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硬膜動静脈奇形の誘発因子に関する研究
家兎を用いて、頚部内頚静脈、頭蓋内硬膜静脈洞の狭窄、閉塞モデルを作製し、静脈洞内圧亢進と硬膜動静脈奇形の発生の相関について検討した。作製後3ヶ月の血管撮影で、実験家兎の20%(10頭中2頭)で、頭蓋内硬膜静脈洞に異常血管の新生を認めた。2)同様のモデルに、狭窄、あるいは閉塞作製の2週間後に血管内皮細胞増殖因子(FGF)を作用させた場合、3ヵ月後の血管撮影で、実験動物の50%(8頭中4頭)で頭蓋内に異常血管の新生を認めた。以上の1)、2)より、静脈洞の狭窄、あるいは閉塞によって頭蓋内静脈洞壁、あるいはその近傍の硬膜に異常血管新生が生じること、この血管新生は内皮細胞増殖因子によって増強されることがわかった。しかし、血管新生を誘発するのは静脈洞の狭窄や閉塞によって同部に生じる血栓か、静脈洞や静脈の内圧の上昇かは不明であった。3)異常血管の新生を認めた位置は、半数の実験動物では閉塞部位の静脈洞壁であったが、残りの半数では閉塞、あるいは狭窄部の上流の静脈洞壁、あるいは近傍の硬膜であった。血管内圧測定の結果、狭窄あるいは閉塞した部位よりも上流の静脈洞や静脈では、対象群に比べて有意の圧上昇が認められ、遠隔部に異常血管の新生を認めた群の方が、狭窄、あるいは閉塞した静脈洞壁、近傍の硬膜、遠隔部で圧の上昇した静脈洞壁内、でFGFで染色される部分があった。これより、静脈洞の変化は、その静脈洞自身のみでなく、近傍の硬膜、あるいは上流の静脈洞やその近傍の硬膜の血管新生にも影響を与えると考えられた。これには静脈洞や静脈内の圧上昇、あるいはこれによるFGFの誘導が関係していることが示唆された。家兎を用いて、頚部内頚静脈、頭蓋内硬膜静脈洞の狭窄、閉塞モデルを作製し、静脈洞内圧亢進と硬膜動静脈奇形の発生の相関について検討した。作製後3ヶ月の血管撮影で、実験家兎の20%(10頭中2頭)で、頭蓋内硬膜静脈洞に異常血管の新生を認めた。2)同様のモデルに、狭窄、あるいは閉塞作製の2週間後に血管内皮細胞増殖因子(FGF)を作用させた場合、3ヵ月後の血管撮影で、実験動物の50%(8頭中4頭)で頭蓋内に異常血管の新生を認めた。以上の1)、2)より、静脈洞の狭窄、あるいは閉塞によって頭蓋内静脈洞壁、あるいはその近傍の硬膜に異常血管新生が生じること、この血管新生は内皮細胞増殖因子によって増強されることがわかった。しかし、血管新生を誘発するのは静脈洞の狭窄や閉塞によって同部に生じる血栓か、静脈洞や静脈の内圧の上昇かは不明であった。3)異常血管の新生を認めた位置は、半数の実験動物では閉塞部位の静脈洞壁であったが、残りの半数では閉塞、あるいは狭窄部の上流の静脈洞壁、あるいは近傍の硬膜であった。血管内圧測定の結果、狭窄あるいは閉塞した部位よりも上流の静脈洞や静脈では、対象群に比べて有意の圧上昇が認められ、遠隔部に異常血管の新生を認めた群の方が、狭窄、あるいは閉塞した静脈洞壁、近傍の硬膜、遠隔部で圧の上昇した静脈洞壁内、でFGFで染色される部分があった。これより、静脈洞の変化は、その静脈洞自身のみでなく、近傍の硬膜、あるいは上流の静脈洞やその近傍の硬膜の血管新生にも影響を与えると考えられた。これには静脈洞や静脈内の圧上昇、あるいはこれによるFGFの誘導が関係していることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-07771097
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07771097
プロスタグランジントランスポーターをターゲットとした潰瘍性大腸炎の発癌リスク診断
大腸の炎症発癌におけるCOX-2、PGE2代謝酵素である15-PGDH、細胞内への膜輸送担体であるPGT、外向輸送を司るMRP4の発現動態について検討した結果、発癌部位においてはCOX-2、MRP4の発現亢進および15-PGDH、PGTの発現低下が見られ、大腸癌細胞内のPGE2含有量は増加していた。PGTの発現およびPGE2含有量は炎症性サイトカインであるTNF-αによって調節され、またPGTと15-PGDHの間には機能連関が存在する可能性が示唆された。発癌までに8週間かかるので、vivoの実験にやや時間を要する。また当院において潰瘍性大腸炎から発癌をきたした臨床症例数が少なく、臨床データを用いた解析が難しい。またヒト樹立大腸癌細胞株SW480、HT29細胞のPGT遺伝子をsiRNAによってノックダウンすると15-PGDHの発現は増加し、一方で15-PGDH遺伝子をsiRNAによってノックダウンするとPGTの発現は増加した。これらのことからPGTと15-PGDHの間には機能連関が存在することが示唆された。またSW480、HT29細胞の培養上清にTNF-α(10ng/ml)を添加した結果、PGTの発現の低下とともに大腸癌細胞内のPGE2含有量は増加し、IκBαのリン酸化およびNFκBの核内移行が生じた。大腸の炎症発癌におけるCOX-2、PGE2代謝酵素である15-PGDH、細胞内への膜輸送担体であるPGT、外向輸送を司るMRP4の発現動態について検討した結果、発癌部位においてはCOX-2、MRP4の発現亢進および15-PGDH、PGTの発現低下が見られ、大腸癌細胞内のPGE2含有量は増加していた。PGTの発現およびPGE2含有量は炎症性サイトカインであるTNF-αによって調節され、またPGTと15-PGDHの間には機能連関が存在する可能性が示唆された。ヒト樹立大腸癌細胞株であるHT-29、SW480、Caco-2を使用し、各細胞のPGTタンパクをコードするSLCO2A1 mRNAの発現程度をRT-PCRによって調べ、SLCO2A1遺伝子を強発現あるいはノックダウンして、15-PGDHの発現が変化するかを調べる。また大腸癌細胞をPG産生阻害剤であるインドメタシンで前処置し培養液にPGE2を添加すると、PGE2はPGTにより取り込まれて15-PGDHで代謝され、代謝産物である15-keto-PGE2が培養液で検出される。そこでprobenecidを添加し、培養上清中の15-keto-PGE2をELISA法にて測定することにより、PGTと15-PGDHの間に機能連関が存在するかを調べる。さらにTNF-α(10 ng/ml)を培養上清に添加し、大腸癌細胞内のSLCO2A1、PGE2含有量、下流のNFκB経路の標的分子がTNF-αのサイトカインシグナルに伴ってどのように変化するか検討する。炎症、癌、小腸、内視鏡本年度はvivoの実験までしか進まなかったため、費用が抑えられた。次年度のvitroの実験におけるtransfection試薬などに使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-15K21288
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K21288
細胞骨格の応力分布計測-共焦点レーザ顕微鏡と光ピンセットによるインビボ細胞診断
本研究ではまずレーザ顕微鏡装置を用い、ナノスケールでの細胞骨格の蛍光断層像を取得し、それを立体再構成した。次に応力を調べるための負荷として、微小粒子操作を目的に開発した光ピンセットを用いて細胞表面に外力を与えた。外力を与えた場合と、与えない場合の細胞骨格の立体構造をそれぞれ再構成し、外力と対応点の変位との関係から細胞の応力分布を計算した。これによってインビボで細胞骨格の形態や強度の変化を定量することができ、疾患の影響や細胞機能の解明に向け必要となる要素技術を開発した。続いて、ナノスケールでの細胞骨格の蛍光断層像を正確かつ精密に立体再構成できる技術を確立し、応力を調べるための負荷として利用する微粒子を光ピンセットで操作する系の改良そしてダブルビームによる2点把持の実現、さらに細胞骨格モデルを用いたモデリング手法の検討を行った。1.基本システムの構築:2.培養細胞を用いた細胞骨格撮像プロトコールの構築:計測対象としてサンプルの培養細胞を用い、安定した蛍光像を得られるような撮像プロトコールを完成した。3.蛍光断層像からの細胞骨格抽出に向けた画像処理手法の開発:得られた蛍光断層像に対して、三次元立体再構成を行うために必要な画像処理技術を開発した。4.ナノスケールでの細胞骨格再構成:装置の自動化を行い、モーター駆動によって自動的に三次元再構成に必要なデータを取得できるようにした。5.光ピンセットの改良およびダブルビームによる2点把持の実現:接着系ではない細胞や細胞骨格の特定部分を断層撮影するために、2本目のレーザ光を入射して1本のレーザビームで捕捉しながら、もう一方で外力を与えられるようにシステムを拡張した。6.細胞骨格モデルを用いたモデリング:細部骨格の応力分布は、その内部構造によって発生すると考えられるので、内部構造を推定し、モデリングする手法を開発した。本研究ではまずレーザ顕微鏡装置を用い、ナノスケールでの細胞骨格の蛍光断層像を取得し、それを立体再構成した。次に応力を調べるための負荷として、微小粒子操作を目的に開発した光ピンセットを用いて細胞表面に外力を与えた。外力を与えた場合と、与えない場合の細胞骨格の立体構造をそれぞれ再構成し、外力と対応点の変位との関係から細胞の応力分布を計算した。これによってインビボで細胞骨格の形態や強度の変化を定量することができ、疾患の影響や細胞機能の解明に向け必要となる要素技術を開発した。続いて、ナノスケールでの細胞骨格の蛍光断層像を正確かつ精密に立体再構成できる技術を確立し、応力を調べるための負荷として利用する微粒子を光ピンセットで操作する系の改良そしてダブルビームによる2点把持の実現、さらに細胞骨格モデルを用いたモデリング手法の検討を行った。1.基本システムの構築:2.培養細胞を用いた細胞骨格撮像プロトコールの構築:計測対象としてサンプルの培養細胞を用い、安定した蛍光像を得られるような撮像プロトコールを完成した。3.蛍光断層像からの細胞骨格抽出に向けた画像処理手法の開発:得られた蛍光断層像に対して、三次元立体再構成を行うために必要な画像処理技術を開発した。4.ナノスケールでの細胞骨格再構成:装置の自動化を行い、モーター駆動によって自動的に三次元再構成に必要なデータを取得できるようにした。5.光ピンセットの改良およびダブルビームによる2点把持の実現:接着系ではない細胞や細胞骨格の特定部分を断層撮影するために、2本目のレーザ光を入射して1本のレーザビームで捕捉しながら、もう一方で外力を与えられるようにシステムを拡張した。6.細胞骨格モデルを用いたモデリング:細部骨格の応力分布は、その内部構造によって発生すると考えられるので、内部構造を推定し、モデリングする手法を開発した。本研究ではまずレーザ顕微鏡装置を用い、ナノスケールでの細胞骨格の蛍光断層像を取得し、それを立体再構成する。次に応力を調べるための負荷として、微小粒子操作を目的に開発した光ピンセットを用いて細胞表面に外力を与える。外力を与えた場合と、与えない場合の細胞骨格の立体構造をそれぞれ再構成し、外力と対応点の変位との関係から細胞の応力分布を計算する。これによってインビポで細胞骨格の形態や強度の変化を定量することができ、疾患の影響や細胞機能の解明に向け必要となる要素技術を開発中である。1)基本システムの構築まずレーザ顕微鏡を使用した、細胞骨格の蛍光像計測系を作成した。倒立型顕微鏡に対して、共焦点顕微鏡用と光ピンセット用の2系統のレーザを入射するようになっており、細胞骨格をリアルタイムで観察しながら、外力を加えた。断層画像は、piezo-actuatorにより対物レンズを上下に移動させることによって取得した。2)培養細胞を用いた細胞骨格撮像プロトコールの構築計測対象としてサンプルの培養細胞を用い、安定した蛍光像を得られるような撮像プロトコールを完成した。撮像プロトコール作成においては、試料の作成条件および効率的な蛍光染色の手法について検討した。3)蛍光断層像からの細胞骨格抽出に向けた画像処理手法の開発得られた蛍光断層像に対して、三次元立体再構成を行うために必要な画像処理技術を開発した。アクチンフィラメントなどの繊維構造に代表される、特徴的な細胞骨格固有の蛍光断層像を共焦点顕微鏡で撮像する際には、断層面に含まれる細胞骨格からの蛍光以外にも、それに連なる骨格部位からの蛍光が重畳されて観察されてしまう問題点がある。よって、断層間に連続する細胞骨格構造を選択的に抽出できるような、画像処理アルゴリズムを考案し、撮影した断層像に適用した。
KAKENHI-PROJECT-17300154
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17300154
細胞骨格の応力分布計測-共焦点レーザ顕微鏡と光ピンセットによるインビボ細胞診断
本年は、ナノスケールでの細胞骨格の蛍光断層像を正確かつ精密に立体再構成できる技術を確立し、応力を調べるための負荷として利用する微粒子を光ピンセットで操作する系の改良そしてダブルビームによる2点把持の実現、さらに細胞骨格モデルを用いたモデリング手法の検討を行った。1)ナノスケールでの細胞骨格再構成:昨年度開発した新手法であるエバネッセント顕微鏡による細胞骨格の三次元形状計測法について、装置の自動化を行い、モーター駆動によって自動的に三次元再構成に必要なデータを取得できるようにした。この改良により細胞中の分子分布の時間変化を経時的に計測することが可能になった。2)光ピンセットの改良およびダブルビームによる2点把持の実現:光ピンセット光学系で光軸方向のトラップ力が他の2方向に比べて弱いため、光軸方向に移動させた場合にトラップから外れやすい。また細胞に接触させた際の変位がある値を超えると突然落ちるなどの実際上の問題があったため、光ピンセット光学系を改良することでこれらを解決した。そして接着系ではない細胞や細胞骨格の特定部分を断層撮影するために、2本目のレーザ光を入射して1本のレーザビームで捕捉しながら、もう一方で外力を与えられるようにシステムを拡張した。これによって、これまで1方向しか与えられなかった外力を、任意方向で与えられるように改良できるようになった。また細胞への効率的な力印加を目的としてナノパーティクルを用いたマニピュレーション実験を行った。実験では、磁性を持つナノパーティクルであるEuS粒子を用いて、単一のEuS粒子を3次元捕捉して操作することに世界で初めて成功した。現時点では平均粒径が100nm程度であるが、屈折率が大きいため通常の誘電体粒子よりも散乱効率を大きくできるので、より小さな粒子で3次元捕捉が可能と予想された。3)細胞骨格モデルを用いたモデリング:細部骨格の応力分布は、その内部構造によって発生すると考えられるので、内部構造を推定し、モデリングする手法を開発した。応力のメカニズムを考察して、予想した構造によって実験での反力が発生することを有限要素法で構浩解析を試みた。
KAKENHI-PROJECT-17300154
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17300154
現代日本における「死のケア」のための異分野融合研究
本研究では、超高齢多死社会の現代日本における「死」への対処を、現場に即した「ケア」のあり方に注目して検討した。その際にはとりわけ、人文社会科学的基盤に立つメンバーと、看護学的基盤に立つメンバーの異なるディシプリンによる観点の違いに留意し、その点の相互理解をする中から、「死のケア」への新たな道実現の要点を考察した。本研究の成果報告書として、『現代日本における『死のケア』のための異分野融合研究』(総頁数112)を刊行した。<死>をめぐる現場に根差したケアのあり方を検討するため、共同研究者が分担してターミナルケア、グリーフケア、デスエドュケーション、死生観といった方向から研究を深めている。思想的見地からは、高橋が近世日本の思想家の追悼文の収集を行う中からその分析を開始し、同様に文献研究の立場より菊谷がインド・チベット文化圏の葬送儀礼に関する記述の分析を進めている。これに対して小田島は死後の死者の表象を墓や埋葬方法の変化の中から探り、農村社会学の立場から相澤は農村部の在宅緩和ケアへの参与観察およびアンケートによる遺族調査を行っている。また本村は看取りの思想史の構築をデスエドュケーションの実態調査の中から炙り出し、鈴木は現代人の死生観のあり方把握のために、全国神社庁への神葬祭実施に関する郵送調査を実施し、現在はその結果分析を行っている。以上のような人文社会的研究とは異質な観点からの近田は、看護の現場における死の観念の把握やグリーフケアを対象としたケア効果の把握を、次年度にアンケート調査を実施して行うため、その準備を進めてきた。各研究者の個別研究は、予定通りに進んでいるが、そうした成果の発表場所を次年度にシンポジウムとして開催することが話し合われ、本プロジェクトのステップとする計画が立てられ、その具体的方向付けがメール会議において行われている。本研究では、現代日本における<死>をめぐる現場に根差した<ケア>のあり方に留意することを通じ、人文社会科学の諸分野からの研究成果を<ケア>の現場に反映させる道の創出を図り、新たな「死のケア」の道を探ることを目的としている。今年度の研究も、昨年度と同様に、研究メンバーそれぞれの<個としての研究>と、メンバーが共同研究として全体として行う<群としての研究>の二方向から執り行われた。<個としての研究>においては、参加研究者がそれぞれが企画したテーマで調査研究を進めている。その際にはとりわけ、看護学の方面からご参加いただいている東北福祉大学の近田真美子先生が、医療現場を対象とした調査を行う際の調整を上手くとっていただいており、同じく東北福祉大学の工藤洋子先生にも研究協力者となっていただき調査能率を高めていただいている。次に<群としての研究>の成果としては、10月3日に岡山大学津島キャンパスにおき、シンポジウム「死の受容の最前線」を開催した。この企画は二部構成からなり、これまで行ってきた<個としての研究>の成果の一部をまとめて発表した。具体的には「第1部臨床宗教師の誕生とその展開」では、「震災被災地から超高齢多死社会へ」(鈴木岩弓)、「在宅医療における臨床宗教師の実践」(田中至道)の二講演が行われ、「第2部グリーフケアの今昔」では、「死の受容と施餓鬼聖典」(菊谷竜太)、「祭文から弔辞へ」(高橋恭寛)、「死体の処置(ケア)の今」(小田島建己)、「死を看取り続ける看護師の悲嘆過程」(近藤真紀子)の四報告がなされた。こうした研究の概要をまとめてみると、平成27年度の本共同研究の研究実績は、大変上手く進んでいるものと結論づけることができる。10月に岡山大学で開催したシンポジウムは、成功裡に終わることができた。企画は公開シンポジウムとして開催したのであるが、この企画の情報が関心のある人々の間でSNSを通じて流れたため、仙台在住のメンバーのみならず西は九州に到るまでの広い地域からの参加者が参集した。(1)本研究では、現代日本における<死>をめぐる現場に根ざした<ケア>のあり方に留意することを通じて、人文社会科学の諸分野からの研究成果を、<ケア>の現場に反映させる道の創出を図り、新たな「死のケア」の道を探ることを目的としている。(2)今年度の研究も、昨年度と同様に、研究メンバーそれぞれによる<個としての研究>と、メンバーが共同研究として全体統合的に実施する<群としての研究>の二方向から行われた。(3)これまで行った本研究の研究成果の中間発表会は、第1回目を平成27年度に岡山大学における公開シンポジウムとして開催したが、本年度はその第2回目の発表として、6月25日に東北大学で同じく公開シンポジウムとして開催した。そこで開催したシンポジウムは「死の受容の最前線ー死ぬまえ死ぬとき死んだあとー」の題名で「老いは『恥』か、『若きにまされる』かー17世紀にほんにおける『老い』の諸相ー」(本村昌文)、「余命1か月以内であった終末期がん患者の語りより」(大浦まり子)、「初めて患者の死に遭遇した看護学生の経験」(近田真美子)、「死を見つめる看取りの現場からの語り」(工藤洋子)、「在宅緩和ケアの看取りをめぐる動物たちー患者と家族にとっての意味ー」(相澤出)の5報告の後、フロアからの質問を交えての討論となった。
KAKENHI-PROJECT-26580009
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26580009
現代日本における「死のケア」のための異分野融合研究
(4)最終年度を迎えたため、本研究プロジェクトの報告書を刊行する計画で出版社とも相談しながら、研究成果の報告をまとめる準備を進めてきた。6月に東北大学で開催したシンポジウムの際のフロアとの討論においては、人文社会科学領域からの研究者と医療や介護の現場に経つ看護師などの間の意見交換が予想された。ただその議論のなかでは、看取りの現場における「死の受容」と「ケア」のかかわりの中で、とりわけ想定していなかった医療と宗教の兼ね合いに議論が集中した。そのため、前年度からの研究の中でまとめられつつあった報告書へ向けての編集作業において、それぞれの論文に医療と宗教の"絡み"を盛り込む必要が生じ、年度内の報告書刊行に遅れが出ることになった。本研究立案に際しては、多くのディシプリンから「死の受容」に焦点を当てることにセールスポイントをおいて研究を推進し、これまであえて大きく取りあげないできた死生観形成の裏にある宗教性への注目は、事前調査では確信を持って外してきたところであるが、年度を繰り越すことで万全を尽くした議論にたつ報告書作成を目指すことにした。(1)本研究の目的は、現代日本における<死>をめぐる現場に根ざした<ケア>のあり方に留意しつつ、人文社会科学からの研究成果を<ケア>の現場に反映させる道を図り、新たな「死のケア」の道を探ることにあった。(2)研究方法は、研究メンバーそれぞれによる<個人研究>と、メンバーが全体統合的に実施する<共同研究>の二種を併せて絡ませながら行った。(3)これまでの研究成果の中間発表は、第1回目を平成27年度に岡山大学において、その第2回目を平成28年6月25日に東北大学で、共に公開シンポジウムとして開催し、フロアの参加者を交えた幅の広い検討の機会を得ることができた。(4)平成28年度には本研究の報告書刊行を準備したが、医療と宗教との兼ね合いに関する視点の欠如が判明し、作成を一年延期した。(5)平成29年度には最終年度報告書として、「老いと死を見つめる」(本村昌文)、「初めて患者の死に遭遇した看護学生の経験」(近田真美子)、「死を見つめる看取りの現場からの語り」(工藤洋子)、「在宅緩和ケアの看取りをめぐる動物たち-患者と家族にとっての意味-」(相澤出)、「在宅慰労における臨床宗教師-超高齢多死社会に向けて-」(田中至道)、「言葉で<かたどる>哀しみー追悼文の今昔ー」(高橋恭寬)、「近代以降の死後の処理」(小田島建己)、「死を看取り続ける看護師の悲嘆過程」(近藤真紀子)、「二・五人称の死者ー“死者の記憶"のメカニズムー」(鈴木岩弓)を収録した報告書を刊行した。本研究では、超高齢多死社会の現代日本における「死」への対処を、現場に即した「ケア」のあり方に注目して検討した。その際にはとりわけ、人文社会科学的基盤に立つメンバーと、看護学的基盤に立つメンバーの異なるディシプリンによる観点の違いに留意し、その点の相互理解をする中から、「死のケア」への新たな道実現の要点を考察した。本研究の成果報告書として、『現代日本における『死のケア』のための異分野融合研究』(総頁数112)を刊行した。アンケート調査の内、神葬祭に関する全国各県の神社庁宛てのものは既に70%以上返信されており、順調に進んでいる。また遺族調査の方も、これまでのスキルなどの蓄積があるためほぼ予定通りに実施されている。
KAKENHI-PROJECT-26580009
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26580009
TEIによる次世代英文学アーカイブの構築
品詞などを示す文法タグをはじめ、英語英文学研究に必要なテクスト情報をタグ化する際に、できるだけ多くの情報をテクストに織り込んでいこうとしたため、予想を遥かに超える作業量が生じた。品詞などを示す文法タグをはじめ、英語英文学研究に必要なテクスト情報をタグ化する際に、できるだけ多くの情報をテクストに織り込んでいこうとしたため、予想を遥かに超える作業量が生じた。前年度のやり残した作業を完成させ、大野はThe Canterbury TalesのHengwrt写本の続きとEllesmere写本、福元はKing LearのF1 (1623)とQ2 (1604)、水野はThe Letters of Samuel Johnson(1778-1781)、島はLittle Dorritの月刊分冊形式の初版、冊子体初版、Charles Dickens Edition、今林はOld Curiosity Shopの月刊分冊形式の初版、冊子体初版、Charles Dickens EditionをTEIのガイドラインに沿って、Oxygenを使ってDDSTELにする。DDSTELを作成する際には、それぞれの進捗状況に応じて、広島大学、広島修道大学の大学院生にアルバイトとして手伝ってもらう。初年度の成果について、5月末の日本英文学会か9月末の英語コーパス学会で福元、水野、島のいずれかが研究発表をする。特に英語英文学研究に必要なテクスト情報の取り込みについて話してもらう。前年同様、平成29年3月末に広島大学で完成したそれぞれのDDSTELに関する問題点を出し合い、次年度の計画について議論する。この時点でまだDDSTELが完成していないところは、アルバイトの人員を増やして速やかに次の版に移れるように人的補充を行う。タグ付け等の基本的な作業においては、アルバイトの数と従事時間などを増やすことにより対処したい。初年度初期の段階においてDDSTEを作成する際のタグ付け等の作業量が非常に多いことがわかり、タグ付けやテクスト編集のためのアルバイト作業料が非常にかさむことが分かったため、次年度に繰り越した。平成30年度は、DDSTEを作成する際のタグ付け等の作業量と増員が予想を越えて非常に多いため、アルバイト料が増えると予想されたため繰り越した。また、現在のPCでは性能の点で作業ができない可能性が生じたため、最新のPCを購入することになる可能性が高いと予想されたので繰り越した。タグ付けやテクスト編集のためのアルバイト作業料に充てる予定。
KAKENHI-PROJECT-16K02492
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K02492
骨折モデルにおけるリーミング・非リーミングの肺障害に及ぼす影響の違いについて
長管骨骨折の内固定方法として、髄内釘法は確立された手術手技である。しかし、従来からよく行われてきた髄内釘挿入前に骨髄内および骨皮質内側を削る操作、すなわちreamingにより骨髄内の脂肪を血中に押し出すことによる脂肪塞栓による肺障害が問題とされている(特に多発外傷例において)。このため、最近はこのような肺障害を予防するため、reamingしないで(非リーミング、unreamed intramedullary nailing)、髄内釘を挿入する手技が臨床的にはよく用いられるようになってきた。本研究の目的は、このようなnon-reaming手技が、従来のreamingする手技に比べ本当に肺障害が軽減できるのかどうかを、非骨折モデルではなく、より臨床に近く、またバイアスの少ない動物を用いた単発骨折モデルや多発骨折モデルを用いて検討し、その機序についても明らかにすることである。実験群として、大腿骨単独骨折群(A群)、両側大腿骨折群(B、群)の2群を、Einhorn骨折作成器を用いた骨折モデルによりラットで作成した(各群で、n=40)。両群において、骨折直後、12時間後、1日、2日、4日、7日、14日、21日後に屠殺し、肺組織中のmyeloperoxidase(MPO)活性を調べた。4日以降において、B群の肺MPO活性はA群の肺MPO活性に比べ有意に高く、多発骨折においては、早期に何らかの固定を行わないと肺障害を引き起こす可能性が示唆された。今後、さらに単発骨折群と多発骨折群で固定法の違いやその固定タイミングの違いによる肺障害への影響の違いを検討していきたい。長管骨骨折の内固定方法として、髄内釘法は確立された手術手技である。しかし、従来からよく行われてきた髄内釘挿入前に骨髄内および骨皮質内側を削る操作、すなわちreamingにより骨髄内の脂肪を血中に押し出すことによる脂肪塞栓による肺障害が問題とされている(特に多発外傷例において)。このため、最近はこのような肺障害を予防するため、reamingしないで(非リーミング、unreamed intramedullary nailing)、髄内釘を挿入する手技が臨床的にはよく用いられるようになってきた。本研究の目的は、このようなnon-reaming手技が、従来のreamingする手技に比べ本当に肺障害が軽減できるのかどうかを、非骨折モデルではなく、より臨床に近く、またバイアスの少ない動物を用いた単発骨折モデルや多発骨折モデルを用いて検討し、その機序についても明らかにすることである。大腿骨骨折および大腿骨骨折以外にも骨折がある場合の間で、肺組織障害への影響の違いがあるか否かを検討単発骨折群として一側の大腿骨骨折群(A群)に、多発骨折群として反対側の大腿骨骨折(B群)および同側下腿骨骨折(C群)をEinhorn骨折作成器を用いた骨折モデルをラットで作成(各n=20以上)する。以上、作成した各群をさらに、即時屠殺群、ギプス固定後24時間後に屠殺する群、48時間後、72時問後、1週後に屠殺する群に分け、屠殺後、肺を摘出し、肺組織中のmyeloperoxidase(MPO)活性を調べた。まだ、明らかな結果は出ていないが、現段階では、多発骨折群で肺MPO活性が高い傾向を示した。さらに、単発骨折群と多発骨折群で固定法の違いやその固定タイミングの違いによる肺障害への影響の程度やARDS、systemic inflamatory response syndrome(SIRS)との関係を検討予定である。長管骨骨折の内固定方法として、髄内釘法は確立された手術手技である。しかし、従来からよく行われてきた髄内釘挿入前に骨髄内および骨皮質内側を削る操作、すなわちreamingにより骨髄内の脂肪を血中に押し出すことによる脂肪塞栓による肺障害が問題とされている(特に多発外傷例において)。このため、最近はこのような肺障害を予防するため、reamingしないで(非リーミング、unreamed intramedullary nailing)、髄内釘を挿入する手技が臨床的にはよく用いられるようになってきた。本研究の目的は、このようなnon-reaming手技が、従来のreamingする手技に比べ本当に肺障害が軽減できるのかどうかを、非骨折モデルではなく、より臨床に近く、またバイアスの少ない動物を用いた単発骨折モデルや多発骨折モデルを用いて検討し、その機序についても明らかにすることである。実験群として、大腿骨単独骨折群(A群)、両側大腿骨折群(B、群)の2群を、Einhorn骨折作成器を用いた骨折モデルによりラットで作成した(各群で、n=40)。両群において、骨折直後、12時間後、1日、2日、4日、7日、14日、21日後に屠殺し、肺組織中のmyeloperoxidase(MPO)活性を調べた。4日以降において、B群の肺MPO活性はA群の肺MPO活性に比べ有意に高く、多発骨折においては、早期に何らかの固定を行わないと肺障害を引き起こす可能性が示唆された。今後、さらに単発骨折群と多発骨折群で固定法の違いやその固定タイミングの違いによる肺障害への影響の違いを検討していきたい。
KAKENHI-PROJECT-14770747
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14770747
先進諸国の政治-制度と所得格差との関係についての比較政治学的研究
本件は、欧米先進諸国における広義の政治制度のあり方の違いが、各国の所得格差の違いにどのように影響を及ぼしているのかという問題について、比較の観点から、各種のデータ分析や調査等を通じて分析したものである。その成果として、労使間の交渉過程の制度化や協調度だけでなく、政府-議会関係や議会における集権度、連合政権等の政権形態、そして公共部門の大きさなどが、各国間の所得格差の違いをもたらしていることを示唆した。本件は、欧米先進諸国における広義の政治制度のあり方の違いが、各国の所得格差の違いにどのように影響を及ぼしているのかという問題について、比較の観点から、各種のデータ分析や調査等を通じて分析したものである。その成果として、労使間の交渉過程の制度化や協調度だけでなく、政府-議会関係や議会における集権度、連合政権等の政権形態、そして公共部門の大きさなどが、各国間の所得格差の違いをもたらしていることを示唆した。本年度は、本研究の初年度にあたるの、本研究の基盤整備をおこない、第一に、PCの購入や統計分析用のソフトを購入し、比較分析のための統計技法の洗練に向けての研鑽につとめた。とくに、複数の国の時系列データを扱うので、そうしたパネルデータをめぐる種々の計量的な分析技法について検討下。第二に、それに関連して、データの収集や整理に持つと目、OECD諸国の各種の所得格差に関連するデータの収集やそれに深く関わる各種の指標についてのデータを渉猟し、収集し整理する作業を行った。これは、今年度だけでなく、次年度以降も、随時展開することになる。そして本研究の理論的な分析視角の点では、第一に、OECD諸国の所得格差の比較制度分析の観点をめぐる近年の研究動向について、資本主義の多様性論とそれ以降の現状について調査し、さらにこの点をめぐって、J・ポントソン氏(プリンストン大学)とアメリカ政治学会の際に、意見交換をした。とくに私が前年度上梓した拙稿「OECの所得格差と政治-制度との関係について:資本主義の多様性と社会民主主義的コーポラティズム」(『法政研究』2005年)において示した、所得格差と政治制度配置(労働の組織間関係の集中化)との関係が、負の単線的な関係にあるのではなく、U字型関係にあるという説について、さらに、その視点を発展・継承させるうえで示唆をえた。この点については、「資本主義の多様性論と所得格差」と題する研究発表をおこなった。第二に、それに関わるが、政治制度との関連で、政策レジームやフィードバック論を発展させて、政策出力と所得格差との関連についても追及した。そのなかで、近年、様々に展開されてきた所得格差の指標を考察するうえでは、再分配の問題に関係する租税政策や、技能形成や解雇規制等に関わる労働市場政策などをめぐる「政策レジーム」や、政策内容が社会へと還流されるなかで所得格差に影響を及ぼすという意味での「政策フィードバック」の問題が重要であることをあらためて発見した。その点を協調すべきこととして、政策レジームと所得格差との関係について論じたものが「政策レジームと所得格差をめぐる予備的考察」である。本年度は,昨年度に引き続き,最近の「資本主義の多様性論」や「コーポラティズム論」の動向を踏まえ,まず第一に,所得格差に関連すると思われる政治、制度の諸要素について,近年の政策フィードバックや政策普及の議論をも視野に入れつつ,それらを系統的に整序するという観点から「政策レジーム」という準拠枠組を提示し,比較研究を体系的なかたちで行うための分析枠組を提起した。その際,従来のアプローチが,どちらかといえば,賃金設定過程の団体交渉中心的な視点であったのに対し,政策志向をもったアプローチへと視座の転換がある点を強調した。その成果は「政策レジームと所得格差:賃金交渉制度論から政策指向型アプローチへ(上)、(中)」『法政研究』(静岡大学法政学会)のかたちで公刊した。第二に,私が本研究に関連して提示した説(拙稿「OECD諸国の所得格差と政治-制度との関係について:資本主義の多様性と社会民主主義的コーポラティズム」(『法政研究』2005年),すなわち,所得格差と政治制度配置(労働の組織間関係の集中化)との関係が,負の単線的な関係にあるのではなく,U字型関係にあるという説について,文献調査や統計資料の分析やインタビュー等をおこない,その補強のための調査を遂行した。第三に,昨年度から引き続いて,OECD諸国の各種の所得格差に関連するデータの収集やそれに深く関わる各種の指標についてのデータを渉猟し,収集整理する作業をおこない,さらに,そうした各種の所得格差の指標と,前述の各種の政治-制度の諸要素との関係について,パネル、データをめぐる種々の計量的な分析技法の適用を試行しながら,その関連性を探究し,いくつかの連関性を索出した。その成果は,随時,次年度において公刊し,来年度の成果報告書のなかに盛り込みたい。以上が,本年度の本研究の主たる概要である。本年度は、本研究の最終年度にあたるので、まず第一に、最近の「資本主義の多様性論」の新たな展開を踏まえて、その概括的な論考を「コーポラティズム論から『資本主義の多様性論』へ?リベラル・デモクラシーの政治経済体制をめぐる一考察」として公刊した。第二に、昨年度に引き続き、賃金設定過程の団体交渉中心的な視点から政策志向をもったアプローチへの視座の転換を強調した「政策レジームと所得格差:賃金交渉制度論から政策指向型アプローチへ」という点について考察を進めた。
KAKENHI-PROJECT-18530089
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18530089
先進諸国の政治-制度と所得格差との関係についての比較政治学的研究
第三に、私が本研究に関連して提示した説-すなわち、所得格差と政治制度配置(労働の組織間関係の集中化)との関係が、負の単線的な関係にあるのではなく、U字型関係にあるという説について、ILOやOECDなどの文献調査や統計資料の分析等をおこない、OECD諸国の各種の所得格差に関連するデータの収集やそれに深く関わる各種の指標についてのデータを収集整理する作業をおこない、その補強のための調査を遂行した。そして、こうした各種の所得格差の指標と、各種の政治-制度の諸要素との関係について、パネル・データをめぐる種々の分析方法の適用を試行しながら、その関連性を探究し、そして、いくつかの連関性を索出した。そして以上の成果は、本研究の成果報告書のなかに盛り込むことになる。
KAKENHI-PROJECT-18530089
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分子軌道法を基にした分子動力学法の非晶質酸化物への適用
本研究は、分子軌道法を用いて、電子状態を考慮したポテンシャルエネルギーを分子動力学法に導入する方法を検討し、ガラス状態の物質へ適用することを目的とした。具体的には、非経験的分子軌道法のひとつであるGAMESSを用いて、基本構造となるクラスタのポテンシャルエネルギーを求め、これを原子間距離の関数(2体)あるいは原子角の関数(3体)のポテンシャルの関数で分解することにより、ポテンシャル関数のパラメータを設定した。対象とした系は、SiO_2,B_2O_3,P_2O_5であり、SiO_2系では、2体ポテンシャルでも2体+3体ポテンシャルに対しても、ポテンシャルパラメータの設定はでき、(1)ガラスのX線回折による動径分布関数、中性子線動径分布関数の実測との比較を行った。(2)α-quartz結晶の振動モードとその波数を算出し、実測との比較を行った。また、これまで報告されているTTAMポテンシャルやBKSポテンシャルとの比較も行った。動径分布関数や振動モードとその波数と実測との比較では、本研究で設定したパラメータを用いた場合でも、これまでのTTAMポテンシャルやBKSポテンシャルと比較して、遜色ない一致を得ることができた。しかしながら、動径分布関数の一致の改善の方向と振動モードと波数の一致の改善の方向が必ずしも一致しないことがわかった。B_2O_3,P_2O_5系に対しては、2体ポテンシャルのパラメータの設定を行った。ここで、得たポテンシャルパラメータを用いて、ガラス状態のシミュレーションを行い、ある程度実際の結晶構造やガラスの構造解析の結果と対応する構造モデルが作成できることを確認した。本研究は、電子状態をある程度考慮した分子動力学法を作成し、非晶質酸化物への適用性を評価することを目的としている。本年度は、近似のレベルは低いが、計算速度が速い経験的手法の評価を行った。具体的には,非経験的分子軌道法であるGAMESSを用いて、SiO_4、PO_4,BO_3、BO_4を基本構造単位とするクラスタを作成し、個々の結合距離や結合角を変化させたエネルギー計算から、個々のSi-O, P-O, B-Oの原子対ポテンシャルを2体ポテンシャルで近似した。さらに、Si-O-Si等の3体ポテンシャル関数の評価とパラメータの設定を行った。ここで得たポテンシャルの評価のために、SiO_2融体から冷却したガラス構造の動径分布関数、ガラスの原子間振動スペクトル、結晶構造の安定性を調べ、以下の知見を得た。(1)分子軌道法によるクラスタのエネルギー変化をある程度再現できる2体ポテンシャルを用いても、冷却により求めたSiO2ガラス中のSi-O-SiとO-Si-Oの構造の動径分布関数から推察される秩序性を充分に再現できないこと。(2)この再現のためには、Si-O-SiとO-Si-Oを対象とした3体ポテンシャルが有効であること。(3)振動スペクトルにおいて、3体ポテンシャルをもちいても、実測の振動モードの対応が充分に得られないこと。分子軌道法を基にして、関数、および、パラメータを求めた2および3体ポテンシャルを用いた分子動力学法では、ある程度実際と対応する構造モデルを作成できる。しかしながら、詳細な原子配列やエネルギー状態などを同時に満足するものを得ることは極めて困難であることがわかった。また、ここで得たポテンシャルを用いて、3成分系酸化物ガラスの構造シミュレーションを行い、組成の変化に対する酸素配位数の変化などの構造情報の抽出と実測を行った。本研究は、分子軌道法を用いて、電子状態を考慮したポテンシャルエネルギーを分子動力学法に導入する方法を検討し、ガラス状態の物質へ適用することを目的とした。具体的には、非経験的分子軌道法のひとつであるGAMESSを用いて、基本構造となるクラスタのポテンシャルエネルギーを求め、これを原子間距離の関数(2体)あるいは原子角の関数(3体)のポテンシャルの関数で分解することにより、ポテンシャル関数のパラメータを設定した。対象とした系は、SiO_2,B_2O_3,P_2O_5であり、SiO_2系では、2体ポテンシャルでも2体+3体ポテンシャルに対しても、ポテンシャルパラメータの設定はでき、(1)ガラスのX線回折による動径分布関数、中性子線動径分布関数の実測との比較を行った。(2)α-quartz結晶の振動モードとその波数を算出し、実測との比較を行った。また、これまで報告されているTTAMポテンシャルやBKSポテンシャルとの比較も行った。動径分布関数や振動モードとその波数と実測との比較では、本研究で設定したパラメータを用いた場合でも、これまでのTTAMポテンシャルやBKSポテンシャルと比較して、遜色ない一致を得ることができた。しかしながら、動径分布関数の一致の改善の方向と振動モードと波数の一致の改善の方向が必ずしも一致しないことがわかった。B_2O_3,P_2O_5系に対しては、2体ポテンシャルのパラメータの設定を行った。ここで、得たポテンシャルパラメータを用いて、ガラス状態のシミュレーションを行い、ある程度実際の結晶構造やガラスの構造解析の結果と対応する構造モデルが作成できることを確認した。本研究は、電子状態をある程度考慮した分子動力学法を作成し、非晶質酸化物への適用性を評価することを目的としている。
KAKENHI-PROJECT-13650734
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13650734
分子軌道法を基にした分子動力学法の非晶質酸化物への適用
昨年度は、非経験的分子軌道法であるGAMESSを用いて、SiO_4、PO_4、BO_3、BO_4を基本構造単位とするクラスタを作成し、個々の結合距離や結合角を変化させたエネルギー計算から、個々のSi-O, P-O, B-Oの原子対ポテンシャルを2体ポテンシャルで近似し、得られた原子間ポテンシャルを用いて、単成分の非晶質の構造モデルを作成し、これまでの構造解析による知見と比較することにより、用いたポテンシャルの評価を行った。本年度は、(1)昨年度に引き続いて、2体ポテンシャルを用いた単成分の非晶質の構造モデルの作成を行った。実際に容易に非晶質が得られるB_2O_3,SiO_2,P_2O_5を起点として、非晶質の構造モデルの中で、陽イオンと酸素イオンとの結合距離と出現する原子配列との関係の整理を行った。原子間ポテンシャルにイオン近似を用いた場合でも非晶質状態では、陽イオンの酸素配位数は酸化物では、3から5配位が安定に存在する。これよりも配位数の大きな陽イオンでは、イオンの充填率が大きく変化し、構造の安定性に変化があることがわかった。(2)クラスタを対象として前述のGAMESSを用いた結果と対比することにより、原子軌道を基にした強結合近似を用いたパラメータとその軌道間の距離依存性を評価した。ここで得たパラメータを用いて、非晶質の構造モデルへの結合の方向性の導入を試み、球対称のイオン近似のポテンシャルを用いた場合との違いを検討した。本研究は、電子状態をある程度考慮した分子動力学法を作成し、非晶質酸化物への適用性を評価することを目的としている。(1)非経験的分子軌道法であるGAMESSを用いて、SiO_4、PO_4,BO_3、BO_4を基本構造単位とするクラスタを作成し、個々の結合距離や結合角を変化させたエネルギー計算から、個々のSi-O, P-O, B-Oの原子対ポテンシャルを2体あるいは3体ポテンシャルで近似し、得られた原子間ポテンシャルを用いて、単成分の非晶質の構造モデルを作成した。これまでの構造解析による知見と比較することにより、用いたポテンシャルの評価を行った。分子軌道法によるクラスタのエネルギー変化をある程度再現できる2および3体ポテンシャルを導出することができた。また、これを用いることにより、動径分布関数をある程度再現できることを確認することができた。しかしながら、SiO_2ガラスにおける振動スペクトルにおいては、Si-O-SiやO-Si-Oの3体ポテンシャルを用いると、実測の振動モードとの対応が2体ポテンシャルを用いた場合より、悪くなることがわかった。Si-O-SiやO-Si-Oの3体ポテンシャルの導入は、原子配列と物性とを同時に満たすポテンシャルには不適当であると判断した。(2)したがって、原子・イオン間のポテンシャルの基本に立ち戻り、イオン結合性のみを考慮した2体ポテンシャルを用いて、非晶質状態の成り立ちの再検討を行った。単成分の非晶質状態の構造モデルでは、陰イオン2配位となり、陽イオンを陰イオンで囲む配位多面体を構造単位とする構造において、非晶質状態が安定になることを見出した。(3)電子親和力・イオン化ポテンシャルを基に、分子軌道法から得られる電子間反発の原子間距離依存性を考慮した電荷移動分子動力学法を作成し、一部の酸化物ガラスにおける光学的塩基度と配位構造との関係を調べた。
KAKENHI-PROJECT-13650734
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格子QCDによるハイペロン相互作用の研究とハイパー核への展開
本研究課題は、なるべく物理点に近いクォーク質量領域において大きな空間体積を持った格子QCD計算を行い、ラムダ核子相互作用並びにシグマ核子相互作用の性質を、中心力、テンソル力、スピン軌道力について調べ、そこで得られたポテンシャルを用いて、軽いハイパー核の精密計算を実行し、ストレンジネスを含んだ一般化核力の性質を、これまで以上に定量的に明らかにしていくことを目指すものである。平成26年度は、まず格子QCD計算部分の基本的な数値計算手法の開発を25年度に引き続き行った。具体的には、25年度に開発した、ラムダ核子、シグマ核子系をはじめとする複数の南部-Bethe-Salpeter波動関数を、一度の計算で同時に効率よく計算できる(例えば、クォーク演算子の内部自由度とフェルミ統計性に起因する演算の繰り返しの回数を、unified contraction法よりも数分の一程度に短縮することができる)アルゴリズムを、複数のGPGPUを利用できるように、CUDAを用いて実装することに成功した。すなわち、筑波大学計算科学研究センターの大型計算機であるHA-PACS上でMPI+OpenMPによるハイブリッド並列動作環境に加えてマルチGPUによる計算が可能となった。また、π中間子の質量が約470MeVになるような重いクォーク質量での格子QCD計算によって、偶パリティの中心力およびテンソル力だけでなく、奇パリティ状態のスピン軌道力ポテンシャルが得られている。この格子QCDによる、新たにスピン軌道力を含む核力ポテンシャルを用いた、4核子系の精密計算を確率論的変分法を用いて行うことに成功した。現在の結果はまだ予備的なものであるが、従来の偶パリティ状態の中心力並びにテンソル力のみを用いた場合と比較して、核力ポテンシャルに新たに加えられた部分は弱い斥力的寄与を与えている。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。本研究課題は、中性子星のような高密度核物質の理論的研究の基礎となるハイペロン相互作用の性質を、なるべく現実に近いクォーク質量領域での格子QCD計算から調べ、さらにその結果を少数粒子系の精密計算に適用することにより、中性子過剰ハイパー核を含む最新の実験データとも比較することによって、ストレンジネスを含んだ一般化核力の性質を、これまで以上に定量的に明らかにしていくことを目指すものである。より具体的には、なるべく物理点に近いクォーク質量領域において大きな空間体積を持った格子QCD計算を行い、ラムダ核子相互作用並びにシグマ核子相互作用の性質を、中心力、テンソル力、スピン軌道力について調べることである。また、格子QCD計算から得られたポテンシャルを用いて、軽いハイパー核の精密計算を実行し、ハイペロンポテンシャルが軽いハイパー核の結合エネルギーの実験値を矛盾無く説明できるかを調べる。さらには、こうした点を踏まえて、中性子過剰ハイパー核などの、よりエキゾチックな系の精密計算を実行し、ハイパー核の理論研究を、これまでの通常核や中性子過剰核の研究で行われている精度にせまるほどの理論研究をハイパー核でも進めていくことを目指す。平成25年度は、特に格子QCD計算部分の基本的な数値計算手法の開発に注力して研究を進めた。現実に近いクォーク質量領域での格子QCD計算では、フレーバSU(3)対称性の破れを直接扱う必要があるため、計算するべきチャネルが膨大になり、その各チャネルの計算を系統的に効率よく行うことが求められる。本研究の遂行には大型計算機の使用が不可欠であるため、大型計算機上の計算効率の向上は、全体の研究の進捗を左右する重要な要素であるが、BlueGene/Qなどの大型計算機で効率よく動く、C++で書かれたプログラムの作成に成功した。本研究課題は、なるべく物理点に近いクォーク質量領域において大きな空間体積を持った格子QCD計算を行い、ラムダ核子相互作用並びにシグマ核子相互作用の性質を、中心力、テンソル力、スピン軌道力について調べ、そこで得られたポテンシャルを用いて、軽いハイパー核の精密計算を実行し、ストレンジネスを含んだ一般化核力の性質を、これまで以上に定量的に明らかにしていくことを目指すものである。平成26年度は、まず格子QCD計算部分の基本的な数値計算手法の開発を25年度に引き続き行った。具体的には、25年度に開発した、ラムダ核子、シグマ核子系をはじめとする複数の南部-Bethe-Salpeter波動関数を、一度の計算で同時に効率よく計算できる(例えば、クォーク演算子の内部自由度とフェルミ統計性に起因する演算の繰り返しの回数を、unified contraction法よりも数分の一程度に短縮することができる)アルゴリズムを、複数のGPGPUを利用できるように、CUDAを用いて実装することに成功した。すなわち、筑波大学計算科学研究センターの大型計算機であるHA-PACS上でMPI+OpenMPによるハイブリッド並列動作環境に加えてマルチGPUによる計算が可能となった。また、π中間子の質量が約470MeVになるような重いクォーク質量での格子QCD計算によって、偶パリティの中心力およびテンソル力だけでなく、奇パリティ状態のスピン軌道力ポテンシャルが得られている。この格子QCDによる、新たにスピン軌道力を含む核力ポテンシャルを用いた、4核子系の精密計算を確率論的変分法を用いて行うことに成功した。現在の結果はまだ予備的なものであるが、従来の偶パリティ状態の中心力並びにテンソル力のみを用いた場合と比較して、核力ポテンシャルに新たに加えられた部分は弱い斥力的寄与を与えている。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-25105505
