title
stringlengths
0
199
text
stringlengths
3
3.18k
id
stringlengths
23
32
url
stringlengths
56
65
放射線肺臓炎の新規予防法開発を目指した基礎研究
右肺スピロノラクトン90日徐放200mgペレットをメスWistarラットの左背部皮下に留置し、X線15Gy単回照射して13週後の肺の状態を病理学的に検討した。32匹を4群に分け、A群は照射1週間前、B群は照射1週間後、C群は照射1か月後にスピロノラクトンの留置術を行い、残る1群はコントロールとしてX線照射のみ行った。ラット肺の線維化を03の4段階で評価した。右肺はA群がコントロール群と比較して線維化スコアが有意に低かった。右肺のB群・C群とコントロールの間および、左肺の各郡間には線維化スコアの有意差はなかった。以上より、照射前のスピロノラクトン投与はX線照射後の肺線維化を有意に抑制した。本研究では、スピロノラクトンを投与したラットの肺に放射線を照射する実験によって、スピロノラクトンの放射線肺臓炎予防効果を確かめる。平成23年度に行った予備実験では、200mg/90daysを投与したラットでは薬剤料が少ないラットと比較して、肺線維化およびマクロファージ浸潤の左右差が明らかに少なく、十分量のスピロノラクトン投与は放射線照射後の肺の炎症誘発を抑制する効果があると考えられた。平成24年度は、この予備実験に基づいて決定した200mg/90daysのスピロノラクトン投与量に従って、スピロノラクトンの投与時期による肺の組織学的変化を比較する実験を行った。Wister系ラット(オス、平均300g)の皮下にスピロノラクトンの徐放性ペレット(Innovative Research of America社製、200mg/90days、各群6-7匹)を埋め込み、その1週間前・1週間後・1か月後にラットの右肺に放射線を15Gy照射した。コントロールとして、薬剤の埋め込みを行っていないラットにも、同様に右肺に15Gy照射した。照射後3カ月の時点で開胸し、生理食塩水・中性緩衝ホルマリンで潅流固定して病理標本を作成した。病理所見(ヘマトキシリン・エオジン染色、アザン・マロリー染色)により肺線維症に係わる項目としてマクロファージ浸潤と線維化の程度を組織学的に評価し、グレード分類を今後行ってゆく予定である。アルドステロンは鉱質コルチコイド受容体に結合して炎症誘発性サイトカインを放出し、これによって誘導されるTGF-βが放射線肺臓炎発症の重要な因子となる。スピロノラクトンによる鉱質コルチコイド受容体阻害により、平成23年度に行った予備実験では放射線肺臓炎の予防効果が実験的に示された。平成24年度に行った動物実験でも、平成25年度に行う予定の解析により同様の効果が示されることが期待される。放射線肺臓炎は胸部放射線治療で生じる重篤な有害事象である。喫煙歴や正常肺線量(mean lung doseやV20)など、放射線肺臓炎発症リスクを評価する方法については多くの研究がなされているが、放射線治療計画に際して肺線量を下げる努力をする以外に、肺臓炎の発症予防に確立した方法はない。本研究ではレニンーアンギオテンシンーアルドステロン系の抑制による放射線肺臓炎の予防効果を確かめる。アンギオテンシンII変換酵素阻害剤を用いたレニンーアンギオテンシン系の経路遮断により、ラットの放射線肺臓炎が軽減できると過去に報告されている。しかし、この実験系で投与された体重あたりのカプトプリル量は人間の通常使用量の10倍以上で、臨床的には応用不可能なシステムと言わざるを得ない。また、レニンーアンギオテンシン系の阻害だけでは、ネガティブフィードバックにより数週程度で血漿アルドステロン濃度は抑制されなくなってしまうアルドステロンエスケープ現象が起きることが知られており、臨床的実用性を考えると、この炎症誘発カスケードの下流を阻害するのが適切かつ有効と考えられる。従って、鉱質コルチコイド受容体へのアルドステロン結合を阻害するスピロノラクトンを用いてこの炎症誘発カスケードを阻害して、放射線肺臓炎の予防効果を実験的に確かめるのが本研究の目的である。まず予備実験として、スピロノラクトン投与量の異なるラット肺照射実験を行って、肺障害予防のためのスピロノラクトン至適投与量を決定した。この至適投与量で、放射線照射とスピロノラクトン投与とのタイミングによる効果の違いを確かめるラット肺照射実験を行った。この結果、照射以前から継続的にスピロノラクトンが投与されている場合に、放射線肺障害の発現はスピロノラクトン非存在下と比較して有意に軽減されることが示された。右肺スピロノラクトン90日徐放200mgペレットをメスWistarラットの左背部皮下に留置し、X線15Gy単回照射して13週後の肺の状態を病理学的に検討した。32匹を4群に分け、A群は照射1週間前、B群は照射1週間後、C群は照射1か月後にスピロノラクトンの留置術を行い、残る1群はコントロールとしてX線照射のみ行った。ラット肺の線維化を03の4段階で評価した。右肺はA群がコントロール群と比較して線維化スコアが有意に低かった。右肺のB群・C群とコントロールの間および、左肺の各郡間には線維化スコアの有意差はなかった。以上より、照射前のスピロノラクトン投与はX線照射後の肺線維化を有意に抑制した。本研究では、スピロノラクトンを投与したラットの肺に放射線を照射する実験によって、スピロノラクトンの放射線肺臓炎予防効果を確かめる。
KAKENHI-PROJECT-23591835
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23591835
放射線肺臓炎の新規予防法開発を目指した基礎研究
平成23年度は、スピロノラクトン投与量の異なるラットを用いて予備実験を行い、組織学的変化の比較を行った。Wister系ラット(オス、平均300g)の皮下にスピロノラクトンの徐放性ペレット(Innovative Research of America社製、50mg/90days, 100mg/90days, 200mg/90daysの3群、各群6-7匹)を埋め込み、その1週間後にラットの右肺に放射線を12Gy照射した。コントロールとして、薬剤の埋め込みを行っていないラットにも、同様に右肺に12Gy照射した。照射後3カ月の時点で開胸し、生理食塩水・中性緩衝ホルマリンで潅流固定して病理標本を作成した。病理所見(ヘマトキシリン・エオジン染色、アザン・マロリー染色)により肺線維症に係わる項目としてマクロファージ浸潤と線維化の程度を組織学的に評価し、グレード分類を行った。200mg/90daysのラットでは、肺線維化およびマクロファージ浸潤の左右差が明らかに少なく、十分量のスピロノラクトン投与は放射線照射後の肺の炎症誘発を抑制する効果があると考えられた。アルドステロンは鉱質コルチコイド受容体に結合して炎症誘発性サイトカインを放出するとされており、これによって誘導されるTGF-βが放射線肺臓炎発症の重要な因子となる。鉱質コルチコイド受容体へのアルドステロン結合を阻害するスピロノラクトンを用いてこの炎症誘発カスケードを阻害したことにより、放射線肺臓炎の予防効果が実験的に示されているものと考えられる。平成23年度には、予備実験の開始直前に東日本大震災が発生し、これに伴う学内での節電対応のために当初予定していた施設・装置の使用が制限され実験の開始が遅れたものの、最終的には当初予定していた病理組織の評価まで平成23年度内にたどり着くことが可能であった。また、病理組織評価によっても、最大容量投与群で線維化・泡沫マクロファージ浸潤の程度が軽減されていると判断できており、薬剤の効果がある程度示されていると判断され、おおむね順調に進展した。平成24年度に行った本実験では、基礎実験という位置づけになる平成23年度に行った内容とほぼ同じ実験であり、予定外の大きなトラブルは発生せず、実験そのものは順調に進展した。ただし、当初は平成24年度中に病理学的評価を下し、線維化・泡沫マクロファージ浸潤の程度を評価する予定であったが、このステップに十分な時間が割けないまま平成24年度が終了してしまった。この点を考慮すると、当初予定していた段階まで到達しておらず本研究の現時点での評価としては、「やや遅れている」ということになる。平成25年度には、線維化・泡沫マクロファージ浸潤の程度を評価を行い、研究成果をまとめて学会発表や論文発表を行う予定である。本研究は当初、学内動物実験施設と同施設内に設置されている放射線照射装置を用いて遂行する予定であった。しかし、本研究の開始直前に東日本大震災が発生し、これに伴う学内での節電対応のためにこれらの施設・装置の使用が制限されることとなってしまい、予定していた施設での実験遂行が不可能となり、当初の予定が狂った。しかしその後、動物飼育および放射線照射について両者とも、学内の別の施設の協力を得て実験が行えることになった。その結果、実験の開始が当初の予定よりも約2カ月遅れることにはなったが、実験開始以降には大きなトラブル等はなく順調に研究を進めることが可能であり、最終的には当初予定していた病理組織の評価まで年度内にたどり着くことが可能であった。
KAKENHI-PROJECT-23591835
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23591835
生体信号とラッセルモデルによる感情推定とロボットへの適用
2018年度は,生体信号を用いた感情推定手法を応用した研究に数多く挑戦した.感情を考慮する声がけロボットの提案は学会等で高く評価され,研究会で2件受賞した.本提案はリハビリ実施者の歩行時に誘導型のロボットが実施者の脳波・心拍の値から,感情をリアルタイムに推定し,その感情に応じた声がけをするものである.また,介護ロボットの恐怖感を評価した研究(Affect Evaluation of Biological Information Approached by a Nursing/care Robot)は,国際学会にてBest Paper Awardを受賞した.本研究は,先行研究で結果が出た加速減速型と直進型を本提案手法による評価で比較したもので,従来わかりづらかった人のロボットへのリアルタイムに変化する感情をセンサ値で評価したことが評価された.その他,ロボットが位置調整を行うパーソナルスペースを考慮したロボット, EQ(Emotional Quotient)による主観結果のフィルタリング手法の提案,レコメンドシステム,運転システムへの応用,仮想化エージェントへの応用など,本研究に関する数多くの提案を行なった.その結果,国内学会21件,国際学会9本(うち受賞4件)の成果があった.JST科研費NEWSに掲載された.3月には, IEEEの国際学会付属のWorkshopにて基調講演者としてEmotion Aware Robot by Emotion Estimation using Biological Sensorsの講演を行なった.講演を機としドイツのKassel大学との共同研究を開始した,生体計測による感情推定技術の共同調査を開始した.また,特許の出願などの成果,共同研究も複数件実施し,より具体的な要件を元にした応用研究などを推進することができた.本手法は,簡易脳波計と心拍のRRIを取得する脈拍の二つの値を,ラッセルの二次元座標に対応づけ感情分類を行い,成果を得て来た.当初より応用を目的とし,心拍値はリアルタイム性が高い時間領域解析のRR間隔変動の差異を解析するPNN50を利用してきた.しかし,基礎研究,心拍変動性スペクトル解析(LF/HF)の解析方法との比較優位十分明らかになっていないことから,2018年度は基礎的な調査を行い,2019年度で実施する実験システムの設計開発を進めた.また,生体指標の解析を中心とした評価に加えて,心理学,Affective Computing,実際のロボットで実現するためのロボット工学や,リアルタイムにデータを解析するための情報基盤技術などの基礎的な調査や研究開発も並行して行い,情報基盤技術については,複数台からリアルタイムに生体情報を取得するための基礎となるシステム開発を行なった.生体計測手法を用いた感情分析については,一般的には信号処理,特徴抽出,特徴分類の3つの手順が必要である.2018年度は特徴分類について,指標の組み合わせの見直し(生体情報を用いた感情推定手法の検討)を行い,比較を行った.LF/HFでは精度は高いと考えられる一方,リアルタイム性が低下することから,PNNxの指標と並行して実行することなどを検討した.ただし.これらの指標の値を実際に分析する場合には,プログラムが非同期で並行実行することが必要であるため,スレッド実装などシステム開発課題なども同時に挑戦し新しいプラットフォーム開発を行い,研究として総合的な進捗があった.また,応用分野としてロボットがメインであるが,それ以外に,うつ病などの軽度精神支援や,運転時の感情解析,ヒューマンエラー時の内部解析など,新たな要求に合わせた解析結果なども研究として推進し,特許成果につながった.2019年度は(1)基礎的な分析/指標の確立,(2)国際化,(3)プラットフォームの開発,(4)応用分野の開拓と実用化の推進を進める.(1)基礎的な分析では,脳波分析では多チャンネル脳波計の利用,心拍分析では,心拍変動のスペクトラム解析と時間領域解析の複数結果を比較し検証を行う.また,分類においては機械学習, Deep Learningを取り入れ,より信頼性の高い研究を目指す.生体計測の専門家を研究室の顧問に招く他,脳波計測機器の開発企業,心拍計測機器の開発企業と共同研究を推進し,信頼性の高い解析・評価方法の確立をすすめる.(2) Kassel大学のKlus教授と共同で生体計測による感情分析論文を執筆する.ロボットの国際会議で著名なIEEE IROSで開催されるAffect Modeling, Evaluation, and Challenges in Intelligent Cars WorkshopでのInvited Speakerとして講演予定があることから,国際的なコミュニティのメンバに参画し活動できるようにする.(3)ロボットや応用プラットフォームの開発を推進する.センサ情報解析では周波数領域と時間領域の解析では並列処理実行基盤技術が必要となり,また,それらをサーバに集めて,集計して統計的な解析や学習器の適用をリアルタイムに行う技術開発を行うためのシステム基盤を開発する.また,個人差の検証や環境情報との連携などを目的に複数人の感情を同時に解析する基盤技術を確立する. (4) 2018年度に特許出願を行い,また,2019年度にはJST新技術説明会等での発表を予定している.さらに,企業との共同研究なども積極的にすすめる中で,具体的な応用を想定したアプリケーションの開発を予定する.2018年度は,生体信号を用いた感情推定手法を応用した研究に数多く挑戦した.感情を考慮する声がけロボットの提案は学会等で高く評価され,研究会で2件受賞した.本提案はリハビリ実施者の歩行時に誘導型のロボットが実施者の脳波・心拍の値から,感情をリアルタイムに推定し,その感情に応じた声がけをするものである.また,介護ロボットの恐怖感を評価した研究(Affect Evaluation of Biological Information Approached by a Nursing/care Robot)は,国際学会にてBest Paper Awardを受賞した.
KAKENHI-PROJECT-18K11505
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K11505
生体信号とラッセルモデルによる感情推定とロボットへの適用
本研究は,先行研究で結果が出た加速減速型と直進型を本提案手法による評価で比較したもので,従来わかりづらかった人のロボットへのリアルタイムに変化する感情をセンサ値で評価したことが評価された.その他,ロボットが位置調整を行うパーソナルスペースを考慮したロボット, EQ(Emotional Quotient)による主観結果のフィルタリング手法の提案,レコメンドシステム,運転システムへの応用,仮想化エージェントへの応用など,本研究に関する数多くの提案を行なった.その結果,国内学会21件,国際学会9本(うち受賞4件)の成果があった.JST科研費NEWSに掲載された.3月には, IEEEの国際学会付属のWorkshopにて基調講演者としてEmotion Aware Robot by Emotion Estimation using Biological Sensorsの講演を行なった.講演を機としドイツのKassel大学との共同研究を開始した,生体計測による感情推定技術の共同調査を開始した.また,特許の出願などの成果,共同研究も複数件実施し,より具体的な要件を元にした応用研究などを推進することができた.本手法は,簡易脳波計と心拍のRRIを取得する脈拍の二つの値を,ラッセルの二次元座標に対応づけ感情分類を行い,成果を得て来た.当初より応用を目的とし,心拍値はリアルタイム性が高い時間領域解析のRR間隔変動の差異を解析するPNN50を利用してきた.しかし,基礎研究,心拍変動性スペクトル解析(LF/HF)の解析方法との比較優位十分明らかになっていないことから,2018年度は基礎的な調査を行い,2019年度で実施する実験システムの設計開発を進めた.また,生体指標の解析を中心とした評価に加えて,心理学,Affective Computing,実際のロボットで実現するためのロボット工学や,リアルタイムにデータを解析するための情報基盤技術などの基礎的な調査や研究開発も並行して行い,情報基盤技術については,複数台からリアルタイムに生体情報を取得するための基礎となるシステム開発を行なった.生体計測手法を用いた感情分析については,一般的には信号処理,特徴抽出,特徴分類の3つの手順が必要である.2018年度は特徴分類について,指標の組み合わせの見直し(生体情報を用いた感情推定手法の検討)を行い,比較を行った.LF/HFでは精度は高いと考えられる一方,リアルタイム性が低下することから,PNNxの指標と並行して実行することなどを検討した.ただし.これらの指標の値を実際に分析する場合には,プログラムが非同期で並行実行することが必要であるため,スレッド実装などシステム開発課題なども同時に挑戦し新しいプラットフォーム開発を行い,研究として総合的な進捗があった.
KAKENHI-PROJECT-18K11505
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K11505
90年代日本の航空規制緩和と空港を核とした地域振興に関する実証的研究
本研究の目的は、航空規制緩和時代における空港の役割変化が、地域経営戦略に及ぼす影響を実証的に研究することである。平成6年度と平成7年度の2年間においては、文献研究および地域振興計画の核として空港整備を位置づけている地域(北海道・千歳市、福岡県、広島県、愛知県、大阪府など)の実態調査を基に、以下の論点を中心に研究をすすめた。つまり、日本における航空規制緩和の特殊性、平成不況と急速に進展するグローバリゼーションの影響による地域経済の空洞化、空港整備および周辺開発の事業主体のあり方などを明確にした上で、情報ネットワークの拠点としての空港が21世紀の地域経営戦略におよぼす影響を実証的に研究しようとした。この研究過程は、阪神大震災等に起因する交通混乱などにより十分に遂行することはできなかったが、以下のような知見を得た。まず、日本の空港容量の制約が航空規制緩和の特徴性を形成する原因となっていること。そのことが同時に、地方空港の国際化をすすめ地域経済を世界経済とドラスティックに結びつけ、空港間競争を媒介として、地域間競争をより激化する要因となっていること。その一方で、国内的には大都市と地方との格差が依然として大きいこと。それは、情報ネットワークの拠点として空港をとらえた場合、大都市圏の拠点空港と地方空港の機能の差、それを支える後背地の政治経済力の差によるものであること。また、後背地の政治経済力の差は、空港整備システムの差としても現れるということ。以上、5点であるが、今後、空港ネットワークを情報ネットワークとしての視点から促えなおし、研究を深めていく所存である。さらに、各地の事例を研究する過程において、空港を核とした地域振興を考える場合に、「空港づくりはまちづくり」という共生の視点にたった地域での合意形成の問題についても、地方分権を含めて問いなおす必要性を感じている。本研究の目的は、航空規制緩和時代における空港の役割変化が、地域経営戦略に及ぼす影響を実証的に研究することである。平成6年度と平成7年度の2年間においては、文献研究および地域振興計画の核として空港整備を位置づけている地域(北海道・千歳市、福岡県、広島県、愛知県、大阪府など)の実態調査を基に、以下の論点を中心に研究をすすめた。つまり、日本における航空規制緩和の特殊性、平成不況と急速に進展するグローバリゼーションの影響による地域経済の空洞化、空港整備および周辺開発の事業主体のあり方などを明確にした上で、情報ネットワークの拠点としての空港が21世紀の地域経営戦略におよぼす影響を実証的に研究しようとした。この研究過程は、阪神大震災等に起因する交通混乱などにより十分に遂行することはできなかったが、以下のような知見を得た。まず、日本の空港容量の制約が航空規制緩和の特徴性を形成する原因となっていること。そのことが同時に、地方空港の国際化をすすめ地域経済を世界経済とドラスティックに結びつけ、空港間競争を媒介として、地域間競争をより激化する要因となっていること。その一方で、国内的には大都市と地方との格差が依然として大きいこと。それは、情報ネットワークの拠点として空港をとらえた場合、大都市圏の拠点空港と地方空港の機能の差、それを支える後背地の政治経済力の差によるものであること。また、後背地の政治経済力の差は、空港整備システムの差としても現れるということ。以上、5点であるが、今後、空港ネットワークを情報ネットワークとしての視点から促えなおし、研究を深めていく所存である。さらに、各地の事例を研究する過程において、空港を核とした地域振興を考える場合に、「空港づくりはまちづくり」という共生の視点にたった地域での合意形成の問題についても、地方分権を含めて問いなおす必要性を感じている。本研究の目的は,航空規制緩和時代における空港の役割変化が,地域経営戦略に及ぼす影響を実証的に研究することである。研究初年度にあたる平成6年度は,次の2点を中心にすすめた。第1に,文献や資料の収集とそれに基づく諸外国を含めた航空規制緩和の動向と地域経済の動向の把握である。航空規制緩和については,世界の航空業の再編がドラスティックに展開された結果,若干の見直しと空港の競争基盤としての役割強化がすすみつつあること,それにともなって,空港間競争が激化し,都市の盛衰もその影響をうけていること,日本における航空規制緩和には特殊な要因が存在すること,などを確認した。また,地域経済の空洞化傾向からは,地域をどのように国際化していくのかという地域経営戦略の中で,情報ネットワークの拠点としての空港の位置づけを明確にすることの必要性を感じた。第2に,地方拠点空港の周辺地域および新空港建設計画をもつ地域を対象に実態調査を行った。平成6年7月名古屋空港,10月新千歳空港および周辺市町村,平成7年3月福岡県において,福岡空港の現状や新国際空港構想,新北九州空港計画,それにともなう周辺開発計画等の資料入手と,現地視察,ヒアリングなどを行った。これらの調査活動を通じて,地域経営戦略を展開する際の上位計画と下位計画とのかかわりの中にみられる縦割り行政にもとづく組織的統合・調整の不備,それにともなう補助金動向と計画遂行における事業主体のあり方についての問題点,とりわけ第3セクター方式の積極面と消極面について知見を得た。本研究の目的は,航空規制緩和時代における空港の役割変化が,地域経営戦略に及ぼす影響を実証的に研究することである。研究2年度にあたる平成7年度は,研究初年度で明らかとなった次の諸論点を深めていくことに重点をおいて,研究をすすめた。
KAKENHI-PROJECT-06630047
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06630047
90年代日本の航空規制緩和と空港を核とした地域振興に関する実証的研究
つまり,日本における航空規制緩和の特殊性,平成不況と急速に進展するグローバリゼーションの影響による地域経済の空洞化,空港建設および周辺開発の事業主体のあり方などを明確にした上で,情報ネットワークの拠点としての空港が21世紀の地域経営戦略におよぼす影響を実証的に研究しようとした。この研究過程は,阪神大震災等に起因する交通混乱などにより十分に遂行することはできなかったが,以下のような知見を得た。まず,日本の空港容量の制約が航空規制緩和の特殊性を形成する原因となっていること。そのことが同時に,地方空港の国際化をすすめ地域経済を世界経済とドラスティックに結びつけ,地域間競争をより激化する要因となっていること。その一方で,国内的には大都市と地方との格差が依然として大きいこと。それは,情報ネットワークの拠点として空港をとらえた場合,大都市圏の拠点空港と地方空港の機能の差,それを支える後背地の政治経済力の差によるものであること。また,後背地の政治経済力の差は,空港整備システムの差としても現れるということ。以上,5点であるが,今後,空港ネットワークを情報ネットワークとしての視点から据えなおし,研究を深めていく所存である。さらに,各地の事例を研究する過程において,空港を核とした地域振興を考える場合に,「空港づくりはまちづくり」という共生の視点にたった地域での合意形成の問題についても,地方分権を含めて問いなおす必要性を感じた。
KAKENHI-PROJECT-06630047
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06630047
貴金属ナノ粒子を担持したバルクナノ熱電材料の創出と熱電特性
SbBiTeバルク合金は、室温付近において性能を発揮する高性能熱電材料である。一方、熱電材料の性能指数ZTを向上させるために重要なことは、高い電気伝導率を保ったまま格子熱伝導率κlatを減少させる、つまり電子は散乱されないがフォノンは散乱される状況を、材料中につくりだすことにある。本研究では、γ線照射法を用いて、Sb_<1.6>Bi_<0.4>Te_3母相中にAuとAuTe2のナノ粒子が均一に分散した完全なナノコンポジット材料を作製した。主に、ナノ粒子と母相との界面におけるフォノン散乱により、ナノコンポジット材料のκlatは大きく減少し、結果、ZTが上昇した。AuとAuTe_2のナノ粒子を担持したSb_<1.6>Bi_<0.4>Te_3バルク熱電材料の最大のZTは423 Kで1.01に達した。この値は、通常のSb_<1.6>Bi_<0.4>Te_3バルク熱電材料のZTよりも18%高い値である。SbBiTeバルク合金は、室温付近において性能を発揮する高性能熱電材料である。一方、熱電材料の性能指数ZTを向上させるために重要なことは、高い電気伝導率を保ったまま格子熱伝導率κlatを減少させる、つまり電子は散乱されないがフォノンは散乱される状況を、材料中につくりだすことにある。本研究では、γ線照射法を用いて、Sb_<1.6>Bi_<0.4>Te_3母相中にAuとAuTe2のナノ粒子が均一に分散した完全なナノコンポジット材料を作製した。主に、ナノ粒子と母相との界面におけるフォノン散乱により、ナノコンポジット材料のκlatは大きく減少し、結果、ZTが上昇した。AuとAuTe_2のナノ粒子を担持したSb_<1.6>Bi_<0.4>Te_3バルク熱電材料の最大のZTは423 Kで1.01に達した。この値は、通常のSb_<1.6>Bi_<0.4>Te_3バルク熱電材料のZTよりも18%高い値である。本年度は、Bi_2Te_3系材料の作製と熱電特性の評価並びに熱電材料と貴金属ナノ粒子が複合したバルクナノ材料の作製と熱電特性の評価の二つの研究を実施した。Bi_2Te_3系材料を、各元素単体のチャンクを出発物質として真空封入した石英管中で溶融させて作製した。得られた溶融試料をボールミルにより粉砕して、粒径が10μm程度のマイクロ粒子を作製した。その後、放電プラズマ焼結(以下、SPS)法により高密度バルク体に成型した。得られた試料の相状態や結晶構造を、X線回折(以下XRD)測定、走査型電子顕微鏡(以下SEM)観察、エネルギー分散型X線(以下EDX)分析により評価した。作製したバルク体のゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率、ホール係数を測定し、性能指数ZTを評価した。その結果。本研究により作製したBi_2Te_3系材料の熱電特性は、過去に報告されている同種の材料の熱電特性とほぼ同程度であることを確認した。また、Bi_2Te_3系材料以外にもスクッテルダイト化合物やCu-Ga-Te系化合物を作製し、その熱電特性を評価することに成功した。これらの物質については、将来的に金ナノ粒子と複合化することを考えている。次いで、このようにして作製した熱電材料のマイクロ粒子上に、放射線照射法で金ナノ粒子を担持させた複合粒子を作製した。得られた複合粒子に対してSPSを施すことでバルク体に成型した。得られた試料の相状態、結晶構造及びナノ粒子の存在形態を、XRD測定、SEM観察、EDX分析、透過型電子顕微鏡観察により評価した。SPSにより得られたバルク体のゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率、ホール効果を測定し、性能指数ZTを評価した。その結果、金ナノ粒子を担持させたBi_2Te_3系材料の格子熱伝導率は、金ナノ粒子を担持させないものと比べて若干減少した。一方、出力因子の値も減少したことから、性能指数の値は、金の担持前後でほぼ同程度の値となった。今後は、金ナノ粒子のサイズや担持量と熱電特性の相関についてより詳細に研究をすすめていく予定としている。本研究では、放射線照射法と放電プラズマ焼結法を組み合わせた手法により、熱電材料中に貴金属ナノ粒子を分散させたバルクナノ材料を創出することを目的としている。今年度は、貴金属水溶液濃度やγ線照射時間等を変化させることで、ナノ粒子の担持量やサイズを変化させた種々の複合粒子を作製した。ナノ粒子の種類、量、サイズの異なる複合粒子に対してSPSを施すことで、ナノ粒子の分散形態の異なる種々のバルクナノ材料を作製した。具体的には、BiSbTe合金に種々の量の金ナノ粒子を付与した複合材料を作製し、そのゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率、ホール効果を測定することで、性能指数ZTを評価した。その結果、ナノ粒子を付与していない通常のBiSbTe合金のZTに対して、最大で18%高いZTを得ることに成功した。このZTの向上は、主にナノ粒子の付与による熱伝導率の低減に起因するものであった。
KAKENHI-PROJECT-23686091
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23686091
貴金属ナノ粒子を担持したバルクナノ熱電材料の創出と熱電特性
当初の予定通り、金ナノ粒子を担持させた場合とさせない場合とで、Bi_2Te_3系材料の熱電特性にどのような違いがあらわれるかを明らかにすることができたため。24年度が最終年度であるため、記入しない。貴金属水溶液濃度やガンマ線照射時間等を変化させることで、ナノ粒子の担持量やサイズを変化させた種々の複合粒子を作製する。また、貴金属の種類として、金に加えて、銀と白金も対象とする。ナノ粒子の種類、量、サイズの異なる複合粒子に対してSPSを施すことで、ナノ粒子の分散形態の異なる種々のバルクナノ材料を作製する。バルクナノ材料の各種熱電特性を測定し、ZTを評価する。また、ナノ粒子の種類、量、サイズと熱電特性の相関を明確にし、熱電性能が最も向上しうる最適条件を提案する。また、本研究で対象としたBi_2Te_3系材料は低温域(室温付近)で実用化される熱電材料であるが、高温側では最大250°C程度の温度環境下での使用が想定されている。このことから、今回作製したバルクナノ材料について、室温から最大250°Cの温度域で長期間保持した後の組織変化をXRD、SEM/EDX、TEMにより分析することで、長期間高温環境下に置かれた際のナノ組織の安定性を評価する。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-23686091
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23686091
血管型一酸化窒素合成酵素遺伝子多型のうつ病の病態への影響
うつ病患者で血中NOx濃度やそれらへの抗うつ薬治療さらにeNOS遺伝子多型の影響に関して検討した。対象はうつ病患者103例であり(性別M/F:41/62,年齢44±13yr)、健常群は性別と年齢を一致させた104例(性別M/F:37/66,年齢39±16yr)である。(1)血中NOx濃度は健常群で23.8±3.8μM、うつ病群で15.4±2.1μMであり、うつ病群で有意に低下していた。(2)HAMD得点と血中NOx濃度との間には有意な負の相関が認められた。(3)milnacipran群では投与4週間後で1.5倍、投与8週間後で1.8倍の増加が認められた。(4)eNOS遺伝子多型(T-786C, G894T, intron 4VNTR)に関しては健常群、うつ病群で分布に有意差は認められなかった。うつ病患者で血中NOx濃度やそれらへの抗うつ薬治療さらにeNOS遺伝子多型の影響に関して検討した。対象はうつ病患者103例であり(性別M/F:41/62,年齢44±13yr)、健常群は性別と年齢を一致させた104例(性別M/F:37/66,年齢39±16yr)である。(1)血中NOx濃度は健常群で23.8±3.8μM、うつ病群で15.4±2.1μMであり、うつ病群で有意に低下していた。(2)HAMD得点と血中NOx濃度との間には有意な負の相関が認められた。(3)milnacipran群では投与4週間後で1.5倍、投与8週間後で1.8倍の増加が認められた。(4)eNOS遺伝子多型(T-786C, G894T, intron 4VNTR)に関しては健常群、うつ病群で分布に有意差は認められなかった。心血管障害とうつ病との関連性が注目されており,その共通因子として一酸化窒素(NO)の関与が考えられているNOはフリーラジカルであり,存在寿命が短く,生体内では亜硝酸イオン(NO2-),硝酸イオン(NO3-)に代謝される。NOは,ホルモン,神経伝達物質,傍分泌,メッセンジャー,メディエーター,細胞保護,細胞障害分子として働き,多くの細胞に分子標的がある。我々は一酸化窒素合成酵素遺伝子をknock-outさせたマウスではカテコールアミン動態に変化を来すことを報告した。一方,血中脳由来神経栄養因子(BDNF)がうつ病の病態に重要な働きをしているという知見も増加している。今年度の研究では,うつ病患者の病状,特に自殺という観点から血中NOx及び血中BDNF物質を調べるごとにより,うつ病の病態に関して,特に自殺念慮や自殺企図と血中一酸化窒素代謝産物(NOx)や血史団DNE濃度との関連を検討した。対象はDSM-IV-TRの大うつ病エピソードQ診断基準を満たす120例(Dep群)と健常群(Cont群)101例である。うつ病エピソードの期間中の任意の時点で採血を行い,血中BDNF濃度はsahdwich ELISA法,血中NOx濃度はHPLC法にて測定した。Deb群の血中NOx濃度は15.2±14.8μM(mean±SD,以下同じ),Cont群の血中NOx濃度は40.1±27.4μMで,DeP群では有意に低値であった。一方,血中BDNF濃度もDep群では10.2±6.1ng/ml,Cont群では20.1±12.0ng/mLであり,Dep群で互意に低直であった。またHAM-Dの下位項目である自殺の項目にて2点以上を自殺念慮有群,1点以下を自殺念慮無群と定義した場合,血中BDNF濃度,血中NOx濃度に関しては両群間に差は認められなかった。以上のことより,うつ病患者では血中BDNFおよびNOx濃度が低下している可能性が示唆されたが両者は自殺関連行動の指標にはならない可能性が示唆された。うつ病患者で血中NOx濃度やそれらへの抗うつ薬治療さらにeNOS遺伝子多型の影響などに関して検討した。対象は産業医科大学病院神経精神科の外来および入院患者103例であり(性別M/F:41/62,年齢44±13yr)、DSM-IVの大うつ病性障害の診断基準を満たしていた。また健常群は性別と年齢を一致させた104例(性別M/F:37/66,年齢39±16yr)である。抑うつの評価はHamilton Rating Scale for Depression 17項目(HAMD)を用いて行った。うつ病群のうちparoxetine投与群20例とmilnacipran投与群20例は薬物投与4週間、8週間後にも採血を行なった。また、eNOSの3つの遺伝子多型をgenotypingした。さらに、動脈硬化の指標としてABIも測定した。(1)血中NOx濃度は健常群で23.8±3.8μM、うつ病群で15.4±2.1μMであり、うつ病群で有意に低下していた(p<0.01)。(2)HAMD得点と血中NOx濃度との間には有意な負の相関が認められた(r=-0.556,p<0.001)。(3)うつ病群の内、自殺念慮有群の血中NOx濃度は14.3±1.3μM
KAKENHI-PROJECT-19591385
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19591385
血管型一酸化窒素合成酵素遺伝子多型のうつ病の病態への影響
自殺念慮無群では16.7±2.9μMであり、自殺念慮有群で有意に低値であった(p=0.034)。(4)paroxetine群、milnacipran群では薬物投与前血中NOx濃度に有意差は認められなかったが、milnacipran群では投与4週間後で1.5倍、投与8週間後で1.8倍の増加が認められたのに対しparoxetine群では有意な変化はなかった。(5)うつ病群と健常群とでABIの差はなかった。(6)健常群でもうつ病群でもABIと血中NOx濃度に関連は無かった。(7)eNOS遺伝子多型(T-786C,G894T,intron 4VNTR)に関しては健常群、うつ病群でその分布に有意差は認められなかった。さらにHAMD得点との関連もなかった。(8)うつ病患者では血中NOx濃度が低下しており、さらに抑うつ症状の程度とも関連していた。(9)うつ病群に内、自殺念慮を有する患者では、さらに血中NOx濃度が低値であった。(10)paroxetineとmilnacipranとでは血中NOx濃度に対する作用に相違があり、血中NOx濃度の増加にはノルアドレナリン神経が重要な役割をしている可能性も考えられる。(11)うつ患者でABIの変化はなく、ABIと血中NOx濃度に関連がなかった。(12)eNOSの3つの遺伝子多型とうつ病や血中NOx濃度との間には関連が無かった。うつ病患者で血中NOx濃度やそれらへの抗うつ薬治療さらにeNOS遺伝子多型の影響などに関して検討した結果、(1)血中NOx濃度は健常群で23.8±3.8μM、うつ病群で15.4±2.1μMであり、うつ病群で有意に低下していた(p<0.01)。(2)HAMD得点と血中NOx濃度との間には有意な負の相関が認められた(r=-0.556,p<0.001)。(3)paroxetine群、milnacipran群では薬物投与前血中NOx濃度に有意差は認められなかったが、milnacipran群では投与4週間後で1.5倍、投与8週間後で1.8倍の増加が認められたのに対しparoxetine群では有意な変化はなかった。(4)うつ病患者では血中NOx濃度が低下しており、さらに抑うつ症状の程度とも関連していた。(5)paroxetineとmilnacipranとでは血中NOx濃度に対する作用に相違があり、血中NOx濃度の増加にはノルアドレナリン神経が重要な役割をしている可能性も考えられた。(6)eNOSの3つの遺伝子多型とうつ病や血中NOx濃度との間には関連が無かった。更に抗うつ薬慢性投与のNOやBrain-derived neurotrophic factorへの影響の検討も加えた。すなわち、ミルナシプランがマウス脳内のnNOS活性、NOx、BDNF mRNA、BDNF発現に与える影響について検討した。9週齢オスのC57BL/6Jマウスをミルナシプラン3mg/day、10mg/day、生理食塩水(対照群)投与の3群に分け、腹腔内へ単回および慢性(14日間)投与した。断頭後、大脳皮質、中脳、海馬に分離した。NOS assay kitによりnNOS活性、グリース法によりNOx、RT-PCRによりBDNF mRNA、Western blotting法によりBDNF発現量を測定した。結果は慢性ミルナシプラン(10mg/day)投与群では対照群(NOx:1.28±0.19mmol/L/g)に比較して、大脳皮質のNOS活性(27.09±7.40% of control,P<0.01)、NOx(0.82±0.09mmol/L/g,p<0.05)が有意に減少し、BDNF mRNA(191.70±16.92%
KAKENHI-PROJECT-19591385
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19591385
放射性セシウム汚染された土壌のファイトレメディエーションに関する実験的研究
カヤツリグサ科マツバイを用いて1Cs溶液水耕栽培実験,2福島県の自生マツバイの放射性Cs濃度と生物濃縮係数(BCF),および3福島県におけるフィールド栽培実験を行った。1では,マツバイがCsを1000mg/kg-DW以上吸収する超集積植物であることが解明された。2では,マツバイが最大で2400 Bq/kgであった。3では,放射性Cs濃度が6580 Bq/kg水田土壌において,マツバイのそれは平成24年度での平均で1310,平成25年度で782 Bq/kgであった。以上の結果に基づくと,マツバイによる放射性Csの除染は極めて簡便で、かつ有効な除染技術であることが実証された。福島県郡山市農業総合センターの放射性Cs汚染された水田土壌において,マツバイのファイトレメディエーションとしての有効性および実用的栽培方法確立のためのフィールド栽培実験を行った。実験期間は,平成24年度から継続して約18ヶ月間である。この実験では,放射性Cs汚染された水田を湛水し,細断したマツバイを散布し,自然に定着・成長させ,栽培実験を実施した。この水田土壌の放射性Cs濃度は,平均6580 Bq/kg(N=4)である。この実験は,より効率的に除染するための栽培技術の確立を目的としている。実験サイトの規模は,約9 m×6 m(マツバイ総重量は約30 kg)である。春から秋にかけて,12ヶ月ごとにマツバイ試料を合計19試料採取し,その放射性Csの崩壊数を測定した。測定は九州環境管理協会に委託した。この実験の結果,採取したマツバイから,2405100 Bq/kgの放射性Cs濃度が得られた。その平均は,平成24年度で1310 Bq/kg,平成25年度で782 Bq/kgである。以上の結果に基づくと,マツバイによる放射性Csのファイトレメディエーションは極めて簡便で有効な除染方法であることが改めて証明された。また,その実施方法の一つとして,マツバイの細断散布法が極めて簡便であり,広範囲の水田を除染する際に有効であることが実証された。カヤツリグサ科マツバイを用いて1Cs溶液水耕栽培実験,2福島県の自生マツバイの放射性Cs濃度と生物濃縮係数(BCF),および3福島県におけるフィールド栽培実験を行った。1では,マツバイがCsを1000mg/kg-DW以上吸収する超集積植物であることが解明された。2では,マツバイが最大で2400 Bq/kgであった。3では,放射性Cs濃度が6580 Bq/kg水田土壌において,マツバイのそれは平成24年度での平均で1310,平成25年度で782 Bq/kgであった。以上の結果に基づくと,マツバイによる放射性Csの除染は極めて簡便で、かつ有効な除染技術であることが実証された。本研究の目的は,カヤツリグサ科マツバイを用いて,放射性Cs汚染された土壌を除染するファイトレメディエーション技術を基礎的実験およびフィールド実験を行い,福島県の放射性Cs汚染の除染に実用化することである。本研究の目標は以下の2点にまとめられる。(1)カヤツリグサ科マツバイのCsの最大吸収量および各媒体とBCFw(マツバイのCs濃度/水のCs濃度)およびBCFs(マツバイのCs濃度/土壌のCs濃度)との関係を明らかにする。(2)放射性Csによって汚染された土壌におけるマツバイによるファイトレメディエーションの実用化にまで展開する。平成24年度に実施した1室内におけるカヤツリグサ科マツバイの水耕栽培実験,2福島県におけるカヤツリグサ科マツバイの小規模フィールド栽培実験を行った。1では、実験終了後のマツバイの最大Cs濃度はK濃度0.2 mg/l-DW;の葉で1880 mg/kg-DW、根で984 mg/kg-DW、マツバイ全体で1560 mg/kg-DWであった。2では、マツバイが最大で6000 Bq/kg以上の放射性Csを吸収可能であり,土壌とマツバイの放射性Cs濃度の間には正の相関が認められることが明らかになった。この結果は、福島県で2011年に実施された農林水産省による他の植物データと比較して著しく吸収効率が良い。これらの結果に基づいて,カヤツリグサ科マツバイによる放射性Csの除染技術が実用化にまで展開可能であることが明らかになった。本研究の目的は,カヤツリグサ科マツバイを用いて,放射性Cs汚染された土壌を除染するファイトレメディエーション技術を基礎的実験およびフィールド実験を行い,福島県の放射性Cs汚染の除染に実用化することである。平成24年度に実施した1室内におけるカヤツリグサ科マツバイの水耕栽培実験,2福島県におけるカヤツリグサ科マツバイの小規模フィールド栽培実験を行った。1では、実験終了後のマツバイの最大Cs濃度は地上部で1880 mg/kg-DW、根部で984 mg/kg-DW、マツバイ全体で1560 mg/kg-DWであった。2では,マツバイが最大で6000 Bq/kg以上の放射性Csを吸収可能であり,土壌とマツバイの放射性Cs濃度の聞には正の相関が認められることが明らかになった。平成25年度および26年度は放射性Cs
KAKENHI-PROJECT-24540492
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24540492
放射性セシウム汚染された土壌のファイトレメディエーションに関する実験的研究
汚染された水田土壌において,マツバイのファイトレメディエーションとしての有効性および実用的栽培方法確立のためのフィールド栽培実験を行った。実験期間は,平成24年度から継続して約18ヶ月間である。この実験では,放射性Cs汚染された水田を湛水し,細断したマツバイを散布し,自然に定着・成長させ,栽培実験を実施した。この水田土壌の放射性Cs濃度は,平均で6580 Bq/kgである。この実験の結果,採取したマツバイから, 2405100 Bq/kgの放射性Cs濃度が得られた。その平均は,平成24年度で1310 Bq/kg,平成25年度で782 Bq/kgである。以上の結果に基づくと,マツバイによる放射性Csのファイトレメディエーションは極めて簡便で有効な除染方法であることが改めて証明された。また,その実施方法の一つとして,マツバイの細断散布法が極めて簡便であり,広範囲の水田を除染する際に有効であることが実証された。地球科学申請時の計画どおり大規模フィールド実験を実施しており,予想通りの成果が得られた。本研究の目的は,カヤツリグサ科マツバイを用いて,放射性Cs汚染された土壌を除染するファイトレメディエーション技術を基礎的実験およびフィールド実験を行い,福島県の放射性Cs汚染の除染に実用化することである。本研究の目標は以下の2点にまとめられる。(1)カヤツリグサ科マツバイのCsの最大吸収量および各媒体とBCFw(マツバイのCs濃度/水のCs濃度)およびBCFs(マツバイのCs濃度/土壌のCs濃度)との関係を明らかにする。(2)放射性Csによって汚染された土壌におけるマツバイによるファイトレメディエーションの実用化にまで展開する。本研究の目的に関して、平成24年度は80%以上の実験成果を得ることができた。土壌栽培実験に関しては、平成25年度に実施する予定である。本年度は研究計画をさらに発展させ,マツバイマットを作成して,より現実的除染技術にする予定である。具体的には,福島県の水田においてそのマツバイマットの性能をチェックするための栽培実験を現地の方々と共同で行う。今年度は、予定通り、大規模なフィールド栽培実験を実施する予定である。対象は、福島県内の放射性Cs汚染された水田および湿地である。本研究では、新たに「マツバイマット」の作成方法を開発し、実際の作成も実施している。このマットを実験に使用し、より簡便でかつ安全な栽培方法を実践的に確立する。物品費は総額100,000円で,主に試薬、栽培・分析用具材に使用する。旅費は総額520,000で、福島県におけるフィールド実験および学会発表のための旅費で使用する。謝金は総額90,000円で,実験補助に使用する。その他は総額390,000円で、放射性Cs濃度測定の依頼分析に使用する。
KAKENHI-PROJECT-24540492
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24540492
Sam68を標的とした口腔がんの新たな診断・治療方法開発に向けた基礎的研究
