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市町村合併の政治経済学的研究
どのような市町村どうしであれば合併が住民に賛成されやすいかを政治経済学の理論を用いて分析し、その理論的帰結を平成の市町村大合併のデータを用いて検証した。合併の是非を問う住民投票での賛成票を増やす効果があるのは、合併後の65歳以上人口比率・可住地面積・一人当たり所得が大きいこと、人口や公債費比率が小さいことであることが確認された。また、合併協議開始後の経過年数が長いとき、もしくは合併支援金が交付されないとき、賛成票のシェアが大きいことも観察された。どのような市町村どうしであれば合併が住民に賛成されやすいかを政治経済学の理論を用いて分析し、その理論的帰結を平成の市町村大合併のデータを用いて検証した。合併の是非を問う住民投票での賛成票を増やす効果があるのは、合併後の65歳以上人口比率・可住地面積・一人当たり所得が大きいこと、人口や公債費比率が小さいことであることが確認された。また、合併協議開始後の経過年数が長いとき、もしくは合併支援金が交付されないとき、賛成票のシェアが大きいことも観察された。本年度は、市町村合併に関する先行研究のサーベイ、理論モデルの構築、平成の市町村大合併のデータの収集と整理を行った。先行研究のサーベイでは、古くからある海外の研究と、平成の市町村大合併を契機に活発化した国内の研究を調べて要点をまとめた。また、学会や研究会で市町村合併に関わる研究報告があるときは出席し、報告者と情報を交換した。理論モデルでは、私的財と地方公共財から効用を得る住民を仮定した。人口、所得分布、財政状況によって特徴付けられる2つの自治体が、それぞれ相手自治体と合併するか否かを住民投票によって決定し、両方の自治体で賛成多数になった場合のみ合併が実現する。各自治体の住民投票の結果は、中位投票者定理により、所得水準が全体の中位である住民の投票と一致することになる。このモデルから、合併を強く希望するのは、所得水準が自分は低く相手自治体は高いときと、財政状況が自分は悪く相手自治体は良いときである一方、人口の大小の影響は一意でないことが示された。実証分析の準備としては、2001年から2007年にかけて実施された市町村合併に関する住民投票432件について、合併の議題(単に是非を問うか、それともどの自治体と合併したいかを問うか)、合併対象自治体、投票総数、賛成票数、反対票数、投票率のデータを収集し整理した。これにより、各自治体の住民たちの合併に関する選好(賛否)を直接知ることができるとともに、理論モデルと整合的なデータを実証分析に用いることができるようになった。さらに、47都道府県がそれぞれ県下の市町村合併を促すために独自に提供している合併時交付金について調査した。これにより、都道府県ごとの合併のインセンティブの違いを考慮した実証分析が可能になる。本年度は、前年度の理論モデルを改訂し、実証分析を行ったうえで、論文の第一稿を執筆した。理論分析では、数理モデルを次のように改訂した。前年度のモデルでは、所得水準がその自治体の中で中位である住民(中位投票者)が合併を望むか否かを表現し、合併を検討する2つの自治体の両方で中位投票者が合併を望む場合のみ合併が実現するという設定のもと、パラメータ(その住民の自治体と合併相手となる自治体の人口、所得分布、財政状況)に応じて合併の実現しやすさがどのように影響されるかを分析した。しかしながら、本研究の特徴は、実証研究において、先行研究が用いている「各自治体が合併したか否か」の2値データに代えて、より情報量の多い「各自治体の合併の是非を問う住民投票における賛成票と反対票の比」という連続データを用いることにある。そこで、これとの整合性を持たせるため、中位投票者だけでなく住民一人一人が合併を望むか否かを表現する数理モデルに改訂した。これにより、パラメータに応じてその自治体の住民のうち何%が合併を望むかを導出できるようにした。実証分析では、次の変数について合併後から合併前を差し引いた値を説明変数とした:人口、65歳以上人口比率、可住地面積、一人当たり所得、公債費比率、合併特例法制定からの経過年数、合併支援金交付ダミー。このうち、賛成票を増やす効果があるのが65歳以上人口比率、可住地面積、一人当たり所得、経過年数、賛成票を減らす効果があるのは人口、公債費比率、合併支援交付金ダミーであることが確認された。合併特例法制定からの経過年数、合併支援交付金ダミーという直接的な合併促進要因だけでなく、人口、65歳以上人口比率、可住地面積など自治体の特徴を表す変数にも(相対的に小さいながらも)有意な効果が見られたことが重要である。
KAKENHI-PROJECT-20730200
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20730200
Cre/loxPシステムを用いたニューロペプチドY発現ニューロンの機能解析
視床下部弓状核(ARH)に存在するニューロペプチドY(NPY)は摂食を強力に促進する神経ペプチドである。そのため、受容体のアンタゴニストは抗肥満薬として開発が進み前臨床段階にある。NPYに関連した抗肥満薬を有効利用するためにも、ARH以外に局在するNPY発現ニューロンに関する知見が必要である。そこで本研究では、(1) NPY発現ニューロンを可視化したマウスの作出とその組織学的解析、(2) NPY特異的ノックダウンおよびin vivoカルシウムイメージングを利用した各神経核におけるNPY発現ニューロンの機能解析を行い、NPY発現ニューロンの機能とその作用機序を明らかにすることを目的とする。視床下部弓状核(ARH)に存在するニューロペプチドY(NPY)は摂食を強力に促進する神経ペプチドである。そのため、受容体のアンタゴニストは抗肥満薬として開発が進み前臨床段階にある。NPYに関連した抗肥満薬を有効利用するためにも、ARH以外に局在するNPY発現ニューロンに関する知見が必要である。そこで本研究では、(1) NPY発現ニューロンを可視化したマウスの作出とその組織学的解析、(2) NPY特異的ノックダウンおよびin vivoカルシウムイメージングを利用した各神経核におけるNPY発現ニューロンの機能解析を行い、NPY発現ニューロンの機能とその作用機序を明らかにすることを目的とする。
KAKENHI-PROJECT-19K09032
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K09032
生理活性ペプチド送達の基礎としての吸収促進剤の促進機構
リドカインを水性ゲルに溶解して皮膚に塗布すると良好に皮膚に移行しヒト成長ホルモン注射時の注射針刺入による疼痛を緩和した。ジルチアゼムは消化管から良好に吸収されるが、口腔粘膜を経ての吸収は大きくはないので、急速に溶解させて、口腔内の溶液の濃度を高くして、吸収速度を上げることが、血中での有効濃度へ達するために必要であった。アムホテリシンBは分子量が924程とやや大きいこともあり、吸収率が小さいので消化管吸収をより再現性良くするために、乳剤などの製剤的工夫が必要だが、成人と小児との差は見いだせなかった。キトサンはアミノ基を含む多糖類であるが、塩基性高分子化合物の例として経粘膜吸収の促進効果を検討した。分子量が大きいキトサンは水への溶解度に限度があるので、分子量が小さいキトサンをも含めて検討した。ペプチド類のモデルとして、水溶性薬物で定量しやすいリボフラビンのリン酸エステルを用い、キトサンとしては各社から提供されたサンプルのうち、水溶性の高い4種を用い、ウサギの鼻腔粘膜からのリボフラビンの吸収に及ぼすキトサン添加の影響を比較した。溶解度が大きいChitosan C-9を用いて、濃度の影響を検討した結果は、0.5%,1%,2%の範囲では0.5%が最大であった。ポリペプチド類の代表としてインスリンの経鼻腔吸収の検討ではキトサンの添加で血糖値が下がることが示された。アズレンの関連化合物エグアレンのインスリンおよびサケカルシトニンの経鼻腔吸収促進効果の検討において、1%および3%の添加でインスリンのバイオアベイラビリティを5.0倍,13.3倍,サケカルシトニンの効果を3倍程度増加することが示された。リドカインを水性ゲルに溶解して皮膚に塗布すると良好に皮膚に移行しヒト成長ホルモン注射時の注射針刺入による疼痛を緩和した。ジルチアゼムは消化管から良好に吸収されるが、口腔粘膜を経ての吸収は大きくはないので、急速に溶解させて、口腔内の溶液の濃度を高くして、吸収速度を上げることが、血中での有効濃度へ達するために必要であった。アムホテリシンBは分子量が924程とやや大きいこともあり、吸収率が小さいので消化管吸収をより再現性良くするために、乳剤などの製剤的工夫が必要だが、成人と小児との差は見いだせなかった。キトサンはアミノ基を含む多糖類であるが、塩基性高分子化合物の例として経粘膜吸収の促進効果を検討した。分子量が大きいキトサンは水への溶解度に限度があるので、分子量が小さいキトサンをも含めて検討した。ペプチド類のモデルとして、水溶性薬物で定量しやすいリボフラビンのリン酸エステルを用い、キトサンとしては各社から提供されたサンプルのうち、水溶性の高い4種を用い、ウサギの鼻腔粘膜からのリボフラビンの吸収に及ぼすキトサン添加の影響を比較した。溶解度が大きいChitosan C-9を用いて、濃度の影響を検討した結果は、0.5%,1%,2%の範囲では0.5%が最大であった。ポリペプチド類の代表としてインスリンの経鼻腔吸収の検討ではキトサンの添加で血糖値が下がることが示された。アズレンの関連化合物エグアレンのインスリンおよびサケカルシトニンの経鼻腔吸収促進効果の検討において、1%および3%の添加でインスリンのバイオアベイラビリティを5.0倍,13.3倍,サケカルシトニンの効果を3倍程度増加することが示された。ペプチド類のペプチド結合と類似したアミド結合を含む化合物として局所麻酔薬リドカインを選択して生体膜の一つとして皮膚を選択し、リドカインの皮膚透過に及ぼす吸収促進剤の作用を検討をした。グリチルレチン酸モノヘミフタ-レートの作用グリチルリチンの関連化合物であるグリチルレチン酸モノヘミフタ-レートは、薬物の鼻腔粘膜透過では優れた促進作用を示したのに、ラットの皮膚では透過促進効果を確認できなかった。グリチルレチン酸モノヘミフタ-レートはラットの皮膚でリドカインの透過促進効果を示さないのに、ヒトではリドカインの局所麻酔作用を増強するのは、この2つの観察を説明するためには皮膚のヒトとラットとの種差なのか、局所麻酔作用が皮膚透過性と直接関係しないのか未解決であるので、局所麻酔作用機構を解明する必要がある。1ーメントールとd-リモネンの作用他方、精油に属する1ーメントールとd-リモネンとは経皮吸収促進剤として知られているので、ラットでドカインの経皮吸収への効果を検討したところ、リドカインの経皮吸収を促進したにもかかわらず、リドカインの局所麻酔作用を増強しないので、皮膚を通して薬物の透過を促進しても、局所麻酔効果の増強対応しないことも示唆される。粘膜を経ての薬物の吸収を促進する物質の促進機構を検討するために、鼻腔粘膜、口腔粘膜、直腸粘膜のうち、今回は鼻腔と口腔を用いることとし、動物としてはウサギなどをin vivoで用いた。非イオン性物質としてはd-リモネン、ιーメントールのリドカイン透過、酸性物質としてはグリチルリチンのナトリウム塩につき、インスリン、グルカゴンの鼻腔粘膜吸収促進を確認しているので、今回は塩基性基を含む物質の検討に入ったが、塩基性物質には生理活性があるものが多いので、それ自身は吸収されない塩基性高分子を用いることとし、天然高分子としてキトサンに注目した。
KAKENHI-PROJECT-06453195
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06453195
生理活性ペプチド送達の基礎としての吸収促進剤の促進機構
分子量も異なるものを含み、数種類のキトサンを入手して、そのままでは吸収しにくい水溶性薬物の鼻腔粘膜を経ての吸収を促進する効果があるか検討している実験動物としては取り扱いやすいウサギを用いることにしたが、鼻腔に滴下した薬物溶液の流失によるロスを少なくするための検討が必要であったが、星薬科大学の米谷らの方法をモディファイして用いた。水溶性薬物としては定量の感度の面から蛍光を測定できるリボフラビンのリン酸エステルが溶解度がリボフラビンより高いので用い、水溶液を鼻腔粘膜へ滴下する方法を用いた。キトサン共存でやや透過/吸収の増加を認めているが、高分子のための粘度の影響の考察も必要である。口腔粘膜透過は、循環器用薬ジルチアゼムについて検討している。キトサンはアミノ基を含む多糖類であるが、塩基性高分子化合物の例として経粘膜吸収の促進効果を検討した。分子量が大きいキトサンは水への溶解度に限度があるので、分子量が小さいキトサンも含めて検討した。ペプチド類のモデルとして、水溶性薬物で定量しやすいリボフラビンのリン酸エステル(分子量478)を用いた。キトサンとしては各社から提供されたサンプルのうち、水溶性の高い4種を用い、ウサギの鼻腔粘膜からのリボフラビンの吸収に及ぼすキトサン添加の影響を比較した結果、Daichitosan VL>Chitosan micropower栗田工業Chitosan C-9>栗田工業Chitosan C-16の順序でバイオアベイラビリティーの増加が大きかった。他のキトサンは水への溶解度が1%程度しかないので、溶解度が大きいChitosan C-9を用いて濃度の影響を検討した結果は、0.5%,1%,2%の範囲では0.5%が最大であった。ポリペプド類の代表としてインステリンの経鼻腔吸収の検討では、インスリン単独時に比較してキサトンの添加時に血糖値がより下がることが示された。酸性高分子である架橋ポリアクリル酸との比較では、キサトンの方が吸収促進作用が小さいことが示された。アズレンの関連化合物エグアレンのインスリンおよびサケカルシトニンの経鼻腔吸収促進効果の検討において、1%および3%の添加でインスリンのバイオアベイラビリティを5.0倍,13.3倍,サケカルシトニンの効果を3倍程度増加することが示された。
KAKENHI-PROJECT-06453195
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06453195
五代目市川海老蔵の東海地域における芝居興行に関する調査・研究
本年度は、五代目市川海老蔵の名古屋及びその周辺地域で行われた芝居興行の実態を捉えるべく、始めに早稲田大学坪内博士記念演劇博物館から関連資料の調査収集作業を行った。次に、名古屋市蓬左文庫、西尾市岩瀬文庫、大阪府立中之島図書館、大阪歴史博物館を訪れ、周辺地域の芝居興行関連資料を収集した。これらの諸機関において、五代目市川海老蔵に関する名古屋及びその周辺地域における「芝居番付」をはじめ、興行に関連する諸資料を閲覧・調査し収集した。現在、収集してきた史資料の翻刻や、内容の分析を行っている最中である。また、本研究課題に関連して、「デジタルアーカイブin岐阜」において「信濃国川路地域の芸能資料デジタルアーカイブについてー関島家資料を素材としてー」と題して報告した。19世紀において、信州川路村(現長野県飯田市)の庄屋を務めていた関島家に所蔵されている芸能資料のデジタルアーカイブの現状について述べた。関島家所蔵の芸能関係資料としては、江戸の歌舞伎役者の興行記録や台帳、歌舞伎役者からの贈呈品、浄瑠璃関係など数多く残されていることが調査ですでに判明している。しかし、個人所蔵の史資料のデジタル化については克服すべき問題がある。そこで、関島家所蔵資料のデジタルアーカイブの現状と課題について言及した。本年度は、論文を1本刊行した。「岐阜地域の芝居興行に関する資料デジタルアーカイブの進展を目指して」という論題にて、江戸時代の歌舞伎役者の伊奈波神社前の興行と現在も活動している岐阜県内の歌舞伎保存会を具体的に提示し、コミュニティ(地域)アーカイブの充実が、各諸機関に所蔵されている史資料の有効的活用を可能にし、岐阜地域の地芝居研究に進展をみせるということの重要性を論じた。今年度中心に取り上げた地域は、名古屋及びその周辺地域である。名古屋には、若宮、橘町、清寿院、大須などの各所で芝居興行が展開されている。これらの地域で開催された芝居興行については、名古屋、大阪の博物館や図書館などを訪れ、史資料を調査・閲覧し、収集してきた。また、名古屋の若宮八幡社では、芝居興行に関する話を直接聞く機会にも恵まれた。海老蔵の東海地域における芝居興行は、当初の計画通り、演劇博物館をはじめ諸機関から収集した関連資料に基づいて研究を進めている。上記興行地の史資料の大部分は揃いつつある。そして、入手してきた史資料の分析、検討は予定通り進んでいる。また、これまですでに収集した資料から、海老蔵の興行に関わった人々の役割など、具体的に判明しそうな事例もあると思われる。海老蔵の興行が名古屋を中心とするその周辺地域の観客・贔屓にどのように受け入れられ支持されたのか、さらには、三都の芝居興行にも匹敵する規模を持つ名古屋の興行システムと三都の興行システムとの相違が、近世後期の歌舞伎界全般にどのような意義をもたらしたのかを追究できると思われる。名古屋の芝居には、江戸の歌舞伎役者が多数来演していることは史資料からすでに判明している。江戸の芝居小屋に契約し、出勤しなければならない責務を負っている役者が、どのような方法を用いて名古屋芝居の出演を実現させたのか、この課題についても究明する必要性を改めて感じた。そこで今後は、五代目海老蔵に限らず、江戸歌舞伎役者と名古屋の芝居興行との結びつきの全体像を捉えるという課題に対し、歴史学的アプローチによって、新たな方法論を提示できるのではないかということに気がついた。次の課題も見えてきて、研究はおおむね順調に進展していると言える。今後の本研究課題に対する推進方策は、まず、昨年度、諸機関で収集した資料の翻刻、内容の検討、分析することからである。次に、「デジタルアーカイブin岐阜」で得た指摘を再度検討し、五代目市川海老蔵の東海地域の芝居興行との結びつきを意識し、論文としてまとめ成果を発表していく。最終目標は、海老蔵の東海地域における芝居興行の全貌の解明である。内容分析を行った史資料を基に、海老蔵の東海地域における芝居興行を解明するという論点を明確に提示しながら、その実態をまとめ上げ、学会発表に向けての準備をする。さらに学会発表で得た指摘を再度検討し、論文として調査成果を発表していく。諸機関に所蔵されている藩政資料や観劇記録、町方資料、村方資料などには、海老蔵は勿論、他の大名題の役者についても想像以上に残されていることが推察される。海老蔵の芝居興行の解明には、それらも有効的に活用し、他の役者の芝居興行と照らし合わせながら成果を出していきたい。本研究は、五代目海老蔵と地域の人々の結びつきの解明や史資料を用いて名古屋及びその周辺地域を含めた演劇活動を捉えるというところに独創性があると考える。この方法を用いて本年度も研究を続けていく所存である。海老蔵の東海地域における芝居興行に関する資料群を中心として、海老蔵の芝居興行が、江戸・京都・大坂の三都の歌舞伎界全般にどのような意味をもたらしたのか、さらには、地方興行をはじめとする芸能興行一般にどのような影響をもたらしたのかを、芸態論中心の演劇的視点だけではなく、歴史学的アプローチで追究して最終目標に向けて成果を出していく。本年度は、五代目市川海老蔵の東海地域で行われた芝居興行の実態を探るべく、まず調査すべき関連資料が所蔵されている諸機関を『資料目録』、『自治体史』などで網羅的に把握した。その手始めとして、早稲田大学演劇博物館から関連資料の調査収集作業を行った。リストアップした諸機関のデータをもとに関連資料を収集するために、京都学・歴彩館、京都文化博物館、桑名市博物館、三重県総合博物館、大阪府立中之島図書館、大阪歴史博物館を訪れた。
KAKENHI-PROJECT-17K02470
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K02470
五代目市川海老蔵の東海地域における芝居興行に関する調査・研究
これらの機関において、五代目市川海老蔵に関する東海地域における「芝居番付」をはじめとする諸資料を収集した。現在、収集してきた史資料の翻刻、内容の分析を行っている最中である。また、本研究課題に関連して、デジタルアーカイブ学会にて「江戸時代の歌舞伎興行に関する資料デジタルアーカイブの充実を目指して」と題して報告した。三都(江戸・京都・大坂)で開催された芝居興行についての関連資料のデジタルアーカイブは充実をみせている。ところが、歌舞伎役者の地方興行に目を移せば、芝居番付や台本、木戸銭覚などの興行関係資料は該当地に多く所蔵されているにも関わらず、デジタルアーカイブという点においては進展をみせていない。学会報告では、三都の史資料が充実している演劇博物館のデジタル・アーカイブコレクションとコミュニティ(地域)アーカイブコレクションの結びつきが歌舞伎役者の地方興行研究へ及ぼす有効性について述べた。本年度は、論文を2本刊行した。「七代目市川團十郎の旅」では、これまで論じられてこなかった五代目海老蔵こと七代目團十郎の「文政期」に限った旅及び旅興行を取り上げ、その実態を考察した。「七代目市川團十郎襲名をめぐって」では、七代目の襲名に焦点を当て、10歳という年若での大名跡襲名の顛末を、江戸社会をはじめ市川團十郎家や江戸歌舞伎の状況と鑑み合わせて考察した。本研究で取り上げる東海地域は、名古屋若宮芝居、橘町芝居や三重の古市の芝居、岐阜の伊奈波神社境内芝居、静岡の宣光寺境内芝居など、幾つかの有名な興行地が含まれている。これらの地域で開催された芝居興行については、桑名や三重、大阪の図書館、博物館などを訪れ、史資料を収集してきた。また、宣光寺や伊奈波神社を訪れ話を聞いた。所蔵されている史資料も調査し、必要な部分を複写した。こうして予定した史資料を収集してきた。海老蔵の東海地域における芝居興行は、当初の計画通り、演劇博物館をはじめ諸機関から収集した関連資料に基づいて研究を進めている。上記興行地の史資料は大部分揃ってきており、現在、史資料の分析は予定通り進んでいる。これまで収集した資料から、興行に関わった人々の役割など具体的に判明できそうな地域の興行もあると思われる。海老蔵の興行が東海地域の人々にどのように受け入れられ支持されたのか、さらには、地方興行のシステムと三都の興行システムとの相違、また、歌舞伎役者の地方興行が、近世後期の歌舞伎界全般にどのような意義をもたらしたのかを追究していきたい。このまま本研究課題を継続していけば、役者の芸態論が中心の現在の近世演劇研究に対して、歌舞伎役者と地域の人々の結びつきから、地方興行を含めた演劇活動を捉えるという、より歴史的な視点からの新たな一石に成り得るインパクトのある方法論を提示できると考える。したがって、研究はおおむね順調に進展していると言える。本年度は、五代目市川海老蔵の名古屋及びその周辺地域で行われた芝居興行の実態を捉えるべく、始めに早稲田大学坪内博士記念演劇博物館から関連資料の調査収集作業を行った。次に、名古屋市蓬左文庫、西尾市岩瀬文庫、大阪府立中之島図書館、大阪歴史博物館を訪れ、周辺地域の芝居興行関連資料を収集した。
KAKENHI-PROJECT-17K02470
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K02470
P450の基質スクリーニングに用いる NADH/NAD^+変換検出アレイの開発
P450の酸化システムにおいて、小分子がP450の基質となり酸化される場合、酸化反応の進行と共に電子供給源であるNADHがNAD+に効率良く変換されることに着目し、この変換を基板上で検出することを試みた。本検出システムの構築には、(1)P450酸化システムで利用可能なNADH固定化基板の開発、(2)基板上に固定化されたNAD+の選択的な検出法の開発、が核となる技術的要素と考えられる。技術的要素の構築を図った結果、まず、アデニン部位の8位に導入したリンカーを介して基板上に固定化されたNADHが、P450酸化システム中で補酵素として機能することを明らかとした。また、P450酸化システムで利用可能なNADH固定化基板の作製法を確立した。NAD+の選択的な検出法の開発では、ビオチンまたは蛍光色素ロダミンを導入したアセトフェノン誘導体を用いることで、選択的にNAD+と反応し、NAD+をビオチンまたはロダミンで標識化することが出来ることを明らかとした。最後に、上記のNADH固定化基板と検出試薬が、P450の基質スクリーニングに利用可能であるかどうかの検討を行った。土壌細菌Pseudomonasputida由来のP450camとその基質であるd-camphorを評価系として用いて検討した結果、d-camphorが含まれる微小液滴をスポットした場所で、NADHからNAD+への変換を検出することに成功した。以上の結果より、本検出システムを用いることで、基板上でのP450の基質スクリーニングが可能であることを示した。P450の酸化システムにおいて、小分子がP450の基質となり酸化される場合、酸化反応の進行と共に電子供給源であるNADHがNAD+に効率良く変換されることに着目し、この変換を基板上で検出することを試みた。本検出システムの構築には、(1)P450酸化システムで利用可能なNADH固定化基板の開発、(2)基板上に固定化されたNAD+の選択的な検出法の開発、が核となる技術的要素と考えられる。技術的要素の構築を図った結果、まず、アデニン部位の8位に導入したリンカーを介して基板上に固定化されたNADHが、P450酸化システム中で補酵素として機能することを明らかとした。また、P450酸化システムで利用可能なNADH固定化基板の作製法を確立した。NAD+の選択的な検出法の開発では、ビオチンまたは蛍光色素ロダミンを導入したアセトフェノン誘導体を用いることで、選択的にNAD+と反応し、NAD+をビオチンまたはロダミンで標識化することが出来ることを明らかとした。最後に、上記のNADH固定化基板と検出試薬が、P450の基質スクリーニングに利用可能であるかどうかの検討を行った。土壌細菌Pseudomonasputida由来のP450camとその基質であるd-camphorを評価系として用いて検討した結果、d-camphorが含まれる微小液滴をスポットした場所で、NADHからNAD+への変換を検出することに成功した。以上の結果より、本検出システムを用いることで、基板上でのP450の基質スクリーニングが可能であることを示した。
KAKENHI-PROJECT-10J55053
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J55053
赤外域サイクロトロンオートレゾナンスレーザーの研究
本年度は2年計画の最終年度としてサイクロトロンレーザ発振実験及び実験結果の解析を行い、以下の成果を得た。●サイクロトロンレーザー発振実験(1)自発放射光のスペクトルを測定した。今回の実験条件である磁束密度1T、磁場長3m、電子ビームエネルギー150MeVでは、電子はソレノイド磁場を通過する間に半回転しかサイクロトロン旋回しない。サイクロトロン共鳴波長は100μmであるにも関わらず、自発放射光はテラヘルツ波帯からミリ波帯にかけて非常に広帯域なスペクトルを示した。(2)光共振器を構築し発振実験を行った。電子ビーム伝送系のミスマッチングのためレーザー光は飽和には至っていないが、自発放射光強度の500倍程度にまで出力が増大した。●数値シミュレーションによる実験結果の解析(1)自発放射光の時間波形及びスペクトルを計算し、実験で得られたスペクトルと比較した。半回転のサイクロトロン旋回を行う電子からのサイクロトロン放射光は、共鳴周波数にかかわらず電子ビームのパルス幅と同程度の時間幅を持つ半周期電磁波を発生することが分かった。半周期電磁波とは通常の電磁波のように電場が正負の値をとらず、正値(あるいは負値)のみを取る電磁波の事を言う。シミュレーションで得られたスペクトルは、実験結果とよく一致しており、観測した放射光は半周期電磁波であると考えられる。(2)一次元の増幅シミュレーションコードを開発した。このコードにより、放射光が電子と相互作用するたびにそのパルス幅を狭めてゆき、飽和レベルに達する時には1psの極短パルスになることが分かった。この時スペクトルはより高周波側に広がり、相当量のテラヘルツ成分を持つようになることが分かった。以上の結果は超相対論的な電子ビームからのサイクロトロン放射を利用することでテラヘルツ帯の超短パルス/大出力光源が実現可能であることを示すものである。本年度は2年計画の初年度として、研究準備を行い以下の成果を得た。(1)サイクロトロンレーザーシミュレーションコードの開発1Dシミュレーションコードを開発し、遠赤外サイクロトロンオートレゾナンスレーザー構築ための基本動作パラメータ(磁場強度、磁場長、電子入射角度等)を調査し、レーザー発振器の設計を行うとともに電子ビーム入射系の最適パラメータを決定した。(2)サイクロトロン放射光発生装置設計・製作シミュレーション結果をもとに、サイクロトロン放射光発生装置であるソレノイドコイルおよびその電源(コンデンサバンク)を製作した。サイクロトロンオートレゾナンスレーザーの発振に必要な最大磁束密度0.5Tの均一磁場を2.9mにわたり発生できた。(3)電子ビーム伝送系の最適化シミュレーション結果をもとに、既存の電子ビーム伝送系を本研究に対して最適化した。特に電子ビームをソレノイドコイルに入射する角度を決定する偏向磁石およびキッカー磁石の位置の最適化を行い、所定の電子ビーム入射角度およびビーム径を得る事ができた。(4)サイクロトロンレーザー発振器の構築既存の紫外自由電子レーザー用光共振器に金コートミラーを配し、これを遠赤外でも使用できるように改造した。また紫外自由電子レーザー用アンジュレータを今回製作したソレノイドコイルに入れ替え、サイクロトロンオートレゾナンスレーザー発振器を構築した。以上の成果をもとに、今後本実験を行う。本年度は2年計画の最終年度としてサイクロトロンレーザ発振実験及び実験結果の解析を行い、以下の成果を得た。●サイクロトロンレーザー発振実験(1)自発放射光のスペクトルを測定した。今回の実験条件である磁束密度1T、磁場長3m、電子ビームエネルギー150MeVでは、電子はソレノイド磁場を通過する間に半回転しかサイクロトロン旋回しない。サイクロトロン共鳴波長は100μmであるにも関わらず、自発放射光はテラヘルツ波帯からミリ波帯にかけて非常に広帯域なスペクトルを示した。(2)光共振器を構築し発振実験を行った。電子ビーム伝送系のミスマッチングのためレーザー光は飽和には至っていないが、自発放射光強度の500倍程度にまで出力が増大した。●数値シミュレーションによる実験結果の解析(1)自発放射光の時間波形及びスペクトルを計算し、実験で得られたスペクトルと比較した。半回転のサイクロトロン旋回を行う電子からのサイクロトロン放射光は、共鳴周波数にかかわらず電子ビームのパルス幅と同程度の時間幅を持つ半周期電磁波を発生することが分かった。半周期電磁波とは通常の電磁波のように電場が正負の値をとらず、正値(あるいは負値)のみを取る電磁波の事を言う。シミュレーションで得られたスペクトルは、実験結果とよく一致しており、観測した放射光は半周期電磁波であると考えられる。(2)一次元の増幅シミュレーションコードを開発した。このコードにより、放射光が電子と相互作用するたびにそのパルス幅を狭めてゆき、飽和レベルに達する時には1psの極短パルスになることが分かった。この時スペクトルはより高周波側に広がり、相当量のテラヘルツ成分を持つようになることが分かった。以上の結果は超相対論的な電子ビームからのサイクロトロン放射を利用することでテラヘルツ帯の超短パルス/大出力光源が実現可能であることを示すものである。
KAKENHI-PROJECT-13780387
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椎間板変性におけるIL-17の役割の解析と新規IL-17活性阻害剤の探索
IL-17A/IL-17A受容体複合体の立体構造をX線解析して、受容体結合部分に結合可能な化合物の立体構造を予測し、さらにその予測された構造の受容体との結合シミュレーションをコンピューター上で行なった。これらにより得られた情報を用いてIL-17A結合阻害剤として適した化合物、すなわち候補化合物を低分子化合物データベースの中から探索し、4種類の低分子化合物;STK630921(STK), PB203263256(PB), Z92151850(Z9251), P2000N-53454(P2000)をIL-17A結合阻害剤候補化合物として評価した。次にアルシアンブルー染色を用いて、細胞外基質の主体成分であるグリコサミノグリカン産生量を評価した。IL-17A50ng/ml単独投与下で8日間培養したラットNP細胞群では、グリコサミノグリカン産生が無処置群と比較して有意な減少を呈したが、STK50μg/mlとIL-17Aを共に投与した群では有意な改善を示した(n=3,p<0.05)。平成30年度は、我々がインシリコスクリーニングを用いて医薬品データーベースから選出した複数のIL-17A阻害剤候補化合物群の、髄核細胞に対する効果を評価した。その結果、これらの候補化合物全てが、髄核細胞に対するIL-17Aの作用を抑制する効果を有することを確認できた。また、昨年度評価した候補化合物STK630921は、今年度さらなる評価を行った結果、昨年度の評価項目以外のタンパク質や細胞外基質産生に対しても効果を有することを確認できた。昨年度までの結果を基に以下の点を中心に研究を行う。1ヒト椎間板細胞に対するIL-17A阻害剤候補化合物の作用評価:ヒト椎間板髄核細胞に対し、昨年度選出したIL-17A阻害剤候補化合物群を投与して、細胞内シグナル因子やサイトカインの発現等を評価する。2椎間板変性動物モデルに対するIL-17A阻害剤候補化合物の作用評価:ラット椎間板変性モデルを作製し、昨年度選出したIL-17A阻害剤候補化合物群の中で最も好成績であったSTK630921を投与してその作用を評価する。3IL-17A阻害剤の新規誘導体化合物の開発:これまで得られた結果を基に、IL-17A阻害剤候補化合物STK630921の化学構造の最適化を行い、より高い効果が期待される新規化合物、即ち新規誘導体化合物の分子構造をin silico創薬にて設計し、合成する。この新規誘導体化合物を培養椎間板細胞に投与し、細胞内シグナル因子の発現、細胞外基質の変化、サイトカインの発現等を評価し、より実用化に近い化合物の開発を目指す。ラット椎間板髄核細胞を1%の低酸素濃度条件で培養し、IL-17Aを投与して評価した。次に、in Silico解析で得られた新規IL-17A活性阻害候補化合物であるSTK630921(以下STK)の作用の評価を行った。今回の結果から、IL-17Aは椎間板の変性進行に関与する因子の制御に関与している可能性が示唆され、IL-17A活性の制御は変性椎間板の有効な治療標的になり得ると考えられた。低分子化合物STKはIL-17A活性阻害剤の候補化合物として有望であると考えられた。さらに、MAPK経路はIL-17AによるCOX-2発現を介在する経路の一つであると考えられ、STKはp38の制御に作用することによりCOX-2やIL-6の発現に関与している可能性が示唆された。平成29年度は計画通り、培養細胞を用いたIL-17Aの作用とIL-17A阻害剤候補化合物の効果の評価を行い、IL-17Aが椎間板変性を促進する因子の制御に関与する事、我々が探索して選出した低分子化合物はIL-17Aの活性阻害効果を有する可能性を確認することができた。IL-17A/IL-17A受容体複合体の立体構造をX線解析して、受容体結合部分に結合可能な化合物の立体構造を予測し、さらにその予測された構造の受容体との結合シミュレーションをコンピューター上で行なった。これらにより得られた情報を用いてIL-17A結合阻害剤として適した化合物、すなわち候補化合物を低分子化合物データベースの中から探索し、4種類の低分子化合物;STK630921(STK), PB203263256(PB), Z92151850(Z9251), P2000N-53454(P2000)をIL-17A結合阻害剤候補化合物として評価した。次にアルシアンブルー染色を用いて、細胞外基質の主体成分であるグリコサミノグリカン産生量を評価した。IL-17A50ng/ml単独投与下で8日間培養したラットNP細胞群では、グリコサミノグリカン産生が無処置群と比較して有意な減少を呈したが、STK50μg/mlとIL-17Aを共に投与した群では有意な改善を示した(n=3,p<0.05)。平成30年度は、我々がインシリコスクリーニングを用いて医薬品データーベースから選出した複数のIL-17A阻害剤候補化合物群の、髄核細胞に対する効果を評価した。その結果、これらの候補化合物全てが、髄核細胞に対するIL-17Aの作用を抑制する効果を有することを確認できた。
KAKENHI-PROJECT-17K10946
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K10946
椎間板変性におけるIL-17の役割の解析と新規IL-17活性阻害剤の探索
また、昨年度評価した候補化合物STK630921は、今年度さらなる評価を行った結果、昨年度の評価項目以外のタンパク質や細胞外基質産生に対しても効果を有することを確認できた。前年度までの結果を踏まえ、1動物モデルを用いたIL-17A阻害剤候補化合物の評価、2培養細胞を用いたIL-17AとIL-17Aと阻害剤候補化合物に対する細胞内シグナル因子の反応の解析を行う予定である。1の動物モデルを用いた評価では、ラット椎間板変性モデルを作成し、IL-17A阻害剤候補化合物を椎間板内に注射し、椎間板変性の進行度、前年度に確認したIL-17Aにより発現が上昇した因子の反応、IL-17A阻害剤候補化合物の生体組織障害性の有無、等を中心に評価する。2の培養細胞を用いた評価は、前年度と同様の手法により、前年度に評価した対象以外の細胞内シグナル因子の反応の解析と、前年度に評価した候補化合物以外の新しい候補化合物の評価を並行して行う。昨年度までの結果を基に以下の点を中心に研究を行う。1ヒト椎間板細胞に対するIL-17A阻害剤候補化合物の作用評価:ヒト椎間板髄核細胞に対し、昨年度選出したIL-17A阻害剤候補化合物群を投与して、細胞内シグナル因子やサイトカインの発現等を評価する。2椎間板変性動物モデルに対するIL-17A阻害剤候補化合物の作用評価:ラット椎間板変性モデルを作製し、昨年度選出したIL-17A阻害剤候補化合物群の中で最も好成績であったSTK630921を投与してその作用を評価する。3IL-17A阻害剤の新規誘導体化合物の開発:これまで得られた結果を基に、IL-17A阻害剤候補化合物STK630921の化学構造の最適化を行い、より高い効果が期待される新規化合物、即ち新規誘導体化合物の分子構造をin silico創薬にて設計し、合成する。この新規誘導体化合物を培養椎間板細胞に投与し、細胞内シグナル因子の発現、細胞外基質の変化、サイトカインの発現等を評価し、より実用化に近い化合物の開発を目指す。培養細胞を用いたIL-17A阻害剤候補化合物の効果が予想よりも少ない容量で確認できたことから、平成29年度の本助成金を全額使用せずに研究を遂行することが可能であった。平成30年度はIL-17関連疾患動物モデルの作成、及びこれまで評価した低分子化合物以外の新しい候補化合物の評価に前年度からの繰越金を使用する。培養細胞を用いたIL-17A阻害剤候補化合物群の評価の際、予想よりも短い投与期間、及び少ない容量で効果があることを確認できたため、平成30年度の本助成金を全額使用せずに研究を遂行することが可能であった。平成31年度の実験に前年度からの繰越金も使用する
KAKENHI-PROJECT-17K10946
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ゲオルク・ジンメルの社会学と同次代人の社会学との比較研究
研究計画は、ジンメルとテジュルケムとテンニエスという、「世紀の転換期の世代」を代表する三人の社会学者における社会学的近代認識(個人と社会の関係の問題)の比較検討として実施された。そして、三者の異同を明らかにするための資料として、ジンメルの「個別的法則。倫理学の原理に関する一試論」(1913年)、デュルケムの「人間性の二元性とその社会的諸条件」(1941年)そしてテンニエスの「近代における個人と世界」(1913年)という、いずれも自己の社会学を展開し終わったあとの、ほぼ同時期に取り組まれた三つの著作を選び、これらを中心にして他の諸著作をも参考にしながら読み込む作業をおこなった。ジンメルとデュルケムについては、主として、両者のカント対決を手懸かりにして両者の近代認識を明らかにしようとした。その結果、両者の出発点における相違が個人の把握にあい、この相違に規定されて、ジンメルでは、全体としての個人が社会学理論の出発点にあって、その延長線上で近代における個人の自律が最終的に哲学的に根拠づけられることになったこと、これに対して、デュルケムでは、社会に依存する部分としての個人が社会学理論の出発点にあって、この理論の正当化として、個人の内面に社会が存在することのうちに、いわば社会の自律が根拠づけられることになったことなどを明らかにすることができた。ジンメルとの関連でテンニエスについていえば、両者には中世との対比において近代を社会学的に解明しようという点で共通項があること、そこでは個人はともに孤立した個人としてつかわれていること、しかし、テンニエスでは、個人はゲマインシャフトの内部からあらわれるから、これに対立するゲゼルシャフトの形成者かつ担い手として、「新たな普遍」とのかかわりの下で把握されている点にジンメルとの相違のあることなどを明らかにすることができた。研究計画は、ジンメルとテジュルケムとテンニエスという、「世紀の転換期の世代」を代表する三人の社会学者における社会学的近代認識(個人と社会の関係の問題)の比較検討として実施された。そして、三者の異同を明らかにするための資料として、ジンメルの「個別的法則。倫理学の原理に関する一試論」(1913年)、デュルケムの「人間性の二元性とその社会的諸条件」(1941年)そしてテンニエスの「近代における個人と世界」(1913年)という、いずれも自己の社会学を展開し終わったあとの、ほぼ同時期に取り組まれた三つの著作を選び、これらを中心にして他の諸著作をも参考にしながら読み込む作業をおこなった。ジンメルとデュルケムについては、主として、両者のカント対決を手懸かりにして両者の近代認識を明らかにしようとした。その結果、両者の出発点における相違が個人の把握にあい、この相違に規定されて、ジンメルでは、全体としての個人が社会学理論の出発点にあって、その延長線上で近代における個人の自律が最終的に哲学的に根拠づけられることになったこと、これに対して、デュルケムでは、社会に依存する部分としての個人が社会学理論の出発点にあって、この理論の正当化として、個人の内面に社会が存在することのうちに、いわば社会の自律が根拠づけられることになったことなどを明らかにすることができた。ジンメルとの関連でテンニエスについていえば、両者には中世との対比において近代を社会学的に解明しようという点で共通項があること、そこでは個人はともに孤立した個人としてつかわれていること、しかし、テンニエスでは、個人はゲマインシャフトの内部からあらわれるから、これに対立するゲゼルシャフトの形成者かつ担い手として、「新たな普遍」とのかかわりの下で把握されている点にジンメルとの相違のあることなどを明らかにすることができた。
KAKENHI-PROJECT-01510113
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19世紀中半のアメリカ合衆国における太平洋像とそこに映し出された合衆国理解の研究
プロジェクト最終年度となった本年、太平洋以外の海域における海の歴史を内外の研究者の視点に学びながら、今後の研究につながる史料調査を行った。まず、例えば、2018年7月8日に行われた鈴木英明(長崎大学)とKevin Le Doudic (南ブルターニュ大学)をパネラーに招聘した関西学院大学でのシンポジウムで、インド洋の歴史を学ぶことが出来た。内外の研究者との知見の交換を進める一方、2018年9月9日から20日まで、ワシントンとニューヨークで史料調査を行った。国立公文書館(NARA)と議会図書館(LC)では、アメリカ海軍天文台長として英国仏露の各国天文台と海洋情報を交換し、1853年にはベルギーのブラッセルで海洋気象学の国際大会を主催した、マシュー・フォンテイン・モーリ(Matthew Fontaine Maury)に関連する史料の収集を進めた。海軍工廠の博物館を訪れる機会も持った。モーリは、南北戦争時の南軍将校としての経歴が災いし、戦後不遇をかこったが、合衆国における海洋学(Oceanology)の発展に記した軌跡はやはり大きい。ニューヨーク歴史協会でも合衆国海軍に関する史料調査を行った。モーリの研究は科学史と交差する。その場合、「アメリカの科学」と総称し得るようなナショナルなサイエンスの歴史の一端として海洋学の歴史を描くことが妥当か、海の歴史に国籍は必要かといった問いが必ず浮上する。経済利益を追求するための航路の探索と純粋科学の見地からの海洋調査の要請に同時に海軍天文台は応えねばならなかった。ナショナル・ヒストリーの枠内と枠外に同時にひろがるその活動を、複眼的な視点から今後分析したいと考えている。今年度の調査を踏まえた報告を、12月15日に明治大学で、12月29日に関西学院大学でそれぞれ行う機会を与えられた。その成果を出来るだけ早期に公刊したい。本研究プロジェクトの第一の目的は「海のアメリカ史」の基盤を築くことにある。楽園や豊穣の空想をはぐくむ異文化空間であり、覇権国家間の紛争の舞台であり、貿易や労働者の移動ネットワークで結ばれた広大な経済圏でもある太平洋を、陸の活動の延長の舞台としてではなく、それ固有の歴史が紡がれた独自の社会空間として把握し直すことがさしあたっての目標となる。研究初年の今年度は、二次史料の収集と先行研究における成果の批判的読解に第一の比重を置いた。例えばアーサー・ダッデンからブルース・カミングスにいたるまでの太平洋の覇権をめぐる米国における通史理解、一方での、アラン・コルバンらのフランス史家、リンダ・コリーらのイギリス史家が展開する海の観念に関する研究、そうした流れが個別にアメリカにおける太平洋史研究には流れ込んでいる。しかし日本には前者の流れこそあれ、後者の系譜に位置する太平洋史の理解はほとんどないことが初年度の調査では明らかになった。この研究上の陥穽を埋めるために、19世紀中半、太平洋に限らず、大洋空間全般に意識を高め始めた合衆国で芽吹いた海洋文学、海洋科学の流れを追い始めた。具体的には、Two Years Before the Mast (1840)の著者、リチャード・ヘンリー・ダナJr.(1815-1882)、及びマシュー・フォンテイン・モーリ(1806-1873 )の二名に焦点を当て、未踏の空間であった太平洋での体験と、その空間に関する科学情報の収集が、米国の太平洋理解をどのように肉付けしていったかを分析し始めた。特に、国立公文書館(NARA)所蔵の海軍海洋情報管理局の文書、ハーヴァード大学のシュレシンジャー研究図書館(Schlesinger Research Library)に所蔵されるダナ家文書などを調査し、分析を開始することに初年次は時間を費やした。19世紀合衆国の太平洋の歴史は、日本においてはとくに、第二次大戦が象徴する日米衝突の前史として研究されることが多かった。海軍、捕鯨船、貿易商人などを軸とする海事史においても同様である。これに対し本研究プロジェクトでは、地球大の空間に合衆国を再定位させるのに必要な科学知識や、未知の空間に対峙した折に見出される新しい自己理解の探求の一部として太平洋への進出を捉えた人々の心性を把握することに努める。その具体的作業として、初年次においては、ハーヴァード大学マップ・コレクションが所蔵する古地図群に表象された太平洋空間の分析、ワシントンDCに所在する国立公文書館(NARA)に所蔵された海軍海洋情報管理局の文書分析を進めた。前者では、16世紀以来の西洋古地図全般に描かれた未知の空間が、幾多の探検航海で積み上げられた発見や船員の海洋体験を下地に、科学的な地図に精緻に表象され直す過程を追っている。海洋の体験知を最初は視覚的に紙面に落とし、続いて異なる他の体験知との比較相対化の過程で、より客観的な情報を磨きだし、それを地図制作者が海図化した過程を描出したいと考えるが、合衆国で発行された海図を通時的に網羅する文書館はまだなく、分析はようやく端緒を開いたばかりの感が強い。一方後者では、初代局長であったマシュー・フォンテイン・モーリが、同じ海軍内の指導者的立場にある者、例えば日本遠征をやがて指揮することになるマシュー・カルブレイス・ペリーらと海洋情報を交換し、さらにはその成果をイギリスやドイツの海洋情報管理局とも共有することで、海洋科学における国際ネットワークを切り拓きつつあった様子をうかがい見ることが出来た。ただし、海軍関係公文書は、その全てを保管する義務がこの時代まだなかったため、その活動の全貌を今後どのようなかたちで浮き彫りにすることができるのか、模索中である。
KAKENHI-PROJECT-16K03106
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K03106
19世紀中半のアメリカ合衆国における太平洋像とそこに映し出された合衆国理解の研究
