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高スループット可変構造型SIMDアーキテクチャに関する研究 | 本研究は、価格性能比に優れた汎用性を持つ専用ハードウエアの構築と評価を目標として、配線処理や遺伝的アルゴリズム等の非定型な部分を含むアプリケーションの並列処理を対象としたSIMDアーキテクチャの研究である。FPGA(Field Programmable Gate Array)の可変構造特性に着目した、核となる基本アーキテクチャと各アプリケーションに応じた拡張アーキテクチャにより階層化設計されたSIMD型並列処理アーキテクチャの有効性をFPGAによるプロトタイプにより検証すること目的とする。平成13年度は、平成12年度の研究により要素プロセッサとして設計された16ビット型RISCコアを用いて、XILINX社製FPGAを用いたプロトタイプシステムを構築するために必要な制御プロセッサ、隣接プロセッサ間ネットワーク、および制御プロセッサと要素プロセッサ間ネットワークについて検討と設計を行った。制御プロセッサは、前述のRISCコアに制御プロセッサとしての機能(命令の拡張、ホスト間通信機能、ネットワーク制御機能等)を加えたものである。隣接プロセッサ間ネットワークは隣接する要素プロセッサ間で通信を行うものである。制御プロセッサと要素プロセッサ間ネットワークは、命令およびデータを制御プロセッサから要素プロセッサへ放送するパイプライン化されたブロードキャストネットワークと要素プロセッサから制御プロセッサへのデータ回収ネットワークで構成されている。平成12年度末から13年度始めに得られたデータを検討した結果、制御プロセッサと要素プロセッサ間ネットワークに大幅な設計変更が必要であることが確認され、変更および関連部分の検討と再設計に時間を必要としたため、当初の計画より実装が遅れることとなった。このため、平成14年2月末時点でプロトタイプシステムは構築中であり、継続して構築を進めるものである。本研究は,価格性能比に優れた汎用性を持つ専用ハードウエアの構築と評価を目標として,配線処理方式や遺伝的アルゴリズムなどの非定型な部分を含むアプリケーションの並列処理を対象としたSIMDアーキテクチャの研究である.FPGA(Filed Programmable Gate Array)の可変構造特性に着目した,核となる基本アーキテクチャと各アプリケーションに応じた拡張アーキテクチャにより階層化設計されたSIMD型並列処理アーキテクチャの有効性を,FPGAによるプロトタイプの試作により検証することを目的とする.基本アーキテクチャについて検討評価を行った結果,SIMDアーキテクチャを構成要素の一部であるPE(プロセッサ要素)は4段パイプライン方式のRISC形アーキテクチャとし,多くの工夫を加えることで,ハードウエアを簡略化した.拡張アーキテクチャ部には,遺伝アルゴリズムを適用例として,遺伝アルゴリズムに典型的な処理である,交差演算,突然変異演算および評価演算を処理するための専用処理ロジックを設けた.これらをC言語によるシミュレーションを行い,命令レベルでの効果を検証した.このシミュレーション結果を踏まえ,16ビット型PEをハードウエア記述言語VHDLでデザインした.このデザインには,上記RISCコアおよび遺伝アルゴリズム処理する各専用回路および通信回路等が含まれている.このデザインをXILINX社製FPGA上に実装し,論理レベルシミュレーションによる評価の結果,良好な結果が得られた.なお,制御プロセッサおよびプロセッサ間ネットワーク部は詳細設計中である.プロトタイプシステム構築のためのテストベッド回路は,FPGA試作用基盤をベースに,ホストI/F部分,メモリ回路部分およびこれら周辺回路で構成されるものを設計中である.平成13年度では,CPのVHDLによる評価とテストベッドの実装およびテストベッド上での動作評価を行う予定である.本研究は、価格性能比に優れた汎用性を持つ専用ハードウエアの構築と評価を目標として、配線処理や遺伝的アルゴリズム等の非定型な部分を含むアプリケーションの並列処理を対象としたSIMDアーキテクチャの研究である。FPGA(Field Programmable Gate Array)の可変構造特性に着目した、核となる基本アーキテクチャと各アプリケーションに応じた拡張アーキテクチャにより階層化設計されたSIMD型並列処理アーキテクチャの有効性をFPGAによるプロトタイプにより検証すること目的とする。平成13年度は、平成12年度の研究により要素プロセッサとして設計された16ビット型RISCコアを用いて、XILINX社製FPGAを用いたプロトタイプシステムを構築するために必要な制御プロセッサ、隣接プロセッサ間ネットワーク、および制御プロセッサと要素プロセッサ間ネットワークについて検討と設計を行った。制御プロセッサは、前述のRISCコアに制御プロセッサとしての機能(命令の拡張、ホスト間通信機能、ネットワーク制御機能等)を加えたものである。隣接プロセッサ間ネットワークは隣接する要素プロセッサ間で通信を行うものである。制御プロセッサと要素プロセッサ間ネットワークは、命令およびデータを制御プロセッサから要素プロセッサへ放送するパイプライン化されたブロードキャストネットワークと要素プロセッサから制御プロセッサへのデータ回収ネットワークで構成されている。平成12年度末から13年度始めに得られたデータを検討した結果、制御プロセッサと要素プロセッサ間ネットワークに大幅な設計変更が必要であることが確認され、変更および関連部分の検討と再設計に時間を必要としたため、当初の計画より実装が遅れることとなった。このため、平成14年2月末時点でプロトタイプシステムは構築中であり、継続して構築を進めるものである。 | KAKENHI-PROJECT-12780230 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12780230 |
悪性化におけるγとK選択の役割とK選択による多剤耐性機構の解明 | 1.c-myc+EJ-ras遺伝子導入細胞(MR5とMR8)のK選択による多剤耐性機構の解析:K選択による多剤耐性機構の解析を進め以下の結果を得た。DXRやVCR耐性に関与するMDR1b/P糖蛋白の発現亢進については、機能的にも多剤耐性に寄与していることを示した。発現亢進の機序としては、DNA脱メチル化や遺伝子増幅ではなく転写因子NF-YAの発現亢進を介した機序が示唆された。一方、Ara-C耐性に関与しては、cytidine deaminaseの高発現やENT1の発現低下が一部の株で確認された。また、K選択による細胞増殖速度の低下が細胞周期特異的抗がん剤の感受性低下に関与していることを示した。よってK選択による多剤耐性には複数の機序が関与しているが、いずれも臨床で観察される現象であることから、このモデルが難治性腫瘍の解析に有用であることが示唆された。2.K選択によって選択される標的遺伝子の探索:K選択細胞からretroviral vector (pMXI)を用いてcDNA libraryを作成し、親株細胞MR8に感染させてrとK選択を行って各選択下での標的遺伝子の探索を行った。その結果単離した14-3-3σ遺伝子が、r選択後細胞ではDNAメチル化による発現抑制を、K選択後には14-3-3σ遺伝子上流のCpGの完全な脱メチル化による発現亢進をしていることを見出した。このメチル化や脱メチル化には可塑性と不可逆性が観察され、in vitroの腫瘍化モデルにおけるクローン選択にDNAメチル化が深く関与していることが明らかとなった。以上から、このモデルは腫瘍化におけるエピジェネティクスの解明に有用なモデルと考えられる。1.c-myc+EJ-ras遺伝子導入細胞(MR5とMR8)のK選択による多剤耐性機構の解析:K選択による多剤耐性機構の解析を進め以下の結果を得た。DXRやVCR耐性に関与するMDR1b/P糖蛋白の発現亢進については、機能的にも多剤耐性に寄与していることを示した。発現亢進の機序としては、DNA脱メチル化や遺伝子増幅ではなく転写因子NF-YAの発現亢進を介した機序が示唆された。一方、Ara-C耐性に関与しては、cytidine deaminaseの高発現やENT1の発現低下が一部の株で確認された。また、K選択による細胞増殖速度の低下が細胞周期特異的抗がん剤の感受性低下に関与していることを示した。よってK選択による多剤耐性には複数の機序が関与しているが、いずれも臨床で観察される現象であることから、このモデルが難治性腫瘍の解析に有用であることが示唆された。2.K選択によって選択される標的遺伝子の探索:K選択細胞からretroviral vector (pMXI)を用いてcDNA libraryを作成し、親株細胞MR8に感染させてrとK選択を行って各選択下での標的遺伝子の探索を行った。その結果単離した14-3-3σ遺伝子が、r選択後細胞ではDNAメチル化による発現抑制を、K選択後には14-3-3σ遺伝子上流のCpGの完全な脱メチル化による発現亢進をしていることを見出した。このメチル化や脱メチル化には可塑性と不可逆性が観察され、in vitroの腫瘍化モデルにおけるクローン選択にDNAメチル化が深く関与していることが明らかとなった。以上から、このモデルは腫瘍化におけるエピジェネティクスの解明に有用なモデルと考えられる。K選択後の多剤耐性について、シクロスポリン添加による耐性解除を検討した。clonogenic assayではわずかの解除だったが、SRB assayでは耐性は1/3減少した。一方、MDR1/Pgp遺伝子の導入発現では、抗がん剤耐性を付与できるにもかかわらずK選択下にクローン選択を誘導することはできなかった。すなわち、MDR1/Pgpの発現亢進がK選択後の多剤耐性に少なくとも一部寄与しているが、K選択の標的とは考えられなかった。一方、Pgpの基質とはなりえないキロサイドに対する耐性機構が存在し、MDR1/Pgp高発現とは異なる。そのため、キロサイドによる耐性機構として知られているキロサイドの輸送・代謝経路にある蛋白の遺伝子発現を解析中である。2.r選択とK選択によって選択される標的遺伝子の探索:K選択細胞からレトロウイルスベクター(pMXI)を用いてcDNAライブラリーを2つ作成し、親株細胞MR8に感染させてr選択ならびにK選択を行って各選択下での標的遺伝子の探索を行った。感染導入したcDNAライブラリーをPCRで増幅・回収してゲル上に展開すると、感染直後スメアーだったものが、2週間以上のrもしくはK選択後にはoligoclonal bandsになり、クローン選択の進行が示された。得られたbandをPCRで増幅・回収し、塩基配列を決定したところ、細胞周期制御ならびに腫瘍化に関連すると思われるいくつかの遺伝子が確認された。現在その中で複数回クローン化された有望な遺伝子に関して、発現とクローン選択への寄与について解析中である。1.K選択による多剤耐性機能の解析:c-myc+EJ-ras導入ラット胎児線維芽細胞(MR5およびMR8細胞)で、通常の細胞培養に匹敵するγ選択と異なり高細胞密度で培養するK選択によって多剤耐性クローンが出現することを見出し、その分子基盤について解析を進めてきた。DXRやVCR耐性に関与するMDR1b/P | KAKENHI-PROJECT-15590995 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15590995 |
悪性化におけるγとK選択の役割とK選択による多剤耐性機構の解明 | 糖蛋白の発現亢進については、DNAメチル化や遺伝子増幅の関与はなく転写因子NF-YAの発現亢進を介した機序が示唆された。一方、Ara-C耐性に関与する遺伝子群の発現を解析したところ、cytidine deaminaseの高発現やENT1の発現低下が少なくとも一部の株で確認された。また、K選択による細胞増殖速度の低下価が細胞周期特異的抗がん剤の感受性低下に関与していることを示した。よってK選択による多剤耐性には複数の機序が関与しているが、いずれも臨床で観察される現象であることから、このモデルが難治性腫瘍の解析に有用であることが示唆された。2.K選択によって選択される標的遺伝子の探索:K選択標的遺伝子とし14-3-3σ遺伝子を単離し、r選択後細胞では著明な発現抑制を、K選択後には著明な発現亢進していることを見出した。さらにその発現制御にDNAメチル化が関与していることを見出した。すなわち、r選択後には14-3-3σ遺伝子上流のCpGのメチル化の進行が認められ、K選択後には完全な脱メチル化が生じていることが判明した。このメチル化や脱メチル化には可塑性と不可逆性が観察され、in vitroの腫瘍化モデルにおけるクローン選択にDNAメチル化が深く関与していることが明らかとなった。以上から、このモデルは腫瘍化におけるエピジェネティクスの解明に有用なモデルと考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-15590995 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15590995 |
東南アジア・太平洋地域の流域水利用実態及びデータ環境の国際共同調査 | 東南アジア・太平洋地域における持続的で健全な水資源環境のあり方を明らかにすることを最終目標として,以下のような調査を行った.【1】東南アジア・太平洋地域の各国の代表河川流域を多数の研究者が同時に調査し,自然的,社会的条件,水資源利用の実態とそれを表すデータの所在,形態,質,アクセス等を調査・特定した.同時に種々の情報交換を行って,重点課題の共通性・相違点を明らかにした.具体的には,タイおよびラオス(平成9年12月),オーストラリア・ニュージーランド(平成10年3月),マレーシア及びインドネシア(平成10年3月)を,それぞれ22人,14人,23人の研究者によって調査した.【2】水文・水資源に関わる各種データを上記6カ国について収集した,また,国際共同利用データベースの構築と通信ネットワークによる共有化を図るために,データベース管理システムの仕様,データの書式仕様についての会議を行い,関係各国間のデータ共同利用ネットワークのあり方について提言を行った.【3】現地調査及び情報交換による知見と収集したデータを利用して,洪水及び渇水特性の地域比較,水文過程のモデル化,持続可能な水資源環境の解析法の確立,地中水,地下水の流動及び森林域における雨水流出過程の実態と影響の評価などを検討した.さらに,今後推進すべき重点課題を明らかにすることを目標に,訪問した各国において,訪問国での水文・水資源・災害に関する研究報告と日本との間での比較水文学研究の提案を行うための会議を設け,今後の比較水文学研究にとって必要不可欠な情報の交換を行った.東南アジア・太平洋地域における持続的で健全な水資源環境のあり方を明らかにすることを最終目標として,以下のような調査を行った.【1】東南アジア・太平洋地域の各国の代表河川流域を多数の研究者が同時に調査し,自然的,社会的条件,水資源利用の実態とそれを表すデータの所在,形態,質,アクセス等を調査・特定した.同時に種々の情報交換を行って,重点課題の共通性・相違点を明らかにした.具体的には,タイおよびラオス(平成9年12月),オーストラリア・ニュージーランド(平成10年3月),マレーシア及びインドネシア(平成10年3月)を,それぞれ22人,14人,23人の研究者によって調査した.【2】水文・水資源に関わる各種データを上記6カ国について収集した,また,国際共同利用データベースの構築と通信ネットワークによる共有化を図るために,データベース管理システムの仕様,データの書式仕様についての会議を行い,関係各国間のデータ共同利用ネットワークのあり方について提言を行った.【3】現地調査及び情報交換による知見と収集したデータを利用して,洪水及び渇水特性の地域比較,水文過程のモデル化,持続可能な水資源環境の解析法の確立,地中水,地下水の流動及び森林域における雨水流出過程の実態と影響の評価などを検討した.さらに,今後推進すべき重点課題を明らかにすることを目標に,訪問した各国において,訪問国での水文・水資源・災害に関する研究報告と日本との間での比較水文学研究の提案を行うための会議を設け,今後の比較水文学研究にとって必要不可欠な情報の交換を行った.東南アジア・太平洋地域における持続的で健全な水資源環境のあり方を明らかにすることを最終目標として,以下のような調査を行った.【1】東南アジア・太平洋地域の各国の代表河川流域を多数の研究者が同時に調査し,自然的,社会的条件,水資源利用の実態とそれを表すデータの所在,形態,質,アクセス等を調査・特定した.同時に種々の情報交換を行って,重点課題の共通性・相違点を明らかにした.具体的には、タイおよびラオス(平成9年12月),オーストラリア・ニュージーランド(平成10年3月),マレーシア及びインドネシア(平成10年3月)を,それぞれ22人,14人,23人の研究者によって調査した.【2】水文・水資源に関わる各種データを上記6ヵ国について収集した,また,国際共同利用データベースの構築と通信ネットワークによる共有化を図るために,データベース管理システムの仕様,データの書式仕様についての会議を行い,関係各国間のデータ共同利用ネットワークのあり方について提言を行った.【3】現地調査及び情報交換による知見と収集したデータを利用して,洪水及び渇水特性の地域比較,水文過程のモデル化,持続可能な水資源環境の解析法の確立,地中水,地下水の流動及び森林域における雨水流出過程の実態と影響の評価などを検討した.さらに,今後推進すべき重点課題を明らかにすることを目標に,訪問した各国において,訪問国での水文・水資源・災害に関する研究報告と日本との間での比較水文学研究の提案を行うための会議を設け,今後の比較水文学研究にとって必要不可欠な情報の交換を行った. | KAKENHI-PROJECT-09041199 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09041199 |
関数方程式の定性的理論 | 関数方程式の定性的理論の中で,重要な研究対象の一つである振動理論については,高階楕円型方程式のすベての解が振動するための十分条件と,波動方程式に対する共振現象の基礎理論が得られた。特に共振現象に関しては,その理論の確立は以前に無かったことで,新しい前進といえる。また,確率論的立場からのアプロ-チとして,指数的マルチンゲ-ルの研究がなされ将来に明るい展望を与えた。更に,反応一拡散系に対する安定解析の研究が進展し,確固たる基礎が築かれた。確率微分方程式からの手法により,積分一偏微分方程式に対するエネルギ-法を用いて解の存在が示され,バナッハ空間におけるボルテラ方程式についても研究成果が得られた。抽象的立場から,関数解析的手法により,発展方程式の解の存在,一意性,性質等が詳しく調べられて,更に発展する余地がある。応用数学においては,物理・工学との関連で,作用素論的方面からの探究が必要であり,それについても未来への進展につながる結果が得られた。今後の研究発展に結びつく萠芽として,関数変数をもつ楕円型方程式の振動に関する結果と,遅れをもつ放物型方程式の振動定理が得られた。特に,関数変数楕円型方程式の振動についての結果は従来一つだけであり,その意味で,将来の理論進展に大きく寄与するものと思われる。また,遅れをもつ放物型方程式は非線形で,かつ外力項がある場合で,従来にない新しい証明方法を含んでいる。今後の課題として,放物型方程式に対する初期値問題の振動を研究すること,双曲型方程式に対するグルサ-問題を研究すること,に気付いたのも大きな収穫であった。関数方程式の定性的理論の中で,重要な研究対象の一つである振動理論については,高階楕円型方程式のすベての解が振動するための十分条件と,波動方程式に対する共振現象の基礎理論が得られた。特に共振現象に関しては,その理論の確立は以前に無かったことで,新しい前進といえる。また,確率論的立場からのアプロ-チとして,指数的マルチンゲ-ルの研究がなされ将来に明るい展望を与えた。更に,反応一拡散系に対する安定解析の研究が進展し,確固たる基礎が築かれた。確率微分方程式からの手法により,積分一偏微分方程式に対するエネルギ-法を用いて解の存在が示され,バナッハ空間におけるボルテラ方程式についても研究成果が得られた。抽象的立場から,関数解析的手法により,発展方程式の解の存在,一意性,性質等が詳しく調べられて,更に発展する余地がある。応用数学においては,物理・工学との関連で,作用素論的方面からの探究が必要であり,それについても未来への進展につながる結果が得られた。今後の研究発展に結びつく萠芽として,関数変数をもつ楕円型方程式の振動に関する結果と,遅れをもつ放物型方程式の振動定理が得られた。特に,関数変数楕円型方程式の振動についての結果は従来一つだけであり,その意味で,将来の理論進展に大きく寄与するものと思われる。また,遅れをもつ放物型方程式は非線形で,かつ外力項がある場合で,従来にない新しい証明方法を含んでいる。今後の課題として,放物型方程式に対する初期値問題の振動を研究すること,双曲型方程式に対するグルサ-問題を研究すること,に気付いたのも大きな収穫であった。 | KAKENHI-PROJECT-03640138 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03640138 |
迷惑行為に対する言語行動: 社会文化および性格特性に関するアジア諸言語の対照研究 | 本研究では、日本(J)・韓国(K)・中国(C)・マレーシア(M)の4つの言語及びそれぞれを母語とする日本語学習者を対象に、第1および第2言語場面での迷惑場面に影響する諸要因を比較検討することを目的とする。具体的には、(1)迷惑行為に対する認知(認知度)と迷惑行為に対して相手に注意をするかどうか(注意有無)はJ・K・C・Mとでどの程度異なるのか、(2)日本語学習と個人の性格特性はJ・K・C・Mの社会的迷惑行為に対する迷惑度と注意有無にどのような影響を与えるのかについて検討を行った。本研究では、日本・韓国・中国・マレーシアのアジアの4つの言語及びそれぞれを母語とする日本語学習者を対象に、第1および第2言語場面での迷惑場面に影響する諸要因を比較検討し、知覚から言語行動をとるまでの一連の発話プロセスのメカニズムを解明することを目的とする。平成27年度は当初の研究計画に基づき、関連分野に関する先行研究をレビューするとともに、迷惑行為に対する社会的規範の相違を把握するための質問項目を選定し、日韓で調査を実施した。社会的迷惑行為の項目については、吉田ら(1999)が示した120項目から、18項目のマナー違反に当たる迷惑行為を選定した。日韓の大学生を対象にした調査では、(1)迷惑行為に対する知覚が日本人と韓国人でどの程度異なるか、それを基準として、(2)日本語母語話者(以下、JJ)、韓国人日本語学習者(以下、KJ)、韓国人日本語未習者(以下、KK)の3つのグループの迷惑度を比較し、外国語としての日本語を学習した経験が社会的迷惑行為に対する知覚(迷惑度)にどのように影響するのかを検討した。予備調査の結果を要約すると、社会的迷惑行為に対する知覚は日本人(JJ)と韓国人(KK)とで違いが見られ、日本語学習の効果(KJ)は、迷惑度が低い時には、日本人との類似性は示されないが、迷惑がある程度高くなると日本人と類似した判断を示すことが分かった【韓国日本研究総連合会・第5回国際学術大会にて報告】。一方個人の性格特性に関する測定尺度については、「共感性」「対立管理スタイル」「アサーティブコミュニケーション」「異文化的能力」「思いやり指数(NQ)」の尺度を検討したが、調査において下位尺度のごく一部においてのみ有意差が見られた。次年度は新たな性格特性や分析方法の検討もを含め、さらに検証を行っていきたいと考えている。平成27年度の研究計画は、関連分野に関する先行研究をレビューするとともに迷惑行為に対する社会的規範の相違を把握するための質問項目を選定し、予備調査を実施することである。計画予定通り、予備調査を踏まえ質問紙の作成を行うとともに、日韓の大学生を対象にした調査を実施した。また、その分析結果を韓国で開催された国際学会で発表することができた。本研究では、日本・韓国・中国・マレーシアのアジアの4つの言語およびそれぞれを母語とする日本語学習者を対象に、第1および第2言語場面での迷惑場面に影響する諸要因を比較検討し、知覚から言語行動を取るまでの一連の発話プロセスのメカニズムを解明することを目的とする。平成28年度は当初の研究計画に基づき、平成27年度の研究成果をふまえ、迷惑行為に対する言語行動と個人の性格特性の影響を検討するための調査を、日本・韓国・中国・マレーシアにて行い、その一部分のデータについて分析を行った。現段階で分析が終わっている日本人と韓国人、韓国人日本語学習者の迷惑行為に対する迷惑度と言語行動(注意する・しない)の結果を要約すると、社会的迷惑行為に対する迷惑度は、日本人(JJ)と韓国人(KK)とで有意な違いがみられ、全体的に社会的迷惑行為に対して韓国人よりは日本人のほうがより迷惑と受け止めていることが明らかになった。また、相手の迷惑行為に対して注意するするのか、しないのかの言語行動については、日本人と韓国人とで大きな違いは見られなかった。一方で、韓国人日本語学習者(KJ)の迷惑度は、迷惑度の低い場面では日本人との類似性は見られないものの、迷惑度がある程度高い場面では日本人と類した判断を示すことが分かった。しかし、注意する、しないの言語行動については、場面によって違いが大きく、一貫したような結果は見られなかった。今後は場面毎に分けてどのような違いがあるのか、より具体的に分析していきたい。平成28年度の計画は日本、韓国、中国、マレーシアにて、社会的迷惑行為と言語行動に関するアンケート調査を実施し、迷惑行為に対する社会文化的規範と言語行動、そして個人の性格特性の関連性について検討することである。予定通り、日本、韓国、中国、マレーシアの大学生を対象にした調査を実施した。また、決定木分析を用いて、日本人と韓国人、韓国人日本語学習者の3つのグループの迷惑行為に対する迷惑度について、学会で発表することができた。また、定量的手法を用いて言語行動(注意する、しない)についての比較分析も進めている。研究の最終年度は、これまで日本(J)・韓国(K)・中国(C)・マレーシア(M)にてそれぞれ収集したデータを統合し、主に次の2点に絞っての検討を行った。(1)迷惑行為に対する認知(迷惑度)と迷惑行為に対して相手に注意をするかどうか(注意有無)はJ・K・C・Mとでどの程度異なるのか、(2)日本語学習経験はK・C・Mの社会的迷惑行為に対する迷惑度と注意有無にどのような影響を与えるのか。分析では、迷惑度に対する注意有無、迷惑場面、そして日本語学習経験の影響を総合的かつ階層的に検討するため、SPSSの決定木分析を用いた。 | KAKENHI-PROJECT-15K12879 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K12879 |
迷惑行為に対する言語行動: 社会文化および性格特性に関するアジア諸言語の対照研究 | 分析の結果、本研究で用いた18項目の迷惑行為に対する迷惑度は、J(M=4.01)>M(M=3.88)>C(M=3.77)>K(M=2.47)の順で高いことが分かった。つまり、迷惑行為に対する認知に違いが見られることから、J・M・C・K間では社会文化的規範の距離が異なることが予想される。一方で迷惑行為に対して注意する割合は、M・C(41.1%)>J(22.3%)>K(14.4%)の順で高かった。M・Cが同じグループになっているのはマレーシアと中国とで同じ傾向であったことを示しており、注意行為では迷惑度の最も高かった日本人よりも中国人やマレーシア人のほうがより積極的な態度をとることが明らかになった。韓国人は迷惑度も低く、注意行動においても最も消極的な態度であった。日本語学習経験の影響は、全体的に注意有無や場面の下に位置しており、しかも全ての場合においてその影響が見られた訳ではないことから、迷惑度を決める最も強い要因ではないことが示唆された。迷惑度を決める最も強い要因は注意有無、その次に場面の順であった。以上の結果については、分析方法を途中で再検討したりしたこともあり、年度内での成果発表までには至っていないが、今後学会発表や論文執筆を通して順次公表していく予定である。本研究では、日本(J)・韓国(K)・中国(C)・マレーシア(M)の4つの言語及びそれぞれを母語とする日本語学習者を対象に、第1および第2言語場面での迷惑場面に影響する諸要因を比較検討することを目的とする。具体的には、(1)迷惑行為に対する認知(認知度)と迷惑行為に対して相手に注意をするかどうか(注意有無)はJ・K・C・Mとでどの程度異なるのか、(2)日本語学習と個人の性格特性はJ・K・C・Mの社会的迷惑行為に対する迷惑度と注意有無にどのような影響を与えるのかについて検討を行った。平成27年度の予備調査の結果をふまえ、さらなる分析方法を検討するとともに、中国・マレーシアで社会的迷惑行為に対する言語行動と個人の性格特性の影響に関する調査を実施する。また、必要に応じて日本と韓国でも追加調査を行う。次年度は、中国、マレーシアの調査分析を急ぐとともに、分析結果について、海外共同研究者を含む関係者全員で討議を行う。また、それらを総括して、国内外の学会にて研究成果を発表し、論文を執筆する。言語学 | KAKENHI-PROJECT-15K12879 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K12879 |
脳のエンコーディング機構としての動的細胞集成体仮説の数理的研究 | 脳認知系における脳内ダイナミクスと符号化の機構について、近来のニューロ・イメージングや、多細胞同時記録からのJPSTHなど、従来の符号化理論では捉えきれないデータが見られ、他方、情報統合の問題などの理論的困難が存在する。この研究では、近来の実験データに基礎をおきつつ、これらの理論的困難を統合的に解決する可能性として、相関符号化理論に基づく脳認知系の情報符号化機構についての新しい仮説-動的セル・アセンブリー仮説を提唱し、その生理学的・数理的な検証の必要性を提起した。本研究は、その主張を理論的、および生理学的に検証するための作業である。●初年度-理論的見取り図としての新しい仮説-動的セル・アセンブリー仮説の提唱論文[1]で、脳の符号化機構を脳内ダイナミクスと情報表現(符号化)の2つのレベルから統合的に把える枠組みを探求した。情報のキャリアと表現に関する実験的・理論的パラダイムのレビューにつづいて、時空間符号化に関する描像として動的細胞集成体仮説を提出した。脳認知系の神経回路網がコインシデンス・ディテクター的特性を持つニューロン系であるという作業仮説の下に、ダイナミクスの中心的概念としての動的細胞集成体の理論的記述、相関ダイナミクスによる符号化原理の可能性を探究した。符号化の立場からは、皮質における基本コードは、スパイク間の発火タイミングという関係性であることが主張される。また、コインシデンス・ディテクター系の動作原理を示すためのミニマム・モデルを提示した。1つの重要な示唆として、ここで提示した概念が統合問題への脳の解答である可能性を指摘した。[3]●2年度において、情報統合に関する理論的試論として、“束ね"の相関シナリオ[5]を提示した。また、“束ね"の相関シナリオに基づく抽象コインシデンス・ディテクター系によるバインディング問題を具体的に解くコンピュータ・モデルを提示[3]した。脳認知系における脳内ダイナミクスと符号化の機構について、近来のニューロ・イメージングや、多細胞同時記録からのJPSTHなど、従来の符号化理論では捉えきれないデータが見られ、他方、情報統合の問題などの理論的困難が存在する。この研究では、近来の実験データに基礎をおきつつ、これらの理論的困難を統合的に解決する可能性として、相関符号化理論に基づく脳認知系の情報符号化機構についての新しい仮説-動的セル・アセンブリー仮説を提唱し、その生理学的・数理的な検証の必要性を提起した。本研究は、その主張を理論的、および生理学的に検証するための作業である。●初年度-理論的見取り図としての新しい仮説-動的セル・アセンブリー仮説の提唱論文[1]で、脳の符号化機構を脳内ダイナミクスと情報表現(符号化)の2つのレベルから統合的に把える枠組みを探求した。情報のキャリアと表現に関する実験的・理論的パラダイムのレビューにつづいて、時空間符号化に関する描像として動的細胞集成体仮説を提出した。脳認知系の神経回路網がコインシデンス・ディテクター的特性を持つニューロン系であるという作業仮説の下に、ダイナミクスの中心的概念としての動的細胞集成体の理論的記述、相関ダイナミクスによる符号化原理の可能性を探究した。符号化の立場からは、皮質における基本コードは、スパイク間の発火タイミングという関係性であることが主張される。また、コインシデンス・ディテクター系の動作原理を示すためのミニマム・モデルを提示した。1つの重要な示唆として、ここで提示した概念が統合問題への脳の解答である可能性を指摘した。[3]●2年度において、情報統合に関する理論的試論として、“束ね"の相関シナリオ[5]を提示した。また、“束ね"の相関シナリオに基づく抽象コインシデンス・ディテクター系によるバインディング問題を具体的に解くコンピュータ・モデルを提示[3]した。脳認知系の情報符号化の機構について相関符号化理論に基づく新しい仮説・動的細胞集成体仮説を提唱し、その生理学的・数理的な検証の必要性を提起した。その本質的な主張は、神経スパイクの時系列の1次統計(本質的に、スパイクの平均発火率)が情報の担い手である、という古典的主張に対して、高次の統計(本質的に、スパイク時系列間の発火タイミング・相互相関)が情報の担い手であるとする。脳内ダイナミクスの力学系としての数学的枠組みの確立するための、基礎的考察を行った。また、動的細胞集成体仮説で展開された脳内ダイナミクスとそれによる符号化の可能性を実際の視覚系の結合問題を例に示した。視覚系において、いわゆるバインディング問題を具体的に"解く"概念的例として、coincidence detectorからなるニューロン系によって、色と形の動的バインディイングをおこなうシステムを構成した。この系は、完全な位置不変性を保ち、かつ視覚物体の脳の異なった領域で処理される複数の属性を統合する動的な機構を内在する。脳認知系における脳内ダイナミクスと符号化の機構について、近来のニューロ・イメージングや、多細胞同時記録からのJPSTHなど、従来の符号化理論では捉えきれないデータや、情報統合問題などの理論的困難を統合的に解決する可能性として、相関符号化理論に基づく符号化機構についての新しい仮説-動的セル・アセンブリー仮説を提唱し、その生理学的・数理的な検証の必要性を提起した。本研究は、その主張を理論的、および生理学的に検証するための作業である。本年度では、情報統合に関する理論的試論として、“束ね"の相関シナリオ[ ]を提示した。 | KAKENHI-PROJECT-08640311 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08640311 |
脳のエンコーディング機構としての動的細胞集成体仮説の数理的研究 | また動的セル・アセンブリー仮説に基づく“束ね"の相関シナリオによる動的リンキングの原理的な実現可能性を示すために、抽象コインシデンス・ディテクター系という枠組みの中で、コンピュータ・モデルを構成した。[2]視覚サブ・モダリティー間の“束ね"の問題を具体的に“解く"概念例として、複数属性をもつ2つの視覚物体(色と長さの異なるバ-)間の動的バインディングをおこなうシステムを構成した。この系は、入力刺激の位置に関する完全な不変性を保ち、かつ脳の異なった領域で処理される視覚物体の複数の属性を統合する動的な機構を内在する。(閾値下での相互作用をもつ)複数(2つ)の相関ダイナミクスが内部的に生成され、入力文脈(例えば、バ-の色と長さの組合わせ)の変化に伴って相関セル・グループの動的な組替えが実現する。このとき、統合した情報を<表現>する細胞グループ内では、互いに相関をもつ。他方、異なる細胞グループ間の細胞には相関が生じない。 | KAKENHI-PROJECT-08640311 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08640311 |
インフルエンザウイルス感染における宿主翻訳制御機構の解明 | インフルエンザウイルス感染症は一旦重症化してしまうと有効な治療法がないことから、新規の作用機序を持った治療法の開発が必要である。しかしながら、インフルエンザの重症病態が形成される分子機構は明らかになっておらず、とりわけ、宿主の翻訳制御機構に関しては不明の点が多い。本研究では、インフルエンザウイルス感染におけるmRNA発現・翻訳状態の変化と、それらを制御する機構を明らかにすることにより、インフルエンザウイルス感染症の病態における翻訳制御機構の役割を明らかにすることを目指す。本研究で得られる知見は、宿主翻訳制御機構を標的とした重症インフルエンザに対する新しい治療法の開発に繋がることが期待される。インフルエンザウイルス感染症は一旦重症化してしまうと有効な治療法がないことから、新規の作用機序を持った治療法の開発が必要である。しかしながら、インフルエンザの重症病態が形成される分子機構は明らかになっておらず、とりわけ、宿主の翻訳制御機構に関しては不明の点が多い。本研究では、インフルエンザウイルス感染におけるmRNA発現・翻訳状態の変化と、それらを制御する機構を明らかにすることにより、インフルエンザウイルス感染症の病態における翻訳制御機構の役割を明らかにすることを目指す。本研究で得られる知見は、宿主翻訳制御機構を標的とした重症インフルエンザに対する新しい治療法の開発に繋がることが期待される。 | KAKENHI-PROJECT-19K18342 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K18342 |
日本および東アジアの金融システムとコーポレートガバナンス | 日本とアジア諸国のコーポレート・ガバナンスと金融システムの問題に焦点を当てる独自の企業のマイクロデータを用いた2年間の本研究課題の主要な成果は、以下の通りである。まず、日本については、企業のコーポレート・ガバナンスの主要なメカニズムとしてこれまで考えられてきた、メインバンクの役割の有効性を検証した。実証研究の結果、メインバンクが貸出先企業(特に製造業)の経営効率向上に寄与したという従来の見解は、197080年代の景況期においても支持されなかった。その一方で、市場競争は一貫して、効率的なコーポレート・ガバナンスに寄与してきたことが明らかになった。以上の結果は、銀行が各種規制やセーフティー・ネットのために効率経営への誘因が欠如し、貸出先を十分にモニタリングできなかったためと考えられる。次に、アジア諸国については、同地域で多く見られるファミリー企業のコーポレート・ガバナンス問題そしてアジア危機発生との関係について分析した。その結果、アジア諸国、主にタイ国においては、企業や金融機関の所有権は、オーナー家族に集中していることが明らかになった。さらに経営支配面では、オーナーが経営者として活動するだけでなく、家族で取締役会を支配していることが明らかになった。企業においては所有と経営の構造はアジア経済危機以後も有意には変化していない。こうした所有・支配構造は、少数株主の犠牲の下に支配株主(オーナー経営者)が企業資産を搾取する可能性を生じさせているが、これはグループ企業間で形成される内部市場によって助長されている。しかし、金融機関については、危機後に家族支配がなくなり、政府と外国人投資家が支配株主となったことが明らかになった。日本とアジア諸国のコーポレート・ガバナンスと金融システムの問題に焦点を当てる独自の企業のマイクロデータを用いた2年間の本研究課題の主要な成果は、以下の通りである。まず、日本については、企業のコーポレート・ガバナンスの主要なメカニズムとしてこれまで考えられてきた、メインバンクの役割の有効性を検証した。実証研究の結果、メインバンクが貸出先企業(特に製造業)の経営効率向上に寄与したという従来の見解は、197080年代の景況期においても支持されなかった。その一方で、市場競争は一貫して、効率的なコーポレート・ガバナンスに寄与してきたことが明らかになった。以上の結果は、銀行が各種規制やセーフティー・ネットのために効率経営への誘因が欠如し、貸出先を十分にモニタリングできなかったためと考えられる。次に、アジア諸国については、同地域で多く見られるファミリー企業のコーポレート・ガバナンス問題そしてアジア危機発生との関係について分析した。その結果、アジア諸国、主にタイ国においては、企業や金融機関の所有権は、オーナー家族に集中していることが明らかになった。さらに経営支配面では、オーナーが経営者として活動するだけでなく、家族で取締役会を支配していることが明らかになった。企業においては所有と経営の構造はアジア経済危機以後も有意には変化していない。こうした所有・支配構造は、少数株主の犠牲の下に支配株主(オーナー経営者)が企業資産を搾取する可能性を生じさせているが、これはグループ企業間で形成される内部市場によって助長されている。しかし、金融機関については、危機後に家族支配がなくなり、政府と外国人投資家が支配株主となったことが明らかになった。日本と東アジア諸国のコーポレート・ガバナンスと金融システムの問題に焦点を当てる本研究プロジェクトの今年度の成果としては、第一に、日本の企業経営者と企業の内部労働市場の関係に関する実証分析がある。その分析から、役員報酬が従業員賃金と強い正の相関を有することが明らかとなった。その背景には、日本の経営者は「昇進した従業員」としての性格を持っており、役員報酬も従業員賃金と似通った体系になることが指摘できる。第二に、同じく日本企業のマイクロデータを用いて、企業活動と企業財務、とりわけ収益と負債の関係を分析したものがある。市場競争の代理変数としての商品売上シェアは収益性を説明する重要な変数であるとはいえない、負債は最適水準を超えて収益を圧迫している、さらに政府規制や補助金が企業収益に歪みを与えている可能性があるなどが、本研究の主要な結論である。一方、東アジアを対象にした分析としては、第一に、東アジア企業のガバナンスの問題とアジア危機の発生との関係を分析したものがある。それによると、家族支配を背景とする企業所有の集中化、企業の支配権と所有権との乖離、債権者によるモニタリングが有効に働かないもとでの負債による資金調達、さらに非効率性を生む安易な多角化の問題が、アジア危機を境にそのような要素を多分に有する企業の経営を圧迫してきたことが示されている。最後に、アジア危機がタイの金融機関の所有と経営の構造に与えた影響に関する分析によれば、危機以前には多くの金融機関が家族によって支配され、何層にも連なる複雑な支配構造をしていたが、危機後には家族支配はほとんどなくなり、透明性の高い構造へと変化したこと、家族に代わって新たな支配株主となったのは、政府と外国人投資家であること、などが明らかとなった。コーポレート・ガバナンスとは、典型的には株主と経営者との間に利害対立が存在する場合に、資金提供者である株主に対して投資に見合った収益をいかに確保する仕組みを整えるかという問題を取り扱うものである。ただし、企業の株主構成が各国間で異なることから、株主と経営者との間の利害対立の構図も相違している。日本では、敵対的買収などの英米型の資本市場に基づく経営者規津づけメカニズムの代替として、銀行中心の金融システムを背景としたメインバンク・システムの存在を指摘することが多かった。 | KAKENHI-PROJECT-14530045 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14530045 |
日本および東アジアの金融システムとコーポレートガバナンス | 近年そのような見方に対しては、1.金融自由化の影響でモニタリングの有効性が低下した、2.モニタリング機能は従来から有効ではなく、市場競争の要素などそのほかの要因が作用していた、等の懐疑論も出ている。日本のコポレート・ガバナンスに関しては、上記のように未だ一致した見解が得られないのに加え、近年の企業の所有構造や銀行と企業との関係における変質をどのように理解するのか、日本型システムに相応しいガバナンス構造とはどういうものかなど、明らかにすべき研究課題も多い。本研究による成果は、これらの課題に対して極めて有意義な示唆を与えている。他方東アジア地域では、家族支配などにより企業所有の集中度が高いことが多い。この場合、所有者は企業の実質的な支配権を確保できることから、利害対立問題の本質は英米でよく見られる株主と経営者との関係から、支配権を持った大株主とそのほかの株主との関係にシフトする。本研究では、主に企業の所有構造に焦点を当てて、東アジアのコーポレート・ガバナンスの実態に迫るとともに、アジア危機との関連を分析した。世界的にみても、企業のミクロデータを用いたこの分野の研究は近年高まっており、本研究による成果は先駆的な研究として注目を浴びるだろう。 | KAKENHI-PROJECT-14530045 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14530045 |
