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移植腎3T-MRIにおける拡散係数値(ADC値)による腎線維化評価の有用性 | 結果、IC等の診察の際の環境に関した医療従事者内での認識の差異や、複数のドナー候補者が絞られる過程が医療従事者には不透明であるという事実、ドナーの自発意思の確認をすることへの戸惑い等の医療従事者自身が抱える葛藤や教育制度へのニーズも明らかとなった。これらの結果から、解決すべき問題点・意思決定支援のニーズの可能性が示唆されるが、さらなる多角的な視野を包含するべく、生体腎移植ドナー経験者に対しての調査を計画している。最終的に、生体腎移植ドナーの意思決定に焦点を当てた支援ツールの作成へつなげていきたい。本研究は、生体腎移植ドナーの意思決定過程へ働く因子を明らかにすることを目的とし、文献レビューにてその論点抽出および整理を行った。続いて、その結果を元にしたインタビューガイドを作成し、医療従事者15人を対象とする面接調査を行った結果、ドナー診察の環境整備に関して医療従事者内における認識の差異や、複数のドナー候補者が絞られていく過程の不透明性、ドナーの自発意思の確認への戸惑いや介入への葛藤等が明らかとなった。多角的な側面から意思決定過程を捉えるために、さらに生体腎移植ドナー経験者に対しての調査を行う予定である。最終的に、生体腎移植ドナーの意思決定に焦点を当てた支援ツールの作成へつなげていく。今後は、機関の倫理委員会の判断を得た後、平成27年度に作成したインタビューガイドに基づき、インタビューを本格的に実施する。インタビュー対象者は神戸大学医学部付属病院において腎移植のドナーとなった者(神戸大学医学部付属病院においては、現在までおよそ250例の生体腎移植、およそ45例の献腎移植を実施している)、最終的にドナーとなることを断念した者、臓器移植に携わる医師・医療従事者である。それぞれ説明文書を用いて説明し、同意を得た者を研究参加者とし、順次インタビュー調査を進める。インタビュー参加人数は、生体腎移植のドナーとなった者10名、最終的にドナーとなることを断念した者5名、腎移植に携わった医師・医療従事者35名を目標とする。インタビュー対象者は限られると予想されるので、年齢、性別をコントロールしない。上半期から下半期にかけて、インタビューが終了したものから結果の分析を行う。目標(1)腎移植にポジティブに働く因子、ネガティブに働く因子の同定、目標(2)意思決定プロセスの類型化、目標(3)思決定モデルのタイプ別の評価、の順に暫定的な結果を提示する。実臨床の遂行の妨げとならないように最大限に配慮を行いつつ、腎移植のドナーとなった者(神戸大学医学部付属病院においては、現在までおよそ300例の腎移植を実施している)、最終的にドナーとなることを断念した者のリクルートを、可及的に積極的に行っていく。複合領域当初予定していたよりもドナー患者・ドナー断念患者のリクルートが遅れているため。本年度実施計画を次年度に変更し、実臨床の遂行の妨げとならないよう配慮しつつ、積極的にリクルートを行う。 | KAKENHI-PROJECT-15K01353 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K01353 |
素粒子・原子核・宇宙線実験のための水シンチレーターの開発研究 | 本研究の目的は、従来の有機溶媒をベースにした液体シンチレーターに関わるさまざまな問題点を克服するために、水をベースとした液体シンチレーターを開発することである。本研究では発光剤のみでなく、ベンゼン環を持った分子も同時に水に溶かすことにより、水ベースの液体中で素粒子反応が生じた場合でも蛍光発光を行う液体の開発を行った。ベンゼン環を含み、水に可溶な物質としては、本溶性芳香族物質と、ベンゼン環を含んだ界面活性剤があげられるため、そのような物質をリストアップし、それらと、発光剤であるPPO、bis-MSBなどを、様々な濃度の組み合わせで水に溶かし込み、^<60>Coからのγ線で素粒子反応に対する発光量の測定を行った。また、有意な発光量を持つサンプルに対しては、光減衰長、引火点、安定性などの測定を行った。最終的にベンゼン環をもった界面活性剤と発光剤を水に溶かし込むことにより、水含有量82%、発光量7.2%アントラセン、420nmの波長に対する光減衰長77cm、や水含有量81%、発光量4.0%アントラセン、光減衰長220cmなどの性質をもつ不燃性の液体シンチレーターを得ることができた。これらの性能は、原子核実験や高エネルギー実験などの信号の大きな実験では十分に使用可能な値である。一方加速劣化試験の結果、これらの液体シンチレーターには、1年半程度すると多少の劣化が見られることも判明し、今後の課題となっている。さらに、この液体シンチレーターを使用できる可能性のあるニュートリノ実験の計画も行った。本研究の目的は、従来の有機溶媒をベースにした液体シンチレーターに関わるさまざまな問題点を克服するために、水をベースとした液体シンチレーターを開発することである。本研究では発光剤のみでなく、ベンゼン環を持った分子も同時に水に溶かすことにより、水ベースの液体中で素粒子反応が生じた場合でも蛍光発光を行う液体の開発を行った。ベンゼン環を含み、水に可溶な物質としては、本溶性芳香族物質と、ベンゼン環を含んだ界面活性剤があげられるため、そのような物質をリストアップし、それらと、発光剤であるPPO、bis-MSBなどを、様々な濃度の組み合わせで水に溶かし込み、^<60>Coからのγ線で素粒子反応に対する発光量の測定を行った。また、有意な発光量を持つサンプルに対しては、光減衰長、引火点、安定性などの測定を行った。最終的にベンゼン環をもった界面活性剤と発光剤を水に溶かし込むことにより、水含有量82%、発光量7.2%アントラセン、420nmの波長に対する光減衰長77cm、や水含有量81%、発光量4.0%アントラセン、光減衰長220cmなどの性質をもつ不燃性の液体シンチレーターを得ることができた。これらの性能は、原子核実験や高エネルギー実験などの信号の大きな実験では十分に使用可能な値である。一方加速劣化試験の結果、これらの液体シンチレーターには、1年半程度すると多少の劣化が見られることも判明し、今後の課題となっている。さらに、この液体シンチレーターを使用できる可能性のあるニュートリノ実験の計画も行った。高発光量の水ベースの液体シンチレーターの可能性を追求するための基礎実験を行っている。高発光量の液体シンチレータを得るには、一般に芳香族又は環状の分子構造をもつ溶媒に発光剤を溶かす必要がある。そのためまず(1)水に溶ける、芳香族及び環状の分子構造をもつ溶媒(第一溶媒),として、ベンジルアルコール、ジオキサン、シクロヘキサノール、(2)発光剤として、分子量が比較的小さく、若干の極性をもつPPO、(3)発光剤を水に溶かし込むために、発光剤及び水が可溶な溶媒(第二溶媒)として、各種アルコール類、ケトン類、などの選定を行った。次に、それらの様々な組み合わせで調合を行い、安定である調合比を系統的に調べ、そのいくつかの組み合わせで発光量の測定を行っている。その途中結果として、例えば水50%+ベンジルアルコール20%+メタノール30%+PPO2.5g/Lで、56%アントラセン相当の発光量を得ている。今後は、さらに水の含有量の多く発光量の多い組み合わせを調べると共に、界面活性剤、化学発光などの可能性も調べる。この研究では、高水含有量をもちながら、素粒子反応に対して発光する水をベースとした液体シンチレーターの開発を行っている。高発光量の液体シンチレーターは、一般に芳香族又は、環状の分子構造をもつ溶媒に発光剤を溶かす必要がある。前年度は、水50%+ベンジルアルコール20%+メタノール30%+PPO2.5g/literで56%アントラセン相当の発光量をもつ水ベースの液体シンチレーターの開発に成功した。今年度は、ベンゼン環をもつ界面活性剤を水に溶かし、それに発光剤を混ぜることにより、さらに高い水含有率で、発光する液体シンチレーターの開発を行った。様々の界面活性剤をリストアップし、様々な濃度の組み合わせで発光量の測定を行った結果、高発光量の水ベースの液体シンチレーターとして水81%+ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム19%+PPO10g/liter+bis-MSBで6.7%アントラセンの発光量を得た。又、高い水含有量の液体シンチレーターとして、水86%+塩化ベンザルコニウム14%+PPO1%+bis-MSBで4.0%アントラセンの発光量を得た。 | KAKENHI-PROJECT-14540236 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14540236 |
素粒子・原子核・宇宙線実験のための水シンチレーターの開発研究 | これにより、従来不可能であると考えられていた高い水含有量の液体シンチレーターの開発に成功した。この結果は、平成15年度秋の学会で発表し、学生が一人、この結果により、修士論文を書いた。 | KAKENHI-PROJECT-14540236 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14540236 |
教員養成カリキュラム改革の効果検証-改革三世代の追跡・比較研究 | 本研究の目的は、弘前大学教育学部における教員養成カリキュラム改革の効果検証をおこなうため、次の13のカリキュラム改革世代に属する学部生・卒業生を対象としたアンケート・インタビュー調査を実施することにある。1第III世代(2015年度以降入学者)の教職意識調査(アンケート調査・インタビュー調査)2第II世代(2011年度以降入学者)の教職意識調査(アンケート調査・インタビュー調査)3第I・II世代(2004年度以降入学者)の教職意識調査(インタビュー調査)本年度は、上記12に関わって、これまで同様、教育実習関連科目の前後を中心として、定期的に学生に対するアンケート調査を実施するとともに、県内公立小中学校教諭として採用された者に対する卒業時、卒後1年調査を実施した。また3に関わって卒後10年を経た県内公立学校の卒業生に対するインタビュー調査も実施した。成果発表に関しては、13を貫くものとして弘前大学教育学部における教員養成カリキュラム改革の30年間を考察した。また2に関わって、これまで実施してきたPAC分析の成果をまとめるとともに、これまで立ち入った考察をおこなってこなかった学生アンケートの自由記述に対する計量テキスト分析をおこない、2011年度カリキュラム改革の効果を質的に検討し、成果と課題について指摘した。なお、その成果は日本教育大学協会研究集会で発表するとともに、論文としてまとめた。加えて、3に関する卒後10年を経た卒業生に対するインタビューをはじめとする調査結果は、学内の自己評価などの資料ともなった。上述したとおり、学生に対するアンケートの実施、卒業生に対するインタビュー調査、これら調査結果の成果公表、いずれもほぼ予定通りに進んでいるため。今年度同様、学生に対するアンケートの実施、卒業生に対するインタビュー調査、これら調査結果の成果公表を継続しておこなっていく。成果公表については、2011年度改革の最終入学年度生が2019年3月に卒業したため、その分析を中心におこなう予定である。本研究の目的は、弘前大学教育学部における教員養成改革の効果検証を、学部生・卒業生に対象とする定量的・定性的調査を通じて明らかにすることにある。平成28年度は、計画にもとづき、1第III世代(2016年度以降入学者)については教職意識に関するアンケート調査を実施し、2第II世代(2011年度以降入学者)については、各年次の学生に対して上記と同様のアンケート調査を実施するとともに、青森県小中学校教員採用予定者と青森県小中学校初任教員に対するインタビュー調査をおこない、3第I世代(2004年度以降入学者)については、予備的なインタビューをおこなった。特に平成28年度は、青森県小中学校教員の学部卒業時と初任一年目終了時とにおけるPAC分析にもとづくインタビュー調査の結果を比較し、教員養成カリキュラムを通した「教職への社会化」が、教職初任期の「教職体験による社会化」過程にどのように機能するのかについて考察した。2つの時期の結果を比較した場合、教職生活に活かしていきたい/活かせた教員養成カリキュラムでの学びについての構造及び内容については対応関係がみられたほか、卒業直前には重視していなかった事項をカリキュラム体験から掘り起こして入職後のリアリティ・ショックを乗りこえた事例もみられた。これまで初任期職業的社会化は、大学の教員養成と断絶しているとされることが少なくなかったが、むしろ、今回の研究では学生期カリキュラム履修体験から得たものの上に連続して展開していくことを明らかにした。計画に示された多くの調査は実施されており、またその成果についても学会報告・論文として公表してきている。しかしながら、予定されていた第III世代(2016年度以降入学者)に対するインタビュー調査の実施が、他の調査との関係で難しかったこと、またアンケート調査で得られたデータについての深い分析が平成29年度の課題として残っているため、「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。本研究の目的は、弘前大学教育学部における教員養成改革の効果を、学部生・卒業生を対象とする定量的・定性的調査を通じて明らかにすることにある。平成29年度は、計画にもとづき、1改革第III世代(2016年度以降入学者)については、各年次につき2回程度、教職意識に関するアンケート調査を実施した。2第II世代(2011年度以降入学者)については、同様の教職意識に関するアンケートを調査を実施するとともに、青森県小中学校教員採用予定者と同初任者に対するインタビュー調査を実施した。実績としては、上記2に関わって、20112013年度入学者を対象とし、一年次から四年次までの教職志望・非教職志望度の変化をもとに5つに類型化し、教職観や教員の資質能力の重要度・向上感などの類型間の違いを明らかにした。それによって、たとえばカリキュラムの中で、一年次において学級経営の重要さや自身や子ども理解力を認識させていくことなどが、学生を教職へと向かわせる上で必要であることなどを明らかにした。また同じく2に関わって、昨年に引き続き、教員養成カリキュラム体験と初任期の教職社会化との連続性を考察し、教員養成カリキュラム体験の意義を明らかにした。特に、入職後の社会化経験において困難を抱えた事例では、その困難として教員養成カリキュラムを通じて得られた信念が自らの実践にうまく活かせていないこと、あるいは困難を抱えていない場合でも自らの教員養成カリキュラムを通じて形成された信念が迷いや葛藤を抱いたときに重要な役割を果たしていることなどを明らかにした。継続してアンケート・インタビュー調査を実施してきており、その成果を学会などで公表してきている。ただし、学会などでの報告を活字化することができていないことが、残された課題となっており、「おおむね順調に進展している」と判断した。 | KAKENHI-PROJECT-16K04449 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K04449 |
教員養成カリキュラム改革の効果検証-改革三世代の追跡・比較研究 | 本研究の目的は、弘前大学教育学部における教員養成カリキュラム改革の効果検証をおこなうため、次の13のカリキュラム改革世代に属する学部生・卒業生を対象としたアンケート・インタビュー調査を実施することにある。1第III世代(2015年度以降入学者)の教職意識調査(アンケート調査・インタビュー調査)2第II世代(2011年度以降入学者)の教職意識調査(アンケート調査・インタビュー調査)3第I・II世代(2004年度以降入学者)の教職意識調査(インタビュー調査)本年度は、上記12に関わって、これまで同様、教育実習関連科目の前後を中心として、定期的に学生に対するアンケート調査を実施するとともに、県内公立小中学校教諭として採用された者に対する卒業時、卒後1年調査を実施した。また3に関わって卒後10年を経た県内公立学校の卒業生に対するインタビュー調査も実施した。成果発表に関しては、13を貫くものとして弘前大学教育学部における教員養成カリキュラム改革の30年間を考察した。また2に関わって、これまで実施してきたPAC分析の成果をまとめるとともに、これまで立ち入った考察をおこなってこなかった学生アンケートの自由記述に対する計量テキスト分析をおこない、2011年度カリキュラム改革の効果を質的に検討し、成果と課題について指摘した。なお、その成果は日本教育大学協会研究集会で発表するとともに、論文としてまとめた。加えて、3に関する卒後10年を経た卒業生に対するインタビューをはじめとする調査結果は、学内の自己評価などの資料ともなった。上述したとおり、学生に対するアンケートの実施、卒業生に対するインタビュー調査、これら調査結果の成果公表、いずれもほぼ予定通りに進んでいるため。第III世代(2016年度以降入学者)については教職意識に関するアンケート調査を実施し、第II世代(2011年度以降入学者)については、各年次の学生に対して上記と同様のアンケート調査を実施するとともに、青森県小中学校教員採用予定者と青森県小中学校初任教員に対するインタビュー調査を継続していく予定である。なお、第III世代と第I世代(2004年度以降入学)に対するインタビュー調査については、その対象・方法についても検討しつつ実施の方向で検討することとする。引き続き、2第II世代(2011年度以降入学者)に対する教職意識と青森県小中学校教員採用予定者と同初任者に対するインタビュー調査を実施していくとともに、残された課題となっているその成果を学会誌などで公表していきたい。また1改革第III世代(2016年度以降入学者)についても教職意識に関するアンケート調査を実施していくこととするが、その一期生が卒業年度を迎えるのは次年度であるため、本格的な分析はそれ以降となる。今年度同様、学生に対するアンケートの実施、卒業生に対するインタビュー調査、これら調査結果の成果公表を継続しておこなっていく。成果公表については、2011年度改革の最終入学年度生が2019年3月に卒業したため、その分析を中心におこなう予定である。 | KAKENHI-PROJECT-16K04449 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K04449 |