本年は、大西洋史における「海の民(people of the sea)」と「陸の民(people of the continent or land)」の交錯に関心を寄せる研究者たちと知見の交換を深めた。それらの「民」の具体的な定義はまだ定まらないが、例えば漁師、海事情報誌の発行者、地図制作者、画家などまでを海の民に括ることによって、海の理解をより二次平面的なひろがりを持つものに肉付けすることができる。田中きく代・阿賀雄二郎・金澤周作編『海のリテラシー』(創元社、2016年)などを叩き台に、大西洋史を学ぶ研究者と海の歴史のひろがりを共同で討議したことは本年の成果である。一方、文学研究者を中心に太平洋のメタヒストリーを追う研究者たちとは、2017年11月22ー23日に東京大学で開催された国際シンポジウム"Pacific Gateways"で討議を行い、英国の太平洋進出が英国人自身に与えた世界観の変容を学ぶことが出来た。アメリカ文学の分析に援用可能な視点も多く、刺激になった。実地の史料調査においては、ワシントンDCでの調査を2018年3月に行った。特に国立公文書館新館(NARA II)の図像資料室に所蔵される、19世紀合衆国海軍天文台作成の海図手稿に注目し、史料を収集した。その結果、英国海軍天文台やロシア海軍との情報の譲受が、合衆国における海の大系的理解に予想外に大きな影響を与えていたことが分かった。19世紀中半の合衆国海軍の情報収集に限れば、ペリーやモーリのほかに、リングゴルドの太平洋測量艦隊の活動が一つの画期であることも明らかになりつつある。ジャワのオランダ植民地政庁やドイツのフンボルトらと情報を交わしたモーリらの活動を洗い直すことで、合衆国の太平洋理解とヨーロッパの太平洋理解との関係をさらに明らかにすることができるだろう。今後もこの方向で調査を続け、成果を論文にまとめたい。伝統的な文字史料として、合衆国海軍天文台所長と各国の海軍天文台、あるいは合衆国海軍艦隊長との間に交わされた海事情報および観測データの収集を本年度試みた。ただし、国立公文書館(NARA)旧館が所蔵するRecord Group全体が未刊行史料を主とし、かつ史料保存の状況が理想的とは言えないので、解読に時間がかかっている。本研究の主たる研究対象であるマシュー・フォンテイン・モーリ自身はある種の記録魔で、残した手稿文書も数多い。が、内容的には海事観測機器や地図の備え付けに関する事務的なやり取りが大部を占め、海そのものへの主観を交えた理解なり理想なりをそこから読み取ることは容易ではない。むしろ、議会図書館(LC)のモーリ家文書に含まれる個人書簡の解読を試みなければ、役職を離れた一人の科学者としてモーリが海に抱いたイマジネーションを析出するのは難しいという印象を得ている。一方、ProQuest Congressional Recordsに集積されている連邦議会資料を検索した限りでは、19世紀中半とくに1853年までの議事録等公式記録で太平洋が議論された例は相当程度フォローできることが分かってきた。興味深いのは、ペリー艦隊が合衆国帰国後に議会にあげた報告が、上院・下院内の幾つかの組織に対し、添付地図の違いなどの差異を含んでいることである。
KAKENHI-PROJECT-16K03106
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K03106
機能性有機金属化合物・錯体分子によるメタロチオネインの機能調節とその分子機構
本研究では、血管内皮細胞に対してメタロチオネイン(MT)合成を効率良く誘導するハイブリッド分子として、ジエチルジチオカルバミン酸銅(Cu10)を見いだした。次に、Cu10は内皮細胞内に取り込まれやすいことや、Cu10によるMT合成誘導には、重金属応答性転写因子であるMTF-1が関与するが、酸化ストレス応答性転写因子であるNrf2は関与していないことを明らかにした。また、Cu10は内皮細胞以外の細胞に対してもMTの合成誘導を引き起こすが、血管内皮細胞に対してより強いMT誘導活性を有することが示された。以上より、Cu10が動脈硬化症などの予防に向けた有用なリード化合物になり得る可能性が示唆された。本研究は、無機化合物と有機化合物の両方の特性を有する有機金属化合物・錯体分子(ハイブリッド分子と呼ぶ)に着目し、(1)各種培養細胞において生体防御因子の一つであるメタロチオネインを効率よく誘導合成する化合物を見いだす、(2)次いで、メタロチオネイン誘導合成能を有するハイブリッド分子をツールとして活用し、新たなメタロチオネイン誘導合成機構の解明を目指す、(3)また、実験動物を用い、個体レベルでのハイブリッド分子の有用性を確認し、動脈硬化症などの各種疾患の予防と治療に貢献できる有用なハイブリッド分子を提案することを目的としている。平成24年度は、血管内皮細胞に対してメタロチオネイン合成を効率よく誘導するハイブリッド分子として、120化合物の中からジエチルジチオカルバミン酸銅〔Cu(II)(Edtc)2〕を見いだした。また、Cu(II)(Edtc)2で前処理した細胞では、カドミウムや亜ヒ酸による細胞毒性が軽減されることを明らかにした。平成25年度は、血管内皮細胞に対して高メタロチオネイン誘導能を示したCu(II)(Edtc)2の関連化合物群についてメタロチオネイン誘導作用を検討したが、Cu(II)(Edtc)2よりも強い活性を示す化合物を見いだすことができなかった。一方で、Cu(II)(Edtc)2の作用発現機構を解析し、Cu(II)(Edtc)2は細胞内に取り込まれやすいことや、Cu(II)(Edtc)2によるメタロチオネイン合成誘導には、重金属応答性転写因子であるMTF-1が関与するが、酸化ストレス応答性転写因子であるNrf2は関与しないことをsiRNAを用いたノックダウン実験により明らかにした。本研究では、血管内皮細胞に対してメタロチオネイン(MT)合成を効率良く誘導するハイブリッド分子として、ジエチルジチオカルバミン酸銅(Cu10)を見いだした。次に、Cu10は内皮細胞内に取り込まれやすいことや、Cu10によるMT合成誘導には、重金属応答性転写因子であるMTF-1が関与するが、酸化ストレス応答性転写因子であるNrf2は関与していないことを明らかにした。また、Cu10は内皮細胞以外の細胞に対してもMTの合成誘導を引き起こすが、血管内皮細胞に対してより強いMT誘導活性を有することが示された。以上より、Cu10が動脈硬化症などの予防に向けた有用なリード化合物になり得る可能性が示唆された。本研究は、無機化合物と有機化合物の両方の特性を有する有機金属化合物・錯体分子(ハイブリッド分子)に着目し、(1)各種培養細胞において生体防御因子の一つであるメタロチオネインを効率よく誘導合成する化合物を見いだす、(2)次いで、メタロチオネイン誘導合成能を有するハイブリッド分子をツールとして活用し、新たなメタロチオネイン誘導合成機序の解明を目指す、(3)また、実験動物を用い、個体レベルでのハイブリッド分子の有用性を確認し、動脈硬化症などの各種疾患の予防と治療に貢献できる有用なハイブリッド分子を提案することを目的としている。平成24年度は、血管内皮細胞や血管平滑筋細胞などの血管構成細胞のメタロチオネイン合成を効率よく誘導するハイブリッド分子の探索を行うことを目的とした。まず、血管内皮細胞に対して効率よくメタロチオネインを誘導合成する低毒性な化合物を見いだすことを目的に、ハイブリッド分子ライブラリーを用いて化合物の探索研究を行い、120化合物の中から高メタロチオネイン誘導能を有する化合物としてジエチルジチオカルバミン酸銅[Cu(II)(Edtc)2]を見いだした。Cu(II)(Edtc)2は血管壁細胞に対してもメタロチオネイン合成を誘導したが、その程度は血管内皮細胞に比べて弱かった。Cu(II)(Edtc)2が高メタロチオネイン誘導能を示す処理条件下において、Cu(II)(Edtc)2の配位子あるいは硫酸銅の単独処理ではメタロチオネインの発現誘導は起こらず、銅を他の金属に置換した化合物や配位子を置換した化合物では誘導効果の消失あるいは低下が認められた。しかもCu(II)(Edtc)2は細胞内へ取り込まれやすい特徴を有することも確認された。また、Cu(II)(Edtc)2で前処理した細胞では、カドミウムや亜ヒ酸による細胞毒性が軽減されることを明らかにした。本研究は、無機化合物と有機化合物の両方の特性を有する有機金属化合物・錯体分子(ハイブリッド分子)に着目し、(1)各種培養細胞において生体防御因子の1つであるメタロチオネイン(MT)を効率よく誘導合成する化合物を見いだす、(2)次いで、MT誘導合成能を有するハイブリッド分子をツールとして活用し、新たなMT誘導機構の解明を目指す、(3)また、実験動物を用い、個体レベルでのハイブリッド分子の有用性を確認し、動脈硬化症などの各種疾患の予防と治療に貢献できる有用なハイブリッド分子を提案することを目的としている。
KAKENHI-PROJECT-24590163
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24590163
機能性有機金属化合物・錯体分子によるメタロチオネインの機能調節とその分子機構
本研究により、血管内皮細胞に対してMT合成を効率良く誘導するハイブリッド分子として、120化合物の中からジエチルジチオカルバミン酸銅[Cu(II)(Edtc)2](Cu10)を見いだした。そこで、Cu10の作用発現機構を解析し、Cu10は、細胞内に取り込まれやすいことや、Cu10によるMT合成誘導には、重金属応答性転写因子であるMTF-1が関与するが、酸化ストレス応答性転写因子であるNrf2は関与しないことを明らかにした。血管内皮細胞以外の細胞種についても検討し、Cu10が脳微小血管周皮細胞や冠動脈血管平滑筋細胞に対してもMTの合成誘導を引き起こすが、その効果は血管内皮細胞に対する効果と比べて弱く、Cu10は血管内皮細胞に対してより強いMT誘導活性を示すことが示唆された。また、Cu10は、難水溶性化合物であったため、実験動物に投与するにあたって、Cu10の投与に適する溶媒の検討や可溶化剤の検討を行ったが、良好な結果は得られなかった。この点については今後のさらに検討が必要ではあるが、本研究によって、Cu10などのハイブリッド分子が、動脈硬化症などの各種疾患の予防に向けた有用なリード化合物になり得る可能性が示唆された。環境毒性学平成25年度の研究計画としては、(1)平成24年度の研究で見いだされたCu(II)(Edtc)2をリード化合物として、Cu(II)(Edtc)2よりもさらに有用な活性を示す化合物を探索すること、(2)あわせて、Cu(II)(Edtc)2によるメタロチオネイン誘導合成機構を明らかにすることを目的とした。平成25年度の各種検討により、(1)については、残念ながら現時点においてはCu(II)(Edtc)2よりもさらに有用な活性を示す化合物は見いだされていないが、現在も継続して探索中である。(2)に関しては、研究実績の概要でも示したように、Cu(II)(Edtc)2は細胞内に取り込まれやすいことや、Cu(II)(Edtc)2によるメタロチオネイン合成誘導には、重金属応答性転写因子であるMTF-1が関与することを明らかにした。したがって、平成25年度の研究計画にそって研究を行い、不十分な点はあるものの、上記のような結果を得られたことから、現在までの達成度としては、おおむね順調に進展していると考えている。初年度(平成24年度)の研究実施計画では、ヒト冠動脈血管内皮細胞、ヒト脳毛細血管内皮細胞、ヒト冠動脈血管平滑筋細胞およびヒト脳毛細血管周皮細胞を用いて、これらの血管構成細胞を各種ハイブリッド分子で処理し、細胞内メタロチオネインmRNA並びにタンパク質量の測定、ハイブリッド分子の構造活性相関の検討、および細胞毒性の評価などの分析を行い、メタロチオネイン合成を効率よく誘導する低毒性なハイブリッド分子を探索することを目的とした。各種検討の結果、平成24度は、まず、120種類のハイブリッド分子の中から、高メタロチオネイン誘導能を有する低毒性な化合物としてジエチルジチオカルバミン酸銅[Cu(II)(Edtc)2]を見いだすことに成功した。このCu(II)(Edtc)2は血管壁細胞に対してもメタロチオネイン合成を誘導すること、並びにその程度は血管内皮細胞に比べて弱いことを見いだした。
KAKENHI-PROJECT-24590163
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網羅的遺伝子発現解析による移植片拒絶反応の機序解明の試み
急性拒絶反応モデルの確立、移植片サンプルの採取を施行した。1.移植片サンプルの作成マウス異所性心移植モデル(BALB/c- C57/BL6、fully allogeneic combination)を用いて、急性拒絶反応モデルを作成し、移植後1時間、6時間、12時間、24時間(1日)、3日、5日、7日、10日目にそれぞれ犠死させ(各群:n=6)、移植片、末梢血、骨髄などについて採取した。さらに、ラット肝移植モデル(DAーLewis、fully allogeneic combination)を用いて急性拒絶反応モデルを作成し、同様の移植片サンプルについて採取した。2.網羅的遺伝子解析発現解析を施行する遺伝子については、Th1サイトカイン(IL-2、IFN-γなど)、Th2サイトカイン(IL-4、IL-5、Il-1Oなど)、ケモカイン(MCP-1、RANTES、など約40種類以上)、ケモカインレセプター(CCR1、Duffyなど20種類以上)、TNF、CDシリーズ、各種接着分子、など、過去10年間に発表された論文の中で、拒絶反応に関与すると考えられる遺伝子、数百種類のリストを作成した。現時点においては、拒絶反応に関するデータは不十分ではあるが、マウスPCR-array、ラットcDNA-microarrayをもちいた網羅的遺伝子解析モデルが、ほぼ使用可能になった。今後はprofiling解析に移行する。急性拒絶反応モデルの確立、移植片サンプルの採取を施行した。1.移植片サンプルの作成マウス異所性心移植モデル(BALB/c- C57/BL6、fully allogeneic combination)を用いて、急性拒絶反応モデルを作成し、移植後1時間、6時間、12時間、24時間(1日)、3日、5日、7日、10日目にそれぞれ犠死させ(各群:n=6)、移植片、末梢血、骨髄などについて採取した。さらに、ラット肝移植モデル(DAーLewis、fully allogeneic combination)を用いて急性拒絶反応モデルを作成し、同様の移植片サンプルについて採取した。2.網羅的遺伝子解析発現解析を施行する遺伝子については、Th1サイトカイン(IL-2、IFN-γなど)、Th2サイトカイン(IL-4、IL-5、Il-1Oなど)、ケモカイン(MCP-1、RANTES、など約40種類以上)、ケモカインレセプター(CCR1、Duffyなど20種類以上)、TNF、CDシリーズ、各種接着分子、など、過去10年間に発表された論文の中で、拒絶反応に関与すると考えられる遺伝子、数百種類のリストを作成した。現時点においては、拒絶反応に関するデータは不十分ではあるが、マウスPCR-array、ラットcDNA-microarrayをもちいた網羅的遺伝子解析モデルが、ほぼ使用可能になった。今後はprofiling解析に移行する。今年度の目標としては、遺伝子プライマーの作成と急性拒絶反応モデルの確立、移植片サプルの採取にある。1.遺伝子プライマーの作成ATAC-PCRによる移植片組織中の網羅的遺伝子発現解析を始めるにあたり、目的とする遺伝子について大量の特異的プライマーの設計を行う。発現解析を施行する遺伝子については、Th1サイトカイン(IL-2、IFN-γなど)、Th2サイトカイン(IL-4、IL-5、II-10など)、ケモカイン(MCP-1、RANTES、など約40種類以上)、ケモカインレセプター(CCR1、Duffyなど20種類以上)、TNF、CDシリーズ、各種接着分子、など、過去10年間に発表された論文の中で、拒絶反応に関与すると考えられる遺伝子、数百種類のリストを作成した。さらにcDNAライブラリーに含まれていないものについて、それぞれの遺伝子特異的プライマーの設計中である。2.移植片サンプルの作成マウス異所性心移植モデル(BALB/c-C57/BL6、fully allogeneic combination)を用いて急性拒絶反応モデルの作成、再現が移植片の正着日数、組織学的解析より可能になった。現在、急性拒絶反応モデルを作成し、移植後1時間、6時間、12時間、24時間(1日)、3日、5日、7日、10日目にそれぞれ犠死させ(各群:n=6)、移植片、末梢血、骨髄などについて採取中である。次年度に、1.の結果とあわせ、網羅的遺伝子解析へと発展させる。今年度は、急性拒絶反応モデルの確立、移植片サンプルの採取を施行した。1.移植片サンプルの作成マウス異所性心移植モデル(BALB/c-C57/BL6、fully allogeneic combination)を用いて急性拒絶反応モデルの作成、再現が移植片の正着日数、組織学的解析より可能になった。現在、急性拒絶反応モデルを作成し、移植後1時間、6時間、12時間、24時間(1日)、3日、5日、7日、10日目にそれぞれ犠死させ(各群:n=6)、移植片、末梢血、骨髄などについて採取中した。2.遺伝子プライマーの作成ATAC-PCRによる移植片組織中の網羅的遺伝子発現解析を始めるにあたり、目的とする遺伝子について大量の特異的プライマーの設計を行う。発現解析を施行する遺伝子については、Th1サイトカイン(IL-2、IFN-γなど)、Th2サイトカイン(IL-4、IL-5、Il-10など)、ケモカイン(MCP-1、RANTES、など約40種類以上)、ケモカインレセプター(CCR1、Duffyなど20種類以上)、TNF、CDシリーズ、各種接着分子、など、過去10年間に発表された論文の中で、拒絶反応に関与すると考えられる遺伝子、数百種類のリストを作成した。これらにより、PCR-arrayへの件きゅいこうを試みた。
KAKENHI-PROJECT-14571136
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14571136
網羅的遺伝子発現解析による移植片拒絶反応の機序解明の試み
同時期に、cDNA-microarrayをもちいたラット網羅的遺伝子解析モデルが共同研究として使用可能になった。今年度前半より、研究をこの方向へシフトした。
KAKENHI-PROJECT-14571136
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14571136
戦後イタリアにおける建築理論の展開に関する研究
今年度は、建築家アルド・ロッシの(A)1960年代の言説(一部)と(B)1968年前後の言説という2つのテーマを研究範囲に設定した。(A)は昨年度後期から継続的に行っていたテーマである。具体的には、ロッシが1966年に発表した著作『都市の建築』の文脈や同時代的背景を、同著作が執筆された時期にロッシがヴェネツィア建築大学で助手として参加していた講座「建物の配列的特徴」の講義録を資料として前年度より検討してきたが、今年度はこの研究成果を学会で発表するとともにその後論文としてまとめた。また今年度から重点的に取り組み始めた(B)のテーマについては、まずロッシが1966年から教師として着任したミラノ工科大学での講義録・ノートを中心に資料の分析を行った。その結果、1968年前後を頂点とする建築学生によるイタリア建築学校の占拠・異議申し立て運動にロッシが教師という立場から共感を持ち、学生達と積極的に対話を行っていたことを明らかにした。戦後建築文化における建築教育の問題は、ポストモダニズムにおける建築形態の議論の陰に隠れてほとんど論じられてこなかった論点であり、本研究は戦後建築史や建築における1968年といったテーマの先駆的研究となり得る。さらに以上の研究過程で、1968年前後のイタリア建築学校の危機の問題が、同時期にアルド・ロッシを中心に「傾向tendenza」という語を鍵概念として展開されていた議論の背景ともなっていることが明らかとなった。この語はこれまでロッシ建築に代表される建築スタイルを示す語として認知されてきた。これに対して本研究は、戦後イタリア建築文化におけるこの語を巡る言説の時系列的変化を考察し、実際にはこの語が建築学校の危機という文脈において既存の建築教育のオルタナティブを示すものとして用いられていたことを明らかにした。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。今年度は、建築家アルド・ロッシの(A)1950年代の言説と(B)1960年代の言説(一部)という2つのテーマを研究範囲として設定した。(A)については、戦後イタリア建築文化における「伝統」の議論を、単なる近代建築批判ではなく、複数の伝統論の対立という観点から考察した。さらにロッシの伝統論が、同時期のイタリア共産党系知識人・芸術家の議論を参照していることも明らかにした。以上の成果を踏まえて、1950年代の言説においてロッシが新古典主義建築に対して与えていた意義を考察した。これまでロッシの新古典主義建築論はその形態的嗜好において理解されがちであったことに対して、本研究は概念的・イデオロギー的な側面から理解する視点を提示している点で重要な意義を持ちうる。また今年度は(A)と(B)の2つの時期のロッシの言説に対する通時的な視点を得るために、ロッシが両時期にウィーンの建築家アドルフ・ロースを参照していたことに注目し、そのロースの評価の変化を追跡した。この結果、歴史というテーマに対するロッシの観点が、1950年代には近代建築運動との対決の中でアカデミックな意味での「歴史・伝統」であったのに対して、1960年代になるとイタリア国内で深刻化していた都市問題を背景に、都市の中を流れる具体的な「時間・歴史」へと変化したことが明らかとなった。またロッシが(B)の1960年代に発表した著作『都市の建築』について、同時代的背景を明らかにするために、同時期にロッシが助手として参加したヴェネツィア建築大学の講座の資料を調査した。この結果、『都市の建築』がヴェネツィアにおいて他の研究者たちと行われた共同作業の成果であったことが明らかとなった。これまでロッシという一人の建築家の独創的な著作として見なされてきた『都市の建築』に対して、本研究の成果は新たな光を当てたと言える。本年度は、当初の予定通り、建築家アルド・ロッシの(A)1950年代の言説に関する研究をまとめあげ、一定の区切りをつけることができた。この時期は、ロッシの建築理論の萌芽段階であり、今年度の研究成果に基づいてロッシの建築理論のその後の発展が適切に追跡・理解できると予想される。また同時期のロッシの未公刊論考を入手するために、次年度に予定していた国外での資料収集を前倒しで今年度に行うことになったが、その結果として、次年度の研究における新たな視点を得ることもできた。またもうひとつの(B)1960年代の言説というテーマについても、ロッシの建築理論の展開の時系列とは相前後する形で、次年度に予定していた1963年-66年の資料調査を前倒しで行ったが、このことによって1960年代初頭のロッシの議論のどこに独自性があるのかも把握することができた。加えて、1950年代から1960年代にかけてのロッシの言説の変化という新しい視点を得ることもできた。各テーマの研究成果を学術発表・論文としてまとめる作業も順次進めており、全体として本研究は順調に進展していると言える。今年度は、建築家アルド・ロッシの(A)1960年代の言説(一部)と(B)1968年前後の言説という2つのテーマを研究範囲に設定した。(A)は昨年度後期から継続的に行っていたテーマである。
KAKENHI-PROJECT-16J05298
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J05298
戦後イタリアにおける建築理論の展開に関する研究
具体的には、ロッシが1966年に発表した著作『都市の建築』の文脈や同時代的背景を、同著作が執筆された時期にロッシがヴェネツィア建築大学で助手として参加していた講座「建物の配列的特徴」の講義録を資料として前年度より検討してきたが、今年度はこの研究成果を学会で発表するとともにその後論文としてまとめた。また今年度から重点的に取り組み始めた(B)のテーマについては、まずロッシが1966年から教師として着任したミラノ工科大学での講義録・ノートを中心に資料の分析を行った。その結果、1968年前後を頂点とする建築学生によるイタリア建築学校の占拠・異議申し立て運動にロッシが教師という立場から共感を持ち、学生達と積極的に対話を行っていたことを明らかにした。戦後建築文化における建築教育の問題は、ポストモダニズムにおける建築形態の議論の陰に隠れてほとんど論じられてこなかった論点であり、本研究は戦後建築史や建築における1968年といったテーマの先駆的研究となり得る。さらに以上の研究過程で、1968年前後のイタリア建築学校の危機の問題が、同時期にアルド・ロッシを中心に「傾向tendenza」という語を鍵概念として展開されていた議論の背景ともなっていることが明らかとなった。この語はこれまでロッシ建築に代表される建築スタイルを示す語として認知されてきた。これに対して本研究は、戦後イタリア建築文化におけるこの語を巡る言説の時系列的変化を考察し、実際にはこの語が建築学校の危機という文脈において既存の建築教育のオルタナティブを示すものとして用いられていたことを明らかにした。次年度の具体的な研究テーマは、(B)1960年代と(C)1968年以降のロッシの言説という2つを設定している。(B)1960年代のロッシ自身の議論については本年度に資料の読み込みが進んだ一方、ロッシ以外の他の建築家・都市計画家・批評家の言説については、資料収集・読み込みともにいまだ不十分である。したがって次年度は後者の研究を重点的に進め、ある程度進んだ段階で、改めてロッシの議論との比較・対象を行う。また今年度に前倒しで行った国外資料調査により、次年度に研究対象としていた(C)1968年以降のロッシの言説について、新たな視点・論点が浮かび上がってきた。なかでもロッシが同時期にスイスのチューリッヒ工科大学で行っていた教育活動が、その建築理論においても重要な背景であることが分かった。したがって今年度は、イタリアでの現地調査に加えて、スイスのチューリッヒ工科大学での資料調査も追加する予定である。ロッシ自身による論文・著作・雑誌記事・草稿といった資料は本年度にかなりの程度収集することができたので、これらの新しい調査事項も十分に遂行可能であると考えている。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-16J05298
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J05298
冠動脈バイパス手術における血小板凝集能に及ぼすインスリンの影響
重症の冠動脈疾患には冠動脈バイパス手術が適用されるが、移植された血管は、血管内皮細胞が脱落しているため、血小板の活性化が生じやすい状態にある。活性化された血小板から放出されるセロトニン(5-HT)などのケミカルメディエータは、さらなる血小板の活性化を惹き起こすことによりバイパス血管のれん縮を生じさせるため、手術の成功率に大きな影響を与える。このバイパス血管のれん縮は、非糖尿病患者に比べて糖尿病患者で生じ易いことが知られている。したがって、インスリン作用不全が血管平滑筋のみならず血小板の反応性をも亢進することを証明できれば、糖尿病患者でバイパス手術後に血管閉塞が生じやすい原因の解明につながるとともに、より安全なバイパス手術の予後改善に寄与できる。現在のところ、高濃度インスリンによる血小板膜の5-HT2A受容体量の減少を確認しているが、ウサギ血小板膜の生理活性を長時間保つ実験条件設定が困難であり低濃度インスリン(生理的濃度)を長時間作用させるのが困難な状態である。我々はこれまで、インスリンにはセロトニン2A (5-HT2A)受容体をヒト血管平滑筋細胞膜から細胞質に引き込むインターナリゼーション促進作用があることを報告してきた。この結果から、糖尿病患者の血管で見られるセロトニンに対する収縮反応性亢進は、インスリンの作用不全によって血管平滑筋細胞膜の5-HT2A受容体の数が相対的に増加したためではないかと考えている。一方、血小板膜にはセロトニン受容体が発現しており、自分自身や他の血小板から放出されたセロトニンにより活性化され迅速な血小板凝集を起こすことが知られている。この血小板凝集は、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす。したがって、糖尿病患者でセロトニンによる血小板凝集が促進されているのであれば、抗血小板薬の使用により冠動脈バイパス手術におけるリスク軽減が期待される。平成30年度は、血小板膜においても、インスリンによるG蛋白質共役受容体のインターナリゼーションが惹起されるのかを明らかにする目的で、血小板凝集におけるインスリンの影響について以下の2点を指標として研究を展開した。1インスリン作用の用量依存性2インスリン処理による血小板膜上の5-HT2A受容体量の変化。現在のところ、高濃度インスリンによる血小板膜の5-HT2A受容体量の減少を確認しているが、ウサギ血小板膜の生理活性を長時間保つ実験条件設定が困難であり低濃度インスリン(生理的濃度)を長時間作用させるのが困難な状態である。現在、血小板膜上の5-HT2A受容体蛋白を定量する実験手技は確立しており、今年度はウサギ血小板に加えてヒト血小板を使用して低濃度インスリン処理条件が設定できることから、研究の遅れは取り戻すことができ、平成30年度の目標であるインスリンによるG蛋白質共役受容体のインターナリゼーションの細胞内メカニズムを明らかにすることが可能と考えている。平成31年度には、インスリンの作用メカニズムの解明を目指し、ヒト血小板を用いて以下の2つの方向からのアプローチを行う。1インスリンで刺激した時の細胞内分子の活性化に関する検討:細胞内シグナル分子の発現量、リン酸化レベルおよびトランスロケーションなどについて、主としてウエスタンブロット法やリアルタイムPCR法を用いた解析を行う。2細胞内シグナル分子の受容体インターナリゼーションにおける役割の解析:細胞内シグナル分子の阻害薬または刺激薬を作用させた血小板の反応を調べ、凝集能や受容体インターナリゼーションにおけるそれぞれのシグナル分子の関与を解明する。血小板は無核の細胞断片であるため、外界から刺激を受けても、遺伝子誘導や蛋白合成が行われることは無い。ゆえに、細胞外環境が血小板の反応性に影響を与えるとすれば、その変化はシグナル分子の局在や活性変化に依存するところが大きいと考えている。重症の冠動脈疾患には冠動脈バイパス手術が適用されるが、移植された血管は、血管内皮細胞が脱落しているため、血小板の活性化が生じやすい状態にある。活性化された血小板から放出されるセロトニン(5-HT)などのケミカルメディエータは、さらなる血小板の活性化を惹き起こすことによりバイパス血管のれん縮を生じさせるため、手術の成功率に大きな影響を与える。このバイパス血管のれん縮は、非糖尿病患者に比べて糖尿病患者で生じ易いことが知られている。したがって、インスリン作用不全が血管平滑筋のみならず血小板の反応性をも亢進することを証明できれば、糖尿病患者でバイパス手術後に血管閉塞が生じやすい原因の解明につながるとともに、より安全なバイパス手術の予後改善に寄与できる。我々は、ウサギから採取した全血を遠心分離によって血小板と他の血球成分とに分離し、さらに内因性インスリンの影響を除くために、洗浄用カルシウム不含バッファーにて血小板を洗浄した。その後、再度遠心分離によってバッファーを取り除き、適切な反応バッファーに血小板を再懸濁して実験に供した。血小板凝集測定装置を用いたセロトニンによる血小板凝集能は、インスリン未処置群で3438%、インスリン300 nM処置群では2631%でありインスリン処置群で凝集が抑制されている。しかし、測定の誤差が大きく実験の信頼性を高める必要がある。現在、安定した測定結果を得ることができるよう、より適切なインスリン処理条件の設定を再度検討中である。我々はこれまで、インスリンにはセロトニン2A (5-HT2A)受容体をヒト血管平滑筋細胞膜から細胞質に引き込むインターナリゼーション作用があることを報告してきた。
KAKENHI-PROJECT-17K10771
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K10771
冠動脈バイパス手術における血小板凝集能に及ぼすインスリンの影響
この結果から、糖尿病患者の血管で見られるセロトニンに対する収縮反応性亢進は、インスリンの作用不全によって血管平滑筋細胞膜の5-HT2A受容体の数が相対的に増加したためではないかと考えている。血小板膜にはセロトニン受容体が発現しており、自分自身や他の血小板から放出されたセロトニンにより活性化され迅速な血小板凝集を起こすことが知られている。平成29年度は、血小板膜においても、インスリンによるG蛋白質共役受容体のインターナリゼーションが惹起されるのかを明らかにする目的で、血小板凝集におけるインスリンの影響について以下の2点を目標として展開した。1より適切なインスリン処理条件の設定2インスリン処理による血小板膜上の5-HT2A受容体量の変化。現在のところ、適切なインスリン処理条件の設定ができていないが、血小板の生理活性を保つ条件設定はできてきている。重症の冠動脈疾患には冠動脈バイパス手術が適用されるが、移植された血管は、血管内皮細胞が脱落しているため、血小板の活性化が生じやすい状態にある。活性化された血小板から放出されるセロトニン(5-HT)などのケミカルメディエータは、さらなる血小板の活性化を惹き起こすことによりバイパス血管のれん縮を生じさせるため、手術の成功率に大きな影響を与える。このバイパス血管のれん縮は、非糖尿病患者に比べて糖尿病患者で生じ易いことが知られている。したがって、インスリン作用不全が血管平滑筋のみならず血小板の反応性をも亢進することを証明できれば、糖尿病患者でバイパス手術後に血管閉塞が生じやすい原因の解明につながるとともに、より安全なバイパス手術の予後改善に寄与できる。現在のところ、高濃度インスリンによる血小板膜の5-HT2A受容体量の減少を確認しているが、ウサギ血小板膜の生理活性を長時間保つ実験条件設定が困難であり低濃度インスリン(生理的濃度)を長時間作用させるのが困難な状態である。我々はこれまで、インスリンにはセロトニン2A (5-HT2A)受容体をヒト血管平滑筋細胞膜から細胞質に引き込むインターナリゼーション促進作用があることを報告してきた。この結果から、糖尿病患者の血管で見られるセロトニンに対する収縮反応性亢進は、インスリンの作用不全によって血管平滑筋細胞膜の5-HT2A受容体の数が相対的に増加したためではないかと考えている。一方、血小板膜にはセロトニン受容体が発現しており、自分自身や他の血小板から放出されたセロトニンにより活性化され迅速な血小板凝集を起こすことが知られている。この血小板凝集は、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす。したがって、糖尿病患者でセロトニンによる血小板凝集が促進されているのであれば、抗血小板薬の使用により冠動脈バイパス手術におけるリスク軽減が期待される。平成30年度は、血小板膜においても、インスリンによるG蛋白質共役受容体のインターナリゼーションが惹起されるのかを明らかにする目的で、血小板凝集におけるインスリンの影響について以下の2点を指標として研究を展開した。1インスリン作用の用量依存性2インスリン処理による血小板膜上の5-HT2A受容体量の変化。
KAKENHI-PROJECT-17K10771
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天井とスプリンクラー設備の耐震性に関する研究
本研究では、近年の地震において多発している天井およびスプリンクラー設備の被害を受けて、それぞれの地震時の挙動を詳細に解析するための数値解析法を提示するとともに、それらの力学的特性を実験的・解析的検討を通して明らかにしている。特に、天井落下に大きく関与している天井下地材の接合金物の特性、天井の地震時の揺れを考える上で重要となる固有周期、地震時に天井面に発生する慣性力を負担する能力、および、スプリンクラー設備における接合部の破断特性などについて定量的に明らかにしている。本研究では、近年の地震において多発している天井およびスプリンクラー設備の被害を受けて、それぞれの地震時の挙動を詳細に解析するための数値解析法を提示するとともに、それらの力学的特性を実験的・解析的検討を通して明らかにしている。特に、天井落下に大きく関与している天井下地材の接合金物の特性、天井の地震時の揺れを考える上で重要となる固有周期、地震時に天井面に発生する慣性力を負担する能力、および、スプリンクラー設備における接合部の破断特性などについて定量的に明らかにしている。本年度の研究実施計画I「天井とスプリンクラー設備から成る試験体の動的実験」では、天井とスプリンクラー設備から成る試験体に対して動的実験を行い、スプリンクラー設備に生じる損傷パターンを洗い出した。結果としては、鋼管仕様の場合にはスプリンクラーヘッド部と天井面との衝突によるヘッド部の損傷ならびに鋼管接合での破断が観察され、フレキシブル管仕様の場合にはスプリンクラーヘッド部自体はほとんど損傷がないながらも天井損傷によってヘッド部が天井懐に埋設してしまいスプリンクラーとしての散水機能が損なわれる現象が確認された。同実施計画IIは耐震改修工事のために使用する予定の装置が使用できなかったために計画変更を余儀なくされた。そこで、本研究の目的のひとつである「接合金物(クリップ)の脱落条件を組み込んだ天井落下予測のための数値解析法の構築」について実施した。天井の下地材のクリップによる接合部を抽出した実験ならびに数値解析の再構築を行った。特筆すべき成果として、既往の研究での解析法に比し、クリップの接合方法、すなわち腹掛け・背掛け方法の如何に関わらず実験結果と一致する解析結果が得られるようになったことが挙げられる。実際の天井には両接合方法が用いられることから、本数値解法および力学モデルを用いることで天井の損傷時の挙動が追跡可能となり、天井の耐震性能を客観的に評価することが可能となる。同実施計画III「吊りボルト長さをパラメータとする天井試験体による動的実験ならびに再現解析」では、従来吊りボルトの長さを1,500mmとする試験体が一般的であったが、本研究では異なる吊りボルト長さ(500mm)を有する天井の動的実験を行うとともに当研究室で提案してきた天井の固有周期推定法の妥当性を検証した。その結果、本推定法は吊りボルトの長さが変化した場合にも十分な精度を有していることが確認された。本年度実施予定であった実施計画I「吊りボルトピッチをパラメータとする天井試験体による動的実験」では、吊りボルトピッチが大きくなることにより、野縁受けを支持する間隔が長くなり、野縁受けの鉛直支持能力が大きく変動・低下することが明らかとなった。また、この野縁受けの支持能力は、当研究室にて開発してきた曲げ捩りを考慮した梁要素にて精度よく再現することが可能であることを確認した。ただし、もうひとつの実験の目的であったクリップのすべり・脱落挙動が促進されるかいなかについては、定性的には促進されることが確認されたが、これを定量的に把握するまでには到らなかった。次年度、クリップ接合部の要素実験を通して定量的な把握を行う。同実施計画II「損傷形式に対する損傷箇所を抽出した要素実験」では、スプリンクラー配管の典型的な接合具を抽出し、鋼管ネジ部での破断現象に関する実験を実施した結果、実際の地震被害に見られるような破断現象は低サイクル疲労破壊によって発生することを再確認した。また、配管からの漏水は完全な破断に到る前の僅かな損傷レベルでも生じることが確認されたことから、損傷の定義としては破断ではなく漏水発生を以って定義する必要があることも明らかとなった。ただし、実際のスプリンクラー設備において漏水するためのデータ、すなわち、損傷発生確率分布などを求めるには、試験体数が不足しており、次年度において試験体数を増やして実験する必要があることも確認された。平成23年度は、クリップ接合部の要素実験を通してクリップ接合部耐力の定量的な把握を行うとともに、この接合部耐力のバラツキが天井の損傷に及ぼす影響を数値解析的に検討し、天井面に作用する加速度(慣性力)に対する損傷確率をフラジリティ・カーブとして提示した。また、提示したフラジリティ・カーブの結果は過去の実験と比較することで妥当性の検証を行った。昨年度行った天井面の安定性に及ぼす吊りボルトピッチの影響および吊りボルト長さの影響を定量的に評価することに成功しており、標準仕様とは異なるピッチや材長が天井面の安定性低下につながることを示した。また、2011年3月11日に発生した東北地方北太平洋沖地震による天井ならびにスプリンクラーの被害調査を仙台、茨城、東京、神奈川を中心に行い、本研究で想定した形式による被害が多く発生していることを確認し、本研究の妥当性・必要性を再確認した。
KAKENHI-PROJECT-21360264
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天井とスプリンクラー設備の耐震性に関する研究
さらに、上記地震被害を受けて設置された国土交通省による基準整備促進事業「地震被害を踏まえた非構造部材の基準の整備に資する検討」(事業主体:一般社団法人建築性能基準推進協会)では、天井耐震計画WG主査として参画し、本研究にて培ってきた内容、特に、接合耐力および天井の剛性ならびに固有周期評価方法などを用いて、天井の耐震計画のあるべき姿について具体的な方策を提示した。このことは、本研究成果が単なる学術論文としてではなく、実効性のある知見として評価されていることを意味している。
KAKENHI-PROJECT-21360264
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アクアポリン9が炎症性皮膚炎発症に果たすKey Role
Aquaporin 9(AQP9)は、水およびグリセロールなどの低分子成分を透過する膜蛋白である。我々は、AQP9欠損(AQP9-/-)マウスを用いた実験から、好中球に発現するAQP9が、ハプテンにより誘発される接触皮膚炎反応(CHS)に関与することを明らかにした。AQP9は好中球の遊走・浸潤に必須の因子であった。AQP9-/-マウスでは、CHS感作過程で起こる好中球のリンパ節への浸潤が低下することで、CHS反応を抑制ししていることを見出した。表皮ケラチノサイトに発現するアクアポリン9(AQP9)の機能解明を目的とし、2012年度より研究に着手した。昨年度までに、ヒト培養ケラチノサイトおよびAQP9遺伝子欠損(AQP9-/-)マウスを用いた検討から、ケラチノサイトに発現するAQP9は、表皮細胞分化・増殖およびバリア機能に大きく関与していないことを見出した。一方、AQP9-/-マウスを用いた種々の炎症性皮膚炎モデルによる予備実験から、免疫細胞に発現するAQP9が、何らかの機能を有する可能性が示された。これらの結果から、本年度は、免疫細胞(好中球、肥満細胞、T細胞)に発現するAQP9の機能を検討することとした。ハプテン(DNFB)誘発による接触皮膚炎反応(CHS)を、野生型(WT)およびAQP9-/-マウスを用い検討した。AQP9-/-マウス皮膚では、発症程度を表す耳介浮腫が、WTマウスと比較して有意に抑制され、WTで認められる好中球およびT細胞の皮膚への浸潤が抑制していた。CHSは、DNFB塗布後5日間の感作相と、DNFB再塗布により誘発される惹起相から成る。感作相を詳細に調べたところ、AQP9-/-マウスでは、リンパ節由来細胞のIL-17産生が低下しており、感作成立が抑制されていた。また、リンパ節由来細胞によるIL-17産生が、好中球中和抗体の投与で阻害されたことから、好中球がIL-17産生に関与していると考えられた。また、DNFB塗布5日後のリンパ節内の好中球の細胞数が、AQP9-/-マウスでは減少していた。さらに、好中球あるいはT細胞の移植実験から、AQP9-/-マウスでのCHS抑制の要因が好中球である可能性が示された。以上から、AQP9-/-マウスでのCHS抑制は、好中球が原因である可能性を見出した。Aquaporin 9(AQP9)は、水およびグリセロールなどの低分子成分を透過する膜蛋白である。我々は、AQP9欠損(AQP9-/-)マウスを用いた実験から、好中球に発現するAQP9が、ハプテンにより誘発される接触皮膚炎反応(CHS)に関与することを明らかにした。AQP9は好中球の遊走・浸潤に必須の因子であった。AQP9-/-マウスでは、CHS感作過程で起こる好中球のリンパ節への浸潤が低下することで、CHS反応を抑制ししていることを見出した。表皮ケラチノサイトにおけるアクアポリン9(AQP9)の機能解明を目的としている。内因性サイトカインが誘発するケラチノサイト分化・増殖制御や表皮バリア機能形成に、AQP9発現が関与していることを仮説としている。ヒト培養ケラチノサイト、ならびにAQP9遺伝子欠損マウスを用い、当該期間中に以下の項目を実施した。ヒト由来培養ケラチノサイト(NHEKs)におけるAQP9遺伝子ノックダウンの影響を検討AQP9発現の細胞増殖・分化への関与を調べるため、NHEKsを用い、AQP9遺伝子ノックダウンの、表皮細胞増殖あるいは分化マーカー遺伝子への影響を調べた。表皮バリア機能への影響は、タイトジャンクション関連遺伝子を比較することで検討した。また、表皮細胞分化に影響を与えるサイトカイン(IL-17, IL-22など)の上述因子への影響を、AQP9遺伝子ノックダウンとコントロール細胞にて比較解析した。AQP9遺伝子欠損(AQP9-KO)マウスの供給体制確立、および炎症性皮膚炎モデルでの予備検討AQP9-KOマウスは、海外研究協力者のRojek博士(Aarhus University、デンマーク)から入手し、供給体制を確立した。本マウスを用い、炎症性皮膚炎モデルである乾癬モデル、アトピー性皮膚炎モデルを実施し、野生型マウスと発症頻度を比較した。両モデルで、AQP9発現欠損による、表皮細胞の著しい機能低下は見出されなかった。一方、AQP9が発現している免疫細胞(好中球、マスト細胞)では、AQP9発現欠損により種々の機能低下の可能性が示された。アクアポリン9(AQP9)は、種々の免疫細胞での発現が報告されていたが、機能は不明であった。我々は、AQP9を高発現する好中球に着目し、免疫異常を伴う炎症性皮膚疾患発症への関与を検証した。AQP9-/-マウスを用い、接触皮膚炎(CHS)モデルにおける野生型(WT)マウスとの表現型を比較することで、AQP9の機能解明を試みた。AQP9-/-マウス皮膚では、ハプテン(DNFB)誘発によるCHS反応が、WTマウスと比較して顕著に抑制された。CHSは、DNFB塗布後5日間の感作相と、DNFB再塗布により誘発される惹起相から成る。AQP9-/-
KAKENHI-PROJECT-24591648
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アクアポリン9が炎症性皮膚炎発症に果たすKey Role
マウスでは、CHS感作が成立していなかった。感作過程において、AQP9-/-マウスにWT由来の好中球を移入したところ、CHS感作が回復し、好中球がAQP9-/-マウスにおけるCHS不成立の原因であることが示された。CHS感作過程での好中球の動態を検討したところ、DNFB塗布数時間後から、リンパ節(LN)での好中球数の顕著な増加が確認された。これらの増加は、AQP9-/-マウスでは抑制されていた。また好中球の移入実験は、DNFB塗布後に起こる好中球のLNへの浸潤が、AQP9-/-マウスで低下していることを示した。また、in vitroでのCCR7誘発性のケモタクシスも、AQP9-/-好中球で有意に低下した。さらにAQP9-/-マウスおよび好中球欠損マウスでは、LN細胞でのIL-17産生が低下しており、これがCHS不成立の要因と考えられた。以上の結果から、AQP9-/-マウスでは、CHS感作過程での好中球のLNへの浸潤が低下することでCHS感作が成立せず、その結果として耳介浮腫を指標とするCHS反応が抑制したと考えられた。皮膚科学当初は、表皮ケラチノサイトでのAQP9遺伝子の機能解明を目的としていたが、初年度の研究結果に基づき、免疫細胞でのAQP9遺伝子の機能解明に着手することとした。AQP9遺伝子欠損マウスを用いた接触皮膚炎モデルの結果から、好中球に発現するAQP9が、接触皮膚炎の感作成立に関与していることを見出した。好中球でのAQP9の機能は未だ明確になっていないが、好中球の代表的な機能であるケモタクシス能、貪食能、アポトーシスには関与しておらず、IL-17産生に関与していることを見出せた。当初の予定どおり、AQP9遺伝子ノックダウン細胞およびAQP9遺伝子欠損マウスを用いた実験系を立ち上げ、種々の検討を実施した。培養細胞を用いた実験からは、AQP9発現の表皮細胞分化・増殖への関与について、検討を実施した。AQP9遺伝子欠損を用いた実験からは、皮膚炎発症過程の免疫細胞でAQP9が機能を有している可能性が見出された。これらは、次年度以降の研究の方向性を決定する重要な結果となった。好中球におけるAQP9の機能を検討する。特に、接触皮膚炎反応において、AQP9がIL-17産生にどのように関与しているかを明らかにする。接触皮膚炎の感作成立におけるIL-17産生担当細胞の検討と、AQP9発現との関連性を検討するほか、好中球と樹状細胞、あるいはT細胞との相互作用におけるAQP9の役割を検討する。当初は、表皮細胞に発現するAQP9を研究ターゲットに据えていたが、今後は、AQP9が発現している免疫細胞にも着目し、皮膚炎発症過程での表皮細胞および免疫細胞に発現するAQP9の役割を検討していく。初めに、皮膚炎発症に関与する免疫細胞(T細胞、樹状細胞、好中球、肥満細胞など)におけるAQP9の発現を確認する。次に、AQP9を発現する免疫細胞を用い、AQP本来の機能である水透過、グリセロール透過、またAQP9を介した透過が報告されている種々の低分子化合物(砒素など)の透過を検討する。さらにAQP9遺伝子欠損マウスを用い、接触皮膚炎モデルを実施し、発症頻度を野生型と比較する。AQP9遺伝子欠損マウスおよび野生型マウス由来の免疫細胞を用い、細胞増殖あるいは細胞遊走へのAQP9発現の役割を検討する。
KAKENHI-PROJECT-24591648
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最新ダスト光学モデルに基づく微惑星形成理論の観測的検証
