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吃音がある小・中学生の包括的・総合的評価バッテリーの開発 | (b)については、幼児・児童吃音実態調査質問紙の分析結果を踏まえ、活動・参加、吃音の状況、発達及び情緒の状況、環境の状況について包括的に評価可能なものとした。(c)については教員の多忙な勤務状況を考慮し、5分程度で回答可能な簡便なものとした。(d)については、上記(1)(2)の回答結果から、各児童・生徒の実態を、国際生活機能分類(ICF)の枠組みを用いて整理・分析すると共に、申請者がこれまで開発した「吃音を持つ児童生徒に対する教育的指導支援プログラム」と併せて利用することで指導支援計画立案までを一体的に行えるものとした。有用性の検証については、筆者が金沢大学で行っている教育臨床相談に吃音が主訴で来所した児童5名に対して、上記作成した(a)(d)を用いた評価及び指導計画立案を実施した。その結果、(1)評価や指導計画立案に必要な作業や時間の軽減、(2)保護者への評価結果や指導計画案の説明のわかりやすさの向上、等の利点があることが確認された。今回作成した質問用紙と評価整理シートは、広く教育臨床で活用いただけるようにホームページで公表した。 | KAKENHI-PROJECT-21730716 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21730716 |
EBウイルス小RNAによる自然免疫シグナルを介した胃がん発生機構の解明 | EBウイルス(EBV)感染リンパ球から、EBV小RNAであるEBER(EBV-encoded small RNA)が細胞外に放出され、ウイルスRNAセンサーであるtoll-like receptor(TLR)3からのシグナル伝達を活性化すること、それが活動性EBV感染症の病態形成に寄与しうることを示した。さらにEBERはEBV陽性胃がん細胞においても細胞外に放出され、TLR3シグナルを活性化することを明らかにした。EBウイルス(EBV)感染リンパ球から、EBV小RNAであるEBER(EBV-encoded small RNA)が細胞外に放出され、ウイルスRNAセンサーであるtoll-like receptor(TLR)3からのシグナル伝達を活性化すること、それが活動性EBV感染症の病態形成に寄与しうることを示した。さらにEBERはEBV陽性胃がん細胞においても細胞外に放出され、TLR3シグナルを活性化することを明らかにした。我々のこれまでの研究で、EBウイルスが胃上皮細胞に感染すると、Lnsulin-1ike growthfactor(IGF)-1の発現が誘導され、そのオートクライン作用により感染細胞の増殖が促進されるということ、またIGF-1の発現誘導の責任遺伝子はウイルスの小RNAであるEBERであることが明らかになった。本研究は、EBERによるIGF-1の発現誘導がいかにしておこるかを解明し、結果EBウイルスによる胃がんの発生のメカニズムを明らかにすることを目的とし行っている。我々は、バーキットリンパ腫(BL)細胞においてEBERが細胞内の2本鎖RNA(dsRNA)認識分子であるRetinoic acid-inducible gene(RLG)-Lと相互作用しこれを活性化、IRF-3およびNF-κBの活性化を介しインターフェロン発現を誘導することを明らかにしていたが、これをもとにEBERとRLG-Iの相互作用がEBERによるサイトカイン産生に寄与しているかどうか検証した。その結果、EBERによるRIG-Iの活性化がLRF3の活性化を介してBL細胞の増殖因子であるIL-10の産生を誘導することを明らかにした。さらに胃がん細胞においてもEBERによりRLG-Iが恒常的に活性化されていることを明らかにした。一方我々は、EBERがEBウイルス感染胃がん細胞より細胞外に放出されること、さらに放出されたEBERはTo11-1ike receptor (TLR)3を介したシグナル伝達を惹起することを見出し、さらにTLR3シグナルの恒常的な活性化がEBウイルス陽性胃がん細胞においておこっていて、それがEBERによるIGF-1産生誘導に関与しているということを明らかにし、現在さらに解析を進めている。我々のこれまでの研究で、EBウイルスが胃上皮細胞に感染すると、Insulin-like growthfactor(IGF)-1の発現が誘導され、そのオートクライン作用により感染細胞の増殖が促進されるということ、またIGF-1の発現誘導の責任遺伝子はウイルスの小RNAであるEBERであることが明らかになった。本研究は、EBERによるIGF-1の発現誘導がいかにしておこるかを解明し、結果EBウイルスによる胃がんの発生のメカニズムを明らかにすることを目的とし行っている。EBERの機能に関し、これまで我々は、EBERが2本鎖RNA(dsRNA)としてRetinoic acid-inducible gene(RIG)-Iを活性化、IRF-3およびNF-κBの活性化を介しインターフェロン発現を誘導することを明らかにした。またEBERがEBウイルス感染細胞より細胞外に放出され、さらに放出されたEBERはToll-like receptor(TLR)3を介したシグナル伝達を惹起することを見出した。さらにその後の研究で、このEBERによるTLR3シグナルの活性化は伝染性単核症や慢性活動性EBV感染症、EBV関連血球貪食症候群の発症に寄与している可能性があることを明らかにした。一方、EBERはEBV感染胃がん細胞からも放出され、さらにTLR3シグナルの恒常的な活性化を誘導していること、そしてEBウイルス陽性胃がん細胞においておこっているTLR3シグナルの活性化は、EBERによるIGF-1産生誘導に関与しているということを明らかにし、現在さらに解析を進めている。我々のこれまでの研究で、EBウイルス(EBV)が胃上皮細胞に感染すると、Insulin-like growthfactor(IGF)-1の発現が誘導され、そのオートクライン作用により感染細胞の増殖が促進されるということ、またIGF-1の発現誘導の責任遺伝子はウイルスの小RNAであるEBERであることが明らかになった。本研究は、EBERによるIGF-1の発現誘導がいかにしておこるかを解明し、結果EBVによる胃がんの発生のメカニズムを明らかにすることを目的とし行っている。EBERの機能に関し、これまで我々は、EBERが2本鎖RNA(dsRNA)としてRetinoic acid-inducible gene(RIG)-Iを活性化、IRF-3およびNF-κBの活性化を介しインターフェロン発現を誘導することを明らかにした。またEBERがEBウイルス感染細胞より細胞外に放出され、さらに放出されたEBERはToll-like receptor(TLR)3を介したシグナル伝達を惹起することを見出した。さらにその後の研究で、このEBERによるTLR3シグナルの活性化は伝染性単核症や慢性活動性EBV感染症、EBV関連血球貪食症候群の発症に寄与している可能性があることを明らかにした。一方、EBERはEBV感染胃がん細胞からも放出され、さらにTLR3シグナルの恒常的な活性化を誘導していることが明らかになり、このTLR3シグナルの活性化がEBERによるIGF-1産生誘導に関与しているということがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-20590715 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20590715 |
EBウイルス小RNAによる自然免疫シグナルを介した胃がん発生機構の解明 | さらにその後の解析で、EBERによるTLR3シグナルの活性化がEBV感染胃がん細胞の増殖を促進していることが明らかとなり、TLR3シグナル活性化がEBV陽性胃がんの発生に寄与していることを示唆する結果が得られることとなった。 | KAKENHI-PROJECT-20590715 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20590715 |
陽極酸化自立膜型集積化高感度ガスセンサ | 本研究の目的は、超小型超低消費電力臭覚センサの実現に向けた半導体ガスセンサの集積化技術の確立のため、陽極酸化によって自己組織的にナノホールアレイが形成される酸化チタンナノチューブ(TNT)を用いた自立膜型微小ガスセンサを局所陽極酸化により構築する。本研究を遂行するためには、1作製プロセスの確立、2TNT内壁表面の評価分析及び制御、3ガスセンサの応答特性の評価・分析が必要である。1作製プロセスの確立では、自立膜を形成するために基板に微小貫通孔を開ける必要がある。基板としてガラス基板を用いた。通常のアルカリガラスは、ナトリウムを含むため半導体プロセスには適合しないので、ガラス基板の種類として(合成)石英及び無アルカリガラスを検討した。無アルカリガラスの場合、フッ酸系溶液によるエッチングの際、析出物が基板表面に付着するため均一な微細孔の形成が困難である。この析出物は、無アルカリガラス中に含まれるアルカリ希土類と溶液中のフッ素によって形成したものであると考えられる。そこで、石英基板による貫通孔形成を試みた。石英基板を用いた場合、エッチング速度が極端に遅いため、レジストが剥がれるなどのレジストの耐薬品性が課題となった。そこで、石英基板上に堆積したSiにパターンを転写し、それをレジストとすることを試みたところ、長時間のエッチングに耐え、石英基板に数十ミクロンの貫通孔を形成できることがわかった。2TNT内壁表面の評価分析及び制御では、その評価法としてMIR-IRASを用いるが、本計測を木村班でも行えるように、赤外分光器の移設を行い、大気中MIR-IRASの光学系を設計した。3応答特性の評価・分析では、新たに構築するガス供給、排気システムを備えた評価装置の設計を行った。1作製プロセスの確立では、貫通孔を有する石英基板の作製プロセスに目処が立ち、リソグラフィによるチタン薄膜のパターニングにも着手している。また、溶液セルを用いないで陽極酸化を行うセルレス陽極酸化を提案し、それによるTi薄膜の陽極酸化にも着手している。したがって、1作製プロセスの確立では、概ね予定通りである。一方、2TNT内壁表面の評価分析及び制御では、赤外分光器の移設は完了したものの、MIR-IRASの光学系が設計にとどまっているが、設計した光学系部品は既に納入されている。したがって、本項目についても、多少の遅れを生じているが、概ね予定通りである。一方、3応答特性の評価・分析では、ガス供給、排気システムを備えた評価装置を2年目までに構築する予定であり、本年度、全体の設計まで行う予定でいたがそこまで至っていない。したがって、全体では、(3)やや遅れていると評価した。1作製プロセスの確立では、計画通り、さらに(i)ガラス基板の微細孔貫通プロセスの開発及び(ii)Tiのパターニング及び局所陽極酸化技術の構築を進める。(i)においては、パターンをSiに転写することにより石英基板の貫通孔形成に成功しているが、石英基板表面に堆積したSiの欠陥が原因と考えられるエッチピットが発生してしまうことが課題である。これを改善するために、分解能は劣るが耐薬品性が優れるレジストとの組み合わせを試みる。(ii)においては、溶液セルを用いないセルレス局所陽極酸化技術を構築する。溶液セルを用いないことにより、Ti細線に欠陥を与えないことや、試料の大きさや形状が自由となる。これは既に前年度に着手しているが、使用できる溶液量が限られるため、陽極酸化できるTiの体積に制限があることがわかってきている。TNT微細センサの特性とTNTの形状との関係を調べるためにはTNT形状を制御しなければならない。そこで、次年度は、形成されるTNTの形状をFE-SEM等で観察し、陽極酸化条件とTNTの形状との関係を調べる。セルレス局所陽極酸化でTNTの形状を制御する。2TNT内壁表面の評価分析及び制御については、大気中MIR-IRASの光学系構築を完了させる。また、1や3と合わせ、TNT構造の違いによるガス吸着の違いなどを評価することにより、TNT微小ガスセンサの特性向上につなげる。3応答特性の評価・分析では、今年度、ガス供給、排気システムを備えた評価装置を新たに構築する予定であったが、そこまで至らなかった。真空排気装置は既に納品済みであるので、必要最低限の機能を厳選して装置を簡便化して設計時間を短縮することにより、早期に評価装置を組み上げる。その後は、実際の試料の測定を行う。対象ガスとして、先ず、最も基本的なガスである水素を用いる。本研究の目的は、超小型超低消費電力臭覚センサの実現に向けた半導体ガスセンサの集積化技術の確立のため、陽極酸化によって自己組織的にナノホールアレイが形成される酸化チタンナノチューブ(TNT)を用いた自立膜型微小ガスセンサを局所陽極酸化により構築する。本研究を遂行するためには、1作製プロセスの確立、2TNT内壁表面の評価分析及び制御、3ガスセンサの応答特性の評価・分析が必要である。1作製プロセスの確立では、自立膜を形成するために基板に微小貫通孔を開ける必要がある。基板としてガラス基板を用いた。通常のアルカリガラスは、ナトリウムを含むため半導体プロセスには適合しないので、ガラス基板の種類として(合成)石英及び無アルカリガラスを検討した。無アルカリガラスの場合、フッ酸系溶液によるエッチングの際、析出物が基板表面に付着するため均一な微細孔の形成が困難である。この析出物は、無アルカリガラス中に含まれるアルカリ希土類と溶液中のフッ素によって形成したものであると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-18K04245 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K04245 |
陽極酸化自立膜型集積化高感度ガスセンサ | そこで、石英基板による貫通孔形成を試みた。石英基板を用いた場合、エッチング速度が極端に遅いため、レジストが剥がれるなどのレジストの耐薬品性が課題となった。そこで、石英基板上に堆積したSiにパターンを転写し、それをレジストとすることを試みたところ、長時間のエッチングに耐え、石英基板に数十ミクロンの貫通孔を形成できることがわかった。2TNT内壁表面の評価分析及び制御では、その評価法としてMIR-IRASを用いるが、本計測を木村班でも行えるように、赤外分光器の移設を行い、大気中MIR-IRASの光学系を設計した。3応答特性の評価・分析では、新たに構築するガス供給、排気システムを備えた評価装置の設計を行った。1作製プロセスの確立では、貫通孔を有する石英基板の作製プロセスに目処が立ち、リソグラフィによるチタン薄膜のパターニングにも着手している。また、溶液セルを用いないで陽極酸化を行うセルレス陽極酸化を提案し、それによるTi薄膜の陽極酸化にも着手している。したがって、1作製プロセスの確立では、概ね予定通りである。一方、2TNT内壁表面の評価分析及び制御では、赤外分光器の移設は完了したものの、MIR-IRASの光学系が設計にとどまっているが、設計した光学系部品は既に納入されている。したがって、本項目についても、多少の遅れを生じているが、概ね予定通りである。一方、3応答特性の評価・分析では、ガス供給、排気システムを備えた評価装置を2年目までに構築する予定であり、本年度、全体の設計まで行う予定でいたがそこまで至っていない。したがって、全体では、(3)やや遅れていると評価した。1作製プロセスの確立では、計画通り、さらに(i)ガラス基板の微細孔貫通プロセスの開発及び(ii)Tiのパターニング及び局所陽極酸化技術の構築を進める。(i)においては、パターンをSiに転写することにより石英基板の貫通孔形成に成功しているが、石英基板表面に堆積したSiの欠陥が原因と考えられるエッチピットが発生してしまうことが課題である。これを改善するために、分解能は劣るが耐薬品性が優れるレジストとの組み合わせを試みる。(ii)においては、溶液セルを用いないセルレス局所陽極酸化技術を構築する。溶液セルを用いないことにより、Ti細線に欠陥を与えないことや、試料の大きさや形状が自由となる。これは既に前年度に着手しているが、使用できる溶液量が限られるため、陽極酸化できるTiの体積に制限があることがわかってきている。TNT微細センサの特性とTNTの形状との関係を調べるためにはTNT形状を制御しなければならない。そこで、次年度は、形成されるTNTの形状をFE-SEM等で観察し、陽極酸化条件とTNTの形状との関係を調べる。セルレス局所陽極酸化でTNTの形状を制御する。2TNT内壁表面の評価分析及び制御については、大気中MIR-IRASの光学系構築を完了させる。また、1や3と合わせ、TNT構造の違いによるガス吸着の違いなどを評価することにより、TNT微小ガスセンサの特性向上につなげる。 | KAKENHI-PROJECT-18K04245 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K04245 |
漢方薬のアルツハイマー病に関する治療メカニズムの解析 | 本研究は、血管障害性アルツハイマー病に対する漢方薬の効果を評価するため、独自の低酸素培養システムを用いて、脳血液関門に係わるアストログリア細胞と脳血管内皮細胞、および、中枢神経系での免疫系を担当するミクログリア細胞における遺伝子発現の解析を行うことを目的としている。本年度は、アストログリア細胞の培養細胞株の一つであるC6グリオーマ細胞に対するIL-1β、IFNγなどのサイトカイン、および、ミクログリア細胞の遊走化因子であるATPに関し、低酸素条件下でのVEGF、GDNF、COX-2、iNOSなどの遺伝子の発現誘導に及ぼす影響についてRT-PCR法を用いて解析した。C6グリオーマ細胞では、低酸素条件下(1%酸素で4時間培養)で、VEGFおよびCOX-2遺伝子について約2倍の発現誘導が見られたが、GDNF遺伝子は発現が抑制された。iNOS遺伝子は発現量が低く有意差は認められなかった。アルツハイマー病の悪化にともない脳組織内濃度が上昇するIL-1βの作用については、GDNFおよびCOX-2遺伝子の発現誘導が増加し、同時に低酸素状態で培養すると、COX-2遺伝子ではさらに促進されるが、GDNF遺伝子では抑制された。一方、炎症ストレスにより上昇するIFNγの作用に関しては、COX-2およびGDNF遺伝子に対しIL-1βと同様の傾向が見られた。また、VEGF遺伝子については、対照群(正常酵素分圧)で発現量が増加するものの、同時に低酸素状態で培養しても発現量には差異がなく、IFNγとの相乗効果は見られなかった。ATPについてはCOX-2遺伝子のみに発現量の上昇が見られた。以上の結果から、アストログリア細胞では、IL-1βやIFNγなどのサイトカイン刺激と低酸素状態との相乗効果により誘導されるCOX-2遺伝子が、漢方薬治療の対象として最有力候補であると考えられる。現在、アミロイドβタンパク質の分解に係わるneprilysin遺伝子の解析、および、脳毛血管内皮細胞の正常細胞培養系の確立を進めている。本研究は、血管障害性アルツハイマー病に対する漢方薬の効果を評価するため、独自の低酸素培養システムを用いて、脳血液関門に係わるアストログリア細胞と脳血管内皮細胞、および、中枢神経系での免疫系を担当するミクログリア細胞における遺伝子発現の解析を行うことを目的としている。本年度は、アストログリア細胞の培養細胞株の一つであるC6グリオーマ細胞に対するIL-1β、IFNγなどのサイトカイン、および、ミクログリア細胞の遊走化因子であるATPに関し、低酸素条件下でのVEGF、GDNF、COX-2、iNOSなどの遺伝子の発現誘導に及ぼす影響についてRT-PCR法を用いて解析した。C6グリオーマ細胞では、低酸素条件下(1%酸素で4時間培養)で、VEGFおよびCOX-2遺伝子について約2倍の発現誘導が見られたが、GDNF遺伝子は発現が抑制された。iNOS遺伝子は発現量が低く有意差は認められなかった。アルツハイマー病の悪化にともない脳組織内濃度が上昇するIL-1βの作用については、GDNFおよびCOX-2遺伝子の発現誘導が増加し、同時に低酸素状態で培養すると、COX-2遺伝子ではさらに促進されるが、GDNF遺伝子では抑制された。一方、炎症ストレスにより上昇するIFNγの作用に関しては、COX-2およびGDNF遺伝子に対しIL-1βと同様の傾向が見られた。また、VEGF遺伝子については、対照群(正常酵素分圧)で発現量が増加するものの、同時に低酸素状態で培養しても発現量には差異がなく、IFNγとの相乗効果は見られなかった。ATPについてはCOX-2遺伝子のみに発現量の上昇が見られた。以上の結果から、アストログリア細胞では、IL-1βやIFNγなどのサイトカイン刺激と低酸素状態との相乗効果により誘導されるCOX-2遺伝子が、漢方薬治療の対象として最有力候補であると考えられる。現在、アミロイドβタンパク質の分解に係わるneprilysin遺伝子の解析、および、脳毛血管内皮細胞の正常細胞培養系の確立を進めている。 | KAKENHI-PROJECT-03F00322 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03F00322 |
新しいナノ微粒子磁性体の研究 | 本期間中には、前年度までに作成に成功し磁化測定を行ってきた、水酸化ニッケル単層ナノクラスター(Ni-MNC)について、より深い解析を進めると同時に、同じ3d遷移金属を含む新たなナノ微粒子磁性体を作成し、その磁気的性質を明らかにすることを目的とした。・直径2.5nm程度の水酸化ニッケルの強磁性単層クラスター(Ni-MNC)について、この系の二次元性を確認するため、放射光を利用したXAFSの実験を行った。この結果より局所構造の解析を行い、これまで仮定してきたNi-MNCの2次元性をさらに裏付けることができた。・Ni-MNCを焼成することにより、NiO微粒子の作成に成功した。バルクのNiOは520K以下では反強磁性に秩序化することが知られているが、このナノ微粒子は低温でわずかな磁気ヒステリシスを持つ強磁性的ふるまい、転移温度付近では超常磁性的ふるまいを示した。・鉄酸化物微粒子は、焼成温度によりγ-Fe_2O_3やα-Fe_2O_3が生成されることがわかった。特に1023K焼成試料では、γ相とα相が共存し、このサイズでは非常に珍しく、室温で約1kOeの保磁力を持つ。この内容は中小企業向けの講演会で報告し、各社から興味を集めた。また、日刊工業新聞でも紹介された。この系のγ相からα相への転移の過程を明らかにする1つの手段として、TG-DTA(重量示唆熱分析)の測定を行った。・鉄(Fe)系については、磁気記録材料としての応用化を考慮し、異方性の大きいコバルト(Co)をドープし、その組成を変化させて最適値を探した。また、焼成温度や測定温度などの条件も変化させ、ほぼ全容を明らかにした。1073K焼成試料を100Kにて測定した場合、Coが0.4モル付近で保磁力の最大値をとることが明らかになった。これは、Fe-rich側で支配的だったγ-Fe_2O_3に変わり、CoFe_2O_4が新たに生成されたためだと考えられる。Co-rich側、Co-pure系については、粉末X線解析、磁化測定のみからでは生成物質の特定がはっきりできず、解析について課題が残ることとなった。・当該期間中に出願した2件の特許に関して、審査請求、追加請求のための追実験を行った。本期間中には、前年度までに作成に成功し磁化測定を行ってきた、水酸化ニッケル単層ナノクラスター(Ni-MNC)について、より深い解析を進めると同時に、同じ3d遷移金属を含む新たなナノ微粒子磁性体を作成し、その磁気的性質を明らかにすることを目的とした。・直径2.5nm程度の水酸化ニッケルの強磁性単層クラスター(Ni-MNC)について、この系の二次元性を確認するため、放射光を利用したXAFSの実験を行った。この結果より局所構造の解析を行い、これまで仮定してきたNi-MNCの2次元性をさらに裏付けることができた。・Ni-MNCを焼成することにより、NiO微粒子の作成に成功した。バルクのNiOは520K以下では反強磁性に秩序化することが知られているが、このナノ微粒子は低温でわずかな磁気ヒステリシスを持つ強磁性的ふるまい、転移温度付近では超常磁性的ふるまいを示した。・鉄酸化物微粒子は、焼成温度によりγ-Fe_2O_3やα-Fe_2O_3が生成されることがわかった。特に1023K焼成試料では、γ相とα相が共存し、このサイズでは非常に珍しく、室温で約1kOeの保磁力を持つ。この内容は中小企業向けの講演会で報告し、各社から興味を集めた。また、日刊工業新聞でも紹介された。この系のγ相からα相への転移の過程を明らかにする1つの手段として、TG-DTA(重量示唆熱分析)の測定を行った。・鉄(Fe)系については、磁気記録材料としての応用化を考慮し、異方性の大きいコバルト(Co)をドープし、その組成を変化させて最適値を探した。また、焼成温度や測定温度などの条件も変化させ、ほぼ全容を明らかにした。1073K焼成試料を100Kにて測定した場合、Coが0.4モル付近で保磁力の最大値をとることが明らかになった。これは、Fe-rich側で支配的だったγ-Fe_2O_3に変わり、CoFe_2O_4が新たに生成されたためだと考えられる。Co-rich側、Co-pure系については、粉末X線解析、磁化測定のみからでは生成物質の特定がはっきりできず、解析について課題が残ることとなった。・当該期間中に出願した2件の特許に関して、審査請求、追加請求のための追実験を行った。1.現有設備の改良現有の振動試料型磁力計(VSM)測定システムについて、低温での安定した温度制御を目指し、新たな液体ヘリウム用ステンレスクライオスタットを設計、特注し、ヘリウム吹き出し口およびヒーター部分の改良を行った。2.Ni-系微粒子についてNi(OH)_2単層ナノ微粒子については、高磁場での磁化測定の結果を踏まえて解析し、10^7erg/ccのオーダーの強い異方性を持つことを確認した。さらにイジングモデルの分子場近似等を導入し、このクラスターが強いイジング性を持つこと、交換積分やクラスターサイズが温度変化すると仮定すると、磁化曲線が理論的に再現できることなどを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-12650008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12650008 |
新しいナノ微粒子磁性体の研究 | 3.新しい微粒子の作成Ni(OH)_2ナノ微粒子に加え、新たに鉄原子を含むナノ微粒子の作成を試みた。X線回折、化学分析の結果より、やはり直径が230nmの鉄の酸化物微粒子、γ-Fe_2O_3,α-Fe_2O_3が生成していることを確認した。しかも、熱処理の条件によってはγ相からα相へと転移していき、その過程の焼成温度1023Kにおいて、ナノサイズの微粒子には非常に珍しく、保磁力H_cが室温で観測された。これは、2相の酸化物の相互作用により発生すると思われ、次世代の磁気記録媒体としての期待が持てる。4.研究発表等平成12年7月大阪大学分子熱力学研究センターにて講演平成12年9月OPG国際集会にて発表(オーストリア・グラーツ)平成12年12月MRS-Jシンポジウム「クラスターの孤立系と凝縮系」にて発表平成13年1月理研シンポジウム「ナノ粒子科学」参加平成13年3月日本物理学会第56回年次会にて発表予定水酸化ニッケルの単層ナノクラスター(Ni-MNC)について、放射光の実験による局所構造の解析を行った。これまでの解析に加え、2次元性の再確認ができた。鉄原子を含むナノ微粒子に関しては、X線回折、化学分析の結果から、粒径が230nmの鉄酸化物(γ-Fe_2O_3,およびα-Fe_2O_3)が生成していることを確認した。この鉄酸化物微粒子は、熱処理の条件によってγ相からα相へと転移していくことがわかった。特に、1023Kで焼成した試料においては、γ相とα相が共存し、このサイズでは非常に珍しく室温で1500Oe程度の保磁力を持っ。さらに、γ相からα相への転移の過程を明らかにする1つの手段として、TG-DTA(重量示差熱分析)の測定を行った。この微粒子は、テラバイトレベルの磁気記録媒体としての可能性があるため、各界より注目を集めた。これまでに得られた、Ni(OH)_2の単層ナノ微粒子を773K以上で焼成することにより、酸化ニッケル、NiOのナノ微粒子の作成に成功した。通常、バルクのNiOは、520K以下では反強磁性にオーダーすることが知られているが、今回得られた微粒子は、300K30Kでは超常磁性的ふるまいをし、5Kではわずかながらヒステリシスを持つ、強磁性的ふるまいを示した。平成13年6月Porf. Hofflmann退官記念国際シンポジウム参加(ドイツ・レーゲンスブルク)平成13年9月日本物理学会秋季大会にて発表(徳島)平成13年9月東京大学大学院理学研究科太田研究室にて講演平成13年11月熱測定国際シンポジウムにて発表(横浜)平成13年11月RSP事業、新技術フォーラムにて講演平成14年3月ICMFS国際会議にて発表(京都)平成14年3月東京工業大学大学院理学研究科小国研究室にて講演予定平成14年3月日本物理学会第57回年次大会にて発表予定(びわこ草津)・昨年度までに作成が完了したステンレスクライオスタットを用い、VSM測定装置でのヘリウム温度までの磁化測定を実行し、データを取ることができた。・水酸化ニッケル(Ni(OH)_2)のナノ微粒子、鉄酸化物微粒子の他に、コバルト系微粒子の作成に成功した.鉄(Fe)系については、磁気記録材料としての応用化を考慮し、異方性の大きいコバルト(Co)をドープし、その組成を変化させて最適値を探した。また、焼成温度や測定温度などの条件も変化させ、ほぼ全容を明らかにした。1073K焼成試料を100Kにて測定した場合、Coが0.4モル付近で保磁力の最大値をとることが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-12650008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12650008 |
イネにおける水および酸化ストレス交差耐性を利用した品種選抜方法の検証 | イネにおける水および酸化ストレス耐性を評価する実験系を確立した.この評価方法に基づいて育種系統を選抜し,栽培試験を行ったところ,収量性や酸化ストレス耐性に改善効果が見られた.しかしながら養分の吸収特性など他の形質による影響も大きかったため,今後は本法に加え,複数の方法による評価が必要であると考えられた.イネにおける水および酸化ストレス耐性を評価する実験系を確立した.この評価方法に基づいて育種系統を選抜し,栽培試験を行ったところ,収量性や酸化ストレス耐性に改善効果が見られた.しかしながら養分の吸収特性など他の形質による影響も大きかったため,今後は本法に加え,複数の方法による評価が必要であると考えられた.降雨由来の水に依存した栽培を行う天水田は世界のイネ栽培面積の3分の1を占め,今後の食料需要の増加を賄うためのターゲットとされているが,降雨の不安定さなどのために生産性の改善は進んでいない.申請者らはイネにおいて酸化ストレス耐性が水ストレス耐性と交差耐性を示すことを明らかにしつつあり,簡易選抜方法を開発中である.本研究では代表的な天水田地帯であるタイ東北部において,現地品種を中心とした供試品種群にこの簡易選抜方法を適用し,実際の栽培条件下で光阻害程度などを測定しその有効性を検証することを目的とした.現地協力機関であるタイ国ウボンイネ研究所で研究を行った.申請者がこれまでに酸化ストレス耐性について評価を行ってきた品種の中から,酸化ストレス耐性について特徴的な6品種を選択し,さらに現地育成系統より90系統選択して加え,メチルビオロゲン(MV)を利用した酸化ストレス耐性およびポリエチレングリコール(PEG)を利用した水ストレス耐性に対する簡易選抜を行った.選抜結果より酸化および水ストレス耐性の異なる20品種・系統を選択した.上記により選択された20品種・系統を用いて,ウボン稲研究所内の研究圃場にて栽培実験を行った.研究所内に湛水および非湛水の2処理の水田を用意し,それぞれにおいて3反復乱塊法にて実験を行った.7月23日に播種,8月12日に移植した.植物体の酸化ストレス程度をクロロフィル蛍光測定による光化学系IIの最大量子収率(Fv/Fm)で評価した.リーフポロメータにより気孔伝導度を計測し,さらに葉身水ポテンシャルと計測し,水ストレス程度を評価した.以上のことにより簡易選抜による酸化ストレス耐性が強い品種は,圃場試験においても酸化ストレス耐性を示す傾向が示された.しかしながら圃場における測定時期や環境によって,評価が異なる場合もあり,詳細な変動要因の解析が必要と考えられた.降雨由来の水に依存した栽培を行う天水田は世界のイネ栽培面積の3分の1を占め,今後の食料需要の増加を賄うためのターゲットとされているが,降雨の不安定さなどのために生産性の改善は進んでいない.申請者らはイネにおいて酸化ストレス耐性が水ストレス耐性と交差耐性を示すことを明らかにしつつあり,簡易選抜方法を開発中である.本研究では代表的な天水田地帯であるタイ東北部において,現地品種を中心とした供試品種群にこの簡易選抜方法を適用し,実際の栽培条件下で光阻害程度などを測定しその有効性を検証することを目的とした.現地協力機関であるタイ国ウボンイネ研究所で栽培実験を行った.平成22年度に実施した幼苗を用いた酸化および水ストレス耐性評価実験(水・酸化ストレス耐性簡易評価法)により選択された系統・品種計22系統を用いた.研究所内に天水田の模擬環境として非湛水(Aerobic)区と湛水区を設け,それぞれにおいて3反復乱塊法にて実験を行った.6月に播種,7月に移植した.昨年度と同構に,植物体の最上位展開葉を用いてクロロフィル蛍光測定を行い,光化学系IIの最大量子収率(Fv/Fm)を評価した.同時に水ポテンシャル測定を行い水ストレス程度を評価した.地上部乾物重や葉面積などを計測し,酸化ストレスおよび水ストレスが乾物生産性に与える影響を評価した.また農家圃場において水稲葉を採取し,膜安定化指数(MSI)を計測することにより,酸化ストレス程度を評価した.以上の実験により,天水田ではイネは酸化ストレスを受けており,酸化ストレス耐性に基づいた簡易選抜法は水ストレス耐性について一定の効果を持ちうることを明らかにした.これらの成果は,学会発表等により公表を行った. | KAKENHI-PROJECT-22780014 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22780014 |
軌道体とその位相的ホワイトヘッド群の研究 | 軌道体の間の写像について研究した。軌道体は局所群の型による層構造を持つが、我々は余次元1の層を持たない軌道体のみを扱う。軌道体は必ず(軌道体の意味での)普遍被覆を持つが、二つの軌道体の間の一般の連続写像f:X→Yは必ずしも普遍被覆の間の連続写像に持ち上がるとは限らない。しかし、fがXの余次元0の層をYの余次元0の層にうつすと仮定すると、持ち上げが存在するための必要十分条件を基本群のことばで書くことができる。それをみたすとき、fは順であるということにする。fが順であるならば、その持ち上げは、普遍被覆の間のφー同変な写像となる。ただし、φはfによりひきおこされる基本群の間の準同型写像である。順な写像、またその特別な場合であるOR写像(竹内氏により定義された)に関して、種々な性質を証明することができた。以下に主なものを列記する。1.X、Yが共にThurstonの意味で「良い」軌道体で、順な写像が基本群の間の単射を引きおこすならば、fは局所群の単射を引きおこす。従ってfは特異点を特異点にうつす。2.上で特にfがORー写像ならば、対応する局所群は互いに同型である。3.XとYがORーホモトピー同値な軌道体であるとき、Xが良いこととYが良いことは必要十分である。4.閉2次元軌道体の間の順ホモトピー同値は順同相写像にホモトピックである。特にORーホモトピー同値は、同型写像にホモトピックとなる。今後の課題は上の4の結果を高次元に拡張することであるが、そのためには、軌道体の単純ホモトピー理論、および軌道体の手術理論を確立しなければならない。順な写像は同変写像との関係が深いので、同変理論と比較しながら研究をすすめてゆきたい。軌道体の間の写像について研究した。軌道体は局所群の型による層構造を持つが、我々は余次元1の層を持たない軌道体のみを扱う。軌道体は必ず(軌道体の意味での)普遍被覆を持つが、二つの軌道体の間の一般の連続写像f:X→Yは必ずしも普遍被覆の間の連続写像に持ち上がるとは限らない。しかし、fがXの余次元0の層をYの余次元0の層にうつすと仮定すると、持ち上げが存在するための必要十分条件を基本群のことばで書くことができる。それをみたすとき、fは順であるということにする。fが順であるならば、その持ち上げは、普遍被覆の間のφー同変な写像となる。ただし、φはfによりひきおこされる基本群の間の準同型写像である。順な写像、またその特別な場合であるOR写像(竹内氏により定義された)に関して、種々な性質を証明することができた。以下に主なものを列記する。1.X、Yが共にThurstonの意味で「良い」軌道体で、順な写像が基本群の間の単射を引きおこすならば、fは局所群の単射を引きおこす。従ってfは特異点を特異点にうつす。2.上で特にfがORー写像ならば、対応する局所群は互いに同型である。3.XとYがORーホモトピー同値な軌道体であるとき、Xが良いこととYが良いことは必要十分である。4.閉2次元軌道体の間の順ホモトピー同値は順同相写像にホモトピックである。特にORーホモトピー同値は、同型写像にホモトピックとなる。今後の課題は上の4の結果を高次元に拡張することであるが、そのためには、軌道体の単純ホモトピー理論、および軌道体の手術理論を確立しなければならない。順な写像は同変写像との関係が深いので、同変理論と比較しながら研究をすすめてゆきたい。 | KAKENHI-PROJECT-63540069 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63540069 |
妊娠高血圧症候群の血管内皮機能障害の臨床現場での適切な評価とその治療に関する研究 | 妊娠高血圧症候群(PIH)の管理、治療においてその主病態である血管内皮機能異常を改善することに着目して研究を行うことを目的とした。近年、内科領域で用いられている診察室外血圧である家庭血圧、24時間自由行動下血圧測定や血管内皮機能評価法として上腕動脈の反応性充血法を用いてPIHの評価やPIHハイリスク妊婦を選別し、L-アルギニン+葉酸投与によるPIH発症予防効果、経口降圧薬であるラベタロール投与の降圧効果などのPIH管理治療への研究を行った。妊娠高血圧症候群(PIH)、その関連疾患であるHELLP症候群、脳出血は妊婦と児の生命に重篤な影響を及ぼす。これまでの研究において、その病態の中心は血管内皮機能の異常であると考えられる。名古屋市立西部医療センター産婦人科ハイリスク外来においてPIHハイリスクやPIH妊婦に対して、血管内皮機能異常の発生に着目し、血管内皮機能異常の改善とPIH発症予防を行った。ハイリスク妊婦の選択は、高年齢、妊娠高血圧症候群の既往歴などの妊婦に対して、血管内皮機能を評価して行った。血管内皮機能は上腕動脈のflow mediate vasodilatation (%FMD)を用いた。外来診察時血圧が140/90mmHg以上の妊婦に24時間自由行動下血圧測定(24h ABPM)を行い、高血圧と白衣高血圧の鑑別を行った。また、血圧手帳を作成し、家庭血圧の記録も行った。ハイリスク妊婦に対して、L-アルギニンと葉酸の投与によるPIH発症予防を行った。高血圧患者には降圧剤投与を行った。血管内皮機能の評価として%FMDにてその変化を観察し、血圧のコントロールは24h ABPMを用いた。PIH発症ハイリスク妊婦に対するL-アルギニンと葉酸の投与による介入は、血管内皮機能異常を改善し、重症PIH発症を抑制出来る可能性が示唆された。また、高血圧患者において24h ABPMによる血圧の日内変動は適切な降圧剤投与の指標となり得ることが明らかとなった。妊娠高血圧症候群(PIH)ハイリスク妊婦における血管内皮機能低下例を対象とした葉酸+L-アルギンサプリメントの研究では、40才以上、BMI>27、高血圧合併症のある妊婦や前回PIH、初診時の血圧が高いものなどをPIH発症ハイリスク妊婦として、名古屋市立西部医療センターで妊娠初期から分娩まで管理予定の妊婦で、同意を得て行なった。上腕動脈のflow-mediated vasodilatation(%FMD)低値(110以下)を血管内皮機能低下群として、葉酸0.4mg+L-アルギニン1g/日(内服群)を投与した。内服を希望されなかった妊婦をコントロール群とした。投与開始前、開始後に%FMD測定した。今年度は内服群15名、コントロール群7名であった。妊娠高血圧腎症(PE)の予防効果があることが示唆された。妊婦の抵抗血管を用いたin vitroの研究は現在、この研究を進めることが不可能と判断した。それに変わる研究として、PIHハイリスク妊婦や外来での高血圧(>140/90mmHg)を対象として24時間自由行動下血圧(24h ABPM)を測定し、重症(>160/110mmHg)や昼間と夜間の血圧の優位性を検討した。PE14名、妊娠高血圧(GH)17名、白衣高血圧妊婦9名に24h ABPM測定を行った。PEは重症高血圧、夜間有意高血圧が多く、GHでは軽症高血圧、昼間有意高血圧が多かった。PEとGHでは、血圧上昇の病態が異なり、それに対応した降圧管理が必要と考えられた。降圧治療を、経口薬ラベタロールおよび注射薬ニカルジピンスライディングスケールを用いて検討した。ラベタロールは、GHの降圧に有用であり、神経症状の改善も認めた。ニカルジピン注射は緊急時に確実に降圧することを明らかにすると共に、20%以上の下降率を示すものも多く認め、十分な血圧監視が必要であることが示唆された。妊娠高血圧症候群(PIH)の管理、治療においてその主病態である血管内皮機能異常を改善することに着目して研究を行うことを目的とした。近年、内科領域で用いられている診察室外血圧である家庭血圧、24時間自由行動下血圧測定や血管内皮機能評価法として上腕動脈の反応性充血法を用いてPIHの評価やPIHハイリスク妊婦を選別し、L-アルギニン+葉酸投与によるPIH発症予防効果、経口降圧薬であるラベタロール投与の降圧効果などのPIH管理治療への研究を行った。妊娠高血圧症候群(PIH)は、血管内皮機能障害が主病態である。本研究は、臨床現場fで病態の重症化の研究、血管内皮機能異常の改善による治療や予防を研究目的とする。名古屋市立西部医療センターにおいて同意の得られたPIHハイリスク妊婦(40才以上、BMI>27、高血圧、糖尿病、抗リン脂質症候群など合併症のあるもの、PIH既往、初診時の血圧が高いものなど)で、%FMDが低値の場合は、血管内皮機能低下群であり、重症PIHの発症率が高い。葉酸0.4mg+L-アルギニン1g/日を投与により、血管内皮機能は改善し、PIH発症予防する。PIH重症型である子癇は、妊娠末期から分娩産褥の発症が多い。高血圧が発症直前に重症化するものと、重症PEから子癇に発展するものがある。前者は分娩の変化が関与すると推察される。後者は重症PEに伴う循環障害や凝固障害が関与し、脳出血による妊婦死亡に至ることもある。 | KAKENHI-PROJECT-23592408 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23592408 |
妊娠高血圧症候群の血管内皮機能障害の臨床現場での適切な評価とその治療に関する研究 | 子癇の病態は、高血圧による脳血管血流の自動調節能破綻による。当センターで昨年5月より5例の子癇があり、4例がPEから発展したものである。PE妊婦で子癇に至らなかった4例と比較検討してみると子癇妊婦では、その病態形成に高血圧の重症度(160/110mmHg)も重要であるが、血圧の変動(30/15mmHg以上)がより重要であることが明らかとなった。妊娠健診で一時的な軽症高血圧にしばしば遭遇する。家庭血圧(HBP)の測定や24時間血圧測定(ABPM)測定は、白衣高血圧の鑑別に用いられる。PIHハイリスク妊婦、軽症高血圧妊婦やPE妊婦においてABPM測定を行った。PIH妊婦では、拡張期血圧が高く、夜間高血圧を認めた。妊婦では、ABPMは%FMDと同様にハイリスク妊娠の予知、診断に有用と考えられるL-アルギニンと葉酸の投与は、%FMDを改善し、重症PIHまたは妊娠高血圧腎症の発症予防に有用であると考えられる。24h ABPMは、降圧剤投与時間の設定の指標となり得る。重症高血圧と脳血管障害の発症に関する検討を、子癇発症妊婦、重症高血圧妊婦の血圧変動の観察から、これらの病態の形成には血圧の重症度のみでなく、血圧の変動幅が大きく、血圧の調節能も重要であることを明らかにした。1.葉酸とL-アルギニンサプリメントの有用性の検討:PIHハイリスク妊婦を対象としたPIH発症予知とL-アルギニン+葉酸による予防の検討は、当センターは2011年5月開院した。2011年7月に本研究は倫理委員会承認された。現在、血管内皮機能測定として%FMD測定機器整備と臨床現場での診療体制がほぼ整い、データ集積中である。エントリーを投与群、非投与群を合わせて100例を目標としているが、本年4月より対象者を増やしてゆく予定である。血液検査も準備がほぼ整い、採取、検査が出来るように進めている。2.PIH重症化に関する研究:当センターで昨年5月より5例の子癇があり、4例がPEから発展したものである。PE妊婦で子癇に至らなかった4例と比較検討し、論文を作成中である。3.臨床現場での血圧測定の検討:新たにABPM測定を開始した。PIH妊婦にけるABPMを測定した。ハイリスク妊婦においてABPMを測定し、PIHの発症や分娩時高血圧の発症予知を行ってゆく予定である。L-アルギニンと葉酸の投与は、例数を重ね検討を進める。24h ABPMは、降圧剤投与時間の設定の指標とするとともに、降圧剤投与の効果判定の検討を進める。PIHハイリスク妊婦を対象とした%FMDによるPIH発症予知について検討をすすめる。新たにABPM測定による血圧の変化の観察を行い、%FMDと同様に血管内皮機能の評価とPIH発症予知(白衣高血圧との鑑別)に用いる。L-アルギニン+葉酸による血管内皮機能改善効果とPIH発症予防の有用性の検討を進める。当初、本年度から予定していた妊婦の抵抗血管を用いたin vitroの研究は、現状では倫理委員会の承認が容易ではなく、モデル動物実験の結果などを行い、その結果から推察されることでunderlying mechanismの研究を進める。・アルギU購入、葉酸購入・赤血球中L-アルギニン測定、葉酸濃度測定以下の項目での研究費の使用を予定している葉酸とL- | KAKENHI-PROJECT-23592408 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23592408 |