本研究は、Sam68というRNA結合タンパクの口腔がんにおける機能解析をすすめ、転移や予後を予測する新規バイオマーカーとしての有用性を検討すること、また正常細胞との相違を見出し、Sam68やそれによるmRNA制御機構を標的とした新しいがんの治療法を開発することを目的としている。初年度には口腔がん細胞株をもちいてSam68の発現様式とStress Granules(mRNAと結合タンパクが一時的に凝集することで生じる細胞質内顆粒構造であり、mRNAの一時的な保管などのmRNA代謝に関与するとされる)の挙動を解析する計画を立てた。まず、口腔扁平上皮癌におけるSam68の発現様式について、正常細胞はヒト皮膚線維芽細胞(BJ)やヒト肺線維芽細胞(WI-38)、口腔扁平上皮癌細胞はヒト細胞株であるHSC3、HSC4、SASを用いて検討を行なった。しかしながら口腔がん細胞株でのSam68高発現を示すデータ(ウェスタンブロッティング法での結果)は得られなかった。また、口腔扁平上皮癌におけるStress Granulesの挙動観察について、上記と同様の細胞株を用いてSam68の蛍光免疫染色を行った。共焦点レーザー走査型顕微鏡でStress Granulesを観察したが、正常細胞と口腔がん細胞での相違点を見出すに至らなかった。平成29年度と平成30年度も、用いる細胞株や抗体を変更したり、実験の条件を複数にして引き続き上記と同様に検討を行ったものの、有意な結果は得られていない。口腔がん細胞におけるSam68の高発現を明らかにすることが本研究の基礎となるが、これを示すデータが得られていない。当初の計画においてもう一つの検討項目であったOSCCにおけるSGの挙動であるが、現時点では正常細胞と口腔がん細胞での相違点を見出すに至っていない。これまでの研究結果からは、口腔がん細胞株および他のがん細胞株におけるSam68の高発現は明らかとならなかった。またSGの挙動解析では、正常細胞株とがん細胞株での有意な相違を明らかにはできなかった。現在は、核内構造物としてのSma68の役割に着目し、がん細胞の悪性形質にいかに関わっているかを検討する計画を立てている。本研究は、Sam68というRNA結合タンパクの口腔がんにおける機能解析をすすめ、転移や予後を予測する新規バイオマーカーとしての有用性を検討すること、また正常細胞との相違を見出し、Sam68やそれによるmRNA制御機構を標的とした新しいがんの治療法を開発することを目的としている。本年度はまず、口腔がん細胞株をもちいてSam68の発現様式とStress Granules(mRNAと結合タンパクが一時的に凝集することで生じる細胞質内顆粒構造)の挙動を解析する計画を立てた。1)OSCCにおけるSam68発現様式の検討:正常細胞はヒト皮膚線維芽細胞(BJ)やヒト肺線維芽細胞(WI-38)、口腔扁平上皮癌細胞はヒト細胞株であるHSC3、HSC4、SASを用いて検討を行なったが、口腔がん細胞株でのSam68高発現を示すデータは今のところ得られていない。2)OSCCにおけるSGの挙動観察:上記と同様の細胞株を用いてSam68の蛍光免疫染色を行い、共焦点レーザー走査型顕微鏡でSGの挙動を観察した。現時点では正常細胞と口腔がん細胞での相違点を見出すに至っていない。口腔がん細胞におけるSam68の高発現を明らかにすることが本研究の基礎となるが、現段階ではこれを示すデータが得られていない。当初の計画においてもう一つの検討項目であったOSCCにおけるSGの挙動であるが、現時点では正常細胞と口腔がん細胞での相違点を見出すに至っていないため、前者とともにさらなる検討を行なっている。本研究は、Sam68というRNA結合タンパクの口腔がんにおける機能解析をすすめ、転移や予後を予測する新規バイオマーカーとしての有用性を検討すること、また正常細胞との相違を見出し、Sam68やそれによるmRNA制御機構を標的とした新しいがんの治療法を開発することを目的としている。初年度には口腔がん細胞株をもちいてSam68の発現様式とStress Granules(mRNAと結合タンパクが一時的に凝集することで生じる細胞質内顆粒構造)の挙動を解析する計画を立てた。まず、OSCCにおけるSam68発現様式について、正常細胞はヒト皮膚線維芽細胞(BJ)やヒト肺線維芽細胞(WI-38)、口腔扁平上皮癌細胞はヒト細胞株であるHSC3、HSC4、SASを用いて検討を行なったが、口腔がん細胞株でのSam68高発現を示すデータは得られなかった。また、OSCCにおけるSGの挙動観察について、上記と同様の細胞株を用いてSam68の蛍光免疫染色を行い、共焦点レーザー走査型顕微鏡でSGの挙動を観察したが、正常細胞と口腔がん細胞での相違点を見出すに至らなかった。上記の検討は本研究の基礎になるため、本年度も引き続き同様に検討を行ったものの、有意な結果は得られていない。口腔がん細胞におけるSam68の高発現を明らかにすることが本研究の基礎となるが、これを示すデータが得られていない。当初の計画においてもう一つの検討項目であったOSCCにおけるSGの挙動であるが、現時点では正常細胞と口腔がん細胞での相違点を見出すに至っていないため、用いる細胞を変更するなど、前者とともにさらなる検討を行なっている。本研究は、Sam68というRNA結合タンパクの口腔がんにおける機能解析をすすめ、転移や予後を予測する新規バイオマーカーとしての有用性を検討すること、また正常細胞との相違を見出し、Sam68やそれによるmRNA制御機構を標的とした新しいがんの治療法を開発することを目的としている。
KAKENHI-PROJECT-16K20433
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K20433
Sam68を標的とした口腔がんの新たな診断・治療方法開発に向けた基礎的研究
初年度には口腔がん細胞株をもちいてSam68の発現様式とStress Granules(mRNAと結合タンパクが一時的に凝集することで生じる細胞質内顆粒構造であり、mRNAの一時的な保管などのmRNA代謝に関与するとされる)の挙動を解析する計画を立てた。まず、口腔扁平上皮癌におけるSam68の発現様式について、正常細胞はヒト皮膚線維芽細胞(BJ)やヒト肺線維芽細胞(WI-38)、口腔扁平上皮癌細胞はヒト細胞株であるHSC3、HSC4、SASを用いて検討を行なった。しかしながら口腔がん細胞株でのSam68高発現を示すデータ(ウェスタンブロッティング法での結果)は得られなかった。また、口腔扁平上皮癌におけるStress Granulesの挙動観察について、上記と同様の細胞株を用いてSam68の蛍光免疫染色を行った。共焦点レーザー走査型顕微鏡でStress Granulesを観察したが、正常細胞と口腔がん細胞での相違点を見出すに至らなかった。平成29年度と平成30年度も、用いる細胞株や抗体を変更したり、実験の条件を複数にして引き続き上記と同様に検討を行ったものの、有意な結果は得られていない。口腔がん細胞におけるSam68の高発現を明らかにすることが本研究の基礎となるが、これを示すデータが得られていない。当初の計画においてもう一つの検討項目であったOSCCにおけるSGの挙動であるが、現時点では正常細胞と口腔がん細胞での相違点を見出すに至っていない。本年度の研究結果からは、口腔がん細胞株におけるSam68の高発現は明らかとならなかった。使用する細胞株の変更や、口腔がん以外の扁平上皮癌細胞株も加えるなど、本事項を最優先として検討をすすめていく。またSGの挙動解析を続け、正常細胞株と口腔がん細胞株での違いを探索したいと考えている。これらの結果を踏まえ、当初に計画していたSam68のノックダウンや強制発現系による悪性形質の変化や、口腔がん細胞におけるSGの挙動と、mRNA制御機構の関わりを検討したい。これまでの研究結果からは、口腔がん細胞株におけるSam68の高発現は明らかとならなかった。使用する細胞株の変更を行って本事項を最優先として検討をすすめていく。またSGの挙動解析を続け、正常細胞株と口腔がん細胞株での違いを探索したいと考えている。ただし、細胞内顆粒構造物としてのSGに有意な差がみつからなければ、核内構造物としてのSma68の役割を検討項目に加える可能性がある。これらの結果を踏まえ、当初に計画していたSam68のノックダウンや強制発現系による悪性形質の変化や、口腔がん細胞におけるSGの挙動と、mRNA制御機構の関わりを検討したい。これまでの研究結果からは、口腔がん細胞株および他のがん細胞株におけるSam68の高発現は明らかとならなかった。またSGの挙動解析では、正常細胞株とがん細胞株での有意な相違を明らかにはできなかった。現在は、核内構造物としてのSma68の役割に着目し、がん細胞の悪性形質にいかに関わっているかを検討する計画を立てている。
KAKENHI-PROJECT-16K20433
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K20433
コイ科魚類の棲息環境条件を備えた水源・水路施設系の設計に関する研究
本研究は,平成5年度・6年度・7年度の3年間にわたって行ったものである.近年の社会的な要請から,土木的整備は生産活動に対する社会資本投資という性格から生活環境の創出および改良という方向へ展開してきている.これらの行為は,いわゆるエコロジカルネットワークでいう,人と自然とのバッファー領域に属するものである.従って,質の高い計画を立案するには,このような人の活動と自然との関係の実態を調査したデータの蓄積が重要となる.さて,コイやフナは下流域や止水域(ため池・貯水池)での釣りの代表的対象魚種である.特にヘラブナ釣りを行う人々の間では専門の釣り会や団体が組織され,釣り場の清掃あるいは放流活動など社会的な活動も行っている.本研究の第1部では,こうしたヘラブナ釣りの実態を山形県内の釣り会に所属する人々へのアンケート調査および現地調査によって明らかにした.そしてこの結果を用いて,釣り人がため池や貯水池を評価する際の5つの要因について分析した.さらにため池や貯水池は釣り場として3つのタイプに分類された.次に,棲息環境条件を備えたため池や貯水池を新設あるいは改修した後,新たな施設に魚を放流することが問題となる.そこで,研究の第2部では,ため池における溶存酸素の鉛直分布を玉川ため池に4つのパイプを有したブイを設置して観測を行った.そして,植物プランクトンが溶存酸素の鉛直分布に与える影響について検討した.その結果,玉川ため池では,その影響が少ないことが判明した.また,溶存酸素総量の変化から自然状態への復帰に要する期間は約2カ月であると結論した.本研究は,平成5年度・6年度・7年度の3年間にわたって行ったものである.近年の社会的な要請から,土木的整備は生産活動に対する社会資本投資という性格から生活環境の創出および改良という方向へ展開してきている.これらの行為は,いわゆるエコロジカルネットワークでいう,人と自然とのバッファー領域に属するものである.従って,質の高い計画を立案するには,このような人の活動と自然との関係の実態を調査したデータの蓄積が重要となる.さて,コイやフナは下流域や止水域(ため池・貯水池)での釣りの代表的対象魚種である.特にヘラブナ釣りを行う人々の間では専門の釣り会や団体が組織され,釣り場の清掃あるいは放流活動など社会的な活動も行っている.本研究の第1部では,こうしたヘラブナ釣りの実態を山形県内の釣り会に所属する人々へのアンケート調査および現地調査によって明らかにした.そしてこの結果を用いて,釣り人がため池や貯水池を評価する際の5つの要因について分析した.さらにため池や貯水池は釣り場として3つのタイプに分類された.次に,棲息環境条件を備えたため池や貯水池を新設あるいは改修した後,新たな施設に魚を放流することが問題となる.そこで,研究の第2部では,ため池における溶存酸素の鉛直分布を玉川ため池に4つのパイプを有したブイを設置して観測を行った.そして,植物プランクトンが溶存酸素の鉛直分布に与える影響について検討した.その結果,玉川ため池では,その影響が少ないことが判明した.また,溶存酸素総量の変化から自然状態への復帰に要する期間は約2カ月であると結論した.本年度は、山形県内のため池を事例に棲息環境である水質について現地観測を行った。このため池は、潅漑期のみに湛水されるために、貯溜直後の混合(ほぼ均質)した状態から水質プロフィールの形成の過程を観測することが可能である。また比較のために通年湛水されている近傍のため池を1ヶ所で観測した。測定項目は、Do・pH・水温・濁度で、6月中旬から9月中旬の潅漑期において、毎週約1回、5ヶ所で鉛直方向には1mおきに測定した。また沢からの流入出点2ヶ所で水質の測定を行い、ため池への導水路では量的把握のため、堰および量水標を設置した。さらに、ため池底部約20ヶ所にサンプラーを埋設し期間中の沈澱物量を採取し、有機物の含有量について分析した。以上の結果、以下の知見を得た。まずDo総量の経時的な変化は、降雨や貯溜水の放流の短期的な影響をのぞけば、貯溜後から約2カ月の間は総量は減少していった。pHからみたイオン濃度は貯溜後徐々に上昇する傾向が見られた。また、濁度は初期の高い値から減少していくが、14m層の表層部では降雨との相関が高いことが判明した。水温の変化は、ため池から放流利用するまでの約1カ月半の間は、表層部が高く指数関数的に減少して8m付近で一定となる様相を示し、拡散で説明される現象であることが推定された。また、沈澱物の測定結果からは、流入部で沈澱物量は多いもののほぼ水深(サンプラー上の水柱容積)に比例した量が沈澱しており、沈澱速度は非常に遅いことが推定された。また、各サンプラーにより採取された試料の有機物含有量は510%程度が大部分であった。以上のような全体的な変化とは別に短期的な変化をみるために、気象要因(風速・降雨)と水質項目の各層のデータとの相関,ため池心土の酸性度および比較対象区との比較から、それぞれの現象の要因について考察した。最上川水系の遊漁場所の利用状況や整備などについて、山形県釣友連絡協議会の協力を得てアンケート調査を277名を対象に実施した。
KAKENHI-PROJECT-05660264
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05660264
コイ科魚類の棲息環境条件を備えた水源・水路施設系の設計に関する研究
有効回収数は114通であった。また夏期の3日間、アンケート結果で最もよくいく釣り場として挙げられたため池において利用数の調査を行った。その結果、利用の実態・釣りの技法と整備との関係・釣り人の望む整備の内容などが判明した。また、平成5年度より観測をしているため池の中央部にブイ観測点を設置し、長さ4m方形パイプを縦に水中に設置して、その内部と外部で溶存酸素の測定を行った。パイプは不透明で上下蓋付きのもの、透明で上下蓋付き・下蓋付き・上下蓋無しの4種類である。それぞれのパイプ内部および外部の測定結果を比較することによって、(1)横方向流れの影響、(2)縦方向のDOの移動の状況。(3)プランクトンや藻類の影響について検討した。なお一部は平成6年農業土木学会東北支部大会にて報告した。さらに今年度、山形県内の水辺環境整備実施地区において聞き取り調査と資料の収集を新たに追加した。事業の実施から管理段階までにおいて、地元住民がどのように係わったかを調べ、管理組織やその形成過程についての関係を考察した。その結果から管理者と事業地区との地理的関係・住民の性格づけ・利用者としての関わり・今後の管理に向けての課題について考察した。1)施設の最適な配置計画を進めるには利用圏と人々の評価について知ることが必要になる。そこで貯水池の釣り場を例として利用圏の実態と評価内容について把握検討することを目的とした。評価の高い上位9つの釣り場を選定し「A型」「B型」「C型」に3分類することができた。またアンケート結果より釣り場選択理由を「釣果(数)」「釣果(サイズ)」「位置」「自然環境」「整備」の5項目に大別し、それぞれの特徴から「A型」を「居住区近接型」、「C型」を「郊外型」とし、それらの中間的性格と持つ「B型」を「中間型」と特徴付けられることが明らかとなった。「釣果」に関しては聞き取り調査で一日(8時間)平均約三十枚が「数が釣れる」となり、30cm以上が「大型」となった。また「放流」に関しては各釣り場で行われており、自然の生息環境以上に影響が大きいことが判明した。以上より、釣り場の最適配置に際して問題となる評価基準に関しての基本的知見が得られた。2)藻類が溶存酸素の鉛直方向のプロファイルに与える影響を把握することを目的とした。酸素生成量は両パイプ内での測定値の差で表した。更に鉛直方向の溶存酸素の挙動を把握するために、鉛直一次元モデルを用いてシュミレーション解析を行った。シュミレーションにおいて測定すべきパラメーターは、鉛直方向の渦動拡散係数:KO(cm2/day)、経験定数:μで、パラメーターの評価関数は2乗誤差の和をとった。1日の経時変化では鉛直方向の流動は小さく、また藻類による影響も小さいことが判った。従って長期変化(24日間)のシュミレーションにおいては、藻類の影響を考慮せずに計算を行った。その結果、K=5000、μ=0.005の値を得た。以上より、ため池に藻類は生息しているが、極微量で、鉛直方向の溶存酸素に影響を与えていないことが判った。
KAKENHI-PROJECT-05660264
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05660264
蛇紋岩化作用に伴う反応-物質移動のフィードバック
地殻物質とマントル物質の境界を模擬して,かんらん石ー石英ー水系において反応帯の形成実験を行った.実験条件は,250°C,飽和蒸気圧であり,また、反応を促進させるために, pH13.5のNaOH水溶液を用いた.反応物の空間分布を明らかにするために,メインのオートクレーブ内に片側だけが空いた反応チューブを設置し,石英とかんらん石の粉末を設置した.実験時間は最大46日であり,実験後は,X線回折,熱重量測定を行うとともに,走査型電子顕微鏡による薄片の画像解析から各鉱物量と空隙の測定を行った.かんらん石/石英の境界から,系統的な反応物の変化が観察された.境界に近い部分では,スメクタイト+蛇紋石が生成し,境界よりも1cm程度離れた部分では蛇紋石+ブルース石+マグネタイトが形成した.シリカ活量が高い部分では滑石の形成が予想されたが,今回は滑石組成に少しNaが加わったスメクタイトが形成した.反応チューブ外側の溶液のシリカ活量は蛇紋石+ブルーサイトの平衡とほぼ一致しており,わずか1 cm程度で3桁ほどのシリカ活量の勾配が出来ていたことを示唆する.かんらん石の加水反応は時間とともに進行し,もっとも進行していた部分ではおよそ80%のかんらん石が反応している.また、反応管内の含水量は石英との境界において低いことが明らかとされた.より詳細な反応メカニズムを明らかにするために,それぞれの鉱物の生成反応の反応進行度を求めた.その結果,かんらん石の加水反応と,シリカ交代作用による2つの脱水反応が競合して起こっていることが明らかになった.シリカ交代作用は水を吐き出すとともに固体体積が増加する反応であるために,反応帯が進行するに従って,局所的な間隙水圧の上昇がおこる.このようなプロセスは沈み込み帯におけるマントルウェッジとスラブとの境界面においても、ダイナミックな物性変化を起こしえることが予想される.25年度が最終年度であるため、記入しない。25年度が最終年度であるため、記入しない。地殻物質とマントル物質の境界を模擬して,かんらん石ー石英ー水系において反応帯の形成実験を行った.実験条件は,250°C,飽和蒸気圧であり,また、反応を促進させるために, pH13.5のNaOH水溶液を用いた.反応物の空間分布を明らかにするために,メインのオートクレーブ内に片側だけが空いた反応チューブを設置し,石英とかんらん石の粉末を設置した.実験時間は最大46日であり,実験後は,X線回折,熱重量測定を行うとともに,走査型電子顕微鏡による薄片の画像解析から各鉱物量と空隙の測定を行った.かんらん石/石英の境界から,系統的な反応物の変化が観察された.境界に近い部分では,スメクタイト+蛇紋石が生成し,境界よりも1cm程度離れた部分では蛇紋石+ブルース石+マグネタイトが形成した.シリカ活量が高い部分では滑石の形成が予想されたが,今回は滑石組成に少しNaが加わったスメクタイトが形成した.反応チューブ外側の溶液のシリカ活量は蛇紋石+ブルーサイトの平衡とほぼ一致しており,わずか1 cm程度で3桁ほどのシリカ活量の勾配が出来ていたことを示唆する.かんらん石の加水反応は時間とともに進行し,もっとも進行していた部分ではおよそ80%のかんらん石が反応している.また、反応管内の含水量は石英との境界において低いことが明らかとされた.より詳細な反応メカニズムを明らかにするために,それぞれの鉱物の生成反応の反応進行度を求めた.その結果,かんらん石の加水反応と,シリカ交代作用による2つの脱水反応が競合して起こっていることが明らかになった.シリカ交代作用は水を吐き出すとともに固体体積が増加する反応であるために,反応帯が進行するに従って,局所的な間隙水圧の上昇がおこる.このようなプロセスは沈み込み帯におけるマントルウェッジとスラブとの境界面においても、ダイナミックな物性変化を起こしえることが予想される.本年度は蛇紋岩化反応における物質移動の影響を明らかにするための反応装置を設計し、反応におけるシリカの影響についての実験を進めた.特に,今年度は,マントルの一般的な鉱物組み合わせであるかんらん石ー斜方輝石ー水系での実験を進めた.反応装置の工夫としては、メインの反応器の内部に2本の小型の反応チューブを設置して,各反応チューブの内部にかんらん石/斜方輝石/かんらん石という層で設置して、その反応進行度の空間的な変化を詳細に観察した点である.また、反応進行度は熱重量測定と走査型電子顕微鏡による画像の解析の2種類を行った.水熱実験は250°C、飽和蒸気圧で行い,最大で1510時間(およそ3ヶ月)である.反応後の物質は,かんらん石帯と斜方輝石帯の間に白っぽい反応帯が形成することが分かったが,どちらの鉱物帯でも反応が進行していることが分かった.これは、かんらん石帯ではシリカを吸収する反応,斜方輝石帯ではシリカを放出する反応が起こってバランスしていることが明らかになった.このような反応進行度の空間分布は、いわゆる局所平衡モデルでは説明することができず,非常に空隙率の大きい岩石においては拡散と表面反応のどちらも効いていることを示している.
KAKENHI-PUBLICLY-24109701
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-24109701
蛇紋岩化作用に伴う反応-物質移動のフィードバック
また、シリカの高い領域においてはマグネタイトを形成せず,すなわち水素を作る反応が起こらないことを明らかにした.斜方輝石とかんらん石では反応速度の温度依存性が著しく異なるはずであり、シリカの供給源からの反応進行度の空間分布は、海洋リソスフェアの熱水変質場における流体・物質移動また温度履歴についての大きな情報を持っているということが推察される.本年度は,反応進行度をうまく読み取るための反応装置の開発、分析方法の確立が急務であったが,その点においては、非常に成功したと考えられる.とくに、メインの反応管に反応チューブを2本設置にすることによって、片方の反応チューブでの試料のSEMによる薄片観察(空間分解能が高い)を行い、もう片方のチューブを分割することによってXRDや熱重量測定を行うことを可能にした.これにより,より精度の高い反応進行度の空間分布を得ることを可能になった.また、蛇紋岩化反応は非常に長期間かかるものである.やはり1シリーズの実験が2ー3か月かかるのは,研究を加速させる上では効率を妨げるものではあるが,やり方のめどがついたために,多くの系での実験を並行して行うことによって,長期間の実験の時間変化を見ることができた.本年度は、かんらん石ー斜方輝石という非常に基本的な系での反応のメカニズムを詳細に押さえることができたのは、非常に予定通りと言える.また、高温条件下であるために,反応容器は金属製のものが必要である.今回は、バックグラウンドとしてのブランク実験を行った.反応容器として用いたステンレス製の容器(SUS316)は若干の水との相互作用を起こすことにより、実験の化学反応系に与える影響も評価し、反応容器の材質をインコネルに変更するなど,改良を加えていく予定である.以上のように,実験手法の確立と1つの系の反応を理解しつつあり、おおむね順調であると言える.1.かんらん石ー石英ー水系、かんらん石ー斜長石ー水系の水熱実験(250#730;C,飽和蒸気圧):地殻とマントル物質の境界をまたぐ熱水変質の進行メカニズムを理解するために、マントル物質の代表としてかんらん石、地殻の代表物質として石英または斜長石の粉末をレイヤーとしてつめたインコネル製の2重管を用いた反応実験を行う。最大で3ヶ月の長期間の実験であるが、両方の系を同時進行で行う。実験中は、順次、試料をとりだし、溶液組成分析(ICP-MS/ICP-AES)を行い,固体試料については熱重量測定と薄片の走査型電子顕微鏡による画像解析によって、物質の相境界からの距離によって反応物とその量がどのように変化するかを定量的に評価する。実験準備(4月),水熱実験および分析(5ー8月)2.かんらん石ーハンレイ岩(斜方輝石+斜長石)の系の水熱実験:より天然の系に近いかんらん石ーはんれい岩の系で実験を行い、Moh近傍での熱水変質物質の産状と比較して、そのメカニズムを考察する。(9ー11月)3.物質移動を考慮した反応ー拡散モデルの構築:地殻とマントルの境界で重要な元素であるシリカを考慮したモデルをまず構築し,地殻からマントル側へ流体とともにシリカが拡散する際の反応がどのように進行するかのモデルを構築し,石英ーかんらん石系の実験と比較しながら、必要な速度論的パラメータを決定する。その上で,より複雑なCaやAlが入る系においておこる反応を明らかかにする。また、水の流入と元素の移動がカップリングしているときと、元素移動が遅れる場合の違いを明らかにし,地殻/マントル境界における反応メカニズムを明らかにする。25年度が最終年度であるため、記入しない。25年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-24109701
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-24109701
反一致現象の研究
Chomsky(2005, 2008)以降、素性継承(inheritance)という概念は、人間言語の計算体系の本質が厳密派生的であることを保証する上で、フェイズ(phase)を単位とした派生計算において重要な役割を担っている。本研究は、完全な形での素性継承が阻止されているのが反一致現象であることを示した。この結論は、素性継承が不完全な形で適用されている他の現象からも支持される。この研究の主要な理論的意義は、逆接的ではあるが素性継承の存在を経験的に支持することにあるChomsky(2005, 2008)以降、素性継承(inheritance)という概念は、人間言語の計算体系の本質が厳密派生的であることを保証する上で、フェイズ(phase)を単位とした派生計算において重要な役割を担っている。本研究は、完全な形での素性継承が阻止されているのが反一致現象であることを示した。この結論は、素性継承が不完全な形で適用されている他の現象からも支持される。この研究の主要な理論的意義は、逆接的ではあるが素性継承の存在を経験的に支持することにある本研究の目的は、反一致現象の分析を提示し、その理論的意義を明らかにすることで言語理論の深化に寄与することにある。より具体的には、反一致現象及びその関連事象を整理し、理論的解釈が可能な形での一般化を提示することを第一の目標とする。その上で、反一致現象の統語的メカニズムを解明し、その理論的含意を明示することを目標とする。22年度は2つの課題に取り組んだ。そのひとつは、広義のAgreement Resthctionに関する調査も平行して行い、より広い視点から反一致現象を捉えることであった。Agreement Restrictionは、一定の環境下で、特定の形態素性の出現を禁じるという現象である。この現象は統語的理由により排除されてしまう場合と形態論的理由によりremedyされる場合とに下位分類され、後者は形態部門でimpoverishmentという素性削除規則が適用される。反一致現象は、形態部門でimpoverishmentという素性削除規則が適用される点で、後者のタイプのAgreement Restrictionに類似しているが、統語的環境がかなり制限されているため、主語後置際に観察される一致の非対称性(agreement asymmetries)として扱うべきであるという結論に至った。もう一つの課題は、言語資料の収集と整理である。この点に関しては、主語のA移動が関与するwh疑問化、関係節化、分裂文化、話題化、焦点移動等で一致素性が不完全な形でしか現れないという一般化が正しいことを確認した。この一般化を一致の非対称性(agreement asymmetries)として解釈し、EPPと素性継承の問題としで分析するという方針を決定した。本研究の目的は、反一致現象の分析を提示し、その理論的意義を明らかにすることで言語理論の深化に寄与することにある。23年度は、規範的一致が出現しない統語環境を明示し、その理論的含意を探求した。より具体的には、素性継承が完全な形で行われない現象(部分継承)が反一致現象の背後にあるメカニズムであるという仮説を検証し、スカンジナビア諸語・ゲルマン諸語に観察される虚辞(CP-expletive)に文頭制約が課されること及び英語のwager/allegeタイプの特殊なECM構文等には、反一致現象に必要とされる部分継承が関係していることを示し、当該の現象群の統一的分析を提案した(Miyoshi and Tozawa(2011))。すなわち、この特殊な虚辞(CP-expletive)の分布には、以下2つの特性がある。(1)補文内での定動詞第2位現象の可否と虚辞(CR-expletive)の分布には相関がある。(2)補文内のCP-expletiveには障壁形成能力がなく、話題島の効果を示す補文中の倒置V2語順とこの点で異なる。これらの特性から、EPP素性を単独で認可する要素は、当該のedge位置には残留できないという条件が働くことを明らかにした。この条件により、アイスランド語の文体前置(stylistic inversion)やwager/allegeタイプの特殊なECM構文の諸特性が導かれることを示した。ハンガリー語・オランダ語の"N of a NP"構文で観察される不規則な数一致(Number Agreement)は、これらの言語の名詞句内部の階層性の複雑さが干渉要因となって、明確な結論を導くことはできなかった。さらに、軽名詞句(nP)のみでは記述自体が困難であるため、カートグラフィー的な分析手法をとる必要があることわかった。本研究の目的は、反一致現象の分析を提示し、その理論的意義を明らかにすることで言語理論の深化に寄与することにある。最終年度である24年度は、以下2点を明らかにした。部分継承(素性継承が完全な形で行われない現象)とφ素性の欠落に含意関係は存在しない。トルコ語や関連方言の関係節に観察されるように、φ素性自体が存在せず、継承自体が行われない現象が存在する(Miyamoto 2013)。一方、ブレトン語のwh疑問化では、φ素性の存在を積極的に否定する根拠が薄弱である。
KAKENHI-PROJECT-22520486
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22520486
反一致現象の研究
さらに、スカンジナビア諸語・ゲルマン諸語に観察される虚辞(CP-expletive)に文頭制約が課されること及び英語のwager/allegeタイプの特殊なECM構文等、部分継承により統一的に分析できる諸現象が、φ素性自体の有無と部分継承の間には体系的な関係が存在せず、反一致現象をφ素性の有無に還元すること不可能である。2部分継承が反一致現象の背後にあるメカニズムであるという仮説を検証する過程で発見した条件、すなわち、フェイズ主要部に単独で残留したEPP素性は主要部により認可されなくてはならないという条件から、ドイツ語等に観察されるWh-copyingの諸特性が導かれることを論じた(Miyoshi 2012)。反一致現象は、部分継承ないしは継承自体が適用されない事例が存在すること示している。フェイズを単位とした計算は近年の極小主義における厳密循環派生の根幹をなす、フェイズを単位とした計算は、継承という操作の存在に依存する。逆説的ではあるが、部分継承ないしは継承自体が適用されない事例が存在することは、継承という操作を売らずケルことになるはずであり、本研究は、継承を取り込んだフェイズ内計算を仮定するアプローチを支持する。素性継承が完全な形で行われない現象(部分継承)が反一致現象の背後にあるメカニズムであるという主張の経験的な妥当性が、独立した現象により検証された。さらに、EPP素性を単独で認可する要素は、当該のedge位置には残留できないという条件の発見等を論文として発表した。24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度は、23年度までの成果に基づき、閉じた統語領域における言語計算に対する、反一致現象の理論的意義を明らかにし、研究のまとめを行う。部分継承が反ー致現象の背後にあるメカニズムであるという主張の妥当性の検証を続けるとともに、edge素性に関する理論的含意を明らかにしていく。この作業を通じて、言語理論内部での本研究の位置づけを明らかにしていく。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22520486
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22520486
肝炎ウイルス感染から肝硬変・肝細胞癌への進展における修飾要因に関する分子疫学研究
肝炎ウイルス感染から肝硬変・肝細胞癌への発症を修飾する要因として、薬物代謝酵素であるチトクロームP450(CYP)2E1・1A2およびN-アセチルトランスフェラーゼ(NAT)2、炎症に関与するインターロイキン1B(IL-1B)の遺伝子多型の影響を検討した。肝癌群・肝硬変群・慢性肝炎群および対照群の四群を比較する症例対照研究の手法を用いた。候補遺伝子多型と肝炎ウイルスマーカーについては対象者より同意を得て採取した静脈血(約7cc)を用いて決定し、飲酒・喫煙などの生活習慣については自記式調査票と専任の調査員(看護婦)による面接により情報を得た。肝癌患者(2001年以降の新患)・肝硬変患者・慢性肝炎患者は、佐賀医大病院と佐賀県立病院好生館の受診者より年齢が4079歳の者を選定し、対照者は佐賀医大病院総合外来受診者(疾病は多彩であり、明らかな疾病のない者も含む)より対応する年齢の者を選定した。2003年1月までに肝癌群106名、肝硬変群40名、慢性肝炎群128名、対照群257名の調査を行ったが、結果の解析が可能となった肝癌群76名と対照群214名について予備的検討を行った。CYP2E1(5'flanking領域のRsa I多型)のc1/c1型(homozygous wild)の性・年齢補正オッズ比は1.0と関連は見られなかったが、多飲歴のある者では3.4と上昇していた(交互作用P=0.03)。同様に、CYP1A2(5'flanking領域のDde I多型)のw/w型(homozygous wild)のオッズ比は全体の解析では1.3と有意な上昇を認めなかったが、多飲歴がある者(4.3,交互作用P=0.03)あるいは喫煙者(2.7,交互作用P=0.04)において上昇していた。NAT2の遺伝子多型については明らかな関連を認めなかった。IL-1B(C-31T多型)については、喫煙者においてT alleleを有する者のオッズ比が2.2と上昇する傾向にあったが、統計学的に有意でなかった。生活習慣と各遺伝子多型の交互作用を検討するために、今後さらに例数を増やして検討する必要がある。肝炎ウイルス感染から肝硬変・肝細胞癌への発症を修飾する要因として、薬物代謝酵素であるチトクロームP450(CYP)2E1・1A2およびN-アセチルトランスフェラーゼ(NAT)2、炎症に関与するインターロイキン1B(IL-1B)の遺伝子多型の影響を検討した。肝癌群・肝硬変群・慢性肝炎群および対照群の四群を比較する症例対照研究の手法を用いた。候補遺伝子多型と肝炎ウイルスマーカーについては対象者より同意を得て採取した静脈血(約7cc)を用いて決定し、飲酒・喫煙などの生活習慣については自記式調査票と専任の調査員(看護婦)による面接により情報を得た。肝癌患者(2001年以降の新患)・肝硬変患者・慢性肝炎患者は、佐賀医大病院と佐賀県立病院好生館の受診者より年齢が4079歳の者を選定し、対照者は佐賀医大病院総合外来受診者(疾病は多彩であり、明らかな疾病のない者も含む)より対応する年齢の者を選定した。2003年1月までに肝癌群106名、肝硬変群40名、慢性肝炎群128名、対照群257名の調査を行ったが、結果の解析が可能となった肝癌群76名と対照群214名について予備的検討を行った。CYP2E1(5'flanking領域のRsa I多型)のc1/c1型(homozygous wild)の性・年齢補正オッズ比は1.0と関連は見られなかったが、多飲歴のある者では3.4と上昇していた(交互作用P=0.03)。同様に、CYP1A2(5'flanking領域のDde I多型)のw/w型(homozygous wild)のオッズ比は全体の解析では1.3と有意な上昇を認めなかったが、多飲歴がある者(4.3,交互作用P=0.03)あるいは喫煙者(2.7,交互作用P=0.04)において上昇していた。NAT2の遺伝子多型については明らかな関連を認めなかった。IL-1B(C-31T多型)については、喫煙者においてT alleleを有する者のオッズ比が2.2と上昇する傾向にあったが、統計学的に有意でなかった。生活習慣と各遺伝子多型の交互作用を検討するために、今後さらに例数を増やして検討する必要がある。
KAKENHI-PROJECT-14031216
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14031216
プラズマ反応を利用した高性能希土類系金属間化合物磁性材料の合成
本研究では、まず既存の高周波電源と真空排気装置を用いて、プラズマ反応装置を組み立てた。次に、アーク溶融あるいは高周波溶融法で作製したSm_2Fe_<17>またはNdFe_<11>Ti合金インゴットを、精製した窒素雰囲気中で粉砕後、上記のプラズマ装置を用いて、各種雰囲気(N_2-H_2あるいはCH_4-N_2-H_2混合ガス、数Torr、作動排気下)中で反応させることにより、所定の侵入型希土類金属間化合物、Sm_2Fe_<17>N_x、NdFe_<11>TiN_x、Sm_2Fe_<17>C_xN_yおよびNdFe_<11>TiC_xN_yを合成した。ここで、これらの試料の組成を調べ、プラズマ処理条件の最適化を行なうと共に、各試料のキュリー温度および磁場-磁化ヒステリシス特性を近隣の研究機関所有の試料振動型磁力計等を用いて明らかにした。これらを基に、磁気特性に及ぼすプラズマの処理条件の影響を明らかにした。また、上記の結果を総合し、良好な磁気特性を有するSm_2Fe_<17>N_x等が生成する条件を、合金原料粉末の粒径、プラズマ反応条件(雰囲気のガス圧、反応温度など)、等々について系統的に検討した。その結果、以下の知見が得られた。1.窒素侵入型希土類金属間化合物磁気特性に優れたSm_2Fe_<17>N_xおよびNdFe_<11>TiN_xがSm_2Fe_<17>とNdFe_<11>Ti粉末を原料とすることで、対応する熱窒化法と比べより低温で効率良く生成することが明らかとなった。これにより、熱窒化過程で併発する試料の分解反応(特性の劣化につながる)を容易に回避できることが可能となった。2.炭素、窒素同時侵入型希土類金属間化合物上記項目1よりもさらに保磁力に優れたSm_2Fe_<17>C_xN_yおよびNdFe_<11>TiC_xN_yが、CH_4-N_2-H_2混合ガス雰囲気中のプラズマ反応により効率良く生成することが明らかになった。本研究では、まず既存の高周波電源と真空排気装置を用いて、プラズマ反応装置を組み立てた。次に、アーク溶融あるいは高周波溶融法で作製したSm_2Fe_<17>またはNdFe_<11>Ti合金インゴットを、精製した窒素雰囲気中で粉砕後、上記のプラズマ装置を用いて、各種雰囲気(N_2-H_2あるいはCH_4-N_2-H_2混合ガス、数Torr、作動排気下)中で反応させることにより、所定の侵入型希土類金属間化合物、Sm_2Fe_<17>N_x、NdFe_<11>TiN_x、Sm_2Fe_<17>C_xN_yおよびNdFe_<11>TiC_xN_yを合成した。ここで、これらの試料の組成を調べ、プラズマ処理条件の最適化を行なうと共に、各試料のキュリー温度および磁場-磁化ヒステリシス特性を近隣の研究機関所有の試料振動型磁力計等を用いて明らかにした。これらを基に、磁気特性に及ぼすプラズマの処理条件の影響を明らかにした。また、上記の結果を総合し、良好な磁気特性を有するSm_2Fe_<17>N_x等が生成する条件を、合金原料粉末の粒径、プラズマ反応条件(雰囲気のガス圧、反応温度など)、等々について系統的に検討した。その結果、以下の知見が得られた。1.窒素侵入型希土類金属間化合物磁気特性に優れたSm_2Fe_<17>N_xおよびNdFe_<11>TiN_xがSm_2Fe_<17>とNdFe_<11>Ti粉末を原料とすることで、対応する熱窒化法と比べより低温で効率良く生成することが明らかとなった。これにより、熱窒化過程で併発する試料の分解反応(特性の劣化につながる)を容易に回避できることが可能となった。2.炭素、窒素同時侵入型希土類金属間化合物上記項目1よりもさらに保磁力に優れたSm_2Fe_<17>C_xN_yおよびNdFe_<11>TiC_xN_yが、CH_4-N_2-H_2混合ガス雰囲気中のプラズマ反応により効率良く生成することが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-05650639
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05650639
ABO式遺伝子型(A,B,O^A,O^G)の簡易判定法に関する研究
これまでABO式血液型の遺伝子レベルでの解明が進み、DNAからの型判定が可能となってきた。しかし、現在主として実施されているPCR-RFLP法は複雑なABO式血液型遺伝子の分析には不向きであることが明らかになってきた。そこで今回、これまで試みられてきた遺伝子型に特異的なプライマーによる方法を改良したAPLP法を考案した。本法は従来法と異なり、遺伝子型特異的プライマーの5'末端に比相補的塩基を加えることにより、各遺伝子型をPCR産物の鎖長の違いにより識別しようとするものである。すなわち、A^1,A^2,A^G,B,O^2,O^A,O^G型遺伝子の塩基置換を区別するために、10種類の特異プライマーを設定し、さらに各遺伝子産物の鎖長が少なくとも8bp以上異なるように一部の5'末端に本来の配列に対応する塩基とは異なる配列を用いた。各々の型判定は10-100ngの鋳型DNAに対して、上記の10個のプライマー等を加えてPCRを行った。その結果、25本のバンドが検出され、パターンによりすべての型判定が可能であった。なお、これらは血清学的検査結果と全例が一致し、PCR-APLP法の信頼性が確立された。さらに本法は、血清学的では区別できないO^A,O^G,O^2,A^G型遺伝子の識別が可能となった。本法は、PCRから型判定まで3時間程度の短時間で終了すると共に、より微量での検出が可能となり、且つ、型判定の信頼性がより向上した。今後本法は、法医学領域のみならず、臨床分野での活用も期待される。これまでABO式血液型の遺伝子レベルでの解明が進み、DNAからの型判定が可能となってきた。しかし、現在主として実施されているPCR-RFLP法は複雑なABO式血液型遺伝子の分析には不向きであることが明らかになってきた。そこで今回、これまで試みられてきた遺伝子型に特異的なプライマーによる方法を改良したAPLP法を考案した。本法は従来法と異なり、遺伝子型特異的プライマーの5'末端に比相補的塩基を加えることにより、各遺伝子型をPCR産物の鎖長の違いにより識別しようとするものである。すなわち、A^1,A^2,A^G,B,O^2,O^A,O^G型遺伝子の塩基置換を区別するために、10種類の特異プライマーを設定し、さらに各遺伝子産物の鎖長が少なくとも8bp以上異なるように一部の5'末端に本来の配列に対応する塩基とは異なる配列を用いた。各々の型判定は10-100ngの鋳型DNAに対して、上記の10個のプライマー等を加えてPCRを行った。その結果、25本のバンドが検出され、パターンによりすべての型判定が可能であった。なお、これらは血清学的検査結果と全例が一致し、PCR-APLP法の信頼性が確立された。さらに本法は、血清学的では区別できないO^A,O^G,O^2,A^G型遺伝子の識別が可能となった。本法は、PCRから型判定まで3時間程度の短時間で終了すると共に、より微量での検出が可能となり、且つ、型判定の信頼性がより向上した。今後本法は、法医学領域のみならず、臨床分野での活用も期待される。
KAKENHI-PROJECT-08670475
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08670475
ヨーロッパ統合とフランス的公役務の行方-行政の公共性に関する日仏比較の視点から-
3年計画の最終年度に当たる本年度は、(1)昨年度に引き続きこれまでに収集したフランスおよびわが国の文献を読んでテーマにかかわる論点の整理を行うこと、(2)昨年度行ったフランスでの調査結果についてさらに整理するとともに、独仏米及び日本の現状との比較を行うこと、(3)上記二点を含めてこれまでの研究のとりまとめを行うこと、の3点を目標に作業を行ってきた。(1)については、昨年度に引き続いてこれまでの2年間に収集してきた多くのフランスの文献を内容ごとに整理することとあわせて、テーマに関連する日仏のいくつかの文献を読みながら日仏の最近の状況、特に公共部門の在り方に関する両国の違いについて論点の整理を行ってきた。フランスについてのこの間の研究成果の一端については、近いうちに公表する予定でいる。また、日本については、行政改革会議最終報告以降本年1月の新省庁体制の発足に至るまでの行政改革の展開過程について整理するとともに、公共事業、公務員制度、新省庁体制などわが国の公共部門のあり方にかかわるいくつかの個別問題について検討を加えてきた。その成果の一端は後掲の論文の中に示されている。(2)については、昨年度に引き続き「民間からみた21世紀に期待される公務員像に関する研究」をテーマとする日本人事行政研究所の共同研究に参加し、昨年度調査を行った英仏独に加え、今年度行った日米加の調査結果を踏まえながら各国の比較を行った。これらの諸国との比較の結果、公共部門の在り方に関するフランス的特色、その独自性をある程度明らかにすることができた。(3)については、以上の検討を通しながら、3年間の研究成果のとりまとめを行った。3年計画の最終年度に当たる本年度は、(1)昨年度に引き続きこれまでに収集したフランスおよびわが国の文献を読んでテーマにかかわる論点の整理を行うこと、(2)昨年度行ったフランスでの調査結果についてさらに整理するとともに、独仏米及び日本の現状との比較を行うこと、(3)上記二点を含めてこれまでの研究のとりまとめを行うこと、の3点を目標に作業を行ってきた。(1)については、昨年度に引き続いてこれまでの2年間に収集してきた多くのフランスの文献を内容ごとに整理することとあわせて、テーマに関連する日仏のいくつかの文献を読みながら日仏の最近の状況、特に公共部門の在り方に関する両国の違いについて論点の整理を行ってきた。フランスについてのこの間の研究成果の一端については、近いうちに公表する予定でいる。また、日本については、行政改革会議最終報告以降本年1月の新省庁体制の発足に至るまでの行政改革の展開過程について整理するとともに、公共事業、公務員制度、新省庁体制などわが国の公共部門のあり方にかかわるいくつかの個別問題について検討を加えてきた。その成果の一端は後掲の論文の中に示されている。(2)については、昨年度に引き続き「民間からみた21世紀に期待される公務員像に関する研究」をテーマとする日本人事行政研究所の共同研究に参加し、昨年度調査を行った英仏独に加え、今年度行った日米加の調査結果を踏まえながら各国の比較を行った。これらの諸国との比較の結果、公共部門の在り方に関するフランス的特色、その独自性をある程度明らかにすることができた。(3)については、以上の検討を通しながら、3年間の研究成果のとりまとめを行った。本年度は、研究計画の初年度ということで、研究課題に関する資料・文献の収集及びそれらの全体的な傾向・概要の把握を中心として研究を進めてきた。フランスの文献・資料の調査収集については、フランスでの外地研究期間(1995年1997年)以降のもの、とりわけ、通貨統合を契機としたヨーロッパ統合に向けた動きやそれと関連するフランスの行政・公共部門をめぐる動き、さらには官僚制度・公務員制度の動向に関するものを中心に行ってきた。収集した文献・資料については、その量が膨大で内容もかなり多岐にわたっているので、本年度はそれらをじっくり読み込むというよりは、資料・文献から読み取られる全体的な研究動向を概括的につかむこと、また日本との対比において研究テーマに関わる理論的課題の整理を行うことを研究の重点に置いた。このため、文献資料類の系統的な調査・収集と平行しながら、研究テーマに関するシンポジウムや研究会に参加し、わが国での研究動向や関心のあり方についてもフォローしてきた。日本の動きについては、フランスとの比較においても、いわゆる橋本行革以降のわが国の行革をめぐる動きをどのように評価するのかが研究課題とかかわる重要な論点であり、この観点から、1998年の中央省庁等改革基本法の成立、それを受けた本年1月の中央省庁等改革大綱の策定に至るまでの行政改革(公務員制度改革を含む)の一連の動きを追い、一定の分析を行ってきた。3年計画の第2年度目に当たる本年度は、(1)昨年度に収集したフランスおよびわが国の文献を読んでテーマにかかわる論点の整理を行うこと、(2)フランスに出向いて関係者への聞取調査を行うこと、(3)テーマに関する文献資料の収集整理を継続すること、の3点を目標に作業を行ってきた。(1)については、昨年度かなりの量の文献を収集したので、それらをテーマと項目別に整理することとあわせて、基礎的な文献を読みながらテーマにかかわる日仏の最近の動向を概括的に把握することを中心に作業を行ってきた。フランスについてのこの間の研究成果については、(2)の報告書の中にもその一端が反映されている。また、日本については、最近の行政改革をめぐる動きを中心に研究を進めてきた。その成果は、後掲の論文
KAKENHI-PROJECT-10620017
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10620017
ヨーロッパ統合とフランス的公役務の行方-行政の公共性に関する日仏比較の視点から-
図書のほか、1999年11月6日の地方自治学会(龍谷大学)での報告「公共事業と地方自治-地方分権一括法・中央省庁再編法との関わりで-」にも一部表れている。(2)については、「民間からみた21世紀に期待される公務員像に関する研究」をテーマとする日本人事行政研究所の研究チームの一員として、1999年9月から10月にかけてパリで聞取調査を中心とする現地調査を行った。上記テーマは本研究テーマと密接な関連をもつものであることから、調査に当たってはあわせて本研究テーマに関する設問事項を追加して聞取りを行った。その成果は、後掲の報告書にまとめられている。(3)については、引き続き日仏の関連文献を収集するとともに、上記(2)の調査の際に収集してきた大量のフランスの文献資科を現在整理しているところである。3年計画の最終年度に当たる本年度は、(1)昨年度に引き続きこれまでに収集したフランスおよびわが国の文献を読んでテーマにかかわる論点の整理を行うこと、(2)昨年度行ったフランスでの調査結果についてさらに整理するとともに、独仏米及び日本の現状との比較を行うこと、(3)上記二点を含めてこれまでの研究のとりまとめを行うこと、の3点を目標に作業を行ってきた。(1)については、昨年度に引き続いてこれまでの2年間に収集してきた多くのフランスの文献を内容ごとに整理することとあわせて、テーマに関連する日仏のいくつかの文献を読みながら日仏の最近の状況、特に公共部門の在り方に関する両国の違いについて論点の整理を行ってきた。フランスについてのこの間の研究成果の一端については、近いうちに公表する予定でいる。また、日本については、行政改革会議最終報告以降本年1月の新省庁体制の発足に至るまでの行政改革の展開過程について整理するとともに、公共事業、公務員制度、新省庁体制などわが国の公共部門のあり方にかかわるいくつかの個別問題について検討を加えてきた。その成果の一端は後掲の論文の中に示されている。(2)については、昨年度に引き続き「民間からみた21世紀に期待される公務員像に関する研究」をテーマとする日本人事行政研究所の共同研究に参加し、昨年度調査を行った英仏独に加え、今年度行った日米加の調査結果を踏まえながら各国の比較を行った。これらの諸国との比較の結果、公共部門の在り方に関するフランス的特色、その独自性をある程度明らかにすることができた。(3)については、以上の検討を通しながら、3年間の研究成果のとりまとめを行った。
KAKENHI-PROJECT-10620017
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10620017
効率的な改善活動の技能伝承に関する研究
