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非線形退化楕円型偏微分方程式の研究
まず,無限次元ヒルベルト空間上における2階退化楕円型方程式に対する弱解の概念の定義とその存在,一意性について研究を行った。このような微分方程式は確率偏微分方程式によって系が記述された制御および微分ゲ-ムにおけるダイナミック・プログラミングの方程式を含むもので,この方面での一つの基本方程式である。今後の確率制御および微分ゲ-ムへの応用が期待される。また偏微分方程式の研究の一つの方向を示しており,継続した研究が期待される。次に,有限次元ユ-フリッド空間上における2階の非線形期化放物型方程式について弱解の存在と一意性についての研究を行った。ここで研究された方程式はパラメ-タ-を特別な値になると,伝染病流行の一つのモデル方程式であり,また別のパラメ-タ-の値においては多孔質媒質中の流体のモデル方程式と関連しているという2次の非線形項をもつ興味深い方程式である。この研究では,弱解に半優調和であることを要請してその存在と一意性を示した。さらに,ハミルトン・ヤコビ方程式に対する状態拘束境界値間題について研究した。これまでに連続な解が得られているような条件下で,不連続な解に対する比較定理を得ることに成功した。これにより,ペロンの方法で連続な解で構成できるよになった。
KAKENHI-PROJECT-02640150
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02640150
脂肪細胞の機能修飾とインスリン抵抗性発症における脂肪合成関連遺伝子の役割
C57BL6/Jマウス(8週齢♂)に60%あるいは10%脂肪食を2週間負荷したのち腸間膜脂肪組織を摘出しナイロンメッシュ(φ70μm)を用いて大型脂肪細胞ならびに小型脂肪細胞を分画した。60%脂肪食負荷マウス群の腸間膜脂肪では10%脂肪食負荷マウス群に比べて大型、小型脂肪細胞ともにTNF-α発現が有意に上昇していた。3T3-L1脂肪細胞におけるTNF-α発現はミリスチン酸、パルミチン酸(C16:0)によりそれぞれ2.1倍、1.9倍に上昇した。一方、オレイン酸、リノール酸はTNF-αの有意な発現上昇を引き起こさなかった。C16:0によるTNF-αの発現上昇はDGAT1,DGAT2遺伝子の発現に引き続いて引き起こされた。3T3-L1細胞へのDGAT1 siRNAの導入あるいはDGAT1活性阻害剤の前処理によりC16:0によるTNF-α発現上昇が抑制されたものの、DGAT2 siRNAの導入はTNF-α発現に影響を与えなかった。脂肪の過剰摂取は脂肪細胞におけるDGAT1発現を介してTNF-α発現上昇を引き起こしインスリン抵抗性の発症に関わる可能性がある。脳血管疾患と虚血性心疾患に代表される動脈硬化性疾患は日本人の死因の上位を占める重要な疾患であり、心血管病の危険因子には肥満、耐糖能異常、脂質代謝異常、高血圧症などが挙げられる。インスリン抵抗性はこれらの危険因子の病態に共通して認められることから、メタボリック症候群の背景因子として注目されている。これまでに我々は細胞移植法を用いた脂肪細胞蓄積マウスモデルを作製し、これを用いた解析から、肥満に伴うインスリン抵抗性の発現には何らかの環境要因により引き起こされる内臓脂肪細胞の機能変化が重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに我々は高脂肪食負荷によるインスリン抵抗性マウスモデルを用いた解析により、肥大化した内臓脂肪細胞は小型脂肪細胞に比べて病的機能変化を示しており、この細胞の肥大化にはトリグリセリド(TG)蓄積が関与する可能性を示した。本研究において我々は、脂肪細胞の肥大化や高脂肪食摂取とTNF-α発現との関連において、トリグリセリド(TG)蓄積に重要な酵素であるアシルCoA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)の役割を検討した。グルコース濃度の異なる培地で3T3-L1脂肪細胞を培養することにより、TG蓄積量の異なる2種類の脂肪細胞を調製した。TG蓄積量の多い脂肪細胞ではDGAT1, DGAT2, TNF-α発現が亢進しており、この作用はグルコースにより引き起こされていた。とりわけTNF-α発現上昇はグルコースによる直接的な作用ではなく、DGAT1遺伝子発現上昇に伴って引き起こされることが明らかとなり、本研究により、内臓脂肪蓄積に伴うTNF-α発現亢進を始めとする脂肪細胞の機能変化にはDGAT1の活性化が関与する可能性が示された。C57BL6/Jマウス(8週齢♂)に60%あるいは10%脂肪食を2週間負荷したのち腸間膜脂肪組織を摘出しナイロンメッシュ(φ70μm)を用いて大型脂肪細胞ならびに小型脂肪細胞を分画した。60%脂肪食負荷マウス群の腸間膜脂肪では10%脂肪食負荷マウス群に比べて大型、小型脂肪細胞ともにTNF-α発現が有意に上昇していた。3T3-L1脂肪細胞におけるTNF-α発現はミリスチン酸、パルミチン酸(C16:0)によりそれぞれ2.1倍、1.9倍に上昇した。一方、オレイン酸、リノール酸はTNF-αの有意な発現上昇を引き起こさなかった。C16:0によるTNF-αの発現上昇はDGAT1,DGAT2遺伝子の発現に引き続いて引き起こされた。3T3-L1細胞へのDGAT1 siRNAの導入あるいはDGAT1活性阻害剤の前処理によりC16:0によるTNF-α発現上昇が抑制されたものの、DGAT2 siRNAの導入はTNF-α発現に影響を与えなかった。脂肪の過剰摂取は脂肪細胞におけるDGAT1発現を介してTNF-α発現上昇を引き起こしインスリン抵抗性の発症に関わる可能性がある。
KAKENHI-PROJECT-18700548
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18700548
アレルゲンを発現する組換え口腔常在菌を応用した次世代の免疫減感作療法の開発
本申請において、(1)「スギ花粉症のアレルゲンとなる組換えタンパク質を安定して発現する口腔常在性・非う蝕原性レンサ球菌Streptococcus anginosus遺伝子組換え体を作製すること」、(2)「実験動物(マウス)を使用して、形質転換株の口腔内への定着および免疫応答を誘導するメカニズムを治療および予防の見地から検討すること」を目的とした。当該年度において、(1)は達成し、(2)は経過段階である。本申請において、(1)「スギ花粉症のアレルゲンとなる組換えタンパク質を安定して発現する口腔常在性・非う蝕原性レンサ球菌Streptococcus anginosus遺伝子組換え体を作製すること」、(2)「実験動物(マウス)を使用して、形質転換株の口腔内への定着および免疫応答を誘導するメカニズムを治療および予防の見地から検討すること」を目的とした。当該年度において、(1)は達成し、(2)は経過段階である。本研究の期間内の目的は「スギ花粉症に対する舌下減感作療法への応用研究のための形質転換株の作製と実験動物を用いた治療および予防効果の検討」であり、当該年度の概要は以下である。本研究の期間内の目的は「スギ花粉症に対する舌下減感作療法への応用研究のための形質転換株の作製と実験動物を用いた治療および予防効果の検討」であり、当該年度の概要は以下である。●スギ花粉症アレルギー遺伝子の大腸菌プラスミドへのクローニングスギ花粉症のアレルギー反応に関与する3Crp領域,タンパク質を検出するための認識抗体用のTag配列,マウス実験用のアジュバンドとして作用するコレラトキシンBサブユニット(CTB)の構造遺伝子領域は大腸菌プラスミドヘクローン化し,配列はシークエンス解析により確認した。●口腔内レンサ球菌形質転換株の作製構築された形質転換用CTB-3Crp-Tagプラスミドを制限酵素切断により直鎖としたのち,S.anginosusの形質転換を行った。その際,形質転換用マーカーとして導入させたエリスロマイシン耐性株を指標としてスクリーニングした。作製した形質転換株の染色体DNA上に遺伝子が正しく導入されているかを、サザンブロッティングおよびPCRと増幅されたDNAの制限酵素切断パターンにより確認した。
KAKENHI-PROJECT-21791798
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21791798
心疾患に伴う骨格筋の弱化予防に対する高気圧・高濃度酸素の効果検証と作用機序の解明
肺高血圧症及び右心不全における骨格筋の萎縮過程を確認した。右心不全の時期では、遅筋、速筋ともに、ユビキチン・プロテアソーム系とオートファジー・ライソソーム系によるタンパク分解の亢進と筋萎縮が生じた。一方、右心不全に至る前段階である肺高血圧症の時期では、遅筋、速筋ともに筋萎縮は生じなかったが、速筋においてのみ、タンパク分解の亢進が確認された。このタンパク分解の亢進は、病期の進行に伴う動脈血酸素飽和度の低下が出現する前から生じていた。また、動脈血酸素飽和度が低下した時点から高酸素を用いた介入を実施した場合、高酸素の有効性は確認できなかった。モノクロタリンの腹腔内投与による心疾患動物を作製し、組織学的手法を用いて、骨格筋の弱化を確認した。これらの動物に対して軽度な運動負荷を与えたところ、心肥大とカヘキシーが助長され、骨格筋の弱化予防効果は得られなかった。このことから、心疾患における骨格筋の弱化予防には、骨格筋機能の改善に広く用いられている運動療法ではなく、心臓に負荷を加えない、他動的な介入手段の必要性が示唆された。また、他動的な介入手段として本研究で採用している高気圧高濃度酸素に関して、心疾患でない通常動物を用いて、骨格筋代謝への即時的な影響を検証した。1.25気圧の高気圧高濃度酸素環境へ30分から3時間暴露した後、長指伸筋とヒラメ筋を速やかに摘出した。得られたサンプルをホモジナイズし、その上清を用いてクエン酸合成酵素活性を測定したところ、30分から3時間の暴露時間では、暴露前の値と比べて有意差を認めなかった。また、得られたサンプルから凍結切片を作製し、筋線維あたりのコハク酸脱水素酵素活性を測定したところ、30分から3時間の暴露時間では、暴露前の値と比べて有意差を認めなかった。このことから、1.25気圧の高気圧高濃度酸素による骨格筋への即時的な効果は低く、効果判定には長期的な適応を検証する必要性が示唆された。また、高気圧高濃度酸素による骨格筋代謝の向上はこれまでに報告されているにもかかわらず、今回用いた高気圧高濃度酸素は骨格筋代謝に顕著な影響を及ぼさなかった。1.25気圧という軽度の高気圧環境は、骨格筋代謝が正常な通常動物に対しては作用しないが、骨格筋代謝が低下している場合には作用する可能性があるため、今後は心疾患動物を用いた検証を行う必要性が示唆された。骨格筋の弱化に対する高気圧・高濃度酸素の作用に関して、筋損傷モデルを用いて、その再生に及ぼす影響を検証した。検証の結果、高気圧・高濃度酸素は骨格筋の再生を促進することが明らかになった。その作用機序として、筋損傷に伴う低酸素状態を改善することがマクロファージの遊走の早期化をもたらし、マクロファージ遊走の早期化に伴う抗炎症性サイトカインの作用が筋再生の促進に貢献したと考えられた。筋損傷モデルにおいて、低酸素状態の改善によって筋再生が促進されたことより、心疾患など、低酸素状態を引き起こす他の疾患モデルにおいても同様に、骨格筋の弱化に対して高気圧・高濃度酸素が有効に作用する可能性がある。なお、これらの研究結果は国内における関連学会で発表するとともに、国際誌にて報告した。また、高気圧・高濃度酸素に関する最適な暴露時間を検討するため、暴露開始30分から24時間における、骨格筋のミトコンドリア新生に関する因子の変化を検証した。検証の結果、ミトコンドリア新生に関わる転写共役因子の発現は曝露開始後1時間で有意に増加することが明らかになった。即時的な作用が暴露開始1時間で生じたことより、筋持久力の低下のようなミトコンドリア障害をターゲットとして高気圧・高濃度酸素を実施する場合、その治療時間は1日1時間程度必要であることが示唆された。なお、これらの研究結果は国内における関連学会で発表するとともに、国際誌へ投稿し、現在は査読中である。また、モノクロタリンによる右心不全モデルを用いて、心疾患に伴う骨格筋弱化のタイムコースを検証した。これまでのところ、骨格筋のタイプによって萎縮の程度や時期が異なり、その経路も異なることを確認している。このことは高気圧・高濃度酸素による最適な介入開始時期を決定するうえで意義があると思われる。なお、これらの研究結果は関連学会での発表準備中である。モノクロタリンによる右心不全モデルを用いて、心不全に伴う骨格筋弱化のタイムコースを検証した。検証の結果、心不全に伴う骨格筋の萎縮は遅筋に比べて速筋で顕著であった。また、ユビキチン・プロテアソーム系及びオートファジー・ライソソーム系を介したタンパク分解に関しても同様に、遅筋に比べて速筋で顕著であった。これらの骨格筋弱化は右心不全の出現と同時期に確認されたが、速筋に関しては、右心不全の前段階である肺高血圧症の時点において、Atrogin-1、MuRF-1、p62、LC3のmRNA発現が既に顕著であった。肺高血圧症の時点では、活動量や餌摂取量に変化がなかった事から、心不全誘導性の骨格筋の弱化には、症状が出現する前からの予防的な介入が必要であると思われる。なお、これらの研究結果は国内における関連学会で発表するとともに、国際誌にて報告した。また、モノクロタリンによる右心不全モデルを用いて、心不全に伴う骨格筋弱化に対する高酸素の影響を検証した。
KAKENHI-PROJECT-25750202
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25750202
心疾患に伴う骨格筋の弱化予防に対する高気圧・高濃度酸素の効果検証と作用機序の解明
モノクロタリンの投与によって右心不全を惹起した動物を、高酸素治療を行った群と、高酸素治療は行わずに通常飼育した群の2群に分け、心臓、肺、骨格筋をターゲットとして、組織学的および分子生物学的な検証作業を実施した。検証の結果、高酸素治療を行った群は死亡率が高く、カヘキシアが早期に生じる事を確認している。このことは高酸素療法の安全性と有効性を再考するうえで意義があると思われる。なお、この研究は現在も継続しており、心臓、肺、骨格筋の組織学的および分子生物学的なデータをまとめた後に、結果を関連学会で発表すべく、準備しているところである。心不全に伴う骨格筋の弱化、及び行動変化に関して、そのタイムコースは既に確認した。このことより、最適な介入時期を検討するうえで、ある程度の結果を得ている。しかし、高酸素療法が予想に反して心不全の悪化をもたらせ、その原因は未だ明らかに出来ていないため、研究の達成度はやや遅れていると思われる。モノクロタリンの腹腔内投与によって肺高血圧症及び右心不全を誘導したモデル動物を用いて、カヘキシアにおける骨格筋の萎縮メカニズムを確認した。筋萎縮の進行を遅筋(ヒラメ筋)と速筋(腓腹筋)に分けて確認したところ、カヘキシアを伴う右心不全の時期では、遅筋と速筋の両者において顕著な筋萎縮が生じ、ユビキチン・プロテアソーム系(atrogin-1、MuRF-1 )とオートファジー・ライソソーム系(LC3、p62)によるタンパク分解が亢進していた。一方、右心不全に至る前段階である肺高血圧症の時期では、遅筋と速筋の両者共に、形態的な筋萎縮は確認されなかった。しかし、同時点において、形態的な筋萎縮は存在しないものの、速筋においてのみ、ユビキチン・プロテアソーム系とオートファジー・ライソソーム系によるタンパク分解が既に開始されていた。これらのタンパク分解系の亢進は、病期の進行に伴う食事摂取量の減少や動脈血酸素飽和度の低下が出現する前から生じており、栄養摂取や低酸素による影響とは別の機序が予想される。本研究の結果より、骨格筋の形態的な萎縮は心不全と同時期に生じるが、タンパク分解経路の亢進は心不全に先行することが確認された。また、遅筋は速筋に比べてタンパク分解に対する耐性が高いことも確認された。このことより、心不全に伴う骨格筋の萎縮に介入する上で、筋萎縮が出現する前段階からの予防的な介入の必要性、及び対象筋を選択する重要性が明らかになった。肺高血圧症及び右心不全における骨格筋の萎縮過程を確認した。右心不全の時期では、遅筋、速筋ともに、ユビキチン・プロテアソーム系とオートファジー・ライソソーム系によるタンパク分解の亢進と筋萎縮が生じた。一方、右心不全に至る前段階である肺高血圧症の時期では、遅筋、速筋ともに筋萎縮は生じなかったが、速筋においてのみ、タンパク分解の亢進が確認された。このタンパク分解の亢進は、病期の進行に伴う動脈血酸素飽和度の低下が出現する前から生じていた。また、動脈血酸素飽和度が低下した時点から高酸素を用いた介入を実施した場合、高酸素の有効性は確認できなかった。高気圧・高濃度酸素が骨格筋の弱化に及ぼす影響に関して、筋損傷モデルでは、その有効性の一部を既に確認した。また、最適な治療条件を検討するうえで、治療開始時期と治療時間に関してはある程度の結果を得ている。しかし、現時点では心疾患モデルに対する治療効果の検証に至っていないため、研究の達成度はやや遅れていると思われる。
KAKENHI-PROJECT-25750202
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25750202
in vitroとin vivoを組み合わせた分裂酵母細胞質分裂のメカニズム解明
細胞分裂は単細胞生物ではその増殖に、多細胞生物では発生、成長、個体の維持に必須の生命現象である。細胞分裂の異常は発生不全や癌を引き起こすことは言うまでもない。真菌症等の創薬ターゲットとしても細胞分裂の詳細なメカニズムの解明は最も重要な課題のひとつである。本研究は、細胞を物理的に二分する細胞質分裂のメカニズムについて、in vivoライブイメージングとin vitro再構成系の両方を駆使して包括的かつ詳細に明らかにすることを目的とする。モデル生物として主に分裂酵母を用い、収縮環の形成や収縮についてin vitro再構成系により構成因子・微細構造・生化学的性質等を明らかにする。得られた情報を元にin vivoでのイメージング解析を行い、生理的な意義について検証する。平成30年度は、昨年度に引き続いて収縮環の収縮機構について解析を進めた。分裂酵母のゴーストを用い、収縮環中のミオシン分子の配向を明らかにするため、光活性型の蛍光タンパク質を用いた超解像顕微鏡法であるPALM/STORMを行った。配向がわかるように遺伝子工学的に改変したミオシンを発現する分裂酵母株について、蛍光タンパク質を融合したミオシン分子の発現量を検討した。PALMのための画像取得は共同研究により行った。レーザーの強度など光活性化型蛍光タンパク質の適度な活性化条件を検討し、条件を最適化した。高感度カメラにより画像取得を行い、PALMのためのデータを取得し、1分子の分をマッピングした。これにより、収縮環中のミオシン分子の分布についてのデータが得られており、統計学的な解析を進めている。また、昨年度に引き続き、細胞質分裂において、隔壁形成に重要な役割を担う細胞内小胞輸送に関わる因子の変異株についての解析を行った。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。本研究は、細胞を物理的に二分する細胞質分裂のメカニズムについて、in vivoライブイメージングとin vitro再構成系の両方を駆使して包括的かつ詳細に明らかにすることを目的とする。平成26年度は分裂酵母の細胞質分裂過程の各ステップについて、細胞ゴーストを用いた再構成系を構築することを目標に研究を行った。収縮環形成過程の再構成系の構築には至っていないが、収縮環の収縮機構について、更に詳細に解析を行った。ゴースト中の収縮環のFRAP実験を行い、ミオシンIIの動きを詳細に解析した結果、ミオシンは収縮環中で大きく位置を変えないことがわかった。分裂酵母の核分裂過程についても、分裂酵母の細胞ゴーストを用いた再構成系の構築を試みた。hydroxyureaを用いることで、分裂期のスフェロプラストの割合を増加させることができた。ゴースト調製に用いる溶液の条件を検討し、核と紡錘体を安定に保持した細胞ゴーストを得ることができた。また、分裂酵母の細胞質分裂には、収縮環の収縮に加えて、細胞膜の伸展、細胞壁(隔壁)の合成が協調的に起こることが必要である。細胞壁を酵素で除去したスフェロプラストの状態でも、細胞壁の再生と再溶解を行うことで、収縮環の収縮に伴う分裂溝の陥入が起こることがわかった。この分裂溝形成は、ミオシンIIの活性に依存しており、細胞壁の寄与はないと思われる。今後はこの系についても詳細に調べ、細胞質分裂のメカニズムに迫りたい。本研究は、細胞を物理的に二分する細胞質分裂のメカニズムについて、in vivoライブイメージングとin vitro再構成系の両方を駆使して包括的かつ詳細に明らかにすることを目的とする。平成27年度は分裂酵母のゴーストを用いた収縮環の収縮機構について、更に詳細に解析を行った。収縮環を構成する既知の因子について、収縮環収縮時の振る舞いをミオシンとの同時観察により調べた。収縮環中の局在パターンを蛍光強度解析により調べたところ、収縮前はミオシンと一致するものとそうでないものがあることがわかった。しかし、ATP添加後、収縮に伴ってその局在パターンが徐々にミオシンクラスターと重なっていくことがわかった。また、アクチンの可視化を行ったところ、収縮環の収縮時にはアクチン繊維からなる数本の束が収縮環から放射状に出ていく様子が観察された。また、新規の収縮環構成因子を同定するため、ゴースト試料の二次元電気泳動を行った。収縮環をもつものと収縮環をもたないものを比較したところ、スポットのパターンは似ており、顕著な違いを見出すことはできなかった。そこで、収縮環を完全に単離する系の構築を検討し、遠心分離によりある程度収縮環を単離することができた。しかし、二次元電気泳動や質量分析に用いるほどの収量や純度は得られていない。この他、超解像顕微鏡や電子顕微鏡を用いた収縮環の微細構造解析、分裂酵母細胞抽出液の調製方法の検討を進めている。細胞質分裂のメカニズム解明に向けて、分裂酵母スフェロプラスト、細胞ゴーストおよび単離収縮環を用いた研究を進めており、一定の成果を上げているものの、研究計画にあるゴースト試料調製のハイスループット化にはまだ至っていない。一方で、分裂酵母の細胞抽出液調製方法の検討や、収縮環単離法の検討などを通して新たな発見もあった。本研究は、細胞を物理的に二分する細胞質分裂のメカニズムについて、in vivoライブイメージングとin vitro再構成系の両方を駆使して包括的かつ詳細に明らかにすることを目的とする。平成28年度は分裂酵母のゴーストを用いた収縮環の収縮機構について、更に詳細に解析を行った。細胞ゴーストの作製とin vitro
KAKENHI-PROJECT-26712010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26712010
in vitroとin vivoを組み合わせた分裂酵母細胞質分裂のメカニズム解明
再構成については、現在まで収縮環収縮時のみ成功している。収縮環の形成や解離の過程には細胞質成分が特に重要であると考えられる。分裂酵母の細胞質抽出液の調製法も引き続き検討している。また、研究計画にある収縮環の単離を行うため、スフェロプラスト化および同調的な収縮環形成の条件検討を行った。まず細胞壁溶解酵素について検討した。以前使用していたものと異なるものを用いることで、より低コスト、高効率でスフェロプラストを得ることができた。また、温度感受性変異株を用いることで同調的に収縮環を形成させるが、温度シフトのタイミングをさらに検討し、より多くのスフェロプラストに収縮環を形成させることができた。効率的に収縮環を単離する方法をさらに検討し、超解像顕微鏡や電子顕微鏡を用いた収縮環の微細構造解析を引き続き進めている。また、収縮環中のミオシン分子の配向を微細構造解析により明らかにするため、配向がわかるように遺伝子工学的に改変したミオシンを発現する分裂酵母株を作製した。進捗が遅れている理由として、平成28年度は研究実施場所の変更があり、にそれ続いて研究機関の変更があったため、研究環境の整備などで研究の時間が十分とれなかったことが挙げられる。これまで使用していた3次元観察が可能な蛍光顕微鏡が使用できなくなったため、新たに蛍光観察用のシステムを構築した。現在は簡易的ではあるが観察ができるようになっており、その他の実験環境も整ってきたため、最終年度である平成29年度は研究の遅れを取り戻したい。本研究は、細胞を物理的に二分する細胞質分裂のメカニズムについて、in vivoライブイメージングとin vitro再構成系の両方を駆使して包括的かつ詳細に明らかにすることを目的とする。平成29年度は分裂酵母のゴーストを用いた収縮環の収縮機構について、これまで成功している収縮環の単離に焦点を絞り、収縮環の構成因子や微細構造の解析を行った。効率的に収縮環を単離するため、単離方法を改良した。臨界点乾燥法や急速凍結レプリカ法による微細構造解析を進めている。グリッド付のカバーグラスを用いることで、蛍光顕微鏡で観察した場所を電子顕微鏡でも観察する光学-電子相関顕微鏡法による単離収縮環の観察について検討した。また、収縮環中のミオシン分子の配向を超解像顕微鏡により明らかにするため、光活性型の蛍光タンパク質を用い、配向がわかるように遺伝子工学的に改変したミオシンを発現する分裂酵母株を作製し、超解像顕微鏡観察を行った。細胞質分裂において、隔壁形成に重要な役割を担う細胞内小胞輸送に関わる因子の変異株についての解析も行った。この変異株では細胞形態に異常がみられるが、エンドサイトーシスやエキソサイトーシス関連因子の局在を調べたところ、細胞膜タンパク質のリサイクリング経路に異常がみられることがわかった。細胞質分裂にも異常がみられるが、細胞膜タンパク質のリサイクリング経路と細胞質分裂の関係についてさらに解析を進めている。収縮環単離法の改良に想定以上の時間がかかっているほか、研究機関の変更、その他の業務、家庭環境などの理由で遅れが生じている。
KAKENHI-PROJECT-26712010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26712010
バングラデシュにおけるシビアローカルストームの高精度構造把握と予測に関する研究
本研究は、バングラデシュにおいて頻発する竜巻等のシビアローカルストームを時間的に高分解能に観測し、その詳細な構造の把握と予測に資する知見を得ることを目的とする。平成26年5月に9例のシビアローカルストームを観測し、1分間隔という極めて時間的に高分解能な精度でシビアローカルストームの通過に伴う風速の上昇、強い下降流である冷気外出流による気圧の上昇(メソハイ)、気温の急激な低下などを捉えることができた。今後は、これらの観測データと現地気象局より入手した高層気象観測データも併せて詳細に解析することで、地上から上空までのシビアローカルストームの構造についての総合的な実態把握を進めていく。本研究は、バングラデシュにおいて頻発する竜巻等のシビアローカルストームを時間的に高分解能に観測し、その詳細な構造の把握と予測に資する知見を得ることを目的とする。平成26年5月に9例のシビアローカルストームを観測し、1分間隔という極めて時間的に高分解能な精度でシビアローカルストームの通過に伴う風速の上昇、強い下降流である冷気外出流による気圧の上昇(メソハイ)、気温の急激な低下などを捉えることができた。今後は、これらの観測データと現地気象局より入手した高層気象観測データも併せて詳細に解析することで、地上から上空までのシビアローカルストームの構造についての総合的な実態把握を進めていく。平成25年度の主な研究実績は、現地において自動気象観測測器の設置を行い集中観測を無事開始したことである。2013年8月にバングラデシュへ渡航しバングラデシュ気象局を訪問した。気象局長官への本観測プロジェクトの説明を行い、本プロジェクトへの理解と気象局地方測候所内における測器設置の許可をいただいた。またダッカにあるShera-Bangla農業大学において本プロジェクトの説明を行い、共同研究の中での観測測器の大学構内への設置及び測器のメインテナンスへの協力について協議を行った。2013年中頃より本観測で採用した自動気象観測測器システムについて、(株)気象情報通信及び(株)東洋電子工業と協議を重ね、常葉大学での試験観測等を経て2014年2月に自動気象観測測器4台を購入した。本観測で使用する測器は、突発的な大気現象であるシビアローカルストームを高分解能で捕えるために時間分解能を1分とした。またより多くのシビアローカルストームを捕えるために、申請段階では3台としていたが4台に増設しより広範囲に数多くのシビアローカルストームを観測できる体制とした。台数を増やしたため予算の関係上今回の観測では雨量観測を行うことができなかったが、本観測で重要なパラメーターは風と気圧の力学的パラメーター及び気温と湿度であり、特に本研究の目的遂行に影響はない。2014年3月にバングラデシュに渡航し、4台の自動気象観測測器をMymensingh、Bogra、Tangailのバングラデシュ気象局の地方測候所内の3地点に、またDhakaにあるSheara-Bangla農業大学構内の合計4地点に設置した。現在バングラデシュは本観測のターゲットであるシビアローカルストームの頻発する時期(プレモンスーン期:3月5月)にある。観測は順調に行われており、既に幾つかのシビアローカルストーム事例の観測に成功している。平成26年度における主な研究実施内容は、バングラデシュにおいて竜巻等のシビアローカルストームが頻発するプレモンスーン期の4月及び5月に高時間分解能自動気象観測装置による集中観測を実施したことである。前年度の3月に、シビアローカルストームの常襲地域における4地点に気象測器を設置して観測を開始した。太陽光パネルの電力供給不足による観測の一時的な停止により4月については連続的な観測はできなかったが、パネルの交換により5月には安定的に連続観測を実施することができた。今回の集中観測において、5月の1か月間に9例のシビアローカルストーム事例の時間的高分解観測に成功した。シビアローカルストームの通過に伴う風向・風速・気温・気圧・湿度の地上における変動を、1分間隔という極めて時間的に高分解能な精度で捉えることができた。具体的には、シビアローカルストームの通過に伴う風速の上昇、強い下降流である冷気外出流による気圧の上昇(メソハイ)、気温の急激な低下を捉えることができた。これらのシビアローカルストームに伴う時間的に詳細な地上気象変動が捉えられたのはこれまでに殆ど例が無く、極めて貴重な観測データである。現在、これらの気象データを活用してシビアローカルストームの詳細な構造を明らかにすべく解析を進めている。また、バングラデシュ気象局より入手した高層気象観測データも併せて解析に利用することで、地上から上空までのシビアローカルストームの構造、シビアローカルストームが発生した大規模な環境場についても明らかにすることで、これまでに殆ど行われてこなかった時間的に高分解能な観測データに基づく事例解析によるシビアローカルストームの総合的実態把握を進めていく予定である。気象学平成25年度の研究計画は、1測器の購入2集中観測実施のための現地との協議3現地への測器の設置展開と観測の開始であった。平成25年度においては、上記1と2を経て3の現地での観測機器の設置展開を無事完了し集中観測を開始することができた。現在も順調に観測が継続されている。以上のことから、現在までの達成度は、概ね研究計画通りに進められているものと考えている。現在、現地はシビアローカルストームの多発する時期にあり、既に幾つかのシビアローカルストーム事例の観測に成功している。本年夏頃(予定では8月)にバングラデシュへ渡航し、データの取集を行う。
KAKENHI-PROJECT-25750153
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バングラデシュにおけるシビアローカルストームの高精度構造把握と予測に関する研究
同時に、気象局等から関連する気象データ(気象レーダー等)を入手し、それらも加味しながら観測データの解析を行う。解析した結果を学術論文に速やかに成果発表する。
KAKENHI-PROJECT-25750153
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都市における商業施設の立地均衡と最適配置
本研究では、都市空間における商業活動の空間分布が市場メカニズムによっていかに決定されるかを明らかにするとともに、そのような空間分布が資源配分上望ましいものであるかを評価するために行われた。本年度の研究成果の概要は以下の通りである。(1)商業施設の立地均衡のモデル化ミクロ経済学の理論に基づいて、消費者、小売業、デベロッパー、及び地主の行動と、小売市場、床市場、土地市場の均衡をモデル化した。ここでは、企業組織の違いが立地分布や資源配分に及ぼす効果を分析するため、二通りのモデルを作成した。一つは、すべての小売業が小規模で完全競争的に行動する場合、もう一つは、大規模小売り店間の寡占競争の場合である。(2)商業施設の最適配置と立地均衡との比較商業施設の最適配置は、社会的余剰を目的関数とする数理計画問題を解くことによって求められる。そしてこのような問題の最適条件に関する式を、上で求めた二通りのモデルの立地均衡条件式と比較することにより、社会的最適を分権的に達成するための条件と政策手段を明らかにした。その結果は、小売業の立地行動は、消費者や他の小売業に外部効果を与えるとともに、寡占の場合には不完全競争による厚生損失があるため、効率的な資源配分を達成できないことがわかった。(3)コンピュータ・シミュレーションによる商業施設の立地構造の分析上述の理論分析につづいて、さらに具体的な分析を行うために、コンピュタ-・シミュレーションを行った。ここでは、モデルに含まれる種々のパラメータの変化が、立地均衡および最適配置のもとでの商業施設の分布、さらには経済厚生の分配にいかなる影響を与えるのかを分析した。本研究では、都市空間における商業活動の空間分布が市場メカニズムによっていかに決定されるかを明らかにするとともに、そのような空間分布が資源配分上望ましいものであるかを評価するために行われた。本年度の研究成果の概要は以下の通りである。(1)商業施設の立地均衡のモデル化ミクロ経済学の理論に基づいて、消費者、小売業、デベロッパー、及び地主の行動と、小売市場、床市場、土地市場の均衡をモデル化した。ここでは、企業組織の違いが立地分布や資源配分に及ぼす効果を分析するため、二通りのモデルを作成した。一つは、すべての小売業が小規模で完全競争的に行動する場合、もう一つは、大規模小売り店間の寡占競争の場合である。(2)商業施設の最適配置と立地均衡との比較商業施設の最適配置は、社会的余剰を目的関数とする数理計画問題を解くことによって求められる。そしてこのような問題の最適条件に関する式を、上で求めた二通りのモデルの立地均衡条件式と比較することにより、社会的最適を分権的に達成するための条件と政策手段を明らかにした。その結果は、小売業の立地行動は、消費者や他の小売業に外部効果を与えるとともに、寡占の場合には不完全競争による厚生損失があるため、効率的な資源配分を達成できないことがわかった。(3)コンピュータ・シミュレーションによる商業施設の立地構造の分析上述の理論分析につづいて、さらに具体的な分析を行うために、コンピュタ-・シミュレーションを行った。ここでは、モデルに含まれる種々のパラメータの変化が、立地均衡および最適配置のもとでの商業施設の分布、さらには経済厚生の分配にいかなる影響を与えるのかを分析した。
KAKENHI-PROJECT-06750556
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幼児の仲間関係におけるルール共有過程の発達
本研究は幼児の仲間関係における交代制ルールと情動反応の関連を検討することを目的とした。4歳児と5歳児を対象に、三人組でのゲーム遊び場面を録画した。分析の結果、交代回数が多いグループの方が楽しさの情動反応が多いことが一部のゲームで示され、交代制ルールの共有と楽しさの情動反応の関連が部分的に示された。また交代制ルールの崩壊過程の事例を検討した結果、男児は力関係の中で、女児は他者との関わりの中でルールが崩壊するという性差が示された。幼児の仲間関係に交代制ルールの規準と情動の共有が重要であり、その指導には性別を考慮する必要が示唆され、保育実践に応用可能な意義のある研究結果が得られた。本研究の目的は、子どもが遊具を使用する際の交代制ルールに着目し、仲間関係の中でどのように自己と他者との関係調整をするのかを明らかにすることだった。本年度は、幼児が三人組で3種類のゲーム遊びをしている場面のビデオでの行動記録を、行動コーディング解析ソフトを用いて分析した。行動コーディングシステムと適応のよいパソコンを購入し、ソフトの導入を実施した。ビデオデータを保存記録して、基本ユニットの始動を行った。従来の研究で、4歳児よりも5歳児の方が交代行動の規準が明確で、関係調整が上手くできるようになることが示されている。しかし、交代行動の関係調整が上手くいくことが楽しく遊べることと結びつくかどうかは明らかでない。そこで本研究では、ゲーム遊び場面における楽しさの共有行動の出現を検討した。4,5歳児を対象に三人組をつくり、魚釣りゲーム、アイスクリームゲーム、ワニゲームの三種類のゲームを5分間ずつ行ってもらい、ビデオ録画した。楽しさの情動共有行動とみなされる笑いや拍手やほめ言葉などの回数を分析した。その結果、魚釣りゲームでは4歳児の方が5歳児よりも、また他のゲームでは男児の方が女児よりも楽しさ共有行動が多いことが示された。今年度はビデオ分析のケース数を増やすことを予定していたが、分析に時間がかかり、分析ケースを大幅に増やすことはできなかった。しかし、従来の研究全体を著書として発行し、日本発達心理学会の小講演や玉川大学のフォーラムで発表した。また、情動共有に関する分析結果を日本発達心理学会で発表した。このことから、おおむね計画は進展しているといえる。本研究の目的は、子どもが遊具を使用する際の交代制ルールに着目し、仲間関係の中でどのように自己と他者との関係調整をするのかを明らかにすることである。27年度は26年度の分析を進めて幼児の三人組のゲーム場面での交代行動の分析を実施し、分析ケース数を増やすことを目的としていた。また、交代制ルールの共有過程の性差と共有がうまくいかない特徴的なケースを記述することを目的としていた。27年度に分析数を増やすことができた。これまでの分析に加えて4歳児と5歳児の交代行動の特徴を再度検討し直した。その結果、これまでの研究と同様に交代回数が4歳児は5歳児よりも少ないことと、4歳児の交代の規準が全部交代や好きなだけ交代が多いことから、より強固に4歳児は交代に関する明確な規準がないことや他者とゲームを共有していないことが示された。一方5歳児は、交代回数が多いことや、1回交代が多く、好きなだけ交代が少ないことから、交代に関する規準が明確になることや、他者とゲームを共有していることが示された。このことから、4歳児から5歳児にかけて交代行動が著しく発達することがより明確に示された。さらに、男児・女児の性差、特に交代制ルールの崩壊過程を取り出して男女で比較した。男女の交代行動の違いを明らかにするために、特徴的な事例を抽出し分析した。その結果、女児のルールの崩壊過程は1人の子どものルールの変更に周りの子どもが同調して生じるものだということが示された。一方、男児のルール崩壊過程は1人の子どものルールの変更から崩壊がはじまり、それに周りの子どもは対抗しようとするが、主張の強い子どもに従わされて生じることが示された。このことより、ルール崩壊過程には性差が見られることが示された。女児は他者との関わりの中でルールが崩壊するが、男児は独立した中でルールが崩壊し、力関係が影響することが示唆された。研究は、おおむね順調に進んでいる。27年度は、26年度に引き続いて、交代行動の分析を実施して、ケース数を増やすことを目的としていた。3種類のゲームにおける交代行動の詳細な行動分析を行い、ケース数を増やすことで、交代行動の4歳から5歳の発達をより明確に示すことができた。また、年齢差とともに性差を示すことができた。特に交代制ルールの共有がうまくいかない特徴的なケースについて記述し、ルールの崩壊過程の性差を示すことができた。研究成果の一部を日本教育心理学会と九州心理学会で発表し、大分県立芸術文化短期大学の研究紀要にもまとめた。本研究の目的は、幼児の仲間関係における交代制ルールの共有過程の発達を明らかにすることだった。従来の研究では、交代制ルールは4歳から5歳にかけて規準が明確化し、他者配慮的なルールの主導ができるという発達が示された。しかし従来は、交代制ルールとゲームを楽しむことの関連が明らかにされていなかった。
KAKENHI-PROJECT-26380916
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26380916
幼児の仲間関係におけるルール共有過程の発達
従って本研究では、情動的反応が出やすいゲームの種類を増やし、4歳児96名と5歳児93名を対象に、三人組で魚釣りゲームとアイスゲームとワニゲームで遊んでもらいビデオ録画した。最終年度は、交代制ルールと楽しさの情動反応の関連について検討した。その結果、ワニゲームにおいてのみ、交代回数が多いグループの方が少ないグループよりも楽しさの情動反応が多いことが示され、交代制ルールと楽しさの情動反応が関連していることが部分的に明らかになった。また、昨年に引き続き交代制ルールの崩壊過程の事例分析を行った結果、男児の力関係による崩壊過程と女児の関係性の中での崩壊過程の性差が示された。子どもの視線や姿勢などを行動コーディングシステムを利用して分析したが、明確な結果を示すことはできなかった。今後、手の動きなども要因に取り入れて分析する必要がある。研究期間全体を通して、4歳児から5歳児にかけて、交代制ルールが発達し、三人で1つのゲームを共有するようになり、他者へ配慮できるようになることが多様なゲームにおいても示された。また交代回数が多いグループの方が少ないグループよりも楽しさの情動反応が多いことが示された。交代制ルールを三人で共有することが、楽しさの情動反応と関連していることが部分的ではあるが示された。最後に、交代制ルールの崩壊過程について性差が見出された。幼児の仲間関係に交代制ルールの共有が重要であり、その指導には性別を考慮する必要があることが示唆され、保育実践に応用可能な意義のある研究結果が得られた。本研究は幼児の仲間関係における交代制ルールと情動反応の関連を検討することを目的とした。4歳児と5歳児を対象に、三人組でのゲーム遊び場面を録画した。分析の結果、交代回数が多いグループの方が楽しさの情動反応が多いことが一部のゲームで示され、交代制ルールの共有と楽しさの情動反応の関連が部分的に示された。また交代制ルールの崩壊過程の事例を検討した結果、男児は力関係の中で、女児は他者との関わりの中でルールが崩壊するという性差が示された。幼児の仲間関係に交代制ルールの規準と情動の共有が重要であり、その指導には性別を考慮する必要が示唆され、保育実践に応用可能な意義のある研究結果が得られた。本研究の目的は、ビデオ分析ソフトを用いて、幼児の相互作用の行動分析を詳細に行うことであった。今年度ビデオ分析ソフトが適応しやすいパソコンを購入し、ビデオ映像を入力した上で、分析を開始した。ビデオデータが大量であるため、まだ分析されていないデータも残っている。しかし、情動行動について3種類のゲーム課題について、一定の分析結果を出せたためおおむね順調に進展しているといえる。また、行動分析の視点を決定することが必要であるとともに、情動行動と関連する仲間関係の調整の側面を検討する必要があった。行動分析の視点を、他者と遊具への視線、笑いや叫び声などの情動的反応と定め、交代制ルールの産出との関連を調べることなど分析の視点を定めることができた。また学会での研究成果の発表や講演での研究発表、著書の出版を通して、研究内容を多くの場面で公表することができた。このことにより今後の研究への示唆を得ることができた。28年度は、行動コーディング解析ソフトを使用して、交代行動だけでなく、情動的な側面の抽出方法を検討する。注意の側面、姿勢や視線、からだの向きなどをこれまでも分析対象として試みているが、測定があいまいなる面もある。今年度は、行動分析方法をさらに継続して検討していく予定である。
KAKENHI-PROJECT-26380916
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26380916
微視測定および希釈法によるウラン化合物の軌道秩序とゆらぎの研究
重い電子系ウラン化合物URu_2Si_2のT_o=17.5Kにおける相転移の秩序変数及びそれと競合する不均一反強磁性のメカニズムの解明は、重い電子系物質群における中心課題のひとつであり、世界的にも精力的に研究されている。これまで我々は一軸応力下中性子散乱実験を行うことによって、この反強磁性相が一軸応力の印加によって著しい増大を示し、さらに強い応力方向依存性を示すことがわかった。つまり、結晶の軸方向によっては、わずか数キロバールの一軸応力によって反強磁性体積比が百倍程度の大きさに増強されるのに対し、それとは異なる軸方向の応力に対してはモーメントの大きさを変えないという実験事実を明らかにした。これらのことから、未知の秩序相から反強磁性相への相転移は正方晶の格子定数比の増大で引き起こされていると考えられる。今回我々はこの結果を実証するために、異なるイオンで置換し格子系を制御した系での中性子散乱・ミュオンスピン緩和実験をおこなった。その結果、Rh置換系U(Ru_<1-x>Rh_x)_2Si_2においてわずか数パーセントのRh置換によって反強磁性相が誘起することを明らかにした。この系ではこれまでRh置換によって格子定数比が増大することがわかっており、その程度も一軸応力印加による格子定数比の増大と同程度であることから、Rh置換系においても反強磁性相の誘起は格子定数比の増大によるものであると考えられる。さらに、置換系の実験においてはこれまでの圧力実験とは異なり圧力セルの使用に起因する実験データのノイズを気にせずに高い精度で実験をおこなうことが可能であり、現在詳細な解析をおこなっているところである。重い電子系ウラン化合物URu_2Si_2のT_o=17.5Kにおける相転移の秩序変数及びそれと競合する不均一反強磁性のメカニズムの解明は、重い電子系物質群における中心課題のひとつであり、世界的にも精力的に研究されている。これまで我々は一軸応力下中性子散乱実験を行うことによって、この反強磁性相が一軸応力の印加によって著しい増大を示し、さらに強い応力方向依存性を示すことがわかった。つまり、結晶の軸方向によっては、わずか数キロバールの一軸応力によって反強磁性体積比が百倍程度の大きさに増強されるのに対し、それとは異なる軸方向の応力に対してはモーメントの大きさを変えないという実験事実を明らかにした。これらのことから、未知の秩序相から反強磁性相への相転移は正方晶の格子定数比の増大で引き起こされていると考えられる。今回我々はこの結果を実証するために、異なるイオンで置換し格子系を制御した系での中性子散乱・ミュオンスピン緩和実験をおこなった。その結果、Rh置換系U(Ru_<1-x>Rh_x)_2Si_2においてわずか数パーセントのRh置換によって反強磁性相が誘起することを明らかにした。この系ではこれまでRh置換によって格子定数比が増大することがわかっており、その程度も一軸応力印加による格子定数比の増大と同程度であることから、Rh置換系においても反強磁性相の誘起は格子定数比の増大によるものであると考えられる。さらに、置換系の実験においてはこれまでの圧力実験とは異なり圧力セルの使用に起因する実験データのノイズを気にせずに高い精度で実験をおこなうことが可能であり、現在詳細な解析をおこなっているところである。
KAKENHI-PROJECT-00J07089
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-00J07089
PI 3-kinaseによる開口放出制御機構の解明
本研究では、ホスファチジルイノシトールリン酸化酵素PI 3-kinaseが神経伝達物質放出を制御する分子機構を解明することを目的としている。本年度は、昨年確立した抗体を化学架橋した磁気ビーズを用いる単離法によって、Vesicular glutamate transporter (VGluT)を含む興奮性シナプス小胞、Vesicular GABAtransporter (VGAT)を含む抑制性シナプス小胞を精製した。精製したそれぞれの小胞タンパク質をSDS-PAGEし、CBB染色した。結果、数十種類のタンパク質を提示できた。ほとんどのタンパク質は2種類の小胞間で共通であったが異なるタンパク質も存在した。質量分析器を用いてこれらタンパク質の解析を行った。また、ホスファチジルイノシートルリン脂質に結合するとされるPICK1およびそのファミリータンパク質が神経伝達物質放出制御に関与しているかの検討を行った。その結果、PICK1およびファミリータンパク質Arfaptin 2がシナプス小胞に結合していることがわかった。またArfaptin 2をPC12細胞に強制発現させると神経伝達物質放出が抑制されることが明らかとなった。次にArfaptin 2にはPI 3-kinaseの下流にあるProtein kinase Bのリン酸化サイトがあるので、そのサイトに対するリン酸化抗体を作製した。作製した抗体を用いてウエスタンブロッテイングによる解析を行った。さらに免疫沈降実験からPICK1に小胞輸送にICA69が結合していることを見出した。本研究では、ホスファチジルイノシトールリン酸化酵素PI3-kinaseが神経伝達物質の放出を制御する分子機構を解明することを目的としている。本年度は、ラット脳のシナプス小胞分画からのグルタミン酸およびGABAを含有するプレシナプス小胞の磁気ビーズによる単離方法の確立を行った。作製したvesicular glutamatetransporter(VGluT), vesucular GABAtransporter(VGAT)の抗体を磁気ビーズに化学的に架橋後、それぞれの抗体に結合する小胞を単離した。イムノブロットによって確認したところ、VGluTを含む興奮性シナプス小胞、VGATを含む抑制性のシナプス小胞を区別して単離できていることがわかった。これらのタンパク質のうちin vitroにおいてPI3-kinaseシグナルの下流に存在しているProtein kinase BおよびGSK-3βでリン酸化されるタンパク質を同定している。また、ホスファチジルイノシートルリン脂質に結合するとされるPICK1およびそのファミリータンパク質が神経伝達物質放出制御に関与しているかの検討を行った。その結果、PICK1およびファミリータンパク質Arfaptin2がシナプス小胞に結合していることがわかった。またArfaptin2をPC12細胞に強制発現させると神経伝達物質放出が抑制されることが明らかとなった。本研究では、ホスファチジルイノシトールリン酸化酵素PI 3-kinaseが神経伝達物質放出を制御する分子機構を解明することを目的としている。本年度は、昨年確立した抗体を化学架橋した磁気ビーズを用いる単離法によって、Vesicular glutamate transporter (VGluT)を含む興奮性シナプス小胞、Vesicular GABAtransporter (VGAT)を含む抑制性シナプス小胞を精製した。精製したそれぞれの小胞タンパク質をSDS-PAGEし、CBB染色した。結果、数十種類のタンパク質を提示できた。ほとんどのタンパク質は2種類の小胞間で共通であったが異なるタンパク質も存在した。質量分析器を用いてこれらタンパク質の解析を行った。また、ホスファチジルイノシートルリン脂質に結合するとされるPICK1およびそのファミリータンパク質が神経伝達物質放出制御に関与しているかの検討を行った。その結果、PICK1およびファミリータンパク質Arfaptin 2がシナプス小胞に結合していることがわかった。またArfaptin 2をPC12細胞に強制発現させると神経伝達物質放出が抑制されることが明らかとなった。次にArfaptin 2にはPI 3-kinaseの下流にあるProtein kinase Bのリン酸化サイトがあるので、そのサイトに対するリン酸化抗体を作製した。作製した抗体を用いてウエスタンブロッテイングによる解析を行った。さらに免疫沈降実験からPICK1に小胞輸送にICA69が結合していることを見出した。
KAKENHI-PROJECT-18700322
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18700322
性ホルモン依存性癌組織におけるマトリックスメタロプロテアーゼの発現
性ホルモン依存性腫瘍の子宮内膜癌を中心としたヒト固形癌において、一群のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)とそのインヒビター(TIMP)の発現と産生レベルおよび発現細胞の局在について検討するとともに、膜型MMP(MT-MMP)とMMP-9に関しても研究した。これらの研究より、以下の諸点について明らかにした。(1).ヒト子宮内膜癌では、MMP-7,8,9の産土量が非癌部組織より有意に高値であるが、これらのうちMMP-7のみがリンパ節転移と正の相関を示した。免疫組織学的にMMP-8,9は炎症細胞に局在するのに対し、MMP-7は癌細胞に限局し、癌細胞での特異的発現はin situhybridizationでも示された。潜在型MMP-7産生を示す子宮内膜癌の全症例で活性型MMP-7が検出され、癌組織内での効率的な活性化が示された。本データは、ヒト子宮内膜癌のリンパ節転移にMMP-7の発現と活性化が重要な役割を果たすことを初めて明らかにした。(2).ヒト胃癌においてもMMP-7は癌細胞特異的に発現し、その産生量は癌組織で有意に高値であった。また、癌細胞の免疫組織染色陽性率はリンパ管や静脈内侵入の程度やリンパ節および肝転移率と相関し、MMP-7は胃癌の転移に深く関わることが示された。(3). MTl-MMPのカルボキシル末端にFlagを付けたりコンビナント蛋白をアガロースビーズ上に固相化するモデルを作り、MTl-MMPによる潜在型MMP-2活性化にTIMP-2が必須の分子であることが実証した。また、腫瘍細胞の悪性形質転換でMTl-MMPの発現誘導がおこり、MTl-MMP/MMP-2のシステムが浸潤・転移に重要であることを実験的に示した。(4). MMP-10を精製し、本酵素が潜在型MMP-9の活性化酵素作用をもつことを初めて実証し、MMP-9の癌組織での役割解析への道を拓いた。性ホルモン依存性腫瘍の子宮内膜癌を中心としたヒト固形癌において、一群のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)とそのインヒビター(TIMP)の発現と産生レベルおよび発現細胞の局在について検討するとともに、膜型MMP(MT-MMP)とMMP-9に関しても研究した。これらの研究より、以下の諸点について明らかにした。(1).ヒト子宮内膜癌では、MMP-7,8,9の産土量が非癌部組織より有意に高値であるが、これらのうちMMP-7のみがリンパ節転移と正の相関を示した。免疫組織学的にMMP-8,9は炎症細胞に局在するのに対し、MMP-7は癌細胞に限局し、癌細胞での特異的発現はin situhybridizationでも示された。潜在型MMP-7産生を示す子宮内膜癌の全症例で活性型MMP-7が検出され、癌組織内での効率的な活性化が示された。本データは、ヒト子宮内膜癌のリンパ節転移にMMP-7の発現と活性化が重要な役割を果たすことを初めて明らかにした。(2).ヒト胃癌においてもMMP-7は癌細胞特異的に発現し、その産生量は癌組織で有意に高値であった。また、癌細胞の免疫組織染色陽性率はリンパ管や静脈内侵入の程度やリンパ節および肝転移率と相関し、MMP-7は胃癌の転移に深く関わることが示された。(3). MTl-MMPのカルボキシル末端にFlagを付けたりコンビナント蛋白をアガロースビーズ上に固相化するモデルを作り、MTl-MMPによる潜在型MMP-2活性化にTIMP-2が必須の分子であることが実証した。また、腫瘍細胞の悪性形質転換でMTl-MMPの発現誘導がおこり、MTl-MMP/MMP-2のシステムが浸潤・転移に重要であることを実験的に示した。(4). MMP-10を精製し、本酵素が潜在型MMP-9の活性化酵素作用をもつことを初めて実証し、MMP-9の癌組織での役割解析への道を拓いた。
KAKENHI-PROJECT-10152255
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10152255
微小機械システムの機械要素および機構に関する基礎的研究
本研究は,パンタグラフ機構を含むマイクロマニピュレ-タのための力計測用センサ(これを多数分布させた場合には分布形力覚センサとなり,1つのハンドに組み込む場合にはそのハンドに作用する力が計測可能な機械要素)の形状寸法の微小化に伴う変位特性,力特性を理論的ならびに実験的に明らかにし,センサを含む機構の使用方法に応じて,センサの最大寸法,感度を入力変数として,センサの詳細な形状寸法を決定できるシステムを開発したものである.まず,1センサ直角3方向の力を計測可能な機械要素(力覚センサ)を提案し,エンジニアリングワ-クステ-ションを用いて,センサの形状寸法の微小化に伴い,センサ部の長さ,厚さ,幅,力の作用点までの距離等がセンサの変化および力特性に及ぼす影響を理論的に明らかにし,感度を最大にするセンサ測定部の設置箇所を明らかにしている.ついで,ワイヤ放電加工機を用いて,センサ(12×12×3mm)を試作し,実験解析を行い,理論結果が実験結果とほぼ一致することを明らかにしている.さらに,センサの形状寸法の設計指針を得るために,理論を用いて,種々な寸法を与えて,センサの変位および力の関係を表す係数を無次元化して求め,これを整理して,グラフ表示を行い,このグラフを用いた各種入力変数(センサの最大寸法および感度)に対する設計変数(センサの詳細な形状寸法)を容易に決定できるシステムを構築し,理論の適用範囲を明らかにするとともに,微小機械システムの機械要素および機構に関する設計指針を得ている.本研究は,パンタグラフ機構を含むマイクロマニピュレ-タのための力計測用センサ(これを多数分布させた場合には分布形力覚センサとなり,1つのハンドに組み込む場合にはそのハンドに作用する力が計測可能な機械要素)の形状寸法の微小化に伴う変位特性,力特性を理論的ならびに実験的に明らかにし,センサを含む機構の使用方法に応じて,センサの最大寸法,感度を入力変数として,センサの詳細な形状寸法を決定できるシステムを開発したものである.まず,1センサ直角3方向の力を計測可能な機械要素(力覚センサ)を提案し,エンジニアリングワ-クステ-ションを用いて,センサの形状寸法の微小化に伴い,センサ部の長さ,厚さ,幅,力の作用点までの距離等がセンサの変化および力特性に及ぼす影響を理論的に明らかにし,感度を最大にするセンサ測定部の設置箇所を明らかにしている.ついで,ワイヤ放電加工機を用いて,センサ(12×12×3mm)を試作し,実験解析を行い,理論結果が実験結果とほぼ一致することを明らかにしている.さらに,センサの形状寸法の設計指針を得るために,理論を用いて,種々な寸法を与えて,センサの変位および力の関係を表す係数を無次元化して求め,これを整理して,グラフ表示を行い,このグラフを用いた各種入力変数(センサの最大寸法および感度)に対する設計変数(センサの詳細な形状寸法)を容易に決定できるシステムを構築し,理論の適用範囲を明らかにするとともに,微小機械システムの機械要素および機構に関する設計指針を得ている.