アザミウマの腸管細菌がトスポウイルスの獲得・伝搬に及ぼす影響 | 日本各地で採集したミカンキイロアザミウマなどから腸管細菌を分離した。分離された細菌のコロニータイプ、グラム染色性、形態、生化学的性質、16S rDNAの塩基配列などを調べた結果、いずれの個体からも少なくとも数種の細菌が分離された。また、1頭あたりの細菌数、細菌の種類には同一集団内での個体差、地域差が認められた。腸管細菌がウイルスの獲得・伝搬に及ぼす影響については、研究を継続中である。日本各地で採集したミカンキイロアザミウマなどから腸管細菌を分離した。分離された細菌のコロニータイプ、グラム染色性、形態、生化学的性質、16S rDNAの塩基配列などを調べた結果、いずれの個体からも少なくとも数種の細菌が分離された。また、1頭あたりの細菌数、細菌の種類には同一集団内での個体差、地域差が認められた。腸管細菌がウイルスの獲得・伝搬に及ぼす影響については、研究を継続中である。トマト黄化えそウイルスなどのトスポウイルスは各種アザミウマによって永続的に伝搬されるため、多種の野菜類、花卉類に大きな被害を及ぼしている。アザミウマはウイルスに感染した植物を吸汁することによりウイルスを獲得し、その後虫体内でウイルスが増殖し伝搬能力をもつ。しかし、ウイルスの獲得・伝搬能力には個体差、アザミウマを採集した地域よって差がみられるが、その理由は明らかにされていない。トスポウイルスは最初に腸管の細胞に感染することから、腸管内に生息している細菌がウイルスの獲得・伝搬に何らかの影響を及ぼしていると予測された。日本各地で採集したミカンキイロアザミウマを催芽したソラマメで集団飼育し、虫体をアルコール殺菌後、磨砕しNA培地に塗布して細菌を分離した。分離された細菌の色調などのコロニータイプ、グラム染色性、形態、カタラーゼ活性、オキシダーゼ活性、16S rRNAの塩基配列などを調べた結果、いずれの個体からも少なくとも複数の細菌が分離された。また、1頭あたりの細菌数、細菌の種類には同一集団内での個体差、地域差が認められた。細菌の種類はBacillus、Serratia、Erwinia、Tsukamurella属などであった。今後、APIテストなどを行ない細菌の種の同定を行なう必要がある。また、アザミウマ虫体内のウイルス量をモノクローナル抗体とポリクローナル抗体を用いたTAS-ELISAにより測定した結果、幼虫、成虫1頭からウイルスを検出することが可能であった。今後、虫体内のウイルス量を調べ、伝搬試験を行なうことにより腸管細菌がウイルスの獲得・伝搬に及ぼす影響が明らかになるものと期待されるトマト黄化えそウイルスなどのトスポウイルスは各種アザミウマによって永続的に伝搬されるため、多種の野菜類、花卉類に大きな被害を及ぼしている。アザミウマはウイルスに感染した植物を吸汁することによりウイルスを獲得し、その後虫体内でウイルスが増殖し伝搬能力をもつ。しかし、ウイルスの獲得・伝搬能力には個体差、アザミウマを採集した地域よって差がみられるが、その理由は明らかにされていない。トスポウイルスな最初に腸管の細胞に感染することから、腸管内に日本各地で採集したミカンキイロアザミウマ,ダイズウスイロアザミウマ,ネギアザミウマなどを催芽したソラマメで集団飼育し、虫体をアルコール殺菌後、磨砕しNA培地に塗布して細菌を分離した。分離された細菌の色調などのコロニータイプ、グラム染色性、形態、カタラーゼ活性、オキシダーゼ活性、16S rRNAの塩基配列などを調べた結果、いずれの個体からも少なくとも数種の細菌が分離された。また、1頭あたりの細菌数、細菌の種類には同一集団内での個体差、地域差が認められた。細菌の種類はErwinia, Bacillus、Serratia、Erwinia、Tsukamurella属など多様であった。今後、正確な細菌の種の同定を行なううともに、腸管細菌とトスポウイルスの獲得・伝搬との関連性を明らかにする必要がある。アザミウマの伝搬試験には多大の労力を必要とするため、感染葉汁液に各種の糖、還元剤、酸化防止剤を加え、ウイルスを部分精製した結果、活性の高い精製ウイルスを得ることカミできた。これらは-80°Cでの保存が可能なことから、今後ネックとなっていたトスポウイルスの伝搬機構の解析が飛躍的に進展することが期待される。 | KAKENHI-PROJECT-19580052 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19580052 |
保健体育研究文献検索のためのシソーラスの研究 | 本研究の目的は、わが国の保健体育学関係文献の検索を円滑に行なうためのシソーラスを作成することである。そのため、これまでに次のような作業を進めてきた。1)EDMARSデータベースに各研究者が独自の立場から登録してきた保健体育関係文献の索引語について、その使用頻度を調査し、日本体育学会の分科会別に使用頻度の多い索引語リストを報告した(教育情報連合研究発表大会、1987年)。2)その後、これまでに登録した索引語の使用状況を検討しながら、体育学会の発表分類コード表を基本とし、また保健体育関係の辞書等を参考にして索引語の精選・整理を行った。そして、これらの索引語を基にして上位・下位の関係を示す樹状構造化したシソーラスを構築し、その試案を報告した(教育情報研究、4巻、1988)。3)一方、保健体育研究文献の検索をマイコンを用いて行なえるようにする開発作業が、後藤を中心に行なわれ、これの利用が可能になった(岐阜大学カリキュラム開発研究センター研究報告、6巻、1988及びデータレポートNO、197、1989)。そこで、これに対応する索引語の検討を並行して進めてきた。4)以上の作業の結果として、最終的に13の領域別に索引語の上位、下位の関係を示す樹状構造化した日本語の保健体育学関係シソーラスを作成し、本報告書にまとめることができた。ただし、上位、下位の関係が不明確な用語も多々見られたので、今後はこの点の検討を行っていきたい、また、今回の日本語に対応する英語の索引語については、別の機会に発表していきたい。本研究の目的は、わが国の保健体育学関係文献の検索を円滑に行なうためのシソーラスを作成することである。そのため、これまでに次のような作業を進めてきた。1)EDMARSデータベースに各研究者が独自の立場から登録してきた保健体育関係文献の索引語について、その使用頻度を調査し、日本体育学会の分科会別に使用頻度の多い索引語リストを報告した(教育情報連合研究発表大会、1987年)。2)その後、これまでに登録した索引語の使用状況を検討しながら、体育学会の発表分類コード表を基本とし、また保健体育関係の辞書等を参考にして索引語の精選・整理を行った。そして、これらの索引語を基にして上位・下位の関係を示す樹状構造化したシソーラスを構築し、その試案を報告した(教育情報研究、4巻、1988)。3)一方、保健体育研究文献の検索をマイコンを用いて行なえるようにする開発作業が、後藤を中心に行なわれ、これの利用が可能になった(岐阜大学カリキュラム開発研究センター研究報告、6巻、1988及びデータレポートNO、197、1989)。そこで、これに対応する索引語の検討を並行して進めてきた。4)以上の作業の結果として、最終的に13の領域別に索引語の上位、下位の関係を示す樹状構造化した日本語の保健体育学関係シソーラスを作成し、本報告書にまとめることができた。ただし、上位、下位の関係が不明確な用語も多々見られたので、今後はこの点の検討を行っていきたい、また、今回の日本語に対応する英語の索引語については、別の機会に発表していきたい。本年度は「体育学関係学術用語・専門用語選定案」の用語3000語と日本体育学会大会案内に記載されている研究分野別コード表の用語約700語をEDMARSーGIFUの辞書データベースに登録した.そして,ここに登録した用語をの修正を行なうとともに,各日本語に対応する英語の入力作業も並行して行なってきた.また,登録された用語の中から1087語を抽出し,索引語相互の関係(上位,下位,同義,関連)について検討してきた.この結果については教育情報連合研究発表大会において発表するとともに,「保健体育学関係索引語リスト検討資料」を会員に配布し,検討してもらうよう依頼した.一方,今回購入したマイクロコンピューター記憶装置に,一部の文献データベースを移植し,マイクロコンピューターて索引語の検討ができるよう開発を進めてきた.現在はまだ開発中であるが,一応の実用化が可能になったので,その手引書「教育情報検索システム」を作成し,これを基にした検索操作と,これまでに登録した索引語による検索上の問題点についての検討を分担者および関係協力者が行なってきた.以上のように,本年度の計画にそって概ね実施することができたが,次年度は,これまでに登録した用語の精選作業を進め,また用語間の関係についても検討を加え,実用的な保健体育関係シソーラスを構築していく計画である.最終的には,本研究で構築した保健体育関係シソーラスを利用するための手引書を作成し,本研究の一応の目的を達成したいと考えている.本年度は、昨年度から検討してきた、保健体育学研究文献検索のためのシソーラスを作成する作業を進めてきた。この作業を進める段階で、協同研究者の後藤たちが開発したマイクロコンピューターによる文献検索用ソフト(NIRS)を用いて、これまでに大型計算機のデータベース(EDMRRS)に登録されてきた保健体育学関係文献の検索が可能になったため、これに対応する索引語(日本語・英語)の検討・整理を行ってきた。ところがNIRSを用いて検索する場合、日本語と英語の両方の索引語で検索することは、マイクロコンピューターの容量等の関係で困難になった。また、これまでの索引語は、日本語で登録されている。そこで、将来マイクロコンピューターによる文献検索を普及させるために、今回は日本語による保健体育学のシソーラスを作成することにした。 | KAKENHI-PROJECT-62450084 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62450084 |
保健体育研究文献検索のためのシソーラスの研究 | 一方、シソーラスの構築作業がかなり進行し、整理された段階で、日本体育学会から体育学専門用語が発表(昭和63年12月)された。体育学関係者にとっては体育学会が発表した用語になじんでいるものと考え、また体育学会の用語を尊重する立場から、時間的に困難であったが、できるかぎり体育学会の用語を取り入れる改訂作業を進めた。その結果、13の領域別に上位・下位の関係を示す樹状構造化したシソーラスを作成することができ、本研究の目的を一応達成することができた。ただし、この作業を進める過程で、樹状構造化が困難な用語が認められ、またどの程度の深さまで上位・下位の関係を示せばよいのか判断しにくい点もみられた。これらについては、今後このシソーラスを使用しながら、不備な点を改良していきたい。 | KAKENHI-PROJECT-62450084 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62450084 |
鼻咽喉閉鎖動態の解析 | 「口蓋裂」の治療目的は鼻咽腔閉鎖機能の改善にあり、12歳ごろ、そのための手術療法を施行する。しかし、その中の56%は手術を施行しても同機能の改善が充分でなく、言語機能(構音)に問題を残す症例が生じている。そして、その原因部位は症例によりまちまちである。また、同じく先天性に鼻咽腔閉鎖不全をきたす疾患である「鼻咽腔閉鎖不全症」も、閉鎖不全をきたす原因部位は症例により異なると考えられている。しかしながら、閉鎖不全の原因部位を正確に判定する方法は未だ確立きれておらず、画一的な手術療法が行われているのが現状である。また、健常人においても鼻咽腔閉鎖動態は個々により様々で、閉鎖に関わる筋群の関与の相違が推測されている。そこで、発声時の鼻咽腔閉鎖機構をより正確に把握するために、MRIの超高速撮像法を用いて、閉鎖に関わる筋群の観察を試みた。その結果、MRIの撮像方法の設定と観察する断面の設定を工夫することにより、口蓋帆挙筋をはじめとする鼻咽腔閉鎖筋の一部の発声時の変化をとらぇることが可能となった。この検査方法が確立されることにより、個々の症例の閉鎖不全の原因となる部位の特定と、症例に応じた手術術式の選択が可能になると考えられる。さらに、この検査方法を用いて、健常人をふくめた鼻咽腔閉鎖動態を観察したところ、従来は鼻咽腔閉鎖筋とは考えられていなかった前頚筋群のひとつが、この閉鎖機構に関わっていることが解明された。この新しい知見は、軽度の鼻咽腔閉鎖不全症例の治療のひとつである言語療法において、臨床応用できる可能性があると考えられる。「口蓋裂」の治療目的は鼻咽腔閉鎖機能の改善にあり、12歳ごろ、そのための手術療法を施行する。しかし、その中の56%は手術を施行しても同機能の改善が充分でなく、言語機能(構音)に問題を残す症例が生じている。そして、その原因部位は症例によりまちまちである。また、同じく先天性に鼻咽腔閉鎖不全をきたす疾患である「鼻咽腔閉鎖不全症」も、閉鎖不全をきたす原因部位は症例により異なると考えられている。しかしながら、閉鎖不全の原因部位を正確に判定する方法は未だ確立きれておらず、画一的な手術療法が行われているのが現状である。また、健常人においても鼻咽腔閉鎖動態は個々により様々で、閉鎖に関わる筋群の関与の相違が推測されている。そこで、発声時の鼻咽腔閉鎖機構をより正確に把握するために、MRIの超高速撮像法を用いて、閉鎖に関わる筋群の観察を試みた。その結果、MRIの撮像方法の設定と観察する断面の設定を工夫することにより、口蓋帆挙筋をはじめとする鼻咽腔閉鎖筋の一部の発声時の変化をとらぇることが可能となった。この検査方法が確立されることにより、個々の症例の閉鎖不全の原因となる部位の特定と、症例に応じた手術術式の選択が可能になると考えられる。さらに、この検査方法を用いて、健常人をふくめた鼻咽腔閉鎖動態を観察したところ、従来は鼻咽腔閉鎖筋とは考えられていなかった前頚筋群のひとつが、この閉鎖機構に関わっていることが解明された。この新しい知見は、軽度の鼻咽腔閉鎖不全症例の治療のひとつである言語療法において、臨床応用できる可能性があると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-08770928 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08770928 |
多様化・集中化機能によるロバスト・適応的多体結合型大域的最適化手法の開発 | 最適化問題の構造に対する「適応性」や問題の規模に対する「ロバスト性」を具備させる方略として,最適解探索の「多様化」と「集中化」の機能を実現した新しい多点探索型大域的最適化アルゴリズムの開発や,Particle Swarm Optimization(以降PSO)などの既存の多点探索型アルゴリズムの機能向上のための改良,さらには開発したアルゴリズムの機能強化のためのハイブリッド化手法の提案をおこない,大域的最適解を探索する多くのベンチマーク問題において,開発手法や提案手法の有用性を検証するとともに,制御系設計問題への応用を検討した.最適化問題の構造に対する「適応性」や問題の規模に対する「ロバスト性」を具備させる方略として,最適解探索の「多様化」と「集中化」の機能を実現した新しい多点探索型大域的最適化アルゴリズムの開発や,Particle Swarm Optimization(以降PSO)などの既存の多点探索型アルゴリズムの機能向上のための改良,さらには開発したアルゴリズムの機能強化のためのハイブリッド化手法の提案をおこない,大域的最適解を探索する多くのベンチマーク問題において,開発手法や提案手法の有用性を検証するとともに,制御系設計問題への応用を検討した.・連続変数最適化問題に対して、大域的最適解探索のための複数探索点の相互作用による「多様化」と「集中化」の機能をもたせた以下のような新しい最適化計算手法を開発した。(1)Particle SwarmOptimization法において、探索点の挙動に負制動による非線形特性を持たせることによって、PSOの欠点とされる初期収束を回避させた手法(2)最適化計算を階層化させることによって、「多様化」と「集中化」の探索戦略を階層化させ、上位の多様化の戦略による手法としてParticle Swarm Optimization法を用い、下位の集中化戦略による手法として、近傍制約条件を考慮した局所探索法を用いた手法(3)非線形カオス力学系を結合させることによって、カオス挙動による多様化探索戦略と、結合構造によって創発される非線形振動の同調現象を用いた集中化戦略を用いた手法これらの手法を多峰性関数のベンチマークでシミュレーションした結果、いずれも比較的変数が多い問題に対しても有効であることを確認した。・離散変数最適化問題に対して、大域的最適解探索のための近接性原理を用いた新しい最適化計算手法を開発した。とくにナップサック問題、巡回セールスマン問題、ジョブショップ・フローショップ問題において、近接最適性原理の成立を数値実験的により検証し、近接最適性原理の定量的解釈や評価に基づき、組合せ問題の解候補間に部品の概念を導入してある種の距離を定義し、目的値を小さくする有望な解候補に距離が近い解候補群に対して集中探索を実行する多点型手法である。このような探索戦略をTabu Searchに導入した手法を、前述の問題のベンチマークに対して適用した結果、きわめて良好な探索性能を有することを確認した。とくに連続変数最適化問題に対して、大域的最適化のための複数探索点の相互作用による「多様化」と「集中化」の機能をもたせた、Particle Swarm Optimization (PSO)の改良を含めた以下のようなさらに新しい最適化手法を開発した。(1)勾配情報を利用する多点型のカオス最適化手法にPSOの移流結合構造を導入して、カオス探索に同調現象を利用する探索手法(2) PSOのような大域的最適化手法では、許された計算時間内おいて収束せずに持続的に探索するという指針が重要であることを指摘し、このような持続探索能力を有するように改良したPSO(3) PSOにおいて、複数の探索点の活性度という概念を新たに導入し、持続型探索を継続しつつ、探索の最終局面では収束状態に遷移させるよう、この活性度に応じた慣性係数を調整するPSO(4)慣性系モデルによる最適化手法において、探索点の挙動に応じた非線形特性で、その慣性係数の安定・不安定性を適応的に調整して、局所解への引き込みを回避する適応型手法(5) PSOの探索点を捕食者と被食者に分類し、両者間の位置関係に対応して、PSOの慣性係数を調整する適応型PSO(6)ヒューリスティックスな探索法の一つであるDifferential Evolutionにおいて、その探索性能を向上させた手法これらの手法を多峰関数のベンチマークでシミュレーションすることにより、それらの間の優劣も含めて、有用性を確認した。連続変数最適化問題の大域的最適解探索ための複数探索点の相互作用による「多様化」と「集中化」の機能を持たせた新しい多点探索型最適化計算手法を開発し、また「多様化」と「集中化」の機能を発揮させるために、Particle Swarm Optimization(PSO)のパラメータが満たすべき条件を解析的に求めた。具体的には、・相互干渉する群構造をもつPSOの開発・多点型離散化時変慣性系モデルを用いた大域的最適化の開発・PSOの安定性解析による持続探索のための最良パラメータの決定である。これらの手法を大域的最適化問題の数多くのベンチマークに適用し、それらが有力な計算手法であることを確認した。さらに、多点探索法の一種であるPSOを取り上げ、これをハイブリッド的かつ進化計算的に用いる方法論を提案し、複雑な構造の制約条件をもつ最適化問題や巡回セールスマン問題を、PSOをメタ手法として用いて解く方法、およびPSOを変数次元のより小さな部分空間の探索に用いて大域的最適解の探索効率を大幅に改善する方法を確立した。 | KAKENHI-PROJECT-19500196 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19500196 |
多様化・集中化機能によるロバスト・適応的多体結合型大域的最適化手法の開発 | 一方、離散変数最適化問題に対しては、探索点間の近接性を距離構造で評価し、それに基づいて探索点間に相互作用を付与した多点型Tabu Searchを開発し、それをベンチマークに適用してきわめて良好な計算性能を有することを確認した。以上、連続変数最適化問題、および離散変数最適化問題に対し、多点探索手法の一種であるPSOの改良と、複数の探索点に探索の「多様化」と「集中化」機能をもたせた新しい計算手法の開発をおこない、大域的最適解を効率良く求めるための有用な手段を提供することを可能にした。 | KAKENHI-PROJECT-19500196 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19500196 |
片眼摘出ラットの視覚系における可塑的神経機構の生理心理学的・免疫組織化学的解析 | 従来の研究において,ラットでは,幼若時の片眼摘出により視覚入力の一部を遮断すると,残存眼からそれと同側の視覚中枢に投射する非交叉性情報系(UXVP)に,補償作用としての再編成が出現し,その系の機能が増大することを,弁別学習を指標とした行動的側面,及び残存眼の視神経刺激により視覚17野から記録されるField Potentialを指標とした電気生理学的側面から明らかにした.そこで本研究では,こうした機能的増大の様態を,縞視力を指標として行動的側面からさらに詳細に分析するとともに,その可塑的神経機構を,c-fos挽疫組織化学により形態的側面から解析し,以下の研究成果を得た.1.縦縞-横縞弁別学習事態において測定したUXVPの縞視力は,OEB(幼若時片眼摘出群):0.73c/d,OET(成長後片眼摘出群):0.44c/dであり,OEBのUXVPに誘起される機能的増大が縞視力に反映される.3.脳梁線維を切断したOEBの残存眼と同側の視覚野では,パターン刺激の提示により,17野を中心として,それを越える広範な領域に,FLIニューロンが検出されるのに対して,同様の処置を施したOETでは,17野の限局した領域に僅かなFLIニューロンが検出されるにとどまる.以上のような形で,幼若時に片眼を摘出したラットのUXVPに誘起される機能的増大の様態を行動的側面から,またその可塑的神経機構を形態的側面から明らかにした.従来の研究において,ラットでは,幼若時の片眼摘出により視覚入力の一部を遮断すると,残存眼からそれと同側の視覚中枢に投射する非交叉性情報系(UXVP)に,補償作用としての再編成が出現し,その系の機能が増大することを,弁別学習を指標とした行動的側面,及び残存眼の視神経刺激により視覚17野から記録されるField Potentialを指標とした電気生理学的側面から明らかにした.そこで本研究では,こうした機能的増大の様態を,縞視力を指標として行動的側面からさらに詳細に分析するとともに,その可塑的神経機構を,c-fos挽疫組織化学により形態的側面から解析し,以下の研究成果を得た.1.縦縞-横縞弁別学習事態において測定したUXVPの縞視力は,OEB(幼若時片眼摘出群):0.73c/d,OET(成長後片眼摘出群):0.44c/dであり,OEBのUXVPに誘起される機能的増大が縞視力に反映される.3.脳梁線維を切断したOEBの残存眼と同側の視覚野では,パターン刺激の提示により,17野を中心として,それを越える広範な領域に,FLIニューロンが検出されるのに対して,同様の処置を施したOETでは,17野の限局した領域に僅かなFLIニューロンが検出されるにとどまる.以上のような形で,幼若時に片眼を摘出したラットのUXVPに誘起される機能的増大の様態を行動的側面から,またその可塑的神経機構を形態的側面から明らかにした.ラットでは、幼若時に片眼を摘出しておくと、残存眼からそれと同側の視覚中枢に投射する非交叉性情報系(UXVP)に、入力遮断に対する補償作用としての再編成が出現し、その系の機能が増大する。われわれはこれまでに、その態様を行動的側面と電気生理学的側面から分析した結果、幼若時に片眼を摘出したラット(OEB)では、両眼が健全な状態で成長したラット(OET)には存在しない、視床後外側核から大脳皮質17野への新たな投射線維が形成されること、およびUXVPにおけるこうした可塑的変化による再編成が、白黒弁別学習を促進させる形で行動面にも反映されることを明らかにした。そこで本研究では、OEBのUXVPにもたらされる機能的増大の態様およびその可塑的神経機構を、これまでとは異なる手法により詳細に解析し、以下のような研究成果を得た。1.縞視力を指標とした行動面における解析OEB、OETについて30mm幅の白、黒が交替する縦縞-横縞弁別行動を形成後、縞幅を順次段階的に減少させ、80%の正反応が維持される最小の縞幅を測定した結果、OETが10mmであるのに対してOEBが6mmという形で、UXVPに誘起される機能的増大の様態を縞視力を指標として行動面から解析可能であることが明らかにされた。OEB、OETそれぞれのUXVPについてFLIニューロンを検索した結果、OEBの上丘および視床後外側核において、OETには見られない強いFosの発現が観察され、UXVPに機能的増大をもたらす可塑的神経機構を免疫組織化学的側面から解析可能であることが明らかにされた。ラットでは、幼若時に片眼を摘出しておくと、残存眼からそれと同側の視覚中枢に投射する非交叉性情報系(UXVP)に、片眼摘出による入力遮断に対する補償作用としての再編成が出現し、その系の機能が増大する。われわれはこれまでに、その様態を行動的側面と電気生理学的側面から分析した結果、幼若時に片眼を摘出したラット(OEB)では、両眼が健全な状態で成長したラット(OET)には存在しない、視床後外側核から大脳皮質17野への新たな投射線維が形成されること、およびUXVPにおけるこうした可塑的変化による再編成が、白黒およびパターン弁別学習を促進させるという形で、行動面にも反映されることを明らかにした。そこで本年度においては、幼若時の片眼摘出によりOEBのUXVPにもたらされる機能的増大の神経機構を、Fos-like immunoreactivity(FLI)を指標として解析した。 | KAKENHI-PROJECT-08610089 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08610089 |
片眼摘出ラットの視覚系における可塑的神経機構の生理心理学的・免疫組織化学的解析 | OEB、OETそれぞれについて、24時間の暗順応後、ウレタン麻酔下で残存眼にパターン刺激を提示し、120分間暗黒条件下においた後、4%PFA/0.1MPB溶液により灌流固定した脳の50μm前額断連続切片を用いてc-fos免疫組織化学を実施し、以下の事実を得た。以上の免疫組織化学的解析から、幼若時の片眼摘出によりOEBのUXVPに誘起される機能的増大には、上丘のsuperficialgray layerにおける形態的変化が大きく関与することが示唆された。ラットでは、幼若時に片眼を摘出しておくと、残存眼からそれと同側の視覚中枢に投射する非交叉性情報系(UXVP)に、片眼摘出による入力遮断に対する補償作用としての再編成が出現し、その系の機能が増大する。われわれはこれまでに、その様態を行動的側面と電気生理学的側面から分析した結果、幼若時に片眼を摘出したラット(OEB)では、成長後に片眼を摘出したラット(OET)には存在しない、視床後外側核から大脳皮質17野への新たな投射線維が形成されること、およびUXVPにおけるこうした可塑的変化による再編成が、白黒およびパターン弁別学習を促進させるという形で、行動面にも反映されることを明らかにした。そこで本年度は、昨年度と同様の免疫組織化学的手法により、OEBの残存眼と同側の大脳皮質視覚野について解析するとともに、anterograde axon tracerとしてDiIを網膜の限局する部位に注入することにより、網膜に起始する軸索の投射パターンを、OEBの上丘および大脳皮質視覚野において検索した。その結果、OEBの視覚野では、17野を中心とするOETに較べてかなり広範な皮質領域にFLIニューロンが検出された。また、OETのUXVPには僅かにしか認められないDiI標識軸索が、OEBの上丘および視覚野の広範な領域に認められた。以上のような形で、OEBのUXVPに出現する機能的増大の神経機構を形態的側面から解析した。今後、これを支配する分子機構についての検討を要する。 | KAKENHI-PROJECT-08610089 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08610089 |
ウシの胚移植成績の向上を目的とする最適受胚牛臨床診断法の作出 | ウシの胚移植技術が開発されて以来,過排卵処置,採卵,胚の保存及び移植等の一連の技術の進展には目ざましいものがあるが,受胚牛を選定するための卵巣・子宮等に臨床診断技術の確立が遅れているために,胚移植の受胎率は平均的に50%程度であり,その普及は不十分である。本年度も昨年度に引続き,この胚移植普及上の大きな問題を解決するため,正常受胚牛の簡易で精度の高い診断法を作出する研究を行った。研究の材料には,野外での実用性が高い診断法を作出するため,酪農家に飼育され人工授精又は胚移植に供された乳牛から,われわれが既に開発した直腸検査法を主体とする生殖器臨床検査法により記録した発情(授精)時,黄体初期5及び7日の卵巣・子宮・腟等の臨床的所見データと,更にこれらと同時点の各個体から採血して測定した血漿中プロジェステロン及びエストラジオール濃度データを用いた。これらのデータは,数量化理論I及びII類の質的データ解析モデルを利用して分析した。その結果,子宮の太さ・子宮角断面形状・収縮性・壁の肥厚度・内部貯留物の有無,子宮頚管の太さ・長さ,外子宮口の大きさ,腟充血の有無,外陰唇の形状,卵巣の黄体の形成状態等,13項目の臨床的所見情報を総合化して胚移植の可又は不可を判定出来る判別方程式が得られた。すなわち,発情後5日で正常受胚牛を選定する判別式を用いて受胚牛を選定し,23日後,これらに胚移植を行った場合の推定受胎率は82.8%,発情後7日で受胚牛を選定する判別式を用いて正常受胚牛を選定し,当日又は翌日,これらに胚移植を実施した場合の推定受胎率は86.2%であった。また,発情後5日に判別式による診断で異常と判定され,hCG剤等の投与により治療し,7日の時点で正常な状態に改善されて移植可能牛と判定されるものがあることも判明した。これらの結果は,胚移植における受胚牛選定に十分応用出来るものと考えられる。牛胚移植においては,最適受胚牛の選定のための臨床的診断技術面が最も遅れていることから,牛胚移植の普及は期待されるほど進展していない.これは,胚移植に関する研究が過排卵誘起,採卵,卵胞卵子,体外授精,胚の培養・操作・保存・移植方法等に偏重し,受胚牛の選定法に関する本格的な研究はほとんどなされなかったためである.本研究は,牛の発情期から黄体期(59日)における生殖内分泌学的な根拠のある生殖器臨床診断法を確立し,これを利用して最適受胚牛の選定法を作出して,胚移植の受胎成績を飛躍的向上させ,胚移植の普及に寄与しようとするものである.昭和62年以来,研究代表者の研究室では,臨床的に正常と判定できる発情期の適期に人工授精した乳牛の79日後の子宮内には,80%以上の高率で移植可能胚が存在することを確認してきているので,これをベ-スとして,平成3年度は,これらと同等の時期の同等の卵巣及び副生殖器臨床所見を示す乳牛について,末梢血液中のゴナドトロピン(LH,FSH),プロジェステロン及びエストラジオ-ルの濃度を調べ,すでに多くの研究者によって報告されている同時期の生殖内分泌パタ-ンと比較した.その結果,これらが全く同等であったことから,本研究スタッフが定めている直腸検査等の臨床診断法により,最適受胚牛として選定できる個体の排卵後5日目の新黄体の高さは1.5Cm<である等のほか,子宮,子宮頚管,腟,外陰部及び腟粘液の所見についても特定できることが明かとなった.目下,これらの方法の再現性の確認とさらなる改善点の検出を目的に,フィ-ルド研究分担者を中心に,研究協力者の支援を得て野外の多数の胚移植牛及び人工授精牛を対象に実験及び材料採取を継続中(平成4年度が最終年)である.ウシの胚移植技術が開発されて以来,過排卵処置,採卵,胚の保存及び移植等の一連の技術の進展には目ざましいものがあるが,受胚牛を選定するための卵巣・子宮等に臨床診断技術の確立が遅れているために,胚移植の受胎率は平均的に50%程度であり,その普及は不十分である。本年度も昨年度に引続き,この胚移植普及上の大きな問題を解決するため,正常受胚牛の簡易で精度の高い診断法を作出する研究を行った。研究の材料には,野外での実用性が高い診断法を作出するため,酪農家に飼育され人工授精又は胚移植に供された乳牛から,われわれが既に開発した直腸検査法を主体とする生殖器臨床検査法により記録した発情(授精)時,黄体初期5及び7日の卵巣・子宮・腟等の臨床的所見データと,更にこれらと同時点の各個体から採血して測定した血漿中プロジェステロン及びエストラジオール濃度データを用いた。これらのデータは,数量化理論I及びII類の質的データ解析モデルを利用して分析した。その結果,子宮の太さ・子宮角断面形状・収縮性・壁の肥厚度・内部貯留物の有無,子宮頚管の太さ・長さ,外子宮口の大きさ,腟充血の有無,外陰唇の形状,卵巣の黄体の形成状態等,13項目の臨床的所見情報を総合化して胚移植の可又は不可を判定出来る判別方程式が得られた。 | KAKENHI-PROJECT-03556042 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03556042 |
ウシの胚移植成績の向上を目的とする最適受胚牛臨床診断法の作出 | すなわち,発情後5日で正常受胚牛を選定する判別式を用いて受胚牛を選定し,23日後,これらに胚移植を行った場合の推定受胎率は82.8%,発情後7日で受胚牛を選定する判別式を用いて正常受胚牛を選定し,当日又は翌日,これらに胚移植を実施した場合の推定受胎率は86.2%であった。また,発情後5日に判別式による診断で異常と判定され,hCG剤等の投与により治療し,7日の時点で正常な状態に改善されて移植可能牛と判定されるものがあることも判明した。これらの結果は,胚移植における受胚牛選定に十分応用出来るものと考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-03556042 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03556042 |
保型関数の特殊値の超越性及び代数的独立性についての研究 | 保型関数と深い関係にあるqー関数を対象にして、その特殊値についての研究を行い、以下に述べる成果を得た。Kを有限次代数体、υをKの素点、qをKの元で|q|_υ>1をみたすものとする。また、lを自然数、Q(z)とR(z)をK係数の多項式でdegQ【lessthanor equal】l及びQ(0)≠0をみたすものとする。このとき、ポアンカレ型関数方程式Q(z)f(qz)=z^lf(z)+R(z)は、Kのυについての完備化K_υにおいて有理型な関数f(z)を解に持つが、その特殊値について次の定理が成り立つ:「αをKの零ではない元で、f(z)の極ではないものとする。このとき、f(α)はKの元ではない。さらに、具体的に計算できる定数μがあって、f(α)のυについての無理数度がμ以下となる。特に、f(α)はリューヴィル数ではない。」この結果は、鹿児島大学の桂田昌紀氏の協力を経て,オウル大学のKeijo Vaananen氏の協力によって完成されたものである。さらに、この研究の過程で、f(z)の特殊値とある種のq-超幾何級数の特殊値との間の関係が認識され、上記の定理をq-超幾何級数の特殊値の研究に応用する道が拓かれた。その成果として、Stihlの結果(Math.Ann.,1984)を一般化することに成功した。上記の研究に関連して、当該研究費補助金により、このテーマに詳しいボルドー大学のAlain Lasjaunias氏を群馬大学に招き(1998年10月)、同氏から意見を聞くとともに、より進んだ研究の可能性についても討論を行った。また、研究成果を日仏超越数論研究集会(於日仏会館、1998年11月)で発表し、さらに、桂田、Vaananen両氏との共著論文を現在準備中である。保型関数と深い関係にあるqー関数を対象にして、その特殊値についての研究を行い、以下に述べる成果を得た。Kを有限次代数体、υをKの素点、qをKの元で|q|_υ>1をみたすものとする。また、lを自然数、Q(z)とR(z)をK係数の多項式でdegQ【lessthanor equal】l及びQ(0)≠0をみたすものとする。このとき、ポアンカレ型関数方程式Q(z)f(qz)=z^lf(z)+R(z)は、Kのυについての完備化K_υにおいて有理型な関数f(z)を解に持つが、その特殊値について次の定理が成り立つ:「αをKの零ではない元で、f(z)の極ではないものとする。このとき、f(α)はKの元ではない。さらに、具体的に計算できる定数μがあって、f(α)のυについての無理数度がμ以下となる。特に、f(α)はリューヴィル数ではない。」この結果は、鹿児島大学の桂田昌紀氏の協力を経て,オウル大学のKeijo Vaananen氏の協力によって完成されたものである。さらに、この研究の過程で、f(z)の特殊値とある種のq-超幾何級数の特殊値との間の関係が認識され、上記の定理をq-超幾何級数の特殊値の研究に応用する道が拓かれた。その成果として、Stihlの結果(Math.Ann.,1984)を一般化することに成功した。上記の研究に関連して、当該研究費補助金により、このテーマに詳しいボルドー大学のAlain Lasjaunias氏を群馬大学に招き(1998年10月)、同氏から意見を聞くとともに、より進んだ研究の可能性についても討論を行った。また、研究成果を日仏超越数論研究集会(於日仏会館、1998年11月)で発表し、さらに、桂田、Vaananen両氏との共著論文を現在準備中である。研究成果は、(1)楕円モジュラー関数j(τ)に関する結果、および、(2)一般化されたチャカロフ関数の特殊値に関する結果、の二つに分けられる。(1)まず、次の結果を証明した:「上半平面の複素数αに対して、楕円モジュラー関数j(τ)の値j(α)が代数的数であると仮定する。このとき、任意の自然数sに対してj(sα)も代数的数であるが、その共役の絶対値の最大値はexp(cs)以下である。ここに、cはj(τ)とj(α)のみに依存し、sには無関係な正の定数である。」さらに、これを使ってMahler-Manin予想の証明を簡易化することができたので、日韓合同セミナー(於慶南大学、1997年11月)で発表した。その内容は、論文“On the proof of Mahler-Manin conjecture"として、同セミナーの報告集に掲載される予定である。当該年度の研究目的に挙げたSchneiderの問題に、上の結果を応用するには至らなかったが、これについては来年度に継続して研究する予定である。また、j(τ)に関係した関数たちの代数的独立性について、前年度に得ていた結果を拡張したものを、研究集会・数論とその応用(於京都大学数理解析研究所、1997年11月)で発表し、同研究集会の報告集のために、論文“On algebraic independence of certain functions related to theelliptic modular function"を投稿した。 | KAKENHI-PROJECT-09640007 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09640007 |
保型関数の特殊値の超越性及び代数的独立性についての研究 | (2)鹿児島大学の桂田昌紀氏と、一般化されたチャカロフ関数の特殊値の無理数性および無理数度についての共同研究を行った。そして、当該研究費補助金により、このテーマに詳しいオウル大学のVaananen氏を群馬大学に招き(1998年1月)、研究集会を開くなどして同氏から意見を聞くとともに、今後の研究課題についても討論した。なお、研究結果はすでにプレプリントにまとめてあり、近く発表の予定である。保型関数と深い関係にあるq-関数を対象にして、その特殊値についての研究を行い、以下に述べる成果を得た。Kを有限次代数体、υをKの素点、qをKの元で|q|v>1をみたすものとする。また、lを自然数、Q(z)とR(z)をK係数の多項式でdegQ【lessthanor equal】l及びQ(0)≠0をみたすものとする。このとき、ポアンカレ型関数方程式Q(z)f(qz)=z_lf(z)+R(z)は、Kのvについての完備化Kvにおいて有理型な関数f(z)を解に持つが、その特殊値について次の定理が成り立つ:「αをKの零ではない元で、f(z)の極ではないものとする。このとき、f(α)はKの元ではない。さらに、具体的に計算できる定数μがあって、f(α)のvについての無理数度がμ以下となる。特に、f(α)はリューヴィル数ではない。」この結果は、鹿児島大学の桂田昌紀氏との共同研究を経て、オウル大学のKeijo Vaananen氏との共同研究によって完成されたものである。さらに、これらの共同研究の過程で、f(z)の特殊値とある種のq-超幾何級数の特殊値との間の関係が認識され、上記の定理をq-超幾何級数の特殊値の研究に応用する道が拓かれた。その成果として、Stihlの結果(Math.Ann.,1984)を一般化することに成功した上記の研究に関連して、当該研究費補助金により、このテーマに詳しいボルドー大学のAlain Lasjaunias氏を群馬大学に招き(1998年10月)、同氏から意見を聞くとともに、より進んだ研究の可能性についても討論を行った。また、研究成果を日仏超越数論研究集会(於日仏会館、1998年11月)で発表し、さらに、桂田、Vaananen両氏との共著論文を現在準備中である。 | KAKENHI-PROJECT-09640007 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09640007 |
樹状細胞による獲得免疫と自然免疫の調節機構の解析 | 樹状細胞は生体内に広く分布し、ウイルスや細菌などの侵襲に対して監視細胞として働き、それら由来の抗原ペプチドを特異的T細胞に提示し、獲得免疫応答を効率よく誘導する抗原提示細胞である。マウスにおいてはCD8αやCD11b, DEC-205の発現から分類される樹状細胞サブセットが存在し、機能的にも異なることが知られるが、粘膜免疫応答や感染免疫応答における役割に関しては詳細な検討が加えられてはいない。そこで、それらの生体内分布についてリンパ器官を対照としつつ皮膚や腸管・パイエル板・肺などの粘膜組織における検討を目的に、HIVの結合と輸送に関与するヒトDC-SIGNおよび表皮ランゲルハンス細胞に発現されるバーベック顆粒の構成タンパクであるLangerinのマウスホモログのクローニングを行い、それらのマウス樹状細胞サブセットにおける発現様態を調べた。骨髄由来樹状細胞を用いて検討したところ、共に未熟な樹状細胞に発現され、活性化されるとmRNAの発現が著しく低下することが確認された。リンパ系ならびに非リンパ系の各組織における分布においては、DC-SIGNならびにmSIGNRは粘膜系組織に分布する樹状細胞や真皮樹状細胞に多く発現されているが、表皮ランゲルハンス細胞にはほとんど検出されないが、これとは逆に、Langerinは表皮ランゲルハンス細胞や脾、リンパ節などリンパ器官T領域に分布する樹状細胞に発現されており、胸腺髄質の樹状細胞にも認められた。しかし、腸管やパイエル板には検出されなかった。さらに、脾、リンパ節、肝の樹状細胞をCD8αとCD11bの発現を指標にCD8α^-/CD11b^<hi>とCD8α^+/CD11b^<lo>の2つの集団に分画して、それぞれの発現を調べたところ、DC-SIGN, mSIGNRは前者に、Langerinは後者に発現されていることが明らかになった。樹状細胞は生体内に広く分布し、ウイルスや細菌などの侵襲に対して監視細胞として働き、それら由来の抗原ペプチドを特異的T細胞に提示し、獲得免疫応答を効率よく誘導する抗原提示細胞である。マウスにおいてはCD8αやCD11b, DEC-205の発現から分類される樹状細胞サブセットが存在し、機能的にも異なることが知られるが、粘膜免疫応答や感染免疫応答における役割に関しては詳細な検討が加えられてはいない。そこで、それらの生体内分布についてリンパ器官を対照としつつ皮膚や腸管・パイエル板・肺などの粘膜組織における検討を目的に、HIVの結合と輸送に関与するヒトDC-SIGNおよび表皮ランゲルハンス細胞に発現されるバーベック顆粒の構成タンパクであるLangerinのマウスホモログのクローニングを行い、それらのマウス樹状細胞サブセットにおける発現様態を調べた。骨髄由来樹状細胞を用いて検討したところ、共に未熟な樹状細胞に発現され、活性化されるとmRNAの発現が著しく低下することが確認された。リンパ系ならびに非リンパ系の各組織における分布においては、DC-SIGNならびにmSIGNRは粘膜系組織に分布する樹状細胞や真皮樹状細胞に多く発現されているが、表皮ランゲルハンス細胞にはほとんど検出されないが、これとは逆に、Langerinは表皮ランゲルハンス細胞や脾、リンパ節などリンパ器官T領域に分布する樹状細胞に発現されており、胸腺髄質の樹状細胞にも認められた。しかし、腸管やパイエル板には検出されなかった。さらに、脾、リンパ節、肝の樹状細胞をCD8αとCD11bの発現を指標にCD8α^-/CD11b^<hi>とCD8α^+/CD11b^<lo>の2つの集団に分画して、それぞれの発現を調べたところ、DC-SIGN, mSIGNRは前者に、Langerinは後者に発現されていることが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-13226053 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13226053 |
国境と跨境が取り結ぶ文学の可能性--モンゴル系諸民族の近代文学の再検討 | 本研究は、モンゴル系諸民族の居住するモンゴル国、中国内モンゴル自治区、ロシア連邦ブリヤート共和国およびカルムイク共和国などの各地域の近代文学の成立過程、国家により形成された個別性、国境を越えた共通性、さらに文学作品や人的交流による相互影響などを再検討し、国家単位で編成された文学ではなく、国境を越えた民族横断的な文学の比較・統合を試み、モンゴル近代文学研究に新たな視点を提供しようとするものである。本研究は、モンゴル系諸民族の居住するモンゴル国、中国内モンゴル自治区、ロシア連邦ブリヤート共和国およびカルムイク共和国などの各地域の近代文学の成立過程、国家により形成された個別性、国境を越えた共通性、さらに文学作品や人的交流による相互影響などを再検討し、国家単位で編成された文学ではなく、国境を越えた民族横断的な文学の比較・統合を試み、モンゴル近代文学研究に新たな視点を提供しようとするものである。本年度は、研究課題遂行の第一段階として、まず、モンゴル系諸民族の居住するモンゴル国、中国・内モンゴル自治区、ロシア連邦ブリヤート共和国、およびカルムイク共和国などの各地域の近代文学の成立過程、国家により形成された個別性、国境を越えた共通性、さらに文学作品や人的交流による相互影響について整理・検討する作業に着手した。そのため、研究代表者の岡田と研究分担者の芝山・荒井は、日本における文献に基づく調査研究のみならず、夏期休暇中に各地域で実地に調査研究を行った。それらの成果の一部は、「D.マンダフ著『日本文学のモンゴル語訳の経験といくつかの新しい問題』における「モンゴル文学の日本語訳概観」の章について」(岡田)、「内モンゴル師範大学朝魯門教授の《世紀を跨ぐモンゴル文学の新傾向》とモンゴル文学史再検討」「モンゴル国文学からモンゴル文学へ日本におけるモンゴル文学研究と『モンゴル文学』誌創刊の意義」(いずれも芝山)などの研究発表の形式で、春と秋に開催された日本モンゴル文学会の研究会に提出され、研究課題をめぐって活発な議論と意見交換が行われた。成果の一部はまた『モンゴル文学』誌創刊号に論文(荒井「ヨーロッパ亡命カルムイク知識人エレンジェン・バラ=ダワーン著『軍指揮官としてのチンギス・ハン』の日本語訳について」)、評論(芝山「モンゴル文学の世界性『モンゴル文学』創刊によせて」、Ts.チョルモン「世紀を跨ぐモンゴル文学の新傾向」)、翻訳(Ts.ダムディンスレン作・岡田訳「遅れたばあさん訪ねある記」)の形式で掲載された。また秋の研究会に招聘した内モンゴル師範大学の満全教授の講演「内モンゴル近代文学に関する諸問題」も、内モンゴルの近代文学の現状と問題点を論じたものであり、私たちの研究課題の遂行にとってたいへん有意義なものであった。本年度は、研究課題遂行の第二段階として、モンゴル国ウランバートル市で8月912日に開催された第10回国際モンゴル学者会議に合わせて、8月15日に国際シンポジウム「モンゴル系諸民族の近代文学-越境の観点から」を主催した。モンゴル学者会議直後だったこともあり、モンゴル国からD.ツェデブ、D.ガルバータル、S.バイガルサイハン、G.ガルバヤル、中国からチョルモン、ワンマンドガ、ロシアからM.P.ペトロワなど有力なモンゴル文学研究者が参加して研究発表を行ったほか、研究代表者の岡田と研究分担者の芝山・荒井も、「モンゴル〔近代〕文学の時代区分の問題について」(岡田)、「モンゴル国における読書傾向と越境モンゴル文学の可能性」(芝山)、「ブリヤートとカルムイクの近代文学史について」(荒井)を発表した。シンポジウムでは、多数のモンゴル人出席者を交えて活発な議論と意見交換が行われ、標記研究課題をめぐって大きな成果を上げることができた。またシンポジウムに先立って開催されたモンゴル学者会議でも、「ツェンディーン・ダムディンスレンと社会主義的近代化」(岡田)、「The Re-birth of "Mongolian Literature":100 Years after Asia's First Modern Revolution」(芝山)、「チンギス・ハーンに関するある本の歴史-ユーゴスラビアで出版された本の日本語訳」(荒井)の発表を行い、研究課題に関連する意見交換を行った。なお、岡田の上記二本の発表は後にモンゴル科学アカデミー言語文学研究所紀要『言語文学研究』とモンゴル国立教育大学モンゴル研究院紀要『モンゴル研究フォーラム』に掲載された。以上の二つの会議のほか、日本モンゴル文学会の春と秋の定例研究会でも研究課題に関連する発表(岡田「モンゴル文学と戦争--集英社創業85周年企画『戦争×文学』に寄せて」、芝山「2010年予備調査にみるモンゴル人の読書傾向」「東アジアにおける『文学』概念の本質化-国際モンゴル学者会議の論争から」)があり、活発な討論が行われた。本年度は、研究課題遂行の第三段階(最終段階)として、日本モンゴル文学会が昨年度8月15日、モンゴル国ウランバートル市で開催した国際シンポジウム「モンゴル系諸民族の近代文学ー越境の観点から」に参加した内外の研究者(モンゴル国、中国、ロシア、日本)から提出された発表論文をまとめ、研究報告書の形式で刊行することを目指していたが、編集作業の遅れや資金面その他、諸般の事情から年度内の刊行が困難となったことは遺憾である。研究代表者の岡田は本年度8月と3月、モンゴル国ウランバートル市で開催された国際学会(「モンゴル研究ーその新しい傾向」「モンゴル文献学の当面する諸問題」)に出席し、研究課題に関連する発表を行った。 | KAKENHI-PROJECT-22520352 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22520352 |
