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データ複雑性に基づく階層的学習モデル最適化と大規模時系列データマイニングへの応用
まず評価手法に関する研究としてAnnealed Importance Sampling (AIS)を対象とする研究を2件行った.AISはBMの規格化定数を精度よく推定する方法であり,BMの定量評価には欠かせない.まず一つめはGaussian RBM (GRBM)を対象とした提案分布の効率的な設定法に関する研究である.この研究では対角共分散行列をもつ初期分布が使われる従来法に対して,非対角共分散行列が使用できる様に改良を行った.AISに関する二つめの研究ではAnnealing速度の最適化を扱った(現在投稿中).この研究ではPerfect transitionの仮定のもと解析した推定誤差を数値的に最小化することで,近似精度の向上を試みた.これら方法を複数のRBMに対する規格化定数の推定に用いたところ,近年報告されていた従来法に比べて高い推定精度を達成できることを示した.次に学習アルゴリズムの改良として,Ratio Matching (RM)法に関する研究とDBMの表現能力に関する研究の二件を行った.まずRMは規格化定数の近似評価を必要としない学習法であるが,多モードデータの学習に困難がある.この研究ではランダムに組み合わせたデータ点間の確率値を均一化する新たな学習基準を提案し人工データに対する実験で効果を確認した.最後にDeep BM (DBM)の表現能力に関する解析および改良に関する研究を行った(現在投稿準備中).この研究ではDBMの表現能力の指標を提案し,DBMが期待以上の表現能力を持っていないことを示した.またDBMの問題を改善する新たなBMを提案し,実験的に効果を確かめた.26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。まず評価手法に関する研究としてAnnealed Importance Sampling (AIS)を対象とする研究を2件行った.AISはBMの規格化定数を精度よく推定する方法であり,BMの定量評価には欠かせない.まず一つめはGaussian RBM (GRBM)を対象とした提案分布の効率的な設定法に関する研究である.この研究では対角共分散行列をもつ初期分布が使われる従来法に対して,非対角共分散行列が使用できる様に改良を行った.AISに関する二つめの研究ではAnnealing速度の最適化を扱った(現在投稿中).この研究ではPerfect transitionの仮定のもと解析した推定誤差を数値的に最小化することで,近似精度の向上を試みた.これら方法を複数のRBMに対する規格化定数の推定に用いたところ,近年報告されていた従来法に比べて高い推定精度を達成できることを示した.次に学習アルゴリズムの改良として,Ratio Matching (RM)法に関する研究とDBMの表現能力に関する研究の二件を行った.まずRMは規格化定数の近似評価を必要としない学習法であるが,多モードデータの学習に困難がある.この研究ではランダムに組み合わせたデータ点間の確率値を均一化する新たな学習基準を提案し人工データに対する実験で効果を確認した.最後にDeep BM (DBM)の表現能力に関する解析および改良に関する研究を行った(現在投稿準備中).この研究ではDBMの表現能力の指標を提案し,DBMが期待以上の表現能力を持っていないことを示した.またDBMの問題を改善する新たなBMを提案し,実験的に効果を確かめた.26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。GRBM学習の早期終了に関しては発表を行う事ができた.また学会への参加により研究動向,特に同分野の研究者の問題意識やどういったアプローチが可能であるかを把握することができた.これを踏まえてモデルを構築し,また効果的な実験方針や解析手法も決める事ができた.Artificial Intelligent Research誌へ発表したものはDLWS: NIPS14での発表を加筆・修正したものである.研究動向の詳細な把握と研究経験の深化により,当初想定していたものよりも効果的な解析手法が分かって来た.例えば現在活発に研究されているRNNはダイナミクスを内在する力学系の一種であるので,力学系の側面から研究するのがふさわしいと考えられる.この点に関しては現在,力学系の専門家との共同研究を行っている.またBMに関しては未だ不明な点が多く,今後の時系列処理の展望においても重要な位置を占めるが,現在のところ研究が進んでいない. BMに関しては統計力学的な観点から解析の解析がふさわしいと考え,現在研究を行っている.
KAKENHI-PROJECT-13J09077
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13J09077
ゲーム性を取りいれた手話学習システムのデザインと評価
本研究は、1)手話学習システムの原理の解明2)ソフトウェアシステムの開発3)学習コンテンツの整備4)実践における評価の順序で行っている。最終年度である平成18年度は、本ソフトの実践における評価について検証を行った。神戸大学付属住吉小学校で道徳のカリキュラムで実践、子供たちにアンケートやインタビューを行いユーザ評価について検討した。付属の小学校の先生方と共同で単元カリキュラムを実践した。こどもたちは冬休みにwwwを用いて指文字を自主的に練習した。最後に実際に聴覚障害の方々と交流授業を行い、実際に指文字が身についたかどうかの検証も行った。本研究は、1)手話学習システムの原理の解明2)ソフトウェアシステムの開発3)学習コンテンツの整備4)実践における評価の順序で行っている。最終年度である平成18年度は、本ソフトの実践における評価について検証を行った。神戸大学付属住吉小学校で道徳のカリキュラムで実践、子供たちにアンケートやインタビューを行いユーザ評価について検討した。付属の小学校の先生方と共同で単元カリキュラムを実践した。こどもたちは冬休みにwwwを用いて指文字を自主的に練習した。最後に実際に聴覚障害の方々と交流授業を行い、実際に指文字が身についたかどうかの検証も行った。今年度は、指文字システムの基本プロットタイプを作成し、小学校で実験を行い、インタフェースの実証を行った。システムは、www上に構築し、指の方向性や、類似に指文字の表示について改良を行った。また親しみやすいキャラクタを配置し、年齢の小さい子供にも親しみがもてるようにした。実験は、神戸大学発達科学部付属住吉小学校において1日かけて行った。担任の先生にも協力してもらい、国語の時間に点字や指文字について事前に話していただいた。今回の実験の主目的は、システムの有効性とインタフェースの操作性の実証である。2つのクラスに分け、1つのグループは、先に紙を用いた指文字の講義、次に指文字システムを使用、片方のクラスは、システムを先に使用し、紙を使用した指文字の講義をあとで行うようにした。講義後、システム使用後にアンケートを記述してもらった。2クラス終了後、ひとりひとりの指文字の習得状況を調査するために簡単な質問を行い、指文字で表示してもらった。アンケートの結果から、各クラスの優位性はあまりでなかったが、システムのインタフェースの改良すべき点は、明確になった。次年度の開発にいかしていきたいと考えている。本研究は、1)手話学習システムの原理の解明2)ソフトウェアシステムの開発3)学習コンテンツの整備の順序で行っている。平成16年度は、15年度の引き続き、「ユーザにとって理解しやすい手話のデザイン」のインタフェースの開発を行った。具体的にはアイカメラを実装し自分で行う指文字の確認ができるようにした。現在障害者の学習支援を研究している生田目とグラフィカルインタフェースの専門家である原田が中心に開発を行った。システムのインタフェース部分の実験を神戸大学付属住吉小学校で行い、検証分析した。その結果前年度のインタフェースよりも使いやすいという結果が得られた。聾者と健常者とのコミュニケーションをより円滑にするために、手話のみならず指文字の理解が必要である。しかしその学習方法は確立されていない現状がある。そのために、初心者の立場にたったインタフェースをもつ学習システムをデザインすることが非常に重要である。本年度は、(1)学習コンテンツの整備と(2)実証システムの実現と評価を行った。(1)今年度も引き続き、共同研究者である稲垣教授のもとで、学習コンテンツデザインの研究を行った。昨年度は、webカメラと本システムの併用により、類似した指文字の学習をより理解を深めることを目的とした実験を行った。実証実験の結果、webカメラを使用した場合としない場合ではあまり差がないことがわかった。今年度は、その結果をもとにわかりやすい学習コンテンツと実際に小学校の授業に適したカリキュラムのデザインについて制作・検討を行った。(2)(1)で検討したカリキユラムのデザインで神戸大学発達科学部付属住吉小学校にて12月に実証宇実験を行った。目的は、児童に「ゆびもじ」を体験してもらうことで(聴覚)障害に対する理解を深めることであり、対象は道徳で学習をした小学校2年生である。こどもたちを3つのグループに分割し、学習ソフトの使用方法(1。個人使用2.グループ使用3.講義形式)学習内容には差が出ないように十分に配慮して行った。学習形態1:個人学習は個人の自由な使用=ソフトと個人の対話、学習形態2は教室学習、教師主導型の講義型学習でソフトは補助教材とした。学習形態3はグループ学習(4人程度のグループ)で児童同士のコミュニケーションが伴う協調学習とした。学習の後にアンケートと簡単なテストを行い、実験評価を行った。本研究は、1)手話学習システムの原理の解明2)ソフトウェアシステムの開発3)学習コンテンツの整備4)実践における評価の順序で行っている。最終年度である平成18年度は、本ソフトの実践における評価について検証を行った。神戸大学付属住吉小学校で道徳のカリキュラムで実践、子供たちにアンケートやインタビューを行いユーザ評価について検討した。付属の小学校の先生方と共同で単元カリキュラムを実践した。こどもたちは冬休みにwwwを用いて指文字を自主的に練習した。最後に実際に聴覚障害の方々と交流授業を行い、実際に指文字が身についたかどうかの検証も行った。
KAKENHI-PROJECT-15300283
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15300283
Na添加を用いた結晶成長技術の革新による高効率Inフリー化合物薄膜太陽電池の開発
大規模量産が可能な次世代太陽電池材料として,希少元素(In)や毒性元素(Se)等を含まないInフリー材料の開発が望まれている。本研究では,Inフリー材料の一つであるCu2(Sn,Ge)S3(CTGS)に着目し,そのベース化合物であるCu2SnS3(CTS)をモデルとして,薄膜の結晶成長機構の解明と結晶成長に伴う薄膜物性の改善を行い,得られた知見に基づいてCTSやCTGS薄膜の作製プロセスを最適化することで高効率なInフリー化合物系薄膜太陽電池の実現を目指す。大規模量産が可能な次世代太陽電池材料として,希少元素(In)や毒性元素(Se)等を含まないInフリー材料の開発が望まれている。本研究では,Inフリー材料の一つであるCu2(Sn,Ge)S3(CTGS)に着目し,そのベース化合物であるCu2SnS3(CTS)をモデルとして,薄膜の結晶成長機構の解明と結晶成長に伴う薄膜物性の改善を行い,得られた知見に基づいてCTSやCTGS薄膜の作製プロセスを最適化することで高効率なInフリー化合物系薄膜太陽電池の実現を目指す。
KAKENHI-PROJECT-19H02663
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H02663
靴の着用感に及ぼす素材と水分量の影響
1目的衣服内に比べ靴内は非常に高湿度になるため、靴を通しての熱と水分の移動特性を調べることは重要と考えられる。靴の形の影響をみるためヒールのある靴を用い人工気候室において運動負荷による着用実験を行い、快適性に及ぼす靴内気候と水分量の影響について検討する。2方法同じ靴型で特別に製作した天然皮革靴および人工皮革靴、靴下としてナイロンストッキングを用いた。人工気候室において、被験者8名により、入室後21分間安静6分間運動負荷、後93分間安静とする着用実験を行った。温度湿度センサ装着部位は、趾間と足底で、皮膚上および靴と靴下の間とした。環境および靴内の温度、湿度、心拍数、口腔温を3分間隔で測定した。被験者の主観的感覚として、発汗感覚濡れ・湿り感、温冷感覚、快適感覚についても申告させた。3結果測定部位別の温度湿度は趾間が最も高く、趾間と土踏まず、および趾間と土踏まずでのストッキング上とでは有意差がみられた。天然皮革靴着用と人工皮革靴着用とでは、靴内の温度・湿度、および温冷感、発汗感、濡れ・湿り感、不快感など被験者の主観的感覚はほぼ同程度であり、著しい違いはみられなかった。趾間の水分量は4つの主観的感覚と大きい相関がみられた。中程度の温度・湿度では、人工皮革靴は天然皮革靴とほぼ同様の着用性能を有していることがわかった。1目的衣服内に比べ靴内は非常に高湿度になるため、靴を通しての熱と水分の移動特性を調べることは重要と考えられる。靴の形の影響をみるためヒールのある靴を用い人工気候室において運動負荷による着用実験を行い、快適性に及ぼす靴内気候と水分量の影響について検討する。2方法同じ靴型で特別に製作した天然皮革靴および人工皮革靴、靴下としてナイロンストッキングを用いた。人工気候室において、被験者8名により、入室後21分間安静6分間運動負荷、後93分間安静とする着用実験を行った。温度湿度センサ装着部位は、趾間と足底で、皮膚上および靴と靴下の間とした。環境および靴内の温度、湿度、心拍数、口腔温を3分間隔で測定した。被験者の主観的感覚として、発汗感覚濡れ・湿り感、温冷感覚、快適感覚についても申告させた。3結果測定部位別の温度湿度は趾間が最も高く、趾間と土踏まず、および趾間と土踏まずでのストッキング上とでは有意差がみられた。天然皮革靴着用と人工皮革靴着用とでは、靴内の温度・湿度、および温冷感、発汗感、濡れ・湿り感、不快感など被験者の主観的感覚はほぼ同程度であり、著しい違いはみられなかった。趾間の水分量は4つの主観的感覚と大きい相関がみられた。中程度の温度・湿度では、人工皮革靴は天然皮革靴とほぼ同様の着用性能を有していることがわかった。1目的衣服内に比べ靴内は非常に高湿度になるため、靴を通しての熱と水分の移動特性を調べることは重要と考えられる。靴の形の影響をみるためヒールのある靴を用い、人工気候室において運動負荷による着用実験を行い、快適性に及ぼす靴内気候と水分量の影響について検討する。2方法同じ靴型で特別に製作した天然皮革靴および人工皮革靴、靴下としてナイロンストッキングを用いた。人工気候室において、被験者8名により、入室後21分間安静、6分間運動負荷、後93分間安静とする着用実験を行った。温度湿度センサ装着部位は、趾間と足底で、皮膚上および靴と靴下の間とした。環境および靴内の温度、湿度、心拍数、口腔温を3分間隔で測定した。被験者の主観的感覚として、発汗感覚、濡れ・湿り感、温冷感覚、快適感覚についても申告させた。3結果靴内の温度湿度については、天然皮革靴と人工皮革靴間に著しい差異はみられなかった。測定部位別の温度湿度は高い順に趾間、土踏まず、土踏まずでのストッキング上であった。今後、測定部位別に温度湿度と各種主観的感覚についての相関をとり、熱と水分の移動特性について検討する。また、靴素材の物理的性能測定結果も考慮し、前回の被覆率が大きめの紐つき短靴の場合と比較する。さらに、靴内水分量の観点から、これまで行ってきた結果と比較検討する。1目的衣服内に比べ靴内は非常に高湿度になるため、靴を通しての熱と水分の移動特性を調べることは重要と考えられる。靴の形の影響をみるためヒールのある靴を用い人工気候室において運動負荷による着用実験を行い、快適性に及ぼす靴内気候と水分量の影響について検討する。2方法同じ靴型で特別に製作した天然皮革靴および人工皮革靴、靴下としてナイロンストッキングを用いた。人工気候室において、被験者8名により、入室後21分間安静6分間運動負荷、後93分間安静とする着用実験を行った。温度湿度センサ装着部位は、趾間と足底で、皮膚上および靴と靴下の間とした。環境および靴内の温度、湿度、心拍数、口腔温を3分間隔で測定した。被験者の主観的感覚として、発汗感覚濡れ・湿り感、温冷感覚、快適感覚についても申告させた。3結果測定部位別の温度湿度は趾間が最も高く、趾間と土踏まず、および趾間と土踏まずでのストッキング上とでは有意差がみられた。
KAKENHI-PROJECT-11680124
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11680124
靴の着用感に及ぼす素材と水分量の影響
天然皮革靴着用と人工皮革靴着用とでは、靴内の温度・湿度、および温冷感、発汗感、濡れ・湿り感、不快感など被験者の主観的感覚はほぼ同程度であり、著しい違いはみられなかった。趾間の水分量は4つの主観的感覚と大きい相関がみられた。中程度の温度・湿度では、人工皮革靴は天然皮革靴とほぼ同様の着用性能を有していることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-11680124
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11680124
火山灰土壌に生育する樹木のリン獲得メカニズムの解明
本年度は野外観察と室内での栽培実験を通して、「火山灰土壌に生育する樹木は非晶質鉱物(アロフェン、イモゴライトなど)に吸着したリンを獲得している」という仮説の検証に努めた。特に野外観察で得られた研究成果を、2019年3月の日本森林学会で「屋久島火山灰土壌における樹木細根滲出物と根圏土壌の化学特性の変化」というタイトルで発表した。ここでは、屋久島の火山灰土壌に生育する優占樹木の細根の化学組成を調べ、特に火山灰土壌としての特徴が強い(土壌非晶質鉱物濃度が高い)ところでは、根圏で非晶質鉱物を溶かして、根圏で可給態のリンが上昇することを示した。このことは野外では樹木は非晶質鉱物に吸着したリンを獲得している可能性を示している。さらに、これまで行ってきた屋久島の標高傾度に沿った火山灰寄与率に関して、2019年3月の日本生態学会で発表した。ここでは、ストロンチウムと鉛の安定同位体比を用いて、屋久島の表層土壌にどれくらい火山灰が寄与しているのかを調べた。屋久島では低標高で火山灰の寄与率が高く、標高の上昇に伴い火山灰の寄与率は線的に減少することを示した。本発表の内容は屋久島の屋久島環境文化財団が発行する商業誌である屋久島通信で、「屋久島の森林生態系への火山灰の影響7300年前の鬼界カルデラの噴火から」というタイトルで本研究成果を発表する予定であり、すでに寄稿済みで来年度掲載される予定である。また、これまでの研究成果の一部をまとめ、国際誌Journal of Forest Research誌に論文を発表した。さらに、これまでの研究成果を博士論文にまとめ、すでに提出済みであり、学位取得は5月を予定している。野外観察では、非晶質鉱物濃度(アロフェン・イモゴライトなど)の異なる屋久島の3つの低地の調査地において、優占樹種上位4種の根圏・非根圏土壌の土壌化学組成と、樹木細根からの滲出物分泌速度を調べた。その結果、火山灰土壌の特徴の強さに関わらず、土壌全リンと可給態リン濃度は樹木の根圏で一律に増加する傾向がみられ、また、火山灰土壌の特徴が強い森林では、樹木は根圏で非晶質鉱物を溶解し、非晶質鉱物に吸着したリンを可給化している可能性があることが分かった。このように樹木細根の根圏では化学組成が変化していることが明らかとなったが、根圏でのリン・非晶質鉱物濃度の変化量と樹木細根からの有機酸分泌速度とは有意な相関関係がみられなかった。樹木細根からは滲出物連続的に分泌されており、樹木根圏の化学組成の変化には長期的な樹木細根滲出物が効いている可能性が示唆された。この内容を日本生態学会で発表した。室内での栽培実験では、園芸用鹿沼土で実生を栽培し、樹木が非晶質鉱物に吸着したリンを獲得できているのかを直接的に調べた。使用した鹿沼土は可給態のリンが非常に少なく、存在するリンのほとんどが非晶質鉱物に吸着している。樹木の栽培100日後の樹木のリン濃度の解析を行ったところ、栽培開始前と栽培後100日後の実生中のリン量に変化が見られず、100日間では樹木は非晶質鉱物に吸着したリンを利用していない可能性が示唆された。しかし、時間が経過すると樹木は利用している可能性もあるので、現在も栽培を継続して行っている。現在、栽培開始1年後の実生の収穫、土壌採取は終えており、このあと2年後の実生・土壌採取を行う予定である。今後、実生のリンなどの栄養塩分析、鹿沼土の非晶質鉱物濃度やリンなどの栄養塩分析を行う。平成31年度も引き続き野外観察と室内での栽培実験を通して、「火山灰土壌に生育する樹木は非晶質鉱物(アロフェン、イモゴライトなど)に吸着したリンを獲得している」という仮説の検証に努める。野外観察に関しては予定通り研究が進んでいるので、平成31年度は特に、平成30年度にできなかった栽培土壌での根圏土壌のリン可視化に精力的に取り組む。そのために、放射線医学総合研究所でmicro-PIXE法を用いて元素のマッピングを行い、リンが根圏土壌で増えているのか検証を行う予定である。この分析のために根圏土壌の薄片作成を行う。土壌薄片作成では栽培している実生を採取する際に、丁寧に根とその根圏の土壌を採取し、その後凍結乾燥をした後、細根とその周りの鹿沼土を樹脂で固めて行う。土壌薄片作成は業者に外注し、凍結乾燥までを自分で行う。この根圏土壌の元素マッピングの結果が得られ次第、国内の学会で発表し、野外実験と栽培実験の内容に関して論文を執筆し、投稿する予定である。本年度は野外観察と室内での栽培実験を通して、「火山灰土壌に生育する樹木は非晶質鉱物(アロフェン、イモゴライトなど)に吸着したリンを獲得している」という仮説の検証に努めた。特に野外観察で得られた研究成果を、2019年3月の日本森林学会で「屋久島火山灰土壌における樹木細根滲出物と根圏土壌の化学特性の変化」というタイトルで発表した。ここでは、屋久島の火山灰土壌に生育する優占樹木の細根の化学組成を調べ、特に火山灰土壌としての特徴が強い(土壌非晶質鉱物濃度が高い)ところでは、根圏で非晶質鉱物を溶かして、根圏で可給態のリンが上昇することを示した。このことは野外では樹木は非晶質鉱物に吸着したリンを獲得している可能性を示している。
KAKENHI-PROJECT-18J14792
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J14792
火山灰土壌に生育する樹木のリン獲得メカニズムの解明
さらに、これまで行ってきた屋久島の標高傾度に沿った火山灰寄与率に関して、2019年3月の日本生態学会で発表した。ここでは、ストロンチウムと鉛の安定同位体比を用いて、屋久島の表層土壌にどれくらい火山灰が寄与しているのかを調べた。屋久島では低標高で火山灰の寄与率が高く、標高の上昇に伴い火山灰の寄与率は線的に減少することを示した。本発表の内容は屋久島の屋久島環境文化財団が発行する商業誌である屋久島通信で、「屋久島の森林生態系への火山灰の影響7300年前の鬼界カルデラの噴火から」というタイトルで本研究成果を発表する予定であり、すでに寄稿済みで来年度掲載される予定である。また、これまでの研究成果の一部をまとめ、国際誌Journal of Forest Research誌に論文を発表した。さらに、これまでの研究成果を博士論文にまとめ、すでに提出済みであり、学位取得は5月を予定している。野外観察では、非晶質鉱物濃度(アロフェン・イモゴライトなど)の異なる屋久島の3つの低地の調査地において、優占樹種上位4種の根圏・非根圏土壌の土壌化学組成と、樹木細根からの滲出物分泌速度を調べた。その結果、火山灰土壌の特徴の強さに関わらず、土壌全リンと可給態リン濃度は樹木の根圏で一律に増加する傾向がみられ、また、火山灰土壌の特徴が強い森林では、樹木は根圏で非晶質鉱物を溶解し、非晶質鉱物に吸着したリンを可給化している可能性があることが分かった。このように樹木細根の根圏では化学組成が変化していることが明らかとなったが、根圏でのリン・非晶質鉱物濃度の変化量と樹木細根からの有機酸分泌速度とは有意な相関関係がみられなかった。樹木細根からは滲出物連続的に分泌されており、樹木根圏の化学組成の変化には長期的な樹木細根滲出物が効いている可能性が示唆された。この内容を日本生態学会で発表した。室内での栽培実験では、園芸用鹿沼土で実生を栽培し、樹木が非晶質鉱物に吸着したリンを獲得できているのかを直接的に調べた。使用した鹿沼土は可給態のリンが非常に少なく、存在するリンのほとんどが非晶質鉱物に吸着している。樹木の栽培100日後の樹木のリン濃度の解析を行ったところ、栽培開始前と栽培後100日後の実生中のリン量に変化が見られず、100日間では樹木は非晶質鉱物に吸着したリンを利用していない可能性が示唆された。しかし、時間が経過すると樹木は利用している可能性もあるので、現在も栽培を継続して行っている。現在、栽培開始1年後の実生の収穫、土壌採取は終えており、このあと2年後の実生・土壌採取を行う予定である。今後、実生のリンなどの栄養塩分析、鹿沼土の非晶質鉱物濃度やリンなどの栄養塩分析を行う。平成31年度も引き続き野外観察と室内での栽培実験を通して、「火山灰土壌に生育する樹木は非晶質鉱物(アロフェン、イモゴライトなど)に吸着したリンを獲得している」という仮説の検証に努める。野外観察に関しては予定通り研究が進んでいるので、平成31年度は特に、平成30年度にできなかった栽培土壌での根圏土壌のリン可視化に精力的に取り組む。そのために、放射線医学総合研究所でmicro-PIXE法を用いて元素のマッピングを行い、リンが根圏土壌で増えているのか検証を行う予定である。この分析のために根圏土壌の薄片作成を行う。土壌薄片作成では栽培している実生を採取する際に、丁寧に根とその根圏の土壌を採取し、その後凍結乾燥をした後、細根とその周りの鹿沼土を樹脂で固めて行う。土壌薄片作成は業者に外注し、凍結乾燥までを自分で行う。
KAKENHI-PROJECT-18J14792
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J14792
肥満症・糖尿病に対する食行動に焦点を当てたマインドフルネス的介入の効果検証
Iマインドフルネスの状態や特性と肥満との関連を明らかにするため、前向きコホート研究を行う。II食行動に焦点を当てたマインドフルネス的介入の治療者マニュアルの開発し、オープンラベル試験前後比較試験を介入後のBMI、ならびに肥満関連食行動の改善について効果検証する。平成32年度後半にはリクルートを開始し、臨床試験を進める。平成33年度からは、先行研究を参考に、実施可能性と効果を予備的に検証するためのサンプルサイズは37例(介入群1:対照群2)と試算し、脱落者も踏まえて、50例を対象としたランダム化比較試験を行う。Iマインドフルネスの状態や特性と肥満との関連を明らかにするため、前向きコホート研究を行う。II食行動に焦点を当てたマインドフルネス的介入の治療者マニュアルの開発し、オープンラベル試験前後比較試験を介入後のBMI、ならびに肥満関連食行動の改善について効果検証する。平成32年度後半にはリクルートを開始し、臨床試験を進める。平成33年度からは、先行研究を参考に、実施可能性と効果を予備的に検証するためのサンプルサイズは37例(介入群1:対照群2)と試算し、脱落者も踏まえて、50例を対象としたランダム化比較試験を行う。
KAKENHI-PROJECT-19K14456
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K14456
保健医療システム導入と運用に関わる看護管理者の基礎情報知識育成プログラム開発
政府は、ITの利活用による新技術と大規模データ解析技術を活用して、国民が健康で安心・安全に暮らせるユニバーサルな新たな社会システムを築くことを目指している。看護分野において、保健医療情報システムの構築や運営で中心的な役割を担っているのは看護中間管理者である。そこで看護管理者が身に付けるべき基礎情報知識項目を同定し、教育のためにその概要を記述した。選択された項目は、T総合戦略本部、世界最先端IT国家創造宣言、看護情報学、.データ・情報・知識、データの選出・集計、標準化、データ保護、プライバシー保護、個人情報保護、保健医療情報システム活用の基本、質評価、根拠に基づく臨床実践の12である。看護中間管理者が医療情報システムなどの高度情報通信ネットワークを使いこなすために必要な基礎的な情報能力を学習するWebサイトを開発するのが本研究の目的である。そのため、看護中間管理者が学習すべき最小限必要な情報能力項目の同定と妥当性を検討し、海外のConsumer Health Webサイトのノウハウを生かして、使い易い学習プログラム作成し、学習プログラムをWebページからの発信することが目標である。昨年度、日本看護協会の認定看護管理者カリキュラム、医療情報技師認定試験内容、アメリカの看護協会の看護情報専門看護師の認定試験内容を参考に、学習項目同定とその提示資料のプロトタイプ作成を完了し、本年度はその学習のためのConsumer Health Informaticsのノウハウを生かしたプログラムの開発を行う予定であった。ところが、平成24年度に、日本看護協会は認定看護管理者カリキュラムの内容を大幅に変更し、看護情報関連の項目の整理統合した。一方、国内で保健医療情報システムの構築及びその運用技術者を医療情報技師として養成している医療情報学会も、医療情報技師認定試験の内容を改訂した。また、国際的な看護情報学分野を牽引しているアメリカの看護協会も、昨年まで実施していた看護情報専門看護師認定試験の内容を変更し新たな認定を開始した。この様な状況変化に対応するため、日本看護協会の新しい認定看護管理者カリキュラムの元となった学習テキスト(第2版看護情報管理論日本看護協会出版会)および日本医療情報学会医療情報技師部会の新認定内容と、アメリカ看護認定センターの新認定内容の比較を行い、看護中間管理者が身につけるべき情報能力の学習項目を再検討して、たたき台となる項目を再構築するとともに、岩手県、宮城県、秋田県の看護協会認定看護管理者教育課程などにおいてその項目を試用した。最近の国際的な医療分野の情報化の進展に伴い、国内の認定看護管理者向け情報教育の基準カリキュラムやアメリカの看護情報看護師の認定試験の内容などが変更されたことと、新たな「世界最先端IT国家創造宣言」が閣議決定され、国の社会保険医療分野の情報戦略が一新されたため、これら相互の内容を検討し過不足部分を調整した結果、先に作成した学習プログラムに取り入れる必要が生じたので、内容を大幅に変更した。政府は、ITの利活用による新技術と大規模データ解析技術を活用して、国民が健康で安心・安全に暮らせるユニバーサルな新たな社会システムを築くことを目指している。看護分野において、保健医療情報システムの構築や運営で中心的な役割を担っているのは看護中間管理者である。そこで看護管理者が身に付けるべき基礎情報知識項目を同定し、教育のためにその概要を記述した。選択された項目は、T総合戦略本部、世界最先端IT国家創造宣言、看護情報学、.データ・情報・知識、データの選出・集計、標準化、データ保護、プライバシー保護、個人情報保護、保健医療情報システム活用の基本、質評価、根拠に基づく臨床実践の12である。Consumer Health Webサイトのノウハウを生かした、看護中間管理者が医療情報システムなどの高度情報通信ネットワークを使いこなすために必要な基礎的な情報能力を学習するWebサイトを開発するのが本研究の目的であり、(1)看護中間管理者が学習すべき最小限必要な情報能力の項目の同定と妥当性の検討、(2)ConsumerHealthInformaticsのノウハウを反映した学習プログラム作成、(3)学習プログラムのWebページからの発信と効果の測定、の3点を実施する。初年度である23年度は、看護中間管理者が学習すべき身につけるべき情報能力の学習項目同定とその提示資料の作成を行った。具体的には、山内が現在担当している、岩手県、宮城県、秋田県、福島県の看護協会認定看護管理者教育課程で教えている項目をたたき台として、いずれも平成23年度に改訂された、アメリカ看護情報専門看護師認定試験の項目と日本看護協会の認定看護管理者教育課程カリキュラムの看護情報学関連項目などと比較検討しながら、太田および石垣と3名で基礎項目案を作成した。その際、看護管理者の生の声も取り入れるため、山内担当の上記認定看護管理者教育課程参加者に対して、学びたい項目についてのアンケートを実施し、その項目も考慮に入れた。作成された基礎項目案は仮に章分けし、各章に学習ポイントを明示し、理解度を測る設問を設定し、スマートホンで見読可能な電子資料を作成した。政府はITの利活用による新技術と大規模データ解析技術を活用して、国民が健康で安心・安全に暮らせるユニバーサルな社会を築くことを目指している。看護分野において、保健医療情報システムの構築や運用で中心的な役割を担っているのは看護中間管理者である。ところが、現在の看護管理者達は情報テクノロジに関する系統的な教育を受けた経験がない。そこで看護管理者が身に付けるべき基礎情報知識項目を同定し、教育プログラムを開発した。
KAKENHI-PROJECT-23593147
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23593147
保健医療システム導入と運用に関わる看護管理者の基礎情報知識育成プログラム開発
基礎知識として選択されたものは国の情報戦略を知るために、IT総合戦略本部、世界最先端IT国家創造宣言の2項目、看護情報の概論として、看護情報学、データ・情報・知識、データの選別と集計、標準化の4項目、看護情報の倫理的側面として、データ保護、プライバシー保護、個人情報保護の3項目、看護実践に活かす方法・管理として、保健医療情報システム導入、質評価、根拠に基づく臨床実践の3項目である。看護情報学初年度の成果を国際学会で発表することは出来たが、カリキュラム作成の基とした日本看護協会が認定看護管理者カリキュラム、医療情報技師の認定試験、アメリカの看護協会の看護情報専門看護師認定試験の、いずれも平成24年度中に同時改訂されたため、改変されたこれらの内容相互の関連性を再検討し、昨年度作成した看護中間管理者が学習すべき最小限必要な情報能力の同定項目を再検討することに時間を取られ、同定された項目学習のためのConsumer Health Informaticsのノウハウを生かした学習プログラムを開発に充分な時間が取れなかったからである。国内外の基準カリキュラムおよび国の社会保険医療分野の情報戦略が変更されたため、学習プログラムに変更が必要になり、改訂内容の評価に時間を取られたこと。そのため国際医療情報学会に参加できず、海外の動向が十分に得られなかったこと。更に、Webサイトのスタイルの参考する予定のThe TIGER Virtual Learning Environmentの募集が中断し、内容にアクセスできなくなったことなどにより、Webサイト開発が遅れた。平成23年度実施予定であった「看護中間管理者が学習すべき最小限必要な情報能力の項目の同定と妥当性の検討」の内、最小限必要な情報能力の項目の案とその教育のための電子テキストプロトタイプを作成することは出来たが、その妥当性の検討に当たる、岩手県内の看護中間管理者から参加者を募り、同定された項目それぞれに対するこれら各項目の実際の認知度や理解度に関する調査が、震災の影響で参加者を集めることができず実施には至らなかったため達成度は80パーセントである。海外のConsumer HealthWebサイトの動向や、アメリカの看護協会の看護情報専門看護師認定試験の内容を変更に伴う影響を調査すると共に、その基礎となったアメリカ看護界の次期情報戦略を担っているTiger Initiativeが、Consumer Health Informaticsのノウハウを生かして発信を開始したオンラインの看護情報学習ページのスタイルをαバージョンとして用い、国内の状況に合わせて改変して今回の学習プログラムWebサイトのβバージョンを作成し、ボランティアを募ってその評価を行い、改訂を加えて保健医療システム導入と運用に関わる看護管理者の基礎情報知識育成のための学習Webページを完成させる。平成24年度は、同定項目の一部を含む内容を国際学会で発表するとともに、看護中間管理者を対象に、同定された基礎項目案の電子資料を使って、同定項目の実際の認知度や理解度に関する調査を実施し、そのフィードバックを基に、Consumer Health Informaticsのノウハウを生かした学習プログラムを開発する。
KAKENHI-PROJECT-23593147
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23593147
抗ガングリオシド抗体の神経障害機構の解明と新規治療法の開発
ギラン・バレー症候群(Guillain-Barre syndrome, GBS)の補体介在性神経障害に関わる抗糖脂質抗体(抗ガングリオシド複合体抗体を含む)の病的意義を検討し,抗体力価と補体活性化能に正の相関を認めた。自律神経障害を呈するGBSは脳神経障害、重症例,人工呼吸器装着例が高頻度で、脱髄型に多い特徴があった。抗糖脂質抗体陰性GBSの10%に抗neurofascin (NF) 155抗体を認めたがそのIgGサブクラスはIgG2であった。慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の10%にIgG4抗NF155抗体が陽性であり、若年,振戦,髄液蛋白の著明高値を示したが抗糖脂質抗体との関連はなかった。Guillain-Barre syndrome(GBS)およびFisher syndrome(FS)の神経障害は抗ガングリオシド抗体による補体介在性障害が主体であると考えられており、主に古典的経路の活性化が推測されている。抗ガングリオシド抗体IgGサブクラスとその補体活性化能および臨床像について引き続きIgG1陽性、IgG3陽性、IgG1とIgG3共に陽性(IgG1+IgG3)の3群に分類し、症例を増やして臨床像を検討した。抗ガングリオシド抗体価はGBSで補体活性化能と正の相関を認めたが、FSでは認めなかった。補体活性化能とGBSの臨床的重症度に相関はなく、サブクラスごとの解析でも相関はみられなかった。IgG1+IgG3陽性群は他群よりも年齢が若く、抗体活性が高く、補体活性化能も高値という特徴を有していた。GBS/FSの神経障害作用において補体活性化は重要であるが、補体活性化の程度は必ずしも臨床的重症度と相関しなかった。次に抗ガングリオシド抗体陰性GBSの神経障害機序を調べるため、近年注目されているneurofascin(NF)155蛋白に対する自己抗体を測定した。抗ガングリオシド抗体陰性GBS群39例、疾患対照群36例、正常対照群15例を対象にELISA、Western BlotによりIgG抗体を検索し、臨床情報を解析した。ELISA法により得られたGBS群のIgG抗NF抗体OD値は正常対照より有意に高値(P=0.0004)であった。対照群の最大補正OD値をcut offとし抗体陽性を定義するとGBS群で抗体陽性は4例(10%)であった。抗体陽性例はWestern Blotで再現性を確認した。抗体陽性症例は全例FS3以上の重症例であった。NF155は抗糖脂質抗体陰性GBSにおいて標的抗原となる可能性が示唆された。Guillain-Barre syndrome(GBS)およびその亜型であるFisher syndrome(FS)の末梢神経障害は抗ガングリオシド抗体による補体介在性神経障害が主体であると考えられており、主に古典的経路の活性化が推測されている。抗ガングリオシド抗体IgGサブクラスはIgG1、IgG3もしくはその両者であり、臨床症状と関連することが知られている。今回抗ガングリオシド抗体IgGサブクラスとその補体活性化能および臨床像について症例を蓄積してIgGサブクラスをIgG1陽性、IgG3陽性、IgG1とIgG3共に陽性(IgG1+IgG3)の3群に再分類し臨床像を検討した。抗ガングリオシド抗体価はGBSで補体活性化能と正の相関を認めた(p<0.01)が、FSでは認めなかった(p=0.069)。補体活性化能とGBSの臨床的重症度は相関を認めず(p=0.68)、サブクラスごとの解析でも相関はみられなかった。臨床症状はIgG1+IgG3陽性群は他群よりも年齢が若く、抗体活性が高く、補体活性化能も高値であった。IgG1+IgG3群はIgG1群と比較し先行感染に消化管感染が有意に多く、IgG3群と比較し脳神経障害を欠いていた。FSについては抗ガングリオシド抗体サブクラスによる臨床症状の差はなかった。GBS/FSの神経障害作用において補体活性化は重要であるが、補体活性化の程度は必ずしも臨床的重症度と相関しなかった。臨床的重症度には年齢、治療開始遅延、補体非介在性神経障害などの多様な因子の関与も考える必要があり、今後の検討課題と考えられた。Guillain-Barrésyndrome (GBS)およびFisher syndrome (FS)の神経障害は抗ガングリオシド抗体による補体介在性障害が主体であり,古典的経路の活性化が重要とされている。抗ガングリオシド抗体のIgGサブクラスとその補体活性化能および臨床像の相関について継続して検討した。抗体の補体活性化能とGBSの臨床的重症度に相関はみられなかったが,IgG1+IgG3群は他群より若年で抗体活性が高く,補体活性化能の高さと相関していた。次に,抗ガングリオシド抗体陰性GBS例において新規自己抗体を検索するために,まずneurofascin (NF) 155蛋白に対する自己抗体を測定し,その臨床的意義,免疫サブクラスを検討した。その結果,抗ガングリオシド抗体陰性GBSの10%に同IgG抗体が陽性であり,全例介助歩行を要するなど重症である傾向が見られた。同抗体のIgGサブクラスはIgG2であった。次に,GBSにおいて予後,死亡率と関連が深い自律神経障害に関して多数例で臨床的,免疫学的に後方視的に検討した。
KAKENHI-PROJECT-24591282
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24591282
抗ガングリオシド抗体の神経障害機構の解明と新規治療法の開発
自律神経症状をもつGBS49例(男31、女18例)の解析で,自律神経障害をきたすGBSは重症度が高く、球麻痺・外眼筋麻痺が高頻度であることが特徴であり,自律神経障害では血圧変動(61%)・膀胱直腸障害(51%)がもっとも多かった。抗ガングリオシド抗体の解析ではGQ1b、GT1aに対する抗体、これらを含むガングリオシド複合体に対する抗体が1020%にみられ,一部の症例ではこれらの抗体が自律神経障害に関連する可能性が示唆された。ギラン・バレー症候群(GBS)およびFisher症候群(FS)の抗ガングリオシド抗体についてIgGサブクラスとその補体活性化能および臨床像の相関について継続して検討した。IgG1+IgG3群はより若年で抗体活性が高く,補体活性化能の高さと相関した。次に,GBSにおいて予後,死亡率と関連が深い自律神経障害に関して臨床的,免疫学的に後方視的に検討した。自律神経症状をもつGBS49例(男31、女18例)の解析で,自律神経障害をきたすGBSは球麻痺・外眼筋麻痺の合併が高頻度であり,重症度が高く人工呼吸器装着例が多く,GBSの予後関連因子として自律神経障害の重要性が示唆された。自律神経障害では血圧変動(61%)・膀胱直腸障害(51%)がもっとも多く,抗ガングリオシド抗体の解析ではGQ1b、GT1aに対する抗体、これらを含むガングリオシド複合体に対する抗体が1020%にみられた。運動軸索型GBSに関連する抗体(GM1, GD1a, GalNAc-GD1a)をもつ例は有意に少なく,脱髄型GBSで生じやすいと考えられた。抗GQ1b抗体がGBSの一部で自律神経障害に関連する可能性が示唆された。次に,GBS,FSに加えて慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)において抗ガングリオシド抗体に加えて絞輪部神経蛋白,neurofascin (NF) 155に対する自己抗体を測定し,その臨床的意義,IgGサブクラスを検討した。GBS,FSでみられる抗NF155抗体のIgGサブクラスはIgG2であったが,CIDPでは約10%にIgG4サブクラスの同抗体が陽性であり,若年発症,振戦,髄液蛋白の著明な高値が特徴であった。抗糖脂質抗体は抗NF155抗体陰性例では一部で陽性となったが,抗NF155抗体陰性例ではみられずIgG4抗NF155抗体陽性CIDPは一つの亜型を形成すると考えられた。ギラン・バレー症候群(Guillain-Barre syndrome, GBS)の補体介在性神経障害に関わる抗糖脂質抗体(抗ガングリオシド複合体抗体を含む)の病的意義を検討し,抗体力価と補体活性化能に正の相関を認めた。自律神経障害を呈するGBSは脳神経障害、重症例,人工呼吸器装着例が高頻度で、脱髄型に多い特徴があった。抗糖脂質抗体陰性GBSの10%に抗neurofascin (NF) 155抗体を認めたがそのIgGサブクラスはIgG2であった。慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の10%にIgG4抗NF155抗体が陽性であり、若年,振戦,髄液蛋白の著明高値を示したが抗糖脂質抗体との関連はなかった。抗ガングリオシド抗体のIgGサブクラスとその補体活性化能および臨床像の相関についての研究は予定通りであり,自律神経障害をもつGBSの解析も予定通りではある。抗neurofascin155抗体の病因的意義に関する研究(標的抗原の局在,動物モデル等),自律神経障害と抗ガングリオシド抗体の病因的作用に関する検討は遅れている。
KAKENHI-PROJECT-24591282
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表面波から板波への遷移波を利用したGFRP貯槽の長期耐久性評価
老朽化したGFRP貯槽の健全性を保証する取り組みとして,GFRP貯槽の外壁から超音波を入射し,その伝播特性を分析して劣化状態を非破壊評価する手法について研究した.内面劣化が少ない初期段階では板面内伝播波による検査は困難であるが,板厚方向に入射した超音波の反射係数分布を算出する手法,および内面反射波の周波数分析からAUパラメータを算出する手法により,安定した劣化検出が可能であることを見出した.老朽化したGFRP貯槽の健全性を保証する取り組みとして,GFRP貯槽の外壁から超音波を入射し,その伝播特性を分析して劣化状態を非破壊評価する手法について研究した.内面劣化が少ない初期段階では板面内伝播波による検査は困難であるが,板厚方向に入射した超音波の反射係数分布を算出する手法,および内面反射波の周波数分析からAUパラメータを算出する手法により,安定した劣化検出が可能であることを見出した.ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)は安価で耐食性を有することから,各種貯槽や反応槽など耐食容器として広く使用され,既に30年以上の使用実績がある.しかし,高度経済成長期に多数製造されたGFRP貯槽は近年老朽化が進んでおり,適切な補修・建替えを行なわず放置すれば突発的な破壊に至る危険性が指摘されている.本研究では,入力超音波の周波数をコントロールすることで,貯槽側壁面内を伝播する波の板厚方向への浸透深さを変化させ,その伝播特性に基づき貯槽の内面劣化を検査する.本年度は超音波の送受信法を検討するとともに,周波数による波の浸透深さ変化の実測を行った.材料の超音波検査法としては水深法が多用されているが,実物貯槽への適用性を考慮して,試料と超音波探触子の間に水袋を配置して局所的に水深状態を実現する局所水深法を検討し,その有効性を確認した.また,板材の表面から入射された超音波の板厚方向への浸透状態を調べるため,ペンシル型トランスデューサを用いた断面変形計測装置を製作し,実物貯槽の評価に適用した.貯槽側壁は耐薬品性に優れた耐食層と強度部材となるFW(フィラメントワインディング)層からなる積層構造を有しているが,外面FW層から入射された波が耐食層まで十分浸透せず,内面劣化層の評価が困難な場合があることが分かった.検討の結果,内面劣化層の検査には貯槽軸方向の測定が適していることを見出した.本年度は前年度に検討した超音波入射法ならびに,超音波浸透深さのコントロール手法に基づき,内面劣化層を有するGFRP貯槽の超音波検査を試みた.当初は劣化状態の異なる複数のサンプルを入手する予定であったが,これが困難となったため13年間実用されたGFRP貯槽から採取したサンプルを対象に評価を行った.その結果,異なる周波数帯の超音波を軸方向に伝播させても周波数による超音波伝播速度の変化は少なく内面劣化層の状態を評価できなかった.この原因は,サンプルを採取した貯槽の劣化が内面付近の局所領域に限定されているため,超音波浸透深さの相違による伝播速度の変化が検出レベルに達していなかったことが考えられる.上記のような比較的軽度な内面劣化状態を判定する手法として,板厚方向に伝播させた超音波の反射波分析に基づき反射係数分布の評価を試みた.初めに,片面に人工的な劣化を付与したGFRP試料を対象として,内面反射波分析により反射面の粗度を評価できることを確認した.次に,実用されたGFRP貯槽から採取したサンプルに対して同様の評価を行い,反射係数分布の変化がGFRP貯槽内面の劣化判定の指標になることを見出した.従来も板厚方向の超音波測定の検討は行われているが,内面劣化がある程度進行すると受信波形が乱れ内面反射波の特定が困難となる.しかし,本研究で提案した反射係数分布の変化を用いることで,内面反射の時間領域の特定が容易となり,劣化したGFRP貯槽の板厚が測定可能であることがわかった.以上の研究成果は,内面劣化の進行初期段階においては、GFRP貯槽側壁の面内方向の超音波検査は適さず,板厚方向の反射波分析が有効であることを示すものであり,今後の研究遂行の指針となる.研究期間の最終年度にあたる本年度は,昨年度までに提案した内面劣化評価指標の有効性を検証するため,内面劣化状態が異なる複数のGFRPサンプルを人工的に作成し,これらに対して板面内方向および板厚方向の超音波計測を行い,劣化進行と超音波測定結果の相関を調査した.その結果,入力周波数を変化させても板面内方向の伝播速度に大きな変化は見られず,波の浸透深さに基づく内面劣化評価が困難であることがわかった.一方,昨年度提案した板厚方向に伝播させた超音波の反射係数分布を評価したところ,劣化進行に伴い内面付近の反射係数分布が低下する傾向が見られ,内面劣化と良い相関があることが確認できた.しかし,この測定法は試料と探触子の接触状態の変化に敏感であり,測定誤差が生じやすいという欠点がある.そこで,本研究では信号の定量分析に適したAcousto-Ultrasonicパラメータを劣化層からの反射波分析に適用し,スペクトル線図の図心位置に相当するA2パラメータ,およびスペクトル線図のねじれに相当するA4/A3パラメータが内面劣化進行の評価に適していることを見出した.また,A2,A4/A3パラメータは試料と探触子の接触状態の変化に鈍感で,測定誤差の少ない評価指標になること,および同パラメータと材料の残存強度には良い相関があることを確認した.