KAKENHI-PROJECT-03650123
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03650123
関節の周期運動における協同収縮の意義とその発生メカニズム
関節の硬さ(関節スティフネス)の自在な調節は,多様な身体運動の円滑な生成に必要不可欠である.特に,外部環境と身体各部位に相互作用が生じる場合や,関節運動の周波数を変化させる場合,関節スティフネスの微妙な調節が必要となる.この関節スティフネスの調節には,主動筋の硬さや主動筋と桔抗筋の張力の組み合わせが関与しており,さらにこれら筋張力の調節には複雑な神経回路が関与していることから,関節スティフネス調節機構の解明は身体運動の複雑な制御機構を解き明かす鍵となり得る.本研究は,身体運動の基盤となる関節の周期運動を対象とし,関節スティフネスの調整機構について検討を行った.関節スティフネス実測のために,電磁式トルクモーターを用いたスティフネス測定器を新たに開発した.そしてその測定器を用いて,鉛直面運動時の関節スティフネス調整が至適周波数を極小値とする二次関数的な傾向を示すことを明らかにした.この発見は,関節スティフネス調整の研究に新たな観点を提供する.すなわち,鉛直面においてシステムの固有振動数を運動周波数に接近させるような調整は至適周波数以上の運動周波数時の運動に限定されており,至適周波数の前後でスティフネスの調整メカニズムが変化している可能性があることである.そして,運動時の関節スティフネス調整は至適周波数と運動周波数の関係に応じて柔軟に組織化されていると考えられる.また,至適周波数は四肢の固有振動数とほぼ一致することから,筋骨格系システムの力学特性が関節スティフネス調整に重要な役割を果たすと考えられる.関節の硬さ(関節スティフネス)の自在な調節は,多様な身体運動の円滑な生成に必要不可欠である.特に,外部環境と身体各部位に相互作用が生じる場合や,関節運動の周波数を変化させる場合,関節スティフネスの微妙な調節が必要となる.この関節スティフネスの調節には,主動筋の硬さや主動筋と桔抗筋の張力の組み合わせが関与しており,さらにこれら筋張力の調節には複雑な神経回路が関与していることから,関節スティフネス調節機構の解明は身体運動の複雑な制御機構を解き明かす鍵となり得る.本研究は,身体運動の基盤となる関節の周期運動を対象とし,関節スティフネスの調整機構について検討を行った.関節スティフネス実測のために,電磁式トルクモーターを用いたスティフネス測定器を新たに開発した.そしてその測定器を用いて,鉛直面運動時の関節スティフネス調整が至適周波数を極小値とする二次関数的な傾向を示すことを明らかにした.この発見は,関節スティフネス調整の研究に新たな観点を提供する.すなわち,鉛直面においてシステムの固有振動数を運動周波数に接近させるような調整は至適周波数以上の運動周波数時の運動に限定されており,至適周波数の前後でスティフネスの調整メカニズムが変化している可能性があることである.そして,運動時の関節スティフネス調整は至適周波数と運動周波数の関係に応じて柔軟に組織化されていると考えられる.また,至適周波数は四肢の固有振動数とほぼ一致することから,筋骨格系システムの力学特性が関節スティフネス調整に重要な役割を果たすと考えられる.本研究のテーマは,身体の運動の基盤となる関節まわりの周期運動において観察される屈筋と伸筋の協同収縮の生成メカニズムを解明することである.その第一年目として,屈筋と伸筋の協同収縮は,力学的には関節の剛性(スティフネス)を高める結果となるので,運動中の関節スティフネスを測定し,その値が運動の状態とともにどのように変化するかを身体運動の実験で検討することから,間接的に屈筋と伸筋の協同収縮の発生メカニズムを検討した.まず身体運動の実験に先立ち,運動中のスティフネスを測定する実験器具をトルクモータを制御する方式で開発した.この新たに開発した測定器は,電子クラッチの作動でトルクモータと身体に外力を与える部分が制御され,関節に瞬間的にトルクを与えると共にそれ以外の間は全くフリーに関節運動ができるように工夫されている.このスティフネス測定器を用いて,6人の被験者の様々な運動周波数で運動中の肘関節にトルクを加え,その際の関節変位を同時に測定することから,運動中のスティフネスを推定した.その結果,1)関節ススティフネスは前腕部の慣性モーメントに対応する周波数の運動の際に最小となること.2)関節スティフネスはその最小値を示す運動周波数より周波数が減少する場合と増加する場合の両方ともに増加することが明らかになった.つまり,関節スティフネスの変化は運動周波数に応じてU字型の変化を示すことが明らかになった.これらの実験結果は,骨格系のダイナミクスがスティフネス制御に関与していること,すなわち屈筋と伸筋の協同収縮の発生に関与していることを示唆した.本研究の目的は,身体運動の基盤となる関節まわりの周期運動において,関節スティフネスの調整メカニズムを明らかにすることである.第1年目は,外力トルクを身体に加えると同時にその変位を測定することから関節スティフネスを計測する関節スティフネス測定器を開発し,6名の被験者を用いて様々な運動周波数における肘関節まわりの関節スティフネスを測定した.その結果,関節スティフネスは前腕部の固有周波数の際に最小値となり,関節スティフネスの調整に運動部位の慣性モーメントが関与していることが推定された.第2年目は,その仮説を検証するために,前腕部に付加を与えることによって前腕部の固有周波数を変化させ,その変化に対応し関節スティフネスも変化するかを検討した.
KAKENHI-PROJECT-13680010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13680010
関節の周期運動における協同収縮の意義とその発生メカニズム
その結果,関節スティフネスはその変化に応じた固有周波数で最小になること,さらに,その運動周波数から離れるほど関節スティフネスが増加することが確認され,その仮説が検証された.次に,関節スティフネスの調整メカニズムを検討した.関節スティフネスは筋自体の剛性の変化と屈筋と伸筋の協同収縮の割合の変化によって変化することが知られている.そこで,関節に作用する筋トルクを算出し,関節スティフネスとの関係を検討した.その結果,固有周波数より高い時は筋トルクの大きさとほぼ比例して関節スティフネスが増加すること,そして固有周波数より低い時は筋トルクの大きさとは関係なく関節スティフネスが変化することが明らかになった.これらの結果から,協同収縮による関節スティフネス調整は主に固有周波数より高い時に働く調整メカニズムであると考えられた.
KAKENHI-PROJECT-13680010
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絨毛細胞において妊娠の成立維持に関わる遺伝子群の同定
本研究では絨毛細胞の分化にかかわる液性因子を決定すること、これが絨毛細胞にもたらす遺伝子群の発現変化とその生物学的意義を明らかにすることを目的とした。平成14年度は、TNFαが絨毛由来細胞株の増殖を抑制やアポトーシスを誘導するのみならず、絨毛細胞の浸潤に関る分化マーカーであるインテグリンαサブユニット発現を転換し、βサブユニットを活性化すること、このシグナルは上記のアポトーシスの制御に関わっていることを報告した(Fukushima et al.,Biology of Reproduction,2005)。細胞外マトリクスと液性因子の相互作用が、絨毛細胞の分化を調節していることが明らかになり、液性因子としてTNFαが重要であることがわかった。さらに、サイトカインと細胞外マトリックスが絨毛細胞に及ぼす生物学的作用について検討を加えたところ、細胞外マトリックスのうち、マトリゲルには絨毛細胞に、血管内皮細胞の特徴とされる、Tube-like formationを誘導する作用があることがわかった。そこで、平成15年度は血管内皮細胞への分化についてこれに関わる因子の抽出を目的として、ヒトEVT不死化細胞株TCL1において液性因子による血管内皮特異的integrin分子発現の変化とその生物学的意義について検討結果、1)TNFα、VEGFは血管内皮特異的なintegrinαVβ3,5の発現を誘導すること、2)これらのサブユニットからのシグナルも微小血管形成および細胞死の制御に関わること、が明らかとなった(投稿準備中)。本研究により細胞外マトリクスと液性因子の相互作用が、絨毛細胞の分化を調節していることが明らかになり、液性因子としてTNFαが重要であること、さらに、TNFα,VEGFとintegrinによるシグナルが胎盤形成におけるEVTの浸潤のみならず血管内皮への分化制御にも関わると考えられた本研究では、(1)絨毛細胞のアポトーシスにかかわる液性因子を決定すること(2)これらの液性因子が絨毛細胞にどのような遺伝子群の発現変化をもたらすかを明らかにすること(3)これらの遺伝子群の動態を流産や妊娠中毒症などの疾患において検証し、真に発生過程の制御に必要な遺伝子を同定することを目的とした。本年度は、絨毛細胞のアポトーシスに関わる因子を決定し、これがもたらす遺伝子発現変化について検討を行った。1)TNFαは20pg/ml濃度で絨毛由来細胞株の増殖を抑制し、100pg/ml濃度でアポトーシスを誘導すること2)このアポトーシスは細胞外マトリックスからIntegrin, PI3 kinaseを介するシグナルにより抑制されること3)TNFαは絨毛細胞の分化マーカーであるインテグリンαサブユニット発現を転換し、βサブユニットを活性化することまたサイトカインと細胞外マトリックスが絨毛細胞に及ぼす生物学的作用について検討を加えたところ、細胞外マトリックスのうち、マトリゲルには絨毛細胞に、血管内皮細胞の特徴とされる、Tube-like formationを誘導する作用があることがわかった。先に報告した絨毛細胞の浸潤における分化とともに、この血管内皮細胞への分化における遺伝子変化についても液性因子と接着分子を中心とした制御機構について引き続き検討する。本研究では絨毛細胞の分化にかかわる液性因子を決定すること、これが絨毛細胞にもたらす遺伝子群の発現変化とその生物学的意義を明らかにすることを目的とした。平成14年度は、TNFαが絨毛由来細胞株の増殖を抑制やアポトーシスを誘導するのみならず、絨毛細胞の浸潤に関る分化マーカーであるインテグリンαサブユニット発現を転換し、βサブユニットを活性化すること、このシグナルは上記のアポトーシスの制御に関わっていることを報告した(Fukushima et al.,Biology of Reproduction,2005)。細胞外マトリクスと液性因子の相互作用が、絨毛細胞の分化を調節していることが明らかになり、液性因子としてTNFαが重要であることがわかった。さらに、サイトカインと細胞外マトリックスが絨毛細胞に及ぼす生物学的作用について検討を加えたところ、細胞外マトリックスのうち、マトリゲルには絨毛細胞に、血管内皮細胞の特徴とされる、Tube-like formationを誘導する作用があることがわかった。そこで、平成15年度は血管内皮細胞への分化についてこれに関わる因子の抽出を目的として、ヒトEVT不死化細胞株TCL1において液性因子による血管内皮特異的integrin分子発現の変化とその生物学的意義について検討結果、1)TNFα、VEGFは血管内皮特異的なintegrinαVβ3,5の発現を誘導すること、2)これらのサブユニットからのシグナルも微小血管形成および細胞死の制御に関わること、が明らかとなった(投稿準備中)。本研究により細胞外マトリクスと液性因子の相互作用が、絨毛細胞の分化を調節していることが明らかになり、液性因子としてTNFαが重要であること、さらに、TNFα,VEGFとintegrinによるシグナルが胎盤形成におけるEVTの浸潤のみならず血管内皮への分化制御にも関わると考えられた
KAKENHI-PROJECT-14770573
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14770573
転写・RNAプロセシング・輸送の機能的連携と統合による遺伝子発現調節機構の解明
遺伝子の転写・pre-mRNAスプライシング・mRNA核外輸送など、従来は個別に研究されてきた諸反応が、生体内では互いに連携もしくは共役しながら進行していることが近年明らかになりつつある。しかし、その分子機構には未だ謎が多いのが現状である。本研究において、スプライシングやmRNA核外輸送の分裂酵母変異株の原因遺伝子の機能及び相互作用解析を行い、真核生物における遺伝子発現を統合的に制御する機構の一部を解明した。遺伝子の転写・pre-mRNAスプライシング・mRNA核外輸送など、従来は個別に研究されてきた諸反応が、生体内では互いに連携もしくは共役しながら進行していることが近年明らかになりつつある。しかし、その分子機構には未だ謎が多いのが現状である。本研究において、スプライシングやmRNA核外輸送の分裂酵母変異株の原因遺伝子の機能及び相互作用解析を行い、真核生物における遺伝子発現を統合的に制御する機構の一部を解明した。遺伝子の転写・pre-mRNAスプライシング・mRNA核外輸送など、従来は個別に研究されてきた諸反応が、生体内では互いに連携もしくは共役しながら進行していることが近年明らかになりつつある。しかし、その分子機構には未だ謎が多い。本年度の研究では、分裂酵母mRNA核外輸送変異株ptr7の原因遺伝子がmRNAの3'末形成複合体因子Clp1をコードしていることを明らかにし、mRNAの3'末形成と組mRNA核外輸送の間には密接な連携機構が存在していることが示された。ptr7変異株では制限温度下でmRNAの3'末に付加されるpoly A鎖の伸長が観察され、そのことが輸送阻害に関連すると推定された。また、ptr7変異株では輸送阻害に加えて、pre-mRNAスプライシングにも阻害が見られた。更に、分裂酵母スプライシング変異株prp1prp14においてmRNAの細胞内分布をin situ hybridizationによって解析した結果、prp1とprp3では制限温度下でmRNAの核蓄積が検出され、スプライシング反応とmRNA核外輸送との間の連携機構の存在が示唆された。また、核膜孔複合体因子Nup85遺伝子に変異をもつptr5変異株とprp8などのスプライシング変異の間に、合成致死等の遺伝学的相互作用があることを明らかにした。これらの結果から、核膜孔複合体を介したスプライシングとmRNA核外輸送の連携機構の存在が初めて示唆された。遺伝子の転写・pre-mRNAスプライシング・mRNA核外輸送など、従来は個別に研究されてきた諸反応が、生体内では互いに連携もしくは共役しながら進行していることが近年明らかになりつつある。本研究では、その連携機構について分子レベルでの解明を目指している。現在までの解析で、分裂酵母mRNA核外輸送変異株ptr7の原因遺伝子がmRNAの3'末形成複合体因子をコードしていることを明らかにしたので、本年度は、ptr7変異のサプレッサーを分離し、Ptr7pと機能的に相互作用する因子の同定を行った。その結果、サプレッサーとして、ysh1遺伝子が同定された。更に、ysh1サプレッサーの変異部位同定を行った。Ysh1pは3'末形成複合体を構成する因子の一つとして知られていることから、Ptr7pと相互作用することで、mRNA3'末形成反応に加えて、mRNAの核外輸送過程にも関与している可能性が示唆された。また、mRNA核外輸送変異株ptr8において、セントロメアのヘテロクロマチン形成に異常があることを、ChIP解析やura4レポーター遺伝子を用いたサイレンシングアッセイによって明らかにした。今後の解析により、染色体を不活性な状態に保つヘテロクロマチン形成に、mRNA核外輸送関連因子が関与する新しい細胞内連携機構が明らかになることが期待される。また、mRNA核外輸送変異ptr9やptr10が、転写とmRNA核外輸送のカップリングを行うTREX2の構成因子Suslpの過剰発現によって、抑制されることを明らかにした。これらの結果は、Ptr9pとPtr10p<膜結合蛋白質>がTREX2複合体を介してmRNA核外輸送過程に関与している可能性を示唆している。本研究では、遺伝子の転写・pre-mRNAスプライシング・mRNA核外輸送など、従来は個別に研究されてきた諸反応が、生体内では互いに連携もしくは共役しながら進行していることを、分裂酵母のRNA代謝に関わる各種変異株を用いて統合的に解析し以下の結果を得た。(1)核膜孔複合体(NPC)因子に変異を持つmRNAの核外輸送変異株ptr5の遺伝学的解析により、Ptr5pがスプライシング因子との間に機能的関連性を持つことを明らかにした。分裂酵母では、NPC近辺が転写とスプライシングの場となり遺伝子発現を効率化している可能性が考えられた。(2)分裂酵母の機能未知因子spRNPS1がスプライソソームの構成成分であること、また、spRNPS1がmRNA核外輸送に関わるTREX複合体因子と機能的相互作用を示すことを、遺伝学的解析及び免疫共沈解析により明らかにした。spRNPS1は、分裂酵母においてスプライシング後の成熟mRNAをmRNA核外輸送経路にリンクさせる機能を持つことが示唆された。(3)染色体分離に関わるスピンドル極体(SPB)の構成因子であるPtr9pの変異株はmRNAの核外輸送に異常を示す。Ptr9pがTREX複合体と機能的に相互作用することを見いだした。更に、ptr9変異株の機能的復帰変異体を分離した。
KAKENHI-PROJECT-20370070
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20370070
転写・RNAプロセシング・輸送の機能的連携と統合による遺伝子発現調節機構の解明
現在、その原因遺伝子をクローニング中である。復帰変異株の原因遺伝子を解析することで、如何にしてSPBの構成因子がmRNA核外輸送機構と連携するか、その分子機構解明の糸口となることが期待される。(4)mRNAの核外輸送に関わる核膜結合因子Ptr10pの変異が、転写伸長とmRNA核外輸送に関わるThp2(TREX複合体構成因子)の過剰発現によって機能相補されることを明らかにした。Ptr10pは転写とmRNA核外輸送をリンクする因子の一つである可能性が強く支持された。
KAKENHI-PROJECT-20370070
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20370070
音楽演奏のデジタル保存と定量行為分析に基づく情報コンテンツシステムの構築
楽譜などの筆記的記号によらず、演奏行為やそれが行われる空間をヴィデオグラムやモーションキャプチャなどに直接取り込み、演奏側、空間設計側の視点から解析することで、現象としての音楽を非筆記的に保存、検証することが可能である。洋楽の打楽器ならびに管弦楽、邦楽の能楽ならびに建築の見地からこのようなデジタル検証を行い、これを生かして教育プログラムを策定した。成果についてはポータルサイトなど情報メディア環境を準備した。第一年次、建築ならびに管弦楽に関しては、東京芸術大学の学生を主体とする選抜オーケストラを対象にマルチアングル演奏解析を行った。第二年次、同一のホールの音響改修、音響改修と時宜を一にしていたため、前回解析などの成果をもとに基本プランを策定、それに基づいて実際にホールの改修がなされたのち、演奏測定を行った。第一年次の分析成果から、個別のプレーヤーの演奏準備段階、レッスン段階、およびGPや本番での「手」「目」「姿勢」「呼吸」の動き、そしてそれらとの関連において「意識・注意」を体系的に理解するために、既存の骨組みとして「速読」のカリキュラムを導入することとした。それと対照することで、分野によらない「身体のための基礎ソルフェージュ」の新たなメソードを準備した。第三年次は、これらをもとにノンプロフェッショナルの一般プレーヤーにも有意であるような教育カリキュラムを策定し、アマチュアオーケストラを対象に全練習のアーカイヴを含むデジタルヴィデオグラム化を行うと同時に、マーカーレス・モーションキャプチャシステムを導入、演奏本番を丸ごとの身体行為収録を行った。身体の誤った使用がパフォーマンスの質的限界を規定することが明確化され、予防医学的な同様のメディカルケアの必要性、一般の<機材利用を通じて身体故障を起こさない合理的なからだの使い方>を教示伝達することを後続研究の共通目標とする結論を得た。楽譜などの筆記的記号によらず、演奏行為やそれが行われる空間をヴィデオグラムやモーションキャプチャなどに直接取り込み、演奏側、空間設計側の視点から解析することで、現象としての音楽を非筆記的に保存、検証することが可能である。洋楽の打楽器ならびに管弦楽、邦楽の能楽ならびに建築の見地からこのようなデジタル検証を行い、これを生かして教育プログラムを策定した。成果についてはポータルサイトなど情報メディア環境を準備した。第一年次、建築ならびに管弦楽に関しては、東京芸術大学の学生を主体とする選抜オーケストラを対象にマルチアングル演奏解析を行った。第二年次、同一のホールの音響改修、音響改修と時宜を一にしていたため、前回解析などの成果をもとに基本プランを策定、それに基づいて実際にホールの改修がなされたのち、演奏測定を行った。第一年次の分析成果から、個別のプレーヤーの演奏準備段階、レッスン段階、およびGPや本番での「手」「目」「姿勢」「呼吸」の動き、そしてそれらとの関連において「意識・注意」を体系的に理解するために、既存の骨組みとして「速読」のカリキュラムを導入することとした。それと対照することで、分野によらない「身体のための基礎ソルフェージュ」の新たなメソードを準備した。第三年次は、これらをもとにノンプロフェッショナルの一般プレーヤーにも有意であるような教育カリキュラムを策定し、アマチュアオーケストラを対象に全練習のアーカイヴを含むデジタルヴィデオグラム化を行うと同時に、マーカーレス・モーションキャプチャシステムを導入、演奏本番を丸ごとの身体行為収録を行った。身体の誤った使用がパフォーマンスの質的限界を規定することが明確化され、予防医学的な同様のメディカルケアの必要性、一般の<機材利用を通じて身体故障を起こさない合理的なからだの使い方>を教示伝達することを後続研究の共通目標とする結論を得た。第一年次は、研究の全体像に適合したシステムの設計および実装、データテイキングのための原理的準備を行い、プロトタイプ実装を完了した。演奏行為の非筆記的定量測定および解析のための基礎システムとして、デジタルカメラ、デジタルCCDマルチ画角カメラおよび対応するレコーダ、カメラサーバ、データテイキングシステム、ストリーミングサーバから成るシステム全体を設計、実装した。管弦楽および空間利用に関しては、東京大学安田講堂を試験スペースとして一貫して使用し、まず東京芸術大学在学学生を中心とする2管編成のオーケストラメンバーを集め、アンサンブルの出発点から最終的な演奏の完成に至るまでのすべてのプロセスを、画像22回路、音声5.1チャンネル対応のデジタルアーカイヴシステムで記録した。一つの合奏態を結成の原点から演奏の完成まですべてデジタルアーカイブした例は、筆者の調べる限り報告がない。このようなシステムに記録しながら、レスピーギ「リュートのための古代舞曲とアリア第三組曲」、チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35」(ヴァイオリン独奏、佐藤まどか)、ベートーヴェン「交響曲第5番ハ短調作品67(「運命」)」の3作品のすべての練習および本番を研究収録、ついで、読売新聞社および読売日本交響楽団の協力を得て、レスピーギ同前曲、武満徹「地平線のドーリア」、バルトーク「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」を同様に収録、こちらはヨミウリオンラインストリーミングの協力を得、ヴィデオオンデマンドのシステムに実装、プロトタイプ世界公開を行った。(<http://www.yomiuri.co.jp/stream/art/>___-)これらをもととする、生態認知科学的な演奏技法分析を開始した。並行して打楽器演奏、能楽について、収録のための基礎的枠組みの整理を進めた。システムインテグレーションの観点から、これら画像データを自然言語処理の手法を援用してデータコーパス上で取り扱う手法を、グラフ理論を援用して原理から設計、別記論文のほか、東京大学伊東研究室、今井健君の修士論文「知識情報のモデル構造化とその可視化」がある。2002年3月現在こちらはフルペーパーを準備中である。
KAKENHI-PROJECT-13410014
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13410014
音楽演奏のデジタル保存と定量行為分析に基づく情報コンテンツシステムの構築
平成14年度の研究の第一の焦点として、非筆記的な記録の記録媒体とそのサーブシステムの再検討を挙げる必要がある。すなわち、ビデオオンデマンドなどの情報公開システムの運用には、我が国の情報インフラストラクチャの全体水準が大きく影響するが、本研究において要求されるブロードバンドの水準にはいまだインフラストラクチャが追い付いておらず、コンテンツベースで進展した研究結果の公開にあたってより幅広い可能性を平行して模索することとなった。すでに前年度報告したように平成13年度の研究内容で行った、読売日本交響楽団との演奏、およびシシポジウム「アートテクノロジブレイン」の非筆記的、音声画像、コンテンツは、同年度のうちにインターネットヴィデオオンデマンドシステム「ヨミウリオンライン」でストリーミング配信されたが、音声は滑らかに伝送されるものの、画像については、東京大学学内など、充分なbit ratioが確保される環境以外ではフリーズやスキップが著しく、当初目的の情報をインターネットを通じて配信することは難しいと判断された。平行して行われた、同一プログラムのCSジャパン読売G+を通じての配信ではそのような問題はなく、さらに、平成13年から可能になったケーブルネットの広域連携のため、G+から二次配信されたケーブルテレビジョンネットワークを通じての配信が繰り返し可能となり、CSおよび系列のケーブルネットなどを通じての情報発信を検討した。8月より文部科学省はCSネットワーク「NHKワールド」と同一の一波を賃借し、世界195ヵ国を対象とする高度学術専門の国際CSネットワークチャネル「NlMEワールド」を開始した。この立ち上げから東京大学以東研は一定の関係を持ったので、同CSネットワークを通じての国際教育情報発信を立ち上げることとし、非筆記的記録コンテンツをその方向でサーブする体制を調えた。報告書を記している現時点においては上記ヨミウリオンラインと同一のコンテンツは英語ベースの国際コンテンツに作り替え、世界発信する段階にあり、引続き作業を進めている。これら、サーブシステムの立ち上げと平行しての、個別内容の研究の焦点として、打楽器および能楽の練習段階からの演奏収録、および計測設定、カリキュラム化を進展させた。打楽器、および能楽おのおの、100時間以上におよぶリハーサルの収録を行い、習熟の過程全体を非筆記的デジタル保存、コンテンツ化した。これら練習、習熟の過程を経て、「東京芸術大学奏楽堂楽器シリーズ<打楽器>」「東京芸術大学大学院能楽専攻博士課程演能「巻絹」(シテ青木涼子)「天鼓」(シテ野村四郎)」などの演奏本番を執り行った。これらの解析、および結果のカリキュラム化とサーブシステム構築を引続き進めている。
KAKENHI-PROJECT-13410014
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13410014
絶滅危惧植物オオイシソウ科藻類の生育調査と培養の試み
目的:1999年8月、合宿先付近を流れる青野川河口で絶滅危惧IA類に指定されるインドオオイシソウを偶然発見した。以来、毎年夏に観察会を実施してきた。今回の研究は、(1)年間を通しての青野川の水質調査および季節さとの藻体の消長を観察すること、(2)実験室内での藻体の培養方法の確立である。方法:(1)については、毎月一度の水質調査、観察、藻体の測定および標本の作製を行った。(3)については、(1)での調査結果をもとに藻体の生育条件を再現して培養を試みた。結果:(1)青野川の水質は、pH6.0付近、水温は7°C27°C(真夏には、一時的に30°Cを超える)、塩分濃度変動するが約0.1%であった。藻体の状態は、4月の約5cm程度から夏に向かっての水温の上昇に伴って、最長10cm程度まで生育していった。11月に入ると水温が低下したものの5cm程度の長さをを維持していた。年が明けると予想外に寒さが厳しく藻体は姿を消した。その後も3月の下旬まで藻体の確認はできていないが、今後水温が上昇すれば再度藻体の生育を確認できるものと思われる。(3)については、青野川の弱酸性に近づけるため、水草栽培専用の培養土を用いて良好な結果を得た。塩分の調整には人工海水を用いた。生育地付近の水質は、潮の干満により塩分濃度が変動するが、基礎実験によると塩分濃度が0.1%程度で最も発芽率が高く、その後の生育も良好であった。他に、CO_2の添加などについても試みたが、藻体の生育にさほど差は生じなかった。さらに、丸形水槽内に緩やかな水流を設けることで、ケイ藻の付着などをある程度防ぐことができた。培養した藻体は、4cm弱まで生育し数ヶ月間にわたり状態を維持できた。また、培養した藻体の1部を現地に戻したが、低水温の時期であったため、結果を得るにまでは至っていない。気温が十分上昇する初夏に再度試みる予定である。目的:1999年8月、合宿先付近を流れる青野川河口で絶滅危惧IA類に指定されるインドオオイシソウを偶然発見した。以来、毎年夏に観察会を実施してきた。今回の研究は、(1)年間を通しての青野川の水質調査および季節さとの藻体の消長を観察すること、(2)実験室内での藻体の培養方法の確立である。方法:(1)については、毎月一度の水質調査、観察、藻体の測定および標本の作製を行った。(3)については、(1)での調査結果をもとに藻体の生育条件を再現して培養を試みた。結果:(1)青野川の水質は、pH6.0付近、水温は7°C27°C(真夏には、一時的に30°Cを超える)、塩分濃度変動するが約0.1%であった。藻体の状態は、4月の約5cm程度から夏に向かっての水温の上昇に伴って、最長10cm程度まで生育していった。11月に入ると水温が低下したものの5cm程度の長さをを維持していた。年が明けると予想外に寒さが厳しく藻体は姿を消した。その後も3月の下旬まで藻体の確認はできていないが、今後水温が上昇すれば再度藻体の生育を確認できるものと思われる。(3)については、青野川の弱酸性に近づけるため、水草栽培専用の培養土を用いて良好な結果を得た。塩分の調整には人工海水を用いた。生育地付近の水質は、潮の干満により塩分濃度が変動するが、基礎実験によると塩分濃度が0.1%程度で最も発芽率が高く、その後の生育も良好であった。他に、CO_2の添加などについても試みたが、藻体の生育にさほど差は生じなかった。さらに、丸形水槽内に緩やかな水流を設けることで、ケイ藻の付着などをある程度防ぐことができた。培養した藻体は、4cm弱まで生育し数ヶ月間にわたり状態を維持できた。また、培養した藻体の1部を現地に戻したが、低水温の時期であったため、結果を得るにまでは至っていない。気温が十分上昇する初夏に再度試みる予定である。
KAKENHI-PROJECT-21917003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21917003
百GeV領域の高解像度スペクトル観測によるガンマ線パルサーの粒子加速機構の解明
昨年度末、CANGAROO-III大気チェレンコフ望遠鏡を用いたステレオ観測によって、ガンマ線パルサーPSR B1509-58/MSH15-52から広がったTeVガンマ線放射を検出した。放射が広がっていることから、TeVガンマ線源は点源であるパルサーからではなく、X線など多波長で存在が確認されているパルサー星雲であることを示唆する。近年、銀河系内のTeVガンマ線天体の多数派を占めるパルサー星雲は、宇宙線供給源候補として注目されている。MSH15-52での陽子起源TeVガンマ線放射モデルでは、パルサーのスピンダウンエネルギーでは十分なエネルギーが供給できないことを示した。また電波からTeVガンマ線に渡る多波長のデータを用いて電子起源モデルを検証し、説明可能なモデルパラメータ(磁場、'電子のべき、電子の最大エネルギー)を示した。これらをまとめてAstrophysical Journal誌に投稿し、受理された。また、博士論文では以上の内容に加えてパルサーの回転エネルギーからパルサー星雲からの放射へのエネルギー分配率を波長ごとに計算し、他の代表的なパルサー星雲であるかに星雲・帆座パルサー星雲と比較した。星雲の磁場の強さや周囲の超新星残骸との相互作用を反映した特徴が見られたが、統一的な傾向を見出すためにはさらにサンプルを増やして調査する必要性を指摘し、継続して調べている。オーストラリアの砂漠地帯ウーメラに設置された、解像型大気チェレンコフ望遠鏡であるCANGAR00-III望遠鏡におけるステレオ解析プログラムを、グループ内に2つ存在する独立解析グループのうちの一方の中心として開発・整備を行った。2005年8月にインドで行われたInternational Cosmic-Ray Conferenceにおいて、大天頂角のステレオ観測と2003年に行われたかにパルサー/星雲の解析結果について口頭発表をおこない、また他のチェレンコフ望遠鏡グループの人々と積極的に情報交換を行った。2005年5月には1ヶ月現地に滞在して、ガンマ線パルサーPSR B1509-58を観測を行った。2004年度に取得したデータと合わせて現在も解析を進めている。また11月から12月にかけて1ヶ月現地に滞し、Flash ADCの組み込みと作動試験、データ収集を行ったのち、かにパルサー/星雲の観測を行い、グループ内では初となる現地でのクイック解析を開発したプログラムを用いて行い、有意なガンマ線信号を捕らえていることを確認した。2006年3月の日本物理学会年次大会ではCANGAROO-IIIのステレオ解析手法およびその結果について口頭発表を行った。データ解析の高速化を図るため、次世代型高速プロセッサであるCell Broadband Engineの導入を検討し、その第一歩としてパルサーの周期解析プログラムを移植し、従来のCPUと比較して10100倍の高速化を実現した。またその結果について2006年3月の日本天文学会年会においてポスター発表を行い、大きな反響を得た。オーストラリアの砂漠地帯ウーメラに設置されたCANGAROO-III大気チェレンコフ望遠鏡を用いて、2006年4月から6月にかけてガンマ線パルサーPSR B1509-58を実効時間で約48時間の観測を行い、データ解析によって7σを超える有意度でガンマ線信号を捕らえることに成功した。ガンマ線放射は我々の望遠鏡のpoint spread function (PSF)よりも広がった形状を示しており、同じ南天に設置されたH.E.S.S.望遠鏡による報告を確認することができた。その広がりの大きさは彼らとのPSFの違いを考慮に入れて同程度であり、方向に関してもX線の観測で見つかっているパルサーから伸びたジェットに沿った向きであることを確認した。また同時に890GeVから5TeVに渡るエネルギーバンドで微分フラックスを求め、べき型関数をフィットしたところphoton indexが2.3±0.5と決まった。これら結果を論文としてまとめ、現在投稿準備中である。2006年11月から約1ヶ月現地に滞在し小マゼラン星雲の観測を行った。望遠鏡は荒野の野外に設置されているため、反射鏡の汚れによる劣化が起こる。その回復を図るため観測期間終了後に大量の水を用いて主鏡の洗浄作業を行った。また観測の合間に、パターントリガーモジュールと呼ばれる夜光によるトリガーを押さえることを目的として開発されたボードの性能評価のための試験データを取得し、現地でデータ解析を行って正常に動作していることを確認し、定量的な評価を現在行っているところである。昨年度末、CANGAROO-III大気チェレンコフ望遠鏡を用いたステレオ観測によって、ガンマ線パルサーPSR B1509-58/MSH15-52から広がったTeVガンマ線放射を検出した。放射が広がっていることから、TeVガンマ線源は点源であるパルサーからではなく、X線など多波長で存在が確認されているパルサー星雲であることを示唆する。近年、銀河系内のTeVガンマ線天体の多数派を占めるパルサー星雲は、宇宙線供給源候補として注目されている。MSH15-52での陽子起源TeVガンマ線放射モデルでは、パルサーのスピンダウンエネルギーでは十分なエネルギーが供給できないことを示した。また電波からTeVガンマ線に渡る多波長のデータを用いて電子起源モデルを検証し、説明可能なモデルパラメータ(磁場、'電子のべき、電子の最大エネルギー)を示した。これらをまとめてAstrophysical Journal誌に投稿し、受理された。
KAKENHI-PROJECT-05J02141
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05J02141
百GeV領域の高解像度スペクトル観測によるガンマ線パルサーの粒子加速機構の解明
また、博士論文では以上の内容に加えてパルサーの回転エネルギーからパルサー星雲からの放射へのエネルギー分配率を波長ごとに計算し、他の代表的なパルサー星雲であるかに星雲・帆座パルサー星雲と比較した。星雲の磁場の強さや周囲の超新星残骸との相互作用を反映した特徴が見られたが、統一的な傾向を見出すためにはさらにサンプルを増やして調査する必要性を指摘し、継続して調べている。
KAKENHI-PROJECT-05J02141
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05J02141
大規模コホートに基づく個別化されたリスク予測ツール、バイオマーカーの有用性の研究
冠動脈疾患発症の10年間発症危険度を予測する日本人を対象とした初めてのリスクスコアである吹田スコアを開発した。発症に関する前向き研究データから、古典的サポートベクターマシンおよびランダムフォレストの複数モデルの組み合わせにより、日常診療上よく使用される約40項目のルーチン検査から、MIDAS研究の総数1920症例に基づき、アンサンブル学習を用いた複数モデルの組み合わせによMACE(Major Adverse Cardiac Event)予測モデルを構築し、約40モデルの識別距離の組み合わせから偽陽性5%程度、偽陰性立5%程度で予測するモデルを構築し、既存予測モデルの成績より良好な成績を得た本年度は当初目標の新規バイオマーカーの測定準備を行うとともに以下の2つの新規のリスク予測モデルを検討した1)吹田研究による脳卒中発症リスクスコアの研究吹田研究のベースラインデータをもとに吹田スコア(冠動脈スコア)と同様に一次予防を目的とした脳卒中の10年発症リスクスコアを作成した。平均15.3年の追跡期間で257件の脳卒中発症を認めた。年齢、性別、心房細動、CKD、冠動脈疾患の履歴、LVH,収縮期血圧、降圧薬内服、糖尿病、喫煙が有意な予測因子であり、新しいスコアはフラミンガム研究のリスクスコアよりc-statsisticsなどが有意に高く、日本人の脳卒中のリスク予測により有効であることが示された。2)循環器疾患を有する糖尿病患者におけるMACE発症リスクスコアの作成国立循環器病研究センターを中心に前向き観察研究として、循環器疾患(虚血性心疾患、心不全、脳卒中、Afなど)を有する患者群におけるHbA1Cの至適カットオフを検討するMIDAS研究の登録者の1年観察データをもとに、HbA1Cの至適カットオフを検討した際に、7.0以下でもMACE発症が上昇するU字型分布ととることとCKD合併が一因であることを見出し、2015年の循環器学会のLate breaking abstractで報告した。同集団におけるMACE発症について、国立循環器病研究センター内の786症例のAMI症例について期間中の全検査データを記録したデータベースの作成を行い、これをもとにサポートベクターマシンによるデータマインニングにより、一年後のMACE予測を行った。従来の古典的リスク以外の約20項目の検査データを加えることで従来リスクによるモデルより約15-20%高い正確性での予測が可能であった。今後、他の疾患患者やでのデータも加え、より広範な患者でのテーラーメイド化されたリスクスコアを作成予定である本研究では、予測モデルの構築のためにMIDAS研究(UMIN000010039)に登録された、後ろ向き+前向きの計3800症例動脈硬化性疾患を有する患者群のデータを解析した。機械学習の手法としてよく使われるSupport Vector Machine (SVM)とrandom forest (RF)による1年後のMACE(心臓死/ MI / HF/stroke/PCI)の予測精度の検討を行った。検査等の項目は、入院30日以内の測定値を抽出した。複数モデルの組み合わせにより精度向上をはかるために、本研究における学習データの選択を、1感度を大きくする、2偽陽性率を小さくする、という2つの評価関数による多目的最適化問題として、遺伝的アルゴリズムを用い、上記データベースより日常診療上よく使用される約40項目のルーチン検査から、サポートベクターマシンを用いて、複数モデルの組み合わせによる予測モデルを構築し、MACE発症症例の偽陽性5%程度、偽陰性立5%程度で予測するモデルを構築した。この成績はGRACR研究などからの既存のMACE予測モデルの成績より感度、特異度ともに約20%程度向上している。また本院野口らとJ Am Coll Cardiol. 2015などで冠動脈の不安定プラークのMRI像(PMR)の効果について報告したが、JAT2014で報告したMIの予測モデルに上記のPMRを組み合わせた場合有意に693人の患者におけるMACE予測での診断能向上を認めた。また従来手法による脳梗塞のリスクモデルに関しては、フラミンガムタイプのリスクスコアを作成し、ヨーロッパ公衆衛生学会で発表を行った。ミドカインなどのAKI関連マーカー、エリスロポエチンと心不全などに関するリスク分析を行っている上記機械学習モデルに関しては、従来法にくらべ大幅な診断能向上を認めており、現在特許出願に向けての準備を行っている。上記手法に関しては、広く応用可能であり、現在AMIにおけるさらなる長期予後予測、未破裂動脈瘤における破裂リスク、大動脈解離および大動脈瘤の破裂リスク(Circulation in revision)、CKDに対するomega3脂肪酸に対する前向き試験≪OKEHAMA研究)などの登録データなどで広く応用可能であると考えられるまた当院ではPINNACLEなど欧米の大規模レジストリーに準じたデータベースを電子カルテ上から自動抽出するシステムを開発しており、こちらのデータもモデル予測の性能向上に資すると考えられる。更に客員教授として研究している藤田保健衛生大学でも病院全体で同様のDWHを作成しているため応用可能性は大きいと思われる発症に関する前向き研究データから、古典的サポートベクターマシンおよびランダムフォレストの複数モデルの組み合わせにより、日常診療上よく使用される約40項目のルーチン検査から、MIDAS研究の総数1920症例に基づき、アンサンブル学習を用いた複数モデルの組み合わせによMACE(Major Adverse Cardiac Event)予測モデルを構築し、約40モデルの識別距離の組み合わせから偽陽性5%程度、偽陰性立5%程度で予測するモデルを構築し、既存予測モデルの成績より良好な成績を得た.この成績はGRACR研究などからの既存のMACE予測モデルの成績より感度、特異度ともに約20%程度向上しおり、現在特許出願中である。
KAKENHI-PROJECT-26460790
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26460790
大規模コホートに基づく個別化されたリスク予測ツール、バイオマーカーの有用性の研究
またMRIを用いた不安定プラークの画像上の特徴に関する研究を世界に先駆けて行い、冠動脈高輝度プラーク(冠動脈high-intensity plaque:HIP)の予測精度に関して検討を行った。更に、同群に対して、人工知能応用による自然言語処理を行い、胸痛、夜間発作性呼吸困難当の症候を電子カルテの記述から抽出を行うロジックを構築した。GRACEなど既存の予測ツールに患者の症候をプラスした場合はより予測精度が向上した(AUC 0.82vs 0.74)本研究の成果をもとに、複合的なリスクを有数患者群に対して機械学習を行い、個人個人のリスクにより個別化された高血圧治療戦略を採用することにより医療費削減に成功している例(Ann Intern Med. 2011)などのように、医療費削減につながる個別化医療推進を行うことも今後可能と思われる冠動脈疾患発症の10年間発症危険度を予測する日本人を対象とした初めてのリスクスコアである吹田スコアを開発した。発症に関する前向き研究データから、古典的サポートベクターマシンおよびランダムフォレストの複数モデルの組み合わせにより、日常診療上よく使用される約40項目のルーチン検査から、MIDAS研究の総数1920症例に基づき、アンサンブル学習を用いた複数モデルの組み合わせによMACE(Major Adverse Cardiac Event)予測モデルを構築し、約40モデルの識別距離の組み合わせから偽陽性5%程度、偽陰性立5%程度で予測するモデルを構築し、既存予測モデルの成績より良好な成績を得た従来のリスク予測に加えて、新たにに2つの疾患領域、すなわち脳卒中のリスクスコア、さらに循環器病疾患における2次予防のリスクスコアの開発が可能になった。更にサポートベクターなど機械学習によるデータマインニングを用いて、従来のリスクスコア作成に用いられる生存解析による線形モデル予測を超える予測精度を達成する可能性が示唆され、吹田スコアに対する改良の可能性がより明らかになった。またMPO/PON-1比については研究協力者杜らとともに他の新規マーカーより優れることをatherosclerosis誌に発表しており、今後吹田研究における保存検体などでの測定を通じより広範な応用可能性が高いことを確かめている。
KAKENHI-PROJECT-26460790
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vHOE符号器を用いた複数視野像の一括取得による小型高速ギガピクセルカメラの創出
ホログラム光学素子を用いた提案撮像系について,実験に基づく原理確認を行った.ホログラフィックグレーティングを複数枚露光し,それらを組み合わせることでフィルタ型ビームスプリッタを構成した.入射光の角度に応じてビーム分割の大きさや方向を変化させることで,角度独立な画像の符号化を行う瞳面変調光学素子を実装した.文字などのスパースネスが十分大きい物体に対しては,レーザー光照射により波長域を十分狭くした場合少なくとも三視野程度で予想していた結果が達成されることが分かった.一方で,対象物の構造や階調が複雑であるようなスパースネスの小さい物体や,照明光の波長域が広い場合,画像再構成を含めた撮像結果が十分でなく,手法面と素子実装面でさらなる工夫が必要であることが明らかになった.また,当該手法の広角化に有効な,イメージセンサの穴あけ加工を利用した撮像系設計手法について着想が有り,シミュレーション及び基礎実験により原理の妥当性を実証した.次年度以降は当初の提案内容に当該手法を融合させ,広角と高解像度の同時実現を目指す.概ね計画どおりに進行している.より実際的な撮像状況で画質において十分な性能が得られるように,手法面と素子実装面についてさらに検討を進める.広角化のための撮像素子開発も並行して進める.ホログラム光学素子を用いた提案撮像系について,実験に基づく原理確認を行った.ホログラフィックグレーティングを複数枚露光し,それらを組み合わせることでフィルタ型ビームスプリッタを構成した.入射光の角度に応じてビーム分割の大きさや方向を変化させることで,角度独立な画像の符号化を行う瞳面変調光学素子を実装した.文字などのスパースネスが十分大きい物体に対しては,レーザー光照射により波長域を十分狭くした場合少なくとも三視野程度で予想していた結果が達成されることが分かった.一方で,対象物の構造や階調が複雑であるようなスパースネスの小さい物体や,照明光の波長域が広い場合,画像再構成を含めた撮像結果が十分でなく,手法面と素子実装面でさらなる工夫が必要であることが明らかになった.また,当該手法の広角化に有効な,イメージセンサの穴あけ加工を利用した撮像系設計手法について着想が有り,シミュレーション及び基礎実験により原理の妥当性を実証した.次年度以降は当初の提案内容に当該手法を融合させ,広角と高解像度の同時実現を目指す.概ね計画どおりに進行している.より実際的な撮像状況で画質において十分な性能が得られるように,手法面と素子実装面についてさらに検討を進める.広角化のための撮像素子開発も並行して進める.
