用のままになったことである。第2の理由は、研究会合を当初シンガポールで予定したが、ホテル代等が高すぎたため、バンコクのチュラロンコン大学で開催した。それにより、バンコクでのホテル代が、当初の予算より少なくて済んだことがある。第3に、チュラロンコン大学での研究会合に、ミャンマーの調査報告を担当する協力者が参加できなかったことによる予算の軽減があった。2年目の研究では、各国調査の焦点をいかに収斂させていくか、とくに次の2点について明確な指針を検討する必要がある。1.中国の文化外交の分析レベルについて、国によって、中国との政府間、非政府間関係がそれぞれに多様な蓄積をもつ社会(フィリピン、インドネシアおよびタイ)もあれば、そうした多様性が乏しい社会もあり、それらの諸国間に顕著な分極化がみられる。それは社会の実態を反映しているともいえるが、本研究の分析枠組については、各国調査の分析にどの程度まで共通の枠組みを設けるか、検討する必要がある。2.分析の対象は、文化外交の手段・ツールだけでなく、内容についても必要である。
KAKENHI-PROJECT-25301018
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25301018
歯科医院の心理的敷居の高さと治療に対する不安の動態解析
歯科の治療を希望する患者は、治療に対する不安などの理由によって歯科医院に通うことを少なからず躊躇しているはずである。その緊張の様子を理解することが、歯科医師と患者との良好な関係を築くために必要ではないかと考えた。本研究では、様々なストレスを和らげる為に分泌されるコルチコイドが、唾液にも現れることを利用して、患者が感じているストレスを定量しようと試みた。この結果、初診時にはかなり強い緊張を強いられているが、通院経験を重ねることによって次第に軽減されることが明らかになった。続いて治療の際の緊張、不安、痛みなどに依るストレスを、治療後に採取した唾液の分析によって知ることができるか調べてみた。また、ストレスの大きさによって診療の項目を分類することができるのではないかと考えた。しかし、治療後に採取した唾液中には極端なコルチコイドの増加は認められなかった。血圧や心拍数の測定によって、患者は治療中にかなりのストレスを感じていることは明らかである。しかし、そのストレスの大きさは積算されるのではなく、短い時間で変化していることが判明した。そのため、診療後は安堵感によってストレスが軽減されているようである。診療後にストレスが検出されなくても、診療中にストレスを感じているのであれば、それを比較的容易に認められるような指標を探した。その結果、呼吸の深さが指尖脈波によって検出したストレスの変動と非常に良く一致していることが分かった。歯科の治療を希望する患者は、治療に対する不安などの理由によって歯科医院に通うことを少なからず躊躇しているはずである。その緊張の様子を理解することが、歯科医師と患者との良好な関係を築くために必要ではないかと考えた。本研究では、様々なストレスを和らげる為に分泌されるコルチコイドが、唾液にも現れることを利用して、患者が感じているストレスを定量しようと試みた。この結果、初診時にはかなり強い緊張を強いられているが、通院経験を重ねることによって次第に軽減されることが明らかになった。続いて治療の際の緊張、不安、痛みなどに依るストレスを、治療後に採取した唾液の分析によって知ることができるか調べてみた。また、ストレスの大きさによって診療の項目を分類することができるのではないかと考えた。しかし、治療後に採取した唾液中には極端なコルチコイドの増加は認められなかった。血圧や心拍数の測定によって、患者は治療中にかなりのストレスを感じていることは明らかである。しかし、そのストレスの大きさは積算されるのではなく、短い時間で変化していることが判明した。そのため、診療後は安堵感によってストレスが軽減されているようである。診療後にストレスが検出されなくても、診療中にストレスを感じているのであれば、それを比較的容易に認められるような指標を探した。その結果、呼吸の深さが指尖脈波によって検出したストレスの変動と非常に良く一致していることが分かった。一般のスポーツグループの協力を得て、クレペリン検査による心理的負荷を加えることによる唾液中のコルチコステロン量の変動の大きさが一日のうちで異なるかどうかを検討した。この結果、午前と午後で変動量に違いがあることが示唆された。そこで歯科病院の初診来院患者を被験者とする研究を、午前に限って実施することにした。患者の不安の大きさを予測するための心理テスト様質問用紙を作成し、初診時に実施される問診と一緒に回答を依頼した。同時に唾液を採取し、コルチコステロン濃度を測定した。現在、この測定結果と心理テストの質問項目との間の関係を解析中である。また、多要素心電計を導入し、心電図のベースラインを読みとることによってより的確に心理的不安を読みとる試みを、既にサンプリングに協力してもらっている患者について実施した。この研究では血中の生理活性物質の測定も併せて実施しており、この結果の解析も進行中である。これらの結果を基に、いくつかの要素を組み合わせ、次年度の測定に活用していきたいと考えている。日本大学歯科病院と一部の開業医院の通院患者に協力を求め、通院の度に唾液を採取した。途中で診療が中断するケースなどがあって、当初の計画通りの採取には至らなかったが、これらの試料は一括して抽出作業を済ませ、現在は含有コルチコステロンの定量とデータ整理に移っている。また、一部の患者については診療中の血圧や心拍数等の変化を記録し、唾液で評価したストレスとの関連を解析中である。この研究においては、患者の視線の動き、まばたき、顔の表情、肩の動き、唾の飲み込みなどを指標にして緊張状態を評価することも試みている。上記の研究とは別に、心理ストレスによる口臭の変化を調べ、クレペリン検査によるストレスが唾液分泌量の減少と口臭の増加をもたらすことを明らかにした。今までの研究において、唾液中のコルチコステロンが測定限界以下の試料も認められたため、クレペリン検査による負荷を与えて、改めて唾液中コルチコステロンを指標としたストレスの評価法について検証してみた。本研究では、患者の不安に起因するストレスを歯科医院に足を運ぶ段階と診療時とに分けて評価しようと試みた。当初、診療終了直後に患者から採取した唾液に含まれるコルチコステロン量を測定することによって、診療時のストレスを評価できるものと考えた。しかし、実際には診療が終了したことによる安堵感が大きく影響することと、診療中のストレスによる反応が比較的早く消失してしまうことから、当初期待したような成果を得ることができなかった。つまり、診療終了時の唾液には診療内容による違いが現れなかった。
KAKENHI-PROJECT-10671952
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10671952
歯科医院の心理的敷居の高さと治療に対する不安の動態解析
一方、多要素心電計を用いることによって、診療中に交感神経と副交感神経の働きをモニターすることができ、診療中の緊張や不安によるストレスの動態を連続して評価することが可能になった。これらの値は個人差が大きく、非常に短時間で変化していくが、測定値の積算などの適当な指標を設定することによって、治療時のストレスを総合的に評価できるものと期待している。本歯科病院は大学付属病院の特徴で初診患者が疾患によってそれぞれの診療科に移っていくため、初診時からの追跡は困難であった。しかし、心身症研究室として診療を担当した患者については、患者の負担を軽減するような配慮をとることが可能と考えている。また、簡単な問診によって、これらのストレスの大きさを予見できるかどうか、引き続き検討を重ねている。
KAKENHI-PROJECT-10671952
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10671952
MPCポリマーで表面改質した脱細胞血管片による小径人工血管の開発
本研究は心筋梗塞など小動脈栓塞症の外科治療に欠かせない移植血管を代用する自家組織化小口径人工血管の開発を目的とする。ラットを使い、生体血管を特殊処理(抗原性を示す細胞を抜き、血液凝固防止)し、移植血管としての有効性を動物実験で検討した。主な成果は、脱細胞自動化装置(血管内と組織外同時に処理液を環流できる)の開発を成功;血管脱細胞法の最適化を確定(ドジシル硫酸ナトリウムSDS環流と超音波洗浄との併用);脱細胞血管の細胞親和性を確認;ヘパリン、MPCポリマーなどで血管内膜抗凝固処理を試したが、移植後長期開存はできなかった。脱細胞血管内膜抗凝固処理の最適化を探るためさらに実験が必要だ。目的:心筋梗塞(冠状動脈梗塞)あるいは他の小動脈梗塞症の治療に必要な高機能人工移植材を開発することを目的とする。同種および異種動物由来の小口径血管組織を素材として、種々の脱細胞化処理とヘパリン浸透による抗凝固処理を行って血管グラフトを試作し、実験動物の血管欠損部位に移植してその機能を評価する。これにより自家血管移植に匹敵する術後開存性を持つ血管グラフトの開発を目指す。方法:1.血管組織片の脱細胞処理の最適化を目指し、超音波処理の併用と全身潅流の有効性を検討する。2.走査電子顕微鏡(SEM)と免疫蛍光染色法を用いて、脱細胞化血管組織片の構造を特定する。3.凍結乾燥とヘパリン浸透処理の抗凝固効果を検討する。4.脱細胞化処理を施した同種と異種の小口径血管移植片をラットの大腿動脈に移植し、自家血管移植を対照として、小口径血管グラフトの有効性を定量的に評価する。成果:SDS洗剤脱細胞法が血管全層の細胞を溶解除去できることを免染で確認した。SEMで滑らかな内膜基底膜構造を確認し、高密度の穿通孔も観察された。しかし、内膜と中膜の間に核残骸の沈着も確認された。術後4週でラット大腿動脈に移植されたサンプルが全例栓塞した。脱細胞法のさらなる効率向上が望ましい、内膜抗凝固措置が不可欠だと示された。超音波処理による脱細胞効率の改善を確認した。全身潅流は腹腔内臓器には有効だが、下肢の動脈には無効だった。ラットの大腿動脈に移植されたサンプルが術後4週で栓塞した、MPC塗布群は血管自身が吸収された。血管或いは他の臓器脱細胞処理自動化装置をメーカーを共同開発した。結論:SDSと超音波洗浄の併用が有効な小動脈脱細胞処理法だと確認できた。径0.81mmの血管では脱細胞血管移植の開存は難しい。MPC塗布が組織吸収反応を惹起するため、脱細胞血管に不適切だと考え、他の血管内膜抗凝固処置法が必要だと判断する。本研究は、小動脈栓塞症(心筋梗塞)、虚血性病変(糖尿病性下肢潰瘍)、皮弁移植などの外科治療に欠かせない自家移植血管を代用する高機能自家組織化小口径人工血管の開発を目的とする。26年度までの成果は:SDSと超音波洗浄の併用は有効な小動脈脱細胞処理法だと確認できた。内外二重循環の自動化脱細胞装置が効率よく脱細胞処理をできた。径0.81mmの血管移植では脱細胞血管の開存が難しい。MPC加工は組織吸収反応を惹起するため、脱細胞血管に不適切だと判断した。今年度次のような内容で研究を実施した:生体由来臓器と組織用自動化脱細胞装置の後期開発(改善)を実施した。脱細胞血管片に細胞培養を試み、細胞親和性を評価した。低分子ヘパリンを脱細胞血管に固定する実験を実施した。低分子ヘパリン固定化脱細胞血管の移植実験を実施した。実験モデルとしてラット総頸動脈と大腿動脈の違いを検討した。結果:脱細胞処理のdebrisが外循環で血管外壁に吸着するため、自動化脱細胞装置に粕取りの網機構を加えた。脱細胞血管片に繊維細胞が良く生着した、優れる細胞親和性を示した。蛍光色素結合ヘパリンを脱細胞血管片に散布して、良い固定率が観察された。低分子ヘパリン固定化脱細胞血管のラット大腿動脈移植実験では、全例栓塞した(6/6)、RDGなどの接着因子と共同内面処理を試すべくだと考える。意義:本研究を通して、自家組織化小口径人工血管の開発にまた一歩近づけた、自動化装置の開発を成功、脱細胞法の最適化を完了、材料自身の生体親和性を確認、いくつかの内膜抗凝固処理を試した。最後の壁は内膜抗凝固処理の最適化と確信し、さらに実験が必要だと考える。本研究は心筋梗塞など小動脈栓塞症の外科治療に欠かせない移植血管を代用する自家組織化小口径人工血管の開発を目的とする。ラットを使い、生体血管を特殊処理(抗原性を示す細胞を抜き、血液凝固防止)し、移植血管としての有効性を動物実験で検討した。主な成果は、脱細胞自動化装置(血管内と組織外同時に処理液を環流できる)の開発を成功;血管脱細胞法の最適化を確定(ドジシル硫酸ナトリウムSDS環流と超音波洗浄との併用);脱細胞血管の細胞親和性を確認;ヘパリン、MPCポリマーなどで血管内膜抗凝固処理を試したが、移植後長期開存はできなかった。
KAKENHI-PROJECT-26861495
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26861495
MPCポリマーで表面改質した脱細胞血管片による小径人工血管の開発
脱細胞血管内膜抗凝固処理の最適化を探るためさらに実験が必要だ。小口径脱細胞血管の製作については、予定通りに成功した。超音波処理の有効性を確認できた、小口径血管の脱細胞処理の最適化がほぼ完成した。潅流循環脱細胞自動化装置も開発した、実験効率が非常に向上された。しかし、移植後開存することが難しく、いろいろ方法で血管内面に抗凝固処理を施した群も開存ができなかった。生体材料他の内膜抗凝固措置を引き続き探る、全身抗凝固投薬も試す。引き続き研究を実施し、他の脱細胞の内膜抗凝固処理を探る。脱細胞化神経移植片作製原料(動物)、薬品。実験動物購入、飼育費。手術器具、消耗品。組織標本作製費(固定液、包埋剤、染色キット、蛍光抗体など)。成果発表費用。
KAKENHI-PROJECT-26861495
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26861495
冷戦終結が北朝鮮政治体制に与えた影響に関する研究
冷戦終結、とりわけソ連・東欧の社会主義体制崩壊が北朝鮮の政治体制に与えた影響について、新資料と従来資料の照合作業で検証を進めた。北朝鮮には軍が国家の礎であるとの考え方があったものの、「先軍政治」を掲げるようになった直接的な契機は冷戦終結にあった、というのがこれまでの研究で得られた知見であり、本研究を通じて冷戦終結が北朝鮮の政治体制に決定的な影響を及ぼしたと結論付けられた。研究第二年度となる平成25年度は、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)が冷戦終結に対していかに体制崩壊の危機を乗り越えようとしたのかを中心に検証を進めた。まず、党よりも軍を重視する「先軍」体制への転換過程について考察を深めた。冷戦終結に対する危機意識から、朝鮮労働党を中心に据えた体制運営の在り方に変化が生じ、1993年12月以降は、半年に一回以上開催するとされる党中央委員会が2010年9月までの17年間あまり一度も開催されないという異常事態が発生した。また、1991年には金日成主席存命中に最高司令官ポストが禅譲され、その後には主席制を廃止して国防委員会中心の国家運営が図られた。冷戦終結と「先軍」体制確立の因果関係について、最近公表されたばかりの「労作」を元外交官や軍幹部といった多様な脱北者の証言、新資料を丹念に突き合わせることで実証する作業となった。北朝鮮側の一次資料については、従来資料からの書き換えの有無、脱北者への意見聴取については彼らの証言内容が包含するであろうバイアスを十分に考慮した。さらに、外交政策の変化についても若干の整理を進めた。核開発を進め、対米直接交渉によって体制護持を模索したほか、ソ韓、中韓国交正常化によって孤立感を深めた北朝鮮は日本や台湾に急接近した。すなわち、ここでは冷戦終結が北朝鮮政治体制に与えた影響という一方通行の考察ではなく、北朝鮮内政と国際環境との相互作用についても検証を試みた。冷戦終結、とりわけソ連・東欧の社会主義体制崩壊が北朝鮮の政治体制に与えた影響について、新資料と従来資料の照合作業で検証を進めた。北朝鮮には軍が国家の礎であるとの考え方があったものの、「先軍政治」を掲げるようになった直接的な契機は冷戦終結にあった、というのがこれまでの研究で得られた知見であり、本研究を通じて冷戦終結が北朝鮮の政治体制に決定的な影響を及ぼしたと結論付けられた。研究初年度となる平成24年度は、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)が冷戦終結をいかに認識してきたかを中心に検証を進めた。北朝鮮が、1980年代末の東欧革命を注意深く見守っていたことは想像に難くない。しかし、北朝鮮の公式メディアは、国内にその事実を隠蔽する必要性からも、きわめて限られた報道しか行わなかった。また、そのような限定的な報道も、政変が発生してから何日も経過した後に論評抜きで報じられたに過ぎなかった。それら論調を丹念に追うとともに、『金日成全集』や『金正日選集』(増補版)など新たに公刊された資料で冷戦終結に対する認識が読みとれる部分について検証を進めた。関連して金正日政権末期や現状に関する論文を複数公刊した。一方、国外搬出が禁じられている新資料の発掘にも努めた。一部入手できたものについては、脱北者(北朝鮮離脱住民)等への意見聴取結果とともに補完的に活用した。金日成死去後の1994年以降についての検証は不十分であり、引き続き作業を進める必要がある。各資料では、ソ連・東欧の「悲惨な末路」について具体例を挙げて論じられ、危機感を煽りながら社会主義体制固守の必要性について繰り返し説かれている。ソ連・東欧の社会主義と区別するための「われわれ式社会主義」なる概念は、早い段階から多用されるようになった一方、体制護持のために「先軍」が必要だとの論理が表面化するのにはさらに時間を要した。1990年代初めの段階においては、後に「先軍」概念へと発展する基礎となる「軍民一致」運動や「軍重視思想」に触れるものはわずかであったことが確認された。最終年度は、国内外で入手した多用な資料を用いて冷戦終結が北朝鮮政治体制に与えた影響について総論的に整理するよう努めた。具体的な成果としては、日本比較政治学会等における発表のほか、本研究課題から派生した内容について論稿を公刊した。北朝鮮では1948年の建国以来、金日成、金正日、金正恩と親子三代にわたる統治が続いている。金正日政権(1994-2011)は、冷戦終焉後も一貫して「社会主義」を掲げつつも、三代世襲を成し遂げ、金正恩政権(2011-)に至っている。1990年代には「崩壊」、体制移行ないし体制転換の可能性について議論されることもあったが、その後20年間、東欧や中東諸国で発生したような市民革命も軍事クーデタも発生しなかった。そればかりか、中国やベトナムのように改革開放の道を選択することもなかった。そのため、体制長期化の背景解明を大きな問題意識として、冷戦終結前後の各国の教訓が北朝鮮政治体制に与えた影響について検証を進めたのである。最終年度は、北朝鮮研究の全体像を概観し、同国体制をめぐる従来の「モデル」分析の問題点をも明示しようと努めた。その上で、個人支配体制概念の金正日体制への適用を試み、さらに北朝鮮独自の論点を中心に、体制長期化の特徴を抽出した。しかし、研究の過程でいくつかの重要資料を入手したことや問題設定が大きかったこともあり、北朝鮮政治体制の研究を継続する必要性を感じた。
KAKENHI-PROJECT-24730124
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24730124
冷戦終結が北朝鮮政治体制に与えた影響に関する研究
北朝鮮政治本研究課題申請時に想定していなかった重要な新資料を入手することができたため、深奥でオリジナリティのある分析が可能となった。本研究課題申請時には想定していなかった重要な新資料を入手することができたため、深奥でオリジナリティのある分析が可能となった。資料が大部に及ぶためさらに時間を要する側面があるものの、初年度に複数の論文を公刊することができ、研究はおおむね順調に進展していると考える。北朝鮮の冷戦崩壊認識、ならびに北朝鮮がいかに体制崩壊の危機を乗り越えようとしたのかについての検証を継続する。そのうえで、最終年度となる平成26年度は、分析枠組みの妥当性を再検討する。近年、非民主主義体制に関する横断的・理論的研究は進展を見せているが、その中で北朝鮮に援用可能と考えられる体制モデル、概念の妥当性を引き続き検討する。初年度で進めた北朝鮮の冷静崩壊認識に関する検証作業を継続する。但し、初年度において北朝鮮政治体制に関する重要な新資料を入手することができたため、『労働新聞』や金日成・金正日の著作といった従来資料以上に重点を置いて検証を進めていきたい。さらに、第二年度となる平成25年度は、冷戦終結に対して、北朝鮮がいかに体制崩壊の危機を乗り越えようとしたのかをも検証する。まず、党よりも軍を重視する「先軍」体制への転換過程について考察する。冷戦終結に対する危機意識から、朝鮮労働党を中心に据えた体制運営の在り方に変化が生じた。金日成主席存命中に最高司令官ポストが金正日へ禅譲され、その後には主席制を廃止して国防委員会中心の国家運営が図られた。これら冷戦終結と「先軍」体制確立の因果関係について、最新資料とともに多様な脱北者、当局者の証言を丹念に突き合わせることで実証していく。北朝鮮側の一次資料については、従来資料からの書き換えの有無、脱北者への意見聴取については彼らの証言内容が包含するであろうバイアスを十分に考慮する。また、各国研究者の見解を十分に消化し活用したい。第二年度は新資料の検証に集中し、申請時よりも旅費の支出が低額となったため、研究費を有効活用すべく、一部を最終年度に持ち越すこととなった。北朝鮮の一次資料については、大学図書館等で閲覧できるものが限られているため、消耗品費の中でも購入予算額が大きくなることが予想される。また、地域研究の一環として、聞き取り調査を目的とした国外出張を実施する計画である。初年度は新資料の検証に集中し、申請時よりも国外出張費用の支出が低額となったため、研究費を有効活用すべく、一部を第二年度へ持ち越すこととなった。本研究は、北朝鮮政治体制論を文献精査の結果と脱北者等への聴取結果の二方向から突合することを特徴の一つとしている。研究に必要な文献、とりわけ北朝鮮の一次資料については、国内外の大学図書館等で閲覧できるものがきわめて限られており、取り扱い書店も少ないため、「消耗品費」の中でもとりわけ北朝鮮書籍の購入予算額がやや大きくなる。英文書籍の購入は、主に分析枠組み模索のためである。また、地域研究の一環として、聞き取り調査を中心としたフィールドワークも欠かせない。南北朝鮮や米国等における脱北者、研究者等への聞き取り調査を行なう必要がある。
KAKENHI-PROJECT-24730124
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24730124
エストロゲン受容体αとβを介した誘導型NO合成酵素発現調節に関わる 共役因子の解析
従来ホルモン補充療法(HRT)において、エストロゲン(E2)と共に用いられていたメドロキシプロゲステロン酢酸エステル(MPA)は、E2による血管内皮細胞における一酸化窒素(NO)産生誘導活性を減弱し、血管拡張作用を抑制する。MPAの代わりに子宮内膜症治療剤である黄体ホルモン製剤のジエノゲスト(DNG)をE2と併用し、血管内皮機能を解析した結果、DNGはE2が誘導する血管内皮細胞のNO産生を抑制せず、MPAに代わるHRT薬として使用できる可能性が示唆された。従来ホルモン補充療法(HRT)において、エストロゲン(E2)と共に用いられていたメドロキシプロゲステロン酢酸エステル(MPA)は、E2による血管内皮細胞における一酸化窒素(NO)産生誘導活性を減弱し、血管拡張作用を抑制する。MPAの代わりに子宮内膜症治療剤である黄体ホルモン製剤のジエノゲスト(DNG)をE2と併用し、血管内皮機能を解析した結果、DNGはE2が誘導する血管内皮細胞のNO産生を抑制せず、MPAに代わるHRT薬として使用できる可能性が示唆された。【目的】エストロゲン(E2)はエストロゲン受容体α(ERα)およびβ(ERβ)に結合し、転写因子として働くことにより組織特異的に遺伝子発現、細胞増殖・分化に関与している。今回我々は、ヒト血管平滑筋細胞(VSMC)においてE2による誘導型NO合成酵素(iNOS)遺伝子発現調節機序を解析した。【方法】VSMCを用い、E2及びER拮抗薬であるICI182,780を投与して以下の実験を行った。1)NO産生量の測定。2)複数種のVSMCにおけるiNOS、ERα及びERβ遺伝子の発現をRT-PCRにて測定。3)iNOS promoter活性をluciferase assayにて測定。4)ERを有しないCOS-7細胞にERα或いはERβ遺伝子を導入して様々な長さのiNOS promoter活性を測定し、各ERの責任領域を検討した。【成績】1)大動脈VSMCではE2によりNO産生が抑制され、ICI182,780はその抑制を解除した。2)VSMCの種類によりERαとERβ遺伝子の発現が異なり、ERαが優位に発現していた大動脈VSMCはE2によりiNOS発現が抑制され、ERβが優位に発現していた橈骨動脈VSMCはE2によりiNOS発現が促進された。3)完全長のiNOS promoter活性は大動脈VSMCでは抑制され、橈骨動脈VSMCでは促進された。4)ERβが導入されたCOS-7においてiNOS promoter活性が促進し、ERαとERβでは各々異なった領域で活性の亢進をみた。【結論】iNOS promoter領域において、ERαとERβは各々異なる責任領域を有することが判明した。iNOS発現においてE2がERβを介してNO産生亢進に関与することが示唆された。【研究の目的】エストロゲン受容体の作用を調節する共役因子の働きを解析することにより、更年期老年期女性に対するエストロゲン製剤または選択的エストロゲン受容体調節薬を用いたホルモン補充療法の新たな方向性について検討する。【研究実績の概要】(1)従来ホルモン補充療法において、エストロゲンと共に用いられていたメドロキシプロゲステロン酢酸エステル(medroxyprogesterone:MPA)は、エストロゲンによる血管内皮細胞における一酸化窒素(nitric oxide:NO)産生誘導活性を減弱し、NOによる血管拡張作用を抑制する。MPAの代わりに子宮内膜症治療剤である黄体ホルモン製剤のジエノゲストをエストロゲンと併用し、動脈硬化の指標となる血流依存性血管拡張反応を測定し、血管内皮機能を解析した。その結果、ジエノゲストはエストロゲンが誘導する血管内皮細胞のNO産生を抑制せず、MPAに代わるホルモン補充療法薬として使用できる可能性が示唆された。(2)排卵誘発剤であり、抗エストロゲン作用をもつクエン酸クロミフェンの子宮内膜細胞に対する作用を解析した。子宮内膜細胞株を用いて、エストロゲン、クエン酸クロミフェン、エストロゲンのアンタゴニストであるICI182780の作用を比較し、検討した。クエン酸クロミフェンは、共役因子であるステロイド受容体転写共役活性化因子(steroid receptor coactivator-1:SRC-1)とエストロゲン受容体αの結合を阻害することでエストロゲン受容体応答領域の活性化を抑制し、エストロゲンが誘導する子宮内膜細胞の増殖を抑制することが示唆された。【研究の目的】エストロゲン受容体の作用を調節する共役因子の働きを解析することにより、更年期老年期女性に対するエストロゲン製剤または選択的エストロゲン受容体調節薬を用いたホルモン補充療法の新たな方向性について検討する。【研究実績の概要】(1)神経突起を介した神経細胞間ネットワーク形成は、高次脳機能の維持に重要である。本研究ではエストロゲン(E)の神経突起伸長作用の機構を明らかにするとともに、それに対するプロゲステロン(P)または酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)の影響について検討した。その結果、SH-SY5Y細胞においてEによる神経突起の伸長にはE→エストロゲン受容体→Akt→Racl,CDC42の活性化→RhoAの不活性化→神経突起伸長という経路が存在することが示された。また、Eの神経突起伸長作用をPは抑制しないが、MPAは抑制することが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-21592121
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21592121
エストロゲン受容体αとβを介した誘導型NO合成酵素発現調節に関わる 共役因子の解析
(2)以前の我々の研究により、脂質異常症治療薬であるベザフィブラートをクエン酸クロミフェン(CC)と共に多嚢胞性卵巣症候群を罹患している不妊症患者に投与すると、排卵を誘発することができることが分かっていた。我々は、ベザフィブラートが卵胞発育に関して直接作用があるのではないかと仮定し、インスリン抵抗性に関わるTNF-αの作用を検討した。卵胞培養系を確立し、TNF-α添加におけるゴナドトロピン刺激を行った卵胞の発育、エストロゲン分泌、排卵率を解析した。その結果、ベザフィブラートはPPAR-γを介するシグナル伝達経路を経て、TNFによる卵胞発育やステロイド産制抑制作用を直接的に修復する作用があることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-21592121
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21592121
スピン系のシミュレーション法の磁気工学への新展開
本年度は,前年度の成果であるシミュレーションの基盤となる基礎理論の定式化を用いて,大規模なシミュレーションを行った.平成10年度の研究成果として,ランダム磁性体の秩序変数を計算する新しい数値計算法を開発することができた.この方法の新しい点は,ランダム平均を行う際に,モンテカルロ法を適用し,強磁性秩序変数のある意味での単純平均でスピングラス秩序変数を導出することが可能になったことにある.この方法を用いれば,これまで計算することのできなかった大きな系で秩序変数を計算することができる.今年度は,2次元±Jイジングモデルにおいて,計算を実行し,現在,議論されている2次元±Jイジングモデル(L【less than or equal】23)におけるスピングラス相の存在の有無について詳細に調べた.計算結果を,有限サイズスケーリングを用いて解析した.通常のスケーリング解析では,有限温度(T_c/J( SY.simeq.〔)0.3)での相転移を強く示唆する結果を得た.今回の研究においては,計算精度が飛躍的に向上し,エラーバーの大きさが,従来の研究の1/10程度となった.そこで,これまで行われてこなかったサイズ補正を含めたスケーリング解析を行うことができた.その結果,0【less than or equal】)T/J【less than or equal】)0.3のどの温度も,臨界温度となる可能性がある結果を得た.つまり,スケーリング解析においては,サイズ補正の効果が非常に大きいことがわかった.今年度の研究においては,計算する系も大きくでき,計算精度も飛躍的に向上することができたが,スピングラス相の存在の有無に関しては,はっきりとした結論を得るには至らなかった.本年度はシミュレーションの基盤となる基礎理論の定式化を行い,シミュレーションの結果の妥当性の確認を行った.まず,ランダムスピン系において,スピングラス秩序変数を飛躍的に少ないメモリー量と計算時間で算出できる方法を考案した.この方法の新しい点は,ランダム平均を行う際に,モンテカルロ法を適用し,強磁性秩序変数のある意味での単純平均でスピングラス秩序変数を導出することが可能になった点にある.小さい系で従来の方法との結果を比較したところ,エラーバーの範囲内で一致することが確認できた.この方法を使えば,現在,議論されている2次元±Jイジングモデルにおけるスピングラス相の存在の有無について,はっきりとした結論が得られると考えられる.実際の大きな系での計算は,現在行っている.また,量子スピン系においては,相互作用が競合している際に現れる負符号問題が緩和されるようなモデルを考案し,かなりフラストレーションの強い領域まで,今までより精度の良いシミュレーション結果を得ることができた.また,緩和時間が大きくなる低温領域や臨界領域において,臨界点や臨界指数を算出するのに適しており,現在注目されつつある非平衡緩和モンテカルロシミュレーション法を用いてランダムスピン系の研究を行い,強磁性相転移点の詳細な導出を行った.その結果,強磁性相境界においては,ユニバーサリテイが成立していることが確認できた.本年度は,前年度の成果であるシミュレーションの基盤となる基礎理論の定式化を用いて,大規模なシミュレーションを行った.平成10年度の研究成果として,ランダム磁性体の秩序変数を計算する新しい数値計算法を開発することができた.この方法の新しい点は,ランダム平均を行う際に,モンテカルロ法を適用し,強磁性秩序変数のある意味での単純平均でスピングラス秩序変数を導出することが可能になったことにある.この方法を用いれば,これまで計算することのできなかった大きな系で秩序変数を計算することができる.今年度は,2次元±Jイジングモデルにおいて,計算を実行し,現在,議論されている2次元±Jイジングモデル(L【less than or equal】23)におけるスピングラス相の存在の有無について詳細に調べた.計算結果を,有限サイズスケーリングを用いて解析した.通常のスケーリング解析では,有限温度(T_c/J( SY.simeq.〔)0.3)での相転移を強く示唆する結果を得た.今回の研究においては,計算精度が飛躍的に向上し,エラーバーの大きさが,従来の研究の1/10程度となった.そこで,これまで行われてこなかったサイズ補正を含めたスケーリング解析を行うことができた.その結果,0【less than or equal】)T/J【less than or equal】)0.3のどの温度も,臨界温度となる可能性がある結果を得た.つまり,スケーリング解析においては,サイズ補正の効果が非常に大きいことがわかった.今年度の研究においては,計算する系も大きくでき,計算精度も飛躍的に向上することができたが,スピングラス相の存在の有無に関しては,はっきりとした結論を得るには至らなかった.
KAKENHI-PROJECT-10875021
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10875021
樹林帯を利用した土砂災害対策工の開発
山麓や渓流沿いに存在する樹林帯は,土砂流出を抑制するなど様々な防災的機能を持つものとして古くより利用されてきた.加えて近年では,豊かな自然環境を創造するものとして注目されている.本研究の目的は,災害時における樹林帯の特性スケールと土石流,土砂流などの挙動との関係,樹林帯内における流体力や掃・浮流砂量,樹林帯の景観工学的効果などについて調べるころである.得られた結果は以下の通りである.(1)移動床水路において樹林帯を一様に設置し,浮流砂濃度分布を調べる実験を行った.樹木の抗力を考慮した有効摩擦速度を用いると,樹林帯内の浮流砂濃度分布はRouse分布に良く適合することが分かった.また,有効摩擦速度より得られた有効掃流力を用いると通常の掃流砂量式によって掃流砂量が評価されることが分かった.(2)流れに対する樹林帯の強度特性や抵抗則を明らかにするため,円柱群に作用する抗力の直接計測を行った.円柱群内にある単独円柱の抗力係数は、樹林帯密度の増加に伴い大きくなり、一様流中に置かれた単独円柱の抗力係数値より大きくなることを確認した。(3)既往の災害について実現を調査し、土石流等の掃流力、流体力、最大曲げモーメントから樹林の破壊限界を求めた。また、水埋模型実験により遊砂地内に存在する樹林の密生度と遊砂地内への土砂の堆積量、侵食量の関係を求めた。(4)1990年熊本県一宮町の土石流災害を対象として,樹林帯のスケールやその配置および地形条件(勾配等)と土石流の挙動との関連性を調べた.そして,得られた知見と従来からの取り組みを参考にして,樹林帯の定量的評価を基礎とした配置計画に関する検討を行った.(5)河畔林・樹林帯が河川の景観的印象に与える効果を明らかにするため,実験水路,人工水辺空間,および実流域河川を対象としたSD法と一対比較法による視覚心理実験を行った.その結果,光と色彩が河川の水量感に与える影響,水面の陰影の河川の好ましさに対する効果,景観の構図と評価との関係等が明らかにされた.山麓や渓流沿いに存在する樹林帯は,土砂流出を抑制するなど様々な防災的機能を持つものとして古くより利用されてきた.加えて近年では,豊かな自然環境を創造するものとして注目されている.本研究の目的は,災害時における樹林帯の特性スケールと土石流,土砂流などの挙動との関係,樹林帯内における流体力や掃・浮流砂量,樹林帯の景観工学的効果などについて調べるころである.得られた結果は以下の通りである.(1)移動床水路において樹林帯を一様に設置し,浮流砂濃度分布を調べる実験を行った.樹木の抗力を考慮した有効摩擦速度を用いると,樹林帯内の浮流砂濃度分布はRouse分布に良く適合することが分かった.また,有効摩擦速度より得られた有効掃流力を用いると通常の掃流砂量式によって掃流砂量が評価されることが分かった.(2)流れに対する樹林帯の強度特性や抵抗則を明らかにするため,円柱群に作用する抗力の直接計測を行った.円柱群内にある単独円柱の抗力係数は、樹林帯密度の増加に伴い大きくなり、一様流中に置かれた単独円柱の抗力係数値より大きくなることを確認した。(3)既往の災害について実現を調査し、土石流等の掃流力、流体力、最大曲げモーメントから樹林の破壊限界を求めた。また、水埋模型実験により遊砂地内に存在する樹林の密生度と遊砂地内への土砂の堆積量、侵食量の関係を求めた。(4)1990年熊本県一宮町の土石流災害を対象として,樹林帯のスケールやその配置および地形条件(勾配等)と土石流の挙動との関連性を調べた.そして,得られた知見と従来からの取り組みを参考にして,樹林帯の定量的評価を基礎とした配置計画に関する検討を行った.(5)河畔林・樹林帯が河川の景観的印象に与える効果を明らかにするため,実験水路,人工水辺空間,および実流域河川を対象としたSD法と一対比較法による視覚心理実験を行った.その結果,光と色彩が河川の水量感に与える影響,水面の陰影の河川の好ましさに対する効果,景観の構図と評価との関係等が明らかにされた.樹林帯は最近,災害時には土石流,土砂流などの土砂災害対策として,平常時にはゆとりと潤いを与えるソフトなインフラとして注目されている.本研究の目的は,災害時における樹林帯の特性スケールと土石流・土砂流の挙動との関連性,樹林帯内における流体力や掃流砂量,平面水路における樹林帯による土砂堆積状況を調べることである.得られた結果は以下の通りである.(1)実際の土石流・土砂流の挙動と樹林帯との関連性について実態調査を行った.1986年京都府南部災害をはじめとして最近の土石流災害について,空中写真判読,地形図解析および現地調査により,地形(勾配),土石流・土砂流の流動深等のパラメータを調査し,これらと樹林帯の破壊・非破壊,樹林帯による土石流等の流向の制御,土砂の捕捉・堆積の実態を明らかにした.