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25105505
格子QCDによるハイペロン相互作用の研究とハイパー核への展開
格子QCDによるラムダ核子、シグマ核子相互作用の研究のためには、これらのチャネルの4点相関関数(Nambu-Bethe-Salpeter波動関数)を計算する必要があり、なるべく現実に近いクォーク質量領域の計算を、相互作用の到達距離が収まる程度に大きな体積で行わなくてはならず、この部分の格子QCD計算は大規模にならざるをえないため、大型計算機の利用は必須である。共用されている大型計算機では利用できるCPU時間は限られているので、この計算を効率よく実行することは、本研究課題における重要なポイントの一つである。そこで、平成25年度は、高エネルギー加速器研究機構大型計算機センター、筑波大学計算科学研究センターを利用し、NBS波動関数を求める際の数値計算の主要部分(Wich contractionを計算する部分)のアルゴリズムの抜本的な整備をまずすすめた。ラムダ核子、シグマ核子系のように複数のNBS波動関数を、一度の計算で同時にかつ効率よく計算することのできるアルゴリズムを開発した。具体的には、クォーク演算子の内部自由度とフェルミ統計性に起因する演算の繰り返しの回数を、unified contraction法よりも数分の一程度に短縮することに成功した。C++で書かれたプログラムとして実装することにも成功している。さらに、このC++プログラムは、格子QCD共通コード(Bridge++)と組み合わせて計算することが可能である。大型計算機としてBlueGene/Q上で、分散メモリ用の並列処理(MPI)と共有メモリ用の並列処理(OpenMP)を同時に利用したハイブリッド並列実行が可能であり、MPI並列数とスレッド並列数の様々な組み合わせにおいて安定して効率よく計算が行えることを確認した。これらの成果について、平成25年のLATTICE国際会議でポスター発表を行っている。格子QCD計算については、なるべく現実に近いクォーク質量領域で、かつ相互作用の到達距離が収まる程度に充分大きな空間体積を持つような計算を引き続き行う。その際、使用する計算機に応じて、必要であれば、さらに詳細なプログラムのパフォーマンスチューニングを行う。ハイパー核の少数多体系の原子核構造計算は、確率論的変分法によって行う。これは、基底関数の空間部分を相関ガウスおよびグローバルベクトルによって表現するものであり、他のガウス基底関数展開による方法に比べてより大きな質量数を持つ系への適用が容易であるという特徴を持つ。例えばΛΛーNΞーΛΣーΣΣの結合チャネルによる6体計算が可能である。プログラムは担当者が自ら作成しFORTRANで書かれており、MPIによる並列計算も既に実装されている。共有メモリ型の並列計算用のプログラム開発も、必要であれば進めていく。
KAKENHI-PUBLICLY-25105505
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25105505
ベンガル農村におけるインフォーマル金融とフォーマル金融の相互作用
本研究の目的はインフォーマル金融とフオーマル金融との相互作用を明らかにすることである。すなわち、インフォーマル金融の存在がフォーマル金融機関の資金回収率および資金需要に与える効果、また、フォーマル金融プログラムの導入・拡大によるインフォーマルな金融取引への影響について考察することを最終的な目的としている。本年度は咋年度までのファインディングを整理するとともに、国際協力銀行の農村開発信用事業事後評価ミッションに参加し、コミラ県G村でデータ収集作業を実施した。昨年までのG村およびT村での調査結果からは、(1)インフォーマルな金融取引における主要な資金余剰主体は上位貧困層(the upper poor)であり全体として資金は貧困層から富裕層へと流れていること、(2)インフォーマルな貯蓄信用講は農村住民にとって消費の安定化をはかるだけでなく新しい投資(G村の事例では海外出稼ぎ)機会を享受するためにも貢献していること、などが両村で観察されることが明らかになっていた。本年度のデータ収集作業からは、明らかになりつつあった地域的差異、すなわち、非農業部門の発展度の差によって、資金の投資先やフォーマル金融のパフォーマンスに相違が見られることを確認できた。非農業部門の発達したG村では富裕層には離農傾向が見られるのに対して、非農業部門が未発達のT村では富裕層の多くは農地を集積し経営規模を拡大している。T村でのマイクロファイナンス事業のパフォーマンスは思わしくなく、借手が多重債務に陥っている状況であるといってよい。今後はこれまで収集した調査データの整理を進め、論文を仕上げる予定である。本研究の目的はインフォーマル金融とフォーマル金融との相互作用を明らかにすることである。すなわち、インフォーマル金融の存在がフォーマル金融機関の資金回収率および資金需要に与える効果、また、フォーマル金融プログラムの導入・拡大によるインフォーマルな金融取引への影響について考察することを最終的な目的としている。本年度はその準備段階として、バングラデシュの2カ村(コミラ県G村、ボグラ県T村)での調査データ(1996、98、99年)を整理するとともに、2001年1月に同じ2カ村で再調査を実施した。1998年までのG村での調査結果からは、(1)インフォーマルな金融取引における主要な資金余剰主体は上位貧困層(the upper poor)であり全体として資金は貧困層から富裕層へと流れていること、(2)インフォーマルな貯蓄信用講は農村住民にとって消費の安定化をはかるだけでなく新しい投資(G村の事例では海外出稼ぎ)機会を享受するためにも貢献していること、などが明らかになっていた。本年度、1999年のT村での調査データを整理することにより、上の2点に関してはG村と同じ傾向がT村でも見られることが分かった。その一方で、非農業部門の発展度の差によって、資金の投資先やフォーマル金融のパフォーマンスに相違点が見られることも明らかになりつつある。非農業部門の発達したG村では富裕層には離農傾向が見られるのに対して、非農業部門が未発達のT村では富裕層の多くは農地を集積し経営規模を拡大している。T村でのマイクロファイナンス事業のパフォーマンスは思わしくなく、借手が多重債務に陥っている状況も見られた。2001年1月に実施した現地調査では、農村部での農業・非農業の収益率を把握するためのデータ収集を行った。現在、そのデータの整理を行っているところである。本研究の目的はインフォーマル金融とフオーマル金融との相互作用を明らかにすることである。すなわち、インフォーマル金融の存在がフォーマル金融機関の資金回収率および資金需要に与える効果、また、フォーマル金融プログラムの導入・拡大によるインフォーマルな金融取引への影響について考察することを最終的な目的としている。本年度は咋年度までのファインディングを整理するとともに、国際協力銀行の農村開発信用事業事後評価ミッションに参加し、コミラ県G村でデータ収集作業を実施した。昨年までのG村およびT村での調査結果からは、(1)インフォーマルな金融取引における主要な資金余剰主体は上位貧困層(the upper poor)であり全体として資金は貧困層から富裕層へと流れていること、(2)インフォーマルな貯蓄信用講は農村住民にとって消費の安定化をはかるだけでなく新しい投資(G村の事例では海外出稼ぎ)機会を享受するためにも貢献していること、などが両村で観察されることが明らかになっていた。本年度のデータ収集作業からは、明らかになりつつあった地域的差異、すなわち、非農業部門の発展度の差によって、資金の投資先やフォーマル金融のパフォーマンスに相違が見られることを確認できた。非農業部門の発達したG村では富裕層には離農傾向が見られるのに対して、非農業部門が未発達のT村では富裕層の多くは農地を集積し経営規模を拡大している。T村でのマイクロファイナンス事業のパフォーマンスは思わしくなく、借手が多重債務に陥っている状況であるといってよい。今後はこれまで収集した調査データの整理を進め、論文を仕上げる予定である。
KAKENHI-PROJECT-12760148
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12760148
TGF-βとMMP-12の動態解析による肺気腫の形成機序解明と増殖因子による再生
エラスターゼ誘導肺気腫マウスにおける肺胞洗浄液中のTGF-β蛋白量と肺組織中のMMP-12mRNA発現量の測定にて、同マウスでは経時的にTGF-βが低下しMMP-12は増加することがわかった。TGF-βとMMP-12の発現相反性は既に複数で報告されている。エラスターゼ誘導肺気腫マウスに対するHGFを投与にて、投与条件により肺気腫の改善も増悪も認めた。改善は急性期の炎症を過ぎた時期、エラスターゼの気管内投与後3週間後にHGFを皮下注射にて連日投与した場合であった。肺気腫病変の改善は定圧伸展して固定した摘出肺の肺胞径を解析ソフトを用いて測定した。改善の機序は血管内皮細胞と肺胞上皮細胞の増殖促進であることがPCNAによる免疫染色で確認された。すなわちHGF投与群ではPBS投与群に比較しPCNA陽性細胞の比率が高かった。一方で肺気腫病変が悪化したのはエラスターゼ投与直後の急性期にHGFを気管内投与または皮下注射による投与をした場合であった。その機序は抗線維化薬の可能性が謳われているように、TGF-bの低下であることが肺胞洗浄液を用いてELISAで行った蛋白量の測定、肺組織を用いてPCRで行ったmRNA発現量の測定で確認された。すなわちHGF投与群では蛋白量・mRNA発現量ともPBS投与群に比較して低値であった。HGFによりTGF-bが低下し炎症による細胞外マトリックスの増加が抑制されることが肺気腫悪化の原因であると思われた。今回の実験では慢性期にHGFを気管内投与すると肺気腫が改善するかどうかを調べておらず、喫煙によるひと肺気腫とエラスターゼ誘導肺気腫では肺気腫形成過程が異なる点もあるが、肺気腫患者において、禁煙後つまり急性炎症が治まったときにHGFを投与すると肺気腫病変が改善する可能性が示された。HGFは各種領域で再生作用が報告され、胎児期の肺形成にも重要な物質であることに注目し、Elastase誘導肺気腫モデルマウスを作製し、HGFの気道内投与にて肺気腫病変の改善を図った。しかし組織学的検討(肺胞径測定)にて肺気腫はHGF投与にて悪化が認められた。肺組織のmRNAレベル・BAL中の蛋白レベルのサイトカイン等(TGF-β・MMP-12等)の測定にてHGFにてTGF-βが抑制されその結果MMP-12が増加することが確認された。このことは肺気腫悪化の一因と考えられた。HGFにて肺気腫の改善がみられなかった為、HGFにかえて同モデルに対してSTATINを腹腔内投与したところ、肺気腫の改善が見られた。STATINは近年Pro-inflammatoryサイトカインやMMPを抑える抗炎症作用が動脈硬化やリウマチ等の領域で、血管新生作用が下肢・心臓虚血病変にて報告されている。肺気腫改善の機序を免疫染色による細胞増殖の程度の比較・肺組織のmRNAレベルやBAL中の蛋白レベルのサイトカイン等の測定で検討した結果では、炎症性サイトカインの抑制は著明でなく増殖期細胞の増加を認め、抗炎症作用よりも傷害肺病変の細胞増殖促進・内皮機能改善作用が肺気腫改善の原因となっていることが示唆された。現在その確認のために骨髄幹細胞・内皮前駆細胞の関与を末梢血中やBAL中の内皮前駆細胞の増加があるかを調べ、内皮機能を反映するVEGFやp-selectinの測定を予定している。エラスターゼ誘導肺気腫マウスにおける肺胞洗浄液中のTGF-β蛋白量と肺組織中のMMP-12mRNA発現量の測定にて、同マウスでは経時的にTGF-βが低下しMMP-12は増加することがわかった。TGF-βとMMP-12の発現相反性は既に複数で報告されている。エラスターゼ誘導肺気腫マウスに対するHGFを投与にて、投与条件により肺気腫の改善も増悪も認めた。改善は急性期の炎症を過ぎた時期、エラスターゼの気管内投与後3週間後にHGFを皮下注射にて連日投与した場合であった。肺気腫病変の改善は定圧伸展して固定した摘出肺の肺胞径を解析ソフトを用いて測定した。改善の機序は血管内皮細胞と肺胞上皮細胞の増殖促進であることがPCNAによる免疫染色で確認された。すなわちHGF投与群ではPBS投与群に比較しPCNA陽性細胞の比率が高かった。一方で肺気腫病変が悪化したのはエラスターゼ投与直後の急性期にHGFを気管内投与または皮下注射による投与をした場合であった。その機序は抗線維化薬の可能性が謳われているように、TGF-bの低下であることが肺胞洗浄液を用いてELISAで行った蛋白量の測定、肺組織を用いてPCRで行ったmRNA発現量の測定で確認された。すなわちHGF投与群では蛋白量・mRNA発現量ともPBS投与群に比較して低値であった。HGFによりTGF-bが低下し炎症による細胞外マトリックスの増加が抑制されることが肺気腫悪化の原因であると思われた。今回の実験では慢性期にHGFを気管内投与すると肺気腫が改善するかどうかを調べておらず、喫煙によるひと肺気腫とエラスターゼ誘導肺気腫では肺気腫形成過程が異なる点もあるが、肺気腫患者において、禁煙後つまり急性炎症が治まったときにHGFを投与すると肺気腫病変が改善する可能性が示された。
KAKENHI-PROJECT-16790453
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16790453
高信頼度核医学パラメトリック画像の高速生成手法に関する研究
前年度において確立した、2-コンパートメント-2-パラメータモデルを対象とした本手法を、今年度は3-コンパートメントモデルへ拡大した。3-コンパートメントモデルにおいては、組織放射能曲線(tTAC)の形状を決定するパラメータは、k_2,k_3の二つとなることから、tTACの特徴付ける2種類のRを実データから算出することによって、クラスタリングを行った。その結果、人脳のFDGについて、妥当なパラメトリック画像を2分程度の計算時間で作成することができた。また計算機シミュレーションによれば、本手法は通常のROIを用いた動態解析とほぼ同等の推定精度を有することが判った。3-コンパートメントモデルは、PETにおける典型的な放射性薬剤であるFDGを記述する動態モデルであり、これへの適用の拡大は、本手法の実用性を高めるものである。1.高信頼度化の方法2-コンパートメント-2-パラメータモデルを対象として、組織放射能抽線(tTAC)の積分と、tTACとフレーム時刻との積に対する積分との比(R)が、k_2と一意に対応していることを、シミュレーションおよび臨床データの検討を通して確認した。従って、同様のRを有する画素を集め、この中でtTACを平均化することによって、画素単位でtTACに含まれる雑音を抑制しつつ、高速でK値に対するパラメトリック画像の作成が可能となった。2.処理系作成本手法に基づく処理系を作成した。これを用いて処理を行った場合、128×128画素14フレームのデータに対して、概ね30秒程度の計算時間であり、従来の画素単位での推定の比較して、パラメータの推定精度は、20倍程度改善された。実際に、側頭葉癲癇の症例に関する、_<11>C-Flumazenil投与による臨床データを処理したところ、ディストリビューションボリュームの画像において、癲癇焦点を明確に描出することを得た。3.今後の予定本手法を_<18>F-FDGの解析で多用される、3-コンパートメント-3-パラメータモデルに拡張したうえで、脳変性疾患を中心とした臨床画像に本手法を適用し、本手法の可用性を検討していく予定である。また、画素のクラスタリング方法に対して、統計モデルを導入することによって、クラスタリングの精度を向上を図る。前年度において確立した、2-コンパートメント-2-パラメータモデルを対象とした本手法を、今年度は3-コンパートメントモデルへ拡大した。3-コンパートメントモデルにおいては、組織放射能曲線(tTAC)の形状を決定するパラメータは、k_2,k_3の二つとなることから、tTACの特徴付ける2種類のRを実データから算出することによって、クラスタリングを行った。その結果、人脳のFDGについて、妥当なパラメトリック画像を2分程度の計算時間で作成することができた。また計算機シミュレーションによれば、本手法は通常のROIを用いた動態解析とほぼ同等の推定精度を有することが判った。3-コンパートメントモデルは、PETにおける典型的な放射性薬剤であるFDGを記述する動態モデルであり、これへの適用の拡大は、本手法の実用性を高めるものである。
KAKENHI-PROJECT-10770439
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関係発達論による認知症の人のエンド・オブ・ライフケアの構築―日瑞の比較を通して―
本研究は、認知症の人のグループホームにおいて長期間の関与観察を実施し、「認知症の人とその家族、支援者はどのように認知症とともに生きる枠組みを作り上げていっているのか」を明らかにする。また、日本とスウェーデンの両国で調査を行うことにより、認知症の人と家族・スタッフとの関係性の日本人の特徴、現在の日本社会が自明としている文化的環境、価値基盤、社会システムの特徴を明らかにする。本研究は、認知症の人のグループホームにおいて長期間の関与観察を実施し、「認知症の人とその家族、支援者はどのように認知症とともに生きる枠組みを作り上げていっているのか」を明らかにする。また、日本とスウェーデンの両国で調査を行うことにより、認知症の人と家族・スタッフとの関係性の日本人の特徴、現在の日本社会が自明としている文化的環境、価値基盤、社会システムの特徴を明らかにする。
KAKENHI-PROJECT-19K02204
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合成ポリペプチドやたんぱく質を分子骨格とした酸化還元分子集合系の作製と機能発現
剛直な構造をもつα-ヘリックスポリペプチドを分子骨格とし、その側鎖にレドックス基を配列させた新規高分子を合成した。レドックス基をできるだけ高密度で規則配列させるため、側鎖自由度の小さい非天然アミノ酸L-2-アンスラキノニルアラニンを用い、それを含むポリペプチドをNCA法で合成した。片末端にポリエチレングリコールを結合し溶解性を高めたポリペプチド1、および両端にαヘリックス構造のポリ(γベンジルグルタメート)を結合し、溶解性を高めると同時にαヘリックス構造をとるように設計したポリペプチド2の2種類を作製した。ポリペプチド1の円二色性スペクトルはアンスラキノニル基が不斉な環境にある事を示したが、ポリペプチド主鎖はヘリックスとは異なる構造であることが分かった。不規則にかつ高密度に存在するアンスラキノニル基間の相互作用により、会合体の存在が予想される。一方、ポリペプチド2はヘリックス構造を取っていることが示された。この場合アンスラキノニル基がヘリックス骨格で支持されており、電子の移動はできるが会合体などの形成は抑制されていることが予想される。サイクリックボルタンメトリーや電極による酸化還元前後のスペクトル変化が測定された。ヘリックス骨格に支持されたアンスラキノニル基は動きが制限され、会合による妨害なしに電子の遠距離メディエーションを行う可能性が期待される。剛直な構造をもつα-ヘリックスポリペプチドを分子骨格とし、その側鎖にレドックス基を配列させた新規高分子を合成した。レドックス基をできるだけ高密度で規則配列させるため、側鎖自由度の小さい非天然アミノ酸L-2-アンスラキノニルアラニンを用い、それを含むポリペプチドをNCA法で合成した。片末端にポリエチレングリコールを結合し溶解性を高めたポリペプチド1、および両端にαヘリックス構造のポリ(γベンジルグルタメート)を結合し、溶解性を高めると同時にαヘリックス構造をとるように設計したポリペプチド2の2種類を作製した。ポリペプチド1の円二色性スペクトルはアンスラキノニル基が不斉な環境にある事を示したが、ポリペプチド主鎖はヘリックスとは異なる構造であることが分かった。不規則にかつ高密度に存在するアンスラキノニル基間の相互作用により、会合体の存在が予想される。一方、ポリペプチド2はヘリックス構造を取っていることが示された。この場合アンスラキノニル基がヘリックス骨格で支持されており、電子の移動はできるが会合体などの形成は抑制されていることが予想される。サイクリックボルタンメトリーや電極による酸化還元前後のスペクトル変化が測定された。ヘリックス骨格に支持されたアンスラキノニル基は動きが制限され、会合による妨害なしに電子の遠距離メディエーションを行う可能性が期待される。
KAKENHI-PROJECT-07215256
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睡眠発現機序に関連する視床下部下垂体系を中心とした神経内分泌学的検討
今年度はそれまでヒト成長ホルモン(GH)の分泌について、睡眠覚醒リズムとの関連について以前から行ってきた成果をまとめた。その結果、GHにはこれまで知られていた睡眠に依存する成分の他に固有の日内リズムが存在することを明らかにし、Journal of Neuroendocrinology上に発表した。次に、GRF(Growth Hormone Releasing Factor)の測定系を確立することに主眼をおいた。まず、これまでGHのエンザイムノアッセイで用いた、マレイミド・ヒンジ法による抗体作成法を応用しGRFにマレイミド・ヒンジを用いてBovine Serum Albumin(BSA)を結合させ、そのconjugateで野兎を免疫する方法を試みた。しかしGRFの分子構造から、GRFにチオール基を導入することが困難で、収率が非常に悪く、次にBSAにマレイミド基を導入したものとカップルさせるとわずかなGRF-BSA結合体しか生成できず、必要量を得るには大量にGRFを消費することから、このconjugateで野兎を免疫し抗血清を作成することは費用の面からも現実的ではないことがわかった。次にGRFのN端及びC端ペプチドとKLHの複合体を作成する方法を採り、この複合体を等量のアジェバントとともに乳化させたもので兎を免疫した。兎から得られた抗血清をHi Trap Protein Aカラム、KLH-NHSカラムを用いて精製し、反応性を調べた。抗原をGRFとし固相抗体にProtein A精製した抗GRF抗体を2種類、すなわち抗GRF(1-29)抗体(N端認識)と抗GRF抗体(30-44)抗体(C端認識)を標識し二次抗体にそれぞれ同じ抗GRF抗体を用いたELISAで確認したところ、C端認識抗体で測定感度が0.1-20ng/mlという結果を得た。しかし、この方法では従来のラジオイムノアッセイとほとんど大差なくより少量で高感度の抗体を得るべく現在同じ抗体作成法で検討中である。今年度はそれまでヒト成長ホルモン(GH)の分泌について、睡眠覚醒リズムとの関連について以前から行ってきた成果をまとめた。その結果、GHにはこれまで知られていた睡眠に依存する成分の他に固有の日内リズムが存在することを明らかにし、Journal of Neuroendocrinology上に発表した。次に、GRF(Growth Hormone Releasing Factor)の測定系を確立することに主眼をおいた。まず、これまでGHのエンザイムノアッセイで用いた、マレイミド・ヒンジ法による抗体作成法を応用しGRFにマレイミド・ヒンジを用いてBovine Serum Albumin(BSA)を結合させ、そのconjugateで野兎を免疫する方法を試みた。しかしGRFの分子構造から、GRFにチオール基を導入することが困難で、収率が非常に悪く、次にBSAにマレイミド基を導入したものとカップルさせるとわずかなGRF-BSA結合体しか生成できず、必要量を得るには大量にGRFを消費することから、このconjugateで野兎を免疫し抗血清を作成することは費用の面からも現実的ではないことがわかった。次にGRFのN端及びC端ペプチドとKLHの複合体を作成する方法を採り、この複合体を等量のアジェバントとともに乳化させたもので兎を免疫した。兎から得られた抗血清をHi Trap Protein Aカラム、KLH-NHSカラムを用いて精製し、反応性を調べた。抗原をGRFとし固相抗体にProtein A精製した抗GRF抗体を2種類、すなわち抗GRF(1-29)抗体(N端認識)と抗GRF抗体(30-44)抗体(C端認識)を標識し二次抗体にそれぞれ同じ抗GRF抗体を用いたELISAで確認したところ、C端認識抗体で測定感度が0.1-20ng/mlという結果を得た。しかし、この方法では従来のラジオイムノアッセイとほとんど大差なくより少量で高感度の抗体を得るべく現在同じ抗体作成法で検討中である。
KAKENHI-PROJECT-07770779
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07770779
エピタキシャル成長の動的素過程の時間分解測定法の開発と反応種の表面泳動の研究
半導体エピタキシャル成長における固相-気相界面反応の動的素過程を"捉え"かつ"制御"することは、原子尺度で制御された積層構造を実現する上で不可欠の題題である。本研究では、反応種の表面泳動に加えて、Ge/Si系における原子の表面偏析過程について調べ、偏析を制御する方法を明らかにした。Ar^+レーザ光の照射が成長過程に及ぼす影響を、ガスソースMBEを用いたSi/SiおよびGe/Siエピタキシャル成長に対して明らかにした。Ar^+レーザ光はほとんど気相中の分子を励起しないため、表面励起による成長過程の変化を捉えることができる。光照射により観測された特徴的な実験結果は、成長速度の促進とRHEED強度振動の消失が起こる成長温度の低下が見られた点である。光照射による成長速度の促進は、本実験条件では、約0.1MLの表面吸着水素が光脱離し、反応種の吸着サイトが増加するためであると考えられる。また、同時にRHEED強度振動の時間的減衰が観測され、吸着水素の光脱離により反応種の表面泳動が促進されたと考えられる。さらに、RHEED強度振動がより低基板温度で消失することも、反応種の表面泳動の促進によるステップ前進モード成長の促進として解釈できる。Si基板上にGe膜を16層成長させ、さらにその上にSi膜をエピタキシャル成長させた場合について、表面の偏析過程を調べた。その結果、ガスソースMBEの成長条件を最適化することで、減衰長を固体ソースMBEの場合の1/21/8に低下させることができた。偏析機構は固体ソースMBEの場合と同様のTwo-site exchange modelで説明できるが、ガスソースMBEでは水素原子が成長表面の未結合手を終端することで、見かけ上の偏析による自由エネルギー変化を小さくしていると考えられる。以上の結果より、反応種の表面泳動や表面偏析などの動的な表面反応過程に水素原子が深く関与しており、またその過程の制御の可能性を明らかにした。半導体エピタキシャル成長における固相-気相界面反応の動的素過程を"捉え"かつ"制御"することは、原子尺度で制御された積層構造を実現する上で不可欠の題題である。本研究では、反応種の表面泳動に加えて、Ge/Si系における原子の表面偏析過程について調べ、偏析を制御する方法を明らかにした。Ar^+レーザ光の照射が成長過程に及ぼす影響を、ガスソースMBEを用いたSi/SiおよびGe/Siエピタキシャル成長に対して明らかにした。Ar^+レーザ光はほとんど気相中の分子を励起しないため、表面励起による成長過程の変化を捉えることができる。光照射により観測された特徴的な実験結果は、成長速度の促進とRHEED強度振動の消失が起こる成長温度の低下が見られた点である。光照射による成長速度の促進は、本実験条件では、約0.1MLの表面吸着水素が光脱離し、反応種の吸着サイトが増加するためであると考えられる。また、同時にRHEED強度振動の時間的減衰が観測され、吸着水素の光脱離により反応種の表面泳動が促進されたと考えられる。さらに、RHEED強度振動がより低基板温度で消失することも、反応種の表面泳動の促進によるステップ前進モード成長の促進として解釈できる。Si基板上にGe膜を16層成長させ、さらにその上にSi膜をエピタキシャル成長させた場合について、表面の偏析過程を調べた。その結果、ガスソースMBEの成長条件を最適化することで、減衰長を固体ソースMBEの場合の1/21/8に低下させることができた。偏析機構は固体ソースMBEの場合と同様のTwo-site exchange modelで説明できるが、ガスソースMBEでは水素原子が成長表面の未結合手を終端することで、見かけ上の偏析による自由エネルギー変化を小さくしていると考えられる。以上の結果より、反応種の表面泳動や表面偏析などの動的な表面反応過程に水素原子が深く関与しており、またその過程の制御の可能性を明らかにした。本研究では、気相-固相界面反応における動的素過程に関する知見を得るために、反応分子・原子の表面マイグレーションを評価し、それを支配している要因を明らかにすることを目的としている。特に、本年度は、RHEED強度解析装置と分子線源を用いてRHEED強度振動の時間変化を追跡するための装置と表面の微視的状態を観察するための表面極微状態観察装置を組み合せた装置を試作すること、およびそれを用いた予備的な実験をすることを行なった。装置の試作に関しては、ほぼ予定通りに進行し、成長およびRHEED観察用チェンバ、表面極微状態察用チェンバおよび試料導入チェンバの3室構成の装置を試作した。真空系の到達真空度は3x10^<-10>Torrであり、0.24A/secの蒸着速度の検出能力を備えているために、反応種の供給量を原子層オーダ以下でもコントロール可能になっている。RHEED強度振動解析装置では、サンプリング率8.3x10^<-8>sec/channel、0.026sen/frameの測定が可能である。また、表面極微状態観察装置では、数A以上の分解能で1000Ax1000Aの領域の観察が可能であることを確認した。ジシランガスを用いたSi(100)-2x1清浄表面へのホモエピタキシャル成長過程を、RHEED強度の時間変化から調べた。その結果、基板温度が高くなると、成長モードは2次元核形成モードからステップ前進モードに変化するが、その温度は供給ガス分圧に依存することが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-04402017
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04402017
エピタキシャル成長の動的素過程の時間分解測定法の開発と反応種の表面泳動の研究
また、低温での2次元核形成モードにおいて、第一層目が成長するまでの時間は第二層目の成長時間に比較して短いことが観察された。これは、二層目以降では基板表面上に水素が吸着することにより、反応種の吸着反応速度が変化するとして解釈できる。成長速度から求めたジシランガスの実効的な吸着反応速度係数は0.10.2であり、シランガスの約100倍の値であることが分かった。半導体エピタキシャル成長における固相-気相界面反応の動的素過程を"捉え"かつ"制御"することは、原子尺度で制御された積層構造を実現する上で不可欠の課題である。本年度の研究では、反応種の表面泳動に加えて、Ge/Si系における原子の表面偏析過程について調べ、偏析を制御する方法を明らかにした。Ar^+レーザ光の照射が成長過程に及ぼす影響を、ガスソースMBEを用いたSi/SiおよびGe/Siエピタキシャル成長に対して明らかにした。Ar^+レーザ光はほとんど気相中の分子を励起しないため、表面励起による成長過程の変化を捉えることができる。光照射により観測された特徴的な実験結果は、成長速度の促進とRHEED強度振動の消失が起こる成長温度の低下が見られた点である。光照射による成長速度の促進は、本実験条件では、約0.1MLの表面吸着水素が光脱離し、反応種の吸着サイトが増加するためであると考えられる。また、同時にRHEED強度振動の時間的減衰が観測され、吸着水素の光脱離により反応種の表面泳動が促進されたと考えられる。さらに、RHEED強度振動がより低基板温度で消失することも、反応種の表面泳動の促進によるステップ前進モード成長の促進として解釈できる。Si基板上にGe膜を16層成長させ、さらにその上にSi膜をエピタキシャル成長させた場合について、表面の偏析過程を調べた。その結果、ガスソースMBEの成長条件を最適化することで、減衰長を固体ソースMBEの場合の1/21/8に低下させることができた。偏析機構は固体ソースMBEの場合と同様のTwo-site exchange modelで説明できるが、ガスソースMBEでは水素原子が成長表面の未結合手を終端することで、見かけ上の偏析による自由エネルギー変化を小さくしていると考えられる。以上の結果より、反応種の表面泳動や表面偏析などの動的な表面反応過程に水素原子が深く関与しており、またその過程の制御の可能性を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-04402017
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04402017
内部磁石形同期電動機の過渡安定度に関する研究
本研究の目的は、内部磁石形同期電動機の過渡安定度を解析と実験とにより解明し、内部磁石形同期電動機の定常運転時の定格出力を何%にしたらよいかを、具体的に決定するデータを提供することである。本研究の期間は平成9年度から平成11年度の3年間である。平成10年度は2年目であり、平成9年度における内部磁石形同期電動機の過渡安定度解析結果に基づいて、2種類の4極の回転子を9個試作した。試作回転子の永久磁石にはエネルギー積38MGOeのNd-Fe-B磁石を用いた。試作機の1つの種類は、かご形巻線をもつ自己始動形内部磁石同期電動機で反作用トルクと永久磁石トルクが有効利用できる構造で、しかも、かご形巻線を深溝形とし、渦電流によるダンパー効果を大きくしている。これを3個試作した。もう一つの種類は、かご形巻線をもたない構造のもので、上記の自己始動形回転子のかご形巻線を除いた構造のものと、比較検討の回転子として電気自動車等でよく用いられる埋め込み磁石同期電動機と同じ構造のものをそれぞれ3個試作した。平成11年度において、試作電動機の定常特性、負荷急変時の過渡特性を測定し、実験結果と解析結果から、上記2種類の過渡安定度を解明し、過渡安定度の観点から、定格出力点を決定する予定である。これらの研究成果の一部は本年5月に電気学会論文誌Dに掲載予定である。また、昨年の5月と8月の電気学会回転機研究会で既に発表済みである。本研究の目的は、内部磁石形同期電動機の過渡安定度を解析と実験とにより解明し、内部磁石形同期電動機の定常運転時の定格出力を最大出力の何%にしたらよいのかを、具体的に決定するデータを提供することである。本研究の期間は平成9年度から平成11年度の3年間である。平成9年度は本研究の初年度であり、平成10年度に試作予定の内部磁石形同期電動機の過渡安定度の解析を行った。ここで、内部磁石同期電動機の固定子には市販の誘導電動機を使用、回転子構造は定格電圧の下でリラクタンストルクを最大限利用したもので、永久磁石の体積を極力小さくしている点に特長がある。試作電動機の一つは、回転子にかご形巻線を内部磁石形同期電動機である。もう一つは、かご形巻線をもたない内部磁石同期電動機である。本年度は、これらの電動機を平衡三相交流電源で定電圧駆動した場合の負荷急変時の過渡安定度解析を行った。ここでは、筆者が独自に開発した「慣性モーメントと空間高調波の影響を厳密に考慮した永久磁石同期電動機の過渡特性解析法」を用いて、上述の二種類の電動機の定常負荷特性と負荷急変時の過渡特性の解析を行った。本研究での成果は以下のようになる。1.負荷急変時の過渡特性解析では、電磁界方程式、電気回路方程式、運動方程式に適用する時間差分値は、空間高調波磁束によるトルク脈動を考慮して、十分小さい値としなければならないことを示した。2.かご形巻線は負荷急変時のダンパー効果に大きく寄与していることを明らかにした。3.ダンパー効果を考慮できない等面積法に比べて、ダンパー効果を考慮した本解析では過渡安定極限電力がかなり大きくなっていることがわかった。これらの研究成果の一部は本年5月及び8月開催の電気学会回転機研究会に報告予定である。本研究の目的は、内部磁石形同期電動機の過渡安定度を解析と実験とにより解明し、内部磁石形同期電動機の定常運転時の定格出力を何%にしたらよいかを、具体的に決定するデータを提供することである。本研究の期間は平成9年度から平成11年度の3年間である。平成10年度は2年目であり、平成9年度における内部磁石形同期電動機の過渡安定度解析結果に基づいて、2種類の4極の回転子を9個試作した。試作回転子の永久磁石にはエネルギー積38MGOeのNd-Fe-B磁石を用いた。試作機の1つの種類は、かご形巻線をもつ自己始動形内部磁石同期電動機で反作用トルクと永久磁石トルクが有効利用できる構造で、しかも、かご形巻線を深溝形とし、渦電流によるダンパー効果を大きくしている。これを3個試作した。もう一つの種類は、かご形巻線をもたない構造のもので、上記の自己始動形回転子のかご形巻線を除いた構造のものと、比較検討の回転子として電気自動車等でよく用いられる埋め込み磁石同期電動機と同じ構造のものをそれぞれ3個試作した。平成11年度において、試作電動機の定常特性、負荷急変時の過渡特性を測定し、実験結果と解析結果から、上記2種類の過渡安定度を解明し、過渡安定度の観点から、定格出力点を決定する予定である。これらの研究成果の一部は本年5月に電気学会論文誌Dに掲載予定である。また、昨年の5月と8月の電気学会回転機研究会で既に発表済みである。
KAKENHI-PROJECT-09650306
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650306
全ゲノム連鎖解析による小児気管支喘息・アトピー関連遺伝子の同定
日本人アトピー性気管支喘息全ゲノム連鎖解析の連鎖領域を中心に喘息疾患感受性遺伝子のポジショナルクローニングを行った。5番染色体長腕(5q31-q33)領域では伝達不平衡解析の結果、連鎖領域内の遺伝子Xが喘息発症と有意に関連していることを見出した(p=0.00017)。現在は多型の機能解析をおこなっている。6番染色体領域については先にTNFAの多型と喘息発症との関連を報告した(Noguchi et al.,2003)。TNFA領域には免疫関連遺伝子が多数存在し、関連の見られたTNFA多型と連鎖不平衡にある多型が喘息発症に関連している可能性がある。そこで喘息患者家系を用いてTNFA周辺遺伝子の多型の遺伝子型を決定し、伝達不平衡解析をおこなったところLTA遺伝子のプロモーター領域の多型と喘息発症が関連していることを見出した。現在ルシフェラーゼによるレポーターアッセイをおこなっており、本多型の機能について検討を加えている。13番染色体領域について全ゲノム解析で関連の認められたマイクロサテライトマーカーの近傍にあるCYSLT2遺伝子に焦点をしぼり、RACE法による完全長cDNAの取得と組織における発現解析、CYSLT2遺伝子内の多型と喘息発症との関連を検討した。RACE法の結果ではCYSLT2遺伝子が4つのエクソンからなり、また多型解析の結果ではCYSLT2のイントロン多型と喘息発症が関連することを見出した(p=0.0066)。日本人アトピー性気管支喘息全ゲノム連鎖解析の連鎖領域を中心に喘息疾患感受性遺伝子のポジショナルクローニングを行った。5番染色体長腕(5q31-q33)領域では伝達不平衡解析の結果、連鎖領域内の遺伝子Xが喘息発症と有意に関連していることを見出した(p=0.00017)。現在は多型の機能解析をおこなっている。6番染色体領域については先にTNFAの多型と喘息発症との関連を報告した(Noguchi et al.,2003)。TNFA領域には免疫関連遺伝子が多数存在し、関連の見られたTNFA多型と連鎖不平衡にある多型が喘息発症に関連している可能性がある。そこで喘息患者家系を用いてTNFA周辺遺伝子の多型の遺伝子型を決定し、伝達不平衡解析をおこなったところLTA遺伝子のプロモーター領域の多型と喘息発症が関連していることを見出した。現在ルシフェラーゼによるレポーターアッセイをおこなっており、本多型の機能について検討を加えている。13番染色体領域について全ゲノム解析で関連の認められたマイクロサテライトマーカーの近傍にあるCYSLT2遺伝子に焦点をしぼり、RACE法による完全長cDNAの取得と組織における発現解析、CYSLT2遺伝子内の多型と喘息発症との関連を検討した。RACE法の結果ではCYSLT2遺伝子が4つのエクソンからなり、また多型解析の結果ではCYSLT2のイントロン多型と喘息発症が関連することを見出した(p=0.0066)。HPGD2多型が気道過敏性の個体差に影響を与えている可能性を示唆した。SPINKS5のASP368SerとGlu420Lys変異がアトピー性皮膚炎に影響を与えている可能性が示唆された。日本人アトピー性気管支喘息全ゲノム連鎖解析の連鎖領域を中心に喘息疾患感受性遺伝子のポジショナルクローニングを行った。5番染色体長腕(5q31-q33)領域では伝達不平衡解析の結果、連鎖領域内の遺伝子Xが喘息発症と有意に関連していることを見出した(p=0.00017)。現在は多型の機能解析をおこなっている。6番染色体領域については先にTNFAの多型と喘息発症との関連を報告した(Noguchi et al.,2003)。TNFA領域には免疫関連遺伝子が多数存在し、関連の見られたTNFA多型と連鎖不平衡にある多型が喘息発症に関連している可能性がある。そこで喘息患者家系を用いてTNFA周辺遺伝子の多型の遺伝子型を決定し、伝達不平衡解析をおこなったところLTA遺伝子のプロモーター領域の多型と喘息発症が関連していることを見出した。現在ルシフェラーゼによるレポーターアッセイをおなっており、本多型の機能について検討を加えている。13番染色体領域について全ゲノム解析で関連の認められたマイクロサテライトマーカーの近傍にあるCYSLT2遺伝子に焦点をしぼり、RACE法による完全長cDNAの取得と組織における発現解析、CYSLT2遺伝子内の多型と喘息発症との関連を検討した。RACE法の結果ではCYSLT2遺伝子が4つのエクソンからなり、また多型解析の結果ではCYSLT2のイントロン多型と喘息発症が関連することを見出した(P=0.0066)。日本人アトピー性気管支喘息全ゲノム連鎖解析の連鎖領域を中心に喘息疾患感受性遺伝子のポジショナルクローニングを行った。13番染色体領域についてはCysleukotorien2(CYSLT2)遺伝子の完全長cDNAをRACE法により取得し、組織における発現解析を行い、CYSLT2遺伝子内の多型と喘息発症との関連を検討し、CYSLT2のイントロン多型と喘息発症が関連することを見出した。
KAKENHI-PROJECT-14570721
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エマルション望遠鏡によるガンマ線天体高解像観測の実現
宇宙磁場の影響を受けず空間を直進できるγ線を観測することで、「宇宙で起こる高エネルギーな物理現象」を探ることができる。我々は、原子核乾板からなる大口径の望遠鏡を気球に搭載して上空へ打ち上げ、γ線による天体精密観測を目指すGRAINE計画を推進している。荷電粒子に対して優れた空間分解能を誇る原子核乾板でγ→e++eー反応を捉え、γ線の到来方向を0.1°1°程度の精度(エネルギーに依存する)で決定出来る。これは現在観測中の衛星搭載望遠鏡に比べ、約1桁優れた撮像性能であり、原子核乾板望遠鏡によるかつてないγ線高分解能観測が実現できれば、高エネルギー宇宙の新たな姿が明らかになるだろう。2018年4月26日、3度目の気球実験(GRAINE 2018)を豪州にて実施した。検出目標γ線天体「ほ座パルサー」を視野内に捉える気球飛翔、回収、現像を完遂し、予定していた観測に成功した。実験に使用した原子核乾板に記録された飛跡は、名古屋大学で稼働する自動飛跡読取装置を用いてデジタルデータ化され、2018年末までに全ての乾板(総面積約40平米)のデータ取得を完了した。コンバーター部(原子核乾板100枚の積層構造)は、γ線の角度、エネルギーの測定を担う。使用した乾板(38cm×25cm)1枚には、実験時に入射した様々な種類の荷電粒子が遺した飛跡が約1億本記録されている。この飛跡データから途中から始まって2本に分かれる幾何学的な特徴を持った事象を残す選別を行った結果、各乾板から約20000のγ線事象候補が選ばれた。気球飛翔中に宇宙から飛来した陽子は、望遠鏡視野内の物体や乾板自体と反応して2次的なγ線を生成する。これらの現象を利用いて、上空でのγ線角度決定精度を調べたところ、100-300 MeVにおいて1度以下の性能を達成していることが確かめられた。天体観測においても優れたイメージング性能を発揮していることが期待される。2015年に実施した気球実験では観測時に姿勢モニター等で部分的な不具合が生じ、目標としいた天体初検出について未達成となってしまった。今回の2018年実験では、観測機器の不具合の原因を見直し、改良を施した上で実験に臨んだ。その結果、全フライト時間(約17時間)に渡って、全ての機器は正常に動作し、前回実験に見られたデータの不具合は発生しておらず、現在天体検出に向けて解析が進んでいる。特に本研究課題である高解像観測に関しては、100-300 MeVにおいて1度以下の性能を達成していることが確かめられており、天体観測においても優れたイメージング性能を発揮していることが期待される。検出したガンマ線事象に対し、時間情報付与、姿勢決定のデータ解析が進行している。目標天体である「ほ座パルサー」領域について分析を進め、天体の検出有意度、空間的広がりについて結果を出していく。宇宙磁場の影響を受けず空間を直進できるγ線を観測することで、「宇宙で起こる高エネルギーな物理現象」を探ることができる。我々は、原子核乾板からなる大口径の望遠鏡を気球に搭載して上空へ打ち上げ、γ線による天体精密観測を目指すGRAINE計画を推進している。荷電粒子に対して優れた空間分解能を誇る原子核乾板でγ→e++eー反応を捉え、γ線の到来方向を0.1°1°程度の精度(エネルギーに依存する)で決定出来る。これは現在観測中の衛星搭載望遠鏡に比べ、約1桁優れた撮像性能であり、原子核乾板望遠鏡によるかつてないγ線高分解能観測が実現できれば、高エネルギー宇宙の新たな姿が明らかになるだろう。2018年4月26日、3度目の気球実験(GRAINE 2018)を豪州にて実施した。検出目標γ線天体「ほ座パルサー」を視野内に捉える気球飛翔、回収、現像を完遂し、予定していた観測に成功した。実験に使用した原子核乾板に記録された飛跡は、名古屋大学で稼働する自動飛跡読取装置を用いてデジタルデータ化され、2018年末までに全ての乾板(総面積約40平米)のデータ取得を完了した。コンバーター部(原子核乾板100枚の積層構造)は、γ線の角度、エネルギーの測定を担う。使用した乾板(38cm×25cm)1枚には、実験時に入射した様々な種類の荷電粒子が遺した飛跡が約1億本記録されている。この飛跡データから途中から始まって2本に分かれる幾何学的な特徴を持った事象を残す選別を行った結果、各乾板から約20000のγ線事象候補が選ばれた。気球飛翔中に宇宙から飛来した陽子は、望遠鏡視野内の物体や乾板自体と反応して2次的なγ線を生成する。これらの現象を利用いて、上空でのγ線角度決定精度を調べたところ、100-300 MeVにおいて1度以下の性能を達成していることが確かめられた。天体観測においても優れたイメージング性能を発揮していることが期待される。2015年に実施した気球実験では観測時に姿勢モニター等で部分的な不具合が生じ、目標としいた天体初検出について未達成となってしまった。今回の2018年実験では、観測機器の不具合の原因を見直し、改良を施した上で実験に臨んだ。その結果、全フライト時間(約17時間)に渡って、全ての機器は正常に動作し、前回実験に見られたデータの不具合は発生しておらず、現在天体検出に向けて解析が進んでいる。
KAKENHI-PROJECT-18K13562
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K13562
エマルション望遠鏡によるガンマ線天体高解像観測の実現
特に本研究課題である高解像観測に関しては、100-300 MeVにおいて1度以下の性能を達成していることが確かめられており、天体観測においても優れたイメージング性能を発揮していることが期待される。検出したガンマ線事象に対し、時間情報付与、姿勢決定のデータ解析が進行している。目標天体である「ほ座パルサー」領域について分析を進め、天体の検出有意度、空間的広がりについて結果を出していく。次年度早急に執行する。
KAKENHI-PROJECT-18K13562
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K13562
CYP代謝産物による眼内慢性炎症疾患の制御メカニズムの解明と治療法の開発
我々はオメガ3脂肪酸が脈絡膜血管新生に対する抑制効果があることを報告し,その作用機序に免疫細胞による炎症抑制が重要であることを示した。さらに実験的自己免疫性ぶどう膜炎(EAU)モデルを用いて,オメガ3脂肪酸の経口投与によりTh1/Th17経路を介した炎症が抑制されることを報告した。オメガ3脂肪酸の一つであるEPAはチトクロームP450により代謝され、17,18-EEQが産生される。今回,17,18-EEQによる眼炎症抑制効果についてEAUモデルを用いて検討し,17,18-EEQが全身のTh1/Th17細胞産生サイトカインを介して眼炎症を抑制していることが示された。ω-3脂肪酸由来のCYP代謝産物による脈絡膜血管新生(CNV),実験的自己免疫性ぶどう膜炎モデル(EAU)の慢性炎症抑制効果を検証した。具体的には17,18-epoxyeicosatetraenoic acid [EEQ],および19,20-epoxydocosapentaenoic acid [EDP]をEAUモデル(マウス足底部皮内に網膜抗原(IRBP)を免疫して作成)に腹腔内投与し,眼内炎症の程度をEAU臨床スコア,眼球の眼炎症組織スコアで確認した。臨床スコアでは17,18ーEEQを投与したマウスがω-6脂肪酸由来のCYP代謝産物14,15-EETを摂取したマウスよりも有意に低く,19,20-EDPを投与したマウスは抗炎症効果はみられなかった。組織学的スコアにおいても17,18ーEEQを投与したマウスが有意にスコアが低かった。ω-3脂肪酸の抗炎症作用におけるマクロファージをはじめとした抗原提示細胞(antigen presenting cell; APC)の関与について検討した。ω-3脂肪酸あるいは対照の食餌摂取21日後のマウスの脾臓から採取しマイトマイシン処理を行ったAPCと、EAU誘導12日後のマウスのリンパ節から採取し磁気細胞分離したCD4陽性T細胞とをIRBP下に72時間共培養させた。評価はELISA法による炎症性サイトカインの測定、3H-チミジン取込み法によるT細胞増殖能の評価を行った。ω-3脂肪酸摂取群ではω-6脂肪酸摂取群と比較して3H-チミジン取込みとIL-17産生が有意に低下した。IFN-γの産生は各群で有意な差がみられなかった。ω-3脂肪酸摂取による眼炎症抑制効果として、マクロファージを介した免疫制御機構におけるTh17経路の抑制が推測された。ω-3脂肪酸由来のCYP代謝産物による脈絡膜血管新生(CNV),実験的自己免疫性ぶどう膜炎モデル(EAU)の慢性炎症抑制効果を検証するために,繰り返し実験を行ったため,予定よりも実験計画が遅れてしまった。実験結果の再現性などについて確実なものとするため,初年度は特に時間をかけてコアとなるデータの作成を行った。次年度以降はこのデータを元に研究を発展させる予定である。前年度の本研究で,オメガ3脂肪酸により眼内炎症を抑制することがマウスぶどう膜炎モデルで示された。本年度はオメガ3脂肪酸による活性化T細胞の炎症抑制効果をin vitroで検討し,オメガ3脂肪酸を摂取したマウスから採取した抗原提示細胞はTh17細胞を介して活性化T細胞の増殖作用を制御していることが明らかとなった。次にオメガ3の抗原提示細胞(APC)への影響を考えるにあたり,オメガ3摂取-非摂取マウスの脾臓自体の特性の変化をみるために,FACSによる細胞分布の測定を行った。既報と同様に,オメガ3摂取マウスと非摂取マウスに対してIRBP免疫によりマウスぶどう膜炎モデルを発症させ,14日目にsacrificeし炎症の程度をclinical, histologicalで比較したところ,オメガ3摂取マウス群において,有意差をもって炎症スコアが低下した。上記マウスのうち,オメガ3非摂取マウスから採取したリンパ節をMACSによりCD4+ T cellへnegative enrichさせた。これらをfeeder細胞,IRBPと48時間共培養させた。この際用いるfeeder細胞は,既報ではマウスから採取しMMC処理を行った脾臓を用いたが,本実験ではこの脾臓をオメガ3摂取マウスとオメガ3非摂取マウスの2群に分け、Tcellの増殖能および上清のサイトカインについて評価した。結果は,オメガ3摂取マウスの脾臓細胞を用いた群で,有意差をもって3H-thymidine取り込み量が減少し,オメガ3のT cellのみならずAPCに対する作用が予想される結果となった。また,上清のELISAに関しては,IFNγには有意差がなくIL-17のみ低下する結果となっており、繰り返し実験が必要と思われる。次のステップとして,オメガ3のAPCへの影響を考えるにあたり,オメガ3摂取-非摂取マウスの脾臓自体の特性をみるために,FACSによる細胞分布を行う。特にAPCのうち,樹状細胞,マクロファージ,B細胞のいずれを対象に抗炎症作用が働くかを検討予定である。慢性炎症制御におけるCYP代謝産物の作用メカニズムが明らかとなり,新規の治療法開発が順調に進捗している。内因性ぶどう膜炎は高度視力障害の主要原因となる炎症性疾患であるが、治療における様々な副作用が問題となる。