本年度の具体的な研究目標はダストの物理的性質(大きさや内部構造)に応じた原始惑星系円盤の観測的性質を理論的に探ることである。そのために本年度では、昨年度に構築したダストの光学特性モデルを利用し、原始惑星系円盤の3次元輻射輸送計算を実行した。特に、近赤外線とミリ・サブミリ波の2種類の観測波長に着目し、それぞれでダストの大きさや内部構造が円盤の観測的性質に与える影響を調査した。各研究成果は次の通りである。1.近赤外線波長では、中心星の光を円盤表層のダストが散乱した円盤散乱光が観測できる。従来、サイズの大きな低密度ダストは赤い散乱光を示すことが予想されていた。しかし、本研究によって構築された従来よりも正確な光学特性モデルを用いることで、低密度ダストは青い散乱光を生み出すことを世界で初めて示した。一方で、サイズの大きな高密度ダストは赤い散乱光を生み出すため、散乱光の色の情報はダストの構造を観測的に区別する上で有用であることを指摘した。このように近赤外線波長での円盤散乱光の情報からダストの大きさや構造を判別する方法を確立した。本研究成果は査読付きの国際学術誌において論文を出版済みである。2.ミリ・サブミリ波における円盤の輻射輸送計算を行った。ダストの大きさや内部構造は光散乱過程に大きく影響する。そこで、ミリ波の散乱によって生じた偏波には、ダストの物理的性質の情報が含まれることが期待できる。そこで、本研究ではダストの内部構造がミリ波散乱偏波に与える影響を調べた。その結果、低密度ダストはその大きさに関わらず散乱効率が非常に悪いことが明らかになった。つまり、ALMA望遠鏡によって観測されているミリ波散乱偏波は比較的高密度なダストによって生じていることを示している。この結果は円盤赤道面においてダストが高密度化していることを示唆している。本研究成果については現在、論文を投稿準備中である。本年度ではダストの大きさや内部構造が原始惑星系円盤の観測的性質に与える影響を調べる予定であった。まず近赤外線波長における円盤の3次元輻射輸送計算を実行し、ダストの物理的性質と円盤の観測的性質を結びつけることに成功した。この研究成果はすでに論文を出版済みである。しかし、この近赤外線での円盤輻射輸送計算の実行に想定よりも多くの時間を費やした。その原因の一つに、今回扱ったダストが波長と比べて非常に大きく、数値的に扱いにくい光学特性が出現したことが挙げられる。そのため安定に数値計算を実行するために、いくつかの工夫が必要であった。こうして次に行う予定であったミリ・サブミリ波での輻射輸送計算の着手に若干の遅れが生じた。次に、ミリ・サブミリ波での円盤の輻射輸送計算を実行した。着手には若干遅れたものの、当初想定していたよりも非常にシンプルな結果が得られたことで大きく研究が進展した。そのため、計画はおおむね順調に進展していると考えている。なお、ミリ・サブミリ波に関する論文は現在投稿準備中である。まず今年度の後半に取り組んでいたミリ・サブミリ波での原始惑星系円盤の輻射輸送計算結果を論文にまとめ査読付きの国際学術誌に投稿・出版する。次に、これまでに構築してきたダストの光学特性モデルや輻射輸送モデルを現実の円盤観測(赤外線・ミリ波)に応用することで、実際の円盤ダストの性質を制限する。制限されたダストの性質をもとに、微惑星形成過程を究明する。本研究課題の目的は、微惑星形成理論における大きな不確定要素となっているダスト・アグリゲイトの空隙率や構成粒子半径を観測的に推定し、様々な理論モデルを観測量の観点から精査することである。本年度では、まずダスト・アグリゲイトの光学特性に関する研究を行った。原始惑星系円盤の分野において、これまで標準的に利用されてきた有効媒質近似やDistribution of Hollow Spheres (DHS)法の妥当性を, T-Matrix法を用いた数値計算によって検証した。その結果、低密度アグリゲイトの半径が入射波の波長より大きくなると、従来の手法は正しく不透明度を計算できないことが明らかになった。こうした問題を解決するため、我々はBotet et al. (1997, ApOpt, 36, 8791)によって定式化された平均場近似と幾何光学近似の考え方を組み合わせた新たな光学モデルを構築した。T-Matrix法によって得られた結果との比較から、我々の手法は、高い精度でアグリゲイトの吸収・散乱不透明度を再現できることがわかった。さらに、アグリゲイトを構成するモノマー間の高次の電磁場の相互作用がミリ波のダスト吸収不透明度に大きく影響し得ることを指摘した。これにより、円盤のミリ・サブミリ波観測結果に対し、新たな解釈が可能となった。これらの研究成果を1編の論文にまとめ、査読付き国際学術誌に投稿中である。また、上記の研究に加えて、原始惑星系円盤の可視光・近赤外線域における輻射輸送計算を行い、アグリゲイトが存在する円盤の観測的性質を調べる研究も行った。その結果、従来の光学特性モデルに従うと低密度アグリゲイトの存在が示唆されてきた天体について、我々の光学モデルを適用すると、低密度ではなく高密度アグリゲイトの存在を示唆する結果を得た。本研究成果は次年度に論文として発表する予定である。
KAKENHI-PROJECT-17J02411
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最新ダスト光学モデルに基づく微惑星形成理論の観測的検証
今年度に行った光学特性計算、およびそのモデル構築により、当初の予定では次年度に行う予定であったいくつかの研究が今年度に大きく進展した。一方で、モデルの構築に時間を要した結果、今年度に実行する予定であった円盤輻射輸送計算への着手が遅れた。今年度に引き続き、次年度も円盤輻射輸送計算を行っていく予定であるが、当初次年度に予定されていた研究が既にある程度進展していることを加味すると、研究はおおむね順調に進展していると思われる。本年度の具体的な研究目標はダストの物理的性質(大きさや内部構造)に応じた原始惑星系円盤の観測的性質を理論的に探ることである。そのために本年度では、昨年度に構築したダストの光学特性モデルを利用し、原始惑星系円盤の3次元輻射輸送計算を実行した。特に、近赤外線とミリ・サブミリ波の2種類の観測波長に着目し、それぞれでダストの大きさや内部構造が円盤の観測的性質に与える影響を調査した。各研究成果は次の通りである。1.近赤外線波長では、中心星の光を円盤表層のダストが散乱した円盤散乱光が観測できる。従来、サイズの大きな低密度ダストは赤い散乱光を示すことが予想されていた。しかし、本研究によって構築された従来よりも正確な光学特性モデルを用いることで、低密度ダストは青い散乱光を生み出すことを世界で初めて示した。一方で、サイズの大きな高密度ダストは赤い散乱光を生み出すため、散乱光の色の情報はダストの構造を観測的に区別する上で有用であることを指摘した。このように近赤外線波長での円盤散乱光の情報からダストの大きさや構造を判別する方法を確立した。本研究成果は査読付きの国際学術誌において論文を出版済みである。2.ミリ・サブミリ波における円盤の輻射輸送計算を行った。ダストの大きさや内部構造は光散乱過程に大きく影響する。そこで、ミリ波の散乱によって生じた偏波には、ダストの物理的性質の情報が含まれることが期待できる。そこで、本研究ではダストの内部構造がミリ波散乱偏波に与える影響を調べた。その結果、低密度ダストはその大きさに関わらず散乱効率が非常に悪いことが明らかになった。つまり、ALMA望遠鏡によって観測されているミリ波散乱偏波は比較的高密度なダストによって生じていることを示している。この結果は円盤赤道面においてダストが高密度化していることを示唆している。本研究成果については現在、論文を投稿準備中である。本年度ではダストの大きさや内部構造が原始惑星系円盤の観測的性質に与える影響を調べる予定であった。まず近赤外線波長における円盤の3次元輻射輸送計算を実行し、ダストの物理的性質と円盤の観測的性質を結びつけることに成功した。この研究成果はすでに論文を出版済みである。しかし、この近赤外線での円盤輻射輸送計算の実行に想定よりも多くの時間を費やした。その原因の一つに、今回扱ったダストが波長と比べて非常に大きく、数値的に扱いにくい光学特性が出現したことが挙げられる。そのため安定に数値計算を実行するために、いくつかの工夫が必要であった。こうして次に行う予定であったミリ・サブミリ波での輻射輸送計算の着手に若干の遅れが生じた。次に、ミリ・サブミリ波での円盤の輻射輸送計算を実行した。着手には若干遅れたものの、当初想定していたよりも非常にシンプルな結果が得られたことで大きく研究が進展した。
KAKENHI-PROJECT-17J02411
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J02411
精神障害者の就労はリカバリーを促進するか-就労者への調査による縦断的研究-
平成30年度前半には、1回目(終了開始時)61人、2回目(終了開始6か月後)45人、3回目(終了開始1年後)35人分のデータ収集が全て終了した。その後の作業として、データの入力およびデータクリーニングを行い、データの分析を開始した。データの件数は想定した人数よりも少ないものとなった。その原因として考えられることとしては、就労を継続することができない人がいることに加え、調査開始から1年が経過してのアンケート協力となるため、初期の協力しようとする意識が低下し回答が得られなかった可能性も考えられる。しかしながら精神障害者の就労とリカバリーに関する実証研究はあまり見られず、また本研究が縦断的研究であることから、これまでにない貴重なデータが得られたと考えている。本研究の中心となる、就労して1年の間にリカバリーが促進されるかどうかについての解明には、始めにリカバリー評価尺度(RAS)の合計得点が向上しているかどうかについて分析を進めているところであるが、RASの下位項目別に分けての詳細な検定や職務満足度やサポート体制との関連などの分析など、多くの分析作業が必要であり、その後の成果のまとめ、学会発表、研究報告書の作成と配布等を年度内に完了させるのは困難と考え、1年間の研究期間延長が認められたところとなっている。平成30年度後半には、長年米国の精神障害者の就労に関する研究を行ってきた研究分担者が加わったことにより、幅広く英語圏の文献をレビューできるようになってきており、1年間の延長をすることと合わせて、より深い研究成果を得ることができると考えている。当初予定では、平成30年度で研究が終了する予定であったが、研究成果の発表や報告書作成など一連の作業を年度内に終了させることが困難な見込みとなってきたため、1年の研究延長し認められたところである。データ数が少ないことから、評価尺度の下位項目や職場要因との関連など細かい分析を行うことが必要と考えている。分析に時間はかかるがこれまでにはない研究の成果が得られるものと考えている。次年度については、国内および国際学会での口頭発表を行い、最終的には査読のある国内の学会誌と国際学術誌へ投稿することを予定している。また研究成果報告書を作成し研究協力者への配布なども終了させることとする。「精神障害者の就労はリカバリーを促進するかー就労者への調査による縦断的研究ー」と題する本研究は、平成27年度から30年度までの4年間の研究である。その初年度として平成27年度は、研究対象となる就労を開始する全国の精神障害者の方にどのような方法で調査協力依頼をするかをはじめの検討事項とし、並行して調査内容の検討を行った。研究デザインとしては当初の研究計画通り縦断的研究として、就労開始時、就労開始から6か月後、就労開始から12か月後の、計3回同一対象者にリカバリーに関する質問調査を依頼し、その変化を分析することとした。調査協力依頼については、本研究の就労の定義が雇用契約のある一般就労とするため、毎年新規就労者がいる可能性のある、障害者総合支援法に基づく「就労移行支援事業所」および障害者雇用促進法に基づく「障害者就業・生活支援センター」に調査協力依頼文書を郵送で送付することとした。送付した事業所の数は合わせて2,700か所以上となった。質問調査の内容については、主たる質問紙は「リカバリー評価尺度」と「一般性自己効力感」の2種類で、当初の計画通りとした。調査協力者の属性や新たに開始した就労の状況については、基本的属性に加え、学歴、職歴、病歴、現在の職場の状況等、リカバリーに影響を与える可能性のある項目を盛り込んだ。平成27年10月までに上記の作業を終え事業所に調査依頼を発送したところ、平成28年3月末までに、数十通のアンケート回答が返送されてきている。現在は、「今後調査対象者が出る可能性がある」と返信のあった事業所に、リマインドの連絡をすると同時に、1回目の回答があった協力者に第2回目の調査票発送の準備をしているところである。対象者への調査依頼の方法を、全国の就労移行支援事業所と障害者就業・生活支援センターに送付することにしたため、そのリストの作成や発送業務に予定以上の時間と労力をさくこととなった。郵送のための切手代や業務委託の費用は当初の予定を大きく上回ることとなったが、予定していた調査依頼文書発送時期までには間に合わせることができた。研究倫理については、研究応募時からこのことに配慮した研究デザインで進めることとしていたが、調査票、インフォームドコンセントに関する資料、研究参加同意書の案が出来上がった時点で、主任研究者の所属する東京福祉大学の研究倫理審査会に審査を申請し、承認を得ることができている。調査協力を全国の事業所に広げたことにより、100人を超える協力者がいることを期待していたが、数十人と予想よりもやや少ない数となっている。しかしながら、研究全体の進行としては、おおむね順調に進呈している。「精神障害者の就労はリカバリーを促進するかー就労者への調査による縦断的研究ー」と題する本研究は、平成27年度から30年度までの4年間の研究である。精神障害者で新たに一般就労をした人に対して、就労開始時、就労開始から6か月後、就労開始から1年後の合計3回にわたりリカバリー評価尺度等の調査票に記入してもらい、その点数の変化を分析する縦断研究である。初年度の平成27年度は、研究方法を確定し対象者のいる可能性のある就労支援事業所に研究協力依頼文書を発送した。
KAKENHI-PROJECT-15K03950
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精神障害者の就労はリカバリーを促進するか-就労者への調査による縦断的研究-
協力できる対象者がいる可能性があると回答のあった事業所に対して調査票を送付し、事業所を通じて調査対象者に協力依頼を行い、平成27年度末には第1回目の記入済調査票数十通の調査票を回収することができた。平成28年度については、引き続き第1回目の調査票回収と共に第2回目調査票の回収、年度の後半においては第3回目調査票の回収が進行中である。これと並行して調査協力事業所および調査協力者への謝礼の送付などを行っているところである。データ分析については、まだ3回の調査がそろっていないため縦断的な研究はできないが、就労開始時の初回調査データから、リカバリー評価と職務満足度の関連について分析を行い、東京で開催された第36回日本社会精神医学会において、「一般就労を開始した精神障害者のリカバリーと職務満足との関連性について」と題し、上司や同僚との良好な人間関係および職務満足とリカバリーに関連があることを報告した。今後については、第3回目の調査票が回収された時点で、就労を継続することがリカバリーに与える影響についての分析を開始する。調査協力依頼を全国の就労移行支援事業所および就業・生活支援センターと当初計画から拡大したため、100名を超える協力者がいることを期待したが平成28年度末で数十名と少なかった。しかし初回調査協力者はほとんどの人が第2回目調査票を返送、3回目の調査についても順調に回収が進んでいる。データの入力や分析もほぼ予定通りに進んでおり、平成29年3月には途中経過として日本社会精神学会年次大会で発表を行い、成果の一部を公表することができた。研究全体としては、概ね順調に進展している。平成29年度は新たに調査を依頼することはなく、すでに1回目の回答が終了している人の2回目、3回目の回答を記入した調査票の返送データの処理作業を行った。作業内容としては、データを確認し入力していくというデータ収集および入力作業と、併せて謝礼の送付などの事務的な作業も行った。3回目のデータ収集は完了していなかったため、1回目と2回目のデータを比較し、データ分析を実施した。またこの作業と並行して、学会への参加や研究者との情報交換などを継続的に行い、新しい精神障害者施策や職業リハビリテーション、リカバリーに関する情報収集や文献調査などを行った。研究成果の公表としては、平成28年度の日本社会精神医学会での学会発表に続き、今年も1回目、2回目までの回収したデータを分析し、経過報告として日本職業リハビリテーション学会第45回大会にて、「精神障害者のリカバリーに影響を与える要因ー就労者への継続調査からー」と題する演題発表を行った。当初予定した人数よりも回答者数は少なかったが、精神障害を持つ当事者が回答した量的研究はこれまで少ないため、大変貴重なデータを回収することができ、分析結果を公表することができた。平成30年3月に、合計3回の回答が全て回収されたため、今後はそのデータを整理し当初から予定していた、就労を継続することによりリカバリーは促進されているのかについて分析を進め、結果をまとめて考察していくこととする。調査対象者の総実数は当初の予想よりも少なかったが、1回目の調査に応じた人についてはほとんどの方から以後2回の回答を得ることができた。平成29年度内に調査データの収集が全て完了できたことは、おおむね順調な進展ということができる。
KAKENHI-PROJECT-15K03950
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植物に対するホウ素の毒性-生育障害の発生機構と進化における役割
前年度に引き続き、過剰量のホウ素が植物の生育を阻害する仕組みの解明と、その毒性が進化に与える影響の評価を行った。ホウ素の毒性機構の解明については、前年度に遺伝子マッピングにより候補遺伝子領域を限定したホウ素過剰感受性シロイヌナズナ変異株の抑圧変異株に対して、原因遺伝子の確定を行った。具体的には候補領域内にあったNAC型転写因子に着目し、この遺伝子を欠損する変異株の取得を行った。もとのホウ素過剰感受性変異株との2重変異株を作成し、ホウ素過剰ストレス下における表現型を観察すると、抑圧変異株と同様にホウ素過剰ストレス感受性が抑圧されていることが確認された。このことから、このNAC型転写因子の欠損がホウ素過剰ストレス感受性を抑圧することが示された。また、前年度に活性酸素産種生酵素の一種を欠損した変異株がホウ素過剰ストレスに耐性を示すことを見出していたが、さらなる解析により、この変異株ではホウ素過剰ストレス下における酸化ストレスの蓄積が軽減していることを発見した。ホウ素毒性が進化に与える影響の評価については、栄養環境がゲノムの安定性に影響することで植物の進化の速度や方向性を変える可能性を引き続き検証した。これまでにシロイヌナズナの野生型、ホウ素過剰ストレス感受性変異株について通常区、ホウ素過剰区において栽培し、自殖による継代によって自然変異を8世代にわたり蓄積させた。最終世代の植物に対して、通常区、ホウ素過剰区それぞれについて追加で3個体のゲノム配列決定を行った。検出された変異をもとに自然変異発生率に栄養環境が与える影響の評価を行ったが、統計的に有意な差は見いだされなかった。しかしながら、最終世代の生育調査の結果、ホウ素過剰状条件で継代した群はホウ素過剰条件下における根の生育が良いことが明らかになった。これは、ホウ素過剰ストレスによる、世代を超えた耐性獲得機構の存在を示唆している。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。本研究では、過剰量のホウ素が植物の生育を阻害する仕組みの解明と、その毒性が進化に与える影響の評価を行っている。ホウ素の毒性機構の解明については、ホウ素過剰ストレスに対する耐性を付与する遺伝子の同定を目的として、ホウ素過剰感受性シロイヌナズナ変異株に変異を導入して得られていた抑圧変異株の原因遺伝子の同定を行った。抑圧変異株2ラインについてエコタイプ間塩基多型を利用した遺伝子マッピングを行い、原因変異の候補領域をそれぞれ1番染色体上の2.6Mbpの領域、5番染色体の4.5 Mbpの領域に限定した。またトランスクリプトーム解析によってホウ素依存的発現を示す遺伝子を探索し、ホウ素過剰耐性への関与が予想された遺伝子についてノックアウト株を確立しホウ素過剰ストレス下における表現型の確認を行った。その結果、活性酸素産種生酵素の一種を欠損した変異株が野生型と比較してホウ素過剰ストレス下において根の生育がよいことを発見した。ホウ素毒性が進化に与える影響の評価については、過剰量のホウ素がDNAの損傷を引き起こすことに着目し、栄養環境がゲノムの安定性に影響することで植物の進化の速度や方向性を変える可能性を検証している。これまでにシロイヌナズナの野生型、ホウ素過剰ストレス感受性変異株についてそれぞれ約100個体を通常区、ホウ素過剰区において栽培し、自殖による継代によって自然変異を8世代にわたり蓄積させた。最終世代の植物に対して、通常区、ホウ素過剰区それぞれについて4個体のゲノム配列決定を行った。検出された変異をもとに自然変異発生率を試算したところ、変異導入箇所数の平均はホウ素過剰区が通常区の1.7倍となり、検査した個体群においてはホウ素過剰ストレスが自然変異の発生を促進する傾向が見られた。ホウ素過剰耐性を付与する遺伝子の同定については、原因遺伝子の確定には至ってはいないものの候補領域を限定した。次世代シーケンサによる変異情報の取得も完了しており、候補変異のリストを得ている。一部の候補遺伝子についてはノックダウン株の作成が進んでいる。ホウ素毒性が進化に与える影響の評価については野生型株では一部継代の遅れがあったものの、目標の世代に達した個体から順次次世代シーケンサによる配列決定を行っており、おおむね予定通り進行している。前年度に引き続き、過剰量のホウ素が植物の生育を阻害する仕組みの解明と、その毒性が進化に与える影響の評価を行った。ホウ素の毒性機構の解明については、前年度に遺伝子マッピングにより候補遺伝子領域を限定したホウ素過剰感受性シロイヌナズナ変異株の抑圧変異株に対して、原因遺伝子の確定を行った。具体的には候補領域内にあったNAC型転写因子に着目し、この遺伝子を欠損する変異株の取得を行った。もとのホウ素過剰感受性変異株との2重変異株を作成し、ホウ素過剰ストレス下における表現型を観察すると、抑圧変異株と同様にホウ素過剰ストレス感受性が抑圧されていることが確認された。このことから、このNAC型転写因子の欠損がホウ素過剰ストレス感受性を抑圧することが示された。また、前年度に活性酸素産種生酵素の一種を欠損した変異株がホウ素過剰ストレスに耐性を示すことを見出していたが、さらなる解析により、この変異株ではホウ素過剰ストレス下における酸化ストレスの蓄積が軽減していることを発見した。ホウ素毒性が進化に与える影響の評価については、栄養環境がゲノムの安定性に影響することで植物の進化の速度や方向性を変える可能性を引き続き検証した。これまでにシロイヌナズナの野生型、ホウ素過剰ストレス感受性変異株について通常区、ホウ素過剰区において栽培し、自殖による継代によって自然変異を8世代にわたり蓄積させた。
KAKENHI-PROJECT-15J11021
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植物に対するホウ素の毒性-生育障害の発生機構と進化における役割
最終世代の植物に対して、通常区、ホウ素過剰区それぞれについて追加で3個体のゲノム配列決定を行った。検出された変異をもとに自然変異発生率に栄養環境が与える影響の評価を行ったが、統計的に有意な差は見いだされなかった。しかしながら、最終世代の生育調査の結果、ホウ素過剰状条件で継代した群はホウ素過剰条件下における根の生育が良いことが明らかになった。これは、ホウ素過剰ストレスによる、世代を超えた耐性獲得機構の存在を示唆している。ホウ素の毒性機構の解明については、候補遺伝子のうち有望なものについて変異株の表現型確認を行う。並行して候補領域の更なる絞込みを行う。ホウ素毒性が進化に与える影響の評価については、より多くの自然変異蓄積系統個体を次世代シーケンサによるゲノムDNAの配列決定に供し、自然変異の蓄積を評価する。得られた変異情報に基づいて、ホウ素過剰ストレスが自然変異の蓄積頻度に影響を与えるかどうかを統計的に示す。合わせて自然変異のバイアスの解析を行う。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15J11021
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AE信号と中性子回折の同時測定による岩石内き裂周辺の応力ひずみ評価
岩石材料の変形、き裂発生メカニズムを解析するために、中性子回折法を用いたひずみ測定を行いながら、AE信号を同時測定するシステムを開発した。一軸圧縮下にある岩石試料からの中性子回折パターンとAE信号を測定し、結晶鉱物中に蓄積したひずみ量が中性子回折より解析され、鉱物粒子の滑りや微小き裂の発生にともなって発生したとみられるAE信号を測定することに成功した。本研究の目的は、圧縮応力下にある岩石試料に対して、AE信号測定と中性子回折法を組み合わせることにより、岩石内部に変形やき裂が発生した時間や場所、メカニズムに関する情報とひずみに関する情報を同時に取得できるようにすることである。本手法を用いれば、結晶中に蓄積したひずみ量と、鉱物粒子の滑りなどの変形に関する情報も得られるようになり、岩石材料がマクロに変形するメカニズムを詳細に解析できる。また、従来のひずみ測定手法では不可能な岩石内部に発生したき裂や欠陥周りのひずみ分布を実験的に求めることが可能となる。平成24年度には、AE信号と中性子回折パターンの同時測定システムを立ち上げ、降伏応力近傍でAE信号を発生させることが知られている金属材料を用いたコミッショニングを行った。AE信号測定には1chAE信号測定装置を用いた。さらには、岩石材料の一軸圧縮試験を行いながらAE信号と中性子回折パターンの同時測定を行った。コミッショニングの結果、双晶にともない発生したAE信号とひずみに関する情報を取得できるようになった。岩石材料を用いた実験では、結晶中に蓄積した格子ひずみと鉱物の滑りや微小き裂の発生にともなって発生したとみられるAE信号を測定することができた。さらには、AE信号の周波数特性は岩種によって異なる傾向を示したため、異なる変形メカニズムにより岩石材料にはマクロにひずみが蓄積していると推測される。平成25年度には、4chAE測定システムを立ち上げ、AE発生源の位置標定を行いながら、様々な種類の岩石試料を用いて実験を行う予定であったが、中性子回折実験を行える研究施設が計画外停止したため、中性子回折実験は行わず、AE信号測定装置の高度化、コミッショニングなどを行い、今後の研究方針についての検討を行った。岩石材料の変形、き裂発生メカニズムを解析するために、中性子回折法を用いたひずみ測定を行いながら、AE信号を同時測定するシステムを開発した。一軸圧縮下にある岩石試料からの中性子回折パターンとAE信号を測定し、結晶鉱物中に蓄積したひずみ量が中性子回折より解析され、鉱物粒子の滑りや微小き裂の発生にともなって発生したとみられるAE信号を測定することに成功した。本研究は、圧縮応力下にある岩石試料に対して、AE計測によるき裂発生位置の標定と中性子回折法を用いたひずみ測定を組み合わせる事により、岩石内部に発生した微小き裂まわりのひずみ分布を行い、岩石中にひずみが蓄積するメカニズム、およびき裂発生進展メカニズムの解析を目的としている。平成24年度は、AE計測装置の仕様を検討し、中性子ビームを用いないオフラインでのAE計測の予備実験および、シングルチャンネルでのAE信号測定と中性子回折パターンの同時測定を行った。さらには、オフラインにてマルチチャンネルAE計測装置を用いて、AE発生源の位置標定を行えるようにしている。オフラインでの圧縮または引張り試験を行いながらのAE計測を行ったが、中性子実験施設特有の電気ノイズが検出されたため、このノイズの原因を追及するとともに、ノイズをカットするための対策を検討した。ノイズ信号源を特定することはできなかったが、ケーブルをシールドするなどのノイズカットのための種々の対策を施した。材料試験機などの機器の動作にともなうノイズが検出されないことも確認し、これらにより、強度試験下において、試料の変形、破断にともなうAE信号を検出することが可能になった。また中性子回折パターンとAE信号の同時計測の結果、中性子回折法により鉱物結晶内にひずみが蓄積する様子と、AE信号から岩石材料内で鉱物粒子の破壊もしくはすべりにともなうと考えられるAE信号波形が観測された。このことから、岩石材料の変形には、鉱物結晶内に蓄積するひずみと鉱物粒子の破壊、滑りが関与していることが示唆された。平成24年度中には、圧縮試験を行いながらのAE法と中性子回折を用いた同時測定手法の開発、およびAE信号解析からき裂発生位置を特定し、き裂周りのひずみ計測を中性子回折法を用いて行う事を計画していた。圧縮試験を行いながらAE測定と中性子回折測定を行うための測定システムを確立し、同時測定を行う事は可能になり、AE信号・中性子回折パターンを用いたひずみ解析を行うことが計画通り可能になった。AE信号解析からAE発生源を特定することができるようにはなっているが、中性子実験のためのマシンタイムを獲得することができなかったため、発生したき裂周りに中性子を照射して、ひずみ測定を行うまでには至らなかった。今後は、AE信号解析によりき裂発生部位を特定し、中性子回折を用いたき裂周辺のひずみ解析を行う予定である。中性子実験のためのマシンタイムは限られた時間であるため、まずはオフラインでの予備実験を進める予定である。そのために、オフラインにて岩石の圧縮試験を行いながらAE信号測定を行い、AE発生源の位置標定精度を高め、き裂発生部位を特定できるようにする。さらには、き裂部位に中性子を照射できるようにするための手順、技術を確立しておく。中性子実験施設のマシンタイムを獲得したら、岩石の圧縮試験を行いながら、AE信号測定・中性子回折パターンの同時測定を行い、き裂周りのひずみ分布を測定する。これにより岩石中にひずみが蓄積する様子、き裂が進展する様子を解析する。
KAKENHI-PROJECT-24760691
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24760691
AE信号と中性子回折の同時測定による岩石内き裂周辺の応力ひずみ評価
本実験を遂行するには、中性子実験施設に課題申請書を提出し、マシンタイムを獲得する必要がある。これまで世界最高性能をもつJ-PARC/BL19「匠」での実験を続けてきたが、「匠」へ課題申請するユーザーは多数おり、マシンタイムの確保は困難であると考えられる。そこで、J-PARCでの課題審査が通らなかった時には、海外での中性子実験も視野にいれる。加えて、これらの研究成果と、昨年度までの研究成果をまとめ、論文、学会等で公表する。該当なし
KAKENHI-PROJECT-24760691
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看護学実習中の医療事故回避に向けた教授活動自己評価尺度の開発-実習安全FDの実現
本研究の目的は、実習中の医療事故回避に必要な看護学教員の教授活動を自己評価する尺度を開発することである。第1段階として、自由記述式の質問紙調査を実施し、実習中の医療事故を回避するために看護学教員が実施している対策と実践40種類8側面を明らかにした。第2段階として、第1段階の成果を基盤として、教員が看護学実習中の教授活動を自己評価する8下位尺度56項目から構成される測定用具『実習中の医療事故回避に向けた教授活動自己評価尺度』を作成した。今後の課題は、作成した自己評価尺度を用いて全国の看護学教員を対象とした調査を実施し、信頼性妥当性を検証し、実習安全FD展開モデルを開発することである。本研究の目的は、実習中の医療事故回避に必要な看護学教員の教授活動を自己評価する尺度を開発することである。第1段階として、自由記述式の質問紙調査を実施し、実習中の医療事故を回避するために看護学教員が実施している対策と実践40種類8側面を明らかにした。第2段階として、第1段階の成果を基盤として、教員が看護学実習中の教授活動を自己評価する8下位尺度56項目から構成される測定用具『実習中の医療事故回避に向けた教授活動自己評価尺度』を作成した。今後の課題は、作成した自己評価尺度を用いて全国の看護学教員を対象とした調査を実施し、信頼性妥当性を検証し、実習安全FD展開モデルを開発することである。平成22年度は、主として次の活動を実施した。1.国内外の文献検討と測定用具開発に向けた基盤研究計画の立案・国内外の文献検討を実施し、看護学教員の学生による医療事故回避に向けた対策と実践を解明し、測定用具を開発するための基盤研究計画書を立案・作成した。2.看護学教員の学生による医療事故回避に向けた対策と実践を解明するための質問紙と特性調査紙の作成・作成した研究計画書に基づき先行研究「患者の安全保証に向けた看護師の対策と実践」を参考に看護学教員が実習中の医療事故回避に向けて実施している対策と実践を問うための自由記載式の質問紙、および回答した教員の背景を確認するための特性調査紙を作成した。3.作成した質問紙の内容的妥当性を検討するためのパイロットスタディの実施と本調査・作成した質問紙の内容的妥当性を検討するため看護教育学の専門家による検討を複数回実施した。・専門家による検討会議の結果に基づき、質問紙を修正し、札幌市立大学倫理委員会の承認を得て、便宜的に抽出した大学・短期大学・看護専門学校の教員約65名を対象にパイロットスタディを実施した。・パイロットスタディの結果に基づき、質問紙及び特性調査紙を修正し、無作為抽出した教員625名を対象に本調査を実施した。震災の影響により回収率が低下した(39.9%)ため、本調査のデータ収集を継続予定である。平成23年度は、次の研究目的の遂行に向け、平成22年度から引き続く活動を実施した。研究目的:自由記述式の質問紙調査を実施し、実習中の医療事故を回避するために看護学教員が実施している対策と実践を明らかにする。平成23年3月に624名の教員を対象に『実習中の医療事故防止に向けた対策と実践に関する質問紙』を用いて本調査を実施した。その結果、249名の回答が回収できた(回収率39.9%)。震災の影響が懸念されたため、5月13日から6月6日にかけて、大学40名、短期大学12名の教員計52名を対象に追加のデータ収集を実施した。その結果、26名から回答が返送されたため、パイロットスタディに協力した教員の回答も含め、計303名の回答を分析対象とし、基礎分析を実施した。基礎分析を3回反復した結果、回答内容は、2487記録単位に分割でき、266同一記録単位群を形成した。さらに、平成23年度3月までに3回の本分析を実施し、48カテゴリを形成した。しかし、測定用具開発の基盤としてのカテゴリの洗練が必要と判断し、平成24年度も本分析を継続することとなった。なお、これらの分析過程は、千葉大学大学院看護学研究科看護教育学教育研究分野研究推進コースにおいて7回公開し、内容分析に精通する共同研究者のスーパービジョンを受けると共に、内容分析の豊富な経験を持つ研究者間の検討を繰り返している。この分析結果は、研究の最終目的となる『実習中の医療事故回避に向けた教授活動自己評価尺度』開発の基盤となるため、カテゴリおよびカテゴリを形成する記録単位群の現実適合性を高めることが重要である。平成25年度は、次の研究目的の遂行に向け、平成24年度に引き続く活動および発展的な活動を実施した。研究目的:実習中の医療事故を回避するために教員が実施している対策と実践を明らかにし、実習中の医療事故防止に必要な教員の教授活動を自己評価する尺度を開発する。平成24年度に作成した測定用具第一案を検討した結果、項目の抽象度や尺度作成方法に課題があることが明らかとなった。そこで、再度文献検討を実施し測定用具開発方法の確定に向け、理論的枠組みを再構築した。その結果、当初、40カテゴリすべてを網羅することを優先しそれぞれに対応する項目を作成していたが、40カテゴリが示す8側面を中核にし、カテゴリを形成した記録単位を確認しながら、因子分析および項目分析による質問項目の削除の可能性を視野に入れ56項目を作成することとした。また、教員特性との関係探索を視野に入れた特性調査紙を作成した。
KAKENHI-PROJECT-22592380
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看護学実習中の医療事故回避に向けた教授活動自己評価尺度の開発-実習安全FDの実現
これらの測定用具を複数回看護教育学を専攻する研究者会議に提示するとともに共同研究者との打ち合わせ会議を実施し、項目の洗練をはかった。質問項目が必要な教授活動を過不足なく網羅し、かつ医療事故防止に向けた教授活動8側面を反映しているかという点から指摘を受け、数度の修正が必要となったが、予備調査に向けた測定用具を完成した。今後の課題は、全国調査による信頼性・妥当性の統計学的検証である。なお、尺度の基盤として明らかにした「実習中の医療事故防止に向けた教員の対策と実践」を日本看護教育学学会学術集会にて発表し、参加者から、カテゴリの現実適合性についての肯定的な意見を得た。平成24年度は、次の研究目的の遂行に向け、平成23年度より引き続く活動および、発展的な活動を実施した。研究目的:実習中の医療事故を回避するために教員が実施している対策と実践を明らかにし、実習中の医療事故防止に必要な教員の教授活動を自己評価する尺度を開発する。平成23年3月から6月に郵送法により看護学教員を対象に実施した質問紙調査に返送のあった313名の回答のうち、有効回答305部について、平成23年度に引き続き、カテゴリ化を実施した。しかし、スーパービジョンおよび専門家会議を繰り返した結果、カテゴリの精度に課題があることが明らかとなった。そのため、再度カテゴリ化を実施し、この再カテゴリ化の結果である63カテゴリを我が国の看護学教員が医療事故防止に向けて示す対策と実践の解明に向けたfirst stepの分析結果として、Sigma Theta Tau International第24回国際学会に投稿し、採用された。しかし、測定用具開発の基盤として、カテゴリ数が多すぎる、カテゴリ名が具体的すぎるため、さらに統合できる可能性があるなどの課題が確認できた。そのため、さらにカテゴリを分析し、考察した結果、最終的に40カテゴリが形成され、医療事故防止に向けた教員の対策と実践に8側面の特徴があることが明らかとなった。加えて、これらの分析過程と同時に測定用具開発の理論的枠組みの構築を実施し、40カテゴリおよび8側面の特徴に基づく、測定用具の第1案を作成した。これらの過程を通して、最終的な成果である実習中の医療事故防止に向けた教員の教授活動自己評価尺度の開発基盤が整った。平成23年度に予定していた本調査を22年度に実施できたため、追加のデータ収集期間をふまえても分析に十分な時間をかけることができた。また、当初の目標とした分析結果(カテゴリ)の産出は達成した。25年度が最終年度であるため、記入しない。平成24年度は、1測定用具の理論的枠組み・測定用具の案を作成し、2専門家会議とパイロットスタディを実施することを目標とした。1および、2の専門家による検討会議は達成できたが、測定用具は、まだ第1案であり、今後、共同研究者との検討および、専門家会議によるさらなる洗練が必要であると判断している。パイロットスタディが実施できなかったため、やや遅れている部分もあるが、理論的枠組みおよび測定用具はほぼ完成しており、本年度中に、最終目標である本調査、パイロットスタディを確実に実施できる期間を十分に(約5ヶ月間)確保しているため、全体の進捗状況としては、概ね順調であると判断した。カテゴリの洗練と同時に測定用具開発の理論枠組みの構築、測定用具案の作成を行うことにより、ほぼ当初の計画通り進捗できる見込みである。
KAKENHI-PROJECT-22592380
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22592380
格子に基づく最悪時/平均時の関係を持つ電子署名および認証方式の構成
研究計画に基づき格子を利用した認証方式および署名方式を構成した。また、これまでに得られた知見を元に、認証方式の構成、既存の暗号方式の改良、新しい暗号方式の提案を行った。これらは、量子計算機であっても困難であると考えられている問題に基づいており、高い安全性を期待できる方式である。各研究の具体的内容は以下である。1.昨年度構成した格子問題に基づく認証用プロトコルの応用を行った。NTRUと呼ばれる多項式を用いた暗号方式がある。これと、先の認証用プロトコルの類似点を用いて、NTRUに適したゼロ知識証明プロトコルを提案した。また、NTRU暗号の困難性に安全性の根拠をおく認証方式を提案した。今までNTRUに基づいた認証方式は無かった。2.昨年度に引き続き、イデアル格子に基づく暗号方式の研究を行った。電子署名、認証方式に引き続き、公開鍵暗号方式、IDベース暗号方式を構成し、その安全性を証明した。これにより既存の格子暗号の鍵サイズや計算効率を上げることができる。3.代理人再暗号化と呼ばれる暗号方式がある。代理人は変換鍵を所持している場合、暗号文の中身を知ることなく、ある受信者用の暗号文を別の受信者用の暗号文に変換できる。2005年に提案されたRegev暗号に着目し、新たなアルゴリズムを加えることで、代理人再暗号化方式を構成した。既存の代理人再暗号化方式は全て離散対数問題と呼ばれる数論的な問題に基づいている。よって、今回,初めて組合わせ系の問題に基づいて代理人再暗号化方式を構成したことになる。前年度に引き続き研究計画に基づき格子を利用した認証方式を構成した。加えて、これまでに得られた知見を元に、新しく認証方式の構成、既存の暗号方式の改良、新しい暗号方式の提案を行った。これらは、量子計算機であっても困難であると考えられている問題に基づいており、高い安全性を期待できる方式である。各研究の具体的内容は以下である。1.昨年度、格子問題およびその部分問題に基づいて認証プロトコルを構成した。この認証プロトコルの研究を続行し、新しい応用として同問題に基づくリング認証方式を構成した。昨年度の研究結果と纏めて、ASIACRYPT 2008で発表を行った。2.1で用いたアイデアを用いて、既存方式であるNTRU暗号用のゼロ知識証明プロトコルを2つ提案した。また、プロトコルの1つを用いてNTRU暗号に基づく認証方式を構成した。3.1,2の研究を元に既存方式であるNTRU暗号の改良を行い、ほぼ線形時間で暗号化・復号が可能な暗号方式NFALSEを提案した。NTRUと同等の安全性を持つと期待される。4.昨年度研究を行った格子に基づく署名方式の鍵生成部を利用して効率がよく安全性が高い暗号方式を提案した。研究計画に基づき格子を利用した認証方式および署名方式を構成した。また、これまでに得られた知見を元に、認証方式の構成、既存の暗号方式の改良、新しい暗号方式の提案を行った。これらは、量子計算機であっても困難であると考えられている問題に基づいており、高い安全性を期待できる方式である。各研究の具体的内容は以下である。1.昨年度構成した格子問題に基づく認証用プロトコルの応用を行った。NTRUと呼ばれる多項式を用いた暗号方式がある。これと、先の認証用プロトコルの類似点を用いて、NTRUに適したゼロ知識証明プロトコルを提案した。また、NTRU暗号の困難性に安全性の根拠をおく認証方式を提案した。今までNTRUに基づいた認証方式は無かった。2.昨年度に引き続き、イデアル格子に基づく暗号方式の研究を行った。電子署名、認証方式に引き続き、公開鍵暗号方式、IDベース暗号方式を構成し、その安全性を証明した。これにより既存の格子暗号の鍵サイズや計算効率を上げることができる。3.代理人再暗号化と呼ばれる暗号方式がある。代理人は変換鍵を所持している場合、暗号文の中身を知ることなく、ある受信者用の暗号文を別の受信者用の暗号文に変換できる。2005年に提案されたRegev暗号に着目し、新たなアルゴリズムを加えることで、代理人再暗号化方式を構成した。既存の代理人再暗号化方式は全て離散対数問題と呼ばれる数論的な問題に基づいている。よって、今回,初めて組合わせ系の問題に基づいて代理人再暗号化方式を構成したことになる。
KAKENHI-PROJECT-07J55201
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顔面神経-舌下神経クロスリンク型神経移植術における神経回路再構築の機序を探る
顔面神経麻痺への外科的治療の一つとして、クロスリンク手術が挙げられる。われわれは本手術での軸索挙動を解析する為に体細胞がGFP標識された実験動物を利用し、拒絶反応を起こさせずに非標識のグラフトを移植するモデルの作成を目標に置いた。このため、神経グラフトの脱細胞化の評価、比較を行った。ラットより採取された坐骨神経を高張塩溶液法、界面活性剤法、凍結融解法によりそれぞれ脱細胞化を行った。これらを組織学的に評価した所、モデル動物において口径1mm程度の神経グラフトを要するクロスリンク手術では、高張塩溶液法による脱細胞化神経は免疫学的および強度的に適していると考えられた顔面神経麻痺への外科的治療の一つとして、クロスリンク手術が挙げられる。われわれは本手術での軸索挙動を解析する為に体細胞がGFP標識された実験動物を利用し、拒絶反応を起こさせずに非標識のグラフトを移植するモデルの作成を目標に置いた。このため、神経グラフトの脱細胞化の評価、比較を行った。ラットより採取された坐骨神経を高張塩溶液法、界面活性剤法、凍結融解法によりそれぞれ脱細胞化を行った。これらを組織学的に評価した所、モデル動物において口径1mm程度の神経グラフトを要するクロスリンク手術では、高張塩溶液法による脱細胞化神経は免疫学的および強度的に適していると考えられた顔面麻痺に対する動的再建術は、神経科学的考察の基、様々な手術術式の変遷を辿ってきた。近年ではcross-link型神経移植法が開発され、その臨床的効果を認め始めている。本術式は顔面神経麻痺のみならず四肢の神経再建にも応用可能であり、極めて有用な再建方法であると考えるが、一方で、術後の神経ネットワーク形成およびその意義について未だ解明されておらず、その臨床学的可能性は広がりを見せない。われわれは前課題研究において本術式の神経ネットワーク形成を解明すべく神経トレーサー法により、軸索の誘導などを明らかとした。再構築された神経ネットワークの意義について更に解明を行うため、本研究課題を行っている。これまでに我々は皮膚・血管・比較的太い神経に対して細胞毒性のない物質を用いることで脱細胞化できることを発見してきた。この方法により得られた神経を坐骨神経に移植したところ、運動神経の回復が認められた。本研究結果を応用し、免疫応答を小さくしたものをGFPラットに移植することで再生してきた軸索を蛍光で観察できると考えた。まず、wistar系ラットより伏在神経を採取した。これを1M NaCl溶液で24時間震盪を加えた。次に7日間、PBSで洗浄を行った。これをHE染色したところ、脱細胞化されていることが確認された。次に本方法により得られた脱細胞化神経をGFPラットの顔面神経-舌下神経にcross-linkさせる形で移植を行った。現在、移植後の神経の拒絶反応および軸索の伸展について解析を行うべく、ラットの管理を行っている。顔面麻痺に対する動的再建術は、神経科学的考察の基、様々な手術術式の変遷を辿ってきた。近年ではcross-link型神経移植法が開発され、その臨床的効果を認め始めている。本術式は顔面神経麻痺のみならず四肢の神経再建にも応用可能であり、極めて有用な再建方法であると考えるが、一方で、術後の神経ネットワーク形成およびその意義について未だ解明されておらず、その臨床学的可能性は広がりを見せない。われわれは前課題研究において本術式の神経ネットワーク形成を解明すべく神経トレーサー法により、軸索の誘導などを明らかとした。再構築された神経ネットワークの意義について更に解明を行うため、本研究課題を行っている。本年度はcross-linkに用いるグラフトの脱細胞化について検討を行った。(1)高張塩溶液、(2)凍結融解、(3)界面活性剤を用いてそれぞれラットの末梢神経に対して脱細胞化を試みた。HE染色ではいずれの組織も核の消失が認められ脱細胞化が行われていた。ウェスタンブロッティング法での予備実験では、いずれの系においてもMHC-classIの減少を認めたがその減少は(1)(2)(3)の順で大きくなった。末梢神経に作成したギャップへの移植実験(端々縫合)では、いずれにおいても軸索の伸展が認められたが、実際にcross-linkでは端側縫合であるため、シュワン細胞有無により軸索誘導に影響すると考えられる。予備実験として回転培養系でシュワン細胞の定着も認められている。次年度はこれら脱細胞化組織を用いたcross-link実験と、これら脱細胞化組織へのシュワン細胞の播種後の移植実験を計画している。基礎研究:脱細胞化神経を用いたクロスリンクモデルの作成を試みた。ラットより大腿神経を採取した。これを高張塩溶液に24時間、震盪下に浸漬し、その後6日間、PBS中で震盪した。これを採取し組織化学的に評価を行った。HE染色ではエオジンに染色される核は認められなかった。次に、凍結融解法および界面活性剤法により脱細胞化も行った。これらに対してHE染色を行った所、界面活性剤法では脱細胞化は認められたが凍結融解法では核の遺残が多く認められた。
KAKENHI-PROJECT-22591993
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顔面神経-舌下神経クロスリンク型神経移植術における神経回路再構築の機序を探る
さらにこれらサンプルをそれぞれラットに移植した後に採取し、組織学的に評価を行った所、高張塩溶液による脱細胞化を行った例および界面活性剤法により脱細胞化を行った例では炎症細胞の浸潤無く、軸索の伸展を認めたが、凍結融解法により脱細胞化を行った例では炎症細胞の著明な浸潤を認め、また、移植組織の融解を認めた。さらに抗原の遺残について検討を行った所、界面活性剤法では抗原が除去出来ていたが、残る2つの方法では遺残が認められた。これらより、少なくとも高張塩溶液による脱細胞化法では多くの細胞成分は除去できるが、一定の遺残を認める事、またその遺残の程度は凍結融解法よりも少なく、また、高張塩溶液による遺残量では免疫反応を生じにくい事が示された。今後、さらに長期での脱細胞化組織の抗原性や維持、軸索伸展の効率について検討を行う必要がある。臨床研究:頭頸部腫瘍切除後にループ型神経移植による顔面神経即時再建術を施行した連続する10症例を検討対象とし、以下の項目について調査した:年齢、性別、原疾患、既往症・基礎疾患、力源神経、再建分枝、放射線治療の有無、化学療法の有無、術前麻痺スコア(40点法)、術後麻痺スコア(40点法)、術後経過観察期間(月)。今回の検討では術後病的共同運動をスコア化していないが、多くの症例で病的共同運動が生じるものの軽度であるという印象を得た。cross-linkに用いるための移植神経の準備として種々の脱細胞化法を実験系として確立し、シュワン細胞の導入も確立しつつ有る。以上よりおおむね順調に進展していると考える。24年度が最終年度であるため、記入しない。種々の脱細胞化法で得られた末梢神経グラフトを用いてcross-link実験(端側)を行う。また、脱細胞化されたグラフトにシュワン細胞を定着させ、これを用いてcross-link実験を行い、シュワン細胞の重要性も探る。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22591993