国境と跨境が取り結ぶ文学の可能性--モンゴル系諸民族の近代文学の再検討 | 研究分担者の芝山は、内モンゴルで現地調査を行う予定であったが、日中関係悪化が内モンゴルのホストに影響することへの配慮から現地調査を自粛し、内モンゴル社会科学院で12月に開催された国際学会への論文参加のみにとどめた。研究分担者の荒井は5月と9月、アメリカとインドで開催された国際学会(“Conference on Language and Identity in Central Asia", “4th East Asian Conference on Slavic Eurasian Studies")に出席し、研究課題に関連する発表を行った。国内では7月に開催された「日本国際文化学会第11回全国大会」に岡田と芝山が出席し、研究課題に関連する発表を行った。また日本モンゴル文学会の春と秋の定例研究会でも研究課題に関連する発表(岡田「モンゴル国立大学創立70周年記念国際学術会議《モンゴル研究ーその新しい傾向》参加報告」、芝山「モンゴル文学における読者論の可能性」「《狼の原理》再考」、荒井「ブリヤート語書籍出版について」)があり、活発な討論が行われた。平成23年度に計画したモンゴル国ウランバートル市での国際シンポジウム「モンゴル系諸民族の近代文学-越境の観点から」の主催と日本モンゴル文学会の春と秋の定例研究会は、ほぼ当初の予定どおり進展して成功裏に終わったが、それらの成果をまとめる作業が若干遅れているため、上記の評価となった。24年度が最終年度であるため、記入しない。研究代表者の岡田と研究分担者の芝山・荒井は、夏期休暇を利用してモンゴル地域での研究調査を行うとともに、国際シンポジウム「モンゴル系諸民族の近代文学-越境の観点から」における発表論文やその他の関係論文の原稿を収集して、論文集『国境と跨境が取り結ぶ文学の可能性-モンゴル系諸民族の近代文学の再検討』の編集作業を行い、研究成果報告書も兼ねて本年度中に刊行することを予定している。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22520352 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22520352 |
結核菌病原因子によるマクロファージ機能撹乱の分子機構の解明 | 結核菌ゲノム上に存在するRD1領域は、マクロファージのミトコンドリア内膜の傷害や、細胞質内カリウムの流出に関与する.その結果、結核菌感染マクロファージでは細胞死やカスパーゼ1の活性化が誘導される.一方、PPE37は炎症性サイトカイン産生を抑制することで結核菌の病原性に寄与する.また、BCGを用いた感染実験で、宿主体内から菌が容易に排除されないのは、PD-1を介した抑制性シグナル経路が活性化されるためであることが示された.結核菌ゲノム上に存在するRD1領域は、マクロファージのミトコンドリア内膜の傷害や、細胞質内カリウムの流出に関与する.その結果、結核菌感染マクロファージでは細胞死やカスパーゼ1の活性化が誘導される.一方、PPE37は炎症性サイトカイン産生を抑制することで結核菌の病原性に寄与する.また、BCGを用いた感染実験で、宿主体内から菌が容易に排除されないのは、PD-1を介した抑制性シグナル経路が活性化されるためであることが示された.細胞内寄生菌である結核菌が感染を成立させ体内に生存し続けるためには、宿主細胞であるマクロファージの殺菌機構を回避すると同時に、その細胞死を制御するメカニズムを発揮することが重要と考えられる。しかし、病原性の強い結核菌株は感染マクロファージにネクローシスを誘導する能力が高いことが示されている。結核菌が宿主細胞のネクローシスを誘導する意義や、その機序については今のところ明確な解答は得られていないが、これは菌の病原性発現において重要な機序であると考えられる。そこで本研究では、結核菌の病原性関連遺伝子領域であるRDlとネクローシス誘導の関係を明らかにすることを試みた。マウスマクロファージ様細胞株RAW264細胞に結核菌H37Rvを感染させたところ、ネクローシスが誘導された。しかし、結核菌の病原性関連遺伝子領域であるRD1欠損株の感染では、ネクローシスの誘導は認められず、結核菌によるネクローシス誘導にはRD1領域が重要であることが示された。さらに、結核菌H37Rv感染細胞では、RD1に依存したミトコンドリア内膜傷害および細胞内ATP量の減少が観察され、これがネクローシスの原因であることが示唆された。また、結核菌H37Rv感染初期にはカスパーゼ9の活性化が誘導され、このカスパーゼ9がネクローシスの抑制に関与することが示された。抗酸菌に特有なPPEファミリータンパク質のうち、PPE37は感染マクロファージや宿主体内でその発現が著しく増加することが示されている。そこで、その機能を調べるため、PPE37を発現するMycobacterium smegmatisを作製し、in vitroで感染実験を行った。その結果、PPE37は感染マクロファージの細胞死に影響することはないが、炎症性サイトカイン産生を抑制することが示され、感染後の宿主免疫応答の制御に関与することが示唆された。結核菌野生株H37RvとRD1遺伝子領域欠損株H37RvΔRD1感染後のサイトカイン産生応答を比較したところ、H37Rv刺激に比較してH37Rv ΔRD1刺激後のIL-18およびIL-1β産生が著しく低いことが示された。H37RvとH37RvΔRD1の感染ではIL-18およびIL-1βmRNAの発現は同程度に誘導されたが、カスパーゼ1の活性化はH37Rv感染においてのみ認められた。また、これらサイトカイン産生とカスパーゼ1の活性化はIFN-α/β非依存的であった。さらに、カスパーゼ1の活性化が細胞外塩化カリウム濃度の増加に応じて阻害され、カリウムイオンの流出を誘導するnigericin存在下でH37Rv ΔRD1を感染させると、カスパーゼ1が活性化することが明らかとなった。以上の結果から、H37Rv感染でIL-18やIL-1β産生が誘導されるのは、菌のRD1領域に存在する遺伝子産物がカリウムイオンの流出を引き起こすことでカスパーゼ1の活性化が誘導されたためであると考えられた。BCGに対する防御免疫を担うT細胞は感染3週目には出現するが、その後感染の経過とともにその活性は抑制された。BCG感染6週目以降の脾臓では制御性T細胞数の増加や抑制性サイトカインであるIL-10産生は認められなかったが、抗原提示細胞上の抑制性補助分子PD-L1の発現の増強が認められた。また、PD-1欠損マウスではwild typeマウスに比べて感染6週目以降の菌の排除が亢進した。さらに、感染防御の発現に重要なIFN-γおよびTNF-α産生性CD4+T細胞数が、PD-1欠損マウスでは感染6週目以降も持続的に存在することが示された。これらの結果から、BCG感染後期ではPD-1/PD-L1経路を介したシグナルが感染防御に関与するCD4+T細胞の機能を抑制することが示され、これがBCG感染を成立させる要因となることが考えられた。結核菌の病原性に関与するPPE37はMAPK経路を阻害することで炎症性サイトカイン産生の抑制に関与することが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-19590443 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19590443 |
ダイオキシンによる毒性発現の除去・軽減を目的とした内因性及び外因性物質の探索 | 1研究目的内因性及び外因性のAh受容体リガンドを探索し、これらの部分的構造修飾によりすぐれたAh受容体阻害剤候補物質の開発を目的とした。2研究計画我々が以前の研究においてAh受容体リガンド活性の構造活性相関より明らかにした1)Ah受容体への結合能を増強させる構造修飾と、2)Ah受容体を介したレポーター遺伝子転写活性抑制を可能とする構造修飾の両者を駆使することにより、内因性由来及び外因性由来のAh受容体阻害剤候補物質となる鍵化合物の選定を行った。さらに、それらの化合物のAh受容体阻害剤としての効果をin vitro及びin vivoにおいて検討した。3研究成果我々は京都大学大学院工学研究科環境デザイン工学講座の松田知成博士との共同研究により、ヒト尿の酸処理試料からAh受容体の新規内因性リガンドであるインディルビンを単離構造決定した。(Matsuda et al.,J.Biol.Chem.,276,31475,2001)更に興味ある知見として、このインディルビンがマウスに対しCYPlAl誘導活性を示さず、逆に、ベンズピレンによるマウスCYPlAl誘導に対し抑制効果があることを明らかにした。一方、外因性Ah受容体リガンド探索において前述の2)の構造修飾について詳細に検討を行った結果、ある種のアミド化合物が、インディルビンと同様にマウスCYPlAl誘導に対し阻害活性を有している、という極めて興味ある新知見を得た。検討を行ったアミド化合物の中ではベンゾイルアミノキノリン類(BzAQs)が最も強いAh受容体阻害活性を有しており、実際にマウス染色体異常誘発性試験(小核試験)において、ベンズピレン(100mg/kg単回腹腔内投与)による小核誘発が3BzAQ(5mg/kg×2回腹腔内投与)により有意に抑制されることを明らかにした。1研究目的内因性及び外因性のAh受容体リガンドを探索し、これらの部分的構造修飾によりすぐれたAh受容体阻害剤候補物質の開発を目的とした。2研究計画我々が以前の研究においてAh受容体リガンド活性の構造活性相関より明らかにした1)Ah受容体への結合能を増強させる構造修飾と、2)Ah受容体を介したレポーター遺伝子転写活性抑制を可能とする構造修飾の両者を駆使することにより、内因性由来及び外因性由来のAh受容体阻害剤候補物質となる鍵化合物の選定を行った。さらに、それらの化合物のAh受容体阻害剤としての効果をin vitro及びin vivoにおいて検討した。3研究成果我々は京都大学大学院工学研究科環境デザイン工学講座の松田知成博士との共同研究により、ヒト尿の酸処理試料からAh受容体の新規内因性リガンドであるインディルビンを単離構造決定した。(Matsuda et al.,J.Biol.Chem.,276,31475,2001)更に興味ある知見として、このインディルビンがマウスに対しCYPlAl誘導活性を示さず、逆に、ベンズピレンによるマウスCYPlAl誘導に対し抑制効果があることを明らかにした。一方、外因性Ah受容体リガンド探索において前述の2)の構造修飾について詳細に検討を行った結果、ある種のアミド化合物が、インディルビンと同様にマウスCYPlAl誘導に対し阻害活性を有している、という極めて興味ある新知見を得た。検討を行ったアミド化合物の中ではベンゾイルアミノキノリン類(BzAQs)が最も強いAh受容体阻害活性を有しており、実際にマウス染色体異常誘発性試験(小核試験)において、ベンズピレン(100mg/kg単回腹腔内投与)による小核誘発が3BzAQ(5mg/kg×2回腹腔内投与)により有意に抑制されることを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-13027276 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13027276 |
レジオネラのSODが病原因子として機能するには分泌されることが必要か。 | 細胞内寄生細菌であるレジオネラは、宿主のマクロファージの中で増殖するという特徴がある。マクロファージの殺菌因子である活性酸素の1つ、スーパーオキサイドを消去するスーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)は、レジオネラのような細胞内寄生細菌の生存に重要な役割を果たしていると考えられる。Legionella pneumophilaの有するCu,Zn-SODはシグナル配列をもっていることから、菌体外に分泌され、宿主が産生する活性酸素の消去に働いていると考えられる。そこでCu,Zn-SODがその機能を果たすためには、分泌されることが重要であるか調べるために,シグナルペプチドをコードする領域を完全に欠損させた変異Cu,Zn-SOD遺伝子を作製したところ、そのSOD活性は野生型の10分の1以下となってしまった。したがってCu,Zn-SODのシグナルペプチドは分泌に関与する以前に、発現あるいは安定性に必要であることが分かった。また、Legionella pneumophilaのCu,Zn-SOD遺伝子破壊株を作製した。Cu,Zn-SOD遺伝子破壊株は培地中での生育は野生型と変わらないが、マクロファージ内での増殖能を失っていた。しかし、染色体外にCu,Zn-SOD遺伝子をもたせて相補実験を行ったところ、Cu,Zn-SOD活性は回復したが、マクロファージ内での増殖能は回復しなかった。したがってCu,Zn-SOD遺伝子破壊株はその作出の過程で別の変異が生じたためマクロファージ内で増殖できなくなったと考えられる。同様に作製した別の5株のCu,Zn-SOD遺伝子破壊株のマクロファージ内での増殖能を調べたところ、2株は野生型と同じだが、3株はマクロファージ内での増殖能が低下していた。したがってCu,Zn-SOD遺伝子破壊株の作出の過程で高頻度で何らかの変異が生じる機構が働いたと考えられる。今後はその変異の同定、およびその変異が生じる機構の解明を行いたい。細胞内寄生細菌であるレジオネラは、宿主のマクロファージの中で増殖するという特徴がある。マクロファージの殺菌因子である活性酸素の1つ、スーパーオキサイドを消去するスーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)は、レジオネラのような細胞内寄生細菌の生存に重要な役割を果たしていると考えられる。Legionella pneumophilaの有するCu,Zn-SODはシグナル配列をもっていることから、菌体外に分泌され、宿主が産生する活性酸素の消去に働いていると考えられる。そこでCu,Zn-SODがその機能を果たすためには、分泌されることが重要であるか調べるために,シグナルペプチドをコードする領域を完全に欠損させた変異Cu,Zn-SOD遺伝子を作製したところ、そのSOD活性は野生型の10分の1以下となってしまった。したがってCu,Zn-SODのシグナルペプチドは分泌に関与する以前に、発現あるいは安定性に必要であることが分かった。また、Legionella pneumophilaのCu,Zn-SOD遺伝子破壊株を作製した。Cu,Zn-SOD遺伝子破壊株は培地中での生育は野生型と変わらないが、マクロファージ内での増殖能を失っていた。しかし、染色体外にCu,Zn-SOD遺伝子をもたせて相補実験を行ったところ、Cu,Zn-SOD活性は回復したが、マクロファージ内での増殖能は回復しなかった。したがってCu,Zn-SOD遺伝子破壊株はその作出の過程で別の変異が生じたためマクロファージ内で増殖できなくなったと考えられる。同様に作製した別の5株のCu,Zn-SOD遺伝子破壊株のマクロファージ内での増殖能を調べたところ、2株は野生型と同じだが、3株はマクロファージ内での増殖能が低下していた。したがってCu,Zn-SOD遺伝子破壊株の作出の過程で高頻度で何らかの変異が生じる機構が働いたと考えられる。今後はその変異の同定、およびその変異が生じる機構の解明を行いたい。 | KAKENHI-PROJECT-08770203 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08770203 |
PPARγアゴニストおよびMMP阻害剤による心筋線維化抑制作用と不整脈抑制作用 | 心房細動の発生・維持には心房筋の線維化が深く関わっている。この線維化を抑制することにより心房細動を予防しうる。糖尿病治療薬でインシュリン抵抗性改善作用のあるPPARγアゴニスト(ピオグリタゾン)には抗炎症作用や抗酸化作用がある。しかしながらこの薬物の心房筋に対する作用は不明である。本研究の目的は、PPARγアゴニストが心房筋の線維化抑制作用を介して、心房細動を抑制しうるか否かを明らかにすることである。心室の4週間高頻度ペーシングにより心不全ウサギが作製され、著明な心房心室拡大と心房筋の線維化が認められた。このウサギに心房高頻度刺激を行うことにより容易に心房細動が誘発された。ペーシング開始とともにピオグリタゾンを4週間内服させると、心不全の進行は同様に認められたものの、心房細動の誘発性は低下し、心房筋の線維化も抑制されていた。またアンギオテンシンIIレセプター拮抗薬(カンデサルタン)をペーシング開始とともに内服させた場合にも、4週間後に心房細動誘発性・心房筋線維化の抑制が認められた。高頻度ペーシングにより両心房の不応期は延長し、伝導速度は低下していたが、ピオグリタゾンやカンデサルタンにより不応期は延長したままであったが、伝導速度は増加した。さらに心房組織TGF-β1、TNF-α、MAPキナーゼの発現は、ピオグリタゾンやカンデサルタンにより低下していた。このことより、PPARγアゴニストがアンギオテンシンII依存性経路を抑制することにより、抗炎症作用、抗酸化作用を発揮し、心房筋線維化を抑制するものと予想された。この研究により、心房細動の新しい治療薬として、PPARγアゴニストであるピオグリタゾンが、臨床的にも有用である可能性が示唆され、今後難治性不整脈である心房細動治療に新たな選択枝がもたらされたと考えられた。心房細動の発生・維持には心房筋の線維化が深く関わっている。この線維化を抑制することにより心房細動を予防しうる。糖尿病治療薬でインシュリン抵抗性改善作用のあるPPARγアゴニスト(ピオグリタゾン)には抗炎症作用や抗酸化作用がある。しかしながらこの薬物の心房筋に対する作用は不明である。本研究の目的は、PPARγアゴニストが心房筋の線維化抑制作用を介して、心房細動を抑制しうるか否かを明らかにすることである。心室の4週間高頻度ペーシングにより心不全ウサギが作製され、著明な心房心室拡大と心房筋の線維化が認められた。このウサギに心房高頻度刺激を行うことにより容易に心房細動が誘発された。ペーシング開始とともにピオグリタゾンを4週間内服させると、心不全の進行は同様に認められたものの、心房細動の誘発性は低下し、心房筋の線維化も抑制されていた。またアンギオテンシンIIレセプター拮抗薬(カンデサルタン)をペーシング開始とともに内服させた場合にも、4週間後に心房細動誘発性・心房筋線維化の抑制が認められた。高頻度ペーシングにより両心房の不応期は延長し、伝導速度は低下していたが、ピオグリタゾンやカンデサルタンにより不応期は延長したままであったが、伝導速度は増加した。さらに心房組織TGF-β1、TNF-α、MAPキナーゼの発現は、ピオグリタゾンやカンデサルタンにより低下していた。このことより、PPARγアゴニストがアンギオテンシンII依存性経路を抑制することにより、抗炎症作用、抗酸化作用を発揮し、心房筋線維化を抑制するものと予想された。この研究により、心房細動の新しい治療薬として、PPARγアゴニストであるピオグリタゾンが、臨床的にも有用である可能性が示唆され、今後難治性不整脈である心房細動治療に新たな選択枝がもたらされたと考えられた。心房細動の発生・維持に心房筋の線維化が深く関わっている。ウサギ心房筋にペーシングリードを装着しペースメーカーを用いて心房を4週間にわたり高頻度刺激し、心不全モデルを作成した。このモデルにおいて慢性期に心臓電気生理検査を行った。心房細動は心房高頻度刺激により容易に誘発された。また組織学的検討により心房筋線維化を確認した。PPARγアゴニストを心房ペーシング開始時より投与することにより、心房細動の誘発性・持続時間が低下し、抗心房細動作用があることが確認された。また心房筋線維化を評価したところ、線維化の進行が抑制されていた。またアンギオテンシン受容体拮抗薬を投与すると、心房細動の誘発性・持続時間が抑制され、心房筋線維化も抑制された。コントロールと比較して、これらの薬物投与による心不全の軽減あるいは重症化を認めなかった。さらにPARγアゴニストとアンギオテンシン受容体拮抗薬の併用により、さらなる心房細動抑制効果・線維化抑制効果を認めなかった。PARγアゴニストはインシュリン感受性改善薬として臨床使用されているが、その他にもPARγアゴニストの多面的作用が報告されている。本研究により、PARγアゴニストにはさらに心房筋線維化抑制作用が存在することが証明され、この作用は心不全改善によるものではなかった。心房筋の線維化が心房細動の発生・維持に深く関わっていることが、本研究によっても再確認された。現在、PARγアゴニストの抗線維化作用機序を検討中である。 | KAKENHI-PROJECT-18590766 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18590766 |
PPARγアゴニストおよびMMP阻害剤による心筋線維化抑制作用と不整脈抑制作用 | 心房細動の発生・維持には心房筋の線維化が深く関わっている。この線維化を抑制することにより心房細動を予防しうる。糖尿病治療薬でインシュリン抵抗性改善作用のあるPPARγアゴニスト(ピオグリタゾン)には抗炎症作用や抗酸化作用がある。平成18年度われわれはこの薬剤に心房細動抑制作用と心房筋繊維か抑制作用を有することを実証した。この機序を解明するために、われわれはウサギ心不全モデルを用い、ピオグリタゾンとアンギオテンシンIIレセプター拮抗薬(カンデサルタン)の効果を分子生物学的手法にて比較検討した。4週間の心室高頻度ペーシングによる心不全も出るでは心房筋の線維化が進行し、同時に心房組織内TGF-β1、TNF-α、MAPキナーゼの発現が、正常心房筋に比較し著明に増加していた。ピオグリタゾンやカンデサルタン投与により心房組織TGF-β1、TNF-α、MAPキナーゼの発現は、ペーシングのみで薬剤投与していないコントロールに比較して低下していた。両者の併用によってさらなる相乗効果を認めなかった。またp38やJNKはこれらの薬剤による変化を認めなかった。このことより、PPARγアゴニストがアンギオテンシンII依存性経路を抑制することにより、抗炎症作用、抗酸化作用を発揮し、心房筋線維化を抑制するものと予想された。この研究により、心房細動の新しい治療薬として、PPARγアゴニストであるピオグリタゾンが、臨床的にも有用である可能性が示唆され、今後難治性不整脈である心房細動治療に新たな選択枝がもたらされたと考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-18590766 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18590766 |
分子情報変換機能を有する高分子LB膜の作成 | 生体の持つ高度な機能を人工的に発現させるためには、生体膜に類似した分子の配向、配列の制御や分子配列の高次構造が重要である。この様な目的に適した分子組織体構築法の優れた手法として、Langmuir-Blodgett(LB)法が注目されている。本研究では、種々の分子情報を電気的信号や光信号などの物理的情報に変換する生体膜類似の超分子組織体を分子設計することを目的としている。本基盤研究を通して、以下の成果が得られた。平成7年度1)N-アルキルアクリルアミドLB膜の詳細な分子配向決定を行った結果、親水部のアクリルアミドとそ水部のアルキル鎖の結合軸を含むそれぞれの平面が累積方向に対して垂直に存在する二軸配向をとっていることが初めて明らかにされた。2)新規に二本鎖を有するアルキルアクリルアミド類を合成し、その単分子膜挙動を検討した結果、生体膜同様な液晶-ゲル相転移を示すことが明らかとなった。平成8年度3)フェロセン誘導体(Fc)やルテニウムビピリジン錯体(Ru)を高分子LB膜中に導入して新規レドックス高分子LB膜を作成した。FcとRuの酸化還元電位が異なることを利用してヘテロ積層レドックス高分子LB膜を作成し、電気化学的な分子素子の試作を試みた。その結果、外膜のFcLB膜を内膜のRuLB膜で制御可能なことが明らかとなった。4)適当な電子ドナー存在下、RuLB膜に光照射すると光アノード電流が観測され、またそのアクションスペクトルからRuのMLCT吸収バンドの波長光で光電流が発生していることが明らかとなった。これらの結果よりRu(II)が光励起され、ドナーから電子を奪う酸化的光誘起電子移動反応が起こり、Ru(I)が生成し、これが電極で酸化されることでアノード電流が発生したものと解釈できる。5)高分子LB膜中に光架橋基を導入して二次元光架橋反応に基づく分子パタ-ニングを可能にした。また、AFM観察から二分子層LB膜でフォトパタ-ニングが可能なことが明らかとなった。分子素子、生物素子など生体膜の高度な機能を模倣した人工分子組織体の分子設計に関する研究が行われている。生体の持つ高度な機能を人工的に発現させるためには、生体膜に類似した分子の配向、配列の制御や分子配列の高次構造が重要である。この様な目的に適した分子組織体構築法の優れた手法として、Langmuir-Blodgett(LB)法が注目されている。我々は優れた高分子LB膜を形成する長鎖アルキルアクリルアミドポリマーを見いだしている。このポリマーは生体分子と同様、水素結合により自己組織化能を有しており、このポリマーを中心に生体機能導入の研究をおこなう。本研究では、種々の分子情報を電気的信号や光信号などの物理的情報に変換する生体膜類似の超分子組織体を分子設計することを目的としている。本年度は以下の成果が得られた。1)長鎖アルキルアクリルアミドポリマーが優れた単分子膜形成能を有し、良質な高分子LB膜を与えることを見いだしている。新たに長鎖アルキルアクリルアミド構造の知見をもとに、先ず生体膜と同様な液晶-ゲル転移を有する単分子膜及びLB膜の探索を二本鎖を有するアルキルアクリルアミド類を中心に検討を行った。表面圧-面積曲線の温度変化による熱力学的考察、LB膜形成能などについてアルキル鎖長の変化による親水-疎水バランスの検討、生体分子と同様に水素結合を利用した分子集合体形成能(自己組織化能)などの評価を行った結果、アルキル鎖長が16、18のジアルキルアクリルアミドが優れた単分子膜、LB膜を形成し、しかも生体膜同様な液晶-ゲル相転移を示すことが明らかになった。これらの単分子膜、LB膜の重合についても成功し、その詳細については検討中である。2)置換活性の機能団として、活性エステル基の高分子LB膜への導入に成功した。この機能団は容易にアミノ酸や生体分子のアミノ基と置換を行い、高分子単分子膜、LB膜に分子認識機能団や生体分子(ポリペプチド、糖鎖分子)などを導入可能にする。目下導入置換反応の条件について、機能団ごとに検討を行い、詳細を検討中である。概ね研究は計画通りに進行しており、順調である。特に高分子LB膜中に活性エステル基を導入でき、種々の分子認識機能団の導入が極めて、容易になり導入できることが明らかになったことは大きな成果である。今後、種々の生体分子などへの応用が期待される。生体の持つ高度な機能を人工的に発現させるためには、生体膜に類似した分子の配向、配列の制御や分子配列の高次構造が重要である。この様な目的に適した分子組織体構築法の優れた手法として、Langmuir-Blodgett(LB)法が注目されている。本研究では、種々の分子情報を電気的信号や光信号などの物理的情報に変換する生体膜類似の超分子組織体を分子設計することを目的としている。本基盤研究を通して、以下の成果が得られた。平成7年度1)N-アルキルアクリルアミドLB膜の詳細な分子配向決定を行った結果、親水部のアクリルアミドとそ水部のアルキル鎖の結合軸を含むそれぞれの平面が累積方向に対して垂直に存在する二軸配向をとっていることが初めて明らかにされた。2)新規に二本鎖を有するアルキルアクリルアミド類を合成し、その単分子膜挙動を検討した結果、生体膜同様な液晶-ゲル相転移を示すことが明らかとなった。平成8年度 | KAKENHI-PROJECT-07455442 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07455442 |
分子情報変換機能を有する高分子LB膜の作成 | 3)フェロセン誘導体(Fc)やルテニウムビピリジン錯体(Ru)を高分子LB膜中に導入して新規レドックス高分子LB膜を作成した。FcとRuの酸化還元電位が異なることを利用してヘテロ積層レドックス高分子LB膜を作成し、電気化学的な分子素子の試作を試みた。その結果、外膜のFcLB膜を内膜のRuLB膜で制御可能なことが明らかとなった。4)適当な電子ドナー存在下、RuLB膜に光照射すると光アノード電流が観測され、またそのアクションスペクトルからRuのMLCT吸収バンドの波長光で光電流が発生していることが明らかとなった。これらの結果よりRu(II)が光励起され、ドナーから電子を奪う酸化的光誘起電子移動反応が起こり、Ru(I)が生成し、これが電極で酸化されることでアノード電流が発生したものと解釈できる。5)高分子LB膜中に光架橋基を導入して二次元光架橋反応に基づく分子パタ-ニングを可能にした。また、AFM観察から二分子層LB膜でフォトパタ-ニングが可能なことが明らかとなった。生体の持つ高度な機能を人工的に発現させるためには、生体膜に類似した分子の配向、配列の制御や分子配列の高次構造が重要である。この様な目的に適した分子組織体構築法の優れた手法として、Langmuir-Blodgett (LB)法が注目されている。本研究では、種々の分子情報を電気的信号や光信号などの物理的情報に変換する生体膜類似の超分子組織体を分子設計することを目的としている。本研究は様々な分子機能団を高分子ナノ組織体中に導入し分子情報変換機能の発現について検討を行った結果、以下の成果が得られた1)電気的信号による分子機能の発現を目指し、レドックス種であるフェロセン誘導体(Fc)やルテニウムビピリジン錯体(Ru)を高分子LB膜中に導入して新規なレドックス高分子LB膜を作成した。電気化学的手法によりそれらのレドックス高分子LB膜がレドックス種-電極界面、LB膜層間において良好に電子移動反応することが明らかとなった。また、FcとRuの酸化還元電位が異なることを利用してヘテロ積層レドックス高分子LB膜を作成し、電気化学的な分子素子の試作を試みた。その結果、外膜のFcLB膜を内膜のRuLB膜で制御可能なことが明らかとなり、一種の分子素子と見なすことができる。2)ルテニウムビピリジン錯体の光照射に伴う分子情報変換機能について検討を行った。適当な電子ドナー存在下、RuLB膜に光照射すると光アノード電流が観測され、またそのアクションスペクトルからRuのMLCT吸収バンドの波長光で光電流が発生していることが明らかとなった。これらの結果よりRu (II)が光励起され、ドナーから電子を奪う酸化的光誘起電子移動反応が起こり、Ru (I)が生成し、これが電極で酸化されることでアノード電流が発生したものと解釈できる。3)高分子LB膜中に光架橋基を導入して二次元光架橋反応に基づく分子パタ-ニングを試みた。その結果、光架橋性高分子LB膜を露光すると有機溶媒に不溶な膜になり、この不溶化はキャスト膜では起こらないことが示された。これはキャスト膜では光架橋基がランダムに配置されているのに対して、LB膜では光架橋基が膜面内に配列され、効率よく光架橋反応が起こるためと考えられる。また、AFM観察から二分子層LB膜でフォトパタ-ニングが可能なことが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-07455442 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07455442 |
プラズマ誘起活性粒子による細胞機能制御 -安全なプラズマ医療を目指した学術基盤- | 1.近年、プラズマ照射の医療への応用が急速に進み、有意な効果が示されているものの、その効果を証明するメカニズムについては未解明な部分が多い。プラズマ照射法として、予めプラズマを照射して調製した培地plasma-activated medium(PAM)を負荷する間接法の方が「より安心・安全なプラズマ医療」に繋がると判断した。本申請課題では、PAM負荷に対する細胞応答ダイナミクスの解明とPAMの臨床応用に向けた橋渡しとなる情報の提供を目的とし、今年度は以下に示す結果を得た。2.PAMは、細胞培養に用いているDulbecco's modified Eagle's medium(DMEM)にプラズマを照射して調製しているが、ヒトへの投与を想定した場合、細胞培養用培地はヒトに投与することがないため、それから調製したPAMでは不適切になる可能性がある。そこで、DMEMの代わりに臨床現場で用いられている乳酸リンゲル液(Lac-R)にプラズマを照射して調製したplasma-activated lactated Ringer's solution(PAL)のがん細胞アポトーシス誘導作用について明らかにした。3.PALはPAMよりも強くA549細胞傷害を誘導した。PAMはcatalaseにて前処理することによりその細胞傷害活性は大きく低下したが、PALの場合、同様にcatalase処理してもその細胞傷害活性の低下はみられなかった。これはLac-Rへのプラズマ照射によりpHが低下したこと、またnitriteが生成されたことにより加えたcatalaseの活性が低下し、PAL中のH2O2の分解が阻害されたことによると考えられた。また、PAL負荷によりチロシンニトロ化が亢進したが、これはnitriteの生成を阻害することで抑制された。1.近年、プラズマ照射の医療への応用が急速に進み、有為な効果が示されているものの、その効果を証明するメカニズムについては未解明な部分が多い。プラズマ照射法として、予めプラズマを照射して調製した培地plasma-activated medium(PAM)を細胞に負荷する間接法の方が「より安心・安全なプラズマ医療」に繋がると思われる。本申請課題では、PAM負荷に対する細胞応答ダイナミクスの解明を目的とし、今年度は以下に示す結果を得た。2.肺胞基底上皮がん細胞A549細胞にPAMを負荷した場合、細胞内でのOHラジカルの発生、2価鉄レベルの上昇が認められた。また、DNA分断(TUNEL法)とその修復酵素であるPARP-1の活性化、それに誘引される反応として、NAD+の枯渇、ATPの枯渇、カルシウムイオンの細胞内流入も観察された。細胞内のフェリチンタンパクレベルの低下が認められたが、catalase、BP(鉄イオンキレーター)、DMTU(OHラジカル消去剤)の他にMG132(プロテアソーム阻害剤)やleupeptin(リソソームプロテアーゼ阻害剤)によっても抑制された。以上の結果より、PAM負荷により細胞内で発生したOHラジカルによりフェリチンが破壊されて貯蔵されていた鉄イオンが遊離し、さらにOHラジカルが増加する連鎖反応でDNA分断やエネルギー枯渇が増幅され細胞死が誘導される可能性が示唆された。3.平成29年度に予定していた緩和な条件で調製したmild PAM負荷による正常細胞のストレス抵抗性獲得メカニズムの解明について前倒しして実施し、HO-1発現の亢進を確認した。HO-1遺伝子はARE配列を有しているため、PhaseIIストレス蛋白のKeap1-Nrf2系の活性化への関与について検討し、Nrf2の核移行やそれのAREへの結合を検出した。1.平成28年度は、PAMによるがん細胞死のメカニズムとして金属イオンの関与について明らかにすることを目標としたが、上記の研究実績でも既述したように、細胞内の鉄イオンの動員によるがん細胞傷害メカニズムを詳細に解明することができた。報告者らはすでにPAM負荷による細胞内の亜鉛イオンの上昇が細胞傷害を引き起こすことを報告しており、H2O2やOHラジカルのような活性酸素による貯蔵タンパクの酸化や破壊により細胞内に遊離した金属が細胞毒性を増幅することが明らかとなった。2.Mild PAM負荷によるストレス抵抗性獲得メカニズムの解明について前倒しして実施し、Keap1-Nrf2系の活性化により抗酸化酵素HO-1の発現亢進が酸化ストレス抵抗能獲得に繋がっていることを明らかにした。3.PAM中に高濃度に含まれるnitrite/nitrate(NOx)は、単独では培養系に添加しても細胞傷害を誘導しないが、H2O2による細胞傷害を増幅する作用を認めた。しかしながら、そのメカニズムについて明らかにするところまで到達できなかった。1.近年、プラズマ照射の医療への応用が急速に進み、有為な効果が示されているものの、その効果を証明するメカニズムについては未解明な部分が多い。プラズマ照射法として、予めプラズマを照射して調製した培地plasma-activated medium(PAM)を負荷する間接法の方が「より安心・安全なプラズマ医療」に繋がると判断した。本申請課題では、PAM負荷に対する細胞応答ダイナミクスの解明とPAMの臨床応用に向けた橋渡しとなる情報の提供を目的とし、今年度は以下に示す結果を得た。2.緩和なプラズマ照射条件にて調製したmild PAM負荷による正常細胞のストレス抵抗性獲得メカニズムについて、昨年度の研究によりKeap1-Nrf2系の活性化を介する抗酸化酵素HO-1の発現亢進による可能性を提示したが、本年度はNrf2をノックダウンした場合にHO-1発現の亢進や酸化ストレスに対する抵抗性がみられなくなることを確認し、その結果よりKeap1-Nrf2系の関与を明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-16K08914 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K08914 |
プラズマ誘起活性粒子による細胞機能制御 -安全なプラズマ医療を目指した学術基盤- | 3.PAM中に高濃度に含まれるnitrite/nitrate (NOx)は、単独ではPAMのがん細胞傷害作用を誘導することはないが、H2O2による細胞傷害を増幅する。そのメカニズムについて検討した結果、H2O2によるチロシンニトロ化、ミトコンドリア膜電位の低下、ミトコンドリアアポトーシス抑制蛋白Bcl2の発現低下、ATP産生低下、細胞内へのカルシウム流入をそれぞれ増幅することが明らかとなった。1.PAM中に高濃度に含まれるnitrite/nitrate (NOx)の作用メカニズムの解明についての研究の着手が遅れ、平成28年度の進捗状況にはやや遅れがみられたが、平成29年度には、その点について精力的に研究を進めた結果、PAM中に含まれるH2O2による細胞傷害作用、特にミトコンドリア機能低下の増幅作用によることを明らかにできた。2.Mild PAM負荷による正常細胞のストレス抵抗性獲得については、平成28年度に引き続き精力的に研究を進め、そのメカニズムを明らかにすることができた。また、mild PAM中に含まれる低濃度のH2O2(50 μM程度)がその効果発現に関わっていることを明らかにした。1.近年、プラズマ照射の医療への応用が急速に進み、有意な効果が示されているものの、その効果を証明するメカニズムについては未解明な部分が多い。プラズマ照射法として、予めプラズマを照射して調製した培地plasma-activated medium(PAM)を負荷する間接法の方が「より安心・安全なプラズマ医療」に繋がると判断した。本申請課題では、PAM負荷に対する細胞応答ダイナミクスの解明とPAMの臨床応用に向けた橋渡しとなる情報の提供を目的とし、今年度は以下に示す結果を得た。2.PAMは、細胞培養に用いているDulbecco's modified Eagle's medium(DMEM)にプラズマを照射して調製しているが、ヒトへの投与を想定した場合、細胞培養用培地はヒトに投与することがないため、それから調製したPAMでは不適切になる可能性がある。そこで、DMEMの代わりに臨床現場で用いられている乳酸リンゲル液(Lac-R)にプラズマを照射して調製したplasma-activated lactated Ringer's solution(PAL)のがん細胞アポトーシス誘導作用について明らかにした。3.PALはPAMよりも強くA549細胞傷害を誘導した。PAMはcatalaseにて前処理することによりその細胞傷害活性は大きく低下したが、PALの場合、同様にcatalase処理してもその細胞傷害活性の低下はみられなかった。これはLac-Rへのプラズマ照射によりpHが低下したこと、またnitriteが生成されたことにより加えたcatalaseの活性が低下し、PAL中のH2O2の分解が阻害されたことによると考えられた。また、PAL負荷によりチロシンニトロ化が亢進したが、これはnitriteの生成を阻害することで抑制された。 | KAKENHI-PROJECT-16K08914 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K08914 |
アセチルコリンエステラーゼの可視化を目的とした新規ポジトロン放出薬剤の開発 | 種々の刺激を受けたラット脳切片における[^<11>C]donepezilの動態変化Dynamic positron autoradiography法を用いたラット脳スライスへの取り込み実験の結果、[^<11>C]donepezilは大脳皮質に比べ線条体に高く取り込まれることが示された。この結果はin vitro、in vivoにおける結合実験の結果を支持するものだった。また、非放射性donepezilを予め添加しておくことによってその取り込みが低下することからこの取り込みは[^<11>C]donepezilの特異的結合を示している可能性が考えられた。緩衝液を高カリウム溶液(50mM)に変更した[^<11>C]donepezilの取り込み実験では、線条体における取り込みは対照群に比べ低下した。高カリウム緩衝液を用いると神経細胞に脱分極作用が起き、神経伝達物質の放出が起こる。実際に高カリウム緩衝液中のACh濃度を測定したところ、その濃度は対照群に比べ時間と共に増加していった。すなわち、AChの濃度に依存して[^<11>C]donepezilの取り込みが低下することから、AChEに対する[^<11>C]donepezilの結合は、内在性のAChと競合反応を起こす可能性が考えられた。このことから、[^<11>C]donepezilがPETにおいてAChEの機能解析のみならず、AChの放出を解析できる放射性薬剤になりうる可能性が期待された。[^<11>C]DonepezilはLOOP-固相抽出法を用いて標識合成され、20分間の照射で92.5-814 MBq (2.5-22 mCi)が得られた。[^<11>C]MeOTfに基づいた放射化学的収率は25-30%、比放射能は合成終了時で19-122 GBq/μmol (0.51-3.30 Ci/μmol)、合成時間は30-40分、放射化学的純度は99%以上だった。従って、得られた[^<11>C]DonepezilはPET放射性薬剤として使用可能な高収量、高純度および高比放射能であることが示された。ラット脳粗膜分画を用いたin vitroにおける[^<11>C]Donepezilの結合は部位特異性を示し、[^<11>C]Donepezilが特異的にAChEに結合することが明らかとなった。その結合におけるIC_<50>は約10nMであり、IC_<50>(6nM)とほぼ同じ値であることが確認された。[^<11>C]Donepezilの結合飽和実験より得られた解離定数(Kd)は39.8nM、最大結合量(Bmax)は65.0 fmol/mg tissueという新たな知見を得た。in vivoにおける[^<11>C]Donepezilの分布実験の結果、in vitroと同様にラット脳線条体、脳幹に高い集積を示した。この集積はAChEの分布と相関があることから[^<11>C]Donepezilはin vivoにおいてもAChEに特異的に結合することが明らかとなった。種々の刺激を受けたラット脳切片における[^<11>C]donepezilの動態変化Dynamic positron autoradiography法を用いたラット脳スライスへの取り込み実験の結果、[^<11>C]donepezilは大脳皮質に比べ線条体に高く取り込まれることが示された。この結果はin vitro、in vivoにおける結合実験の結果を支持するものだった。また、非放射性donepezilを予め添加しておくことによってその取り込みが低下することからこの取り込みは[^<11>C]donepezilの特異的結合を示している可能性が考えられた。緩衝液を高カリウム溶液(50mM)に変更した[^<11>C]donepezilの取り込み実験では、線条体における取り込みは対照群に比べ低下した。高カリウム緩衝液を用いると神経細胞に脱分極作用が起き、神経伝達物質の放出が起こる。実際に高カリウム緩衝液中のACh濃度を測定したところ、その濃度は対照群に比べ時間と共に増加していった。すなわち、AChの濃度に依存して[^<11>C]donepezilの取り込みが低下することから、AChEに対する[^<11>C]donepezilの結合は、内在性のAChと競合反応を起こす可能性が考えられた。このことから、[^<11>C]donepezilがPETにおいてAChEの機能解析のみならず、AChの放出を解析できる放射性薬剤になりうる可能性が期待された。 | KAKENHI-PROJECT-14770440 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14770440 |