KAKENHI-PROJECT-15K10869
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K10869
CYP代謝産物による眼内慢性炎症疾患の制御メカニズムの解明と治療法の開発
我々は眼内炎症の動物モデルとして確立されているマウス網膜抗原誘導自己免疫性ぶどう膜炎(EAU)モデルを用いて、食餌摂取したオメガ3脂肪酸が自然免疫系の抗原提示細胞の機能を制御し、臨床学的および組織学的に抗炎症効果を示すことが明らかとなった。オメガ3脂肪酸が最終的に眼局所の獲得免疫系であるT細胞由来のIFNーγやIL-17などの炎症性サイトカインを制御して炎症を抑制していたが、その機序は未だ明らかになっていない。活性化T細胞と脾臓由来の抗原提示細胞をin vitroで共培養することで、EAUの発症メカニズムにおける自然免疫と獲得免疫の制御機構について検討し,オメガ3脂肪酸を摂取したマウスの抗原提示細胞はTh17細胞を介して活性化T細胞の増殖作用を制御していることが明らかとなった。さらに,オメガ3脂肪酸がT細胞の活性化に直接関与しているのか,抗原提示細胞を介した細胞間相互作用に作用しているのか検討中である。我々はオメガ3脂肪酸が脈絡膜血管新生に対する抑制効果があることを報告し,その作用機序に免疫細胞による炎症抑制が重要であることを示した。さらに実験的自己免疫性ぶどう膜炎(EAU)モデルを用いて,オメガ3脂肪酸の経口投与によりTh1/Th17経路を介した炎症が抑制されることを報告した。オメガ3脂肪酸の一つであるEPAはチトクロームP450により代謝され、17,18-EEQが産生される。今回,17,18-EEQによる眼炎症抑制効果についてEAUモデルを用いて検討し,17,18-EEQが全身のTh1/Th17細胞産生サイトカインを介して眼炎症を抑制していることが示された。これらの眼炎症効果のメカニズムを探索するために,アラーミンシグナルの解析,マクロファージ活性化およびT細胞分化の機序の解析を行う予定である。Bioplexシステム(Bio-Rad)を用いて炎症性サイトカイン,ケモカインおよび接着分子の発現の程度をスクリーニングする。この結果から得られたデータを元に,網膜および脈絡膜からmRNAおよびタンパク質を回収し,標的となる接着分子の発現の程度をReal-time PCRおよびウェスタンブロット法を用いて確認する。さらに摘出した眼球はOCTコンパウンドに包埋し,凍結切片を作成する。レーザーマイクロダイセクションによってCNV領域を切除し,RNAを抽出する。Real-time PCRを用いてIL-1b,IL-6,IL-8, TNF-aなどのサイトカイン,ICAM-1, VCAM-1, Selectinファミリーなどの接着分子およびVEGF, IGF-1, FGF, PIGFなどの血管新生関連因子の発現を比較検討する。マクロファージはT細胞の生産するサイトカインにより活性化され,T細胞はTh1,Th2,TFH,Th17,Treg細胞などの特異的な機能を持ったT細胞へと分化していくが,これらの相互作用ならびに制御機構と分化判定は複雑である。この複雑なネットワークを解明するため,タンパクビーズアレイシステムでマクロファージ活性化およびT細胞分化誘導因子を網羅的に解析する。Th1サイトカイン(IFNγ, TNFα, IL-2, IL-12)およびTh2サイトカイン(L-4,IL-10,IL-1β),HMGB-1,IL-27ならびに各受容体の相互解析も行う。IL-17とそのT細胞制御機構が慢性炎症の新たな治療のターゲットとなる可能性がある。
KAKENHI-PROJECT-15K10869
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アモルファス分子材料を用いる高性能エレクトロミネッセンス素子の開発
有機物質を用いるエレクトロルミネッセンス(EL)素子は、大面積化、薄膜化が可能な新しい表示素子として、大型フルカラーフラットパネルディスプレイへの応用の観点から注目を集めている。有機EL素子の実用化への最大の課題は、発光効率の向上ならびに耐久性・熱安定性の向上である。申請者らが開発した光・電子機能性アルモファス分子材料は、安定な有機EL素子の優れた材料として機能することが期待される。本研究では、有機EL素子の発光効率の改善と耐久性の向上を図り、有機EL素子の実用化を目指して、以下の検討を行った。(1)新規アモルファス分子材料の合成とモルフォロジー変化の検討新規starburst分子群を設計・合成し、それらのモルフォロジー変化を検討して、分子構造とガラス形成能、ガラス転移温度、ガラス状態の熱安定性との相関について知見を得た。(2)ガラス状態における電荷輸送過程の解明分子性ガラスの電荷輸送を検討し、分子構造とホール輸送特性との相関について知見を得た。(3)有機EL素子の作製とその特性評価開発した新規starburst分子のアモルファス膜をホール輸送層に用いた有機EL素子を作製し、従来の有機EL素子に比べて耐久性が飛躍的に向上することを見いだした。また、ホール輸送層を二層関層した新規多層型有機EL素子を作製し、この素子の駆動電圧が従来の素子に比べて低くなり、発光効率が向上することを明らかにした。このように、(i)ガラス転移温度の高いstarburst分子のアモルファス膜の利用、(ii)ホール輸送層を積層した新規多層関層型有機EL素子の開発、が有機EL素子の耐久性・熱安定性の向上、駆動電圧の低減、発光効率の向上のための戦略になることを示した。有機物質を用いるエレクトロルミネッセンス(EL)素子は、大面積化、薄膜化が可能な新しい表示素子として、大型フルカラーフラットパネルディスプレイへの応用の観点から注目を集めている。有機EL素子の実用化への最大の課題は、発光効率の向上ならびに耐久性・熱安定性の向上である。申請者らが開発した光・電子機能性アルモファス分子材料は、安定な有機EL素子の優れた材料として機能することが期待される。本研究では、有機EL素子の発光効率の改善と耐久性の向上を図り、有機EL素子の実用化を目指して、以下の検討を行った。(1)新規アモルファス分子材料の合成とモルフォロジー変化の検討新規starburst分子群を設計・合成し、それらのモルフォロジー変化を検討して、分子構造とガラス形成能、ガラス転移温度、ガラス状態の熱安定性との相関について知見を得た。(2)ガラス状態における電荷輸送過程の解明分子性ガラスの電荷輸送を検討し、分子構造とホール輸送特性との相関について知見を得た。(3)有機EL素子の作製とその特性評価開発した新規starburst分子のアモルファス膜をホール輸送層に用いた有機EL素子を作製し、従来の有機EL素子に比べて耐久性が飛躍的に向上することを見いだした。また、ホール輸送層を二層関層した新規多層型有機EL素子を作製し、この素子の駆動電圧が従来の素子に比べて低くなり、発光効率が向上することを明らかにした。このように、(i)ガラス転移温度の高いstarburst分子のアモルファス膜の利用、(ii)ホール輸送層を積層した新規多層関層型有機EL素子の開発、が有機EL素子の耐久性・熱安定性の向上、駆動電圧の低減、発光効率の向上のための戦略になることを示した。有機物質を用いるエレクトロルミネッセンス(EL)素子は、大面積化、薄膜化が可能な新しい表示素子として、大型フルカラーフラットパネルディスプレイへの応用の観点から注目を集めている。有機EL素子の実用化への最大の課題は、発光効率を向上させること、および素子の安定性、耐久性を向上させることである。申請者らが開発した光・電子機能性アモルファス分子材料は、安定なアモルファス膜を容易に形成し、高いガラス転移温度を有するとともに、優れたホール輸送能を有しており、有機EL素子の優れた材料となることが期待される。平成6年度は、有機EL素子の発光効率とおよび耐久性を向上させることを目指して研究を行い、以下のような成果を得た。(1)高いガラス転移温度を有する新規starburst分子を設計・合成した。(2)開発した新規starburst分子のアモルファス膜をホール輸送層に用いた有機EL素子を作製し、従来の有機EL素子に比べて耐久性が飛躍的に向上することを見いだした。(3)ホール輸送層を二層積層した新規多層型有機EL素子を作製し、この素子の駆動電圧が従来の素子に比べて低くなり、発光効率が向上することを明かにした。このように、(1)ガラス転移温度の高いstarburst分子のアモルファス膜の利用、(2)ホール輸送層を積層した新規多層積層型有機EL素子の開発、が有機EL素子の耐久性・熱安定性の向上、駆動電圧の低減、発光効率の向上のための戦略になることを示した。有機物質を用いるエレクトロルミネッセンス(EL)素子は、大面積化、薄膜化が可能な新しい表示素子として、大型フルカラーフラットパネルディスプレイへの応用の観点から注目を集めている。有機EL素子の実用化への最大の課題は、発光効率の向上ならびに耐久性・熱安定性の向上である。申請者らが開発した光・電子機能性アモルファス分子材料は、高いガラス転移温度を有する安定なアモルファス膜を容易に形成し、かつそれらが優れたホール輸送能を有しており、安定な有機EL素子の優れた材料として機能することが期待される。本年度は、以下のような成果を得た。
KAKENHI-PROJECT-06555261
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06555261
アモルファス分子材料を用いる高性能エレクトロミネッセンス素子の開発
(1)新規アモルファス分子材料の合成とモルフォロジー変化の検討新規starburst分子群を設計・合成し、それらのモルフォロジー変化を検討して、分子構造とガラス形成能、ガラス転移温度、ガラス状態の熱安定性との相関について知見を得た。(2)ガラス状態における電荷輸送過程の解明分子性ガラスの電荷輸送を検討し、分子構造とホール輸送特性との相関について知見を得た。(3)有機EL素子の作製とその特性評価新規なstarburst分子を用いた多層積層型EL素子を作製し、この素子が熱安定性に優れ、かつ低い駆動電圧で高い発光効率を示すことを明らかにするとともに、その発光機構について考察した。
KAKENHI-PROJECT-06555261
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舌圧‐喉頭運動の協調性に着目した包括的嚥下機能評価システム
本研究は、嚥下時における舌と口蓋との接触と舌骨・喉頭の動きの協調性を、新たに開発した計測システムを用いて明らかにすることを目的とした。舌圧の測定には舌圧センサシートを用い、喉頭の動きの記録には前頸部皮膚に貼付した屈曲センサを用いて、水嚥下時の両者の時間的協調性について分析した。その結果、舌圧発現と舌骨-喉頭複合体の動きの順序性が描写された。すなわち、舌圧は舌骨のかすかな動きの後に続く急速な挙上のタイミング付近で発現し、舌骨が最前上方位に到達した時点で最大値に達し、舌骨が下降を開始するのとほぼ同じタイミングで消失していた。今年度は頸部に貼付した屈曲センサ信号と嚥下時Videofluorography画像との同時記録を行って両者の同期性を解析し、屈曲センサによる嚥下時喉頭運動モニタリング法を確立した(PLoS ONEに論文発表)。また、舌圧センサを口腔内に貼付することによって喉頭運動記録は影響を受けないことを確認した(Chin J Otorhinolaryngol Head Neck Surgに論文発表)。さらに、センサシートによる嚥下時舌圧測定と屈曲センサによる喉頭運動との同時記録を行い、舌圧のOnse, peak, offsetと屈曲センサのタイムイベントとの関係から、嚥下時舌運動と喉頭運動との同期性について解析を行った(日本顎口腔機能学会において発表し、論文作成中)。これらの結果より、健常者における嚥下口腔期と咽頭期の非侵襲的な評価の可能性が示唆された。本研究は、嚥下時における舌と口蓋との接触と舌骨・喉頭の動きの協調性を、新たに開発した計測システムを用いて明らかにすることを目的とした。舌圧の測定には舌圧センサシートを用い、喉頭の動きの記録には前頸部皮膚に貼付した屈曲センサを用いて、水嚥下時の両者の時間的協調性について分析した。その結果、舌圧発現と舌骨-喉頭複合体の動きの順序性が描写された。すなわち、舌圧は舌骨のかすかな動きの後に続く急速な挙上のタイミング付近で発現し、舌骨が最前上方位に到達した時点で最大値に達し、舌骨が下降を開始するのとほぼ同じタイミングで消失していた。今年度は、基本的な実験系を確立し、以下の知見を得た。1.自覚的,他覚的ともに摂食・嚥下機能に問題を認めない健常成人男性6名(平均年齢31.7±10.6歳)とし,座位における5mlの水嚥下を各被験者6回ずつ行ない,VFおよび喉頭運動の同時記録を行なった.波形分析とVFイベントとの比較より,屈曲センサから得られた波形上の基準点を用いて嚥下咽頭期における重要なイベント(舌骨の急速な挙上開始、舌骨の最上前方位、舌骨の復位等)のタイミングを把握し得る可能が示唆された.2.自覚的、他覚的ともに摂食・嚥下機能に問題を認めない健常成人男性14名(平均年齢27.0±2.2歳)とし、座位における5mlの水嚥下を各被験者5回ずつ行なって、舌圧、喉頭運動、嚥下音の同時計測を行った。各信号を同期させ、嚥下音のpeakを0sと定義した時系列上で解析を行った。その結果、嚥下初期の舌骨・喉頭の小さな動きは口腔期の開始と関連していること口腔期において後方部のCh.4,5まで強固な舌のアンカーが確立することが、咽頭期の開始、すなわち喉頭の上方への急速な拳上と関係が深いことが示唆された。まず、VFと喉頭運動の同時計測により、喉頭運動の波形上の標点とVF上の嚥下イベントとの関連性が高い一致度を有していることが確認できた(論文投稿中)。次に、当初予定していた舌圧・喉頭運動同時計測システムの構築が順調に達成され、嚥下時の舌運動と喉頭運動の協調性が定量的に評価できることが確認できた(論文準備中)。以上の結果により、次年度において、食塊量、食塊性状、嚥下時姿勢の嚥下運動に対する影響を解析する基盤が構築された。これまで、嚥下運動に影響する因子として報告されている食塊量、食塊性状、嚥下時姿勢の影響が本システムで検出可能かを検討する。食塊としては、液体、トロミ液体、ゼリーとし、量は5ml、10ml、15mlの3種類、姿勢としては90°座位、60°ギャッジ、30°ギャッジの3種類を予定し、健常若年者(ボランティア)20名を対象に、これらの条件での嚥下運動記録を各5回ランダムに行って、前年度に確定した時系列上のパラメータの変化について検討する。次に、その結果と、VFを用いた先行研究において報告されている結果とを比較することによって、本システムの信頼性を検証する。健常者における有効性が検証できれば、次の段階として嚥下障害患者における誤嚥の検出精度の研究に進むことができると考えている。25年度は最終年度のため、計測に必要な物品の購入と共に、成果発表のために予算を計上する。物品費:舌圧センサシート、喉頭運動センサ等の購入に50万円の計上を予定。
KAKENHI-PROJECT-24659859
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舌圧‐喉頭運動の協調性に着目した包括的嚥下機能評価システム
旅費:欧州嚥下障害学会(ESSD)または国際嚥下障害研究会(DRS)、ならびに国内での成果発表に70万円の計上を予定。その他:論文作成(英文翻訳、校正等)に30万円の計上を予定。
KAKENHI-PROJECT-24659859
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高血圧・心不全時の抹消抵抗血管平滑筋の反応とカルシウム濃度の研究
血管抵抗を形成する細動脈のmyogenic response(MR)は、総抹消血管抵抗を規定する一因となることが考えられる。そこで細動脈のMRが高血圧の進展に関与しているか否かを明かにするために高血圧発症前後のSHRの精巣挙筋より取り出した細動脈のMRをin vitroの実験系で観察し対照のWKYと比較した。MRは血管内圧を変化させた時の血管径の前値に対する比率として評価した。4-5週齢では+15mmHg、+30mmHgいずれもSHRとWKYの間に有意差がなかった。しかし7-8週齢では有意にSHRにおいてWKYに比しMRが亢進していた。更にMRとの関連性が報告されている電位依存性カルシウム・チャンネル(VDCC)の感受性についてもKCl収縮を観察することにより検討した。KClの濃度反応曲線のEC50は4-5週齢でSHRとWKYに差を認めなかったが,7-8週齢ではSHRで有意に亢進していた。7-8週齢でのSHRとWKYでのMR時の細胞内Ca濃度([Ca^<2+>]i)をCa感受性色素を用いて測定した[Ca^<2+>]iは+15mmHgでのMR時ではSHRでWKYに比し大なる傾向を示し、+30mmHgでのMR時ではSHRでWKYに比べ[Ca^<2+>]iは有意に増加していた。更に7-8週齢のSHRにおけるMR亢進とVDCC感受性亢伸との相互関係を明かにするためにdihydropiridine系のCa拮抗薬であるnitrendipineに対するMRの抑制効果を検討した。+30mmHgにおけるnitrendipineによるMRの抑制率はSHRにおいて有意に大であった。これらの結果より高血圧初期のSHR抵抗血管において、1)高血圧の進展に伴いMR及びVDCC感受性が亢進し、2)MR増強の一機序としてVDCCの感受性の亢進が関与することが推測された。血管抵抗を形成する細動脈のmyogenic response(MR)は、総抹消血管抵抗を規定する一因となることが考えられる。そこで細動脈のMRが高血圧の進展に関与しているか否かを明かにするために高血圧発症前後のSHRの精巣挙筋より取り出した細動脈のMRをin vitroの実験系で観察し対照のWKYと比較した。MRは血管内圧を変化させた時の血管径の前値に対する比率として評価した。4-5週齢では+15mmHg、+30mmHgいずれもSHRとWKYの間に有意差がなかった。しかし7-8週齢では有意にSHRにおいてWKYに比しMRが亢進していた。更にMRとの関連性が報告されている電位依存性カルシウム・チャンネル(VDCC)の感受性についてもKCl収縮を観察することにより検討した。KClの濃度反応曲線のEC50は4-5週齢でSHRとWKYに差を認めなかったが,7-8週齢ではSHRで有意に亢進していた。7-8週齢でのSHRとWKYでのMR時の細胞内Ca濃度([Ca^<2+>]i)をCa感受性色素を用いて測定した[Ca^<2+>]iは+15mmHgでのMR時ではSHRでWKYに比し大なる傾向を示し、+30mmHgでのMR時ではSHRでWKYに比べ[Ca^<2+>]iは有意に増加していた。更に7-8週齢のSHRにおけるMR亢進とVDCC感受性亢伸との相互関係を明かにするためにdihydropiridine系のCa拮抗薬であるnitrendipineに対するMRの抑制効果を検討した。+30mmHgにおけるnitrendipineによるMRの抑制率はSHRにおいて有意に大であった。これらの結果より高血圧初期のSHR抵抗血管において、1)高血圧の進展に伴いMR及びVDCC感受性が亢進し、2)MR増強の一機序としてVDCCの感受性の亢進が関与することが推測された。目的:高血圧での抹梢抵抗血管の反応性における細胞内Caイオンの役割とその制御機構のうち、抹梢管抵抗を形成する主要な一因子である細動脈のmyogenic response(MR)が高血圧の進展に関与しているか否かを検討し、さらにMRとの関連性が報告されている電位依存性カルシウムチャンネル(VDCC)の感受性をKCl反応とdihydropiridine系のCa拮抗薬であるnitrendipineに対するMRの抑制効果より検討し同時に細胞内Caイオン濃度の変化を検討。対象:高血圧発症前(4-5週齢)と初期(7-8週齢)の高血圧自然発症ラット(SHR)と同週齢の対照ラット(WKY)。方法;各群の右精巣挙筋の細動脈(太さ100-150μm,長さ1mm)を分離しmicropipetteにてcannulate後にMR,KCl,等の血管径を測定。またfura2を添加し血管の中心での380nmに対する340nmの蛍光強度の比(Ratio画像)をMR,KCl等の反応時に検討した。結果:MRは4-5週齢ではSHRとWKYの間に有意差がなく7-8週齢では有意にSHRにおいてMRが亢進していた。KClの濃度反応曲線のEC_<50>は4-5週齢でSHRとWKYに差がなかったが,7-8週齢ではSHRで有意に亢進していた。7-8週齢でのMRに対するnitrendipineの抑制率はSHRにおいて有意に大であった。細胞内Caイオンの変化も血管径の変化と同様の変化を示した。結語:以上より高血圧初期SHR抵抗血管において(1)高血圧の進展に伴いMR及びVDCC感受性が亢進し
KAKENHI-PROJECT-06670752
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高血圧・心不全時の抹消抵抗血管平滑筋の反応とカルシウム濃度の研究
2)MR増強の一機序としてVDCCの感受性の亢進が関与することが推測された。心不全での末梢抵抗血管細動脈平滑筋細胞内Caイオン濃度の変化対象:冠動脈結紮による心不全ラット(対象;sham operationしたrat)方法:冠動脈を結紮し8週後に臨床的、また左室拡張終期圧の20mmHg以上の上昇とmaxdP/dTの低下により心不全と確認されたratのcremasterの内径約120、長さ700μmの細動脈を実体顕微鏡下にて単離し、pipetteを両端からcanulateしbath内に取付け、倒立顕微鏡からCCDカメラを経てテレビ・モニター上の細動脈径を測定。myogenic responseを検討後、Fura II/AMを添加し1時間後再度myogenic response反応させ、細動脈平滑筋細胞内Caイオン濃度を蛍光発生装置からの340-380nmにおけるFura IIの蛍光変化を細胞内Ca ion濃度画像解析システム-すなわちCCD cameraにて撮像しdigital image processor (Argus 50)にて可視化し、反応前後のCaイオン濃度を心不全ratと対照ratにて比較し、また細胞内Caに関係している筋小胞体(SR)の機能をangiotensine II(AGII)にて血管の反応性と細胞内Ca濃度の変化を心不全と対照群にて検討した。さらに細胞外のCa濃度を0にしてAGIIにてSRから細胞内へのCaの放出に両軍にて差があるのかを検討し、心不全での末梢血管の反応における細胞内のCaイオンの役割を解明することであった。結果。myogenic responseは心不全では低下傾向を認めた。またAGIIに対する収縮反応性も対照群に比べ低下しており、AGIIに対する細胞内Ca濃度の上昇も低下していた。ただしまだnが不足しているので実験を継続中である。
KAKENHI-PROJECT-06670752
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現代オーストリアにおける言語実験派作家たちの研究
現代オーストリアにおける言語実験派詩人たちは、言語を省察する過程で、統語論的文法的論理的に方向付けられた言語規範からの抽象化を実作上可能ならしめ、抒情主体の現実経験という、伝達手段としての言語の本質から決別した。こうした抽象化において主体の言語的自己同一性は完全に消失する。そして、伝統的な言語規範への関連においては自己同一性が失われるかわりに、言語遊戯的な作業形式が実現される。この形式運動は、80年代半ばのアナグラム的な詩作に代表されるように、意識的に粉砕された言語によって、言語規範の彼岸にある、異なった自己同一性探求と知覚作業を続けていった。こうした意味において、言語の解体傾向は、否定的な実相としてではなく、硬直化した言語観ないし価値観に対する反抗として、変容した意識形式に向けられていった。言語実験的な書法の本質的な機能は言語批判という形式であり、言語自体に内包される意識内容としての認識批判と杜会批判を目指す。こうした過程で人々の持つ世界構想や主体構想が言語的に条件付けられていることを提示することが必要不可欠となる。言語の創造的使用によって言語的思想的規範化への強制から逃れることを目指した結果、言語実験詩は、純粋に芸術的に規定されうる立場から逃れえたのである。現代の言語実験派の作家たちは、従来哲学的、認識批判的諸科学に残されている諸領域に対して、言語批判的、意識批判的に方向付けられた言語操作を目指す。こうした総合的な連関を考慮しつつ詩作への理解を広げることによって、言語的ないし言語分析的な諸努力め理性的な評価を行う基礎が築かれるのである。言語実験的な諸傾向は、言語との格闘として、そして科学および科学的認識への関心を超えた問題系として理解されうる。現代オーストリアにおける言語実験派詩人たちは、言語を省察する過程で、統語論的文法的論理的に方向付けられた言語規範からの抽象化を実作上可能ならしめ、抒情主体の現実経験という、伝達手段としての言語の本質から決別した。こうした抽象化において主体の言語的自己同一性は完全に消失する。そして、伝統的な言語規範への関連においては自己同一性が失われるかわりに、言語遊戯的な作業形式が実現される。この形式運動は、80年代半ばのアナグラム的な詩作に代表されるように、意識的に粉砕された言語によって、言語規範の彼岸にある、異なった自己同一性探求と知覚作業を続けていった。こうした意味において、言語の解体傾向は、否定的な実相としてではなく、硬直化した言語観ないし価値観に対する反抗として、変容した意識形式に向けられていった。言語実験的な書法の本質的な機能は言語批判という形式であり、言語自体に内包される意識内容としての認識批判と杜会批判を目指す。こうした過程で人々の持つ世界構想や主体構想が言語的に条件付けられていることを提示することが必要不可欠となる。言語の創造的使用によって言語的思想的規範化への強制から逃れることを目指した結果、言語実験詩は、純粋に芸術的に規定されうる立場から逃れえたのである。現代の言語実験派の作家たちは、従来哲学的、認識批判的諸科学に残されている諸領域に対して、言語批判的、意識批判的に方向付けられた言語操作を目指す。こうした総合的な連関を考慮しつつ詩作への理解を広げることによって、言語的ないし言語分析的な諸努力め理性的な評価を行う基礎が築かれるのである。言語実験的な諸傾向は、言語との格闘として、そして科学および科学的認識への関心を超えた問題系として理解されうる。まず資料収集については、昨年9月のウィーン滞在中に、「文学館」のアルヒーフを訪れ、言語実験派作家たちの作品や作品論、作家論のうちで重要なものをコピーし整理した。とくに新聞の切り抜きや雑誌の記事などは貴重な一次資料である。また8月には、研究補助員によって、手元にある当該作家の作品抜粋をテキストファイルで入力・保存する作業をしてもらった。保存テキストの分析作業は現在継続中である。3月の国内出張では、日本国内にある当該テーマに関する文献の収集に努め、数名のオーストリア文学研究者たちとも意見交換を行った。論文としてまとめたのは、ゲルハルト・ロートの初期作品に見られる言語批判と言語実験的な試行を考察したものであり、現在執筆中の論文では、雑誌マヌスクリプテに掲載されたテキストを中心に、リアリズムと言語批判の緊張関係のなかで生み出されたグラーツグループの文学的営為と言語実験的な試行の意味付けを考察している。彼らは高踏的な文学観に対する反発から、60年代のウィーングループを規範として、新しい文学言語創出の必要性を訴え、それを実践し、その結果社会批判的な文学へと向かうリアリズム派と、徹頭徹尾言語表現にこだわる言語実験派グループに分化した。後者の作家たちの前衛的な活動においては、パフォーマンスなど文字言語を超える視聴覚メディアの取り込みと活性化が問題となっており、その試行が新たな文学表現の可能性をひらくものであるかどうか、検証する必要がある。現代オーストリアにおける言語実験派詩人たちは、言語を省察する過程で、統語論的文法的論理的に方向付けられた言語規範からの抽象化を実作上可能ならしめ、抒情主体の現実経験という、伝達手段としての言語の本質から決別した。こうした抽象化において主体の言語的自己同一性は完全に消失する。そして、伝統的な言語規範への関連においては自己同一性が失われるかわりに、言語遊戯的な作業形式が実現される。
KAKENHI-PROJECT-12610538
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12610538
現代オーストリアにおける言語実験派作家たちの研究
この形式は、80年代半ばのアナグラム的な詩作に代表されるように、意識的に粉砕された言語によって、言語規範の彼岸にある、異なった自己同一性探求と知覚作業を続けていった。こうした意味において、言語の解体傾向は、否定的な実相としてではなく、硬直化した言語観ないし価値観に対する反抗として、変容した意識形式に向けられていった。言語実験的な書法の本質的な機能は言語批判という形式であり、言語自体に内包される意識内容とKの認識批判と社会批判を目指す。こうした過程で人々の持つ世界構想や主体構想が言語的に条件付けられていることを提示することが必要不可欠となる。言語の創造的使用によって言語的思想的規範化への強制から逃れることを目指した結果、言語実験詩は、純粋に芸術的に規定されうる立場からも逃れえたのである。現代の言語実験派の作家たちは、従来哲学的、認識批判的諸科学に残されている諸領域に対して、言語批判的、意識批判的に方向付けられた言語操作を目指す。こうした総合的な連関を考慮いつつ詩作への理解を広げることによって、言語的ないし言語分析的な諸努力の理性的な評価を行う基礎が築かれるのである。言語実験的な諸傾向は、言語との格闘として、そして科学および科学的認識への関心を超えた問題系として理解されうる。
KAKENHI-PROJECT-12610538
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古代土器の形態模倣に関する時空間的検討
最終年度にあたる本年度は、西日本における土器形態模倣の実態として資料収集をすすめた。データは各府県ごとにファイリングし、表計算ソフトウェアを用いてデータ一覧を作成した。これを元にして現在『畿内産土師器関連資料』を奈良文化財研究所の史料として刊行する予定である。目標とした成果の公表は年度内には達成できなかったが、先述した史料を含め、具体的な成果の公表をおこなうことを目的に作業を進めている。本年度は、奈良文化財研究所蔵の出版されている発掘調査報告書より基礎資料の収集を進めた。この資料の作成とあわせて、主に西日本を中心とした6世紀後半9世紀に至る金属器模倣形態をもつ土師器、須恵器を中心に、実際の資料を見学し、土器の形状模倣の実態について検討を進めることができた。中でも、山陰地方における当該期の土師器生産は、官衙及び寺院の周辺で宮都の土器を模倣して製作された土器がまず現われ、それが徐々に地域の土器の影響を受けて変容しながら定着していく過程を想定することができることが明らかになりつつある。このことから、土器の形状の模倣が各地域において一律に開始されるのではなく、宮都で生活をおこなった国司、郡司層の地方行政機関への移動を契機としておきたものであったと考えるべきであることがわかった。実資料による製作技法の検討からはこれらの土器は既存の各地域の製作技法をもとにして製作されており、器形の類似が達成されているに留まり、新しい技法による変化ではなかったことも想定することができるであろう。これについては、土器を属性分類し、多量の資料の分析を通じてその変化の過程を検討する必要があり、現在、その分析の視点について検討を進めている。金属器模倣形態の土器の日本全国への転換は、これらの実態を捉えた上で、いくつかのモデル化をおこなうことが可能となるであろう。これを達成し、各地の土器の模倣のあり方を展望する方法を模索したい。この想定を実際に証明し、モデル化を進めていく為に、来年度は更なる資料の収集と体系化、及び実資料の見学を通じて更に検討を進めたい。研究の2年目にあたる本年は、西日本を中心に発掘調査成果の収集をおこない、各地域における律令期の土器について概観した。当該期における土器は金属器模倣を主とする近畿地方の土器形態の影響を強く受けており、直接近畿地方よりもたらされた土器、忠実に模倣がおこなわれている土器、その影響下で出現した土器の存在が想定された。今回はそれぞれについて検討をおこなうこととした。まず、当研究所収蔵の発掘調査報告書から6世紀10世紀の土器の出土例について複写をおこない、これを県別に整理した。整理された報告書の複写は全てスプレッドシートによって一覧化され、これから検討をおこなう上での基礎資料として用いることとした。その中より、実見が必要と考えられた資料を絞り込み、検討をおこなうこととした。この成果を元にして、兵庫、島根、岡山、広島の各県の出土資料について実見をおこなった。検討は各地域の研究者と共同で観察し、法量、製作手法、施文といった各属性について検討をおこなった。その結果、直接近畿地方からもたらされている土器資料は今回対象とした各県では少量に留まり、近畿地方からのものとされている資料の中には忠実に模倣がおこなわれている土器が一定量存在するのではないかという見通しを得ることができた。また、各地で出現する宮都の土器の模倣形態については、地方によってその模倣のありかたが異なっており、模倣のありかたが共通するものではなく、それぞれが任意に模倣の要素を選択しているとの見通しを持つことができた。最終年度にあたる本年度は、西日本における土器形態模倣の実態として資料収集をすすめた。データは各府県ごとにファイリングし、表計算ソフトウェアを用いてデータ一覧を作成した。これを元にして現在『畿内産土師器関連資料』を奈良文化財研究所の史料として刊行する予定である。目標とした成果の公表は年度内には達成できなかったが、先述した史料を含め、具体的な成果の公表をおこなうことを目的に作業を進めている。
KAKENHI-PROJECT-14710286
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急激な環境変化と生物の適応と絶滅ー海洋酸性化応答生物学の創設
産業革命以降の大気中二酸化炭素濃度の上昇に伴い,海洋酸性化とその生物への影響が深刻な問題となりつつある。本研究では,特に炭酸カルシウムの殻を持つ微小な海洋生物(有孔虫・貝形虫)への酸性化の影響を過去の事例から明かにするため,現在の海洋酸性化との類似性(進行の急速さ,程度)が高い5600万年前の暁新世・始新世温暖期(PETM)に着目し,有孔虫・貝形虫が,急速な環境変動に対しどのように殻形成(石灰化)や生態系を変化させてきたのかを評価する。石灰化の程度はマイクロフォーカスX線CTによる殻密度の計測から定量化し,海洋酸性化の程度と殻密度の変化を時系列で比較する。さらに,群集組成や体サイズの変化等の形態学的な情報をもとに,それぞれの分類群の複数種を検討することで,炭酸カルシウム殻生物が急速な海洋酸性化に対しどのような生体的応答戦略により適応・または絶滅したのかを解明する。平成30年度は,PETM前後の堆積物サンプルについて,サンプルの選定,種の選定を行い,有孔虫および貝形虫のピッキングを行った。研究分担者と協力者との議論の中で、ピッキングについは、有孔虫のサイズの違いによる骨密度の違いを評価すべきという視点がでてきたので、サイズを細かく分けてピッキング、撮影を行うことにした。また,マイクロフォーカスX線CT(MXCT)による有孔虫,貝形虫の殻の効率的な測定手法を開発するとともに,二次元画像データの測定を行なった。研究の進め方について,海外研究協力者と研究手法についての問題点を洗い出し,解決法を議論した。研究代表者が、頭脳循環プログラムのため、昨年度1年間は海外の大学で別のテーマでの研究に従事しており、当初の予定からやや遅れている。研究協力者の協力を仰ぎながら、微化石のピッキングについてより効率的に進めていく。マイクロX線CTでの撮影は、撮影方法が確立したので、より速く撮影できるようになった。解析にも時間を要するため、作業補助を雇い、今年度である程度の数の画像解析ができるように対策をたてた。産業革命以降の大気中二酸化炭素濃度の上昇に伴い,海洋酸性化とその生物への影響が深刻な問題となりつつある。本研究では,特に炭酸カルシウムの殻を持つ微小な海洋生物(有孔虫・貝形虫)への酸性化の影響を過去の事例から明かにするため,現在の海洋酸性化との類似性(進行の急速さ,程度)が高い5600万年前の暁新世・始新世温暖期(PETM)に着目し,有孔虫・貝形虫が,急速な環境変動に対しどのように殻形成(石灰化)や生態系を変化させてきたのかを評価する。石灰化の程度はマイクロフォーカスX線CTによる殻密度の計測から定量化し,海洋酸性化の程度と殻密度の変化を時系列で比較する。さらに,群集組成や体サイズの変化等の形態学的な情報をもとに,それぞれの分類群の複数種を検討することで,炭酸カルシウム殻生物が急速な海洋酸性化に対しどのような生体的応答戦略により適応・または絶滅したのかを解明する。平成30年度は,PETM前後の堆積物サンプルについて,サンプルの選定,種の選定を行い,有孔虫および貝形虫のピッキングを行った。研究分担者と協力者との議論の中で、ピッキングについは、有孔虫のサイズの違いによる骨密度の違いを評価すべきという視点がでてきたので、サイズを細かく分けてピッキング、撮影を行うことにした。また,マイクロフォーカスX線CT(MXCT)による有孔虫,貝形虫の殻の効率的な測定手法を開発するとともに,二次元画像データの測定を行なった。研究の進め方について,海外研究協力者と研究手法についての問題点を洗い出し,解決法を議論した。研究代表者が、頭脳循環プログラムのため、昨年度1年間は海外の大学で別のテーマでの研究に従事しており、当初の予定からやや遅れている。研究協力者の協力を仰ぎながら、微化石のピッキングについてより効率的に進めていく。マイクロX線CTでの撮影は、撮影方法が確立したので、より速く撮影できるようになった。解析にも時間を要するため、作業補助を雇い、今年度である程度の数の画像解析ができるように対策をたてた。
KAKENHI-PROJECT-18H03364
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H03364
環境適応型バイパスライン生産システムの最適化に関する研究
ライン全体の設備投資額の最小化および稼働率向上の両立を目指した、バイパスライン生産システムの設計および投入順序付けの最適化を、作業時間、ライン長、バッファなどを考慮して、シミュレーション技法等を用いて検討した。また、環境を考慮した循環型生産システムに関して数理モデルによる解析を行い、再生産も考慮した生産ラインの最適化に関しての研究を行った。ライン全体の設備投資額の最小化および稼働率向上の両立を目指した、バイパスライン生産システムの設計および投入順序付けの最適化を、作業時間、ライン長、バッファなどを考慮して、シミュレーション技法等を用いて検討した。また、環境を考慮した循環型生産システムに関して数理モデルによる解析を行い、再生産も考慮した生産ラインの最適化に関しての研究を行った。本研究では、ライン全体の設備投資額の最小化および稼働率向上の両立を目指した、バイパスライン生産システムの設計、各品種のバイパスラインへの作業時間配分および投入順序付けの最適化アルゴリズムを、数理最適化手法やシミュレーション技法等を用いて考案する。今年度は、バイパスラインの導入されている、実際の自動車生産ラインに赴き、需要変動に応じた生産ラインの変更やそれに伴う、労働者のシフト変更などがどのように行なわれているか、現地で詳細な聞き取り調査を行なった。また、自動車リサイクル工場等において、多種多様な使用済み自動車を対象に、環境を考慮した分解作業がどのように行なわれているか現地調査した。さらに、SCM環境下における、JITの在庫量や生産量をマルコフ連鎖として定式化し、各工程が遠隔地で搬送リードタイムを考慮すべき場合に、変動需要下でのシステムの挙動を、厳密解を求めて明らかにした。加えて、各工程での在庫保管費用や品切れ費用を考慮した場合の最適な在庫量も算出した。次に、「Jコスト」と呼ばれる概念について調査し、棚卸資産など流動的でない資金を一定期間保持することによる機会損失を適切に評価するための問題点の検討を行なった。さらに、バイパスラインに代表されるJITは、ものづくりの分野に限らず、先端技術を応用した製品、サービスや社会システムなど、様々な分野に応用可能であることを明らかにしつつ、一方で、社会や企業に与える影響に関しても考察し、安直な導入が引き起こす問題点に関しても指摘した。本研究では、ライン全体の設備投資額の最小化および稼働率向上の両立を目指した、バイパスライン生産システムの設計、各品種のバイパスラインへの作業時間配分および投入順序付けの最適化アルゴリズムを、数理最適化手法やシミュレーション技法等を用いて考案する。今年度は、海外進出した製造業の工場などで、実際の生産ラインの運用状況を現地調査し、リーマンショック以後の生産変動の激変に対する企業が実践している対応方策に関しての分析を行った。また、多品目の部品から完成品を生産する、多工程生産システムの解析をシミュレーション実験により行い、変動する需要量や各部品の在庫量の設定に対する、顧客に影響を及ぼす最終製品の品切れの発生確率に関しての性能評価を行った。さらに、環境問題に対応したリサイクルを目的とした多工程分解システムを対象に、在庫量や分解指示する工程を変化させることにより、ライン内の仕掛品在庫量や品切れ確率の挙動に関して分析し、適切な在庫および生産方策に関しての検討を行い、従来の生産指示方策では品切れと在庫量の適切なバランスを取ることが困難であることを示した。また、「Jコスト」と呼ばれる概念について調査し、棚卸資産など流動的でない資金を一定期間保持することによる機会損失を適切に評価するための問題点を明らかにした。さらに、バイパスラインに代表されるJITは、様々な分野に応用可能であることを明らかにしつつ、一方で、社会や企業に与える影響に関しても考察し、安直な導入が引き起こす問題点に関しても指摘した。本研究では、ライン全体の設備投資額の最小化および稼働率向上の両立を目指した、バイパスライン生産システムの設計、各品種のバイパスラインへの作業時間配分および投入順序付けの最適化アルゴリズムを、数理最適化手法やシミュレーション技法等を用いて考案した。今年度は、作業時間、ライン長、バッファ等のライン環境がラインの稼働率に与える影響を調査し、各種条件を変化させた上でラインの最適化を行った。研究結果より、作業時間の変動が大きくなると、メインライン、バイパスライン共にラインストップ時間が増加する傾向をシミュレーションにより明らかにした。しかしながら、作業時間のラインストップ時間の削減を企図して、ラインを長くすると、逆に作業終了時間が上昇し始めるため、それらの最適化が重要であることを明示した。また、複数のラインを連動しつつ制御するため、投入順序の最適化が重要であることも示した。これらの結果は、バイパスラインの設計及び運用において有効な示唆を与えるものと期待される。また、環境を考慮したループ構造の生産ラインに関しても研究を行い、厳密解を得られる最適化手法であるマルコフ決定過程を応用し、再生産も考慮した生産ラインの最適化に関しての研究も行った。さらに、グローバル生産で各所に分散するジャストインタイムシステムの信頼性に関して、基本的なシステム特性を明らかにし、コストのみを重視し徒に生産箇所を分散することが、生産システム全体の稼働率に対して大きな負の影響を与えることを明らかにした。この予見は、東日本大震災により国内外のサプライチェーンの破綻を通じて、現実に正しいことが証明された。
KAKENHI-PROJECT-20510134
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分子系統解析からさぐる放散虫の形態進化と分子進化
Polycystinea綱のSpumellarida目に属するDictyocoryne profunda, Dictyocoryne truncatum, Spongaster tetrasg, Didymocyrtis tetrathalamus, Euchitoniaelegans, Dicranastrum furcatum, Triastrum aurivillii, Nassellarida目に属するEucyrtidium hexagonatum, Pterocorys zancleus,およびPhaeodarea網のChallengeron diodon, Conchellium capsula, Protocystis xiphodonの18S rDNAの塩基配列を決定した.これらの塩基配列と国際塩基配列データベースから得た既知の放散虫の塩基配列に基づき,その系統学的位置について考察を行ったところ,放散虫のうちのPhaeodarea綱はまったく別の系統であるCercozoaと近縁であることがわかった.また,Polycystinea綱のSpumellarida目が側系統になり,その一方の単体性Spumellarida目が,ことこれまでに放散虫に属さないとも考えられてきたAcantharea綱と単系統をなすこともわかった.Phaeodarea綱がCercozoaに含まれたこと,一方,Polycystinea綱が珪酸質の,Acantharea綱は硫酸ストロンチウムの殻と,まったく殻形質が異なっているもの同士が(分子による再検討で)単系統群を形成したことは,現行の放散虫の分類体系を改訂する可能性を示唆する.Polycystinea綱のSpumellarida目に属するDictyocoryne profunda, Dictyocoryne truncatum, Spongaster tetrasg, Didymocyrtis tetrathalamus, Euchitonia elegans, Dicranastrum furcatum, Triastrum aurivillii, Nassellarida目に属するEucyrtidium hexagonatum, Pterocorys zancleus,およびPhaeodarea網のChallengeron diodon, Conchellium capsula, Protocystis xiphodonの18S rDNAの塩基配列を決定した.これらの塩基配列と国際塩基配列データベースから得た既知の放散虫の塩基配列に基づき,その系統学的位置について考察を行ったところ,放散虫のうちのPhaeodarea綱はまったく別の系統であるCercozoaと近縁であることがわかった.また,Polycystinea綱のSpumellarida目が側系統になり,その一方の単体性Spumellarida目が,ことこれまでに放散虫に属さないとも考えられてきたAcantharea綱と単系統をなすこともわかった.Phaeodarea綱がCercozoaに含まれたこと,一方,Polycystinea綱が珪酸質の,Acantharea綱は硫酸ストロンチウムの殻と,まったく殻形質が異なっているもの同士が(分子による再検討で)単系統群を形成したことは,現行の放散虫の分類体系を改訂する可能性を示唆する.2003年6月10日27日および10月26日11月4日の2回ノルウェーに渡航し,研究協力者であるKjell R.Bjorklund教授らとともに,ノルウェーのSogndalにて放散虫を採集した.採集後,PCR法により18SrDNA領域の増幅を行い,十数種の18SrDNAの増幅に成功した.クローニングを経て,塩基配列解析を行ったところ,これまで,数種の18SrDNAの塩基配列を解読できた.そこで,申請者が解析したデータをもとに,放散虫特有のプライマーを設計し,これを用いて,放散虫と共生藻の18SrDNAがともに増幅されたものをテンプレートとし,セカンドPCRを行ったところ,Cladococcus viminalisの増幅にも成功した.これまで解析したデータにより,系統樹を構築し,真核生物全体の中でのPolycystinea綱とAcantharea綱の系統関係を調べた.NJ, MP,およびML系統樹全てで,それら2綱はクラウン生物群の根の部分で分岐し,単系統を形成していた.その単系統は73%,84%,および64%のブーツストラップ確立で支持された.また,Polycystinea綱とAcantharea綱のみの29種データセットでは,それら2綱の内部における系統関係は,NJ, ML系統樹で,Spumellaria目の群体性と無殻単体性がNassellaria目と100%のブーツストラップ確立で単系統を形成し,またブーツストラップ確立は低いがSpumellaria目のSpongodiscidae科はAcantharea綱と近縁であることが示された.真核生物内での放散虫の系統関係を調べた57種データセットでは,Polycystinea綱はAcantharea綱と単系統を形成し,Phaeodarea綱はPolet et al.(2004)の結果と同様に,Cercozoaに属する種とともに単系統を形成した.Phaeodarea綱については,遊走子の鞭毛の数や殻の形態的な特徴など,Cercozoaに属する種との類似性が見られること(Polet et al.,2004),また,Polycystinea綱については,Acantharea綱の殻と同成分のSrSO4を含む遊走子をつくることや共生藻を持つことなど,Acantharea綱との類似性が指摘されている(Anderson,1983).一方,Polycystinea綱とAcantharea綱の系統関係を調べた29種データセットでは,Polycystinea綱Spumellarida目の群体性と無殻単体性種は同じくPolycystinea綱のNassellarida目と,Spumellarida目のうちの有殻単体性種はAcantharea綱とそれぞれ単系統を形成した.