本研究の目的は、製造業の生産職場における技術伝承システムの構築方法を明らかにすることであった。特にその中でもトヨタ生産方式やリーンマネジメントに代表される経営管理技術の中心的な活動であり、生産システムの性能向上と人材育成の両面において効果を上げている改善活動において広く普及が進んでいる見える化技術の成功事例を取り上げて、効率的な管理のあり方について検討を行った。この目的に対して最終年度である平成30年度のテーマは生産職場における改善成果のマネジメント要件の一般化であり、特に、改善成果の整理・分類に関する要件、及び改善成果例として着目した見える化技術の事業所内と、産業間における技術伝承の要件について検討を行った。前者においては、平成28年度に提案し、平成29年度にその試行を行った当該技術の内部的な構造を図式化する方法論から与えられる視点を用いることができることを議論した。また後者については、事業所内及び産業間の移転について、それぞれのケースを持つ企業との継続的なディスカッションを通して、移転元の知識・技術を参考にしながらも、移転先の課題の掘り下げや組織の状況を加味するといった移転ノウハウの存在を確認することができた。これらの取り組みを通して、本研究に関連する研究業績として、国際学会において4件の発表を行い、本研究業績を所属大学と拙研究室ホームページに公表した。3年間における本研究の成果は、日本の製造業の基本を支え、海外においても生産戦略の1つとして広く認識されている改善(Kaizen)活動の中において、問題解決の有効な手法として用いられている見える化技術を対象に、改善資産のライフサイクル管理ともいうべき新たな技能伝承論の体系化を試みたことであり、この学術的意義は、生産人口が少なくなる局面においても更なる生産活動の高効率化を支えるといった実務的意義を含むものであると考えられる。本研究の目的は、製造業の生産職場における技術伝承システムの構築方法を明らかにすることである。特にその中においても、トヨタ生産方式に代表される経営管理技術の中心的な活動であり、生産システムの性能向上と人材育成の両面において効果を上げている改善活動において広く普及が進んでいる見える化技術の成功事例を取り上げて、効率的な管理のあり方について検討を行っている。この目的に対して本年度のテーマは「見える化技術の調査書式の設計」としており、次の4項目について取り組みを行った。第1は「文献調査による調査書式の原案設計」であり、制御理論などの文献を参考にしながら、当該技術をそれにより管理されるシステムとそれを用いて管理を行う人のコミュニケーションツールとしてとらえ、図式による書式化を行った。第2は「協力企業からの助言による調査書式の改善」であり、提案した書式の説明を協力企業に行い、協力企業において利用されている当該技術に対する理解との整合を、デスカッション等を通して行った。第3は「事例調査の施行による調査書式の改善」であり、協力企業における導入事例を提案書式により記述し、その有効性を確認した。第4は「調査書式のマニュアル作成」であり、調査書式により記述される当該技術の要素についての説明を明らかにした。これらの取り組みを通して、国際学会において本研究に関連する5件の発表を行い、本研究業績を拙研究室ホームページに公表した。以上の計画に対する実績は、今後、構築を計画している事例データベースにおいて、蓄積される事例を表現するための統一的な書式であり、事例の効率的な管理法の基礎になるという意義があると考えられる。本研究の目的は、製造業の生産職場における技術伝承システムの構築方法を明らかにすることであり、特に、改善活動において用いられている見える化技術の成功事例を効率的に管理するためのあり方について検討することであった。また、この目的に対して3ヵ年の研究計画の初年度にあたる本年度は「見える化技術の調査書式の設計」をテーマとして取り組んでおり、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると考えられる。研究を進めるにあたって、そのペースメーカとなる協力企業と拙研究室との間において開かれる会議があり、月1回の頻度で概ね定期的に行うことができている。また、当該テーマを継続的に遂行できるようにするために、得られた成果の学会における報告といった目標などについてもスケジュールに含めながらPDCAサイクルをまわすことにより、研究の進捗管理を行っている。このような工夫をふまえ、本年度のテーマの中で、1.文献調査による調査書式の原案設計、2.協力企業からの助言による調査書式の改善、3.事例調査の施行による調査書式の改善、4.調査書式のマニュアル作成の4つのサブテーマを進めた。また、46th International Conference on Computers & Industrial Engineering(CIE46)などの国際学会において本年度のテーマに関連する5件の発表を行い、本研究業績を拙研究室ホームページに公表した。本研究の目的は、製造業の生産職場における技術伝承システムの構築方法を明らかにすることである。特にその中においても、トヨタ生産方式に代表される経営管理技術の中心的な活動であり、生産システムの性能向上と人材育成の両面において効果を上げている改善活動において広く普及が進んでいる見える化技術の成功事例を取り上げて、効率的な管理のあり方について検討を行っている。この目的に対して平成29年度のテーマは見える化技術の導入事例の調査であった。平成28年度(前年度)は、オペレーションマネジメントやサプライチェーンマネジメントの分野において広く援用されている制御理論を参考にしながら、見える化技術をそれにより管理されるシステムとそれを用いて管理を行う人のコミュニケーションツールとしてとらえ、当該技術の内部的な構造を図式化するための方法論を提案した。平成29年度(本年度)は、この成果物を利用するステップとして位置づけており、見える化技術の導入を積極的に行っている複数の職場に行き、実際に導入されている事例についてヒヤリングを行い、実物のスケッチを行った。
KAKENHI-PROJECT-16K03897
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K03897
効率的な改善活動の技能伝承に関する研究
また、それらの情報に基づいて、提案書式により各事例を記述することを試み、本技術の内部的な構造を表現できることを確認した。これらの取り組みを通して、本研究に関連する研究業績として、国際学術誌への1件の掲載と国際学会において4件の発表を行い、本研究業績を所属大学と拙研究室ホームページに公表した。以上の計画に対する実績は、様々な表現形式で多くの産業において導入・利用されている見える化技術を統一的な書式で記述することを示しており、事例を効率的に水平展開するための方法論確立の一歩として意義があると考えられる。本研究の目的は、製造業の生産職場における技術伝承システムの構築方法を明らかにすることであり、特に、改善活動において用いられている見える化技術の成功事例を効率的に管理するためのあり方について検討することであった。また、この目的に対して3ヵ年の研究計画の中間年度にあたる本年度(平成29年度)は見える化技術の導入事例の調査をテーマとして取り組んでおり、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると考えられる。前年度に提案した見える化技術のフレームワークの適用について、生産職場において導入されている事例の調査が本年度の目的であったが、いくつかの企業の協力の中で、実際の事例を直接観察すると共に、それらの詳しい説明をうかがうことができる機会を得ることができている。その結果として、前述した提案フレームワークの適用に関する検証を円滑に行うことができた。本研究の目的は、製造業の生産職場における技術伝承システムの構築方法を明らかにすることであった。特にその中でもトヨタ生産方式やリーンマネジメントに代表される経営管理技術の中心的な活動であり、生産システムの性能向上と人材育成の両面において効果を上げている改善活動において広く普及が進んでいる見える化技術の成功事例を取り上げて、効率的な管理のあり方について検討を行った。この目的に対して最終年度である平成30年度のテーマは生産職場における改善成果のマネジメント要件の一般化であり、特に、改善成果の整理・分類に関する要件、及び改善成果例として着目した見える化技術の事業所内と、産業間における技術伝承の要件について検討を行った。前者においては、平成28年度に提案し、平成29年度にその試行を行った当該技術の内部的な構造を図式化する方法論から与えられる視点を用いることができることを議論した。また後者については、事業所内及び産業間の移転について、それぞれのケースを持つ企業との継続的なディスカッションを通して、移転元の知識・技術を参考にしながらも、移転先の課題の掘り下げや組織の状況を加味するといった移転ノウハウの存在を確認することができた。
KAKENHI-PROJECT-16K03897
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K03897
血管新生阻剤による実験腫瘍瘍の治療に関する研究ー血管鋳型走査電顕法及び免疫組織化学的検討ー
はじめに〕脳腫瘍の間質である血管は、腫瘍の発育、増殖、さらには治療と関連して非常に興味のある対象である。本研究では、血管新生阻害物質投与における実験脳腫瘍の微小血管構築の変化およびDNA合成期にある血管内皮細胞の変化を検討し、血管新生阻害剤による脳腫瘍治療の可能性を追究した。結果〕Eethylnitrosoureaを経胎盤的に投与して誘発する実験脳腫瘍は生後3カ月頃よりほぼ全例に中枢神経系腫瘍が選択的に発生するが、血管新生阻害剤と考えられるhydrocortisone出生直後から連続摂取した群では、腫瘍発生率は有意に抑制され75%にのみ腫瘍の形成が認められた。また、長径が2mm未満の微小腫瘍が全体の20%を占めた。しかし、腫瘍の微小血管構築および血管内皮細胞におけるDNA合成期細胞の分布は血管新生阻害剤摂取の有無には影響を受けず、ほぼ同様の結果を示した。長径が2mm未満の微小腫瘍では腫瘍血管の形成はなく、BrdUを取り込んだ血管内皮細胞核の存在も認められなかった。長径が2mm以上の腫瘍になると初めて正常脳には存在しない特徴的な形態を有する腫瘍血管が形成された。特に、腫瘍辺縁部は“溝"形成、小隆起、盲端など腫瘍サイズに関係なく一定の血管構築を示し、BrdUを取り込んだ血管内皮細胞核が多数存在することから活発な血管新生を示唆する形態学的所見と考えられた。考察〕血管新生阻害剤の連続投与により腫瘍の発生率は有意に抑制されたが、その効果を微小血管構築の変化として観察することは出来なかった。はじめに〕脳腫瘍の間質である血管は、腫瘍の発育、増殖、さらには治療と関連して非常に興味のある対象である。本研究では、血管新生阻害物質投与における実験脳腫瘍の微小血管構築の変化およびDNA合成期にある血管内皮細胞の変化を検討し、血管新生阻害剤による脳腫瘍治療の可能性を追究した。結果〕Eethylnitrosoureaを経胎盤的に投与して誘発する実験脳腫瘍は生後3カ月頃よりほぼ全例に中枢神経系腫瘍が選択的に発生するが、血管新生阻害剤と考えられるhydrocortisone出生直後から連続摂取した群では、腫瘍発生率は有意に抑制され75%にのみ腫瘍の形成が認められた。また、長径が2mm未満の微小腫瘍が全体の20%を占めた。しかし、腫瘍の微小血管構築および血管内皮細胞におけるDNA合成期細胞の分布は血管新生阻害剤摂取の有無には影響を受けず、ほぼ同様の結果を示した。長径が2mm未満の微小腫瘍では腫瘍血管の形成はなく、BrdUを取り込んだ血管内皮細胞核の存在も認められなかった。長径が2mm以上の腫瘍になると初めて正常脳には存在しない特徴的な形態を有する腫瘍血管が形成された。特に、腫瘍辺縁部は“溝"形成、小隆起、盲端など腫瘍サイズに関係なく一定の血管構築を示し、BrdUを取り込んだ血管内皮細胞核が多数存在することから活発な血管新生を示唆する形態学的所見と考えられた。考察〕血管新生阻害剤の連続投与により腫瘍の発生率は有意に抑制されたが、その効果を微小血管構築の変化として観察することは出来なかった。Ethylnitrosourea(ENU)経胎盤的投与により誘発した化学誘発脳腫瘍モデルの微小血管構築については既に報告した。しかし、移植操作を必要とする移植脳腫瘍モデルは機械的外傷や炎症に伴う血管反応が予測された為、当初の研究計画を変更し、まず移植脳腫瘍モデルの経時的な微小血管構築の検討およびENU経胎盤投与により誘発した化学誘発脳腫瘍モデルの微小血構築との比較検討を行った。その結果、移植脳腫瘍モデルも基本的にはENU経胎盤投与により誘発した化学誘発脳腫瘍モデルと同様の微小血管構築を示し、なかでも腫瘍辺縁部において認められた特徴的な血管構築は活発な血管新生を示唆する形態学的所見であることが推察され、第47回.日本脳神経外科学会総会(1988年、神戸)にて報告した。現在、研究計画が遅延しているものの問題なく当初の研究計画を遂行中である。はじめに〕脳腫瘍の間質である血管は、腫瘍の発育、増殖、さらには治療と関連して非常に興味のある対象である。本研究では、血管新生阻害物質投与における実験脳腫瘍の微小血管構築の変化およびDNA合成期にある血管内皮細胞の変化を検討し、血管新生阻害剤による脳腫瘍治療の可能性を追究した。結果〕Eethylnitrosoureaを経胎盤的に投与して誘発する実験脳腫瘍は生後3カ月頃よりほぼ全例に中枢神経腫瘍が選択的に発生するが、血管新生阻害剤と考えられるhydrocortisoneを出生直後から連続摂取した群では、腫瘍発生率は有意に抑制され75%にのみ腫瘍の形成が認められた。また、長径が2mm未満の微小腫瘍が全体の20%を占めた。しかし、腫瘍の微小血管構築および血管内皮細胞におけるDNA合成期細胞の分布は血管新生阻害剤摂取の有無には影響を受けず、ほぼ同様の結果を示した。長径が2mm未満の微小腫瘍では腫瘍血管の形成はなく、BrdUを取り込んだ血管内皮細胞核の存在も認められなかった。長径が2mm以上の腫瘍になると初めて正常脳には存在しない特徴的な形態を有する腫瘍血管が形成された。特に、腫瘍辺縁部は“溝"形成、小隆起、盲端など腫瘍サイズに関係なく一定の血管構築を示し、BrdUを取り込んだ血管内皮細胞核が多数存在することから活発な血管新生を示唆する形態学的所見と考えられた。
KAKENHI-PROJECT-63570692
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63570692
血管新生阻剤による実験腫瘍瘍の治療に関する研究ー血管鋳型走査電顕法及び免疫組織化学的検討ー
考察〕血管新生阻害剤の連続投与により腫瘍の発生率は有意に抑制されたが、その効果を微小血管構築の変化として観察することは出来なかった。
KAKENHI-PROJECT-63570692
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63570692
電解加工による高速極微細加工に関する基礎的研究
電解加工は極間距離が大きいために微細加工寸法領域への適用が難しく,その場合の加工速度も低い.そこで本研究では,電解加工において未だ達成されていない高速極微細加工の実現を目標とした.その結果,厚さ3μmのステンレス鋼箔に対して入口最大径2.8μm,出口最大径1.7μmの極微細穴の加工に成功した.これらは電解加工による加工例としては最小径の部類に入るものである.加工速度の向上についても検討を行い,直径10μmの工具電極を用いて厚さ8μmのステンレス鋼箔に貫通穴加工を行う場合において1min以下で加工を完了できた.これは従来の同様な報告例に比べて10倍以上の加工速度に相当する.電解加工は,硬脆材料への加工が容易である,加工速度が高い,工具電極が消耗しない,加工変質層が微小である等の優れた長所をもつ.しかし,極間距離が大きいために微細加工寸法領域への適用が難しく,その場合の加工速度も低い.そこで本研究では,電解加工において未だ達成されていない高速極微細加工の実現を目標としている.平成27年度は,まず加工試験環境の構築を目的に現有の微細超音波加工機をベースに電解加工試験装置を製作した.この加工機は超音波加工において加工荷重検出を行うために電子天秤を備えており,これにより工具電極・工作物の接触荷重を検出することで工作物荷重フィードバックによる電極送り制御が可能である.また,工具電極回転機構も備わっている.極微細加工寸法では工具電極の回転振れが大きな問題となるので,回転振れを0.2μm以下に抑えた高精度スピンドルを導入した.電極回転により,極間電解生成物の速やかな排出や,加工穴真円度の向上が期待できる.まず現有のファンクションジェネレータを用いて微細穴加工試験を行った結果,厚さ5μmのステンレス鋼に対して,内径5μm未満の穴加工に成功した.アスペクト比(穴深さ/内径)は1程度であるが,この最小加工穴径は従来達成されていなかったものであり,平成28年度の計画分が既に実現されたことになる.この結果により,現段階では新たなファンクションジェネレータを導入する必要がないことがわかった.一方,ファンクションジェネレータの出力電流を増幅する必要が新たに生じたので,高速バイポーラ電源を購入し実験を継続している.加工試験環境を構築し,微細穴加工試験を行った結果,計画より早く最小加工可能寸法(穴径)が達成されたため.電解加工は,硬脆材料への加工が容易である,加工速度が高い,工具電極が消耗しない,加工変質層が微小である等の優れた長所をもつ.しかし,極間距離が大きいために微細加工寸法領域への適用が難しく,その場合の加工速度も低い.そこで本研究では,電解加工において未だ達成されていない高速極微細加工の実現を目標としている.平成27年度に厚さ5μmのステンレス鋼箔に対して内径5μmまでの微細穴あけ加工を行ったが,平成28年度にはさらに小径の内径3.5μmまでの微細穴の加工に成功した.アスペクト比(穴深さ/内径)は1程度であるが,これは電解加工による加工例としては最小径の部類に入るものであり,加工寸法の最小化の目標を達することができた.また,平成28年度は加工速度の向上についても検討を行った.工具電極送りを定速送りから可変送りに変更することにより,最適な送り速度で加工が行え加工速度が向上した.工具電極形状を円柱から半円柱に変更することによっても,電解液の循環が良好になるので加工速度の上昇がみられた.さらに,電解液濃度を従来使用されていたものより数倍高くすることにより,かなりの加工速度の向上がみられた.これらの効果により,直径10μmの工具電極を用い,厚さ8μmのステンレス鋼箔に対して1min以下で加工を完了することができ,以前の報告例より10倍以上の加工速度が達成された.ただし,高速バイポーラ電源を用いた効果は確認できなかった.電解加工において未だ達成されていない高速極微細加工を目標としており,極微細加工に関しては穴あけ径において目標以上を達し,高速加工に関しても従来の報告例の10倍以上の加工速度が得られ,ほぼ計画通りに研究が進行しているため.電解加工は,硬脆材料への加工が容易である,加工速度が高い,工具電極が消耗しない,加工変質層が微小である等の優れた長所をもつが,極間距離が大きいために微細加工寸法領域への適用が難しく,その場合の加工速度も低い.そこで本研究では,電解加工において未だ達成されていない高速極微細加工の実現を目標とした.平成28年度までに,厚さ5μmのステンレス鋼箔に対して内径3.5μmまでの微細穴の加工を行うことができた.平成29年度には,厚さ3μmのステンレス鋼箔に対して入口最大径2.8μm,出口最大径1.7μmの極微細穴の加工に成功した.これらは電解加工による加工例としては最小径の部類に入るものであり,最小加工寸法の微細化の目標を達成することができた.また,穴以外の形状として微細貫通溝の加工を試み,厚さ8μmのステンレス鋼箔に対して溝幅10μm以下の加工例が得られた.加工速度の向上についても検討を行い,平成28年度までに,直径10μmの工具電極を用いて厚さ8μmのステンレス鋼箔に貫通穴加工を行う場合において1min以下で加工を完了できることが確認されている.
KAKENHI-PROJECT-15K05722
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K05722
電解加工による高速極微細加工に関する基礎的研究
これは従来の同様な報告例に比べて10倍以上の加工速度に相当する.平成29年度には,さらなる加工速度の向上を目指して超音波加振を援用した.その結果,加工速度の大きな向上はみられなかったが,加工穴のテーパ比が小さくなる効果が得られることがわかった.電解加工は極間距離が大きいために微細加工寸法領域への適用が難しく,その場合の加工速度も低い.そこで本研究では,電解加工において未だ達成されていない高速極微細加工の実現を目標とした.その結果,厚さ3μmのステンレス鋼箔に対して入口最大径2.8μm,出口最大径1.7μmの極微細穴の加工に成功した.これらは電解加工による加工例としては最小径の部類に入るものである.加工速度の向上についても検討を行い,直径10μmの工具電極を用いて厚さ8μmのステンレス鋼箔に貫通穴加工を行う場合において1min以下で加工を完了できた.これは従来の同様な報告例に比べて10倍以上の加工速度に相当する.平成27年度において加工試験環境がほぼ整備され,予備的な微細穴加工試験により内径5μm未満の極小径穴あけ加工に成功した.平成28年度は,加工の高速化試験に注力する予定である.高速バイポーラ電源の採用により加工電流増幅が期待できるため,これによる高速化が予想される.さらに,工作物荷重フィードバック制御,工具電極回転,超音波加振援用等によっても効果が期待できる.穴あけ加工において,内径5μm以下でアスペクト比が2程度の極小径穴の電解加工を,加工時間1min以下で完了できる加工条件を見出すことを目標とする.また,加工状態の観察が重要であり,そのための極間印加電圧・加工電流の精密測定のために高分解能オシロスコープを導入する.平成28年度までに加工の微細化と高速化がある程度達成されたが,当初の目標である,内径5μm以下でアスペクト比が2程度の極小径穴の加工を1min以下で行うことにはまだ成功していない.平成29年度はこれを達成するため,超音波加振の援用等を試みる予定である.微細加工に関する研究平成27年度に予備的に加工試験を行った結果,現段階では高周波数マルチファンクションジェネレータおよび高精度電子天秤を購入する必要がないことが判明したため.予定額よりも割引価格で物品が購入できたため,次年度に繰り越すことにした.繰越額は,平成28年度購入予定の高分解能オシロスコープのグレードの向上に用いる計画である.繰越額は,平成29年度に加工装置の消耗部品の購入に充てる予定である.
KAKENHI-PROJECT-15K05722
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K05722
白血病の原因となる融合遺伝子mRNAの動態とそれを標的とするリボザイムの設計
リボザイムは遺伝子発現の抑制やがんの治療に応用できる新しい魅力的な手段である。私共は、t(8 ; 21)転座型急性骨髄性白血病の融合遺伝子AML1-MTG8mRNAの融合点近傍の4つの部位を標的としてDNA/RNAキメラハンマーヘッド型リボザイムを作製した。各々のリボザイムのin vitroでの標的RNA切断効率は、高いものと低いものでは約100倍の違いがあった。次に、in vitroのリボザイム活性が、細胞内での標的mRNA切断活性を反映するかどうかを検討する目的で、AML1-MTG8mRNAを発現する白血病細胞株SKNO-1の分離核を用いてリボザイム活性測定系を作製した。AML1-MTG8mRNAの切断は、RNaseプロテクション法により検出した。AML1-MTG8リボザイムは、白血病細胞株の分離核内で、内在性のAML1-MTG8mRNAを濃度依存的に切断した。次に、核内のAML1-MTG8mRNAの切断産物を解析した結果、リボザイムはアンチセンス効果により内在性のRNase Hを活性化し、切断を起こすことが見い出された。更に標的とするAML1-MTG8mRNA融合領域に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドをシリーズで作製し、分離核での切断活性を検討した結果、この標的領域がアンチセンスホットスポットであることが示唆された。したがって、このリボザイムの標的領域は核内で露出しており、アンチセンスオリゴヌクレオチドが結合しやすい部位であることを示している。分離核系における切断活性の強さは、リボザイムによる細胞増殖抑制効果と相関することから、この分離核系は、リボザイムやアンチセンスによる内在性RNase H活性化によって起こる標的mRNA切断活性を定量的に解析する系として有用であり、今後の発展が期待できる。リボザイムは遺伝子発現の抑制やがんの治療に応用できる新しい魅力的な手段である。私共は、t(8 ; 21)転座型急性骨髄性白血病の融合遺伝子AML1-MTG8mRNAの融合点近傍の4つの部位を標的としてDNA/RNAキメラハンマーヘッド型リボザイムを作製した。各々のリボザイムのin vitroでの標的RNA切断効率は、高いものと低いものでは約100倍の違いがあった。次に、in vitroのリボザイム活性が、細胞内での標的mRNA切断活性を反映するかどうかを検討する目的で、AML1-MTG8mRNAを発現する白血病細胞株SKNO-1の分離核を用いてリボザイム活性測定系を作製した。AML1-MTG8mRNAの切断は、RNaseプロテクション法により検出した。AML1-MTG8リボザイムは、白血病細胞株の分離核内で、内在性のAML1-MTG8mRNAを濃度依存的に切断した。次に、核内のAML1-MTG8mRNAの切断産物を解析した結果、リボザイムはアンチセンス効果により内在性のRNase Hを活性化し、切断を起こすことが見い出された。更に標的とするAML1-MTG8mRNA融合領域に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドをシリーズで作製し、分離核での切断活性を検討した結果、この標的領域がアンチセンスホットスポットであることが示唆された。したがって、このリボザイムの標的領域は核内で露出しており、アンチセンスオリゴヌクレオチドが結合しやすい部位であることを示している。分離核系における切断活性の強さは、リボザイムによる細胞増殖抑制効果と相関することから、この分離核系は、リボザイムやアンチセンスによる内在性RNase H活性化によって起こる標的mRNA切断活性を定量的に解析する系として有用であり、今後の発展が期待できる。
KAKENHI-PROJECT-09278228
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09278228
軟骨分化に関与する因子の遺伝子解析を用いた検索
軟骨細胞株ATDC5を用い軟骨分化に関わる遺伝子を同定した。ATDC5はインシュリンおよびBMP2で軟骨細胞に分化することが報告されている。我々は、ATDC5を軟骨分化誘導かけた後、発現が変動する遺伝子をインシュリンで分化誘導した系とBMP2で誘導した系で比較解析した。分化誘導後0、4、8、12日におけるRNAを回収し、ノーザンブロット解析を用い軟骨特異的マーカーである、II型コラーゲンおよびアグリカンの発現解析した。この結果、インシュリンの系、BMP2の系で共に経時的に発現が上昇していることが確認された。次に、cDNAマクロアレイ解析により、1176個の遺伝子について、この2つの系において比較解析を行った。このcDNAマクロアレイの遺伝子のなかに含まれているアグリカン遺伝子は、ノーザンブロット解析の結果と非常に高い相関性を示した。cDNAマクロアレイ解析の結果、インシュリン、BMP2の両方の系で軟骨分化に伴い発現が上昇した遺伝子は、軟骨分化に重要な遺伝子であると考えられる。そのような遺伝子として、Early Growth Response 1(EGR-1)、Early Growth Response 3(EGR-3)、プレプロエンケファリン、VEGF-A、FN-1が同定された。本研究では、軟骨細胞株ATDC5を2つ因子により軟骨分化させ、その2つの系を比較することで、より軟骨分化に関わる遺伝子を同定しようと考えた。ATDC5はヘテロの細胞集団であることから、軟骨細胞に分化しないものも多く含むと考えられる。この2つの系で絞り込むことにより、軟骨分化に関わらない遺伝子を排除し、より軟骨分化に重要な遺伝子を同定できると考えた。その結果同定された5つの遺伝子は、将来、軟骨再生において重要な役割を果たす可能性がある。今後、その機能を解析していきたい。軟骨に分化するマウスATDC5というセルラインを用いて、軟骨分化において重要な役割を果たす遺伝子を同定、解析するために、まず、このATDC5を軟骨分化をさせてから0、4、8、12日におけるRNAを回収した。ATDC5の培養は常法に従い5%FBS存在下でおこないコンフルエントに達した後インシュリンを加えて軟骨細胞へと分化させた。RNAの回収には、Trizol Reagentを用いて回収した。回収したRNAを用いてRT-PCRを行い軟骨特異的遺伝子であるType II Collagenの発現を確認した。また、このRNAを用いノーザンブロット法によりタイプ2コラーゲン、タイプ10コラーゲン、アグリカン、デコリンの発現パターンを解析した。タイプ2コラーゲン、タイプ10コラーゲン、アグリカン、デコリンの発現パターンは、それぞれ分化に従いその発現が上昇し、これらの結果は従来報告されたパターンと一致した。回収したRNAが軟骨分化にともなって発現してきたものであることが確認されたので、このRNAを使って他の遺伝子について、その発現パターンに興味深いものがないか検索した。シンデカン1、シンデカン2、シンデカン3、パールカン、ハス1、ハス2、ハス3、COMP、EXTなど軟骨の細胞外マトリックスに関係すると思われる遺伝子をノーザンブロット法で解析したが、興味深い結果は得られなかった。これらの結果はプローブを作成した位置が悪いことなどが原因とも考えられるので、位置を変えて再度プローブを作成し、もう一度ノーザンブロット法で解析しようと考えている。軟骨細胞株ATDC5を用い軟骨分化に関わる遺伝子を同定した。ATDC5はインシュリンおよびBMP2で軟骨細胞に分化することが報告されている。我々は、ATDC5を軟骨分化誘導かけた後、発現が変動する遺伝子をインシュリンで分化誘導した系とBMP2で誘導した系で比較解析した。分化誘導後0、4、8、12日におけるRNAを回収し、ノーザンブロット解析を用い軟骨特異的マーカーである、II型コラーゲンおよびアグリカンの発現解析した。この結果、インシュリンの系、BMP2の系で共に経時的に発現が上昇していることが確認された。次に、cDNAマクロアレイ解析により、1176個の遺伝子について、この2つの系において比較解析を行った。このcDNAマクロアレイの遺伝子のなかに含まれているアグリカン遺伝子は、ノーザンブロット解析の結果と非常に高い相関性を示した。cDNAマクロアレイ解析の結果、インシュリン、BMP2の両方の系で軟骨分化に伴い発現が上昇した遺伝子は、軟骨分化に重要な遺伝子であると考えられる。そのような遺伝子として、Early Growth Response 1(EGR-1)、Early Growth Response 3(EGR-3)、プレプロエンケファリン、VEGF-A、FN-1が同定された。本研究では、軟骨細胞株ATDC5を2つ因子により軟骨分化させ、その2つの系を比較することで、より軟骨分化に関わる遺伝子を同定しようと考えた。ATDC5はヘテロの細胞集団であることから、軟骨細胞に分化しないものも多く含むと考えられる。この2つの系で絞り込むことにより、軟骨分化に関わらない遺伝子を排除し、より軟骨分化に重要な遺伝子を同定できると考えた。その結果同定された5つの遺伝子は、将来、軟骨再生において重要な役割を果たす可能性がある。今後、その機能を解析していきたい。
KAKENHI-PROJECT-14657518
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14657518
新型打撃高圧装置の開発と動的圧縮下における潤滑油の高圧レオロジー評価
ダイヤモンドアンビルセル型高圧発生装置と打撃圧縮法を組み合わせたこれまでにない打撃高圧装置を開発した.この装置と球変形解析法により転がり軸受などと同条件の3GPa,ミリ秒オーダーの瞬間的動的に圧縮,せん断下で得られた潤滑油の固化圧力,ガラス固化後のトラクション係数の目安は,ほとんどの油で準静的値より若干低いが概してほぼ同程度となった,したがって,潤滑油中変形球の相当ひずみおよび平均直径の増加は準静的の値に比べ半分以下であったが,潤滑油のレオロジー・力学特性面からの動的高圧固化摩擦特性はほぼ準静的のもので近似できると総括した.研究目的はダイヤモンドアンビルセル型高圧発生装置(DAC)と打撃圧縮法を組み合わせたこれまでにない打撃高圧装置を開発して,転がり軸受などでミリ秒オーダーの瞬間的動的に圧縮,せん断される潤滑油の固化圧力,ガラス固化後のせん断応力など動的高圧レオロジーを機械要素で必要十分な3GPaまで評価することである.2年目本年度の研究実績を「研究実施計画」に照らし,以下にまとめる.1打撃装置の円筒パイプガイドを透明アクリル在室に変更し,落下高さを100から300mmまで変えて,圧力を1.7GPaから3.5GPaまで広範囲に実験できた.圧力室にはりん青銅ガスケット,レオロジー評価用微小球はアルミ球と強度の高い銅球を用い,準静的実験と同様,限界せん断応力に近い値を評価できた.2基本的なグリースおよび最近のグリースで広範囲に実験した結果,固化後のトラクション係数の目安は,トラクショングリースでは動的圧縮下で準静的値と同程度,転がり軸受用グリース,宇宙用グリース、合成炭化水素基油グリースなど通常のグリースでは若干低くなることが新たに確認できた.さらに広範囲に実験するため,先行してイオン液体などの準静的実験を行った.3宇宙用グリース基油や次世代潤滑剤と期待されるイオン液体の高圧粘度を測定した.4打撃専用DAC装置を新たに考案,製作し,基油で容易に実験できることを確認し,得られた基油のトラクション係数の目安は,トラクション油,転がり軸受油ともに,銅球,アルミ球ともグリースのものより若干小さい値となった.最高圧力は2.5GPa程度と低かった.研究目的はダイヤモンドアンビルセル型高圧発生装置(DAC)と打撃圧縮法を組み合わせたこれまでにない打撃高圧装置を開発して,転がり軸受などでミリ秒オーダーの瞬間的動的に圧縮,せん断される潤滑油の固化圧力,ガラス固化後のせん断応力など動的高圧レオロジーを機械要素で必要十分な3GPaまで評価することである.3年目本年度(最終年度)の研究実績を「研究実施計画」に照らし,以下にまとめる.1平均直径の圧力変化から得た固化圧力はいずれの試料油においても準静的の値とほぼ一致し,固化圧力時間依存性はない.潤滑油の動的圧縮固化圧力が低下し,圧縮率は準静的なものより小さくなるとの予想と異なった.2動的圧縮下で固化後のトラクション係数の目安は,変形球のひずみ,応力の偏差成分から得られた.ほとんどの油で準静的値および文献の摩擦特性より若干低いが概してほぼ同程度となった,1で固化圧力は差がないため粘度圧力係数にも差がなく油膜厚さも同じとなり,摩耗特性も同程度と推察される.ある種のウレアグリースで文献の摩擦特性と同じ傾向となった.3物理的理論的に圧縮時間依存挙動は粘弾性モデルで緩和時間τ(=η/G,η:粘度,G:横弾性係数)=1程度で固化すると考えられ, G≒10E9Pa, η≒10E7Pasを代入してτ=10E-2秒となり,観測された動的圧縮時間の10E-4秒では準静的加圧より低い固化圧力と予想されたが,準静的と同じであった.したがって,変形球の相当ひずみおよび平均直径の増加は準静的の値に比べ半分以下であったが,潤滑油のレオロジー・力学特性面からの動的高圧固化摩擦特性はほぼ準静的のもので近似できると総括できる.ダイヤモンドアンビルセル型高圧発生装置と打撃圧縮法を組み合わせたこれまでにない打撃高圧装置を開発した.この装置と球変形解析法により転がり軸受などと同条件の3GPa,ミリ秒オーダーの瞬間的動的に圧縮,せん断下で得られた潤滑油の固化圧力,ガラス固化後のトラクション係数の目安は,ほとんどの油で準静的値より若干低いが概してほぼ同程度となった,したがって,潤滑油中変形球の相当ひずみおよび平均直径の増加は準静的の値に比べ半分以下であったが,潤滑油のレオロジー・力学特性面からの動的高圧固化摩擦特性はほぼ準静的のもので近似できると総括した.研究目的はダイヤモンドアンビルセル型高圧発生装置(DAC)と打撃圧縮法を組み合わせたこれまでにない打撃高圧装置を開発して,転がり軸受などでミリ秒オーダーの瞬間的動的に圧縮,せん断される潤滑油の固化圧力,ガラス固化後のせん断応力など動的高圧レオロジーを機械要素で必要十分な3GPaまで評価することである.初年度の研究実績を「研究実施計画」に照らし,以下にまとめる.1)打撃方式は円筒パイプガイド内を金属落体を重力で落下させる方式が広範囲に実験条件を設定できるので適切と判断して開発した.落下高さ,質量を変えて約300mm, 260gの条件で固化トラクショングリース中のアルミ球の大きな塑性変形が観測でき,打撃圧力発生性能を有することがわかった.
KAKENHI-PROJECT-23560160
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23560160
新型打撃高圧装置の開発と動的圧縮下における潤滑油の高圧レオロジー評価
2)圧電衝撃センサーによる打撃高圧装置のピーク力までの衝撃時間は約130μ秒であったがDAC装置なしで直接センサーを衝撃した時間約40μ秒の約3倍となった.衝撃時間と圧力室のせん断ひずみからのせん断速度は1000/秒程度となった.衝撃力は約1.5kNとなったが直接打撃した力11kNの約1/8と小さくなった.これは打撃高圧装置内でいくつもの部品が直列に配置され,部品界面での力の吸収,弾性バネ効果などが考えられる.3)打撃衝撃圧力を推定するため,衝撃実験と同じグリースで,従来のDACとルビー蛍光法による準静的実験を行い,圧力室厚さ減少量で圧力を推定する圧力較正図を構築した.比較のため準静的条件でのマイクロ金属球変形実験も行った.4)トラクションリチウムグリース基油と転がり軸受用グリース基油(合成油)の高圧粘度を測定した.24年度の主な目標は,実験計画を立て,標準的な油,新開発油,試作油で3GPaまでの広範囲に実験を行い,また新たに実施計画に加えた打撃専用DAC装置を新たに考案,製作,実験を行うことであり,研究実績の概要からおおむね順調に進展していると言える.しかしながら実験が十分広範囲とは言えない.23年度の主な目標は,DACと打撃圧縮法を組み合わせたこれまでにない打撃高圧装置を開発して,潤滑油の動的高圧レオロジー評価法を確立することにあり,研究実績の概要からおおむね順調に進展していると言える.精度の改善,衝撃力の減少改善が課題として残る.当初の計画通り平成25年度は平成24年度で不十分な実験を行いつつ,データを蓄積,整理して,前回の科研費の準静的データと比較,文献との比較を行い,潤滑油の高圧レオロジー特性の圧縮時間依存性評価,モデル化および総括を行う.実験,データ処理において大学院生が研究協力者であるが,衝撃実験は土田悠生氏,準静的実験は湯川嵩士氏,黄瀬慧氏,高圧粘度測定は鈴木史明氏の役割分担である.当初の計画通り平成24年度は平成23年度で確立した打撃高圧装置による動的高圧レオロジー評価法を用いて,実験計画を立て,標準的な油,新開発油,試作油で3GPaまでの広範囲に実験を行う.平成25年度は平成24年度で不十分な実験を行いつつ,さらにデータを蓄積,整理して,前回の科研費の準静的データと比較,文献との比較を行い,潤滑油の高圧レオロジー特性の圧縮時間依存性評価,モデル化および総括を行う.物品費,旅費,人件費・謝金,その他の配分は当初の計画より学会発表旅費を増やす予定である.必要に応じ代表者,研究協力者が学会にて成果を発表して専門家の助言を得る.物品費,旅費,人件費・謝金,その他の配分はほぼ当初の計画通りの予定である.ただし,平成24年度の物品費は当初,マルチ入力データ収集システム一式で計画していたがデジタルオシロで代用できることがわかり,その代わりに新たな課題である精度の改善のため打撃専用DAC装置を設計,発注することにした.
KAKENHI-PROJECT-23560160
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23560160
上顎顎義歯装着患者における口蓋咽頭閉鎖度の客観的評価とそのデータベース化
上顎顎補綴患者では、上顎の実質欠損により発語機能、咀嚼機能、嚥下機能など口腔の主機能にその低下や障害を認める。これらの機能低下あるいは障害を回復するために補綴学的には顎義歯を適用する。ところが、上顎欠損の部位や大きさまたは、顎義歯の着脱方向との関係で欠損部の充分な閉鎖が得られず、顎義歯装着後に発語、咀嚼、嚥下障害にある程度満足のゆく改善がみられたにもかかわらず、空気や水分の鼻漏という点で良好な結果が得られない場合がある。上顎顎義歯による上顎欠損部の閉鎖度を評価する従来の方法(ex.発語明瞭度、ストロー吹き(時間)、ヘビ笛吹き(長さ)、鼻孔前の鏡やステンレスパイプの曇り具合の形や大きさ等)ではその閉鎖度を定量的・客観的に評価することは困難である。また、吸い上げられた水柱の高さを測定する方法が報告されているが、取り扱いの煩雑な装置を用いなければならない。そこで、上顎顎義歯装着による口蓋咽頭閉鎖度を定量的・客観的に評価する目的で、差圧トランスデューサおよび呼吸用アンプを応用し、年令2425歳の健常男子4名および上顎実質欠損による口蓋咽頭閉鎖不全を有する患者8名を対象に、顎義歯装着前後のBlowingおよびSucking時における口腔内圧の圧変化をパラメータとして分析・評価を試みた。その結果被験者各個人の顎義歯装着前のBlowingおよびSucking時の最大圧・安定圧・安定圧持続時間・圧減衰時間を基準値とし、最終顎義歯装着後のそれらとを比較することで口蓋咽頭閉鎖度の定量的・客観的な評価が可能であることがわかった。さらにまた、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータを用いれば、この評価結果を含め患者に関する形態のことなる各種データ(ex.カルテ、口腔内写真、X-ray、音声、下顎運動)を同一次元で扱うことが可能であり、それらのデータベース構築が比較的容易に行えることがわかった。上顎顎補綴患者では、上顎の実質欠損により発語機能、咀嚼機能、嚥下機能など口腔の主機能にその低下や障害を認める。これらの機能低下あるいは障害を回復するために補綴学的には顎義歯を適用する。ところが、上顎欠損の部位や大きさまたは、顎義歯の着脱方向との関係で欠損部の充分な閉鎖が得られず、顎義歯装着後に発語、咀嚼、嚥下障害にある程度満足のゆく改善がみられたにもかかわらず、空気や水分の鼻漏という点で良好な結果が得られない場合がある。上顎顎義歯による上顎欠損部の閉鎖度を評価する従来の方法(ex.発語明瞭度、ストロー吹き(時間)、ヘビ笛吹き(長さ)、鼻孔前の鏡やステンレスパイプの曇り具合の形や大きさ等)ではその閉鎖度を定量的・客観的に評価することは困難である。また、吸い上げられた水柱の高さを測定する方法が報告されているが、取り扱いの煩雑な装置を用いなければならない。そこで、上顎顎義歯装着による口蓋咽頭閉鎖度を定量的・客観的に評価する目的で、差圧トランスデューサおよび呼吸用アンプを応用し、年令2425歳の健常男子4名および上顎実質欠損による口蓋咽頭閉鎖不全を有する患者8名を対象に、顎義歯装着前後のBlowingおよびSucking時における口腔内圧の圧変化をパラメータとして分析・評価を試みた。その結果被験者各個人の顎義歯装着前のBlowingおよびSucking時の最大圧・安定圧・安定圧持続時間・圧減衰時間を基準値とし、最終顎義歯装着後のそれらとを比較することで口蓋咽頭閉鎖度の定量的・客観的な評価が可能であることがわかった。さらにまた、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータを用いれば、この評価結果を含め患者に関する形態のことなる各種データ(ex.カルテ、口腔内写真、X-ray、音声、下顎運動)を同一次元で扱うことが可能であり、それらのデータベース構築が比較的容易に行えることがわかった。上顎顎義歯装着による口蓋咽頭閉鎖度を定量的・客観的に評価する目的で、差圧トランスデューサおよび呼吸用アンプを応用し、口蓋咽頭閉鎖不全を有する患者の顎義歯装着前後のBlowingおよびSucking時における口腔内圧の圧変化をパラメータとして分析・評価を試みた。その結果、被験者各個人の顎義歯装着前のBlowingおよびSucking時の最大圧・安定圧・安定圧持続時間・圧減衰時間を基準値とし、最終顎義歯装着後のそれらとを比較することで口蓋咽頭閉鎖度の定量的・客観的な評価が可能であることがわかった。さらにまた、本装置を用いることにより上記分析・評価が診療室のチェアサイドにて容易に行えることもわかった。一方、上顎顎義歯装着前後の音声データに関しては、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータを用いれば容易に診療室にてデータの採取、分析・評価が可能であることがわかった。さらに、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータを用いれば、患者に関する形態の異なる各種データ、すなわち文字データ(ex.カルテ)、画像データ(ex.口腔内写真、X-ray)、音声データ、その他動的データ(ex,顎運動)を同一次元で扱うことが可能であり、さらに、そのコンピュータがグラフィカルユーザーインターフェイスに優れていればそれらデータの取り扱いとそれらのデータベース構築が比較的容易に行えることがわかった。今後の課題としては、第一に診療室において極力雑音の少ない音声データを採取する方法について検討すること。
KAKENHI-PROJECT-04671207
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04671207
上顎顎義歯装着患者における口蓋咽頭閉鎖度の客観的評価とそのデータベース化
第二として画像データを診療室において極力鮮明にかつコンパクトに表示できるように検討すること。第三にキーボードによる文字データの入力に対して他の入力方法をも含めて検討を加えること。最終の第四として構築したデータベースを診療室において扱いやすくすること。上顎顎補綴患者では、上顎の実質欠損により発語機能、咀嚼機能、嚥下機能など口腔の主機能にその低下や障害を認める。これらの機能低下あるいは障害を回復するために補綴学的には顎義歯を適用する。ところが、上顎欠損の部位や大きさまたは、顎義歯の着脱方向との関係で欠損部の充分な閉鎖が得られず、顎義歯装着後に発語、咀嚼、嚥下障害にある程度満足のゆく改善がみられたにもかかわらず、空気や水分の鼻漏という点で良好な結果が得られない場合がある。上顎顎義歯による上顎欠損部の閉鎖度を評価する従来の方法(ex.発語明瞭度、ストロー吹き(時間)、ヘビ笛吹き(長さ)、鼻孔前の鏡やステンレスパイプの曇り具合の形や大きさ等)ではその閉鎖度を定量的・客観的に評価することは困難である。また、吸い上げられた水柱の高さを測定する方法が報告されているが、取り扱いの煩雑な装置を用い無ければならない。そこで、上顎顎義歯装着による口蓋咽頭閉鎖度を定量的・客観的に評価する目的で、差圧トランスデューサおよび呼吸用アンプを応用し、年令2425歳の健常男子4名および上顎実質欠損による口蓋咽頭閉鎖不全を有する患者8名を対象に、顎義歯装着前後のBlowingおよびSucking時における口腔内圧の圧変化をパラメータとして分析・評価を試みた。その結果、被験者各個人の顎義歯装着前のBlowingおよびSucking時の最大圧・安定圧・安定圧持続時間・圧減衰時間を基準値とし、最終顎義歯装着後のそれらとを比較することで口蓋咽頭閉鎖度の定量的・客観的な評価が可能であることがわかった。さらにまた、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータを用いれば、この評価結果を含め患者に関する形態のことなる各種データ(ex.カルテ、口腔内写真、X-ray、音声、下顎運動)を同一次元で扱うことが可能であり、それらのデータベース構築が比較的容易に行なえることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-04671207
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04671207
ヒトの皮膚交感神経活動中の発汗神経活動と血管収縮神経活動の温度依存性変化
環境温が皮膚交感神経活動中の発汗神経活動成分および血管運動神経活動成分に及ぼす影響について検討した.5人の健常成人男子を対象とし,臥位にて皮膚交感神経活動を微小神経電図法を用いて,先端直径1μm,インピーダンス35MΩのタングステン微小電極2本を脛骨神経および腓骨神経に刺入し,両神経から同時記録法により皮膚神経束中の交感神経節後遠心性線維を記録した.発汗は換気カプセル法にて,皮膚血流量はレーザードプラー血流量計にてモニターした.この末梢効果器である汗腺および皮膚血管括約筋の活動から生ずる発汗波および皮膚血流量の低下をもとに,皮膚交感神経活動を発汗神経活動成分および血管運動神経活動成分に分類し,これらの成分の変化が環境温によりどのように影響されるかを検討した.環境温を25°Cから34°Cに上昇させると,腓骨神経における発汗神経活動成分と血管運動神経成分は,ともに増加したが,脛骨神経からの皮膚交感神経活動は、両成分ともに抑制された.環境温を34°Cから18°Cに低下させると,脛骨神経においては,発汗神経活動成分および血管運動神経活動成分ともに増加したが、脛骨神経においては、血管運動神経活動成分が増加し、発汗神経活動成分はむしろ減少した。本研究の結果は、皮膚交感神経活動中の発汗神経活動成分と血管運動神経成分は環境温により相違をもって影響されていることを示す.脛骨神経および腓骨神経中の皮膚交感神経活動の発汗神経活動成分および血管運動神経活動成分の違いは、有毛部と無毛部における精神性および温熱性の,発汗あるいは血管収縮に関与する可能性が示唆された.環境温が皮膚交感神経活動中の発汗神経活動成分および血管運動神経活動成分に及ぼす影響について検討した.5人の健常成人男子を対象とし,臥位にて皮膚交感神経活動を微小神経電図法を用いて,先端直径1μm,インピーダンス35MΩのタングステン微小電極2本を脛骨神経および腓骨神経に刺入し,両神経から同時記録法により皮膚神経束中の交感神経節後遠心性線維を記録した.発汗は換気カプセル法にて,皮膚血流量はレーザードプラー血流量計にてモニターした.この末梢効果器である汗腺および皮膚血管括約筋の活動から生ずる発汗波および皮膚血流量の低下をもとに,皮膚交感神経活動を発汗神経活動成分および血管運動神経活動成分に分類し,これらの成分の変化が環境温によりどのように影響されるかを検討した.環境温を25°Cから34°Cに上昇させると,腓骨神経における発汗神経活動成分と血管運動神経成分は,ともに増加したが,脛骨神経からの皮膚交感神経活動は、両成分ともに抑制された.環境温を34°Cから18°Cに低下させると,脛骨神経においては,発汗神経活動成分および血管運動神経活動成分ともに増加したが、脛骨神経においては、血管運動神経活動成分が増加し、発汗神経活動成分はむしろ減少した。本研究の結果は、皮膚交感神経活動中の発汗神経活動成分と血管運動神経成分は環境温により相違をもって影響されていることを示す.脛骨神経および腓骨神経中の皮膚交感神経活動の発汗神経活動成分および血管運動神経活動成分の違いは、有毛部と無毛部における精神性および温熱性の,発汗あるいは血管収縮に関与する可能性が示唆された.