KAKENHI-PROJECT-22560095
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22560095
表面波から板波への遷移波を利用したGFRP貯槽の長期耐久性評価
最後にGFRP貯槽実機での検査を想定して,内面のみを水に接触させた状態で超音波測定を試みたが,劣化検出精度の低下が生じ現実的ではないことがわかった.以上の研究成果より,GFRP貯槽の検査では内部溶液の抜き取り後の検査が推奨され,内面劣化の初期段階においては板厚方向の反射波分析が有効であること,およびAcousto-Ultrasonicパラメータを導入することで検査精度の向上が期待できることがわかった.昨年度は当初計画していた通り,超音波の入射法の確立および板厚方向の超音波浸透深さの実測を行い,GFRP貯槽では周方向よりも軸方向の超音波計測が評価に適していることを見出した.今年度の当初予定では,板厚方向の劣化状態が異なるGFRP貯槽サンプルを入手し,超音波の浸透深さ変化による伝播速度の変化を評価する予定であったが,入手できたサンプルの劣化が比較的軽度であったため,超音波の浸透深さに基づく評価が困難となった.そこで,板厚方向の反射波分析に基づく反射係数分布の評価を加味することで,軽度な内面劣化にも適用可能な検査方法の提案を行った.24年度が最終年度であるため、記入しない。研究期間の最終年度にあたる次年度は,本年度までに得られた研究成果をもとにGFRP貯槽に対する内面劣化評価手法の確立を目指す.ただし,劣化状態が大きく異なる実物サンプルを入手することが困難なため,薬品や熱により人工的に片面劣化させたサンプルを評価対象とし,「超音波浸透深さに基づく評価」および「板厚方向の反射係数分布に基づく評価」の両面から超音波検査の適用性を検証する,また,貯槽運転中の検査を想定して内面を液体に浸した場合の影響も評価する.最後に,評価サンプルの力学的試験を行い,超音波検査結果との相関を調査することで,超音波によるGFRP貯槽の残存強度判定の指針を提案することを目標とする.24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22560095
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GRiD W-phase MTによる巨大地震のリアルタイム地震解析システム
グローバルおよび日本に展開されている広帯域地震計からの長周期波動場(W-phase)を常時監視することにより,巨大地震あるいは津波を発生する可能性のある地震の位置と規模とモーメントテンソル解を同時決定する新しいリアルタイム地震解析システムを開発した.このシステムにより,巨大地震や津波地震に対する震源時・震源位置・モーメントテンソル解の同時決定を近地においては約6分,遠地については約15分で迅速かつ高精度で決定できる可能性を示した.グローバルおよび日本に展開されている広帯域地震計からの長周期波動場(W-phase)を常時監視することにより,巨大地震あるいは津波を発生する可能性のある地震の位置と規模とモーメントテンソル解を同時決定する新しいリアルタイム地震解析システムを開発した.このシステムにより,巨大地震や津波地震に対する震源時・震源位置・モーメントテンソル解の同時決定を近地においては約6分,遠地については約15分で迅速かつ高精度で決定できる可能性を示した.本研究は,グローバルおよび日本に展開されている広帯域地震観測網からリアルタイムで配信される地震波形データを常時監視し,全世界で発生するMw6.5以上の巨大地震の震源および発生機構をW-phaseを用いて地震発生後6分(遠地地震の場合は15分)という即時的に決定するリアルタイム地震解析システムを開発し,津波警報および地震直後の震度マップ作成等の災害予測に利することを目的である.平成21年度においては,GRiD MTシステムとW-phaseインバージョンを融合させたシステムのプロトタイプを開発した.GRiDMTシステムにおいては,どの観測点x仮想震源の組み合わせにおいても地震波形を解析する時間長は近地のP波,S波,表面波が含まれる2分で固定しているのだが,W-phaseインバージョンの際には,その震源距離によって波形インバージョンに使う時間窓を変化させる必要があり,その改良を実施した.また,W-phaseインバージョンで利用するグリーン関数を利用できるようにすると共に,リアルタイム地震波形データから,地震計のレスポンスをでデコンボリューションして,リサンプリングを行い,W-phaseの周期のフィルターをかけるプログラム群の開発も行った.また,2003年9月十勝沖地震,2008年5月の茨城沖地震,2010年2月沖縄本島近海地震における事例解析を行い,GRiDW-phase MTシステムのパフォーマンス等の調査を行った.本研究は,グローバルおよび日本に展開されている広帯域地震観測網からリアルタイムで配信される地震波形データを常時監視し,全世界で発生するMw6.5以上の巨大地震の震源および発生機構をW-phaseを用いて地震発生後6分(遠地地震の場合は15分)という即時的に決定するリアルタイム地震解析システムを開発し,津波警報および地震直後の震度マップ作成等の災害予測に利することが目的である.平成22年度においては,2005年8月から2010年8月までの気象庁マグニチュード6.5以上,深さ200km以浅の地震40個に対して,GRiD W-phase MTシステムのオフラインでのシステム稼働テストを行い,得られた震源パラメータの統計的性質を調査した.震源位置については気象庁一元化震源と比較して,水平方向は0.5゚,深さは10km程度以内に求まっており,メカニズム解については,防災科学技術研究所のF-net解と比べて,モーメントマグニチュードにして0.1以内,メカニズムについてはリセンブランスが0.7以上であった.上記オフラインテストの成果をもとに,東日本,および西日本をカバーするモリタリング領域を設定してオンラインでのモニターを開始した.ただし,2011/3/11に発生した東北地方太平洋沖地震に対しては,周期として,100-300秒のモニターとしたため,メカニズムを決定できなかった.このことは,より広帯域(200-1000秒)でのモニターが必要であることも明らかとなった.本研究は,全世界で発生するMw6.5以上の巨大地震の震源および発生機構をW-phaseを用いて理論的には地震発生後6分(遠地地震の場合は15分)という即時的に決定するリアルタイム地震解析システムを開発し,津波警報および地震直後の震度マップ作成等の災害予測に利することが目的である.平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の際に,プロトタイプシステムがこの地震をうまく決定できなかったことに対して,平成24年度において,新たな地震データ配信システムへの適用と開発したGRiDW-phase MTシステムの改善を行った.また,巨大地震のメカニズム決定の取りこぼしをなくすため,イベント駆動型のモーメントテンソル決定システムの開発も行った.2005年以降のモーメントマグニチュードが7を超える世界の地震およそ100個に対して,W-phaseソースインバージョンとGRiD W-phase MTの解を比較したところ使うチャンネル数が10を超える場合には,良好な解が得られることがわかった.また,複数の周期帯域(100-300sec, 150-400sec, 200-600sec, 200-1000sec)と複数の震源時間関数の組み合わせによる解の安定性なども調査し,震源時間関数が適切であれば,比較的短周期である100-300secでのモニターにおいてもリアルタイム解析においては満足できる解が得られることもわかった.GRiDW-phase MT解析においては,地震計の故障等やS/Nが悪いなどの理由により使えない成分を任意に選択できるように,Z, NS, EW成分を解析に使うように改善した.また,解析ウィンドウについても様々なオプションを設定できるなどシステムの改良を行った.今後は,本システムによるモニタリングを実施し,システムの経験を積んで気象庁等へ技術提供を行う予定である.
KAKENHI-PROJECT-21310114
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GRiD W-phase MTによる巨大地震のリアルタイム地震解析システム
24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-21310114
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21310114
三次元形状データベースからの多重フーリエスペクトルによる知識統合処理の研究
本研究では、「多重フーリエスペクトル特徴量」(MFSD特徴量)をコア技術とした三次元形状データベースに対する検索・分割・分類などの研究を行った。特に、形状の複雑さによらず、すべての物体で約4000次元あるMFSD特徴量を約1/10に圧縮する技術を開発した。また、突起形状に着目した分割手法を開発した。このように、MFSD特徴量から派生した知的統合処理の代表的な要素技術の新手法を研究開発することができた。本研究では、「多重フーリエスペクトル特徴量」(MFSD特徴量)をコア技術とした三次元形状データベースに対する検索・分割・分類などの研究を行った。特に、形状の複雑さによらず、すべての物体で約4000次元あるMFSD特徴量を約1/10に圧縮する技術を開発した。また、突起形状に着目した分割手法を開発した。このように、MFSD特徴量から派生した知的統合処理の代表的な要素技術の新手法を研究開発することができた。類似検索の性能向上に関しては、局所的に非線形な構造(多次元空間の測地線を距離とした隣接グラフ構造)に着目し「多様体ランキング」による性能向上を達成した。こちらでの性能向上は非常に劇的で、我々が既に開発していたMFSD(Multi-Fourier Spectra Descript or)と併用することで、ほとんどすべてのベンチマークデータに対して(人間による事前学習を行わない三次元物体の類似検索の中で)世界最高性能(ベンチマーク全体の平均で)を達成した。こちらの手法に関しては、情報処理学会論文誌に投稿後、採録され出版された。検索に係る知的な処理としてクラスタリングに関する研究も行った。クラスタリングをうまく利用すると、類似検索で検索クエリの物体と類似する類似度の高い物体から、形状は類似しないが、特徴量が類似する物体を散策結果から排除でき、精度向上が達成可能である。クラスタリング手法自体に関しては、画像の特徴量の研究で利用されているスペクトルクラスタリングを改良したMSC(Modified Spectral Clustering)を開発した。この技術に関しては現在、国際論文誌に投稿中で、採録通知をもらっている状況である。三次元形状モデルの多重フーリエスペクトルで得られた4つの特徴量で得られるMFSD (Multiple Fourier Spectral Descriptor)にスペクトルクラスタリングを行い検索性能の向上を目指した論文は、投稿後、スプリンガー社の国際論文誌から出版された。一方、MFSD特徴量ベクトルの新しい次元削減手法を開発した。これは、非線形な次元削減手法の問題点であった、未知データへの学習の難しさを克服するための線形化手法である。具体的には、拡散写像法という多様体学習基づく非線形な次元削減に、スペクトル回帰を応用した線形化手法を開発し、実装を行った。この手法には性能を調整可能なパラメータをもたせられる。通常、次元削減すると情報の損失を伴うが、パラメータの調整により、検索性能が向上できるという点で秀逸な技術であることが判明した。実際、この新しい線形化次元削減手法により、元々3000次元以上の高次元の特徴量であった三次元形状モデルに適用したところ、検索精度を5%程度向上でき、同時に3次元数を2ケタくらい圧縮することが出来た。この手法のもうひとつの重要な点は、メディアに関係なく適用できる点である。実際、三次元形状モデル以外にも、手書き文字認識のベンチマークデータや、テキストデータを使った文書分類などでも、性能向上を達成できた。文書分類事例として、「20-Newsgroup」ベンチマークのテキストデータで事前学習し、パラメータを調整した後、文書分類を行い、次元削減しない方法、および類似する他手法との比較実験を行ったところ、この手法の性能が最高だった。このように、これまで三次元形状モデルの検索を中心に開発してきたが、分類に代表される知識統合処理において、開発した手法が画像や文書などマルチメディアでの有効性を検証できた。三次元形状データベースからの多重フーリエスペクトルによる知識統合化に関して、H22年度に質・量ともにかなり進歩することができた。当初の目的にあったように知識統合の中で,特に三次元物体のセグメンテーションの研究の新しいコア技術となりうるアイデアを開発し、学会発表することができた。具体的には、セグメンテーションを行い再利用したい三次元物体は通常、複雑な形状・パーツ構造をもつものが多いので、「突起形状」に着目し、三次元物体を構成するメッシュのグララ構造を利用する全く新しいセグメンテーション手法を開発した。これは、2月に北海道大学で行われた映像情報メディア学会で「突起形状に着目した3次元モデルのセグメンテーション」というタイトルで発表した。なお、評価として米国プリンストン大学で作成されたベンチマークを使って行い、クラスによっては最高精度を達成することができた。一方、多重フーリエスペクトルで得られた特長量の次元削減手法は、特許出願を行い、同時に論文誌に投稿し、最終的に出版された。こちらの次元削減手法の最大の特長は、非線形な高次元構造を多様体として捉え、事前に様々な形状の三次元データで訓練しておき、低次元への射影変換を行う行列を学習しておくことで、未知データに対しても頑健であることである。ただし、特徴量の次元が大きいと前処理の時間が大きく、場合によっては、メモリに入りきらないため次元削減できないこともありうる。この問題に対してNSH(Neighborhood Sensitive Hashing)というハッシュ手法を開発した。これはデータのスケーラビリティに対応するため極めて重要な技術である。この技術に関しては、特許として出願している状況である。
KAKENHI-PROJECT-20500090
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20500090
高齢者虐待防止体制の日韓比較
本研究では、高齢者虐待防止施策の日韓比較、高齢者虐待対応の全国データの日韓比較、政令市における虐待対応評価データの分析、日韓両国での高齢者虐待に対する意識調査等を行った。日本においては地域包括支援センターを中心とした総合相談力が高いこと、韓国においては虐待対応に特化した老人保護機関があるなどそれぞれに優れた点があった。そこで、両国の虐待対応におけるより望ましいあり方として,基礎自治体レベルつまり高齢者の総合相談機関での虐待対応能力を高め、地域全体の力を活用しつつ,虐待相談に特化したより高度な専門性を持った機関を広域自治体レベルに置く,日本と韓国のシステムを融合し発展させた形を提案した。本研究では、高齢者虐待防止施策について韓国と日本を比較した上で,両国の虐待防止体制を強化するための方策を考察し,より望ましい虐待防止体制を提案を行っている。韓日両国の高齢者虐待防止施策のレビューから明らかになったのは主に以下の3点である.1韓国においては中央老人専門保護機関を設置し国の役割をより明確にすると共に,全国的な虐待事例のデータ分析からプログラム開発につながるPDCAサイクルを組み込んでいること.2韓国では広域自治体,日本では基礎自治体の単位で虐待防止体制が組まれていること.3韓国では高齢者虐待に特化した専門相談機関が,日本では地域の包括的な総合相談機関が高齢者虐待に対応していること.韓国の高齢化率は日本に比べまだ低く,コミュニティベースでの在宅サービスはこれから発展していく余地があり、基礎自治体レベルで高齢者に関する「一般相談」に対応できる機関の設置,並びに専門家の育成が急務であった.一方、日本においては虐待相談に特化した機関が無く、相談機関が分散化されており、法律問題や精神保健対応を含むより専門的な虐待事例への対応力を強化させる必要が認められた.そこで、本研究では今後の両国の虐待対応における望ましいあり方として,基礎自治体レベルつまり総合相談機関での虐待対応能力を高め,地域全体の力を活用しつつ,虐待相談に特化したより高度な専門性を持った機関を広域自治体レベルに置く,韓国と日本のシステムを融合し発展させた形を提案した.本研究では、高齢者虐待防止施策の日韓比較、高齢者虐待対応の全国データの日韓比較、政令市における虐待対応評価データの分析、日韓両国での高齢者虐待に対する意識調査等を行った。日本においては地域包括支援センターを中心とした総合相談力が高いこと、韓国においては虐待対応に特化した老人保護機関があるなどそれぞれに優れた点があった。そこで、両国の虐待対応におけるより望ましいあり方として,基礎自治体レベルつまり高齢者の総合相談機関での虐待対応能力を高め、地域全体の力を活用しつつ,虐待相談に特化したより高度な専門性を持った機関を広域自治体レベルに置く,日本と韓国のシステムを融合し発展させた形を提案した。高齢者虐待防止体制について日韓での以下3点の調査を行った.第1に,老人福祉法(日本・韓国),介護保険制度・老人長期療養保険制度,高齢者虐待防止法・家庭内暴力犯罪の処罰などに関する特例法に焦点をあて比較を行った.その結果,1韓国においては中央老人保護機関を設置することにより国の役割をより明確にしている,2高齢者虐待対応について,韓国では広域自治体,日本では基礎自治体の単位で虐待防止体制が組まれている,3韓国は専門相談機関が,日本は総合相談機関が高齢者虐待に対応していることがわかった.これらの結果から,韓国においては市町村レベルでの総合相談機能の強化,日本においては中央老人保護機関のような役割をとる中央機関の設置の必要性が導かれた.第2に,韓国の「老人虐待報告書」(保健福祉部・中央老人保護専門機関20062011),日本の厚生労働省調査(20062010)を用い,両国における通報事例の統計的データの比較を行った.通報受理機関が虐待だと判断した事例(2010)は,高齢者人口1万人当たり韓国では5.7件,日本では5.8件であった.身体的虐待と心理的虐待が多く,被虐待者の性別は両国共に女性が7割を占めた.また,虐待者は息子が多く,韓国では虐待事例の46%,日本43%と類似していた.背景には,未婚率が上昇し相対的に母親の世話をする息子が両国共に増加していること,非正規雇用の増加など彼らを取り巻く環境の厳しさなどが考えられる.これらの現状に対し,有効な対策を検討していく必要があるだろう.第3に,慶尚南道の老人保護機関の視察と職員へのヒアリングを実施すると共に,高齢者虐待防止に関するセミナーを,老人保護機関と共同で開催した(2012.9).また,大阪府堺市において,高齢者虐待の取り組みの調査を行った.日韓両国の高齢者虐待防止施策の背景となる社会的・文化的な文脈や高齢者虐待についての意識を明らかにするため日韓両国で質問紙調査を行った。調査の対象は、高齢者虐待に直面する可能性のあるケア専門職等とし、調査サンプルは日本800・韓国600とした。過去の調査を参考に「高齢者虐待についての意識」に関する指標を作成し予備調査を行ったうえで調査を実施した。「家意識」「家族の扶養」「高齢者のイメージ」「エイジズム」などをキーワードとし、「高齢者虐待についての意識」との関連性を調べ、日韓の意識の比較を行った。これらの研究成果は関連学会で報告を行った。高齢者福祉まず、これまでの研究成果を研究論文『高齢者虐待防止施策の韓日比較』にまとめ地域福祉研究に発表した。
KAKENHI-PROJECT-24730495
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高齢者虐待防止体制の日韓比較
次に、自治体および地域包括支援センターにおける継続した虐待対応の実践について担当者と意見交換を行うと共に、匿名化された高齢者虐待の相談通報事例のデータを分析し、自治体における虐待事例の現状と対応状況を明らかにした。これらの研究結果は、日本老年社会科学会の小講演にて発表を行うと共に、国際ソーシャルワーク会議(メルボルン)の演題(e-Poster)に採択された。また、韓国の長期療養保健施設、日本の介護保険施設を視察し、虐待を受けた高齢者の支援のあり方について情報交換を行った。韓国の共同研究者と共に「高齢者虐待について意識」に関する調査票を作成した。以上のことから、本研究は順調に進展しているといえる。当初の予定通り、日韓両国における国の高齢者虐待防止施策のレビューを行った。研究成果は、第20回国際老年学会の示説演題に採択された。また、韓国の慶尚南道の老人保護機関の視察を行い虐待対応職員と情報交換を行った。さらに、共同で高齢者虐待防止に向けたセミナーを昌原市(韓国)で開催した。さらに、対象自治体の高齢者虐待対応データを入手した。以上が、上記のように評価する理由である。今後の研究において、日韓両国の高齢者虐待防止施策の背景となる社会的・文化的な文脈や高齢者虐待についての意識を明らかにする。具体的には、日韓両国で「高齢者虐待についての意識」の調査を行う。調査の対象は、高齢者虐待に直面する可能性のあるケア専門職等を予定している。高齢者虐待についての意識調査では、過去の調査を参考に「高齢者虐待についての意識」に関する指標を作成し調査を行う。その際、「家族の扶養」「高齢者のイメージ」「敬老思想」「エイジズム」などをキーワードとして調査し、社会文化的な文脈の検討を行う。1日韓両国において、実際にどのような高齢者虐待防止体制がとられているのかを、広域および基礎自治体レベルで明らかにする。まず、広域自治体および基礎自治体の高齢者虐待防止施策を日韓で比較するため、自治体のドキュメント分析と自治体担当者へのインタビュー調査を実施する。日韓における広域自治体と基礎自治体の機能と役割を比較できるように、ドキュメントの分析の枠組み設定や、インタビュー調査の項目の設定を行う。次に、現場レベルの日韓の高齢者虐待対応機関の現状と課題についてまとめる。日本においては、地域包括支援センターに焦点をあて、そこで対応された高齢者虐待の実態や対応状況について数量的データを用い明らかにする。また、地域包括支援センター職員への聞き取りを通し対応の課題を整理する。韓国においては、老人保護専門機関に焦点をあて、そこで対応された高齢者虐待の実態や対応状況について数量的データを用い明らかにする。また、老人保護専門機関の職員への聞き取りを通し対応の課題を整理する。2日韓両国の高齢者虐待防止施策の背景となる社会的・文化的な文脈や高齢者虐待についての国民の意識を明らかにする。日韓両国で、高齢者虐待に対する意識調査を行う。調査の対象は、高齢者虐待に直面する可能性のあるケア専門職・高齢者・地域住民とする。高齢者虐待についての意識調査では、過去の調査を参考に「高齢者虐待への意識」に関する指標を作成し、調査を行う。
KAKENHI-PROJECT-24730495
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超準手法と算術の融合による逆数学プログラムと超準解析学の発展
前年度からの研究を拡張し,超準解析と算術の融合手法を算術における組み合わせ論等の諸種の問題に応用する可能性を探った.前年度までの研究で,公理化した超準解析の体系と2階算術の諸体系の強さの関係がある程度明確になったため,このアイデアを再起理論の手法と関連づけることやラムゼイの定理の強さを調べる研究等に適用することを目指して研究を行った.再起理論との関連づけでは,樋口氏との共同研究により,前年度に行った2階算術の公理WWKLの超準的な特徴付けのアナロジーを考え,再起理論由来の算術公理DNRに超準的な特徴付けを与えた.また,再起理論におけるpriority argumentと超準的な手法を特定の条件下で組み合わせることを試み,Chong, Slaman, Yangらによるラムゼイの定理に関連したいくつかの保存性証明に別証明を与えた.また組に関するラムゼイの定理RT^2_2の強さを調べる研究に関連し,算術の超準モデルの手法によるBovykin, WeiermannのRT^2_2のП_2部分の特徴付けを一部拡張して,П_3,П_4部分の特徴付けを得た.超準解析を用いた公理系と2階算術との比較としては,Sanders氏による,体系ERNAとП_1移行原理を用いた逆数学研究を,2階算術のものと比較・翻訳を目指す研究を行った.ERNA+П_1は,2階算術体系WKL 0と似たような逆数学的な振る舞いをする一方で,完全には一致しない部分もある.これまでに,ERNA+П_1は2階算術におけるパラメータを許さないΔO_2-CAと同じ強さを持つことが分かっており,より具体的な翻訳が得られるか等を今後の研究課題としている.超準解析における無限小近似め手法と移行原理の階層が算術のどのような階層に対応するかを調べ、またそれらの性質が超準解析学を展開する中でどの強さまで必要になるかについて逆数学の手法で評価を行った。無限小近似公理は2階算術における集合存在公理によく対応することがわかり、さらに超準解析学における諸種の命題がある種の無限小近似公理と同値になる場合が多いことが分かった。一方、移行原理の強さは他の公理との組合せによって大きく変化し、2階算術の公理系がなす階層とはかなり異なった振る舞いをすることが分かった。移行原理と直接同値になるような超準解析学における自然な命題は見つかっておらず、逆数学の視点からも移行原理は特殊な振る舞いをしていると考えられる。これらの研究に関連して、R.Kaye, T.L.Wongらによって調べられているATR_0やPi^1_1-CA_0といった強い算術体系の超準モデルを拡大する研究で挙げられている問題にも新たに取り組んでいる。こうしたモデルの拡大の研究は超準解析学と2階算術の公理の強さを比較する有効な道具立てになると考えられる。現段階では、H.J.Keislerによる結果の系となるような自明な結果しか得られていないが、議論をより精密化し、さらに無限ラムゼイの定理を用いたタイプの構成を組み合わせることで結果を改良することを目指している。また、超準解析を含んだ強い公理系における証明を2階算術における証明に変換するとき、証明の長さがどのように変化するのかについても調べ、いくつかの上からの評価を与えた。得られた評価が最適であるかどうかは現段階では不明であり、下からの評価を併せた適切な評価を模索中である。前年度からの研究を拡張し,超準解析と算術の融合手法を算術における組み合わせ論等の諸種の問題に応用する可能性を探った.前年度までの研究で,公理化した超準解析の体系と2階算術の諸体系の強さの関係がある程度明確になったため,このアイデアを再起理論の手法と関連づけることやラムゼイの定理の強さを調べる研究等に適用することを目指して研究を行った.再起理論との関連づけでは,樋口氏との共同研究により,前年度に行った2階算術の公理WWKLの超準的な特徴付けのアナロジーを考え,再起理論由来の算術公理DNRに超準的な特徴付けを与えた.また,再起理論におけるpriority argumentと超準的な手法を特定の条件下で組み合わせることを試み,Chong, Slaman, Yangらによるラムゼイの定理に関連したいくつかの保存性証明に別証明を与えた.また組に関するラムゼイの定理RT^2_2の強さを調べる研究に関連し,算術の超準モデルの手法によるBovykin, WeiermannのRT^2_2のП_2部分の特徴付けを一部拡張して,П_3,П_4部分の特徴付けを得た.超準解析を用いた公理系と2階算術との比較としては,Sanders氏による,体系ERNAとП_1移行原理を用いた逆数学研究を,2階算術のものと比較・翻訳を目指す研究を行った.ERNA+П_1は,2階算術体系WKL 0と似たような逆数学的な振る舞いをする一方で,完全には一致しない部分もある.これまでに,ERNA+П_1は2階算術におけるパラメータを許さないΔO_2-CAと同じ強さを持つことが分かっており,より具体的な翻訳が得られるか等を今後の研究課題としている.
KAKENHI-PROJECT-21740061
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21740061
授乳における心房性ナトリウム利尿ペプチドの生理的意義
ICRマウスで出産及び授乳中の心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)増加を見いだした。この生理的意義を考え、下垂体後葉(オキシトシン=OXT)・心房(ANP)・乳腺(標的器官)軸という新しいホルモン協関システムの存在仮説に到った。すなわち出産及び授乳で下垂体後葉からOXTが分泌され、それは従来子宮収縮、乳汁射出に関わると考えられてきた。ところが、これに平行してANPの合成・分泌増加が示され、乳腺にANP受容体が存在することから、子宮収縮・乳汁射出作用とは別に、OXTの刺激で心房からANPが合成・分泌され、そのANPが乳腺に作用して、乳汁分泌を促進する系があると考えられた。心房にはOXT受容体がありOXT投与でANP分泌が起こること、一方、乳腺にANP受容体が存在することはそれぞれ知られていた。今回示された、下垂体・心房・乳腺軸という新しいホルモン協関システムの考えは、新しい独創的な発想である。一方、心房から分泌されるANPの機能に関しては、ANPファミリーペプチドの1つ、ウナギVNPがイヌ摘出冠血管輪状標本に対してヒトANPやBNPよりも強い血管弛緩作用を示すことを明らかにした。ANPファミリーペプチドは魚類レベルで一度分子拡散を示したペプチドで、ほ乳類に至り、乳腺というほ乳類のみに発達した器官の調節因子として新たな機能を獲得したと考えられ、ホルモンとその受容体系の進化を考える上でも興味深い。以上より、新しいホルモン協関システムの存在が示唆された。このホルモン軸についての研究をさらに進めるとともに、ANPなどの循環作動性ペプチドと心臓機能との関連については今後さらに研究を進める必要がある。妊娠や授乳のようにほ乳類になって獲得された行動様式にともなうホルモン調節系に、従来別の生理的意義をもつ分子種を利用する進化適応を明らかにすることは大きな意義を持つと考えられる。ICRマウスで出産及び授乳中の心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)増加を見いだした。この生理的意義を考え、下垂体後葉(オキシトシン=OXT)・心房(ANP)・乳腺(標的器官)軸という新しいホルモン協関システムの存在仮説に到った。すなわち出産及び授乳で下垂体後葉からOXTが分泌され、それは従来子宮収縮、乳汁射出に関わると考えられてきた。ところが、これに平行してANPの合成・分泌増加が示され、乳腺にANP受容体が存在することから、子宮収縮・乳汁射出作用とは別に、OXTの刺激で心房からANPが合成・分泌され、そのANPが乳腺に作用して、乳汁分泌を促進する系があると考えられた。心房にはOXT受容体がありOXT投与でANP分泌が起こること、一方、乳腺にANP受容体が存在することはそれぞれ知られていた。今回示された、下垂体・心房・乳腺軸という新しいホルモン協関システムの考えは、新しい独創的な発想である。一方、心房から分泌されるANPの機能に関しては、ANPファミリーペプチドの1つ、ウナギVNPがイヌ摘出冠血管輪状標本に対してヒトANPやBNPよりも強い血管弛緩作用を示すことを明らかにした。ANPファミリーペプチドは魚類レベルで一度分子拡散を示したペプチドで、ほ乳類に至り、乳腺というほ乳類のみに発達した器官の調節因子として新たな機能を獲得したと考えられ、ホルモンとその受容体系の進化を考える上でも興味深い。以上より、新しいホルモン協関システムの存在が示唆された。このホルモン軸についての研究をさらに進めるとともに、ANPなどの循環作動性ペプチドと心臓機能との関連については今後さらに研究を進める必要がある。妊娠や授乳のようにほ乳類になって獲得された行動様式にともなうホルモン調節系に、従来別の生理的意義をもつ分子種を利用する進化適応を明らかにすることは大きな意義を持つと考えられる。ICRマウスの妊娠期と授乳期における血中及び心房筋細胞中の心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の変化を調べた。妊娠後期(18日)に、非妊娠対照動物に比べ、心筋のANP顆粒の増加が透過型電子顕微鏡や免疫組織化学で観察された。顆粒は出産直後に非妊娠対照動物よりさらに減少し、授乳中に再び増加し、乳汁分泌最盛期である15目目にピークとなった。一方、ラジオイムノアッセイで測定した血中ANP値は、妊娠後期(18日)には低値、出産直後には非妊娠対照動物より上昇し、その後の授乳中さらに上昇して、授乳15日目にピークとなった。すなわち、妊娠後期には、ANPの分泌低下にともなう顆粒増加が起こり、出産で著明な分泌増加、顆粒減少が起こる。その後授乳中は分泌とともに合成も増加し、顆粒と血中値のいずれもが増加したと考えられる。出産時並びに授乳中にはオキシトシン(OXT)分泌が起こることが知られ、ラット心筋ではOXT受容体が証明されている。一方、乳腺にANP受容体が証明されている。以上から、脳下垂体-心房-乳腺という新しいホルモン軸が示唆された。現在、ANP分泌増加に対するOXTの関与、さらにはANPの授乳における生理的役割について検討中である。一方、ANPの機能に関しては、ANPファミリーペプチドの系統発生とその血管作用についても研究を進め、魚類起源のVNPがイヌ摘出冠血管輪状標本に強い血管弛緩作用を示すことを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-15570049
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15570049
授乳における心房性ナトリウム利尿ペプチドの生理的意義
ANPは魚類レベルで一度分子拡散を示したペプチドであるが、今回の仮説のように、ほ乳類に至って、乳腺というほ乳類のみに発達した器官の調節因子として新たな機能を獲得したと考えられ、ホルモンとその受容体系の進化を考える上でも興味深い。ICRマウスの心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)血中値は、妊娠後期(18日)には低値を示した。血中ANPは出産直後には非妊娠対照動物より上昇し、その後の授乳中さらに上昇して、授乳15日目にピークとなった。すなわち、妊娠後期には、ANPの分泌低下が起こり、出産で著明な分泌増加が起こる。その後授乳中は分泌と合成がともに増加したと考えられる。出産時並びに授乳中にはオキシトシン(OXT)分泌が起こること、乳腺にもANP受容体が存在することから、脳下垂体のオキシトシン-心房のANP-乳腺という新しいホルモン軸が示唆された。一方、ANPに関しては、ANPファミリーペプチドの系統発生とその血管作用についても研究を進め、魚類起源のVNPによるイヌ摘出冠血管輪状標本の強い血管弛緩作用を示した。ANPファミリーペプチドは魚類レベルで一度分子拡散を示したペプチドであるが、今回の仮説のように、ほ乳類に至って、乳腺というほ乳類のみに発達した器官の調節因子として新たな機能を獲得したと考えられ、ホルモンとその受容体系の進化を考える上でも興味深い。また、妊娠維持とも関連するアドレノメデュリン(AM)ファミリーの新規ペプチドAM2が他の血管に比べ、冠血管の拡張に強く関与することも新たに見いだした。さらに第一染色体にある高血圧関連遺伝子を導入したコンジェニックラットでの血圧上昇機序については、交感神経系の重要性を示唆した。以上より、心房性ナトリウム利尿ペプチドなどの循環作動性ペプチドと心臓機能および妊娠や授乳との関連は今後さらに研究を進める必要がある。
KAKENHI-PROJECT-15570049
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高精度日本人ゲノム参照パネルに基づいた日本人炎症性腸疾患感受性遺伝子の高密度解析
高精度の東北人ゲノムリファレンスパネルと、それを活用できるカスタムジェノタイピングアレイを用いて、日本人炎症性腸疾患、特にクローン病の高密度疾患感受性多型解析を行った。その結果、クローン病では13領域がP<1e-6の候補領域として同定された。TNFSF5,MHC,ZNF365, 4p14が有意レベル(P<5e-8)の相関を認めた。これら13領域のうち8領域は既知の領域あるいは、その近傍であり、5領域が新規の候補領域である。新規領域のトップヒットはRAP1A遺伝子にあり、RAP1A遺伝子が日本人クローン病の新規感受性遺伝子である可能性が示された。クローン病(CD)と潰瘍性大腸炎(UC)からなる炎症性腸疾患(IBD)の遺伝背景は、欧米でのアレイによるゲノムワイド相関解析(GWAS)によって多くの感受性遺伝子が同定された。一方、従来型GWASの問題点も明らかになった。高密度多型解析は、この従来型GWASの問題点を解決する手法として実践され、欧米人感受性多型は一気に200か所を超えて解明された。このような高密度解析には詳細な多型地図を参照する必要があるが、これまで日本人の高精度の多型地図が存在せず、日本人IBDの感受性遺伝子解析は従来型GWASの結果のまま停滞していたが、2014年に高精度の東北人ゲノムリファレンスデータ(1KJPN)が作成されたことで、日本人での高密度多型解析が可能となった。そこで、この1KJPNのデータをもとに作成された、カスタムジェノタイピングアレイを使用し、日本人のIBDの遺伝因子解析を開始した。今年度まず800人の患者DNAの解析と、1000人の健常人データを比較し、多数の日本人IBD感受性遺伝子候補領域が抽出された。さらにその確認用アレイ(JIBDアレイ)を設計して使用する予定であったが、実際に設計を行ってみると、当初から使用しているカスタムアレイの精度で十分な精度の解析が可能で、新たにJIBDカスタムアレイを作成するよりも安価に網羅的な解析が可能なことから、当初の予定よりも前倒しし、追加の600検体でアレイ解析データを得て、解析を行う準備が開始された。本研究で得られているデータは、多くの日本人固有の多型を含み、一時解析の結果ですでに多人種では認められていない感受性遺伝子候補が発見されていることから、今後の解析によって、日本からIBDの新たな病因が解明される可能性が高い。当初の予定では平成27年度中に第一次検討として、日本人用カスタムアレイによるタイピングを行い、平成28年度にそのデータ解析と第二次検討として追加検体を用いた詳細な解析を行う予定であった。現在、平成27年度に予定されていた内容に加え、平成28年度予定の二次検討のアレイデータの取得まで終了している。ただし、二次検討分のデータは、アレイデータの取得までであり、これからの解析が必要であるが、一次解析ですでに興味深い新規感受性候補領域が複数発見されていることから、様々な臨床データをベースに多方面からの解析が可能となっている。以上より、本研究は当初計画の目的達成に向けて、おおむね順調に進展をしている。クローン病(CD)と潰瘍性大腸炎(UC)からなる炎症性腸疾患(IBD)の遺伝背景は、欧米でのアレイによるゲノムワイド相関解析(GWAS)によって多くの感受性遺伝子が同定され、さらに高密度多型解析で欧米人では感受性多型は一気に200か所まで解明された。2014年に高精度の東北人ゲノムリファレンスパネルが作成されたことで、日本人での高密度多型解析が可能となった。そこで、本研究で日本人IBDの遺伝因子解析を進めることとした。2015年度は、患者約1314人、健常人コントロール2198人について、日本人用のSNPジェノタイピングカスタムアレイであるJaponica Arrayを使用し、約67万多型のGenotypingを行った。2016年度は、それらのデータを東北メディカル・メガバンク機構が作成した日本人リファレンスパネルデータ(1KJPN)を使用して約986万多型をimputeし、それらを用いたゲノムワイド相関解析を開始した。具体的には、東北地方在住、九州地方在住の患者・健常人のデータを分けて解析した。これは、ジェノタイピングデータの主成分分析を行ったところ、九州と東北ではクラスターに違いがあったためであり、これらを分けてそれぞれで解析を行い、その結果をメタ解析するという手法をとった。この結果、クローン病では14領域、潰瘍性大腸炎では7領域がP<1e-6の候補領域として同定された。このうちクローン病で最も強い相関が認められた領域はTNFSF15遺伝子を含む領域で、最も有意な相関を認めたのはrs78898421 (p=2.59E-26)であった。14領域のうち8領域は既知の領域あるいは、その近傍であり、6領域が新規の候補領域である。潰瘍性大腸炎では、HLA領域での相関が最も強く(rs116905289, p=2.46E-44)、7領域のうち2領域が新規領域であった。当初の予定より大きく前倒しをし、検体の収集が完了し解析が進行している。平成28年度は膨大なデータの解析が主体であったが、現在までに新規感受性候補領域として、クローン病では8領域、潰瘍性大腸炎では2領域が同定されている。いずれの新規領域についても、これまでのデータのみでは科学的に根拠が弱いため、別サンプルでの確認研究が今後必要となる。
KAKENHI-PROJECT-15H04805
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H04805
高精度日本人ゲノム参照パネルに基づいた日本人炎症性腸疾患感受性遺伝子の高密度解析
これらについての確認を行うため、検証実験の準備のための検体収集が完了しており、まもなく最終的な確認実験を開始できる見込みである。以上より、本研究は当初の計画の目的達成に向けて、おおむね順調に進展をしている。炎症性腸疾患(IBD)の遺伝背景は、欧米でのアレイによるゲノムワイド相関解析(GWAS)によって多くの感受性遺伝子が同定され、さらに高密度多型解析で欧米人では感受性多型は一気に200か所まで解明された。2014年に高精度の東北人ゲノムリファレンスパネルが作成されたことで、日本人での高密度多型解析が可能となった。そこで、本研究で日本人IBDの遺伝因子解析を進めることとした。患者約1314人、健常人コントロール2198人について、日本人用のSNPジェノタイピングカスタムアレイであるJaponica Arrayを使用し、約67万多型のGenotypingを行った。日本人リファレンスパネルデータ(1KJPN)を使用して約986万多型をimputeし、それらを用いたゲノムワイド相関解析を開始した。この結果、クローン病では13領域がP<1e-6の候補領域として同定された。このうち最も強い相関が認められた領域はTNFSF15遺伝子を含む領域で、最も有意な相関を認めたのはrs78898421 (p=2.59E-26)であった。13領域のうち8領域は既知の領域あるいは、その近傍であり、5領域が新規の候補領域である。5つの新規領域について、別の検体としてクローン病286例、健常人254例のDNAを用いてReplication Studyを行ったところ、RAP1A遺伝子の下流に存在するrs488200が有意な相関を示した(p=1.98E-8,OR 1.39)。クローン病患者の外科手術標本における腸管粘膜rs488200の遺伝子型毎のRAP1Aの発現を比較したところ、クローン病リスクアリルとRAP1Aの発現低下に相関があった(p=0. 000927)。RAP1Aはリンパ球の腸管へのホーミングにかかわる蛋白であり、Rap1のノックアウトマウスで腸炎が確認されており、今回の結果と矛盾しない。以上から、RAP1Aが日本人クローン病の新規疾患感受性遺伝子として同定された。高精度の東北人ゲノムリファレンスパネルと、それを活用できるカスタムジェノタイピングアレイを用いて、日本人炎症性腸疾患、特にクローン病の高密度疾患感受性多型解析を行った。その結果、クローン病では13領域がP<1e-6の候補領域として同定された。TNFSF5,MHC,ZNF365, 4p14が有意レベル(P<5e-8)の相関を認めた。これら13領域のうち8領域は既知の領域あるいは、その近傍であり、5領域が新規の候補領域である。新規領域のトップヒットはRAP1A遺伝子にあり、RAP1A遺伝子が日本人クローン病の新規感受性遺伝子である可能性が示された。平成28年度は予定通り、追加検体で得られたデータから、第二次検討の解析を開始する。解析結果から得られた候補領域、候補多型については、TaqManなどによる直接タイピング法による解析で確認を行う。平成29年度には多方面の臨床データや、臨床診療上問題となる病態や治療などと遺伝子との解析を加えることで、単なる疾患感受性遺伝子だけではなく、疾患の分類や、疾患を修飾する因子の解明も進めていき、当初の研究計画の目的を達成していく。
KAKENHI-PROJECT-15H04805
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DNAデータベースの構築に関する国際協力の確立に関する調査研究
近年, DNAデータは増加の一途をたどり, DNAデータベースは分子生物学の研究で必要不可欠のものとなった.このような事情から, 1987年2月25日ー27日西ドイツのハイデルベルグでNIH(米国国立保健研究所)/EMBL(欧州分子生物学研究所)ワークショップ「分子生物学におけるデータベースの将来」の開かれた.この会議では, DNAデータバンク(欧州のEMBL Data Library,米国のGenBank,日本のDDBJ)の成功はデータバンク間の協力関係の緊密さ如何に依るとの認識に至り,この協力を推進するためワークショップは,このような国際協力を調整する目的で国際諮問委員会の設立を勧告した.日本のこのワークショップの後直ちに国際協力に参加し現在にいたっている.本学術調査の目的は,この勧告に従って開催される「第一回DNA配列データベースのための国際諮問委員会」に参加し,関係者とDNAデータベース構築に関する国際協力について協議することである.また,併せて米国におけるDNAデータバンク運営の実態, DNAデータベース利用の実態と解析ソフトウェアの開発状況を調査することである.国際諮問委員会が, DNAデータバンク(欧州EMBL,米国GenBank,日本DDBJ)の国際協力を調整する目的で開催された.委員会のメンバーは,欧州,米国から各3名,日本から2名である.委員会は,データバンク担当者の活動報告を受け,データバンク間の協力(対象雑誌の分担, accession numberの共同管理, common data submission formの採用等)を大いに評価するものの,以下の勧告を出した.1)データバンクは最低必要なcommondataitemsに関して一致すべきである.2)データバンクは共通のfeature tableを採用すべきである.それにあたっては,データの過大な解釈を避けることを要請する.3)データバンクはこれまで出版された文献にあるDNAデータで未入力のものを無くすべきである.4)データベースは他のデータベースに関する相互参照に関して案をまとめるべきである.進展を見守るため,委員会は毎年開催されることが要請された.近年, DNAデータは増加の一途をたどり, DNAデータベースは分子生物学の研究で必要不可欠のものとなった.このような事情から, 1987年2月25日ー27日西ドイツのハイデルベルグでNIH(米国国立保健研究所)/EMBL(欧州分子生物学研究所)ワークショップ「分子生物学におけるデータベースの将来」の開かれた.この会議では, DNAデータバンク(欧州のEMBL Data Library,米国のGenBank,日本のDDBJ)の成功はデータバンク間の協力関係の緊密さ如何に依るとの認識に至り,この協力を推進するためワークショップは,このような国際協力を調整する目的で国際諮問委員会の設立を勧告した.日本のこのワークショップの後直ちに国際協力に参加し現在にいたっている.本学術調査の目的は,この勧告に従って開催される「第一回DNA配列データベースのための国際諮問委員会」に参加し,関係者とDNAデータベース構築に関する国際協力について協議することである.また,併せて米国におけるDNAデータバンク運営の実態, DNAデータベース利用の実態と解析ソフトウェアの開発状況を調査することである.国際諮問委員会が, DNAデータバンク(欧州EMBL,米国GenBank,日本DDBJ)の国際協力を調整する目的で開催された.委員会のメンバーは,欧州,米国から各3名,日本から2名である.委員会は,データバンク担当者の活動報告を受け,データバンク間の協力(対象雑誌の分担, accession numberの共同管理, common data submission formの採用等)を大いに評価するものの,以下の勧告を出した.1)データバンクは最低必要なcommondataitemsに関して一致すべきである.2)データバンクは共通のfeature tableを採用すべきである.それにあたっては,データの過大な解釈を避けることを要請する.3)データバンクはこれまで出版された文献にあるDNAデータで未入力のものを無くすべきである.4)データベースは他のデータベースに関する相互参照に関して案をまとめるべきである.進展を見守るため,委員会は毎年開催されることが要請された.