KAKENHI-PROJECT-18H03257
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H03257
ラット虹彩縮瞳筋におけるpharmaco-mechanical ccupling-その機序ならびに除神経効果との関連
1)単離虹彩平滑筋の電気生理学的をパッチクランプ用を用い検討した.2)単離した平滑筋は高カリウムあるいはアセチルコリンの適用により収縮した.これらの細胞は約-50mVの静止膜電位を持ち,脱分極性電流により活動電位は発生せず,電気緊張電位は外向き整流を示した.3)膜電位固定下において,膜電位の脱分極によってみられる電流は外向き電流のみで,内向き電流は殆ど認められなかった. (正常栄養液中)4)外向き電流は,低濃度のテトラエチルアンモニウム(TEA, 1mM)及び, 4-アミノピリジン(4-AP, 2mM)のそれぞれで抑制され,また両薬物の存在下では大部分が抑制された.5)単一Kチャネル電流を検討した結果,少なくとも3種類の異なったKチャネルの存在が確認された.その1つは,細胞内のCa濃度に依存性があり細胞外のTEAによって阻害された.従って,外向き電流にはTEAに非常に感受性の高いCa依存性K電流と, 4-APで抑制されるK電流などの成分が,主要なものとして存在する事が分かった.6)外向き電流を50mMTEAと5mM4-APで抑制すると20pA以下の内向き電流が確認できた.これは,外液のCaをBaに置換すると, Ba濃度に比例して増大した.これは低濃度のCaの添加により抑制され, 1mMカドミウムで完全に抑制された.7)虹彩平滑筋の膜の安定化機構には,非常に小さい内向き電流と,それと比較して大きな外向き電流が寄与している事が明確となった.1)単離虹彩平滑筋の電気生理学的をパッチクランプ用を用い検討した.2)単離した平滑筋は高カリウムあるいはアセチルコリンの適用により収縮した.これらの細胞は約-50mVの静止膜電位を持ち,脱分極性電流により活動電位は発生せず,電気緊張電位は外向き整流を示した.3)膜電位固定下において,膜電位の脱分極によってみられる電流は外向き電流のみで,内向き電流は殆ど認められなかった. (正常栄養液中)4)外向き電流は,低濃度のテトラエチルアンモニウム(TEA, 1mM)及び, 4-アミノピリジン(4-AP, 2mM)のそれぞれで抑制され,また両薬物の存在下では大部分が抑制された.5)単一Kチャネル電流を検討した結果,少なくとも3種類の異なったKチャネルの存在が確認された.その1つは,細胞内のCa濃度に依存性があり細胞外のTEAによって阻害された.従って,外向き電流にはTEAに非常に感受性の高いCa依存性K電流と, 4-APで抑制されるK電流などの成分が,主要なものとして存在する事が分かった.6)外向き電流を50mMTEAと5mM4-APで抑制すると20pA以下の内向き電流が確認できた.これは,外液のCaをBaに置換すると, Ba濃度に比例して増大した.これは低濃度のCaの添加により抑制され, 1mMカドミウムで完全に抑制された.7)虹彩平滑筋の膜の安定化機構には,非常に小さい内向き電流と,それと比較して大きな外向き電流が寄与している事が明確となった.1.ラット虹彩縮瞳筋は、正常栄養液中では伝達物質であるAch及びP物質は膜電位変化を介さずに収縮を引きおこす。ところが外液のCaを全てBaに置換した栄養液中では活動電位が自発的に発生し律動性収縮を起こし得る。この事は、ラット虹彩縮瞳筋には、電気的興奮性の高い他の平滑筋と同様に、電位依存性のCaチャネル等は存在するが何らかの要因により強く抑制されている事を示唆している。その要因の1つは外液のCaイオンである事はすでに報告した。そこで、Caを全てSrに置換した栄養液中での虹彩筋の挙動を検討した。Baによる置換の場合と異なり、自発的な収縮は観察されず、TEA等のK透過性遮断薬を与えても同様であった。ところが、Ach及びP物質は、この特殊な環境下においては律動性収縮を引き起こす事が判明した。これはTEAによって著明に増強され、Ca拮抗薬によって消失する事から、膜電位変化を伴っていると思われる。また、この現象は虹彩筋を外科的に除神経する事により増強された。(投稿準備中)2.ウサギ虹彩筋を酵素処理する事によって得た単一平滑筋細胞を用い、パッチクランプ法により単一Ca依存性Kチャネルの性質を検討した。単位面積あたりのチャネルの密度及びその性質(Ca依存性及び電位依存性)は電気的興奮性の高い(自動能を有する)結腸ヒモでのそれと著明な差はなかった。3.whole-cell clampを行ない単一細胞の性質を検討した。Ach(10μM)は単一細胞を収縮させたが、静止膜電位及び膜電位固定下での保持電流を変化させなかった事から、単一細胞レベルにおいてもagonistに対する基本的性質は変化していないと思われる。ところが、正常栄養液中において電位依存性の内向き電流及び外向き電流が、結腸ヒモと同様に活性化される事が明らかとなった。さらに詳細な膜電流の解析が今後の研究課題である。
KAKENHI-PROJECT-61571059
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61571059
エアロゾルの直接的地球冷却化効果
本研究では、日本各地の地上サイトおよび船上でのリモートセンシングおよび現場観測により東アジアにおける対流圏エアロゾルの光学特性を調べ、直接効果による気候影響を評価することを目的としている。そのため、気候影響を評価する上で重要なパラメタであるエアロゾルの屈折率や単散乱アルベド(single scattering albedo ; SSA)を光学観測に基づいて決定する方法を開発し(Yabuki et al., 2003)、現場観測に応用した(Shiobara et al., 2005)。同時に行われたエアロゾル粒子採取とその化学分析により、次のような研究成果を得た。1.小笠原・父島での長期連続地上観測(2002.92005.6)により、単散乱アルベド(SSA)が海洋性気団に覆われた小笠原の代表的な気象条件下では0.981.0であるが、春季(4月)には0.960.98、冬季(1月)には0.9前後の低い値となることがわかった。2.一方、2002年2005年の間、毎年9月に実施された南極観測船「しらせ」による船上観測では、異なる気団を持つ気象条件下で異なる光学特性を示す3つの類型に大別される観測結果を得た。(1)清澄な海洋性気団のもとでは海塩粒子が豊富に見られ、その時のSSA=0.981.0、(2)土壌性粒子や人為起源の硫酸性エアロゾルを含む大陸性気団のもとではSSA=0.940.98、(3)大陸起源ながら日本上空を通過中に人間活動の影響を受けたと考えられる汚染大気のもとではSSA=0.850.94の値を示した。3.父島の観測結果としらせの観測結果は整合している。すなわち、共に清澄な海洋性気団のもとでは光吸収性の低い海塩粒子が支配的であるが、春季の大陸性気団が黄砂に代表される土壌性粒子を含むようになるとSSAはやや低い値をとるようになり、さらに、冬季モンスーンの強い吹き出し時に日本列島の風下に位置する父島では、日本上空を通過中に燃焼性物質を含む汚染の影響によりさらに低いSSAを示すようになる、と結論付けることができる。本研究では、日本各地の地上サイトおよび船上でのリモートセンシングおよび現場観測により東アジアにおける対流圏エアロゾルの光学特性を調べ、直接効果による気候影響を評価することを目的としている。そのため、気候影響を評価する上で重要なパラメタであるエアロゾルの屈折率や単散乱アルベド(single scattering albedo ; SSA)を光学観測に基づいて決定する方法を開発し(Yabuki et al., 2003)、現場観測に応用した(Shiobara et al., 2005)。同時に行われたエアロゾル粒子採取とその化学分析により、次のような研究成果を得た。1.小笠原・父島での長期連続地上観測(2002.92005.6)により、単散乱アルベド(SSA)が海洋性気団に覆われた小笠原の代表的な気象条件下では0.981.0であるが、春季(4月)には0.960.98、冬季(1月)には0.9前後の低い値となることがわかった。2.一方、2002年2005年の間、毎年9月に実施された南極観測船「しらせ」による船上観測では、異なる気団を持つ気象条件下で異なる光学特性を示す3つの類型に大別される観測結果を得た。(1)清澄な海洋性気団のもとでは海塩粒子が豊富に見られ、その時のSSA=0.981.0、(2)土壌性粒子や人為起源の硫酸性エアロゾルを含む大陸性気団のもとではSSA=0.940.98、(3)大陸起源ながら日本上空を通過中に人間活動の影響を受けたと考えられる汚染大気のもとではSSA=0.850.94の値を示した。3.父島の観測結果としらせの観測結果は整合している。すなわち、共に清澄な海洋性気団のもとでは光吸収性の低い海塩粒子が支配的であるが、春季の大陸性気団が黄砂に代表される土壌性粒子を含むようになるとSSAはやや低い値をとるようになり、さらに、冬季モンスーンの強い吹き出し時に日本列島の風下に位置する父島では、日本上空を通過中に燃焼性物質を含む汚染の影響によりさらに低いSSAを示すようになる、と結論付けることができる。エアロゾルの直接効果を調べるために計画された地上観測サイト(父島、福江島、奄美大島、乗鞍岳)に観測機器を配備し(一部既設機器使用)、観測を開始した。また、2002年9月には南極観測船「しらせ」により日本周辺海域での洋上観測を実施した。これらの地上サイトおよび船上で行った主な観測は、(1)サンフォトメータ/スカイラジオメータによるエアロゾルの光学的厚さと粒径分布(気柱総量)の測定、(2)パーティクルカウンターによる粒径分布の測定、(3)積分型ネフェロメータによるエアロゾル散乱係数の測定、(4)サンプリング光度計/吸収光度計によるエアロゾルのサンプリングと吸収係数の測定、である。その結果、次のような成果が得られた。
KAKENHI-PROJECT-14048228
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エアロゾルの直接的地球冷却化効果
1)しらせ国内訓練航海においては、日本列島をほぼ一周する海洋境界層中のエアロゾルの光学観測とサンプリングが行われ、その時の流跡線解析結果と併せて、日本の東側沿岸では海洋性大気中のエアロゾルについて、西側沿岸では大陸・朝鮮半島起源のエアロゾルについて、それぞれ特徴的な光学特性が得られ、対応する複素屈折率の導出に成功した。2)しらせ航海中に得られたエアロゾル試料の化学分析および非水溶性粒子分析の結果、太平洋側で観測された海洋性エアロゾルは相対的に低濃度で海塩粒子の特徴を示し、日本海・東シナ海側で観測された大陸・朝鮮半島起源エアロゾルは相対的に高濃度で人為汚染粒子や土壌粒子の特徴を示した。3)小笠原父島観測では、海洋性気団に覆われる夏季には吸収性が小さく、大陸起源気塊の輸送シーズンにあたる冬春には吸収性が大きくなるような季節変化が得られた。1)エアロゾルの直接効果に関する実験観測のために機器整備を行った父島、福江島および乗鞍岳においてエアロゾルの光学観測を継続しデータを収集した。特に、福江島ではグレーティング・サンフォトメータ観測により、春季の黄砂到来に対応したエアロゾル光学的厚さの増大が観測された。また、冬季の父島観測では、寒冷前線の通過とともに大陸性気団に含まれた汚染物質が長距離輸送により父島に到達する様子が観測された。2)昨年度と同様、日本列島周辺海上でのエアロゾル観測を南極観測船「しらせ」の国内訓練航海期間中(9月4日10月4日)に実施した。観測項目は前年度と同様で、エアロゾルの光学特性、化学成分、非水溶性粒子濃度の測定が行われた。今回の洋上観測期間中の特徴的な現象として、九州北西部沿岸海域で非常に濃いヘイズに遭遇した。その時のエアロゾル粒子は微小粒子が卓越し、消散係数も増大した。また、この現象は福江島での地上観測でも検知され、比較的広域で長時間持続していたことがわかった。化学成分やガス成分の分析結果と総合すると、大陸起源の人間活動に起因する人為汚染の影響を受けたエアロゾルであることが示唆された。トラジェクトリ解析によれば、今年度の観測では主に大陸性気団の到来が卓越しており、昨年度の観測と比較して、太平洋起源と大陸起源のエアロゾル特性の相違は明瞭ではなかったが、特に西日本海域の航行中に、非水溶性粒子が多く観測された。3)A01班との共同により実施された非水溶性エアロゾルの広域地上観測(長崎、岡山、甲府、東京)では、春季の黄砂到来に対応して、非水溶性粒子濃度と粒子サイズが時間的空間的に移動し変化する様子が検出された。4)スカイラジオメータ観測によるエアロゾルの光学特性(光学的厚さ、粒径分布、複素屈折率)の導出について、地上観測および船舶観測のデータの予備解析を行い、次年度からの本解析の準備が整った。本研究では、日本各地の地上サイトおよび船上でのリモートセンシングおよび現場観測により東アジアにおける対流圏エアロゾルの光学特性を調べ、直接効果による気候影響を評価することを目的としている。平成16年度の主な成果は以下のとおりである。1)南極観測船しらせの日本周回訓練航海(2004年9月)において洋上エアロゾル光学観測を実施した。この船上観測には、光学式粒子数濃度計測器(OPC)、積分型ネフェロメータ(IN)、および吸収光度計(PSAP)を用いた。Yabuki et al.(JMSJ,2003)の方法により、これらの観測データを組み合わせて解析した結果、濃厚なヘイズ現象が観測された鳥取山口沖(9月20日)では、エアロゾルの複素屈折率について実数部1.481.54、虚数部0.0020.004という値が得られた。2)2004年4月に実施した甲府での黄砂観測(A01P21計画研究班との共同)では、2004年4月1718日に到来した黄砂粒子の粒径分布をコールターマルチサイザーにより測定することができた。その結果、この時の黄砂粒子は幾何平均半径2.8μmを持つ粒径分布を示した。
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肺コラーゲン架橋酵素のカドミウムによる誘導合成機序の生化学的解明に関する研究
体重300g前後の雄ラットを麻酔し、0.015%のCdCl_2、ZnCl_2、CuCl_2溶液の0.5mlを気管内に注入した。対照動物には生食水を注入した。2日後に深麻酔下で動物肺の潅流を、生食水の右心室からの注入で行い、屠殺した。Cd投与動物肺は出血性肺炎と浮腫を示し、肺重量は約2倍に増加した。ZnやCd投与群は対照群同様、肺の肉眼的変化はなかった。肺のリジルオキシダーゼ(L.O)活性はCd投与動物でのみ有意に増加した。ZnやCu投与動物では、肺L.O活性は対照動物と同様に増加なく、差なかった。肺のメタロチオネイン(MT)については、Cd投与動物群では対照群と比べ、約10倍の増加を示した。だが強力なMT合成誘導金属であるZnやCuを投与した群の肺MTは対照動物群の肺MT量に比べ増加を示さなかった。このようにCdの気管内注入によってのみ、肺L.O活性と肺MT量が増加した。したがって肺L.O活性と肺MT量の増加は調べた金属のうちCdに特異的であった。また肺L.O活性増加は肺MT量増加を伴うことが判明した。このことはL.O合成を調節するといわれている組織中のCuがMTによって、その組織中での代謝を調節されることを示唆する所見である。MTはヘムオキシゲナーゼ(HO)とともにストレス蛋白である。またHOはL.Oと分子量が同じである。Cd投与動物群の肺L.O抽出液に抗HO兎血清を加えると、L.O活性は正常兎血清を加えたものに比べ抑制され、抗HO血清量に比例する抑制傾向を認めた。そこでCd投与動物の肺から抽出された粗L.O液からSDS電気泳動法でL.Oを分離、この分離されたL.Oをウェスタンブロッティング法で抗HO血清と反応させ、L.Oの抗原性がHOと共通か否か目下検討中である。この結異から、肺L.OがMTやHO同様、ストレス蛋白、とりわけHOと近縁の蛋白か否かが明らかとなる。体重300g前後の雄ラットを麻酔し、0.015%のCdCl_2、ZnCl_2、CuCl_2溶液の0.5mlを気管内に注入した。対照動物には生食水を注入した。2日後に深麻酔下で動物肺の潅流を、生食水の右心室からの注入で行い、屠殺した。Cd投与動物肺は出血性肺炎と浮腫を示し、肺重量は約2倍に増加した。ZnやCd投与群は対照群同様、肺の肉眼的変化はなかった。肺のリジルオキシダーゼ(L.O)活性はCd投与動物でのみ有意に増加した。ZnやCu投与動物では、肺L.O活性は対照動物と同様に増加なく、差なかった。肺のメタロチオネイン(MT)については、Cd投与動物群では対照群と比べ、約10倍の増加を示した。だが強力なMT合成誘導金属であるZnやCuを投与した群の肺MTは対照動物群の肺MT量に比べ増加を示さなかった。このようにCdの気管内注入によってのみ、肺L.O活性と肺MT量が増加した。したがって肺L.O活性と肺MT量の増加は調べた金属のうちCdに特異的であった。また肺L.O活性増加は肺MT量増加を伴うことが判明した。このことはL.O合成を調節するといわれている組織中のCuがMTによって、その組織中での代謝を調節されることを示唆する所見である。MTはヘムオキシゲナーゼ(HO)とともにストレス蛋白である。またHOはL.Oと分子量が同じである。Cd投与動物群の肺L.O抽出液に抗HO兎血清を加えると、L.O活性は正常兎血清を加えたものに比べ抑制され、抗HO血清量に比例する抑制傾向を認めた。そこでCd投与動物の肺から抽出された粗L.O液からSDS電気泳動法でL.Oを分離、この分離されたL.Oをウェスタンブロッティング法で抗HO血清と反応させ、L.Oの抗原性がHOと共通か否か目下検討中である。この結異から、肺L.OがMTやHO同様、ストレス蛋白、とりわけHOと近縁の蛋白か否かが明らかとなる。
KAKENHI-PROJECT-63570252
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ジエンポリマー/脂肪酸及び脂肪酸エルテルブレンドの結晶性
天然ゴムの力学的性質や材料物性が合成ゴムよりも優れている要因の一つとして天然ゴムが他のゴムよりも低温結晶化しやすいことに着眼し、非ゴム成分として含まれている脂肪酸及び脂肪酸エステルがcis-1,4ポリイソプレンの結晶性にどのような影響を及ぼしているのかをDSC及びディラトメトリーで検討した。天然ゴムのモデルとして合成シスポリイソプレンを用い、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エライジン酸、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、リノール酸メチルを添加してそれぞれ混和性を調べた。リノール酸、オレイン酸メチル、リノール酸メチルはシスポリイソプレンのガラス転移温度(T_g)を下げて可塑化効果を示したが、他の飽和及び不飽和脂肪酸との混合系ではT_gには変化がなくゴムマトリックス中に脂肪酸の島相が分散した相分離構造が示唆された。この相溶系と相分離系の中からリノール酸メチルとステアリン酸をそれぞれ合成シスポリイソプレンに混ぜて-25°Cで結晶化したところ、相溶系であるリノール酸メチルとの混合物では少量のリノール酸メチルの添加で結晶化は遅くなったが添加量を増やすことにより結晶化が速くなることを見いだした。一方、相分離系のステアリン酸との混合物では少量の添加でシスポリイソプレンの結晶化速度は大きくなり、ステアリン酸含有率が増えるのにともない順次大きくなった。ガラス転移点と融点の測定から、前者は結晶化に不利な表面自由エネルギーと可塑化による分子運動性の増大の兼ね合により、後者は結晶化に有利な表面自由エネルギーにより結晶化速度が変化するものと推察した。天然ゴムにはリノール酸とステアリン酸、及びこれらのエステルが混合物として最も多く含まれており、本研究によってシスポリイソプレンの結晶化に対する混在している脂肪酸のそれぞれの役割を明かにした。今後、新たに見いだされた天然ゴムに結合している脂肪酸の役割を検討する。天然ゴムの力学的性質や材料物性が合成ゴムよりも優れている要因の一つとして天然ゴムが他のゴムよりも低温結晶化しやすいことに着眼し、非ゴム成分として含まれている脂肪酸及び脂肪酸エステルがcis-1,4ポリイソプレンの結晶性にどのような影響を及ぼしているのかをDSC及びディラトメトリーで検討した。天然ゴムのモデルとして合成シスポリイソプレンを用い、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エライジン酸、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、リノール酸メチルを添加してそれぞれ混和性を調べた。リノール酸、オレイン酸メチル、リノール酸メチルはシスポリイソプレンのガラス転移温度(T_g)を下げて可塑化効果を示したが、他の飽和及び不飽和脂肪酸との混合系ではT_gには変化がなくゴムマトリックス中に脂肪酸の島相が分散した相分離構造が示唆された。この相溶系と相分離系の中からリノール酸メチルとステアリン酸をそれぞれ合成シスポリイソプレンに混ぜて-25°Cで結晶化したところ、相溶系であるリノール酸メチルとの混合物では少量のリノール酸メチルの添加で結晶化は遅くなったが添加量を増やすことにより結晶化が速くなることを見いだした。一方、相分離系のステアリン酸との混合物では少量の添加でシスポリイソプレンの結晶化速度は大きくなり、ステアリン酸含有率が増えるのにともない順次大きくなった。ガラス転移点と融点の測定から、前者は結晶化に不利な表面自由エネルギーと可塑化による分子運動性の増大の兼ね合により、後者は結晶化に有利な表面自由エネルギーにより結晶化速度が変化するものと推察した。天然ゴムにはリノール酸とステアリン酸、及びこれらのエステルが混合物として最も多く含まれており、本研究によってシスポリイソプレンの結晶化に対する混在している脂肪酸のそれぞれの役割を明かにした。今後、新たに見いだされた天然ゴムに結合している脂肪酸の役割を検討する。
KAKENHI-PROJECT-05750796
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05750796
トポロジカル量子磁性相の実験的開拓
パイロクロアIr酸化物R2Ir2O7 (R =希土類)はRサイトの幾何学的フラストレーションとスピン軌道相互作用の強いIrにより金属絶縁体転移から量子スピンアイスまで多彩な現象を示す。特にPr2Ir2O7は金属量子スピンアイスであり、ゼロ磁場・ゼロ磁化での自発的異常ホール効果を示し注目を集めている。光電子分光ではQuadratic band touchingが観測され、磁場や一軸圧力などにより強相関ワイル半金属になると考えられているが実験的な理解は進んでいない。そこで本研究ではパイロクロアIr酸化物をはじめとする様々な強相関トポロジカル物質を作成し、新規物性探索を行うことが目的であった。本研究ではPr2Ir2O7やNd2Ir2O7などのパイロクロアIr酸化物、その他新規Ir酸化物の単結晶合成を行い、電気抵抗率を始めとする諸低温物性測定を行った。それに加えて、新規強相関ワイル磁性体の探索を行い、鉄を含むワイル磁性体候補物質の単結晶育成を多数行った。そのうち幾つかはワイル点起源と思われる大きな異常ホール効果及び異常ネルンスト効果を示した。これらの成果は現在論文として執筆中である。パイロクロアIr酸化物の合成については前任者から引き継ぎを行い、単結晶育成を一人で行えるようになった。加えて、仕込み組成の調整からアニール条件の見直しまで様々なファインチューニングを試し、さらなる純良化を試みた。電気抵抗率を始めとする低温物性測定からは高品質な試料が得られていることがわかった。今後これらの試料を用いて、熱膨張や磁歪測定を行う予定である。鉄を含むワイル磁性体についてはフラックス法や化学輸送法など様々な合成方法を試した結果、数mm角の単結晶が得られるようになった。これらの幾つかは大きな異常ホール効果と異常ネルンスト効果を示すことがわかった。この成果について現在論文を執筆中である。パイロクロアIr酸化物R2Ir2O7 (R =希土類)はRサイトの幾何学的フラストレーションとスピン軌道相互作用の強いIrにより金属絶縁体転移から量子スピンアイスまで多彩な現象を示す。特にPr2Ir2O7は金属量子スピンアイスであり、ゼロ磁場・ゼロ磁化での自発的異常ホール効果を示し注目を集めている。光電子分光ではQuadratic band touchingが観測され、磁場や一軸圧力などにより強相関ワイル半金属になると考えられているが実験的な理解は進んでいない。そこで本研究ではパイロクロアIr酸化物をはじめとする様々な強相関トポロジカル物質を作成し、新規物性探索を行うことが目的であった。本研究ではPr2Ir2O7やNd2Ir2O7などのパイロクロアIr酸化物、その他新規Ir酸化物の単結晶合成を行い、電気抵抗率を始めとする諸低温物性測定を行った。それに加えて、新規強相関ワイル磁性体の探索を行い、鉄を含むワイル磁性体候補物質の単結晶育成を多数行った。そのうち幾つかはワイル点起源と思われる大きな異常ホール効果及び異常ネルンスト効果を示した。これらの成果は現在論文として執筆中である。パイロクロアIr酸化物の合成については前任者から引き継ぎを行い、単結晶育成を一人で行えるようになった。加えて、仕込み組成の調整からアニール条件の見直しまで様々なファインチューニングを試し、さらなる純良化を試みた。電気抵抗率を始めとする低温物性測定からは高品質な試料が得られていることがわかった。今後これらの試料を用いて、熱膨張や磁歪測定を行う予定である。鉄を含むワイル磁性体についてはフラックス法や化学輸送法など様々な合成方法を試した結果、数mm角の単結晶が得られるようになった。これらの幾つかは大きな異常ホール効果と異常ネルンスト効果を示すことがわかった。この成果について現在論文を執筆中である。
KAKENHI-PROJECT-18F18025
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抗体を利用した大腸癌の遺伝子標的治療の基礎的検討
平成5年度にはc-myc遺伝子のアンチセンスDNAを直接抗体で修飾することで、選択的遺伝子治療を試みたが効率が極めて不良であったため、今年度はc-myc遺伝子のアンチセンスDNAをneo遺伝子とともに、抗体でコートしたレトロウイルスをベクターとして導入した。G418で選択した後、大腸癌におけるc-mycの選択的発現抑制を蛋白レベルで免疫組織化学的に検討した。抗体とウイルスの結合はSPDPあるいはAvidin-Biotinの系を用いた。培養大腸癌細胞に添加してc-mycの発現が阻止されるか検討したが、その効率は極めて低く、実用化には更に検討を要するものと考えられた。抗体認識抗原をもたない腎癌の培養系では、c-mycの発現は完全には抑制できなかった。また、抗体の分子サイズによる違いを検討したところ、wholeの抗体あるいはF(ab)'_2では特に差は認められなかったが、Fab fragmentを利用した場合、大腸癌細胞におけるc-myc遺伝子の発現抑制作用は弱かった。このように抗体のサイズで差が認められた原因は、主に抗体としてのaffinityの差によるものと考えられた。以上の様にウイルスに導入したc-myc遺伝子アンチセンスDNAの、c-myc遺伝子発現抑制作用は期待したより効率が悪く、このままの状態では実用化できないことが明らかになった。しかし、効率は悪いとはいえ抗体をキャリアーとした選択的遺伝子導入が可能なことが示されたので、今後はウイルスベクターの改良に重点をおいて研究を進めるべきと考えられた。平成5年度にはc-myc遺伝子のアンチセンスDNAを直接抗体で修飾することで、選択的遺伝子治療を試みたが効率が極めて不良であったため、今年度はc-myc遺伝子のアンチセンスDNAをneo遺伝子とともに、抗体でコートしたレトロウイルスをベクターとして導入した。G418で選択した後、大腸癌におけるc-mycの選択的発現抑制を蛋白レベルで免疫組織化学的に検討した。抗体とウイルスの結合はSPDPあるいはAvidin-Biotinの系を用いた。培養大腸癌細胞に添加してc-mycの発現が阻止されるか検討したが、その効率は極めて低く、実用化には更に検討を要するものと考えられた。抗体認識抗原をもたない腎癌の培養系では、c-mycの発現は完全には抑制できなかった。また、抗体の分子サイズによる違いを検討したところ、wholeの抗体あるいはF(ab)'_2では特に差は認められなかったが、Fab fragmentを利用した場合、大腸癌細胞におけるc-myc遺伝子の発現抑制作用は弱かった。このように抗体のサイズで差が認められた原因は、主に抗体としてのaffinityの差によるものと考えられた。以上の様にウイルスに導入したc-myc遺伝子アンチセンスDNAの、c-myc遺伝子発現抑制作用は期待したより効率が悪く、このままの状態では実用化できないことが明らかになった。しかし、効率は悪いとはいえ抗体をキャリアーとした選択的遺伝子導入が可能なことが示されたので、今後はウイルスベクターの改良に重点をおいて研究を進めるべきと考えられた。平成5年度には、c-myc遺伝子のアンチセンスDNAを抗体に結合し、培養大腸癌細胞に添加してc-mycの発現が阻止されるか検討したが、その効率は極めて低く、実用化には更に検討を要するものと考えられた。抗体認識抗原をもたない胃癌の培養系では、抗体結合アンチセンスDNAによりc-mycの発現は完全には抑制できなかった。また、抗体の分子サイズによる違いを検討したところ、wholeの抗体あるいはF(ab)′_2では特に差は認められなかったが、Fab fragmentに結合したアンチセンスDNAの大腸癌細胞におけるc-myc遺伝子の発現抑制作用は弱かった。このように抗体のサイズで差が認められた原因の一つは、単に分子量や抗体としてのaffinityの差によるものばかりでなく、細胞膜に結合した後のinternalizationが関与しているものと考えられる。以上の様に抗体に単独結合したc-myc遺伝子アンチセンスDNAの、c-myc遺伝子発現抑制作用は期待したより効率が悪く、このままの状態では実用化できないことが明らかになった。しかし、効率は悪いとはいえ抗体をキャリアーとした選択的遺伝子導入が可能なことが示されたので、今後はウイルスベクターを利用した方法に重点をおいて研究を進めたい。平成5年度にはc-myc遺伝子のアンチセンスDNAを直接抗体で修飾することで、選択的遺伝子治療を試みたが効率が極めて不良であったため、今年度はc-myc遺伝子のアンチセンスDNAをneo遺伝子とともに、抗体でコートしたレトロウイウルスをベクターとして導入した。G418で選択した後、大腸癌におけるc-mycの選択的発現抑制を蛋白レベルで免疫組織化学的に検討した。抗体とウイルスの結合はSPDPあるいはAvidin-Biotinの系を用いた。培養大腸癌細胞に添加してc-mycの発現が阻止されるか検討したが、その効率は極めて低く、実用化には更に検討を要するものと考えられた。抗体認識抗原をもたない腎癌の培養系では、c-mycの発現は完全には抑制できなかった。また、抗体の分子サイズによる違いを検討したところ、wholeの抗体あるいはF(ab)'_2では特に差は認められなかったが、Fab fragmentを利用した場合、大腸癌細胞におけるc-myc遺伝子の発現抑制作用は弱かった。このように抗体のサイズで差が認められた原因は、主に抗体としてのaffinityの差によるものと考えられた。以上の様にウイルスに導入したc-myc遺伝子アンチセンスDNAの、c-myc遺伝子発現抑制作用は期待したより効率が悪く、このままの状態では実用化ができないことが明らかになった。しかし、効率は悪いとはいえ抗体をキャリアーとした選択的遺伝子導入が可能なことが示されたので、今後はウイルスベクターの改良に重点をおいて研究を進めるべきと考えられた。
KAKENHI-PROJECT-05671080
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671080
国立大学と附属学校との連携・協働による初任者研修システムの構築
本研究目的は、教職専門性向上と教員支援体制を模索し、効果的な教員支援システム構築を推進することにある。つまり、国立大学と附属学校との連携・協働による研修システムを検討するものである。近年の国立大学附属学校では、法人化後の人件費削減、労働時間増加、中間世代教員の減少等から、教員採用人事において困難な状況が継続し、初任者教員採用を余儀なくされる実情を耳にする。本研究が目指す初任者研修システムは、従来型の職場内徒弟制研修やトップダウン型伝達研修ではなく、国内外の人的・知的資源を活用した機能的・融合的なシステムを目指すものである。平成29年度は、平成25年度からの継続研究を踏まえて、下記に示す全国的な基礎調査を実施した。1.研究目的:国立大学附属学校における教員採用人事、教員組織・環境、教員研修体制、等を調査し、初任者教員採用と初任者研修の実際、現職教員環境の実情等を検討。2.研究方法:全国国立大学附属学校へのアンケート調査と事例調査を実施。(1)アンケート調査...平成28年度実施の附属幼稚園調査を基に、小学校・中学校・高等学校・特別支援学校など209校(今年度は幼稚園51園舎を除く)を対象に、自記式記述回答調査を実施。(2)事例調査...実地調査として全国より数校を抽出。教育改革事例・教育活動の特色等を現地調査。3.研究成果:アンケート調査より計量的傾向を、事例調査より質的特徴を検討。(1)基礎調査...平成29年度附属学校209校対象の調査回答率は、平成30年度末約43%。アンケート集計結果による計量分析、及び、知見等を総括して研究発表予定。(2)事例調査...調査対象抽出校は、岩手大学附属小学校・同中学校、茨城大学附属幼稚園、奈良教育大学附属中学校、神戸大学附属幼稚園・同中等教育学校、大分大学附属幼稚園・同小学校、以上8校。(3)研究発表...平成29年6月:日本教育経営学会茨城大会にて、これまでの調査結果等の知見を研究発表。本研究目的は、教職専門性向上と教員支援体制を模索し、効果的な教員支援システム構築を推進することにある。つまり、国立大学と附属学校との連携・協働による研修システムを検討するものである。近年の国立大学附属学校では、法人化後の人件費削減、労働時間増加、中間世代教員の減少等から、教員採用人事において困難な状況が継続し、初任者教員採用を余儀なくされる実情を耳にする。本研究が目指す初任者研修システムは、従来型の職場内徒弟制研修やトップダウン型伝達研修ではなく、国内外の人的・知的資源を活用した機能的・融合的なシステムを目指すものである。平成29年度は、平成25年度からの継続研究を踏まえて、下記に示す全国的な基礎調査を実施した。1.研究目的:国立大学附属学校における教員採用人事、教員組織・環境、教員研修体制、等を調査し、初任者教員採用と初任者研修の実際、現職教員環境の実情等を検討。2.研究方法:全国国立大学附属学校へのアンケート調査と事例調査を実施。(1)アンケート調査...平成28年度実施の附属幼稚園調査を基に、小学校・中学校・高等学校・特別支援学校など209校(今年度は幼稚園51園舎を除く)を対象に、自記式記述回答調査を実施。(2)事例調査...実地調査として全国より数校を抽出。教育改革事例・教育活動の特色等を現地調査。3.研究成果:アンケート調査より計量的傾向を、事例調査より質的特徴を検討。(1)基礎調査...平成29年度附属学校209校対象の調査回答率は、平成30年度末約43%。アンケート集計結果による計量分析、及び、知見等を総括して研究発表予定。(2)事例調査...調査対象抽出校は、岩手大学附属小学校・同中学校、茨城大学附属幼稚園、奈良教育大学附属中学校、神戸大学附属幼稚園・同中等教育学校、大分大学附属幼稚園・同小学校、以上8校。(3)研究発表...平成29年6月:日本教育経営学会茨城大会にて、これまでの調査結果等の知見を研究発表。
KAKENHI-PROJECT-17H00276
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H00276
グリオーマの共通母細胞の同定とそれを分化誘導する因子の解析
1.脳腫瘍の症例収集および臨床病理学的解析を行い、症例ライブラリーを作成するとともに、学会発表および論文発表を行った。(Saito,et al.2008;金城他,2008;田中他,2008;大石他,2008;佐々木他,2008)4.膠芽腫培養細胞に対する炭素粒子線線照射効果について検索し、膠芽腫細胞の老化と細胞死をもたらすことを明らかにした(Ohishi,et al.2008)。1.研究室内に収集した脳腫瘍ライブラリーの中から、検索症例の選択とその臨床病理学的解析を行った。一部の形態情報の病理学的解析には独自に開発した画像解析ソフトウエアも用いた。症例の病理学的特性について、学会発表または論文発表を行った。(Ohishi T, et al.,2006;Sasaki A, et al.,2006;中里ら,2007;Kinjyo S, et al.,in press)。2.Pilocytic astrocytoma (PA)の構成細胞に関する解析を行ない、PAではdiffuse astrocytomaとは異なり、GFAP陽性細胞のみならず、0lig2やIba-1抗原を発現する細胞が腫瘍を構成していることを示した。しかも増殖能を保持している細胞は、0lig2やIba-1抗原を発現する細胞に多いことを明らかにし、これらの成果を学会発表(田中ら,2006)するとともに、論文発表準備中である。1.脳腫瘍の症例収集をすすめ,研究室内にライブラリーとデータベースを作成した.これらの症例を選択し,臨床病理学的解析を行った.形態情報の病理学的解析には独自に開発した画像解析ソフトウエアも用いた.症例の臨床病理学的特性について,学会発表および論文発表を行った.(Kinjyo S, et. al.2007;松田他,2007;望月他,2007;田中他,2007).4.脳腫瘍におけるOlig2陽性の小型円形細胞について病理形態学的検索を行ったところ,Olig2陽性の小型円形細胞は神経外胚葉性腫瘍のなかで,oligodendroglioma,pilocytic astrocytomaをはじめ多くの腫瘍で出現していた.一方,ependymoma,central neurocytomaなどにはこの細胞は出現しない.Olig2陽性細胞は共通して,小型円形の核と狭いあるいは淡明な細胞質をもち,免疫組織化学的にはGFAP,NFP,nestinとの共発現はみられず,電顕的には細胞小器官の乏しい狭い細胞質を持っていた.この小型細胞がグリオーマの共通母細胞である可能性が示唆される.この結果について学会発表準備中である(中里他,2008).1.脳腫瘍の症例収集および臨床病理学的解析を行い、症例ライブラリーを作成するとともに、学会発表および論文発表を行った。(Saito,et al.2008;金城他,2008;田中他,2008;大石他,2008;佐々木他,2008)4.膠芽腫培養細胞に対する炭素粒子線線照射効果について検索し、膠芽腫細胞の老化と細胞死をもたらすことを明らかにした(Ohishi,et al.2008)。
KAKENHI-PROJECT-18650096
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椎間板内培養髄核細胞挿入術に関する基礎的実験-椎間板変性変化の抑制効果について-
(結果)椎間板高はいずれの週令においても、培養髄核挿入椎間板の方が挿入しなかった椎間板に比べ椎間が保たれていた。挿入4週後までは椎間板高は比較的保たれていたが、8週後では椎間板高の低下が認められた。また各種染色法において線維輪、終板軟骨の変性変化(線維輪の蛇行、断裂や軟骨帯の希薄化、染色性低下)は培養髄核を挿入することにより、線維輪の断裂、終板軟骨の染色性低下が培養髄核を挿入しなかった椎間板と比較し軽度であり、病理組織学検索において変性変化の抑制が認められた。^3H-thymidineを用いDNA合成能は培養髄核の挿入の有無による大きな差は認められなかった。^<35>S-sulfateを用いプロテオグリカン合成能は培養髄核の挿入椎間板においてより多くの合成能が認められ、培養髄核挿入によりプロテオグリカン合成能が促進した事が考えられた。(考察)今回の結果は以前我々が行った新鮮髄核を挿入した実験と同様な結果がでた。本法は椎間板変性の進行を抑制することを目的としている。よって今回の結果により、臨床的応用の可能性が出てきたと思われた。培養髄核の再挿入によりプロテオグリカン合成は促進され、その結果、線維輪、終板軟骨の変性変化が抑制され、椎間板高が保たれたと思われるが、プロテオグリカン合成促進のメカニズムははっきりとしておらず、今後その解明が必要と思われる。また臨床応用においてアレルギー反応、長期経過観察例の検討が必要と思われる。(結果)椎間板高はいずれの週令においても、培養髄核挿入椎間板の方が挿入しなかった椎間板に比べ椎間が保たれていた。挿入4週後までは椎間板高は比較的保たれていたが、8週後では椎間板高の低下が認められた。また各種染色法において線維輪、終板軟骨の変性変化(線維輪の蛇行、断裂や軟骨帯の希薄化、染色性低下)は培養髄核を挿入することにより、線維輪の断裂、終板軟骨の染色性低下が培養髄核を挿入しなかった椎間板と比較し軽度であり、病理組織学検索において変性変化の抑制が認められた。^3H-thymidineを用いDNA合成能は培養髄核の挿入の有無による大きな差は認められなかった。^<35>S-sulfateを用いプロテオグリカン合成能は培養髄核の挿入椎間板においてより多くの合成能が認められ、培養髄核挿入によりプロテオグリカン合成能が促進した事が考えられた。(考察)今回の結果は以前我々が行った新鮮髄核を挿入した実験と同様な結果がでた。本法は椎間板変性の進行を抑制することを目的としている。よって今回の結果により、臨床的応用の可能性が出てきたと思われた。培養髄核の再挿入によりプロテオグリカン合成は促進され、その結果、線維輪、終板軟骨の変性変化が抑制され、椎間板高が保たれたと思われるが、プロテオグリカン合成促進のメカニズムははっきりとしておらず、今後その解明が必要と思われる。また臨床応用においてアレルギー反応、長期経過観察例の検討が必要と思われる。