ケアリング教育を理論とした中学校家庭科での指導者向けロール・プレイングDVDの開発 | 研究目的本研究は、人との関係性の育みに学びの本質があるとするケアリング教育の理論を基に、人と人との関係性をシステム的な構造として捉える松村康平の人間関係学とモレノの役割理論を方法論として用いた、中学校家庭科における指導者のためのロール・プレイングDVDの開発を目的とする。新学習指導要領においても中学校家庭科における家族・家庭に関する内容は一層重視される傾向にあり、その具体的な学習の方法としてロール・プレイングがあげられている。一方、中学校家庭科の教育現場においてロール・プレイングは教育的な効果があるとされながらも、十分に活用されていない。その背景はさまざまであるが、家族を取り巻く状況が複雑になる中で生徒を傷つけないよう過度に気遣う「プライバシーへの不安」やロール・プレイングの方法論、指導プログラムが確立されていないことなどが主な原因であろうと考える。ロール・プレイングとは想定した場面において創造性を働かせ、役を演じる中で気づくことを目的とする活動であるため、これら生徒のプライバシー等の問題解決につながると考える。研究方法平成24年度第二学年に在籍する生徒44名を対象にモレノ、松村康平の理論に依拠した技法を用い行ったロール・プレイングの授業実践4時間分の映像を基に、解説を交えながら、これまでに実践例のない中学校家庭科における指導者のためのロール・プレイングDVDの開発を行なった。研究成果DVDの構成は、以下のとおりである。第1章:ロール・プレイングとは?(教師向け)第2章:実践事例〈4時間の事例〉(1)ロール・プレイングとは・観技(2)ロール・プレイングの事例と解説(3)ロール・プレイング3.4時間目、第3章:まとめ(1)制作者より(2)授業後の生徒の感想(3)監修者より今後、このDVDを活用し、ロール・プレイングの教育的効果を明らかにしていきたい。研究目的本研究は、人との関係性の育みに学びの本質があるとするケアリング教育の理論を基に、人と人との関係性をシステム的な構造として捉える松村康平の人間関係学とモレノの役割理論を方法論として用いた、中学校家庭科における指導者のためのロール・プレイングDVDの開発を目的とする。新学習指導要領においても中学校家庭科における家族・家庭に関する内容は一層重視される傾向にあり、その具体的な学習の方法としてロール・プレイングがあげられている。一方、中学校家庭科の教育現場においてロール・プレイングは教育的な効果があるとされながらも、十分に活用されていない。その背景はさまざまであるが、家族を取り巻く状況が複雑になる中で生徒を傷つけないよう過度に気遣う「プライバシーへの不安」やロール・プレイングの方法論、指導プログラムが確立されていないことなどが主な原因であろうと考える。ロール・プレイングとは想定した場面において創造性を働かせ、役を演じる中で気づくことを目的とする活動であるため、これら生徒のプライバシー等の問題解決につながると考える。研究方法平成24年度第二学年に在籍する生徒44名を対象にモレノ、松村康平の理論に依拠した技法を用い行ったロール・プレイングの授業実践4時間分の映像を基に、解説を交えながら、これまでに実践例のない中学校家庭科における指導者のためのロール・プレイングDVDの開発を行なった。研究成果DVDの構成は、以下のとおりである。第1章:ロール・プレイングとは?(教師向け)第2章:実践事例〈4時間の事例〉(1)ロール・プレイングとは・観技(2)ロール・プレイングの事例と解説(3)ロール・プレイング3.4時間目、第3章:まとめ(1)制作者より(2)授業後の生徒の感想(3)監修者より今後、このDVDを活用し、ロール・プレイングの教育的効果を明らかにしていきたい。 | KAKENHI-PROJECT-24907007 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24907007 |
膀胱痛症候群に対する新規治療薬の探索 | 膀胱や周囲の骨盤部に痛みを生じる間質性膀胱炎は、膀胱痛症候群と定義され、頻尿や尿意切迫感などの過活動膀胱症状も呈する。本研究は、間質性膀胱炎モデルを作製し、膀胱の病理学所見と膀胱関連痛や頻尿の双方に対する治療戦略の提案を目的とする。本モデルは、ラットの膀胱内にリポポリサッカライド(LPS)を注入し作製した。平成30年度に得られた結果は以下の通りである。1)本モデルにおいて、膀胱組織に炎症性細胞である好中球・マクロファージの浸潤がみられ、肥満細胞の増加や組織の線維化が確認できた。2)膀胱関連痛は、尿道周囲にvon Freyフィラメントによる機械刺激を加え検討した結果、LPS投与1日目から疼痛閾値の低下がみられた。この疼痛閾値の低下は、LPSの単回投与では4日目以降から徐々に回復がみられたが、LPSの繰り返し投与により数週間にわたって閾値の低下が長期に持続することが確認できた。3)排尿機能は、膀胱内圧測定により、本モデルにおいて排尿間隔の短縮と排尿圧の低下が確認できた。以上の結果、LPS投与により膀胱関連痛や頻尿を伴う間質性膀胱炎を想定したモデルが作製でき、LPSの繰り返し投与により慢性化に移行することが確認できた。昨年度に検討していたプロタミン硫酸塩投与による膀胱炎モデルよりも比較的簡便な方法で作製できる慢性膀胱炎モデルが確立できたため、現在、本モデルによる膀胱関連痛や頻尿の双方に対する鎮痛薬の検討を進めることができている。間質性膀胱炎は頻尿や尿意切迫感といった排尿障害だけでなく、膀胱周囲に痛みを伴う難治性の慢性膀胱炎であるため、膀胱関連痛や頻尿の双方に効果のある治療戦略が求められる。今後は、すでに安全性が確認されている既存する鎮痛薬の中から膀胱関連痛に対する鎮痛効果だけでなく、排尿機能を改善する治療薬を模索する。さらに治療効果が得られた治療薬は、計画通り中枢性の局所投与により機序の解明に着手する。膀胱痛症候群/間質性膀胱炎は、頻尿だけでなく、膀胱関連痛を伴う慢性炎症疾患であるが、その病態の原因は未だ不明の難治性疾患であり、有効な治療薬もないのが現状である。本研究は、膀胱痛症候群/間質性膀胱炎モデルラットを作製し、頻尿や膀胱関連痛への治療効果を薬理学的に検討することを目的とする。まずは膀胱痛症候群/間質性膀胱炎モデルラットの作製として、イソフルラン吸入麻酔下でラット尿道から挿入したカテーテル(PE-50)よりプロタミン硫酸塩(30 mg/ml)0.5 mlを膀胱内に30分間注入し、この手順を1週間に3回、1ヶ月行い間質性膀胱炎モデルラットを作製した。比較対象群としては、未処置群と溶媒である生理食塩水を同じ手順で膀胱内に注入した生理食塩水膀胱注群を用いて、膀胱内圧測定による排尿機能の複数パラメータである排尿間隔、排尿時最大排尿圧および排尿閾値圧を経時的に測定した。対照群と比較して、プロタミン硫酸塩膀胱注による間質性膀胱炎モデルラットは、膀胱内圧測定で排尿間隔の短縮がみられたため、本モデルラットで頻尿となることを確認した。膀胱関連痛の評価については、内蔵痛の指標とされるすくみ行動や膀胱拡張時の下腹部へのlicking行動を経時的に観察しており、例数が集まり次第、データ解析を行う。本モデルラットにおいて、頻尿が認められ、膀胱関連痛においても評価が確立され次第、双方の治療に期待できる鎮痛薬による薬理学的検討をする予定である。当初予定していた実験室が設備改築工事のため、膀胱内圧測定機器の搬入が遅れ、研究の開始時期も遅れた。工事終了後、研究機器を設置し、実際に膀胱痛症候群/間質性膀胱炎モデルラットの作製を確立してからは計画が順調に進んでいる。膀胱や周囲の骨盤部に痛みを生じる間質性膀胱炎は、膀胱痛症候群と定義され、頻尿や尿意切迫感などの過活動膀胱症状も呈する。本研究は、間質性膀胱炎モデルを作製し、膀胱の病理学所見と膀胱関連痛や頻尿の双方に対する治療戦略の提案を目的とする。本モデルは、ラットの膀胱内にリポポリサッカライド(LPS)を注入し作製した。平成30年度に得られた結果は以下の通りである。1)本モデルにおいて、膀胱組織に炎症性細胞である好中球・マクロファージの浸潤がみられ、肥満細胞の増加や組織の線維化が確認できた。2)膀胱関連痛は、尿道周囲にvon Freyフィラメントによる機械刺激を加え検討した結果、LPS投与1日目から疼痛閾値の低下がみられた。この疼痛閾値の低下は、LPSの単回投与では4日目以降から徐々に回復がみられたが、LPSの繰り返し投与により数週間にわたって閾値の低下が長期に持続することが確認できた。3)排尿機能は、膀胱内圧測定により、本モデルにおいて排尿間隔の短縮と排尿圧の低下が確認できた。以上の結果、LPS投与により膀胱関連痛や頻尿を伴う間質性膀胱炎を想定したモデルが作製でき、LPSの繰り返し投与により慢性化に移行することが確認できた。昨年度に検討していたプロタミン硫酸塩投与による膀胱炎モデルよりも比較的簡便な方法で作製できる慢性膀胱炎モデルが確立できたため、現在、本モデルによる膀胱関連痛や頻尿の双方に対する鎮痛薬の検討を進めることができている。 | KAKENHI-PROJECT-17K15792 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K15792 |
膀胱痛症候群に対する新規治療薬の探索 | 今後は、確立した膀胱痛症候群/間質性膀胱炎モデルラットを用いて、組織染色による病理所見を観察し、さらにヒトの間質性膀胱炎において、肥満細胞を主体とした膀胱粘膜の炎症が見られることから、本モデルでも確認できるか検討する。膀胱内圧測定による排尿機能評価およびすくみ行動やlicking行動による膀胱関連痛評価は昨年度と同様に引き続き進めていく。さらに治療効果は、鎮痛薬を用いて評価する。排尿機能評価に対しては静脈内投与による排尿抑制効果を膀胱内圧測定法を用いてを対照群と比較検討し、膀胱関連痛評価においては、経口投与によるすくみ行動やlicking行動の変化を検討する。治療効果が得られた場合は、双方の効果の作用機序を解明するため、中枢性の局所投与により解析を行い、この解析は平成30年度から平成31年度にかけて実施する予定である。間質性膀胱炎は頻尿や尿意切迫感といった排尿障害だけでなく、膀胱周囲に痛みを伴う難治性の慢性膀胱炎であるため、膀胱関連痛や頻尿の双方に効果のある治療戦略が求められる。今後は、すでに安全性が確認されている既存する鎮痛薬の中から膀胱関連痛に対する鎮痛効果だけでなく、排尿機能を改善する治療薬を模索する。さらに治療効果が得られた治療薬は、計画通り中枢性の局所投与により機序の解明に着手する。当初購入を予定していた機器のうち、一部共用機器を使用することが出来たことと、初年度ということもあり研究成果の水準を考慮し学会参加を見合わせたことがあげられる。次年度は繰り越し分と合わせて、研究費を主に実験動物・薬剤・消耗品費にあて、学会参加も予定しているので出張費にも充てる。実験が当初の予定より順調に進んだため、実験動物費、試薬・消耗品費が節約できたことと、研究成果を国際・国内学会で発表するための出張費に充てるため、次年度は繰り越し分と合わせて、研究費を主に実験動物費、試薬・消耗品費と学会発表の出張費に使用する。 | KAKENHI-PROJECT-17K15792 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K15792 |
ポジトロン標識向中枢神経薬剤の合成と脳機能の解明 | 1.′′C標識イミプラミンの合成--デシプラミン(5mg)をアセトン(1.5ml)に溶解し,ドライアイスーアセトン冷却下′′CH_3Iを吹き込み, 50°C10分間反応後, HPLCで精製を行った.単離した標識体を塩酸塩とし,生理食塩水に溶解滅菌し, ′′C標識イミプラミン注射液を得た. ′′CH^3I吹き込み後30分で製剤化を終了し,放射量9mCi,放射化学収率42%,放射化学的純度99%以上い,比放射能37Ci/mmolであった.2.′′C標識イミプラミンの体内・脳内動態--′′C標識イミプラミンのマウス投与60分までの分布を検討すると,肺及び腎臓に高い集積がみられた.また投与後短時間で脳に取り込まれ,その取り込みは用量依存的であった.脳内では線状体,視床下部に高い分布を示し,他の部位と異なり,投与後60分でも放射活性の減少はみられなかった.非標識イミプラミンの前投与によっても′′C標識イミプラミンの取り込みは抑えられず,むしろ増加の傾向にあった.3.′′C標識メタンフェタミンの合成--アンフェタミン(5mg)をアセトン, (1.5ml)に溶解し,ドライアイスーアセトン冷却下′′CH_3Iを吹き込み, 50°C, 10分間反応後, HPLCで精製した.単離した標識体を塩酸塩とし,生理食塩水に溶解滅菌し, ′′C標識メタンフェタミン注射液を得た. ^′′CH_3I吹き込み後, 30分で製剤化が完了,放射量1mCi,放射化学的収率20%,放射化学的純度99%以上,比放射能20Ci/mmolであった.4.′′C標識メタンフェタミンの体内・脳内動態--′′C標識メタンフェタミンのマウス投与60分まで検討すると,大部分は腎臓に分布していた.脳内では用量依存的に取り込まれ,線状体,皮質,視床下部,海馬は,中脳,小脳,延髄に比較して高かった.非放射性メタンフェタミンの前および後の大量投与により脳への取り込みは減少せず,むしろ増加する傾向にあった.1.′′C標識イミプラミンの合成--デシプラミン(5mg)をアセトン(1.5ml)に溶解し,ドライアイスーアセトン冷却下′′CH_3Iを吹き込み, 50°C10分間反応後, HPLCで精製を行った.単離した標識体を塩酸塩とし,生理食塩水に溶解滅菌し, ′′C標識イミプラミン注射液を得た. ′′CH^3I吹き込み後30分で製剤化を終了し,放射量9mCi,放射化学収率42%,放射化学的純度99%以上い,比放射能37Ci/mmolであった.2.′′C標識イミプラミンの体内・脳内動態--′′C標識イミプラミンのマウス投与60分までの分布を検討すると,肺及び腎臓に高い集積がみられた.また投与後短時間で脳に取り込まれ,その取り込みは用量依存的であった.脳内では線状体,視床下部に高い分布を示し,他の部位と異なり,投与後60分でも放射活性の減少はみられなかった.非標識イミプラミンの前投与によっても′′C標識イミプラミンの取り込みは抑えられず,むしろ増加の傾向にあった.3.′′C標識メタンフェタミンの合成--アンフェタミン(5mg)をアセトン, (1.5ml)に溶解し,ドライアイスーアセトン冷却下′′CH_3Iを吹き込み, 50°C, 10分間反応後, HPLCで精製した.単離した標識体を塩酸塩とし,生理食塩水に溶解滅菌し, ′′C標識メタンフェタミン注射液を得た. ^′′CH_3I吹き込み後, 30分で製剤化が完了,放射量1mCi,放射化学的収率20%,放射化学的純度99%以上,比放射能20Ci/mmolであった.4.′′C標識メタンフェタミンの体内・脳内動態--′′C標識メタンフェタミンのマウス投与60分まで検討すると,大部分は腎臓に分布していた.脳内では用量依存的に取り込まれ,線状体,皮質,視床下部,海馬は,中脳,小脳,延髄に比較して高かった.非放射性メタンフェタミンの前および後の大量投与により脳への取り込みは減少せず,むしろ増加する傾向にあった.1.【^(11)C】標識イミプラミンの合成ーデシプラミンをアセトンに溶解し、ドライアイス-アセトン冷却下11【CH_3】Iを吹き込み、50°C10分間反応後、HPLCで精製を行った。単離した標識体を塩酸塩とし、生理食塩水に溶解滅菌し、11C標識イミプラミン注射液を得た。11【CH_3】I吹き込み後30分で製剤化を終了し放射活性量は平均9mci,放射化学収率平均42%,放射化学的純度は99%以上,比放射能平均37Ci/mmolであった。2.【^(11)C】標識イミプラミンの体内動態ー11C標識イミプラミンの投与60分までの体内動態について検討したところ、肺及び腎臓に高い集積が見られた。また投与後短時間で脳に取り込まれ、その取り込みは用量依存的であった。 | KAKENHI-PROJECT-61480232 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61480232 |