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学習支援システムにおける学習者の負担と最適な学習時間、休憩時間の提案
学習内容をモデル化し,計算,読む,照合の課題を提示できる実験用の学習支援システムを構築した。そして,学習中の生体情報の計測と主観的評価を実施し,学習中の学習者の負担を分析した。その結果,心拍のパワースペクトル解析より,課題開始30分程度で負担が大きくなることなどを示した。また,学習支援システムを用いて30分間連続で学習(課題遂行)した場合には, 10分間以上の休憩を取ることで,学習者の負担や疲労感を抑えられる効果があることを明らかにした。平成25年度は、1長時間の学習を行った際の生体情報を測定する、2測定した生体信号は、パワースペクトル解析を主に実施して、時間変化を詳細に検討し、学習時の生体に与える負担を抽出する、3研究成果の公表、を行う計画であった。1実験を2回実施し、課題作業時の学習者の生体情報を測定した。実験Aでは、課題を連続で行わせた場合の生体情報を測定し、生体情報の経時変化を分析するとともに、精神活動や負担の測定の有効性を検討した。実験Bでは、実験Aの結果(生体情報の経時変化)を踏まえ、課題作業中に休憩を取った場合の生体情報を測定した。実験Aと実験Bともに、質問用紙法(アンケート調査)も併せて実施した。2実験Aでは、学習をモデル化した課題として、計算課題、読む課題、照合課題の3種類を行わせた。3種類の課題を各20分間、合計60分間連続で行わせた。その際の学習者の生体情報(脳波、心電図(心拍))を測定し、時間変化を詳細に分析した。その結果、(a)課題作業中60分間の各時間帯の脳波(β波)では、課題の内容が変わるとβ波が一旦減衰するが、徐々にβ波が増加する、(b)心拍のパワースペクトル解析(LF/HF)では、開始後30分程度で負担が大きくなることなどが確認でき、精神活動や負担を捉えられる可能性を示した。実験Bでは、実験Aの結果(開始後30分程度で負担が大きくなる)を受けて、計算課題を30分、休憩10分、再び計算課題を30分、休憩10分の合計80分間の実験を行った。その際の学習者の生体情報(脳波、心電図(心拍))を測定し、分析した。その結果、課題作業30分後に、10分間の休憩を取ると後半は心拍の変化が小さくなることなどが確認でき、負担を抑えられることを示した。3研究成果の公表では、研究成果の一部を日本教育工学会第29回全国大会(秋田大学)において、発表した。学習内容をモデル化し,計算,読む,照合の課題を提示できる実験用の学習支援システムを構築した。そして,学習中の生体情報の計測と主観的評価を実施し,学習中の学習者の負担を分析した。その結果,心拍のパワースペクトル解析より,課題開始30分程度で負担が大きくなることなどを示した。また,学習支援システムを用いて30分間連続で学習(課題遂行)した場合には, 10分間以上の休憩を取ることで,学習者の負担や疲労感を抑えられる効果があることを明らかにした。本研究の目的は、学習者の生体情報(筋電図、心電図など)を計測し、学習支援システムによる長時間の学習が、生体に与える影響(負担)を明らかにするとともに、生体情報の経時変化から算出した適切な学習時間とそれに必要な休憩時間を提案することである。平成24年度は、1.学習支援システムの構築、2.生体情報の処理に関する検討、3.研究成果の公表、を行う計画であった。1.「学習支援システムの構築」学習内容をモデル化し、計算課題、読む課題、照合課題を提示できるとともに、学習条件を自由に設定できる実験用システムを構築した。2.「生体情報の処理に関する検討」実験を2回実施し、課題作業時の学習者の生体情報(筋電図、心電図)を測定した。第1実験では、50分間連続で計算課題を行わせ、実験方法や学習時間、生体情報の分析方法の課題や問題点を洗い出した。第1実験の結果を踏まえ、第2実験を計画し実施した。第2実験では、60分間連続で計算課題、読む課題、照合課題の3種類を提示し、課題作業時の学習者の生体情報(筋電図、心電図)を測定した。その結果、心電図(心拍のRーR間隔)データの分析では、ウェーブレット変換によるパワースペクトル解析で短時間の周波数やパワーの変化を分析することが有効であることが確認できた。しかし、筋電図データの分析では、短時間の周波数やパワーを分析することよりも、1分間隔程度の周波数やパワーを見ることで、学習者に与える影響(負担)の経時変化を捉えられる可能性を明らかにした。3.「研究成果の公表」研究成果の一部を日本教育工学会第28回全国大会(長崎大学)において、発表した。平成26年度は、1学習支援システムによる学習の適切な学習時間およびそれに必要な休憩時間の提案、2研究の成果は、学会の全国大会等で発表するとともに、国際会議に論文を投稿し発表、3一般市民に対しては、Webサイトを通して研究成果を公表、を行う計画であった。1昨年度に実施した実験では、学習をモデル化した課題として、計算課題、読む課題、照合課題の3種類を行わせた。その際の学習者の生体情報(脳波、心電図(心拍))を測定し、時間変化を詳細に分析した。その結果、心拍のパワースペクトル解析(LF/HF)では、開始後30分程度で負担が大きくなることを示した。
KAKENHI-PROJECT-24501123
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学習支援システムにおける学習者の負担と最適な学習時間、休憩時間の提案
そのため、学習(課題遂行)開始してから30分程度で休憩を取る必要があると推察された。そこで平成26年度は、学習支援システムを想定した課題遂行中の生体情報(心拍)の測定と、質問用紙法による主観的評価を実施し、途中で休憩(5分間、10分間、15分間)を入れた場合の効果について実験を通して検討した。その結果、課題遂行中(計算課題)の生体情報(心拍)と主観的評価の結果より、30分間連続で課題遂行した場合には、10分間以上の休憩を取ることで、学習者の負担や疲労感を抑えられる効果があることを示した。適切な学習時間は30分程度、それに必要な休憩時間は10分以上であることを明らかとした。3一般市民に対しては、山形大学人文学部本多研究室のWebサイト上に、研究成果の概要を公表した。情報科学(ヒューマンインタフェース)平成25年度の研究計画で掲げた1長時間の学習を行った際の生体情報を測定する、2測定した生体信号は、パワースペクトル解析を主に実施して、時間変化を詳細に検討、3研究成果の公表の3課題は、おおむね順調に進んでいる。平成24年度では、学習者の生体情報として、筋電図、心電図の2つを測定し、生体情報の変化を検討したが、平成25年度では、心電図に加えて、脳波を測定し経時変化を分析した。研究成果の公表では、学会の全国大会で発表した。平成24年度の研究計画で掲げた1学習支援システムの構築、2生体情報の処理に関する検討、3研究成果の公表の3課題は、おおむね順調に進んでいる。学習支援システムの構築では、学習内容をモデル化し、計算課題、読む課題、照合課題を提示できるとともに、学習条件を自由に設定できる実験用システムを設計・作成した。生体情報の処理に関する検討では、2回実験を実施し、学習者の生体情報(筋電図、心電図)を測定するとともに、生体情報の分析手法を検討した。なお、研究計画で挙げている脳波については、平成25年度に実施する予定である。研究成果の公表では、学会の全国大会で発表した。(1)学習支援システムの設計上の課題と適切な学習時間、休憩時間の提案学習支援システムによる学習の適切な学習時間およびそれに必要な休憩時間の提案を行う。適切な学習時間および休憩時間をさらに検討するために追加の実験を行う。生体情報の時間的変化を詳細に検討する計画であり、学習時間の経過と生体負担との関係も明らかとしたい。(2)研究成果の公表研究の成果は、学会の全国大会等で発表するとともに、国際会議に論文を投稿し発表する。また、一般市民に対しては、Webサイトを通して研究成果を公表する。平成24年度に学習内容をモデル化し、計算課題、読む課題、照合課題を提示できるとともに、学習条件を自由に設定できる学習支援システム(実験用)を構築した。この学習支援システムにより、学習を行った際の生体情報を測定する。実験の方法としては、各学習条件を変化させた場合の筋電図、心電図および脳波の測定を行う。また、従来からの評価方法である質問用紙法(アンケート調査)も併せて実施する。測定した生体信号は、パワースペクトル解析を主に実施して、時間変化を詳細に検討し、学習時の生体に与える負担を抽出する。計測した筋電図、心電図および脳波について、どの生理指標が学習支援システム(学習者の生体負担)の評価に適しているかを比較検討する。必要に応じて、追加の実験を行う。実施した学習支援システムによる学習時の各生理指標の測定結果と考察についての研究成果を、学会の全国大会等で発表する。
KAKENHI-PROJECT-24501123
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前立腺癌におけるTip60のアンドロゲン依存性および放射線感受性への関与
1)前立腺癌におけるRIZ1遺伝子のDNAメチル化解析前立腺癌、腎癌組織における免疫組織化学的検討により正常組織に比較して染色性の低下を認める分子群が同定され、癌組織における発現低下が示唆された。その発現低下のメカニズムを解明するため、各々の遺伝子について、メチル化特異的PCRを用いてDNAメチル化の解析を行った。その結果Rb蛋白の結合蛋白の一つをコードするRetinoblastoma-interacting zincfinger gene(RIZ1)について、前立腺癌組織の42.6%においてDNAのメチル化が認められた。RIZ1におけるDNAメチル化の検出率はGleason score7以上の群では53.3%と、Gleason score6以下の群での23.5%に比較して高率であった。また、前立腺癌細胞株のうちPC3において、DNAメチル化による-RIZ1の発現消失と、脱メチル化剤添加による発現回復が確認された。これらの結果より、DNAメチル化によるRIZ1の発現低下が前立腺癌の発生や増殖に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。2)アンドロゲン非依存性前立腺癌細胞株の樹立アンドロゲン依存性前立腺癌細胞株LNCapをアンドロゲン除去下で長期間培養することにより、アンドロゲン非依存性増殖能を獲得した細胞株を樹立し、カソデックスの添加によっても増殖速度の低下が見られないことを確認した。現在このアンドロゲン非依存性LNCapの増殖特性についてさらに解析を準めている。1)泌尿器癌におけるKu70、アンドロゲンレセプター、Tip60の免疫組織化学的検討手術により摘除された前立腺癌組織において、アンドロゲンレセプター(AR)、およびその共役因子であるTip60、Ku70について免疫組織化学染色を行った。Tip60、Ku70については、膀胱、腎、精巣など、他の泌尿器科臓器についてもその正常粗織および癌組織について免疫組織化学染色を行った。その結果、Ku70抗体による免疫組織化学染色において、ほとんどの正常腎組織の腎尿細管上皮および腎皮質腺腫では核にKu70の発現が認められたが、腎癌ではほとんどの細胞において発現がみられなかった。そこでDNA修復機構のうち非相同末端結合においてKu70との相互作用を有することが知られているKu86、DNAPKcsについても正常腎組織および腎癌組織に対し免疫組織化学検討を行った。その結果、Ku70と同様、正常腎組織の尿細管上皮および腎皮質腺腫ではKu86、DNAPKcsの発現が認められたが、腎癌では多くの細胞で発現が消失していた。MRE11、NBS1など、相同組み換えによるDNA修復機構に関与する蛋白群についても免疫組織化学的検討を行ったが同様の傾向はみられなかった。腎癌の発生において、非相同末端結合を介したDNA修復機構の破綻が関与している可能性が示唆された。2)アンドロゲン非依存性前立腺癌細胞株の樹立アンドロゲン依存性前立腺癌細胞株LNCapをアンドロゲン除去下で長期間培養することにより、アンドロゲン非依存性増殖能を獲得した細胞株を樹立した。現在その増殖特性についてMTTアッセイにより解析中である。1)前立腺癌におけるRIZ1遺伝子のDNAメチル化解析前立腺癌、腎癌組織における免疫組織化学的検討により正常組織に比較して染色性の低下を認める分子群が同定され、癌組織における発現低下が示唆された。その発現低下のメカニズムを解明するため、各々の遺伝子について、メチル化特異的PCRを用いてDNAメチル化の解析を行った。その結果Rb蛋白の結合蛋白の一つをコードするRetinoblastoma-interacting zincfinger gene(RIZ1)について、前立腺癌組織の42.6%においてDNAのメチル化が認められた。RIZ1におけるDNAメチル化の検出率はGleason score7以上の群では53.3%と、Gleason score6以下の群での23.5%に比較して高率であった。また、前立腺癌細胞株のうちPC3において、DNAメチル化による-RIZ1の発現消失と、脱メチル化剤添加による発現回復が確認された。これらの結果より、DNAメチル化によるRIZ1の発現低下が前立腺癌の発生や増殖に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。2)アンドロゲン非依存性前立腺癌細胞株の樹立アンドロゲン依存性前立腺癌細胞株LNCapをアンドロゲン除去下で長期間培養することにより、アンドロゲン非依存性増殖能を獲得した細胞株を樹立し、カソデックスの添加によっても増殖速度の低下が見られないことを確認した。現在このアンドロゲン非依存性LNCapの増殖特性についてさらに解析を準めている。
KAKENHI-PROJECT-17791078
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せん断パネルダンパー付鉄骨建物の統合化耐震性能評価に関する研究
分散型システムとインターネットを用いて解析・実験装置を複数統合化した耐震性能評価法を確立した.統合化解析用のNETSHEARというせん断パネルダンパーの複合非線形詳細解析プログラムを新規に作成した.せん断パネルダンパーを建物内に設置した制振建物全体の地震時挙動を調べて耐震性能評価を行った.また,せん断パネルダンパーの2方向加力時の性能を実験的に明らかにし,その設計式についても整備を行った.分散型システムとインターネットを用いて解析・実験装置を複数統合化した耐震性能評価法を確立した.統合化解析用のNETSHEARというせん断パネルダンパーの複合非線形詳細解析プログラムを新規に作成した.せん断パネルダンパーを建物内に設置した制振建物全体の地震時挙動を調べて耐震性能評価を行った.また,せん断パネルダンパーの2方向加力時の性能を実験的に明らかにし,その設計式についても整備を行った.「分散型実験システムを用いた統合化評価法」は,世界中各地に点在する実験設備を効果的に利用して、実大規模の建物や構造物の弾塑性振動実験を、大型振動台実験と比較して,安価に実施することのできる方法である。1.統合評価環境の整備統合化実験とは、インターネットを介して、大規模有限要素法解析と実験装置を結合して建物全体の挙動をシュミュレーションする実験である。本研究は、大きな2軸曲げを受けるせん断パネルダンパーの特性を調べるため、これを間柱に取り付けた試験体を作成して加力試験を行う。大規模有限要素解析プログラムでは、ADINA、MARCという汎用有限要素プログラムを動かすワークステーション(SUN FIRE V210, HP Station 8700)を4台4ライセンスに、ワークステーションをGiga Ethernetで密結合し、非線形挙動の激しい柱の局部座屈挙動解析に充て、システムを構築した。2.通信・データ交換技術のプログラミング統合化実験・解析では、遠隔地にある研究機関のワークステーション、実験装置とのデータ交換をインターネットを介して行う必要がある。通信の簡便性と汎用性を重視し、UNIXで標準装備されいるTCPIPを利用する方法を開発した.3.せん断パネルダンパー単体の多軸応力下における耐力評価これまでに実施した実大せん断ダンパー単体の繰り返し載荷試験に加えて、パネル面内方向に対して45度傾いた方向に載荷試験を行った。「分散型実験システムを用いた統合化評価法」は,世界中各地に点在する実験設備を効果的に利用して、実大規模の建物や構造物の弾塑性振動実験を、大型振動台実験と比較して,安価に実施することのできる方法である。本年度は,上述の統合化解析のための準備を行った.1.せん断パネルダンパー単体の多軸応力下における耐力評価これまでに実施したせん断ダンパー単体の繰り返し載荷試験に加えて、パネル面内方向に対して45度傾いた方向に載荷試験を行い,その塑性変形性能を確認した.2.せん断パネルダンパーの単体の設計式の構築パネル面内方向に対して0度の標準載荷の疲労実験,漸増繰り返し試験を行って,提案する,塑性変形性能を表示するための設計式の妥当性を示した.3.統合化解析用建物の構造設定せん断パネルダンパーを用いた,鉄骨造多層建物の構造設計を行い,梁,柱,および,ダンパーの形状を決定した.実際の地震応答は,載荷角度が45度の場合が起こるが,このときのパネルダンパーの剛性は約半分程度と現行の設計法では見落としている現象があることを明らかにした.「分散型実験システムを用いた統合化評価法」は,世界中各地に点在する実験設備を効果的に利用して、実大規模の建物や構造物の弾塑性振動実験を、大型振動台実験と比較して,安価に実施することのできる方法である。本年度は,上述の解析準備と統合化解析を行った.1.せん断パネルダンパーの単体の設計式の構築パネル面内方向に対して0度の標準載荷の疲労実験,漸増繰り返し試験を行って,提案する,塑性変形性能を表示するための設計式の妥当性を示した.2.統合化解析用建物の構造設定せん断パネルダンパーを用いた,鉄骨造多層建物の構造設計を行い,梁,柱,および,ダンパーの形状を決定した.実際の地震応答では加力状態が曲げとせん断の状態となり,反曲点位置がキーポイントなることを指摘して,現行の設計法では見落としている点があることを明らかにし,新たな設計法を提案した.3. 2層1スパンの設計例題を対象として,NETSEHARというせん断パネルダンパーの繰り返し載荷時の弾塑性挙動が追跡できる詳細解析と,フレーム解析とをインターネットを介して統合化して弾塑性解析を行い.載荷中にはダンパーの反曲点位置が変動することを実証し,提案した設計法が有用であることを示した.
KAKENHI-PROJECT-20560541
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20560541
青果物のエチレン生成誘導機構の電気生理学的解析
青果物のエチレン生成の誘導機構を電気生理学的手法を用いて調べた。1.これまでに開発した通電によるエチレン生成の誘導方法には、電極表面での電気分解による組織崩壊があり、傷害エチレンが含まれている懸念があった。そこで、寒天橋を用いて電極が直接組織に触れないように通電方法を改良した。改めて通電によるエチレン生成の誘導様相を確認したところ、キュウリ、トマトおよちカボチャで、通電刺激に反応した急速なエチレン生成の誘導がみられた。このエチレンは、ACC含量の蓄積とACC synthaseおよびACC oxidaseの活性化を伴っており、青果物自体の生理反応に基づくものであることを再確認した。2.キュウリ果実を用いて通電によるエチレン生成誘導をACC synthase遺伝子の発現面から調べたところ、少なくとも6種類の遺伝子が存在し、この内5種類が通電によって発現した。これらの遺伝子には、傷害、オーキシンおよび高濃度炭酸ガスで発現するものも含まれていた。また、キュウリと同じウリ科植物であるメロンとカボチャ果実の傷害型、成熟型およびオーキシン型ACC synthase遺伝子との間で高い相同性を示した。3.通電によるキュウリ果実のエチレン生成誘導の内的な初期反応部位の特定を、電気インピーダンス解析により行った。等価回路として5素子モデルを用い、マルカートのアルゴリズムによる非線形最小二乗法を適用した数値演算により、通電に伴う各素子の値の変化を求めたところ、細胞外抵抗、原形質抵抗およびトノプラスト容量が大きく増加した。この内、細胞外抵抗の増加のみ、エチレンの作用性阻害剤であるジアゾシクロペンタジエンの前処理でほぼ完全に消失した。このことより、通電は原形質pHとトノプラスト状態の変化を通じてエチレン生成を誘導すると思われた。青果物のエチレン生成の誘導機構を電気生理学的手法を用いて調べた。1.これまでに開発した通電によるエチレン生成の誘導方法には、電極表面での電気分解による組織崩壊があり、傷害エチレンが含まれている懸念があった。そこで、寒天橋を用いて電極が直接組織に触れないように通電方法を改良した。改めて通電によるエチレン生成の誘導様相を確認したところ、キュウリ、トマトおよちカボチャで、通電刺激に反応した急速なエチレン生成の誘導がみられた。このエチレンは、ACC含量の蓄積とACC synthaseおよびACC oxidaseの活性化を伴っており、青果物自体の生理反応に基づくものであることを再確認した。2.キュウリ果実を用いて通電によるエチレン生成誘導をACC synthase遺伝子の発現面から調べたところ、少なくとも6種類の遺伝子が存在し、この内5種類が通電によって発現した。これらの遺伝子には、傷害、オーキシンおよび高濃度炭酸ガスで発現するものも含まれていた。また、キュウリと同じウリ科植物であるメロンとカボチャ果実の傷害型、成熟型およびオーキシン型ACC synthase遺伝子との間で高い相同性を示した。3.通電によるキュウリ果実のエチレン生成誘導の内的な初期反応部位の特定を、電気インピーダンス解析により行った。等価回路として5素子モデルを用い、マルカートのアルゴリズムによる非線形最小二乗法を適用した数値演算により、通電に伴う各素子の値の変化を求めたところ、細胞外抵抗、原形質抵抗およびトノプラスト容量が大きく増加した。この内、細胞外抵抗の増加のみ、エチレンの作用性阻害剤であるジアゾシクロペンタジエンの前処理でほぼ完全に消失した。このことより、通電は原形質pHとトノプラスト状態の変化を通じてエチレン生成を誘導すると思われた。青果物のエチレン生成誘導機構を電気生理学的に解析した。1.直流電流処理がキュウリ、カボチャおよびトマトのエチレン生成を著しく誘導した。とくに、キュウリでは10分間の通電でエチレン生合成の律速酵素であるACC合成酵素とACC酸化酵素が急速に誘導された。通電処理はポリガラクチュロネースとフェニールアラニンアンモニアリエースも著しく誘導したが、エチレンの作用性阻害剤の同時処理実験により、これらの酵素は通電処理により誘導されたエチレンによる二次誘導であることが判明した。2.通電処理の作用部位を特定するために、キュウリについてマルカート・アルゴリズムによる膜インピーダンスの数値解析を試みたところ、細胞外抵抗、細胞内抵抗及びトノプラスト容量に大きな変化がみられ、エチレン生成の誘導の作用部位はトノプラストと推定できた。3.キュウリからトノプラストミクロゾームを調製し、通電処理に伴うATPase活性とプロトンポンプ活性変化を測定したところ、通電処理によりプロトンポンプ活性が著しく低下しており、エチレン生成の誘導要因としてプロトンポンプの活性低下が関与している可能性が伺えた。4.通電処理により誘導されたACC合成酵素をコードするcDNAライブラリーを作成したところ、少なくとも3種のACC合成酵素が通電により誘導されていることが判明した。現在、引き続づきこれらのcDNAの塩基配列の決定と、既知のACC合成酵素cDNAとの相同性の確認を行っている。5.本研究助成により、本年度の計画はcDNAをプローブとしてNor-thern Blot分析を除いて終了し、当初の予定以上の成果をあげることができ、エチレン生成の誘発機構の解明をかなり進展させることができた。次年度に向けて、エチレン生成の遺伝子発現研究を遂行中である。植物器官によるエチレン生成誘導因子を特定するために、主として直流電流により誘導されるキュウリ果実のエチレン生成について、物理、化学および遺伝子レベルでの解析を行った。
KAKENHI-PROJECT-04454055
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青果物のエチレン生成誘導機構の電気生理学的解析
1.通電に伴うキュウリ果実の細胞内外の電気特性を測定したところ、エチレン生成の誘導と同時に細胞外抵抗(R_1)、細胞内抵抗(R_2)、原形質膜容量(C_1)および液胞膜(トノプラスト)容量(C_2)が大きく増加した。エチレンの作用性阻害剤であるジアゾシクロペンタジエンを合成し、果実に前処理したところ、R_1とC_1の増加は消失したが、R_2とC_2の変化には影響しなかった。このことより、エチレン生成には原形質とトノプラストの状態変化が関与していると推測した。2.エチレン生成のエリシター物質の抽出・精製をキュウリ果実から試みたところ、活性が弱く通電の有無による差が明確ではなかった。そこで、エチレン生成能が大きなカボチャを用いたところ、傷害組織のエタノール可溶性高分子画分に強い活性が認められ、無傷組織には活性はなかった。現在、この物質の化学同定と生理的意義を検討中である。3.通電誘導によるエチレン生成キュウリ果実を用いて、ACC合成酵素遺伝子のクローニングとその発現について調べた。cDNAのPCR産物プラスミドクローンの制限酵素地図から、最終的には4種類の遺伝子を得た。これらの遺伝子のDNA塩基配列を既知のACC合成酵素遺伝子と比較したところ、成熟型、傷害型およびオーキシン誘導型の3種類のACC合成酵素遺伝子と高い相同性を示した。同時に、ノーザンブロット分析を行ったところ、通電処理は傷害型ACC合成酵素遺伝子を強く誘導することが判明した。昨年度までの研究で、直流電流通電に伴うキュウリ果実のエチレン生成誘導は原形質のpH変化とトノプラストの状態変化に起因することを電気理論的インピーダンス解析により特定し、さらにエチレン生合成の律速酵素であるACC合成酵素の遺伝子フラグメントを4種類(CU-ACS-1,2,3,4)クローニングすることに成功した。最終年度である本年度は、新たな2種のACC合成酵素遺伝子のクローニングを行い、全遺伝子の塩基配列の決定と通電に伴う発現解析をノーザンブロット分析により行った。なお、傷害、オーキシンおよび高濃度炭酸ガス処理による遺伝子発現についても解析し、通電との比較を行った。また、同じウリ科であるメロン果実の既報遺伝子(ME-ACS-1,2,3)との相同性比較も行った。1)通電により、キュウリ果実より2種のACC合成酵素遺伝子フラグメント(CU-ACS-5,CU-ACS-103)をクローニングした。CU-ACS-103はACC合成酵素遺伝子に特有の保存領域をもたなかった。CU-ACS-5の塩基配列はCU-ACS-4と極めて類似していたが、鎖長は0.4Kbp長かった。3)ノーザンブロット分析では、通電によりCU-ACS-2を除く全ての遺伝子発現がみられた。CU-ACS-2は、オーキシン処理でのみ発現する特異な遺伝子であった。また、CU-ACS-3も炭酸ガス処理では発現しなかった。4)これらのことより、通電は傷害刺激と類似の遺伝子発現作用をもつが、その能力は傷害刺激より遥かに強力であると判断された。
KAKENHI-PROJECT-04454055
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骨格筋で癌を阻害するー食品と運動のパッケージによるエネルギー代謝介入効果の検討
近年、中鎖脂肪酸(MCFA)は、高カロリーにおいても、生体内の代謝が速く体内蓄積も無いことから、サルコペニアの栄養介入において注目されているが、骨格筋における直接的効果を検証した報告はない。われわれはBALB/cマウスを用い2%、5%、10%の濃度別ラウリン酸食が骨格筋に及ぼす影響を検証した。体重と骨格筋重量は5%群、10%群で対照群と比較し減少した。2%群にて酸化ストレスの減少、ミトコンドリア量の増加が確認され、10%群にてミトコンドリア量、ミオシン軽鎖の減少が確認された。次に、マウス骨格筋細胞株であるC2C12筋芽細胞と分化誘導した筋管細胞を用い、対照群、LAA処理群は0.15μg/ml・0.30μg/ml・0.60μg/mlの異なった濃度で処理し、48時間培養での増殖能とミトコンドリア量を検証した。筋芽細胞の増殖能は対照群と比較し低濃度群で増加、高濃度群で低下し、ミトコンドリア量は低濃度群で増加、中・高濃度群で低下した。筋管細胞は高濃度群でミトコンドリア量が低下した。さらにフラックス解析によりミトコンドリア機能を評価したところ、LAA投与により、basalおよびmaximumのミトコンドリア呼吸はC2C12細胞で亢進していたがROS産生は亢進しなかった。これに対し、CT26大腸癌細胞株ではLAAによりROS産生が亢進し細胞死が誘導された。MCFAの適性濃度の投与はミトコンドリアを活性化し、骨格筋に有用であることが示唆された。糖質および脂肪酸の骨格筋への効果を検討し、ミトコンドリア呼吸についても検討を行った。現在取り組んでいる、脂肪酸に種々のアミノ酸を同時付加したときの骨格筋萎縮への影響を検討する。われわれは以前より腹膜播種によるマウス悪疫質モデルを用いて、糖質(Glc)と中鎖脂肪酸(MCT)の単独摂取における栄養介入にて検証を行っている。それらの結果では、Glc負荷では濃度依存的に腫瘍重量の増加を認めたが、骨格筋組織成熟度を反映するSDS可溶性重合myosin L1(MYL1)は糖濃度依存的に有意に高値を示した。一方、MCT負荷では、腫瘍増殖を抑制し、筋重量の維持を認め、骨格筋萎縮を阻止する傾向が認められたが、MYL1は低値を示す可能性を報告している。よって本研究はGlcとMCTの同時摂取による、マウス悪液質モデルにて抗腫瘍効果、骨格筋萎縮阻止効果を検証した。実験には、BALB/cマウスと同系の大腸癌細胞株であるCT26を使用し、1×10^6個を腹腔内へ接種した。Glc摂取は10%の糖水を自由飲水投与し、MCT摂取は、ラウリン酸(Lauric acid以下LAA)を通常食であるCE2に対し重量比で2%を混合し自由経口摂取とした。群分けは腹膜播種のみ施行した対象群(以下Con群)、LAA摂取群、LAA+10%Glc摂取群の3群とした。飲水量はGlc群で高値を示し、食事摂取量はLAA群が有意に高値を示したが、総カロリーの比較は有意差は示さなかった。LAA群において体重は有意に減少した。腫瘍重量はLAA群で有意に低値を示し、LAA+10%Glc群ではGlcによる腫瘍促進効果をLAAが抑制した。骨格筋重量およびMYL1はLAA群、LAA+10%Glc群で有意に増加していた。骨格筋において糖質は有用であるが、腫瘍を持つ宿主には腫瘍増大のリスクがある。しかし、GlcとLAAを同時摂取させることで、Glcによる腫瘍増大を相殺し、さらに骨格筋では解糖系と酸化的リン酸化の両者が促進し骨格筋萎縮を予防する可能性が示唆された。本年度は、検討予定の栄養素のうちエネルギー代謝のキーとなるグルコースと中鎖脂肪酸について検討を行った。アミノ酸、長鎖脂肪酸などは検討を開始している。近年、中鎖脂肪酸(MCFA)は、高カロリーにおいても、生体内の代謝が速く体内蓄積も無いことから、サルコペニアの栄養介入において注目されているが、骨格筋における直接的効果を検証した報告はない。われわれはBALB/cマウスを用い2%、5%、10%の濃度別ラウリン酸食が骨格筋に及ぼす影響を検証した。体重と骨格筋重量は5%群、10%群で対照群と比較し減少した。2%群にて酸化ストレスの減少、ミトコンドリア量の増加が確認され、10%群にてミトコンドリア量、ミオシン軽鎖の減少が確認された。次に、マウス骨格筋細胞株であるC2C12筋芽細胞と分化誘導した筋管細胞を用い、対照群、LAA処理群は0.15μg/ml・0.30μg/ml・0.60μg/mlの異なった濃度で処理し、48時間培養での増殖能とミトコンドリア量を検証した。筋芽細胞の増殖能は対照群と比較し低濃度群で増加、高濃度群で低下し、ミトコンドリア量は低濃度群で増加、中・高濃度群で低下した。筋管細胞は高濃度群でミトコンドリア量が低下した。さらにフラックス解析によりミトコンドリア機能を評価したところ、LAA投与により、basalおよびmaximumのミトコンドリア呼吸はC2C12細胞で亢進していたがROS産生は亢進しなかった。
KAKENHI-PROJECT-17K19923
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K19923
骨格筋で癌を阻害するー食品と運動のパッケージによるエネルギー代謝介入効果の検討
これに対し、CT26大腸癌細胞株ではLAAによりROS産生が亢進し細胞死が誘導された。MCFAの適性濃度の投与はミトコンドリアを活性化し、骨格筋に有用であることが示唆された。糖質および脂肪酸の骨格筋への効果を検討し、ミトコンドリア呼吸についても検討を行った。本年度の糖と中鎖脂肪酸およびその併用についてより詳細な検討を行うとともに運動負荷についても併用を行う。また、糖・中鎖脂肪酸とともに長鎖脂肪酸、アミノ酸、ビタミン等についても悪液質モデルによる検討を行う。現在取り組んでいる、脂肪酸に種々のアミノ酸を同時付加したときの骨格筋萎縮への影響を検討する。残額は少額(1188円)であり、問題はない。
KAKENHI-PROJECT-17K19923
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成分分画による牧草色素類およびアルファルファサポニンの高度利用
アルファルファ緑葉抽出乾燥物(LE)は、良品質アルファルファミールの5倍に及ぶカロチノイドを含み、高カロリーが求められる養鶏用飼料の添加物として有望である。しかしカロチノイドは酸化されやすく、その結果二重結合を失い色素給源としての価値を減ずるため、LEの製造及び貯蔵期間中における変性の防止法を検討するとともに、その卵黄色に及ぼす効果についても検討した。アルファルファのカロチノイド含量は開花期に達すると急激に低下するので、それまでに収穫するのが望ましい。LEの製造及び貯蔵中のカロチノイドの分解を防ぐうえで抗酸化剤とくにエトキシキンの添加が有効であった。-18°Cにおける貯蔵ではエトキシキンを添加せずとも45週に及ぶ試験期間中、安定的に保たれたが、5°Cにおけるβ-カロチン及び室温下における全カロチノイドの貯蔵には抗酸化剤が欠かせなかった。しかし高濃度のエトキシキン添加は、ニワトリによるカロチノイド蓄積を低下させ、よってアルファルファ搾汁への添加は0.05%以下でなければならず、カロチノイド貯蔵のためならば0.01%で十分であることを示した。エトキシキン処理をしなかったLEの多量投与もかえってニワトリのカロチノイドの蓄積を阻害し、投与限界は10%であった。デビュイ種アルファルファLEにはイネ科牧草にはない高脂血症抑止効果があり、その作用物質をアルファルファの特殊成分であるメジカジェニン酸(サポニンの一種)であると考え、その単離を行ったが収量的に実用性がなく、含量が多い根からの単離を試みたところ、4.5g/kg生根の粗サポニンを得た。しかしその精製及び生理活性の検討はまだ行っていない。アルファルファ緑葉抽出乾燥物(LE)は、良品質アルファルファミールの5倍に及ぶカロチノイドを含み、高カロリーが求められる養鶏用飼料の添加物として有望である。しかしカロチノイドは酸化されやすく、その結果二重結合を失い色素給源としての価値を減ずるため、LEの製造及び貯蔵期間中における変性の防止法を検討するとともに、その卵黄色に及ぼす効果についても検討した。アルファルファのカロチノイド含量は開花期に達すると急激に低下するので、それまでに収穫するのが望ましい。LEの製造及び貯蔵中のカロチノイドの分解を防ぐうえで抗酸化剤とくにエトキシキンの添加が有効であった。-18°Cにおける貯蔵ではエトキシキンを添加せずとも45週に及ぶ試験期間中、安定的に保たれたが、5°Cにおけるβ-カロチン及び室温下における全カロチノイドの貯蔵には抗酸化剤が欠かせなかった。しかし高濃度のエトキシキン添加は、ニワトリによるカロチノイド蓄積を低下させ、よってアルファルファ搾汁への添加は0.05%以下でなければならず、カロチノイド貯蔵のためならば0.01%で十分であることを示した。エトキシキン処理をしなかったLEの多量投与もかえってニワトリのカロチノイドの蓄積を阻害し、投与限界は10%であった。デビュイ種アルファルファLEにはイネ科牧草にはない高脂血症抑止効果があり、その作用物質をアルファルファの特殊成分であるメジカジェニン酸(サポニンの一種)であると考え、その単離を行ったが収量的に実用性がなく、含量が多い根からの単離を試みたところ、4.5g/kg生根の粗サポニンを得た。しかしその精製及び生理活性の検討はまだ行っていない。アルファルファ(Medicago Sativa L.,cv.Natsuwakaba)を収穫後ただちに細断し抗酸化剤とよく混合したのち圧搾し、搾汁を得た。用いた抗酸化剤はエトキシキン、次亜硫酸ソーダ、ブチル化ハイドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸、α-トコフェロールおよび緑茶である。無添加を含めた7種類の搾汁を蒸気により瞬時に90°Cに熱し、生じた凝固物を連続遠心機で分離し、凍結乾燥した。この乾燥物を以後、緑葉抽出物と呼ぶ。各緑葉抽出物を100ml容の透明瓶および褐色瓶にいれ、栓をするに先立ち、各々の半数に窒素ガスを充満させた。透明および褐色瓶を28°Cに保ちつつ蛍光灯により12時間照明した場合、および暗黒下-18°Cで貯蔵した場合のカロチノイド含量の推移を60週間にわたって調査した。暗黒・冷凍下では、抗酸化剤に関係なくキサントフィルはよく保護されたが、β-カロチンの長期貯蔵には抗酸化剤の助けを必要とし、エトキシキンの添加によりほぼ完全に保護された。照明下28度では、キサントフィルおよびβ-カロチンとも減少したが、エトキシキン処理をし褐色瓶に蓄えることによりその程度は著しく緩和され、60週後でも初期値の2/3以上が保たれた。容器の窒素ガスによる充満は、まったく効果がなかった。その他の添加物の効果も、エトキシキンに比し著しく劣った。本実験ではエトキシキンを生草当り0.2%添加したが、その緑葉抽出物を5.6%添加した飼料を摂取したニワトリヒナは肝の機能が低下し、体内へのカロチノイドの蓄積は無添加の場合よりもむしろ劣った。よって現在、カロチノイド保護に必要な最低添加量およびその抽出物の動物生理上安全な添加レベルについて検討中である。
KAKENHI-PROJECT-05454108
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成分分画による牧草色素類およびアルファルファサポニンの高度利用
カロチノイドの酸化を防ぐ目的で、破砕前の新鮮なアルファルファに新鮮重当たり0.2%のエトキシキンほか6種類の抗酸化剤を添加したところ、エトキシキンがもっとも有効だった。搾汁液を加熱して得た凝固物(Leaf extract:LE)をカロチノイドを含まない飼料に約5.7%添加してニワトリヒナに給与したところ、エトキシキン無添加の場合は飼料中の含量差がそのまま肝、皮膚及び血漿中の含量及び脚色に反映された。しかし、搾汁液にエトキシキンを0.2%添加して調製したLE中のカロチノイド含量はやや増加したにもかかわらず、これらを給与したヒナの蓄積量は有意に低下した。搾汁液にエトキシキンを0.01,0.02,0.05,0.10及び0.20%添加して調製したLEのエトキシキン濃度は、搾汁液中の濃度の約10倍になった。これらのLEをカロチノイドを含まない合成飼料に約5%添加してニワトリヒナに給与したところ、高濃度のエトキシキン添加はヒナのカロチノイド蓄積を抑制したが、低濃度のエトキシキン(飼料中50及び125ppm)添加は皮膚の黄色素量、飼料効率及び体重増加を高め、血漿コレステロールを減少させるうえで有効であった。ウズラ飼料へのLE10%添加は卵黄のカロチノイド含量を有意に高めたが20%添加は卵巣内でのカロチノイド蓄積を抑制して10%添加の場合より低くし、産卵後の卵黄の色及びカロチノイド含量は10%添加の場合と変わらなかった。このことはLEを高濃度で添加した場合の阻害効果を示しており、同様の傾向が血漿及び肝においても観察された。アルファルファ緑葉抽出乾燥物(LE)は、良品質アルファルファミールの5倍に及ぶカロチノイドを含み、高カロリーが求められる養鶏用飼料の添加物として有望である。しかしカロチノイドは酸化されやすく、その結果二重結合を失い色素給源としての価値を減ずるため、LEの製造及び貯蔵期間中における変性の防止法を検討するとともに、その卵黄色に及ぼす効果についても検討した。アルファルファのカロチノイド含量は開花期に達すると急激に低下するので、それまでに収穫するのが望ましい。LEの製造及び貯蔵中のカロチノイドの分解を防ぐうえで抗酸化剤とくにエトキシキンの添加が有効であった。-18°Cにおける貯蔵ではエトキシンを添加せずとも45週に及ぶ試験期間中、安定的に保たれたが、5°Cにおけるβ-カロチン及び室温下における全カロチノイドの貯蔵には抗酸化剤が欠かせなかった。しかし高濃度のエトキシン添加は、ニワトリによるカロチノイド蓄積を低下させ、よってアルファルファ搾汁への添加は0.05%以下でなければならず、カロチノイド貯蔵のためならば0.01%で十分であることを示した。エトキシキン処理をしなかったLEの多量投与もかえってニワトリのカロチノイドの蓄積を阻害し、投与限界は10%であった。デピュイ種アルファルファLEにはイネ科牧草にない高脂血症抑止効果があり、その作用物質をアルファルファの特殊成分であるメジカジェニン酸(サポニンの一種)であると考え、その単離を行ったが収量的に実用性がなく、含量が多い根からの単離を試みたところ、4.5g/kg生根の粗サポニンを得た。しかしその精製及び生理活性の検討はまだ行っていない。
KAKENHI-PROJECT-05454108
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大学における英語学習者のライティングによる語彙評価ツールの開発と運用
本研究は、日本の大学・短大における英語学習者の語彙習熟度とプロダクトとの関係を明らかにし、語彙評価のための評価項目を作成することを目的としている。まず、本研究で使用する語彙テストの信頼性を検証した結果、語彙テストと一般に用いられる英語能力テストとの信頼性を確認することができた。次に、語彙テスト、ライティング・サンプル、質問紙調査より得られたデータ結果を分析し、英語学習者の語彙を評価するのに有用な項目を作成した。またこれらの評価ツールの具体的な指導法、運用方法を検証し、今後、教室での指導者・学習者双方が利用できるツールへの改善に取り組んでいる。本研究は、日本の大学・短大における英語学習者の語彙習熟度とプロダクトとの関係を明らかにし、語彙評価のための評価項目を作成することを目的としている。まず、本研究で使用する語彙テストの信頼性を検証した結果、語彙テストと一般に用いられる英語能力テストとの信頼性を確認することができた。次に、語彙テスト、ライティング・サンプル、質問紙調査より得られたデータ結果を分析し、英語学習者の語彙を評価するのに有用な項目を作成した。またこれらの評価ツールの具体的な指導法、運用方法を検証し、今後、教室での指導者・学習者双方が利用できるツールへの改善に取り組んでいる。本研究は、「大学における英語学習者のライティングによる語彙評価ツールの開発と運用」という課題を取り扱うものである。英語学習において語彙は重要な役割を果たすものであるが,学習者が意味や用法を知っている英単語(認識語彙)と,実際に発話や書き言葉として使える英単語(発表語彙)との間には大きな隔たりがあり,認識語彙を発表語彙につなげるための学習方策の体系化が必要とされている。したがって本研究では,学習者の使える語彙力を増進させるための指導ツールの開発に取り組んでいる。現在,英語学習者のライティングを評価するために,テストや用途に応じて開発されたさまざまな評価ガイドラインが広く使用されている。多くのガイドラインは,いくつかの項目(内容・構成・文法・語彙など)から成り,さらにいくつかのレベル(点数)に分けられている。そのなかで「語彙」項目の評価基準は,使用語彙の多様性や適切性について言及されたものが多く,評価項目のなかでもあまりに一般的で,評価が困難であるとされる項目である。このことを解消するためにも,評価者・学習者にとって使いやすく,英語教育の現場で機能しうる語彙評価ツール開発の検証を行うことにした。語彙指導ツールの開発・運用のためには、まず学習者による語彙使用の多様性・習熟度を測る必要がある。具体的には,英語学習者の習熟度を測定するためのテスト(C-Test)を実施し,そこから得られた結果をもとに,学習者のライティングを詳細に分析した。これによって英語学習者の習熟度とプロダクトとの関係を明らかにすることができる。現在,学習者の発表語彙力を把握するため,ライティングをサンプルとした語彙の多様性について検証中である。その結果をもとに英語学習者の語彙力を評価するうえで必要となる評価項目を作成し,新たな評価ツールを開発する。本研究は、「大学における英語学習者のライティングによる語彙評価ツールの開発と運用」という課題を取り扱った。具体的な目的は以下のとおりである。(1)日本の大学・短大における英語学習者の習熟度とプロダクトとの関係を明らかにする。(2)研究目的(1)で得られたデータ結果をもとに、指導者・学習者が使用できる語彙評価のための評価項目を作成し、その信頼性について検証する。(3)評価項目を語彙力促進のために教室で活用する方策を探り、自律的かつ自立的な学習者育成のため、語彙指導ツールとして運用する方法について探る。まず(1)の目的については、英語学習者の習熟度を測るための語彙テスト、C-Testを実施した。また語彙テストとC-Testの信頼性を検証することで、語彙学習が学習者の語彙力を促進させることを示した。次に(2)の目的では、学習者によるライティング・サンプルを収集し分析を行った。そして、学習者の語彙テスト、C-Testの結果とライティング・データの結果を比較することで、学習者の語彙力が総合的な英語力と関連していることが明らかになった。あわせて質問紙調査を実施し、学習者の語彙学習に対する学習動機について調査を行った。最後に(3)の目的では、質問紙調査より得られたデータ結果をもとに因子分析を行い、質問項目がどのような共通の特性から影響を受けているかを明らかにし、語彙評価項目を作成した。この評価項目が教室で活用できる語彙評価ツールとして有用であるかを確認するため、具体的な指導法、教室での運用方法を検証した。英語教育学本研究の目的の一つである「日本の大学・短大における英語学習者の習熟度とプロダクトとの関係を明らかにする」について,調査対象となる英語学習者にたいして,習熟度を測るため学期始めと最後に2回のC-Testを実施した。そこから得られたデータをもとにC-Testの信頼性を明らかにするため相関係数,信頼性係数を算出し,t検定を行った結果,C-Test自体の信頼性と学習者によるスコアの伸びが確認された。次に,同じ学習者によるライティングのサンプルをC-Testと同様に学期始めと最後に2度収集した。ライティングの内容は,与えられたトピックについて10分間で書くというTimed Writingの方法をとった。収集したライティング・サンプルについては,学習者の使用語彙の多様性の観点から分析した。この分析結果をもとに語彙使用に関する英語学習者に共通する特徴・問題点を見出し,学習者が使用する語彙を評価するための評価項目(候補)を作成中である。
KAKENHI-PROJECT-25770208
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25770208
大学における英語学習者のライティングによる語彙評価ツールの開発と運用
二つ目の目的である「学習者のデータ結果をもとに,指導者・学習者が使用できる語彙評価のための評価項目を作成し,その信頼性について検証する」点においては,評価項目が確定されたうえで今後確認することになる。三つ目の目的は,本研究の完成年度である平成26年度以降引き続いて「評価項目を語彙力促進のために教室で活用する方策を探り,自律的かつ自立的な学習者育成のため,語彙指導ツールとして運用する方法について探る」予定である。平成26年度現在,語彙評価項目候補の決定に向けて検証中であるが,評価項目の決定については,今後の信頼性の検証に備えて,時間をかけて慎重かつ適切な判断を下す必要がある。さらに現場の教員を含めた学内外からの専門家の助言を得ながら研究を進める予定である。また,平成25年度から始まった本研究のデータ収集・分析・評価項目の検証・決定までの過程を1つの区切りとして研究発表する。具体的には,語彙評価項目の検証過程についてまとめた論文を執筆し,学会誌に投稿する予定である。評価項目の信頼性の検証については,次の研究段階として捉え,学習者のライティング・サンプルをもとに教育現場に従事する複数の研究者の協力を得て評価してもらい,評定者間信頼性を算出する。これをもとに複数の評定者の評定が一貫しているか否かを確認することで,語彙評価項目の信頼性を確認することが可能になる。また,評定者には,単なる数字による評価だけでなく,気づいた点などを記載してもらうことで,そのコメントを分析しデータ結果だけでなく経験にもとづく判断も語彙評価項目の改訂・修正作業に役立てることができる。最終的に確定した語彙評価項目は,学習者のライティングを評価するときの評価ガイドラインとして使用される以外に,教室内でライティングをする際の指導ツールとして,学習者にたいして指標を示すことも可能である。これによって学習者が自ら学び,学習者の自律・自立性を育成することにつながるのである。当初,平成25年度に予定していた研究成果発表のための旅費(海外学会参加費)を使用していないことによるものである。平成26年度にデータ(コメント)分析として使用するNvivoなどの統計ソフトを購入する予定である。
KAKENHI-PROJECT-25770208
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25770208
プロスタノイド受容体の生理活性に基づく医薬品への応用研究