認知機能に関連する遺伝子の同定と機能解析 | 近交系マウスを行動解析により高低パフォーマンス群に分け、群間で発現差のある遺伝子群を同定した。IQ差の顕著な一卵性双生児を用い、兄弟間で発現差のある遺伝子群を同定し、さらに兄弟間でDNAメチル化に差のある遺伝子を同定した。また精神遅滞患者で、既知の重複・欠失症候群と未知のコピー数変化CNVを検出した。これらの遺伝子あるいはCNVは、認知機能と関連している可能性がある。近交系マウスを行動解析により高低パフォーマンス群に分け、群間で発現差のある遺伝子群を同定した。IQ差の顕著な一卵性双生児を用い、兄弟間で発現差のある遺伝子群を同定し、さらに兄弟間でDNAメチル化に差のある遺伝子を同定した。また精神遅滞患者で、既知の重複・欠失症候群と未知のコピー数変化CNVを検出した。これらの遺伝子あるいはCNVは、認知機能と関連している可能性がある。本研究により、以下のことについて明らかにした。(1)マウスの行動解析による得点化と遺伝子発現・DNAメチル化解析正常の雄マウス(C57BL/6J)41匹の各マウスから脳を採取し、抽出した海馬のRNAで遺伝子発現を解析した。行動テストパラメーターを取捨選択して組み合わせ、高パフォーマンスマウス5匹と低パフォーマンスマウス8匹を選び出した。これらのマウスについて、GSEA解析により、パフォーマンスと関連している発現が見られる遺伝子群をいくつか同定した。これらの遺伝子群は認知機能に関わる可能性があると考えられる。(2)IQの差が顕著な一卵性双生児を用いた遺伝子発現・DNAメチル化解析一卵性であると卵性診断が確定された、IQ差が15以上(1SD)の一卵性双生児17組のリンパ芽球からRNAを抽出し、遺伝子発現解析を行い、高IQ兄弟と低IQ兄弟間で発現差の見られる遺伝子群をいくつか特定した。また血液由来DNAを用いてMeDIP-on-chip解析を行い、双子兄弟間でプロモーター領域のDNAメチル化に差のある遺伝子を1つ特定した。これらの遺伝子群・遺伝子は、認知機能に関わる可能性がある。一方で血液由来DNAを用いたゲノムワイドのCNV解析を行ったが、兄弟間で異なるCNVは同定できなかった。(3)精神遅滞の原因遺伝子の同定原因不明の精神遅滞患者試料27人検体分の血液由来DNAを用い、ゲノムワイドのCNV解析を行い、既知の重複・欠失症候群と、未知のCNVを検出した。未知のCNVから、精神遅滞の原因になりそうな遺伝子を選び出した。(4)同定された遺伝子の機能解析と分子ネットワークの構築(1)と(2)の解析から、同じ機能を持つ遺伝子群が同定されており、これらが認知機能に関わる可能性が高いことを示唆していると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-23650136 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23650136 |
X線溶液散乱と高速AFMを用いた生物時計因子の動的構造解析 | X線溶液散乱を用いて時計タンパク質(KaiC)の分子内対称性や動態を精査した。6量体の分子内対称性に起因する広角領域の相関ピークを中心に、測定の条件や対象(KaiC変異体)を変えながら観察を実施した。独自に整備したソフトウェアを用いて注意深く解析したところ、リン酸化やATPaseの状態に応じて6量体の分子内対称性が変化することが示唆された。KaiCの構造モデルの構築を試みたが、取得した広角散乱曲線に合致するモデルは未だ見出されていない。これには2つの可能性が考えられる。一つは、構造の異なる複数の状態が系中に混在しており、それらの平均値として観察された広角散乱曲線と唯一の構造モデルが合致しない場合である。液中高速AFMを用いた観察からも、分子内対称性の異なる分子が含まれていることが確認されている。これらの観察を受け、研究協力者とともにKaiCの分子動力学計算を実施し、複数分子種からなるアンサンブルとして広角散乱曲線を再評価した。その結果、広角散乱曲線の変化を分子内対称性の変化と対応付けることに成功した。二つめは、KaiCの6量体構造が想定以上に大きく変化している場合であり、これは中角領域の散乱曲線が変化するという観察結果からも支持される。既報の結晶構造解析をもとにした分子動力学計算からは容易に探索されない構造であるため、新たに取得した結晶構造をもとに探索したところ、該当する構造アンサンブルが幾つか得られつつある。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。本課題では、シアノバクテリア生物時計システムの中核をなす時計タンパク質(KaiC)を題材に、X線溶液散乱や液中高速AFMを用いて分子内対称性やその動態を精査することで、細胞システム全体に表出する動秩序の本質に迫る。X線溶液散乱では分子の大きさ・形状を生理的な溶液環境下で検証することができ、とくに散乱角度が大きい領域(広角)には分子の形状に応じた特徴的な信号パターンが現れる。微弱な広角散乱信号を定量的に測定・解析するため、独自に装置や解析ソフトウェアを整備して実験を実施した。その結果、KaiC6量体の分子内対称性に起因した相関ピークが広角領域にまで複数観察された。KaiCの結晶構造に基づいた理論的な散乱曲線に比べると、一部、ピーク位置のシフト、幅広化、消失などが確認され、分子内対称性の一部が損なわれている可能性が示唆された。今後は、実験データを説明する分子モデルを構築することで、6量体の対称性について詳細に検証する。液中高速AFMでは1分子ごとに動態を観察することができる。平成28年度の研究活動を通じて、KaiCを基盤上に固定化し、その機能や構造を著しく損なうことなく1分子イメージングが実施できるようになった。野生型KaiCを注意深く観察したところ、リング状構造の対称性が低下した6量体が存在していた。対称性の低下とATP加水分解の関係を検証するため、系に含まれるATP濃度を変化させた実験を実施中である。今後は、X線溶液散乱から示唆される6量体モデルとの対応関係について考察する。平成28年度の研究活動を通じて、KaiCを基盤上に固定化し、その機能や構造を著しく損なうことなく1分子イメージングが実施できるようになった。野生型KaiCを注意深く観察したところ、リング状構造の対称性が異なる6量体が存在することが明らかとなった。X線溶液散乱については、広角散乱を取得するための装置や解析ソフトウェアを整備した。X線溶液散乱を用いて時計タンパク質(KaiC)の分子内対称性や動態を精査した。6量体の分子内対称性に起因する広角領域の相関ピークを中心に、測定の条件や対象(KaiC変異体)を変えながら観察を実施した。独自に整備したソフトウェアを用いて注意深く解析したところ、リン酸化やATPaseの状態に応じて6量体の分子内対称性が変化することが示唆された。KaiCの構造モデルの構築を試みたが、取得した広角散乱曲線に合致するモデルは未だ見出されていない。これには2つの可能性が考えられる。一つは、構造の異なる複数の状態が系中に混在しており、それらの平均値として観察された広角散乱曲線と唯一の構造モデルが合致しない場合である。液中高速AFMを用いた観察からも、分子内対称性の異なる分子が含まれていることが確認されている。これらの観察を受け、研究協力者とともにKaiCの分子動力学計算を実施し、複数分子種からなるアンサンブルとして広角散乱曲線を再評価した。その結果、広角散乱曲線の変化を分子内対称性の変化と対応付けることに成功した。二つめは、KaiCの6量体構造が想定以上に大きく変化している場合であり、これは中角領域の散乱曲線が変化するという観察結果からも支持される。既報の結晶構造解析をもとにした分子動力学計算からは容易に探索されない構造であるため、新たに取得した結晶構造をもとに探索したところ、該当する構造アンサンブルが幾つか得られつつある。平成29年度は、溶媒条件や温度を変えた液中高速AFM観察を実施し、6量体内の対称性が変化する時間スケールについても検証する。X線溶液散乱については、観察されたピーク位置・強度を説明するような6量体モデルを構築し、同時に、液中高速AFMのデータとの対応関係について考察する。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-16H00785 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-16H00785 |
産業規制が企業活動に与える影響についての実証研究 | 第一に、産業規制は企業活動にほとんど影響を与えないが、企業の社会的責任(CSR)など社会からの圧力は企業活動に影響する。第二に、CSRのうち、環境保護投資は企業パフォーマンスを減少させるが、労働問題や社会貢献への取り組みは増加させる。第三に、CSRから経済的パフォーマンスへの因果関係とともに、経済的パフォーマンスからCSRへの因果関係も存在する。第四に、CSRの決定要因として企業のガバナンス構造が重要な役割を持っている。第五に、多くの株主は自らの関心のあるCSR活動にのみ注目し、戦略の一部としての全体的なCSR投資計画にはほとんど注意を払っていない。また、特定のCSR活動に集中的に資源を投下するより、様々な種類のCSRに薄く広く資源を分散させるほうが経済的パフォーマンスは向上する。第一に、産業規制は企業活動にほとんど影響を与えないが、企業の社会的責任(CSR)など社会からの圧力は企業活動に影響する。第二に、CSRのうち、環境保護投資は企業パフォーマンスを減少させるが、労働問題や社会貢献への取り組みは増加させる。第三に、CSRから経済的パフォーマンスへの因果関係とともに、経済的パフォーマンスからCSRへの因果関係も存在する。第四に、CSRの決定要因として企業のガバナンス構造が重要な役割を持っている。第五に、多くの株主は自らの関心のあるCSR活動にのみ注目し、戦略の一部としての全体的なCSR投資計画にはほとんど注意を払っていない。また、特定のCSR活動に集中的に資源を投下するより、様々な種類のCSRに薄く広く資源を分散させるほうが経済的パフォーマンスは向上する。本研究の目的は、産業規制や社会からの圧力などの企業外部の要因が、様々な産業における経済的パフォーマンスや投資行動に与える影響を、実証分析によって多面的に分析することであった。そこで、公益事業だけでなく製造業やサービス業などを含めた企業のサンプルを作り、産業規制とCSRが企業活動に与える影響を同時に分析した。これにより、「産業規制は企業の非効率性を増加させる」という公益事業の分野で支持されていた従来の仮説がそれ以外の産業にも一般化できるかどうかを検証した。また、CSRを企業の外部要因として分析に含めることで、産業規制とCSRのどちらがより大きな影響力を持つか比較・検証した。研究によって、次の2点が明らかになった。第一に、産業規制は企業活動に対してほとんど無視できる影響しか与えない一方、CSRに代表される社会からの期待や圧力は、企業活動を制約または促進することがわかった。近年、消費者や株主など企業の重要なステークホルダーが意思決定を行う際にCSRの活動実績を考慮することが多いため、CSRは企業にとって無視できない課題になっていることを考えると、合理的な結果であるといえる。このように、公益事業以外の産業を含めた分析では、産業規制の企業活動における役割は従来に比べて低下しており、それに代わって社会からの期待や圧力に答えるための企業の自主的な取り組みの重要性が増していることが示された。第二に、CSRのうち、環境保護のための投資は企業パフォーマンスに負の影響を与える一方、労働問題や社会貢献への取り組みは正の影響を与えることがわかった。これは、環境保護が日本企業において今や標準的な活動として認識されており、企業のブランドイメージ確立には貢献しづらいこと、その一方で労働問題や社会貢献への取り組みは企業イメージを有意に高めることを示唆している。本研究の目的は、CSRに代表される社会からの圧力などの企業外部の要因が、様々な産業の経済的パフォーマンスや投資行動に与える影響を、実証分析によって多面的に分析することであった。従来のCSRにおける先行研究は、経済的パフォーマンスが高い企業ほど多くのCSRに投資できるという逆の因果関係を考慮していない。本研究は、同時方程式によってこのバイアスをコントロールしたうえで、環境保護、労働問題、社会貢献への取り組みというそれぞれのCSRと経済的パフォーマンスの関係を分析した。さらに、CSRの決定要因を分析することで企業活動にCSRを通して社会がどのような影響を与えることができるのかを考察した。研究によって、次の3点が明らかになった。第一に、CSRから経済的パフォーマンスへの因果関係とともに、経済的パフォーマンスからCSRへの因果関係も存在することが明らかになった。従来は、「CSRを積極的に行っている企業ほど経済的パフォーマンスが高い」という仮説が支配的であったが、「経済的パフォーマンスが高い企業ほど多くの資源を持つため、積極的にCSRを行うことができる」という逆の因果関係も確かに存在する。第二に、CSRの決定要因として企業のガバナンス構造が重要な役割を果たしていることが明らかになった。特に、企業株主、外国株主や個人株主、金融機関株主などの特殊な株主の影響力が強くCSRの投資計画に反映されることがわかった。第三に、株主のほとんどは自らの関心のあるCSR活動にのみ注目しており、戦略の一部としての全体的なCSR投資計画にはほとんど注意を払っていないことが明らかになった。また、特定のCSR活動に集中的に資源を投下するより、様々な種類のCSRに薄く広く資源を分散させるほうが経済的パフォーマンスは向上することが示された。本研究の目的は、産業規制や社会からの圧力などの企業外部の要因が、様々な産業における経済的パフォーマンスや投資行動に与える影響を、実証分析によって多面的に分析することであった。現在までのところ、産業規制が企業活動にほとんど影響を与えないこと、様々なCSR活動が企業パフォーマンスに与える影響を明らかにすることができた。24年度が最終年度であるため、記入しない。今後は、以下の4つの点を明らかにする予定である。第一に、CSRから経済的パフォーマンスへの因果関係とともに、経済的パフォーマンスからCSRへの因果関係も存在するかどうかについてより詳細に分析する。 | KAKENHI-PROJECT-23830030 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23830030 |
産業規制が企業活動に与える影響についての実証研究 | 第二に、CSRの決定要因として何が作用しているのかを分析する。第三に、CSRにおける株主の役割を分析する。これにより、CSRが企業活動に与える影響だけでなく、CSRの決定要因、ステークホルダーがCSRにおいて果たすべき役割を明らかにする。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-23830030 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23830030 |
ナイル川の水資源の配分の交渉プロセスの解明:中東政治変動との関連に着目して | 2018年度には、以下の研究活動を実施した。1.ナイル川の水資源をめぐる流域諸国間における配分について、国際関係の観点から研究するにあたり、現在流域諸国の間で争点となっているエチオピアでのルネサンスダム建設によって予想される水量の変化が水環境学の観点からどのように考えられているかについて、多くの専門書を読んだうえ、専門家への聞き取りを実施した。とりわけ三ヵ国(エジプト、エチオピア、スーダン)の技術的見解がどれほど政治に利用されたか、あるいは技術的意見がどのような政治的意図によってなされたかについて、様々なメディア媒体で確認し、その分析に着手している。2. 2019年3月から4月にかけて、スーダンで実施した現地調査においては、灌漑、外交、農業専門家およびジャーナリストへの聞き取り調査を通して、ナイルの水レジームにおけるスーダン政府の立場についての意見をうかがうことができた。同時期においては、スーダンの民衆蜂起の影響によって、インタビューの対象者全員に会うことができず、次回の調査に持ち越すことにした。3.現地調査中に多くの専門家と良好な関係を築き、エチオピアやエジプトなどの専門家を紹介していただくことができた。さらに、今後スーダン国内で実施される関連のワークショップの資料を共有していただけることになった。言うまでもなく、本研究を円滑に実施するのに専門家や研究者とのネットワークの強化が重要な課題であると思う。4.今後の計画に関して、研究計画案の時点では無かった重要な政治変動の一連の出来事を同テーマと関連付ける必要があるので、特にバシール政権崩壊におけるサウジ、UAEの関与と両国のナイル川水資源への関心とを結び付けた視点を新たに加えたい。初年度においては、文献研究に加え、1回の現地調査を実施した。計画通りに、スーダンの灌漑、外交、農業専門家に加え、多くのジャーナリストへのインタビューを実施した。2018年末から2019年4月まで続いたスーダンでの民衆蜂起は予測外の事態であったため、調査時のインタビュー関係者との調整をある程度難しくした。特に、ジャーナリストや現役の外交官へのインタビューがもっとも調整を要するものであった。1年目の研究の成果としては、2019年1月に京都大学でナイル川の水資源の配分に関する講演会を実施した。本研究会には60名を超す出席者が集い、出席者からヒントになる質問やコメントを多数いただいた。今年度では以下の研究活動を実施する予定である。現地調査:前年度に引き続き、現地調査を実施して、より多くの関係者とインタビューを重ねていく。渡航先はスーダンとエチオピアである。国際学会での発表:現地調査および2次資料から得られたデータに基づき、国際学会での発表を計画している。現時点では、米国南部政治学会での発表を検討している。国内の学術雑誌に論文投稿:日本人読者に研究成果を発表する機会として、日本語による論文を執筆投稿する。国際学術雑誌の論文投稿の準備:1年目及び2年目の調査・研究を踏まえた内容の論文を投稿する準備を進める。2018年度には、以下の研究活動を実施した。1.ナイル川の水資源をめぐる流域諸国間における配分について、国際関係の観点から研究するにあたり、現在流域諸国の間で争点となっているエチオピアでのルネサンスダム建設によって予想される水量の変化が水環境学の観点からどのように考えられているかについて、多くの専門書を読んだうえ、専門家への聞き取りを実施した。とりわけ三ヵ国(エジプト、エチオピア、スーダン)の技術的見解がどれほど政治に利用されたか、あるいは技術的意見がどのような政治的意図によってなされたかについて、様々なメディア媒体で確認し、その分析に着手している。2. 2019年3月から4月にかけて、スーダンで実施した現地調査においては、灌漑、外交、農業専門家およびジャーナリストへの聞き取り調査を通して、ナイルの水レジームにおけるスーダン政府の立場についての意見をうかがうことができた。同時期においては、スーダンの民衆蜂起の影響によって、インタビューの対象者全員に会うことができず、次回の調査に持ち越すことにした。3.現地調査中に多くの専門家と良好な関係を築き、エチオピアやエジプトなどの専門家を紹介していただくことができた。さらに、今後スーダン国内で実施される関連のワークショップの資料を共有していただけることになった。言うまでもなく、本研究を円滑に実施するのに専門家や研究者とのネットワークの強化が重要な課題であると思う。4.今後の計画に関して、研究計画案の時点では無かった重要な政治変動の一連の出来事を同テーマと関連付ける必要があるので、特にバシール政権崩壊におけるサウジ、UAEの関与と両国のナイル川水資源への関心とを結び付けた視点を新たに加えたい。初年度においては、文献研究に加え、1回の現地調査を実施した。計画通りに、スーダンの灌漑、外交、農業専門家に加え、多くのジャーナリストへのインタビューを実施した。2018年末から2019年4月まで続いたスーダンでの民衆蜂起は予測外の事態であったため、調査時のインタビュー関係者との調整をある程度難しくした。特に、ジャーナリストや現役の外交官へのインタビューがもっとも調整を要するものであった。1年目の研究の成果としては、2019年1月に京都大学でナイル川の水資源の配分に関する講演会を実施した。本研究会には60名を超す出席者が集い、出席者からヒントになる質問やコメントを多数いただいた。今年度では以下の研究活動を実施する予定である。現地調査:前年度に引き続き、現地調査を実施して、より多くの関係者とインタビューを重ねていく。渡航先はスーダンとエチオピアである。国際学会での発表:現地調査および2次資料から得られたデータに基づき、国際学会での発表を計画している。 | KAKENHI-PROJECT-18K12727 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K12727 |
ナイル川の水資源の配分の交渉プロセスの解明:中東政治変動との関連に着目して | 現時点では、米国南部政治学会での発表を検討している。国内の学術雑誌に論文投稿:日本人読者に研究成果を発表する機会として、日本語による論文を執筆投稿する。国際学術雑誌の論文投稿の準備:1年目及び2年目の調査・研究を踏まえた内容の論文を投稿する準備を進める。初年度に実施した調査の時期と英文原稿の校正作業が初年度支出の締め切りを過ぎてしまい次年度に繰り越されたからである。 | KAKENHI-PROJECT-18K12727 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K12727 |
タンパク質による生体膜の形態制御 | 最近、BARスーパーファミリータンパク質をはじめ、局所的に曲げるタンパク質が見つかっている。しかし、その膜形状の制御機構は不明な点が多い。本研究では多数の膜タンパク質分子の協同的な振る舞いに注目して、膜の形状がどのように制御されているかを、主に数値シミュレーションを用いて探求する。2018年度は、バナナ状の形状を持ち、一方向に膜を曲げるBARタンパク質のようなタンパク質におけるキラリティの効果を調べた。これまでに、タンパク質が膜チューブを楕円状に変形し、楕円の両端に2列になって凝集することがわかっているが、キラリティを加えると、さらにらせん状の凝集体への構造転移が起こることを明らかにした。平面膜からチューブ形成もキラリティによって促進されることがわかった。論文を投稿中である。また、タンパク質の吸着によって基板上の張り付いた脂質膜が剥離し、ベシクルを形成するダイナミクスについても研究を進めている。それ以外にナビエ・ストークス方程式の離散化に関する研究も行った。ナビエ・ストークス方程式は角運動量保存則のもとで導かれているが、ずれと体積変化の粘性項に縮退があるため、この方程式自体は角運動量保存を保証しない。そのため、この縮退項をそのストレス起源に基づいて分けて処理しなければ、角運動量保存が失われてしまうことを明らかにした。角運動量非保存の影響はバルクでは生じす、境界において人工的なトルクとして現れる。粘性の異なる相を含む混相流においては、相境界で角運動量を保存されることが、正しい流れが得るため不可欠である。計画通り、キラリティの効果、膜の剥離についての研究は順調に進んでいる。また、計画になかったナビエ・ストークス方程式の離散化に関する研究も行った。これは今後、流体力学相互作用を取り入れるための重要なステップである。2019年度は膜の剥離を始め、非平衡状態でのダイナミクスを中心に研究を進める予定である。最近、BARスーパーファミリータンパク質をはじめ、局所的に曲げるタンパク質が見つかっている。しかし、その膜形状の制御機構は不明な点が多い。本研究では多数の膜タンパク質分子の協同的な振る舞いに注目して、膜の形状がどのように制御されているかを、主に数値シミュレーションを用いて探求する。2017年度は、バナナ状の形状を持ち、一方向に膜を曲げるBARタンパク質のようなタンパク質に加えて、同じ符号の等方的な自発曲率を持つ添加物(膜貫入ペプチドや円錐状脂質など)がある場合の脂質膜の構造変化について調べた。バナナ状タンパク質によって、チューブ状の膜が形成されることがこれまでの研究でわかっていたが、同じ符号の等方的な添加物を加えた場合、チューブ形成が促進されることを明らかにした。また、逆の曲率を持つ場合、ネットワーク構造の形成によるチューブ形成の抑制や球状のコブ形成が行われることがわかった。正と負の自発曲率を持つ2種類の添加物を等量加えた場合、最初は無添加の時と同様の振る舞いを示すが、その後、正の曲率を持つ添加物が膜の突起部に濃縮されることにより、チューブ形成が促進されることを明らかにした。このように膜形状に依存して、分子濃度が変化し、膜形状変化のダイナミクスが大きく変わる。生体膜は多くの脂質分子、膜タンパク質から成るが、細胞の種類、部位に依存して、多様な分子分布を持つ。我々の研究結果はこれらの多様な分子分布が生体膜の膜変形にとっても重要であることを示している。計画どおり、バナナ状タンパク質による生体膜のチューブ形成が、同じ符号の等方的な自発曲率を持つタンパク質など添加物によって、促進されることを明らかにした。また、タンパク質吸着による膜の剥離やバナナ状タンパク質のキラリティの効果についても予備計算を行った。最近、BARスーパーファミリータンパク質をはじめ、局所的に曲げるタンパク質が見つかっている。しかし、その膜形状の制御機構は不明な点が多い。本研究では多数の膜タンパク質分子の協同的な振る舞いに注目して、膜の形状がどのように制御されているかを、主に数値シミュレーションを用いて探求する。2018年度は、バナナ状の形状を持ち、一方向に膜を曲げるBARタンパク質のようなタンパク質におけるキラリティの効果を調べた。これまでに、タンパク質が膜チューブを楕円状に変形し、楕円の両端に2列になって凝集することがわかっているが、キラリティを加えると、さらにらせん状の凝集体への構造転移が起こることを明らかにした。平面膜からチューブ形成もキラリティによって促進されることがわかった。論文を投稿中である。また、タンパク質の吸着によって基板上の張り付いた脂質膜が剥離し、ベシクルを形成するダイナミクスについても研究を進めている。それ以外にナビエ・ストークス方程式の離散化に関する研究も行った。ナビエ・ストークス方程式は角運動量保存則のもとで導かれているが、ずれと体積変化の粘性項に縮退があるため、この方程式自体は角運動量保存を保証しない。そのため、この縮退項をそのストレス起源に基づいて分けて処理しなければ、角運動量保存が失われてしまうことを明らかにした。角運動量非保存の影響はバルクでは生じす、境界において人工的なトルクとして現れる。粘性の異なる相を含む混相流においては、相境界で角運動量を保存されることが、正しい流れが得るため不可欠である。計画通り、キラリティの効果、膜の剥離についての研究は順調に進んでいる。また、計画になかったナビエ・ストークス方程式の離散化に関する研究も行った。これは今後、流体力学相互作用を取り入れるための重要なステップである。 | KAKENHI-PROJECT-17K05607 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K05607 |
タンパク質による生体膜の形態制御 | 2018年度はタンパク質吸着による膜の剥離やバナナ状タンパク質のキラリティの効果について研究する。また、細胞骨格によって生体膜に力が加わった時の形態変化についても研究を行う予定である。2019年度は膜の剥離を始め、非平衡状態でのダイナミクスを中心に研究を進める予定である。当初の予定より学会等の参加が少なかったため、旅費の利用が少なくなった。また、研究室の計算機の更新を次年度に行うため、次年度に多くの予算を繰り越した。次年度に計算機を購入するため、繰り越した。 | KAKENHI-PROJECT-17K05607 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K05607 |
フッ素系ポリマー/有機溶媒間相互作用とゾル-ゲル転移 | ポリ(フッ化ビニリデン)(PVdF)をケトンやラクトン類に高温で溶解させた後、室温近傍で冷却すると、溶液中のポリマーは特定のコンホメーションを形成しながら結晶化し、系全体はやがてゾル-ゲル転移を引き起こす。この研究ではPVdFのゲル化現象を、高分子/溶媒間の相互作用パラメーター(Flory-Hugginsのχパラメーター)に着目し、この熱力学的パラメーターの温度依存性を測定することことにより、より一般的に検討した。その結果、次の結論が得られた。1)PVdF/ケトン系やPVdF/ラクトン系のように、χパラメーターの値が0.5近傍となる系では、熱可逆性ゲルへ転移する。2)PVdF/ヘキサン系やPVdF/m-キシレン系のように、χ>>0.5となるような系では、マクロな固-液分離を引き起こしゲル化しない。3)PVdF/DMA系、PVdF/NMP系のように、χ<<0.5となるような系では、一相溶液を形成しゲル化しない。そこで、次にχの値が0.5近傍の値を示すPVdF/ケトン系、PVdF/ラクトン系に着目し、これらの溶媒中でのPVdF鎖のコンホメーション形成をin situ IR法で追跡したところ、次のことが明らかとなった。a)系の温度低下につれ、χの値が0.5を横切ってわずかに大きくなるようなシクロヘキサノン(ケトン類)を溶媒に用いると、PVdF鎖は繊維周期の短いTGTG'のコンホメーションを形成しながら結晶化し、直ちにゲル化していく。b)温度低下につれ、χの値が0.5に漸近するようなγ-ブチロラクトンを溶媒に用いると、PVdF鎖は繊維周期の長いTTTGTTTG'のコンホメーションを形成しながら結晶化し、非常にゆっくりゲル化していく。ポリ(フッ化ビニリデン)(PVdF)をケトンやラクトン類に高温で溶解させた後、室温近傍で冷却すると、溶液中のポリマーは特定のコンホメーションを形成しながら結晶化し、系全体はやがてゾル-ゲル転移を引き起こす。この研究ではPVdFのゲル化現象を、高分子/溶媒間の相互作用パラメーター(Flory-Hugginsのχパラメーター)に着目し、この熱力学的パラメーターの温度依存性を測定することことにより、より一般的に検討した。その結果、次の結論が得られた。1)PVdF/ケトン系やPVdF/ラクトン系のように、χパラメーターの値が0.5近傍となる系では、熱可逆性ゲルへ転移する。2)PVdF/ヘキサン系やPVdF/m-キシレン系のように、χ>>0.5となるような系では、マクロな固-液分離を引き起こしゲル化しない。3)PVdF/DMA系、PVdF/NMP系のように、χ<<0.5となるような系では、一相溶液を形成しゲル化しない。そこで、次にχの値が0.5近傍の値を示すPVdF/ケトン系、PVdF/ラクトン系に着目し、これらの溶媒中でのPVdF鎖のコンホメーション形成をin situ IR法で追跡したところ、次のことが明らかとなった。a)系の温度低下につれ、χの値が0.5を横切ってわずかに大きくなるようなシクロヘキサノン(ケトン類)を溶媒に用いると、PVdF鎖は繊維周期の短いTGTG'のコンホメーションを形成しながら結晶化し、直ちにゲル化していく。b)温度低下につれ、χの値が0.5に漸近するようなγ-ブチロラクトンを溶媒に用いると、PVdF鎖は繊維周期の長いTTTGTTTG'のコンホメーションを形成しながら結晶化し、非常にゆっくりゲル化していく。フッ素系ポリマーであるポリ(フッ化ビニリデン)(PVdF)は結晶変態を有する代表的なポリマーである。このポリマーは現在、Liイオンバッテリーのゲルバインダーとして利用されている。本研究は、このような現状をふまえ、熱力学的により安定なPVdFゲルを作るための条件を検討した。まず、PVdFゲルの生成条件を検討するための1つの手段として高分子/有機溶媒間の相互作用パラメーターχ_<12>をIGC法から見積もり、χ_<12>とPVdFのゲル形成能の関係を検討した。また、PVdF溶液のゲル化過程をin situ IR法で追跡し、ゲル化機構とゲル構造を検討し、以下の結論を得た。1.χ_<12>パラメーターの値が室温近傍でχ_<12>≫0.5となるヘキサンやキシレンなどのアルカン系やアルケン系の有機溶媒中では固/液分離を起こしゲル化しない。また、χ_<12>≪0.5になるN-メチル-2-ピロリジノンやジメチルアセトアミドなどの有機溶媒中では、1相溶液となりゲル化しない。これらに対し、χ_<12>≒0.5となるシクロヘキサノンなどのケトン類やラクトン類中で熱力学的に安定なゲルを生成する。2.ゲル化する系であるシクロヘキサノンなどのケトン類中ではPVdF鎖は、TGTG'のコンホメーションを形成して結晶化し、ゲル化する。ラクトン類であるγ-ブチロラクトンやエステル類であるプロピレンカーボネート中では、T_3GT_3G'のコンホメーションを形成して結晶化し、ゲル化する。 | KAKENHI-PROJECT-14550852 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14550852 |
フッ素系ポリマー/有機溶媒間相互作用とゾル-ゲル転移 | ポリ(フッ化ビニリデン)(PVdF)をケトンやラクトン類に高温で溶解させた後、室温近傍で冷却すると、溶液中のポリマーは特定のコンホメーションを形成しながら結晶化し、系全体はやがてゾル-ゲル転移を引き起こす。この研究ではPVdFのゲル化現象を、高分子/溶媒間の相互作用パラメーター(Flory-Hugginsのχパラメーター)に着目し、この熱力学的パラメーターの温度依存性を測定することにより、より一般的に検討した。その結果、次の結論が得られた。1)PVdF/ケトン系やPVdF/ラクトン系のように、χパラメーターの値が0.5近傍となる系では、熱可逆性ゲルへ転移する。2)PVdF/ヘキサン系やPVdF/m-キシレン系のように、χ>>0.5となるような系では、マクロな固-液分離を引き起こしゲル化しない。3)PVdF/DMA系、PVdF/NMP系のように、χ<<0.5となるような系では、一相溶液を形成しゲル化しない。そこで、次にχの値が0.5近傍の値を示すPVdF/ケトン系、PVdF/ラクトン系に着目し、これらの溶媒中でのPVdF鎖のコンホメーション形成をin situ IR法で追跡したところ、次のことが明らかとなった。a)系の温度低下につれ、χの値が0.5を横切ってわずかに大きくなるようなシクロヘキサノン(ケトン類)を溶媒に用いると、PVdF鎖は繊維周期の短いTGTG'のコンホメーションを形成しながら結晶化し、直ちにゲル化していく。b)温度低下につれ、χの値が0.5に漸近するようなγ-ブチロラクトンを溶媒に用いると、PVdF鎖は繊維周期の長いTTTGTTTG'のコンホメーションを形成しながら結晶化し、非常にゆっくりゲル化していく。 | KAKENHI-PROJECT-14550852 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14550852 |
オーフス条約遵守委員会が議会オンブズマンの環境分野での活動に与える影響の研究 | 平成30年度に本研究は、オーフス条約遵守委員会(ACCC)と議会オンブズマンの関係性を明らかにすべく、スウェーデンとアイルランドで現地調査を実施した。ACCCは、「情報へのアクセス・意思決定への市民参加・環境案件に関する審査機関へのアクセスに関する条約(オーフス条約)」の実効性を担保する為に設置された、条約保護機関である。そのオーフス条約は、環境行政意思決定のアカウンタビリティを確保することを目的として、締結された欧州地域を中心とする地域的枠組である。オーフス条約は、環境行政意思決定のアカウンタビリティを確保する為の法的枠組の構築を促進する世界的な動きの中で、特に地域的枠組が重要な役割を果たしているという典型例である。他方、議会オンブズマンは、議院内閣制諸国において行政意思決定のアカウンタビリティを確保する上で鍵となる、公式の査問手続の場たる審査機関の一つである。議会オンブズマンは、様々な行政分野に関する一般管轄を有するが、地球規模での環境問題の進行に伴い、近年は環境分野での活動を強めている。スウェーデンとアイルランドでは、議会オンブズマンが環境分野での活動に特に熱心に取り組んでいるだけでなく、両国内にACCC委員の活動拠点が存在する。両国の議会オンブズマンは、典型的オンブズマンであるが、アイルランドでは更に環境情報コミッショナーも兼任する。そこで、本研究は、このような国内法体系上の枠組の違いに対する地域的枠組の影響の有無を明らかにするために、両国に於いて、ACCCの存在が議会オンブズマンの活動に与えている影響に関する調査を実施した。その長期的な狙いは、環境行政意思決定のアカウンタビリティを確保する為の法的枠組の全体像をより正確に把握することである。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成29年度に本研究は、オーフス条約遵守委員会(ACCC)と環境オンブズマンの関係性を明らかにすべく、オーストリアとハンガリーで現地調査を実施した。ACCCは、「情報へのアクセス・意思決定への市民参加・環境案件に関する審査機関へのアクセスに関する条約(オーフス条約)」の実効性を担保する為に設置された、条約保護機関である。そのオーフス条約は、環境行政意思決定のアカウンタビリティを確保することを目的として、締結された欧州地域を中心とする地域的枠組である。オーフス条約は、環境行政意思決定のアカウンタビリティを確保する為の法的枠組の構築を促進する世界的な動きの中で、特に地域的枠組が重要な役割を果たしているという典型例である。他方、環境オンブズマンは、行政意思決定のアカウンタビリティを確保する上で鍵となる、公式の査問手続の場たる審査機関の一つである議会オンブズマンの一形態で、環境分野に特化した管轄を有するものを指す。従って、環境オンブズマンは、国内法体系上の枠組に分類される。オーストリアとハンガリーは、オーフス条約締約国の中で、環境オンブズマン制度の採用実績がある代表的な二国である。しかしながら、両国は同じ法系に属するとは云え、オーストリアの環境オンブズマンが、議会オンブズマン制度の典型からはかなり乖離した権限を有するのとは対照的に、ハンガリーの環境オンブズマンは、議会オンブズマン制度の典型に忠実な形で発達した。そこで、本研究は、このような国内法体系上の枠組の違いに対する地域的枠組の影響の有無を明らかにするために、両国に於いて、ACCCの存在が環境オンブズマンの活動に与えている影響に関する調査を実施した。その長期的な狙いは、環境行政意思決定のアカウンタビリティを確保する為の法的枠組の全体像をより正確に把握することである。平成29年度に於いて、本研究は、まず基本的文献の収集と分析を行い、現地調査の準備を行った。そして、準備を基礎に、現地調査計画と個別調査票を作成し、主要関係各機関に調査協力を要請した。研究代表者が所属するthe International Ombudsman Institute (IOI)の支援を受けたこともあり、幸いにして、要請を出した殆どの機関からの調査協力を受けることが出来た。現地での聞き取り調査は、2018年2月末から3月下旬に掛けて、オーストリアとハンガリーで実施された。オーストリアで特に重視していたことは、全九州の環境オンブズマンから出来るだけ多く聞き取りを行う事であったが、当職者が不在の一州を除く八州の環境オンブズマンから聞き取りを行う事ができた。また、ACCC関係者を含む主要関係者の全てに聞き取り調査を敢行できたことは、大きな成果と云える。また、ハンガリーに於いても、ACCC関係者と環境担当の議会副オンブズマンを含む主要関係者の全てに聞き取り調査を敢行できたので、全体として現地調査は大成功であったと云える。オーストリアとハンガリーに於ける現地調査に基づいたACCCと環境オンブズマンの関係性について分析した内容は、当初の予定通り、2018年度の国内外の学会にて口頭発表を行って、フィードバックを得た後に英文論文として発表する。これにより、ACCCが議会オンブズマンの環境分野に於ける活動に与える影響の一端が解明される。平成30年度に本研究は、オーフス条約遵守委員会(ACCC)と議会オンブズマンの関係性を明らかにすべく、スウェーデンとアイルランドで現地調査を実施した。ACCCは、「情報へのアクセス・意思決定への市民参加・環境案件に関する審査機関へのアクセスに関する条約(オーフス条約)」の実効性を担保する為に設置された、条約保護機関である。 | KAKENHI-PROJECT-17H07177 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H07177 |
オーフス条約遵守委員会が議会オンブズマンの環境分野での活動に与える影響の研究 | そのオーフス条約は、環境行政意思決定のアカウンタビリティを確保することを目的として、締結された欧州地域を中心とする地域的枠組である。オーフス条約は、環境行政意思決定のアカウンタビリティを確保する為の法的枠組の構築を促進する世界的な動きの中で、特に地域的枠組が重要な役割を果たしているという典型例である。他方、議会オンブズマンは、議院内閣制諸国において行政意思決定のアカウンタビリティを確保する上で鍵となる、公式の査問手続の場たる審査機関の一つである。議会オンブズマンは、様々な行政分野に関する一般管轄を有するが、地球規模での環境問題の進行に伴い、近年は環境分野での活動を強めている。スウェーデンとアイルランドでは、議会オンブズマンが環境分野での活動に特に熱心に取り組んでいるだけでなく、両国内にACCC委員の活動拠点が存在する。両国の議会オンブズマンは、典型的オンブズマンであるが、アイルランドでは更に環境情報コミッショナーも兼任する。そこで、本研究は、このような国内法体系上の枠組の違いに対する地域的枠組の影響の有無を明らかにするために、両国に於いて、ACCCの存在が議会オンブズマンの活動に与えている影響に関する調査を実施した。その長期的な狙いは、環境行政意思決定のアカウンタビリティを確保する為の法的枠組の全体像をより正確に把握することである。本年度は、スウェーデン・アイルランド・ストラスブールに於ける現地調査を行い、ACCCと議会オンブズマン及び欧州オンブズマンの関係性を明らかにする。数ある議会オンブズマンの内、スウェーデンとアイルランドを選択したのは、両オンブズマンが環境分野での活動に熱意を以て取り組んでいることと、両国内にACCC委員の活動拠点が存在するからである。調査の準備に関しては、昨年度同様に主要関連文献の収集と分析を基礎として進めるが、更に昨年度の研究の成果を反映させて、より良い現地調査計画書と個別調査票の準備に努めてゆきたい。2018年8月末から9月に掛けて、スウェーデン・アイルランド・ストラスブールで主要関係者を対象とした現地調査を行う。調査対象人数は、各国・地域共に、ACCC委員、議会オンブズマンまたは欧州オンブズマンと主要関係者を中心に、十名程度を想定している。現地調査の実施期間は、対象の夏季休暇との調整を要するが、三週間程度の滞在を想定している。その内訳は、各国・地域に一週間ずつの調査日程を想定している。スウェーデン・アイルランド・ストラスブールに於ける現地調査に基づいたACCCと議会オンブズマン及び欧州オンブズマンの関係性について分析した内容は、2019年度の国内外の学会にて口頭発表を行って、フィードバックを得た後に英文論文として発表する予定である。これにより、ACCCが議会オンブズマンの環境分野に於ける活動に与える影響の解明が一層進む。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成29年度に行った本研究現地調査の成果を基礎に、本年5月に開催されるInternational Ombudsman Instituteの環境統治に関する国際ワークショップに於いて、作業部会の共同議長を務める。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-17H07177 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H07177 |
葉緑体形質転換に基づく葉緑体遺伝子の機能解析 | 本研究は、タバコの葉緑体ゲノムに存在するycfの機能を解明すること、及びycfの発現の基盤となる核コードの制御因子を探索し、その機能を解明することを目的として行われた。得られた主な成果は、以下の通りである。(1)ycf5(orf313)ノックアウトタバコを2株が得ることに成功した。ycf5ノックアウトタバコは、光化学系の電子伝達が顕著に低下していることを明らかにした。(2)葉緑体と進化的に近縁な、ラン藻の低分子RNA(tmRNA)遺伝子を初めて明らかにした。タバコなど高等植物の葉緑体DNAにはtmRNA遺伝子が存在しないことから、細胞内共生の結果、葉緑体DNAから欠失したと考えられる。(3)タバコ葉緑体RNA結合蛋白質(cpRNP)がストロマ中の(m)RNAの安定性に関与していることを明らかにした。また、cpRNPに結合しているRNA分子種を網羅的に調べるため、葉緑体DNAマイクロアレーを開発し解析に用いた。その結果、光合成関連mRNAおよびイントロンをもつRNA前駆体にcpRNP抗体が結合していることを明らかにした。本研究は、タバコの葉緑体ゲノムに存在するycfの機能を解明すること、及びycfの発現の基盤となる核コードの制御因子を探索し、その機能を解明することを目的として行われた。得られた主な成果は、以下の通りである。(1)ycf5(orf313)ノックアウトタバコを2株が得ることに成功した。ycf5ノックアウトタバコは、光化学系の電子伝達が顕著に低下していることを明らかにした。(2)葉緑体と進化的に近縁な、ラン藻の低分子RNA(tmRNA)遺伝子を初めて明らかにした。タバコなど高等植物の葉緑体DNAにはtmRNA遺伝子が存在しないことから、細胞内共生の結果、葉緑体DNAから欠失したと考えられる。(3)タバコ葉緑体RNA結合蛋白質(cpRNP)がストロマ中の(m)RNAの安定性に関与していることを明らかにした。また、cpRNPに結合しているRNA分子種を網羅的に調べるため、葉緑体DNAマイクロアレーを開発し解析に用いた。その結果、光合成関連mRNAおよびイントロンをもつRNA前駆体にcpRNP抗体が結合していることを明らかにした。葉緑体DNAには光合成や転写・翻訳などに働くおよそ100種類の遺伝子と未だ機能のわからないオープンリーディングフレーム(ORF)が多数存在する。本研究はタバコの葉緑体ゲノムに存在するORFの機能を解明すること、及び新規の低分子RNA遺伝子を探索しその機能を解明することを目的とする。(1)タバコ葉緑体ORFのうち、保存ORFであるycf1(orf1901)、ycf2(orf2280)、ycf5(orf313)、ycf6(orf29)の転写単位を明らかにした。ycf5とycf6は緑葉(葉緑体)でその転写物が検出されたが、タバコ培養細胞BY-2(原色素体)では検出されなかった。このことはycf5とycf6が光合成機能を担っている可能性が高いことを示唆している。ycf1とycf2の転写物は葉緑体と原色素体でほぼ同レベル蓄積していることを明らかにした。(2) ycf1、ycf2、ycf5、ycf6の遺伝子コード領域をaadA遺伝子(スペクチノマイシン耐性を付与する)で置換した遺伝子ターゲッテイングのためのプラスミドを作製した。これらのプラスミドをタバコの葉にパーティクルガン法で導入した。現在、ycf1ノックアウトタバコと想定される葉緑体形質転換タバコが得られた。(3)葉緑体と進化的に近い光合成細菌の一種であるラン藻の低分子RNA10SaRNA(tmRNA)ホモログの存在を明らかにした。タバコ葉緑体ゲノムにも10SaRNA遺伝子が存在するかどうかを相同性検索したが、相同配列を見い出すことができなかった。本研究はタバコの葉緑体ゲノムに存在するycfの機能を解明すること、及び新規の低分子RNA遺伝子を探索しその機能を解明することを目的とする。(1)タバコ葉緑体のycf1、ycf2(orf2280)、ycf5(orf313)、ycf6(orf29)のコード領域をaadA遺伝子(スペクチノマイシン耐性を付与する)で置換したプラスミドを3種類のタバコ栽培品種ブライトイエロー4、キサンチ、プチハバナそれぞれの葉にパーテイクルガン法で導入した。その結果、キサンチが葉緑体形質転換実験に適した品種であることを明らかにした。(2)ycf1ノックアウトタバコと想定される葉緑体形質転換株が得られた。タバコの葉の形態異常、未発達葉緑体の形成、光化学系2の活性低下が観察された。(3)葉緑体ゲノムの新規の低分子RNA遺伝子探索のためのツールとして、タバコ葉緑体DNAマイクロアレイを作製した。本研究は、タバコの葉緑体ゲノムに存在するycfの機能を解明すること、及びycfの発現の基盤となる核コードの制御因子を探索しその機能を解明することを目的とする。(1)ycf5(orf313)ノックアウトタバコを2株が得ることに成功した。ycf5ノックアウトタバコは、光化学系の電子伝達が顕著に低下していることを明らかにした。(2)タバコ葉緑体RNA結合蛋白質(cpRNP)がストロマ中の(m)RNAの安定性に関与していることを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-10440238 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10440238 |