マテリアルデザインによる新しいマルテンサイト変態の発見と新機能の創出 | IV族とX族から構成される等原子比HfPd合金,HfNi合金およびZrNi合金のマルテンサイト変態挙動(各種変態点や温度ヒステリシス)や結晶構造,内部欠陥およびバリアント境界の特性等を明らかにすることができた。またHf-Co-Pd合金マルテンサイト相において長周期積層構造の存在を見出し,最新鋭の電子顕微鏡(HAADF-STEM)観察による微細構造解析の結果,6層周期の斜方晶(6O)構造を有することがわかった。さらにB2型Fe-Co合金に対して,PdやPtなど第3元素の置換による軟質な析出物の生成により,強度や延性が著しく向上することがわかった。本研究はマテリアルデザインによって新しいマルテンサイト変態の発見を試みるとともに,強度や延性など基本的材料特性の改善や新機能の創出へと導くことが目的である。本年度は以下の2項目について調査を行った。研究計画に沿って150Hf-45Co-5Ni, 250Hf-40Co-10Ni, 350Hf-45Co-5Pd,さらに比較材として450Hf50Co合金を作製し,組織観察・構造解析および機械的性質等の調査を行った。XRD測定と組織観察の結果,すべての試料において室温では結晶粒径約50μmのB2構造を呈しており,さらに数百nm程度のfcc構造を有するHfO2析出物も多数存在していた。冷間圧延の結果,2元系合金は最大圧下率40%以下と脆性的であったが,NiおよびPd置換材では,最大圧下率約80%を示すなど加工性が向上しており,さらに硬度値も低下していることがわかった。圧延材をTEM観察に供したところ,主にb = <100>を有する転位が観察され,マルテンサイト相は見られなかった。以上のように,HfCo合金のCoをNiやPdで置換することにより高延性化にはつながったが,マルテンサイト相の存在は確認できなったことから,高延性化メカニズムやマルテンサイト変態の生成機構等については今後,詳細に調査する。2.電子顕微鏡観察用試料に関する作製方法の確立と解析方法の習得。海外研修制度を利用することで,X線回折やTEMによる解析手法として,結晶子サイズや局所的なひずみを算出可能なClassical & Modified Williamson-Hall法ならびにPASAD法などの解析方法を習得することができた。また電子顕微鏡観察用試料の作製に関するノウハウ等,確立することができた。本研究はマテリアルデザインによって新しいマルテンサイト変態の発見を試みるとともに,強度や延性など基本的材料特性の改善や形状記憶特性・超弾性など機能特性の創出へと導くことが目的である。本年度は以下の3項目について調査を行った。(1)等原子比NiZr合金のマルテンサイト変態と微細構造解析ー代表的な形状記憶合金であるTi-Ni合金をはじめ,Ti-Pd合金やTi-Pt合金,Zr-Pd合金など4族と10族からなる金属間化合物は熱弾性マルテンサイト変態を有することで知られている。そこで,等原子比NiZr合金について結晶構造や組織を中心に調査した結果,室温ではCm構造を有し,約200°CにてCmcm構造へ,また約1000°CにてL10相(a=0.363nm, c=0.540nm, c/a=1.488)へと2段階のマルテンサイト変態を生じることが新たにわかった。(2)等原子比HfPd合金の相変態と組織ー4族と10族からなるHfPd合金に着目し,XRDおよびTEM観察による微細構造解析を実施した。その結果,室温ではCmcm構造を有し,約600°CにてB2構造(a=0.329nm)へと熱弾性型マルテンサイト変態を生じることが分かった。また組織は微細なプレート状のバリアントを呈しており,プレート境界は(021)Cmcm双晶を形成していた。(3)強加工による高温型Ti-Pd形状記憶合金の組織変化ーTi-Pd合金に高圧ねじり(HPT)加工(加工条件:8GPa-80回転)を施した結果,結晶粒が微細化するとともに,これまでに本合金系では報告されていない新たな加工誘起L10相の生成が認められた。本年度は新しいマルテンサイト相の発見につなげるため,原点に戻って4族と10族からなる2元系合金に着目し,相変態挙動や微細構造解析を行った。その結果,等原子比NiZr合金やHfPd合金など新たに熱弾性型のマルテンサイト変態の存在を明らかにするなど,年度当初に企画した実験計画に沿って研究は進行しているといえる。また,H26年度の海外研修を利用して取得した新たな研究手法や解析方法を駆使することで,等原子比Ti-Pd合金においてもこれまでに全く報告のない新しいマルテンサイト相を発見することに成功した。したがって,今年度の研究に関する達成度としては,おおむね順調に進展している。本研究はマテリアルデザインによって新しいマルテンサイト変態の発見を試みるとともに,強度や延性など基本的材料特性の改善や形状記憶特性・超弾性など機能特性の創出へと導くことが目的である。本年度は以下の3項目について調査を行った。 | KAKENHI-PROJECT-26420725 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26420725 |
マテリアルデザインによる新しいマルテンサイト変態の発見と新機能の創出 | (1)等原子比HfNi合金マルテンサイト相の微細構造解析ー室温におけるマルテンサイト相はCmcm (a= 0.330 nm, b= 0.982 nm, c= 0.410 nm)とCm (a= 0.616 nm, b= 0.827 nm, c= 0.521 nm, β= 105.5°)の2種類の構造が混在していることがわかった。またプレート状のバリアントが存在し,その境界は(111)Cmcm双晶や(110)Cm双晶を形成していた。また本合金の高温からの相変態として立方晶から斜方晶,そして単斜晶に関する結晶方位関係を明らかにすることができた。(2) B2型Hf-Co-Pd合金の高延性化ー室温にてB2構造を有する50Hf-38Co-12Pd合金において,冷間圧延により圧下率73.7%と極めて高い加工量を示した。一方,室温にてB33マルテンサイト相を有する50Hf-20Co-30Pd合金では,圧下率9%と低い値となった。このことから,本合金系のB2構造は高延性を示すことが明らかとなった。(3)等原子比HfPd合金における形状記憶特性の評価ーTMA試験により形状記憶特性について調査した結果,オーステナイト変態により試料は熱収縮してマルテンサイト変態にて熱膨張するなど,形状記憶特性を担う熱弾性マルテンサイト変態とは異なり,非熱弾性マルテンサイト変態の特徴を有するFe-Ni合金などと同様の傾向を示した。従って,新規形状記憶合金の開発には,変態時における体積変化を制御する必要があると考えられる。IV族とX族から構成される等原子比HfPd合金,HfNi合金およびZrNi合金のマルテンサイト変態挙動(各種変態点や温度ヒステリシス)や結晶構造,内部欠陥およびバリアント境界の特性等を明らかにすることができた。またHf-Co-Pd合金マルテンサイト相において長周期積層構造の存在を見出し,最新鋭の電子顕微鏡(HAADF-STEM)観察による微細構造解析の結果,6層周期の斜方晶(6O)構造を有することがわかった。さらにB2型Fe-Co合金に対して,PdやPtなど第3元素の置換による軟質な析出物の生成により,強度や延性が著しく向上することがわかった。本年度はHf-Co-Ni合金およびHf-Co-Pd合金に対して,組織・構造・機械的性質(強度や硬度)など基礎的データの収集を主な目的とした。重要な課題の1つである新しいマルテンサイトの発見には至っていないが,金属間化合物の欠点となっている室温延性の改善につながっており,年度当初に企画した実験計画に沿って研究は進行しているといえる。また,海外研修を利用して新しい解析方法を習得しており,今後,本研究の遂行に際して大いに活用できるといえる。したがって,今年度の研究に関する達成度としては,おおむね順調に進展している。H26,27年度と同様に,今後も申請当初の計画に沿って研究を実施する。H28年度は最終年度にあたることから,H27年度にて新しく見出した等原子比NiZr合金やHfPd合金について,強度や延性など機械的性質を始め,形状記憶・超弾性特性など機能特性について調査を行う。この際,H27年度経費にてアーク溶解炉を設置できたことから,ZrやHfなど酸化物を抑えた合金プロセスを確立し,合金本来の特性がひきだせるよう注意を払う。またHf系合金を中心に3元,4元系合金などにも拡張して実験を行い,研究課題全体の目標である「マテリアルデザインによる新しいマルテンサイト変態の発見と新機能の創出」に向けて基礎的データ(材料組織・構造・機械的性質)の収集および機能特性に関するまとめを行う。工学H26年度と同様に,今後も申請当初の計画に沿って研究を実施する。 | KAKENHI-PROJECT-26420725 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26420725 |
アセチルコリン合成酵素遺伝子の単離とその発現調節機構の解明 | 我々は既にDrosophilaのアセチルコリン合成酵素部分cDNA. (翻訳配列:2.2Kbp、3'非翻訳配列:0.3Kbp)を単離していたが、Northern analysisから本酵素mRNAのサイズは約4.7Kbと推定され、また、単離されたcDNAには開始コドンが見出されなかった。従って、full-length cDNAを単離する目的で、部分cDNAをプローブしとして、Drosophila頭部cDNAライブラリーをスクリーニングし、5つのクローンを得た。そのうち、最長のサイズのcDNAについて塩基配列を決定したところ、このcDNAはポリ(A)構造を含む完全な3'非翻訳配列(1.4Kbp)が明らかになったが、翻訳配列については、先に単離したcDNAとほとんど一であり、開始コドンは見出されなかった。さらに、5'端末側の構造を明らかにする目的で、再スクリーニングする予定である。抗アセチルコリン合成酵素単クローン抗体はDrosophilaの神経組織に特異的に結合することが示されている。Drosophila頭部の全ホモジネートをWestern analysisしたところ、この単クローン抗体はアセチルコリン合成酵素以外にも約150Kダルトンのタンパク質にも強く結合することが明らかになった。この150Kダルトンのタンパク質も神経組織特異的タンパク質と期待され、その実体を明らかにする目的で、この150Kのタンパク質をコードしていると期待されるcDNAを単離し、その構造を明らかにした。我々は既にDrosophilaのアセチルコリン合成酵素部分cDNA. (翻訳配列:2.2Kbp、3'非翻訳配列:0.3Kbp)を単離していたが、Northern analysisから本酵素mRNAのサイズは約4.7Kbと推定され、また、単離されたcDNAには開始コドンが見出されなかった。従って、full-length cDNAを単離する目的で、部分cDNAをプローブしとして、Drosophila頭部cDNAライブラリーをスクリーニングし、5つのクローンを得た。そのうち、最長のサイズのcDNAについて塩基配列を決定したところ、このcDNAはポリ(A)構造を含む完全な3'非翻訳配列(1.4Kbp)が明らかになったが、翻訳配列については、先に単離したcDNAとほとんど一であり、開始コドンは見出されなかった。さらに、5'端末側の構造を明らかにする目的で、再スクリーニングする予定である。抗アセチルコリン合成酵素単クローン抗体はDrosophilaの神経組織に特異的に結合することが示されている。Drosophila頭部の全ホモジネートをWestern analysisしたところ、この単クローン抗体はアセチルコリン合成酵素以外にも約150Kダルトンのタンパク質にも強く結合することが明らかになった。この150Kダルトンのタンパク質も神経組織特異的タンパク質と期待され、その実体を明らかにする目的で、この150Kのタンパク質をコードしていると期待されるcDNAを単離し、その構造を明らかにした。1.アセチルコリン合成酵素cDNAの構造解析.アセチルコリン合成酵素cDNAをプローブとし,ドロソフィラの頭部cDNAライブラリーをスクリーニングした.その結果,プローブとして用いたcDNAより大きなサイズをもつ4個のcDNAが単離された.これらのcDNAの塩基配列を決定したところ,前記の部分cDNAでは大部分が欠けていた3^1非翻訳配列(約1/2キロ塩基)の全塩基配列を明らかにした.しかし, 5の非翻訳配列及びN末端アミノ酸配列をコードする領域の塩基配列を完全に解明することはできなかった.現在,これらの領域の塩基配列を完全に明らかにするため,新らたに, cDNAの単離を試みている.2.アセチルコリン合成酵素の抗体によって単離されたcDNAの構造解析.アセチルコリン合成酵素に対する単クローン抗体をプローブとして用いて,ドロソフィラの頭部cDNAライブラリーをスクリーニングしたところ,アセチルコリン合成酵素cDNA以外にも,別のcDNAが単離された.このcDNAの塩基配列(約1.8キロ塩基)を決定したところ,その3^1非翻訳配列にドロソフィラのミトコンドリアのlarge rRNAの3^1末端領域の塩基配列と極めて同一性の高い領域(約350塩基, 95%の同一性)が存在していることが明らかになった.各遺伝子とミトコンドリア遺伝子の相互関係を考える上で極めて興味ある知見が得られた.現在,この領域の遺伝子構造を解明中である.1.アセチルコリン合成酵素cDNAの構造解析full-lengthのアセチルコリン合成酵素cDNAを単離する目的で、部分cDNAをプローブとして、Drosophila頭部cDNAライブラリーをスクリーニングし、5つのクローンを得た。そのうち、最長のサイズのcDNA(約3.6kbp)について塩基配列を決定したところ、このcDNAはポリ(A)構造を含む完全な3^1非翻訳配列が明らかになったが、翻訳配列については、先に単離したcDNAとほとんど同一であり、開始コドンは見出されなかった。さらに、5^1末端側の構造を明らかにする目的で、再スクリーニングを行なっている。2.抗アセチルコリン合成酵素単クローン抗体が交叉反応性を示す遺伝子産物について抗アセチルコリン合成酵素単クローン抗体はDrosophilaの神経組織(主として、神経網)に特異的に結合することが示されている。Drosophila頭部の全ホモジネートをWestern analysisしたところ、この単クローン抗体はアセチルコリン合成酵素以外にも約150kダルトンのタンパク質にも強く結合することが明らかになった。この150kのタンパク質も神経組織特異的タンパク質と期待され、その実体を明らかにする目的で、この150kタンパク質をコードしていると期待されるcDNAを単離し、その塩基配列を明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-62580137 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62580137 |
AFTA、FTAとマレーシアの自動車産業-貿易自由化と地場企業の競争力強化 | マレーシアの自動車産業は同国の国民車計画のもと1980年代央以降政策的に保護されてきた。さらに同国のブミプトラ(マレー人)優先政策とも深く関わる国民車メーカーと地場ベンダーは手厚い保護のもとにあった。しかし、同産業は近年、AFTA及び日本とのFTA (EPA)の発効により、半ば強制的に市場開放への転換を迫られることになった。本研究では現地調査により、貿易自由化のもとでのマレーシア自動車産業における地場企業の競争力強化について検討を加え、以下のような結果を得るに至った。政策面ではマレーシアは段階的な保護の軽減により、急激な貿易自由化に多少の歯止めをかけつつ、一方で2006年の国家自動車政策により、基本的に保護から自助努力に応じた支援へと対応を変化させてきた。2大国民車メーカーのうち、プロトン社は世界的な自動車産業の潮流である戦略的提携の道を模索したが、現時点では単独での生き残りをかけ、低価格車やより消費者のニーズにマッチしたモデルの開発に努力している。プロドゥア社はダイハツ、ひいてはトョタグループのとの協力に活路を見出そうとしている。一方、地場部品メーカーの間では二極分化が進んでおり、比較的規模の大きな企業は海外進出や多角化という戦略をとり、かつ外国企業との技術提携により、競争力の維持をはかっている。一方、中小の部品メーカーは引き続き国民車メーカーへの依存が強く、貿易自由化のもと淘汰が進む可能性がある。これらの結果からは輸入代替の途中にある発展途上国の機械産業を貿易自由化の中で維持、強化するには政策的な支援のみならず、地場企業の競争力強化に向けた自助努力や外資との連携を視野に入れた新たな戦略構築が重要性を増しつつあることが明らかとなった。マレーシアの自動車産業は同国の国民車計画のもと1980年代央以降政策的に保護されてきた。さらに同国のブミプトラ(マレー人)優先政策とも深く関わる国民車メーカーと地場ベンダーは手厚い保護のもとにあった。しかし、同産業は近年、AFTA及び日本とのFTA (EPA)の発効により、半ば強制的に市場開放への転換を迫られることになった。本研究では現地調査により、貿易自由化のもとでのマレーシア自動車産業における地場企業の競争力強化について検討を加え、以下のような結果を得るに至った。政策面ではマレーシアは段階的な保護の軽減により、急激な貿易自由化に多少の歯止めをかけつつ、一方で2006年の国家自動車政策により、基本的に保護から自助努力に応じた支援へと対応を変化させてきた。2大国民車メーカーのうち、プロトン社は世界的な自動車産業の潮流である戦略的提携の道を模索したが、現時点では単独での生き残りをかけ、低価格車やより消費者のニーズにマッチしたモデルの開発に努力している。プロドゥア社はダイハツ、ひいてはトョタグループのとの協力に活路を見出そうとしている。一方、地場部品メーカーの間では二極分化が進んでおり、比較的規模の大きな企業は海外進出や多角化という戦略をとり、かつ外国企業との技術提携により、競争力の維持をはかっている。一方、中小の部品メーカーは引き続き国民車メーカーへの依存が強く、貿易自由化のもと淘汰が進む可能性がある。これらの結果からは輸入代替の途中にある発展途上国の機械産業を貿易自由化の中で維持、強化するには政策的な支援のみならず、地場企業の競争力強化に向けた自助努力や外資との連携を視野に入れた新たな戦略構築が重要性を増しつつあることが明らかとなった。マレーシアの自動車産業は同国の国民車計画のもと、長期間にわたり保護されてきたが、2005年から2006年にかけて同国の自動車政策に大きな変化が見られた。政策面では2006年に出された国家自動車政策(NAP)が示すように、貿易自由化への対応に向けた施策の枠組みが決められた。昨年度は特に自由化に大きな影響を与えたといえる日マFTA(EPA)(2005年に合意し、2006年に発効)と自動車産業との関連について、現地でのヒアリングによりこれを明らかにすることに努めた。ヒアリング先はマレーシア通商産業省、マラヤ大学、研究機関、国民車メーカー、部品メーカー、自動車関連団体など多岐にわたった。以下はその要約である。AFTAによるASEAN域内の貿易自由化に抗するように、マレーシアは自動車の関税撤廃を遅らせ、さらに物品税により関税の引き下げを相殺させる等の政策を続けてきた。しかし、国民車計画を推進してきたマハティール前首相の引退により、保護政策に変化があらわれた。日マFTA締結に向けた交渉の中で、当初、自動車は例外品目になるとの憶測も流れたが、最終的に日本側の技術協力などを織り込むことにより、自動車(完成車)の段階的関税撤廃が決定された。これにより、保護から自由化への流れは決定的となり、これを受けて、マレーシアは国家自動車政策を策定し、自由化に向けた指針を提示した。その考えは2006年に公表された第3次工業マスタープランにも受け継がれている。国家自動車政策ではマレーシアをASEAN域内での乗用車生産のハブにすべく、規模の経済の追求、輸出促進、外資導入、部品メーカーの集約などの目標が掲げられており、これらの達成のために、引き続き政府は支援を行うとしている。AFTA及び2006年に締結された日マFTAにより、マレーシアの自動車産業は急速に貿易自由化の波にさらされることとなった。自動車産業はマレーシアの戦略的な産業であり、政府の主導により、長期にわたり保護が継続されたため、多くの企業が国際競争力を持たない状況にある。 | KAKENHI-PROJECT-18402018 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18402018 |
AFTA、FTAとマレーシアの自動車産業-貿易自由化と地場企業の競争力強化 | 一昨年度に実施した政策面での現地調査を踏まえ、昨年度は企業におけるヒアリングとアンケートを中心に現地調査を実施した。現地企業8社、マレーシア自動車部品協会、マレーシア自動車協会、さらには日系企業5社のヒアリングからは貿易自由化により激化する環境変化への対応が企業により大きく異なることが明らかとなった。一部の企業は早い段階から輸出や海外進出を企図し、そのために必要な経営資源の獲得に努力していたが、一方で多くの企業が国民車メーカーへ依存する体質を残し、政策的な支援を求めていた。同国の自動車部品メーカー間では上記のような二極化が進んでいるといえる。アンケート調査の結果は引き続きより詳細な分析を通じて明らかにされるが、上記のヒアリングの結果を支持するものとなると思われる。マレーシア政府は国家自動車政策(2006年策定)と第9次マレーシア計画(2006年-2010年)、さらには第3次工業マスタープランにおいて、自動車産業の発展のため地場企業の競争力強化に向け各種の支援を行うとしている。また、日本からの協力も仰ぎながら地場企業の能力の向上をはかる計画である。 | KAKENHI-PROJECT-18402018 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18402018 |
水素及びハロゲンラジカルとシリコン表面の単原子層反応の制御 | Siデジタルエッチングにおける自己停止反応を探求すべくFラジカルとSi表面との反応を赤外反射吸収分光(IR-RAS)で研究した。まず、Si(100)表面にNF_3のマイクロ波放電プラズマで生成したFラジカルを照射し、表面反応層の形成過程を基板温度を変えて観察した結果、室温(300K)及び高温(500K)状態では、SiF_2,SiF_3の吸収に比べSiF_1の吸収が大きく現れた。低温(200K)の場合は、SiF_1,SiF_2,SiF_3の各ピークは同程度であった。この結果から、まずFラジカルがSi(100)表面に吸着すると最初SiF_2が形成されるが、高温ではSiのバックボンドが弱められて熱的に解離し、SiF_3とSiF_1に変化して、SiF_3が熱脱離するが、低温ではこれらの脱離が抑制されると考えられる。しかし200KでもFラジカルが供給される限り、徐々にではあるがエッチング反応が進行する。一方、本研究過程で以下の極めて興味深い結果を得た。即ち、更に低い温度状態(140K)でFラジカルを照射したところ、F/Si反応の進行が見られずラジカル(F/NF_2)の凝縮層と思われる吸収のみが観測された。そして、この表面を加熱していくと、200Kの温度でSiF_2,SiF_1の吸収が現れ、常温程度まではこれらの吸収強度は変化しなかった。このことは、低温状態でSi表面に凝縮ラジカル層を昇温すると、Fラジカルは最表面Si(100)原子と反応し、主にSiF_2で、一部はSiF_1で終端すると同時に、Fラジカル凝縮層は、気化し、反応は下層に進まない無いのではと推察される。更に表面敏感高電子分光などで調べなければならないが、もし真実なら、従来困難と考えられていたF/Si系で自己停止反応が初めて見つけ出されたことを示唆しており、このSiF_2/SiF_1終端層の層毎の除去で、Siの原子層デジタルエッチングの実現が期待される。Siデジタルエッチングにおける自己停止反応を探求すべくFラジカルとSi表面との反応を赤外反射吸収分光(IR-RAS)で研究した。まず、Si(100)表面にNF_3のマイクロ波放電プラズマで生成したFラジカルを照射し、表面反応層の形成過程を基板温度を変えて観察した結果、室温(300K)及び高温(500K)状態では、SiF_2,SiF_3の吸収に比べSiF_1の吸収が大きく現れた。低温(200K)の場合は、SiF_1,SiF_2,SiF_3の各ピークは同程度であった。この結果から、まずFラジカルがSi(100)表面に吸着すると最初SiF_2が形成されるが、高温ではSiのバックボンドが弱められて熱的に解離し、SiF_3とSiF_1に変化して、SiF_3が熱脱離するが、低温ではこれらの脱離が抑制されると考えられる。しかし200KでもFラジカルが供給される限り、徐々にではあるがエッチング反応が進行する。一方、本研究過程で以下の極めて興味深い結果を得た。即ち、更に低い温度状態(140K)でFラジカルを照射したところ、F/Si反応の進行が見られずラジカル(F/NF_2)の凝縮層と思われる吸収のみが観測された。そして、この表面を加熱していくと、200Kの温度でSiF_2,SiF_1の吸収が現れ、常温程度まではこれらの吸収強度は変化しなかった。このことは、低温状態でSi表面に凝縮ラジカル層を昇温すると、Fラジカルは最表面Si(100)原子と反応し、主にSiF_2で、一部はSiF_1で終端すると同時に、Fラジカル凝縮層は、気化し、反応は下層に進まない無いのではと推察される。更に表面敏感高電子分光などで調べなければならないが、もし真実なら、従来困難と考えられていたF/Si系で自己停止反応が初めて見つけ出されたことを示唆しており、このSiF_2/SiF_1終端層の層毎の除去で、Siの原子層デジタルエッチングの実現が期待される。 | KAKENHI-PROJECT-05237223 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05237223 |
局所細胞間コミュニケーションによる機能発現機序-黄体をモデルとした細胞生物学的研究- | 本研究では、黄体機能の調節機序を、異種細胞間のコミュニケーションによる、局所での機能発現のモデルと捉え、特に卵巣に細胞種特異的に発現するカルシウム-リン脂質結合タンパク質であるアネキシンVの生理的役割を追求した。1)組換えアネキシンVの生産と精製既に生産している組換えラットアネキシンVの生産条件と精製法を改良した。逆相クロマトフラフィーとリン脂質への親和性によって高純度にアネキシンVを精製することが出来た。2)プロジェステロン分泌に対するアネキシンVの作用の観察ラット卵巣の灌流系、卵巣嚢内への検体投与、黄体の器官培養実験それぞれについて、実験条件を検討し、プロジェステロン分泌反応が実験法によって異なることを見いだした。酸素分圧を高めた器官培養法について更に検討を続けている。3)アネキシンV mRNAの発現調節インサイチュ・ハイブリダイゼーション法でアネキシンV mRNA発現細胞の分布を観察すると、大型の黄体細胞に特異的に発現することが観察された。黄体のアネキシンV mRNA含量は、ラットの生殖周期に従って変動すること、特に黄体の機能化によって著しく減少することが、明らかになった。更に、アネキシンV mRNAの発現が、プロラクチンによって抑制的に調節されていることを明らかにした。これらの研究成果から、アネキシンVを介する黄体内の細胞間コミュニケーションの存在が示唆され、黄体機能調節における役割を研究中である。本研究では、黄体機能の調節機序を、異種細胞間のコミュニケーションによる、局所での機能発現のモデルと捉え、特に卵巣に細胞種特異的に発現するカルシウム-リン脂質結合タンパク質であるアネキシンVの生理的役割を追求した。1)組換えアネキシンVの生産と精製既に生産している組換えラットアネキシンVの生産条件と精製法を改良した。逆相クロマトフラフィーとリン脂質への親和性によって高純度にアネキシンVを精製することが出来た。2)プロジェステロン分泌に対するアネキシンVの作用の観察ラット卵巣の灌流系、卵巣嚢内への検体投与、黄体の器官培養実験それぞれについて、実験条件を検討し、プロジェステロン分泌反応が実験法によって異なることを見いだした。酸素分圧を高めた器官培養法について更に検討を続けている。3)アネキシンV mRNAの発現調節インサイチュ・ハイブリダイゼーション法でアネキシンV mRNA発現細胞の分布を観察すると、大型の黄体細胞に特異的に発現することが観察された。黄体のアネキシンV mRNA含量は、ラットの生殖周期に従って変動すること、特に黄体の機能化によって著しく減少することが、明らかになった。更に、アネキシンV mRNAの発現が、プロラクチンによって抑制的に調節されていることを明らかにした。これらの研究成果から、アネキシンVを介する黄体内の細胞間コミュニケーションの存在が示唆され、黄体機能調節における役割を研究中である。黄体は、主として卵胞膜細胞と顆粒層細胞が、分化・増殖して形成される。更に、黄体にはマクロファージを始めとする免疫系の細胞が含まれ、毛細血管に極めて富むために、血管内皮細胞の占める割合も高い。本研究では、黄体機能の調節機序を、異種細胞間のコミュニケーションによる、局所での機能発現のモデルと捉え、特に卵巣に細胞種特異的に発現するカルシウム-リン脂質結合タンパク質であるアネキシンVの生理的役割を追求し、新規の黄体機能調節機序の存在を探索する。本年度は、まず組換えラットアネキシンVの生産条件と精製法を改良し、多量の組換え体を実験に供することを可能にした。次いで、ラット卵巣の灌流系を確立し、組換え体、抗アネキシンV抗体から生成したγグロブリン分画、アネキシンV mRNAに対するアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドそれぞれのプロジェステロン産生に対する影響を観察している。更に卵巣灌流法に加えて、卵巣嚢内への微量投与法、黄体の器官培養を行い、アネキシンVのプロジェステロン分泌に対する影響を調べた。別にインサイチュ・ハイブリダイゼーション法を確立し、アネキシンV mRNA発現細胞の分布を発情周期、黄体期を通して観察中である。実験はいずれも現在進行中であり、アネキシンVの生産が性周期中に変動すること、プロジェステロン分泌に影響することを明らかにしつつある。卵巣における新規の調節因子として、アネキシンVの発現調節を主に検討した。この目的のために、ノーザンブロット法とリアルタイムPCR法の技術を確立した。ノーザンブロット法には、ジゴキシゲニン標識PCRプローブを用いた非RI法を確立した。ジゴキシゲニン標識ヌクレオチドを添加した反応液でPCR法を行い、プローブを合成した。アルカリフォスファターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体を用いた化学発光法で特異的バンドを検出した。この方法で、mRNA量を定量的に評価できることを確認し、性周期、偽妊娠(機能的黄体相)で卵巣のアネキシンVmRNA量の推移を検討した。更に、測定に使用するRNA量を少なくし、定量性を高めるために、リアルタイムPCR法を確立した。内部標準として用いるG3PDHとアネキシンVcDNAに適用する蛍光色素標識オリゴDNAプローブ(Taqmanプローブ)とプライマーの組み合わせを検討した。検量線作成用の標準品をDNA組み換えで作製した。これらを用い、測定条件を検討し、良好な検量線を得た。 | KAKENHI-PROJECT-11660303 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11660303 |
局所細胞間コミュニケーションによる機能発現機序-黄体をモデルとした細胞生物学的研究- | 卵巣のアネキシンVmRNA含量は、性周期に伴ってその量を変え、排卵前に最低値を示すことが明らかになった。更に、黄体が機能化しプロジェステロン分泌が高進すると、卵巣のアネキシンVmRNA含量は著しく減少した。これは、ラットの偽妊娠に分泌の高進するプロラクチンの作用であることが明らかになった。これらの結果から、アネキシンVが黄体機能に影響を及ぼすことが推定された。 | KAKENHI-PROJECT-11660303 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11660303 |
地盤工学的手法による都市地盤耐震性評価に関する研究 | 本研究で被災を受けた建築構造物はGISに入力済みである。まず、本研究で購入したGIS入力システムを用いて、19種類の地形単位に区分された縮尺1/10,000の地形分類図をベクター化して入力し、分類された地形単位ごとに被災(全壊)の戸数を求めた。その結果、山地・丘陵地を除いて87万年前の最終氷期以前に堆積した扇状地では被災率は少なく、堆積年代が新しくなるにつれて被災率は大きくなり、6千年前に堆積した扇状地と扇状地性三角州で被災率はもっとも大きくなることが明らかになった。しかし、この方法では被災を受けなかった建築構造物の数が不明であるため被災率が定義できない。このため次に被災を受けなかった建築構造物のベクター化をGIS入力システムを用いて行った。これにより被災した建築構造物のみならず、全体の建築構造物に対する被災の割合、被災率が定義できる。これを神戸市全域で行うには時間を要するため、面積約2km_2の調査区域を設定し、その中で作業を実施した。一方、点情報で与えられる建築構造物の分布を定量的に表現するためGIS機能を用いてバッファリング化し、被災率の等値線図を求めた。この図に地形分類図をオーバーレイすると、被災率が大きな地形単位は1.5万年前から6千年前に堆積した扇状地、旧河道で、被災率の小さな地形単位は4万年以前に堆積した扇状地で、それ以外の地形単位は被災率が大きな場所から小さな場所まで様々な値が出現したことが明らかになった。一方、山麓での宅地被害の原因を究明するため反射法地震探査を実施し、盛土と基盤の境界条件を求めるとともに、それぞれのせん断波速度を求めた。その結果を用いて動的斜面安定解析を実施した。その結果、盛土基盤では応答加速度の減衰がみられるものの、盛土では逆に入力加速度の1.5倍以上に増幅することが明らかになった。このために地震時では宅地造成地盤で変状が生じたものと推定された。本研究で被災を受けた建築構造物はGISに入力済みである。まず、本研究で購入したGIS入力システムを用いて、19種類の地形単位に区分された縮尺1/10,000の地形分類図をベクター化して入力し、分類された地形単位ごとに被災(全壊)の戸数を求めた。その結果、山地・丘陵地を除いて87万年前の最終氷期以前に堆積した扇状地では被災率は少なく、堆積年代が新しくなるにつれて被災率は大きくなり、6千年前に堆積した扇状地と扇状地性三角州で被災率はもっとも大きくなることが明らかになった。しかし、この方法では被災を受けなかった建築構造物の数が不明であるため被災率が定義できない。このため次に被災を受けなかった建築構造物のベクター化をGIS入力システムを用いて行った。これにより被災した建築構造物のみならず、全体の建築構造物に対する被災の割合、被災率が定義できる。これを神戸市全域で行うには時間を要するため、面積約2km_2の調査区域を設定し、その中で作業を実施した。一方、点情報で与えられる建築構造物の分布を定量的に表現するためGIS機能を用いてバッファリング化し、被災率の等値線図を求めた。この図に地形分類図をオーバーレイすると、被災率が大きな地形単位は1.5万年前から6千年前に堆積した扇状地、旧河道で、被災率の小さな地形単位は4万年以前に堆積した扇状地で、それ以外の地形単位は被災率が大きな場所から小さな場所まで様々な値が出現したことが明らかになった。一方、山麓での宅地被害の原因を究明するため反射法地震探査を実施し、盛土と基盤の境界条件を求めるとともに、それぞれのせん断波速度を求めた。その結果を用いて動的斜面安定解析を実施した。その結果、盛土基盤では応答加速度の減衰がみられるものの、盛土では逆に入力加速度の1.5倍以上に増幅することが明らかになった。このために地震時では宅地造成地盤で変状が生じたものと推定された。 | KAKENHI-PROJECT-08248226 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08248226 |
東アジアの経済格差収斂と成長を両立させる持続的地域統合の方策:理論的・実証的検証 | 東アジア地域における経済統合の拡大・深化の過程において、格差収斂と成長とを両立させる方法を理論・実証的に模索することが本研究の主な目的である。分析の主眼は、成長・発展に対する阻害要因の撤廃・軽減や貿易・FDIの進展による経済の開放化の進展が、域内各国の所得、厚生、環境にどのような影響をおよぼすのかに注がれた。分析の結果、阻害要因の撤廃や開放化は必ずしも各国の所得増加や厚生・環境の改善に貢献するとは限らないことが明らかとなった。また、所得増加や環境改善のための条件についても明示した。ただし、格差縮小と成長とを「両立」させるための具体的な政策提言は行えておらず、この点が今後の課題として残された。本研究の目的は、東アジア地域統合の障害となっている経済・制度面における異質性や当該地域特有の複雑な国際分業体制を前提としつつ、地域統合の進展が地域内経済格差の収斂と全体の成長とを両立させ得るのかについて理論的・実証的見地から考察を加えることである。初年度の平成25年度は、世界の地域統合の流れと東アジア地域経済連関の実態、域内各国経済状況に関する情報収集を行った。貿易・投資を中心とした統計データ、日本企業の海外進出動向に関する情報収集を行い、学部ゼミ学生の協力のもとで簡易なデータベースの形にまとめた。上記作業と並行して、文献サーベイや現地視察も行った。本年度は、日本企業の新たな進出先として注目されつつあるベトナムを訪問し、現地視察を行うとともに、JETROホーチミンの協力のもと様々な情報を入手した。海外調査に関しては、ASEAN諸国のうち未調査であったフィリピンを選択し、現地調査・ヒアリング、資料収集を行った。また、部品・中間財企業の国際競争における脆弱性・問題点を把握するため、中小企業の集積が見られる川崎市でのヒアリングを行った。川崎市は、公的機関が、当地域周辺に立地する大企業と中小企業との橋渡しを行うことで、きわめて良好な信頼関係を維持しているモデルケース(川崎モデル)としても有名である。本年度の調査にあたっては、JETROマニラ、フィリピン大学、川崎市産業振興財団、および関東学院大学スタッフにご協力いただいた。上記調査と並行して、1.多国籍企業の貿易・投資行動、2.持続的経済成長の阻害要因となる環境汚染と企業の越境行動との関係のモデル化も開始した。前者は、企業特性あるいは異質性(生産性、R&D集約度、雇用規模等)と、投資地域・形態との関係を理論的に明らかにすることを目的としている。理論仮説は、実証的にも検討する。プロトタイプ・モデルは、すでに数本の論文に分割してまとめられているが、現時点では投稿中あるいは修正中であるため、本年度の業績としては記載しない。後者については、共同研究として作業を進めており、現在は理論モデル作成の段階である。本年度は、過去2年間の基礎研究及び実態調査・ヒアリングの結果をふまえ、複数のトピックスに関する理論・実証研究に従事した。いくつかの研究については、学外の研究者との共同論文という形で行った。各分野のエキスパートとの共同研究により、専門外の知識をも取り込む形で論文を作成することが可能となった。上記研究の内容は、1.多国籍企業の貿易・投資行動とその変化による各国経済・厚生への影響(理論・実証研究)、2.持続的成長の阻害要因とその撤廃による影響(理論研究)に大別される。前者については、「The effect of exchange rate fluctuation on intra-industry reallocation in a firm heterogeneity model with trade and foreign direct investment」(under review)以外にも、日本企業のアジア立地戦略に関する理論・実証研究、開放化の進展による失業・賃金への影響に関する分析(吟谷泰裕:関東学院大学との共同論文)など、数本の論文を作成中である。後者に関しては、日本企業のインド進出に関する理論・実証研究(佐藤隆広:神戸大学、藤森梓:大阪成蹊大学との共同論文)、南北モデルによる環境規制強化の効果に関する理論研究(杉山泰之:福井県立大学との共同論文)を論文にまとめている最中である。これらの論文(ドラフト含む)は国内学会および海外での研究会等で順次報告している。ただし本年度に計画していた海外調査については、諸処の事情により実施できなかった。本研究では、東アジアの経済格差の収斂と成長の両立に向けた地域統合のあり方を理論・実証的に模索した。本研究における分析の主眼は、当該地域経済の成長・発展に対する阻害要因(具体的には、アジア諸国の多くが直面する成長の阻害要因である「脆弱なインフラ」や「為替変動リスク」、「環境リスク」など)の撤廃が、域内各国および全体の所得・厚生・環境に及ぼす影響に注がれた。東アジア地域における経済統合の拡大・深化の過程において、格差収斂と成長とを両立させる方法を理論・実証的に模索することが本研究の主な目的である。分析の主眼は、成長・発展に対する阻害要因の撤廃・軽減や貿易・FDIの進展による経済の開放化の進展が、域内各国の所得、厚生、環境にどのような影響をおよぼすのかに注がれた。分析の結果、阻害要因の撤廃や開放化は必ずしも各国の所得増加や厚生・環境の改善に貢献するとは限らないことが明らかとなった。また、所得増加や環境改善のための条件についても明示した。ただし、格差縮小と成長とを「両立」させるための具体的な政策提言は行えておらず、この点が今後の課題として残された。以上の状況を勘案し、上記評価とする。最終年度につき、現在進行中の研究を論文の形で完成させる。現在作成中の論文はすべて海外雑誌への投稿を予定している。 | KAKENHI-PROJECT-25380312 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25380312 |
東アジアの経済格差収斂と成長を両立させる持続的地域統合の方策:理論的・実証的検証 | 本年度の研究計画に対して障害となる要因は現時点では見当たらない。社会科学事前計画に従い、平成27年度は(1)アジア地域における企業の貿易・投資行動、(2)環境汚染と企業の越境行動の関係、について理論・実証両面からの分析を行う。ただし本年度は理論モデルの構築ならびに分析に重点を置く。その後、理論分析において得られた仮説の妥当性を、実証分析によって検証する予定である。国内外の現地視察も継続する。本年度の研究計画に対して、進行を著しく困難にさせる要因は現在のところ見当たらない。調査に関しても同様である。本年6月には海外での研究会報告が予定されており、年度末には研究成果をワーキングペーパー等の形で提示する。東アジア経済に関する基礎データの収集・整理に関しては、ほぼ計画どおりに進んでいる。理論研究に関しては計画を前倒しして進めているが、一方で現地調査にやや不十分さが残った(ベトナムのみの訪問にとどまった)ため、上記の評価とした。年度内に計画していた海外調査が実施できなかったため。平成26年度に予定されていた海外での研究会報告が延期されたため。本年度は最終年度につき、主に英文校正料、論文投稿料、学会および研究会参加費および旅費、海外調査費などに用いる。当初の予定通り、平成26年度は、25年度に行った基礎調査を土台に実態調査・文献研究をさらに進展させる。加えて昨年度には十分に行えなかった海外視察および国内企業のヒアリングを充実させる。これらの調査結果を反映させる形で、貿易・投資・フラグメンテーションを組み込んだモデルを開発、地域統合の進展による域内外経済への影響について理論的検証を加える。以上は事前の研究計画に沿ったスケジュールであり、大きな計画変更の予定はない。平成27年度中に海外で研究報告を行う予定。加えて当初の予定通り、主に国内外の調査関連費用、英文校正・論文投稿費用、図書購入費用などに用いる。平成25年度購入予定であったノートPCの購入が、平成26年度にずれ込んだため。前年度に未処理であったノートPCの購入を行う。加えて当初の予定通り、主に国内外の調査関連費用、英文校正・論文投稿費用、図書・資料購入費用などに用いる。 | KAKENHI-PROJECT-25380312 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25380312 |
連鎖解析による上皮性卵巣がん関連遺伝子領域の特定と構造決定 | (1)平成89年度にかけて家族性卵巣癌家系、乳癌/卵巣癌家系34家系を集積し、BRCA1遺伝子の解析を行った結果、卵巣癌家系17家系中7家系(41.2%)乳癌/卵巣癌家系17家系中11家系(64.7%)合計34家系中18家系(52.9%)にBRCA1遺伝子の異常をみとめた。18家系中17家系で認められた異常は蛋白の中断を引き起こすものであったが1家系ではZinc finger motifの構造に影響をおよぼすものであった。さらにBRCA2についても検討を行ったが明らかな異常は1例も認められなかった。(2)卵巣がん腫瘍組織からDNAが採取可能であった症例について、BRCA1遺伝子内に位置するD17S1322,D17S855、近傍に位置するD17S1325の3つのマイクロサテライトDNA多型マーカーを用いてLOHの解析を行った結果、germline mutationを有する21症例では、全例でLOHが確認された。BRCA1遺伝子に関連しない15家系を対象として、患者が少なくとも2名以上存在すれば解析可能なsib-pair analysisを実施した結果、9q34-35領域においてZ2=0.96が得られた。(4)BRCA1遺伝子に異常を認めた女性68名(患者32名、健常者36名)の年齢をもとにカプランメイヤー法により卵巣癌の浸透率を計算し、日本人における生涯危険率が80%であることを明らかにした。(5)BRCA1遺伝子に異常を認めた卵巣癌患者25名の臨床的解析の結果、しょう液性腺癌が96%を占め、孤発例に比較し明らかに高い生存率を示し事、あるいは発症年齢の平均は51.1才と孤発例の平均年齢52.03才とほぼ変わらず欧米の家族性卵巣癌患者の平均発症年齢より高い事が明らかになった。(6)アンケート調査による上皮性卵巣癌4512例の解析の結果、1例の遺伝性卵巣癌/乳癌家系、6例の遺伝性卵巣癌家系、5例の家族性卵巣癌家系が認められたが、この頻度は欧米のものと比較すると約10分の1であった。(1)平成89年度にかけて家族性卵巣癌家系、乳癌/卵巣癌家系34家系を集積し、BRCA1遺伝子の解析を行った結果、卵巣癌家系17家系中7家系(41.2%)乳癌/卵巣癌家系17家系中11家系(64.7%)合計34家系中18家系(52.9%)にBRCA1遺伝子の異常をみとめた。18家系中17家系で認められた異常は蛋白の中断を引き起こすものであったが1家系ではZinc finger motifの構造に影響をおよぼすものであった。さらにBRCA2についても検討を行ったが明らかな異常は1例も認められなかった。(2)卵巣がん腫瘍組織からDNAが採取可能であった症例について、BRCA1遺伝子内に位置するD17S1322,D17S855、近傍に位置するD17S1325の3つのマイクロサテライトDNA多型マーカーを用いてLOHの解析を行った結果、germline mutationを有する21症例では、全例でLOHが確認された。BRCA1遺伝子に関連しない15家系を対象として、患者が少なくとも2名以上存在すれば解析可能なsib-pair analysisを実施した結果、9q34-35領域においてZ2=0.96が得られた。(4)BRCA1遺伝子に異常を認めた女性68名(患者32名、健常者36名)の年齢をもとにカプランメイヤー法により卵巣癌の浸透率を計算し、日本人における生涯危険率が80%であることを明らかにした。(5)BRCA1遺伝子に異常を認めた卵巣癌患者25名の臨床的解析の結果、しょう液性腺癌が96%を占め、孤発例に比較し明らかに高い生存率を示し事、あるいは発症年齢の平均は51.1才と孤発例の平均年齢52.03才とほぼ変わらず欧米の家族性卵巣癌患者の平均発症年齢より高い事が明らかになった。(6)アンケート調査による上皮性卵巣癌4512例の解析の結果、1例の遺伝性卵巣癌/乳癌家系、6例の遺伝性卵巣癌家系、5例の家族性卵巣癌家系が認められたが、この頻度は欧米のものと比較すると約10分の1であった。本年度の主な研究成果は以下の通りである。1)20家系64名についてBRCA1の全翻訳領域の解析を行った(卵巣癌41名、乳癌5名、健常者18名)。乳癌患者を含む家系7家系中5家系(卵巣癌患者15名中10名、乳癌患者5名中3名、健常者6名中0名)と乳癌患者を含まない家系13家系中3家系(卵巣癌患者26名中7名、健常者12名中0名)にGermline mutationを認め、これらは7家系においてprotein truncation,1家系においてzinc finger motifの構造に影響すると考えられるものであった。2)BRCA1に異常が確認された8家系で同意の得られた健常者63名についてmutationの有無を解析したところ、17名にmutationが確認された。BRCA1に関し遺伝子診断の有用性について検討するため、当施設倫理委員会の許可のもと家系内の健康女性(mutationの有無に関わらず)の追跡調査をインフォームドコンセントにて同意のもとで行っている。3)19症例の孤発例卵巣癌患者で、血液と腫瘍組織のBRCA1を検索。 | KAKENHI-PROJECT-08457437 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08457437 |