KAKENHI-PROJECT-07771181
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ヒト胎児期における“量的および質的"な形態指標による発生段階の設定
ヒト胎児期における解剖学的発育基準の設定を行うために、前年度に引き続き胎児の軟レ線撮影後、体重と頂殿長(RL)、各部の外表計測を行った上、頭頚部、胸部、腹部、腹膜後隙および骨盤部の解剖を行い、各器官の外景発生と組織発生の観察および重量と計測を行った。外形正常ヒト胎児903例(胎齢:310カ月;CRL:29310mm)を用い、外表の各形態発生事象(口唇隆起の有無、副乳数など7項目)および外表の各部位の計測(頭長ほか63項目、本年度はnasion-tragion距離を追加)による基準値を設定した。これはCRLと胎令に対しての基準である。なお、cervical flexureのCRLに対する角度の平均は、CRL39ー47mm:23°、52ー58mm:15°、67ー74mm:10°であり、CRL85mm以上ではほゞ0°となり、初期胎児の発育の一つの指標になるのではないかと考えられる。化骨中心は発育段階に従って、順を追って出現してくることから、胎児の発育を示す有用な指標の一つである。その発現時期の基準を設定した(その概略は、頭蓋底のほとんどの化骨中心:CRL40ー149mm;舌骨:160ー257mm;顔面頭蓋および頭蓋冠:30ー68mm;頚椎1:137ー165mm、仙椎5:138ー257mm、他の椎体:40ー148mm、仙椎を除く椎弓:38ー74mm;胸骨:117ー310mm;第5中節骨:112mm、他の上肢骨:29ー81mm;腸骨:32ー43mm、坐骨:108ー135mm、恥骨:160ー182mm、中節骨:115ー259mm、他の下肢骨:29ー146mm、距骨:295ー310mm、腫骨:135ー260mm)。脳を含む24器官の重量測定によりCRLと体重による基準値を得た。各器官の各部位の組織発生の検索により、CRLと月経齢、体重による各組織の成熟度との関係を求め、質的な形態発生の基準を得た。橋を例にとれば、三叉神経、顔面神経、外転神経はCRL130mm、内側縦束は160mm、内側毛帯は230mmにおいてmyelinationが認められた。成長に関する基準、形態発生の進行に関する基準を得た。ヒト胎児期における解剖学的発育基準の設定を試みるために,計370例の外形正常ヒト胎児〔妊娠4ヵ月9ヵ月,頂殿長(CRL)3,5cm30cm〕を用い,外表各部位の計測を行ない,各形態発生事象を調べた後,剖検を行ない各内部臓器の重量および大さの測定をした上,各器官の外形発生を検索した.その経過と主な知見として.(1)外表計測:legth(l),breadth(b),height(h)とする. Head(l,b,h),Face(h),Eye(b),Ear(b,h),Manaibular(b,h),Corpus(l),Shoulder(b),Upper arm(l),Forearm(l),Hand(l),Hip(b),Thigh(l),Knee(l),Foot(l),Anogenital distance,Navol(h)の各部位長はCRLとの間に一定の関係があることを認めた.(2)外表発生事象:今年度のこの例数より現在認め得た資料としては,頭部血管静脈叢の消失CRL3.54.5cm,眼瞼初同閉鎖4.55.5cm,まゆ毛線の出現5.06.5cm,頭毛の渦の出現1013cm,上唇結節の出現4.055cm,〓幹の毛の出現1315.5cm,外生殖器による性差の判定4.56.0cm,殿溝の出現7.09.5cm,指紋の出現115140cm,第1指の爪が指頭に達する2024cm,趾紋の出現1214.5cmなどであった.(3)器官重量:脳重量については,固定不良のため測定不可能例が若干あった.甲状腺,肺,胸腺,心,肝,膵,腎,副腎,脾,性腺の重量値と各体重との器官比を求め,一定の基準の設定の検討資料を得た.(4)器官の外景:(3)の臓器の外景の写真撮影(種々の方向より)を行ない,各外景の形態発生の検討を行ない,腎臓の小葉の消退の経緯を含む種々の所見を得た.(5)心臓の計測:今年度は特に心臓の胎生期発生を詳しく検索した.全例において,外景(縦径,横径,前後径,周囲長)および内景(大動脈外内径,肺動脈外,内径,中隔の高さ,厚さ,左右心室壁の厚さ,左右心房壁の厚さ)の計測,優位動脈の検索などを行ない,詳細な基準となり得るデータを多数得られた.ヒト胎児期における解剖学的基準の設定を行なうために、前年度と同様な方法を用いて行なった。すなわち、計300例の外形正常ヒト胎児〔妊娠410ケ月、頂殿長(CRL):3.834cm〕につき、軟レ線撮影後、体重とCRLの測定した上、頭囲、頭長、胸囲、腹囲、上下肢長、肛門一生殖長の測定を行なった。
KAKENHI-PROJECT-62480347
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ヒト胎児期における“量的および質的"な形態指標による発生段階の設定
また、本年度は、特により祥細な部位すなわち、頭幅、底幅、頭高、矢状頭弧、横頭弧、顔幅、全顔幅、上顔高、下顎角間距離、鼻高、鼻幅、人中長、人中幅、口唇隆起、口幅、唇の厚さ、口蓋、上顎突起、下顎、歯部、舌幅、眉間長、生毛状態、内および外眼幅、眼瞼、耳高、耳幅、肩幅、肩高、胸幅、胸厚、乳頭高および幅、臍高、腸骨幅、腸骨棘高腸稜高、殿幅、足甲の高さ、足長、足幅を加えて外表計測を行なって、CRLに対する一定の基準値を得た。胸部臓器の解剖および計測についても前年度と同様な方法で行ない、種々のデーターを追加した。なお、本年度は、特に腹部および骨盤臓器の解剖および各器官の計測を行なった。腹部としては、胃底、胃体、幽門の各周囲径、小湾および大湾径、十二指腸および空回長の長、小腸径、上行、横行、下行の結腸の長、大腸径、直腸、肛門部の各長さと径、肝臓の横および縦径、前後径、肝臓左および右葉体積、胆のうの最大長、最大幅、胆道長と径、膵臓の全長、脾臓の長、横、幅径およびその体積の計測値を得た。骨盤部としては、腎臓の縦、横径、体積、皮質と髄質の厚さ、骨盤の幅、腎小葉数、尿管の長さ、副腎の縦、横径、厚さ、体積、皮質と髄質の厚さ、膀胱三角の大きさ、前および後壁の厚さについて各計測値を得た。この他、精巣、精巣上体、会陰、子宮、腟、卵管、卵巣、陰核、処女膜についての詳しい計測および発生現象の検索を行なった。以上のCRL、体重、胎令を基準にした、発生段階の指標を求めるための資料を得た。ヒト胎児期における解剖学的発育基準の設定を行うために、前年度に引き続き胎児の軟レ線撮影後、体重と頂殿長(RL)、各部の外表計測を行った上、頭頚部、胸部、腹部、腹膜後隙および骨盤部の解剖を行い、各器官の外景発生と組織発生の観察および重量と計測を行った。外形正常ヒト胎児903例(胎齢:310カ月;CRL:29310mm)を用い、外表の各形態発生事象(口唇隆起の有無、副乳数など7項目)および外表の各部位の計測(頭長ほか63項目、本年度はnasion-tragion距離を追加)による基準値を設定した。これはCRLと胎令に対しての基準である。なお、cervical flexureのCRLに対する角度の平均は、CRL39ー47mm:23°、52ー58mm:15°、67ー74mm:10°であり、CRL85mm以上ではほゞ0°となり、初期胎児の発育の一つの指標になるのではないかと考えられる。化骨中心は発育段階に従って、順を追って出現してくることから、胎児の発育を示す有用な指標の一つである。その発現時期の基準を設定した(その概略は、頭蓋底のほとんどの化骨中心:CRL40ー149mm;舌骨:160ー257mm;顔面頭蓋および頭蓋冠:30ー68mm;頚椎1:137ー165mm、仙椎5:138ー257mm、他の椎体:40ー148mm、仙椎を除く椎弓:38ー74mm;胸骨:117ー310mm;第5中節骨:112mm、他の上肢骨:29ー81mm;腸骨:32ー43mm、坐骨:108ー135mm、恥骨:160ー182mm、中節骨:115ー259mm、他の下肢骨:29ー146mm、距骨:295ー310mm、腫骨:135ー260mm)。脳を含む24器官の重量測定によりCRLと体重による基準値を得た。各器官の各部位の組織発生の検索により、CRLと月経齢、体重による各組織の成熟度との関係を求め、質的な形態発生の基準を得た。橋を例にとれば、三叉神経、顔面神経、外転神経はCRL130mm、内側縦束は160mm、内側毛帯は230mmにおいてmyelinationが認められた。成長に関する基準、形態発生の進行に関する基準を得た。
KAKENHI-PROJECT-62480347
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分化と増殖の転換の分子機構の解明
本年度の研究の結果、以下の成果を得た。1 EID-2類縁分子として新たにEID-2-1ike inhibitor of differentiation-3(EID-3)をクローニングした。これによってEID-1,-2,-3からなる新しい分子ファミリーという概念を提唱することができた。2 EID-3はEID-2と同様に、過剰発現系において細胞分化を阻害することを明らかにした。特にマウス筋芽細胞株C2C12を用いた系では、発現レベルの高いものでは細胞死を来すこともわかった。3 EID-3はEID-2と同様に、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)と結合し、分化に関わる転写因子(MyoDなど)の転写活性を抑制することを明らかにした。HDACファミリーの中でも特にクラス1HDAC(HDAC1,2)と結合することもわかった。4 EID-3は核内に局在し、この機能はHDACとの結合および転写阻害機能と共通のドメインを利用していることを明らかにした。5 EID-2およびEID-3がEID-1と同様に、癌抑制遺伝子産物pRBと細胞内で複合体を形成するすることを証明した。6 EID-2およびEID-3遺伝子は同一染色体上の近傍に位置し、この両方を含むアンプリコンがある種の癌細胞株で増幅していることがわかった。以上をまとめると、1から5の結果によって、EID-2およびEID-3の生化学的・生物学的機能をよりいっそう明らかにすることができた。また5,6の結果から、EID-2およびEID-3の発がんにおける役割が推測された。本年度の研究の結果、以下の成果を得た。1 EID-2類縁分子として新たにEID-2-1ike inhibitor of differentiation-3(EID-3)をクローニングした。これによってEID-1,-2,-3からなる新しい分子ファミリーという概念を提唱することができた。2 EID-3はEID-2と同様に、過剰発現系において細胞分化を阻害することを明らかにした。特にマウス筋芽細胞株C2C12を用いた系では、発現レベルの高いものでは細胞死を来すこともわかった。3 EID-3はEID-2と同様に、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)と結合し、分化に関わる転写因子(MyoDなど)の転写活性を抑制することを明らかにした。HDACファミリーの中でも特にクラス1HDAC(HDAC1,2)と結合することもわかった。4 EID-3は核内に局在し、この機能はHDACとの結合および転写阻害機能と共通のドメインを利用していることを明らかにした。5 EID-2およびEID-3がEID-1と同様に、癌抑制遺伝子産物pRBと細胞内で複合体を形成するすることを証明した。6 EID-2およびEID-3遺伝子は同一染色体上の近傍に位置し、この両方を含むアンプリコンがある種の癌細胞株で増幅していることがわかった。以上をまとめると、1から5の結果によって、EID-2およびEID-3の生化学的・生物学的機能をよりいっそう明らかにすることができた。また5,6の結果から、EID-2およびEID-3の発がんにおける役割が推測された。
KAKENHI-PROJECT-16590217
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未来のガリレオ育成のための天文教育-食連星の観測と光度曲線解析-
地域貢献としての未来のガリレオ育成活動:世界天文年2009から行っている小中学生対象の公開講座「天体観測会ー君も未来のガリレオだ!ー」については、第1回6/1(金)19:4521:15「口径35cm望遠鏡で金星と木星を見よう」、第2回7/20(金)18:3021:00「夏休みスペシャル手作り望遠鏡で月を見よう」、第3回10/12(金)18:3020:00「口径35cm望遠鏡で土星と火星を見よう」、第4回12/1(水)13:3015:30「分光器を作ろう、太陽望遠鏡をのぞいてみよう」を開催した。保護者等も参加することと、なるべく多くの天体を見てもらうため受講生定員は1回当たり20名としていた。計4回の講座の受講生は86名、保護者等も含む参加者は約179名であった。講座の肯定的な評価が90%、普通の評価が8%、否定的な評価が2%であった。高専生に対する未来のガリレオ育成活動:上記天体観測会に対し、本校2年チャレンジゼミナール基礎および3年全系横断演習I学生10名には補助学生として、望遠鏡操作や「手作り望遠鏡」「簡易分光器」作成指導などで主体的に参加してもらった。また、ケプラー方程式による惑星軌道シミュレータ作成について試行的な指導を行った。食連星の観測と光度曲線解析:7月31日に火星の大接近があったので、今年度はケプラー方程式を用いる惑星の軌道計算に取り組んだ。ケプラーの第2法則によると、惑星が一定時間に掃引きする軌道面の面積は常に一定である。これを離心近点角と時間の関係として表現するものがケプラー方程式である。惑星軌道の計算方法をまとめ、具体例として、地球と火星の軌道シミュレータを作成した。地域貢献としての未来のガリレオ育成活動:公開講座「天体観測会ー君も未来のガリレオだ!ー」については予定通り開催し、概ね好評であった。地域の小中学生に天文教育を行うという意味で、完全に達成できたと考える。高専生に対する未来のガリレオ育成活動:上記天体観測会に対し本校2年チャレンジゼミナール基礎および3年全系横断演習I学生10名が補助学生を務め「教えることで教えられる」相互教育を実施した。また、ケプラー方程式による惑星軌道シミュレータ作成について試行的な指導を行った。食連星の観測と光度曲線解析:今年度はケプラー方程式を用いる惑星の軌道計算に取り組んだ。装置の整備とその活用が遅れているので「やや遅れている」とした。令和元年度に整備の上、その活用に注力したい。未来のガリレオ育成活動:津山地域の小中学生には天文への興味付けと観測体験のため、天体観測会を継続する。高専のチャレンジゼミナール生には天体観測会補助学生の他に天体写真撮影を重視する天文教育を継続する。また、ケプラー方程式の理論的理解の推進を図る。科学的活動:科学的成果を挙げられるよう、高専生と共に食連星についてWD計算コードやPHOEBEにより光度曲線解析を行い、対象連星系の物理パラメータや特徴を研究する。ケプラー方程式についても取り組みを継続する。天体観測室の口径35cm望遠鏡について、GPSの2019年4月7日問題に対応するため、ファームウェアをアップデートする。気象観測装置が利用できなくなっているので、更新等の対策を始める。また、素粒子論、特に量子色力学のシミュレーションプログラムLTKf90を用いた高専生に対する物理シミュレーション教育の検討を行う。地域貢献としての未来のガリレオ育成活動:世界天文年2009から行っている小中学生対象の公開講座「天体観測会ー君も未来のガリレオだ!ー」については、第1回5/29(月)19:4521:15「口径35cm望遠鏡で木星を見よう」、第2回8/1(火)18:3021:00「夏休みスペシャル手作り望遠鏡で月を見よう」、第3回9/26(火)19:0020:40「口径35cm望遠鏡で土星を見よう」、第4回10/25(水)18:3021:00「夏秋の星座を見よう」を開催した。保護者等も参加することと、なるべく多くの天体を見てもらうため受講生定員は1回当たり20名としていた。計4回の講座の受講生は87名、保護者等も含む参加者は約184名であった。講座の肯定的な評価が94%、普通の評価が4%、否定的な評価が2%であった。また、津山市公民館「天体観測教室」にも対応し、その参加者は24名であった。高専生に対する未来のガリレオ育成活動:上記天体観測会に対し、本校2年3年チャレンジゼミナール学生12名には補助学生として、望遠鏡操作や「手作り望遠鏡」「ペーパークラフト」作成指導などで主体的に参加してもらった。また、学生は主体的に校内天体観測会を実施した。食連星の観測と光度曲線解析:連星系理論のWDコードを実装するオープンソースソフトPHOEBEを用いたおとめ座HW星の光度曲線から物理量を引き出す手法と連星系の基礎知識をまとめた。また、高校「地学」や「物理」の知識の範囲で、光度曲線と視線速度曲線から物理量を引き出す手法をまとめた。地域貢献としての未来のガリレオ育成活動:公開講座「天体観測会ー君も未来のガリレオだ!ー」については予定通り開催し、概ね好評であった。
KAKENHI-PROJECT-17K01002
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K01002
未来のガリレオ育成のための天文教育-食連星の観測と光度曲線解析-
地域の小中学生に天文教育を行うという意味で、完全に達成できたと考える。高専生に対する未来のガリレオ育成活動については、上記天体観測会に対し本校2年3年チャレンジゼミナール学生12名が補助学生を務め「教えることで教えられる」相互教育を実施した。食連星の観測と光度曲線解析:オープンソースソフトPHOEBEを用いた手法をまとめた。装置の整備とその活用が遅れているので「やや遅れている」とした。平成30年度に整備の上、その活用に注力したい。地域貢献としての未来のガリレオ育成活動:世界天文年2009から行っている小中学生対象の公開講座「天体観測会ー君も未来のガリレオだ!ー」については、第1回6/1(金)19:4521:15「口径35cm望遠鏡で金星と木星を見よう」、第2回7/20(金)18:3021:00「夏休みスペシャル手作り望遠鏡で月を見よう」、第3回10/12(金)18:3020:00「口径35cm望遠鏡で土星と火星を見よう」、第4回12/1(水)13:3015:30「分光器を作ろう、太陽望遠鏡をのぞいてみよう」を開催した。保護者等も参加することと、なるべく多くの天体を見てもらうため受講生定員は1回当たり20名としていた。計4回の講座の受講生は86名、保護者等も含む参加者は約179名であった。講座の肯定的な評価が90%、普通の評価が8%、否定的な評価が2%であった。高専生に対する未来のガリレオ育成活動:上記天体観測会に対し、本校2年チャレンジゼミナール基礎および3年全系横断演習I学生10名には補助学生として、望遠鏡操作や「手作り望遠鏡」「簡易分光器」作成指導などで主体的に参加してもらった。また、ケプラー方程式による惑星軌道シミュレータ作成について試行的な指導を行った。食連星の観測と光度曲線解析:7月31日に火星の大接近があったので、今年度はケプラー方程式を用いる惑星の軌道計算に取り組んだ。ケプラーの第2法則によると、惑星が一定時間に掃引きする軌道面の面積は常に一定である。これを離心近点角と時間の関係として表現するものがケプラー方程式である。惑星軌道の計算方法をまとめ、具体例として、地球と火星の軌道シミュレータを作成した。地域貢献としての未来のガリレオ育成活動:公開講座「天体観測会ー君も未来のガリレオだ!ー」については予定通り開催し、概ね好評であった。地域の小中学生に天文教育を行うという意味で、完全に達成できたと考える。高専生に対する未来のガリレオ育成活動:上記天体観測会に対し本校2年チャレンジゼミナール基礎および3年全系横断演習I学生10名が補助学生を務め「教えることで教えられる」相互教育を実施した。また、ケプラー方程式による惑星軌道シミュレータ作成について試行的な指導を行った。食連星の観測と光度曲線解析:今年度はケプラー方程式を用いる惑星の軌道計算に取り組んだ。装置の整備とその活用が遅れているので「やや遅れている」とした。令和元年度に整備の上、その活用に注力したい。未来のガリレオ育成活動:津山地域の小中学生には天文への興味付けと観測体験のため、天体観測会を継続する。高専のチャレンジゼミナール生には天体観測会補助学生の他に天体写真撮影を重視する天文教育を継続する。
KAKENHI-PROJECT-17K01002
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非線形状態空間モデルの推定と金融データへの応用分析
近年多変量の資産収益率のモデリングが注目されているが,本年度も昨年に引き続き多変量非線形状態空間モデルとして表現できる多変量確率的ボラティリティ変動(multivariate stochastic volatility, MSV)モデルの計算効率的な推定法とその応用に関する研究を行った.扱ったモデルは,(1)交差レバレッジのあるMSVモデル,(2)交差レバレッジのある行列指数MSVモデル,(3)レバレッジのある因子MSVモデル(4)レバレッジのある因子MSVモデルの4種類である.(1)から(3)までそれぞれのモデルに対して効率的なマルコフ連鎖モンテカルロ法のアルゴリズムを提案し,それに基づいたベイズ推定法用いて株式指数収益率を用いた実証分析を行い,情報量基準DICを用いたモデル比較も行った.(1)に関してはS & P500の業種別株価指数を用いた実証分析を行い,提案したアルゴリズムの効率性もシミュレーションにより示された.その結果は査読付き論分に投稿し,採択が決定された.(2)については(1)と同様のアルゴリズムを開発し,その効率性を示すとともに東証株価指数・日本国債価格指数・円ドル為替レートの収益率を用いた実証分析を行った.また情報量基準モデルDICを用いたモデル比較では(2)のモデルが(1)のモデルよりあてはまりが良いことが分かった.更に応用として(3)モデルを用いたポートフォリオ選択の問題も今年度は扱い粒子フィルタを用いたポートフォリオ選択法を提案した.(2),(3)に関する研究に関しては学位論文にまとめた.(4)のモデルはすでに先行研究で推定法は提案されていたため,(1)のモデルとの比較を行った.その結果は来年度出版される予定の書籍の一章としてまとめられた.本年度は,大別して三つの研究を行った.一つ目は研究計画書の「これまでの研究」にある『マルコフ・スイッチング確率的ボラティリティ(Stochastic Volatility SV)モデル』を用いた日本の株式指標に関する推定法とパフォーマンスを評価した.二つ目は研究計画書として提出した『行列指数を用いた動学的相関・レバレッジ効果を考慮したSVモデル』に関する研究である.しかしながら直接的には行列指数を用いたモデルに関する研究ではなく,特にその前段階である『相関一定のレバレッジ効果を考慮した多変量SVモデル』と『レバレッジ効果を考慮した因子SVモデル』の推定と比較に関する研究に集中した.前者は行列指数SVモデルの特殊ケースであり,同様アプローチが使え,単純であり,研究として行列指数と同等かそれ以上の成果になると期待されるためである.後者に関しては異なる定式化で,計算効率から注目を受けている因子モデルであり,大森裕浩教授が理論的な部分の研究を終えており特に実証分析を担当した.また二つのモデルのパフォーマンスを比較した.どちらのモデルに関しても我々のとるブロックサンプラーと呼ばれるマルコフ連鎖モンテカルロ法を用いた推定のアプローチが非常に有効であることがわかった.三つ目の研究は,『マルコフ・スイッチングSVモデル』にrealized volatility (RV)を加えて拡張したモデルである.RVやそれを多変量に拡張したrealized covarianceはSVモデルと同時モデリングすることが非常に予測などを考える上で重要であることがわかった.そこで,まず『マルコフ・スイッチングSVモデル』に応用して研究を行った.また行列指数SVに応用する研究も現在進めている.昨年度に引き続き,確率的ボラティリティ変動モデルのベイズ推定と応用に関する研究を行った.「相関一定のレバレッジ効果を考慮した多変量確率的ボラティリティ変動モデル」に関してはマルコフ連鎖モンテカルロ推定の計算効率の向上と交差レバレッジ効果のモデル化を行った.ここでいう交差レバレッジとはある株価下がった日の次の日のその株式のボラティリティが大きくなるという通常のレバレッジ効果だけでなく,ある株価が下がった日の次の日の別の株式のボラティリティへの影響をモデル化したものであり,実際のデータにおいても別の株式のボラティリティは大きくなるという結果が明らかになった.前者のモデルを用いた結果はワーキングペーパーとしてまとめ,学術誌に投稿中である.「レバレッジ効果を考慮した因子確率的ボラティリティ変動モデル」に関しては比較的高次元を扱うことができるため研究計画にあるポートフォリオ最適化に関する研究に応用することを目的として,モデルの拡張,予測・予測精度の評価法を構築し推定・予測に関する計算を行っている.計算が終了次第ワーキングペーパーとしてまとめ学術誌に投稿する予定である.昨年度,「2状態のマルコフスイッチング確率的ボラティリティ変動モデル」により定式化を行っていたものの推定結果等を考慮して多状態の構造変化モデルに変更している.この構造変化モデルは昨年度扱っていたモデルを含むより一般のモデルとなっている.三つ目は主な研究対象として扱っている.「レバレッジのある行列指数を用いた確率的ボラティリティ変動モデル」に関する研究である.今年度はより非効率ではあるが,シンプルであるプログラムを用いて予備的な実証分析を行った.株価の収益率の相関係数の変動を捉えることができることがわかっている.近年多変量の資産収益率のモデリングが注目されているが,本年度も昨年に引き続き多変量非線形状態空間モデルとして表現できる多変量確率的ボラティリティ変動(multivariate stochastic volatility, MSV)モデルの計算効率的な推定法とその応用に関する研究を行った.扱ったモデルは,(1)交差レバレッジのあるMSVモデル,(2)交差レバレッジのある行列指数MSVモデル,(3)レバレッジのある因子MSVモデル(4)レバレッジのある因子MSVモデルの4種類である.(1)から(3)までそれぞれのモデルに対して効率的なマルコフ連鎖モンテカルロ法のアルゴリズムを提案し,それに基づいたベイズ推定法用いて株式指数収益率を用いた実証分析を行い,情報量基準DICを用いたモデル比較も行った.(1)に関してはS & P500の業種別
KAKENHI-PROJECT-08J10363
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非線形状態空間モデルの推定と金融データへの応用分析
株価指数を用いた実証分析を行い,提案したアルゴリズムの効率性もシミュレーションにより示された.その結果は査読付き論分に投稿し,採択が決定された.(2)については(1)と同様のアルゴリズムを開発し,その効率性を示すとともに東証株価指数・日本国債価格指数・円ドル為替レートの収益率を用いた実証分析を行った.また情報量基準モデルDICを用いたモデル比較では(2)のモデルが(1)のモデルよりあてはまりが良いことが分かった.更に応用として(3)モデルを用いたポートフォリオ選択の問題も今年度は扱い粒子フィルタを用いたポートフォリオ選択法を提案した.(2),(3)に関する研究に関しては学位論文にまとめた.(4)のモデルはすでに先行研究で推定法は提案されていたため,(1)のモデルとの比較を行った.その結果は来年度出版される予定の書籍の一章としてまとめられた.
KAKENHI-PROJECT-08J10363
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特許法における当業者概念の具体的意義と機能――比較法的観点から
初年度である2018年度は、主に英国における当業者概念につき検討を行った。2017年に英国最高裁で判決が下されたActavis v. Eli Lilly事件、及びその他の裁判例の調査から、英国下級審では、(侵害成否のみが争われた事案であっても)係争特許の名宛人たる当業者がどのような者であるか、そしてその者がどのような「通常の一般的知識」を有するかが当事者により争われ、裁判所により具体的に認定されていることを確認した。他方、日本では、当業者を判断基準と明示する29条2項、36条4項(特許庁の審査基準では両条文における当業者の定義は異なる)、均等論第3、第4要件の関係性が問題とされることは少ないながらあるものの、一般に、個別事案において当業者の同定が争われることはなく、これがクレーム解釈との関係で問題とされた例も見られない。このような相違に関係する事情として、(1)英国では、ドイツと同様に、クレーム解釈資料たり得る公知技術が、(明細書記載のもの以外は)当業者の通常の一般的知識に属するものに限られているが、日本ではそのような限定がないこと、(2)英国の裁判実務では専門家証人が法廷に出て証言をするが、日本では当事者が提出した書類の審理が中心であることが挙げられる。以上につき研究会(11月の株式会社商事法務知的財産判例研究会)で報告を行った。上記(1)は、両国の相違の理由というよりむしろ、英国で当業者概念がクレーム解釈において具体的に機能していることの表れと考えられる。上記(2)については、実務家との意見交換から、実務上の大きな要因と推測されることが裏付けられた。また、日本特許法29条2項の進歩性の有無は当業者を基準に判断されるところ、進歩性判断における「効果」の位置付けについても関連的に検討し、短い判例評釈(2019年4月刊行の「平成30年度重要判例解説」に掲載)を執筆した。2018年度と2019年度は、現状分析のための基礎的な研究を行う計画であった。計画に則り、外国法については、文献調査の成果を研究会で報告するなどして研究を進めることができており、順次論文の形で公表していく予定である。他方、日本において当業者論の展開が見られないことに関しては、当初計画でも、外国で当業者論が果たしている機能が日本ではそもそも問題とされていない可能性だけでなく、他の概念により代替されている可能性も検討することとしていたが、2018年度の文献調査及び実務家との意見交換から、今後日本の法的状況の調査分析を進めるには、当初の想定以上の工夫が必要であるとの認識に至った。このような課題はあるものの、研究実績の概要記載のとおり、視野を広く持ち関連論点も含めて研究を行うことができており、また、今後の研究推進方策の見通しもあることから、おおむね順調に進展していると評価してよいものと考える。2019年度も、現状分析のための基礎的な研究を行う。外国法については、引き続き、資料収集と分析を行い、成果が一定のまとまりになった時点で公表する。他方、日本法については、学説での議論は非常に少なく、また裁判例で当業者の同定も行われていないことから、英国法・ドイツ法と同様の研究方法によるだけでは十分な情報を得られない。外国において多局面で当業者論が果たしている機能が我が国では他の(いくつかの)概念により代替されている可能性について、広く実務家の率直な認識を知ることが不可欠と考えられるため、あり得る可能性を具体的に複数提示して意見交換を積極的に行う。これにより得られた視角から裁判例(や審決)を再度分析し、そのような代替手法の有無、内容、利点及び限界につき、国内外の研究者との議論も通じて理論的検討を行う。初年度である2018年度は、主に英国における当業者概念につき検討を行った。2017年に英国最高裁で判決が下されたActavis v. Eli Lilly事件、及びその他の裁判例の調査から、英国下級審では、(侵害成否のみが争われた事案であっても)係争特許の名宛人たる当業者がどのような者であるか、そしてその者がどのような「通常の一般的知識」を有するかが当事者により争われ、裁判所により具体的に認定されていることを確認した。他方、日本では、当業者を判断基準と明示する29条2項、36条4項(特許庁の審査基準では両条文における当業者の定義は異なる)、均等論第3、第4要件の関係性が問題とされることは少ないながらあるものの、一般に、個別事案において当業者の同定が争われることはなく、これがクレーム解釈との関係で問題とされた例も見られない。このような相違に関係する事情として、(1)英国では、ドイツと同様に、クレーム解釈資料たり得る公知技術が、(明細書記載のもの以外は)当業者の通常の一般的知識に属するものに限られているが、日本ではそのような限定がないこと、(2)英国の裁判実務では専門家証人が法廷に出て証言をするが、日本では当事者が提出した書類の審理が中心であることが挙げられる。以上につき研究会(11月の株式会社商事法務知的財産判例研究会)で報告を行った。上記(1)は、両国の相違の理由というよりむしろ、英国で当業者概念がクレーム解釈において具体的に機能していることの表れと考えられる。上記(2)については、実務家との意見交換から、実務上の大きな要因と推測されることが裏付けられた。
KAKENHI-PROJECT-18K12692
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K12692
特許法における当業者概念の具体的意義と機能――比較法的観点から
また、日本特許法29条2項の進歩性の有無は当業者を基準に判断されるところ、進歩性判断における「効果」の位置付けについても関連的に検討し、短い判例評釈(2019年4月刊行の「平成30年度重要判例解説」に掲載)を執筆した。2018年度と2019年度は、現状分析のための基礎的な研究を行う計画であった。計画に則り、外国法については、文献調査の成果を研究会で報告するなどして研究を進めることができており、順次論文の形で公表していく予定である。他方、日本において当業者論の展開が見られないことに関しては、当初計画でも、外国で当業者論が果たしている機能が日本ではそもそも問題とされていない可能性だけでなく、他の概念により代替されている可能性も検討することとしていたが、2018年度の文献調査及び実務家との意見交換から、今後日本の法的状況の調査分析を進めるには、当初の想定以上の工夫が必要であるとの認識に至った。このような課題はあるものの、研究実績の概要記載のとおり、視野を広く持ち関連論点も含めて研究を行うことができており、また、今後の研究推進方策の見通しもあることから、おおむね順調に進展していると評価してよいものと考える。2019年度も、現状分析のための基礎的な研究を行う。外国法については、引き続き、資料収集と分析を行い、成果が一定のまとまりになった時点で公表する。他方、日本法については、学説での議論は非常に少なく、また裁判例で当業者の同定も行われていないことから、英国法・ドイツ法と同様の研究方法によるだけでは十分な情報を得られない。外国において多局面で当業者論が果たしている機能が我が国では他の(いくつかの)概念により代替されている可能性について、広く実務家の率直な認識を知ることが不可欠と考えられるため、あり得る可能性を具体的に複数提示して意見交換を積極的に行う。これにより得られた視角から裁判例(や審決)を再度分析し、そのような代替手法の有無、内容、利点及び限界につき、国内外の研究者との議論も通じて理論的検討を行う。【理由】図書については、特許法全体を扱う和書・洋書を他の経費で購入することができたこと、及び、購入予定だった複数冊の洋書の刊行が遅れていること等のため、本予算を予定ほど執行しなかった。また、物品については、すぐに必要なものを購入させていただいた一方、性能等の十分な検討を要したために翌年度の購入としたものもある。加えて、旅費については、学務と日程が重なった等の理由で、当初予定していた出張(研究会参加)を行うことができないことが複数回あった。【使用計画】2019年度以降の研究に必要な図書及び物品(経年劣化してきた、資料収集・分析・保存・研究報告用の電子機器を含む)の購入をさせていただく。さらに、今後の研究の推進方策に記載したように、実務家・研究者と、関連し得る事項を不足なく視野に入れた意見交換を行うべく、研究会・関係官庁等への出張を積極的に行う。年代の古い資料や会員に配布されるタイプの資料については、所蔵する図書館や機関が限られるため、必要に応じて資料調査に出向く。
KAKENHI-PROJECT-18K12692
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超音波検査のコンピュータ処理:心エコー図による心臓肥大の診断と予後予測
心臓に於ける超音波検査法の発展により,心臓肥大が多く発見されるようになり,その際生じる,心筋組織変性と病態生理学的変化の関連性が注目されている.更に,最近になって心臓肥大とその予後予測との関連が,心エコー図検査上重要となり,臨床応用の拡大が期待されている.一方,我々はここ数年来,心エコー図検査のコンピュータ処理を行い,心形態の立体的描出を容易に可能にするシステムを開発してきた.そこで,このシステムにより以下の方法で研究を進めた.1.京都大学付属病院検査部に於て,心エコー図検査を実施したもののうち,心臓肥大と診断され,良好な超音波信号の得られる患者について,ビデオテープに収録した.2.現在当部にて稼働中のコンピュータシステムによって,心エコー図検査の記録をオフラインにて処理して,超音波信号情報の解析を行い,特徴的な超音波情報パラメーターを抽出し,大容量記憶装置にデーターを保存した.3.以前より記録保存してある,心エコー図記録をオフライン処理して,上記と同様の処理をし,病例数を蓄積した.4.一方,これまで蓄積されている臨床情報から心臓肥大に関する特徴を抽出,解析した.5.この様にして得られた,心エコー図検査による心臓肥大の特徴的情報と,臨床上の特徴を対比して,心臓肥大の診断と予後予測の関連ついての基礎的検討をくわえた.このように,心エコー図検査のコンピュータ処理により,超音波信号を特徴づける情報を抽出し,心臓肥大の診断,病態生理と,その予後の予測の対比検討を行うことにより,心臓肥大の診断とその予後予測に関する基礎的な検討を加えた.心臓に於ける超音波検査法の発展により,心臓肥大が多く発見されるようになり,その際生じる,心筋組織変性と病態生理学的変化の関連性が注目されている.更に,最近になって心臓肥大とその予後予測との関連が,心エコー図検査上重要となり,臨床応用の拡大が期待されている.一方,我々はここ数年来,心エコー図検査のコンピュータ処理を行い,心形態の立体的描出を容易に可能にするシステムを開発してきた.そこで,このシステムにより以下の方法で研究を進めた.1.京都大学付属病院検査部に於て,心エコー図検査を実施したもののうち,心臓肥大と診断され,良好な超音波信号の得られる患者について,ビデオテープに収録した.2.現在当部にて稼働中のコンピュータシステムによって,心エコー図検査の記録をオフラインにて処理して,超音波信号情報の解析を行い,特徴的な超音波情報パラメーターを抽出し,大容量記憶装置にデーターを保存した.3.以前より記録保存してある,心エコー図記録をオフライン処理して,上記と同様の処理をし,病例数を蓄積した.4.一方,これまで蓄積されている臨床情報から心臓肥大に関する特徴を抽出,解析した.5.この様にして得られた,心エコー図検査による心臓肥大の特徴的情報と,臨床上の特徴を対比して,心臓肥大の診断と予後予測の関連ついての基礎的検討をくわえた.このように,心エコー図検査のコンピュータ処理により,超音波信号を特徴づける情報を抽出し,心臓肥大の診断,病態生理と,その予後の予測の対比検討を行うことにより,心臓肥大の診断とその予後予測に関する基礎的な検討を加えた.