葉緑体形質転換に基づく葉緑体遺伝子の機能解析 | また、cpRNPに結合しているRNA分子種を網羅的に調べるため、葉緑体DNAマイクロアレーを用いた解析を行った。その結果、光合成関連mRNAおよびイントロンをもつRNA前駆体にcpRNP抗体が結合していることを明らかにした。(3)Nicotiana sylvestrisのファージ型RNAポリメラーゼをコードする3種の遺伝子(RpoT-A、RpoT-B、RpoT-C)の構造を明らかにした。RpoT-AとRpoT-Bは19個のエキソンと18個のイントロンから、RpoT-Cは21個のエキソンと20個のイントロンで構成されていた。このうち、RpoT-Aはミトコンドリアに、RpoT-Bはミトコンドリアと葉緑体の両方に移行し局在することを明らかにした。これに対して、RpoT-Cはオルガネラに局在性しない、RpoT-Aと-Bとは異なる新規のファージ型RNAポリメラーゼであることを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-10440238 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10440238 |
任意の形状寸法を持つ物体の効果的な励振及び電波放射の効率化に関する研究 | 本研究は,携帯電話や携帯情報端末などのアンテナまたは機器の効率的な励振方法を明らかにすることをねらいとして,機器の形状寸法の放射に対する効果の検討および励振素子とその配置についての検討を行った.携帯端末用アンテナにλ/4モノポールアンテナを用いたときの解析を行い,その放射特性と筐体上に流れる電流の関係について明らかにした.また,放射特性の改善をねらいとして,筐体上に電流制御素子を設け,それによる放射特性の改善を研究した.その素子を筐体上に設置した場合の筐体上の電流分布,放射パターン,インピーダンス特性を解析し,素子の効果を明らかにした.携帯端末に内蔵可能なアンテナとしてメアンダラインアンテナ(MLA)を取り上げた.MLAを地板および直方導体の面に平行に設けた場合のインピーダンス特性を明らかにし,MLAの素子を2線式にすることで広帯域化を図った.偏波ダイバーシチ方式を採用したパッチアンテナを取り上げ,その放射特性を数値解析および試作実験により明らかにした.パッチに用いる基板の比誘電率上げて小形化を図り,その場合でもパターンの形状が変化しないことを示した.スタブによる広帯域整合を行うことにより,BWR(比帯域)を4.4%とすることができた.広帯域化が可能な携帯端末用小形アンテナとして,小形板状アンテナ(SPA)を取り上げ,そのインピーダンス特性を解析し,広帯域化の方法について研究した.有限要素法を用いて,2板式SPA,3板式SPAのインピーダンス特性を数値解析し,板状導体を複数用いることによる広帯域化の方法について明らかにした.結果として,VSWR≦3の比帯域幅が,2板式SPAで12.2%,3板式SPAでは14.95%得ることができた.本研究は,携帯電話や携帯情報端末などのアンテナまたは機器の効率的な励振方法を明らかにすることをねらいとして,機器の形状寸法の放射に対する効果の検討および励振素子とその配置についての検討を行った.携帯端末用アンテナにλ/4モノポールアンテナを用いたときの解析を行い,その放射特性と筐体上に流れる電流の関係について明らかにした.また,放射特性の改善をねらいとして,筐体上に電流制御素子を設け,それによる放射特性の改善を研究した.その素子を筐体上に設置した場合の筐体上の電流分布,放射パターン,インピーダンス特性を解析し,素子の効果を明らかにした.携帯端末に内蔵可能なアンテナとしてメアンダラインアンテナ(MLA)を取り上げた.MLAを地板および直方導体の面に平行に設けた場合のインピーダンス特性を明らかにし,MLAの素子を2線式にすることで広帯域化を図った.偏波ダイバーシチ方式を採用したパッチアンテナを取り上げ,その放射特性を数値解析および試作実験により明らかにした.パッチに用いる基板の比誘電率上げて小形化を図り,その場合でもパターンの形状が変化しないことを示した.スタブによる広帯域整合を行うことにより,BWR(比帯域)を4.4%とすることができた.広帯域化が可能な携帯端末用小形アンテナとして,小形板状アンテナ(SPA)を取り上げ,そのインピーダンス特性を解析し,広帯域化の方法について研究した.有限要素法を用いて,2板式SPA,3板式SPAのインピーダンス特性を数値解析し,板状導体を複数用いることによる広帯域化の方法について明らかにした.結果として,VSWR≦3の比帯域幅が,2板式SPAで12.2%,3板式SPAでは14.95%得ることができた.携帯端末の筐体に設けるアンテナの方式および設置方法について検討するとともに、筐体に流れる電流の解析および流れる電流を変える方法について検討を行った。取り上げたアンテナ方式としては、メアンダラインアンテナ、小形板状アンテナおよびパッチアンテナである。メアンダラインアンテナについては筐体に取付けた場合の特性を、小形板状アンテナについてはその基本特性を明らかにした。また、パッチアンテナについては垂直および水平の偏波を共用し、それらを切替えて使用するダイバーシチアンテナの可能性について明らかにした。筐体に流れる電流の解析では、アンテナをユニポールとして筐体に流れる電流を含めて数値解析するとともにその放射特性を及ぼす影響について明かにしている。さらに、放射特性に悪い影響を与える電流について、筐体上に電流抑圧素子を設けてコントロールする手法について検討を行い、有効に動作することを明かにしている。これらのアンテナを解析する手法については、モーメント法、FD-TD法、有限要素法などについて、数値解析用ソフトを準備するとともに、その特徴をみながら、実際のアンテナへの適用をはかっている。上述の解析では、メアンダラインアンテナおよび電流抑圧素子の解析にはモーメント法を用い、板状アンテナおよびパッチアンテナでは有限要素法の適用を試みている。なお、数値解析結果に付いては実験により確認を行っている。携帯電話などの携帯端末に設けるアンテナの方式とその設置方法について検討し,端末の筐体に流れる電流の解析および流れる電流を制御し放射特性を改善する方法について研究した.取り扱ったアンテナの方式は,モノポールアンテナ,メアンダラインアンテナ,小形板状アンテナおよびパッチアンテナであり,筐体に流れる電流の解析についてはモノポールアンテナを設けた場合について重点的に行った.メアンダラインアンテナでは,筐体に設けた場合の広帯域化について研究し,小形板状アンテナについては,アンテナそのものの広帯域化について研究した.パッチアンテナについては筐体に設けた場合について,垂直,水平両偏波の放射特性と,インピーダンス特性について解析した. | KAKENHI-PROJECT-11650357 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11650357 |
任意の形状寸法を持つ物体の効果的な励振及び電波放射の効率化に関する研究 | 筐体に流れる電流の解析については,アンテナと筐体上に流れる電流が,数値的にどの程度流れ,その振幅と位相についてモーメント法を用いて解析し,その電流が与える放射特性への影響について考察した.また,携帯端末の放射特性での問題点を,筐体に流れる電流との関係から明らかにし,問題の改善方法として筐体電流制御素子を設け,その効果について研究した.結果として,電流制御素子を設けることにより,筐体上に流れる電流の制御がある程度可能となり,電流制御素子が無い場合に比べて,天頂方向への不要な放射を抑圧し,基地局方向への放射の利得を4.5dB増加することができた.これらの研究成果は,別途提出する研究成果報告書としてまとめ,4月に提出する予定である. | KAKENHI-PROJECT-11650357 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11650357 |
ラット角膜移植片拒絶反応に対するイムノフィリンリガンドの免疫薬理作用の研究 | 目的:Immunophilin Iigandに属する免疫抑制剤であるFK506の点眼薬を用いて、ラットにおける同種角膜移植片拒絶反応抑制効果について検討を行った。方法:ドナーとしてフィシャーラット、レシピエントとしてルイスラットを用いた同種全層角膜移植術を行い、0.3%、0.05%、0.01%FK506点眼薬の効果を移植片の術後臨床所見、角膜移植片生存率、免疫組織病理学的所見について検討した。結果:0.3%FK506点眼治療群は、術後15日目の臨床所見で、対象群に比較して有意に(p<0.006)角膜移植片拒絶反応を抑制し、移植片生存率は術語13日で対象群に比較して有意に(P<0.009)移植片の生存率が高かった。この拒絶反応抑制効果は、FK506の用量依存的に認められた。術後14日での病理所見では対象群の移植片は、著明に肥厚し、角膜実質には炎症細胞浸潤と血管新生が認められたが、FK506点眼治療群では、角膜移植片は、正常の厚さで、炎症細胞や新生血管の浸潤は殆ど認められなかった。免疫染色の結果では、対象群では、角膜固有細胞やリンパ系細胞にMHCクラス1,クラス11抗原および細胞接着分子(ICAN-1 ,LFA-1)の発現が強く認められたが、0.3%FK506点眼治療群では、これらの発現が抑制されていた。また、全層角膜移植術を行った眼に0.3%FK506点眼を行ったところ全血中には点眼後60分で平均4.8ng/ml、180分で1.5ng/ml、前房内では点眼後60分で13.7ng/ml、180分で2.9ng/mlの濃度のFK506が確認された。以上よりFK506点眼薬はラットを用いた同種角膜移植片拒絶反応の抑制に極めて有効で、点眼療法は全身的な薬物の副作用を軽減するうえで有用と考えられ、ヒト角膜移植への応用の可能性が示唆された。目的:Immunophilin Iigandに属する免疫抑制剤であるFK506の点眼薬を用いて、ラットにおける同種角膜移植片拒絶反応抑制効果について検討を行った。方法:ドナーとしてフィシャーラット、レシピエントとしてルイスラットを用いた同種全層角膜移植術を行い、0.3%、0.05%、0.01%FK506点眼薬の効果を移植片の術後臨床所見、角膜移植片生存率、免疫組織病理学的所見について検討した。結果:0.3%FK506点眼治療群は、術後15日目の臨床所見で、対象群に比較して有意に(p<0.006)角膜移植片拒絶反応を抑制し、移植片生存率は術語13日で対象群に比較して有意に(P<0.009)移植片の生存率が高かった。この拒絶反応抑制効果は、FK506の用量依存的に認められた。術後14日での病理所見では対象群の移植片は、著明に肥厚し、角膜実質には炎症細胞浸潤と血管新生が認められたが、FK506点眼治療群では、角膜移植片は、正常の厚さで、炎症細胞や新生血管の浸潤は殆ど認められなかった。免疫染色の結果では、対象群では、角膜固有細胞やリンパ系細胞にMHCクラス1,クラス11抗原および細胞接着分子(ICAN-1 ,LFA-1)の発現が強く認められたが、0.3%FK506点眼治療群では、これらの発現が抑制されていた。また、全層角膜移植術を行った眼に0.3%FK506点眼を行ったところ全血中には点眼後60分で平均4.8ng/ml、180分で1.5ng/ml、前房内では点眼後60分で13.7ng/ml、180分で2.9ng/mlの濃度のFK506が確認された。以上よりFK506点眼薬はラットを用いた同種角膜移植片拒絶反応の抑制に極めて有効で、点眼療法は全身的な薬物の副作用を軽減するうえで有用と考えられ、ヒト角膜移植への応用の可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-06671785 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06671785 |
混合セメント利用によるアルカリ骨材反応抑止のメカニズム | スラグのアルカリ骨材反応抑制効果には、稀釈効果以外の固有の抑制効果があり、コンクリート中における骨材反応量が顕著に低下している。スラグの水和により、コンクリート中の固相水酸化カルシウム量および液相水酸化カルシウム濃度が低下するために、生成ゲルの流動性が大きくなり、このことがアルカリ骨材反応による膨張を抑制するメカニズムであると考える説もあるが、本研究の一連の試験結果はこの説を支持するものではない。反応が抑制されていることは、薄片の顕微鏡観察によっても、選択溶解法の測定結果からも明らかであるが、反応は骨材表面全体から均一に進行するのではなく、骨材内部に亀裂を貫入しながら不均一に進行している。均質な化学組成を有するパイレックスガラスを骨材として使用しながら、このような実験結果を得たことは、アルカリ骨材反応による膨張メカニズムに関して有意義な知見となると考えられるが、今後の充分な検討が必要である。反応抑制効果としては以下の3点を挙げることができるが、すべての効果が相乗的に現われていると考えられ、いずれが特に優勢であるかは未だ明らかではなく、その情況は試験条件によって変化しているかもしれない。(1)稀釈効果混入率を50%にするとかなり過酷な条件下においても著しい膨張抑制効果を示し、稀釈効果以外の積極的な抑制効果が存在することは明らかで、特にスラグ混入率が大きい場合にこの作用は著しい。(2)吸着固定化効果未反応スラグへ吸着はほとんどないとしても、水和生成物は、クリンカー化合物からの生成物より低C/S比となり、アルカリイオンなどの吸着量はいくらかでも大きくなるはずである。(3)移動抑止効果スラグを含むコンクリート中におけるアルカリイオンなどの移動速度は遅い。この効果もスラグのアルカリ骨材反応抑制効果一翼をになっているにちがいない。スラグのアルカリ骨材反応抑制効果には、稀釈効果以外の固有の抑制効果があり、コンクリート中における骨材反応量が顕著に低下している。スラグの水和により、コンクリート中の固相水酸化カルシウム量および液相水酸化カルシウム濃度が低下するために、生成ゲルの流動性が大きくなり、このことがアルカリ骨材反応による膨張を抑制するメカニズムであると考える説もあるが、本研究の一連の試験結果はこの説を支持するものではない。反応が抑制されていることは、薄片の顕微鏡観察によっても、選択溶解法の測定結果からも明らかであるが、反応は骨材表面全体から均一に進行するのではなく、骨材内部に亀裂を貫入しながら不均一に進行している。均質な化学組成を有するパイレックスガラスを骨材として使用しながら、このような実験結果を得たことは、アルカリ骨材反応による膨張メカニズムに関して有意義な知見となると考えられるが、今後の充分な検討が必要である。反応抑制効果としては以下の3点を挙げることができるが、すべての効果が相乗的に現われていると考えられ、いずれが特に優勢であるかは未だ明らかではなく、その情況は試験条件によって変化しているかもしれない。(1)稀釈効果混入率を50%にするとかなり過酷な条件下においても著しい膨張抑制効果を示し、稀釈効果以外の積極的な抑制効果が存在することは明らかで、特にスラグ混入率が大きい場合にこの作用は著しい。(2)吸着固定化効果未反応スラグへ吸着はほとんどないとしても、水和生成物は、クリンカー化合物からの生成物より低C/S比となり、アルカリイオンなどの吸着量はいくらかでも大きくなるはずである。(3)移動抑止効果スラグを含むコンクリート中におけるアルカリイオンなどの移動速度は遅い。この効果もスラグのアルカリ骨材反応抑制効果一翼をになっているにちがいない。 | KAKENHI-PROJECT-61550336 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61550336 |
脳内のチオシアン酸イオン排出速度の非侵襲的定量測定法の開発とその排出機構解明 | 身近な食品等の摂取により、生体内では毒物としてよく知られるシアン化物イオン(CN-)が生成されるが、CN-はさらに代謝を受けチオシアン酸イオン(SCN-)となる。SCN-は神経障害を引き起こす中枢毒性を持つため、脳にはSCN-を排出することでSCN-の脳内濃度を低く保つ機構が存在すると考えられているが、その実体は未だ不明である。従って、SCN-排出能の非侵襲的な測定およびその排出機構の解明はSCN-の中枢毒性の評価に大きく貢献すると考えられる。そこで、本研究では脳からのSCN-排出速度を非侵襲的に定量測定するための方法を開発する。身近な食品等の摂取により、生体内では毒物としてよく知られるシアン化物イオン(CN-)が生成されるが、CN-はさらに代謝を受けチオシアン酸イオン(SCN-)となる。SCN-は神経障害を引き起こす中枢毒性を持つため、脳にはSCN-を排出することでSCN-の脳内濃度を低く保つ機構が存在すると考えられているが、その実体は未だ不明である。従って、SCN-排出能の非侵襲的な測定およびその排出機構の解明はSCN-の中枢毒性の評価に大きく貢献すると考えられる。そこで、本研究では脳からのSCN-排出速度を非侵襲的に定量測定するための方法を開発する。 | KAKENHI-PROJECT-19K08241 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K08241 |
身体感覚増幅現象から捉えた精神・心理的疼痛の診断と治療 | 最終年度は、対象施設の大学病院心療内科外来患者を対象とした診療データベースの解析を完成させ、国際雑誌のゲスト・エディターとなって特集企画を組み(企画名:psychosomatic medicine、雑誌名:Journal of Clinical Medicine)、論文刊行を進めた。具体的には、研究代表者と研究分担者が診療をし、過去10年間に当科外来を初診受診した患者のうち、痛みを含む身体愁訴を訴える心身症患者604人の身体愁訴の発現、身体感覚増幅、失感情症、不安、うつ、適応度などの関連を検討した。その結果、心理社会的ストレスが失感情症と身体感覚過敏を介し、痛みにつながるまでの心理メカニズムに関して知見が得られた(Nakao M & Takeuchi T. Journal of Clinical Medicine 2018 May 10;7(5). pii: E112)。そのメカニズムに対するうつや不安の精神状態の影響や、過剰適応傾向が果たす役割についても共分散構造解析(構造方程式モデリング)によって定量的な評価を行った。その結果、過剰適応・うつ・不安の3者が相互に関連し合っている(mutual effect)ことを示した。また、過剰適応と不安は心理社会的ストレスに対して、うつは失感情症に対して影響(causal effect)を与え、身体感覚の増幅、身体愁訴の出現につながるメカニズムを明らかにした。また治療研究として、心因性疼痛に関する認知行動療法による6週間の治療プログラムの開発を進め、そのプログラムを適用したランダム化比較試験の効果についてまとめている。当大学医学部附属病院心療内科の外来患者を対象とした診療データベースを作成し、疼痛の発生部位と心理社会的ストレス・気分状態などとの関連について明らかにした。心理質問紙としては、1身体感覚増幅尺度(計10項目、50点満点)、2トロント式失感情症スケール(心身症の傾向を反映、計20項目、100点満点)、3気分調査票POMS(不安-緊張、うつ、怒り-敵意、活気、疲労、混乱度の6尺度得点)、4Medical Symptom Checklist(頭痛、胸痛、腹痛、腰痛、関節痛など、16の主要身体症状の頻度・強度・支障度を得点化)、5Self-rated Stress Checklistなどを実施した。その結果、心療内科外来受診患者1,067人(平均年齢46歳、女性率65%)のうち、主要な症状は疲労(47%)、不眠(35%)、腰痛(31%)、頭痛(28%)、動悸(26%)、息切れ(23%)、便秘(21%)、めまい(21%)と続いた。全外来患者を、心身症を有した心身症群(398人)と非心身症群(669人)との2群に分けたところ、心身症群の平均身体症状数は3.0、非心身症群の平均身体症状数は2.9と統計学的な有意差はなかった(p>0.05)。またSelf-rated Stress Checklistの平均得点も、心身症群24.0、非心身症群25.1で統計学的な有意差はなかった(p>0.05)。ところが、身体感覚増幅尺度の平均得点は心身症群31.4vs.非心身症群30.7と心身症群で有意に高い得点を示し(p<0.05)、POMSうつの平均得点は心身症群23.0 vs.非心身症群29.7、POMS不安緊張の平均得点は心身症群18.7 vs.非心身症群22.9と逆に非心身症群で有意に高い得点を示した(both p<0.05)。研究計画申請通りに順調に進捗している。2年目は外来診療データベースのデータ解析をさらに進め、認知行動療法などの介入プログラムにも着手していきたい。2年目の研究は、当医学部附属病院の心療内科外来患者を対象とした診療データベースの作成を継続し、疼痛の発生部位・心理社会的ストレス・気分状態と身体感覚増幅現象との関連をさらに検討した。特に、身体感覚増幅現象については従来の身体感覚増幅尺度だけでなく、新たに開発をした「身体感覚に対する破局的思考尺度(SSCS)」(瀬戸泰,中尾睦宏.機能性身体症候群と心身相関:身体感覚増幅と身体感覚に対する破局的思考.日本心療内科学会誌19(3):170-177, 2015)を用いて、心気症状態の臨床評価を行った。身体表現性障害の診断を受けた患者33名(男性11名,女性22名,平均年齢48.82歳,SD = 12.94)を対象に調査を行った。平均罹病期間は44カ月で、診断名はDSM-IV-TR診断基準で「特定不能の身体表現性障害」が23名(69.7%)と最多であり、以下、心気症が6名(18.2%)、転換性障害・疼痛性障害がそれぞれ2名(6.1%)であった。一方、健常群として、大学生・大学院生123名(男性35名,女性88名,平均年齢20.51歳,SD = 1.36)を分析対象とした。その結果、身体感覚に対する破局的思考を表すSSCS合計得点とMSC得点について、両群とも比較的強い正の相関が認められた(患者群:r = .64,p < .01,健常群:r = .40,p < .01)。身体感覚に対する破局的思考は、身体症状との間に有意な相関を示し、重回帰分析においても、身体症状に有意な影響を及ぼしていることが確認された。 | KAKENHI-PROJECT-15K08681 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K08681 |
身体感覚増幅現象から捉えた精神・心理的疼痛の診断と治療 | 一方、身体感覚増幅は、身体症状との間に有意な相関が認められたが、重回帰分析においては、身体症状に対し、有意な影響が示されなかった。研究申請書に従って、順調に進捗している。外来診療データベースのデータ解析をさらに進めていると同時に、認知行動療法を用いた介入プログラムも開発し、その実施可能性を検討するための健常者へのトライアルなども同時に進めている。3年目は、勤務する大学医学部付属病院の心療内科(当科)外来患者を対象とした診療データベースの解析を進めた。研究代表者と研究分担者が診療をし、過去10年間に当科外来を初診受診した患者のうち、診療データベースに記録された1,000人余りが解析対象者となった。指標として、身体感覚増幅尺度、トロント式失感情症スケール、気分調査票POMS(不安-緊張、うつ、怒り-敵意、活気、疲労、混乱度の6尺度得点)、東大式エゴグラムTEG(CP, NP, A, FC, ACの5つのエゴ得点)、Medical Symptom Checklist(頭痛、胸痛、腹痛、腰痛、関節痛など、16の主要身体症状の頻度・強度・支障度を得点化)、Self-rated Stress Checklist(仕事(学業)、家庭、社会、経済、健康、生活、近所のストレスを得点化)などが用いられた。その結果、心理社会的ストレスが失感情症と身体感覚過敏を介し、痛みにつながるまでの心理メカニズムに関して知見が得られた(国際雑誌、投稿中)。そのメカニズムに対するうつや不安の精神状態の影響や、過剰適応傾向が果たす役割についても共分散構造解析によって定量的な評価を行った。また治療研究として、心因性疼痛に関する認知行動療法による6週間の治療プログラムの開発を進め、ランダム化比較試験によるパイロット研究を進めた。こうした成果はBioPsychoSocial Medicineで特集企画を組み、「認知行動療法による不安と身体症状の軽減効果」、「身体感覚に対する破局的思考、身体感覚増幅、身体症状との関連」をテーマとした論文を研究分担者や研究協力者とともにまとめた。研究申請書に従って、順調に進捗している。2017年度で研究期間が終了する予定であったが、本研究に関連する英語論文を投稿中であり、2018年度にJournal of Clinical Medicineのguest editorとして特集企画を依頼されている。本研究に関する企画を進めたいため、1年間の延長申請をした。最終年度は、対象施設の大学病院心療内科外来患者を対象とした診療データベースの解析を完成させ、国際雑誌のゲスト・エディターとなって特集企画を組み(企画名:psychosomatic medicine、雑誌名:Journal of Clinical Medicine)、論文刊行を進めた。具体的には、研究代表者と研究分担者が診療をし、過去10年間に当科外来を初診受診した患者のうち、痛みを含む身体愁訴を訴える心身症患者604人の身体愁訴の発現、身体感覚増幅、失感情症、不安、うつ、適応度などの関連を検討した。その結果、心理社会的ストレスが失感情症と身体感覚過敏を介し、痛みにつながるまでの心理メカニズムに関して知見が得られた(Nakao M & Takeuchi T. Journal of Clinical Medicine 2018 May 10;7(5). pii: E112)。そのメカニズムに対するうつや不安の精神状態の影響や、過剰適応傾向が果たす役割についても共分散構造解析(構造方程式モデリング)によって定量的な評価を行った。その結果、過剰適応・うつ・不安の3者が相互に関連し合っている(mutual effect)ことを示した。 | KAKENHI-PROJECT-15K08681 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K08681 |
間伐と混交林化が里山林の生物多様性に及ぼす影響 | わが国の森林は,旧薪炭林や人工林がそのはとんどを占め,人為の影響を受けていない森林は非常に限られたものとなってしまった.これまで薪炭林は長期にわたって短い周期で伐採が繰り返され,人工林では植生遷移を人為的に停滞させることによって用材が生産されてきた.そのために,林分構造が単純化し,天然林にみられる多様な更新段階からなる林分のモザイク構造が失われている.本研究は,わが国冷温帯の代表的な森林における,林冠条件や管理方法の違いが植物種多様性に及ぼす影響を明らかにする.調査地は新潟県上川村および周辺の町村でおこなった.第1章では,旧薪炭林である落葉広葉樹林における潜在的な植物種多様性を明らかにした.第2章では,(1)スギ人工林施業,(2)スギ人工林に広葉樹を導入する針広混交林施業,(3)薪炭林が放棄された広葉樹二次林を対象に,林冠構成木の違いが林床の光環境と植物種多様性におよぼす影響を明らかにするとともに,それぞれの林冠条件に関係する植物種群を抽出した.そして,第3章では,林床植物種の保全に配慮したスギ人工林の森林管理について検討を行った.第4章では,広葉樹二次林に対して間伐強度(人工ギャップのサイズ)を変えて,間伐直後と一定年が経過した後で更新してくる広葉樹の消長を明らかにした.さらに,各章それぞれにおいて,林冠条件や管理方法の違いが生物多様性に及ぼす影響を明らかにするとともに,里山林全体の多様性を保全するための各森林タイプの管理方法についても検討した.わが国の森林は,旧薪炭林や人工林がそのはとんどを占め,人為の影響を受けていない森林は非常に限られたものとなってしまった.これまで薪炭林は長期にわたって短い周期で伐採が繰り返され,人工林では植生遷移を人為的に停滞させることによって用材が生産されてきた.そのために,林分構造が単純化し,天然林にみられる多様な更新段階からなる林分のモザイク構造が失われている.本研究は,わが国冷温帯の代表的な森林における,林冠条件や管理方法の違いが植物種多様性に及ぼす影響を明らかにする.調査地は新潟県上川村および周辺の町村でおこなった.第1章では,旧薪炭林である落葉広葉樹林における潜在的な植物種多様性を明らかにした.第2章では,(1)スギ人工林施業,(2)スギ人工林に広葉樹を導入する針広混交林施業,(3)薪炭林が放棄された広葉樹二次林を対象に,林冠構成木の違いが林床の光環境と植物種多様性におよぼす影響を明らかにするとともに,それぞれの林冠条件に関係する植物種群を抽出した.そして,第3章では,林床植物種の保全に配慮したスギ人工林の森林管理について検討を行った.第4章では,広葉樹二次林に対して間伐強度(人工ギャップのサイズ)を変えて,間伐直後と一定年が経過した後で更新してくる広葉樹の消長を明らかにした.さらに,各章それぞれにおいて,林冠条件や管理方法の違いが生物多様性に及ぼす影響を明らかにするとともに,里山林全体の多様性を保全するための各森林タイプの管理方法についても検討した.本研究は、森林の林冠条件や管理方法の違いが生物多様性に及ぼす影響を明らかにするとともに、里山林全体の多様性に対する各林分の貢献度を評価することを目的としている。具体的には、(1)針葉樹人工林施業、(2)針葉樹人工林に広葉樹を導入する針広混交林施業、(3)薪炭林が放棄された広葉樹二次林を対象に、これら異なる取り扱いがなされてきた森林の林床に出現する植物相と、それらが繁殖過程で依存する動物相を明らかにし相互に比較することによって、林冠構成木の違いが林床の生物多様性におよぼす影響を明らかにする。そのために、林野庁撮影の空中写真をデジタル化して画像解析システムに取り込み、ランドスケープレベルでの林相区分を行った。区分された各対象から無作為に10林分ずつ合計50林分を選び、現地で40m×40mのプロットを設置して以下の調査を行った.木本層(高さ2m以上の樹木をすべて)は10m×10mのサブプロット16個に分割し毎木調査を行った。草本層(2m未満)は1m×1mの植生調査枠を40個設けて出現する維管束植物種を記録した。さらに、調査林分の光環境を推定するために,すべての植生調査枠の上で全天写真撮影システムを使い,展葉期と落葉期に全天空写真を撮影した。調査結果から植物種の出現パターンを統計処理して、有意に高い頻度で特定の林分に出現する種群、林分間で共通して出現する種群、低頻度の種群などに分類し、林冠構成種の違いや施業履歴の異なる人工林の間で出現する植物種を調べるとともに、それらの送粉シンドロームおよび種子散布シンドロームを比較した。また、5年前に設置した人工的にギャップが創出された広葉樹二次林の永久コドラートで出現植物のモニタリングを行い、上記の各林分に加えて同様の解析を行った。森林の林冠条件や管理方法の違いが生物多様性に及ぼす影響を明らかにするとともに、里山林全体の多様性に対する各林分の貢献度を評価した。 | KAKENHI-PROJECT-14560118 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14560118 |
間伐と混交林化が里山林の生物多様性に及ぼす影響 | そのために、(1)針葉樹人工林施業、(2)針葉樹人工林に広葉樹を導入する針広混交林施業、(3)薪炭林が放棄された広葉樹二次林を対象に、これら異なる取り扱いがなされてきた森林の林床に出現する植物相と、それらが繁殖過程で依存すると予想される動物相を相互に比較することによって、林冠構成木の違いが林床の生物多様性におよぼす影響を検討した。また、針葉樹人工林に関しては、間伐前後での植物種多様性を比較した。さらに、広葉樹二次林に対しては、間伐強度(人工ギャップのサイズ)を変えて、間伐直後と一定年が経過した後で更新してくる広葉樹の消長を明らかにした。そのために、植生および光環境の調査を行い,植物種の出現パターンを統計処理して、有意に高い頻度で特定の林分に出現する種群、林分間で共通して出現する種群、低頻度の種群などに分類し、林冠構成種の違いや施業履歴の異なる人工林の間で出現する植物種を調べるとともに、それらの送粉シンドロームおよび種子散布シンドロームを比較した。これらの結果から、林冠条件が林床の光環境に及ぼす影響を明らかにするとともに,それぞれの林冠条件に関係する植物種群を抽出した。そして,林冠条件や管理方法の違いが生物多様性に及ぼす影響を明らかにするとともに、里山林全体の多様性を保全するための各森林タイプの管理方法を検討した。さらに、生物多様性の保全を視野に入れた森林管理を地域全体として計画するための手法について考察した。 | KAKENHI-PROJECT-14560118 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14560118 |
日本型住宅システムの再編と家族生活・職業生活への影響に関する縦断的研究 | 日本は持家率が60%を超え、多くの人が自分の家を持ちたいと願う「持家」社会である。企業福祉が縮小し、住宅金融の市場化が進む現在、なぜ住宅を取得するのか、住宅の取得は家族生活にどのような影響があるのかを、大規模縦断的データの分析・インタビュー調査・官庁統計や史料の精査といった総合的なアプローチを用いて検討した。歴史を振り返ると、日本の大企業は福利厚生の一環として社宅の建設や従業員の持家取得を促した。公営住宅の拡充を望む労働組合の動きは大きな力を持たず、政府は1970年代以降、新規の住宅着工による景気の刺激をもくろんだ。近年、社宅も公営住宅も減少している。さらに、住宅金融が市場化し、雇用環境が悪化しており、家計における住宅ローンの負担は高くなっており、家族は妻の労働供給や消費の引き締めで対処している。それもかかわらず持家志向が依然として強いのは、親との同居規範が緩むなど「家族」のあり方が変化しているにもかかわらず、「幸せで豊かな近代家族」像が依然として理想であり続けていることが大きい。日本は持家率が60%を超え、多くの人が自分の家を持ちたいと願う「持家」社会である。企業福祉が縮小し、住宅金融の市場化が進む現在、なぜ住宅を取得するのか、住宅の取得は家族生活にどのような影響があるのかを、大規模縦断的データの分析・インタビュー調査・官庁統計や史料の精査といった総合的なアプローチを用いて検討した。歴史を振り返ると、日本の大企業は福利厚生の一環として社宅の建設や従業員の持家取得を促した。公営住宅の拡充を望む労働組合の動きは大きな力を持たず、政府は1970年代以降、新規の住宅着工による景気の刺激をもくろんだ。近年、社宅も公営住宅も減少している。さらに、住宅金融が市場化し、雇用環境が悪化しており、家計における住宅ローンの負担は高くなっており、家族は妻の労働供給や消費の引き締めで対処している。それもかかわらず持家志向が依然として強いのは、親との同居規範が緩むなど「家族」のあり方が変化しているにもかかわらず、「幸せで豊かな近代家族」像が依然として理想であり続けていることが大きい。本研究の目的は、持家への移行のタイミングと促進要因、さらに住宅取得が家族生活と職業生活におよぼす影響について明らかにすることを通じて家族生活と職業生活研究の新たな局面を開拓すると同時に、若い家族の生活基盤が安定するような政策提言を目指すことである。住宅を取得することは、若年期の家族にとって重大なライフイベントの一つである。しかし、雇用が流動化している昨今では、住宅取得は家計への負担・長時間労働・離転職の阻害など家族によってリスクとなりうる。それにもかかわらすなぜ住宅を取得するのか。住宅取得の結果、どのような家族の負担がとくに大きくなり、それにどう対処し、適応するのか。理論的には家族ストレス論に依拠して研究を進める。研究手法は、統計データの分析・インタビュー調査・社史や労働組合の史料の分析など複数の方法を組み合わせる。平成22年度の主要な成果は以下のとおりである。1.住宅取得が家計に及ぼす影響について「家計調査」を分析した。バブル期よりも住宅を取得しやすくなったようにみえるが、可処分所得に占める住宅ローン返済額の割合はむしろ増加傾向にある。可処分所得の低下が一因であり、住宅取得が若年家計に負担を及ぼしているといえる。2.このような負担があるにもかかわらず、なぜ住宅を取得するのかについては、歴史的な経緯を踏まえて考察する必要がある。そこで企業の社内報や社史、住宅金融公庫や公団の社史、労働組合史の閲覧・蒐集につとめ、住宅・不動産業の役割に焦点をあてることが理論的にみても不可欠であるとの見通しを得た。3.2の成果をもとに、平成23年度に実施するインタビュー調査の地域を確定し調査の準備を進めた。さらに、住宅取得に伴う負担に家計がどのように対処したかを統計的に明らかにするための縦断的データセットの整理と構築も行った。予備的な分析の結果、妻が労働供給を増やしていることがうかがえた。本研究の目的は(1)持家への移行のタイミングと促進要因、さらに(2)住宅取得が家族生活と職業生活におよぼす影響について明らかにすることにある。平成23年度は、以下の3つの研究を並行して進めた。(1)インタビュー調査過去3年以内に関東圏で住宅を取得した3050代の男女5名ずつ計10名を対象に、まずグループインタビューを行い、住宅取得のきっかけ、親からの援助の有無、住宅履歴と職業歴・家族歴との関連について全体像を把握した。インタビューの内容をもとに対象者を類型化し、さらに30代の女性1名、50代の男女1名ずつ計3名を選び、1対1のインタビューを行った。このような工夫をすることで、大勢の前では話しにくい家計の変化、家族関係や将来設計、賃貸住宅や社宅の不便さについて詳細に尋ねることができた。量的調査では捉えにくい「住宅」に関する主観的な意味づけも検討したところ、「子供のため」という理由が重要な要因として浮上した。また、結婚年齢が高い場合には、退職と子どもの大学進学と住宅ローンの返済期間が重なるというホワイトカラー特有のリスクがあるにもかかわらず住宅を取得せざるを得ない環境があることも見出された。(2)社史・労働組合の資料の分析「総評」や「同盟」の資料を蒐集し、精査した。 | KAKENHI-PROJECT-22730380 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22730380 |
日本型住宅システムの再編と家族生活・職業生活への影響に関する縦断的研究 | 「総評」が住宅手当の支給と同時に公共住宅の建設を訴えていたこと、「同盟」は住宅に関心がないようだが、個別事例をみるとかならずしもそうとは言いきれないことを見出した。企業福祉の役割を検討することは非常に重要であり、統計データのより良い分析・解釈、福祉レジームという理論枠組みの再検討に貢献することが可能になる。(3)パネルデータの分析持ち家の有無・取得と消費支出・生活時間の違い(およびそれらの変化)を分析し、職業階層による住宅ローンの負担感の違いを析出した。また、固定効果・変量効果モデルを用いた論文を公表した。本研究の目的は、住宅取得とその要因、住宅取得の生活面への影響について明らかし、政策提言を目指すことである。住宅は日々の生活の基礎であり、住居関連費は家計において大きな支出を占める。景気にも影響を与えるため研究の必要性は高い。平成24年度は最終年度であるため、これまで継続してきた質的データおよび量的データの分析結果を統合し、論文や学会報告として公表した。昨年度に引き続きインタビュー調査の結果を分析することで、持家志向が依然として強いのは、晩婚化や親との同居規範の緩みなど「家族」のあり方が変化しているにもかかわらず、「幸せで豊かな家族」像が依然として理想であり続けていることが大きいためといえる。さらに、持家と賃貸の居住水準に大きな差があることや老後の生活保障に不安があることも住宅を取得せざるを得ない要因である。しかしながら、景気が低迷している状況において、住宅取得は家計に負担をもたらす。ローン負担感は返済が進むにつれて軽くなるが、総じて親の援助がない家族や夫が自営・中小企業勤務者の場合に負担感が強い。これは、戦後、公営住宅の拡充を望む労働組合の運動が大きな力を持たず、大企業を中心とした企業福祉の提供による持家取得が日本の住宅システムの主流であったことと無関係ではないことが労働組合の史料から示唆される。企業は住宅取得への関与を弱めつつあるにもかかわらず、公営住宅は減少しており、日本の住宅システムはいっそう自由主義的になりつつある。そこで、若い世代が家計の心配をせずに住宅を取得し、子どもの教育ができるような住宅政策や労働政策を検討した。研究成果の公表に際しては、他領域の研究者からコメントを得たことで、住宅と生活に関する総合的な議論を深めることができた。インタビュー調査は完了し、テープ起こしも済ませている。インタビュー調査の結果は研究会で簡単な報告を行い、平成24年度以降の成果の公表の見通しを立てた。社史・労働組合の史料はほぼ蒐集を済ませ、整理・予備的な分析を行った。また、2本の論文を執筆する過程で、総務省だけではなく内閣府や国土交通省の統計資料、財形貯蓄に関する資料、住宅ローン減税に関する資料も並行して蒐集した。それにより、日本における住宅政策の歴史を多面的に理解する準備が進めることができた。24年度が最終年度であるため、記入しない。平成24年度が最終年度であるため、積極的に成果を公表する。日本社会学会では、関連領域の研究者と同じ部会で報告できるよう、打ち合わせを始めている。住宅について異なるアプローチから取り組む研究者の報告を聞くことで、本研究の成果にとって重要な示唆を得ることが期待できる。数理社会学会では、階層論の視点に基づく職業キャリアと住宅に関するコメントおよび方法論上の示唆を得られる見通しである。 | KAKENHI-PROJECT-22730380 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22730380 |
農村地方財政の展開構造-両大戦間期における戸数割賦課の内容検討を中心として- | 上記課題を遂行するために(1)栃木県河内郡本郷村(現上三川町)、佐賀県東与賀村(現東与賀町)、山形県中平田村(現酒田市)、岩手県庁文書学事課所蔵行財政文書、山口県立図書館所蔵行財政文書の閲覧、複写を行い、分析を加えることにした。資料の閲覧、収集、複写に関してはほぼ初期の目的を達した。とくに貴重と思われる資料は岩手県庁文書学事課所蔵の「県参事会記録」および山口県立図書館所蔵「訴願、訴訟、異議申立綴」全13冊である。山口県の「訴願、訴訟、異議申立綴」は明治後期から昭和戦前期にあたるもので、行政当局の徴税令書に対して異議申立(行政救済)を行ったものであり、戸数割賦課の性格を明らかにしていく上で貴重である。早急に分析を行っていく予定である。なお、岩手県の戸数割賦課問題については、「戸数割賦課異議申立に関する-考察-岩手県の事例-」のテ-マで、宇都宮大学農学部学術報告第14-2号に掲載されることになっている。集取した山口県の「訴願、訴訟、異議申立綴」に関しては早急に分析を行い、次号の宇都宮大学農学部学術報告に投稿する予定である。佐賀県東与賀村(現東与賀町)には明治後期から昭和20年まで、又、栃木県上三川町には明治後期から昭和15年までの村会事録ならびに予算、決算書が所蔵されており、その閲覧と一部コピ-を行った。戦前期の自小作進地帯(東与賀町)と在村耕作地帯(上三川町)の比較分析を行う予定である。寄生地主地帯の中平田村(現酒田市)では予算、決算書については不十分ながら、村独自で発行している「村報」が保存されており、その中で財政項目掲載されており、その面から当村の財政分析を行っていく予定である。予算示達が大変遅かったため、資料の収集、複写を行うのに精一杯であり、日程的に分析までには至っていないのが現状である。早急に分析を行っていきたい。上記課題を遂行するために(1)栃木県河内郡本郷村(現上三川町)、佐賀県東与賀村(現東与賀町)、山形県中平田村(現酒田市)、岩手県庁文書学事課所蔵行財政文書、山口県立図書館所蔵行財政文書の閲覧、複写を行い、分析を加えることにした。資料の閲覧、収集、複写に関してはほぼ初期の目的を達した。とくに貴重と思われる資料は岩手県庁文書学事課所蔵の「県参事会記録」および山口県立図書館所蔵「訴願、訴訟、異議申立綴」全13冊である。山口県の「訴願、訴訟、異議申立綴」は明治後期から昭和戦前期にあたるもので、行政当局の徴税令書に対して異議申立(行政救済)を行ったものであり、戸数割賦課の性格を明らかにしていく上で貴重である。早急に分析を行っていく予定である。なお、岩手県の戸数割賦課問題については、「戸数割賦課異議申立に関する-考察-岩手県の事例-」のテ-マで、宇都宮大学農学部学術報告第14-2号に掲載されることになっている。集取した山口県の「訴願、訴訟、異議申立綴」に関しては早急に分析を行い、次号の宇都宮大学農学部学術報告に投稿する予定である。佐賀県東与賀村(現東与賀町)には明治後期から昭和20年まで、又、栃木県上三川町には明治後期から昭和15年までの村会事録ならびに予算、決算書が所蔵されており、その閲覧と一部コピ-を行った。戦前期の自小作進地帯(東与賀町)と在村耕作地帯(上三川町)の比較分析を行う予定である。寄生地主地帯の中平田村(現酒田市)では予算、決算書については不十分ながら、村独自で発行している「村報」が保存されており、その中で財政項目掲載されており、その面から当村の財政分析を行っていく予定である。予算示達が大変遅かったため、資料の収集、複写を行うのに精一杯であり、日程的に分析までには至っていないのが現状である。早急に分析を行っていきたい。 | KAKENHI-PROJECT-01560231 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01560231 |