KAKENHI-PROJECT-10555176
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10555176
樹林帯を利用した土砂災害対策工の開発
(2)開水路内に,高さ40cm,直径1cmのアクリル製円柱の樹木模型を辺長8.3cmの正三角形で長さ3.6mの区間を千鳥配置し,その中の一本の円柱に作用する流体力を3分力計を用いて調べた.円柱群内の流速計測にはレーザー流速計を用いた.群中の一本円柱の抗力係数は1.41.8となった.(3)樹林帯内に移動床を設け,樹林帯内の掃流砂量を調べる実験を行った.この結果と掃流砂量式を用いて有効摩擦速度と流速係数を求めた.その結果,有効摩擦速度・見かけの摩擦速度比は樹林帯密度が大きくなると減少する.流速係数は,通常知られている清水流の場合の値よりは小さく,流砂を伴う急勾配流れの流速係数と同程度の値となっている.また,樹林帯密度が大きくなると減少する傾向があることが分かった.(4)遊砂地内の樹林帯による土砂堆積実験を行った.遊砂地の模型を作成し、この中に樹木の直径、密生度を変化させた樹林帯の模型を設置して,上流より掃流砂を供給して,遊砂地内への土砂の堆積形状,土砂量等を測定して樹林帯による土砂堆積機能を検討した.この結果,樹林帯を設置することにより遊砂地内への土砂堆積量は若干減少するが護岸沿いの流速が減少し,護岸保護に効果があることがわかった.山麓や渓流沿いに存在する樹林帯は,土砂流出を抑制するなど様々な防災的機能を持つものとして古くより利用されてきた.加えて近年では,豊な自然環境を創造するものとして注目されている.本研究の目的は,災害時における樹林帯の特性スケールと土石流,土砂流などの挙動との関係,樹林帯内における流体力や掃・浮流砂量,樹林帯の景観工学的効果などについて調べることである.得られた結果は以下の通りである.(1)移動床水路において樹林帯を一様に設置し,浮流砂濃度分布を調べる実験を行った.樹木の抗力を考慮した有効摩擦速度を用いると,樹林帯内の浮流砂濃度分布はRouse分布に良く適合することが分かった.また,有効摩擦速度より得られた有効掃流力を用いると通常の掃流砂量式によって掃流砂量が評価されることが分かった.(2)流れに対する樹林帯の強度特性や抵抗則を明らかにするために,円柱群に作用する抗力の直接計測を行った.円柱群内にある単独円柱の抗力係数は,樹林帯密度の増加に伴い大きくなり,一様流中に置かれた単独円柱の抗力係数値より大きくなることを確認した.(3)既往の災害について実態を調査し,土石流等の掃流力,流体力,最大曲げモーメントから樹林の破壊限界を求めた.また,水理模型実験により遊砂地内に存在する樹林の密生度と遊砂地内への土砂の堆積量,侵食量の関係を求めた.(4)1990年熊本県一宮町の土石流災害を対象として,樹林帯のスケールやその配置および地形条件(勾配等)と土石流の挙動との関連性を調べた.そして,得られた知見と従来からの取り組みを参考にして,樹林帯の定量的評価を基礎とした配置計画に関する検討を行った.(5)河畔林・樹林帯が河川の景観的印象に与える効果を明らかにするため,実験水路,人口水辺空間,および実流域河川を対象としたSD法と一対比較法による視覚心理実験を行った.その結果,光と色彩が河川の水量感に与える影響,水面の陰影の河川の好ましさに対する効果,景観の構図と評価との関係等が明らかにされた.
KAKENHI-PROJECT-10555176
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10555176
古代ロシア文語萌芽期の第二段階におけるハイブリッド性の多様さと重層性について
今次の研究にあっては、『スヴャトスラフの文集』1073年(Izbと略記)に焦点を当てながら、古代ロシア文語成立の萌芽期第2期-『オストロミール福音書』1056-57年成立から『ムスチスラフ福音書』(Mst)出現以前12世紀始め迄と措定-につき、その特徴点を明らかにせんとした。平成14年度においてはIzbの文献学的研究と、『アルハンゲリスク福音書』1092年(Arch)における動詞の過去形につき研究を行った。平成15年度には旧・新約両聖書からIzbに引用された例のひろい出しとその検討と、IzbとArchの動詞組織の、特に時制とアスペクトの研究を行った。平成16年度は継続していたArchの索引の改良作業にとり組んだ。とりわけnの接続詞か人称代名詞かの弁別作業、жEを含む語のI語か否かの判定作業を行なった。またMst本文を1983年жуковская刊本によって、第1次電子化を開始した。第三にArchにおける人称代名詞2人称単数および再帰代名詞につきрусn3м形出現の問題を研究した。平成17年度は今次研究のまとめを行なった。ロシア文語成立の萌芽期第2期にあっては、テクストの東スラブ語化現象が依然一回的・個別的・散発的生起にとどまっており、カテゴリカルな生起に至っていないと結論づけられる。なお平成17年8月にはロシア国立図書館古写本部においてArch原本の閲覧に成功し、古文書学的観察を行ない、かつ写真版の重大な誤りを発見した。これによりArch本文の校訂注の再検討を行なった。さらにMst本文の第1次電子化も一応終了した。年度末には今次報告書を作成・印刷し、研究者・同機関に配布した。今次の研究にあっては、『スヴャトスラフの文集』1073年(Izbと略記)に焦点を当てながら、古代ロシア文語成立の萌芽期第2期-『オストロミール福音書』1056-57年成立から『ムスチスラフ福音書』(Mst)出現以前12世紀始め迄と措定-につき、その特徴点を明らかにせんとした。平成14年度においてはIzbの文献学的研究と、『アルハンゲリスク福音書』1092年(Arch)における動詞の過去形につき研究を行った。平成15年度には旧・新約両聖書からIzbに引用された例のひろい出しとその検討と、IzbとArchの動詞組織の、特に時制とアスペクトの研究を行った。平成16年度は継続していたArchの索引の改良作業にとり組んだ。とりわけnの接続詞か人称代名詞かの弁別作業、жEを含む語のI語か否かの判定作業を行なった。またMst本文を1983年жуковская刊本によって、第1次電子化を開始した。第三にArchにおける人称代名詞2人称単数および再帰代名詞につきрусn3м形出現の問題を研究した。平成17年度は今次研究のまとめを行なった。ロシア文語成立の萌芽期第2期にあっては、テクストの東スラブ語化現象が依然一回的・個別的・散発的生起にとどまっており、カテゴリカルな生起に至っていないと結論づけられる。なお平成17年8月にはロシア国立図書館古写本部においてArch原本の閲覧に成功し、古文書学的観察を行ない、かつ写真版の重大な誤りを発見した。これによりArch本文の校訂注の再検討を行なった。さらにMst本文の第1次電子化も一応終了した。年度末には今次報告書を作成・印刷し、研究者・同機関に配布した。岩井は『スヴャトスラフの文集』1073年の文献学的研究を行ない次のような特徴を見い出した。1.文字・字体につき,1)ЮСЫは〓・〓及びjotaのついた〓・〓が用いられ,更にjotaのついた〓が存する。この音価は要検討。2)ЪlはЪlとЫの2字体。3)〓・〓など右肩に鍵を有する字体が存する。4)合字のやや頻繁な使用。5)所謂spiritusは形と向きにより何種類か存するが,母音につく時は無意,子音につく時は有意で,この場合多くjersの省略を示す。2.言語面では次のようなrusizmが表われる。音と綴りでは,1)ЮСЫの誤った表記。2)語頭でのOCSЮ-, Е-に対しОУ-, О-の綴り。3)共通スラヴ語*djに対しЖ, *tjに対しЧで出現。4)共通スラヴ語の子音間の流音の結合はtъ/brt, tъ/bltで出現。形態では,5)動詞3人称・単・複数・現在は-тьで終わる。6)*о-stem名詞の単数・造格は-ЪМЬ/-ЬМЬ。7)*а-stem等,軟音変化における単数・生格・複数・主格あるいは対格に-〓の語尾が存在。8)人称代名詞ТОБ〓, СОБ〓の形が存する。概して本テクストは全体として伝統的なOCSに依りながらも部分部分で東スラヴ語化が進行したテクストであるとみられる。
KAKENHI-PROJECT-14510607
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14510607
古代ロシア文語萌芽期の第二段階におけるハイブリッド性の多様さと重層性について
服部は前回に引き続き『アルハンゲリスク福音書』における動詞の過去形につき研究した。12世紀の古ロシア語文献ではアオリスト・未完了過去・完了・過去完了のの4形態が見られるが,未完了過去とアオリストは後に使用頻度が著しく減少する。この変化は,スラヴ祖語時代から継承されてきた未完了過去とアオリストが完了によって駆逐された結果と説明されてきた。これに対し東スラヴ語の日用語にはこれら2時制が存在しなかったという修正説がある。そこで『アルハンゲリスク福音書』の異読部分を分析してみると,そこに当時の日用語の実態を反映する例が散見することを見い出した。これは上記修正説を強く支持する証拠とみなしうると結論づけられる。岩井は『スヴャトスラフ文集』1073年(以下I)に引用された旧約・新約両聖書の文章が地の文章にあって,どれほど東スラヴ語化されているかを探り,元来ギリシア語から古代教会スラヴ語に翻訳された聖句がルーシの地にもたらされた時,どのように変容していったかの一端に光を当てる試みを行なった。Iに延べ48の聖句の引用例を見い出した。これを検討すると,1)引用の仕方がラフである,2)他とは異なる語彙を使用する場合が多い,という特長を確認した。2)は重要で,他のカノンと比較する時には孤立的だが,1117年以前成立の『ムスチスラク福音書』(M)と比較すると決して孤立しているわけではなく,ルーシの地に伝えられた別系統の聖書テクストの存在を暗示せしめると解される。さらにこれらの引用文は,音・綴り・形態論・シンタクスの分野で東スラヴ語化が進行していることが観察される。その程度は『アルハンゲリスク福音書』1092年(Arch)およびMに比してまだ低いが,ただしIもArchやMと同方向に東スラヴ語化が進行している。服部はIとArch両文献中の動詞組織にかかわる総合研究の基礎作業として,時制とアスペクト体系を検討した。特に今日問題とされる仮説,即ち12世紀の東スラヴ語の口語には未完了過去もアオリストも存在しなかったとする見解に対し,Archの他のカノンに対立する異読箇所を検討することによって,これら異読がХабургаевらの仮説を支持する有力な証拠たりうると見倣すことができる。今年度は他に,Arch本文の校訂注の整備とパソコンへの入力,さらにArch索引の訂正を行なった。あわせて語彙《И》を接続詞か3人称代名詞対格かを弁別する作業を継続している。本年度は第1に『アルハンゲリスク福音書』の索引の改良をひき続き行なった。特に接続詞のиと3人称代名詞жиの対格・単数иとの弁別作業を全面的に行なった。その結果30ほどの問題箇所が浮かび上ったが,『マリア写本』を第1の基準として判定していった。その際明らかになったのは,1)やはり形容詞・分詞において長語尾形を好むこと,2)テキストの提示において粗雑さが見られ,従ってカノンからの逸脱や付加が存在すること,である。第2に『ムスチスラフ福音書』本文を1983年刊行本のテキストに従い,全体の78%ほどを電子化した。次年度も継続する予定である。第3に『アルハンゲリスク福音書』における人称代名詞・2人称単数および再帰代名詞におけるрусизмの問題を研究した。与格・所格(D-L)に注目すると,OCS形ТЕБЪ,СЕБЪの他にрусизм形ТОБЪ,ТЕБЕ;СОБЪ,СЕБЕ,СОБЕが出現することが観察できる。これらの形態の内,第2のрусизм形ともいうべきТЕБЕ;СЕБЕ,СОБЕに注意すべきである。さらに次の知見を得た。1)Arch^1はТЕБЪ,СЕБЪの両語でOCS形とрусизм形が併存する。第2のрусизм形ТЕБЕ,СЕБЕの侵蝕が進行している。2)Arch^2はArch^1とは逆で,русизм形が圧倒的。第2のрусизм形ТЕБЕ,СЕБЕの侵蝕は進んでいるが,むしろこれをとび越えてТОБЪ,СОБЪに向かう傾向がある。
KAKENHI-PROJECT-14510607
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14510607
測定応力に基づく遮熱コーティングシステムでの剥離の定量評価と剥離抑制機構の付与
Ni基超合金にBC層(耐酸化性)とTC層(遮熱性)を施工して作製される遮熱コーティングシステム(TBCs)では、実使用環境下においてTC/BC界面にAl2O3(TGO)層が生成し、成長に伴う残留応力の増大によりTGO/BC界面に剥離が生じ、TC層が脱落するのが問題となっている。本研究ではTGO層中の局所的な残留応力成分を電子後方散乱法により取得できるEBSDパターンのゆがみから直接応力成分を決定するウィルキンソン法を用いて同定した。さらに、金属BC層の塑性変形により剥離進展時の界面剥離エネルギーを増大させて界面剥離を抑制する機構を付与した新規TBCsを開発した。本研究では遮熱コーティングシステムを対象に、TGO層の応力成分や分布を同定し、測定結果からTBCsの応力基準での界面剥離機構や剥離開始条件の解明を試みた。さらに、BC層の塑性変形を積極的に利用して、剥離進展時の界面剥離エネルギーを増大させて剥離を抑制する機構を開発し、耐剥離性に優れた新規TBCsの作製プロセスの確立を目指した。1BC層の熱処理・熱曝露による降伏応力の評価:熱処理および熱曝露後のBC層を対象にビッカース硬さ試験の結果に基づいて降伏応力を評価した。2TGO層の残留応力成分評価:熱曝露後のTBCsに対してEBSD測定により得られる菊池パターンのゆがみから歪および応力成分を決定するウィルキンソン法を利用して応力成分の評価を行った。3熱サイクルおよび熱・力学的負荷試験:選定した候補TBCsに対して、熱サイクルおよび熱・力学的負荷を加えた。熱サイクルは、実使用環境に近い温度(12731423K)にて1時間毎の熱サイクルを加えた。熱・力学的負荷も1時間毎の熱サイクルとともに、異なる繰り返し負荷を加えた。熱サイクルおよび熱・力学的負荷を加えた剥離前のTBCsに対しても、BC層の降伏応力、TGO層の残留応力成分、TBCsのせん断剥離特性を評価した。さらに、TC層が剥離するまでTBCsに熱サイクルおよび熱・力学的負荷を加えて寿命を評価した。4結果のまとめ: TBCsの応力基準での界面剥離機構や剥離開始条件に与える影響をTGO層での応力成分や最大応力値、応力状態を基に明らかにした。また、TGO層での残留応力成分や応力値、TBCsのせん断負荷による界面剥離特性や寿命の評価から最適なプロセス条件を見出し、剥離抑制機構を付与した耐剥離性の高い、新規遮熱コーティングシステムの実現がおおむね達成された。Ni基超合金にBC層(耐酸化性)とTC層(遮熱性)を施工して作製される遮熱コーティングシステム(TBCs)では、実使用環境下においてTC/BC界面にAl2O3(TGO)層が生成し、成長に伴う残留応力の増大によりTGO/BC界面に剥離が生じ、TC層が脱落するのが問題となっている。本研究ではTGO層中の局所的な残留応力成分を電子後方散乱法により取得できるEBSDパターンのゆがみから直接応力成分を決定するウィルキンソン法を用いて同定した。さらに、金属BC層の塑性変形により剥離進展時の界面剥離エネルギーを増大させて界面剥離を抑制する機構を付与した新規TBCsを開発した。本研究ではTGO層中の局所的な残留応力成分を同定し、残留応力成分や分布を基に応力基準での剥離開始条件や界面剥離機構の解明と、金属BC層の塑性変形を積極的に利用することにより剥離進展時の界面剥離エネルギーを増大させて界面剥離を抑制する機構を付与した新規TBCsの開発を目指している。本年度の実績は、以下の通りである。(1)BC層のコーティング・熱処理条件の確立:コールドスプレー法によってCoNiCrAlY合金をBC層としてNi基超合金へコーティングした。空孔率の低い緻密なBC層について熱処理を行う候補材料として選定した。BC層をコーティングした材料に対して熱処理による組織制御を施した。降伏応力が低いと予想される結晶粒径の大きい複数の熱処理条件を選定した。選定後、8wt%Y2O3-ZrO2を大気プラズマ溶射法によってTC層をコーティングしTBCsを作製した。(2)硬さ試験によるBC層の降伏応力の評価:選定した複数条件のTBCsに対して大気熱暴露を温度(11731423K)、時間(10200h)を変えて行った。熱暴露前後でのBC層に対して降伏応力を評価した。(3)TGO層の残留応力成分評価:熱暴露後のTBCsに対して、TGO層の残留応力成分を蛍光分光法により測定し、TBCsの応力基準での界面剥離機構や剥離開始条件を検討するとともに、組織制御したBC層の降伏応力の低下がTGO層の残留応力の緩和に与える効果を評価した。(4)TBCsの界面剥離特性の評価:界面剥離の進展はせん断負荷によって生じるため、大気熱暴露前後により組織変化したTBCsに対して、せん断負荷による界面剥離強度(界面剥離ひずみエネルギー解放率)を測定した。組織制御したBC層の降伏応力の低下がせん断強度の向上に与える影響について評価を行った。研究実績の(1)、(2)、(4)についてはおおむね順調であるが、(3)については十分な評価ができておらず、やや遅れている状態にある。問題点としては、TGO層の結晶粒が小さく、応力成分分離が難しいことにある。結晶方位は電子線後方散乱(EBSD)法により取得できるものの、蛍光分光法では、レーザー径が大きいため、結晶方位に対応した結晶粒から得られた蛍光かどうかをうまく判断することができなかった。そのため、とりあえずは評価できているものの、正しい結果であるかをさらに吟味する必要がでている。
KAKENHI-PROJECT-23760662
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23760662
測定応力に基づく遮熱コーティングシステムでの剥離の定量評価と剥離抑制機構の付与
正しく評価する解決策としては、EBSD測定により得られる菊池パターンのゆがみを直接読み取って応力成分を決定するウィルキンソン法を利用することを考えている。この場合は、結晶方位の情報とともに得られるため、残留応力成分の評価が正しくできると考えている。(1)ウィルキンソン法を利用したTGO層の残留応力成分評価:熱暴露後のTBCsに対して、再度、TGO層の残留応力成分を測定する。蛍光分光法では、「現在までの達成度」でも記載した通り問題があるため、対策として、測定には電子線後方散乱(EBSD)測定により得られる菊池パターンのゆがみを直接読み取って応力成分を決定するウィルキンソン法を用いることとする。測定データを基にTBCsの応力基準での界面剥離機構や剥離開始条件を検討する。(2)熱サイクルおよび熱・力学的負荷試験:選定した候補TBCsに対して、実使用環境を模擬したTC層側からの加熱による熱サイクルおよび熱・力学的負荷を加える。熱サイクルは、実使用環境に近い温度(12731423K)にて1時間毎の熱サイクルを加える。熱・力学的負荷も12731423Kにおける1時間毎の熱サイクルとともに、異なる繰り返し負荷応力(20, 40, 60 MPa)を加える。熱サイクルおよび熱・力学的負荷を加えた剥離前のTBCsを対象に、BC層の降伏応力、TGO層の残留応力成分、TBCsのせん断剥離特性を評価し、BC層、TC層のコーティングおよび熱処理条件の実使用環境下での有効性を確認する。さらに、TC層が剥離するまでTBCsに熱サイクルおよび熱・力学的負荷を加えて寿命を評価する。(3)結果のまとめ:熱暴露、熱サイクルおよび熱・力学的負荷がTBCsの応力基準での界面剥離機構や剥離開始条件に与える影響をTGO層での応力成分や最大応力値、応力状態を基に明らかにする。また、TGO層での残留応力成分や応力値、TBCsのせん断負荷による界面剥離特性や寿命の評価から最適なプロセス条件を見出し、剥離抑制機構を付与した耐剥離性の高い、新規遮熱コーティングシステムを実現する。昨年、学内業務により予定していた金属学会への出張を取りやめる事態となったため、次年度に使用する予定の研究費が生じた。一方、残留応力成分評価のため、EBSD装置を用いたウィルキンソン法による応力成分の測定を行う必要が生じたため、使用料が必要な外部の装置を借用する。また、レーザー加熱については、レーザー源不安定化のため購入を検討する。そのため、研究費の使用計画を以下の通りとする。(1)ウィルキンソン法による応力成分の測定:EBSD装置を用いたウィルキンソン法による応力成分を測定は、外部の装置を借用することで行わなければならない。試料を厳選することで、15日程度の使用で収まると考えられる。1日の使用料が約3万円との回答であったため15日の使用で約45万円が応力成分測定に見込まれる。(2)レーザー源:固体レーザー源の不安定化のため、信頼性の高い熱処理のため購入を検討することとした。グリーンレーザーを60万円と見積もっている。(3)熱・力学負荷試験用治具の作製・消耗品:実使用環境を模擬したTC層側からの加熱による熱・力学的負荷をTBCsへ加えるにあたり、既存の万能試験機を改修して行う。そのための治具を作製する。
KAKENHI-PROJECT-23760662
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23760662
ヒト赤芽球の脱核機序に関する研究
本研究では、1)ヒト赤芽球の脱核に関与する赤芽球膜骨格蛋白の親和性と解離定数の制御機構、2)脱核に伴う細胞構造・膜骨格蛋白の赤血球内外への移行動態、3)造血幹・前駆細胞(CD34+細胞)から赤芽球系前駆細胞そして赤血球へと至る過程における構成蛋白質の代謝回転とその調節機構を解析することを目的とした。本年度は上記1),2)の関連のもとに、ヒト赤芽球の脱核に関する研究を発展させた。その結果、以下を明らかにした。1)ヒト赤芽球の脱核時間は8.4±3.4分2)脱核率は1.16±0.42%/hourをピークとして以後は経時的に減少する3)脱核はマクロファージなどの支持細胞の関与を必要としない4)核の網赤血球からの完全分離にはずり応力やマクロファージによる核の貧食が必要である5)脱核は細胞質分裂の一種である6)脱核にcentrosomeは関与しない以上の成果について現在投稿中である。上記3)においては赤血球膜蛋白である4.1Rを中心に解析した。4.1Rは分子量135kDaと80kDaの二つのisoformからなり、赤芽球の分化過程でその発現が入れ替わるが、その機序は不明に留まっている。本研究では以下のことを明らかにした。1)4.1R135は、赤芽球発生の初期段階から発現するが網赤血球には発現しない2)4.1R80は4.1R135に遅れて発現し網赤血球にも発現する3)4.1R80と4.1R135は膜骨格蛋白質に対する親和性と解離定数が異なる以上の成果について現在投稿中である。今年度は脱核における細胞構成タンパク質の発現と組み込み過程を中心に、ヒト赤芽球の分化過程を網羅的に解析した。CD34^+細胞から脱核段階まで、共焦点顕微鏡と酵素抗体染色を用いて、calnexin,β-spectrin, actin, tubulin, 14-3-3, cytochrome C, lamin,4.1R^<80>, 4.1R^<135>, 4.1G, glycophorin A, glycophorin C, band 3, p55, myosinなどの発現過程を検討した。さらに主要蛋白について膜骨格への組み込み過程をイムノブロットで検討し、膨大な結果が集積されつつある。そのなかで今回は、脱核過程における蛋白動態についてまとめ「Symposium with Dr.Mohandas Narla and Dr.Joel Chasis」(平成18年3月21日、学士会館、東京)において「Enucleation of human erythroblast : Cytokinesis or exocytosis?」として発表した。高い評価を受け、今後、国際共同研究として進展させることとした。脱核に関する結果は平成18年度血液学会総会においても発表予定である。共同研究者の高桑は、4.1R^<135>と4.1R^<80>を対象として、赤芽球系前駆細胞そして赤血球へと至る過程における構成蛋白質の代謝回転(合成と分解)とその調節機構を明らかにしつつある。今後、脱核阻害細胞との対比等を通じて、正常の膜機能の維持機構のみならず脱核障害を含む新たな疾患群の同定や治療法の開発および種々の膜疾患の病態を明らかにしていきたい。1.脱核における細胞構成タンパク質の発現と組み込み過程(澤田・高桑)2.正常ヒト赤芽球の脱核機構の解析(澤田・高桑)3.脱核阻害赤芽球の解析恙無く検討を進めている。正常赤芽球の脱核メカニズム(正常コントロール)について上述のごとく報告準備を進めている。本研究では、1)ヒト赤芽球の脱核に関与する赤芽球膜骨格蛋白の親和性と解離定数の制御機構、2)脱核に伴う細胞構造・膜骨格蛋白の赤血球内外への移行動態、3)造血幹・前駆細胞(CD34+細胞)から赤芽球系前駆細胞そして赤血球へと至る過程における構成蛋白質の代謝回転とその調節機構を解析することを目的とした。本年度は上記1),2)の関連のもとに、ヒト赤芽球の脱核に関する研究を発展させた。その結果、以下を明らかにした。1)ヒト赤芽球の脱核時間は8.4±3.4分2)脱核率は1.16±0.42%/hourをピークとして以後は経時的に減少する3)脱核はマクロファージなどの支持細胞の関与を必要としない4)核の網赤血球からの完全分離にはずり応力やマクロファージによる核の貧食が必要である5)脱核は細胞質分裂の一種である6)脱核にcentrosomeは関与しない以上の成果について現在投稿中である。上記3)においては赤血球膜蛋白である4.1Rを中心に解析した。4.1Rは分子量135kDaと80kDaの二つのisoformからなり、赤芽球の分化過程でその発現が入れ替わるが、その機序は不明に留まっている。本研究では以下のことを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-17659286
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17659286
ヒト赤芽球の脱核機序に関する研究
1)4.1R135は、赤芽球発生の初期段階から発現するが網赤血球には発現しない2)4.1R80は4.1R135に遅れて発現し網赤血球にも発現する3)4.1R80と4.1R135は膜骨格蛋白質に対する親和性と解離定数が異なる以上の成果について現在投稿中である。
KAKENHI-PROJECT-17659286
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17659286
金属と繊維の出土複合遺物に対する保存科学的研究
出土複合素材遺物、特に金属製品と繊維(麻類・絹)が共存する遺物に対する保存処理方法の再検討および開発の一環として、I.日本において古来から利用されている布(麻類・絹)が埋蔵中において金属製品と共存して場合に、布の繊維自体にどのような変質機構を経ているのかについて解明、II.現在国内において展示・収蔵されている出土繊維遺物の調査からその変質課程が観察できるのかについて明らかにすること、の以上2点を目的とした。Iの達成のために、『出土複合遺物を想定した実験』を行った。金属と繊維を一体化させた試料を恒温恒湿器内で劣化・変質の促進実験を行い、経時変化を追った。供する試料は金属片3種(JIS規格で定義されている鉄、銅、青銅、鉛の金属片)の直上に平絹2種(絹が精練および未精練のもの)、平織り麻類(素材はカラムシ)の組み合わせを作製して、温度20°C・相対湿渡90%に曝し、経過観察・実験試料の繊維の断面薄片を作製し、金属の錆がどのように影響しているかについて確認した。その際には調査専用実体顕微鏡を用い、的確な経過観察を追うことができた。結果、金属さびが繊維の無機成分と微小な電気的なイオン交換を行うことに、初期反応がすすむことが示唆された。IIの達成のために、『出土複合遺物(金属と繊維)の展示及び収蔵品の実地調査』を行った。古代期の北海道、東北、九州を中心とした地域の金属製品を調査し、非破壊調査として古代繊維の素材、糸の太さ、撚り方向、織密度を調査専用実体顕微鏡下で記録した。次に、第二段階として破壊調査や既往の結果との比較を行い、いづれの場合でも非破壊分析結果と明らかな相違があるものは見られなかった。本年度は1)繊維が銃着して残存している刀剣の保存処理と科学的調査2)北海道および九州において確認されている銃着繊維の非破壊調査および破壊調査との結果検討を中心に研究を進めた。1)の資料は青森県おいらせ町阿光坊古墳群の刀剣で、繊維のほか漆膜、鞘木が残存する保存状態の良好な資料であった。保存処理は現行の出土鉄製品の手法を用いて行なった。脱塩にはセスキ炭酸ナトリウム5wt%水溶液を用いて約1ヶ月施行したが、刀剣他繊維・漆膜・鞘木などに大きな変化は見られなかった。クリーニング中に剥落した繊維、漆膜、鞘木の破壊分析を行なった。繊維・漆膜はエポシキ樹脂に包埋し、#4004000の紙やすりなどを用いて繊維は非破壊分析においてその撚り状況から麻類と推定していたが、破壊分析からも麻類の特徴を見出すことが出来、非破壊分析の結果を追従した。さらに、漆膜からは2層の生漆と思われる塗り構造が確認できた。鞘木においてはモミ属の使用が確認できた事から地域特性や当時の交流を考える一助となった。この結果は中間発表を東アジア国際会館においてポスターで、まとまった結果はICOM-METALに論文投稿し査読を受けている。2)本経費で購入した実態顕微鏡を用いて、北海道および九州の銹着資料の非破壊分析を行なった。これらの資料の中にはこれまで所蔵部局で繊維資料の破壊分析が行なわれているものもあり、それらの結果とも照らし合わせた考察を継続的に行なっており。現時点では非破壊分析において、繊維素材推定を「撚り」「密度」「繊維の太さ」で行なっている。大部分の資料においては両者の結果は合っているが、一部非破壊分析結果と異なっている部分もあり、今後の課題となる。この部分を明確にすることも本研究の意義であると考えている。出土複合素材遺物、特に金属製品と繊維(麻類・絹)が共存する遺物に対する保存処理方法の再検討および開発の一環として、I.日本において古来から利用されている布(麻類・絹)が埋蔵中において金属製品と共存して場合に、布の繊維自体にどのような変質機構を経ているのかについて解明、II.現在国内において展示・収蔵されている出土繊維遺物の調査からその変質課程が観察できるのかについて明らかにすること、の以上2点を目的とした。Iの達成のために、『出土複合遺物を想定した実験』を行った。金属と繊維を一体化させた試料を恒温恒湿器内で劣化・変質の促進実験を行い、経時変化を追った。供する試料は金属片3種(JIS規格で定義されている鉄、銅、青銅、鉛の金属片)の直上に平絹2種(絹が精練および未精練のもの)、平織り麻類(素材はカラムシ)の組み合わせを作製して、温度20°C・相対湿渡90%に曝し、経過観察・実験試料の繊維の断面薄片を作製し、金属の錆がどのように影響しているかについて確認した。その際には調査専用実体顕微鏡を用い、的確な経過観察を追うことができた。結果、金属さびが繊維の無機成分と微小な電気的なイオン交換を行うことに、初期反応がすすむことが示唆された。IIの達成のために、『出土複合遺物(金属と繊維)の展示及び収蔵品の実地調査』を行った。古代期の北海道、東北、九州を中心とした地域の金属製品を調査し、非破壊調査として古代繊維の素材、糸の太さ、撚り方向、織密度を調査専用実体顕微鏡下で記録した。次に、第二段階として破壊調査や既往の結果との比較を行い、いづれの場合でも非破壊分析結果と明らかな相違があるものは見られなかった。
KAKENHI-PROJECT-18700678
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18700678
教科書における科学教材の研究-日本の公教育成立・形成期に限定して-
本研究の結果は相互に関連した次の3つの論文に集約される。第1は須田勝彦「明治初期算術教科書の自然数指導」である。この論文では序章において本研究全体の目的にふれながら,2章以下では明治初期における初等数学教科書(主に塚本明毅,永峰秀樹,中条澄清など)における自然数指導に限定して,教育の目的論,教育内容・教材構成論を検討した。そこでは数学教育が諸科学との関連のもとで構想されていたこと,最初に可能な限り一般的な数範囲を提示しようとしたこと,アルゴリズム形成への周到な配慮がなされていたこと,理論的・法則的認識が重視されていたことなど,今日の数学教育が立ち帰って検討すべき価値のある試みが析出された。第2は大野栄三「明治期物理教科書における力概念の取り扱い」である。力学教育では,昔も今も,基本概念である「力」そのものが何であるのかという疑問に答えることよりも,「力」が作用した結果どうなるかを教育することに重点が置かれてきた。本論文では,このような力学教育における重心の偏りを改善するため,明治期物理教科書に見られる「力」の実在論的取り扱いを現代物理学の視点から捉え直すことについて論じた。第3は大竹政美「師範学校編『小學読本』における科学教材の分析の試み-『科学に関する識字能力』の観点から」である。これは,その形成が現在もなお「理科と国語の接合点」で問題となっている,科学研究の成果を書いた文章を理解する能力=科学に関する識字能力(リテラシー)の形成について,『小學読本』の究理学的教材に焦点をあてて検討したものである。科学に関する識字能力は記述的な「報告」と,「説明」という二つの「ジャンル」(テクスト組織の全体的パターン)に限定した。本研究の結果は相互に関連した次の3つの論文に集約される。第1は須田勝彦「明治初期算術教科書の自然数指導」である。この論文では序章において本研究全体の目的にふれながら,2章以下では明治初期における初等数学教科書(主に塚本明毅,永峰秀樹,中条澄清など)における自然数指導に限定して,教育の目的論,教育内容・教材構成論を検討した。そこでは数学教育が諸科学との関連のもとで構想されていたこと,最初に可能な限り一般的な数範囲を提示しようとしたこと,アルゴリズム形成への周到な配慮がなされていたこと,理論的・法則的認識が重視されていたことなど,今日の数学教育が立ち帰って検討すべき価値のある試みが析出された。第2は大野栄三「明治期物理教科書における力概念の取り扱い」である。力学教育では,昔も今も,基本概念である「力」そのものが何であるのかという疑問に答えることよりも,「力」が作用した結果どうなるかを教育することに重点が置かれてきた。本論文では,このような力学教育における重心の偏りを改善するため,明治期物理教科書に見られる「力」の実在論的取り扱いを現代物理学の視点から捉え直すことについて論じた。第3は大竹政美「師範学校編『小學読本』における科学教材の分析の試み-『科学に関する識字能力』の観点から」である。これは,その形成が現在もなお「理科と国語の接合点」で問題となっている,科学研究の成果を書いた文章を理解する能力=科学に関する識字能力(リテラシー)の形成について,『小學読本』の究理学的教材に焦点をあてて検討したものである。科学に関する識字能力は記述的な「報告」と,「説明」という二つの「ジャンル」(テクスト組織の全体的パターン)に限定した。本研究の課題である公教育成立期の教科書における科学教材の研究の中で、平成8年度は主として明治19年以前、即ち検定期以前の教科書の検討がなされた。まず、共通の検討事項であるこの時期の教授学理論の到達水準について確認の後、物理、算術及び読本の教科書に関する資料の収集、整理が進められ、分析がなされた。検定期以前の物理教科書では、重要な天然力として「重力」「凝集力」「化学親和力」という概念が用いられ、また物性として物質の慣性、不加入性等が挙げられている。このような概念系は従来、スコラ学的であると批判されていたが、それらの説明が持つリアリティは自然理解に役立つ側面も有している。検定期から国定期へと移るに従い、物理教科書の内容は劇的に現代のそれへと近づいて行く。力は運動変化の原因として登場し、物理理論に対して外在的なものとなる。そこには検定期以前の教科書に見られるリアリティはむしろ乏しくなっている。次年度はこれらの変遷と現代物理学の成果を踏まえた上で、これからの理科教育の内容構成に関する提言を見いだして行く予定である。算術では、塚本明毅『筆算訓蒙』(明治2年)、中絛澄清『算学教授書』(明治9年)、永峰秀樹『筆算教授書』(明治10年)などにつき、(1)数とは何か、量との関係をどのように把握しているか(2)演算の基本法則をどのように扱っているか、(3)分数及び比をどのように把握しているかの3点に焦点をあてて検討した。これらの諸点は算術教育に特有というより、全ての数学教育において中心問題であり、次年度は検定期も含めた実践的諸遺産の整理を試みたい。読本においては今日の国語科との教科の目的論の相違を勘案しながら、主に師範学校編『小学読本』の究理、博物教材の検討を進めている。本研究の結果は相互に関連した次の3つの論文に集約される。第1は須田勝彦
KAKENHI-PROJECT-08610233
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08610233
教科書における科学教材の研究-日本の公教育成立・形成期に限定して-
「明治初期算術教科書の自然数指導」である。この論文では序章において本研究全体の目的にふれながら、2章以下では明治初期における初等数学教科書(主に塚本明毅、永峰秀樹、中条清澄など)における自然数指導に限定して、教育の目的論、教育内容・教材構成論を検討した。そこでは数学教育が諸学科との関連のもとで構想されていたこと、最初に可能な限り一般的な数範囲を提示しようとしたこと、アルゴリズム形成への周到な配慮がなされていたこと、理論的・法則的認識が重視されていたことなど、今日の数学教育が立ち帰って検討すべき価値のある試みが析出された。第2は大野栄三「明治期物理教科書における力概念の取り扱い」である。力学教育では、昔も今も、基本概念である「力」そのものが何であるかという疑問に答えることよりも、「力」が作用した結果どうなるかを教育することに重点が置かれてきた。本論文では、このような力学教育における重心の偏りを改善するため、明治期物理教科書に見られる「力」の実在論的取り扱いを現代物理学の視点から捉え直すことについて論じた。第3は大竹政美「師範学校編『小学読本』における科学教材の分析の試み-『化学に関する識字能力』の観点から」である。これは、その形成が現在もなお「理科と国語の接合点」で問題となっている、科学研究の成果を書いた文章を理解する能力=科学に関する識字能力(リテラシー)の形成について、『小学読本』の究理学的教材に焦点をあてて検討したものである。科学に関する識字能力は記述的な「報告」と、「説明」という二つの「ジャンル」(テクスト組織の全体的パターン)に限定した。
KAKENHI-PROJECT-08610233
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08610233
ギリシア語の先史の比較言語学的研究
平成23年度の前半は、先年度に引き続き、研究指導委託先である米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校の印欧語研究プログラムで、古代ギリシア語テッサリア方言における特異な動詞活用についての資料収集と分析を進めた。その結果、この方言については既知の碑文を網羅することができた。年度の後半には、日本に帰国したのち、受入研究機関である京都大学で資料の分析をおこなった。報告者が研究課題とするギリシア語の動詞の特異な活用形については、H. Hockによる先行研究がある。彼はこの活用形について、究極的な起源は印欧祖語に遡るものの、ギリシア語が諸方言に分岐した後に、いくつかの方言ではこの活用形が完全に失われ、一方ほかの方言ではこの活用形が他の動詞にも広まったものと考えた。そして、テッサリア方言については、特異な形式と通常の形式がともに見られることから、特異な活用形が拡大していく途上の状態をとどめているものと考えた。しかし、テッサリア方言で特異な活用を示さない語形はわずかに3例のみであり、しかもそのうち2例は他の方言からの影響を受けた可能性のある碑文であるので、テッサリア方言の歴史的変化の証拠としては確実とは言えない。この問題について、報告者は、テッサリア方言とレスボス方言を対照することで解決を図った。テッサリア方言とレスボス方言は、ともにこの特異な活用形を示す方言であるが、「行う・完遂する」を意味する動詞teleie/o-は、レスボス方言では例外的にこの特異な活用形を示さないことがすでに知られていた。これに対し、報告者は、2007年に公刊されたテッサリア方言の碑文の中で、この「行う・完遂する」を意味する動詞の語形(tele-)が問題の特異な活用を示していることを確認した。この差異は、問題の特異な活用がテッサリア方言においてこの動詞に拡大したことを例証するものである。本年度の大きな成果は、印欧諸語に関する知識の獲得である。本年度の研究計画に述べられているように、研究の第一年度である本年度は、研究の基盤となる印欧諸語に関する知識の獲得が重要な目的であった。そこで、報告者は二度の海外渡航などの機会を活用して知識の獲得に努めた。ひとつは米国でのアメリカ言語学会夏期講座であり、この場では、報告者がこれまで学習の機会を得られなかった言語であるトカラ語をはじめ、印欧比較言語学において重要な情報源となる言語について、知識を深めることができた。もうひとつは米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校で開かれた印欧語学会への出席で、これは最先端の研究成果に触れる機会となった。また、この他にも、受入研究者である吉田和彦教授の尽力により、京都大学でゲルマン諸語に関する集中講義が開かれた。これらによって、報告者は印欧語研究の柱となる主要な語派をほぼ全て学習する機会を得たことになる。このような基礎的知識は、論文などの著作で発表できるような成果にすぐさま結びつくものではないが、今後の研究の基盤として重要な価値を持つものである。したがって、本年度の研究の主要な目標である、印欧諸語についての知識の吸収は、よく実施できたと思われる。また、ギリシア語碑文資料の読解については、第二年度以降の研究内容として計画していたが、本年度において小規模ながら実施することができた。ここで対象としたのはギリシア語テッサリア方言である。ギリシア語のいくつかの方言には動詞の特殊な形式が存在することが知られているが、テッサリア方言では特殊な形式が新しい碑文に、通常の形式が古い碑文に確認されていることから、この特殊な形式が歴史的にどのような変遷を辿ったのかを、テッサリア方言を手掛かりに解明できることが期待される。今年度の調査は部分的であったので、次年度以降も引き続き碑文資料の読解を進める必要がある。今年度の研究は、年度前半に京都大学でおこなった研究と、年度後半にカリフォルニア大学ロサンゼルス校でおこなった研究との二つに大きく分かれる。今年度の前半には、前年度に引き続きギリシア語テッサリア方言の碑文を読み、その中から特に動詞の語形を収集する作業をおこなった。また、七月には、スロバキアで開かれた若手研究者向けの国際学会において研究発表を行い、主にヨーロッパの研究者との意見交換の機会を得た。この成果は、後述する米国渡航の間にさらに吟味を加えた結果、審査に合格し、集会のproceedingsに掲載される予定である(発行時期は未確定)。年度の後半(九月以降)には、米国のカリフォルニア大学ロサンゼルス校において、Brent Vine教授の指導のもと、印欧比較言語学全体に関連するいくつかの授業に出席する一方、さらにギリシア語方言の碑文資料の読解を進めた。その結果、2000年代に入ってから新しく公刊されたテッサリア方言の碑文の中に、有意義と思われる語形を発見した。報告者の注目している「アイオリス風屈折」は、thematicとathematicの語形がパラダイム内に相補分布していることが大きな特徴のひとつである。当然、そのことを確実に知るには、その両方の語形が碑文資料に現れることが必要であるが、これは碑文資料の量的な制約のため容易でない。その中で、「し続ける」を意味する動詞は、三人称単数でthematicの語形を持つことが既に知られていた。そして、今回の報告者の語形収集の中においては、この動詞が三人称複数でathematicの語形を持つことが確認された。今後、このことが持つ意味を、この動詞の歴史的背景や他の方言での状況とあわせて検討する必要がある。
KAKENHI-PROJECT-09J04918
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J04918
ギリシア語の先史の比較言語学的研究
年度の後半(九月以降)には、米国のカリフォルニア大学ロサンゼルス校において、Brent Vine教授の指導のもと、印欧比較言語学全体に関連するいくつかの授業に出席する一方、さらにギリシア語方言の碑文資料の読解を進めた。その結果、2000年代に入ってから新しく公刊されたテッサリア方言の碑文の中に、有意義と思われる語形を発見した。報告者の注目している「アイオリス風屈折」は、thematicとathematicの語形がパラダイム内に相補分布していることが大きな特徴のひとつである。当然、そのことを確実に知るには、その両方の語形が碑文資料に現れることが必要であるが、これは碑文資料の量的な制約のため容易でない。その中で、「し続ける」を意味する動詞は、三人称単数でthematicの語形を持つことが既に知られていた。そして、今回の報告者の語形収集の中においては、この動詞が三人称複数でathematicの語形を持つことが確認された。今後、このことが持つ意味を、この動詞の歴史的背景や他の方言での状況とあわせて検討する必要がある。平成23年度の前半は、先年度に引き続き、研究指導委託先である米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校の印欧語研究プログラムで、古代ギリシア語テッサリア方言における特異な動詞活用についての資料収集と分析を進めた。その結果、この方言については既知の碑文を網羅することができた。年度の後半には、日本に帰国したのち、受入研究機関である京都大学で資料の分析をおこなった。報告者が研究課題とするギリシア語の動詞の特異な活用形については、H. Hockによる先行研究がある。彼はこの活用形について、究極的な起源は印欧祖語に遡るものの、ギリシア語が諸方言に分岐した後に、いくつかの方言ではこの活用形が完全に失われ、一方ほかの方言ではこの活用形が他の動詞にも広まったものと考えた。そして、テッサリア方言については、特異な形式と通常の形式がともに見られることから、特異な活用形が拡大していく途上の状態をとどめているものと考えた。しかし、テッサリア方言で特異な活用を示さない語形はわずかに3例のみであり、しかもそのうち2例は他の方言からの影響を受けた可能性のある碑文であるので、テッサリア方言の歴史的変化の証拠としては確実とは言えない。この問題について、報告者は、テッサリア方言とレスボス方言を対照することで解決を図った。テッサリア方言とレスボス方言は、ともにこの特異な活用形を示す方言であるが、「行う・完遂する」を意味する動詞teleie/o-は、レスボス方言では例外的にこの特異な活用形を示さないことがすでに知られていた。これに対し、報告者は、2007年に公刊されたテッサリア方言の碑文の中で、この「行う・完遂する」を意味する動詞の語形(tele-)が問題の特異な活用を示していることを確認した。この差異は、問題の特異な活用がテッサリア方言においてこの動詞に拡大したことを例証するものである。
KAKENHI-PROJECT-09J04918
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J04918
学習障害児の早期支援にどこまで迫れるか?