KAKENHI-PROJECT-08672640
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08672640
化学物質リスク評価に基づいた意思決定支援のための経験則と理論的知識の構造化
初年度、第2年度を通して構築した、構築してきたプロセス設計と評価に関する手法群や既存の知識、さらにはそれらに関わる経験則と理論的知識を論理的に解析し、全体を一つの知識構造体として体系化していく作業を中心に行った。プロセス設計と評価に関する知識を、リスク項目の特定、プロセス評価、代替案生成、プロセスシミュレーション、リスクの解釈という5つの知識に分類し、それぞれの知識において必要となる既存の経験則や理論的知識と要求項目を検討した。この分類により、設計や評価に関する知識を一般的に体系化して議論することが可能となり、それぞれの知識・手法群の関係を考慮できるようになった。この知識構造をもとにすることで、化学物質リスク評価に基づいた意思決定を支援するためのフレームワークの詳細な検討が可能となった。プロセス評価と設計に関する知識の一般的な体系化に加えて、ケーススタディの対象となっている金属洗浄に関しては、実際に5つの知識を基にした知識情報基盤システムを実装した。まず、金属洗浄における設計の制約条件を考慮しながら、5つの知識を用いるビジネスモデルと情報システムをアクティビティモデリング言語IDEFOと情報システムモデリング言語UMLを用いてそれぞれモデル化した。これらのモデルは、化学物質リスク評価を組み込んだ新しい業務モデルとソフトウェアシステムの設計図となり、実際のシステム構築をより効率的かつ効果的に行うことが可能となった。特にプロセスモデリングに関しては、工業用洗浄装置を用いた実験。現場プロセスの調査、数値流体力学によるコンピュータシミュレーションを行い、エビデンスを収集してプロセスの物理モデルと数値モデルを構築した。これをプロセス評価方法と関連付けさせて一部をシステムに実装した。化学物質リスク削減のためのプロセス設計方法に関して、産業洗浄分野において蓄積されている経験則を調査・分類するために、洗浄サイト、溶剤メーカ、及び装置メーカのエンジニアにヒアリングを行った。これに加えて、既存の体系化されたリスク評価手法を調査し、それぞれの手法が評価可能である評価項目を産業洗浄プロセス設計における評価項目とする際の適応可能性と妥当性に関して検討して、産業の経験則と理論的な評価手法の間の差異を分析した。また、この作業とともに、リスクの要因となる洗浄プロセス情報・パラメタ・条件に関しても、同様に経験則と理論的な手法の調査・分類を行い、先に述べたリスク項目の解析結果と結びつけながら整理した。整理できた情報を基にして、プロセスにおける化学物質リスクを特定化する化学物質リスク特定化モジュールと、リスク削減対策を導出する代替案導出モジュールの基盤となる、化学物質リスク-プロセスパラメタ連関モデルを構築した。これにより、リスク削減プロセス導出システムに不可欠なデータベースの構造を明確化できた。さらに、洗浄プロセスモデルの構築のために、洗浄プロセスの種類を分類した。その中で特に、現在汎用的に用いられている塩素系溶剤を使用したプロセスに関する実験と解析を行い、洗浄プロセスモデルの一部を実装した。このモデルにより、代表的なオペレーションパラメタの変化に伴う化学物質リスクの変化を推算することが可能となり、リスク削減対策として導出された代替プロセスのリスク評価が可能となった。経験則と理論的知識の構造化におけるケーススタディである、産業洗浄におけるプロセス設計に関し、産業の関係者から協力を得ることができた。その結果から現場固有の機能や制約を考慮したリスク削減の方法を考慮するとともに、第1年度に構築したリスク評価手法の現場プロセスへの適用を行うことができた。既に、このリスク評価手法に関して、2本の論文が採択されている。また、初年度に体系化した、化学物質を利用するプロセスにおいて評価すべきリスク項目の特定化と代替案導出を行うための知識と情報を、さらに具体化してコンピュータシステムのモジュールとして表現した。このときのリスク特定化のための情報と洗浄プロセスモデルに関する情報を関連付けし、リスクに基づく意思決定を支援する知識・情報基盤システムを提案することができた。さらに、工業用洗浄装置を用いた現場の条件を考慮したリスク定量化実験を実施し、第1年度から構築してきた洗浄プロセスモデルの一部を拡張・構築した。合わせて数値流体力学を用いて装置内の物理現象を可視化し、産業洗浄関係者でも明確に理解していなかった物理現象の一部を解明することができた。同時に、現実の複雑さを反映できるように、様々な経験則の収集も行った。実際の研究活動に加え、第2年度は数多くの国際学会に参加し、海外の産業プロセスにおける現状と化学物質リスク評価手法に関して調査、さらに研究発表・意見交換を行ってきた。スイス連邦工科大学において、海外の情勢の調査と意見交換を行った。化学物質リスクに基づく意思決定が世界中で必要となり、各研究機関で同じようにリスク削減のための研究が行われていることを再認識するとともに、本研究がリスクに基づく意思決定のための支援システム構築の研究として重要な位置にあることを確認することができた。初年度、第2年度を通して構築した、構築してきたプロセス設計と評価に関する手法群や既存の知識、さらにはそれらに関わる経験則と理論的知識を論理的に解析し、全体を一つの知識構造体として体系化していく作業を中心に行った。プロセス設計と評価に関する知識を、リスク項目の特定、プロセス評価、代替案生成、プロセスシミュレーション、リスクの解釈という5つの知識に分類し、それぞれの知識において必要となる既存の経験則や理論的知識と要求項目を検討した。この分類により、設計や評価に関する知識を一般的に体系化して議論することが可能となり、それぞれの知識・手法群の関係を考慮できるようになった。この知識構造をもとにすることで、化学物質リスク評価に基づいた意思決定を支援するためのフレームワークの詳細な検討が可能となった。プロセス評価と設計に関する知識の一般的な体系化に加えて、ケーススタディの対象となっている金属洗浄に関しては、実際に5つの知識を基にした知識情報基盤システムを実装した。
KAKENHI-PROJECT-06J11314
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J11314
化学物質リスク評価に基づいた意思決定支援のための経験則と理論的知識の構造化
まず、金属洗浄における設計の制約条件を考慮しながら、5つの知識を用いるビジネスモデルと情報システムをアクティビティモデリング言語IDEFOと情報システムモデリング言語UMLを用いてそれぞれモデル化した。これらのモデルは、化学物質リスク評価を組み込んだ新しい業務モデルとソフトウェアシステムの設計図となり、実際のシステム構築をより効率的かつ効果的に行うことが可能となった。特にプロセスモデリングに関しては、工業用洗浄装置を用いた実験。現場プロセスの調査、数値流体力学によるコンピュータシミュレーションを行い、エビデンスを収集してプロセスの物理モデルと数値モデルを構築した。これをプロセス評価方法と関連付けさせて一部をシステムに実装した。
KAKENHI-PROJECT-06J11314
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J11314
生体シグナル調節におけるスフィンゴ糖脂質の作用機構と重複性の解明
1.GM2/GD2合成酵素とGD3合成酵素のダブルKOマウスの検討の結果、神経変性、皮膚損傷、抗不安と記憶・学習脳の低下、知覚機能低下、アセチルコリンのムスカリン型受容体の反応性低下と、セロトニン受容体5-HT2の反応亢進を認め、酸性糖脂質が神経組織の維持に必須であることが示唆された。2.DKOマウスでの遺伝子発現プロフィールを検討し、DKOにおいて発現低下する遺伝子5種、亢進する遺伝子15種を同定した。特に補体・補体受容体遺伝子の発現亢進が認められ、補体制御分子のラフトでの機能不全、組織障害が補体系の活性化を招き変性増強に働くことが示唆された。3.舌下神経再生実験の結果、GM2/GD2合成酵素KOマウスでは、再性能が著明に低下した。舌下神経核において発現低下する遺伝子をLCMとRT-PCRにより解析し、BDNF、GDNFなどの発現低下が示された。asialo-系糖脂質の欠損にはGD3の代償機能が不十分なことが示された。4.lac-cer合成酵素であるβ4GalT-VI遺伝子KOを樹立したが、糖脂質に明らかな変化が見られず、lac-cer合成の多くはβ4-GalT-Vが担うことが示唆された。5.GM3合成酵素の欠損マウスは問題なく出生、成長し、asialo-系列糖脂質の代償作用が示唆された。6.Gb3/CD77合成酵素(α1,4-GalT)のKOマウスを用い、ベロ毒素に対する感受性が本酵素の発現に依っていることが確認された。以上、KOマウスに残存する糖脂質の代償的機能のカバー可能な範囲と、固有の機能が見えてきた。今後のテーマとして、1、単一遺伝子KOとダブルKOマウスの異常表現型の比較による特定糖脂質構造の意義の解明、2、糖脂質糖鎖の特異的ligandの同定と意義の解明、3、糖脂質がクラスター形成する膜ミクロドメインのin vivoにおける解明が重要である。1.GM2/GD2合成酵素とGD3合成酵素のダブルKOマウスの検討の結果、神経変性、皮膚損傷、抗不安と記憶・学習脳の低下、知覚機能低下、アセチルコリンのムスカリン型受容体の反応性低下と、セロトニン受容体5-HT2の反応亢進を認め、酸性糖脂質が神経組織の維持に必須であることが示唆された。2.DKOマウスでの遺伝子発現プロフィールを検討し、DKOにおいて発現低下する遺伝子5種、亢進する遺伝子15種を同定した。特に補体・補体受容体遺伝子の発現亢進が認められ、補体制御分子のラフトでの機能不全、組織障害が補体系の活性化を招き変性増強に働くことが示唆された。3.舌下神経再生実験の結果、GM2/GD2合成酵素KOマウスでは、再性能が著明に低下した。舌下神経核において発現低下する遺伝子をLCMとRT-PCRにより解析し、BDNF、GDNFなどの発現低下が示された。asialo-系糖脂質の欠損にはGD3の代償機能が不十分なことが示された。4.lac-cer合成酵素であるβ4GalT-VI遺伝子KOを樹立したが、糖脂質に明らかな変化が見られず、lac-cer合成の多くはβ4-GalT-Vが担うことが示唆された。5.GM3合成酵素の欠損マウスは問題なく出生、成長し、asialo-系列糖脂質の代償作用が示唆された。6.Gb3/CD77合成酵素(α1,4-GalT)のKOマウスを用い、ベロ毒素に対する感受性が本酵素の発現に依っていることが確認された。以上、KOマウスに残存する糖脂質の代償的機能のカバー可能な範囲と、固有の機能が見えてきた。今後のテーマとして、1、単一遺伝子KOとダブルKOマウスの異常表現型の比較による特定糖脂質構造の意義の解明、2、糖脂質糖鎖の特異的ligandの同定と意義の解明、3、糖脂質がクラスター形成する膜ミクロドメインのin vivoにおける解明が重要である。糖鎖遺伝子ノックアウトマウスが示す様々な異常表現型の発症メカニズムと、残存糖脂質による代償機能の解析をめざして、in vivoおよびin vitroの研究を展開した。GM2/GD2合成酵素遺伝子,GD3合成酵素遺伝子の両方を欠失するダブルノックアウト(KO)マウスの神経機能,行動,神経組織形態につき詳細な検討を行った。その結果、1.ダブルKOマウスでは生後間もない時期より末梢神経の変性を認めた。2.20週齢過ぎから出現する皮膚損傷部位には神経線維の増殖が見られた。3.著明な記憶,学習能の低下と抗不安を認めた。4.知覚機能低下(機械刺激に対する知覚の低下)が加齢と共に進行した。5.アセチルコリンのムスカリン型受容体アゴニストであるOxotremorine刺激に対する反応の低下と、セロトニン受容体5-HT2のアゴニストDOIに対するtwitch反応の亢進を認めた。以上の結果よりGM3以外のガングリオシドの存在が神経組織の維持にとって必須であり、その欠失がアセチルコリンとセロトニンなどのシグナル伝達の障害を惹起することにより、学習,記憶能を低下させることが判明した。現在ダブルKOと野生型マウスにおける神経組織発現遺伝子の発現プロフィールの比較に基づき、変性に関連する遺伝子を探索中である。また、舌下神経切断実験によって、神経再生における糖脂質糖鎖の役割を明らかにすべく、システムの構築を行った。
KAKENHI-PROJECT-16390075
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生体シグナル調節におけるスフィンゴ糖脂質の作用機構と重複性の解明
神経切断後、舌から注入したHRPは完全に逆行性輸送が遮断されるが、23週後から徐々に回復し、6週後には90%のレベルまで回復することが示された。今後、タブルKOマウスを用いて舌下神経切断後の再生能と、外来性のガングリオシドを注入した時の再生能亢進につき検討する。酸性糖脂質糖鎖の生体内機能とその代償のメカニズムの解明のため、GM2/GD2合成酵素、およびGD3合成酵素とのダブルノックアウト(DKO)の異常表現型と遺伝子発現プロフィールの検討を進めた。1、DKOマウスにおいては、野生型マウスとの遺伝子発現プロフィールの比較において、補体系遺伝子C4、C3a受容体(R)の発現亢進が認められ、S100A8などの炎症関連遺伝子、タンパク質分解酵素、RNAase、などの発現亢進も認められた。2、補体系の神経変性への関わりを明らかにするために、補体系遺伝子すべてに関して、各週齢の野生型、DKOマウスの脊髄、小脳、肝臓における発現レベルを解析したところ、脊髄、小脳においては、15週齢頃よりC1qa、C4、C3aR、C5aRなどの明らかな発現亢進が認められた。一方、肝臓では一般的に遺伝子発現レベルは高かったが、明らかな変動は認められず、神経系組織と肝臓において独自の補体系の調節機構が存在することが示唆された。また、DKOにおける補体系遺伝子の意義として、ガングリオシド欠損に基づく補体抵抗性分子(GPI型タンパク質)のラフトでの機能不全が惹起されて、補体による組織障害が発生したこと、その病変がさらに補体系の活性化を招いて、変性を増悪することが示唆された。3、複合型ガングリオシドを欠損するGM2/GD2合成酵素遺伝子のKOマウスでは、残存するガングリオシドとしてGM3、GD3が認められていたが、さらに9-O-acetyl-GD3が脳神経系で発現増強していることが判明した。KOマウスの脳組織全体に9-O-acetyl-GD3の発現が認められたが、驚いたことにプルキンエ細胞には発現を認めなかった。In situ hybridizationではGM2/GD2合成酵素遺伝子の強い発現が見られることから、本来、asialo-系ガングリオシドが高発現することが推測され、GD1cやそのderivativesの存在を検討中である。本年は、糖脂質糖鎖のノックアウト(KO)マウス間の異常表現型の比較により、代償機能と独自機能の解明を進めた。b-系列ガングリオシドを欠損するGD3合成酵素遺伝子KOマウスは、舌下神経切断実験において著明な再生能低下を示したが、GM2/GD2合成酵素遺伝子のKOマウスでは、再性能がさらに低下し、野生型のそれの約3分の1以下であることが判明した。またGT1bの切断部への注入により80%まで回復した。そのメカニズムの解明のため、舌下神経核において野生型に比してGM2/GD2合成酵素遺伝子のKOマウスで発現低下する遺伝子を、Iaser capture microdissection(LCM)およびreal time RT-PCRにより解析した。その結果、BDNF、GDNF、p75NTF、TrkB、CNTFRなどの遺伝子発現が有意に低下していることが示され、再性能の低下の要因と考えられた。これらの因子や受容体は以前の研究で、神経再生に重要であることが報告されている遺伝子である。これらの結果は、asialo-系列の欠損に対してはGD3の代償機能が十分でないことを示すものである。
KAKENHI-PROJECT-16390075
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製品・サービスの意味性を明らかにするビジネスマイクロエスノグラフィ手法の開発
製品やサービスの開発時には、消費者やユーザの立場にたって、製品やサービスが生活や業務にとって意味があるかどうか(意味性)を重視する必要がある。そこで、意味性を明確にするために、ユーザ経験という観点に立ち、その実態を把握する手法を開発した。当初は、ビジネスマイクロエスノグラフィと呼んでいたが、ユーザ経験に焦点を当てているため、経験想起法(ERM: Experience Recollection Method)と命名した。これは使用開始当時から現在までの人工物との関わりを想起してもらい、エピソードと経験評価値(+10-10)を継時的に記録する手法であり、ユーザ経験の実態が把握できるようになった。製品・サービスの意味性を明らかにするマイクロエスノグラフィの手法に対して適切なベースとしてUXカーブの手法をとりあげ、それを次の点に関して改善し、UXグラフとして提案した。(1)カーブそのものよりも、その変曲点に相当するライフイベントが重要であると考えられたため、記入にあたってライフイベントの座標とその内容を最初に記録させ、カーブはその後で記入させるようにした。(2)UX白書でも事前の期待感の重要性を指摘しているため、現在の前の期待感についても値を記入させることにした。(3)各イベントにおける座標はUX白書で言うところのエピソード的経験に相当するものと解釈することにした。(4)カーブそのものでは累積的UXは求められないため、現在時点での評価に対しては、現時点での総括的な評価を記入させるようにした。(5)カーブについては、各イベント間をつなぐときに、漸次的に変化している場合と、当該イベントによって急激に変化が起きる場合を区別するため、直線(場合によっては曲線)でつなぐ場合と、水平線で移行して次のイベントのところでほぼ直角に上下につなぐ場合とを区別させた。(6)隣接するイベント間の絶対座標ではなく、縦座標の差分を二番目のイベントの持っていた経験値と解釈するようにした。以上である。また記入においては、使いやすさや利用頻度など複数の縦軸を用いることをやめ、満足度ひとつに絞った。これは満足できる物はそれなりに意味があり、反対に意味がある物は人を満足させる、という考えに基づくものである。これまでにおよそ150近い事例を集めたが、集団法で施行していたために細かいニュアンスを聞き取ることができなかった。今後は個人法によって詳細なデータを得るようにし、意味性を明らかにする手法としての精度を高めることを目指す。研究テーマであるビジネスマイクロエスノグラフィは、ビジネス対象である製品やサービスについて、その利用者(ユーザ)がどのような経験をしたかを素片的(つまりマイクロな視点から)収集し、データに基づいて、ユーザの経験(UX)を総体的に明らかにすることを目標としている。初年度と今年度前半では、Kujala達の開発したUXカーブを改善して申請者が新たに開発したUXグラフをメインツールとして位置づけ、今年度後半では、そのWebアプリ化を推進した。これによって、グラフを記入しようとするユーザは、素片的な経験データを、必ずしも時系列的に想起する必要が無く、自由に記入することができるようになった。およそ一年半の期間で開発や紙ベースでのデータ収集を行ったUXグラフという手法は、横軸に時間をとり、縦軸に意味性の結果としてもたらされる満足感をとり、各時期における満足度の水準を関連するエピソードと共に記入する手法である。トータルな満足感は、最新の評価値と最大値とによって決定されるというKahnemanの説があるが、申請者が目標としているのは、単独の値としてのトータルな満足感ではなく、どのような出来事、つまり理由や原因によって、ユーザがどの程度の水準の満足感を得るかということであり、個別のエピソード的経験を収集することが必要である。もちろん記憶の変容や減衰という問題があるので、調査時点から遡るに連れて、データの信頼度は低下すると考えられ、また欠損も発生しているとは思えるが、次の開発において、満足感の高かったエピソードはそのまま保存し、満足感の低かったエピソードについては改善を施、トータルとしてのUXの満足度水準を向上させることが重要であるため、多少の信頼性の低下やデータの欠損については致し方ないことと考えた。さらにアプリ化することによって、データ記入におけるユーザの心理的負担は軽減された。・満足感と意味性を品質特性(客観的品質特性と主観的品質特性、および、設計品質と利用品質を含む)の集約的指標とし、それがUXの規定要因のなかで重要な位置を占めるという点については、HCII2015にて発表し、かなりの反響を呼んだ。特に関心のある海外、主にイギリス、の関係者と集まって、セッション終了後にその適切さを討論する場を設けるという、一般の発表ではあまりない形で、その内容が審議され、関係者の理解を得ることができた。このことは、満足感ないし意味性が重要な特性であり、それを指標にしてUXに関するデータを取得するという申請者のアプローチの適切さが確認されたことと解釈できる。・Webツールについては、情報処理学会のインタラクション2016などの機会に発表を行い、多くの人々から有益なフィードバックを得ることが出来た。具体的に一例をあげれば、UXグラフでエピソードを記入してもらうと、そのエピソードについて背景情報が欲しくなる場合があり、通常はインタビューを行うわけだが、オンラインでデータを取得するやり方の場合にその点はどうなるか、という質問があった。これについては、質問すべき内容をあらかじめ用意しておき、オンラインで対面インタビューと同等の情報を得ることができる方式を検討中であり、2016年度にシステムとして実装する予定である。本研究では、製品やサービスの利用によって、ユーザが意味のある(意義のある)経験や生活ができるようになるかを評価し確認する手法を開発した。
KAKENHI-PROJECT-26330228
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製品・サービスの意味性を明らかにするビジネスマイクロエスノグラフィ手法の開発
具体的には、UXカーブという手法をベースにして、まずUXグラフという手法を提案した。UXカーブは、UXの水準(具体的には、一般的経験水準、魅力水準、使いやすさ水準、機能性水準、利用頻度)を横軸の時間に対して上下の高さでグラフ表現させる手法である。これに対して、UXグラフでは、横軸の単位(つまり年)を明確にし、また、どのようなエピソードがどの程度の評価を得たのかをエピソードのテキスト記述と、+10から-10までの評定による程度の評価を得ることにした点に特徴がある。いいかえれば、UXカーブにおける恣意性を、手法の厳格化によって抑えようとしたものである。しかし、UXカーブやUXグラフはグラフを描画するため、視覚的に把握できるという利点がある反面、横軸の時期に関する記憶の曖昧さによってグラフの形が影響されてしまう点に大きな課題があった。そこで、グラフという視覚化表現をやめ、エピソードのテキスト記述と評価値の記入だけに限定したのがERM(Experience Recollection Method)である。日本語では経験想起法と命名した。なお、時間軸に相当する部分については、入手前、入手した時点、その後、現時点、今後の見通し、という大ぐくりな表現とするにとどめた。記憶に関しては忘却や歪曲という心理学的プロセスの影響が懸念されるが、リアルタイムで経験値を蒐集する方法にくらべれば侵襲性が低く、長期間にわたる調査や広い分野での利用が可能である。ERMについては国内外で既に80件程度のデータ収集を行い、記入のしやすさ、自己の経験の確認の可能性、などの利点があることがインフォーマントのアンケート結果から明らかとなっている。製品やサービスの開発時には、消費者やユーザの立場にたって、製品やサービスが生活や業務にとって意味があるかどうか(意味性)を重視する必要がある。そこで、意味性を明確にするために、ユーザ経験という観点に立ち、その実態を把握する手法を開発した。当初は、ビジネスマイクロエスノグラフィと呼んでいたが、ユーザ経験に焦点を当てているため、経験想起法(ERM: Experience Recollection Method)と命名した。これは使用開始当時から現在までの人工物との関わりを想起してもらい、エピソードと経験評価値(+10-10)を継時的に記録する手法であり、ユーザ経験の実態が把握できるようになった。UXカーブに着目し、それをUXグラフに改善するための各種の改訂を行い、エスノグラフィックな手法としての有効さや効率性を基本的に確認した。UXグラフは、インタビューや観察といった一般的なエスノグラフィックな手法と異なり、総括的な(満足度という形での意味性に関する)評価を定量的に行えるという利点がある。また、個人法を採用した場合には、このカーブがインタビュー調査における媒介素材として有効に機能することが考えられるため、そうした可能性については次年度に検討することにする。
KAKENHI-PROJECT-26330228
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細菌内毒素による細胞活性化に関与する膜タンパク質の同定とその機能解析
細菌内毒素(LPS)は、マクロファージなどの宿主細胞を活性化し種々のサイトカインを産生することが知られている。本研究の目的は、LPSによる細胞活性化の要となっている新たな分子を同定しその特性を明らかにすることである。本研究では、細胞膜タンパク質に対する抗体およびラジオアイソトープ標識リピドAを用いて解析することで、これらの基準の多くを満足するタンパク質を同定した。これまで、マウス骨髄ストローマ細胞株ST2がCD14の発現はなく、マクロファージとほぼ同程度のLPS反応性を有することを明らかにしている。そこで、ST2細胞から精製した細胞膜およびこの細胞膜よりHPLCで部分精製したLPS結合タンパク質を抗原としてポリクロナール抗体を作製した。この抗ST2細胞膜抗体をもちいたマクロファージ膜タンパク質の解析した。ST2細胞を可溶化し作成した抗体を用い免疫沈降することで膜タンパク質を濃縮し、これを電気泳動で分離後、さらに同じ抗体でウェスタンブロットする。これによって特定の集団の膜タンパク質の発現が可能になった。[3H]標識リピドA前駆体(PE-406)および[3H]標識リピドA(PE-506)を用いたリガンドブロット法でリピドA結合タンパク質として57kDaおよび53kDaのタンパク質を同定した。細菌内毒素(LPS)は、マクロファージなどの宿主細胞を活性化し種々のサイトカインを産生することが知られている。本研究の目的は、LPSによる細胞活性化の要となっている新たな分子を同定しその特性を明らかにすることである。本研究では、細胞膜タンパク質に対する抗体およびラジオアイソトープ標識リピドAを用いて解析することで、これらの基準の多くを満足するタンパク質を同定した。これまで、マウス骨髄ストローマ細胞株ST2がCD14の発現はなく、マクロファージとほぼ同程度のLPS反応性を有することを明らかにしている。そこで、ST2細胞から精製した細胞膜およびこの細胞膜よりHPLCで部分精製したLPS結合タンパク質を抗原としてポリクロナール抗体を作製した。この抗ST2細胞膜抗体をもちいたマクロファージ膜タンパク質の解析した。ST2細胞を可溶化し作成した抗体を用い免疫沈降することで膜タンパク質を濃縮し、これを電気泳動で分離後、さらに同じ抗体でウェスタンブロットする。これによって特定の集団の膜タンパク質の発現が可能になった。[3H]標識リピドA前駆体(PE-406)および[3H]標識リピドA(PE-506)を用いたリガンドブロット法でリピドA結合タンパク質として57kDaおよび53kDaのタンパク質を同定した。本年度は、ポリクロナール抗体の作製とLPSによる細胞活性化に関与する新たな分子を検索し、生物学的特性の解析を行った。(1)CD14陰性骨髄ストローマ細胞株(ST2)細胞膜に対するポリクローナル抗体の作製。申請者はこれまで、マウス骨髄ストローマ細胞株ST2がOD14の発現はなく、マクロファージとほぼ同程度のLPS反応性を有することを明らかにしている。そこで、ST2細胞から精製した細胞膜およびこの細胞膜よりHPLCで部分精製したLPS結合タンパク質を抗原としてポリクロナール抗体を作製した。(2)マクロファージ膜タンパク質中のリピドA結合タンパク質の同定(1)で作製した抗体による免疫沈降で膜タンパク質を濃縮し、これを電気泳動で分離後、楠本正一教授(阪大)らにより合成された高い放射活性をもつ[^3H]標識リピドA前駆体(PE-406)および[^3H]標識リピドA(PE-506)を用いたリガンドブロット法でリピドA結合タンパク質を検出した。その結果、57kDaと53kDaの膜タンパク質(p57とp53)が無刺激のマクロファージでは発現しているが、LPSで活性化するとその発現が完全に消失すること、LPS低感受性C3H/HeJマクロファージではこのp57とp53はLPS刺激の有無に関わらず発現していること、またp53への[^3H]標識リピドA前駆体PE-406および[^3H]標識リピドA(PE-506)の結合は合成リピドA前駆体(406)、合成リピドA(506)、PE-406やPE-506では抑制されなかったが、S.minnesotaSLPSやReLPSにより抑制されることが明らかとなった。細菌内毒素(LPS)は、マクロファージなどの宿主細胞を活性化し種々のサイトカインを産生することが知られている。本研究の目的は、LPSによる細胞活性化の要となっている新たな分子を同定しその特性を明らかにすることである。本研究では、細胞膜タンパク質に対する抗体およびラジオアイソトープ標識リピドAを用いて解析することで、これらの基準の多くを満足するタンパク質を同定した。これまで、マウス骨髄ストローマ細胞株ST2がCD14の発現はなく、マクロファージとほぼ同程度のLPS反応性を有することを明らかにしている。そこで、ST2細胞から精製した細胞膜およびこの細胞膜よりHPLCで部分精製したLPS結合タンパク質を抗原としてポリクロナール抗体を作製した。この抗ST2細胞膜抗体をもちいたマクロファージ膜タンパク質の解析した。ST2細胞を可溶化し作成した抗体を用い免疫沈降することで膜タンパク質を濃縮し、これを電気泳動で分離後、さらに同じ抗体でウェスタンブロットする。これによって特定の集団の膜タンパク質の発現が可能になった。[3H]標識リピドA
KAKENHI-PROJECT-11670270
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11670270
細菌内毒素による細胞活性化に関与する膜タンパク質の同定とその機能解析
前駆体(PE-406)および[3H]標識リピドA(PE-506)を用いたリガンドブロット法でリピドA結合タンパク質として57kDaおよび53kDaのタンパク質を同定してた。
KAKENHI-PROJECT-11670270
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膵癌に対するMUC1刺激樹状細胞療法の臨床研究―樹状細胞マイクロアレイ解析を含めて―
切除不能および再発膵癌にMUC1-CTLとMUC1-DC併用療法を施行し、その臨床効果を検討した。Leukapheresisにより抹消血単核球を分離、さらに比重遠心法を行った後、プラスチックシャーレで45分間培養し、浮遊細胞と付着細胞に分け、浮遊細胞からMUC1-CTLを誘導、付着細胞からはDCを誘導した。樹状細胞はIL-4およびGM-CSFより未熟DCを誘導、さらにTNF-αを添加して、培養終了24時間前にGMP gradeのMUC1ペプチドで刺激し、成熟DCを誘導した。MUC1-CTLは経静脈的に投与し、DCは大腿部皮内に投与、安全性を確認すると共に、臨床効果や免疫反応について検討した。9例に行い、有害事象は認めなかった。CTL移入細胞数は0.6-5.7x10^9個、DCは3.4-31X10^7個であった。CR1例、NC2例、PD6例であり、CRの1例は48ヶ月無再発生存中である。MUC1-CTLの表面マーカー解析の結果、誘導前に比べ誘導後には、明らかにヘルパーT細胞(32.7→44.6%)および細胞障害性T細胞(17.9→48.3%)の比率が増加していた。未熟DCに比較して成熟DCではCD83(2.7→88.4%)、CD80(42.9→87.3%)、CD86(50.4→99.2%)と有意に増加していた。DCの遺伝子解析では、単球の純度をあげる実験を行い、98%の純度がコンスタントに得られるようになった。現在、健常者1名、膵癌患者2名より単球、未熟DC,および成熟DCを得ており、アレイ解析を行う準備をしている。切除不能および再発膵癌にMUC1-CTLとMUC1-DC併用療法を施行し、その臨床効果を検討した。Leukapheresisにより抹消血単核球を分離、さらに比重遠心法を行った後、プラスチックシャーレで45分間培養し、浮遊細胞と付着細胞に分け、浮遊細胞からMUC1-CTLを誘導、付着細胞からはDCを誘導した。樹状細胞はIL-4およびGM-CSFより未熟DCを誘導、さらにTNF-αを添加して、培養終了24時間前にGMP gradeのMUC1ペプチドで刺激し、成熟DCを誘導した。MUC1-CTLは経静脈的に投与し、DCは大腿部皮内に投与、安全性を確認すると共に、臨床効果や免疫反応について検討した。9例に行い、有害事象は認めなかった。CTL移入細胞数は0.6-5.7x10^9個、DCは3.4-31X10^7個であった。CR1例、NC2例、PD6例であり、CRの1例は48ヶ月無再発生存中である。MUC1-CTLの表面マーカー解析の結果、誘導前に比べ誘導後には、明らかにヘルパーT細胞(32.7→44.6%)および細胞障害性T細胞(17.9→48.3%)の比率が増加していた。未熟DCに比較して成熟DCではCD83(2.7→88.4%)、CD80(42.9→87.3%)、CD86(50.4→99.2%)と有意に増加していた。DCの遺伝子解析では、単球の純度をあげる実験を行い、98%の純度がコンスタントに得られるようになった。現在、健常者1名、膵癌患者2名より単球、未熟DC,および成熟DCを得ており、アレイ解析を行う準備をしている。
KAKENHI-PROJECT-15025252
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15025252
遺伝子暗号に従わない翻訳終結/再開始のメカニズムの解明:試験管内再構成系を用いて
ヒト因子由来再構成型タンパク質合成システムを樹立した。この系で、脳心筋炎ウイルスの2A2B領域をコードする部分を翻訳すると、2Aと2Bが分断されて合成されてきた。このことは2A2Bの分断には特別な因子を必要としていないことを示している。更に、翻訳終結因子eRF1, eRF3を除いてもこの現象が起こることから、2A2Bの翻訳終結・再開始はペプチド鎖伸長の際に起こることが証明された。また、この現象のメカニズムを解明するために、様々な変異を2A2Bの分断部位に施した。特記すべきことに、所謂NPGP配列をNPGGやNPGQに変異させてもでは80%近くの分断率を示した脳心筋炎ウイルス(EMCV)のゲノムRNAはひとつのオープンリーデイングフレームを持ち、翻訳の際ポリプロテイン(L-1A-1B-1C-1D-2A-2B-2C-3A-3B-3C-3D)の形で合成される。ほとんどの場合ウイルス自身がコードするプロテアーゼにより個々のタンパク質に分断されるが、最初の分断である2A-2Bの間の分断はウイルス由来または細胞由来のプロテアーゼによるものでなく、翻訳という過程で起こることが知られている。そこで我々はヒト因子由来再構成翻訳系を構築し、この現象にどのような因子が関わっているのかを明らかにし、分子レベルでの分断メカニズムを探ることにした。ヒト因子由来再構成型試験管内タンパク質合成系はリボソーム、eEF1, eEF2, eRF1/3,そしてアミノアシルtRNAから成る。これまでのシステムでのアミノ酸の供給元はアミノアシルtRNAであった。しかしこのままではtRNAの再利用ができないため合成量は限られたものである。そこでアミノ酸とtRNAを結合させる酵素:アミノアシルtRNA合成酵素をすべて(20種類)リコンビナント体として十分量発現・精製し、これらを再構成系に投入し、tRNAをリサイクルさせることにより絶えずアミノ酸をリボソームに供給できるようにした。結果として、タンパク質の合成量が格段に上がり、実験系が確立されてきた。そして本研究の目的である2A2Bの合成を試みたところ、2Aと2Bの分断はこのシステムで再現され、特別な因子が必要ではないことが示唆された。ヒト因子由来再構成型タンパク質合成システムを樹立し、論文発表に至った(J. Biol. Chem. 289: 31960-31971)。このシステムに脳心筋炎ウイルスの2A2B領域をコードするDNAを投入すると2Aと2Bが分断されて合成されてきた。このことは2A2Bの分断には特別な因子を必要としていないことがわかった。翻訳終結因子eRF1, eRF3を除いてもこの現象が起こることから、2A2Bの翻訳終結・再開始はペプチド鎖伸長の際に起こることが証明された。更にこの現象のメカニズムを解明するために、様々な変異を2A2Bの分断部位に施した。所謂NPGP配列(2Aの最後の3アミノ酸がNPG、2Bの最初のアミノ酸がP)をそれぞれAに変えると、NPGの場合(APGP, NAGP, NPAP)はいずれも分断が起きなかったが、NPGAでは分断は50%で起こった。NPGG, NPGSでも同様に50%で起こったが、NPGN,NPGLでは10-20%の分断率であった。このことは従来の考え方「プロリンの脱プロトン化が起こりにくいため求核攻撃が遅く、2Aペプチドの影響で活性化された水分子がPサイトにあるペプチジルtRNAのエステル結合を先に攻撃し、ペプチドが離れる」には合致しない。なぜならA(アラニン)やS(セリン)は脱プロトン化が起こりにくいことはないからである。そこでクライオEMにより構造解析を行い、詳細なメカニズムを追究することにし、現在準備を進めている。2A2Bの分断のメカニズムを解明するために、様々な変異を2A2Bの分断部位に施した。所謂NPGP配列(2Aの最後の3アミノ酸がNPG、2Bの最初のアミノ酸がP)をそれぞれAに変えると、NPGの場合(APGP, NAGP, NPAP)はいずれも分断が起きなかったが、NPGAでは分断は50%で起こった。そこでAだけでなく他のすべてのアミノ酸に置換するとNPGGやNPGQでも80%近くの分断率を示した。このことは従来の考え方「プロリンの脱プロトン化が起こりにくいため求核攻撃が遅く、2Aペプチドの影響で活性化された水分子がPサイトにあるペプチジルtRNAのエステル結合を先に攻撃し、ペプチドが離れる」には合致せず、新たなモデルの必要性が提示された。更に、アミノ酸置換を2AのC末18アミノ酸にも施し分断率を測定すると、特に、疎水性アミノ酸のGへの置換が分断を阻止することがわかった。これは、リボソームのペプチドトンネルの疎水性部位との2A末端との相互作用の重要性を示唆している。2A-2Bの分断メカニズムの完全な理解には構造解析が不可欠である。そこで、クライオ電子顕微鏡を用いて観察することにした。目下のところ、ヒト因子由来再構成型翻訳システムで2A-2Bを合成し、分断がぎりぎりで起こらない条件で、所謂アレストしたリボソームを精製しようとしている。サイトメガロウイルスのuORF2の配列(アレスト配列)を用いたコントロール実験では、リボソームとmRNAの像が観察されているが、新生ペプチドの可視化には至っていない。ヒト因子
KAKENHI-PROJECT-25660082
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遺伝子暗号に従わない翻訳終結/再開始のメカニズムの解明:試験管内再構成系を用いて
由来再構成型タンパク質合成システムを樹立した。この系で、脳心筋炎ウイルスの2A2B領域をコードする部分を翻訳すると、2Aと2Bが分断されて合成されてきた。このことは2A2Bの分断には特別な因子を必要としていないことを示している。更に、翻訳終結因子eRF1, eRF3を除いてもこの現象が起こることから、2A2Bの翻訳終結・再開始はペプチド鎖伸長の際に起こることが証明された。また、この現象のメカニズムを解明するために、様々な変異を2A2Bの分断部位に施した。特記すべきことに、所謂NPGP配列をNPGGやNPGQに変異させてもでは80%近くの分断率を示した目的としていた再構成型翻訳システムを構築し、翻訳停止、再開始を限られた因子で再現し、そのメカニズムの解明を進めることができた。そしてその成果として論文受理(J. Biol. Chem. 289: 31960-31971)に至ったため。タンパク質工学2Aペプチドによる翻訳終結・開始のメカニズムを解明するために、クライオEMを用いて構造解析する予定である。そのためには、リボソームをmRNA上に止める必用がある。分断が起こる瞬間はPサイトにはペプチドが結合したグリシルtRNAが存在し、AサイトにはプロリルtRNAがある状態である。まず、サイトメガロウイルスのuORF2の配列(アレスト配列)を用いて、コントロール実験を行い実験条件を整える予定である。25年度の計画に従ってヒト型再構成型翻訳システムを改善し、2A2Bの分断を再現することができた。26年度から新学術領域「新生鎖の生物学」の計画班の分担金としての研究費が入り、主な支出である消耗品の会計をその分担金で購入したため。ヒト因子由来再構成型翻訳システムの合成量は各因子の精製度および活性に依存しているため、現時点のタンパク質合成量は実験ごとにばらつきがある。26年度は実験系の安定性を目的とし、各因子の精製の方法を見直し完全プロトコルを作成する。その上で、2A2Bの合成を行い分断メカニズムを探る。また、論文の作成に取り掛かり年度内に公表できるようにする。新学術の分担金は夏まで入金されないため、消耗品(研究として共通している)をこの基金で購入する。細胞培養に関する経費(培養液、dishなど)を価格の低いものに切り替えたため、節約できた。引き続き低価格のものを使用して、研究の量を1.3倍程度に増やす。
KAKENHI-PROJECT-25660082
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糖脂質及び糖脂質を構成するオリゴ糖の化学合成と生理作用
1.大部分のスフィンゴ糖脂質が、還元末端側にラクト-ス構造を持っていることに注目し、そのベンジル誘導体を糖脂質のモデル物質(糖受容体)として用いて、いくつかの糖供与体とのグリコシル化反応について検討した。用いた糖受容体は、ベンジル2,3,6,2',6'-ペンタ-O-ベンジル-β-D-ラクトシド、その4'-O-アセテ-トおよび4'-O-ベンジル体の3種。糖供与体としては、ガラクト-ス、2-アジド(後にN-アセチル基に変換)ガラクト-ス、ラクト-スおよび2-アジドラクトサミンの1-ハロゲン糖を用い、それぞれについてグリコシル化反応条件を確立した。この結果は、第12回糖質シンポジウム(大阪、1989)で発表した。また、それぞれの反応の位置選択性、立体選択性、収率に関する知見および生成物のNMRデ-タは、次の糖脂質に反応する際の基礎デ-タとして用いられた。2.ヒト赤血球から単離したグロボシドに対して選択的イソプロピリデン化反応を行ない、末端糖鎖(N-アセチルガラクトサミン)の3,4位以外の水酸基をすべてベンジル基で保護した糖脂質受容体を得た。この結果は、第10回国際複合糖質シンポジウム(イスラエル、1989)で発表した。これをさらに3位の水酸基だけが開いた化合物に導き、1で確立したグリコシル化反応条件を適応してForssman、Para-Forssman、SSEA-3抗原などの糖脂質を化学合成することを目下の研究課題としている。1.大部分のスフィンゴ糖脂質が、還元末端側にラクト-ス構造を持っていることに注目し、そのベンジル誘導体を糖脂質のモデル物質(糖受容体)として用いて、いくつかの糖供与体とのグリコシル化反応について検討した。用いた糖受容体は、ベンジル2,3,6,2',6'-ペンタ-O-ベンジル-β-D-ラクトシド、その4'-O-アセテ-トおよび4'-O-ベンジル体の3種。糖供与体としては、ガラクト-ス、2-アジド(後にN-アセチル基に変換)ガラクト-ス、ラクト-スおよび2-アジドラクトサミンの1-ハロゲン糖を用い、それぞれについてグリコシル化反応条件を確立した。この結果は、第12回糖質シンポジウム(大阪、1989)で発表した。また、それぞれの反応の位置選択性、立体選択性、収率に関する知見および生成物のNMRデ-タは、次の糖脂質に反応する際の基礎デ-タとして用いられた。2.ヒト赤血球から単離したグロボシドに対して選択的イソプロピリデン化反応を行ない、末端糖鎖(N-アセチルガラクトサミン)の3,4位以外の水酸基をすべてベンジル基で保護した糖脂質受容体を得た。この結果は、第10回国際複合糖質シンポジウム(イスラエル、1989)で発表した。これをさらに3位の水酸基だけが開いた化合物に導き、1で確立したグリコシル化反応条件を適応してForssman、Para-Forssman、SSEA-3抗原などの糖脂質を化学合成することを目下の研究課題としている。
KAKENHI-PROJECT-01580171
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AM菌におけるストリゴラクトン誘導性共生因子の解明
本研究ではアーバスキュラー菌根菌(AM菌)においてストリゴラクトンによって誘導される化学因子を探索・単離し,菌根形成における機能を精査することでAM菌共生シグナルであるMycファクターを同定することを目的として研究を開始した。しかし、ストリゴラクトン処理によってむしろMycファクター活性は低下することが判明したため、AM菌の細胞壁に由来する共生因子について追究した。その結果、ヘテロキトオリゴ糖がMycファクター活性を示すことが明らかになり、本オリゴ糖の菌体から分泌はストリゴラクトン処理により減少することが分かった。AM菌と植物との間での共生シグナルのクロストークについてまず検討することとした。Myc-LCOおよびキチンオリゴ糖(2-8糖)をそれぞれ処理したミヤコグサ根におけるストリゴラクトン(SL)関連遺伝子ホモログ(D27、CCD7、CCD8、MAX1、D3、D14)の発現誘導をqRT-PCRにより調べた。その結果、野生型ミヤコグサにおいてMyc-LCOおよび重合度4以上のキチンオリゴ糖によりSL生合成遺伝子(D27、CCD8、MAX1)の発現誘導が見られた。このSL生合成遺伝子の発現誘導の菌根特異性を検討するために、Nodファクター受容体(NFR)欠損変異体(nfr1、nfr5、nfr1/nfr5)を用いて同様に解析を行ったところ、Myc-LCOでは発現誘導は大きく低下したが,キチンオリゴ糖では野生型と同様に誘導が見られた。この結果より、AM菌の共生シグナルが植物の菌根共生シグナルであるSLの生合成を活性化する可能性が示唆された。そこで、SL(5-deoxystrigol、GR24)を加えた培養液中で、AM菌Rhizophagus irregularisを培養し、経時的に菌体を取り出して菌体抽出液を調製して、ミヤコグサ共生誘導性pCbp1ーGUSレポーターおよびイネ菌根共生マーカー遺伝子(AM1)誘導を指標に菌体抽出物の共生応答誘導活性を評価した。その結果、コントロールおよびSL処理した菌体由来の抽出物は共に共生応答を誘導したが、それら両者の間で活性に差はなかった。また、共生応答誘導活性は培養0日目から見られ、培養日数の経過と共に弱くなっていく傾向があった。ストリゴラクトン処理したAM菌の菌体からはキチン4糖および5糖が生成することが知られている。そこでAM菌の主要な細胞壁成分であるキチン質について構造解析を行い,AM菌の細胞壁から生成し得るキチン質オリゴ糖の存在について精査した。それらオリゴ糖を化学的・酵素的手法により調製し,イネにおけるAM共生マーカー遺伝子の発現誘導について調べることとした。AM菌Rhizophagus irregularisの菌体を1 N NaOH続いて2% AcOHで加熱還流することによりキチン画分を得た。これをStreptomyces griseus由来のエンド型キチナーゼで処理し,酵素加水分解産物についてTLC, LC-MS, NMR分析を行ったところ,キチン2糖に加えて,非還元末端側の糖残基のアセトアミド基が脱アセチル化されたキチン2糖が同定された。このことからAM菌のキチンはN-アセチルグルコサミンだけではなく,グルコサミンを含むヘテロ多糖であることが明らかとなった。そこでAM菌の細胞壁キチンから生成し得るオリゴ糖断片として部分N-脱アセチルキチンオリゴ糖の共生シグナルとしての機能について調べることとした。キトサン4糖の部分N-アセチル化により調製した部分N-脱アセチルキチン4糖をイネ(cv. Nipponbare BL2)の発芽34日後の実生に処理し,12時間後の根におけるAM共生マーカー遺伝子(AM1, AM2, AM3, RAM1)の発現量をqRT-PCRにより測定した。その結果,AM1, AM3, RAM1について発現量の顕著な増加が見られた。一方,Myc-LCOおよびキチン7, 8糖では共にマーカー遺伝子の誘導は見られなかった。これらのことからグルコサミンを含む部分N-脱アセチルキチンオリゴ糖が共生シグナル物質として機能している可能性が示唆された。ヘテロ多糖構造を有するAM菌の細胞壁キチンから生成し得るオリゴ糖断片として,部分N-脱アセチルキチン(partially N-deacetylated chitin,DAC)3糖およびキトサン26糖およびグルコサミンをイネ(Oryza sativa cv. Nipponbare BL2)の発芽3日後の実生に処理し,6時間後の根におけるAM共生マーカー遺伝子(AM1,AM2,AM3,RAM1)および防御応答関連遺伝子(PAL,KSL4)の発現量をqRT-PCRにより測定した。その結果,DAC3糖,キトサン26糖により共生マーカー遺伝子および防御応答関連遺伝子の発現誘導が見られ,特にDAC3糖,キトサン35糖がこれら遺伝子を強く誘導した。DAC3糖およびキトサン24糖はイネのLysM型キチン受容体であるOsCERK1の欠損変異体においても野生型と同様にマーカー遺伝子の発現を強く誘導した。次に,N-脱アセチルキトオリゴ糖が実際にAM菌の菌体から分泌されているのかを検証した。AM菌R.irregularisを滅菌水中, 30°Cで7日間静置培養した後,菌体を濾別し菌分泌物を得た。これを重水素無水酢酸((CD3CO)2O)を用いてN-アセチル化した後,WGA (wheat-germ agglutinin)
KAKENHI-PROJECT-25292066
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AM菌におけるストリゴラクトン誘導性共生因子の解明
-アガロースによりキチンオリゴ糖を選択的に回収しLC-MS分析を行ったところ,重水素ラベル化されたDAC3糖およびキトサン3糖が検出された。合成SLであるGR24を1uM含む滅菌水中でAM菌を培養し,同様に分析・定量を行ったところ,GR24の添加によってDAC3糖およびキトサン3糖の分泌量はそれぞれ1/6程度まで減少していた。このことから,AM菌はSLを感知することにより非共生的(asymbiotic)生育から前共生的(presymbiotic)生育に切り替わると菌体からのDAC3糖およびキトサン3糖の分泌を抑制することが示唆された。本研究ではアーバスキュラー菌根菌(AM菌)においてストリゴラクトンによって誘導される化学因子を探索・単離し,菌根形成における機能を精査することでAM菌共生シグナルであるMycファクターを同定することを目的として研究を開始した。しかし、ストリゴラクトン処理によってむしろMycファクター活性は低下することが判明したため、AM菌の細胞壁に由来する共生因子について追究した。その結果、ヘテロキトオリゴ糖がMycファクター活性を示すことが明らかになり、本オリゴ糖の菌体から分泌はストリゴラクトン処理により減少することが分かった。AM菌におけるストリゴラクトン誘導性物質であるキチンオリゴ糖の発生源として細胞壁キチン質に着目し、その化学構造を詳細に解析することで、部分N-脱アセチルキチンオリゴ糖が共生シグナル物質として機能している可能性を突き止めることができた。27年度が最終年度であるため、記入しない。天然物化学イネはMyc-LCOやキチンオリゴ糖には全く共生応答を示さないが、アセチル基が脱離したキトオリゴ糖には強く応答することが明らかになった。さらに引き続き、キトサンオリゴ糖の共生マーカー遺伝子発現解析を進めることで、真のMycファクターの解明に至ることが期待できる。既知のAM菌共生シグナルであるMyc-LCOとキチンオリゴ糖によりミヤコグサのSL生合成遺伝子が発現誘導されることを見出し、AM共生相互作用においてシグナルクロストークが存在することを見出した。AM菌におけるSL誘導性物質の探索については、共生応答誘導解析に時間を要したため、LC-MSなどを用いた網羅的分析を行うことができなかった。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。SL処理したAM菌の菌体抽出物および培養濾液について網羅的分析を行い、SL誘導性物質の探索を速やかに実行する。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-25292066
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現代における能楽の伝承形態と実践ー外国人能指導プログラムを事例としてー