ポジトロン標識向中枢神経薬剤の合成と脳機能の解明 | 脳内では線条体,視床下部に高い分布を示し、他の部位と異なり投与後60分でも放射活性の減少は見られなかった。3.【^(11)C】標識メタンフェタミンの合成と体内動態ートリフルオロアセチルアンフェタミンをドライアセトン,粉末KOH中、ドライアイス-アセトン冷却下11【CH_3】Iを吹き込みトラップする。50°C10分間反応させた後120°C10分間アルカリ加水分解を行った。以下、イミプラミンの標識化と同様の操作を行った。11【CH_3】I吹き込み終了後65分で製剤化を完了し、得られた放射活性量は0.1mCi,放射化収率7.7%,放射化学的純度98%,比放射能3mCi/mmolであった。体内分布はイミプラミンと同様の傾向を示し、アミン系薬物に見られる特徴的な分布と考えられた。4.今後の予定ー【^(11)C】標識イミプラミンの合成は比放射能の上昇を検討し、ポジトロンCTによる画像化を試みる。【^(11)C】標識メタンフェタミンの合成は不十分であるので更に検討を重ね、脳内動態,レセプターの分布等も試みる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-61480232 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61480232 |
薬剤耐性アシネトバクターのゲノム疫学解析による耐性機構の解明 | 本研究では、科学的・効率的な感染制御の実践に寄与することを目指し、以下に示すような耐性菌の遺伝子情報を基本とする各種検討を行った。1)全ゲノム解析による耐性遺伝子の網羅的検出と解析:アシネトバクターの全ゲノム解析を実施した。血液分離株の13株については、菌種同定、患者背景、遺伝子解析(ドラフトゲノム解析、MLST解析、POT解析)、薬剤感受性の測定を完了し、論文発表を行った(Oinuma KI. et al. Jpn J Infect Dis. 2019)。12株を新たに追加して解析を行った。2)新規耐性因子の探索と解析:これまでに解析したゲノムの中から、新たにカルバペネマーゼ活性の可能性を有する耐性因子発見の手がかりを得て、耐性誘導を行い、カルバペネム耐性化した株に関してカルバペネマーゼ活性を測定した。カルバペネマーゼ活性は見られなかったが、容易にカルバペネムに耐性化する株が見つかり、遺伝子変化も含めた詳細な解析を実施する予定とした。3)耐性機構と病原性の解析:コリスチン耐性菌種Acinetobacter colistiniresistens(OCU_Ac7株)の耐性機構に迫るため、全ゲノム解析からの耐性機構予測を行った。2つ目として誘導されるコリスチン耐性の耐性機構の解析を実施した。耐性度の異なる複数のコリスチン耐性株を取得し、ドラフトゲノム解析を実施した結果、多彩な遺伝子変異が確認された。3つ目として、コリスチン耐性菌を指示菌とする新しい抗菌薬探索法を確立し、新しい抗菌物質候補を取得した。4)カルバペネム高度耐性のアシネトバクターに関する検討:完全ゲノムを決定し、耐性因子の局在(染色体及びプラスミド)を同定した。また、NDM-1が容易に多菌種に伝達することを確認した。さらに、追加した12株のうち、多剤耐性菌については、完全ゲノムを決定した。アシネトバクターの全ゲノム解析に関して、血液分離株の13株については、菌種同定、患者背景、ドラフトゲノム解析、MLST解析、POT解析を完了し、論文として発表した。年間5-10株の目標もおおむね達成できた。新規耐性因子の探索と解析に関しては、カルバペネム耐性に関する新たな知見が得られつつあり、順調に進捗していると考える。コリスチン耐性株の耐性機構と病原性の解析に関して、コリスチン耐性が複数の要因によって発現されることを見出した。また、コリスチン耐性株を利用した新しい抗菌薬開発法を確立し、いくつかの候補物質燃えられた。カルバペネム高度耐性のアシネトバクターに関する検討では、完全ゲノムを決定し、耐性因子の局在が確認され、現在解析を進めている。新たに決定した多剤耐性菌の完全ゲノムの解析も進行している。1)全ゲノム解析による耐性遺伝子の網羅的検出と解析:これまでドラフトゲノムを中心に解析してきたが、完全ゲノムも比較的容易になってきたため、順次完全ゲノムの決定を行う。また、新たに追加した12株についても同様に実施する。12株を含めた解析を元に、新たに論文報告をする。2)新規耐性因子の探索と解析:カルバペネマーゼ以外の耐性化因子に関して、さらに検討し、新たな治療法や感染制御法の開発に応用する。3)耐性機構と病原性の解析、および治療薬開発への応用:コリスチン耐性菌を指示菌とする新しい抗菌薬探索法を確立し、新しい抗菌物質候補が得られたため、精製単離し、シード化合物を取得する。さらに、抗菌スペクトル、作用機序について検討を行う。4)カルバペネム高度耐性のアシネトバクターに関する検討:完全ゲノムを決定し、耐性因子の局在(染色体及びプラスミド)を同定したため、既報の耐性因子との比較等を行い、論文化する。新たに決定した多剤耐性菌の完全ゲノムについても、さらに解析を行い、論文化する。本研究では、科学的・効率的な感染制御の実践に寄与することを目指し、以下に示すような耐性菌の遺伝子情報を基本とする各種検討を行った。1)全ゲノム解析による耐性遺伝子の網羅的検出と解析に関して、アシネトバクターの全ゲノム解析を実施した。血液分離株の13株については、菌種同定、患者背景、遺伝子解析(ドラフトゲノム解析、MLST解析、POT解析)を完了した。また、症例の解析と菌の薬剤感受性の測定を行い、発見した因子がどの程度耐性や重症化に寄与しているかを検討した。耐性因子のリスト化を行い、耐性因子の蔓延状況と臨床的重要性について検討した。成果の一部は日本感染症学会等で発表した。2)新規耐性因子の探索と解析に関しては、これまでに解析したゲノムの中から、新たにカルバペネマーゼ活性の可能性を有する耐性因子発見の手がかりを得た。3)耐性機構と病原性の解析に関して、1つ目はコリスチン耐性菌種Acinetobacter gs 13BJ/14TU(OCU_Ac7株)の耐性機構に迫るため、全ゲノム解析からの耐性機構予測を行った。2つ目として誘導されるコリスチン耐性の耐性機構の解析を実施した。複数のコリスチン耐性株を取得し、ドラフトゲノム解析を開始した。3つ目として、コリスチン耐性菌を指示菌とする新しい抗菌薬探索法を確立した。コリスチンに対して耐性化すると、他系統の抗菌薬の感受性が変化する(コラテラル感受性)ことが知られている。新しい抗菌薬探索には、このコラテラル感受性という性質を利用した。 | KAKENHI-PROJECT-17K10026 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K10026 |
薬剤耐性アシネトバクターのゲノム疫学解析による耐性機構の解明 | 4)カルバペネム高度耐性のアシネトバクターに関する検討では、完全ゲノムを決定し、耐性因子の局在(染色体及びプラスミド)を同定した。また、一部のプラスミドについては、実験的に伝達性を確認した。アシネトバクターの全ゲノム解析に関して、血液分離株の13株については、菌種同定、患者背景、ドラフトゲノム解析、MLST解析、POT解析を完了し、論文作成中である。一方、新規の解析については、年間5-10株の目標は未達成であるが、準備は進んでいる。新規耐性因子の探索と解析に関しては、これまでに解析したゲノムの中から、見落とされていた耐性因子発見の手がかりを得ており、概ね予定通りである。コリスチン耐性株の耐性機構と病原性の解析に関して、コリスチン耐性が複数の要因によって発現されることを見出した。また、コリスチン耐性によって、他の抗菌薬に対する感受性が変化するコラテラル感受性を利用した新しい抗菌薬開発法を確立し、予想を越える展開も得られている。カルバペネム高度耐性のアシネトバクターに関する検討では、完全ゲノムを決定し、耐性因子の局在(染色体及びプラスミド)を同定した。また、一部のプラスミドについては、実験的に伝達性を確認した。以上の結果について論文作成中である。本研究では、科学的・効率的な感染制御の実践に寄与することを目指し、以下に示すような耐性菌の遺伝子情報を基本とする各種検討を行った。1)全ゲノム解析による耐性遺伝子の網羅的検出と解析:アシネトバクターの全ゲノム解析を実施した。血液分離株の13株については、菌種同定、患者背景、遺伝子解析(ドラフトゲノム解析、MLST解析、POT解析)、薬剤感受性の測定を完了し、論文発表を行った(Oinuma KI. et al. Jpn J Infect Dis. 2019)。12株を新たに追加して解析を行った。2)新規耐性因子の探索と解析:これまでに解析したゲノムの中から、新たにカルバペネマーゼ活性の可能性を有する耐性因子発見の手がかりを得て、耐性誘導を行い、カルバペネム耐性化した株に関してカルバペネマーゼ活性を測定した。カルバペネマーゼ活性は見られなかったが、容易にカルバペネムに耐性化する株が見つかり、遺伝子変化も含めた詳細な解析を実施する予定とした。3)耐性機構と病原性の解析:コリスチン耐性菌種Acinetobacter colistiniresistens(OCU_Ac7株)の耐性機構に迫るため、全ゲノム解析からの耐性機構予測を行った。2つ目として誘導されるコリスチン耐性の耐性機構の解析を実施した。耐性度の異なる複数のコリスチン耐性株を取得し、ドラフトゲノム解析を実施した結果、多彩な遺伝子変異が確認された。3つ目として、コリスチン耐性菌を指示菌とする新しい抗菌薬探索法を確立し、新しい抗菌物質候補を取得した。4)カルバペネム高度耐性のアシネトバクターに関する検討:完全ゲノムを決定し、耐性因子の局在(染色体及びプラスミド)を同定した。また、NDM-1が容易に多菌種に伝達することを確認した。さらに、追加した12株のうち、多剤耐性菌については、完全ゲノムを決定した。アシネトバクターの全ゲノム解析に関して、血液分離株の13株については、菌種同定、患者背景、ドラフトゲノム解析、MLST解析、POT解析を完了し、論文として発表した。年間5-10株の目標もおおむね達成できた。 | KAKENHI-PROJECT-17K10026 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K10026 |
ヒストンの修飾によって制御される真核生物遺伝子の転写調節機構の解析 | 本研究では、「クロマチンの構成単位であるヒストン分子の物理的・化学的修飾が遺伝子の転写活性をどのようにして調節しているか」を我々が開発した試験管内クロマチン再構成・転写系を用いて解明することを目指す。これまでに以下のことを明らかにした:(1)SNF2/SWI2スーパーファミリーに属するATP依存性の核内因子のうち、クロマチン構造による転写抑制を解除し活性化する新規.ARI1(INO80)遺伝子が酵母(Saccharomyces Cerevisiae)ゲノム上に存在する(原稿準備中)。(2)ARI1(INO80)遺伝子産物は、少なくとも12のサブユニットから構成される蛋白複合体を形成している(原稿準備中)。(3)ARI1(INO80)蛋白複合体は、転写活性化因子GAL4VP16が転写調節領域に結合することにより誘導される局所的なクロマチン構造の破壊に、クロマチン再編成因子NURFと協調的に働く(原稿準備中)。(3)ARI1(INO80)複合体によるクロマチン構造の局所的破壊が近傍遺伝子の転写活性化を促す(原稿準備中)。(4)ARI1(INO80)複合体は、TATA box、転写開始点、およびその下流域のクロマチン構造を特異的に破壊する(原稿準備中)。(5)AR11(INO80)は、酵母細胞内において、INO1,PHO5遺伝子等の転写活性を直接調節する機能を担う(原稿準備中)。以上の研究成果により、ARI1(INO80)複合体がクロマチンにおける転写調節に直接関与していること、特にINO1,PHO5遺伝子の転写開始複合体形成に選択的に働くことが明かとなった。本研究では、「クロマチンの構成単位であるヒストン分子の物理的・化学的修飾が遺伝子の転写活性をどのようにして調節しているか」を我々が開発した試験管内クロマチン再構成・転写系を用いて解明することを目指す。これまでに以下のことを明らかにした:(1)SNF2/SWI2スーパーファミリーに属するATP依存性の核内因子のうち、クロマチン構造による転写抑制を解除し活性化する新規.ARI1(INO80)遺伝子が酵母(Saccharomyces Cerevisiae)ゲノム上に存在する(原稿準備中)。(2)ARI1(INO80)遺伝子産物は、少なくとも12のサブユニットから構成される蛋白複合体を形成している(原稿準備中)。(3)ARI1(INO80)蛋白複合体は、転写活性化因子GAL4VP16が転写調節領域に結合することにより誘導される局所的なクロマチン構造の破壊に、クロマチン再編成因子NURFと協調的に働く(原稿準備中)。(3)ARI1(INO80)複合体によるクロマチン構造の局所的破壊が近傍遺伝子の転写活性化を促す(原稿準備中)。(4)ARI1(INO80)複合体は、TATA box、転写開始点、およびその下流域のクロマチン構造を特異的に破壊する(原稿準備中)。(5)AR11(INO80)は、酵母細胞内において、INO1,PHO5遺伝子等の転写活性を直接調節する機能を担う(原稿準備中)。以上の研究成果により、ARI1(INO80)複合体がクロマチンにおける転写調節に直接関与していること、特にINO1,PHO5遺伝子の転写開始複合体形成に選択的に働くことが明かとなった。 | KAKENHI-PROJECT-12028216 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12028216 |
新種細菌アロイオコッカスに関する臨床研究、免疫学的研究および抗原構造解析 | 中耳炎に関する新種細菌アロイオコッカスについての、発育至適条件や臨床症例における頻度、ならびに本細菌に対する宿主免疫応答の詳細について、新たな事実を発見した。また、本細菌の抗原を同定、さらには抗原構造の解析を遂行し、新たな知見を得た。中耳炎に関する新種細菌アロイオコッカスについての、発育至適条件や臨床症例における頻度、ならびに本細菌に対する宿主免疫応答の詳細について、新たな事実を発見した。また、本細菌の抗原を同定、さらには抗原構造の解析を遂行し、新たな知見を得た。新種細菌アロイオコッカスは、小児中耳炎において高頻度に検出されることが判明している。しかしながら、本細菌が病原菌として中耳炎め病態形成に関与しているのか否かについては明らかになってはいない。我々は、本細菌の病原性についての理解をより深めるために、臨床症例の解析、ならびに免疫学的手法を用いての本細菌に対ずる免疫応答に関する研究を行つた。本細菌は、他の中耳起炎菌と同様に、各種の炎症性サイトカインやケモカインなどを誘導することが明らかとなり、またさらに患者め中耳検体中に本細菌に対する抗体が産生誘導されていることが示された。また、患者抗体によって認識される複数の抗原を解析した結果、抗原のひとつは数種類の糖の反復構造からなるポリサッカライドであることが判明し、その糖鎖構造を同定した。また他の抗原についても現在解析中である。以上の結果はいずれも論文投稿中である。今回の研究により、アロイオコッカスの中耳炎症病態における重要性ならびに生体内での本細菌に対する宿主免疫応答が解明されつつあり、今後はこれらの結果を踏まえて本細菌に対するワクチン開発や診断技術、治療技術の進歩への基盤作りを行いたいと考えている。新種細菌アロイオコッカスは、小児中耳炎において高頻度に検出されることが判明している。しかしながら本細菌の中耳炎症病態における役割についてはいまだに詳細が明らかとなっていない。我々は本研究において、アロイオコッカスが炎症性サイトカインやケモカインを産生誘導したり、中耳内において抗原抗体反応を惹起していることを明らかとし、アロイオコッカスが中耳内における炎症形成過程において重要な役割を担っている可能性が示された。現在は、本細菌の抗原構造の解析ならびに抗原により惹起される宿主免疫応答についての一部解析にも着手しはじめており、今後はより詳細な解析をすすめる予定である。また、本細菌はPCRにては容易に検出されるものの、培養での検出は非常に困難であることから、本細菌に関しての、より至適な発育条件についても詳細に検討した。以上の研究により、中耳炎症形成過程におけるアロイオコッカスの役割が徐々に解明されつつあり、また本細菌のより効率的な培養検出法の発明も期待される。今後はこれらの研究成果を踏まえて、本細菌に対する診断・治療・予防に関するさらなる研究へと発展させていきたい。 | KAKENHI-PROJECT-21791627 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21791627 |