KAKENHI-PROJECT-62041151
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62041151
障害者福祉サービスに関わる情報取り扱いに関する研究-提供・開示・共有の観点から-
本研究の目的は、ソーシャルワーク過程において、施設職員が利用者支援の一環として、説明・記録・情報の利活用・評価を行ない、その場面ごとに、第三者の関与を得ながら、二者間で福祉情報を共有、生成している現状と課題を明確化することを通し、情報共有論を展開することにある。研究方法は、障害者福祉施設におけるレジデンシャルソーシャルワークの参与観察や施設職員に対する自由記述式アンケート、そしてフォーカス・グループ・インタビューを複合的に用いた。得られた知見は、ソーシャルワーク過程のいずれの場面においても、客体に甘んじていた利用者はその主体性を回復し、職員は利用者の主体性を尊重し、各場面への利用者参加を積極的に保障することを前提とした支援を行なうという、両者の意識および行動改革を迫られていることである。そのためには、利用者の意思決定を支援する職員を、「反省的実践家(reflective practitioner)」と位置づけ、その実践を促進するためにはスーパービジョンが必要であることと、利用者の主体性確立と権利擁護の両者を実現するために、セルフ・アドボカシーの発展とそれに対する適切な支援が重要であることを主張した。このことに関連し、利用者と職員が対話を通して向き合い、互いの福祉情報を共有することを通し、新たな情報を生成、外在化させ、両者がともに主体性をもって、福祉課題の解決や要望の実現に、協働的に関与する「対話型協働的意思決定」が重要であり、その各場面に関与する第三者活動の段階的展開の必要性を提言した。以上を踏まえ、支援とは、それを求める者と提供する者の相互主体性に基づく、情報共有により実現可能となることを結論づけた。本研究の目的は、障害者入所施設における、職員による利用者に対する情報提供の一形態としての説明場面に分析および考察を加えることにある。3つの質的調査を行った。第1に利用者の苦情に対する職員のコミュニケーションのあり方に影響を与える要因を探るための、職員へのアンケートおよびインタビュー。第2に職員の説明に対する利用者の理解度を把握するための、利用者集団へのインタビュー。第3に制度説明場面における話し手と聞き手の相互作用に関する参与観察である。その結果、職員と利用者の間には認識のズレがあり、その背景には職員と利用者のコミュニケーション能力に関する要因だけでなく、入所施設がもつ職員体制や予算等の物理的要因、運営方針や集団規範等の組織的要因等が数多く見られた。さらに利用者の理解を促進するために、説明者の選択、採用する資料、説明環境の整備のような工夫が試みられており、利用者の動機づけとともに、コミュニケーション仲介者としての第三者の機能に注目することができた。職員が説明責任を果たすためには、利用者からの(応答責任に基づく)フィードバックは重要である。双方向のコミュニケーションを積み重ねることにより、職員は利用者の生活の質を高めるパートナーとしての位置を獲得することが可能となる。2003年4月にスタートした支援費制度は、ケース記録の重要性を高め、新たに個別支援計画、契約書の作成を必須のものとした。このことにより職員の利用者支援は、専門職主導から利用者主体へと意識や具体的方法の変革を余儀なくされている。このような状況を鑑み、本研究では,ケース記録・個別支援計画・契約書といった記録を媒介とした、情報共有の意義と可能性について考察するために、障害者施設職員へのアンケートおよびフォーカスグループディスカッションを実施し、現場実践における記録作成および活用の現状と課題について把握した。調査データからは、各文書、利用者と職員の対等な関係性を担保するには、職員の意識や支援技術の未確立、利用者や家族の意識、社会資源の未整備等、多くの課題を抱えていることが把握できた。記録に記載された情報を利用者支援に活用するためには、各文書のリンケージの必要性が明らかになった。利用者情報の共有については、職員と利用者との二者関係の充実が前提として重要であり、この関係を核として、施設同僚、他機関、家族、地域住民と利用者支援に関する情報ネットワークを構築することが重要であることを提言した。この情報ネットワークにおける個人情報の保護と活用についてを次年度以降の課題とし、さらに考察を深めていく予定である。本研究の目的は、ソーシャルワーク過程において、施設職員が利用者支援の一環として、説明・記録・情報の利活用・評価を行ない、その場面ごとに、第三者の関与を得ながら、二者間で福祉情報を共有、生成している現状と課題を明確化することを通し、情報共有論を展開することにある。研究方法は、障害者福祉施設におけるレジデンシャルソーシャルワークの参与観察や施設職員に対する自由記述式アンケート、そしてフォーカス・グループ・インタビューを複合的に用いた。得られた知見は、ソーシャルワーク過程のいずれの場面においても、客体に甘んじていた利用者はその主体性を回復し、職員は利用者の主体性を尊重し、各場面への利用者参加を積極的に保障することを前提とした支援を行なうという、両者の意識および行動改革を迫られていることである。そのためには、利用者の意思決定を支援する職員を、「反省的実践家(reflective practitioner)」と位置づけ、その実践を促進するためにはスーパービジョンが必要であることと、利用者の主体性確立と権利擁護の両者を実現するために、セルフ・アドボカシーの発展とそれに対する適切な支援が重要であることを主張した。このことに関連し、利用者と職員が対話を通して向き合い、互いの福祉情報を共有することを通し、新たな情報を生成、外在化させ、両者がともに主体性をもって、福祉課題の解決や要望の実現に、協働的に関与する「対話型協働的意思決定」が重要であり、その各場面に関与する第三者活動の段階的展開の必要性を提言した。
KAKENHI-PROJECT-14710144
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14710144
障害者福祉サービスに関わる情報取り扱いに関する研究-提供・開示・共有の観点から-
以上を踏まえ、支援とは、それを求める者と提供する者の相互主体性に基づく、情報共有により実現可能となることを結論づけた。
KAKENHI-PROJECT-14710144
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14710144
農村工業化と女性出稼ぎ労働者の生活と意識
「改革・開放」後の経済発展がもたらした農村人口の広範な地域移動がどのような社会構造の変化の方向を示唆するのかについての分析の一端となることをめざして、本研究では、郷鎮企業での女性出稼ぎ労働者の生活構造と生活意識についての把握を目的としている。本年度は以下の作業を行った。1.研究枠組みの精緻化:女性出稼ぎ労働者の移動は次の枠組みで把握されよう。(1)承包責任制のもとでの家族農業経営は余剰労働力を含んでいる。(2)先進農村における、それら余剰労働力の吸収・行政財源確保の手段としての農村工業化は、さらに進むと、後背農村の余剰労働力をも吸収するようになる。そこで、農村人口の地域移動が生じる。(3)後背農村は農村工業化のための条件を欠く。(4)以上のような家族生存戦略、地域生存戦略のプロセスのなかにあって、女性出稼ぎ労働者は、帰還型、定着型、漂流型の何れかの生活意識を持つ。2.調査票の作成:資料収集、先行研究にかんする検討をへて、調査項目を決定した。(1)移動の背景、(2)移動のプロセスとネットワーク、(3)労働生活とネットワーク、(4)日常生活とネットワーク、(5)女性出稼ぎ労働者の生活意識。これらに基づき、調査票を作成した。この間、中国側研究協力者と電話、ファックスなどで連絡し協議し、予備調査の際に討議した。3.予備調査は、別途研究費により実施し、その結果については、資料集(報告書)を印刷した。また、国内で、調査予定地についてのヒヤリングを行った。4.本調査:別途研究費により、現地調査を依頼し、実施中である。「改革・開放」後の経済発展がもたらした農村人口の広範な地域移動がどのような社会構造の変化の方向を示唆するのかについての分析の一端となることをめざして、本研究では、郷鎮企業での女性出稼ぎ労働者の生活構造と生活意識についての把握を目的としている。本年度は以下の作業を行った。1.研究枠組みの精緻化:女性出稼ぎ労働者の移動は次の枠組みで把握されよう。(1)承包責任制のもとでの家族農業経営は余剰労働力を含んでいる。(2)先進農村における、それら余剰労働力の吸収・行政財源確保の手段としての農村工業化は、さらに進むと、後背農村の余剰労働力をも吸収するようになる。そこで、農村人口の地域移動が生じる。(3)後背農村は農村工業化のための条件を欠く。(4)以上のような家族生存戦略、地域生存戦略のプロセスのなかにあって、女性出稼ぎ労働者は、帰還型、定着型、漂流型の何れかの生活意識を持つ。2.調査票の作成:資料収集、先行研究にかんする検討をへて、調査項目を決定した。(1)移動の背景、(2)移動のプロセスとネットワーク、(3)労働生活とネットワーク、(4)日常生活とネットワーク、(5)女性出稼ぎ労働者の生活意識。これらに基づき、調査票を作成した。この間、中国側研究協力者と電話、ファックスなどで連絡し協議し、予備調査の際に討議した。3.予備調査は、別途研究費により実施し、その結果については、資料集(報告書)を印刷した。また、国内で、調査予定地についてのヒヤリングを行った。4.本調査:別途研究費により、現地調査を依頼し、実施中である。
KAKENHI-PROJECT-08208110
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膜蛋白質の機能におよぼす境界燐脂質層の影響
細胞および細胞内の微細な構造は燐脂質二重層によって仕切られている。膜蛋白質は部分的に折り畳まれてこの脂質層に保持されている。本研究ではこの脂質を変化させたとき膜蛋白の動的な微細構造に発生する変化をラット心筋の筋小胞体(SR)を対象として検討した。蛋白の-SH基に選択的に結合して蛍光を発するアニリノナフチルマレイミド(ANM)をSR蛋白と30°Cに孵置して反応させ、その蛍光の性質を自家製の時間分解蛍光異方性測定装置によって測定した。膜燐脂質の変更には脂質titration法によりcholateを用いて、脂質二重層の主成分であるフォスファチヂルコリン(PC)の鎖長の異なる燐脂質分子(18:1,16:1,14:1,12:0)をSRへ導入し,充分に洗浄後25°Cで測定に供した。燐脂質が置換されていることは脂質親和性蛍光物質ジフェニルヘクサトリエン(DOH)を用いて脂質層の粘度と搖動角を測定することにより確認した。これらの燐脂質で置換すると、脂質層の粘度はPC18:1で0.78ポアズ,12:0のPCによって0.53ポアズと低下した。PCの鎖長が短縮するとSR蛋白に特有なCA^<2+>-ATP分解活性は減弱した。鎖長が短縮して膜粘性が減少すると、SR蛋白の運動性は大きくなることが、時間分解蛍光異方性減衰の促進と定常光異方性値の低下として認められた。即ち、ANM蛍光の異方性減衰曲線のオ-バ-オ-ルの半減期はPC18:1を導入したとき30nsecであり、PC14:1導入で25nsecへPC12:0を導入で13nsecへ減じた。これはSR蛋白の構造の中で少なくともANMの結合した部位一帯の回転緩和が、粘性低下にともなって容易になったことを示している。これらの結果は境界燐脂質をはじめとする脂質二重層の厚さと物理的性質とがSR蛋白の動的微細構造の維持に寄与していることを示唆している。今後、種々な生体膜について膜蛋白と脂質二重層の関連を研究するうえで有力な方法と考える。細胞および細胞内の微細な構造は燐脂質二重層によって仕切られている。膜蛋白質は部分的に折り畳まれてこの脂質層に保持されている。本研究ではこの脂質を変化させたとき膜蛋白の動的な微細構造に発生する変化をラット心筋の筋小胞体(SR)を対象として検討した。蛋白の-SH基に選択的に結合して蛍光を発するアニリノナフチルマレイミド(ANM)をSR蛋白と30°Cに孵置して反応させ、その蛍光の性質を自家製の時間分解蛍光異方性測定装置によって測定した。膜燐脂質の変更には脂質titration法によりcholateを用いて、脂質二重層の主成分であるフォスファチヂルコリン(PC)の鎖長の異なる燐脂質分子(18:1,16:1,14:1,12:0)をSRへ導入し,充分に洗浄後25°Cで測定に供した。燐脂質が置換されていることは脂質親和性蛍光物質ジフェニルヘクサトリエン(DOH)を用いて脂質層の粘度と搖動角を測定することにより確認した。これらの燐脂質で置換すると、脂質層の粘度はPC18:1で0.78ポアズ,12:0のPCによって0.53ポアズと低下した。PCの鎖長が短縮するとSR蛋白に特有なCA^<2+>-ATP分解活性は減弱した。鎖長が短縮して膜粘性が減少すると、SR蛋白の運動性は大きくなることが、時間分解蛍光異方性減衰の促進と定常光異方性値の低下として認められた。即ち、ANM蛍光の異方性減衰曲線のオ-バ-オ-ルの半減期はPC18:1を導入したとき30nsecであり、PC14:1導入で25nsecへPC12:0を導入で13nsecへ減じた。これはSR蛋白の構造の中で少なくともANMの結合した部位一帯の回転緩和が、粘性低下にともなって容易になったことを示している。これらの結果は境界燐脂質をはじめとする脂質二重層の厚さと物理的性質とがSR蛋白の動的微細構造の維持に寄与していることを示唆している。今後、種々な生体膜について膜蛋白と脂質二重層の関連を研究するうえで有力な方法と考える。生体膜の基礎構築は燐脂質二重層である.この二重層は一定不変の固定構造ではなく,分子運動を反覆する動的構造である.本研究は蛍光分子の導入することにより,蛍光異方性からこの動的性質と脂質層中の浮かぶ膜蛋白の機能との関係を明らかにしようとするものである.生体膜の燐脂質二重層はかなりに不均一な系であり,多くの膜蛋白が境界燐脂質を周囲に固着させており,膜蛋白を精製して燐脂質層をとり除くと酵素あるいは受容体としての機能を失なう.しかし境界層をはじめとする燐脂質二重層の不均一な構造の動的な性質は未だ充分には解析されていない.我々はこの性質の解明が膜蛋白と燐脂指層の相互作用解析の出発点と判断した.昭和62年度には,既設の装置に科研費による備品を加えてサブナノ秒高速蛍光計を組立てることができた.この装置を用いて,脂質鎖長の異なる燐脂質を混合したリポソームについて,導入した蛍光分子の異方性の時間分解測定を行なった.
KAKENHI-PROJECT-62480100
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膜蛋白質の機能におよぼす境界燐脂質層の影響
驚くべきことに,脂質鎖長が炭素分子二ヶ以上異なるとき蛍光異方性曲線は特異的時間経過を辿ることが明らかとなった.即ち,まず速やかにやがて緩かに下降して一定値に近付いたのち上昇に移り50ナノ秒後には新らしい一定値を示したのである.しかもこの曲線は蛍光強度に依存した二成分に分解できることが明らかとなった.混合比,脂質鎖長,温度をかえて測定した結果,この現象は異なる鎖長をもった燐脂質が十分に混合せず,相分離して存在する,所謂ドメイン構造を形成しているためと結論された.かくて時間分解蛍白異方性の高速測定により,各ドメイン内燐脂質分子の運動にもとづく微視的粘性や,分子運動の揺動角を弁別解析できるという新らしい研究方法の絲口がえられた.これにより境界層燐脂質の動的構造と蛋白との相互作用を解明する基本的方法が確立された.今後は,この方法を用いて燐脂質と膜蛋白分子の運動及び生理活性との関係を解析していく.境界燐脂質は多くの蛋白分子が分布する生体膜に大量に含まれる筈である。その典型例の一つがミトコンドリヤ(以下M_Tと略す)内膜である。そこでカエルの心筋M_Tを採取し定法に従って、外・内膜を分離し、教室製の時間分解蛍光計によって、膜粘性と燐脂質分子の搖動角とを測定した。また蛋白の影響を除いてみるため燐脂質を抽出分離し、フリで超音波震盪してリポソームを作り同様に測定した。以下のとおり、M_T膜の外・内膜は蛋白質分子の存在のために、きわめて不均一な性質を示すことを明らかにすることができた。1.測定される膜粘性は内膜の方が外膜より遙かに大きい。2.外・内膜からえられたリポソームは相似た低い粘性を示す。殊に内膜リポソームの粘性は内膜そのものより遙かに小さく、外膜の粘性に近い。3.これらの結果は燐脂質分子が蛋白分子の周囲できわめて秩序立った状態にあり、燐脂質分子の動きは強く制限されていることを示す。4.境界層を伴った蛋白分子の間を埋める燐脂質層も存在する。この燐脂質領域とも呼ぶべき部分の粘性はリポソーム同程度とみられる。5.外膜の搖動角よりも内膜の搖動角の方が大きいという知見は、境界燐脂質層と燐脂質領域との間に低秩序の脂質層の存在を仮定すると説明できる。6.このようなM_T膜燐脂質の不均一な動的微細構築をラット心筋M_Tについても、外・内膜分離とリポソーム作製という実験によって確認した。7.さらにラット心筋M_Tに蛋白分解酵素パパインを作用させた。施行した状件下でM_T蛋白は10%が消失し、膜粘性は12%低下した。即ち膜蛋白の減少により、境界層状態の燐脂質がへり、燐脂質域からの信号の測定値への寄与が増大する。これは抽出リポソームについての成績と符号する。また蛋白の変成により燐脂質分子が境界層から離脱することを示唆している。このような蛋白と燐脂質との相互作用はNa^+、K^+、Ca^<2+>などの共存によって影響されることはなかった。細胞および細胞内の微細な構造は燐脂質二重層によって仕切られている。膜蛋白は部分的に折り畳まれてこの脂質層に保持されている。本研究ではこの脂質を変化させたとき膜蛋白の動的な微細構造に発生する変化をラット心筋の筋小胞体(SR)を対象として検討した。蛋白の-SH基に選択的に結合して蛍光を発するアニリノナフチルマレイミド(ANM)をSR蛋白と30°Cに孵置して反応させ、その蛍光の性質を自家製の時間分解蛍光異方性測定装置によって測定した。膜燐脂質の変更には脂質titration法によりcholateを用いて、脂質二重層の主成分であるフオスフアチヂルコリン(PC)の鎖長の異なる燐脂質分子(18:1,16:1,14:1,12:0)をSRへ導入し、充分に洗浄後25Cで測定に供した。
KAKENHI-PROJECT-62480100
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62480100
蛋白質分解反応を捕捉する新しい方法の開発の応用および一般化に関する研究
様々の蛋白質が、プロテアーゼによって切断されることにより、活性化・不活性化・形態変化といった機能修飾を受ける。この作用は不可逆的であるために、生命現象の多くの局面で決定的役割を担っている。このような生体内のプロテアーゼによる制御系を把握するうえで、個々の蛋白質分解反応過程を捕捉し、定量的および空間的情報を得ることは、不可欠である。しかしながら、今日まで、生理・病理現象における蛋白質分解反応を空間的に捕捉することは、事実上不可能であった。この問題を解決するために、新しいアプローチを開発した。すなわち、個々の蛋白質分解反応産物を特異的に認識する抗体を調製する確度の高い方法を確立した。その結果、免疫化学的手法によって、様々のプロテアーゼ反応を現場で押さえることが可能となった。本研究によって、世界で初めて蛋白質分解反応を空間的に捕捉することが可能になったと言える。具体的には、脳虚血におけるカルパインの作用やアルツハイマー病におけるβアミロイドペプチドのプロセッシングをはじめとする様々の現象の解析に応用し、多くの新知見を得た。今後、これらの疾患の予防・治療法の開発へと発展する可能性が期待される。本研究法は全世界的に応用・模倣され始めており、プロテアーゼ研究の方法論を変えつつある。科学研究費による補助によって、日本における研究がオリジナルであることを世界に示すことが出来た。様々の蛋白質が、プロテアーゼによって切断されることにより、活性化・不活性化・形態変化といった機能修飾を受ける。この作用は不可逆的であるために、生命現象の多くの局面で決定的役割を担っている。このような生体内のプロテアーゼによる制御系を把握するうえで、個々の蛋白質分解反応過程を捕捉し、定量的および空間的情報を得ることは、不可欠である。しかしながら、今日まで、生理・病理現象における蛋白質分解反応を空間的に捕捉することは、事実上不可能であった。この問題を解決するために、新しいアプローチを開発した。すなわち、個々の蛋白質分解反応産物を特異的に認識する抗体を調製する確度の高い方法を確立した。その結果、免疫化学的手法によって、様々のプロテアーゼ反応を現場で押さえることが可能となった。本研究によって、世界で初めて蛋白質分解反応を空間的に捕捉することが可能になったと言える。具体的には、脳虚血におけるカルパインの作用やアルツハイマー病におけるβアミロイドペプチドのプロセッシングをはじめとする様々の現象の解析に応用し、多くの新知見を得た。今後、これらの疾患の予防・治療法の開発へと発展する可能性が期待される。本研究法は全世界的に応用・模倣され始めており、プロテアーゼ研究の方法論を変えつつある。科学研究費による補助によって、日本における研究がオリジナルであることを世界に示すことが出来た。当初の計画通り、様々の蛋白質分解反応産物に対する抗ペプチド抗体を設計・調製することに成功した。すなわち、新たなる「蛋白質分解反応産物特異的抗体」として、活性化プラスミン・カルパイン活性化中間体・活性化インターロイキン1・成熟型カテプシン・カルパインによって限定分解を受けたタリン3(pE:ピログルタミン酸)をアミノ末端に持つβアミロイド・イソアスパラギン酸をアミノ末端に持つβアミロイド・ラセミ化アスパラギン酸をアミノ末端に持つβアミロイド・11(pE)をアミノ末端に持つβアミロイド・40(V)をカルボキシル末端に持つβアミロイド・42(A)をカルボキシル末端に持つベータアミロイド・その他を特異的に認識する抗体を調製した。特に、βアミロイドに対する種々の抗体を用いた免疫組織化学的研究により、アルツハイマー病においてアミノ末端に修飾を受けたβアミロイドが大量かつ早期に蓄積することを初めて見いだした。このことは、老人斑形成における律速段階を決定する上できわめて重要な証拠となる。このように、抗体調整法を普遍化する目的は、ほぼ完全に達成されたといってよい。また、この様な抗体を用いて学問的・臨床医学的価値の高い応用を行うという目的については、アルツハイマー病βアミロイドペプチドのプロセッシングに関して、期待以上の成果が得られた。脳虚血によって誘導される神経細胞死におけるカルパインの役割についても新たなる知見が得られた。今後、さらに応用範囲が広がることは確実である。細胞内の蛋白質分解反応を捕捉・解析する目的で抗体の細胞への微量注入を行う研究に関しては、マイクロインジェクションシステムが導入されるので、上皮性ガン細胞を用いて特に細胞内プロテアーゼであるカルパインの作用に注目して、現在検討を行っている。初年度(94年度)に様々の蛋白質分解反応産物に対する抗ペプチド抗体を設計・調製することに成功したが、本年度はさらに、そのリストを増やした。すなわち、βアミロイドペプチドについては、グルタミン酸(3残基目)やフェニルアラニン(4残基目)をアミノ末端にもつもの、あるいは、バリン(39残基目)やスレオニン(43残基目)をカルボキシル末端にもつものを特異的に認識する抗体を調製した。その結果、アルツハイマー病との関係で脳に蓄積するβアミロイドの微細な構造とこれに関わる代謝経路について新たな知見が得られた。また、β3インテグリンがカルパインの作用によって限定分解を受けることを見いだし、その3種類の分解産物に対する抗体を調製した。これを用いて、血小板活性化の系において、インテグリンがカルパインの作用を受けることを示した。カルパインと接着現象の関係に関する新しい知見である。また、同様に細胞骨格関連蛋白質タリンの限定分解についても解析した。
KAKENHI-PROJECT-06557131
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蛋白質分解反応を捕捉する新しい方法の開発の応用および一般化に関する研究
さらに、今年度までに調製した抗体を様々の現象の解析に応用した。例えば、脳虚血によって生じる遅発型神経細胞死におけるカルパインの作用としては、虚血後数分で生じる初期相と数時間以降に生じる後期相があることを既に見いだしていたが、このうち後期相が細胞死に直結していること、また、これをプロテアーゼ阻害剤で抑制することにより細胞死を防ぐことの出来ることを確認した。この他に、リンパ球のアポトーシスや心虚血・脳低酸素等におけるカルパインの作用の解析にも供した。これまで調製した抗体は、全てポリクローナル抗体であるが、現在、モノクローナル抗体の調製も試みている。また、本研究で調製した抗体を用いたELISAの系も開発した。初年度および昨年度に様々の蛋白質分解反応産物に対する抗ペプチド抗体を設計・調製することに成功したが、本年度はさらに、そのリストを増やす一方で、モノクローナル抗体の調整にも成功した。たとえば、アルツハイマー病βアミロイドペプチドの主要な蓄積型分子種はアミノ末端にピログルタミン酸を有するが、この分子種に対するモノクローナル抗体を樹立し、さらに、酵素免疫定量法を確立した。アルツハイマー病研究に寄与することが期待される。さらに、修飾型βアミロイドが脳の不溶画分のみならず、可溶画分に蓄積に先行して存在することを確認した。βアミロイド蓄積機構を理解する上で重要な知見であると考えられる。また、本研究によって得られたβアミロイドの構造に関する知見に基づいて、脳内のβアミロイド代謝系の律速過程に関する予測を行った。すなわち、「脳内におけるβアミロイドペプチドの分解過程の律速をアミノペプチダーゼが担う。ある種のアミノペプチダーゼ活性の低下がアミロイド代謝の停留、ひいては、蓄積の促進を促す。」という仮説(「アミノペプチダーゼ仮説」)を提唱した。本仮説に基づいて、アルツハイマー病の生化学的マーカーを検索したところ、有望な候補を見いだした。将来、アルツハイマー病の予防法の開発へと発展する可能性が期待される。この他、脳虚血によるプロテアーゼの作用の解析についても、本研究法をさらに応用し、カルパイン以外にCaspase(ICE様プロテアーゼ)の作用を感知する抗体を調整した。虚血性神経細胞死におけるプロテアーゼの作用についてより深い理解の得られることが、期待される。さらに、細胞接着蛋白質や細胞骨格蛋白質のカルパインによる限定分解の解析にも、本研究法を応用し、細胞接着とカルパイン活性化の関係が明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-06557131
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プラズマ照射型シングルセル遺伝子導入マイクロデバイスの開発
近年、常温常圧のプラズマを用いた医療・生物学分野への応用研究が進められている。本研究では、申請者が開発した一つの細胞に対して直接プラズマを照射できるマイクロデバイスを用いて、プラズマ中の活性種に起因する電気/化学/光刺激が細胞に与える効果を明らかにする。これら三つの刺激を協調的に作用させることで、従来の手法を超える、遺伝子等の細胞内部への導入技術を確立することが目的である。近年、常温常圧のプラズマを用いた医療・生物学分野への応用研究が進められている。本研究では、申請者が開発した一つの細胞に対して直接プラズマを照射できるマイクロデバイスを用いて、プラズマ中の活性種に起因する電気/化学/光刺激が細胞に与える効果を明らかにする。これら三つの刺激を協調的に作用させることで、従来の手法を超える、遺伝子等の細胞内部への導入技術を確立することが目的である。
KAKENHI-PROJECT-19H04457
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てんかんの病因にシトリン欠損は関与するか
遺伝性のてんかん症例において、責任遺伝子の同定とその異常が少しずつ明らかになってきている。しかし、人口の約1%が「てんかん」と診断されていることから考えると、同定された遺伝子に異常が見つかる例はごくわずかである。本研究は、てんかんと診断され、原因が明らかでない症例に、citrin欠損症が存在する可能性、あるいはSLC25A13変異ヘテロ接合体が高頻度で検出される可能性などを検討し、脳器質病変発症の分子機構解明の手がかりを得ることを目的とする。Citrin欠損症は、生後1歳までに胆汁うっ滞性新生児肝炎(NICCD)に罹患し、適応・代償期を過ごし、重篤な成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)をひき起こす。SLC25A13の既知・新規変異診断法を確立し、本年度新たに国内外のNICCD症例54例(日本人32例、中国人15例、ベトナム人2例、韓国人1例、白人3例、イスラエル人1例)及び日本人CTLN2症例6例を見いだした(論文作成中)。これまでNICCD症例219例とCTLN2症例155例を分子遺伝学的に診断し、その特徴と診断基準をGeneReviews(Kobayashi & Saheki)[www.genetests.org]にまとめた。さらに、従来の治療法:大量の糖質投与は高アンモニア血症と細胞質NADH上昇に繋がり、CTLN2をiatrogenicdiseaseにしていたと考えられる。一方、CTLN2の脂肪肝はnon-alcoholic steatohepatitis(NASH)の肝組織像に合致することを明らかにした。肝移植CTLN2症例の調査では、代償期すでに不定愁訴や精神神経症状などが認められ、39%(7/18)がてんかんと初期診断されていた。これまで解析したCTLN2症例157例では、33例がてんかん、2例がうつ病、4例が統合失調症などと診断されていた。てんかん症例237例の変異検索では4例の保因者を検出した(1/59)が、一般集団の保因者頻度(1/65)と比べて有意な差は認められなかった。237例は、乳児重症ミオクロニーてんかん、広汎性てんかん熱性けいれん、良性家族性新生児けいれん、良性家族性小児けいれん、前頭葉てんかん症例であるので、今後さらなる検討が必要である。ここ数年、遺伝性てんかん症例において、責任遺伝子の同定とその異常が少しずつ明らかになってきている。しかし、人口の約1%が「てんかん」と診断されていることから考えると、同定された遺伝子に異常が見つかる例はごくわずかである。本研究は、てんかんと診断され、原因が明らかでない症例に、citrin欠損症が存在する可能性、あるいはSLC25A13変異ヘテロ接合体が高頻度で検出される可能性などを検討し、脳器質病変発症の分子機構解明の手がかりを得ることを目的とする。本年度の研究実績を列挙する。(1)てんかん症例におけるSLC25A13遺伝子の既知変異検索てんかん症例237例について、12種のSLC25A13変異を診断したところ、4例が1つのalleleに変異を持つヘテロ接合体であることを見いだした(乳児重症ミオクロニーてんかんSMEI症例2/89、広汎性てんかん熱性けいれんGEFS症例2/99、良性家族性新生児けいれんBFNC症例0/25、良性家族性小児けいれんBFIC症例0/15、前頭葉てんかんFLE症例0/9)。西南日本を中心とした一般集団における保因者頻度(20/1372=1/69)と比較すると、4/237=1/59、2/89=1/45、2/99=1/50のいずれとも有意な差は認められなかった。今後、症例数を増やして、さらに検討する必要がある。(2)SLC25A13変異同定とcitrin欠損症の病態把握Citrin欠損症は、生後1歳までに胆汁うっ滞性新生児肝炎(NICCD)に罹患し、適応・代償期を過ごし、重篤な成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)をひき起こす。国内外の症例で新規変異を同定し、新規・既知変異診断法を確立し、これまでにNICCD症例153例とCTLN2症例150例を分子遺伝学的に診断してきた。肝移植治療を受けたCTLN2症例を調査した結果、代償期において、すでに不定愁訴や精神神経症状などが認められ、39%(7/18)4がてんかん(疑い)と初期診断されていることが明らかになった。NICCD症例の何割がてんかん様発作を呈するのか、長期観察が重要となる。遺伝性のてんかん症例において、責任遺伝子の同定とその異常が少しずつ明らかになってきている。しかし、人口の約1%が「てんかん」と診断されていることから考えると、同定された遺伝子に異常が見つかる例はごくわずかである。本研究は、てんかんと診断され、原因が明らかでない症例に、citrin欠損症が存在する可能性、あるいはSLC25A13変異ヘテロ接合体が高頻度で検出される可能性などを検討し、脳器質病変発症の分子機構解明の手がかりを得ることを目的とする。Citrin欠損症は、生後1歳までに胆汁うっ滞性新生児肝炎(NICCD)に罹患し、適応・代償期を過ごし、重篤な成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)をひき起こす。
KAKENHI-PROJECT-16659281
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16659281
てんかんの病因にシトリン欠損は関与するか
SLC25A13の既知・新規変異診断法を確立し、本年度新たに国内外のNICCD症例54例(日本人32例、中国人15例、ベトナム人2例、韓国人1例、白人3例、イスラエル人1例)及び日本人CTLN2症例6例を見いだした(論文作成中)。これまでNICCD症例219例とCTLN2症例155例を分子遺伝学的に診断し、その特徴と診断基準をGeneReviews(Kobayashi & Saheki)[www.genetests.org]にまとめた。さらに、従来の治療法:大量の糖質投与は高アンモニア血症と細胞質NADH上昇に繋がり、CTLN2をiatrogenicdiseaseにしていたと考えられる。一方、CTLN2の脂肪肝はnon-alcoholic steatohepatitis(NASH)の肝組織像に合致することを明らかにした。肝移植CTLN2症例の調査では、代償期すでに不定愁訴や精神神経症状などが認められ、39%(7/18)がてんかんと初期診断されていた。これまで解析したCTLN2症例157例では、33例がてんかん、2例がうつ病、4例が統合失調症などと診断されていた。てんかん症例237例の変異検索では4例の保因者を検出した(1/59)が、一般集団の保因者頻度(1/65)と比べて有意な差は認められなかった。237例は、乳児重症ミオクロニーてんかん、広汎性てんかん熱性けいれん、良性家族性新生児けいれん、良性家族性小児けいれん、前頭葉てんかん症例であるので、今後さらなる検討が必要である。
KAKENHI-PROJECT-16659281
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ジェンダーの視点からみた就業と失業の空間構造に関する研究
地方都市中心都市である松本市の郊外地域に造成された寿台住宅団地をとりあげ,夫婦の通勤行動圏を分析した。その結果,地方都市においても,地方年の郊外住宅地域においても,大都市郊外と同様に夫婦の通勤距離の差は大きく,主婦労働力が郊外の雇用の場で重要な役割を果たしていることがわかった。その一方で,夫の通勤先や定年後の再就職先として,産業振興地域が浮上してきていることも明らかとなった。このことは,地方都市である松本に置いても,産業振興地域の形成に伴って,雇用の郊外化が進行していることの表れであるといえる。本研究の内容は,斎藤功編『中央日本における盆地の地域性-松本盆地の文化層序-』に執筆した。また,東京大都市圏の郊外住民の通勤行動と求職行動について分析し,大都市郊外が上京人口(いわゆる郊外第一世代)の受け皿であるだけでなく,彼らの子供であり,大都市郊外を地元とする郊外第二世代の通勤者を生み出していることを指摘した。郊外第二世代については,現段階では高学歴者,ホワイトカラーは中心市に集中し,通勤距離に関わる制約から通勤行動に性差や職種・ライフコース(学歴など)による差も存在し,特に未婚男性でその差が大きいことを明らかにした。そして,今後,雇用の郊外化により郊外での雇用機会が増大し,郊外核へのホワイトカラー系職種の集積が進むと大都市圏では,郊外第二世代による郊外地域での就業が男女ともに増加し,通勤行動の性差が縮小する可能性を指摘した。本研究については,2005年10月に地理科学学会秋季学術大会シンポジウムにて報告した。まず,東京大都市圏の郊外地域に位置する,千葉県野田市の住民を対象として就業と通勤行動に関する研究を行った。大都市郊外の住宅地域では,就業者の多くが東京都内で就業しているが,旧市街では地元で就業する地元出身者が多く,農村部では鉄道交通へのアクセスが悪いためにモータリゼーションが進行していた。これらの地域的な要因が,既婚男性,既婚女性,未婚男性,未婚女性といった,配偶関係別にみた通勤行動の性差を生じさせていることが明らかになった。本研究については,2003年8月にスロベニアのリュブリャナで開かれた,IGU(国際地理学連合)のUrban-Commissionにて口頭発表を行い,その一部はGeoJournal誌に投稿中である。また,地域の産業と,そこで働く就業者の状況について雇用者側の視点から把握するために,鳥取市に立地する大手電機メーカーS社の子会社T社を対象として,生産体制の変容と,それに伴う雇用状況の変化と現状について調査を行った。日本の大手電機メーカーは,アジアへの生産拠点の移管を急速に進めているが,国内生産においては,さらなるコストダウンのために請負(アウトソーシング)の導入を進めていた。マルチメディア機器を製造するT社の子会社M社では,製造ラインの6割以上を請負社員が占めていた。これは,2001年以降,50歳を過ぎた正社員の一部が転進支援措置によって退職し,それに変わる労働力として賃金の安い社外工を導入したことによる。このことは,地域の雇用の不安定化の原因ともなりうる現象といえ,今後さらなる観察が必要である。本研究については,2004年度日本地理学会春季学術大会において口頭発表を行い,その一部は分担執筆の著書の中で発表した。さらに,広島都市圏と東京都市圏のパーソントリップデータを借用し,現在,個人属性による通勤行動パターンの差異について分析中である。東京大都市圏の郊外住民を対象として就業と通勤行動に関する研究を行った。大都市郊外の住宅地域では,就業者の多くが東京都内に通勤しているが,旧市街では地元で就業する地元出身者が多く,農村部では鉄道交通へのアクセスが悪いためにモータリゼーションが進行していた。また,これらの地域的な要因が,配偶関係別にみた通勤行動の性差を生じさせていることも明らかした。本研究は,2003年8月にスロベニアのリュブリャナで開かれたIGU(国際地理学連合)のUrban-Commissionにおいて口頭発表を行ったものであり,その内容は2004年に発刊されたプロシーディングスに掲載された。さらに,世代間で平均通勤時間の性差に逆の傾向があること,すなわち,大都市郊外において,既婚者は男性の方が女性より平均通勤時間が長いが,未婚者は,女性の方が男性よりも長いことに着目し,大都市郊外で成長した若年者の居住地移動の性差,特に,未婚女性の独居が男性のそれよりも困難な状況にあることが,未婚女性に長距離通勤を強いる原因となっていることを指摘した。この成果は,地理学の国際学術雑誌であるGeoJournal誌に審査論文として掲載された。また,同じく大都市郊外住民の通勤行動と求職行動を,ライフコース,世代,性差によって分析した結果,夫(父親)については,大都市圏出身者と非大都市圏出身者で通勤行動が大きく異なること,妻(母親)は出産後に一度離職する者が多く,子供の成長後に広告や社会的ネットワークを通じて再就職していること,彼らの子供たちの世代は,いずれも大都市圏出身者であることからライフコースが類似しており,求職行動については,特に男性において学歴による違いが大きいことを明らかにした。本研究については,2004年8月にイギリスのグラスゴーで開かれた,IGUのUrban-Commissionにて口頭発表を行った。地方都市中心都市である松本市の郊外地域に造成された寿台住宅団地をとりあげ,夫婦の通勤行動圏を分析した。その結果,地方都市においても,地方年の郊外住宅地域においても,大都市郊外と同様に夫婦の通勤距離の差は大きく,主婦労働力が郊外の雇用の場で重要な役割を果たしていることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-15700550
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15700550
ジェンダーの視点からみた就業と失業の空間構造に関する研究
その一方で,夫の通勤先や定年後の再就職先として,産業振興地域が浮上してきていることも明らかとなった。このことは,地方都市である松本に置いても,産業振興地域の形成に伴って,雇用の郊外化が進行していることの表れであるといえる。本研究の内容は,斎藤功編『中央日本における盆地の地域性-松本盆地の文化層序-』に執筆した。また,東京大都市圏の郊外住民の通勤行動と求職行動について分析し,大都市郊外が上京人口(いわゆる郊外第一世代)の受け皿であるだけでなく,彼らの子供であり,大都市郊外を地元とする郊外第二世代の通勤者を生み出していることを指摘した。郊外第二世代については,現段階では高学歴者,ホワイトカラーは中心市に集中し,通勤距離に関わる制約から通勤行動に性差や職種・ライフコース(学歴など)による差も存在し,特に未婚男性でその差が大きいことを明らかにした。そして,今後,雇用の郊外化により郊外での雇用機会が増大し,郊外核へのホワイトカラー系職種の集積が進むと大都市圏では,郊外第二世代による郊外地域での就業が男女ともに増加し,通勤行動の性差が縮小する可能性を指摘した。本研究については,2005年10月に地理科学学会秋季学術大会シンポジウムにて報告した。
KAKENHI-PROJECT-15700550
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状態空間表現によるベイジアン時系列モデリングのプロセス工学への応用
1.反応プロセスへのベイジアン時系列モデルの適用本年度は、反応機構が解明されているプロセスに対して実験を行なった。実験例としてアルカリによるエステルのけん化速度(2次反応速度定数)の測定を採用し、酢酸エチルと苛性ソーダの反応を恒温槽にて行なわせた。文献値による反応速度定数を用いて、生成物濃度の経時変化を計算し、逆滴定法により求められた濃度(実験値)と比較した。結果として、ベイジアン時系列モデリングより実験値の誤差を減少させ得ることがわかった。しかし、簡単な反応プロセスということもあって結果はほぼ予想されたものであり、複雑な反応プロセスに適用しない限り詳細な実行性の検討は行なえないものと推察された。2.画像処理へのベイジアン時系列モデルの適用これまで研究例がない画像処理への応用を試みた。物体の輪郭形状を表す2次元の点列を平面極座標系で表し、半径と角度を時系列成分とした。半径の時系列成分は傾向変動要素、定常変動要素、周期変動要素に分解され、各変動要素にはベイズモデルの特徴である事前情報が設定されるようにした。状態空間を構成し、拡張カルマンフィルタを使用して、各変動要素を逐次推定しスムージングを行う処理法を開発した。計算機実験として、まず輪郭形状に凹凸のある物体に適用し、周期成分として凹凸が評価されることを確認した。また、活性炭の顕微鏡画像に対して適用し、複数の活性炭の輪郭形状が1つのクラスのモデルとして表し得ることを確かめた。なお、これらの成果の一部を化学工学会(仙台、1994)にて発表した。1.反応プロセスへのベイジアン時系列モデルの適用本年度は、反応機構が解明されているプロセスに対して実験を行なった。実験例としてアルカリによるエステルのけん化速度(2次反応速度定数)の測定を採用し、酢酸エチルと苛性ソーダの反応を恒温槽にて行なわせた。文献値による反応速度定数を用いて、生成物濃度の経時変化を計算し、逆滴定法により求められた濃度(実験値)と比較した。結果として、ベイジアン時系列モデリングより実験値の誤差を減少させ得ることがわかった。しかし、簡単な反応プロセスということもあって結果はほぼ予想されたものであり、複雑な反応プロセスに適用しない限り詳細な実行性の検討は行なえないものと推察された。2.画像処理へのベイジアン時系列モデルの適用これまで研究例がない画像処理への応用を試みた。物体の輪郭形状を表す2次元の点列を平面極座標系で表し、半径と角度を時系列成分とした。半径の時系列成分は傾向変動要素、定常変動要素、周期変動要素に分解され、各変動要素にはベイズモデルの特徴である事前情報が設定されるようにした。状態空間を構成し、拡張カルマンフィルタを使用して、各変動要素を逐次推定しスムージングを行う処理法を開発した。計算機実験として、まず輪郭形状に凹凸のある物体に適用し、周期成分として凹凸が評価されることを確認した。また、活性炭の顕微鏡画像に対して適用し、複数の活性炭の輪郭形状が1つのクラスのモデルとして表し得ることを確かめた。なお、これらの成果の一部を化学工学会(仙台、1994)にて発表した。
KAKENHI-PROJECT-06750761
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06750761
胃酸逆流と気道疾患 ―動物モデルを用いた検討―
胃酸逆流が一因と考えられている咽喉頭症状に喉頭肉芽腫、咽喉頭異常感症、慢性咳嗽、歯周炎、肺線維症があるが、その病態を動物モデルにより再現し、その発症機序を解明した。また胃液・十二指腸混合液が食道癌およびBarrett食道の発症に強く関与することから、その動物モデルを作製し、咽頭癌の発症の原因になるかを検討した。その結果、頸部食道に扁平上皮癌の発生を確認した。これまで我々は慢性逆流性食道炎モデルラットを用いて胃酸逆流が喉頭肉芽腫、咽喉頭異常感症や嚥下性肺炎の発生機序についてどのように関与するかについて研究を進めてきた。今回、新たに咽喉頭疾患と胃液十二指腸液逆流の関連性について検討した。胃酸逆流には60から70%の頻度で十二指腸液が混合しており、また胃酸のみではなく十二指腸液との逆流によりバレット食道や食道腺癌が発症すると報告されている。そこでわれわれは咽喉頭癌の発症にも胃液十二指腸液逆流が関与する可能性を考え、モデルラットを作製した。2003年にKumagaiらが報告した方法に従い、ラットの胃-食道接合部と上部空腸に5mm程度の切開を加え、6-0ナイロン糸にて側々吻合した。それにより胃-食道接合部における逆流防止機能を破壊する一方で、胃およびその機能を温存し、胃液および十二指腸液の両者を食道に逆流させることが出来る。これまで食道と空腸を直接吻合したモデルを用いて咽喉頭病変を観察した報告はあるが、今回はより生体に近い胃液十二指腸液逆流モデルにて咽喉頭および食道を観察した。その結果、術後10週より食道粘膜層の乳頭化と強いびらんを認めた。また術後30週では下部食道を中心に腺癌の発生を認め、頸部食道では扁平上皮癌の発生が確認できた。咽喉頭においては慢性炎症像のみを認めた。これらの結果は第67回日本気管食道科学会および第28回日本喉頭科学会にて発表した。現在はさらに、下咽頭に扁平上皮癌の発生を生じるために研究を進めている。計画通りに頸部食道癌をモデル動物に発生させることが出来た。しかし下咽頭癌の発生は認められず、さらなる研究が必要であると思われる。これまで我々は慢性逆流性食道炎モデルラットを用いて胃酸逆流が喉頭肉芽腫、咽喉頭異常感症および慢性咳嗽の発生機序にどのように関与するかについて研究を進めてきた。今年度は胃酸逆流が逆流性食道炎の食道外症状の一つである歯牙酸蝕について検討した。術後10週から歯冠の平坦化と歯周ポケットにおける炎症細胞浸潤を認め、術後20週にはエナメル質の露出を認めた。また舌根部の粘膜下にも炎症細胞浸潤を認め、胃酸逆流が歯牙酸蝕、歯周炎および舌炎の発症に関与する可能性が示唆された。それについて日本口腔咽頭科学会にて報告し、論文も作成し採用されている。また今回新たに、咽喉頭疾患と胃液十二指腸液逆流の関連性について検討した。胃酸逆流には6070%の頻度で十二指腸液が混合しており、十二指腸液の逆流によってバレット食道や食道腺癌が発症すると報告されている。それは十二指腸液に含まれる胆汁酸が亜硝酸塩と結合しニトロソ化合物となることで発癌物質の生成に関与すると言われているが、明らかになっていないのが現状である。我々は下咽頭癌の発症にも胃液十二指腸液逆流が関与する可能性を考え、モデルラットを作製した。その結果、術後30週にて下部食道に腺癌の発生を認め、頸部食道に扁平上皮癌の発生を認めた。しかし下咽頭粘膜には炎症所見しか認められなかった。胃酸にて障害された粘膜上皮の再生の過程において、十二指腸液に含まれる発癌物質が加わることにより食道癌が発症すると考え、下咽頭粘膜に慢性的な刺激を加えることにより、上皮を損傷すれば下咽頭癌が生じる可能性を模索している。頸部食道癌を発症させることができたが、現在、下咽頭癌の発症に向けて研究を進めている。胃酸逆流と咽喉頭症状をラットモデルを用いて解明を続けている。胃酸逆流により歯牙および中咽頭、口腔内に慢性炎症が生じることから、舌炎や歯周炎、咽喉頭異常感などの原因に大きく関与することを示した。学会発表および英文雑誌に掲載された。また胃酸および十二指腸液逆流が頸部食道扁平上皮癌の成因に大きく関与することをラットモデルにて観察できた。これは複数の国内学会にて発表した。現在、追加実験中であり、今後論文投稿を予定している。胃酸逆流が一因と考えられている咽喉頭症状に喉頭肉芽腫、咽喉頭異常感症、慢性咳嗽、歯周炎、肺線維症があるが、その病態を動物モデルにより再現し、その発症機序を解明した。また胃液・十二指腸混合液が食道癌およびBarrett食道の発症に強く関与することから、その動物モデルを作製し、咽頭癌の発症の原因になるかを検討した。その結果、頸部食道に扁平上皮癌の発生を確認した。
KAKENHI-PROJECT-15K10810
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K10810
胃酸逆流と気道疾患 ―動物モデルを用いた検討―
モデル動物の下咽頭に機械的・化学的刺激を加えることで、慢性炎症を惹起する。その炎症部位に胃液十二指腸液逆流が加わることで、下咽頭癌が生じる可能性を考えており、現在研究を進行させている。胃液十二指腸液逆流モデルラットの下咽頭に化学的・機械的刺激を加えることで、粘膜上皮の損傷が生じる。その上皮再生の過程において十二指腸液に含まれる発癌物質が作用することで下咽頭癌が発症するのではないかと研究を進めている。耳鼻咽喉科・頭頸部外科実験器具などの新規購入が必要なく、物品費は主にラット購入日のみであったため次年度繰越金が生じた。実験器具などの新規購入の必要がなく、ラット購入費のみが主な物品費だったため繰越金が生じた。国際学会での発表を予定してる。ラットの購入数を増加する見込みである。国際および国内学会での研究成果の発表を計画している。
KAKENHI-PROJECT-15K10810
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K10810
C型慢性肝炎における肝細胞障害機序に関する検討
方法INSITUハイブリダイゼーション組織上でC型肝炎ウイルス感染細胞を検出するためcore領域から360塩基対のcDNAzを製作し、PCRにてdigoxigeninを標識増幅しこれをプローブとしてin situハイブリダイゼーションを行った。結果NICK END LABELLINGにてDNAが断裂が認められたのはC型慢性肝炎症例20例の検討では、主に間葉系細胞であり、肝細胞にはごく一部であった。また、C型肝炎ウイルス感染は、間葉系細胞には認められず、肝細胞に限局していた。DNAの断裂とC型肝炎ウイルス感染が同時に認められた細胞は存在しなかった。考察DNAの断裂が認められてから、細胞が融解するまでの時間はIN VITROの検討では、6-7時間といわれる。これを考慮するとNICK END LABELLINGでは、アポトーシスを過小評価している可能性がある。しかし、これを考慮しても、多数例の検討で、全くC型肝炎ウイルス感染細胞にDNAの断裂が認められなかったことは、アポトーシスがC型慢性肝炎の細胞障害機序の主体を占めている可能性が低いことを示唆している。方法INSITUハイブリダイゼーション組織上でC型肝炎ウイルス感染細胞を検出するためcore領域から360塩基対のcDNAzを製作し、PCRにてdigoxigeninを標識増幅しこれをプローブとしてin situハイブリダイゼーションを行った。結果NICK END LABELLINGにてDNAが断裂が認められたのはC型慢性肝炎症例20例の検討では、主に間葉系細胞であり、肝細胞にはごく一部であった。また、C型肝炎ウイルス感染は、間葉系細胞には認められず、肝細胞に限局していた。DNAの断裂とC型肝炎ウイルス感染が同時に認められた細胞は存在しなかった。考察DNAの断裂が認められてから、細胞が融解するまでの時間はIN VITROの検討では、6-7時間といわれる。これを考慮するとNICK END LABELLINGでは、アポトーシスを過小評価している可能性がある。しかし、これを考慮しても、多数例の検討で、全くC型肝炎ウイルス感染細胞にDNAの断裂が認められなかったことは、アポトーシスがC型慢性肝炎の細胞障害機序の主体を占めている可能性が低いことを示唆している。
KAKENHI-PROJECT-06670526
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06670526
MgO(001)単結晶基板を用いたトンネル型スピンフィルター素子の実現
強磁性絶縁体La_2NiMnO_6のトンネル型スピンフィルター効果を検証した.SrTiO_3(001)基板上に作製したLa_2NiMnO_6と強磁性金属La_<0.7>Sr_<0.3>MnO_3によるトンネル磁気抵抗素子に対して磁気抵抗測定を行った結果,50Kで約9%,110Kで約4%のスピン偏極電流の検出に成功した.強磁性絶縁体La_2NiMnO_6のトンネル型スピンフィルター効果を検証した.SrTiO_3(001)基板上に作製したLa_2NiMnO_6と強磁性金属La_<0.7>Sr_<0.3>MnO_3によるトンネル磁気抵抗素子に対して磁気抵抗測定を行った結果,50Kで約9%,110Kで約4%のスピン偏極電流の検出に成功した.本年度は低温下でのトンネル型スピンフィルター素子の伝導特性評価を行うために,磁気抵抗測定装置の立ち上げを行った.参考試料としてSrTiO_3ステップ基板上にレーザーアブレーション法,超高真空蒸着器により,La_<0.7>Sr_<0.3>MnO_3/LaTiO_3/La_2NiMnO_6/Cr/Auという構造を持つ多層膜を成膜し,フォトリソグラフィー,ミリング等を用いて数〓m程度のサイズのトンネル型スピンフィルター素子を作製した.この試料において極低温での磁気抵抗測定を行った結果,50Kで10%程度のトンネル磁気抵抗効果が観測され,強磁性絶縁体La_2NiMnO_6のスピンフィルター効果が確認された.MgO(001)基板上へのスピンフィルター素子の作製を行うために,酸素雰囲気の濃度を変えて,トンネル磁気抵抗素子での下部電極となる強磁性金属La_<0.7>Sr_<0.3>MnO_3をレーザーアブレーション法で成膜し,その結晶評価,磁気的性質の評価を行った.その結果,(1)酸素圧200mTorr以上で成膜を行うことで,La_<0.7>Sr_<0.3>MnO_3のエピタキシャル成長することがわかった.(2)高い酸素圧下でレーザーアブレーションを行うことでLa_<0.7>Sr_<0.3>MnO_3薄膜の飽和磁化量やキュリー温度が大きくなり,300mTorrではSrTiO_3ステップ基板上のLa_<0.7>Sr_<0.3>MnO_3と同程度の飽和磁化量及びキュリー温度を有する試料が作製できた.一方で,本年度中にMgO(001)基板上でのスピンフィルター素子の作製までには至らなかった.現在は,MgO(001)基板上にLa_<0.7>Sr_<0.3>MnO_3/LaTiO_3/La_2NiMnO_6/Cr/Auの構造を持つ多層膜を作製し,スピンフィルター素子への加工を行う準備をしている.昨年度までの研究で得られた結晶状態,磁気特性及び平坦性が最適となる強磁性金属La_<0.7>Sr_<0.3>MnO_3及び強磁性絶縁体La_2NiMnO_6薄膜のレーザーアブレーション法による作製条件で,MgO(001)基板上にLa_<0.7>Sr_<0.3>MnO_3/LaTiO_3/La_2NiMnO_6/Cr/Au多層膜を成膜した.多層膜はフォトリソグラフィーやアルゴンイオンミリング装置等を用いて磁気トンネル接合素子を作製した.昨年度に立ち上げを行った低温下での伝導特性評価装置等を用いて極低温での磁気抵抗測定を行った結果,良好な電流電圧特性が得られたが,明確なトンネル磁気抵抗効果は観測されなかった.また,レーザー強度の調整をこれまでよりも精度良く行うためにレーザー用のアッテネーターを導入し,SrTiO_3ステップ基板にLa_<0.7>Sr_<0.3>MnO_3/LaTiO_3/La_2NiMnO_6/Cr/Auを成膜した.同様の手法で磁気トンネル素子を作製し,伝導特性評価を行った結果.(1)50Kの磁気抵抗測定では,約20%のトンネル磁気抵抗効果が得られた.(2)110K以上で約10%のトンネル磁気抵抗効果が観測された.(3)トンネル障壁層の平坦性が改善し,絶縁性がよく,抵抗値が小さい磁気トンネル接合素子の作製に成功した.上述のように,MgO基板を用いたスピンフィルター素子では,研究期間内に明確なトンネル磁気抵抗効果が観測には至っていないが,一方でSrTiO_3ステップ基板を用いたスピンフィルター素子ではこれまでよりもトンネル磁気抵抗効果が高く,より高い温度で動作するトンネル型スピンフィルター素子の作製法が確立できた.