KAKENHI-PROJECT-15540449
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分子系統解析からさぐる放散虫の形態進化と分子進化
群体性および無殻単体性種のSpumellarida目は三叉状の骨針を細胞質内に持っているが,この三叉状の骨針はNassellarida目の内部基本骨格に類似している.また,Spumellarida目の有殻単体性の骨格は,Acantharea綱の放射状の骨格と類似している.これらの形態的特徴の類似性は,18SrDNAによって示されるPolycystinea綱(Spumellarida目)の側系統の関係を支持しているものと考える.Polycystinea綱のSpumellarida目に属するDictyocoryne profunda, Dictyocoryne truncatum, Spongaster tetras, Didymocyrtis tetrathalamus, Euchitonia elegans, Dicranastrum furcatum, Triastrum aurivillii, Nassellarida目に属するEucyrtidumhexagonatum, Pterocorys zancleus,およびPhaeodarea綱のChallengerondiodon, Conchellium capsula, Protocystis xiphodonの18S rDNAの塩基配列を決定した.これらの塩基配列と国際塩基配列データベースから得た既知の放散虫の塩基配列に基づき,その系統学的位置について考察を行ったところ,放散虫のうちのPhaeodarea綱はまったく別の系統であるCercozoaと近縁であることがわかった.また,Polycystinea綱のSpumellarida目が側系統になり,その一方の単体性Spumellarida目が,ことこれまでに放散虫に属さないとも考えられてきたAcantharea綱と単系統をなすこともわかった.Phaeodarea綱がCercozoaに含まれたこと,一方,Polycystinea綱が珪酸質の,Acantharea綱は硫酸ストロンチウムの殻と,まったく殻形質が異なっているもの同士が(分子による再検討で)単系統群を形成したことは,現行の放散虫の分類体系を改訂する可能性を示唆する.
KAKENHI-PROJECT-15540449
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地域間及びスケール間の比較と相互関係を視点とした地誌学習の理論的・実践的構築
本研究の目的は,中学校社会科地理的分野において,地域間及びスケール間の比較と相互関係を視点とした地誌学習の課題を整理し,単元プランを開発することである。単元プランを開発するために,中学校教員に対する全国調査を実施した。全国の中学校数の1割に質問紙を送付し,その45%にあたる472校から回答があった。この調査で,地理的分野の指導を苦手とする教員の割合が3分野の中で最も高いこと,また,単元を貫く学習課題の設定に苦慮していることが分かった。調査に基づき,4つの単元プランを開発した。単元プランには,単元を貫く学習課題,知識の構造図などを示した。本研究の目的は,地域間の比較,および重層的スケール間の相互関係を考察する視点を組み込む事により,中等段階の社会科地理的分野および地歴科地理における地誌学習を理論的・実践的に再構築することである。平成26年度は,単元プランの開発のためのフレームワーク設定を行ってきた。そのために大きく3つの取り組みを行ってきた。第1の取り組みとして,全国の中学校の約1割にあたる1049校に地誌学習実践状況を調査するためのアンケート調査を送付した。そして約45%にあたる470校から回答があった。回収したアンケートのデータを現在分析中である。分析結果は平成27年度中に学会で発表する予定である。アンケートでは,中学校の世界地誌学習および日本地誌学習を実践する上で大切にしていること,および困難を感じていることについて調査している。第2の取り組みは,外国における地誌学習の実施状況調査である。平成26年12月に台北市立中正國民中学校において地理授業の参観および教師への聞き取り調査を行った。特に,地誌学習の具体的実践状況を使用教材と共に知ることができた。台北では臺湾師範大學の研究者にも並行して聞き取り調査を行っている。さらに平成27年3月にオーストラリアのウェスタンオーストラリア州オーストラリンドハイスクールにて授業参観および教師への聞き取り調査を行った。また,州教育省においてカリキュラム統括官から,異なるスケール間の関係について,ナショナルカリキュラムや州カリキュラムでどのような考えを持っているのかについて聞き取りを行った。第3の取り組みは,研究協力者への研究進捗状況を共有するマルチスケール地理学習研究会の開催である。26年度は1回の研究会を行い,次年度の実戦に向けた情報共有とアイディア交換を行った。これらの調査をもとに,地誌学習の単元プランを開発するための基礎的データを収集することができた。本研究の目的は,地域間の比較,および重層的スケール間の相互関係を考察する視点を組み込む事により,中等段階の社会科地理的分野および地歴科地理における地誌学習を理論的・実践的に再構築することである。平成27年度は,学校現場における地誌学習実施上の問題点を明らかにした上で,それらを克服する授業を作成する予定であった。平成27年度は以下の2つの取り組みを行った。1地域間比較や重層的スケール間の相互関係を考察する地誌学習のモデルを作成するための予備調査として,平成26年度末に全国アンケート調査を実施した。全国の中学校の約1割にあたる1049校に発送したうち472校(45%)から回答が寄せられた。その分析より,1回答者の大学時代の専門は,地理系12.4%,歴史系27.0%,公民系50.7%,社会科教育系8.0%,その他1.9%であった。2回答者が不得手とする分野は地理,公民,歴史の順である。3世界地誌学習および日本地誌学習ともに,教科書の内容や高校入試を意識,知識の習得を重視する教員が比較的多い。4世界地誌学習および日本地誌学習ともに,教科書に記載されている内容が古いと感じたり,生徒の関心を引かないと感じたりしている教員が比較的多い。5世界地誌学習および日本地誌学習ともに,地域の特色を多面的・多角的に捉えられるようにしている教員が比較的多い。6世界地誌学習および日本地誌学習ともに,教科書と異なる主題や考察の仕方を設定している教員は少数である。7特に世界地誌学習では,単元を貫く学習課題の設定が難しいと感じている教員が多い。8教科書の学習内容に比べて時間数が確保されておらず,知識量と探究学習のバランスに悩む教師が見られる。という結果が得られた。この結果を日本地理教育学会で発表した。2アンケート結果を参考に,中学校社会科地理的分野における外国および日本の単元モデルの作成を行った。平成27年度はアンケート調査の分析を行い,その結果を反映して中学校社会科地理的分野の授業モデルを作成する予定であった。アンケート結果の共有,授業モデルの作成のため,数名の実践者と共にマルチスケール地理学習研究会を開き,授業案の精緻化を図ることができたため。本研究の目的は,地域間の比較,および重層的スケール間の相互関係を考察する視点を組み込む事により,中学校社会科地理的分野および高等学校地理歴史科地理における地誌学習を理論的・実践的に再構築することである。平成28年度は,前年度に分析したアンケート結果を参考に,中学校社会科地理的分野における外国および日本の単元モデルの作成を引き続き行った。単元モデルは,外国ではアジア,ヨーロッパ,日本では関東のモデルができあがった。開発した単元モデルは,地域間の比較,重層的スケール間の相互関係を考察する視点を組み込むものとなるよう工夫した。
KAKENHI-PROJECT-26370922
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地域間及びスケール間の比較と相互関係を視点とした地誌学習の理論的・実践的構築
単元毎に,これらの視点が獲得されたかどうかを看取ることができるような目標および評価規準の記載,単元を貫く学習課題および学習課題の会に位置付く主張な発問の記載,単元の中で獲得すべき知識を構造図として記載した。また,本研究の趣旨を読み取りやすくするための工夫として,開発した学習指導案には本時の目標と共に毎時間の授業仮説を記入した。授業仮説は,スケール間の相互依存関係等を考察する方法として有効だと考えられるものを仮説の形で示したものである。さらに,追試を容易にするための学習指導展開案への工夫として,予想される生徒の反応を丁寧に書き込むという形式で作成した。一方,一部の地域については最終的な完成に至らなかった。それは,研究代表者が平成28年度に所属機関の管理職に就任したからである。そのため,1年間の研究期間延長を申請し,認められた。研究代表者が,平成28年度に管理職に就任したため,研究のまとめ段階で十分時間をとることがでいなかったことによる。今年度は,平成26年度までに実施したアンケート調査に基づく研究の枠組み,および枠組みに基づいた単元案の開発を行い,研究を総括することができた。アンケート調査の結果によると,中学校の社会科教員は,教科書に即した授業を展開しており,単元を貫く課題の設定に困難を感じている。また,地域間の比較を行いたいものの,実際には上手くいっていないという現状があった。さらに,異なるスケール間の比較に関してもあまり意識されていないことがわかった。これらの現状を踏まえ,単元間の比較やスケール間の比較を考慮した単元モデルを開発した。その際,全ての単元で問いの構造図を作成し,単元を貫く学習課題と単元で学習する事項との関係性を明確にした。開発した単元は平成28年度に開発した単元案に1つ加えた4単元である。アジア州では,人口動態や経済状況,宗教事情などを地域の人々の生活と関連付けて多面的・多角的に考察することを通して,アジア全体に関わる一般的課題とアジアの諸地域で見られる地域特有の課題を捉えさせる単元構成とした。ヨーロッパ州では,国家を超えたEUという組織のもとで,ヒトやモノ,カネが自由に行き来し,人々の生活が加盟前後で変化したことを理解し,言語や文化が違う国がひとつにまとまる難しさを間の比較を考慮した単元案を作成した。九州地方では,日本の諸地域学習のはじめに位置することを考慮し,「なぜ.,九州地方の人々は,環境と共生した生活を積極的に進めているのか.」という課題の発見に焦点化した単元構成とした。また,関東地方では,東京を中心とする関東地方が,日本の交通・通信網の中心地だけでなく世界経済の中心地の1つであり,交通・通信・物流の拠点として国内・国外と深く結びついていることを理解し,関東,日本と世界という重層的なスケールとのつながりを意識した単元案を開発した。本研究の目的は,中学校社会科地理的分野において,地域間及びスケール間の比較と相互関係を視点とした地誌学習の課題を整理し,単元プランを開発することである。単元プランを開発するために,中学校教員に対する全国調査を実施した。全国の中学校数の1割に質問紙を送付し,その45%にあたる472校から回答があった。
KAKENHI-PROJECT-26370922
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現代アフリカ女性の開発プログラム参加と言語選択に関する学際的研究
現在、世界中で多数の言語が、その母語話者を急激に失いつつあり、それらは危機言語と呼ばれている。言語が存続の危機に瀕する背景には様々な要素がある。国家レベルの言語政策、地域の商業言語からの圧力、異民族間の勢力争い、異民族間の結婚による言語選択の結果等、歴史的、政治経済的な要因がそれぞれの地域ごとに複雑に影響している。今、アフリカにおけるこのような危機言語のありようを見るとき、そこには女性の社会参加が大きく関与していることがわかる。本研究では特に、言語政策と教育との間にある葛藤に関する調査、識字教育に焦点を当てた開発プログラムの実態の調査、および、多言語社会における旧宗主国の言語と民族語の関係の調査などを通して、現代を生きるアフリカの女性たちの言語生活を詳細に記述することを目的とした。楠瀬は、南アフリカにおいて、開発政策と言語政策との関係を女性と開発の視点から論文にまとめた。戸田は、開発プログラム(特にNGOによる識字教育)にみる女性の社会参加実態を中心に、ウガンダとケニアにおいて調査して得たデータを分析し、論文を作成した。米田は、タンザニア、ナミビア、ジンバブエにおける英語の位置づけを分析して論文にまとめた。協力者の小森は、ケレウェ語における女性語の分析を行った。宮本は、ケニアにおいて、社会参加からみた女性の言語使用及び言語態度の実態をインタビュー形式やアンケート形式で調査して収集したデータを分析し、論文にまとめた。現在、世界中で多数の言語が、その母語話者を急激に失いつつあり、それらは危機言語と呼ばれている。言語が存続の危機に瀕する背景には様々な要素がある。国家レベルの言語政策、地域の商業言語からの圧力、異民族間の勢力争い、異民族間の結婚による言語選択の結果等、歴史的、政治経済的な要因がそれぞれの地域ごとに複雑に影響している。今、アフリカにおけるこのような危機言語のありようを見るとき、そこには女性の社会参加が大きく関与していることがわかる。本研究では特に、言語政策と教育との間にある葛藤に関する調査、識字教育に焦点を当てた開発プログラムの実態の調査、および、多言語社会における旧宗主国の言語と民族語の関係の調査などを通して、現代を生きるアフリカの女性たちの言語生活を詳細に記述することを目的とした。楠瀬は、南アフリカにおいて、開発政策と言語政策との関係を女性と開発の視点から論文にまとめた。戸田は、開発プログラム(特にNGOによる識字教育)にみる女性の社会参加実態を中心に、ウガンダとケニアにおいて調査して得たデータを分析し、論文を作成した。米田は、タンザニア、ナミビア、ジンバブエにおける英語の位置づけを分析して論文にまとめた。協力者の小森は、ケレウェ語における女性語の分析を行った。宮本は、ケニアにおいて、社会参加からみた女性の言語使用及び言語態度の実態をインタビュー形式やアンケート形式で調査して収集したデータを分析し、論文にまとめた。平成12年度は初年度であったので、海外共同研究者と綿密な連絡をとり合い、情報交換をし、全体の研究方法について協議することにフォーカスをおいた。特に開発に関するセンシティブな話題になった時にでも必要な情報交換が出来るような人間関係を築くことに留意した。代表者の宮本は、国内においてはアフリカに関するジェンダー研究の文献研究を行い、海外においてはケニア、ウガンダ、タンザニア、南アフリカ、ナミビアを訪れ、研究協力者との直接の協議を行った。特にケニアにおける聞取り調査のための準備に時間を割いた。分担者の楠瀬は、南アフリカ、ジンバブエを訪れ、言語政策と女性の開発プログラムにおける地位についてケープタウン大学、研究会などに参加して、文献資料の収集、様々な情報収集にあたった。戸田は、ウガンダとケニアにおいて、現地で女子教育にあたっているNGOの活動地において聞き取り調査を行った。協力者である小森淳子は、タンザニアに調査に入り、言語選択の実態を調べ、米田信子はナミビア及びジンバブエにおいて教育省、開発省等を訪れて言語政策とその実施状況を調査した。全体として初年度の目標は達成した。平成13年度は、初年度に築いた現地協力者との人間関係に基く現地調査を中心とした。本研究の研究目的、すなわち(1)開発プログラム(特に識字教育)にみる女性の社会参加実態(2)開発政策と言語政策との関係(3)識字教育と民族語使用との関係(4)社会参加からみた女性の言語選択の実態(5)識字教育と民族語・民族文化保持の関係のうち、宮本は、ケニア、タンザニア、ウガンダにおいて(2)開発政策と言語政策との関係(3)識字教育と民族語使用との関係、(4)社会参加からみた女性の言語政策の実態を都市部及び郡部の20代60代のあらゆる社会層の女性を対象にインタビュー形式で調査した。楠瀬は、南アフリカ、ナミビア、ジンバブエ、ボツワナにおいて(1)開発プログラム(特に識字教育)にみる女性の社会参加実態(2)開発政策と言語政策との関係(3)識字教育と民族語使用との関係を都市部以外の地域に入って調査した。戸田は、(1)開発プログラム(特に識字教育)にみる女性の社会参加実態を中心に、ウガンダ、ケニア、タンザニアにおいて調査した。宮本の調査では、教育レベルで言語の選択意識に差が出ること、国家の言語政策にかかわらず、母語を家庭内で維持したいという意識が強いことがわかったが、なお詳細な分析が必要である。楠瀬は、民族語を使用しての教育、特に民話の語り継ぎが大きな成果をあげていることを実証した。戸田は、少女の識字教育に携わるNGOの活動を追いながら、同じNGOの活動であっても地域によってアプローチが異なることなどを観察した。
KAKENHI-PROJECT-12371001
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現代アフリカ女性の開発プログラム参加と言語選択に関する学際的研究
今後は、現地研究者の協力を得て、それぞれの地域での調査及び入手したデータの分析を進めていきたい。また、本研究対象地域は、東部アフリカと南部アフリカであるが、今後は西部及び北部地域にまで拡大して、アフリカ地域全体を概観できるように研究を展開していきたい。本研究3年目の本年度は、現地調査最後の年であり、過去2年間に築いた現地協力者との人間関係に基いたフィールドワークのまとめの年とした。本研究の研究目的、すなわち(1)開発プログラム(特に識字教育)にみる女性の社会参加実態(2)開発政策と言語政策との関係(3)識字教育と民族語使用との関係(4)社会参加からみた女性の言語選択の実態(5)識字教育と民族語-民族文化保持の関係のうち、宮本は、ケニアにおいて(2)開発政策と言語政策との関係(3)識字教育と民族語使用との関係、(4)社会参加からみた女性の言語政策の実態を都市部及び郡部の20代60代のあらゆる社会層の女性を対象にインタビュー形式で調査した。楠瀬は、南アフリカ、ナミビア、ジンバブエ、ボツワナにおいて(1)開発プログラム(特に識字教育)にみる女性の社会参加実態(2)開発政策と言語政策との関係(3)識字教育と民族語使用との関係を都市部以外の地域に入って調査した。戸田は、(1)開発プログラム(特に識字教育)にみる女性の社会参加実態を中心に、ウガンダ、ケニア、タンザニアにおいて調査した。宮本の調査では、教育レベルで言語の選択意識に差が出ること、国家の言語政策にかかわらず、母語を家庭内で維持したいという意識が強いことがわかったが、なお詳細な分析が必要である。楠瀬は、民族語を使用しての教育、特に民話の語り継ぎが大きな成果をあげていることを実証した。戸田は、少女の識字教育に携わるNGOの活動を追いながら、同じNGOの活動であっても地域によってアプローチが異なることなどを観察した。米田はジンバブエにおいて開発政策と言語政策との関係を調査した。以上の調査報告を日本アフリカ学会を始め様々な研究会で発表した。今後は、それぞれの調査で入手したデータの分析を進めていく。本年度は、本研究の最終年度であり、過去3年間に行ったフィールドワークのまとめを行った。本研究では、社会言語学的アプローチを通して、アフリカ地域(ケニア、タンザニア、ウガンダ、ボツワナ、ジンバブエ、南アフリカ)における以下の点を明らかにすることであった。すなわち、(1)開発プログラム(特に識字教育)にみる女性の社会参加実態(2)開発政策と言語政策との関係(3)識字教育と民族語使用との関係(4)社会参加からみた女性の言語選択の実態(5)識字教育と民族語・民族文化保持の関係上記研究目的のうち、宮本は、ケニア及びタンザニアにおいて(2)開発政策と言語政策との関係(3)識字教育と民族語使用との関係、(4)社会参加からみた女性の言語使用及び言語態度の実態をインタビュー形式やアンケート形式で調査して収集したデータを分析し、口頭発表の上、論文にまとめた。
KAKENHI-PROJECT-12371001
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12371001
カーボンナノファイバーをテンプレートに応用した金属酸化物ナノチューブの合成
ナノテクノロジーは,IT医薬,バイオテクノロジー,化学工業などの産業の基盤に関わるものであり,今後ますます重要となる分野である.ナノテクノロジーの進展には,ナノスケールオーダーで構造が制御された材料が必要不可欠であり,現在その合成法の開発が精力的に行われている.ナノスケールマテリアルの中でも,ナノスケールの中空構造を有するナノチューブは,その構造特異性から注目され,金属酸化物あるいは金属からなるナノチューブの合成が検討されている.本申請課題では,ナノスケールカーボンマテリアルであるカーボンナノファイバーをテンプレートに用いて金属酸化物チューブの合成を試みた.その結果,カーボンナノファイバーをシリカで被覆し,酸素雰囲気下で加熱しカーボンファイバーを酸化除去したところ,シリカファイバーの合成に成功した.またあらかじめ金(Au),あるいは白金(Pt)ナノ粒子を担持したカーボンナノファイバーをテンプレートに用いてシリカチューブを合成したところ,シリカチューブ内部にこれらの金属ナノ粒子を固定化することができた.そこでこれらのAu,およびPt内包シリカナノチューブを水素一酸素燃料電池(PEFC)のアノード電極触媒に応用したところ,優れた発電特性を示すことが分かった.シリカ中にこれらの金属を内包することで,金属ナノ粒子がシンタリングしないため,高い電極活性を示したものと考えられる.またAu, Pt内包シリカナノチューブの金属種の電子構造をX線吸収分光法で調べたところ,これらの金属はシリカと化学的に強く相互作用していることが分かった.ナノテクノロジーは,IT,医薬,バイオテクノロジー,化学工業などの産業の基盤に関わるものであり,今後ますます重要となる分野である.ナノテクノロジーの進展には,ナノスケールオーダーで構造が制御された材料が必要不可欠であり,現在その合成法の開発が精力的に行われている.ナノスケールマテリアルの中でも,ナノスケールの中空構造を有するナノチューブは,その構造特異性から注目され,金属酸化物あるいは金属からなるナノチューブの合成が検討されている.通常,金属酸化物,および金属ナノチューブの合成では,陽極酸化アルミナ,ブロック共重合体などに代表されるテンプレートが利用される.テンプレートを利用したナノチューブ合成では,得られるチューブの構造がテンプレートの構造により決定される.よって,テンプレート法で種々の形状のナノチューブを合成するには,幾何学的構造,形状に対して高い自由度をもつテンプレート材料が必要となる.本申請課題では,ナノスケールカーボンマテリアルであるカーボンナノファイバーをテンプレートに用いて金属酸化物チューブの合成を試みた.カーボンナノファイバー存在下で,テトラエトキシシランの加水分解を行い,その後カーボンナノファイバーを除去する目的で,空気中で加熱処理をしたところ,カーボンナノファイバーの形状を反映したシリカナノチューブが得られた.またファイバー径の異なるカーボンナノチューブをテンプレートに用いたところ,チューブ内径が60200nmのシリカナノチューブを合成可能であることが分かった.ナノテクノロジーは,IT医薬,バイオテクノロジー,化学工業などの産業の基盤に関わるものであり,今後ますます重要となる分野である.ナノテクノロジーの進展には,ナノスケールオーダーで構造が制御された材料が必要不可欠であり,現在その合成法の開発が精力的に行われている.ナノスケールマテリアルの中でも,ナノスケールの中空構造を有するナノチューブは,その構造特異性から注目され,金属酸化物あるいは金属からなるナノチューブの合成が検討されている.本申請課題では,ナノスケールカーボンマテリアルであるカーボンナノファイバーをテンプレートに用いて金属酸化物チューブの合成を試みた.その結果,カーボンナノファイバーをシリカで被覆し,酸素雰囲気下で加熱しカーボンファイバーを酸化除去したところ,シリカファイバーの合成に成功した.またあらかじめ金(Au),あるいは白金(Pt)ナノ粒子を担持したカーボンナノファイバーをテンプレートに用いてシリカチューブを合成したところ,シリカチューブ内部にこれらの金属ナノ粒子を固定化することができた.そこでこれらのAu,およびPt内包シリカナノチューブを水素一酸素燃料電池(PEFC)のアノード電極触媒に応用したところ,優れた発電特性を示すことが分かった.シリカ中にこれらの金属を内包することで,金属ナノ粒子がシンタリングしないため,高い電極活性を示したものと考えられる.またAu, Pt内包シリカナノチューブの金属種の電子構造をX線吸収分光法で調べたところ,これらの金属はシリカと化学的に強く相互作用していることが分かった.
KAKENHI-PROJECT-17760616
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17760616
肝がん患者・家族の意思決定を支える看護支援プログラムの開発
肝がん患者(17名)とその家族(18名)を対象に、半構成的面接調査を実施し質的帰納的に分析を行った。患者・家族の治療と療養に関する意思決定のプロセスは【病状の受けとめと現状の認識】、【決定しなければならない事象の見定め】、【判断材料の探索と収集】、【具体的な選択肢の検討】、【意思決定に向かう姿勢をつくる】で構成されており、闘病過程別に特徴的な意思決定の内容があることが明らかになった。これらの結果をもとに、肝がん患者・家族の意思決定を支える看護支援プログラム案を検討した。肝がん患者(17名)とその家族(18名)を対象に、半構成的面接調査を実施し質的帰納的に分析を行った。患者・家族の治療と療養に関する意思決定のプロセスは【病状の受けとめと現状の認識】、【決定しなければならない事象の見定め】、【判断材料の探索と収集】、【具体的な選択肢の検討】、【意思決定に向かう姿勢をつくる】で構成されており、闘病過程別に特徴的な意思決定の内容があることが明らかになった。これらの結果をもとに、肝がん患者・家族の意思決定を支える看護支援プログラム案を検討した。肝がん患者は疾患の病態特性から,長期にわたり特有な闘病過程を歩むことが明らかにされており,患者の意思決定を支えるためには網羅的な支援ではなく,地域で生活する患者と家族を一つの対象として捉え,家族像を把握したうえで継続的に支援することが必要となる.本研究では,肝がん患者・家族を対象に,闘病過程の各段階(発がん期,再発期,多発期)における意思決定のプロセスの構造を明らかにし,その意思決定を支える看護支援プログラムを作成することを最終的な研究課題としている.そのため,平成21年度は肝がん患者・家族を対象に闘病過程の各段階における意思決定のプロセスの構造を明らかにすることを研究課題とした.21年度前期は,研究協力施設での研修,調査依頼を行った.また,米国におけるアドボケーターの現状に関する情報収集および医療コミュニケーションの技術の研鑽を目的に医療決断サポーター養成講座を受講した.後期は,所属機関の倫理委員会の承認を得て,研究協力施設で肝がん患者とその家族6組に対し,それぞれに半構成化面接調査を行った.分析を進める中で,家族の背景(結びつき,居住形態など)によって意思決定のプロセスに異なる点がみられることが明らかとなった.そのため当初,家族に対してはヒアリングをもとに意思決定に関する行動や認識に関する質問紙を作成し調査を行うことを予定していたが,分析の途上ではあるが上記の結果を考慮し,比較分析が行えるよう対象者を新たに加え面接調査を継続することに変更した.今後は次年度にかけて,新たな調査施設の倫理委員会の承認を得て,面接調査を継続し,肝がん患者・家族の意思決定のプロセスを明らかにすることを目指す.本研究では,肝がん患者・家族を対象に治療および療養についての意思決定のプロセスの構造を明らかにし,その意思決定を支える看護支援プログラムを作成することを最終的な研究課題としている.平成2122年度は肝がん患者・家族を対象に半構造化面接を行い,闘病過程の各段階における意思決定のプロセスの構造を明らかにすることを研究課題とした.21年度に所属機関の倫理委員会の承認を得て,研究協力施設で肝がん患者とその家族6組に対し面接調査を行ったが,対象の家族の背景(同居人数,居住形態など)に偏りがみられることが明らかになった。そのため,本年度は新たに調査施設を加えて肝がん患者とのその家族6組に治療や療養について意思決定に関する面接調査を行い,対象と主治医との承諾が得られた場合は,診察の場面について参加観察を行った。平成21,22年度の分析結果の一部から,がんの再発を複数回経験している患者とその家族の意思決定のプロセスとして以下のことが明らかになった,肝がん患者と家族は,消えないがんの再発を覚悟しながら,繰り返される再発の告知に向き合い,治療や療養方法を判断するための情報を揃えて決定の場に臨み,最終的な治療の決定は医師に託していた.また,家族は遠方に住む家族に患者や治療についての状況を報告するなど無理のないサポート体制を整えていた.長期におよぶ闘病過程では療養に関する意思決定に関して,家族が担う役割が大きくなるため,情報提供の在り方を含め患者・家族に対する看護支援を検討することが必要と考える.本研究の目的は、肝がん患者と家族の治療および療養についての意思決定のプロセスの構造を明らかにし、闘病過程(発がん期、再発期、多発期)別に意思決定を支える看護支援プログラムを作成することである。平成2123年度にかけて、肝がん患者(17名)とその家族(18名)を対象に半構成的面接調査を実施した。面接は病気の進行や家族のライフイベントなどを考慮し、縦断的に13回実施し質的帰納的に分析を行った。結果、意思決定のプロセスは【病状の受けとめと現状の認識】、【決定しなければならない事象の見定め】、【判断材料の探索と収集】、【具体的な選択肢の検討】、【意思決定に向かう姿勢をつくる】で構成されていた。闘病過程別の特徴的な意思決定の内容として、発がん期は【治療施設の選択と決定】、【体調管理の方法】、【心身の回復に合わせた活動と休息のバランス】があった。再発期は、治療後の回復の程度によって【療養の場の選択と決定】し、治療と治療の間の【生活の切り替え】を行っていた。また、居住している距離や発達段階によって家族員別に【伝える情報内容や時期】を決定していた。多発期は、患者とともに家族員の高齢化が進む中で、【新たな生活の再編】に取り組んでいた。
KAKENHI-PROJECT-21792246
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21792246
肝がん患者・家族の意思決定を支える看護支援プログラムの開発
治療については、全期にわたり【最終的な決定は医師に託す】【患者の決定を支援する】といった姿勢で決定していた。各期の特徴と先行文献を参考にし、肝がん患者・家族の意思決定を支える看護支援プログラム案を検討した。
KAKENHI-PROJECT-21792246
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談話における心的態度の認知に関する心理学的研究
コンピュータによる言語分析や言語理解過程の研究が進められている今日、構文を解析し、辞書を参照し、意味を再現する能力だけでなく、その発話から意図や目標や感情を推論したり、その先を予測したりする能力が必要である。特に、「察しの言語」とも言われる日本語の発話の理解過程を深く知るためには、語用論的観点から言語行動における発話者の心的態度がいかに認知されているかに着目する必要があろう。単文レベルの言語表現だけでなく、談話レベルで、そこに潜む話者の心的態度に着目して言語行動に表れる心のありようとその認知について、実験的手法も用いて検討した。まず、様々な言語行動分析の文献を検索することによって、言語行動研究の現在を概観したところ、状況に応じた表現の用い方を調べる記述的調査が中心であり、その表現の聞き手の捉えられ方及びその認知過程を実験的手法で検証されていないことが明らかになった。それを補うべく、依頼と断りの言語行動を中心にして、談話の聴取実験によって、談話の評定を行い、談話展開の仕方や発話意図の前ぶれや韻律的要素などの諸要因が抽出できた。すなわち、我々がある目標を遂行するには、その意図に従って談話を展開させながら、談話全体でその目標に到達しようとしており、どのような談話構成要素つまり意味形式(semantic formula)から談話が成り立っているか、さらにそれら構成要素の提示順序によっても、談話全体として伝達される意図・ニュアンスは異なり得ること、韻律的要素も含めて、発話意図の前ぶれが機能している点も明らかになった。談話レベルで言語行動の認知を検討することは、日本語学習者が直面する発話上の問題にも示唆を与え得ると考えられ、コミュニケーション教育の一助となるであろう。コンピュータによる言語分析や言語理解過程の研究が進められている今日、構文を解析し、辞書を参照し、意味を再現する能力だけでなく、その発話から意図や目標や感情を推論したり、その先を予測したりする能力が必要である。特に、「察しの言語」とも言われる日本語の発話の理解過程を深く知るためには、語用論的観点から言語行動における発話者の心的態度がいかに認知されているかに着目する必要があろう。単文レベルの言語表現だけでなく、談話レベルで、そこに潜む話者の心的態度に着目して言語行動に表れる心のありようとその認知について、実験的手法も用いて検討した。まず、様々な言語行動分析の文献を検索することによって、言語行動研究の現在を概観したところ、状況に応じた表現の用い方を調べる記述的調査が中心であり、その表現の聞き手の捉えられ方及びその認知過程を実験的手法で検証されていないことが明らかになった。それを補うべく、依頼と断りの言語行動を中心にして、談話の聴取実験によって、談話の評定を行い、談話展開の仕方や発話意図の前ぶれや韻律的要素などの諸要因が抽出できた。すなわち、我々がある目標を遂行するには、その意図に従って談話を展開させながら、談話全体でその目標に到達しようとしており、どのような談話構成要素つまり意味形式(semantic formula)から談話が成り立っているか、さらにそれら構成要素の提示順序によっても、談話全体として伝達される意図・ニュアンスは異なり得ること、韻律的要素も含めて、発話意図の前ぶれが機能している点も明らかになった。談話レベルで言語行動の認知を検討することは、日本語学習者が直面する発話上の問題にも示唆を与え得ると考えられ、コミュニケーション教育の一助となるであろう。日常の言語現象には、言語学が扱う語彙的及び統語的側面のみならず、言語使用者の一般的知識や事象の捉え方、ことばの使われ方など、語用論的な要素が不可欠である。そこは文を越えた談話の世界であり、言語現象に関わる者の認知的メカニズムに拠っていると考えられる。特に、「察しの言語」とも言われる日本語の発話の理解過程を深く知るためには、ある言語表現をもって、その使用者は外界をどのように認知し、どのような意味を表そうとしているのか、また、受け手はそこにどのような意味を汲み取るのか、語用論的観点から心的態度に着目する必要がある。単文では把握しにくい発話者の意図・心情を、我々はいかに捉えているかを談話レベルで検討し、話し手と聞き手が相互に心的態度を認知し合いながら談話を展開していく点を取り上げ、日本語の談話理解過程の一端の解明を試みた。まずは、日本語母語話者に対して分析を行い、談話全体として発話者の心的態度が認知されれば、目的遂行のための直接的な発話の言及が存在しなくても、その発話行為が成立し、談話レベルで丁寧さも認識され得ることが示された。一方、このような発話行為の語用論的な側面がうまく機能しない場合には、コミュニケーションに支障をきたす。そればかりか、そのような誤りに対して対話者は、誤りを犯した人の言語能力が原因であると捉えるよりも、むしろその人自身のパーソナリティーに帰しがちな傾向が明らかになった。談話の運び方次第で他者の人格把握にまで影響を及ぼすということは、言語文化や価値観の異なる人々とコミュニケーションする機会が増加しつつある現代にあって、さらに検討を要する問題となろう。さらに、第2言語教育の在り方にも示唆を与えることとなろう。コンピュータによる言語分析や言語理解過程の研究が進められている今日、構文を解析し、辞書を参照し、意味を再現する能力だけでなく、その発話から意図や目標や感情を推論したり、その先を予測したりする能力が必要である。特に、「察しの言語」とも言われる日本語の発話の理解過程を深く知るためには、語用論的観点から言語行動における発話者の心的態度がいかに認知されているかに着目する必要があろう。
KAKENHI-PROJECT-09834003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09834003
談話における心的態度の認知に関する心理学的研究
単文レベルの言語表現だけでなく、談話レベルで、そこに潜む話者の心的態度に着目して言語行動に表れる心のありようとその認知について、実験的手法も用いて検討した。まず、様々な言語行動分析の文献を検索することによって、言語行動研究の現在を概観したところ、状況に応じた表現の用い方を調べる記述的調査が中心であり、その表現の聞き手の捉えられ方及びその認知過程を実験的手法で検証されていないことが明らかになった。それを補うべく、依頼と断りの言語行動を中心にして、談話の聴取実験によって、談話の評定を行い、談話展開の仕方や発話意図の前ぶれや音韻的要素などの諸要因が抽出できた。すなわち、我々がある目標を遂行するには、その意図に従って談話を展開させながら、談話全体でその目標に到達しようとしており、どのような談話構成要素つまり意味形式(semantic formula)から談話が成り立っているか、さらにそれら構成要素の提示順序によっても、談話全体として伝達される意図・ニュアンスは異なり得ること、音韻的要素も含めて、発話意図の前ぶれが機能している点も明らかになった。談話レベルで言語行動の認知を検討することは、日本語学習者が直面する発話上の問題にも示唆を与え得ると考えられ、コミュニケーション教育の一助となるであろう。
KAKENHI-PROJECT-09834003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09834003
地方都市の防災まちづくり支援のためのWebGISとプランニング手法の開発
WebGIS開発については、新たに開発を試みる延焼危険性評価機能、災害時緊急行動困難性評価機能、地域防災力評価機能の各新機能の核となる基礎技術開発を進めた。災害時緊急行動困難性評価については次頁の研究発表に示すとおり論文にまとめ発表し、地域防災力評価については次頁の研究発表に示すとおり査読付きの論文に投稿・採録が決定した。この他、延焼シミュレーション機能、延焼危険性評価機能、地域点検マップづくり支援機能、防災関連地理情報提供機能、市街地整備機能、防災性能測定機能については、昨年度までの開発成果・課題を踏まえ、各機能に改良を施した。そして、全ての機能を統合するための開発の基本方針・課題を検討し、その結果を踏まえ、WebGISのプロトタイプの開発を行った。このプロトタイプの予備実験を行い、そこで明らかになった課題解決のための改良を進め、改良したプロトタイプの有効性を検証するための実証実験の内容・方法を検討した。プランニング手法開発については、前年度の研究成果と課題検討結果を整理し、プランニング手法の具体的内容の検討・まとめを行った。ここまででまとめられた手法の有用性と問題を探るため、専門家との検討を行った。以上を基に得られた成果と課題を基にプランニング手法のまとめを試みた。以上2年間の成果を踏まえ、開発したWebGISとプランニング手法の普及・実用化に向けた課題の整理と活用可能性を検討した。WebGIS開発については,申請者による平成18年度までの研究成果と課題を整理し,本研究課題で開発するWebGISの開発方針と開発要件を明確化した。一方,新たに開発を試みる(1)延焼危険性評価機能,(2)防災アクティビティ評価機能,(3)人的防災力評価機能,(4)防災対策立案支援機能,(5)地域点検マップづくり支援機能の各新機能の核となる基礎技術開発を進めた。(1)については評価手法の原案をまとめ,現実市街地への適用により評価結果例を得ることができた。(2)については次頁研究発表に示すとおり論文にまとめ発表し,(3)については査読付きの論文に投稿した。(4)と(5)については基礎的技術開発の研究を行い,その成果を基に機能の試作版を開発した。この試作版を防災まちづくりの現場で活用する実証実験を,2007年9月に愛知県豊橋市山田地区と,2007年9月と10月に愛知県田原市赤羽根地区,そして2007年12月2008年3月まで豊橋市二川地区において実施し,それぞれの機能の成果と課題を得ている。現在は,全機能を統合するための開発の基本方針・課題を検討し,その結果を踏まえ,WebGISのプロトタイプを進めている。プランニング手法開発については,これまでの研究成果を基に,プランニング手法の基本理念や方針の検討・整理を行った。この結果と研究対象地区の防災まちづくりに対する状況を踏まえながら,プランニング手法の原案を具体化した。そして,具体化された手法の原案を対象地区の防災まちづくり活動で試用し,手法を活用した実践活動を調査(活動による地元の状況変化,問題等)した。その結果を基に,手法の効果や課題を明らかにし,課題を改善するための検討を行った。以上の成果をまとめ,WebGIS開発とプランニング手法開発の成果・課題を明らかにし,次年度に取り組む開発の方向性・内容を検討した。WebGIS開発については、新たに開発を試みる延焼危険性評価機能、災害時緊急行動困難性評価機能、地域防災力評価機能の各新機能の核となる基礎技術開発を進めた。災害時緊急行動困難性評価については次頁の研究発表に示すとおり論文にまとめ発表し、地域防災力評価については次頁の研究発表に示すとおり査読付きの論文に投稿・採録が決定した。この他、延焼シミュレーション機能、延焼危険性評価機能、地域点検マップづくり支援機能、防災関連地理情報提供機能、市街地整備機能、防災性能測定機能については、昨年度までの開発成果・課題を踏まえ、各機能に改良を施した。そして、全ての機能を統合するための開発の基本方針・課題を検討し、その結果を踏まえ、WebGISのプロトタイプの開発を行った。このプロトタイプの予備実験を行い、そこで明らかになった課題解決のための改良を進め、改良したプロトタイプの有効性を検証するための実証実験の内容・方法を検討した。プランニング手法開発については、前年度の研究成果と課題検討結果を整理し、プランニング手法の具体的内容の検討・まとめを行った。ここまででまとめられた手法の有用性と問題を探るため、専門家との検討を行った。以上を基に得られた成果と課題を基にプランニング手法のまとめを試みた。以上2年間の成果を踏まえ、開発したWebGISとプランニング手法の普及・実用化に向けた課題の整理と活用可能性を検討した。
KAKENHI-PROJECT-19860038
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19860038
近代語コーパスの高度なタグ付けと形態素解析による待遇表現・人称代名詞の計量的研究
『太陽コーパス』と『近代女性雑誌コーパス』を使って、近代日本語の待遇表現・人称代名詞の使用実態について明らかにするために、次のことを行った。まず、分析に必要な言語使用状況に関する情報と形態素解析によって得られる形態論情報をコーパスに新たに付与した。次に、形態論情報を利用してコーパスから待遇表現・人称代名詞の用例を網羅的に抽出した。そして、待遇表現・人称代名詞・言語使用状況の対応関係について計量的分析を行い、いくつかの対応関係について明らかにした。本研究の目的は、近代語の代表的なコーパスである『太陽コーパス』と『近代女性雑誌コーパス』を用いて、コーパスに既存のXMLタグの情報、および新たにコーパスのXMLタグに付与する言語使用状況に関する情報と、形態素解析によって得られる形態論情報を組み合わせ、近代語の待遇表現・人称代名詞の計量的分析を行い、それらの特徴を明らかにすることである。その達成のため、平成24年度は次の3点を実践した。1.新たにコーパスのXMLタグに付与する言語使用状況に関する情報のうち、人手の作業が必要なものについて、23年度に引き続き情報付けの作業を行い、完了した。2.形態素解析したコーパスをデータベースに格納した。3.コーパスのXMLタグの情報(あらたに付与した情報も含む)の一部と形態素解析によって得られた形態論情報とを利用して、一人称代名詞の計量的分析を行った。まず、形態論情報を利用し『太陽コーパス』『近代女性雑誌コーパス』から一人称代名詞を網羅的に抽出した。次に、一人称代名詞の語形と文章の種類・文末辞種類・著者性別との対応関係や一人称代名詞の使用頻度の通時的変遷について分析した。その結果、次の13の点について明らかになった。この分析結果については学会発表をおこなった。1一人称代名詞の語形と文章の種類との間には密接な対応関係がある。2書き言葉が文語文から口語文へ交替する中途段階において、「吾人」「余」のような文語文に特徴的に出現する一人称代名詞が一時的に書き言葉的性質の強い口語文にも広がって出現する。3雑誌記事の著者性別と記事で使用される文末辞の種類との間には強い対応関係があり、一人称代名詞はその文末辞の種類に対応して出現する。本研究の目的は、近代語の代表的なコーパスである『太陽コーパス』と『近代女性雑誌コーパス』を用いて、コーパスに既存のXMLタグの情報、および新たにコーパスのXMLタグに付与する言語使用状況に関する情報と、形態素解析によって得られる形態論情報を組み合わせ、近代語の待遇表現・人称代名詞の計量的分析を行い、それらの特徴を明らかにすることである。その達成のため、平成25年度は、XMLタグの情報と形態論情報とを利用して、次の13にあげる一人称・二人称代名詞および待遇表現形式の計量的分析をおこなった。これらの研究成果は論文や学会発表として発表した。1『太陽コーパス』の小説・戯曲の会話部分に出現する一人称・二人称代名詞について、話者性別・口語文体との対応関係を分析した。その結果、話者性別により使用する一人称・二人称代名詞の語形や口語文体との対応関係に違いがあることなどが明らかになった。2『近代女性雑誌コーパス』に出現する一人称代名詞について、文章の種類との対応関係を分析した。また、地の文に出現する一人称代名詞について、著者性別・文体との対応関係を分析した。その結果、一人称代名詞と文章の種類には密接な対応関係があること、地の文で女性は男性より丁寧な文体を選択し、その文体に対応した一人称代名詞を選択することなどを明らかにした。3『太陽コーパス』の小説・戯曲の会話部分に出現する動詞の尊敬待遇表現形式について、二人称代名詞との対応関係、形式選択における位相(年・話者性別・話者階層・口語文体)の重要度を分析した。その結果、尊敬待遇表現形式と二人称代名詞には密接な対応関係があること、位相は尊敬待遇表現形式の選択に決定的な影響力を有しないこと、こうした様相は尊敬待遇表現形式が命令形か否かにより違いがあることなどを明らかにした。『太陽コーパス』と『近代女性雑誌コーパス』を使って、近代日本語の待遇表現・人称代名詞の使用実態について明らかにするために、次のことを行った。まず、分析に必要な言語使用状況に関する情報と形態素解析によって得られる形態論情報をコーパスに新たに付与した。次に、形態論情報を利用してコーパスから待遇表現・人称代名詞の用例を網羅的に抽出した。そして、待遇表現・人称代名詞・言語使用状況の対応関係について計量的分析を行い、いくつかの対応関係について明らかにした。本研究の目的は、近代語の代表的なコーパスである『太陽コーパス』と『近代女性雑誌コーパス』を用いて、コーパスに既存のXMLタグの情報、および新たにコーパスのXMLタグに付与する言語使用状況に関する情報と、形態素解析によって得られる形態論情報を組み合わせ、近代語の待遇表現・人称代名詞の計量的分析を行い、それらの特徴を明らかにすることである。その達成のため、平成23年度は次の3点を実践した。1.新たにコーパスのXMLタグに付与する言語使用状況に関する情報のうち、人手の作業が必要な(1)媒体、(2)話し手・書き手の性別、(3)話し手・書き手の階層に関するものについて、情報付けの作業を進めた。2.次年度に行う本格的な計量的分析の試行として、新たにタグ付けした情報の一部を利用して、人称代名詞「吾人(ごじん)」の『太陽コーパス』での使用実態を「余(よ)」と比較しながら分析した。