Dr.Franz Stoedtner作成ガラススライドの意義についての基礎的研究 | 本研究では、フランツ・シュテットナー博士が1895年にベルリンに設立した「学術用映写研究所」の教育・研究用ガラススライドの製作・販売の実態をあきらかにし、同研究所が当時ヨーロッパの主要なメーカーであり、ドイツのほか、ハーバード大学やウィーン大学など多くの高等教育機関に教材を提供したことを確認した。また、京都工芸繊維大学美術工芸資料館蔵のガラススライドが同大学の前身校のひとつ京都高等工芸学校で、当時最先端のデザインやヨーロッパの著名な美術、建築装飾に関する教材として、先駆的に購入・活用されていたことをあきらかにした。本研究の目的は、ドイツで初めて学術的利用を目的としたガラススライドの作成・販売を手がけた人物の一人とされるフランツ・シュテットナー博士(Dr. Franz Stoedtner)が、1895年にドイツのベルリンに設立した「学術用スライド研究所」(Institut fuerwissenschaftlicheProjection)製のガラススライドに焦点をあて、ドイツでの現存状況や当時の販売用カタログを調べ、このシリーズの製作・販売の実態を明らかにし、このガラススライドが明治・大正時代の日本の高等教育機関における美術・デザイン教育にどのように活用され、効果をもたらしたのか確認することである。平成27年度は、ドイツ国立図書館Staatsbibliothek zu Berlinに所蔵されている、同研究所が発行していた販売用カタログのうち、発行年度が古いものを中心に調査をおこなった。その結果、ギリシャやローマなど古代美術の作品とともに、同時代の流行を反映するかのように工芸品や装飾をおもに写したガラススライドが、比較的早くに整理され、販売されていたこと、また、ガラススライドの整理方法や当時の販売価格、サイズ、注文から納品までの手順などが判明し、販売の実態が一部あきらかになった。また、同研究所とベルリン工芸博物館付属図書館との関わりも判明した。また、京都工芸繊維大学美術工芸資料館に所蔵されている、同大学前身校の京都高等工芸学校図案科で教材として購入された同シリーズのガラススライドの調査をおこない、美術工芸品や建築装飾を写したガラススライドが、同校の教育方針と密接に関わっていることを改めて確認できた。同科教授の浅井忠が自身の図案に利用した可能性も浮上し、利用の実態が少しずつだがあきらかになりつつある。以上は、第57回意匠学会大会にて発表をおこない、また同学会誌に論文を投稿した。当初予定していた当該ガラススライドの関連資料を入手することができ、販売の実態の一部が明らかとなった。一方で、当該ガラススライドが現存しているミュージアムでの実地調査ができておらず、難航している。本研究の目的は、フランツ・シュテットナー博士(Dr. Franz Stoedtner)が、1895年にベルリンに設立した「学術用映写研究所」製のガラススライドに焦点をあて、製作・販売の実態を明らかにし、明治・大正時代の日本の高等教育機関における美術・デザイン教育にどのように活用され、効果をもたらしたのか確認することである。平成28年度は、京都高等工芸学校における当該ガラススライドの利用実態調査を進め、最初の納入品が初代校長中澤岩太により現地で選択・購入された可能性があることを指摘できたほか、同時代のデザインの流行を反映したもの、美術史をまなぶためのもの、建築装飾に注目して選択されたものと、各々の購入目的と利用範囲をある程度あきらかにすることができた。同校では、図案教育の参考として多くの実物資料が購入されたが、複製資料であるスライドが補助的役割を果たし、実物を見ることの難しい作品について、学生たちに様々な視覚的情報を与える重要な教材であったことが検証できた。並行して、創立年度の早い日本の高等教育機関に、同種のスライドの所蔵や整理状況等を尋ね、当時の利用実態の検証を試みたが、その所蔵は確認できなかった。回答を得られなかった館もあり、この調査は継続していく必要がある。さらに、海外における所蔵調査としてドイツのハイデルベルク大学を訪問した。この調査結果は、現在分析中である。また、関連調査として、京都高等工芸学校で同時期に購入された機織と紡績に関するオーストリア製のスライドについても分析をおこない、教育カリキュラムと照合し、その利用実態の一端をあきらかにした。以上の調査をもとに、画像関連学会連合会2016年秋季大会にて研究発表をおこない、公益財団法人中信美術奨励基金『美術京都』49号に研究論文を投稿した。また、意匠学会誌『デザイン理論』68号に前年度投稿した論文が掲載された。当該ガラススライドと京都高等工芸学校の教育プログラムとの関連性が明らかになってきた。また、当該ガラススライドを所蔵している海外の高等教育機関で実地調査をおこなうことができた。本研究の目的は、フランツ・シュテットナー博士(Dr. Franz Stoedtner)が、1895年にベルリンに設立した「学術用映写研究所」製のガラススライドに焦点をあて、製作・販売の実態とその意義や歴史的位置を確認するとともに、明治・大正時代の日本の高等教育機関における美術・デザイン教育にどのように活用され、効果をもたらしたのか確認することである。平成29年度は、前年度ドイツのハイデルベルク大学でおこなった当該ガラススライドの調査結果を分析し、おもに192040年代に考古学分野での研究と教育に利用されたことを確認した。また、アメリカのハーバード大学Fine Arts Library、オーストリアのウィーン大学Institut fuer Kunstgeschichteで同様の調査をおこない、美術史等の研究と教育に利用されていたことを確認した。その数や海外の主要な高等挙育機関での利用状況から、同研究所が当時の主要メーカーのひとつであることが確認できた。 | KAKENHI-PROJECT-15K16645 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K16645 |
Dr.Franz Stoedtner作成ガラススライドの意義についての基礎的研究 | さらにドイツのマールブルク大学Deutsches Dokumentationszentrum fuerKunstgeschichte, Bildarchiv Foto Marburgで同研究所の目録やアルバムなどを調査し、製造・販売の実態を確認した。当初想定した日本の高等教育機関における当該ガラススライドの使用事例は発見できなかった。一方で、京都のデザイン業界を牽引する京都高等工芸学校で、1900年前後に、写真を利用した海外製のガラススライドが実物資料の補助教材として先駆的に導入され、当時最新のデザインとヨーロッパの美術史の教育に寄与していたことがあきらかとなった。当時の文化交流を示す貴重な一例である。昨年度、公益財団法人中信美術奨励基金『美術京都』49号に投稿した研究論文は50号(平成31年3月)掲載予定である。本研究では、フランツ・シュテットナー博士が1895年にベルリンに設立した「学術用映写研究所」の教育・研究用ガラススライドの製作・販売の実態をあきらかにし、同研究所が当時ヨーロッパの主要なメーカーであり、ドイツのほか、ハーバード大学やウィーン大学など多くの高等教育機関に教材を提供したことを確認した。また、京都工芸繊維大学美術工芸資料館蔵のガラススライドが同大学の前身校のひとつ京都高等工芸学校で、当時最先端のデザインやヨーロッパの著名な美術、建築装飾に関する教材として、先駆的に購入・活用されていたことをあきらかにした。今後は、ドイツ文化圏での現存状況および販売カタログのさらなる調査、浅井忠など京都高等工芸学校におけるガラススライドの利用実態の調査を進めるとともに、明治・大正時代において日本の高等教育機関で同種のものを教材として活用した記録がないか調査する。具体的には、京都大学、京都市立芸術大学、東京大学、東京芸術大学、東京国立博物館、東京文化財研究所、東北大学、九州大学、北海道大学など創立年の早い高等教育機関および研究機関において、同種のガラススライドシリーズの購入実績およびその現存状況を確認する。当該ガラススライドが実際に使用された高等教育機関での調査を積極的におこなう。当初想定していた日本の高等教育機関における当該ガラススライドの使用事例は現在のところ見つかっておらず、引き続き調査を進める。一方で、ドイツのハイデルベルク大学の調査結果について分析をおこない、さらに本研究を通じてあらたに所蔵を確認したドイツの他の大学およびアメリカの大学が所蔵する当該ガラススライドの調査をおこない、海外の高等教育機関における当該ガラススライドの利用目的をあきらかにする。日本美術史本務の関係で出張調査に行くことができず、旅費として使用することができなかったため。当該ガラススライドを所蔵する日本の高等教育機関での調査を予定していたが、調査先がみつからず今年度は、実現できなかったため。また、海外での調査候補先が複数みつかったため。 | KAKENHI-PROJECT-15K16645 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K16645 |
宇宙空間での電子ビームアンテナによる地上の電磁界強度の予測と観測 | 本研究せ2カ月にわたり次のような研究課題を設定し,研究を実施した.1.変調電子ビームの放射パターンを考慮して, full wave計算により地上の電磁界強度を計算可能とする.2.項目1で完成した計算ソフトを適用して,ロケットと大地との立体観測により得られた自然電波やホイスラ波の強度を解析し, VLF波の下部電離層の伝搬機構を明らかにする.3.予測結果に基づき,地上観測のためのVLF受信機を試作し観測に備える.以下に上述の項目に対応して得られた成果の概要を述べる.(1)振幅が任意に分布する波動の伝搬を取り扱えるfull wave計算法を開発した. kベクトルが電離層に垂直である鋭い指向性のVLF波を入射した場合,電離層吸収は,昼間で10数dB,夜間では7-8dBで,波源直下へ主に伝搬する.水平方向の減衰率は100km以内で-10dB/100km,それ以上の距離では-3dB/100kmとなった.従って,電子ビームより放射された波は地上の最大強度地点から-40dBの減衰で1000kmまで伝搬することが分かった.(2)電子ビームより放射された波動とオーロラに伴うヒス波動とその発生メカニズムが類似しているので,南極で,ロケットと地上で観測されたオーロラヒス強度を解析した.その結果,ヒスのkベクトルがトランスミションコーンに入る確立は0.01程度であった.従って, (1)の結果を考慮すると電子ビームより放射された波動の大地上での総合減衰は約50dbであることが分かった.(3)地上での観測に備えるため受信機を製作し,大地上の雑音レベルを測定した.その結果,空電雑音の最小値は0.1μV/mHzであった.以上の結果から,シャトル上のビーム電力を1kw程度とすれば,地上での観測が可能と考える.本研究せ2カ月にわたり次のような研究課題を設定し,研究を実施した.1.変調電子ビームの放射パターンを考慮して, full wave計算により地上の電磁界強度を計算可能とする.2.項目1で完成した計算ソフトを適用して,ロケットと大地との立体観測により得られた自然電波やホイスラ波の強度を解析し, VLF波の下部電離層の伝搬機構を明らかにする.3.予測結果に基づき,地上観測のためのVLF受信機を試作し観測に備える.以下に上述の項目に対応して得られた成果の概要を述べる.(1)振幅が任意に分布する波動の伝搬を取り扱えるfull wave計算法を開発した. kベクトルが電離層に垂直である鋭い指向性のVLF波を入射した場合,電離層吸収は,昼間で10数dB,夜間では7-8dBで,波源直下へ主に伝搬する.水平方向の減衰率は100km以内で-10dB/100km,それ以上の距離では-3dB/100kmとなった.従って,電子ビームより放射された波は地上の最大強度地点から-40dBの減衰で1000kmまで伝搬することが分かった.(2)電子ビームより放射された波動とオーロラに伴うヒス波動とその発生メカニズムが類似しているので,南極で,ロケットと地上で観測されたオーロラヒス強度を解析した.その結果,ヒスのkベクトルがトランスミションコーンに入る確立は0.01程度であった.従って, (1)の結果を考慮すると電子ビームより放射された波動の大地上での総合減衰は約50dbであることが分かった.(3)地上での観測に備えるため受信機を製作し,大地上の雑音レベルを測定した.その結果,空電雑音の最小値は0.1μV/mHzであった.以上の結果から,シャトル上のビーム電力を1kw程度とすれば,地上での観測が可能と考える.本研究は次の3ステップによって行われる。(1)プラズマ中の電子ビームアンテナによる電磁波放射、(2)放射(発生)された位置から地上への電波伝搬、(3)space shuttleからの電子ビーム放射に伴う地上観測。本年度は主に上記(2)のステップについて研究を行った。変調電子ビームによる電磁波放射の研究は開始されたばかりでその放射効率及び指向性などは詳しく分かっていないが、定性的にはプラズマのLHR周波数付近で効率がよく、磁場と直角方向に放射する。これらを考慮しプラズマ中で有限な大きさの波動の伝搬を取り扱かえるfull wave計算方法を開発した。このプログラムを使用して電離層中からVLF波を入射し大地上の電磁界強度分布を調べた結果、次のことが分かった。変調電子ビームより放射された電磁波のkベクトルがほとんど電離層に垂直(トランスミションコーン内にkベクトルがある場合)にある時、昼では10数dB、夜では7-8dBの電離層減衰で、波源の真下の大地上へ伝搬する。そして、その大地上での水平方向の減衰率は大地上の最大強度より100km以内では約-10dB/100km、そして100km以降では-3db/100kmとなった。従って、高度200km-300kmの電離層中の電子ビームによるVLF放射電波は約40dB以内の減衰で、約1000km程度まで伝搬することが分かった。次年度では、変調ビームから電磁波の放射効率及び放射パターンを理論的に研究する。又、数年後に延期になったspace shuttle実験に備えて地上観測装置も準備する。 | KAKENHI-PROJECT-61550238 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61550238 |
炎症が惹起する神経変性機構解明のためのヒト血液脳関門の構築 | 神経変性機構解明のために、神経組織中に神経細胞が高密度で均一に分布するような神経組織を神経幹細胞から作製する技術を開発した。本技術では、蓋付きアガロースゲルチャンバを用いることで、神経幹細胞を密閉した状態で分化誘導するため、組織の3次元形状が制御でき、分化誘導により神経細胞が高密度で均一に分布する組織作製を可能にした。また、ヒトiPS細胞由来神経幹細胞を用いてひも状のヒト神経組織を構築した。最終的に、神経組織をパターニングしたデバイス中で血管内皮細胞と共培養することで、神経組織周辺部に血管内皮細胞による血管網の構築をした。また薬剤投与による神経変性を観察し、本系の薬物実験への有効性を確認した。本研究課題では、炎症作用が血管をから神経組織に入り神経変性が生じる際のメカニズムを解明するために、再生医療技術を利用しガラス基板上に「ヒトiPS細胞由来神経細胞から構築された神経組織と脳毛細血管網の共培養系」を構築することである。初年度は、最初にヒト神経ファイバの構築と詳細な特性評価を行った。ヒト神経幹細胞から構築されたファイバ組織は、PCRと免疫組織化学染色の結果から、分化誘導を行うことで運動神経細胞、抑制性神経細胞、ドーパミン産生神経細胞及び、アストロサイト、オリゴデンドロサイトなどのグリア細胞からなる神経組織を構築することが判明した。また、神経幹細胞をひも状の組織にしたのちに分化誘導することで2次元培養条件下に比べ、分化誘導後の神経細胞の生存率の上昇を確認した。現在は、フィブリンゲル及び、コラーゲンゲル中でヒト血管内皮細胞(HUVEC)とヒト神経ファイバとの共培養に成功している。神経ファイバをパターニングしたデバイス中でこれら2種の細胞を3次元的に共培養することで、培養37日間ほどで神経組織周辺部に血管内皮細胞による血管網の構築を観察することができた。またこれらの血管網周辺部には増殖したアストロサイトが存在することも確認できている。現在、本研究成果は国際及び国内の学会に発表するための準備を行っている。一方、ヒト脳毛細血管上皮細胞との共培養条件の検討に時間がかかり、解析系を確立するためにはさらなる培養条件の検討が必要であると考えられる。ヒト脳毛細血管上皮細胞の培養条件と神経組織の培養条件が異なるため、共培養条件の検討に時間がかかっているが、培地や細胞外マトリックス(ECM)を工夫することで、血管上皮細胞の生存率が上昇してきている段階である。本研究課題では、再生医療技術を利用しガラス基板上に「ヒトiPS細胞由来神経細胞から構築された神経組織と脳毛細血管網の共培養系」を構築することである。初年度にヒトiPS細胞ファイバと血管内皮細胞との共培養系の開発を行った。