KAKENHI-PROJECT-20840023
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20840023
新奇量子構造SiGeナノハットおよびナノリングの自己組織的形成
Si基板上に自己形成されたGeアイランドは、これを保護するSi層でキャッピングされることで、そのサイズ、形状、化学組成が劇的に変わる。本研究は、申請者たちが最近見出した、半球状のGeアイランドの周辺にリング状の「つば」が付随した「ナノハット」の発現メカニズムを解明し、そのサイズと密度を制御するプロセスを構築するとともに、これらナノ構造の量子物性の探索と応用展開の指針を得ることを目的に研究を行った。本年度は高輝度放射光を用いたX線光電子顕微鏡(X-PEEM)・低速電子顕微鏡(LEEM)を用いたシリコン極薄層でキャップしたSiGe(Si-capped SiGe)ナノアイランド表面のナノスケール観察を行った。このSi-capped SiGeは、形成過程の違いにより、ナノハット、ナノドット、及びナノピラミッドと呼ばれる種々のナノ構造を取ることが明かとなった。これらの構造の違いは、Si-capped SiGe中のSi/Ge組成比の違いに起因するものである。さらに、各々のSiGeナノ構造内部でのSi/Ge組成比が数nmスケールで急峻に変化することも明らかにした。SiGeナノ構造に関する研究は、これまで数多くなされてきたが、本研究のようにSiGeナノ構造内部での局所的なSi/Ge組成比(の空間分布)とナノ構造が密接な関連を持つことを明らかにした研究はこれまでにないため、本研究の新規性は高いものであると言える。シリコン(Si)基板上に自己形成されたゲルマニウム(Ge)アイランドは、これを保護するSi層でキャッピングされることで、そのサイズ、形状、化学組成が劇的に変わり得る。本研究は、申請者らが最近見出したSiキャップ層形成時に生成する半球状のGeアイランドの周辺にリング状の「つば」が付随した「ナノハット」の発現メカニズムを解明し、そのサイズと密度を制御するプロセスを構築するとともに、これらナノ構造の量子物性の探索と応用展開の指針を得ることを目的として研究を行った。本年度は、まず、オージェ電子分光によるナノハット構造内部の組成分析を試みた。その結果、同構造の詳細な組成情報を得るにはオージェ電子分光法では不十分であり、今後、光電子分光顕微測定(PEEM)が必要であることを認識した。このため、本年度の後半はPEEM測定の準備を行なった。次に、ナノハット形成における水素の役割解明を明らかにすべく、その第一段階としてSiキャップ層形成Geアイランド形状の水素アニールによる影響を調べた。その結果、同じアニール温度であっても、水素圧力によってGeアイランドの形状変化に大きな違いが見られることを発見した。これは、GeとSiの水素拡散を水素が抑制すると考えることで理解される。また、水素の影響をより直接検証するため、水素の存在しない環境下でSiキャップ層製膜を行なうべくSi蒸発源を当該補助金で購入して固体ソースMBE装置を構築し、本年度はその基本性能の確認を行なった。Si基板上に自己形成されたGeアイランドは、これを保護するSi層でキャッピングされることで、そのサイズ、形状、化学組成が劇的に変わる。本研究は、申請者たちが最近見出した、半球状のGeアイランドの周辺にリング状の「つば」が付随した「ナノハット」の発現メカニズムを解明し、そのサイズと密度を制御するプロセスを構築するとともに、これらナノ構造の量子物性の探索と応用展開の指針を得ることを目的に研究を行った。本年度は高輝度放射光を用いたX線光電子顕微鏡(X-PEEM)・低速電子顕微鏡(LEEM)を用いたシリコン極薄層でキャップしたSiGe(Si-capped SiGe)ナノアイランド表面のナノスケール観察を行った。このSi-capped SiGeは、形成過程の違いにより、ナノハット、ナノドット、及びナノピラミッドと呼ばれる種々のナノ構造を取ることが明かとなった。これらの構造の違いは、Si-capped SiGe中のSi/Ge組成比の違いに起因するものである。さらに、各々のSiGeナノ構造内部でのSi/Ge組成比が数nmスケールで急峻に変化することも明らかにした。SiGeナノ構造に関する研究は、これまで数多くなされてきたが、本研究のようにSiGeナノ構造内部での局所的なSi/Ge組成比(の空間分布)とナノ構造が密接な関連を持つことを明らかにした研究はこれまでにないため、本研究の新規性は高いものであると言える。
KAKENHI-PROJECT-20656007
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20656007
変形性関節症の病態制御機構における組織線溶系の役割の解明
変形性関節症(Osteoarthritis: OA)は、関節変形、運動痛及び可動域制限等により起立歩行障害を引き起こし、公衆衛生上大きな問題となっている。しかしながら、現在、人工関節置換術を除いて、OAの有効な治療方法がないため、その病態解明と治療戦略を確立することが急務である。OA患者の関節内では、軟骨基質が著しく損傷、破壊される。また、線溶系因子のプラスミンが細胞外基質の分解に重要な役割を果たしている。そこで、遺伝子改変マウスを用いてOAの進行過程や細胞外基質の分解(軟骨基質の破壊)における線溶系因子の役割を解明し、新たな治療標的として確立する。まず、関節軟骨組織の損傷・破壊過程における線溶系関連因子(プラスミン)の影響を解明するために、OAモデルを作製した。作製した切片を使い、OAの重症度を観察した結果、プラスミン遺伝子欠損マウスでは野生型マウスに比べて、OAの進行を遅延させる傾向があった。次にプラスミン遺伝子欠損マウスと野生型マウスから得た初代軟骨細胞株を用い、in vitro実験を行った。単離したそれぞれの軟骨細胞にOA誘導としてIL-1β刺激処理を行った結果、野生型マウスでは、IL-1βによって炎症性マーカー遺伝子(iNOS,、Cox2、IL-6、MMP-13など)の発現が誘導された。一方、プラスミン遺伝子欠損マウスでは、IL-1β誘導による炎症性マーカー遺伝子の発現量が抑制さた。これらのことから、組織線溶系因子の一つであるプラスミンが関節軟骨組織の損傷やOAの促進に関与することが示唆された。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。変形性関節症(Osteoarthritis: OA)は、関節変形、運動痛及び可動域制限等により起立歩行障害を引き起こし、公衆衛生上大きな問題となっている。しかしながら、現在、人工関節置換術を除いて、OAの有効な治療方法がないため、その病態解明と治療戦略を確立することが急務である。OA患者の関節内では、軟骨基質が著しく損傷、破壊される。また、線溶系因子のプラスミンが細胞外基質の分解に重要な役割を果たしている。そこで、遺伝子改変マウスを用いてOAの進行過程や細胞外基質の分解(軟骨基質の破壊)における線溶系因子の役割を解明し、新たな治療標的として確立する。まず、関節軟骨組織の損傷・破壊過程における線溶系関連因子(プラスミン)の影響を解明するために、OAモデルを作製した。作製した切片を使い、OAの重症度を観察した結果、プラスミン遺伝子欠損マウスでは野生型マウスに比べて、OAの進行を遅延させる傾向があった。次にプラスミン遺伝子欠損マウスと野生型マウスから得た初代軟骨細胞株を用い、in vitro実験を行った。単離したそれぞれの軟骨細胞にOA誘導としてIL-1β刺激処理を行った結果、野生型マウスでは、IL-1βによって炎症性マーカー遺伝子(iNOS,、Cox2、IL-6、MMP-13など)の発現が誘導された。一方、プラスミン遺伝子欠損マウスでは、IL-1β誘導による炎症性マーカー遺伝子の発現量が抑制さた。これらのことから、組織線溶系因子の一つであるプラスミンが関節軟骨組織の損傷やOAの促進に関与することが示唆された。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15H06755
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H06755
減数分裂の制御機構
分裂酵母において第一減数分裂の制御にフォークヘッド型転写因子であるMei4は中心的な役割を果たしている。しかし、この制御は長い間未解明であった。申請者は、第一減数分裂の進行には、Cdk1の15番目のチロシン残基のリン酸化制御が主要な制御機構であり、Mei4がCdk1の活性化因子であるcdc25遺伝子の発現を活性化することが必須であることを明らかにし、さらにwee1遺伝子もMei4の第一減数分裂の進行に必要なターゲットであることを解明した。分裂酵母において第一減数分裂の制御にフォークヘッド型転写因子であるMei4は中心的な役割を果たしている。しかし、この制御は長い間未解明であった。申請者は、第一減数分裂の進行には、Cdk1の15番目のチロシン残基のリン酸化制御が主要な制御機構であり、Mei4がCdk1の活性化因子であるcdc25遺伝子の発現を活性化することが必須であることを明らかにし、さらにwee1遺伝子もMei4の第一減数分裂の進行に必要なターゲットであることを解明した。分裂酵母において第一減数分裂の制御に転写因子であるMei4は中心的な役割を果たしている。しかし、この制御は長い間未解明であった。申請者は、第一減数分裂の進行には、Cdk1の15番目のチロシン残基のリン酸化制御が主要な制御機構であり、Mei4がCdk1の活性化因子であるcdc25遺伝子の発現を活性化することが必須であることを明らかにし、さらにwee1遺伝子もMei4の第一減数分裂の進行に必要なターゲットであることを解明した。また、減数分裂での細胞周期制御で重要な問題の一つはDNA複製と遺伝子組み換え開始のための二重鎖切断がどのように制御されているかほとんど未解明なことである。申請者は減数分裂のDNA合成と二重鎖切断の両方に必要な因子として、リボヌクレオチドリダクターゼ(RNR)を同定した。しかし、RNRを阻害した状態でも、DNA複製チェックポイントタンパク質であるRad3やCds1が機能を失うと、二重鎖切断がかなりの頻度で起こることが明らかになった。また、この時の二重鎖切断は正常な場合と同じ位置に生じ、組み換え開始に必要な因子を必要とした。すなわち、RNRが阻害され、DNA複製が阻害されると、チェックポイント因子が活性化し、二重鎖切断の開始を抑制するという新しいチェックポイント経路が減数分裂に存在することが明らかになった。さらに、この経路を分子レベルで解明するため、Cds1と物理的に結合する因子のスクリーニングの準備中である。また、Cds1の基質の候補となるタンパク質が実際にリン酸化されるか解析中である。分裂酵母において第一減数分裂の制御に転写因子であるMei4は中心的な役割を果たしている。しかし、この制御は長い間未解明であった。申請者は、第一減数分裂の進行には、Cdk1の15番目のチロシン残基のリン酸化制御が主要な制御機構であり、Mei4がCdk1の活性化因子であるcdc25遺伝子の発現を活性化することが必須であることを明らかにし、さらにweel遺伝子もMei4の第一減数分裂の進行に必要なターゲットであることを解明した。さらに、weel遺伝子の発現が隣の遺伝子と共通の配列により調節され、隣の遺伝子の発現とweel遺伝子の発現が相反していることが明らかになった。また、減数分裂での細胞周期制御で重要な問題の一つはDNA複製と遺伝子組み換え開始のための二重鎖切断がどのように制御されているかほとんど未解明なことである。申請者は減数分裂のDNA合成と二重鎖切断の両方に必要な因子として、リボヌクレオチドリダクターゼ(RNR)を同定した。しかし、RNRを阻害した状態でも、DNA複製チェックポイントタンパク質であるRad3やCds1が機能を失うと、二重鎖切断がかなりの頻度で起こることが明らかになった。また、この時の二重鎖切断は正常な場合と同じ位置に生じ、組み換え開始に必要な因子を必要とした。すなわち、RNRが阻害され、DNA複製が阻害されると、チェックポイント因子が活性化し、二重鎖切断の開始を抑制するという新しいチェックポイント経路が減数分裂に存在することが明らかになった。さらに、Cds1の基質の候補となる二重鎖切断に必要なタンパク質にタグをつけ、Cds1によるリン酸化の検出を試みている。分裂酵母において第一減数分裂の制御にフォークヘッド型転写因子であるMei4は中心的な役割を果たしている。しかし、この制御は長い間未解明であった。申請者は、第一減数分裂の進行には、Cdk1の15番目のチロシン残基のリン酸化制御が主要な制御機構であり、Mei4がCdk1の活性化因子であるcdc25遺伝子の発現を活性化することが必須であることを明らかにし、さらにwee1遺伝子もMei4の第一減数分裂の進行に必要なターゲットであることを解明した。さらに、wee1遺伝子の発現が隣の遺伝子と共通の配列により調節され、隣の遺伝子の発現とwee1遺伝子の発現が相反していることが明らかになった。すなわち、wee1遺伝子は、第一減数分裂に進行するときに、発現量が減少し、隣の遺伝子の発現は上昇する。また、Mei4が存在しない時は、wee1遺伝子の減少は見られず、隣の遺伝子も発現上昇はない。しかし、Mei4が過剰発現した場合は、wee1遺伝子は早く減少し、隣の遺伝子は早く上昇する。この発現の詳細な機構については現在、解析中である。
KAKENHI-PROJECT-21370004
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21370004
減数分裂の制御機構
さらに、Cds1と相互作用する因子を出芽酵母を用いたtwo-hybrid法を用いたスクリーニングにより転写因子と思われる遺伝子をクローニングした。この遺伝子の破壊株は必須遺伝子であることが報告されていたため、条件変異株を作成することが必要になった。条件変異株を作成するため、当該遺伝子をクローニングして、ランダムに変異をいれたものを分裂酵母に相同組換えにより戻し、温度感受性になるものをスクリーニングした。その結果、複数の株が温度感受性を示したので、現在、塩基配列を決定して、確認中である。分裂酵母において第一減数分裂の制御にフォークヘッド型転写因子であるMei4は中心的な役割を果たしている。しかし、この制御は長い間未解明であった。申請者は、第一減数分裂の進行には、Cdk1の15番目のチロシン残基のリン酸化制御が主要な制御機構であり、Mei4がCdk1の活性化因子であるcdc25遺伝子の発現を活性化することが必須であることを明らかにし、さらにwee1遺伝子もMei4の第一減数分裂の進行に必要なターゲットである可能性を見いだしている。Mei4によるwee1遺伝子の発現の機構を詳しく調べてみると、Mei4が認識するFLEX配列が5'上流に5つ存在していることがわかった。この配列にMei4がin vivoでもin vitroでも結合するかどうか検討中である。また、隣の遺伝子と共通の配列により調節され、隣の遺伝子の発現とwee1遺伝子の発現が相反していること可能性がある。すなわち、wee1遺伝子のmRNA量は、第一減数分裂に進行するときに減少し、隣の遺伝子のmRNA量は上昇する。また、Mei4が存在しない時は、wee1遺伝子のmRNA量の減少は見られず、隣の遺伝子のmRNA量も発現上昇はない。さらに、Cds1と相互作用する因子を出芽酵母を用いたtwo-hybrid法を用いたスクリーニングにより転写因子と思われる遺伝子をクローニングした。この遺伝子の破壊株は必須遺伝子であることが報告されていたため、条件変異株を作成することが必要になった。条件変異株を作成するため、当該遺伝子をクローニングして、ランダムに変異をいれたものを分裂酵母に相同組換えにより戻し、温度感受性になるものをスクリーニングした。その結果、複数の株が温度感受性および低温感受性を示したが、目的の遺伝子ではなく、すべて違う場所に変異が生じたものであることが判明したため、やり直している。分裂酵母において第一減数分裂の制御にフォークヘッド型転写因子であるMei4は中心的な役割を果たしている。しかし、この制御は長い間未解明であった。申請者は、第一減数分裂の進行には、Cdk1の15番目のチロシン残基のリン酸化制御が主要な制御機構であり、Mei4がCdk1の活性化因子であるcdc25遺伝子の発現を活性化することが必須であることを明らかにし、さらにwee1遺伝子もMei4の第一減数分裂の進行に必要なターゲットである可能性を見いだしている。Mei4によるwee1遺伝子の発現の機構を詳しく調べてみると、Mei4が認識するFLEX配列が5'上流に5つ存在していることがわかった。この配列にMei4がin vivoでもin vitroでも結合するかどうか検討し、両方で結合していることを示した。また、隣の遺伝子と共通の配列により調節され、隣の遺伝子の発現とwee1遺伝子の発現が相反していること可能性がある。
KAKENHI-PROJECT-21370004
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21370004
ニューラルネットワークを用いた回転機の音響診断に関する研究
回転機(コンプレッサ)のバルブ異常を音響法により診断することを目的として、これまでに特徴抽出ネットワークと異常識別ネットワークからなるハイブリッド・ニューラルネットワークを提案し、良好な結果を得ている。しかしながら、これまでの検討は主に一台の回転機の一つのバルブしか診断対象としてなかった。そこで、本研究では実用化への見通しを得るために、実際の工場での使用を念頭において複数台の回転機の複数個のバルブ部を一つのマイクロフォンで診断する場合に、提案するネットワークの評価と問題点の抽出及びその改善策の検討を目的としている。これらのために、実際の工場での使用を模倣した種々の診断パラメータ(バルブ部を構成している弁板やスプリングに加える人工欠陥の種類、マイクロフォンの位置や方向、ノイズの付加、吐出圧の変動、診断対象のバルブなど)のもとで回転機の稼働音を収集した。そして、前処理としてFFT分析を施した周波数スペクトラムを用いて、次のようなシミュレーション実験を行った。既に提案しているハイブリッド・ネットワークの評価を行うと共に、その問題点の抽出を検討した。問題点として(a)膨大な学習時間。(b)ローカルミニマムでの停留などについての改善策を検討した。その改善策として中間層の活性化関数にガウス関数を持つネットワークを適用した。シミュレーション実験より上記の問題点に対して良好な結果を得た。また、これらの内容を論文投稿した。回転機(コンプレッサ)のバルブ異常を音響法により診断することを目的として、これまでに特徴抽出ネットワークと異常識別ネットワークからなるハイブリッド・ニューラルネットワークを提案し、良好な結果を得ている。しかしながら、これまでの検討は主に一台の回転機の一つのバルブしか診断対象としてなかった。そこで、本研究では実用化への見通しを得るために、実際の工場での使用を念頭において複数台の回転機の複数個のバルブ部を一つのマイクロフォンで診断する場合に、提案するネットワークの評価と問題点の抽出及びその改善策の検討を目的としている。これらのために、実際の工場での使用を模倣した種々の診断パラメータ(バルブ部を構成している弁板やスプリングに加える人工欠陥の種類、マイクロフォンの位置や方向、ノイズの付加、吐出圧の変動、診断対象のバルブなど)のもとで回転機の稼働音を収集した。そして、前処理としてFFT分析を施した周波数スペクトラムを用いて、次のようなシミュレーション実験を行った。既に提案しているハイブリッド・ネットワークの評価を行うと共に、その問題点の抽出を検討した。問題点として(a)膨大な学習時間。(b)ローカルミニマムでの停留などについての改善策を検討した。その改善策として中間層の活性化関数にガウス関数を持つネットワークを適用した。シミュレーション実験より上記の問題点に対して良好な結果を得た。また、これらの内容を論文投稿した。
KAKENHI-PROJECT-06750466
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06750466
昆虫の能動的触覚情報と自己移動情報による空間行動
本研究は、昆虫の空間認知と空間行動の神経機構の解明をめざして実施され、以下の成果を得た。(1)小規模な閉鎖環境におけるコオロギの空間選択行動について、既知の結果に基づき、より詳細で定量的な解析結果が得られた。(2)自由歩行する動物から脳ニューロン活動を記録しつつ、体の位置および方向を高頻度で同時記録できる実験装置(行動-神経活動計測システム)の開発に成功した。(3)同システムを用いて、行動と脳ニューロンの活動様式の関係について明らかにした。本研究は、昆虫の空間認知と空間行動の神経機構の解明をめざして実施され、以下の成果を得た。(1)小規模な閉鎖環境におけるコオロギの空間選択行動について、既知の結果に基づき、より詳細で定量的な解析結果が得られた。(2)自由歩行する動物から脳ニューロン活動を記録しつつ、体の位置および方向を高頻度で同時記録できる実験装置(行動-神経活動計測システム)の開発に成功した。(3)同システムを用いて、行動と脳ニューロンの活動様式の関係について明らかにした。【目的と概況】本課題の目的は、夜行性昆虫がどのような神経機能により周囲の空間構造を知り、いかに適切な場所へ自身をナビゲートするのかという神経科学上の問題について、コオロギの小スケール空間行動をモデルとして解明することにある。研究の立上げに当たる本年度は、まず行動実験システムを開発、確立し、次にこれを用いて昆虫の空間認知能における既知の行動学的知見を再検証することを主な目標とした。しかし代表者が平成19年10月に現所属へ異動したため、研究環境が大きく変化し、得られた成果は後述のように実験系の開発に限られた。平成20年度からは新たな研究協力者として修士大学院生1名と学部学生1名が得られ、かつ研究環境も整備されつつあるので、遅れを取り戻せるものと考えている。【行動実験システムの開発状況】人工的閉鎖空間における非拘束動物の行動を自動計測するシステムの開発に着手した。まず各種条件を満たすXYレールガイドとサーボモータ2セットを準備し、機械駆動系を作製した。レールガイドのステージにはCCDカメラを搭載し画像センサに接続した。1台のCCDカメラはアリーナ中における動物の現在位置座標を取得し、もう1台のCCDカメラは動物の体軸方向、アンテナ水平位置等を記録するが、現在は位置検出用のカメラ1台のみで運転中である。本システムでは、動物の現在位置座標をプログラマブルコントローラ(PLC)へ送り、常に画像上の定点に戻すような負帰還制御信号をサーボモータへ送る。この負帰還信号の積算が動物の行動軌跡を与える。これら一連の処理を実行するPLCプログラムは、その暫定版が既に完成した。現在、より洗練されたサーボ制御をするためのプログラム修正や、ニューロン活動と行動を同時記録するためのサブシステムの構築をおこなっている。本課題の目的は、夜行性昆虫の空間行動の神経機構について、コオロギをモデルとして解明することにある。最終年度に当たる本年度は、開発途中の実験システムの完全実用化と、同システムを用いた昆虫の空間行動のニューロン機構の解析を目的として実施された。【実験システムの確立】昨年度のシステムは、動物の現在位置座標を取得するのみであったが、本年度は新たに動物の体軸方向を計測する機能が追加された。さらに自由歩行条件下で問題となる電極ワイヤのねじれを補償するユニット(アクティブ・スリップリング)が追加搭載された。以上によりサンプリング頻度30Hzで動物の位置座標と体軸方向をモニタしつつ、生体信号lChを最大10時間記録できる行動-神経活動計測システムが完成した。当初計画したアンテナ運動の計測機能については、その演算処理負荷が大きいため断念したが、その他についてはほぼ予定通りの性能が達成できた。【行動実験】脳への電極埋込み手術の影響を調べる対照実験として、当初は行動のみについて解析予定であったが、システム開発に予想外の時間が費やされたため断念した。【空間行動と脳ニューロン活動の関係】完成した行動-神経活動計測システムを用いて、前大脳領域(中心複合体およびキノコ体周辺)からニューロン活動を記録し、閉鎖空間における行動との関連を解析した。いわゆる場所細胞のような空間認知に関わるニューロンの発見には至らなかったが、(1)歩行開始時に興奮するニューロン、(2)歩行中に興奮するニューロン、(3)歩行終了時に興奮するニューロン、(4)歩行開始時に抑制されるニューロンなどの存在を明らかにした。またこれらのニューロンの多くが様々な体部位表面への機械刺激に対して興奮応答を示した。以上の結果は、中心複合体およびキノコ体が感覚入力を受けつつ、体移動の発現と調節に関わるという従来の仮説を支持するものである。
KAKENHI-PROJECT-19570070
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19570070
ぶどう膜炎続発緑内障における前房内環境の免疫学的解析とその臨床的応用
研究代表者の専門とする緑内障疾患は、日本において失明原因の第2位であり、現代においてもその治療法の進展が急務とされる分野である。当研究において、免疫学的観点という全く新しい視、点から開放隅角緑内障患者の前房内環境を解析し,新しい治療法に結びつく可能性を検討した.眼球の前房内は以前より「隔絶された免疫寛容の場」として知られており、角膜移植の場合、他の部位に比べて生着率が高く、眼内に特・殊な免疫制御機構があると考えられていた.またマウス眼内の虹彩上皮細胞は,T細胞に対して調節作用を持ち、眼内を免疫寛容の状態に保っていることが知られてきた.そこで申請者は,手術で得られた緑内障、患、者の虹彩上皮細胞をしばらく培養した後に,免疫制御に関係する細胞表面マーカーを検索したし当研究は当大学倫理委員会の承諾を得ており,被検者からインフォームドコンセントを得た場合のみ行った,検索結果より虹彩上皮細胞には,補助刺激因子のひとつであるB7-2分子に比べ,B7-1分子が抑制されており,さらにアポトーシス関連分子であるPDL-1が強く発現していた.このように虹彩上皮細胞に特徴的な分子が発現していたことを踏まえ,中請者は次に虹彩上皮細胞に免疫制御作用があるか検討を行った.具体的には虹彩上皮細胞とT細胞を抗CD3抗体とともに共培養し,T細胞の増殖反応を3H uptakeで測定した結果,虹彩上皮細胞を加えた群では有意にT細胞増殖反応が抑制された.これより,虹彩上皮におけるB7分子経由でのT細胞の免疫制御とPDL-1分子経由でのT細胞のアポトーシス誘導の可能性が示され,前房内に炎症が惹起されてもこれらのメカニズムが動いて消l腿することが示唆された.研究代表者の専門とする緑内障疾患は、日本において失明原因の第2位であり、現代においてもその治療法の進展が急務とされる分野である。当研究において、免疫学的観点という全く新しい視、点から開放隅角緑内障患者の前房内環境を解析し,新しい治療法に結びつく可能性を検討した.眼球の前房内は以前より「隔絶された免疫寛容の場」として知られており、角膜移植の場合、他の部位に比べて生着率が高く、眼内に特・殊な免疫制御機構があると考えられていた.またマウス眼内の虹彩上皮細胞は,T細胞に対して調節作用を持ち、眼内を免疫寛容の状態に保っていることが知られてきた.そこで申請者は,手術で得られた緑内障、患、者の虹彩上皮細胞をしばらく培養した後に,免疫制御に関係する細胞表面マーカーを検索したし当研究は当大学倫理委員会の承諾を得ており,被検者からインフォームドコンセントを得た場合のみ行った,検索結果より虹彩上皮細胞には,補助刺激因子のひとつであるB7-2分子に比べ,B7-1分子が抑制されており,さらにアポトーシス関連分子であるPDL-1が強く発現していた.このように虹彩上皮細胞に特徴的な分子が発現していたことを踏まえ,中請者は次に虹彩上皮細胞に免疫制御作用があるか検討を行った.具体的には虹彩上皮細胞とT細胞を抗CD3抗体とともに共培養し,T細胞の増殖反応を3H uptakeで測定した結果,虹彩上皮細胞を加えた群では有意にT細胞増殖反応が抑制された.これより,虹彩上皮におけるB7分子経由でのT細胞の免疫制御とPDL-1分子経由でのT細胞のアポトーシス誘導の可能性が示され,前房内に炎症が惹起されてもこれらのメカニズムが動いて消l腿することが示唆された.