連鎖解析による上皮性卵巣がん関連遺伝子領域の特定と構造決定 | 2例においてsomatic mutation(2073delA,4498G to A)と同時にヘテロ接合性の消失を認め、BRCA1の不活化が疾患発症に関与していることが示唆された。BRCA1異常が無い家系を対象として原因遺伝子の検索を行っている。non-parametric linkage analysis(sib-pair method)を用いて6家系について9q34領域から解析を始めた。マーカーD9S60-D9S61周辺でLOD scoreは1.0と有意ではなかったが,患者間で対立遺伝子を共有する割合が0.055(共有しない)、0.109(一つだけ共有)、0.836(二つとも共有)と疾患発症に関連した遺伝子の存在が推測される結果が得られた。この解析法は姉妹に2人以上の患者が存在すれば解析できる利点を有するが、多くの家系を用いた追試と他の染色体領域の解析を行っていく必要がある。(1)今年度新規に家族性卵巣癌家系、乳癌/卵巣癌家系18家系を集積し、BRCA1遺伝子の解析を行った結果、家族性卵巣癌3家系と家族性乳癌/卵巣癌家系4家系でgermline mutationを認めた。前年度までのものを含めると、卵巣癌家系17家系中7家系(41.2%)乳癌/卵巣癌家系17家系中11家系(64.7%)合計34家系中18家系(52.9%)の頻度であった。。(2)BRCA1遺伝子に関連しない15家系を対象として、患者が少なくとも2名以上存在すれば解析可能なsib-pair analysisを実施した結果、9q34-35領域いおいてZ2=0.96が得られた。(3)BRCA1遺伝子に異常を認めた女性68名(患者32名、健常者36名)の年齢をもとにカプランメイヤー法により卵巣癌の浸透率を計算し、日本人における生涯危険率が80%であることを明らかにした。(4)BRCA1遺伝子に異常を認めた卵巣癌患者25名の臨床的解析の結果、しょう液性腺癌が96%を占め、孤発例に比較し明らかに高い生存率を示す事、あるいは発症年齢の平均は51.1才と孤発例の平均年齢52.03才とほぼ変わらず欧米の家族性卵巣癌患者の平均発症年齢より高い事が明らかになった。(5)アンケート調査による上皮性卵巣癌4512例の解析の結果、1例の遺伝性卵巣癌/乳癌家系、6例の遺伝性卵巣癌家系、5例の家族性卵巣癌家系が認められたが、この頻度は欧米のものと比較すると約10分の1であった。 | KAKENHI-PROJECT-08457437 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08457437 |
真核細胞ゲノムに存在するヘリカーゼ様遺伝子群の網羅的機能解析 | 本研究は、基本的な核酸ダイナミクスにおいて重要な働きをしているヘリカーゼ様遺伝子群に焦点をあてて、真核生物におけるヘリカーゼファミリーとそれらが果たす機能の全体像を解明することを目指して行った。1.出芽酵母ゲノムの情報解析に基づいて同定した新規ヘリカーゼ様遺伝子産物の機能解析2.比較生物学的見地から、RNAiによる機能破壊を利用した線虫ホモローグの機能解析以上の2点が本研究計画の要点である。その結果、本研究開始時には、個別の蛋白質について断片的な知見に留まっていたヘリカーゼ研究に以下に示すような新たな知見を加えることができた。1.出芽酵母のゲノム情報解析から同定された20種の新規ヘリカーゼ様ORFについて、遺伝子破壊を行い、6個の必須遺伝子を同定した。2.43個のヘリカーゼ様ORFの遺伝子発現解析を行い、全ての転写産物を確認した。特異的な培養条件で発現レベルが顕著に上昇する遺伝子を同定するとともに、熱ショック時にヘリカーゼ様遺伝子群の転写レベルが高進することを初めて見出した。3.新規必須遺伝子YDLO84WがRNA依存性ATPaseをコードすることを初めて明らかにした。4.10個の新規遺伝子産物について、酵母two-hybrid解析を行い、Yn1218wpやYk1017cpなどと相互作用する酵母蛋白質を同定した。YNL218W遺伝子産物について、遺伝子破壊株の表現型の検討を行った結果、同遺伝子産物が(組換え)修復に関与することを示唆する知見を得た。5.3個のミトコンドリア機能に関わる新規ヘリカーゼ様遺伝子(YDR332W, YGL064C, YOL095C)を明らかにした。6.線虫とRNAi法を用いて、新規遺伝子を含むヘリカーゼ様遺伝子ホモローグの網羅的な機能破壊を進め、表現型の解析を行った結果、酵母と線虫とで遺伝子保存性と機能との間に高い相関関係が見いだされた。また多くの線虫のRNAi変異体(40%以上)では増殖や発生に顕著な異常が観察されたことから、ヘリカーゼ様遺伝子群は多細胞生物においても生理的に重要な機能を果たしていることを明らかにした。出芽酵母ゲノムの網羅的な情報解析から、137個のヘリカーゼ様蛋白質を同定し、新規な遺伝子21個について系統的な遺伝子破壊実験を行い、6個の必須遺伝子を同定した。また20個の新規遺伝子を含む43個のヘリカーゼ様遺伝子について、7種類の培養(処理)条件(栄養培養、貧栄養培養、胞子形成培養、熱ショック処理、紫外線照射、MMS処理、hydroxyurea処理)における転写量のレベルをNorthern解析によって詳細に検討した結果、幾つかの条件特異的な発現上昇を示す機能未知遺伝子が見出された(YER176W:胞子形成培養;YHR169W:紫外線照射、hydroxyurea処理;YFR038W:hydroxyurea処理など)。更に興味深いことに、ヘリカーゼ様遺伝子の70%以上で熱ショックによる転写量の増大が観察された。この現象は、熱ショック蛋白質合成の急増時に抑制される他の蛋白質合成を補償している可能性、あるいはストレス応答でヘリカーゼ様蛋白質が何らかの役割を果たしている可能性が考えられた。また本研究で同定された新規ヘリカーゼ様遺伝子のうち、国内外で解析の進んでいない15個の遺伝子についてクローニングを完了し、蛋白質発現系の構築を進めた。大腸菌による発現で可溶性になる蛋自質は少なかったが、そのうちYd1084w蛋白質はタグによる精製に成功し、生化学的な解析を行った結果、RNA依存性ATPaseであることを初めて明らかにした。Yd1084w蛋白質はアミノ酸配列の類似性などから、pre-mRNA splicingの初期過程に働くRNAヘリカーゼ蛋白質であることが強く示唆された。本研究は、基本的な核酸ダイナミクスにおいて重要な働きをしているヘリカーゼ様遺伝子群に焦点をあてて、真核生物におけるヘリカーゼファミリーとそれらが果たす機能の全体像を解明することを目指して行った。1.出芽酵母ゲノムの情報解析に基づいて同定した新規ヘリカーゼ様遺伝子産物の機能解析2.比較生物学的見地から、RNAiによる機能破壊を利用した線虫ホモローグの機能解析以上の2点が本研究計画の要点である。その結果、本研究開始時には、個別の蛋白質について断片的な知見に留まっていたヘリカーゼ研究に以下に示すような新たな知見を加えることができた。1.出芽酵母のゲノム情報解析から同定された20種の新規ヘリカーゼ様ORFについて、遺伝子破壊を行い、6個の必須遺伝子を同定した。2.43個のヘリカーゼ様ORFの遺伝子発現解析を行い、全ての転写産物を確認した。特異的な培養条件で発現レベルが顕著に上昇する遺伝子を同定するとともに、熱ショック時にヘリカーゼ様遺伝子群の転写レベルが高進することを初めて見出した。3.新規必須遺伝子YDLO84WがRNA依存性ATPaseをコードすることを初めて明らかにした。4.10個の新規遺伝子産物について、酵母two-hybrid解析を行い、Yn1218wpやYk1017cpなどと相互作用する酵母蛋白質を同定した。YNL218W遺伝子産物について、遺伝子破壊株の表現型の検討を行った結果、同遺伝子産物が(組換え)修復に関与することを示唆する知見を得た。 | KAKENHI-PROJECT-11672202 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11672202 |
真核細胞ゲノムに存在するヘリカーゼ様遺伝子群の網羅的機能解析 | 5.3個のミトコンドリア機能に関わる新規ヘリカーゼ様遺伝子(YDR332W, YGL064C, YOL095C)を明らかにした。6.線虫とRNAi法を用いて、新規遺伝子を含むヘリカーゼ様遺伝子ホモローグの網羅的な機能破壊を進め、表現型の解析を行った結果、酵母と線虫とで遺伝子保存性と機能との間に高い相関関係が見いだされた。また多くの線虫のRNAi変異体(40%以上)では増殖や発生に顕著な異常が観察されたことから、ヘリカーゼ様遺伝子群は多細胞生物においても生理的に重要な機能を果たしていることを明らかにした。YDL084Wの合計11個について、lexAシステムを利用した酵母two-hybrid法によって、酵母ゲノムライブラリーから相互作用する蛋白質のスクリーニングを行った。自己活性化により解析が不可能であったYIR002Cを除く10個の遺伝子のうちで、現在までにYKL017Cがそれ自身と、YNL218Wがそれ自身を含む少なくとも5個の遺伝子産物(SNF1,YMR102C,TEM1など)と相互作用することなどを見出している。またこれらの蛋白質についてタグを付加した蛋白質発現株を構築し、蛋白質複合体を精製するための条件検討を進めた。また出芽酵母の新規ヘリカーゼ様遺伝子の線虫ホモログをデータベース検索により同定し、RNAi法による遺伝子機能破壊によって機能の解析を進めている。平成11年度ではRNAiの実験系の立ち上げを行った。モデルとしてYDL084Wの線虫ホモログ(C26D10.2)の機能破壊を行ったところ、胚性致死となり、種を超えて真核細胞の増殖に必須な機能を果たしていることが示唆された。平成12年度までの出芽酵母ゲノムの解析から我々が新規に見出したヘリカーゼ様遺伝子のうち、増殖に必須でない遺伝子YNL218wについて、酵母two-hybrid系で観察された蛋白質との相互作用を確認するために、相互作用が検出された遺伝子のクローニング、大腸菌での蛋白質発現、および遺伝子タグを付加した蛋白質発現株の構築を行った。Yn1218wpについてはATPaseドメインを含む変異体遺伝子の作成を進めた。本遺伝子欠損株ではDNA組換えに欠損が見られるとの報告もあることから、一連の複製関連蛋白質との相互作用についても合わせ検討したが、少なくともYn1218wpとSGS1ヘリカーゼおよびRFC small subunitとの間では相互作用は検出できなかった。さらに新規遺伝子(YDR332W, YGL064C, YOL095C)の欠損株では、グリセロールなどの非発酵性糖原を含む培地で顕著な贈殖抑制が観察され、呼吸欠損の表現型を示すことを新たに見出した。これらの遺伝子産物はミトコンドリア機能に関与することが予想されるため、現在、詳細な解析を進めている。また出芽酵母の新規ヘリカーゼ様遺伝子の線虫ホモローグをデータベース検索により同定し、RNAiによる遺伝子機能破壊による機能解析を進めた。昨年度までのパイロット実験を拡大させ、相当する線虫の全遺伝子について機能破壊実験を行ったところ、(表現型は弱い場合があるものの)酵母破壊株の表現型と良い相関が認められたことから、少なくとも両者で保存されている遺伝子産物については、種を超えて共通の機能を果たしていることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-11672202 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11672202 |
アジア地域研究における旧米国陸軍地図局作成地図の利用可能性に関する基礎研究 | 旧米国陸軍工兵隊地図局(以下,AMS)の作成した地図に関して,本年度の研究実施計画に従って三つの課題に取り組んだ.第一はAMS図からの地理情報の取得であり,前年度に画像処理・空間参照を行ったAMS「Okinawa1/4800」地形図から,GISを用いて集落などの地名(約750地点)および道路網などの地理情報を取得し,一部についてGPSを用いその位置を確認した.その他に,琉球大学法文学部地理学教室の所蔵するAMS図(約300面)のデジタル化も行った.第二はAMS図のメタデータ取得である.そのために米国公文書館および米国議会図書館においてAMS図の技術マニュアルを新たに入手するとともに,特に琉球列島に関してAMS図を複写した.また,そこに記載されたメタデータも整理することで,同時期に作成されたAMS図でも版により地名などの記載内容や参照された資料が異なることを確認できた.また技術マニュアルによると,AMSは地名をフィールドワークにより収集する場合があり,実際に沖縄島中南部のAMS図に記載された集落や河川などの地名をみると,方言による地名の表記が散見された.その一方,例えば沖縄市の旧名である「コザ」のように,作成過程における地名の誤記が現在でも実社会で使用され続けていることも見いだし得た.第三は,AMS図の利用可能性に関する検討である.上述のようにAMS図は既に失われた地名を当時の発音で記録している場合もあり,その資料的価値は高い.また,アジアについてAMS図は日本の外邦図と同様に第三国の測量機関が作成したものを用いる場合と,測量などを含めAMSが独自に作成する場合とがあった.後者はAMS図に使用した空中写真の撮影年などを記載している場合があり,194050年代のアジア地域の環境を知る上で有用な情報を取得できる可能性を持つ.なお,成果の一部は学会にて報告した.旧米国陸軍地図局(U.S.Army Map Service,以下AMS)は,主に194050年代にかけ世界の様々な地域の地図を作成した。本研究の目的は,AMSがアジア地域について作成した地図の特徴を把握すること,およびAMSマップをアジア地域研究に活用していく上での利点および問題点について,琉球大学法文学部地理学教室所蔵AMSマップを具体的な素材としながら検討することである。2年計画の1年目である本年度は,3つの課題に取り組んだ。第一は,AMSマップの所在情報の調査・収集である。主に米国公文書館地図ライブラリーにおいてAMSマップ約3,400シリーズに関する,作成地域,作成年,縮尺等のメタデータを入手するとともに,アジア地域の各シリーズ索引図や関連ドキュメントの写しを入手した。第二は,上記過程で収集したメタデータの整理とデータベース化であり,これに基づくならばアジア地域(東アジア,東南アジア,南アジア)については,少なくとも約550シリーズ以上の地図が作成され,その半数あまりは1940年代前半に作成開始されたことなどが判明した。第三は,AMS「Okinawa1/4,800」シリーズのGIS化である。まず,1940年代後半にAMSが作成した沖縄本島中南部の地図約200面について,各画像ファイルにデジタル画像処理および空間参照を行い,GISソフトウェア上で当該地図を操作できる仕組みを構築した。次いで,沖縄本島北部地域についても1950年代に作成された同縮尺地形図約50面の所在を新たに確認し,同様の手法でGIS化を行った。AMSマップは衛星写真を利用できる以前の年代に作成されたものが多く,産業開発が深く進展する前のアジア地域の環境復元などにおいて活用することも可能であろう。次年度はAMSマップの利用可能性について,検討を加えていく予定である。旧米国陸軍工兵隊地図局(以下,AMS)の作成した地図に関して,本年度の研究実施計画に従って三つの課題に取り組んだ.第一はAMS図からの地理情報の取得であり,前年度に画像処理・空間参照を行ったAMS「Okinawa1/4800」地形図から,GISを用いて集落などの地名(約750地点)および道路網などの地理情報を取得し,一部についてGPSを用いその位置を確認した.その他に,琉球大学法文学部地理学教室の所蔵するAMS図(約300面)のデジタル化も行った.第二はAMS図のメタデータ取得である.そのために米国公文書館および米国議会図書館においてAMS図の技術マニュアルを新たに入手するとともに,特に琉球列島に関してAMS図を複写した.また,そこに記載されたメタデータも整理することで,同時期に作成されたAMS図でも版により地名などの記載内容や参照された資料が異なることを確認できた.また技術マニュアルによると,AMSは地名をフィールドワークにより収集する場合があり,実際に沖縄島中南部のAMS図に記載された集落や河川などの地名をみると,方言による地名の表記が散見された.その一方,例えば沖縄市の旧名である「コザ」のように,作成過程における地名の誤記が現在でも実社会で使用され続けていることも見いだし得た.第三は,AMS図の利用可能性に関する検討である.上述のようにAMS図は既に失われた地名を当時の発音で記録している場合もあり,その資料的価値は高い.また,アジアについてAMS図は日本の外邦図と同様に第三国の測量機関が作成したものを用いる場合と,測量などを含めAMSが独自に作成する場合とがあった. | KAKENHI-PROJECT-18652075 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18652075 |
アジア地域研究における旧米国陸軍地図局作成地図の利用可能性に関する基礎研究 | 後者はAMS図に使用した空中写真の撮影年などを記載している場合があり,194050年代のアジア地域の環境を知る上で有用な情報を取得できる可能性を持つ.なお,成果の一部は学会にて報告した. | KAKENHI-PROJECT-18652075 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18652075 |
通信ソフトウェアの自動形成システムの開発 | 本研究の目的は,通信ソフトウェアの自動形成システムを開発し,具体的に試作することである.そのため,まず自動形成システムの核となる知的な開発支援システムを構成する.次に,この開発支援システムを用いて実際の通信ソフトウェアを設計する.最後に,これらの実証実験を繰返すことにより,ヒューマンインタフェースなどの改良をはかり,通信ソフトウェアの自動形成システムを構成し試作する.61年度では,通信ソフトウェアの自動形成システムの核となる知的支援システムを中心に,特に次の2点に重点を置き諸研究を推進した.(1)知的開発支援システムの構成,(2)(1)の構成要素の設計(1)については,プロトコルと通信ソフトウェアのライフサイクルに注目し,要求仕様記述からプログラミング,保守まで円滑に開発するために,知識工学的手法を用いて,ユーザフレンドリイで知的な開発支援システムを構成した.特に,要求仕様記述が与えられた時,不足情報をユーザから獲得しながら自動的にプログラムを生成する機構を設計した.(2)では, (1)の核となる構成要素である通信ソフトウェア向き(a)仕様記述言語, (b)高級プログラミング言語, (C)検証法を新しく開発し,また, (d)(a)のエディタ,及び(e)(a)から(b)への変換アルゴリズムを設計した.62年度では, 61年度に設計した前述の(1)と(2)をグラフィックスシステムとワークステーションを用いて試作し,本設計法の有効性を実証した.具体的には,プロトコルの設計からソフトウェアの生成まで,一貫して開発する設計法(本研究で提案)が,その生産性の飛躍的な向上に寄与することができることを示した.本研究の目的は,通信ソフトウェアの自動形成システムを開発し,具体的に試作することである.そのため,まず自動形成システムの核となる知的な開発支援システムを構成する.次に,この開発支援システムを用いて実際の通信ソフトウェアを設計する.最後に,これらの実証実験を繰返すことにより,ヒューマンインタフェースなどの改良をはかり,通信ソフトウェアの自動形成システムを構成し試作する.61年度では,通信ソフトウェアの自動形成システムの核となる知的支援システムを中心に,特に次の2点に重点を置き諸研究を推進した.(1)知的開発支援システムの構成,(2)(1)の構成要素の設計(1)については,プロトコルと通信ソフトウェアのライフサイクルに注目し,要求仕様記述からプログラミング,保守まで円滑に開発するために,知識工学的手法を用いて,ユーザフレンドリイで知的な開発支援システムを構成した.特に,要求仕様記述が与えられた時,不足情報をユーザから獲得しながら自動的にプログラムを生成する機構を設計した.(2)では, (1)の核となる構成要素である通信ソフトウェア向き(a)仕様記述言語, (b)高級プログラミング言語, (C)検証法を新しく開発し,また, (d)(a)のエディタ,及び(e)(a)から(b)への変換アルゴリズムを設計した.62年度では, 61年度に設計した前述の(1)と(2)をグラフィックスシステムとワークステーションを用いて試作し,本設計法の有効性を実証した.具体的には,プロトコルの設計からソフトウェアの生成まで,一貫して開発する設計法(本研究で提案)が,その生産性の飛躍的な向上に寄与することができることを示した.本研究の目的は、対象を通信ソフトウェアにしぼり、その自動形成システムを開発し、具体的に試作することである。そのため、まず自動形成システムの核となる知的な開発支援システムを構成する。次に、この開発支援システムを用いて実際の通信ソフトウェアを設計する。最後に、これらの実証実験を繰返すことによりマンマシンインターフェースなどの改良をはかり通信ソフトウェアの自動形成システムを構成し試作する。61年度では、通信ソフトウェアの自動形成システムの核となる知的支援システムを中心に特に次の2点に重点を置き諸研究を推進した。(1)知的開発支援システムの構成、(2)(1)の構成要素の設計(1)については、通信ソフトウェアのライフサイクルに注目し、要求仕様記述からプログラミング、保守まで円滑に開発するために、知識工学的手法を用いてユーザ・フレンドリイ・インターフェースの高い知的な開発支援システムを構成した。特に、要求仕様記述が与えられた時、不足情報をユーザから獲得しながら自動的にプログラムを生成する機構を設計した。(2)では、(1)の核となる構成要素である通信ソフトウェア向き(a)仕様記述言語、(b)高級プログラミング言語、(C)検証法を新しく開発し、また、(d)(a)のエディタ、及び(e)(a)から(b)への変換アルゴリズムを設計した。次年度では、今年度設計した前述の(1)と(2)をグラフィックシステムUNIBOX(SORD製)を用いて試作し、本設計法の有効性を実証する。 | KAKENHI-PROJECT-61580015 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61580015 |
網羅的遺伝子解析を軸にした網膜色素変性の病態解明と新規治療法開発 | 網膜色素変性は遺伝性疾患であり、進行性の網膜障害を来す。本研究では研究代表者がこれまで行ってきた網羅的遺伝子診断の成果を軸とし、premature termination codonの変異を持つ患者から樹立した疾患特異iPS細胞を用いてstop codon readthroughによる治療法を開発することを第一の目的とする。さらに既報の遺伝子を網羅的に調べても原因遺伝子が特定できなかった症例から、家系解析および人工知能を用いて原因となる遺伝子の候補を絞り込み、動物実験で表現型を確認することで新規遺伝子の同定を目指す。網膜色素変性は遺伝性疾患であり、進行性の網膜障害を来す。本研究では研究代表者がこれまで行ってきた網羅的遺伝子診断の成果を軸とし、premature termination codonの変異を持つ患者から樹立した疾患特異iPS細胞を用いてstop codon readthroughによる治療法を開発することを第一の目的とする。さらに既報の遺伝子を網羅的に調べても原因遺伝子が特定できなかった症例から、家系解析および人工知能を用いて原因となる遺伝子の候補を絞り込み、動物実験で表現型を確認することで新規遺伝子の同定を目指す。 | KAKENHI-PROJECT-19K09929 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K09929 |
胆嚢がん発症要因としての胆汁中微生物のメタゲノム解析と感染履歴の検証 | 平成30年度の計画は、インドで採取した胆汁試料を日本に持ち込み、DNA抽出後、メタゲノム解析を行うことであった。胆嚢がん患者と胆石症患者からの胆汁試料の採取は、特に胆嚢がん患者が進行期で診断される例が多いことから予定していた100例を年度内に採取することが不可能であった。このため、引き続き胆汁試料の採取を継続している。平成30年度には、胆嚢がん患者と胆石症患者から採取した血漿を用いて、腸チフス菌のVi抗原とO抗原、パラチフスA菌とB菌のO抗原に対する抗体価を改良ウィダール反応により測定した。さらに、血清を用いて、腸チフス菌のIgG LPS抗原に対する抗体価をELISA法により測定し各々の抗体価の陽性率を両群間で比較した。胆嚢がん患者のVi抗体価の陽性率44.0%(44/100)は胆石症患者の14.7%(14/95)に比べ有意に高く(P<0.001)、パラチフスA菌のO抗体価も有意に高かった(胆嚢がん患者17.0%:胆石症患者1.1%、P<0.001)。しかし、腸チフス菌O抗体価、パラチフスB菌のO抗体価、LPS抗体価には両群間で有意差は認められなかった。Vi抗体価の陽性率が最も高かったのは、胆嚢がん患者(55.6%)、胆石症患者(41.6%)何れも60歳代であった。また、胆嚢がん患者のVi抗体価の陽性率は、女性で41.7%、男性で50.0%とほぼ近似した値を示した。我々の結果は、改良ウィダール反応による胆嚢がん患者のVi抗体価とパラチフスA菌のO抗体価は胆石症患者に比べ有意に高く、本法はインドの腸チフス菌感染と胆嚢がんリスクとの関係を明らかにするために有用であることが示された。当初の計画では平成30年度内に胆嚢がん患者と胆石症患者各々100例から胆汁試料の採取を終え、メタゲノム解析を実施し、各々の患者の胆汁中に常在している細菌叢を明らかにする予定であった。しかし、試料採取が遅れており、メタゲノム解析までに至らなかった。平成30年度末時点で採取できた胆汁試料数は、胆嚢がん患者から約30例、胆石症患者から約80例であった。このように、目標とした胆汁試料数に達していないことから、引き続き2019年末まで試料の採取をお願いしている。このため、当初の計画よりやや遅れている状況である。しかし、平成31年度に計画していた、腸チフスやパラチフス菌感染の感染歴を検証するための抗体価測定は平成30年度中に終了し、インド北部における胆嚢がん発症にこれらの菌の感染が関係している可能性を示唆する知見を得た。平成31年度には、2019年末までに採取できた胆汁試料からDNA抽出を行い、メタゲノム解析を行い、各々の患者の胆汁中に常在している細菌叢を明らかにする予定である。平成31年度には、平成30年度に予定していたメタゲノム解析により、胆嚢がん患者と胆石症患者の胆汁中に常在する細菌類のDNAを網羅的に調べ、胆嚢がん患者の胆汁中に特異的に存在する細菌叢を明らかにする予定であるその方法は、インドのサンジャイ・カンジー医科学大学院病院で胆嚢がん患者と胆石症患者から採取した胆汁試料中から、同大学院、消化器外科学教室の実験室において市販のDNA抽出キットを用いてDNAを抽出する。抽出したDNAを日本に保冷状態で持ち込みメタゲノム解析(16S rRNA菌叢解析)を実施する予定である。なお、このメタゲノム解析は外部委託する予定である。両患者からの胆汁試料の採取は、2019年12月末までお願いし、当初目標とした試料数の確保を目指す。100人の胆石症患者からの胆汁採取は問題なく実施できるが、100人の胆嚢がん患者からの胆汁採取は困難かもしれない。この場合、黄色肉芽腫性胆嚢炎(XBC)は胆嚢壁に肉芽腫を形成する胆嚢炎の一亜型であることから、この患者からの胆汁も含めて検討する。採取した胆汁が目標数に達しない場合でも得られた試料を用いて解析することで初期の目的を達成したいと考えている。平成29年度の計画は、インド研究者との研究打ち合わせ後に研究用試料(胆汁及び血清)を採取することであった。平成29年9月にサンジャイ・ガンジー医科学大学院(SGPGIMS)を訪問し、Prof. Kapoor、Dr. Mishraと打ち合わせを行った。内容は、試料の採取法、保存法、輸送法、実験法等である。胆嚢がん患者と胆石症患者の各々100例からの血清(血漿)採取は、事前に29年4月に依頼しており、9月の訪問時には採取は完了していた。受け取った試料は、冷凍状態で日本へ搬入、新潟大学のー80°Cのフリーザー中に保管した。胆汁採取は、現在、引き続き採取をお願いしている。当初は29年度中に採取が完了する予定であったが、胆嚢がん患者からの採取が予定数に達しておらず、30年度訪問時(12月を予定)に受け取り、日本に搬入することになっている。29年度中に、胆嚢がん患者と胆石症患者各100例を対象として、ラテックス凝集法(LZ)法を用いてヘリコバクターピロリ抗体価を測定した。 | KAKENHI-PROJECT-17K09103 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K09103 |
胆嚢がん発症要因としての胆汁中微生物のメタゲノム解析と感染履歴の検証 | インドにおけるこれまでの研究でヘリコバクター属菌感染と胆嚢がんの関係が報告されていることから両者の関係を調べた。平均抗体価は、胆嚢がん患者群で11.1 ±11.6 U/mL、胆石症患者群で13.6 ±23.0 U/mLであり、両群間には有意差は認められなかった。また10 U/mL以上の抗体価を感染陽性とした場合の感染率は、胆嚢がん患者群で41%、胆石症患者群で42%であり、両群間には有意差は認められなかった。これらの結果から、我々は、インド人においては、ヘリコバクターピロリ感染は胆嚢がんの重要なリスク要因であるという証拠を得ることができなかった。当初30年度内の採取を予定していた胆嚢がん患者と胆石症患者からの血清(血漿)採取は29年度中に終了し、既に日本に持ち込み、フリーザー中に保管している。試料の一部を使い、ヘリコバクターピロリ抗体価測定を行い、胆嚢がんとの関係を論文としてまとめた。投稿した論文は、現在、査読中である。一方、胆嚢がん患者からの胆汁採取は若干遅れている。これは、進行期で胆嚢がんと診断された患者の胆嚢中から胆汁を採取することが困難であることが原因となっている。しかし、30年12月にはその採取も終了し、胆石症患者の胆汁試料と合わせて受け取ることになっている。30年度中には、入手した血清(血漿)試料を用いて、腸チフス、パラチフス感染履歴の確認をELISA法とウィダール反応を用いて実施する予定である。平成30年度の計画は、インドで採取した胆汁試料を日本に持ち込み、DNA抽出後、メタゲノム解析を行うことであった。胆嚢がん患者と胆石症患者からの胆汁試料の採取は、特に胆嚢がん患者が進行期で診断される例が多いことから予定していた100例を年度内に採取することが不可能であった。このため、引き続き胆汁試料の採取を継続している。平成30年度には、胆嚢がん患者と胆石症患者から採取した血漿を用いて、腸チフス菌のVi抗原とO抗原、パラチフスA菌とB菌のO抗原に対する抗体価を改良ウィダール反応により測定した。さらに、血清を用いて、腸チフス菌のIgG LPS抗原に対する抗体価をELISA法により測定し各々の抗体価の陽性率を両群間で比較した。胆嚢がん患者のVi抗体価の陽性率44.0%(44/100)は胆石症患者の14.7%(14/95)に比べ有意に高く(P<0.001)、パラチフスA菌のO抗体価も有意に高かった(胆嚢がん患者17.0%:胆石症患者1.1%、P<0.001)。しかし、腸チフス菌O抗体価、パラチフスB菌のO抗体価、LPS抗体価には両群間で有意差は認められなかった。Vi抗体価の陽性率が最も高かったのは、胆嚢がん患者(55.6%)、胆石症患者(41.6%)何れも60歳代であった。また、胆嚢がん患者のVi抗体価の陽性率は、女性で41.7%、男性で50.0%とほぼ近似した値を示した。我々の結果は、改良ウィダール反応による胆嚢がん患者のVi抗体価とパラチフスA菌のO抗体価は胆石症患者に比べ有意に高く、本法はインドの腸チフス菌感染と胆嚢がんリスクとの関係を明らかにするために有用であることが示された。当初の計画では平成30年度内に胆嚢がん患者と胆石症患者各々100例から胆汁試料の採取を終え、メタゲノム解析を実施し、各々の患者の胆汁中に常在している細菌叢を明らかにする予定であった。しかし、試料採取が遅れており、メタゲノム解析までに至らなかった。平成30年度末時点で採取できた胆汁試料数は、胆嚢がん患者から約30例、胆石症患者から約80例であった。このように、目標とした胆汁試料数に達していないことから、引き続き2019年末まで試料の採取をお願いしている。このため、当初の計画よりやや遅れている状況である。 | KAKENHI-PROJECT-17K09103 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K09103 |
原発性胆汁性肝硬変における胆管破壊機序に関する研究 | 1.継代ヒト培養細胞株PtK_2から得られたcytokeratinのsubclass CK1 (52KD)に対するモノクローン抗体を作製し、この抗体を用いた酵素抗体間接法によってCK1の発現を原発性胆汁性肝硬変(PBC)および対照として胆石症患者の腹腔鏡下楔状生検肝組織において検討した。CK1は対照では肝内胆管系に発現はみられなかったが、AMA陽性、陰性PBCにおいて、特にchronic nonsuppuretive destructive cholangitis (CNSDC)を示す隔壁ないしは小葉間胆管の上皮細胞内に異所性に発現し、CK1が胆管上皮細胞を場として起こる自己免疫反応の"epitope"になっている可能性が示された。2.細胞間接着分子であるICAM-1とそのリガンドであるLFA-1の表出をPBCおよび対照生検肝組織において同様に観察した。ICAM-1は対照では類洞内皮細胞のみに表出し、AMA陽性、陰性PBCではCNSDCを示す小葉間ないしは隔壁胆管の上皮細胞形質膜上に異所性に表出し、特に浸潤リンパ球が多数集族している基底側の胆管上皮細胞形質膜上に強いICAM-1の表出が認められた。LFA-1はCNSDCを示す傷害胆管周囲を取り巻く浸潤リンパ球上に強く表出し、一部のLFA-1陽性リンパ球が胆管基底部で胆管上皮細胞に接着している像が観察された。免疫組織化学的に識別されたCD4、CD8浸潤リンパ球の一部がいずれも傷害胆管上皮細胞に直接接着していた。さらに、CNSDCを示す胆管上皮細胞上にはHLA-A, B, Cの発現増強とHLA-DRの顕著な異所性発現を認めた。以上の所見から、HLA抗原の表出と増強により活性化されたCD4リンパ球(class II拘束性)とCD8リンパ球(class I拘束性)の両者が標的胆管上皮細胞に対して傷害性に作用し、終局的CD8陽性の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)がリンパ球表面に発現したLFA-1と胆管上皮細胞形質膜上に発現したICAM-1の接合を介して胆管上皮細胞の破壊を惹起すると想定された。1.継代ヒト培養細胞株PtK_2から得られたcytokeratinのsubclass CK1 (52KD)に対するモノクローン抗体を作製し、この抗体を用いた酵素抗体間接法によってCK1の発現を原発性胆汁性肝硬変(PBC)および対照として胆石症患者の腹腔鏡下楔状生検肝組織において検討した。CK1は対照では肝内胆管系に発現はみられなかったが、AMA陽性、陰性PBCにおいて、特にchronic nonsuppuretive destructive cholangitis (CNSDC)を示す隔壁ないしは小葉間胆管の上皮細胞内に異所性に発現し、CK1が胆管上皮細胞を場として起こる自己免疫反応の"epitope"になっている可能性が示された。2.細胞間接着分子であるICAM-1とそのリガンドであるLFA-1の表出をPBCおよび対照生検肝組織において同様に観察した。ICAM-1は対照では類洞内皮細胞のみに表出し、AMA陽性、陰性PBCではCNSDCを示す小葉間ないしは隔壁胆管の上皮細胞形質膜上に異所性に表出し、特に浸潤リンパ球が多数集族している基底側の胆管上皮細胞形質膜上に強いICAM-1の表出が認められた。LFA-1はCNSDCを示す傷害胆管周囲を取り巻く浸潤リンパ球上に強く表出し、一部のLFA-1陽性リンパ球が胆管基底部で胆管上皮細胞に接着している像が観察された。免疫組織化学的に識別されたCD4、CD8浸潤リンパ球の一部がいずれも傷害胆管上皮細胞に直接接着していた。さらに、CNSDCを示す胆管上皮細胞上にはHLA-A, B, Cの発現増強とHLA-DRの顕著な異所性発現を認めた。以上の所見から、HLA抗原の表出と増強により活性化されたCD4リンパ球(class II拘束性)とCD8リンパ球(class I拘束性)の両者が標的胆管上皮細胞に対して傷害性に作用し、終局的CD8陽性の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)がリンパ球表面に発現したLFA-1と胆管上皮細胞形質膜上に発現したICAM-1の接合を介して胆管上皮細胞の破壊を惹起すると想定された。平成8年度の研究はPBCにおける胆管破壊機構の免疫細胞化学的解明を目的にcytokeratinの亜分画であるCK1(52kD)に対する抗CK1モノクローン抗体を作製し、PBC患者生検肝組織内におけるCK1の局在を免疫組織化学的に究明した。更に免疫電顕、in situ hybridization組織化学法によりm-RNAレベルでの観察を試みている。1)継代培養細胞株PtK_2からcytokeratinを抽出し、Balb/cマウスに免疫して得た脾細胞をmyeloma cell line P3U1と融合させてhybridomaを作製した。抗cytokeratin抗体を産生するhybridomaを選択してマウス腹腔に注入し、腹水から抗cytokeratin抗体を得た。得られた抗cytokeratin抗体は2種類あり、各々PtK_2細胞から抽出されるcytokeratinの2つの亜分画であるCK1とCK2(45kD)に一致することがimmunoblot法で確認された。 | KAKENHI-PROJECT-08670621 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08670621 |
原発性胆汁性肝硬変における胆管破壊機序に関する研究 | この抗CK1抗体を蛍光抗体間接法でPtK_2細胞に反応させると、細胞質内の中間径フィラメントに一致して特異蛍光が認められ、PtK_2細胞由来のcytokeratinに対する特異抗体であることが確かめられた。2)PBC患者および対照として胆石症患者生検肝組織より凍結切片を作製し上述の抗CK1抗体を用いた免疫蛍光および酵素抗体間接法で観察すると、CK1の局在を示す特異蛍光なしperoxidase陽性反応は門脈域の胆管上皮細胞内に限局して認められ、肝動脈枝、門脈枝、類洞、肝静脈枝の血管内皮細胞内や肝細胞内には証明されなかた。また、DAKO(USA)の作製したcytokeratin M630(66.57kD)の局在との比較、さらに免疫電顕法による超微形態学的な局在の観察を進めている。3)CK1アミノ酸配列を決定してoligonucleotide probeを作製し、PBCおよび胆石症患者からの肝生検組織凍結切片でhybridizationを行い、autoradiographyによって観察することでmRNAレベルでのCK1の局在を証明するため研究を進めている。平成9年度の研究はPBCにおける胆管破壊機構の免疫反応機構の解明を目的に細胞間接着分子としてICAM-1,LFA-1に着目し、PBCおよび対照群としての胆石症患者生検肝およびラット肝組織における表出の相違を観察した。ICAM-1,LFA-1の局在の観察には酵素抗体間接法を用い、胆管周囲のみならず肝微小循環系、特に活性化リンパ球の門脈域間質への流出部位と考えられる門脈細枝周辺に注目して検討した。さらに、PBC患者末梢血中のsoluble(s)-ICAM-1値をELISA法によって測定し、その起源と臨床的意義を究明した。1.免疫組織化学的検討PBC患者(Scheuer stage I,II)6例および対照群として無黄疸胆石症例4例について、開腹手術下あるいは腹腔鏡下楔状肝生検をおこなって肝組織を得た。細切後PLP固定液中で固定し、OCT compound(Miles)にて包埋後、液体窒素で凍結し、46μmの連続切片をcryostatにて作製した。酵素抗体間接法に従い、一次抗体としてマウス抗ヒトICAM-1-1,LFA-1(Dako Japan)モノクローナル抗体を反応させ、二次抗体としてHRP標識ヤギ抗マウスIgGF(ab')2抗体(Cappel)を反応させ、DAB溶液にて発色させ、光学顕微鏡下で観察した。胆石症の肝組織においてはICAM-1の表出は胆管上皮細胞上には認められなかった。一方PBCの肝組織においてはCNSDCを示す中等大胆管の上皮細胞形質膜上に異所性に陽性反応を示した。LFA-1については胆石症の肝組織においては門脈域内にリンパ球の浸潤は認められず、浸潤が軽度にある場合もLFA-1の反応は陰性であった。一方、PBCの門脈域に浸潤するリンパ球の大部分はLFA-1陽性を示し、中等大胆管では全周にわたってLFA-1陽性リンパ球を認めた。さらに一部のLFA-1陽性リンパ球が胆管上皮細胞の基底膜側に接着し、胆管上皮細胞間へ侵入、接着している像が捉えられた。平成10年度はPBCの胆管破壊機構における抗原の解明を図るべく中間径フィラメントの構成成分であるCytokeratin亜分画(MW 52kD)の免疫組織化学的表出を主眼に検討した。近年、PBCの類縁疾患として、AMA(抗ミトコンドリア抗体)陰性ANA(抗核抗体)陽性血液生化学的並びに組織学的にPBCと同様の所見を示すautoimmune cholangitis(AIC)が注目されるようになってきた。 | KAKENHI-PROJECT-08670621 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08670621 |
磁場と電場を用いた配向積層構造制御による新規セラミックスの創製 | 本研究課題着手までに、アルミナについては磁場中鋳込み成形(スリップキャスト)とその後の焼結により配向体を作製し、焼結中と焼鈍中における結晶配向の発達と微細組織の発達について検討を行なってきており、酸化亜鉛、酸化チタン、アパタイトなどの他の非立方晶系の酸化物についても磁場中成形による配向制御が可能であることを見出していた。そこで、炭化ケイ素や窒化アルミニウム等の非立方晶系の非酸化物セラミックスについても、強磁場中スリップキャストと焼結により配向体の作製を試み、結晶配向と組織の発達について検討した。アルミナにおいては、配向と機械的性質の基礎的な知見を得るために、磁場中スリップキャストにより作製した配向体について、強度、高温引張り特性を評価した。配向方向により強度が異なることを見出し、c軸と並行に亀裂進展する場合に強度が高くなることを示した。磁場中での電気泳動堆積を行なう場合には、基板と磁場のなす角(ф_<B-E>)を一定時間毎に変えることで、アルミナc軸と基板との角度を任意に制御した配向積層構造体の作製が可能なことを証明した。さらに、この様な配向積層アルミナの強度が積層方向に依存することを見出した。堆積方向に対して亀裂方向が垂直な場合に曲げ強度が高く、靭性も同様な方向で高い値を示した。堆積方向に平行に亀裂が進展するように試験した場合には、亀裂はジグザグに、ちょうど各層毎に結晶粒子が並んでいる方向(結晶のc面に沿う方向)へ亀裂が折れ曲がっていた。このときの破面は粒界破壊になっていることを確認した。また、堆積方向と垂直に亀裂が進展するように試験した場合には、亀裂は大きく曲がり、その破面は粒内破壊となっていた。この様に試験方向により亀裂進展方向と破壊形態が変わることで、強度と靭性に方向依存性が現れると考えられる。本研究課題着手までに、アルミナについては磁場中鋳込み成形(スリップキャスト)とその後の焼結により配向体を作製し、焼結中と焼鈍中における結晶配向の発達と微細組織の発達について検討を行なってきており、酸化亜鉛、酸化チタン、アパタイトなどの他の非立方晶系の酸化物についても磁場中成形による配向制御が可能であることを見出していた。そこで、炭化ケイ素や窒化アルミニウム等の非立方晶系の非酸化物セラミックスについても、強磁場中スリップキャストと焼結により配向体の作製を試み、結晶配向と組織の発達について検討した。アルミナにおいては、配向と機械的性質の基礎的な知見を得るために、磁場中スリップキャストにより作製した配向体について、強度、高温引張り特性を評価した。配向方向により強度が異なることを見出し、c軸と並行に亀裂進展する場合に強度が高くなることを示した。磁場中での電気泳動堆積を行なう場合には、基板と磁場のなす角(ф_<B-E>)を一定時間毎に変えることで、アルミナc軸と基板との角度を任意に制御した配向積層構造体の作製が可能なことを証明した。さらに、この様な配向積層アルミナの強度が積層方向に依存することを見出した。堆積方向に対して亀裂方向が垂直な場合に曲げ強度が高く、靭性も同様な方向で高い値を示した。堆積方向に平行に亀裂が進展するように試験した場合には、亀裂はジグザグに、ちょうど各層毎に結晶粒子が並んでいる方向(結晶のc面に沿う方向)へ亀裂が折れ曲がっていた。このときの破面は粒界破壊になっていることを確認した。また、堆積方向と垂直に亀裂が進展するように試験した場合には、亀裂は大きく曲がり、その破面は粒内破壊となっていた。この様に試験方向により亀裂進展方向と破壊形態が変わることで、強度と靭性に方向依存性が現れると考えられる。アルミナについては磁場中鋳込み成形とその後の焼結により配向体を作製し、焼結中と焼鈍中における結晶配向の発達と微細組織の発達について検討を行なってきている。強磁場を用いることによる配向制御の汎用性の高さを示すために、16年度においては、他の反磁性セラミックスについても強磁場を用いての配向制御を試み、特に窒化アルミニウム(AlN)に関しての詳しい解析を行った。AlNは水との反応があるために非水系溶媒でのサスペンション作製が必要であるため、アルコール溶媒中での分散制御を検討した。亀裂進展方向が磁場印加方向と平行な場合に、曲げ強度と靭性が共に高いことが分かり、機械的特性が配向方向に依存することを見出した。さらに、熱伝導度も磁場印加方向と平行方向で高いことが分かり、配向方向に依存することを確かめた。これらの結果は、強度、靭性、熱伝導度を同時に向上させることが可能であることを示唆するものである。また、磁場と電場を重畳作用させることで配向と積層とを組み合わせることにより高次な構造を実現するためのプロセスの開発においては、強磁場中での電気泳動(EPD)法を用いた多層配向制御積層アルミナの作製を試みた。磁場と電場のなす角度(φ_<B-E>)を調節することにより、基板に対する結晶配向方位が制御できることを確認し、EPD中に一定時間毎にφ_<B-E>を変化させることで、結晶配向の方位が異なる層を積層することを試みた。 | KAKENHI-PROJECT-16560597 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16560597 |