本研究は、国内外における外国人向けの能指導プログラムの実態を明らかにすることを目的とし、参与観察を通じて以下の問いに答えた。1どのようなプログラムを採用しているのか、2稽古法は日本の伝統的な口頭伝承による方法なのか、西洋の教育法なのか、あるいは新しい方法なのかである。具体的には、Noh Training Project-Tokyo(日本)と、Noh Training Project-Bloomsburg(米国)に参加し、指導者と参加者にインタビューを行った。調査の結果、能の古典的な指導法と西洋のダンスの教授法の双方が確認され、加えて指導者独自の工夫が見られた。成果は学会発表と論文に纏めた。本研究は、国内外における外国人向けの能指導プログラムの実態を明らかにすることを目的とし、参与観察を通じて以下の問いに答えた。1どのようなプログラムを採用しているのか、2稽古法は日本の伝統的な口頭伝承による方法なのか、西洋の教育法なのか、あるいは新しい方法なのかである。具体的には、Noh Training Project-Tokyo(日本)と、Noh Training Project-Bloomsburg(米国)に参加し、指導者と参加者にインタビューを行った。調査の結果、能の古典的な指導法と西洋のダンスの教授法の双方が確認され、加えて指導者独自の工夫が見られた。成果は学会発表と論文に纏めた。本研究は、このトランスナショナルな時代において、外国人向けの能指導プログラムの実態を明らかにすることが目的である。具体的には、師匠が外国人生徒らにどのように言語的、文化的な壁を乗り越えて能楽を伝承しているかを追求することである。当該年は、東京の能指導プログラム(Noh Training Project-Tokyo、以下NTP-T)に参加し、その活動に関する調査結果を東洋音楽学会大会で発表した。NTP-Tの調査では、指導者のR.エマートが活動に着手した背景、教育法、またエマートの指導法に対する参加者の反応について、報告者の参与観察とエマートへのインタビューを通じて明らかにした。エマートは、1991年にNTP-Tを結成し、1992年に喜多流仕舞教士の資格を取得している。調査の結果、エマートは日本の伝統的な仕舞の教育法だけではなく、西洋のダンスの教育法も用いていることが明確になった。例えば、能における古典の伝承は、師匠が謡を一度通しで謡い、弟子がそれを真似る。舞も同じく師匠が通しで舞を舞い、弟子がそれを真似る。しかしながらエマートの教育法では、特に新しい舞を習う際は、通しで全部教えるのではなく、部分的に教えている。これは、西洋のクラシック・バレー、モダン・ダンスの教授法などで見られる。またNTP-Tでは、弟子が師匠に理解できなかった箇所をゆっくり教えてもらう姿も見られた。このように個人の学び方に重視した教育法が、日本の稽古場に導入される可能性もあり、外国人向けの能指導プログラムを能楽全体に影響を及ぼすものとして位置づける必要性が明らかになった。東洋音楽学会大会では、英語能の創作過程の分析を通じて、英語能の「演劇化」によって古典能の多くの要素が失われている実態を明らかにした。それにより、この問題の解決策として、外国人の能指導プログラムにおける教育法を検証する必要を再確認した。本研究は、身体を用いて師匠から指導される能楽の伝承に関して、特に外国人を対象とする事例に焦点を合わせた実践的研究を基盤としている。そのため国内外における外国人能指導プログラムが実施される現地での調査によって、プログラムの実態を明らかにすることが目的である。具体的に、当該年は、喜多流仕舞教士の資格を取得しているR.エマートの日本におけるNoh Training Project - Tokyo(NTP-T)と、アメリカにおけるNoh Training Project - Bloomsburg (NTP-B)に参加かつ参与観察した。調査の結果、エマートは師匠の動きを真似る古典的な指導法と、西洋のダンス教育で部分ごとに区切って舞を教える教授法に加え、エマート独自の細やかな説明が確認できた。なお、NTP-Bにおけるエマートの指導法はNTP-Tと似ており、国籍を問わず弟子個人に合った教え方や工夫が見られた。NTP-Bは本年で創立20周年記念を迎えるため、それを祝して8月1日と2日に半能〈高砂〉と能〈羽衣〉が上演された。報告者は、地謡の一員として参加し、準備の過程や稽古の流れを体験することができた。インタビューもエマートの他、NTP-Bの創立者、初級レベル謡・仕舞担当の指導者と、プログラムに三年間通い続けている生徒に行った。これらを通して、それぞれの観点から見たNTP-Bの目的や活動、役割や意義が明らかになった。様々な側面からプログラムの実態を分析し、教育面から浮き彫りになった点は、指導者も生徒も西洋の背景を持つ方が多く、言葉のやり取りが多いことであった。技術は、見様見真似だけで伝承されるのではなく、質問や会話を交わす効果的な稽古が見られた。この調査の結果、報告者は古典の能指導法をよりよく理解するため、11月より喜多流の謡・仕舞と、金春流太鼓を玄人の能楽師から学び始めた。以上の研究成果の一部は、3月10日に日本音楽国際交流会より招待されたパネルで「国境を越えた英語能」として発表した。26年度が最終年度であるため、記入しない。音楽学26年度が最終年度であるため、記入しない。本研究は、おおむね順調に進展している。
KAKENHI-PROJECT-25884019
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現代における能楽の伝承形態と実践ー外国人能指導プログラムを事例としてー
報告者は、国内の能指導プログラムの一つに参加することができ、そのプログラムの現在の在り方を捉えることができた。予定していた京都の二つのプログラムは、先方との予定が合わず、まだ訪れることができていないが、平成26年度の夏に参加することを交渉している。また調査の成果は、日本の東洋音楽学会大会で発表できたため、当該年度の達成度は問題ないと考える。本研究課題の推進方策として、国内で三つ、国外で一つの能指導プログラムへの参加かつ参与観察を予定している。平成26年度は、アメリカとイギリスと、二つの国外能指導プログラムに参与観察する予定だった。しかし申請した予算額より交付予定額が少ないため、双方の参加は難しいので、国外の事例はアメリカのプログラムに絞ることで対応する。
KAKENHI-PROJECT-25884019
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25884019
WTO加盟がベトナム製造業の集計生産性に及ぼす効果
本研究課題は,2000年から最新年におけるベトナム企業センサスの個別企業データを利用して,2007年におけるベトナムの世界貿易機関(WTO)への加盟がベトナム製造業の生産構造と集計生産性に与えた影響を,産業全体と企業の所有形態(国有・民間・外資企業)別に分析し,政策的意義を見出すことを目的とする。この目的を達成するため,本年度は,昨年度に整理した20022015年におけるベトナム企業センサスの製造企業のデータを使ってコブ=ダグラス型生産関数を推定し,個別企業の全要素生産性(TFP)と製造業部門の集計生産性を計算した。また,集計生産性を,継続して生産する個別企業の生産性の貢献(個別生産性効果)と,より生産的な企業への産出量の再配分の貢献(再配分効果)に分解し,2007年の前後で比較した。その結果,分析期間を通じて,個別生産性効果は集計生産性の1020%,再配分効果は集計生産性の8090%を説明すること,2007年以降では,個別生産性効果はコンスタントに上昇したが,再配分効果は停滞気味であり,結果として集計生産性は2007年以降に停滞気味に推移したことがわかった。さらに,再配分効果の停滞要因を調べるため,TFPと固定資本の相関係数,労働投入の産業内配分指数(100に近いと効率的配分,0に近いと非効率的配分を表す)を観察した。その結果,製造業部門では生産性の高い企業により多くの固定資本が配分されやすいが,2007年以降ではその傾向が弱まったこと,製造業部門では産業内の最小費用を達成するように労働投入が配分されておらず,2007年以降ではこの傾向も悪化したことがわかった。本年度は,当初の計画どおり,20022015年におけるベトナム企業センサスのデータに基づき,製造業部門の集計生産性の分析を行うことができた。また,海外の研究者との議論を通じて,データの適切な扱い方や変数の定義を確認するとともに,分析結果の妥当性について議論できた。これらの状況を勘案すれば,本研究課題は総じて順調に進展しているといえる。基本的には,今後の研究は計画通りに進めていく。具体的には,学会報告でのコメントと海外研究者のコメントに基づき,これまでの研究成果を論文として仕上げることを目指す。また,最終年度の計画どおり,所有形態別(国有企業,民間企業,外資企業)に集計生産性の分解分析を行い,WTO加盟の影響を検討することにより,政策的意義を見出す。本研究課題は,2000年から最新年におけるベトナム企業センサスの個別企業データを利用して,2007年におけるベトナムの世界貿易機関(WTO)への加盟がベトナム製造業の生産構造と集計生産性に与えた影響を,産業全体と企業の所有形態(国有・民間・外資企業)別に分析し,政策的意義を見出すことを目的とする。この目的を達成するため,本年度は,20102015年におけるベトナム企業センサスのデータの入手と整理を行い,来年度以降の実証分析に備えた。また,海外の研究者との議論を通じて,統計的関係としての構造変化と現実経済における構造変化を対応づけられるように,ベトナムの経済構造の変革(農業改革,企業改革,国際統合)についてまとめ,集計生産性の変化に関わる重要な構造変化としては,製造業内における家計企業から登録企業への移行,国有企業から民間・外資企業への移行があることがわかった。さらに,統計的関係としての構造変化を検証するため,整理済みの20002009年における製造企業のデータを使い,コブ=ダグラス型生産関数の構造変化を検証した。利用した検証法は,パネルデータ向けの一般化積率法を基礎とし,構造変化の前後で生産関数の係数だけではなく,観察できない固定効果についても変化を許し,比較的新しい手法である。構造変化の想定年を2006年から2008年の間で動かし,モデルの推定と構造変化の検証を行った結果,構造変化年の前後で労働の生産弾力性は0.5程度,生産性ショックの自己相関係数は0.4程度で安定して推定され,構造変化を検証する統計量は2008年で最大となり,WTO加盟後における生産構造変化の存在を示唆する結果が得られた。本年度は,20102015年におけるベトナム企業センサスのデータの入手と整理を行い,来年度以降の実証分析に備えることができた。また,海外の研究者との議論を通じてベトナムの経済構造の変革についてまとめ,集計生産性の変化に関わる重要な構造変化として,製造業内における家計企業から登録企業への移行,国有企業から民間・外資企業への移行があるという,新しい視点を見つけることができた。さらに,20002009年における製造企業のデータを使って,コブ=ダグラス型生産関数の構造変化を検証し,WTO加盟後における構造変化の存在を示唆する予備的な結果が得られた。これらの状況を勘案すれば,本研究課題は総じて順調に進展しているといえる。本研究課題は,2000年から最新年におけるベトナム企業センサスの個別企業データを利用して,2007年におけるベトナムの世界貿易機関(WTO)への加盟がベトナム製造業の生産構造と集計生産性に与えた影響を,産業全体と企業の所有形態(国有・民間・外資企業)別に分析し,政策的意義を見出すことを目的とする。この目的を達成するため,本年度は,昨年度に整理した20022015年におけるベトナム企業センサスの製造企業のデータを使ってコブ=ダグラス型生産関数を推定し,個別企業の全要素生産性(TFP)と製造業部門の集計生産性を計算した。
KAKENHI-PROJECT-17K03733
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K03733
WTO加盟がベトナム製造業の集計生産性に及ぼす効果
また,集計生産性を,継続して生産する個別企業の生産性の貢献(個別生産性効果)と,より生産的な企業への産出量の再配分の貢献(再配分効果)に分解し,2007年の前後で比較した。その結果,分析期間を通じて,個別生産性効果は集計生産性の1020%,再配分効果は集計生産性の8090%を説明すること,2007年以降では,個別生産性効果はコンスタントに上昇したが,再配分効果は停滞気味であり,結果として集計生産性は2007年以降に停滞気味に推移したことがわかった。さらに,再配分効果の停滞要因を調べるため,TFPと固定資本の相関係数,労働投入の産業内配分指数(100に近いと効率的配分,0に近いと非効率的配分を表す)を観察した。その結果,製造業部門では生産性の高い企業により多くの固定資本が配分されやすいが,2007年以降ではその傾向が弱まったこと,製造業部門では産業内の最小費用を達成するように労働投入が配分されておらず,2007年以降ではこの傾向も悪化したことがわかった。本年度は,当初の計画どおり,20022015年におけるベトナム企業センサスのデータに基づき,製造業部門の集計生産性の分析を行うことができた。また,海外の研究者との議論を通じて,データの適切な扱い方や変数の定義を確認するとともに,分析結果の妥当性について議論できた。これらの状況を勘案すれば,本研究課題は総じて順調に進展しているといえる。基本的には,今後の研究は計画通りに進めていく。具体的には,新たに入手したデータを整理し,20002015年の期間について製造企業の生産構造の変化を検証していく。その後,個別企業のデータから集計生産性を計算して要因分解し,個別企業の生産性と資源再配分の変化の集計生産性の変化への寄与を調べる。つづいて,ベトナムのWTO加盟が集計生産性と各要因にどのように影響したかを調べる。さらに,国有・民間・外資企業それぞれについて,WTO加盟の影響を調べ,その政策的意義を考察する。基本的には,今後の研究は計画通りに進めていく。具体的には,学会報告でのコメントと海外研究者のコメントに基づき,これまでの研究成果を論文として仕上げることを目指す。また,最終年度の計画どおり,所有形態別(国有企業,民間企業,外資企業)に集計生産性の分解分析を行い,WTO加盟の影響を検討することにより,政策的意義を見出す。予定より旅費を節約できたため,次年度の旅費として使用する。旅費に若干の余裕が生じたためであり,次年度の旅費予算とする。
KAKENHI-PROJECT-17K03733
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K03733
循環型生物資源利用の立場から見たカツオ節加工残滓の利用に関する研究
カツオ節加工残滓の付加価値向上を図るため、それを異なる条件で処理し、タンパク質の回収率、アミノ酸、抗酸化性、抗変異原性を指標として処理方法の違いを比較した。1酵素分解法から機能性が高く、ペプチドを多く含む食素材が得られた。短所としてはタンパク質の回収率が低い(0.75%)。2酸加水分解法から遊離アミノ酸を中心とした食素材が得られた。タンパク質の回収率が高い(592%)が、機能性がやや低い。本年度は、まず昨年等同様に、カツオ節の加工残滓を複数種類のプロテアーゼー系酵素で処理した。加工残滓に粗タンパク質の1%4%に相当する酵素を加え、318時間で酵素分解を行った。試料を遠心分離して得られた上澄み液(酵素分解液と略称)を分析試料とした。低分子ペプチド群(3003500)の分布はHPLC法、抗酸化性はDPPHラジカル消去法(DPPHラジカル抑制力)および極微弱法XYZ法(H2O2消去能力)、抗変異原性はumuテスト法を用いた。これら分析結果から、供試試料の機能性成分の変化に及ぼす酵素添加量ならびに処理時間の影響を検討した。続いて、同じカツオ節の加工残滓を異なる酸加水分解条件(塩酸濃度、分解時間、分解温度)で処理した。得られた酸加水分解液から酸を除去し、適宜に希釈した溶液(酸加水分解液と略称)を分析試料とした。18種アミノ酸含有量をHPLC法で測定し、18種アミノ酸の回収率に及ぼす酸加水分解条件の影響を検討した。1酵素分解試液に含まれるペプチドの分子量を300以下、300-1000、1000-3500の三つのグループに分けてみると、いずれも酵素添加量および処理時間の増加につれて含有量も高くなる傾向が見られた。プロテアックスの分解液に300-1000のペプチドの占める割合がもっとも高かった。2極微弱法XYZ法では6-37units/酵素分解液100mL、DPPHラジカル消去法では5-59%のDPPHラジカル捕捉活性(0.3-1.6Trolox(mmol/ L))が検出されたが、いずれもプロテアックスの分解液の抗酸化力がもっとも強かった。3複数の供試試料から抗変異原性が検出された。4酸加水分解試料から1.542g/100gの18種全アミノ酸が検出され、酸加水分解条件が強くなるに伴って18種アミノ酸含有量の増加傾向が見られた。カツオ節加工残滓の付加価値向上を図るため、それを異なる条件で処理し、タンパク質の回収率、アミノ酸、抗酸化性、抗変異原性を指標として処理方法の違いを比較した。1酵素分解法から機能性が高く、ペプチドを多く含む食素材が得られた。短所としてはタンパク質の回収率が低い(0.75%)。2酸加水分解法から遊離アミノ酸を中心とした食素材が得られた。タンパク質の回収率が高い(592%)が、機能性がやや低い。本研究は限りある水産資源を有効利用する立場から、カツオ節の加工残滓に注目した。加工残滓を酵素および酸で処理し、タンパク質の分解率、栄養・呈味・機能性成分の含有量、抗酸化性・抗変異原性などの諸方面から、カツオ節の加工残滓の安全かつ付加価値の高い利用条件を明らかにすることを目的とする。本年度はまず、カツオ節の加工残滓を3種のプロテアーゼー系酵素で処理し、18種全アミノ酸含有量、18種遊離アミノ酸含有量および抗酸化性に及ぼす酵素添加量ならびに処理時間の影響を検討した。試料に粗タンパク質の1%4%に相当する酵素を加え、318時間で酵素分解を行った。試料を遠心分離して得られた上澄み液(酵素分解液と略称)を分析試料とした。18種アミノ酸の測定はHPLC、抗酸化力の測定は供試試料量が少なく、測定時間も短い極微弱発光方法を用いた。1対照試料から53mg173mg/100gの18種全アミノ酸、1320mg/100gの遊離18種アミノ酸を検出した。2これに対して酵素分解液から3422491mg/100gの18種全アミノ酸、13886mg/100gの18種遊離アミノ酸が検出され、酵素の添加量および抽出時間の変化に伴って18種アミノ酸含有量の増加傾向が見られた。3酵素分解液にタンパク質・ペプチドに由来するAsp・Glu・Pro・Gly・Ala・Leu・Lysなどの7種のアミノ酸の占める割合がいずれも多かった。4酵素分解液から0.0560.388unitの抗酸化力が検出され、酵素添加量および処理時間の増加に伴って、抗酸化力の増加傾向が見られた。5これまでの実験結果から酵素種類はプロテアックス、酵素添加量は1%、酵素分解時間は18時間という処理条件が適切だと思われる。本年度は試料の抗酸化性、抗変異原性および変異原性の消長に及ぼす酸加水分解条件の影響を検討するため、カツオ節加工残滓を異なる条件で処理した(処理温度:100°C・115°C、処理時間:5・10・20時間、塩酸濃度:1・2・3・4・5・6mol/L)。得られた酸加水分解液から酸を除去し、蒸留水で定容した溶液を分析試料とした。抗酸化性を極微弱
KAKENHI-PROJECT-24580263
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24580263
循環型生物資源利用の立場から見たカツオ節加工残滓の利用に関する研究
化学発光XYZ法(H2O2消去能力)、変異原性および抗変異原性をウムラックAT-F(JIMURO(株))により測定した。フリルフラマイド(以下AF-2と略する)および2-アミノアントラセン(以下2-AAと略する)を既知変異原物質として用いた。以下の結果がわかった。1)供試試料から抗酸化力を827units/100mL検出した。酸加水分解の処理温度、処理時間、および塩酸濃度の増加に伴って抗酸化力が減少する傾向が見られた。2)いずれの供試試料からも変異原性が検出されなかった。間接変異原物質2-AAに対する抑制率は検出されなかったが、直接変異原物質AF-2に対する抑制率を940%検出し、酸加水分解処理条件の変化が抑制率への影響が見られた。3)酸加水分解法は酵素分解法と違って、ガラス化などの変化を受けた水不溶性タンパク質に対しても、強い分解力を持っている。カツオ節加工残滓を酸加水分解処理すると、タンパク質を十分に回収できる。ただ、分解条件が強いほど、タンパク質が機能性ペプチドよりも遊離アミノ酸としての回収率は高くなり、抗酸化性などの機能性が低くなる傾向が見られた。実際の必要に応じて酸加水分解条件を調整すれば、異なるタイプの食素材が得られると思われる。農学二年目では初年度の研究結果を踏まえ、主に以下の二つの研究内容を実施した。まず、カツオ節の加工残滓から栄養性・呈味性・機能性成分の抽出率および生理活性に及ぼす酵素分解処理条件の影響を検討した。続いて、同じカツオ節の加工残滓を異なる酸加水分解条件で処理し、カツオ節の加工残滓からの栄養性・呈味性・機能性成分の抽出率に及ぼす酸加水分解処理条件の影響を追究した。これまでほぼ当初の計画の通りに、酵素分解液中の低分子ペプチド配分を分析し、更に2種の活性酸素を対象とする抗酸化性の測定を完了した。得られた成果を平成26年度春季水産大会で発表した。また、カツオ節の加工残滓を異なる酸加水分解条件で処理した。18種全アミノ酸含有量の測定もほぼ完了し、データ解析中であるが、その結果を平成26年度秋季水産大会で発表する予定である。また、これまで得られた抗変異原性分結果を日本環境変異原学会第43回大会で発表する予定である。初年度では栄養・呈味・機能性成分の抽出率および生理活性に及ぼす酵素処理条件の影響を明らかにすることを目的とした。カツオ節の加工残滓を試料として、酵素種類(3種)、添加濃度(1%・2%・4%)、分解時間(3時間・9時間・18時間)という三つのパラメータを用い、カツオ節の加工残滓を異なる条件で処理した。これまでほぼ当初の計画の通りに、得られた酵素分解液に含まれる18種遊離アミノ酸、18種全アミノ酸および抗酸化性などの機能性の分析を完了した。1酵素分解液の18種アミノ酸含有量に及ぼす酵素処理条件の影響2酵素分解液の抗酸化性の変化に及ぼす酵素処理条件の影響についての研究結果を水産学会で2回発表した。本年度は昨年度の研究結果を踏まえ、主に以下の研究内容を実施する予定である。1)異なる条件で分解した酸加水分解試料について、低分子ペプチドの分布状況を分析し、タンパク質の分解率に及ぼす酸加水分解条件の影響を分析する。分析手法は昨年度と同じである。2)異なる条件で分解した酸加水分解試料について、2種の活性酸素を対象とする抗酸化性を測定する。測定条件は昨年度と同じ、DPPHラジカル消去法(DPPHラジカル抑制力)および極微弱法XYZ法(H2O2消去能力)を用いる。3)異なる条件で分解した酸加水分解試料について、抗変異原性および変異原性を測定し、これら活性の消長に及ぼす酸加水分解条件の影響を解析する。酵素分解試料の分析と同じ、umuテスト方法を用いる。
KAKENHI-PROJECT-24580263
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24580263
コンクリート系複合構造部材の定着機構の解明に関する研究
-昨年度は、骨組式鉄骨造の最下階柱脚における鉄筋コンクリート基礎梁への定着性能改善方法について外柱を対象にして実験的検討を行い、昨年度は柱梁接合部における90度折曲げ梁筋定着機構に関するFEM解析を行った。本年度はこれらの成果を参考として、より条件が厳しい鉄骨造外柱の柱脚定着方法について実験的な検討を行った。アンカー筋を用いた露出型鉄骨柱脚は施工性に優れているが、強度・剛性・靭性の確保が難しいのに対して、埋込み型柱脚は力学性状に優れるが施工性に劣るため、両者の長所を有する定着方法としてアンカー筋に代わって複数の小断面T鋼材を用いた埋込み型柱脚の開発を行った。柱には角形鋼管を仮定し、その各辺にT形鋼を取り付けたものであり、RC基礎梁はL形平面とした隅柱とT形平面とした側主の2種を想定している。柱に曲げせん断力を受ける際の4つのT形鋼は、位置ごとに抵抗性状が異なるので、それらの力学性状を個別に把握する約2分の1縮尺摸型の要素試験体を作製した。すなわち、要素実験として単独または2本のT形鋼をRC基礎梁へ垂直に配置した試験体を用いて、T形鋼を引き抜き方向または水平方向および加力して、耐力・加重変形関係を把握した。この際にT形鋼の埋め込み長さ、T形断面の強軸・弱軸方向および外向き・内向きの加力方向を実験変数とした。実験結果より外柱脚部においても、次の性状を確認した。(1)特殊補強(外端部にU字形の水平補助筋)を必要量に応じて配筋することによって、内柱の半分程度の水平耐力と優れた変形性能が得られる、(2)梁上端筋の先端を曲げ下げて梁下端筋近傍に定着すれば、引き抜き力に対しても内柱と同等の抵抗力を示す。(3)これらの抵抗力を算定できる評価式を提案した。-昨年度は、骨組式鉄骨造の最下階柱脚における鉄筋コンクリート基礎梁への定着性能改善方法について外柱を対象にして実験的検討を行い、昨年度は柱梁接合部における90度折曲げ梁筋定着機構に関するFEM解析を行った。本年度はこれらの成果を参考として、より条件が厳しい鉄骨造外柱の柱脚定着方法について実験的な検討を行った。アンカー筋を用いた露出型鉄骨柱脚は施工性に優れているが、強度・剛性・靭性の確保が難しいのに対して、埋込み型柱脚は力学性状に優れるが施工性に劣るため、両者の長所を有する定着方法としてアンカー筋に代わって複数の小断面T鋼材を用いた埋込み型柱脚の開発を行った。柱には角形鋼管を仮定し、その各辺にT形鋼を取り付けたものであり、RC基礎梁はL形平面とした隅柱とT形平面とした側主の2種を想定している。柱に曲げせん断力を受ける際の4つのT形鋼は、位置ごとに抵抗性状が異なるので、それらの力学性状を個別に把握する約2分の1縮尺摸型の要素試験体を作製した。すなわち、要素実験として単独または2本のT形鋼をRC基礎梁へ垂直に配置した試験体を用いて、T形鋼を引き抜き方向または水平方向および加力して、耐力・加重変形関係を把握した。この際にT形鋼の埋め込み長さ、T形断面の強軸・弱軸方向および外向き・内向きの加力方向を実験変数とした。実験結果より外柱脚部においても、次の性状を確認した。(1)特殊補強(外端部にU字形の水平補助筋)を必要量に応じて配筋することによって、内柱の半分程度の水平耐力と優れた変形性能が得られる、(2)梁上端筋の先端を曲げ下げて梁下端筋近傍に定着すれば、引き抜き力に対しても内柱と同等の抵抗力を示す。(3)これらの抵抗力を算定できる評価式を提案した。新素材を用いた鉄筋コンクリート造柱のせん断耐震補強に関して以下の検討を行った。(1)腰壁付き柱のせん断補強方法に関して実験的な検討を行った。腰壁付き柱の場合には、腰壁と柱の境界部にスリットを設けて独立柱にして扱うのが現状の方法であるが、本研究では腰壁をも補強して高耐力・高靭性化を目指したもので、腰壁と柱脚部の補強方法を実験変数として5体の試験体を作成して繰り返し水平加力実験を行った。柱の補教材には炭素繊維シート(以下CFS)を用い、窓開口部柱は一定量のCFSを巻き付けたが、壁横の柱脚部では補強高さを実験変数とした。また、腰壁の補強には鋼板を壁の両側に挟みこれを貫通ボルトで止め付ける方法を用い、鋼板の幅と高さおよび断面形状(帯板、等辺アングル、不等辺アングル)を実験変数とした。この結果、a)腰壁および柱脚の必要補強高さは、柱せいの3分の2以上であること、b)柱脚CFSの両端部は壁補強鋼板に定着させる必要があること、c)柱の曲げ耐力はCFS補強によって2割以上の上昇が期待できること、d)上記のaとbを満足する補強を行えば荷重変形履歴ループがエネルギー吸収能力の高い紡錘形に改善されること、等を明らかにした。(2)2本の柱間に挟まれる腰壁の地震時挙動を把握するために、応力状態が明快であり、腰壁端部の側圧を計測できるロードセルを内蔵した鋼製柱を用いた1スパン腰壁試験体を2体製作して、水平加力実験を行い、高さ方向の腰壁抵抗力分布と腰壁の破壊形式を調べた。
KAKENHI-PROJECT-11450201
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11450201
コンクリート系複合構造部材の定着機構の解明に関する研究
(3)新素材を用いたハイブリッド形シートの力学的性状について既往の文献調査を行った。過年度は鉄筋の折り曲げ定着に関しては実験的検討を行ったが、本年度はFEM解析法を用いた数値解析による検討を行い、実験的には鉄骨部材の柱脚定着方法について検討した。(1)柱梁接合部における90度折曲げ梁筋定着機構に関するFEM解析:中間層の外柱と梁との接合部に配筋された90度折曲げ梁筋の定着性能を検討対象として、先ず鉄筋コンクリート用非線形3次元有限要素解析プログラム(DIANA)における材料構成則の妥当性を検討した。この内特にコンクリートと鉄筋との付着強度の扱いが、折り曲げの内側と外側、直線部と曲線部とにおいて支圧力との関係から大きく異なるべきことを明らかにした。続いて、柱幅の大小が梁筋の被り厚の大小として応力伝達経路に影響を与え、破壊モードや横補強筋の抵抗機能と関係することが既往の破壊実験資料と対照して整合することを明確にした。(2)T形鋼を用いた鉄骨柱脚部のRC基礎梁への定着性能に関する実験的検討:露出型鉄骨柱脚はアンカー筋を用いるのが通常であり、強度・剛性・靭性の確保が簡単ではないために、アンカー筋に代わってT形鋼材を埋め込んだ定着の開発を行った。先ず、要素実験として単独のT形鋼をRC基礎梁へ垂直に配置した試験体を用いて、T形鋼を引き抜き方向、水平方向および同時に加力して、耐力・荷重変形関係を把握した。この際にT形鋼の埋め込み長さ、断面2次モーメント、強軸・弱軸方向および向きを実験変数とした。次ぎに、内柱を想定して十字形に交差した基礎梁接合部に、角柱の4辺に各1個のT形鋼を配置した定着鉄骨を埋め込んだ部材試験体を用いて、柱脚部の曲げせん断加力を行い、要素実験結果との関連性を明確にして、耐力の予測方法を検討した。過年度は鉄筋の折り曲げ定着および鉄骨部材の柱脚定着方法に関しては実験的検討を行ったが、本年度は後者をさらに発展させるとともに、折り曲げ定着の解析的検討および鉄骨を内蔵した弾塑性FEM解析法の数値解析に関する資料的検討を行った。(1)L字形最上層柱梁接合部における90度折曲げ梁筋定着機構に関するFEM解析:最上階に位置する外柱と梁とのL字形接合部に配筋された90度折曲げ梁上端筋の定着性能を検討対象として、先ず鉄筋コンクリート用非線形3次元有限要素解析プログラム(DIANA)における材料構成則の妥当性を検討した。この内特に鉄筋折り曲げ部および余長部から発生するコンクリートの割り裂き亀裂が、梁下端圧縮域に向かう斜め亀裂として成長拡幅する実験時の性状を的確に表現するためには、離散亀裂を解析上導入する必要があること、柱筋のフック部と梁筋の折り曲げ部との正確な応力伝達を表現することの重要性を明らかにした。(2)鉄骨鉄筋コンクリート造接合部の弾塑性FEM解析:鉄骨部とコンクリートとの付着性状に関する構成則についての資料を集積し、鋼板の上下面および直交部での性状とそのモデル化について問題点と方向性を確認した。(3)T形鋼を用いた鉄骨柱脚部のRC基礎梁への定着性能に関する実験的検討:前年に続いて露出型鉄骨柱脚ではあるが、アンカー筋に代わってT形鋼材を埋め込んだ定着の開発を行った。内柱を想定して十字形に交差した基礎梁接合部に、角柱の4辺に各1個のT形鋼を配置した定着鉄骨を埋め込んだ部材試験体を用いて、耐力の予測方法を検討した。一昨年度は、骨組式鉄骨造の最下階柱脚における鉄筋コンクリート基礎梁への定着性能改善方法について外柱を対象にして実験的検討を行い、昨年度は柱梁接合部における90度折曲げ梁筋定着機構に関するFEM解析を行った。本年度はこれらの成果を参考として、より条件が厳しい鉄骨造外柱の柱脚定着方法について実験的な検討を行った。
KAKENHI-PROJECT-11450201
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11450201
アデノウイルス・ベクターを用いた筋ジストロフィーの遺伝子治療に関する基礎的研究
進行性筋ジストロフィーに対する遺伝子治療の基礎的研究の一環として、アデノウイルス・ベクターを用いた筋細胞に対する遺伝子の導入を確立することができた。1.培養骨格筋細胞に対する組換えアデノウイルスのin vitro導入実験増殖性に富むC2細胞株及びより高い分化能を持つC2/4細胞株に対して、普遍的で高度の発現が期待できるAdex CA-lacZ(東京大学医科学研究所斎藤研究室より供与)及び組織特異的な発現を企図して斎藤研究室との共同で作製したAdex MHC IIB-lacZを用いて感染実験を行い次のような結果を得た。1)組換えアデノウイルスは、増殖中の筋芽細胞のみならず筋管細胞に分化した後の細胞に対しても、高率に導入される。2)細胞に高率に導入された遺伝子は、組み合わされているブロモーターにより、その発現が制御されうる。2.再生筋に対する組換えアデノウイルスのin vivo導入実験成熟ラットヒラメ筋に対するBupivacaineによる筋再生系を用いて、Adex CA-lacZの筋注を行ない、筋再生を惹起することにより、効率的な組換えアデノウイルスの導入が可能であることを明らかにした。この事実は、組換えアデノウイルスが細胞に取り込まれるために必要なインテグリンαvリセプターの発現が分化・成熟途上の筋細胞に限られていることと呼応している。進行性筋ジストロフィーに対する遺伝子治療の基礎的研究の一環として、アデノウイルス・ベクターを用いた筋細胞に対する遺伝子の導入を確立することができた。1.培養骨格筋細胞に対する組換えアデノウイルスのin vitro導入実験増殖性に富むC2細胞株及びより高い分化能を持つC2/4細胞株に対して、普遍的で高度の発現が期待できるAdex CA-lacZ(東京大学医科学研究所斎藤研究室より供与)及び組織特異的な発現を企図して斎藤研究室との共同で作製したAdex MHC IIB-lacZを用いて感染実験を行い次のような結果を得た。1)組換えアデノウイルスは、増殖中の筋芽細胞のみならず筋管細胞に分化した後の細胞に対しても、高率に導入される。2)細胞に高率に導入された遺伝子は、組み合わされているブロモーターにより、その発現が制御されうる。2.再生筋に対する組換えアデノウイルスのin vivo導入実験成熟ラットヒラメ筋に対するBupivacaineによる筋再生系を用いて、Adex CA-lacZの筋注を行ない、筋再生を惹起することにより、効率的な組換えアデノウイルスの導入が可能であることを明らかにした。この事実は、組換えアデノウイルスが細胞に取り込まれるために必要なインテグリンαvリセプターの発現が分化・成熟途上の筋細胞に限られていることと呼応している。アデノウイルス・ベクターを用いた進行性筋ジストロフィーに対する遺伝子治療の基礎的研究を行うことを目的として,今年度は生化学的にも形態学的にも検出することが可能な、beta-galactosidase(lacZ)遺伝子のアデノウイルスゲノムへの組み込みを行った。1.骨格筋と心筋に特異的なミオシンH鎖IIBプロモーターとbeta-galactosidase(lacZ)遺伝子からなるユニットを作製した。2.同ユニットを、アデノウイルスゲノムのうちE1A,E1B,E3を欠失したコスミドカセットに組み込み,発現コスミドカセットとした。3.現在、斎藤らの方法に従って、アデノウイルスゲノム末端蛋白複合体と、発現コスミドカセットを293細胞に導入し、組み替えアデノウイルスを得る実験を行っている。今年度中に組み替えアデノウイルスが得られれば、引続きマウス筋芽・筋管細胞系C2、マウス骨格筋およびマウス個体に導入し、アデノウイルスベクターの有効性と,ミオシンH鎖IIBプロモーターの特異性を検定する予定である。両者の確認を前提に、lacZ遺伝子の代わりに、ジストロフィン遺伝子の組み替えを考えている。一方、本研究と平行して、ウイルスベクターを使用しない遺伝子導入法についても研究を行った。今年度は、正荷電リポソームとりわけ、DOSPA/DOPEとDOGSを用いることにより、マウス筋芽・筋管細胞系C2および、マウス線維芽細胞系10T1/2に対する効率の良い遺伝子導入法を確立することができた。現在この方法を用いて、マウス個体に対する遺伝子導入を行っている。進行性筋ジストロフィーに対する遺伝子治療の基礎的研究の一環として、アデノウイルス・ベクターを用いた筋細胞に対する遺伝子の導入を確立することができた。1.培養骨格筋細胞に対する組換えアデノウイルスのin vitro導入実験増殖性に富むC2細胞株及びより高い分化能を持つC2/4細胞株に対して、普遍的で高度の発現が期待できるAdex CA-lacZ(東京大学医科学研究所斉藤研究室より供与)及び組織特異的な発現を企画して斉藤研究室との共同で作製したAdex MHC IIB-lacZを用いて感染実験を行い次のような結果を得た。1)組換えアデノウイルスは、増殖中の筋芽細胞のみならず筋管細胞に分化した後の細胞に対しても、高率に導入される。2)細胞に高率に導入された遺伝子は、組み合わされているプロモーターにより、その発現が制御されうる。2.再生筋に対する組換えアデノウイルスのin vivo導入実験成熟ラットヒラメ筋に対するBupivacaineによる筋再生系を用いて、Adex CA-lacZの筋注を行ない、筋再生を惹起することにより、効率的な組換えアデノウイルスの導入が可能であることを明らかにした。この事実は、組換えアデノウイルスが細胞に取り込まれるために必要なインテグリンαvリセプターの発現が分化・成熟途上の筋細胞に限られていることと呼応している。
KAKENHI-PROJECT-05454264
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サイトカインによる担癌宿主T細胞の応答制御
担癌状態では癌拒絶抗原提示能を持ったAPC機能は正常であり、抗腫瘍T細胞は担癌早期では一旦は活性化される。しかし癌の進行に伴い応答性が抑制されていく。ここで強調すべきは、一旦誘導された抗腫瘍T細胞は担癌状態の進行により消去されずに、一時的に機能異常が惹起されている点である。ちなみにBALB/Cマウス由来CSA-1M線維肉腫細胞や(B6xC3H)F1マウス由来OV-HM卵巣癌細胞担癌マウスにIL-12を投与すると、腫瘍の完全退縮及び著明な抗腫瘍転移効果を誘導できる。しかも、IL-12投与は抑制された抗腫瘍T細胞のIFN-γ産生能を著明に回復/増強する。またIL-12投与により腫瘍が退縮したマウスでは腫瘍特異免疫が獲得されている。IL-12の抗腫瘍効果は全ての腫瘍系で有効とは限らず、効果をほとんど認めない非奏効性腫瘍系が存在する事がわかった。そして腫瘍周辺部ストローマ形成の有無が、腫瘍局所への抗腫瘍性T細胞浸潤を、更にはIL-12治療の効果を左右する重要な因子である事を報告した。今回、担癌T細胞応答性低下の免疫分子環境を解析した結果、担癌宿主ではとりわけ担癌後期で脾臓中にMac-1陽性のGr-1陽性細胞の著しい増加が認められ、その結果NO産生が増加し、IFN-γ産生に代表されるT細胞応答性が抑制される。しかしT細胞がこのような環境から解放されると、速やかにそれ自身の持つ応答性を回復しうる。またT細胞自身のIL-12応答性は、担癌ステージに関らず差がみられない事が明らかになった。またIL-12によるT細胞腫瘍組織内浸潤の誘導に重要な役割を果たす腫瘍周囲ストローマ形成にはIL-12治療前から腫瘍塊に少数ながらも浸潤しているCD4^+/CD8^+T細胞及びそれらが産生する少量のIFN-γが必要であることより、腫瘍周辺部ストローマの形成は宿主免疫系と腫瘍の相互作用に基づく事が示唆された。1.担癌宿主ではT細胞機能が抑制される。このT細胞機能抑制が、T細胞抗原レセプター(TCR)の構造異常に基づくものか否かをまず検討した。その結果、担癌マウスから調製したT細胞集団においてはTCR-CD3複合体のζ鎖やこれに結合すべきp56lckの量が一見著明に減少しているようにみえた。しかしながら、精製したT細胞集団(混入するMac-1^+細胞などを除去)について同様の検討を加えると、ζ鎖とp56lckの量的減少がみられず、担癌状態におけるT細胞機能抑制はTCRの構造異常以外の原因による結果を得た。2.担癌宿主ではサイトカインネットワークの異常が惹起される。この異常がT細胞機能異常を説明しうるか否かを次に検討した。その結果、担癌状態ではステージの進行と共にTGF-βとIL-6の産生が無制限に亢進してゆくこと、この両者は、抗腫瘍T細胞が〔腫瘍抗原+抗原提示細胞(APC)〕で刺激された時、抗腫瘍サイトカイン(IFN-γやTNF-α)を産生するのを著明に抑制することが明らかになった。前項の結果と併せ、担癌宿主におけるT細胞応答性の低下は、TCRの構造異常以外による機能抑制であり、その抑制を惹起する分子機構の一端が明らかにされた。担癌早期に一旦腫瘍抗原で感作されたTリンパ球は癌の進行に伴っても消去されずに、機能発現が抑制された状態で存在している。そこで、細胞性免疫応答の誘導や維持に決定的な役割を果すIL-12の投与による抗腫瘍応答の増強を図った。その結果、以下に述べる如くIL-12投与は担癌状態における抗腫瘍免疫能の低下を回復させ、腫瘍拒絶及び抗腫瘍転移効果を惹起させうる事が明らかになった。1、In vitroでの担癌マウス脾臓Tリンパ球による抗腫瘍サイトカイン(IFN-γ,IL-2,及びTNF-α)産生へのIL-12添加の影響を検討した所、免疫抑制状態にある担癌後期においてもIL-12添加によりIFN-γ産生の著明な回復が見られた。又、Tリンパ球の中でも特にCD4^+Tリンパ球が主なIFN-γ産生細胞である事も明らかとなった。尚、IL-2及びTNF-α産生はIL-12を添加してもそれ程著明な増加が見られなかった。2、IL-12を繊維芽肉腫CSAIM担癌マウスに腹腔内投与した場合、抗腫瘍免疫能が回復されるか否かを調べた。その結果、早期担癌(1-2週目)マウスに投与した場合はもとより、担癌中期(4-5週目)及び担癌後期(7週目)で投与した場合にも、腫瘍塊の完全な退縮が誘導された。免疫組織学的検査では退縮中の腫瘍組織の周辺部に多くのリンパ系細胞(CD4^+及びCD8^+マクロファージ)の浸潤が観察された。また、腫瘍が完全に退縮したマウスでは腫瘍特異免疫が獲得されている事、IL-12の抗腫瘍効果はCD4^+或いはCD8^+Tリンパ球がそれぞれ単独でもその効果を発揮しうる事、及び腫瘍退縮にはIL-12投与により誘導されるIFN-γが初期段階で不可欠な役割を果たしている事も明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-06282234
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サイトカインによる担癌宿主T細胞の応答制御
更に、IL-12投与中の担癌マウスの脾細胞及び退縮中の腫瘍組織に於て強いIFN-γmRNAの発現が確かめられた。一方、肺やリンパ節への自然転移を起こす卵巣癌(OV-HM)を用いた場合にも、IL-12投与は著明な腫瘍転移抑制効果を発揮しうる事が示された。我々はT細胞機能が低下している後期の担がん宿主でも、ある種のがんのモデル(マウス線維肉腫細胞CSA1M或は卵巣がん細胞OV-HM)ではIL-12を全身投与することにより、抗腫瘍T細胞のIFN-γ産生能の回復が見られ完全な腫瘍退縮効果がもたらされる事を見いだしている。IL-12が担がん宿主免疫系に作用して腫瘍を退縮させる際、腫瘍局所の多数のT細胞の浸潤が認められる。本年度は、IL-12投与によるT細胞の腫瘍局所での抗腫瘍効果発現機構を分子レベルで解析した。1、IL-12投与した担がんマウスの脾細胞を蛍光色素PKH-26にて染色後、無治療の同系担がんマウスに静脈内移入し、12-24時間後に腫瘍塊の凍結切片に於る蛍光細胞数を測定するという実験系を確立し、IL-12はT細胞を活性化するのみならず、活性化T細胞に腫瘍局所への浸潤能力を賦与する事を直接証明した。2、IL-12治療により腫瘍局所で誘導されるIFN-γが如何なる分子機構で腫瘍拒絶を惹起するかについて検討した。1)CSA1M或はOV-HMをIFN-γでin vitro刺激した所、CSA1Mでは誘導型NO-synthase(iNOS)、OV-HMではindolamine 2,3-dioxy-genase(IDO)の発現が誘導された(トリプトファン利用が阻止され増殖抑制に陥ると考えられる)。2)IL-12治療を受けたCSA1M担がんマウス腫瘍局所ではiNOS mRNAの強い発現を認め、OV-HM担がんではIDO mRNAの発現と共に浸潤細胞によるiNOSの発現も認められた。3)L-12投与と共に抗IFN-γ抗体を投与すると腫瘍拒絶は阻止されるが、腫瘍塊へのT細胞浸潤や局所でのIFN-γの発現は抑制されなかった。しかし、腫瘍塊でのiNOSの発現は、抗IFN-γ抗体投与により著明に減少し腫瘍細胞の壊死も誘導されなかった。即ち、IL-12投与により腫瘍局所でIFN-γを介して二次的に誘導されるiNOSやIDOの発現が腫瘍拒絶に必須である事が示された。4)CSA1MやOVA-HMはNOの作用によりG1期に収束或は同期する為に増殖能が低下する事が示唆された。担癌状態ではサイトカインネットワークの異常が惹起され、結果として抗腫瘍T細胞応答が抑制される。しかし宿主に一旦誘導された抗腫瘍T細胞は著しい機能低下が認められるものの担癌状態の進行によっても除去されずに存在している。このような担癌宿主にIL-12を投与すると、抗腫瘍T細胞の制御が解除され、ある種の腫瘍系では腫瘍の完全退縮が誘導できる。IL-12が担癌宿主免疫系に作用して腫瘍を拒絶させる際、腫瘍局所に多数のT細胞の浸潤が認められる。しかしIL-12無効の腫瘍系ではT細胞の浸潤が見られない。そこで実際にIL-12がT細胞の腫瘍局所への浸潤能を亢進させることを直接証明する実験系で解析したところ、IL-12は末梢リンパ組織の抗腫瘍性T細胞を活性化し、T細胞に腫瘍局所への浸潤能力を賦与する事が明らかとなった。この際IL-12により活性化された担癌宿主のT細胞は、VLA-4とVCAM-1及びLFA-1とICAM-1との効率的な分子間相互作用を介して腫瘍組織の血管内皮細胞に接着し腫瘍組織内に浸潤する。またIL-12奏効性腫瘍系では、腫瘍局所で産生されるIFN-γがT細胞の腫瘍組織への誘引に重要な役割を果たす事も明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-06282234
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四国地方における仏像の造像圏とその形成過程に関する研究
四国とそれを取り巻く地域(九州東部、瀬戸内、紀伊半島西部)の文化的な特性について、その具体像について、仏像の様式の分類と解析からひも解いていった。特に紀伊半島西部地域と四国東部地域、四国中山間地域における山岳仏教圏における類似した造像、九州東部(豊後日向地域)と大陸(中国山東省、四川省、朝鮮半島)との造形的な関係についていくつかの具体的な事例が確認された。また仏像製作における「造像圏」という概念を、特に四国地方の仏像から解読してゆく試みとして本研究を位置づけた。四国とそれを取り巻く地域(九州東部、瀬戸内、紀伊半島西部)の文化的な特性について、その具体像について、仏像の様式の分類と解析からひも解いていった。特に紀伊半島西部地域と四国東部地域、四国中山間地域における山岳仏教圏における類似した造像、九州東部(豊後日向地域)と大陸(中国山東省、四川省、朝鮮半島)との造形的な関係についていくつかの具体的な事例が確認された。また仏像製作における「造像圏」という概念を、特に四国地方の仏像から解読してゆく試みとして本研究を位置づけた。本年度は、瀬戸内沿岸の仏像、特に金銅仏ならびに廃寺遺物の調査と研究を進めた。愛媛・興隆寺如来立像は法隆寺四十八体仏などにも類例が認められるもので、香川・与田寺誕生仏は痩身のユニークな形態をみせるものであるが四国地方では珍しい朝鮮系の作例と考えられる。また香川・善通寺の塑像頭部は破損仏で四国地方では類例も少ないものだが、その表情の作り方から奈良・西大寺塔本四仏、あるいは八世紀以降に造立された木彫群などとの関係を想起させられるものであった。近年高知県中央部の野田遺跡から発掘された博仏、瓦片などは四国圏ばかりではなく我が国でもあまり例をみないもので、地方独自の造形様式がこの時代の四国で発生していた可能性を考えた。この問題は香川・願興寺聖観音菩薩坐像、のように畿内から海を隔てた地域に伝播した様式のものとして注目されるが、初期一木造の香川・正花寺菩薩立像など奈良時代末期における地方作例の系譜とは異なる個性的な造形が生み出されていたことを物語るものと言えよう。また院政期に地方への文化移入は急速に活性化する。こうしたことは東北にしても九州地方についても言えることだが、四国においてもまた中央の様式が直接的に流入してくると同時に、すでに培われてきた地方様式の仏像とが混在した形で伝来する。そうした問題を高知・金林寺不動明王、毘沙門天像、徳島丈六寺聖観音坐像、愛媛・太山寺十一面観音群像、香川・法蓮寺不空絹索観音像などからそこにある独自性について考えてみたい。愛媛・旧北条市周辺に伝来する元毘沙門堂の兜賊毘沙門天、特異な形態を見せる光徳院如来立像などもまた、この時代の四国地方独自の造形的な系譜を辿ることができる作例といえる。次年度以降、豊後水道から東シナ海沿岸の仏教文化の伝播の様子を造形作品から改めてひもといてみたい。本年度は豊後水道に面した九州東部より、阿蘇中山間地域に至る一帯の仏教文化財の調査を中心に行った。調査地としては、大分県国東半島より九州東岸沿いに伝来する磨崖仏や石造品を含む平安時代の作例、宮崎県国富町周辺の鎌倉時代の作例を中心に行った。周知のように国東半島における石造物の文化は宇佐文化や六郷満山の修験文化などきわめて独自な信仰を背景としたものとして知られている。しかしながらさらに、豊後水道を南下してゆく過程にも、石窟型の大分・曲磨崖仏群、高瀬磨崖仏群、宮迫磨崖仏群、崖を彫りだした元宮磨崖仏群、菅尾磨崖仏群、犬飼磨崖仏群、普光磨崖仏群などが点在しており、こうした大規模な石造遺物の存在は豊後水道対岸域の四国海岸部や瀬戸内両岸には見られないもので、古代から中世にかけての石造遺物の拡散が九州東岸地域に集中していることはその背後にある信仰圏や造像圏の問題を考えるときに注目されるところであった。中でも菅尾磨崖仏群は紀州熊野権現の本地物を勧請したものとしても興味深いが、岩屋寺石仏群などとともに中国・山東省の千仏崖磨崖仏群などとの作風や群像表現の方法など類似点が多く見受けられ、今後の研究課題としたい。鎌倉時代の作例としては宮崎・法華嶽寺薬師三尊像、王楽寺薬師三尊像は、高知・雪蹊寺薬師三尊像、大乗院薬師三尊像にみられるような鎌倉時代中期、仏師湛慶周辺の作者に見られる特色が認められるもので、また国富町萬福寺阿弥陀三尊像などは鎌倉時代中期の慶派様式をこの地方において独自に受容した作例と考えられる。また大分、六郷満山の一つ旧千燈寺跡石塔群、如来座像、大分県立歴史博物館寄託の不動明王像なども鎌倉時代初期から中期にかけての中央文化の影響を強く受けた作例と言えよう。昨年度までに、瀬戸内沿岸の造像圏の形成過程についての研究を行ってきたが、本年度は四国を東西に挟む紀伊水道ならびに豊後水道沿岸の仏像の分布とその特性についての研究を中心に行った。調査地域は前者が大阪南部より和歌山県一帯、後者が大分県から鹿児島県に至る地域について実査を行った。紀伊水道沿岸地域の作例では、紀の川沿いの法音寺、吉祥寺、法福寺といった寺院の仏像群の造像圏の想定を和歌山県周辺地域、ならびに徳島県、高知県等における平安時代の仏像からその影響関係を読み解く作業を行った。
KAKENHI-PROJECT-22520108
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四国地方における仏像の造像圏とその形成過程に関する研究
この一体は比較的年代の下る時代(14世紀後半頃)まで一木造りが積極的に行われていたことや、板光背を備える作品が多く見られることが特色と言える。和歌山・法音寺十一面観音像と高知・名留川観音堂十一面観音像にみる頭体より台座まで一木で仕上げ、またずんぐりとして、肩をいからせたような造形の志向はこの地域でしばしば確認された。また徳島・龍光寺仏像群と高知・豊楽寺、定福寺、金林寺(いづれも如来像の比較)といった仏像の類似は、平安時代中期から後期にかけて四国中山間地域における独自の造像圏の存在を窺わせるものであった。一方、豊後水道を挟んだ、九州東南部においては廃仏毀釈の影響もあって、比較対象すべき作例が少ないが、大分・龍ヶ鼻石仏群、堂ヶ追石仏などは従来行われてこなかった平安時代後期の木彫像との比較を試みるべき作例と考えられる。またこれらの石仏祭祀の問題は民俗学的な見地からも興味深いものがある。また鹿児島県清水町石仏群、本高城集落仏像群、宮崎県綾町、国富町、福岡県南阿蘇村周辺の調査を行った。これらは逐次、調査報告も交えて成果発表していきたい。当初、遼東半島周辺の調査を目指していたが、震災などにより日程調整ができず、本年中には是非行いたいと思う。24年度が最終年度であるため、記入しない。仏教に関わらず人々の信仰に関わる文化の研究は今後、社会学、歴史学、民俗学なども含めてより広範な学際領域を網羅したものとして進展すべきと思われる。大学や研究分野の敷居を、自他ともに下げたところであらたな対話の機会を作ってゆきたい。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22520108
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不斉炭素資源の高度利用を指向する高選択的プロセスの開発
アセタールテンプレートを用いる不斉誘導はその高い誘導率のため現在有機化学の中で重要な手法となっている。その機構に関してはSn2型協秦反応であると提唱させている。しかし、そのためにはアセタールの結合開製と求核剤(Nu)とアセタール炭素との間に新たに生成する結合生成とのタイミングが全く同時である必要がある。従って、用いるルイス酸(MXn)の酸性強度およびNuの求核性の程度等々によって、不斉誘導率および不斉誘起の方向などが支配されるはずである。今回、その様な知見を初めて得ることが出来これを利用してステロイド側鎖の立体選択的合成に成功した。ステロイダルアルデヒドと(2R,4R)-(-)-ペンタンジオールから合成したキラルなステロイダルアセタール(S-R,R体)をアリルシランと四塩化チタン存在下に反応させ、常法に従って処理すると(S-S体)のアルコールが圧倒的に得られた。一方、S-S,S体のステロイダルアセタールとアリルシランを同様に反応させたところ、(S,S)体と(S,R)体のアルコールの混合物を9:1の割合で生成した。従来、SSアセタールはRキラリティを誘起することが知られており、この場合(S,R)体を与えるべきであるが予想に反して(S,S)体を主生成物として与えた。一方、(S-S,S体)のステロイダルアセタールとアリルスズの反応は予想通り(S,R)体のアルコールを高選択的に与えた。結局、求核性の強いアリルスズはアセタールテンプレートの指示する方向で不斉誘起を行なうが、求核性の弱いアクルシランでは反応性が低いためアセタールの結合開裂が先に起こってしまい、不斉誘導はアセタールテンプレートによっては支配されず、ステロイド側鎖のメチル基等々のクラム則によって決定されることが判明した。すなわち、結合開裂と結合生成のタイミングが不斉誘導に重要であることが判った。これを利用してブラシノリドやα-エクダイソンの合成を行なった。アセタールテンプレートを用いる不斉誘導はその高い誘導率のため現在有機化学の中で重要な手法となっている。その機構に関してはSn2型協秦反応であると提唱させている。しかし、そのためにはアセタールの結合開製と求核剤(Nu)とアセタール炭素との間に新たに生成する結合生成とのタイミングが全く同時である必要がある。従って、用いるルイス酸(MXn)の酸性強度およびNuの求核性の程度等々によって、不斉誘導率および不斉誘起の方向などが支配されるはずである。今回、その様な知見を初めて得ることが出来これを利用してステロイド側鎖の立体選択的合成に成功した。ステロイダルアルデヒドと(2R,4R)-(-)-ペンタンジオールから合成したキラルなステロイダルアセタール(S-R,R体)をアリルシランと四塩化チタン存在下に反応させ、常法に従って処理すると(S-S体)のアルコールが圧倒的に得られた。一方、S-S,S体のステロイダルアセタールとアリルシランを同様に反応させたところ、(S,S)体と(S,R)体のアルコールの混合物を9:1の割合で生成した。従来、SSアセタールはRキラリティを誘起することが知られており、この場合(S,R)体を与えるべきであるが予想に反して(S,S)体を主生成物として与えた。一方、(S-S,S体)のステロイダルアセタールとアリルスズの反応は予想通り(S,R)体のアルコールを高選択的に与えた。結局、求核性の強いアリルスズはアセタールテンプレートの指示する方向で不斉誘起を行なうが、求核性の弱いアクルシランでは反応性が低いためアセタールの結合開裂が先に起こってしまい、不斉誘導はアセタールテンプレートによっては支配されず、ステロイド側鎖のメチル基等々のクラム則によって決定されることが判明した。すなわち、結合開裂と結合生成のタイミングが不斉誘導に重要であることが判った。これを利用してブラシノリドやα-エクダイソンの合成を行なった。
KAKENHI-PROJECT-61211015
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61211015
胃癌診断血清マーカー実用性評価システムの構築