KAKENHI-PROJECT-16791071
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16791071
弦場の理論とD-braneのダイナミックス
平成10,11,12年度の三年間にわたる本研究の研究成果は次の通りである。1.Unoriented open-closed string混合系の場の理論の構成:「向き付けできない開弦/閉弦の系に対する場の理論」のフルオーダーの作用を与え、treelevelでのBRS不変性の完全な証明を与えた。また、1-loopでのアノマリーと相殺すると予想されるグラフについても、そのアノマラスな1-loopグラフを同定した。さらに、このtree levelでのBRS不変性の証明にあたって、PeskinらのoriginalなGGRT定理を1-loopレベルまで拡張した定理を証明した。3.ブレーン世界シナリオの研究:我々の4次元世界の乗っている3-braneのfluctuation modeの重要性を指摘し、先ず、braneの張力が小さいとbulkのゲージ場のKaluza-Klein高励起モードの結合が指数関数的に抑圧されることを明らかにした。さらに、我々の物質場との相互作用を分析し、第5の力や超新星爆発後の中性子星の冷却過程への寄与を評価し、braneの張力の下限を求めた。また、ブレーン世界シナリオを真面目に研究する準備として、6次元時空で既に知られている超共形テンソル計算則から出発して次元削減の方法により5次元の超重力理論のテンソル計算則を導いた。次にそれに基づき5次元時空での一般の物質-ヤンミルズ-超重力系の不変作用を計算し具体的な表式を求めた。平成10,11,12年度の三年間にわたる本研究の研究成果は次の通りである。1.Unoriented open-closed string混合系の場の理論の構成:「向き付けできない開弦/閉弦の系に対する場の理論」のフルオーダーの作用を与え、treelevelでのBRS不変性の完全な証明を与えた。また、1-loopでのアノマリーと相殺すると予想されるグラフについても、そのアノマラスな1-loopグラフを同定した。さらに、このtree levelでのBRS不変性の証明にあたって、PeskinらのoriginalなGGRT定理を1-loopレベルまで拡張した定理を証明した。3.ブレーン世界シナリオの研究:我々の4次元世界の乗っている3-braneのfluctuation modeの重要性を指摘し、先ず、braneの張力が小さいとbulkのゲージ場のKaluza-Klein高励起モードの結合が指数関数的に抑圧されることを明らかにした。さらに、我々の物質場との相互作用を分析し、第5の力や超新星爆発後の中性子星の冷却過程への寄与を評価し、braneの張力の下限を求めた。また、ブレーン世界シナリオを真面目に研究する準備として、6次元時空で既に知られている超共形テンソル計算則から出発して次元削減の方法により5次元の超重力理論のテンソル計算則を導いた。次にそれに基づき5次元時空での一般の物質-ヤンミルズ-超重力系の不変作用を計算し具体的な表式を求めた。今年度の研究実績は次の通りである。1. Unoriented Open-closed string混合系の場の理論の構成:「向き付けできない開弦/閉弦の系に対する場の理論」は、1昨年に場の2次のオーダーまで構成し,そのゲージ不変性をそのオーダーまで示していたが、今回、その系の場の(フルオーダーの)作用を与え、treelevelでのBRS不変性の完全な証明を与えた。また、1-loopでのアノマリーと相殺すると予想されるグラフについても、そのアノマラスな1-loopグラフを同定した。さらに、このtree levelでのBRS不変性の証明にあたって、PeskinらのoriginalなGGRT,定理を1-loopレベルまで拡張する必要があり、この拡張定理を証明しProgress誌に発表した。今年度の研究実績は次の通りである。2.我々の4次元世界が高次元中の3次元膜(3-Brane)の場合の膜の揺らぎモードの研究:超弦理論の最近の最も重要な認識は、D-braneやOrientifold planeと言った高次元膜の存在である。これは、我々の4次元世界が実は、より高次元時空中での3-braneであるという新しい可能性を示唆する。我々の4次元世界の乗っている3-braneのfluctuation modeの重要性を指摘し、先ず、braneの張力が小さいとbulkのゲージ場のKaluza-Klein高励起モードの結合が指数関数的に抑圧されることを明らかにした。さらに、我々の物質場との相互作用を分析し、第5の力や超新星爆発後の中性子星の冷却過程への寄与を評価し、braneの張力の下限を求めた。今年度は、5次元時空での超重力理論に関する以下の研究をおこなった。我々の4次元世界が実は高次元時空中に埋め込まれた3次元膜(3-Brane)である、とする考え方が、いわゆるブレーン世界シナリオの考え方である。ブレーン世界シナリオでは、超対称性が自発的に破れる隠れたセクターというのは我々のブレーンとは別のブレーンであるという実体的な解釈が与えられる。このようなシナリオで超対称性の破れの我々のブレーンへの伝播を真面目に調べるためには、いちばん簡単な状況でも、5次元の時空での超重力理論を構成しておく必要がある。今年度は、先ず、6次元時空では超共形テンソル計算則が既に知られているので、それから出発していわゆる次元削減の方法により5次元の超重力理論のテンソル計算則を求める仕事をした。具体的には、超重力のワイル多重項、物質場のベクトル多重項およびハイパー多重項などの超対称変換則や、それらを用いた不変作用公式、などの公式群を与えた。
KAKENHI-PROJECT-10640261
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10640261
弦場の理論とD-braneのダイナミックス
次にその結果に基づいて5次元時空でのベクトル多重項およびハイパー多重項からなる一般の物質-ヤンミルズ系の超重力系に結合した系に対する不変作用を計算し、あらわな表式を求めた。
KAKENHI-PROJECT-10640261
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10640261
可溶性TCR分子を用いたT細胞活性の制御とT細胞認識抗原の検出
TSA細胞の活性を抗原特異的に人為的に抑制制御することが出来れば、自己免疫病、移植免疫、過剰免疫反応によって生ずる種々の免疫病あるいはアレルギーの治療に有効な治療法を提供することになる。我々は上記の目的を達成するために、H-2d MHC classI拘束性に卵白アルブミン(OVA)ペプチドを認識するTCRを発現しているT細胞ハイブリドーマDO11.10細胞より、TCRα,βをそれぞれコードする遺伝子を単離し、そのVα,Vβをリンカーで連結して、これをイッムノグロブリン遺伝子プロモーター、エンハンサーにつないでマウス骨髄腫細胞株で発現させ、scFv(単鎖可変領域フラグメント)型の可溶性のTCR分子を作成した。得られた分子は分子量25kDaでin vitroで安定であり、試験管内で大量に産生させることが出来た。このscFv型の可溶性TCR分子はH-2d MHC classIに結合した抗原ペプチドと特異的に結合した。このscFv型の可溶性TCR分子は元ののTCRと全く同じイディオタイプを保持していた。このscFv型の可溶性TCR分子は抗原ペプチド特異的に免疫反応を抑制し、抗原提示細胞上のペプチド抗原をMHC拘束性に認識し結合することがわかった。同様に、多発性硬化症の実験モデルであるExperimental allergic encephalomyelitis(EAE)を発症したSJL/Jマウスからミエリン塩基性蛋白(MBP)特異的T細胞株を樹立し、Vα及びVβcDNAを単離し、可溶性のscFv型TCRを作製した。今後は可溶性TCR分子を用いて自己反応性T細胞が認識し反応する自己抗原の組織内局在を蛍光抗体法、酵素抗体法を用いて同定し免疫組織学的に検出することを試みるとともに、T細胞の抗原特異的な活性化の抑制をin vitro,in vivoにおいて行う。TSA細胞の活性を抗原特異的に人為的に抑制制御することが出来れば、自己免疫病、移植免疫、過剰免疫反応によって生ずる種々の免疫病あるいはアレルギーの治療に有効な治療法を提供することになる。我々は上記の目的を達成するために、H-2d MHC classI拘束性に卵白アルブミン(OVA)ペプチドを認識するTCRを発現しているT細胞ハイブリドーマDO11.10細胞より、TCRα,βをそれぞれコードする遺伝子を単離し、そのVα,Vβをリンカーで連結して、これをイッムノグロブリン遺伝子プロモーター、エンハンサーにつないでマウス骨髄腫細胞株で発現させ、scFv(単鎖可変領域フラグメント)型の可溶性のTCR分子を作成した。得られた分子は分子量25kDaでin vitroで安定であり、試験管内で大量に産生させることが出来た。このscFv型の可溶性TCR分子はH-2d MHC classIに結合した抗原ペプチドと特異的に結合した。このscFv型の可溶性TCR分子は元ののTCRと全く同じイディオタイプを保持していた。このscFv型の可溶性TCR分子は抗原ペプチド特異的に免疫反応を抑制し、抗原提示細胞上のペプチド抗原をMHC拘束性に認識し結合することがわかった。同様に、多発性硬化症の実験モデルであるExperimental allergic encephalomyelitis(EAE)を発症したSJL/Jマウスからミエリン塩基性蛋白(MBP)特異的T細胞株を樹立し、Vα及びVβcDNAを単離し、可溶性のscFv型TCRを作製した。今後は可溶性TCR分子を用いて自己反応性T細胞が認識し反応する自己抗原の組織内局在を蛍光抗体法、酵素抗体法を用いて同定し免疫組織学的に検出することを試みるとともに、T細胞の抗原特異的な活性化の抑制をin vitro,in vivoにおいて行う。卵白アルブミン(OVA)特異的T細胞ハイブリドーマDO11.10細胞より、TCRα、TCRβ鎖の可変領域cDNAをRT-PCR法を用いて単離した。得られたVβDβJβ及びVαJαを、Gly,Serのポリマーで構成した我々独自のリンカーペプチドに結合し、VβDβJβ-linker-VαJαのDNAを構築した。さらにN末にTagを付加した。これをベクターに導入し種々の細胞で発現させた。サイトメガロウイルス由来のプロモーターあるいは免疫グロブリン遺伝子プロモーター・エンハンサー等を用いて、CHO細胞、マウス骨髄腫細胞株などに発現させて安定形質変換細胞株を確立した。いずれの場合も、効率よく可溶性のscFv型のVα-Vβからなる分子が培養上清中に産生された。この可溶性TCR分子はH-2d拘束性OVA特異的TCRαβ遺伝子トランスジェニックマウス(DO)のT細胞の、OVAペプチド(OVA323-339)に対する増殖反応を抗原特異的に抑制した。さらにDO11.10由来のTCRαβに対する抗イディオタイプ抗体KJ1-26は、可溶型Vα-Vβ分子にintactなTCRαβと同程度に結合し、イディオトープも保存されていることがわかった。A20・B細胞株(H-2d)に抗原ペプチド(OVA323-339)を加え、MHCクラスIIに結合させ、得られた培養上清を加えると結合が見られ、我々の可溶性scFv型のTCR分子はMHC拘束性に抗原特異的に結合することが蛍光抗体法により確かめられた。
KAKENHI-PROJECT-10557037
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10557037
可溶性TCR分子を用いたT細胞活性の制御とT細胞認識抗原の検出
マウスEAEの発症に関わるSJL/Jマウス由来のT細胞クローンより、同様にVα、VβのcDNAを単離し、上記の方法で可溶性のscFv型のVα-Vβ-TCR分子を組換えDNA法により構築した。得られたTCR分子は、T細胞クローンのミエリン塩基性蛋白(MBP)ペプチドに対する反応性を抑制する事がわかった。T細胞の活性を抗原特異的に人為的に抑制制御することが出来れば、自己免疫病、移植免疫、過剰免疫反応によって生ずる種々の免疫病あるいはアレルギーの治療に有効な治療法を提供することになる。我々は上記の目的を達成するために、H-2d MHC classI拘束性に卵白アルブミン(OVA)ペプチドを認識するTCRを発現しているT細胞ハイブリドーマDO11.10細胞より、TCRα,βをそれぞれコードする遺伝子を単離し、そのVα,Vβをリンカーで連結して、これをイッムノグロブリン遺伝子プロモーター、エンハンサーにつないでマウス骨髄腫細胞株で発現させ、scFv(単鎖可変領域フラグメント)型の可溶性のTCR分子を作成した。得られた分子は分子量25kDaでin vitroで安定であり、試験管内で大量に産生させることが出来た。このscFv型の可溶性TCR分子はH-2d MHC classIに結合した抗原ペプチドと特異的に結合した。このscFv型の可溶性TCR分子は元ののTCRと全く同じイディオタイプを保持していた。このscFv型の可溶性TCR分子は抗原ペブチド特異的に免疫反応を抑制し、抗原提示細胞上のペプチド抗原をMHC拘束性に認識し結合することがわかった。同様に、多発性硬化症の実験モデルであるExperimental allergic encephalomyelitis(EAE)を発症したSJL/Jマウスからミエリン塩基性蛋白(MBP)特異的T細胞株を樹立し、Vα及びVβcDNAを単離し、可溶性のscFv型TCRを作製した。今後は可溶性TCR分子を用いて自己反応性T細胞が認識し反応する自己抗原の組織内局在を蛍光抗体法、酵素抗体法を用いて同定し免疫組織学的に検出することを試みるとともに、T細胞の抗原特異的な活性化の抑制をin vitro,in vivoにおいて行う。
KAKENHI-PROJECT-10557037
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10557037
血管内皮前駆細胞に注目した肺気腫病変と肺気腫合併肺高血圧の病態解析
金沢医科大学呼吸器内科または共同研究施設で10 pack year以上の喫煙者を対象に血中のDNA、RNAを抽出し、DNAよりPCR-RFLP法によりp53 codon 72変異、MDM2 SNP309変異を測定、血中RNAよりreal-time RT-PCRにて循環血中の血管内皮前駆細胞のマーカーとしてCD31、CD34、vWFのmRNAを測定した。いずれの多型も肺気腫病変に影響を与えており、CD31、CD34、vWF発現はいずれも喫煙コントロール群に比して中等症COPD群で低下し、喫煙患者群における血管内皮前駆細胞の発現低下がCOPD発生の機序に関与している可能性が示唆された。昨年度に引き続き、金沢医科大学呼吸器内科、福井大学呼吸器内科において呼吸機能検査と胸部CTを施行した喫煙歴を有する約350名の患者血液より抽出したDNAよりPCR-RFLP法によりp53(rs1042522)、MDM2(rs2279744)多型の検討を行った。同遺伝子多型群と胸部CTより計測された気腫化(%LAA)を比較した結果、p53遺伝子多型でG変異がC変異に比し、MDM2遺伝子多型でT変異がG変異に比し有意に%LAA値の上昇が認められた。上記検討から、p53遺伝子多型とMDM2遺伝子多型を組み込んだプラスミドを作成し、A549細胞とCR5803細胞に遺伝子導入を行い、p53遺伝子強発現状態での細胞増殖とアポトーシス因子の発現をMTS法とCaspase-3蛋白発現の検討、MDM2プロモーター活性をルシフェラーゼ法により評価したところ、p53遺伝子多型のG変異でC変異に比し、有為な細胞増殖抑制効果が認められ、MDM2プロモーター活性はT変異でG変異に比し、有意に低下が認められた、p53・MDM2遺伝子多型によるp53蛋白の機能変化が生ずる可能性が示唆され、肺細胞でのアポトーシス、ひいては気腫化に影響を与えている可能性が示唆された。また、現在は更なる患者群の検討と、COPD患者における血管増殖因子と肺気腫・肺高血圧症との関連の検討として、同患者群からPaxgene RNA採血管により凍結保存してある末梢血からRNAを抽出し、cDNAを作成、LightCyclerを用いたRT-PCRによる血中ECP遺伝子の検討が進行中である。金沢医科大学呼吸器内科または共同研究施設で10 pack year以上の喫煙者を対象に血中のDNA、RNAを抽出し、DNAよりPCR-RFLP法によりp53 codon 72変異、MDM2 SNP309変異を測定、血中RNAよりreal-time RT-PCRにて循環血中の血管内皮前駆細胞のマーカーとしてCD31、CD34、vWFのmRNAを測定した。いずれの多型も肺気腫病変に影響を与えており、CD31、CD34、vWF発現はいずれも喫煙コントロール群に比して中等症COPD群で低下し、喫煙患者群における血管内皮前駆細胞の発現低下がCOPD発生の機序に関与している可能性が示唆された。金沢医科大学呼吸器内科、福井大学呼吸器内科において呼吸機能検査と胸部CTを施行した喫煙歴を有する約250名の研究協力に同意を得られた患者より得られた検体より抽出したDNA遺伝子より、PCR-RFLP法によりHIF-1α(rs11549465, rs11549467), VEGF (rs3025039), p53 (rs1042522), IL-6 (rs1800795)の検討を行った。同遺伝子群多型と胸部CTから得られた気腫化(%LAA)を比較検討したところ、p53 codon 72のC/G変異において、G変異で有意な気腫化病変を有する患者群の上昇を認めたため、p53関連遺伝子であるMDM2 SNP309, p27, p21遺伝子の追加検討を行ったところ、MDM2 SNP309のG/T変異でT変異で有意に気腫化病変の亢進群を認めた。上記検討により、MDM2 SNP309遺伝子多型により喫煙刺激でのp53蛋白産生が肺内で変化する可能性があり、またp53 codon 72のC/G変異により肺細胞のアポトーシスが亢進する可能性が示唆されたため、p53またMDM2遺伝子の多型を有するプラスミドを作成した。現在、同プラスミドを培養肺細胞に導入し同遺伝子の多型による機能解析を行っている。また、次年度は更なる患者群の検討とCOPD患者における血管増殖因子と肺気腫・気腫合併肺高血圧症との関連の検討として同遺伝子採血患者から採取保存してあるPaxgene RNA採血管より血中ECP遺伝子の検討をLightCyclerを用いたrealtime RT-PCRによる解析も開始している。金沢医科大学呼吸器内科、福井大学呼吸器内科において、喫煙歴を有する約358名の患者血液細胞から抽出したRNAより、LightCyclerを用いたReal timeRT-PCR法により血管内皮由来遺伝子であるCD31、CD34、vWF、アポトーシス誘導マイクロRNAであるmiR34aの半定量を行った。いずれの血管内皮由来遺伝子群も中等症COPD群で有意に低下していた。しかしながら重症群ではCD31、CD34、vWFいずれも発現が亢進している群が散見され、喫煙コントロール群と重症COPD群での有意差は認められなかった。CD31、CD34、vWF発現にはいずれも相関関係を認め、p53由来と考えられるmiRNA
KAKENHI-PROJECT-24591144
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24591144
血管内皮前駆細胞に注目した肺気腫病変と肺気腫合併肺高血圧の病態解析
34aは軽症から中等症COPD群で有意に上昇しており、各血管内皮遺伝子群と逆相関の関係を示していた。miR34aの発現は重症COPD群での発現が軽症中等症COPD群に比して低く、重症COPD群での血管内皮前駆細胞の発現を抑制している可能性が示唆された。COPDでは血管内皮前駆細胞の低下による疾患重症度に違いが生ずることが示唆されたが、重症COPD群では慢性低酸素血症による二次性肺高血圧症、慢性心不全による血管内皮前駆細胞の発現が亢進している可能性があると考えられる。また肺気腫化の指標である%LAAは一秒率と有意に相関していたが、血管内皮由来遺伝子群の発現とは有意な関連性は示されなかった。血中の血管内皮前駆細胞の発現は気流制限による呼吸状態や全身状態の悪化などの多因子が関与していることが類推され、血管内皮前駆細胞のマーカーと考えられる血管内皮由来遺伝子群の気腫化因子の違いにより、気腫化の程度や有無を類推することは困難と考えられた。肺循環、慢性閉塞性肺疾患同意患者からのサンプル数は順調に増加しており、目標の300症例を超えて進行中である。本研究では同意を得られた患者数の収集が最も困難であるが、検討開始後順調に増加しており、来年度中には目標数以上に達することが想定されるため。患者サンプルから抽出されたECP関連遺伝子発現の検討と患者背景のサブ解析を行い、気腫化(%LAA)とECP関連遺伝子、治療内容・呼吸状態・肺高血圧の合併の有無などとの詳細な比較検討を行う予定である。血管増殖因子遺伝子多型と肺気腫/肺気腫合併肺高血圧症との関連の検討を主に行う予定であり、肺の気腫化(%LAA)の評価:胸部HRCT画像のDICOMデータより%LAAを測定し、肺内の気腫化の程度により患者群の肺気腫の程度を評価し、CEP関連遺伝子の発現:Paxgene RNA採血管よりRNAを抽出し、逆転写酵素を用いてcDNAを作成し、CEPのmarkerであるVEGFR-1, VEGFR-2, CD133, vWF, PECAM-1, CD34, CD144のmRNAの発現をreal-time RT-PCRにて測定する。測定したCEP関連遺伝子の発現値よりCEP低下群とCEP上昇群に分類し、各群間での%LAAの値を検討しCEP遺伝子と肺気腫化病変との関連を検討する。また、患者群において右心不全を合併している群を抽出し、肺高血圧合併群と同程度の呼吸機能を有する肺高血圧非合併群との遺伝子発現の比較検討も行う。該当なし
KAKENHI-PROJECT-24591144
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第四紀の東南極氷床・南極環流変動史の高精度復元:氷床・陸棚・深海底トランセクト
東南極リュツォ・ホルム湾沖の南大洋の生物生産量は氷期に低下し間氷期に増加する.しかし,約43万年前より前の間氷期では生物生産が抑制されていた.この時代はmid-Brunhesevent(MBE)として近年注目されている気候システムの変換期に相当し,MBE以前の南大洋は海氷が夏季でも融解しない環境であった.また,コンラッド海台南西斜面には巨大砂丘様ベッドフォームであるマッドウェーブが存在し,海底下の反射面にも同様の構造が認められることから,これらは南極環流によって形成されたドリフト堆積体である.東南極リュツォ・ホルム湾沖の南大洋の生物生産量は氷期に低下し間氷期に増加する.しかし,約43万年前より前の間氷期では生物生産が抑制されていた.この時代はmid-Brunhesevent(MBE)として近年注目されている気候システムの変換期に相当し,MBE以前の南大洋は海氷が夏季でも融解しない環境であった.また,コンラッド海台南西斜面には巨大砂丘様ベッドフォームであるマッドウェーブが存在し,海底下の反射面にも同様の構造が認められることから,これらは南極環流によって形成されたドリフト堆積体である.南大洋オーストラリア区のコアSIR-1PC(南緯54度、東経140度)において、漂流岩屑(IRD)の産出量変動を復元し。過去3回の氷期末にいずれもIRDが顕著に増大すること、および、間氷期にはIRDかほとんど産出しないことを明らかにした。南極海リュツォ・ホルム湾陸棚上から採取した6本のコアのX線CTスキャナ解析および非破壊計測を実施し、堆積物の物性プロファイルを明らかにした。また、それらの元素分析を行い、有機炭素量が0.1%以下であり、炭酸塩含有量は検出限界以下の極めて低い濃度であることを明らかにした。平成20年2月に、学術研究船白鳳丸によるKH07-4 Leg3航海を実施し、南極海リュツォ・ホルム湾沖における海洋地質学的調査および海洋コアの採取を行った。海底地形および地震波探査データは、現在解析を進めている。新たに採取した3本の海洋コアについて、非破壊計測および堆積物組成の概要を把握するためのスライド観察を実施した。その結果,コンラッド海台コアCOR-1PC(南緯54度、東経40度)は白色の珪藻軟泥であり、含水率が非常に高いこと、磁性鉱物をほとんど含まないことがわかった。リュツォ・ホルム湾沖のコアLHB-3PC(南緯66度、東経40度)は、黄褐色を呈する珪藻質粘土であり、IRDもしくは混濁流堆積物の挟在を示唆する帯磁率のピークが周期的に現れている。グンネラス海台のコアGUR-1MC(南緯66度、東経33度)は、灰白色を呈する炭酸塩軟泥であり、浮遊性有孔虫を多産する。航海の成功により、本研究課題を遂行するための貴重な試料を入手することが出来た。得られたコアも古海洋変動を復元することが可能な堆積物であることがわかり、今後研究を進展させる土台が整ったと言える。白鳳丸KH07-4Leg3航海(平成20年2月)において,南極海リュツォ・ホルム湾沖から採取した海洋コアLHB-3PC(南緯66度,東経40度)の非破壊蛍光X線連続分析,古地磁気・岩石磁気分析,微化石層序解析,地球化学分析を行った.その結果,コア最下部の年代がおよそ65万年前に達すること,複数のタービダイト層が挟在することがわかった.また,生物源オパール量や磁性鉱物の粒径が,約10万年サイクルの気候変動サイクルに同調して変化していることがわかり,海洋表層における生物生産量は間氷期に増大し,氷期に減少していたと解釈される.また,コンラッド海台から採取されたコア(COR-1PC)の堆積物中から産する浮遊性有孔虫の放射性炭素年代測定の結果,コア最下部が約1万年前で平均堆積速度が40cm/kyrに達する珪藻軟泥コアであることが判明した.また,上記航海中に行った地形・地層探査,および,反射法地震波探査のデータ解析の結果,コンラッド海台南西斜面には巨大砂丘様ベッドフォームであるマッドウェーブが存在することが判明した.このマッドウェーブの比高は約30mであり,波長は数百mに及び,水深20003200m付近にのみ存在する可能性が高い.サイスミックプロファイルからは,海底下の反射面にも同様の構造が認められ,調査海域の北部域で特に顕著である.このような深海底のマッドウェーブは,南極底層水(AABW)影響を反映していると考えられる.南極海リュツォホルム湾沖コア(LHB-3PC)の有機炭素量および有機炭素同位体比を分析した.その結果,既に分析済みであった同コアのオパール量変動とほぼ整合的な結果を示し,南極表層水域では間氷期に生物生産量が増加し,氷期には低下していたことが判明した.また,有機炭素同位体比は間氷期で重く氷期で軽くなる傾向を示した.この結果も,同海域では氷期に生物生産量が抑制されていたことを強く示唆した.また,約43万年前を境に,生物生産量変動の振幅がより大きくなる傾向が示された.これはmid-Brunhes
KAKENHI-PROJECT-19340156
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第四紀の東南極氷床・南極環流変動史の高精度復元:氷床・陸棚・深海底トランセクト
eventとして注目されている気候変動様式の変換期に対応する.一方,コンラッド海台コア(COR-1PC)の珪藻群集解析の結果からは,完新世に数百年スケールの短周期の群集変化が存在することが新たに判明した.この短周期変動に見られる寒冷種が増加するタイミングは,浮遊性有孔虫の酸素同位体比が重くなる時代に概ね一致する.すなわち,南極環流影響下のコンラッド海台域には完新世に数百年スケールの表層水塊の変化,おそらく南極前線の南北振動が起こっていた可能性が示唆される.これらの成果は,これまで古海洋変動の復元研究例が限られていた南大洋インド洋区における第四紀の古海洋変動を明らかにした点で意義深い.
KAKENHI-PROJECT-19340156
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代謝イメージングによる心筋細胞における代謝ー興奮ー収縮連関の分子機構の解明
心臓の拍動には大量のエネルギーが必要であり、心臓の代謝状態や代謝産物は、エネルギー供給にかかわる重要な因子である。申請者は、エネルギー代謝基質であるピルビン酸が、エネルギー供給のみならず心室筋細胞や洞房結節細胞機能に積極的に関与する可能性を見出した。本研究は、代謝状態や代謝産物が心筋細胞の代謝ー興奮ー収縮連関を制御する分子メカニズムを明らかにするために、単一細胞代謝イメージングと細胞機能との同時測定、ならび包括的心筋細胞数理モデル構築、解析を行うものである。心臓の拍動には大量のエネルギーが必要であり、心臓の代謝状態や代謝産物は、エネルギー供給にかかわる重要な因子である。申請者は、エネルギー代謝基質であるピルビン酸が、エネルギー供給のみならず心室筋細胞や洞房結節細胞機能に積極的に関与する可能性を見出した。本研究は、代謝状態や代謝産物が心筋細胞の代謝ー興奮ー収縮連関を制御する分子メカニズムを明らかにするために、単一細胞代謝イメージングと細胞機能との同時測定、ならび包括的心筋細胞数理モデル構築、解析を行うものである。
KAKENHI-PROJECT-19H03400
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感覚刺激を活用したリラクセーション技法(呼吸法)の効果に関する研究
視覚、聴覚、嗅覚に働きかけるような環境を調えた中で対象者(健康成人、患者)は呼吸法を行った。その結果、脳波から眠気が高まる可能性、唾液中のストレスホルモンの減少と免疫機構の高まりを認めた。気分の評価では、緊張・不安感、抑うつ気分、怒りなどが低下した。また、繰り返しの練習によって、血圧が低下し抑うつ気分はさらに改善した。呼吸法と環境調整の組み合わせが患者の心身を安定させることが明らかとなった。視覚、聴覚、嗅覚に働きかけるような環境を調えた中で対象者(健康成人、患者)は呼吸法を行った。その結果、脳波から眠気が高まる可能性、唾液中のストレスホルモンの減少と免疫機構の高まりを認めた。気分の評価では、緊張・不安感、抑うつ気分、怒りなどが低下した。また、繰り返しの練習によって、血圧が低下し抑うつ気分はさらに改善した。呼吸法と環境調整の組み合わせが患者の心身を安定させることが明らかとなった。本研究の目的は、感覚(視覚、聴覚、嗅覚)を刺激してリラックスするための環境を整えた中で呼吸法を用いることにより、より一層リラックス反応が高まることを検証することである。本年度は、健常成人に対する基礎研究を行った。感覚刺激と呼吸法を併用した実験群(30名)、呼吸法のみの対照群(30名)を対象とし、生理的指標として脳波、心拍変動、血圧、皮膚温、主観的指標として感情プロフィール尺度(精神的リラックス反応の評価)を実施前後に測定した。環境の調整方法は、人工気候室にて温度・湿度を一定とした上で、自然環境の映像(視覚)、それに伴う自然音(聴覚)、樹木の香り(嗅覚)を用いて行った。実施する呼吸法は、呼気を吸気の2倍の長さで行う腹式呼吸とした。すべての指標において、両群ともに同様の変化を示し、群間比較による有意差は認められなかった。両群において実施中にα波とβ波は増加傾向を示し、実施後はθ波が増加した。しかし、実験群では、測定したすべての部位においてθ波の増幅が大きく、C_3、P_3、O_1において有意差が認められた。心拍変動と血圧は、両群ともに実施前後での変化はほとんどなかった。皮膚温は、両群ともに実施前に比べ実施中、実施後に有意に上昇した。POMSは、両群ともに「活気」以外は有意に減少した。以上から両群ともに実施した呼吸法によってリラックス反応が引き起こされたと考えられる。環境を調整したことによる影響としては、θ波の結果から呼吸法を単独で実施するよりも、より眠気を導く可能性があることが示唆された。また、実施後の自由記述から「映像があった方がリラックスできる」「環境に適した香りで心地よい」などの反応もあり、今後、さらに検証し、療養環境において環境を整えることの重要性を明らかにしたい。本研究の目的は、感覚(視覚、聴覚、嗅覚)環境を調整した中で呼吸法を行うことによってリラックス感が高まることを検証することである。本年度は、A病院を受診した外来患者51名を対象として行った。場所は、カーペットが敷かれ、ソファとテーブルが設置された外来部門の相談室を使用した。視覚的な環境の調整として、単なる観葉植物ではなく、季節感を感じてもらうため、季節の草花や樹木の花を配置した。また、室内の壁面には、その季節に応じた自然環境の写真を配置した。聴覚環境の調整としては、CDプレーヤーを用いヒーリング音楽を流した。嗅覚環境の調整としては、ラベンダー等の精油をフットランプに滴下して室内に拡散させた。この環境の中で、呼吸法を行い、実施前後に血圧、脈拍、リラックス度、唾液中のアミラーゼ濃度を測定した。実施する呼吸法は、呼気を吸気の2倍の長さで行う腹式呼吸とした。対象者の平均年齢は47.8±13.2歳、男性5名、女性46名であり、いずれもリラクセーション技法としての呼吸法の体験は初めてであった。収縮期血圧は、実施前122.7mmHgから実施後116.5mmgへ低下し有意な差があることを認めた。拡張期血圧はわずかな低下であった。脈拍は82.8回/分から77.7回/分へ低下し有意差を認めた。リラックス度は16.0点から22.2点に上昇し有意差を認めた。唾液中のアミラーゼ濃度は、わずかに低下したが有意な差は見出せなかった。また、「季節の植物があると気持が落ち着く」「香りが心地よい」「自然な音楽でリラックスできる」などの環境が心地よいことを示す意見も聞かれた。以上から、感覚環境を調整した中での呼吸法の実施は、リラックス感を高める可能性があると考えられる。本研究の目的は、感覚(視覚、聴覚、嗅覚)を刺激してリラックスするための環境を整えた中で呼吸法を用いることが、ベッド上で過ごすことが多い入院患者のリラックス反応を導き出すという効果を検証することである。対象はA病院放射線科に入院中の患者12名とした。対照群、実験群ともに、ベッド上で臥位のまま呼吸法を実施した。実施する呼吸法は、呼気を吸気の2倍の長さで行う腹式呼吸とした。対照群に対しては、研究者による呼吸法を実施するための声かけのみを行った。実験群に対しては、以下の環境を調整した中での呼吸法の実施とした。
KAKENHI-PROJECT-17791612
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17791612
感覚刺激を活用したリラクセーション技法(呼吸法)の効果に関する研究
視覚を刺激する方法としては森林の映像、聴覚を刺激する方法は、映像にあわせた川のせせらぎ音や鳥の声とし、市販のDVDの音楽の含まれていない部分を使用した。また、嗅覚を刺激する方法として、αピネンが多く含まれたひのき精油をディフューザーを用いて拡散させた。評価指標は、心拍変動解析によるHF、LF/HF、心拍数、唾液中のコルチゾール濃度、POMS日本語版とした。すべての指標において、両群ともに同様の変化を示し、群間比較による有意差は認められなかった。両群ともに実施した呼吸法によってリラックス反応が引き起こされたと考えられる。実験群の対象者から「森林の中で寝そべっているようで気持ちよかった」、「ほのかな香りが心地よかった」などの反応もあり、環境を調整したことによる影響があった。対象者数が少ないため、継続してデータを蓄積し療養環境において環境を整えることの重要性を明らかにしたい。
KAKENHI-PROJECT-17791612
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中赤外OH吸収帯波長高出力超短パルスファイバーレーザーの開発
エルビウムを添加したフッ化物ガラス光ファイバーを用いた波長2.7μm帯の高出力な超短パルスファイバーレーザーの要素技術を開発した。ピコ秒パルスの発生に必要な超短パルスレーザー発振器とそのパルスを増幅するために必要な高出力レーザー増幅器の基礎技術を実証し、赤外域レーザー技術を進展させた。エルビウムを添加したフッ化物ガラス光ファイバーを用いた波長2.7μm帯の高出力な超短パルスファイバーレーザーの要素技術を開発した。ピコ秒パルスの発生に必要な超短パルスレーザー発振器とそのパルスを増幅するために必要な高出力レーザー増幅器の基礎技術を実証し、赤外域レーザー技術を進展させた。本研究の目的は、Erドープフッ化物ガラスファイバーレーザーによる2.8μm帯超短パルス光の発生と増幅に関する基礎技術を確立することである。今年度はその初期段階として、低分散フッ化物ガラスファイバーの開発と同ファイバーの発振特性、波長可変特性の測定、及びモード同期法の開発に取り組んだ。ファイバーのコア径およびコア/クラッドの屈折率比を最適化することにより、幅広い波長域において低い群遅延分散を示すフッ化物ガラスファイバーを制作した。群遅延分散に波長2.8μmにおいて4ps/km/nmと予想され十分に小さな値である。Erの高濃度ドープにより高効率な連続波発振を実現し、500mW程度の高い出力を得た。また、回折格子を用いた波長選択発振においては、これまでに報告されている波長可変域を長波長側へ拡大することに成功し、我々の知る限り最も広い波長可変域を得た。波長域の拡大により、ガスセンシング等における応用範囲の拡大が期待される。さらに、モード同期法の開発として、石英系ファイバーレーザーで実績のある非線形偏波回転法を中赤外波長へ応用することを試みた。非線形偏波回転法によるモード同期発振を実現するにはリング共振器が安定性の面で有利であるため、フッ化物ガラスファイバーによるリング共振器を開発し、世界で初めて単一方向発振に成功した。以上の成果により、Erドープフッ化物ガラスファイバーレーザーによる2.8μm帯超短パルス発生へ向けた技術的見通しが得られた。本研究の目的は、Erドープフッ化物ガラスファイバーレーザーによる2.8μm帯超短パルス光の発生と増幅に関する基礎技術を確立することである。平成21年度は超短パルス発生のためのモード同期発振の実証、及び高平均出力レーザー動作の実証を実施した。1.モード同期発振の実証:波長2.8μm帯における超短パルス光発生技術を確立するため、ZBLAN系フッ化物ガラスファイバーを用いたモード同期発振に関する先駆的実験を実施した。昨年度に開発した低分散フッ化物ガラスファイバーを用いたリング型発振器に偏波制御を施し、世界で初めて非線形偏波回転によるモード同期パルス列の観測に成功した。現状では安定性の問題が残り、実用化へ向けた更なる開発が必要である。2.高平均出力レーザー動作の実証:モード同期発振器からの低出力の超短パルスを、ファイバーレーザー増幅器により高平均出力・高ピーク出力パルスへと増幅するための基礎技術を確立するため、ZBLAN系フッ化物ガラスファイバーの高出力連続レーザー発振における熱的特性を実験的に調べ、熱的限界を向上させる技術の開発を行った。その結果、世界最高出力の連続波2.8μm帯ファイバーレーザーの開発に成功し、これまで飛躍的な高出力化が困難と考えられてきたフッ化物ガラスファイバーレーザーが高平均出力レーザーとして高い能力を持つことを実証した。以上の成果により、Erドープフッ化物ガラスファイバーレーザーによる2.8μm帯超短パルス発生・増幅へ向けた技術的見通しが得られた。
KAKENHI-PROJECT-20760032
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20760032
水素ガスの生物生産系の改良戦略の総合的研究
水素ガスはクリーンなエネルギーとして注目されている。本研究ではヒドロゲナーゼ、ニトロゲナーゼ両システムの研究者が意見を交換しながら、水素ガス生産のために培養工学、遺伝子工学的方法で系を改良することをねらって研究を行った。小野寺は水素ガス発生能にすぐれているAzotobacterのミュータントを得た。またアンモニアで抑制されず、高い水素ガス発生能をもった窒素固定菌を土壌から分離した。いずれのアプロウチも今後の新微生物探索の方向を示唆する。魚住は窒素固定菌Azospirillumlipoferumのニトロゲナーゼ遺伝子の転写時および転写後のアンモニアによる活性抑制の機構解明を行い、高アンモニアで窒素固定活性が抑制されない菌TAIを作成した。熊沢は水素ガス発生能の高いらん藻の改良に取り組み、アンモニアによる窒素固定抑制のかからない条件では窒素ガス存在下でも水素ガス発生が継続することを明らかにした。いずれも、ニトロゲナーゼで水素ガスが発生するとアンモニアができにくくなることを考慮して、アンモニアでニトロゲナーゼ活性が抑制されないようにする試みである。西原は酸素ガスと熱に強く、酸性条件で水素ガス発生に強く傾いたヒドロゲナーゼを海洋性細菌Hydrogenovibrioから取り出した。このヒドロゲナーゼは酵素を利用した水素ガス発生に利用できそうである。浅田はらん藻に真正細菌のヒドロゲナーゼ遺伝子を組み込み、水素ガス発生の光エネルギー利用効率を高めようとした。宮本はNoxと二酸化炭素含有ガスを利用する海産微細藻類から乳酸菌と光合成細菌を使って水素ガスを高い効率で生産することに成功した。二酸化炭素削減技術のひとつの有望な方向を示すものである。大宮は難分解性物質からの水素ガス生産に利用するため、Clostridiumのキティナーゼ遺伝子を解析した。渡辺はアゾラと共生しているらん藻の水素ガス発生活性の窒素固定活性にたいする相対比はらん藻の窒素固定活性高いほど高くなるこを見いだした。これらの研究はいずれも水素ガス生物生産の今後の改良戦略の基礎となる知見を与えた。平成8年2月16-17日三重大学にて研究会を開催した。班員以外に京都大学助教授樋口芳樹,千葉大学教授藤井貴明氏を専門家として招待した。研究会には班員以外若干名が参加した。発表者のテーマは次のとおりであった。渡辺(窒素固定から水素ガス発生へ),小野寺(ニトロゲナーゼによる水素ガス発生)魚住(Azospirillum lipoferumの窒素固定能の制御),熊沢(海産窒素固定らん藻による水素ガス発生),浅田(遺伝子組み換えによる光合成微生物の水素ガス生産能増強の試み),西原(海洋性水素酸化細菌Hydrogenovibrio marinusのヒドロゲナーゼ),樋口(硫酸還元菌ヒドロゲナーゼの結晶構造),宮本和久(緑藻によるCO2固定と藻類バイオマスの水素ガス生産),大宮(嫌気性菌のキティン-ゼ遺伝子と水素ガス発生),藤井(水素ガス発生性紅色非硫黄細菌の炭素代謝と電子供与体)2特記すべき研究結果小野寺はタングステン抵抗性のニトロゲナーゼを持つAzotobacterのミュータントが水素ガス発生能にすぐれていることを示して、今後の新微生物探索の方向を示唆した。魚住はAzospirillumのニトロゲナーゼ酵素の活性修飾をする2種の酵素遺伝子drag,dratを明らかにし,ニトロゲナーゼ活性がアンモニアで抑制されない方法の開発をおこなった。熊沢は非常に水素ガス発生能の高いらん藻の改良に取り組んだ。西原は酸素ガスと熱に強いヒドロゲナーゼを見い出した。宮本ははNOxと二酸化炭素含有ガスを利用する海産微細藻類の培養法の工学的検討を行った。大宮は難分解性物質からの水素ガス生産に利用しようと,キティナーゼ遺伝子を解析した。いずれも水素ガス生物生産の今後の改良戦略の基礎となる知見であった。水素ガスはクリーンなエネルギーとして注目されている。本研究ではヒドロゲナーゼ、ニトロゲナーゼ両システムの研究者が意見を交換しながら、水素ガス生産のために培養工学、遺伝子工学的方法で系を改良することをねらって研究を行った。小野寺は水素ガス発生能にすぐれているAzotobacterのミュータントを得た。またアンモニアで抑制されず、高い水素ガス発生能をもった窒素固定菌を土壌から分離した。いずれのアプロウチも今後の新微生物探索の方向を示唆する。魚住は窒素固定菌Azospirillumlipoferumのニトロゲナーゼ遺伝子の転写時および転写後のアンモニアによる活性抑制の機構解明を行い、高アンモニアで窒素固定活性が抑制されない菌TAIを作成した。熊沢は水素ガス発生能の高いらん藻の改良に取り組み、アンモニアによる窒素固定抑制のかからない条件では窒素ガス存在下でも水素ガス発生が継続することを明らかにした。いずれも、ニトロゲナーゼで水素ガスが発生するとアンモニアができにくくなることを考慮して、アンモニアでニトロゲナーゼ活性が抑制されないようにする試みである。西原は酸素ガスと熱に強く、酸性条件で水素ガス発生に強く傾いたヒドロゲナーゼを海洋性細菌Hydrogenovibrioから取り出した。このヒドロゲナーゼは酵素を利用した水素ガス発生に利用できそうである。浅田はらん藻に真正細菌のヒドロゲナーゼ遺伝子を組み込み、水素ガス発生の光エネルギー利用効率を高めようとした。宮本はNoxと二酸化炭素含有ガスを利用する海産微細藻類から乳酸菌と光合成細菌を使って水素ガスを高い効率で生産することに成功した。二酸化炭素削減技術のひとつの有望な方向を示すものである。大宮は難分解性物質からの水素ガス生産に利用するため、Clostridiumのキティナーゼ遺伝子を解析した。
KAKENHI-PROJECT-07306016
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07306016
水素ガスの生物生産系の改良戦略の総合的研究
渡辺はアゾラと共生しているらん藻の水素ガス発生活性の窒素固定活性にたいする相対比はらん藻の窒素固定活性高いほど高くなるこを見いだした。これらの研究はいずれも水素ガス生物生産の今後の改良戦略の基礎となる知見を与えた。水素ガスはクリーンなエネルギーとして注目されている。本研究ではヒドロゲナーゼ、ニトロゲナーゼ両システムの研究者が意見を交換しながら、水素ガス生産のために培養工学、遺伝子工学的方法で系を改良することをねらって研究を行った。小野寺は水素ガス発生能にすぐれているAzotobacterのミュータントを得た。またアンモニアで抑制されず、高い水素ガス発生能をもった窒素固定菌を土壌から分離した。いずれのアプロウチも今後の新微生物探索の方向を示唆する。魚住は窒素固定菌Azospirillumlipoferumのニトロゲナーゼ遺伝子の転写時および転写後のアンモニアによる活性抑制の機構解明を行い、高アンモニアで窒素固定活性が抑制されない菌TA1を作成した。熊沢は水素ガス発生能の高いらん藻の改良に取り組み、アンモニアによる窒素固定抑制のかからない条件では窒素ガス存在下でも水素ガス発生が継続することを明らかにした。いずれも、ニトロゲナーゼで水素ガスが発生するとアンモニアができにくくなることを考慮して、アンモニアでニトロゲナーゼ活性が抑制されないようにする試みである。西原は酸素ガスと熱に強く、酸性条件で水素ガス発生に強く傾いたヒドロゲナーゼを海洋性細菌Hydrogenovibrioから取り出した。このヒドロゲナーゼは酵素を利用した水素ガス発生に利用できそうである。浅田はらん藻に真正細菌のヒドロゲナーゼ遺伝子を組み込み、水素ガス発生の光エネルギー利用効率を高めようとした。宮本はNOxと二酸化炭素含有ガスを利用する海産微細藻類から乳酸菌と光合成細菌を使って水素ガスを高い効率で生産することに成功した。二酸化炭素削減技術のひとつの有望な方向を示すものである。大宮は難分解性物質からの水素ガス生産に利用するため,Clostridiumのキティナーゼ遺伝子を解析した。渡辺はアゾラと共生しているらん藻の水素ガス発生活性の窒素固定活性にたいする相対比はらん藻の窒素固定活性高いほど高くなるこを見いだした。これらの研究はいずれも水素ガス生物生産の今後の改良戦略の基礎となる知見を与えた。
KAKENHI-PROJECT-07306016
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07306016
カイコ卵休眠現象の生物有機化学的研究
長年に亘る研究の結果、休眠ホルモン(DH)の構造解明に成功し、DH-mRNA上に3種の機能未知SGNP類がコードされていることを見いだしていた。本研究はこれらペプチド類の化学合成から着手した。合成DHは天然DH探索の標品としてだけでなく、誘導体作成や抗体作成にも使用した。誘導体化条件の検討の結果、N末端のみを修飾する手法を開発することができ、脂溶性を付与した誘導体、蛍光や色素標識した誘導体、光親和性標識基で修飾した誘導体作成に成功した。抗体作成には2種の合成標品を用意し、認識部位を異にする2種の抗体を得た。また、合成SGNP類を標品とし、食道下神経節抽出物を徹底的に精査した結果、SGNP類が全て実在していることを証明できた。次に、抗体との反応性や生物活性を指標として、新天然休眠誘導活性物質を探索した。その結果、蚕蛾頭部には、物理化学的性質の異なる複数の活性物質が存在することを明らかにでき、それらを高純度まで精製すると共に、その内の一種を構造解明することに成功した。この物質はDHを酵素分解から保護するという特異な機能を有する点で特徴的であるが、有機溶媒に可溶である点や、構造的にもVal,Ala,Proを異常に多く含み、繰り返し配列が多い点でも極めて興味深い。一方、本研究で開発した合成技術を使い、DHの活性発現に必要な部分構造の特定を目指した。その結果、C末端構造としてはアミド型が必須であること、トリペプチドアミドが活性発現最小単位であること、およびそのN末端を修飾すると活性を増強できることを発見した。これらの研究成果はDHの活性発現機構解明にとって物質的ならびに知的基礎を与えると共に、新活性物質設計や創製に重要な示唆を与えるものである。今後、本研究で蓄積した資産を基礎に、カイコ卵休眠という興味深い生命現象の生物有機化学的理解に向けて精進していきたい。長年に亘る研究の結果、休眠ホルモン(DH)の構造解明に成功し、DH-mRNA上に3種の機能未知SGNP類がコードされていることを見いだしていた。本研究はこれらペプチド類の化学合成から着手した。合成DHは天然DH探索の標品としてだけでなく、誘導体作成や抗体作成にも使用した。誘導体化条件の検討の結果、N末端のみを修飾する手法を開発することができ、脂溶性を付与した誘導体、蛍光や色素標識した誘導体、光親和性標識基で修飾した誘導体作成に成功した。抗体作成には2種の合成標品を用意し、認識部位を異にする2種の抗体を得た。また、合成SGNP類を標品とし、食道下神経節抽出物を徹底的に精査した結果、SGNP類が全て実在していることを証明できた。次に、抗体との反応性や生物活性を指標として、新天然休眠誘導活性物質を探索した。その結果、蚕蛾頭部には、物理化学的性質の異なる複数の活性物質が存在することを明らかにでき、それらを高純度まで精製すると共に、その内の一種を構造解明することに成功した。この物質はDHを酵素分解から保護するという特異な機能を有する点で特徴的であるが、有機溶媒に可溶である点や、構造的にもVal,Ala,Proを異常に多く含み、繰り返し配列が多い点でも極めて興味深い。一方、本研究で開発した合成技術を使い、DHの活性発現に必要な部分構造の特定を目指した。その結果、C末端構造としてはアミド型が必須であること、トリペプチドアミドが活性発現最小単位であること、およびそのN末端を修飾すると活性を増強できることを発見した。これらの研究成果はDHの活性発現機構解明にとって物質的ならびに知的基礎を与えると共に、新活性物質設計や創製に重要な示唆を与えるものである。今後、本研究で蓄積した資産を基礎に、カイコ卵休眠という興味深い生命現象の生物有機化学的理解に向けて精進していきたい。本研究では、まず、物質的基盤を得るために、休眠ホルモン(DH)およびDH-mRNAにコードされていた食道下神経節ペプチド(SGNP)類を化学合成した。ついで、得られた合成標品を用い、高感度三次元検出器付HPLCによるDHおよびSGNP類の高感度分析法を確立すると共に、抗DH抗体を作成して免疫的超高感度DH検出法を確立した。そこで、本手法を適用してSG抽出物を精査したところ、蚕体内にSGNP類が実際に存在することを発見した。SGNP類はDH活性を示さず、生体内では全く別の生理的役割を担っている可能性が大きい。一方、上記手法と生物試験を用い、雄蚕蛾頭部の休眠誘導活性物質を検索した。雄蚕蛾頭部には以前からDH(あるいは休眠誘導活性物質)の存在が知られ、その有機溶媒抽出物がDH精製の出発物質とされていたが、単離には至っていない。材料を蛹SGとするとDHは水抽出され、これが単離、構造決定に至っている。今回は蚕蛾頭部の有機溶媒に抽出可能な活性物質を得て、その構造を明らかにすると共に、材料による活性物質の物理化学的性質の差異の原因解明を目指した。新規に集めた生蚕蛾頭部からの有機溶媒抽出物は複数の活性物質を含んでいたが、これまでに、その内の一つをほぼ純粋に精製できた。この活性物質のHPLC的挙動は蛹SGのDHとは明らかに異なる。つぎに、卵内に休眠誘導活性物質が存在するか否かを検索した。家蚕の卵を集め、種々の抽出法を検討した結果、明らかに休眠誘導活性物質が存在することを発見した。