KAKENHI-PROJECT-06670079
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06670079
アジア型まちづくりの仕組みと継承に関する国際比較研究。
1.研究の視点本研究は、東南アジア諸国のまちづくりに関わる都市・建築法制及び開発計画関連の資料収集とその体系的な整理を行い、法制・計画が及ぼす都市形成、市街地形成の誘導、居住環境の改善などに対する効果と役割を検証することを通して、東南アジア固有のまちづくりの仕組み、性格付けを明らかにしようとするものである。このため次のステップで研究を進めた。(1)東南アジア諸国(シンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、フィリッピン、香港、台湾)における都市・建築法制資料の収集。(2)都市形成、市街地形成に関わる地域開発計画、土地利用画計、住宅供給政策、居住改善プログラムなどの行政資料の収集。(3)収集した資料の抄訳とその体系的、比較的整理。(4)主要都市における都市・市街地形成のトレースとまちづくりに関わる問題点の把握、並びに居住環境の改善方策の具体的内容・把握。2.研究報告書の構成まず第2章で、シンガポールにおける都市形成の変遷とそれに関わるマスタープランの効果、パブリックハウジングの役割を明らかにした。第3章では、マレーシアの首都クアラルンプールにおける都市居住問題とその対応策を整理した。第4章では、インドネシアの首都ジャガルタにおけるインナーシティ問題の特徴とそれに対する計画、管理方策を整理した。第5章では、タイの首都バンコクにおける市街地形成、スプロール問題を住宅地開発とからめて把握し、そこにおける開発の特徴、ショップハウスの役割、改善方策について整理した。第6章では、フィリッピンの首都マニラにおける大都市圏計画及び都市形成について特徴をとらえると共に、スクオッター発生の問題と改善方策について整理した。1.研究の視点本研究は、東南アジア諸国のまちづくりに関わる都市・建築法制及び開発計画関連の資料収集とその体系的な整理を行い、法制・計画が及ぼす都市形成、市街地形成の誘導、居住環境の改善などに対する効果と役割を検証することを通して、東南アジア固有のまちづくりの仕組み、性格付けを明らかにしようとするものである。このため次のステップで研究を進めた。(1)東南アジア諸国(シンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、フィリッピン、香港、台湾)における都市・建築法制資料の収集。(2)都市形成、市街地形成に関わる地域開発計画、土地利用画計、住宅供給政策、居住改善プログラムなどの行政資料の収集。(3)収集した資料の抄訳とその体系的、比較的整理。(4)主要都市における都市・市街地形成のトレースとまちづくりに関わる問題点の把握、並びに居住環境の改善方策の具体的内容・把握。2.研究報告書の構成まず第2章で、シンガポールにおける都市形成の変遷とそれに関わるマスタープランの効果、パブリックハウジングの役割を明らかにした。第3章では、マレーシアの首都クアラルンプールにおける都市居住問題とその対応策を整理した。第4章では、インドネシアの首都ジャガルタにおけるインナーシティ問題の特徴とそれに対する計画、管理方策を整理した。第5章では、タイの首都バンコクにおける市街地形成、スプロール問題を住宅地開発とからめて把握し、そこにおける開発の特徴、ショップハウスの役割、改善方策について整理した。第6章では、フィリッピンの首都マニラにおける大都市圏計画及び都市形成について特徴をとらえると共に、スクオッター発生の問題と改善方策について整理した。1.研究目的と本年度の作業本研究は、東南アジア諸国の都市・建築法制の資料収集と体系的な整理・理解を行い、それらの施行・影響、効果を実際の都市・市街地形成とからめて実態的に検証し、これらから、東南アジア固有の都市・建築法制度体系の性格付け、そこにおける我が国の位置付けを明確にしようとするものである。本年度は、東南アジア諸国の都市・建築法制資料の収集と特徴の把握、体系的整理を行った。以下、研究成果のひとつとしてシンガポールの都市・住宅制度とそれによる都市形成への影響の概要を述べる。2.シンガポールの都市、住宅制度と都市形成(1)マスタープランによる都市形成:マスタープランの性格はPlanning Actに基づく法定プランであり、Planning Departmentが担当し、マスタープラン委員会で検討され、5年ごとに見直される。計画は、コンセプトプランにより誘導され、3つのエリア、人口をベースとして、ゾーニング、居住密度を重視し、住居地区と工業地区を中心とした修正がなされている。マスタープランが都市形成へ与える効果として、都市成長の誘導、人口再配分の誘導、ゾーニングによる誘導、整備・開発目標の明確化、民間開発の誘導がある。(2)Publc Housingと都市形成:Public Housingの性格は、Housing and Development ActによりHousing and Development Boardが設立され、HDBはPublic Housingに関する全面的な責任を負う。ローインカムハウジングであり、近隣住区を中心としたアメニティ重視型のため、政府からの財政的バックアップが大きい。計画は、1960年より5ヶ年計画で住宅プログラムがスタートし、1985年までに全人口の80%を吸収した。ニュータウンと連動して職住近接型のあふれ出し人口の吸収を行った。1.研究の目的と本年度の作業本研究は、東南アジア諸国の都市・建築法制の資料収集と体系的な整理・理解を行ない、それらの施行・影響、効果を実際の都市・市街地形成とからめて検証し、これらから、東南アジア固有の都市・建築法制度体系の性格付け、そこにおける我国の位置付けを明確にしようとするものである。本年度は、都市・建築法制が果たしている市街地形成の効果(影響)と法制度ではカバ-出来ない部分を実態的に明らかにした。また、最終年度として研究全体のまとめを行った。以下その概要を示す。2.バンコク(タイ)のスラムと改善事業バンコクの都心部には、約70万人(都心部人口の20%)が生活する。400か所以上のスラム・スクオッタ-地区が存在する。これらの地区は都心部での公共施設建設、特に排水設備
KAKENHI-PROJECT-63302056
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63302056
アジア型まちづくりの仕組みと継承に関する国際比較研究。
・洪水調節事業といった公益事業の大きな障害となっている。他方、これらの地又は都市の経済活動に必要な多数の人材の供給源として役立っている。こうした地区の生活環境の改善のために多様な事業が実施されてきた。スラククリアランスと再開発、地区更新、セルフヘルプハウジング、サイトアンドサ-ビス、スラム改良、協同建設、必要最小ニ-ズの充足がある。3.クアラルンプ-ル(マレ-シア)のスクオッタ-と政策クアラルンプ-ル市の人口の24%、労働人口の15%がスクオッタ-居住者であると推計されている。それは177か所、面積にして177haの土地を占拠している。スクオッタ-地区の密度は平均22.5戸/haで、44%程度が貧困レベル以下でする。スクオッタ-に対する政府の政策は変化している。法律違反者であり、住宅を政府基準以下とする違法者であるという見方から、スクオッタ-の人種的・人口学的構成の面で進行する変化と新マレ-シア経済政策とが指示する「柔軟な寛容」へ変っている。
KAKENHI-PROJECT-63302056
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63302056
第一原理分子動力学法による構造サンプリングと非平衡ダイナミクス
凝縮系の熱物理と非平衡ダイナミクスの研究に必要な長時間・大規模シミュレーションを実現するため,第一原理分子動力学法プログラムxTAPPの高並列化,高度化,高機能化を行った。また第一原理から原子間の非調和相互作用を効率的にモデリングして格子熱伝導率を高精度計算する手法を開発した。電気化学反応のシミュレーションでは,本グループメンバーが提案した有効媒質理論を拡張し,任意の一定バイアス電圧をかけたシミュレーションを可能にした。xTAPPならびに熱伝導率計算のプログラムパッケージALAMODEは,オープンソースコードとして公開した。凝縮系の熱物理と非平衡ダイナミクスの研究に必要な長時間・大規模シミュレーションを実現するため,第一原理分子動力学法プログラムxTAPPの高並列化,高度化,高機能化を行った。また第一原理から原子間の非調和相互作用を効率的にモデリングして格子熱伝導率を高精度計算する手法を開発した。電気化学反応のシミュレーションでは,本グループメンバーが提案した有効媒質理論を拡張し,任意の一定バイアス電圧をかけたシミュレーションを可能にした。xTAPPならびに熱伝導率計算のプログラムパッケージALAMODEは,オープンソースコードとして公開した。本研究グループでは,次世代半導体デバイスや熱電素子,電池等エネルギー変換素子への応用を念頭に,第一原理分子動力学法を用いてナノ構造体や新材料の熱科学の解明を目的とする.具体的には,材料およびナノ構造体の熱伝導度,熱膨張率,熱破壊の前駆現象,固液相変化とナノスケールでの相関や揺らぎ,分子固体中や分子/電極界面での電子移動による再配置エネルギーと電子移動度など,原子間相互作用の非調和性が本質的に重要となる大きな原子変位を伴う非平衡物理現象の予測と,ダイナミクスの解明を目指している.本年度は次のような成果を上げた.(1)動力学の第一原理計算に用いる平面波基底第一原理計算プログラムxTAPPを,稲葉班で開発されたアクセラレータGrape-DRを使えるように改変し,問題点の洗い出しを行った.(2)物質の熱伝導度の第一原理計算を実現するため,短時間の第一原理分子動力学シミュレーションから非調和格子モデルを導出する手法を開発した.また得られたモデルを使った非平衡分子動力学法シミュレーションを行い,シリコンとダイヤモンドの熱伝導特性を調べた.(3)超ソフト擬ポテンシャルの多重参照機能を用いて,結晶中の欠陥による内殻XPSを高精度で計算する手法を提案し,Si結晶中のB欠陥について,0.1eV程度の精度で実験を再現できることを示した.(4)新たな境界条件を導入することによりESM法を拡張した.これにより,従来のESM法の問題であった"真空領域の導入"と"原子に対するバリアポテンシャルの導入"の二つの問題が同時に解決された.また,真空領域の除去により電極表面への印加電圧が明瞭に定義することが可能となった.(5)平面波基底第一原理計算を用いて,仮想的なAlN/MgB2(0001)界面の安定構造と電子状態を調べ,最安定状態で強磁性が発現することを見出した.本研究グループでは,次世代半導体デバイスや熱電素子,電池等工ネルギー変換素子への応用を念頭に,第一原理分子動力学法を用いてナノ構造体や新材料の熱科学の解明を目的とする.具体的には,材料およびナノ構造体の熱伝導度,熱膨張率,熱破壊の前駆現象,固液相変化とナノスケールでの相関や揺らぎ,分子固体中や分子/電極界面での電子移動による再配置エネルギーと電子移動度など,原子間相互作用の非調和性が本質的に重要となる大きな原子変位を伴う非平衡物理現象の予測と,ダイナミクスの解明を目指している.本年度は次のような成果を上げた.(1)平面波基底第一原理計算での交換相互作用計算を加速するため,GPGPUの利用を試み,価格性能比の観点で十分な性能を得ることに成功した.(2)6次の非調和項まで含めた非調和格子模型を第一原理分子動力学法の結果から導出することに成功し,それを非平衡分子動力学法に用いて幅広い温度領域での熱伝導シミュレーションを安定に実行できることを示した.バルクSiの高温熱伝導度を計算し,実測データの外挿値と定量的に良く一致する結果を得た.(3)固液界面の電気二重層の第一原理分子動力学計算を行い,電位を評価する新たな手法を導入して,非経験的にHelmholtz層の静電容量を求めることに成功した。その結果,Helmholtz層の新たな微視的描像を得た.(4)電池系のモデリングに有効な,滑らかに無限大へと変化する誘電率の関数を用いるsmooth ESM法を開発した.(5)擬ポテンシャル法で結晶中の欠陥による内殻XPSを高精度計算する手法を用いて,シリコン中のBを含む欠陥系の境界条件評価を踏まえた理論計算を行い,実際の実験データと比較してその有効性を実証した.(6)グラフェンとGaN,AlNの界面構造を調べ,引っ張り応力による大きな構造変化を予測した.本研究グループでは,材料およびナノ構造体の熱伝導度,熱膨張率,熱破壊の前駆現象,固液相変化とナノスケールでの相関や揺らぎ,分子固体中や分子/電極界面での電子移動による再配置エネルギーと電子移動度など,原子間相互作用の非調和性が本質的に重要となる大きな原子変位を伴う非平衡物理現象の予測とダイナミクスの解明を目指している。これらの物理量を意味のある統計量として計算し,物理現象を正しく理解・予測するためには,これまでにない大規模かつ長時間のシミュレーションと統計的なサンプリングが必要である。
KAKENHI-PLANNED-22104006
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-22104006
第一原理分子動力学法による構造サンプリングと非平衡ダイナミクス
そのために平面波基底関数を用いた第一原理計算コードの整備と、構造とダイナミクス研究に必要な第一原理に基づくモデリング手法の開発を行ってきた。今年度は平面波基底第一原理計算コードxTAPPの擬ポテンシャルを整備し、GUIと合わせた一連のプログラム群の一般公開を行った。またこれまでに開発してきた第一原理分子動力学法による非調和格子モデルの導出法と熱伝導率計算手法(3次非調和項による緩和時間計算)を用いて、様々な物質の熱伝導率の実証計算を行い、熱伝導率が高いSiから熱伝導率が低く熱電材料になるPbTe, Bi2Te3,クラスレート化合物BGGまで、4桁の範囲にわたって熱伝導率の物質依存性と温度依存性の定量計算が可能であることを実証した。さらに電解液を用いたデバイスの現実的なモデリングを可能にするSmooth-ESM法を完成させた。また第一原理計算に現れるブリリュアンゾーン積分のk点数に対する収束を早める改良テトラヘドロン法の開発、生体分子のように複雑な系の電子状態を精密にモデリングする手法であるFMO-LCMO法の改良を行った。本研究グループでは,材料およびナノ構造体の熱伝導度,熱膨張率,熱破壊の前駆現象,固液相変化とナノスケールでの相関や揺らぎ,分子固体中や分子/電極界面での電子移動による再配置エネルギーと電子移動度など,原子間相互作用の非調和性が本質的に重要となる大きな原子変位を伴う非平衡物理現象の予測とダイナミクスの解明を目指している。これらの物理量を意味のある統計量として計算し,物理現象を正しく理解・予測するためには,これまでにない大規模かつ長時間のシミュレーションと統計的なサンプリングが必要である。そのために平面波基底関数を用いた第一原理計算コードの整備と、構造とダイナミクス研究に必要な第一原理に基づくモデリング手法の開発を行ってきた。今年度は,昨年度一般公開した平面波基底第一原理計算コードxTAPPの整備をすすめ,最局在ワニエ関数の計算,ファンデルワールス力に対応するためのDFT-D法の導入,格子力学計算の公開コードphonopyへの接続を行った。熱伝導に関しては,非調和格子振動の第一原理計算に基づくモデリングを行うプログラムパッケージALAMODEの整備を進め,今年度一般公開を行った。またクラスレート化合物Ba8Ga16Ge30 (通称BGG)の熱伝導率が,かご内イオンのラットリング振動によるフォノン散乱によることを明らかにした。電場下のダイナミクスシミュレーションについては,電極表面での電気化学反応の活性障壁を,電圧一定条件で計算するための手法を確立した。また半導体中不純物のコアレベルシフト計算の応用を進めた。(1)前年度に引き続き一般化された非調和原子間相互作用有効モデルの第一原理に基づく導出と,非平衡分子動力学法およびボルツマン輸送方程式による熱伝導度計算を相補的に用いる,ナノ構造体の熱輸送計算プログラムの高度化を行い,実用的かつ汎用性の高いシミュレーション手法として確立した。これを用いてシリコンおよびI型クラスレート構造の熱伝導度における非調和効果を明らかにした。またSiナノワイヤーの熱伝導計算を行い,界面効果が大きいことを明らかにした。(2)ハイブリッド汎関数計算についてGPGPUに対応した平面波基底プログラム
KAKENHI-PLANNED-22104006
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-22104006
高齢者の生活保障における政府市場及び家族の役割ー家族の役割の考察を中心としてー
本研究課題の達成のために、大きく二つのテ-マ、すなわち、インフォ-マル・セクタ-(家族)の社会経済理論研究とわが国現代家族の実態分析を実施し、ほぼ計画どおりの研究成果を得ることができた。第一のテ-マにおいては、社会学習、文化人類学者による家族社会学の研究を調査するとともに、アメリカで発展しつつある家族経済理論の摂取に努めた。その目的は、家族社会学における家族形態・機能論と家族経済学における社会保障・貯蓄論との統合を図ることであったが、家族社会の成果を参考にすることによって、社会保障及び貯蓄の経済理論が従来よりもはるかに明確かつ現実的になったと確信する。第二のテ-マにおいては、わが国現代家族の居住形態、相続関係、高齢者介護及び既婚女性労働力率の実態を未公表資料等も用いて重点的に調査した。その結果、たとえば、三世代同居世帯の減少という通説は支持されるが、親族ネットワ-クの存在を示唆する準同居・近居・一時別居という居住形態が増加していること、都市地域においても土地問題の深刻化から相続による土地取得が著しく増加していること、長期にわたる高齢者の介護が既婚女性の労働供給をますます抑制する傾向にあること、年金制度の充実が家族内部の現金形態の移転を縮少させていること等が明らかとなった。民間の市場メカニズムによる所得保障や福祉には、民間保険市場に固有な逆選択という厄介な問題があるため、十分な市場成果は期待できない。したがって、高齢者の生活保障においては政府と家族の機能的代替性がかなり大きいと予想され、実際、実証分析でも代替性の高さが確かめられる。今後の本格的な高齢化社会に向けて、政府がいかなる政策をとるべきかは、家族の実態や反応、その社会的・経済的な影響を十分に考慮する必要がある。本研究課題の達成のために、大きく二つのテ-マ、すなわち、インフォ-マル・セクタ-(家族)の社会経済理論研究とわが国現代家族の実態分析を実施し、ほぼ計画どおりの研究成果を得ることができた。第一のテ-マにおいては、社会学習、文化人類学者による家族社会学の研究を調査するとともに、アメリカで発展しつつある家族経済理論の摂取に努めた。その目的は、家族社会学における家族形態・機能論と家族経済学における社会保障・貯蓄論との統合を図ることであったが、家族社会の成果を参考にすることによって、社会保障及び貯蓄の経済理論が従来よりもはるかに明確かつ現実的になったと確信する。第二のテ-マにおいては、わが国現代家族の居住形態、相続関係、高齢者介護及び既婚女性労働力率の実態を未公表資料等も用いて重点的に調査した。その結果、たとえば、三世代同居世帯の減少という通説は支持されるが、親族ネットワ-クの存在を示唆する準同居・近居・一時別居という居住形態が増加していること、都市地域においても土地問題の深刻化から相続による土地取得が著しく増加していること、長期にわたる高齢者の介護が既婚女性の労働供給をますます抑制する傾向にあること、年金制度の充実が家族内部の現金形態の移転を縮少させていること等が明らかとなった。民間の市場メカニズムによる所得保障や福祉には、民間保険市場に固有な逆選択という厄介な問題があるため、十分な市場成果は期待できない。したがって、高齢者の生活保障においては政府と家族の機能的代替性がかなり大きいと予想され、実際、実証分析でも代替性の高さが確かめられる。今後の本格的な高齢化社会に向けて、政府がいかなる政策をとるべきかは、家族の実態や反応、その社会的・経済的な影響を十分に考慮する必要がある。
KAKENHI-PROJECT-02630047
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02630047
細菌リポタンパク質新規脂質修飾の生合成酵素同定
低G+Cグラム陽性細菌のリポタンパク質はNアシル化酵素ホモログを持たないため、Nアシル化されないと考えられてきた。しかし、私たちはこれらの細菌のリポタンパク質からNアシル化修飾を検出し、これらの細菌がNアシル化酵素を含む未知の生合成酵素群を持つことを示唆した。本研究では、質量分析によるNアシル化検出系を改良し、感度・スループットを有意に向上させた。次に、この方法により枯草菌遺伝子破壊株などからの生合成酵素探索を試みた。現時点では責任遺伝子を同定できていないため、継続して探索を行う。細菌リポタンパク質は、そのN末端システイン残基への共有結合脂質をアンカーとして生体膜に局在し、代謝、接着、情報伝達など細菌の生存に重要な役割を担う。大腸菌などグラム陰性菌と結核菌などアクチノバクテリアのリポタンパク質は連続して働く一連の酵素(Lgt, Lsp, Lnt)によりトリアシル脂質修飾を受け成熟し機能する。これらの酵素のうち、ジアシルリポタンパク質にアシル基を転移しトリアシルリポタンパク質を合成するLntは低G+C含量グラム陽性菌やマイコプラズマのゲノム上にホモログが検出されないため、これらの細菌はジアシルリポタンパク質のみを持つと考えられてきた。しかし、最近私たちは、質量分析をもちいた解析により、黄色ブドウ球菌、枯草菌、腸球菌などの低G+C含量グラム陽性菌やマイコプラズマのリポタンパク質が新規修飾構造を含むNアシル化脂質修飾を受けていることを示した。これら予想外の修飾は低G+C含量グラム陽性菌などに未知の脂質修飾酵素(群)が存在することを強く示唆する。本研究では、低G+C含量グラム陽性菌などで明らかになった多様な脂質修飾の機能を解析するための第一歩として、枯草菌のNアセチル化酵素の同定を目指す。本年度は、Nアセチル化酵素遺伝子破壊株をリポタンパク質のアセチル化の有無により遺伝子破壊株コレクションから選択する遺伝学的スクリーニングを行うための脂質修飾検出系の高感度化を行った。質量分析の試料前処理を再検討し、従来の約1/50の試料から出発して脂質修飾を検出出来るようになった。これにより、並行して処理できる試料数が5倍程度増加し、現実的なスクリーニングの実施が可能となったので、破壊株の解析を開始した。細菌リポタンパク質は、そのN末端システイン残基への共有結合脂質をアンカーとして生体膜に局在し、代謝、接着、情報伝達など細胞の生存に重要な役割を担う。大腸菌などグラム陰性細菌と結核菌などアクチノバクテリアのリポタンパク質は連続して働く一連の酵素(Lgt, Lsp, Lnt)によりトリアシル脂質修飾を受けて成熟し機能する。低G+C含量グラム陽性細菌やマイコプラズマのゲノムからは、これらの酵素のうちジアシルリポタンパク質にアシル基を転移してトリアシルリポタンパク質を合成する大腸菌、結核菌Lntホモログが相同性検索により見出されない。そのため、これらの細菌はジアシル型リポタンパク質のみを持つと考えられてきた。しかし、私たちは、質量分析をもちいた解析により、黄色ブドウ球菌、枯草菌、腸球菌などの低G+Cグラム陽性細菌やマイコプラズマのリポタンパク質が新規修飾様式を含むNアシル化脂質修飾を受けていることを示した。これら予想外のNアシル化はこれらの細菌に未知の修飾酵素(群)が存在することを強く示唆する。本研究では、多様な脂質修飾の機能を解析するための第一歩として、枯草菌Nアシル化酵素の同定を目指す。昨年度の研究で、枯草菌遺伝子破壊株コレクションからNアシル化酵素をスクリーニングするための質量分析をもちいた検出系を確立したので、今年度はスクリーニングを進めた。現時点では、まだジアシル型を合成する破壊株を見出せていない。細菌リポタンパク質は、共有結合脂質をアンカーとして生体膜に局在し、代謝、接着、情報伝達など細胞の生存に重要な役割を担う。グラム陰性細菌とアクチノバクテリアのリポタンパク質は連続して働く一連の酵素(Lgt, Lsp, Lnt)によりトリアシル化修飾を受けて成熟し機能する。これに対して低G+Cグラム陽性細菌やマイコプラズマのゲノムにはこれらの酵素のうちジアシルリポタンパク質のαアミノ基にアシル基を転移してトリアシルリポタンパク質を合成する大腸菌Lntホモログが存在しないことから、これらの細菌ではジアシルリポタンパク質が成熟型として機能していると考えられていた。しかし、私たちは質量分析により、黄色ブドウ球菌、枯草菌、腸球菌などの低G+Cグラム陽性細菌やマイコプラズマのリポタンパク質が新規脂質修飾構造を含むNアシル化を受けることを示した。これら予想外のNアシル化リポタンパク質の存在はこれらの細菌に未知の修飾酵素(群)が存在することを強く示唆する。本研究では、多様な脂質修飾の機能を明らかにするため、枯草菌Nアシル化酵素の同定を目指す。まず、枯草菌遺伝子破壊株からリポタンパク質のNアシル化の有無を検出するための質量分析系を検討し、従来非イオン性界面活性剤TritonX114による濃縮後でないと検出できなかったリポタンパク質Nアシル化を抽出液からの分析で可能とした。次に、遺伝子破壊株コレクションをもちいた検索を開始したが、増殖速度が低いものが多く効率的なスクリーニングが出来なかった。今年度は、低G+Cグラム陽性細菌およびマイコプラズマで保存されている膜タンパク質と予想される遺伝子の破壊株や大腸菌Lntと類似したトポロジーが予想されるタンパク質遺伝子の破壊株を優先的に検索したが、これまでのところジアシル型のみを合成する変異株を検出することはできていない。
KAKENHI-PROJECT-25450118
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25450118
細菌リポタンパク質新規脂質修飾の生合成酵素同定
低G+Cグラム陽性細菌のリポタンパク質はNアシル化酵素ホモログを持たないため、Nアシル化されないと考えられてきた。しかし、私たちはこれらの細菌のリポタンパク質からNアシル化修飾を検出し、これらの細菌がNアシル化酵素を含む未知の生合成酵素群を持つことを示唆した。本研究では、質量分析によるNアシル化検出系を改良し、感度・スループットを有意に向上させた。次に、この方法により枯草菌遺伝子破壊株などからの生合成酵素探索を試みた。現時点では責任遺伝子を同定できていないため、継続して探索を行う。生育が遅い株などの解析が出来ずスクリーニングが当初予定よりやや遅れている。分析化学スクリーニングを継続するとともに、生化学的な方法による酵素の同定を試みる。当初計画とは異なりすぐにスクリーニングを開始するのではなく、リポタンパク質脂質修飾の検出方法のブラッシュアップを行った。この結果スクリーニングを当初計画より効率的に行う目処が立ち計画通りのスクリーニングを終えることが出来ると考える。今年度確立した方法にしたがい、破壊株をもちいた遺伝学的スクリーニングを行う。
KAKENHI-PROJECT-25450118
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25450118
ウイルス性がん遺伝子産物による転写コアクチベーターの機能制御
1.p300分子内のPRS1結合領域の決定in vitroで合成した[^<35>S]-methionine代謝標識のPRS1を用いてGST-pull down assayを行った結果、p300のPRS1結合領域は567番目のアミノ酸から652番目のアミノ酸の間に存在することが示唆された。mammaliantwo hybridsystemは、Gal4 DNA結合領域に融合させたXタンパク質とVP16に融合させたYタンパク質において培養細胞内で結合するとレポータープラスミドが反応し、ルシフェラーゼ活性の上昇が検出される系である。培養細胞株のMCF7細胞にGal4DNA結合領域に融合したPRS1、VP16に融合させたCBPまたはp300を遺伝子導入後、ルシフェラーゼアッセイを行った。その結果、VP16-p300のみルシフェラーゼ活性の上昇が検出された。さらにp300のPRS1結合領域を欠失させた変異体p300では、ルシフェラーゼ活性の上昇が検出されなかったことからPRS1はp300特異的に結合することが示唆された。3.PRS1分子内のp300結合領域の決定およびp300(KIX)に結合しない点変異体PRS1の作製PRS1はp300(KIX)領域に結合するがPRS1とアミノ酸レベルにおいて94%のホモロジーを有するPRS2は結合しないことが判明した。PRS1とPRS2のキメラタンパク質発現プラスミドを作製し、in vitroで合成した[^<35>S]-methionine代謝標識のキメラタンパク質を用いてGST-pull down assayを行った結果、PRS1の170番目のアミノ酸から190番目のアミノ酸がp300(KIX)との結合に重要であることが判明した。PRS1の点変異体を用いた解析からPRS1の188番目のアミノ酸がp300(KIX)との会合に重要であり、PRS1の点変異体PRS1(D188E)では、その結合能が顕著に低下した。現在、PRS1,PRS2,PRS1(D188E)を用いて、CBP,p300それぞれのヒストンアセチル化活性、転写コアクチベーター能に及ぼす影響について検討中である。1.p300分子内のPRS1結合領域の決定in vitroで合成した[^<35>S]-methionine代謝標識のPRS1を用いてGST-pull down assayを行った結果、p300のPRS1結合領域は567番目のアミノ酸から652番目のアミノ酸の間に存在することが示唆された。mammaliantwo hybridsystemは、Gal4 DNA結合領域に融合させたXタンパク質とVP16に融合させたYタンパク質において培養細胞内で結合するとレポータープラスミドが反応し、ルシフェラーゼ活性の上昇が検出される系である。培養細胞株のMCF7細胞にGal4DNA結合領域に融合したPRS1、VP16に融合させたCBPまたはp300を遺伝子導入後、ルシフェラーゼアッセイを行った。その結果、VP16-p300のみルシフェラーゼ活性の上昇が検出された。さらにp300のPRS1結合領域を欠失させた変異体p300では、ルシフェラーゼ活性の上昇が検出されなかったことからPRS1はp300特異的に結合することが示唆された。3.PRS1分子内のp300結合領域の決定およびp300(KIX)に結合しない点変異体PRS1の作製PRS1はp300(KIX)領域に結合するがPRS1とアミノ酸レベルにおいて94%のホモロジーを有するPRS2は結合しないことが判明した。PRS1とPRS2のキメラタンパク質発現プラスミドを作製し、in vitroで合成した[^<35>S]-methionine代謝標識のキメラタンパク質を用いてGST-pull down assayを行った結果、PRS1の170番目のアミノ酸から190番目のアミノ酸がp300(KIX)との結合に重要であることが判明した。PRS1の点変異体を用いた解析からPRS1の188番目のアミノ酸がp300(KIX)との会合に重要であり、PRS1の点変異体PRS1(D188E)では、その結合能が顕著に低下した。現在、PRS1,PRS2,PRS1(D188E)を用いて、CBP,p300それぞれのヒストンアセチル化活性、転写コアクチベーター能に及ぼす影響について検討中である。
KAKENHI-PROJECT-01J03339
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01J03339
シェイクスピア戯曲の二つ折り本(第1版から第4版まで)の研究
本研究は、これまで十分な学術的関心を集めてこなかった1632年出版シェイクスピア戯曲全集第2版(以後、"F2"と表記。初版は"F1")に焦点を当て、多角的な視点から、その特性や歴史的意義に迫る共同研究である。2018年度にメンバーは以下のような活動を行った。住本は、明星大学ならびに海外図書館所蔵の22冊のF2に関して、製本およびページサイズを計測し、外観、前付け、ならびにこれまでの所有者による書き込みを調査した。また、Richard IIIに焦点を絞ったプレスヴァリアンツ(印刷内異同)研究も進めた。長瀬は、F2の印刷を取り巻く環境について調査を進め、F1の印刷者William StansbyとF2の印刷者Cotes兄弟との間に、そしてF1の出版出資者Edward BlountとF2の出版出資者Robert Allotとの間に協働関係があったことを指摘した。廣田と桒山は作品毎に、F2の編集者(名前表記等のない編集者)の校訂・改変によって、どのように作品の解釈が異なるかを探った。具体的には廣田は、Hamletについて、特にトロイ戦争に関する旅役者の台詞を中心に注目し、F1以前に出版された第1四つ折り版(Q1)と第2四つ折り版(Q2)、F1、F2との比較考察を行った。桒山はF1によって初めて印刷された作品(Julius Caesar, Macbeth, The Winter's Tale, The Tempestなど)を中心に考察を進め、これら作品に関してF2編集者が、9年前に出版されていたF1以外に参照テクストがなかった可能性や、作品によってF2編集者の理解(筋・イメジャリーなどについて)が大きく異なること、F2が提案した校訂には(その正しさに特に根拠がない場合も権威ある選択肢として)現在に至る後世の編集者に影響を及ぼしているものがあることを指摘した。上記の研究実績概要で示した研究活動内容は研究実施計画に概ね合致して進んでいる。2018年度に行ったF2の研究実績をもとに、F3、F4へと調査・考察を進め、フォリオ全集を総体として捉える試みを進める。本研究は、これまで十分な学術的関心を集めてこなかった1632年出版シェイクスピア戯曲全集第2版(以後、"F2"と表記。初版は"F1")に焦点を当て、多角的な視点から、その特性や歴史的意義に迫る共同研究である。2018年度にメンバーは以下のような活動を行った。住本は、明星大学ならびに海外図書館所蔵の22冊のF2に関して、製本およびページサイズを計測し、外観、前付け、ならびにこれまでの所有者による書き込みを調査した。また、Richard IIIに焦点を絞ったプレスヴァリアンツ(印刷内異同)研究も進めた。長瀬は、F2の印刷を取り巻く環境について調査を進め、F1の印刷者William StansbyとF2の印刷者Cotes兄弟との間に、そしてF1の出版出資者Edward BlountとF2の出版出資者Robert Allotとの間に協働関係があったことを指摘した。廣田と桒山は作品毎に、F2の編集者(名前表記等のない編集者)の校訂・改変によって、どのように作品の解釈が異なるかを探った。具体的には廣田は、Hamletについて、特にトロイ戦争に関する旅役者の台詞を中心に注目し、F1以前に出版された第1四つ折り版(Q1)と第2四つ折り版(Q2)、F1、F2との比較考察を行った。桒山はF1によって初めて印刷された作品(Julius Caesar, Macbeth, The Winter's Tale, The Tempestなど)を中心に考察を進め、これら作品に関してF2編集者が、9年前に出版されていたF1以外に参照テクストがなかった可能性や、作品によってF2編集者の理解(筋・イメジャリーなどについて)が大きく異なること、F2が提案した校訂には(その正しさに特に根拠がない場合も権威ある選択肢として)現在に至る後世の編集者に影響を及ぼしているものがあることを指摘した。上記の研究実績概要で示した研究活動内容は研究実施計画に概ね合致して進んでいる。2018年度に行ったF2の研究実績をもとに、F3、F4へと調査・考察を進め、フォリオ全集を総体として捉える試みを進める。2018年度はF2テクストに集中した共同研究であったが、これまでの研究で既に使用した資料が幸運にも有用であり、当初予想したよりも少ない研究資金で研究を進めることができた。しかし2019年度は、扱うテクストがF3ならびにF4に及び、研究チームがこれまで重点的に扱ってこなかった主題になるため余剰分をこれに充填する。
KAKENHI-PROJECT-18K00370
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K00370
雲仙火山の火砕流のコンピュータ・シミュレーションとハザードマップへの応用
雲仙火山で起こっている火砕流は,溶岩ドームの崩壊に伴うメラピ型火砕流と考えられている。ここの火砕流について,温度・噴煙の高度・流路の地形・流下速度・堆積状況等の資料がかなり存在する.これらの観察された事実とシミュレーション結果を対比しながらシミュレーション手法の改良を試みた.筆者が前年度までに開発してきた,火砕流のシミュレーション手法(落石・岩屑流用のコンピュータ・シミュレーション手法を修正し,落石の衝突速度に応じて岩塊が割れ,ガスを噴出するようにしたもの)を使い,さらに噴煙部の運動のシミュレーションも出来るように拡張して,雲仙で観察されている実体部の運動軌跡,噴煙柱の上昇高さに適合させることを試みた.しかし,岩塊の体積と噴煙量との関係についていくつか試行を行ったが実体部と噴煙部の双方に合うような関係を見出すことが出来ず,本シミュレーション手法を用いて火砕流のハザードマップを作るには至らなかった.代わりに,岩屑流の摩擦則について,かつて筆者の提案した底部境界波理論に基づき,岩屑流の抵抗を激減させる滑り速度(閾値速度)を底部層の厚さを変えて計算した結果,現実的な境界層厚さに対して,滑り速度は容易に閾値を越えうることが明らかとなり,底部境界波理論は現実性を持つことが確かめられた.この結果は,本年の国際応用地質学会(アテネ)のシンポジウムで発表する予定で,現在,投稿論文は印刷中である.雲仙火山で起こっている火砕流は,溶岩ドームの崩壊に伴うメラピ型火砕流と考えられている。ここの火砕流について,温度・噴煙の高度・流路の地形・流下速度・堆積状況等の資料がかなり存在する.これらの観察された事実とシミュレーション結果を対比しながらシミュレーション手法の改良を試みた.筆者が前年度までに開発してきた,火砕流のシミュレーション手法(落石・岩屑流用のコンピュータ・シミュレーション手法を修正し,落石の衝突速度に応じて岩塊が割れ,ガスを噴出するようにしたもの)を使い,さらに噴煙部の運動のシミュレーションも出来るように拡張して,雲仙で観察されている実体部の運動軌跡,噴煙柱の上昇高さに適合させることを試みた.しかし,岩塊の体積と噴煙量との関係についていくつか試行を行ったが実体部と噴煙部の双方に合うような関係を見出すことが出来ず,本シミュレーション手法を用いて火砕流のハザードマップを作るには至らなかった.代わりに,岩屑流の摩擦則について,かつて筆者の提案した底部境界波理論に基づき,岩屑流の抵抗を激減させる滑り速度(閾値速度)を底部層の厚さを変えて計算した結果,現実的な境界層厚さに対して,滑り速度は容易に閾値を越えうることが明らかとなり,底部境界波理論は現実性を持つことが確かめられた.この結果は,本年の国際応用地質学会(アテネ)のシンポジウムで発表する予定で,現在,投稿論文は印刷中である.