ゲインスケジューリングによる送水管の安定化制御 | 構造物の振動を抑制する方法として,これまでは主に受動的制振法が用いられてきたが,設計パラメータや系の特性の変動に対して制振性能が著しく低下してしまうという問題がある.それに対し,外部からエネルギを投入して制振する能動的制振法は,コントローラをロバストに設計することにより制御対象の変動に対しても制振性能の劣化を小さくすることが可能である.本研究者らは能動的制御手法が送水管の不安定現象に対しても非常に有効であることを示してきた.また,アクチュエータが発生可能な操作エネルギに拘束条件を有するコントローラを設計し,拘束条件の違いが送水管の不安定現象抑制にどのように影響するかを考察してきた.しかし,これらの方法では,ある固定された流速に対してコントローラを設計していたため,制御による限界流速の向上に関しては限界があった.送水管の動特性は管内流速をパラメータとして変化するから,流速変化に応じてコントローラを連続的に変更できれば,より高い流速でも制御が可能になる.本研究では,このような制御を実現するため,ゲインスケジューリングの手法の一つであるパラメータ凍結法を採用し,送水管の不安定現象の抑制を試みた.はじめに,Galerkin法により送水管の集中定数モデルを管内流速の関数として求め,次いで,複数の固定された流速値に対してLQG理論によりコントローラを設計し,得られた複数のコントローラを管内流速に応じて補間する.得られたコントローラを用いて,シミュレーション及び実験を行った.その結果,本研究で得られたコントローラによって送水管に生じる不安定現象を安定化可能であることを確認した.また,スケジューリングコントローラを用いた場合,その設計流速区間内であれば,送水管の流速の上昇に対しても閉ループ系は安定を保ち,限界流速を大幅に向上させることが可能であることを明らかにした.1.一般に送水管の特性は流速の影響をきわめて受けやすく,どのような流速に対しても常に送水管を安定化させるためには,流速の変化による系の特性変化を考慮に入れた制御系の設計が必要である.本研究では,送水管の数学モデルが管内流速の関数として記述できることに着目し,ゲインスケジューリングの手法の一つであるパラメータ凍結法を用い,時事刻々と変化する流速に対応できる制御系の設計を試みる.本年度は,制御系設計用ソフトウェアMATLABを用いて,流速が変化したときの閉ループ系の時間応答を,LQCコントローラを用いた場合とスケジューリングされたコントローラを用いた場合について調べ,本手法の有用性を詳細なシミュレーションを行うことにより確認した.2.能動制御方式において,送水管への制御力の印加方法として,スラスタにより直線力を付加する方法を採用するが,制御力の高いスラスタ装置の機構設計を行った.今後は1,2の結果を踏まえ,LQCコントローラ及びスケジューリングコントローラ両方の外乱抑制特性と,スケジューリングコントローラの限界流速向上特性に関する実験を行う予定である.構造物の振動を抑制する方法として,これまでは主に受動的制振法が用いられてきたが,設計パラメータや系の特性の変動に対して制振性能が著しく低下してしまうという問題がある.それに対し,外部からエネルギを投入して制振する能動的制振法は,コントローラをロバストに設計することにより制御対象の変動に対しても制振性能の劣化を小さくすることが可能である.本研究者らは能動的制御手法が送水管の不安定現象に対しても非常に有効であることを示してきた.また,アクチュエータが発生可能な操作エネルギに拘束条件を有するコントローラを設計し,拘束条件の違いが送水管の不安定現象抑制にどのように影響するかを考察してきた.しかし,これらの方法では,ある固定された流速に対してコントローラを設計していたため,制御による限界流速の向上に関しては限界があった.送水管の動特性は管内流速をパラメータとして変化するから,流速変化に応じてコントローラを連続的に変更できれば,より高い流速でも制御が可能になる.本研究では,このような制御を実現するため,ゲインスケジューリングの手法の一つであるパラメータ凍結法を採用し,送水管の不安定現象の抑制を試みた.はじめに,Galerkin法により送水管の集中定数モデルを管内流速の関数として求め,次いで,複数の固定された流速値に対してLQG理論によりコントローラを設計し,得られた複数のコントローラを管内流速に応じて補間する.得られたコントローラを用いて,シミュレーション及び実験を行った.その結果,本研究で得られたコントローラによって送水管に生じる不安定現象を安定化可能であることを確認した.また,スケジューリングコントローラを用いた場合,その設計流速区間内であれば,送水管の流速の上昇に対しても閉ループ系は安定を保ち,限界流速を大幅に向上させることが可能であることを明らかにした.構造物の振動を抑制する方法として,これまでは主に受動的制振法が用いられてきたが,設計パラメータや系の特性の変動に対して制振効果が著しく低下してしまうという問題があるそれに対し,外部からエネルギを投入して制振する能動的制振法は,コントローラをロバストに設計することにより制御対象の変動に対しても制振性能の劣化を小さくすることが可能である.本研究者らは能動制御手法が送水管の不安定現象抑制に対しても非常に有効であることを示してきた.また,アクチュエータが発生する操作エネルギに拘束条件を有するコントローラを設計し,拘束条件の違いが送水管の不安定現象抑制にどのように影響するかを考察してきた.しかし,これらの方法では,ある固定された流速に対してコントローラを設計していたため,制御による限界流速の向上に関しては限界があった. | KAKENHI-PROJECT-09650261 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650261 |
ゲインスケジューリングによる送水管の安定化制御 | 送水管の動特性は管内流速をパラメータとして変化するから,流速変化に応じてコントローラを連続的に変更できれば,より高い流速でも制御が可能になる.本研究では,このような制御を実現するため,ゲインスケジューリングの手法の一つであるパラメータ凍結法を採用し,送水管の不安定現象の抑制を試みた.はじめに,Galerkin法により送水管の集中定数モデルを管内流速の関数として求め,次いで,複数の固定された流速値に対してLQG理論によりコントローラを設計し,得られた複数のコントローラを管内流速に応じて補間する.得られたコントローラを用いて,シミュレーションおよび実験を行った.その結果,本研究で得られたコントローラによって送水管に生じる不安定現象を安定化可能であることを確認した.また,スケジューリングコントローラを用いた場合,その設計流速区間内であれば送水管の流速の上昇に対しても閉ループ系は安定性を保ち,限界流速を大幅に向上させることが可能であることを明らかにした. | KAKENHI-PROJECT-09650261 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650261 |
イネ科新規モデル植物実験系の確立とその検証:環境応答研究をモデルケースとして | 環境応答機構研究におけるモデル植物実験系開発を目的にイネ科植物ミナトカモジグサのストレス耐性評価を行った。その結果、1凍結耐性は-4°Cから低温馴化1週間で-7.5°Cまで増加する、2低温馴化に重要なCBF転写因子やその標的遺伝子COR、LEA遺伝子の発現が低温応答性を示す、3凍結傷害発生に重要な細胞膜のプロテオームが大きく変動する、4塩ストレス(100 mM NaCl、2週間)や乾燥ストレス(10日間の灌水停止)耐性を有する、ことを明らかにした。これらの結果は、ミナトカモジグサが環境ストレス耐性機構研究における単子葉モデル植物として利用できることを示している。環境応答機構研究におけるモデル植物実験系開発を目的にイネ科植物ミナトカモジグサのストレス耐性評価を行った。その結果、1凍結耐性は-4°Cから低温馴化1週間で-7.5°Cまで増加する、2低温馴化に重要なCBF転写因子やその標的遺伝子COR、LEA遺伝子の発現が低温応答性を示す、3凍結傷害発生に重要な細胞膜のプロテオームが大きく変動する、4塩ストレス(100 mM NaCl、2週間)や乾燥ストレス(10日間の灌水停止)耐性を有する、ことを明らかにした。これらの結果は、ミナトカモジグサが環境ストレス耐性機構研究における単子葉モデル植物として利用できることを示している。1.凍結耐性の評価:細胞膜のIntegrityを評価する電解質漏出法で低温処理前後の植物体の凍結耐性を評価したところ、低温馴化前では-4°C程度までしか耐えられなかったものが低温処理1週間で-7.5°C程度まで耐えられるようになった。それ以降4週間の低温処理ではと甌穴耐性の増加はみられなかった。従って、Brachypodiumはシロイヌナズナ同様に比較的急速に低温馴化することが示唆された。2.低温誘導性遺伝子発現:低温馴化初期期間(48時間)でシロイヌナズナなどの植物の低温馴化過程において報告されている低温誘導性遺伝子(CFBFs、CORs、LEAsなど)と相同な遺伝子の発現をRT-PCR法により解析したところ、転写因子CBFsは低温処理開始後12時間後に、CORsやLEAs遺伝子は低温処理開始後48時間後に発現が増加することが判明した。従って、植物界に広く見られる転写因子CBFsによって支配される低温誘導性遺伝子発現系がBrachypodiumに存在することが示唆された。3.細胞膜プロテオーム解析:凍結傷害発生の初発部位である細胞膜を対象にshotgun proteomics法によりプロテオーム解析を実施したところ、低温馴化の時間によって発現誘導あるいは抑制されるタンパク質はかなり異なっていたが、低温馴化期間を通じて変動しているものも多くみられた。低温馴化期間を通じて増加していたタンパク質にはデハイドリンや熱ショックタンパク質などが含まれており、Brachypodiumの低温応答性も他の植物と同様にストレス応答性タンパク質は関与している可能性が示された。平成26年度計画のうち「細胞の凍結融解過程における挙動解析」はBrachypodium distachyon葉からのプロトプラスト単離法の確立が当初計画通りに進まず、未だに様々な方法を試しながらプロトコールを探している状況である。一方、もう一つの研究項目「乾燥耐性の評価」についてはいくつか成果が得られ、さらに、塩ストレス(NaCl)に対する耐性も評価した。その結果、13週間育てた芽生えでは10日間の灌水停止に耐える能力を持つこと、24日間生育させた芽生えでは相対湿度75%(飽和NaCl溶液共存下)で2日間の処理には耐えられること、33週間育てた芽生えは100 mM NaCl処理に2週間は耐えられることなどを明らかにした。昨年得られた凍結耐性に関する研究成果を合わせて考えると、B. distachyonは凍結、乾燥、塩ストレスなど環境ストレス耐性機構を研究材料として利用できる単子葉モデル植物であり、イネ科植物を対象とした生理学的・生化学的な環境ストレス応答分子機構を理解する上で有効な実験材料となり得ることが明らかになった。さらに、遺伝子組換えが比較的容易に利用でき、変異体ライブラリーが充実してきていることから、環境ストレス応答に関連したOmics解析や遺伝子機能解析にも十分応えられるものと判断される。今後、B. distachyonで得られた知見が、イネ科作物の環境ストレス耐性増大に関する研究に大きく貢献していくことが期待される。植物分子生理学年度当初に計画していた実験項目は、一部を除いてほぼ終了した。プロテオーム解析はもう少し時間を掛けて行う必要があるが、平成26年度中には終了するものと考えられる。他の項目については確認実験が必要な部分もあるが、予定通り行われた。実験に使用した系統Bd21は、ゲノム配列が報告されている系統であり、種子繁殖が容易で変異体などの解析ツールも多く揃っている。しかし、凍結耐性および低温馴化能力という面からみると、凍結耐性はそれほど高くなく、他の系統を用いた基礎的な実験が必要であると考えられる(ただし、発芽に長い低温期間を要求する系統があるなど解決すべき点は多々存在する)。それと並行して、当初研究計画に基づき、Bd21系統を使って他の環境ストレス耐性をチェックする実験を行い、Brachypodiumが環境ストレス耐性研究にどの程度利用できるかを検討する。 | KAKENHI-PROJECT-25650090 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25650090 |
仮想現実感を用いたマクロ世界からナノ世界へのテレマニピュレーションに関する研究 | 本研究では、遠隔制御を用いて超微粒子をマニピュレーションするシステム,Tele-Nanorobotics systemを構築した。一つのアプリケーションとして遺伝子操作を目指しているため、スレーブにはAFMを採用している。申請者らは、nmとμmの分解能の粗い部分とnmの分解能の精細な部分を持つポジショニング・システムとピエゾレジスティブ・カンチレバーを使うことで、独自のAFMを製作した。ポジショニング・システムは試料を動かすのに使われ、ピエゾレジスティブ・カンチレバーは光学的感知方式をとる従来のカンチレバーに比べコンパクトで安価である。現在あるインタフェースは、3次元VRグラフィックスと1自由度マスタデバイスである。3次元VRグラフィックスでは試料表面の形状とカンチレバーのチップ先端の位置をディスプレイ上で提示している。1自由度マスタデバイスは。Z方向の動作(接触評価)を行える。また、ナノ世界のZ方向にかかる力をモデル化したNano Simulatorを製作し、VR世界で1自由度マスタデバイスによる接触評価を行った。このシミュレータは、カンチレバーチップを球,試料の表面を平面であると仮定した上で、非接触部門のLennard-Jonesモデルと接触部分のJKRモデルにより、力モデルを考えてある。実験の種類を以下に示す。1.半自動制御による試料のプッシング1自由度マスタデバイスを用いて試料表面までカンチレバーをZ方向に移動し(Tele-touching)、その後、3次元VRグラフィックス上でマウスを用いカンチレバーチップをXY方向に移動させ粒子を押す。2.自動制御による試料のプッシング試料表面へのアプローチから粒子のプッシングまで全てを、3次元VRグラフィックスとマウスを用いて自動的に行う。実験に使用した粒子は、シリコン表面に置かれたlatex(100nm2μm)である。本研究では、遠隔制御を用いて超微粒子をマニピュレーションするシステム,Tele-Nanorobotics systemを構築した。一つのアプリケーションとして遺伝子操作を目指しているため、スレーブにはAFMを採用している。申請者らは、nmとμmの分解能の粗い部分とnmの分解能の精細な部分を持つポジショニング・システムとピエゾレジスティブ・カンチレバーを使うことで、独自のAFMを製作した。ポジショニング・システムは試料を動かすのに使われ、ピエゾレジスティブ・カンチレバーは光学的感知方式をとる従来のカンチレバーに比べコンパクトで安価である。現在あるインタフェースは、3次元VRグラフィックスと1自由度マスタデバイスである。3次元VRグラフィックスでは試料表面の形状とカンチレバーのチップ先端の位置をディスプレイ上で提示している。1自由度マスタデバイスは。Z方向の動作(接触評価)を行える。また、ナノ世界のZ方向にかかる力をモデル化したNano Simulatorを製作し、VR世界で1自由度マスタデバイスによる接触評価を行った。このシミュレータは、カンチレバーチップを球,試料の表面を平面であると仮定した上で、非接触部門のLennard-Jonesモデルと接触部分のJKRモデルにより、力モデルを考えてある。実験の種類を以下に示す。1.半自動制御による試料のプッシング1自由度マスタデバイスを用いて試料表面までカンチレバーをZ方向に移動し(Tele-touching)、その後、3次元VRグラフィックス上でマウスを用いカンチレバーチップをXY方向に移動させ粒子を押す。2.自動制御による試料のプッシング試料表面へのアプローチから粒子のプッシングまで全てを、3次元VRグラフィックスとマウスを用いて自動的に行う。実験に使用した粒子は、シリコン表面に置かれたlatex(100nm2μm)である。生物学、遺伝子工学、物質工学、半導体産業などの分野では、マイクロ/ナノスケールの大きさの超微粒子のハンドリングが急務となっている。しかし、マイクロ世界、ナノ世界およびマクロ世界との間には、支配的な物理法則が異なるなどの大きなバリアが存在している。本研究の目的は、サイズが0.1から100nmの範囲にある、ナノメータスケールの大きさを持つ超微粒子の自由自在なマニピュレーションにある。このために主に以下のような技術を用いる。(1)マスク・スレーブデバイスを組み合わせた遠隔制御(テレコントロール)技術(2)原子間力顕微鏡(AFM)を用いた超微粒子のマニピュレーション技術(3)ハプティンクデバイスを用いた操作者に対する仮想現実感生成技術(4) AFMによって得られた画像を3次元画像表示する可視化技術平成10年度の実績は主に以下のようにまとめられる。(1)マクロ世界とナノ・マイクロ世界のスケールの違いを考慮にいれた遠隔制御システムの基礎の構築(2) AFMのプローブによるスティックの繰り返しによるマイクロメータスケールの大きさを持つ微粒子の移動(3) 1軸方向(試料表面に対し垂直方向)の力覚フィードバックを可能とするマスクデバイスによる力覚の呈示(4) AFMによる試料表面の走査から得られたトポロジーをCG技術によって3次元画像として表示本研究では、一つのアプリケーションとして遺伝子操作を目指しているため、スレーブにはAFMを採用している。テレ・ナノマニピュレーションを行うためのシステムをTele-Nanorobotics systemと呼んでいる。申請者らは、nmとμmの分解能の粗い部分とnmの分解能の精細な部分を持つポジショニング・システムとピエゾレジスティブ・カンチレバーを使うことで、独自のAFMを製作した。ポジショニング・システムは試料を動かすのに使われ、ピエゾレジスティブ・カンチレバーは光学的感知方式をとる従来のカンチレバーに比べコンパクトで安価である。現在あるインタフェースは、3次元VRグラフィックスと1自由度マスタデバイスである。3次元VR | KAKENHI-PROJECT-10450164 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10450164 |
仮想現実感を用いたマクロ世界からナノ世界へのテレマニピュレーションに関する研究 | グラフィックスでは試料表面の形状とカンチレバーのチップ先端の位置をディスプレイ上で提示している。1自由度マスタデバイスは、Z方向の動作(接触評価)を行える。また、ナノ世界のZ方向にかかる力をモデル化したNano Simulatorを製作し、VR世界で1自由度マスタデバイスによる接触評価を行った。このシミュレータは、カンチレバーチップを球,試料の表面を平面であると仮定した上で、非接触部分のLennard-Jonesモデルと接触部分のJKRモデルにより、力モデルを考えてある。実験の種類を以下に示す。1.半自動制御による試料のプッシング1自由度マスタデバイスを用いて試料表面までカンチレバーをZ方向に移動し(Tele-touching)、その後、3次元VRグラフィックス上でマウスを用いカンチレバーチップをXY方向に移動させ粒子を押す。2.自動制御による試料のプッシング試料表面へのアプローチから粒子のプッシングまで全てを、3次元VRグラフィックスとマウスを用いて自動的に行う。実験に使用した粒子は、シリコン表面に置かれたlatex(100nm2μm)である。 | KAKENHI-PROJECT-10450164 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10450164 |
半導体励起子の高感度光カロリメトリー分光-光励起状態におけるエネルギー散逸過程の解明- | 励起子のフォノン散乱による無輻射緩和過程を探ることを目的として,化合物半導体β-ZnP_2を対象に光カロリメトリー分光(PCS)スペクトルと励起子発光の励起スペクトルの同時測定を実施した。β-ZnP_2は明瞭な励起子系列を示し,電子-格子弱結合系のため個々の緩和素過程が追跡できるなど,励起子研究に適した物質である。得られた主な結果は以下の通りである。1.一重項1s縦波励起子エネルギー以上の光励起下では,吸収された光が熱に変わる効率はほぼ一定であり,入射光の試料表面での反射ロスによる補正と絶対熱発生量の較正から,熱変換効率は約80%と高い値を持つことが分かった。2.一方,1s励起子の反射バンド内では発光,熱発生とも減少する。このことは,この領域では反射・発光・熱発生以外に,共鳴レーリー散乱のような他の光学過程も一定の役割を担っている事を示している。3.各励起位置における発生熱量と1s励起子発光強度の比を調べた。このような比を取ることは,割り算することにより反射やレーリー散乱の効果がキャンセルされるという利点を持つ。上記の比は励起子の各共鳴域(n=1,2,3,4)で増大を示し,正味に結晶に吸収された光の内で,発光に対する熱発生の比率がこれらの領域で増加することを意味している。4.三重項励起子に対するPCSスペクトルは,一定のバックグラウンドを除いて吸収スペクトルと良い対応を示し,光励起により生成された三重項励起子が熱放出する効率は各準位でほぼ一定で有ることが分かった。これらの結果の一部は日本物理学会や昨年8月に開催されたルミネッセンス国際会議で発表した。励起子のフォノン散乱による無輻射緩和過程を探ることを目的として,化合物半導体β-ZnP_2を対象に光カロリメトリー分光(PCS)スペクトルと励起子発光の励起スペクトルの同時測定を実施した。β-ZnP_2は明瞭な励起子系列を示し,電子-格子弱結合系のため個々の緩和素過程が追跡できるなど,励起子研究に適した物質である。得られた主な結果は以下の通りである。1.一重項1s縦波励起子エネルギー以上の光励起下では,吸収された光が熱に変わる効率はほぼ一定であり,入射光の試料表面での反射ロスによる補正と絶対熱発生量の較正から,熱変換効率は約80%と高い値を持つことが分かった。2.一方,1s励起子の反射バンド内では発光,熱発生とも減少する。このことは,この領域では反射・発光・熱発生以外に,共鳴レーリー散乱のような他の光学過程も一定の役割を担っている事を示している。3.各励起位置における発生熱量と1s励起子発光強度の比を調べた。このような比を取ることは,割り算することにより反射やレーリー散乱の効果がキャンセルされるという利点を持つ。上記の比は励起子の各共鳴域(n=1,2,3,4)で増大を示し,正味に結晶に吸収された光の内で,発光に対する熱発生の比率がこれらの領域で増加することを意味している。4.三重項励起子に対するPCSスペクトルは,一定のバックグラウンドを除いて吸収スペクトルと良い対応を示し,光励起により生成された三重項励起子が熱放出する効率は各準位でほぼ一定で有ることが分かった。これらの結果の一部は日本物理学会や昨年8月に開催されたルミネッセンス国際会議で発表した。化合物半導体ZnP_2は励起子の研究に最も適した物質の一つである。本研究ではZnP_2結晶におけるフォノン散乱による励起子の無輻射過程を探ることを目的として,光カロリメトリー分光(PCS)を実施する。PCSに用いる熱伝導型ヘリウムクライオスタットは,当初の予定より遅れて平成10年10月中旬に納品された。信号検出回路の組み込み及び調整を行い,12月中旬よりPCSの観測を開始した。予備測定の段階であるが,得られた結果は次の通りである。我々の場合,波長可変チタンサファイアレーザーを用いてZnP_2励起子帯領域の共鳴励起を行う。レーザー波長を一重項1s励起子からバンドギャップ近傍まで掃引しながら試料の温度上昇を観測した。得られたPCSスペクトルは全領域で反射スペクトルとかなり良い対応を示す。即ち,反射ロスの少ない領域で温度の上昇量ΔTが大きく,ロスの多い領域でΔTが減少する。このことは,試料に吸収された光がほぼ等しい割合で熱に変換されることを意味する。しかし,n=1から4までの各励起子エネルギー位置では反射補正を施してもPCS信号の変化が残る。特に,最低励起子準位近傍の1.5652 eVから低エネルギーにかけて見られるΔTの急激な降下は反射率変化とは大きな差異を示す。このエネルギーは別の実験から得られている1s縦波励起子エネルギーE_Lと実験誤差内で一致する。従ってこのような振る舞いは,縦波励起子直下から熱発生が減少すること,すなわち励起子緩和において光学不活性な縦波励起子が重要な役割を担っていることを示唆する。上記の研究成果は平成11年3月の日本物理学会年会で発表する。 | KAKENHI-PROJECT-10640308 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10640308 |
半導体励起子の高感度光カロリメトリー分光-光励起状態におけるエネルギー散逸過程の解明- | 今後,励起子発光の励起スペクトルとの対応や三重項励起子に対するPCSスペクトルについて調べ,一部の結果を本年8月に開催されるルミネッセンス国際会議で発表する予定である。化合物半導体ZnP_2は励起子の研究に最も適した物質の一つである。この結晶における励起子のフォノン散乱による無輻射緩和過程を探ることを目的として,昨年度の予備測定に引き続き本年度は,光カロリメトリー分光(PCS)スペクトルと励起子発光の励起スペクトルの同時測定を実施した。得られた主な結果は以下の通りである。1.一重項1s縦波励起子エネルギー以上の光励起下では吸収された光が熱に変わる効率はほぼ一定であり,試料表面での反射ロスによる補正と絶対熱発生量から求めた熱変換効率は約80%であることが分かった。2.1s励起子の反射バンド内では発光,熱発生とも減少する。このことは,この領域では反射・発光・熱発生以外に共鳴レーリー散乱のような他の光学過程も一定の役割を担っている事を示している。3.各励起エネルギーにおける熱発生量と1s励起子発光強度の比を調べた。このような比を取ることは,割り算することにより反射やレーリー散乱の効果がキャンセルされるという利点を持つ。上記の比は励起子の各共鳴域(n=1,2,3,4)で増大を示し,これらの領域では正味に結晶に吸収された光の内で発光に対する熱発生の比率が増加することを意味している。4.三重項励起子に対するPCSスペクトルは,一定のバックグラウンドを除いて吸収スペクトルと良い対応を示し,光励起により生成された三重項励起が熱放出する効率は各準位でほぼ一定で有ることが分かった。これらの結果の一部は日本物理学会や昨年8月に開催されたルミネッセンス国際会議で発表した。 | KAKENHI-PROJECT-10640308 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10640308 |
可積分系のタウ関数と代数曲線 | ソリトン方程式の中で最も重要な方程式であるKP方程式の解について研究する。KP方程式の様々な解が代数曲線から構成される。本研究では種数1以上の特異代数曲線に対応するKP方程式の解を具体的かつ系統的に求める。これは従来技術的困難のため放置されていた問題であるが、rogue waveなどの非線形波動の新しい研究動向の観点、および数学内部におけるテータ関数論の観点から重要かつ興味深い問題と考えられる。ここではKP方程式の佐藤理論を用いてこの問題を攻略する。さらに佐藤理論の観点から、位相的場の理論の相関関数の性質の解明も目指す。ソリトン方程式の中で最も重要な方程式であるKP方程式の解について研究する。KP方程式の様々な解が代数曲線から構成される。本研究では種数1以上の特異代数曲線に対応するKP方程式の解を具体的かつ系統的に求める。これは従来技術的困難のため放置されていた問題であるが、rogue waveなどの非線形波動の新しい研究動向の観点、および数学内部におけるテータ関数論の観点から重要かつ興味深い問題と考えられる。ここではKP方程式の佐藤理論を用いてこの問題を攻略する。さらに佐藤理論の観点から、位相的場の理論の相関関数の性質の解明も目指す。 | KAKENHI-PROJECT-19K03528 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K03528 |
鼻粘膜上皮の物理的バリア機能の動的解析 | 気道粘膜上皮は、イオンや高分子物質の輸送機能だけではなく、バリア機能を持ち、生体の恒常性維持を担っている。従来、免疫学的バリア機能に重点がおかれがちであったが、原点に戻り、物理的バリア機能に焦点をあて、新しい視点からの鼻粘膜バリア機能の評価法について検討をおこなった。気道上皮バリア機能を評価するため、in vitroでは、短絡電流、上皮膜抵抗の、in vivoでは、鼻粘膜水分蒸散量、上皮間電位差の測定系を確立し、種々の検討を引き続きおこない、以下の結果を得た。鼻粘膜だけではなく、ヒト咽頭粘膜でも、上皮間電位差が測定可能となった。また、酸ストレスにより咽頭上皮間電位差であらわされる電気的バリア機能は低下し、中性塩化亜鉛で回復する傾向を示した。プロトンポンプインヒビターを内服することにより、塩化亜鉛局所処置による回復効果は増強する可能性が示唆された。細菌感染およびウイルス感染のモデルとして、初代培養上皮細胞をリポポリサッカライド(LPS)、poly(I:C)でそれぞれ刺激したところ、上皮膜抵抗が減少し、電気的バリア機能が低下したことが示唆され、感染時のバリア機能の低下を示す指標となると考えられた。陽性荷電を有するキトサンなどのポリカチオンでは、上皮膜抵抗が減少したが、陰性荷電を有するヘパリンなどのポリアニオンでは変化を認めなかった。この結果は、ドラッグデリバリーシステムの観点からも重要な知見であると考えられた。一方、LPS、poly(I:C)刺激後、ヘパリンを投与すると、上皮膜抵抗の減少は回復した。難治性気道疾患に対してヘパリン局所投与による治療が有用である可能性が示唆された。気道粘膜上皮は、イオンや高分子物質の輸送機能だけではなく、バリア機能を持ち、生体の恒常性維持を担っている。従来、免疫学的バリア機能に重点がおかれがちであったが、原点に戻り、物理的バリア機能に焦点をあて、新しい視点からの鼻粘膜バリア機能の評価法について検討をおこなった。気道上皮バリア機能を評価するため、in vitroでは、短絡電流、上皮膜抵抗の、in vivoでは、鼻粘膜水分蒸散量、上皮間電位差の測定系を確立し、種々の検討を引き続きおこない、以下の結果を得た。鼻粘膜だけではなく、ヒト咽頭粘膜でも、上皮間電位差が測定可能となった。また、酸ストレスにより咽頭上皮間電位差であらわされる電気的バリア機能は低下し、中性塩化亜鉛で回復する傾向を示した。プロトンポンプインヒビターを内服することにより、塩化亜鉛局所処置による回復効果は増強する可能性が示唆された。細菌感染およびウイルス感染のモデルとして、初代培養上皮細胞をリポポリサッカライド(LPS)、poly(I:C)でそれぞれ刺激したところ、上皮膜抵抗が減少し、電気的バリア機能が低下したことが示唆され、感染時のバリア機能の低下を示す指標となると考えられた。陽性荷電を有するキトサンなどのポリカチオンでは、上皮膜抵抗が減少したが、陰性荷電を有するヘパリンなどのポリアニオンでは変化を認めなかった。この結果は、ドラッグデリバリーシステムの観点からも重要な知見であると考えられた。一方、LPS、poly(I:C)刺激後、ヘパリンを投与すると、上皮膜抵抗の減少は回復した。難治性気道疾患に対してヘパリン局所投与による治療が有用である可能性が示唆された。鼻粘膜などの気道上皮の物理的バリア機能を解析し、その異常と疾患の関連性および治療の可能性について研究をおこない以下の知見を得た。1)生理食塩水の点鼻あるいは噴霧により、鼻粘膜水分蒸散量が低下し、鼻粘膜バリア機能がup-regulateされることを示した。2)電荷性の上皮バリア機能に対する影響を検索するため、初代培養気道上皮細胞の上皮膜抵抗を測定したところ、陽性に荷電しているポリカチオンで低下、陰性に荷電しているポリアニオンで増加する傾向が認められた。この知見はドラッグデリバリーシステムの観点からも重要であると考えられた。3)抗原鼻誘発検査前後での、鼻粘膜水分蒸散量、鼻粘膜上皮間電位差を測定したところ、誘発後に鼻粘膜水分蒸散量の上昇、鼻粘膜上皮間電位差の減少を確認し、アレルギー反応に伴い上皮バリア機能がdown-regulateすることを証明した。4)酸ストレスに対する気道粘膜上皮の電気的バリア機能を検索し、気道上皮の電気的バリア機能は、酸ストレスにより低下することを証明した。また、プロトンポンプインヒビターの投与により、その低下が抑制されることを実験的に示した。生体の酸ストレスは、胃酸だけではなく気道上皮細胞自身のプロトンポンプ活性の亢進による水素イオンの放出によるものも考えられる。プロトンポンプに作用する薬剤が、胃酸による食道外粘膜病変や「バリア機能病」といってもよい気道アレルギーひいては広義の気道の炎症性疾患の病態の改善に有効である可能性が示唆された。昨年度に引き続いて、鼻粘膜などの気道上皮の物理的バリア機能を解析し、その異常と疾患の関連性および新しい治療の可能性について研究をおこない、以下の知見を得た。1)バリア機能関連タンパクであるフィラグリンの局在を免疫組織学的に検索し、表皮、口腔粘膜上皮、下鼻甲介粘膜(前端部から後端まで)上皮で存在し、気管支粘膜上皮にはないことを、形態学的に確認した。2)気道上皮がうける様々な物理的ストレスの中でも、今までほとんどわかっていなかったシアストレスの影響を検索するため、初代培養気道粘膜 | KAKENHI-PROJECT-20592003 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20592003 |
鼻粘膜上皮の物理的バリア機能の動的解析 | 上皮細胞および気管組織に対して適用できるシアストレスが気道上皮の電気的バリア機能に与える影響を解析する装置を作製した。3)近年酸化ストレスを防御するために水素水が有用であることが報告されているが、今回水素水の点鼻をおこない、鼻粘膜上皮の物理的バリア機能がup-regulateすることを証明した。このことから、抗酸化剤の点鼻が鼻疾患の治療に有用である可能性が示唆された。4)過酸素も低酸素と同じく、酸化ストレスをひきおこし、細胞のカリウムチャネル活性の変化をひきおこすことを証明し、気道上皮においても検討する必要があることが示唆された。5)グリセリンやヒアルロン酸などの保湿剤の点鼻が、鼻粘膜上皮の物理的バリア機能がup-regulateすることにより効果を発揮している可能性が証明された。気道粘膜上皮は、イオンや高分子物質の輸送機能だけではなく、バリア機能を持ち、生体の恒常性維持を担っている。気道上皮バリア機能を評価するため、in vitroでは、短絡電流、上皮膜抵抗の、in vivoでは、鼻粘膜水分蒸散量、上皮問電位差の測定系を確立し、種々の検討を引き続きおこない、以下の結果を得た。鼻粘膜だけではなく、ヒト咽頭粘膜でも、上皮間電位差が測定可能となった。また、酸ストレスにより咽頭上皮間電位差であらわされる電気的バリア機能は低下し、中性塩化亜鉛で回復する傾向を示した。プロトンポンプインヒビターを内服することにより、塩化亜鉛局所処置による回復効果は増強する可能性が示唆された。細菌感染およびウイルス感染のモデルとして、初代培養上皮細胞をリポポリサッカライド(LPS)、poly(I:C)でそれぞれ刺激したところ、上皮膜抵抗が減少し.電気的バリア機能が低下したことが示唆され、感染時のバリア機能の低下を示す指標となると考えられた。陽性荷電を有するキトサンなどのポリカチオンでは、上皮膜抵抗が減少したが、陰性荷電を有するヘパリンなどのポリアニオンでは変化を認めなかった。この結果は、ドラッグデリバリーシステムの観点からも重要な知見であると考えられた。一方、LPS、poly(I:C)刺激後、ヘパリンを投与すると、上皮膜抵抗の減少は回復した。難治性気道疾患に対してヘパリン局所投与による治療が有用である可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-20592003 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20592003 |
相互承認論に関する理論的・歴史的研究 | 本研究では、初期フィヒテの「相互人格性理論」の構造分析を起点としながら、「相互承認論」が現代哲学においていかなる意味を持ち、またいかなる問題を孕んでいるのかを以下のように明らかにした。1、フィヒテの「相互人格性理論」は『自然法の基礎』において確立され、「相互承認」の問題は法・制度・国家などのそれと密接に関連づけられて論じられている。こうした観点からすると、「相互承認論」の原型はスピノザ哲学に求めることができる。その意味では「相互承認論」を「社会契約論」との関係において問題にする必要がある。2、現代哲学においては、「相互承認」の問題は英米の認知心理学において「模擬説」と「理論説」との間の論争において問題になっている。この場合、「模擬説」はカントのUbertragungstheorieを援用しているが、それは基本的にカントの意図を見誤っていると言える。3、ドイツの環境倫理学においては、「相互承認」の問題は「自然の情感的承認」のそれとして重要な議論を提供しつつある。4、しかしながら、「相互承認」の可能性を根本的に考察すると、その核心には「良心」の問題が伏在していることが明らかになった。その意味でカント哲学のさらなる分析が重要となる。本研究では、初期フィヒテの「相互人格性理論」の構造分析を起点としながら、「相互承認論」が現代哲学においていかなる意味を持ち、またいかなる問題を孕んでいるのかを以下のように明らかにした。1、フィヒテの「相互人格性理論」は『自然法の基礎』において確立され、「相互承認」の問題は法・制度・国家などのそれと密接に関連づけられて論じられている。こうした観点からすると、「相互承認論」の原型はスピノザ哲学に求めることができる。その意味では「相互承認論」を「社会契約論」との関係において問題にする必要がある。2、現代哲学においては、「相互承認」の問題は英米の認知心理学において「模擬説」と「理論説」との間の論争において問題になっている。この場合、「模擬説」はカントのUbertragungstheorieを援用しているが、それは基本的にカントの意図を見誤っていると言える。3、ドイツの環境倫理学においては、「相互承認」の問題は「自然の情感的承認」のそれとして重要な議論を提供しつつある。4、しかしながら、「相互承認」の可能性を根本的に考察すると、その核心には「良心」の問題が伏在していることが明らかになった。その意味でカント哲学のさらなる分析が重要となる。今年度は研究計画の第一年度であるので、まず研究計画にしたがって文献購入やハード環境などの研究環境を整備して、特にフィヒテの相互承認論と現代の環境倫理学における承認の問題に関する研究に着手して、その研究成果の一部をそれぞれ「<相互人格性>理論の陥穽」(日本現象学会編『現象学年報』第16号所収)および「環境倫理学における<承認>の問題」(中部哲学会編『中部哲学会年報』第33号所収)として公刊した。前者に関しては以下の諸論点を論証して明らかにした。(1)フィヒテの「相互人格性」理論がカントのUbertragungstheorieを受け継ぎながらそれを独特の仕方で発展させた論理であること。(2)しかし、カントとフィヒテとの決定的な理論的差異は「自己」と「他者」との「同型性」の捉え方の違いにあること。(3)フィヒテの「相互人格性」理論はヘーゲルをはじめとして、現代哲学にまで非常に大きな影響を与え、特に「素朴心理学」の議論においても重要な問題構制を提供していること。後者に関しては以下の諸論点を論証して明らかにした。(1)環境倫理学の分野においても「承認」の問題は重要な意義を持っていること。(2)その「承認」の構造に関して「相互性」と「一方向性」との論争があり、「一方向性」の議論の代表として、M.ゼールの最近の議論があり、そこでは「情感的承認」という考え方が積極的に提起されていること。以上である。本年度は、まず昨年度末から取りかかっていた「相互承認と教育学の問題」について、それをカントの『教育学講義』の解説論文としてまとめると同時に、本年度の研究実施計画にしたがってヘーゲル関係の文献を収集し、それらに分析を加えた。まず最初に、前者についてまとめると、(1)18世紀のドイツにおいて大学内部の学問の自由をめぐる運動において「公共性の構造転換」が確認できる、ということ、および(2)カントもこうした「公共性の構造転換」に依拠しながら、そしてさらに、ルソーの『エミール』などの影響を強く受けながら、教育学を「ディアローグ的教育学」として構想し、その構想によれば「教育」は基本的に相互承認の場であることが確認できる--その意味で、フィヒテが『自然法の基礎』において相互承認の原型を「教育」に置いたことは必ずしも偶然ではない--、ということになろう。つぎに、後者について中間的な報告をするとすれば、(1)『法哲学』においてヘーゲルは相互承認を「家族」・「市民社会」・「国家」というように、歴史的な三段階に区別しながら体系的に論じようとしている。しかし、これを歴史的な段階とすることは現代では維持するのが困難であるものの、たとえば、「市民社会」の議論のように、カントが「人格」と「物件」とに二元化して、相互承認を前者にだけ限定したのに対して、ヘーゲルは「物件」を媒介した「人格」の相互承認ということを問題提起しており、このことは相互承認を現代的に再構成する上でも重要な論点を提供している、ということになる。 | KAKENHI-PROJECT-12610011 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12610011 |
相互承認論に関する理論的・歴史的研究 | この問題については引き続き考察を進めてゆきたいと考えている。初期フィヒテにおいてドイツ語の「Anerkennung」という言葉が「承認」という意味を獲得することで「人格の相互承認」という思想が「相互承認論」として確立され、「相互承認」という用語が哲学の専門用語となった。本研究では、初期フィヒテの「相互人格性理論」の構造分析を踏まえながら、その現代的射程と問題点を以下のように明らかにした。1、フィヒテの「相互人格性理論」は『自然法の基礎』において確立されるが、このことからも明らかなように、「相互承認」の問題は法・制度・国家などのそれと密接に連関している。こうした観点からすると、「相互承認論」の原型はスピノザの『神学・政治論』の議論にもとめることができる。その意味では「相互承認論」を近代ヨーロッパ哲学に固有の思想とみなしうる。2、ヘーゲルがフィヒテの「相互承認論」を受け継いでゆく。『精神現象学』ではそれを理論的に整理するが、それと同時にヘーゲルは『法の哲学』ではむしろ「相互承認」のあり方を「家族」・「市民社会」・「国家」という三つの段階ないしは場面に即して具体的に分析しようと試みる。こうした試みは、現代ドイツのA.ホネットなどにも影響を及ぼして引き継がれている。3、現代哲学について言うと、「相互承認」の問題は英米では心理学において重要な意味を持つとともに、ドイツでは環境倫理学において重要な議論を提供しつつある。4、しかしながら、「相互承認」の可能性を原理的に考察すると、その核心には「良心」の問題が伏在していることが明らかになった。この問題にとって最も示唆に富む議論を提供しているのがカントである。それは「相互承認」の権利問題と位置づけることができると思う。 | KAKENHI-PROJECT-12610011 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12610011 |
心肺機能予備能力の無侵襲総合評価システムの開発 | 本研究は、健常者或いは心疾患患者のための総合的な心肺機能予備能力計測・評価システムの開発を行った。本システムは、ガス分析器、ICG(胸部インピーダンス)、ECG(心電図)の装置からなり、安静時、運動(自転車エルゴメータ負荷)時の呼吸循環(換気量、酸素摂取量、二酸化炭素排泄量、心拍数、心拍出量)動態に無侵襲的に連続測定し、得られたデータはパソコンによりオンラインで処理される。漸増負荷運動では、嫌気的閾値(AT)は健常者に比べ心疾患患者では有意に低い。パルスオキシメータ(申請設備備品)を用いた測定では、健常者、心疾患患者共に動脈血酸素飽和度は安静時とATレベル以上の運動負荷時との間では有意な差は認められない。ステップ負荷運動時の各測定パラメータの過渡応答特性を、一次の指数関数を持つ線形モデルで定量化した際、呼吸系パラメータには健常者と心疾患患者との間には有意な差は見られないが、循環系では心疾患患者の動特性は遅くなる。その動特性の遅れは主に心拍数によることが示され、心機能の低下は一回拍出量の低下として顕著に現れる。以上より、呼吸系パラメータから得られるATを基準とした従来の運動耐容能の評価は、心疾患患者に対しては安全に問題があることが示された。また、本研究によって開発されたシステムは、運動負荷試験時の呼吸循環系諸指標の過渡応答特性を定量的に示し、従来の定常状態の情報に加え過渡状態の情報を提供すると共に、呼吸と循環の相互関係に関する情報を提供する。また、運動時の一回拍出量、心拍出量を与えるICGを備えた本システムは、運動時のリスクの有無を示唆する予防医学上の情報を提供するだけではなく、心肺機能の評価と診断に重要な情報を提供するものである。本研究では設備備品であるPowerMacは、データ取得と解析、シミュレーションに使用した。本研究は、健常者或いは心疾患患者のための総合的な心肺機能予備能力計測・評価システムの開発を行った。本システムは、ガス分析器、ICG(胸部インピーダンス)、ECG(心電図)の装置からなり、安静時、運動(自転車エルゴメータ負荷)時の呼吸循環(換気量、酸素摂取量、二酸化炭素排泄量、心拍数、心拍出量)動態に無侵襲的に連続測定し、得られたデータはパソコンによりオンラインで処理される。漸増負荷運動では、嫌気的閾値(AT)は健常者に比べ心疾患患者では有意に低い。パルスオキシメータ(申請設備備品)を用いた測定では、健常者、心疾患患者共に動脈血酸素飽和度は安静時とATレベル以上の運動負荷時との間では有意な差は認められない。ステップ負荷運動時の各測定パラメータの過渡応答特性を、一次の指数関数を持つ線形モデルで定量化した際、呼吸系パラメータには健常者と心疾患患者との間には有意な差は見られないが、循環系では心疾患患者の動特性は遅くなる。その動特性の遅れは主に心拍数によることが示され、心機能の低下は一回拍出量の低下として顕著に現れる。以上より、呼吸系パラメータから得られるATを基準とした従来の運動耐容能の評価は、心疾患患者に対しては安全に問題があることが示された。また、本研究によって開発されたシステムは、運動負荷試験時の呼吸循環系諸指標の過渡応答特性を定量的に示し、従来の定常状態の情報に加え過渡状態の情報を提供すると共に、呼吸と循環の相互関係に関する情報を提供する。また、運動時の一回拍出量、心拍出量を与えるICGを備えた本システムは、運動時のリスクの有無を示唆する予防医学上の情報を提供するだけではなく、心肺機能の評価と診断に重要な情報を提供するものである。本研究では設備備品であるPowerMacは、データ取得と解析、シミュレーションに使用した。 | KAKENHI-PROJECT-06780714 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06780714 |