本研究では、学習障害(読み困難)の早期発見のための基礎データを得ることを目的として、幼児期における読み習得に関わる認知機能の発達について実験的に検討した。その結果、ひらがな読み習得の過渡期においては、単語に含まれる音に対する気づきの能力が、読みの習得にあたって重要な要素となることが推測された。さらに読みの習熟が進むにつれて、物の名前がすらすら言えるといった、言葉における流暢性の側面が読みの習熟にとって主な影響因となることが示唆された。本研究では、学習障害(読み困難)の早期発見のための基礎データを得ることを目的として、幼児期における読み習得に関わる認知機能の発達について実験的に検討した。その結果、ひらがな読み習得の過渡期においては、単語に含まれる音に対する気づきの能力が、読みの習得にあたって重要な要素となることが推測された。さらに読みの習熟が進むにつれて、物の名前がすらすら言えるといった、言葉における流暢性の側面が読みの習熟にとって主な影響因となることが示唆された。本研究では、発達障害児の早期発見・早期支援に関わる具体的な支援内容の構築について、(1)幼児期における読み書きに関わる認知機能の特徴とその発達、および(2)幼児における読み書き障害のリスク評価とその支援の2点について検討することを目的としている。本年度は、当該研究の初年度にあたるため、主として幼児期における読み書きに関わる認知機能の評価について予備的検討を実施した。この予備的検討では、読み書きに関わる認知能力の中でも、言語性作動記憶と音韻意識の関係性に注目するため、単語を音節(モーラ)単位で逆唱する課題(単語モーラ逆唱課題)を用いて検討した。5歳の幼児を対象とし、2音節から5音節で構成される単語の逆唱を求めた。その結果、全ての音節数で正しく答えることができた。さらに、認知神経科学的評価手法として、近赤外線光トポグラフィー(NIRS)を用いて単語モーラ逆唱課題遂行中の脳血流動態についても予備的実験を行った。また、成人を対象とした実験では、単語をそのまま呼称した条件に比べ、逆唱した条件において血流量が増大する傾向が認められた。これらの結果から、行動指標のみでは捉える事の難しい認知機能の脳内処理過程について明らかにすることが可能になることが示唆された。一方、5歳児を対象として同様の実験を実施したが、途中で機材装着にともなう不快感を訴え、最後まで課題を遂行することができなかった。次年度は幼児でも遂行可能なNIRSの実験条件を検討するとともに、幼稚園・小学校に協力を依頼し、行動指標によるデータ収集を実施する予定である。本研究では、発達障害児の早期発見・早期支援に関わる具体的な支援内容の構築について、(1)幼児期における読み書きに関わる認知機能の特徴とその発達および(2)幼児における読み書き障害のリスク評価とその支援の2点について検討することを目的としている。本年度は、主として幼児期における読み書きに関わる認知機能における脳内処理過程について明らかにするために、健常成人を対象とした予備的検討を実施した。予備的検討では、読み書きに関わる認知能力の中でも、言語性ワーキングメモリと音韻意識の関係性に注目するため、単語を音節(モーラ)単位で逆唱する課題(単語逆唱課題)を遂行中の脳血流動態について、近赤外線光トポグラフィ(NIRS)を用いて検討した。その結果、3音節単語を逆唱する課題に比べ、ワーキングメモリの負荷が高い5音節単語を逆唱する課題において、刺激を聴覚呈示した条件、および視覚呈示した条件ともに前頭領域で血流の増大が認められた。さらに刺激を聴覚呈示した条件では、前頭領域に加え、左右側頭領域の血流増大も認められた。これらの結果から、言語性ワーキングメモリを用いる課題では、課題における記憶負荷、および刺激の呈示モダリティによって脳内の処理は異なることが推察された。以上の結果は、今後読み書きの習得途上にある幼児における認知機能に関わる脳内処理過程について検討する際に重要な情報となる。次年度は小児を対象としたNIRSの実験を実施するとともに、幼稚園・小学校に協力を依頼し、行動指標によるデータ収集を実施する予定である。本研究では、発達障害児の早期発見・早期支援に関わる具体的な支援内容の構築について、主として学習障害に焦点を当て、(1)幼児期における読み書きに関わる認知機能の特徴とその発達および(2)幼児における読み書き障害のリスク評価とその支援の2点について検討することを目的としている。上記の研究の目的を達成するため、本年度は幼児を対象とした認知処理能力の行動調査を実施した。所属機関の附属幼稚園および園児の保護者に協力を依頼し、合計87名の園児に対して調査を行った。認知機能の評価には、(1)音韻分解・抽出課題、(2)音韻復号課題、(3)単語逆唱課題、(4)フロスティッグ視知覚検査法の空間における位置課題を用いた。一方、かな文字読みの評価として、ひらがな単語の読みとひらがな単文字の読みテストを用いた。課題終了後、各課題成績間について月齢を制御変数とした偏相関係数を算出した。その結果、ひらがな単語および単文字読みに関しては、5歳6カ月以上の子どもではほぼすべて正確に読むことができていた。ひらがな単語の読み成績、およびひらがな単文字の読み成績と認知課題成績の相関を調べたところ、ひらがな単語、単文字いずれの場合においても音韻意識課題と音韻性ワーキングメモリ課題と呼称速度の間で有意に相関が高かった。一方、ひらがな単文字読みの得点と視覚認知課題成績との関連性は示されなかった。
KAKENHI-PROJECT-21730726
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21730726
学習障害児の早期支援にどこまで迫れるか?
このことから、ひらがな読みの習得に必要な認知機能として、視空間能力よりも、音韻操作に関する能力の方が大きく影響を及ぼすことが推察された。今回の研究により、読み書きに困難を示す子どもの認知機能を評価する上での基礎資料を得ることができた。本研究では、発達障害児の早期発見・早期支援に関わる具体的な支援内容の構築について、主として学習障害に焦点を当て、(1)幼児期における読み書きに関わる認知機能の特徴とその発達および(2)幼児における読み書き障害のリスク評価とその支援の2点について検討することを目的としている。上記の研究の目的を達成するため、本年度は昨年度実施した行動調査のフォローアップを実施した。対象は、幼稚園年長組に在籍し、昨年度の調査に参加した37名であった。認知機能の評価には、1音韻分解・抽出課題、2音韻復号課題、3単語逆唱課題、4フロスティッグ視知覚検査法の「空間における位置」課題を用いた。一方、かな文字読みの評価として、ひらがな単文字の読みテストを用いた。ひらがな単文字読みに関しては、年中段階では正答率が10100%と個人差が大きかったのに対し、年長になると全ての対象児で60%以上であった。このことから、年中から年長の段階にかけて、ひらがな読みの習得は全体的に向上したことがうかがえた。さらに年中・年長それぞれの時期において、ひらがな読みの習得にどのような認知機能が関与しているのかについて検討するため、ひらが音読課題の正答数を目的変数、その他の課題成績を予測変数として重回帰分析を実施した。その結果、ひらがな読みの習得に関して十分でない対象児が多かった年中の段階では、音節分解の能力が読みの習得に大きく影響を及ぼすが、年長の段階になると、読みの習得が定着するに伴い、音節分解のような音韻意識に関する能力よりもむしろ、呼称速度に反映されるような、音韻的再符号化における流暢性の方が読みの習熟に関与することが推測された。本研究結果は、読みの習得に困難を示す子どものリスクを評価するうえで、重要な基礎データとなりうることが期待される。本研究の目的のうち、(1)幼児期における読み書きに関わる認知機能の特徴とその発達に関する検討は概ね順調に進展している。しかしながら、(2)幼児における読み書き障害のリスク評価とその支援については、該当する対象児がおらず、進展していない。24年度が最終年度であるため、記入しない。研究目的(2)幼児における読み書き障害のリスク評価とその支援については、該当する対象児がおらず、支援を含めた研究が難しい状況である。そこで、今後は幼児における読み書き障害のリスク評価の側面に焦点をあて、今年度の調査において認知課題や読みの成績が相対的に低かった対象児において、来年度さらに同様の調査を行うことで読み書きの困難に関するリスク要因や、発達のキャッチアップに関する側面について検討を加えて行きたいと考えている。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-21730726
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21730726
アメリカン・ルネサンスと日本開国を繋ぐ19世紀アメリカ言説の考察
本研究では、アメリカン・ルネサンスと日本開国の共時性に注目して両者に共有される19世紀アメリカの言説を調査した。ナサニエル・ホーソーンと彼に『日本遠征記』編纂を打診したペリー提督の接点に関する研究はほとんどなされてこなかった。本調査では、ホーソーンと海軍との関わりと、ペリーの文学的素養の伝記的背景を明らかにした。そして楽団や艦上劇を日本開国の文化的兵器と位置付けたペリーの戦略の背景に、両者に共有される海軍言説と文学的想像力が反映されていることを考察した。研究成果を4回の研究発表、雑誌論文2件で公表。新たに獲得した科研費で研究課題を継続して行っていく。また関連の論集と翻訳の企画を進めている。那覇市歴史博物館で琉球王国史『球陽』にあたり琉球王国滅亡直前の彗星、異国船、天変地異などに関する記述が記載されている本研究に関する有用な資料を得ることが出来た。またニューヨークのブルックリン海軍工廠博物館(Building 92)を訪問した。ペリーの尽力によって1833年に創設されたブルックリン海軍工廠ライシーアム(文化会館)の図書館は幅広い教養を備えた海軍士官を養成するというペリーの文学に対する深い関心が見て取れるものであるが、今回の訪問では、ライシーアムやペリーの住居跡地を訪れ、ブルックリン海軍工廠とライシーアムに関する資料の入手を行った。また、ペリーによる日本開国の背景的思想がマッカーサーによる戦後日本支配の思想に受け継がれていることがわかる有益な資料も入手できた。ワシントン海軍工廠ではNational Museum of the U.S. Navyとその図書館を訪問した。図書館では、ペリーの文学に対する深い造詣が窺える日本では入手できない古い伝記が見つかり、デジタルカメラでの撮影の許可を得て資料を入手した。5月の日本ナサニエルホーソーン協会全国大会では、ホーソーンの『緋文字』に関する発表を行い、また12月の日本ナサニエル・ホーソーン協会関西支部例会では、出張で得た資料にコーネル大学のアーカイブズなどで収集した資料を加え、今年度の研究報告として「空と海を巡る転換期の文学的想像力ーホーソーンと海軍、ペリー提督と文学ー」の発表を行った。特に後者では、ペリーが幼少期にイギリスの名家出身の母親から古典文学の教育を受けていたこと、そして、船乗りの家に生まれたホーソーンが、当時発展しつつあった海軍へ強い関心を抱いていたことに言及し、日本開国を実現した時の海軍提督と、『緋文字』でその名を不動にした作家が、19世紀アメリカの思潮を共有する素地をもっていたことを検証した。前年の調査ではペリーと文学との繋がりが確認できた。今年度は、この点に関する具体的な資料を収集する為にアナポリスとニューポートで調査を行った。アナポリスでは、Naval Academyの博物館と図書館を訪れ、博物館では、ペリー提督がブルックリン海軍工廠ライシーアム図書館に寄付した書籍の目録を入手した。図書館ではブルックリン海軍工廠図書館の1841年蔵書カタログの手書き原稿を閲覧してホーソーンも寄稿していた『民主党機関紙』の記録があることを確認した。また、ペリー一族の故郷のニューポートでは、18世紀より運営されているレッドウッド図書館で調査を行い、オリバー・H・ペリーが1817年に図書館に出資した際の証券の写し、その他の資料を入手した。これらの資料はニューポートにおけるペリー一族の文化的担い手としての位置を示しているが、そうした環境がペリー提督の文学的素養の形成に大きく影響したと考えられる。これらの調査結果に基づき、ナサニエル・ホーソーン協会全国大会(2016年5月)で「海洋国家アメリカの文学的想像力ー海軍のディスクールとアンテベラムの作家達ー」というテーマでシンポジウムの司会と発表を行う。ここでは、ホーソーンとペリーに共有される海軍ディスクールと文学的想像力についての考察を行うとともに、同時代の他の作家(アーヴィング、クーパー、メルヴィル)を扱う他の登壇者の方々の論考との相関性を検討する。ホーソーンに限らず、同時代の作家と海軍ディスクールとの関係を知ることで、より広範な視点から「アメリカン・ルネサンスと日本開国を繋ぐ19世紀アメリカ言説の考察」という本科研テーマの研究を深める契機とする。当初の計画通り海外調査、学会参加、資料収集を行い、その結果に基づく研究発表を学会で行う準備がすすんでいる。研究成果発表として、日本ナサニエル・ホーソーン協会全国大会にて「海洋国家アメリカの文学的想像力ー海軍ディスクールとアンテベラムの作家たち」というテーマでシンポジウムのコーディネートと発表を行った。各登壇者が専門とする作家と海軍との関わり、作家活動に与えた海軍言説などを検討したが、他の作家との比較によって、ホーソーンの海軍言説の捉え方、ペリーとホーソーンに共有された言説の特徴などが明確になり、アンテベラムの作家と海軍の関係性を包括的、多角的に論じる視座を得ることができた。調査では、ホーソーンの生誕地セイラムと姉妹都市である大田区郷土博物館にてホーソーンに関する資料、下田の開国博物館、霊仙寺、長楽寺、ハリス記念館(玉泉寺)および横浜開港資料館にて、ペリー提督と開国に関連する資料を収集、閲覧した。また仙台市博物館では、ペリーが小笠原を日本の領土とする根拠とした仙台藩林子平による『三国通覧図説』のフランス語版の資料、1860年に日米修好通条約の批准で派遣された仙台藩玉蟲左大夫の資料を閲覧した。仙台市博物館では2013年に世界記憶遺産に登録された17世紀の慶長遣欧使節に関連する資料等も閲覧し、開国期のアメリカとの接触に先立って、仙台では西洋への視点が開かれていたことが確認できた。
KAKENHI-PROJECT-26370344
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26370344
アメリカン・ルネサンスと日本開国を繋ぐ19世紀アメリカ言説の考察
一方、近年、小笠原の欧米系住民の子孫の方々と19世紀に小笠原で遭難して救助された陸前高田の漁師の子孫の方々との交流が始まっている。歴史の表舞台であまり論じられてこなかった地域や民間レベルで生じた日米交流の原点への注目が、19世紀のアメリカの文化言説と日本開国との関係性を考察する本研究の新たな視点となるのではないかという示唆を得た。本研究では、アメリカン・ルネサンスと日本開国の共時性に注目して両者に共有される19世紀アメリカの言説を調査した。ナサニエル・ホーソーンと彼に『日本遠征記』編纂を打診したペリー提督の接点に関する研究はほとんどなされてこなかった。本調査では、ホーソーンと海軍との関わりと、ペリーの文学的素養の伝記的背景を明らかにした。そして楽団や艦上劇を日本開国の文化的兵器と位置付けたペリーの戦略の背景に、両者に共有される海軍言説と文学的想像力が反映されていることを考察した。研究成果を4回の研究発表、雑誌論文2件で公表。新たに獲得した科研費で研究課題を継続して行っていく。また関連の論集と翻訳の企画を進めている。研究計画書で予定していたアメリカの海軍工廠での資料収集、並びにペリー来航の地での資料収集が順調にすすみ、学会での調査報告発表も行った。前年度の研究成果をもとに、関連するテーマを行っている他の研究者との交流を図り、最終年度の締めくくりとなる枠組みの構築を図る。具体的には、日本ナサニエル・ホーソーン協会全国大会(5月)において「海洋国家アメリカの文学的想像力ー海軍のディスクールとアンテベラムの作家達ー」というシンポジウムのコーディネータを務め、発表も行う。こうした研究の深化と拡充をさらに図る為、発展的内容にて次の科研費の申請を行い、研究書の出版へと繋げる方針である。アメリカ文学次年度では引き続きアメリカでの資料収集を行う。主にアナポリス海軍士官学校に保管されているブルックリン海軍工廠ライシーアムの図書館蔵書資料を閲覧するとともに、ペリー提督の子孫であるペリー博士のインタヴューを行う予定である。また国内ではペリー来航の地である小笠原の父島でペリー提督に関する資料収集を行う。今年度発表した「空と海を巡る転換期の文学的想像力ーホーソーンと海軍、ペリー提督と文学ー」を論文して学会誌に投稿し、また今年度の調査報告の準備を行う。今年度の研究調査出張の回数が予定より少なく済んだため、その分の旅費、その他の費用を繰越することになった。H27年度に行う東京での調査の日程を延長する必要があるため、宿泊費(12000×2)と日当(4500×3)ならびに、現地での交通費と資料コピーの依頼費他(2500)に充てる。
KAKENHI-PROJECT-26370344
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26370344
睡眠中の記憶整理仮説に基づく機能的MRIを用いた学習記憶の神経基盤に関する研究
本研究課題は、睡眠中の記憶の固定および消去を司る神経基盤の解明を目的とする。研究に用いた記憶課題は漢字二文字からなる単語の記銘課題と再認課題からなり、再認課題は記銘課題直後と24時間後に実施した。被験者は記銘課題と24時間後再認課題の間に7時間の睡眠をとった。記銘課題では、100個の単語を被験者は記憶した。再認課題では、記銘課題中に提示された単語のほかに新たな単語50個が提示され、被験者は単語が記銘課題中に提示されたものかどうかをボタンで回答した。記銘課題および再認課題時の脳活動を機能的MRIにより計測した。記銘課題遂行中の脳活動について、再認できた単語の記銘に関わる脳活動を、直後再認によるものと24時間後再認によるものとで解析し比較した。その結果、直後再認でも24時間後再認でも再認できた単語に有意な活動が認められた領域として、右海馬、背側の下前頭回が同定された。また、直後再認で再認できた単語に有意な活動が認められず、24時間後再認で再認できた単語に有意な活動が認められた領域として左上前頭回、左中前頭回、腹側の下前頭回、左中側頭回、左右中後頭回、左舌上回、右海馬傍回が同定された。これらの結果から、「弱い記憶」の記銘には海馬および背側の下前頭回を含む領域の活動が本質的であるのに対し、それを「強い記憶」として固定するためには、それらの領域ほかに左上前頭回、左中前頭回、腹側下前頭回ほかの領域の活動が重要であると考えられた。24時間後再認時に正しく再認できたときの脳活動部位として両側海馬が同定された。この領域の活動の強さの解析から、活動の強さと睡眠の構造とに関係があることが示唆された。この結果から、睡眠により記憶の固定が起こり、その状態を再認時の脳活動として検出できることを示唆すると共に、Squireによる記憶の固定に関わる海馬-皮質系記憶システムの説を支持するものと考えられた。本研究課題は、睡眠中の記憶の固定および消去を司る神経基盤の解明を目的とする。研究に用いた記憶課題は漢字二文字からなる単語の記銘課題と再認課題からなり、再認課題は記銘課題直後と24時間後に実施した。被験者は記銘課題と24時間後再認課題の間に7時間の睡眠をとった。記銘課題では、100個の単語を被験者は記憶した。再認課題では、記銘課題中に提示された単語のほかに新たな単語50個が提示され、被験者は単語が記銘課題中に提示されたものかどうかをボタンで回答した。記銘課題および再認課題時の脳活動を機能的MRIにより計測した。記銘課題遂行中の脳活動について、再認できた単語の記銘に関わる脳活動を、直後再認によるものと24時間後再認によるものとで解析し比較した。その結果、直後再認でも24時間後再認でも再認できた単語に有意な活動が認められた領域として、右海馬、背側の下前頭回が同定された。また、直後再認で再認できた単語に有意な活動が認められず、24時間後再認で再認できた単語に有意な活動が認められた領域として左上前頭回、左中前頭回、腹側の下前頭回、左中側頭回、左右中後頭回、左舌上回、右海馬傍回が同定された。これらの結果から、「弱い記憶」の記銘には海馬および背側の下前頭回を含む領域の活動が本質的であるのに対し、それを「強い記憶」として固定するためには、それらの領域ほかに左上前頭回、左中前頭回、腹側下前頭回ほかの領域の活動が重要であると考えられた。24時間後再認時に正しく再認できたときの脳活動部位として両側海馬が同定された。この領域の活動の強さの解析から、活動の強さと睡眠の構造とに関係があることが示唆された。この結果から、睡眠により記憶の固定が起こり、その状態を再認時の脳活動として検出できることを示唆すると共に、Squireによる記憶の固定に関わる海馬-皮質系記憶システムの説を支持するものと考えられた。今年度は、睡眠を介して固定される記憶と消去される記憶がほぼ同数となる機能的MRI向きの記憶課題の開発と、固定されやすい「強い記憶」と消去されやすい「弱い記憶」の記銘を司る脳内過程の機能的MRIによる解析を行った。1.記憶課題の開発漢字二文字からなる単語100語を記憶する課題を20名(男性、1938歳)に対して実施したところ、睡眠を介した24時間後の再認率は1994%であり、個体差が大きいことがわかった。このばらつきは難易度を変えても同様に存在し、また平均再認率が68%、MRIの解析が可能となる基準(再認率2575%)を20名中17名がクリアしたことから、記憶する単語数を100語に固定し再認率2575%のデータを解析することとした。2.記銘を司る脳内過程の解析1で開発した単語記憶(記銘)課題を行い、その直後と24時間後に再認試験を実施した。記銘課題遂行中の脳活動を機能的MRIにより計測し、再認試験の成績により再認できた単語の記銘に関わる脳活動を、直後再認によるものと24時間後再認によるものとで解析し比較した。
KAKENHI-PROJECT-17605010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17605010
睡眠中の記憶整理仮説に基づく機能的MRIを用いた学習記憶の神経基盤に関する研究
その結果、直後再認の結果による解析で再認できた単語とできなかった単語の記銘に関わる脳活動に有意差があって、さらに24時間後再認の結果による解析でも同様の有意差を認めた領域と、直後再認の結果による解析では有意差が認められず、24時間後再認の結果による解析でのみ有意差を認めた領域とが同定された。前者は、右海馬、背側の下前頭回であり、後者は左上前頭回、左中前頭回、腹側の下前頭回、左中側頭回、左右中後頭回、左舌上回、右海馬傍回であった。これらの結果から、「弱い記憶」の記銘には海馬および背側の下前頭回を含む領域の活動が本質的であるのに対し、「強い記憶」として固定するためには、それらの領域ほかに左上前頭回、左中前頭回、腹側下前頭回ほかの領域の活動が重要であると考えられた。睡眠中の記憶の固定および消去を司る神経基盤の解明を目的とし、初年度(平成17年度)は記憶の記銘課題遂行中の脳活動に着目し実験及び解析を行った。平成18年度は、記憶の再認に着目し、再認に関わる脳内過程を機能的MRIにより解析した。使用した記憶課題は漢字二文字からなる単語の記銘課題と再認課題からなり、記銘課題と再認課題の間には24時間の間隔が置かれている。また、被験者は記銘課題と再認課題の問に7時間の睡眠をとる。記銘課題では、100個の単語と50個の記号(コントロール)がランダムな順序で視覚的に提示される。被験者への教示は「提示されたものが単語か記号かをボタンにより回答し、単語の場合はそれを記憶する」である。再認課題では、記銘課題中に提示された単語のほかに、新たな単語50個と記号50個がランダムな順序で視覚的に提示される。被験者への教示は「提示されたものが単語の場合、記銘課題中に提示されたものかを判断し、また記号の場合は記号と判断して、それらの判断をボタンにより回答する」である。再認課題遂行中にfMRIを用いて脳活動を計測し、それらのデータはSPM2 (London, UK)により解析された。その結果、記銘課題中に提示された単語を再認課題中に正しく再認することに関わる脳活動部位(コントロールである記号提示時に対して解析)として両側海馬が同定された。また、これらの領域の活動の強さは、記銘課題と再認課題の間の睡眠の構造と関係をもつことを示唆する結果となった。以上の結果は、睡眠により記憶の固定が起こりそれを再認時の脳活動として検出できることを示すと共に、Squireによる記憶の固定に関わる海馬-皮質系記憶システムの説を支持するものと考えられる。
KAKENHI-PROJECT-17605010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17605010
クエン酸生産糸状菌におけるオリゴマイシン耐性変異株のミトコンドリア遺伝子解析
糸状菌Aspergillusnigerにおいて、ミトコンドリアはクエン酸生産の場としても極めて重要であるが、クエン酸生産と呼吸機能およびミトコンドリア遺伝子の遺伝的機構との関連性については従来は全く研究されていなかった。そこで、本申請研究においては表現型としてオリゴマイシン耐性を示すミトコンドリア遺伝子変異株を作成し、変異に関わる遺伝子領域の塩基配列を決定した。マンガンイオンを過剰に含む培地内で分生子を生育させて、9株のオリゴマイシン耐性変異株を取得した。これらはトリエチルチン感受性であり、最少培地における生育が親株と比較して劣っていた。これらの結果から、ミトコンドリア遺伝子上にコードされているATPaseサブユニット6または9をコードする遺伝子に変異があると推定された。そこで、代表変異株LORM-4Lに関して、変異が予想された領域付近のミトコンドリアDNA断片をクローニングして塩基配列を決定した。親株(野性型)のATPaseサブユニット6の遺伝子と比較したところ、代表変異株LORM-4Lでは771塩基対から成る読み取り枠中の508番目の塩基がGからAに変化しており、GAA→AAAの変化によってアミノ酸としてはグルタミン酸からリシンへと変化していることが明らかとなった。この部分はATPaseサブユニット6においては高次構造に影響を及ぼす部分であり、当該変異によりLORM-4Lはオリゴマイシン耐性を獲得したものと考えられた。ATPaseサブユニット9遺伝子に関しては正常であった。一方、オリゴマイシン耐性変異株についてクエン酸生産性を調べたが、いずれの株においてもグルコース消費性が減少しており、これに伴いクエン酸生産性も極端に低下していた。糸状菌Aspergillusnigerにおいて、ミトコンドリアはクエン酸生産の場としても極めて重要であるが、クエン酸生産と呼吸機能およびミトコンドリア遺伝子の遺伝的機構との関連性については従来は全く研究されていなかった。そこで、本申請研究においては表現型としてオリゴマイシン耐性を示すミトコンドリア遺伝子変異株を作成し、変異に関わる遺伝子領域の塩基配列を決定した。マンガンイオンを過剰に含む培地内で分生子を生育させて、9株のオリゴマイシン耐性変異株を取得した。これらはトリエチルチン感受性であり、最少培地における生育が親株と比較して劣っていた。これらの結果から、ミトコンドリア遺伝子上にコードされているATPaseサブユニット6または9をコードする遺伝子に変異があると推定された。そこで、代表変異株LORM-4Lに関して、変異が予想された領域付近のミトコンドリアDNA断片をクローニングして塩基配列を決定した。親株(野性型)のATPaseサブユニット6の遺伝子と比較したところ、代表変異株LORM-4Lでは771塩基対から成る読み取り枠中の508番目の塩基がGからAに変化しており、GAA→AAAの変化によってアミノ酸としてはグルタミン酸からリシンへと変化していることが明らかとなった。この部分はATPaseサブユニット6においては高次構造に影響を及ぼす部分であり、当該変異によりLORM-4Lはオリゴマイシン耐性を獲得したものと考えられた。ATPaseサブユニット9遺伝子に関しては正常であった。一方、オリゴマイシン耐性変異株についてクエン酸生産性を調べたが、いずれの株においてもグルコース消費性が減少しており、これに伴いクエン酸生産性も極端に低下していた。
KAKENHI-PROJECT-06760096
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06760096
微粒酸化鉱物の浮選分離に及ぼす疎水性相互作用に関する研究
捕収剤を吸着した粒子間には疏水性相互作用が働く.浮選により目的鉱物と非目的鉱物を分離する場合には疏水性相互作用が分離成績の低下をもたらす原因となる.本研究ではpH9.8でドデシルアミン水溶液中の石英,ヘマタイト間に生じる疏水性相互作用について基礎的検討を行なった.-10umのヘマタイト, 65100meshの石英を1:1に混合しpH9.8で浮選した結果,粗粒石英の浮選性は単独試料で得られる結果より著しく減少した.微粒ヘマタイト,粗粒石英に対するドデシルアミンの吸着等温線は3×10^<-5>M以上でほぼ一致した.単独試料の100%浮選性は粗粒石英でDAAの表面被覆率6%,微粒ヘマタイトのそれは100%で得られた.混合試料中の粗粒石英は表面被覆率630%で浮遊しうるに充分な吸着量でるあにもかかわらず浮遊いにくくなることが認められた.微粒ヘマタイト,粗粒石英のゼータ電位を測定し,吸着等温線と比較検討した結果,粗粒石英に対してはDA^+イオントとDA分子の吸着が行るのに対し,微粒ヘマタイトに対しては非解離アミン分子の毛管凝縮機構が関与することを推察した.浮選条件の石英粒子表面を電顕観察した結果, DAA初濃度2×10^<-5>Mですでにヘマタイト微粒子は付着し始め, 5×10^<-5>Mで多量のヘマタイト粒子がヘテロ凝集していた.DLVO理論(球-平板モデル)を用いて粒子間に働く相互エネルギーのエネルギー障壁(Vn)を求めた結果, DAA初濃度2×10^<-5>MでVn65kT5×10^<-5>MでVn30kTであり,付着量との間に対応性が認められた.系の厳密な解析のためには疏水性相互作用の定量的考察が必要であることが認められた.捕収剤を吸着した粒子間には疏水性相互作用が働く.浮選により目的鉱物と非目的鉱物を分離する場合には疏水性相互作用が分離成績の低下をもたらす原因となる.本研究ではpH9.8でドデシルアミン水溶液中の石英,ヘマタイト間に生じる疏水性相互作用について基礎的検討を行なった.-10umのヘマタイト, 65100meshの石英を1:1に混合しpH9.8で浮選した結果,粗粒石英の浮選性は単独試料で得られる結果より著しく減少した.微粒ヘマタイト,粗粒石英に対するドデシルアミンの吸着等温線は3×10^<-5>M以上でほぼ一致した.単独試料の100%浮選性は粗粒石英でDAAの表面被覆率6%,微粒ヘマタイトのそれは100%で得られた.混合試料中の粗粒石英は表面被覆率630%で浮遊しうるに充分な吸着量でるあにもかかわらず浮遊いにくくなることが認められた.微粒ヘマタイト,粗粒石英のゼータ電位を測定し,吸着等温線と比較検討した結果,粗粒石英に対してはDA^+イオントとDA分子の吸着が行るのに対し,微粒ヘマタイトに対しては非解離アミン分子の毛管凝縮機構が関与することを推察した.浮選条件の石英粒子表面を電顕観察した結果, DAA初濃度2×10^<-5>Mですでにヘマタイト微粒子は付着し始め, 5×10^<-5>Mで多量のヘマタイト粒子がヘテロ凝集していた.DLVO理論(球-平板モデル)を用いて粒子間に働く相互エネルギーのエネルギー障壁(Vn)を求めた結果, DAA初濃度2×10^<-5>MでVn65kT5×10^<-5>MでVn30kTであり,付着量との間に対応性が認められた.系の厳密な解析のためには疏水性相互作用の定量的考察が必要であることが認められた.捕収剤を吸着した粒子は強い疎水性凝集を起すことが知られている。本研究では、石英、ヘマタイトに対するアミンの吸着量、ち電位、凝集実験を行なって、どのような条件で疎水性凝集が生じ、どのように浮選分離に影響するのかを検討した。本年度で得られた結果をまとめるとつぎのようである。-10μmヘマタイト、65100mesh石英を用いて浮選分離におよぼす捕収剤の添加量の影響を検討した結果、単独試料の浮遊性には差が認められるが、1:1混合試料にすると粗粒石英の浮遊性は減少し微粒ヘマタイトと同様の浮遊性を示すために両者の差は認められなくなる。微粒ヘマタイト、粗粒石英に対するドデシルアミンの吸着等温線を測定した結果、石英に対するそれは3×【10^(-5)】Mで、ヘマタイトに対するそれは2×【10^(-5)】Mでそれぞれ急激に立ち上がりやがて飽和した。石英とヘマタイトに対する吸着等温線は3×【10^(-5)】M以上では差が認められないこと、ならびに両者とも二分子層吸着を示すことなどが確認された。混合試料中での両鉱物に対するドデシルアミンの分配吸着を検討した。その結果、混合試料に対する吸着等温線はそれぞれの単独試料の吸着等温線から計算されるものと一致することを認めた。
KAKENHI-PROJECT-61550459
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61550459
微粒酸化鉱物の浮選分離に及ぼす疎水性相互作用に関する研究
したがって両鉱物に分配されるドデシルアミンの吸着量を平衡濃度から算出できる。吸着量と浮遊性の関係を求めた結果、100%の浮鉱率を得るのに粗粒石英では表面被覆率θ=6%、微粒ヘマタイトではθ【!】100%が必要である。一方、混合試料では石英は浮遊するのに充分な吸着量を有するにもかかわらず浮遊しにくくなることが認められた。
KAKENHI-PROJECT-61550459
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61550459
神経回路形成における新規リン酸化GAP43の機能解析
GAP-43は神経軸索先端に極めて多く発現するリン酸化蛋白質である。近年、我々は神経発生過程のリン酸化プロテオーム解析を行い、GAP-43の新規リン酸化部位(Ser96、Thr172)を同定した。これらpSer/Thrを認識する特異的抗体を作成し、JNKが上流キナーゼとして制御していることを明らかにした。本研究ではJNKを介したGAP-43リン酸化の機能を明らかにするため、非リン酸化型GAP-43のノックインマウスを作製した。このノックインマウスにおいては、神経軸索の長さが野生型の50%程度であったことから、Ser96がGAP-43の軸索伸長機能に関与する事が示唆された。GAP-43は神経軸索先端に極めて多く発現するリン酸化蛋白質である。近年、我々は神経発生過程のリン酸化プロテオーム解析を行い、GAP-43の新規リン酸化部位(Ser96、Thr172)を同定した。これらpSer/Thrを認識する特異的抗体を作成し、JNKが上流キナーゼとして制御していることを明らかにした。本研究ではJNKを介したGAP-43リン酸化の機能を明らかにするため、非リン酸化型GAP-43のノックインマウスを作製した。このノックインマウスにおいては、神経軸索の長さが野生型の50%程度であったことから、Ser96がGAP-43の軸索伸長機能に関与する事が示唆された。神経がどのようにして成長・再生するかは、殆ど理解されていない。GAP-43は古くから知られる神経成長関連分子であるが、その分子機能は明らかになっていない。我々は、大規模な定量的リン酸化プロテオミクスを実施し、神経発生・再生過程でのみ活性化されるGAP-43リン酸化部位を同定した。このリン酸化部位は、神経軸索の形成維持に重要なMKK/JNKシグナルで活性化されていた。これらの結果から、GAP-43の新規リン酸化部位が神経の発生・再生において何らかの機能を有する可能性が示唆された。本研究では、リン酸化型GAP-43の分子機能を解明し、軸索伸長に必要なシグナル伝達機構を明らかにすることを目的としている。25年度の成果は以下の通りである。1:リン酸化GAP-43の発現マッピング(神経発生及び再生):マウスの神経発生過程では、回路形成が盛んな時期に限局し、強い発現が確認された。また、中枢および末梢神経の再生過程の神経軸索おいても発現が上昇した。これらの結果から、新規リン酸化型GAP-43を神経発生や再生のマーカー分子として国際特許出願中である。2:軸索伸長機能について:非リン酸化型GAP-43をノックインしたマウスでは、野生型と比較し軸索の長さが半分程度にまで減少していた。このことから、GAP-43のリン酸化は軸索の形成に関与することが明らかとなった。神経軸索の先端には成長円錐と呼ばれる非常に運動性の高い構造体が存在する。成長円錐は細胞骨格の再編成及び膜輸送により運動性を獲得し、軸索を牽引することで軸索伸長を制御する。これまでに、我々は成長円錐における情報伝達系を明らかにする事を目的とし、リン酸化プロテオーム解析を行っきた。本研究では、特にリン酸化の頻度が高いGAP-43の96番目のSerに着目し、その責任キナーゼの同定及びその下流シグナル経路の解析を行った。GAP-43はパルミトイル化で細胞膜にアンカーし、PKCでリン酸化されるIQmotifを有する分子である。Ser96は、GAP-43のIQ motifよりC末側に位置しており、確かに成長円錐内で高頻度にリン酸化されていたが、PKCリン酸化部位であるSer41は殆ど検出されなかった。今年度は、Ser96におけるリン酸化型GAP-43の特異的抗体とキナーゼに対するsiRNAを用いた解析を行い、JNK1が責任キナーゼであることを同定した。JNK1は神経発生過程の軸索成長において重要な役割を担うmitogen-activated protein kinaseである。一方で、GAP-43にリン酸化依存的に結合する分子を探索し候補タンパク質を同定することにも成功した。同定された分子の幾つかは、活性酸素の消去に関わる分子でることから、GAP-43のリン酸化は神経成長過程における酸化還元恒常性維持に関与しているのではないかということが予測された。現在これらの分子の神経成長機能についても解析を進めている。このリン酸化の機能的意義についても、GAP-43 Ser96Alaノックインマウスを用いて突起伸長過程における活性酸素レベルを評価した。現在までには、野生型と比較して有意な違いは認められていない。今後は、より感度の高い方法を用いて、成長円錐における活性酸素レベルの変動について解析を進める予定である。細胞生物学リン酸化GAP-43の機能を明らかにする上で、その発現をマッピングすることは必要不可欠である。本年度は、当初の予定通りの研究を行い、GAP-43のリン酸化が神経系(中枢、末梢)の発生及び再生過程に共通した現象であることを明らかにした。さらに、このリン酸化が軸索の伸長に関与することを、ノックインマウスを用いた解析で明らかにした。当初の研究計画通りに、今後は非リン酸化型GAP-43ノックインマウスを用いたin vivo解析で、リン酸化の生理的意義を明らかにする。さらに、GAP-43のリン酸化がどのようにして軸索伸長を制御しているのか、その分子メカニズムについて細胞生物学的な手法により解析を進めて行く予定である。
KAKENHI-PROJECT-25870251
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25870251
神経回路形成における新規リン酸化GAP43の機能解析
動物実験を行う予定の施設が改修工事のため、大幅ば動物実験の縮小を行った。このため、本年度行う予定であった遺伝子組み換えマウスを用いた細胞生物学的解析を、次年度に延期することになった。細胞生物学的実験に必要な非リン酸化GAP-43のノックインマウスを準備しており、本年度予定していた細胞生物学的解析を次年度すぐにスタートする準備を整えている。
KAKENHI-PROJECT-25870251
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25870251
体育授業における教師の「身体-感性-言語」の関係に関する理論的・実証的研究