本年度は特に神経組織の神経変性の観察系を発展させるため、神経組織構築の改良と観察系の最適化を行った。新しい神経組織構築法として、長さ数mmのひも状の神経組織(神経ファイバ)のユニットを構築し、ユニット同士を結合させることで、異なる脳領域から取得した神経組織から形成される複雑な3次元的神経回路を構築する手法を開発した。本手法は、Advanced Healthcare Materialsに「Rod-shaped Neural Units for Aligned 3D Neural Network Connection」と言うタイトルで報告した。また神経組織の観察系として、幹細胞から分化される神経組織の最適化を行った。アガロースゲルチャンバを用いて大きさの異なる線構造の神経組織を神経幹細胞から構築した。分化誘導後、神経細胞の比率が高く、3次元組織内部に均一に神経細胞が存在するような神経組織の構築に成功した。本手法は、Biotechnology and Bioengineeringに「Differentiation of 3D-shape-controlled mouse neural stem cell to neural tissues in closed agarose microchambers」と言うタイトルで報告した。最終的に、ひも状神経組織をパターニングしたデバイス中でヒト血管内皮細胞(HUVEC)と3次元的に共培養に成功しており、また薬剤投与による神経変性を観察している。現在その結果に関しては論文として執筆中である。神経変性機構解明のために、神経組織中に神経細胞が高密度で均一に分布するような神経組織を神経幹細胞から作製する技術を開発した。本技術では、蓋付きアガロースゲルチャンバを用いることで、神経幹細胞を密閉した状態で分化誘導するため、組織の3次元形状が制御でき、分化誘導により神経細胞が高密度で均一に分布する組織作製を可能にした。また、ヒトiPS細胞由来神経幹細胞を用いてひも状のヒト神経組織を構築した。最終的に、神経組織をパターニングしたデバイス中で血管内皮細胞と共培養することで、神経組織周辺部に血管内皮細胞による血管網の構築をした。また薬剤投与による神経変性を観察し、本系の薬物実験への有効性を確認した。ヒト脳毛細血管上皮細胞と神経組織の共培養条件を確立し、,血管内皮細胞同士がタイトジャンクションで密に接着した血液脳関門を形成していることを免疫組織化学染色法などにより確認する。また血液脳関門を通過する蛍光グルコースを流すことで,血液脳関門から神経組織への取り込みを経時的に観察し、組織内分布に関する物質輸送シュミレーションを行う。最終的ヒトヘルパーT細胞を最上部から還流することで毛細血管網へのヘルパーT細胞の取り込みを評価し、ヘルパーT細胞が神経組織に及ぼす影響を観察する。 | KAKENHI-PROJECT-16K14190 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K14190 |
炎症が惹起する神経変性機構解明のためのヒト血液脳関門の構築 | 神経科学、マイクロデバイス次年度より研究代表者の根岸みどりが他研究機関に移動することが内定しため、それに伴い新施設で引き続き円滑に研究を遂行する上で、消耗品や備品などを次年度に購入する必要があったため。物品費として、細胞培養に関わる消耗品の購入(約500,000円)、細胞観察用のレンズの購入(約400,000円)を行う。 | KAKENHI-PROJECT-16K14190 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K14190 |
脳と免疫系の相互反応とその老化に伴う変化に関する実験病理学的研究 | 免疫系は感染防御系の中核として働くと共に、神経・内分泌系とも連動し、生体の内部環境の維持に重要な役割を果たす。免疫系と神経・内分泌系の連動は、神経・内分泌系からはホルモンや自律神経を介し、また、免疫系からはサイトカインを介して行われる。今回の研究は下記の8つの成果からなり、特に神経・内分泌系と免疫系の相互反応とその加齢変化に焦点を絞った。1.視床下部は下垂体を介して内分泌系を制御しているが、同時に胸腺機能も調節していることを明らかにした。この視床下部の加齢変化が胸腺機能の生後早くからの機能低下に関与している。2.LPS投与によるマウスの感染モデル実験では、免疫系にいろいろなサイトカインとその受容体の発現が起こる。本研究では脳においても、様々なサイトカイン受容体の発現増強が起こること、及びそれが脳の場所、サイトカインの種類及びエイジにより異なる加齢変化のある事を明らかにした。3.慢性ストレス下にあるラットは欝状態になり、脳のモノアミン類のレベルが低下する。この欝状態にあるラットで、免疫抑制剤であるcyclosporine Aが抗うつ剤として作用する事を明らかにした。4.GMFβは脳のグリア細胞の増殖・成熟に働く因子である。このGMFβが胸腺上皮細胞で産生され、T細胞の分化に重要な役割を果たし、脳と免疫系で共通に働く新しい因子である事が分かった。5.ホルモンが免疫系に作用する時は、固体の性と年齢、及びホルモンの用量により働き方が異なる。Diethylstilbestrolを例にして見ると、それはかなり低い用量でも働くことが明らかになった。6.漢方補剤の中には免疫機能を回復させるものがあり、ゾンデによる注入や餌に混ぜることにより、老化マウスのT細胞の増殖能、抗体産生、NK活性を冗進するものがあることが分かった。7.免疫機能の回復方法には2種類の方法があり、第1は既存の免疫細胞を刺激し機能的に回復させる方法と第2は細胞・組織の移植による免疫系の再生方法である。これらについて、人への応用を考えながら検討を加えた。8.前項で明らかになった免疫機能回復能力のある漢方補剤について、その脳に対する影響を見た。加齢に伴い、脳内のモノアミン類レベルは低下するが、漢方補剤の中には脳内のモノアミン類の量を若齢レベルにまで上昇させるものがあることを明らかにした(未発表データ)。免疫系は感染防御系の中核として働くと共に、神経・内分泌系とも連動し、生体の内部環境の維持に重要な役割を果たす。免疫系と神経・内分泌系の連動は、神経・内分泌系からはホルモンや自律神経を介し、また、免疫系からはサイトカインを介して行われる。今回の研究は下記の8つの成果からなり、特に神経・内分泌系と免疫系の相互反応とその加齢変化に焦点を絞った。1.視床下部は下垂体を介して内分泌系を制御しているが、同時に胸腺機能も調節していることを明らかにした。この視床下部の加齢変化が胸腺機能の生後早くからの機能低下に関与している。2.LPS投与によるマウスの感染モデル実験では、免疫系にいろいろなサイトカインとその受容体の発現が起こる。本研究では脳においても、様々なサイトカイン受容体の発現増強が起こること、及びそれが脳の場所、サイトカインの種類及びエイジにより異なる加齢変化のある事を明らかにした。3.慢性ストレス下にあるラットは欝状態になり、脳のモノアミン類のレベルが低下する。この欝状態にあるラットで、免疫抑制剤であるcyclosporine Aが抗うつ剤として作用する事を明らかにした。4.GMFβは脳のグリア細胞の増殖・成熟に働く因子である。このGMFβが胸腺上皮細胞で産生され、T細胞の分化に重要な役割を果たし、脳と免疫系で共通に働く新しい因子である事が分かった。5.ホルモンが免疫系に作用する時は、固体の性と年齢、及びホルモンの用量により働き方が異なる。Diethylstilbestrolを例にして見ると、それはかなり低い用量でも働くことが明らかになった。6.漢方補剤の中には免疫機能を回復させるものがあり、ゾンデによる注入や餌に混ぜることにより、老化マウスのT細胞の増殖能、抗体産生、NK活性を冗進するものがあることが分かった。7.免疫機能の回復方法には2種類の方法があり、第1は既存の免疫細胞を刺激し機能的に回復させる方法と第2は細胞・組織の移植による免疫系の再生方法である。これらについて、人への応用を考えながら検討を加えた。8.前項で明らかになった免疫機能回復能力のある漢方補剤について、その脳に対する影響を見た。加齢に伴い、脳内のモノアミン類レベルは低下するが、漢方補剤の中には脳内のモノアミン類の量を若齢レベルにまで上昇させるものがあることを明らかにした(未発表データ)。脳と免疫系の相互反応は個体が感染或いはストレスに暴露された時に良く見られる。脳からは視床下部-下垂体を介するホルモンによる影響が免疫系に及び、また、免疫系の産生するサイトカインは脳に影響する。本研究では個体レベルでマウスに感染・ストレスを負荷し、脳、免疫系を中心にホルモンやサイトカインとそれらの受容体の発現を検索し、老化に伴う脳と免疫系の相互反応の加齢変化を解析した。感染源としては、LPS、インフルエンザウイルスとリステリア菌を、ストレスとしては拘束ストレスを用いた。 | KAKENHI-PROJECT-12307006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12307006 |
脳と免疫系の相互反応とその老化に伴う変化に関する実験病理学的研究 | LPS刺激により、IL-1、IL-2、IL-4、IL-6、IFNγ、TNFαなどの受容体のmRNA発現の増加が若齢マウスの脾臓ではみられたが、老齢マウスではみられなかった。同じ様なmRNA発現の増加が脳においても認められたが、発現程度は脳の部位(視床下部、海馬、大脳皮質)、サイトカインの種類およびマウスの月齢により異なった。例えば、老齢マウスの視床下部では殆どの受容体のmRNA発現は低下したが、大脳皮質ではIFNγとTNFαの受容体のmRNA発現は若齢マウスに比べて逆に増加した。インフルエンザウイルス及びリステリア菌感染実験では、老齢マウスは感受性が高く若齢に比べて致死量は10倍少なかった。LPS実験と同じように、老齢マウスの脳ではサ殆どのイトカイン受容体mRNA発現は低下したが、IFNγ受容体だけは若齢に比べて増加した。このような脳におけるサイトカイン受容体発現の加齢変化は、脳と免疫系の相互反応の加齢変化を示唆する。即ち感染に際して、老齢個体では視床下部-下垂体-副腎軸の抗ストレス反応が順調に機能しない事が、防御能力低下の一因となっていることが示唆された。【概説】個体が感染或いはストレスに暴露されると、脳と免疫系の間でクロストークが起こる。脳からは視床下部-下垂体を介するホルモンによる影響が免疫系に及び、又、免疫系の産生するサイトカインは脳に影響する。【方法と材料】本研究では個体レベルでマウスに感染・ストレスを負荷し、脳、免疫系を中心にホルモンやサイトカインとそれらの受容体の発現を検索し、老化に伴う脳と免疫系の相互反応の加齢変化を解析した。平成13年度はインフルエンザウイルスとリステリア菌を感染源とし、ストレス源として拘束、震盪、高温、寒低、疼痛、給餌制限、飲水制限等を用いた。【結果】(1)インフルエンザウイルス及びリステリア菌感染実験では、老齢個体は感染に弱く、LD50は10倍少ない量であった。感染の体重、体温、免疫機能に及ぼす影響は老齢マウスにおいて重篤であり、視床下部におけるサイトカイン受容体の発現は全般的に若齢に比べ老齢で低かった。(2)拘束ストレスは免疫機能に大きな影響を及ぼすが、1週で回復した。老齢では回復の始まりに遅れが見られた。しかし、ストレスに感染が重なる(複合感染)では回復は大きく遅延し、その遅延は老齢個体で著明であった。(3)拘束ストレスは脾臓におけるサイトカイン産生を抑制するが、サイトカイン受容体IFNγR、IL-2Rαなどの発現は増加し、複合感染でも同様の傾向が見られた。しかし、それらの発現程度は老齢に比べ若齢個体に高かった。(4)拘束ストレスは視床下部におけるサイトカイン受容体の発現を抑制したが、IFNγRは逆に増加した。複合感染によりIFNγRの発現が更に亢進したが、老齢では増加の亢進の始まりが遅延した。(5)慢性的に各種のストレスに暴露することにより、実験的鬱モデルの再現が出来た。ストレスにより脳血管関門の透過性が亢進することが分かった。免疫系は感染防御系の中核として働くが、その時、神経・内分泌系も反応し、免疫系と連動して機能する。抗原刺激に対して免疫系の細胞は様々なサイトカインを産生すると共に、それらの受容体の発現も冗進する。 | KAKENHI-PROJECT-12307006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12307006 |
調理動作のバイオメカニクス的研究 | 本研究の目的は調理動作のバイオメカニクス的特徴を調べることで、対象として「包丁によるリンゴの丸剥き動作」を取り上げた。女子大学生148名に予備試験を行い、その中から熟練者・未熟練者それぞれ10名ずつを本実験の参加者とした。本実験では参加者の両手の動きをモーションキャプチャー(VICON)で記録し、同時に両手の手指の筋活動も計測した。その結果、熟練者は右手を包丁に固定して数回力を入れながら左手で保持したリンゴをゆっくり回転させ、次に左手で保持したリンゴを持ちかえる、というパターンで左右の手を協調させていた。一方、未熟練者ではこうした左右での協調パターンがみられなかった。本研究は、日本の一般家庭で行われる様々な調理動作を、動作の力学的特性および筋活動等の生理学的特性の両面から詳細に記録・分析するというバイオメカニクス的手法で研究し、その中で熟練者と未熟練者の比較から調理動作の「コツ」について検討することを目的とするものである。平成27年度においては、当初の計画通り、研究代表者が調理動作を測定するため、動作の3次元記録と同時に筋電図や脳波といった生体信号記録が可能な実験システムを構築し、さらに動作や生体信号の解析方法の確立を進めた。一方、研究分担者は予備実験から対象とする調理動作を「包丁を用いたりんご1個丸ごとの皮むき」とし、熟練者と未熟練者を比較するために調理技術の評価指標を作成した。その後、実際に、熟練者と未熟練者の動作の3次元記録を行い、動作の違いについて検討した。その結果、熟練者において包丁を持つ右手の親指が包丁の刃よりも左側に安定して置かれていて、包丁を案内する役割を果たしている可能性が示された。また、包丁を保持する角度が水平面に対して大きく(斜め45度付近)、包丁と手首の間の空間を大きくとっている傾向がみられた。これらの平成27年度に得られた知見は「包丁を用いたりんご1個丸ごとの皮むき」動作の「コツ」を示唆するきわめて重要なものであった。調理動作測定するための、動作の3次元記録と生体信号記録を同時に行う実験システムが構築できた。さらに動作や生体信号の解析方法も確立した。また、調理動作のスキルを一定の指標で評価した上で、熟練者と未熟練者の動作を比較することで調理技術の「コツ」を探ることが可能であることも分かった。本研究は、日本の一般家庭で行われる様々な調理動作を、動作の力学的特性および筋活動等の生理学的特性の両面から詳細に記録・分析するというバイオメカニクス的手法で研究し、その中で熟練者と未熟練者の比較から調理動作の「コツ」について検討することを目的とするものである。平成28年度においては、平成27年度に引き続き、対象動作を「包丁を用いたりんご1個丸ごとの皮むき」として、熟練者と未熟練者を比較する調理技術の評価指標に基づいて分類した被験者間で動作の違いについて検討し、さらに動作を生み出す筋活動の違いについても、包丁を持つ利き手だけではなく、りんごを持つ非利き手の活動も含めて検討した。その結果、熟練者の動作は、包丁を持つ利き手がほぼ固定されている一方でりんごを持つ非利き手がリンゴをゆっくり弧を描いて回転させ、ある程度進めたらわずかに手を離して持ちかえることを繰り返していた。筋活動もそれに合わせて行われ、右手の筋群はリズミカルに活動し、左手は継続的な弱い活動とりんごを持ち直す活動が繰り返されていた。すなわち、右手と左手の規則的な連動が認められた。一方、非熟練者では右手はわずかに不規則に動き、左手はきれいな弧は描かなかった。すなわち、無意識に動かしている左手の動きに熟練者と未熟練者の顕著な違いがみられた。これらの平成28年度に得られた知見は、調理動作の「コツ」を検討する上できわめて重要なものであった。またこれを調理動作のスキルの学習の補助に用いることが、日本の一般家庭で行われる調理動作という技能の伝達をより円滑にする一助となるものと考えられた。研究代表者・研究分担者ともに平成28年度に予定していた実験及びデータの解析を精力的にすすめたが、勤務先の大学における新学科設立に関係する業務多忙と、年度末の研究室移動により研究遂行のための十分な時間と場所ができなかった。そのため、当初の計画のような、他の調理動作についての検討や、他の生理指標の計測ができなかった。それゆえ、研究期間を1年延長し、対象とする調理動作を増やし、計測する生理指標として脳波計測などを用いながら、調理動作の「コツ」をさらに明らかにしていきたい。本研究は、日本の一般家庭で行われている様々な調理動作を、動作の力学的特性および筋活動などの生理学的特性の両面から詳細に記録・分析するというバイオメカニクス的手法で研究し、その中で熟練者と未熟練者の比較から調理動作の「コツ」について検討することを目的とするものである。平成29年度においては、引き続き対象動作を「包丁を用いたりんご1個丸ごとの皮むき」として、熟練者と未熟練者を比較する調理技術の評価指標に基づいて分類した被験者間での動作の違いについて、とくに動作を生み出す左右上肢の筋活動の違いから検討した。その結果、熟練者の動作は非利き手でりんごをゆっくり回転させながら包丁を持つ利き手を少しずつ3-4回動かし、次にりんごを持ちかえるために非利き手を反対側に大きく動かす、という繰り返しのパターン動作をリズミカルに行っていることがわかった。すなわち、利き手と非利き手の協調的な連動が確認された。 | KAKENHI-PROJECT-15K12363 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K12363 |