官吏ヴィオレ=ル=デュックと文学 | フランス本国においてすら等閑視されていたE.-L.-N.ヴィオレ=ル=デュック(1781-1857)の業績を再評価し、19世紀前半の文芸界において彼が隠れた影響力を持っていたことを実証した。特に1830年代後半から1840年代に亘る文芸誌記事に詳細な検討を加え、サント=ブーヴがヴィオレ=ル=デュックの交流が希薄であったという従来の説を覆す決定的証拠を得たことは本研究の大きな成果である。フランス本国においてすら等閑視されていたE.-L.-N.ヴィオレ=ル=デュック(1781-1857)の業績を再評価し、19世紀前半の文芸界において彼が隠れた影響力を持っていたことを実証した。特に1830年代後半から1840年代に亘る文芸誌記事に詳細な検討を加え、サント=ブーヴがヴィオレ=ル=デュックの交流が希薄であったという従来の説を覆す決定的証拠を得たことは本研究の大きな成果である。ヴィオレ=ル=デュック初期試作品と19世紀前半の文学状況の関連について調査および研究を行った。後に『韻文蔵書目録』で語られるように、ヴィオレ=ル=デュックはフランスの詩について総合的な知見の確立を目指していた。彼が取った最初の方法は詩の創作(『新詩法』(Nouvel art poetique)1809年)であった。『新詩法』という表題(明らかに古典詩人ボワローの風刺詩『詩法』を捩ったものである)から容易に推察されるように、彼が取った表現方法は「風刺」というきわめて古典的な方法である。ロマン主義台頭の時期にあって、あえてこのような方法をとった背景には、まさに彼の風刺的精神があると考えれらる。引き続き彼は『ローマとチブル』、『アポロンの帰還』、『ナポレオン弾劾詩』、『栄達の技法』、『計木詩法』と風刺詩を発表する。また、詩を創作する一方、官吏という職務を果たしながらも、自らの文学史観を形成すべく研究を続けていたように思われる。当時の文学史の大著、ラアルプ『古代近代文学講義』に見られるように、ギリシャ=ローマの文芸的権威がフランス古典期と継承され、それが18世紀の知的啓蒙の文芸へと継承・発展を遂げたとする文学史観に対して彼は反発を覚えていたに違いない。詩作品を連続して発表した後、彼は詩作から方向を転じ、まずフランス風刺詩人の系譜であるボワロー、レニエの校訂版を出版した後、『フランス詩概要』というフランス詩史の研究成果を公表する。彼はフランス古典期を評価するものの過大評価はせず、中世から16世紀ルネサンスを経て古典期に至る流れを叙述することで、ボワロー以降無視されて来た古典期以前の文芸を再評価する。これは、サント=ブーブを中心としたロマン主義グループが古典主義者達への反発からフランス古典主義の影に隠れた16世紀の文芸に価値を見出した動きとは別の再評価なのである。今年度の課題の中心として、7月王政下(1830-1848)のヴィオレ=ル=デュックの文筆活動とその背景を明らかにすることを掲げ、当時文芸ジャーナリズムの中心人物の一人であったサント=ブーヴとの関係を中心に研究を行った。サント=ブーヴがジャーナリズムの世界に登場するのは1824年であるが、この頃、彼はヴィオレ=ル=デュックが催すサロンに出入りし、色々とヴィオレ=ル=デュックの世話になっていた。後年、サント=ブーヴが、ジャーナリストとして活躍するようになった後は、ヴィオレ=ル=デュックに対する感謝の態度が見られない、とするG.Charlierのような考え方もあるが、実際にはそうではない。確かに、直接サント=ブーヴが公表したものの中でのヴィオレ=ル=デュックの扱いはそれほど多くはなく、また冷淡と取られるような扱いであると考えれてても巳むをえない。今年度の研究では、ヴィオレ=ル=デュックがきわめて小部数で刊行した、Epitrea M. Sainte-Beuve,1837.[Signe:Viollet leDuc.], Paris: impr.de Ri-gnoux, (1837). In-8°,8p.の刊行時期を確定したうえで(実際、複数の書誌で刊行時期の記述に混乱が見られる)、この書簡形式の詩の内容および、アンリ=パタンが1844年に「ジュルナル・デ・サヴァン」に掲載したヴィオレ=ル=デュックとサント=ブーヴに言及した記事をあわせて検討することにより、彼らの交際は現実には続いており、「サント=ブーヴがヴィオレ=ル=デュックに対して感謝の意を表していない」とすることは妥当ではない、ということを明らかにした。今年度は、主として第2共和制成立(1848)以降のヴィオレ=ル=デュックの活動、すなわち晩年の活動を明らかにする予定であった。調査対象の下記の文献および、フランス国立図書館の蔵書を綿密に検討した結果、後述の成果があった。第1は、上記2の1849年の蔵書売り立て目録No.362(p.32)に記載されているJudith et David, tragedies. Parmonsieur L*** | KAKENHI-PROJECT-18520203 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18520203 |
官吏ヴィオレ=ル=デュックと文学 | avocatは、フランス国立図書館の蔵書目録ではヴィオレ=ル=デュックの共著者あるいは共編者として記載されているが、アルスナル分館所蔵本(ARS GD-20977)を検討した所、ヴィオレ=ル=デュックの蔵書票(exlibris)があるのみで編集に関する関与は認められないことを確証したことである。第2は文学史上ではこれまで注目されていなかった1819年から1820年にかけて発刊された文芸雑誌『リセ・フランセ』(Lycee Francais)にヴィオレ=ル=デュックの作品を数点発見したことである。これらは、これまでヴィオレ=ル=デュックに関する文献では全く言及されていなかったことであり、小規模ではあるが重要な成果であると考えている。 | KAKENHI-PROJECT-18520203 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18520203 |
三量体Gタンパク質の光操作技術の開発 | 本研究では,細胞内シグナル伝達において鍵となるセカンドメッセンジャー(カルシウムイオン(Ca2+)および環状アデノシン一リン酸(cAMP))の動態制御を担う三量体Gタンパク質のαサブユニット(Gαq)を自由自在に光照射でコントロールするための分子プローブを設計・開発した.この分子プローブの開発にあたっては,細胞質と細胞膜の間でGαの動態をコントロールすることにより,その活性の光操作を実現した.具体的には,申請者が以前開発した光スイッチタンパク質「Magnet system」にCAAXモチーフを連結して細胞膜に局在化させた.さらにGα(PLCβを活性化するGαqアイソフォームを例として用いた)にもMagnet systemを連結した.暗所ではGαqは不活性型として細胞質中に存在するが,光を照射するとMagnetsystemは二量体を形成し,Gαqは細胞膜に移行した.この細胞膜への移行によってGαqは活性化し,エフェクターのPLCβの活性化を引きおこして最終的にCa2+の濃度上昇を誘起できることが分かった.なお,光照射をやめれば,Magnet systemが単量体に戻るので,Gαqは細胞膜から離れて再び不活性型に戻った.このような分子プローブを遺伝子工学的アプローチに基づいて作製し,細胞内シグナル伝達において重要な働きを持つCa2+とcAMPのそれぞれについて,細胞内動態を青色光による光刺激のON/OFFによりでコントロールできることを示した.本研究では,細胞内シグナル伝達において鍵となるセカンドメッセンジャー(カルシウムイオン(Ca2+)および環状アデノシン一リン酸(cAMP))の動態制御を担う三量体Gタンパク質のαサブユニット(Gαq)を自由自在に光照射でコントロールするための分子プローブを設計・開発した.この分子プローブの開発にあたっては,細胞質と細胞膜の間でGαの動態をコントロールすることにより,その活性の光操作を実現した.具体的には,申請者が以前開発した光スイッチタンパク質「Magnet system」にCAAXモチーフを連結して細胞膜に局在化させた.さらにGα(PLCβを活性化するGαqアイソフォームを例として用いた)にもMagnet systemを連結した.暗所ではGαqは不活性型として細胞質中に存在するが,光を照射するとMagnetsystemは二量体を形成し,Gαqは細胞膜に移行した.この細胞膜への移行によってGαqは活性化し,エフェクターのPLCβの活性化を引きおこして最終的にCa2+の濃度上昇を誘起できることが分かった.なお,光照射をやめれば,Magnet systemが単量体に戻るので,Gαqは細胞膜から離れて再び不活性型に戻った.このような分子プローブを遺伝子工学的アプローチに基づいて作製し,細胞内シグナル伝達において重要な働きを持つCa2+とcAMPのそれぞれについて,細胞内動態を青色光による光刺激のON/OFFによりでコントロールできることを示した. | KAKENHI-PROJECT-17K19192 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K19192 |
味センサ及び摩擦感テスターを利用した経口ジェネリック薬の服用性評価システムの構築 | 本研究ではドライシロップ製剤、口腔内崩壊錠等の薬剤の苦味を評価した。クラリスロマイシンドライシロップ製剤の苦味強度と薬物溶出濃度の間には良好な相関性を認めた。味覚センサ測定による主成分分析の結果より算出したファモチジン口腔内崩壊錠のユークリッド距離は、服用性と良好な相関を示した。口腔内崩壊錠の評価法として、官能評価、溶出性の評価に加えて、崩壊性についての新たな評価法を導入し、製剤の性質を総合的に評価した。本研究ではドライシロップ製剤、口腔内崩壊錠等の薬剤の苦味を評価した。クラリスロマイシンドライシロップ製剤の苦味強度と薬物溶出濃度の間には良好な相関性を認めた。味覚センサ測定による主成分分析の結果より算出したファモチジン口腔内崩壊錠のユークリッド距離は、服用性と良好な相関を示した。口腔内崩壊錠の評価法として、官能評価、溶出性の評価に加えて、崩壊性についての新たな評価法を導入し、製剤の性質を総合的に評価した。平成20年度は、経ロジェネリック薬の服用性の評価システムのモデルとしてファモチジン含有口腔内崩壊錠剤の服用性を定量的に評価することを目的に検討を行った。ファモチジン含有口腔内崩壊錠の先発品ならびに後発品8品目を対象にして、口腔内崩壊錠の口腔内での薬物溶出を想定した溶出試験を実施した。ステンレスメッシュに錠剤10錠を入れ、37度に保持した水100mL中に投入し、10、20、30、60秒後にメッシュをとりだし、水100mL中に溶出したファモチジン濃度およびアスパルテーム濃度をHPLC法で測定した。また溶出液をアルファモス社のアルファアストリーを用いて測定を行った。ファモチジン含有口腔内崩壊錠の先発品ならびに後発品8品目からの薬物放出性ならびにアスパルテーム放出性については、先発品の口腔内崩壊錠からの薬物放出・アスパルテーム放出がもっとも抑制されていた。後発品の中には薬物放出性ならびにアスパルテーム放出性が増大している製剤が散見された。センサ測定の結果の主成分分析を行ったところ、主成分マップ上、先発医薬品に近いところに位置する後発医薬品グループと先発医薬品とはかけはなれた場所に位置する後発医薬品グループに分類され、服用性を先発品から後発品までのユークリッド距離を算出したところ、ユークリッド距離と服用性の間には相関性が認められた。平成21年度は、20年度の実績を基盤として、服用性についてより多角的に評価を実施したいと考えている。クラリスロマイシンドライシロップ(CAMDS)12製剤を対象に、酸性スポーツ飲料に30秒間懸濁した試料の苦味強度を評価した。また、同懸濁試料中のクラリスロマイシン(CAM)濃度をHPLC法で決定し、官能試験結果との相関性について検証した。その結果、ヒト官能試験の実測苦味強度を、ろ過液中のCAM濃度を用いた予測苦味強度で回帰すると、回帰式はY(予測苦味強度)=0.621X(実測苦味強度)+1.118(R^2=0.538,p<0.01)、相関係数はr=0.814となり、良好な相関性が認められた。この事実より、本検討に用いた懸濁液中のCAM濃度から苦味予測を行う簡易的in vitro試験法は、服用時にヒトが感じる苦味評価に有用である評価法であることを確認した。また、本簡易的in vitro試験法により、酸性スポーツ飲料に同条件で懸濁した場合、各種CAMDS製剤間に苦味の違いがあること、CAMDS製剤のほとんどが強い苦味を呈することが評価できた。さらに、CAMDS製剤の水懸濁試料を口に含み口腔内から排出後、1分経過後にムコダイン^[○!R]DS(MDS)水懸濁試料を口腔内に5秒間含んだ場合の苦味強度をヒト官能試験で評価した。ヒト官能試験の実測苦味強度を、ろ液中のCAM濃度を用いた予測苦味強度で回帰すると、回帰式は、Y(予測苦味強度)=0.966X(実測苦味強度)+0.238(R^2=0.899,p<0.01)、相関係数は0.796となり、良好な相関性が認められた。以上より、本検討に用いた簡易的in vitro試験法は、2種の製剤を併用する際に生じる苦味評価に有用であり、2種の製剤が存在する口腔内を反映していることが確認できた。本検討結果より、CAMDSとMDSを続けて服用する場合にはCAMDSの種類が最も苦味に影響し、両製剤の服用順も苦味強度に影響することが明らかとなった。今後はさらに、味センサと摩擦感テスターでの検討も行い、客観的評価法の構築を目指す。味センサ及び摩擦感テスターを利用した経口ジェネリック薬の服用性評価システムの構築を目的として、平成22年度は、主に以下の2つの研究を行った。まず、ムコソルバン^<[○!R]>錠ドライシロップおよびその後発品を対象として、口腔内を想定した試験器を用いた苦味予測法の確立を目的とし、官能試験、溶出試験に加えて、新たな試験器の導入を試みた。これは、錠剤の底面を水表面に浸し、上から降りてくる重りの圧力による錠剤の崩壊時間を測定するシステムであり、まず、様々な重りの直径や重量を検討して適切な条件設定を行った。これにより、口腔内での崩壊時間が予測でき、官能試験による服用性と溶出試験による薬物溶出と比較することで、製剤の性質が総合的に評価できた。 | KAKENHI-PROJECT-20590166 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20590166 |
味センサ及び摩擦感テスターを利用した経口ジェネリック薬の服用性評価システムの構築 | また、クレメジン^<[○!R]>細粒および後発品2種について、物理薬剤学的性質として、粒度分布、流動性および分散性について測定し、比較検討を行った。服用性については、SD法を用いて評価した。クレメジン^<[○!R]>細粒を嚥下補助製品と組み合わせた検討では、嚥下補助製品として、ゼリー状のオブラート(三和化学)、お薬飲めたね(龍角散)、トロメリン顆粒(三和化学)を用いた。それぞれの組み合わせにおける服用性、尿毒症物質への吸着除去率を検討した。クレメジン^<[○!R]>細粒および他の後発品における服用性の検討から、粒度分布の大きい製剤は官能試験後に嗽を数回した後でも口の中に残る傾向が認められ、口の中をリセットするために必要な嗽の回数を多く必要とすることが明らかとなった。ざらつき感については現在摩擦感テスターを用いて測定中である。以上のことから、粒度分布の大きい製品は嚥下する際、口の中に残りやすく、服用性が悪くなる可能性が示唆された。更にクレメジン^<[○!R]>細粒を嚥下補助製品と組み合わせた検討では、嚥下補助製品で服用した場合、水で服用した場合と比較して、クレメジン^<[○!R]>細粒の尿毒症物質の吸着除去率に影響を与えることなく、服用性は改善されることが示された。 | KAKENHI-PROJECT-20590166 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20590166 |
有限群のモジュラー表現におけるブロックの導来同値について | 有限群のモジュラー表現における問題はおもに与えられた群の標数Pにおけるブロックの表現の情報はp-局所部分群のブロックの情報から得られるのではないかという考えに基づいている。とくにブルエは可換不足群を持つブロックはそのブラウアー対応子に導来同値ではないかという予想を提出している。この予想については巡回群を不足群に持つ場合が一般的に解決されており、現在はp-ランクが2の場合を主に調べている段階である。今年度の研究においてはとくにp-ランクは2であるが不足群が可換群とはならない場合についての研究を行った。具体的には3次射影線型群で不足群が位数27の被可換群となる主ブロックとそれにブラウアー対応する3次射影ユニタリ群の主ブロックを調べ、それらのブロック間に導来同値が存在することを示した。ルキエは2002年7月にブルエ予想の非可換の場合として、不足群の超焦点部分群が可換であるときその正規化群のブロックとの間に導来同値が存在するのではないかと予想を述べているが、上記の結果はその例になっている。さらに非可換不足群をもつブロックを考察を進めるために、非可換3群を不足群に持つ場合の3次射影特殊線型群と3次射影特殊ユニタリ群のブロック間の関係を調べて2つの対応するブロック間に導来同値が存在することを示した。またこの2つの群を指数3で含む群のブロック間へ導来同値を拡張することや、中心拡大した群のブロックへ導来同値を持ちあげることを試みた。有限群のモジュラー表現における問題はおもに与えられた群の標数Pにおけるブロックの表現の情報はp-局所部分群のブロックの情報から得られるのではないかという考えに基づいている。とくにブルエは可換不足群を持つブロックはそのブラウアー対応子に導来同値ではないかという予想を提出している。この予想については巡回群を不足群に持つ場合が一般的に解決されており、現在はp-ランクが2の場合を主に調べている段階である。今年度の研究においてはとくにp-ランクは2であるが不足群が可換群とはならない場合についての研究を行った。具体的には3次射影線型群で不足群が位数27の被可換群となる主ブロックとそれにブラウアー対応する3次射影ユニタリ群の主ブロックを調べ、それらのブロック間に導来同値が存在することを示した。ルキエは2002年7月にブルエ予想の非可換の場合として、不足群の超焦点部分群が可換であるときその正規化群のブロックとの間に導来同値が存在するのではないかと予想を述べているが、上記の結果はその例になっている。さらに非可換不足群をもつブロックを考察を進めるために、非可換3群を不足群に持つ場合の3次射影特殊線型群と3次射影特殊ユニタリ群のブロック間の関係を調べて2つの対応するブロック間に導来同値が存在することを示した。またこの2つの群を指数3で含む群のブロック間へ導来同値を拡張することや、中心拡大した群のブロックへ導来同値を持ちあげることを試みた。 | KAKENHI-PROJECT-01J07600 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01J07600 |
昆虫ウイルスの機能開発による新しい作物保護システムの確立 | バキュロウイルスの一種、イラクサキンウワバ顆粒病ウイルス(TnGV)の顆粒体に存在するウイルス構成たんぱく質エンハンシンは、これまで多くの顆粒病ウイルスで同定されており、機能として、他のバキュロウイルスと共にその宿主昆虫に摂食させた場合、そのウイルスの感染力を増進する作用がある。本研究では、TnGV顆粒体とバキュロウイルス(AcNPVおよびSeNPV)の封入体をシロイチモジヨトウを用いて生物検定しTnGV顆粒体中のエンハンシンたんぱく質による感染増進作用と、エンハンシン遺伝子を植物(タバコおよびイネ)へ導入し、耐虫性が付与されるか否かを調査した。さらに、エンハンシン遺伝子を持つバキュロウイルス組換え体を感染させた昆虫培養細胞で発現したエンハンシンに感染増進作用があるか否かについても調査した。シロイチモジヨトウは常法により人工飼料育した。バキュロウイルスとして、ウワバの一種Autographa californicaの核多角体病ウイルス(AcNPV)とシロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)NPV、およびTnGVを用いた。生物検定は、3齡シロイチモジヨトウを用い、AcNPVまたはSeNPV多角体を単独またはTnGV顆粒体と共に、人工飼料に定量的に添加したものを24時間添食し、その後ウイルスフリーの人工飼料で飼育して行った。また、形質転換植物を用いた生物検定の場合には、凍結乾燥粉末のタバコの葉またはイネのカルスおよび生葉を用いた。検定後の解析は、死亡率からプロビット法によりMedian lethal dose (LD_<50>)(封入体/幼虫)を算出し、エンハンシン作用の検定区と対照区で得られた値の差をEnhancement indexとして表した。エンハンシンタバコは16系統を、エンハンシンイネは20系統を用いた。植物個体やバキュロウイルス組換え体でエンハンシン遺伝子が導入・発現していることを確認するために、PCR法、リボプローブによるノザン解析、および抗エンハンシンウサギ抗体によるウエスタン解析を行った。シロイチモジヨトウ3齡幼虫を用いた生物検定の結果、LD_<50>は、AcNPVでは1.05×10^5、SeNPV T1株、SeNPVではそれぞれ4.04×10^3、1.92×10^2の値が得られた。これより、今回用いた3種のNPVのシロイチモジヨトウに対する殺虫性は、SeNPVが最も高く次いでSeNPV T1株、AcNPVの順であった。さらに、TnGVによる感染増進効果をEnhancement indexにより評価すると、AcNPVについては1.49、SeNPV T1株、SeNPVについてはそれぞれ0.85,0.36という値が得られ、AcNPVでは約30倍感染が増進されるのに対し、SeNPV T1株では約7倍、SeNPVでは約2倍しか増進されなかった。また、AcNPV、SeNV T1株、SeNPVおよびTnGVの封入体を摂食させたシロイチモジヨトウ幼虫の胃腔膜をSDS-PAGEにより分析したところTnGVの封入体を摂食させた幼虫の胃腔膜の破壊が認められ、これがNPVの感染増進に関与を示唆していた。さらに、エンハンシン遺伝子を持つバキュロウイルス組換え体を感染させた昆虫培養細胞で発現したエンハンシンの感染増進効果を調査したところAcNPVにおいては約14倍、SeNPVにおいては約2倍感染が増進された。エンハンシン遺伝子を導入したタバコにおいてはエンハンシン遺伝子が導入・発現していることをPCR法、ノザン解析、およびウエスタン解析により確認し、エンハンシンを発現している個体(エンハンシンタバコの葉の凍結乾燥粉末を用い生物検定を行った結果、AcNPVにおいては約310倍、SeNPVにおいては約2倍感染が増進した。さらに、エンハンシンタコの凍結乾燥粉末を混合した人工飼料を摂食し続けた幼虫は成長が阻害され異常な蛹化をおこすものが見られた。同様の実験をエンハンシン遺伝子を導入したイネ(エンハンシンイネ)のカルスを用いて行った場合AcNPVの感染は約25倍増進された。また、エンハンシンイネの生葉を用いて行った検定ではAcNPVの感染は約10倍増進された。さらにカルスの凍結乾燥粉末を混合した人工飼料を摂食し続けた場合、幼虫の成長はタバコを用いた場合とは異なりほとんど抑制されなかったが、蛹化異常が見られた。以上の結果よりエンハンシン遺伝子を導入した組換えウイルスおよび形質転換植物(タバコとイネ)はTnGVと同様にNPVの感染を増進することが確認された。従って、今後エンハンシン遺伝子やその類似遺伝子を様々な植物体へ導入していくことで(1)昆虫ウイルスを自然界へ大量に散布することなく、自然界における殺虫性物質の希釈を回避し、(2)目的昆虫のみに対して選択毒性を与え、(3)他の微生物農薬との組合せによりさらに効率のよい害虫防除を確立してゆけるものと期待された。バキュロウイルスの一種、イラクサキンウワバ顆粒病ウイルス(TnGV)の顆粒体に存在するウイルス構成たんぱく質エンハンシンは、これまで多くの顆粒病ウイルスで同定されており、機能として、他のバキュロウイルスと共にその宿主昆虫に摂食させた場合、そのウイルスの感染力を増進する作用がある。 | KAKENHI-PROJECT-06044132 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06044132 |
昆虫ウイルスの機能開発による新しい作物保護システムの確立 | 本研究では、TnGV顆粒体とバキュロウイルス(AcNPVおよびSeNPV)の封入体をシロイチモジヨトウを用いて生物検定しTnGV顆粒体中のエンハンシンたんぱく質による感染増進作用と、エンハンシン遺伝子を植物(タバコおよびイネ)へ導入し、耐虫性が付与されるか否かを調査した。さらに、エンハンシン遺伝子を持つバキュロウイルス組換え体を感染させた昆虫培養細胞で発現したエンハンシンに感染増進作用があるか否かについても調査した。シロイチモジヨトウは常法により人工飼料育した。バキュロウイルスとして、ウワバの一種Autographa californicaの核多角体病ウイルス(AcNPV)とシロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)NPV、およびTnGVを用いた。生物検定は、3齡シロイチモジヨトウを用い、AcNPVまたはSeNPV多角体を単独またはTnGV顆粒体と共に、人工飼料に定量的に添加したものを24時間添食し、その後ウイルスフリーの人工飼料で飼育して行った。また、形質転換植物を用いた生物検定の場合には、凍結乾燥粉末のタバコの葉またはイネのカルスおよび生葉を用いた。検定後の解析は、死亡率からプロビット法によりMedian lethal dose (LD_<50>)(封入体/幼虫)を算出し、エンハンシン作用の検定区と対照区で得られた値の差をEnhancement indexとして表した。エンハンシンタバコは16系統を、エンハンシンイネは20系統を用いた。植物個体やバキュロウイルス組換え体でエンハンシン遺伝子が導入・発現していることを確認するために、PCR法、リボプローブによるノザン解析、および抗エンハンシンウサギ抗体によるウエスタン解析を行った。シロイチモジヨトウ3齡幼虫を用いた生物検定の結果、LD_<50>は、AcNPVでは1.05×10^5、SeNPV T1株、SeNPVではそれぞれ4.04×10^3、1.92×10^2の値が得られた。これより、今回用いた3種のNPVのシロイチモジヨトウに対する殺虫性は、SeNPVが最も高く次いでSeNPV T1株、AcNPVの順であった。さらに、TnGVによる感染増進効果をEnhancement indexにより評価すると、AcNPVについては1.49、SeNPV T1株、SeNPVについてはそれぞれ0.85,0.36という値が得られ、AcNPVでは約30倍感染が増進されるのに対し、SeNPV T1株では約7倍、SeNPVでは約2倍しか増進されなかった。また、AcNPV、SeNV T1株、SeNPVおよびTnGVの封入体を摂食させたシロイチモジヨトウ幼虫の胃腔膜をSDS-PAGEにより分析したところTnGVの封入体を摂食させた幼虫の胃腔膜の破壊が認められ、これがNPVの感染増進に関与を示唆していた。さらに、エンハンシン遺伝子を持つバキュロウイルス組換え体を感染させた昆虫培養細胞で発現したエンハンシンの感染増進効果を調査したところAcNPVにおいては約14倍、SeNPVにおいては約2倍感染が増進された。エンハンシン遺伝子を導入したタバコにおいてはエンハンシン遺伝子が導入・発現していることをPCR法、ノザン解析、およびウエスタン解析により確認し、エンハンシンを発現している個体(エンハンシンタバコの葉の凍結乾燥粉末を用い生物検定を行った結果、AcNPVにおいては約310倍、SeNPVにおいては約2倍感染が増進した。さらに、エンハンシンタコの凍結乾燥粉末を混合した人工飼料を摂食し続けた幼虫は成長が阻害され異常な蛹化をおこすものが見られた。 | KAKENHI-PROJECT-06044132 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06044132 |
消化器癌におけるDNA修復異常と抗癌剤感受性との関連の解明および化学療法への応用 | 本研究では、DNA修復異常と抗癌剤感受性との関連を解明するため、まず消化器癌で汎用されている5-FUに注目し、ミスマッチ修復異常との関連、およびマイクロサテライト不安定性解析の意義を検討した。ミスマッチ修復能の判明している種々の大腸癌細胞株を用いて、5-FU感受性とミスマッチ修復能との関連について解析した。この際、5-FUによる細胞のDNA障害に対しG1/SチェックポイントでのDNA修復かアポトーシスによる細胞死を選択するp53の発現や、5-FU感受性の主要酵素であるチミジル酸合成酵素(TS)の活性や発現、5-FUによるRNA障害や細胞周期の変化など詳細な検討を加え5-FU感受性におけるミスマッチ修復能の意義を考察した。その結果、p53は細胞周期の変化には関与しているが直接感受性を規定するものではないこと、TSがほぼ抑制されている状態では、ミスマッチ修復異常細胞はミスマッチ修復正常細胞より5-FU感受性が低いことが明らかとなった。今後の方針として、ミスマッチ修復遺伝子MSH2のノックアウトマウス由来の繊維芽細胞を用いての5-FU感受性の解析を行ない、MSH2欠損の感受性に及ぼす影響及びそのメカニズムを解析する予定である。臨床検体での解析系では、ミスマッチ修復異常の評価のためのより客観的なマイクロサテライト不安定性解析法を開発しており(S.Oda,et al.Nucleic Acids Res 25;3415-3420,1997)臨床症例は、胃癌、大腸癌で各々100症例以上解析した。マイクロサテライト不安定検査陽性は、胃癌20%、大腸癌40%であった。今後はマイクロサテライト不安定性により評価した各症例のミスマッチ修復異常と抗癌剤感受性試験での5-FU感受性、更に臨床効果との相関を検討していきたいと考える。本研究では、DNA修復異常と抗癌剤感受性との関連を解明するため、まず消化器癌で汎用されている5-FUに注目し、ミスマッチ修復異常との関連、およびマイクロサテライト不安定性解析の意義を検討した。ミスマッチ修復能の判明している種々の大腸癌細胞株を用いて、5-FU感受性とミスマッチ修復能との関連について解析した。この際、5-FUによる細胞のDNA障害に対しG1/SチェックポイントでのDNA修復かアポトーシスによる細胞死を選択するp53の発現や、5-FU感受性の主要酵素であるチミジル酸合成酵素(TS)の活性や発現、5-FUによるRNA障害や細胞周期の変化など詳細な検討を加え5-FU感受性におけるミスマッチ修復能の意義を考察した。その結果、p53は細胞周期の変化には関与しているが直接感受性を規定するものではないこと、TSがほぼ抑制されている状態では、ミスマッチ修復異常細胞はミスマッチ修復正常細胞より5-FU感受性が低いことが明らかとなった。今後の方針として、ミスマッチ修復遺伝子MSH2のノックアウトマウス由来の繊維芽細胞を用いての5-FU感受性の解析を行ない、MSH2欠損の感受性に及ぼす影響及びそのメカニズムを解析する予定である。臨床検体での解析系では、ミスマッチ修復異常の評価のためのより客観的なマイクロサテライト不安定性解析法を開発しており(S.Oda,et al.Nucleic Acids Res 25;3415-3420,1997)臨床症例は、胃癌、大腸癌で各々100症例以上解析した。マイクロサテライト不安定検査陽性は、胃癌20%、大腸癌40%であった。今後はマイクロサテライト不安定性により評価した各症例のミスマッチ修復異常と抗癌剤感受性試験での5-FU感受性、更に臨床効果との相関を検討していきたいと考える。 | KAKENHI-PROJECT-12217111 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12217111 |
マウス心臓発生におけるPolycomb group遺伝子群の役割の解析 | 我々が独自に作製したrae28遺伝子欠損マウスはファロー四徴症や両大欠陥右室起始症といった心臓流出路を中心とした心臓の形態形成異常や系統的な神経堤細胞の発生異常を示し、周産期致死に至る。ファロー四徴症や両大欠陥右室起始症は、ヒトの代表的なチアノーゼ型先天性心疾患であり、その発症機構の解明が待たれている。本研究では、このマウスを組織解剖学的、分子生物学的手法を用いて解析することによりこれらの疾患の原因解明を目指した。本研究により以下の結果を得た。1.rae28遺伝子欠損マウスで観察された心臓の形態形成異常は、胎令9.5日、10.5日の個体における心臓のルーピング異常を主な原因とする。2.心臓発生におけるルーピング異常は、領域特異的に発現する心房性利尿因子(ANF)、ミオシン軽鎖2v(MLC2v)、ベーシック・ヘリックス・ループ・ヘリックス型転写制御因子の一つであるHand1の発現異常から生じる。3.これらの領域特異的遺伝子発現の異常は、上流遺伝子である心臓特異的ホメオボックス遺伝子Nkx2.5の発現が正常に維持されなかったために生ずる。以上の結果からrae28を含むポリコーム遺伝子群による遺伝子発現維持機構がNkx2.5遺伝子の発現維持を介して心臓発生に重要な役割を果たしていることが明らかになった。我々が作成したrae28遺伝子欠損マウスは、ファロー四徴症など心臓流出路を中心とした先天性心疾患や系統的な神経提細胞の発生異常を示し、ヒトのCATCH22症候群において観られる病態の全てを兼ねそろえている。本研究では、このマウスを解析することにより、心臓発生及び先天性心疾患の発症に至る分子機構を解明することを目的としている。現在までに以下の研究成果が得られている。(1)新生仔期のrae28遺伝子欠損マウスにおいて観察された、肺動脈狭窄、心室中隔欠損等を含む心臓発生異常は胎令13.5日には既に生じており、また、胎令10.5日には心臓のルーピング異常を示す個体が認められた。これらの発生異常はニワトリにおいて神経提細胞の除去実験で高頻度に出現する異常と良く似ていた。(2)α-cardiac actin、Ca^<2+>-ATPaSe、MHC-αといった心筋の発生、機能に重要な働きをする遺伝子の発現は、rae28遺伝子欠損マウスと野生型マウスを比較して変化が認められなかった。(3)発生中のrae28遺伝子欠損マウスにおいて、側板中胚葉に観られるHoxa3、a4、a5、b3、b4遺伝子の発現境界が顎の方向に変化していた。(4)頭部神経提細胞の起源と考えられるロンボメアーにおいて、Hoxb3、b4遺伝子の異所的発現がrae28遺伝子欠損マウスで生じていた。以上の遺伝子の発現異常が、rae28遺伝子欠損マウスで観察されたCATCH22症候群様の病態を引き起こすと我々は推察している。我々が独自に作製したrae28遺伝子欠損マウスはファロー四徴症や両大欠陥右室起始症といった心臓流出路を中心とした心臓の形態形成異常や系統的な神経堤細胞の発生異常を示し、周産期致死に至る。ファロー四徴症や両大欠陥右室起始症は、ヒトの代表的なチアノーゼ型先天性心疾患であり、その発症機構の解明が待たれている。本研究では、このマウスを組織解剖学的、分子生物学的手法を用いて解析することによりこれらの疾患の原因解明を目指した。本研究により以下の結果を得た。1.rae28遺伝子欠損マウスで観察された心臓の形態形成異常は、胎令9.5日、10.5日の個体における心臓のルーピング異常を主な原因とする。2.心臓発生におけるルーピング異常は、領域特異的に発現する心房性利尿因子(ANF)、ミオシン軽鎖2v(MLC2v)、ベーシック・ヘリックス・ループ・ヘリックス型転写制御因子の一つであるHand1の発現異常から生じる。3.これらの領域特異的遺伝子発現の異常は、上流遺伝子である心臓特異的ホメオボックス遺伝子Nkx2.5の発現が正常に維持されなかったために生ずる。以上の結果からrae28を含むポリコーム遺伝子群による遺伝子発現維持機構がNkx2.5遺伝子の発現維持を介して心臓発生に重要な役割を果たしていることが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-10770005 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10770005 |
敗血症における血管内皮細胞病態の解明と新規遺伝子核酸試薬の開発に関する研究 | 敗血症は現在も単一の根治的治療法が存在せず,死亡率の高い病態として知られている。敗血症の重症化には,血管内皮細胞障害が関与することが知られているものの,血管内皮細胞の分子レベルでの創薬には,未だ根治的なものが認められない。本研究は,敗血症モデル動物として盲腸結紮穿孔による雄性BALB-Cマウスを用い,敗血症の時系列で遊離型血管内皮細胞(CEC:circulating endothelial cell)が出現することを明らかとした。このCECの発現には, nuclear factor-κB(NF-κB)が強く関与すること, FADDやTAK-1のsiRNAが部分的に抑制効果を持つこと,activator protein-1(AP-1)のデコイ核酸はCECの発現を干渉しないことなどが確認された。敗血症病態においてCECの増加は,血管内皮細胞障害による播種性血管内凝固の指標となる可能性を確認した。敗血症は現在も単一の根治的治療法が存在せず,死亡率の高い病態として知られている。敗血症の重症化には,血管内皮細胞障害が関与することが知られているものの,血管内皮細胞の分子レベルでの創薬には,未だ根治的なものが認められない。本研究は,敗血症モデル動物として盲腸結紮穿孔による雄性BALB-Cマウスを用い,敗血症の時系列で遊離型血管内皮細胞(CEC:circulating endothelial cell)が出現することを明らかとした。このCECの発現には, nuclear factor-κB(NF-κB)が強く関与すること, FADDやTAK-1のsiRNAが部分的に抑制効果を持つこと,activator protein-1(AP-1)のデコイ核酸はCECの発現を干渉しないことなどが確認された。敗血症病態においてCECの増加は,血管内皮細胞障害による播種性血管内凝固の指標となる可能性を確認した。敗血症は現在も単一の根治的治療法が存在せず,死亡率の高い病態として知られている。敗血症の重症化には,血管内皮細胞障害が関与することが知られているものの,血管内皮細胞の分子レベルでの創薬には,未だ根治的なものが認められない。これらは,アルブミン,赤血球,および脂質の接着を高めると同時に,これらを貪食する傾向を示した。CECsが,どのようにアルブミンなどを貪食し,炎症病態の増悪をもたらすのかの詳細は未だ不明であり,来年度の研究につなげる予定である。敗血症は現在も単一の根治的治療法が存在せず,死亡率の高い病態として知られている。敗血症の重症化には,血管内皮細胞障害が関与することが知られているものの,血管内皮細胞の分子レベルでの創薬には,未だ根治的なものが認められない。本研究では,敗血症モデル動物として盲腸結紮穿孔による雄性BALB-Cマウスを用いた。これらの動物の右心房より採取した静脈血あるいは大腿動脈血の約1mLの血液サンプルに対して,CD146抗体IgGビーズを用いてのcirculating endothelial cells (CECs)の沈下は,正常では観察されなかったが,盲腸結紮穿孔24時間のマウスの血液中には約100/mLのCECs,盲腸結紮穿孔36時間で約160/mLが検出された。このようなCECsの発現は,転写因子NF-κB活性を抑制するデコイ核酸で抑制された。一方,盲腸結紮穿孔24時間レベルで血液中に発現したCECsは,アルブミン,赤血球などを貪食する傾向を示した。CECsの貪食能に対する炎症病態の関与について,来年度の研究につなげる予定である。この研究は,敗血症に合併する播種性血管内凝固症候群の病態を,CECsの観点より解明しようとするものである。本研究により,敗血症罹患時の播種性血管内凝固症候群の早期診断と治療が可能となることを目標とする。敗血症病態は,血管内皮細胞炎症を契機として,血管内皮細胞を基底膜より遊離させ,さらに血管への血小板沈着を誘導することが観察できる。このような結果として,敗血症病態では血小板数減少を特徴とする播種性血管内凝固症候群が進行しやすい可能性がある。本研究は,播種性血管内凝固症候群における血管内皮細胞障害を,遊離型血管内皮細胞(circulating endothelial cell : CEC)の数を同定することで評価したものである。雄性Balb-Cマウス(8-12週,体重25-35g)において,盲腸結紮穿孔により敗血症病態を惹起した。抗CD146抗体ビーズを用いて血液より回収されたCECは,抗フォンビルブランド因子が陽性であり,正常では5個/mLだったが,敗血症病態の作成により60個/mLレベル以上に高められた。以上に対して,敗血症作成の3時間後に尾静脈よりTGF-βactivated kinase-1(TAK-1)siRNAおよびActivator protein-1 (AP-1)decoy oligonucleatideを投与すると,投与量50μg以上で有意にTAKi1蛋白量やAP-1活性が抑制され,さらに,CEC発現が減少した。敗血症病態において,血管内皮細胞で増加する分子としてTAK-1を同定したが,siRNAによるTAK-1減少により,AP-1活性が減じていた。 | KAKENHI-PROJECT-21390482 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21390482 |
敗血症における血管内皮細胞病態の解明と新規遺伝子核酸試薬の開発に関する研究 | また,敗血症病態におけるCEC発現増加と血小板数減少は相関しており,CEC発現増加は,敗血症による播種性血管内凝固症候群を予測する因子と評価された。一方,敗血症血管で増加するnuclear factor-κB(NF-κB)活性をNF-κB decoy oligonucleatideで抑制したが,CECの発現量に有意差を認めなかった。以上より,敗血症病態におけるCECの発現には転写因子AP-1が関与しており,NF-κB活性によらないと評価された。敗血症病態において,血管内皮細胞で増加する分子としてTAK-1を同定したが,TAK-1活性増強に伴うAP-1活性増強がCEC増加や播種性血管内凝固症候群の発症に関与していると結論された。 | KAKENHI-PROJECT-21390482 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21390482 |