【京都大学グループの成果】"1"プロスタノイド受容体特異リガンドの作製:EP3受容体の第7膜貫通領域にあるアルギニン(Arg-306)とリガンドのカルボン酸との結合では、そのGiの活性化には水素結合で十分であること、しかし、他のG蛋白質の活性化にはイオン結合が必須であることを見出した。また、その下流に存在するアスパラギン酸(Asp-318)の負電荷は、G蛋白との結合には無関係ながら結合後のGi蛋白の活性化(GTPase活性促進とアデニル酸シクラーゼ活性抑制)には必須であることを証明した。"2"受容体遺伝子欠損による各プロスタノイド受容体の生理機能評価:4種類のEPサブタイプ受容体欠損マウスを作製し、それらを用いて受容体の生理機能を評価した。その結果、EP3は細菌感染(LPS)による発熱反応に関与することを明らかにした。そのメカニズムは、LPS→macrophageでのIL-1bの産生→中枢発熱領域周辺でのIL-1βによるCOXの活性化→PGE2の産生→EP3の活性化の経路で起こることがわかった。また、EP4は胎児期循環から新生児期循環に交換する際に必須の動脈管閉鎖反応に働くことを明らかにした。EP2受容体は、卵の成熟・受精に働く卵丘細胞に発現し、同様に発現するCOX-2により産生されたPGE2がEP2に作用した結果、排卵と受精の効果率に寄与していることを明らかにした。【小野薬品工業(株)研究所グループの成果】"3"4種類あるPGE2受容体サブタイプの遺伝子クロンを発現させた動物細胞を用いて、それぞれのサブタイプ受容体に選択的なアゴニストを開発した。代表的な化合物として、EP1:AE1-259,ONO-EA-248,EP4:ONO-AE1-329を発見した。これら薬物は、その選択性において既知物質をはるかに凌ぐ。【京都大学グループの成果】"1"プロスタノイド受容体特異リガンドの作製:EP3受容体の第7膜貫通領域にあるアルギニン(Arg-306)とリガンドのカルボン酸との結合では、そのGiの活性化には水素結合で十分であること、しかし、他のG蛋白質の活性化にはイオン結合が必須であることを見出した。また、その下流に存在するアスパラギン酸(Asp-318)の負電荷は、G蛋白との結合には無関係ながら結合後のGi蛋白の活性化(GTPase活性促進とアデニル酸シクラーゼ活性抑制)には必須であることを証明した。"2"受容体遺伝子欠損による各プロスタノイド受容体の生理機能評価:4種類のEPサブタイプ受容体欠損マウスを作製し、それらを用いて受容体の生理機能を評価した。その結果、EP3は細菌感染(LPS)による発熱反応に関与することを明らかにした。そのメカニズムは、LPS→macrophageでのIL-1bの産生→中枢発熱領域周辺でのIL-1βによるCOXの活性化→PGE2の産生→EP3の活性化の経路で起こることがわかった。また、EP4は胎児期循環から新生児期循環に交換する際に必須の動脈管閉鎖反応に働くことを明らかにした。EP2受容体は、卵の成熟・受精に働く卵丘細胞に発現し、同様に発現するCOX-2により産生されたPGE2がEP2に作用した結果、排卵と受精の効果率に寄与していることを明らかにした。【小野薬品工業(株)研究所グループの成果】"3"4種類あるPGE2受容体サブタイプの遺伝子クロンを発現させた動物細胞を用いて、それぞれのサブタイプ受容体に選択的なアゴニストを開発した。代表的な化合物として、EP1:AE1-259,ONO-EA-248,EP4:ONO-AE1-329を発見した。これら薬物は、その選択性において既知物質をはるかに凌ぐ。本年度の実験計画に従い以下の研究成果を得た。(1)プロスタノイド受容体特異リガンドの作製:EP3受容体の第7膜貫通領域にあるアルギニン残基とリガンド官能基の一つであるカルボン酸との結合においては、従来考えられていたイオン結合ではなく水素結合で十分であること、また、この性質は他のEPサブタイプEP1,EP2,EP4受容体での結合においても適応できることを明らかにした。しかし、EP3はアイソフォーム受容体が複数のG蛋白質を活性化する際には、Giとの共役には水素結合で、GsあるいはGqとの共役いはイオン結合が必須であることがわかった。(2)受容体遺伝子欠損による各プロスタノイド受容体の生理機能評価:EPの4種類のサブタイプ受容体遺伝子欠損マウスを作製し、それらを用いて受容体の生理機能を評価している。本年度はEP3とEP4について重点的に評価した。その結果、EP3は細菌感染(LPS)による発熱反応に関与することを明らかにした。そのメカニズムは。LPS→macrophageでのIL-1βの産生→中枢発熱領域周辺でのIL-1βによるCOXの活性化→PGE@S22@E2の産生→EP3の活性化の経路で起こることがわかった。一方、EP4は胎児期循環から新生児期循環に変化するのに必須の動脈管閉鎖反応に働くことを明らかにした。EP4欠損マウスは生後3日以内に動脈管開存症とみられる症状で死亡するが、数パーセントの確立でホモマウスの一部は生存する。このホモマウスの動脈管は、野生株のマウスにみられるのと同様に動脈管が閉鎖している。
KAKENHI-PROJECT-10557222
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プロスタノイド受容体の生理活性に基づく医薬品への応用研究
この生存EP4欠損マウスは、動脈管開存症のメカニズムの解析、及びEP4の関与が予想される細胞反応の解析に応用できることがわかった。【京都大学グループの成果】1.プロスタグランジン(PG)受容体のリガンド認識ドメインと機能ドメインの解析:PGE2の1位カルボン酸は、EP3サブタイプ受容体の第7膜貫通領域にあるアルギニン(Arg-306)残基と結合する。両者の結合の化学的性質は、Gi活性化のおいては水素結合で十分であるが、GsおよびGqの活性化にはイオン結合が必須であることが明らかにした。Arg-306残基の少し下流にあるAsp-318の負電荷は、受容体とGi蛋白との結合には無関係であるが、結合後のGi蛋白の活性化(GTPase活性の促進およびアデニル酸シクラーゼ活性の抑制)には必須であることを証明した。さらに、アゴニスト結合前の受容体では、Asp-318残基が第二細胞内ループのN-末側にあるG蛋白活性化モチーフ(DRY)のArg残基との間にイオン結合していることを示唆した。2.PG受容体欠損マウスの代表的なフェノタイプの解析:EP2受容体のフェノタイプとして、排卵、受精の異常による出産数の顕著な減少を見出した。さらに、このフェノタイプを解析して、卵の成熟・受精に働く卵丘細胞にEP2受容体とCOX-2が発現していること、および排卵、受精の過程にはEP2受容体を介してのcAMPの産生が重要であることを明らかにした。【小野薬品工業(株)研究所グループの成果】1.4種類あるPGE2受容体サブタイプの遺伝子クロンを発現させた動物細胞を用いて、それぞれのサブタイプ受容体に選択的なアゴニストを開発した。代表的な化合物として、EP1:ONO-DI-004,EP2:ONO-AE1-259,EP3:ONO-EA-248,EP4:ONO-AE1-329を発見した。これらは既知物質より選択性においてはるかに優れている。
KAKENHI-PROJECT-10557222
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複式学級における異学年協同学習の教育効果についての研究-「寺子屋」式授業形態導入の試み-
今研究の成果は、フィンランドの教育状況を視察することができたことである。異年齢集団での学びの可能性を探るために、PISA型学力で成功しているフィンランドの教育状況を視察した。訪問した複式学級の小学校では、1年生11人、2年生10人など日本のように何人以下だから複式学級になるというようなことではなく、日本よりも多い人数でも複式学級で授業をしていた。時間の都合もあり、私が考えていたような異年齢という特徴を生かして、同単元同内容の授業を創造しているというような取り組みは、視察した限りでは見られなかった。新学年が始まってすぐという時期的なこともあったのかもしれない。校長の話でも、道徳的や情緒的な面では、異年齢の集団というのは意味があると話していたが、授業にどう異年齢を取り入れているかというところまではきけなかった。ただ、それぞれの学年での授業内容をきちんと子どもに保障していくことがもとにあって、それに異年齢という特徴が作用しているように感じた。もっと時間をかけた丁寧な視察が必要だと感じた。この視察を受けて、2学年複式授業だけでなく、全6学年による協同学習のカリキュラムの開発に取り組んだ。本校複式学級は各学年8名ずつ全48名を4つの異年齢グループに分けて体を使った影絵の表現活動を行った。5年生6年生が各グループのリーダーとなって、テーマに沿って動物や車などの影絵を作り出し表現していた。はじめはグループの活動がなかなかうまく進まなかったが、高学年がうまく低学年に教えられるように成長してきて、3学期にはすばらしい影絵の発表ができた。なお、研究費で購入したプロジェクターは研究発表会でのプレゼン投影だけでなく、影絵の練習の光源としても利用できた。今研究の成果は、フィンランドの教育状況を視察することができたことである。異年齢集団での学びの可能性を探るために、PISA型学力で成功しているフィンランドの教育状況を視察した。訪問した複式学級の小学校では、1年生11人、2年生10人など日本のように何人以下だから複式学級になるというようなことではなく、日本よりも多い人数でも複式学級で授業をしていた。時間の都合もあり、私が考えていたような異年齢という特徴を生かして、同単元同内容の授業を創造しているというような取り組みは、視察した限りでは見られなかった。新学年が始まってすぐという時期的なこともあったのかもしれない。校長の話でも、道徳的や情緒的な面では、異年齢の集団というのは意味があると話していたが、授業にどう異年齢を取り入れているかというところまではきけなかった。ただ、それぞれの学年での授業内容をきちんと子どもに保障していくことがもとにあって、それに異年齢という特徴が作用しているように感じた。もっと時間をかけた丁寧な視察が必要だと感じた。この視察を受けて、2学年複式授業だけでなく、全6学年による協同学習のカリキュラムの開発に取り組んだ。本校複式学級は各学年8名ずつ全48名を4つの異年齢グループに分けて体を使った影絵の表現活動を行った。5年生6年生が各グループのリーダーとなって、テーマに沿って動物や車などの影絵を作り出し表現していた。はじめはグループの活動がなかなかうまく進まなかったが、高学年がうまく低学年に教えられるように成長してきて、3学期にはすばらしい影絵の発表ができた。なお、研究費で購入したプロジェクターは研究発表会でのプレゼン投影だけでなく、影絵の練習の光源としても利用できた。
KAKENHI-PROJECT-21906003
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薬剤による増殖制御型腫瘍融解ウイルスと神経幹細胞を用いた脳腫瘍治療の研究
薬剤(テトラサイクリン)/放射線照射などの外来刺激条件下で複製するoncolyticvirus (OV)を、神経幹細胞に感染させ、brain tumor stem cell(以下、BTSC)由来の脳腫瘍モデルで治療効果を検討する本研究の前段階として、本年度は各種予備実験を行った。実験では慶應義塾大学大学院先端医科学研究所遺伝子制御学教室に協力頂いた。同教室のプロトコールに基づき、マウス脳実質におけるsubventricular zoneから神経幹細胞を採取し、神経幹細胞の培養・継代技術を習得した。野生株神経幹細胞の長期継代は困難であるが、今回も野生型では十分量の神経幹細胞を得ることは困難だった。In vitro培養条件下での神経幹細胞への感染対策(抗菌薬の種類や採取手技の迅速化、contaminationを招く手技の回避)や更なる至適培養条件の検索も課題だろうと考えられた。研究実施計画では外来刺激条件下で複製開始する新たなoncolytic herpes virus株の作成を本年度の予定としていたが、上述の理由で十分量の安定した神経幹細胞が得られていない状況であることから、現時点では条件複製型の新規oncolyticvirus作製は計画中の状況である。また、不安定な細胞発育状況での免疫不全マウスへのin vivo神経幹細胞移植実験は倫理面・コスト面から許容できないものと判断した。本年度は免疫不全マウスを用いた移植実験は行わず、現在も安定した細胞培養条件を探索している。実際には、その他にもマウスの脳解剖、研究員の安定した神経幹細胞採取技術の習得、顕微鏡下での迅速な細胞採取を目標とした顕微鏡手技の修練、FACS解析やコンフォーカル顕微鏡での組織免疫染色手技の習得など、実験の確実性を向上させ、今年度の実験は終了した。薬剤(テトラサイクリン)/放射線照射などの外来刺激条件下で複製するoncolytic virus (OV)を、神経幹細胞に感染させ、brain tumor stem cell(以下、BTSC)由来の脳腫瘍モデルで治療効果を検討する本研究の前段階として、本年度は各種予備実験を行った。実験では慶應義塾大学大学院先端医科学研究所遺伝子制御学教室に協力頂いた。同教室のプロトコールに基づき、マウス脳実質におけるsubventricular zoneから神経幹細胞を採取し、神経幹細胞の培養・継代技術を習得した。野生株神経幹細胞の長期継代は困難であるが、今回も野生型では十分量の神経幹細胞を得ることは困難だった。In vitro培養条件下での神経幹細胞への感染対策(抗菌薬の種類や採取手技の迅速化、contaminationを招く手技の回避)や更なる至適培養条件の検索も課題だろうと考えられた。研究実施計画では外来刺激条件下で複製開始する新たなoncolytic herpes virus株の作成を本年度の予定としていたが、上述の理由で十分量の安定した神経幹細胞が得られていない状況であることから、現時点では条件複製型の新規oncolyticvirus作製は計画中の状況である。また、不安定な細胞発育状況での免疫不全マウスへのin vivo神経幹細胞移植実験は倫理面・コスト面から許容できないものと判断した。本年度は免疫不全マウスを用いた移植実験は行わず、現在も安定した細胞培養条件を探索している。実際には、その他にもマウスの脳解剖、研究員の安定した神経幹細胞採取技術の習得、顕微鏡下での迅速な細胞採取を目標とした顕微鏡手技の修練、FACS解析やコンフォーカル顕微鏡での組織免疫染色手技の習得など、実験の確実性を向上させ、今年度の実験は終了した。
KAKENHI-PROJECT-26861167
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ペプチド性伝達物質遊離に関与するシナプス膜蛋白質の同定と遊離機構の解明
脊髄後角組織の神経伝達物質に関与するシナプス蛋白質の存在を確認するため、ラット脊髄後角シナプトゾームを調整し、SDS-PAGE後、シナプトタグミン,シンタキシン,シナプトブレビン(VAMP), SNAP-25,シナプトフィジン、Rab3A、Rab3A/B/Cの抗体を用いてWestern blottingを行った。陽性コントロールとしてラットの大脳皮質膜シナプトゾーム画分を用いた。その結果、脊髄後角では1.基本的に大脳皮質に存在するシナプス蛋白質の存在が確認された、しかし、2.シナプトブレビン(VAMP)は、ほとんど検出できなかった、3.Rab3A、Rab3A/B/Cについては、脊髄のRab3Cが検出できなかった、4.シンタキシンのアイソフォームでは、Aタイプの存在が脊髄では確認できなかった。以上、脊髄後角でのシナプス蛋白質の分布が大脳皮質のそれらとは異なり、脊髄後角でペプチド性神経伝達物質を含有しているシナプスには、脊髄特異的なシナプス蛋白質が存在し、遊離を制御している可能性が示唆された。一方、ラット後根神経節初代培養細胞から刺激に応じてサブスタンスPが遊離することを確認し、複数の遊離制御機構の存在すること可能性を明らかにした。後根神経節初代培養細胞では、培養条件特にNGF (nerve growth factor)によりサブスタンスPの生合成が制御されていることもサブスタンスP合成酵素のmRNAの定量で明らかになった。脊髄後角組織の神経伝達物質に関与するシナプス蛋白質の存在を確認するため、ラット脊髄後角シナプトゾームを調整し、SDS-PAGE後、シナプトタグミン,シンタキシン,シナプトブレビン(VAMP), SNAP-25,シナプトフィジン、Rab3A、Rab3A/B/Cの抗体を用いてWestern blottingを行った。陽性コントロールとしてラットの大脳皮質膜シナプトゾーム画分を用いた。その結果、脊髄後角では1.基本的に大脳皮質に存在するシナプス蛋白質の存在が確認された、しかし、2.シナプトブレビン(VAMP)は、ほとんど検出できなかった、3.Rab3A、Rab3A/B/Cについては、脊髄のRab3Cが検出できなかった、4.シンタキシンのアイソフォームでは、Aタイプの存在が脊髄では確認できなかった。以上、脊髄後角でのシナプス蛋白質の分布が大脳皮質のそれらとは異なり、脊髄後角でペプチド性神経伝達物質を含有しているシナプスには、脊髄特異的なシナプス蛋白質が存在し、遊離を制御している可能性が示唆された。一方、ラット後根神経節初代培養細胞から刺激に応じてサブスタンスPが遊離することを確認し、複数の遊離制御機構の存在すること可能性を明らかにした。後根神経節初代培養細胞では、培養条件特にNGF (nerve growth factor)によりサブスタンスPの生合成が制御されていることもサブスタンスP合成酵素のmRNAの定量で明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-08670112
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08670112
角膜表面上のディスプレイ反射像を用いた可視光視線計測技術
角膜表面上に反射するディスプレイ領域を推定するため,本年度は非接触な角膜イメージング法に取り組んだ.これまで角膜イメージングの歪み補正に用いていた3次元眼球モデルに加えて,3次元顔モデルを導入することで,頭部に移動が生じた場合も眼球の3次元位置を正確に求めることができ,非接触な角膜イメージングが実現できた.頭部を追跡するアルゴリズムとしては,カメラの台数に依存しないアルゴリズムを採用しており,単眼での計測から複数のカメラを用いた計測まで対応できる.眉毛,目尻,目頭,唇などの特徴の動きベクトルから3次元的な動きを推定し,頭部の位置,姿勢を推定する.頭部の位置,姿勢を基準として眼球中心を求めるが,虹彩追跡については3次元眼球モデルを用いたモデルベースの追跡法を採用した.頭部位置,姿勢及び眼球位置,姿勢が求まった時,眼球の3次元姿勢を考慮して角膜表面から歪みのない画像を抽出できる.また,平成31年度に実施予定であったディスプレイ領域の抽出についても着手した.光学機器を積極的に用いた手法に取り組み,2つのカメラを用いた偏光カメラシステムを構築した.2つのカメラにはそれぞれ向きの異なる偏光フィルタが設置されており,片方だけディスプレイの反射像が観測される.これはディスプレイ内部にも偏光フィルタが内蔵されており,ディスプレイから発せられる光は直線偏光されているからである.2つのカメラによって取得された画像は,ディスプレイ領域のみ異なるものとなることから,単純に差分を求めるだけで,ディスプレイ領域を抽出することに成功した.平成31年度に取り組む予定であったディスプレイ領域の抽出に,既に着手することができており,成果を挙げている.虹彩追跡の精度が視線計測結果に影響を与えていることが確認された.近赤外を一部併用することや,虹彩追跡の精度を増すことで,視線計測の精度向上を目指す.角膜表面上に反射するディスプレイ領域を推定するため,本年度は非接触な角膜イメージング法に取り組んだ.これまで角膜イメージングの歪み補正に用いていた3次元眼球モデルに加えて,3次元顔モデルを導入することで,頭部に移動が生じた場合も眼球の3次元位置を正確に求めることができ,非接触な角膜イメージングが実現できた.頭部を追跡するアルゴリズムとしては,カメラの台数に依存しないアルゴリズムを採用しており,単眼での計測から複数のカメラを用いた計測まで対応できる.眉毛,目尻,目頭,唇などの特徴の動きベクトルから3次元的な動きを推定し,頭部の位置,姿勢を推定する.頭部の位置,姿勢を基準として眼球中心を求めるが,虹彩追跡については3次元眼球モデルを用いたモデルベースの追跡法を採用した.頭部位置,姿勢及び眼球位置,姿勢が求まった時,眼球の3次元姿勢を考慮して角膜表面から歪みのない画像を抽出できる.また,平成31年度に実施予定であったディスプレイ領域の抽出についても着手した.光学機器を積極的に用いた手法に取り組み,2つのカメラを用いた偏光カメラシステムを構築した.2つのカメラにはそれぞれ向きの異なる偏光フィルタが設置されており,片方だけディスプレイの反射像が観測される.これはディスプレイ内部にも偏光フィルタが内蔵されており,ディスプレイから発せられる光は直線偏光されているからである.2つのカメラによって取得された画像は,ディスプレイ領域のみ異なるものとなることから,単純に差分を求めるだけで,ディスプレイ領域を抽出することに成功した.平成31年度に取り組む予定であったディスプレイ領域の抽出に,既に着手することができており,成果を挙げている.虹彩追跡の精度が視線計測結果に影響を与えていることが確認された.近赤外を一部併用することや,虹彩追跡の精度を増すことで,視線計測の精度向上を目指す.
KAKENHI-PROJECT-18H03279
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H03279
政策評価研究における刷新の試み――平和政策を題材に――
平和政策と政策評価、それぞれ大きな進展があった。政策評価は目標管理型業績測定の方法が主流になって、地方創生に代表されるPDCAサイクルとKPI方式が一般化した。ただこの方法は、数値目標を設定しその達成度を測定するので分かり易いが、数値化できない政策に関しては何もできない。トヨタのカイゼンのように生産現場のコストカット方法だからである。他方、平和政策は非常に難しい側面に突入した。東アジアにおける中国の進出、それに対応する自衛隊、中東におけるISの脅威、沖縄辺野古問題に関する国と沖縄県の紛争など、平和政策が評価困難な局面に突入したことは間違いない。この研究テーマはますます興味深いものになっている。2013年度は、新川達郎・編著の『政策学入門』(法律文化社)に2本の論文を執筆した。1第3章「政策評価」は政策に関する情報を集め、分析や比較を試し、その結果をとりまとめて提示するクールで価値中立的なツールが政策評価であり、誰が、何のために政策評価を行わせるのか、これが評価方法、スケジュール、評価基準に大きく影響することを明らかにした。2第4章「政策の失敗・変更・修正」では政策の成功、失敗は言う人によって認識が違い、あるいは時代によっても判断は違う。あるいは、外交政策のように、個々の対策を見れば成功したとは言えないが、長い目で見たら結果としてうまくいっていた、そう評価され、政策の継続を指示されることもある。これらの状況で、政策の変更や修正はどのように行われるのかについて、詳しく分析した。この2本の論文は、本科研の研究目的、「現行の政策評価制度が想定していなかった政策領域」に取り組む第一歩として、まずは政策の評価制度のあり方を明確にする意味があった。2014年度山谷は論文を1本発表した。「政策評価の『メタ評価』システムー客観性と評価の質ー」(『同志社政策科学研究』、第16巻第1号、2014年9月)である。評価が客観的であることと評価の質が良いことは別のことであるとの前提から、実務上、いかなる客観的チェックを評価に対して行いうるのか論じている。また以下の日程で研究会を開催して、関係者の知見を深めた。6月15日「政策評価とその現状について」報告者・山谷清志、7月12日「ODA評価と政策評価」報告者・山谷清志、8月2日「民主主義のツールとしての政策評価」報告者・山谷清志、8月23日「行政評価と地方自治体の評価」報告者・山谷清志、9月16日「経済産業省の政策評価」報告者・小林誠氏(経済産業省)、10月5日「NPOの参加型評価]報告者・渋谷典子氏(NPO法人参画プラネット代表理事)・林やすこ氏(NPO法人参画プラネット常任理事)、10月18日「防衛省の政策評価」報告者・田邊哲也氏(防衛省)、11月3日「こうべソーシャルファームプランの構築」報告者・山本英子氏、「教育専門職支援プログラムの評価ー発達障害のある生徒への支援を中心にー」報告者・長谷川法子氏、2月26日「紛争の和解とその評価」報告者・熊谷智博氏(大妻女子大学文学部)。政策評価は国内では目標管理型測定が主流になり、PDCA(Plan-Do-Check-Act)方式が一般化した。この方法は政策に数値目標を設定し、その達成度を測定するので判断し易いが、数値化困難な目標には何もできない。この不安がある政策評価の理論と実践について、再考を迫る大きな事実が出現した。2015年度はこの研究の最終年度であるだけでなく、国連の`Millennium Development Goals(MDGs)'の最終年度でもあり、「国際評価年」でもあったという事実である。目標を達成できなかったMDGsが`Sustainable Development Goals'に変わったのもよく知られている。大きな国際環境の変化、たとえばシリアの紛争、IS(Islamic State)によるテロに代表される事態が出現したからである。これはMDGsだけでなく、平和構築政策評価もまた困難である状況を再認識させた。すなわち平和政策主体、客体(政策対象)の把握を困難にし、平和構築の政策ツールを無力化した。まさに、日本で一般化している目標管理型の政策評価が、国際社会においても方法的課題を持っていると問題が提起されたのである。もちろん、各国政府、国際機関が取り組みを試行錯誤しているが、実はこの試行錯誤にこそ、政策評価がその本領を発揮できるところである。平和政策と政策評価、それぞれ大きな進展があった。政策評価は目標管理型業績測定の方法が主流になって、地方創生に代表されるPDCAサイクルとKPI方式が一般化した。ただこの方法は、数値目標を設定しその達成度を測定するので分かり易いが、数値化できない政策に関しては何もできない。トヨタのカイゼンのように生産現場のコストカット方法だからである。他方、平和政策は非常に難しい側面に突入した。東アジアにおける中国の進出、それに対応する自衛隊、中東におけるISの脅威、沖縄辺野古問題に関する国と沖縄県の紛争など、平和政策が評価困難な局面に突入したことは間違いない。この研究テーマはますます興味深いものになっている。評価に関する研究の所与の目的(理論構築)は達成されている。紛争解決の評価に関しては想定通りの困難が、理論的に存在することも既に認識した。この点は織り込み済みである。しかし、国内外での大きな社会的、政治的変化があり、紛争の評価の段階に至らない状況になっている。
KAKENHI-PROJECT-25518016
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25518016
政策評価研究における刷新の試み――平和政策を題材に――
すなわち、国内では沖縄問題や原子力発電所の再稼働問題に代表されるように、容易に解決の糸口を見いだせない状態がある。他方、国際的には新たな国際紛争やテロの問題が数多く発生したため、現実に研究が追いつかないという状況がある。政治学2015年度は最終年度であるため、研究のとりまとめを行いたい。ただし、研究の一応の結論を、どこに置くかについてはいまだに悩ましいところではある。2013年度は英国で刊行する書籍の共同準備作業に大きく時間をとられ、論文執筆時間が制約された。ただし、人権研究者たちとの共同研究会(金沢)、沖縄の米軍基地の実態調査などでは研究の資料や手がかりを入手できたので2014年度にはこの部分で成果を出すことができる。書籍や文具等の購入時に発生した。研究方針は変わらない。したがって、2014年度は実際に防衛省や内閣府をはじめとする中央府省での調査、ODA、平和構築などの政策分野に集中する予定である。とくにODA大綱は改訂をする予定との方針が外務大臣から示されたので(2014年3月)、これまでのODA大綱の事後評価が行われるはずである。本研究にとっては絶好の研究対象ができたと考えている。適切に使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-25518016
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25518016
小児期・思春期肥満が,早期の動脈硬化性変化と左室肥大に及ぼす影響の検討
[目的と方法]本研究では、20歳以下の小児ならびに若年成人を対象として、若年肥満にともなう心血管系への影響、合併症の実態を把握するために身体計測、BMI(body mass index)、肥満度、血圧、血液検査(総コレステロール、中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロール、空腹時インスリン値(IRI)、空腹時血糖値(FBS)、レプチン、PAI-1(plasminogen acitvator inhibitor-1)、HOMAインスリン抵抗性指標)、心臓超音波検査(左室心筋重量係数(LVMI)、左室壁厚係数(LVWT/height)、左室拡張終期内径指数(LVIDD/height)、腹部超音波検査(皮下脂肪厚、内臓脂肪厚)、上腕動脈血管超音波検査(血流依存性血管拡張率(%FMD)により検討した。43名の肥満・2型糖尿病の患者(年齢10.7歳、身長148cm、体重60.7kg、各平均値)を対象とした。[結果]4例(9.3%)に左室肥大(LVMI>45g^*m^<-2.7>)を認めた。多変量解析ではBMIのみがLVMIの独立した関連因子であった。BMIは単独でLVMIの変動の46%を説明した。同様にIRIにたいしてはPAI-1が、PAI-1にたいしては内臓脂肪厚が独立した関連因子であった。左室肥大様式としてはLVWT/heightには有意にBMIと相関したが(r=0.35,p=0.02)、LVIDD/heightとは相関しなかった。肥満患者の%FMD(6.6+/-5.2%)は有意に正常対照(13.1+/-5.3%)に比べて低下していた(p<0.001)。%FMDと相関が認められたのは、LVWT/height(r=-0.43,p=0.05)、LVMI(r=-0.35,p=0.027)であった。[結論]以上より、小児肥満にともなう左室肥大は求心性肥大を主体とし、肥大程度には肥満重症度が主たる関連因子で、かつ肥大の成因には末梢血管内皮機能異常が関連すると考えられた。[目的と方法]本研究では、20歳以下の小児ならびに若年成人を対象として、若年肥満にともなう心血管系への影響、合併症の実態を把握するために身体計測、BMI(body mass index)、肥満度、血圧、血液検査(総コレステロール、中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロール、空腹時インスリン値(IRI)、空腹時血糖値(FBS)、レプチン、PAI-1(plasminogen acitvator inhibitor-1)、HOMAインスリン抵抗性指標)、心臓超音波検査(左室心筋重量係数(LVMI)、左室壁厚係数(LVWT/height)、左室拡張終期内径指数(LVIDD/height)、腹部超音波検査(皮下脂肪厚、内臓脂肪厚)、上腕動脈血管超音波検査(血流依存性血管拡張率(%FMD)により検討した。43名の肥満・2型糖尿病の患者(年齢10.7歳、身長148cm、体重60.7kg、各平均値)を対象とした。[結果]4例(9.3%)に左室肥大(LVMI>45g^*m^<-2.7>)を認めた。多変量解析ではBMIのみがLVMIの独立した関連因子であった。BMIは単独でLVMIの変動の46%を説明した。同様にIRIにたいしてはPAI-1が、PAI-1にたいしては内臓脂肪厚が独立した関連因子であった。左室肥大様式としてはLVWT/heightには有意にBMIと相関したが(r=0.35,p=0.02)、LVIDD/heightとは相関しなかった。肥満患者の%FMD(6.6+/-5.2%)は有意に正常対照(13.1+/-5.3%)に比べて低下していた(p<0.001)。%FMDと相関が認められたのは、LVWT/height(r=-0.43,p=0.05)、LVMI(r=-0.35,p=0.027)であった。[結論]以上より、小児肥満にともなう左室肥大は求心性肥大を主体とし、肥大程度には肥満重症度が主たる関連因子で、かつ肥大の成因には末梢血管内皮機能異常が関連すると考えられた。平成11年度は、本研究の基礎的検討として小児期に早期に動脈硬化をきたすモデル疾患としてWilliams症候群(以下WSと略)患者について検討した。以下の値は平均±標準偏差で示す。[結果]WS9名(年齢11.4±6.7歳)と、年齢のマッチした動脈硬化リスク因子を持たない対照14名(以下Cと略)(年齢16.1±8.9歳)について以下の結果を得た。(1)総頚動脈内膜中膜厚(IMT):C群ではIMTは0.526±0.076mmであったのに対し、WS群では0.735±0.141mmとWS群でC群に比べてIMTの肥厚が認められ(P<0.0001)、WSでは動脈硬化が小児期においても出現していることが認められた。(2)上腕動脈の血流増加ならびにニトログリセリン投与による血管拡張反応
KAKENHI-PROJECT-11670796
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小児期・思春期肥満が,早期の動脈硬化性変化と左室肥大に及ぼす影響の検討
性:血流の一過性途絶後に認めれられる血流増加反応により上腕動脈はC群ではコントロール値に比べて13.1±5.3%増加にしたのに対して、WS群では7.4±5.4%と拡張性の低下が認められた(P=0.02)。これに対してニトログリセリン投与によってC群は22.7±7.5%拡張したのに対して、WS群では20.0±9.3%と有意差なく拡張した。すなわちWS群では内皮依存性の血管拡張反応性は小児期においても低下するのに対して、内皮非依存性の拡張性は比較的温存されることが明らかになった。以上により本研究で用いる方法は動脈硬化をきたすモデル疾患において正しく病態を表現しうることが示唆された。[目的と方法]本研究では、20歳以下の小児ならびに若年成人を対象として、若年肥満にともなう心血管系への影響、合併症の実態を把握するために身体計測、BMI(body mass index)、肥満度、血圧、血液検査(総コレステロール、中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロール、空腹時インスリン値(IRI)、空腹時血糖値(FBS)、レプチン、PAI-1(plasm inogen acitvator inhibitor-1)、HOMAインスリン抵抗性指標)、心臓超音波検査(左室心筋重量係数(LVMI)、左室壁厚係数(LVWT/height)、左室拡張終期内径指数(LVIDD/height)、腹部超音波検査(皮下脂肪厚、内臓脂肪厚)、上腕動脈血管超音波検査(血流依存性血管拡張率(%FMD)により検討した。43名の肥満・2型糖尿病の患者(年齢10.7歳、身長148cm、体重60.7kg、各平均値)を対象とした。[結果]4例(9.3%)に左室肥大(LVMI>45g^*m^<-2.7>)を認めた。多変量解析ではBMIのみがLVMIの独立した関連因子であった。BMIは単独でLVMIの変動の46%を説明した。同様にIRIにたいしてはPAI-1が、PAI-1にたいしては内臓脂肪厚が独立した関連因子であった。左室肥大様式としてはLVWT/heightには有意にBMIと相関したが(r=0.35,p=0.02)、LVIDD/heightとは相関しなかった。肥満患者の%FMD(6.6+/-5.2%)は有意に正常対照(13.1+/-5.3%)に比べて低下していた(p<0.001)。%FMDと相関が認められたのは、LVWT/height(r=-0.43,p=0.05)、LVMI(r=-0.35,p=0.027)であった。[結論]以上より、小児肥満にともなう左室肥大は求心性肥大を主体とし、肥大程度には肥満重症度が主たる関連因子で、かつ肥大の成因には末梢血管内皮機能異常が関連すると考えられた。
KAKENHI-PROJECT-11670796
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発生工学を用いた神経細胞壊死の機構解析
虚血による神経細胞壊死、とりわけ一過性の虚血による遅発性の神経細胞の壊死にグルタミン酸受容体の関与が考えられてきたが、その詳細は不明のままであった。我々は、この遅発性の神経細胞壊死にNMDA受容体チャネルがどのように関与するのかを明らかにするために、NMDA受容体チャネルを構成し、この受容体の機能的多様性を決定している4種類のεサブユニットを欠損したマウスを用いて検討をおこなった。一過性虚血による神経細胞壊死の人工的モデルとして、眼圧を上昇させることにより虚血状態を作る方法を採用した。マウスを麻酔下に片眼の前眼房に針を挿入し、1200mmの静水圧を経時的に加えることにより網膜の神経細胞に一過性の虚血を負荷した。この虚血負荷後、経時的に眼球を摘出し、形態学的な変化を検討した。その結果、30-45分の眼圧上昇により遅発性神経細胞壊死が惹起されることが明らかになった。この神経細胞の壊死は、アポトーシス様の過程をたどる。成体マウスの網膜では、ε1およびε2サブユニットが主に発現している。そこで、成体まで成長し、光顕レベルで組織に異常が認められないε1サブユニットを欠損したマウスと野生型マウスに眼圧上昇を負荷し比較検討した。その結果、ε1サブユニット欠損マウスでは、45分の眼圧上昇を負荷しても網膜神経細胞の壊死はほとんど認められなかった。一方この条件では、野生型マウスのほとんどの網膜神経細胞が変性脱落する。このことは、虚血による遅発性神経細胞壊死にNMDA受容体チャネルを介する過程が含まれることを示唆する。虚血による神経細胞壊死、とりわけ一過性の虚血による遅発性の神経細胞の壊死にグルタミン酸受容体の関与が考えられてきたが、その詳細は不明のままであった。我々は、この遅発性の神経細胞壊死にNMDA受容体チャネルがどのように関与するのかを明らかにするために、NMDA受容体チャネルを構成し、この受容体の機能的多様性を決定している4種類のεサブユニットを欠損したマウスを用いて検討をおこなった。一過性虚血による神経細胞壊死の人工的モデルとして、眼圧を上昇させることにより虚血状態を作る方法を採用した。マウスを麻酔下に片眼の前眼房に針を挿入し、1200mmの静水圧を経時的に加えることにより網膜の神経細胞に一過性の虚血を負荷した。この虚血負荷後、経時的に眼球を摘出し、形態学的な変化を検討した。その結果、30-45分の眼圧上昇により遅発性神経細胞壊死が惹起されることが明らかになった。この神経細胞の壊死は、アポトーシス様の過程をたどる。成体マウスの網膜では、ε1およびε2サブユニットが主に発現している。そこで、成体まで成長し、光顕レベルで組織に異常が認められないε1サブユニットを欠損したマウスと野生型マウスに眼圧上昇を負荷し比較検討した。その結果、ε1サブユニット欠損マウスでは、45分の眼圧上昇を負荷しても網膜神経細胞の壊死はほとんど認められなかった。一方この条件では、野生型マウスのほとんどの網膜神経細胞が変性脱落する。このことは、虚血による遅発性神経細胞壊死にNMDA受容体チャネルを介する過程が含まれることを示唆する。
KAKENHI-PROJECT-09280211
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09280211
糖尿病網膜症におけるMechanical Stressの役割
糖尿病網膜症発症に活性酸素(ROS)が重要な役割を果たしている可能性が報告されている。一方、全身高血圧症が糖尿病網膜症の増悪因子であることがよく知られている。そこで、我々は血圧上昇時における血管壁伸展の網膜症発症に及ぼす影響及びその機序について検討した。方法:ブタ網膜血管周皮細胞(PRPC)を用い、Flexcer Cell細胞進展装置を使用し、細胞が日常生体内で経験していると思われる10%/60cpmの周期的機械的伸展を負荷した。細胞内シグナル伝達の検討はWestern blot法を用いた。キナーゼの詳細な検討は特異的薬理的阻害剤及びアデノウイルスベクターによる強制発現を用いた。アポトーシスはTUNEL法及びDNALadder法により評価した。結果:周期的伸展によりROS産生増加(3.6+/-0.9 fold,p<0.01)が認められた。時間依存性、伸展強度依存性にSAPK/JNKのリン酸化が認められ、ROS阻害剤により抑制された(83%,p=0.011)。さらに周期的伸展はCaspase3の活性化(6.5+/-1.4fold,p<0.01)及びTUNEL陽性細胞の増加(17.8% vs 39.8%,p<0.01)、DNA断片化を誘導し、これらはJNKの阻害により正常化された(83%,p=0.0089,90%,p=0.0045)。結論:周期的伸展により産生された活性酸素がJNK-caspase経路を活性化し、周皮細胞のアポトーシスを誘発することによりpericyte lossを促進し、網膜症を増悪する可能性が示唆された。これにより、高血圧症の合併が網膜症発症を促進する機序が示唆された。糖尿病網膜症の血管新生、血管透過性の亢進には血管内皮増殖因子(VEGF)が主要な役割を担っていることが明らかになり、研究代表者もVEGF自体やその調節機構の制御による治療法の開発に関して数々の研究成果をあげてきた。高血圧症もまた糖尿病網膜症を増悪させることが疫学的に知られている。高血圧は血管内圧によって、血管壁を構成する血管細胞が周期的に過剰伸展(stretch)される状態ととらえることが出来る。今回の研究目的はグルコース依存性の各経路、特に酸化ストレスの亢進がstretchによってどのように変化するかを細胞レベルで検討し、高血圧によるより初期の糖尿病網膜症増悪において主要な役割をはたす既存の、もしくは新しいメカニズムを提唱し、さらに高血圧合併糖尿病動物モデルを用いて生体内での役割を確認することである。本年度は周皮細胞によるin vitroの系で検討した。(2)フレクサーセルテンションシステム(米国FLEXCELL社)を用い細胞にstretchを負荷しstretchの周皮細胞のアポトーシス促進効果を明らかにした。続いてstretchが如何にしてそれらの経路を修飾するのかを細胞内シグナル伝達の視点から検討した。我々はすでにstretchが細胞内でtyrosine kinase, PI3-kinase, Akt, MAP-kinase, PKCなどの細胞内シグナル伝達分子群を活性化することを報告しているが、各シグナル分子のinhibitor(genistein, wortmannin, PD98059,GF109203X等)、またはそれぞれの優勢変異型(dominant negative mutant)をアデノウイルスベクターを用いて過剰発現することにより各経路を抑制し、stretchの効果が酸化ストレスを介することを明らかにした。糖尿病網膜症発症に活性酸素(ROS)が重要な役割を果たしている可能性が報告されている。一方、全身高血圧症が糖尿病網膜症の増悪因子であることがよく知られている。そこで、我々は血圧上昇時における血管壁伸展の網膜症発症に及ぼす影響及びその機序について検討した。方法:ブタ網膜血管周皮細胞(PRPC)を用い、Flexcer Cell細胞進展装置を使用し、細胞が日常生体内で経験していると思われる10%/60cpmの周期的機械的伸展を負荷した。細胞内シグナル伝達の検討はWestern blot法を用いた。キナーゼの詳細な検討は特異的薬理的阻害剤及びアデノウイルスベクターによる強制発現を用いた。アポトーシスはTUNEL法及びDNALadder法により評価した。結果:周期的伸展によりROS産生増加(3.6+/-0.9 fold,p<0.01)が認められた。時間依存性、伸展強度依存性にSAPK/JNKのリン酸化が認められ、ROS阻害剤により抑制された(83%,p=0.011)。さらに周期的伸展はCaspase3の活性化(6.5+/-1.4fold,p<0.01)及びTUNEL陽性細胞の増加(17.8% vs 39.8%,p<0.01)、DNA断片化を誘導し、これらはJNKの阻害により正常化された(83%,p=0.0089,90%,p=0.0045)。結論:周期的伸展により産生された活性酸素がJNK-caspase経路を活性化し、周皮細胞のアポトーシスを誘発することによりpericyte lossを促進し、網膜症を増悪する可能性が示唆された。これにより、高血圧症の合併が網膜症発症を促進する機序が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-14657445
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14657445
戦争と革命の20世紀を生きた表現者たち―左派社会運動と文学運動の交錯
本研究では、20世紀日本で展開された左派社会運動の重要な一環をなした文学運動が担った役割に着目して、サークル誌・同人誌をも含む多様な表現から運動を担った人びとの〈生きられた運動経験〉を読み取ることで、運動を担った「個」の主体性に着目した左派社会運動史/文学運動史の構築を目指す。とくに、東アジアの物流・人流の拠点であった神戸で多様な民族構成の人びとを担い手としつつ展開された文学運動の経験に着目し、左派社会運動/文学運動が東アジアへと〈越境する想像力/創造力〉を生み出していった思想的脈絡についても明らかにしていく。本研究では、20世紀日本で展開された左派社会運動の重要な一環をなした文学運動が担った役割に着目して、サークル誌・同人誌をも含む多様な表現から運動を担った人びとの〈生きられた運動経験〉を読み取ることで、運動を担った「個」の主体性に着目した左派社会運動史/文学運動史の構築を目指す。とくに、東アジアの物流・人流の拠点であった神戸で多様な民族構成の人びとを担い手としつつ展開された文学運動の経験に着目し、左派社会運動/文学運動が東アジアへと〈越境する想像力/創造力〉を生み出していった思想的脈絡についても明らかにしていく。
KAKENHI-PROJECT-19K00320
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K00320
アルカデイン代謝産物p3-Alcの解析
未解明な点が多く残されている孤発性アルツハイマー病(AD)の発症機構を解明するために、AD関連タンパク質Alcadeinの代謝産物であるp3-Alcの解析を行った。孤発性AD患者の脳脊髄液および血液からp3-Alcを検出し解析したところ、AD発症初期から疾患特異的にp3-Alcが質的・量的に変化していることを見出した。p3-Alcを切り出す切断酵素の機能変化が孤発性ADの発症に関与する可能性を示唆した。未解明な点が多く残されている孤発性アルツハイマー病(AD)の発症機構を解明するために、AD関連タンパク質Alcadeinの代謝産物であるp3-Alcの解析を行った。孤発性AD患者の脳脊髄液および血液からp3-Alcを検出し解析したところ、AD発症初期から疾患特異的にp3-Alcが質的・量的に変化していることを見出した。p3-Alcを切り出す切断酵素の機能変化が孤発性ADの発症に関与する可能性を示唆した。孤発性アルツハイマー病(AD)の患者数の増加が社会的な問題となっているが、ADの発症機構には未解明な点が多く、確実な診断法や根本的な治療法はいまだ確立されていない。APP(Amyloid Precursor Protein)はADの原因因子の一つであり、AD特異的に脳への蓄積が見られる老人斑の主要構成成分アミロイドβ(Aβ)の前駆体である。Aβの量的・質的変化がAD発症に関与していると考えられるが、Aβは凝集性が高いため、その変化を捉えるのは難しい。本研究はAPPと同じ酵素で同じ代謝様式で代謝を受け、生理的機能や局在も相同であるI型膜タンパク質Alcadein(Alc)に着目し、凝集性の低い代謝産物p3-Alcの解析を行うことによって、孤発性AD発症メカニズムの解明および新たなAD診断法の開発を目的としている。Alcは、Alcα、Alcβ、Alcγの3つのファミリー分子からなり、それぞれのファミリー分子から分泌されるp3-Alcをp3-Alcα、p3-Alcβ、p3-Alcγと呼ぶ。これまでにp3-Alcαとp3-Alcβを脳脊髄液(CSF)中から検出可能であることを明らかとしてきた。本年度はまずCSF中のp3-Alcαとp3-Alcβを定量的に解析可能なsELISAの系を確立した。さらに、このELISA系を用いてnonAD、AD患者のCSF中のp3-Alcの量的変化の解析を行った。その結果、AD発症の初期段階の患者CSF中ではp3-Alcα、p3-Alcβが共に有意に増加することを見出した。このことよりp3-AlcをADの新規バイオマーカーとして応用できる可能性を示唆した。アルツハイマー病(AD)の大部分を占める孤発性AD(SAD)の発症機構には未解明な点が多く残されている。家族性AD(FAD)の発症には、原因遺伝子の変異によるAβ42の産生量・量比の増加が関与していると考えられるが、Aβ42は凝集性が高く、Aβの生体内における正味の質的・量的変化を捉えるのは難しいという問題点がある。私はSAD患者にもおいてもγセクレターゼ切断変化が起こっているのではないかと考え、これを検証するためにAPP以外のγセクレターゼ基質であるAlcadein(Alc)の切断産物を解析した。Alcは、X11Lを介してAPPと複合体を形成するI型膜タンパク質である。X11Lの解離により、APPからはAβが、Alcからはαセクレターゼとγセクレターゼの切断により「p3-Alc」が分泌される。私はまずAPPのγ切断変化を引き起こすPS1変異体を用いたin vitro解析より、Alcのγセクレターゼ切断はAPPと協調的に変化することを明らかにした(J Biol Chem, 2009)。p3-AlcはAβとは異なり凝集性が低く、生体内においてもγセクレターゼ機能変化を捉えられるペプチドであることがわかったので、本年度は孤発性AD患者サンプルの解析を行った。その結果、SAD患者の脳脊髄液(CSF)では疾患特異的にAlcのγ切断変化が起こっていることが明らかとなった(Ann Neuro1, 2011)。さらに、血液中においてもSAD患者でp3-Alcの量的変化が起こっていることを明らかにした(Mol Neurodegen, 2011)。以上より、私は遺伝子変異がないSADでもγセクレターゼの基質切断の質的・量的変化が起こり、それが発症に関与している可能性を初めて示した。