KAKENHI-PROJECT-05453164
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カイコ卵休眠現象の生物有機化学的研究
以上のように、本研究ではDHとSGNP類の化学合成と分離分析、検出法を確立できた。ついで、この手法を用い、SGNP類が蚕体内に存在することを証明した。さらに、この手法と生物活性試験を適用して、雄蚕蛾頭部及び休眠卵内に休眠誘導活性物質が存在することを証明すると共に一部の活性物質を単離する事に成功した。今後、これらの活性物質本体の構造を明らかにし、卵休眠の誘導、維持、覚醒の機構を分子レベルで解明する予定である。休眠ホルモン誘導体の調製と誘導体の休眠活性休眠ホルモン分子はN末端アミノ基の他にLys-ε-アミノ基を持つが、その両者を同時に誘導体化すると活性が著しく低下することを見いだした。そこで、新規にN末端アミノ基のみを修飾する手法を開発した。調製した各種誘導体の生物試験の結果、一部活性を低下させる誘導体もあったが、ほぼ活性を維持する誘導体もあることが判明し、活性発現には必ずしもN末端アミノ基が遊離である必要はないことがわかった。卵内休眠卵内の休眠誘導活性物質これまでの研究で、休眠誘導活性物質が休眠卵内にも存在することが判明している。そこで、休眠するように条件づけた卵巣内卵を採集し、この材料から休眠誘導活性物質を抽出できるか否か検討した。その結果、抽出可能な条件は見いだしたものの、抽出効率の再現性は良好でなかった。現在、生物検定法の検討を含めて、再現性のある抽出法開発を目指している。雄蚕蛾頭部休眠誘導活性物質雄蚕蛾頭部の有機溶媒抽出物には休眠誘導活性物質が存在することが知られていた。本研究では、この抽出物中の活性本体の解明をめざした。その結果、この画分には活性度の異なる複数の活性物質が存在することを見いだした。更に、このうちの活性の弱い一物質を単離する事に成功し、55残基からなる部分構造の解明に成功した。本ペプチドは親脂性アミノ酸に富み、多数の繰り返し構造を含む特異なものである。しかし、本部分構造は休眠ホルモン分子とは類似性がないため、いかにして休眠誘導能を発現するか、現在検討中である。天然蚕休眠誘導活性物質休眠性蚕の卵巣内卵と雄蚕蛾頭部を材料として、休眠誘導活性物質の究明を目指した。前者中の活性物質を再現よく抽出する手法の確立には至らなかったが、後者からは複数の活性物質を高純度に精製することができた。その内、構造を解明できた一種の活性ペプチドはDH分子を酵素分解から保護することにより、DH活性発現の閾値をさげるという特異な活性を持っていた。また、この物質は極めて親油性であり、Val、Ala、とProの含量が異常に高く、繰り返し配列を多数含むという特徴を持ち、構造的にも極めて特異であった。休眠ホルモン誘導体および断片の合成DHの精密な機能発現機構解析と実用的活性分子設計を目指して、DH誘導体および類縁短鎖ペプチド類とその誘導体を作成した。まず、DH合成の中間体を利用し、活性を維持した誘導体を調製する条件を確立することができた。この手法を用い、これまでに、DHのアシル誘導体、蛍光や色素標識体及び光親和性標識体を調製する事ができた。次に、DHのC末端部位のアミノ酸置換体とそのC末端官能基の変換体や、短鎖ペプチドアミドとそのN末端修飾体を作成し、休眠誘導能を調べた。
KAKENHI-PROJECT-05453164
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破骨細胞における細胞骨格を制御する新規因子の同定とその分子基盤の解明
私達は破骨細胞分化過程で発現上昇する遺伝子群を網羅的に解析して、Actin Binding LIM protein1(abLIM1)を同定した。abLIM1はアクチンフィラメントと細胞質内の結合分子とを連結することで細胞骨格の機能を制御していると考えられている。我々は同遺伝子をノックダウンした破骨細胞は活性化・巨大化し、逆にabLIM1を過剰発現した破骨細胞では活性化した。本研究では、分子メカニズムを探るため、in vitro解析としてabLIM1の結合タンパク質の同定を行う。私達は破骨細胞分化過程で発現上昇する遺伝子群を網羅的に解析して、Actin Binding LIM protein1(abLIM1)を同定した。abLIM1はアクチンフィラメントと細胞質内の結合分子とを連結することで細胞骨格の機能を制御していると考えられている。我々は同遺伝子をノックダウンした破骨細胞は活性化・巨大化し、逆にabLIM1を過剰発現した破骨細胞では活性化した。本研究では、分子メカニズムを探るため、in vitro解析としてabLIM1の結合タンパク質の同定を行う。
KAKENHI-PROJECT-19K19299
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末梢におけるFOXP3陽性制御性T細胞への分化メカニズム解析とがん治療への応用
申請者らが独自に作製した誘導Tregs(iTreg)細胞培養方法(ナイーブT細胞をJak3阻害剤存在下で3日間培養を行いiTreg前駆細胞に分化させ、その後IL-2を添加し3日間培養を続けることによりFoxp3陽性iTreg細胞に分化増殖)を用い、どのような因子が影響を与えるか解析を行った。Jak3阻害剤の標的が主にIL-2であることを見出し、また、Foxp3陰性iTreg前駆細胞からFoxp3陽性iTreg細胞への分化段階においてはIL-4が最も強く阻害すること等を含めて明らかにした。得られた結果は、制御性T細胞の機能を抑制することによって効果的な癌治療を開発する基盤となると考えられる。申請者らが独自に作製したJak3阻害剤を使用した培養システム(野生型マウスより単離した末梢未感作CD4+CD25-T細胞を用いJak3阻害剤存在下で3日間培養を行うことにより、Foxp3陰性のiTres前駆細胞に分化させ、その後IL-2を添加した培地にて培養を続けることによりFoxp3陽性細胞に分化増殖させる培養法)を用い、末梢未感作CD4+CD25-T細胞からFoxp3陰性iTres前駆細胞への分化段階を強く阻害する数種のサイトカインを明らかにしている。これらサイトカインがiTres前駆細胞への分化誘導に及ぼす影響、及びiTres前駆細胞からFoxp3陽性制御性T細胞への分化に及ぼす影響を検討している。並行して、既に同定している中で最も阻害活性の高い一種のサイトカインに注目し、その伝達シグナルの下流にある特定のSTATをノックアウトしたマウスT細胞を用い、野生型マウスを用いた培養系との比較検討作業を継続し行っている。また、特定のSTATノックアウトマウスin vivoにおけるTregの動態解析を行っている。他、多数の阻害剤、化学物質を用いた阻害効果のスクリーニングを継続して行なっている。これらの結果を元に、当初の予定通りin vivoマウスモデル(がんワクチン治療モデル・養子免疫治療モデル)を用いた胆癌マウス腫瘍局所でのTregs前駆細胞の動態を腫瘍浸潤T細胞及び所属リンパ節T細胞を用いて解析する準備を進めている。抗腫瘍免疫応答を減弱させるCD4+CD25+Foxp3+制御性T細胞(Tregs)の機能を抑制することにより、効果的に癌治療が行える可能性が考えられる。今研究において、申請者らが独自に作製したJak3阻害剤を使用したinduced Tregs(iTreg)細胞培養システム(野生型マウスより単離した末梢未感作CD4+CD25-T細胞を用いJak3阻害剤存在下で3日間培養を行うことにより、Foxp3陰性のiTreg前駆細胞に分化させ、その後IL-2を添加した培地にて培養を続けることによりFoxp3陽性iTreg細胞に分化増殖させる培養法)を用い、どのようなサイトカイン等の因子がこの培養系に影響を与えるか検討を行った。サイトカイン及び中和抗体の投与により、Jak3阻害剤の標的が主にIL-2のシグナリングであることを見出した。さらに、Foxp3陰性iTreg前駆細胞からFoxp3陽性iTreg細胞への分化段階においては、この分化段階をIL-2が強く促進しIL-4が強く阻害する現象を明らかにした。IL-2のシグナリングには多様な作用がある現象を見出したことと併せて、IL-4シグナリングの下流に位置するSTAT6ノックアウトマウスを用いた検討において、野生型と比較しより頻度が高くiTreg細胞に分化しやすくなる現象を確認している。一方、Jak3阻害剤を使用する代替として、anti-TCRb抗体(H57-597)の使用がIn vitro及びIn vivoにおいて6日後に有意にFoxP3陽性細胞の頻度を高めることを見出し、同抗体のマウスIn vivoへの投与がallograftの生着を延長することを見出した。これらの結果は、将来的に腫瘍局所でのiTregの機能を抑制し効果的な癌治療を開発する基盤となると考えられる。申請者らが独自に作製した誘導Tregs(iTreg)細胞培養方法(ナイーブT細胞をJak3阻害剤存在下で3日間培養を行いiTreg前駆細胞に分化させ、その後IL-2を添加し3日間培養を続けることによりFoxp3陽性iTreg細胞に分化増殖)を用い、どのような因子が影響を与えるか解析を行った。Jak3阻害剤の標的が主にIL-2であることを見出し、また、Foxp3陰性iTreg前駆細胞からFoxp3陽性iTreg細胞への分化段階においてはIL-4が最も強く阻害すること等を含めて明らかにした。得られた結果は、制御性T細胞の機能を抑制することによって効果的な癌治療を開発する基盤となると考えられる。申請者らが独自に作製したJak3阻害剤を使用した培養システム(野生型マウスより単離した末梢未感作CD4+CD25-T細胞を用いJak3阻害剤存在下で3日間培養を行うことにより、Foxp3陰性のiTregs前駆細胞に分化させ、その後IL-2を添加した培地にて培養を続けることによりFoxp3陽性細胞に分化増殖させる培養法)を用い、どのようなサイトカイン・阻害剤がこの培養系を阻害し得るかを検討した。まず、十数種の阻害剤及びサイトカインパネルを用いて、どのようなシグナルがこの培養系を阻害可能かの検討を行なった。結果、末梢未感作CD4+CD25-T細胞からFoxp
KAKENHI-PROJECT-23501284
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23501284
末梢におけるFOXP3陽性制御性T細胞への分化メカニズム解析とがん治療への応用
3陰性iTregs前駆細胞への分化段階を強く阻害する数種のサイトカインを明らかにした。同定したサイトカインの伝達シグナルの下流にある、特定のSTATをノックアウトしたマウスを既にアメリカジャクソンラボから購入・導入し、野生型マウスとの比較検討作業を既に開始している。また、より深い知見を得るため、多種の阻害剤・化学物質を用いた阻害効果のスクリーニングを継続し行なっている。平成23年度における上記の研究成果は、今後期待される成果の端緒となると考えている。すなわち、これらのシグナルを腫瘍局所で高め、腫瘍局所におけるiTregs細胞の頻度及び絶対数を減少させることにより、目標とする癌に対するより効果的な治療法及びアジュバント開発への基盤となり得ると考えている。平成25年度にはマウスのin vivo実験に取り掛かる予定であるが、その準備が少し遅れている。Gene chipを使用したiTregs前駆細胞に選択的に発現する分子の網羅的探索を実施に移している段階であり、達成をしていない。iTregs前駆細胞に特異的な分子等を同定することは非常に重要であり、至急の課題と考えている。これまでに得られた知見を元に、阻害シグナルを腫瘍局所で高め、腫瘍局所におけるiTres細胞の頻度及び絶対数を減少させることにより、目標とする癌に対するより効果的な治療法を開発する。Gene chipを使用し、iTregs前駆細胞に選択的に発現する分子の網羅的探索を進めるとともに、野生型マウス及び特定のSTAT欠損マウスを用いて、マウスin vivoでのiTregs前駆細胞の動態解析を行なっていく。また、既に同定したサイトカイン/今後同定する分子を用いて、がんワクチン治療モデルマウス・養子免疫治療モデルでの効果検討を行なっていく。我々の研究室がこれまでに開発してきた、がんワクチン治療モデル、養子免疫治療モデルの2種類のがん治療モデルにおいての解析を中心に研究を行っていく。腫瘍局所、所属リンパ節及び脾臓に存在する腫瘍反応性CD8+T細胞の頻度・絶対数・活性化の程度・IFN-g等のサイトカイン放出等の詳細な解析を行い、これら手法を用いて分化抑制因子併用による免疫応答への影響を詳細に検討する予定である。主にマウス購入代・細胞染色用抗体・中和抗体に研究費を使用予定である。
KAKENHI-PROJECT-23501284
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銀河系およびマゼラン銀河内の膨張ガスシェルの観測的研究
本研究は、局所群の3銀河(銀河系、大小マゼラン雲)の分子雲と星形成を包括的に研究し、銀河進化における星形成を、スーパーシェルの役割を軸に解明することをめざしたものである。本研究の結果、大マゼラン雲における巨大分子雲星形成の全体像が、大質量星形成について完全に解明され、分子雲進化の時間尺度等が確立され、スーパーシェルの影響は全体として主要ではないことが結論された。本研究によってまず、銀河系と小マゼランに比べ、大マゼラン雲に集中して解析することが有効であることが明らかになった。これは、大マゼラン雲のみが銀河全面について200個近い星形成領域を含み、均一な観測データが活用できるためである。本研究によって、銀河系は銀河面内の多天体の重なりによって多くの星形成のサシプルが得にくく(最大30領域程度)、小マゼラン雲もサンプル数が十分多くない(最大20領域程度)ことが示された。大マゼラン雲での大質量星形成の指標として、従来光学的な星団と星雲が使用されたが、最近の電波連続波観測の前進によって、減光を受けない電波星雲も確実に特定できることが分かり、新たな比較解析を行って、確実な星形成分子雲の特定を実施できた。この結果、160余個の巨大分子雲を星なし、星有り、さらに活発な星形成有り、の3クラスの分類できることを示し、それらの進化的つながりと進化的年齢を推定した。以上の成果は、銀河全体にわたる星形成について進化的猫像が初めて明確にしたものであり、2005年10月国際会議の招待講演などで世界的評価を受けている。本研究は、局所群の3銀河(銀河系、大小マゼラン雲)の分子雲と星形成を包括的に研究し、銀河進化における星形成を、スーパーシェルの役割を軸に解明することをめざしたものである。本研究の結果、大マゼラン雲における巨大分子雲星形成の全体像が、大質量星形成について完全に解明され、分子雲進化の時間尺度等が確立され、スーパーシェルの影響は全体として主要ではないことが結論された。本研究によってまず、銀河系と小マゼランに比べ、大マゼラン雲に集中して解析することが有効であることが明らかになった。これは、大マゼラン雲のみが銀河全面について200個近い星形成領域を含み、均一な観測データが活用できるためである。本研究によって、銀河系は銀河面内の多天体の重なりによって多くの星形成のサシプルが得にくく(最大30領域程度)、小マゼラン雲もサンプル数が十分多くない(最大20領域程度)ことが示された。大マゼラン雲での大質量星形成の指標として、従来光学的な星団と星雲が使用されたが、最近の電波連続波観測の前進によって、減光を受けない電波星雲も確実に特定できることが分かり、新たな比較解析を行って、確実な星形成分子雲の特定を実施できた。この結果、160余個の巨大分子雲を星なし、星有り、さらに活発な星形成有り、の3クラスの分類できることを示し、それらの進化的つながりと進化的年齢を推定した。以上の成果は、銀河全体にわたる星形成について進化的猫像が初めて明確にしたものであり、2005年10月国際会議の招待講演などで世界的評価を受けている。「なんてん」望遠鏡を用いた銀画面サーベイのデータをもとに、膨張ガスシェルの探査を行なった。この探査によりへび座-いて座方向にあるHII領域であるM16およびM17を含む巨大分子ガスの複合雲がシェル状の構造を持つことが明らかになった。M16およびM17領域は活発な大質量星形成領域として知られ、これまでにも様々な波長帯で観測がなされてきたが、これらがひとつのスーパーシェルに付随するものであることを初めて示した。シェルのサイズ、巨大分子雲を除くシェルの質量、年齢、運動エネルギーはそれぞれ、170pc×250pc、2×10^4太陽質量、6×10^6年、4×10^<50>ergと見積もられた。理論モデルとの比較から29個の超新星爆発により形成されたと考えられ、これはシェルの中心星団から推定される個数とほぼ一致する。以前の研究で発見したカリーナフレアよりも若干小さく、カリーナフレアよりも若い段階にあるスーパーシェルである可能性が高いことを示した。銀画面サーベイおよび大マゼラン銀河の高感度掃天観測は順調に進んでおり、銀画面サーベイは銀経220度から60度までの広範囲をカバーし、また、大マゼラン銀河の高感度観測も30平方度の掃天が終了している。その中でも特に大きな成果は、銀河系外縁部の銀河円盤の歪み(Warp)に付随する分子ガス雲の無バイアス探査である。銀経が252度から266度の範囲で視線速度から推定される運動学的距離(銀河系中心からの距離)が14kpc以上外側にあると考えられる分子雲を約70個検出した。これら分子雲の分布はHIガスの分布とよい相関を示しており、また銀河系からの距理が大きく成るにつれて銀画面からの距離(Z)が大きくなる傾向を示し、銀河円盤が外側でゆがんでいる構造を表している。銀画面からの距離(Z)は大きいものでは1200pc以上も離れていることが明らかになった。分子ガスとHIガスの質量比は、warp領域ではカリーナ渦状腕の1/10程度と小さく、warp領域では渦状腕ほど分子雲形成や星形成が活発に起きていないこと、また、一酸化炭素(CO)スペクトル積分強度と分子ガスの柱密度の変換係数であるX-
KAKENHI-PROJECT-14102003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14102003
銀河系およびマゼラン銀河内の膨張ガスシェルの観測的研究
factorが銀河円盤内縁分に比べて3倍程度warp領域では大きく成っていること、等の新たな知見が得られた。研究は順調に進んでいる。本研究は、我々の銀河系および銀河系に最も近い系外銀河である大小マゼラン銀河に対して、徹底したミリ波掃天観測を行い、分子ガス雲の分布と運動の全貌を明らかにすることを目的とする。本年度の最後にアタカマに移設される予定であったNANTEN2望遠鏡の移設は進行中であるが、年度中には完了しなかったため、NANTEN2によるサブミリ波観測はできなかったが、「なんてん」望遠鏡により取得されたデータをさらに推し進めて解析することにより、次のような観測成果を挙げることができた。1)TeVガンマ超新星残骸G347と相互作用する分子雲を発見し、その距離を精度よく決定して、宇宙線陽子加速の現場の特定、陽子加速の定量的評価を始めて行い、この分野の前進に寄与した(PASJ他に論文発表、国内外にて招待講演)。2)マゼラン雲のブリッヂにおいて新たに6領域で分子雲を発見し、低重元素量下での星形成の証拠をあげるとともに、わい小銀河形成仮説を検証にむけた観測的基礎を開いた(March 2004国際学会"Young Local Universe"他において招待講演)。3)ASTE 10m望遠鏡を用いて、大小マゼラン雲の[CI]スペクトルによる初めての高分解能観測を行った。小マゼラン雲では初めての優位なスペクトルを得ることができ、CO/C比などを定量的に求めることが初めて可能となった。大マゼラン雲では、近くのHII領域の影響を受けて、[CI]のピークがCOのピークと比較して数パーセク以上離れている典型的な光かい離領域と思われる領域を見つけた。4)この他の成果については、いくつかの国際会議で招待講演を行っている。「なんてん」による観測結果(CO分子J=1-0スペクトル)によるスーパーシェルの解析をすすめ、単一超新星残骸(G347、G266他)に付随する星間分子雲の特定を行うと同時に、NANTEN2計画を推進してサブミリ波観測への展望を切り拓いた。主な成果は以下のとおりである。1)我々の発見した分子ガススーパーシェル「カリーナフレア」について、オーストラリア(ATNF)との共同研究をすすめ、中性水素ガス(HI)と分子ガス(CO)との比較を行なった。これにより、COではトレースできなかった密度1cm^<-3>程度の低密度ガスによって空間的にほぼ連続にスーパーシェルの形状と運動を解明した。シェルのサイズが、従来分子ガスによって求められたものよりも30%程度大きいことなど、シェルの物理量を改訂する重要な知見が得られた。今後、さらに他のシェルにこの手法を応用する予定である。2)TeVガンマ線超新星残骸G347について、ASTE10mサブミリ波望遠鏡によるCO J=3-2スペクトルの観測を実行し、G347と相互作用すると見られる3個の分子ガス塊について分布を明らかにした。その結果、J=3-2スペクトルとJ=1-0スペクトルの強度比からこれらの分子ガスが30-40K以上の高温に加熱されていることを明らかにし、新たな相互作用の証拠であることを指摘した。分子雲スーパーシェルの観測的研究を推進した。主な項目は以下4点にまとめられる。1)分子雲スーパーシェル形成の素過程は、水素分子形成を含むはずである。このプロセスを研究するために、太陽系の極く近傍に位置する高銀緯分子雲の詳細研究を進めてきた。
KAKENHI-PROJECT-14102003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14102003
認知症高齢者の転倒予防看護質指標による看護介入プログラムと実践継続システムの開発
介護保険施設に入所している認知症高齢者を対象とした看護介入プログラムと継続プログラムを開発し、老人保健施設の認知症高齢者を対象に介入研究を実施し、同プログラムの転倒予防の効果を検証する。特に対象地域を浜松、石川、関西の3地域の老人保健地域で同時に実施し、介入効果を高齢者とケアスタッフの両面から明らかにした。1.浜松地区:平成28年5月平成29年1月に介入を実施した。ペースライン(2月4月)、準介入(5月7月)、本格介入(8月10月)、追跡(11月1月)を研究計画に沿って実施した。高齢者の対象者は、介入群60名、コントロール69名であり、転倒率(転倒者・対象者)はベースライン26.66%、準介入(21.66%)、本格介入(13.33%)、追跡(16.66%)であった。本格介入ではスタッフは転倒予防チームを結成して定期的に事例検討を実施し、特に転倒した対象者の再転倒予防に取り組んだ。ケアスタッフの調査は32名を対象にアンケートを分析し、転倒予防の意識の変化の変化が明らかになった。2.石川地区:石川の介入群:開始時期2016年9月(24日)終了予定時期2017年6月30日の予定である。介入群、コントロール群の高齢者、スタッフの人数石川の介入群:高齢者24名(うち3名退所、1名死亡退所)、スタッフ59名であり、チームコンピテンシーなどの変化が見られた。3.関東地区開始時期2016年7月2017年5月終了予定時期である。介入群では開始時対象者:高齢者30名、スタッフ43名であったが、現在、入院、退所等で高齢者17名、スタッフ43名で実施した。ケアスタッフの意識の変化はなかったが、もととも転倒予防に関する意識は高かった。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。認知症高齢者に対する転倒予防看護介入プログラム・実践継続・RCT研究に関する情報収集・エビデンスの分析を実施した。欧米の転倒予防に関する欧米の介入研究・RCTのエビデンスを分析する。さらに看護の視点から転倒予防に関する実証研究、看護管理システム、看護教育プログラム、看護実践のリフレクションに関する国内外の文献・資料を収集する。特に米国National Geriatric Nursing Association, American Geriatric Society, American Psychiatric Associationなどの認知症看護に関する指標・プログラム・介入などを分析する。国際老年学会のRCTのセッションやセミナーや長寿医療研究センターに訪問し、RCTに関する最新情報を得た。わが国のエビデンス・実践報告から転倒予防を実践している病院・介護保険施設を抽出、フォーカスグループインタビューを実施した。認知症高齢者の転倒予防の実践内容・実践上の問題点・障害を明確化し、同時に開発中の転倒予防プログラムの内容・時間・実施方法などについて分析した。認知症高齢者の転倒予防に関する看護介入プログラム(介入内容の標準化と実践継続システム)の開発するために分担研究者がそれぞれ実施してきた研究を基盤に認知症高齢者の転倒予防の課題について明確化した。さらに認知症高齢者の転倒予防の看護介入の標準化と実践継続システムの内容を検討した。特に平成28年度に実施する転倒予防介入プログラムの開発を目標に、ケア内容を標準化、教育プログラムを検討した。1.臨床判断能力を高める転倒予防ケア質評価指標に基づいた介入プログラムの開発:介入のプログラムに関しては、転倒予防包括看護質評価指標を基盤に実践におどのように応用、展開するのかを討議し、【転倒予防介入プログラム】(1)転倒予防ケア質指標:認知症高齢者を理解し、尊厳ある関わりを通して転倒を予防しましょうを開発した。さらに認知症高齢者の転倒予防には、認知症高齢者の疾患に理解と個人の理解の両方が必要であることから、(2)認知症高齢者の視点を重視した転倒予防を開発した。2.転倒予防包括看護質評価指標に基づいた看護介入プログラムを持続するための実践継続システム開発:介入プログラムが臨床で継続されないことが大きな課題だが、転倒予防は長期介入が継続されないと効果が得られない。標準化された看護介入プログラムの実施は現場の看護師による介入であるために実践レベルの確保とモチベーションの継続が重要であるが、1回の講義のみによる学習効果はすぐに低下することが予測されるために同プログラムでは対象となる介護保険施設の特性や機能も踏まえて、「看護師のリフレクション」、「課題に向けたアクションプランの立案と展開」、「ケアスタッフのエンパワメント」、「実践家と研究者の協働」を強化するシステムを重視した特にスタッフをエンパワメントするためにファシリテーター育成、ワークショップ・シェアリングを強化し、転倒予防を「理解する」から「継続して実践できる」システムを開発する。実践継続プログラム】「ご一緒に転倒予防に取り組みませんか!」を開発した。転倒予防に関する多職種(看護師・介護職作業療法士)のエキスパートによって妥当性を高めるための検討会議を2回実施した。3.研究の体制作りと手順マニュアルの作成:3か所の地域の研究実施マニュアルを作成した。平成28年度は、石川、東京、浜松で転倒予防介入研究を実施する予定である。浜松は協力施設と3年間準備をしており、体制は万全である。石川、東京はケアスタッフの人材不足もあり、施設の変更などがあるが、早急に対応し、平成28年度の介入研究実施には対応できている。
KAKENHI-PROJECT-26293477
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26293477
認知症高齢者の転倒予防看護質指標による看護介入プログラムと実践継続システムの開発
介護保険施設に入所している認知症高齢者を対象とした看護介入プログラムと継続プログラムを開発し、老人保健施設の認知症高齢者を対象に介入研究を実施し、同プログラムの転倒予防の効果を検証する。特に対象地域を浜松、石川、関西の3地域の老人保健地域で同時に実施する。本研究の目的は、下記の2点である。1.認知症高齢者を対象とした看護介入プログラムと継続プログラムを開発し、転倒の頻度や外傷などからの効果を明らかにする。2.ケアスタッフの意識に関してアンケート調査を用いて追跡調査することで介入プログラムの効果を明らかにする。1.浜松地区:平成28年5月平成29年1月に介入を実施した。ペースライン(2月4月)、準介入(5月7月)、本格介入(8月10月)、追跡(11月1月)を研究計画に沿って実施した。高齢者の対象者は、介入群60名、コントロール69名であり、転倒率(転倒者・対象者)はベースライン26.66%、準介入(21.66%)、本格介入(13.33%)、追跡(16.66%)であった。本格介入ではスタッフは転倒予防チームを結成して定期的に事例検討を実施し、特に転倒した対象者の再転倒予防に取り組んだ。ケアスタッフの調査は32名を対象にアンケートを分析し、転倒予防の意識の変化を分析中である。3.石川地区:石川の介入群:開始時期2016年9月(24日)終了予定時期2017年6月30日の予定である。介入群、コントロール群の高齢者、スタッフの人数石川の介入群:高齢者24名(うち3名退所、1名死亡退所)、スタッフ59名で継続して介入中である。3.関東地区開始時期2016年7月2017年5月終了予定時期である。介入群では開始時対象者:高齢者30名、スタッフ43名であったが、現在、入院、退所等で高齢者17名、スタッフ43名で実施している。コントロール群も合わせて調査を実施中である。浜松の調査は計画どおり進行した。石川・関東は24か月遅れたがおおむね順調である。施設先との連携は順調であり、平成29年度6月末日には調査は終了し、全体の解析を実施する予定である。介護保険施設に入所している認知症高齢者を対象とした看護介入プログラムと継続プログラムを開発し、老人保健施設の認知症高齢者を対象に介入研究を実施し、同プログラムの転倒予防の効果を検証する。特に対象地域を浜松、石川、関西の3地域の老人保健地域で同時に実施し、介入効果を高齢者とケアスタッフの両面から明らかにした。1.浜松地区:平成28年5月平成29年1月に介入を実施した。ペースライン(2月4月)、準介入(5月7月)、本格介入(8月10月)、追跡(11月1月)を研究計画に沿って実施した。高齢者の対象者は、介入群60名、コントロール69名であり、転倒率(転倒者・対象者)はベースライン26.66%、準介入(21.66%)、本格介入(13.33%)、追跡(16.66%)であった。本格介入ではスタッフは転倒予防チームを結成して定期的に事例検討を実施し、特に転倒した対象者の再転倒予防に取り組んだ。ケアスタッフの調査は32名を対象にアンケートを分析し、転倒予防の意識の変化の変化が明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-26293477
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省エネ・多機能型の膜分離導入下廃水処理システムの実用化
膜分離活性汚泥法(MBR)の改良型として渡辺が考案したbuffled MBRは単一槽で有機物酸化、窒素除去、リン除去が行える画期的方式である。本研究ではbuffled MBRの「信頼性の向上+低コスト化」及びそこでの「余剰汚泥からのリン回収システム」について研究した。処理能力15 m3/日のパイロットプラント実験によって以下の点を明らかにした。長さ3mのPTFE中空糸膜による実験から動力消費量として0.35kWh/m3を得た。嫌気性MBRにジルコニアメソ構造体を担持したMF膜を用いることで画期的な余剰汚泥からのリン回収システムか構築できる可能性を示した。(1) Buffled Membrane bioreactor (bMBR)の「信頼性向上+低コスト化」実現:長さ3 mのPTFE膜を用いた処理流量14.4 m3/日のbMBRによる実下水を原水とする2ケ月間の実験を行った。Flux 0.4 m/日(bMBRのHRTは6時間)において、処理水のBOD, T-N, T-Pの平均値はそれぞれ0.7, 6.8, 0.9 mg/Lであった。bMBRの消費電力は0.35 kWh/m3であった。PTFE膜モジュールのばっ気による膜洗浄効率を高めるためにモジュール直下からばっ気する構造を持つPTFE膜モジュールを考案した。このモジュールの効果を、高速度カメラによる膜の振動度計測とMBR実験によって実証した。(2) bMBR余剰汚泥からのリンの回収システムの構築:既存の下水処理場のbMBRパイロットプラントの余剰汚泥を用いた「膜分離型消化槽」による実験を行った。136日間の実験によって、61目から76日間に投入された汚泥に含有された8.0 gのT-Pの内の5.8 gが可溶化して膜透過水に回収された。しかし、約20 gのT-Pが消化槽内汚泥に蓄積していた。来年度は汚泥蓄積リンを植物根が分泌する酸性フォスファターゼによる可溶化促進に行う。リン酸を特異的に陰イオン交換によって吸着するジルコニアメゾ構造体(ZS)によるリン吸着実験を行った。粉末ZSをAramid-Polymer製の鈴形状担体に入れた粒状ZSを作成し、リン酸濃度10 mg/Lの原水を連続通水してリン酸破過実験を行った。Bed Volume 1020までリン酸の破過は無かった。粒状ZSに吸着したリン酸をアルカリ溶液で抽出し、リン回収と粒状ZSの再生を行った。50回再生利用してもZSの吸着能力の劣化はなかった。その間のリン回収率は85 %であった。長さ3mのPTFE膜を用いた処理量14.4m3/dayのbMBRによる実下水を原水とした通年実験を行った。実験時の平均Fluxは0.4m/day (bMBRのHRTは5.7時間)とした。bMBRの消費電力を0.35kWh/m3において、処理水のBOD、T-N、T-Pの平均値はそれぞれ、0.7、0.65、0.9 mg/Lであった。窒素除去とbMBRのBaffle内部(常時曝気)の酸化還元電位(ORP)及びBuffle外部の原水注入箇所(従来の1点と4点)の関係を調べる実験を行った。その結果、ORPと処理水のNH4-N及びNO3-Nの相関は高く、日平均ORPが60-80mVの場合に平均T-N濃度は3 mg/Lとなった。また4点注入によって脱窒が安定した。これらの知見は3年目の研究に生かされる。平膜を装着したbMBRにポリエチレングリコール担体を投入することで、旋回流に乗った担体が膜面と接触して効果的に膜面付着ケーキ層を剥離することで、可逆的膜ファウリングを低減することを明かにした。(2)bMBR余剰汚泥からのリン回収システムの構築既存の研究から高いリン吸着性能を示したジルコニウムを膜に担持することで、嫌気MBR中の汚泥を濃縮しつつ、リン酸を回収しうるプロセスが構築可能となる。本年度は、高透水性・高化学耐久性・高リン回収性を兼ね備えた膜を形成しうる膜原液組成の探索及びリン吸着能の評価を目的とした。原液組成14.07/66.06/15.73/4.14(PSf/NMP/PVP/ジルコニウム)の膜を作製し、公称孔径22.3 nm、表面開孔率は7.5 %の膜を得た。本膜による実下水中のリンの吸着が確認できた。また、リン酸の脱着-再吸着も可能であることが明かになった。Buffled(b) MBRの「信頼性向上+低コスト化」実現:(1)今年度は更なる省エネ化を図るために、随時Fluxを0.6 m/dとした運転を行った。この場合でも差圧の上昇も予定範囲であり、消費電力は0.23 kWh/m3である。(2)PTFE膜モジュウルの省エネ化のために、モジュール直下からばっ気するモジュールを考案し、その効果を高速度カメラによる膜の振動度計測とMBR実験によって確認した。このモジュールを装備したbMBRはさらなる省エネ化が可能である。
KAKENHI-PROJECT-25249073
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25249073
省エネ・多機能型の膜分離導入下廃水処理システムの実用化
(3)昨年度の実験では窒素除去効率が不安定であった理由として仕切り板内のORPが大幅(40-120 mv)に変動していたことを考えた。そこで、今年度はBMBRの仕切り板内ORPを制御してT-N除去を効率化を図った。その結果、ORPを60mV程度にすれば処理水のT-N濃度は2 mg/L程度となった。bMBR余剰汚泥からのリンの回収システムの構築:bMBRパイロットプラントの余剰汚泥を原料として「膜分離型消化槽」による長期間実験を行った。膜ろ過により消化槽の汚泥を高濃度化し、運転71日目にはTS濃度とVS濃度がそれぞれ20.8, 16.3 mg/Lとなった。バイオガス生成率は平均で0.42L/g-分解VSであった。76日間に投入された余剰汚泥に含有された8.0gのリンの5.8gが可溶化し膜透過水に回収されたが、約20gのリンが内に蓄積した。これをいかに可溶化するかが課題として残った。透過水のリンはジルコニアメゾ構造体(ZS)により回収できるが、膜にZSを埋め込む研究を継続している。これが成功すれば、リンを吸着した膜をアルカリ洗浄して高濃度のリン酸溶液を作ることができる。膜分離活性汚泥法(MBR)の改良型として渡辺が考案したbuffled MBRは単一槽で有機物酸化、窒素除去、リン除去が行える画期的方式である。本研究ではbuffled MBRの「信頼性の向上+低コスト化」及びそこでの「余剰汚泥からのリン回収システム」について研究した。処理能力15 m3/日のパイロットプラント実験によって以下の点を明らかにした。長さ3mのPTFE中空糸膜による実験から動力消費量として0.35kWh/m3を得た。嫌気性MBRにジルコニアメソ構造体を担持したMF膜を用いることで画期的な余剰汚泥からのリン回収システムか構築できる可能性を示した。(1)bMBRの「信頼性向上+低コスト化」実現」:通年の実験によって目標とした電力消費(0.4kwh/m3以下)で、BOD 1mg/L以下、T-N 5mg/L以下、T-P 1 mg/L以下を担保した。考案したPTFE膜モジュールをプラントに適用すれば、更なる省エネが可能であり、bMBRの優れた性能がさらに向上する可能性が示された。(2)ZSを埋め込んだポリスルフォン膜を嫌気性MBRに組み込む新しいメタンガスとリンを回収するシステムを開発出来る可能性が示された。最終年度にこのシステムの有効性を確認する。27年度が最終年度であるため、記入しない。工学(1)bMBRの「信頼性+低コスト化」実現:考案したPTFE膜モジュールを組み込んだbMBRの運転を行い、bMBRの実用化のための準備を完了する。(2)bMBR余剰汚泥からのリン回収システムの構築:ZSを埋め込んだ膜を嫌気槽内に浸漬し、膜ろ過とリン回収運転について、長期間繰り返し試験を実施する。試験を通して、膜閉塞の進行速度とリンの回収率を評価する。(1)bMBRの「信頼性向上+低コスト化」実現:水深と膜長が実規模に近いパイロットプラントの実験によってbMBRの機能が小型プラントの性能とほぼ等しいことを確認した。ただし、実験を始めたのが冬場であったため活性汚泥濃度が予定した値(10,000 mg/L)にまで上がらず、活性汚泥へのリン取り込み量が少なく処理水のT-P濃度が期待値より高かった。今年度は夏場の実験を行い、活性汚泥濃度を高めてT-P除去効率を高めたい。PTFE膜モジュールのばっ気による膜洗浄効率を高めるためにモジュール直下からばっ気する構造を持つPTFE膜モジュールを考案した。このモジュールの効果を、高速度カメラによる膜の振動度計測とMBR実験によって実証した。(2)bMBR余剰汚泥からのリン回収システムの構築: Aramid Polymer
KAKENHI-PROJECT-25249073
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地方自治体による低炭素都市・地域エネルギー計画のヒートアイランド対策評価
地球温暖化対策のために、これまでに様々な低炭素施策が提案されているが、これを実現するためには居住者の身近な生活環境との両立が必要である。そこで本研究は低炭素施策の導入により得られる省エネルギー効果とその都市熱環境への影響について明らかにすることを目的とした。本研究では、街区スケールの局所気象モデルと空調負荷計算モデルとを結びつけた都市キャノピー・ビルエネルギー連成モデルにより評価を行った。この結果、多くの省エネルギーによる施策では若干の気温低下が見られたが、PVパネルではわずかに気温上昇を伴うことなどが示された。平成24年度に行なった情報収集の結果を基にして、各自治体の提案や取り組みの事例を体系的に分類・類型化し、整理した。特徴的な事例として川崎市や横浜市、北九州市、新地町を取り上げて取り組みの状況を詳細に把握し、今後の評価対象地域について検討した。とくに、これまで評価対象地域と位置付けた川崎市に加えて、住民レベルでのICTを活用した省エネルギー実験や、火力発電所の廃熱利用、さらにLNG基地の設立による熱利用効率化などの種々の提案がなされている新地町も本研究の評価対象地域として最適であると判断し、自治体の政策担当者との協議を通じてCO2削減計画に直接貢献するとともに、今後のシミュレーションに利用可能なデータやパラメータも取得した。これと同時に、評価対象とする省エネルギー・再生可能エネルギー利用技術やその導入施策について、評価モデルに組み込むための検討を行なった。とくに今年度は川崎市における木造・耐火造住宅街区を対象として夏季の冷房負荷軽減策や、そのCO2削減効果、ヒートアイランド緩和効果についてのシミュレーションを行った。また、屋上緑化による低炭素効果について、水収支を考慮した対策評価を行なった。地球温暖化対策のために、これまでに様々な低炭素施策が提案されているが、これを実現するためには居住者の身近な生活環境との両立が必要である。そこで本研究は低炭素施策の導入により得られる省エネルギー効果とその都市熱環境への影響について明らかにすることを目的とした。本研究では、街区スケールの局所気象モデルと空調負荷計算モデルとを結びつけた都市キャノピー・ビルエネルギー連成モデルにより評価を行った。この結果、多くの省エネルギーによる施策では若干の気温低下が見られたが、PVパネルではわずかに気温上昇を伴うことなどが示された。研究対象事例を選定するため、地方自治体による環境都市計画の一環としての省エネルギー・再生可能エネルギー利用技術とその導入施策の提案や計画についての調査を行なった。とくに震災復興まちづくりの事例や環境未来都市、地域の再生可能エネルギー等を活用した自立分散型地域づくりモデル事業の事例について情報収集し、新地町、横浜市、川崎市、紫波町、瀬戸内市などの複数の自治体を今後の解析対象地域の候補として選定した。これと同時に、都市キャノピーモデル・ビルエネルギーモデルを連成した熱環境シミュレーションにより、種々の空調負荷低減技術の都市ヒートアイランドへの影響評価を行なった。とくに対策導入ケースのシナリオ作成に重点を置き、窓面の日射遮蔽、高断熱化、内部発熱削減、建物・地面緑化、高アルベド化、PVパネル導入、空調設定温度の変更の各シナリオについて効果を定量化した。この結果、本研究では局地気象・空調負荷の連成計算により、現状および各種対策ケースでの地上気温や室内熱収支、空調負荷パターンの特性を明らかにし、また、屋外温熱環境との相互作用も含めて施策導入によるCO2排出削減効果を定量化することができた。屋上緑化については、屋根面水収支の観点から散水量を定量化し、水道水利用やポンプ動力によるCO2排出量も算定し、冷房によるCO2削減量と比較し十分に小さいことを確認した。都市全体のマクロ評価では、今回の計算条件では例えば川崎市では緑化や高アルベド化による冷房負荷軽減により300400[t-CO2/日]のCO2削減効果が得られるという結果を得た。ただし、本研究で想定した施策導入シナリオは必ずしも各施策を対等に比較し得る導入条件とは言えないため、今後シナリオ設定については検討が必要である。平成25年度までに行った事例調査に基づき、川崎市を対象とした都市熱環境シミュレーションを行った。今年度は窓面の日射遮蔽、太陽光発電(PV)パネル導入、壁面・屋根面の高断熱化、室内機器の更新、冷房温度の変更の5つのCO2削減方策を評価対象として選択し、コベネフィットとしてのヒートアイランド緩和効果を含めた評価を行った。この結果、いずれの対策も省エネルギー効果とCO2削減効果が明確に生じた。また、省エネルギー効果と気温変化の関係を検討した結果、気象条件や街区条件によるばらつきが大きいものの、CO2削減方策の導入により気温低下効果が生じているケースが多く見られた。これは人工排熱削減によるヒートアイランド緩和効果が生じていることを示唆している。ただしPV導入ケースではいずれの街区においても気温が若干上昇しており、発電や日射遮蔽による人工排熱減少よりも、屋根面の低アルベド化の影響が大きく生じたことが推察される。また、高断熱化ケースでは建物表面の熱容量が小さくなるため、表面温度の変化幅が大きく、影響の生じ方が街区の条件により異なる結果となった。ただし、本研究において評価対象としたCO2削減方策はいずれも気温への影響は日平均値では0.1°C以下であり、気温への影響は大きいとは言えないという結果となった。土木環境システム今年度は主に新地町等において、自治体の政策担当者と直接協議する機会を多く設定することにより、今後の評価に必要な情報取得を効率化し、また昨年度に本研究において行った情報収集の結果に基づいて種々の知見の提供を行った。
KAKENHI-PROJECT-24760438
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24760438
地方自治体による低炭素都市・地域エネルギー計画のヒートアイランド対策評価
種々のCO2削減計画の事例について情報収集することは計画通りであるが、この結果から具体的な自治体のCO2削減計画に直接貢献することができたことは当初の計画を上回る成果である。シミュレーションについても概ね計画通りに準備を進めているが、現段階の成果で4回の学会発表を行い、さらに評価方法などについても検討を加えて2報の国内学術論文の掲載に結びつけたため、超過達成したと考えている。平成24年度は当初の目標通り、地方自治体による環境都市計画の事例について情報収集し、本研究の対象候補地域を選定した。この結果、各自治体が独自の工夫をして提案した事例も多く、単に研究対象地域の選定だけではなく、より一般性のある事例調査としても有益な知見を得た。この結果は例えば環境省のモデル事業に関する委員会においても活かすことができたため、社会的貢献に結びつけることができたと考えている。また、候補地域の一つとして選定した新地町では、自治体と連携した今後の震災復興まちづくりの計画の提案に結びつけることができた。都市キャノピーモデル・ビルエネルギー連成モデルによる熱環境シミュレーションでは、当初の計画通り種々の空調負荷低減技術の都市ヒートアイランドへの影響評価を行なった。この結果は様々な観点から有益な知見を多く含んでおり、国際会議1件を含む5件の学会発表に結びつけた。また、このモデルをベースとし、低炭素評価を含む新たな空間立地モデルと低炭素型ライフスタイルの研究提案に結びつけることができたことから、当初の計画から超過達成したと考えている。平成24、25年度に行なった省エネルギー・再生可能エネルギー利用技術に関する調査結果に基づいて、各技術のパラメータを熱環境シミュレーションに組み込む作業を行なう。負荷変動や外気条件に応じて機器運転状況やエネルギー効率や排熱特性が変化する技術については、必要に応じてサブモデル化する。次に前述した熱環境シミュレーションモデルおよび各施策・技術のサブモデルを、従前より開発を進めてきた都市・街区の土地利用、建築物、気象条件に関する情報ならびに施策導入の前提条件の入出力やCO2排出量の算出が可能な計算プラットフォームに組み込み、シミュレーション評価を行う。最終的には、得られた結果を低炭素やエネルギー安定供給と都市空間の熱環境改善とを両立するためのヒートアイランドの予測評価や対策提案、最適配置提案などの形で取りまとめ、成果の発表を行なう。平成25年度はこれまでに行なった情報収集の結果を基にして、各自治体の提案や取り組みの事例を体系的に分類・類型化し、整理する。その上で、典型的な事例や特徴的な事例を取り上げ、評価対象事例として選定する。これと同時に、評価対象とする省エネルギー・再生可能エネルギー利用技術やその導入施策について、後述する評価モデルに組み込むための検討を開始する。評価対象は今後精査を行なうが、例えば地域熱供給や分散型電源、工場廃熱利用などの事例は、本研究の目的では重要であると考えている。
KAKENHI-PROJECT-24760438
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北海道南部の地域別のアイヌ語の調査研究-主として口頭伝承を資料として-
1.音声資料の録音・録画昭和62年7・8月に次の諸地域で録音を行った.北海道沙流郡平取町において,同町荷負在住の木村キミ氏(女),同町貫気別在住の西島てる氏(女),同町旭在住の上田トシ氏(女)から神謡,昔話,歌謡を採録した.また,白老郡白老町アイヌ民族資料館にて,沙流郡平取町下荷負在住の川上まつ子氏(女)から神謡,昔話を採録した.静内郡静内町豊畑において,織田ステノ氏(女)から昔話及びユーカラ(英雄叙事詩)を,静内町春立在住の葛野辰次郎氏(男)から子守歌等を採録した.浦河郡浦河町白泉在住の岡本ユミ氏(女,様似郡様似町岡田出身)から,基礎語彙,神謡,昔話を採録した.また,アイヌ語映像資料作成のために,昔話や口頭伝承に語られている地域や風物,村落,家屋などの録画も行った.2.資料の整理,分析(1)これまでに収集した資料について,テープの聴き取り,意味解釈など,整理・分析の作業を行った.昭和62年7, 8月に上記のインフォーマントらに疑問点・不明点の質問調査を行い,『アイヌ語音声資料5』を仕上げた(印刷中).続刊の準備も進めている.(2)昨年度までに,これまで出版した『アイヌ語音声資料1』『同2』『同3』のテキストを,パーソナルコンピュータにページ番号・行番号を付けて入力してあったが,それに『アイヌ語音声資料4』を加えた.さらに印刷中の『同5』も加えて,『同4』『同5』の索引を作成する準備と,アイヌ語沙流下流方言の用例付辞書作成の準備を行った.1.音声資料の録音・録画昭和62年7・8月に次の諸地域で録音を行った.北海道沙流郡平取町において,同町荷負在住の木村キミ氏(女),同町貫気別在住の西島てる氏(女),同町旭在住の上田トシ氏(女)から神謡,昔話,歌謡を採録した.また,白老郡白老町アイヌ民族資料館にて,沙流郡平取町下荷負在住の川上まつ子氏(女)から神謡,昔話を採録した.静内郡静内町豊畑において,織田ステノ氏(女)から昔話及びユーカラ(英雄叙事詩)を,静内町春立在住の葛野辰次郎氏(男)から子守歌等を採録した.浦河郡浦河町白泉在住の岡本ユミ氏(女,様似郡様似町岡田出身)から,基礎語彙,神謡,昔話を採録した.また,アイヌ語映像資料作成のために,昔話や口頭伝承に語られている地域や風物,村落,家屋などの録画も行った.2.資料の整理,分析(1)これまでに収集した資料について,テープの聴き取り,意味解釈など,整理・分析の作業を行った.昭和62年7, 8月に上記のインフォーマントらに疑問点・不明点の質問調査を行い,『アイヌ語音声資料5』を仕上げた(印刷中).続刊の準備も進めている.(2)昨年度までに,これまで出版した『アイヌ語音声資料1』『同2』『同3』のテキストを,パーソナルコンピュータにページ番号・行番号を付けて入力してあったが,それに『アイヌ語音声資料4』を加えた.さらに印刷中の『同5』も加えて,『同4』『同5』の索引を作成する準備と,アイヌ語沙流下流方言の用例付辞書作成の準備を行った.