調理動作のバイオメカニクス的研究 | 一方で、非熟練者の動作は不安定で、利き手・非利き手ともに不規則な動作が目立ち、動作のリズムも一定ではなかった。さらに、結果に基づいたりんごのむき方の教習を行うと、皮をむいたりんごの完成度と皮むきの動作速度に改善が認められた。これらの知見は調理動作の「コツ」を検討する上できわめて重要なものであった。またこれを調理動作学習に用いることが、日本の一般家庭で行われている調理動作技能の円滑な伝達の一助となるものと考えられた。本研究の目的は調理動作のバイオメカニクス的特徴を調べることで、対象として「包丁によるリンゴの丸剥き動作」を取り上げた。女子大学生148名に予備試験を行い、その中から熟練者・未熟練者それぞれ10名ずつを本実験の参加者とした。本実験では参加者の両手の動きをモーションキャプチャー(VICON)で記録し、同時に両手の手指の筋活動も計測した。その結果、熟練者は右手を包丁に固定して数回力を入れながら左手で保持したリンゴをゆっくり回転させ、次に左手で保持したリンゴを持ちかえる、というパターンで左右の手を協調させていた。一方、未熟練者ではこうした左右での協調パターンがみられなかった。平成28年度においては、研究代表者・研究分担者協力のもとで、生体信号(とくに筋電図)を含めた調理動作の分析を、さらに他の調理動作も含めて進める予定である。また、研究代表者・研究分担者ともに平成27年度に行った研究結果をまとめ、国内学会での発表および論文投稿を積極的に進めていく予定である。平成29年度においては、研究代表者・研究分担者ともにこれまでの研究のまとめ作業として、より詳細なリンゴの皮むき動作のデータ取得をまず行う。とくに、調理技術の極めて高い熟練者のデータを取得してその特性を明らかにすることを行う。その際、計測する生理指標として筋電図に加えて脳波の計測も行う。次に、対象とする調理動作を他の調理動作にも広げ、様々な動作に共通する「コツ」についても検討する。最後に、研究代表者・研究分担者ともに平成28年度までに行った研究成果をまとめ、国内学会・国際学会での発表、および論文の投稿に特に精力を傾けて取り組む予定である。身体教育学調理動作の計測には食材の利用が不可欠であるが、食材の価格は変動が大きく、平成27年度の研究における総額が当初予定より少なくなってしまったためである。モーションキャプチャーによる動作分析と生体アンプによる筋電図測定により、りんごの皮向き動作の計測を続けてきた。しかし、平成28年度は研究代表者・研究分担者ともに、学内の新学科設立による業務多忙と、年度末の研究室移動により研究遂行のための十分な時間と場所が確保できなかった。この状況で年度内に無理して測定を行い研究を終了させるのではなく、平成29年度に研究期間を延長し研究成果の発表を含めて行うべきと考えたため。平成28年度においても、前年に引き続き調理動作の測定を積極的に続ける予定であり、その際要する食材の購入に要する経費として使用する予定である。平成29年度も継続してリンゴの皮向き動作の計測を行うため、おもに消耗品としての物品費や、被験者の謝礼品にかかる経費などとして用いる。また、他の調理動作や生理指標の計測も行う予定であるため、それらの消耗品としての物品費も必要になる。また研究成果の発表を精力的に行うため、学会参加のための旅費や、論文の校正謝金、論文投稿料なども必要になる。 | KAKENHI-PROJECT-15K12363 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K12363 |
リハビリテーション専門看護師養成カリキュラムの開発 | 本研究では、大学院教育における高度専門職業教育施行の開始を受け、欧米より立ち遅れている本邦のリハビリテーション専門看護師養成に向けて、その基本となるカリキュラム開発を目的に、本邦における教育側・臨床側のリハビリテーション専門看護師養成に関する現状把握と、諸外国における同様の状況把握を行い、分析検討を重ね、本邦におけるリハビリテーション専門看護師養成のためのカリキュラム案を作成した。初めに、看護系大学・大学院におけるリハビリテーション看護教育の実施状況と教員認識の現状を把握する目的で、日本看護系大学協議会登録大学院においてリハビリテーション看護研究関連講座を担当する教員およびリハビリテーション看護関係看護団体委員で構成する検討会を開催し、具体的で実現性が高い教育案および臨床・教育側の教育連携システム等を討議した。次いで、現在の本邦において専門病院または病棟に勤務している看護師すなわちリハビリテーション専門看護師ともいえる立場の看護師が抱く、リハビリテーション専門看護業務・同養成カリキュラムに対する臨床看護職の認識の現状を広く把握するために、リハビリテーション病院および病棟の看護部長・病棟師長・スタッフ看護師を対象に、看護職者調査を行った。さらに、われわれが開発して現在実施中の臨床看護師対象研修カリキュラムについて、研修参加者を対象に調査を行い、その効果を検討した。そして、欧米豪の現地に赴き、リハビリテーション専門看護師業務実態と養成カリキュラム実施状況、それらの抱える問題点と今後の動向について、関係者を対象に面接調査を行った。これらの結果を踏まえ、大学院カリキュラムおよび日本看護協会専門看護師養成カリキュラムに適合する実施案を作成した。本研究では、大学院教育における高度専門職業教育施行の開始を受け、欧米より立ち遅れている本邦のリハビリテーション専門看護師養成に向けて、その基本となるカリキュラム開発を目的に、本邦における教育側・臨床側のリハビリテーション専門看護師養成に関する現状把握と、諸外国における同様の状況把握を行い、分析検討を重ね、本邦におけるリハビリテーション専門看護師養成のためのカリキュラム案を作成した。初めに、看護系大学・大学院におけるリハビリテーション看護教育の実施状況と教員認識の現状を把握する目的で、日本看護系大学協議会登録大学院においてリハビリテーション看護研究関連講座を担当する教員およびリハビリテーション看護関係看護団体委員で構成する検討会を開催し、具体的で実現性が高い教育案および臨床・教育側の教育連携システム等を討議した。次いで、現在の本邦において専門病院または病棟に勤務している看護師すなわちリハビリテーション専門看護師ともいえる立場の看護師が抱く、リハビリテーション専門看護業務・同養成カリキュラムに対する臨床看護職の認識の現状を広く把握するために、リハビリテーション病院および病棟の看護部長・病棟師長・スタッフ看護師を対象に、看護職者調査を行った。さらに、われわれが開発して現在実施中の臨床看護師対象研修カリキュラムについて、研修参加者を対象に調査を行い、その効果を検討した。そして、欧米豪の現地に赴き、リハビリテーション専門看護師業務実態と養成カリキュラム実施状況、それらの抱える問題点と今後の動向について、関係者を対象に面接調査を行った。これらの結果を踏まえ、大学院カリキュラムおよび日本看護協会専門看護師養成カリキュラムに適合する実施案を作成した。リハビリテーションの必要度の高まりに看護が対応するために、リハビリテーション専門看護師養成が急務である。そこで、大学院教育における高度専門職業教育施行環境が整えられたこと、また、研究者らの所属機関に博士課程前期・後期が設置されていることを背景に、大学院におけるリハビリテーション専門看護師養成のカリキュラム開発を行うこととして、初年度は、(1)海外状況調査、(2)試行中の臨床研修カリキュラム評価、(3)専門家会議、(4)大学院カリキュラム準備、(5)国内調査準備を行った。(1)海外状況調査:一つは、米国におけるリハビリテーション看護教育の状況把握である。アメリカ・リハビリテーション看護協会の協力を得て、リハビリテーション認定看護師のカリキュラムと教育方法を把握するとともに、リハビリテーション専門看護師コースの不調原因の意見交換を行った。この調査からは、日本における専門看護師養成カリキュラム開発で克服すべき問題が明らかにでき、これを基盤として日本看護協会担当者との協議も行えた。もう一つは、豪州の調査である。米国とは異なる教育制度を発達させており、日本におけるリハビリテーション専門看護師養成カリキュラム開発に有益なシステムの情報を得ることができた。(2)試行中の臨床研修カリキュラム評価:参加者の調査結果を毎回纏めたところ、好意的な評価であった。なお、受講後の待遇問題などの問題も明らかになった。(3)専門家会議:(1)(2)の調査結果を踏まえて、教育側・臨床側の参加を得て活発に行った。(4)大学院カリキュラム準備:金沢大学・大阪大学でのシラバス案作成を行った。(5)国内調査準備:(1)(4)の成果を踏まえて、国内調査用質問紙を作成した。2年目は、国内調査・欧州調査を行うとともに、大学院教育におけるカリキュラム案を提示する。本研究では、大学院教育における高度専門職業教育施行の開始を受け、欧米より立ち遅れている本邦のリハビリテーション専門看護師養成に向けて、その基本となるカリキュラム開発を目的に、本邦における教育側・臨床側のリハビリテーション専門看護師養成に関する現状把握と、諸外国における同様の状況把握を行い、分析検討を重ね、本邦におけるリハビリテーション専門看護師養成のためのカリキュラム案を作成した。初めに、看護系大学・大学院におけるリハビリテーション看護教育の実施状況と教員認識の現状を把握する目的で、日本看護系大学協議会登録大学院においてリハビリテーション看護研究関連講座を担当する教員およびリハビリテーション看護関係看護団体委員で構成する検討会を開催し、具体的で実現性が高い教育案および臨床・教育側の教育連携システム等を討議した。 | KAKENHI-PROJECT-15390663 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15390663 |
リハビリテーション専門看護師養成カリキュラムの開発 | 次いで、現在の本邦において専門病院または病棟に勤務している看護師すなわちリハビリテーション専門看護師ともいえる立場の看護師が抱く、リハビリテーション専門看護業務・同養成カリキュラムに対する臨床看護職の認識の現状を広く把握するために、リハビリテーション病院および病棟の看護部長・病棟師長・スタッフ看護師を対象に、看護職者調査を行った。さらに、われわれが開発して現在実施中の臨床看護師対象研修カリキュラムについて、研修参加者を対象に調査を行い、その効果を検討した。そして、欧米豪の現地に赴き、リハビリテーション専門看護師業務実態と養成カリキュラム実施状況、それらの抱える問題点と今後の動向について、関係者を対象に面接調査を行った。これらの結果を踏まえ、大学院カリキュラムおよび日本看護協会専門看護師養成カリキュラムに適合する実施案を作成した。 | KAKENHI-PROJECT-15390663 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15390663 |
腎臓のクロライドイオン輸送異常症の病態解析と治療法開発 | 1.偽性低アルドステロン症II型(PHAII)は、腎臓遠位尿細管におけるクロライド再吸収増加がその原因としていわれていた。本研究ではその病態解明をヒトPHAII患者と同じ変異を持つ遺伝子改変マウス(ノックインマウス)を作成し検討した。その結果、細胞間のクロライド輸送は変異ノックインマウスの集合尿細管を単離してかん流し検討したが、野生型マウスに比して著明な増加は見られなかった。変異WNK4はSTE20-like kinaseであるOSR1/SPAKキナーゼをリン酸化し、OSR1/SPAKキナーゼはさらにサイアザイド感受性Na-Cl共輸送体(NCC)をリン酸化し、リン酸化されたNCCは細胞膜上に存在して盛んにNaClを再吸収し、塩分依存性高血圧症が形成されると考えられた。また、NCC以外の輸送体、ROMKカリウムチャネルやENaC上皮型ナトリウムチャネルは変異WNK4によって一次的に制御は受けず、WNK4の直接のターゲット分子ではないことが示された。2.ヘンレの太い上行脚のに存在し、この部位でのNaCl再吸収にとって重要なCLC-K2クロライドチャネルヒとそのベータサブユニットbarttinについて、そのお互いの結合部位を免疫沈降にて検討した。その結果、CLC-K2クロライドチャネルの外側壁を形成する膜貫通部位とbarttinの膜貫通部位が親和性を有していることが判明した。これ情報にもとずき両者の結合を阻害する薬剤の探索をすすめれば、強力な利尿剤となることが予想された。1.偽性低アルドステロン症II型(PHAII)は、腎臓遠位尿細管におけるクロライド再吸収増加がその原因としていわれていた。本研究ではその病態解明をヒトPHAII患者と同じ変異を持つ遺伝子改変マウス(ノックインマウス)を作成し検討した。その結果、細胞間のクロライド輸送は変異ノックインマウスの集合尿細管を単離してかん流し検討したが、野生型マウスに比して著明な増加は見られなかった。変異WNK4はSTE20-like kinaseであるOSR1/SPAKキナーゼをリン酸化し、OSR1/SPAKキナーゼはさらにサイアザイド感受性Na-Cl共輸送体(NCC)をリン酸化し、リン酸化されたNCCは細胞膜上に存在して盛んにNaClを再吸収し、塩分依存性高血圧症が形成されると考えられた。また、NCC以外の輸送体、ROMKカリウムチャネルやENaC上皮型ナトリウムチャネルは変異WNK4によって一次的に制御は受けず、WNK4の直接のターゲット分子ではないことが示された。2.ヘンレの太い上行脚のに存在し、この部位でのNaCl再吸収にとって重要なCLC-K2クロライドチャネルヒとそのベータサブユニットbarttinについて、そのお互いの結合部位を免疫沈降にて検討した。その結果、CLC-K2クロライドチャネルの外側壁を形成する膜貫通部位とbarttinの膜貫通部位が親和性を有していることが判明した。これ情報にもとずき両者の結合を阻害する薬剤の探索をすすめれば、強力な利尿剤となることが予想された。偽性低アルドステロン症II型は、高血圧を呈する優性遺伝形式の病気であり、近年WNKキナーゼの変異がその原因である事が判明したが、その分子機序は全く不明であった。遠位部尿細管でのクロライドイオン再吸収の増加が指摘されていたが、以前我々は病気を引きおこす変異体のWNK4発現によりMDCK細胞にてクロライド透過性の亢進、claudinのリン酸化が起こることを明らかにした。今回、1)WNK1のヒトでの異常はイントロン部の欠損で、それによりWNK1発現が増加すると言われていることから、WNK1の強制発現細胞でWNK4と同様な変化が起きるかを検討した。その結果、WNK1発現増加により、クロライドの透過性が亢進し、claudinのリン酸化が増加する事を明らかにした。2)一方、この様な培養細胞系ではクロラィド透過性亢進以外にもいろいろなデータが出されている。しかしながら生体内でもこの様なことがおきているか結論が出ていなかった。そこで今回WNK4のミスセンス体を発現するノックインマウスを作成し検討することとした。すでに、偽性低アルドステロン症II型の形質を発現していることを確認し、モデルマウスとして検討に値することを確認済みで、現在分子病態を検討中である。1.偽性低アルドステロン症II型(PHAII)は、腎臓遠位尿細管におけるクロライド再吸収増加がその原因としていわれていた。本研究ではその病態解明をヒトPHAII患者と同じ変異を持つ遺伝子改変マウス(ノックインマウス)を作成し検討した。その結果、細胞間のクロライド輸送は変異ノックインマウスの集合尿細管を単離してかん流し検討したが、野生型マウスに比して著明な増加は見られなかった。変異WNK4はSTE20-like kinaseであるOSR1/SPAKキナーゼをリン酸化し、OSR1/SPAKキナーゼはさらにサイアザイド感受性Na-Cl共輸送体(NCC)をリン酸化し、リン酸化されたNCCは細胞膜上に存在して盛んにNaClを再吸収し、塩分依存性高血圧症が形成されると考えられた。また、NCC以外の輸送体、ROMKカリウムチャネルやENaC | KAKENHI-PROJECT-18390246 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18390246 |