電極触媒を用いる環境調和型高選択的電解フッ素化プロセスの開発 | 本研究は電解フッ素化に適した電極触媒の設計と選定を通して、フッ素系機能性材料や生理活性物質の創製などを指向した電極触媒的電解フッ素化プロセスを新たに開拓することが主目的であり、3年間で以下の成果を得、所期の目的をほぼ達成できた。1)高密度リチウム電池用有機電解液の開発:電極触媒的電解フッ素化により含フッ素環状カーボナートの最適合成ルートを開発した。得られた含フッ素環状カーボナートは高密度リチウム電池用有機電解液として極めて優れていることを見いだした。2)電極触媒的脱硫フッ素化によるフッ素系生理活性物質の創製:トリアリールアミンを電極触媒とする電解脱硫フッ素化による含フッ素β-ラクタムの高効率的合成に成功するとともにトリアリールアミン電極触媒を用いたジチオアセタール類からの電解脱硫フッ素化によるgem-ジフルオロメチレン化合物の合成を達成した。さらに、同種の電極触媒によりS-アリールチオベンゾアート類の脱硫フッ素化が円滑に進行し、対応するベンゾイルフルオリド類が高収率で得られることを見い出した。従来から電解フッ素化で問題とされていた陽極の不動態化がトリアリールアミン電極触媒の利用により回避できることを明らかにした。3)ダイヤモンド電極による有機化合物の選択的フツ素化:ダイヤモンド電極が白金電極と同様に種々の複素環化合物の電解フッ素化法に対し、優れた電極触媒能を示し、好収率で相応するフッ素化体を与えることを見出した。4)代替フロン(冷媒)の開発:代替フロンのモデル化合物として含フッ素エーテル系を選定し、種々のエーテル類を電解フッ素化法することに成功した。本研究は電解フッ素化に適した電極触媒の設計と選定を通して、フッ素系機能性材料や生理活性物質の創製などを指向した電極触媒的電解フッ素化プロセスを新たに開拓することが主目的であり、3年間で以下の成果を得、所期の目的をほぼ達成できた。1)高密度リチウム電池用有機電解液の開発:電極触媒的電解フッ素化により含フッ素環状カーボナートの最適合成ルートを開発した。得られた含フッ素環状カーボナートは高密度リチウム電池用有機電解液として極めて優れていることを見いだした。2)電極触媒的脱硫フッ素化によるフッ素系生理活性物質の創製:トリアリールアミンを電極触媒とする電解脱硫フッ素化による含フッ素β-ラクタムの高効率的合成に成功するとともにトリアリールアミン電極触媒を用いたジチオアセタール類からの電解脱硫フッ素化によるgem-ジフルオロメチレン化合物の合成を達成した。さらに、同種の電極触媒によりS-アリールチオベンゾアート類の脱硫フッ素化が円滑に進行し、対応するベンゾイルフルオリド類が高収率で得られることを見い出した。従来から電解フッ素化で問題とされていた陽極の不動態化がトリアリールアミン電極触媒の利用により回避できることを明らかにした。3)ダイヤモンド電極による有機化合物の選択的フツ素化:ダイヤモンド電極が白金電極と同様に種々の複素環化合物の電解フッ素化法に対し、優れた電極触媒能を示し、好収率で相応するフッ素化体を与えることを見出した。4)代替フロン(冷媒)の開発:代替フロンのモデル化合物として含フッ素エーテル系を選定し、種々のエーテル類を電解フッ素化法することに成功した。本研究は電解フッ素化に適した電極触媒の設計と選定を通して、フッ素系機能性材料や生理活性物質の創製などを指向した電極触媒的電解フッ素化プロセスを新たに開拓することが主目的であり、本年度は以下の成果を得た。高密度リチウム電池用有機電解液の開発:高密度リチウム電池用有機電解液として、高い電気伝導率(特にリチウムイオン)、電気化学的安定性(耐酸化性、耐還元性)、広い使用温度領域、安全性(難燃性)、安価であるといった要求性能を満たす有機フッ素化合物を計算化学により検討し、含フッ素環状カーボナートをターゲット化合物として選定した。ついで環状カーボナートにフッ素を選択的に導入すべく、電極触媒的電解フッ素化について種々条件を検討し、フッ素の最適化を行い、最適合成ルートを開発した。得られた含フッ素環状カーボナートは物性評価の結果、期待したとおり高密度リチウム電池用有機電解液として極めて優れていることを見いだした。代替フロン(冷媒)の開発:代替フロンのモデル化合物として含フッ素エーテル系を選定し、種々のエーテル類を電極触媒的に電解フッ素化法することに成功した。本研究は電解フッ素化に適した電極触媒の設計と選定を通して、フッ素系機能性材料や生理活性物質の創製などを指向した電極触媒的電解フッ素化プロセスを新たに開拓することが主目的であり、本年度は以下の成果を得た。1.医薬品開発のためのフッ素系生理活性物質の創製(1)β-ラクタムは抗生物質の重要な骨格であり、フッ素の導入により生理活性の増強が期待される。そこで、α-位にスルフェニル基を有するβ-ラクタムを選定し、電解脱硫フッ素化を試みたが、陽極の激しい不動態化が起こり、フッ素化は殆ど進行しなかった。そこで、これを克服すべくトリアリールアミンを電極触媒として電解したところ、脱硫フッ素化が円滑に進行し、好収率で含フッ素β-ラクタムを得ることに成功した。(2)gem-ジフルオロメチレン基はエーテル酸素と電子的にも立体的にも等価であり、このユニットを有する化合物には特異な生理活性を発現するものが多いことから、安全かつ効率的な方法が望まれている。 | KAKENHI-PROJECT-12555252 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12555252 |
電極触媒を用いる環境調和型高選択的電解フッ素化プロセスの開発 | そこで、モデルとしてジチオアセタール類を選定し、トリアリールアミンを電極触媒に用い、電解脱硫フッ素化を行ったところ、陽極の不動態化を併発することなくジフッ素化が効率良く進行し、目的としたgem-ジフルオロメチレン化合物を高収率で得ることに成功した。2.ダイヤモンド電極による有機化合物の選択的フッ素化ダイヤモンド電極が白金電極と同様に有機化合物の電解フッ素化法に対し、優れた電極触媒能を有することを見出した。本研究は電極触媒の設計と選定を通して、フッ素系機能性材料や生理活性物質の創製などを指向した電極触媒的電解合成プロセスを新たに開拓することが主目的であり、本年度は以下の成果を得、スケールアップ試験を除きほぼ所期の目的を達成した。1.ダイヤモンド電極による有機化合物の選択的フッ素化ダイヤモンド電極が白金電極と同様に種々の複素環化合物の電解フッ素化法に対し、優れた電極触媒能を示し、好収率で相応するフッ素化体を与えることを見出した。2.電極触媒を利用する医薬品開発のための生理活性複素環化合物の創製(1)トリアリールアミンを電極触媒に用いることによりS-アリールチオベンゾアート類の脱硫フッ素化が円滑に進行し、対応するベンゾイルフルオリド類が高収率で得られることを見い出した。(2)含CF_3鎖状カーボナートやカルバメート類を対象にフッ化物イオンメデイエーターを用い、電解酸化したところ分子内環化が起こり、目的とした相応する含CF_3環状カーボナートやカルバメート類を高収率で得ることに成功した。(3)チアゾリジン、1、3-オキサチオラン、1、3-ジチオラン類を対象として、フッ化物イオンメデイエーター(電極触媒)を用いメタノールあるいは酢酸中で電解酸化したところ好収率で相応するメトキシ化体やアセトキシ化体を得ることに成功した。電解生成物は抗HIV剤の前駆体として有用である。 | KAKENHI-PROJECT-12555252 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12555252 |
情報社会における環境負荷の少ない物流システムに関する研究 | 近年、インターネット及びモバイル通信など情報技術(IT)の高度化により、電子商取引あるいはインターネットビジネスを含むEコマース(EC)が急速に進み、既に進行しつつあった工業社会から情報社会へのパラダイムシフトを加速させている。ECは生産者と消費者、生産者と生産者、消費者と消費者を効率的に結びつけ、従来の生産、流通、消費の経済の各分野において根本的な変化をもたらそうとしている。その結果のひとつとして、経済活動の物的な結びつきを集約する物流においても巨大な変化が起きると考えられる。このような転機をつかみ、如何にして物流システムの効率化をはかることは、従来環境問題など多くの問題をもたらした交通問題の解決にも有利であると考えられる。本研究はE-Commerceが物流に与える影響、そして情報社会における環境負荷の少ない物流システムについて研究するという目的を達成するために、次の研究を行った。1)情報化による国際物流の変化を研究するために、中国の輸出入企業についてアンケート調査の結果を用いて、中継港選択行動をロジットモデルで分析を行った。2)BtoCビジネスの増加による物流の変化およびその交通への影響を予測するために、詳細な経済地理データベースを利用する必要があるが、既存のGISソフトを物流研究のベースシステムとするには、ユーザーとしての交通研究者にとっては難しいため、既存のGISソフトを使用せず、GISデータベースだけ利用し、コンピュータプログラミングによってGISデータベースをビジュアル化するシステムを作ることに成功した。3)Eコマースによる都市内交通への影響についてケーススタディを行った。4)土木学会・物流小委員会の活動に参加した。E-Commerceが物流に与える影響、そして情報社会における環境負荷の少ない物流システムについて研究するという目的を達成するために、本年度は、次の研究を行った。1)情報化の進展、特にE-Commerceの進展についての基礎調査を行い、情報化社会の比較・評価指標についての研究を行った。2)BtoCビジネスの増加による物流の変化およびその交通への影響を予測するために、詳細な経済地理データベースを利用する必要があるが、既存のGISソフトを物流研究のベースシステムとするには、ユーザーとしての交通研究者にとっては難しいため、既存のGISソフトを使用せず、GISデータベースだけ利用し、コンピュータプログラミングによってGISデータベースをビジュアル化するシステムを作ることに成功した。これによって、任意点のGISデータベースを利用できるだけでなく、従来、大量の労力が必要とするネットワークデータ作成・編集作業を対話式で行うことができ、沿道のデータとリンクさせることによって、その上での交通行動シミュレーションモデルの開発、ビジュアルな交通計画の実現が可能になる。このシステムを利用して、BtoCビジネスの増加による物流への影響をシミュレートする予定である。3)情報化による国際物流の変化を研究するために、中国の輸出入企業についてアンケート調査の結果を用いて、中継港選択行動をロジットモデルで分析を行った。近年、インターネット及びモバイル通信など情報技術(IT)の高度化により、電子商取引あるいはインターネットビジネスを含むEコマース(EC)が急速に進み、既に進行しつつあった工業社会から情報社会へのパラダイムシフトを加速させている。ECは生産者と消費者、生産者と生産者、消費者と消費者を効率的に結びつけ、従来の生産、流通、消費の経済の各分野において根本的な変化をもたらそうとしている。その結果のひとつとして、経済活動の物的な結びつきを集約する物流においても巨大な変化が起きると考えられる。このような転機をつかみ、如何にして物流システムの効率化をはかることは、従来環境問題など多くの問題をもたらした交通問題の解決にも有利であると考えられる。本研究はE-Commerceが物流に与える影響、そして情報社会における環境負荷の少ない物流システムについて研究するという目的を達成するために、次の研究を行った。1)情報化による国際物流の変化を研究するために、中国の輸出入企業についてアンケート調査の結果を用いて、中継港選択行動をロジットモデルで分析を行った。2)BtoCビジネスの増加による物流の変化およびその交通への影響を予測するために、詳細な経済地理データベースを利用する必要があるが、既存のGISソフトを物流研究のベースシステムとするには、ユーザーとしての交通研究者にとっては難しいため、既存のGISソフトを使用せず、GISデータベースだけ利用し、コンピュータプログラミングによってGISデータベースをビジュアル化するシステムを作ることに成功した。3)Eコマースによる都市内交通への影響についてケーススタディを行った。4)土木学会・物流小委員会の活動に参加した。 | KAKENHI-PROJECT-13750516 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13750516 |
発症機序最上流に表皮バリア機能異常があるという新視点による乾癬表皮・免疫病態解明 | 免疫バリアにおいて重要な役割を担うランゲルハンス細胞は乾癬病変において活性化しており、また、乾癬病態成立において不可欠な役割を持ち、皮膚所属リンパ節においてIL-23を産生し、Th17細胞を誘導する可能性を、モデルマウス(K5.Stat3Cマウス、ランゲリンDTRノックインマウス)を用いて示した。また、乾癬病態成立において、表皮細胞におけるStat3の活性化はランゲルハンス細胞を活性化しやすく、皮膚所属リンパ節への遊走を促しやすいことを明らかにし、さらに、表皮細胞が産生するIL-1αは表皮内ランゲルハンス細胞を活性化させる因子のひとつである可能性を示唆した。我々は、皮膚の角層バリア機能において重要な脂質の1つであるセラミドの合成酵素遺伝子を表皮特異的に破壊したマウス(K5.SPT KOマウス)では乾癬様皮疹を自然に発症したことを報告した(J Invest Dermatol 2013; 133: 2555)。これは表皮バリア障害によって乾癬様病変が誘導された可能性を示したものである。本研究はバリア機能障害が乾癬病態発症の最も上流に位置するいう新しい視点からバリア障害に引き続く表皮シグナルと免疫系クロストークについて乾癬モデルマウスを用いて検討することを試みた。我々の研究室で開発した乾癬モデルマウス(K5.Stat3Cトランスジェニックマウス)はテープストリッピングによるバリア破壊によって乾癬様皮疹を誘導でき、その乾癬様皮疹は、IL-23/Th17軸に依存しており、この軸を標的とする抗体によって乾癬様皮疹形成が抑制されることを報告した(J Immunol 2011; 186: 4481)。今回我々はK5.Stat3Cトランスジェニックマウス、K5.Stat3Cノックアウトマウス、正常マウスにテープストリッピングを施行後、2.5時間後、6時間後、24時間後の経表皮水分蒸散量(Transepidermal water loss: TEWL)を測定しTEWL回復率を算定した。2.5時間後のTEWL回復率はK5. Stat3C, WT, K5.Stat KOの順で高い値を示し、24時間後には3つのマウス群でほぼ同じ値を示した。また、24時間後の皮膚における抗菌ペプチドの発現をreal-time RT-PCRで測定したところ、K5.Stat KOマウスの皮膚のみ、抗菌ペプチドの値が上昇した。以上の結果より、テープストリッピングによって乾癬様病変を誘導する実験系においてはバリア修復能遅延が乾癬様病変の引き金ではないことを明らかにした。バリア機能障害が乾癬病態発症の最も上流に位置するという視点から乾癬の病態を解明することを試みた。乾癬モデルマウス(K5.Stat3Cトランスジェニックマウス)、K5.Stat3Cノックアウトマウス、正常マウスにテープストリッピングを施行後、2.5時間後、6時間後、24時間後の経表皮水分蒸散量(Transepidermal water loss: TEWL)を測定し、TEWL回復率を算定した。2.5時間後のTEWL回復率は、K5. Stat3C, WT, K5.Stat KOの順で高い値を示し、24時間後には3つのマウス群でほぼ同じ値を示した。これは、乾癬モデルマウスにおいてはバリア障害回復は促進していることを示す結果であった。また、24時間後の皮膚における抗菌ペプチド(b-デフェンシン3,4, S100A8,A9)の発現をreal-time RT-PCRで測定したところ、K5.Stat KOマウスの皮膚のみ、抗菌ペプチドの値が上昇した。以上の結果より、テープストリッピングによって乾癬様病変を誘導する実験系においてはバリア修復能遅延が乾癬様病変の引き金ではないことを明らかにした。我々は、バリア機能障害が乾癬病態発症の最も上流に位置するという新しい視点から、バリア障害に引き続く表皮シグナルと免疫系クロストークについて乾癬モデルマウス(K5.Stat3Cマウス)を用いて検討することを試みている。本年度は、皮膚バリア機能において重要な役割を担う表皮内樹状細胞であるランゲルハンス細胞の乾癬病変成立における役割について検討した。まず、ランゲリン陽性細胞をジフテリア毒素処理して除去できるマウス(Langerin DTR KIマウス)とK5.Stat3Cマウスを交配したマウスにTPA(12-O-Tetradecanoylphorbol 13 acetate)を塗布したところ、乾癬様病変の誘導は抑制され、乾癬病態成立においてランゲルハンス細胞は重要な役割をすることを見出した。次に、TPA塗布によって乾癬様病変を誘導したK5.Stat3CマウスとTPA塗布していないK5.Stat3Cマウスの皮膚所属リンパ節へのランゲルハンス細胞の遊走を検討したところ、正常マウスの比較して、TPA塗布していないK5.Stat3Cマウスの皮膚所属リンパ節においてすでにランゲルハンス細胞の遊走が増加していることを確認した。これは、Stat3が活性化した表皮細胞においてランゲルハンス細胞が遊走しやすい状態にあることを示唆した。次に、ランゲリン陽性細胞の機能解析として、K5. Stat3トランスジェニックマウスからランゲルハンス陽性細胞を採取し正常マウスのLangerhans細胞とマイクロアレイ解析を行い、比較検討した。IL-12b, CCL8, IL-6, CXCL10, TGF-aなどが高発現しており、乾癬病態を形成する際に、ランゲルハンス細胞は乾癬を発症しやすい機能を獲得していることを示唆した。計画通りに進んでいる。 | KAKENHI-PROJECT-15K09769 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K09769 |
発症機序最上流に表皮バリア機能異常があるという新視点による乾癬表皮・免疫病態解明 | 我々は、バリア障害が乾癬病態の最も上流に位置するという新しい視点から、バリア障害に引き続く表皮シグナルと免疫系クロストークについて、乾癬モデルマウス(K5.Stat3Cマウス)を用いて検討することを試みている。昨年度は乾癬病態の成立において表皮内樹状細胞であるランゲルハンス細胞が重要な役割を果たすことを示した。本年度は、Stat3が活性化した表皮細胞がランゲルハンス細胞を活性化するシグナルについて検討した。これまでにランゲルハンス細胞を活性化する分子として、TNF-a, IL-1a, IL-1b, IL-6, TGF-b, IL-18, TSLPが報告されている。新生児K5.Stat3Cマウスの表皮細胞を培養し、これらの分子の発現を正常マウスの表皮細胞と比較してみると、IL-1aが高発現しており、表皮細胞から産生されるIL-1aがランゲルハンス細胞を活性化する可能性を実証した。次に、表皮細胞とランゲルハンス細胞のクロストークとして細胞膜小胞体であるExosomeが働いている可能性を考え、実験を施行した。まず、正常マウス、K5.Stat3Cマウスの培養表皮細胞から超遠心法を用いてExosomeを採取した。採取したExosomeは、Westernblott法でCD9, CD63が陽性であることを確認した。次に、K5.Stat3Cマウスの表皮からsortingして、ランゲルハンス細胞を採取しExosomeと反応させ、タイムラプスを用いてランゲルハンス細胞がExosomeを取り込むか否かを観察した。72時間観察したが、ランゲルハンス細胞はExosomeを取り込まなかった。この結果から、乾癬の表皮におけるランゲルハンス細胞を活性化に、表皮細胞が産生するExosomeは関与しないことが明らかになった。免疫バリアにおいて重要な役割を担うランゲルハンス細胞は乾癬病変において活性化しており、また、乾癬病態成立において不可欠な役割を持ち、皮膚所属リンパ節においてIL-23を産生し、Th17細胞を誘導する可能性を、モデルマウス(K5.Stat3Cマウス、ランゲリンDTRノックインマウス)を用いて示した。また、乾癬病態成立において、表皮細胞におけるStat3の活性化はランゲルハンス細胞を活性化しやすく、皮膚所属リンパ節への遊走を促しやすいことを明らかにし、さらに、表皮細胞が産生するIL-1αは表皮内ランゲルハンス細胞を活性化させる因子のひとつである可能性を示唆した。今後は、TPA (12-O-Tetradecanoylphorbol 13-acetate)塗布による乾癬様病変におけるバリア障害について検討し、表皮バリア障害によって生じるStat3活性化シグナル経路、表皮バリア障害によって誘導されるランゲルハンス細胞活性化のシグナル伝達、Stat3の活性化とランゲルハンス細胞の活性化のシグナル伝達経路などを明らかにしていく。平成27,28年度にモデルマウスを用いた結果をもとに、乾癬病変成立における表皮細胞とランゲルハンス細胞のクロストークについて明らかにしていく。皮膚科学次年度に購入予定の試薬の種類が多いため。次年度に購入予定の試薬の種類が多いため。実験試薬購入。実験試薬購入。 | KAKENHI-PROJECT-15K09769 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K09769 |
先天全盲選手向け運動イメージ生成の評価基準の開発 | 本研究の目的は,先天全盲選手向け運動イメージ生成評価基準を開発することであった.本評価基準が開発され活用されれば,先天全盲選手のイメージ生成スキルの向上に寄与し,それに随伴し動作スキルの発揮にもつながると予想された.平成30年度の研究実績は,主に次の二つである.第一は,前年度までに原案作成した評価基準の信頼性と妥当性を確認したことである.先天性視覚障害を有するブラインドサッカー選手8名を対象に,信頼性については再テスト法による順位相関係数を算出した.その結果,全領域で1%水準の関連性が確認でき,本評価基準の4領域で高い信頼性が確認された.妥当性については専門家間で内容妥当性を検討した結果,この4領域20項目からなる本評価基準は,ブラインドサッカーの技術的および認知的な学習上の肝要な目標像であり,学習プロセスにおいて評価・チェックすべき内容が反映されているという見解で一致した.基準関連妥当性を検討した結果,本評価基準は既存の質問紙で測定されるイメージとは異なり,ブラインドサッカー攻撃場面に肝要な技術的スキルのイメージ想起の難易度を測定していることが明らかにされた.第二は,本評価基準とブラインドサッカー技術スキルとの関連を確認したことである.先天性視覚障害を有するブラインドサッカー選手8名を対象に,ドリブルタイムとゴールシュートスキルとの順位相関係数を算出した.その結果,ドリブルスキルで指標となるボール操作スキルとドリブルスピードの両面が本評価基準を構成する主観イメージ得点に反映されていることが判明した.さらに,3mの近い距離ではなく6mの距離からのゴールシュートで得点奪取するためには俯瞰的なイメージが活用されているのではないかと推測された.この俯瞰的なイメージは練習や試合経験を積んでいくことで生成しやすくなることが考察された.平成30年度には,ブラインドサッカーに焦点を当てた評価基準作成が概ね完了した.作成手続きを通して,本評価基準はブラインドサッカー選手に適用可能だと確認された.そして平成30年度後半から令和元年度前半にかけて,評価基準を活用した運動イメージ生成指導を実践し,実用性の確認を進めている.研究協力者は,特別支援盲学校に在籍する児童生徒である.具体的には,独立変数を運動イメージ生成指導とし,従属変数をイメージ生成スキル(本評価基準の項目得点など)と動作スキルとした.このようにして,この評価基準の科学性と実用性を検証しており,現在は追加実践データの収集とこれまでに得た結果の多面的分析を行っている.現時点では,運動イメージ生成指導によるイメージ生成スキルと動作スキルの向上に伴って本評価基準得点が上昇することを確認している.このように,本研究課題で計画した検討事項はほぼ完了に近い状況にある.今後,現在進行中の追加実践データを含めた全ての分析結果を総括し,本評価基準が視覚障害を持つ児童生徒の運動学習の促進に寄与することを示す.そして最終年度となる令和元年度には,開発された運動イメージ生成評価基準の体系化と成果公表,研究成果の評価を得る.本研究の成果は国内外を通して希少価値のあるアウトプットになると予想されるため,国内外で精力的に行う.具体的には,European College of Sport Science (ECSS),Association for Applied Sport Psychology,および,日本イメージ心理学会,日本スポーツ心理学会,視覚特別支援学校,ブラインドスポーツ指導現場である.研究成果の評価を得た上で,同学会が発行する学術雑誌へ論文投稿する予定である.本研究の目的は,先天全盲選手向けの運動学習時の運動イメージ生成の評価基準を独自開発することである.具体的には,1)申請者らが開発準備した原案の信頼性と妥当性の確認,2)評価基準に基づいた運動イメージ生成のためのイメージ指導の実践により,評価基準の客観性と実用性の科学的エビデンスを得ることである.最終的には,これらの手順によって世界で初めて先天全盲選手向け運動学習時の運動イメージ生成の評価基準が開発され,成果が提出される.成果は,2020年の東京オリンピック・パラリンピックに先駆けて,開発した評価基準を導入することによって,日本代表選手らは高い運動イメージスキルを獲得でき,本番での実力発揮が実現する.さらに,視覚記憶を持つ後天性な視覚障害選手や特別支援盲学校の視覚障害を持つ児童生徒の体育・運動指導にも大きな成果が見られ,汎用性の高い評価基準になると確信する.平成29年度には,評価基準の試作版(百瀬・伊藤,2016c)を最終吟味し,全研究協力者に対する研究目的のインフォームド・コンセントを得て,データ収集,分析を行った.先天性視覚障害を持つブラインドサッカー学習者を対象に,再テスト法を用いた信頼性の検討を行った.そして,研究代表者と研究分担者,ブラインドサッカー指導者と選手とで評価基準の内容とワーディングの確認をし,内容妥当性を検討した.現在のところ,概ね十分な信頼性と妥当性が確認されている.こうした研究実績は,日本イメージ心理学会第18回大会,日本スポーツ心理学会第44回大会,日本スポーツパフォーマンス学会第3回大会で発表し,且つ,常葉大学教育学部紀要37巻と38巻,イメージ心理学研究14巻に投稿し掲載された.さらに,視覚特別支援学校と日本ブラインドサッカー協会において成果公表を実施した.平成29年度には,第一に,評価基準の試作版(百瀬・伊藤,2016c)を最終吟味し,全研究協力者に対する研究目的のインフォームド・コンセントを得て,データ収集,分析を行った.先天性視覚障害を持つブラインドサッカー学習者を対象に,再テスト法を用いた信頼性の検討を行った. | KAKENHI-PROJECT-17K18714 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18714 |
先天全盲選手向け運動イメージ生成の評価基準の開発 | そして,研究代表者と研究分担者,ブラインドサッカー指導者と選手に評価基準の内容とワーディングの確認をし,内容妥当性を検討した.現在のところ,信頼性も妥当性も確認を終えている.第二に,この評価基準を用いて,実際に先天全盲選手3名を対象に,運動イメージ生成指導を実践し,実用性を確認した.現在,結果分析中である.本研究の目的は,先天全盲選手向け運動イメージ生成評価基準を開発することであった.本評価基準が開発され活用されれば,先天全盲選手のイメージ生成スキルの向上に寄与し,それに随伴し動作スキルの発揮にもつながると予想された.平成30年度の研究実績は,主に次の二つである.第一は,前年度までに原案作成した評価基準の信頼性と妥当性を確認したことである.先天性視覚障害を有するブラインドサッカー選手8名を対象に,信頼性については再テスト法による順位相関係数を算出した.その結果,全領域で1%水準の関連性が確認でき,本評価基準の4領域で高い信頼性が確認された.妥当性については専門家間で内容妥当性を検討した結果,この4領域20項目からなる本評価基準は,ブラインドサッカーの技術的および認知的な学習上の肝要な目標像であり,学習プロセスにおいて評価・チェックすべき内容が反映されているという見解で一致した.基準関連妥当性を検討した結果,本評価基準は既存の質問紙で測定されるイメージとは異なり,ブラインドサッカー攻撃場面に肝要な技術的スキルのイメージ想起の難易度を測定していることが明らかにされた.第二は,本評価基準とブラインドサッカー技術スキルとの関連を確認したことである.先天性視覚障害を有するブラインドサッカー選手8名を対象に,ドリブルタイムとゴールシュートスキルとの順位相関係数を算出した.その結果,ドリブルスキルで指標となるボール操作スキルとドリブルスピードの両面が本評価基準を構成する主観イメージ得点に反映されていることが判明した.さらに,3mの近い距離ではなく6mの距離からのゴールシュートで得点奪取するためには俯瞰的なイメージが活用されているのではないかと推測された.この俯瞰的なイメージは練習や試合経験を積んでいくことで生成しやすくなることが考察された.平成30年度には,ブラインドサッカーに焦点を当てた評価基準作成が概ね完了した.作成手続きを通して,本評価基準はブラインドサッカー選手に適用可能だと確認された.そして平成30年度後半から令和元年度前半にかけて,評価基準を活用した運動イメージ生成指導を実践し,実用性の確認を進めている.研究協力者は,特別支援盲学校に在籍する児童生徒である.具体的には,独立変数を運動イメージ生成指導とし,従属変数をイメージ生成スキル(本評価基準の項目得点など)と動作スキルとした.このようにして,この評価基準の科学性と実用性を検証しており,現在は追加実践データの収集とこれまでに得た結果の多面的分析を行っている.現時点では,運動イメージ生成指導によるイメージ生成スキルと動作スキルの向上に伴って本評価基準得点が上昇することを確認している.このように,本研究課題で計画した検討事項はほぼ完了に近い状況にある. | KAKENHI-PROJECT-17K18714 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18714 |
病院医療における患者代弁者の役割機能に関する国際比較 | 職業としてのPatient Advocacyの生成と推移について文献レビューを行い、米国マサチューセッツ総合病院のOffice of Patient Advocacy(OPA)を中心に活動と機能の実際を調査した。病院の職業的PAはRepresentative, Ambassadorなど異なる名称で呼ばれる。1960年代にSocial Workerとして同種の役割が配置され、1970年代から全国の病院にPatient Representativeが配置された。90年代には不採算部門として縮小される傾向にあったが、医療安全の意識の高まりに伴い再び見直されつつある。患者と病院組織との間のギャップを埋め、倫理面、業務の遂行およびケアの標準を改善することを目的として、(1)患者の相談や苦情を随時に受止め、(2)応急的な対応を可能にするとともに、(3)関係部署やプログラムにフィードバックしてシステム改革を促進する役割を果たしている。主な関心事は病院のリスクマネジメントだが、業務のやり方やシステムの改善、問題患者の対策、患者の権利に関するスタッフと患者への教育を促進しており、医師評価にも反映している。年間約2500件の苦情に対応。電話によるものが75%で、近年は職員の通知が増えた。外来患者55%、入院患者32%で、診療関連が26%、業務関連が36%、対人関係が29%、支払い関連が9%を占める。診療関連では、治療が72%、、情報提供要請が22%、医療安全3%。業務関連では、対応遅れが63%、患者所有物関係が13%、入退院や転院に関するものが10%だった。資格制度はない。修士以上が望ましいとされ、養成コースでは(1)医療政策と組織管理、(2)病気とケアの理解、(3)関連法規、(4)倫理と代弁機能、(5)医療の経済的側面、を学ぶ。<結論>医療への信頼が揺らいでいる今こそ、患者の権利擁護と患者-スタッフ間のトラブル回避、および医療安全の観点からも、日本の病院でも同様の機能を備えた専門職員を配置することが有益かつ必要と考える。平成14年度は米国の病院における患者代弁者について現地調査を計画していたが国際情勢の不安定化により現地調査が不可能となったため、資料収集により患者の視点についてアメリカを中心に文献レビューを行った。・米国のピッカー研究所では患者が受ける医療サービスの中で特に「経験」の側面に焦点を当てて、患者や医療従事者の満足度調査を実施している。これらにより明らかになった「患者の視点で考える医療」の7つの側面を中心に、患者に調査を行い、長期にわたってモニタリングとベンチマーキングを実施可能にしている。患者のニーズを明らかにし、医療提供者の教育と医療の質改善にあたって優先順位をつけている。また退院計画について患者教育用教材(ビデオ)を作成している。医療提供者に対しては患者を中心とする医療の環境作り、「アクションキット」として提供している。・メイヨークリニックでは患者教育センターで患者が学べるよう、図書室があり、展示品が置かれており、喘息、乳がんの自己健診など特定の新患について教室が開催されている。・オーストラリアでは政府が医療制度全段階における医療消費者運動強化を目的に政府が資金供与して医療サービスの計画から実施、評価に至るまで情報の統合、提供を行っている。・マサチューセッツ総合病院ではペイシャントアドボケイトルームで患者の権利に関する情報提供を行うと同時に苦情処理も実施している。また患者家族学習センターでは訓練された職員がいて様々な言語で教材を備え、サポートグループ、子供の学習コーナー、地域で提供される資源や病院の情報提供などを行っている。以上の内容から、アメリカやオーストラリアでは患者も医療に参与しやすいような仕組みや様々な学習環境作りが幅広く実施されており、そのような基盤の上に患者代弁者活動が実施されている。我が国の今後の医療を考える上で大きな示唆を含んでいると言える。職業としてのPatient Advocacyの生成と推移について文献レビューを行い、米国マサチューセッツ総合病院のOffice of Patient Advocacy(OPA)を中心に活動と機能の実際を調査した。病院の職業的PAはRepresentative, Ambassadorなど異なる名称で呼ばれる。1960年代にSocial Workerとして同種の役割が配置され、1970年代から全国の病院にPatient Representativeが配置された。90年代には不採算部門として縮小される傾向にあったが、医療安全の意識の高まりに伴い再び見直されつつある。患者と病院組織との間のギャップを埋め、倫理面、業務の遂行およびケアの標準を改善することを目的として、(1)患者の相談や苦情を随時に受止め、(2)応急的な対応を可能にするとともに、(3)関係部署やプログラムにフィードバックしてシステム改革を促進する役割を果たしている。主な関心事は病院のリスクマネジメントだが、業務のやり方やシステムの改善、問題患者の対策、患者の権利に関するスタッフと患者への教育を促進しており、医師評価にも反映している。年間約2500件の苦情に対応。電話によるものが75%で、近年は職員の通知が増えた。外来患者55%、入院患者32%で、診療関連が26%、業務関連が36%、対人関係が29%、支払い関連が9%を占める。診療関連では、治療が72%、、情報提供要請が22%、医療安全3%。業務関連では、対応遅れが63%、患者所有物関係が13%、入退院や転院に関するものが10%だった。資格制度はない。修士以上が望ましいとされ、養成コースでは(1)医療政策と組織管理、(2)病気とケアの理解、(3)関連法規、(4)倫理と代弁機能、(5)医療の経済的側面、を学ぶ。<結論> | KAKENHI-PROJECT-14657092 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14657092 |
病院医療における患者代弁者の役割機能に関する国際比較 | 医療への信頼が揺らいでいる今こそ、患者の権利擁護と患者-スタッフ間のトラブル回避、および医療安全の観点からも、日本の病院でも同様の機能を備えた専門職員を配置することが有益かつ必要と考える。 | KAKENHI-PROJECT-14657092 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14657092 |
多人数インタラクションのための対話型進化計算の応用システムの開発 | 本研究では,複数の人が参加して協調デザインを行うシステムのための対話型進化計算アルゴリズムおよび評価インタフェースを開発した.これらの手法を実装した実システムとして,並列対話型タブーサーチを用いた仮想試着システム,衣服のイメージ検索システム,デジタルサイネージを用いた多数のユーザからの投票により衣服コーディネート支援を行うシステム,インターネットを用いた多数の人の投票により看板のデザインを行うシステムなどを開発した.昨年度から開発を進めている多人数投票による看板デザインの作成システムの実用化に向けて,ユーザインタフェース設計および実装を行った.また,ユーザが投票への興味を失わない工夫として,投票結果に応じて新たなデザインを作成する進化アルゴリズムを改良し,ユーザがシステムにアクセスするたびに提示されるデザインが変化するようにした.この改良を施したシステムをWebサーバ上に実装し,学生による運用テストを行った.昨年度に基礎検証を行ったファッションコーディネート支援システムでは,Tシャツの感性検索システムを実装し,システムがユーザの好みを学習し,ユーザが好むTシャツをデータベースから検索して提示できることが確認できた.また,ファッションコーディネートを多人数の投票で行うためのシステムの試作として,デジタルサイネージを用いた多人数投票によるメンズファッションコーディネートシステムを開発し,大学構内にて運用テストを実施した.さらにKinectセンサを用いてジェスチャーによるデザイン評価および仮想試着が可能なシステムを試作し,動作確認を行った.タブレット端末を用いた協調デザイン支援システムでは,昨年度に開発したiPadとMacProを用いたランニングシューズのデザインシステムの操作インタフェースおよび進化計算アルゴリズムを改良し,複数のシューズメーカがひとつの展示ブースに各社のシューズを展示することを想定し,展示ブース全体のコンセプトの合意形成をしながら個別にシューズをデザインすることができるデザイン支援システムを開発し,動作検証およびアンケートによる評価を行った.さらに,食生活支援システムでは,タブレット端末を用いることを前提とした献立の検索と選択を行うためのユーザインタフェースを設計し,ユーザが気に入った献立を選ぶだけで検索エージェントを最適化することが可能なシステムを開発した.本研究では,複数の人が参加して協調デザインを行うシステムのための対話型進化計算アルゴリズムおよび評価インタフェースを開発した.これらの手法を実装した実システムとして,並列対話型タブーサーチを用いた仮想試着システム,衣服のイメージ検索システム,デジタルサイネージを用いた多数のユーザからの投票により衣服コーディネート支援を行うシステム,インターネットを用いた多数の人の投票により看板のデザインを行うシステムなどを開発した.これまでの研究成果である複数参加型トーナメント方式の対話型遺伝的アルゴリズムをインターネット投票を用いた実システムへと応用するために,HPの配色と文字配置を最適化するアプリケーションを開発し,Webサーバ上に実装した.本システムは不特定多数がPCやスマートフォンを用いてサーバにアクセスして好みのデザインに投票することにより,自動的にサーバがデザインの最適化を行い多数のユーザが満足するHPデザインを自動作成する仕組みになっており,20名程度の学生による運用テストにより動作を確認した.また,福井大学で開発された「景観に合う看板デザインの作成支援システム」を多人数投票による協調デザイン支援システムに拡張するため,Webサーバ上にシステムを実装してテストを行った.さらに,ファッションコーディネート支援システム構築に向けて,Tシャツの感性検索システムや類似衣服の検索手法について基礎的な検証を行った.ポーカー方式の対話型遺伝的アルゴリズムでは,iPadとMacProを用いてシステムのベースとなるインタフェースおよび通信機能の実装を行った.まずミズノ株式会社と共同で開発しているランニングシューズのデザインシステムをポーカー方式の対話型遺伝的アルゴリズムを用いた協調デザインシステムにアレンジし,実装した.iPadにはサーバから提示されたデザイン案をユーザが簡単に評価するためのインタフェースを実装し,タッチパネル操作のみでサーバ(MacPro)に評価結果を送る機能を開発した.さらに,高速な対話型進化計算アルゴリズムとして,タブーサーチアルゴリズムを用いた進化計算手法を提案し,シミュレーションによる性能の検証と,ランニングシューズデザインシステムへの実装を行った.本研究では,複数の人が参加して協調デザインを行うシステムのための対話型進化計算アルゴリズムおよび評価インタフェースを開発し,インターネットやデジタルサイネージを用いて不特定多数の人からの投票によりデザインを進化させるシステムや,iPadと大型ディスプレイを利用して複数の人が協調しながらデザインを行うシステムに実装して実験を行った.インターネットを用いたシステムでは,観光地の看板をデザインすることを想定し,木目パターンや文字色の異なる様々な看板デザインを複数自動生成してWebページに掲載し,不特定多数の人から好みのデザインに投票してもらうことでデザインを最適化することができた.並列対話型タブーサーチを用いた仮想試着システムでは,システムが提示する解候補に対して,ユーザが好きなデザインと嫌いなデザインを任意個数選択するのみで進化計算を行うことが可能となった.また,同システムをKinectとデジタルサイネージを用いた仮想試着システムへと実装し,ユーザのジェスチャーによる操作により仮想試着とデザイン評価が可能なシステムを開発した.さらに,2台のデジタルサイネージと大型のボタンを用いて,2種類のデザインをサイネージに表示して好みのデザインの方のボタンを押してもらうことで,通りすがりの多数の人の投票によりデザインを最適化するシステムを開発した.また,ポーカー方式の対話型進化計算アルゴリズムをiPadアプリに実装し,ランニングシューズのデザインを支援するシステムを開発した.本システムはメインの大型ディスプレイと複数のiPadで構成されており,各ユーザはiPadを用いてデザインの評価を行い,それぞれのユーザの最適化デザインが随時メインディスプレイに提示される.これにより,お互いのデザイン案を考慮しながら,共通のコンセプトによるデザインを実現することが可能となった.感性情報工学当初に計画していたシステムについては,ユーザインタフェースデザインの最適化を残してほぼ実装が完了しており,大規模ユーザによる実験を行う準備が整った.また当初予定していなかったデジタルサイネージを用いた協調デザインシステムを開発し,大学構内にて大規模な実験を行うことができた. | KAKENHI-PROJECT-24500264 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24500264 |
多人数インタラクションのための対話型進化計算の応用システムの開発 | ファッションコーディネート支援システムとしては当初の予定に無かったKinectセンサによる仮想試着システムも並行して開発できたので,今後はこれらのシステムを融合し,評価実験を行いたい.iPadを用いた比較的少人数での協調デザインシステムでは,大型ディスプレイとiPadを使ったシステムを開発し,デザインコンセプトを共有しながら個々のデザインを行うことが可能となった.食生活支援システムでは,実用となるレシピデータベースを構築し,栄養管理システムと献立推薦システムを統合したシステムがほぼ完成し,タブレット端末での操作を前提としたユーザインタフェース設計が完了した.以上により,当初の予定に無かった新たなシステムの開発にも成功し,研究目的はおおむね達成できたと評価できる.当初の計画であった「システムの実装」についてはおおむね計画通りに進めることができた.インターネット投票を用いた複数参加型トーナメント方式による対話型遺伝的アルゴリズムでは,実際にWebサーバ上にHPデザイン支援システムを構築し,不特定多数のユーザからインターネット経由でシステムにアクセスして投票を行う仕組みを実装した.また,20名程度の研究室学生のみであったが,自宅のPCやスマートフォンからシステムにアクセスし,実際にシステムを使用することにより運用試験をすることができた.また,当初の予定には無かったが福井大学の研究者と共同し,より多くの人が気軽に参加できるアプリケーションの開発を目指し,新たに「多人数で評価を行うことが可能な景観に合う看板デザイン作成支援システム」の開発に着手することができた.当初の計画であったファッションコーディネート支援システムについては,対話型進化計算をベースとしたシステム開発は進んでいるものの,ファッションコーディネートをユーザに提示する手法について検討すべき課題が多く,配色コーディネートや類似画像の検索など基礎的な技術開発にとどまっている. | KAKENHI-PROJECT-24500264 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24500264 |