磁場と電場を用いた配向積層構造制御による新規セラミックスの創製 | 磁場の中と外でBPDを行なうことで配向層と無配向層を交互に積層する、基板を磁場印加方向と水平・垂直に変化させることで基板に対して結晶方位が90゚と0゚に配向した層を交互に積層する、φ_<B-E>を±45゚にすることで基板に対して結晶方位が±45゚に配向した層を交互に積層する、さらに±45゚の層の間にφ_<B-E>=0゚の層を挟む等、さまざまな積層構造を作りこむことが可能であることを実証した。昨年度の成果により、磁場と電場を重畳作用したコロイドプロセスにおいて、磁場と電場(基板)のなす角度(φ_<B-E>)を任意に設定することにより、基板に対してある特定の配向方向を選ぶことが可能であり、さらに、一定時間毎にφ_<B-E>を変化させることで結晶配向の方位が異なる層を積層し、様々な微構造をデザインすることが出来ることを見出している。例えば、一定時間毎に基板を磁場印加方向と水平・垂直に変化させることで基板に対して結晶方位が90°と0°に配向した層を交互に積層する、一定時間毎にφ_<B-E>を±45°にすることで基板に対して結晶方位が±45°に配向した層を交互に積層する等、さまざまな積層構造を作りこむことが可能となる。本年度においては、このようにして作製した積層体で強度や靭性に方向依存性があることを確かめた。堆積した各層の結晶方位を±45°に制御したアルミナ積層体を用いて、配向制御積層体の構造と曲げ強度および靭性の関係を検討した。堆積方向に対して亀裂方向が垂直な場合に曲げ強度が高く、靭性も同様に堆積方向に対して亀裂方向が垂直な場合に高い値を示した。このときの微細組織と亀裂の進展過程も観察を行なった。φ_<B-E>=±45°とした場合には、板状粒子が45°右斜め上に向いている層と45°右斜め下に向いている層とが交互に積層していた。堆積方向に平行に亀裂が進展するように試験した場合には、亀裂はジグザグに、ちょうど各層毎に結晶粒子が並んでいる方向(結晶のC面に沿う方向)へ亀裂が折れ曲がっていた。このときの破面は粒界破壊になっていることを確認した。また、堆積方向と垂直に亀裂が進展するように試験した場合には、亀裂は大きく曲がり、その破面は粒内破壊となっていた。この様に試験方向により亀裂進展方向と破壊形態が変わることで、強度と靭性に方向依存性が現れると考えられる。昨年度までの成果により、アルミナにおいて、磁場と電場を重畳作用したコロイドプロセスにおいて、磁場と電場(基板)のなす角度(φ_<B-E>を任意に設定することにより、基板に対してある特定の配向方向を選ぶことが可能であり、さらに、一定時間毎にφ_<B-E>を変化させることで結晶配向の方位が異なる層を積層し、様々な微構造をデザインすることが出来ることを見出しており、このようにして作製した積層体で強度や靭性に方向依存性があることを確かめた。本年度においては、配向アルミナの高温強度特性評価および残留応力による亀裂進展の制御を検討した。また、アルミナ以外の系として炭化ケイ素の配向制御と常温における強度特性評価を行った。配向アルミナの強度は、ランダム材では常温で400MPa程度で試験温度で1200°Cから強度の低下が始まったが、配向材では常温で500MPaとランダム材よりも強度が高く、しかも試験温度が1200°Cまでその強度を維持した。また、方位制御したアルミナを積層させることで、結晶方位に依存した熱膨張係数の違いを利用して残留応力を発生させることが可能でり、それが亀裂進展に影響することを見出した。炭化ケイ素に関しては、磁場配向によりc軸に高配向した炭化ケイ素が得られることを既に見出しているが、緻密化が不十分であった。そこで、炭化ケイ素焼結で一般に用いられるアルミナ、イットリアを焼結助剤として緻密化を試みた。 | KAKENHI-PROJECT-16560597 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16560597 |
社会資本整備と国土利用 | わが国のように国土が希少な国においては、社会資本整備等の国土利用の効率性が一層強く求められる。ここでいう社会資本整備の中心に位置づけられてきたのが、病院や社会福祉施設、博物館、美術館、ホール、道路網、橋、上下水道、空港、港湾といった公共投資にようて建設される公共施設である。これらは生活と産業の基盤であり、アダム・スミスが行政の基本的な役割として位置づけているものであるが、現状においては、行政と政治の信頼が最も揺らいでいる分野でもある。本研究期間内において、過去の社会資本整備の理念を整理する(第2章)とともに、現在の社会資本整備の効率性について、地域間競争モデルを構築する理論分析(第6章)の視点から、及び、医療政策(第4章)と整備に必要な財源確保のための税徴収の側面(第5章)からデータ包絡分析によって分析した。特に、本研究では、社会基盤としての教育基盤の整備がわが国の大きな課題として力点が置かれている。地域における人的資本の蓄積は、地域の暮らしや地域産業の高付加価値化に貢献し、地域の可能性を高める。そのため、学校教育による人材の育成や人材が能力を発揮できる地域環境の整備、地域に一級の人材を引きつける基盤の構築に関心が持たれている。それは地域社会だけにとってだけでなく、国際競争下の日本にとって重要な課題である。本研究の中では、特に高等教育の在り方として、国立大学法人の形態に関する考察(第1章)、及び、教育政策に関する理論分析(第7章)が展開されている。それらの分析結果をもとに、これからの社会資本整備と地域づくりを中心とした国土利用のあり方の方向性を示している(第3章)。現状においては、社会資本整備と国土計画に関しては、「国民所得の最大化と地域格差の是正」に続く次の時代のための理念が模索されている段階であり、本研究では、広域的整備、厳正な評価、住民への説明、競争と事業の効率性等をキーワードに、社会資本整備のあり方に一つの方向性を見いだしている。わが国のように国土が希少な国においては、社会資本整備等の国土利用の効率性が一層強く求められる。ここでいう社会資本整備の中心に位置づけられてきたのが、病院や社会福祉施設、博物館、美術館、ホール、道路網、橋、上下水道、空港、港湾といった公共投資にようて建設される公共施設である。これらは生活と産業の基盤であり、アダム・スミスが行政の基本的な役割として位置づけているものであるが、現状においては、行政と政治の信頼が最も揺らいでいる分野でもある。本研究期間内において、過去の社会資本整備の理念を整理する(第2章)とともに、現在の社会資本整備の効率性について、地域間競争モデルを構築する理論分析(第6章)の視点から、及び、医療政策(第4章)と整備に必要な財源確保のための税徴収の側面(第5章)からデータ包絡分析によって分析した。特に、本研究では、社会基盤としての教育基盤の整備がわが国の大きな課題として力点が置かれている。地域における人的資本の蓄積は、地域の暮らしや地域産業の高付加価値化に貢献し、地域の可能性を高める。そのため、学校教育による人材の育成や人材が能力を発揮できる地域環境の整備、地域に一級の人材を引きつける基盤の構築に関心が持たれている。それは地域社会だけにとってだけでなく、国際競争下の日本にとって重要な課題である。本研究の中では、特に高等教育の在り方として、国立大学法人の形態に関する考察(第1章)、及び、教育政策に関する理論分析(第7章)が展開されている。それらの分析結果をもとに、これからの社会資本整備と地域づくりを中心とした国土利用のあり方の方向性を示している(第3章)。現状においては、社会資本整備と国土計画に関しては、「国民所得の最大化と地域格差の是正」に続く次の時代のための理念が模索されている段階であり、本研究では、広域的整備、厳正な評価、住民への説明、競争と事業の効率性等をキーワードに、社会資本整備のあり方に一つの方向性を見いだしている。本年度の研究目的に沿う形で、人口転出入、財の移転などを用いた指標によって、都市間の結びつきを測る指標を構築し、地域間の連関関係を明らかにするための基礎条件を抽出することを試みた。伝統的には、日本の都道府県単位で考えた場合、いわゆる地方交付税制度に代表される地域間の所得移転によって一般的に地域間の資源移転が測られる場合が多い。このとき、都道府県単位でみた場合には、表面的には東京都のみが地方交付税の不交付団体となっており、それ以外の46道府県は交付団体となってしまい、地域間の相互移転とは言うものの、実質的には東京都からそれ以外のすべての道府県への移転という形態をとっていることを意味してしまう。しかしながら、本年度の研究では、単なる地方交付税の受け取り量のみならず、交付税の財源拠出量を考慮して、ネットの交付税移転という概念を提示し、それを指標化することによって、地域間所得移転の枠組の中でのネットでの受け取りがプラスの自治体(winner)とネットでの受け取りがマイナスの自治体(looser)をグルーピングし、それらが1980年代以降どのような構成変化を遂げているかを明らかにした。また、効率性の観点からは、1980年代に比べて90年代に入ってからは過大な資源移転が行われていることが明らかにされた。この研究は、「国土の均衡ある発展」という国土計画の理念の実証的な検証を提供することに成功している。理論面での研究成果としては、従来の社会資本整備の理論を公共サービスのスピルオーバー効果などを通じた地域間の関係性をモデルに統合する基本モデルを構築した。 | KAKENHI-PROJECT-16530209 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16530209 |
社会資本整備と国土利用 | このモデルは静学モデルであるが、これを動学化することで最適な社会資本整備戦略についての政策的な分析が可能となるであろう。本年度の研究目的に沿う形で、具体的な事例を取り上げた実証研究を行った。主として取り上げた対象は、社会基盤としての医療サービスの供給体制と、社会的資本整備の財源調達のための徴税に関わる活動体制である。分析は、データ包絡分析(DEA)法を用いて現状での各供給体制の効率性を測定し、効率性に影響を与える要因を抽出することによって、望ましい社会資本整備と国土形成のあり方を求めることを通じて進められた。国土利用のあり方に着目する目的から、現状下の効率性に影響を与える要因として、地域人口、面積に焦点が当てられている。社会資本基盤としての医療供給体制としては、わが国における2次医療圏の効率性が測定された。従来より、2次医療圏の設定が、基本的に地域ごとの病床数を調整するために行われており、人口や交通事情など医療サービスの水準に影響すると思われる要素を十分に勘案していないために、非効率な体制となっている可能性が指摘されている。本研究によって、上記の危惧が定量的に捕捉され、人口と面積が効率性値に有意に影響を与えることが明らかにされた。社会資本整備の財源調達の主たるものに税があるが、本研究では、現行の都道府県という区割りのもとでの、税の滞納と不納欠損の情報をもとに地方税の徴収力を測定し、自治体間での税徴収力の格差が発生する要因を抽出している。そこでは、税徴収に係る費用投入を考慮した上での税徴収活動の効率性がデータ包絡分析(DEA)によって測定されると同時に、起債制限比率を指標とした財政要因と地方税の徴収力との関係について明らかにされている。全国的に見て、現年度課税分についての滞納率が低下しているという傾向は見られず、滞納された税については、年度内に2030%程度が整理される程度であること、全国的にみて課税調定額の4%程度(約5000億円)が翌年度に繰越されており、繰越された税のうち520%は、不納欠損として納税義務の消滅を受けていることなどが定量的に明らかにされている。 | KAKENHI-PROJECT-16530209 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16530209 |
Oct-3/4と協調して機能する転写因子の同定とES細胞の分化運命決定機構の解析 | ES細胞の未分化状態維持に必須の転写因子を同定することを目的とし、Rex-1遺伝子の転写調節領域に結合する因子Roxのクローニングを試みた。Rex-1遺伝子は、ES細胞、EC細胞などの未分化細胞特異的に発現し、転写因子Oct-3/4による発現制御を受けることが分かっている。一方でOct-3/4の結合配列のすぐ上流側の配列も転写調節に重要であることが示され、実際その配列上に結合する因子が存在していることも示されたが、その因子の実態は不明であった。Oct-3/4が他の因子と協調して転写活性化因子として機能することから、我々は、上記の配列に結合する因子こそが、Oct-3/4と協調して機能する因子ではないかと考え、その同定を行った。等電点電気泳動とSDS-PAGEとを組み合わせて蛋白の分離を行い、ゲルからペプチドを回収して、活性の再生をこころみた。EMSAによってDNAへの結合能を調べ、目的の配列に特異的に結合するペプチドを同定した。さらにLC-MASを用いてペプチドの内部配列情報を得、このペプチドをコードする遺伝子を同定した。in vitro translationシステムを用いて同定した遺伝子の遺伝子産物を作成したところ、この因子が確かにRex-1遺伝子の転写調節領域内の配列に特異的に結合し、F9細胞だけではなく、ES細胞でも発現していることが確認された。ES細胞の未分化状態維持におけるこの因子の役割をさらに解析するため、ES細胞におけるnull mutantの作製を開始し、Oct-3/4との相互作用、分化状態による修飾の違いなどについても解析を進めている。ES細胞の未分化状態維持に必須の転写因子を同定することを目的とし、Rex-1遺伝子の転写調節領域に結合する因子Roxのクローニングを試みた。Rex-1遺伝子は、ES細胞、EC細胞などの未分化細胞特異的に発現し、転写因子Oct-3/4による発現制御を受けることが分かっている。一方でOct-3/4の結合配列のすぐ上流側の配列も転写調節に重要であることが示され、実際その配列上に結合する因子が存在していることも示されたが、その因子の実態は不明であった。Oct-3/4が他の因子と協調して転写活性化因子として機能することから、我々は、上記の配列に結合する因子こそが、Oct-3/4と協調して機能する因子ではないかと考え、その同定を行った。等電点電気泳動とSDS-PAGEとを組み合わせて蛋白の分離を行い、ゲルからペプチドを回収して、活性の再生をこころみた。EMSAによってDNAへの結合能を調べ、目的の配列に特異的に結合するペプチドを同定した。さらにLC-MASを用いてペプチドの内部配列情報を得、このペプチドをコードする遺伝子を同定した。in vitro translationシステムを用いて同定した遺伝子の遺伝子産物を作成したところ、この因子が確かにRex-1遺伝子の転写調節領域内の配列に特異的に結合し、F9細胞だけではなく、ES細胞でも発現していることが確認された。ES細胞の未分化状態維持におけるこの因子の役割をさらに解析するため、ES細胞におけるnull mutantの作製を開始し、Oct-3/4との相互作用、分化状態による修飾の違いなどについても解析を進めている。 | KAKENHI-PROJECT-14028012 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14028012 |
推論主義による行動データ時代の社会課題の解明 | 本研究ではプラグマティズム言語哲学の観点から「Society5.0」等として構想される行動データ駆動型社会における課題を明らかにする。行動データとは位置情報や購買データ、Web閲覧データなどを指す。これらはアンケート回答のような意識データとは異なり、取得されている自覚が薄い。行動データの充実はナッジ手法として知られるような、意識をともなわない因果的な介入を可能にし、よりスマートな社会を実現する基盤となっている。他方、こうした構想はコミュニケーションを「理由」のやりとりとして構想したプラグマティズム言語哲学とは緊張関係にある。本研究では、社会課題の解明を通じて「因果」と「理由」の関係を問い直す。本研究ではプラグマティズム言語哲学の観点から「Society5.0」等として構想される行動データ駆動型社会における課題を明らかにする。行動データとは位置情報や購買データ、Web閲覧データなどを指す。これらはアンケート回答のような意識データとは異なり、取得されている自覚が薄い。行動データの充実はナッジ手法として知られるような、意識をともなわない因果的な介入を可能にし、よりスマートな社会を実現する基盤となっている。他方、こうした構想はコミュニケーションを「理由」のやりとりとして構想したプラグマティズム言語哲学とは緊張関係にある。本研究では、社会課題の解明を通じて「因果」と「理由」の関係を問い直す。 | KAKENHI-PROJECT-19K23005 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K23005 |
高周期典型元素間π結合架橋[2]フェロセノファン類の創製と開環重合制御 | 本研究課題では、ケイ素やゲルマニウムなどの高周期14族元素や、リンなどの高周期15族元素のπ結合をdーπ電子系に組み込んだ新規なdーπ電子系の創製を目指す。特にフェロセンの上下をGe=Geで架橋した[2]フェロセノファン型化合物の開環重合を目指している。本年度は、フェロセン架橋体の合成を検討したものの、最適な反応条件を見出せなかったため、かさ高いフェロセニル基を活用することで、Fc*2Ge=GeFc2*という、ゲルマニウム間二重結合の両側にそれぞれ二つずつのフェロセニル基を持つdーπ電子系の創製を目指し研究を行った。目的物の生成をねらい、かさ高いフェロセニルリチウム(Fc*Li)に対してジヨードゲルマニウムを作用させたところ、期待したゲルマニウム二重結合ではなく、二重結合が開裂した二価ゲルマニウム化学種であるビス(フェロセニル)ゲルミレンを安定な化合物として合成・単離することに成功した。得られた化合物は、結晶中でも溶液中でも二価二配位状態を保っており、電気化学測定により、安定な多段階酸化還元系として機能することを明らかとした。これは、dーp電子系として、速やかな電子移動を達成するユニークな分子であることが分かった。さらに、このゲルミレンは、二電子酸化を受けると、新規な三重項状態をもつゲルミレンが生じることが理論計算より明らかとなり、フェロセニル基を二つ持つ二価二配位14族元素化学種が、これまでに無い斬新な分子設計であることを明らかとした。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。本研究課題では、ケイ素やゲルマニウムなどの高周期14族元素や、リンなどの高周期15族元素のπ結合をdーπ電子系に組み込んだ新規なdーπ電子系の創製を目指す。本年度は、まずπ電子系としてゲルマニウム間三重結合、ジゲルミンに注目し、そのπ結合としての性質および開環重合の条件を見出す目的で、基本的性質を明らかとすることとした。まず、ゲルマニウム間三重結合を安定な化合物として合成・単離した上で検討を行うこととし、そのための立体保護基としてBbt基(2,6-bis(bis(trimethylsilyl)methyl)-4-tris(trimethylsilyl)methyl-phenyl)およびTbb基(4-t-butyl-2,6-bis(bistrimethylsilylmethyl)phenyl)を用いることとした。それぞれの置換基を有するジゲルミンを既知法に倣って合成し、それに対しまずエチレンおよびトランを反応させた。その結果、それぞれ1,2-ジゲルマシクロブテンおよび1,2-ジゲルマシクロブタジエン誘導体が得られた。これらはGe=Ge部位を四員環内に含む化合物であり、目的とする[2]フェロセノファン誘導体のモデルとも言える化合物群である。得られたこれらの化合物に対し、エチレンやアセチレンを反応させたところ、室温でもゆっくりとそのGe=Ge結合が開裂していることが示唆された。またその他スペクトル測定やX線結晶構造解析などの結果から、Ge=Ge結合は比較的弱い結合で、光や熱で容易に開裂することが示唆された。本研究課題の対象化合物とする高周期典型元素間π結合は例が少なく、実際に[2]フェロセノファン誘導体を構築したとしても、その開環重合条件の探索や生成物の同定に時間がかかるものと予想された。そこで本年度は、まずそのモデルとしてゲルマニウム間の二重結合および三重結合化合物を合成し、その反応性や開裂条件を明確とした。この基礎的知見により、翌年度の実際の目的物合成も迅速に達成できるものと期待でき、また化合物が合成出来た際の開環重合制御に関する予備知見も十分得られたものと考えている。本研究課題では、ケイ素やゲルマニウムなどの高周期14族元素や、リンなどの高周期15族元素のπ結合をdーπ電子系に組み込んだ新規なdーπ電子系の創製を目指す。特にフェロセンの上下をGe=Geで架橋した[2]フェロセノファン型化合物の開環重合を目指している。本年度は、フェロセン架橋体の合成を検討したものの、最適な反応条件を見出せなかったため、かさ高いフェロセニル基を活用することで、Fc*2Ge=GeFc2*という、ゲルマニウム間二重結合の両側にそれぞれ二つずつのフェロセニル基を持つdーπ電子系の創製を目指し研究を行った。目的物の生成をねらい、かさ高いフェロセニルリチウム(Fc*Li)に対してジヨードゲルマニウムを作用させたところ、期待したゲルマニウム二重結合ではなく、二重結合が開裂した二価ゲルマニウム化学種であるビス(フェロセニル)ゲルミレンを安定な化合物として合成・単離することに成功した。得られた化合物は、結晶中でも溶液中でも二価二配位状態を保っており、電気化学測定により、安定な多段階酸化還元系として機能することを明らかとした。これは、dーp電子系として、速やかな電子移動を達成するユニークな分子であることが分かった。さらに、このゲルミレンは、二電子酸化を受けると、新規な三重項状態をもつゲルミレンが生じることが理論計算より明らかとなり、フェロセニル基を二つ持つ二価二配位14族元素化学種が、これまでに無い斬新な分子設計であることを明らかとした。本年度の成果により、ゲルマニウム間二重結合および三重結合化合物の基礎的な反応性・物性を明らかとすることができた。 | KAKENHI-PUBLICLY-15H00738 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-15H00738 |
高周期典型元素間π結合架橋[2]フェロセノファン類の創製と開環重合制御 | これらの知見を活かし、目的とする高周期典型元素π結合により架橋された[2]フェロセノファン誘導体を合成する。まずは性質を十分熟知したGe=Ge架橋[2]フェロセノファンの合成を皮切りに、ケイ素やスズ、あるいはリンの系へと展開すれば、多少の条件検討は必要であっても、比較的速やかに合成を達成することができると考えている。また開環重合条件も、基本的性質を元に考察することにより、適切な条件を速やかに見出すことが出来ると考えている。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-15H00738 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-15H00738 |
二次元偏光撮像装置HOPSによる木星極ヘイズの研究 | 平成12年10月下旬に二次元撮像装置HOPSの完成に漕ぎつけ,同年11月3日に京都大学理学研究科付属飛騨天文台で木星および金星のファーストライト観測に成功した。開発経過および観測結果については,米国の木星会議,第34回月・惑星シンポジウム,2001年日本天文学会秋季年会,Proc. ISAS Lun. Planet. Symp.,34,146-149,2001)で公表した。パイオニア10号,11号の観測に基づき決定された青色と赤色における位相関数をより広い波長範囲で適用できるようにするためミー散乱近似を行った。その結果,有効半径0.96μm,有効分散0,32のサイズ分布を持ち,複素屈折率が青色で1.591-0.0075i,赤色1.535-0.0012iの球体粒子の位相関数が可視域から近赤外領域までの惑星周縁減光曲線を説明できることがわかった.位相角が小さい場合,惑星の赤道帯あるいはその近傍における理論偏光度を求めることが極めて困難であった。本研究では多重散乱計算における積分点の取り方の工夫,ストークス・パラメーターの計算において多重散乱成分と一次散乱成分を別々に扱う,内挿法の改善を組み合わせることで,偏光度分布曲線を十分な精度で計算できるまでになった(J. Appl. Math. Comp.,116,115-132,2000)。パイオニア金星探査機の観測で金星大気中に多量に検出されたヘイズ粒子がいつ頃から存在していたかを調べるため、1974年2月にマリナー10号よって得られた金星赤道帯及び中央子午線に沿う輝度分布データをモデル解析した。その結果、著しい量のヘイズ粒子が既に高緯度地帯には存在していた可能性を見出した(Proc. ISAS Lun. Planet. Symp.,34,49-52,2001; Earth, Moon, and Planets,2002(inpress))。平成12年10月下旬に二次元撮像装置HOPSの完成に漕ぎつけ,同年11月3日に京都大学理学研究科付属飛騨天文台で木星および金星のファーストライト観測に成功した。開発経過および観測結果については,米国の木星会議,第34回月・惑星シンポジウム,2001年日本天文学会秋季年会,Proc. ISAS Lun. Planet. Symp.,34,146-149,2001)で公表した。パイオニア10号,11号の観測に基づき決定された青色と赤色における位相関数をより広い波長範囲で適用できるようにするためミー散乱近似を行った。その結果,有効半径0.96μm,有効分散0,32のサイズ分布を持ち,複素屈折率が青色で1.591-0.0075i,赤色1.535-0.0012iの球体粒子の位相関数が可視域から近赤外領域までの惑星周縁減光曲線を説明できることがわかった.位相角が小さい場合,惑星の赤道帯あるいはその近傍における理論偏光度を求めることが極めて困難であった。本研究では多重散乱計算における積分点の取り方の工夫,ストークス・パラメーターの計算において多重散乱成分と一次散乱成分を別々に扱う,内挿法の改善を組み合わせることで,偏光度分布曲線を十分な精度で計算できるまでになった(J. Appl. Math. Comp.,116,115-132,2000)。パイオニア金星探査機の観測で金星大気中に多量に検出されたヘイズ粒子がいつ頃から存在していたかを調べるため、1974年2月にマリナー10号よって得られた金星赤道帯及び中央子午線に沿う輝度分布データをモデル解析した。その結果、著しい量のヘイズ粒子が既に高緯度地帯には存在していた可能性を見出した(Proc. ISAS Lun. Planet. Symp.,34,49-52,2001; Earth, Moon, and Planets,2002(inpress))。本年度は,先ず二次元撮像装置HOPSの設計図を作成し,光学レンズと半波長板を購入した後,モックアップを製作した。次いで,京都大学理学部付属飛騨天文台の65cm屈折望遠鏡に装着するための諸調整実験を行った。さらに木星大気の光散乱モデルを構築するために,位相行列要素のうち,パイオニア探査機の観測に基づいて得られた雲粒子の位相関数を,ミー散乱で近似する試みを行った。その結果,南熱帯縞では有効半径が0.96μmでその有効分散が0.32,青色光に対する複素屈折率が1.591-i0.0075,赤色光に対するそれが1.535-i0.0012を持った球形粒子なら,可視域から近赤外域に至る13波長で観測された周縁減光曲線を表せることが判明した。しかし同時にまたこのようなミー散乱から予想される偏光度が,木星で観測される直線偏光の特徴を説明できないことも明らかになり,非球形粒子の存在が強く示唆される結果となった。多重散乱計算に基づき惑星の赤道帯あるいはその近傍の理論偏光度曲線を計算しようとすると,小位相角の場合には非常に顕著な振動が現れる。反射行列要素の内挿精度が極端に悪くなるためである。この精度向上のために,幾つかの工夫を加えた。先ず,多重散乱計算における天頂角余弦μに関する積分には,μ=1近傍に分点が多く取れる求積公式を採用した。 | KAKENHI-PROJECT-11640240 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11640240 |
二次元偏光撮像装置HOPSによる木星極ヘイズの研究 | さらに内挿式として3次スプライン関数を用いたが,その際,着目点での入射光あるいは出射光方向の天頂角余弦が0.7071より大きいときには,独立変数として天頂角の正弦を用いるようにしたところ,振動をほぼ抑えることができ,実用に耐える偏光度曲線が得られた。本年度の予算により本学理工学部機械工学科工作工場に依頼し,HOPSの設計図に基づき本体の製作を実行すると共にフィルターおよび自動偏光子を別途購入し,既に購入済みの半波長板を加えて本体に組み込み,平成12年10月下旬に二次元撮像装置の完成に漕ぎつけることができた。同年11月2日から5日まで,この撮像装置を京都大学理学部付属飛騨天文台の65cm屈折望遠鏡に装着し,木星および金星の撮像試験観測を行ったが,望遠鏡との整合性や撮像性能が極めて良好であることが判明した。得られた測光データを偏光度に変換するための最適な処理方法を策定中である。可視域から近赤外域に至る13波長で観測された木星の周縁減光曲線を表すために雲粒子の位相関数をミー散乱理論で近似しようという試みが一応の成功を収め,得られた結果がPib.Astronom.Soc.Japan,Vol.52,363-374,(2000)で公表された。また,小位相角で観た惑星大気の低緯度帯に沿う偏光度分布を理論的に計算しようとする際に生じる数値計算上の困難を,内挿法の工夫等により著しく解消することに成功し,その成果はAppl.Math.and Comp.,Vol.116,115-132,(2000)の公表された。さらに優れた計算方法を見出す努力も続行中である。ハイオニア金星探査機の観測で金星大気中に多量のもや粒子の存在が判明したが,1978年以前は同であったかに関しての情報が欠けている。1975年に得られたマリナー10号の測光データはそうした情報を提供してくれる可能性がある。この観点から金星赤道帯の輝度分布データの理論解析を開始した。暫定的な結果は予想を上回る量のもや粒子がマリナー10号の到達時に既に発生していた可能性を強く示唆している。パイオニア金星探査機の観測で金星大気中に多量の煙霧粒子が検出されたが,1978年以前はどうであったかに関しての情報が欠けている。そのため,1975年に得られたマリナー10号の測光データの多重散乱モデル解析を行った。その中間報告は8月6日にやはり宇宙科学研究所第34回月・惑星シンポジウムにて「マリナー10号フライバイ時における金星大気の煙霧粒子」(川端潔他),10月5日には日本天文学会秋季年会で「マリナー10号の測光観測に基づく金星大気煙霧粒子の検出」(佐藤靖彦他),「偏光度から見たマリナー10号近接飛行時における金星大気煙霧粒子の散乱特性」(川端潔他)という題で口頭発表で行った。また'Presence of Haze Particles in the Atmosphere of Venus at the Time of Mariner 10 Flyby Observation'(by K.Kawabata et al.)(Proc.ISASLun.Planet.Symp.,34,49-52,2001)と題する論文を発表した。 | KAKENHI-PROJECT-11640240 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11640240 |
ヘテロクムレン類のジエン不認識問題の解決-定説の打破- | 「ヘテロクムレン類のジエン不認識問題の解決-定説の打破-」の研究課題のもと研究を2年間行ってきた。初年度においては,ヘテロクムレンとジエン類との反応について,低温から高温にいたるさまざまな温度でのNMRおよびIRの測定による詳細な反応過程のモニターを行った。このモニターによって,今まで認識されてきた[2+2]型の付加過程は,真の反応機構を示していないこと,別に真の反応の中間体(初期生成物)が存在することをつきとめることに成功した。さらに,これらのへテロクムレンとジエンの反応の様子は,環状ジエンと鎖状ジエンとの場合では全く異なったものであることも見い出した。本年度においては,このヘテロクムレンとジエン類との反応の全過程を明かにするため,反応に介在する中間体のすべての単離および構造決定を目指した。その結果,これらすべての中間体の構造を決定することに成功した。このようにして得られた実験結果および反応初期生成物の性質を詳細に検討した結果をもとに,反応機構についての詳細な検討を行なった。そして,ヘテロクムレンとジエンの反応において,今まで認識されてきた[2+2]型の付加過程は,真の反応機構を示していないこと,別に真の反応の中間体(初期生成物)が存在し,ヘテロクムレンはジエン類を認識していることが一般的であることをつきとめることができた。以上述べたように,本研究課題についての一つの解答を得ることができた。「ヘテロクムレン類のジエン不認識問題の解決ー定説の打破ー」の研究課題のもと研究を行い,今年度,以下の結果を得ている。ジフェニルケテンとシクロペンタジエンとの反応について、得られた新しい概念(ケテンはそのC=O結合をとうしてジエンを認識し,[4+2]型の環化付加体を生成する)が,一般的なことであることを明らかにするため,いくつかのジエン類(環状のジエンおよび鎖状のジエン)とジフェニルケテンとの反応を検討した。まず,ジフェニルケテンとジエン類との反応について,低温から高温にいたるさまざまな温度でのNMRおよびIRの測定による詳細な反応過程のモニターを行った。このモニターによって,今まで認識されてきた[2+2]型の付加過程は,真の反応機構を示していないこと,別に真の反応の中間体(初期生成物)が存在することをつきとめることに成功した。さらに,これらのケテンとジエンの反応の様子は,環状のジエンと鎖状のジエンとの場合では全く異なったものであることも見い出した。現在,反応中間体のいくつかの単離に成功し,その中間体がさらに転位することもわかっている。反応の全過程を明らかにするため,今後,残りの反応中間体のすべてを単離し,分子軌道法によって理論的な検討も加え,ケテンとジエンの反応について真の反応機構を明らかにすることをめざしている。そして,この研究によって,ケテンとジエンの反応過程を系統的に解釈することを考えている。「ヘテロクムレン類のジエン不認識問題の解決-定説の打破-」の研究課題のもと研究を2年間行ってきた。初年度においては,ヘテロクムレンとジエン類との反応について,低温から高温にいたるさまざまな温度でのNMRおよびIRの測定による詳細な反応過程のモニターを行った。このモニターによって,今まで認識されてきた[2+2]型の付加過程は,真の反応機構を示していないこと,別に真の反応の中間体(初期生成物)が存在することをつきとめることに成功した。さらに,これらのへテロクムレンとジエンの反応の様子は,環状ジエンと鎖状ジエンとの場合では全く異なったものであることも見い出した。本年度においては,このヘテロクムレンとジエン類との反応の全過程を明かにするため,反応に介在する中間体のすべての単離および構造決定を目指した。その結果,これらすべての中間体の構造を決定することに成功した。このようにして得られた実験結果および反応初期生成物の性質を詳細に検討した結果をもとに,反応機構についての詳細な検討を行なった。そして,ヘテロクムレンとジエンの反応において,今まで認識されてきた[2+2]型の付加過程は,真の反応機構を示していないこと,別に真の反応の中間体(初期生成物)が存在し,ヘテロクムレンはジエン類を認識していることが一般的であることをつきとめることができた。以上述べたように,本研究課題についての一つの解答を得ることができた。 | KAKENHI-PROJECT-09874121 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09874121 |
眼科領域におけるミトコンドリア異常の基礎的臨床的研究 | 眼科領域におけるミトコンドリア(mT)とその異常について、基礎的および臨床的研究をさまざまな側面から行なって、以下の成果をあげた。1.チトクロ-ムCオキシダ-ゼに対するモノクロ-ナル抗体の作成と網膜組織化学:標準的方法によってモノクロ-ナル抗体の作成に成功した。ヒト網膜における局在を調べると、視細胞層ことに錐体視細胞内節および視神経細胞層に豊富にあることが明らかにされた。2.網膜におけるミトコンドリア(mT)酵素活性:サル網膜からmTを抽出して呼吸鎖酵素群の活性測定を試みた。組織タンパク量当たりの活性は黄斑部を含む後極部網膜で最も活性が高いことが判明した。mT網膜症の好発部位との関連から興味ある知見である。3.筋緊張性ジストロフィの眼徴候、mT酵素活性:この疾病には白内障、網膜変性のほかに脈絡膜皺襞が合併することを記載した。さらに、外眼筋にもmT異常が発生することを生化学的および組織化学的に証明した。そして、ミトコンドリア網膜症(mitochondrial retinopathy)の新概念を提唱した。4.眼科領域疾病におけるミトコンドリアDNA(MtDNA):網膜変性を合併するKearnsーSayre症候群、進行性外眼筋麻痺でMtDNAに欠失することを確認した。全身異常を合併しなく、かつ遺伝形式が不明の網膜色素変性症でも検討した欠失は認めなかった。遺伝性視経畏縮(レ-ベル病)ではMtDNAの11778番に点突然変異のあることを確認した。5.網膜色素変性症に対するイデベノン療法:ミトコンドリア酵素賦活剤であるイデベノンを投与すると、網膜色素変性症の中心部視野機能が改善することを統計的に示唆する資料をえた。この場合、投与を6か月以上持続してはじめて効果が出現することが示唆された。眼科領域におけるミトコンドリア(mT)とその異常について、基礎的および臨床的研究をさまざまな側面から行なって、以下の成果をあげた。1.チトクロ-ムCオキシダ-ゼに対するモノクロ-ナル抗体の作成と網膜組織化学:標準的方法によってモノクロ-ナル抗体の作成に成功した。ヒト網膜における局在を調べると、視細胞層ことに錐体視細胞内節および視神経細胞層に豊富にあることが明らかにされた。2.網膜におけるミトコンドリア(mT)酵素活性:サル網膜からmTを抽出して呼吸鎖酵素群の活性測定を試みた。組織タンパク量当たりの活性は黄斑部を含む後極部網膜で最も活性が高いことが判明した。mT網膜症の好発部位との関連から興味ある知見である。3.筋緊張性ジストロフィの眼徴候、mT酵素活性:この疾病には白内障、網膜変性のほかに脈絡膜皺襞が合併することを記載した。さらに、外眼筋にもmT異常が発生することを生化学的および組織化学的に証明した。そして、ミトコンドリア網膜症(mitochondrial retinopathy)の新概念を提唱した。4.眼科領域疾病におけるミトコンドリアDNA(MtDNA):網膜変性を合併するKearnsーSayre症候群、進行性外眼筋麻痺でMtDNAに欠失することを確認した。全身異常を合併しなく、かつ遺伝形式が不明の網膜色素変性症でも検討した欠失は認めなかった。遺伝性視経畏縮(レ-ベル病)ではMtDNAの11778番に点突然変異のあることを確認した。5.網膜色素変性症に対するイデベノン療法:ミトコンドリア酵素賦活剤であるイデベノンを投与すると、網膜色素変性症の中心部視野機能が改善することを統計的に示唆する資料をえた。この場合、投与を6か月以上持続してはじめて効果が出現することが示唆された。眼科領域におけるミトコンドリア異常の問題を検討するために、いくつかの基礎的および臨床的検討を行なった。今年度において得られた研究成果と今後の問題を具体的に記す。1.網膜のミトコンドリア酵素活性の測定:サル眼網膜からミトコンドリアを抽出し、呼吸鎖酵素群(とくにNADH cytochrome c reductase,Succinate cytochrome c reductase,cytochrome coxydase)について酵素活性の測定を試みた。満足すべき精度と再現性をもつ測定系を確立することに成功した。サル眼網膜の後極部、中間部、周辺部で比較すると、黄斑部を含む後極部において組織タンパク量当たりの活性が最も高いことが判明した。この所見のもつ意義は明らかではないが、臨床的なミトコンドリア網膜症の発生部位との関連を解明する基礎的知見を提供するものと考えられる。2.呼吸鎖酵素cytochrome coxidaseに対するモノクローナル抗体の作成:新しい抗体の作成にはじめて成功した。cytochrome coxida seの活性局在を免疫組織化学的に調べ、サル網膜において視細胞内節および神経線維層に豊富な活性の存在することを証明した。この方法によって光学顕微鏡レベルでミトコンドリア酵素の局在を求めることが可能になったから、今後の臨床事例への応用範囲は広いと思われる。3.臨床症例におけるミトコンドリア異常の検索:筋緊張性ジストロフィおよびミトコンドリア脳筋症における外眼筋のミトコンドリアを組織化学的、電子顕微鏡的および生化学的に検索した。ミトコンドリア異常を外眼筋においてはじめて証明することができた。とくに、これらの疾患のなかに呼吸鎖酵素活性の全般的低下を示す事例がみられたことは新知見である。なお、網膜色素変性症の外眼筋における同様の検索結果には異常がみられなかった。 | KAKENHI-PROJECT-63480396 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63480396 |
眼科領域におけるミトコンドリア異常の基礎的臨床的研究 | 眼科領域におけるミトコンドリア異常の問題を前年度につづいていくつかの側面からとりあげた。今年度に得た実績を以下に記す。1.網膜におけるチトクロ-ムCオキシダ-ゼの抗体作成:標準的方法を用いてモノクロ-ナル抗体を得た。これを用いてヒト網膜における酵素の局在を免疫組織化学的に検討した結果、視細胞層とくに錐体視細胞に、また視神経乳頭部に活性が豊富に存在することが判明した。2.筋緊張性ジストロフィ患者の眼症状とミトコンドリア酵素:骨格筋におけるミトコンドリア異常にすでに知られるが,われわれは外眼筋においても同様の異常の存在することを明らかにした。これらの患者には網膜変性がしばしば存在するが、われわれはミトコンドリア網膜症というあたらしい疾患概念を提唱した。3.網膜色素変性症に対するCoQ_<10>療法:この難治性疾患の成因は不明であるが、直接もしくは間接にミトコンドリア酵素機能の障害も考えられるので、酵素賦括剤であるイデベノン(CoQ_<10>)の内服療法を一部の患者の十分な説明と同意を得て行った。その結果、一部の症例ではあるがこのような治療によって残存する視機能、とくに視野機能がわずかながら改善する効果を示唆する結果を得た。眼科領域におけるミトコンドリア異常について基礎的および臨床的に研究してきた。今年度は臨床面における応用を中心課題として研究をすすめ、以下に要約する成果をえた。1.ミトコンドリア異常DNAの検討:臨床試料を用いてmtDNAの検索を可能にするために実験装置の整備と技術習得に努めた結果、さまざまな試料でDNAの調整とSouthern blot解析が可能になった。最初に、レ-ベル遺伝性視神経萎縮を検討した。この疾病は細胞質遺伝病であり、最近mtDNAの11778番目のコドンのA→G変異が報告された。患者および家族の骨格筋生検試料および末梢血を試料として適当なプライマ-を用いて問題領域を含むmtDNA領域をPCR増幅した。これを制限酵素SfaNIで切断すると健康者では2個の断片に切断されたが、罹患者とキャリアでは点突然変異のために切断がおこらなかった。一方、制限酵素MaeIIIを用いると健康者では切断されず、罹患者とキャリアでは2個に切断された。この疾病における11778変異の検出にはSfaNI切断法が広く用いられているが、falseーpositiveの結果が生じる心配がある。今回の方法であるMaeIII切断を併用する方法がmtDNA診断の確実性を増すのに有用であろう。KearnsーSayre症候群、慢性進行性外眼筋麻痺の症例の骨格筋生検試料のmtDNAに欠失が確認された。全身異常を合併しない網膜色素変性症ではこのような所見は認められず、もし存在すれば点突然変異が示唆された。2.網膜色素変性症に対するイデベノンの臨床効果:10例にイデベノンを312か月投与し、中心部視野機能の推移をオクトパス視野計によって経時的に検索した。その結果、6か月以上投与すると軽度ながら視野感度が改善する傾向が認められた。 | KAKENHI-PROJECT-63480396 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63480396 |
計算解剖学モデルを応用したナビゲーション誘導下腹腔鏡下手術の自動工程分析・評価法 | 今年度は計算解剖学モデルと術具ナビゲーションログ情報を用いた手術工程・技能分析アルゴリズムの検討として,1手術技能を定量的に評価する術者スキルレベルの推定と,2手術工程評価のための手術プロセスモデルの構築と評価について研究を実施した.今年度も内視鏡下手術で最も一般的である胆嚢摘出術を基本対象とし,ファントムと内視鏡トレーニングボックスを用いた模擬的腹腔鏡下胆嚢摘出術25例のデータを用いて研究を実施した.昨年度までに開発した術具位置ログと工程分析用臓器モデルとの干渉解析により手術作業のステージを同定し,各ステージでの鉗子作業の定量解析指標(各工程の作業時間,作業進捗度,術具先端移動速度,ログ分布近似楕円面積,ログ分布近似楕円重畳率,ログデータの分布密度)を自動抽出するアルゴリズムをベースに,以下の開発評価を行った.1技能評価:上記の定量解析指標を用い,重回帰分析を利用して各作業工程の作業特性に応じて各解析指標が技能レベルに与える影響度を算出した.その結果を用いて各解析指標からその影響度を加味して最終的な定量的技能レベル値を算出する回帰モデルを開発した.2工程評価:手術ワークフロー解析の基礎として手術プロセスモデルを構築・比較する手法を構築した.手術ナビゲーション情報から取得した術具先端の通過領域a,作業進捗度p,術具先端速度v,術具種類iのパラメータを用いて手術中の一連のアクティビティの配列となる手術プロセスモデルを定義し,配列アラインメントを応用して手術プロセスモデルを整列・比較した.その結果.手術プロセスモデルは作業工程中の作業動向を忠実に表していることが示唆された.25年度が最終年度であるため、記入しない。25年度が最終年度であるため、記入しない。今年度は計算解剖学モデルと術具ナビゲーションログ情報を用いた手術工程・技能分析アルゴリズムの検討として,1手術技能を定量的に評価する術者スキルレベルの推定と,2手術工程評価のための手術プロセスモデルの構築と評価について研究を実施した.今年度も内視鏡下手術で最も一般的である胆嚢摘出術を基本対象とし,ファントムと内視鏡トレーニングボックスを用いた模擬的腹腔鏡下胆嚢摘出術25例のデータを用いて研究を実施した.昨年度までに開発した術具位置ログと工程分析用臓器モデルとの干渉解析により手術作業のステージを同定し,各ステージでの鉗子作業の定量解析指標(各工程の作業時間,作業進捗度,術具先端移動速度,ログ分布近似楕円面積,ログ分布近似楕円重畳率,ログデータの分布密度)を自動抽出するアルゴリズムをベースに,以下の開発評価を行った.1技能評価:上記の定量解析指標を用い,重回帰分析を利用して各作業工程の作業特性に応じて各解析指標が技能レベルに与える影響度を算出した.その結果を用いて各解析指標からその影響度を加味して最終的な定量的技能レベル値を算出する回帰モデルを開発した.2工程評価:手術ワークフロー解析の基礎として手術プロセスモデルを構築・比較する手法を構築した.手術ナビゲーション情報から取得した術具先端の通過領域a,作業進捗度p,術具先端速度v,術具種類iのパラメータを用いて手術中の一連のアクティビティの配列となる手術プロセスモデルを定義し,配列アラインメントを応用して手術プロセスモデルを整列・比較した.その結果.手術プロセスモデルは作業工程中の作業動向を忠実に表していることが示唆された.本研究では,計算解剖学的手法により求められた臓器モデルおよびその近接領域モデルのデータを用いた手術工程分析法を提案し,近接覚ナビゲーション誘導下での腹腔鏡下手術の作業工程推定,分析,評価を行う技術を開発する.その具体的技術として,今年度は1計算解剖学モデルを用いた誘導/回避・工程分析用臓器モデルの構築と計算解剖学モデルベースの近接覚ナビゲーションの実装,2計算解剖学モデルと術具ナビゲーションログ情報を用いた手術工程分析アルゴリズムの構築について研究を実施した.内視鏡下手術で最も一般的である胆嚢摘出術と,先年保険適応となった新しく難易度の高い術式である肝切除術を基本対象とし,ファントムと内視鏡トレーニングボックスを用いた模擬的手術環境を評価系として研究を実施した.1:術野の3次元医用画像からナビゲーションによる術具の誘導/回避と手術作業工程分析に必要な臓器をモデル化するとともに,臓器外部の距離マージン領域を提示する拡張臓器モデルを定義し,誘導/回避対象周囲のマージンへの術具侵入時に警告を発することで,処置対象・治療パスへの誘導と血管等の損傷危険領域の回避を促す近接覚ナビゲーションシステムを実装しその効用を評価した.ファントムを用いた腹腔鏡下肝切除術での近接覚ナビゲーション併用・非併用条件でのパフォーマンスを定量的に評価する新しい評価関数を定義し,その評価値とファントム内血管モデルの傷害度に強い相関が見られたことから,誘導性能を示す評価値としての有用性が示唆された.2:術具位置ログと工程分析用臓器モデルとの干渉を解析し,作業領域情報と術具情報から手術作業のステージを同定するアルゴリズムを構築し,術式分析評価を行った.ファントムを用いた腹腔鏡下胆嚢摘出術25例のデータから,工程の自動分類と進捗度の客観評価が可能なことが示された. | KAKENHI-PUBLICLY-24103704 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-24103704 |