KAKENHI-PROJECT-22890001
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22890001
固体・液体金属における核融合及び核崩壊の促進
(1)金属への重陽子ビーム照射による動的遮蔽効果の影響を、Sm金属板中のα崩壊核147Smのα粒子放出で調べた。ビーム照射に伴う遮蔽エネルギーの上限値が19.3 keVと求まった。(2)超音波を作用した液体Liに重陽子ビームを照射することにより、液体Li中に高温重陽子プラズマを生成することに成功した。超音波キャビテーション中の重陽子プラズマは100万度以上の高温状態となることが判明した。(3)液体金属にD3分子ビームを照射することにより、分子ビームに特有な協力衝突d+d反応過程のが存在することを初めて見出した。この反応を利用して液体Inと液体Sn中のd+d反応の遮蔽エネルギーが求められた。(a)液体金属中での核反応:液体Li超音波キャビテーションに関する前年度の結果を踏まえ、今年度は、重陽子ビーム照射により、Li以外の液体金属による超音波キャビテーションの可能性が調べられた。具体的には、比較的融点の低いGa,とInの液体標的がテストされた。しかしながら、両者ともに超音波照射のON/OFFのd+d反応への影響は全く観測されず、液体Liの場合とはかなり様相が異なっていることが判明した。液体Gaは液体に超音波を伝播するAlホーンと合金をつくり材質を劣化することが判ったので、液体標的としての開発は当面断念することにした。一方、液体Inに関しては、重陽子ビーム照射時に放出される荷電粒子を観測していたところ、液体In中のd+d反応は特異な振る舞いを示していることが判り、そのメカニズムを解明することとした。(b)液体In中での協力衝突d+d反応機構の発見:液体In中での特異なd+d反応の大きな特徴は、1d(d,p)t反応からの陽子スペクトルが非対称で幅広い、2収量の励起曲線が通常のd+d反応の予想とは全く異なり、更に、3原子ビームD+照射時には観測されず、分子ビームD3+照射でのみ観測される、の3点である。詳細な解析の結果、この反応は分子ビームに特有な2段階反応で、分子中の一つのdがInと弾性散乱を起こし方向を変え、同じ分子中の他のdと衝突しd(d,p)t反応を生じたものであると結論された。新たに発見したこの反応過程を分子ビームによる協力衝突反応(Cooperative Colliding Reaction)と名づけた。この場合、d+d反応は液体金属の伝導電子中で生じるため、電子による遮蔽効果により増強されると考えられる。現在、詳細なデータの取得により、この反応から遮蔽ポテンシャルを精度良く決定する実験が続行されている。最終年度に実施した研究の概要前年度検討した研究推進方策に沿い、1液体金属中へのD3分子イオンビーム照射時に生ずるd+d協力衝突反応を用いた液体金属中のd(d,p)t反応の遮蔽エネルギーの測定、2重水及び重水素化アセトンを用いたキャビテーション核融合の探索、を実施した。1に関しては、融点が比較的低い液体In、Sn、Pb、Bi中での協力衝突d(d,p)t反応のスペクトルと収量が入射エネルギー10-60 keVの間で測定された。現在、InとSnについて解析が進み、遮蔽エネルギーは、In中では270(±50)eV、Sn中では450(±50)eVとの値が得られた。いずれも単純なThomas-Fermi電子遮蔽模型では説明できない大きな値であることが明確になった。特に興味深いのは、InとSnでは原子番号が1しか違わないのに、遮蔽エネルギーは180eVもの大きな違いがあることである。2に関しては、dd核融合からの中性子測定のため液体シンチレータの整備を行い、さらに、バックグラウンド削減のためのシールドを伴う測定系を構築した。それを用いて、超音波キャビテーション下の重水素化アセトンと流動キャビテーション下の重水(工学部祖山研との共同研究)からの中性子を探索したが、バックグラウンドレベルの中性子しか観測されず、キャビテーション核融合を生じさせるための更なる工夫が必要であることが判った。研究期間全体を通じて実施した研究の成果液体Li超音波キャビテーション標的の重陽子ビーム照射データの詳細な運動学的解析の結果、液体Liキャビテーション内では600万度にも及ぶ高温の重陽子プラズマが生成されていることを明らかにした。D3分子ビームを用いた液体金属照射d(d,p)t反応の観測から、分子ビームに特有の反応機構(協力衝突反応)を発見し、それを用いて液体In, Sn中でのd(d,p)t反応の遮蔽エネルギーが精度良く求められた。(1)金属への重陽子ビーム照射による動的遮蔽効果の影響を、Sm金属板中のα崩壊核147Smのα粒子放出で調べた。ビーム照射に伴う遮蔽エネルギーの上限値が19.3 keVと求まった。(2)超音波を作用した液体Liに重陽子ビームを照射することにより、液体Li中に高温重陽子プラズマを生成することに成功した。超音波キャビテーション中の重陽子プラズマは100万度以上の高温状態となることが判明した。(3)液体金属にD3分子ビームを照射することにより、分子ビームに特有な協力衝突d+d反応過程のが存在することを初めて見出した。この反応を利用して液体Inと液体Sn中のd+d反応の遮蔽エネルギーが求められた。固体・液体金属中での核反応や核崩壊を大きく変化・増大させる方法開発とそのメカニズムの理解を目的に、二つの課題で研究が進められた。
KAKENHI-PROJECT-23540333
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23540333
固体・液体金属における核融合及び核崩壊の促進
(a)液体金属超音波キャビテーション内での核融合反応:これまでの液体Liを用いた実験で取得されたデータ解析が詳細に進められた。50 keV重陽子によるD(d,p)T反応で放出された陽子ピークは、キャビテーションを作用させた場合のみ、裾が広がって観測され、通常の反応から得られる形状ではないことが明らかになった。運動学的な解析結果から、液体Liキャビテーション内で生じている重陽子プラズマは、100万度K以上の高温状態にあることが判明した。また、反応収量を説明するためには、キャビテーション内の重陽子数密度は、少なくとも10E24/ccであることがわかり、重陽子照射下の液体Liキャビテーション内には、高温高密度の重陽子プラズマが生成されていると結論された。これらの成果は論文として取り纏められ、現在、Physical Review C誌に投稿中である。(b)固体金属中での動的遮蔽効果によるα崩壊促進:α崩壊核147Smを20%程自然に含んでいるSm金属板を対象に実験を行った。Sm金属板を低エネルギー重陽子ビームで照射し、放出α粒子のスペクトルをビーム照射on/offの条件で比較した。実験では、15keV D3+ビームを用いて、10秒照射ー10秒照射無しの測定サイクルを長時間行い、金属板表面付近に対応するEα=2.02.23 MeV部分の収量比(R)が求められた。結果は、R=1.19+/-0.02となり、ビーム照射に伴う遮蔽エネルギーの上限値は、19.3keVと求められた。この値は、以前、Sm中のDD反応の遮蔽ポテンシャルを測定する際に副次的に求めた上限値とは、矛盾しない。Li以外の金属での液体金属標的での核融合反応促進については、GaとInについての予定通り進められた。両者ともに、超音波キャビテーションの効果が全く見られなかったが、液体In中でのd+d反応の異常性を見出すという新たな展開があり、全体としては概ね順調に進展したといえる。昨年の大震災により、主要装置である大強度ビーム照射装置が故障し、修理後ビームが得られるようになったのは23年12月であった。また、同時に、超音波キャビテーション標的システムも損壊したため、再製作を余儀なくされた。これらの事情により、重陽子ビームを用いた液体金属キャビテーション実験が開始されるのは、24年7月ころと見込まれる。この間、以前の実験データの解析は予定通り進行した。更に、23年12月のビーム復帰後は、固体Sm標的を用いて、「動的遮蔽効果によるα崩壊促進」の実験は予定どおり行われた。液体In中でのd+d反応に新たなメカニズムを見出したため、従来の研究計画を多少変更し、次年度が最終年度であることも考慮して、今後、以下の2点を重点に研究を進める。(a)新たに発見した協力衝突反応を用いて、液体金属中のd(d,p)t反応の遮蔽エネルギーを精度良く決定する。この方法は、金属中への重陽子ビーム照射時の標的重陽子密度のあいまいさが無くなるため、従来の方法に較べて、導出される遮蔽エネルギーの信頼性は飛躍的に大きくなる。また、d+d反応を取り巻く環境は固体金属中とは異なり、結晶格子は存在せず伝導電子の効果のみである。比較的融点の低いIn, Bi等を対象に、電子密度と遮蔽エネルギーの相関を求める。結果を理論計算と比較する。
KAKENHI-PROJECT-23540333
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23540333
新規シェル、コア設計による次世代スマート機能型高分子ミセルの創製
本研究では、既存材料や従来的手法に囚われない新たなDDS設計に基づく、高分子ミセル型ナノキャリアの創製を目的として、環境応答性や標的細胞親和性を賦与した新規シェルの開発と従来の高分子ミセルでは内包が困難であった両親媒性物質やタンパク質等の生理活性分子を安定にミセルに内包するための内核設計理論の確立を目指している。具体的に、(1)新規シェル設計に関しては、(A)pH応答性ベタインポリマーと(B)側鎖にアミノ酸構造を有するがん細胞親和性ベタインポリマーの2種類のポリマーの開発を進めている。(A)については、側鎖のアミノ基とカルボキシ基のスペーサーのメチレン数を変化させたポリマーを合成し、pKaや生体分子との相互作用を評価した結果、メチレン数が2個の場合においてのみ、血中での優れたantifouling特性と腫瘍内pHでの細胞との親和性の向上が両立できることが明らかになった。また、このポリマーで表面修飾を行った金ナノ粒子ががん組織に顕著に集積することも確認された。また、(B)については、従来ポリマーよりもさらに分子量の大きい側鎖にグルタミン構造を有するポリマーを開発し、がん細胞との親和性を評価した結果、分子量の増大と伴に、がん細胞との親和性が増大することが確認された。グルタミン以外のアミノ酸Xを側鎖に有するポリマーの開発を行い、がん細胞との親和性を評価したところ、膀胱がん等の種々のがん細胞との相互作用が確認された。一方、(2)コア設計に関しては、タンパク質を内包させるための内核構成鎖の化学構造および分子修飾の最適化を進めた結果、物質Yを利用した三元系のコア-シェル型ナノ粒子が極めて安定にモデルタンパク質の緑色蛍光タンパク質(GFP)を内包できることが明らかになった。今後、in vivoにおけるデリバリー機能について検討を行う予定である。(1)新規シェル設計に関しては、(A)pH応答性ベタインポリマーの化学構造の最適化を進め、ポリマー修飾金ナノ粒子に関して顕著ながん組織への集積を確認した。また、(B)がん細胞親和性ベタインポリマーについては、分子量の効果を明らかにする一方で、グルタミン以外のアミノ酸Xを側鎖に有するポリマーを開発し、がん細胞との親和性を実証することができた。一方、(2)コア設計に関しては、様々な手法を検討した結果、当初計画では考えていなかった物質Yの利用により、生理活性タンパク質を高分子ミセルに安定に内包させる新規手法を考案するに至った。以上のように、(1)に関しては当初計画通りに研究が進み、(2)に関しては当初計画を上回る成果が得られている。(1)新規シェル設計の(A)pH応答性ベタインポリマーに関しては、ポリマー修飾金ナノ粒子に関して顕著ながん組織への集積を確認することができたために、投与量依存性や腫瘍内浸透性などについて詳細な検討を行う。(B)がん細胞親和性ベタインポリマーについては、スマートシェルとしての有用性を明らかにするためにナノ粒子の表面修飾へと応用し、その体内動態を評価する。(2)コア設計に関しては、タンパク質を内包した三元系のコア-シェル型高分子ミセルの酸性環境下におけるタンパク質のリリース能を評価する一方で、がん細胞への取り込みを含むin vitro評価、がん集積性を含む体内動態評価を実施する予定である。本研究では、既存材料や従来的手法に囚われない新たなDDS設計に基づく、高分子ミセル型ナノキャリアの創製を目的として、環境応答性や標的細胞親和性を賦与した新規シェルの開発と従来の高分子ミセルでは内包が困難であった両親媒性物質やタンパク質等の生理活性分子を安定にミセルに内包するための内核設計理論の確立を目指している。具体的に、(1)新規シェル設計に関しては、(A)pH応答性ベタインポリマーと(B)側鎖にアミノ酸構造を有するがん細胞親和性ベタインポリマーの2種類のポリマーの開発を進めている。(A)については、側鎖のアミノ基とカルボキシ基のスペーサーのメチレン数を変化させたポリマーを合成し、pKaや生体分子との相互作用を評価した結果、メチレン数が2個の場合においてのみ、血中での優れたantifouling特性と腫瘍内pHでの細胞との親和性の向上が両立できることが明らかになった。また、このポリマーで表面修飾を行った金ナノ粒子ががん組織に顕著に集積することも確認された。また、(B)については、従来ポリマーよりもさらに分子量の大きい側鎖にグルタミン構造を有するポリマーを開発し、がん細胞との親和性を評価した結果、分子量の増大と伴に、がん細胞との親和性が増大することが確認された。グルタミン以外のアミノ酸Xを側鎖に有するポリマーの開発を行い、がん細胞との親和性を評価したところ、膀胱がん等の種々のがん細胞との相互作用が確認された。一方、(2)コア設計に関しては、タンパク質を内包させるための内核構成鎖の化学構造および分子修飾の最適化を進めた結果、物質Yを利用した三元系のコア-シェル型ナノ粒子が極めて安定にモデルタンパク質の緑色蛍光タンパク質(GFP)を内包できることが明らかになった。今後、in vivoにおけるデリバリー機能について検討を行う予定である。(1)新規シェル設計に関しては、(A)pH応答性ベタインポリマーの化学構造の最適化を進め、ポリマー修飾金ナノ粒子に関して顕著ながん組織への集積を確認した。また、(B)がん細胞親和性ベタインポリマーについては、分子量の効果を明らかにする一方で、グルタミン以外のアミノ酸Xを側鎖に有するポリマーを開発し、がん細胞との親和性を実証することができた。
KAKENHI-PROJECT-18H04163
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H04163
新規シェル、コア設計による次世代スマート機能型高分子ミセルの創製
一方、(2)コア設計に関しては、様々な手法を検討した結果、当初計画では考えていなかった物質Yの利用により、生理活性タンパク質を高分子ミセルに安定に内包させる新規手法を考案するに至った。以上のように、(1)に関しては当初計画通りに研究が進み、(2)に関しては当初計画を上回る成果が得られている。(1)新規シェル設計の(A)pH応答性ベタインポリマーに関しては、ポリマー修飾金ナノ粒子に関して顕著ながん組織への集積を確認することができたために、投与量依存性や腫瘍内浸透性などについて詳細な検討を行う。(B)がん細胞親和性ベタインポリマーについては、スマートシェルとしての有用性を明らかにするためにナノ粒子の表面修飾へと応用し、その体内動態を評価する。(2)コア設計に関しては、タンパク質を内包した三元系のコア-シェル型高分子ミセルの酸性環境下におけるタンパク質のリリース能を評価する一方で、がん細胞への取り込みを含むin vitro評価、がん集積性を含む体内動態評価を実施する予定である。
KAKENHI-PROJECT-18H04163
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生体・人工ハイブリッド回転ナノモーターの創製
回転分子モーターF1-ATPaseの固定子であるα3β3リングに回転子として二重鎖DNAを差し込んだハイブリッドモーターDNA-F1を作製した。DNA-F1はATP依存的に一方向に大きくバイアスがかかったステップ回転運動をみせた。一方向性回転の効率の改善や歩留まりの改善が課題として残ったが、ハイブリッド回転ナノモーター創製の足掛かりは達成できた。さらにハイブリッドモーターの新しい材料として腸球菌由来V1-ATPaseの1分子回転観察系を構築し、回転運動の基本特性を明らかにすることに成功した。回転分子モーターF1-ATPaseの固定子α3β3リングの触媒サブユニットβは、回転子γサブユニットがなくても一方向に順番を守ってATP加水分解反応と構造変化を行うことが先行研究で明らかとなった。そこで本研究では、回転子γの代わりに異種分子であるカーボンナノチューブやDNAを差し込んだハイブリッドモーターを創製することを目的とした。カーボンナノチューブとの複合化については、透析法等の種々の方法を試したが、残念ながらF1の固定子リングとの複合体は得られなかった。カーボンナノチューブを水溶液中で分散させるために添加されている界面活性剤の影響で固定子リングが解離してしまうためと考えられた。DNAとの複合化については、F1の固定子リングのγと相互作用する部位に正電荷を持つアミノ酸残基を多数導入した変異体を多種作製し、DNAの導入効率を紫外可視吸収スペクトルおよび高速AFM観察により評価した。さらに生化学アッセイにより、DNA導入F1のATP加水分解活性を測定した。これらにより、DNA導入効率が高くかつ活性を保持しているDNA-F1をスクリーニングした。次に、得られたDNA-F1のDNA部位に金ナノロッドを結合させ1分子回転観察を行った。金ナノロッドを用いたのは、DNAが傾いているだけなのか、真に回転しているのかを区別するためである。その結果、ATP依存的に一方向に大きくバイアスがかかった回転運動を観察することが出来た。しかしながら、1.120°のバックステップが頻繁にみられる、2.回転発見頻度が非常に低い、といった問題があり、論文出版には至っていない。さらにハイブリッドモーター形成の新しい材料として腸球菌由来V1-ATPaseの回転観察実験系を構築し、回転運動の基本特性を明らかにすることに成功した(Minagawa et al JBC 2013)。回転分子モーターF1-ATPaseの固定子であるα3β3リングに回転子として二重鎖DNAを差し込んだハイブリッドモーターDNA-F1を作製した。DNA-F1はATP依存的に一方向に大きくバイアスがかかったステップ回転運動をみせた。一方向性回転の効率の改善や歩留まりの改善が課題として残ったが、ハイブリッド回転ナノモーター創製の足掛かりは達成できた。さらにハイブリッドモーターの新しい材料として腸球菌由来V1-ATPaseの1分子回転観察系を構築し、回転運動の基本特性を明らかにすることに成功した。F1モーターの固定子と回転子の相互作用に重要とされている固定子α3β3リングの入り口(DELSEED領域)やリング内部のアミノ酸配列を遺伝子操作で改変し、表面電荷の正負や親水・疎水性を大幅に変えた変異体を多種作製した。また回転子として、長さや配列の異なる様々な二重鎖DNAを合成した。回転子DNA-F1α3β3固定子リングの複合体形成能を有するもの(以下ではDNA-F1とよぶ)を、精製後のSDS-ポリアクリルアミド電気泳動、紫外-可視吸収スペクトル測定、高速AFMによる1分子観察で確認した。DNA-F1ハイブリッドモーターは野生型F1モーターに比べ固定子と回転子の相互作用が弱かったため、回転子DNAの末端と固定子α3β3リングの内側を共有単結合でつなぐことで安定なDNA-F1複合体の作製に成功した。得られたDNA-F1複合体がATP加水分解活性を保持していることをATP再生系を用いた多分子計測で確認した。また金ナノロッドをプローブとする1分子回転観察を行い、野生型のF1モーターと同様、120°離れた3か所で安定な停止点示すことを明らかにした。3か所で停止する時間はATP濃度を上げると短くなり、ATP加水分解反応と共役していることが示唆された。さらに、回転方向は60-70%の割合で反時計回りに偏っていた。しかしながら現時点では、連続的に一方向に回転するDNA-F1複合体は得られていない。これは、本来の回転子であるγサブユニットが非対称な構造を有しているのに対し、DNAは対称な二重らせん構造を有しているためと考えられた。当初計画では、当該年度で一方向に連続的に回転するハイブリッドモーターの創製を達成する予定であった。現状ではDNAを回転子とするDNA-F1ハイブリッドモーターは得られているが、一方向性回転の効率は60-70%程度である。また、DNAだけでなくカーボンナノチューブ、金属錯体ナノワイヤ、人工らせんポリマー、フォルダマー等の人工分子も回転子として試す予定であったが、材料の入手に時間がかかりそこまで至らなかったため、(3)やや遅れている、とした。さらに多種多様なα3β3固定子リング変異体、および様々な配列やミスマッチを持つ二重鎖DNAやRNAを合成して次々に試し、一方向に連続的に回転するハイブリッドモーターを創製する。また、カーボンナノチューブ、金属錯体ナノワイヤ、人工らせんポリマー、フォルダマー等の様々な人工分子とα3β3固定子リングの複合体形成を試みる。
KAKENHI-PROJECT-24651167
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24651167
生体・人工ハイブリッド回転ナノモーターの創製
高速AFMによる1分子観察で複合体形成を、ATP再生系を用いた多分子計測でATP加水分解活性の保持を確認した後、金ナノロッドを用いた1分子回転観察で一方向性の回転運動を実証する。さらに、得られたハイブリッドモーターを1分子操作し性能評価を行う。磁気ビーズを可視化プローブとして磁気ピンセットで強制的に逆回転させた際にATPが合成できるかを検証する。フェムトリッターチャンバーやフェムトリッタードロップレット内で強制逆回転させることにより、ハイブリッドモーター1分子のATP合成効率を定量化してエネルギー変換の可逆性を検証する。人工回転子として用いるカーボンナノチューブ、金属錯体ナノワイヤ、人工らせんポリマー、フォルダマー等の入手に当初の予定より時間がかかったため当該研究費が生じた。今後、これらの人工分子の入手、改変、修飾の経費に利用する。
KAKENHI-PROJECT-24651167
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24651167
赤血球分化を制御する遺伝子の解析
赤血球分化の制御機構を解明するため,試験管内で分化誘導可能なマウス赤白血病(MEL)細胞を用い,分化の決定(コミットメント)過程を解析した.まず,我々は, MEL細胞TSA8株を誘導剤処理すると,エリトロポエチン(Epo)依存に分化増殖を行なう前駆細胞(CFu-E)へと分化することを見出した.結合実験の結果より,分化誘導前後のEpo受容体は,細胞当りの数,親和性の変動は無く, CFu-Eへの分化の決定が, Epo受容体の誘導ではなく,細胞内因子の誘導が重要であることが分った.この分化誘導系を用い,分化の決定に関与する要因をさらに詳しく調べた.その結果,分化誘導直後にシクロヘキシミド感受性の時期があり,不安定な蛋白の新合成が必要であることが分った.また,分化誘導の後半に,アミロライド誘導体に感受性の時期が見出され, Na^+/H^+exchangerの関与が明らかとなった.すなわち,この分化の決定には,二つの因子が逐次的に働いていると予想された.つぎに, Epoの作用機序を解析し, Epoの受容体を介した細胞内シグナル伝達には, CAMPが関与していることを明らかにした.これまで, Epoの作用機序については,正常血液細胞集団を用いた解析結果が報告されているが,結果は不明確であり,均一な前駆細胞を用した我々の結果は最も明確であり,今後の生化学的解析の材料としても最適である.MEL細胞の分化の決定におけるがん遺伝子C-mycの関与を,誘導プロモーターと結合したc-myc遺伝子の導入により調べた.その結果, c-mycは,分化の決定に,その量に依存して働いていること,また,分化特異的遺伝子の活性化に抑制的に働いており, c-myc自身のauto-regulationにより,分化の決定と遺伝子発現を結びつけた調節をしていると予想させる結果が得られた.赤血球分化の制御機構を解明するため,試験管内で分化誘導可能なマウス赤白血病(MEL)細胞を用い,分化の決定(コミットメント)過程を解析した.まず,我々は, MEL細胞TSA8株を誘導剤処理すると,エリトロポエチン(Epo)依存に分化増殖を行なう前駆細胞(CFu-E)へと分化することを見出した.結合実験の結果より,分化誘導前後のEpo受容体は,細胞当りの数,親和性の変動は無く, CFu-Eへの分化の決定が, Epo受容体の誘導ではなく,細胞内因子の誘導が重要であることが分った.この分化誘導系を用い,分化の決定に関与する要因をさらに詳しく調べた.その結果,分化誘導直後にシクロヘキシミド感受性の時期があり,不安定な蛋白の新合成が必要であることが分った.また,分化誘導の後半に,アミロライド誘導体に感受性の時期が見出され, Na^+/H^+exchangerの関与が明らかとなった.すなわち,この分化の決定には,二つの因子が逐次的に働いていると予想された.つぎに, Epoの作用機序を解析し, Epoの受容体を介した細胞内シグナル伝達には, CAMPが関与していることを明らかにした.これまで, Epoの作用機序については,正常血液細胞集団を用いた解析結果が報告されているが,結果は不明確であり,均一な前駆細胞を用した我々の結果は最も明確であり,今後の生化学的解析の材料としても最適である.MEL細胞の分化の決定におけるがん遺伝子C-mycの関与を,誘導プロモーターと結合したc-myc遺伝子の導入により調べた.その結果, c-mycは,分化の決定に,その量に依存して働いていること,また,分化特異的遺伝子の活性化に抑制的に働いており, c-myc自身のauto-regulationにより,分化の決定と遺伝子発現を結びつけた調節をしていると予想させる結果が得られた.赤血球分化の制御機構を解明するため、試験管内で分化誘導可能なマウス赤白血病細胞を用い、分化の決定(コミットメント)過程を解析した。赤血球の分化においては、血液幹細胞から数回の分裂を経て、エリトロポエチン(EPO)依存の分化増殖を行なう前駆細胞(CFU-E)を経て成塾分化するが、我々は、赤白血病細胞(TSA8株)を誘導剤で処理すると、CFU-Eへと分化することを見出した。この分化誘導系で、EPO受容体合成が誘導されるかどうかを、結合実験により調べたところ、EPO受容体量は、分化誘導前後で、質的にも、量的にも変動が無いことが分った。よって、CFU-Eへの分化の決定には、EPO受容体の増加が重要ではなく、細胞内因子の誘導が重要であることが予想された。この分化誘導系を用いて、分化の決定に関与する要因を調べた。この系にsrc遺伝子産物のリン酸化の特異的阻害剤であるハービマイシンを添加すると、EPO依存的コロニー形成(細胞増殖)は阻害されるが、ヘモグロビン合成で見た細胞分化の誘導は阻害されなかった。このことは、胎児肝より得た正常CFU-Eの分化増殖においても同様で、EPOが前駆細胞に惹き起す分化と増殖のシグナルは独立であり、増殖のシグナルは、src関連遺伝子の関与によっていることが示唆された。赤白血病細胞分化誘導におけるC-myc遺伝子の関与を、誘導プロモーターに結合したC-myc遺伝子の導入により調べた。外から導入したC-myc遺伝子の発現を人為的にコントロールすると、分化誘導能を変えることができ、この分化誘導系に、C-myc遺伝子の発現の量、タイミングが重要であることを示した。
KAKENHI-PROJECT-61480428
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61480428
赤血球分化を制御する遺伝子の解析
今後、上記の点を更に詳しく解析し、分化の決定の要因を解明してゆくつもりである。赤血球分化の制御機構を解明するため,試験管内で分化誘導可能なマウス赤白血病(MEL)細胞を用い,分化の決定(コミットメント)過程を解析した.まず,我々は,MEL細胞TSA8株を誘導剤処理すると,エリトロポエチン(Epo)依存に分化増殖を行なう前駆細胞(CFUーE)へと分化することを見出した.結合実験の結果より,分化誘導前後のEpo受容体は,細胞当りの数,親和性の変動は無く,CFUーEへの分化の決定が,Epo受容体の誘導ではなく,細胞内因子の誘導が重要であることが分った.この分化誘導系を用い,分化の決定に関与する要因をさらに詳しく調べた.その結果,分化誘導直後にシクロヘキシミド感受性の時期があり,不安定な蛋白の新合成が必要であることが分った.また,分化誘導の後半に,アミロライド誘導体に感受性の時期が見出され,Na^+/H^+exchangerの関与が明らかとなった.すなわち,この分化の決定には,二つの因子が逐時的に働いていると予想された.つぎに,Epoの作用機序を解析し,Epoの受容体を介した細胞内シグナル伝達には,cAMPが関与していることを明らかにした.これまで,Epoの作用機序については,正常血液細胞集団を用いた解析結果が報告されているが,結果は不明確であり,均一な前駆細胞を用いた我々の結果は最も明確であり,今後の生化学的解析の材料としても最適である.MEL細胞の分化の決定におけるがん遺伝子Cーmycの関与を,誘導プロモーターと結合したcーmyc遺伝子の導入により調べた.その結果,cーmycは,分化の決定に,その量に依存して働いていること,また,分化特異的遺伝子の活性化に抑制的に働いており,cーmyc自身のautoregulationにより,分化の決定と遺伝子発現を結びつけた調節をしていると予想させる結果が得られた.
KAKENHI-PROJECT-61480428
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61480428
「認識された事態」にもとづく知識・証拠性・認識の言語表現の分析
本研究の目的は,「認識された事態」という意味レベルが日本語の知識・推論に関わる表現の分析に有用であることを示すことであった。「認識された事態」とは単なる事態・出来事ではなく,主体によって認識された対象としての事態・出来事と捉えられる。本年度は主に,1推論を述べる「トイウコトハ...トイウコトダ」という構文の分析(昨年度より継続),2感心を表す「コトダ。」構文を通したコト節の分析(新規),3目的表現へのとりたて助詞ハの付加に対する分析の精緻化・終助詞(継続)に取り組んだ。13のすべての分析において,研究課題における「認識された事態」を,形式意味論で提案されている「判断主」あるいは「視点」を含む意味論の枠組みに従い,「主体に相対化された命題」の枠組みを用いた。1の推論を表す構文については,「トイウコトハ...トイウコトダ」という構文の特徴を整理し,トイウの省略の可否およびトノへの置き換えの可否に基づいて,先行研究で広く受け入れられてきた「命題ーモダリティ」という節の意味レベルの中間に位置する意味レベルが存在するという議論を論文にまとめて発表した。2の感心を表す「コトダ。」については,1の研究の過程で得られた問題意識に基づいて新たに研究対象としたものである。コト節の特徴を明らかにしつつ,判断主を含む主観的意味の概念を用いて「感心」という機能を説明できるという分析を本年度後半で進めた(成果論文はH19年度公開予定)。3の目的表現への助詞の付加については,本課題初年度から進めてきた分析を精緻化して公表するために,議論の整理と形式化を中心に取り組んだ。3つの内容に共通して,主体に相対化された命題や「主観的意味」を言語分析で考慮する重要性を示すことが出来たと考える。これは本研究課題の「認識された事態」という枠組みの価値を示すものと言える。本研究は,「認識された事態」という意味レベルの言語分析における有用性を示すことを目指し,証拠性表現などの知識・推論にかかわる言語表現を対象に意味論・統語論的分析を行う。申請者は「認識された事態」を,外延的な「事態・出来事」と内包的な「命題」の中間に位置するものと想定している。これは「何らかの主体によって認識された=どの視点から見られているかが決まっている事態・出来事」と述べることもできる。特に日本語の証拠性表現や認識条件文,テンス解釈などは「認識された事態」との関係がうかがえる現象が多いため,この意味レベルの適用可能性を検証するのに適した言語と考えられる。本年度は,主に証拠性表現にかかわる先行研究の分析の検討・整理と,テンス解釈に関する申請者の従来の分析の再検討および適用範囲の拡張を実施した。テンス解釈と「認識された事態」との関係については,同じ現象を扱った研究の詳細な検討を行い,問題点を整理した。それに加えて,モーダル要素や条件文の分析に用いられる様相論理を用いた副詞節の分析を検討し,日本語学の先行研究の成果との比較・検討を行った。副詞節については,とりたて助詞と共起した場合の解釈についても現象を整理して分析案を作成した。副詞節(理由節や条件節,目的節ほか)に関する現象は,「認識された事態」と「命題」を区別する意義を検証するうえで有効と考えられるため,次年度以降も継続して分析を進める。本年度の進捗状況は,当初の計画に比べてやや遅れが見られた。特に研究成果の公開に関して,当初予定していた国際学会での発表を実施できず,全体的に低調であった。研究活動としては,状況意味論・様相論理に基づいた証拠性表現と副詞節の分析を実施し,また日本語のテンスに関する申請者の分析と,類似の現象を扱っている研究の比較を通じて,テンス解釈の分析を再検討した。これらの研究状況については,研究会および関係する研究者(上山あゆみ氏,林由華氏)との打合せを通じて意見交換を行い,理論的分析および方言データに関する情報を得ることができた。本研究の目的は,「認識された事態」という意味レベルが言語分析,特に日本語の知識・推論に関わる表現の分析にとって重要な役割を持つと示すことである。「認識された事態」とは単なる事態・出来事そのものではなく,ある主体によって認識されたものとしての事態・出来事と述べることができる。この研究課題のもとで,本年度は主に,1理由・目的を表す従属節の研究,2推論を述べる表現におけるコト内容節の分布および意味論の研究,3終助詞の機能分析と談話における情報管理モデルの研究の3点に取り組んだ。1の理由・目的を表す従属節については,理由・目的を表す従属節が事態を認識する視点を含むような従属節(Epistemic Phrase)であり,認識視点が意味論的な変数としてこのレベルの節に含まれるという想定と,主題助詞・とりたて助詞の付加が意味論的に量化表現として働くという補助的想定を組み合わせることで,主題・とりたて助詞が付加された場合の従属節の機能が意味-統語論的に説明できると論じた。2の推論構文とコト節の関係については,先行研究を検討し,コトおよびトイウの分析が推論構文に適応できないという分析をおこなった。3の終助詞の研究では,共通日本語の終助詞の先行研究と比較しつつ北海道方言の終助詞サの分析を行い,話し手がどのように他者の知識をモデル化し発話によって操作するかを探った。
KAKENHI-PROJECT-16K16827
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K16827
「認識された事態」にもとづく知識・証拠性・認識の言語表現の分析
いずれの研究も,知識のモデル化や様々な視点からの知識という意味統語レベルの存在を探るものであり,本研究課題にとって興味深い分析を提示することができたと考える。本年度の進捗状況は,概ね順調であった。特に前年度の課題であった研究成果の公開について活発に進めることができた。結果,国内学会(日本言語学会大会)・国際学会(Japanese Korean Linguistics)において研究発表を行い,英語論文も含めて2本の論文に成果をまとめることができた。研究活動としては,2つの叙述タイプと統語構造(Kuroda,上山)に基づく副詞節の分析案や,終助詞の機能分析に関して研究会で発表し,関連分野の研究者と意見交換を行うことができた。特に現象の記述面はかなりの進展を見,課題最終年度の理論的分析および現象横断的な要因の解明に向けて十分な基礎を作ることができたと考える。本研究の目的は,「認識された事態」という意味レベルが日本語の知識・推論に関わる表現の分析に有用であることを示すことであった。「認識された事態」とは単なる事態・出来事ではなく,主体によって認識された対象としての事態・出来事と捉えられる。本年度は主に,1推論を述べる「トイウコトハ...トイウコトダ」という構文の分析(昨年度より継続),2感心を表す「コトダ。」構文を通したコト節の分析(新規),3目的表現へのとりたて助詞ハの付加に対する分析の精緻化・終助詞(継続)に取り組んだ。13のすべての分析において,研究課題における「認識された事態」を,形式意味論で提案されている「判断主」あるいは「視点」を含む意味論の枠組みに従い,「主体に相対化された命題」の枠組みを用いた。1の推論を表す構文については,「トイウコトハ...トイウコトダ」という構文の特徴を整理し,トイウの省略の可否およびトノへの置き換えの可否に基づいて,先行研究で広く受け入れられてきた「命題ーモダリティ」という節の意味レベルの中間に位置する意味レベルが存在するという議論を論文にまとめて発表した。2の感心を表す「コトダ。」については,1の研究の過程で得られた問題意識に基づいて新たに研究対象としたものである。コト節の特徴を明らかにしつつ,判断主を含む主観的意味の概念を用いて「感心」という機能を説明できるという分析を本年度後半で進めた(成果論文はH19年度公開予定)。3の目的表現への助詞の付加については,本課題初年度から進めてきた分析を精緻化して公表するために,議論の整理と形式化を中心に取り組んだ。3つの内容に共通して,主体に相対化された命題や「主観的意味」を言語分析で考慮する重要性を示すことが出来たと考える。これは本研究課題の「認識された事態」という枠組みの価値を示すものと言える。平成29年度は,平成28年度に実施できなかった国際学会での発表を行うため,Japanese/Korean Linguistics, Workshop on Altaic Formal Linguisticsなどに応募する。また,これらのGeneral Topicに関する学会以外にも,知識や言語学的形而上学など,本研究課題に関連するより限定された分野のワークショップへの応募も検討する。また,当初計画に従って査読付き論文誌への投稿も行う。また,上記研究計画の概要でも述べたとおり,副詞節に関する現象を当初予定していたものに加えて検討の対象とする。琉球語に関しては,特に日本語共通語のノダ文に対応すると推測される,動詞-mの形式に注目した分析をはじめに行い,その後他のモーダル形式,条件文,テンス解釈へと分析を進める。
KAKENHI-PROJECT-16K16827
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消化管運動障害でのアストロサイトを介する腸管神経系制御機構の役割と麻酔薬作用
局所麻酔薬ブピバカインは神経毒性を持つことが知られており、その機序を解明することによりブピバカインによる神経毒性を予防することを目標とした。ヒト神経芽細胞腫培養細胞(SH-SY5Y細胞)を使用し、ブピバカイン投与により細胞の生存率低下が見られたが、この生存率はT型カルシウムチャネル阻害薬の併用により更に悪化した。SH-SY5Y細胞におけるT型カルシウムチャネルの発現をリアルタイムPCRで調べたところ、Cav3.1のみが発現していることがわかった。消化管筋間神経叢をマウス小腸から剥離し、神経細胞、神経膠細胞を単離、培養した。それらの細胞にパッチクランプした。神経細胞の静止膜電位、活動電位を記録し、デルタオピオイドレセプター刺激薬(DPDPE)投与により神経細胞の自発活動電位発現性が高くなることを確認した。現在はマウスのイレウスモデルを作成するための麻酔装置、手術器具の準備と、イレウス状態を確認する方法について検討している。本研究ではマウスの小腸から神経細胞を単離し培養する必要があるが、腸管内の細菌によるコンタミネーションにより培養が成功しない場合がある。培養液に抗菌薬、抗真菌薬を添加し、神経細胞を効率的に単離するための工夫を行った。パッチクランプの成功率を向上するために微小電極の作成や細胞外液還流装置にも微調整が必要であった。マウスの消化管筋間神経細胞から神経細胞、神経膠細胞を単離し培養することができた。顕微鏡下でパッチクランプを行ったが、マイクロピペットの調整、電位測定装置の調整に時間を要した。パッチクランプでは神経細胞から静止膜電位を測定するところまでは到達したが、薬剤投与などを行ううちに細胞とマイクロピペットの接触が悪くなり、持続的な測定ができなかった。細胞の単離からパッチクランプまでの時間を1日単位で変更したが、改善が見られなかった。マウスから初代培養した細胞を使用することを諦め、培養細胞を使用して実験を進めることにした。ヒト神経芽腫細胞(SH-SH5Y細胞)を培養し、パッチクランプを行った。SH-SH5Y細胞においてもマイクロピペットの調整に時間を要し、静止膜電位の測定と活動電位を見るところまでしか進められていない。マウスの術後イレウスモデルを作成する方法について、麻酔用のセボフルラン気化器などを整備し、マウスの手術ができる体制を整えた。しかし、マウスから初代培養した神経細胞のパッチクランプが現状ではうまくいかないため、イレウスモデルを作成してもそこから単離した神経細胞を使用することができない。パッチクランプが上手く測定できるまで、イレウスモデルの作成は休止としている。マウスの小腸による等尺性収縮力変化についての実験は、実験機器の故障により実験ができない状況が続いており、今後計画を修正して行く予定である。マウスの小腸から神経細胞を単離し培養する段階で問題があるため、培養細胞に変更したが、その判断に時間がかかった。前年度までにマウスの消化管筋間神経細胞から単離した神経細胞、神経膠細胞を使用したパッチクランプは断念した。ヒト神経芽細胞腫培養細胞(SH-SY5Y細胞)を培養しパッチクランプを行い、静止膜電位の測定のみを行った。局所麻酔薬の神経毒性を調べるために、SH-SY5Y細胞の生存に局所麻酔薬がどのように関与するのかをMTTアッセイを用いて調べた。長時間作動性局所麻酔薬ブピバカインを培養液に添加した場合、SH-SY5Y細胞の生存率が非常に下がったが、様々なイオンチャネルブロッカーを同時投与した場合、カルシウムチャネルブロッカーを投与した場合に、生存率が悪化した。細胞毒性に関与するカルシウムチャネルのタイプを調べるために様々なカルシウムチャネル阻害薬を使用したところ、T型カルシウムチャネル阻害薬をブピバカインと併用した場合に細胞死が増加することがわかった。T型カルシウムチャネルはCav3.1、3.2、3.3のサブタイプがあるため、どのサブタイプがこの細胞死に関与するのかを調べるために、RT-PCRでCav3.1、3.2、3.3のmRNAの発現を調べたところ、Cav3.1のみが発現していることがわかった。そこで、Cav3.1のSiRNAをSH-SY5Y細胞に導入し、さらにブピバカインを添加した場合に細胞死が抑制されるかを調べることとした。購入したCav3.1のSiRNAのノックアウト効果をRT-PCRで調べるところまでは実験が進んだが、ブピバカインを添加するまでには至っていない。今後、SH-SY5Y細胞にCav3.1のSiRNAを導入し、さらに培養液にブピバカインを添加し、SiRNAを導入しなかった場合に比べ、細胞死が抑制されるかを調べる予定である。局所麻酔薬ブピバカインは神経毒性を持つことが知られており、その機序を解明することによりブピバカインによる神経毒性を予防することを目標とした。ヒト神経芽細胞腫培養細胞(SH-SY5Y細胞)を使用し、ブピバカイン投与により細胞の生存率低下が見られたが、この生存率はT型カルシウムチャネル阻害薬の併用により更に悪化した。SH-SY5Y細胞におけるT型カルシウムチャネルの発現をリアルタイムPCRで調べたところ、Cav3.1のみが発現していることがわかった。小腸から単離し培養した神経/グリア細胞を使用して、免疫染色により乳酸トランスポーターの発現とそのサブタイプを調べる。その後、培養細胞の免疫染色が陽性となった抗体を使用し、小腸の縦走筋と神経叢の組織を免疫染色し乳酸トランスポーターの消化管神経叢における局在を調べる。
KAKENHI-PROJECT-15K10548
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消化管運動障害でのアストロサイトを介する腸管神経系制御機構の役割と麻酔薬作用
また、マウスイレウスモデルを作成し、その消化管運動、神経細胞活動を記録する。PPAR-γ活性化薬のマウス小腸等尺性筋収縮への効果を調べ、それがイレウスモデルの小腸でどのように変化するかを調べる。イレウスモデルの小腸から単離した神経細胞でパッチクランプを行い、同様にPPAR-γ活性化薬の作用による活動電位の変化を記録する。マウス小腸のグリア細胞にターゲットを絞り、単離した神経/グリア細胞を使用した免疫染色により、乳酸トランスポーターの発現とサブタイプを調べる。その後、培養細胞の免疫染色が妖精となった抗体を使用し、小腸の縦走筋と神経叢の組織を免疫染色し、乳酸トランスポーターの消化管神経叢における局在を調べる。局所麻酔今年度は神経/グリア細胞の免疫染色を行うため、1次抗体、2次抗体等が必要である。マウスイレウスモデルを作成し、神経細胞単離、小腸等尺性収縮実験、パッチクランプを行う予定であり、それに伴い、マウス購入、麻酔・手術に関する消耗品、上記の実験に関連する消耗品の購入が必要である。マウス購入、神経/グリア細胞の免疫染色を行うため、1次抗体、2次抗体などが必要である。免疫染色用の抗体、マウス、麻酔薬、手術用資材などの購入。神経細胞の単離実験、細胞培養、パッチクランプに必要な薬剤、資材などの購入を計画している。免疫染色用の抗体、マウス、細胞培養のための消耗品などが必要である。
KAKENHI-PROJECT-15K10548
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父親・母親に対する産後うつ病予防統合プログラムの開発
本研究は、我が国における、産後4か月の父親のうつ病の有病率と関連要因を明らかにし、産後うつ病の予防と早期発見のための産後健診プログラムを開発することを目的に研究を実施した。2032組の生後4か月の乳児の親に調査を行い、807組の親を分析対象とした。110名(13.6 %)の父親がうつ状態であり、パートナーのうつ状態と低い夫婦関係満足度に関連があった。産後4か月から6か月の夫婦6組にインタビューを行い、母親は父親に比べて生活の変化が大きいと感じており、夫婦関係は、父親の家事や育児の量ではなく、パートナーや子どもへの父親の関心の程度が影響する可能性があることが明らかになった。父親のうつ状態と子どもの発達との関連が注目されており、2万人の親子を対象とした米国の大規模縦断調査により、父親のうつ病が子どもの発達に負の影響を及ぼすことが確認されている。また、うつ状態の父親は1歳未満の子どもへの躾として平手で叩くことが多いことが報告された。Paulsonらは、妊娠期から生後1年までの父親のうつ状態率は10.4%であり、産後36か月が25.6%と最も高いことを報告した。日本の虐待死亡例のほとんどが産後4か月までに生じている。しかし、これまでの父親のうつ状態に関する研究のほとんどが小規模研究であり、産後うつ状態を測定する方法にも統一性がない。そこで、父親のうつ状態の有病率が最も高く、子ども虐待のリスクが高まる産後4か月に大規模調査を行い、1.父親と母親のうつ状態の有病率、2.父親のうつ状態の関連要因、3.うつ状態の父親の対児感情を明らかした。対象と方法:生後4か月児の父親と母親2032組を対象に2013年1月4月の期間に自己記入式質問紙調査を行った。調査項目は、エジンバラ産後うつ病自己調査票(EPDS)、夫婦関係満足尺度、対児感情尺度、属性、健康状態、心理・精神的問題、仕事のストレス、妊娠・出産・育児に関する情報とした。父親907名(44.6%)、母親1036名(51.0%)から回答を得た。そのうち、夫婦ともにEPDSに回答した867組(42.7%)を分析対象とした。結果:14.9%の父親、10.6%の母親がうつ状態であり、5人に1人の乳児がうつ状態の親に養育されていた。父親のうつ状態の関連要因は、心の問題で医療機関を受診した経験がある、夫婦関係の満足度が低い、経済的な不安がある、不妊治療による妊娠、パートナーがうつ状態、仕事のストレスであった。また、うつ状態の父親はそうでない父親と比べて子どもへの否定的感情が強かった。これまで父親の産後うつ病はほとんど注目されてこなかったが、2005年にRamchandaniらが、父親の産後うつ病が子どもの発達に悪影響を及ぼすことを報告して以来、父親の産後うつ病に関する研究が積み重ねられてきている。2万人の親子を対象とした米国の大規模縦断調査においても父親のうつ病が子どもの発達に悪影響を及ぼすことが確認されている(Weitzman, 2011)。父親の産後1年までのうつ状態の有病率は約10%であり、産後3か月から6か月が25.6%と最も多いと報告されているが(Paulson et. al., 2010)、対象者数が少ないことや測定方法が統一されていない等の問題が指摘されており、さらなる調査が期待されている。本研究の目的は、父親の産後うつ病の早期発見と予防、うつ病のセルフケア能力の獲得を目的に、産後の健診プログラムを開発・実施し、プログラムの妥当性とその効果を検証することである。我々は、産後1か月の父親のうつ状態の関連要因が、望まない妊娠、精神的な問題での医療機関受診歴、不安定な雇用状態、服薬している、親との離別経験、パートナーが妊娠中の父親自身のうつ状態であることを明らかにしたが、産後1か月間はパートナーが実家に帰省するなど、子どもとパートナーとの新しい生活が開始していない者も多い。そのため、生後4か月の乳児の父親のうつ状態の関連要因を明らかにすることを目的に大規模調査を実施した。平成25年1月から4月の期間に、生後4か月健診を受診する乳児の父親と母親1980組に依頼文と調査票を配布し、現在までの回収数は、父親740名、母親849名、父親と母親の両方からの回収数は735組(回収率37.1%)である。今後、データの回収が終了次第、分析を行う予定である。本研究は、父親の産後うつ病の早期発見と予防、うつ病のセルフケア能力の獲得を目的に、産後の健診プログラムを開発・実施し、プログラムの妥当性とその効果を検証することを目的としている。父親の産後うつ病は母親の産後うつ病と同様に子どもの発達に負の影響があるため、予防と早期発見が重要である。周産期における父親のうつ状態の有病率のメタ・アナリシスによると、妊娠期から産後1年の期間で、父親のうつ状態が最も高い時期は、産後3か月から6か月であった。そのため、平成24年度は、産後4か月の父親と母親のうつ病の有病率と関連要因を明らかにすることを目的に、神戸市の協力を得て大規模調査を実施した。その結果、産後4か月のうつ状態の有病率は父親13.6%、母親10.3%であり、父親のうつ状態にはパートナーのうつ状態と夫婦関係満足度が関連していた。