教師の成長には,「運動の知識」獲得が重要であり,優れた教師へと成長するための十分条件になっている。しかしながら,この手の知識獲得に関わった問題認識と関心の形成の前段階に,授業マネジメントなど授業の基礎固めに関わる問題といったステージなどが存在しているものと考えられた。また,今後の課題として,各教師の身体知のレベルに合った問題(抱くべき関心も含む)とは何か,どうすれば問題を認識させることが可能なのか,また認識すべき問題に順序は存在するのか,といった実践課題を導出することができた。本研究の目的は,体育科における学習成果を高めた教師は「運動の知識」と「子どものつまずきの類型と対処法に関する知識」を豊富に有し,それらを中核に授業中の「出来事の予兆」に気づき,言語的相互作用を適切に展開しているという関係を学校教育現場で実証することである。上述した研究目的を達成するために,今回,1年目の目標として次の2点を立案した。すなわち,【1】アメリカの体育授業における教師の「身体ー感性ー言語」の関係に関する論理的仮説を導出した。具体的には,Sensitivity研究の第1人者であった,アメリカのクルト・レヴィン氏を中心とした先行研究を批判的に概観し,教師の「身体ー感性」の関係性を検討した。また、【2】優れた教師は本当に体育授業中の「出来事の予兆」への気づきと言語相互作用とが関係するのか検討するため,小学校教師12名を対象に,同一の課題解決的指導法の体育授業を一単元にわたって実施してもらい,両者の関係を検討した(1年目)。その結果、Sensitivityを感性と直訳することには疑義があったこと、感性とはAwarenessと捉えられること、卓越した教師と言われた実践者の一連の著書より、優れた教師の身体と感性は密接に関係するが両者の間には関心が介入している可能性の高いことが、それぞれ導出できた。また、優れた教師ほど言語相互作用を多く展開しており、そこでの言語と体育授業中の「出来事の予兆」への気づきとの多くが対応する関係が認められた。これより、より良い言語的相互作用の展開するためには、「出来事の予兆」に気づくための準備が重要であるものと考えられた。以上のことから、優れた教師は「運動の知識」と「子どものつまずきの類型と対処法に関する知識」を豊富に獲得し,その知識を中核に授業中の「出来事の予兆」に気づき,言語的相互作用を適切に展開できるとする研究仮説は妥当であるものと考えられた。本研究課題として,下記の2点を設定した。すなわち、【1】アメリカの体育授業における教師の「身体ー感性ー言語」の関係に関する論理的仮説を導出した。具体的には,Sensitivity研究の第1人者であった,アメリカのクルト・レヴィン氏を中心とした先行研究を批判的に概観することで,教師の「身体ー感性」の関係性を検討した。また、【2】優れた教師は本当に体育授業中の「出来事の予兆」への気づきと言語相互作用とが関係するのか検討するため,小学校教師12名を対象に,同一の課題解決的指導法(フラッグフットボール)の体育授業を一単元(8時間)にわたって実施してもらい,両者の関係を検討した、の2点である。1年目では、概ね上記2つに関わった研究データの収集・整理は終えることができた。その大きな理由は、アメリカのクルト・レヴィン氏を中心とした先行研究の収集が可能であったこと、学校教育現場の協力により無事に授業研究を実施することが出来たことが大きな理由として挙げられる。とりわけ、後者については、学校現場の先生方が忙しい中で授業研究の打ち合わせに時間を割いてくれたこと、関係する保護者や子どもたちが快く調査協力に応じてくれたことが関係している。また、天候による影響が少なかったことも順調に研究が進展している理由である。2年目についても、引き続き学校教育現場からの協力を得つつ研究を推進していければと願っている。2016年度では、当初の研究計画通りに進めることができた。すなわち、教師の「運動の知識」の広さが体育授業における「出来事の予兆」への気づきと「推論ー対処」にどのような影響を及ぼすのかを検討した。合わせて、授業中の教師行動ー気づきと「推論ー対処」ー学習成果(態度得点,運動技能)の三者の関係についても検討した。調査対象およ授業は、小学校教師(知識量が多く専門的な内容まで把握していた教師を上位群、一般的な知識量を保有している教師を中位群、そうでない教師を下位群)と短距離走(学校行事および天候の関係より、5月及び9月に実施)とした。教師の「運動の知識」量については、「ゲーム理論」における「展開型」の表現様式と樹形図を用いた調査と半構造化インタビューを中心に測定した。得られた結果は次の通りである。(1)同じ小学校教師であっても保有する「運動の知識」量に顕著な相違が存在し、上位群の教師、中位群の教師、さらには下位群の教師に大別可能であったこと、(2)上位群の教師=中位群の教師>下位群の教師という順に1時間あたりの「出来事の予兆」への気づきの頻度数が有意に多く、なかでも「技術的つまずき」に関わったものが多い傾向になったこと、(3)上位群>中位群>下位群の順に学習成果(態度得点,運動技能)も高くなる結果にあった。
KAKENHI-PROJECT-15K04203
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K04203
体育授業における教師の「身体-感性-言語」の関係に関する理論的・実証的研究
(4)気づきの頻度数に差はないが学習成果で差が認められた上位群と中位群について、インタビュー調査と実際の授業中の教師行動より両者の間には、「動機づけられた見落とし」があるものと考えられた。つまり、気づいてはいるものの、対処することで授業の流れが壊れたリ止まる可能性のある「出来事の予兆」については、気づいても実際には行動していなかった現象が中位群の教師には生起していた。授業実践を依頼していた学校教育現場に大きな変化(人事異動や休職など)がなかったことが、おおむね順調に進展した理由であると考える。また、積雪などの天候の影響はあったものの、学校教育現場の先生方が臨機応変に対応して下さったおかげで、授業分析に必要なデータを収集することも可能であった点も、大きな理由であると考える。また、学校教育現場以外の職場(スポーツ教育現場)で日々の実践を蓄積している方々から収集しているデータや調査結果についてアドバイスを頂けたことも順調に進んでいる理由であろう。とりわけ、学校現場とは異なった観点や視点からアドバイスが得られたことで、不足していた調査観点を得ることができたことは、研究を進めるにあたっては大きな成果であったと考える。今年度は,研究課題【3】として体育科を専門としない教師1名と初任教師(経験年数3年以下)1名を対象に,「運動の知識」と「子どものつまずきの類型と対処方法に関する知識」を介入することで,教師の「出来事の予兆」への気づきがどのように変化し,授業中の「言語的相互作用」がどのように改善されるのか検討した。各調査対象者には,介入前にサッカーもしくは短距離走教材を,介入後の単元としてハンドボール教材を,それぞれ実施してもらった。ちなみに,知識への介入は,過去のバイオメカニクスや臨床スポーツ科学の分野を中心としたスポーツ諸科学の研究成果を収集・整理したもの,サッカー,短距離走およびハンドボールを専門とする専門家からの専門的知識提供,これらの運動教材を取り扱った過去の先行研究で認められた「子どものつまずきの類型と対処方法」を体系化したもの,さらには学校体育授業辞典の内容をそれぞれ提示した。その結果,子どもの「技術的つまずき」への気づきやスポーツ諸科学の知見から推論する「合理的推論」の量は増加したものの,実際の言語的相互作用が変化することはなかった。また,子どもたちの学習成果が高まることもなかった。これらより,「運動の知識」獲得は重要であり,優れた教師へと成長するための十分条件ではあるが,この手の知識獲得に関わった問題認識と関心の形成の前段階に,授業マネジメントなど授業の基礎固めに関わる問題といったステージなどが存在しているものと考えられた。また,今後の研究課題として,各教師の身体知のレベルに合った問題(抱くべき関心も含む)とは何か,どうすれば問題を認識させることが可能なのか,また認識すべき問題に順序は存在するのか,といった実践課題を導出することができた。教師の成長には,「運動の知識」獲得が重要であり,優れた教師へと成長するための十分条件になっている。しかしながら,この手の知識獲得に関わった問題認識と関心の形成の前段階に,授業マネジメントなど授業の基礎固めに関わる問題といったステージなどが存在しているものと考えられた。また,今後の課題として,各教師の身体知のレベルに合った問題(抱くべき関心も含む)とは何か,どうすれば問題を認識させることが可能なのか,また認識すべき問題に順序は存在するのか,といった実践課題を導出することができた。
KAKENHI-PROJECT-15K04203
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K04203
1細胞メチル化DNA検出法の開発と血中循環腫瘍細胞の簡易検出法への展開
本研究は標的遺伝子のメチル化レベルを1細胞から測定する方法を開発することを目的としている。これまでに、核酸の特殊構造であるグアニン四重鎖(G-quadruplex: G4)構造がメチル化によって安定化すると、その領域を標的とした場合PCR増幅効率が減少することを報告している。つまり、これを利用すれば標的遺伝子のメチル化レベルを、PCRを行うだけで測定することが可能である。一方、メチル化によってG4構造が安定化する詳細な条件やその物理化学的なパラメーターは不明であった。そこで、本年度は血管内皮増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor: VEGF)プロモーター中に含まれるG4構造を対象に、このG4構造がメチル化によって安定化する詳細な条件とその物理化学的なパラメーターを解析することを目的とした。メチル化したVEGF G4 DNAと非メチル化VEGF G4 DNAを化学合成し、種々の条件でその熱安定性を円偏光二色性(Circular Dichroism: CD)測定法で解析した。その結果、メチル化によりVEGF G4構造の熱安定性が上昇するためには20 mM NaClと2 mM MgCl2が必要であることが明らかになった。この条件下ではメチル化することによりVEGF G4構造のTm値は5.7度上昇した。VEGF G4には4か所のメチル化サイトが含まれるが、11番目のシトシンをメチル化すると熱安定性が上昇することも明らかにした。これらの結果は、標的遺伝子のメチル化レベルを1細胞からPCR法で直接測定する方法を開発するために重要な知見になる。本研究はPCRを行うだけで標的遺伝子のメチル化レベルを1細胞から測定する方法を開発することを目的としている。初年度に本検出法の標的となるG4構造形成領域をゲノムワイドに同定している。具体的には、G4構造結合リガンド存在下において全ゲノム増幅反応を行い、増幅されなかった領域を次世代シークエンサーで解析することにより、ヒトゲノムDNA中のG4構造形成領域を網羅的に同定している。本年度はメチル化によってG4構造の熱安定性が上昇する条件を明らかにした。標的としてはVEGFプロモーター中で形成されるG4構造を用い、20 mM NaClと2 mM MgCl2存在下ではこのG4構造のTm値がメチル化により5.7度上昇することを明らかにした。今後、これらの知見を基に測定条件の最適化を行い、標的遺伝子のメチル化レベル測定法を開発する。本年度に決定したメチル化によりG4構造が安定化する条件を基に、PCRを行うだけで細胞から直接標的遺伝子のメチル化レベルを測定する方法を開発する。初年度に同定したG4構造形成領域から疾病のマーカーとなる遺伝子領域を選択し、そのG4構造がメチル化によって安定化するか検討する。さらにその条件を基に、その領域を標的としPCRを行った際にPCR増幅効率が減少する条件を検討する。さらにゲノムDNAを細胞から抽出しないで、直接PCR溶液に細胞を加え、PCR増幅効率を測定するだけで標的遺伝子のメチル化レベルを測定できる条件を検討する。本研究は1細胞レベルでがん関連遺伝子のメチル化レベルを直接測定する方法を開発することを目的としている。これまでにグアニン四重鎖(G4) DNAがメチル化されるとその構造が安定化すること利用し、PCR増幅効率を測定するだけで標的遺伝子のメチル化レベルを測定できる方法を開発している。そこで本研究では細胞を直接PCR溶液に加え定量PCRを行うことにより癌関連遺伝子のメチル化レベルを測定する方法を開発する。本年度は本検出法の標的となるG4 DNA形成配列を複数含む領域(G4 cluster)をヒトゲノム中から網羅的に同定することを目的とした。これまでにPCR溶液にグアニン四重鎖DNAに特異的に結合する化合物7OTDを添加すると、鋳型となるDNAがG4構造を形成する場合PCRが阻害されることが報告されている。そこで、ヒトゲノムDNAに7OTDを添加し、Whole Genome Amplification (WGA)反応を行えば、ヒトゲノムDNAにおいてG4 cluster領域でWGA反応が阻害されると想定した。つまり、得られたWGA反応産物を次世代シークエンサーで解析し、WGA反応が阻害されているゲノム領域を同定すれば、ヒトゲノムDNA中で形成されるG4 clustersを網羅的に同定できると想定した。実際に7OTD存在下でヒトゲノムDNAをWGAで増幅し、それを次世代シークエンサーで解析した結果、9,651箇所のG4 clustersを同定することに成功した。さらに、その内3,766 G4 clustersは近傍に転写開始点を含み、95遺伝子ががん関連遺伝子であることが明らかになった。つまり、これらがPCRでメチル化レベルを測定する方法の標的遺伝子領域となることが明らかになった。本年度は本検出法の標的となるG4 DNA形成配列を複数含む領域(G4 cluster)をヒトゲノム中から網羅的に同定することを目的とした。これまでにPCR溶液にグアニン四重鎖DNAに特異的に結合する化合物7OTDを添加すると、鋳型となるDNAがG4構造を形成する場合PCRが阻害されることが報告されている。そこで、ヒトゲノムDNAに7OTDを添加し、Whole Genome Amplification (WGA)反応を行えば、ヒトゲノムDNAにおいてG4 cluster領域でWGA反応が阻害さると想定した。実際に7OTD存在下でヒトゲノムをWGAで増幅し、そのWGA効率をPCRで解析した。G4構造形成配列を含む遺伝子としてc-MYC, c-KIT, BCL2, VEGFAを、G4構造形成配列を含まない遺伝子としてMBD3L3, CD4, CNDP2, SOD1を標的としてPCRを行った。
KAKENHI-PROJECT-17K06933
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K06933
1細胞メチル化DNA検出法の開発と血中循環腫瘍細胞の簡易検出法への展開
その結果、7OTDを加えてWGAを行うと、G4構造形成配列を含む遺伝子特異的にWGA増幅効率が低下することが示された。そこで、このWGA産物のDNA配列をIllumina HiSeq X10 (the paired-end mode: 150bp×2)を用いて解析した。その結果、平均35 coverageのデータが得られた。全ゲノムに対して10kbp windowごとのリード数をカウントした結果、7OTDを加えた場合に特異的にリード数が減少している領域として9,651箇所のゲノム領域を同定した。つまり、9,651か所のG4 clustersを同定することに成功した。さらに、その内3,766 G4 clustersは近傍に転写開始点を含むことから、これらがメチル化測定のために標的になることが示された。本研究は標的遺伝子のメチル化レベルを1細胞から測定する方法を開発することを目的としている。これまでに、核酸の特殊構造であるグアニン四重鎖(G-quadruplex: G4)構造がメチル化によって安定化すると、その領域を標的とした場合PCR増幅効率が減少することを報告している。つまり、これを利用すれば標的遺伝子のメチル化レベルを、PCRを行うだけで測定することが可能である。一方、メチル化によってG4構造が安定化する詳細な条件やその物理化学的なパラメーターは不明であった。そこで、本年度は血管内皮増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor: VEGF)プロモーター中に含まれるG4構造を対象に、このG4構造がメチル化によって安定化する詳細な条件とその物理化学的なパラメーターを解析することを目的とした。メチル化したVEGF G4 DNAと非メチル化VEGF G4 DNAを化学合成し、種々の条件でその熱安定性を円偏光二色性(Circular Dichroism: CD)測定法で解析した。その結果、メチル化によりVEGF G4構造の熱安定性が上昇するためには20 mM NaClと2 mM MgCl2が必要であることが明らかになった。この条件下ではメチル化することによりVEGF G4構造のTm値は5.7度上昇した。VEGF G4には4か所のメチル化サイトが含まれるが、11番目のシトシンをメチル化すると熱安定性が上昇することも明らかにした。これらの結果は、標的遺伝子のメチル化レベルを1細胞からPCR法で直接測定する方法を開発するために重要な知見になる。本研究はPCRを行うだけで標的遺伝子のメチル化レベルを1細胞から測定する方法を開発することを目的としている。初年度に本検出法の標的となるG4構造形成領域をゲノムワイドに同定している。具体的には、G4構造結合リガンド存在下において全ゲノム増幅反応を行い、増幅されなかった領域を次世代シークエンサーで解析することにより、ヒトゲノムDNA中のG4構造形成領域を網羅的に同定している。
KAKENHI-PROJECT-17K06933
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K06933
ブレインサイエンスにシミュレーションから接近する
身体運動は、自分の意志で運動を始めようとする「自律制御」と、いったん運動が始まったら、他の器官などに同調される「引き込み現象」から構築されている。これらの仕組みを明らかにするためには、その基礎づくりとして身体運動に関わる基礎原理を様々な方向から検討しておかなければならない。そのために、以下のような研究を行った。1:従来のシミュレーション研究を総括し、シミュレーション分野の進み具合を文献的に確認するとともに、その問題点を明らかにした。2:垂直跳および立幅跳を対象にした実験によって、下肢の二関節筋の役割、腕振りの効果などを明らかにした。また、超音波法を用いた実験によって、運動中の筋紡錘の働きを、伸張反射を通して明らかにした。3:ダイナミックな身体運動で大きな役割を果たす「筋腱複合体MTC」について、超音波法および力学モデルを用いた方法によって、各要素の力学特性を定量した。4:収縮要素および直列・並列弾性要素からなるHillタイプのMTCモデルを作成した。このモデル1個の動的特性を検証し、身体に配列されている筋の役割を考察した。次に、身体骨格モデルに、MTCモデルを複数個とりつけ、立位の足関節屈伸運動、垂直跳、歩行のシミュレーションを行い、成功した。この人体骨格MTCモデルを用い、神経入力を様々に変化させて動作を構築するという手順を通して、脳の高次機能に接近するという土台ができあがった。身体運動は、自分の意志で運動を始めようとする「自律制御」と、いったん運動が始まったら、他の器官などに同調される「引き込み現象」から構築されている。これらの仕組みを明らかにするためには、その基礎づくりとして身体運動に関わる基礎原理を様々な方向から検討しておかなければならない。そのために、以下のような研究を行った。1:従来のシミュレーション研究を総括し、シミュレーション分野の進み具合を文献的に確認するとともに、その問題点を明らかにした。2:垂直跳および立幅跳を対象にした実験によって、下肢の二関節筋の役割、腕振りの効果などを明らかにした。また、超音波法を用いた実験によって、運動中の筋紡錘の働きを、伸張反射を通して明らかにした。3:ダイナミックな身体運動で大きな役割を果たす「筋腱複合体MTC」について、超音波法および力学モデルを用いた方法によって、各要素の力学特性を定量した。4:収縮要素および直列・並列弾性要素からなるHillタイプのMTCモデルを作成した。このモデル1個の動的特性を検証し、身体に配列されている筋の役割を考察した。次に、身体骨格モデルに、MTCモデルを複数個とりつけ、立位の足関節屈伸運動、垂直跳、歩行のシミュレーションを行い、成功した。この人体骨格MTCモデルを用い、神経入力を様々に変化させて動作を構築するという手順を通して、脳の高次機能に接近するという土台ができあがった。身体運動は、自分の意志で運動を始めようとする「自律制御」と、いったん運動が始まったら、他の器官などに同調される「引き込み現象」から構築されている。これまで、身体運動に関わる自然科学的研究は、実際の運動を実験解析して、その基となる脳の意図を探ってきた。これは、脳の意図から始まって体肢を動かすという身体構築の順序とは逆(逆ダイナミクスと呼ばれる)なのに対し、運動発現の基をコントロールして運動を具現させる方法がモデリングとシミュレーションである。人工知能つまりロボテイクス研究では、「課題を明確に幾つかの部分問題に分割し、それぞれの部分問題を解く情報処理モジュールを構築する。そこからシステム全体を構成する」というアプローチをとる。脳機能の研究においても、このようなアプローチをとり、異なる情報処理のモジュールの存在を仮定し、そのモジュールごとに理解をはかってきた。この研究法の最大の特長は、部分問題が完結している(入力と出力、その変動が予め限定されている)点である。本年度は、「シミュレーションを用いた身体運動の再構築」について、従来のシミュレーション研究を総括すること(大金と深代、JJBSE2000)と、逆ダイナミクスを用いた基本的運動:垂直跳の解析(Nagano & Fukashiro,JB,JJBSE2000)を行った。次年度以降、この2つの研究方法を融合させてシミュレーションを行い、その結果、脳をコントロールする形で「脳の高次機能」が明らかになれば、と考えている。身体運動は自分の意志で運動を始めようとする「自律制御」と、いったん運動が始ったら他の器官などに同調される「引き込み現象」から構築されている。運動を制御するこれらの仕組みを明らかにするためには、その基礎づくりとして身体運動に関わる基礎原理を様々な方向から検討しておかなければならない。これまで、主に単純な身体運動として大きな発揮パワーが得られる下肢の動作、垂直跳に注目して解析を行ってきた。動作のコントロールという観点では、下肢だけではなく上肢にも注目しなければならない。そこで、本年度は研究成果の蓄積がある垂直跳を対象に、動作中の上肢の役割を逆ダイナミクスを用いて解析した。高くあるいは遠くへ跳ぼうとする場合、通常人間は腕を振ってパフォーマンスを高めようとする。垂直跳では腕を振った場合に跳躍高が増加するが、それは身体(特に体幹)の上昇速度よりも大きな速度で腕を上方に振ることで、体幹を下に押し、結果として床反力を増加させる(床反力の力積の増大は跳躍高の増大と同義)。腕振りの貢献度を機械的仕事量の増大という形で定量した。また、ダイナミックな身体運動では、反動が用いられるが、その反動によって主動筋が主要局面直前に引き伸ばされ、伸張反射が生じることが知られている。
KAKENHI-PROJECT-12680015
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12680015
ブレインサイエンスにシミュレーションから接近する
この伸張反射は反動動作の効果の一つと考えられている。伸張反射は通常関節角速度との関係で検討されてきたが、実際は筋自体(筋紡錘)の伸張によって生じる。そこで、伸張反射が生じる筋(筋束)の伸張速度を超音波法を用いて定量した。身体運動は、自分の意志で運動を始めようとする「自律制御」と、いったん運動が始まったら、他の器官などに同調される「引き込み現象」から構築されている。これらの仕組みを明らかにするためには、その基礎づくりとして身体運動に関わる基礎原理を様々な方向から検討しておかなければならない。本年度は、運動方向の調節という観点から、その場からの跳躍、つまり垂直方向と水平方向へ跳躍を対象に検討した。これまで、我々は垂直跳と立幅跳を比較して、二関筋筋である大腿直筋が運動方向の調節に大きく関わっていることを指摘した(Nagano, A. and S. Fukashiro : Biomechanical comparison of therole of bi-articular rectus femoris in standing broad jump and vertical jump. Jpn. J. Biomech. Sports Exerc. 4(1):8-15, 2000.)。この研究をさらに進めて、下肢の単関節筋である内側広筋・外側広筋、二関筋筋である大腿直筋・半膜様筋・大腿二頭筋・腓服筋長頭・短頭の計7筋を対象に両跳躍を比較検討した。その結果、膝関節の単関節筋(内側広筋・外側広筋)および足関節の二関節筋(腓服筋長頭・短頭)は両跳躍で差がなく、これらの筋は関節トルク増大のみに貢献していることがわかった。一方、大腿の二関節筋については、垂直跳で大腿の前面(大腿直筋)が、立幅跳で後面(半膜様筋・大腿二頭筋)が大きく働いていた。この筋活動により、立幅跳の股関節トルクが垂直跳に比べてかなり大きくなった。この2種類の跳躍の運動方向の調節は、足部に対する体幹位置とともに、大腿前面と後面の二関節筋によって行われていることが明らかになった。身体運動は、自分の意志で運動を始めようとする「自律制御」と、いったん運動が始まったら、他の器官などに同調される「引き込み現象」から構築されている。運動を制御するこれらの仕組みを明らかにするためには、その基礎づくりとして身体運動のメカニズムを様々な方向から検討しておかなければならない。本年は、収縮要素と並列・直列弾性要素からなるHillタイプの筋・腱複合体モデル(Muscle-tendon complex : MTC)を作成し、その力学的特徴をシミュレーションした。すなわち、筋と腱の長さ比および負荷重量を変えて収縮要素を最大活動させたところ、腱の長いMTCでは軽い負荷の時に、筋の長いMTCでは重い負荷の時に、相対的に大きな仕事がなされることがわかった。一方、身体の中の体幹(例えば大殿筋)では筋が長いMTC、末端(例えば下腿三頭筋)では腱が長いMTCが配列されていることが、解剖学的にわかっている。
KAKENHI-PROJECT-12680015
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12680015
現代イランにおけるイスラームと科学知の併存―環境分野のイスラーム議論を手がかりに
本年度は、現地調査及び文献資料調査を通して、環境分野をめぐる科学知とイスラーム知の関係性に関する知見を深めた。特に、調査地(テヘラン)あるいはオンライン上で入手した一次資料を活用して、イスラーム法学者及び環境エキスパートによるイスラーム的知識の援用のしかた、理由づけ(リーズニング)に着目しながら、彼らの議論の特徴や傾向について概括した。また、環境分野を含めたイランの諸社会分野における、包括的な科学知の適用のあり方にも留意しながら関連情報の収集を進めた。これらの分野における科学知の適用事例は、環境分野における科学知とイスラーム知の関係性を相対化し、多層的に検討する上で有用であった。本研究課題は当初の研究計画よりやや遅れて進行しているが、今年度の現地調査において、研究課題に関わる新たなネットワークを構築することができ、来年度の調査を円滑に実施していく上で収穫があった。以上のような調査により、とりわけ、環境問題に関する(イラン国内の)イスラーム法学者及び環境エキスパートによる所見や問題意識の特徴、問題解決に向けてこれらの環境活動家の間で期待されているイスラーム伝統による貢献、およびイラン国内外の諸社会分野における科学知とイスラーム知の併存関係性について新たな視座から考察し、理解を深めることができた。本年度の研究成果については、英文論考や国際学会・フォーラムでの研究発表を通して幅広い読者層へ発信できた。本年度が研究課題の最終年度であったが、イランでは反政府組織によるテロや急激なデフレーションにより国内情勢が著しく不安定化したため、従来の調査計画の変更(延期)を強いられた。しかし、過年度の研究活動により本研究課題に関する基礎的情報の収集、整理を進められたため、今後、イラン国内外の動向に注視しながら、現地調査・文献資料調査を継続できれば、研究課題の完遂は可能であると考える。来年度は本研究課題の総仕上げに向けて、テヘラン、可能であればコムを訪れ、特にイスラーム知を基底とした環境啓発の実践に焦点を当てて調査を実施する。また、文献資料調査は随時継続し、関連情報のアップデートを行う。すなわち、環境啓発・教育の現場でのインタビュー及び参与観察調査を通して、過年度の研究より明確化してきたイスラーム的環境言説の実践についての理解を深めると共に、イラン国内で発信される環境言説を俯瞰しながら、環境分野をめぐるイスラーム知と科学知の関係性について批判的に検討していく。来年度の下半期に調査データを整理、統合し、研究成果を国際的に発信することを目指す。具体的には、海外からの識者を招聘しての国際シンポジムの開催、国際学術誌への論文投稿、国際学会での研究発表を通して、研究成果をより広い読者と共有し、社会へ還元していく。本年度は、主に文献資料調査を通して、環境分野におけるイスラーム的視座について研鑽をおこなった。具体的には、イランで入手した「環境問題とイスラーム」を題材にした一次資料より、イラン宗教指導者層やイスラーム法学者の環境問題への見解について知見を深めることができた。また、メディア媒体(新聞、ラジオ、雑誌等)を介して発信されている環境問題が、どのようにイスラームの規範と関連づけられて提起されているのかという点に特に着目しながら、情報収集をおこない分析を進めた。イラン国内外における環境問題ニュースについては随時確認を行い、同国を取り巻く国内外の諸事情にも留意しながら、関連情報をアップデートした。以上のような調査から、イラン政府によるイスラーム教義を媒介させた環境問題政策、イスラーム法学者による環境問題に対する視座、イスラーム聖典の援用のされ方についての傾向性が明らかになってきた。本年度の研究成果については、論考や学会・研究会などを通して発信できた。当初の計画では、平成29年度に現地調査を実施予定であったが、イランの国内事情により、調査の延期を強いられた。昨今、環境活動家や環境保全活動の政治性が当局より問題視され始めたことは、今後の現地調査のあり方に影響を及ぼす可能性があり、国内情勢の動向に注視していく必要がある。現在は、文献資料調査を継続しながら、これまで蓄積してきたデータと合わせて、科学知とイスラーム知の併存関係性について総合的に分析を進めている。本年度は、現地調査及び文献資料調査を通して、環境分野をめぐる科学知とイスラーム知の関係性に関する知見を深めた。特に、調査地(テヘラン)あるいはオンライン上で入手した一次資料を活用して、イスラーム法学者及び環境エキスパートによるイスラーム的知識の援用のしかた、理由づけ(リーズニング)に着目しながら、彼らの議論の特徴や傾向について概括した。また、環境分野を含めたイランの諸社会分野における、包括的な科学知の適用のあり方にも留意しながら関連情報の収集を進めた。これらの分野における科学知の適用事例は、環境分野における科学知とイスラーム知の関係性を相対化し、多層的に検討する上で有用であった。本研究課題は当初の研究計画よりやや遅れて進行しているが、今年度の現地調査において、研究課題に関わる新たなネットワークを構築することができ、来年度の調査を円滑に実施していく上で収穫があった。以上のような調査により、とりわけ、環境問題に関する(イラン国内の)イスラーム法学者及び環境エキスパートによる所見や問題意識の特徴、問題解決に向けてこれらの環境活動家の間で期待されているイスラーム伝統による貢献、およびイラン国内外の諸社会分野における科学知とイスラーム知の併存関係性について新たな視座から考察し、理解を深めることができた。本年度の研究成果については、英文論考や国際学会・フォーラムでの研究発表を通して幅広い読者層へ発信できた。本年度が研究課題の最終年度であったが、イランでは反政府組織によるテロや急激なデフレーションにより国内情勢が著しく不安定化したため、従来の調査計画の変更(延期)を強いられた。
KAKENHI-PROJECT-17K13587
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K13587
現代イランにおけるイスラームと科学知の併存―環境分野のイスラーム議論を手がかりに
しかし、過年度の研究活動により本研究課題に関する基礎的情報の収集、整理を進められたため、今後、イラン国内外の動向に注視しながら、現地調査・文献資料調査を継続できれば、研究課題の完遂は可能であると考える。来年度はテヘラン、コムを中心に、可能であれば複数回、現地調査を実施する。本年度の調査より明らかになってきた環境分野におけるイスラーム言説が、当該地域の人びとの間でどのように受け入れられているのか(あるいは、受け入れられていないのか)について批判的に検討する。環境教育を行っている諸機関への訪問、関連イベントへの参与観察、環境エキスパートおよび市民への聞き取り調査などを通じて、環境分野で展開しているイスラームの多義性に関するデータを蓄積し、分析を試みる。同時に、イランの環境分野における科学技術の発展についても着目しながら、科学知とイスラームを媒介とする知識の競合、併存性のあり方への理解を深める。現地調査後は、得られた全てのデータを整理・吟味し、環境分野において西洋近代科学を背景に展開する現代イスラーム解釈についての様相を読み解く。本研究の成果を人類学や宗教社会学などの分野における国際学術誌や学会発表を通して発信する。来年度は本研究課題の総仕上げに向けて、テヘラン、可能であればコムを訪れ、特にイスラーム知を基底とした環境啓発の実践に焦点を当てて調査を実施する。また、文献資料調査は随時継続し、関連情報のアップデートを行う。すなわち、環境啓発・教育の現場でのインタビュー及び参与観察調査を通して、過年度の研究より明確化してきたイスラーム的環境言説の実践についての理解を深めると共に、イラン国内で発信される環境言説を俯瞰しながら、環境分野をめぐるイスラーム知と科学知の関係性について批判的に検討していく。来年度の下半期に調査データを整理、統合し、研究成果を国際的に発信することを目指す。具体的には、海外からの識者を招聘しての国際シンポジムの開催、国際学術誌への論文投稿、国際学会での研究発表を通して、研究成果をより広い読者と共有し、社会へ還元していく。当初の計画では、平成29年度に現地調査を実施予定であったが、イランの国内事情により、調査の延期を強いられたため。イランの国内事情を考慮しながら、平成30年度(場合によっては翌年度)に複数回イランで調査を実施することを検討している。本年度が研究課題の最終年度であったが、イランでは反政府組織によるテロや急激なデフレーションにより国内情勢が著しく不安定化したため、従来の調査計画の変更(延期)を強いられた。来年度の予算は主に現地調査、図書購入、国際シンポジウムの開催にあてる計画である。具体的には、来年度は本研究課題の総仕上げに向けて、テヘラン、可能であればコムを訪れ、特にイスラーム知を基底とした環境啓発の実践に焦点を当てて調査を実施する。また、文献資料調査は随時継続し、関連情報のアップデートを行う。
KAKENHI-PROJECT-17K13587
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K13587
ATトラクトを認識する核マトリックス蛋白質のDNA結合機構
1.MAR結合タンパク質SP120の認識配列を明らかにするため,人工MARとして種々の合成コンカテマーDNAを合成し,競合DNA存在下に末端ラベルしたコンカテマーの特異的結合を測定した.2つのATトラクトを含むモノマー(26塩基長)のヘキサマー(156bp)がSP120との結合に必要な最短のコンカテマーであることが明らかになった.ATトラクトの配列が異なる36種類のヘキサマーを合成し,それぞれの結合親和性を比較したところ,poly(dA)・poly(dT)で強く競合されるというMARの特徴を示す数種類のコンカテマーが同定された.しかし,結合活性と厳密な相関をもつATトラクトの配置パターン(バーコード)を特定することは未だできていない.2.DNAトポイソメラーゼIIのアイソフォームβ(トポIIβ)がin vivoで直接作用しているゲノム領域をクローン化し,多数のMARを含むクローンを得た.複数のターゲット・クローンの塩基配列を決定した結果,ATトラクトの配置パターンに,ある種の法則性が見いだされた.トポIIβはSP120と同様にATトラクトを認識するが,その配置パターンは異なることが示唆された.3.天然のMAR内部に共通して見出される,約120bpにわたって特定の間隔で現れる4つのATトラクト(Aトラクト2つとTトラクト2つ)からなるモチーフ(MARモチーフと呼ぶ)を,市販の配列解析ソフトウェアのモチーフ検索機能を利用して,インプットした任意の塩基配列の中で検索するアルゴリズムを作った.この方法により,ヒトのβグロビン遺伝子座(約75kb)のMARを予測した.計17箇所のMAR候補領域を同定し,PCRクローニングで12箇所のクローンを得た.核マトリックスとの結合を調べると,11/12が強いMAR活性を示した.negative controlとした3つの領域にはMAR活性を検出しなかった.この方法は未知のゲノム領域の塩基配列情報のみからMARの位置を予測する際に有用であると思われる.1.MAR結合タンパク質SP120の認識配列を明らかにするため,人工MARとして種々の合成コンカテマーDNAを合成し,競合DNA存在下に末端ラベルしたコンカテマーの特異的結合を測定した.2つのATトラクトを含むモノマー(26塩基長)のヘキサマー(156bp)がSP120との結合に必要な最短のコンカテマーであることが明らかになった.ATトラクトの配列が異なる36種類のヘキサマーを合成し,それぞれの結合親和性を比較したところ,poly(dA)・poly(dT)で強く競合されるというMARの特徴を示す数種類のコンカテマーが同定された.しかし,結合活性と厳密な相関をもつATトラクトの配置パターン(バーコード)を特定することは未だできていない.2.DNAトポイソメラーゼIIのアイソフォームβ(トポIIβ)がin vivoで直接作用しているゲノム領域をクローン化し,多数のMARを含むクローンを得た.複数のターゲット・クローンの塩基配列を決定した結果,ATトラクトの配置パターンに,ある種の法則性が見いだされた.トポIIβはSP120と同様にATトラクトを認識するが,その配置パターンは異なることが示唆された.3.天然のMAR内部に共通して見出される,約120bpにわたって特定の間隔で現れる4つのATトラクト(Aトラクト2つとTトラクト2つ)からなるモチーフ(MARモチーフと呼ぶ)を,市販の配列解析ソフトウェアのモチーフ検索機能を利用して,インプットした任意の塩基配列の中で検索するアルゴリズムを作った.この方法により,ヒトのβグロビン遺伝子座(約75kb)のMARを予測した.計17箇所のMAR候補領域を同定し,PCRクローニングで12箇所のクローンを得た.核マトリックスとの結合を調べると,11/12が強いMAR活性を示した.negative controlとした3つの領域にはMAR活性を検出しなかった.この方法は未知のゲノム領域の塩基配列情報のみからMARの位置を予測する際に有用であると思われる.1.SP120に特異的に結合することが示された合成コンカテマ-DNA(random concatemer,RC)をセファロースに固定化し,これを吸着体として核の抽出液からSP120をアフィニティー精製しすることが可能になった.2.合成したRC(鎖長は不均一)をゲル電気泳動にかけて鎖長の違いにより分画・精製した.それぞれを^<32>Pで末端ラベルし,過剰の大腸菌DNAの存在下にSP120とのフィルター結合反応を行って結合親和性を比較したところ,ユニット・オリゴマー(26-mer)のhexamer(156bp)がSP120との結合に必要な最短のオリゴ・コンカテマ-であることがわかった.3.計画調書に詳述した手順により特定の配列をもったオリゴ・コンカテマ-を合成する方法を確立した.具体的には,重合方向に制限を加えるためにユニット・オリゴマーの5′端の4塩基の配列(ライゲーションのタッグとなる)を変化させた11種類のオリゴマーとそれらの相補配列を合成した.これらを適当に組み合わせてアニーリング・ライゲーションし,制限酵素で切り出すことにより,すべての可能なhexamer配列(36種類)を合成した.これらを用いた結合実験はまだ完了していない.4.ATトラクトに変異を導入した数種類のユニット・オリゴマーを合成し,ランダムライゲーションによりコンカテマ-を調製した.これらを末端ラベルして精製SP120との結合親和性をフィルター結合法で検討した.