KAKENHI-PROJECT-23720242
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23720242
近代語コーパスの高度なタグ付けと形態素解析による待遇表現・人称代名詞の計量的研究
その結果、「吾人」は「余」同様に主に文章で用いられ、会話ではほとんど用いられないという書き言葉的要素が強い特徴を持つこと、ただし、文語体の文章から口語体の文章への使用の拡大の程度が「余」とくらべて「吾人」のほうが低く、それが「吾人」の衰退が早く進行した一因となったことが明らかになった。これまで研究のほとんど行われていなかった主に文章で用いられる人称代名詞について、新たな情報を付与したコーパスを用いることで、その使用実態の一端を明らかにすることができた。この分析結果については論文として発表した。3.コーパスの形態素解析を終了し、データベースに格納する準備を整えた。コーパスのXMLタグへの情報付けの作業補助を依頼した者の一身上の都合により、作業時間が確保できず、代替の作業者の確保も検討したが適任者を得られなかった。このため、作業完了が計画より遅れ25年2月までかかり、付与した情報の全体を利用した分析・研究を今年度行うことができなかった。コーパスのXMLタグへの情報付けの作業において、作業補助を依頼した者の一身上の都合により作業時間が確保できず、作業進行が計画より遅れた。コーパスのXMLタグへの情報付けの作業が完了したので、この情報全体をデータベースに格納したうえで、形態論情報と組み合わせて一人称代名詞・待遇表現の計量的分析をおこなう。研究成果は学会で発表し、論文として執筆する準備をおこなう。今年度、進捗状況に遅れの出た、コーパスのXMLタグへの情報付けの作業については、すでに新たな作業補助者を確保して作業を続行しており、次年度の早い段階で作業を終了させる計画である。その作業終了後、XMLタグの情報を形態素解析による形態論情報とともに、データベースに格納する。そこから、分析対象の待遇表現・人称代名詞の用例を言語使用状況に関する情報とともに抽出し、計量的分析を行う。研究成果は学会で発表し、論文として執筆する準備を行う。コーパスのXMLタグへの情報付けの作業に遅れた生じていたため、今年度は情報全体を用いた分析・研究ができず、それに伴う経費を使用できなかった。次年度の研究費は、残された分析・研究に必要な物品の購入や学会発表をおこなうための旅費等に充てることとしたい。作業補助を依頼した者の一身上の都合により作業時間が確保できず、作業に対する謝金支出が計画より少額となり、次年度に使用する研究費が生じた。これは、次年度も続行する作業の補助者に対する謝金の支払いに使用する計画である。
KAKENHI-PROJECT-23720242
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23720242
ソフトウェア開発に関する機密データからの研究用データの生成
本研究の目的は,与えられたソフトウェア開発データに対し,特徴量の類似する研究用データを人工的に生成する方法を確立することである.平成30年度は,前年度に開発したデータ生成方法の拡張と評価を進めた.まず,歪度と尖度の変換を伴うデータ生成方法について,その効果を実験的に評価した.実験では,多数のソフトウェア開発プロジェクトデータセットを用いて,歪度と尖度の変換がソフトウェア開発工数予測モデルに与える影響について,モデルの適合度と予測性能の両面から評価を行った.その結果,データセットによっては歪度と尖度の変換がモデルの適合度および予測性能の影響を与えることが分かり,変換の必要性を確認できた.また,外れ値を含むデータセットの再現については,まず,外れ値の大きさと割合を定量化する方法を提案した.そして,定量化の結果に基づいて,平均値から乖離の大きい値を生成し,データセットに含める方法を提案した.また,欠損値の再現については,個々の変数について欠損値を生成した後,変数間の欠損値のパターンを再現するようにデータの入れ替えを行う方法を提案した.ただし,欠損値のパターンを再現することにより,変数間の値の関係が再現されなくなる恐れがあるため,その両者の再現のバランスをとる方法についても検討した.また,これまでの成果とまとめて,2つの国際会議APSEC2018およびQuASoQ2018にて論文発表を行った.平成30年度以降の研究実施計画として,(1)歪度と尖度を利用したデータ生成方法について,さらなる評価を進める,(2)外れ値・欠損値の再現方法の確立を目指す,(3)様々なデータマイニング方法を用いた評価を行う,(4)データ増減による効果の評価を行う,を予定していた.(1)(2)については平成30年度中に実施できており,(3)(4)についても現在進めている.以上のことから研究実施計画に従っておおむね順調に進呈していると考える.平成31年度は,様々なデータマイニング方法を用いた評価,および,データ増減による効果の評価を行う.前者については,特に外れ値除去方法やアソシエーションルールマイニングを用いた評価を行う.さらに,データ増減による効果の評価として,データから生成されるモデルの適合度および予測性能の関係を実験的に明らかにする.本研究の目的は,与えられたソフトウェア開発データに対し,特徴量の類似する研究用データを人工的に生成する方法を確立することである.現実のソフトウェア開発データを分析した結果,多くの変数値は対数正規分布に近い分布となっているが,歪みを含んでいることが明らかとなった.そこで,ボックス=ミュラー法により正規分布を生成し,対数変換を行うことで対数正規分布に従うデータを生成することとした.さらに,データの特徴量として,尖度と歪度を計測することとし,生成されたデータに対して尖度と歪度の変換を施すことで,現実のデータにより近づける方法を提案した.現実のソフトウェア開発データに対してsinh-arcsinh transformationを用いた結果,与えられた尖度と歪度に一致するデータの生成が可能なことを確認し,線形回帰モデルを用いた評価を行った.また,変数間の関係の再現方法として,3変数以上の組み合わせを扱う方法を提案した.具体的には,相関の大きい2変数の組み合わせについて,一方を他方で除した導出尺度を設け,導出尺度を含むすべての2変数間の関係を再現することとした.さらに,ソフトウェア開発データを研究により適したものとするために,人工的に個体を追加するオーバーサンプリング法についても検討した.多数のソフトウェア開発データを対象として複数のオーバーサンプリング法を実感的に比較し,その効果を明らかにした.平成29年度の研究実施計画では,(1)多様なデータの分布・尺度を想定したデータ生成方法の確立,(2)変数間の関係の再現方法の確立,(3)多数のデータセット,データ分析方法を用いた評価,を予定していた.(1)については,ボックス=ミュラー法,対数変換,および,尖度と歪度の変換を用いる方法を提案した.(2)については,導出尺度を用いる方法を提案した.(3)についても評価を進めている.以上のことから,研究実施計画に従っておおむね順調に進展していると考える.本研究の目的は,与えられたソフトウェア開発データに対し,特徴量の類似する研究用データを人工的に生成する方法を確立することである.平成30年度は,前年度に開発したデータ生成方法の拡張と評価を進めた.まず,歪度と尖度の変換を伴うデータ生成方法について,その効果を実験的に評価した.実験では,多数のソフトウェア開発プロジェクトデータセットを用いて,歪度と尖度の変換がソフトウェア開発工数予測モデルに与える影響について,モデルの適合度と予測性能の両面から評価を行った.その結果,データセットによっては歪度と尖度の変換がモデルの適合度および予測性能の影響を与えることが分かり,変換の必要性を確認できた.また,外れ値を含むデータセットの再現については,まず,外れ値の大きさと割合を定量化する方法を提案した.そして,定量化の結果に基づいて,平均値から乖離の大きい値を生成し,データセットに含める方法を提案した.また,欠損値の再現については,個々の変数について欠損値を生成した後,変数間の欠損値のパターンを再現するようにデータの入れ替えを行う方法を提案した.ただし,欠損値のパターンを再現することにより,変数間の値の関係が再現されなくなる恐れがあるため,その両者の再現のバランスをとる方法についても検討した.また,これまでの成果とまとめて,2つの国際会議APSEC2018およびQuASoQ2018にて論文発表を行った.平成30年度以降の研究実施計画として,(1)歪度と尖度を利用したデータ生成方法について,さらなる評価を進める,
KAKENHI-PROJECT-17K00102
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K00102
ソフトウェア開発に関する機密データからの研究用データの生成
(2)外れ値・欠損値の再現方法の確立を目指す,(3)様々なデータマイニング方法を用いた評価を行う,(4)データ増減による効果の評価を行う,を予定していた.(1)(2)については平成30年度中に実施できており,(3)(4)についても現在進めている.以上のことから研究実施計画に従っておおむね順調に進呈していると考える.平成30年度以降は,歪度と尖度を利用したデータ生成方法について,さらなる評価を進めるとともに,外れ値・欠損値の再現方法の確立を目指す.また,線形回帰モデル等の統計モデルによる評価に加えて,外れ値除去方法やアソシエーションルールマイニングを用いた評価を行う.さらに,データ増減による効果の評価を行う.平成31年度は,様々なデータマイニング方法を用いた評価,および,データ増減による効果の評価を行う.前者については,特に外れ値除去方法やアソシエーションルールマイニングを用いた評価を行う.さらに,データ増減による効果の評価として,データから生成されるモデルの適合度および予測性能の関係を実験的に明らかにする.
KAKENHI-PROJECT-17K00102
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K00102
Elマウス発作発現機構における脳内グルタミン酸とγーアミノ酪酸の役割に関する研究
遺伝性てんかん動物であるElマウスは薬物などを投与することなしに強直性・間代性けいれんを起こすためにヒトの部分てんかん、あるいは側頭葉てんかんの良いモデル動物と考えられている。我々は本研究で、Elマウスのけいれん発現機序をアミノ酸神経伝達物質放出異常の面より検討した。この結果、脳内の興奮性アミノ酸神経伝達物質であるアスパラギン酸の放出がElマウスでは増加していることを見いだした。また、Elマウスのけいれん抑制効果を持つvalproate(抑制性アミノ酸神経伝達物質であるGABAのアゴニスト)がアスパラギン酸の放出を抑制することも見いだした。さらに、これらの生化学的成果に立脚して、興奮性アミノ酸神経伝達物質の拮抗薬、及び抑制性アミノ酸神経伝達物質のアゴニストをElマウスに投与して、これらの薬物がElマウスのけいれん発作発現を抑制することを見いだした。以上の結果、GABA高親和性GABA_Aレセプタ-、GABA_Bレセプタ-、NーメチルーDーアスパラギン酸(NMDA)型グルタミン酸レセプタ-及びメタボトロピック・グルタミン酸レセプタ-がElマウスのけいれん発現機構に関与していることが明らかとなった。しかし、GABA低親和性GABA_Aレセプタ-、カイニン酸型グルタミン酸レセプタ-及びキスカル酸型グルタミン酸レセプタ-はElマウスのけいれん発現機構に関与していないことが明らかとなった。本研究の成果は、単にElマウスのけいれん発現機構の一端を明らかにしたばかりでなく、Elマウスのけいれんを指標とすることにより、新しい抗てんかん薬のスクリ-ニングに際して有用な情報が得られることを明らかにした。遺伝性てんかん動物であるElマウスは薬物などを投与することなしに強直性・間代性けいれんを起こすためにヒトの部分てんかん、あるいは側頭葉てんかんの良いモデル動物と考えられている。我々は本研究で、Elマウスのけいれん発現機序をアミノ酸神経伝達物質放出異常の面より検討した。この結果、脳内の興奮性アミノ酸神経伝達物質であるアスパラギン酸の放出がElマウスでは増加していることを見いだした。また、Elマウスのけいれん抑制効果を持つvalproate(抑制性アミノ酸神経伝達物質であるGABAのアゴニスト)がアスパラギン酸の放出を抑制することも見いだした。さらに、これらの生化学的成果に立脚して、興奮性アミノ酸神経伝達物質の拮抗薬、及び抑制性アミノ酸神経伝達物質のアゴニストをElマウスに投与して、これらの薬物がElマウスのけいれん発作発現を抑制することを見いだした。以上の結果、GABA高親和性GABA_Aレセプタ-、GABA_Bレセプタ-、NーメチルーDーアスパラギン酸(NMDA)型グルタミン酸レセプタ-及びメタボトロピック・グルタミン酸レセプタ-がElマウスのけいれん発現機構に関与していることが明らかとなった。しかし、GABA低親和性GABA_Aレセプタ-、カイニン酸型グルタミン酸レセプタ-及びキスカル酸型グルタミン酸レセプタ-はElマウスのけいれん発現機構に関与していないことが明らかとなった。本研究の成果は、単にElマウスのけいれん発現機構の一端を明らかにしたばかりでなく、Elマウスのけいれんを指標とすることにより、新しい抗てんかん薬のスクリ-ニングに際して有用な情報が得られることを明らかにした。Elマウスは放り上げなどの体位変換刺激によりけいれんが誘発される自然発症てんかん動物である。われわれはElマウスの抑制性ならびに興奮性神経伝達物質の異常に関して研究をすすめてきたが、今年度はElマウス大脳皮質及び海馬切片におけるグルタミン酸の取り込み並びに放出について検討を行なった。実験方法:実験動物はElマウスとその母系のddYマウスを使用した。Elマウスは生後3週齢より、常法に従って1週間に2回放り上げ刺激を行ない、毎回連続してけいれんをおこすEl(+)と、放り上げ刺激を行わないEl(-)について実験を行った。グルタミン酸の取り込みと放出はChapmanらの方法によった。神経伝達物質の放出は高濃度K(50mM)刺激による放出と定義した。実験結果と考按:El(-)のグルタミン酸の放出は、大脳皮質においても海馬においてもいずれもddYより高値であり、一方El(+)における放出はEl(-)より低値であった。この際、El(-)とddYとの間の相異は遺伝的に規制されているものであり、El(+)とEl(-)との間の相異はEl(+)における反復するけいれんの結果に基づくものと想定される。Elマウスの海馬におけるグルタミン酸の取り込みは、El(+)もEl(-)もともにddYに比べて非常に低値であった。しかし大脳皮質においてはいずれのグル-プ間にも有意差が認められなかった。大脳皮質のグルタミン酸の放出は50mMK^+-灌流液に1mM及び5mMグルタミン酸を加えることにより促進するが、10mMのグルタミン酸を負荷するとグルタミン酸の放出は抑制された。また、海馬切片へのグルタミン酸の取り込みも、高濃度のグルタミン酸を負荷することによって低下した。これらの実験結果はグルタミン酸の放出と取り込みはオ-ト・レセプタ-系によって調節されていることを示唆するものである。
KAKENHI-PROJECT-01570607
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01570607
Elマウス発作発現機構における脳内グルタミン酸とγーアミノ酪酸の役割に関する研究
従来は、放り上げ刺激により痙攣感受性の高まった、発作間欠期のE1マウス、放り上げ刺激を行っていないE1マウス、及びこれらの母系であり痙攣素因のないddYマウスにおいて、大脳皮質切片からのアスパラギン酸及びグルタミン酸の放出について検討を行ってきた。今回は、突発的に高頻度に痙攣を起こすE1マウスとddYマウスについて、大脳皮質及び海馬の切片からのアスパラギン酸とグルタミン酸について検討を行い、次ぎの結果を得た。(1)先に、われわれはこれら神経伝達物質の放出について50mMのカリウム濃度の刺激を用いていた。しかし今回はその半量の25mMのカリウムについて検討した結果、ddYマウスやE1マウスの大脳皮質及び海馬からのアスパラギン酸やグルタミン酸は、50mMのカリウムの場合と同様に著明に放出していた。(2)E1マウスのアスパラギン酸の放出は、ddYマウスに比べて、大脳皮質においてのみ有意に低下していた。しかし海馬では変化は認められなかった。またアスパラギン酸の取り込みは、ddYマウスとE1マウスの大脳皮質及び海馬において変化は認められなかった。(3)抗てんかん薬のデパケンはE1マウスの痙攣を阻止する。デパケンは、E1マウスの海馬からのアスパラギン酸の放出を抑制した。また、非カリウム依存性のアスアスパラギン酸の放出をも抑制した。(4)E1マウスにおいてはアスパラギン酸の放出量は、大脳皮質と海馬においてはいずれも同程度であった。しかしグルタミン酸の放出量は、E1マウスにおいては海馬の方が大脳皮質に比べて2倍多かった。これらの実験成績より、E1マウスの痙攣感受性には大脳皮質及び海馬からのアスパラギン酸とグルタミン酸の放出が関係していることが明かとなった。以上の結果、GABA高親和性GABA_Aレセプタ-、GABA_Aレセプタ-、NMDA型Gluレセプタ-及びメタボトロピックGluレセプタ-がElマウスのけいれん発現機構に関与していることが明らかとなった。しかし、GABA低親和性GABA_Aレセプタ-、KA型Gluレセプタ-及びQA型Gluレセプタ-は関与していないことが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-01570607
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01570607
自然免疫系を始動するリポ多糖分子と膜脂質との相互作用の固体NMRによる解析
我々は、自然免疫反応のリガンド分子であるリポ多糖(LPS)と生体膜がどのように関わりあっているかを固体NMRにより明らかにした。まず、LPSと種々のリン脂質成分との混和性により、膜中でのLPSの分布や膜の形態が影響を受けることを明らかにした。また、リン脂質のみで構成されている二重膜や、ラフト形成膜の中での、LPSや膜脂質の運動性を解析した。さらに、ラフト形成膜においてReLPSの存在がラフト領域を拡大することを明らかにした。我々は、自然免疫反応のリガンド分子であるリポ多糖(LPS)と生体膜がどのように関わりあっているかを固体NMRにより明らかにした。まず、LPSと種々のリン脂質成分との混和性により、膜中でのLPSの分布や膜の形態が影響を受けることを明らかにした。また、リン脂質のみで構成されている二重膜や、ラフト形成膜の中での、LPSや膜脂質の運動性を解析した。さらに、ラフト形成膜においてReLPSの存在がラフト領域を拡大することを明らかにした。リポ多糖ReLPSはグラム陰性菌の表層に存在し、我々高等動物の自然免疫の鍵物質として働く。これまでに、自然免疫における動物細胞側の病原体認識の機構の解明が急速に進められてきたが、その反応の場である動物細胞側の細胞膜の働きは未だ明らかではない。そこで、まず、LPSと細胞膜脂質との間の相互作用を理解するために、いくつかの物理化学的な手法を用いて、モデル膜であるリン脂質二重膜中に大腸菌のR型変異種であるReLPSがどのように存在するかを調べてみた。31Pの固体NMRスペクトルにより、ReLPSの一部は脂質二重膜に挿入することがわかった。また、ReLPS存在下では、脂質膜の構造は脂質の構成に依存して大きく変化することがわかった。特にReLPSはegg L-a-phosphatidylcholine(Egg-PC)を多く含んだ膜では膜のミセル化を起こすが、phosphatidylethanolamine(PE)を多く含んだ膜ではそのようなミセル化は起こさないことがわかった。また、GUV膜や平面膜中でのReLPSの局在を顕微鏡を用いて観測をしたところ、どちらのモデル膜中でもReLPSはEgg-PCのみから構成される脂質二重膜中に均一に挿入していた。一方、Egg-PCに負電荷を持つ1-palmitoyl-2-oleoyl-srrglycero-3-phosphoglycerol(POPG)を少量混ぜて作成した膜に対しては、ReLPSは部分的に挿入し、二重膜の表面に非ラメラ相の会合体が観測された。さらに、ReLPSとEggPCとPOPGをいろいろなモル比で混ぜて作成した平面膜上での、リン脂質の拡散速度を顕微鏡を用いて測定したところ、ReLPSが多いほど脂質の拡散速度は遅くなることがわかった。さらに、ReLPS存在下では、POPGの濃度が高いほど拡散速度は遅くなることがわかった。このように、膜を構成するリン脂質の性質はReLPSの膜中での分布や脂質膜の会合体の構造、そして物理化学的な性質に敏感に影響を及ぼすことがわかった。これは、ReLPSと個々のリン脂質成分との混和性によると思われる。リポ多糖(LPS)は自然免疫系の代表的な鍵物質として最近注目されている。しかし、Toll様受容体がLPSを認識する際に、動物細胞側の細胞膜がどのような働きをしているのかどうかは未だに明らかではない。また、最近生体膜中のラフト領域がシグナル伝達のプラットホームとして注目されている。そこで我々は、自然免疫反応の際には、生体膜とLPSがどのように関わりあっているかを固体NMRにより明らかにした。まず、リン脂質であるphosphatidylethanolamine(PE)のみで構成されている二重膜や、リン脂質の他にスフィンゴミエリンやコレステロールを加えて作成した人工的なラフト膜の中での、Re型LPS(ReLPS)や膜脂質の運動性を固体NMRにより解析した。その結果、ReLPSの回転系におけるプロトンの縦緩和時間T_<1p>^Hは膜脂質に比べ約100倍長く、膜脂質に比べて非常に遅く動いていることがわかった。ReLPSが結合したPE二重膜では、膜脂質は結合していないものと比べると、動きの遅いReLPSにより運動が制限されていることがわかった。また、ラフト形成膜でもReLPSの運動性は遅かった。さらに、DEPEのカルボニル炭素の線形や化学シフトの値から、ラフト形成膜においてReLPSの存在がラフト領域を拡大することが明らかになった。ReLPSは自分自身が飽和したアシル鎖を6本も持っていることより、ReLPSの存在が脂質二重膜中の周りの膜脂質のアシル鎖のオールトランス構造を誘起する効果があると思われる。このように、ReLPSは周りの膜には影響を及ぼす一方、自分自身は周りの環境が変わろうとも同じペースで運動していた。自然免疫反応の際には、ReLPSが膜に挿入することにより、反応の場であるラフト領域を自ら拡大することで受容体であるTLR4との結合が容易になり、よりシグナルが伝達されやすくなっていることが考えられる。脂質膜中でのReLPS間の会合状態を解明するために、ReLPSの全ての炭素を^<13>Cで、ReLPSのグルコサミンの窒素を^<15>
KAKENHI-PROJECT-19550174
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19550174
自然免疫系を始動するリポ多糖分子と膜脂質との相互作用の固体NMRによる解析
Nでそれぞれ同位体標識したものをリン脂質と混ぜてリポソームを作成し、混合時間に^<13>Cと^<15>Nの核スピンの間のスピンディフュージョンを起こさせて、2次元^<13>C-^<15>N相関スペクトルの相関ピークの強度によりReLPSの分子間の距離を見積もることを試みた。まずは、この測定のためのパルスシークエンスの検討を行った。いくつかの^<13>C-^<15>N相関スペクトルを、テストサンプルとして^<13>C、^<15>N安定同位体標識ヒスチジンを用い測定し比較した結果、プロトンを介した方法の方が距離が遠いN-C間の相関まで観測できることがわかった。さらに、N-(H)-Cスペクトルの磁化移動時間と相関ピークの強度の関係を調べたところ、相関ピークの強度は磁化移動の時間が長くなるにつれて強くなり、また、N-C間の距離が近い方が磁化移動の量が多いことを確認したので、今後はこれらの関係性を分子間距離の目安として用いることとした。さらに、C2炭素を^<13>Cで、アミドプロトンを^<15>Nでそれぞれ同位体標識したグリシンを1:1の割合で混ぜ、この微結晶を作成し、N-(H-H)-C相関スペクトルを測定し、分子間N-Cの相関ピークが観測できることを観測した。このリポ多糖の会合体状態の解析実験用に、ReLPSの全ての炭素を^<13>Cで、ReLPSのグルコサミンの窒素を^<15>Nでそれぞれ同位体標識したものをこれまでに確立した方法を用いて追加で準備した。今後は、計画通りにサンプルを調整し、今回検討した方法を用いて測定するのみである。
KAKENHI-PROJECT-19550174
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19550174
大腸菌におけるマロニル-CoA生合成経路の強化と脂肪酸生産菌の分子育種
本研究の最終目標は、コエンザイムA(CoA)生合成経路の鍵酵素であるパントテン酸キナーゼ(CoaA)を用いてアシル基のキャリアであるCoAを増加させ、有用物質生産に結びつけることである。本申請ではCoaAによって細胞内CoAレベルが上がった大腸菌のCoA増産株を用いて、アセチル-CoAカルボキシラーゼ(Acc)でマロニル-CoAに変換し、さらに増加したマロニル-CoAを脂肪酸合成酵素(Fas)で脂肪酸を生産することで、物質生産におけるCoAコファクターエンジニアリングの有用性を示すことを計画した。昨年度までに、大腸菌由来AccサブユニットをCoaAと大腸菌DH5α株で共発現させることにより、細胞内マロニル-CoAレベルを上昇させることに成功している。しかしながら、脂肪酸生産を検討するにはDH5α株の細胞内CoAプールサイズは小さすぎるという問題点が残されていた。平成30年度は、脂肪酸増産試験の宿主をJM109株に、マロニル-CoA増産のためのAccを大腸菌由来からCorynebacterium glutamicum由来の酵素に変更して検討した。また、外来のFasにはC.glutamicum由来FasAを使用した。IPTG存在下でCoaA、Acc、およびFasAの共発現株を最少培地で37°Cで72時間培養したところ、対照株のおよそ7倍の脂肪酸を生産し、FasAに起因するオレイン酸の生産も観察された。脂肪酸増産株を透過型電子顕微鏡で観察した結果、細胞膜の内側に白い層が存在し、薄層クロマトグラフィーの分析からリン脂質である可能性が示唆された。このように、細胞内CoAプールサイズの増大、アセチル-CoAからマロニル-CoAへの変換は脂肪酸生産に効果があることが示された。今後はCoAコファクターエンジニアリングの汎用性を検討し、本要素技術の有用性を確かなものにする必要がある。本研究の最終目標は、コエンザイムA(CoA)生合成経路の鍵酵素であるパントテン酸キナーゼ(CoaA)を用いてアシル基のキャリアであるCoAを増加させ、有用物質生産に結びつけることである。本申請ではCoaAによって細胞内CoAレベルが上がった大腸菌のCoA増産株を用いて、アセチル-CoAをアセチル-CoAカルボキシラーゼ(Acc)でマロニル-CoAに変換し、さらに増加したマロニル-CoAを脂肪酸合成酵素(FAS)で脂肪酸を生産することで、物質生産におけるCoAコファクターエンジニアリングの有用性を示すことを計画した。最初に大腸菌由来Accの発現プラスミドを構築し、CoA増産株における細胞内マロニル-CoAの生産を検討した。大腸菌由来AccはAccA、AccB、AccC、およびAccDの4つのサブユニットから構成されており、4つすべて遺伝子を持つAccABCD発現プラスミド、および二酸化炭素をアセチル-CoAに付加する活性を持つAccAD発現プラスミドを保持する形質転換体では生育が全く観察されず、またAccD発現プラスミド保持菌でも明らかに生育が悪かった。しかしながら、AccABC、あるいはAccBCDの発現プラスミド保持菌ではマロニル-CoAへの変換が見られた。Corynebacteriumu glutamicum由来FASの発現プラスミドの構築も終了しており、現在、脂肪酸生産の条件検討をしている。脂肪酸生産量の増加傾向は見られるが培養条件、宿主の選択など検討の余地が残されている状況である。特筆すべきは、CoaAを大腸菌のゲノムDNAに導入した菌株おいて、これまで解析に使用してきたプラスミドでCoaAを発現させた株よりIPTG添加で3.6倍、非存在下でも同等のCoAレベルを示すことが明らかとなったことである。この株は抗生物質の培地への添加が不要であり、かつ生育も良いので、今後は本菌株を宿主として解析を進める予定である。平成28年度はアセチル-CoAからマロニル-CoAへの変換に時間を費やしたが、大腸菌由来Accではサブユニットを組み合わせて発現させることで顕著ではないが、細胞内マロニル-CoAレベルをおよそ25%上げることに成功した。マロニル-CoAは専ら脂肪酸合成に使用される代謝中間体であるため、これ以上細胞内濃度を上げることは困難かもしれない。しかしながら、この発現系にFASの発現系を組合わせれば、効率よく脂肪酸生産に流れることが期待される。FASによる脂肪酸生産実験は、大腸菌からの中性脂肪および脂肪酸の抽出法、ガスクロマトグラフィー(FID検出器)による分析法が確立した。C. glutamicum由来FASが細胞内で機能しているかどうかが鍵となるが、今後は宿主をゲノムDNAにCoaAを導入したCoA増産株(JB9-coaA株)を使用し、解析を進める予定である。平成28年度は前述のJB9-coaA株の構築に成功し、CoA増産において過去の実績より良いデータだ得られたことが最も進歩したところである。このことにより、複数のプラスミドを同時に保持させる必要がなくなり、プラスミドの保持安定性などの不確定要素を排除することができる。JB9-coaA株の構築は連携研究者の茨城大学農学部・西澤智康准教授と共に行った。本研究の最終目標は、コエンザイムA(CoA)生合成経路の鍵酵素であるパントテン酸キナーゼ(CoaA)を用いてアシル基のキャリアであるCoAの細胞内濃度を上げることによって炭素代謝を活性化させ、有用物質生産に応用することである。
KAKENHI-PROJECT-16K07655
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07655
大腸菌におけるマロニル-CoA生合成経路の強化と脂肪酸生産菌の分子育種
本申請では、CoaAによる大腸菌(Escherichia coli)のCoA増産株を用いて、アセチル-CoAカルボキシラーゼ(Acc)と脂肪酸合成酵素(FAS)を組み合わせて脂肪酸を増産させ、物質生産における補酵素CoAのコファクターエンジニアリングの有効性を示すことを目標にしている。平成28年度はDH5α株とE.coli由来のAccの組合せでマロニル-CoA増産を目指したが、平成29年度は宿主をJM109株、AccをCorynebacterium glutamicum由来に変更して解析を進めた結果、脂肪酸の増産が確認された。さらに、FASを組み合わせると、脂肪酸生産量はおよそ1.5倍に上昇し、ここにCoaA遺伝子を追加すると、単位培養液当たりの生産量はわずかに減少するが、菌体重量当たりの生産量は17%上昇した。実験回数が少ないため、現時点では明言できないが、物質生産におけるCoAコファクターエンジニアリングの有効性に希望が見えてきた状況にある。前記した増産を達成するには、CoAの出発物質であるパントテン酸を培地に添加する必要があるが、この問題を解決するために、パントテン酸生合成経路に関与する酵素遺伝子(Pan遺伝子)を放線菌の部位特異的組換え機構を利用して、E.coliのゲノムDNAに導入する研究も並行して実施している。平成28年度までに、CoaAを導入したCoA増産株(JB9-coaA株)の構築に成功している。平成29年度はJB9-coaA株に4種のPan遺伝子を導入するためのプラスミド構築を行い、現在、導入を試みている状況である。平成29年度は、宿主をJM109株、AccをC.glutamicum由来の酵素に変更し、脂肪酸増産を解析した。これらの変更によって、脂肪酸の顕著な増産が確認され、さらにC.glutamicum由来のFASによっても脂肪酸生産が促進されることが明らかとなった。これらの条件下で、CoaAによる細胞内CoAレベルの上昇が脂肪酸生産に及ぼす影響を検討した結果、形質転換体の増殖がわずかではあるが悪くなるため、単位培養液当たりの生産量もわずかに低くなるが、菌体当たりの生産量は明らかに上昇した。試験回数が少ないため、現時点では明言できないが、CoA増産の物質生産への有効性が示されつつある状況になってきている。平成28年度に、放線菌の部位特異的組換え機構を利用して、プラスミド上のCoaAではなく、ゲノムDNA上に導入されたCoaAによってCoA増産を達成するJB9-coaA株の育種に成功している。平成29年度はパントテン酸の添加無しに自立してCoAを増産する菌株の育種に着手した。具体的には、パントテン酸生合成遺伝子であるpanB、panC、panD、およびpanEを保持する部位特異的組換え用プラスミドの構築を完了し、JB9-coaA株のゲノムDNAへの導入する準備が整った状況にある。ゲノム型CoA増産菌の育種は連携研究者の茨城大学農学部・西澤智康准教授と共に行った。前者のCoaAの脂肪酸生産への有効性を示す研究は、宿主およびAccの変更により、進度はやや遅れている状況ではあるが、変更により質の良い結果が出てきている。
KAKENHI-PROJECT-16K07655
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07655
社会人の自発的協同学習を誘発するオンライン学習環境の開発
現在、生涯学習社会実現にむけて、学んだことが適切に評価される社会が望まれている。そのためにも、学習記録を残し振り返ることは大切なプロセスである。本研究を通じて多くの利用者に対してeポートフォリオ利用環境を提供したことに意義があると考えている。また、初対面の学生が集まるグループワークにおいて、グループ活動への意識と協同作業への認識の変化について、事前のグループ活動への意識の影響が大きいことを示した。2014年度にも申請者が担当する科目において、自分の学習記録を残すためのeポートフォリオサーバを用いて、実践を行った。また、利用者を対象にオンラインでのアンケートを実施した。そして、システムに残る利用実績やアンケートを用いて利用者の行動を分析した。すると、科目の登録者の多くがシステムにログインしていることが分かった。しかし、積極的に活用している者もいたが、多くの人は、利用を難しいと感じ、実際に学習記録を残す者は少なかった。そこで、2014年度は、学生が積極的に利用できるように学びにも役立つツールの作成を行った。まず、教育におけるコンピテンシーの標準化を開発し促進する国際的な組織であるibstpiの作成した「オンライン学習者にスキル標準」を購入し、それを日本語訳した。そして、学習者が自分のスキルを見直し確認できるように、チェックリストとして利用できるようなページを作成した。また、eポートフォリオで記録を残す場合には、形として現れない多くのアイデアがあり、文章として残るのは一部であると考えのもと、学習記録の作成途中にクッキー上にメモを残すシステムを実装した。さらに、maharaの管理記録をもとに考えると、ログインし、学習記録を残さなかった学生も多くいた。そこで、ログイン後の利用者の行動を把握できるようにするために、ログイン後の利用者が移動したページをログに残すようにmaharaの改造を行った。2015年度にも引き続き実践およびツール作成を行い、学習者同士で学びを促進できるような環境構築を目指す。eポートフォリオの運用を行ない、2016年4月までに一度でも利用した学生は約3500人にまで増えた。電子メールなどで受講生に使い方を説明するなどの工夫を行い、パソコン初心者を対象に利用を増やすように努めている。しかし、自分の学習記録を積極的に残すまでに行くにはハードルが高い。そこで、学生の利用状況を詳細に調べる目的で、今年度に、maharaにおける学生の閲覧ページをログとして記録した。そして、学期間の活動について分析を行なった。その結果、学期開始時、通信指導提出時、通信指導提出後において、行動に違いがあることを把握することができた。また、学生の深い理解を図るためには、通信制大学がオンラインで学ぶことについての意識を知るために、グループワークを行う対面のスクーリング(面接授業)を受講した学生を対象に調査を行なった。放送大学では、通常の大学と異なり、自分の好みに従い、科目を選んで履修する。そのため、面識のない学生でグループ活動を行う。そうした学生が協同作業について、どのような認識をもっているのか、またオンラインでの学習の意識についてアンケート調査を行なった。2日間のグループワークの結果、協同作業の効用についての意識を増やし、個人での学びの志向性を減らすことができることがわかった。また、グループワークへの不安を持っているグループとそうでないグループに分けて調べたところ、不安を感じているグループほど協同作業効用が低く、個人志向が高いが、面接授業後には、事前にポジティブな印象を持っていたグループと同等まで高めることができることがわかった。本来であれば、レコメンデーションのプロトタイプを作成する段階であるが、少し遅れている。eポートフォリオを2年間運用し、他のシステムを利用することで学生が一度はログインするように仕向けることはできた。また、学生の閲覧履歴をログとして分類した結果、ページを閲覧する学生はいても、自らの学習結果を残す学生はまだまだ少なく、ある程度長期に渡ってデータを収集していく必要があると考えている。4年間の放送大学の放送授業の学生を対象にeポートフォリオサーバについて運用を行った。受講生が約7500名であった。放送大学は遠隔学習機関であり、教員が学生と対面で会うことはない。そこで、操作説明については、事前に収録した放送授業や数分の動画を作成し、それを公開することによって行い、別途対面での操作説明会などは行わなかった。放送授業では単位取得のしくみは単位認定試験と通信指導問題でしかなく、通信指導問題にeポートフォリオの利用を絡めた問題を作成することによって、ログインや利用を促すことはできた。しかし、提出の義務がなく、成績にも影響がなかったため、多くの学生は、試しにログインし、公開されているページを見る学生は多かったが、通信指導問題後も引き続きログインして、自分の学習記録を記録し使い続ける学生はほとんどいなかった。利用者に対するオンラインアンケートでの自由記述でも、利用の意義が分からない、また、利用に困難を抱えているという意見があった。2016年度から、放送大学でもオンライン授業が開始され、作成したeポートフォリオを提出し、学生同士で閲覧するといった活用をするための土壌が育ってきているので、今後はオンライン授業での利用について検討することが望まれる。学生がいつどのページを閲覧したかを記録するログツールを作成した。従来の放送大学の放送授業においては、学期中の学生について知ることはほとんどできなかったが、今回の運用を通して学生の学習過程や主にアクセスする活動時間などを知ることができた。今後は、蓄積したデータベース上のログの分析ツール作成や、利用者へのインタビューによる、より詳細な利用調査を行うことが望まれる。
KAKENHI-PROJECT-26350331
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社会人の自発的協同学習を誘発するオンライン学習環境の開発
今回対象とした学生は、通信制の大学であり、普段顔をあわせることがなく、提供するサービスは常時安定した運用が望まれる。しかし、2016年度1学期にサーバ機器に不調があり、その復旧に時間が取られたために、遅れが生じた。また、新たなツールの実装することが出来なかった。また、研究代表者が本務校において業務が増え、データ解析に対して十分な研究開発時間を取ることができなかった。2017年度から開始された放送大学の放送授業の受講生を対象に学習記録をWeb上に残し振り返りを促すために、maharaを用いてeポートフォリオ作成する環境の提供を行った。学生の自発的な利用について調べる目的で、ログインしてページを見ることを課題にするなどの条件をなくした。また、放送授業を作り直し、放送授業で内容について紹介するだけに留めた。学生の人数などを調べたところ、2017年度にログインした学生は600名程度であり、登録したユーザーの4分の1程度であった。対面で顔を合わせて指導することができない環境では、学生は与えられた課題はこなすものの、そこから学生同士が主体的に学習記録を公開し、それをもとに議論を行うことは難しい。別のシステムで学生同士が対話をするだめの電子掲示板を提供しているが、環境があっても教員の参加がなければ活発な活動にはならなかった。そこには、多様な学生がいることから、顔の見えない相手とのグループでの学習について懸念があること。また、教員の負担を考えると、学生の活動を把握するためには、それぞれのユーザーとしてログインして確認しか方法しかなく、多数の学生を抱えているときには負担が大きい。放送大学でも2016年度からWebのみの学習で単位を取得することのできるオンライン科目も始まったことから、オンラインの学生に向けたより少数の学生での取り組みが今後望まれるように思う。また、実際の運用の結果について十分な分析を行うことができなかった。今後は利用状況についてのより詳細な分析を行い、さらに個別のインタビュー調査をして、今後の開発へと活かしていきたいと考えている。現在、生涯学習社会実現にむけて、学んだことが適切に評価される社会が望まれている。そのためにも、学習記録を残し振り返ることは大切なプロセスである。本研究を通じて多くの利用者に対してeポートフォリオ利用環境を提供したことに意義があると考えている。また、初対面の学生が集まるグループワークにおいて、グループ活動への意識と協同作業への認識の変化について、事前のグループ活動への意識の影響が大きいことを示した。想定されたよりも実際のファイルの利用量が少なかった。大学内でもeポートフォリオだけでなく、いくつかのシステムが存在している。そこで、利用の拡大、および利便性の向上のために、他のシステムとも連携したシステムを構築した方が有効であると判断したことから、ファイルサーバの構築は2015年度に行うこととした。
KAKENHI-PROJECT-26350331
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ラングミュア膜のプロセシング法の確立に関する研究
本研究は、高品質LB膜をつくるために、水面上の単分子膜(L膜)に対して積極的に働きかけ(プロセシング)を行うための方策を探ることを最終的な目的として行った。特に、L膜に加えられたプロセシングの影響をその場観察するための技術を開発した。1.表面波法:解析的なプロ-ブとして確立するため、膜の不均一性を蛍光顕微鏡で定量的に評価しながら同時測定を行った。この結果、気相・液相共存領域では液相の表面波に及ぼす影響が殆ど零であることが見出された。一方、固相・気相共存領域では、固相の影響は島状構造の連結性によって支配され、この方法のみの測定では、相の一義的な同定が困難であることが示された。2.反射分光法:色素高分子を含む水溶液上に展開した単分子膜への色素高分子のイオンコンプレックスの形成過程を詳しく調べた結果、電気中性条件が吸着に支配的であり、従って高分子は単分子層的であること、そのキネテックスは拡散のみによって支配されることを明らかにした。3.非線形光学効果:LB膜の3次の非線形光学効果の厳密な解析を行い、従来無視されていた基本波の多重反射の影響が重要であり、これを取り込むことにより、実験の定量的な解釈が可能になった。さらに、2次の非線形性についても同様の厳密解の解析により、分子配向を決定した。これと平行して、実用に耐えるような薄膜を作ることを目標とする実験を行った。1.蒸着基板:ポリジアセチレンの異方的圧縮によって生じた高配向L膜を一層だけ基板上にのせ、これの上に蒸着を行い、定量的に蒸着膜中に異方性を発現させることができた。2.新型トラフの試作:表面波プロ-ブをもつトラフのプロトタイプを試作し、L膜の配向を損なう事なく垂直浸漬法でLB膜を作製することに成功した。さらに、この方法を拡張して、数百層程度のヘテロ累積膜を容易に作ることができるような、トラフの自動化を行った。本研究は、高品質LB膜をつくるために、水面上の単分子膜(L膜)に対して積極的に働きかけ(プロセシング)を行うための方策を探ることを最終的な目的として行った。特に、L膜に加えられたプロセシングの影響をその場観察するための技術を開発した。1.表面波法:解析的なプロ-ブとして確立するため、膜の不均一性を蛍光顕微鏡で定量的に評価しながら同時測定を行った。この結果、気相・液相共存領域では液相の表面波に及ぼす影響が殆ど零であることが見出された。一方、固相・気相共存領域では、固相の影響は島状構造の連結性によって支配され、この方法のみの測定では、相の一義的な同定が困難であることが示された。2.反射分光法:色素高分子を含む水溶液上に展開した単分子膜への色素高分子のイオンコンプレックスの形成過程を詳しく調べた結果、電気中性条件が吸着に支配的であり、従って高分子は単分子層的であること、そのキネテックスは拡散のみによって支配されることを明らかにした。3.非線形光学効果:LB膜の3次の非線形光学効果の厳密な解析を行い、従来無視されていた基本波の多重反射の影響が重要であり、これを取り込むことにより、実験の定量的な解釈が可能になった。さらに、2次の非線形性についても同様の厳密解の解析により、分子配向を決定した。これと平行して、実用に耐えるような薄膜を作ることを目標とする実験を行った。1.蒸着基板:ポリジアセチレンの異方的圧縮によって生じた高配向L膜を一層だけ基板上にのせ、これの上に蒸着を行い、定量的に蒸着膜中に異方性を発現させることができた。2.新型トラフの試作:表面波プロ-ブをもつトラフのプロトタイプを試作し、L膜の配向を損なう事なく垂直浸漬法でLB膜を作製することに成功した。さらに、この方法を拡張して、数百層程度のヘテロ累積膜を容易に作ることができるような、トラフの自動化を行った。高品質LB膜をつくるために、水面上の単文子膜(L膜)に対して積極的に働きかけ(プロセシング)を行うための方策を探ることを最終的な目的とし、まず第一にプロセシングの結果何がL膜に生じたかを、その場観察出来るよう、以下のようなプロ-ブの開発を中心に研究を行った。1.表面波法:水槽上の任意の点で任意の方向の表面圧を非接触で測定する装置を完成し、次のような知見を得た。(1)純粋上のステアリン酸やオレイン酸のように、従来から「軟らかい」と言われてきた膜は一軸性の圧縮のもとで、表面圧は一様かつ等方的である。一方、「硬い」膜として知られているフタロシアニン等は、膜中に大きな圧力勾配が生じ、かつ圧力が異方的であった。このような情報は今回初めて得られたものであり、従来ごく漠然と言われてきた膜の性質を定量的に評価する方法を与えたものである。(2)ポリジアセチレン単分子膜のように、ポリマ-の膜においては、圧力の異方性によって誘起された主鎖の配向が観測された。この方法によって、二色比が10程度のものが容易に作製できた。これはLB膜の高配向化に重要である。