KAKENHI-PROJECT-24593419
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父親・母親に対する産後うつ病予防統合プログラムの開発
結果は現在、論文を学術雑誌に投稿中である。その結果を基に、平成26年度は、妊娠期から産後4か月までの父親の生活の変化やそれに伴う感情について夫婦関係に注目して明らかにすることを目的に産後4か月の父親を対象にインタビューを計画した。方法は、診療所の乳児1か月健診に同行した父親に研究の目的、意義、方法を説明し、産後4か月のインタビューの同意を得て実施した。しかし、乳児1か月健診に同行する父親が少なかったため対象者のリクルートが困難であり、予定調査期間に充分な数のインタビューが実施できなかった。そのため、リクルートの方法を変更して再度インタビューを実施する予定である。産後うつ病の父親の子どもは、多動や喧嘩が多いなどの発達上の問題があることが、国外の1万人規模の調査で明らかになっている。また、うつ状態の父親はそうでない父親に比べて、読み聞かせや歌を歌うなどの子どもとの豊な関わりが少なく、乳児を叱る際に体を叩くことが4倍多いと報告されている。そこで、本研究は、我が国における、父親の産後うつ病の有病率と関連要因を明らかにし、産後うつ病の予防と早期発見のための産後健診プログラムを開発することを目的に研究を実施した。先行研究により、産後3か月から6か月の父親が最もうつ状態になりやすいことが判明しているため、生後4か月の乳児を養育している2032組の夫婦を対象に自記式質問紙調査を行った。807組(39.7 %)の夫婦を分析対象とし、うつ状態はエジンバラ産後うつ病自己調査票(EPDS)により測定した。その結果、110名(13.6 %)の父親がうつ状態であり、ロジスティック回帰分析の結果、父親のうつ状態は、パートナーのうつ状態(adjusted ratio (AOR) 1.91, 95 % confidence interval (CI) 1.05-3.47)と低い夫婦関係満足度(AOR 0.83, 95 % CI 0.77-0.89)とに関連が認められた。そこで、妊娠期から産後6か月までに生じる生活と夫婦関係の変化を明らかにすることを目的に、産後4か月から6か月の夫婦6組を対象にインタビューを実施した。その結果、母親は父親に比べて生活の変化が大きいと感じていた。また、夫婦関係自体は妊娠期から変化せず、その良否は、父親の家事や育児の量ではなく、パートナーや子どもへの父親の関心の程度が影響する可能性があることが明らかになった。現在、これらの結果を基に父親への産後うつ病の啓発と予防のための冊子を作成中であり、今後、妊娠期における両親学級で実施し効果を検証する予定である。本研究は、我が国における、産後4か月の父親のうつ病の有病率と関連要因を明らかにし、産後うつ病の予防と早期発見のための産後健診プログラムを開発することを目的に研究を実施した。2032組の生後4か月の乳児の親に調査を行い、807組の親を分析対象とした。110名(13.6 %)の父親がうつ状態であり、パートナーのうつ状態と低い夫婦関係満足度に関連があった。産後4か月から6か月の夫婦6組にインタビューを行い、母親は父親に比べて生活の変化が大きいと感じており、夫婦関係は、父親の家事や育児の量ではなく、パートナーや子どもへの父親の関心の程度が影響する可能性があることが明らかになった。平成26年度は、妊娠期から産後4か月までの父親の生活の変化やそれに伴う感情について夫婦関係に注目して明らかにすることを目的に産後4か月の父親を対象にインタビューを計画した。方法は、診療所の乳児1か月健診に同行した父親に研究の目的、意義、方法を説明し、産後4か月のインタビューの同意を得て実施した。
KAKENHI-PROJECT-24593419
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男性ホルモンによる中枢ド-パミン作動性神経機能老化の制御に関する研究
ラットの仙髄において運動神経細胞の大きさや樹状突起の分枝の数に男性ホルモンが影響することが報告されているが、ド-パミン神経系に対する影響については報告がない。我々は加齢ラットの精巣を早い時期に摘除しておくと、線条体におけるド-パミン受容体密度の加齢による減少が対照群より少ないという知見に基づいて研究を始めた。その結果1.自発運動量、常動行動やカタレプシ-などの行動薬理学的指標ではド-パミン神経系の加齢変化に精巣摘除が影響を与えるという結果は得られなかった。2.ラット中脳黒質にあるド-パミン神経細胞の活動電伝の発火頻度を指標としたド-パミン自己受容体の薬物感受性は精巣摘除によって高まった。しかも、加齢ラットにおいて強い傾向が認められた。受容体蛋白あるいはmーRNAレベルでの変化によっている可能性が考えられる。3.線条体のシナプス後ド-パミン受容体の指標であるDー2受容体密度の加齢による減少は、ラットの精巣を摘除しても変化しなかった。Dー1受容体密度には明確な加齢変化そのものが認められなかった。4.現在、ラット線件体におけるムスカリン受容体密度の加齢変化に対する精巣摘除の影響について実験を進めている。今回の研究では、対照群の一つとして同じ生後日数の雌のラットをおくべきであったという反省がある。すなわち、雄のラットの精巣を摘除した後に得られたデ-タは、単にある性周期の雌のラットのデ-タを反映しているに過ぎないということが考えられるからである。研究開始後まもなく、ラットの生育業者が倒産する事件があり、我々が長年使用してきたウィスタ-系ラットのコロニ-が入手不能となった。このことが3の実験結果が再現しなかったことと関連がある可能性があり、今後別の角度から追求する予定である。ラットの仙髄において運動神経細胞の大きさや樹状突起の分枝の数に男性ホルモンが影響することが報告されているが、ド-パミン神経系に対する影響については報告がない。我々は加齢ラットの精巣を早い時期に摘除しておくと、線条体におけるド-パミン受容体密度の加齢による減少が対照群より少ないという知見に基づいて研究を始めた。その結果1.自発運動量、常動行動やカタレプシ-などの行動薬理学的指標ではド-パミン神経系の加齢変化に精巣摘除が影響を与えるという結果は得られなかった。2.ラット中脳黒質にあるド-パミン神経細胞の活動電伝の発火頻度を指標としたド-パミン自己受容体の薬物感受性は精巣摘除によって高まった。しかも、加齢ラットにおいて強い傾向が認められた。受容体蛋白あるいはmーRNAレベルでの変化によっている可能性が考えられる。3.線条体のシナプス後ド-パミン受容体の指標であるDー2受容体密度の加齢による減少は、ラットの精巣を摘除しても変化しなかった。Dー1受容体密度には明確な加齢変化そのものが認められなかった。4.現在、ラット線件体におけるムスカリン受容体密度の加齢変化に対する精巣摘除の影響について実験を進めている。今回の研究では、対照群の一つとして同じ生後日数の雌のラットをおくべきであったという反省がある。すなわち、雄のラットの精巣を摘除した後に得られたデ-タは、単にある性周期の雌のラットのデ-タを反映しているに過ぎないということが考えられるからである。研究開始後まもなく、ラットの生育業者が倒産する事件があり、我々が長年使用してきたウィスタ-系ラットのコロニ-が入手不能となった。このことが3の実験結果が再現しなかったことと関連がある可能性があり、今後別の角度から追求する予定である。本年度は成熟雄性マウスおよびラットの精巣を摘除し、13カ月後に実験を行って下記のような結果を得た。I)去勢マウスの行動薬理:(1)去勢後3カ月を経過したマウスの自発運動量をANIMATEにより測定した。apomorphine 3mg/kg腹腔内投与による運動量、立ち上がり行動および動作回数の増加はいずれも去勢群において対照群より大きかった。(2)金網上がり行動派apomorphine1および3 mg/kg腹腔内投与により有意に増加するが、去勢群において像が著しかった。II)去勢マウスおよびラットの線条体におけるド-パミンの代謝回転:去勢1カ月後のマウス線条体において、ド-パミンの代謝回転は増加していることが認められた。また、ラットの線条体においてもド-パミンの消費量が高い傾向がみられた。III)ラット黒質ド-パミン神経細胞の自発性放電:微小電極により記録したド-パミン神経細胞の自発性発火頻度はapomorphineの静脈注射により用量依存的に減少した。成熟ラットにおける上記の反応は去勢によって低濃度側へ平行移動したが、個々の数値は有意なものではなかった。生後約2年の加齢ラットにおいても自発放電頻度に対するapomorphineの抑制作用は去勢によって強まる傾向が認められた。以上の結果から、去勢によって動物のapomorphineに対する反応性が高まっていること、線条体におけるド-パミンの代謝回転が亢進していることが認められた。これらの生体側の変化の機序については来年度以降さらに検討する予定である。生後68週令および1年以上を経過した雄性ラットを使用し、(1)精巣を摘除後テストステロンを投与した群、
KAKENHI-PROJECT-01571253
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男性ホルモンによる中枢ド-パミン作動性神経機能老化の制御に関する研究
(2)精巣を摘除後生理食塩水を投与した群、(3)偽手術を施した群を作って、4週間以上を経過した時点で下記の実験を行った。1.ドパミン受容体密度および代謝回転の測定:線条体および前頭葉皮質の神経細胞膜標本におけるDー1受容体(〔^3H〕ーSCH23390の特異的結合部位)の密度、Dー2受容体(〔^3H〕ーSpiperoneの特異的結合部位)の密度は、生後1年以上を経過したラットにおいては生後68週令のラットに比較して有意な減少が認められた。親和性は変わらなかった。若齢ラットのドパミン受容体密度は精巣を摘除しても変化はみられなかった。また、加齢ラットにおいても受容体密度は精巣摘除によって変化しなかった。ドパミン受容体の代謝回転に対する精巣摘除の影響は現在研究中である。2.ムスカリン受容体密度の測定:生後68週令のラット線条体および前頭葉皮質部位のMー1受容体(〔^3H〕ーpirenzepineの特異的結合部位)の密度および親和性は精巣摘除しても有意な変化は認められなかった。3.細胞内二次情報達物質の測定:ラット線条件に含まれるcーAMPは10^<ー4>Mのドパミン添加による増加するが、その割合は精巣摘除の有無によっては変化しなかった。ラット小脳に含まれるcーGMPはベンゾジアゼピン系薬物midazolamにより有意に減少し、拮抗薬R04ー4602投与により著明に拮抗された。しかし、このような変化は精巣摘除によっては影響をうけなかった。生後68週令および1年以上を経過した雄性ラットを使用し、下記のような実験結果を得た。(1)ラット脳切片を用いた神経細胞の活動性の研究:中脳黒質からド-パミン神経支配をうけている側座核のスライス標本を作製し、フィ-ルド刺激によっておこる陰性波(N_1,N_2)および陽性波(P_2)に対する各種伝達物質の影響を検討した。ド-パミンは300μM以上の濃度でN_2を30300μMの濃度でP_2を抑制した。抑制性伝達物質GABAは30300μMでP_2を抑制したが、N_2には影響しなかった。(±)baclofenは0.33μMの濃度でN_2およびP_2を抑制した。これらのN_2およびP_2はいずれもシナプスを介した活動で,抑制性伝達物質に対する感受性が高い。精巣摘除ラットおよび加齢ラットのスライス標本の活動に対する性ホルモンの作用は現在検討中である。(2)脳内テストステロン受容体の測定:ラット線条体、側座核、大脳皮質および視床下部の神経膜標本を用い、[ ^3H]dihydroxytestosteroneをリガンドとしてテストステロン受容体の分布は従来から報告されている文献値と差は認められなかったが、加齢ラットにおいては減少傾向が認められた。(3)ラット線条体および側座核におけるド-パミン代謝回転は副腎を摘出しても変化は認められなかった。しかし、脳下垂体を摘除すると少し影響を受けるように思われた。ムスカリン受容体に対する影響については現在検討中である。以上、今年度は新しい方法を作って精巣摘除がラット中枢ド-パミン作動性機能に及ぼす影響を測定しようとしたため、まだ実験が終了したわけではないが、幾つかの興味ある知見が得られそうである。
KAKENHI-PROJECT-01571253
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01571253
隔膜形成体における細胞板成分輸送の分子機構
細胞板成分輸送の担い手を探索する目的で、タバコ培養細胞BY-2がもつキネシン関連遺伝子の細胞周期における発現を解析した(Matsui,Collings,and Asada Protoplasma[special issue]in press).その結果、細胞板形成時のBY-2細胞には、少なくとも6種類のキネシン関連遺伝子が細胞板形成時に高発現していることが判明し、細胞周期における発現変動だけから細胞板成分輸送を担うタンパク質の候補を割り出すことは困難と考えられた。そこで、各キネシン様タンパク質を特異的に認識する抗体を用いて細胞板形成時のBY-2細胞を染色したところ、一つのキネシン様タンパク質(TBK5)に対する抗体が、細胞板小胞が蓄積する隔膜形成体赤道面を染色することが明らかになった。TBK5は、分裂期特異的に発現誘導される他のキネシン様タンパク質とは異なり、細胞周期を通じて高発現しており、間期の細胞では、核内、及び細胞質中に分布していた。細胞内TBK5の機能阻害を目的としてTBK5のカルボキシル基末端領域を過剰発現する形質転換BY-2株を作成し、解析したところ、その株では、細胞壁除去後の細胞壁再生能が著しく低下していることが明らかになった。この結果は、TBK5'の機能が細胞壁成分分泌と密接に関係していることを示している。本年度はその他、隔膜形成体における小胞輸送により細胞板に供給されるカロース合成酵素の有力候補として、分裂期に転写産物蓄積量の著しい増加がみられるグルカン合成酵素関連遺伝子GLUC1、GLUC2を見い出した。隔膜形成体における細胞板成分輸送の「試験管内再構成」と「可視化」が本研究の目標である。この目標を達成するため、細胞膜を透過性にしたタバコ培養細胞BY-2に蛍光標識したレクチンを導入する実験系を考案し、この系の確立に向けたいくつかの検討を平成11年度におこなった。まず初めに、細胞膜透過性細胞内で輸送現象を再構成することが可能か否かを調べたが、ここで注目すべき成果が得られた。それは、細胞膜透過性細胞にATPやGTPを導入すると、隔膜形成体の赤道部に未同定の物質の集積がおこることが分かったことである(この反応がおこった領域は、隔膜形成体微小管を間接蛍光抗体法で観察した際に、微小管染色がなされない領域として検出される)。このことは、細胞板成分を標識する手法さえ確立すれば、細胞膜透過性細胞を用いて細胞板成分輸送の再構成、可視化が可能になるとの期待を抱かせるものであった。第2の検討として、蛍光レクチンを用いて隔膜形成体内の細胞板成分を標識することが可能か否かを調べた。ここで問題となったのは、蛍光標識レクチンが細胞板成分(キシログルカン)以外の物質に対しても親和性をもつために、細胞膜透過性細胞に蛍光レクチンを導入すると細胞全体に信号が生じることであった。このことから、別の(細胞板成分の)標識手法を利用する必要性が生じた。今後は、細胞板成分の一つと推定されているカロース合成酵素のGFP融合蛋白質を利用した方策を検討する。細胞板成分輸送の担い手を探索する目的で、タバコ培養細胞BY-2がもつキネシン関連遺伝子の細胞周期における発現を解析した(Matsui,Collings,and Asada Protoplasma[special issue]in press).その結果、細胞板形成時のBY-2細胞には、少なくとも6種類のキネシン関連遺伝子が細胞板形成時に高発現していることが判明し、細胞周期における発現変動だけから細胞板成分輸送を担うタンパク質の候補を割り出すことは困難と考えられた。そこで、各キネシン様タンパク質を特異的に認識する抗体を用いて細胞板形成時のBY-2細胞を染色したところ、一つのキネシン様タンパク質(TBK5)に対する抗体が、細胞板小胞が蓄積する隔膜形成体赤道面を染色することが明らかになった。TBK5は、分裂期特異的に発現誘導される他のキネシン様タンパク質とは異なり、細胞周期を通じて高発現しており、間期の細胞では、核内、及び細胞質中に分布していた。細胞内TBK5の機能阻害を目的としてTBK5のカルボキシル基末端領域を過剰発現する形質転換BY-2株を作成し、解析したところ、その株では、細胞壁除去後の細胞壁再生能が著しく低下していることが明らかになった。この結果は、TBK5'の機能が細胞壁成分分泌と密接に関係していることを示している。本年度はその他、隔膜形成体における小胞輸送により細胞板に供給されるカロース合成酵素の有力候補として、分裂期に転写産物蓄積量の著しい増加がみられるグルカン合成酵素関連遺伝子GLUC1、GLUC2を見い出した。
KAKENHI-PROJECT-11740444
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11740444
インドにおける経済格差分析のための農村都市連結産業連関表の推計
本研究は,開発途上国,特にインドにおける都市部と農村部の産業構造の相違と相互依存関係を定量的に明らかにするためにインドを都市と農村部に分割統合した農村都市地域間産業連関表を推計することを目的にしている.行政的な括りである県,州,地区町村を単位にした地域あるいは地域間産業連関表は多々存在するが,それを都市と農村という二重構造を特徴とする開発途上国の経済分析に適した単位に分割統合した産業連関表の推計は世界的にも類がない.2013年9月にインドの研究協力者であるエネルギー資源研究所(TERI)において協議した結果,現在のインドが抱える最大の問題の一つが水問題であり,水資源の供給と各部門の水需要の状態を農村都市連結産業連関表で表象することが可能なように産業連関表の推計をしてほしいという要請を受けた。水の投入産出を表象するためには農村都市という経済的な地域分割では不十分であり,水系による地理的な地域分割が必要である。一方で経済統計は行政的な地域単位が基本であるから,それを水系別に再構成することは極めて困難である。よってインド35州・連邦直轄領の産業連関表を推計し,そこに水資源の供給と部門別の水需要を付帯することになった。製造業部門についてはAnnual Survey of Industryの事業所別生産額および雇用者数を産業別州別に集計して,州別の特化係数を計算し,最もシンプルなLocation Quotientsに基づくノンサーベイ法によって州別の投入係数を推計した。農業については国民経済計算において州別に詳細な農産物の産出内訳が計上されているので,それによって州別特化係数を計算し,製造業同様にLocation Quotients法によって投入係数を確定した。一方サービス業に関しては,地域別の情報が乏しいので,全ての州で同じ投入構造を持つことを仮定した。最終需要部門のうち家計についてはNSSOによる家計調査の個票を再集計することによって推計した。本研究は,開発途上国,特にインドにおける都市部と農村部の産業構造の相違と相互依存関係を定量的に明らかにするためにインドを都市と農村部に分割統合した農村都市地域間産業連関表を推計することを目的にしている.行政的な括りである県,州,地区町村を単位にした地域あるいは地域間産業連関表は多々存在するが,それを都市と農村という二重構造を特徴とする開発途上国の経済分析に適した単位に分割統合した産業連関表の推計は世界的にも類がない.平成24年度は,インド政府が公表する2003-04年全国産業連関表を都市部と農村部に分割する作業を進めた。インド政府が作成公表する産業連関表の製造業に関連する部分は,登録事業所についてAnnual Survey of Industry(ASI),非登録事業所についてはNational Sample Survey(NSS)を基礎データとして作表されている。われわれは,これらの基礎データのマイクロデータを入手して,都市部と農村部の個々の製造事業所における投入産出関係を産業連関表部門に集計し,全国産業連関表を都市部と農村部に分割した。その際以下の2点に留意した。(1) ASIについては1998-99年から2007-2008年までの登録事業所別パネルデータが利用可能である。産業連関表が作表された年次の投入係数(産出額あたりの原材料・エネルギー投入金額または量)が,事業所ごとの時系列の中で異常な値になっていないかどうかをパネルデータによって確認した。(2) ASIとNSSの調査年次が異なるので,年次調整を全数調査であるEconomic Censusを利用して行った。次のステップは,都市部と農村部の交易表を作成することであるが,交易表を作成するための基礎データについて21012年8月にインドのTERI(The Energy and Resources Institute)を訪問して情報を収集した。同時にTERIが実施しているエネルギー消費に関する農村家計調査に同行して,マディヤ・プラデーシュ州のボパールにあるライセン村とラジガー村の農村家計でのインタビューを実施した。農村家計のエンゲル係数は60%から80%と高く,支出の多くが費やされる日々の食料に関する都市依存度は低く,燃料についても薪,牛糞がほとんどで,都市依存度が極めて低いことを示すサンプルが得られた。本研究は、開発途上国、特にインドにおける都市部と農村部の経済構造の違いと連関構造を定量的に明らかにするためにインドを都市部と農村部に分割統合した都市ー農村地域間産業連関表を推計することを目的にしている。インドは別として、行政的な括りである県、市区町村を単位にした地域あるいは地域間産業連関表は多々存在するが、それを都市ー農村という特に開発途上国の経済分析に重要な単位に分割・統合した産業連関表の推計は世界的にも類がない。本研究期間を通じて、インドの都市部および農村部に関する地域産業連関表の推計はほぼ完了したが、これら2地域を連結する情報に乏しく、都市ー農村地域間産業連関表の推計にはまだ時間が必要である。一方で最終年度においては、地域産業連関表における家計部門の推計の目的で編纂したデータにより、都市および農村における家計消費の脆弱性の測定を実施し、リスクに対しては農村家計がより脆弱であることが示された。さらに地域産業連関表の推計の過程の中でインド全国表の修正推計も必要になったが、この修正インド産業連関表を産業連関ベースの世界経済モデルに組み入れることにより、インドにおけるエネルギー・環境政策が世界のエネルギー市場に与える影響のシナリオ分析も実施した。
KAKENHI-PROJECT-24530265
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インドにおける経済格差分析のための農村都市連結産業連関表の推計
本研究の最終目的は、インドにおける貧困削減政策、持続可能な発展を目的にしたエネルギー・環境政策が、都市・農村という地域間の連関構造を通じて、都市農村間の格差を拡大するのか縮めるのかを定量的に明らかにすることであり、持続可能な発展と貧国の削減を両立させるための政策オプションを検討することにある。この目的を達成するために都市農村地域間産業連関表の推計を完遂することが不可欠であり、今後も継続的に推計作業を進捗させ、産業連関ベース世界経済モデルに組み込み貧困および持続可能な発展の政策シナリオ分析を実施することを予定している。開発経済学2013年9月のインド訪問によって,水路,空路による地域間物流データが国際貿易データと共に推計されていることが判明し,それに基づいて地域間交易係数の推計を開始することができた。この資料には,インドの主たる輸送手段である道路と鉄道による物流が欠如していることが大きな問題ではあるが,昨年までの地域間物流情報が皆無であった状況と比較すれば大きな進展を遂げることができた。平成24年度中に,農村都市交易表作表のための基礎データの把握および収集の目途をつけるはずであった。インドを訪問して調査した結果,公式統計には地域間交易,流通に関するものが皆無に等しいことが判明したため,情報収集という点において計画よりも遅れる結果となった。依然として州別の地域間交易係数の推計が最大の課題として残っている。「現在までの達成度」で述べたように地域間交易係数を推計するための統計資料において,インドの主たる輸送手段である道路と鉄道による物流情報が欠如している。これを補うためにAnuual Survey of Industryの事業所別投入産出情報と事業所の地理的情報(GIS情報)をリンクして空間統計学的手法を用いて地域間交易の構造の推定を試みる。次年度以降の中心課題は,農村都市の交易表の作表である。交易に関する公式統計が皆無に等しいことが判明したので,研究協力機関であるTERI(The Energy and Resources Institute)の協力を得てサンプル調査を実施することが必要になった。また,個々の事業所の地理情報を利用して原材料,エネルギーの距離を加味した調達コストの最小化などの数学的方法を用いて交易表を推定することも検討している。サンプル調査から得られた結果と数学モデルから得られる結果の溝をどのように埋めるかが検討課題となる。インドにおける研究協力機関であるThe Energy and Resources Institute(TERI)の研究者への謝金の支払いを毎年計上していたが,最終年に一括して支払うことになったため。次年度使用額のうち600,000円をTERIの研究者3名に対する3年間の協力謝金として支出する。残額をNSSOによる家計調査の購入に支出する。インドでのサンプル調査の重要性が増してきたという現状を鑑み,次年度以降の研究費は,インド訪問の旅費,研究協力機関TERIへの謝金,データ入力,プログラム作成に対する謝金に費やすことを予定している。繰越金は旅費および研究協力機関への謝金の一部として有効に使用する。
KAKENHI-PROJECT-24530265
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歯科診療過程におけるX線検査の選択基準の決定
歯科診療過程におけるX線検査の果たす役割は大きい。ただし、選ばれる検査方法は適切でありかつ無駄であってはならない。一方、歯科におけるX線検査の選択基準は必ずしも明確ではなく、ここに研究の必要性が生ずる。この研究には膨大な基礎的資料、すなわち個々の患者の初診時の所見、治療経過、その時々の種々なタイプのX線写真などが最終的な病理所見をも含めて必要である。我々はそのような資料を手に入れることはできない。本研究ではより基礎的なX線検査に関連した資料の作成を試みた。主たる目的はすでに我々によってその意義の明らかにされた口内法のサブトラクション法をより現実的なものにすることであった。口内法X線撮影をしより効果的に利用する方法として規格撮影が提示されている。長期にわたる臨床研究や予後の判定においてはことに有用である。このとき問題となるのはX線の幾何学的関係の維持とX線照射量の再現性である。前者について従来用いられてきた口内維持装置に拠る場合、わずかな歯の動きに依存して大きく像が変化することがある。ここでは動きによるずれを最小限にするため焦点-被写体間距離をできるだけ大きくした。このために頭部X線規格装置を利用した。その結果極めて再現性の高いX線写真像が得られた。この手法をより現実的にするため頭部固定具を新たに作成した。現在、ファントムを用いて、その再現性を検討中である。一方、後者においては写真濃度を校正するプログラムを作成し、これをファントムを用いた実験、及び初期治療を行なった患者のX線写真に応用したところ、良好な結果が得られた。以上から本研究は今後、当初の課題であったX線検査の選択基準の決定に当たって、ひとつの資料になるといえた。このような地道な歯科X線写真の解析を積み重ねることが重要と考える。歯科診療過程におけるX線検査の果たす役割は大きい。ただし、選ばれる検査方法は適切でありかつ無駄であってはならない。一方、歯科におけるX線検査の選択基準は必ずしも明確ではなく、ここに研究の必要性が生ずる。この研究には膨大な基礎的資料、すなわち個々の患者の初診時の所見、治療経過、その時々の種々なタイプのX線写真などが最終的な病理所見をも含めて必要である。我々はそのような資料を手に入れることはできない。本研究ではより基礎的なX線検査に関連した資料の作成を試みた。主たる目的はすでに我々によってその意義の明らかにされた口内法のサブトラクション法をより現実的なものにすることであった。口内法X線撮影をしより効果的に利用する方法として規格撮影が提示されている。長期にわたる臨床研究や予後の判定においてはことに有用である。このとき問題となるのはX線の幾何学的関係の維持とX線照射量の再現性である。前者について従来用いられてきた口内維持装置に拠る場合、わずかな歯の動きに依存して大きく像が変化することがある。ここでは動きによるずれを最小限にするため焦点-被写体間距離をできるだけ大きくした。このために頭部X線規格装置を利用した。その結果極めて再現性の高いX線写真像が得られた。この手法をより現実的にするため頭部固定具を新たに作成した。現在、ファントムを用いて、その再現性を検討中である。一方、後者においては写真濃度を校正するプログラムを作成し、これをファントムを用いた実験、及び初期治療を行なった患者のX線写真に応用したところ、良好な結果が得られた。以上から本研究は今後、当初の課題であったX線検査の選択基準の決定に当たって、ひとつの資料になるといえた。このような地道な歯科X線写真の解析を積み重ねることが重要と考える。頭部固定装置を設計,作製した.本装置は1.乾燥骨を用いた擬似疾患について,病変の検出限界を決定すること.2.生体を対象とした口内法撮影において,その規格化を図ることを目的として設計された.頭部規格撮影における頭部固定法とほぼ同一で,すなわち耳桿により左右ならびに前後方向の固定を図り,また顎おさえにより上下方向の固定を行なった.乾燥骨においては,さらに正中矢状面と左右耳桿を結ぶ線分との交点を中心として,いづれの三方向への回転を可能とし,その回転角度の測定をも可能とした.本研究の第一の目的は乾燥骨にX線透過性の擬似疾患を作製し,病変の大きさないし,密度についてその検出限界を決めることであった.これは同時にX線の投影角度,写真濃度その他の因子の影響を受けるため,これを考慮した実験モデルを作る必要があった.したがって例えば投影角度については前述の固定装置を必要とした.もう一つの問題は擬似疾患の作製法であった.かつて我々は隣接面エナメル質ウ蝕の作製にあたって,ドリルで穴をあけそこを軟部組織相当物質によって埋める手法を用いた.研究目的によってはこれでも良いが,本研究においては不適切といえる.人工的に脱灰病巣を作ることは液のPH,モル濃度,温度時間等を考慮したものの現在のところ成功していない.骨の透過性病変についてはさらに困難が予想される.口内法撮影の規格化は本装置により一定の成果を得た.
KAKENHI-PROJECT-62570890
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歯科診療過程におけるX線検査の選択基準の決定
この場合, X線焦点-被写体正中矢状面までの距離を150cmとし,照射野は患者皮膚面において6cmφとした.フィルムは事前に得た歯型から平行法用ホルダーを用いて固定した.後ボランティアを対象とした月1回の撮影で得られた複数のX線写真の幾何学的再現性は定量的と評価された.それは極めて満足のいくものであり今後,主に歯槽骨の変化の経年的変化を把握する上で,重要なステップとなった.歯科診療過程におけるX線検査の有用性は甚だ大きい。日常の診療においては欠くことの出来ない検査の方法であることは既によく知るところであるが,かならずしもその選択基準は明確ではない。本研究では基礎的X線検査に関連した資料の作成を試みた。(1)頭部規格撮影装置を利用した。口内法撮影によりサブトラクション法をより現実的なものとし,本システムは,歯周病,根光病巣等の経過観察に使いて有用であり,昨年度作成した,頭部固定装置を使用して,再現性の高いX線写真像が得られた。現在もファントームを用いて実験中である。(2)長期にわたる臨床研究では予後の判定が問題となるX線幾何学的関係の維持とX線照射線量の再現性が問題点であり,この為には写真濃度を校正するデジタルサブトラクションのプログラムを作成し,これをフアントームを用いた実験を行った。又,初期治療を行った患者のX線写真に応用したところ良い結果を得た。本研究では当初の課題であったX線検査の選択基準の決定にはひとつの資料になるといえるが,本研究の目的とする課題はあまりにも遠大であり短日に出来得ない多くの課題を残した。
KAKENHI-PROJECT-62570890
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音声操作式書字介助機器の実現のための障害音入力部の開発
1.はじめに運動機能が重度に障害された脳性麻痺症例における書字能力の障害は、社会生活上の重大な障害となることがある。このため残存する運動機能を入力手段とし、カ-ソル移動により画面上の五十音表から文字を選択する方式の書字介助機器(障害者用特殊ワープロ)の開発がおこなわれてきた。しかし、緊張時に操作困難になるなど、機器の存在意義に反し改良すべき問題が多い。音声認識による併用操作は限定語であっても有効であるが、この応用は遅れている。本研究では、発生可能な単音節を認識して文字選択をおこなう方法の書字介助機器への応用について検討し、音声入力部の開発をおこなった。2.実施方法専門医や使用者との意見交換を参考にし、/a/から/N/までの45単音節の発声行為を入力手段に選択した。使用者が発声した単音節を認識し、文字マトリクス内のカ-ソル走査の開始位置を決定することで、文字入力作業を支援するシステムについて、実現方法を検討し、パソコンおよび周辺装置を使用してこれを試作した。脳性麻痺症例が発声した音声を収録し、障害音入力部に入力した結果を用いて試作システムの改良余地を含めた全体的な評価をおこなった。3.得られた知見および今後への課題本研究によって、ある程度の緊張時にも音声認識による操作が可能な文字選択方式が実現できた。既存の入力方式に比較すると操作効率の面で音声認識の併用操作方式は有効であることが確認できた。対象とした文字入力方式では、単音節音声の併用が有効であると考えられる。認識困難な単音節の入力にそなえ、文字選択手続き側の工夫も必要であると思われる。今後、聞き分け困難な単音節の認識方法につき、実装を意識して検討を進める計画である。1.はじめに運動機能が重度に障害された脳性麻痺症例における書字能力の障害は、社会生活上の重大な障害となることがある。このため残存する運動機能を入力手段とし、カ-ソル移動により画面上の五十音表から文字を選択する方式の書字介助機器(障害者用特殊ワープロ)の開発がおこなわれてきた。しかし、緊張時に操作困難になるなど、機器の存在意義に反し改良すべき問題が多い。音声認識による併用操作は限定語であっても有効であるが、この応用は遅れている。本研究では、発生可能な単音節を認識して文字選択をおこなう方法の書字介助機器への応用について検討し、音声入力部の開発をおこなった。2.実施方法専門医や使用者との意見交換を参考にし、/a/から/N/までの45単音節の発声行為を入力手段に選択した。使用者が発声した単音節を認識し、文字マトリクス内のカ-ソル走査の開始位置を決定することで、文字入力作業を支援するシステムについて、実現方法を検討し、パソコンおよび周辺装置を使用してこれを試作した。脳性麻痺症例が発声した音声を収録し、障害音入力部に入力した結果を用いて試作システムの改良余地を含めた全体的な評価をおこなった。3.得られた知見および今後への課題本研究によって、ある程度の緊張時にも音声認識による操作が可能な文字選択方式が実現できた。既存の入力方式に比較すると操作効率の面で音声認識の併用操作方式は有効であることが確認できた。対象とした文字入力方式では、単音節音声の併用が有効であると考えられる。認識困難な単音節の入力にそなえ、文字選択手続き側の工夫も必要であると思われる。今後、聞き分け困難な単音節の認識方法につき、実装を意識して検討を進める計画である。
KAKENHI-PROJECT-05771097
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05771097
オリゴデンドロ前駆細胞による脳内炎症制御からアプローチする双極性障害の病態解明
本申請研究は、成体脳におけるオリゴデンドロサイト前駆細胞(NG2グリア)が脳内炎症制御に関わる分子機構を明らかにするとともに、精神疾患である双極性障害の発症に関わる可能性について調べることを目的とする。これまでに、我々はNG2グリアの選択的除去実験から、NG2グリアがマイクログリアの活性化機構に関わる可能性を示唆してきた。本申請研究ではその分子機構を解明する目的で、複数の候補分子群について組織化学的および生化学的手法により検討してきた。本年度は、当初の研究計画にあったloxP-IL4/IL13KOマウスを入手し、NG2-creマウスとの交配により、NG2グリア選択的にIL4/IL13発現欠損させることに成功した。IL4/IL13は末梢組織でのマクロがファージの活性化機構に関与する分子群である。我々はNG2グリアの選択的除去が脳内でのIL4およびIL13発現を低下させることを明らかにしてきた。そこで、NG2-cre-IL4/IL13KOマウスを用いて、NG2細胞特異的にIL4/IL13発現抑制させた条件下で、脳内炎症を誘発させたところ、脳内での炎症性サイトカイン(特に、IL-6およびTNF-a)発現が上昇した。この結果は、NG2グリアがIL4/IL13を介して、炎症性サイトカイン産生(脳内炎症の増悪)を抑制している可能性を示唆した。また、昨年度まで候補分子として着目してきた肝細胞増殖因子(HGF)については、脳内炎症誘発モデルにおける遺伝子発現解析実験の結果を考慮し、保留することとした。本申請研究における目的の一つがNG2グリアによる脳内炎症制御機構の解明である。本年度は、遺伝子改変マウスを用いて、NG2グリアがIL4/IL13を介して、脳内炎症を制御している可能性を示唆する成果を得た。しかし、もう一つの目的であるNG2グリアが双極性障害の発症に寄与するについては、使用するNG2-HSVtkトランスジェニックラットの繁殖状況や使用機器のトラブルにより充分に検討することができなったため、当初の予定よりやや遅れている。今後は、NG2グリア-脳内炎症-双極性障害の関連性について検討する。本申請研究は、成体脳におけるオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)が脳内環境保全にどのような役割を果たすのかを明らかにするとともに、精神疾患である双極性障害の発症に関わる可能性について探ることを目的とする。成体脳におけるOPCは他のグリア細胞を産生する前駆細胞としての機能はよく知られているが、それ以外の機能については明らかにされていない。これまでに、OPCの新たな機能を探る目的で、OPCを選択的に除去するための遺伝子改変ラットを作製し、成体脳でのOPCを除去した。その結果、多数のM1タイプマイクログリアが集積することを見出した。一方、M2マイクログリアは全く観察されなかった。本年度は、OPCによるマイクログリア活性化に関わる分子メカニズムを探る。末梢組織においては、T細胞から産生される抗炎症性サイトカイン(IL-4およびIL-13)がM2マクロファージの活性化に関わることが知られている。そこで、正常ラットおよびpolyIC誘発脳内炎症モデルラットにおけるOPCでのIL-4およびIL-13発現について、免疫染色法により検討した。しかし、いまのところ良好な陽性所見は得られていない。現在、OPCにおける抗炎症性サイトカイン発現については、免疫染色法に加え、FACS法を用いて検討中である。また我々は、OPCによるマイクログリアの活性化制御に関わる新たな分子を探索する目的でマイクロアレイ解析を行った。複数の候補分子の中から肝細胞増殖因子(HGF)に着目した。OPCがHGFを発現することを免疫染色法により確認した。さらに、HGFの脳内投与がOPC除去により観察されたマイクログリアの活性化を抑制することも明らかにした。このことは、OPCにより産生されたHGFがマイクログリアの活性化を制御する可能性を示唆した。本年度の研究計画はOPCによるミクログリア活性化に関わる分子メカニズムを探ることであり、当初想定していたものとは異なる分子が関わる可能性を見出しつつある。この点において予定通り成果を得ることができたと考える。本申請研究は、成体脳におけるオリゴデンドロサイト前駆細胞(NG2グリア)が脳内環境保全にどのような役割を果たすのかを明らかにするとともに、精神疾患である双極性障害の発症に関わる可能性について調べることを目的とする。これまでに、我々はNG2グリアの選択的除去実験から、NG2グリアが炎症制御を介して、脳内環境保全に関わる可能性を示唆してきた。さらに、NG2グリアが直接的または間接的にマイクログリアの活性化機構に関わる可能性も示した。本年度は、昨年度に引き続き、OPCによる脳内炎症制御に関わる分子機構の解明研究を実施した。昨年度は、複数の候補分子の中から肝細胞増殖因子(HGF)に注目し、1NG2グリアにおけるHGF発現、2HGF脳内投与によるマイクログリア活性化抑制などを明らかにした。今年度は、NG2グリア特異的HGF欠損マウス作製のための準備を行いつつ、その他の候補分子について検索した。その結果、INFAR2、CD4などの分子がOPC除去後経時的に変化することを見出した。現在、これら分子について詳細な解析を実施している。
KAKENHI-PROJECT-16K10232
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K10232
オリゴデンドロ前駆細胞による脳内炎症制御からアプローチする双極性障害の病態解明
また、我々は末梢組織(特に、毛包)におけるNG2陽性細胞の存在を明らかにするとともに、毛包NG2細胞が中枢神経系と同様に、分裂活性を有することや毛包形成細胞を産生する可能性を示唆することも明らかにした。さらに、毛包NG2細胞のin vivoイメージング法を確立し、毛周期のモニタリングに利用できることも示した。本年度の研究計画は、NG2グリア(OPC)による脳内炎症制御機構の分子メカニズムを解明することが主目的である。本年度は、昨年度のHGFに加えて、NG2グリア除去により複数の分子(INFA2RやCD4)が変更することを明らかにしてきた。現在のところ、詳細な分子メカニズムの解明には至っていないが、NG2グリア(OPC)による脳内炎症制御機構に新たな免疫担当細胞の関与を示唆するデータを得つつあり、今後につながるものと考える。この点において、予想通りの成果を得ることができたと考える。本申請研究は、成体脳におけるオリゴデンドロサイト前駆細胞(NG2グリア)が脳内炎症制御に関わる分子機構を明らかにするとともに、精神疾患である双極性障害の発症に関わる可能性について調べることを目的とする。これまでに、我々はNG2グリアの選択的除去実験から、NG2グリアがマイクログリアの活性化機構に関わる可能性を示唆してきた。本申請研究ではその分子機構を解明する目的で、複数の候補分子群について組織化学的および生化学的手法により検討してきた。本年度は、当初の研究計画にあったloxP-IL4/IL13KOマウスを入手し、NG2-creマウスとの交配により、NG2グリア選択的にIL4/IL13発現欠損させることに成功した。IL4/IL13は末梢組織でのマクロがファージの活性化機構に関与する分子群である。我々はNG2グリアの選択的除去が脳内でのIL4およびIL13発現を低下させることを明らかにしてきた。そこで、NG2-cre-IL4/IL13KOマウスを用いて、NG2細胞特異的にIL4/IL13発現抑制させた条件下で、脳内炎症を誘発させたところ、脳内での炎症性サイトカイン(特に、IL-6およびTNF-a)発現が上昇した。この結果は、NG2グリアがIL4/IL13を介して、炎症性サイトカイン産生(脳内炎症の増悪)を抑制している可能性を示唆した。また、昨年度まで候補分子として着目してきた肝細胞増殖因子(HGF)については、脳内炎症誘発モデルにおける遺伝子発現解析実験の結果を考慮し、保留することとした。本申請研究における目的の一つがNG2グリアによる脳内炎症制御機構の解明である。本年度は、遺伝子改変マウスを用いて、NG2グリアがIL4/IL13を介して、脳内炎症を制御している可能性を示唆する成果を得た。しかし、もう一つの目的であるNG2グリアが双極性障害の発症に寄与するについては、使用するNG2-HSVtkトランスジェニックラットの繁殖状況や使用機器のトラブルにより充分に検討することができなったため、当初の予定よりやや遅れている。平成29年度も引き続き、OPCによるミクログリア活性化に関わる分子メカニズムを解明する。そのターゲットして、新たに見出したHGFおよび抗炎症性サイトカインに着目しながら、より詳細な解析を行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-16K10232
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赤外分光を用いた骨系細胞の力学応答現象計測
赤外分光法を用いた生体分子の非標識・経時的観察法を,骨系細胞の力学応答現象の計測手法に適用することを試みた.赤外分光の光路となる半導体プリズムを細胞培養基板として用いることにより,基板上の培養接着細胞の情報が赤外光の吸光度として検出されることを確認した.また,赤外分光装置内に細胞外液の流れ刺激を模す力学実験系への展開が可能な細胞培養観察系を構築するとともに,それらを用いた赤外分光計測による細胞動的過程の検出・評価法に関する知見を得た.赤外分光法を用いた生体分子の非標識・経時的観察法を,骨系細胞の力学応答現象の計測手法に適用することを試みた.赤外分光の光路となる半導体プリズムを細胞培養基板として用いることにより,基板上の培養接着細胞の情報が赤外光の吸光度として検出されることを確認した.また,赤外分光装置内に細胞外液の流れ刺激を模す力学実験系への展開が可能な細胞培養観察系を構築するとともに,それらを用いた赤外分光計測による細胞動的過程の検出・評価法に関する知見を得た.赤外分光を用いて細胞応答現象を観察・評価するため,既存設備である赤外分光装置の試料室内に培養細胞の観察系を構築した.半導体プリズムを細胞の培養基板に用いた細胞培養セルを製作し,赤外光によりプリズム基板上の細胞の情報が検出されることを確認した,検出された1650cm^<-1>および1550cm^<-1>の赤外光の吸収スペクトルピークは,プリズムのみの場合や培養セル内に蒸留水を満たした場合には検出されず,液体培地由来のスペクトルピークに比して高いピーク強度で検出されたことから,プリズム表面に接着した細胞内のタンパク質に由来するアミド結合のスペクトルピークが検出されたものと考えられる.また,細胞培養セルに灌流路を接続し,力学実験系の設計・構築を試みた.培地を灌流しながらの赤外分光計測については,少ない流量(20μl/min)下において,赤外分光装置の試料室内での長期間培養(7days)が可能であることを確認した.この観察系を用いて,脂肪前駆細胞3T3-L1の脂肪細胞への分化過程を経時的に計測し,分化にともなう細胞内の脂質形成過程をとらえた(投稿準備中).今後,骨系細胞の細胞応答を惹起する力学刺激量の付与と,その流量に耐えうる細胞培養セルの再設計が必要である.このほか,灌流路を用いない観察系を用いた,懸濁液中のミトコンドリアによるアデノシン三リン酸(ATP)の合成過程,および,加水分解過程を表面赤外分光法で経時的に測定した研究成果について,学術雑誌にて報告(Appl Phys.Lett.Vol.98,133703)するとともに,国際学会,国内学会で発表した.前年度に引き続き,赤外分光を用いて細胞応答現象を観察・評価するため,赤外分光装置の試料室内に培養細胞に対する実験系,および,観察系を設計・構築した。本年度は,本研究課題で目標としている力学実験系への展開に先立ち,赤外分光計測による細胞動的過程の検出・評価法について検討した.前年度に構築した,赤外分光装置内での長期培養系において,灌流培地に薬剤を添加することにより,生化学刺激に対する細胞応答観察系を構築した.この観察系を用いて,薬剤投与下の脂肪前駆細胞3T3-L1の脂肪細胞への分化過程を経時的に計測した.脂肪細胞への分化過程の赤外分光計測においては,脂肪生成にともないエステル結合に帰属される1739cm^<-1>周辺の赤外吸収スペクトルピークの増強が認められる.これに対し,抗肥満作用として脂肪滴形成を促進する薬剤,ならびに,脂肪生成を阻害する薬剤投与下において脂肪細胞への分化過程の赤外分光計測を試みたところ,それぞれ赤外吸収スペクトルピーク強度の増加,減少が計測された.これらの赤外吸収スペクトルの経時変化は,それぞれの薬剤投与にともなう脂肪生成促進と脂肪生成阻害に由来すると考えられる(投稿準備中).また細胞培養セル中の試料に対し,赤外分光計測と並行して光学顕微鏡による観察をおこなった.脂肪細胞分化の経時的計測において,脂肪生成に由来する赤外吸収スペクトルピーク強度の増加が,光学顕微鏡観察により脂肪滴形成が認められるよりも早く検出される様子が観察された.このことは,赤外分光を用いた非標識非侵襲計測法が,細胞の動的過程にともなう形態変化に先行する細胞内組成の変化を計測しうる有用な手法であることを示している.