計算解剖学モデルを応用したナビゲーション誘導下腹腔鏡下手術の自動工程分析・評価法 | 計算解剖学モデルとナビゲーション情報を用いることで,ナビゲーション機能の有効性,作業の評価等について定量性と客観性を持った分析が可能であることが示された.術者による実験も既に20例以上のデータを蓄積することができ,今後のさらに詳細な分析や新たなアルゴリズム構築にも応用可能と考えられる.しかし一方で,実験に用いた臓器ファントムと実際の臓器との違いがこの評価に大きな影響を与えている可能性は否定できない.また術中モデルのリアルタイム更新が不可能なため臓器を固定した剛体として実験を行っている.本研究によって構築する解剖モデルとナビゲーションによる手術・機器評価系の信頼性をより高めるためには,より臨床に近い環境での評価が重要である.平成25年度は1より臨床に近い肝切除術・胆嚢摘出術用ファントムの構築,2アルゴリズムの改良・新開発,3リアルタイムモデル構築・評価の手法について検討する.特に中核である2については近接覚に重点を置き,解剖モデル周辺領域での作業についての評価アルゴリズムの検討を行い,手技の特長・誘導装置の効用についての新たな客観的評価法の研究を推進する.25年度が最終年度であるため、記入しない。25年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-24103704 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-24103704 |
病診連携の経済分析……医療機関への支払い方式の設計 | 我が国の医療サービスの供給サイドにおける診療所と病院の位置づけについて特徴的なことは、医療機関を受診しようと考える人々が、診療所のみならず、病院を直接訪問できることである。この制度は、病気の程度の軽い患者が病院で受診することを可能にし、病院での長い待ち時間を作りだし、病院設備の有効利用を妨げているという批判を浴びている。欧米諸国に目を転じてみると、いわゆるGPシステムを採用している国々が少なからずある。イギリス、オランダなどヨーロッパの多くの国々では、患者は、病気になったら、最初にかかりつけ医であるGP(General Practitioner)を訪れ、必要がある場合に紹介状をもらい、病院に通院することができる仕組みになっている。日本のようなシステムは、患者の診療サービスの生産について、市場に任せて、分業を行おうとするシステムであり、GPシステムは、規制によって分業を行うシステムであると解釈することもできる。本研究では、日本のようなシステム、及びGPシステムのメカニズムを分析し、両者の資源配分、所得分配(衡平性)に与える影響を整理し、最適な「医療供給システム」の性質を考察した。本報告書では、第1章で、本研究の課題の位置づけを明確にするべく、日本の医療制度が抱える問題について、総括した。第2章では、問題の根源を構成する医療サービスの性質について考察した。第3章では、第2章における医療サービスの持つ性質を考慮に入れながら、病・診連携のメカニズムを経済的分業の観点から考察し、最適な病診連携のあり方について議論した。第4章では、ケーススタディーとして、オランダの医療制度改革について考察した。我が国の医療サービスの供給サイドにおける診療所と病院の位置づけについて特徴的なことは、医療機関を受診しようと考える人々が、診療所のみならず、病院を直接訪問できることである。この制度は、病気の程度の軽い患者が病院で受診することを可能にし、病院での長い待ち時間を作りだし、病院設備の有効利用を妨げているという批判を浴びている。欧米諸国に目を転じてみると、いわゆるGPシステムを採用している国々が少なからずある。イギリス、オランダなどヨーロッパの多くの国々では、患者は、病気になったら、最初にかかりつけ医であるGP(General Practitioner)を訪れ、必要がある場合に紹介状をもらい、病院に通院することができる仕組みになっている。日本のようなシステムは、患者の診療サービスの生産について、市場に任せて、分業を行おうとするシステムであり、GPシステムは、規制によって分業を行うシステムであると解釈することもできる。本研究では、日本のようなシステム、及びGPシステムのメカニズムを分析し、両者の資源配分、所得分配(衡平性)に与える影響を整理し、最適な「医療供給システム」の性質を考察した。本報告書では、第1章で、本研究の課題の位置づけを明確にするべく、日本の医療制度が抱える問題について、総括した。第2章では、問題の根源を構成する医療サービスの性質について考察した。第3章では、第2章における医療サービスの持つ性質を考慮に入れながら、病・診連携のメカニズムを経済的分業の観点から考察し、最適な病診連携のあり方について議論した。第4章では、ケーススタディーとして、オランダの医療制度改革について考察した。我が国の医療サービスの供給サイドを海外の国々と比較してみると、診療所と病院の位置づけについて特徴的なことがある。それは、医療機関を受診しようと考える人々が、診療所のみならず、病院を直接訪問できることがある。この制度は、病気の程度の軽い患者が病院で受診することを可能にし、病院での長い待ち時間を作りだし、病院設備の有効利用を妨げているという批判を浴びている。欧米諸国に目を転じてみると、いわゆるGPシステムを採用している国々が少なからずある。イギリス、オランダなどヨーロッパの多くの国々では、患者は、病気になったら、最初にかかりつけ医であるGP(General Practitioner)を訪れ、必要がある場合に紹介状をもらい、病院に通院することができる仕組みになっている。日本のようなシステムは、患者の診療サービスの生産について、市場に任せて、分業を行おうとするシステムであり、GPシステムは、規制によって分業を行うシステムであると解釈することもできる。本研究では、日本のようなシステム、GPシステムのメカニズムを分析し、参考にしながら、最適な「医療供給システム」の性質を考察した。平成17年度は、理論研究、実証研究の準備を行った。(1)診療所、病院に関する事前的支払い方式に関する理論的研究、実証的研究の文献サーベイを行った。(2)医師の行動、病院の行動に関する最近までの理論的、実証的研究を経済学関係のみならず医学関連まで広げて、平成16年度以降の内外の雑誌、書籍などの文献からサーベイした。(3)医師・患者関係の文献を経済学・医学関連の雑誌などまで含めて、サーベイを行った。(4)紹介制度(Referral system)に関する一連の理論的・実証的研究の文献をサーベイする。(5)本研究に関連する文脈で、契約理論、組織の経済学、情報の経済学の文献を特に平成16年度以降のものを中心にサーベイした。我が国の医療サービスの供給サイドにおける診療所と病院の位置づけについて特徴的なことは、医療機関を受診しようと考える人々が、診療所のみならず、病院を直接訪問できることである。この制度は、病気の程度の軽い患者が病院で受診することを可能にし、病院での長い待ち時間を作りだし、病院設備の有効利用を妨げているという批判を浴びている。欧米諸国に目を転じてみると、いわゆるGPシステムを採用している国々が少なからずある。 | KAKENHI-PROJECT-17530238 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17530238 |
病診連携の経済分析……医療機関への支払い方式の設計 | イギリス、オランダなどヨーロッパの多くの国々では、患者は、病気になったら、最初にかかりつけ医であるGP(General Practitioner)を訪れ、必要がある場合に紹介状をもらい、病院に通院することができる仕組みになっている。日本のようなシステムは、患者の診療サービスの生産について、市場に任せて、分業を行おうとするシステムであり、GPシステムは、規制によって分業を行うシステムであると解釈することもできる。本研究では、日本のようなシステム、及びGPシステムのメカニズムを分析し、両者の資源配分、所得分配(衡平性)に与える影響を整理し、最適な「医療供給システム」の性質を考察した。本報告書では、第1章で、本研究の課題の位置づけを明確にするべく、日本の医療制度が抱える問題について、総括した。第2章では、問題の根源を構成する医療サービスの性質について考察した。第3章では、第2章における医療サービスの持つ性質を考慮に入れながら、病・診連携のメカニズムを経済的分業の観点から考察し、最適な病診連携のあり方について議論した。第4章では、ケーススタディーとして、オランダの医療制度改革について考察した。 | KAKENHI-PROJECT-17530238 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17530238 |
超低エネルギー陽電子回析装置の試作 | 電子を利用した表面の構造解析は,当初LEEDが瀕用されたが,その理論的取り扱いの困難さのため,現在では, RHEEDが主流となっている.本研究では,理論的取り扱いが容易で,かつ,表面構造により敏感であると考えられる超低エネルギー陽電子回析装置(ULEPD)の試作を目的としている.LEEDと比較して, ULEPDの利点は,陽電子出は多重散乱の少ないこと,交換相互作用のないこと,内部ポテンシャルが略ゼロに近いこと等が挙げられる.本研究では,以上述べたような特徴のある超低エネルギー陽電子回析装置を試作し,設計研究を行った.静電集束型の陽電子集光レンズ系の設計計算および試作を行った.集光レンズ系は,円筒型静電リングから成る2体レンズ,対称型アインツェル・レンズ,非対称アインツェル・レンズで構成した.陽電子の引き出し用には, Soaにより考案されたレンズ系を採用した.このSoa銃は,広いレンジにわたって集光性の良いことが確認された. Soa銃以降の軌道計算は電子光学で利用されている変換行列の方法により行った.Soa銃からCMA入口迄の軌道, CMA出口から第1段再減速材迄の軌道,第2Soa銃から第2段再減速材迄の軌道,第3Soa銃から最終ズーム・レンズの入口迄の軌道,ズーム・レンズ入口から試料位置までの軌道について計算を行い, 35個の円筒電極に供給すべき最適電圧を決定し,これにもとづいて集光レンズ系を試作した.この電圧配置で,発散角を1.15度とすると, 1eVで1.7mm, 10eVで0.5mm, 100eVで0.17mmのビーム径となることが判った.超低エネルギー陽電子回析の測定として,予備的に, BaF2シンチレータと光電子増倍管により, Cu(100)面について,ガンマ線計数率を陽電子の入射エネルギーの関数として測定したところ,ブラッグ条件に対応するエネルギーで計数率の減少が見られ,陽電子回析装置として有効に機能することが確認された.電子を利用した表面の構造解析は,当初LEEDが瀕用されたが,その理論的取り扱いの困難さのため,現在では, RHEEDが主流となっている.本研究では,理論的取り扱いが容易で,かつ,表面構造により敏感であると考えられる超低エネルギー陽電子回析装置(ULEPD)の試作を目的としている.LEEDと比較して, ULEPDの利点は,陽電子出は多重散乱の少ないこと,交換相互作用のないこと,内部ポテンシャルが略ゼロに近いこと等が挙げられる.本研究では,以上述べたような特徴のある超低エネルギー陽電子回析装置を試作し,設計研究を行った.静電集束型の陽電子集光レンズ系の設計計算および試作を行った.集光レンズ系は,円筒型静電リングから成る2体レンズ,対称型アインツェル・レンズ,非対称アインツェル・レンズで構成した.陽電子の引き出し用には, Soaにより考案されたレンズ系を採用した.このSoa銃は,広いレンジにわたって集光性の良いことが確認された. Soa銃以降の軌道計算は電子光学で利用されている変換行列の方法により行った.Soa銃からCMA入口迄の軌道, CMA出口から第1段再減速材迄の軌道,第2Soa銃から第2段再減速材迄の軌道,第3Soa銃から最終ズーム・レンズの入口迄の軌道,ズーム・レンズ入口から試料位置までの軌道について計算を行い, 35個の円筒電極に供給すべき最適電圧を決定し,これにもとづいて集光レンズ系を試作した.この電圧配置で,発散角を1.15度とすると, 1eVで1.7mm, 10eVで0.5mm, 100eVで0.17mmのビーム径となることが判った.超低エネルギー陽電子回析の測定として,予備的に, BaF2シンチレータと光電子増倍管により, Cu(100)面について,ガンマ線計数率を陽電子の入射エネルギーの関数として測定したところ,ブラッグ条件に対応するエネルギーで計数率の減少が見られ,陽電子回析装置として有効に機能することが確認された.電子を利用した表面の構造解析は、当初LEEDが瀕用されたが、その理論的取扱いの困難さのために、現在では、RHEEDが主流となっている。本研究では、理論的取扱いが容易で、かつ、表面構造に敏感であると考えられる超低エネルギー陽電子回折(VLEPD)装置の試作を目的とした。昭和61年度は、この目的のために、静電収束型の低速陽電子実験装置の製作を行った。陽電子をタングステン,ニッケル等の金属に入射してやると、陽電子は金属内部でエネルギーを失い一部は表面から放出される。このとき放出される陽電子は、その金属の仕事関数に相当する単一のエネルギーを持ち、表面に垂直方向に放出されることが知られている。従って低速の陽電子を加速して径を絞り金属単結晶に入射し表面から再放出される陽電子をビームとして取り出すことにより、径が小さく、しかもエネルギーおよび方向が良くそろったビームを得ることができる。製作した静電収束型低速陽電子実験装置は、低速陽電子発生部,ミラーアナライザー,陽電子高輝度化部分,ターゲット試料部分から成り、【10^(-10)】Torr台の真空度が得られた。低速陽電子発生部では、低速陽電子変換効率を【10^(-4)】以上に向上させることができた。エネルギー選別および放射線遮蔽のための90゚偏向ミラーアナライザーの製作を行い、殆んど損失なく目的のビームを偏向することができた。 | KAKENHI-PROJECT-61840006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61840006 |
超低エネルギー陽電子回析装置の試作 | 高輝度化のために、陽電子ビームの加速,絞り込み,再引出しの目的の静電レンズ系の設計計算を行い、それに基づいたレンズ部品の製作を行った。これらの成果の上に、昭和62年度には、高輝度ビームの実現および超低エネルギー陽電子回折の実験を試み、全体的な試作を完了の予定である。これとあわせて、固体表面と陽電子の相互作用のいくつかの基礎過程について理論的研究を行ない、陽電子の中性化(ポジトロニウム形成)による回折強度の損失について試算を行なった。 | KAKENHI-PROJECT-61840006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61840006 |
MAIT細胞を標的としたループス病態制御に関する研究 | Mucosal-associated invariant T(MAIT)細胞はヒトの末梢血T細胞の5%を占める大きな細胞集団であり様々な免疫応答において重要な役割を担うと推察される。我々は全身性エリテマトーデス(SLE)患者において、MAIT細胞は患者末梢血中で減少するものの、その活性化状態は疾患活動性と相関することを明らかにした。このことより、MAIT細胞はSLE病態に関与している可能性が示唆された。本研究では、SLE動物モデルであるループス自然発症マウス(FcγRIIB-/-Yaaマウス)を用い、ループス病態におけるMAIT細胞の役割を解明し、MAIT細胞を標的としたループス病態制御の可能性について検証することを目的とする。FcγRIIB-/-YaaマウスとMAIT細胞が存在しないMR1欠損(MR1-/-)マウスを交配し、MAIT細胞の存在がループス病態へ及ぼす影響を検証した。MR1-/- FcγRIIB-/-Yaaマウスでは同腹のMR1+/+ FcγRIIB-/-Yaaマウスに比較し生存率の改善と自己抗体の減少を認めた。生後4ヶ月のマウスでは、MR1欠損により皮膚炎は悪化するが、腎炎所見は改善傾向を示すことが明らかとなった。そこで、生後2ヶ月マウスの腎臓をより詳細に解析しててみると、MR1欠損により糸球体腎炎の病理学的所見の改善、IgGおよび補体沈着の減少を認めた。MAIT細胞の存在により自己抗体産生亢進と腎炎病態増悪、一方で皮膚炎の軽症化を認めたことから、MAIT細胞の機能調整がループス病態の抑制につながる可能性が考えられた。そこで、これまで報告されているMR1リガンドを参考に、類縁体を複数合しin vitroで活性の確認を行った。また、SLE患者の腎組織におけるMAIT細胞を解析するため、免疫組織染色の条件検討を進めた。ループス自然発症マウスモデルであるFcγRIIB-/-YaaマウスとMAIT細胞を欠損するMR1欠損マウスを交配し、ループス病態へのMAIT細胞欠損の影響を調べた。生存率、関節炎所見、皮膚症状、腎炎所見、血清自己抗体価などについてMR1-/- FcγRIIB-/-Yaaマウスと同腹のFcγRIIB-/-Yaaマウスで比較した。MR1欠損により生存率や自己抗体価からループス病態の軽症化傾向がみられた。生後4ヶ月のマウスを用いた予備実験からMR1欠損により皮膚炎の増悪、腎炎所見は改善傾向を確認していたが、H29年度は生後2ヶ月マウスを用い腎炎の解析をより詳細に行った。MR1欠損により糸球体腎炎の病理学的所見の改善、IgGおよび補体沈着の減少を認めた。MRリガンドについては複数のリガンドを合成し、in vitroの系にて活性の確認を進めた。SLE患者の組織におけるMAIT細胞を解析するために、免疫組織染色のための条件検討を行った。MAIT細胞による自己抗体産生亢進とループス腎炎増悪のメカニズムについて解析を進める。形質細胞、形質芽細胞、濾胞性T細胞の数や活性化状態についてMR1-/- FcγRIIB-/-Yaaマウスと同腹のFcγRIIB-/-Yaaマウスで比較する。また、MAIT細胞が腎臓へ直接浸潤して炎症に関与しているかどうか、ループスマウスだけでなくSLE患者の腎生検サンプルを用いてMAIT細胞浸潤の有無の確認を行う。また、組織におけるMAIT細胞のサイトカイン産生など機能についても解析を進める。MR1リガンドについては、ループルモデルマウスへの投与実験に向けて、これまで合成したものからin vitroおよびin vivoでの活性を確認する。Mucosal-associated invariant T(MAIT)細胞はヒトの末梢血T細胞の5%を占める大きな細胞集団であり様々な免疫応答において重要な役割を担うと推察される。我々は全身性エリテマトーデス(SLE)患者において、MAIT細胞は患者末梢血中で減少するものの、その活性化状態は疾患活動性と相関することを明らかにした。このことより、MAIT細胞はSLE病態に関与している可能性が示唆された。本研究では、SLE動物モデルであるループス自然発症マウス(FcγRIIB-/-Yaaマウス)を用い、ループス病態におけるMAIT細胞の役割を解明し、MAIT細胞を標的としたループス病態制御の可能性について検証することを目的とする。FcγRIIB-/-YaaマウスとMAIT細胞が存在しないMR1欠損(MR1-/-)マウスを交配し、MAIT細胞の存在がループス病態へ及ぼす影響を検証した。MR1-/- FcγRIIB-/-Yaaマウスでは同腹のMR1+/+ FcγRIIB-/-Yaaマウスに比較し生存率の改善と自己抗体の減少を認めた。生後4ヶ月のマウスでは、MR1欠損により皮膚炎は悪化するが、腎炎所見は改善傾向を示すことが明らかとなった。そこで、生後2ヶ月マウスの腎臓をより詳細に解析しててみると、MR1欠損により糸球体腎炎の病理学的所見の改善、IgGおよび補体沈着の減少を認めた。MAIT細胞の存在により自己抗体産生亢進と腎炎病態増悪、一方で皮膚炎の軽症化を認めたことから、MAIT細胞の機能調整がループス病態の抑制につながる可能性が考えられた。そこで、これまで報告されているMR1リガンドを参考に、類縁体を複数合しin vitroで活性の確認を行った。 | KAKENHI-PROJECT-17K09983 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K09983 |
MAIT細胞を標的としたループス病態制御に関する研究 | また、SLE患者の腎組織におけるMAIT細胞を解析するため、免疫組織染色の条件検討を進めた。ループス自然発症マウスモデルであるFcγRIIB-/-YaaマウスとMAIT細胞を欠損するMR1欠損マウスを交配し、ループス病態へのMAIT細胞欠損の影響を調べた。生存率、関節炎所見、皮膚症状、腎炎所見、血清自己抗体価などについてMR1-/- FcγRIIB-/-Yaaマウスと同腹のFcγRIIB-/-Yaaマウスで比較した。MR1欠損により生存率や自己抗体価からループス病態の軽症化傾向がみられた。生後4ヶ月のマウスを用いた予備実験からMR1欠損により皮膚炎の増悪、腎炎所見は改善傾向を確認していたが、H29年度は生後2ヶ月マウスを用い腎炎の解析をより詳細に行った。MR1欠損により糸球体腎炎の病理学的所見の改善、IgGおよび補体沈着の減少を認めた。MRリガンドについては複数のリガンドを合成し、in vitroの系にて活性の確認を進めた。SLE患者の組織におけるMAIT細胞を解析するために、免疫組織染色のための条件検討を行った。MAIT細胞による自己抗体産生亢進とループス腎炎増悪のメカニズムについて解析を進める。形質細胞、形質芽細胞、濾胞性T細胞の数や活性化状態についてMR1-/- FcγRIIB-/-Yaaマウスと同腹のFcγRIIB-/-Yaaマウスで比較する。また、MAIT細胞が腎臓へ直接浸潤して炎症に関与しているかどうか、ループスマウスだけでなくSLE患者の腎生検サンプルを用いてMAIT細胞浸潤の有無の確認を行う。また、組織におけるMAIT細胞のサイトカイン産生など機能についても解析を進める。MR1リガンドについては、ループルモデルマウスへの投与実験に向けて、これまで合成したものからin vitroおよびin vivoでの活性を確認する。ヒト検体におけるMAIT細胞の解析については、本年度は条件検討のみを行い実際の患者検体の解析は次年度以降に行うことになったため次年度使用額が生じた。 | KAKENHI-PROJECT-17K09983 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K09983 |
悪性黒色腫移植マウスにおけるポリモノクロ-ナル抗体による診断治療の有効性の研究 | モノクロ-ナル抗体(MoAb)は特異性が高い反面、同一腫瘍であっても、その一部分にしか結合しないことがこれまでのinViVoの実験で確認された。そして腫瘍内に壊死を作りながら発育する腫瘍においては特に壊死への集積が高いことが^<125>I(又は^<131>I)標識抗メラノ-マ抗体を用いた研究で証明された。そこで我々は、特に腫瘍内壊死への抗体集積の機序を特異性に注目し、MoAbの腫瘍内分布を観察した。メラノ-マ移植マウスに^<125>I(または^<131>I)標識抗メラノ-マ抗体またはコントロ-ルとして抗リンフォ-マモノクロ-ナル抗体(IgM)を投与し、メラノ-マへの集積率を経時的に測定した。コントロ-ル抗体の生体内分布は肝臓、腎臓そして腫瘍共、経時的に集積率(%dose/g)が減少し、腫瘍/血液比は1.52.1のほぼ一定の値を保った。特異抗体の内、特にM2590は、集積率の経時的減少率が低く、投与後5日および7日は肝臓、腎臓に比べ集積率が高かった。そして腫瘍/血液比は5日、7日と漸次高くなり、平均値はコントロ-ルIgMの2倍を越えた。腫瘍への集積率はM2590では2.0グラムまで重量に相関して高くなったが、コントロ-ル抗体では明らかな相関はみられなかった。しかし、壊死巣へのM2590の集積は明らかな重量との相関を示さず、小さくても高い集積率を示すケ-スがみられた。以上の結果からMoAbは非特異的にも腫瘍に集積するが、肝臓、腎臓と同じ経時的減少率を示し、血液比もほぼ一定である。これに対し、特異抗体は投与後5日、7日と血液比が大きくなり、経時的減少率が低い。そこで臨床的にヒト由来の同種同系のMoAb(IgM)を使用する場合は、投与後5日7日が腫瘍への非特異的結合も減り、至適撮像時間と考えられた。腫瘍内壊死への特異抗体および非特異抗体の集積に関しては、更に、経時的変化を観察した上で、ミクロオ-トラジオグラムを含めて検討を加えていく。モノクロ-ナル抗体(MoAb)は特異性が高い反面、同一腫瘍であっても、その一部分にしか結合しないことがこれまでのinViVoの実験で確認された。そして腫瘍内に壊死を作りながら発育する腫瘍においては特に壊死への集積が高いことが^<125>I(又は^<131>I)標識抗メラノ-マ抗体を用いた研究で証明された。そこで我々は、特に腫瘍内壊死への抗体集積の機序を特異性に注目し、MoAbの腫瘍内分布を観察した。メラノ-マ移植マウスに^<125>I(または^<131>I)標識抗メラノ-マ抗体またはコントロ-ルとして抗リンフォ-マモノクロ-ナル抗体(IgM)を投与し、メラノ-マへの集積率を経時的に測定した。コントロ-ル抗体の生体内分布は肝臓、腎臓そして腫瘍共、経時的に集積率(%dose/g)が減少し、腫瘍/血液比は1.52.1のほぼ一定の値を保った。特異抗体の内、特にM2590は、集積率の経時的減少率が低く、投与後5日および7日は肝臓、腎臓に比べ集積率が高かった。そして腫瘍/血液比は5日、7日と漸次高くなり、平均値はコントロ-ルIgMの2倍を越えた。腫瘍への集積率はM2590では2.0グラムまで重量に相関して高くなったが、コントロ-ル抗体では明らかな相関はみられなかった。しかし、壊死巣へのM2590の集積は明らかな重量との相関を示さず、小さくても高い集積率を示すケ-スがみられた。以上の結果からMoAbは非特異的にも腫瘍に集積するが、肝臓、腎臓と同じ経時的減少率を示し、血液比もほぼ一定である。これに対し、特異抗体は投与後5日、7日と血液比が大きくなり、経時的減少率が低い。そこで臨床的にヒト由来の同種同系のMoAb(IgM)を使用する場合は、投与後5日7日が腫瘍への非特異的結合も減り、至適撮像時間と考えられた。腫瘍内壊死への特異抗体および非特異抗体の集積に関しては、更に、経時的変化を観察した上で、ミクロオ-トラジオグラムを含めて検討を加えていく。モノクローナル抗体による画像診断および治療の成績は期待された程の成果に達していない。その原因の一つとして、我々はモノクローナル抗体は特異性が高い反面、認識する抗原も腫瘍の一部に限られていることが大きく関与していると、担癌動物のin vivo実験から推定した。そこで我々は性質の異なる二種類のモノクローナル抗メラノーマ抗体が、腫瘍内で異なった分布を示すことをin vivoで証明し更に各々の抗体が認識する腫瘍細胞の組織学的確認を得る方法を検討した。 | KAKENHI-PROJECT-63570498 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63570498 |
悪性黒色腫移植マウスにおけるポリモノクロ-ナル抗体による診断治療の有効性の研究 | 用いた二種類のモノクローナル抗体(M562、M2590)はC57BL/6マウスから自然発生したB16メラノーマを同種同系のマウスに感作して、BALB/Cからマウスのミエローマ細胞(P_3U_1)と融合して得たものである。(千葉大学谷口克教授よりの提供)方法はヨードジエンを用いて^<125>Iまたは^<131>Iに標識したM2590またはM562をB16メラノーマ移植マウスに30100μci投与し3日後にオートラジオグラフィを施行した。^<125>Iおよび^<131>Iの物理的半減期の差を利用し、マウスの凍結乾燥切片をフィルムに密着し1週間以内に^<131>の標識抗体のオートラジオグラムを得、続いて同一切片を1ヶ月後に再度フィルムに密着させて^<125>I標識抗体のオートラジオグラムを得た。続いて腫瘍内分布を確認したマウスの腫瘍部分を取り出してパラフィン包埋した。同一面の薄層切片を作成し、ヘマトキシリン、エオジン染色をして組織学的観察を行なった。その結果、二種類のモノクローナル抗体は、腫瘍内で異なった分布を呈し、認識する抗原が異なることが確認された。又これらモノクローナル抗体の分布は腫瘍内の壊死巣に高くメラノーマの壊死部分に、細胞膜抗原が瀘出されていることが示唆された。放射性核種で標識したモノクロ-ナル抗腫瘍抗体(MoAb)による画像診断(Radiommunodetection)および治療(Radiommunotherapy)の有用性を検討するため、担癌動物を用いてin vivoにおけるMoAbの分布を観察した。用いたMoAbはC57BL/6マウスに自然発生したB16メラノ-マをマウスに免疫し、細胞融合法にて得た抗メラノ-マモノクロ-ナル抗体(M562,M2590,IgM)および抗リンフォ-マ抗体(IgM)である。(いづれも千葉大学谷口克教授提供)、M562およびM2590を各々エネルギ-および半減期の異なる放射性ヨ-ド(^<131>I,^<125>I)で標識して同時に投与し、オ-トラジオグラムで観察したところ、各々異なる腫瘍内分布を呈した。以上から二種類の異なった抗原決定基を認識するMoAbを同時に投与すると、検出感度が高まることが示唆された。これらMoAb(M562,M2590)のオ-トラジオグラムの腫瘍内分布を病理組織標本と対比させて観察したところ、腫瘍内壊死巣に、より高度にMoAbが集積することが判明した。これは通常隠蔽されている腫瘍抗原が、発育する壊死巣では特異抗体の結合し易い環境となり存在するためと推定された。これらMoAbの腫瘍内分布の特異性を評価するため、同じIgMであるモノクロ-ナル抗リンフォ-マ抗体を同時に投与して集積率を測定した。メラノ-マへの抗リンフォ-マ抗体の集積率はM2590の約1/2であった。更に抗肺癌ヒトモノクロ-ナル抗体の腫瘍内分布をヒト扁平上皮癌を移植したヌ-ドマウスを用いて検討したところ、やはり癌壊死部で血液の19倍という高度の集積を呈した。今後発育増殖する腫瘍の壊死巣におけるMoAbの挙動と特異性を検討するため、免疫化学法およびミクロオ-トラジオグラムによる確認と、酵素抗体法による検定を試みている。 | KAKENHI-PROJECT-63570498 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63570498 |
動的なネットワーク交通流特性を内包した都市スケールの交通状態解析理論 | 本研究は,都市エリアの交通状態・性能を巨視的に表す「Macrosocpic Fundamental Diagram」を,よりミクロなネットワーク交通流特性と結びつけて解析する方法論を構築する.具体的には,まず,ネットワーク上の渋滞パターンを与件とした動的利用者均衡モデルに対する逆問題を定式化する.この逆問題は線形方程式系で記述されており,ネットワーク全体のスループットを解析的に導出することができる.この解析式によりスループットを決定づける要素を考察するとともに,その感度分析を行い,スループットの低下を引き起こす渋滞パターンとそのメカニズムを明らかにした.本研究の目的は,都市エリアの交通状態・性能をマクロに表す「Macroscopic Fundamental Diagram (MFD)」(エリアの平均密度と平均交通量)を,よりミクロなネットワーク交通流特性と結びつけて解析する方法論を構築することである.そして,MFDの容量や形状等の特性を特徴づける要素・メカニズムを解明する.具体的な研究手順は以下の3つのステップからなる:(1)渋滞パターンとMFDを結びつける逆解析手法の開発;(2)提案手法の感度分析によるMFDの特性分析;(3)日本の主要都市のMFD特性の実証分析.初年度にあたる平成26年度では,(1)の手法を,ドライバーの経路選択行動から時々刻々のネットワーク交通流パターンを記述する動的交通量配分(DTA)モデルに基づき開発した.その結果,エリアのスループット(or平均交通量)は渋滞したリンクの接続関係を表す「縮約ネットワーク」により特徴付けられることが分かった.また,シミュレーションにより,MFDのスループットの低下やヒステリシス・ループのメカニズムを分析した.現在は,上記の手法で得られたMFD解析式の感度分析により,理論的なMFDの特性分析を進めている.さらに,(当初の予定にはなかったが)経路選択の影響だけでなく,出発時刻選択の影響を評価するために,複数のボトルネックを考慮した出発時刻選択均衡の特性(存在・唯一性)を理論的に明らかにした.一方,(3)としては,仙台中心部エリアを含めいくつかの都市のMFDの実証分析を進めている.具体的には,数年にわたる長期間データから,日々のMFDの再現性や交通需要条件/供給条件がMFDの形状に与える影響を評価した.今後は,(1), (2)で理論的に得られた知見に基づき,MFD形状と渋滞パターンの関係性について実証分析を進めていく予定である.本研究の目的は,都市エリアの交通状態・性能を巨視的に表す「Macroscopic Fundamental Diagram (MFD)」(エリア平均密度と平均交通量の関数関係)を,よりミクロなネットワーク交通流特性と結びつけて解析する方法論を構築することである.そして,提案手法によりMFDの容量や渋滞領域の形状を特徴付ける要素・メカニズムを解明する.具体的な研究手順は以下の3つのステップからなる:(1)渋滞パターンとMFDを結びつける逆解解析手法の開発;(2)提案手法の感度分析によるMFDの特性分析;(3)日本の主要都市のMFD特性の実証分析.最終年度にあたる平成27年度では,平成26年度に完了した上記(1)で導出したMFDの解析的評価式の感度分析を進め,1起点多終点ネットワークのMFDの渋滞領域が以下のメカニズムにより発現することを理論的に明らかにした:(a)終点ノードへの渋滞延伸によるトリップ完了フローのブロッキング,(b)異なる終点を持つフローによる渋滞リンク容量の奪い合い.一方で,多起点1終点ネットワークでは上記のようなメカニズムが働かないことをいくつかの例,数値実験により示した.このことから,MFDの渋滞領域発現には異なる終点を持つフローの相互作用が重要であることがわかった.一方,(3)では,仙台市,京都市,那覇市,東京都,首都高の道路網におけるMFDの実証分析を長期間データを用いて行った.その結果,MFDの渋滞領域が道路網上の渋滞パターンと対応関係があること(理論解析の前提の妥当性確認),MFDの渋滞領域における平均交通量レベルが渋滞延伸数と負の比例関係にあること,が明らかになった.また,詳細な渋滞パターンの分析より,MFDの渋滞領域発現時に上記(a)のブロッキング現象が生じているという示唆が得られた.また,各道路網のMFDの特徴も分析した.本研究は,都市エリアの交通状態・性能を巨視的に表す「Macrosocpic Fundamental Diagram」を,よりミクロなネットワーク交通流特性と結びつけて解析する方法論を構築する.具体的には,まず,ネットワーク上の渋滞パターンを与件とした動的利用者均衡モデルに対する逆問題を定式化する.この逆問題は線形方程式系で記述されており,ネットワーク全体のスループットを解析的に導出することができる.この解析式によりスループットを決定づける要素を考察するとともに,その感度分析を行い,スループットの低下を引き起こす渋滞パターンとそのメカニズムを明らかにした.理論解析については,平成26年度予定していた(1)について,1起点多終点,多終点1起点の需要を持つネットワークに対して解析を終えている.また,平成27年度に予定してた(2)の感度分析についても,理論的に解析可能な部分については,目処がたっている.また,系統的な感度分析実験を行うための,シミュレーションもすでに作成済みである.従って,研究は順調に進んでいると言える.実証分析(3)については,平成26年度は主に対象都市の基本的なデータ処理,基礎集計分析,渋滞パターンの抽出等を行った.これにより,平成27年度に予定している本格的な実証分析を行う準備が整ったことになり,こちらも順調に研究が進捗している. | KAKENHI-PROJECT-26820207 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26820207 |
動的なネットワーク交通流特性を内包した都市スケールの交通状態解析理論 | 交通工学研究最終年にあたる平成27年度では,(2)提案手法の感度分析によるMFDの特性分析を早い時期に完了させ,(3)日本の主要都市のMFD特性の実証分析に進む予定である.(3)については,(3a)理論的に得られた知見に基づきMFDの特徴的な現象メカニズムを説明する段階と,(3b)開発手法に基づきMFDの形状を定量的に評価する段階がある.(3a)については,現象のメカニズムを説明するだけでなく,そのメカニズムから考えらえる渋滞制御ルールを構築し,シミュレーション評価を行う予定である.(3b)を達成するためには,多起点・多終点需要を持つネットワークを解析する必要があるが,DTA分野においてもその方法は確立しておらず,困難が予想される.そのため,近似手法や準動的な交通配分モデルを活用するなど,いくつかのアプローチで取り組んでいく予定である.平成26年度の経費は,主に数値計算やデータ処理に用いる数値計算言語MATLABの購入,関連研究者との打ち合わせ・スタディサイトの現地調査・学会参加への旅費,人件費,成果発表のための論文掲載料・英文校正費にあてる予定であった.しかし,研究計画の(1)において,当初の計画以上に理論による一般的な解析が可能であったため,大規模な数値計算実験には至っていない.また,成果を論文にまとめて投稿中であるが,掲載には至っていないこともあり,次年度使用額が生じている.次年度使用額は,当初の計画通り,大規模数値実験のための数値計算言語の費用,実験補助の人件費,および,論文掲載料にあてる計画である. | KAKENHI-PROJECT-26820207 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26820207 |
生活史戦略理論による社会生物学と群集生態学の統合:外来アリからクローナル植物まで | 本研究は、一旦定着したら移動性に乏しい超個体という共通の特徴を持ち、かつ生物多様性と生態系サービスの維持のための鍵となりうる生物分類群、アリ、シロアリ、サンゴ、クローナル植物が、環境撹乱にどう適応しているのかという視点を切口に、群集生態学と社会生物学を生活史戦略理論の観点から統合再構築することを目的とした。超個体の分割比と分散距離のトレードオフに関するコロニーベースモデルの一般版を平衡点安定性解析に関する定理を用いて、環境撹乱下における「近傍分巣対遠隔分散」の生活史モデルの詳細な解析を行った。平衡点の安定性条件の結果から、撹乱そのものは従来の生態学の定説どおり遠隔分散戦略を有利にするという結論が得られた。また、本研究グループによる先行研究では想定されていなかったコロニー間に干渉的な相互作用がある場合についても解析を行い、撹乱下でコロニーの分割比や拡散距離においていかなる戦略が有利になるのか検討した。これらモデルの予測を実地に検証すべく、撹乱が生活史各ステージに与える影響を、沖縄のサンゴ礁(枝状サンゴ)、沖縄のイタジイなどの樹木、沖縄にすむ外来アリ類、シロアリ類、本州の多年生の草本植物であるイタドリ等を材料に、フィールド調査、操作実験、分子マーカーによる解析を行った。関連テーマで日本生態学会大会と個体群生態学会大会において外国人研究者を招聘し2つの国際シンポジウムを開催した本研究は、一旦定着したら移動性に乏しい超個体という共通の特徴を持ち、かつ生物多様性と生態系サービスの維持のための鍵となりうる生物分類群、アリ、シロアリ、サンゴ、クローナル植物が、環境撹乱にどう適応しているのかという視点を切口に、群集生態学と社会生物学を生活史戦略理論の観点から統合再構築することを目的とした。超個体の分割比と分散距離のトレードオフに関するコロニーベースモデルの一般版を平衡点安定性解析に関する定理を用いて、環境撹乱下における「近傍分巣対遠隔分散」の生活史モデルの詳細な解析を行った。平衡点の安定性条件の結果から、撹乱そのものは従来の生態学の定説どおり遠隔分散戦略を有利にするという結論が得られた。また、本研究グループによる先行研究では想定されていなかったコロニー間に干渉的な相互作用がある場合についても解析を行い、撹乱下でコロニーの分割比や拡散距離においていかなる戦略が有利になるのか検討した。これらモデルの予測を実地に検証すべく、撹乱が生活史各ステージに与える影響を、沖縄のサンゴ礁(枝状サンゴ)、沖縄のイタジイなどの樹木、沖縄にすむ外来アリ類、シロアリ類、本州の多年生の草本植物であるイタドリ等を材料に、フィールド調査、操作実験、分子マーカーによる解析を行った。関連テーマで日本生態学会大会と個体群生態学会大会において外国人研究者を招聘し2つの国際シンポジウムを開催した本研究は、生物多様性と生態系サービスの維持のための鍵となりうる生物分類群、アリ、シロアリ、サンゴ、クローナル植物における群集生態学と社会生物学を生活史戦略理論の観点から統合再構築することを目的とする。本年度は、アリなどのコロニーの分割比と拡散距離のトレードオフに関するコロニーベースモデルの一般バージョンを構築し、現在論文を執筆中である。経験研究では、まず繁殖様式の異なるサンゴ種間を対象に、琉球列島の島群間で集団遺伝学的解析を行った。その結果、放卵放精型の種では琉球列島全体で遺伝的分化の程度が小さく、幼生保育型の種では島群間で、遺伝的分化著しいことが明らかとなった。また、琉球諸島の亜熱帯林の森林動態モデルを構築し、森林皆伐が、樹木種多様性の回復過程に及ぼす影響を明らかにした。林業の経済的収益と生物多様性を両立するための、施業手法を検証した。今後この問題を数理的手法で詰める。攪乱を受けたクローナル植物の回復過程を定量的に評価するため、栽培実験を行った。地下茎あるいは地上茎の断片に切断されても、イタドリは非常に高い回復能力を示した。また、根の大半が失われても、ウキクサ類の成長には大きな影響は見られなかった。攪乱の要因として、人工的な切除に加え、昆虫の食害についても定量的な評価を試みた。そのほかアリやシロアリで種内多型の検出に有効なミトコンドリアDNA上のチトクロームオキシダーゼ(CO)領域および核DNAの28SrDNA, Elongation factor-1a(EF-1a)のシーケンシング用プライマーの設計および反応条件の検討を行った。本研究は、生物多様性と生態系サービスの維持のための鍵となりうる生物分類群、アリ、シロアリ、サンゴ、クローナル植物における群集生態学と社会生物学を生活史戦略理論の観点から統合再構築することを目的とする。昨年度にアリなどのコロニーの分割比と拡散距離のトレードオフに関するコロニーベースモデルの一般バージョンを構築したが、これを発展させコロニー間で直接的な競争のある場合のモデルを解析中である。経験研究では、まず沖縄島、慶良間諸島および西表島において、サンゴの個体群動態を野外調査により解析し、繁殖様式と個体群動態のパターンに、関連があることが示唆された。また、琉球諸島の各島レベルの生物多様性情報をデータベース化し、人為インパクトに対する生物多様性の応答を検証するための基礎データを整備した。そのデータベースを用いた基礎生態学的な論文と、そのデータを元にしたシミュレーションモデル分析の論文を発表した。前者の論文では、琉球諸島のフロラ形成の歴史過程を植物種間の系統関係に基づいて検証し、従来の生物地理区分の見直しを提案した。 | KAKENHI-PROJECT-21247006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21247006 |
生活史戦略理論による社会生物学と群集生態学の統合:外来アリからクローナル植物まで | 後者の論文では、島嶼亜熱帯林で行われている下層除伐による森林施業が、樹木種多様性に及ぼす効果をモデルを用いて定量し、亜熱帯林の持続的な森林管理の在り方について提言を行った。攪乱の影響を受けたクローナル植物の成長が、個体群あるいは群集の構造によってどのように変化するかを定量的に評価するため、栽培実験を行った。イタドリでは、人工個体群が遺伝的に同一な個体により構成されるか、複数の遺伝的個体によって構成されるかで、回復は異なり、複数の遺伝的個体によって構成される個体群で、収量がより大きかった。また、根への攪乱の程度が高まると、ウキクサの群集では、均等度が高まった。昆虫の食害による根の攪乱では、群集の種構成やサイズ構造によって、植物の反応が異なった。本研究は、一旦定着したら移動性に乏しい超個体という共通の特徴を持ち、かつ生物多様性と生態系サービスの維持のための鍵となりうる生物分類群、アリ、シロアリ、サンゴ、クローナル植物が、環境撹乱にどう適応しているのかという視点を切口に、群集生態学と社会生物学を生活史戦略理論の観点から統合再構築することを目的とした。本年度は、前年度に構築された超個体の分割比と拡散距離のトレードオフに関するコロニーベースモデルの一般バージョンを平衡点安定性解析に関する定理を用いて、環境撹乱下における「近傍分巣対遠隔分散」の生活史モデルの詳細な解析を行った。平衡点の安定性条件の結果から、撹乱そのものは従来の生態学の定説どおり1:3遠隔分散戦略を有利にするという結果が得られた(投稿論文を作成中)。また、Nakamaru et al.(2007)では想定されていなかったコロニー間に干渉的な相互作用がある場合についても解析を行い、撹乱下でコロニーの分割比や拡散距離においていかなる戦略が有利になるのか検討した(生態学会大会で発表)。以上のように一般モデルの構築という当初目的はほぼ達成された。並行し、これらモデルの予測を実地に検証すべく、撹乱が生活史各ステージに与える影響を、沖縄のサンゴ礁(枝状サンゴ)、沖縄のイタジイなどの樹木、沖縄にすむ外来アリ類、シロアリ類、本州の多年生の草本植物であるイタドリを材料に、フィールド調査、操作実験、分子マーカーによる解析を行った。その結果、撹乱の生活史パラメーターに与える影響は分類群毎に様々であり、アリを想定した特殊モデルを他の生物にそのまま適用できないが、上記一般モデルを参照に分類群による適応進化のパターン幾つかに類型化できる可能性が示された。なお、H23年度は最終年度でもあり、本課題関連テーマで日本生態学会大会と個体群生態学会大会において外国人研究者を招聘し2つの国際シンポジウムを開催した。 | KAKENHI-PROJECT-21247006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21247006 |