KAKENHI-PROJECT-08680483
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08680483
ゲノムワイド関連解析を起点とするメタボリック症候群と動脈硬化の分子疫学研究
ゲノムワイド関連解析(GWAS)よって首として欧米人で明らかになったメタボリック症候群および重大な合併症である心筋梗塞に関連する疾患感受性遺伝子を文献から抽出し、日本人コホートにおけるメボリック症候群の表現系および潜在的動脈硬化度などに及ぼす影響を検討した。その結果、いくつかの欧米で明らかにされた遺伝子の効果を再現するとともに、新規な遺伝子?環境因子相互作用および遺伝子の複合的影響を同定した。心筋梗塞感受性遺伝子の効果は欧米人と日本人では異なる可能性が示唆された。ゲノムワイド関連解析(GWAS)よって首として欧米人で明らかになったメタボリック症候群および重大な合併症である心筋梗塞に関連する疾患感受性遺伝子を文献から抽出し、日本人コホートにおけるメボリック症候群の表現系および潜在的動脈硬化度などに及ぼす影響を検討した。その結果、いくつかの欧米で明らかにされた遺伝子の効果を再現するとともに、新規な遺伝子?環境因子相互作用および遺伝子の複合的影響を同定した。心筋梗塞感受性遺伝子の効果は欧米人と日本人では異なる可能性が示唆された。本研究の目的は、メタボリック症候群から動脈硬化症にかけての全身的な代謝異常と血管病変に関わる遺伝因子および遺伝因子と環境因子の交互作用を明らかにする事により、メタボリック症候群および動脈硬化症の発症・進展の早期予防に向けて基盤となる遺伝情報を創成することである。本年度はゲノムワイド関連解析(GWAS)や候補遺伝子法で糖尿病および高血圧と関連することが発見された遺伝子を日本人集団の職域コホートで解析して、エネルギー摂取量、塩分摂取量、日常的運動量などのライフスタイル因子との交互作用を検討した。また複数の遺伝子多型がどのように代謝的表現系に影響を与えるかを検討した。その結果、ABCA1,ACADSB,ATP2B1,CDH13,GREB1,COMT,CYP11A1,CSK,CYP11B2,CYP17A1,PTGIS,PTK2Bの12高血圧感受性遺伝子のSNPを用いる事によって、これらが相加的に収縮期および拡張期血圧をコントロールしていることを明らかにした。またCOMT遺伝子多型に関しては単独で、エネルギー摂取量と交互作用を持って血圧レベルを上昇させる事が明らかとなった。以上の事は、メタボリック症候群の種々の表現形質における複数の遺伝子がリスクファクターであることを確認するとともにこれらを捉える事により、より正確に発症リスク群を割り出す可能性があることを示唆している。本研究の目的は、メタボリック症候群から動脈硬化症にかけての全身的な代謝異常と血管病変に関わる遺伝因子および遺伝因子と環境因子の交互作用を明らかにする事により、メタボリック症候群および動脈硬化症の発症・進展の早期予防に向けて基盤となる遺伝情報を創成することである。本年度はゲノムワイド関連解析(GWAS)や候補遺伝子法で糖尿病と関連することが発見された遺伝子を日本人集団の職域コホートで解析して、エネルギー摂取量、塩分摂取量、日常的運動量などのライフスタイル因子との交互作用を検討した。また複数の遺伝子多型がどのように代謝的表現系に影響を与えるかを検討した。その結果、GLUT4(rs5418), GIPR(rs10423928), VPS13C(rs17271305), GCKR(rs1260326), and CDKAL1(rs9465871)の5個糖尿病感受性遺伝子のSNPを用いる事によって、これらが相加的にHbAlcレベルをコントロールしていることを明らかにした。またGLUT4遺伝子多型に関しては単独で、エネルギー摂取量と交互作用を持ってHbA1cレベルを上昇させる事が明らかとなった。以上の事は、メタボリック症候群の種々の表現形質における複数の遺伝子がリスクファクターであることを確認するとともにこれらを捉える事により、より正確に発症リスク群を割り出す可能性があることを示唆している。本研究の目的は、メタボリック症候群から動脈硬化症にかけての全身的な代謝異常と血管病変に関わる遺伝子および遺伝子と環境因子の交互作用を明らかにする事により、メタボリック症候群および動脈硬化症の発症進展の早期予防に向けて基盤となる遺伝情報を創成することである。本年度はゲノムワイド関連解析(GWAS)あるいは候補遺伝子として主に欧米人において心筋梗塞・冠動脈疾患と関連することが発見された遺伝子・遺伝子多型の効果を日本人高齢者連続剖検例(n=1373)における病理的動脈硬化度において検討した。本年度解析した遺伝子多型は、CDKN2B (rs1333049)、ADTRP (rs6903956)、PDGFD (rs974819)、ADAMTS7 (rs4380028)、COL4A2 (rs4773144)、TCF21 (rs12190287)、UBE2Z (rs46522)、HHIPL1(rs2895811)の8個の一塩基多型(SNP)でありそれぞれが単独であるいは交互作用をもって冠動脈硬化に関連するかを検討した。その結果、冠動脈硬化症を明らかな関連が認められたのはCDKN2B(CC+CG:GG、OR=1.68、95%CI1.21-2.32、p=0.002)およびADTRP(GG:AG+AA、OR=1.78、OR=1.78、95%CI1.17-2.88、p=0.008)であった。これ以外の6個のSNPに関しては冠動脈硬化症と明らかな関連を見出す事が出来なかった。一方、日本人のGWASで発見されたLTA、LGALS
KAKENHI-PROJECT-22590547
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22590547
ゲノムワイド関連解析を起点とするメタボリック症候群と動脈硬化の分子疫学研究
2、PPSM6における疾患感受性SNPの追試実験においては、LTAおよびLGALS2が冠動脈硬化と関連する事が再現された。以上の事は、冠動脈硬化関連遺伝子が日本人と欧米人によって同一なものと異なるものがあることが示唆された。これまでゲノムワイド関連解析は、単独の遺伝子座(SNP)と疾患の関連を鋭敏に捉えることは出来ていたが、これらの複数のSNPが合わさって、血圧(昨年度)および血糖(本年度)に相加的影響を及ぼしていることを明らかにした意義は大きいと考えられる。24年度が最終年度であるため、記入しない。複数のCommon variantによって高血圧や高血糖のリスクが算出されるが算出されることが明らかになった。今後は、このような原理が遺伝子検査に応用可能なのかどうかという点が益々重要になってくると考えられる。これらの成果を予防医療への応用へ向けた包括的な新しい研究課題の策定を見据えて、本研究課題の最終年度の研究に取り組んで行く。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22590547
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22590547
Gサイクルの時空的起動制御と作動様式に基づく細胞内小胞の選別輸送
G蛋白質は、GDP/GTP結合型のコンホメーション転換(Gサイクル)により、細胞の様々なシグナル伝達系で分子スイッチとしての役割を果たしている。本基盤研究(A)では、細胞内小胞の選別輸送経路をモデル系として、Gサイクルが時空間的あるいは作動様式に基づいて制御される機構を解析し、特異な生化学的特性や構造を有する新奇のG蛋白質が、リソソームの形成・成熟やエンドサイトーシス・エキソサイトーシスなどといった細胞内エンドソームの動態制御に介在していることを見出した。G蛋白質は、GDP/GTP結合型のコンホメーション転換(Gサイクル)により、細胞の様々なシグナル伝達系で分子スイッチとしての役割を果たしている。本基盤研究(A)では、細胞内小胞の選別輸送経路をモデル系として、Gサイクルが時空間的あるいは作動様式に基づいて制御される機構を解析し、特異な生化学的特性や構造を有する新奇のG蛋白質が、リソソームの形成・成熟やエンドサイトーシス・エキソサイトーシスなどといった細胞内エンドソームの動態制御に介在していることを見出した。本基盤研究(A)では、主に低分子量G蛋白質が重要な役割を果たす細胞内小胞の選別輸送(エンドサイトーシスやエキソサイトーシス)系について、Gサイクルの時空的起動制御と作動様式から検討を加え、以下の知見を得た。1.Rab5サブファミリー(Rab5,22,31)の活性化因子GEFであるRINファミリーのRIN3は、受容体刺激に応じて輸送小胞へ移動すること、またRIN3のリン酸化状態に依存して特定のG蛋白質(Rab31)に対してのみGEF活性を発揮し、複雑なエンドサイトーシス経路を巧みに調節することを見出した。2.Arf/Ar1ファミリーに分類されるAr18は、多細胞生物間で極めて保存性が高く、広範囲な組織に発現し、定常状態でGTP結合型のユニークなGタンパク質である。線虫Ar18欠失変異体を用いた解析から、Ar18は後期エンドソームとリソソームの融合に必須の役割を果たすことを明らかにした。さらに哺乳動物細胞におけるAr18ノックダウン実験や小胞局在の動態解析から、Ar18が後期エンドソームの正常な成熟過程に関与することを見出した。3.Ar113は、N末端側のArfドメインに加えてC末端側にPro-rich配列を有するユニークなArf/Ar1ファミリー蛋白質である。線虫Ar113欠失変異体の表現型解析及び培養細胞におけるノックダウン実験により、Ar113bが繊毛の形成・維持に重要な役割を果たすことを見出した。4.Rab45は、C末端側のRab-GTPaseドメインに加えて、N末端側にEF handとcoiled-coil領域を有する。細胞内での動態解析から、Rab45は主にリサイクリングエンドソームに局在し、トランスフェリンなどの細胞内取込みを制御するユニークな作用をもつことを見出した。本基盤研究(A)では、主に低分子量G蛋白質が重要な役割を果たす細胞内小胞の選別輸送(エンドサイトーシスやエキソサイトーシス)系について、Gサイクルの時空的起動制御と作動様式から検討を加え、以下の知見を得た。1.GDP結合型Rab5の活性化因子GEFとして同定したRINファミリーのRIN2は、血小板由来成長因子(PDGF)刺激に応じてPDGF受容体と結合し、受容体の内在化を促進すること、また、その内在化にはRIN2のGEF活性が必要で、RIN2のPro-richドメインとアダプター蛋白質Grb2の相互作用が介在することを見出した。2.Arf/Arlファミリーに分類されるArl8は、線虫Arl8欠失変異体を用いた解析から、後期エンドソームに加えて、ファゴソームとリソソームの融合に必須の役割を果たすこと、さらにArl8b欠損マウスの解析から、Ar18bを欠くマウスは脳の形態形成が異常となり、出生直後に致死となることを見出した。3.Rasファミリーに分類されるDi-Rasは、細胞内でGTP結合型として存在し、出生後の神経組織に特異的に発現する。GTP結合型において、Di-RasはRapのGEFとして先に同定されたマルチドメイン蛋白質Epac2aのRAドメインに結合し、細胞膜にEpac2aを局在化させることを見出した。4.N末端側のArfドメインに加えてC末端側にPro-rich配列を有するユニークなG蛋白質Arl13は、繊毛に限局して繊毛内物質輸送系に介在する。このArll3繊毛局在性は、C末端側に存在するRVEP配列に担われていることを見出した。本基盤研究(A)では、主に低分子量G蛋白質が重要な役割を果たす細胞内小胞の選別輸送(エンドサイトーシスやエキソサイトーシス)系について、Gサイクルの時空的起動制御と作動様式から検討を加え、以下の知見を得た。1.RhoファミリーのRhoA活性化は、細胞質中の凝集体ProcessingbodyへのAU-rich element mRNAの局在化を抑制し、その速やかな分解を抑制するという興味深い新規シグナル伝達経路を見出した。2.Arf/Arlファミリーに分類されるAr18は、線虫Ar18欠失変異体を用いた解析から、後期エンドソームに加えて、ファゴソームとリソソームの融合に必須の役割を果たすこと、さらにAr18b欠損マウスの解析から、Ar18bを欠くマウスは脳の形態形成や膵外分泌細胞の分泌小胞の局在が異常となる表現型を見出した。
KAKENHI-PROJECT-20247011
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20247011
Gサイクルの時空的起動制御と作動様式に基づく細胞内小胞の選別輸送
3.Rasファミリーに分類されるDi-Rasは、細胞内でGTP結合型として存在し、出生後の神経組織に特異的に発現する。GTP結合型において、Di-RasはRapのGEFとして先に同定されたマルチドメイン蛋白質Epac2aのRAドメインに結合し、細胞膜にEpac2aを局在化させることを、さらにDi-Rasはsmg-GDSとヘテロ二量体を形成して細胞質画分にも存在見出した。4.N末端側のArfドメインに加えてC末端側にPro-rich配列を有するユニークなG蛋白質Ar113は、繊毛に限局して繊毛内物質輸送系に介在する。このAr113繊毛局在性は、C末端側に存在するRVEP配列に担われていることを見出した。
KAKENHI-PROJECT-20247011
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20247011
骨組織のホメオスタシスにおけるオステオポンチンの役割
骨組織は外的環境に対応して形状変化を起こす。この骨組織に特有のホメオスタシスは現象的には古くより明らかであったが、その分子機構は全く不明であった。骨組織に外力が加わったときに、もっともその外力を受ける細胞として骨細胞が候補に挙がっていた。我々は外力が加わった骨組織の骨細胞において発現変化のある遺伝子を検索し、オステオポンチンを同定した。オステオポンチンは骨基質から単離された細胞外基質蛋白であり、リン酸カルシウムと高い親和性を有する。また、オステオポンチンはそのアミノ酸配列のなかにRGDSというインテグリンと結合するモチーフをもっている。ラット骨組織において、荷重がかかっていない歯槽骨の骨細胞にはオステオポンチンが全く発現していない。しかし、第一臼歯と第二臼歯の間に輪ゴムをはさんで、臼歯間を押し広げて、歯槽骨に圧迫、あるいは牽引力をかけたとき、24時間後に圧迫をうけた歯槽骨に存在する骨細胞の90%がオステオポンチンを高度に発現することを見出した。さらにオステオポンチンが歯槽骨表面に達し、インテグリンを発現する破骨細胞の骨への接着をうながすことを証明した。実験動物にRGDSペプチド、あるいは抗オステオポンチン抗体をを注入することによって圧迫側への破骨細胞の接着、あるいはそれに引き続いて起こる骨吸収反応が阻害されることから、オステオポンチンは骨の外力に対応するホメオスタシスをになう分子であることが判明した。我々はさらにオステオポンチンのプロモーター解析をおこない、外力対応エレメントを同定した。骨組織は外的環境に対応して形状変化を起こす。この骨組織に特有のホメオスタシスは現象的には古くより明らかであったが、その分子機構は全く不明であった。骨組織に外力が加わったときに、もっともその外力を受ける細胞として骨細胞が候補に挙がっていた。我々は外力が加わった骨組織の骨細胞において発現変化のある遺伝子を検索し、オステオポンチンを同定した。オステオポンチンは骨基質から単離された細胞外基質蛋白であり、リン酸カルシウムと高い親和性を有する。また、オステオポンチンはそのアミノ酸配列のなかにRGDSというインテグリンと結合するモチーフをもっている。ラット骨組織において、荷重がかかっていない歯槽骨の骨細胞にはオステオポンチンが全く発現していない。しかし、第一臼歯と第二臼歯の間に輪ゴムをはさんで、臼歯間を押し広げて、歯槽骨に圧迫、あるいは牽引力をかけたとき、24時間後に圧迫をうけた歯槽骨に存在する骨細胞の90%がオステオポンチンを高度に発現することを見出した。さらにオステオポンチンが歯槽骨表面に達し、インテグリンを発現する破骨細胞の骨への接着をうながすことを証明した。実験動物にRGDSペプチド、あるいは抗オステオポンチン抗体をを注入することによって圧迫側への破骨細胞の接着、あるいはそれに引き続いて起こる骨吸収反応が阻害されることから、オステオポンチンは骨の外力に対応するホメオスタシスをになう分子であることが判明した。我々はさらにオステオポンチンのプロモーター解析をおこない、外力対応エレメントを同定した。外力に対して骨はリモデリングを行い、最も合理的な形態を保持しようとする。骨リモデリングは骨吸収をつかさどる破骨細胞と骨形成をつかさどる骨芽細胞における遺伝子発現変化の結果として起こる。我々は骨に牽引、あるいは圧迫力を加えた際に起こる遺伝子発現変化を検討し、圧迫力を加えた骨の骨細胞のオステオポンチン遺伝子の発現が急激に上昇することを見いだした。歯槽骨の骨細胞において通常では5%以下の骨細胞しかオステオポンチン遺伝子を発現していない。しかし、Waldoらによって確立された方法、つまり第一臼歯と第二臼歯の間に弾力性を有するゴムをはさむことによって加えられた圧迫力のかかる歯槽骨の骨細胞の90%以上がオステオポンチン遺伝子を発現していることが明らかとなった。われわれはこのメカニカルストレスがオステオポンチン遺伝子の発現を誘導する現象の分子機構を明らかにするため、オステオポンチン遺伝子のプロモーター解析を行い、オステオポンチン遺伝子上流域に結合する転写因子の同定を行った。その結果ビタミンDレセプター、PEBP2αA(CBFA1)、ETS-1、PU.1(Spi-1)、MITF、AP1などを同定した。骨細胞、骨芽細胞においてはビタミンDレセプター、PEBP2αA(CBFA1)、ETS-1.AP1が主要な転写因子として働いていることを明らかにした。メカニカルストレス対応領域決定のため、このプロモーター部位を導入したトランスジェニックマウスを作成し、解析を行っている。骨組織は外的環境に対応して形状変化を起こす。この骨組織に特有のホメオスタシスは現象的には古くより明らかであったが、その分子機構は全く不明であった。骨組織に外力が加わったときに、もっともその外力を受ける細胞として骨細胞が候補に挙がっていた。我々は外力が加わった骨組織の骨細胞において発現変化のある遺伝子を検索し、オステオポンチンを同定した。オステオポンチンは骨基質から単離された細胞外基質蛋白であり、リン酸カルシウムと高い親和性を有する。また、オステオポンチンはそのアミノ酸配列のなかにRGDSというインテグリンと結合するモチ-フをもっている。ラット骨組織において、荷重がかかっていない歯槽骨の骨細胞にはオステオポンチンが全く発現していない。
KAKENHI-PROJECT-10470058
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10470058
骨組織のホメオスタシスにおけるオステオポンチンの役割
しかし、第一臼歯と第二臼歯の間に輪ゴムをはさんで、臼歯間を押し広げて、歯槽骨に圧迫、あるいは牽引力をかけたとき、24時間後に圧迫をうけた歯槽骨に存在する骨細胞の90%がオステオポンチンを高度に発現することを見出した。さらにオステオポンチンが歯槽骨表面に達し、インテグリンを発現する破骨細胞の骨への接着をうながすことを証明した。実験動物にRGDSペプチド、あるいは抗オステオポンチン抗体を注入することによって圧迫側への破骨細胞の接着、あるいはそれに引き続いて起こる骨吸収反応が阻害されることから、オステオポンチンは骨の外力に対応するホメオスタシスをになう分子であることが判明した。我々はさらにオステオポンチンのプロモ-タ-解析をおこない、外力対応エレメントを同定した。
KAKENHI-PROJECT-10470058
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10470058
日本列島とアジア大陸の植物相の比較研究
本研究は,国立科学博物館が上海自然博物館と共同で推進する国際学術研究と位置づけられ,植物と菌類に加え動物の研究も実施された.また中国科学院昆明植物研究所とも共同研究がなされた.調査地域は,揚子河中下流域の山岳,上海付近の海岸,メコン河流域の山岳,四川省と雲南省に連なる横断山脈の山岳である。研究分野は陸上の植物と菌類及び海藻と貝類である.全体的研究成果としては,7,000点をこえる標本が採集されたことが第一で,これらの標本は日本に初めてもたらされる研究資料である.中国南部の植生が把握され,今後の研究の基礎が得られたことは第二の成果である.また得られた標本には新種が相当含まれている可能性が高いことも成果であり,種子植物のHeterostemma lobulataは1例である.なお国立科学博物館の展示活動に活用される標本や資料も得られた.本研究の目的に定められた目的別成果は以下のようである.1.日本列島の植物相とアジア大陸のそれとの比較に関しては,(1)揚子江下流域では日本産植物に似るが異る特徴を持つノイバラなどの種が多く分類学的な再検討を要する,(2)日本産植物と同種とされて来た中国産のものに明らかな別種がある.(ホトトギス属),(3)日本特産と考えられて来た種が中国に産し,しかも中国が分化の中心と思われるオニフスベなどの菌類がある,(4)中国における多様性の解析を基に日本産植物の分類を再検討すべきブナ科のようなものがある,等の知見が得られた。海藻と貝類(ヒザラガイ類)は,日本の太平洋沿岸と良く似ていることが明らかとなった.2.ヒマラヤから日本に至る植物区系上の「日華区系」の再検討に関しては,ヒマラヤ山脈の東麓に位置する横断山脈東部の四川省ゴンガ山と同山脈西部の雲南省ガリク山で本調査として初の調査が行なわれ,ゴンガ山の植物相はヒマラヤとの共通要素が多く,ガリク山はメコン河下流域の熱帯の要素を持つことが示唆された.日華区系西部の雲南省とその東に位置する貴州省の間に植物地理学上の境が存在するらしいという考がえを支持する知見は森林土壌の研究で得られた.雲南省と貴州省では森林土壌の垂直分布パターンが異なり,土壌構造も異る.植物の分布ではブナが貴州省より東部で多く分布しているが,雲南では見られなかった.またシダ植物の日本産ヌリトラノオ属の多くが貴州省以東の揚子江下流域を発祥の地とすることを示唆する知見が得られた.3.植物資源と民族植物に関する基礎資料の収集については、揚子江下流浙江省でシイタケと日本では見られないカラカサタケの栽培およびマンネンタケの利用に興味ある知見が得られた.またメコン河流域を含む雲南省では,バウヒニアの花,キクの花,シュロの雄花,数種のマメ科の花について花食文化の例が記録された.成果の公表は,学会での口頭発表や論文発表等に加えて,国立科学博物館の展示活動を通して行なわれている.平成8年から9年にかけ,企画展「中国南部の植物と菌類」が開催され,成果が公開されると共に展示の内容を紹介する図録が出版された.日本列島とアジア大陸の植物相を,アジアの標本を直接採集して比較する研究は緒についたばかりであり,揚子江下流域の春季証左,横断山脈や秦嶺山脈,メコン河下流域等の調査を行いたい.本研究は,国立科学博物館が上海自然博物館と共同で推進する国際学術研究と位置づけられ,植物と菌類に加え動物の研究も実施された.また中国科学院昆明植物研究所とも共同研究がなされた.調査地域は,揚子河中下流域の山岳,上海付近の海岸,メコン河流域の山岳,四川省と雲南省に連なる横断山脈の山岳である。研究分野は陸上の植物と菌類及び海藻と貝類である.全体的研究成果としては,7,000点をこえる標本が採集されたことが第一で,これらの標本は日本に初めてもたらされる研究資料である.中国南部の植生が把握され,今後の研究の基礎が得られたことは第二の成果である.また得られた標本には新種が相当含まれている可能性が高いことも成果であり,種子植物のHeterostemma lobulataは1例である.なお国立科学博物館の展示活動に活用される標本や資料も得られた.本研究の目的に定められた目的別成果は以下のようである.1.日本列島の植物相とアジア大陸のそれとの比較に関しては,(1)揚子江下流域では日本産植物に似るが異る特徴を持つノイバラなどの種が多く分類学的な再検討を要する,(2)日本産植物と同種とされて来た中国産のものに明らかな別種がある.(ホトトギス属),(3)日本特産と考えられて来た種が中国に産し,しかも中国が分化の中心と思われるオニフスベなどの菌類がある,(4)中国における多様性の解析を基に日本産植物の分類を再検討すべきブナ科のようなものがある,等の知見が得られた。海藻と貝類(ヒザラガイ類)は,日本の太平洋沿岸と良く似ていることが明らかとなった.
KAKENHI-PROJECT-07041151
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07041151
日本列島とアジア大陸の植物相の比較研究
2.ヒマラヤから日本に至る植物区系上の「日華区系」の再検討に関しては,ヒマラヤ山脈の東麓に位置する横断山脈東部の四川省ゴンガ山と同山脈西部の雲南省ガリク山で本調査として初の調査が行なわれ,ゴンガ山の植物相はヒマラヤとの共通要素が多く,ガリク山はメコン河下流域の熱帯の要素を持つことが示唆された.日華区系西部の雲南省とその東に位置する貴州省の間に植物地理学上の境が存在するらしいという考がえを支持する知見は森林土壌の研究で得られた.雲南省と貴州省では森林土壌の垂直分布パターンが異なり,土壌構造も異る.植物の分布ではブナが貴州省より東部で多く分布しているが,雲南では見られなかった.またシダ植物の日本産ヌリトラノオ属の多くが貴州省以東の揚子江下流域を発祥の地とすることを示唆する知見が得られた.3.植物資源と民族植物に関する基礎資料の収集については、揚子江下流浙江省でシイタケと日本では見られないカラカサタケの栽培およびマンネンタケの利用に興味ある知見が得られた.またメコン河流域を含む雲南省では,バウヒニアの花,キクの花,シュロの雄花,数種のマメ科の花について花食文化の例が記録された.成果の公表は,学会での口頭発表や論文発表等に加えて,国立科学博物館の展示活動を通して行なわれている.平成8年から9年にかけ,企画展「中国南部の植物と菌類」が開催され,成果が公開されると共に展示の内容を紹介する図録が出版された.日本列島とアジア大陸の植物相を,アジアの標本を直接採集して比較する研究は緒についたばかりであり,揚子江下流域の春季証左,横断山脈や秦嶺山脈,メコン河下流域等の調査を行いたい.本調査は、国立科学博物館が中国上海市立自然博物館と共同で推進する国際的な学術共同事業として位置づけられ、本年度は、中国揚子江下流域淅江省舟山群島と温州海岸の海藻と生育環境及び江西省の陸上植物と菌類、同中流域の貴州省、雲南省の陸上植物と菌類を分類学的見地から調査し、5,000点をこえる日本に始めてもたらさた標本を採集すると共に、上海市立自然博物館及び中国科学院昆明植物研究所の研究者を招へいし、採集した標本の共同研究を行った。本調査は、1)日本列島の植物相をアジア大陸の植物相と比較、2)ヒマラヤから日本に至る日華区系を再検討し、3)植物資源と民族植物に関する基礎資料の収集を目指すものであるが、1)に関しては、海岸の海藻とその生育環境が日本と良く似ていることが判り、また陸上では、日本を中心に分布するホトトギス属(ユリ科)の新種が江西省で発見され、日本産ヌリトラノオ属(チャセンシダ科)のシダの多くが揚子江流域を発祥の地とするとの考えを示唆するデータが得られた。2)に関しては、貴州省と雲南省の間に植物分布の境が存在することを示唆する情報が得られた。また、3)に関しては、雲南省で食用菊の新たな利用法を示す民族植物学的知見が得られた。本研究は,中国科学院昆明植物研究所と上海自然博物館と日本側の国際共同研究として行なわれた。今年度は揚子江下流域,四川省横断山脈,雲南省西部山地で調査が行なわれ,種子植物,コケ類,地衣類,菌類の標本総計約2000点が得られた。本研究の目的と成果の関連は以下のようである。1.日本列島の植物相とアジア大陸のそれとの比較に関しては,(1)揚子江下流域では日本産植物に似るが異なる特徴を持つ,イノバラなどの種が多く分類学的再検討を要する,(2)日本産植物と同種とされて来た中国産のものは明らかに異なる別種である(ホトトギス属),(3)日本特産と考えられて来た種が中国にも産し,中国が分化の中心と思われる(オニフスベ),(4)中国における多様性の解析を基に日本産植物の分類を再検討すべき(ブナ科),等の知見が得られた.2.ヒマラヤから日本に至る日華区系の再検討に関しては,四川省横断山脈ゴンガ山と雲南省西部山地ガリク山で初の調査が行なわれ,ゴンガ山の植物相はヒマラヤのそれと共通し,ガリク山はメコン河下流域の熱帯の要素を持つことが示唆された.
KAKENHI-PROJECT-07041151
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07041151
トランスポーターの輸送動態解析法に関する研究
D-グルコースは生物が広く利用するエネルギー源であるにも関わらず、単一細胞レベルでのグルコース輸送動態には未だ不明の点が多い。そこで代表者らは蛍光標識したD-グルコース誘導体2-NBDGが、生きた単一哺乳動物細胞内にグルコーストランスポーター(GLUT)を介して取り込まれることを示し、グルコース輸送の可視化に道を開いた。しかし2-NBDGを脳など複雑な細胞構成をとる組織に適用して議論するには、2-NBDGのGLUTへの結合解離、膜を通過した後の代謝の他、細胞外へのGLUTを介した流出や他細胞へのGap結合を介した移動があり、更に退色や細胞膜への吸着の程度の評価なども必要で、それには適切な対照蛍光分子の開発が不可欠である。そこで細胞が利用しないL型の蛍光グルコース誘導体2-NBDLGを新規開発した。21年度は、2-NBDGあるいは2-NBDLGを神経細胞、アストロサイトなどにbath投与、もしくはパッチクランプ電極から投与しながら共焦点顕微鏡でリアルタイムに計測する方法を開発し、2-NBDGの細胞膜への非特異吸着や、短時間の光照射による退色や分解は非常に小さいことなどが定量的に表せるようになった。またNBDと蛍光波長極大が離れていて、かつ強い蛍光を発する分子を探索し、NBDG類縁体ならびに非類縁体を対象に多数の合成を行った。このうち2-NBDGと異なる赤色の蛍光を有するL型グルコース誘導体2-TRLGを合成し、2-NBDGと2-TRLGを同時に使用して特定波長範囲における両者の比を用いることで、セルアタッチモードでパッチクランプしている細胞から自発発火を記録しながら、同パイペットを介して2-NBDGが細胞内に取り込まれる際の蛍光強度の増加を定量的に表す方法を開発した(山田他、特許願2009-185010;山田他、PCT/JP2009/064053)。20年度は、L型グルコース誘導体の出発物質であるL-glucosamine、および2-NBDLGを始めとする各種L型グルコース誘導体合成法に関する論文発表、特許申請を行った。L型グルコース誘導体を用いて、研究計画に記したような計測を行っていくためには、新規分子合成、試薬調整方法、検出器、検出方法、解析手法など様々な面からの検討が必要となる。20年度はこれら全てに着手し、具体的には後の論文で述べるが、それぞれ進展が見られた。特に大型で均質な細胞であるマウス受精卵による基本測定が役立っている。リアルタイムレーザー共焦点顕微鏡観察により、同一受精卵中の膜状態の良い割球はD型のみを取り込んだが、状態の悪い割球はD型のみならず、L型グルコース誘導体をも取り込んだ。また蛍光強度の時間的変化を追跡することで、蛍光グルコースの細胞膜面、膜中などへの非特異的吸着の程度、退色の度合い、細胞内での代謝による分解の速度など、これまでD型のみでは不明であった貴重なデータを、L型との比較により得ることができた。当初計画を推進する目的で、急性単離した中脳黒質網様部GABA作動性神経細胞を対象として、共焦点顕微鏡上で37度にて溶液を潅流しながらL型蛍光グルコース投与前後の蛍光強度の差を、2-NBDGによる蛍光強度の差と比較し、基礎的データを取得した。神経活動に依存したグルコース取りこみなどを調べる為には、細胞の活動状態をパッチクランプ法により同時に計測することが求められるが、高速に動く3次元リアルタイム共焦点顕微鏡の振動により、観察中などにパッチピペットのシール状態が悪化する問題が生じた。顕微鏡ステージを新たに作成し、また種々のマニピュレーターを試し、改良を加えるなど改善を急いでいる。D-グルコースは生物が広く利用するエネルギー源であるにも関わらず、単一細胞レベルでのグルコース輸送動態には未だ不明の点が多い。そこで代表者らは蛍光標識したD-グルコース誘導体2-NBDGが、生きた単一哺乳動物細胞内にグルコーストランスポーター(GLUT)を介して取り込まれることを示し、グルコース輸送の可視化に道を開いた。しかし2-NBDGを脳など複雑な細胞構成をとる組織に適用して議論するには、2-NBDGのGLUTへの結合解離、膜を通過した後の代謝の他、細胞外へのGLUTを介した流出や他細胞へのGap結合を介した移動があり、更に退色や細胞膜への吸着の程度の評価なども必要で、それには適切な対照蛍光分子の開発が不可欠である。そこで細胞が利用しないL型の蛍光グルコース誘導体2-NBDLGを新規開発した。21年度は、2-NBDGあるいは2-NBDLGを神経細胞、アストロサイトなどにbath投与、もしくはパッチクランプ電極から投与しながら共焦点顕微鏡でリアルタイムに計測する方法を開発し、2-NBDGの細胞膜への非特異吸着や、短時間の光照射による退色や分解は非常に小さいことなどが定量的に表せるようになった。またNBDと蛍光波長極大が離れていて、かつ強い蛍光を発する分子を探索し、NBDG類縁体ならびに非類縁体を対象に多数の合成を行った。このうち2-NBDGと異なる赤色の蛍光を有するL型グルコース誘導体2-TRLGを合成し、2-NBDGと2-TRLGを同時に使用して特定波長範囲における両者の比を用いることで、セルアタッチモードでパッチクランプしている細胞から自発発火を記録しながら、同パイペットを介して2-NBDGが細胞内に取り込まれる際の蛍光強度の増加を定量的に表す方法を開発した(山田他、特許願2009-185010;山田他、PCT/JP2009/064053)。
KAKENHI-PROJECT-20056001
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20056001
幹細胞老化に着目した新規心不全治療法の開発
これまで当教室で進めてきた先行研究から、高齢者心不全患者に由来する心筋幹細胞においてsFRP1が高発現している可能性が考えられる。本研究では、ヒト心筋幹細胞の細胞老化誘導におけるsFRP1の役割を解明することを研究目的とし、以下の点を明らかにした。1若齢(65歳以下)および高齢(65歳以上)心不全患者由来の心筋幹細胞におけるsFRP1の発現レベルをRT-PCRにより比較したところ、高齢群におけるsFRP1の発現が若齢群に比べて亢進していた。2若齢心不全患者由来の心筋幹細胞を抗癌剤であるエトポシドで処理すると、老化関連beta-ガラクトシダーゼ(SA-b-Gal)陽性細胞が増加し、細胞老化の誘導が認められ、このとき、sFRP1の発現が亢進していた。3組み換え型sFRP1蛋白質を若齢心不全患者由来の心筋幹細胞に添加すると、SA-b-Gal陽性細胞が増加し、細胞老化の誘導が認められた。以上より、心不全患者に由来する心筋幹細胞の細胞老化誘導機序の一端が解明された。これまで当教室で進めてきた先行研究から、高齢者心不全患者に由来する心筋幹細胞においてsFRP1が高発現している可能性が考えられる。本研究では、ヒト心筋幹細胞の細胞老化誘導におけるsFRP1の役割を解明することを研究目的とし、以下の点を明らかにした。1若齢(65歳以下)および高齢(65歳以上)心不全患者由来の心筋幹細胞におけるsFRP1の発現レベルをRT-PCRにより比較したところ、高齢群におけるsFRP1の発現が若齢群に比べて亢進していた。2若齢心不全患者由来の心筋幹細胞を抗癌剤であるエトポシドで処理すると、老化関連beta-ガラクトシダーゼ(SA-b-Gal)陽性細胞が増加し、細胞老化の誘導が認められ、このとき、sFRP1の発現が亢進していた。3組み換え型sFRP1蛋白質を若齢心不全患者由来の心筋幹細胞に添加すると、SA-b-Gal陽性細胞が増加し、細胞老化の誘導が認められた。以上より、心不全患者に由来する心筋幹細胞の細胞老化誘導機序の一端が解明された。
KAKENHI-PROJECT-17K16594
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K16594
旅行者と旅行先との関係構築プロセスの解明:顧客エンゲージメント理論を援用して
観光市場が成熟化し観光地間の競争が高まるわが国において、旅行先である地域と旅行者とのより強固な関係性を構築し、地域における関係人口を創出することが、これからの観光地マーケティングにおける大きな課題となっている。本研究は、「旅行先である地域と旅行者との関係性はどのようにして構築されるのか」という問いに対し、消費者行動論における「顧客エンゲージメント」(購買を超えた顧客とブランドとの相互作用やつながりの強さ)の概念を援用し、「(旅行先に対する)旅行者エンゲージメント」の構築プロセスについて検討するものである。観光市場が成熟化し観光地間の競争が高まるわが国において、旅行先である地域と旅行者とのより強固な関係性を構築し、地域における関係人口を創出することが、これからの観光地マーケティングにおける大きな課題となっている。本研究は、「旅行先である地域と旅行者との関係性はどのようにして構築されるのか」という問いに対し、消費者行動論における「顧客エンゲージメント」(購買を超えた顧客とブランドとの相互作用やつながりの強さ)の概念を援用し、「(旅行先に対する)旅行者エンゲージメント」の構築プロセスについて検討するものである。
KAKENHI-PROJECT-19K12571
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K12571
医療の質の向上に役だつ医療保険制度のあり方に関する基礎的研究―日本とドイツを例に
「ドイツにおける医療の質の確保に関する制度の構造と法体系モデルー医療提供体制と公的疾病保険を中心にー」法政理論50巻3・4号(2018年)112頁ないし239頁において案出した医療の質の確保に関する制度の法体系モデルを基礎として、「医師の資格に関する制度」、「診療行為を対象とする制度」、「医療施設を対象とする制度」、「医療提供体制に関係する制度」、「医療施設情報提供制度」のカテゴリーに応じて、わが国の医療の質の確保に関する制度を体系的に整理し、サブシステムそれぞれを描写するとともに、制度群の構造を解明するなどの作業を行ってきた。作業対象である制度群は、医師法、医療法、医薬品医療機器等法、健康保険法、療養担当規則、診療報酬の算定方法など広範な法令に及び、それらの法令に関する多数の通達、医学系学会などが定める自主規制ないし民間規範も参照しなければならない課題であるが、作業は着実に進んでいるところである。同時に、ドイツ法について、第4次メルケル政権発足後の看護制度改革の動向をフォローした。さらに、在宅医療やへき地医療の質の確保に大きく貢献するポテンシャルが認められる遠隔診療についても調査を行い、ドイツの医師資格制度、診療報酬、家庭医中心などとともに制度描写と整理を行い、「ドイツの外来医療における主治医機能と遠隔診療」を執筆し、2018年12月、健保連海外医療保障120号に掲載するに至った(1頁ないし9頁)。2018年の第4次メルケル政権の連立協定において医療の質の確保に大きな影響を与える看護師配置基準に関する改革が盛り込まれ、新たな関係法令が制定されたため、その後の施行状況等も見極める必要が生じたことから、補助事業期間を平成31年度(令和元年度)まで延長したが、研究目的の二本柱の1つ目のドイツ法における医療の質の確保に関する制度の構造の解明の作業を終え、もう一つの柱である日本における医療の質の確保に関する制度の整理や構造の解明の作業が着実に進んでいることから、全体として、「おおむね順調に進展している」と判断することができる。平成30年度までの上掲の研究実績を踏まえ、引き続き、わが国の医療の質の確保に関する制度を体系的に整理し、サブシステムそれぞれについて制度描写を行うとともに、制度群の構造を解明し、それらの成果を踏まえて、我が国の公的医療保険法制等における課題と対応策について検討するなどの作業を行い、研究成果の公表を行う予定である。平成28年度においては、ドイツの医療保障法制におけるい医療の質の確保に関する制度について文献調査を行った。ドイツの公的疾病保険制度のみならず、これと密接に関係する医師の資格法制や病院法制などの諸制度も含めて関係法令などを読み解き、医療の質の向上の観点からコンステラツィオーン(全体的な位置関係)を把握する作業を行った。調査対象としたサブシステムは、医療職の資格制度、医療機関の開設・運営規制、医療職や医療機関を公的医療保険の中に組織化する制度、診療報酬や医療機関のファイナンスのための制度、新たな診断治療方法を保険適用する際の審査制度、既存の診断治療方法を再審査する制度、臨床評価指標を用いた医療機関の自主管理の仕組み、医療安全・医療事故対応システムなどである。当初の調査結果については、医療保障に関心を持つ社会保障法研究者で組織する「世界の病院研究会」第5回研究会(2016年5月29日、京都市)において、報告した。この際、出席者の方々から質疑をいただくとともに、貴重なご助言をいただいた。その後、引き続き、ドイツの専門雑誌(Medizinrecht, Neue Zeitschrift fuer Sozialrechtなど)に掲載された医療の質の確保に関する諸論文などの資料を収集して読み込むなどの調査作業を進めた。年明けからは、これらの調査結果を基盤として、ドイツの医療の質の確保に関する制度を描写し、その構造や特徴を明らかにする論文を作成する作業を行っているところである(現在、執筆中)。同論文は、2017年10月頃公刊予定の『法政理論』(新潟大学法学会紀要)に掲載する予定である。この成果物によって、医療の質の確保に関する制度を構成する多様なサブシステムの間の連関や位置関係の一例を明らかにできるものと考えている。ドイツの医療法制における医療の質の確保に関する制度の調査はほぼ終了しており、調査結果のとりまとめ=論文作成に若干の時間を要してはいるが、特段の障壁や困難もないことから、全体としては、概ね順調に進展していると判断することができる。平成29年度においては、ドイツの医療保障法制における医療の質の確保に関する制度についての文献に加え、医療の質の確保に関する制度を具体化する共同連邦委員会による指針や保険者側と診療側との間の協定など、幅広い資料を収集し、読み込みと検討を行った。これらの研究と平成28年度の実績を基礎として、「ドイツにおける医療の質の確保に関する制度の構造と法体系モデルー医療提供体制と公的疾病保険を中心にー」を執筆し、2018年2月、法政理論50巻3・4号に掲載するに至った(112頁ないし239頁)。同論文では、まず、医療の質の確保に関する制度を読み解くために不可欠なドイツの医療制度の概要、特に、保険診療の組織化と診療報酬などについて整理した。次に、法体系を認識するためのアプローチを選定する作業を行い、カテゴリーに手段を位置付けるアプローチを用いることを決定した。
KAKENHI-PROJECT-16K03338
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K03338
医療の質の向上に役だつ医療保険制度のあり方に関する基礎的研究―日本とドイツを例に
そして、このアプローチに従って、ドイツの医療の質に関する制度を「医師の職業法」、「社会法」に分け、さらに後者につき、「給付を対象とする制度」、「医師を対象とする制度」、「医療施設を対象とする制度」、「医療提供体制に関係する制度」、「医療施設情報提供制度」に整理し直すことを通じて、ドイツ法の構造を探求した。その結果を踏まえて、日本法研究の際に参照可能な法体系モデルの案出を行った。さらに、2018年3月には、ドイツの関係機関、すなわちドイツ病院協会、AOK Nordost、ブランデンブルク州社会労働保健省、看護管理協会を訪問し、医療の質の確保制度の運用実態や現状などの事項について聴取した。文献には必ずしも明記されていない関係者の評価や政策形成過程との関係などの情報も得ることができ、有益であった。「ドイツにおける医療の質の確保に関する制度の構造と法体系モデルー医療提供体制と公的疾病保険を中心にー」を執筆し、2018年2月、法政理論50巻3・4号に掲載した。これにより、日本法を検討する際に枠組みとして利用できる法体系モデルを獲得することができたことから、全体としては、概ね順調に進展していると判断することができる。「ドイツにおける医療の質の確保に関する制度の構造と法体系モデルー医療提供体制と公的疾病保険を中心にー」法政理論50巻3・4号(2018年)112頁ないし239頁において案出した医療の質の確保に関する制度の法体系モデルを基礎として、「医師の資格に関する制度」、「診療行為を対象とする制度」、「医療施設を対象とする制度」、「医療提供体制に関係する制度」、「医療施設情報提供制度」のカテゴリーに応じて、わが国の医療の質の確保に関する制度を体系的に整理し、サブシステムそれぞれを描写するとともに、制度群の構造を解明するなどの作業を行ってきた。作業対象である制度群は、医師法、医療法、医薬品医療機器等法、健康保険法、療養担当規則、診療報酬の算定方法など広範な法令に及び、それらの法令に関する多数の通達、医学系学会などが定める自主規制ないし民間規範も参照しなければならない課題であるが、作業は着実に進んでいるところである。同時に、ドイツ法について、第4次メルケル政権発足後の看護制度改革の動向をフォローした。さらに、在宅医療やへき地医療の質の確保に大きく貢献するポテンシャルが認められる遠隔診療についても調査を行い、ドイツの医師資格制度、診療報酬、家庭医中心などとともに制度描写と整理を行い、「ドイツの外来医療における主治医機能と遠隔診療」を執筆し、2018年12月、健保連海外医療保障120号に掲載するに至った(1頁ないし9頁)。2018年の第4次メルケル政権の連立協定において医療の質の確保に大きな影響を与える看護師配置基準に関する改革が盛り込まれ、新たな関係法令が制定されたため、その後の施行状況等も見極める必要が生じたことから、補助事業期間を平成31年度(令和元年度)まで延長したが、研究目的の二本柱の1つ目のドイツ法における医療の質の確保に関する制度の構造の解明の作業を終え、もう一つの柱である日本における医療の質の確保に関する制度の整理や構造の解明の作業が着実に進んでいることから、全体として、「おおむね順調に進展している」と判断することができる。上述のとおり、ドイツの医療法制における医療の質の確保に関する制度の調査結果を論文にとりまとめ、公刊する予定である。その後、医療の質に係る法制度の下で関係に機関により発出されている個別的な指針を読み解き、具体的な診療行程における役割を探求する。
KAKENHI-PROJECT-16K03338
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K03338
移民言語の展開・変容のダイナミズムについての構造的研究
平成30年度は現地調査を2回行った。8月塘坊にて語りを二日間採集し、同じく平江県内の小岩村にて語りを一日採集した。9月江西省Gan州市にて客家語の語彙を1200、語りを1時間ほど採集した。本年度中、平江天林客家語、平江連雲客家語、台湾台中客家語、梅州客家語のそれぞれ語彙1200項目の録音を発音記号に転写した。塘坊で録音した語りの文字転写に専念し、口語コーパスを増やした。これらの口語コーパスを活かし、塘坊客家語の文法や語彙の記述を進めている。大きな成果は主に下記の二つである。平成30年5月、「塘坊客家語における「子」について)、国際中国言語学会第26回大会. Wisconsin University-Madison(アメリカ)にて報告した。これは口語資料にみられる「子」を分析したものである。分析結果から塘坊客家語における「子」の複雑な用法は塘坊客家語と地元平江方言の融合した結果であることが判明した。それから、論文「客家語語彙の比較ー平江客家語を中心とする」を作成し、第13回客家語国際学会にて報告した。その内容は、平江塘坊客家語、連雲客家語、台湾台中客家語、平江城関方言の四つの方言における基礎語彙1200の比較である。語彙の比較を通して、平江県内部における客家語は互いの交流が少ないにもかかわらず語彙における統一度が高いことが判明した。地元平江及び客家語梅州方言とも比較した結果、これらの客家語が移民してから地元平江方言と絶えずに接触交流した結果、多くの平江方言語彙を取りこんでいるが、客家語の語彙と特徴を多く保持していることが判明した。基礎語彙で比較対照を行った結果、塘坊客家語と連雲客家語の語彙は平江方言と客家語が混ざった語彙体系になっていることが言える。フィールドワークでは小岩村や大岩村の客家語を少し調査することができたが、どこも話者が減りつつ状態であることを確認できた。29年度はできるだけ多くの資料を収集し、一次分析をしつつ整理と質を高める工夫をした。また収集と分析整理の段階に応じて学会などで報告した。発表の場としては、世界各国から中国の言語の研究者が集まる国際中国言語学会(IACL)が適切であり、IACL26に採択され、平成30年5月に研究報告を行った。主に実地調査を行い、他言語や方言の分析法に倣い、調査結果を精密に分析し、仮説を立てて、再調査で裏付けた。塘坊客家語に重要な影響を与えたと推定される梅県客家語や台湾の客家語も調査した。30年度は1地点(Ganzhou)の客家語データ(語彙1200)を採集した。手元の資料に加え、全部で8地点の客家語基礎語彙1200の調査データを持っていることになる。これらの語彙データの比較対照により、各地の客家語の語彙変遷がわかり、語彙に関する移民言語の展開・変容のダイナミズムの解明に役に立つ。録音資料を文字化し、口語コーパスを作成し、文法や音韻特徴を調べる予定であった。これに関しては、現地調査では語彙データを採集すると同時に物語や地元の案内、家族史などについての語りのデータも採集している。これらの語りは極めて自然な状態の下で採集したものであり、より自然な音声や文法現象を調べることができる。現に、塘坊では語りから文字化したデータが25,000字あり、試験的な分析だけでもすでに多くの発見がある。その詳細な内容は今後少しずつ学会などにて報告していく予定である。30年度は二回国際会議にて報告を行った。この通り、計画が順調に進展し、成果を出していると言える。文法の記述を進め、録音資料の文字化を進めている。口語コーパスのデータを増やし、文法の研究に活かしている。今後は引き続き手元のデータを整理しずつ追加調査をしていく予定。未整理データとして、基礎語彙では、湖南省資興黄草方言とGanzhou客家語がそれぞれ1200あり、語りデータとしては、湖南省資興黄草方言と塘坊方言それぞれ長時間の録音やビデオを採集できている。これらのデータの整理、特に文字転写に関しては地元の話者の協力を仰ぎ、集中的にできるように、話者を日本に招聘することも視野に入れる。音声データの文字転写を進め、口語コーパスのデータを増やし、文法研究を進める。令和元年度は音声データ、文字データ、映像データの統合や分析を行う。塘坊客家語の全体データに対する分析結果を国内外の学会にて発表し、その内容を論文にまとめる。データの整理に関してはソフトウェアEmEditior、Toolbox、Elanを活用する。データの分析にはツールAntconcを用いる。方言に対する分析については、他言語や方言の分析法に倣い、調査結果を精密に分析し、仮説を立てて、再調査で裏付ける。情報の公開に関しては、収集したすべての音声、映像、文字データをまとめて出版、音声や画像データはネット上で公開利用できるように段取りを組む。手元の客家語資料は、湖南省、広東省、江西省、台湾より収集しており、きちんと整理して一般の方でも利用できるように公開する。方言資料について綿密な分析を行い、論文にまとめて学会誌に投稿するなどして、研究成果の公開や発信、更にはその他の少数言語の研究や資料の保存、社会への還元に努める。