KAKENHI-PROJECT-09680592
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09680592
ATトラクトを認識する核マトリックス蛋白質のDNA結合機構
ATトラクトをG/Cの挿入で破壊したもの,ATトラクトをheteropolymeric(例えば,TATやTAAT)にしたもの,TトラクトをAトラクトに転換させたものやATトラクトの間隔を変えたものでは著しく親和性が低下することが明らかになった.この結果はATトラクトの存在と極性,及び出現間隔がSP120との結合にとって重要な因子であるというバ-コードモデルを支持するものである.1. MAR結合タンパク質SP120の認識配列を明らかにするため,付着端が異なる22種類のユニット・オリゴマー(26塩基長で2つのATトラクトを含む)を組み合わせて36種類のオリゴ・コンカテマー(hexamer)を合成し,それぞれの精製SP120に対する結合親和性をフィルター結合法により比較した.しかし,期待したほどの結合活性の差は検出されず,結合活性と厳密な相関をもつATトラクトの配置パターン(バーコード)を特定することはできなかった.現在,SP120のDNA結合領域をもつGST融合タンパク質を調製し,新たな結合測定法を用いて解析をやり直している.2. SP120と同様の機構でMARを認識すると思われるDNAトポイソメラーゼII(トポII)に関する研究を開始した.まず,トポIIアイソフォームβがin vivoで直接作用しているゲノム領域をクローン化する技術を開発し,この酵素の主要なターゲットはATトラクトに富む領域であり,トポIIβによる切断点はMAR内部か,その近傍2-3kbの非コード領域内にあることを証明した.現在,切断点周辺のATトラクトの配置パターンに法則性が見いだされることを期待して,複数のターゲット・クローンの塩基配列と切断点の解析を行っている.3. ATトラクトの間隔に注目して十数種類のMARの塩基配列を調べると,約120bpにわたって特定の間隔で現れる4つのATトラクト(Aトラクト2つとTトラクト2つ)からなるモチーフが頻繁に出現することがわかった.いくつかの塩基配列について,このモチーフをコンピュータで検索することにより,かなりの確度でMARを予測できることがわかった.上記のオリゴ・コンカテマーの一部にもこのモチーフが存在することから,バーコードモデルはMAR一般についても成立する可能性が示唆された.1.MAR結合タンパク質SP120の認識配列を明らかにするため,SP120のDNA結合領域(N末端領域)をもつGST融合タンパク質を調製し,これをグルタチオン-セファロースに結合させたものを結合基質として用いる結合反応系を作製した.競合DNA存在下に末端ラベルしたDNA断片の特異的結合を測定した.既知のMARやトポII標的クローンに見出された新たなMARを用いて,この系が働くことを確認した.次に,156塩基長で12のATトラクトを含む36種類のオリゴ・コンカテマー(hexamer)を合成し,それぞれの結合親和性を比較したところ,poly(dA)・poly(dT)で強く競合されるというMARの特徴を示す数種類のコンカテマーが同定された.しかし,やはり結合活性と厳密な相関をもつATトラクトの配置パターン(バーコード)を特定することはできなかった.
KAKENHI-PROJECT-09680592
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09680592
Wolbachia感染天敵製剤の放飼における生態リスク評価
近年、化学肥料や化学農薬の使用量を削減した環境保全型農業が推進され、化学農薬に替わる害虫防除法として天敵製剤の利用が年々増加している。しかし、細胞内共生細菌Wolbachiaが感染した天敵製剤を放飼した場合、特定の組合せ(非感染雌と感染雄など)でふ化率が減少する細胞質不和合(CI)によって放飼個体が個体群中で分布拡大し、個体群構造を変えてしまう可能性がある。これまで天敵製剤の放飼が野外個体群の遺伝的多様性に影響を及ぼすかどうか定量的に調査した研究は少なく、Wolbachiaによる影響もあまり考えられていない。そこで本研究では、CIを引き起こす2種類のWolbachia、wOus1およびwOus2が感染している天敵製剤タイリクヒメカメムシを放飼することで野外個体群の遺伝的多様性に影響を与えているかを明らかにすることを目的とした。本年度は1.放飼地域と無放飼地域の遺伝的多様性調査、2.シミュレーションモデルによる放飼個体の分布拡大予測をおこなった。前年度と引き続き、複数の遺伝マーカーを用いて放飼地域と無放飼地域の遺伝的多様性を調査した結果、前年度同様の傾向がみられた。さらに、単感染個体群に2重感染個体である放飼個体が侵入した場合、どのように放飼個体が分布拡大するかCaspari and Watsonモデル(Hoffmann et al.1990による改良)およびTravelling Wave Model(Turelli and Hoffmann,1991;Schofield,2002)を用いて予測した。その結果、タイリクヒメハナカメムシでは細胞質不和合の強さや放飼量によって単感染個体より放飼個体の適応度が高くなり、野外個体群に侵入した放飼個体が分布拡大すると予測された。細胞質不和合を引き起こすWolbachiaが感染した天敵製剤を放飼するとミトコンドリア遺伝子の多様性を低下させる可能性があるため、今後も引き続き放飼地域と無放飼地域の野外個体を採集し、継続的な遺伝的多様性の調査が必要である。Wolbachiaが感染した天敵製剤を放飼している地域と放飼していない地域においてサンプルを採集し、遺伝的多様性に関する貴重なデータを蓄積できた。本研究によって天敵製剤を実用化する際の事前評価として、今後共生微生物の調査が必要となってくると考えられる。これらの点から本研究は農学分野の技術発展に貢献できると思われる。本研究でおこなったシミュレーションモデルによる野外個体群内における放飼個体の分布拡大予測と野外個体の遺伝的多様性のデータを相互に照らし合わせることによって、これまで明確ではなかった天敵製剤の放飼による農業生態系への影響を科学的に評価していく予定である。また、今後も引き続き放飼地域と無放飼地域の野外個体を課集し、継続的な遺伝的多様性の調査が必要であると考えられる。近年、化学肥料や化学農薬の使用量を削減した環境保全型農業が推進され、化学農薬に替わる害虫防除法として天敵製剤の利用が年々増加している。しかし、細胞内共生細菌Wolbachiaが感染した天敵製剤を放飼した場合、特定の組合せ(非感染雌と感染雄など)でふ化率が減少する細胞質不和合(CI)によって放飼個体が個体群中で分布拡大し、個体群構造を変えてしまう可能性がある。これまで天敵製剤の放飼が野外個体群の遺伝的多様性に影響を及ぼすかどうか定量的に調査した研究は少なく、Wolbachiaによる影響もあまり考えられていない。そこで本研究では、CIを引き起こす2種類のWolbachia、wOus1およびwOus2が感染している天敵製剤タイリクヒメカメムシを放飼することで野外個体群の遺伝的多様性に影響を与えているかを明らかにすることを目的とした。まず、複数の放飼地域と無放飼地域からタイリクヒメハナカメムシの野外個体を採集し、Wolbachia感染の有無を調査した。その結果、各地域のWolbachia感染率は100%で、単感染個体より2重感染個体の割合が多かった。続いて、遺伝的多様性を調査するために核ではマイクロサテライト領域、ミトコンドリアではCytb領域の遺伝マーカーを選定し、天敵製剤および各地域のタイリクヒメハナカメムシの遺伝的多様性を調査した。ミトコンドリア領域による調査では、両地域で天敵製剤と同様のハプロタイプが多く検出された。地域間のハプロタイプ多様度では差がみられなかったが、塩基多様度では放飼地域の方が有意に低かった。一方、マイクロサテライト領域による調査では、地域間の遺伝的多様性に差はみられなかった。今後も野外個体の採集および解析をおこない、Wolbachia感染天敵の放飼による野外個体群の遺伝的多様性に与える影響を検証する。近年、化学肥料や化学農薬の使用量を削減した環境保全型農業が推進され、化学農薬に替わる害虫防除法として天敵製剤の利用が年々増加している。しかし、細胞内共生細菌Wolbachiaが感染した天敵製剤を放飼した場合、特定の組合せ(非感染雌と感染雄など)でふ化率が減少する細胞質不和合(CI)によって放飼個体が個体群中で分布拡大し、個体群構造を変えてしまう可能性がある。これまで天敵製剤の放飼が野外個体群の遺伝的多様性に影響を及ぼすかどうか定量的に調査した研究は少なく、Wolbachiaによる影響もあまり考えられていない。そこで本研究では、CIを引き起こす2種類のWolbachia、wOus1およびwOus2が感染している天敵製剤タイリクヒメカメムシを放飼することで野外個体群の遺伝的多様性に影響を与えているかを明らかにすることを目的とした。
KAKENHI-PROJECT-10J07743
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J07743
Wolbachia感染天敵製剤の放飼における生態リスク評価
本年度は1.放飼地域と無放飼地域の遺伝的多様性調査、2.シミュレーションモデルによる放飼個体の分布拡大予測をおこなった。前年度と引き続き、複数の遺伝マーカーを用いて放飼地域と無放飼地域の遺伝的多様性を調査した結果、前年度同様の傾向がみられた。さらに、単感染個体群に2重感染個体である放飼個体が侵入した場合、どのように放飼個体が分布拡大するかCaspari and Watsonモデル(Hoffmann et al.1990による改良)およびTravelling Wave Model(Turelli and Hoffmann,1991;Schofield,2002)を用いて予測した。その結果、タイリクヒメハナカメムシでは細胞質不和合の強さや放飼量によって単感染個体より放飼個体の適応度が高くなり、野外個体群に侵入した放飼個体が分布拡大すると予測された。細胞質不和合を引き起こすWolbachiaが感染した天敵製剤を放飼するとミトコンドリア遺伝子の多様性を低下させる可能性があるため、今後も引き続き放飼地域と無放飼地域の野外個体を採集し、継続的な遺伝的多様性の調査が必要である。Wolbachiaが感染した天敵製剤を放飼している地域と放飼していない地域においてサンプルを採集し、遺伝的多様性に関する貴重なデータを蓄積できた。本研究によって天敵製剤を実用化する際の事前評価として、今後共生微生物の調査が必要となってくると考えられる。これらの点から本研究は農学分野の技術発展に貢献できると思われる。本研究でおこなったシミュレーションモデルによる野外個体群内における放飼個体の分布拡大予測と野外個体の遺伝的多様性のデータを相互に照らし合わせることによって、これまで明確ではなかった天敵製剤の放飼による農業生態系への影響を科学的に評価していく予定である。また、今後も引き続き放飼地域と無放飼地域の野外個体を課集し、継続的な遺伝的多様性の調査が必要であると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-10J07743
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J07743
組換え昆虫細胞による次世代インフルエンザワクチンの迅速高生産技術の開発
ウイルス様粒子は,ウイルス感染症を予防するための有効かつ安全な次世代ワクチンとして利用が期待されている.本研究の目的は,インフルエンザウイルス様粒子ワクチンを迅速に高生産するための新たな技術基盤を確立することである.このため本研究では,A型のインフルエンザウイルスの構造タンパク質であるヘマグルチニンHAおよびマトリックスタンパク質M1の遺伝子を共発現する組換え昆虫細胞を作製し,両タンパク質と脂質二重層から構成されるインフルエンザウイルス様粒子の連続分泌生産系を構築する.これまでに,インフルエンザAウイルスのHAおよびM1の遺伝子を,異なる薬剤耐性遺伝子を有する2種類の高発現型プラスミドベクターにそれぞれクローニングし,両プラスミドをTrichoplusia ni由来のBTI-TN-5B1-4 (High Five)にコトランスフェクションし,薬剤耐性遺伝子に対応する2種類の抗生物質の存在下で培養をおこなった.両抗生物質存在下で培養を継続することによりHAおよびM1を共発現する細胞を効率よく取得できるが,Drosophila由来のBiPシグナル配列をHA,M1両遺伝子の上流に付加することにより,付加していない場合に比べて,HAおよびM1の分泌生産量が著しく増大することを確認した.また,培養上清を濃縮・精製し透過電子顕微鏡で観察したところ,脂質二重層やHAのスパイク構造を有する粒子が確認された.このことから,作製した組換え昆虫細胞はインフルエンザウイルス様粒子を分泌生産していると考えられる.平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。ウイルス感染症を予防するための有効かつ安全な次世代ワクチンとして,ウイルス様粒子の利用が期待されている.本研究では,インフルエンザウイルス様粒子ワクチンを迅速に高生産するための新たな技術基盤の構築を検討する.このため本研究では,A型のインフルエンザウイルスの構造タンパク質であるヘマグルチニンHAおよびマトリックスタンパク質M1の遺伝子を共発現する組換え昆虫細胞を作製し,両タンパク質と脂質二重層から成るウイルス様粒子の連続分泌生産系の確立を目指す.本年度は,まず,インフルエンザAウイルスのHAおよびM1のcDNAを,GenBankに公開されている塩基配列に基づきそれぞれ全合成した.この際,昆虫細胞における発現に向けてコドンの最適化をおこなった.合成した遺伝子を,異なる薬剤耐性遺伝子を有する2種類の高発現型プラスミドベクターpIHAblaおよびpIHAneo (Yamaji et al.: Biochem. Eng. J., 41, 203-209 (2008))にクローニングした.作製したHAおよびM1の発現ベクターをTrichoplusia ni由来のBTI-TN-5B1-4 (High Five)にコトランスフェクションし,一過性発現を試みた.培養上清を抗インフルエンザAウイルスHA H1抗体および抗M1抗体を用いるウェスタンブロット法で分析したところ,HAおよびM1に相当する分子量付近にそれぞれ特異的なバンドを検出することができた.このことから,発現ベクターを導入した昆虫細胞はHAおよびM1を分泌発現することがわかった.HAおよびM1の発現ベクターを構築し,両発現ベクターをコトランスフェクションした昆虫細胞がHAおよびM1を分泌発現することを確認している.ウイルス様粒子は,ウイルス感染症を予防するための有効かつ安全な次世代ワクチンとしての利用が期待されている.本研究では,インフルエンザウイルス様粒子ワクチンを迅速に高生産するための新たな技術基盤の確立を目指す.このため本研究では,A型のインフルエンザウイルスの構造タンパク質であるヘマグルチニンHAおよびマトリックスタンパク質M1の遺伝子を共発現する組換え昆虫細胞を作製し,両タンパク質と脂質二重層から構成されるウイルス様粒子の連続分泌生産系の構築について検討する.本年度は,HAおよびM1のcDNAをそれぞれクローニングした,異なる薬剤耐性遺伝子を有する2種類の高発現型プラスミドベクターを昆虫細胞にコトランスフェクションすることにより,HAおよびM1を共発現する安定形質転換細胞の構築を試みた.HAおよびM1の発現ベクターを昆虫細胞にコトランスフェクションした後,これらのプラスミド上に存在する薬剤耐性遺伝子に対応する2つの薬剤の存在下で長期間培養を続けることにより,薬剤耐性株を取得した.得られた薬剤耐性株の培養上清を抗HA抗体および抗M1抗体を用いてウェスタンブロッティングにより分析したところ,HAおよびM1に相当する分子量付近にそれぞれ特異的なバンドを検出することができた.このことから,HAおよびM1を連続的に分泌生産する組換え昆虫細胞を作製に成功したと言える.また,培養上清をショ糖密度勾配遠心分離により分画した各フラクションをウェスタンブロッティングで分析すると,HAとM1がほぼ同等のショ糖密度のフラクションに確認された.さらに,培養上清を動的光散乱法で分析したところ,上清中に最頻粒子径が約120 nmの粒子が存在することがわかった.これらのことから,組換え昆虫細胞が分泌生産したHAとM1はウイルス様粒子を形成している可能性が示唆された.HAおよびM1の発現ベクターをコトランスフェクションし,2種類の薬剤の存在下で長期間培養することにより得られた組換え昆虫細胞がHAおよびM1を分泌発現することを確認できたとともに,HAとM1がウイルス様粒子を形成している可能性が示唆された.ウイルス様粒子は,ウイルス感染症を予防するための有効かつ安全な次世代ワクチンとして利用が期待されている.本研究の目的は,インフルエンザウイルス様粒子ワクチンを迅速に高生産するための新たな技術基盤を確立することである.このため本研究では,A型のインフルエンザウイルスの構造タンパク質であるヘマグルチニンHAおよびマトリックスタンパク質M1の遺伝子を共発現する組換え昆虫細胞を作製し,両タンパク質と脂質二重層から構成されるインフルエンザウイルス様粒子の連続分泌生産系を構築する.
KAKENHI-PROJECT-15H04195
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H04195
組換え昆虫細胞による次世代インフルエンザワクチンの迅速高生産技術の開発
これまでに,インフルエンザAウイルスのHAおよびM1の遺伝子を,異なる薬剤耐性遺伝子を有する2種類の高発現型プラスミドベクターにそれぞれクローニングした.これらのプラスミドを昆虫細胞にコトランスフェクションし,薬剤耐性遺伝子に対応する2種類の抗生物質の存在下で培養することにより,HAおよびM1の両遺伝子が染色体に組み込まれた安定形質転換細胞を取得している.この際,Drosophila由来のBiPシグナル配列をHA,M1両遺伝子の上流に付加したところ,付加していない場合に比べて,HAおよびM1の分泌生産量が著しく増大することを見出した.また,ニワトリ赤血球を用いた赤血球凝集試験により,培養上清中のHAが赤血球凝集活性を有することを確認した.さらに,培養上清をポリエチレングリコール沈殿法およびショ糖密度勾配遠心分離法で処理することによりインフルエンザウイルス様粒子を精製し,これを抗原としてウサギに免疫することにより抗血清を作製した.今後,この抗血清を用いた酵素免疫測定法(ELISA)を確立し,HAを定量することにより,組換え昆虫細胞によるインフルエンザウイルス様粒子の生産特性を明らかにする.Drosophila由来のBiPシグナル配列をHAおよびM1両遺伝子の上流に付加することにより,組換え昆虫細胞によるインフルエンザウイルス様粒子の分泌生産量を著しく増大することに成功した.また,赤血球凝集試験により,分泌されたHAが赤血球凝集活性を有することを確認できた.ウイルス様粒子は,ウイルス感染症を予防するための有効かつ安全な次世代ワクチンとして利用が期待されている.本研究の目的は,インフルエンザウイルス様粒子ワクチンを迅速に高生産するための新たな技術基盤を確立することである.このため本研究では,A型のインフルエンザウイルスの構造タンパク質であるヘマグルチニンHAおよびマトリックスタンパク質M1の遺伝子を共発現する組換え昆虫細胞を作製し,両タンパク質と脂質二重層から構成されるインフルエンザウイルス様粒子の連続分泌生産系を構築する.これまでに,インフルエンザAウイルスのHAおよびM1の遺伝子を,異なる薬剤耐性遺伝子を有する2種類の高発現型プラスミドベクターにそれぞれクローニングし,両プラスミドをTrichoplusia ni由来のBTI-TN-5B1-4 (High Five)にコトランスフェクションし,薬剤耐性遺伝子に対応する2種類の抗生物質の存在下で培養をおこなった.両抗生物質存在下で培養を継続することによりHAおよびM1を共発現する細胞を効率よく取得できるが,Drosophila由来のBiPシグナル配列をHA,M1両遺伝子の上流に付加することにより,付加していない場合に比べて,HAおよびM1の分泌生産量が著しく増大することを確認した.
KAKENHI-PROJECT-15H04195
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H04195
ナノポアシークエンサーを用いたRNA二次構造決定法の開発
本研究では,RNAの構造と機能の網羅的な相関解析へ向けて,その基盤となるRNA二次構造決定のための新しい技術を開発する.具体的には,RNA二次構造特異的な化学修飾を引き起こす化合物でRNA配列を処理し,ナノポアシークエンサーでその化学修飾を直接読み取ることによって二次構造プロファイルを計測する方法を確立する.また,得られた二次構造プロファイルをRNA二次構造予測に利用することによって予測精度の劇的な向上を目指す.本研究では,RNAの構造と機能の網羅的な相関解析へ向けて,その基盤となるRNA二次構造決定のための新しい技術を開発する.具体的には,RNA二次構造特異的な化学修飾を引き起こす化合物でRNA配列を処理し,ナノポアシークエンサーでその化学修飾を直接読み取ることによって二次構造プロファイルを計測する方法を確立する.また,得られた二次構造プロファイルをRNA二次構造予測に利用することによって予測精度の劇的な向上を目指す.