平成6年12月末現在753例の胃癌症例と、1005例の対照について、自記式アンケートと血清が収集され、血清ペプシノーゲンI(PGI)・II(PG2)と抗ヘリコバクター・ピロリIgG抗体の測定が終了した。残血清は、-80°Cで凍結保存されている。ROC曲線を描いてこれらの血清検査の最適の判定基準と(敏感度%、特異度%)を分析したところ、60歳代で男:PG2/13.4(57.6,55.1)、女:PG1<PG2<2.5(63.8,60.9)であり、若い年代ほど高い値が得られたが、間接X線に替わって胃癌検診の一次スクリーニングに用いるには十分な値でなかった。この分析には、進行癌で既に救命不能となっている症例も含まれていることから、最終的な実用性の判定には、救命可能な胃癌に限った分析を実施する必要が、また血清検査を併用して判定する方法についても検討する必要がある。血清検査の併用に関しては目下のところ、考えられる総ての条件について敏感度・特異度を計算する「総当たり法以外に適当な方法がないという結論であるが、他の方法や総合当たり法に測定誤差などを加味した方法についてなお検討を続けている。ヘリコバクター・ピロリが胃癌の発がんに関与していることが疑われているが、本研究のデータで胃癌と抗ヘリコバクター抗体陽性の関連性のオッズ比を年齢別に計算し、20歳代で23.1、30歳代で11.0、40歳代9.6、50歳代3.3、60歳代1.6と年齢と共に低くなるという結果を得た。これは胃癌症例の陽性率が87.7%から91.9%と年齢でほとんど変わらないのに対して、対照では20歳代28.0%から60歳代82.0%と、年齢の上昇に伴って陽性率が上昇するためであった。平成6年12月末現在753例の胃癌症例と、1005例の対照について、自記式アンケートと血清が収集され、血清ペプシノーゲンI(PGI)・II(PG2)と抗ヘリコバクター・ピロリIgG抗体の測定が終了した。残血清は、-80°Cで凍結保存されている。ROC曲線を描いてこれらの血清検査の最適の判定基準と(敏感度%、特異度%)を分析したところ、60歳代で男:PG2/13.4(57.6,55.1)、女:PG1<PG2<2.5(63.8,60.9)であり、若い年代ほど高い値が得られたが、間接X線に替わって胃癌検診の一次スクリーニングに用いるには十分な値でなかった。この分析には、進行癌で既に救命不能となっている症例も含まれていることから、最終的な実用性の判定には、救命可能な胃癌に限った分析を実施する必要が、また血清検査を併用して判定する方法についても検討する必要がある。血清検査の併用に関しては目下のところ、考えられる総ての条件について敏感度・特異度を計算する「総当たり法以外に適当な方法がないという結論であるが、他の方法や総合当たり法に測定誤差などを加味した方法についてなお検討を続けている。ヘリコバクター・ピロリが胃癌の発がんに関与していることが疑われているが、本研究のデータで胃癌と抗ヘリコバクター抗体陽性の関連性のオッズ比を年齢別に計算し、20歳代で23.1、30歳代で11.0、40歳代9.6、50歳代3.3、60歳代1.6と年齢と共に低くなるという結果を得た。これは胃癌症例の陽性率が87.7%から91.9%と年齢でほとんど変わらないのに対して、対照では20歳代28.0%から60歳代82.0%と、年齢の上昇に伴って陽性率が上昇するためであった。平成5年12月末現在、症例330例、対照987例が収集され、血清ヘリコバクター抗体、血清ペプシノーゲン値IおよびIIの測定、生活習慣(飲酒、喫煙)、既往歴に関する自記式アンケートの回収・コンピューター入力、残血清の-80°Cでの凍結保存が終了している。対照を使った分析において、(1)ヘリコバクター抗体とペプシノーゲンI、IIの間に正の相関関係がみとめられること、特にペプシノーゲンIIとの相関が強いこと(いずれも年齢補正後、統計学的に有意)を明らかにした。(2)飲酒、喫煙とヘリコバクター抗体の間には関係は認められなかった。(3)内視鏡がヘリコバクターを媒介する可能性が心配されているが、胃疾患の既往、自覚症状の影響を除いた分析においては、内視鏡検査歴とヘリコバクター抗体陽性の間には関連を認めなかった。(4)湿疹の既往とヘリコバクター抗体陽性の間に関連性を認めた(年齢補正後、統計学的に有意)が、現在その意義づけについて検討している。(5)健診受診者に関して、ヘリコバクター抗体陽性率は20代28%、30代43%、40代54%、50代71%、60代85%と年齢とともに高率となった。(以上のうち(1)、(5)については第4回日本疫学会総会で発表)平成6年12月末現在753例の胃癌症例と、1005例の対照について、自記式アンケートと血清が収集され、血清ペプシノーゲンI(PG1)・II(PG2)と抗ヘリコバクター・ピロリIgG抗体の測定が終了した。
KAKENHI-PROJECT-05304029
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胃癌診断血清マーカー実用性評価システムの構築
残血清は、-80°Cで凍結保存されている。ROC曲線を描いてこれらの血清検査の最適の判定基準と(敏感度%、特異度%)を分析したところ、60歳代で男:PG2>13.4 (57.6,55.1)、女:PG1/PG2<2.5(63.8,60.9)であり、若い年代ほど高い値が得られたが、間接X線に替わって胃癌検診の一次スクリーニングに用いるには十分な値でなかった。この分析には、進行癌で既に救命不能となっている症例も含まれていることから、最終的な実用性の判定には、救命可能な胃癌に限った分析を実施する必要が、また血清検査を併用して判定する方法についても検討する必要がある。血清検査の併用に関しては目下のところ、考えられる総ての条件について敏感度・特異度を計算する「総当たり法」以外に適当な方法がないという結論であるが、他の方法や、総当たり法に測定誤差などを加味した方法についてなお検討を続けている。ヘリコバクター・ピロリが胃癌の発ガンに関与していることが疑われているが、本研究のデータで胃癌と抗ヘリコバクター抗体陽性の関連性のオッズ比を年齢別に計算し、20歳代で、23.1、30歳代11.0、40歳代9.6、50歳代3.3、60歳代1.6と年齢と共に低くなねという結果を得た。これは胃癌症例の陽性率が87.7%から91.9%と年齢でほとんど変わらないのに対して、対照では20歳代28.0%から60歳代82.0%と、年齢の上昇に伴って陽性率が上昇するためであった。
KAKENHI-PROJECT-05304029
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顔に変形を有する児童に対する発達臨床的支援プログラムの開発とその実践的活用
2006年度に引き続き、医療機関・学校・家族らと協同しての支援が行えるような発達臨床的支援の実践として、支援プログラムの作成のためのパイロットケースとして、東北大学歯学部付属病院において,継続して児童期後期から思春期に移行する口唇裂口蓋裂児の面接を行なった。また2005-2006年度に行った成人期口唇裂口蓋裂者への面接調査、および先行研究の文献検討から見いだされた顔に変形を有する人々の各発達期における心理社会的問題と支援のモデルについての論文が、心理学研究に採択された。これを元にして実践を継続して行い、今後、より充実した支援プログラムを作成する予定である。また、顔の変形の問題は、単に顔に変形を有する人々の問題だけではなく、それを取り巻く社会の問題でもあるため、冊子の作成などの情報支援,また子どもが孤立無援になりがちな学校における支援ニーズを教師に伝える資料作成も今後の課題である。また、8月には,前年度までに見いだした各発達期のモデルを国内外の学会や研究会で発表・情報収集を行うために、ドイツで行われた第13回ヨーロッパ発達心理学会において、思春期の口唇裂口蓋裂者の自己形成についての発表を行って、海外の研究者とも積極的に意見交換をするとともに、そこで得た知見をもとに、顔に変形を有する人々の心理社会的問題と支援のモデルの精緻化を行った。さらに、こうしたモデルについての研究上、顔の変形を有する人々の発達に関する問題が、実は脳性まひ児などの身体障害者の発達と可視性(見た目)という観点で共通する部分があることが考えられた。このため、日本発達心理学会第19回大会において脳性まひ児の研究を行っている心理学者との自主シンポジウムを開催した。これによって顔の変形の問題が単にこの問題だけにかぎらず、身体障害などいわゆる障害の領域とも共通する問題であることが明確になった。顔に変形を有する児童に対する発達臨床的支援プログラムを開発するために,本年はその実態調査を行ない,その報告を学会発表や論文投稿によって行った。調査については,特に発達的な影響が大きいと考えられる先天的な変形のうち,比較的発生率が高い口唇口蓋裂を有する人々を対象として,実態調査を行った。調査に際しては,特に,発達早期からの養育者と顔に変形をもつ子どもとの関係性の構築等の家族環境、友人との関係性,就学前後からの他者に対するコーピングスキルの獲得、児童期など各発達段階における発達レベルにふさわしい顔の変形の認知などが患者の心理的適応にどのように影響しているかを調査した。調査協力者は,形成外科・口腔外科を退院後の20-30代口唇口蓋裂患者24名であり,東北大学歯学部付属病院外来において、2005年7月から2006年1月まで、継続的に面接調査を行なった。実態調査の結果は、各発達段階ごとの患者の発達的特徴と課題,および心理的支援のモデルを提起する形でまとめられ、発達心理学会で一部を発表後,東京大学紀要に「口唇口蓋裂が患者の適応に与える影響-患者の発達的支援モデルへ向けて-」という形で,投稿(現在印刷中),さらに発達心理学研究に「口唇口蓋裂患者の心理的苦痛と転機:探索的インタビューに基づく仮説的発達移行モデルの構築」という形で投稿した(審査中)。あわせて心理学研究にも先行研究についてのレビューを投稿中である(「Visible Differenceにまつわる心理的問題:その発達的理解と支援モデルの構築」)。また,7月に9th European Congress of Psychology(スペイン)において、研究成果を報告し、さらにイギリスチャリティChanging FacesおよびUniversity of West Englandにおいて世界の研究動向について知見を収集した。初年度におこなった病院外来での成人期口唇裂口蓋裂患者の面接からの知見をもとに,児童期前期中期,児童期後期,思春期,青年期後期の各発達期の心理社会的問題を明らかにし,さらにそれが各発達期の口唇列口蓋裂者の自己の中でどのような意味づけがなされているのかについて,モデルを構築する作業を行った。この結果,今後は児童期から青年期までの発達的支援を行う際に,一定の指針が出来たと考えられる。今年度は初年度に構築したこのモデルをもとにして,T大学歯学部付属病院において,継続して児童期後期から思春期に移行する口唇裂口蓋裂児の面接を行って,支援モデルに基づいた実践を行った。この支援においては,単に病院外来において面接による支援を行うだけでなく,病院医師や他の心理学者,児童の両親,学校と緊密な連絡をとるリエゾンコンサルテーション的な支援を積極的に進めている。また,口唇裂口蓋裂等,可視的変形を有している者は,他者・社会の反応に大きな影響を受ける。このため,顔の可視的変形に対する社会の側の理解促進が,支援の重要な側面である。この他者・社会への理解促進のために,9月には日本社会心理学会学会企画シンポジウムにて企画・発表を行って,多くの人々の理解に向けて討議を行った。さらに,2月には,この領域の先進的な研究・実践活動を行っているイギリスチャリティChanging Facesを訪問して世界の研究動向について知見を収集すると共に,当該領域の国際比較研究の可能性について活発な意見交換を行った。実態調査及び支援モデルについては,論文にまとめられ学会誌(発達心理学研究,心理学研究)に投稿して現在審査中である。2006年度に引き続き、医療機関・学校・家族らと協同しての支援が行えるような発達臨床的支援の実践として、支援プログラムの作成のためのパイロットケースとして、東北大学歯学部付属病院において,継続して児童期後期から思春期に移行する口唇裂口蓋裂児の面接を行なった。
KAKENHI-PROJECT-05J10384
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顔に変形を有する児童に対する発達臨床的支援プログラムの開発とその実践的活用
また2005-2006年度に行った成人期口唇裂口蓋裂者への面接調査、および先行研究の文献検討から見いだされた顔に変形を有する人々の各発達期における心理社会的問題と支援のモデルについての論文が、心理学研究に採択された。これを元にして実践を継続して行い、今後、より充実した支援プログラムを作成する予定である。また、顔の変形の問題は、単に顔に変形を有する人々の問題だけではなく、それを取り巻く社会の問題でもあるため、冊子の作成などの情報支援,また子どもが孤立無援になりがちな学校における支援ニーズを教師に伝える資料作成も今後の課題である。また、8月には,前年度までに見いだした各発達期のモデルを国内外の学会や研究会で発表・情報収集を行うために、ドイツで行われた第13回ヨーロッパ発達心理学会において、思春期の口唇裂口蓋裂者の自己形成についての発表を行って、海外の研究者とも積極的に意見交換をするとともに、そこで得た知見をもとに、顔に変形を有する人々の心理社会的問題と支援のモデルの精緻化を行った。さらに、こうしたモデルについての研究上、顔の変形を有する人々の発達に関する問題が、実は脳性まひ児などの身体障害者の発達と可視性(見た目)という観点で共通する部分があることが考えられた。このため、日本発達心理学会第19回大会において脳性まひ児の研究を行っている心理学者との自主シンポジウムを開催した。これによって顔の変形の問題が単にこの問題だけにかぎらず、身体障害などいわゆる障害の領域とも共通する問題であることが明確になった。
KAKENHI-PROJECT-05J10384
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カントの人間哲学の総合的理解の試み
『純粋理性批判』の摘要の作成、『道徳形而上学の基礎づけ』『天界の一般自然史と理論』「嘘論文」などカントの主要著作の精読を通して、自分のこれまでのカント研究の成果を「カントの人間思想に関する十の仮説」としてまとめた。これをこの三年間に研究会、学会、大学の講義、講演等で口頭発表したが、今後数年間のうちに上梓したい。本仮説の主軸は、「人間の自己対象化的性格の剔抉」がカントの全哲学的営為を貫いていたと把握することができる、というものである。これがカントの認識論、実践論、目的論、宗教論、政治論、大学論などを串刺しにしている、という視点を今後国際カント研究の世界にも発信していく。○私が主催する少人数の研究会で『道徳形而上学の基礎づけ』を精読した。カントの思想的特質のうち、イエスの黄金律に帰着する幸福主義的な道徳観を他律として批判することを通じて、キリスト教の神から戴いた道徳律をも同じく他律として退ける、という戦略が鮮明となった。○論文「人間愛から嘘をつく権利と称されるものについて」を精読した。その結果ようやく、当初の仮説どおり、この論文にもカント特有の二枚舌が隠されていることを発見した。この収穫は大きかった。(→H.25年度に口頭発表の予定)○『純粋理性批判』前半(「原則論」まで)の詳細な摘要を作成した。この作業によって、例えば、「物自体」と「超越論的客観」とのカント超越論における身分の同一性と差異性が鮮明になった。これによって、従来の私の「カントにおける四極構造」のうちのDにあたる極の解釈がよりいっそう立体的なものになった。○昨年度に引き続き、二つの有力大学で非常勤講師として「カント人間思想の総合的把握」と題して講義を受け持った。これにより、10の仮説からなる私の複合的なカント仮説をブラッシュ・アップすることができた。○研究協力者のウィーン大学ペルトナー教授の著書『哲学的美学』の翻訳を通して、カントの美学に潜む存在論的含意を学ぶことができた。●年度後半に、ライフ・ワークとなるカント研究の著作の執筆に取り掛かる予定であったが、上記翻訳に集中したため、果たすことができなかった。(→H.25年度に果たす)この三年間に本科研費補助金を活用して以下の研究活動をなした。(1)カントの著作等としては『純粋理性批判』(1781,1787)『道徳形而上学の基礎づけ』(1785)『天界の一般自然史と理論』(1755)「人間愛から嘘をつく権利と称されるものについて」(1797)の四点を精読した。(2)これまでの自分のカント研究の全成果を「カントの人間思想に関する十の仮説」(仮、概要)にまとめた(最終年度も改訂を重ねる)。(3)これを「特殊講義」として、東京の二つの有力大学の文学部哲学科等でH.23、H.24年度の二年にわたって講義した。(4)三年間に学会等の機会に全部で五回、(1)(2)の成果を口頭発表した(うち一回最終年度)。(5)研究協力者のペルトナー教授をウィーンに三回訪ね、意見交流した。(6)ペルトナー教授の著書『哲学としての美学』を四人の共訳者と共にほぼ全訳した(最終年度)。(7)ペルトナー教授を日本に招聘し、カントの美学を中心に二回の講演を開催した(最終年度)。(8)『人間学』に関するM.フーコーの研究書の邦訳の書評を学会誌に寄せた。(9)カントの人間思想に関係する講演を一回話し、随筆を一本書いた(最終年度も含む)。以上の活動から得られた主な研究成果は以下の通りである。1カントの人間思想の随一の特質を「人間の自己対象化的性格」に見ようとする仮説に一層の確信が得られた。2カントが生涯を通じて一方で哲学的に厳密な議論を展開しながら、他方で時の権力・宗教界の目をごまかすために二枚舌等の文章術を駆使していたことが判明した(最終年度)。今後の研究の展開:この研究成果を基にして、a)今後二年間のうちに『カントの人間思想に関する十の仮説』(仮)を上梓する。b) H.27年9月にウィーン大学で開催される第12回国際カント学会において口頭発表する。c)上記(6)をH.26秋に出版する。『純粋理性批判』の摘要の作成、『道徳形而上学の基礎づけ』『天界の一般自然史と理論』「嘘論文」などカントの主要著作の精読を通して、自分のこれまでのカント研究の成果を「カントの人間思想に関する十の仮説」としてまとめた。これをこの三年間に研究会、学会、大学の講義、講演等で口頭発表したが、今後数年間のうちに上梓したい。本仮説の主軸は、「人間の自己対象化的性格の剔抉」がカントの全哲学的営為を貫いていたと把握することができる、というものである。これがカントの認識論、実践論、目的論、宗教論、政治論、大学論などを串刺しにしている、という視点を今後国際カント研究の世界にも発信していく。○これまで未読であったカント『天界の一般自然史と理論』を読み、改めてカントの天文学的知見の深さと発想の現代性を認識した。『純粋理性批判』を「原則論」まで読み直した。
KAKENHI-PROJECT-23520014
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カントの人間哲学の総合的理解の試み
ハイデッガーのカント書を再読し、彼のカント解釈の斬新さと問題点を確認した。○カントの人間思想を総合的に把握するために、自分独自の「カント仮説」を10立て、それぞれに下位仮説を311設けた。これをこのあとの著作執筆の基盤とする。これが今期の一番の成果である(現在、ヴァージョン13まで改訂)。○ある有名大学から非常勤講師を依頼された機会を活かし、前・後期を通して上記の「カント仮説」のうち4つを選んで学生に講義を施した。これを通して仮説の説得性を確かめ、弱点を見出した。○H.24年1月にウィーン大学のペルトナー教授を訪ね、上記の仮説の説得性について率直な批判を仰いだ。教授は長年の研究連携の実績からくる信頼のうえに立って、親身に批評を下さった。○H.23年8月末から9月にかけてカント研究の友人の主催するカント研究合宿に参加し、本研究について中途報告する機会を得た。私以外の参加者14人から率直な批評を受け、たいへんに刺激になった。また10月に慶應義塾三田哲学会、11月に日本カント協会のそれぞれの学会の機会に、本研究について口頭発表する機会を得た。H.24年3月末に京都で開催されたカント研究会京都例会における著名なカント研究者の書評会に出席し、発言する機会を得た。これらの機会を通して本研究の説得性を高めることができた。▼これまでの自分のカント関係の論文(約20本強)を読破する作業は進まなかった。H.24年度の最重点課題とする。*カントの綜合的把握を構造的に表す仮説群を確立する、カントの主要著作を改めて精読する、等の研究作業ははほぼ順調に進んでいるが、他方、1先行する主要カント研究の読破が遅れていること、2本研究によるカント研究の執筆にまだ取り掛かっていないこと、の二点から、(3)とした。上記「研究実績の概要」にあるように、過去の自分のカント関係論文を読破する作業を除いて、他の研究計画をほぼ達成したうえに、当初念頭になかった自分独自の「カント仮説」を立てることの意義が大きいので、(2)と判断する。○10のカント仮説をさらにブラッシュ・アップして、著作とする。○国際カント協会の学会(2015年ウィーン大学)で口頭発表する。○国内の学会で口頭発表する。○「カント仮説」をさらにブラッシュ・アップする。これを基にして、カント研究のモノグラフィを出版するべく、章建てをする。これとは別に、過去の自分のカント関係論文(20本以上)を読破し総点検して、上記の章建てに基づいて活かせる箇所を確定する。○内外の永年の研究協力者に引き続き批判を仰ぎつつ構想を練り上げる。○『判断力批判』等、これまで研究が薄かった領域について重点的に研究を補足する。また、カント思想の体系的な把握を試みた内外の先行研究書を集中的に読破し、自分の研究視角の特徴と独自性をさらに明確にする。○紀要論文の執筆、内外の関連学会、研究会での口頭発表等の方途を活かす。○最後に、本研究を一冊の本としてまとめるべく、執筆する。該当なし○カント思想の体系的な把握を試みた内外の先行研究書、新刊を購入する。[図書購入費]○ウィーン大学のカント哲学の共同研究者G.ペルトナー教授を再度訪問するか、招聘して、じかにカント哲学を総合的に把握するさいの留意点などの教示を受ける。[外国出張旅費]○永年交流の深い国内のカント研究者に会って、彼らの独自なカント解釈の真意をじかに聴きながら、自分のカント把握の構想について批評を仰ぐ。[国内出張旅費]○耐用年数が過ぎた研究用のノート型パソコンを買い替える。[設備備品費]
KAKENHI-PROJECT-23520014
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キラルリン酸触媒を用いる不斉反応の立体制御因子の解明と遷移状態のデータベース化
キラルリン酸触媒を用いるイミンとアセチルアセトンのMannich反応について、遷移状態構造を計算により求めた。しかし、高い選択性の得られるキラルリン酸には多数の配座異性体が存在し多数の遷移状態構造があることが分かった。実際そのほとんどを計算したが、立体制御因子の解明には至らなかった。そこで、触媒構造の自由度の小さい系での研究を行なうこととし、キラルロジウム2核錯体を用いるα-アルキル-α-ジアゾエステルとフェニルアセチレンの不斉シクロプロペン化反応の立体選択性に関する研究を行なった。触媒はハロゲン結合のために唯一つの形に固定されいることが分かった。触媒とα-アルキル-α-ジアゾエステルから得られるカルベン錯体とフェニルアセチレンとの反応の遷移状態を計算し4つの遷移状態構造を得た。不斉炭素のため触媒はらせん構造をとり、アセチレンの近づく向きにより大きなエステル部分との立体障害により立体が決まっていることが分かった。キラルリン酸触媒を用いるイミンとアセチルアセトンのMannich反応について、遷移状態構造を計算により求めた。しかし、高い選択性の得られるキラルリン酸には多数の配座異性体が存在し多数の遷移状態構造があることが分かった。実際そのほとんどを計算したが、立体制御因子の解明には至らなかった。そこで、触媒構造の自由度の小さい系での研究を行なうこととし、キラルロジウム2核錯体を用いるα-アルキル-α-ジアゾエステルとフェニルアセチレンの不斉シクロプロペン化反応の立体選択性に関する研究を行なった。触媒はハロゲン結合のために唯一つの形に固定されいることが分かった。触媒とα-アルキル-α-ジアゾエステルから得られるカルベン錯体とフェニルアセチレンとの反応の遷移状態を計算し4つの遷移状態構造を得た。不斉炭素のため触媒はらせん構造をとり、アセチレンの近づく向きにより大きなエステル部分との立体障害により立体が決まっていることが分かった。キラルビナフトールから得られるリン酸触媒のうち立体選択性をほとんど示さない(44:56)触媒1(R=H,Rは3,3'位置換基)、中程度(78:22)の触媒2(R=Ph)、および高い選択性(95:5))を持つ触媒3(R=1-Binaph)を用いるイミン4とアセチルアセトン5の不斉Mannich反応について反応の経路計算をHF/3-21G*、B3LYP/6-31G*、B3LYP/6-31+G*、oniom(B3LYP/6-31+G*:HF/3-21G*)、oniom(MP2/6-31+G*:HF/3-21G*)レベルで行なった。その結果、キラルリン酸触媒では3,3'位置に置換基がないと立体選択性がほとんどないことが明らかとなり、さらに3,3'位置にフェニル基がついた場合は反応系をすっぽり包むには足らず、長く伸びたビフェニル基をつけることにより高い立体選択性を実現していることもわかった。しかし、触媒3ではビフェニル基とビナフチル部分との2面角により4つのコンフォマーが可能で反応基質の組み合わせにより32個もの遷移状態構造が可能であることが分かった。それら全てを計算しており、実験で得られる立体選択性は計算によりほぼ再現されてはいるが、立体制御因子の解明には至っていない。上記計算結果から計算方法としては高いレベルのniom法を用いるよりはB3LYP/6-31G*で行なう方が実験結果と一致するエネルギー差が得られ、かつ多くのコンフォメーション解析を行なうのに計算時間の点から適していることが分かった。また、上記以外の触媒を使った計算も行ない、ビナフチル基のなす2面角が立体選択性に大きくかかわっていることが分かった。このような比較により新たな触媒のデザインに向けた基礎的知見が得られた。また、インドールとの不斉Friedel-Crafts反応についても一部計算を行なった。インドールとイミンとのFriedel-Crafts反応は3,3'-p-NO_2Ph置換ビナフトールから得られるキラルリン酸1aにより触媒され、トルエン中室温10分でR体が96:4 (92%ee)の選択性で得られている。この反応の反応機構を明らかにするために分子軌道計算(B3LYP/6-31G*)を行なった。触媒のコンフォメーション解析を行なったところ、オルト位のAr基の向きに関して4つのコンフォメーションが可能であった。一方のAr基はその芳香環プロトンがリン酸のP=O部分と水素結合しているのが安定で、もう一方のArはビナフトール酸素と水素結合している方が安定であった。イミンのプロトン化反応は自発的に起こる過程であり、その後インドールとC-C結合形成をおこしてσ錯体が生成する。イミンのプロトン化でプロトンを失った触媒のリン酸アニオンがσ錯体からプロトンを取り去り生成物を与え、触媒は再生される。反応の律速段階はC-C結合の生成であった。最も安定なR体を与える遷移状態構造TS1aの触媒部分はAの形を取っており、最も安定なS体を与える遷移状態構造TS1bの触媒部分はBの形であることが分かった。2つの遷移状態構造のエネルギー差1.41kcal/molからBoltzmann分布から生成物のR:Sを計算すると92:8となり、実験で得られた92%ee(96:4)とだいたい一致していることが分かった。反応の活性化
KAKENHI-PROJECT-19550047
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19550047
キラルリン酸触媒を用いる不斉反応の立体制御因子の解明と遷移状態のデータベース化
エネルギーは9.26kcal/molで、室温10分で容易に起こる反応に対応している。触媒1aを用いるこの反応の立体制御機構を明らかにするために触媒1b(R=H)について現在検討を行なっている。触媒1bを用いると反応は室温で進行するものの反応時間が4時間と長くなり、立体選択性は失われる。パラ位ニトロ基の影響によると考えられる。今後、触媒1aと1bの比較により立体制御因子の解明を行なっていく予定である。3,3'-ジアリールビナフトールから得られるキラルリン酸触媒を用いるイミンとアセチルアセトンのMannich反応について、遷移状態構造を計算により求めた。しかし、高い選択性の得られる3,3'-ビスビフェニルビナフトールから得られるリン酸には多数の配座異性体が存在し多数の遷移状態構造がありうることが分かった。実際そのほとんどを計算し、62個の遷移状態構造を得た。選択性は実験結果と良い一致を示したが、立体制御因子の解明には至らなかった。これら分子触媒と反応基質との相互作用が特定の部位に限定されず、いろいろな部位での相互作用も起こるため単純には説明できないことが分かった。そこで、触媒構造の自由度の小さい系での研究を行なうこととした。最近キラルロジウム2核錯体を用いる不斉反応が注目されているため、そのカルボキシレート触媒を用いるα-アルキル-α-ジアゾエステルとフェニルアセチレンのシクロプロペン化反応の立体選択性に関する研究を行なった。触媒構造について調べたところ4つのテトらブロモフタロイルアミド部分がall upのものが1つだけdownのものに比べ7.03kcal/mol安定で、その安定性は4つのハロゲン結合(Brとアミド酸素とのBr-O)のためであることが分かった。触媒とα-アルキル-α-ジアゾエステルから得られるカルベン錯体とフェニルアセチレンとの反応の遷移状態を計算したところ、4つの遷移状態構造が得られた。不斉炭素のためにフタロイルアミド基は傾いた形をしており、4つのフタロイルアミド基はゆるいながらもらせん形をしている。そのため、アセチレンの近づく向きにより大きなt-Bu基がフタロイル基と接近してしまうためR体プロペンが生成することが分かった。また、分子軌道計算に基づいた5配位アンチモン化合物の熱異性化の反応が、turnstile rotationで起こることを初めて明らかにすることにも成功した。
KAKENHI-PROJECT-19550047
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ヒト・ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素遺伝子と類似遺伝子の単離と構造解析
ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素はα-ケトグルタル酸脱水素酵素複合体(α-KGDH)を構成する一成分酵素である。α-KGDHは生物のエネルギー生産系のなかで重要な役割を果たす。生体エネルギーの生産・調節機構の問題は生命の中心的な課題であるが、最近、生体エネルギーの生産は脳の老化、記憶、神経細胞死、神経伝達等と密接な関係があることが示唆され、生命の高次機能発現と言う新たな課題に発展しつつある。本研究の目的はヒト・ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素の遺伝子及び偽遺伝子の単離と構造解析である。この目的のためにまず、ヒト・ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素のcDNAを単離し、その構造を明らかにした。cDNAを使用して、ヒト染色体マッピングを行なったところ、ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素の遺伝子は14q24.2-q24.3に存在し、偽遺伝子は1p31に存在することが発見された。この部位には早発型の家族性アルツハイマー病の原因遺伝子が存在することが知られているが、その原因遺伝子は同定されていない。更に、本研究のなかでヒト・ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素のcDNAを用いてヒト・ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素の遺伝子及び偽遺伝子が単離され、それらの全構造が解明された。現在のところ、ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素はアルツハイマー病の最も有望な原因遺伝子であると注目されている。この構造に関する情報をもとにして、近い将来、ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素とアルツハイマー病との関わりが解明されるものと期待される。ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素はα-ケトグルタル酸脱水素酵素複合体(α-KGDH)を構成する一成分酵素である。α-KGDHは生物のエネルギー生産系のなかで重要な役割を果たす。生体エネルギーの生産・調節機構の問題は生命の中心的な課題であるが、最近、生体エネルギーの生産は脳の老化、記憶、神経細胞死、神経伝達等と密接な関係があることが示唆され、生命の高次機能発現と言う新たな課題に発展しつつある。本研究の目的はヒト・ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素の遺伝子及び偽遺伝子の単離と構造解析である。この目的のためにまず、ヒト・ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素のcDNAを単離し、その構造を明らかにした。cDNAを使用して、ヒト染色体マッピングを行なったところ、ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素の遺伝子は14q24.2-q24.3に存在し、偽遺伝子は1p31に存在することが発見された。この部位には早発型の家族性アルツハイマー病の原因遺伝子が存在することが知られているが、その原因遺伝子は同定されていない。更に、本研究のなかでヒト・ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素のcDNAを用いてヒト・ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素の遺伝子及び偽遺伝子が単離され、それらの全構造が解明された。現在のところ、ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素はアルツハイマー病の最も有望な原因遺伝子であると注目されている。この構造に関する情報をもとにして、近い将来、ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素とアルツハイマー病との関わりが解明されるものと期待される。当初の計画通り、平成5年度はヒト遺伝子ライブラリーからジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素の遺伝子と類似遺伝子を単離し、それらの構造の解析を行った。1.本遺伝子は約23kbほどの長さであり、15個のエキソンからなることが判明した。2.エキソン-イントロン・スプライスィング・ジヤンクションはすべてag-gtルールに従った。3.哺乳類のジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素はE1/E3結合ドメインを欠いているが、遺伝子レベルにおいてもその配列に対応するエキソンは認められなかった。E1/E3結合ドメインに対応するエキソンは進化の過程のなかで隣接するイントロンと共に欠落したものと思われた。類似遺伝子はcDNAとほぼ同じ長さであり、90%の相同性を持つプロセスド型の偽似遺伝子で会った。進化のごく最近に1p31に転座したものと思われた。本遺伝子はヒト染色体14q24.2-14q24.3にあり、擬似遺伝子は1p31に存在した。従来、知られている染色体21番と19番以外に、最近新たに家族性アルツハイマー病の原因遺伝子座として14q24.3が報告されている。大部分の家族性アルツハイマー病は14q24.3と連鎖する。今後、本遺伝子とアルツハイマー病との関連を追及していきたい。ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素はα-ケトグルタル酸脱水素酵素複合体(α-KGDH)を構成する一成分酵素である。α-KGDHは生物のエネルギー生産のなかで重要な役割を果たす。生体エネルギーの生産・調節機構の問題は生命の中心的な課題であるが、最近、生体エネルギーの生産は脳の老化、記憶、神経細胞死、神経伝達等と密接な関係があることが示唆され、生命の高次機能発現と言う新たな課題に発展しつつある。本研究の目的はヒト・ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素の遺伝子及び偽遺伝子の単離と構造解析である。この目的のために昨年度はまず、ヒト・ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素のcDNAを単離し、その構造を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-05680557
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ヒト・ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素遺伝子と類似遺伝子の単離と構造解析
このcDNAを使用して、ヒト染色体マッピングを行なったところ、ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素の遺伝子は14q24.2-q24.3に存在し、偽遺伝子は1p31に存在することが発見された。この部位には早発型の家族性アルツハイマー病の原因遺伝子が存在することが知られているが、その原因遺伝子は同定されていない。本年度はヒト・ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素のcDNAを用いてヒト・ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素の遺伝子及び偽遺伝子が単離され、それらの全構造が解明され、本研究の目的は完遂された。現在のところ、ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素はアルツハイマー病の最も有望な原因遺伝子であると注目されている。この構造に関する情報をもとにして、近い将来、ジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素とアルツハイマー病との関わりが解明されるものと期待される。
KAKENHI-PROJECT-05680557
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B型肝炎ワクチンに対する初期および記憶免疫応答に関する研究
1. B型肝炎(HB)ワクチンに対する初期免疫応答HBワクチン接種後、抗原が抗原提示細胞に取り込まれ分解産物とHLAが細胞表面に提示され、CD4+T細胞が活性化される。また、抗原自体がB細胞レセプターに認識され、初期にはIgM抗体が分泌されるが、その後、活性化CD4+T細胞の補助を受けた活性化B細胞が形質細胞に分化し、IgG抗体が産生されるとされている。今回、HBワクチンに対するT細胞の初期免疫応答についてHBs抗体価獲得と関連する因子であるHLA、T細胞受容体β鎖(TCRβ)を初回HBワクチン接種者5例で検討した。同時にB細胞受容体IgG重鎖(BCR IgG H chain)についても検討を行なった。その結果、(1) 5例全例がHBs抗体を獲得したため、HLAとの明らかな関係は見いだせなかった。(2) HBs抗体価は、HBワクチン2回接種後10mIU/mL未満であったが、3回接種後10mIU/mL以上であった。(3) HBワクチン2回接種後にTCRβレパトアは上昇、BCR IgG H chainレパトアは低下していた。(4)以上より、HBs抗体獲得者においてはHBワクチン2回接種後HBs抗体価は10mIU/mL未満ではあるが、TCRβレパトア、BCR IgG H chainレパトアに変化が起きおり、それらがHBs抗体獲得のサロゲートマーカーとなる可能性が示唆された。2. HBワクチン接種後のB細胞の免疫記憶HBワクチン3回接種後のHBs抗体価は、個人差があり、経時的に低下するが、HBs抗原特異的memory B細胞の機能と反応性が確認できれば、追加接種を減らすことが可能性となる。HBワクチン接種後およびHBワクチン未接種者の末梢血単核球(PBMCs)を分離後、マイクロビーズを用いて分離したB細胞に標識付CD19, CD14, CD27抗体を加え、さらにHBs抗原および標識付HBs抗体を添加した前後でFlow cytometryを用いて解析を行なった。その結果、memory B細胞は末梢血中に僅かに存在するが、HBs抗原特異的であるかの検討が必要と考えられた。母子感染防止事業がより、現在、乳幼児のHBs抗原陽性率は0.05%未満まで減少しているが、成人でのHBV感染は減少していないこと、乳幼児期の感染は年少児ほど持続感染へ移行する可能性が高いこと、HBs抗原陰性、HBs抗体陽性といった臨床的治癒の状態でも免疫が弱まるとHBVの再活性化が起こるといった問題があるため、B型肝炎ワクチン(HBワクチン)の投与により感染を未然に防ぐことが望まれている。しかし、HBワクチンに対する免疫応答についての詳細は不明な点も多い。そこで、HBワクチンに対する初期免疫応答および記憶免疫応答とその有効性を明らかにすることを目的として本研究を立案した。本年度は、HBワクチン接種後の記憶免疫応答を明らかにするため、少数例の末梢血単核球を分離後、B細胞を分離した。そして、B細胞とメモリーB細胞をHBs抗原で刺激して活性B細胞およびHBs抗原特異的メモリーB細胞のHBs抗体分泌能をELISPOT法により測定すると同時にそれらの細胞内伝達シグナル(PI3K/AKT/mTOR/Foxo1/Bach2)をウエスタンブロット法で測定する系を確立中である。また、B細胞にPE標識HBs抗体を結合させたHBs抗原、FITC標識抗CD27抗体、PreCP標識抗CD14抗体、APC標識抗CD19抗体を加え、HBs抗原特異的メモリーB細胞をフローサイトメトリーで測定する系も確立中である。ELISPOT法による活性B細胞およびHBs抗原特異的メモリーB細胞のHBs抗体分泌能を測定する系、それらの細胞内伝達シグナル(PI3K/AKT/mTOR/Foxo1/Bach2)をウエスタンブロット法で測定する系およびHBs抗原特異的メモリーB細胞をフローサイトメトリーで測定する系を確立中であるため。(1) B型肝炎(HB)ワクチン接種後のB細胞の免疫記憶HBワクチン3回接種後のHBs抗体価は、個人差はあるが、経時的に低下する。しかし、免疫学的記憶が残存するため、HBワクチンは長期にわたって有効性を示すとされている。だが、免疫学的記憶を確認する方法としては、boosterをかける必要がありHBワクチンの追加接種が必要となる。もし、HBワクチン接種後のHBs抗原特異的memory B細胞の機能と反応性が確認できれば、免疫学的記憶が残存している可能性があり、追加接種を減らすことが可能となる。HBワクチン接種後およびHBワクチン未接種者の末梢血から末梢血単核球(PBMCs)を分離後、PBMCsより、マイクロビーズを用いてB細胞を分離した。分離したB細胞に標識付CD19、CD14、CD27抗体を加えたうえにHBs抗原および標識付HBs抗体を添加し前後でFlowcytometryにて解析を行なった。結果、memory B細胞は末梢血中に極僅か存在していたが、HBs抗原特異的であるかの検討が必要と考えられた。同時に、B細胞にHBs抗原を添加した前後での細胞内シグナルについても測定中である。(2) HBワクチンに対するT細胞の初期免疫応答HBワクチンに対するT細胞の初期免疫応答については、関連する因子(TCRVβ、細胞内シグナル、HLAなど)を検討するため、HBワクチン接種前の検体を収集中である。HBワクチン接種後のB細胞の免疫記憶:HB
KAKENHI-PROJECT-15K08746
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B型肝炎ワクチンに対する初期および記憶免疫応答に関する研究
ワクチン接種後、HBワクチン未接種者についてFlowcytometryにて解析を行なった結果、memory B細胞は末梢血中に極僅かに存在していた。しかし、HBs抗原特異的memoryB細胞を検出するにはさらにマイクロビーズでセレクションし、ELISPOT法で検討する必要があると考えられた。また、細胞内シグナルを検討するためWestern blot、cell signaling assay、PCR法を検討中である。HBワクチンに対するT細胞の初期免疫応答:HBワクチン接種前の検体を収集中である。(1)B型肝炎(HB)ワクチン接種後のB細胞の免疫記憶HBワクチン3回接種後のHBs抗体価は、個人差があり、経時的に低下する。しかし、免疫学的記憶が残存するため、HBワクチンは長期間有効であるとされている。だが、免疫学的記憶を確認するにはHBワクチンの追加接種が必要となる。もし、HBワクチン接種後のHBs抗原特異的memory B細胞の機能と反応性が確認できれば、免疫学的記憶が残存している可能性があり、追加接種を減らすことが可能性となる。HBワクチン接種後およびHBワクチン未接種者の末梢血単核球を(PBMCs)を分離後、PBMCsよりマイクロビーズを用いて分離したB細胞に標識付CD19, CD14, CD27抗体を加え、さらにHBs抗原および標識付HBs抗体を添加した前後でFlow cytometryを用いて解析を行なった。その結果、memory B細胞は末梢血中に僅かに存在するが、HBs抗原特異的であるかの検討が必要と考えられた。同時に、B細胞にHBs抗原を添加した前後での細胞内シグナルについても測定中である。(2)HBワクチンに対するT細胞の初期免疫応答本研究の(2)については、2017年12月に福岡で行われた第21回日本ワクチン学会学術集会において口頭発表を行った。研究遂行に想定以上の時間を要した。HBワクチン接種後のB細胞の免疫記憶:HBワクチン接種後およびHBワクチン未接種者についてFlow cytometryを用いて解析を行なった結果、memory B細胞は末梢血中に僅かに存在していた。しかし、HBs抗原特異的memoryB細胞を検出するにはさらにマイクロビーズでセレクションをし、ELISPOT法で検討する必要があると考えられた。また、細胞内シグナルを検討するためWestern blot、cell signaling assay、PCR法を検討中である。HBワクチンに対するT細胞の初期免疫応答:HBワクチン接種前後の検体を収集し測定を行ない、学会発表および情報収集を行なった。1. B型肝炎(HB)ワクチンに対する初期免疫応答HBワクチン接種後、抗原が抗原提示細胞に取り込まれ分解産物とHLAが細胞表面に提示され、CD4+T細胞が活性化される。また、抗原自体がB細胞レセプターに認識され、初期にはIgM抗体が分泌されるが、その後、活性化CD4+T細胞の補助を受けた活性化B細胞が形質細胞に分化し、IgG抗体が産生されるとされている。
KAKENHI-PROJECT-15K08746
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亀裂の時代におけるプライバシーの権利:ウォーレン・コートの アメリカ
今年度はウォーレン・コート下に成立したプライバシー権を法的根拠とした1976年のカリフォルニア州自然死法を中心に研究した。カリフォルニア州自然死法は全米で初めて末期患者の生命維持装置の不使用または取り外しに関する指示書に法的権限を与えた。この法律を支えたのが、身体に関する決断の自由はプライバシー権によって保障されている、という考えであった。今年度の研究活動は主に修士論文の総括を中心に行った。修士論文ではカリフォルニア州自然死法と人間の尊厳のつながりを検討し、その研究成果を「死ぬ権利と人間の尊厳ーカリフォルニア州自然死法を事例にー」という題目で4月の日本アメリカ史学会修士論文報告会で発表した。この報告は、カリフォルニア州自然死法をめぐる論争における「人間の尊厳」の概念に着目し、法律の賛成派と反対派が異なる尊厳の解釈を用いて議論を進めていたことを明らかにした。報告会では今後の研究につながるコメントをいただくことができた。また、当初の計画通り、『アメリカ太平洋研究』(査読有り)に投稿する論文(英語)を執筆することもできた。この論文ではカリフォルニア州自然死法の成立を可能にした1970年代のアメリカ社会に重点を置いて法律の意義を検討した。自然死法の成立には、医療技術の進歩や公権力に対抗したプライバシー権が大きな影響を与えたことを指摘した。今年度はカリフォルニア州自然死法とプライバシー権利のつながりを中心に研究を進めてきたため、最高裁判所のリベラル派判事の思想に関する二次文献の収集・分析はやや遅れている。しかし、カリフォルニア州自然死法を事例に研究を進めたことによってなぜプライバシー権が身体をめぐる問題の解決策として利用されたのか、なぜ文化的な価値観の衝突を調停するために法や裁判という公的な手段を用いたのか、という大きな問いについて考察することができた。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。今年度はウォーレン・コート下に成立したプライバシー権を法的根拠とした1976年のカリフォルニア州自然死法を中心に研究した。カリフォルニア州自然死法は全米で初めて末期患者の生命維持装置の不使用または取り外しに関する指示書に法的権限を与えた。この法律を支えたのが、身体に関する決断の自由はプライバシー権によって保障されている、という考えであった。今年度の研究活動は主に修士論文の総括を中心に行った。修士論文ではカリフォルニア州自然死法と人間の尊厳のつながりを検討し、その研究成果を「死ぬ権利と人間の尊厳ーカリフォルニア州自然死法を事例にー」という題目で4月の日本アメリカ史学会修士論文報告会で発表した。この報告は、カリフォルニア州自然死法をめぐる論争における「人間の尊厳」の概念に着目し、法律の賛成派と反対派が異なる尊厳の解釈を用いて議論を進めていたことを明らかにした。報告会では今後の研究につながるコメントをいただくことができた。また、当初の計画通り、『アメリカ太平洋研究』(査読有り)に投稿する論文(英語)を執筆することもできた。この論文ではカリフォルニア州自然死法の成立を可能にした1970年代のアメリカ社会に重点を置いて法律の意義を検討した。自然死法の成立には、医療技術の進歩や公権力に対抗したプライバシー権が大きな影響を与えたことを指摘した。今年度はカリフォルニア州自然死法とプライバシー権利のつながりを中心に研究を進めてきたため、最高裁判所のリベラル派判事の思想に関する二次文献の収集・分析はやや遅れている。しかし、カリフォルニア州自然死法を事例に研究を進めたことによってなぜプライバシー権が身体をめぐる問題の解決策として利用されたのか、なぜ文化的な価値観の衝突を調停するために法や裁判という公的な手段を用いたのか、という大きな問いについて考察することができた。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15J09507
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プロトンポンプ阻害薬の視覚障害惹起可能性の検証
本研究の目的は,プロトンポンプ阻害薬オメプラゾールの視覚障害惹起可能性を検証するため,ウサギ毛様体非色素性上皮細胞にH,K-ATPase様蛋白が存在しているという過去の報告を追試し,毛様体非色素性上皮細胞におけるH,K-ATPase様蛋白の機能,およびそのオメプラゾールによる抑制が観察されるかどうかを検討することであった.ウサギ胃粘膜からH,K-APTaseを精製し,多くのマウスを免疫してポリクローナル抗体を作成し,更にこれらのマウスの脾細胞をミエローマと融合させて,モノクローナル抗体を作成した.いずれのポリクローナル抗体も,H,K-ATPaseのα・βサブユニットを認識したが,モノクローナル抗体は,H,K-ATPaseのαサブユニットのみを認識した.しかしながらFainらの報告と異なり,いずれの抗体も,ウサギ毛様体上皮細胞を特異的に免疫染色することはなく,ウェスタンブロット解析によっても,抗体陽性のバンドは認められなかった.ただし,毛様体上皮細胞の可溶性画分中,H,K-ATPaseのα・βサブユニットとは異なる,約70kDaのバンドを認識する抗体が1種のみ得られた.これは毛様体上皮細胞に,H,K-ATPaseとエピトープが共通する蛋白が存在する可能性を示し,現在この蛋白の一次構造を解析中である.毛様体上皮細胞に機能的H,K-ATPase様酵素が存在する可能性を探るため,急性単離したウサギ毛様体上皮細胞にpH感受性色素BCECFをロードし,Argus-50画像解析装置を用いて細胞内pHを測定した.毛様体上皮細胞は,塩化アンモニウム負荷や炭酸脱水酵素阻害薬で細胞内pHが低下したが,オメプラゾールによっては変化がなく,毛様体上皮にオメプラゾール感受性眼房水分泌があることを示唆する結果は得られなかった.糖尿病モデルラットを用いる実験の基礎検討として,ラットよりH,K-ATPaseを精製し,モノクローナル抗体を作成したが,ポリクローナル抗体の段階でも,毛様体上皮中の蛋白を認識しなかった.以上のことから,プロトンポンプ阻害薬オメプラゾールが視覚障害を惹起する可能性があるとしても,毛様体上皮細胞が作用点である可能性は薄いと考えられた.本研究の目的は,プロトンポンプ阻害薬オメプラゾールの視覚障害惹起可能性を検証するため,ウサギ毛様体非色素性上皮細胞にH,K-ATPase様蛋白が存在しているという過去の報告を追試し,毛様体非色素性上皮細胞におけるH,K-ATPase様蛋白の機能,およびそのオメプラゾールによる抑制が観察されるかどうかを検討することであった.ウサギ胃粘膜からH,K-APTaseを精製し,多くのマウスを免疫してポリクローナル抗体を作成し,更にこれらのマウスの脾細胞をミエローマと融合させて,モノクローナル抗体を作成した.いずれのポリクローナル抗体も,H,K-ATPaseのα・βサブユニットを認識したが,モノクローナル抗体は,H,K-ATPaseのαサブユニットのみを認識した.しかしながらFainらの報告と異なり,いずれの抗体も,ウサギ毛様体上皮細胞を特異的に免疫染色することはなく,ウェスタンブロット解析によっても,抗体陽性のバンドは認められなかった.ただし,毛様体上皮細胞の可溶性画分中,H,K-ATPaseのα・βサブユニットとは異なる,約70kDaのバンドを認識する抗体が1種のみ得られた.これは毛様体上皮細胞に,H,K-ATPaseとエピトープが共通する蛋白が存在する可能性を示し,現在この蛋白の一次構造を解析中である.毛様体上皮細胞に機能的H,K-ATPase様酵素が存在する可能性を探るため,急性単離したウサギ毛様体上皮細胞にpH感受性色素BCECFをロードし,Argus-50画像解析装置を用いて細胞内pHを測定した.毛様体上皮細胞は,塩化アンモニウム負荷や炭酸脱水酵素阻害薬で細胞内pHが低下したが,オメプラゾールによっては変化がなく,毛様体上皮にオメプラゾール感受性眼房水分泌があることを示唆する結果は得られなかった.糖尿病モデルラットを用いる実験の基礎検討として,ラットよりH,K-ATPaseを精製し,モノクローナル抗体を作成したが,ポリクローナル抗体の段階でも,毛様体上皮中の蛋白を認識しなかった.以上のことから,プロトンポンプ阻害薬オメプラゾールが視覚障害を惹起する可能性があるとしても,毛様体上皮細胞が作用点である可能性は薄いと考えられた.