KAKENHI-PROJECT-17K02720
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K02720
移民言語の展開・変容のダイナミズムについての構造的研究
地元に関しては代表者はコンサルタントから提供された資料を整理し、研究成果を地元へ還元する。観光地化されつつある地元で、方言関連の観光客向けイベントの開催や資料の展示を行い、地元の潜在的な話者の開発に努める。最終的には三者(地元、話者、代表者)とも利がある形の流れを実現できれば研究成果の社会的貢献につながると考える。平成29年度は現地調査を3回行い、平江塘坊客家語の基礎語彙1200及び語り(約10時間分)、湖南省資興市羊興客家語の基礎語彙1200及び語り(3時間分)、広州省梅州市客家語の基礎語彙1200及び語り(2時間分)や歌謡を採集した。これに加え、手元の所持データの整理をした。平江天林客家語、平江連雲客家語、台湾台中客家語それぞれ語彙1200項目の録音を発音記号に転写した。更に塘坊客家語の語り録音の文字転写に専念し、口語コーパスを22,000字に増やした。これらのデータを利用した研究成果は多い。2017年8月、第一回南方漢語方言学会にて「方言口語資料の注釈と辞書の作成ー湖南省塘坊客家語を例として」という題目で招待講演をした。実際に塘坊客家語の口語資料から得られた結果(否定表現が周りの方言より多い事実)をもとに、口語資料を利用して文法研究を行うことの大切さを確認した。2018年5月、「塘坊客家語における「子」について)、国際中国言語学会第26回大会. Wisconsin University-Madison(アメリカ)にて報告する予定である。これも口語資料にみられる「子」を分析したものである。分析結果から塘坊客家語における「子」の複雑な用法は客家語と地元方言の融合した結果であることが判明した。これ以外に、「客家語語彙の比較ー平江客家語を中心とする」という題目の論文を作成した。その内容は、平江塘坊客家語、連雲客家語、台湾台中客家語、平江城関方言の四つの方言における基礎語彙1200の比較である。結果では二つの客家語ともほかの客家語より、地元の平江との相似性が高いことになっている。基礎語彙で比較対照を行った結果、塘坊客家語と連雲客家語の語彙は平江方言と客家語が混ざった語彙体系になっていることが言える。計画では、29年度はできるだけ多くの資料を収集し、一次分析をしつつ整理と質を高める工夫をする。収集と分析整理の段階に応じて学会などで報告する。発表の場としては、世界各国から中国の言語の研究者が集まる国際中国言語学会(IACL)が適切と考えているとしており、実施結果では2018のIACL26に採択され、2018年5月に研究報告を行う予定である。計画では主に実地調査を行い、他言語や方言の分析法に倣い、調査結果を精密に分析し、仮説を立てて、再調査で裏付ける。塘坊客家語に重要な影響を与えたと推定される梅県客家語や台湾の客家語も調査する予定である。これに対して、29年度は3地点(塘坊、羊興、梅州市)の客家語データを採集した。手元の資料に加え、全部で7地点(ほかに天林、連雲、台湾台中、台湾楊梅)の客家語基礎語彙1200の調査データを持っていることになる。これらの語彙データの比較対照により、各地の客家語の語彙変遷がわかり、語彙に関しての移民言語の展開・変容のダイナミズムの解明に役に立つ。計画ではより自然な音声や文法現象を調べるために、コンサルタントだけを会話させることや物語を語らせる方法も採る。
KAKENHI-PROJECT-17K02720
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K02720
悪性脳腫瘍に対するマイクロウェーブ組織内照射と放射線組織内照射の併用療法の研究
1)放射線組織内照射正常脳組織に対する影響については14頭の日本ザルを用いて検討した。その結果(1)200260Gy以上の照射領域で放射線壊死がみられた。(2)MRIでは、necrotic zoneは1週間後より認められ、その大きさは6ヵ月後まで殆ど変化しなかった。造影剤によるリング状増強部の程度、及び周囲の浮腫は1ヵ月後が最も弱く、その後再び強くなった。(3)CTでは、MRIに比較してこれらの所見は明瞭ではなかったが、2ヵ月後よりnecrotic zone内に石灰化を認めた。今後、組織内照射による正常脳の障害を更に解明するには、dose rate、total dose、irradiated volume等の因子を考慮し、動物実験を重ねていく必要があると考えられた。2)組織内温熱療法温熱による正常脳組織の組織学変化と加温限界の検討は成熟日本ザル20頭を用いて検討した。その結果、44°C未満、60分間の加温領域では加温直後、7日後とも脳組織の不可逆的変化を認めなかった。一方、44°C以上、60分間の加温領域では7日後には白質、基底核ともに境界明瞭な壊死巣を認めた。3)臨床応用放射線組織内照射の臨床応用として11例の悪性脳腫瘍(再発例、深部腫瘍例)に対し定位脳手術装置を用い密封小線源治療を行った。その結果は11例中、CR1例、PR4例、MR1例、NC4例で有効率54%であり、本法の有用性が示唆され、従来治療が困難であった悪性グリオーマに対する有効な補助療法として期待し得ると考えられた。また定位脳手術装置により、きわめて正確にかつ最小の外科的侵襲で線源用カテーテルを刺入することができた。本治療中に出血などの合併症は認められなかった。今後も症例を重ね、長期経過観察を行いその有用性、最適な併用療法となるべきものを併せて検討してゆきたい。1)放射線組織内照射正常脳組織に対する影響については14頭の日本ザルを用いて検討した。その結果(1)200260Gy以上の照射領域で放射線壊死がみられた。(2)MRIでは、necrotic zoneは1週間後より認められ、その大きさは6ヵ月後まで殆ど変化しなかった。造影剤によるリング状増強部の程度、及び周囲の浮腫は1ヵ月後が最も弱く、その後再び強くなった。(3)CTでは、MRIに比較してこれらの所見は明瞭ではなかったが、2ヵ月後よりnecrotic zone内に石灰化を認めた。今後、組織内照射による正常脳の障害を更に解明するには、dose rate、total dose、irradiated volume等の因子を考慮し、動物実験を重ねていく必要があると考えられた。2)組織内温熱療法温熱による正常脳組織の組織学変化と加温限界の検討は成熟日本ザル20頭を用いて検討した。その結果、44°C未満、60分間の加温領域では加温直後、7日後とも脳組織の不可逆的変化を認めなかった。一方、44°C以上、60分間の加温領域では7日後には白質、基底核ともに境界明瞭な壊死巣を認めた。3)臨床応用放射線組織内照射の臨床応用として11例の悪性脳腫瘍(再発例、深部腫瘍例)に対し定位脳手術装置を用い密封小線源治療を行った。その結果は11例中、CR1例、PR4例、MR1例、NC4例で有効率54%であり、本法の有用性が示唆され、従来治療が困難であった悪性グリオーマに対する有効な補助療法として期待し得ると考えられた。また定位脳手術装置により、きわめて正確にかつ最小の外科的侵襲で線源用カテーテルを刺入することができた。本治療中に出血などの合併症は認められなかった。今後も症例を重ね、長期経過観察を行いその有用性、最適な併用療法となるべきものを併せて検討してゆきたい。1.放射線組織内照射サル11頭を用いて、密封小線源による正常脳組織の放射線障害について検討した。3カ月後の組織学的検索では、Irー192seed刺入部の周囲に500ー700Gy以上の領域でnecrotic zoneが認められ、その面積はdose dependentであった。300Gy以下の領域は明らかな異常所見は認められなかった。また、3カ月後までのCT、MRIでの観察では、necrotic zone周囲のedemaは、2週間から1カ月後が強く、その後やや縮小するものの3カ月後も続いていた。64年度は、組織学的な検索を更に6カ月後まで経時的に行なう予定である。2.臨床応用1)昨年度に引続き、放射線組織内照射の臨床応用を悪性グリオーマ7例、転移性脳腫瘍1例、頭蓋底部の脊索腫1例の計9例に対し施行した。腫瘍周辺部の総線量が12ー55GyになるようIr-192seedを1から6本のカテーテルを用い約1週間腫瘍内に留置した。いずれも腫瘍縮小や腫瘍周囲の脳浮腫の軽減が認められ、有効だと判断された。2)また、アンテナ冷却システムを用いた組織内加温療法の臨床応用を悪性グリオーマ3例に対し施行した(うち2例は、放射線組織内照射と併用した)。マイクロウェーブアンテナを腫瘍内に1ないし2本刺入し、腫瘍辺縁部を42°Cになるように30分から1時間の加温を1週間に2ないし3回行なった。
KAKENHI-PROJECT-62870057
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62870057
悪性脳腫瘍に対するマイクロウェーブ組織内照射と放射線組織内照射の併用療法の研究
加温後のCTスキャンにて、加温部に一致する低吸収域と、腫瘍周囲の脳浮腫の著明な減少を認めた。42°C以上の加温で強い抗腫瘍効果を示すことが確認された。これらの治療法の詳細な評価は現在検討中である。(1)放射線組織内照射昨年度のサルを用いた実験では、機械的損傷の影響が強かったと考えられたので、本年度は小線源を刺入するのに用いるカテ-テルをさらに細く改良した。また、昨年度よりも長期の経時的変化を(6カ月間)、組織学的に、またCT,MRIを用いて画像診断学的に詳細に観察した。サルは14頭用い、10mCiの^<192>Ir seedを約1週間留置して組織内照射を行なった。その結果は(1)200Gy以上の照射領域で放射線壞死が認められた。(2)MRIでは放射線壞死は1週間後から認められ、その大きさは6ヵ月後までほとんど変化しなかった。造影剤によるリング状増強部の程度、および周囲の脳浮腫は1ヵ月後が最も弱く、その後再び強くなった。(3)CTでは、MRIに比してこれらの所見は明瞭ではなかったが、2ヵ月後より放射線壞死巣内に石炭化を認めた。(2)臨床応用1)平成元年度は放射線組織内照射の臨床応用としては、悪性グリオ-マ1例に対して行なった。^<192>Irseedを3本のカテ-テルに挿入し、9日間で腫瘍周囲に60Gy(一部30Gy)照射した。照射による副作用は認められなかったが、3月間後にMRIで腫瘍の再増殖が認められた為、今後腫瘍摘出術を行い、照射野の組織学的変化について検討を加える予定である。2)前年度までに行なった計15例の放射線組織内照射および組織内温熱療法の臨床例について検討を行なった。悪性グリオ-マの1例では腫瘍周囲に45Gy照射したが、1年後の現在も再発は認められていない。また、放射線壞死をまねくおそれが強く、通常の放射線照射が追加できない悪性グリオ-マの例についても十分な腫瘍増殖抑制効果が得られた。死亡例中4例について剖検が得られたので、現在検討中である。
KAKENHI-PROJECT-62870057
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62870057
高度計測の統合利用による蓄電固体界面の物理化学局所状態の解明
蓄電固体材料から構成されるヘテロ/ホモ界面では、バルクとは異なる特異なイオン輸送、蓄積特性が観測されている。これらは、蓄電固体界面近傍で局所的に生じる物理化学状態(イオン濃度・価数、化学ポテンシャル、電位、結晶/非晶質構造、歪など)の変調・分布が複雑に絡み合って発現すると考えられているが、その支配因子はほとんど理解されていない。本研究では、様々な最先端計測技術を結集し、蓄電固体界面近傍における各種物理化学状態の変調・分布を多角的に実測し、これらの知見を総合的、網羅的に融合することで、蓄電固体界面の物理化学的状態と特性を体系的に扱うことのできる新しい学理の構築へと繋げる。蓄電固体材料から構成されるヘテロ/ホモ界面では、バルクとは異なる特異なイオン輸送、蓄積特性が観測されている。これらは、蓄電固体界面近傍で局所的に生じる物理化学状態(イオン濃度・価数、化学ポテンシャル、電位、結晶/非晶質構造、歪など)の変調・分布が複雑に絡み合って発現すると考えられているが、その支配因子はほとんど理解されていない。本研究では、様々な最先端計測技術を結集し、蓄電固体界面近傍における各種物理化学状態の変調・分布を多角的に実測し、これらの知見を総合的、網羅的に融合することで、蓄電固体界面の物理化学的状態と特性を体系的に扱うことのできる新しい学理の構築へと繋げる。
KAKENHI-PLANNED-19H05814
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-19H05814
微小な剥落片のクロスセクションを利用したトータル分析システムの構築
複数の情報を1つの剥落片から多角的に得るため、クロスセクションを利用したトータル分析システムの構築を目指し、以下の成果を得た。1Py-GC/MSによって塗料の樹脂成分と一部の鉱物顔料の情報を、1回の測定で同時に検出できる。2取り扱いに苦慮する微細粉末状の試料を回収方法としてヤモリテープの活用を提案。3クロスセクション試料作製時において失われてしまうサンプルを切削し、埋め込み樹脂が混在している状態の粉末試料をヤモリテープで回収してそのまま熱分解に活用できる可能性を指摘。以上、従来のクロスセクション研究では議論されず「活用しきれなかった文化財試料」の利用拡大へ寄与することが期待される。漆文化財には多種類の材料が使われ、複層構造になっている。本研究課題は、用いられた材料について、層ごとの有機成分および無機成分についての複数の情報を1つのクロスセクション(断面試料)から取り出すトータル分析を提案・実施することで、漆工技法や技術の変遷を解明しようという試みである。初年度は各分析装置で測定するための複層構造をしたモデル試料の作製に着手し、経年劣化した漆試料の分析を行った。経年劣化した試料の分析では、熱分解-ガスクロマトグラフィー/質量分析法[Py-GC/MS]を用いることで、塗料として使われる漆樹の特定と一部の無機顔料の有無については、1回の測定で同時に分析可能であることを明らかにした。具体的には、水銀の安定同位体を確認することで水銀朱が使用されているかどうかを判断し、硫黄と砒素の分子量に着目することで硫化砒素について含まれるかどうか判別できた。特に硫化砒素に関しては、SEM-EDXや蛍光X線分析では見出せなかった組成の細かな情報を追跡可能な可能性が出てきた。日本製の漆器だけでなくミャンマー製の漆器でも同様の分析結果を得られたことから、製作地に関わらず、朱色・黄色・緑色を使っている漆器全般で適用可能な分析結果といえる。一方、ミュンスター漆美術館をはじめ、ドイツ国内での美術館・博物館の漆器の収蔵品調査を実施することで、微量試料での分析の需要が高いこと、東南アジアに限定している「漆」という材料と技法の両方に関する情報提示の必要性があるということを強く認識した。代表研究者の異動に伴う勤務地の変更により、微量試料の採取時に使用する計画であったマニピュレーターシステムが一切使用できない状況になっていたが、12月末に移設が終了した。また、偏光・蛍光一体型の顕微鏡を購入したことで、クロスセクション観察における研究の推進が期待される。有機成分と無機成分の両方の情報を同時に検出する方法として、熱分解-ガスクロマトグラフィー/質量分析法〔Py-GC/MS〕が利用可能という研究成果は、国際学会で発表した後で論文投稿を行い、2015年6月に公開が決定した。漆文化財から剥落したサンプルのように分析量に制約のある場合には、水銀や硫化ヒ素という特定の無機成分であれば、X線を利用した測定結果とのクロスチェックが可能であり、今後の分析システムの一つとして期待される。一方、マイクロナイフを用いた切削時のヒューマンエラーを防ぐため、マイクロマニピュレーターシステムを使用した微量サンプル採取の実験に着手した。その中で、取り扱いが困難になりやすい「微量かつ粉末化したサンプル」を回収する手法として、カーボンナノチューブから成る「ヤモリテープ」の活用を検討した。真空状態でのサンプルの固定用テープとして開発されていたが、カーボン単体で構成されることから熱分析分野での応用が期待できると考え、前処理や保存法などの検討を行った。結果、ヤモリテープの介在による弊害は認められず、粉末状のサンプルを簡便に回収する材料として適しているとわかった。これらの研究成果は、第19回高分子分析討論会にて発表し、ポスター賞を受賞した。1スペイン装飾美術館所蔵品(1点)の剥落片に対して、マニピュレーターシステムを利用した実験を行い、微量粉末サンプルの回収材料としてヤモリテープの実用性を検証した。マイクロナイフを使用したマニピュレーターシステムによる切削を行った結果、クロスセクション分析と併用した際の細かな情報を十分得られるとわかった。一方で繰り返し使用可能な性質を持つヤモリテープであるが、実際の文化財剥落片資料から、各層で切削をした粉末状態のサンプルを回収した際にはテープの変形が大きく、使い捨てになることがわかった。また、ヤモリテープが存在した場合の誘導体化に着手したが、これまでの高分子の誘導体化の条件のままでは、十分な効果が得られないことが確認できた。2スペイン装飾美術館で分析提供を受けた作品には、貝が使用されていたことから、螺鈿を用いた漆器を対象として、浦添市美術館および南蛮文化館に所有されている作品の調査に着手した。その結果、用いられる貝の加工に関する重要な知見を得ることができた。また南蛮文化館では、まとまったコレクションの内容を確認しただけでなく、美術史・植物学・分析化学(有機化学、年代測定)を専門とする研究者らと共に現地調査を行って情報交換を行うことで、樹種同定・年代測定・Sr産地同定を含めた今後の分析に対する見通しを得た。分析量に制約のある微小な文化財剥落片に対する検証に着手した結果、昨年度から取り組んでいる「ヤモリテープによる粉末サンプルの回収」が従来困難であった微量サンプルの分析前段階における試料量の減少を軽減し、取り扱いの煩雑さの解消に貢献できる可能性を明らかにできたことは大きな成果といえる。また、浦添市美術館や南蛮文化館での一部の収蔵品の現地調査により、今後の顕微鏡調査を増やすことで、貝の加工法に関する重要な情報を収集できる見通しを得た。
KAKENHI-PROJECT-25282076
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25282076
微小な剥落片のクロスセクションを利用したトータル分析システムの構築
その他、3報の英文論文としてこれまでの調査内容をまとめて公表することができた。以上のような理由により、おおむね順調に進展していると判断した。1南蛮様式の輸出漆器など分析量に制限のある文化財剥落片のクロスセクションを利用した本システムでの検証の中で、従来研究と異なり数十マイクログラム以下での有機分析法を検討する本研究においては、クロスセクション(断面試料)を作製するための埋め込み樹脂がわずかにでも混在することで、分析手法によっては本来区別可能なはずの「オリジナルの材料」の情報が得られなくなることを見出した。分析試料が大量に確保できれば問題なく検出できても、次代での調査を考慮すれば破壊分析に使用する文化財試料は可能な限り少なくすべきである。そこでPy-GC/MS法で誘導体化の改良を試みた結果、従来では液体の誘導体化試薬しか使用されないのだが、固体と液体の両方を併用することで検出感度を向上させることができるという重要な知見を得た。この手法を見出したことにより、埋め込み樹脂が混在していても漆の分析に関しては、微量であっても検出できる可能性が出てきた。2スペイン装飾美術館や南蛮文化館などより提供を受けた剥落片の分析を継続する中、蒔絵などの装飾に使用されている金属粉の形状についての検証にも着手した。従来の漆器調査では蛍光X線分析などが行われ、加飾に用いられた金属の材質は調査される一方で、実際に使用されている金属の形状をより詳細に観察することはされていない。しかし現在流通している様々な蒔絵粉の形状を実体顕微鏡と走査型電子顕微鏡で観察しながら、実際の南蛮様式の輸出漆器と比較した結果、金属箔を加工した粉を使用している例をいくつも発見した。以上より、表面からの形状観察と断面からの形状観察の両方を実施して明確に金属粉の形状を捉えることは、当時の作り手の意図や製粉技術を推察する上で非常に意義があり、情報を蓄積していくことで蒔絵粉に関する研究は深化できるとの確信を得た。複数の情報を1つの剥落片から多角的に得るため、クロスセクションを利用したトータル分析システムの構築を目指し、以下の成果を得た。1Py-GC/MSによって塗料の樹脂成分と一部の鉱物顔料の情報を、1回の測定で同時に検出できる。2取り扱いに苦慮する微細粉末状の試料を回収方法としてヤモリテープの活用を提案。3クロスセクション試料作製時において失われてしまうサンプルを切削し、埋め込み樹脂が混在している状態の粉末試料をヤモリテープで回収してそのまま熱分解に活用できる可能性を指摘。以上、従来のクロスセクション研究では議論されず「活用しきれなかった文化財試料」の利用拡大へ寄与することが期待される。平成24年度末に突然決定した勤務地の異動に伴って、研究実施初年度から交付申請書に記載していた実験計画の大幅な修正が必要となった。さらに現場責任者から研究への理解を得られず、研究を実施すること自体が想像以上に困難となり、平成25年度は大きな遅れが生じてしまった。しかし平成26年度は責任者らが変わったこともあり、初年度の遅れを取り戻すべく、移設したマイクロマニピュレーターシステムを使用した本格的な研究に着手した。
KAKENHI-PROJECT-25282076
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25282076
高齢者施設における脱臭機能を有する建材の性能評価と適用方法に関する研究
ゼオライトパネルへの臭気物質の吸着量を把握するため、アセトアルデヒドとトリメチルアミンを使用して実験を行った。対照実験として、市販の調湿建材も用いた。6×6mm角の試験片を24時間、恒温槽を用いて80°Cの温度で加熱を行い、試験片の中に含まれている水分を除去する。24時間経過後、試験片が常温になった約5分後に、電子上皿天秤で測定する。その試験片をカラムに詰込み、再度重量を測定し、カラムをインキュベーターに設置する。臭気ガスを臭気強度3になるように設定し、カラム内へ流す。初期重量は、市販の調湿建材10.130g、ゼオライトパネル10.167gであった。1週間後は、市販の調湿建材10.198gで0.068gが増加し、ゼオライトパネル10.460gで0.293gが増加した。また、サンプリングバッグ内のアセトアルデヒド濃度を0.515ppmとし、試験片を入れて放置した。市販の調湿建材のバッグ内は1週間後0.434ppm、ゼオライトパネルのバッグ内は1週間後0.424ppmと減衰した。市販の調湿建材とゼオライトパネルでは、吸着性能に大きな差があることが認められた。ゼオライトパネルの方が初期吸着において約4倍の吸着性能を有すると考えられた。光触媒を塗布したゼオライトパネルの試験片を用いた実験では、ゼオライトパネルに紫外線を照射することで、アセトアルデヒドのような臭気物質は、分解されるため物質吸着による飽和時間を遅らせることができることが明らかとなった。室内の臭気問題として、高齢者施設内の臭気があげられており、対策が望まれている。今年度の研究では、まず、高齢者施設内の臭気成分を分析し、感覚的に影響を強く及ぼしている臭気成分を明らかにした。その結果、居室ではアルデヒド類、便所では硫化水素、メチルメルカプタンが主成分であることが把握された。また、臭気対策として、分解による臭気対策の検討を行なった。建材に可視光型光触媒を塗布したものを用いて、光量と臭気物質の分解基本性能の関係を実験的に検討し、実態調査として、高齢者施設内でも特に不快な臭気が感じられる便所を対象として、便所内の壁材に可視光型の光触媒を塗布したものを設置し、間接照明を当て、臭気レベルの測定を行なった。その結果、条件が整えられる実験室では、メチルメルカプタン、アンモニア、ホルムアルデヒドともに、検知閾値以下まで除去されたが、実態調査では、発生量が瞬間的に多くなる時があり、感覚的に明確な効果をつかむことができない場合があった。さらに、建材として、吸着性能に優れているゼオライトパネルを用いて、臭気物質の吸着、分解に関する基礎実験を実施した。その結果、光触媒を塗布したゼオライトパネルの方が、臭気物質の除去性能は向上した。今年度の研究成果から、建材としては吸着層を持つ建材を使用する方が、光触媒を用いた分解機能を高めることができると推察された。また、光触媒による分解過程での生成物についても確認する必要があることが示唆された。光触媒を塗布したゼオライトパネルの基本的な吸着・分解性能を把握することを目的として、ゼオライトパネルの臭気物質別の吸着性能、紫外線強度と光触媒の分解特性の関係、分解過程において発生が示唆されている副生成物の検討を行った。また、光触媒による脱臭性能を詳細に検討するために、臭気物質の吸着層を持たない材質に光触媒を塗布した場合の臭気物質の除去効果についても検討を行った。ゼオライトパネルによる脱臭効果の検討では、1m^3のチャンバーの天井面にゼオライトパネルを設置し、チャンバー内に臭気物質を拡散させ、その濃度の変動を測定した。実験に用いた臭気物質は、介護臭の主な物質を考慮し、アンモニア、プロピオン酸、硫化水素、トルエンとし、設定濃度については臭気強度34となるよう調整した。ゼオライトパネルに塗布した光触媒による分解効果の検証については、床面よりブラックライトで10μW/cm^250μW/cm^2の強度で照射した。光触媒のみの脱臭効果の検証については、蛍光灯に光触媒を塗布し、1m^3のチャンバーにその蛍光灯を入れ、臭気物質の変動を測定することにより検討した。その結果、ゼオライトパネルへの各臭気物質の吸着については、プロピオン酸、硫化水素、アンモニア、トルエンの順で大きいことが明らかとなった。トルエン濃度の変動から分解の効果が認められたが、分解過程における副生成物として、主にアセトアルデヒドの発生が示唆された。ゼオライトのように吸着が大きい材質に光触媒を塗布した場合には、吸着の影響が大きく、分解特性を見ることが難しかったが、吸着層を持たない材質である蛍光灯に光触媒を塗布した場合には、プロピオン酸等も光触媒によって分解されている状況が明らかになった。ゼオライトパネルへの臭気物質の吸着量を把握するため、アセトアルデヒドとトリメチルアミンを使用して実験を行った。対照実験として、市販の調湿建材も用いた。6×6mm角の試験片を24時間、恒温槽を用いて80°Cの温度で加熱を行い、試験片の中に含まれている水分を除去する。24時間経過後、試験片が常温になった約5分後に、電子上皿天秤で測定する。その試験片をカラムに詰込み、再度重量を測定し、カラムをインキュベーターに設置する。
KAKENHI-PROJECT-15686023
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15686023
高齢者施設における脱臭機能を有する建材の性能評価と適用方法に関する研究
臭気ガスを臭気強度3になるように設定し、カラム内へ流す。初期重量は、市販の調湿建材10.130g、ゼオライトパネル10.167gであった。1週間後は、市販の調湿建材10.198gで0.068gが増加し、ゼオライトパネル10.460gで0.293gが増加した。また、サンプリングバッグ内のアセトアルデヒド濃度を0.515ppmとし、試験片を入れて放置した。市販の調湿建材のバッグ内は1週間後0.434ppm、ゼオライトパネルのバッグ内は1週間後0.424ppmと減衰した。市販の調湿建材とゼオライトパネルでは、吸着性能に大きな差があることが認められた。ゼオライトパネルの方が初期吸着において約4倍の吸着性能を有すると考えられた。光触媒を塗布したゼオライトパネルの試験片を用いた実験では、ゼオライトパネルに紫外線を照射することで、アセトアルデヒドのような臭気物質は、分解されるため物質吸着による飽和時間を遅らせることができることが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-15686023
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15686023
精子形成における放射線適応応答の実験的研究
細胞が低線量の電離放射線に被曝すると、その後しばらくの間、高線量放射線に対する抵抗性を上げる「放射線適応応答」の例を、マウス精母細胞の第一減数分裂前期シナプトネマ複合体の観察により発見した。今回は、性染色体以外にも染色体を特定するため、第1染色体に大きな逆位のあるマウスIn(1)1Rkと、第1染色体と第17染色体に相互転座のあるT(1:17)190Caマウスの、それぞれのヘテロ雄を用いた。双方のマウスを4群に分け、C(対照)群、L(50mGy照射)群、H(4Gy照射)群、L+H(50mGy照射4時間後に4Gy照射)群としてX線照射した。照射4日後と5日後に精巣を摘出し、プラスチックフィルム・コートしたスライドグラスに細胞を分散して低張処理した。これを銀染色して光学顕微鏡で観察、第一減数分裂厚糸期前期にある細胞を選び出して、その周辺をプラスチックフィルムごと切り出した。これを水に浮かべてグリッドに取り、電子顕微鏡で観察した。C群、L群ともシナプトネマ複合体の異常頻度は低かった。H群では、すべての染色体に異常がみられた。特定した第1、第17染色体では、これら逆位や相互転座の原因となった染色体切断点に特に多く切断がみられた。これら部位は染色体切断の高感受性部位であることが示された。照射5日後に検査したものでは、4日後のものより染色体異常頻度が高かった。L+H群では、全染色体異常、個別には、切断、性染色体-常染色体対合、転座、ブリッジが、H群より有意に少なく、放射線適応応答がみられた。本研究では、精母細胞の放射線適応応答を確認し、逆位や転座の原因になった染色体切断部位は、放射線による切断感受性が高いことを発見した。細胞が低線量の電離放射線に被曝すると、その後しばらくの間、高線量放射線に対する抵抗性を上げる「放射線適応応答」の例を、マウス精母細胞の第一減数分裂前期シナプトネマ複合体の観察により発見した。今回は、性染色体以外にも染色体を特定するため、第1染色体に大きな逆位のあるマウスIn(1)1Rkと、第1染色体と第17染色体に相互転座のあるT(1:17)190Caマウスの、それぞれのヘテロ雄を用いた。双方のマウスを4群に分け、C(対照)群、L(50mGy照射)群、H(4Gy照射)群、L+H(50mGy照射4時間後に4Gy照射)群としてX線照射した。照射4日後と5日後に精巣を摘出し、プラスチックフィルム・コートしたスライドグラスに細胞を分散して低張処理した。これを銀染色して光学顕微鏡で観察、第一減数分裂厚糸期前期にある細胞を選び出して、その周辺をプラスチックフィルムごと切り出した。これを水に浮かべてグリッドに取り、電子顕微鏡で観察した。C群、L群ともシナプトネマ複合体の異常頻度は低かった。H群では、すべての染色体に異常がみられた。特定した第1、第17染色体では、これら逆位や相互転座の原因となった染色体切断点に特に多く切断がみられた。これら部位は染色体切断の高感受性部位であることが示された。照射5日後に検査したものでは、4日後のものより染色体異常頻度が高かった。L+H群では、全染色体異常、個別には、切断、性染色体-常染色体対合、転座、ブリッジが、H群より有意に少なく、放射線適応応答がみられた。本研究では、精母細胞の放射線適応応答を確認し、逆位や転座の原因になった染色体切断部位は、放射線による切断感受性が高いことを発見した。
KAKENHI-PROJECT-07670990
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07670990
エクソソームを利用した抗癌剤感受性予測および新規核酸治療法の開発
術前抗癌剤療法をうけた食道癌患者の奏功例・非奏功例5症例ずつの血清を用いたmicroRNAarrayを施行。microRNAarrayより、非奏功例の血清にて高発現を認めたmicroRNA(miR-X, miR-Y)に着目して、in vitroで抗癌剤耐性機序の検討を行った。In vitroにおける検討では、抗癌剤感受性におけるmiR-X, miR-Yの直接的影響は認められなかった。線維芽細胞との共培養実験により、miR-X, miR-Yは抗癌剤耐性に寄与することが判明した。食道癌細胞が分泌されるmiR-X, miR-Yは微小環境を調節することで抗癌剤耐性を獲得している可能性が示された。術前抗癌剤療法をうけた食道癌患者の奏功例・非奏功例5症例ずつの血清を用いたmicroRNAarrayを施行。microRNAarrayより、非奏功例の血清にて高発現を認めたmicroRNA(miR-X, miR-Y)に着目して、in vitroで抗癌剤耐性機序の検討を行った。In vitroにおける検討では、抗癌剤感受性におけるmiR-X, miR-Yの直接的影響は認められなかった。線維芽細胞との共培養実験により、miR-X, miR-Yは抗癌剤耐性に寄与することが判明した。食道癌細胞が分泌されるmiR-X, miR-Yは微小環境を調節することで抗癌剤耐性を獲得している可能性が示された。1.臨床サンプルを用いた抗癌剤耐性・感受性に関与するmicroRNAの同定食道癌化学療法症例の奏功例(good PRCR)5例と、非奏功例(PDSD)5例の血液サンプルよりmirVanaPARISkitを用いてTotalRNAの抽出を行った。ついで、血中RNAのQuality checkをAgilent 2100バイオアナライザを用いて血中RNAのQuality checkを行った。その上で、TORAY 3D-Gene microRNAチップによるmicroRNA arrayを行った。その結果、奏功例、非奏功例において、1.75倍以上の発現差を認める血中microRNAを合計22種類同定できた。食道癌化学療法前の患者の血液サンプル70サンプルを用いてmicroRNAarrayのvalidationを行ったところ、これら22種のmicroRNAのうち、3種のmicroRNAにおいて、抗癌剤感受性と相関を認めた。2.選定したmiRNAに関して、細胞株での導入/抑制実験3種のmicroRNAのうち、2種は非奏功例で高発現を認めたmicroRNAに着目して基礎研究を行った。食道癌細胞株TE4,TE8,TE10を用いて、細胞株での発現を確認すると、TE4,TE8ではTE10にくらべ高発現であった。そこで、TE4,TE8におけるanti-miRのtransfectionを行い、CDDPに対する治療効果をMTT assay, apoptosis assay(Annexin V&PI; Biovision)を行ったところMTT assayにおいては、CDDPの効果との関連性を認めなかったが、apoptosis assayにおいては、TE4でアポトーシスが増強しており、今回着目したmicroRNAがアポトーシス抑制に関与している可能性が示唆された。現在、当初予定していたmicroRNAの同定とそのメカニズムに関する実験が進行しており、かつpositiveな結果が得られている。抗癌剤耐性のさらなるメカニズムの解明に加え、癌組織中と血液中のmicroRNAの比較を行う。さらに、動物実験における、microRNAの全身投与モデルを作成し、microRNAが治療に応用できるかを検証する。また、エクソソーム分画、AGO2分画のmicroRNAの定量を行い、臨床的意義を検討する予定である。今後も同定したmicroRNAの発現解析、target遺伝子の発現解析、動物実験に試薬や抗体・プライマーなどの消耗品の使用を要する。本研究の成果を学会活動や論文による報告に研究費を使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-24791416
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24791416
がん細胞分化機構の分子生物学的解明と分化誘導療法の臨床応用に関する基礎的研究
全トランス型レチノイン酸(ATRA)による分化誘導療法は急性前骨髄球性白血病(APL)に90%以上の有効性を示すがATRA治療後の再発例には20%以下の再寛解率しか示さない。班員が創製した新レチノイドAm-80はATRA耐性細胞において増加している細胞内レチノイン酸結合蛋白とは親和性を示さないため、ATRAで寛解後に再発したAPL24例に使用した所、14例(58%)に完全寛解を得た。ATRAはプロテアゾーム系依存的に、APLの原因遺伝子産物PML-RARA蛋白を分解し、PML蛋白の細胞内局在を正常化する。APL細胞株であるNB4のATRA耐性株は様々なレチノイン酸に耐性だが、cAMPとの併用で分化がおきる。耐性株はATRA処理によってもPML-RARA蛋白は減少せず、PML蛋白の細胞内局在も正常化PML-RARAの転写物は不変であり、900番目のProがLeuに変わっている。亜ヒ素酸(As_2O_3)はNB4に対し、高濃度ではアボトーシスを、低濃度では分化様形態変化を起こすが、NBT還元能や細胞表面抗原の発現を誘導せず、通常の分化誘導とは異なり、PML-RARA蛋白を減少させるものの、レチノイン酸とは違うPML蛋白局在変化をもたらし、患者細胞にも感受性を示す。一方レチノイドアンタゴニストおよび分化誘導活性を大幅に増強するシナ-ジスト数種を創製し、レチノイドが関与しないとされていたK562細胞を赤芽球系血球細胞に分化させ得、これらにもレチノイドが必須因子であることを示した。また、分化誘導に対し活性型ビタミンD_3と相乗効果を示す新規化合物を検索し、新規ウラシル誘導体5-chloro-(2-propenyl)uracilを見出した。ウラシル誘導体はフォスファターゼを阻害しレセプターのリン酸化を高めた結果、リガンド・セレプター複合体のDNAへの結合能が増大したと推察された。全トランス型レチノイン酸(ATRA)による分化誘導療法は急性前骨髄球性白血病(APL)に90%以上の有効性を示すがATRA治療後の再発例には20%以下の再寛解率しか示さない。班員が創製した新レチノイドAm-80はATRA耐性細胞において増加している細胞内レチノイン酸結合蛋白とは親和性を示さないため、ATRAで寛解後に再発したAPL24例に使用した所、14例(58%)に完全寛解を得た。ATRAはプロテアゾーム系依存的に、APLの原因遺伝子産物PML-RARA蛋白を分解し、PML蛋白の細胞内局在を正常化する。APL細胞株であるNB4のATRA耐性株は様々なレチノイン酸に耐性だが、cAMPとの併用で分化がおきる。耐性株はATRA処理によってもPML-RARA蛋白は減少せず、PML蛋白の細胞内局在も正常化PML-RARAの転写物は不変であり、900番目のProがLeuに変わっている。亜ヒ素酸(As_2O_3)はNB4に対し、高濃度ではアボトーシスを、低濃度では分化様形態変化を起こすが、NBT還元能や細胞表面抗原の発現を誘導せず、通常の分化誘導とは異なり、PML-RARA蛋白を減少させるものの、レチノイン酸とは違うPML蛋白局在変化をもたらし、患者細胞にも感受性を示す。一方レチノイドアンタゴニストおよび分化誘導活性を大幅に増強するシナ-ジスト数種を創製し、レチノイドが関与しないとされていたK562細胞を赤芽球系血球細胞に分化させ得、これらにもレチノイドが必須因子であることを示した。また、分化誘導に対し活性型ビタミンD_3と相乗効果を示す新規化合物を検索し、新規ウラシル誘導体5-chloro-(2-propenyl)uracilを見出した。ウラシル誘導体はフォスファターゼを阻害しレセプターのリン酸化を高めた結果、リガンド・セレプター複合体のDNAへの結合能が増大したと推察された。
KAKENHI-PROJECT-08266106
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08266106
アジア系アメリカ人作家の戦争表象研究におけるトラウマ理論の有効性について
最終年度は、まず2018年4月にカリフォルニアのUCLAで開催されたAmerican Comparative Literature Associationの年次大会にて"Neurobiology and Trauma Theory"というタイトルで学会発表を行った。オーディエンスの中にも同様のテーマに興味を持つ研究者がいたので意見交換ができた。10月からフルブライト研究員としての海外研修がthe University of Minnesota, Twin Citiesで始まり、大学内のトラウマ研究グループが定期的に行うワークショップに参加した。ここでも類似した研究を行なっている研究者とともに学ぶことができ、大変有意義であった。この研究グループとは今後も交流を続けていく予定である。2019年1月にはシカゴで行われたModern Language Association(MLA)の年次大会にて"Liminal Subjects of the Pacific War"というパネルに参加し“Justice from Liminality: Documenting Atrocities in Wing Tek Lum's _The Nanjing Massacre: Poems_"という発表を行うとともにパネル司会も行った。26年度は、資料収集、資料分析、学会等での情報収集、途中経過発表を行った。資料収集に関しては、9月にロサンゼルス(UCLA)、バッファロー(SUNY at Buffalo)で行った。Project Museなどのデータベースを用いて必要な学術論文を入手した。また、地元の書店で図書購入を行った。資料分析は主に夏季、冬季などの大学の長期休暇を用いた。学会発表は、4月にペンシルバニア州ハリスバーグで行われたNortheast MLAで、9・11と第2次大戦について扱った日系作家について行い、他の研究者からフィードバックを得た。日本アメリカ学会の分科会(沖縄)、AALA例会(名古屋)では日系2世の被爆者について書かれた作品をトラウマセオリーとディスアビリティスタディの視点から分析し、他の研究者から有益なフィードバックを得た。また9月のAALA25周年記念国際フォーラムにはキーノートスピーカーのディスカッサントとして参加した。キーノートスピーカーのレクチャーが第二次世界大戦を扱ったハワイのアジア系作家作品に関することであったので、本研究課題と直接関係のあるトピックでもあり、興味深いディスカションの機会を持つことができた。12月に行われた明治大学のAsian American Literature & Asia: Citizenship, History, Memory, Diplomacyという催しにも参加し、科研プロジェクトで扱うアジア系アメリカ人作家、台湾、韓国などのアジア系アメリカ研究を行っている研究者と交流を深めることができた。特にアジア系アメリカ人作家に直接作品に関して質問できたことは研究に大いに役立った。27年度春先の手術の影響で前半は学会発表などの出張を伴う活動は制限された。そのため論文執筆、資料精読を中心に夏まで作業を進めた。論文を一本書き上げ、日本アメリカ学会の学会誌に提出した。この論文は28年に出版されることになった。ようやく8月に国内出張の許可が担当医よりおりたので、8月17日から19日に開催された九州アメリカン・ルネサンス研究会夏季セミナー(福岡・大分で開催)で講演をした。この研究会ではアフェクト(情動)の理論を中心に勉強を進めていたので、専門であるトラウマの分野との関連を他の参加者から学べ大変有意義であった。年明けには海外出張も可能になり、1月9日から12日にハワイのホノルルで開催された人文系の学会で学会発表を行った。また、3月17日から20日にハーバード大学で行われた比較文学の学会でも学会発表を行った。これら海外での学会発表では、様々な国の研究者と意見を交換したり、発表へのフィードバックを得ることができた。また学会会場の展示会では最近の学術書籍の情報を集めることができた。ハーバードでの学会発表の後、母校であるニューヨーク州立大学バッファロー校に向かい、大学院図書館で資料収集を行うことができた。充実したデータベースを使用することでたくさんの参考文献をダウンロードすることができた。また、琉球大学大学病院のセラピストをコンサルタントにむかえトラウマに関する脳医学の英語論文の精読を行った。医学系の論文は、初めは知識がないため理解に苦労したが、最近はだいぶスピードを上げて読めるようになった。27年春の手首の手術の影響が夏まで続いたため、研究活動がかなり制限されたため。2015年前半の入院、その後のリハビリ期間に研究が中断したり、滞ったため、その遅れが未だに影響している。年度始めの4月13日から15日にかけてアメリカ、オレゴン州ポートランドで開催されたAssociation for Asian American Studiesの年次大会に参加し、"Death, Bodies and Medicine"というセッションにおいて論文発表を行った。論文のタイトルは、"Politics of Care and Racialized Medicine in Chang-rae Lee's _A Gesture Life_"である。前年度同作品について別の学会発表用の論文を執筆したが、これと今回の発表論文と合わせて出版できる水準の論文に仕上げたい。2015年度の手首の手術・リハビリのためしばらく研究ができなかったことが、遅れの原因になっている。また、脳や記憶についての医学知識の習得に多くの時間を費やすことが必要となったためやや遅れる結果となった。最終年度は、まず2018年4月にカリフォルニアのUCLAで開催されたAmerican Comparative Literature Associationの年次大会にて"Neurobiology and Trauma Theory"というタイトルで学会発表を行った。オーディエンスの中にも同様のテーマに興味を持つ研究者がいたので意見交換ができた。10月からフルブライト研究員としての海外研修がthe University of Minnesota, Twin Citiesで始まり、大学内のトラウマ研究グループが定期的に行うワークショップに参加した。ここでも類似した研究を行なっている研究者とともに学ぶことができ、大変有意義であった。
KAKENHI-PROJECT-26370320
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26370320
アジア系アメリカ人作家の戦争表象研究におけるトラウマ理論の有効性について
この研究グループとは今後も交流を続けていく予定である。2019年1月にはシカゴで行われたModern Language Association(MLA)の年次大会にて"Liminal Subjects of the Pacific War"というパネルに参加し“Justice from Liminality: Documenting Atrocities in Wing Tek Lum's _The Nanjing Massacre: Poems_"という発表を行うとともにパネル司会も行った。医学系のトラウマ研究を読み進める作業が遅れている。また、ここ5年以内に出版された人文系のトラウマ研究の書物は膨大であり、分析に時間がかかっている。また、入院、手術などで作業が中断した。当初は様々なアジア系アメリカ人のテキストを用いる予定だったが、ブックプロジェクトに関してはフォーカスをより明確にするため太平洋戦争に関するテキストに絞ることにした。個々の論文発表についてはベトナム戦争など他の戦争トラウマのテキストも用いる。ハーバードでの学会で人文系のトラウマセオリーの最近の発展の動向は十分把握できていると確認したので、今年は人文系の理論と医学系の研究を具体的にどのように繋げていくか考えていきたい。昨年までの学会発表論文をより修正し、書籍出版できる形にしていきたい。また、医学系のトラウマ、記憶に関する資料分析をさらに進めていきたい。脳についての知識もだいぶついてきたので、今後は、医学系の文献をさらに読み進めるとともに、人文系のトラウマ理論とどのように医学系の知識をブリッジしていくか考えていきたいと思う。特に、Catherine Malabou, Adrian Johnstonなどの著作からNeuroscience分野と人文分野の繋がりを作り上げていく方法を学びたいと考えている。医学系トラウマ研究を読み進めるため、コンサルタントを2人見つけることができたので、本年度は昨年度より作業を能率よく進めたい。また、昨年は学会発表を通して主に研究の途中成果を他の研究者をシェアしたが、手術後のリハビリのため、今年度前半、学会に行くのが困難なため、今年度は、長めの論文執筆により時間をあてていく予定である。
KAKENHI-PROJECT-26370320
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26370320
甲状腺ホルモンのノンゲノミック作用によるp27kip1の調節機序とその意義
本研究は、T3がp27^<Kip1>リン酸化を抑制し、p27^<Kip1>のUbiquitin化を減弱することによってp27^<Kip1>の蛋白レベルを増加することを明らかにした。このT3ノンゲノミク作用は細胞周期を制御することによって、細胞の分化を促進する一方、増殖を抑えた。本研究は、T3がp27^<Kip1>リン酸化を抑制し、p27^<Kip1>のUbiquitin化を減弱することによってp27^<Kip1>の蛋白レベルを増加することを明らかにした。このT3ノンゲノミク作用は細胞周期を制御することによって、細胞の分化を促進する一方、増殖を抑えた。T3よるp27^<Kip1>の調節分子機序を解明するために以下の実験を行った。1)まずは、pGL-IRES plasmidを作成し、N2aTRαとN2aTRβ細胞でReporter gene assayを行った。IRESはp27^<Kip1>mRNA上流にあるnon-coding sequenceであり、蛋白合成促進に関与する領域です。その結果、T3の添加はluciferase活性を増加しなかったため、p27^<Kip1>の蛋白合成効率に影響がないことを示唆した;2)次は、N2aTRαとN2aTRβ細胞を用いて、pulse-chase法で一定時間内に合成されたp27^<Kip1>蛋白を標識し、その後標識された蛋白がT3存在下、非存在下での経時的変化を追跡し、蛋白の安定性を検討した。その結果、N2aTRβ細胞で、T3はp27^<Kip1>蛋白安定性を促進したが、N2aTRα細胞では変化が認められなかった。また、N2aTRGS細胞でもN2aTRβと同じ結果を得られた。以上の結果から、T3はTRβのナンゲノミック作用を介して、p27^<Kip1>蛋白安定性を促進することを示唆した;3)さらに、N2aTRGS細胞をproteasome阻害剤LLnLやMG132で前処理し、p27^<Kip1>蛋白を免疫沈降後、抗ubiquitin抗体、抗p27^<Kip1>抗体を用いたWestern Blottingで、p27^<Kip1>のubiquitin化状態を検討した。その結果、T3はp27^<Kip1>のubiquitin化を抑制した;4)p27^<Kip1>のUbiquitin化はThr^<187>依存性と非依存性のメカニズムがあり、3)のように処理したN2aTRGS細胞のp27^<Kip1>のThr^<187>リン酸化を、Thr^<187>のリン酸化部位を特異的に認識できる抗体を用い、Western Blottingで検討した。その結果、T3がp27^<Kip1>のThr^<187>リン酸化を抑制した。以上の結果はT3がp27^<Kip1>のThr^<187>リン酸化を抑制し、p27^<Kip1>のUbiquitin化を減弱することによってp27^<Kip1>の蛋白レベルを増加することを明らかにした。ヒト肝細胞癌では、その70%以上がTRの変異を持つと言われている。これらの変異は主にTRのT3結合領域にあり、DNA結合領域だけの変異体はまだ報告が無い。T3の細胞分化作用がTRの変異で阻害されることが発癌の一つの原因だと考えられている。そこで、本研究は癌細胞におけるp27^<Kip1>のT3による調節とその意義を解明するために、ヒト肝細胞癌由来のHepG2細胞を用い、pcDNA3.1/TRGS(DNA結合能欠損)、pcDNA3.1/TRβ1-EとpcDNA3.1/TRβ1-J(両者はhepatocellular carcinoma患者に同定された変異体で、TRβ1-EはT3結合領域とDNA結合領域に変異を有し、TRβ1-JはT3結合領域だけに変異を有する)を導入し、これらのTRを恒常的に発現する細胞を樹立した。1)まず、これらの細胞にT3によるp27^<KiP1>の発現調節をWestern Blotting法で検討した。TRGS発現している細胞だけには、p27脇P1はT3により発現量が促進された。以上の結果から、T3はTRβと結合して、nongenomic作用を介して、P27^<Kip1>の発現量を調節することを強く示唆された。2)また、CK8 kitを用いて、癌細胞増殖に対するTR変異体の影響も検討した。その結果、TRGSではなく、TRβ1-EとTRβ1-Jを発現している細胞の増殖が促進された。この促進はp27^<Kio1>siRNAの導入することによって、抑えられた。以上の結果から、T3はTRβと結合して、新たなnongnomicメカニズムを介してp27照P1の発現を促進し、そして細胞周期を制御することによって、細胞の分化を促進する一方、増殖を抑えたことを強く示唆された。