KAKENHI-PROJECT-01850004
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01850004
ラングミュア膜のプロセシング法の確立に関する研究
2.反射分光法:L膜からの反射分光を行うため、高感度多チャンネル同時分光装置をセットした。3.非線形光学効果:L膜の分子配向を、その極性も含めて知るため、パルスレ-ザ-を設置し、検出系を整備した。測定系の予備実験として、アゾベンゼンの二分子膜およびLB膜の2次・3次高調波発生を、J会合体からH会合体への転移を中心に測定した。その結果、分子の局所的な環境を反映して、分子の対称性が高くても2次高調波が発生しうること、高調波発生効率が会合状態によることなどを見出した。4.蛍光顕微鏡:水相中の分子の単分子膜への吸着をその場観察した。低分子色素および蛋白(蛍光ラベルしたアクチン)の結晶状態が、膜の流動性をあげることで、著しく改善されることを見出した。本研究は、高品質LB膜をつくるために、水面上の単分子膜(L膜)に対して積極的に働きかけ(プロセシング)を行うための方策を探ることを最終的な目的としている。第一年度で開発した、L膜のその場観察のためのプロ-ブを用いて以下の知見を得た。1.表面波法:より解析的なプロ-ブとして使えるようにするため、膜に不均一性があるとき、これを蛍光顕微鏡で定量的に評価しながら同時測定を行った。この結果、気相・液相共存領域で液相の表面波に及ぼす影響が殆ど零であることが見出された。現在、固相・気相共存領域についての研究を行っている。2.反射分光法:色素を含む溶液上に展開した単分子膜への色素分の吸着過程及びJ会合体の成長過程を検討中である。3.非線形光学効果:LB膜の3次の非線形光学効果の厳密な解析を行い、従来無視されていた基本波の多重反射の影響が重要であり、これを取り込むことにより、実験の定量的な解釈が可能になった。4.蛍光顕微鏡:蛍光相関法を用いて、蛍光ビ-ズの拡散係数が測定できることを示した。蛋白(蛍光ラベルしたアクチン)への応用を目下行っている。今年度はさらに、実用に耐えるような薄膜を作ることを目標とする実験も開始した。非線形光学用薄膜を意識し、数百nm以上の膜を作るための成膜技術について検討した。1.蒸着基板:ポリジアセチレンの異方的圧縮によって生じた高配向L膜を一層だけ基板上にのせ、これの上に蒸着を行い、定量的に蒸着膜中に異方性を発現させることができた。2.新型トラフの試作:表面波プロ-ブをもつトラフのプロトタイプを試作し、L膜の配向を損なう事なく垂直浸漬法でLB膜を作製することに成功した。これにより、50層程度の累積膜を容易に作ることができるが、この10倍程度の厚さの累積を行うために、トラフの自動化を行っているところである。本研究は、高品質LB膜をつくるために、水面上の単分子膜(L膜)に対して積極的に働きかけ(プロセシング)を行うための方策を探ることを最終的な目的として行った。特に、L膜に加えられたプロセシングの影響をその場観察するための技術を開発した。1.表面波法:解析的なプロ-ブとして確立するため、膜の不均一性を蛍光顕微鏡で定量的に評価しながら同時測定を行った。この結果、気相・液相共存領域では液相の表面波に及ぼす影響が殆ど零であることが見出された。一方、固相・気相共存領域では、固相の影響は島状構造の連結性によって支配され、この方法のみの測定では、相の一義的な同定が困難であることが示された。2.反射分光法:色素高分子を含む水溶液上に展開した単分子膜への色素高分子のイオンコンプレックスの形成過程を詳しく調べた結果、電気中性条件が吸着に支配的であり、従って高分子は単分子層的であること、そのキネテックスは拡散のみによって支配されることを明らかにした。3.非線形光学効果:LB膜の3次の非線形
KAKENHI-PROJECT-01850004
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01850004
高温高圧水の活用による食品残留分析のグリーン化と迅速化
農薬等を対象とする食品残留分析は有機溶媒を使用するが故に、環境への負荷や分析時間が長い等の問題点がある。そこで本研究では、有機溶媒の代替に100°C以上に加熱した超高温水を利用した超高温水抽出法(Superheated Water Extraction, SWE)を開発し、食品残留分析をグリーン化及び迅速化することを目指している。本年度は、既知量の農薬を添加したキャベツを分析試料とした添加回収試験を行い、農薬抽出に関する基礎データを収集した。どのような種類の農薬がSWEで抽出可能であるかを評価するために農薬のオクタノール/水分配係数(Log Pow)と回収率との関係を検討したところ、Log Powが概ね4以下の農薬に適用可能性があることが示された。そこで、回収率をさらに向上させるために抽出温度(50150°C)と回収率との関係を検討したところ、多くの農薬は抽出温度が高いほど回収率が高くなった。一方で、150°Cになると回収率が低下した農薬もあり、その原因として超高温水による分解が考えられた。そこで、これを検証するために、超高温水中での農薬の分解性を評価する装置を試作し、前記の農薬を評価した。その結果、先の考察通りに、高温になると一部の農薬が分解することが確認された。これより、SWEの最適抽出温度は農薬の種類によって異なることが示唆された。以上の検討結果からSWEが適用可能と考えられた農薬について、妥当性確認を行った。農薬フェニトロチオンが実際に残留しているキャベツ試料を入手し、SWEと厚生労働省「GC/MSによる農薬等の一斉試験法(農産物)」による分析結果を比較した。SWEの分析値は若干低かったものの、スクリーニング法としては十分な正確さを有していると評価された。異なる抽出温度におけるSWEの抽出挙動の検討を当初計画通りに行うとともに、農薬のLog Powを指標としてSWEの適用可能性に関する考察をすることができた。一部の農薬について高温水中での分解が示唆されたことから、当初計画にはなかった分解性評価試験を行いこれを検証した。さらに、確立した分析法法の妥当性確認も計画通りに行った。以上より、概ね順調に進捗していると評価する。今年度の検討結果から、食品中残留農薬が一定抽出温度でのSWEによって抽出可能であることが示された。そこで、SWEによる抽出効率をさらに向上させるために、抽出過程において抽出温度を段階的に上昇させる多段階加熱抽出操作の適用を検討する。これにより、農薬の分解を最小限に抑えながら、より多種類の農薬の同時抽出が可能になると考えられる。さらに、確立した分析条件の妥当性を評価するために、認証標準物質等の分析も行う。また、分析を迅速化するために、抽出後のグリーンアップ操作も改良する。農薬等を対象とする食品残留分析は有機溶媒を使用するが故に、環境への負荷や分析時間が長い等の問題点がある。そこで本研究では、有機溶媒の代替に100°C以上に加熱した超高温水を利用した超高温水抽出法(Superheated Water Extraction, SWE)を開発し、食品残留分析をグリーン化及び迅速化することを目指している。本年度は、既知量の農薬を添加したキャベツを分析試料とした添加回収試験を行い、農薬抽出に関する基礎データを収集した。どのような種類の農薬がSWEで抽出可能であるかを評価するために農薬のオクタノール/水分配係数(Log Pow)と回収率との関係を検討したところ、Log Powが概ね4以下の農薬に適用可能性があることが示された。そこで、回収率をさらに向上させるために抽出温度(50150°C)と回収率との関係を検討したところ、多くの農薬は抽出温度が高いほど回収率が高くなった。一方で、150°Cになると回収率が低下した農薬もあり、その原因として超高温水による分解が考えられた。そこで、これを検証するために、超高温水中での農薬の分解性を評価する装置を試作し、前記の農薬を評価した。その結果、先の考察通りに、高温になると一部の農薬が分解することが確認された。これより、SWEの最適抽出温度は農薬の種類によって異なることが示唆された。以上の検討結果からSWEが適用可能と考えられた農薬について、妥当性確認を行った。農薬フェニトロチオンが実際に残留しているキャベツ試料を入手し、SWEと厚生労働省「GC/MSによる農薬等の一斉試験法(農産物)」による分析結果を比較した。SWEの分析値は若干低かったものの、スクリーニング法としては十分な正確さを有していると評価された。異なる抽出温度におけるSWEの抽出挙動の検討を当初計画通りに行うとともに、農薬のLog Powを指標としてSWEの適用可能性に関する考察をすることができた。一部の農薬について高温水中での分解が示唆されたことから、当初計画にはなかった分解性評価試験を行いこれを検証した。さらに、確立した分析法法の妥当性確認も計画通りに行った。以上より、概ね順調に進捗していると評価する。今年度の検討結果から、食品中残留農薬が一定抽出温度でのSWEによって抽出可能であることが示された。そこで、SWEによる抽出効率をさらに向上させるために、抽出過程において抽出温度を段階的に上昇させる多段階加熱抽出操作の適用を検討する。これにより、農薬の分解を最小限に抑えながら、より多種類の農薬の同時抽出が可能になると考えられる。さらに、確立した分析条件の妥当性を評価するために、認証標準物質等の分析も行う。また、分析を迅速化するために、抽出後のグリーンアップ操作も改良する。
KAKENHI-PROJECT-18K05485
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K05485
高温高圧水の活用による食品残留分析のグリーン化と迅速化
当初計画では分析法の妥当性確認のために認証標準物質を使用する予定であった。しかし、より実分析試料に形態を持つ農薬残留キャベツが入手できたことから、これを購入する必要がなくなったため未使用額が生じた。未使用額は、平成31年度本研究課題において、試薬等の消耗品として使用する。
KAKENHI-PROJECT-18K05485
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K05485
歯髄炎症惹起時における循環血液中の炎症マーカーの動態について
本研究の目的は、非注水下で象牙質に窩洞形成し、下顎切歯歯髄に刺激を加えた際の、血液中の炎症マーカー(白血球動態、赤血球沈降反応、急性期反応蛋白質)の変化を測定することである。ラットに急性で部分的な実験的歯髄炎症を惹起させると、血液中の好中球数とリンパ球数は急速に増加し、処置後6時間以内で最大値(好中球:430,200±12,986cells/ml、リンパ球:395,600±4,636cells/ml)に達した。歯髄炎症を伴ったラットから採取した血液において、赤血球沈降反応は炎症の進展に伴い徐々に増加し、処置後24時間で最大値となった。赤血球沈降反応の最大値は36.9±2.1mm/hrとなり、ラットの健常値の7.5倍であった。同様にラット血液中のアルブミン・グロブリン比は歯髄炎症により減少してゆき、24時間後で最小値となった(0.85±0.08)。血液中のフィブリノーゲン量は処置後24時間では歯髄炎症からの反応により増加することがわかった。最大値は3.64±0.19mg/mlとなり健常値の1.5倍であった。さらに典型的な急性期蛋白質の一つであるC-反応性蛋白質(CRP)量は、下顎切歯に刺激を加えると血液中において増加していくことがわかった。CRP量の増加は24時間まで継続し、最大値(4,407±152μg/ml)となり、健常値の7倍に達していた。炎症反応の出現から2日以内では、血液中の赤血球沈降反応、アルブミン・グロブリン比、フィブリノーゲン量、およびCRP量の一時的な変化は同期していた。以上の結果は、歯髄の急性局所炎症の進行に従って、全身循環血液中の炎症マーカーが有意に変化する可能性を強く示唆していた。本研究の目的は、非注水下で象牙質に窩洞形成し、下顎切歯歯髄に刺激を加えた際の、血液中の炎症マーカー(白血球動態、赤血球沈降反応、急性期反応蛋白質)の変化を測定することである。ラットに急性で部分的な実験的歯髄炎症を惹起させると、血液中の好中球数とリンパ球数は急速に増加し、処置後6時間以内で最大値(好中球:430,200±12,986cells/ml、リンパ球:395,600±4,636cells/ml)に達した。歯髄炎症を伴ったラットから採取した血液において、赤血球沈降反応は炎症の進展に伴い徐々に増加し、処置後24時間で最大値となった。赤血球沈降反応の最大値は36.9±2.1mm/hrとなり、ラットの健常値の7.5倍であった。同様にラット血液中のアルブミン・グロブリン比は歯髄炎症により減少してゆき、24時間後で最小値となった(0.85±0.08)。血液中のフィブリノーゲン量は処置後24時間では歯髄炎症からの反応により増加することがわかった。最大値は3.64±0.19mg/mlとなり健常値の1.5倍であった。さらに典型的な急性期蛋白質の一つであるC-反応性蛋白質(CRP)量は、下顎切歯に刺激を加えると血液中において増加していくことがわかった。CRP量の増加は24時間まで継続し、最大値(4,407±152μg/ml)となり、健常値の7倍に達していた。炎症反応の出現から2日以内では、血液中の赤血球沈降反応、アルブミン・グロブリン比、フィブリノーゲン量、およびCRP量の一時的な変化は同期していた。以上の結果は、歯髄の急性局所炎症の進行に従って、全身循環血液中の炎症マーカーが有意に変化する可能性を強く示唆していた。
KAKENHI-PROJECT-08771740
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08771740
カーボンナノチューブにおける電子スピンダイナミクスの光検出
単層カーボンナノチューブ内のスピンを光検出するために必要となるデバイス構造および測定手法の開発に取り組んだ。スピンの電気注入と光検出を両立させるため、架橋カーボンナノチューブに電極を取り付けた電界効果トランジスターの作製手法を確立した。また、単一ナノチューブの発光を検出可能なレーザー走査型共焦点蛍光顕微分光装置を構築し、さらに、スピン共鳴に必要な低温磁場環境およびマイクロ波の導入を実現した。単層カーボンナノチューブ内のスピンを光検出するために必要となるデバイス構造および測定手法の開発に取り組んだ。スピンの電気注入と光検出を両立させるため、架橋カーボンナノチューブに電極を取り付けた電界効果トランジスターの作製手法を確立した。また、単一ナノチューブの発光を検出可能なレーザー走査型共焦点蛍光顕微分光装置を構築し、さらに、スピン共鳴に必要な低温磁場環境およびマイクロ波の導入を実現した。2009年度は単一カーボンナノチューブ架橋型トランジスターの試作を中心に研究を進めた。単層カーボンナノチューブに電極からスピンを注入し、フォトルミネッセンスを利用して電子スピンを検出するためには、単一の単層カーボンナノチューブを架橋型トランジスター構造に組み込む必要がある。まず、発光効率が高いためにフォトルミネッセンス測定に適しているカーボンナノチューブの架橋構造の作製方法を確立した。酸化膜つきSi基板に溝を加工し、触媒を溝の近傍に配置した上でアルコール化学気相成長により単層カーボンナノチューブを合成した。フォトルミネッセンス測定による評価を用いて、カーボンナノチユーブの発光を確認し、架橋構造の作製に適した化学気相成長の条件を見出した。次に、単一カーボンナノチューブ架橋型トフンジスターの作製を試みた。溝と電極をあらかじめ加工した基板上に触媒を配置し、その後カーボンナノチューブの合成を行った。このように最後に合成を行うことにより、カーボンナノチューブは清浄な状態に保てるため、その本来の特性を測定できることが期待できる。ところが、架橋せずに溝に落ちたカーボンナノチューブにより、バックゲートと電気的に短絡することや大きな漏れ電流が起きるといった問題点が浮上した。そこで、溝の加工後に熱酸化を行ったところ、ゲートの絶縁特性の改善に成功した。これにより、発光測定と電気測定を単一の単層カーボンナノチューブに対して行うことが可能なデバイスを実現した。2010年度は単一カーボンナノチューブ架橋型トランジスターにおけるフォトルミネッセンス測定を中心に研究を進めた。単層カーボンナノチューブに電極からスピンを注入し、フォトルミネッセンスを利用して電子スピンを検出するためには、単一の単層カーボンナノチューブを架橋型トランジスター構造に組み込む必要がある。溝と電極をあらかじめ加工した基板上に触媒を配置し、アルコール化学気相成長により単層カーボンナノチューブを合成した。このように最後に合成を行うことにより、カーボンナノチューブは清浄な状態に保てるため、発光効率が高いためにフォトルミネッセンス測定に適しており、その本来の特性を測定できることが期待できる。蛍光画像と励起分光を用いて単一のナノチューブであることを確認し、その発光スペクトルのゲート電圧依存性を調査した。印加電圧により発光エネルギーがわずかであるが高くなり、また、発光強度が指数関数的に減衰する様子を捉えた。過去の研究では、ゲート電圧による高次のバンドのエネルギーが低下するということが報告されている。キャリアを誘起することによって遮蔽効果が強くなるため、再規格化によるバンドギャップの縮小と励起子束縛エネルギーの低下が起き、前者が後者をやや上回る形で発光エネルギーの低下が起きるという解釈がされている。今回観測された、最低バンドにおける青方変移の原因はまだ明らかではないが、第一原理計算では高エネルギー側へのシフトが予測されており、上で述べたような二つの効果のバランスが微妙である可能性もある。また、スピンの光検出に向け、低温磁場中でのフォトルミネッセンスを実現する装置の設計・作製に取り組んだ。電磁石により200mTの磁場を印加可能で、温度5Kまで冷却可能であり、なおかつデバイスへの配線を導入できる顕微分光装置を立ち上げている。2011年度は単一の架橋カーボンナノチューブにおける低温フォトルミネッセンス測定を中心に研究を進めた。カーボンナノチューブにおけるスピンの光検出を実現するため、低温磁場中でのフォトルミネッセンスを可能とする装置を作製した。電磁石により200 mTの磁場を印加可能で、温度5Kまで冷却可能であり、なおかつデバイスへの配線を導入できる顕微分光装置を立ち上げ、アモルファスシリコンを用いた光検出スピン共鳴顕微鏡として動作することを確認した。架橋カーボンナノチューブを対象とする実験にも取り組み、低温磁場中でのフォトルミネッセンス測定を実現した。チップ上にカーボンナノチューブを架橋させる溝とマイクロ波を導入するための電極および配線を加工し、触媒を溝付近に配置して化学気相成長により単層カーボンナノチューブを合成した。走査ミラーによる反射像およびフォトルミネッセンス像を利用して架橋カーボンナノチューブを見出し、励起分光によりそのカイラル指数を同定した。液体ヘリウムを用いた低温測定で、単一ナノチューブのフォトルミネッセンスを長時間計測し続けることに成功している。カーボンナノチューブへの電気的スピン注入を視野に入れた架橋型トランジスター構造における測定では、フォトルミネッセンスと光伝導度の同時測定に成功し、カイラル指数を明らかにした上で単一ナノチューブに対する測定を行うことにより励起子の解離に関する知見を得た。強磁性コバルト電極を用いたデバイスの作製にも成功している。24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-21684016
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TEM-3DAPによるナノコンポジット合金のナノ組織解析
ナノコンポジット合金の元素添加、熱処理に伴うナノ組織構造、元素分布、結晶粒の分布状態の変化と、機械的特性、磁気的特性との機能性変化の関係を明らかにするため、以下の試料について、透過型電子顕微鏡、アトムプローブによるナノ組織解析を行った。液体急冷法により作製したNd(-Pr-Zr)-Fe-B(-Ti-C)合金の急冷リボン材についての硬磁気特性について研究を行った結果、磁気特性は合金の急冷速度及び熱処理条件に大変敏感であり、添加元素効果についてはTiが軟磁性相のNd_2Fe_<23>B_3相を抑制し、硬磁性相のNd_2Fe_<14>Bを優先的に析出させ、さらに結晶粒が微細化する効果があることを明らかにした。Ti及びcを同時添加することでさらに組織が微細化することを示し、Cは硬磁性相であるNd_2Fe_<14>Bに固溶すると共にTiをNd_2Fe_<14>B中から結晶粒界相に排出する効果があることを示した。これにより残留磁化Mr及び飽和磁化Msが増加して優れた硬磁気特性が得られることが明らかになった。2.Mg合金の熱時効効果とナノ組織Mgに微量元素を添加した合金は、熱時効により機械的特性が大きく向上する。これは、析出、粒界偏析等によるナノコンポジット化が原因であると考えられる。そこで、そのナノ組織と機械的特性の変化の関連について明らかにするため、TEM及び3DAPによる解析を行い、析出物の成長に伴う構造、元素分布の変化を明らかにし、機械的特性変化との関連について考察を行った。ナノコンポジット合金の元素添加、熱処理に伴うナノ組織構造、元素分布、結晶粒の分布状態の変化と、機械的特性、磁気的特性との機能性変化の関係を明らかにするため、以下の試料について、透過型電子顕微鏡、アトムプローブによるナノ組織解析を行った。液体急冷法により作製したNd(-Pr-Zr)-Fe-B(-Ti-C)合金の急冷リボン材についての硬磁気特性について研究を行った結果、磁気特性は合金の急冷速度及び熱処理条件に大変敏感であり、添加元素効果についてはTiが軟磁性相のNd_2Fe_<23>B_3相を抑制し、硬磁性相のNd_2Fe_<14>Bを優先的に析出させ、さらに結晶粒が微細化する効果があることを明らかにした。Ti及びcを同時添加することでさらに組織が微細化することを示し、Cは硬磁性相であるNd_2Fe_<14>Bに固溶すると共にTiをNd_2Fe_<14>B中から結晶粒界相に排出する効果があることを示した。これにより残留磁化Mr及び飽和磁化Msが増加して優れた硬磁気特性が得られることが明らかになった。2.Mg合金の熱時効効果とナノ組織Mgに微量元素を添加した合金は、熱時効により機械的特性が大きく向上する。これは、析出、粒界偏析等によるナノコンポジット化が原因であると考えられる。そこで、そのナノ組織と機械的特性の変化の関連について明らかにするため、TEM及び3DAPによる解析を行い、析出物の成長に伴う構造、元素分布の変化を明らかにし、機械的特性変化との関連について考察を行った。ナノコンポジット合金の元素添加、熱処理に伴うナノ組織構造、元素分布、結晶粒の分布状態の変化と、機械的特性、磁気的特性との機能性変化の関係を明らかにするため、以下の試料について、透過型電子顕微鏡、アトムプローブによるナノ組織解析を行った。(1)単ロール液体急冷法によって作製されたNd-Fe-B系合金の硬磁気特性とナノ組織ボンド磁石として注目されている低Nd-高B組成のNd-Fe-B系ナノコンポジット磁石に、Ti、Cを添加することにより、最大エネルギー積(BH)_<max>が向上する新しいタイプの合金が開発されているが、そのナノ組織については詳細な解析が行われていない、本研究では、3次元アトムプローブ、及び、透過型電子顕微鏡によるナノ組織の解析を行い、B、C、Tiが高濃度で存在する粒界相の形成を明らかにした。(2)高強度、高加工性を有する鉄鋼材料のナノ組織フェライト相中にナノ析出物を高密度分散させ、引張強度780MPa級を実現した析出強化型熱延鋼板が開発され注目されているが、このナノ析出物の定量的な解析は行われていない。本研究では0.04C-1.5Mn(mass%)を基本成分とし、Ti、Moを添加した本鋼で、巻き取り温度を変えて熱間圧延した試料について、3次元アトムプローブによるナノ析出物の組織解析を行い、巻き取り温度の上昇に伴うナノ析出物のサイズ増加、析出物の軽元素を含む元素の分配状況が明らかになった。また、組成の定量解析等から新たな知見が得られた。ナノコンポジット合金の元素添加、熱処理に伴うナノ組織構造、元素分布、結晶粒の分布状態の変化と、機械的特性、磁気的特性との機能性変化の関係を明らかにするため、以下の試料について、透過型電子顕微鏡、アトムプローブによるナノ組織解析を行った。(1)ナノコンポジットFe_<35>Pt_<35>P_<30>合金の硬磁気特性とナノ組織液体急冷法によって作製された、3元共晶近傍の組成を有するFe_<35>Pt_<35>P_<30>リボンは、熱処理後20kOeを超える高保磁力を示した。
KAKENHI-PROJECT-15560580
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TEM-3DAPによるナノコンポジット合金のナノ組織解析
透過型電子顕微鏡によるナノ組織解析の結果、本合金の急冷後の試料は、粒径約20nmのFePtとPtP_2で構成され、それぞれPとFeが過飽和に固溶していた。また、熱処理によりL1_0規則構造のFePtとPtP_2に変化し、高磁気異方性を有するFePtと、磁壁のピニングサイトとして作用するPtP_2がナノコンポジット構造を形成することで、高保磁力が達成されたことが明らかになった。(2)液体急冷Sm(Co_<0.74>Fe_<0.1>Cu_<0.12>Zr_<0.04>B_<0.015>)_<7.4>合金中の硬磁気特性とナノ組織高いキュリー温度を有することから、高温域での応用が注目されている高温液体急冷Sm(Co_<0.74>Fe_<0.1>Cu_<0.12>Zr_<0.04>B_<0.015>)_<7.4>合金中のナノ結晶構造の形成と磁気特性への影響について、X線回折、透過型電子顕微鏡、3次元アトムプローブを用いて解析を行った。急冷速度の増加に伴い、保磁力の増加が確認された。構造解析の結果、急冷速度の増加に伴い、主相であるSm(Co, Fe, Cu, Zr)、の結晶粒の微細化とTh_2Ni_<17>型からTbCu_7型への構造相変態が確認された。熱処理試料の3次元アトムプローブ解析から、微細なボロンリッチ相(Co-Zr-B)が確認され、磁気特性との関連が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-15560580
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木曽シュミット望遠鏡によるクェーサー広域ディープサーベイ
木曾シュミット望遠鏡の広視野(50文角×50文角)2Kccdカメラにおいて、本課題で購入した狭帯域(NB)・中帯域(MB)フィルターシステムを用いて撮像観測を行ない、低分散分光サーベイを行なってきた。これらのhigh z銀河候補は、スペクトルの長波長側がフラットで、6200ないし6610 Aバンドの短波長側が約1等級暗くなっており、更にBバンドが非常に暗いという特徴を備えるもので、z>4の星生成の活発な若い銀河に特有のスペクトルである。なお、木曾で行なった本課題のNB/MBフィルターサーベイの経験は、すばる望遠鏡主焦点用R23フィルターシステムの設計製作に反映されており、更に今後のすばるNBサーベイ観測・解析においてもその経験を活かすことが期待される。木曾シュミット望遠鏡の広視野(50文角×50文角)2Kccdカメラにおいて、本課題で購入した狭帯域(NB)・中帯域(MB)フィルターシステムを用いて撮像観測を行ない、低分散分光サーベイを行なってきた。これらのhigh z銀河候補は、スペクトルの長波長側がフラットで、6200ないし6610 Aバンドの短波長側が約1等級暗くなっており、更にBバンドが非常に暗いという特徴を備えるもので、z>4の星生成の活発な若い銀河に特有のスペクトルである。なお、木曾で行なった本課題のNB/MBフィルターサーベイの経験は、すばる望遠鏡主焦点用R23フィルターシステムの設計製作に反映されており、更に今後のすばるNBサーベイ観測・解析においてもその経験を活かすことが期待される。今年度、木曾シュミット望遠鏡・2K-ccdカメラ、及び本課題にて購入した狭帯域(NB)フィルターを含むフィルターシステムを用いてクェーサー低分散分光サーベイを開始した。これまでに2天域、計約1度四方の探索を行ない、赤方偏移z=2.43.6を持つV等級<20.6の10個のクェーサー候補を見い出した。('97年12月「第3回すばるファーストライトシンポジウム」、'98年2月「21世紀の大型観測装置による天文学」シンポジウム等で発表)クェーサー光度関数によるとこの領域に期待されるクェーサー数も約10個であり、本課題のサーベイ法=狭帯域フィルター分光法がクェーサー輝線検出に有効であることを示している。'98年度は本課題によりフィルターシステムを拡充し、クェーサー低分散分光サーベイを発展させる計画である。即ち、木曾観測所では'98年度からクェーサーサーベイをプロジェクト観測とすることを決定しており、観測時間・観測条件など'97年度より更に良好な状況のもとで、出来るだけ広い天域に亘ってサーベイを行ないたいと考えている。特に'98年度本課題で購入するフィルターは長波長の数バンドを予定しており、これにより探査できる赤方偏移領域をz=5まで拡大して、木曾シュミット望遠鏡の広視野を活かした観測を進めたい。クェーサーに関する現在の知識では赤方偏移zが4を越すとクェーサー数は激減するとされているが、これは未だ確定した知見とは言えない。従って、これまでの探索方法に比べクェーサー輝線検出の効率が優れていると考えられる本課題の方法=狭帯域フィルター分光法によって高赤法偏移(z>4)を探索することは非常に興味深く、大きな意義を持つものである。今年度は、本課題にて購入した長波長用中帯域(MB)フィルター及び、前年度本課題で購入した狭帯域(NB)フィルターを用いて、主にz〉4のクェーサー、Lyα銀河サーベイを行なった。最近(1998年以降)、z〉4に強いLyα輝線を持つ若い銀河が極めて多いという観測結果が、KECK望遠鏡等による狭視野(約30平方分)深等級(約25等)サーベイから報告され、原始銀河探索の期待も含めて、hjgh z強輝線天体の発見が重要となっている。そこで本課題では、当初予定したz(23)より高い赤方偏移(z4)に、明るい(約22等まで)クェーサー、Lyα銀河=強輝線天体がどれくらい存在するかを探るのを当面の目標として、今年度のサーベイを行なった。一般に明るい天体ほど数は減少し、22等程度でz4の遠方にある銀河は大変少いと考えられるが、木曾シュミット・2K-ccdカメラの広視野(2500平方分)性能を生かして、KECK望遠鏡サーベイと対照的に、広視野・明等級のサーベイを行なったものである。ここで、明るいhigh zLyα銀河が見つかれば、吸収線解析によりその銀河が含む重元素量が測定でき、原始銀河判定の直接的テストを行なえるなど、メリットは大きい。口径は小さくとも視野の大きさを生かして独自のサーベイを試みたものである。1998年度は、木曾シュミット観測割り当てが、全27日とかなりの時間を戴いたが、秋まで天候が非常に悪く、良好なデータを取得できたのは12月末の5日のみであった。現在このデータを解析中で、結果の一部を1999年3月末の天文学会で発表予定である。なお、良好でない天候条件の下で1998年9月までに取得したデータの解析結果は同年10月の天文学会等で報告を行なった。今年度は、過去2年間に本課題にて購入した中帯域(MB)フィルター及び狭帯域(NB)フィルターを用いて、z>4の明るい銀河の探索を行なった。
KAKENHI-PROJECT-09640309
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09640309
木曽シュミット望遠鏡によるクェーサー広域ディープサーベイ
主な観測領域は、HDF(ハッブル・ディープフィールド)を中心に据えた50分角天域で、データは1998年12月及び1999年5月の木曾シュミット観測時間割り当て時に取得した。用いたフィルターはバンド幅(BW)40nm、中心波長(CW)620、661、700、745、795nmの中帯域フィルター5バンド、これを挟む形でB,V,I,の計8バンドである。限界等級は620nm以上で約22AB等級、B,V,で約23AB等級に達している。解析の結果、スペクトルの長波長側がフラットで620ないし661nmバンドの短波長側が約1等級暗くなっており、更にBバンドが非常に暗いという天体が、22等級前後に数個見い出された。これらはz>4にある星生成の活発な若い銀河である可能性が大きい。high zの銀河やQSOは構造形成期にある天体と宇宙空間の解明に欠かせないものであり、特に22ないし23等より明るいものはすばるクラスの望遠鏡により相当の高分散分光が可能であるため、今後、これらのz>4銀河候補について、金属吸収線の有無や吸収の程度など詳しい分光解析を大口径望遠鏡を用いて行なっていく計画である。
KAKENHI-PROJECT-09640309
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鎮痛オピオイド受容体活性化分子機構の解明
本研究は当初、科学研究費・国際学術研究の共同研究としてスタートした。本研究の「オピオイド受容体にエンケファリンを内蔵させる」着想は、酵素・トロンビンの特異的受容体から得た。7回膜貫通型のトロンビン受容体は、受容体自身にリガンドを内蔵するきわめて構造特異な受容体である。酵素トロンビンが末端ペプチドを切り放し、リガンドを露出されて、受容体は活性化される。一方、化学合成したリガンドペプチドは、トロンビンの作用しない、謂わば眠った受容体に結合し、活性化する。申請者等はこの受容体-リガンド相互作用の特異さに着目した。すなわち、受容体に内蔵させたエンケファリンと、外部から加えるエンケファリン(誘導体)を使い分け、駆使しながら受容体応答を解析できる可能性に思い至った。当初はエンドルフィンN端8残基(N末端5残基はエンケファリンの配列に相当)を挿入することとし、δ型とμ型のN端延長ペプチドの末端側をトロンビン受容体N末端部位で置き換えた形の変異受容体を設計した。すなわち、トロンビン結合部位・酸性アミノ酸クラスター、リガンド相当部位、トロンビン切断部位、さらに末端ペプチド配列標識としてM1エピトープを順次結合させた変異受容体を構築した。そして、これをCHO細胞に発現して調べたが、外部リガンドの活性化は受けたものの、酵素・トロンビンでは完全な活性化には至らず、内臓リガンドの確認を得ることができなかった。そこで、細胞膜外N末端領域を基本的にトロンビン受容体のものを用い、これのリガンド部位にエンケファリン(5残基)を挿入したδ型オピオイドキメラ体を作製することにした。δオピオイド受容体cDNAクローン(dor)の細胞膜外のN端領域にLeu-エンケファリン配列(Tyr-Gly-Gly-Phe-Leu)に相当するオリゴヌクレオチドを挿入したδオピオイドキメラ体クローン(pador)を作製し、COS-7細胞で発現させた。発現した受容体タンパク質・PADORのN末端部にはタンパク質標識M1エピトープが組込まれている。そして、これを認識する抗体を用いたウエスタンブロッティング法により陽性となり、受容体の細胞膜への発現が確認された。このPADORは、通常のδ型受容体と同様にアゴニスト・デルトルフィンIIが結合し、受容体は活性化された。興味深いことに、アルカロイドリガンドとペプチド性リガンドでキメラ受容体に対する結合能に違いが見られ、ペプチド性リガンドのキメラ受容体に対する結合能が10倍以上低下した。これより、δ型オピオイド受容体の細胞膜外N端領域はリガンド認識に重要な役割を担っていることが判明した。酸素・トロンビンで受容体PADORを処理すると、N末端部は切断され、エンケファリンが露出されることになるが、このことをN端遊離のエンケファリン配列のみを認識する抗体(3E-7)によるウエスタンブロッティング法により確認した。内臓エンケファリンの露出による受容体活性化は非常に小さく、必ずしも十分とは言えなかったが、本研究により「受容体にそのリガンドを内臓させる」方法論が確立され、受容体分子機構解析の新規な分子ツールの開発に成就した。本研究は当初、科学研究費・国際学術研究の共同研究としてスタートした。本研究の「オピオイド受容体にエンケファリンを内蔵させる」着想は、酵素・トロンビンの特異的受容体から得た。7回膜貫通型のトロンビン受容体は、受容体自身にリガンドを内蔵するきわめて構造特異な受容体である。酵素トロンビンが末端ペプチドを切り放し、リガンドを露出されて、受容体は活性化される。一方、化学合成したリガンドペプチドは、トロンビンの作用しない、謂わば眠った受容体に結合し、活性化する。申請者等はこの受容体-リガンド相互作用の特異さに着目した。すなわち、受容体に内蔵させたエンケファリンと、外部から加えるエンケファリン(誘導体)を使い分け、駆使しながら受容体応答を解析できる可能性に思い至った。当初はエンドルフィンN端8残基(N末端5残基はエンケファリンの配列に相当)を挿入することとし、δ型とμ型のN端延長ペプチドの末端側をトロンビン受容体N末端部位で置き換えた形の変異受容体を設計した。すなわち、トロンビン結合部位・酸性アミノ酸クラスター、リガンド相当部位、トロンビン切断部位、さらに末端ペプチド配列標識としてM1エピトープを順次結合させた変異受容体を構築した。そして、これをCHO細胞に発現して調べたが、外部リガンドの活性化は受けたものの、酵素・トロンビンでは完全な活性化には至らず、内臓リガンドの確認を得ることができなかった。そこで、細胞膜外N末端領域を基本的にトロンビン受容体のものを用い、これのリガンド部位にエンケファリン(5残基)を挿入したδ型オピオイドキメラ体を作製することにした。δオピオイド受容体cDNAクローン(dor)の細胞膜外のN端領域にLeu-エンケファリン配列(Tyr-Gly-Gly-Phe-Leu)に相当するオリゴヌクレオチドを挿入したδオピオイドキメラ体クローン(pador)を作製し、COS-7細胞で発現させた。発現した受容体タンパク質・PADORのN末端部にはタンパク質標識M1エピトープが組込まれている。そして、これを認識する抗体を用いたウエスタンブロッティング法により陽性となり、受容体の細胞膜への発現が確認された。このPADORは、通常のδ型受容体と同様にアゴニスト・デルトルフィンIIが結合し、受容体は活性化された。
KAKENHI-PROJECT-09044230
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鎮痛オピオイド受容体活性化分子機構の解明
興味深いことに、アルカロイドリガンドとペプチド性リガンドでキメラ受容体に対する結合能に違いが見られ、ペプチド性リガンドのキメラ受容体に対する結合能が10倍以上低下した。これより、δ型オピオイド受容体の細胞膜外N端領域はリガンド認識に重要な役割を担っていることが判明した。酸素・トロンビンで受容体PADORを処理すると、N末端部は切断され、エンケファリンが露出されることになるが、このことをN端遊離のエンケファリン配列のみを認識する抗体(3E-7)によるウエスタンブロッティング法により確認した。内臓エンケファリンの露出による受容体活性化は非常に小さく、必ずしも十分とは言えなかったが、本研究により「受容体にそのリガンドを内臓させる」方法論が確立され、受容体分子機構解析の新規な分子ツールの開発に成就した。近年、オピオイド受容体を初めとする7回膜貫通型受容体の構造が相次いで解明され、リガンド結合部位を特定する研究成果も報告されるようになった。しかし、リガンドの結合したのちの受容体分子の情報伝達機構の解析については有効な研究手法がなく、手着かずの状態である。本研究では、「オピオイド受容体にリガンド・エンケファリンを内蔵させる」というユニークな発想により、分子機構の解明をめざす。平成9年度における成果は、以下の2つに要約される。1.エンケファリン内蔵の変異受容体の作製:δ型とμ型の変異受容体について、通常の受容体の細胞質外のN末端に、酵素・トロンビンの結合部位(DKYEPFW)、エンドルフィンN端8残基(YGGFM TSE)、トロンビンによる切断部位(LDPR)、そして標識のため市販のM1抗体のエピトープであるペプチド断片(DYKDDDD)を順次N端へ延長した構造をもつcDNAクローンを構築した。CHO細胞に発現して調べた結果、外部からのエンケファリン高活性誘導体により活性化を受けることがGTPaseの活性化実験から確認された。しかし、酵素・トロンビンを作用させたときのGTPaseの活性化は10%程度であり、完全な活性化には至らなかった。これは、内蔵エンケファリンの結合、あるいはトロンビンの結合に立体障害があるためと考えられた。2.受容体のクローニング:新規δ型のクローニングの過程で、オピオイド受容体に非常によく似た、疼痛刺激を媒介するペプチド・ノシセプチンの受容体(ORL1)がクローニングされた。なお、新たに得られた知見として以下の2つを特筆することができる。1.エンケファリン内蔵のδ型とμ型の変異受容体を作製して、δ型、μ型に特異的なエンケファリン誘導体で受容体応答を解析した。その結果、変異のない受容体と全く同様に結合し、受容体を活性化することが判明した。これにより、受容体の細胞膜外のN末端部分に新たにペプチド断片を結合しても、受容体の機能に何らの影響を与えないこと証明された。一方、酵素・トロンビンによる活性化が完全でなかったことより、変異受容体の構築には、酵素の作用性およびリガンドの結合部位へのアクセスの立体効果に配慮しなければならないという貴重な教訓が得られた。2.疼痛刺激を媒介するペプチド・ノシセプチンの受容体(ORL1)をヒト脳のcDNAライブラリーよりクローニングすることができた。ノシセプチンのアナログを種々化学合成して受容体結合性を検討し、この受容体がオピオイド受容体とは全く異なることが証明された。
KAKENHI-PROJECT-09044230
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09044230
電界共役流体を応用した高パワー軽量な高集積化マイクロモータの開発
電界共役流体(Electro-Conjugate Fluid, ECF)は,流体中に配置した電極対に直流高電圧を印加することにより活発な流動(ジェット流)を生じる機能性流体である.本研究では,このジェット流を工学的に応用した高パワーで軽量なECFマイクロモータを開発する.本年度は,円筒状ロータに線状電極を配置したC-RE形ECFモータの出力特性の測定,および電極対を放射状に配置した円盤状ロータを複数枚積層した積層DP-RE形ECFモータに関する出力パワーの向上を実現した.はじめに,ECFマイクロモータの小径化に関する検討を行った.ECFマイクロモータはステータ内部に充填した電界共役流体に,ロータ上の電極によってジェット流を発生させ,この反力でトルクを得るニューアクチュエータである.これまでの研究からECFジェットを応用したモータでは,小形化するほど出力パワー密度が上昇することがわかっている.このため,内径2mmのC-RE形ECFモータのトルク-スピード特性を明らかにした.また,内径5mm(従来モータの約1/2)の8層DP-RE形ECFモータを開発した.この結果,内径9mmの8層DP-RE形ECFモータと比較して,出力パワー密度が約2.3倍に向上することを実験的に明らかにした.つぎに,従来研究で使用していたECF(デカン二酸ジブチル)よりも高速なジェットを発生することが知られている高性能ECF(FF-1)を使用して,モータ性能の向上を目指した.この結果,8層DP-RE形ECFモータにおいて,出力パワー密度が約5倍になることを実験的に明らかにした.本研究課題では,線状電極間で直流高電圧の印加により活発な流動(ジェット)を生じる電界共役流体(ECF)を応用した高パワー軽量な高集積化マイクロモータの実現を目的としている.本年度は主に,高集積化によるECFモータのさらなる高出力化を図るため,ディスクプレート形ロータ上に薄膜状電極を放射状に配置したDP-RE形ECFモータを新たに提案し,試作2層DP-RE形ECFモータを用いて電極形状および薄膜状電極厚さについて検討をおこなった.さらに,高集積化を図った内径9mm8層DP-RE形ECFモータを試作し,その特性評価をおこなった.実施結果の具体的内容は以下のとおりである.試作した内径9mm2層DP-RE形ECFモータに異なる電極厚さを持つ数種類のロータを用いた特性実験の結果,正負電極厚さが250μmである場合,正負電極厚さが50μmである場合に比べ,印加電圧6kVにおいて,電流は4.0μAであり2.7倍,最大回転数は73rad/sであり1.8倍,最大出力トルクは20μNmであり1.8倍,最大出力パワーは0.24mWであり2.7倍に向上することが示され,薄膜状電極厚さの増加は高出力化に有効であることが確認できた.また,内径9mm4層DP-RE形ECFモータを同体積のもとで,層数を2倍にした内径9mm8層DP-RE形ECFモータ(高集積化積層DP-RE形ECFモータ)を試作した.特性実験の結果,セパレータ材質として同様のポリエーテルイミド樹脂を使用した内径9mm4層DP-RE形ECFモータの出力特性に比べ,印加電圧4kVにおいて,電流は1.4μAであり1.8倍,最大回転数は35rad/sであり1.8倍,最大出力トルクは27μNmであり3倍,最大出力パワーは0.26mWであり6.5倍に向上され,積層DP-RE形ECFモータの高集積化は高出力化に非常に有効であることが示された.電界共役流体(Electro-Conjugate Fluid, ECF)は,流体中に配置した電極対に直流高電圧を印加することにより活発な流動(ジェット流)を生じる機能性流体である.本研究では,このジェット流を工学的に応用した高パワーで軽量なECFマイクロモータを開発する.本年度は,円筒状ロータに線状電極を配置したC-RE形ECFモータの出力特性の測定,および電極対を放射状に配置した円盤状ロータを複数枚積層した積層DP-RE形ECFモータに関する出力パワーの向上を実現した.はじめに,ECFマイクロモータの小径化に関する検討を行った.ECFマイクロモータはステータ内部に充填した電界共役流体に,ロータ上の電極によってジェット流を発生させ,この反力でトルクを得るニューアクチュエータである.これまでの研究からECFジェットを応用したモータでは,小形化するほど出力パワー密度が上昇することがわかっている.このため,内径2mmのC-RE形ECFモータのトルク-スピード特性を明らかにした.また,内径5mm(従来モータの約1/2)の8層DP-RE形ECFモータを開発した.この結果,内径9mmの8層DP-RE形ECFモータと比較して,出力パワー密度が約2.3倍に向上することを実験的に明らかにした.つぎに,従来研究で使用していたECF(デカン二酸ジブチル)よりも高速なジェットを発生することが知られている高性能ECF(FF-1)を使用して,モータ性能の向上を目指した.この結果,8層DP-RE形ECFモータにおいて,出力パワー密度が約5倍になることを実験的に明らかにした.