開状態におけるイオンチャネルポアの柔軟性の分子基盤 | P_2X型ATP受容体は、時間依存的にイオン選択性が変化することや、記録ごとにうち向き整流の強度がばらつくなどの特徴あるポアの性質を持つことが知られている。また、我々は本研究遂行過程において、その内向き整流性のばらつきが発現密度に相関することを見いだした。これを手がかりとして、P_2X受容体の種々の性質を発現レベルとの関連において解析し以下の知見が得られた。(1)P_<K+>/P_<Na+>の発現密度に依存した変化は観察されなかったが、P_<NMDG+>/P_<Na+>は発現密度と負の相関を示した。(2)内向き整流性の強弱は発現密度と負の相関を示した。脱分極パルス直後に観察される外向き電流(I_<initial>)は、経時的に減衰し定常レベルに(I_<steady>)に達した。I_<initial>およびI_<steady>の、内向き電流の大きさに対する割合はどちらもチャネルを高発現にすることによって増加した。(3)高濃度のATP(100microM)により弱い内向き整流性電流を呈する発現密度の高い細胞に、低濃度ATP(3microM)を投与するとその内向き整流性は増強した。(4)[ATP]・応答関係のKdの値は発現密度と負の相関を示した。Hill係数は発現密度に相関なく一定値2であった。(5)ポア上部の点変異I328Cにより上記の発現密度に依存したポアの性質の変化がほぼ消失した。以上の結果をまとめると、「P2X_2受容体の内向き整流性等の性質は、膜上に存在する「開状態」のチャネルの密度に依存して動的に変化する。」と表現できる。我々は「ATP投与により開状態に入った、ごく近傍にあるP2X_2受容体チャネル間の相互作用によりポア上部においてなんらかの構造変化が起こり、ポアの性質やリガンド感受性が変わる。」というイメージでデータを説明できると考えている。P_2X型ATP受容体とnicotinic型ACh受容体の間で膜上相互作用が起こることが報告されている。すなわち両者が共存する場合、P_2X受容体が活性化されるとnACh受容体の活性が発現密度に依存して抑制されることが知られている。また、P_2X受容体のイオン選択性は開状態における時間経過とともに変化し、NMG等の巨大な陽イオンを透過するようになることも知られている。我々はまずP_2X受容体側に着目し、アフリカツメガエル卵母細胞を発現系として用いて電気生理学的解析を行い、以下の2つの知見をあげた。(1)P_2X受容体の細胞内領域の欠失変異体とnACh受容体を共発現させ実験を行ったところ、変異型P_2X受容体の発現密度が高い状態においては依然として上述の抑制作用が親察された。このことは膜上での直接相互作用には特別な細胞内介在蛋白質を必要としないということを示唆する。今後は系統的に変異体を作成して相互作用の分子基盤の同定を目指す。(2)P_2X受容体は強い内向き整流性を示すことが知られているが、発現密度を高めることによりその内向き整流性が著しく減弱する事を見いだした。このことは、発現密度に依存してイオン透過すなわちチャネルポアの性質、もしくは何らかのゲート機構が変化することを示唆する。今後、このふたつの可能性を念頭において、P_2Xの内向き整流性を引きおこす機構、さらにその機構がどのようにして発現密度に依存して修飾されるのかを明らかにしていく。P_2X型ATP受容体は、時間依存的にイオン選択性が変化することや、記録ごとにうち向き整流の強度がばらつくなどの特徴あるポアの性質を持つことが知られている。また、我々は本研究遂行過程において、その内向き整流性のばらつきが発現密度に相関することを見いだした。これを手がかりとして、P_2X受容体の種々の性質を発現レベルとの関連において解析し以下の知見が得られた。(1)P_<K+>/P_<Na+>の発現密度に依存した変化は観察されなかったが、P_<NMDG+>/P_<Na+>は発現密度と負の相関を示した。(2)内向き整流性の強弱は発現密度と負の相関を示した。脱分極パルス直後に観察される外向き電流(I_<initial>)は、経時的に減衰し定常レベルに(I_<steady>)に達した。I_<initial>およびI_<steady>の、内向き電流の大きさに対する割合はどちらもチャネルを高発現にすることによって増加した。(3)高濃度のATP(100microM)により弱い内向き整流性電流を呈する発現密度の高い細胞に、低濃度ATP(3microM)を投与するとその内向き整流性は増強した。(4)[ATP]・応答関係のKdの値は発現密度と負の相関を示した。Hill係数は発現密度に相関なく一定値2であった。(5)ポア上部の点変異I328Cにより上記の発現密度に依存したポアの性質の変化がほぼ消失した。以上の結果をまとめると、「P2X_2受容体の内向き整流性等の性質は、膜上に存在する「開状態」のチャネルの密度に依存して動的に変化する。」と表現できる。 | KAKENHI-PROJECT-14657010 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14657010 |
開状態におけるイオンチャネルポアの柔軟性の分子基盤 | 我々は「ATP投与により開状態に入った、ごく近傍にあるP2X_2受容体チャネル間の相互作用によりポア上部においてなんらかの構造変化が起こり、ポアの性質やリガンド感受性が変わる。」というイメージでデータを説明できると考えている。 | KAKENHI-PROJECT-14657010 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14657010 |
除染作業員の被ばく影響等長期的健康管理のためのコホート構築と健康課題の分析 | 飯舘村振興公社およびグループ企業(期間中のべ18社)を包括する健康管理データベースを作成し、除染事業が開始された2013年から2018年までの個人属性、健康診断結果および外部被ばく線量について入力作業を行った。内部被ばく線量については、ほぼ全てが検出下限以下であったため、入力対象から除外した。概ね7割程度となる455人のデータがデータベースに入力された。得られたデータのうち、すべてのデータが入力された2016年度に従事した男性242人の外部被ばく線量について、分析を実施した。2016年4月から12月までの期間を通して作業した人(130人)と、中途入退場者(112人)の線量を比較した結果、多くの月で中途入退場者の線量が低くなっていた。また、期間を通して作業した人の業務を事務局、表土除去、除去表土の輸送、仮置き場への設置、非汚染土壌の搬入の5種類に分類し、作業内容別の外部被ばく線量の分析を行った。その結果、事務局(中央値0.64mSv)および非汚染土壌の搬入(中央値0.71mSv)は期間全体の被ばく線量が低い結果となり、除去表土の輸送(中央値0.96mSv)が被ばく線量が最も高くなった。その他の作業の被ばく線量は表土除去(中央値0.88mSv)、仮置き場への設置(中央値0.79mSv)であり、どちらも事務局および非汚染土壌の搬入と比較し有意に線量が高い結果となった。現在は比較的低線量下での除染作業については必ずしも個人線量測定は必須となっていないが、作業内容によっては被ばく線量に大きな差が生じており、長期的な健康影響を分析するためには個人線量測定が必要となることが示唆された。この結果について、International Congress on Occupational Health(ICOH2018 Dublin)にて発表した。飯舘村振興公社における除染作業員健康管理に関するデータベースを作成し、一部のデータ入力を開始した。データベースについては福味商事に作成および今後の保守管理を依頼した。対象者は飯舘村振興公社を一次下請として除染作業に従事している飯舘村振興公社および下請企業群の従業員である。飯舘村振興公社が全員の労務管理を行っており、グループ企業として一括して全てのデータを管理、保管している。過去に所属した人も含め、人数は300人ほどであった。今後順次紙ベースで保存されているデータについて、電子データに移行する。現在所属している人については書面による説明を行い同意を、過去に所属していた人については情報公開を行っている。入力する情報は基本属性(年齢、性別、就労期間)、一般健康診査および電離健康診査の所見(身長、体重、腹囲、BMI、血圧、血糖(HbA1c)、脂質(HDLC、LDLC、TG)、肝機能(AST、ALT、γ-GTP)、血液一般検査(赤血球量、白血球量、白血球分画、Hb)、既往歴、治療歴)、労働環境(業務内容(保有資格、首都する労働内容、実労働時間)、作業現場における肩書(作業主任者であるか否か)、労災記録)および被ばく線量(内部被ばく線量および外部被ばく線量)である。被ばく線量は内部については3ヶ月毎に測定するWholebody counterの値、外部被曝はポケット線量計にて測定した数値が1ヶ月毎に出力されている。このうち、外部被曝線量について、1ヶ月毎の値を入力している。生活歴(飲酒、喫煙、運動)および治療歴については、個別に聴取を行っている。データベースの構築は予定通り完了した。データについては膨大な分量であり、今後外部委託などを行い短縮できる予定である。昨年度作成したデータベースに、飯舘村振興公社が管理している、当該企業及び下請企業群の従業員の健康診断データ及び被ばく線量データの入力作業を継続した。データは除染事業が開始した平成24年度からのデータが紙ベースで保管されているため、現在から遡って過去に所属していた従業員も含め入力を継続している。平成28年12月31日現在通算して414人が在籍しており、年度別にそれらの情報を整理している。結果をデータベース化したことにより、現場での健康管理についても面談情報、健康管理の経緯が時系列で分かりやすくなった。また、検査にて異常値を認めたものの抽出作業が用意になり、受診勧奨および受診結果の確認作業が円滑に進むようになった。当該企業により、退職した職員の追跡方法についても確認を行っている。作業員はその時期必要とされる作業に応じて特有の技能を持った者を全国各地から雇用している。企業単位での雇用であり、引き続きその企業に所属している者が多いことを確認した。得られたデータの一部を分析して、就業の形態による健康状態の差、被ばく線量が作業内容によって差が生じていることが明らかになり、それらの内容について学会発表を行った。今後は更にデータの整理を進め、結果について論文化する予定である。入力作業について、一部外部委託により大規模な情報の取り込みを行うことができた。飯舘村振興公社およびグループ企業(期間中のべ18社)を包括する健康管理データベースを作成し、除染事業が開始された2013年から2018年までの個人属性、健康診断結果および外部被ばく線量について入力作業を行った。内部被ばく線量については、ほぼ全てが検出下限以下であったため、入力対象から除外した。 | KAKENHI-PROJECT-16K19275 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K19275 |
除染作業員の被ばく影響等長期的健康管理のためのコホート構築と健康課題の分析 | 概ね7割程度となる455人のデータがデータベースに入力された。得られたデータのうち、すべてのデータが入力された2016年度に従事した男性242人の外部被ばく線量について、分析を実施した。2016年4月から12月までの期間を通して作業した人(130人)と、中途入退場者(112人)の線量を比較した結果、多くの月で中途入退場者の線量が低くなっていた。また、期間を通して作業した人の業務を事務局、表土除去、除去表土の輸送、仮置き場への設置、非汚染土壌の搬入の5種類に分類し、作業内容別の外部被ばく線量の分析を行った。その結果、事務局(中央値0.64mSv)および非汚染土壌の搬入(中央値0.71mSv)は期間全体の被ばく線量が低い結果となり、除去表土の輸送(中央値0.96mSv)が被ばく線量が最も高くなった。その他の作業の被ばく線量は表土除去(中央値0.88mSv)、仮置き場への設置(中央値0.79mSv)であり、どちらも事務局および非汚染土壌の搬入と比較し有意に線量が高い結果となった。現在は比較的低線量下での除染作業については必ずしも個人線量測定は必須となっていないが、作業内容によっては被ばく線量に大きな差が生じており、長期的な健康影響を分析するためには個人線量測定が必要となることが示唆された。この結果について、International Congress on Occupational Health(ICOH2018 Dublin)にて発表した。引き続き、データの入力を実施する。服薬の内容が変更されている作業員も存在するので、その変更履歴も反映できるよう、今後データベースの修正を行う予定である。残りのデータ入力を行うと共に、得られたデータを検討して今後の追跡計画などを立案する。また、現時点でのデータをベースラインとして分析し、それらの結果について学会発表、論文化を進めていく。年度末の学会出張があり、若干の余裕を持って見積もったため、その差額が次年度への繰越となった。本研究に関連した他の助成金が得られたため、科研費からの支出が減少した。また、次年度国際学会での発表があるため次年度へ多く繰り越すことになった。本来次年度以降に予定していた予算を急遽繰り上げたものであるため、従来の使用予定に充てる。 | KAKENHI-PROJECT-16K19275 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K19275 |
高周期14族元素-遷移金属メタラサイクルを用いる位置選択的元素配列と結合活性化 | 本研究では、ケイ素、ゲルマニウム、スズの高周期14族元素で構成される環状錯体(メタラサイクル)の新合成方法の確立、及び、環構造に由来する特異な反応を調査した。その結果、3,4量体オリゴゲルマンを合成する方法、不飽和有機分子の挿入反応等、合成化学上、重要かつ新しい知見を見出した。ニッケル触媒による有機ケイ素化合物の脱水素重合は9-10量体の均一な分子量をもつ環状オリゴシランを与えた。本研究では、ケイ素、ゲルマニウム、スズの高周期14族元素で構成される環状錯体(メタラサイクル)の新合成方法の確立、及び、環構造に由来する特異な反応を調査した。その結果、3,4量体オリゴゲルマンを合成する方法、不飽和有機分子の挿入反応等、合成化学上、重要かつ新しい知見を見出した。ニッケル触媒による有機ケイ素化合物の脱水素重合は9-10量体の均一な分子量をもつ環状オリゴシランを与えた。遷移金属-炭素結合を含む環状錯体(メタラサイクル)は1970年代頃からその化学的性質を明らかにする研究が精力的におこなわれ、オレフィンのメタセシス、オリゴメリゼーション等の重要な均一系触媒反応の開発までに至った。これに比べて、炭素と同族の高周期14属元素であるケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)を環成分にもつメタラサイクルの報告の例はほとんどない。申請者は二座リン配位子をもっパラジウム及び白金錯体と二級ゲルマニウムとの反応より、四原子ゲルマニウムで構成される五員環メタラサイクルの合成反応を見出した。ここでの反応は金属錯体上で脱水素反応を伴い、連続的なGe-Ge結合形成反応が進行している。白金錯体ではその中間構造の1つである四員環錯体の合成・単離が可能であり、五員環錯体への環拡大反応がゲルミレン(:GeR_2)挿入過程を経て進行することを提案した。これらメタラサイクルは一級ゲルマンと作用させることで脱金属反応が進行し、直鎖状の三、四量体のオリゴゲルマンを単離した。白金やパラジウムでは安定なメタラサイクルを形成するという事実を基に、ニッケル錯体を用いて触媒反応へと応用すると、同様なGe-Ge結合形成反応が進行する。その生成物は様々な分子量をもつポリゲルマンではなく、三、四量体を主生成分とするオリゴゲルマンであった。一般に、三、四量体のオリゴゲルマンの合成は、段階的なGe-Ge結合形成により多段階反応を必要とするが、本研究の遂行により、簡便なオリゴゲルマン合成手法を見出したことになる。本研究では、ケイ素、ゲルマニウム等の14族元素で構成される環状錯体(メタラサイクル)の合成方法の確立及び環状構造に由来する特異な反応性を調査した。21年度では、四原子ゲルマニウムで構成される環状白金・パラジウム錯体の合成方法を確立した。二級ゲルマンのGe-H結合の脱水素反応、Ge-Ge結合形成を通じて、環状オリゴゲルマン錯体を高収率で得た。22年度では、ゲルマニウム上にジアルキル基を有するメタラサイクルの合成、スズを環成分に含む環状オリゴスタナン錯体の合成を新規に取り組んだ。立体障害が小さい置換基の導入はアルキンとの反応に対して顕著な相違が見出された。5員環オリゴゲルマン錯体とアルキンとの反応は、Pt-Ge結合へC≡C結合の挿入反応を通じて環拡大生成物を与えた。これは従来から提案されていた触媒サイクルを直接的に実証したものであり、反応機構に関する研究として重要な意義がある。二級スズ化合物のSn-H結合は反応性に富み、Pd(0)錯体との反応から一挙に類似構造の5員環オリゴスタナンを与えた。得られたスタナサイクルは熱安定性が低く、環構造により自由度が減少したSn-Sn結合は容易に開裂しやすいと理解される。ニッケル触媒による一級ヒドロシランの脱水素カップリング反応は、10量体程度の環状オリゴシランを与えた。各種の分析測定結果、末端構造が存在しないことを明確にした。上記のメタラサイクル構造は環状ケイ素化合物の合成反応における中間体の一つとして提案された。このようにして、本研究ではこれまで研究例の少ない14族元素-環状錯体の合成法を確立し、そのメタラサイクル構造が14族元素を含むオリゴマー合成に関連性を示すことができた。 | KAKENHI-PROJECT-21750057 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21750057 |
文法・語彙シラバスに基づいた総合中級日本語教材の作成 | 本研究は、中級レベルの日本語教材の開発のための基礎的研究である。現行の中級レベル教材および教育を、文法・語彙シラバスという観点を中心に4技能の面から多角的に見直すとともに、問題の改善にむけた提案を行った。また、年少学習者の支援など近年ニーズの高まりが見られる領域についても考察した。1.初級から中級にかけての文法項目についての研究初級文法教育の見直しと初級から中級への橋渡しのために、文法の「振り返り」学習の必要性を指摘した。また、具体的な取り組みとしてアラブ人学習者の日本語文法習得における困難点を考察した。2.読解教材についての研究日本語と文字体系が異なる言語を母語とする学習者が日本語のテクストを読む際に生じる感覚と心理を考察した。また、学習者の心理的負担を軽減し、正確な読みを促進する読解タスクのあり方を提案した。3.作文教材についての研究現行の中級レベルの作文教材を検討し、学習者に見られる問題点から、特に文法的に「正しく書く」訓練を強化した教材の必要性を指摘した。一方、作文の内容面については、構想・構成段階の支援としてアイディアシートを用いる方法を提案した。4.待遇表現の指導についての研究中上級レベル学習者の待遇表現の使用実態を接触場面における自然談話の映像データにより分析することにより、現行の中級レベル日本語教材の待遇表現の扱い方の問題点を指摘し、シラバス構築にむけた提言を行った。5.外国籍児童生徒の支援にむけての研究外国籍児童生徒のための教材作成を目指し、1)地域言語の特徴、2)地域言語を踏まえた生活言語教育、および、3)生活言語と学習言語の結びつけの3点につき、考察・報告を行った。本研究は、中級レベルの日本語教材の開発のための基礎的研究である。現行の中級レベル教材および教育を、文法・語彙シラバスという観点を中心に4技能の面から多角的に見直すとともに、問題の改善にむけた提案を行った。また、年少学習者の支援など近年ニーズの高まりが見られる領域についても考察した。1.初級から中級にかけての文法項目についての研究初級文法教育の見直しと初級から中級への橋渡しのために、文法の「振り返り」学習の必要性を指摘した。また、具体的な取り組みとしてアラブ人学習者の日本語文法習得における困難点を考察した。2.読解教材についての研究日本語と文字体系が異なる言語を母語とする学習者が日本語のテクストを読む際に生じる感覚と心理を考察した。また、学習者の心理的負担を軽減し、正確な読みを促進する読解タスクのあり方を提案した。3.作文教材についての研究現行の中級レベルの作文教材を検討し、学習者に見られる問題点から、特に文法的に「正しく書く」訓練を強化した教材の必要性を指摘した。一方、作文の内容面については、構想・構成段階の支援としてアイディアシートを用いる方法を提案した。4.待遇表現の指導についての研究中上級レベル学習者の待遇表現の使用実態を接触場面における自然談話の映像データにより分析することにより、現行の中級レベル日本語教材の待遇表現の扱い方の問題点を指摘し、シラバス構築にむけた提言を行った。5.外国籍児童生徒の支援にむけての研究外国籍児童生徒のための教材作成を目指し、1)地域言語の特徴、2)地域言語を踏まえた生活言語教育、および、3)生活言語と学習言語の結びつけの3点につき、考察・報告を行った。本年度は、文法・語彙シラバスの構築のための作業を中心に進め、それと並行して、視聴覚教材作成の素材となるデータの収集作業を行った。また、年少者を含む、地域の日本語学習者の援助を目指す研究や情報収集を行った。1.文法・語彙シラバスの構築のための研究・作業(1)中級レベル以上の文法で何が問題となるかについて,「モダリティ,テンス,とりたて,複文,待遇表現」の各カテゴリーを中心に洗い出し,文法シラバスの検討を行った。結果の一部は研究業績にまとめて刊行した。(2)中級学習者の作文の分析を行い、その中に出てくる問題点を、文法・語彙・表記の各レベルに分けて分析・考察した。(3)中・上級学習者のスピーチについて、その原稿および口頭発表に見られる問題点を洗い出し、整理・分析した。2.視聴覚教材の素材の収集作業中上級レベルの視聴覚教材作成に必要な場面設定を行い,その映像素材をテレビ映像等からデジタルデータで収集し,編集・文字化する作業を行った。これを来年度以降作成する視聴覚教材の素材として用いる。3.地域の日本語教育に関わる研究・活動(1)外国籍住民が多い岐阜県で必要とされる地域言語の語彙や文法を、実際の運用の中から抽出・分析し、理論的な体系をたてて提示する試みを行った。結果は研究業績にまとめて刊行した。また、地域で受け入れる日本語話者の言語に対しても、フォリナートークの効果的運用という観点から考察を行った。結果は研究業績にまとめて刊行した。(2)京都市の公立小・中学校における入国児童生徒の日本語教育協力推進プロジェクト(京都外国語大学主催)に参加し,現場のボランティア教員から問題点や必要とされる日本語教材についての情報を収集した。本年度は、昨年度に引き続き、文法・語彙シラバスの構築のための作業を進めた。それと並行して、視聴覚教材の素材となるデータの収集、さらに、年少者を含む地域の日本語学習者の援助を目指す研究や情報収集を行った。1.文法・語彙シラバスの構築のための研究・作業(1)中級レベル以上の文法で何が問題となるかについて、とりたて助詞、複文、名詞修飾、モダリティ、待遇表現を中心に考察し、文法シラバスの検討を行った。 | KAKENHI-PROJECT-15520334 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15520334 |
文法・語彙シラバスに基づいた総合中級日本語教材の作成 | 結果の一部は研究業績にまとめた。(2)自然な話し言葉のデータを収集するため、主に関東地方在住者を中心とした談話を採集し、文字化した。この談話コーパスを素材として、さまざまな観点から分析が可能になることが期待される。(3)中級学習者の作文の分析を行い、その中に出てくる問題点を、文法・語彙・表記の各レベルに分けて分析・考察した。(4)日本語教育の電子化教材、インターネット教材の調査を行った。2.視聴覚教材の素材の収集作業昨年度に引き続き,中上級レベルの視聴覚教材作成に必要な映像素材の収集と文字化を行った。今年度は待遇表現場面のデータを収集するため,非日本語母語話者と日本語母語話者の接触場面での自然談話(1談話あたり約30分)をビデオで撮影し,文字化する作業を行った。収集したデータは来年度以降作成する視聴覚教材(デジタルデータ)の素材として用いる。3.地域の日本語教育に関わる研究・活動(1)岐阜地域における日本語教育に役立つ文法および語彙について、大学生を対象に調査を続けた(別記報告書参照)。また、大学生に対し、地域で生活する留学生との交流を促し、その際にどのような文法・語彙を用いた日本語が有用であるかを、実践プログラムを構築し考察した。(2)京都市の公立小・中学校における入国児童生徒の日本語教育協力推進プロジェクトを昨年度に引き続き行った。今年度は,特に中上級の高校の生徒が何を問題とするかに着目し教育現場の観察を行った。活動報告は,下記の報告書にまとめられている。(著者は京都外国語大学学生,指導は日本語学科教員)参考:「2004年度日本語指導ボランティア報告」2004年12月,京都外国語大学日本語学科本年度は、以下のような研究・作業・活動を行った。1.文法・語彙シラバスの構築のための研究・作業(1)10分程度の話し言葉を22本収集し、文字化した話し言葉データベースを作成した。このデータは、話し言葉で多く見られる語彙や話し言葉特有の表現、書き言葉と異なる振る舞いを見せる文法項目、話し言葉に見られる談話構造などについて、今後の分析および、教材作りの材料となるものである。(2)書き言葉を基本に「テ形」のデータを収集し、先行研究を元に分類した。テ形は動詞の活用形の中で最も基本となるものであり、従来の研究において指摘されていないいくつかの注目すべき用法が見つかった。(3)敬語をビジネス場面における「ビジネス日本語」として見た場合,中上級の学習者はどんなことを習得すべきかを分析するため、ビジネス場面で日本語学習者が直面する問題をケーススタディとして収集した。(4)中上級の学習者を対象に談話収集,アンケート調査を実施し,「とりたて」に関する研究を継続している。結果の一部は研究業績にまとめた。(5)昨年度に引き続き中級学習者の作文にみられる問題点の整理・分析を行うとともに、従来の作文教材を検討し、シラバス、文法説明・練習の方法などに見られる問題点を考察した。2.地域の日本語教育に関わる研究・活動(1)昨年度に引き続き方言における日本語教育教材開発を進めつつ、言語理論面での裏付けを強固なものにするための研究をおこなった。 | KAKENHI-PROJECT-15520334 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15520334 |
野生アジアゾウにおける集団の意志決定:老齢個体の知識は活用されているか | 飼育下のアジアゾウを対象とした行動実験によりその高度な知性の存在が証明されてきたが、知性が野生のどのような場面で活用されているかは明らかにされていなかった。ゾウは哺乳類の中で並外れた記憶力を持つと言われている。申請者は、知識・経験量が豊富だと考えられる年長個体の知識が集団で活用されているかを調べた。1.危険を伴う集団移動:野生アジアゾウの母系集団が車通りの多い道路を渡るときの行動ををオトナとコドモで比較した。道路を一番先に渡り始めていたのはオトナであったが、道路上でコドモはオトナを抜かしていた。コドモは道路を渡り始めるタイミングを自ら決めず、経験豊富なオトナに追従していたと考えられる。本研究に関する論文が学術雑誌Behaviourに受理された。2.日常的な場面でみられる集団移動:野生アジアゾウの日常的におこなわれる集団移動において、オトナとコドモの行動を比較するべく、スリランカのウダ・ワラウェ国立公園の水場にて母系集団の観察を行った。集団が水場に訪れたとき、(i)水場に最初に到着した個体、休憩を終えて水場から出発をする際に(ii)出発方向へ体を向けた個体、(iii)出発方向へ移動し始めた個体を記録した。(i)(iii)全てにおいてオトナが行動開始者となった割合が高かった。これらの研究結果より、野生アジアゾウの集団移動において、経験豊富であるオトナが集団を先導することが明らかとなった。本研究成果を国際学会で発表した。現在、論文を執筆中である。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。ゾウは哺乳類の中で並外れた記憶能力を持つと言われている。また、アジアゾウの寿命は約60年と長い。知識・経験量は年齢とともに増えるために、老齢個体の知識・経験量は他のメンバーよりも大きいと推察される。しかし、実際にその知識が野生でどのように活用されているのかは解明されていなかった。これまではヒトに近縁である霊長類の認知能力が研究されてきたが、ヒトと系統的に遠いアジアゾウの記憶能力について調べることで、ヒトの知性が進化してきた生態学的要因を解明するうえでの重要な手がかりを得られると期待される。アジアゾウの行動圏は100 km2以上であり、常に資源を求めて集団で移動する。申請者は、集団の移動で見られる各個体の行動を調べ、老齢個体の行動が他のメンバーの行動に影響を与えているかを調べている。昨年度は、おもに危険を伴う場面における集団移動に関する研究を行った。野生アジアゾウが移動をする際に、森林を分断する車道を渡ることがあるが、その際に車から妨害を受けることが頻繁にある。申請者は、ゾウの集団が道路を渡る時の行動をオトナとコドモで比較した。その結果、道路を渡る時に尻尾を上げていた個体の数はオトナよりもコドモの方が多い傾向にあった。これより、オトナよりもコドモの方が興奮状態にあったと示唆された。道路を一番先に渡り始めたのはオトナであった。本研究より、集団の危険を伴う移動において、オトナはコドモよりも経験量がより多いために興奮状態になく、一番先に渡っていたことが示唆された。また、集団の日常生活における移動に関する研究も進めた。スリランカのウダ・ワラウェ国立公園に5ヶ月間滞在し、野生アジアゾウの集団のビデオ観察を行った。今後、収集したデータについて解析を行う。集団の危険を伴う場面における移動の研究については、昨年度に研究結果をまとめ国際学術誌に投稿した。掲載までには至らなかったが、小改訂要請を受けた。今年度中に受理されると期待される。また、日常場面での移動に関する研究については、昨年度に5ヶ月間かけてデータ収集をすることができた。飼育下のアジアゾウを対象とした行動実験によりその高度な知性の存在が証明されてきたが、知性が野生のどのような場面で活用されているかは明らかにされていなかった。ゾウは哺乳類の中で並外れた記憶力を持つと言われている。申請者は、知識・経験量が豊富だと考えられる年長個体の知識が集団で活用されているかを調べた。1.危険を伴う集団移動:野生アジアゾウの母系集団が車通りの多い道路を渡るときの行動ををオトナとコドモで比較した。道路を一番先に渡り始めていたのはオトナであったが、道路上でコドモはオトナを抜かしていた。コドモは道路を渡り始めるタイミングを自ら決めず、経験豊富なオトナに追従していたと考えられる。本研究に関する論文が学術雑誌Behaviourに受理された。2.日常的な場面でみられる集団移動:野生アジアゾウの日常的におこなわれる集団移動において、オトナとコドモの行動を比較するべく、スリランカのウダ・ワラウェ国立公園の水場にて母系集団の観察を行った。集団が水場に訪れたとき、(i)水場に最初に到着した個体、休憩を終えて水場から出発をする際に(ii)出発方向へ体を向けた個体、(iii)出発方向へ移動し始めた個体を記録した。(i)(iii)全てにおいてオトナが行動開始者となった割合が高かった。これらの研究結果より、野生アジアゾウの集団移動において、経験豊富であるオトナが集団を先導することが明らかとなった。本研究成果を国際学会で発表した。現在、論文を執筆中である。 | KAKENHI-PROJECT-16J05470 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J05470 |
野生アジアゾウにおける集団の意志決定:老齢個体の知識は活用されているか | 昨年度に収集したデータの解析を行い、結果をまとめ、学会での発表および論文執筆を行う予定である。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-16J05470 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J05470 |
ハロシランをヒドロシランに変換する遷移金属触媒反応系の開発 | Si-H結合は反応性が高いため、ケイ素化合物の変換反応において重要である。このSi-H結合を生成するために、従来はSi-Cl結合をLiAlH4などの強い還元剤を用いているが、LiAlH4は還元力が強すぎるため目的部位以外も還元してしまう。本研究ではよりマイルドな還元剤であるNaBH4を用いてSi-Cl結合をSi-H結合に変換する反応を検討し、アセトニトリルあるいはTHFを反応溶媒として用いると目的のSi-Cl部位のみが還元されることを見出した。特にアセトニトリルを用いた場合には、室温で15分間反応させるだけで反応が完結することが分かった。C-H結合に比べて、Si-H結合は反応活性が高いため、ヒドロシランはケイ素化合物変換反応において重要な化合物である。現在はSi-Cl結合をLiAlH4などの強い試剤で還元してSi-H結合を形成しているが、LiAlH4を合成するのに多大なエネルギーが必要であるため、グリーンケミストリーの観点から好ましい反応とは言い難い。また、LiAlH4は非常に強い還元剤であるため、目的以外の部位も容易に還元してしまうため、官能基を有するシランには適応できないという問題点もある。本研究ではSi-Cl結合をSi-H結合に変換する有用な反応の開発を行う。平成27年度は、LiAlH4に代わる還元剤としてNaBH4が使用可能であることを見出した。NaBH4はLiAlH4に比べるとマイルドな還元剤であり、他の官能基を容易には還元しないことが知られている。しかし、NaBH4を用いた反応によりSi-Cl結合をSi-H結合に変換する報告例は今までになかった。我々は、反応溶媒としてTHFおよびアセトニトリルを用いることにより、容易にSi-H化合物が生成することを見出した。特にアセトニトリルを用いた場合には室温で15分間反応させるだけでSi-H化合物が収率良く生成することを見出した。この反応はPh2MeSiCl, Ph3SiCl, Et3SiCl, Ph2SiCl2, (n-C6H13)2SiCl2,(PhC2H4)SiCl3など、多くのクロロシランに適応可能であることも分かった。また、ジシランである(ClMe2Si)2も(HMe2Si)2に変換可能であることも分かった。クロロシランをヒドロシランに還元するには現在はLiAlH4が使用されている。しかしLiAlH4は還元力が強く、望まない官能基をも還元してしまうという問題点がある。また、値段が高い、後処理に難がある、などの問題点も抱えていた。本研究では取り扱いが容易で、安価で、望まない官能基を還元しにくいNaBH4を還元剤に用い、反応溶媒にアセトニトリルを用いることで、クロロシランをヒドロシランに室温という温和な条件下で還元できることを見出した。これは実用面で大きな進展と言える。また、種々のモノクロロシラン、ジクロロシランに適応可能であり、加えて、1,2ジクロロジシランとの反応でもSi-Si結合を保持したまま還元反応が進行することも明らかにした。これにより、クロロシランのヒドロシランへの変換反応に大きな進展をもたらすことができた。Si-H結合は対応するC-H結合に比べて反応性が高いため、ケイ素化合物の変換反応において重要な結合である。このSi-H結合を生成するために、従来はSi-Cl結合をLiAlH4などの強い還元剤を用いてSi-Hへ変換しているが、LiAlH4を合成するには多大なエネルギーが必要であることを考えると、グリーンケミストリーの観点から好ましい反応とは言い難い。加えて、LiAlH4は強い還元剤であるため、目的部位(Si-Cl部位)以外の部位も容易に還元してしまうため、官能基を有するケイ素化合物には適応できないという問題点もある。本研究ではSi-Cl結合をSi-H結合に変換する有用な反応系の開発を行った。NaBH4はLiAlH4に比べてマイルドな還元剤であり、多くの官能基を容易には還元しないことが知られている。そしてNaBH4がSi-ClをSi-Hに変換する反応は今までに知られていなかった。本研究では反応溶媒にアセトニトリルあるいはTHFを用いることで、NaBH4が容易にSi-ClをSi-Hに還元できることを見出した。特にアセトニトリルを用いた場合は、室温で15分間反応させるだけでSi-Cl部位が収率良くSi-Hに変換できることを見出した。この反応はPh2MeSiCl, Ph3SiCl, Et3SiCl, Ph2SiCl2, (n-C6H13)2SiCl2,(PhC2H4)SiCl3など、多くのクロロシラン化合物に適応可能であることも分かった。また、ジシランである(ClMe2Si)2も(HMe2Si)2に変換可能であることも分かり、この反応がSi-Cl結合をSi-H結合に変換するのに有用であることが分かった。Si-H結合は反応性が高いため、ケイ素化合物の変換反応において重要である。このSi-H結合を生成するために、従来はSi-Cl結合をLiAlH4などの強い還元剤を用いているが、LiAlH4は還元力が強すぎるため目的部位以外も還元してしまう。本研究ではよりマイルドな還元剤であるNaBH4を用いてSi-Cl結合をSi-H結合に変換する反応を検討し、アセトニトリルあるいはTHFを反応溶媒として用いると目的のSi-Cl部位のみが還元されることを見出した。 | KAKENHI-PROJECT-15K13662 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K13662 |
ハロシランをヒドロシランに変換する遷移金属触媒反応系の開発 | 特にアセトニトリルを用いた場合には、室温で15分間反応させるだけで反応が完結することが分かった。高価で反応性が高いLiAlH4に代わって、比較的安価で取扱いの容易なNaBH4が、クロロシランをヒドロシランに還元できる反応条件を見出すことができた。この反応はいくつかのクロロシランに適応可能であることが分かってきたが、今後はさらに種々のクロロシランへの適応範囲の拡大を行う。加えて、遷移金属錯体を触媒に用いて、クロロシランと水素分子との反応によりヒドロシランが生成する反応系の開発を行っていく。平成27年度にもいくつかの反応を試みてたが、今までのところ望む反応系は見い出せていない。この触媒系を完成させるには、錯体触媒が水素分子の活性化を行い、またSi-Cl結合の活性化も行う能力を持っていることが必要となる。また、金属配位圏でシリル配位子とヒドリド配位子が選択的にカップリングする必要がある。これらの条件を満足する錯体の探索が必要であると考えている。今後も鉄錯体に注目し、配位子を工夫するなどして、望みの触媒反応系の開発を行っていく予定である。錯体化学購入した物品が、予定していた額より少し安価で入手できたため。物品の購入費としての使用を予定している。 | KAKENHI-PROJECT-15K13662 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K13662 |
マンガ/コミックの「読者共同体」に関する日米比較による実証的アプローチ | 日米のマンガおよびコミックの愛好者が集うイベント(コミックマーケットおよびコミック・コンベンション)を主要な事例としながら、両国におけるアマチュアとプロとの境界の差異について比較検討した。日本においては「読者共同体」のコード(約束事)がアマ/プロ問わず共有されやすいのに対して、アメリカでは両者の境界が比較的強く引かれていること、およびその背景として文化産業としてのマンガ/コミック出版社の歴史的な形成過程が存在することを実証的に明らかにした。日本とアメリカの「マンガ読者共同体」を実証的に比較検討するという目的のもと、平成25年度はアメリカのコミックの歴史や産業構造、「ファンダム」と呼ばれる愛好者集団についての文献を重点的に渉猟し、調査研究のベースとなるアメリカン・コミックの状況把握に努めるとともに、<大衆文化>における作り手と送り手との関係に関連した文献についても調査を進めた。平成25年10月上旬には、ニューヨークで開催された「ニューヨーク・コミコン」への視察を行い、アメリカのコミック愛好者たちとコミックの作り手との関係を実地調査した。また、アメリカのコミックコンベンションとの比較を行うため、同年12月には東京・有明で開催された「コミック・マーケット」への視察も行った。これらの視察の結果、日本とアメリカとでは「ファン」による行動に大きな違いが見られることが分かった。同人誌を作成し、二次創作と呼ばれる「オリジナル」に刺激を受けた創作活動(二次的とはいえ、「作り手」となること)に日本のファンが向かう傾向が少なからず見られるのに対し、アメリカではコンベンション形式の場所では、同じコミックの「作り手」になることよりも、サイン会やワークショップへの参加など、「作り手/受け手」の差異を敢えて越境せず、「受け手(消費者)」としての様々なコミックへの関わり方に重点を置いている。「マンガ/コミック」という、類似の表現構造を持つ娯楽であっても、それが置かれた歴史的・社会的状況に愛好者の行動様式は多分に影響されており、特に著作権をめぐる状況やコミック産業の歴史の特殊性に拠っていることが判明したことは、今年度の調査研究の大きな成果である。日本とアメリカの「マンガ読者共同体」を実証的に比較検討するという目的のもと、平成26年度は日本のマンガの歴史や産業構造、さらにマンガ愛好者によるイベントの歴史についての文献を重点的に渉猟し、平成25年度に調査・分析したアメリカのコミック事情との比較検討するための素材を集積した。また、平成26年8月および12月に東京・晴海で開催されたコミックマーケットへの視察旅行を行い、マンガ愛好者によるファンジン(同人誌)や、主催者であるコミックマーケット準備局が発行するパンフレット等を収集し、前年度にアメリカ視察旅行で得られた知見や文献調査の結果と比較考量する素材を得られたことで、「マンガ読者共同体」の日米のありようの違いと共通点についての知見をさらに深めることができた。さらに、「ファンコミュニティ」の実態調査と並行して、日本とアメリカ双方の「大衆文化/ポピュラーカルチャー」の社会的布置について社会学や文化史の観点からの研究についても検討を行った結果、マンガ/コミックの「読者共同体」は単独で存在するのではなく、隣接する分野のファン・カルチャーとの相互浸透、およびマンガ/コミックが産業的に自律する以前のメディア環境との段階的な接合を経て現在の形態に至っているとの知見を得られたことは、平成26年度の調査・研究の大きな成果である。日本とアメリカの「マンガ読者共同体」を実証的に比較検討するという目的のもと、平成27年度は日本のマンガの歴史や産業構造、さらにマンガ愛好者によるイベントの歴史についての文献を重点的に渉猟し、平成25年度に調査・分析したアメリカのコミック事情との比較検討するための素材を集積した。特に平成27年度は、開催からちょうど40周年にあたる日本最大規模の同人誌即売会「コミックマーケット」について重点的に分析を行った。そのために8月および12月に東京・晴海で開催されたコミックマーケットへの視察旅行を行い、マンガ愛好者によるファンジン(同人誌)や、主催者であるコミックマーケット準備局が発行するパンフレット等を収集した。これらの研究の成果のひとつとして、見世物的コンベンションではなく「全員参加型」のイベントとして定着した「コミックマーケット」の歴史的・社会的意味について考察した単著論文「マンガに集う/マンガで集う」(浪田陽子・柳澤伸司・福間良明編『メディア・リテラシーの諸相』ミネルヴァ書房、2016年3月刊に所収)を執筆した。日本のマンガ関連のイベントへの視察旅行と資料の収集、さらに理論的な文献の調査・分析は順調に進められている。なお、平成27年度に執筆した論文の作成過程において、アメリカのコミック産業や社会的な文化事情などについての資料収集および研究がさらに必要であることが判明したため、一年間の補助事業期間延長を申請したが、最終年度にあたる平成28年度の総括的な調査・研究に向けての準備は概ね順調に進んでいる。日本とアメリカの「マンガ読者共同体」を実証的に比較検討する研究の最終年度として、平成28年度は、日本およびアメリカのマンガ/コミックの歴史や産業構造、さらにマンガ愛好者によるイベントの歴史について渉猟してきた文献・資料を整理し、平成25年度に調査・分析したアメリカのコミック事情との比較検討を進めた。8月および12月に東京・晴海で開催されたコミックマーケットへの視察旅行も過年度同様に行い、マンガ愛好者によるファンジン(同人誌)や、主催者であるコミックマーケット準備局が発行するパンフレット等を収集した。「ファンカルチャー」と一言で言っても、日本とアメリカとではマンガ/コミックの表現が異なるだけでなく、それを読者が受け取る環境(出版や流通のありかた)も大きく異なっている。 | KAKENHI-PROJECT-25380714 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25380714 |
マンガ/コミックの「読者共同体」に関する日米比較による実証的アプローチ | 「読者共同体」のありようも、それに伴って大きく異なる。日本のコミックマーケットが、アマチュアによる「描くー読む」のフラットな関係性を前提に40年の歴史を紡いできたのに対し、アメリカのコミック・コンベンションが「有名人」の招待を企画の目玉として、イベントの場が作り手と受け手との距離を「縮める」場として機能してきた/いるのは、日米のマンガ/コミックをめぐる情報環境の違いの一端を象徴的に示す事例である。とはいえ、アメリカにおいてもアマチュアのコミック作成やファン同士の交流は(日本とは決して同じではないとはいえ)長い歴史を持っていることも事実である。20世紀に発展した「出版(プリント)」というメディア形態が「読者共同体」の編成にどう作用したのかについて、その一端を明らかにした本研究は、ネット時代となり、作り手と読者(消費者)との関係性が大きく変化しつつある現代社会の<趣味・嗜好の共同体>のあり方を検討する土台を提供することとなるであろう。日米のマンガおよびコミックの愛好者が集うイベント(コミックマーケットおよびコミック・コンベンション)を主要な事例としながら、両国におけるアマチュアとプロとの境界の差異について比較検討した。日本においては「読者共同体」のコード(約束事)がアマ/プロ問わず共有されやすいのに対して、アメリカでは両者の境界が比較的強く引かれていること、およびその背景として文化産業としてのマンガ/コミック出版社の歴史的な形成過程が存在することを実証的に明らかにした。マンガ関連のイベントへの視察旅行と資料の収集、さらに理論的な文献の調査・分析は順調に進められており、最終年度にあたる平成27年度の総括的な調査・研究に向けての準備も概ね順調に進んでいる。マンガ/コミックの「読者共同体」の日米比較という研究目的の完遂に向けて、特にアメリカのコミック産業およびファンカルチャーについて実証的な比較検討を行い、その成果を論文として公表する予定である。メディア文化論マンガ/コミックの「読者共同体」の日米比較という研究目的に向けて、最終年度にあたる本年度では、実証的な比較検討を行い、その成果を論文として公表する予定である。日本とアメリカ双方の大規模なマンガ/コミックのコンベンションへの視察旅行ができたことにより、特にアメリカにおけるコミックを取り巻く状況とそれに対するファンの行動の実態をつかむことができたことは大きな収穫であった。また、アメリカのコミックや文化についての文献収集および調査も順調に進んでおり、平成26年度以降の日米比較に向けての準備もおおむね予定通りに進んでいる。平成27年度の研究過程において、アメリカのコミック関連についてのさらなる資料収集が必要であることが判明し、一年間の補助期間延長申請を行ったため。購入予定であったコミック関連の洋書の発行が遅れたため。日米のマンガ/コミック読者共同体の比較検討に必要な文献、特にアメリカのコミック産業や文化事情に関連した文献の購入、および「コミックマーケット」の視察旅行に研究費を充て、研究がさらに進捗するように努める。 | KAKENHI-PROJECT-25380714 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25380714 |
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