KAKENHI-PROJECT-19H04210
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H04210
非完備市場における金融派生証券に対する最適ヘッジ戦略と数値計算
(1)研究の背景:完備市場とは、取引手数料等が存在せず任意の金融派生証券の価格はその価格が既知である金融商品のポートフォリオによって実現できる仮定である。完備市場に於ける金融派生証券の価格は金融派生証券を完全複製するヘッジ戦略の初期費用である。その価格は、資産価格の確率過程をマルチンゲールにする確率測度と、同値マルチンゲール測度の下での期待値によって求められる。完備市場の仮定は明らかに現実から乖離したものである。そのため、完備市場の仮定を弱めた非完備市場に於ける金融派生証券の価格付け及び最適ヘッジ戦略に関する研究の必要性が高まっている。交付申請書に記載した、平成30年度の研究実施計画に概ね沿った形で研究成果が得られている。交付申請書に記載した、平成31年度の研究実施計画に沿って研究を行う。また、最終年度の締めくくりとして、得られた研究成果を国際学会において発表する。また次の研究課題として、FPGAを用いた金融計算の高速化実現に向け、基礎調査と研究を行う。(1)研究の背景:完備市場とは、取引手数料等が存在せず任意の金融派生証券の価格はその価格が既知である金融商品のポートフォリオによって実現できる仮定である。完備市場に於ける金融派生証券の価格は金融派生証券を完全複製するヘッジ戦略の初期費用である。その価格は、資産価格の確率過程をマルチンゲールにする確率測度と、同値マルチンゲール測度の下での期待値によって求められる。完備市場の仮定は明らかに現実から乖離したものである。そのため、完備市場の仮定を弱めた非完備市場に於ける金融派生証券の価格付け及び最適ヘッジ戦略に関する研究の必要性が高まっている。(2)研究内容について: Le'vy過程に関する確率微分方程式の解で資産価格が記述されるモデルに対して、Malliavin解析を用いLocal risk minimization戦略の一般公式が導出されている。得られた一般公式をもとに、数値計算可能な式を導出し数値計算を行い、デルタヘッジ戦略との比較を行った。特に、株価過程が幾何Le'vy過程に従う場合について、オプション価格が高速フーリエ変換を用いて高速かつ高精度に計算できることを示した。幾何Le'vyモデルの具体例として、株価がVariance Gammaモデル、Martonモデル、Normal Inverse Gaussianモデルで記述される場合について結果を得た。(3)研究内容の対外発表について:本年度の研究成果を論文に纏めて査読付き英文学術誌に投稿を行なった。また、2017年度中之島ワークショップ「金融工学・数理計量ファイナンスの諸問題2017」において得られた研究成果の発表を行なった。交付申請書に記載した、平成29年度の研究実施計画に概ね沿った形で研究成果が得られている。(1)研究の背景:完備市場とは、取引手数料等が存在せず任意の金融派生証券の価格はその価格が既知である金融商品のポートフォリオによって実現できる仮定である。完備市場に於ける金融派生証券の価格は金融派生証券を完全複製するヘッジ戦略の初期費用である。その価格は、資産価格の確率過程をマルチンゲールにする確率測度と、同値マルチンゲール測度の下での期待値によって求められる。完備市場の仮定は明らかに現実から乖離したものである。そのため、完備市場の仮定を弱めた非完備市場に於ける金融派生証券の価格付け及び最適ヘッジ戦略に関する研究の必要性が高まっている。交付申請書に記載した、平成30年度の研究実施計画に概ね沿った形で研究成果が得られている。交付申請書に記載した、平成30年度31年度の研究実施計画に沿って研究を行う。また、平成29年度には研究集会や談話会の主催が十分な形で行えなかったので、この点を反省し平成30年度31年度には積極的な開催を行う。交付申請書に記載した、平成31年度の研究実施計画に沿って研究を行う。また、最終年度の締めくくりとして、得られた研究成果を国際学会において発表する。また次の研究課題として、FPGAを用いた金融計算の高速化実現に向け、基礎調査と研究を行う。計算環境の継続上、現在所有している計算機をそのまま使用する必要があったので、新規に購入しなかった。平成30年度において新規購入予定。また、業務の都合上、想定していた海外への出張が行えなかった。この点についても平成30年度には海外での研究発表ならびに海外で開催される研究集会に出席する予定である。また、平成30年度からハードウエアを用いた研究を行う予定であるため、前年度に購入予定であったFPGAやGPUなどの購入を行う予定である。所属機関の変更により、想定していた通りの物品購入や出張が行えなかった。次年度が最終年であることから、これまでの研究成果を国際研究集会においてより積極的に発表する。
KAKENHI-PROJECT-17K13764
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K13764
アドヘレンスジャンクションの新しい細胞間接着機構
私共は、接着分子ネクチン、ネクチンをアクチン細胞骨格に連結させるF-アクチン結合蛋白質アファディンより構成される細胞間接着機構ネクチン-アファディン系を見いだし、アドヘレンスジャンクション(AJ)に局在することを明らかにしている。ネクチン-アファディン系はAJのみならず、タイトジャンクション(TJ)の形成をも制御している。本研究では、ネクチン-アファディン系について解析を行い、以下の結果を得た。1.細胞間接着形成における機能と作用機構:ネクチン-アファディン系がアファディンを介してα-カテニン、ZO-1と連結していること、さらに、ネクチン-アファディン系がカドヘリンとZO-1を、ネクチンをベースとする細胞間接着部位にリクルートすることを明らかにした。また、ヒト印環細胞がん由来の浮遊系の細胞株であるHSC-39細胞を用いて、ネクチン-アファディン系とカドヘリン-カテニン系が協調的に機能して細胞間接着が形成されることを示した。2.細胞増殖のシグナル系との相互制御機構:ネクチン-アファディン系が線虫のLin-7の哺乳類ホモログであるmLin-7と連結し、mLin-7を細胞間接着にリクルートすることを明らかにした。哺乳類のmLin-7の機能は明らかになっていないが、線虫のLin-7はEGF受容体の局在を決定していることから、ネクチン-アファディン系がmLi-7を介して何らかの細胞増殖因子受容体の局在を決定している可能性が考えられた。このように、本研究課題は予想以上に進展し、当初の目的を達成することができた。私共は、接着分子ネクチン、ネクチンをアクチン細胞骨格に連結させるF-アクチン結合蛋白質アファディンより構成される細胞間接着機構ネクチン-アファディン系を見いだし、アドヘレンスジャンクション(AJ)に局在することを明らかにしている。ネクチン-アファディン系はAJのみならず、タイトジャンクション(TJ)の形成をも制御している。本研究では、ネクチン-アファディン系について解析を行い、以下の結果を得た。1.細胞間接着形成における機能と作用機構:ネクチン-アファディン系がアファディンを介してα-カテニン、ZO-1と連結していること、さらに、ネクチン-アファディン系がカドヘリンとZO-1を、ネクチンをベースとする細胞間接着部位にリクルートすることを明らかにした。また、ヒト印環細胞がん由来の浮遊系の細胞株であるHSC-39細胞を用いて、ネクチン-アファディン系とカドヘリン-カテニン系が協調的に機能して細胞間接着が形成されることを示した。2.細胞増殖のシグナル系との相互制御機構:ネクチン-アファディン系が線虫のLin-7の哺乳類ホモログであるmLin-7と連結し、mLin-7を細胞間接着にリクルートすることを明らかにした。哺乳類のmLin-7の機能は明らかになっていないが、線虫のLin-7はEGF受容体の局在を決定していることから、ネクチン-アファディン系がmLi-7を介して何らかの細胞増殖因子受容体の局在を決定している可能性が考えられた。このように、本研究課題は予想以上に進展し、当初の目的を達成することができた。私共は、ネクチンーアファディンーポンシンより構成される、NAP系と命名した新しい細胞間接着機構を世界に先駆けて報告し、その生理機能について研究を行っている。本接着系は臓器普遍的に存在し、細胞レベルではアドヘレンスジャンクション(AJ)に存在している。NAP系はカドヘリン系と協調的に、AJとタイトジャンクション(TJ)の形成を制御している。本年度は、NAP系による細胞接着形成の制御の分子機構を明らかにするため、細胞生物学的、生化学的解析を行った。また、私共が同定した、細胞の接着・運動を制御する蛋白質フラビン、新規蛋白質アンキコルビンの解析を行った。1.NAP系によるAJ、TJの制御に関する細胞生物学的解析:NAP系がアファディンを介してα-カテニン、TJの蛋白質であるZO-1と連結していること、さらにこれらの分子を介して、NAP系がカドヘリン系とZO-1を、ネクチンをベースとする細胞間接着にリクルートすることを明らかにした。NAP系はこれらのリクルート機能を通して、AJ、TJの形成を制御していると考えられた。2.NAP系によるAJ、TJの制御の分子機構の解明:アファディンはα-カテニン、ZO-1とは直接結合しないことより、これら以外の分子がNAP系とカドヘリン系、またはTJ系との連関に関与していることが示唆される。このような分子を明らかにするため、すでにいくつかの蛋白質を生化学的に同定しており、現在さらなる解析を行っている。3.フラビン、アンキコルビンの解析:フラビンがCdc42低分子量G蛋白質を直接的に活性化することに加え、Rac低分子量G蛋白質を間接的に活性化することを明らかにした。また、新規蛋白質、アンキコルビンを同定し、本蛋白質が細胞間接着やストレスファイバーに一致した局在を示すことを見い出した。このように、私共は、本年度の研究予定をほぼ達成することができた。私共は、接着分子ネクチン、ネクチンをアクチン細胞骨格に連結させるF-アクチン結合蛋白質アファディンより構成される細胞間接着機構ネクチン-アファディン系を見いだし、アドヘレンスジャンクション(AJ)に局在することを明らかにしている。ネクチン-アファディン系はカドヘリン-カテニン系と協調してAJの形成を制御している。
KAKENHI-PROJECT-12680697
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12680697
アドヘレンスジャンクションの新しい細胞間接着機構
本研究ではネクチン-アファディン系について解析を行い、以下の成果を得た。1.細胞間接着形成における機能と作用機構:ヒト印環細胞がん由来の浮遊系の細胞株であるHSC-39細胞を用いて、細胞間接着形成におけるネクチン-アファディン系の機能と作用機構を解析した。HSC-39細胞はカドヘリンを発現しているにもかかわらず、細胞間接着の形成はほとんど認められない。この細胞株にネクチンを強制発現させると、細胞間接着が形成され、そこにネクチンとともにカドヘリンが局在した。このネクチン依存性の細胞間接着の形成には、ネクチンがアファディンに結合することが必要であった。以上の結果より、ネクチン-アファディン系とカドヘリン-カテニン系が協調的に機能して細胞間接着が形成されることが示唆された。2.細胞増殖のシグナル系との相互制御機構:ネクチン-アファディン系が線虫のLin-7の哺乳類ホモログであるmLin-7と連結し、mLin-7を細胞間接着にリクルートすることを明らかにした。哺乳類のmLin-7の機能は明らかになっていないが、線虫のLin-7はEGF受容体の局在を決定していることから、ネクチン-アファディン系がmLin-7を介して何らかの細胞増殖因子受容体の局在を決定している可能性が考えられた。このように、私共は、本年度の研究予定をほぼ達成することができた。
KAKENHI-PROJECT-12680697
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12680697
CMGを搭載した超小型衛星による迅速姿勢制御システムの研究開発
1.CMGの性能指標に関する検討をまとめた.(1)リアクションホイールなどの他のデバイスと定量的に比較するための指標を導入し,搭載に必要な体積という観点から,性能要求に応じてCMGが優れていることを計算により導出する方法を提案した.(2)ジンバル制御の安定性に関する検討は,内部のフィードバック組み込みにより解決策が得られているが,性能向上とのトレードオフに関しては今後の課題である.(3)真空下で使用するためのハードウェアに関して多摩川精機株式会社と共同で検討を行い,宇宙用のものよりも高速で回転させることで,全体の小型化を行うことを提案し,試作を行った.性能試験を通じて,より実用的なものへ改良するための提案を行う.2.CMGの配列に関する検討を行った.(1)過去に提案されてきた様々な配列に関して性能指標の計算を行い,出力方向への依存性をまとめ,特異点の到達頻度と性能指標の大小にある程度の相関があることを改めて示した.(2)2台のCMGを直交して配置するルーフ型の一種について重点的に検討を行った.この配列は最適制御理論の適用を前提とする場合には,衛星構体の慣性モーメントと要求トルク性能の比に応じて,姿勢制御デバイスの搭載体積を最も小さくすることができる.3.従来型の駆動則をまとめ,最適制御理論の応用について検討した.(1)従来型の駆動則を,時間最適性および誘導則追従性の観点から3つに分類し,目的に応じてこれらの中から最適な駆動則を選択すべきであることを示した.(2)時間最適かつ誘導則に追従できる駆動則は,最適制御理論の導入により,最小化すべき目的関数に工夫を行うペナルティ法の一種を用いることで計算できることを示した.●人工衛星の姿勢制御用デバイスとして、具体的にCMGが有効である場合の検討を追加した。・CMGの性能は、慣性モーメントと回転数の積で決まる。従来のCMGは回転数をあまり大きくすることがなかったが、多摩川精機の協力により、ホイールを超小型のものとし真空対策を施す事で、回転数を24000回転まで高める方法を提案した。●日本無重量総合センターにおける実験で、CMGの性能を表す計算方法が実際に正しく評価できていることを確認した。●ジンバル制御に関する振動の問題は、ジンバル軸の制御に粘性減衰の効果を加えると安定する解が得られることを、理論、シミュレーション、実験により示した。ただし、実現性の問題については、想定するハードウェアの設計変更により未検討である。●CMGの配列については、4台のピラミッド配置に加え、2台のみで制御する手法について集中的に検討している。これは、2軸の制御のみを要求している場合に有効である可能性が高い。・2台のCMGを直交して配置し、その回転数を制御するVS-CMGとする場合、制御上有利な状態が2-SPEED型特異点配置と同等になることを確認した。VS-CMGを用いれば特異点を完全に回避できることができるが、ホイールモータの性能によっては制御性能が極端に低下することがあり、回避することが望ましい。●制御については、最適制御に中心的に取り組んでいる。2台のVS-CMGの直交配列について、実質的にCMGのメリットを最大限にいかすためには、ジンバルのみの制御に頼ることが望ましい。その場合、単純なフィードバック制御では、ジンバルのみに頼る制御を見つけることは難しい。そこで、最適制御に基づいた繰り返し計算で、可能な解を見つける手法を検討している。1.CMGの性能指標に関する検討をまとめた.(1)リアクションホイールなどの他のデバイスと定量的に比較するための指標を導入し,搭載に必要な体積という観点から,性能要求に応じてCMGが優れていることを計算により導出する方法を提案した.(2)ジンバル制御の安定性に関する検討は,内部のフィードバック組み込みにより解決策が得られているが,性能向上とのトレードオフに関しては今後の課題である.(3)真空下で使用するためのハードウェアに関して多摩川精機株式会社と共同で検討を行い,宇宙用のものよりも高速で回転させることで,全体の小型化を行うことを提案し,試作を行った.性能試験を通じて,より実用的なものへ改良するための提案を行う.2.CMGの配列に関する検討を行った.(1)過去に提案されてきた様々な配列に関して性能指標の計算を行い,出力方向への依存性をまとめ,特異点の到達頻度と性能指標の大小にある程度の相関があることを改めて示した.(2)2台のCMGを直交して配置するルーフ型の一種について重点的に検討を行った.この配列は最適制御理論の適用を前提とする場合には,衛星構体の慣性モーメントと要求トルク性能の比に応じて,姿勢制御デバイスの搭載体積を最も小さくすることができる.3.従来型の駆動則をまとめ,最適制御理論の応用について検討した.(1)従来型の駆動則を,時間最適性および誘導則追従性の観点から3つに分類し,目的に応じてこれらの中から最適な駆動則を選択すべきであることを示した.(2)時間最適かつ誘導則に追従できる駆動則は,最適制御理論の導入により,最小化すべき目的関数に工夫を行うペナルティ法の一種を用いることで計算できることを示した.
KAKENHI-PROJECT-06J05567
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J05567
エンドセリン-1の病態生理学的役割に関する研究
平成8年度科学研究費補助金により以下の実績を得た。1.DOCA-食塩高血圧ラットの高血圧発症期にET_A受容体拮抗薬FR139317を2週間腹腔内に連日投与した場合、高血圧の進展が有意に抑制され、同時に胸部大動脈や腸間膜動脈の中膜肥厚も軽度であった。高血圧発症後のDOCA-食塩高血圧ラットにFR139317を静脈内投与した場合、有意な腎血流量増加作用並びに利尿効果が観察された。またET_B受容体拮抗薬BQ788を用いた実験から、FR139317投与によりみられる利尿作用にET_B受容体を介する作用が一部関与することが明らかとなった。以上、DOCA-食塩による高血圧の発症、維持並びに腎機能異常にET_A受容体を介するET-1の作用が密接に関与すること、さらにET_A受容体遮断による利尿作用にET_B受容体の活性化が関係することが示唆された.2.5/6腎摘による慢性腎不全ラットを作製し、その病態におけるET-1の関与について検討した。5/6腎摘12週後において、全身血圧の上昇、蛋白尿の発現、顕著な腎機能低下および糸球体硬化がみられ、また腎組織中のET-1量およびET-1遺伝子発現量にも有意な増加がみられた。以上、5/6腎摘による慢性腎不全の病態発症に腎臓におけるET-1の過剰産生が関与する可能性が示唆された。平成8年度科学研究費補助金により以下の実績を得た。1.DOCA-食塩高血圧ラットの高血圧発症期にET_A受容体拮抗薬FR139317を2週間腹腔内に連日投与した場合、高血圧の進展が有意に抑制され、同時に胸部大動脈や腸間膜動脈の中膜肥厚も軽度であった。高血圧発症後のDOCA-食塩高血圧ラットにFR139317を静脈内投与した場合、有意な腎血流量増加作用並びに利尿効果が観察された。またET_B受容体拮抗薬BQ788を用いた実験から、FR139317投与によりみられる利尿作用にET_B受容体を介する作用が一部関与することが明らかとなった。以上、DOCA-食塩による高血圧の発症、維持並びに腎機能異常にET_A受容体を介するET-1の作用が密接に関与すること、さらにET_A受容体遮断による利尿作用にET_B受容体の活性化が関係することが示唆された.2.5/6腎摘による慢性腎不全ラットを作製し、その病態におけるET-1の関与について検討した。5/6腎摘12週後において、全身血圧の上昇、蛋白尿の発現、顕著な腎機能低下および糸球体硬化がみられ、また腎組織中のET-1量およびET-1遺伝子発現量にも有意な増加がみられた。以上、5/6腎摘による慢性腎不全の病態発症に腎臓におけるET-1の過剰産生が関与する可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-08672630
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08672630
リボソームに局在するリジン脱アセチル化酵素の生理機能の解明
近年、原核生物においてもタンパク質中のリジンのアセチル化が数多く発見され、注目されている。一部のアセチル化は生体反応を制御するシグナルとして機能し、その制御に脱アセチル化酵素が関わっていることが示されている。申請者らは最近、大腸菌の脱アセチル化酵素がリボソームと相互作用することを発見した。このことから、この脱アセチル化酵素は翻訳制御や翻訳後のタンパク質品質管理に関わっていると考えられるが、それらの詳細は未解明である。そこで、本研究ではリボソームに局在する大腸菌の脱アセチル化酵素の生理機能を解析し、アセチル化による翻訳制御や翻訳の品質管理の理解へと展開するための分子基盤研究を行う。近年、原核生物においてもタンパク質中のリジンのアセチル化が数多く発見され、注目されている。一部のアセチル化は生体反応を制御するシグナルとして機能し、その制御に脱アセチル化酵素が関わっていることが示されている。申請者らは最近、大腸菌の脱アセチル化酵素がリボソームと相互作用することを発見した。このことから、この脱アセチル化酵素は翻訳制御や翻訳後のタンパク質品質管理に関わっていると考えられるが、それらの詳細は未解明である。そこで、本研究ではリボソームに局在する大腸菌の脱アセチル化酵素の生理機能を解析し、アセチル化による翻訳制御や翻訳の品質管理の理解へと展開するための分子基盤研究を行う。
KAKENHI-PROJECT-19K05944
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K05944
中国・インドの企業競争力に関する国際比較分析
絵所は独立後インドの経済開発の軌跡を描き出し、経済自由化政策以降の経済パフォーマンスの特質を描き出し、中国との比較を試みた。胃・田村は、比較優位などの貿易理論に基づいて分析を試み、中国は韓国に次ぎ、ドイツと匹敵するほどに国際競争力を伸ばしたが、他方インドは国際競争力を伸ばしたものの、現段階ではかなり下位であることを明らかにした。馬場は重要なサポーティング産業であること金型産業について、中国・インドの発展段階を定性的・定量的に測定し、明確にした。絵所は独立後インドの経済開発の軌跡を描き出し、経済自由化政策以降の経済パフォーマンスの特質を描き出し、中国との比較を試みた。胃・田村は、比較優位などの貿易理論に基づいて分析を試み、中国は韓国に次ぎ、ドイツと匹敵するほどに国際競争力を伸ばしたが、他方インドは国際競争力を伸ばしたものの、現段階ではかなり下位であることを明らかにした。馬場は重要なサポーティング産業であること金型産業について、中国・インドの発展段階を定性的・定量的に測定し、明確にした。日本経済は巨大化する中国とインド経済とどう共存していくのか。このような重要な政策課題に答えるために,本研究は中国・インド両国のIT・ソフトウェア、自動車・二輪産業、およびサービス(金融・流通)産業を取り上げ,中国・インド両国の企業競争力に関する国際比較分析を行なう。分析に当たっては,技術移転、人材育成、裾野・部品産業クラスターの視点から、IT・ソフトウェア、自動車・二輪産業、サービス(金融・流通)業分野における中印企業および中印に進出している日韓企業のクロスセクション比較、さらにその成長過程を日韓の70、80年代における成長過程と比較という新たな比較手法を取り入れる.こうした分析を通じて、中国とインドの企業競争力を解明する。本年度はインドの自動車産業とIT産業に関する現地調査を行った。後掲研究成果のうち、馬場によるインドの金型産業、武智によるインドの自動車産業に関する分析は、現地調査結果に基づいてインドの競争力に関する研究成果に該当する。他方、胥・田村論文は、国際貿易から世界の工場としての中国の競争力を分析している。また、絵所によるインドの経済成長と貧困削減に関する総合分析は、研究統括者としての研究成果に該当する。現地調査のほかに、インド・中国の専門家をゲスト・スピーカーとして招いて、研究会を多数開催し、インドと中国経済の最新動向の把握につとめた。さらに、実証分析に取り組むために、現段階でインド・中国および両国に進出している日系企業の経済データを広く収集・加工している。インド経済は21世紀のチャンピンになるのか。中国経済を抜き去るのか。こういった問題に対して,絵所はITソフトなどの輸出産業の成長が著しい反面,教育水準によって階層化された労働市場において雇用が伴わない問題点に着目し,教育と格差拡大などの変わらざるインド経済の影を明らかにした。さらに,中国の中高卒の労働力構成と異なって,インドの識字率がいまだに低いことがインド経済のアキレス腱になると,絵所は楽観的なインド経済の展望に対して警鐘を鳴らした。胥・田村は,貿易データを用いて,中国・日本と米国の貿易パターンの比較を行い,さらに中国の国際競争力およびその決定要因を分析した。結論として,中国の教育水準,低い賃金とR&Dが中国の国際競争力に寄与することが解明された。松島は,中国の寧波における金型産業の集積の現地調査を行い,中国経済の内発的発展と企業成長の関係を明らかにした。2007年度の中国の一大産業集積地上海の日系企業,国営企業と民営企業に関する現地調査結果に基づいて,武智は中国に進出した日系企業の中間財における比較優位および日中貿易と対中国直接投資に対する効果を分析した。2006年度のインドバンガロールの現地調査結果と2007年度上海現地調査結果を踏まえて,馬場は金型産業の発展と日本の優位を再確認した。二階堂は,インドの銀行に対する自己資本規制の影響の分析を試みた。今井は中国の携帯電話産業に関する現地調査を行い,産業政策の影響を分析する論文を発表した。絵所は独立後インドの経済開発の軌跡と描き出し、また1991年に着手された経済自由化政策への転換以降の経済パフォーマンスの特質を描き出し、中国との比較を試みた。とりわけ、歴史からインド経済の特質とパフォーマンスを概観することによって、中国のそれとの比較のための論点を提示した。具体的に、インド経済開発の特質と経済パフォーマンスに関連するこれまでの研究史をサーベイし、91年以降今日に至るまでのインド経済パフォーマンスの成果と問題点を同定し、ITソフトウエア産業に依存したインド経済成長はエリート依存型であり、その結果平均的なGNPでは計測することができない構造的諸問題-人口問題、貧困問題、所得分配問題、教育問題一が生じている点を詳細に明らかにした。中国やインドの国際競争力を明確に測定するために、胥・田村は、比較優位などの貿易理論に基づいて分析を試み、中国は韓国に次ぐものから、ドイツと互角するほどに国際競争力が伸ばしてきた。他方、インドは国際競争力を伸ばしたものの、現在の段階ではかなり下位である、と明らかにした。現地調査と貿易データに基づいて、馬場は重要なサポーティング産業である金型産業について、中国・インドの発展段階を定性的・定量的に測定し、明確にした。両国の金型産業の発展状況がかなり明確となった。金型産業の発展段階は両国とも近年発展が著しく、工業化に貢献しうるレベルに達しつつある。
KAKENHI-PROJECT-18402025
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18402025
中国・インドの企業競争力に関する国際比較分析
特に中国については国際競争力が急速に向上しており、世界的に中国が競争力で優位にある。
KAKENHI-PROJECT-18402025
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18402025
白血病遺伝子Evi1と協調するnoncoding RNAの同定
Evi1はエピゲノム関連因子の一つであり、long noncoding RNA (lncRNA)と結合して作用している可能性が考えられる。Evi1を高発現しているヒト白血病細胞株でEvi1とHOTAIRというlncRNAが結合することがわかった。また、Evi1過剰発現により不死化した細胞でCRNDEというlncRNAの発現が亢進していることがわかった。CRNDEのノックダウンによってEvi1不死化細胞の増殖能は変化しなかった。Evi1はエピゲノム関連因子の一つであり、long noncoding RNA (lncRNA)と結合して作用している可能性が考えられる。Evi1を高発現しているヒト白血病細胞株でEvi1とHOTAIRというlncRNAが結合することがわかった。また、Evi1過剰発現により不死化した細胞でCRNDEというlncRNAの発現が亢進していることがわかった。CRNDEのノックダウンによってEvi1不死化細胞の増殖能は変化しなかった。Evi1高発現ヒト白血病細胞株MOLM-1, HNT34を用いて、核内タンパク質を抽出し、Evi1抗体を用いたRNA免疫沈降を行った。Evi1とlncRNA HOTAIRの結合を確認することはできたが、既知のEZH2とHOTAIRなどのlncRNAの結合について再現を得ることが出来ていない。現在もRNA免疫沈降実験系の確立中である。一方、公開されているマイクロアレイデータGSE51757の解析により、われわれは、造血器腫瘍細胞で正常造血細胞と発現量が8倍程度異なっているlncRNAの候補を11個ピックアップした。また、Evi1をレトロウイルスでマウス造血細胞に導入して移植するEvi1白血病モデル実験で得られたマウス白血病細胞の解析により、Evi1白血病マウス骨髄の幼若なLineage(-)cKit(+)分画で、11個のlincRNAのうちいくつかが同様の発現量の変化を起こしていることを見出した。このような発現量変化の大きいlncRNAは腫瘍の分子病態に関与している可能性が高く、Evi1高発現白血病においても、Evi1とこのようなlincRNAが結合して特定の標的プロモーターに結合することが、病態に重要であることが考えられる。今後は他のEvi1高発現細胞株も用いてRNA免疫沈降の系を確立した上で、Evi1に結合するlncRNAを同定し、ノックダウン実験や導入実験、移植実験を併用して解析を進めていく。long non-coding RNA(lncRNA)を含む網羅的発現解析公開データであるGSE51757を用いて、骨髄異形成症候群(MDS)で発現が低下しているlncRNAの候補として10個、またMDSで発現が亢進しているlncRNAの候補として3個を前年の解析で抽出している。このようなlncRNAの中で、MDSで発現が特に亢進しており正常細胞との差が大きかったCRNDEに着目した。CRNDEは大腸がん細胞で発現が亢進していることが知られているlncRNAで、腫瘍細胞の代謝に影響し、好気的解糖を促進することが知られている。マウスCRNDEのsiRNAを発現するレトロウイルスベクターを2種類作成し、マウス造血器腫瘍のin vitroモデルであるEvi1強制発現不死化細胞,MLL-ENL強制発現不死化細胞にそれぞれレトロウイルスで導入し、CRNDEの発現をノックダウンした。2種類のベクターがそれぞれCRNDEの発現を約30%に低減することを確認した。この細胞をin vitroで培養し対照との細胞増殖を比較したが有意差は得られなかった。従って、この系からはCRNDEの造血器腫瘍細胞の生存・増殖における重要性を示すことができなかった。その後、正常核型のde novo急性骨髄性白血病症例で発現量が予後と相関するlncRNAが網羅的解析によって多数報告された(PNAS 2014;111:18679)。これらの白血病の病態における意義を解析するため、高発現で予後不良となる7種のlncRNAについて、その発現をノックアウトすることの可能なCRISPR/Cas9を発現するレトロウイルスベクターを構築した。血液内科学RNA免疫沈降の実験系が確立できていないため。他の細胞株などを用いてRNA免疫沈降の系を速やかに確立し、Evi1に結合しているlncRNAの機能解析に進む。その際、公開発現マイクロアレイの解析結果から得られた造血器腫瘍で発現異常のあるlncRNA候補を中心に解析を進める。
KAKENHI-PROJECT-25860783
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25860783
連星中性子星合体から数時間後の電磁波対応天体から迫るブラックホールの活動性
連星中性子星合体は有力な重力波源であるだけでなく、合体後に様々な高エネルギー天体現象を引き起こす可能性がある。しかし、その詳細な駆動メカニズムはよくわかっていない。本研究では、今後の連星中性子星観測の進展を見越して、合体から数時間という短いタイムスケールで観測される電磁波対応天体の研究を行う。このタイムスケールでは、高エネルギー現象を引き起こす合体後の天体の情報が電磁波に反映されている可能性が高い。主に、自由中性子による放射、合体後に駆動されたジェットにより加熱された成分からの放射が考えられるが、後者の観測から駆動されたジェットの物理量を制限する方法の構築を目指す。連星中性子星合体は有力な重力波源であるだけでなく、合体後に様々な高エネルギー天体現象を引き起こす可能性がある。しかし、その詳細な駆動メカニズムはよくわかっていない。本研究では、今後の連星中性子星観測の進展を見越して、合体から数時間という短いタイムスケールで観測される電磁波対応天体の研究を行う。このタイムスケールでは、高エネルギー現象を引き起こす合体後の天体の情報が電磁波に反映されている可能性が高い。主に、自由中性子による放射、合体後に駆動されたジェットにより加熱された成分からの放射が考えられるが、後者の観測から駆動されたジェットの物理量を制限する方法の構築を目指す。
KAKENHI-PROJECT-19J00214
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19J00214
連棟配置された建築構造物群に作用する津波荷重の解明
本研究は3か年の計画とし,津波解析,水理実験の2種類の手法を総合して検討を行っていく。本研究は対象とする変数が多く,津波荷重の傾向を段階的にとらえるために実験および解析を2フェーズに分けて計画する。フェーズ1では,特に変数として着目するのは,建物位置,建物形状(平面形状矩形,円筒形など),建物間隔の3変数である。初めての研究であるため,対象とする建物を2体とし相互の関係性を明らかにすることを目的とし,基本的な性状の把握を目的とする。フェーズ2では,フェーズ1の変数に加えて建物縦横比(建物アスペクト比),津波進行方向の2変数を追加する。建物数を4体まで増やし,建物群の中での性状把握を目的とする。本研究は3か年の計画とし,津波解析,水理実験の2種類の手法を総合して検討を行っていく。本研究は対象とする変数が多く,津波荷重の傾向を段階的にとらえるために実験および解析を2フェーズに分けて計画する。フェーズ1では,特に変数として着目するのは,建物位置,建物形状(平面形状矩形,円筒形など),建物間隔の3変数である。初めての研究であるため,対象とする建物を2体とし相互の関係性を明らかにすることを目的とし,基本的な性状の把握を目的とする。フェーズ2では,フェーズ1の変数に加えて建物縦横比(建物アスペクト比),津波進行方向の2変数を追加する。建物数を4体まで増やし,建物群の中での性状把握を目的とする。
KAKENHI-PROJECT-19K04713
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K04713
歩行機能に与える圧迫性脊髄症に対しての除圧術の影響と脳循環代謝変化との相関
本研究では、頸椎症もしくは頸椎後縦靱帯骨化症等の圧迫性脊髄症に対する減圧術の治療効果を、歩行を総合的かつ客観的に解析可能な携帯型精密歩行分析計(MG-M1110)を用いて解析し、さらに、大脳の運動関連皮質における神経受容体機能の術後変化と比較することである。最終的には、圧迫性脊髄症に対する除圧術の歩行機能改善効果の客観的証明と大脳へ与える影響を解明することを目指している。初年度である本年度は以下の二点を予定した。1.頸椎症または頸椎後縦靱帯骨化症による圧迫性脊髄症に対して徐圧術を施行する患者に、術前および術後三か月後に携帯型精密歩行分析計による歩行分析を行う。さらに、従来行われているJOA scoreの評価も同時期に行うこと。頸椎症または頸椎後縦靱帯骨化症による圧迫性脊髄症に対して徐圧術を施行する患者に、術前および術後三か月後に携帯型精密歩行分析計による歩行分析と従来行われているJOA scoreの評価を実施した。また、計測装置の精度検証のため、患者と同一条件にて健常者の測定を実施し、同内容について国際会議にて報告した。頸椎症または頸椎後縦靱帯骨化症による圧迫性脊髄症に対して徐圧術を施行する患者に、術前および術後三か月後に携帯型精密歩行分析計による歩行分析と従来行われているJOA scoreの評価を実施した。また、本研究で用いている携帯型精密歩行分析計の精度検証のため、患者と同一条件にて健常者36例によるtest-retestを実施し、各歩行パラメータの再現性の違いを明らかにするとともに、パラメータの正常範囲を決定した。しかし、術前および術後三か月に123I-iomazenil SPECTを行い、術前後の各脳循環代謝の変化の評価を行うことが、特定臨床研究の申請の評価がまだ行われておらず、症例数が増えていない。今後の方針としては、特定臨床研究の申請を速やかに行い評価してもらい、審査結果の判定をしてもらうことが優先。その後に、術前および術後三か月に123I-iomazenil SPECTを行い、術前後の各脳循環代謝の変化の評価する症例数を増やしていく。本研究では、頸椎症もしくは頸椎後縦靱帯骨化症等の圧迫性脊髄症に対する減圧術の治療効果を、歩行を総合的かつ客観的に解析可能な携帯型精密歩行分析計(MG-M1110)を用いて解析し、さらに、大脳の運動関連皮質における神経受容体機能の術後変化と比較することである。最終的には、圧迫性脊髄症に対する除圧術の歩行機能改善効果の客観的証明と大脳へ与える影響を解明することを目指している。初年度である本年度は以下の二点を予定した。1.頸椎症または頸椎後縦靱帯骨化症による圧迫性脊髄症に対して徐圧術を施行する患者に、術前および術後三か月後に携帯型精密歩行分析計による歩行分析を行う。さらに、従来行われているJOA scoreの評価も同時期に行うこと。頸椎症または頸椎後縦靱帯骨化症による圧迫性脊髄症に対して徐圧術を施行する患者に、術前および術後三か月後に携帯型精密歩行分析計による歩行分析と従来行われているJOA scoreの評価を実施した。また、計測装置の精度検証のため、患者と同一条件にて健常者の測定を実施し、同内容について国際会議にて報告した。頸椎症または頸椎後縦靱帯骨化症による圧迫性脊髄症に対して徐圧術を施行する患者に、術前および術後三か月後に携帯型精密歩行分析計による歩行分析と従来行われているJOA scoreの評価を実施した。また、本研究で用いている携帯型精密歩行分析計の精度検証のため、患者と同一条件にて健常者36例によるtest-retestを実施し、各歩行パラメータの再現性の違いを明らかにするとともに、パラメータの正常範囲を決定した。しかし、術前および術後三か月に123I-iomazenil SPECTを行い、術前後の各脳循環代謝の変化の評価を行うことが、特定臨床研究の申請の評価がまだ行われておらず、症例数が増えていない。今後の方針としては、特定臨床研究の申請を速やかに行い評価してもらい、審査結果の判定をしてもらうことが優先。その後に、術前および術後三か月に123I-iomazenil SPECTを行い、術前後の各脳循環代謝の変化の評価する症例数を増やしていく。頸椎症または頸椎後縦靱帯骨化症による圧迫性脊髄症に対して徐圧術を施行する患者に、術前および術後一・三か月後に携帯型精密歩行分析計による歩行分析を行い、術前および術後三か月に123I-iomazenil SPECTを行い、術前後の各脳循環代謝の変化の評価を行う予定であったが、特定臨床研究の申請の評価がまだ行われたおらず、SPECTの使用する症例数が少なかったため、SPECTトレーサーの購入が少なかった。次年度の術前および術後三か月に123I-iomazenil SPECTを行い、術前後の各脳循環代謝の変化の評価を行うため、その際のSPECTトレーサーの購入に充てる。
KAKENHI-PROJECT-18K08948
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K08948
専門学校在学者の実態と意識に関する基礎的・総合的な調査研究
平成13年度3月に当該補助金による調査研究の成果を「専門学校在学者の実態と意識に関する基礎的、総合的な調査研究報告書-全国47都道府県国立・公立・私立専門学校在学生5万2,024人の実態と意識に関する調査研究-」(研究代表者[著者]京都文教大学教授、関口義)と題してまとめ、刊行した。同報告書の内容を、目次に基づき紹介すると次のようである。一.調査結果の基本事項解説[1]分野別学生数[2]男女別、昼夜別、学年別学生数[3]全国専門学校分野・学科別学生数[4]年齢別学生数[5]出身高校の学科別学生数[6]出身高校の全日制、定時制別学生数二.実態、意識調査の結果とその考察[1]専門学校入学にさいしての県内進学と県間移動[2]専門学校に関心を持った時期は[3]専門学校への入学動機(1)全体的概況(2)8項目別にみた入学動機と意識(1)就職(転職)準備のため(2)資格をとるため(3)技術を習得するため(4)教養・知識を得るため(5)趣味を深めるため(6)学校生活を楽しみたいため(7)社会に役立つ人物になるため(8)友人をつくるため[4]専門学校への入学に影響を与えたものは[5]専門学校進学と大学との関連[6]専門学校進学と就職との関連[7]専門学校生の生活時間[8]専門学校生の経済生活[9]現在学んでいることに関して(1)現在学んでいる学科についてどう考えるか(2)授業内容について(3)使用教科書について(4)課題、宿題について(5)実習時間について(6)実習機材について(7)修得している科目数について(8)年間授業日数について(9)現在学んでいる学科について最も望む事はなにか[10]入学後の学校生活は[11]現在学んでいる学科と卒業後の進路[12]学歴についての見解三.調査対象専門学校350校の学校名と所在地四.調査の経過と調査対象への依頼文書、関連資料、調査票平成13年度3月に当該補助金による調査研究の成果を「専門学校在学者の実態と意識に関する基礎的、総合的な調査研究報告書-全国47都道府県国立・公立・私立専門学校在学生5万2,024人の実態と意識に関する調査研究-」(研究代表者[著者]京都文教大学教授、関口義)と題してまとめ、刊行した。同報告書の内容を、目次に基づき紹介すると次のようである。一.調査結果の基本事項解説[1]分野別学生数[2]男女別、昼夜別、学年別学生数[3]全国専門学校分野・学科別学生数[4]年齢別学生数[5]出身高校の学科別学生数[6]出身高校の全日制、定時制別学生数二.実態、意識調査の結果とその考察[1]専門学校入学にさいしての県内進学と県間移動[2]専門学校に関心を持った時期は[3]専門学校への入学動機(1)全体的概況(2)8項目別にみた入学動機と意識(1)就職(転職)準備のため(2)資格をとるため(3)技術を習得するため(4)教養・知識を得るため(5)趣味を深めるため(6)学校生活を楽しみたいため(7)社会に役立つ人物になるため(8)友人をつくるため[4]専門学校への入学に影響を与えたものは[5]専門学校進学と大学との関連[6]専門学校進学と就職との関連[7]専門学校生の生活時間[8]専門学校生の経済生活[9]現在学んでいることに関して(1)現在学んでいる学科についてどう考えるか(2)授業内容について(3)使用教科書について(4)課題、宿題について(5)実習時間について(6)実習機材について(7)修得している科目数について(8)年間授業日数について(9)現在学んでいる学科について最も望む事はなにか[10]入学後の学校生活は[11]現在学んでいる学科と卒業後の進路[12]学歴についての見解三.調査対象専門学校350校の学校名と所在地四.調査の経過と調査対象への依頼文書、関連資料、調査票当該研究の本年度(平成11年度)の研究実施計画で次のように述べていた。「全国の専門学校在校生を対象とし、アンケート方式の質問項目から構成される質問紙により、その実態及び意識について集約して行う。そのため、日本全国の専門学校生が十分に代表できるように学校数・在学者数とも1/10程度の抽出で行う。地域別には専門学校が立地する47都道府県全てを網羅し、併せて分野別、学校種類・学科別に代表できるよう選定する。300校程度の対象校を経由し、6万3000人程度の在学者(有効回答数として計上)について行う。この計画に基づき平成11年度は9月12月の3ヶ月間にわたり「専門学校在学者意識調査票」を作成(8万部)全国の国公私立の専門学校1200校を対象とした調査を行った。実態に関する調査項目は、専門学校生の所属する学校、学科、性別、年齢、出身高校県、大卒者の場合は、その経歴に関するものなど、主としてフェースシートに関する項目である。その他、経済生活(アルバイトとその有無を含む)や1日の平均生活時間などがある。