KAKENHI-PROJECT-07672457
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07672457
mTORを分子標的としたバイパス開存率向上の研究
ラパマイシンはmTORを抑制することにより内膜肥厚を抑制する。今回このメカニズムをバイパス吻合部に応用することを考えた。吻合部となる平滑筋細胞(冠動脈、大動脈)に対してsiRNAを使用してmTORの発現を抑制した。mTORの一つ下流にあたるp70S6kinaseで比較するとsiRNA群でリン酸化が抑制された。また、実際のバイパス吻合部を観察すると狭窄、閉塞部位で石灰化を伴っていることが多い。石灰化も狭窄、閉塞をもたらす原因の一つと考えられる。石灰化を引き起こすリスクを検討すると糖尿病、透析で石灰化を促進する傾向を認めた。そのシグナリングを解明することが開存率上昇につながると思われる。最近silorimus(rapamycin)が薬物溶出性ステントに使用されており、冠動脈へステント留置後、再狭窄抑制作用が有効であることが示されている。rapamycinはmTOR(mammalian Target Of Rapamycin)を抑制し細胞増殖、遊走の抑制、アポトーシスを促進し冠動脈内の内膜肥厚を抑制する。このことにより冠動脈ステントの開存率が改善されてきた。しかし、下肢のバイパスや冠動脈バイパス手術においてグラフト閉塞の原因となる内膜肥厚に対し、抗凝固剤投与等行われてきたが効果が少なく、現在まで内膜肥厚の抑制法は確立されていない。今回、われわれは、silorimus(rapamycin)のターゲットであるmTORに注目し、グラフト吻合部でこの活性を抑制することにより内膜肥厚を抑えることを目標とした。われわれは以前よりsiRNA mTORのtransfectionの条件を検討し実際にその条件で大伏在静脈の平滑筋細胞に導入すると、観察細胞数が著しく低下することを確認している。ラパマイシンによりmTORの活性を抑制することにより細胞のアポトーシスを誘導することからsiRNAによりmTORの活性化が抑制され培養細胞が減少したと考えている。前年度はバイパス吻合部となる動脈への効果を検討した。さらに、今回,mTORを抑制した状態を確認するために、mTORより一つ下流に当たるp70 S6kinaseにおいても検討することとし、p70 S6kinaseの発現については、ELISAキットを使用して蛋白発現、リン酸化の評価する方針とした。また、糖尿病、高脂血症、透析などの動脈硬化性病変の強い大伏在静脈でどの因子がmTOR, S6kinaseが活性化しているかDNAマイクロアレイで評価する準備を進めている。最近silorimus(rapamycin)が薬物溶出性ステントに使用されており、冠動脈へステント留置後、再狭窄抑制作用が有効であることが示されている。rapamycinはmTOR(mammalian Target Of Rapamycin)を抑制し細胞増殖、遊走の抑制、アポトーシスを促進し冠動脈内の内膜肥厚を抑制する。このことにより冠動脈ステントの開存率が改善されてきた。しかし、下肢のバイパスや冠動脈バイパス手術においてグラフト閉塞の原因となる内膜肥厚に対し、抗凝固剤投与等行われてきたが効果が少なく、現在まで内膜肥厚の抑制法は確立されていない。今回、われわれは、silorimus(rapamycin)のターゲットであるmTORに注目し、グラフト吻合部でこの活性を抑制することにより内膜肥厚を抑えることを目標とした。前年度より、血管壁の石灰化も、吻合部で狭窄の原因となることに注目した。最近の文献の報告例ではmTOR活性化により血管壁の石灰化に促進することが報告されている。、高度な大動脈石灰化を伴う大動脈弁狭窄症症例において、その石灰化を起こすリスクファクターの検討もおこなった。その結果、透析、糖尿病のもとでは動脈壁の石灰化が進行させることが予測された。文献上、糖尿病存在下ではmTORを活性化することが示されている。吻合部での石灰化を伴った内膜肥厚にもmTORの制御が有効ではないかと注目し今後検討していく予定である。ラパマイシンはmTORを抑制することにより内膜肥厚を抑制する。今回このメカニズムをバイパス吻合部に応用することを考えた。吻合部となる平滑筋細胞(冠動脈、大動脈)に対してsiRNAを使用してmTORの発現を抑制した。mTORの一つ下流にあたるp70S6kinaseで比較するとsiRNA群でリン酸化が抑制された。また、実際のバイパス吻合部を観察すると狭窄、閉塞部位で石灰化を伴っていることが多い。石灰化も狭窄、閉塞をもたらす原因の一つと考えられる。石灰化を引き起こすリスクを検討すると糖尿病、透析で石灰化を促進する傾向を認めた。そのシグナリングを解明することが開存率上昇につながると思われる。最近silorimus(rapamycin)が薬物溶出性ステントに使用されており、冠動脈へステント留置後、再狭窄抑制作用が有効であることが示されている。rapamycinはmTOR(mammalian Target Of Rapamycin)を抑制し細胞増殖、遊走の抑制、アポトーシスを促進し冠動脈内の内膜肥厚を抑制する。このことにより冠動脈ステントの開存率が改善されてきた。しかし、下肢のバイパスや冠動脈バイパス手術においてグラフト閉塞の原因となる内膜肥厚に対し、抗凝固剤投与等行われてきたが効果が少なく、現在まで内膜肥厚の抑制法は確立されていない。
KAKENHI-PROJECT-23592032
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23592032
mTORを分子標的としたバイパス開存率向上の研究
今回、われわれは、silorimus(rapamycin)のターゲットであるmTORに注目し、グラフト吻合部でこの活性を抑制することにより内膜肥厚を抑えることを目標とした。われわれは以前よりsiRNA mTORのtransfectionの条件を検討し実際にその条件で大伏在静脈の平滑筋細胞に導入すると、観察細胞数が著しく低下することを確認している。ラパマイシンによりmTORの活性を抑制することにより細胞のアポトーシスを誘導することからsi RNAによりmTORの活性化が抑制され培養細胞が減少したと考えている。今年度は次のステップとして吻合部で内膜肥厚を起こす部位は大伏在静脈だけでなく、宿主の動脈に対しても起こりうるため、前述のsiRNAが大動脈由来の平滑筋細胞へtransfectionを行ってきた。現在までのところさまざま条件を行いtransfectionの効率をあげるため検討を行っている。食生活の欧米化、高齢化社会により動脈硬化症による動脈閉塞、狭窄症は増加傾向にある。そのため冠動脈、下肢バイパス術など血行再建手術は増加傾向にある。その一方で、静脈グラフトを使用したバイパス術は、吻合部での血管内膜肥厚が原因で10年間に約60%は閉塞すると報告されている。内膜肥厚を引き起こされる原因はRossらによると血管平滑筋の遊走能、増殖能の亢進、細胞外基質の堆積、アポトーシスの抑制であると報告されている。われわれは、いままでその起序をコントロールする手段として薬剤溶出ステントで使用されているラパマイシンのターゲットであるmTORの活性の抑制に注目してきた。代表研究者は、ラパマイシンが増殖因子(EGF,PDGF等)の刺激だけではなく、細胞外基質の刺激(コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンなど)による、細胞遊走を強力に抑制することを現在までに明らかにしてきた。このことはバイパス術後内膜肥厚を起こすcell signalingの重要な役割の一つであると考えられる。mTORのsignaling抑制のためsiRNAを使用し検討をおこなっており、大伏在静脈、大動脈の平滑筋細胞を使用してきた。本年度は冠動脈細胞の平滑筋細胞での検討を行った。さらにグラフト閉塞部を検討すると、吻合部において内膜肥厚に加え、石灰化を伴っていることが多く、血管壁の石灰化もグラフト閉塞の原因の一つと推察される。特に糖尿病を合併した患者では石灰化が著しく、グラフト閉塞率が高い。われわれの検討では糖尿病を併存する重症大動脈弁狭窄症患者の上行大動脈の石灰化を検討したところ重度石灰化群では糖尿病合併を32.0%、非石灰化群では19.6%であった。このことは石灰化と糖尿病に強い関連があることを示し、そのメカニズムを今後検討し、そのシグナリングを制御することも新たなグラフト開存率を向上させる方法につながると考えられた。心臓血管外科昨年に続き、正常ヒト大動脈平滑筋細胞、大伏在静脈平滑筋細胞にコントロールsiRNA (GFP)をtransfectionし効率のよい条件を検討しつつ、siRNA transfectionを行っているが安定ししたデーターをとることに難渋している。研究が遅れている状況なので、mTORだけでなく合わせてその下流であるp70 S6kinaseなどにも広げる方針としている。血管平滑筋細胞に遺伝子を導入し正常ヒト
KAKENHI-PROJECT-23592032
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マイクロウェルによる微小分割を用いた細胞単離に基づく一細胞PCR用ディスクの開発
診療現場での癌など各種疾患の早期診断を目指して、既存の大型で高価なセルソーターを利用せず、小型化が容易な遠心力による送液と簡便な微小分割による細胞単離を組み合わせ、正常細胞群に僅かに混在する病変細胞を高感度に検出可能な一細胞PCR用ディスクの開発を行った。ヒトTリンパ腫細胞を対象としたリアルタイムPCR法を用いて、開発したディスク上で細胞単離後、そのままマイクロウェル中でPCRすることにより、個々のマイクロウェルの蛍光強度変化から標的遺伝子を有する細胞数を定量可能とした。診療現場での癌など各種疾患の早期診断を目指して、既存の大型で高価なセルソーターを利用せず、小型化が容易な遠心力による送液と簡便な微小分割による細胞単離を組み合わせ、正常細胞群に僅かに混在する病変細胞を高感度に検出可能な一細胞PCR用ディスクの開発を行った。ヒトTリンパ腫細胞を対象としたリアルタイムPCR法を用いて、開発したディスク上で細胞単離後、そのままマイクロウェル中でPCRすることにより、個々のマイクロウェルの蛍光強度変化から標的遺伝子を有する細胞数を定量可能とした。微小分割を用いた細胞単離の条件検討のため、ディスク中央から外周部に向かってジグザグ状に形成した微小流路に沿って、400μm幅、300μm深さのマイクロウェルを約2,700個、周期的に外周側に配置させた構造のマイクロウェルアレイを作製した。微小分割において細胞を単離する場合、その分配はポアソン分布に従うため、細胞懸濁液に含まれる細胞が全てのウェルに均等に分配されるためには、微小流路の上流と下流にて細胞の濃度が一定でなければならない。そのため、マイクロウェルの形状を楕円形状とすることにより、上流から下流まで細胞がスムーズに流れることにより、上流側で細胞が過剰にトラップされず、一定の密度で流路出口まで流れる細胞単離に最適なデザインを実現した。これにより、大腸菌やサルモネラ菌について、遠心制御のみで多数の細胞を同時に単離出来ることを顕微鏡観察により確認するとともに、その分布がポアソン分布に従うことを確認した。また、ディスクの材質の検討を図り、シリコン/ガラス系と樹脂系の2種類のディスクを開発し、比較検討を行ったところ、樹脂系材料を利用した場合には、物理的吸着やぬれ性に依存する溶液の残存が確認され、細胞単離に利用するには改良が必要であることが判明した。また、細胞単離の処理能力向上のため、サイズを拡張し集積度を上げたディスクのデザインについての見通しを得た。本研究では、診療現場での癌など各種疾患の早期診断を目指して、既存の大型で高価なセルソーターを利用せず、小型化が容易な遠心力による送液と簡便な微小分割による細胞単離を組み合わせ、正常細胞群に僅かに混在する病変細胞を高感度に検出可能な一細胞PCR用ディスクの開発を目的とする。平成22年度において最適化した流路デザインに基づき樹脂製のディスクの開発を行ったが、試料成分の流路表面への吸着により、PCRが阻害されることが判明していた。そこで、本年度は流路表面への試料の吸着抑制の方法の検討を進めた。その結果、タンパクを用いたコーティング技術を新たに開発することにより、PCRを阻害する非特異吸着を抑制し、樹脂製流路においてもPCRが可能となることを実現した。また、PCRのための各ウェルのサイズを微小化していった場合、50pL以下のレベルまで微小化すると界面効果の影響によりPCRが困難となるが、それ以上のボリュームであれば、今回の新規コーティング技術により問題なくPCR可能であることが確認された。これにより、樹脂製PCR用ディスクを用いて、in situ PCR用サーマルサイクラーによりリアルタイムPCRを行った場合、遺伝子増幅に伴う蛍光増加を確認した。診療現場での癌など各種疾患の早期診断を目指して、既存の大型で高価なセルソーターを利用せず、小型化が容易な遠心力による送液と簡便な微小分割による細胞単離を組み合わせ、正常細胞群に僅かに混在する病変細胞高感度に検出可能な一細胞PCR用ディスクの開発を行った。昨年度までの成果として、微小流路により全てのマイクロウェルを連結し、逐次、細胞懸濁液を分配していく構造を用いて、特に最後の1滴までとなる極微量の溶液量であっても送液可能な遠心力を利用することにより、試料中に含まれる細胞を高い収率で単離できるディスク型のマイクロデバイスを開発していた。そこで本年度は、個々に単離された細胞のアッセイには、変異配列等の標的遺伝子を高い選択性で検出できるリアルタイムPCR法を利用することとし、開発するディスク上で単離後、そのままマイクロウェル中でPCRすることで、個々のマイクロウェルの蛍光強度変化から標的遺伝子を有する細胞を定量可能とした。具体的には、ヒトTリンパ腫細胞であるJurkat cellの遺伝子を標的とし、リアルタイムPCRによる蛍光強度変化を、蛍光顕微鏡や蛍光イメージスキャナーにより計測することで、PCRにより18S rDNAを増幅できることを確認した。さらに、マイクロウェル集積化ディスク上で単離された細胞数と、リアルタイムPCR後の蛍光増幅したマイクロウェル数が同じポアソン分布に従うことを確認し、単一細胞からPCRされたことが明らかとなり、研究成果を国際誌に1件報告した。申請書および本年度当初計画に記載した内容通りの成果を達成し、概ね順調に進展している。24年度が最終年度であるため、記入しない。研究計画通り、ヒトTリンパ腫細胞であるJurkat cellの遺伝子を標的としたリアルタイムPCRにより、単一細胞からのPCRについて検証を行う。また、これまでに開発した成果の発表に努める。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22710126
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22710126
乳癌における3β-HSD Type1発現の臨床的意義の解析
乳癌におけるHSD3B1発現の臨床的意義に関しては未だ十分に解析されておらず,今回の解析を行った.未治療の乳癌161検体を用いHSD3B1発現を免疫染色法にて評価,各種臨床病理学的因および予後との関連につき解析した.HSD3B1高発現群は低発現群と比較し,有意に若年傾向,腫瘍浸潤径が小さい,非浸潤癌が多い,リンパ管侵襲陰性例が多いなどの特徴を認めた.予後の解析ではHSD3B1高発現群は低発現群と比較して有意に良好で,多変量解析においてもHSD3B1発現は独立した予後因子であった.HSD3B1が乳癌における予後因子であることが初めて見いだされたのは大変興味深い.乳癌におけるHSD3B1発現の臨床的意義に関しては未だ十分に解析されておらず,今回の解析を行った.【方法】未治療の乳癌161検体を用いHSD3B1発現を免疫染色法にて評価,各種臨床病理学的因子(年齢,閉経状況,組織型,腫瘍浸潤径,リンパ管侵襲,リンパ節転移,組織学的悪性度,ER,PgR,HER2過剰発現)および予後(無再発生存率:DSF,疾患特異的生存率:DSS)との関連につき解析した.【結果】HSD3B1はER陽性例において有意に高発現である一方HER2過剰発現の有無では差を認めなかった.以降ER陽性乳癌130例に限った解析結果を示す.HSD3B1高発現群は低発現群と比較し,有意に若年傾向,腫瘍浸潤径が小さい,非浸潤癌が多い,リンパ管侵襲陰性例が多いなどの特徴を認めた(p<0.05).予後の解析ではHSD3B1高発現群は低発現群と比較してDFS,DSSいずれも有意に良好(DFS:p<0.01,DSS:p<0.01:Log rank検定)で,多変量解析においてもHSD3B1発現はDFS,DSS両者において独立した予後因子であった(DFS:p<0.05,RR=0.34,DSS:p<0.05, RR=0.09:Cox比例ハザード回帰).AI単独による術後補助療法がおこなわれた症例(n=44)に限った解析でもHSD3B1高発現群は有意にDFSが良好であった.【考察】AI耐性メカニズムに関与する分子の候補として注目したHSD3B1は少なくとも未治療の乳癌においては腫瘍抑制的に働いていることが示唆され,とりわけHSD3B1が乳癌における予後因子であることが初めて見いだされたのは大変興味深い.乳癌におけるHSD3B1発現の臨床的意義に関しては未だ十分に解析されておらず,今回の解析を行った.未治療の乳癌161検体を用いHSD3B1発現を免疫染色法にて評価,各種臨床病理学的因子(年齢,閉経状況,組織型,腫瘍浸潤径,リンパ管侵襲,リンパ節転移,組織学的悪性度,ER,PgR,HER2過剰発現)および予後(無再発生存率:DSF,疾患特異的生存率:DSS)との関連につき解析した.HSD3B1はER陽性例において有意に高発現である一方HER2過剰発現の有無では差を認めなかった.以降ER陽性乳癌130例に限った解析結果を示す.HSD3B1高発現群は低発現群と比較し,有意に若年傾向,腫瘍浸潤径が小さい,非浸潤癌が多い,リンパ管侵襲陰性例が多いなどの特徴を認めた(p<0.05).予後の解析ではHSD3B1高発現群は低発現群と比較してDFS,DSSいずれも有意に良好(DFS:p<0.01,DSS:p<0.01:Log rank検定)で,多変量解析においてもHSD3B1発現はDFS,DSS両者において独立した予後因子であった(DFS:p<0.05,RR=0.34,DSS:p<0.05, RR=0.09:Cox比例ハザード回帰).AI単独による術後補助療法がおこなわれた症例(n=44)に限った解析でもHSD3B1高発現群は有意にDFSが良好であった.AI耐性メカニズムに関与する分子の候補として注目したHSD3B1は少なくとも未治療の乳癌においては腫瘍抑制的に働いていることが示唆され,とりわけHSD3B1が乳癌における予後因子であることが初めて見いだされたのは大変興味深い.昨年度までに上述の解析をすべて終えており、本年度は研究成果を論文にまとめ報告した(Inpress)。乳癌におけるHSD3B1発現の臨床的意義に関しては未だ十分に解析されておらず,今回の解析を行った.未治療の乳癌161検体を用いHSD3B1発現を免疫染色法にて評価,各種臨床病理学的因および予後との関連につき解析した.HSD3B1高発現群は低発現群と比較し,有意に若年傾向,腫瘍浸潤径が小さい,非浸潤癌が多い,リンパ管侵襲陰性例が多いなどの特徴を認めた.予後の解析ではHSD3B1高発現群は低発現群と比較して有意に良好で,多変量解析においてもHSD3B1発現は独立した予後因子であった.HSD3B1が乳癌における予後因子であることが初めて見いだされたのは大変興味深い.予想以上に実験及び解析に割く時間が十分にとれたことで、当初の計画以上に進展している。癌の分子生物学来年度は本年度の研究成果を学会等で報告すると同時に論文として発表することを予定している。今後下記の点に関して研究を継続していきたい。
KAKENHI-PROJECT-26861041
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26861041
乳癌における3β-HSD Type1発現の臨床的意義の解析
当初3β-HSD type 1をAI耐性メカニズムの候補の一つとして注目したが、今回の解析の結果少なくとも3β-HSD type 1はAI耐性マーカーとしては機能しておらず、かえって予後良好を示す因子であった。我々の過去の報告と、本研究の結果からは、未治療の乳癌と、AI耐性乳癌においてはそのホルモン環境の違いから3β-HSD type 1の果たす役割が異なっていると推測される。この点について今後さらに考察を行った上、今後の具体的なる研究計画を立てて行きたい。当初の計画よりも安価に研究を遂行できたため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は平成27年度請求額に合わせて学会発表参加費、旅費、論文の英文校正や投稿費用に充てる。
KAKENHI-PROJECT-26861041
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放射線内部被ばくによる甲状腺がんの発症機構の解明
当初の研究計画に沿い、「放射線被ばくで生じたRET/PTCは内部被ばくの場合、継続的な被ばくにより活性酸素種(以下ROS)産生・レドックス反応が持続し、RET/PTCがさらに持続的に活性化される」という仮説を証明するために行った実験において、CHO細胞へのRET/PTC1遺伝子導入は成功し、CHO/RET PTC1細胞を作製することができた。しかし紫外線照射またはX線照射によるCHO/RET PTC1細胞の異常活性化については様々な検討を行ったが確認されず、この実験系を終了した。改めて、放射線照射がより持続的に、さらに多くのROSを産生する可能性がある動物を検討した結果、オートファジー不全マウス(甲状腺特異的ATG5ノックアウトマウス)を用いることとした。オートファジーを不全にすることで放射線照射により機能障害を起こしたミトコンドリアが細胞内で分解されず、高いROS産生を維持する。やがて持続的なROS産生がDNA損傷を起こし、結果としてゲノム不安定化に至ると考えた。胎生期から甲状腺特異的にオートファジーが不全となった生後12ヶ月のAtg5TPO-KOマウス(以下KO)では、コントロールと比較して濾胞細胞内に変性タンパクの蓄積がみられた。さらに、分解されないまま残った不良ミトコンドリアからのROSによると考えられるDNAの酸化損傷(8-OHdG)および二重鎖切断も増加した。これらの結果から生体内でのROSの持続的な産生とDNA損傷との関連を証明できた。現在、KOマウスに放射線外照射し、さらに高いROS産生が持続された状態での甲状腺機能および発がん頻度を観察する予定である。さらに放射線照射によりROSの発生源となるミトコンドリアの機能低下や染色体の異常がどの程度増加するか、初代培養を行い検討する。「放射線被ばくで生じたRET/PTCは内部被ばくの場合、継続的な被ばくによりROS産生・レドックス反応が持続し、RET/PTCがさらに持続的に活性化される」という仮説の証明本研究で用いる予定であったPCCL3細胞(ラット正常甲状腺細胞)よりも増殖が早く実験の効率がよいCHO(Chinese Hamster Ovary)細胞にレンチウイルスを用いてRET/PTC1遺伝子導入を試みたが上手くいかず、その後レトロウイルスに切り替えクローニング方法もIn-fusion法に変更した。この方法で遺伝子導入した細胞をG418(ネオマイシン)でセレクションを行い、ウエスタンブロットにてV5 tagの発現を確認できたことからRET/PTC1遺伝子導入完了とみなし、これをCHO/RETPTC1細胞とした。(2)放射線照射によるRET/PTC1の異常活性化の確認以前の報告でRET/PTC1の活性化を誘導した紫外線(UV)200J/cm2照射またはX線10Gy照射でCHO/RETPTC1細胞が異常活性化を起こすか否かを下流のMAPKの発現により確認した。基礎検討の結果としてCHO細胞へのUVあるいはX線照射60分後、p-ERKの発現の増加を認めたもののp-p38、p-JNKについては抗体の反応性の問題からか検出が不可能であったためCHO細胞を用いた検討を断念し、H-Tori(ヒト正常甲状腺)細胞を用いることにした。基礎検討の結果ではH-Tori細胞へのUVあるいはX線照射10分後、p-p38の発現の増加を認めた。遺伝子導入に用いるウイルスの選定やクローニング法の検討に時間を要したためCHO/RET PTC1細胞の作製完了までに遅れが生じた。また、基礎検討に用いた細胞の変更による遅れも大きい。さらに作製したCHO/RET PTC1細胞を用いた実験ではウエスタンブロットにおいていくつかの抗体の反応性の問題から検出が不可能であったために、細胞を変更して実験をやり直す結果となり、遅れが生じた。「放射線被ばくで生じたRET/PTCは内部被ばくの場合、継続的な被ばくによりROS産生・レドックス反応が持続し、RET/PTCがさらに持続的に活性化される」という仮説を証明するために行った実験において、CHO細胞へのRET/PTC1遺伝子導入は成功し、CHO/RET PTC1細胞を作製することが出来た。しかし紫外線照射またはX線照射によるCHO/RET PTC1細胞の異常活性化については確認されなかった。次に放射線照射により持続的に、さらに多くのROSを産生する可能性がある細胞および動物を検討した結果、オートファジー不全マウス(ATG5ノックアウトマウス)が考えられた。オートファジーを不全にすることで放射線照射により機能障害を起こしたミトコンドリアが細胞内で分解されず、ROSを通常よりも多く持続的に産生すると推測される。やがて高いROS産生を持続させることにより通常よりも多くのDNA損傷をひき起こし、結果としてゲノム不安定化、さらに癌化に至る可能性がある。このマウスを用いることで当初の目的であった放射線被ばくによる甲状腺がんの発症機構の解明に寄与できると考えられる。ATG5は全身でノックアウトすると生後早期に死亡してしまうため甲状腺特異的にATG5をノックアウトしたマウス(ATG5flox/flox;TPO-Cre)を作製し、実験に用いる。マウス作製後は今後の研究の推進方策に記したように基礎検討を行う。紫外線照射またはX線照射によりCHO/RETPTC1細胞の異常活性化の確認に時間を費やした。具体的には紫外線やX線の線量、細胞株の変更、ウエスタンブロットの実験条件や使用する抗体の変更などを行い繰り返し検討したため、そのための時間を要した。さらに現在の実験系に続く新たな実験系を検討することとなり、研究の遂行に遅れが生じた。
KAKENHI-PROJECT-16K00548
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K00548
放射線内部被ばくによる甲状腺がんの発症機構の解明
当初の研究計画に沿い、「放射線被ばくで生じたRET/PTCは内部被ばくの場合、継続的な被ばくにより活性酸素種(以下ROS)産生・レドックス反応が持続し、RET/PTCがさらに持続的に活性化される」という仮説を証明するために行った実験において、CHO細胞へのRET/PTC1遺伝子導入は成功し、CHO/RET PTC1細胞を作製することができた。しかし紫外線照射またはX線照射によるCHO/RET PTC1細胞の異常活性化については様々な検討を行ったが確認されず、この実験系を終了した。改めて、放射線照射がより持続的に、さらに多くのROSを産生する可能性がある動物を検討した結果、オートファジー不全マウス(甲状腺特異的ATG5ノックアウトマウス)を用いることとした。オートファジーを不全にすることで放射線照射により機能障害を起こしたミトコンドリアが細胞内で分解されず、高いROS産生を維持する。やがて持続的なROS産生がDNA損傷を起こし、結果としてゲノム不安定化に至ると考えた。胎生期から甲状腺特異的にオートファジーが不全となった生後12ヶ月のAtg5TPO-KOマウス(以下KO)では、コントロールと比較して濾胞細胞内に変性タンパクの蓄積がみられた。さらに、分解されないまま残った不良ミトコンドリアからのROSによると考えられるDNAの酸化損傷(8-OHdG)および二重鎖切断も増加した。これらの結果から生体内でのROSの持続的な産生とDNA損傷との関連を証明できた。現在、KOマウスに放射線外照射し、さらに高いROS産生が持続された状態での甲状腺機能および発がん頻度を観察する予定である。さらに放射線照射によりROSの発生源となるミトコンドリアの機能低下や染色体の異常がどの程度増加するか、初代培養を行い検討する。現在とCHO/RET PTC1細胞作製した際と同様の方法でH-Tori細胞へのRET/PTC1遺伝子の導入に着手している。今後はH-Tori/RETPTC1細胞を確立し、放射線内・外照射によるRET/PTC1のさらなる活性化を証明していきたい。また初年度の実験計画に大幅な遅れが生じたため、今後はin vitroの実験に的を絞って検討を行う予定である。放射線誘発性の甲状腺がん発症機構については不明な点が多い。我々は以前にin vitroのモデルを構築し、甲状腺の内部被ばく・外部被ばくの両方において被ばく時だけでなく被ばく後にも持続的で高いROS産生が起こり、この被ばく後のROSにより生じたDNA損傷や修復されずに残った染色体の異常が示された。この値はむしろ被ばく時の放射線自体の直接作用や瞬間的に生じたROSによる間接作用よりも高かった。実際に正常ラット甲状腺に外部被ばくさせた実験では、18ヶ月後に腫瘍が形成された。オートファジーの不全はROS産生が恒常的に起こることが考えられ、がんの形成や進展を加速させる可能性がある。今後は、胎生期から、あるいは生後から甲状腺特異的にオートファジー不全を起こしたマウスに放射線外照射を行い、甲状腺を経時的に解析することで細胞内のROS産生の増加が甲状腺の発がんに関与するかを解明することができる。
KAKENHI-PROJECT-16K00548
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K00548
近世瀬戸内地域における遍歴職人の研究
(1)遍歴職人の一つ船大工について、拠点的地域だった倉橋島を素材に分析した。そのさい職人それだけをみるのではなく、造船業の資材の獲得から需要地にいたる一連の過程のなかに位置づける方法を提唱した。そしてとくに瀬戸内海地域にあっては船市や船入札とよばれる独自な販売ルートがあり、それとの関係で造船業の、市場も存在していたことに、地域的な特質をみいだした。(2)また一定の範囲を移動するという意味では遍歴職人と共通するはずの日用存在について、武家奉公としての需要から検討した。直接分析対象とした徳山藩にあっては武家奉公人市場の枯渇から、18世紀末に領内からの徴発に踏み切った。しかし都市域での雇用と競合してしまい、わずかな期間でこの政策は破綻してしまった。この一連の経緯から日用存在の展開のあり方を考察した。(3)さらに近年提唱されている身分的周縁論の研究史上の位置づけを考察する論考も発表した。80年代の身分論からの発展として身分的周縁論が90年代半ば以降提唱されているが、それは単に周縁的な存在への注目を喚起するにとどまらないで、近世社会全体をとらえる方法的な提言となっていることを述べた。(1)本年度は、史料収集を中心に行った。主な収集先は、(1)大阪商業大学・大阪市立図書館等に架蔵されている近世大坂の経済史関係史料、(2)岡山大学池田家文庫より岡山藩域の史料、(3)対馬宗家文書、などである。(2)そのなかで、大坂から瀬戸内海を経て対馬に向かう上方抱え下し者関係の史料をまとめて収集することができた。瀬戸内海が大坂と九州地区とを媒介する動脈の役割を果たしていたことが労働力の移動を通しても確認でき、とくに大坂の都市下層社会を遠隔地の労働市場と結びつけていたことは注目される。従来これは近世初頭の問題として捉えられてきたが、少なくとも18世紀半ばまで広汎に存在が確認できるのである。(3)またそうした移動の核となるのは、近世にあってはやはり大坂だった。その意味で大坂の都市下層社会の分析も不可欠な課題として浮上してきた。当面は日用存在としての仲仕の史料を収集しつつある。(4)こうして1年間の史料収集活動のなかから、近世の「遍歴職人」を分析するうええで、あれこれの事例を並べ立てるだけではなく、一定の視角を持つことの重要性が次第に浮き彫りになってきた。それは第一に瀬戸内海だけで完結するのではなく、大坂を核に九州地方まで含んだ、西日本一帯の問題として構造的に把握する必要、第二に職人だけにとどまらないで、日用存在も含めて意味づけを考察すべきこと、この2点であり、こうした観点から14年度は分析を進めてゆきたい。(1)遍歴職人の一つ船大工について、拠点的地域だった倉橋島を素材に分析した。そのさい職人それだけをみるのではなく、造船業の資材の獲得から需要地にいたる一連の過程のなかに位置づける方法を提唱した。そしてとくに瀬戸内海地域にあっては船市や船入札とよばれる独自な販売ルートがあり、それとの関係で造船業の、市場も存在していたことに、地域的な特質をみいだした。(2)また一定の範囲を移動するという意味では遍歴職人と共通するはずの日用存在について、武家奉公としての需要から検討した。直接分析対象とした徳山藩にあっては武家奉公人市場の枯渇から、18世紀末に領内からの徴発に踏み切った。しかし都市域での雇用と競合してしまい、わずかな期間でこの政策は破綻してしまった。この一連の経緯から日用存在の展開のあり方を考察した。(3)さらに近年提唱されている身分的周縁論の研究史上の位置づけを考察する論考も発表した。80年代の身分論からの発展として身分的周縁論が90年代半ば以降提唱されているが、それは単に周縁的な存在への注目を喚起するにとどまらないで、近世社会全体をとらえる方法的な提言となっていることを述べた。
KAKENHI-PROJECT-13710196
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13710196
国際標準SNPシステムの構築に基づくアジア在来家畜集団の遺伝的多様性解析と保全策
本課題では、国際標準となりうるSNPシステムをウシ、ブタ、ニワトリおよびヤギにおいて構築し、アジア在来家畜に対する遺伝的多様性解析を目的とした。最終的に、ウシでは121SNP、ブタでは101SNP、ニワトリでは76SNP、ヤギでは58SNPからなるSNPシステムを構築した。このSNPシステムを用いてアジア在来4家畜種の遺伝的多様性解析を行った結果、品種や地域分岐、遺伝的混在程度を明らかにし、アジア在来家畜の遺伝的多様性維持には、本研究で示したような遺伝的指標を用いて評価される地域・希少系統を保持することが重要であるとの結論を得た。本課題では、国際標準となりうるSNPシステムをウシ、ブタ、ニワトリおよびヤギにおいて構築し、アジア在来家畜に対する遺伝的多様性解析を目的とした。最終的に、ウシでは121SNP、ブタでは101SNP、ニワトリでは76SNP、ヤギでは58SNPからなるSNPシステムを構築した。このSNPシステムを用いてアジア在来4家畜種の遺伝的多様性解析を行った結果、品種や地域分岐、遺伝的混在程度を明らかにし、アジア在来家畜の遺伝的多様性維持には、本研究で示したような遺伝的指標を用いて評価される地域・希少系統を保持することが重要であるとの結論を得た。アジアの在来家畜は近代品種の系譜や基盤的遺伝特性などを理解するために重要な上、多様な遺伝的背景からその評価と保全は急務である。本課題では、遺伝的多様性解析に恒久的な利用が可能で国際標準となる汎用性の高いSNPシステムをウシ、ブタ、ニワトリにおいて構築し、このSNPシステムを用いることにより、数十力国のアジア在来家畜に対し集団内外の遺伝的多様性解析を行い、地域家畜集団相互間の遺伝的分化と類縁関係、遺伝的構造を明らかにすることを目的とする。ウシにおける国際的な遺伝的多様性分析に適するSNPの選出:予定通り、アジア在来牛および近縁野生種の個体に対してウシ50K SNPアレイ分析の情報を得た。遺伝子頻度が0.10.5であり、連鎖がない(>10Mbp)SNP候補として約300のSNPを選出した。これらはアジア在来家畜集団において適度な遺伝子頻度を有するSNPを選出した。ブタにおける国際的な遺伝的多様性分析に適するSNPの選出:各国の約20の地域から代表的なアジア在来豚およびイノシシに対するブタ60K SNPアレイ分析の情報を得た。その中で遺伝子頻度が0.10.5であり、連鎖がないSNPを約300選出した。ニワトリにおける国際的な遺伝的多様性分析に適するSNPの選出:各国の約20の地域からニワトリの野生種である赤色野鶏とアジア在来鶏の個体に対するニワトリ50K SNPアレイ分析情報を得た。その中で遺伝子頻度が0.10.5であり、連鎖がない(>3Mbp)SNPを約300選出した。選出したSNPによる国際標準SNPシステムの構築:各家畜から選出したSNPの検出法としてDigiTag2法を適用した。DigiTag2法では、効率よく検出できるSNPを選択する必要があり、不適切SNPを除外したSNPパネルを検討し、ウシ、ブタ、ニワトリともに96 SNPによるシステムの構築を進めている。本課題では、遺伝的多様性解析に恒久的な利用が可能で国際標準となる汎用性の高いSNPシステムをウシ、ブタ、ニワトリおよびヤギにおいて構築し、アジア在来家畜に対する遺伝的多様性解析を目的とした。ウシ、ブタ、ニワトリに対して、候補SNPを検討した結果、ウシでは192 SNP、ブタでは177 SNP、ニワトリでは96 SNPによる基本システムの構築に成功した。さらに遺伝子頻度や検出精度を検討した結果、ウシでは121SNP、ブタでは101SNP、ニワトリでは76SNPが解析に適したSNPであることを示した。加えてゲノム情報が明らかでないヤギにおいても、58の候補SNPを選出した。構築したSNPパネルを用い、これらアジア在来家畜に対する解析を実施した。本SNPパネルを用いた解析から明らかとなった代表的な結果を以下に示す。1)北方系牛はインド系牛と比較して遺伝的多様性が高い。2)北方系牛とインド系牛の分岐、和牛品種の遺伝的位置関係、東南アジア在来牛における遺伝的斉一性。3)地域在来ウシの遺伝的混在や地域分化の推定。4)ニホンイノシシと各ブタ集団の独立した遺伝的類縁関係。5)欧米系集団とアジア系集団は遺伝的分岐。6)セキショクヤケイ、ブロイラー、薩摩鶏、ロードアイランドレッドで遺伝的多様性が高く、アローカナ、インギー鶏、レイヤーでは低く評価され、集団の近親交配。7)品種・集団の遺伝的類縁関係を明らかにし、セキショクヤケイとの遺伝的関係や選抜による効果による遺伝的分岐。8)アジア在来ヤギの遺伝情報と遺伝構造の示唆。これらの結果から、ウシ、ブタ、ニワトリ、ヤギのアジア在来家畜の品種や地域分岐、遺伝的混在程度を明らかにすることができた。アジア在来家畜全体における遺伝的多様性維持のためには、本研究で示した遺伝的指標を用いて評価される地域系統や希少系統を保持することが重要であるとの結論を得た。これまでにウシ、ブタ、ニワトリに対する国際的な遺伝的多様性分析に適するSNPを約300選出した。これらのSNPは遺伝子頻度が0.10.5であり、連鎖がないSNP候補であった。これらの候補からDigiTag2法で効率よく検出でき不適切SNPを除外した結果、ウシ、ブタ、ニワトリともに96 SNPによる基本システムの構築に成功した。
KAKENHI-PROJECT-23380165
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23380165