KAKENHI-PROJECT-14655063
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14655063
細胞治療のための臍帯血由来間葉系幹細胞バンク化を目指した基礎的研究
臍帯血由来間葉系幹細胞(MSC)を5株樹立した。増殖特性、clonologicalabilityはMSC株ごとに異なり、5株中4株が治療量としての細胞数に到達したが、残り1株の増殖は不良であった。凍結保存MSCの解凍後の増殖は速やかであり、増殖動態は各MSCの凍結保存前と同等であった。しかしながら、凍結保存の1株において染色体異常が検出されたことから、今後は継代期間と凍結保存による染色体異常への影響を検証する必要があると思われた。臍帯血由来間葉系幹細胞(MSC)を5株樹立した。増殖特性、clonologicalabilityはMSC株ごとに異なり、5株中4株が治療量としての細胞数に到達したが、残り1株の増殖は不良であった。凍結保存MSCの解凍後の増殖は速やかであり、増殖動態は各MSCの凍結保存前と同等であった。しかしながら、凍結保存の1株において染色体異常が検出されたことから、今後は継代期間と凍結保存による染色体異常への影響を検証する必要があると思われた。平成22年度においては、特定非営利活動法人宮城さい帯血バンクより研究用として提供を受けた臍帯血は14件であり、臍帯血採取から単核球分離培養開始までの時間は3-26.5時間であった。前半の9件についてはMSCは得られなかったが、採取から培養開始までの時間経過が長かったことが原因であると思われた。後半の5件については採取からの時間経過が短い臍帯血の提供を受けた(3-8時間)。またcomplete mediumとしては従来どおりMesenCuly^<TM> Basal MediumにMesenchymal Stem Cell Stimulatory Supplementsを加えたものを用いたが、後半の5件については、MSCグレードの胎児ウシ血清を20%にて使用した。また初期培養においては、単球のdishへの付着を抑制するためにdexamethasone(10^7 M)を添加した。これら5件の臍帯血から得られたMSCは、採取から単核球分離培養開始までの時間が3時間、6.5時間と短いもの(2件)からの4株であった。このうちで最も増殖の早いMSCのpassage 1における細胞数は1.26x10^6であり、一部を凍結保存し、一部を1x10^5/40cm^2 dishとして培養を継続した。同株の表現型はCD29^+CD44^+CD73^+CD105^+CD166^+-D34^- CD45^-D62L^-であった。また増殖特性はpassage 2,day 47で2.6 population doublingsであった。今後も臍帯血由来間葉系幹細胞の樹立と増幅(継代)、保存は継続して実施していく予定であり、また機能解析が可能な細胞数が得られるようになった。平成22年度において実施したもうひとつの実験は、以前の研究において樹立し、超低温冷凍庫(-85°C)に20-21ヵ月間凍結保存されていたMSC株が解凍後に再増殖するかどうかの確認である。用いたMSC株はMSC3362,MSC3368,MSC3394の3株である。いずれにおいても培養開始後にMSC細胞の増殖が確認されていたが、東日本大震災のため実験が中断された。この課題については次年度において再実験を行なうこととした。平成23年度においても特定非営利活動法人宮城さい帯血バンクより移植適応外となった臍帯血の譲渡を受けた。本年度の受入数は15件であり、採取から培養開始までの時間は5.5-9.0時間であった。Complete mediumとしてはこれまでどおりMesenCult^<TM> Basal MediumにMesenchymal Stem Cell Stimulatory Supplementsを加えたものを使用し、これにMSCグレードの胎児ウシ血清を20%にて添加した。また初期培養においては、単球のdishへの付着を抑制するためにdexamethasone(10^<-7>M)を添加した。これら15件の臍帯血のうち、MSCの増殖が確認できたものは3件であったが、このうちの1件は2回目の継代後まもなく増殖不良となった。あとの2件については継代毎に一部を凍結保存し、一部を1x10^5/40cm^2 dishとして培養を継続した。2件の臍帯血から得られたMSCは5株であり、フローサイトメトリー解析によるそれらの表現型はいずれもCD29^+CD44^+CD73^+CD105^+CD166^+ CD34^-CD45^-CD62L^-であった。増殖特性は5株のうちの2株(4189-3,4189-4)が>passage 6で>25 cumulative population doubling level(PDL)と増殖が良好であったのに対し、残りの3株(4093,4189-1,4189-2)は>passage 4で<15 PDLと前2株に比較して増殖は弱かった。また継代毎のCFU-F assay(1,000cells/plateで評価)においては、4189-3と4189-4の2株はpassage 3までは>30 colonies(56 colonies,37 colonies)とclonological abilityは高かったが、後者の3株では、>passage 3では2 colonies以下とcolony foming abilityは低かった。以上、cmmulative population doubling
KAKENHI-PROJECT-22591150
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細胞治療のための臍帯血由来間葉系幹細胞バンク化を目指した基礎的研究
levelとcolony forming abilityとは一致する結果を得た。Passage 4までの累積細胞数は4189-3で1.5x1010,4189-4では1.6x10^<10>,4189-1では2.8x10^8,4189-2では1.6x10^8と治療量としては十分量の細胞数に到達したが、4093のみは5.2x10^6と治療量としての十分な細胞数には到達しなかった。本年度の研究において得られたMSC株数は5株と少なかったが、そのなかにおいても増殖特性はまちまちであり、いずれが凍結保存に適するMSCかを初期の段階で判断することは困難であると思われた。平成24年度においては、-80°C超低温冷凍庫に凍結保存した5株を順次解凍し、凍結前培養株と増殖能を比較した。1x10E5/dishにて培養を継続し、胎児ウシ血清を20%濃度にて添加した間葉系幹細胞(MSC)基礎培地にMSC増殖因子を加えたものを使用した。凍結保存4189-3Fおよび4189-4Fの増殖特性は、継代による細胞集団倍加累積数(PDL)で25以上であった。また凍結保存4189-1F,4189-2Fおよび4093Fの増殖特性は、4継代以上で15 PDL未満と増殖は弱かった。継代毎のコロニーアッセイCFU-F (1,000 cells/dishで評価)では、4189-3Fと4189-4Fの2株は3継代までは30コロニー以上(33, 41)とコロニー形成能(CFA)は高かったが、4189-1Fと4189-2Fでは、3継代以上では2コロニー以下とCFAは低かった。4093Fでは、1継代の段階で1コロニーであった。以上、凍結保存の5株におけるPDLとCFAとは凍結前と同等の結果であった。解凍後の累積細胞数は4189-3F,4189-4F,4189-1F,4189-2Fでは治療量としての細胞数(2.2x10E3倍以上)に到達したが、4093Fのみは到達しなかった。また解凍後培養早期の段階でG-bandingによる染色体分析を実施した。核板が得られた4株中3株は正常核型であったが、1株で核型異常が認められた。以上の結果より、凍結前培養で増殖能が高い株は凍結保存後においても同等の増殖能を保持することが明らかとなった。しかしながら、一部の株において染色体異常が検出されたことから、今後は染色体異常の発生に係る継代期間の限界に関する検証が必要であると思われた。臍帯血採取から譲渡・分離培養開始までの時間が5時間以上と空いてしまい、MSC株の分離率が低かった。24年度が最終年度であるため、記入しない。2011年度までに得られたMSC株5株は液体窒素中に凍結保存されている。これら5株を解凍した上で再度培養をおこない、初代培養株と同等の増殖特性を有するかどうかを検証する。また同時に凍結融解をおこなうことで染色体異常が発生していないかどうかを確認する。さらにこれらのMSC細胞が脂肪細胞、軟骨細胞、骨細胞への分化能を有しているかどうか、また同種抗原応答性T細胞活性抑制効果、造血幹細胞支持能についても機能解析をおこない、細胞バンクに適した性状を有するかについて検証する。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22591150
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シリカをテンプレート剤とするIVb, Vb族元素の微細構造制御と新規反応系の創製
VIb族およびVb族元素であるTi、Zr、Nbを四面体構造を持つシリカマトリックス中に埋めこみ、シリカのテンプレート作用を利用して配位形態の制御を行った。また、配位形態の違いによる触媒活性の評価に1-オクテンのエポキシ化反応を適用した。テトラエチルオルトシリケートとチタンイソプロポキシドの急速加水分解により調製したチタニアシリ力は、Ti含有量の少ない場合にエポキシ化活性な配位不飽和の四面体構造をとることがXAFS分析により観測されている。しかし、XAFS分析は触媒バルクまでに及び、必ずしも表面分析に限定されないという欠点がある。本研究では調製したチタニアシリカに酸素を導入して触媒表面に生成するスーパーオキシドのg値が四面体Tiと八面体Tiでは異なり、XAFS分析の結果と一致することがわかり、XAFS分析は触媒表面の状態を正確に反映していることが証明された。つづいて、Zr,Nbを同様にシリカと複合させた。Tiの場合と同様に含量が少ない場合にはZr,Nb共シリカマトリックスの影響を受けて4面体構造をとり、1-オクテンのエポキシ化に活性を示した。以上の結果から、ヒドロペルオキシドを用いる液相でのエポキシ化反応では、配位不飽和の金属原子に対して第一段階でヒドロペルオキシドが配位する反応形式が多いことが明らかとなった。VIb族およびVb族元素であるTi、Zr、Nbを四面体構造を持つシリカマトリックス中に埋めこみ、シリカのテンプレート作用を利用して配位形態の制御を行った。また、配位形態の違いによる触媒活性の評価に1-オクテンのエポキシ化反応を適用した。テトラエチルオルトシリケートとチタンイソプロポキシドの急速加水分解により調製したチタニアシリ力は、Ti含有量の少ない場合にエポキシ化活性な配位不飽和の四面体構造をとることがXAFS分析により観測されている。しかし、XAFS分析は触媒バルクまでに及び、必ずしも表面分析に限定されないという欠点がある。本研究では調製したチタニアシリカに酸素を導入して触媒表面に生成するスーパーオキシドのg値が四面体Tiと八面体Tiでは異なり、XAFS分析の結果と一致することがわかり、XAFS分析は触媒表面の状態を正確に反映していることが証明された。つづいて、Zr,Nbを同様にシリカと複合させた。Tiの場合と同様に含量が少ない場合にはZr,Nb共シリカマトリックスの影響を受けて4面体構造をとり、1-オクテンのエポキシ化に活性を示した。以上の結果から、ヒドロペルオキシドを用いる液相でのエポキシ化反応では、配位不飽和の金属原子に対して第一段階でヒドロペルオキシドが配位する反応形式が多いことが明らかとなった。IVbおよびVb族であるジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)のアルコキシドをテトラエチルオルトシリケートと反応させるゾルゲル法により複合酸化物を調製し、その微細構造を主としてX線吸収微細構造(XAFS)スペクトルにより解析して、ヒドロペルオキシドを酸化剤とするオレフィン(1-オクテン)のエポキシ化反応とZr,Nb構造との関連を検討した。両者ともその濃度が小さい場合にはXAFSスペクトルのpre-edgeピークが大きく、対称性のよい6配位あるいはそれより高次の配位形態からずれた配位、おそらく4配位をとることが推察された。含量の増大につれて高次の配位状態が優先となった。エポキシ化活性は4配位構造をとる場合高く、6配位あるいはそれより高次配位ではほとんど活性が認められなかった。この結果は以前のチタンとシリカの複合酸化物中のチタンの挙動と同じ現象であり、配位数が少なくて配位座が空いている場合には反応の第一段階であるヒドロペルオキシドのZrあるいはNbへの配位が可能であり、活性が発現するものと推定された。なお、エポキシ化活性を示す配位不飽和の領域はチタンでは30モル%以下であるのに対して、Nbでは10モル%以下、Zrではわずかに1-2モル%以下であった。これはイオン半径の順であり、Zrのように大きなイオンは小さなシリカ骨格に取り込まれにくいためであると思われる。さらに、ゾルゲル法以外に超微細粒径を持つエアロジルシリカを担体として、含浸法でチタン、Zr,Nb、タングステン、バナジウムを担持してその活性を調べた。これらの複合酸化物のエポキシ化活性はゾルゲル法で調製したものよりも高く、現在その微細構造を検討中である。VIb族およびVb族元素であるTi、Zr、Nbを四面体構造を持つシリカマトリックス中に埋めこみ、シリカのテンプレート作用を利用して配位形態の制御を行った。また、配位形態の違いによる触媒活性の評価に1-オクテンのエポキシ化反応を適用した。テトラエチルオルトシリケートとチタンイソプロポキシドの急速加水分解により調製したチタニアシリカは、Ti含有量の少ない場合にエポキシ化活性な配位不飽和の四面体構造をとることがXAFS分析により観測されている。しかし、XAFS分析は触媒バルクまでに及び、必ずしも表面分析に限定されないという欠点がある。本研究では調製したチタニアシリカに酸素を導入して触媒表面に生成するスーパーオキシドのg値が四面体Tiと八面体Tiでは異なり、XAFS分析の結果と一致することがわかり、XAFS分析は触媒表面の状態を正確に反映していることが証明された。つづいて、Zr,Nbを同様にシリカと複合させた。
KAKENHI-PROJECT-09650904
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650904
シリカをテンプレート剤とするIVb, Vb族元素の微細構造制御と新規反応系の創製
Tiの場合と同様に含量が少ない場合にはZr,Nb共シリカマトリックスの影響を受けて4面体構造をとり、1-オクテンのエポキシ化に活性を示した。以上の結果から、ヒドロペルオキシドを用いる液相でのエポキシ化反応では、配位不飽和の金属原子に対して第一段階でヒドロペルオキシドが配位する反応形式が多いことが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-09650904
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650904
フィリピン断層系を例とした横ずれ断層系のセグメンテーションに関する研究
本研究期間中に10回渡航し,ルソン島のフィリピン断層帯の空中写真判読・地形調査・トレンチ掘削調査,およびルソン島南東部の第四紀テフラの調査を行った.本研究では,調査地域全域の縮尺約3万分の1のモノクロ空中写真を購入し,その判読に基づいて新たな活断層分布図を作成した.基図はフィリピン国家地図資源情報局発行の縮尺5万分の1地形図である.さらに,調査地域全域の断層変位地形調査を行った.その結果,San Jose断層やSan Manuel断層において新たな地表トレースが確認され,また断層の分岐形状に関しても新たな知見が得られた.この活断層図を基に,中田ほか(2004)で提示された起震断層モデルを適用すると,ルソン島のフィリピン断層帯は3つのセグメント(起震断層)に分割することができ,被害記録から推定される歴史地震の破壊領域ともよくあうことが判明した.このセグメンテーションモデルを検証するため,個々の活断層の活動履歴の解明を目的としたトレンチ掘削調査を行った.Digdig断層上の2地点で行った掘削調査では,過去2000年間に4回の活動の痕跡を見いだすことができた.San Jose断層上では1地点で掘削を行い,過去2500年間に少なくとも3回の活動の痕跡が認められた.Gabaldon断層のトレンチ掘削調査では,最新活動時期が17世紀以降に限定されることが明らかとなり,1645年の大地震がbabaldon断層の活動によって引き起こされたことがほぼ確実となった.すなわち,最新の地震サイクルでは,San Jose断層・Digdig断層・Gabaldon断層は別々に破壊しており,断層形状に基づくセグメンテーションモデルを支持する結果が得られた.またルソン島南東部のMayon火山およびIrosinカルデラの第四紀後期噴出物の層序学的・年代学的調査を行い,今後これらの火山の噴出物が広域火山灰として活用できる可能性が示された.本研究期間中に10回渡航し,ルソン島のフィリピン断層帯の空中写真判読・地形調査・トレンチ掘削調査,およびルソン島南東部の第四紀テフラの調査を行った.本研究では,調査地域全域の縮尺約3万分の1のモノクロ空中写真を購入し,その判読に基づいて新たな活断層分布図を作成した.基図はフィリピン国家地図資源情報局発行の縮尺5万分の1地形図である.さらに,調査地域全域の断層変位地形調査を行った.その結果,San Jose断層やSan Manuel断層において新たな地表トレースが確認され,また断層の分岐形状に関しても新たな知見が得られた.この活断層図を基に,中田ほか(2004)で提示された起震断層モデルを適用すると,ルソン島のフィリピン断層帯は3つのセグメント(起震断層)に分割することができ,被害記録から推定される歴史地震の破壊領域ともよくあうことが判明した.このセグメンテーションモデルを検証するため,個々の活断層の活動履歴の解明を目的としたトレンチ掘削調査を行った.Digdig断層上の2地点で行った掘削調査では,過去2000年間に4回の活動の痕跡を見いだすことができた.San Jose断層上では1地点で掘削を行い,過去2500年間に少なくとも3回の活動の痕跡が認められた.Gabaldon断層のトレンチ掘削調査では,最新活動時期が17世紀以降に限定されることが明らかとなり,1645年の大地震がbabaldon断層の活動によって引き起こされたことがほぼ確実となった.すなわち,最新の地震サイクルでは,San Jose断層・Digdig断層・Gabaldon断層は別々に破壊しており,断層形状に基づくセグメンテーションモデルを支持する結果が得られた.またルソン島南東部のMayon火山およびIrosinカルデラの第四紀後期噴出物の層序学的・年代学的調査を行い,今後これらの火山の噴出物が広域火山灰として活用できる可能性が示された.本研究の初年度である平成15年度には以下のような調査を行った.日本において文献収集・従来のデータの整理を行うと共に,2003年8月と12月,および2004年3月の3回渡航し,空中写真判読・現地地形調査・トレンチ掘削調査を行った.8月には研究代表者である堤がフィリピン火山地震研究所を訪問し,調査地域の地形図空中写真を購入すると共に,日本の活断層研究の現状や本研究の意義を紹介するセミナーを開催し,共同研究への足がかりを作った.12月には堤と後藤が渡航し,空中写真判読によりルソン島のフィリピン断層系の分布図を作成しその後予察的な現地地形調査を行った.今回の空中写真判読により,断層トレースの位置や上下変位パターンに関して新たな知見が得られた.ルソン島のフィリピン断層系は左雁行配列する4条の活断層から構成されるが,それぞれの活断層に沿って断層の南部では西側隆起,断層の北部では東側隆起という上下変位パターンを示す.このパターンは左横ずれ地震に伴う地表面の上下変位パターンと同じであり,これは個々の活断層がそれぞれ独立の起震断層をなしている可能性を示唆する.また1990年ルソン島地震ではDigdig断層が破壊したが,その破壊開始点が,隣接するGabaldon断層とSan Jose断層との会合部に位置することが判明した.すなわち断層セグメントの境界部付近で破壊が開始したことになる.3月には研究代表者および分担者全員が渡航し,Digdig断層およびSan Jose断層の計2ケ所でトレンチ掘削調査を行った.層序と断層構造から古地震イベントを認定し,イベントの時期決定のために,放射性炭素年代測定試料と火山灰分析用試料を採取した.これらの試料は平成16年度前半に分析する.
KAKENHI-PROJECT-15403002
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15403002
フィリピン断層系を例とした横ずれ断層系のセグメンテーションに関する研究
これまでの成果については,2004年5月の地球惑星科学関連学会合同大会において発表する予定である.本研究の2年目に当たる平成16年度には以下のような調査を行った.まず2004年5月と11月,および2005年3月にそれぞれ23週間渡航し,地形調査・トレンチ掘削調査を行った.地形調査については,調査地域全域の断層変位地形の観察と記載,および断面測量がほぼ終了した.また来年度のトレンチ調査候補地の選定も行った.トレンチ調査については,調査地域の主要な4本の活断層のうち,Gabaldon断層・Digdig断層・San Jose断層の掘削を行った.それぞれの調査地点で,層序と断層構造から古地震イベントを認定し,またイベントの時期決定のために放射性炭素年代測定試料を採取した.これらの試料についてはAMS年代測定を随時行い,それに基づいて古地震イベントの時期や活動間隔の検討を進めている.また歴史地震の起震断層の特定についても,現地の歴史地震研究者との共同研究を進めている.前年度の空中写真判読や地形調査によって得られた断層トレースの位置や上下変位パターンに関する新たな知見および断層セグメンテーションモデルについては,2004年5月の地球惑星科学関連学会合同大会や2004年9月の日本地理学会で発表した.また研究成果の一部は,2編の学術論文として公表および公表予定である.また断層トレースの形状と歴史地震に伴う破壊パターンが明らかとなってきたことを受けて,断層の動的破壊過程に関する地震学研究者との共同研究を開始した.本研究の最終年度に当たる平成17年度には,それぞれ約2週間の日程で3回渡航し現地調査・室内作業を行った.2005年8月にはフィリピン火山地震研究所においてルソン島北部の空中写真判読を行い,活断層分布図を作成した.また半日の空中写真判読講習会を行い,所員を中心に約15名の参加があった.2005年1112月にはSan Manuel断層のトレンチ掘削調査を行ったが,地下水位が高く断層を露出させるのに十分な深度まで掘削することができず,San Manuel断層の古地震活動については未解決のまま残された.2006年23月にはGabaldon断層上の2地点でトレンチ掘削調査を行った.それぞれの調査地点で,層序と断層構造から古地震イベントを認定し,またイベントの時期決定のために放射性炭素年代測定試料を採取した.これらの試料についてはAMS年代測定を随時行い,それに基づいて古地震イベントの時期や活動間隔の検討を進めている.断層が地表直下の地層までを変位させていることから,Gabaldon断層が歴史時代に活動した可能性が高いことが明らかとなった.本研究の3年間の調査で,調査地域の主要な4本の活断層のうち,Gabaldon断層・Digdig断層・San Jose断層については過去約2000年間の活動履歴が明らかとなった.またこれらの断層の最新活動と歴史地震との対応についても明らかとなってきた.これらの研究成果の一部については,2005年9月の日本地質学会第112年学術大会で発表し,また2006年5月に開催される日本地球惑星科学連合2006年大会の特別セッション「フィリピンのテクトニクス」において発表する予定である.また本年度中に研究成果の一部を2編の学術論文として公表したが、今後研究成果をまとめて,国際誌に数編の論文として投稿する予定である.
KAKENHI-PROJECT-15403002
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15403002
散在型有限単純群が作用する頂点作用素代数の構成
散在型有限単純群の中で最も興味深いモンスター単純群を理解するために,この群が全自己同型群として作用する頂点作用素代数であるムーンシャイン頂点作用素代数を研究することは非常に有効な手段の一つである.本年度は,ムーンシャイン頂点作用素代数の位数3の自己同型に付随する構成法を目指して研究を行った。これはFrenkelらによって提出されたいくつかの素数の位数の自己同型に付随するムーンシャイン頂点作用素代数の構成法に関する予想の一部の解決を目指すものである.とりわけ,本研究を遂行する上で重要な鍵となるコクセター・トッド格子に付随する頂点作用素代数の性質、表現論、自己同型群に関する研究を行った.また,台湾の国立成功大学のChing Hung Lam教授と共著でリーチ格子に付随する頂点作用素代数のイジング元に関する論文「Ising vectors in the vertex operator algebra $V_{\Lambda}^+$ associated with the Leechlattice $\Lambda$」を発表した.この論文において,リーチ格子に付随する頂点作用素代数のイジング元の特徴づけを行った.イジング元とは位数2の自己同型を引き起こすような元であり,自己同型群との関係を調べるために非常に重要な役割を果たす.そして,ムーンシャイン頂点作用素代数がこの頂点作用素代数を含むことを用いて,モンスター単純群のいくつかの性質を頂点作用素代数の立場から解明した.特に,モンスター単純群の共役類2Aの元とワイル群との不思議な関係を述べたグラウバーマン・ノートン観察の一部について頂点作用素代数の視点からの説明を与えた.この研究成果を応用して,この観察における残された場合や未だ残されているモンスター単純群に関するさまざまな不思議な現象の解明が大きく進展することが期待される.散在型有限単純群の中で最も興味深いモンスター単純群を理解するために,この群が全自己同型群として作用する頂点作用素代数であるムーンシャイン頂点作用素代数を研究することは非常に有効な手段の一つである.本年度は,ムーンシャイン頂点作用素代数の位数3の自己同型に付随する構成法を目指して研究を行った。これはFrenkelらによって提出されたいくつかの素数の位数の自己同型に付随するムーンシャイン頂点作用素代数の構成法に関する予想の一部の解決を目指すものである.とりわけ,本研究を遂行する上で重要な鍵となるコクセター・トッド格子に付随する頂点作用素代数の性質、表現論、自己同型群に関する研究を行った.また,台湾の国立成功大学のChing Hung Lam教授と共著でリーチ格子に付随する頂点作用素代数のイジング元に関する論文「Ising vectors in the vertex operator algebra $V_{\Lambda}^+$ associated with the Leechlattice $\Lambda$」を発表した.この論文において,リーチ格子に付随する頂点作用素代数のイジング元の特徴づけを行った.イジング元とは位数2の自己同型を引き起こすような元であり,自己同型群との関係を調べるために非常に重要な役割を果たす.そして,ムーンシャイン頂点作用素代数がこの頂点作用素代数を含むことを用いて,モンスター単純群のいくつかの性質を頂点作用素代数の立場から解明した.特に,モンスター単純群の共役類2Aの元とワイル群との不思議な関係を述べたグラウバーマン・ノートン観察の一部について頂点作用素代数の視点からの説明を与えた.この研究成果を応用して,この観察における残された場合や未だ残されているモンスター単純群に関するさまざまな不思議な現象の解明が大きく進展することが期待される.
KAKENHI-PROJECT-07J00542
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07J00542
標的タンパク質の立体特異的リガンド認識を利用したマメ科植物就眠運動の分子機構解明に関する研究
就眠運動の分子機構解明を目指し,モデル植物であるアメリカネムノキの就眠運動を制御する内因生理活性物質β-グルコピラノシル-12-ヒドロキシジャスモン酸カリウムを基盤とした分子プローブを設計・合成し,その標的タンパク質MTGJの効率的標識化および精製を目指し研究を行ってきた.前年度までに,リンカー構造にトリアゾール-フェニル(TAzP)型ビアリール構造を含む分子プローブを開発し、これが従来用いてきた分子プローブと比較して約20倍もの標的タンパク質標識化効率を示すことを見出した.これは,ビアリール構造に起因する剛直なリンカーが、嵩高い分子タグをファーマコフォアから空間的に引き離すことで,分子プローブ-標的タンパク質間相互作用が強まったことが原因であると考察した。本年度はこの知見を活かし、リンカーの分子構造と分子プローブの性能の相関を明らかにし,さらなる高性能分子プローブの開発の開発を目指すこととした.リンカー部位の剛直性を比較するコントロールとして,トリアゾール基とフェニル基を炭化水素鎖(C2H4)で連結した分子プローブ,および分子プローブに広く用いられるオリゴエチレングリコールリンカーを導入した分子プローブをそれぞれ合成した,また,剛直性を保ち,更に平面性と分子全体の極性を高めたトリアゾール-キノリン(TAzQ)構造を有する分子プローブを合成し,これらとTAzP型プローブとMTGJ標識化効率を比較した.その結果,合成した各種プローブはTAzP型プローブに比べ標識化効率が著しく低下した.炭化水素鎖を挿入したプローブ,およびオリゴエチレングリコールを導入したプローブとの比較結果から,TAzP型分子プローブの高い標識化性能は,リンカー部位の剛直性が大きく寄与していることが示唆された.また同じビアリール構造を有するTAzQ型プローブがほとんど標識化性能を示さなかったことに関しては,分子プローブの水溶性の違いによる物と考察した.TAzQ型はTAzP型に比べClogP法および逆相HPLCの保持時間から極性は高いものの、その飽和濃度はTAzP型の4分の1程度であった.橋本らは,分子の平面性や対称性を崩すことで分子の水溶性が向上することを報告している.そこで,DFT計算を用いたコンフォメーション解析を行い,TAzP型とTAzQ型のビアリール結合の二面角を調べたところ,TAzP型はややねじれた構造を取っているのに対し,TAzQ型は平面性を保った構造を有することが明らかになった.このような最安定構造の違いから二つのプローブは水溶液中で異なる状態を取り,結果として標識化効率に差が現れたものと推測された.以上の結果から,申請者が開発したTAzPリンカーは簡便に合成可能かつ高い標識化性能を付与することができる優れたリンカーであることが示唆された.高性能分子プローブを開発し,この高い性能がリンカー構造に起因することを見出し,今後の分子プローブ開発研究に置ける一つの指針を示すことが出来たものの,未だ就眠運動に関わるタンパク質の単離・精製は達成されていない.現時点での課題は,標的タンパク質MTGJが極微量にしか入手できない点である.これを解決するためには,アメリカネムノキ運動細胞プロトプラストの大量調製法の確立,並びにタンパク質精製のプロトコル改善が必要不可欠であると考える.申請者は,就眠運動の詳細な分子機構解明を目指し,分子プローブ法によるアメリカネムノキの就眠物質標的タンパク質の同定を検討した.まず申請者は,植物体内に極微量に含まれる標的タンパク質を,効率的に標識化・精製可能な高性能分子プローブの創製に着手した.プローブ-タンパク質間に共有結合を形成する架橋性宮能基,および検出や精製に関わる分子タグの組み合わせを最適化することで,高性能分子プローブの創出が可能であると考えた.このようなスクリーニングを行うために,申請者は一価の銅触媒によるアジドとアルキンのHuisgen[3+2]環化付加反応(以下,CuAAC反応)を利用した分子プローブの簡便な合成法を開発した.すなわち,グリコンの2'位に架橋性官能基を,6'位にアジドを導入したファーマコフォアと,分子タグを導入した4-エチニル桂皮酸アミドをそれぞれ合成し,CuAAC反応により各ユニットを連結することで,ビアリール構造を有する分子プローブを簡便に合成した.合成したビアリール連結型プローブ(以下,BArLプローブ)は,これまで用いてきたトリグリシン連結型プローブに比べて,標的タンパク質に対し約70倍もの標識化効率を示した.剛直なビアリールリンカーが良いスペーサーとして機能することで,嵩高い分子タグをファーマコフォアから空間的に遠ざけることで,プローブの生理活性が向上したことが原因と推測された.現在,合成したBArLプローブを用い,アメリカネムノキ運動細胞プロトプラスト細胞膜画分に局在する標的タンパク質の標識化・精製を検討している.申請者は、就眠運動の詳細な分子機構解明を目指し、分子プローブ法によるアメリカネムノキの就眠物質標的タンパク質の同定を検討した。昨年度、アメリカネムノキに極微量含まれる標的タンパク質を効率的に標識化・精製可能なビアリール連結型プローブ(以下,BArLプローブ)を開発した。ビアリールリンカーは自由度が低く剛直であると考えられるため、本年度は、リンカー部位の剛直性が標識化性能へ及ぼす影響を検討した。
KAKENHI-PROJECT-10J03237
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J03237
標的タンパク質の立体特異的リガンド認識を利用したマメ科植物就眠運動の分子機構解明に関する研究
柔軟なリンカー構造を有するトリグリシン型プローブ、トリアゾール骨格とアリール部位の間にエチレンスペーサーを導入したプローブ、ポリエチレングリコール(PEG)型プローブ、さらに剛直性を期待できるリンカー構造を有する2種のキノリン型プローブを合成し、これらの標識化性能をBArLプローブと比較した。その結果、トリグリシン型プローブ以外の全てのプローブで、標識化性能の大幅な低下が見られた。柔軟なリンカー構造を有するプローブの性能低下は予想通りであったが、性能の向上を期待して合成したキノリン型リンカーを有するプローブは、予想に反してBArLプローブよりも標識化性能が低下した。これらの結果は、リンカー個々の剛直性と標識化性能の間には、直接的な相関がないことを示しており、高性能プローブの統一的な分子設計にはさらに詳細な検討と解析が必要であることが分かった。就眠運動の分子機構解明を目指し,モデル植物であるアメリカネムノキの就眠運動を制御する内因生理活性物質β-グルコピラノシル-12-ヒドロキシジャスモン酸カリウムを基盤とした分子プローブを設計・合成し,その標的タンパク質MTGJの効率的標識化および精製を目指し研究を行ってきた.前年度までに,リンカー構造にトリアゾール-フェニル(TAzP)型ビアリール構造を含む分子プローブを開発し、これが従来用いてきた分子プローブと比較して約20倍もの標的タンパク質標識化効率を示すことを見出した.これは,ビアリール構造に起因する剛直なリンカーが、嵩高い分子タグをファーマコフォアから空間的に引き離すことで,分子プローブ-標的タンパク質間相互作用が強まったことが原因であると考察した。本年度はこの知見を活かし、リンカーの分子構造と分子プローブの性能の相関を明らかにし,さらなる高性能分子プローブの開発の開発を目指すこととした.リンカー部位の剛直性を比較するコントロールとして,トリアゾール基とフェニル基を炭化水素鎖(C2H4)で連結した分子プローブ,および分子プローブに広く用いられるオリゴエチレングリコールリンカーを導入した分子プローブをそれぞれ合成した,また,剛直性を保ち,更に平面性と分子全体の極性を高めたトリアゾール-キノリン(TAzQ)構造を有する分子プローブを合成し,これらとTAzP型プローブとMTGJ標識化効率を比較した.その結果,合成した各種プローブはTAzP型プローブに比べ標識化効率が著しく低下した.炭化水素鎖を挿入したプローブ,およびオリゴエチレングリコールを導入したプローブとの比較結果から,TAzP型分子プローブの高い標識化性能は,リンカー部位の剛直性が大きく寄与していることが示唆された.また同じビアリール構造を有するTAzQ型プローブがほとんど標識化性能を示さなかったことに関しては,分子プローブの水溶性の違いによる物と考察した.TAzQ型はTAzP型に比べClogP法および逆相HPLCの保持時間から極性は高いものの、その飽和濃度はTAzP型の4分の1程度であった.橋本らは,分子の平面性や対称性を崩すことで分子の水溶性が向上することを報告している.そこで,DFT計算を用いたコンフォメーション解析を行い,TAzP型とTAzQ型のビアリール結合の二面角を調べたところ,TAzP型はややねじれた構造を取っているのに対し,TAzQ型は平面性を保った構造を有することが明らかになった.このような最安定構造の違いから二つのプローブは水溶液中で異なる状態を取り,結果として標識化効率に差が現れたものと推測された.以上の結果から,申請者が開発したTAzPリンカーは簡便に合成可能かつ高い標識化性能を付与することができる優れたリンカーであることが示唆された.
KAKENHI-PROJECT-10J03237
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J03237
日常に生きる書写指導確立のための基礎研究-字形損傷要因の分析を通して-
本研究では、日常に生きる書写指導の確立をめざし、まず字形が乱れる場面や要因を明確にし、次に姿勢と持ち方による字形の変化を検証した。続いて「なぞり書き」と「空書」、それらを融合したタッチパネル上への指やペンでのなぞり書き(「空なぞり」)の効果を検証した。さらに、字形の乱れが著しい横書き速書きの平仮名について、文字と文字とのつながり部分に注目したトレーニングを考案し、中学校において実践を試みた。本研究では、日常に生きる書写指導の確立をめざし、まず字形が乱れる場面や要因を明確にし、次に姿勢と持ち方による字形の変化を検証した。続いて「なぞり書き」と「空書」、それらを融合したタッチパネル上への指やペンでのなぞり書き(「空なぞり」)の効果を検証した。さらに、字形の乱れが著しい横書き速書きの平仮名について、文字と文字とのつながり部分に注目したトレーニングを考案し、中学校において実践を試みた。日常に生きる書写指導として、字形損傷の顕著な横書きの速書きを中心に取り扱うが、字形損傷は損傷要因との相関性が極めて強いため、内容や程度が多岐に渡る損傷の要因を認知と運動の両面から確認する必要がある。そこで文献調査を行い、脳科学的見地から書字障害(ディスグラフィア)の認知面での要因(アトキンソン2005、笹沼2007)を確認した。特別支援学校での支援・介入の方法は、通常学級でも一斉や個別の指導に導入が図られている(大庭1996)。例えば、漢字を構成要素で分解し色分けする、形を言葉にする等の方法(白石2009、稲垣2011)がある。運動面に関わる「なぞり」については、視写との学習効果の比較(小野瀬1995)、筆記具操作能力の発達的変化や速さと正確性との関係(本多・佐々木2009)、視写・聴写と書字速度の相関性(河野2008)を明らかにした。書写指導の視点から字形損傷をとらえ直す(廣瀬・橋本2009、小林2004)と、損傷表出の場面・状況そのものが損傷要因であることが明確になった(杉崎2012)。研究協力校においては、字形損傷の実態を把握し、パイロットテストやなぞり手法等の試行で生徒らの反応や字形損傷の程度を調査した。その結果、絵・記号の視写では各々ある種のストローク(筆使い)で見本とずれること、モニタに提示した文字を指でなぞる実験では筆画の中心から遊離しないことが分かった。さらに通常の筆記具でのなぞり・姿勢等の調査では、書く速さにより特異な姿勢の乱れの発生を確認した。速書きの場合、損傷は顕著だが日常よりも速さに順応した軽い持ち方となるのに対し、遅く書く場合は、損傷は緩徐ながら持ち方の乱れる状況が認められた。以上のように、脳内に記憶させるための空書き的な「なぞり」の速書き指導における有用性が示唆され、速書き指導のモデル作成につながる具体的な手立てを得ることができた。小・中学校の書写の授業では、書き文字を整えるために、整斉な規範となる文字に照合させて自分の文字の形の乱れに気づかせるなどの自己評価や相互評価を繰り返して改善を図るという教育的アプローチが主に実施されている。しかし昨今では認知心理学的アプローチを取り入れた指導が期待されているため、本研究では日常に生きる書写指導の確立をめざして以下の基礎研究を行った。1.字形損傷要因の分類/字形の乱れが出現する場面状況を確認し、字形の乱れの出現要因を明確にした。2.姿勢と持ち方による書字形の変化に関する検証/書字時の握圧(筆記具を握る圧力)、傾斜角、筆圧の計測から、「持ち方」の分析を行い、望ましい持ち方についての力学的検討を行った。また、人間工学的なアプローチから、手指、腕、肩、その他の力学的な要素と、視覚の要素、教育的な要素などを踏まえ、書写教育の立場での書字動作における最適な姿勢を検討した。3.なぞり学習の字形認識効果の検証/「なぞり書き」と「空書」の効果を明らかにした後、それらを融合したタッチパネル上への指やペンでのなぞり書き(「空なぞり」)の効果を検証した。4.横書き速書きスキルアップトレーニングの開発/横書き速書きにおける平仮名の場合、次の文字へのつながり部分に着目した「字間ストロークの立体的なトレーニング」が重要であるため、タブレット等と連動させたストロークの可視化モデルを作成した。5.実践の試み/研究成果をもとに、多面的・多角的な見方や考え方を重視している中学校において、発展的な学習として横書き速書きスキルアップの実践を試みた。字間ストロークモデルをプロジェクターで提示しホワイトボードに書く「なぞり書き」やiPadへの指筆記による「空なぞり」、3Dテレビによる「動きのイメージ体感」などの機器の活用は、筆記具把持のストレスを除去でき、生徒達の理解を容易にするために有効であった。文献・事例調査については、認知・教育等の多くの研究者と会議を行い、通常筆記における字形損傷にとどまらず、いわゆる学習障害における字形損傷まで幅広く調査を行った。また指導手法開発の検討に関しては実験のパイロットテストを行い、仮説を実証するなど、次年度の準備を行うことができた。ほぼ順調に進捗している。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-23830031
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23830031
日常に生きる書写指導確立のための基礎研究-字形損傷要因の分析を通して-
初年度の調査・パイロットテストをふまえ、字形損傷要因の分類(杉崎2012)を援用して、(1)持ち方、(2)書き方、(3)姿勢、(4)書字障害、(5)その他の視点から分析を行い、静岡・愛知・の研究協力校の児童・生徒を用いて、実態調査・計測を行い、実践に生きる試案までを行う。また、特に横書きの速書きにおける字形損傷の改善を見据えた授業を考察する。(1)の持ち方については、書字時の握圧(筆記具を握る圧力)、傾斜角、筆圧の計測と検討を、(2)書き方については、タブレット等と連動させたストロークの計測と評価、(3)姿勢については、人間工学的なアプローチによる最適な姿勢の検討、(4)書字障害については、特に発達性の場合の現状把握と分析、(5)学習時の書字による疲労について、(1)(2)(3)を統合した考察を行う。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-23830031
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23830031
生殖細胞の発生と分化に特異的発現をする遺伝子の解析
我々は精細胞の分化メカニズムを理解するため、精巣分化時期に特異的発現をする遺伝子を順次クローニングし、その機能について解析を加えることで精子形成過程を解析している。さらに、それらの遺伝子をノックアウトしたマウスを作成し、それらがコードする蛋白質の生体内機能についての解析を行っている。まず、パキテン期精母細胞から初期精子細胞までの精細胞を特異的に認識するモノクローナル抗体(TRA369)を分離した。この抗体を用いてこの分化段階にのみ発現が認められるcalmegin(精細胞分化時期特異抗原)のcDNAを分離し、その特異的発現を制御する遺伝子領域の解析をトランスジェニックマウスを作成することによって行った。さらにこのcalmegin遺伝子を欠損したマウスを作成した。この変異マウスのヘテロ同士の掛け合わせによりホモ欠損マウスを得、その表現型について解析中である。既に、このホモ欠損オスマウスは、見掛け上は正常な精子を形成するにも関わらず不妊であることを確認しており、その詳細についても検討中である。我々は精細胞の分化メカニズムを理解するため、精巣分化時期に特異的発現をする遺伝子を順次クローニングし、その機能について解析を加えることで精子形成過程を解析している。さらに、それらの遺伝子をノックアウトしたマウスを作成し、それらがコードする蛋白質の生体内機能についての解析を行っている。まず、パキテン期精母細胞から初期精子細胞までの精細胞を特異的に認識するモノクローナル抗体(TRA369)を分離した。この抗体を用いてこの分化段階にのみ発現が認められるcalmegin(精細胞分化時期特異抗原)のcDNAを分離し、その特異的発現を制御する遺伝子領域の解析をトランスジェニックマウスを作成することによって行った。さらにこのcalmegin遺伝子を欠損したマウスを作成した。この変異マウスのヘテロ同士の掛け合わせによりホモ欠損マウスを得、その表現型について解析中である。既に、このホモ欠損オスマウスは、見掛け上は正常な精子を形成するにも関わらず不妊であることを確認しており、その詳細についても検討中である。
KAKENHI-PROJECT-07283212
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07283212
安全安心と歩行空間での環境行動に関する研究
本研究では1)国内の自転車道整備先進地域を対象に,歩自分離の状況と安全安心について調査を行い,先進地域においても歩道上の自転車走行が見られ,歩行者の安全安心を阻害しており,その原因は自転車道において十分な走行速度が得られないことにあることが示唆された.2)海外の自転車道整備先進地域における歩自分離と安全・安心について調査を行い,自転車走行の十分な速度が保たれ,歩行者・自転車間の事故が少なく,自転車を用いた犯罪も見られない点を確認した.3)東京近郊の住宅地R地区における犯罪傾向と通行の調査を行い,通行と犯罪に対する安全安心との間に関係があることを示唆した.4)自転車走行者を自転車道へ誘導する際に適切な案内標識のデザインについて,フォトリアリスティックなCG表示を用いて自転車走行時の景観を再現した知覚実験を行い,検討した.本研究では1)国内の自転車道整備先進地域を対象に,歩自分離の状況と安全安心について調査を行い,先進地域においても歩道上の自転車走行が見られ,歩行者の安全安心を阻害しており,その原因は自転車道において十分な走行速度が得られないことにあることが示唆された.2)海外の自転車道整備先進地域における歩自分離と安全・安心について調査を行い,自転車走行の十分な速度が保たれ,歩行者・自転車間の事故が少なく,自転車を用いた犯罪も見られない点を確認した.3)東京近郊の住宅地R地区における犯罪傾向と通行の調査を行い,通行と犯罪に対する安全安心との間に関係があることを示唆した.4)自転車走行者を自転車道へ誘導する際に適切な案内標識のデザインについて,フォトリアリスティックなCG表示を用いて自転車走行時の景観を再現した知覚実験を行い,検討した.日本国内での自転車専用道路の整備はまだ端緒についたばかりであり、国交省で98地区をモデル事業対象地区として選定し整備を進めているところである。本研究ではまずこの98地区を中心に自治体から情報を収集した。その結果、自転車道路を持つ都市住宅地として、歩自分離道路を整備しつつあるA市市街地部分とT市市街地部分、またC市縦断道路沿い部分とをピックアップし、その対照地となる一般の都市住宅地としては、Y市の郊外計画住宅地をサンプルとして抽出した。その上でまず、1)街路ネットワークの形状から推定されるパーミアビリティ(浸透性)関連指標を考案し、GISを用いて表示を行ったところである。また、2)考案した指標と行動との関連を、サンプル地域の歩自分離道路を整備しつつあるA市市街地部分において実地に検証するため、調査対象部分における自転車通行と歩行者の環境行動とを調査・記録した。現在指標と自転車通行ならびに歩行者の環境行動との関連を分析中である。3)サンプル地域における犯罪については、市警察署から該当地区を含む所轄の犯罪記録統計を得ることはできたが、街路との関連を検討できる詳細なデータを所有しておらず、街路のパーミアビリティと犯罪との関連についての調査は難航している。対照地区であるY市計画住宅地については、犯罪発生地点の詳細データを得ることができ、現在パーミアビリティ指標と犯罪件数との関連を分析中である。以上より、歩自分離道路における犯罪状況とパーミアビリティの分析については、犯罪データ収集および分析の剖分を来年度に持ち越すことになった。本年はまず、犯罪発生地点の詳細データが得られた国内事例、すなわちY市計画住宅地について、パーミアビリティ指標と犯罪件数との関連を分析した。その結果、犯罪発生地点は、自動車によるアクセスが容易であるにもかかわらず、歩行者が少なく閑静であるため安心感のある地点、すなわち自動車にとってのパーミアビリティが高く歩行者のパーミアビリティが低い場所に分布していることがわかった。この住宅地では自転車も歩行者と類似した経路をたどるが、様々なカテゴリーの通行者のパーミアビリティを高めるためには、自転車の通行路の設定をするなどの余地があることが示唆された。一方で、自転車の通行を統制する環境を整備した海外の都市について、その整備の実態および、整備と歩行者の安全・安心との関係についてインタビュー調査および現地の主要整備地点の視察を行った。まず、自転車専用レーンの整備を推進し、同一道路内における歩自分離を推進しているデンマーク国コペンハーゲン市の市役所交通計画課自転車政策担当者に対して、コペンハーゲンにおける歩自分離のデザイン概要と計画プロセスおよび事後評価について調査した。その結果、段差を設けた専用レーンによってより明確な分離をはかった結果、自転車は自動車に次ぐスピードを出すことが可能になり、また歩行者の脅威にならなくなったことが指摘された。またコペンハーゲンの自転車政策の特徴として、自転車利用者に対するアンケート調査を毎年遂行し、整備の効果と利用者のニーズを統計的に判断する体制を整えたことが、環境整備の推進に一役買っている点が挙げられた。またコペンハーゲン警察署交通課課長ならびに取り締まり担当者に対するインタビューを行った。その結果、歩自分離の進展と自転車のスピード向上によって、自転車と自動車の交差点における事故が最も大きな安全安心の問題となっており、歩行者と自転車の間に見られる「ひったくり」や「衝突事故」は問題にならないレベルであることがわかった。さらに、自転車の貸し出し事業ヴェリブを積極的に推進し、通常の道路においても自転車の利用を推し進める政策をとっているフランスのパリ市で現地インタビューおよび視察を行った。貸し出し事業では登録者数は順調に増加しているのではあるが、自転車用レーンや駐輪施設の整備が遅れているため、ヴェリブの実際の利用者は限られており、自転車通行量が十分に伸びていない現状が利用者から示唆された。海外事例のインタビュー結果は、自転車専用レーンの整備によって歩行者の安全・安心が変化しうることを示唆している。
KAKENHI-PROJECT-21560632
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21560632
安全安心と歩行空間での環境行動に関する研究
本研究では,歩行空間での安全・安心を左右する犯罪不安および自転車通行について考察を行った.犯罪不安については,主要因の一つと言われる路上犯罪について考察したが,犯罪の認知件数が発生件数に対して少ないとされる点および調査対象地における認知件数が少ない点から,侵入盗についても参照した.人びとの街路での行動について考察する場合には,通常,近隣住民の移動なのか,通過交通なのか,年齢層,性別など通行する人の属性が問われることが多いが,ここでは,通行手段に着目した.特に自転車交通は,近年エコロジーや経済性から注目されつつあり,ヨーロッパでは自転車専用道の整備が進んだ都市居住地域が多く見られる.ここでは、分離された自転車交通も含めて街路の浸透性について考察を進め、街路の浸透性と、当該街路の環境行動や通行との関係を分析し、防犯との関係について考察した。平成21年度には,国土交通省が選定した「自転車通行環境に関するモデル地区」98地区の中から3地区を対象に調査を行い,自転車道の整備状況と,自転車交通の実況を明らかにした.また,街路の浸透性について検討を行った.平成22年度には,歩車自分離型住宅地開発が行われたR地区を選定し,街路の浸透性と犯罪の認知件数を調査し,両者の関係について考察した.また,早くから自転車環境の整備の実績を積んできたヨーロッパの2都市においてインタビュー調査を行い,その整備のプロセスと実態,および通行者の安全・安心について明らかにした.その結果,自転車専用レーンの整備によって歩行者の安全・安心が改善しうることがわかった.平成23年度は,以上を踏まえて,R地区の犯罪分布と街路の浸透性の調査結果についてまとめ,海外発表をめざして翻訳を行うと同時に,R地区における通行調査を追加実施し,犯罪・浸透性と対照する行動データを補足した.また,ヨーロッパの自転車環境先進地域におけるインタビュー調査の結果を整理し,公表した(13.雑誌論文参照).また,結果として自転車専用レーンの利用が重要であったので,専用レーンへの誘導を目指したサインのあり方について,リアリスティックなCG映像による実験を行い,望ましいサイン・デザインの検討を行った(投稿中).