KAKENHI-PROJECT-11610293
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11610293
専門学校在学者の実態と意識に関する基礎的・総合的な調査研究
意識に関する調査項目は、入学から始まり、在学時の学校生活、カリキュラム授業内容、卒業後の進路への意識などの広範囲にわたり、選択肢と自由記述欄により回答を得る方式とした。平成13年3月に当該補助金による調査研究の成果を「専門学校在学者の実態と意識に関する基礎的、総合的な調査研究報告書-全国47都道府県国立・公立・私立専門学校在校生5万2,024人の実態と意識に関する調査研究-」(研究代表者[著者]京都文教大学教授,関口義)と題してまとめ、刊行した。同報告書の内容を、目次に基づき紹介すると次のようである。一.調査結果の基本事項解説[1]分野別学生数[2]男女別、昼夜別、学年別学生数[3]全国専門学校分野・学科別学生数[4]年齢別学生数[5]出身高校の学科別学生数[6]出身高校の全日制、定時制別学生数二.実態、意識調査の結果とその考察[1]専門学校入学にさいしての県内進学と県間移動[2]専門学校に関心を持った時期は[3]専門学校への入学動機(1)全体的概況(2)8項目別にみた入学動機と意識(1)就職(転職)準備のため(2)資格をとるため(3)技術を習得するため(4)教養・知識を得るため(5)趣味を深めるため(6)学校生活を楽しみたいため(7)社会に役立つ人物になるため(8)友人をつくるため[4]専門学校への入学に影響を与えたものは[5]専門学校進学と大学との関連[6]専門学校進学と就職との関連[7]専門学校生の生活時間[8]専門学校生の経済生活[9]現在学んでいることに関して(1)現在学んでいる学科についてどう考えるか(2)授業内容について(3)使用教科書について(4)課題、宿題について(5)実習時間について(6)実習機材について(7)修得している科目数について(8)年間授業日数について(9)現在学んでいる学科について最も望む事はなにか[10]入学後の学校生活は[11]現在学んでいる学科と卒業後の進路[12]学歴についての見解三.調査対象専門学校350校の学校名と所在地四.調査の経過と調査対象への依頼文書、関連資料、調査票
KAKENHI-PROJECT-11610293
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11610293
細胞膜に存在する新規女性ホルモン受容体
E2前駆体およびE2代謝産物を中心にコレステロール骨格を有する生理活性物質や環境ホルモンを再度細胞内カルシウムの上昇を指標にして蛍光画像解析で網羅的なスクリーニングを行った。しかし、培養液中に存在する女性ホルモン様物質が測定を妨害し一部の細胞では、GPR30の細胞内移行が観察され、刺激前に活性化された画像が多く観察された。このため、正確な結果を導くことが出来ないと判断し、培養液に存在する女性ホルモン様物質の同定を行った。この物質は、培地内に多く含まれており、培養液を特殊な処理をすることで除去が可能になった。この培地を用いて、現在新しいアッセイシステムを構築し、再スクリーニングを行っている。また、GPR30の組織および細胞内発おける分布をリアルタイムPCR法を用いて検索した。その結果、体内の多くの組織で発現が認められる一方で、一部の特定の組織で、遺伝子発現が増加することを見出した。しかし、女性ホルモン発応答しているかどうかは不明である。この遺伝子が発現はある程度タンパク質発現と一致しており、信頼できるデータだと思われる。GPR30はExon3のみから転写されていることから、Exon3のみをCreリコンビナーゼで切り出して欠損するコンディショナルマウスを作製した脳および子宮特異的なコンディショナルKOマウスを作出したが、250匹の胎児まで解析し、キメラマウスの遺伝子が胎児の染色体にのっていない。今後は、コンストラクトの再構成を考えないといけない可能性がある。E2前駆体およびE2代謝産物を中心にコレステロール骨格を有する生理活性物質や環境ホルモンを再度細胞内カルシウムの上昇を指標にして蛍光画像解析で網羅的なスクリーニングを行った。しかし、培養液中に存在する女性ホルモン様物質が測定を妨害し一部の細胞では、GPR30の細胞内移行が観察され、刺激前に活性化された画像が多く観察された。このため、正確な結果を導くことが出来ないと判断し、培養液に存在する女性ホルモン様物質の同定を行った。この物質は、培地内に多く含まれており、培養液を特殊な処理をすることで除去が可能になった。この培地を用いて、現在新しいアッセイシステムを構築し、再スクリーニングを行っている。また、GPR30の組織および細胞内発おける分布をリアルタイムPCR法を用いて検索した。その結果、体内の多くの組織で発現が認められる一方で、一部の特定の組織で、遺伝子発現が増加することを見出した。しかし、女性ホルモン発応答しているかどうかは不明である。この遺伝子が発現はある程度タンパク質発現と一致しており、信頼できるデータだと思われる。GPR30はExon3のみから転写されていることから、Exon3のみをCreリコンビナーゼで切り出して欠損するコンディショナルマウスを作製した脳および子宮特異的なコンディショナルKOマウスを作出したが、250匹の胎児まで解析し、キメラマウスの遺伝子が胎児の染色体にのっていない。今後は、コンストラクトの再構成を考えないといけない可能性がある。GPR30コンディショナルKOマウスの作製GPR30はExon3のみから転写されていることから、Exon3のみをCreリコンビナーゼで切り出して欠損するコンディショナルマウスを作製する。実験にはKOマウスの作製に使用したターゲッティングベクター5領域の下流にLoxP、さらにGPR30のORFを挿入したのち、LoxP遺伝子を挿入する。独立して発現するネオマイシン耐性遺伝子を挿入した後、2.5kBの3'領域を挿入したターゲッティングベクターを作製する。これらの配列をシークエンスで確認した後に精製し、リニアライズした後、ES細胞への導入を行った。ES細胞をマウス繊維芽細胞存在下で培養しエレクトロポレーションで電気刺激を行ったのちターゲッティグ遺伝子を導入する。遺伝子導入後、ES細胞を限界希釈し384マイクロブイレート上で培養しネオマイシンで選択を行う。選択後に増殖した細胞を一部保存し、残りの細胞からゲノムDNAを調製する。ネオマイシン耐性遺伝子の配列を指標に3種類の異なるタッチダウンPCRを行い、陽性の細胞を選別した後、PCR産物のダイレクトシークエンスを行い、配列を確認する。組換えが行われている細胞のみストックから起こし細胞培養する。I1-3.C57/BL6マウスを用いたキメラマウスの作製増殖したES細胞を熊本大学に依頼し、キメラマウスを作製している。E2前駆体およびE2代謝産物を中心にコレステロール骨格を有する生理活性物質や環境ホルモンを再度細胞内カルシウムの上昇を指標にして蛍光画像解析で網羅的なスクリーニングを行った。しかし、培養液中に存在する女性ホルモン様物質が測定を妨害し一部の細胞では、GPR30の細胞内移行が観察され、刺激前に活性化された画像が多く観察された。このため、正確な結果を導くことが出来ないと判断し、培養液に存在する女性ホルモン様物質の同定を行った。この物質は、培地内に多く含まれており、培養液を特殊な処理をすることで除去が可能になった。この培地を用いて、現在新しいアッセイシステムを構築し、再スクリーニングを行っている。また、GPR30の組織および細胞内における分布をリアルタイムPCR法を用いて検索した。その結果、体内の多くの組織で発現が認められる一方で、一部の特定の組織で、遺伝子発現が増加することを見出した。しかし、女性ホルモンに応答しているかどうかは不明である。この遺伝子が発現はある程度タンパク質発現と一致しており、信頼できるデータだと思われる。
KAKENHI-PROJECT-18590205
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18590205
細胞膜に存在する新規女性ホルモン受容体
脳および子宮特異的なコンディショナルKOマウスを作出したが、250匹の胎児まで解析し、キメラマウスの遺伝子が胎児の染色体にのっていない。今後は、コンストラクトの再構成を考えないといけない可能性がある。
KAKENHI-PROJECT-18590205
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18590205
コンピュータ利用による文様分析法の確立と我が国5〜13世紀文様史の時代区分
1コンピュータ利用による文様分析の試み本研究は従来の文様史研究がモティーフ分類とその系統づけを主要課題となしていたのに対し、文様史を空間に対する装飾の歴史としてとらえ、装飾史としての造形的分析の方法を問題化しようとするもので、(1)文様を施す装飾空間の空間分割法、(2)装飾空間への文様の布置構成法、(3)個々文様の構成法の3点から、コンピュータ利用による文様分析法の確立を試みた。研究対象作例はモティーフ別ではなく、文様が施される装飾空間の形式別に収集し、その空間形式に応じた文様分析の方法を考察した。コンピュータ利用による文様分析の具体的作業は、(1)法隆寺金堂釈迦三尊像脇侍両光背、(2)玉虫厨子透彫り金具、(3)法隆寺献納宝物頭光背33面、(4)法隆寺釈迦三尊像脇侍・四天王像・救世観音像各宝冠、(5)法隆寺献納宝物灌頂幡、(6)杏葉、を対象として行った。2文様作例データベースの作成文様の様式変遷に基づいた文様史独自の時代区分を試みるための準備作業として、検索目的・用途に応じて以下の3種類のデータベースを試作した(文様作例約826、データ数約1243件)。(1)1作例に関する画像データおよびテキストデータを集約させ、検索・抽出・分類を行うためのカード型データベース。(File Maker Pro 5使用)(2)作例データを表形式として表示し、一覧・検索・抽出・分類を行うための表計算型データベース。(Microsoft Excel 9.0J使用)データベースでは、文様作例を装飾史および造形分析の観点から類別、検索可能とし、文様史時代区分を行うための有効性をもたせるため、一般的な事項項目とは別に、(1)文様抽出区分(文様要素・単位文様・文様ユニット)、(2)装飾空間の形状(文様の施される装飾空間の形状分類)、(3)文様名称(モティーフ語と形式語に区分)、(4)装飾空間への文様布置構成法、などをフィールド項目として設計した。1コンピュータ利用による文様分析の試み本研究は従来の文様史研究がモティーフ分類とその系統づけを主要課題となしていたのに対し、文様史を空間に対する装飾の歴史としてとらえ、装飾史としての造形的分析の方法を問題化しようとするもので、(1)文様を施す装飾空間の空間分割法、(2)装飾空間への文様の布置構成法、(3)個々文様の構成法の3点から、コンピュータ利用による文様分析法の確立を試みた。研究対象作例はモティーフ別ではなく、文様が施される装飾空間の形式別に収集し、その空間形式に応じた文様分析の方法を考察した。コンピュータ利用による文様分析の具体的作業は、(1)法隆寺金堂釈迦三尊像脇侍両光背、(2)玉虫厨子透彫り金具、(3)法隆寺献納宝物頭光背33面、(4)法隆寺釈迦三尊像脇侍・四天王像・救世観音像各宝冠、(5)法隆寺献納宝物灌頂幡、(6)杏葉、を対象として行った。2文様作例データベースの作成文様の様式変遷に基づいた文様史独自の時代区分を試みるための準備作業として、検索目的・用途に応じて以下の3種類のデータベースを試作した(文様作例約826、データ数約1243件)。(1)1作例に関する画像データおよびテキストデータを集約させ、検索・抽出・分類を行うためのカード型データベース。(File Maker Pro 5使用)(2)作例データを表形式として表示し、一覧・検索・抽出・分類を行うための表計算型データベース。(Microsoft Excel 9.0J使用)データベースでは、文様作例を装飾史および造形分析の観点から類別、検索可能とし、文様史時代区分を行うための有効性をもたせるため、一般的な事項項目とは別に、(1)文様抽出区分(文様要素・単位文様・文様ユニット)、(2)装飾空間の形状(文様の施される装飾空間の形状分類)、(3)文様名称(モティーフ語と形式語に区分)、(4)装飾空間への文様布置構成法、などをフィールド項目として設計した。本年度は基礎データベースの作成を中心課題とした。基礎データベース作成にあたっては、従来のモティーフ別の作例収集でなく、文様により装飾される対象の用途別データ収集とした。これは、文様史の中心課題は、装飾空間に対して文様がいかに造形化(布置構成)されるかの分析であるべきと考え、従来のモティーフ別個別文様の収集よりは、装飾空間の類似性のなかで作例収集をおこなうことを課題としたからである。用途別作例収集の基本項目としては、鞍金具文様・杏葉文様・武具文様・光背文様・宝冠文様・仏象装飾文犠・台座文様・天蓋文様・幡文様・建築金具文様など25項目を設定し、各基本項目のなかでそれぞれ作例別小項目530を設定している。(例:光背文様では舟形光背・頭光などの形式別項目。宝冠文様では山形冠・三山冠・三面頭飾などの形式別項目。幡文様・建築金具文様では方形・横帯状・縦帯状などの形式別項目。)
KAKENHI-PROJECT-11610063
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11610063
コンピュータ利用による文様分析法の確立と我が国5〜13世紀文様史の時代区分
個別の作例においては、文様により装飾される場がいかに空間分割されているかの分析をベースとし、そこにどのような単位文様が、どのように組み合わされて構成されるかを分析せねばならない。こうした装飾空間の分割法と、個別文様の組合せ構成法の具体的分析作業例として、本年度は法隆寺金堂釈迦三尊像脇侍両光背の分析を試みた。従来より両光背の造形的な相違は指摘されていたが、印象論の域をでなかった。そこで小論では、コンピュータにより、光背全体の構成比較・文様帯内部の空間分割・文様帯内部の単位文様とその組合せ・両光背の相対する文様ユニットにおける造形性の比較などをおこなうことにより、両光背文様の具体的な造形的相違を実証した。この作業プロセスは、コンピュータ利用による文様分析法の一例でもある。1コンピュータ利用による文様分析コンピュータ利用による文様分析の具体的作業は、(1)玉虫厨子透彫り金具文様と(2)法隆寺献納宝物頭光背33面を対象として行った。(1)では、従来の研究がモティーフによる系統分類を主眼となし、個々の文様に対する基礎的造形分析が欠如していたことを問題化した。これまで最も論議されてきた須弥座腰部柱の〓龍文系猪目形空孔文に対して、朝鮮扶余陵山里古墳出土金具文様との比較分解構成図を作成することにより、小杉一雄の提唱以来通説化していた両文様の「複合形組成法」が恣意的作図による立論であることを明らかにし、さらにこれらを漢代爬虫唐草の系譜とする一元的起源論の問題点を明確にした。(2)では、頭光背33面の装飾文様を、モティーフ分類ではなく、装飾空間に対して文様がいかに造形化(布置構成)されるかという視点より分析した。特に圏帯部に対しては、これを62例の円圏帯装飾空間に分け、各円圏帯に施される文様より単位文様を弁別し、その布置構成法の分類整理をおこなった。2文様作例データベースの作成文様史時代区分のための準備作業として、文様作例約826、データ数約1243件のデータベースを、以下の検索目的・用途に応じて3種類試作した。(3)1作例に関する複数画像と作例データを検索するためのカード型データベース(File Maker Pro5使用)文様作例を造形的な視点から検索可能とし、その時代区分に有効性をもたせるため、(3)のカテゴリは文様要素・単位文様・文様ユニットの3種に分け、フィールド項目には、(a)装飾空間の形状(文様の布置される装飾空間の形状分類)、(b)文様名称(モティーフ語と形式語に区分)、(c)装飾空間への文様布置構成法、を追加設計した。
KAKENHI-PROJECT-11610063
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11610063
損傷脊髄への移植を主眼とした嗅神経グリア(OEC)の性状の解析とマーカーの探索
OECは脊髄損傷の治療の為の細胞ソースとして有望視されながらも、基礎的研究が立ち遅れている現状にある。その原因の一つは、OECの細胞を特定するための特異的なマーカーが見つかっていないことによる。OECは嗅粘膜から嗅球へ至につれ、生体内でも形態と細胞表面抗原を変化させることが知られている。また、in vitroでの培養においても、p75の発現が徐々に低下していくことや、s100βとGFAPの発現が排他的になっていくことが知られている。そこで、脊髄損傷の治療に最適なOECを分取するためのマーカーを探索するべく、OECのサブクローニングを行い、OECが持つ神経細胞の軸索伸展促進能について着目して、軸索伸展促進能のある株とない株でcDNAサブトラクションを行った。この中で、同定されてきたものの中には、s100βが含まれていた。s1OOタンパク質はさまざまな細胞の細胞質や核に局在し、細胞周期進行や分化といった多くの細胞過程の調節にかかわっていることが知られている。S100βの発現は生体内においては、OECのうちでも軸索と接触する嗅粘膜のouter membraneで発現が見られ、一つの指標になりうると考えられた。しかし、軸索伸展能を有しないOEC株への遺伝子導入は、PC12に対して明白には軸索伸展の促進を引き起こさなかった。また、これ以外にもライブラリーから作製した遺伝子発現ウィルスベクターを用いて遺伝子の導入を行って調べたが、明白に軸索伸展を引き起こした物は見いだせなかった。複数の遺伝子の導入が必要であるのか、また用いたOECの株がすでにOECの能力を失っていることも考えられ、現在、軸索伸展能のあるOEC株に強発現させる方向で検索を続けている。OECは脊髄損傷の治療のための細胞ソースとして有望視されながらも、基礎的研究が立ち遅れている現状にある。その原因の一つは、OECの細胞を特定するための特異的なマーカーが見つかっていないことによる。OECは嗅粘膜から嗅球へ至るにつれ、生体内でも形態と細胞表面抗原を変化させることが知られている。また、in vitroでの培養においても、p75の発現が徐々に低下していくことや、s100βとGFAPの発現が排他的になっていくことが知られている。われわれは、脊髄損傷の治療に最適なOECを分取するためのマーカーを探索するべく、以下のような計画を実施した。まずratから回収したOECがPC12や中枢の神経幹細胞の軸策伸展を促すことを見出した。さらに、OECとして精製されたp75+GFAP+の細胞をさらにサブクローニングし、PC12の軸策伸展を促す能力の違いをもとにマイクロアレイを実施した。これらマイクロアレイの結果から、HGFを含むいくつかの遺伝子について、cDNAあるいはリコンビナントタンパクを入手し、PC12に対する軸策伸展効果を確認した。しかし、これまで調べたものは全て軸策伸展に対して、影響を示さなかった。本研究では、サブクローンを作成した細胞がrat由来であったため、マイクロアレイで差異が認められた遺伝子の多くは、affiliationが決定されておらず、クローニングしなければ機能が評価できない。このため、現在、マイクロアレイで用いた細胞株について、cDNAサブトラクションを行ってライブラリーを作成している。今後、得られたライブラリーの中から、OECの細胞株にPC12の軸策伸展を促す能力を付与する遺伝子を探索する。OECは脊髄損傷の治療の為の細胞ソースとして有望視されながらも、基礎的研究が立ち遅れている現状にある。その原因の一つは、OECの細胞を特定するための特異的なマーカーが見つかっていないことによる。OECは嗅粘膜から嗅球へ至につれ、生体内でも形態と細胞表面抗原を変化させることが知られている。また、in vitroでの培養においても、p75の発現が徐々に低下していくことや、s100βとGFAPの発現が排他的になっていくことが知られている。そこで、脊髄損傷の治療に最適なOECを分取するためのマーカーを探索するべく、OECのサブクローニングを行い、OECが持つ神経細胞の軸索伸展促進能について着目して、軸索伸展促進能のある株とない株でcDNAサブトラクションを行った。この中で、同定されてきたものの中には、s100βが含まれていた。s1OOタンパク質はさまざまな細胞の細胞質や核に局在し、細胞周期進行や分化といった多くの細胞過程の調節にかかわっていることが知られている。S100βの発現は生体内においては、OECのうちでも軸索と接触する嗅粘膜のouter membraneで発現が見られ、一つの指標になりうると考えられた。しかし、軸索伸展能を有しないOEC株への遺伝子導入は、PC12に対して明白には軸索伸展の促進を引き起こさなかった。また、これ以外にもライブラリーから作製した遺伝子発現ウィルスベクターを用いて遺伝子の導入を行って調べたが、明白に軸索伸展を引き起こした物は見いだせなかった。複数の遺伝子の導入が必要であるのか、また用いたOECの株がすでにOECの能力を失っていることも考えられ、現在、軸索伸展能のあるOEC株に強発現させる方向で検索を続けている。
KAKENHI-PROJECT-18791055
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18791055
血管安定化因子制御による糖尿病黄斑症の治療法開発
増殖糖尿病網膜症において硝子体中のコハク酸濃度が有意に上昇していることを発見した。また抗VEGF治療を行った患者ではコハク酸濃度が有意に低下していることもわかった。コハク酸がVEGFを誘導することはすでに報告されていることからVEGFによるコハク酸へのポジティブフィードバック機構の存在が示唆された。このことは世界で初めての発見である。増殖糖尿病網膜症において硝子体中のコハク酸濃度が有意に上昇していることを発見した。また抗VEGF治療を行った患者ではコハク酸濃度が有意に低下していることもわかった。コハク酸がVEGFを誘導することはすでに報告されていることからVEGFによるコハク酸へのポジティブフィードバック機構の存在が示唆された。このことは世界で初めての発見である。糖尿病網膜症は成人の失明原因として主要な割合を占めており、その病態解明・治療法の確立が非常に重要な問題となっている。糖尿病網膜では毛細血管の障害・脱落により網膜無灌流領域が形成されることにより血管内皮増殖因子(VEGF)やエリスロポエチンといった様々な増殖因子が産生・放出され、血管透過性亢進による網膜浮腫(視力低下)や血管新生(緑内障、硝子体出血)により失明に至ると考えられている。網膜無灌流領域の治療は網膜光凝固術が現在主流であるが虚血周辺網膜を焼き尽くすこの治療法は破壊的で侵襲も大きい。網膜血管脱落を最小限にとどめ、形成された無灌流領域には速やかに正常血管の再構築を行うことが理想的な治療法と言える。糖尿病黄斑症に関係する血管安定化因子を検索するため手術の時に採取した網膜症の硝子体中のサイトカイン濃度などを検討したところ驚くべきことに増殖糖尿病網膜症において硝子体中のコハク酸濃度が有意に上昇していることを発見した。このことは世界で初めての発見であり、次の日本眼科学会、米国でのassociation for research of visionand ophthalmology(ARVO)学会に演題は採用され発表予定である。コハク酸は網膜血管の発生段階において必要不可欠な因子であることが報告されており正常な血管の再構築に役立つ因子である可能性がある。コハク酸濃度と血管内皮増殖因子(VEGF)やエリスロポエチンの濃度は有意な相関を示さなかったことからもコハク酸は眼内で独立した血管作用因子であることが推察される。コハク酸を利用した糖尿病黄斑症の治療法開発につなげたいと考えている。糖尿病網膜症は成人の失明原因として主要な割合を占めており、その病態解明・治療法の確立が非常に重要な問題となっている。糖尿病網膜では毛細血管の障害・脱落により網膜無灌流領域が形成されることにより血管内皮増殖因子(VEGF)やエリスロポエチンといった様々な増殖因子が産生・放出され、血管透過性亢進による網膜浮腫(視力低下)や血管新生(緑内障、硝子体出血)により失明に至ると考えられている。糖尿病黄斑症に関係する血管安定化因子を検索するため手術の時に採取した網膜症の硝子体中のサイトカイン濃度などを検討したところ驚くべきことに増殖糖尿病網膜症において硝子体中のコハク酸濃度が有意に上昇していることを発見した。また抗VEGF治療を行った患者ではコハク酸濃度が有意に低下していることもわかった。コハク酸がVEGFを誘導することはすでに報告されていることからVEGFによるコハク酸へのポジティブフィードバック機構の存在が示唆された。このことは世界で初めての発見であり、次の日本眼科学会、日本糖尿病学会、米国でのassociation for research of visionand ophthalmology(ARVO)学会に演題は採用され発表予定である。コハク酸は網膜血管の発生段階において必要不可欠な因子であることが報告されており正常な血管の再構築に役立つ因子である可能性がある。コハク酸濃度と血管内皮増殖因子(VEGF)やエリスロポエチンの濃度は有意な相関を示さなかったことからもコハク酸は眼内で独立した血管作用因子であることが推察される。コハク酸を利用した糖尿病黄斑症の治療法開発につなげたいと考えている。糖尿病網膜症は成人の失明原因として主要な割合を占めており、その病態解明・治療法の確立が非常に重要な問題となっている。糖尿病網膜では毛細血管の障害・脱落により網膜無灌流領域が形成されることにより血管内皮増殖因子(VEGF)やエリスロポエチンといった様々な増殖因子が産生・放出され、血管透過性亢進による網膜浮腫(視力低下)や血管新生(緑内障、硝子体出血)により失明に至ると考えられている。糖尿病黄斑症に関係する血管安定化因子を検索するため手術の時に採取した網膜症の硝子体中のサイトカイン濃度などを検討したところ驚くべきことに増殖糖尿病網膜症において硝子体中のコハク酸濃度が有意に上昇していることを発見した。また抗VEGF治療を行った患者ではコハク酸濃度が有意に低下していることもわかった。コハク酸がVEGFを誘導することはすでに報告されていることからVEGFによるコハク酸へのポジティブフィードバック機構の存在が示唆された。このことは世界で初めての発見であり、日本眼科学会、日本糖尿病学会、米国でのassociation for research of visionand ophthalmology (ARVO)学会に演題は採用され発表した。またAmerican Journal of Ophthalmlogyに論文が採択された(現在印刷中)。
KAKENHI-PROJECT-21592234
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21592234
血管安定化因子制御による糖尿病黄斑症の治療法開発
コハク酸は網膜血管の発生段階において必要不可欠な因子であることが報告されており正常な血管の再構築に役立つ因子である可能性がある。コハク酸濃度と血管内皮増殖因子(VEGF)やエリスロポエチンの濃度は有意な相関を示さなかったことからもコハク酸は眼内で独立した血管作用因子であることが推察される。コハク酸を利用した糖尿病黄斑症の治療法開発につなげたいと考えている。また高血圧を模倣した機械的伸展刺激により網膜色素上皮細胞において細胞内コハク酸濃度の上昇が認められた。コハク酸のregulationの分子メカニズムの解明につながると考えている。
KAKENHI-PROJECT-21592234
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21592234
知的財産権とイノベーション、国際取引に関する実証研究
知的財産権保護が国際的に強化される中、国際取引にどのような影響をもたらすのかという点は国際経済学において大きな関心を集めている。一般に、知的財産権保護が強化されるとR&D活動の誘因は高まるが、市場を独占する形で権利保護を与えているため、財の低価格での普及を犠牲にしている。このため、研究開発の潜在能力が低い発展途上国には、独占の弊害という負の側面がある。その一方で知的財産権保護は、先進国企業による直接投資の増加および現地企業への技術移転の活発化により、受入国へ技術知識が波及し生産性が上昇するという点において、経済成長に正の影響があるとされる。保護強化によって生じる効果が十分に大きいとすれば、保護強化の正当性は高まる。したがって、知的財産権保護がこうした国際間の技術知識の移転を加速させるのかどうかを吟味することは重要な実証的課題である。本研究では日本企業の技術取引データを利用して、海外進出先の知的財産権保護が親子会社間の技術移転と資本関係を持たない現地企業への技術移転にどのような影響を与えるか分析を行った。知的財産権保護が強い国において日本企業は資本関係を持たない現地企業への技術移転を加速させていることが判明した。しかしそうした知的財産権保護の影響は企業間で異なり、R&D集約的な企業な知的財産権制度を整備することで直接投資を通じた企業内技術移転を好むことが示された。知的財産権保護の整備の度合が技術取引に関する企業の境界に影響を与えることが示唆される技術移転の受入国は知的財産権保護を整備することにより自国企業への直接的な技術移転を促進することが可能となるが、高度な技術を持つR&D集約的な企業による技術移転は企業内部で加速され、自国への技術移転は技術知識が漏れ伝わる知識スピルオーバーの大きさに依存することが示唆される。知的財産権保護が国際的に強化される中、国際取引にどのような影響をもたらすのかという点は国際経済学において大きな関心を集めている。一般に、知的財産権保護が強化されるとR&D活動の誘因は高まるが、市場を独占する形で権利保護を与えているため、財の低価格での普及を犠牲にしている。このため、研究開発の潜在能力が低い発展途上国には、独占の弊害という負の側面がある。その一方で、知的財産権保護は次に示す点において、経済成長に正の影響があるとされる。(1)途上国市場を目的としたR&D活動が促進される。(2)先進国企業による直接投資の増加および現地企業への技術移転の活発化により、途上国への技術知識の波及効果により生産性が上昇する。これら保護強化によって生じる効果が十分に大きいとすれば、知的財産権制度の国際調和の正当性は高まる。したがって、知的財産権保護がこうした国際間の技術知識の移転を加速させるのかどうかを吟味することは重要な実証的課題である。そこで(1)に関して本研究では、感染症向け医薬品を途上国市場を目的とした財として位置付け、そのR&D活動の過去の趨勢について定量的な分析を行った。その結果、こうした感染症向け医薬品開発は、一部の大手製薬企業によって集中的に取り組まれており、企業の規模と範囲の経済性が大きく貢献していることが示された。知的財産権保護はもとより、今後こうした企業属性を持つ企業の成長を支援することが重要となる。(2)に関しては、日本の多国籍企業のデータを利用して、海外進出先の知的財産権保護が現地で取り組むR&D活動にどのようなどのような影響を与えるか分析を行った。知的財産権保護が強い国において日本企業の現地でのR&D活動は活発であり、とりわけ研究所を設置している企業は設置していない企業に比べ強い影響を受けていることが判明した。知的財産権制度を整備することで直接投資を通じた技術移転を加速させることが示唆される。知的財産権保護が国際的に強化される中、国際取引にどのような影響をもたらすのかという点は国際経済学において大きな関心を集めている。一般に、知的財産権保護が強化されるとR&D活動の誘因は高まるが、市場を独占する形で権利保護を与えているため、財の低価格での普及を犠牲にしている。このため、研究開発の潜在能力が低い発展途上国には、独占の弊害という負の側面がある。その一方で知的財産権保護は、先進国企業による直接投資の増加および現地企業への技術移転の活発化により、受入国へ技術知識が波及し生産性が上昇するという点において、経済成長に正の影響があるとされる。保護強化によって生じる効果が十分に大きいとすれば、保護強化の正当性は高まる。したがって、知的財産権保護がこうした国際間の技術知識の移転を加速させるのかどうかを吟味することは重要な実証的課題である。本研究では日本企業の技術取引データを利用して、海外進出先の知的財産権保護が親子会社間の技術移転と資本関係を持たない現地企業への技術移転にどのような影響を与えるか分析を行った。知的財産権保護が強い国において日本企業は資本関係を持たない現地企業への技術移転を加速させていることが判明した。しかしそうした知的財産権保護の影響は企業間で異なり、R&D集約的な企業な知的財産権制度を整備することで直接投資を通じた企業内技術移転を好むことが示された。
KAKENHI-PROJECT-07J11498
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07J11498
知的財産権とイノベーション、国際取引に関する実証研究
知的財産権保護の整備の度合が技術取引に関する企業の境界に影響を与えることが示唆される技術移転の受入国は知的財産権保護を整備することにより自国企業への直接的な技術移転を促進することが可能となるが、高度な技術を持つR&D集約的な企業による技術移転は企業内部で加速され、自国への技術移転は技術知識が漏れ伝わる知識スピルオーバーの大きさに依存することが示唆される。
KAKENHI-PROJECT-07J11498
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07J11498
高温耐性戦略としての高窒素施肥によるサツマイモの窒素固定能促進と地表面被覆増加
近年,温暖化により環境ストレス耐性の高いとされるサツマイモにおいても高温による生産への影響が危惧されている.これまでの研究実績から,本研究では高窒素施肥により,サツマイモの茎葉の地表面被覆(植被率)が上昇し地温上昇が抑制されることと,窒素固定能が高まり高温での収量低下が抑制されることを予測し,この仮説を検証する実験を行うこととした.検証のため,まず初年度では窒素施肥量と窒素固定寄与率との関係の再確認と窒素施肥量が植被率に及ぼす影響について調査した.材料には`ベニアズマ'および`べにはるか'を用いた.10a当たり5kgの窒素施肥量を標準とし,標準の3倍を施肥する区と無窒素区を設けて実験を行った.収量調査の結果,`ベニアズマ'では標準窒素区で収量が最も高くなり,`べにはるか'では窒素施肥量の増加に伴い収量も高くなった.全乾物重も収量と同様の傾向であった.窒素施肥量と植被率との関係をみると,`ベニアズマ'では正の相関,`べにはるか'では負の相関関係にあり,品種によって両者の関係性は異なった.窒素施肥量と窒素固定寄与率,あるいは窒素固定寄与率と収量との間には両品種ともに明確な関係性が見られなかった.窒素固定寄与率と植物体窒素含量は両品種ともに負の相関関係にあった.しかし,窒素固定寄与率と植物体窒素含量から推定した窒素固定量と収量との間には`ベニアズマ'では正の相関関係が見られ,`べにはるか'では明確な関係性が確認できなかった.以上の結果から,`ベニアズマ'では窒素施肥量の増加により植被率は向上し窒素固定量は増加したため,仮説に近い結果が示唆された一方で,`べにはるか'では窒素施肥量に対する植被率および窒素固定の反応は`ベニアズマ'と大きく異なることが示された.窒素施肥量を変えて栽培し,収量だけでなく植被率,窒素固定について調査した結果,それぞれの調査項目の窒素施肥量に対する反応と項目間の関係性について検討することができたが,用いた2品種では異なる結果が多く,施肥窒素と植被率,窒素固定,乾物生産との関係についてサツマイモ品種間で共通する知見を得ることはできなかった.また,初年度の実験の目的は,これまで得られていた窒素施肥量と収量または窒素固定寄与率との関係について再現性のある事象であるか確認することであった.しかし,高窒素施肥による窒素固定および収量の増加について完全には再現性が確認できず,再度試験を行う必要があると判断したため,やや遅れている状況であると考えた.初年度の実験では一部再現性が確認できなかった窒素施肥量と収量または窒素固定寄与率との関係について再度検討する.そのため,圃場で異なる窒素施肥条件を設定した栽培試験を再び行う.一方で,本研究の重要な目的である高温条件下での収量低下に対する窒素施肥量の影響を検討するため,当初の計画の通りに温度傾斜型チャンバーを用いたポット栽培試験を行い,窒素施肥量,気温および地温が収量または窒素固定に及ぼす影響について調査する.また,計画では最終年度に地温を変化させる処理区を設けた圃場試験において温度傾斜型チャンバーで得られた結果を再検証する予定であるが,最終年度に向けた予備試験として今年度に再試験する圃場試験において地温処理区はない条件で窒素施肥量による植被率の変化と地温との関係を測定する.近年,温暖化により環境ストレス耐性の高いとされるサツマイモにおいても高温による生産への影響が危惧されている.これまでの研究実績から,本研究では高窒素施肥により,サツマイモの茎葉の地表面被覆(植被率)が上昇し地温上昇が抑制されることと,窒素固定能が高まり高温での収量低下が抑制されることを予測し,この仮説を検証する実験を行うこととした.検証のため,まず初年度では窒素施肥量と窒素固定寄与率との関係の再確認と窒素施肥量が植被率に及ぼす影響について調査した.材料には`ベニアズマ'および`べにはるか'を用いた.10a当たり5kgの窒素施肥量を標準とし,標準の3倍を施肥する区と無窒素区を設けて実験を行った.収量調査の結果,`ベニアズマ'では標準窒素区で収量が最も高くなり,`べにはるか'では窒素施肥量の増加に伴い収量も高くなった.全乾物重も収量と同様の傾向であった.窒素施肥量と植被率との関係をみると,`ベニアズマ'では正の相関,`べにはるか'では負の相関関係にあり,品種によって両者の関係性は異なった.窒素施肥量と窒素固定寄与率,あるいは窒素固定寄与率と収量との間には両品種ともに明確な関係性が見られなかった.窒素固定寄与率と植物体窒素含量は両品種ともに負の相関関係にあった.しかし,窒素固定寄与率と植物体窒素含量から推定した窒素固定量と収量との間には`ベニアズマ'では正の相関関係が見られ,`べにはるか'では明確な関係性が確認できなかった.以上の結果から,`ベニアズマ'では窒素施肥量の増加により植被率は向上し窒素固定量は増加したため,仮説に近い結果が示唆された一方で,`べにはるか'では窒素施肥量に対する植被率および窒素固定の反応は`ベニアズマ'と大きく異なることが示された.
KAKENHI-PROJECT-18K05596
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K05596
高温耐性戦略としての高窒素施肥によるサツマイモの窒素固定能促進と地表面被覆増加
窒素施肥量を変えて栽培し,収量だけでなく植被率,窒素固定について調査した結果,それぞれの調査項目の窒素施肥量に対する反応と項目間の関係性について検討することができたが,用いた2品種では異なる結果が多く,施肥窒素と植被率,窒素固定,乾物生産との関係についてサツマイモ品種間で共通する知見を得ることはできなかった.また,初年度の実験の目的は,これまで得られていた窒素施肥量と収量または窒素固定寄与率との関係について再現性のある事象であるか確認することであった.しかし,高窒素施肥による窒素固定および収量の増加について完全には再現性が確認できず,再度試験を行う必要があると判断したため,やや遅れている状況であると考えた.初年度の実験では一部再現性が確認できなかった窒素施肥量と収量または窒素固定寄与率との関係について再度検討する.そのため,圃場で異なる窒素施肥条件を設定した栽培試験を再び行う.一方で,本研究の重要な目的である高温条件下での収量低下に対する窒素施肥量の影響を検討するため,当初の計画の通りに温度傾斜型チャンバーを用いたポット栽培試験を行い,窒素施肥量,気温および地温が収量または窒素固定に及ぼす影響について調査する.また,計画では最終年度に地温を変化させる処理区を設けた圃場試験において温度傾斜型チャンバーで得られた結果を再検証する予定であるが,最終年度に向けた予備試験として今年度に再試験する圃場試験において地温処理区はない条件で窒素施肥量による植被率の変化と地温との関係を測定する.初年度の使用額が減じた理由は窒素固定寄与率の分析費が減少したことにある.分析は外部へ依頼して行っているが,年度末までに結果が出るように調整できた試料数が少なかったため,分析依頼数も減少した.試料は保存されているため次年度に調整を行い,分析依頼することで経費を使用する計画である.