最適な移植環境を構築する新規膵島移植免疫抑制法の開発:MEK阻害剤の応用可能性 | 異種あるいはES/iPS由来膵島細胞移植の臨床応用のために、門脈内に変わる新たな移植部位の開発が望まれている。現状の免疫抑制療法は膵島毒性と移植後血管新生阻害作用を有しており、膵島移植のブレイクスルーには新たな免疫抑制療法の開発が必要である。MEK阻害剤は、Allo反応性T細胞を選択的に抑制しうること、MEK/ERK経路の阻害は耐糖能を改善しうる可能性があることが報告されている。今年度は、新規移植部位の開発に先立ち、膵島移植モデルにおいて、MEK阻害剤がAllo免疫応答を制御しうるかを検証した。MEK阻害剤存在下で24時間培養した膵島は、薬剤濃度に関わらずViabilityおよびインスリン分泌能は維持されており、毒性は確認されなかった。マウスの同種膵島(H-2d)をSTZ投与により誘導した糖尿病モデルマウス(H-2b)に経門脈的に移植を行い、MEK阻害剤は移植直前から移植後28日目まで経口投与を行って膵島移植実験を実施した。MEK阻害剤投与群では非投与群よりグラフト生着期間が有意に延長(30日vs.11.5日)し、移植7日後の組織学的評価においてMEK阻害剤投与群では膵島グラフトへのTリンパ球の浸潤抑制が確認された。MEK阻害剤投与群はコントロール群に比べ、アログラフトに対する肝内のEffector CD4+ T cellの増加が抑制され(44.0% vs.58.3%)。Naïve CD4+ T cellが温存されていた(42.2% vs.30.5%)。今年度の研究により、MEK阻害剤単剤投与で同種移植膵島への拒絶反応抑制が確認され、膵島移植への応用可能性が示された。本研究において、最も重要な検討課題であった、経門脈膵島移植におけるMEK阻害剤の有効性を、明確に確認することができ、その機序についても概ね確認することができた。同種膵島移植ならびに、同種細胞移植におけるMEK阻害剤の免疫抑制作用については初めての報告でもあり、他の分野にも波及しうる結果である。今年度の研究の進捗により、次年度以降も当初の計画通り研究が推進できる見通しとなった。次年度以降は以下の項目について研究を推進する。1MEK阻害剤の耐糖能改善効果の確認:MEK阻害剤投与が耐糖能に与える影響について、分離膵島細胞、正常マウス、膵島移植レシピエントマウスを用いて確認する。MEK阻害剤がERK/Cdk5経路を介しPPARγ機能を制御することで耐糖能の改善をもたらすことを、Westernblot法等を用いて検証する。2皮下膵島移植モデルにおける血管新生抑制作用の有無の検証:皮下血管誘導法(Am J Transplant. 2014)における血管新生作用を対照群・CNI群・MEK阻害剤群間で組織学的(免疫染色・電気顕微鏡等)に比較する。3MEK阻害剤による皮下膵島移植:皮下Allo膵島移植がTrametinibにより生着延長しうるか、成功した場合には作用機序(T細胞動態、移植部位の免疫担当細胞・液性因子の解析等)を対照群・CNI群と比較することで検証する。異種あるいはES/iPS由来膵島細胞移植の臨床応用のために、門脈内に変わる新たな移植部位の開発が望まれている。現状の免疫抑制療法は膵島毒性と移植後血管新生阻害作用を有しており、膵島移植のブレイクスルーには新たな免疫抑制療法の開発が必要である。MEK阻害剤は、Allo反応性T細胞を選択的に抑制しうること、MEK/ERK経路の阻害は耐糖能を改善しうる可能性があることが報告されている。今年度は、新規移植部位の開発に先立ち、膵島移植モデルにおいて、MEK阻害剤がAllo免疫応答を制御しうるかを検証した。MEK阻害剤存在下で24時間培養した膵島は、薬剤濃度に関わらずViabilityおよびインスリン分泌能は維持されており、毒性は確認されなかった。マウスの同種膵島(H-2d)をSTZ投与により誘導した糖尿病モデルマウス(H-2b)に経門脈的に移植を行い、MEK阻害剤は移植直前から移植後28日目まで経口投与を行って膵島移植実験を実施した。MEK阻害剤投与群では非投与群よりグラフト生着期間が有意に延長(30日vs.11.5日)し、移植7日後の組織学的評価においてMEK阻害剤投与群では膵島グラフトへのTリンパ球の浸潤抑制が確認された。MEK阻害剤投与群はコントロール群に比べ、アログラフトに対する肝内のEffector CD4+ T cellの増加が抑制され(44.0% vs.58.3%)。Naïve CD4+ T cellが温存されていた(42.2% vs.30.5%)。今年度の研究により、MEK阻害剤単剤投与で同種移植膵島への拒絶反応抑制が確認され、膵島移植への応用可能性が示された。本研究において、最も重要な検討課題であった、経門脈膵島移植におけるMEK阻害剤の有効性を、明確に確認することができ、その機序についても概ね確認することができた。同種膵島移植ならびに、同種細胞移植におけるMEK阻害剤の免疫抑制作用については初めての報告でもあり、他の分野にも波及しうる結果である。今年度の研究の進捗により、次年度以降も当初の計画通り研究が推進できる見通しとなった。次年度以降は以下の項目について研究を推進する。 | KAKENHI-PROJECT-18K08593 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K08593 |
最適な移植環境を構築する新規膵島移植免疫抑制法の開発:MEK阻害剤の応用可能性 | 1MEK阻害剤の耐糖能改善効果の確認:MEK阻害剤投与が耐糖能に与える影響について、分離膵島細胞、正常マウス、膵島移植レシピエントマウスを用いて確認する。MEK阻害剤がERK/Cdk5経路を介しPPARγ機能を制御することで耐糖能の改善をもたらすことを、Westernblot法等を用いて検証する。2皮下膵島移植モデルにおける血管新生抑制作用の有無の検証:皮下血管誘導法(Am J Transplant. 2014)における血管新生作用を対照群・CNI群・MEK阻害剤群間で組織学的(免疫染色・電気顕微鏡等)に比較する。3MEK阻害剤による皮下膵島移植:皮下Allo膵島移植がTrametinibにより生着延長しうるか、成功した場合には作用機序(T細胞動態、移植部位の免疫担当細胞・液性因子の解析等)を対照群・CNI群と比較することで検証する。予定よりも少ない実験動物数で今年度の研究成果が得られたため、次年度使用額が発生した。次年度にはMEK阻害剤の作用機序の解析や、耐糖能に与える影響等のIn vitro, In vivoアッセイを予定しており、それらの実施に必要な実験動物購入費用、試薬類の購入費用等に充てることを計画している。 | KAKENHI-PROJECT-18K08593 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K08593 |
「島原大変・寛政大津波」、熊本側への波先浸入を通して津波防災の意識高揚を図る | 熊本に身近な有明海でも、かつて「寛政大津波」が起こっており、その津波の実態と被害状況をよく理解してもらうことこそ意識啓発につながると考え、津波防災資料を作成し啓発を行った。1、津波防災を自分の問題として捉えるには、地域住民(熊本の人々)に身近な有明海でも、「寛政大津波」により大被害を被っていることを知らせ、津波防災の意識高揚を図った。2、「寛政大津波の被害・波先浸入域を図示し、防災意識の高揚・啓発を図る資料(CD版を添付)」を作成し、啓発活動を行った。3、報告書には次の2点を盛り込んだ。(1)、熊本側沿岸部への浸水域を、北から玉名平野、熊本平野沿岸部など4つに区分し「波先浸入図」を作成した。(2)、寛政大津波では主な河川で、どこまで津波が遡上したかを明らかにした。このうち緑川水系加勢川では川床地下より津波跡を発見した。4、津波防災の鉄則は「早く、高台へと逃げる。」であり、その意識を高められるように、平成19年6月と10月の二回に亘り寛政大津波の波先浸入跡を尋ねる巡検会を実施した。5、「島原大変による寛政大津波」の報告書は、熊本市を中心とする生涯学習施設(公民館等)、消防署、有明海沿岸地域の各学校、図書館などに送付し、活用をお願いしている。熊本に身近な有明海でも、かつて「寛政大津波」が起こっており、その津波の実態と被害状況をよく理解してもらうことこそ意識啓発につながると考え、津波防災資料を作成し啓発を行った。1、津波防災を自分の問題として捉えるには、地域住民(熊本の人々)に身近な有明海でも、「寛政大津波」により大被害を被っていることを知らせ、津波防災の意識高揚を図った。2、「寛政大津波の被害・波先浸入域を図示し、防災意識の高揚・啓発を図る資料(CD版を添付)」を作成し、啓発活動を行った。3、報告書には次の2点を盛り込んだ。(1)、熊本側沿岸部への浸水域を、北から玉名平野、熊本平野沿岸部など4つに区分し「波先浸入図」を作成した。(2)、寛政大津波では主な河川で、どこまで津波が遡上したかを明らかにした。このうち緑川水系加勢川では川床地下より津波跡を発見した。4、津波防災の鉄則は「早く、高台へと逃げる。」であり、その意識を高められるように、平成19年6月と10月の二回に亘り寛政大津波の波先浸入跡を尋ねる巡検会を実施した。5、「島原大変による寛政大津波」の報告書は、熊本市を中心とする生涯学習施設(公民館等)、消防署、有明海沿岸地域の各学校、図書館などに送付し、活用をお願いしている。 | KAKENHI-PROJECT-19914028 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19914028 |
日本のバラ属の分類誌研究 | 本研究は、バラ属の系統分化と日本のバラ属植物について形態学的形質により識別した種を基準とした分類誌を完成することを目的としている。そのために、1集団内および地理的変異の掌握、2種を識別するための有効な形質を見出すこと、3 FranchetとSavatierにより命名された種および種内分類群の証拠標本の正体を明らかにして、現在の国際植物命名規約に従いレクトタイブを定め、形態学的形質、解剖学的形質、分子的形質の諸形質について行った諸解析の結果を総合して、岩槻邦男・D.E.Boufford・大場秀章編「日本植物誌英文版」2b巻(Flora of Japan,Vol.2b)のバラ属の原稿を完成した。従来の研究では見逃されていた重要な発見は、1従来アズマイバラと考えられていたRosa luciae Franch.& Sav.はテリハノイバラであること、2テリハノイバラにこれまで用いられてきたRosawichurae Crep.という学名はR.luciaeの異名となり、R.luciaeがテリハノイバラの正名となること、3アズマイバラ、モリイバラ、ヤブイバラ、ミヤコイバラはテリハノイバラに変異が連続し、種内分類群として区別されること、4ヤマイバラRosa sambucina Koidz.は他のノイバラ亜属の種とは系統がまったく異なる位置にあること、などである。また、従来日本産バラ属植物として記載または報告された種及び種内分類群の全学名の出典、そのタイプならびに異同を明らかにし論文にまとめた。なお、染色体核型の研究、分子レベルによる地方変異の解析が遅延したため、本研究中に目的のひとつとしたモノグラフの出版までには至らなかったが、3月パリで開かれたバラ属植物分類に関するコンファレンスでその成果を発表した。本研究は、バラ属の系統分化と日本のバラ属植物について形態学的形質により識別した種を基準とした分類誌を完成することを目的としている。そのために、1集団内および地理的変異の掌握、2種を識別するための有効な形質を見出すこと、3 FranchetとSavatierにより命名された種および種内分類群の証拠標本の正体を明らかにして、現在の国際植物命名規約に従いレクトタイブを定め、形態学的形質、解剖学的形質、分子的形質の諸形質について行った諸解析の結果を総合して、岩槻邦男・D.E.Boufford・大場秀章編「日本植物誌英文版」2b巻(Flora of Japan,Vol.2b)のバラ属の原稿を完成した。従来の研究では見逃されていた重要な発見は、1従来アズマイバラと考えられていたRosa luciae Franch.& Sav.はテリハノイバラであること、2テリハノイバラにこれまで用いられてきたRosawichurae Crep.という学名はR.luciaeの異名となり、R.luciaeがテリハノイバラの正名となること、3アズマイバラ、モリイバラ、ヤブイバラ、ミヤコイバラはテリハノイバラに変異が連続し、種内分類群として区別されること、4ヤマイバラRosa sambucina Koidz.は他のノイバラ亜属の種とは系統がまったく異なる位置にあること、などである。また、従来日本産バラ属植物として記載または報告された種及び種内分類群の全学名の出典、そのタイプならびに異同を明らかにし論文にまとめた。なお、染色体核型の研究、分子レベルによる地方変異の解析が遅延したため、本研究中に目的のひとつとしたモノグラフの出版までには至らなかったが、3月パリで開かれたバラ属植物分類に関するコンファレンスでその成果を発表した。バラ科バラ属(Rosa)は北半球の温帯を中心に100150種があるとされる。生態学的には茎や枝に刺が発達し、枝はつる状に伸長する種もあり、林間や林縁や伐採跡地などの撹乱を受けやすい場所での競争に適した種と考えられる。日本ではバラ属から約30種が報告されるが、その実体が未だよく解明されていない。このような実情を反映して、ノイバラ節(Synstylae)は分類体系に定説がなく、分類群の境界やそのくくりの設定も定かではない。本研究では、まず、日本のバラ科バラ属ノイバラ節の学名のもとになるフランシェ・サヴァティエ(Franchet & Savatier)命名の基準標本を含むパリ自然博物館収蔵のサヴァティエ・コレクションの観察を行い、命名上の問題を整理した。本研究において、集団内および地理的変異の掌握し、種を識別するための有効な形質を見出すために必要な材料を国内各地から収集し、また、日本産種に近似する外国産種の材料の送付を国外研究者に依頼した。また、フランシェ・サヴァティエの後、日本のバラ属の研究を行い命名した小泉(Koidzumi)、牧野(Makino)、中井(Nakai)、籾山(Momiyama)の命名の基準となった標本を探し出した。標本の検討に必要な文献資料を購入し、記載と標本を照合し、lectotypificationを行った。本研究により、生殖器官を中心に形態学的形質が明らかになりバラ属ノイバラ節における各分類群の実体を明確にすることが可能となり、本研究から得られた研究成果をもとに、バラ属の系統分化と、日本のバラ属植物について形態学的形質により識別した種を基準とした分類誌である「日本産ノイバラ節の種及び種内分類群」という論文を、専門誌への投稿に向けて、まとめ中である。 | KAKENHI-PROJECT-09839008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09839008 |
日本のバラ属の分類誌研究 | 本研究は、バラ属の系統分化と日本のバラ属植物について形態学的形質により識別した種を基準とした分類誌を完成することを目的としている。そのために本年度は、1集団内および地理的変異の掌握、2種を識別するための有効な形質を見出すこと、3 FranchetとSavatierにより命名された種および種内分類群の証拠標本の正体を明らかにして、現在の国際植物命名規約に従いレクトタイプを定め、形態学的形質、解剖学的形質、分子的形質の諸形質について行った諸解析の結果を総合して、岩槻邦男・D.E.Boufford・大場秀章編「日本植物誌英文版」2b巻(Flora of Japan,Vol.2b)のバラ属の原稿を完成した。従来の研究では見逃されていた重要な発見は、1従来アズマイバラと考えられていたRosa luciae Franch.& Sav.はテリハノイバラであること、2テリハノイバラにこれまで用いられてきたRosawichurae Crep.という学名はR.luciaeの異名となり、R.luciaeがテリハノイバラの正名となること、3アズマイバラ、モリイバラ、ヤブイバラ、ミヤコイバラはテリハノイバラに変異が連続し、種内分類群として区別されること、4ヤマイバラRosa sambucina Koidz.は他のノイバラ亜属の種とは系統がまったく異なる位置にあること、などである。また、従来日本産バラ属植物として記載または報告された種及び種内分類群の全学名の出典、そのタイプならびに異同を明らかにし論文にまとめた。なお、染色体核型の研究、分子レベルによる地方変異の解析が遅延したため、本研究中に目的のひとつとしたモノグラフの出版までには至らなかったが、3月パリで開かれたバラ属植物分類に関するコンファレンスでその成果を発表した。 | KAKENHI-PROJECT-09839008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09839008 |
食品流通における環境保全型物流システムの導入と展開に関する研究 | 1.青果物の流通には非常に多くのマージンが含まれ、特に、産地では、選別・包装・荷造に関わる物流コストが産地流通コストを押し上げ、小売では、労務費や営業費が小売流通コストを押し上げ、小売価格を高める要因となっている。2.近年、青果物流通において、レンタル+デポジット制にもとづいた「リターナブルコンテナ(容器),の導入が急増しつつあり、その利用・流通範囲も全国広域的規模で進められている。また、レンタル+デポジット制による「リターナブルコンテナ(容器)」は、今日の広域流通化した青果物流通への導入も十分可能であることが明らかになった。3.わが国の消費者も、青果物の販売形態として、ばら(定価・計量)販売を望んでいる消費者が多数存在することが明らかとなった。このような消費者意識に対応するためにも、ばら販売による販売を拡大していく必要がある。そのためには、産地から小売(販売)までの物流そのものの見直しが必要である。4.近年、国内大手小売業の物流において、従来のダンボー容器中心から急速に再利用可能なリターナブルコンテナへの転換が進みつつあり、さらには、近年、陳列什器の改良によるリターナブルコンテナでの陳列販売が模索されつつあることが明らかとなった、また、販売形態も従来の個装形態からばら(はだか)販売も積極的に導入していこうとする動きがあることも明らかとなった。5.環境保全型物流の視点から、こうした取組の先進国であるEU諸国の物流実態の調査を実施した。EU諸国では、リターナブル容器を利用した物流や陳列販売が一般的であり、販売方法も、計量機を使用した消費者自身による計量販売が中心となっている。こうした背景には、物流パレットや容器のモジュール化、あるいは制度の整備があることが明らかとなった。わが国への環境保全型物流システムの導入や展開のためにも、そうした視点での取組が早急に求められている。1.青果物の流通には非常に多くのマージンが含まれ、特に、産地では、選別・包装・荷造に関わる物流コストが産地流通コストを押し上げ、小売では、労務費や営業費が小売流通コストを押し上げ、小売価格を高める要因となっている。2.近年、青果物流通において、レンタル+デポジット制にもとづいた「リターナブルコンテナ(容器),の導入が急増しつつあり、その利用・流通範囲も全国広域的規模で進められている。また、レンタル+デポジット制による「リターナブルコンテナ(容器)」は、今日の広域流通化した青果物流通への導入も十分可能であることが明らかになった。3.わが国の消費者も、青果物の販売形態として、ばら(定価・計量)販売を望んでいる消費者が多数存在することが明らかとなった。このような消費者意識に対応するためにも、ばら販売による販売を拡大していく必要がある。そのためには、産地から小売(販売)までの物流そのものの見直しが必要である。4.近年、国内大手小売業の物流において、従来のダンボー容器中心から急速に再利用可能なリターナブルコンテナへの転換が進みつつあり、さらには、近年、陳列什器の改良によるリターナブルコンテナでの陳列販売が模索されつつあることが明らかとなった、また、販売形態も従来の個装形態からばら(はだか)販売も積極的に導入していこうとする動きがあることも明らかとなった。5.環境保全型物流の視点から、こうした取組の先進国であるEU諸国の物流実態の調査を実施した。EU諸国では、リターナブル容器を利用した物流や陳列販売が一般的であり、販売方法も、計量機を使用した消費者自身による計量販売が中心となっている。こうした背景には、物流パレットや容器のモジュール化、あるいは制度の整備があることが明らかとなった。わが国への環境保全型物流システムの導入や展開のためにも、そうした視点での取組が早急に求められている。本年度は、上述の課題を解明するために、青果物を中心に環境保全型物流システムに積極的に取り組んでいる。産地、卸売業、小売業への事例調査と、特に青果物物流における「通いコンテナ」の導入に関する実験調査、及び消費者アンケート調査を実施した。その結果、点が明らかとなった。1.通いコンテナ導入による青果物物流の効率化は、店舗段階で特に大きい。2.産地段階での導入メリットは、品目により異なるが店舗段階に比べると相対的に小さい。3.ただ、産地段階におけるメリットは、通いコンテナ導入による「長期的取引」をどのように評価するかによっても異なり、慎重な検討を要する。4.また、青果物の物流効率化は、農家から小売までのトータル物流の効率化ができて初めて達成されるものである。そのためには、DBから通いコンテナヘの転換だけでなく例えば、産地での包装や規格選別の簡素化や小売でのバラ(計量)販売などを含めた物流効率化のシステムも今後検討していくことが重要である。5.また、近年、消費者の野菜購入意識も変わりつつある。家族の小子化、単身化、高齢化などによる世帯当たりの人数が減少、消費者の環境問題への関心の高まり、あるいは経済低迷による消費の節約などにより、消費者の野菜の購買形態の意識も変化(小売店<ルーシー店・西岡店>でのアンケート調査)し、バラ(計量)形態での購入意識が高まってきている。6.すなわち、小売でのバラ(計量)販売の増大は、産地での包装や規格選別の簡素化をさらに推し進め、それが通いコンテナと結合したとき、生産から小売までのトータルとして青果物物流のより大きな効率化が実現されると思われる。 | KAKENHI-PROJECT-11556040 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11556040 |
食品流通における環境保全型物流システムの導入と展開に関する研究 | 7.すなわち、青果物物流の効率化は、産地から小売までのどこかの段階が効率化を進めればよいというものではなく、それぞれの段階が協調することによって初めて可能になるものであると言える。8.わが国への青果物物流の効率化のための通いコンテナ導入も、こうした観点からの導入を検討していく必要がある。80年代後半以降、輸入野菜が急増し国内野菜との競合を強めつつあり、輸入野菜への対抗方策が早急に求められている。輸入野菜に対抗し国産野菜の振興を図るためには、鮮度、品質、安全など国産野菜の良さを強調することに加え、生産から流通までのあらゆる段階で可能な限りコストを削減していくことが重要である。ただ、これまでの対抗策は生産費に関しての議論はされても流通費については、ほとんど議論がされてこなかったといっても過言ではない。しかし、野菜流通が国内競争から国際競争へ移行しつつある中で、国産野菜が生き残っていくためには、生産費の削減だけでなく生産段階から小売り段階までの流通費の削減が必要不可欠であると考える。また、21世紀を迎えるにあたり、自然や環境破壊などによる地球温暖化、ゴミ問題など人類存続の基盤である地球環境が損なわれるおそれがあることが世界共通の認識となっている。こうした中、「食品流通における環境保全型物流システムの導入と展開に関する研究」について、本年度は、第一に、環境保全への取り組みが進んでいるヨーロッパの現状を考察するために、ドイツ、フランス、スペインにおける食品流通での環境保全型物流の取り組みの現状について、小売業、物流センター、卸売市場、生産者の取り組みの現状を調査した。第2に、国内における環境保全型物流への取り組みの現状についてコンテナ(出荷容器)の使用実態を事例調査を実施した。事例調査は、限られた(クローズ)範囲で流通している事例と、広域(オープン)範囲で流通している事例とを調査し、比較検討を行った。第3に、環境保全型物流の実態や意向についてのアンケート調査を実施した。21世紀を迎えるにあたり、自然や環境破壊などによる地球温暖化、ゴミ問題など人類存続の基盤である地球環境が損なわれるおそれがあることが世界共通の認識となっている。こうした中で、これまでの経済合理主義に重きをおいた大量生産、大量流通、大量消費、大量廃棄の社会経済活動の見直しが必要となっている。すなわち21世紀は、これまでの「一方通過型社会」から地球環境への負荷の少ない持続的発展可能な「循環型社会」へ変えていくことが重要であり、そのための取り組みがわが国においても徐々にではあるが進められつつある。そうしたなか、今日、野菜流通においても、段ボール(以下、DBと略)やトレー等容器包装減量化などがリサイクルなど環境問題の観点から強く求められているが、加えて流通の見直しによる低コスト化の観点からも極めて重要である。また、現在消費構造も単独世帯や少数世帯の増加、高齢化の進展などに伴う購買単位の小口化が進展しつつあり、こうした消費構造の変化に対応した野菜流通への転換も求められている。本年度は、まず第1に、現在の消費構造の変化に対応した野菜の販売形態について消費者がどのように考えているのかを検討した。野菜販売形態に関する消費者アンケートにより、わが国の消費者も、野菜の販売形態として、ばら販売を望んでいる消費者が多数存在することが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-11556040 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11556040 |
海洋微生物ライブラリーを用いた海産物鮮度保持のための新規酵素阻害剤の開発と応用 | 海産物の鮮度を低下させる原因として、保存中に作用する低温酵素が知られている。海産物鮮度保持を目指して、その低温酵素についての諸性状の解明、酵素阻害物質の探索を行った。海産動物の腸内共生細菌を標的として日本各地より約3000株の海洋細菌を集め、低温で作用するリパーゼ活性、ホスホリパーゼ(PL)A1活性、PLC活性、リゾホスホリパーゼC活性、スフィンゴミエリナーゼ活性を指標にスクリーニングを実施した。その結果、培養上清中にリパーゼ活性を示す菌株約100種類、リン脂質分解活性を示す菌株約10種類を見いだした。今後はこれら低温酵素の諸性状を明らかにし、これら酵素に対する特異的な阻害物質のスクリーニングを開始する。本研究において、種々の酵素阻害剤の中から海産物の鮮度保持に重要なチロシナーゼインヒビターに注目してこの生産微生物を種々海域の海水、海底堆積物などから探索を行った。その結果、伊豆諸島新島沖の水深100メートルの海底堆積物から分離した海洋微生物がチロシナーゼインヒビターを生産していることが判明した。本菌はTrichoderma属の糸状菌であり、海水培地でしんとう培養すると顕著に培養液中に物質を生産した。本有効物質は低分子のペプチド性物質であることが判明した。本菌の培養液はエビなどの甲殻類の保存中における褐変防止に顕著な効果が認められたため、現在その応用研究を展開中である。海産物の鮮度を低下させる原因として、保存中に作用する低温酵素が知られている。海産物鮮度保持を目指して、その低温酵素についての諸性状の解明、酵素阻害物質の探索を行った。海産動物の腸内共生細菌を標的として日本各地より約3000株の海洋細菌を集め、低温で作用するリパーゼ活性、ホスホリパーゼ(PL)A1活性、PLC活性、リゾホスホリパーゼC活性、スフィンゴミエリナーゼ活性を指標にスクリーニングを実施した。その結果、培養上清中にリパーゼ活性を示す菌株約100種類、リン脂質分解活性を示す菌株約10種類を見いだした。今後はこれら低温酵素の諸性状を明らかにし、これら酵素に対する特異的な阻害物質のスクリーニングを開始する。本研究において、種々の酵素阻害剤の中から海産物の鮮度保持に重要なチロシナーゼインヒビターに注目してこの生産微生物を種々海域の海水、海底堆積物などから探索を行った。その結果、伊豆諸島新島沖の水深100メートルの海底堆積物から分離した海洋微生物がチロシナーゼインヒビターを生産していることが判明した。本菌はTrichoderma属の糸状菌であり、海水培地でしんとう培養すると顕著に培養液中に物質を生産した。本有効物質は低分子のペプチド性物質であることが判明した。本菌の培養液はエビなどの甲殻類の保存中における褐変防止に顕著な効果が認められたため、現在その応用研究を展開中である。低温酵素を阻害する物質のスクリーニングにあたり、今年度は低温でリパーゼ活性を有する海洋細菌の探索とリパーゼに対する阻害活性の簡便な評価法の検討を行った。リパーゼ活性を有する海洋細菌の探索には、岩手県大槌湾で採取し、25°Cで単離した海洋細菌(約600株)と奄美大島で採取し、25°Cで単離した海洋細菌(約400株)をそれぞれ用いた。大槌湾で単離した海洋細菌を4°Cで培養した結果、生育した菌株は僅かであり、培養上清にリパーゼ活性は確認されなかった。また、25°Cで培養した場合も、培養上清に確認されたリパーゼ活性は弱く、本研究目的には適していなかった。一方、奄美大島で単離した海洋細菌を25°Cで培養した結果、培養上清にリパーゼ産生能を有する株を数株見出すことができた。その中で最も高いリパーゼ活性を示した4W-15株を今後実施する低温酵素を阻害する物質のスクリーニングに用いる菌株として選択した。また、本学所有の練習船に便乗し様々の海域及び各深度の海水中や海底堆積物などから、放線菌を選択的に現場分離し、来年度の本研究の供試菌株として保存中である。さらに細胞融合技術の適合できる微生物は大変限定されているため海洋細菌をプロトプラスト化する条件検討を行い、ある種の発光細菌は塩化カルシウム及びグリセリンを添加した緩衝液中で最も安定にプロトプラスト化が起こる事を解明した。現在本菌と大腸菌でプロトプラスト融合を行い、両親株の性質とは明らかに異なる組み替え体を13株得ており、それらの生理、生化学性状を親株と比較しているところである。低温酵素を阻害する物質の探索にあたり、今年度はリパーゼおよびホスフォリパーゼ活性を有する海洋細菌の探索とリパーゼおよびホスフォリパーゼに対する阻害活性の簡便な評価法の検討を行った。リパーゼ活性およびホスフォリパーゼ活性を有する海洋細菌の探索には主に海産動物の腸内共生細菌を標的とした。岩手県大槌湾で採取した約600株の海洋細菌(25°Cで単離)、奄美大島で採取した約400株の海洋細菌(25°Cで単離)、北海道利尻島で採取した約200株の海洋細菌(15°Cで単離)、北海道釧路沖海底から採取した約150株の海洋細菌(15°Cで単離)をそれぞれ試験に供した。 | KAKENHI-PROJECT-15380141 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15380141 |
海洋微生物ライブラリーを用いた海産物鮮度保持のための新規酵素阻害剤の開発と応用 | 奄美大島での分離株にリパーゼ活性を有する海洋細菌が、また釧路沖海底からの分離株にホスフォリパーゼ活性を有する海洋細菌をすでに取得した。これらの菌株を用いて各酵素の阻害物質のスクリーニングを行う計画である。さらに昨年度発光細菌と大腸菌でプロトプラスト融合に成功した融合株の中から両親株の性質とは明らかに異なる組み替え体を13株得て、それらの生理生化学的性状を親株と比較したところ、これらの融合株は高い抗生物質体制を有する他は大腸菌の性質と一致した。これらの13株の中から最も高い耐性株(4-12株と命名)を選び、DNAの制限酵素処理切断パターンを調べた結果、大腸菌とほぼ一致したため、発光細菌の持つ薬剤耐性の形質のみが特異的に融合によって水平伝播された可能性が強く示唆された。昨年度に引き続き様々の海域及び各深度の海水中や海底堆積物などから、放線菌を初めとする海洋微生物を分離した。これらの微生物について、各種条件下で培養し、培養液中のプロテアーゼインヒビターやチロシナーゼインヒビター活性などを現在測定中である。海産物鮮度保持を目的として標的となる海洋性の酵素を取得するべく、前年に引き続き海産動物の腸内容物からの海洋微生物取得を継続した。釧路沖、諸磯、八丈島、下田、三浦三崎、伊豆、東京湾、利尻、西表島の海産動物の腸内容物から取得した575株の海洋細菌に、リン脂質を分解する酵素を菌体外に分泌するものを探索した。その結果、ホスホリパーゼA1活性、ホスホリパーゼC活性、リゾホスホリパーゼC活性およびスフィンゴミエリナーゼ活性が確認された。これまで見出してきたリパーゼを含めてこれらの5種の海産性脂質分解酵素に対する阻害剤は鮮度保持のために有用と思われ、今後本酵素群に対する酵素阻害剤のスクリーニングをこれまでに得られた全ての海洋細菌を対象として一斉に開始するする計画である。昨年度から種々の海水及び海底堆積物などから分離した海洋微生物について、プロテアーゼインヒビターやチロシナーゼインヒビター生産菌探索していたところ、伊豆大島の水深100メートルの海底堆積物から分離した海洋微生物がチロシナーゼインヒビターを生産していることが判明したため、この菌に焦点をあててその分類学的諸性状を明らかにするとともに物質の特定を行った。その結果、本菌は海洋糸状菌であり、しんとう培養すると顕著に培養液にインヒビターを蓄積した。本有効物質は低分子のペプチド性物質であることが判明した。本菌の培養液はエビなどの甲殻類の保存中における褐変防止に効果が認められたため、現在その応用研究を展開中である。 | KAKENHI-PROJECT-15380141 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15380141 |
高分子ネットワークへの異種高分子の侵入 | 本研究では、アクリルアミドゲルを水中からポリビニルメチルエーテル(PVME)水溶液中に入れたときに、PVME分子鎖がゲルネットワーク中に浸入する証拠をフーリェ変換赤外分光法(FTIR)を用いて探索した。また、結晶性/結晶性ポリマーブレンドであるポリ(ブチレンサクシネート)/ポリ(塩化ビニリデン-co-塩化ビニル)(PBSU/PVDCVC)ブレンドの球晶系で、異種高分子が侵入することを見出した。この系に関しても検討を行った。下記に示すのが主な研究成果である。1.アクリルアミドゲル中にPVME鎖が浸入していく過程を検討するため、PVME水溶液に浸した試料と浸していない試料を乾燥させてFTIRスペクトルを測定した。その結果、PVME分子鎖のアクリルアミドゲル内への浸入の可能性を示す結果が得られた。2.PBSU/PVDCVCブレンド系は溶融状態では相溶している。この系は通常とは異なり同時に両者の球晶成長が起こり、更に、一方の球晶が他方の球晶に浸入していく、「相互侵入球晶(Interpenetrated Spherulite)」という現象を示すことを発見した。3.PBSU/PVDCVC系について、その相互侵入球晶の生成条件を検討した。また、顕微FTIRを用いて、実際にこの現象が起こっているかの検討も行い、その証拠を得た。本研究では、アクリルアミドゲルを水中からポリビニルメチルエーテル(PVME)水溶液中に入れたときに、PVME分子鎖がゲルネットワーク中に浸入する証拠をフーリェ変換赤外分光法(FTIR)を用いて探索した。また、結晶性/結晶性ポリマーブレンドであるポリ(ブチレンサクシネート)/ポリ(塩化ビニリデン-co-塩化ビニル)(PBSU/PVDCVC)ブレンドの球晶系で、異種高分子が侵入することを見出した。この系に関しても検討を行った。下記に示すのが主な研究成果である。1.アクリルアミドゲル中にPVME鎖が浸入していく過程を検討するため、PVME水溶液に浸した試料と浸していない試料を乾燥させてFTIRスペクトルを測定した。その結果、PVME分子鎖のアクリルアミドゲル内への浸入の可能性を示す結果が得られた。2.PBSU/PVDCVCブレンド系は溶融状態では相溶している。この系は通常とは異なり同時に両者の球晶成長が起こり、更に、一方の球晶が他方の球晶に浸入していく、「相互侵入球晶(Interpenetrated Spherulite)」という現象を示すことを発見した。3.PBSU/PVDCVC系について、その相互侵入球晶の生成条件を検討した。また、顕微FTIRを用いて、実際にこの現象が起こっているかの検討も行い、その証拠を得た。現在は、主要実験装置の購入、チェック及び適当な試料の作成と予備実験を行っている。本研究では、アクリルアミドゲルをポリビニルメチルエーテル(PVME)水溶液中に入れたときに、PVME分子鎖がゲルネットワーク中に浸入する証拠を得ることが目的である。1.装置の購入。顕微FTIRシステムを購入し、動作チェック等を行った。2.試料の作成。アクリルアミドゲルの試料を毛細管中で作成した。その際、適当な太さを決めるため、異なる径の毛細管を使用し、数種類の径の試料を作成した。3.顕微FTIR用試料の作成。上記で作成した試料を薄くスライスして顕微FTIR用の試料を試作した。顕微FTIRの透過モードで測定するためには理想的には1μm程度の薄さの試料が必要なため、ダイヤモンドセルを用いて試料を圧縮し、薄い試料を作成した。4.予備実験。アクリルアミドゲル中にPVME鎖が浸入していく過程を測定するため、上記の試料に対して、PVME水溶液に浸していないものについて予備実験を行い、測定時の試料作成方法や、FTIRスペクトルの妥当性などを検討した。本研究では、アクリルアミドゲルをポリビニルメチルエーテル(PVME)水溶液中に入れたときに、PVME分子鎖がゲルネットワーク中に浸入する証拠を得ることが目的である。その研究を前年度に引き続き行っている。また、結晶性/結晶性ポリマーブレンドで異種高分子が浸入する系を見出した。今後は、この系についての研究も継続して行う予定である。1.前年度同様、アクリルアミドゲルの試料を毛細管中で作成し、試料を薄くスライスして顕微フーリェ変換赤外分光(FTIR)用の試料を作成した。アクリルアミドゲル中にPVME鎖が浸入していく過程を測定するため、上記の試料に対して、PVME水溶液に浸していないものについて予備実験を継続し、測定時の試料作成方法や、FTIRスペクトルの妥当性などを検討した。2.ポリ(ブチレンサクシネート)/ポリ(塩化ビニリデン-co-塩化ビニル)[PBSU/P(VDC-VC)]ブレンド系は結晶性/結晶性高分子ブレンドで、溶融状態では相溶している。この系は通常とは異なり同時に両者の球晶形成が起こり、更に、一方の球晶が他方の球晶に浸入していく、「相互侵入球晶(Interpenetrated Spherulite)」という現象を示すことを発見した。3. PBSU/P(VDC-VC)系について、その相互侵入球晶の生成条件を検討した。また、顕微FTIRを用いて、実際にこの現象が起こっているかの検討も開始した。本研究では、アクリルアミドゲルを水中からポリビニルメチルエーテル(PVME)水溶液中に入れたときに,PVME分子鎖がゲルネットワーク中に浸入する証拠をフーリェ変換 | KAKENHI-PROJECT-09450356 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09450356 |
高分子ネットワークへの異種高分子の侵入 | 赤外分光法(FTIR)を用いて探索した。また、結晶性/結晶性ポリマーブレンドでポリ(ブチレンサクシネート)/ポリ(塩化ビニリデン-co-塩化ビニル)(PBSU/PVDCVC)ブレンドで、異種高分子の浸入する系を見出した。この系に関しても検討を行った。1.前年度までと同様、アクリルアミドゲルの試料を毛細管中で作成し、FTIR用の試料を作成した。アクリルアミドゲル中にPVME鎖が浸入していく過程を測定するため、上記の試料に対して、PVME水溶液に浸した試料と浸していない試料についてFTIRの実験を継続した。その結果、PVME分子鎖のアクリルアミドゲル内への浸入の可能性を示唆する結果が得られた。2.PBSU/PVDCVCブレンド系は溶融状態では相溶している。この系は通常とは異なり同時に両者の球晶形成が起こり、更に、一方の球晶が他方の球晶に侵入していく、「相互侵入球晶(Interpenetrated Spherulite)」という現象を示すことを発見した。3.PBSU/PVDCVC系について、その相互侵入球晶の生成条件を検討した。また、顕微FTIRを用いて、実際にこの現象が起こっているかの検討も行いその証拠を得た。 | KAKENHI-PROJECT-09450356 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09450356 |
圧電センサ/アクチュエータの線形補償及び線形駆動に関する研究 | 圧電素子が汎用的な機能性材料となり得るには位置及び力の再現性すなわちヒステリシス,温度の影響,周波数特性並びに動特性に関する改善が不可欠である。その改善策としては,再現性と温度特性の優れた高感度の単一材料の開発を目指すだけでは限界がある。本研究は,圧電素子の非線形特性を明らかにするとともに,素子自身の発生電圧をセンサ信号として使用した圧電アクチュエータの線形駆動法を呈示し,素子の高速・高精度駆動を実現するものである。始めに,圧電素子の駆動用線形パワーアンプを製作し,種々の圧電素子の印加電圧と変位特性及び周波数特性を計測し,素子の変位曲線の履歴を把握した。次に,圧電素子に電圧を印加すると素子にひずみが生じ,さらにその発生するひずみによって圧電素子から電圧信号が出力される。この電圧信号を抽出するセルフセンシング回路の試作並びに調整を行い,信号の抽出に成功した。最後に,セルフセンシング回路の出力信号をフィートバックする線形駆動器を試作し,実験で求められた素子の固有非線形パラメータに基づき線形駆動器を調整し実験を行った。結果より,本セルフセンシング線形駆動法および線形駆動器の有効性が確認された。今後,可能な限り実用化に向けて改良を加え,本線形駆動アンプを小型化し,製品化する。圧電素子が汎用的な機能性材料となり得るには位置及び力の再現性すなわちヒステリシス,温度の影響,周波数特性並びに動特性に関する改善が不可欠である。その改善策としては,再現性と温度特性の優れた高感度の単一材料の開発を目指すだけでは限界がある。本研究は,圧電素子の非線形特性を明らかにするとともに,素子自身の発生電圧をセンサ信号として使用した圧電アクチュエータの線形駆動法を呈示し,素子の高速・高精度駆動を実現するものである。始めに,圧電素子の駆動用線形パワーアンプを製作し,種々の圧電素子の印加電圧と変位特性及び周波数特性を計測し,素子の変位曲線の履歴を把握した。次に,圧電素子に電圧を印加すると素子にひずみが生じ,さらにその発生するひずみによって圧電素子から電圧信号が出力される。この電圧信号を抽出するセルフセンシング回路の試作並びに調整を行い,信号の抽出に成功した。最後に,セルフセンシング回路の出力信号をフィートバックする線形駆動器を試作し,実験で求められた素子の固有非線形パラメータに基づき線形駆動器を調整し実験を行った。結果より,本セルフセンシング線形駆動法および線形駆動器の有効性が確認された。今後,可能な限り実用化に向けて改良を加え,本線形駆動アンプを小型化し,製品化する。 | KAKENHI-PROJECT-06750222 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06750222 |
視線情報を利用した参照表現の理解・生成モデル | 人間が対象物体を指示する時に用いる参照表現を計算機で扱うモデルを構築するための基礎データとして,日本語の参照表現コーパスを作成した.2名で幾何パズルを協調して解く課題を与え,その時の対話音声,パズル・ピースの位置,パズル・ピースに対する操作,および対話者の視線などの情報をすべて時間同期して記録した.対話音声を書き起し,その中から参照表現を抽出し,指示対象と表現中の性質をアノテーションし,合計131対話からなるマルチモーダル・コーパスを作成した.このコーパスを基礎データとし,視線や行動などの非言語情報を利用した参照表現の理解・生成モデルを機械学習の枠組を用いて実現した.作成したコーパスを用いてこれらのモデルの評価をおこない,その有効性を確認した.人間が対象物体を指示する時に用いる参照表現を計算機で扱うモデルを構築するための基礎データとして,日本語の参照表現コーパスを作成した.2名で幾何パズルを協調して解く課題を与え,その時の対話音声,パズル・ピースの位置,パズル・ピースに対する操作,および対話者の視線などの情報をすべて時間同期して記録した.対話音声を書き起し,その中から参照表現を抽出し,指示対象と表現中の性質をアノテーションし,合計131対話からなるマルチモーダル・コーパスを作成した.このコーパスを基礎データとし,視線や行動などの非言語情報を利用した参照表現の理解・生成モデルを機械学習の枠組を用いて実現した.作成したコーパスを用いてこれらのモデルの評価をおこない,その有効性を確認した.本研究では,対象物の空間的配置,言語表現に加え,話者の視線情報を併用する新しい参照表現の理解・生成のモデルを構築することを目的とし,以下の2つの課題を設定している.1.日本語の対話における話者の視線情報を含む参照表現コーパスの作成2.視線情報を利用した参照表現の理解と生成モデルの構築今年度はまず参照表現コーパスの作成を中心に研究をおこなった.話者の視線を計測するために,視線計測装置(Tobii T-60)を購入し,これを駆動するためのソフトウェアの開発をおこなった.また課題として用いる幾何パズルのシミュレータを作成し,実験環境を整えた.26組(56名)の被験者に対して3種類の幾何パズル(タングラム,ダブルタングラム,ポリオミノ)を協調的に解かせる課題を与え,この時の対話音声に同期して,パズルに対する操作,パズルピースの位置,対話者の画面上の視線を記録した.パズルの問題は各組に対しタングラムとポリオミノでは4題,ダブルタングラムでは6題を与えた.合計126対話を収録したが,これらのうちから視線データが70%以上の割合で計測できたもの83対話を選択し,これらの音声を書き起し,さらに発話中の参照表現を抽出し,その指示対象と統語的・意味的属性をアノテーションした.その結果,日本はもとより,国際的にも類をみない規模の高精度の情報を付与した参照表現コーパスを構築した.また,従来から盛んに研究されている英語と比較するために同じ実験環境で英語についても6組24対話を収録した.本研究では,対象物の空間的配置,言語表現に加え,話者の視線情報を併用する新しい参照表現の理解・生成のモデルを構築することを目的とし,以下の2つの課題を設定している.(1)日本語の対話における話者の視線情報を含む参照表現コーパスの作成(2)視線情報を利用した参照表現の理解と生成モデルの構築(1)については昨年度作成したコーパスによってほぼその目的を達成しているので,今年度は,このコーパスを用いて(2)の参照表現の理解・生成モデルの構築を中心に研究をおこなった.まず,参照表現の理解については,先行研究として我々が提案していた対話参加者の談話履歴情報と操作履歴情報を用いて参照解析をおこなうモデルに新たに話者の視線情報を追加し,モデルを拡張した.視線情報としては,参照表現発話前の一定時区間あるいは発話中の時区間に候補となる対象をどれくらいの頻度/時間注目しているかを表現する素性を用いた。コーパスを用いた評価実験の結果,解析精度を最大で20%改善することができた.従来の参照表現の生成モデルは対象領域に含まれるすべての物体を常に考慮して,指示したい対象を他の物体といかに区別するか,またそのためにどのような表現を使うかを最適化することを主眼としていた.しかし,実際には参照表現を理解する聞き手が対象領域内のすべての物体に常に注目しているわけではなく,その一部に注目しているにすぎない.この現象を扱うために,参照表現の生成に聞き手の視線情報を用いた参照表現生成モデルを構築した.コーパスを用いた内生的評価では従来のモデルと比べより簡潔な表現を生成できることを示した.今後は外生的評価によってその有効性を実証する予定である.本研究では,対象物の空間的配置,言語表現に加え,話者の視線情報を併用する新しい参照表現の理解・生成のモデルを構築することを目的とし,以下の2つの課題を設定している.(1)日本語の対話における話者の視線情報を含む参照表現コーパスの作成(2)視線情報を利用した参照表現の理解と生成モデルの構築(1)については,今年度までに条件を変えて収集したコーパスを整理し,公開可能な状態にするとともに各条件でコーパス中に出現する参照表現の属性について比較をおこなった.対話収集条件としてパズルの種類,ヒントの有無,言語(日本語,英語)を考慮した.その結果,課題として与えた幾何パズルの種類によって,操作者が使う発話数,参照表現の属性の分布が影響を受けることが明らかになった. | KAKENHI-PROJECT-21300049 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21300049 |