腎臓のクロライドイオン輸送異常症の病態解析と治療法開発 | 上皮型ナトリウムチャネルは変異WNK4によって一次的に制御は受けず、WNK4の直接のターゲット分子ではないことが示された。2.ヘンレの太い上行脚のに存在し、この部位でのNaCl再吸収にとって重要なCLC-K2クロライドチャネルとそのべータサブユニットbarttinについて、そのお互いの結合部位を免疫沈降にて検討した。その結果、CLC-K2クロライドチャネルの外側壁を形成する膜貫通部位とbarttinの膜貫通部位が親和性を有していることが判明した。これ情報にもとずき両者の結合を阻害する薬剤の探索をすすめれば、強力な利尿剤となることが予想された。 | KAKENHI-PROJECT-18390246 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18390246 |
人為的環境改変によるリュウキュウコノハズク二系統の同所化と浸透性交雑に関する研究 | 南西諸島に分布するリュウキュウコノハズクは、分断分布による種レベルの遺伝的差異を蓄積した南北二系統に分けられた。それぞれが進化的に重要な単位(ESU)である。しかし沖縄島には小型の北系統が優占するものの大型の南系統が同所的に生息することが確認された。これは人為的環境改変が南系統の分布域を変化させた結果と推察された。地史的時間スケールで形成された近縁種が、生態学的時間スケールで同所的に生息するようになった例である。本研究では、この機会を利用して二系統間に生じる交雑、同類交配、配偶者選択、移動分散など、生態学的諸側面を解明することでESUの実質的な意義を明らかにする。本研究では分断分布に矛盾する個体群の成立要因を解明する。小型の北系統が生息する沖縄島と奄美大島には、それぞれノグチゲラとオオアカゲラが分布する。この島々においてリュウキュウノコハズクはこれらのキツツキの古巣に営巣する。巣穴の入口サイズが異なる巣箱を架設し、それぞれを利用するリュウキュウコノハズクの系統を明らかにすることが最も重要な野外調査である。穴のサイズの異なる巣箱を架設した結果、異なる穴サイズの巣箱で繁殖するつがいの系統が明らかになった。本年のデータだけでは繁殖成功の系統間での繁殖の和合性、不和合性に大きな違い確認されなかった。より解析つがい数を増やすことで傾向が見出される可能性がある。生態的に競合するオオコノハズクは小型の巣箱の穴から可能じて出ることができるものの翼を伸ばした状態でしか出入りができないことが分かった。オオコノハズクはノグチゲラの巣穴を巣として利用しないと考えられた。既存の約700個体のリュウキュウコノハズクのマイクロサテライト12個遺伝子座解析を終えた。北系統には渡りをする個体群が存在する可能性が本研究過程で確認されたため、GPSロガーの装着し2017年8個体の回収に成功した。本研究では、リュウキュウコノハズクの巣立ちに雛に衛星追跡GPSを装着し、移動分散と配偶者選択の過程を解明する予定であった。しかし予定していたアルゴスシステムを用いたデバイスが、日本の電波法の基準をクリアーできず使用不可能となった。このためGPSデータロガーを用いることにした。衛星追跡GPSを使用すれば、研究室に居ながらにして測位データが得られたのであるが、GPSデータロガーの場合、再捕獲をしデバイスを取り外した上でコンピュータを用い位置データを取り出す必要がある。そのため再捕獲の可能性が極めて低い雛に、再捕獲が必要なGPSデータロガーを装着することはできない。つまり雛の分散過程の追跡、および配偶者の解明は諦めざるを得なかった。繁殖個体の土地執着性や配偶者執着性を足輪を用いて確認し、同類交配、異系交配による配偶成功を経年的に比較する現実的な方法を採用することとした。そこで沖縄島では2017年1月に巣箱を架設し直し、新たな繁殖つがいを誘致し、確実なデータ収集が可能になる準備を整えた。繁殖つがいに関する情報の上乗せが期待される。本研究の過程で北部個体群が渡りをしている可能性があることがわかり、その解明にGPSデータロガーを役立てることができる。個体群の遺伝的構造を解明する上で、重要な情報を提供する。中之島の個体群で捕獲を行いGPSロガーを装着し、2017年8個体の回収に成功した。しかしGPSメーカーの判断ミスで外装の強度が弱く、7個がリュウキュウコノハズクよって破壊されデータ抽出ができなかった。1個はデータ抽出はできたものの想定外に短い電池の寿命により、渡りの経路の解明には至らなかった。2016年5月に鹿児島県トカラ列島中之島に巣箱10個を架設したが、リュウキュウコノハズクは利用しなかった。基本的にこれまでと同様の手順で研究を進める。巣穴サイズの選好性、利用可能性を明らかにするために穴のサイズが異なる巣箱を架設し、利用するつがいのを捕獲する。採血からDNAを抽出し、ミトコンドリアDNAを解析することで南北どちらの系統か解明する。穴のサイズが体サイズに関係して生態的な利用制限となっているのかどうか解明する。系統同類交配があるのかどうか明らかにする。北系雄と南系雌、および南系雄と北系雌の組み合わせの出現頻度を解明する。オス南系統とメス北系統、オス北系統とメス南系統、オスメス同系統の4パターンの繁殖成功を比較する。遺伝構造の解像度を変え、より詳細な帰属を査定できるマイクロサテライトDNAでも同様の解析を行なう。異なる系統間での繁殖は、卵が孵化しないなど、失敗の頻度が高いと予測される。なおリュウキュウコノハズクにはつがい外受精が確認されている。雛の父性を確認し、社会的つがいによる繁殖成功なのか、つがい外受精によるのかを明らかにすることで、同類交配の繁殖成功をより確実に査定する。またマイクロサテライト解析ではストラクチャー解析による浸透性交雑の様相を明確にする。生態学的時間スケールでの変化を評価するために剥製からDNAを抽出し、約100年前の遺伝的構造を解明する。山階鳥類研究所蔵の剥製には124年前から80年前までのものが約20体確認されている。現在では市街化が進み、リュウキュウノコハズクが生息していない那覇市中心部で採集された個体も含まれる。 | KAKENHI-PROJECT-16H04737 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H04737 |
人為的環境改変によるリュウキュウコノハズク二系統の同所化と浸透性交雑に関する研究 | これらをサンプルとし過去の遺伝的構造の推定を試みる。環境改変が現在程進行していない段階の100年前の沖縄島には、南系統は生息していなかったと予測される。南西諸島に分布するリュウキュウコノハズクは、分断分布による種レベルの遺伝的差異を蓄積した南北二系統に分けられた。それぞれが進化的に重要な単位(ESU)である。しかし沖縄島には小型の北系統が優占するものの大型の南系統が同所的に生息することが確認された。これは人為的環境改変が南系統の分布域を変化させた結果と推察された。地史的時間スケールで形成された近縁種が、生態学的時間スケールで同所的に生息するようになった例である。本研究では、この機会を利用して二系統間に生じる交雑、同類交配、配偶者選択、移動分散など、生態学的諸側面を解明することでESUの実質的な意義を明らかにすることを最終目的とする。本研究では、まず分断分布に矛盾する個体群の成立要因について検証する。小型の北系統のリュウキュウコノハズクの主な生息地である沖縄島と奄美大島には、それぞれノグチゲラとオオアカゲラが分布する。この島々においてリュウキュウノコハズクはこれらのキツツキの古巣に営巣する。そのために体サイズが小型に維持されてきたと推測される。巣穴の入口サイズが異なる巣箱を架設し、それぞれを利用するリュウキュウコノハズクの系統を明らかにすることが検証の一歩となる。2016年には穴のサイズの異なる十分な数の巣箱を架設した。異なる穴サイズの巣箱で繁殖するつがいの系統が明らかになる。さらに繁殖成功を比較することで、系統間での繁殖の和合性、不和合性が確認され、系統の違いに応じた繁殖成功を評価する準備が整った。巣箱繁殖つがいの遺伝解析に先駆け、既存の500個体以上のリュウキュウコノハズクを用い、マイクロサテライトDNA領域12個のプライマーが利用可能であることを確認した。また北系統には渡りをする個体群が存在する可能性が本研究過程で確認された。そこでGPSロガーの装着を行い、2017年には渡りの有無、時期、ルート、越冬地が判明する。本研究では、リュウキュウコノハズクの巣立ちに雛に衛星追跡GPSを装着し、移動分散と配偶者選択の過程を解明する予定であった。しかし使用を予定していたアルゴスシステムを用いた最新超小型追跡用のデバイスが、日本の電波法の基準をクリアーできず使用不可能となった。このためGPSデータロガーを用いることになった。衛星追跡GPSを使用すれば、研究室に居ながらにして測位データが得られたのであるが、GPSデータロガーの場合、再捕獲をしデバイスを取り外した上でコンピュータを用い位置データを取り出す必要がある。そのため再捕獲の可能性が極めて低い雛に、再捕獲が必要なGPSデータロガーを装着することはできない。つまり雛の分散過程の追跡、および配偶者の解明は諦めざるを得なかった。そこで、繁殖個体の土地執着性や配偶者執着性を足輪を用いて確認し、同類交配、異系交配による配偶成功を経年的に比較する現実的な方法を採用することとした。しかしアルゴスシステムを使うデバイスよりも、GPSデータロガーは比較的安価であるため、より多くの個体に装着が可能になる。また、本研究の過程で北部個体群が渡りをしている可能性があることがわかり、その解明にもGPSデータロガーを役立てることができる。個体群の遺伝的構造を解明する上で、重要な情報を提供する。 | KAKENHI-PROJECT-16H04737 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H04737 |
マグマの発生と多様性のダイナミクス | 本研究の目的は、地球上のさまざまなテクトニックセッティングにおけるマグマの成因を明らかにして、地球内部のダイナミクスを理解することにある。当核期間において、得られた主要な成果は、以下のものである.1.沈み込むリシスフェア-の化学的役割の解明:高圧下の脱水分解反応における元素移動度を実験により求め、このメカニズムが、マグマの化学的特徴を説明することを明らかにした.2.含水マントル物質の地震波速度の決定:高圧下での含水マントル物質の地震波速度を実験により決定し、マントルウェッジ最下部の低速度層が含水カンラン岩層である可能性を確認した.3.マントルウェッジ内高温域の成因の解明:沈み込むリソスフェア-によって励起される二次対流が、マグマ発生に必要な高温領域を形成することを明らかにした.4.沈み込み帯におけるマグマ発生の包括的モデルの提唱:沈み込み帯火山活動における一般的特徴を明らかにし、この特徴を合理的に説明しうる包括的モデルを、上記の成果をふまえて提唱した.5.背孤海盆形成に伴うマントルダイナミクスの解明:日本海形成時における火山活動を解析し、マントルウェッジの化学的進化、温度構造の変化を明らかにした。全マントル規模の物質循環の解明:南太平洋ポリネシア地域に産するHIMU玄武岩の岩石学的・地球化学的特性を明らかにし、このマグマの発生に、沈み込んだ海洋地殻物質が関与し、その貯蔵庫が下部マントル最下部に存在することを明らかにした.本研究の目的は、地球上のさまざまなテクトニックセッティングにおけるマグマの成因を明らかにして、地球内部のダイナミクスを理解することにある。当核期間において、得られた主要な成果は、以下のものである.1.沈み込むリシスフェア-の化学的役割の解明:高圧下の脱水分解反応における元素移動度を実験により求め、このメカニズムが、マグマの化学的特徴を説明することを明らかにした.2.含水マントル物質の地震波速度の決定:高圧下での含水マントル物質の地震波速度を実験により決定し、マントルウェッジ最下部の低速度層が含水カンラン岩層である可能性を確認した.3.マントルウェッジ内高温域の成因の解明:沈み込むリソスフェア-によって励起される二次対流が、マグマ発生に必要な高温領域を形成することを明らかにした.4.沈み込み帯におけるマグマ発生の包括的モデルの提唱:沈み込み帯火山活動における一般的特徴を明らかにし、この特徴を合理的に説明しうる包括的モデルを、上記の成果をふまえて提唱した.5.背孤海盆形成に伴うマントルダイナミクスの解明:日本海形成時における火山活動を解析し、マントルウェッジの化学的進化、温度構造の変化を明らかにした。全マントル規模の物質循環の解明:南太平洋ポリネシア地域に産するHIMU玄武岩の岩石学的・地球化学的特性を明らかにし、このマグマの発生に、沈み込んだ海洋地殻物質が関与し、その貯蔵庫が下部マントル最下部に存在することを明らかにした.本研究は、マントルウェッジ内の物質移動・リフト形成に伴う地域深部ダイナミクス・プレート内火山活動と地球深部ダイナミクス、の3点の解明を目的とする。1.マントルウェッジ内の物質移動:マントルウェッジ内の温度構造を支配してマグマの発生に決定的な役割を果たす2種の2次対流について、岩石学的な束縛条件に基づいて評価を行ない、スラブの沈み込みに伴う対流が主要な役割を果たすことを明らかにした。さらに、本年度導入したワークステーションを用いて粘性係数の温度変化を考慮に入れた数値シミュレーションを行ない、マントルウェッジ内の物質移動と温度構造の合理的な再現を行った。2.リフト形成に伴う地球深部ダイナミクス:日本海背弧海盆の形成に伴う物質移動について、日本海・東北日本弧の岩石について実験岩石学・地球化学的なデータを生産した。これらを束縛条件にしてアセノスフェアーの貫入と冷却に伴うリフト下の温度構造の時間変化について数値シミュレーションを行ない、背弧海盆形成に伴うマントル内の物質移動を明らかにした。同様の解析をアフリカ・ケニア地溝帯に対しても行なっている。3.プレート内火山活動と地球深部ダイナミクス:カムチャッカ半島に分布する、従来プレート内火山活動であるとされた岩石について、地球化学的さらに数値シミュレーションに基づく検討を行ない、トランスフォーム/沈み込み境界での熱異常の結果マグマが発生したことを明らかにした。また、スラブ物質の大規模循環を考察する上で重要な束縛条件となる、脱水分解反応に伴う元素移動について、高温高圧実験を行ない、特に鉛が移動しにくいことを発見した。このことにより、ある種のプレート内マグマの発生に、マントル・核相互作用が重要であることが明らかになった。本年度は、マントルウェッジ内の物質移動とマグマ成因論・プレート内火山活動と地球深部ダイナミクス、に関して、以下のような進展があった。1.マントルウェッジ内の物質移動とマグマ成因論:昨年度までの研究成果に基づいて、包括的な沈み込み帯におけるマグマ成因モデルを提唱した。このモデルによって、多くの沈み込み帯火山活動で認められる一般的な特徴はもとより、特異な火山活動の成因も理解することが可能となった。また、脱水分解反応に伴う元素移動に関するより精密な実験と、鉛同位体比を含む高精度の地球化学データを組み合わせることにより、沈み込み帯のマグマが有する化学的特徴の成因を、定量的に説明できる可能性が高くなった。 | KAKENHI-PROJECT-05231106 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05231106 |
マグマの発生と多様性のダイナミクス | さらに、一部の特異な火山活動では、マントルウェッジ内の異常高温によるスラブ(堆積物)融解が、主要なトリガーになっていることが、明らかになってきた。2.プレート内火山活動と地球深部ダイナミクス:全マントル規模のスラブ物質の大循環を考察する上で重要なフレンチポリネシアの玄武岩類について、深部マントル起源と浅部起源のマグマの化学組成を比較し、前者がより玄武岩成分・ペロブスカイト成分に富むことを明らかにした。このことは、スラブ内の玄武岩質海洋地殻が下部マントルにまで達して、大循環していることを強く支持する。さらに、日本列島の付加帯を構成する緑色岩類の中に、ポリネシア域の深部マントル由来玄武岩と同一の化学的特徴を有するものが見いだされ、過去にも、巨大なマントル内大循環が起こっていたらしいことが、明らかになってきた。また、沈み込み帯背後の大陸内火山活動は、枯渇したマントル物質がその起源物質であることが、中国東北部玄武岩の解析から明らかになってきた。この枯渇した物質が、スラブ物質であるか否かが、今後の重要な関心事である。3.本年度導入したプラズマ発光分析装置を用いて希土類元素を、迅速高精度で分析する方法を開発した。本年度は、マントルウェッジ内の物質移動とマグマ成因論・プレート内火山活動と地球深部ダイナミクス、に関して、以下のような進展があった。1.マントルウェッジ内の物質移動とマグマ成因論:昨年度に提案した、包括的な沈み込み帯におけるマグマ成因モデルを、さらに発展させるために、沈み込み堆積物の化学的特徴、特異な火山活動に関する解析を行った。堆積物が脱水分解反応する際の元素移動に関して結果を得ることができ、このデータを用いることでより一般的な化学的進化を議論できるようになった。また、特異な高Mg安山岩質マグマの発生が、マントル内の異常高温によってもたらされたことを、年代測定・古地磁気測定・熱計算シミュレーション・同位体比測定の結果に基づいて示した。このことにより、初期地球における大陸地殻の形成、という地球科学の重要な問題について強い束縛条件を与えることができた。また、全上部マントル規模のプレート沈み込みに伴う対流の発生について解析し、マントル深部物質の沈み込み帯への上昇を確認した。2.プレート内火山活動と地球深部ダイナミクス:昨年度に引き続き、日本列島・サハリンの付加帯およびシャツキ-海台を構成する玄武岩質岩石に関して地球化学的検討を行い、ポリネシア域の深部マントル由来玄武岩と同一の化学的特徴を有するものを見いだし、しかも、その活動が地球磁場静穏気と一致することを明らかにした。このことにより、巨大マントル上昇流が地球システムの変動に大きな影響を与えていることが明らかになった。また、沈み込み帯背後の大陸内火山活動に関して、シホテアリン地域の玄武岩類について、年代測定・化学分析を行い、予察的ではあるが、枯渇したマントル物質がその起源物質であることが明らかになってきた。3.プラズマ発光分析装置を用いて希土類元素を、迅速高精度で分析する方法を更に発展させ、日常的な分析が行えるようなシステムを完成した。 | KAKENHI-PROJECT-05231106 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05231106 |