KAKENHI-PROJECT-22790884
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22790884
ラクトフェリンの歯周治療への応用に関する基礎的研究
1.GCF,唾液中のヒトラクトフェリン(hLf)定量15人の被験者から採取したGCFおよび7人の被験者から採取した唾液についてhLf量を測定した結果,GCFでは平均226μg/ml,唾液では平均20μg/mlとGCF中のhLf量は有意に高かった。2.歯根面におけるhLf分布状態の観察ウサギ抗hLf IgGを使った免疫染色により,歯石が認められた部位には強い蛍光が認められた。被験歯の歯根を表層から歯髄腔までが3層となるように切削してhLf量を測定した結果,歯石が付着している部位では第1層から第3層に向かうにつれてhLf量が減少していた。また,歯石付着部位の第1層に含まれるhLf量は歯石非付着部位の第1層に比べて有意に高かった。さらに,歯石付着部位,歯石非付着部位とも第1層から第3層に向かうにつれてエンドトキシン活性が減少していた。3.歯肉縁上,縁下プラーク中のhLf定量19人の被験者から採取した歯肉縁上・縁下プラーク中のhLf量を測定した結果,縁上プラーク中hLf量の平均は3.27μg/ml,縁下プラーク中hLf量の平均は2.06μg/mlであり,対応のあるt検定で解析したところ統計学的な有意差は認められなかった。しかし,両者間には有意な相関関係が認められた(相関係数0.609,p<0.01)。4.hLfがA. actinomycetemcomitans感染ヒト単球系細胞の細胞死に与える影響THP-1細胞にA. actinomycetemcomitansを感染させ24時間後,感染群では対照群に比べてTNF-α産生量が有意に増加した。これにhLfを添加するとTNF-α産生量は有意に減少した。また,感染群では細胞内DNA断片化が対照群に比べて有意に亢進したが,hLf(100μg/ml)を感染操作前後に添加すると対照群と同程度まで断片化が抑制された。1.GCF,唾液中のヒトラクトフェリン(hLf)定量15人の被験者から採取したGCFおよび7人の被験者から採取した唾液についてhLf量を測定した結果,GCFでは平均226μg/ml,唾液では平均20μg/mlとGCF中のhLf量は有意に高かった。2.歯根面におけるhLf分布状態の観察ウサギ抗hLf IgGを使った免疫染色により,歯石が認められた部位には強い蛍光が認められた。被験歯の歯根を表層から歯髄腔までが3層となるように切削してhLf量を測定した結果,歯石が付着している部位では第1層から第3層に向かうにつれてhLf量が減少していた。また,歯石付着部位の第1層に含まれるhLf量は歯石非付着部位の第1層に比べて有意に高かった。さらに,歯石付着部位,歯石非付着部位とも第1層から第3層に向かうにつれてエンドトキシン活性が減少していた。3.歯肉縁上,縁下プラーク中のhLf定量19人の被験者から採取した歯肉縁上・縁下プラーク中のhLf量を測定した結果,縁上プラーク中hLf量の平均は3.27μg/ml,縁下プラーク中hLf量の平均は2.06μg/mlであり,対応のあるt検定で解析したところ統計学的な有意差は認められなかった。しかし,両者間には有意な相関関係が認められた(相関係数0.609,p<0.01)。4.hLfがA. actinomycetemcomitans感染ヒト単球系細胞の細胞死に与える影響THP-1細胞にA. actinomycetemcomitansを感染させ24時間後,感染群では対照群に比べてTNF-α産生量が有意に増加した。これにhLfを添加するとTNF-α産生量は有意に減少した。また,感染群では細胞内DNA断片化が対照群に比べて有意に亢進したが,hLf(100μg/ml)を感染操作前後に添加すると対照群と同程度まで断片化が抑制された。平成12年度では,(1)歯周炎患者の歯周組織におけるラクトフェリンの分布状態および(2)感染防御機構におけるラクトフェリンの役割,について検討する予定であった。(1)については,ELISA法によるラクトフェリン定量について再度,確認を行った。まず,1/1000希釈ウサギ抗ラクトフェリン抗体によってコーティングしたプレートを1%牛血清アルブミンによってブロッキングした。0.25ng/ml128ng/mlに希釈したヒトラクトフェリン溶液を標準血清とした。5名の健常者から採血した血清を希釈し,標準血清と共にプレートに加え室温で2時間インキューベートした。洗浄後,1/1000希釈したペルオキシダーゼ標識ウサギ抗ラクトフェリン抗体を加えて室温で2時間インキューベートした。プレートを洗浄後,基質溶液を加え発色させた。その結果,血清ラクトフェリン濃度は0.236μg/ml0.357μg/mlであった。これらの値は,これまで報告されている濃度と同様であった。歯肉溝滲出液についても,同様に健常者からのサンプルを用いて測定を行った。また,ポケット内縁上皮および抜去歯表面におけるラクトフェリンの分布については,現在,患者からのサンプルを収集中である。
KAKENHI-PROJECT-12672039
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12672039
ラクトフェリンの歯周治療への応用に関する基礎的研究
(2)については,これまでマウスマクロファージで行ってきた感染実験をヒト由来の細胞(HL-60,U-937,THP-1)に細胞を換えて実験系を組み立てている途中である。実験系が確立次第,ヒトマクロファージのリポ多糖あるいは炎症性サイトカインに対する反応性にラクトフェリンがどの様に影響するか検討する予定である。平成13年度では,1.歯肉溝滲出液および唾液中のラクトフェリン量の定量,2.歯肉あるいは歯根面におけるラクトフェリンの分布について検討した。1.Ora flow社製ペリオペーパー(歯肉溝滲出液)あるいはサイアロペーパー(唾液)によって採取したサンプルについて,液量をペリオトロンにて計測した。その後,サンドイッチELISA法によりラクトフェリン量を定量した。現在,サンプル数を増やし,健常者と歯周病患者との間でラクトフェリン量に差が認められないか検討中である。2.歯周外科時に歯肉内縁上皮を含む試料を採取し,液体窒素中でO.C.Tコンパウンド(SAKURA社製)に包埋した。クライオスタットで超薄切片を作製し,ペルオキシダーゼ標識ウサギIgG(カッペル社製)を用いた免疫組織染色を行った。しかし,切片中にはラクトフェリン陽性の染色像は認められなかった。また,抜去歯をウサギ抗ヒトラクトフェリン抗体(カッペル社製)およびアレキサ532標識ヤギ抗ウサギIgG抗体(カッペル社製)にて蛍光染色し,モレキュラーイメージャー(バイオラッド社製)により観察した。抜去歯を撮影した画像と蛍光画像を比較したところ,強く蛍光を発する部位には歯石の付着が認められた。よって,ラクトフェリンは歯石が付着している部位に分布している可能性が示唆された。根面表層に分布するラクトフェリンが歯根全体に均一に分布しているかどうかを調べるために,根面を表層から歯髄腔まで一定量ずつ切削し,その中に含まれるラクトフェリン量を定量した。その結果,歯石付着の有無に関わらず,表層から歯髄腔に向かうにつれてラクトフェリン量は減少した。以上の結果から,ラクトフェリンは歯根表層,特に歯石が付着している部位に分布していることが明らかになった。平成14年度では,ラクトフェリンが歯周組織,特に歯肉上皮,歯肉線維芽細胞に与える影響について検討する予定である。平成14年度では,(1)歯肉縁上・縁下プラーク中のラクトフェリン定量,(2)歯根面にけるエンドトキシンとラクトフェリンの分布について検討した。(1)北海道医療大学歯学部附属病院にて歯周治療を行っている患者20名から,患者のプラークを実験に供するための承諾を得た。滅菌したスケーラーを使用して縁上・縁下のプラークを採取し,あらかじめ用意しておいたマイクロチューブ内のPBSに懸濁した。遠心操作後,上清を採取しタンパク定量,サンドイッチELISA法によるラクトフェリン定量を行った。サンプル中のタンパク量によってラクトフェリン量を標準化した後にデータを解析した結果,縁上プラーク量と縁下プラーク量との間に有意差は認められなかった。しかし,縁上プラーク中のラクトフェリン量と縁下プラーク中のラクトフェリン量が有意に相関するという結果が得られた。この結果から,患者毎にプラーク中に含まれるラクトフェリン量が異なる可能性が考えられた。(2)歯周治療において保存不可能と診断され抜歯された抜去歯について,根面表層に分布するラクトフェリンとエンドトキシンが歯根表層から深層までに均一に分布しているかどうかを調べるために,根面を表層から歯髄腔まで一定量ずつ切削し,その中に含まれるラクトフェリンとエンドトキシンを定量した。その結果,歯石付着部位では,表層から歯髄腔に向かうにつれてラクトフェリン量とエンドトキシン量は減少した。
KAKENHI-PROJECT-12672039
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12672039
無限次元多様体上の変分法の幾何学的研究
無限次元多様体上の幾何学について研究をすすめた.特に有限次元多様体上の関数空間として得られる多様体を研究し,その結果として元の多様体の研究に有用な知見を得た.より具体的には,有限次元多様体に関わる様々な汎関数を考察し,その変分を研究した.その根底にあるのは,良く研究されてきたモ-ス理論の拡張を目指すものである.モ-ス理論の研究は,その勾配ベクトル場を通じて力学系の研究に帰着させた.この視点にたって我々の研究は,無限次元力学系の研究にも貢献できた.これらの成果を通じて,下記に述べる無限次元及び有限次元多様体の位相・微分幾何学的性質をある程度明らかにできた.まず有限次元多様体上の計量全体のなす空間の位相を研究した.これを3つの観点から研究を進めた.第1に計量から定まる様々な(積分幾何的)不変量の変分を調べるものである.このような不変量の極値は,様々な偏微分方程式の解として与えられる.従って変分法と非線形偏微分方程式の観点で研究可能であった.第2にリーマン計量の曲率から定まる様々な不等式の極値を考察することである.多くのリーマン幾何学的な不変量の極値は偏微分方程式からは特徴つけられないが,それらに対してはより素朴で純リーマン幾何学的手法での研究が可能であった.第3に,この空間は多様体上の可微分同相写像のなす(無限次元)リー群の分類空間であることに着目する.従ってfoliated productの分類空間の研究の中で使われてきた方法がいろいろと使用できることが確認できた.さらに有限次元多様体上に与えられた構造のなすモジュライ空間や,2つの有限次元多様体の間の写像の族のなす空間の位相を研究した.この問題は部分多様体の研究を含んでいる.これらの問題についても多くの知られている汎関数の変分を調べることで研究をすすめた.無限次元多様体上の幾何学について研究をすすめた.特に有限次元多様体上の関数空間として得られる多様体を研究し,その結果として元の多様体の研究に有用な知見を得た.より具体的には,有限次元多様体に関わる様々な汎関数を考察し,その変分を研究した.その根底にあるのは,良く研究されてきたモ-ス理論の拡張を目指すものである.モ-ス理論の研究は,その勾配ベクトル場を通じて力学系の研究に帰着させた.この視点にたって我々の研究は,無限次元力学系の研究にも貢献できた.これらの成果を通じて,下記に述べる無限次元及び有限次元多様体の位相・微分幾何学的性質をある程度明らかにできた.まず有限次元多様体上の計量全体のなす空間の位相を研究した.これを3つの観点から研究を進めた.第1に計量から定まる様々な(積分幾何的)不変量の変分を調べるものである.このような不変量の極値は,様々な偏微分方程式の解として与えられる.従って変分法と非線形偏微分方程式の観点で研究可能であった.第2にリーマン計量の曲率から定まる様々な不等式の極値を考察することである.多くのリーマン幾何学的な不変量の極値は偏微分方程式からは特徴つけられないが,それらに対してはより素朴で純リーマン幾何学的手法での研究が可能であった.第3に,この空間は多様体上の可微分同相写像のなす(無限次元)リー群の分類空間であることに着目する.従ってfoliated productの分類空間の研究の中で使われてきた方法がいろいろと使用できることが確認できた.さらに有限次元多様体上に与えられた構造のなすモジュライ空間や,2つの有限次元多様体の間の写像の族のなす空間の位相を研究した.この問題は部分多様体の研究を含んでいる.これらの問題についても多くの知られている汎関数の変分を調べることで研究をすすめた.松本はリーマン面の退化の位相的分類を写像類群の言葉で与えた。これはリーマン面の普遍族の完備化への応用を目指すものである。砂田は磁場のある場合の測地線の方程式にあたるものを研究した。たとえば負の定曲率空間の場合を具体的に調べ、磁場の強さによって出来る力学系がアノソフ系・ホロサイクル流・完全積分系と順に変わることを示した。これらの量子化についても研究を進めている。深谷はヤングミルズ方程式と概複素曲線の方程式の混合である方程式を研究した。すなわち曲面と二次元ユークリッド空間の直積である空間を考える。この空間の上のヤングミルズ方程式は曲面の表現空間への概複素曲線の方程式と近いことがドストグラウサラモン・吉田によって知られているが,この方程式を混合した方程式を考えそれに対して,解の滑らかさ,特異点除去定理,解のモデュライ空間のコンパクト化を論じた。これらは角付き多様体の上でゲージー理論を展開する基礎となるべきものであり,たとえば境界付き多様体のフレーア-ホモロジー理論の構成の解析の部分を正当化するものである。またラグランジアンの交点に対するフレーア-ホモロジーの研究におけるマスロフ指数の意味を明らかにした。すなわちこれらはノビコフによって多価関数のモース理論を展開するために導入されたローラン多項式環(ノビコフ環)とかかわる。またこのノビコフ環が量子コホモロージー環の係数環と自然に考えられることもわかった。さらにモース理論と位相的場の理論種々の低次元多様体の位相不変量の関係についての考察も進めた。無限次元多様体上の幾何学的手法でもって、有限次元多様体上の様々な汎関数の変分について研究を進めた。
KAKENHI-PROJECT-05452006
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05452006
無限次元多様体上の変分法の幾何学的研究
得られた成果は下記の通りである。1.多様体上の幾何学的考察を元に様々な変分を考え、それらが共形不変性があるとき著しい性質を持ち、標準型を持つことを示した。(落合、大津)2.偏微分方程式論的考察を元に、様々な変分を考え、それらの危点の諸性質につき興味ある結果を得た。特に爆発を持つ危点につき知見を得た。(俣野、石村)3.有限次元多様体の微分同相の作る群およびその分類空間の位相につき成果を得た。(松本、坪井)4.Morse理論をシンプレクテイク幾何学の立場から再認識をし、物理幾何学への応用を発見した。(落合、坪井)5.多様体の写像に対する変分であるエネルギーとその危点を与える調和写像について、特に2変数の場合の研究を進めた。コントン数についての知見を得た。(落合、石村)6.部分多様体に対する変分である面積とその危点を与える極小曲面について、存在、滑らかさの研究をおこない、面積の増大度に関する知見を得た。
KAKENHI-PROJECT-05452006
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05452006
歯周病原細菌排除におけるカスパーゼの役割と炎症反応制御に関する研究
炎症性カスパーゼのカスパーゼ1、4、5はインターロイキン1βの産生やピロトーシスと呼ばれる細胞死を誘導することにより、炎症反応を惹起し、生体内に侵入した細菌の排除に関与していることが報告されている。そこで我々は歯周病炎症反応における炎症性カスパーゼの機能について実験を行った。ラットにおける実験的歯周炎モデルにおいて、カスパーゼ1の活性化に関与するNLRP3の抑制剤のグリブリドを投与したラットは、コントロールと比較して歯肉内の炎症性細胞数、破骨細胞数、歯槽骨吸収が抑制されていた。このことからカスパーゼ1は歯周炎症反応と歯槽骨吸収において重要な役割を演じていることが示唆された。病原性を示す細菌の特徴の一つとして細胞内侵入能および生存能があるが、細胞内に侵入した細菌がどのようにして排除されるかは明らかになっていない。近年、細胞質およびエンドソーム内の自然免疫受容体が細胞内細菌を検知し、カスパーゼ1,4,5を活性化し、ピロトーシスと呼ばれる形態の細胞死を誘導することで細胞内容物とともに細菌を細胞外に放出し、除菌する機序が報告された。しかし歯周病原細菌感染とカスパーゼ活性化との関連に関する研究はほとんど存在しない。そこで本研究では細胞内侵入歯周病原細菌のクリアランスにおけるカスパーゼ1,4, 5活性化とピロトーシスの役割について基礎研究を行う。病原性を示す細菌の特徴の一つとして細胞内侵入能および細胞内生存能があるが、細胞内に侵入した細菌がどのようにして排除されるかは明らかになっていない。近年、細胞質およびエンドソーム内の自然免疫受容体が細胞内細菌を検知し、カスパーゼ1、4、5を活性化し、ピロトーシスを呼ばれる形態の細胞死を誘導することで細胞内内容物とともに細菌を細胞外に放出し、除菌する機序が報告された。しかしながら歯周病原細菌とカスパーゼ活性化との関連に関する研究はほとんど存在しない。そこで本研究では細胞内侵入歯周病原細菌のクリアランスにおけるカスパーゼ1、4、5活性化とピロトーシスの役割に関して基礎研究を行う。前年度は歯肉上皮細胞株のHSC-2細胞を用いて歯周病原細菌(P. gingivalis, F. nucleatum)の細胞内侵入能について実験を行った結果、P.gingivalisは0.36%, F.nucleatumは0.14%であった。しかしながらHSC-2細胞でのカスパーゼ1、5の発現量が少なかったことから、今年度はヒトマクロファージ細胞株のTHP-1細胞を用い、実験を行った。THP-1細胞をP.gingivalis, F.nucleatumで刺激するとcaspase1 mRNAの発現はそれぞれ未刺激と比較して0.82と0.77で、コントロールのE.coliの1.89と比較して減少していた。しかしながらタンパク発現量は、P.gingivalisではcaspase1の発現は変わらなかったが、F.nucleatum, E.coliでは増加していた。またピロトーシスは3菌種でそれぞれ差は認められなかった。これらの結果から歯周病原細菌のcaspase1のタンパク発現には、さまざまな機序があることが考えられた。所属研究機関が長崎大学より福岡歯科大学に変更になり、研究環境の整備や研究条件の設定に時間を要したために研究の進捗状況はやや遅れている。HSC-2細胞ではカスパーゼ1のタンパク発現の検出は困難であったため、THP-1細胞でも実験を並行して行っている。病原性を示す細菌の特徴の一つとして宿主細胞内への侵入能および生存能があるが、細胞内に侵入した細菌の排除メカニズムは明らかになっていない。近年、細胞質内およびエンドソーム内の自然免疫受容体が細胞内細菌を検知し、インフラマソームを介したカスパーゼ1、4、5を活性化し、ピロトーシスを呼ばれる形態の細胞死を誘導することにより、細胞内容物とともに細菌を細胞外に排出し、除菌するメカニズムが報告された。一方これらのカスパーゼはIL-1βやIL-18などの炎症性サイトカインのプロセッシングと活性化にも関与しているため、炎症の誘導にも関与している。しかしながら歯周病原細菌感染とカスパーゼ活性化に関する研究は少ない。そこで我々は歯周病原細菌によるインフラマソーム活性化を介した、カスパーセの活性化とピロトーシス、IL-1βの誘導に関して基礎実験を行った。Porphyromonas gingivalis, Aggregatibacter actinomycetemcomitans刺激によりTHP-1細胞はIL-1βを培養液中に放出した。IL-1βの放出はNLRP3インフラマソームインヒビターのMCC950とカスパーゼ1インヒビターのz-YVAD-fmkにより抑制されたが、IL-8の放出は影響を受けなかった。また細菌刺激によるTHP-1細胞からのLDHの放出は誘導されなかった。このことは歯周病原性細菌刺激により、カスパーゼ1の活性化とIL-1βの活性化は誘導されるが、ピロトーシスは誘導されないことを示唆している。またこれらの細菌によるラット歯周炎モデルにおいて、NLRP3を抑制する作用を有する糖尿病治療薬グリブリドを投与したラットの歯周組織は炎症性細胞浸潤と歯槽骨吸収が減少していた。このことからNLRP3活性化が歯周炎の発症、進展に関与することが示唆された。研究期間中に長崎大学から福岡歯科大学へ研究期間の移動したために、研究の進捗状況に遅延が生じた主な理由である。さらに細胞培養液中のカスパーゼ
KAKENHI-PROJECT-26463138
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26463138
歯周病原細菌排除におけるカスパーゼの役割と炎症反応制御に関する研究
1のプロセッシングをimmunoblottingで確認しているが、適切な抗体がないためにうまく検出できていない。病原性を示す細菌の特徴の一つとして宿主細胞内への侵入能および生存能があるが、細胞内に侵入した細菌の排除メカニズムは明らかになっていない。近年、細胞質内およびエンドソーム内の自然免疫受容体が細胞内細菌を検知し、インフラマソームを介したカスパーゼ1、4、5を活性化し、ピロトーシスを呼ばれる形態の細胞死を誘導することにより、細胞内容物とともに細菌を細胞外に排出し、除菌するメカニズムが報告された。またピロトーシスによって放出された細胞内容物はDangerシグナルとして近接する細胞に作用して、炎症応答を誘導することが知られている。本年度はカスパーゼ4,5によるピロトーシスの誘導に関して研究を行った。ヒトマクロファージ細胞株のTHP-1とU937のカスパーゼ4、5の遺伝子発現をRT-PCR法によって調べたところ、これらの細胞はカスパーゼ4のみを発現しており、カスパーゼ5の発現は認められなかった。さらにカスパーゼ4のタンパク発現はWB法によって確認した。近年カスパーゼ4は細胞内LPS受容体として作用し、ピロトーシスを誘導することから、E.coliのLPSをTHP-1細胞にトランスフェクションし、細胞死を培養液中のLDH酵素活性を指標としてLPSのカスパーゼ活性化を検討した。E.coliLPSを24時間トランスフェクションすると40%の細胞が細胞死を起こした。この活性はpan-caspase抑制剤のz-VAD-fmk,カスパーゼ4抑制剤のz-LEVD-fmkによって抑制された。これらのことからマクロファージ内に侵入したグラム陰性細菌のLPSは、カスパーゼ4によって認識され、ピロトーシスを誘導することが示唆された。炎症性カスパーゼのカスパーゼ1、4、5はインターロイキン1βの産生やピロトーシスと呼ばれる細胞死を誘導することにより、炎症反応を惹起し、生体内に侵入した細菌の排除に関与していることが報告されている。そこで我々は歯周病炎症反応における炎症性カスパーゼの機能について実験を行った。ラットにおける実験的歯周炎モデルにおいて、カスパーゼ1の活性化に関与するNLRP3の抑制剤のグリブリドを投与したラットは、コントロールと比較して歯肉内の炎症性細胞数、破骨細胞数、歯槽骨吸収が抑制されていた。このことからカスパーゼ1は歯周炎症反応と歯槽骨吸収において重要な役割を演じていることが示唆された。今年度は所属研究所属機関が長崎大学より福岡歯科大学に変更になり、研究環境の整備や研究条件の設定に時間を要したために研究の進捗状況はやや遅れている。研究備品を整備しつつ、研究計画に従い実験を遂行する。実験の遅れを取り戻すべく、THP-1細胞を用いてカスパーゼ4、5についても解析を進めていく。カスパーゼ1の活性化について新しい抗体でImmunoblottingを行う予定である。Immunoblottingがうまくいかない場合においては、カスパーゼ1の酵素活性を測定する予定である。またカスパーゼ4、5のIL-1β活性化への関与も検討する。
KAKENHI-PROJECT-26463138
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26463138
日本の鉱山技術資料の総合的研究と総合目録の作成
鉱山開発は日本の近代化と資本の蓄積を支えてきた重要な産業であり、江戸時代においても様々な技術を集結した総合技術であった。本研究では、国内の江戸時代の鉱山技術に関する器物資料および文献史料のリストアップとデータベース化を目的に研究を行ってきた。これまでに全国の博物館・大学・資料館約50ヶ所を訪れ、収蔵資料の調査を行った。また主要鉱山約30ヶ所で現地調査を行った。大学関連の文書史料に関しては九大、東大で調査を行った他、東北、近畿、中国、九州地方の大学の研究者の協力によりリスト化を進めた。この内、九州大学所蔵の鉱山・製錬関連の古文書・絵図等については、随時デジタル化を行い、Web上(http://database.museum.kyushu-u.ac.jp/kouzan/およびhttp://record.museum.kyushu-u.ac.jp/search/)に公開し、研究者に限らず一般の人々による画像の閲覧と目録の検索を可能にした。鉱山の現地調査は、金・銀・銅・鉛・錫等を対象とした奈良時代江戸時代末の主要鉱山について実施した。調査では当時の山師が採掘の対象とした鉱石の採取や採掘エリアを把握する事に重点を置いた。特に製錬跡を伴う場合は製錬澤や製錬炉の炉材を採取し、鉱石と併せて分析を行うことで、採掘対象の鉱石を推定し、当時の製錬技術の検証を行った。江戸時代の鉱山技術としては、鉱山における採鉱では、坑内掘りの技術が普及し、様々な坑内燈が用いられた。また、坑内採掘では湧水対策が必須であり、桶のほか樋の使用が一般化した。水抜き坑道は近世初期から掘られていたが、測量術の進歩と普及により、元禄以後には大規模な疎水坑道の掘削が行われるようになった。鉱石を処理する選鉱技術としては、鉱石の粉砕にリンズを用いた石臼が定型となった。また、ねこ流しによる比重選鉱が行われた。鉱石から金属を取出す製錬技術では、中世末に石見銀山へ導入された灰吹法が全国に普及し、大阪銅吹所では南蛮吹が導入され、各地の鉱山や製錬所への技術移転が進められた。平成17年度には、中世ヨーロッパの鉱山技術との対比のためスウェーデン・ドイツ・スロバキアにおいて現地調査を行った。今後は、日本の主要鉱山に関する器物・文献の現状や鉱石・製錬澤の分析値等を統合した総合データベースを構築することによって、多方面から幅広く鉱山技術を研究・検証できる環境を整えてゆく。鉱山開発は日本の近代化と資本の蓄積を支えてきた重要な産業であり、江戸時代においても様々な技術を集結した総合技術であった。本研究では、国内の江戸時代の鉱山技術に関する器物資料および文献史料のリストアップとデータベース化を目的に研究を行ってきた。これまでに全国の博物館・大学・資料館約50ヶ所を訪れ、収蔵資料の調査を行った。また主要鉱山約30ヶ所で現地調査を行った。大学関連の文書史料に関しては九大、東大で調査を行った他、東北、近畿、中国、九州地方の大学の研究者の協力によりリスト化を進めた。この内、九州大学所蔵の鉱山・製錬関連の古文書・絵図等については、随時デジタル化を行い、Web上(http://database.museum.kyushu-u.ac.jp/kouzan/およびhttp://record.museum.kyushu-u.ac.jp/search/)に公開し、研究者に限らず一般の人々による画像の閲覧と目録の検索を可能にした。鉱山の現地調査は、金・銀・銅・鉛・錫等を対象とした奈良時代江戸時代末の主要鉱山について実施した。調査では当時の山師が採掘の対象とした鉱石の採取や採掘エリアを把握する事に重点を置いた。特に製錬跡を伴う場合は製錬澤や製錬炉の炉材を採取し、鉱石と併せて分析を行うことで、採掘対象の鉱石を推定し、当時の製錬技術の検証を行った。江戸時代の鉱山技術としては、鉱山における採鉱では、坑内掘りの技術が普及し、様々な坑内燈が用いられた。また、坑内採掘では湧水対策が必須であり、桶のほか樋の使用が一般化した。水抜き坑道は近世初期から掘られていたが、測量術の進歩と普及により、元禄以後には大規模な疎水坑道の掘削が行われるようになった。鉱石を処理する選鉱技術としては、鉱石の粉砕にリンズを用いた石臼が定型となった。また、ねこ流しによる比重選鉱が行われた。鉱石から金属を取出す製錬技術では、中世末に石見銀山へ導入された灰吹法が全国に普及し、大阪銅吹所では南蛮吹が導入され、各地の鉱山や製錬所への技術移転が進められた。平成17年度には、中世ヨーロッパの鉱山技術との対比のためスウェーデン・ドイツ・スロバキアにおいて現地調査を行った。今後は、日本の主要鉱山に関する器物・文献の現状や鉱石・製錬澤の分析値等を統合した総合データベースを構築することによって、多方面から幅広く鉱山技術を研究・検証できる環境を整えてゆく。本年度の研究では、江戸時代の非鉄金属(金・銀・銅・鉛・錫)鉱山、鉄山、石炭鉱山に関する技術資料を対象に予備的な所在調査を行った。まず、各地の博物館等の機関に所蔵される器物資料・文献資料の調査を行い、資料の保管状況と目録作成の現状を調査した。非鉄金属鉱山については、生野銀山(資料館)、佐渡金山(博物館、資料館)、尾去沢銅山(資料館)、大葛金山、石見銀山(資料館)について調査した。
KAKENHI-PROJECT-14023212
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14023212
日本の鉱山技術資料の総合的研究と総合目録の作成
このほか、各地域の研究者、関係者との連携をはかり、岩手県金沢金山、大分県木浦鉱山(錫)の鉱山資料の一部について現状を把握した。目録作成については、まず、九州大学工学部資源工学科所蔵の古文書資料(内田家文書、荒木文書)を対象として、資料のマイクロフィルム化を完了し古文書資料の一部について、研究分担者のホームページ上で公開を実施した。また、鉱山絵巻についてデジタル化の準備を開始した。さらに、同学部列品室の鉱山技術関連標本・器物資料のリスト化を進めた。金属鉱山鉱石試料の重要コレクションについては、産総研地質票本館所蔵の木下標本等、合同資源産業(株)所蔵の磯部標本の所在調査を行うと共に、データベース化を検討した。さらに、鉱山技術の鉱床学的背景を明らかにする目的で、地質調査、試料の採取・分析等を行った。非鉄金属鉱山に関しては、佐渡の新穂金山、島根県石見銀山、丸山銅山(大年ノ元製錬遺跡)、福岡県星野金山について、鉄山に関しては、古代の元岡遺跡(福岡県)と幕末の大日向鉄山(長野県)、犬鳴鉄山(福岡県)、富山海岸の砂鉄産地等について調査を行った。その他、目録作成を行う上で必要となる日本の鉱山リストの作成に着手した。まず、日本鉱産誌に採録されている金・銀鉱山、銅・鉛・亜鉛鉱山、錫鉱山、水銀鉱山のリストのデジタル化を完了した。また、石炭鉱山のリスト作成に関する文献資料の調査を行った。平成15年度は国内主要鉱山の現地調査として、秋田県阿仁銅山、大葛金山、尾去沢銅山、山口県長登銅山、島根県石見銀山、都茂丸山銅山、宮崎県木浦鉱山(錫)の調査を行った。資料館・博物館関連の施設としては、小坂町立総合博物館郷土館、阿仁町郷土文化保存伝承館、秋田県立博物館、秋田大学工学資源学部付属鉱業博物館、秋田県立図書館、東京大学総合博物館、東京大学工学部、湯ノ奥金山博物館、石見銀山資料館、住友史料館、大阪歴史博物館、宇部市石炭資料館等において文献・器物の所在調査を行った。特に、山口県長登銅山では、周辺地質の調査、鉱石・からみ(製錬滓)試料の分析等を行い、銅の製錬技術の古代から近世にいたる時代的変遷を検証するための基礎データの収集を行った。また、文献試料については東北地方の鉱山史料について82点を目録化した。昨年度目録化を行った九州大学旧採鉱学科所蔵鉱山関連古文書については、テキストデータベースの作成を完了し、絵図等についても随時デジタル化、HP上での公開を進めてきた。本年度の研究の過程で得られた知見として、鉱山技術を探査・採掘・選鉱・製錬のプロセスに分けた場合、鉱山技術を読み解く材料として、1)鉱山技術が人(山師)の移動を伴って広がること、2)当時の技術レベルに応じた採掘対象(鉱石)の選択、3)石臼等選鉱用の道具の変遷、4)新しい製錬技術の伝播、5)製錬技術の科学的検証等が挙げられる。特に、5)の製錬技術の検証については、長登銅山の鉱石・からみの分析の結果、当時の製錬技術や採掘の対象となった鉱石、あるいは製錬の過程で添加された溶融剤等を推定する事が可能である事が判明した。また本特定領域の他の研究班との連携として、製錬技術についてはA03班「生産遺跡出土資料研究に基づく近世科学技術の比較研究の総合化」と協調して鉱山遺跡関連のシンポジウムに参加を行った他、A01班「石黒信由以下4代の編著書・作成地図・考案測量器具に関する調査・研究と日本近代化論」と共同で鉱山で使用された測量器具についての調査をおこなった。
KAKENHI-PROJECT-14023212
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14023212
唱導文献に基づく法会の綜合的研究―寺院聖教調査の統合と復元的研究への展開―
調査フィールドの基盤調査・研究に据えている各寺院・文庫調査については、研究成果の統合に向けて、以下のような研究実績と成果を得た。〔金剛寺調査・研究〕『天野山金剛寺善本叢刊』第1期・第2期の公刊(平成28年度・29年度)を経て、調査データの綿密化・高度化を図った。さらに、他の寺院とのネットワークを解明するフォーラムを国内(名古屋大学)および海外(ハンブルク大学)において開催した。〔金沢文庫調査・研究〕神祇関係のテクストを中心とする展示を金沢文庫にて開催し、併せて研究成果を公表する研究集会を国内(横浜市立大学)および海外(エクス・マルセイユ大学)で開催した。〔真福寺調査・研究〕昨年度中に目録の入力作業・電子化の第一段階を予定通りに終了し、本年度からはデータの確認作業を進めた。また、金剛寺・東大寺等との寺院ネットワーク解明に向けた研究と、その成果報告の場を設けた(上述、名古屋大学・ハンブルク大学)。〔勧修寺調査・研究〕引き続き、重要文化財指定に連動した調査聖教・経典類の全貌解明に向けての研究を展開した。法会・唱導学創成に向けて、本研究が積極的に展開している統合的・復元的研究においては、法会の実態を灌頂に着目して解明するフォーラムを海外(UCサンタバーバラ)において開催した。東アジアにおける唱導の比較対照研究においては、あらたに文文化遺産と交流史に着目するプロジェクトを立ち上げ、学内のプロジェクト経費に採択された。具体的な研究推進は、次年度に引き継がれ、後継の共同研究へと引き継いでいく計画を立案中である。統合的研究成果への展開の一環として、前近代の日本における信仰を正統と異端の観点から、キリスト教との相対化をも意図して分析するフォーラム(ヌーシャテル大学)を開催した。また、絵画資料等を含む宗教テクストの世界を身体や芸能の視点からとらえなおすフォーラム(コロンビア大学)を開催した。成果の報告・公刊の点では、本研究の中核的課題とする、唱導文献に基づく法会の統合的・復元的研究において、一部に顕著な業績を上げることができている。金剛寺に関する研究では、予定を前倒しするかたちで『天野山金剛寺善本叢刊』第1期・第2期を刊行できたことは、特筆すべき成果である。このことにより、研究期間後半を、調査研究の綿密化に宛てることができている。さらに、寺院間ネットワークを探求する課題に向けて研究体制を整え、学会を名古屋大学に招致して、金剛寺・真福寺をめぐる聖教類のネットワーク解明の成果を得た。もちろん、調査研究対象の中核に置いている金剛寺・真福寺に関しても、今後に向けて多大な作業が残されている。両寺院聖教の悉皆目録完成は、将来的に完遂させなければならない重要な点である。この点については、本研究課題の後半に作業を進めると共に、次の共同研究の中核に据える計画を立案済みである。復元的研究について、本年度は研究分担者との共同研究体制を活かし、灌頂儀礼とのかかわりから法会の実態を復元的に探究するプロジェクトを進め、UCサンタバーバラにおいて成果報告の国際研究集会を開催することができた。これは、昨年度の論義を中心とする復元的研究と対をなすものであり、これを研究期間最終年度を待たずに行えた点は、当初の研究計画以上の進展を示すものである。これらの共同研究の成果の公刊についても、各々進行中であり、研究期間最終年度およびその翌年に二つの出版物が公刊される予定である。もちろん、これらの研究についても、今後に向けての課題は残されている。たとえば、院政期から鎌倉時代初期にかけての法会の復元的研究については、さらに多くの時間を要することが明らかになりつつある。この点については、本研究期間中に最大限の努力を進めると共に、不十分な点は後継の共同研究で、更に進展させることを計画済みである。調査フィールドと位置づける部分については、本研究の課題解明に直結する点を進めると同時に、後継課題につなげる準備段階として、金剛寺・真福寺聖教の悉皆目録完成を見据えた作業を同時に展開する。復元的研究においては、後白河院を中核に据えた研究を進めるが、本研究期間中に完遂できるわけではないので、最大限の成果報告を行うと共に、今後に向けての展開方法を策定する。研究成果の発表を行った国内外のフォーラム・学会から得られた成果については、それらのうちのいくつかを出版物として公刊する計画が進展中である。最終年度に間に合わせるものは確実に実現させると共に、研究期間終了後2年のあいだに公刊する計画で進めているものについては、内容をさらに充実させつつ実現させる。〇本研究は、近年飛躍的に進みつつある寺院聖教調査の成果を踏まえ、特に唱導文献に着目して、法会の綜合的理解へと研究を深めることを構想するものである。これを推進するため、調査・研究の継続と成果報告を推進した。以下、基盤調査と各研究・分析プロジェクトに沿って概要を示す。[基盤調査]〔金剛寺調査・研究〕においては、前年度に完成済みの目録に依拠して聖教分析を進め、日本学術振興会より出版助成を得て、「天野山金剛寺善本叢刊第1期」2冊を刊行した。〔真福寺調査・研究〕においては、真福寺大須文庫聖教典籍悉皆調査の礎となる「黒板目録」のデータ入力作業を推進し、分析の基礎的作業を終了した。〔神奈川県立金沢文庫調査・研究〕においては、分析対象となる聖教・唱導文献におけるアーカイヴ化の視点による調査を推進し、次年度以降の成果報告および連携展示のための準備を整えた。
KAKENHI-PROJECT-16H03385
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H03385
唱導文献に基づく法会の綜合的研究―寺院聖教調査の統合と復元的研究への展開―
[寺院聖教調査の統合的研究]関連唱導文献の注釈・分析作業を推進した。研究代表者の在外研究に伴って、これを海外においても研究グループによって進めた。成果報告の場を翌年度に確保しつつ、その準備を進めている。[復元的研究・東アジア宗教文献比較対照研究]復元的研究については、連携研究者が学会発表による成果報告を行った。また、後述の海外展開フィールドにおいても、院政期の諸宗派における法会の実態を解明する事例について、学会・フォーラムによる成果報告を複数行った。東アジア宗教文献に関する研究については、先行する研究期間に実施したシンポジウム・フォーラムの出版による成果報告の準備を整えた。いずれも、次年度に刊行予定である。[海外展開・連携フィールド]ハーバード大学において、ハーバード大学他の研究者および国内の研究者との共同研究による国際ワークショップを開催した。また、次年度に開催されるEAJS(欧州日本研究協会)の大会におけるフォーラムの準備を進めた。〇成果報告については、当初の計画以上の出版実績とそのための準備を整えることができた。天野山金剛寺善本叢刊に関しては、第1期の刊行に続いて、次年度に刊行を継続するめどがたった。東アジア宗教文献比較対照研究の領域においても、先行研究期間中から推進してきた国際シンポジウム等の成果を刊行する計画が複数実現し、それぞれ校正・入稿段階に入っている。学会等における発表の分野においても、複数の研究メンバーが参加したハーバード大学における国際ワークショップをはじめ、欧米の研究集会での成果発表を進めることができた。研究成果報告の場については、次年度以降にも継続・分散するかたちで、ほぼその内容を整えるに至っている。〇基盤調査においては、真福寺大須文庫の今後の調査・分析に必須となる目録の入力作業が、当初の計画以上に進展した。この結果、次年度からの効率的な分析作業が可能となり、合わせて平成30年度に予定している連携展示企画による成果報告への道筋についても大きな前進となった。真福寺と金剛寺との統合的調査については、両寺院における調査・研究・成果報告が順調に進んでいることで、今後に向けての相乗的効果が期待される状況である。〇研究期間開始後に、研究代表者の所属先変更と在外研究が惹起したが、この当初予期していなかった状況に関しても、研究分担者・連携研究者との協力的関係によって大きな問題は生じなかった。むしろ、海外における展開フィールドにおいては、研究代表者の在外研究先であるハーバード大学との連携関係の強化および成果報告に結実する結果となった。国内寺院・文庫における調査機会が当初の計画通りに確保できなかったが、これについては、次年度に補って実施する計画を策定済みである。また、復元的研究の成果の学会等への発信は十分に推進することができたが、研究組織内での問題の共有機会は、次年度に確保する必要があると考えている。研究計画のうち、調査フィールドと位置づける基盤調査については、以下のように研究を推進した。〔金剛寺調査・研究〕平成28年度に、科学研究費補助金出版助成金の支援を得て刊行した金剛寺善本叢刊第一期に続き、平成29年度出版助成金により善本叢刊第二期を刊行した。〔金沢文庫調査・研究〕唱導
KAKENHI-PROJECT-16H03385
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H03385
アルツハイマー病の個別化医療を目指したサブグループ特異的なバイオマーカーの同定
アルツハイマー病(Alzheimer's disease, AD)のサブタイプ特異的バイオマーカーを同定するため、細胞内または細胞外にアミロイドβを蓄積するAD患者由来のiPS細胞を神経細胞に分化誘導しその培養上清を網羅的・定量的に解析した。その結果細胞内型AD、細胞外型AD、そして両ADのバイオマーカー候補をそれぞれ複数個同定した。multiplexed-MRM (multiple reaction monitoring)法でiPS細胞由来神経細胞の培養上清の候補タンパク質を定量した結果、現在までのところ3種類の候補タンパク質がLC-MSMS解析と一致する結果が得られた。対照者と細胞内にアミロイドベータタンパク質を蓄積するアルツハイマー病患者(細胞内タイプ)のiPS細胞をそれぞれ3クローンずつ培養し、Kondoらの方法(Cell Stem Cell 2013)で神経細胞に分化誘導した。分化後の神経細胞を2日間培養し培養上清を回収した。その培養上清からアルツハイマー病のバイオマーカーを精製するため、まず培地中に大量に含まれるBSAの除去を行った。具体的には、培養上清を抗BSA抗体をプロテインGマグネットビーズにクロスリンクさせたものとインキュベートすることによりBSAを吸収除去した。さらにBSAを除去した培養上清を3 kDa以下の分子を除去するフィルターを用いて濃縮した。そのサンプルをトリプシン消化後、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)により定量的・網羅的解析を行ったところ、両群間で有意に差のあるタンパク質を59個同定した。同定された分子を大まかに分類するとプロテアーゼが7個、プロテアーゼ阻害分子、糖転移酵素が各5個、糖異性化酵素、細胞接着分子、酸化還元酵素が各3個、その他となった。これらの分子が細胞内タイプのADバイオマーカー候補になると考えられるが、今後脳脊髄液等の臨床検体で確認していく必要がある。また当初の計画どおりに、培養上清の糖タンパク質をレクチンによる部分精製したサンプルを用いてバイオマーカー候補を同定する試みも実行中である。昨年度は対照者と細胞内にアミロイドベータタンパク質を蓄積する家族性アルツハイマー病患者(細胞内タイプ)のiPS細胞由来神経細胞の培養上清から培地成分のBSAを除去し、LC-MSMSでバイオマーカー候補分子を59個同定した。本年度はさらに候補分子を絞るため孤発性の細胞内タイプアルツハイマー病患者のサンプルをLC-MSMSで分析し、前述の59個の中から3個を家族性と孤発性アルツハイマー病に共通した細胞内タイプのバイオマーカー候補として抽出した。一方、家族性および孤発性アルツハイマー病の細胞外にアミロイドベータタンパク質を蓄積する細胞外タイプのiPS細胞から神経細胞の培養上清を調製し、これまでと同法でLC-MSMSで分析した。その結果家族性と孤発性アルツハイマー病に共通した細胞外タイプのバイオマーカー候補として3個を、全アルツハイマー病共通のバイオマーカー候補として1個を抽出した。これら7個の抽出したバイオマーカー候補が確かにiPS細胞由来神経細胞の培養上清中で量的に変化しているかを確かめるため各抗体を用いてウエスタンブロット法もしくは免疫沈降とウエスタンブロット法を組み合わせた方法により検出を試みた。その結果1個の候補分子を検出することができた。しかしながら他の6個は検出できなかった。上記の分析とは別にiPS細胞由来神経細胞の培養上清からレクチンカラムにより糖タンパク質を精製し、タンパク質がどの程度同定できるかの予備検討を行った。iPS細胞から分化させた神経細胞の培養上清をMAH、WGA、PNAの3種類のレクチンカラムにアプライし、糖タンパク質をそれぞれ溶出した。各レクチンカラムの溶出画分には糖タンパク質の量が少なかったので3つの溶出画分をひとまとめにしLC-MSMS分析した。その結果総計で430分子を同定することができた。これによりレクチンカラム3つを組み合わせた精製法によりバイオマーカー候補の同定が可能であることが分かった。細胞内および細胞外にアミロイドベータを蓄積するタイプのiPS細胞を神経細胞に分化させた後の培養上清を部分精製し、質量分析計を用いた網羅的解析を行い、バイオマーカー候補を複数個同定しているため。またレクチンカラムを用いた新規方法でもタンパク質の同定が可能であることが明らかになったから。平成27年度までにiPS細胞由来神経細胞の培養上清からBSAを除去したサンプルをLC-MSMS分析しバイオマーカー候補を7個に絞っていた。これら7個の分子が確かにアルツハイマー病(AD: Alzheimer's disease)患者のiPS細胞由来神経細胞の培養上清中で増減しているかを調べるため免疫沈降後ウエスタンブロット法で検出したが、1つしかバンドとして検出できなかった。他の6個の分子は存在量が少ないため、あるいは抗体の感度が低いため検出されなかったと考えられる。そこでより感度が高く、かつ抗体に依存しない定量法(mlutiplexed-multiple reaction monitoring (MRM)法)を用いて定量した。その際に候補分子選定の基準を複数通りに増やすことにより、候補分子を7個から19個(バイオマーカーの内訳は細胞内型ADが10個、細胞外型が3個、全AD共通が6個)にした。各分子の同位体ペプチドを合成しMRM法の標準物質とし、iPS細胞由来神経細胞の培養上清をトリプシン消化後MRM法で分析した結果、3個の分子については最初のLC-MSMSでの定量結果が再現された。
KAKENHI-PROJECT-26460200
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26460200
アルツハイマー病の個別化医療を目指したサブグループ特異的なバイオマーカーの同定
レクチンカラムを用いてアルツハイマー病のバイオマーカーの候補分子を同定する方法では、iPS細胞由来神経細胞の培養上清をMAH、WGA、PNAの3種類のレクチンカラムにアプライし、糖タンパク質をそれぞれ溶出した。各レクチンカラムの溶出画分には糖タンパク質の量が少なかったため3つの溶出画分をひとまとめにしLC-MSMS分析した。データは対照者とアルツハイマー病患者間で定量比較した。その結果細胞内型ADのバイオマーカー候補として31個が得られた。今後はMRM法を用いて候補タンパク質を定量し、LC-MSMS分析と同様の増減を示すかを確かめる。アルツハイマー病(Alzheimer's disease, AD)のサブタイプ特異的バイオマーカーを同定するため、細胞内または細胞外にアミロイドβを蓄積するAD患者由来のiPS細胞を神経細胞に分化誘導しその培養上清を網羅的・定量的に解析した。その結果細胞内型AD、細胞外型AD、そして両ADのバイオマーカー候補をそれぞれ複数個同定した。multiplexed-MRM (multiple reaction monitoring)法でiPS細胞由来神経細胞の培養上清の候補タンパク質を定量した結果、現在までのところ3種類の候補タンパク質がLC-MSMS解析と一致する結果が得られた。細胞内にアミロイドベータを蓄積するタイプのiPS細胞を神経細胞に分化させた後の培養上清を部分精製し、質量分析計を用いた定量的網羅的解析を行い、バイオマーカー候補を複数個同定しているため。既に同定した7個のバイオマーカー候補分子については、感度の高いELISA法もしくは質量分析法でiPS細胞由来神経細胞の培養上清中の量を定量し、確かに量的変動が起こっているかを調べ、患者の脳脊髄液でも量的変動があるかを調べる。レクチンカラムを用いて、iPS細胞由来神経細胞の培養上清から糖タンパク質を精製しLC-MSMSにてアルツハイマー病のバイオマーカーの候補分子を同定する。同定後は、上記と同じように培養上清での量的変動の確認後、患者の脳脊髄液で量的変動を調べる。神経疾患の生化学レクチンカラムや糖鎖抗体カラムを用いてiPS細胞から分化させた神経細胞の培養上清から糖タンパク質を部分精製し質量分析し、アルツハイマー病のバイオマーカーの候補分子を絞り込む。細胞外にアミロイドベータを蓄積するタイプについても同様に分析していく。