KAKENHI-PROJECT-18K05596
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K05596
文書理解とその応用のためのプログラムライブラリの開発
1.筆者らが開発し、名古屋大学大型計算機センターのプログラムライブラリとして登録されている文字認識や文書理解のためのプログラム(SMARTと呼ぶ)を、ワークステーション(EWS)あるいはパソコンへ移植し、一般利用者に提供すると共に、これらの利用方法を初心者にわかりやすく解説した利用手引き書「文字認識用プログラムパッケージSMART利用手引き書サブルーチン及び関数篇」「文字認識用プログラムパッケージSMART利用手引き書テストプログラム篇」を作成配布し、更に多くの文字認識や文書理解に関心を持つ研究者に役立てるようにした。2.開発したプログラムの支えになっているパターン認識理論の研究を行い、有限学習標本から母集団のパラメータを指定するときの推定精度の評価や、擬似的なBayes分類器の性能評価に関する誤り率の推定の問題につき、一定の成果を上げることができた。3.開発したプログラムを利用して、文字認識、郵便番号認識筆者認識、署名照合等の応用研究を行った結果、(1)文字認識については、JIS第1水準手書き漢字データベースに含まれる漢字を用いて平均97.74%の正読率を実現、一方、筆記の制約のない手書き英単語の認識においては、9198%の認識率を得ることができた。(2)郵便番号認識に関する研究においては、特徴量として局所方向ヒストグラムを用い、郵政省提供の郵便番号をデータとして用いた手書き数字認識実験で、平均正読率99.18%の良好な結果を得た。また、局所円弧パターン法を用いた郵便番号認識の研究も行い、良好な結果を得た。(3)筆者認識の研究においては、日本語一般文とハングル文字文をデータとして実験を行い、良好な結果を得た。(4)署名照合の研究においては、オンライン署名照合、オフライン署名照合、小切手上に書かれた署名照合システム等の応用研究を行い、多くの成果を得た。1.筆者らが開発し、名古屋大学大型計算機センターのプログラムライブラリとして登録されている文字認識や文書理解のためのプログラム(SMARTと呼ぶ)を、ワークステーション(EWS)あるいはパソコンへ移植し、一般利用者に提供すると共に、これらの利用方法を初心者にわかりやすく解説した利用手引き書「文字認識用プログラムパッケージSMART利用手引き書サブルーチン及び関数篇」「文字認識用プログラムパッケージSMART利用手引き書テストプログラム篇」を作成配布し、更に多くの文字認識や文書理解に関心を持つ研究者に役立てるようにした。2.開発したプログラムの支えになっているパターン認識理論の研究を行い、有限学習標本から母集団のパラメータを指定するときの推定精度の評価や、擬似的なBayes分類器の性能評価に関する誤り率の推定の問題につき、一定の成果を上げることができた。3.開発したプログラムを利用して、文字認識、郵便番号認識筆者認識、署名照合等の応用研究を行った結果、(1)文字認識については、JIS第1水準手書き漢字データベースに含まれる漢字を用いて平均97.74%の正読率を実現、一方、筆記の制約のない手書き英単語の認識においては、9198%の認識率を得ることができた。(2)郵便番号認識に関する研究においては、特徴量として局所方向ヒストグラムを用い、郵政省提供の郵便番号をデータとして用いた手書き数字認識実験で、平均正読率99.18%の良好な結果を得た。また、局所円弧パターン法を用いた郵便番号認識の研究も行い、良好な結果を得た。(3)筆者認識の研究においては、日本語一般文とハングル文字文をデータとして実験を行い、良好な結果を得た。(4)署名照合の研究においては、オンライン署名照合、オフライン署名照合、小切手上に書かれた署名照合システム等の応用研究を行い、多くの成果を得た。1.本研究の目的の一つは,筆者等が開発し,名古屋大学大型計算機センターのプログラムライブラリとして登録されている文字認識や文書理解のためのプログラムを,ワークステーション(EWS)あるいはパソコンへ移植し,一般利用者に提供することであるので,初年度の研究は,そのための環境設定を主目的にして行った。即ち,豊田高専にEWSを設置し,名古屋大学大型計算機センターに登録してある,文字認識用プログラムライブラリSMARTの移植を実施した。従来,汎用コンピュータ上で動作していたため,ジョブ制御言語(JCL)を用いてプログラムが動作するようになっているものを,UNIXのシェルスクリプトを使ってEWS上でも動作するようにした。SMARTを構成するプログラムは,全てFORTRAN言語で書かれているが,UNIX配下で多様されているC言語によるプログラムからも引用して利用できるようにした。2.文字認識実験に使用する共通データとして,電子技術総合研究所が作成した「ETL手書き文字データベース」をCD-ROM形式でワークステーションシステムに移植した。ETL手書き文字データベースに格納されている約117万文字のディジタルデータ化された文字データを,著作権を有する電子技術総合研究所の了解を得て,三重大学・豊田高専・中部大学でも,文字認識実験ができるようにした。3.ライブラリの利用手引き書の作成と整備を実施中であり,既にサブプログラム部分の手引書は80%完成した。本研究の目的は,筆者等が開発し,名古屋大学大型計算機センターのプログラムライブラリとして登録されている文字認識や文書理解のためのプログラムを,ワークステーション(EWS)あるいはパソコンへ移植し,一般利用者に提供すると共に,これらの利用方法を初心者にわかりやすく解説した利用手引き書を作成配布することである.初年度の研究は,そのための環境設定を主目的にして行い,豊田高専にEWSを設置し,名古屋大学大型計算機センターに登録してある,文字認識用プログラムライブラリSMARTの移植を実施した.上記に引き続き,研究の2年目に当たる平成6年度は以下の研究を行った.
KAKENHI-PROJECT-05558035
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05558035
文書理解とその応用のためのプログラムライブラリの開発
1.豊田高専のEWSに移植したSMARTプログラムと電総研より提供を受けたCD-ROM版の手書き文字データとを用いて,手書き文字認識実験や筆者識別実験を行い,EWSへの移植が正しく行われたかどうかの確認を行った.2.名古屋大学大型計算機センターのSMARTに含まれるプログラムのいくつかの修正と追加を行った.3.SMARTを用いて手書き文字の個人性の研究を行った.4.SMARTライブラリの中で重要な地位を占める,特徴抽出や識別関数プログラムを用いて,これらのプログラムの有用性を確認するための大規模な実験を行った.5.ライブラリーの利用手引き書の内,サブルーチン及び関数編をほぼ完成させた.一方,コプリ-トプログラムの利用手引き書は80%程度の整備を行った.平成7年度中には手引き書を全て完成させる予定である本研究の目的は、筆者らが開発し、名古屋大学大型計算機センターのプログラムライブラリとして登録されている文字認識や文書理解のためのプログラム(SMARTと呼ぶ)を、ワークステーション(EWS)あるいはパソコンへの移植し、一般利用者に提供すると共に、これらの利用方法を初心者にわかりやすく解説した利用手引き書を作成配布し、更に多くの文字認識や文書理解に関心を持つ研究者に役立てることである。初年度の研究は、そのための環境設定を主目的にして行い、次年度はライブラリの移植SMARTに含まれるプログラムの修正及びSMARTを利用した応用研究を主として行った。上記の引き続き、研究の3年目に当たる平成7年度は以下の研究を行った。1.SMARTライブラリ中で重要な地位を占める、特徴抽出や識別関数プログラムを用いて、これらのプログラムの有用性を確認するための研究を行っった。2.SMARTに含まれるプログラムを利用した応用研究として、文字認識、郵便番号の認識アルゴリズム、小切手上に書かれた署名の照合、等の研究を行った3.SMARTに含まれる、サブルーチンと関数プログラムの利用方法を解説した。「文字認識用プログラムパッケージSMART利用手引き書サブルーチン及び関数篇」(160ページ)を作成した。4.SMARTの特徴はサブルーチンや関数を利用者に提供するだけでなく、含まれているサブルーチン及び関数の利用方法とがよくわかる、テストプログラムまで提供されていることである。最終年度の今年度、このテストプログラムの解説をした、「文字認識用プログラムパッケージSMART利用手引き書テストプログラム篇」(1000ページ)を作成した。5.上記2つの利用手引き書を関係者に配布する。
KAKENHI-PROJECT-05558035
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05558035
変形性膝関節症の動的診断システム開発によるテーラーメードリハビリテーションの創出
本研究は、地磁気搭載慣性センサ、インソール型足圧センサ、レーザーレンジセンサ等の計測機器を用いて、変形性膝関節症(膝OA)患者の移動能力評価を行い、膝OA進行および関節痛の予後予測が可能な動的診断システムを開発し、そのシステムに準じたリハビリテーション介入が、膝OA進行および関節痛に与える影響を検証することを目的としている。なお、本研究では、全ての対象者に研究趣旨を書面にて個別で説明し、同意を得た後に実施した。平成31年度では、膝OAと診断された地域在住高齢者131名を対象に、腰部に固定した慣性センサを用いて歩行評価を行った。得られた計測値から、左右非対称性指標であるHarmonic ratioとImproved harmonic ratio(iHR)の2つの指標を算出した。これら2つの指標が膝OA患者の下肢筋力や日常生活困難度のモニタリング指標となりうるかを検討するため、線形回帰分析を用いてこれらの関連性を評価した。その結果、内外側方向のiHRが膝OA患者の関節痛や生活支障度と関連した。次に、これら横断的研究から構築した歩行評価システムを膝OA患者の個別リハビリテーションに生かすため、医療機関において外来リハビリテーション中の膝OA患者1名を対象とした症例検討を行った。本症例は歩行中の左右非対称性に起因する関節痛を慢性的に有していた。前述のiHRを用いて複数のリハビリテーション治療介入前後の変化を捉えることで、どのリハビリテーション治療が最も左右非対称性を改善し、関節痛緩和において最適な治療なのかを定量的に判断することができた。6週間のフォローアップ時では、良好な治療経過をたどっていた。以上のことから、IMUによる歩行評価は、膝OA進行に伴う関節痛や生活支障度の増悪をモニタリングできる可能性があり、リハビリテーション治療方針決定にも寄与することが明らかになった。平成30年度には、変形性膝関節症患者131名を対象に、慣性センサを用いた計測を行い、一部の解析を既に完了している。また、平成31年度に向けたリハビリテーション介入効果に関する予備検討も行うことができた。得られた一部の研究成果については、予定通り国内外の学会や原著論文にて報告することができ、おおむね順調に進展していると言える。平成30年度に得られた計測データについては解析を継続し、学会発表ならびに論文成果発表を行っていく。また、平成30年度のリハビリテーション介入予備検討を踏まえて、計測システムを用いた系統的な膝OA治療戦略を構築する予定である。本研究は、地磁気搭載慣性センサ、インソール型足圧センサ、レーザーレンジセンサ等の計測機器を用いて、変形性膝関節症(膝OA)患者の移動能力評価を行い、膝OA進行および関節痛の予後予測が可能な動的診断システムを開発し、そのシステムに準じたリハビリテーション介入が、膝OA進行および関節痛に与える影響を検証することを目的としている。本研究は、研究趣旨を対象者に書面にて個別で説明し、同意を得た後に実施した。平成30年度では、変形性膝関節症(Kellgren/Lawrence grade 1以上)と診断された地域在住高齢者163名(平均年齢68.5歳、BMI22.8 kg/m2、女性比70.6%)を対象に、上述の計測機器を用いて移動能力評価(TUGテスト)を行った。TUGテストは、椅子から立ち上がり、3m先にあるコーンを回り、また椅子に座るまでの時間を計測するものである。対象者は、地磁気搭載慣性センサを第3腰椎レベルにベルクロを用いて装着し、また、インソール型足圧センサ内蔵の標準靴を履いた後、TUGテストを計2回行った。TUGテスト中は、椅子の下に置いたレーザーレンジセンサから照射される赤外線を使用し、対象者の脚追跡を行った。慣性センサとインソール型足圧センサによる計測結果は、現在、解析結果をまとめている段階であるため、今回は、レーザーレンジセンサによって得られたTUGテスト中の計測値と関節痛(JKOM pain score)との関連性を重回帰分析を用いて検討した。その結果、年齢、性別、BMI、X線上の関節症重症度の共変量で補正してもなお、関節痛が強い対象者ほど、立ち上がりから1歩目を踏み出すまでの所要時間が遅延していることが明らかになった。以上の結果は、関節痛を伴った膝OA患者の移動制限に関する新たな知見となり、新しい治療戦略開発に寄与しうる。当初の研究計画通り、初年度には、予備実験の後、変形性膝関節症163名の地域在住高齢者を対象とした計測と、一部解析を完了している。得られた研究成果は国内外の学術会議にて発表予定であり、原著論文も現在執筆中である。これらの研究成果については、当初の予定よりも早いペースで発表しており、当初の計画以上に進展している。本研究は、地磁気搭載慣性センサ、インソール型足圧センサ、レーザーレンジセンサ等の計測機器を用いて、変形性膝関節症(膝OA)患者の移動能力評価を行い、膝OA進行および関節痛の予後予測が可能な動的診断システムを開発し、そのシステムに準じたリハビリテーション介入が、膝OA進行および関節痛に与える影響を検証することを目的としている。なお、本研究では、全ての対象者に研究趣旨を書面にて個別で説明し、同意を得た後に実施した。平成31年度では、膝OAと診断された地域在住高齢者131名を対象に、腰部に固定した慣性センサを用いて歩行評価を行った。得られた計測値から、左右非対称性指標であるHarmonic ratioとImproved harmonic ratio(iHR)の2つの指標を算出した。
KAKENHI-PROJECT-17J03084
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J03084
変形性膝関節症の動的診断システム開発によるテーラーメードリハビリテーションの創出
これら2つの指標が膝OA患者の下肢筋力や日常生活困難度のモニタリング指標となりうるかを検討するため、線形回帰分析を用いてこれらの関連性を評価した。その結果、内外側方向のiHRが膝OA患者の関節痛や生活支障度と関連した。次に、これら横断的研究から構築した歩行評価システムを膝OA患者の個別リハビリテーションに生かすため、医療機関において外来リハビリテーション中の膝OA患者1名を対象とした症例検討を行った。本症例は歩行中の左右非対称性に起因する関節痛を慢性的に有していた。前述のiHRを用いて複数のリハビリテーション治療介入前後の変化を捉えることで、どのリハビリテーション治療が最も左右非対称性を改善し、関節痛緩和において最適な治療なのかを定量的に判断することができた。6週間のフォローアップ時では、良好な治療経過をたどっていた。以上のことから、IMUによる歩行評価は、膝OA進行に伴う関節痛や生活支障度の増悪をモニタリングできる可能性があり、リハビリテーション治療方針決定にも寄与することが明らかになった。平成30年度には、変形性膝関節症患者131名を対象に、慣性センサを用いた計測を行い、一部の解析を既に完了している。また、平成31年度に向けたリハビリテーション介入効果に関する予備検討も行うことができた。得られた一部の研究成果については、予定通り国内外の学会や原著論文にて報告することができ、おおむね順調に進展していると言える。今年度の研究成果は、レーザーレンジセンサから得られた計測値をもとにまとめたものである。今後は、慣性センサとインソール型足圧センサによる計測結果をまとめ、次年度の学会発表や論文執筆にとりかかる予定である。平成30年度に得られた計測データについては解析を継続し、学会発表ならびに論文成果発表を行っていく。また、平成30年度のリハビリテーション介入予備検討を踏まえて、計測システムを用いた系統的な膝OA治療戦略を構築する予定である。
KAKENHI-PROJECT-17J03084
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J03084
シア・アルフベン波の直接励起と非線形現象への発展に関する研究
プラズマ中の電磁流体波動の原点に立ちかえって、シア・アルフベン波は本当にアンテア等によって「直接」励起出来るのかどうか、という基本的な問題を解決することを第一の目的とする。この様な研究課題を重要視した理由は、これまで実験室でなされてきたシア・アルフベン波の励起に関するさまざまな研究(我々の研究も含めて)はほとんどの場合、圧縮波(MHD表面波)からのモード変換による「間接的」な励起によるもであると思われるからである。励起に関する研究と平行する形で、新たなアンテナを考案し理論と実験の両面から直接励起の可能性を考察する。2年間にわたる研究の結果、第一の目的である直接励起は可能である事が判明したが、その研究を詳細に進める過程において、次のような新事実が明らかになった。即ち、直接励起されたm=0のシア・アルフベン波はある周波数ω_*(<ωci)近傍において、イオンと中性粒子との衝突効果により、著しく吸収され、それ以上の周波数ではm=+1の圧縮波の分散曲線につながることが見いだされた。ω=ω_*の吸収近傍における誘電率の実数部と虚数部を調べたところ、この間にいわゆるkramers-kronigの関係がほぼ満足されていることが明かとなった。プラズマ物理学の分野でこの様な関係が見いだされたのはおそらく初めてであろうと思われ,大きな研究成果があった。プラズマ中の電磁流体波動の原点に立ちかえって、シア・アルフベン波は本当にアンテア等によって「直接」励起出来るのかどうか、という基本的な問題を解決することを第一の目的とする。この様な研究課題を重要視した理由は、これまで実験室でなされてきたシア・アルフベン波の励起に関するさまざまな研究(我々の研究も含めて)はほとんどの場合、圧縮波(MHD表面波)からのモード変換による「間接的」な励起によるもであると思われるからである。励起に関する研究と平行する形で、新たなアンテナを考案し理論と実験の両面から直接励起の可能性を考察する。2年間にわたる研究の結果、第一の目的である直接励起は可能である事が判明したが、その研究を詳細に進める過程において、次のような新事実が明らかになった。即ち、直接励起されたm=0のシア・アルフベン波はある周波数ω_*(<ωci)近傍において、イオンと中性粒子との衝突効果により、著しく吸収され、それ以上の周波数ではm=+1の圧縮波の分散曲線につながることが見いだされた。ω=ω_*の吸収近傍における誘電率の実数部と虚数部を調べたところ、この間にいわゆるkramers-kronigの関係がほぼ満足されていることが明かとなった。プラズマ物理学の分野でこの様な関係が見いだされたのはおそらく初めてであろうと思われ,大きな研究成果があった。1.アルフベン波を直接励起するためのアンテナの作成を行った。ほぼm=0モ-ドのシア・アルフベン波の直接励起が可能らしいことが分かってきたが、現在デ-タを解析中である。アンテナ近傍での分散と遠方での分散に違いがありその理由がまだ判明していない。たぶんm=1の速波が同時に励起されて、それが減衰率が小さいため遠方で生き残り、シア・アルフベン波と干渉しているためと思われるが、この点は2年目の課題の一つにいれたい。2.これまでのアンテナの励起に基づくアルフベン波の励起と比較しつつ、以下の事が判明した。(1)宇容プラズマ、特に磁気圏でのmicroーpulsationのメカニズムを明らかにする基礎実験になっており、実験室に置いてスペ-スプラズマの検証か可能であることが実証された。(2)オ-ロラ、核融合などでの粒子加速、加熱で重要な役目をしている、あるいは期待されている運動論的アルフベン波の実証にほぼ成功した。3.アルフベン波特有の現象の一つとして「凍りつき」あるいはcoーrotationなどがあるが、後者の基本的な性質を明らかにするために、水銀を使い基礎実験を行った。その結果、非線形現象としてkelvinーHelmholtz不安定で発生した渦の形成、さらに銀河系の生成とも関係があると思われる螺旋構造への発展が実験的に明らかになった。我々は従来のモード変換に基づくシア・アルフベンの励起に関する研究と平行する形で、新たなアンテナを考案し理論と実験の両面から直接励起の可能性を考察した。また、直接励起が可能な場合、実験室に於ける大振幅のシア・アルフベン波の励起の可能性が出てくるので(スペースでは頻繁に起きている)、それに基づく非線形現象への発展の研究を第二の目的とした。中でも、b_θ成分がしきい値を越えた場合、円偏波から楕円偏波への遷移が理論的に考えられているが、果してこの様な現象が起きるのだろうか、というテーマを第一に掲げた。2年間にわたる研究の結果、第一の目的である直接励起は理論的に可能である事が判明し、実験の結果m=Oモードのシア・アルフベン波の励起に成功した。その研究を詳細に進める過程において、次のような新事実が明らかになった。即ち、直接励起されたm=Oのシア・アルフベン波はある周波数w_*(<w_<ci>)
KAKENHI-PROJECT-03452283
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03452283
シア・アルフベン波の直接励起と非線形現象への発展に関する研究
近傍において、イオンと中性粒子との衝突効果により、著しく吸収され、それ以上の周波数ではm=+1の圧縮波の分散曲線につながることが見いだされた。w=w_*の吸収近傍における誘電率の実数部と虚数部を調べたところ、この間にいわゆるkramers-kronigの関係がほぼ満足されていることが明かとなった。従って、この新事実の発見のため後者の第二の目的の当初の内容を変更することとなったが、プラズマ物理学の分野でこの様なKramers-Kronig関係が見いだされたのはおそらく初めてであろうと思われ、大きな研究成果が得られた。
KAKENHI-PROJECT-03452283
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03452283
感覚フィードバック型ハンドのための触感覚呈示システムの開発
電子義手や機能的電気刺激およびテレイグジスタンス型ロボットや人工現実感などの分野では触感覚をどのように人間の皮膚にフィードバックさせたり呈示させるかが大きな課題となっている。本研究では、これらの課題に応えるために、材質感のような触覚の質に関する感覚がどのような物理的要因で規定されるかを心理物理実験を通じて調べ、触感覚をできるだけ忠実に呈示するシステムを提案した。また、水素吸蔵合金を利用したアクチュエータを利用し、触感覚ばかりでなく上腕に力感覚を呈示する装置の開発を行った。これらの呈示システムを感覚フィードバック型ハンドに組み込んで評価を行い、その有効性を確かめた。以下に、得られた結果を要約する。(1)表面粗さ、粘度および熱容量の異なる物体を指先で触れたとき、粒子径が30μmを境に「さらさら」感から「ざらざら」感に移行すること、粘度17dPa・sで「ぬるぬる」感が最大になること、皮膚温度の時間パターンが材質の識別の手がかりとなることが分かり、ペルチエ素子により皮膚温を可変にすることで、ある程度の材質感を呈示することができることを実証した。(2)物体を把持したときの「ずれ弁別閾」は20μm-30μmとなり、ずれ弁別閾には方向依存性があること、皮膚温が32°Cのときに弁別閾が最も低くなることが分かった。水素吸蔵合金を利用したアクチュエータを設計し、アクチュエータを上腕に装着して力情報を呈示した結果、仮想物体の重量感を知覚させることができることが分かった。以上から、触感覚に関する多くの形容詞が表面粗さ、粘性及び温度の3つのパラメータで表現できる可能性が示された。今後は、本課題で得られた知見や技術を基に、感覚フィードバック型ハンドのための触感覚呈示システムを構築していきたい。電子義手や機能的電気刺激およびテレイグジスタンス型ロボットや人工現実感などの分野では触感覚をどのように人間の皮膚にフィードバックさせたり呈示させるかが大きな課題となっている。本研究では、これらの課題に応えるために、材質感のような触覚の質に関する感覚がどのような物理的要因で規定されるかを心理物理実験を通じて調べ、触感覚をできるだけ忠実に呈示するシステムを提案した。また、水素吸蔵合金を利用したアクチュエータを利用し、触感覚ばかりでなく上腕に力感覚を呈示する装置の開発を行った。これらの呈示システムを感覚フィードバック型ハンドに組み込んで評価を行い、その有効性を確かめた。以下に、得られた結果を要約する。(1)表面粗さ、粘度および熱容量の異なる物体を指先で触れたとき、粒子径が30μmを境に「さらさら」感から「ざらざら」感に移行すること、粘度17dPa・sで「ぬるぬる」感が最大になること、皮膚温度の時間パターンが材質の識別の手がかりとなることが分かり、ペルチエ素子により皮膚温を可変にすることで、ある程度の材質感を呈示することができることを実証した。(2)物体を把持したときの「ずれ弁別閾」は20μm-30μmとなり、ずれ弁別閾には方向依存性があること、皮膚温が32°Cのときに弁別閾が最も低くなることが分かった。水素吸蔵合金を利用したアクチュエータを設計し、アクチュエータを上腕に装着して力情報を呈示した結果、仮想物体の重量感を知覚させることができることが分かった。以上から、触感覚に関する多くの形容詞が表面粗さ、粘性及び温度の3つのパラメータで表現できる可能性が示された。今後は、本課題で得られた知見や技術を基に、感覚フィードバック型ハンドのための触感覚呈示システムを構築していきたい。本課題は、麻痺上肢やロボットハンドのための触覚情報の検出と呈示に関する研究であり、材質感のような触覚の質に関する情報をできるだけ忠実に検出して呈示する感覚フィードバッグ型ハンドを開発している。そのため触感覚がどのような要因で決定されるのかを調べ、表面粗さ、粘性、温度の3つの物理的要素が重要であることを確かめている。平成4年度では、ケミカルエッチングで作った凹凸パターンシートやサンドペーパを手指に呈示し、どの程度の表面粗さで「ざらざら感」を生じさせることができるかを調べた。その結果、30μm以上の粒子径からなる表面粗さで「さらさら感」から「ざらざら感」に移行すること、凹凸パターンをなぞったときに、8本/mmを境に「つるつる感」から「凸凹感」に移行することなどが分かった。次に、粘度の異なる様々なシリコンを用いて粘性に関する心理物理実験を行い、「ぬるぬる」というような感覚と粘度との関係を明らかにした。その結果、17dpa・sの粘度で「ぬるぬる感」になることなどが示された。また、ずれ感覚がやっと生じるときの物体と皮膚表面の位置ずれを求めたところ、位置ずれは表面粗さにはあまり依存しなかったが、ずらす速度や表面の粘度によって大きく変化した。さらに、これらの実験を物体の温度を変えた場合、触感覚がどのように変化するかを調べた。その結果、物体表面が32度のとき最もずれを検出しやすいことが分かった。次に、木板、ガラス板、アルミ板、ゴム板、アクリル板などを触れさせて識別実験を行い、同時に皮膚表面の温度時間変化を測定した。その結果、温度変化と材質感とが極めて良く一致することが判明した。
KAKENHI-PROJECT-04555090
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04555090
感覚フィードバック型ハンドのための触感覚呈示システムの開発
そこで、ペルチェ素子を用いて人工的に温度変化パターンを作り指先の皮膚表面に呈示したところ、色々な材質感を生じさせ得ることが分かった。以上から、触覚ディスプレイ設計のための基礎的資料を得た。電子義手や機能的電気刺激およびテレイグジスタンス型ロボットや人工現実感などの分野では触感覚をどのように人間の皮膚にフィードバックさせたり呈示させるかが大きな課題となっている。本研究では、これらの課題に応えるために、材質感のような触覚の質に関する感覚がどのような物理的要因で規定されるかを心理物理実験を通じて調べ、触感覚をできるだけ忠実に呈示するシステムを提案した。また、水素吸蔵合金を利用したアクチュエータを利用し、触感覚ばかりでなく上腕に力感覚を呈示する装置の開発を行った。これらの呈示システムを感覚フィードバック型ハンドに組み込んで評価を行い、その有効性を確かめた。以下に、得られた結果を要約する。(1)表面粗さ、粘度および熱容量の異なる物体を指先で触れたとき、粒子径が30μmを境に「さらさら」感から「ざらざら」感に移行すること、粘度が17dPa・sで「ぬるぬる」感が最大になること、皮膚温度の時間パターンが材質の識別の手がかりとなることが分かり、ペルチエ素子により皮膚温を可変にすることで、ある程度の材質感を呈示することができることを実証した。(2)物体を把持したときの「ずれ弁別閾」は20μm-30μmとなり、ずれ弁別閾には方向依存性があること、皮膚温が32°Cのときに弁別閾が最も低くなることが分かった。水素吸蔵合金を利用したアクチュエータを設計し、アクチュエータを上腕に装着して力情報を呈示した結果、仮想物体の重量感を知覚させることができることが分かった。以上から、触感覚に関する多くの形容詞が表面粗さ、粘性及び温度の3つのパラメータで表現できる可能性が示された。今後は、本課題で得られた知見や技術を基に、感覚フィードバック型ハンドのための触感覚呈示システムを構築していきたい。
KAKENHI-PROJECT-04555090
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04555090
アジアにおける農業の近代化の地域社会的影響と維持可能な発展方向の模索的事例研究
本研究では、農業近代化政策のなかで、これまであまり問題にされてない大型水利ダムと灌漑施設を取り上げ、これを梃子とする水田稲作特化型の近代農業の意義と限界を明らかにするとともに、日本、スリランカ、及びタイ王国における事例の調査・研究によって、持続可能な地域農業の発展方向を明らかにした。嘉瀬川(日本)、ナムポン川(タイ)、マハベリ川(スリランカ)の三河川では大型ダム建設により近代的な水利灌漑システムが構築されているが、開発コストが水を商品と化し、費用対効果の点から工業用水や都市用水の経済的優位性が強調され、優先される傾向がある。他方、これらの水系には、アオ取水やクリーク(日本)、ため池(タイ)、滝状型小規模堤群(スリランカ)のような、固有の小規模水利施設があり、持続的な灌漑農業の発展のためには、これらの伝統的システムと近代的なシステムとの接合が、今後の課題になってきている。水田稲作農業における近代化の象徴としての機械化と化学肥料と農薬の多用は、西与賀集落(日本)、ターカスン村(タイ)、ヤックレ村(スリランカ)の何れの調査地区においても共通にみられた傾向であり、地力の低下と病害虫の多発、化学肥料と農薬の多用という悪循環のなかで、コストの上昇と価格の低迷により所得の低下をもたらしている。そのなかで、経営規模の拡大による展開を図る上層農家と複合経営への傾斜を深める中間農家、兼業化・脱農を図る下層農家という階層分化が進んでいる。農薬と化学肥料の多用による環境への影響と農産物の安全性については、日本だけに限らず、タイ、スリランカの両国の調査地域においても、程度の差こそあれ生産者の間で優先度の高い課題として認識されており、有機農業を中心とする新たな模索が開始されるとともに、溜池を利用した自給的な複合農業(タイ)や有畜複合農業(スリランカの先住民)など伝統的な地域農業の見直しが始まっており、農産物流通についても農産物直売所(日本)やコミュニティマーケット(タイ)を始め、地産地消を基本とする新たなシステム構築が始まっている。本研究では、農業近代化政策のなかで、これまであまり問題にされてない大型水利ダムと灌漑施設を取り上げ、これを梃子とする水田稲作特化型の近代農業の意義と限界を明らかにするとともに、日本、スリランカ、及びタイ王国における事例の調査・研究によって、持続可能な地域農業の発展方向を明らかにした。嘉瀬川(日本)、ナムポン川(タイ)、マハベリ川(スリランカ)の三河川では大型ダム建設により近代的な水利灌漑システムが構築されているが、開発コストが水を商品と化し、費用対効果の点から工業用水や都市用水の経済的優位性が強調され、優先される傾向がある。他方、これらの水系には、アオ取水やクリーク(日本)、ため池(タイ)、滝状型小規模堤群(スリランカ)のような、固有の小規模水利施設があり、持続的な灌漑農業の発展のためには、これらの伝統的システムと近代的なシステムとの接合が、今後の課題になってきている。水田稲作農業における近代化の象徴としての機械化と化学肥料と農薬の多用は、西与賀集落(日本)、ターカスン村(タイ)、ヤックレ村(スリランカ)の何れの調査地区においても共通にみられた傾向であり、地力の低下と病害虫の多発、化学肥料と農薬の多用という悪循環のなかで、コストの上昇と価格の低迷により所得の低下をもたらしている。そのなかで、経営規模の拡大による展開を図る上層農家と複合経営への傾斜を深める中間農家、兼業化・脱農を図る下層農家という階層分化が進んでいる。農薬と化学肥料の多用による環境への影響と農産物の安全性については、日本だけに限らず、タイ、スリランカの両国の調査地域においても、程度の差こそあれ生産者の間で優先度の高い課題として認識されており、有機農業を中心とする新たな模索が開始されるとともに、溜池を利用した自給的な複合農業(タイ)や有畜複合農業(スリランカの先住民)など伝統的な地域農業の見直しが始まっており、農産物流通についても農産物直売所(日本)やコミュニティマーケット(タイ)を始め、地産地消を基本とする新たなシステム構築が始まっている。本研究では、農業近代化政策の特色の一つである大型開発について、これまであまり問題にされてこなかった大型水利ダムと灌漑施設の建設を取り上げ、これを梃子とする水田稲作特化型の近代農業の意義と限界を明らかにするとともに、日本、スリランカ、及びタイ王国こおける事例を調査・研究することによって、特続可能な地域農業の発展方向を明らかにすることを目的としている。初年度の本年度は、研究作表者と各研究分担者の研究裸題に対する研究視角の検討・統一を図ることと、調査対象とした3つの地域に対する総合的な概況把握を行う為に、以下の手順で作業を進めた。(1)国内研究者による研究会・打合せ会を6回開催するとともに、IT等により海外の共同研究者との連携を密にし、9月に日本に招聘して共同研究者全員による研究会を行った。(2)ダム建設中の佐賀県嘉瀬川水系の農業灌漑を中心とする水利用について現地詞査を行った(9月)。(3)スリランカの大河・マハベリ川の総合開発計画の全容を把握するために現地調査を行った(11月)。(4)タイ東北部のナムフォン川のダム建設による多目的な水利用の現況について現地調査を行った(12月)。
KAKENHI-PROJECT-15402024
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15402024
アジアにおける農業の近代化の地域社会的影響と維持可能な発展方向の模索的事例研究
本核的な実態調査に基づく分析は次年度以降になるが、新たな利水用にダムを建設中の嘉瀬川水系(日本)、多数の大型ダムと灌漑施設網をほぼ構築し終え、稲作と発電という当初の目的の実現を図るマハベリ河水系(スリランカ)、当初の稲作目的から農外利用を含む多目的ダムへと変貌を遂げるナムフォン川水系(タイ)というように、夫々の水系の大型ダムの建設による水利用の状況は異なるが、他方で、これらの水系は、アオ取水やクリーク(日本)、滝状型小規模ダム群(スリランカ)、ため池と井戸(タイ)のように、夫々、固有の小規模水利用システムを有しており、持続的な地域農業の発展には、これらの伝統的システムとの接合が今後、大きな課題になってくるように思われる。本研究では、大型水利ダムと灌漑施設の建設を梃子とする水田稲作特化型の近代農業の意義と限界を明らかにするとともに、日本、スリランカ、及びタイ王国における事例を調査・研究することによって、持続可能な地域農業の発展方向を明らかにすることを目的としている。初年度に行った、嘉瀬川(日本)、ナムポン川(タイ)、マハベリ川(スリランカ)の三つの河川における大型ダムの建設による水利灌漑システムの構築についての調査を踏まえて、二年目の本年度は、上記の河川流域における近代的な水田稲作農業の課題とそれに代わるオールタナティヴな農業のあり方を総合的に把握する為に、以下の手順で作業を進めた。(1)マハベリ川総合開発計画下の灌漑農業の現状と課題を明らかにするために、システムC地区ヤックレ村の概況調査とサマナラウェワダム下流のカルトタ村の農家調査を実施した(8月、9月)。(2)ナムポン川流域と周辺域の水と農業の関係を把握するために、ナムポン郡タークラスム村の水稲二期作農業、ナーファイヌア村のサトウキビとトウガラシの複合農業、ムアン郡パークプァイ村の水稲と野菜の複合農業、ウェンヤイ郡ドーンバン村の小規模複合農業、の調査を実施した(12月)。(3)嘉瀬川流域と周辺域において、大型機械施設を装備した近代的営農集団(西与賀町)と有機米生産農家(高木瀬町、鍋島町、江北町)、有機野菜生産農家(久保田町、鳥栖市)、多様な流通チャンネル(佐賀青果市場、道の駅「そよかぜ館」、有機野菜の店「元気畑」、直売)の調査を行った(3月)。農薬と化学肥料の多用による環境への影響と農産物の安全性については、日本だけに限らず、タイ、スリランカの両国の調査地域においても、程度の差こそあれ生産者の間で優先度の高い課題として認識されており、有機農業を中心とする新たな模索が開始されるとともに、農産物流通についても直売所(日本)やコミュニティマーケット(タイ)を始め、地産地消を基本とする新たなシステム構築が始まっている。最終年度の次年度は、残された幾つかの集落農家調査や補足調査をもとにその全容を明らかにする。本研究では、大型水利ダムと灌漑施設の建設を挺子とする水田稲作特化型の近代農業の意義と限界を明らかにするとともに、日本、スリランカ、及びタイ王国における事例を調査・研究することによって、持続可能な地域農業の発展方向を明らかにすることを目的としている。初年度に行った、嘉瀬川(日本)、ナムポン川(タイ)、マハベリ川(スリランカ)の三つの河川における大型ダムの建設による水利灌漑システムの構築についての調査と、二年目に行った、上記の河川流域における近代的な水田稲作農業の課題とそれに代わるオールタナティヴな農業のあり方を総合的に把握する調査を踏まえて、最終年度の本年度は、以下の手順で作業を進めた。(1)マハベリ川総合開発計画下の灌漑農業の現状と課題を明らかにするために、システムC地区パハラヤックレ村の農家調査とサマナラウェワダム下流のカルトタ村の補足調査を実施した(8月、12月)。
KAKENHI-PROJECT-15402024
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15402024