KAKENHI-PROJECT-21560632
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21560632
揺らぐ動的事象の協同的振る舞い
多くの要素からなる系はしばしば集団レベルでコヒーレントな振る舞いを示す。そのような振る舞いは協同現象の例として、物理現象のみならず社会現象にも見ることができる。様々なタイプの協同現象の中で、近年、新しいタイプの動的協同現象がガラス系において見出された。本研究課題では、この現象をガラス系以外のいくつかの系において見出した。また、このような現象を解析するための数理的方法を新たに開発し、その協同現象を特徴づける量を計算した。多くの要素からなる系はしばしば集団レベルでコヒーレントな振る舞いを示す。そのような振る舞いは協同現象の例として、物理現象のみならず社会現象にも見ることができる。様々なタイプの協同現象の中で、近年、新しいタイプの動的協同現象がガラス系において見出された。本研究課題では、この現象をガラス系以外のいくつかの系において見出した。また、このような現象を解析するための数理的方法を新たに開発し、その協同現象を特徴づける量を計算した。(1)ジャミング転移を示すもっとも簡単な模型を考えるために、ランダムグラフ上のKinetic constraint modelを考察した。その骨の部分を与えるk-core percolationの動力学がジャミング転移を示すことを明らかにした。また、その臨界ゆらぎの発散を特徴づける指数を計算にとりかかり、最初の結果を得た。これは、20年度に詳細をつめられるだろう。(2)ランダム磁場中のスピンモデルについて、乱れ誘起転移が「ゆらぐ動的事象の協同現象」と同じカテゴリーに属することを数値実験で見出し、その指数を与えた。(3)興奮素子振動子多体系がサドルノード分岐をして集団振動をはじめる転移現象が「ゆらぐ動的事象の共同現象を同じカテゴリーに属することを見出した。その指数を理論的に計算し、数値実験の結果と一致することを確認した。(1)ランダムグラフ上のk-コアパーコレーションについて、その転移点が1次元力学系のサドルノード分岐点として与えられることを厳密に示した。その知見にもとついて、動的事象のゆらぎを理論的に計算した。この結果は、様々な系の理論的解析のもっとも簡単な例題として位置づけられる。(2)実際、このアイデアに沿って、ランダム磁場下のスピン模型が示す「乱れ誘起転移」を理論的に解析することに成功した。力学系の立場では、縮退したサドルノード分岐として捉えられることが分かった。この方法を「運動論的に制限された模型」に適用する方法も展開中である。(3)さらに、粉体が示すジャミング転移について、その緩和時間の異常性に着目し、その理論的理解を目指している。格子模型の提案および解析を介して、普遍性クラスの同定を行っている。今年度のもっとも大きな成果は、ゆらぐ動的事象の協同現象を示す現象について、厳密に議論できるアイデアを提示したことである。具体的には、ランダムグラフ上で定義されたランダム磁場イジング模型の振る舞いを「直感では全く分からない秩序変数」に対する有限自由度力学系によって厳密に記述することに成功した。その方程式の分岐解析に基づいて、ランダムグラフ上の模型については、ゆらぎに関する統計も含めて全ての臨界指数を決定した。また、結果にもとづいて、空間有限次元系の振る舞いについての大雑把な近似を与えることができる。この系の特徴的な現象である、臨界的雪崩現象についての、第一近似理論が出来たことになる。この結果は、この研究課題の達成点として位置づけられる。昨年度までの成果として位置づけられる「k-coreパーコレーションに付随した動力学」に関する結果も今回の解析からより一般的に導出できるし、動的ゆらぎの解析については昨年度までに培った研究結果にもどつくからである。また、解析の鍵となるアイデアは、模型の詳細に依存しているわけではなく、あるクラスの模型や現象に対しては有効な出発点を与えている。今後はその発展可能性を検討することが必要であろう。この結果は、プレプリント(arXiv : 0912.4790)として公表し、学会にて発表した。
KAKENHI-PROJECT-19540394
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19540394
EC統合と各国労働法の動向
1 EC統合をめぐっては、92年末の欧州市場統合の実現を中心に大きな展開があった。本研究が対象とする社会労働政策の領域でも、89年に欧州理事会で採択された社会憲章の具体化のため、EC委員会が行動計画を策定して精力的に取り組んだ結果、92年末までにはいくつかの規制や指令などが採択された。しかし、従業員代表制や不安定雇用など多くの重要な事項については、未だにその実現を見ていない。このことは、各国の制度的格差や様々な利害関係を反映するみのであり、マーストリヒト条約により、イギリスを切り離した形でのEC社会法形成の可能性が開かれたとはいえ、それによって未解決の問題が急速に展開する情勢にはない。2しかし、EC社会労働政策の各国への影響は、既に多くの分野で各国の具体的な法制度改正として具体化しているほか、たとえば男女雇用平等問題については、相次ぐ欧州裁判の判断により各国の女子労働者保護規定がEC法違反の評価を受け、その見直しが迫られており、また、職場における男女の尊厳の保護に関する91年EC委員会勧告をうけてフランスのセク・ハラ禁止法が制定されるなど、近年の各国の雇用法制の動向の多くは、ECとの関連を抜きにして理解することはできない。さらに93年11月の労働時間に関するEU理事会指令の採択などの新たな動きも見られ、それらを含めた今後の展開にも注目する必要がある。3本年度は本研究の最終年度であり、その主要な目的も以上のようなEC社会労働法の各国への具体的影響の検証とそれらの比較検討に向けられた。特に、男女雇用平等や派遣労働の問題については集中的な報告・検討の機会をもち、その成果の一部は既に公表されている。現在、研究結果の全体の取りまとめを行っているところであり、できるだけ早い時期に共同研究の成果として刊行する予定である。1.平成4年度は本研究の初年度であり、最新の文献・資料等の収集に努めるとともに、当初の研究計画に従い、研究分担者が3班に分かれて(前掲「研究組識」欄を参照)各自の個別的テーマについて研究を進めながら、原則として毎月1回東京において共同研究会を開催し、研究経過の報告と全体の調整を行った。2.本年度の研究と通じて得られた主な知見および今後の研究遂行上の課題としては、次のようなものがある。(1)92年末に予定されたEC市場統合は、デンマークによるマーストリヒト条約批准拒否はあったものの、一応の達成を見た。しかし労働・社会法の分野では、同条約の作成に際してイギリスがローマ条約の社会条項の改正に強く抵抗したため、結局は当初の予定を変更し、イギリスを除く11カ国のみが社会政策に関する議定書及び89年社会憲章の実施に関する合意に達した。これにより、EC社会政策の根拠はローマ条約と11カ国合意の二本立てとなったわけであり、今後のECの労働・社会法の展開にも重大な影響を及ぼすことは確実である。(2)89年11月の、イギリスを除く11カ国の首脳による政治宣言として採択されたEC社会憲章に関しては、EC委員会が47の措置を内容とする行動計画を作成し、91年末までにそのほとんどの措置を決定したが、理事会での審議は停滞し、各国の意見調整が難行したいくつかの措置については、なおその具体的内容が確定していない状態にある。本研究においても、今後さらにその動向をフォローしていくことにしている。(3)本研究の課題であるEC統合の各国労働・社会法に与える影響の問題については、基本的条約などのほか、EC裁判所の判断が重要な役割を果たしており、たとえば男女雇用平等や営業譲渡等に伴う雇用関係の継続の問題などについて、わが国との比較を含めて、今後より総合的な検討を進める必要がある。1 EC統合をめぐっては、92年末の欧州市場統合の実現を中心に大きな展開があった。本研究が対象とする社会労働政策の領域でも、89年に欧州理事会で採択された社会憲章の具体化のため、EC委員会が行動計画を策定して精力的に取り組んだ結果、92年末までにはいくつかの規制や指令などが採択された。しかし、従業員代表制や不安定雇用など多くの重要な事項については、未だにその実現を見ていない。このことは、各国の制度的格差や様々な利害関係を反映するみのであり、マーストリヒト条約により、イギリスを切り離した形でのEC社会法形成の可能性が開かれたとはいえ、それによって未解決の問題が急速に展開する情勢にはない。2しかし、EC社会労働政策の各国への影響は、既に多くの分野で各国の具体的な法制度改正として具体化しているほか、たとえば男女雇用平等問題については、相次ぐ欧州裁判の判断により各国の女子労働者保護規定がEC法違反の評価を受け、その見直しが迫られており、また、職場における男女の尊厳の保護に関する91年EC委員会勧告をうけてフランスのセク・ハラ禁止法が制定されるなど、近年の各国の雇用法制の動向の多くは、ECとの関連を抜きにして理解することはできない。さらに93年11月の労働時間に関するEU理事会指令の採択などの新たな動きも見られ、それらを含めた今後の展開にも注目する必要がある。3本年度は本研究の最終年度であり、その主要な目的も以上のようなEC社会労働法の各国への具体的影響の検証とそれらの比較検討に向けられた。特に、男女雇用平等や派遣労働の問題については集中的な報告・検討の機会をもち、その成果の一部は既に公表されている。現在、研究結果の全体の取りまとめを行っているところであり、できるだけ早い時期に共同研究の成果として刊行する予定である。
KAKENHI-PROJECT-04301064
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自律神経活動、麻酔深度モニターの開発
心血管系パラメータの変動の周波数解析を行うことにより、個々の周波数成分の増減が自律神経活動の指標になることが知られてきた。本研究では心血管系の変動の連続的周波数解析を行うことにより、自律神経活動の実時間モニターの開発、および自律神経活動を指標とした麻酔深度モニターの開発を行った。昨年完成した体動、不整脈等のノイズ除去アルゴリズムを組み込んだ高速で実時間処理可能なシステムを実際に研究に用いた。麻酔深度との関連ではセボフルレン、イソフルレン、フェンタニール、の心拍変動に与える影響をヒトで種々の濃度で各周波数成分にたいする影響を検討し、麻酔深度モニターとしての有用性を明らかにした。成果は日本麻酔学会、雑誌Anesthesiology,循環制御、J Cardiothoracic Vascular Anesthesia等で発表した。自律神経活動との関連では開心術の心拍変動に与える影響を検討し術後1月経過しても自律神経活動の障害されていることをAnesthesiologyに発表した。さらに本年度はRR間隔変化/収縮期圧変化の実時間モニタリング装置を開発し、本法が薬物投与試験のように循環動態を変化させることなく、連続的に麻酔下の患者において測定可能であり、圧受容体反射の感受性を反映していることを臨床モニターに報告した。また、心拍変動と同時に動脈圧変動を測定できるように自律神経・麻酔深度モニターを改良した。イソフルレンの心拍変動、動脈圧変動に対する影響を検討し、心拍変動は麻酔深度とともに減少するが、動脈圧変動は全周波数領域の変化は見られず、高域周波数成分は麻酔深度を深くすると大きくなることを明らかにし、臨床モニター研究会で発表した。心血管系パラメ-タの変動の周波数解析を行うことにより、個々の周波数成分の増減が自律神経活動の指標となることが知られてきた。本研究では心血管系の変動の連続的周波数解析を行うことにより、自律神経活動の実時間モニタ-の開発、および自律神経活動を指標とした麻酔深度モニタ-の開発を行う。従来、心電図RR間隔よりconvolusionを利用し心拍数を求めていたが、計算に時間を要し実時間処理が難しかった。しかし、本年度購入のNECコンピュ-タシステム(信号処理言語:asyst)により実時間処理が可能となった。本装置を用いて、猫およびヒトで吸入麻酔薬(イソフルレン)の心拍変動周波数解析に及ぼす影響と前投薬ミダゾラムの心拍変動周波数解析に及ぼす影響を検討した。これらの結果は日本麻酔学会で報告を予定している。また、体動等によるノイズのため256秒間の周波数解析が不可能になることが多々あったが、新たにノイズ除去アルゴリズムをソフトウエアに組み込み、体動時・不整脈等のノイズ出現時にも解析が可能になったことを臨床モニタ-研究会で報告をした。今後、麻酔モニタ-としての信頼性を確立するため、猫およびヒトで各種麻酔薬・麻酔深度で、心血管情報の各周波数成分の個々の増減に対する影響を検討する必要がある。心血管系パラメ-タの変動の周波数解析を行うことにより、個々の周波数成分の増減が自律神経活動の指標になることが知られてきた。本研究では心血管系の変動の連続的周波数解析を行うことにより、自律神経活動の実時間モニタ-の開発、および自律神経活動を指標とした麻酔深度モニタ-の開発をおこなう。昨年度検討した体動、不整脈等のノイズ除去アルゴリズムを本年度購入の高速処理可能なコンピュ-タ-(clock=33mHz)に組み込みノイズ対策をした、実時間処理可能なシステムを開発した。本装置関しては“Continuous,on line,real time spectral analysis of heartrate variation during anesthesia.Recentadvance in computing anesthesia T.Oyamaedk,Springer-Verlan,Tokyo"で詳細を発表した。麻酔深度との関連ではセボフルレン、イソフルレン、フェンタニル、の心拍変動に与える影響をヒトで種々の濃度で各周波数成分に対する影響を検討し、麻酔深度モニタ-としての有用性を明らかにした。成果は日本麻酔学会、雑誌等に発表予定となっている。自律神経活動との関連では開心術の心拍変動に与える影響を検討し術後1月経過しても自律神経活動の障害が継続することを第19回日本集中治療医学会出発表した。また、食道癌手術後の自律神経活動の変化を米国麻酔学会で報告をした。前投薬としてのミダゾラム、ヂアゼパム、クロニジンの心拍変動に対する影響をヒトで検討し、各前投薬の自律神経活動に及ぼす影響をInternational Anesthesia Research Society Annual Conference等で発表した。筋弛緩薬が心拍変動を減少させることを猫で明らかにし、筋弛緩薬の中枢神経系に抑制的に働く可能性を新な知見としてえた。さらに、脊髄損傷、全脊椎麻酔、意識障害、脳死での心拍変動を検討し報告をした。心血管系パラメータの変動の周波数解析を行うことにより、個々の周波数成分の増減が自律神経活動の指標になることが知られてきた。本研究では心血管系の変動の連続的周波数解析を行うことにより、自律神経活動の実時間モニターの開発、および自律神経活動を指標とした麻酔深度モニターの開発を行った。昨年完成した体動、不整脈等のノイズ除去アルゴリズムを組み込んだ高速で実時間処理可能なシステムを実際に研究に用いた。麻酔深度との関連ではセボフルレン、イソフルレン、フェンタニール、の心拍変動に与える影響をヒトで種々の濃度で各周波数成分にたいする影響を検討し、麻酔深度モニターとしての有用性を明らかにした。成果は日本麻酔学会、雑誌Anesthesiology,循環制御、J Cardiothoracic Vascular Anesthesia等で発表した。
KAKENHI-PROJECT-02557060
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02557060
自律神経活動、麻酔深度モニターの開発
自律神経活動との関連では開心術の心拍変動に与える影響を検討し術後1月経過しても自律神経活動の障害されていることをAnesthesiologyに発表した。さらに本年度はRR間隔変化/収縮期圧変化の実時間モニタリング装置を開発し、本法が薬物投与試験のように循環動態を変化させることなく、連続的に麻酔下の患者において測定可能であり、圧受容体反射の感受性を反映していることを臨床モニターに報告した。また、心拍変動と同時に動脈圧変動を測定できるように自律神経・麻酔深度モニターを改良した。イソフルレンの心拍変動、動脈圧変動に対する影響を検討し、心拍変動は麻酔深度とともに減少するが、動脈圧変動は全周波数領域の変化は見られず、高域周波数成分は麻酔深度を深くすると大きくなることを明らかにし、臨床モニター研究会で発表した。
KAKENHI-PROJECT-02557060
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新規な眼球運動トレーニングによるスポーツ脳情報処理のハイパフォーマンス化
卓球のような視覚依存性の高い球技スポーツでは、選手は素早く正確な視覚情報の取得と脳情報処理を行い、運動動作を行うことが求められ、特に視線行動は取得する視覚情報の内容を決定する重要な要因となる。現在まで、選手らのスポーツ中の視線行動を計測し、視線行動が運動パフォーマンスへ影響している可能性が示唆されてきた。しかし、スポーツ中の視線行動の役割については依然として不明である。また、単発的な視覚運動における視線行動の計測は行われてきているものの、卓球のラリー場面のような連続的な視覚運動での計測はその動作の複雑さ故、行われてきていない。そこで本研究では卓球のラリー場面を模倣した心理物理実験課題を構築・実施し、連続視覚運動における運動制御特性と視線行動の特性とパフォーマンスに果たす役割について明らかにすることを目的とし、実験を行った。PC画面上を高速で移動するガボール刺激(ターゲット)に指の把持力のみで操作するカーソルをヒットさせる連続視覚運動課題を構築・実施した。課題中の身体運動と眼球運動計測を同時に行うことで、連続視覚運動における視線行動の特性と運動パフォーマンスに対する役割について検討した。その結果、ターゲットに対する急速なアプローチ運動がカーソル(身体運動)・視線行動の両者において観察された。さらに、視線行動は身体運動に先立ってターゲットに対してアプローチをする特性が観察され、そしてその先行する視線行動の精度が運動パフォーマンスの良否へ関与していることを示唆する結果を得た。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。卓球のような視覚依存性の高い球技スポーツでは、選手は素早く正確な視覚情報の取得と脳情報処理を行い、運動動作を行うことが求められ、特に視線行動は取得する視覚情報の内容を決定する重要な要因となる。現在まで、選手らのスポーツ中の視線行動を計測し、視線行動が運動パフォーマンスへ影響している可能性が示唆されてきた。しかし、スポーツ中の視線行動の役割については依然として不明である。また、単発的な視覚運動における視線行動の計測は行われてきているものの、卓球のラリー場面のような連続的な視覚運動での計測はその動作の複雑さ故、行われてきていない。そこで本研究では卓球のラリー場面を模倣した心理物理実験課題を構築・実施し、連続視覚運動における運動制御特性と視線行動の特性とパフォーマンスに果たす役割について明らかにすることを目的とし、実験を行った。PC画面上を高速で移動するガボール刺激(ターゲット)に指の把持力のみで操作するカーソルをヒットさせる連続視覚運動課題を構築・実施した。課題中の身体運動と眼球運動計測を同時に行うことで、連続視覚運動における視線行動の特性と運動パフォーマンスに対する役割について検討した。その結果、ターゲットに対する急速なアプローチ運動がカーソル(身体運動)・視線行動の両者において観察された。さらに、視線行動は身体運動に先立ってターゲットに対してアプローチをする特性が観察され、そしてその先行する視線行動の精度が運動パフォーマンスの良否へ関与していることを示唆する結果を得た。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-17J08456
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J08456
スキルス・ラボの海外交流プログラムによる国際感覚育成に関する研究
海外留学生と医療系学部学生が合同で、スキルスラボでシミュレータを用いて基本的心肺蘇生を英語で受講後に急変患者の心肺蘇生実習とビデオフィードバックを行った。また、医学科5年生に外国人留学生が英語テキストを用いて、英語で縫合実習を行い、実習評価、アンケート調査を施行した。実習後アンケートでは、チーム連携、コミュニケーションの重要性を再認識し、今後の英語学習も積極的に行いたい、などポジティブな意見が大半を占めた。また縫合実習では上級医の評価は、平均90.6点(100点満点)と高評価で高い理解度を示した。【目的】海外からの留学生と合同で、英語を用いて行う職種連携型のシミュレーション教育プログラムを開発し、そのプログラムが国際的に通用するShow howDoesのレベルのノンテクニカルスキルの修得に有効であることを検討する。【対象・方法】<検討1.救急救命処置を中心とした医療シミュレーション実習>クリニカルクラークシップで消化器・移植外科を実習中の医学部生5名、フィンランド人留学生(本学保健学科看護学専攻との交換留学生)1名、看護学生5名で病棟手洗い、採血、BLS実習をスキルス・ラボでシミュレータを用いて施行した。シミュレータとAEDを用いてAHAガイドライン2010に基づいたBLSの手技を英語で解説し各パートのタスクトレーニングを行ったのち、「ナースステーションで心電図モニターがAFを示し、病室に駆けつけると心肺停止状態を発見した」という状況設定に学習者を投入して医師が到着するまでのBLSの流れを別室でシミュレーションし、他者はカメラを通して見学、後にビデオフィードバックを行った。<検討2.縫合実習>クリニカルクラークシップ(消化器・移植外科)実習中の医学部生(5名)を対象に消化器・移植外科の外国人留学生が指導者となり縫合方法の英語テキストを用いて、英語で外科基本縫合実習を行った。【結果】<検討1.>平成26年11月12日に合同実習を施行した。実習後アンケートでは、英語での表現方法が理解できた、実際の臨床現場を想定したシミュレーションを英語で行うことで、チームとしてより一層コミュニケーションがとれた、他学部学生と合同実習できたことはよかった、などポジティブな意見が大半を占めた。<検討2.>平成26年度は縫合実習を20回施行、98名が受講した。留学生による英語での説明であったが、上級医による縫合の手技、仕上がりの評価では、平均85.7点(100点満点)と好評価であった。【目的】海外からの留学生と合同で、英語の職種連携型シミュレーション教育プログラムを開発し、国際的に通用するShow howDoesのレベルのノンテクニカルスキルの修得に有効であることを検討する。【対象・方法】<検討1.救急救命処置医療シミュレーション実習>クリニカルクラークシップ(消化器・移植外科)学生5名、モンゴル人留学生(本学総合科学部との交換留学生)5名がスキルス・ラボでシミュレータとAEDを用いてAHAガイドライン2010に基づいたBLSの手技を英語で解説し、タスクトレーニングののち、「ナースステーションで心電図モニターがAFを示し、病室に駆けつけると心肺停止状態を発見した」という状況設定で、別室の模擬病室に学習者3名を投入して医師が到着するまでのBLSの流れをシミュレーションし、後にビデオフィードバックを行い、チーム連携、コミュニケーションの必要性などを検討した。<検討2.縫合実習>クリニカルクラークシップ(消化器・移植外科)実習中の医学部生(1グループ6名、18グループ)を対象に消化器・移植外科の外国人留学生が指導者となり縫合方法の英語テキストを用いて、英語で外科基本縫合実習を行った。【結果】<検討1.>平成27年2月6日に合同実習を施行した。実習後アンケートでは、英語での表現方法が理解できた、実際の臨床現場を想定したシミュレーションを英語で行うことで、より一層コミュニケーションの重要性が認識できた、今後の英語学習も積極的に行いたい、などポジティブな意見が大半を占めた。<検討2.>平成27年度は縫合実習を18回施行、108名が受講した。留学生による英語での説明のみであったが、上級医による縫合の手技、仕上がりの評価では、平均86.6点(100点満点)と高評価であった。実習後アンケートでは英語説明も理解可能であった、集中できたなどポジティブな意見が多かった。平成26年度に計画した救急救命処置と縫合実習における英語での実習および、外国人留学生、他学部生との合同実習を開催し、アンケートや上級医による手技評価を行うことで実習評価を行った。また、本実習を定期開催することとなった点で、達成度はおおむね順調に進展している。平成27年度は当初の予定通り、BLS合同実習と縫合実習における英語実習を定期的に行った。平成28年度は研究分担者の矢田と協力してOSCE受験前の医療系学部のボランティア学生を対象にUSMLE Step2 CSを意識したOSCEの実習と講義、解説を英語で行い、英語版OSCEの開発を目指す。【目的】海外からの留学生と合同で、英語の職種連携型シミュレーション教育プログラムを開発し、国際的に通用するShow howDoesのレベルのノンテクニカルスキルの修得に有効であることを検討する。【対象・方法】<検討1.救急救命処置医療シミュレーション実習>クリニカルクラークシップ(消化器・移植外科)学生5名、モンゴル人留学生(本学総合科学部との交換留学生)
KAKENHI-PROJECT-26460603
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26460603
スキルス・ラボの海外交流プログラムによる国際感覚育成に関する研究
5名がスキルス・ラボでシミュレータとAEDを用いてAHAガイドライン2015に基づいたBLSの手技を英語で解説し、タスクトレーニングののち、「ナースステーションで心電図モニターがAFを示し、病室に駆けつけると心肺停止状態を発見した」という状況設定で、別室の模擬病室に学習者3名を投入して医師が到着するまでのBLSの流れをシミュレーションし、後にビデオフィードバックを行い、チーム連携、コミュニケーションの必要性などを検討した。<検討2.縫合実習>クリニカルクラークシップ(消化器・移植外科)実習中の医学部生(1グループ56名、18グループ)を対象に消化器・移植外科の外国人留学生が指導者となり縫合方法の英語テキストを用いて、英語で外科基本縫合実習を行った。【結果】<検討1.>平成28年2月7日に合同実習を施行した。実習後アンケートでは、英語での表現方法が理解できた、実際の臨床現場を想定したシミュレーションを英語で行うことで、より一層コミュニケーションの重要性が認識できた、今後の英語学習も積極的に行いたい、などポジティブな意見が大半を占めた。<検討2.>平成28年度は縫合実習を17回施行、105名が受講した。留学生による英語での説明のみであったが、上級医による縫合の手技、仕上がりの評価では、平均90.6点(100点満点)と高評価であった。実習後アンケートでは英語説明も理解可能であった、集中できたなどポジティブな意見が多かった。海外留学生と医療系学部学生が合同で、スキルスラボでシミュレータを用いて基本的心肺蘇生を英語で受講後に急変患者の心肺蘇生実習とビデオフィードバックを行った。また、医学科5年生に外国人留学生が英語テキストを用いて、英語で縫合実習を行い、実習評価、アンケート調査を施行した。実習後アンケートでは、チーム連携、コミュニケーションの重要性を再認識し、今後の英語学習も積極的に行いたい、などポジティブな意見が大半を占めた。また縫合実習では上級医の評価は、平均90.6点(100点満点)と高評価で高い理解度を示した。平成26年度に計画した救急救命処置と縫合実習における英語での実習および、外国人留学生、他学部生との合同実習を開催し、アンケートや上級医による手技評価を行うことで実習評価を行った。また、本実習を定期開催することとなった点で、達成度はおおむね順調に進展している。平成27年度は当初の予定通り、BLS合同実習と縫合実習における英語実習を定期的に行うとともに、研究分担者の矢田と協力してOSCE受験前の医療系学部のボランティア学生を対象にUSMLE Step2 CSを意識したOSCEの実習と講義、解説を英語で行い、英語版OSCEの開発を目指す。研究代表者が所属する徳島大学教養教育院(仮称)設置準備室には医学・歯学・薬学・栄養学・保健学に跨がる多職種医療人の養成を担う教育・研究機関があり、学生および、留学生の動員は容易で、さらに基本的手技から高度な手技をトレーニングできるシミュレータは完備されており、本研究を行うにあたって設備は整っている。
KAKENHI-PROJECT-26460603
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26460603
自然癌化モデルを用いた癌化に関与する特異的な代謝機構の解明と治療標的の探索
マウス胎仔の初代培養線維芽細胞(MEFs)を用い、(1)細胞の自然老化→自然癌化(不死化)モデルの樹立、(2)老化あるいは癌化(不死化)した細胞に特徴的な代謝産物の探索、を行い、それら細胞老化・癌化に特徴的な代謝産物の増減パターンのvalidationを行い、細胞老化・細胞癌化に実際に関与した代謝酵素反応を絞り込み、それらの代謝酵素の(a)過剰発現細胞株、(b)発現ノックダウン細胞株、(c)遺伝子破壊細胞株を樹立、(a)と(b)については、薬剤(テトラサイクリン)によって代謝酵素の発現をコントロール出来るシステム、すなわち、細胞の老化や癌化をコントロールできるシステムを樹立中である。細胞が老化して癌化していく過程における代謝の変動に注目して、老化と癌化の原因となる代謝の異常を掌握するプロジェクトである。初年度は、先ずは自然癌化モデルの作製を行った。マウス胎仔線維芽細胞(MEFs)の初代培養3T3継代モデルを用い、3日おきに8.25 x 10^5 cells/p100 dishの細胞密度を維持しながら、増殖期→増殖停止→老化→不死化するまで継代を続けた。細胞の性別が代謝に及ぼす影響を回避するため、本研究には雄の胎児由来のMEFsのみを使用した。その結果、8クローンのMEFsの不死化株の樹立に成功し、その全てのクローンに対して、算出したpopulation doubling timeによる細胞の増殖スピードの評価、SAβGアッセイによる細胞老化の評価、FACSによる細胞周期解析と倍数体以上の確認、などを行った。また、細胞の不死化の過程で、Phase 1(増殖期)、Phase 2(増殖期の細胞を接触阻害により細胞周期を停止させたもの)、Phase 3(老化により増殖が停止した時期)、Phase 4(不死化して再度増殖し始めた時期)のそれぞれのPhaseにおいて、安定同位体13Cで標識したグルコースを細胞に取り込ませ、その13C-グルコース由来の代謝産物の定量を行った。初年度には細胞の老化→自然癌化モデルを作製した。本年度は、増殖期(Phase I)、増殖期の正常細胞を接触阻害によってG0期に静止させたもの(Phase II)、老化期(Phase III)癌化後(Phase IV)につき、樹立した細胞株全てに於いてそれぞれ安定同位体13Cで標識したグルコースを投与し、13Cを含む代謝産物の網羅的定量解析を行った。その結果、老化細胞特異的、癌か細胞特異的に上昇している代謝産物や代謝経路を同定することが出来た。当初の予定通り進行している。前年度までに、マウス胎仔の初代培養線維芽細胞(MEFs)を用い、(1)細胞の自然老化→自然癌化(不死化)モデルの樹立、および、(2)老化あるいは癌化(不死化)した細胞に特徴的な代謝産物の探索、を完了し、当初のロードマップ通りにプロジェクトを進行させることが出来た。最終年度は、それら細胞老化・癌化に特徴的な代謝産物の増減パターンのvalidationを行い、細胞老化・細胞癌化に実際に関与した代謝酵素反応を絞り込み、それらの代謝酵素の(a)過剰発現細胞株、(b)発現ノックダウン細胞株、(c)遺伝子破壊細胞株を樹立することで、細胞老化・細胞癌化を誘導することが出来る代謝パスウェイを複数同定した。また、(a)と(b)については、薬剤(テトラサイクリン)によって代謝酵素の発現をコントロール出来るシステム、すなわち、細胞の老化や癌化をコントロールできるシステムを樹立中である。さらに、現所属先で既に樹立されていたヒトの正常線維芽細胞の細胞老化システムを用いて、マウスの胎仔の細胞を老化・癌化へと導くシステムが、ヒトの成体由来の細胞の老化・癌化をも同様にコントロールできることを確認中である。また、研究遂行中に、細胞老化・癌化に密接な関与があると思われた代謝パターンは、細胞の老化・癌化に関係無く、dishに播いた細胞の密度によっても全く異なるといった、予想外かつ興味深い、かつ要注意な知見をも得ることが出来た。マウス胎仔の初代培養線維芽細胞(MEFs)を用い、(1)細胞の自然老化→自然癌化(不死化)モデルの樹立、(2)老化あるいは癌化(不死化)した細胞に特徴的な代謝産物の探索、を行い、それら細胞老化・癌化に特徴的な代謝産物の増減パターンのvalidationを行い、細胞老化・細胞癌化に実際に関与した代謝酵素反応を絞り込み、それらの代謝酵素の(a)過剰発現細胞株、(b)発現ノックダウン細胞株、(c)遺伝子破壊細胞株を樹立、(a)と(b)については、薬剤(テトラサイクリン)によって代謝酵素の発現をコントロール出来るシステム、すなわち、細胞の老化や癌化をコントロールできるシステムを樹立中である。当初の予定通り進行している。最終年度は同定した代謝経路を人為的に操作した細胞株で老化や癌化の誘導や回避が出来るかどうかを検証する。細胞内エネルギー代謝予定通り、2年次は予定通り代謝産物解析と、その解析結果から、老化・癌化の過程における異常を来した代謝経路の同定を試みる。
KAKENHI-PROJECT-26670163
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26670163
コーチングに基づく機械系の行動学習支援および個人適応制御
本年度の研究実施状況として,自閉症スペクトラム障害を持つ児童のための療育支援ロボットに関する研究に取り組み,愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所と共同で長期に渡る実地実験を行った.それにより,自閉症児の社会性向上やコミュニケーションスキルの学習支援の実現性に関する興味深い結果が得られ,その結果を自閉症スペクトラム学会, Neuro2013およびIEEE International Conference onHuman-Robot Interaction 2014にて発表するとともに,それらをまとめたものを発達心理学系の権威ある雑誌であるJoumal of Autism and Developmental Disordersに投稿した. Neuro2013では共同研究者の論文が報道機関へのプレスリリースに選ばれ, 2013年6月21日付けの中日新聞の1面に掲載された.また,前年度に実施した駐車運転技量育成システムに関する研究成果をIEEE Transactions on Hapticsに投稿し採択されるとともに,計測自動制御学会論文集に掲載された論文が計測自動制御学会システム・情報部門技術賞を受賞した.(抄録なし)本年度の研究実績として,まず駐車運転技量育成のための運転支援システムについて,被験者実験で取得したデータの解析を行い提案手法による運転技量への影響を定量的に評価を行った.その結果,提案手法による運転支援を行った被験者群の駐車成績が,支援を行わなかった被験者群に比べて統計的に有意に向上したことから,提案手法による人の運転技量育成の意義とその可能性を示すことが出来た,また,2012年5月に米国で開催されたIEEE Interanational Conference on Robotics and Automationsや9月に札幌で行われた日本ロボット学会学術講演会において研究成果を発表し,自動車技術会学術研究講演会ではベストペーパー賞を獲得した.さらに,本プロジェクトの全体を通して得られた知見を論文としてまとめたものを計測自動制御学会論文誌へ投稿し採録が決定している他,IEEE Transactions on Hapticsへの投稿の準備も進めている.また,生体信号を用いたロボットの行動学習に関して,米国カリフォルニア州にあるNASAジェット推進研究所への短期インターンシップを行い,生体信号を用いたロボットの遠隔操作に関する小規模なプロジェクトを遂行し,重要な知見と経験を得た.発達障がい児のための療育支援ロボットプロジェクトに関しては,愛知県コロニー発達障害研究所の研究者とともに自閉症児を対象としたロボット介在活動を予備実験として複数回に渡って継続的に実施し,今後の研究方針についての考察を深めるとともに,実験を通して得られたロボット介在活動中の発達障がい児の社会的行動に関する知見等を,東京で行われた国際会議Human Robot Interaction 2013において発表を行った.本年度の研究実施状況として,自閉症スペクトラム障害を持つ児童のための療育支援ロボットに関する研究に取り組み,愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所と共同で長期に渡る実地実験を行った.それにより,自閉症児の社会性向上やコミュニケーションスキルの学習支援の実現性に関する興味深い結果が得られ,その結果を自閉症スペクトラム学会, Neuro2013およびIEEE International Conference onHuman-Robot Interaction 2014にて発表するとともに,それらをまとめたものを発達心理学系の権威ある雑誌であるJoumal of Autism and Developmental Disordersに投稿した. Neuro2013では共同研究者の論文が報道機関へのプレスリリースに選ばれ, 2013年6月21日付けの中日新聞の1面に掲載された.また,前年度に実施した駐車運転技量育成システムに関する研究成果をIEEE Transactions on Hapticsに投稿し採択されるとともに,計測自動制御学会論文集に掲載された論文が計測自動制御学会システム・情報部門技術賞を受賞した.まず,対外発表に関しては当初予定していた学会及び学術論文誌による発表を行い,ベストペーパー賞を受賞する等一定の評価を得ることが出来た.また,ジェット推進研究所へのインターンシップにも予定通り参加し,現地の研究者との議論や小規模なプロジェクトを通して目的を達成出来たと考える.また,療育支援ロボットについても発達障がい児を対象としたロボット介在活動を複数回継続的に実施し,その計測データをまとめた内容を国際会議等で発表するなど,おおむね当初計画した通りに進展していると考える.今後の推進方策として,まず療育支援ロボットに関して新たに養護学校に協力を要請し,提案手法の有効性を検証する為の総括的な実験を実施する環境を整える予定である.その際,生体電位信号に基づく表情計測や社会的インタラクションの定量的計測によって,情動や社会的交流に基づくロボットのコーチング技術に関する研究を行っていく予定である.その後,実験の成果について対外的に発表を行うことと並行して学位論文の執筆作業を行うとともに,特別研究員としての研究活動に関する最終的な報告を行うつもりである.(抄録なし)
KAKENHI-PROJECT-12J02539
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J02539
家族形成過程における家族機能に影響する要因の概念モデル構築
「形成期家族の家族機能に影響する因子の概念モデル」の基盤となる案について、以下の3つの方略を用いて作成した。(1)研究代表者の本研究に関連する先行研究:2002.5-2003.1までに、101組の形成期家族・初めての子どもを迎える夫婦に対して、妊娠末期・産後2ヶ月の時点での睡眠-生活リズムの縦断調査の結果で得られたデータから、本研究・概念モデルの基盤となる理論的論文を作成し出版した。(2)文献検索:「家族機能」「生活リズム」をキーワードにして、国内外の文献検索を実施した。(3)質的データ収集からの概念の抽出:関西方面の育児サークルにおいてリクルートを行い、6名の乳児を育てている女性から、「子どもと暮らす生活にリズムが噛み合うということ」について、インタビューを行った。また、開業助産師・市町村保健師、各1名からインフォーマルに、「子どもと暮らす生活にリズムが噛み合っている家族・そうでなく気になる家族」について聞き取りを実施した。以上から、調査用紙の素案を作成し、Family Assessment Device(FAD)・SF8については、尺度開発者に連絡を取り、使用許可を得た。短縮版日常生活リズム尺度については、本研究における使用の妥当性を検討中である。平成19年度は、新しく関西方面に研究分担者を加え、データ収集を開始する予定である。1.東京大学の医学部研究倫理審査委員会において、承認を得られた。(受付番号2122)2.関西の助産院と産科単科病院にてプレテストの後データ収集を開始した。主に6-8月に妊娠期の調査用紙を上記の施設が開催している出産準備教室に赴いて、趣旨を説明し、対象者をリクルートした。その中で、一部出産予定日が6月のご夫婦は、産後2ヶ月の調査用紙を郵送した。(関西の2施設は研究倫理審査委員会がないため本学に依頼書を提出した)3.都立病院において研究倫理審査委員会の審査を受け、共同研究者である職員の連絡先を記載するなど若干調査用紙に修正を加えるように指摘された。(9月からデータ収集を行う予定)4.7-8月にはデータ入力と同時に、関連する文献の収集も行った。新しい家族成員を迎える家族の家族機能に影響する要因を縦断的デザイン(妊娠末期・産後2ヵ月・産後6ヵ月)で、家族機能尺度(FAD)を用いて探求し、個々の成員と一単位の家族双方にとって実践に提供が可能な妊娠末期から産後6ヵ月にかけての「家族形成過程における家族機能に影響する要因の概念モデル」を構築した.関西・関東にある3か所の施設の両親学級においてリクルートされ、計3回のデータ収集に有効回答であった78組のカップルを対象とし、記述統計・repeated measuredANOVA(初経別を調整)により、以下の項目を分析した.1.妊娠末期から産後6ヵ月の健康な形成期家族において、家族機能に影響する要因とは、「日常生活リズム」「職業上のストレス」「暮らしむき」「育児についてのソーシャルサポート」であった.2.【妊娠末期】【産後2ヵ月】【産後6ヵ月】のうち・家族機能は、【産後2ヵ月】が他の2時期よりも低くなった。3.家族機能に影響する要因は、【妊娠末期】には、「日常生活リズム」「職業上のストレス」であったが、【産後2ヵ月】および【産後6ヵ月】には、「日常生活リズム」「育児についてのソーシャルサポート」と変化した.4.2.における夫婦間の性差は、【産後2ヵ月】の起床・就寝時刻についての日常生活リズムについて、女性のみ家族機能に影響する要因であった.
KAKENHI-PROJECT-18592344
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18592344