視線情報を利用した参照表現の理解・生成モデル | また,ヒントの有無は課題の完了時間や達成率には影響するが,参照表現の属性については一部のものを除いてあまり影響がないことがわかった.言語の違いについては,英語話者の方が日本語話者より多くの代名詞や補集合表現を使用する傾向があることがわかった.(2)については,昨年度に引き続き視線情報を利用した参照表現の生成モデルを中心に研究をおこなった従来の参照表現の生成モデルは対象領域に含まれるすべての物体を常に考慮して,指示対象を他の物体と区別するために使う属性を最適化することを主眼としていた.我々は聞き手の視覚的注意領域を考慮することによって区別すべき物体の範囲を動的に選択し,参照表現を生成するモデルを構築した.構築したコーパスを用いて,このモデルの内生評価をおこなうとともに,その外生評価の手法について検討し,評価手法の基本的な枠組を設計した. | KAKENHI-PROJECT-21300049 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21300049 |
核蛋白ピグペンの血管新生促進作用の機序の解明と血管新生制御への応用 | 申請者らが見出したPILSAPの血管新生ならびに脈管形成促進作用の分子学的機序を解明する過程で、核蛋白ピグペンの関与が示唆された。siRNAによる発現阻害実験から、ピグペンも血管新生と脈管形成に関与する因子であることが明らかとなった。VEGF非添加時ピグペンは核に、PILSAPは細胞質に主に存在し、VEGF添加により細胞質のPILSAPは核に移動してピグペンと共局在した。以上より、ピグペンがPILSAPと協調して血管新生ならびに脈管形成にも関与することが明らかとなった。申請者らが見出したPILSAPの血管新生ならびに脈管形成促進作用の分子学的機序を解明する過程で、核蛋白ピグペンの関与が示唆された。siRNAによる発現阻害実験から、ピグペンも血管新生と脈管形成に関与する因子であることが明らかとなった。VEGF非添加時ピグペンは核に、PILSAPは細胞質に主に存在し、VEGF添加により細胞質のPILSAPは核に移動してピグペンと共局在した。以上より、ピグペンがPILSAPと協調して血管新生ならびに脈管形成にも関与することが明らかとなった。PILSAPは申請者らが見出した新規血管新生因子のアミノペプチダーゼであるが、申請者はこの分子が血管新生だけでなく脈管形成にも必要である事を、in vitroの肺性幹(ES)細胞の分化系を用いて明らかにした(Genes to Cells, 2006, 11 : 719-29)。ES細胞から血管内皮細胞への分化の過程でPILSAPのアミノペプチダーゼ活性に発現を制御される核蛋白をプロテオーム解析により検出したところ、血管新生に関与する可能性が示唆されている分子ピグペンが得られた。血管内皮細胞におけるこの分子の発現をsiRNAで抑制すると、増殖や遊走、ネットワーク形成などのin vitroでの血管新生だけでなく、C57BL/6マウスを用いたマトリゲルプラーグアッセイにおいてもbFGFによる血管新生をも抑制した。以上より、ピグペンが血管新生に促進的に作用することが明確となった。そこで我々は、ピグペンのsiRNAを用いて腫瘍の血管新生を抑制することで、抗腫瘍効果が得られないかを検討した。c57BL/6マウスのマトリゲルプラーグアッセイの系で、bFGFの代わりにルイス肺がん細胞を用いた。マウスに皮下注したルイス肺がん細胞から成る腫瘍の増殖は、コントロールのscrRNA群に比し、siRNA群で有意に抑制されており、それは腫瘍血管新生阻害の程度に依存していた。以上より、ピグペンが腫瘍血管新生促進ならびにそれによる腫瘍増殖に関与する可能性が示唆されるとともに、その発現抑制は治療応用の可能性を示した。申請者らが見出した新規血管新生因子PILSAPは、血管新生だけでなく、脈管形成にも必要である(Genes to Cells, 2006, 11: 719-29)。このPILSAPの作用を分子学的に解明するため、マウスES(胚性幹)細胞の分化培養系を用いてプロテオーム解析を行ったところ、ピグペンという分子が得られた。このピグペンも血管新生に関与するのかを検討した結果、in vitro、in vivoの両方で血管新生に促進的に作用することが明確となった(Cancer Science, 2010, 101: 1170-1176)。PILSAPとピグペンが血管新生においてどのように相互作用をするのかを確かめるために、先ず両者の細胞内局在を検討した。マウスES細胞の培養系で内皮細胞系と血球系が分化する8日目の胚様体(EB: embryoid body)ではPILSAPは細胞質に、ピグペンは核に局在していた。PILSAPのアミノペプチダーゼ活性を欠失したミュータントEBではピグペンの発現が有意に低下していた。ESの分化系においてピグペンの発現を抑制すると、PILSAPの場合と同様に血管内皮細胞への分化が抑制された。代表的な血管新生因子、血管内皮増殖因子(VEGF:vascular endoethlial growth factor)によりその局在がどのように変化するのか、その際、両分子は結合するのか等を、マウス血管内皮細胞株を用いて検討した。VEGF非添加時ピグペンは核に、PILSAPは細胞質(特に核周囲)に主に存在し、VEGF添加により細胞質のPILSAPは核に移動してピグペンと共局在した。この現象はIP-IBにより確認された。以上より、ピグペンがPILSAPと協調して血管新生ならびに脈管形成にも関与することが明らかとなった。H22年度から群馬県高崎市にある上武大学看護学部の学部長・医学領域教授となった。H22年度は研究の場である東京医科歯科大学に行き、仕事をある程度進める事も出来たが、H23年度は保健師・助産師・看護師法改正にともなるカリキュラム改正に忙殺されて、東京に移動して研究を行う時間が取れず、この1年間は下記にあげた原著論文のリバイス実験やその論文作成が主な仕事であった。24年度が最終年度であるため、記入しない。H24年1月1日付で上武大学に学校法人学文館付属医学生理学研究所が設立され、上武大学でもウエット系の研究が可能な環境が整った。所属を東京医科歯科大学(非常勤講師)から常勤している上武大学に移し、この研究所で研究の本格的な再開が可能となった。本研究所所長の澁谷正史博士のご指導を仰ぎながら、血管新生の研究のスピードを加速させることが出来る。 | KAKENHI-PROJECT-22501006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22501006 |
核蛋白ピグペンの血管新生促進作用の機序の解明と血管新生制御への応用 | しかしながら本研究所では動物実験設備がないためにin vitroの実験系で研究を遂行しなければならない点で、研究計画の一部に変更を余儀なくされる。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22501006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22501006 |
日本企業の情報統合を支援する組織的仕組みについて―情報システム部の調査とともに― | 本研究では、企業内情報活用についての基礎モデルをもとに質問票を作成し、質問票調査を行った。その結果、基礎モデルと整合的に、情報活用に対する風土が浸透している企業ほど、情報活用を行う程度が高かった。さらに組織的支援として、ここでは、統合重要度の認識と経営者の支援がこれらの関係にどのような影響を及ぼしているかについて検証した。その結果、統合重要度の認識は企業の風土に、経営者の支援は風土と活用状況の双方に正の影響を与えていることがわかった。すなわち、これらが風土や活用状況を通して、情報活動の成果に正の影響を与えているといえる。これらのことより、風土を作り上げることがわかった。平成24年度に東証一部上場企業すべてにアンケート用紙を送付し、回収を行ったが、平成25年度はこの分析を行った。先ず単純集計をしてデータを集約し、後半に多変量解析を行った。単純集計では基幹情報システムは3/4程度以上の多くの会社で導入されているが、半数近く以上の企業で統合されているモジュールは財務会計、管理会計、販売管理システムだけであった。CRMシステが1/4程度の企業でしか導入されている以外物流管理、生産管理、購買管理、人事管理などは半数近くの企業で導入はされているが、大多数の企業ではモジュールは統合されていない。そして単一のERPしか導入していない企業はわずか6%で、半数を超える企業が複数のシステムを統合して使っているが統合の度合いは高くない。また複数のシステムを未統合で使用している企業が1/3以上あった。ERPは競争力強化、情報投資の効率化、会計制度への対応を目的として導入されているが、最も望まれているのは、業務改革であり、販売マーケティングでの重要性が認識されている。情報システムのデータの斬新は1/3程度の企業で日次に行われており、リアルタイム、月次がこれに続く。半数程度の企業でデータの品質の維持・向上の活動を実施しており、その多くの企業でIT分門が担当しているが、ユーザ部門が行っている企業もあり、わずかではあるが、データ管理専門部門を持つ企業もある。経営企画担当者として、自社データに満足しているのは30%にすぎず、利用されていない古いデータがあることなどが分かった。多変量解析により、経営企画担当者が,企業内情報システム(基幹系情報システムおよびERP)の導入に深く関わっている企業では、情報化が望ましい方向に進んでいることがわかり、なお詳細な分析を行っている。公開企業の経営企画担当者に企業内情報活用に関する質問表を送付し、回収し、集計した。ERPシステムの導入により、企業内情報システムは会計情報システムをはじめとして、各情報システムが統合されつつある。しかしながら、全ての情報システムが同時に統合されているわけではなく、企業によってどのシステムから統合されるかには違いがある。また、システム統合によって、情報システムによる情報活用が改善されているか否かには疑問の余地もある。本研究の目的は企業の情報統合の程度がどのような要因で決定されているか、そしてその結果企業の情報システムの質や量がどの程度影響を受けるかにあるため、これらについて調査、集計を行った。研究の初年度にあたる24年度は、これまで研究代表者および研究分担者が、本研究課題に関連する研究をおこなっているため、これらの整理・検討を行い、それを元に質問票の設計を最初に行った。さらに、回収、配布を終了した。4月から9月までに、内外の先行研究の整理、7月から10月までに質問票項目の作成、これ以降に、質問票の配布・回収を行い、3月にこの結果を集計した。前年度までに得た単純集計の結果を「日本企業の情報統合を支援する仕組みに関する研究ー経営企画部へのアンケート調査の単純集計結果ー」として2015年3月に日本生産管理学会年次大会で発表し,大阪学院大学商・経営学論集に「企業内情報活用に関する調査」として2015年3月に印刷れた。またこれらの単純集計のデータについて多変量解析を行い,リーダーからの情報活用の組織的支援を受けることが,最終的に情報活用の効果を上げていることを明らかにした。本研究では東証一部上場企業にアンケートを行い、日本企業の企業内情報活用の実態を調査をしている。平成27年度は申請者のグループで仮定した企業内情報活用の基礎モデルと第一回目のアンケート調査の関係を共分散構造分析を用いて検証した。この結果、この基礎モデルにより企業内の情報活用の実態を説明できることが明らかになった。また第一回目のアンケート調査を補足するための第二回目のアンケート調査を行った。本研究では、企業内情報活用についての基礎モデルをもとに質問票を作成し、質問票調査を行った。その結果、基礎モデルと整合的に、情報活用に対する風土が浸透している企業ほど、情報活用を行う程度が高かった。さらに組織的支援として、ここでは、統合重要度の認識と経営者の支援がこれらの関係にどのような影響を及ぼしているかについて検証した。その結果、統合重要度の認識は企業の風土に、経営者の支援は風土と活用状況の双方に正の影響を与えていることがわかった。すなわち、これらが風土や活用状況を通して、情報活動の成果に正の影響を与えているといえる。これらのことより、風土を作り上げることがわかった。第一回目のアンケートについては単純集計の結果を公表し,このデータを元にした多変量解析を終えた。この中で情報活用を有効に行っている企業ではリーダーからの情報活用への組織的支援が行われていることが明らかになった。この研究の目的は情報活用を有効に行えている企業についての一般性を見つけることにあったため,当初の目標を達成しつつあると考える。生産システム | KAKENHI-PROJECT-24530434 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24530434 |
日本企業の情報統合を支援する組織的仕組みについて―情報システム部の調査とともに― | 最後の一年は多変量解析の結果を論文にし,ここで明らかにした事実を第二回目のアンケートにより実証する。そのことにより,上記の事実を第二回目のアンケートにより実証する。本研究においては2回のアンケートを計画している。最初に経営企画部にアンケートを行い、この分析を元に2回目のアンケートを情報システム部に実施する予定である。1回目のアンケート結果の分析を深く行うためには、1回目のアンケート結果について学会や企業担当者との議論が必須であるが、今年はこれを十分に行いたい。1回目のアンケート結果の解釈を正確に行い、来年度の2回目の調査を実施したい。1回目の結果については単純集計とそのグラフ化、クロス集計とそのグラフ化、多変量解析とその解析内容のモデル化まで順調に進んできている。来年1年間に2回目のアンケートとその分析を行わないといけないため多少時間がなくなってきているが、分析には経費がそれほど掛からないため、来年中に第2回目のアンケートを東証一部上場企業に行いこれを回収できれば当初の目標は達成できると考えている。調査表を作成し、送付し、回収し、集計することができた。調査票質問事項の内容は吟味を重ねた結果概ね満足できるものとなった。ただ残念なことにアンケートの回収率は低かった。各社の経営の本質に関する質問が多かったために、回答し辛かった可能性がある。次回調査するときの回収率向上の方策を検討しなければならない。多変量解析の結果を国際会議で発表する予定であったが,間に合わなかったため。今年は昨年までに行った単純集計結果を論文化し、多変量解析の結果を学会発表し、得られた結論の解釈を専門家と議論する。また企業の経営企画担当者や情報システム担当者と話し合いの機会を多く持ち、実際の状況と構築した企業の経営方針と情報統合化の関係を表すモデルの整合性について検証する。来年度はこの結果を元に情報システム担当者にアンケートを送付し、モデルの検証を行う。質問票調査の結果の分析をおこなっていくと同時に、成果がまとまり次第、学会・国際会議等で成果の発信をおこなう。質問票の作成、配布、回収が終わっていない場合には、まずこの点を優先的に実行する。具体的には先ずアンケート結果の単純集計を行い,次に質問間のクロス集計により企業内で生じている問題点を抽出する。続いて多変量解析、データマイニングなどの手法により、問題の構造化を試みるとともに予測されていた問題点との関係を分析する。研究の第3年度(平成26年度)においては、引き続き質問票調査の結果の分析をおこなっていくと同時に、積極的に、学会等で成果の発信をおこなう。発表学会としては、International Conference on Production Research、生産管理学会、組織学会、会計学会、経営分析学会、大阪学院大学企業情報学会などを想定している。最終年度(平成27年度)においては、さらにもう一回質問票調査をおこなう。これにより、3年間の差異を見ることができる。 | KAKENHI-PROJECT-24530434 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24530434 |
胸腺細胞に働く細胞外因子相互関係の解析 | DA系ラット(補助金で購入)に致死量以下の放射線を照射し、経時的に屠殺して胸腺を採材し、以下のような解析を行って報告した。胸腺細胞の回復には、上皮系の細胞が非常に重要な働きを持つことを、免疫組織化学・RT-PCR・電子顕微鏡を使って多面的に考察した。1)600R照射した後のラット胸腺につき、様々だなサイトカインの発現についてPCRを用いて解析した。PCRには、補助金で購入したサーマルサイクラーとプライマーを用いた。結果は、Mizutani N.らによって、Radiation Research(2002年)にて発表された。また、照射後のラット胸腺上皮系細胞の変化について、補助金で購入した抗体を用い、電子顕微鏡での解析も行った。これは、Arudchelvan Y.らによってAnatomical Record(in press)に掲載予定である。2)800R照射したラット胸腺についての免疫組織学的解析とフローサイトメーターによる解析、(抗体を補助金で購入)を行った。また、400Rを2度照射した群について同様の実験を行い、比較検討している。予備的な実験結果についてはリンパ学(2000年)に発表した。続報については以下の学会にて、筆頭演者として報告した。3)筆頭演者として報告した学会:第15回国際形態学シンポジウム、第14回日本組織細胞化学会学術集会、第55回日本解剖学会中国四国地方会学術集会、第94回山口医学会学術集会(すべて2000年)、第106回日本解剖学会学術集会、第56回日本解剖学会中国四国地方会学術集会(2001年)。また、第107回日本解剖学会学術集会(2002年)にても発表予定である。4)上記学会で報告した結果と考察について、現在投稿準備中である。現在、DA系ラット(補助金で購入)に致死量以下の放射線を照射し、経時的に屠殺して胸腺を採材して以下のような解析を行っている。1)6Gy照射したラット胸腺についてのフェノールクロロホルム法によるRNAの抽出。これをもとにcDNAを作製し、それを鋳型として様々なサイトカインプライマーを用いてPCRを行っている。サーマルサイクラー、プライマーは補助金で購入した。この結果については投稿準備中である。2)8Gy照射したラット胸腺についての免疫組織学的解析とフローサイトメーターによる胸腺細胞の解析など。抗体は補助金で購入した。6Gy照射のものと比較して、回復の立ち上がりが遅いこと、回復が十分に行われないということを多面的に考察した。この結果については、第15回国際形態科学シンポジウム、第14回日本組織細胞化学会学術集会、第55回日本解剖学会中国四国地方会学術集会、第94回山口医学会学術集会にて筆頭演者として報告した(すべて2000年)。第24回リンパ学会総会、比較免疫学会、第30回日本免疫学会学術集会(すべて2000年)では共同演者として報告した。予備的な実験結果についてはリンパ学(23巻・2号、2000年)にて発表したが、その後の結果と考察については現在投稿準備中である。3)4Gyを2度照射したラット胸腺についての免疫組織学的解析とフローサイトメーターによる胸腺細胞の解析など。単純1回照射に比べて、回復過程における細胞動態が違うこと、また、2度目の照射を最初の照射後どのくらい離して行うかで回復過程に変化が見られることを解析した。結果は第106回日本解剖学会学術集会(2001年4月)にて報告予定である。DA系ラット(補助金で購入)に致死量以下の放射線を照射し、経時的に屠殺して胸腺を採材し、以下のような解析を行って報告した。胸腺細胞の回復には、上皮系の細胞が非常に重要な働きを持つことを、免疫組織化学・RT-PCR・電子顕微鏡を使って多面的に考察した。1)600R照射した後のラット胸腺につき、様々だなサイトカインの発現についてPCRを用いて解析した。PCRには、補助金で購入したサーマルサイクラーとプライマーを用いた。結果は、Mizutani N.らによって、Radiation Research(2002年)にて発表された。また、照射後のラット胸腺上皮系細胞の変化について、補助金で購入した抗体を用い、電子顕微鏡での解析も行った。これは、Arudchelvan Y.らによってAnatomical Record(in press)に掲載予定である。2)800R照射したラット胸腺についての免疫組織学的解析とフローサイトメーターによる解析、(抗体を補助金で購入)を行った。また、400Rを2度照射した群について同様の実験を行い、比較検討している。予備的な実験結果についてはリンパ学(2000年)に発表した。続報については以下の学会にて、筆頭演者として報告した。3)筆頭演者として報告した学会:第15回国際形態学シンポジウム、第14回日本組織細胞化学会学術集会、第55回日本解剖学会中国四国地方会学術集会、第94回山口医学会学術集会(すべて2000年)、第106回日本解剖学会学術集会、第56回日本解剖学会中国四国地方会学術集会(2001年)。また、第107回日本解剖学会学術集会(2002年)にても発表予定である。4)上記学会で報告した結果と考察について、現在投稿準備中である。 | KAKENHI-PROJECT-12770005 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12770005 |
魚類の始原生殖細胞(PGCs)の起源及び分化に関する研究 | (1)ゼブラフィッシュを用い、胚盤移植を試み、同法の発生への影響および生殖系列キメラの作出への有効性を検討した。胞胚期の胚盤全体、胚盤上部、または胚盤下部を他胚の動物極へ移植した。全ての移植群で、正常な頭部・背方構造を持つ個体が得られたが、胚盤下部を移植した胚では頭部構造を欠く個体の出現頻度が高かった。胚盤全体または胚盤下部を移植した胚から発生した多くの個体(10/11)の生殖隆起にドナー胚盤に由来するPGCsが認められ、本種での生殖系列キメラ個体の作出に、胚盤移植法が有効であることが明らかとなった。(2)胚盤全体の移植胚から得られた個体において、咽頭部もしくは耳胞付近での異所的なPGCsの存在が明らかになった。これらには、ドナーだけではなくレシピエント由来のPGCsも含まれていた。また、これらの咽頭部もしくは耳胞付近に分布するPGCsは、発生過程で、分布を変化させなかった。このPGCsの誤移動は、重複処理、あるいは胚細胞の混合が原因であると考えられた。また、異所に残存する中胚葉細胞塊が移動に影響を与える可能性も示唆された。(3)咽頭部もしくは耳胞付近の異所的なPGCSを12体節期(受精後15時間)より経時的に観察したところ、正常の位置に分布するPGCsと同様の組織学的変化を呈した。これらの異所的PGCsは、PGCsが生殖隆起に到達後に示す生殖幹細胞への組織学的な変化および分裂を、生殖隆起に位置するPGCsと同調的に行った。これらの結果は、PGCsが位置情報なしに自律的に分化を遂げるか、異所的なPGCsが確認された咽頭部や耳胞付近の中胚葉細胞がPGCsの分化にとって好的環境であったかのどちらかを示すと考えられた。(1)ゼブラフィッシュの初期卵割期の第1第2卵割面には、生殖系列マーカーの発現が確認されている。本研究における卵割面の細胞質の除去実験によって、胚盾期あるいは生殖隆起に観察される始原生殖細胞(PGCs)数が有意に減少することが明らかとなった。一方、この細胞質を、生殖系列のマーカー遺伝子の転写産物が局在しない割球に移植した結果、この細胞質を受け継いだPGCs様の細胞を有する個体が得られた。これらの結果から、この細胞質が生殖質と同等の役割を果たすと考えられた。(2)現在、ゼブラフィッシュにおいては、nos1-3'UTR-mRNAを受精卵へ注入することにより簡便にPGCsを可視化することが可能となっている。そこで本研究では、本法によりPGCsの可視化を行った胚を用いて、蛍光顕微鏡下でPGCsの単離を行った。PGCsの単離は、初期体節期から孵化稚魚まで行うことができた。(3)12体節期および受精後4日目の個体から単離されたPGCsは、それぞれの分化能力を明らかにするために、他胚への移植を行った。レシピエントには細胞移植が最も容易であることから胞胚期の胚を選定した。その結果、12体節期のPGCsは、異時的環境下でもレシピエントPGCsと同様の動態を示し、またその組織学的な分化は自律的であった。一方、受精後4日目のPGCsは、レシピエント内で正常に移動せず、生殖系列の組織状態も維持することができなかった。この結果より、簡便で効率的なキメラ魚の作製には12体節期のPGCsを胞胚へ移植することが有効であると考えられた。(1)ゼブラフィッシュを用い、胚盤移植を試み、同法の発生への影響および生殖系列キメラの作出への有効性を検討した。胞胚期の胚盤全体、胚盤上部、または胚盤下部を他胚の動物極へ移植した。全ての移植群で、正常な頭部・背方構造を持つ個体が得られたが、胚盤下部を移植した胚では頭部構造を欠く個体の出現頻度が高かった。胚盤全体または胚盤下部を移植した胚から発生した多くの個体(10/11)の生殖隆起にドナー胚盤に由来するPGCsが認められ、本種での生殖系列キメラ個体の作出に、胚盤移植法が有効であることが明らかとなった。(2)胚盤全体の移植胚から得られた個体において、咽頭部もしくは耳胞付近での異所的なPGCsの存在が明らかになった。これらには、ドナーだけではなくレシピエント由来のPGCsも含まれていた。また、これらの咽頭部もしくは耳胞付近に分布するPGCsは、発生過程で、分布を変化させなかった。このPGCsの誤移動は、重複処理、あるいは胚細胞の混合が原因であると考えられた。また、異所に残存する中胚葉細胞塊が移動に影響を与える可能性も示唆された。(3)咽頭部もしくは耳胞付近の異所的なPGCSを12体節期(受精後15時間)より経時的に観察したところ、正常の位置に分布するPGCsと同様の組織学的変化を呈した。これらの異所的PGCsは、PGCsが生殖隆起に到達後に示す生殖幹細胞への組織学的な変化および分裂を、生殖隆起に位置するPGCsと同調的に行った。 | KAKENHI-PROJECT-02J00439 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02J00439 |
魚類の始原生殖細胞(PGCs)の起源及び分化に関する研究 | これらの結果は、PGCsが位置情報なしに自律的に分化を遂げるか、異所的なPGCsが確認された咽頭部や耳胞付近の中胚葉細胞がPGCsの分化にとって好的環境であったかのどちらかを示すと考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-02J00439 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02J00439 |
地球温暖化対策選択の公共選択論的研究 | 先進諸国による一方的な温室効果ガスの削減を主要内容とする気候変動枠組み条約の発効を受けて、わが国が直面する地球環境政策が実効性をもつためには、次のような要件があげられる。地球環境対策が広範な経済活動に大きな影響をあたえるものであるために、活動主体に環境負荷活動を抑制するインセンティブをあたえる手段であること。環境負荷の小さい産業構造やライフスタイルへの変化を、最小のコストで実現できるような超長期的視野に立つこと。将来の科学的知見の変化に対応できるような柔軟性をもつこと。地球温暖化対策の国際協調に開発途上国の参加を促す方向性をもつこと。トータルエネルギー・システムの構築を促進するインセンティブをもつことがそれである。本研究ではつぎに、環境税の概念分類を行い、各国において環境税率がどのような形で決定されるかについて、公共選択分析を行った。さらにOECD諸国の環境関連データおよび政治経済関連データを用いて、統計的な実証分析を行った。それによれば、税収の最大化をめざすリヴァイアサン型政府を前提にすれば、環境税率は、国民1人当たりのGDPが大きくなるほど、限界生産費用が低くなるほど、需要弾力性が低くなるほど高くなる。一方、環境税の賦課に利害関係を持つ主体のうち、特に需要者側は、価格弾力が低いほど政治抵抗が強まる。さらに、環境政党の存在は環境税率を引き上げる。ついで、わが国におけるエネルギー消費動向と環境関連税制を地球環境政策の観点から検討し、最後に、トータルエネルギー・システム構築のためのインセンティブシステムとして、環境税制改革の提案を検討した。先進諸国による一方的な温室効果ガスの削減を主要内容とする気候変動枠組み条約の発効を受けて、わが国が直面する地球環境政策が実効性をもつためには、次のような要件があげられる。地球環境対策が広範な経済活動に大きな影響をあたえるものであるために、活動主体に環境負荷活動を抑制するインセンティブをあたえる手段であること。環境負荷の小さい産業構造やライフスタイルへの変化を、最小のコストで実現できるような超長期的視野に立つこと。将来の科学的知見の変化に対応できるような柔軟性をもつこと。地球温暖化対策の国際協調に開発途上国の参加を促す方向性をもつこと。トータルエネルギー・システムの構築を促進するインセンティブをもつことがそれである。本研究ではつぎに、環境税の概念分類を行い、各国において環境税率がどのような形で決定されるかについて、公共選択分析を行った。さらにOECD諸国の環境関連データおよび政治経済関連データを用いて、統計的な実証分析を行った。それによれば、税収の最大化をめざすリヴァイアサン型政府を前提にすれば、環境税率は、国民1人当たりのGDPが大きくなるほど、限界生産費用が低くなるほど、需要弾力性が低くなるほど高くなる。一方、環境税の賦課に利害関係を持つ主体のうち、特に需要者側は、価格弾力が低いほど政治抵抗が強まる。さらに、環境政党の存在は環境税率を引き上げる。ついで、わが国におけるエネルギー消費動向と環境関連税制を地球環境政策の観点から検討し、最後に、トータルエネルギー・システム構築のためのインセンティブシステムとして、環境税制改革の提案を検討した。1.先進各国における地球温暖化対策の詳細に関する文献調査を行った。直接規制、課徴金、税制(税目・課税対象・使途財源)、補助金等の文献調査を行うとともに、税収、税率等の統計資料を収集し国際比較を行った。2.各種の地球温暖化対策に関する経済理論的研究および公共選択理論的研究の文献調査を行った。特に二酸化炭素排出削減のための各種抑制手段に関わる行政コスト(モニタリング、施行、強制)、政治的コスト(合意、決定、基準の改定等)の比較に関する理論的研究。各種抑制手段選択における政治主体の選好の理論的研究を行った。3.エネルギー・環境政策決定過程に関する文献を収集した。わが国におけるエネルギー政策決定過程に関する文献の収集を行った。(外国に関する同様の文献を収集し国際比較の可能なモデルを作ることは来年度の課題である。)4.各国における・地理的・社会経済的要因を代表するデータを収集し、多変量分析の準備を行った。地球温暖化対策の各手段と各国の地理的・社会経済的要因の間の多変量分析をおこなう目的で、データ・セットを作成中であである。1.先進各国における地球温暖化対策の詳細に関する資料収集を行った。エネルギー代替、省エネルギー、リサイクル促進のための直接規制、課徴金、税制(税目・課税対象・使途財源)、補助金等の文献調査を行うとともに、税収、税率等の統計資料を収集し国際比較を行った。2.エネルギー・環境政策決定過程に関する文献調査を行った。主要先進各国における地球温暖化対策の傾向を比較することに主眼をおき、エネルギー政策決定過程、ならびに政策手段に関する文献の収集を行った。3.政治システムの構造と政策選択の関連に関して文献調査をし、理論的研究を行った。特に二酸化炭素排出削減のための各種抑制手段に関わる行政コスト、政治的コストと政治経済システムの関連、および政治政治主体の選好の関連に関する理論的研究を行った。4.各国における・地理的・社会経済的要因を代表するデータを収集し、政策手段選択の計量分析を行った。地球温暖化対策の各手段と各国の地理的・社会経済的要因の間の多変量分析を行うために、データ・セットを作成し、政治的意思決定に関わる主体の影響力を数量化し、政治システムの諸要因を加えて選択される政策手段の計量モデルを作成した。 | KAKENHI-PROJECT-05630033 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05630033 |
弱い相互作用におけるCP非保存の研究 | CP非保存のパラメータε′/εを測定する実験の解析を行い、論文発表を行った。1996年7月より開始するKTeV実験のために、次のプロジェクトを担当した。*CsIの結晶を用いた電磁カロリメータに用いる、線形性に優れた光電子増倍管の開発を行った。また、光電子倍増管の試験装置を独自に作り、できてきた約2400本線形性、レート依存性を0.2%以下の精度で測定した。*メモリーのマトリックスと高い能力をもつ計算機を組み合わせることにより、20kHzで来る8kbyteの事象を読み出し、全事象その場で解析して必要なものだけをテープに書き出す超高速データ収集装置をFermilabと共同で開発した。*CsIカロリメータの穴の周りに置くγ線検出器をシミュレーションとテスト実験の結果をもとに設計を行い、プロトタイプの試験を行った後、実機を製作した。*KTeV実験で探索する種々の崩壊についてモンテカルロシミュレーションを行い、それらに対する感度、及びバックグラウンドの種類と量を見積もった。また、解析のためのプログラムの開発も行った。CP非保存のパラメータε′/εを測定する実験の解析を行い、論文発表を行った。1996年7月より開始するKTeV実験のために、次のプロジェクトを担当した。*CsIの結晶を用いた電磁カロリメータに用いる、線形性に優れた光電子増倍管の開発を行った。また、光電子倍増管の試験装置を独自に作り、できてきた約2400本線形性、レート依存性を0.2%以下の精度で測定した。*メモリーのマトリックスと高い能力をもつ計算機を組み合わせることにより、20kHzで来る8kbyteの事象を読み出し、全事象その場で解析して必要なものだけをテープに書き出す超高速データ収集装置をFermilabと共同で開発した。*CsIカロリメータの穴の周りに置くγ線検出器をシミュレーションとテスト実験の結果をもとに設計を行い、プロトタイプの試験を行った後、実機を製作した。*KTeV実験で探索する種々の崩壊についてモンテカルロシミュレーションを行い、それらに対する感度、及びバックグラウンドの種類と量を見積もった。また、解析のためのプログラムの開発も行った。1.光電子増倍管とベースの開発1994年からの実験に用いるCsIカロリメータ用の光電子増倍管の開発を浜松ホトニクスと共同で開発を行なった結果、ようやく増幅率5000で30mA以下のパルスに対して非線型性が0.5%以内という厳しい仕様を満たすものがようやくできた。現在、初めの約300本が生産されている。また、これからできてくる総数2000本以上の光電子増倍管の受取試験を行なうための装置の設計を行ない、窒素レーザなど必要な装置を購入した。現在、その各部分の性能試験を行なっており、春には光電子増倍管を1本ずつ試験する装置を組み立て、夏からは同時に20本以上同時に試験できるようにする。光電子増倍管のベースについては、2社と共同開発を行ない、これも平均アノード電流50μA以下で増幅率の変動が0.5%以下という厳しい仕様を満たすものができた。この開発のために約0.2%の高精度で増幅率のレート依存性を測る試験装置も阪大で作った。ベースは1993年から大量生産に入る。2.超高速データ収集システムの開発システムの骨格となるVMEクレート、モジュール、ワークステーション及びVMEとのインターフェースがようやく手に入り、既にデータの簡単な読み出しはできた。これから各ハードウェアの性能試験、ソフトウェアの開発を行ない、夏にはデータをFASTBUSからVMEメモリー、ワークステーションを通してテープに書けるようにする。また、システムに必要なVMEメモリー用の特殊回路の開発もFermilabと共同で行なっており、夏前にその性能評価を行なう。1.実験結果1991-2年に行なったE799-Iのデータより次の結果を得た。2.超高速データ収集システム特注のデータ入出力基盤ができて来、それに載せるソフトウェアの開発し、設計どおり動くことを確認した。また、システム全体の設計書を作成した。現在、システムの基本部分の組み上げを行なっている。3.CsIカロリメータ用フォトマルとベース窒素レーザを用いたフォトマル試験装置を開発した。これを用いて必要な精度で増幅率、線型性、頻度依存生などを測定できる目処がついた。来年度より約半年間かけて約2千本のフォトマルの受取試験を行なう。4.γ線検出器CsIカロリメータのビームを通す穴の回りにつけるγ線検出器の仕様をシミュレーションによって決定した。また、シミュレーションにより、必要なタングステンの厚さ、枚数等もわかった。前の実験で取ったデータの解析がほぼ済み、裏に示すようにその論文発表を行った。また、次の実験の準備も順調に進んでいる。CsIカロリメータ用光電子増倍管の試験システム:窒素レーザ、液体発光体、光ファイバー等を用いて15本の光電子増倍管の線形性、レート依存性、増幅率を測定するシステムを完成させた。様々な改良の結果、線形成レート依存性に関しては約0.15%以内の精度での測定が可能となった。現在、このシステムを用いて大量測定を開始したところである。今後は夏までに2200本の光電子増倍管の受け取り試験を行い、秋以後、カロリメータに組み込む。超高速データ収集システム:6(データストリーム) | KAKENHI-PROJECT-04402006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04402006 |
弱い相互作用におけるCP非保存の研究 | x4(解析用コンピュータ)のシステムの内、1x1のシステムを構築し、実際にデータ収集を行った。また、1x2、2x1等のシステムに拡張し、様々な試験を行った。また、イベントを複数のコンピュータ・プレーンに振り分ける論理回路も開発、試験した。今後は6月までに最終システムを組み上げ、測定器の実際の読み出しを始める。ビーム穴回りのγ線検出器:コンピュータシュミレーションを用いて、検出器の材質、構造、大きさを決定した。また、その雛形を高エネルギー物理学研究所の電子シンクロトロンを用いて、ビームテストを行い、シミュレーションの結果が正しい事を確かめた。現在、実機の製作のための準備を行っている。1996年夏より始まるKTeV実験の準備は順調に進んでいる。*CsI電磁カロリメータ用光電子増倍管の試験:本科研費を用いて作り、改良を重ねてきた試験装置がようやく完成した。これは大光量の窒素レーザーを用いることにより、15本の光電子増倍管の増幅率、線形性、レート依存性を同時に測れたため、約2400本に及ぶ試験を比較的短時間で精度良く行うことができた。試験は全て終了し、試験に合格した光電子増倍管は米国フェルミ研究所に送った。*超高速データ収集装置の開発:全ファードウェアが揃い、ソフトウェアも約9割できあがった。実際に試験を行った結果、計画通りの速度でデータが読み出せること、また全てのデータをその場で解析し、事象の選別を行えることを確認した。*CsIカロリメータの穴の周りに置くγ線検出器の開発:これはシミュレーションとテスト実験の結果をもとに設計を行い、プロトタイプの試験を行った後、実機を製作した。1996年5月に実験に組み込む。*KTeV実験で探索する様々の崩壊についてモンテカルロシミュレーションを行い、それらに対する感度、及びバックグラウンドの種類と量を見積もった。また、解析のためのプログラムの開発も行った。実験は1996年夏より約2年間かけて走り、データ収集、解析を行う。 | KAKENHI-PROJECT-04402006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04402006 |
新生児阻血性腸疾患の病態に関する研究 | Sepsisでは腸管での一酸化窒素nitric oxide(NO)の合成が促進され、これが腸管障害の一因であると考えられている。しかし、本病態での消化管におけるinducible NO synthase (iNOS)mRNAの発現と腸管粘膜障害との関係に関しては明らかではない。そこで、ラットにエンドトキシンを投与し、腸管におけるiNOS mRNAの発現をNorthern blot法およびRT-PCR法を用いて検討した。その結果次のことが明らかとなった。1)食道、小腸、結腸においてiNOS mRNAはエンドトキシン投与1時間後より発現し、4時間目で最高値をとった。デキサメサゾン前投与によりこれらの発現は抑制された。2)デキサメサゾンとNOS阻害剤のL-NAMEを投与することで、エンドトキシン投与により起こる腸管粘膜の透過性の亢進が改善された。以上より、消化管には組織特異的にiNOS mRNAの発現が見られること、sepsisにおいてNO産生を抑制することで腸管粘膜障害が抑制される可能性が示された。さらに本研究を進めるため、ラットにエンドトキシンを投与して、消化管粘膜のendothelial nitric oxidase synthase(NOS-III)の発現を測定することで、腸管虚血や感染症の病態時にしばしば見られる消化管粘膜障害の病因としてNOが関与している可能性を検討した。その結果、NOS-III mRNAおよびその蛋白が全消化管粘膜で発現が見られること、エンドトキシン投与により腸管粘膜のNOS-III mRNAがdown-regulateされることが明らかとなった。以上より、重症感染症時において、NOS-III mRNAの発現の低下が腸管粘膜の血管拡張を抑制し、腸管粘膜障害や消化管機能の低下の原因となる可能性が示された。Sepsisでは腸管での一酸化窒素nitric oxide(NO)の合成が促進され、これが腸管障害の一因であると考えられている。しかし、本病態での消化管におけるinducible NO synthase (iNOS)mRNAの発現と腸管粘膜障害との関係に関しては明らかではない。そこで、ラットにエンドトキシンを投与し、腸管におけるiNOS mRNAの発現をNorthern blot法およびRT-PCR法を用いて検討した。その結果次のことが明らかとなった。1)食道、小腸、結腸においてiNOS mRNAはエンドトキシン投与1時間後より発現し、4時間目で最高値をとった。デキサメサゾン前投与によりこれらの発現は抑制された。2)デキサメサゾンとNOS阻害剤のL-NAMEを投与することで、エンドトキシン投与により起こる腸管粘膜の透過性の亢進が改善された。以上より、消化管には組織特異的にiNOS mRNAの発現が見られること、sepsisにおいてNO産生を抑制することで腸管粘膜障害が抑制される可能性が示された。さらに本研究を進めるため、ラットにエンドトキシンを投与して、消化管粘膜のendothelial nitric oxidase synthase(NOS-III)の発現を測定することで、腸管虚血や感染症の病態時にしばしば見られる消化管粘膜障害の病因としてNOが関与している可能性を検討した。その結果、NOS-III mRNAおよびその蛋白が全消化管粘膜で発現が見られること、エンドトキシン投与により腸管粘膜のNOS-III mRNAがdown-regulateされることが明らかとなった。以上より、重症感染症時において、NOS-III mRNAの発現の低下が腸管粘膜の血管拡張を抑制し、腸管粘膜障害や消化管機能の低下の原因となる可能性が示された。新生児虚血性腸炎の発症にnitric oxide(NO)とoxidant stressがどのように関与しているかを明らかにする目的で、腸管虚血再潅流モデルを用いて、急性期及び慢性期の病態を検討した。急性期モデルとして、ラットを用い、腸管の30分虚血、60分の再潅流を行い、虚血10分前にL-NAME、L-Arginine或いは生食を投与した。慢性期モデルでは、腸管の30分虚血及び60分の再潅流後L-NAME、L-Arginine或いは乳酸化リンゲル液の持続静注を5日間行い、その予後を検討した。結果:急性期においてL-NAME投与により死亡率が有意に高く、腸管および肝組織血流量、門脈血流量いずれも低値であった。慢性期では、L-Arginine投与群で死亡率が高く、腸管粘膜の障害も強かった。結論:虚血再潅流直後にNOの合成を抑制すると肝臓などの臓器血流量が低下し、oxidant stressが増悪した。しかし急性期以降はNOの過産生により臓器障害が助長すると考えられた。新生児虚血性腸炎の発症におけるnitric oxide(NO)とoxidant stressの関与を明らかにする目的で、腸管虚血再潅流モデル(ラット)を用いて、急性期および慢性期のモデルで検討した。その結果次のことが明らかとなった。1)急性期においてL-NAME投与により、死亡率が有意に高く、腸管および肝組織血流量、門脈血流量のすべてがControlに比し、低値をとる。2)慢性期では、L-Arginine投与群で死亡率が高く、腸管粘膜の障害が強い。以上より、虚血再潅流直後にNOの合成を抑制すると、肝臓などの臓器血流量が低下し、oxidant stressが増悪することが明らかとなった。しかし急性期以降はむしろNOの過剰産生により臓器障害がいっそう促進されると考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-08457473 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08457473 |
新生児阻血性腸疾患の病態に関する研究 | さらに研究を進めるため、ラットにエンドトキシンを投与して、消化管粘膜のnitric oxidase synthase(NOS-III)発現を調べた。その結果、NOS-III mRNAおよびその蛋白が全消化管粘膜で発現が見られること、エンドトキシン投与により腸管粘膜のNOS-III mRNAがdown-regulateされることを初めて明らかにした。以上の結果より、NOS-III mRNAの発現の低下が腸管粘膜の血管拡張を抑制し、sepsisにおける粘膜構造や機能低下の原因となる可能性が示された。 | KAKENHI-PROJECT-08457473 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08457473 |
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