KAKENHI-PROJECT-62510269
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62510269
汽水域における魚類の生活史に関する生態学的研究
汽水域は海洋と陸水域との接点であり、両水域間の物質循環や生物種多様性を維持する上で重要な水域である。しかし、わが国における汽水域に関する研究は諸外国と比較した場合後れの目立つ分野である。本研究では沿岸水域との水の交換が維持されている茨城県の涸沼を汽水域の,岩手県の閉伊川を河川河口域のモデル水域として研究を行った。野外採集調査は、張り網、MTDネットによる卵仔稚魚採集、小型引き網を用いて行った。潮汐作用による涸沼と沿岸水域との魚卵仔稚魚の移動・滞留機構を解明するために,涸沼の流出河川、下涸沼川に掛かる大貫橋において,月二回の大潮の際に24時間採集調査を実施した。3時間ごとに表層と底層にMTDネットを投入し、潮汐流によって運ばれてくる魚卵・仔稚魚の採集を行った。その結果,涸沼からは62種の硬骨魚類が確認された。その多くが春から夏にかけて出現する遇来種であった。大貫橋で実施した調査の結果,7、8月にはサッパの卵が大量に採集され,涸沼水系が本種の産卵場として機能していることが示唆された。10-11月にはアユ仔魚の流下が確認された。現在アユ仔魚の滞留機構を解明すべく,データを解析中である。涸沼に周年出現したシラウオは,魚類中幼型進化的異時性を示すことで知られている。現在シラウオに見られる特異な幼型進化の持つ汽水域への適応機構を新規研究課題として実施している。閉伊川では遡河回遊型ワカサギの産卵遡上生態調査を行い,現在標本とデータを解析中である。ワカサギ仔魚流下調査も行い,多数のワカサギ仔魚を採集した。現在閉伊川河口域におけるワカサギ仔稚魚の滞留機構を研究中である。以上、二年間にわたり,涸沼と閉伊川をモデル水域として,汽水域における魚類の生活史に関する生態学的研究を実施した。平成10年10月に本研究課題の採択を通知されて以来、魚類の生活史における汽水域の持つ生態学的意義を解明すべく、閉伊川河口域(岩手県)、霞ヶ浦・北浦・涸沼(茨城県)を調査水域として研究を実施した。各水域における研究実績の概要は以下の通りである。閉伊川河口域遡河回遊型ワカサギの生活史を解明すべく、河口周辺海域において小型巻き網とサーフゾーンネットを用いた採集を行った。現在採集物を解析中である。霞ヶ浦・北浦近年、本来は両側回遊を行うアユが霞ヶ浦・北浦水系内において生活史を完結し、近年増加傾向にある。このアユの陸封化メカニズムを解明すべく、張り網、トロール網などを利用した採集調査を実施した。現在得られた標本を元に、アユ稚魚の成長履歴などの解析を行っている。涸沼涸沼水系内における魚類の生態・生活史に関して過去に収集したデータを元に、魚類目録と仔稚魚出現カレンダーを作成した。また産卵のために涸沼へ遡上するコノシロとサッパの産卵生態予備調査を実施した。現在本調査の準備中である。以上の結果を踏まえ、平成11年度には魚類の生活史にとって汽水域の持つ意義についてより総合的な調査研究と考察を行う。汽水域は海洋と陸水域との接点であり、両水域間の物質循環や生物種多様性を維持する上で重要な水域である。しかし、わが国における汽水域に関する研究は諸外国と比較した場合後れの目立つ分野である。本研究では沿岸水域との水の交換が維持されている茨城県の涸沼を汽水域の,岩手県の閉伊川を河川河口域のモデル水域として研究を行った。野外採集調査は、張り網、MTDネットによる卵仔稚魚採集、小型引き網を用いて行った。潮汐作用による涸沼と沿岸水域との魚卵仔稚魚の移動・滞留機構を解明するために,涸沼の流出河川、下涸沼川に掛かる大貫橋において,月二回の大潮の際に24時間採集調査を実施した。3時間ごとに表層と底層にMTDネットを投入し、潮汐流によって運ばれてくる魚卵・仔稚魚の採集を行った。その結果,涸沼からは62種の硬骨魚類が確認された。その多くが春から夏にかけて出現する遇来種であった。大貫橋で実施した調査の結果,7、8月にはサッパの卵が大量に採集され,涸沼水系が本種の産卵場として機能していることが示唆された。10-11月にはアユ仔魚の流下が確認された。現在アユ仔魚の滞留機構を解明すべく,データを解析中である。涸沼に周年出現したシラウオは,魚類中幼型進化的異時性を示すことで知られている。現在シラウオに見られる特異な幼型進化の持つ汽水域への適応機構を新規研究課題として実施している。閉伊川では遡河回遊型ワカサギの産卵遡上生態調査を行い,現在標本とデータを解析中である。ワカサギ仔魚流下調査も行い,多数のワカサギ仔魚を採集した。現在閉伊川河口域におけるワカサギ仔稚魚の滞留機構を研究中である。以上、二年間にわたり,涸沼と閉伊川をモデル水域として,汽水域における魚類の生活史に関する生態学的研究を実施した。
KAKENHI-PROJECT-10760114
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10760114
細胞融合の手法による新しい活性物質の生物的合成研究
報告者は一連の研究により、細胞融合法により得られたハイブリッド菌株が我々の創造力を超えた代謝産物を産生することが可能であることを示してきた。すなわち、Penicilliumcitreo-virideB IFO6200および4692を親株として作製したハイブリッド菌株KO0031からはプロテインファルネシルトランスフェラーゼ(PFTase)の阻害活性を示すシトレオハイブリドンB(IC_<50>3.6μM)を単離し、抗ガン剤の開発のための新たなリ-ド化合物を提供した。さらに、ハイブリッド菌株KO0011から天然物としては極めて稀なアゾ基を有するピロン化合物を単離した。また、この化合物はレタスの発芽種子を用いた下胚軸の伸長試験において生長抑制作用を示した。このことはシンプルなピロン類が新たな農薬のリ-ド化合物となり得ることを示唆したものと考えている。また、当初はセスタテルペノイドであると考えられていたシトレオハイブリドン類は、その後の生合成の研究によりテルペノイドとポリケチドが、まさに、ハイブリッドしたmixed polyketide-terpenoid生合成経路により生合成された極めて稀なメロテルペノイドであることを明らかにし、従来の生合成研究に大きな衝撃を与えた。さらに、天然物としては極めて稀なアゾ基を有する化合物を単離できたことは、この化合物の構造的新規性および生物活性もさることながら更めて細胞融合の手法の有用性を示すことができたものと考えている。まだ実現してはいないが、将来、細胞融合法により得られたハイブリッド菌株の産生する代謝産物から新薬が創出されることを信じている。最終目的は創薬なので時間がかかると思うが、ここ数年で足掛りはできたので12年以内に飛躍できるものと考えている。報告者は一連の研究により、細胞融合法により得られたハイブリッド菌株が我々の創造力を超えた代謝産物を産生することが可能であることを示してきた。すなわち、Penicilliumcitreo-virideB IFO6200および4692を親株として作製したハイブリッド菌株KO0031からはプロテインファルネシルトランスフェラーゼ(PFTase)の阻害活性を示すシトレオハイブリドンB(IC_<50>3.6μM)を単離し、抗ガン剤の開発のための新たなリ-ド化合物を提供した。さらに、ハイブリッド菌株KO0011から天然物としては極めて稀なアゾ基を有するピロン化合物を単離した。また、この化合物はレタスの発芽種子を用いた下胚軸の伸長試験において生長抑制作用を示した。このことはシンプルなピロン類が新たな農薬のリ-ド化合物となり得ることを示唆したものと考えている。また、当初はセスタテルペノイドであると考えられていたシトレオハイブリドン類は、その後の生合成の研究によりテルペノイドとポリケチドが、まさに、ハイブリッドしたmixed polyketide-terpenoid生合成経路により生合成された極めて稀なメロテルペノイドであることを明らかにし、従来の生合成研究に大きな衝撃を与えた。さらに、天然物としては極めて稀なアゾ基を有する化合物を単離できたことは、この化合物の構造的新規性および生物活性もさることながら更めて細胞融合の手法の有用性を示すことができたものと考えている。まだ実現してはいないが、将来、細胞融合法により得られたハイブリッド菌株の産生する代謝産物から新薬が創出されることを信じている。最終目的は創薬なので時間がかかると思うが、ここ数年で足掛りはできたので12年以内に飛躍できるものと考えている。
KAKENHI-PROJECT-08680637
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08680637
レーザビームの電気光学偏光によるマイクロ波影像装置の開発
本研究は,被検査体を透過したマイクロ波ビームの電場分布を電気光学結晶に入力されたレーザビームの偏光に置き換えることによりマイクロ波影像を得る装置を開発し,被検査体の電磁物性分布を画像化することを目的とするものである。高分解能なマイクロ波影像をリアルタイムで取得可能な装置の開発,さらにその応用としてシリコンウェーハの導電率分布の非接触計測への実用化を図る。2年継続により,(I)マイクロ波影像装置の開発,(II)マイクロ波周波数及び電気光学結晶の最適化,(III)シリコンウェーハの導電率分布の定量評価,なる3項目の研究を推進し,目標を達成する。本年度は以下の実績を得た。1.マイクロ波周波数及び電気光学結晶の最適化マイクロ波周波数,及び電気光学結晶の種類を変化させ,それぞれにおけるマイクロ波影像を得ることにより,マイクロ波影像装置におけるマイクロ波周波数,及び電気光学結晶の種別の影響を調べ,最適化を行った。これにより,高分解能,高感度の影像を実現した。2.シリコンウェーハの導電率分布の定量評価上記の研究成果を踏まえ,マイクロ波影像装置の応用例として,シリコンウェーハの導電率分布の非接触計測を実施した。種々の加工条件により導電率分布の違うシリコンウェーハ試験片を用いて,試験片を透過したマイクロ波の電場分布をマイクロ波影像装置により測定し,試験片の導電率分布によって変化するマイクロ波の応答を計測した。さらにマイクロ波の応答と従来の接触型測定法により評価される試験片の導電率から,マイクロ波による導電率の定量評価式を生成し,シリコンウェーハの導電率分布の非接触リアルタイム計測を実現した。本研究は,被検査体を透過したマイクロ波ビームの電場分布を電気光学結晶に入力されたレーザビームの偏光に置き換えることによりマイクロ波影像を得る装置を開発し,被検査体の電磁物性分布を画像化することを目的とするものである。まず,高分解能なマイクロ波影像をリアルタイムで取得可能な装置の開発を狙う。さらに,その応用としてシリコンウェーハの導電率分布の非接触計測への実用化を図る。2年継続により,(I)マイクロ波影像装置の開発,(II)マイクロ波周波数及び電気光学結晶の最適化,(III)シリコンウェーハの導電率分布の定量評価,なる3項目の研究を推進し,目標を達成する。本年度は以下の実績を得た。1.マイクロ波影像装置の開発本研究の根幹となるマイクロ波影像装置を構築した。信号源としては現有の設備であるネットワークアナライザ(HP8510C)を利用し,連続正弦マイクロ波を発生させ,ホーンアンテナを介して被検査体であるシリコンウェーハに向けて照射する。被検査体を透過したマイクロ波ビームの電場を,被検査体の後方に設置したマイクロ波影像装置中の電気光学結晶に印加すると,電気光学効果によって同結晶中に入力されたレーザビーム(現有設備であるレーザ発振装置(Millennia Vs)による)に偏光が生じる。装置中に設置した偏光ビームスプリッタにより偏光されたレーザビームを取り出し,高感度CCD検出器により,マイクロ波の電場分布の変化に対応するレーザビームの偏光を検出した。2.マイクロ波周波数及び電気光学結晶の最適化上記の研究成果を踏まえ,マイクロ波周波数,及び電気光学結晶の種類を変化させ,マイクロ波影像装置におけるマイクロ波周波数,及び電気光学結晶等の最適化を行い,より高分解能,高感度の影像の実現を図る。本研究は,被検査体を透過したマイクロ波ビームの電場分布を電気光学結晶に入力されたレーザビームの偏光に置き換えることによりマイクロ波影像を得る装置を開発し,被検査体の電磁物性分布を画像化することを目的とするものである。高分解能なマイクロ波影像をリアルタイムで取得可能な装置の開発,さらにその応用としてシリコンウェーハの導電率分布の非接触計測への実用化を図る。2年継続により,(I)マイクロ波影像装置の開発,(II)マイクロ波周波数及び電気光学結晶の最適化,(III)シリコンウェーハの導電率分布の定量評価,なる3項目の研究を推進し,目標を達成する。本年度は以下の実績を得た。1.マイクロ波周波数及び電気光学結晶の最適化マイクロ波周波数,及び電気光学結晶の種類を変化させ,それぞれにおけるマイクロ波影像を得ることにより,マイクロ波影像装置におけるマイクロ波周波数,及び電気光学結晶の種別の影響を調べ,最適化を行った。これにより,高分解能,高感度の影像を実現した。2.シリコンウェーハの導電率分布の定量評価上記の研究成果を踏まえ,マイクロ波影像装置の応用例として,シリコンウェーハの導電率分布の非接触計測を実施した。種々の加工条件により導電率分布の違うシリコンウェーハ試験片を用いて,試験片を透過したマイクロ波の電場分布をマイクロ波影像装置により測定し,試験片の導電率分布によって変化するマイクロ波の応答を計測した。さらにマイクロ波の応答と従来の接触型測定法により評価される試験片の導電率から,マイクロ波による導電率の定量評価式を生成し,シリコンウェーハの導電率分布の非接触リアルタイム計測を実現した。
KAKENHI-PROJECT-16656038
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16656038
新生仔期及び成体における神経新生のメカニズムと精神機能の分子病態
本研究ではアクチン結合分子Girdinが統合失調症の脆弱性因子であるDISC1分子と結合し、新生仔期と成体期における海馬歯状回の神経新生、特に神経芽細胞の移動と位置決定を制御していることを明らかにした。Girdinは脳室下帯で新生した神経芽細胞の嗅球への移動にも重要であることも示した。さらにGirdinのファミリー分子であるGipieおよびDapleの機能についても解析を行い、それぞれ小胞体ストレス応答およびWntシグナル伝達機構を制御することを明らかにした。本研究ではアクチン結合分子Girdinが統合失調症の脆弱性因子であるDISC1分子と結合し、新生仔期と成体期における海馬歯状回の神経新生、特に神経芽細胞の移動と位置決定を制御していることを明らかにした。Girdinは脳室下帯で新生した神経芽細胞の嗅球への移動にも重要であることも示した。さらにGirdinのファミリー分子であるGipieおよびDapleの機能についても解析を行い、それぞれ小胞体ストレス応答およびWntシグナル伝達機構を制御することを明らかにした。本研究の目的は、アクチン結合分子GirdinとDISC1の機能解析を通して生後、すなわち新生仔(児)期と成体期における神経新生の分子メカニズムと精神機能の分子病態を解明することである。さらにGirdinの発現制御機構やそのファミリー分子の細胞生物学的解析を通して、生後の神経新生を制御するより普遍的な分子ネットワークおよび細胞内シグナル伝達機構を明らかにする。本年度は下記の事項について検討した。(1) Girdinノックアウトマウスは生後4週程で死亡する。時期・組織選択的にGirdin遺伝子を欠失させることが可能なコンディショナル遺伝子改変マウスを作成するためにGirdin遺伝子の開始コドンを含むexon1領域の前後にloxPサイトを、intron2にFlp発現によって除去できるneomycin耐性遺伝子を導入するターゲティングベクターを作成し、ES細胞に導入、続いてG418による薬剤選択を行い複数のES細胞クローンを得た。サザン分析により組み換えES細胞を得た後、胚盤胞への注入によりキメラマウス、さらにFlマウスまで作出した。(2) GirdinのN末端を強制発現するとGirdinとDISC1の結合が阻害されることを事前に生化学的手法で確認している。今年度はラット新生仔(生後6日目)の海馬歯状回にGirdin shRNA(shorthairpin RNA)およびGidinのN末端ドメインを組み込んだレトロウイルスを注入し、その2週間後、幹細胞から分化した神経前駆細胞の移動と位置を観察した。その結果、Girdinをノックダウンした場合と同様に、GirdinのN末端を発現した神経細胞でも、新生神経細胞の位置異常が観察された。このことはGirdinとDISC1の結合が新生神経細胞の分化、特に細胞移動や位置決定に関わることを示しており、米国科学誌に報告した(Enomoto, A. etal, Neuron 63:774-87,2009)。本研究の目的は、アクチン結合分子GirdinとDISC1の機能解析を通して生後、すなわち新生仔(児)期と成体期における神経新生の分子メカニズムと精神機能の分子病態を解明することである。さらにGirdinの発現制御機構やそのファミリー分子の細胞生物学的解析を通して、生後の神経新生を制御するより普遍的な分子ネットワークおよび細胞内シグナル伝達機構を明らかにする。本年度は下記の事項について検討した。(1)時期・組織選択的にGirdin遺伝子を欠失させることが可能なコンディショナル遺伝子改変マウスを作成するためのF1マウスを作出した。今年度はさらに神経組織特異的にCreリコンビナーゼを発現するnestin-Creマウスと掛け合わせることで、神経特異的遺伝子改変マウスを作成した。海馬歯状回および脳室下帯における組織学的解析を現在実施している。(2)脳室下帯で産生される新生神経細胞の移動におけるGirdinとDISC1の意義を引き続き組織学的に解析した(Wang et al., in revision)本研究の目的は、アクチン結合分子Girdinと統合失調症原因因子DISC1の機能解析を通して生後、すなわち新生仔(児)期と成体期における神経新生の分子メカニズムと精神機能の分子病態を解明することである。さらにGirdinのファミリー分子の細胞生物学的解析を通して、生後の神経新生を制御するより普遍的な分子ネットワークおよび細胞内シグナル伝達機構を明らかにする。平成23年度は下記の点について明らかにした。(1)昨年度までにGirdin遺伝子の神経特異的遺伝子改変マウスを作成した。海馬歯状回および脳室下帯における組織学的解析を施行したところ、ノックアウトマウスと同様に新生ニューロンの著明な移動異常や位置異常が確認された。また生後3-4週間程で死亡することも明らかとなり、新生仔(児)期の海馬あるいは脳室下帯における神経新生が生存に必要であることも示唆された。(2)脳室下帯で産生される新生神経細胞の移動におけるGirdinとDISC1の意義を引き続き組織学的に解析し、論文を報告した。(3)Girdinのヘテロノックアウトマウス(Girdin+/-)において行動解析を施行したところ、海馬依存的な記憶の障害がみられることを明らかにした。一方、学習や新規対象認識試験では異常が観察されなかった。(4)統合失調症では介在ニューロンの異常が報告されている。生後10日目のGirdinノックアウトマウスにおいて介在ニューロンを各種マーカーの抗体を用いて染色したところ、パルブアルブミン陽性の介在ニューロンが著明に減少していることが明らかとなった(投稿準備中)。
KAKENHI-PROJECT-21689013
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21689013
新生仔期及び成体における神経新生のメカニズムと精神機能の分子病態
(5)Girdinのファミリー分子であるDapleの機能解析を行い、Wntシグナル依存的な低分子量Gタンパク質Racの活性を制御することを示した(論文投稿中)。
KAKENHI-PROJECT-21689013
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21689013
隣接水酸基同時除去による糖類からのジデオキシ糖の触媒的合成
酸化セリウムへ高分散担持した酸化レニウムをパラジウム金属粒子で修飾したReOx-Pd/CeO2触媒が、シス位で隣接する水酸基を持った様々な糖のメチルグリコシドを、酸化レニウム種を活性点とし、水素分子を還元剤とする脱酸素脱水反応と、パラジウム粒子表面上で進行する炭素ー炭素二重結合の水素化により、対応するジデオキシ糖のメチルグリコシドへ高い収率で変換できることを示した。さらに、水溶液中でジデオキシ糖のメトキシ基を水酸基に置換し、開環で生成した炭素ー酸素二重結合を水素化することで、光学活性なトリオールを高い収率、高い鏡像体過剰率で与えることも示した。糖類と水素の反応により、ジデオキシ糖(2つのC-OHをC-Hへと脱酸素されたもの)を選択的に与える固体触媒反応システムの開発を目的とする。糖類は、その分子中に数多くの水酸基(C-OH)を持っており、そのため、糖類を還元し、デオキシ糖を選択的に得るには、非常に精度の高い官能基認識能が必要となり、通常酵素反応が用いられてきている。これに対して、本研究は、最も安価な水素を還元剤として用いることを可能とすると同時に、酵素に置き換わるポテンシャルを持つ固体触媒の開発を目指す。固体触媒と還元剤としてを用いることが可能になれば、生成物と触媒の分離の簡便性、十分な耐熱性を活かしたより高温反応による劇的な反応速度向上、原子効率の高い触媒変換などにつながることも期待される。本年度は、ReOx-Pd/CeO2を固体触媒として用い、様々なメチルグリコシドを基質として触媒反応を行ったところ、隣接してシス位に位置する水酸基二つを同時に除去できることを示した。生成物はほとんどが市販されてないものであるため、生成物の単離や単離された生成物の構造解析などについても行った。例えば、メチルα-D-マンノピラノシドを基質として用いた場合に、反応条件の最適化を行った結果として、ガスクロマトグラフから求めた収率で96%、単離収率で91%という高い収率で目的生成物が得られることを示した。触媒の反応前後の構造解析や触媒再使用性の検討などについて今後行っていく予定である。平成28年度の実施予定の研究が順調に行えたため。糖類と水素の反応により、ジデオキシ糖(2つのC-OHをC-Hへと脱酸素されたもの)を選択的に与える固体触媒反応システムの開発を目的とする。糖類は、その分子中に数多くの水酸基(C-OH)を持っており、そのため、糖類を還元し、デオキシ糖を選択的に得るには、非常に精度の高い官能基認識能が必要となる。これに対して、本研究は、最も安価な水素を還元剤として用いることを可能とすると同時に、酵素に置き換わるポテンシャルを持つ固体触媒の開発を目指し、平成27年度の研究成果として、酸化セリウム上の担持した酸化レニウム触媒をパラジウム金属粒子で修飾したReOx-Pd/CeO2触媒が、シス位で隣接する水酸基を持った様々な糖のメチルグリコシドを、酸化セリウム上の担持した酸化レニウム種を活性点とし、水素分子を還元剤とする脱酸素脱水反応と、パラジウム粒子表面上で進行する炭素ー炭素二重結合の水素化により、対応するジデオキシ糖のメチルグリコシドへ高い収率で変換できることを見いだした。本年度は、この有効な触媒について、活性点構造として、酸化セリウム上で単核状に分散した酸化レニウム種が考えられること、酸化レニウム種の+4と+6の間での酸化・還元で触媒反応が進行していることなどを明らかにした。また、ここで開発した触媒は、適切な手続きを踏むことで容易に再使用できることも示した。。本反応系では、固体触媒と還元剤を用いることが可能になり、生成物と触媒の分離の簡便性、十分な耐熱性を活かしたより高温条件での反応速度向上、原子効率の高い触媒変換につながることが示された。などにつながることも期待できる。酸化セリウムへ高分散担持した酸化レニウムをパラジウム金属粒子で修飾したReOx-Pd/CeO2触媒が、シス位で隣接する水酸基を持った様々な糖のメチルグリコシドを、酸化レニウム種を活性点とし、水素分子を還元剤とする脱酸素脱水反応と、パラジウム粒子表面上で進行する炭素ー炭素二重結合の水素化により、対応するジデオキシ糖のメチルグリコシドへ高い収率で変換できることを示した。さらに、水溶液中でジデオキシ糖のメトキシ基を水酸基に置換し、開環で生成した炭素ー酸素二重結合を水素化することで、光学活性なトリオールを高い収率、高い鏡像体過剰率で与えることも示した。ReOx-Pd/CeO2の有効性について前年度で示すことができ。触媒については、さらに担体(ZrO2, Al2O3, SiO2, TiO2等)の依存性、Reの担持量の依存性、添加金属の依存性(Pd, Pt, Rh, Ru, Au等)を検討し、性能決定している因子についての知見を得たいと考えている。前年度の結果も踏まえて、最も優れた触媒について反応条件をさらに最適化しながら触媒性能評価を行う。反応前後の触媒の構造解析(XRD, BET, Raman, FTIR, EXAFS, XANES, XPS,吸着量測定等)を行い、活性点となっていることが想定されているRe種の構造、担体との相互作用に着目してキャラクタリゼーションを行う。また、触媒の再利用性を評価する。
KAKENHI-PROJECT-16K14473
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K14473
隣接水酸基同時除去による糖類からのジデオキシ糖の触媒的合成
触媒反応機構については、反応速度の水素分圧依存性と基質濃度依存性を測定し、反応次数をえて、その結果に基づいて速度論解析を行う。また、基質と触媒表面の相互作用についても検討する。触媒化学
KAKENHI-PROJECT-16K14473
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K14473
表出言語と知能に障害をもつ病児の電子合成音声による認知開発と社会参加への看護支援
平成19年度は前年度の結果を基に引き続き臨床検討を行った。倫理的配慮・契約は前年度に準じた。滋賀県立大学では、保育園1園、中学校(障害児学級)1校の協力を得て、表出言語障害のある知的発達障害児を対象として、それぞれの職員に現場の生活指導の用具として使用をしてもらい、ソフトの実用性について検討した。結果、両施設とも、相手の返答や表情への反応と、コミュニケーションを理解して楽しむ場面が見られるようになった。この他に保育園では機器に興味を持ち関わってきた他児と対象児が普段はもつことが困難な場面共有と、言葉を発する必然性を子どもが感じる場を生み出せた。中学校では保護者や職員のみが理解可能な対象児固有の言葉を一般社会で通じる言葉へ置き換える指導に用いて効果が認められた他、授業中の表情が能面様から穏和な笑顔になり、多動が消失して着席が維持できるようになった。昼休みも引きこもらず、他児と同じ部屋で研究ソフトの入ったパソコンで遊ぶようになった。検討終了時には、使用した教員および協力者以外の子どもと親から、研究継続への協力の申し出と機材使用の要望があった。神戸大学では、養護学校に通学中の子どもを対象に臨床評価(1ヶ月の介入プログラム)を行うため、ある養護学校の協力を得て2台の機器(Uribow Talk)を用いて介入し、表出言語能力の異なる2名の実践検討を行った。対象者には、事象(食事が出てくる,音楽がかかるなど)が機器から発声される音声の内容に合わせて起こることへの理解が形成され、機器に興味を持つようになった。また、要求を示す音声を使用すると、機器使用への要求が高まる様子が見られ、要求に基づいた言語を機器にセッティングすることで言語理解を効果的に高められる可能性が示唆された。以上のことから、開発ソフトの活用範囲は広く、各発達段階に応じた言語認知と社会性の発達支援に貢献できる可能性が示唆された。平成19年度は前年度の結果を基に引き続き臨床検討を行った。倫理的配慮・契約は前年度に準じた。滋賀県立大学では、保育園1園、中学校(障害児学級)1校の協力を得て、表出言語障害のある知的発達障害児を対象として、それぞれの職員に現場の生活指導の用具として使用をしてもらい、ソフトの実用性について検討した。結果、両施設とも、相手の返答や表情への反応と、コミュニケーションを理解して楽しむ場面が見られるようになった。この他に保育園では機器に興味を持ち関わってきた他児と対象児が普段はもつことが困難な場面共有と、言葉を発する必然性を子どもが感じる場を生み出せた。中学校では保護者や職員のみが理解可能な対象児固有の言葉を一般社会で通じる言葉へ置き換える指導に用いて効果が認められた他、授業中の表情が能面様から穏和な笑顔になり、多動が消失して着席が維持できるようになった。昼休みも引きこもらず、他児と同じ部屋で研究ソフトの入ったパソコンで遊ぶようになった。検討終了時には、使用した教員および協力者以外の子どもと親から、研究継続への協力の申し出と機材使用の要望があった。神戸大学では、養護学校に通学中の子どもを対象に臨床評価(1ヶ月の介入プログラム)を行うため、ある養護学校の協力を得て2台の機器(Uribow Talk)を用いて介入し、表出言語能力の異なる2名の実践検討を行った。対象者には、事象(食事が出てくる,音楽がかかるなど)が機器から発声される音声の内容に合わせて起こることへの理解が形成され、機器に興味を持つようになった。また、要求を示す音声を使用すると、機器使用への要求が高まる様子が見られ、要求に基づいた言語を機器にセッティングすることで言語理解を効果的に高められる可能性が示唆された。以上のことから、開発ソフトの活用範囲は広く、各発達段階に応じた言語認知と社会性の発達支援に貢献できる可能性が示唆された。本年度は初年度であり、まず、電子合成音声補助具の内容に関するニーズ調査を行った。結果、内容・仕様のニーズについては、その家族の文化的価値概念・生活習慣が多種多様であり、個々の家族がそれぞれの生活で活用できる補助具を想定すると、プリセットする音声内容の標準化が非常に困難であることが明らかになった。そこで、標準化した音声を使用するのではなく、音声は母親もしくは父親が自分でパソコンに向かって録音し、それを自動的に父親の声は男児の声に、母親の声は女児の声に変換するシステムを開発した。使用機器については、研究開発後の臨床現場への普及を容易にするため、市販タブレットPCを使用することにし、知的障害があり、巧緻性も低い対象児が使用可能で最軽量のものを検索し990gのFUJITSUFMV-P8210(Windows(R)XP TabletPC Edition)を用いることにした。また、今回、携帯して使用することが前提であるので、移動時の携帯負担感の少なさと機材保護を重視した携帯用ケースを開発した。また、動作はタッチパネル画面で行うが、数量に制限のあるアイコンについても、上記の理由により、標準化が困難なため、自由にテキストを入力し,それをボタンに表示するようにした。また、アイコンの表示ボタンは弱視者にも識別が容易なように濃い色にし、認知を容易にするシンボリックなイラストも準備した。さらに個別的な認知を容易する写真などの画像を保護者が自由にアイコンに貼り付けられるように設定した。本年度は以上の内容のα版およびβ版の電子合成音声オーサリングソフトウェアの開発をもって終了した。
KAKENHI-PROJECT-17592260
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17592260
表出言語と知能に障害をもつ病児の電子合成音声による認知開発と社会参加への看護支援
今年度準備した機器およびソフトウェアにより、次年度は実践検討に入る予定であり、モニターの募集・選定・依頼も終了している。本年度は初年度に開発したソフトを用い、実践検討を行った。パソコンは既存で最軽量990gのFUJITSU FMV-P8210(Windows (R)XPTablet PC Edition)を用いた。対象児は、保育園1園、療育教室1園の協力を得て、表出言語障害のある知的発達障害児を募集した。実施にあたっての倫理的配慮では、施設としての倫理的配慮も検討され、両施設とも実質機材を利用する担当保育士を保護者代理とすることを条件としたため、研究者は施設長ほか直接関係職員に研究目的と実施内容を説明して了承を得て、保護者への説明は施設関係者が行った。保育園に関しては保護者との面接を許可され、直接説明も行った。書面契約については両施設とも、保護者との契約は実践する施設が行い、研究者との契約は施設長と取り交わした。保育園の対象児は自閉性障害のCA4歳の女児1名が使用し、自由保育場面で使用した。結果、VTR記録でソフトを媒体として、他児との交流ができるようになった様子が確認でき、子どもが社会への参加が促進された。療育教室の対象児は先天性コルネリア症候群でMA1歳9ケ月のCA6歳の男児、自閉性障害でMA2歳8ケ月のCA5歳の男児、原因不明でMA2歳6ケ月のCA4歳の男児、MAの検査が不可能なCA4歳の男児、の計4名であうた。4名は来訪時、おやつの時間、遊具の選択、帰宅時に使用した。結果、来訪時と帰宅時の挨拶で、対人面での効果が認められたが、他の場面では機材がタイミングよく作動せず、活用が困難だったことや、音量が最大にしても静かなところでないと聞き取りにくいなど、機材の能力的な限界が指摘され、家庭では使用が困難だろうとの見解が示された。しかし、両施設とも、このソフトが既存の物より、重度の障害児には使用できる可能性が高いとの評価を示し、使用方法の工夫と対象とする児を検討して、次年度も使用を続行したいと要望しており、次年度も両施設での実践検討を予定している。平成19年度は前年度の結果を基に引き続き臨床検討を行った。倫理的配慮・契約は前年度に準じた。滋賀県立大学では、保育園1園、中学校(障害児学級)1校の協力を得て、表出言語障害のある知的発達障害児を対象として、それぞれの職員に現場の生活指導の用具として使用をしてもらい、ソフトの実用性について検討した。結果、両施設とも、相手の返答や表情への反応と、コミュニケーションを理解して楽しむ場面が見られるようになった。この他に保育園では機器に興味を持ち関わってきた他児と対象児が普段はもつことが困難な場面共有と、言葉を発する必然性を子どもが感じる場を生み出せた。中学校では保護者や職員のみが理解可能な対象児固有の言葉を一般社会で通じる言葉へ置き換える指導に用いて効果が認められた他、授業中の表情が能面様から穏和な笑顔になり、多動が消失して着席が維持できるようになった。昼休みも引きこもらず、他児と同じ部屋で研究ソフトの入ったパソコンで遊ぶようになった。検討終了時には、使用した教員および協力者以外の子どもと親から、研究継続への協力の申し出と機材使用の要望があった。
KAKENHI-PROJECT-17592260
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抗菌成分含有口腔ケア剤による高齢者の口腔および全身疾患発症予防の可能性について
申請者らは,これまで天然抗菌成分カテキン含有ジェルを開発し,in vitroで口腔正常維持に関わる菌群に影響を与えず,齲蝕原因菌や歯周病原菌などに対して抗菌効果を示すことを確認した。今回,このジェルの臨床でのパイロット実験を実施した結果,日和見感染症の起因菌を含め,口腔の微生物叢・数のコントロールと長期使用の可能性を見出した。一方,新たな天然抗菌成分としてアリルイソチオシアネートおよびイオン水を見出し,これらが歯周病原菌およびC. albicansに対して顕著な抗菌効果を発揮することを確認した。したがってこれらの抗菌成分は高齢者の健康維持とQOLの向上に貢献できる可能性が示唆された。申請者は抗菌,抗真菌,抗ウイルスおよび抗酸化作用を持つ天然抗菌成分カテキンを含有する抗菌ジェルを開発し,in vitroにおいて要介護高齢者の口腔において有害な病原菌に対して抗菌効果を示すが,口腔の正常維持に関わるレンサ球菌には影響を与えないことから,臨床での口腔の微生物叢・数のコントロールと長期応用の可能性を見出した。さらに,このジェルはin vitroで肺炎および日和見感染症の起因菌である肺炎レンサ球菌、黄色ブドウ球菌および緑膿菌に対しても抗菌効果を示すことを確認した。また,口腔、特に義歯装着率の高い高齢者から優勢に検出され,口腔カンジダ症の原因真菌であるCandida albicansにも抗菌効果を発揮することを確認するとともに,その抗菌機序は菌のATP産生量の減少および病原性を発揮する菌糸形への変換を遺伝子レベルで抑制することを解明した。一方,日本大学歯学部倫理委員会より承認を受け,研究に同意を得た要介護高齢者を対象とした臨床実験を実施した。その結果,カテキンジェルを4週間,口腔内に塗布することによって齲蝕原因菌,歯垢成熟に関与する菌,歯周病原菌群およびC. albicansそれぞれの菌数が有意に減少した。しかし,口腔の正常維持に関わる口腔レンサ球菌群菌数への影響は認められず,in vitroの実験結果と同様な抗菌効果を臨床で発揮することを確認した。これらの結果から,開発したカテキンジェルは要介護高齢者の口腔内微生物数のコントロールに有用で,かつ,長期使用が出来ることから,口腔病原微生物が関与する口腔ならびに全身疾患の発症予防に役立ち,健康維持とQOLの向上に貢献できる可能性が示唆された。本年度の進捗状況は,1.歯周病原菌群に対する抗菌機序の解明を企画したが,時間およびマンパワー不足の関係で検討に至らず残念であり,次年度に繰り越すこととなった。2.カテキンジェルの要介護高齢者口腔内の日和見感染病原体への影響を検討した結果,緑膿菌,ブドウ球菌および肺炎レンサ球菌数は有意に減少し,口腔が原因となる日和見感染症の発症予防に役立つ可能性が考えられた。3.健康高齢者を対象として実験を実施した結果,要介護高齢者の場合とほぼ同様な結果となり,口腔内微生物コントロール効果が確認され,現在詳細な分析を行っている。4.バイオアクティブガラスから放出される金属イオンがCandida albicansに及ぼす影響を検討した結果,発育を阻害するとともに,この真菌が病原性を発揮する酵母形から菌糸形への変換も抑制することが確認され,このガラスを義歯床用レジンに含有させることにより,高齢者の口腔カンジダ症および関連する真菌症の発症予防に寄与する可能性が考えられた。申請者らは、まず.抗微生物および抗酸化作用を持つ天然抗菌成分カテキン含有ジェルを開発し,in vitroで口腔の正常維持に関わるレンサ球菌群には影響を与えないが,齲蝕原因菌,歯周病原菌などの有害な病原菌に対して抗菌効果を示すことを確認し,臨床での口腔の微生物叢・数のコントロールと長期使用の可能性を見出した。さらに,口腔に限局せず一般病原菌である肺炎レンサ球菌,黄色ブドウ球菌および緑膿菌に対しても抗菌効果を示すことを確認した。また,口腔カンジダ症の原因真菌であるCandida albicansにも抗菌効果を発揮すること,その抗菌機序は菌のATP産生量の減少および病原性(付着能,菌糸形変換およびタンパク分解酵素産生能)の阻害で,これらは遺伝子レベルで抑制することを解明した。一方,日本大学歯学部倫理委員会より承認を受け,研究に同意を得た要介護高齢者を対象とした臨床でのパイロット実験を実施した。In vivoでの実験の結果,カテキンジェルを4週間,口腔内に塗布することによって齲蝕原因菌,歯垢成熟に関与する菌,歯周病原菌群およびC. albicansそれぞれの菌数が有意に減少した。一方,in vitroと同様に口腔の正常維持に関わる口腔レンサ球菌群菌数への影響は認められず,選択的抗菌効果を示したことから,臨床においても十分有用な抗菌効果を発揮するものと考えられた。これらの結果から,開発したカテキンジェルは要介護高齢者の口腔内微生物数のコントロールに有用で,かつ,長期使用が出来ることから,口腔病原微生物が関与する口腔ならびに全身疾患の発症予防に役立ち,健康維持とQOLの向上に貢献できる可能性が示唆された。さらに臨床で応用可能な新たな抗菌作用を見出し,新たな口腔ケア剤の開発へと繋がるものと示唆される。本年度の進捗状況は,1.加齢および性別が口腔細菌叢の変化に与える影響について検討する目的で研究に賛同を得た健康被験者と,実験予定にはなかった障害者から唾液を採取し,次世代シークエンス機器(MiSeq,Illumina)による菌叢解析と,real-time PCR法による菌数,特に歯周病原菌数の算定を行い,比較検討を行った。
KAKENHI-PROJECT-15K11456
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抗菌成分含有口腔ケア剤による高齢者の口腔および全身疾患発症予防の可能性について
その結果,次世代シークエンスの結果では,両被験者とも口腔レンサ球菌群が優勢で検出比率がもっとも高かった、しかし,全菌叢に占めるその割合は健康高齢者の方が高く,他の主だった菌属に相違が見られた。Real-time PCRによる歯周病菌数の解析では健康高齢者の方が多く認められた。今後得られたデータから年齢・性別の相違について分析する予定である。2.カテキンジェル塗布が口腔細菌叢に与える影響として1.の被験者を対象に口腔ケア剤であるカテキンジェルの口腔内塗布による細菌叢の構成と菌数変化を同様に評価したところ,両解析法において塗布による両被験者の口腔レンサ球菌属菌への影響は認められなかった。一方,real-time PCR法では歯周病原菌群およびカンジダ菌数が減少し,特に健康高齢者で有意差が認められた。3.新たな抗菌成分による抗菌効果の検討としてバイオアクティブガラスから放出するイオンの歯周病原菌・病原性因子の抑制効果を検討したところ,歯周病原菌のP. gingivalisの発育,タンパク分解酵素であるRpgおよびKgp活性および血球凝集能を濃度依存的に抑制することを確認した。申請者らはこれまで抗微生物および抗酸化作用を持つ天然抗菌成分カテキン含有ジェルを開発し,in vitroで口腔の正常維持に関わるレンサ球菌群には影響を与えないが,齲蝕原因菌,歯周行原菌などの有害な病原菌に対して抗菌効果を示すことを確認した。一方,日本大学歯学部倫理委員会より承認を受け,研究に同意を得て要介護高齢者を対象とした臨床でのパイロット実験を実施し口腔の微生物叢・数のコントロールと長期使用の可能性を見出したことから,臨床においても十分有用な抗菌効果を発揮するものと確信した。さらに肺炎および日和見感染症の起因菌である肺炎レンサ球菌,黄色ブドウ球菌および緑膿菌に対しても抗菌効果を示すことも確認した。以上の結果から,今回はカテキン以外の新たな天然抗菌成分を検索する目的で実験を重ねたところ,ワサビの主成分であるアリルイソチオシアネートが選択的抗菌効果を有し,歯周病原菌およびC. albicnasに対して抗菌効果を示すことが明らかとなった。さらにその他の抗菌成分を検索した結果,6種類の混合陽・陰イオン水がC. albicansの発育を阻害するとともに病原因子(付着能,二形性変換能およびタンパク分解酵素産生能)を著しく抑制することを確認した。これらの実験結果から,新たに見出したアリルイソチオシアネートおよびイオン水を臨床に応用することは,新しい歯周病およびカンジダ症の予防法の確立と,高齢者の健康維持およびQOLの向上に貢献できる可能性が示唆された。現在,歯周病原菌の病原因子に対する抗菌効果および抗菌機序について検討中である。申請者らは,これまで天然抗菌成分カテキン含有ジェルを開発し,in vitroで口腔正常維持に関わる菌群に影響を与えず,齲蝕原因菌や歯周病原菌などに対して抗菌効果を示すことを確認した。今回,このジェルの臨床でのパイロット実験を実施した結果,日和見感染症の起因菌を含め,口腔の微生物叢・数のコントロールと長期使用の可能性を見出した。一方,新たな天然抗菌成分としてアリルイソチオシアネートおよびイオン水を見出し,これらが歯周病原菌およびC. albicansに対して顕著な抗菌効果を発揮することを確認した。
KAKENHI-PROJECT-15K11456
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DNAの構造的性質に基づくゲノムクロマチンの構築原理の解明
本研究は,DNAの構造的性質に基づいたゲノムクロマチンの構築とその遺伝子発現制御における役割を明らかにすることを目的として,以下の三つの観点から研究を展開した.真核生物ゲノムに散在するさまざまな種類の単純反復配列が,in vivoでのヌクレオソーム形成に及ぼす影響について,酵母ミニ染色体のアッセイ系を用いて解析した.その結果,ヌクレオソーム形成に対する効果として,阻害的に働く配列から促進的に働く配列まで4つのグループに分類できた.2.特殊なDNA構造によるクロマチンの改変を利用した転写制御機構の解析出芽酵母α細胞ではa-細胞特異的遺伝子はα2/Mcm1pによって抑制されており、そのプロモーターではヌクレオソームがポジショニングしている。本研究において、ヌクレオソーム形成を阻害するDNA配列を用いて,出芽酵母ゲノムBAR1遺伝子座およびSTE6-lacZプラスミドにおいて解析した結果,a-細胞特異的遺伝子の転写抑制にはヌクレオソームポジショニングが本質的な役割を果たしていることが実証された.3.トリプレットリピート配列の特殊DNA構造とクロマチンの構築神経筋疾患遺伝病の原因となるトリプレットリピート配列(CTG,CGG,GAAリピート)がクロマチン構造と遺伝子発現に及ぼす影響をin vivoで明らかにした.さらに,Friedreich運動失調症の原因となるリピートについて,sticky DNAとクロマチンとの関係について考察した.以上,DNAの構造的性質がin vivoにおけるヌクレオソーム形成に重要な役割を果たしていることが明らかになった.さらに,本研究は,DNA構造によるクロマチンの改変によって遺伝子発現を人為的に制御できる可能性を示している.本研究は,DNAの構造的性質に基づいたゲノムクロマチンの構築とその遺伝子発現制御における役割を明らかにすることを目的として,以下の三つの観点から研究を展開した.真核生物ゲノムに散在するさまざまな種類の単純反復配列が,in vivoでのヌクレオソーム形成に及ぼす影響について,酵母ミニ染色体のアッセイ系を用いて解析した.その結果,ヌクレオソーム形成に対する効果として,阻害的に働く配列から促進的に働く配列まで4つのグループに分類できた.2.特殊なDNA構造によるクロマチンの改変を利用した転写制御機構の解析出芽酵母α細胞ではa-細胞特異的遺伝子はα2/Mcm1pによって抑制されており、そのプロモーターではヌクレオソームがポジショニングしている。本研究において、ヌクレオソーム形成を阻害するDNA配列を用いて,出芽酵母ゲノムBAR1遺伝子座およびSTE6-lacZプラスミドにおいて解析した結果,a-細胞特異的遺伝子の転写抑制にはヌクレオソームポジショニングが本質的な役割を果たしていることが実証された.3.トリプレットリピート配列の特殊DNA構造とクロマチンの構築神経筋疾患遺伝病の原因となるトリプレットリピート配列(CTG,CGG,GAAリピート)がクロマチン構造と遺伝子発現に及ぼす影響をin vivoで明らかにした.さらに,Friedreich運動失調症の原因となるリピートについて,sticky DNAとクロマチンとの関係について考察した.以上,DNAの構造的性質がin vivoにおけるヌクレオソーム形成に重要な役割を果たしていることが明らかになった.さらに,本研究は,DNA構造によるクロマチンの改変によって遺伝子発現を人為的に制御できる可能性を示している.本研究は,DNAの構造的性質に基づいたゲノムクロマチンの構築とその遺伝子発現制御における役割を解明することを目指している。まず、特殊なDNA構造を形成してヌクレオソームを破壊するホモポリマー配列A_<34>を用いて、出芽酵母α2/Mcm1pによる転写抑制機構について検討した。A_<34>配列を挿入すると、a、αいずれの細胞においても、転写の活性化が見られ、ヌクレオソームが転写制御に重要であることが示された.次に、ヌクレオソームがTATA-box結合タンパク質(TBP)の結合を阻害して転写を抑制するという作業仮説を検証するために、TBPを人為的にリクルートする実験系を構築した。その結果、A_<34>配列の挿入は、TBPの人為的リクルートを促進して転写を脱抑制することが示された。したがって、α2/Mcm1pによるa細胞特異的遺伝子の転写制御について、ヌクレオソームのポジショニングは重要な転写抑制機構の一つであると結論づけられた。次に、神経筋疾患遺伝病の原因であるトリプレットリピートの伸長とDNAの特殊な高次構造形成との関係に着目して、CTG、CGG、GAAリピートについて、酵母ミニ染色体におけるクロマチン構造と遺伝子発現に及ぼす影響について検討した。(CTG)_<12>はヌクレオソームの形成を促進するが、(CGG)_<12>はそれを阻害した。また、(GAA)_<12>はヌクレオソーム形成に大きな影響はなかった。さらに、(CGG)_<12>は転写を活性化し、(CTG)_<12>は抑制することが示された。この結果は、それぞれの配列がヌクレオソーム形成に及ぼす効果と関連づけて説明することができた。以上の結果は、DNA構造によって規定されるクロマチンの構造が転写制御に重要な役割を果たしていることを示している。本研究は、DNAの構造的性質に基づいたゲノムクロマチンの構築とその遺伝子発現制御における役割を明らかにすることを目的としており、以下の二つの観点から研究を展開した。1.特殊なDNA構造によるクロマチンの改変を利用した転写制御機構の解析:出芽酵母α細胞ではa-細胞特異的遺伝子(BAR1など)はα2/Mcm1Pによって抑制されており、そのプロモーターではヌクレオソームがポジショニングしている。