KAKENHI-PROJECT-22860002
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差分方程式の解析的研究
このとき、ある条件のもとに、方程式(1)は、形式解(2)yj=【g(^(i)_1)】,【x^(-1/M)】+【g(^(i)_2)】【x^(-2/m)】+...+【g(^(i)_N)】【x^(-N/μ)】+...(μ=m-1)をもち、【x^μ】のリーマン面の各sheetにおいて、正の主軸を含むある領域で形式解(2)を漸近展開とする(1)の正則解の存在を証明した。3.S.TanakaのOn asymptotic Solutions of analytic diffarenee oquations(1986)におけるB=(bij)は三角行列と仮定したが、本研究において、この仮定が不要であることがわかった。このとき、ある条件のもとに、方程式(1)は、形式解(2)yj=【g(^(i)_1)】,【x^(-1/M)】+【g(^(i)_2)】【x^(-2/m)】+...+【g(^(i)_N)】【x^(-N/μ)】+...(μ=m-1)をもち、【x^μ】のリーマン面の各sheetにおいて、正の主軸を含むある領域で形式解(2)を漸近展開とする(1)の正則解の存在を証明した。3.S.TanakaのOn asymptotic Solutions of analytic diffarenee oquations(1986)におけるB=(bij)は三角行列と仮定したが、本研究において、この仮定が不要であることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-61540090
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鼻・副鼻腔乳頭腫における癌化メカニズムの解明と予測マーカーの確立
鼻・副鼻腔乳頭腫症例、乳頭腫由来癌症例における組織内遺伝子解析を行い、鼻・副鼻腔乳頭腫発生における乳頭腫ウイルスの関与、癌化メカニズムを解明すること、またSCC抗原の構成タンパクであるSCCA1、SCCA2の組織内発現、血清値を解析し、腫瘍マーカーとしての有用性を検討することが本研究の目的である。最終年度は、鼻・副鼻腔乳頭腫症例、乳頭腫由来癌、上顎洞癌症例で組織内、血清SCCA1、SCCA2発現量の確認、発現に関わる分子メカニズムや癌化に関わる遺伝子を同定するための研究を行った。その結果SCCA1、SCCA2発現は鼻・副鼻腔乳頭腫、乳頭腫由来癌、上顎洞癌症例いずれにおいても亢進している例が存在することが確認できた。ただ、鼻・副鼻腔乳頭腫ではSCCA1発現が優位である一方で、乳頭腫由来癌症例ではSCCA2発現が優位であった。この現象は組織内発現だけではなく、血清値でも同様の傾向が認められ、血清SCCA1,SCCA2を測定することによって乳頭腫と癌の鑑別を行得る可能性があり、補助診断ツールとして有用であることが示唆された。SCCA1、SCCA2の発現に関わる転写因子を解析するためにそれぞれの遺伝子プロモータ領域の解析を行ったが、SCCA1、2の発現を調整しているメカニズムの解明には至らなかった。また、がん化のメカニズムを解明するために乳頭腫由来癌症例における乳頭腫組織とがん組織で発現に差が認めれる遺伝子の解析を行った結果、p53発現に差が認められ、p53が乳頭腫からがん化を来す過程での重要な因子であることが示唆された。鼻・副鼻腔乳頭腫症例、癌合併乳頭腫症例における組織内遺伝子解析を行い、鼻・副鼻腔乳頭腫発生における乳頭腫ウイルスの関与、癌化メカニズムを解明し、またSCC抗原の構成タンパクであるSCCA1、SCCA2の組織内発現、血清値を解析し、腫瘍マーカーとしての有用性を検討することが本研究の主たる目的である。初年度は、学内倫理委員会の承認が得られたため、臨床サンプル(血液、組織)を用いてSCCA1、SCCA2の発現解析を行った。まだサンプル数としては少ないながらも、鼻・副鼻腔乳頭腫症例と癌合併乳頭腫症例とではSCCA1、SCCA2の発現量は明らかに異なっていた。乳頭腫症例では組織内SCCA1発現量が有意に高いのに対して、癌合併乳頭腫、上顎癌へと移行していくのに伴い、SCCA1発現量は減少、逆に組織内SCCA2発現量が増加する傾向が認められた。現在血清サンプルを用いてさらに解析を進めている状況である。今後、血清値にて同様の傾向が認められば、カットオフ値を設定することによって乳頭腫が癌化しているのか血液検査にて予測できる可能性がある。29年度以降は、乳頭腫症例、癌合併乳頭腫、上顎癌症例で、SCCA1、SCCA2の発現に関わる分子メカニズムを網羅的に解析していきたいと考えている。当初、28年度はDNAマイクロアレイを行う計画であったが、臨床研究を行う上での倫理委員会の承認が得られたため、臨床サンプル(血液、組織)を用いたSCCA1,SCCA2発現の解析を行っており、計画通りに進捗している。鼻・副鼻腔乳頭腫症例、癌合併乳頭腫症例における組織内遺伝子解析を行い、鼻・副鼻腔乳頭腫発生における乳頭腫ウイルスの関与、癌化メカニズムを解明し、またSCC抗原の構成タンパクであるSCCA1、SCCA2の組織内発現、血清値を解析し、腫瘍マーカーとしての有用性を検討することが本研究の目的である。初年度は、学内倫理委員会の承認が得られたため、臨床サンプル(血液、組織)を用いてSCCA1、SCCA2の発現解析を行った。その結果、鼻・副鼻腔乳頭腫症例と癌合併乳頭腫症例とではSCCA1、SCCA2の発現量は明らかに異なっていた。乳頭腫症例では組織内SCCA1発現量が有意に高いのに対して、癌合併乳頭腫、上顎洞癌へと移行していくのに伴い、SCCA1発現量は減少し、逆に組織内SCCA2発現量が増加する傾向が認められた。血清サンプルを用いた解析においても同様の傾向が確認できたためカットオフ値を設定し、症例数を増やした上でカットオフ値の妥当性を検証している。30年度は、乳頭腫症例、癌合併乳頭腫、上顎洞癌症例で、SCCA1、SCCA2の発現に関わる分子メカニズムや癌化に関わる遺伝子を同定するための網羅的解析に着手する予定である。臨床サンプル(血液、組織)を用いたSCCA1,SCCA2,SCC抗原の発現解析は終了し、現在マイクロアレイを用いて鼻・副鼻腔乳頭腫が癌化を来す上で重要な役割を担っていると思われる遺伝子の同定を行っている。鼻・副鼻腔乳頭腫症例、乳頭腫由来癌症例における組織内遺伝子解析を行い、鼻・副鼻腔乳頭腫発生における乳頭腫ウイルスの関与、癌化メカニズムを解明すること、またSCC抗原の構成タンパクであるSCCA1、SCCA2の組織内発現、血清値を解析し、腫瘍マーカーとしての有用性を検討することが本研究の目的である。最終年度は、鼻・副鼻腔乳頭腫症例、乳頭腫由来癌、上顎洞癌症例で組織内、血清SCCA1、SCCA2発現量の確認、発現に関わる分子メカニズムや癌化に関わる遺伝子を同定するための研究を行った。
KAKENHI-PROJECT-16K11235
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K11235
鼻・副鼻腔乳頭腫における癌化メカニズムの解明と予測マーカーの確立
その結果SCCA1、SCCA2発現は鼻・副鼻腔乳頭腫、乳頭腫由来癌、上顎洞癌症例いずれにおいても亢進している例が存在することが確認できた。ただ、鼻・副鼻腔乳頭腫ではSCCA1発現が優位である一方で、乳頭腫由来癌症例ではSCCA2発現が優位であった。この現象は組織内発現だけではなく、血清値でも同様の傾向が認められ、血清SCCA1,SCCA2を測定することによって乳頭腫と癌の鑑別を行得る可能性があり、補助診断ツールとして有用であることが示唆された。SCCA1、SCCA2の発現に関わる転写因子を解析するためにそれぞれの遺伝子プロモータ領域の解析を行ったが、SCCA1、2の発現を調整しているメカニズムの解明には至らなかった。また、がん化のメカニズムを解明するために乳頭腫由来癌症例における乳頭腫組織とがん組織で発現に差が認めれる遺伝子の解析を行った結果、p53発現に差が認められ、p53が乳頭腫からがん化を来す過程での重要な因子であることが示唆された。29年、30年度に行う計画であった臨床研究を初年度から前倒しで実施している。28年度に行う予定であったDNAマイクロアレイを用いた網羅的解析を29年度より順次開始していく予定である。順調に進捗しており、最終年度でSCCA1、SCCA2の発現に関わる分子メカニズムの解明や癌化に関わる原因遺伝子の特定に至りたいと考えている。初年度に行う予定であったDNAマイクロアレイを次年度に繰り越したため。試薬品の購入のための費用が今年度予定よりもやや少なかったが、次年度は繰り越し分含めて使用予定である。DNAマイクロアレイを行う上での解析費用が生じる予定である。
KAKENHI-PROJECT-16K11235
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地球環境保護に関する国際法制度の創設とその実施における正当性と公正さの主張
1地球環境保護に関する国際法制度が、その遵守を関係諸国に対して要求し得るのは、その制度創設及び実施が正当プロセスに則っていることが必要である。この仮説を実証的に論証していくことが、本研究の目的である。本年度の研究成果は、南極条約体制における国際法制度創設・実施過程の検討を通じて、この仮説をかなりの説得力をもって提示しえることが明らかになったことである。2国立極地研究所及び外務省地球規模問題課における南極条約体制に関する資料の地道な収集・分析・検討の結果、以下の諸点が明らかになった。(1)1970年代以降、南極資源の保存と開発を規律する国際法制度を創設するフォーラムとして、少数の南極利害関係国で構成される協議国会議か、それとも国連総会のような普遍的な機関のどちらが正当性があるかが争われた。(2)協議国会議の開放性と情報公開を求める国際社会の圧力に対して、協議国は、非協議国のオブザーバー参加、会議文書の原則公開、協議国資格取得の条件緩和という一連の制度的改革を行い、協議国会議の正当性を向上させた。これらの措置は、協議国会議の国際社会に対するアカウンタビリティー(説明責任)を向上させたといえる。(3)この正当性向上の結果、1988年鉱物資源活動規制条約には、途上国や非協議国の意向を反映した多くの規定が挿入され、その遵守力向上に貢献した。3鉱物資源条約は、しかしながら、豪国と仏国の署名拒否により発効せず、代わりに1991年に南極環境議定書が採択された。このプロセスには様々な要因が関わるが、その一つとして、開放性の向上した協議国会議国際法創設過程に対する非国家アクター、特に環境NGOの影響が挙げられる。これも、別の意味で、協議国会議のアカウンタビリティーを向上させ、究極的には、そこで創設される国際法の遵守力を向上させると思われる。1.地球環境保護を目的とする国際法の普遍的な遵守を確保する要因として、法形成過程の正当性と法の実質的公正さが提示されるのではないか。この仮説を論証していくことが、本研究の目的である。そして、本年度の研究成果として、この仮説を提示することの妥当性が、理論的に根拠づけられた。2.本研究の成果である拙稿「国際法における公正-フランク国際法学の主眼と課題-」において、以下の3点が明らかになった。第一に、国際法形成過程の正当性や公正さを語ることは、理論的に十分な根拠があること、すなわち、フランク教授が論証したように、国際社会は共通の道徳的認識を有する国際共同体として成立しつつあり、その共同体で共有される正当性と公正の準則が明らかになりつつあるのである。第二に、地球環境保護を目的とする国際法の場合には、特に、資源や負担の公正な分配に至る「正当プロセス」が重要な機能を果たすこと。この点は、例えば、深海底資源を人類の共同遺産とすること自体には合意ができていても、それを実現する国連海洋法会議の「公正手続」が問題にされたことからも分かる。そして第三に、この「正当プロセス」、すなわち国際法の創設・実施過程の手続的・組織的正当性については、フランク教授自身詳細な検討をしておらず、従って、後世に託された課題として残っていることである。3.従って、本研究では、引き続き、先の仮説を論証するために、今度は実証的に地球環境保護に関する国際法の創設・実施過程を検討していく、南極環境の保護に関する国際法制度が当面の検討対象であるが、現在までのところ資料収集が中心である。1地球環境保護に関する国際法制度が、その遵守を関係諸国に対して要求し得るのは、その制度創設及び実施が正当プロセスに則っていることが必要である。この仮説を実証的に論証していくことが、本研究の目的である。本年度の研究成果は、南極条約体制における国際法制度創設・実施過程の検討を通じて、この仮説をかなりの説得力をもって提示しえることが明らかになったことである。2国立極地研究所及び外務省地球規模問題課における南極条約体制に関する資料の地道な収集・分析・検討の結果、以下の諸点が明らかになった。(1)1970年代以降、南極資源の保存と開発を規律する国際法制度を創設するフォーラムとして、少数の南極利害関係国で構成される協議国会議か、それとも国連総会のような普遍的な機関のどちらが正当性があるかが争われた。(2)協議国会議の開放性と情報公開を求める国際社会の圧力に対して、協議国は、非協議国のオブザーバー参加、会議文書の原則公開、協議国資格取得の条件緩和という一連の制度的改革を行い、協議国会議の正当性を向上させた。これらの措置は、協議国会議の国際社会に対するアカウンタビリティー(説明責任)を向上させたといえる。(3)この正当性向上の結果、1988年鉱物資源活動規制条約には、途上国や非協議国の意向を反映した多くの規定が挿入され、その遵守力向上に貢献した。3鉱物資源条約は、しかしながら、豪国と仏国の署名拒否により発効せず、代わりに1991年に南極環境議定書が採択された。このプロセスには様々な要因が関わるが、その一つとして、開放性の向上した協議国会議国際法創設過程に対する非国家アクター、特に環境NGOの影響が挙げられる。これも、別の意味で、協議国会議のアカウンタビリティーを向上させ、究極的には、そこで創設される国際法の遵守力を向上させると思われる。
KAKENHI-PROJECT-09720019
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09720019
周期積分の圏化と安定性条件の空間上のフロベニウス構造の研究
共同研究者の清華大学のQiu Yu氏と共に、カラビ・ヤウ代数の次元が複素数値であると思える,Bridgeland安定性条件のq-変形であるq-安定性条件の空間について基礎理論を確立し、論文にまとめることができた。また、これを用いてADE型の箙に付随したカラビ・ヤウ代数の導来圏のq-安定性条件の空間についての記述を予想し、その予想をA型箙の場合に証明をした。さらに、この結果をより一般の曲面の多角形分割に付随したポテンシャル付き箙の場合に拡張する理論を確立して、カラビ・ヤウ3次元の安定性条件の空間を記述する理論であるBridgeland-Smith理論の高次元化に相当する結果を得ることができた。この際に、リーマン面上の多価2次微分であるq-2次微分などの新たな概念を導入した。これらの結果も論文にまとめた。結果として、当初の研究計画に沿って結果を出し、2本の論文にまとめることができた。これら2本の論文はarXiv:1807.00469とarXiv:1812.00010に載せ、現在ジャーナルに投稿して査読中である。申請した研究予定について多くの部分を前年度の平成29年度に完遂することができた。今年度の平成30年度はこの結果の詳細を詰めて、研究論文の2本書くことができた。これらについては、現在雑誌に投稿中である。当初の研究計画に関してはかなり進展が見られた結果、研究成果として得られたq-安定性条件はシンプレクティック特異点解消に関連した幾何学的表現論に応用がありそうなことがわかってきたので、現在はその方向性にさらなる研究を進めている。また、次年度の31年度は本研究の最終年度なので、得られた研究成果については研究発表を積極的に行っていく予定である。本研究の目的は、周期積分を三角圏の安定性条件の空間を用いて圏論的に解釈・構成するというものである。今年度は当初の研究計画に従い、(1)カラビ・ヤウ圏の次元を複素化したものに相当する圏の構成と、その上の安定性条件の空間の構成(2)曲面のN角形分割に付随したポテンシャル付き箙を用いてのN次元のカラビ・ヤウ圏の構成という二つの方向性で研究を行った。(1)については、カラビ・ヤウ完備化をトーラス作用付きの次数付き微分環に一般化する、またその上にトーラス同変な安定性条件の空間を構成し、トーラス作用のウェイトのシフトを複素カラビ・ヤウ次元と同一視するという研究成果は得られており、現在研究成果を論文にまとめている最中である。(2)については、共同研究者の香港大学のQiu Yu氏とメールで議論を進め、N角形分割に付随したポテンシャル付き箙の構成方の候補を発見することはできた。しかしながら、主要な性質の証明が終わっていないため、今後も共同で研究を進める予定である。またこの研究に関連して、三角圏の自己関手の圏論的エントロピーを、安定性条件を用いて圏の対象の質量成長という概念を導入し、これを用いて表す公式を開発することが出来た。この研究成果は、この研究の目的である''周期積分=安定性条件の中心電荷''という背景にある哲学を強く反映するものであり、本研究の方向性が正しいことを示唆するものである。この研究成果についてはすでに論文を書き、ジャーナルに投稿済みである。上で書いた(1)については、すでに研究成果が得られている。ただし、論文執筆が完了していないため、来年度は論文執筆を早急に完了させたい。(2)についても、共同研究者と共に研究は進んでおり、一定の成果が得られている。今後も継続して研究を進めることで成果が得られることが期待される。また、この研究を通して、当初は予想していなかった圏論的エントロピーについても、周期積分と安定性条件の対応を通して研究成果を得ることができ、論文にまとめることが出来たのは良い成果であると言える。今年度は共同研究者のQiu Yu氏と共に、複素数を次元とするカラビ・ヤウ代数の構成、及びその導来圏の上のq-安定性条件の空間の構成を行った。また、これらの代数や空間について基本的な性質を調べ、様々な定理を示すことに成功した。特に、安定性条件を具体的に構成するために様々な新しい概念を導入し、q-安定性条件を構成する定理を発見することができた。それら新しい概念や定理を用いて、当初予定していた研究を大幅に進めることができた。結果として、研究計画に書いた、リーマン面上の二次微分の周期積分と安定性条件の空間の関係を、Bridgeland-SmithやHaiden-Katzarkov-Kontsevichによる知られていた理論を含む形で、より強い形の結果が得られた。また、ADE型の箙のカラビ・ヤウ代数の導来圏の安定性条件の空間の構造についてかなり具体的な予想を得ることができ、フロベニウス構造との関係を概ね明らかにすることができた。特にA型については、予想を最後まで証明を得ることができたが、これは前述のリーマン面の二次微分と安定性条件の空間の関係について得られた結果を用いてのことなので、同時進行の研究が相補的な役割をうまく果たした。
KAKENHI-PROJECT-16K17588
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周期積分の圏化と安定性条件の空間上のフロベニウス構造の研究
本研究の大きな2つの目的である、カラビ・ヤウ圏について、(A)安定性条件の空間の中心電荷と周期積分の関係性を明らかにする、(B)この安定性条件の空間Stab(D)上にフロベニウス多様体の構造を構築する、ということについては、予想していた結果をかなり広いクラスについて得ることができたので、大幅な進展があったと言える。現在はこれらの結果を2本の論文として執筆している最中である。今後は、本研究により導入した理論のさらなる発展の方向性の研究や研究成果の発表も積極的に行っていこうと考えている。当初申請した研究計画に関しては、平成29年度と平成30年度の部分に関しては、当初予想していた形より強い形で研究を概ね遂行することが出来たので。今後は細かい所を詰めて、研究成果の詳細を丁寧に書いた論文を書くことを優先事項とする予定である。共同研究者の清華大学のQiu Yu氏と共に、カラビ・ヤウ代数の次元が複素数値であると思える,Bridgeland安定性条件のq-変形であるq-安定性条件の空間について基礎理論を確立し、論文にまとめることができた。また、これを用いてADE型の箙に付随したカラビ・ヤウ代数の導来圏のq-安定性条件の空間についての記述を予想し、その予想をA型箙の場合に証明をした。さらに、この結果をより一般の曲面の多角形分割に付随したポテンシャル付き箙の場合に拡張する理論を確立して、カラビ・ヤウ3次元の安定性条件の空間を記述する理論であるBridgeland-Smith理論の高次元化に相当する結果を得ることができた。この際に、リーマン面上の多価2次微分であるq-2次微分などの新たな概念を導入した。これらの結果も論文にまとめた。結果として、当初の研究計画に沿って結果を出し、2本の論文にまとめることができた。これら2本の論文はarXiv:1807.00469とarXiv:1812.00010に載せ、現在ジャーナルに投稿して査読中である。申請した研究予定について多くの部分を前年度の平成29年度に完遂することができた。今年度の平成30年度はこの結果の詳細を詰めて、研究論文の2本書くことができた。これらについては、現在雑誌に投稿中である。来年度については、(1)については論文執筆を完了させ、一方では安定性条件の空間上の接続の構成について研究を進める予定である。これは、当初の研究予定通りにADE箙という最も基本的な例を中心として、具体的な計算を中心に研究を進める。(2)については、共同研究者のQiu Yu氏を日本に招聘し、直接会って議論を進めることで一気に研究を進展させようと考えている。これにより、Bridgeland-Smith理論の高次元化というプログラムが推進されることが期待される。当初の研究計画に書いた、複素数を次元とするカラビ・ヤウ代数やその導来圏の構成、その上の安定性条件の空間の構成、ADE型の箙の場合の具体的な研究、Brigeland-Smith理論の高次元化などについては、かなりの部分が今年度進んだので、次年度はそれらをきちんと論文として完全にまとめきること、またそれらを元にした応用的な研究や発展的な研究を進めていこうと考えている。また、一部はまだ完遂できていない部分があるので、その部分についても完遂しようと考えている。当初の研究計画に関してはかなり進展が見られた結果、研究成果として得られたq-安定性条件はシンプレクティック特異点解消に関連した幾何学的表現論に応用がありそうなことがわかってきたので、現在はその方向性にさらなる研究を進めている。また、次年度の31年度は本研究の最終年度なので、得られた研究成果については研究発表を積極的に行っていく予定である。
KAKENHI-PROJECT-16K17588
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K17588
低線量放射線で誘導される遺伝的不安定性に関する研究
ヒト胎児由来細胞にX線を一日10時間あたり1cGyの低線量率で反復照射を細胞の生涯を通じて行うと、細胞の試験管内寿命(最大細胞集団分裂数)は、40-60%増加したが、いずれの細胞も無限増殖能を獲得するには至らなかった。しかし、結果は平成6年度におこなった1週間に1度、7.5cGyのγ線を反復照射した際と同様に染色体数に異常が起こり、高頻度に異数性(aneuploid)細胞が出現した。通常、ヒト細胞における染色体数は、極めて厳密に維持され、構造異常を高頻度に生ずる線量の放射線照射によって異数性が誘導されるとする報告は殆どないという事実を考慮すると、本研究で観察された現象は、低線量放射照射に特異的な現象である。X線照射後、その細胞集団を培養経時的に細胞におけるコロニー形成能と染色体異常出現頻度を調べたところ、照射後1カ月以上経て、細胞が既に20数回分裂した後であっても、非照射細胞に比べコロニー形成率は50%以上近く、染色体異常は5-20倍高いことがわかった。これらの結果は、いずれも、低線量放射線に対する細胞の応答現象として遺伝的不安定性が誘導される可能性を示唆している。さらに、低線量放射線照射を受けた細胞膜の解析から、この遺伝的不安定性は、細胞膜の異常として細胞に記憶されている可能性が示唆された。ヒト胎児由来細胞にX線を一日10時間あたり1cGyの低線量率で反復照射を細胞の生涯を通じて行うと、細胞の試験管内寿命(最大細胞集団分裂数)は、40-60%増加したが、いずれの細胞も無限増殖能を獲得するには至らなかった。しかし、結果は平成6年度におこなった1週間に1度、7.5cGyのγ線を反復照射した際と同様に染色体数に異常が起こり、高頻度に異数性(aneuploid)細胞が出現した。通常、ヒト細胞における染色体数は、極めて厳密に維持され、構造異常を高頻度に生ずる線量の放射線照射によって異数性が誘導されるとする報告は殆どないという事実を考慮すると、本研究で観察された現象は、低線量放射照射に特異的な現象である。X線照射後、その細胞集団を培養経時的に細胞におけるコロニー形成能と染色体異常出現頻度を調べたところ、照射後1カ月以上経て、細胞が既に20数回分裂した後であっても、非照射細胞に比べコロニー形成率は50%以上近く、染色体異常は5-20倍高いことがわかった。これらの結果は、いずれも、低線量放射線に対する細胞の応答現象として遺伝的不安定性が誘導される可能性を示唆している。さらに、低線量放射線照射を受けた細胞膜の解析から、この遺伝的不安定性は、細胞膜の異常として細胞に記憶されている可能性が示唆された。ヒト胎児由来細胞にガンマー線を連続照射し、がん化形質の発現動態を追跡した。週7.5cGyの照射を細胞の生涯を通じて行うと、細胞の試験管内寿命(最大細胞集団分裂数)は、40-60%増加したが、いずれの細胞も無限増殖能を獲得するには至らなかった。同様の現象は、1日・8時間あたり1cGyの極低線量率の連続照射によっても起こることがわかった。こうした細胞で染色体の構造異常が有意に増加することはなかったが、染色体の数に異常が起こり、高頻度に異数性(aneuploid)細胞が出現する。通常、ヒト細胞における染色体数は、極めて厳密に維持され、構造異常を高頻度に生ずる線量の放射線照射によって異数性が誘導されるとする報告は殆どないという事実を考慮すると、本研究で観察された現象は、低線量放射線照射に特異的な現象であり、低線量放射線に対する応答現象として遺伝的不安定性が誘導される可能性を示唆している。ヒト胎児由来細胞にX線を一日10時間あたり1cGyの低線量率で反復照射を細胞の生涯を通じて行うと、細胞の試験管内寿命(最大細胞集団分裂数)は、40-60%増加したが、いずれの細胞も無限増殖能を獲得するには至らなかった。しかし、結果は平成6年度におこなった1週間に1度,7.5cGyのγ線を反復照射した際と同様に染色体数に異常が起こり、高頻度に異数性(aneuploid)細胞が出現した。通常、ヒト細胞における染色体数は、極めて厳密に維持され、構造異常を高頻度に生ずる線量の放射線照射によって異数性が誘導されるとする報告は殆どないという事実を考慮すると、本研究で観察された現象は、低線量放射線照射に特異的な現象である。X線照射後、その細胞集団を培養し、経時的に細胞におけるコロニー形成能と染色体異常出現頻度を調べたところ、照射後1カ月以上経て、細胞が既に20数回分裂した後であっても、非照射細胞に比べコロニー形成率は50%以上低く、染色体以上は5-20倍高いことがわかった。これらの結果は、いずれも、低線量放射線に対する細胞の応答現象として遺伝的不安定性が誘導される可能性を示唆している。さらに、低線量放射線照射を受けた細胞膜の解析から、この遺伝的不安定性は、細胞膜の異常として細胞に記憶されている可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-06454640
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06454640
限定合理性に関する研究:フレーミング効果と探索費用による意思決定プロセスの分析
本研究の主要な目的は、意思決定者の推論過程について、意思決定理論と行動経済学を包摂するようなモデルを構築し、より良い人間行動の理解を得ることにある。特に、現実の人間行動を理解するために、公理を通して、行動の背後にある意思決定メカニズムの一端を解明することを目的としている。平成28年度の研究成果は以下の通りである。前年度までにワーキングペーパーにまとめることができていたため、平成28年度は研究成果を国内外の学会や研究会で発表し、研究の質的向上に努めた。まず、参照依存的選好(reference-dependent preferences)の論文では、参照点を内生的に導出するモデルを公理化した。この論文については、いくつか公理を修正することになったが、結果として大幅に質的向上を図ることができた。核となる公理の検証をする実験などは今後の課題とする。参照依存的選好の関連研究、特に参照点を内生的に導出する研究との差別化をし、論文の投稿に備えたい。次に、確率的選択の論文では、機会集合(メニュー)の集合を選好のドメインとして、この選好関係を出発点(プリミティブ)として、期待効用理論でよく知られている独立性公理を適切に修正することで、意思決定者のrandomizationに対する態度を特定することを試みた。学会発表によって得たフィードバックから、公理の修正をしつつ、研究の質を高めることに努めた。公理化作業は終えたが、ランダム化に関する選好(Preferences for Randomization)に関する実験との整合性や関連研究との差別化について、不十分なままとなっている。早期にまとめ直し、投稿に備えたい。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。本研究の主要な目的は、意思決定主体の推論過程について標準的な意思決定理論と行動経済学を包摂するようなモデルを構築することであるが、平成26年度は以下のように部分的に研究成果をまとめることができた。現実の意思決定主体は、自身の選択状況について、標準的な意思決定理論で前提とされる(たとえば、意思決定主体はすべての選択肢について把握し、その中で最も望ましい選択肢を決定することができる)ような形で捉えているとは限らない。そのため、そのような状況から、意思決定主体はどのように選択肢を決定するのか、に関してより一層の理解を深めていくことは重要である。しかしながら、この種の研究は重要と認識されながらも、これまで十分な分析がなされてこなかった。そこで本研究では、主体が持つ情報として選択肢の属性に着目し、それらを基にどのように選択肢を1つ決定するか、という意思決定ルールを定式化した。具体的には、選択肢の各属性ごとに選択肢を評価し、各属性による評価において最も高い評価を持つ選択肢を仮想的に組み合わせた理想的な選択肢(本研究ではtarget pointと呼ぶ)を検討する。意思決定主体はその理想的な選択肢(target point)に最も類似な選択肢を選ぶとする。本研究ではそのモデルをくじの集合上の選好で公理化できることを示した。この研究成果はワーキングペーパーとしてすでにまとめられており、国内外の研究会や学会での報告が予定されている。本研究の主要な目的は、意思決定者の推論過程について標準的な意思決定理論と行動経済学を包摂するようなモデルを構築し、より良い人間行動の理解を得ることにある。特に、意思決定者が、推論に用いる情報として選択肢の「属性」に着目し、その各属性評価を基に意思決定するモデルを分析している。平成27年度の研究成果は以下の通りである。平成26年度にまとめたワーキングペーパーについては、平成27年度の前半に国内外の学会・サマースクールで発表し、フィードバックが得られた。学会発表で得られたフィードバックを基に論文を再構成することに努めた。その際、(i)意思決定者はいかにして各属性の評価を集約するのか、(ii)意思決定者は与えられた選択問題(メニュー)より、いかに参照依存的な選好(reference-dependent preferences)もしくはメニューに依存したアスピレーション・レベル(aspiration levels)が内生的に生じるのか、という問題に着目した。この2つの側面を公理的に分析し、その研究成果を2つのワーキングペーパーの形にまとめた。さらに、属性を基にした意思決定分析に加え、ランダム化に関する選好(Preferences for Randomization)についても検討した。具体的には、確率的選択関数をモデルのプリミティブとするのではなく、選好関係からいかにランダムな選択行動を捉えることができるのか公理的に分析した。現在、十分にまとまったワーキングペーパーについては投稿に備え、改訂作業を行っている。それ以外のワーキングペーパーについては、平成28年度中に国内外での研究会や学会での報告が予定されており、質的向上を目指し、投稿に備える。平成26年度中に完成させたワーキングペーパーについては、平成27年度中に投稿することを目標としていたが、それが持ち越された。一方で、そのワーキングペーパーを進展させる形で、進めていた研究をより一層発展させることができた。さらに、当初想定していなかった研究にも一定の成果を出すことができた。以上により、計画以下の面と計画以上の面があることを考慮し、おおむね順調に進展しているとする。本研究の主要な目的は、意思決定者の推論過程について、意思決定理論と行動経済学を包摂するようなモデルを構築し、より良い人間行動の理解を得ることにある。特に、現実の人間行動を理解するために、公理を通して、行動の背後にある意思決定メカニズムの一端を解明することを目的としている。
KAKENHI-PROJECT-14J05576
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J05576
限定合理性に関する研究:フレーミング効果と探索費用による意思決定プロセスの分析
平成28年度の研究成果は以下の通りである。前年度までにワーキングペーパーにまとめることができていたため、平成28年度は研究成果を国内外の学会や研究会で発表し、研究の質的向上に努めた。まず、参照依存的選好(reference-dependent preferences)の論文では、参照点を内生的に導出するモデルを公理化した。この論文については、いくつか公理を修正することになったが、結果として大幅に質的向上を図ることができた。核となる公理の検証をする実験などは今後の課題とする。参照依存的選好の関連研究、特に参照点を内生的に導出する研究との差別化をし、論文の投稿に備えたい。次に、確率的選択の論文では、機会集合(メニュー)の集合を選好のドメインとして、この選好関係を出発点(プリミティブ)として、期待効用理論でよく知られている独立性公理を適切に修正することで、意思決定者のrandomizationに対する態度を特定することを試みた。学会発表によって得たフィードバックから、公理の修正をしつつ、研究の質を高めることに努めた。公理化作業は終えたが、ランダム化に関する選好(Preferences for Randomization)に関する実験との整合性や関連研究との差別化について、不十分なままとなっている。早期にまとめ直し、投稿に備えたい。平成26年度中に研究会や学会で発表し、フィードバックを得て改訂した後、投稿することが理想であったが、意思決定ルールの公理化という目標は達成された。上記の研究では、1回限りの意思決定状況のみを取り扱っていることや選択肢の属性間の補完性の問題は検討していないため、今後は繰り返し意思決定するような動学的状況の分析や属性間の関係を考慮したモデルの構築を進めていく。平成26年度から進めていた研究については、平成28年度中の投稿を目指す。残りのワーキングペーパーについては、国内外の研究会や学会で発表し、質的向上を目指し、投稿に備える。28年度が最終年度であるため、記入しない。ワーキングペーパーとしてまとめることができた論文は、国内外の研究会や学会で発表し、平成27年度中の投稿を目指す。また、現在進行中の研究プロジェクトに関しては、平成27年度中の草稿の完成を目指す。さらに、本研究で得られた結果は、実験的アプローチや実証的アプローチからどのような知見が得られるのか、検討する。28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-14J05576
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高濃度酸素を用いた肺癌治療法の開発
72人の肺癌患者から癌部と非癌部に分けて、組織マイクロアレイを作成し、HIF-1αの陽性率を調べた。その結果、癌部は非癌部に比較してHIF-1αの陽性率が高く、低酸素環境にあることが判明した。次に、癌と非癌の細胞株を用いて、20%酸素濃度と50%酸素濃度下における細胞生存率を測定した。その結果、50%高濃度酸素下では癌細胞の増殖は抑制されたが、正常細胞の増殖抑制は生じなかった。上記現象の機序を解明するために、H1975とSK-MES-1のcDNAマイクロアレイを行い、pathway解析を行った。その結果、50%高濃度酸素はAMPK pathwayの活性化を通じて細胞増殖を抑制すると考えられた。このことは、各細胞株でwestern blotting及びsiRNAでAMPKをknockdownした時点でのMTS assayでも証明された。以上の結果をin vivoでも確認するため、FGF9過剰発現の肺癌マウスモデルを48時間高濃度酸素下におき、組織の免疫染色を行った。その結果、高濃度酸素により低濃度酸素環境が改善された結果、AMPKが活性化され、癌増殖抑制につながることが判明した。また、上記細胞株において、抗癌剤(ABT-263)に高濃度酸素を併用したところ、細胞増殖抑制の効果が高められることも判明した。以上から、高濃度酸素と抗癌剤の併用により肺癌の増殖を抑制できると考えられた。しかし、HIF-1αとAMPKの活性化の直接的な関連に関しては本研究では解明できておらず、今後さらなる検討が必要である。72人の肺癌患者から癌部と非癌部に分けて、組織マイクロアレイを作成し、HIF-1αの陽性率を調べた。その結果、癌部は非癌部に比較してHIF-1αの陽性率が高く、低酸素環境にあることが判明した。次に、癌と非癌の細胞株を用いて、20%酸素濃度と50%酸素濃度下における細胞生存率を測定した。その結果、50%高濃度酸素下では癌細胞の増殖は抑制されたが、正常細胞の増殖抑制は生じなかった。上記現象の機序を解明するために、H1975とSK-MES-1のcDNAマイクロアレイを行い、pathway解析を行った。その結果、50%高濃度酸素はAMPK pathwayの活性化を通じて細胞増殖を抑制すると考えられた。このことは、各細胞株でwestern blotting及びsiRNAでAMPKをknockdownした時点でのMTS assayでも証明された。以上の結果をin vivoでも確認するため、FGF9過剰発現の肺癌マウスモデルを48時間高濃度酸素下におき、組織の免疫染色を行った。その結果、高濃度酸素により低濃度酸素環境が改善された結果、AMPKが活性化され、癌増殖抑制につながることが判明した。また、上記細胞株において、抗癌剤(ABT-263)に高濃度酸素を併用したところ、細胞増殖抑制の効果が高められることも判明した。以上から、高濃度酸素と抗癌剤の併用により肺癌の増殖を抑制できると考えられた。しかし、HIF-1αとAMPKの活性化の直接的な関連に関しては本研究では解明できておらず、今後さらなる検討が必要である。
KAKENHI-PROJECT-17K16061
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吃音がある小・中学生の包括的・総合的評価バッテリーの開発
本研究では、吃音がある小・中学生の包括的・総合的バッテリーの開発を目指し、(1)国際生活機能分類に基づく幼児・児童吃音実態調査、(2)包括的・総合的評価バッテリーの作成及び有用性の検証を行った。その結果、(1)活動・参加の制約に、吃音、発達・情緒、環境の各要因が関わっていること、(2)評価バッテリーに、評価や指導計画立案に必要な作業の軽減や保護者への説明のわかりやすさの向上等の利点があることが明らかになった。本研究では、吃音がある小・中学生の包括的・総合的バッテリーの開発を目指し、(1)国際生活機能分類に基づく幼児・児童吃音実態調査、(2)包括的・総合的評価バッテリーの作成及び有用性の検証を行った。その結果、(1)活動・参加の制約に、吃音、発達・情緒、環境の各要因が関わっていること、(2)評価バッテリーに、評価や指導計画立案に必要な作業の軽減や保護者への説明のわかりやすさの向上等の利点があることが明らかになった。本年度は、筆者が平成1719年度に科学研究費補助金を得て行った「吃音を持つ児童生徒に対する教育的指導・支援プログラムの開発」で作成した包括的・総合的な吃音評価システム(以下、本システム)を基に、(1)評価項目の精選と改訂版本評価システムの作成、(2)改訂版本評価システムを用いた吃音がある幼児・児童の実態調査に取り組んだ。その結果、(1)本システムの内容を検討し、14項目計104問から構成される改訂版本評価システムを完成させると共に、保護者に対する質問紙、子どもとの評価面接に使用する教材シート等を作成した。改訂版本評価システムは、A.毎日の生活の状況(ことばの教室、家庭、学校等における困難や支障の程度に関する質問から構成:計32問)、B.吃音の言語面と心理面の状況(吃音の言語症状や吃音の心理面の状況に関する質問から構成:計32問)、C.認知・言語・運動発達の状況(言語・認知・運動発達と情緒・情動の障害の有無や状況に関する質問から構成:23問)、D.幼児・児童を取り巻く環境の状況(家庭、学校等における主に対人的な環境に関する質問から構成:15問)から構成され6件もしくは4件の選択肢を設けることで、比較的短時間に評価が行えるように工夫を加えた。(2)関東、北陸地域のことばの教室担当教員や病院勤務の言語聴覚士計8名に依頼し、改訂版本評価システムに基づく幼児・児童(計87名)に対する実態調査質問紙の発送を行った。来年度は、改訂版本評価システムの標準化をめざし、本年度行った実態調査の結果に分析・検討を加えていく予定である。本年度は、平成21年度に実施した吃音がある児童・生徒の実態調査質問紙の回答(幼児・児童87名分)の分析を行うと共に、この分析結果を踏まえた「幼児・学童版の包括的・総合的な吃音評価システム」(以下、評価システム)の作成を行った。児童・生徒の実態調査質問紙の分析は、吃音の言語面の特徴(言語症状)と、毎日の生活の状況、吃音の心理面の状況、認知・言語・運動発達の状況、幼児を取り巻く環境の状況との間の関係性について、相関分析を用いた分析を行った。その結果、(1)吃音の言語症状の内、語音のつまり(ブロック)と、毎日の生活の状況、吃音の心理面の状況、認知・言語・運動発達の状況、幼児を取り巻く環境の状況との間に有意な負の相関関係が見られる、(2)それ以外の吃音の言語症状、(語音の繰り返し、引き伸ばし等)とこれらの項目との間には相関関係は見られない、(3)年齢と吃音の言語症状やこれらの項目との間には相関関係は見られない、ことなどが明らかになった。この結果は、吃音の言語症状の中でも、とりわけ語音のつまりが吃音問題の深刻さに影響を及ぼすことや、吃音の進展には加齢の要因よりも語音のつまりの有無がより関与している可能性があることを示唆するものである。評価システムの作成においては、前述した分析結果を踏まえ、吃音の言語症状の中でも、特に語音のつまりの評価が精緻に行えるようにすると共に、対象者間であまり評価に差がなかった項目を削除する等、質問項目の構成や内容に変更を加えた。来年度は、本年度作成した評価システムを幼児・学童に再度実施してもらい、評価システムの最終版の作成を行う予定である。本研究の目的は、吃音がある小・中学生の包括的・総合的評価バッテリーを開発することである。本年度は、昨年度までに作成した幼児・児童吃音実態調査質問紙の分析・検討結果を踏まえ、「包括的・総合的評価バッテリーを用いた評価用紙」の作成及び、有用性の検証を行った。作成については、幼児・児童吃音実態調査質問紙の分析・検討結果を踏まえ、(a)児童・生徒用質問紙、(b)保護者用質問紙、(c)学級担任用質問紙の3種類の質問紙及び、質問紙の回答を整理、分析するためのツールである(d)幼児・児童の包括的評価整理シートを作成した。(a)については、児童・生徒の吃音進展状況や課題理解の状況を踏まえ、小学校低学年向けと小学校中学年以降の2種類の質問紙を作成した。
KAKENHI-PROJECT-21730716
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21730716