KAKENHI-PROJECT-26460200
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26460200
時間分解蛍光測定を軸とする蛋白質水和と機能発現の相関解析
時間分解蛍光和周波測定装置について、光学系の高度化を行った。特に、非線形光学結晶下流でのバックグラウンド光を除去のために新たに設置したレンズ・スリット光学系が威力を発揮し、生体試料からの微弱な和周波光を定常的に測定可能となり、とリゾチームからの和周波測定に成功した。320370 nmにおける1500 psの蛍光強度測定から、トリプトファン蛍光の動的ストークスシフトを再構成できた。さらに、量子化学計算から励起状態にあるトリプトファンの電荷分布を推定し、の蛍光強度への静電相互作用の影響を検討した。水中リゾチームの分子動力学計算トラジェクトリーから、水分子の双極子とトリプトファンの双極子の相互作用が、動的ストークスシフトの主要因となっていることを、初めて明らかにすることができた。これまでに構築した経験的水和分布関数を、通常の分子動力学計算で使用されている分子力場で再現できるのか?どの水分子モデルがこの関数を再現できるのかを、短いペプチドの分子動力学計算によって検討した。その結果、sp2混成軌道を有する脱プロトン化した酸素原子と窒素原子においては、それらの孤立電子対を考慮することが、水和分布関数の際現に不可欠であることが明らかとなった。また、水分子モデルでは、TIP3PとTIP4Pモデルが、水和分布関数を良く再現できることも明らかとなった。この研究結果は、従来の分子動力学計算による蛋白質の動的構造研究や、創薬における分子結合シミュレーションの再考を促す衝撃的なものであった。結晶構造解析による植物青色光受容蛋白質の立体構造解明を目指してきたが、良質な結晶が作出できないため、電子顕微鏡による単粒子解析によるアプローチを行っている。また、電子顕微鏡による蛋白質の構造解析の応用として、ドメイン運動を行う蛋白質の構造多形を可視化することを試みた。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。1.蛋白質水和の研究これまでに開発してきた時間分解蛍光和周波測定装置について、光学系の高度化を行い、トリプトファン溶液について和周波測定を行った。また、トリプトファンの蛍光を正しく見積もるために、電子密度分布を量子化学計算によって推定した。分子動力学計算によってグルタミン酸脱水素酵素のドメイン運動に関わる水和構造変化の詳細を明らかにし、同酵素の親水性ポケットへの水和水分子の段階的な吸着脱離過程と、疎水性ポケットへの水和水分子の周辺水素結合ネットワークに応じた吸着脱離過程の協奏によってドメイン運動が制御されている可能性を指摘した。2.植物青色光受容蛋白質フォトトロピンの構造研究シロイヌナズナphototropin1について、光受容LOV2ドメインとキナーゼドメインで構成された最小機能単位の立体構造をSPring-8 BL45XUでのX線小角散乱実験によって解析し、暗中、青色光照射下での立体構造モデルを得た。モデル形状推定に関わる画像解析問題を検討して新しい解析法を提案し、同アルゴリズムの概要を報告した。光照射によってLOV2ドメインに内に生じる微小構造変化がLOV2とキナーゼの連結部分によって伝達され、キナーゼドメインのLOV2ドメインに対する相対位置が変化することが見出された。伝達にかかわる連結部分の点変異体を測定し、部位特異的な構造変化の役割を検討した。シロイヌナズナphototropin2全長のX線小角散乱実験から、全体構造、青色光照射下での構造変化を明らかにした。phototropin1と同様に、青色光照射によってLOV2-キナーゼの相対配置変化が生じることが明らかとなった。さらに、同分子の高分解能構造解析をめざし、電子顕微鏡観察と結晶化を試みた。クラミドモナスphototropinについては、全長の結晶化を試み、結晶を得てSPring-8のBL32XUにて回折強度測定を行ったが、解析が困難な多結晶であった。1.蛋白質水和の研究これまでに開発してきた時間分解蛍光和周波測定装置の高度化を行い、トリプトファン蛍光の和周波を得つつあり、さらに、それを正しく解釈するべく、トリプトファンの電子密度分布を量子化学計算によって推定している。分子動力学計算によってグルタミン酸脱水素酵素のドメイン運動に関わる水和構造変化に関する研究は、当該分野における水和の重要性認識の向上に貢献している。2.植物青色光受容蛋白質フォトトロピンの構造研究シロイヌナズナphototropin1光受容LOV2ドメインとキナーゼドメインで構成された最小機能単位やシロイヌナズナphototropin2全長について、分子の形状と青色光受容によって書汁立体構造変化を観測できた。その結果から、光照射によってLOV2ドメインに内に生じる微小構造変化がLOV2とキナーゼの連結部分によって伝達され、キナーゼドメインのLOV2ドメインに対する相対位置が変化することが見いだされた。伝達にかかわる連結部分の点変異体を測定し、部位特異的な構造変化の役割を検討した。モデル形状推定に関わる画像解析問題を新しい考えで解決し、同アルゴリズムの概要を報告できた。シロイヌナズナphototropin2全長については、さらに高分解能構造解析をめざし、電子顕微鏡観察と結晶化を試みており、クラミドモナスphototropinについては、全長の結晶化を試み、解析が困難な多結晶であったものの結晶を得てSPring-8にて回折強度測定を行を実施することができた。このように、本申請の研究課題はおおむね順調に進んでいると考えられる。時間分解蛍光和周波測定装置について、光学系の高度化を行った。
KAKENHI-PUBLICLY-15H01647
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-15H01647
時間分解蛍光測定を軸とする蛋白質水和と機能発現の相関解析
特に、非線形光学結晶下流でのバックグラウンド光を除去のために新たに設置したレンズ・スリット光学系が威力を発揮し、生体試料からの微弱な和周波光を定常的に測定可能となり、とリゾチームからの和周波測定に成功した。320370 nmにおける1500 psの蛍光強度測定から、トリプトファン蛍光の動的ストークスシフトを再構成できた。さらに、量子化学計算から励起状態にあるトリプトファンの電荷分布を推定し、の蛍光強度への静電相互作用の影響を検討した。水中リゾチームの分子動力学計算トラジェクトリーから、水分子の双極子とトリプトファンの双極子の相互作用が、動的ストークスシフトの主要因となっていることを、初めて明らかにすることができた。これまでに構築した経験的水和分布関数を、通常の分子動力学計算で使用されている分子力場で再現できるのか?どの水分子モデルがこの関数を再現できるのかを、短いペプチドの分子動力学計算によって検討した。その結果、sp2混成軌道を有する脱プロトン化した酸素原子と窒素原子においては、それらの孤立電子対を考慮することが、水和分布関数の際現に不可欠であることが明らかとなった。また、水分子モデルでは、TIP3PとTIP4Pモデルが、水和分布関数を良く再現できることも明らかとなった。この研究結果は、従来の分子動力学計算による蛋白質の動的構造研究や、創薬における分子結合シミュレーションの再考を促す衝撃的なものであった。結晶構造解析による植物青色光受容蛋白質の立体構造解明を目指してきたが、良質な結晶が作出できないため、電子顕微鏡による単粒子解析によるアプローチを行っている。また、電子顕微鏡による蛋白質の構造解析の応用として、ドメイン運動を行う蛋白質の構造多形を可視化することを試みた。本申請の研究課題はおおむね順調に進んでいると考えられるので各研究項目について、下記のように推進してゆきたい。1.蛋白質水和の研究これまでに開発してきた時間分解蛍光和周波測定装置の蛋白質分子への適用を開始する。グルタミン酸脱水素酵素の水和構造研究成果については現在、論文投稿後の改定要求に対して対応中であり、今年度中に出版にこぎつけたい。また、追加の水和構造研究成果についても投稿予定である。2.植物青色光受容蛋白質フォトトロピンの構造研究シロイヌナズナphototropin1光受容LOV2ドメインとキナーゼドメインで構成された最小機能単位やシロイヌナズナphototropin2全長について、分子の形状と青色光受容によって書汁立体構造変化を観測できたことは、二報の論文にまとめて投稿予定である。シロイヌナズナphototropin2全長、クラミドモナスphototropinについては、さらに高分解能構造解析をめざし、電子顕微鏡観察と結晶化を引き続き実施して、より詳細な立体構造の解明と構造変化における水和との関連を明らかにしたい。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-15H01647
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-15H01647
日本的『ハムレット』翻案作品の研究―<書き換え>メカニズムの解明―
日本で生まれた『ハムレット』翻案作品に焦点を合わせ、各々の翻案作品が誕生する際に、さまざまな要因ー翻案者の個人的資質や事情、日本の文化的風土、社会背景、日本と西洋・イギリスとの関係性、思想的風潮などーが複雑に作用しあいながら「書き換え」メカニズムを形成し、翻案テキストを生成するさまを解明するとともに、そこで生まれた翻案が、原作に対して複雑で屈折した関係や態度(崇拝・模倣・反発・挑戦・揶揄など)を示すことを確認した。日本で生まれた『ハムレット』翻案作品に焦点を合わせて、その翻案成立時に作用する「書き換え」のメカニズムを、体系的・歴史的に解明することを本研究はめざす。本年度は、戦後まもない1949年に宝塚歌劇団で上演された『ハムレット』に焦点を合わせて「書き換え」のメカニズムを解明した。同上演は、原作戯曲に大幅な加筆修正を加えることにより、シェイクスピア悲劇の本質をずいぶんと変容させるものである。宝塚歌劇団という劇団の特殊性や、1949年という上演時期にも目配りしながら、<宝塚化>の過程を明らかにするとともに、本公演の意義を明らかにした。具体的には、宝塚歌劇団が(1)フレーミング、(2)単純化とダミング・ダウン、(3)女性表象の書き換えと性的表現の清浄化という三つのプロセスを通じて、「厳しく」「汚れた」現実から「女こども」を中心とする観客を庇護し、彼らの劇体験をコントロールしようとしている点を明らかにした。さらに、宝塚歌劇団が「大衆的」「低俗」「少女趣味」といった自己イメージを払しょくするべくシェイクスピアや『ハムレット』がまとう文化的権威や名声、古典性、エリート性を利用しようとしたことにも論究した。また、大衆作家・久生十蘭の『ハムレット』翻案作品に関して国際誌に投稿していた論文の書き換え作業をも行った。とりわけ、久生作品と『ハムレット』との関連性、および戦後の天皇の戦争責任に関する部分の記述を手直している。日本で生まれた『ハムレット』翻案作品に焦点を合わせ、翻案成立時にはたらく「書き換え」のメカニズムを体系的・歴史的に解明することを本研究はめざす。本年度は、本邦初の『ハムレット』翻案完結作である、仮名垣魯文の『葉武列土倭錦絵』(1886年)のテキストと、同劇の「初舞台」とされる1991年グローブ座公演の上演脚本を(むろん密接な相互関連性はあるとはいえ)独立した文化的産物、二つの「書き換え」作品として位置づけ、それぞれの書き換え行程に作用した諸事情を、時代的・文化的背景も踏まえながら考察した。そして、それぞれの作に体現される<東西文化融合>の特質を明らかにしつつ、ややもすると同一視されがちな両者のあいだに見られるズレ/亀裂を指摘した。さらに、それらの考察を通して、両者を隔てる約100年間に生じた日本シェイクスピア受容の異なる様相も浮き彫りにした。その成果は研究論文として発表した。さらに、大衆作家・久生十蘭の翻案二つの『ハムレット』翻案を研究対象に取り上げた。久生は、シェイクスピア悲劇『ハムレット』をいったん「刺客」(1938年)に書き換え、さらに終戦直後の1946年に大幅な加筆修正を施したうえ「ハムレット」として発表している。これら二つの「書き換え」作品のテキストを細かく分析することにより、いかに第二次世界大戦・敗戦・GHQによる占領という、書き換え時の歴史的背景が、翻案成立に深い影響を及ぼしているかを明らかにしつつ、「ハムレット」の体現する政治的寓意性を具体的に解明した。成果は、学会において発表したのち、研究論文(投稿中)として発表予定である。日本で生まれたシェイクスピア『ハムレット』翻案作品に焦点を合わせ、翻案成立時に働く「書き換え」のメカニズムを体系的・歴史的に解明することを本研究は目指す。本年度はまず、投稿中であった久生十蘭の『ハムレット』翻案に関する論文の加筆修正を行い、ようやくフランスの学術誌への掲載を決めることができた(出版は2015年5月の予定である)。国内外でほとんど認知されていない翻案を世に知らしめる点、さらに第二次世界大戦、原子爆弾投下、GHQ占領などの世界的な重大事件をめぐる政治的寓意を明らかにした点で、シェイクスピア翻案研究への貢献は少なくないと信じている。つづいて、堤春恵作の翻案喜劇『仮名手本ハムレット』(1993年)についての研究を行った。そして同作が、20世紀末日本において、あまりにも確立され、当たり前で「異質性」を失ってしまった悲劇『ハムレット』のあり方や、名作家として君臨するシェイクスピアの中心性・絶対性を相対化しつつ、この悲劇を生まれつき理解できる、楽しめると錯覚する日本人に、日本の演劇的・文化的ルーツや、これまでの受容の紆余曲折の道のりをあらためて考えさせるものであることを示した。その成果は十一月の京大英文学会において口頭で発表した後、現在は論文として執筆中である。また夏のイギリス出張においては、海外(主に英語圏)で発表された『ハムレット』翻案作品、シェイクスピア劇の翻案作品に関する資料収集・研究を重点的に行った。本研究をまとめる際には、日本人による翻案との比較材料として活用したいと考える。日本で生まれたシェイクスピア『ハムレット』翻案作品に焦点を合わせ、翻案成立時にはたらく「書き換え」のメカニズムを体系的・歴史的に解明することを本研究は目指す。本年度は、昨年度に学会で発表を行なった、堤春恵『仮名手本ハムレット』についての研究をまとめ、日本シェイクスピア協会発行予定の論文集に投稿した。さいわい採択との通知を受け、2016年出版の予定である。
KAKENHI-PROJECT-24520286
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24520286
日本的『ハムレット』翻案作品の研究―<書き換え>メカニズムの解明―
同稿では、作者である堤がシェイクスピアの原作悲劇そのものの「書き換え」というよりは、明治期の『ハムレット』受容の歴史の「書き換え」により大きな関心を示してていること、さらに堤が本作を通じて、二十世紀末日本におけるシェイクスピア・『ハムレット』受容のあり方を批評していることを論じた。また、夏目漱石の『吾輩は猫である』(1905-6年)における『ハムレット』の影響について考察する論文も執筆した。漱石は悲劇『ハムレット』の翻案作品を書いたわけではないが、日本の『ハムレット』受容を考えるうえで、漱石のシェイクスピア受容を抜かすわけにはいかない。本研究では、『猫』テキストのなかにひそむ、『ハムレット』からの隠微でとらえがたい影響の跡をたどりつつ、それが次作『草枕』にも流れ込む様子を分析した。とくに『猫』のなかの二つの溺死への言及ー一高生・藤村操の投身自殺と、酔っ払って鉢に落ちる猫の最期ーを手がかりとして、漱石の想像力や心象風景の回路をたどった。本研究はすでに年度内に出版済みである。日本で生まれた『ハムレット』翻案作品に焦点を合わせ、各々の翻案作品が誕生する際に、さまざまな要因ー翻案者の個人的資質や事情、日本の文化的風土、社会背景、日本と西洋・イギリスとの関係性、思想的風潮などーが複雑に作用しあいながら「書き換え」メカニズムを形成し、翻案テキストを生成するさまを解明するとともに、そこで生まれた翻案が、原作に対して複雑で屈折した関係や態度(崇拝・模倣・反発・挑戦・揶揄など)を示すことを確認した。上でも言及したように、久生十蘭の翻案に関する論文を投稿した際に、投稿先ジャーナルの要請や書式スタイルの違いにより、数回にわたる大幅な加筆修正を行わねばならなかったことが原因である。しかしすでに述べたように2015年5月出版が決まり、計3回の校正作業も終えたので、遅れをとりもどすべく、次の課題の完成を急ぎたい。イギリス文学最終年度は、これまでの研究結果に、以前行ってきた関連研究(具体的には、日本初のハムレット第四独白の珍訳(1874)、仮名垣魯文『葉武列土倭錦絵』(1886)、志賀直哉『クローディアスの日記』(1912)、太宰治『新ハムレット』(1931)、大岡昇平『ハムレット日記』(1955)、黒澤明映画『悪い奴ほどよく眠る』(1960)に関する個別研究)を統合し、一貫性とテーマ性をもたせながら総括する作業に専念したい。海外出張時には追加リサーチを行う。最終的には、日本的『ハムレット』翻案にみられる<書き換え>のメカニズムに関する大きな研究をまとめる予定である。個別の翻案研究についてはほぼ予定通りに進んでいるが、久生十蘭の翻案に関する英語論文の出版が思うようにいかなかったため、成果発表の点ですこし遅れてしまっている。2014年度内の出版を目指したい。予定していた研究の対象に変更があったものの、ほぼ「書き換え」のメカニズムの具体的解明という点では、予定通り研究を進められている。ただし、海外における『ハムレット』翻案の資料収集/研究という点では、予定していたほどの成果があげられていないのが現状である。計画していたPCの購入が果たせなかったため。
KAKENHI-PROJECT-24520286
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24520286
歯石形成機序に関する分子疫学的解析:患者唾液中の細菌とナノバクテリアの役割
Corynebacterium matruchotiiはバイオフィルムの石灰化に重要な役割を果たしている。しかし、C. matruchotiiと歯石沈着の関連における疫学調査や臨床データが少ない。その理由は、C. matruchotiiの簡便な検出方法が存在しないためである。本研究では、C. matruchotiiの簡便な検出方法の確立を目指した。C. matruchotiiの分子疫学調査に利用できる比較的安価で特異的な抗原を抽出した。C. matruchotiiのカルシウム結合タンパク質は20種類存在し、そのタンパク質の多くは酸性タンパクであることが明らかとなった。グラム陽性桿菌の一種であるCorynebacterium matruchotii( C. matruchotii)はcom-cobの形成において、central filamentとしての役割をはたしている。C. matruchotiiは口腔内に生息し、過飽和のカルシウムが存在する口腔内において、リポタンパク質を沈着させ、ハイドロオキシアパタイトの核を成長させるとされている。本研究課題において疫学調査を行うためには口腔内からC. matruchotiiの検出方法の確立が必須となる。しかし、現在のところC. matruchotii特異的な検出方法は確立されていない。細菌の検出方法としては、16S Ribosomal RNAのシーケンスによる方法が確実な方法であるが、疫学調査でこの方法を用いるとコストがかかりすぎてしまう。そこで本研究課題において、C. matruchotiiの膜タンパクを抽出しC. matruchotii特異的なタンパク質からモノクロナール抗体を作製することを目的とし、検出系を確立することを目指す。前年度において様々な界面活性剤から膜タンパクの抽出に適切な界面活性剤をスクリーニングを行った。その結果、多くの界面活性剤が沈殿を形成し、タンパク質が抽出されなかった中でTriton-100とEDTAを組み合わせることによって膜タンパクの抽出に成功した。本年度はさらにタンパク抽出法を改良し、尿素、チオ尿素を含むタンパク抽出液により、さらに効率よくタンパク質を抽出する方法の確立に成功した。これら膜タンパクのうち、ハイドロオキシアパタイトに結合するフラクションを見い出し、これらの石灰化を確認するためのFlow cellによる石灰化物観察の系の確立に成功した。グラム陽性桿菌の一種であるCorynebacterium matruchotii (C. matruchotii)はバイオフィルムの核の形成において中心的な役割を果たしているとされ菌体表面にリポタンパクを沈着させ、歯石の主成分であるハイドロキシアパタイトの核を成長させるとされている。しかし、C. matruchotiiと歯石沈着や歯周病との関連における疫学調査や臨床データが極端に少ない。その理由は、C. matruchotiiの簡便な検出方法が存在しないためである。現在のところC. matruchotiiの特異抗体がなく、この菌の検出方法は16S Ribosomal RNAのシークエンスしか方法がない。本研究課題では、臨床や疫学調査で用いることができるC. matruchotiiの簡便な検出方法の確立を目指す。そのために、C. matruchotiiの特徴である石灰化に関わるタンパク質を抽出する。石灰化に関わるタンパク質を用いて、C. matruchotiiの疫学調査に利用できる比較的安価な特異抗体を得ることを目的とした。臨床や疫学調査で細菌を検出するための抗体作製には細胞内タンパク質ではなく、細胞表面の膜タンパクに対する抗体を作製する必要がある。そこで平成24年度においては、タンパク質の抽出方法を中心に検討を行った。膜タンパクの抽出には界面活性剤を用いた。多くの界面活性剤はC. matruchotiiと結合することにより沈殿を形成する。界面活性剤によるタンパク質の可溶化は困難であった。多くの界面活性剤をスクリーニングし、膜タンパクの可溶化に成功した。平成25年度においてはタンパクの抽出方法を改良し、さらに効率の良い、膜タンパクの抽出方法を見い出した。平成25年度では、抽出した膜タンパク質の成分分離を行った。SDS電気泳動の結果、C. matruchotiiから抽出したカルシウムに結合するタンパク質は大きく20種類存在した。20種類のタンパク質の多くは酸性タンパクであることが明らかとなった。Corynebacterium matruchotiiはバイオフィルムの石灰化に重要な役割を果たしている。しかし、C. matruchotiiと歯石沈着の関連における疫学調査や臨床データが少ない。その理由は、C. matruchotiiの簡便な検出方法が存在しないためである。本研究では、C. matruchotiiの簡便な検出方法の確立を目指した。C. matruchotiiの分子疫学調査に利用できる比較的安価で特異的な抗原を抽出した。C. matruchotiiのカルシウム結合タンパク質は20種類存在し、そのタンパク質の多くは酸性タンパクであることが明らかとなった。グラム陽性桿菌の一種であるCorynebacterium matruchotii( C. matruchotii)はcom-cobの形成において、central filamentとしての役割をはたしている。C. matruchotiiは口腔内に生息し、過飽和のカルシウムが存在する口腔内において、リポタンパク質を沈着させ、ハイドロオキシアパタイトの核を成長させるとされている。本研究課題において疫学調査を行うためには口腔内からC. matruchotiiの検出方法の確立が必須となる。しかし、現在のところC. matruchotii特異的な検出方法は確立されていない。
KAKENHI-PROJECT-23659992
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23659992
歯石形成機序に関する分子疫学的解析:患者唾液中の細菌とナノバクテリアの役割
細菌の検出方法としては、16S Ribosomal RNAのシーケンスによる方法が確実な方法であるが、疫学調査でこの方法を用いるとコストがかかりすぎてしまう。そこで本研究課題において、C. matruchotiiの膜タンパクを抽出しC. matruchotii特異的なタンパク質からモノクロナール抗体を作製することを目的とし。検出系を確立することを目指す。さらにそのタンパク質は石灰化の関与するものであることが望ましい。そこではじめにC. matruchotiiの膜タンパクの抽出を試みた。様々な界面活性剤から膜タンパクの抽出に適切な界面活性剤をスクリーニングを行った。その結果、多くの界面活性剤が沈殿を形成し。タンパク質が抽出されなかった中でTriton-100とEDTを組み合わせることによって膜タンパクの抽出に成功した。さらに予備実験ではあるが、これら膜タンパクのうち、ハイドロオキシアパタイトに結合するフラクションを見いだした。今後さらにタンパクの精製を進め、モノクロナール抗体の作製を目指す。Corynebacterium matruchotiiの培養にはその増殖速度が遅いため、培養には1週間程度の時間が必要である。タンパク質の中でも膜タンパクの抽出は困難を伴うことが多く、Corynebacterium matruchotiiの膜タンパクを効率よく抽出することが最も大きな課題である。今年度、までにその抽出方法を向上し、より効率の良い膜タンパクの抽出法法が可能となった。タンパク質の分離においても様々なカラムの条件検討が必要である。さらに、石灰化物を観察するためのFlow cellの系ではその緩衝液の組成、濃度、時間等の様々な因子の検討が必要である。また一回、一回の実験にかかる時間が1日から一週間を要するため、これらの条件検討には膨大な時間と労力が必要である。昨年度までに以上の条件検討がかなりのレベルまで向上したため、おおむね順調に進行していると判断した。現在、抽出、分離に成功しているCorynebacterium matruchotiiのタンパクをさらに精度よく分離を行い、最も石灰化能の高いタンパクの単離とその抗体の作製を目指す。膜タンパクの単離のためには今後もさらにクロマトグラフィー用の担体の選択、緩衝液の種類、pH、溶出液の濃度、pH等をはじめとする、多くの液体クロマトグラフィーの条件検討が必要である。さらに抗体作製のためには、タンパク質のアミノ酸シーケンス、質量分析、が必要である。シーケンス後は、効率の良い発現系ベクターの選択、宿主を選択し、発現系を確立する。その後発現させたリコンビナントタンパクを用いてFlow cellによる石灰化をはじめとする生物活性を確認後にモノクロナール抗体もしくはポリクロナール抗体の作製を試みる。
KAKENHI-PROJECT-23659992
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23659992
超大型浮体構造物に於ける海洋環境外力による動的応用解析
本研究では、横浜国立大学及びデルフト工科大学が協力して、物体回りの流体運動と構造変形との相互干渉を考慮した種々の流力弾性問題の実験や解析法を精査、推進し、超大型浮体に対する環境外力の評価法を確立する。また、流体荷重に対する構造系の応答を評価するための合理的かつ実用的な解析手法を完成する。実現が期待されている超大型浮体や既に実績はあるものの損傷事故等のある船舶海洋構造物の構造設計に対して、環境外力の評価法と構造応答の評価法を統合した合理的な設計法を提案する。また、これらの応用として、構造上有利な浮体形状の提案も試みる。平成16年度はこれまでの関連研究に基づき、超大型浮体に対する環境外力の評価法や、流体と構造の連成を考慮した解析手法についての更なる改良を加え、3次元特異点分布法を用いた線形及び非線形流体力計算法を拡張し、さまざまな大型浮体に対する流体問題へ応用と、時々刻々変化する環境外力とそれに伴う応答の変化を評価できる基礎的な計算コードの開発を行った。その結果、非線形流体力の評価に関しては、複数の浮体間に於ける係留力、潮流力、風応力を考慮した解析コードを開発し、より現実的な問題に対しての推定が可能になることが確認された。また、前進速度を考慮した3次元特異点分布法に基づく不規則波中に於ける船舶の耐航性能に関する時系列応答解析コードを開発し、船体構造規則に示されている甲板荷重等についての妥当性を検証した。さらに、環境外力の推定に関しては多層モデル並びに単層モデルによる数十km四方を対象領域とする内湾領域に於ける海洋物理場を再現するコードの整備を行った。大型浮体に関する数値計算の検証に不可欠な水槽実験に関しては、小型水槽を有効に活用するために、画像解析による波浪場の計測手法について様々な検討を加え、小型水槽に於ける大縮尺模型による大型浮体模型実験の検討を行い、その有効性について確認した。本研究では、横浜国立大学及びデルフト工科大学が協力して、物体回りの流体運動と構造変形との相互干渉を考慮した種々の流力弾性問題の実験や解析法を精査、推進し、超大型浮体に対する環境外力の評価法を確立する。また、流体荷重に対する構造系の応答を評価するための合理的かつ実用的な解析手法を完成する。実現が期待されている超大型浮体や既に実績はあるものの損傷事故等のある船舶海洋構造物の構造設計に対して、環境外力の評価法と構造応答の評価法を統合した合理的な設計法を提案する。また、これらの応用として、構造上有利な浮体形状の提案も試みる。平成16年度はこれまでの関連研究に基づき、超大型浮体に対する環境外力の評価法や、流体と構造の連成を考慮した解析手法についての更なる改良を加え、3次元特異点分布法を用いた線形及び非線形流体力計算法を拡張し、さまざまな大型浮体に対する流体問題へ応用と、時々刻々変化する環境外力とそれに伴う応答の変化を評価できる基礎的な計算コードの開発を行った。その結果、非線形流体力の評価に関しては、複数の浮体間に於ける係留力、潮流力、風応力を考慮した解析コードを開発し、より現実的な問題に対しての推定が可能になることが確認された。また、前進速度を考慮した3次元特異点分布法に基づく不規則波中に於ける船舶の耐航性能に関する時系列応答解析コードを開発し、船体構造規則に示されている甲板荷重等についての妥当性を検証した。さらに、環境外力の推定に関しては多層モデル並びに単層モデルによる数十km四方を対象領域とする内湾領域に於ける海洋物理場を再現するコードの整備を行った。大型浮体に関する数値計算の検証に不可欠な水槽実験に関しては、小型水槽を有効に活用するために、画像解析による波浪場の計測手法について様々な検討を加え、小型水槽に於ける大縮尺模型による大型浮体模型実験の検討を行い、その有効性について確認した。本研究では、横浜国立大学及びデルフト工科大学が協力して、物体回りの流体運動と構造変形との相互干渉を考慮した種々の流力弾性問題の実験や解析法を精査、推進し、超大型浮体に対する環境外力の評価法を確立する。また、流体荷重に対する構造系の応答を評価するための合理的かつ実用的な解析手法を完成する。実現が期待されている超大型浮体や既に実績はあるものの損傷事故等のある船舶海洋構造物の構造設計に対して、環境外力の評価法と構造応答の評価法を統合した合理的な設計法を提案する。また、これらの応用として、構造上有利な浮体形状の提案も試みる。平成13年度は超大型浮体構造物の津波や海震による動的応答に薗する数値計算、超小型水槽による超大型浮体構造物の波浪中における動的応答の水理実験に関する研究を行った。これらの研究によって、津波荷重よりも直下型の地震による海震の方が構造に対して厳しい環境荷重であることが分った。また、流体と構造の連成を考慮した解析を可能にするために、複数浮体に作用する1次および2次の流体力について計算精度等の問題点を検討した。これらよって、数値計算プログラムを倍精度にするとともに、パネルの分割数を大幅に増やすべく計算機の記憶装置を有効活用できるようプログラムを改良した。さらに、異常波高時の海水打ち込みや、船底衝撃力などの非線形影響を調査した。この研究では、非線形流体力としては、横揺れ減衰力のみであったが、異常波高時にはディフラクション力やラディエーション力も明らかに非線形になっていることが分ったので、実用上どのようにその影響を取り入れるか検討する必要がある。
KAKENHI-PROJECT-13450408
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13450408
超大型浮体構造物に於ける海洋環境外力による動的応用解析
また、流体荷重を受ける構造物の最適設計に関する研究を実施し、実際の海洋構造物の構造設計法に対する有益な指針を得た。本研究では、横浜国立大学及びデルフト工科大学が協力して、物体回りの流体運動と構造変形との相互干渉を考慮した種々の流力弾性問題の実験や解析法を精査、推進し、超大型浮体に対する環境外力の評価法を確立する。また、流体荷重に対する構造系の応答を評価するための合理的かつ実用的な解析手法を完成する。実現が期待されている超大型浮体や既に実績はあるものの損傷事故等のある船舶海洋構造物の構造設計に対して、環境外力の評価法と構造応答の評価法を統合した合理的な設計法を提案する、また、これらの応用として、構造上有利な浮体形状の提案も試みる。平成14年度は横浜国立大学及びデルフト工科大学に於けるこれまでの関連研究に基づき、超大型浮体に対する環境外力の評価法や、流体と構造の連成を考慮した解析手法についての改善点を協議し、計算プログラムの修正等を行った。その結果、コラム支持型超大型浮体に関しては顕著な粘性影響があるものと考え、非線形項である物体表面での粘性影響を考慮できる計算コードを開発した。計算コードを実験結果などと比較して検証を行うとともに、流力弾性応答ならびに周辺波浪場に与える影響に関して検討を行った。また、波無し点を有するコラムに着目し、コラム形状が大型浮体の流力弾性応答に与える影響に関してパラメトリックスタディを行い、波浪中の応答評価を行った。また、上記の計算手法を大型浮体周りの海底地形を考慮できる計算手法へと拡張し、海底地形と大型浮体の弾性応答との関連性に関して数値的な検討を行った。さらに、大型浮体に関する数値計算の検証に不可欠な水槽実験に関しては、小型水槽を有効に活用するために、画像解析による波浪場の計測手法に開発し、規則波に対しては数%の誤差精度で数mmの波浪場を観測できることを確認した。本研究では、横浜国立大学及びデルフト工科大学が協力して、物体回りの流体運動と構造変形との相互干渉を考慮した種々の流力弾性問題の実験や解析法を精査、推進し、超大型浮体に対する環境外力の評価法を確立する。また、流体荷重に対する構造系の応答を評価するための合理的かつ実用的な解析手法を完成する。実現が期待されている超大型浮体や既に実績はあるものの損傷事故等のある船舶海洋構造物の構造設計に対して、環境外力の評価法と構造応答の評価法を統合した合理的な設計法を提案する。また、これらの応用として、構造上有利な浮体形状の提案も試みる。平成15年度は横浜国立大学及びデルフト工科大学に於けるこれまでの関連研究に基づき、超大型浮体に対する環境外力の評価法や、流体と構造の連成を考慮した解析手法についての改善点を協議し、3次元特異点分布法を用いた線形及び非線形流体力計算法を拡張し、さまざまな大型浮体に対する流体問題へ応用と、時々刻々変化する環境外力とそれに伴う応答の変化を評価できる基礎的な計算コードの開発を行ってきた。その結果、非線形流体力の評価に関しては、複数の浮体間に於ける係留力、潮流力、風応力を考慮した解析コードを開発し、既存の実験結果を良好に再現することが確認された。また、線形理論に基づく不規則波中に於ける中規模浮体の時系列応答解析コードを開発した。また、環境外力の推定に関しては多層モデル並びに単層モデルによる数十km四方を対象領域とする内湾領域に於ける海洋物理場を再現するコードの整備を行った。
KAKENHI-PROJECT-13450408
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13450408
サンマ索餌場としての黒潮-親潮混合域低次生産構造・経年変動機構の理解
サンマの資源量変動メカニズムを解明するため、資源量と海洋環境要因間の相関解析・物理-低次生態系結合モデルの解析・サンマ仔魚の耳石解析を組み合わせ、何が・いつ・どこが・どのようにサンマの資源量変動に影響を与えるかを検討した。研究の結果、1990年代後半以降は、サンマ仔魚の春季分布場である黒潮続流域・黒潮-親潮混合域において餌となるプランクトン密度の経年変動が、仔魚の生残を通して資源量変動に密接に関わっていたことが示唆された。また、プランクトン密度の経年変動は黒潮と親潮の相互作用により形成された黒潮水-親潮水二層構造の伸縮によって引き起こされたと考えられる。西太平洋に広く分布するサンマ(Cololabis saira)は秋季から春季にかけて産卵する。既往の研究から、サンマ仔魚の春季の索餌場となる黒潮フロントと親潮フロントに挟まれた黒潮-親潮混合域(30-40N、150-170E)において、この海域でボックス平均したクロロフィルa濃度と、一年半後の大型サンマ資源量の指標であるCPUEの間に、1998年から2005年にかけて有意な正の相関関係があることが明らかとなっている。一般に仔魚期の成長速度が速いほど生残率が高くなるため、この結果は大型サンマの資源量が春季サンマ索餌場での餌量に依存し、その関係が経年変動することを示す可能性がある。どこで、どのようなメカニズムに基づいて資源量が決定するのかを知ることができれば、資源量予測の可能性という点でサンマ資源管理方策に重要な示唆を与えることができる。ただし、混合域は亜熱帯・亜寒帯域起源の水塊が混じり合って複雑な海洋構造を呈する海域であり、クロロフィルa濃度分布は中規模スケールの海洋物理構造に大きく影響されることが知られている。つまり、既往の研究で示されたボックス海域全体が等しくサンマ資源量変動にとって重要な海域であるとは限らない。本研究はサンマ資源量変動に決定的な影響を及ぼす海域を特定し、その生息域での餌環境変動機構を明らかにすることを目的として、サンマ仔魚のサンプル分析、海洋観測データ、および海洋データ同化システムの出力結果を組み合わせた研究を行った。平成26年度は、これまでに混合域・黒潮続流域で採集したサンプルを分析してサンマ仔魚を同定し、うち約150個体の耳石径および輪紋間隔の計測を行った。さらに衛星クロロフィルa濃度データと海洋モデルの結果を組み合わせ、これらの個体がどのようなクロロフィルa濃度・水温を経験してきたかを推定した。西太平洋に広く分布するサンマ(Cololabis saira)は秋季から春季にかけて産卵する。既往の研究から、サンマ仔魚の春季の索餌場となる黒潮フロントと親潮フロントに挟まれた黒潮-親潮混合域において、この海域でボックス平均したクロロフィルa濃度と、一年半後の大型サンマ資源量の指標であるCPUEの間に、1998年から2005年にかけて有意な正の相関関係があることが明らかとなっている。一般に仔魚期の成長速度が速いほど生残率が高くなるため、この結果は大型サンマの資源量が春季サンマ索餌場での餌量に依存し、その関係が経年変動することを示す可能性がある。どこで、どのようなメカニズムに基づいて資源量が決定するのかを知ることができれば、資源量予測の可能性という点でサンマ資源管理方策に重要な示唆を与えることができる。ただし、混合域は亜熱帯・亜寒帯域起源の水塊が混じり合って複雑な海洋構造を呈する海域であり、クロロフィルa濃度分布は中規模スケールの海洋物理構造に大きく影響されることが知られている。つまり、既往の研究で示されたボックス海域全体が等しくサンマ資源量変動にとって重要な海域であるとは限らない。本研究はサンマ資源量変動に決定的な影響を及ぼす海域を特定し、その生息域での餌環境変動機構を明らかにすることを目的として、サンマ仔魚のサンプル分析、海洋観測データ、および海洋データ同化システムの出力結果を組み合わせた研究を行った。本年度は、これまでに混合域・黒潮続流域で採集したサンプルを分析してサンマ仔魚を同定し、うち約100個体の耳石径および輪紋間隔の計測を行った。さらに衛星クロロフィルa濃度データと海洋モデルの結果を組み合わせ、これらの個体がどのようなクロロフィルa濃度・水温を経験してきたかを推定した。2008年, 2009年,2011年の春季に混合域・続流域で行われた仔魚分布調査のサンプルを整理し、各観測点で採集されたサンマ仔魚の体長と個体数を計数した。さらに全調査点に対し、2015年に開発された最新の海洋データ同化システムFORAの流速・水温データと衛星によるクロロフィルa濃度分布データを組み合わせた粒子追跡実験を行った。サンマ仔魚サンプルの一部に対して耳石分析を行い、平成27年度に分析が完了した100個体の体長・日齢と水温・クロロフィルa濃度の関係を明らかにした。平成26年度に耳石分析を完了した150個体に対しては、2006年に開発された海洋データ同化システムMOVEの流速・水温データを使った粒子追跡実験を既に完了していたが、最新の海洋データ同化システムFORAが入手できたため、これらのサンマ仔魚サンプルデータに対する粒子追跡実験をFORAでやり直した。
KAKENHI-PROJECT-26850119
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26850119
サンマ索餌場としての黒潮-親潮混合域低次生産構造・経年変動機構の理解
さらにFORAの塩分・水温データを使い、春季の混合域・続流域の基礎生産経年変動機構と親潮水の中層への侵入面積の間に有意な正の相関関係があることを明らかにした。これらの研究により、春季の混合域・続流域における基礎生産経年変動がどのような場所で決定されるか、そして実際にどのような場所でサンマ仔魚の成長速度の平均値およびばらつきが大きいかが明らかにされつつある。既往の研究から、サンマ仔魚の索餌場となる黒潮と親潮に挟まれた黒潮-親潮混合域において、この海域でボックス平均したChl-a濃度が高ければ、一年半後の大型サンマ資源量が多くなる傾向があることがわかっている。この結果は大型サンマの資源量が仔魚索餌場での餌量を介して仔魚の生き残りに依存している可能性を示す。ただし、混合域は黒潮水と親潮水が入り混じって複雑な海洋構造を呈する海域であり、Chl-a濃度分布は非定常的かつ不均一である。つまり、ボックス海域全体が等しくサンマ資源量変動にとって重要な海域であるとは限らない。本研究はサンマ資源量変動に決定的な影響を及ぼす海域を特定し、その生息域での餌環境変動機構を明らかにすることを目的として、サンマ仔魚のサンプル分析および海洋データの解析を組み合わせた研究を行った。平成25年度までに行ったサンマ仔魚サンプルの耳石解析から、黒潮のフロント付近で仔魚の成長速度が大きいという結果が得られた。平成26年度には海洋データ同化システムから得られた海況と衛星画像から得られたChl-a濃度分布データの解析を行い、黒潮フロントでは局所的にChl-a濃度が高くなる現象がしばしば見られ、この場所でのChl-a濃度経年変動が黒潮-親潮混合域ボックス平均値の経年変動に寄与していることを示した。ここから、餌が得やすい黒潮フロントで生育するサンマ仔魚ほど生き残りが良く、年級群に占める割合も高いこと、そのため黒潮フロントの餌環境変動が年級群の生残、ひいては一年半後の大型サンマ資源量に影響するという仮説が示される。また、黒潮フロント付近で高いChl-a濃度分布が見られる原因は、黒潮水の下に親潮水が潜り込むことで、表層の黒潮水に豊富な栄養塩が供給され局所的に光合成が活発になること、および黒潮水と親潮水の層構造の分布面積変動がChl-a濃度経年変動に影響する可能性を指摘した。サンマの資源量変動メカニズムを解明するため、資源量と海洋環境要因間の相関解析・物理-低次生態系結合モデルの解析・サンマ仔魚の耳石解析を組み合わせ、何が・いつ・どこが・どのようにサンマの資源量変動に影響を与えるかを検討した。研究の結果、1990年代後半以降は、サンマ仔魚の春季分布場である黒潮続流域・黒潮-親潮混合域において餌となるプランクトン密度の経年変動が、仔魚の生残を通して資源量変動に密接に関わっていたことが示唆された。また、プランクトン密度の経年変動は黒潮と親潮の相互作用により形成された黒潮水-親潮水二層構造の伸縮によって引き起こされたと考えられる。2008年から2012年の春季に混合域・続流域で行われた仔魚分布調査のサンプルを整理し、各観測点で採集されたサンマ仔魚の体長と個体数を計数した。さらに全調査点に対し、海洋データ同化システムMOVE-MRI.COM-WNPの流速・水温データと衛星によるクロロフィルa濃度分布データを組み合わせた粒子追跡実験を行った。サンマ仔魚サンプルの一部に対して耳石分析を行い、分析が完了した150個体の体長・日齢と水温・クロロフィルa濃度の関係を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-26850119
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26850119
アルドステロンの腎障害機構に対する内因性ジギタリスの保護作用
本研究は内因性ジギタリス用物質(EDLF)の病態検査学的研究の一環である。アルドステロンの腎障害機構に対するEDLFの保護効果を理解する上で重要な、末梢でのEDLF産生および作用機構で役割を果たす器官である副腎および心臓に関して新しい知見を得るとともに、さらに上位の調節機関であることが強く示唆される神経系細胞PC12からmarinobufotoxin(MBT)が産生されることを初めて示し、さらに視床下部の不死化細胞であるN-1でのウアバイン様物質産生にかかわるシステムが存在することを明らかにした。本研究は内因性ジギタリス用物質(EDLF)の病態検査学的研究の一環である。アルドステロンの腎障害機構に対するEDLFの保護効果を理解する上で重要な、末梢でのEDLF産生および作用機構で役割を果たす器官である副腎および心臓に関して新しい知見を得るとともに、さらに上位の調節機関であることが強く示唆される神経系細胞PC12からmarinobufotoxin(MBT)が産生されることを初めて示し、さらに視床下部の不死化細胞であるN-1でのウアバイン様物質産生にかかわるシステムが存在することを明らかにした。本研究は内因性ジギタリス用物質(EDLF)の病態検査学的研究の一環である。近年、アルドステロンが腎障害を促進することが明らかになった。今回のアルドステロン有害事象へのEDLF系の改善作用を研究する可能性があるため、そのメカニズムを特異的受容体拮抗薬なども駆使しつつ、アルドステロンの腎障害機構に対する内因性ジギタリスの保護効果を明らかにすることが本研究の目的である。なお、申請者らは、このbufadienolideに属するEDLFのエポキシ形成および解裂、両タイプのEDLFのアミノ酸結合型を保有し、これらを有効利用する。アルドステロンの近位尿細管細胞アポトーシス惹起機構に対するMBT、MBGおよびTCBおよびアルドステロン受容体拮抗薬の作用については、明確な結論を得るに至っていない。しかし、アルドステロンの腎障害機構に対するEDLFの保護効果を理解する上で重要な、末梢でのEDLF産生において重要な役割を果たす器官である副腎に関して新しい知見を得た。すなわち、MBG,MBTの両者が副腎皮質に同程度存在することを示し,副腎皮質おけるEDLFの産生・分泌機構に両者が関与すること、さらに視床下部にもMBT,MBG両者が存在することが示唆した。また自然発症高血圧ラットにおける内因性ジギタリス様物質、マリノブフォトキシンの動態血圧調節におけるレニン・アンジオテンシン系の関与を明らかにした。さらに、EDLFの産生分泌を制御する中枢、すなわち視床下部の培養細胞系を用い、MBTと免疫原性を同一にするあらたなbufadienolideの存在を明らかにするとともに、さらに内因性のouabain産生とそのアルドステロンによる産生刺激を発見した。本研究は内因性ジギタリス用物質(EDLF)の病態検査学的研究の一環である。近年、アルドステロンが腎障害を促進することが明らかになった。今回のアルドステロン有害事象へのEDLF系の改善作用を研究する可能性があるため、そのメカニズムを特異的受容体拮抗薬なども駆使しつつ、アルドステロンの腎障害機構に対する内因性ジギタリスの保護効果を明らかにすることが本研究の目的である。なお、申請者らは、このbufadienolideに属するEDLFのエポキシ形成および解裂、両タイプのEDLFのアミノ酸結合型を保有し、これらを有効利用する。アルドステロンの近位尿細管細胞アポトーシス惹起機構に対するMBT、MBGおよびTCBおよびアルドステロン受容体拮抗薬の作用については、明確な結論を得るに至っていない。しかし、アルドステロンの腎障害機構に対するEDLFの保護効果を理解する上で重要な、末梢でのEDLF産生および作用機構で役割を果たす器官である副腎および心臓に関して新しい知見を得た。すなわち、今回新たにMBTが副腎髄質に存在することを質量分析的に定性的、さらに定量的にはELISAで示し,副腎髄質おけるEDLFの産生・分泌機構にMBGおよびMBT両者が関与すること、さらに、実験的心不全におけるNa/Ca exchangerが新たな治療ターゲットになること、およびouabainの関与についての側面を示した。また、ターゲット分子のMBGiレベルをアルドステロン受容体拮抗薬エピレレノンがラット血液中で低下させることを発表した。研究成果は、下記11に示すように2つの論文2報で報告し、また国際学会を含む2度の学会で発表している。本研究は内因性ジギタリス用物質(EDLF)の病態検査学的研究の一環である。近年、アルドステロンが腎障害を促進することが明らかになった。今回のアルドステロン有害事象へのEDLF系の改善作用を研究する可能性があるため、そのメカニズムを特異的受容体拮抗薬なども駆使しつつ、アルドステロンの腎障害機構に対する内因性ジギタリスの保護効果を明らかにすることが本研究の目的である。なお、申請者らは、このbufadienolideに属するEDLFのエポキシ形成および解裂、両タイプのEDLFのアミノ酸結合型を保有し、これらを有効利用する。アルドステロンの近位尿細管細胞アポトーシス惹起機構に対するMBT、MBGおよびTCBおよびアルドステロン受容体拮抗薬の作用については、明確な結論を得るに至っていない。
KAKENHI-PROJECT-21590643
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21590643
アルドステロンの腎障害機構に対する内因性ジギタリスの保護作用
しかし、アルドステロンの腎障害機構に対するEDLFの保護効果を理解する上で重要な、末梢でのEDLF産生および作用機構で役割を果たす器官である副腎および心臓に関して新しい知見を得るとともに、さらに上位の調節機関であることが強く示唆される神経系細胞PC12からMBTが産生されることを初めて示し、さらに視床下部の不死化細胞であるN-1でのウアバイン様物質産生にかかわるシステムが存在することを明らかにした。すなわち、今回新たにMBTが副腎髄質に存在することを質量分析的に定性的、さらに定量的にはELISAで示し,副腎髄質おけるEDLFの産生・分泌機構にMBGおよびMBT両者が関与すること、さらに、実験的心不全におけるNa/Ca exchangerが新たな治療ターゲットになること、およびouabainの関与についての側面を示した。特筆すべきは今までほとんど明確でなかった中枢系の細胞であるN-1細胞でウアバイン様物質の存在とその分泌機構に本研究課題のメインテーマであるアルドステロンが調節機構としてかかわっていることを明らかにした。研究成果は、下記13に示すように論文として発表するとともに、学会で発表している。
KAKENHI-PROJECT-21590643
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21590643