KAKENHI-PROJECT-14572079
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14572079
DNAの構造的性質に基づくゲノムクロマチンの構築原理の解明
本研究において、非B型構造を形成するpoly dA・poly dT、poly dG・poly dC配列をBAR1プロモーターに挿入したところ、BAR1の脱抑制が起こりα-factorが分解された。この結果は、ヌクレオソームポジショニングが転写抑制に重要な役割を果たしていることを示しているとともに、DNA構造に基づくヌクレオソーム配置の改変によってin vivoで転写活性を制御できる可能性を提示している。2.トリプレットリピート配列の特殊DNA構造とクロマチンの構築:ゲノムの反復配列とクロマチンの構築という観点から、神経筋疾患遺伝病の原因となるトリプレットリピート配列のクロマチン構造の特徴について研究を進めている。今年度は、Friedreich運動失調症の原因となるGAAリピートに焦点を絞った。近年、GAAリピートは三重鎖DNAを基盤としたsticky DNA構造を形成することが報告されており、Friedreich失調症との関連が注目されている。今回、様々な長さの(GAA)_n(n=12,23,89,126)をヌクレオソーム中央部位またはヌクレオソームフリー領域に挿入したミニ染色体を構築して、そのクロマチン構造を解析した。その結果、GAAリピートが長くなるほど、ミニ染色体におけるヌクレオソームポジショニングが破壊されることが示され、sticky DNAの形成との関連が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-14572079
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魚類の還元的カロテノイド代謝に関わる新奇酵素の探索
魚類の体色発現に関与している代表的な色素であるカロテノイドには、様々な分子種が存在する。それらの代謝メカニズムは魚種により異なり、海水魚の多くは酸化的代謝を行うのに対し、ティラピアやアユ等の淡水魚には、還元的な代謝を行うものが存在する。カロテノイドの酸化的代謝に関与する酵素遺伝子については、細菌や植物において、その同定がすでに行われている。しかし、カロテノイドの還元的代謝経路に関与する酵素に関する情報は、ほぼ皆無に等しい。そこで本研究では、魚類における還元的カロテノイド変換に関与する酵素遺伝子を単離・同定し、魚類における還元的カロテノイド代謝を分子レベルで解明するとともに、新規反応メカニズムを有する酵素に関する基礎的知見を得ることを目的とする。前年度までの実験から、アスタキサンチンの還元的代謝に関与する酵素における、基質特異性に関する情報を得ることが必要と考えられた。アスタキサンチンにはβ-ヨノン環の3、3'位に存在する水酸基に関連し、(3S, 3'S)(3S, 3'R)、(3R, 3'R)の三種の立体異性体が存在する。そこで、アスタキサンチンのこれらの三種の立体異性体を、それぞれ単独の色素源として試料に添加し、ヒメダカに投与した。飼育実験終了後、前年度までに確立した分析手法により、魚体のカロテノイド組成を分析し、総カロテノイド量、および黄色系キサントフィルと赤色系キサントフィルの存在比を求めることにより、アスタキサンチン各異性体の転換効率を調べた。魚類の体色発現に関与している代表的な色素であるカロテノイドには、様々な分子種が存在する。それらの代謝メカニズムは魚種により異なり、海水魚の多くは酸化的代謝を行うのに対し、ティラピアやアユ等の淡水魚には、還元的な代謝を行うものが存在する。カロテノイドの酸化的代謝に関与する酵素遺伝子については、細菌や植物においてその同定が行われている。しかし、カロテノイドの還元的代謝経路に関与する酵素に関する情報は、ほぼ皆無に等しい。そこで本研究では、魚類における還元的カロテノイド変換に関与する酵素遺伝子を単離・同定し、魚類における還元的カロテノイド代謝を分子レベルで解明するとともに、新規反応メカニズムを有する酵素に関する基礎的知見を得ることを目的とする。魚類の各組織に存在するキサントフィル類は、一部の例外を除いては脂肪酸エステルとして存在する。異なる脂肪酸分子種とエステル結合した単一のキサントフィルの分子種は、各種クロマトグラフで異なる挙動をするため、当該キサントフィルの分子種が、どの様に代謝されたか解析するための分析が難しい。そこで今年度はキサントフィル類脂肪酸エステルを、遊離型キサントフィルに酵素処理により変換した後、高速液体クロマトグラフィーにより解析する、迅速分析システムを確立した。これにより魚体に存在する、カロテン類から最も代謝が進んだアスタキサンチンまでの各種カロテノイドの分離、分析が可能となった。一方、ティラピアのゲノム情報からカロテノイド代謝に関連する酵素遺伝子の探索を試みたが、今までのところ当該遺伝子は得られていない。ティラピアに異なるカロテノイド源を投与することで、酸化型および還元型のカロテノイド代謝を行う試験魚の作成を試みたものの、当該供試魚が得ることができなった。そのため当初計画していたRNA発現解析を、次年度に延期せざるを得なかった。魚類の体色発現に関与している代表的な色素であるカロテノイドには、様々な分子種が存在する。それらの代謝メカニズムは魚種により異なり、海水魚の多くは酸化的代謝を行うのに対し、ティラピアやアユ等の淡水魚には、還元的な代謝を行うものが存在する。カロテノイドの酸化的代謝に関与する酵素遺伝子については、細菌や植物においてその同定が行われている。しかし、カロテノイドの還元的代謝経路に関与する酵素に関する情報は、ほぼ皆無に等しい。そこで本研究では、魚類における還元的カロテノイド変換に関与する酵素遺伝子を単離・同定し、魚類における還元的カロテノイド代謝を分子レベルで解明するとともに、新規反応メカニズムを有する酵素に関する基礎的知見を得ることを目的とする。前年度までにβ-カロテンあるいはアスタキサンチンを、それぞれ色素源として含む餌料をヒメダカに投与し、カロテノイドの酸化的代謝あるいは還元的代謝を行っている供試魚の作出を試みた。それぞれの飼育群の魚につき、前年度までに確立した手法により、カロテノイド組成を分析したところ、特にアスタキサンチン投与魚において、期待される色素組成となっていなかった。このことから、アスタキサンチンの投与法を再検討する必要性が示唆された。また、カロテノイドの酸化的代謝に関与すると考えられる、候補酵素遺伝子の取得をPCRにより試みたところ、得られた同一酵素のcDNAクローンの塩基配列には。若干の多様性が認められた。前述の様に、カロテノイドの還元的な代謝を行う生理状態となっている供試魚の作成ができず、酸化型の代謝を行っている魚とのRNA発現状況の比較解析を行うことができなかったため。アスタキサンチンの投与法について若干の改変が必要なものと考えている。また、カロテノイド代謝関連酵素遺伝子の取得に比較的時間がかかってしまった。これは今回用いたヒメダカが遺伝的に均一な集団で無かったことも一因と考えられる。魚類の体色発現に関与している代表的な色素であるカロテノイドには、様々な分子種が存在する。それらの代謝メカニズムは魚種により異なり、海水魚の多くは酸化的代謝を行うのに対し、ティラピアやアユ等の淡水魚には、還元的な代謝を行うものが存在する。カロテノイドの酸化的代謝に関与する酵素遺伝子については、細菌や植物において、その同定がすでに行われている。
KAKENHI-PROJECT-16K14982
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K14982
魚類の還元的カロテノイド代謝に関わる新奇酵素の探索
しかし、カロテノイドの還元的代謝経路に関与する酵素に関する情報は、ほぼ皆無に等しい。そこで本研究では、魚類における還元的カロテノイド変換に関与する酵素遺伝子を単離・同定し、魚類における還元的カロテノイド代謝を分子レベルで解明するとともに、新規反応メカニズムを有する酵素に関する基礎的知見を得ることを目的とする。前年度までの実験から、アスタキサンチンの還元的代謝に関与する酵素における、基質特異性に関する情報を得ることが必要と考えられた。アスタキサンチンにはβ-ヨノン環の3、3'位に存在する水酸基に関連し、(3S, 3'S)(3S, 3'R)、(3R, 3'R)の三種の立体異性体が存在する。そこで、アスタキサンチンのこれらの三種の立体異性体を、それぞれ単独の色素源として試料に添加し、ヒメダカに投与した。飼育実験終了後、前年度までに確立した分析手法により、魚体のカロテノイド組成を分析し、総カロテノイド量、および黄色系キサントフィルと赤色系キサントフィルの存在比を求めることにより、アスタキサンチン各異性体の転換効率を調べた。ティラピア以外にも淡水魚のメダカ類は、カロテノイド類の構成成分としてツナキサンチンを有していることが、既往研究により明らかになっている。メダカ類はティラピア類よりも小型で飼育も容易である。また、メダカ類もティラピア同様、ゲノム情報が公開されており、カロテノイド代謝関連酵素遺伝子の探索が、比較的容易と考えられる。そこで次年度は、試験魚の魚種を変更することも検討している。メダカを用いる場合は体サイズが小さいことから、組織別のカロテノイド代謝解析は行わず、魚体全体を用いたRNA発現解析により候補遺伝子の絞り込みを行う予定である。アスタキサンチンにはβ-ヨノン環の4、4'位に関し、(R,R)、(R,S)、(S, S)の3種の立体異性体が存在する。魚類によるカロテノイドの代謝的還元系において、これらの立体異性体間で反応性に差があるかを考慮して、餌中に投与することを検討する。また、安定性を考慮して、遊離型では無く脂肪酸エステル体として投与することも検討する。ティラピアに異なるカロテノイド源を投与することで、酸化型および還元型のカロテノイド代謝を行う試験魚の作成を試みたものの、当該供試魚が得ることができなった。そのため当初平成28年度に計画していたRNA発現解析を、次年度に行うこととし、その必要経費を繰り越す必要があった。前年度までにカロテノイドの還元的代謝を行っていると考えられる供試魚の作成が出来なかったため、関連遺伝子の特定に必要なトランスクリプトームデータベースの作成を差し控えざるを得なかった。次年度には速やかに飼育実験を再開することで当該供試魚を作成し、トランスクリプトーム解析を行う予定であり、その費用を計上した。使用魚種の変更等により、カロテノイド代謝に関与する遺伝子候補を特定し得る供試魚を作成次第、RNA発現解析を行い、当該繰越額を充当する予定である。
KAKENHI-PROJECT-16K14982
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マイクロRNAによる複雑な転写後抑制様式の理解に向けたin vivo解析
培養細胞を用いた実験から、マイクロRNAによる転写後抑制にはTNRC6タンパク質が必要であると考えられている。本研究では、tnrc6aとtnrc6b1の二重変異ゼブラフィッシュを作成し、脊椎動物の初期発生過程においてTNRC6がマイクロRNAによる抑制に必須であることを明らかにした。またマイクロRNA以外にmRNAの安定性を制御する要因として、コドン使用の偏りが大きな影響を及ぼすことを発見した。さらにマイクロRNAによるmRNA分解に関わるDcp2とCnot7をゼブラフィッシュ胚で阻害した場合のmRNAプロファイリングを行い、初期発生における2つの酵素の貢献を網羅的に明らかにした。miRNA経路の中核因子TNRC6AおよびTNRC6Bの変異体(MZtnrc6変異体)を用い、miRNAによる転写後抑制におけるTNRC6の機能解析を行った。miRNAにより抑制されるルシフェラーゼレポーターmRNAをMZtnrc6a受精卵にインジェクションし、6時間後にその抑制活性を検証したところ、野生型で見られたmiR-1によるレポータの抑制が、MZtnrc6a変異胚では効率よく起こっていないことを確認した。さらにポリ(A)鎖の短縮化が起こらないレポーターmRNAを用いて同様の実験を行ったところ、このレポーターにおいてもMZtnrc6a変異胚ではmiR-1による抑制が効率よく起こっていなかった。MZtnrc6a変異胚ではmiRNA経路に関わる主要な因子のタンパク質量が低下していなかったことから、変異胚における抑制活性の減少は他のタンパク質因子の発現不全による二次的影響である可能性は考えにくい。以上の結果から、TNRC6AがポリA鎖の短縮を介した標的mRNAの分解以外に、翻訳レベルでの抑制に関与していることが強く示唆された。また、miR-430による抑制を検出するGFPレポーターを発現する系統と変異系統の掛け合わせを行い、tnrc6a/tnrc6b二重変異体のバックグラウンドにGFPレポーター遺伝子を持つ系統を作出した。この系統は次年度以降の解析に用いる予定である。ユビキチン系を利用したタンパク質ノックダウン法については、cnot1のN末端にCRISPRシステムによりGFPを挿入するための準備を行い、活性の高いgRNAを選別した。本年度は、予定していたレポーターmRNAを用いた実験をMZtnrc6a胚を用いて行い、TNRC6Aの必要性を検証することができた。この結果は本研究の基盤となる部分であり、重要な成果であると考える。一方で、MZtnrc6a/tnrc6b二重変異体に関しては、成体の生存率が予想以上に低く、また加齢に伴い稔性の低下が起こったため、十分な検証をするための胚を得ることができなかった。この点に関しては次年度以降の課題である。MZtnrc6a/tnrc6b二重変異体へのGFPレポータの導入は完了していることから、次年度以降はこの系統を中心に研究を推進することができると期待できる。CRSIPRシステムの確立や標的部位の選別等は予定通り進行している。想定外の成果として、miRNA経路の解析を進める中で、miRNA以外にmRNAの安定性を制御する要因として、コドン使用の隔たりが大きな影響を及ぼすことを発見した。副次的な成果ではあるが、初期発生におけるmRNA制御を理解する上で重要な成果であり、今後本計画を進める上でも必須の知見であることから、予定の一部を変更して研究を進めた。この内容についてはMolecular Cell誌に論文として報告した。当初は予期していなかった結果が含まれているものの、全体として計画は順調に進んでいると考える。昨年に引き続き、miRNA経路の中核因子TNRC6AおよびTNRC6Bの母性接合子二重変異体(MZtnrc6変異体)を用い、miRNAによる転写後抑制におけるTNRC6の機能解析を行った。昨年度作成したmiR-430による抑制を検出するGFPトランスジーン系統を利用した解析を行ったところ、予想通りMZtnrc6変異体ではGFPの蛍光が顕著に強くなっていることが確認できた。しかしその蛍光はmiR-430をモルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド(MO)で阻害した場合や、miR-430による抑制を受けないレポーターと比較して弱いことから、TNRC6AおよびTNRC6Bを欠いた胚ではmiRNAによる抑制が部分的に解除されていると結論した。一方で、miRNAによるポリA鎖の短縮を引き起こすCnot7の機能をドミナントネガティブ型タンパク質の過剰発現により阻害した場合より、MZtnrc6変異体におけるGFP蛍光は強いことが確認された。この結果より、miRNAが引き起こすdeadenylationを介したmRNA分解と翻訳開始の抑制効果より、TNRC6AおよびTNRC6Bによる直接的な翻訳抑制の方が、miRNAによる転写後抑制全体に対する寄与が大きいことが示唆された。ユビキチン系を用いたタンパク質ノックダウンについては、オリジナルの方法を改変し、Cnot7とE3結合ドメインの融合タンパク質によってCnot1を分解する方法を試みたところ、Cnot1の顕著な分解が認められた。また、miRNAによるmRNA分解に関わるDcp2とCnot7をゼブラフィッシュ胚で阻害した場合のmRNAプロファイリングを行い、その結果を解析した。本年度は、昨年度に作成していたレポーター系統を用いた実験により、TNRC6AおよびBの二重欠損時(MZtnrc6)におけるmiRNAによる抑制効果の検証を予定通り行うことができた。その結果、MZtnrc6ではmiRNAによる抑制が顕著に阻害されていたことから、今後この系統に対してレスキュー実験などを行うことによって、TNRC6の機能解析を個体発生において効率よく検証することが可能である。
KAKENHI-PROJECT-15K18476
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マイクロRNAによる複雑な転写後抑制様式の理解に向けたin vivo解析
ユビキチン系を用いたタンパク質ノックダウンについては、CRISPRを用いたCnot1内在遺伝子座へのGFPタグ付けが技術的に依然として難しく、やや難航している。しかしこの点に関しては、Cnot1タンパク質に結合するCnot7タンパク質とE3の融合タンパク質を利用する方法を発案し、良好な結果を得ている。今後はさらに条件を検討し、両者を併用する形で、計画を補完して進めることが可能である。また本研究計画の基盤的知見を得る目的で、miRNAによるmRNA分解に関わるDcp2とCnot7をゼブラフィッシュ胚で阻害した場合のmRNAプロファイリングを行い、これら2つの因子がmiRNA経路において不均一に貢献していることを示唆するデータを得ることができた。MZtnrc6系統を用いてこの知見を確認するためには、時間的に猶予がない可能性が考えられたので、この結果をまずは独立した論文としてまとめ、査読付き雑誌への投稿を完了した。本年度は、昨年度までに確立したMZtnrc6/miR-430 GFPセンサー系統に対して、野生型のtnrc6aをコードするmRNAを受精卵に顕微注入することにより、レスキュー実験を行なった。その結果、MZtnrc6変異体で見られていた発生遅延が回復することが確認できた。またGFPの抑制も回復する傾向が確認された。しかしながら、いずれの場合もその効果は部分的であった。このことは、tnrc6aとbには異なる機能がある可能性を示唆している。すなわち、tnrc6ファミリー間での機能分担が予想される。この結果は、本研究開始時の仮説と矛盾しないものである。一方で、MZtnrc6変異体で見られた表現型の一部は、卵形成期におけるtnrc6の欠損によるものである可能性も考えられる。次に、MZtnrc6変異体における遺伝子発現の変動を明らかにするために、受精後6時間の野生型とMZtnrc6変異胚からRNAを抽出し、RNA-seqによる解析を行った。その結果、MZtnrc6変異胚ではmiR-430の標的配列を有する一連のmRNA群が特異的に上昇していることが確認された。このことから、MZtnrc6変異胚ではmiRNAによるmRNA分解活性が全般的に低下していると結論した。本研究計画の基盤的知見を得る目的で実施し、昨年度に査読付き雑誌へ投稿していたmiRNAによるmRNA分解に関わるDcp2とCnot7をゼブラフィッシュ胚で阻害した場合のmRNAプロファイリングの報告については、査読結果をもとに追加実験と加筆修正を行い、Genes to Cells雑誌に受理された。培養細胞を用いた実験から、マイクロRNAによる転写後抑制にはTNRC6タンパク質が必要であると考えられている。本研究では、tnrc6aとtnrc6b1の二重変異ゼブラフィッシュを作成し、脊椎動物の初期発生過程においてTNRC6がマイクロRNAによる抑制に必須であることを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-15K18476
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GABAのマスト細胞機能に及ぼす影響と抗アレルギー作用に関する基礎的研究
γ-アミノ酪酸(GABA)およびGABA_B受容体作動薬であるbaclofenはマスト細胞のヒスタミン遊離を抑制した。また、マスト細胞はGABA_B受容体を発現し、関連するシグナル伝達が確認された。さらに、T細胞、NK細胞においてもGABA_B受容体の発現が確認され、GABAが免疫機能に影響を及ぼす可能性が示された。一方、GABAおよびbaclofenの経口投与によりTh2偏向状態にあるBALB/cマウスの血中IgEレベル亢進が有意に抑制され、そのメカニズムとしてTh1型免疫応答の誘導によるTh1/Th2バランスの改善が背景にあることが推察された。GABAはGABA_B受容体を介してマスト細胞機能とIgE産生を抑制し、抗アレルギー作用を発揮することが期待される。γ-アミノ酪酸(GABA)およびGABA_B受容体作動薬であるbaclofenはマスト細胞のヒスタミン遊離を抑制した。また、マスト細胞はGABA_B受容体を発現し、関連するシグナル伝達が確認された。さらに、T細胞、NK細胞においてもGABA_B受容体の発現が確認され、GABAが免疫機能に影響を及ぼす可能性が示された。一方、GABAおよびbaclofenの経口投与によりTh2偏向状態にあるBALB/cマウスの血中IgEレベル亢進が有意に抑制され、そのメカニズムとしてTh1型免疫応答の誘導によるTh1/Th2バランスの改善が背景にあることが推察された。GABAはGABA_B受容体を介してマスト細胞機能とIgE産生を抑制し、抗アレルギー作用を発揮することが期待される。GABA(γ-アミノ酪酸)は機能性食品成分として知名度が高いが、免疫機能へ及ぼす影響に関する検討例は少ない。本研究では、GABAがマスト細胞へ及ぼす影響を調べ、抗アレルギー作用を示すか否か検討した。細胞培養実験系において、GABAはラットマスト細胞様RBL-2H3細胞やヒト好塩基球様KU812F細胞、さらにラット腹腔マスト細胞(正常なマスト細胞)におけるIgEを介した脱顆粒を抑制した。この抑制には、GABA_B受容体を介した細胞内シグナル伝達の下流に位置するGαiやERKなどの情報伝達分子が関与することが明らかとなった。そこで、これらの細胞にGABAに対する受容体が発現しているか否か検討したところ、GABA_B受容体を構成する2つのサブユニット(GABA_BR1、GABA_BR2)の発現がタンパク質並びにmRNAレベルで確認された。これは、GABAがマスト細胞に影響を及ぼす分子的基盤を裏付ける結果といえる。GABA受容体は脳神経器官で発現していることが知られているが、現状では、末梢組織における発現は十分に検討されていない状況にある。上記の結果より、GABAはマスト細胞に発現するGABA_B受容体を介しで脱顆粒を抑制し、即時型アレルギー反応を予防する可能性がある。一方、マウス経口投与試験によりGABA(0.51mg/mouse/day)が血中IgEレベルを低下させることが確認された。血中IgEレベルを低下させることは、アレルギー疾患の予防・治療に大きな意味を持つ。この作用のメカニズムについて解明が待たれるが、マスト細胞の脱顆粒抑制と併せ、GABAは抗アレルギー作用を有する可能性が示された。H21年度の成果より、マスト細胞におけるGABA_B受容体を構成する2つのサブユニット(GABA_BR1、GABA_BR2)の発現が確認された。そこで、他の免疫担当細胞についてもGABA_B受容体の有無を調べた結果、マウス脾臓由来のT細胞画分並びにNK細胞画分においてGABA_BR1とGABA_BR2の発現が確認された。なお、リアルタイムRT-PCRの結果、マスト細胞、T細胞、NK細胞の画分におけるGABA_BR1とGABA_BR2の発現レベルは、脳組織と比較して何れも低いレベル(数%数十%程度)であった。in vitro実験系において、GABA並びにGABA_B受容体作動薬であるBaclofen(両者共に数十数百μM)はマウス脾細胞のサイトカイン産生に影響を及ぼし、抗原誘導性のIL-4産生を抑制する傾向が認められた。この結果は、GABAがGABA_B受容体を介してIgE産生を抑制する可能性を支持する。また、GABA並びにBaclofenは、YAC-1細胞に対するマウス脾細胞の細胞傷害活性を増強した。T細胞とNK細胞は機能的なGABA_B受容体を発現しているものと推察される。GABA並びにBaclofenのマウス経口投与試験(両者共に1mg/mouse/day)を2回実施した結果、OVA感作BALB/cマウスの血中IgEレベル亢進を有意に抑制することを再現性良く確認できた。同時に、血中のIgG1レベル低下とIgG2aレベル上昇がみられたことより、GABAおよびBaclofenはTh1偏向を誘導する可能性が伺える。なお、約60日間の飼育期間を通じ、体重における変化は認められなかった。摂取したGABAがT細胞などの免疫担当細胞へ直接作用するか否か検証が必要だが、GABAはGABA_B受容体を介して免疫機能へ影響を及ぼし、Th1/Th2バランスの改善による抗アレルギー作用へ繋がる可能性が示された。
KAKENHI-PROJECT-21780122
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肥満進展においてペリサイト局在の動的変化により形成される脂肪幹細胞ニッチの同定
肥大化した内臓脂肪組織に認められる炎症性マクロファージの集積および新たな血管と脂肪細胞の生成の三事象の因果関係、およびこれらの相互作用が肥満に及ぼす影響の解明を目的とした。脂肪組織において炎症性マクロファージがどのようにPDGF-Bを高産生するかについて、発現調節機構を解析した。薬理学的阻害およびRNA干渉法により、炎症性マクロファージのPdgfb遺伝子が解糖系代謝に共役したERKシグナル伝達経路を媒介して発現誘導されることを明らかにした。またPdgfb発現誘導には、肥満により内臓脂肪組織で増加する解糖系代謝物が一部関与し、その誘導作用は他のサイトカイン発現誘導には認められなかった。また、肥満による過剰なPDGF-Bは、血管からのペリサイトの脱落とそれに伴う血管新生を誘導する。脂肪組織マクロファージ除去により、それらが抑制された知見から、ペリサイト局在と脂肪新生の起源となる脂肪幹細胞の数的変化を評価した。フローサイトメトリーを用いて、マクロファージ除去モデルマウスおよび肥満病態を模倣した培養脂肪組織における脂肪幹細胞変化を解析した。マクロファージ除去により肥満に伴うペリサイトの脱落が防御された脂肪組織において、脂肪幹細胞の割合が低値を示した。一方、肥満脂肪組織を模倣した過剰なPDGF-B存在下において、血管からのペリサイトの脱落は認められたにも関わらず、脂肪幹細胞の割合と増殖能に差異は認められなかった。したがって、肥満による脂肪幹細胞の増殖は、過剰なPDGF-B暴露とは独立した機構により誘導されることが明らかになった。以上より、脂肪組織の肥大化過程において、浸潤した炎症性マクロファージは、組織内での代謝ストレスに応答した固有の細胞内シグナル伝達経路を介してPDGF-Bを産生し、ペリサイトを血管から脱落させる。この脱落と同時に脂肪幹細胞増殖が誘導されることが示唆された。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。肥大化する脂肪組織では、血管ネットワークの再構築と脂肪幹細胞を起源とする脂肪細胞の新生が起こる。しかし、これらの現象が独立しているのか連動しているかは明らかではない。骨髄や腫瘍内のペリサイトが接着する血管周囲は組織幹細胞を維持する微小環境を提供することから、脂肪組織肥大化におけるペリサイトの挙動とその制御に関わるPDGF-Bの産生機構を解析した。食餌性肥満マウスの脂肪組織において、マクロファージがPDGF-Bを高発現しており、マクロファージ集積部位においてペリサイトが血管から脱落していたことから、マクロファージが脂肪組織ペリサイトの挙動に与える影響を評価した。クロドロン酸封入リポソームの投与は高脂肪食負荷による脂肪組織のマクロファージ浸潤を抑制し、PDGF-B遺伝子発現を顕著に減少させた。脂肪組織の体積変化の影響を除外するために、クロドロン酸封入リポソームを短期間投与したところ、食餌性肥満マウスによる血管からのペリサイトの脱落を抑制した。一方、長期間のクロドロン酸封入リポソームの投与は、高脂肪食負荷による肥満を抑制し、糖代謝異常を防御した。これらの知見より、マクロファージがPDGF-Bを介してペリサイトの挙動を制御することが示唆された。そこで、マクロファージにおけるPDGF-B発現誘導機構を検討した結果、高血糖と炎症性刺激により誘導される解糖系代謝およびMAPKシグナルを介することが示された。本研究成果により、肥満病態において高血糖と慢性炎症の進展が脂肪組織の血管新生と肥大化に対し促進的に関与することが示唆された。平成29年度科学研究費助成事業交付申請書において記載した平成29年度の研究実施計画に従い、本年度は、高脂肪食負荷による脂肪組織の肥大化において、マクロファージがPDGF-Bを介してペリサイトの局在を制御し、脂肪組織肥大化を促進させる可能性を示す知見を得た。さらに、肥満マウスのマクロファージにおけるPDGF-B発現増加を培養細胞において再現することに成功し、PDGF-B発現調節に関わる新たな細胞内シグナル機構を明らかにした。以上より、肥満によるマクロファージとペリサイトとのクロストークが脂肪組織微小環境の変化を導くことが示唆されたことから、ペリサイトの局在変化と脂肪幹細胞増殖・分化との連動機構の解明に向けてさらなる研究の遂行が可能となった。肥大化した内臓脂肪組織に認められる炎症性マクロファージの集積および新たな血管と脂肪細胞の生成の三事象の因果関係、およびこれらの相互作用が肥満に及ぼす影響の解明を目的とした。脂肪組織において炎症性マクロファージがどのようにPDGF-Bを高産生するかについて、発現調節機構を解析した。薬理学的阻害およびRNA干渉法により、炎症性マクロファージのPdgfb遺伝子が解糖系代謝に共役したERKシグナル伝達経路を媒介して発現誘導されることを明らかにした。またPdgfb発現誘導には、肥満により内臓脂肪組織で増加する解糖系代謝物が一部関与し、その誘導作用は他のサイトカイン発現誘導には認められなかった。また、肥満による過剰なPDGF-Bは、血管からのペリサイトの脱落とそれに伴う血管新生を誘導する。脂肪組織マクロファージ除去により、それらが抑制された知見から、ペリサイト局在と脂肪新生の起源となる脂肪幹細胞の数的変化を評価した。フローサイトメトリーを用いて、マクロファージ除去モデルマウスおよび肥満病態を模倣した培養脂肪組織における脂肪幹細胞変化を解析した。マクロファージ除去により肥満に伴うペリサイトの脱落が防御された脂肪組織において、脂肪幹細胞の割合が低値を示した。
KAKENHI-PROJECT-17H06705
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肥満進展においてペリサイト局在の動的変化により形成される脂肪幹細胞ニッチの同定
一方、肥満脂肪組織を模倣した過剰なPDGF-B存在下において、血管からのペリサイトの脱落は認められたにも関わらず、脂肪幹細胞の割合と増殖能に差異は認められなかった。したがって、肥満による脂肪幹細胞の増殖は、過剰なPDGF-B暴露とは独立した機構により誘導されることが明らかになった。以上より、脂肪組織の肥大化過程において、浸潤した炎症性マクロファージは、組織内での代謝ストレスに応答した固有の細胞内シグナル伝達経路を介してPDGF-Bを産生し、ペリサイトを血管から脱落させる。この脱落と同時に脂肪幹細胞増殖が誘導されることが示唆された。平成30年度は、「肥大化した脂肪組織において、血管から脱落したペリサイトの機能変化が、脂肪幹細胞の増殖を介して組織肥大化の素地を形成する」と研究仮説を立て、その実証に取り組む。肥満マウスの脂肪組織において脂肪新生が血管周囲で発生する報告を踏まえ、血管リモデリングと脂肪幹細胞増殖との関連に焦点をあて解析する。蛍光免疫染色法により、正常マウスの脂肪組織における脂肪幹細胞の組織内局在と血管との位置関係を観察する。さらに、肥満による血管リモデリングが抑制されるモデルとしてPDGF受容体欠損マウスとマクロファージ除去マウスの脂肪組織を用いて、脂肪幹細胞の増殖と脂肪組織内局在について検討する。また、肥満による脂肪組織ペリサイトの表面抗原変化および機能的差異について、フローサイトメトリーと定量的PCR法を用いて探索する。さらに、肥大化した脂肪組織でのペリサイトの挙動を模倣した脱離型および接着型ペリサイトが、脂肪幹細胞増殖および前駆脂肪細胞分化に与える影響とその分子機構について細胞培養実験により検討する。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-17H06705
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リサイクルに利用可能な解体性と高耐熱性を併せ持つ易解体性高耐熱粘着技術の開発
今年度は、高耐熱性を有する芳香族高分子粘着剤の開発を中心に研究を進めた。様々な原料を縮合反応させることで粘着性を有するポリマーの作製を行った。剛直な構造である芳香族高分子に、柔軟性の高いシリコーンや脂肪族架橋構造、環動高分子材料などの柔らかい骨格を導入することで、粘着特性発現に必要なミクロ相分離構造を形成し、耐熱性と粘着特性(粘着力、凝集力、保持力等)を両立させた粘着剤の作製を検討した。その結果、主鎖骨格にシリコーン骨格を有するジアミンと酸無水物を組み合わせることで、粘着性と製膜性を兼ね備えたポリマーの作製に成功した。得られたポリマーは、250度以上の耐熱性を示した。得られたポリマーをNMP(N-methylpyrrolidone)に溶解させ、アプリケーターを用いてポリイミドフィルム上に塗工し、粘着層膜厚30 μmの粘着フィルムを得た。得られた粘着フィルムを用いて、PETおよびSUS基板に対し180度剥離試験を実施した。その結果、この粘着フィルムの粘着強度はPETに対して3.19 N/20mm、SUSに対して3.02 N/20mmを示すことがわかった。さらに、250度2時間の加熱を行い、その後180度剥離試験を実施した結果、粘着強度の変化は見られず、約3 N/20 mmの剥離強度を示すことが明らかとなった。また、粘着剤への解体性付与については、解体性を有するモノマーの合成とポリマー化に着手し、合成を実施した。現在、ポリマー合成の条件について詳細な検討を実施している。研究申請書に基づき、以下の2点について研究をすすめ、当該年度の目標を達成することができた。(1)高耐熱性を有する芳香族高分子粘着剤の開発ジアミノシリコーンと酸二無水物を組合せ、粘着性と耐熱性を兼ね備えたポリマーの作製を実施した。得られたポリマーを塗工した粘着フィルムは、PETおよびSUS基板に対し、250度2時間の加熱後に約3 N/20 mmの剥離強度を示す粘着剤を作製することができた。(2)粘着剤への解体性付与また、粘着剤への解体性付与については、解体性を有するモノマーの合成とポリマー化に着手し、合成を実施した。現在、ポリマー合成の条件について詳細な検討を実施している。次年度は、引き続き(1)高耐熱性を有する芳香族高分子粘着剤の開発を進め、更なる機能化や最適化を実施する。PETおよびSUS基板に対し、250度2時間の加熱後に約3 N/20 mmの剥離強度を示す粘着剤を作製することができたため、更なる耐熱温度および粘着強度の向上を目指す。また、得られた芳香族高分子粘着剤への(2)解体性付与を中心に研究を行い、解体能と高耐熱性を有する芳香族高分子粘着剤の開発を進める。具体的にはアシルオキシムや側鎖反応性の置換基を有するモノマーの合成およびポリマー化により解体能の導入を行う。さらに、次年度の後半は、(3)潜在性化合物の合成・選定を行い、芳香族高分子粘着剤と組み合わせることで易解体特性の評価を実施する。今年度は、高耐熱性を有する芳香族高分子粘着剤の開発を中心に研究を進めた。様々な原料を縮合反応させることで粘着性を有するポリマーの作製を行った。剛直な構造である芳香族高分子に、柔軟性の高いシリコーンや脂肪族架橋構造、環動高分子材料などの柔らかい骨格を導入することで、粘着特性発現に必要なミクロ相分離構造を形成し、耐熱性と粘着特性(粘着力、凝集力、保持力等)を両立させた粘着剤の作製を検討した。その結果、主鎖骨格にシリコーン骨格を有するジアミンと酸無水物を組み合わせることで、粘着性と製膜性を兼ね備えたポリマーの作製に成功した。得られたポリマーは、250度以上の耐熱性を示した。得られたポリマーをNMP(N-methylpyrrolidone)に溶解させ、アプリケーターを用いてポリイミドフィルム上に塗工し、粘着層膜厚30 μmの粘着フィルムを得た。得られた粘着フィルムを用いて、PETおよびSUS基板に対し180度剥離試験を実施した。その結果、この粘着フィルムの粘着強度はPETに対して3.19 N/20mm、SUSに対して3.02 N/20mmを示すことがわかった。さらに、250度2時間の加熱を行い、その後180度剥離試験を実施した結果、粘着強度の変化は見られず、約3 N/20 mmの剥離強度を示すことが明らかとなった。また、粘着剤への解体性付与については、解体性を有するモノマーの合成とポリマー化に着手し、合成を実施した。現在、ポリマー合成の条件について詳細な検討を実施している。研究申請書に基づき、以下の2点について研究をすすめ、当該年度の目標を達成することができた。(1)高耐熱性を有する芳香族高分子粘着剤の開発ジアミノシリコーンと酸二無水物を組合せ、粘着性と耐熱性を兼ね備えたポリマーの作製を実施した。得られたポリマーを塗工した粘着フィルムは、PETおよびSUS基板に対し、250度2時間の加熱後に約3 N/20 mmの剥離強度を示す粘着剤を作製することができた。(2)粘着剤への解体性付与また、粘着剤への解体性付与については、解体性を有するモノマーの合成とポリマー化に着手し、合成を実施した。現在、ポリマー合成の条件について詳細な検討を実施している。次年度は、引き続き(1)高耐熱性を有する芳香族高分子粘着剤の開発を進め、更なる機能化や最適化を実施する。
KAKENHI-PROJECT-18K11723
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K11723
リサイクルに利用可能な解体性と高耐熱性を併せ持つ易解体性高耐熱粘着技術の開発
PETおよびSUS基板に対し、250度2時間の加熱後に約3 N/20 mmの剥離強度を示す粘着剤を作製することができたため、更なる耐熱温度および粘着強度の向上を目指す。また、得られた芳香族高分子粘着剤への(2)解体性付与を中心に研究を行い、解体能と高耐熱性を有する芳香族高分子粘着剤の開発を進める。具体的にはアシルオキシムや側鎖反応性の置換基を有するモノマーの合成およびポリマー化により解体能の導入を行う。さらに、次年度の後半は、(3)潜在性化合物の合成・選定を行い、芳香族高分子粘着剤と組み合わせることで易解体特性の評価を実施する。(理由)計画していた消耗品について残額等が生じたことや当初予定していた学会へ参加できず旅費およびその他経費の残額が生じた。(使用計画)次年度、物品費として使用する。
KAKENHI-PROJECT-18K11723
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K11723
移植腎3T-MRIにおける拡散係数値(ADC値)による腎線維化評価の有用性
本研究は、生体腎移植ドナーの意思決定過程へ働く因子を明らかにすることを目的とし、文献レビューにてその論点抽出および整理を行った。続いて、その結果を元にしたインタビューガイドを作成し、医療従事者15人を対象とする面接調査を行った結果、ドナー診察の環境整備に関して医療従事者内における認識の差異や、複数のドナー候補者が絞られていく過程の不透明性、ドナーの自発意思の確認への戸惑いや介入への葛藤等が明らかとなった。多角的な側面から意思決定過程を捉えるために、さらに生体腎移植ドナー経験者に対しての調査を行う予定である。最終的に、生体腎移植ドナーの意思決定に焦点を当てた支援ツールの作成へつなげていく。本研究では生体腎移植のドナー、腎移植に携わっている医療従事者、それぞれにインタビューを行うことで、ドナーの意思決定プロセスを解明する。具体的には、臓器移植にポジティブに働く因子とネガティブに働く因子を日本という文化的背景を踏まえて確認する。その上で、ドナーの意思決定プロセスの類型化を行、意思決定モデルのタイプ別の評価を行う。以上の目標を達成した後、腎移植のドナーの意思決定のためのガイドラインを作成し、関係する機関・施設に配布する。本研究は研究参加者20名に対して半構造化面接を実施し、その結果を内容分析の手法を用いて分析する。平成27年度は、・腎移植にポジティブに働く因子・ネガティブに働く因子・意思決定プロセスの詳細・意思決定能力の判断について・腎移植のドナーになることの心理的影響・家族力動(ファミリー・ダイナミクス)、についてに主眼を置いて、本研究のインタビューガイドを作成した。また、研究参加者のリクルート方法の方針を決定し、プレインタビュー対象者も含めてリクルートを開始している。またプレインタビューとして1名の模擬患者聴き取り調査を実施し、インタビューガイドのブラッシュアップを行い、その改定を行った。併せて、文献調査を実施し、インタビューガイドの最終版を作成中である。インタビュー対象者は神戸大学医学部付属病院において腎移植のドナーとなった者(神戸大学医学部付属病院においては、現在までおよそ250例の生体腎移植、およそ45例の献腎移植を実施している)、最終的にドナーとなることを断念した者、臓器移植に携わる医師・医療従事者である。実際の腎移植ドナーに対する聴き取り調査が未実施である。またインタビューガイド作成は、最終段階まで至っているが、未完成である。共同研究であり、インタビューガイド作成および解析と、実際のインタビューを実施する施設が異なる都合上、最終決定のための話し合いを行うべく、日程調整を行っている。本研究では、2015年度より3年間の研究期間において、生体腎移植のドナー、腎移植に携わっている医療従事者、それぞれにインタビューを行うことで、ドナーの意思決定プロセスを解明する。現在の国内外の当該領域に関する研究状況に照らして、臓器移植にポジティブに働く因子(患者を救いたいという熱意、臓器提供することで、患者との生活を現状維持したいという希望、患者の容体、等)とネガティブに働く因子(周囲からの反対、現在提供することにより将来自身の子供に臓器提供できなくなることの懸念、これまでの患者の生活態度への非難、など)を同定することで、日本という文化的背景を踏まえて確認する。これまでに東京大学、および神戸大学でそれぞれ倫理委員会の判断を得て、インタビューガイドに基づき、神戸大学病院で実際に腎移植医療に従事する4名の医師および3名の医療従事者にインタビューを行い、現在その結果を解析中である。また神戸大学医学部付属病院において腎移植のドナーとなった者(神戸大学医学部付属病院においては、現在までおよそ300例の腎移植を実施している)、最終的にドナーとなることを断念した者の中で、研究参加者候補者の人選を行っており、それぞれ説明文書を用いて説明し、同意を得られた場合、順次インタビュー調査を進める予定である。インタビュー参加人数は、生体腎移植のドナーとなった者10名、最終的にドナーとなることを断念した者5名、腎移植に携わった医師・医療従事者35名を目標とする。腎移植のドナーとなった者(神戸大学医学部付属病院においては、現在までおよそ300例の腎移植を実施している)、最終的にドナーとなることを断念した者のリクルートが遅れている。理由としては実臨床の遂行の妨げとならないように最大限に配慮を行っているからである。生体腎移植医療において、ドナーの意思決定の自律性を担保するための具体的かつ実務に即した方策が求められている背景を受け、本研究では生体腎移植ドナーの意思決定過程へ働く因子を明らかにすることを目的とし、第一に文献レビューにて論点抽出および整理を行った。結果、ドナーへの明らかな圧力にとどまらず、ドナー自身の価値観や医療者側からの影響など、要素の多様性が見られた。IC(Informed Consent)の在り方が与える影響など、改善の余地のある要素が見出された一方、改善の是非そのものを議論すべき課題として含む要素もあった。それらは内容の類似性により12サブカテゴリーと上位4カテゴリー(【A.ドナーの持つ個性や価値観】、【B.十分な理解ができないこと】、【C.ドナーの意思決定へ直接的に圧力をかける可能性】、【D.ドナーを取り巻く周辺の環境や状況】)と分類し、さらに、臨床の実務的視点に基づいて、“要素の起因する場所"および“要素の変動する余地"の2軸を用いた分析枠組みを加えた臨床アプローチの区分が示唆された。続いて、ドナーの意思決定に重要な影響を与えうる医師をはじめとした医療従事者への面接調査を行った。レビューで抽出された論点からインタビューガイドを作成し、生体腎移植に関わる医療従事者15人を対象とした。
KAKENHI-PROJECT-15K01353
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K01353