土構造物の性能設計とリスク評価・管理及び社会制度に関する総合的研究 | 現在我が国の建築、道路橋、港湾施設等多くの分野で、設計基準の性能規定化が進んでいる。さらに、我が国の多くの設計コードは,ISO2394などに準拠した信頼性設計法に移行している。今後の我国の設計コードは、要求性能を性能により規定し、性能照査を信頼性設計法によるものとなって行くと考えられる。性能設計は本質的に多様であり、現在いろいろなグループや、種々の構造物の主管機関で出されている提案には、多くのバリエーションがある。いまだに明確な全体像は明らかでない。しかし性能型設計が、構造物のより正確な挙動の予測とその予測精度の定量的把握(不確実性の定量化)を技術者に対して要求するとともに、従来からの設計・施工・維持管理に関する社会的な制度の変更をも迫っていることは間違いない。これはリスク評価と分担、発注形態、設計審査機関、設計者へのインセンティブの付与、地盤調査・設計・施工・維持管理の情報連携などの問題である。これらを、土構造物を対象として考える必要がある。以上のような成果を踏まえた、土構造物に適したモデル設計コードの提案も、必要な課題である。以上のような背景を踏まえて,本研究では,次のような成果を挙げた。1.土構造物の性能設計のための既存の設計法、FEMなどより進んだ設計法の、予測精度を定量的に評価し、土構造物の性能設計の可能性と限界を明確にする。この結果は,3の設計コードの開発にも反映された.2.性能設計を可能にする設計・施工の社会的制度とリスク評価・管理手法の提案性能設計を導入するに当たり、リスクの評価、リスクの分担やこれに応じた発注形態、設計技術の審査機関、いろいろな認証制度、設計者へのインセンティブの与え方、地盤調査-設計-施工-維持管理における情報連携などに関し、文献調査を行うとともに,欧州の動向を現地調査した.この結果は,報告書に特に詳細にまとめられたおり,今後のこの種の研究に貴重な情報を与えている.3.土構造物モデル設計コードの提案を行った.これは,地盤工学会の「性能設計概念に基いた基礎構造物等の設計原則」(JGS4001-2004)を土構造物に拡張したものであり,今後開始される設計コードの拡張に寄与するものである.現在我が国の建築、道路橋、港湾施設等多くの分野で、設計基準の性能規定化が進んでいる。さらに、我が国の多くの設計コードは,ISO2394などに準拠した信頼性設計法に移行している。今後の我国の設計コードは、要求性能を性能により規定し、性能照査を信頼性設計法によるものとなって行くと考えられる。性能設計は本質的に多様であり、現在いろいろなグループや、種々の構造物の主管機関で出されている提案には、多くのバリエーションがある。いまだに明確な全体像は明らかでない。しかし性能型設計が、構造物のより正確な挙動の予測とその予測精度の定量的把握(不確実性の定量化)を技術者に対して要求するとともに、従来からの設計・施工・維持管理に関する社会的な制度の変更をも迫っていることは間違いない。これはリスク評価と分担、発注形態、設計審査機関、設計者へのインセンティブの付与、地盤調査・設計・施工・維持管理の情報連携などの問題である。これらを、土構造物を対象として考える必要がある。以上のような成果を踏まえた、土構造物に適したモデル設計コードの提案も、必要な課題である。以上のような背景を踏まえて,本研究では,次のような成果を挙げた。1.土構造物の性能設計のための既存の設計法、FEMなどより進んだ設計法の、予測精度を定量的に評価し、土構造物の性能設計の可能性と限界を明確にする。この結果は,3の設計コードの開発にも反映された.2.性能設計を可能にする設計・施工の社会的制度とリスク評価・管理手法の提案性能設計を導入するに当たり、リスクの評価、リスクの分担やこれに応じた発注形態、設計技術の審査機関、いろいろな認証制度、設計者へのインセンティブの与え方、地盤調査-設計-施工-維持管理における情報連携などに関し、文献調査を行うとともに,欧州の動向を現地調査した.この結果は,報告書に特に詳細にまとめられたおり,今後のこの種の研究に貴重な情報を与えている.3.土構造物モデル設計コードの提案を行った.これは,地盤工学会の「性能設計概念に基いた基礎構造物等の設計原則」(JGS4001-2004)を土構造物に拡張したものであり,今後開始される設計コードの拡張に寄与するものである.性能設計を可能とする設計法不確実性の把握と、設計・施工の社会的制度・リスク管理方法の提案を行うのが、本研究の目的であり、最終的目標は、次のようなものである。1.土構造物の性能設計のための設計法の評価(1)土構造物の要求性能の性能規定の方法に関して提案し、主な設計法との関連を整理、明確化する。(2)既存の設計法、FEMなどより進んだ設計法の、予測精度を定量的に評価し、土構造物の性能設計の可能性と限界を明確にする。(3)情報化設計・施工法の性能設計との関連を明確化、(2)と合せて性能設計を実現する設計法を提案。 | KAKENHI-PROJECT-17360222 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17360222 |
土構造物の性能設計とリスク評価・管理及び社会制度に関する総合的研究 | 2.性能設計を可能にする設計・施工の社会的制度とリスク評価・管理手法の提案性能設計を導入するに当たり、リスクの評価、リスクの分担やこれに応じた発注形態、設計技術の審査機関、いろいろな認証制度、設計者へのインセンティブの与え方、地盤調査-設計-施工-維持管理における情報連携などに関し、段階を踏まえて、調査・研究し、最終的にいくつかの代替的な制度を提案する。(1)文献やプロジェクト事例を集め、性能設計導入の障害となっている制度的な問題点・疑問点を整理。(2)海外P/J、リスク評価・管理関連の研究機関やコンサル、性能設計を支える制度(認証機関等)を現地調査。(3)上記の調査・研究を踏まえて、リスクの評価・管理の方法、代替的な社会制度などを提案する。3.土構造物モデル設計コードの提案上記1、2の研究・提案を踏まえ、地盤工学会基準(案)「性能設計概念に基づいた基礎構造物等の設計原則」の土構造物への拡張版を執筆し、成果を公表する。2については昨年11月に欧州調査を行った。また3については盛土についての章を起稿した。現在我が国の建築、道路橋、港湾施設等多くの分野で、設計基準の性能規定化が進んでいる。さらに、我が国の多くの設計コードは,ISO2394などに準拠した信頼性設計法に移行している。今後の我国の設計コードは、要求性能を性能により規定し、性能照査を信頼性設計法によるものとなって行くと考えられる。性能設計は本質的に多様であり、現在いろいろなグループや、種々の構造物の主管機関で出されている提案には、多くのバリエーションがある。いまだに明確な全体像は明らかでない。しかし性能型設計が、構造物のより正確な挙動の予測とその予測精度の定量的把握(不確実性の定量化)を技術者に対して要求するとともに、従来からの設計・施工・維持管理に関する社会的な制度の変更をも迫っていることは間違いない。これはリスク評価と分担、発注形態、設計審査機関、設計者へのインセンティブの付与、地盤調査・設計・施工・維持管理の情報連携などの問題である。これらを、土構造物を対象として考える必要がある。以上のような成果を踏まえた、土構造物に適したモデル設計コードの提案も、必要な課題である。以上のような背景を踏まえて,本研究では,次のような成果を挙げた.研究の最終的目標は、次のようなものである。1.土構造物の性能設計のための既存の設計法、FEMなどより進んだ設計法の、予測精度を定量的に評価し、土構造物の性能設計の可能性と限界を明確にする。この結果は,3の設計コードの開発にも反映された.2.性能設計を可能にする設計・施工の社会的制度とリスク評価・管理手法の提案性能設計を導入するに当たり、リスクの評価、リスクの分担やこれに応じた発注形態、設計技術の審査機関、いろいろな認証制度、設計者へのインセンティブの与え方、地盤調査-設計-施工-維持管理における情報連携などに関し、文献調査を行うとともに,欧州の動向を現地調査した.この結果は,報告書に特に詳細にまとめられたおり,今後のこの種の研究に貴重な情報を与えている.3.土構造物モデル設計コードの提案を行った.これは,地盤工学会の「性能設計概念に基いた基礎構造物等の設計原則」(JGS4001-2004)を土構造物に拡張したものであり,今後開始される設計コードの拡張に寄与するものである. | KAKENHI-PROJECT-17360222 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17360222 |
動画システムを用いた遠隔病理診断による病理組織及び細胞学的診断の実用的研究 | 術中遠隔病理診断(以下、テレ診断と略)システムにおける凍結標本の作成を病理担当技師に指導した。その結果、採取された材料の凍結、薄切、染色が改善され診断に苦慮する原因となっていた標本の挫滅、染色不良が減少し、診断に適した標本となった。細胞診断では悪性と誤診する原因となる核の過染性は改善されたが、臨床側での標本採取、固定などが問題点として残っている。平成15年10月2日から庄原赤十字病院と動画、静止画を併用したテレ診断を開始した。電送される組織の観察には動画を用い、画像の保存と手術室への診断報告には静止画を使用した。静止画のみの診断に比較し、以下の項目の改善があった。(1)凍結標本全体を連続的に観察可能で切除断端の診断が容易になった。(2)画像伝送から診断報告までの時間の短縮ができた。(3)細胞診標本では不十分ではあるが、スクリーニングが可能となった。(4)焦点を連続的に変えることが可能で細胞や核内の構造、細胞集塊内部の詳細な観察が可能となった。(5)診断病理医の拘束時間、精神的負担の軽減がはかれた。術中遠隔病理診断(以下、テレ診断と略)システムにおける凍結標本の作成を病理担当技師に指導した。その結果、採取された材料の凍結、薄切、染色が改善され診断に苦慮する原因となっていた標本の挫滅、染色不良が減少し、診断に適した標本となった。細胞診断では悪性と誤診する原因となる核の過染性は改善されたが、臨床側での標本採取、固定などが問題点として残っている。平成15年10月2日から庄原赤十字病院と動画、静止画を併用したテレ診断を開始した。電送される組織の観察には動画を用い、画像の保存と手術室への診断報告には静止画を使用した。静止画のみの診断に比較し、以下の項目の改善があった。(1)凍結標本全体を連続的に観察可能で切除断端の診断が容易になった。(2)画像伝送から診断報告までの時間の短縮ができた。(3)細胞診標本では不十分ではあるが、スクリーニングが可能となった。(4)焦点を連続的に変えることが可能で細胞や核内の構造、細胞集塊内部の詳細な観察が可能となった。(5)診断病理医の拘束時間、精神的負担の軽減がはかれた。1993年から静止画による術中遠隔病理診断(以下、テレ診断と略)を開始し、2003年3月末までに626例の術中迅速診断を行った。我々はこれまでのテレ診断に於ける以下のような種々の問題点を指摘、発表してきた。(1)標本作製:凍結標本の薄切、染色が診断上重要である。凍結標本では日常診断に使用しているパラフィン包埋標本に比較し、標本が厚く、細胞が大型となる傾向があり、悪性と誤診する原因となる。染色性に関しては核クロマチンの好塩基性が増し、核異型度が強調され悪性と誤診される原因となる。これらは、標本作製時の凍結温度、核染色を行うヘマトキシリンの種類、濃度を最適なものを選択する必要がある事により解決した。殊に、細胞診標本においては核の染色性に特に気を配り、よりよい染色を行うことが必要である。(2)静止画によるテレ診断では標本全体の観察に長時間を要し、診断を報告する時間が直接検鏡による迅速診断より遅くなる。これは、術者、診断病理医の両者にとって精神的苦痛を増す原因であった。静止画は細胞診断においてはスクリーニングに不向きであり、全体像がとらえがたい。また、異型細胞の核内構造や細胞重積部の内部構造が分かりにくい等の問題点を指摘してきた。試験的に動画システムによる術中診断、細胞診断を行ったところ、これらの問題点が大幅に改善されることが明らかとなった。これらの結果をふまえて平成15年度には動画システムを導入することを予定し、より診断に適したシステムの開発に向けてさらに検討を行う。平成14年度に引き続き、術中遠隔病理診断(以下、テレ診断と略)、遠隔細胞診断における標本作製の検討を行った。術中組織標本においては標本の凍結・薄切・染色を病理診断担当技師に指導し、診断に適した標本作製が可能となった。細胞診断では染色性の改善を試みたが、臨床側での標本採取、固定などが問題点として残っている。平成15年10月2日から庄原赤十字病院と動画、静止画を併用したテレ診断を開始した。電送される組織の観察には動画を用い、画像の保存と手術室への診断報告には静止画を使用している。静止画のみの診断に比較し、以下の項目の改善があった。(1)迅速標本の全体像の観察が容易となり、標本断端部の組織標本の見落としが防げるようになった。(2)連続的に所見を観察でき、診断の報告までの時間の短縮ができた。(3)診断開始から終了までの時間的ロスが少なくなった。(4)細胞診標本では不十分ではあるが、スクリーニングが可能となった。(5)細胞診標本の観察では焦点を連続的に変えることが可能で細胞や核内の構造、細胞集塊内部の詳細な観察が可能となった。(6)診断病理医の拘束時間、精神的負担の軽減がはかれた。 | KAKENHI-PROJECT-14570142 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14570142 |
心筋細胞特有のゲノムDNA損傷応答機構の解明 | 心筋細胞は細胞内で発生する活性酸素種(ROS)によるDNA損傷が引き金となって生後すぐに分裂増殖能を喪失する。心筋細胞はまた、細胞内で大量に発生するROSによるDNA損傷にも細胞死を選択することなく、場合によってはDNA損傷を蓄積して生涯にわたって個体の生命を支え続ける。これら二つのDNA損傷に対する反応は、いずれも通常の分裂細胞で認められるものとは異なる心筋細胞特有の反応である。本研究の目的は、DNA損傷を時間的・空間的・定量的に制御可能な実験系を構築することで、心筋細胞特有のDNA損傷応答機構を明らかにし、そのメカニズムを解明することである。心筋細胞は細胞内で発生する活性酸素種(ROS)によるDNA損傷が引き金となって生後すぐに分裂増殖能を喪失する。心筋細胞はまた、細胞内で大量に発生するROSによるDNA損傷にも細胞死を選択することなく、場合によってはDNA損傷を蓄積して生涯にわたって個体の生命を支え続ける。これら二つのDNA損傷に対する反応は、いずれも通常の分裂細胞で認められるものとは異なる心筋細胞特有の反応である。本研究の目的は、DNA損傷を時間的・空間的・定量的に制御可能な実験系を構築することで、心筋細胞特有のDNA損傷応答機構を明らかにし、そのメカニズムを解明することである。 | KAKENHI-PROJECT-19H03662 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H03662 |
骨吸収と骨形成の共役機構を解析できる実験系の確立 | OPG欠損マウスを用いて骨代謝共役を解析し、以下の結果を得た。(1)前駆細胞から破骨細胞への分化にp38MAP kinaseが必須であることを証明した。一方、成熟破骨細胞ではp38MAP kinaseシグナル系が作動しないことを見出した。(2)破骨細胞は骨形成促進因子を産生する可能性はあるが、炎症性サイトカインを産生する可能性はないことが示された。(3)骨の形態計測より、OPG欠損マウスは、骨吸収と骨形成がともに亢進していた。また、血中のアルカリホスファターゼ(ALP)活活性とオステオカルシン値は高値を示した。(4)OPG欠損マウスの血中には極めて高濃度の可溶性RANKLが見出された。(5)OPG欠損マウスに活性型ビタミンD_3を投与すると、血中の可溶性RANKL値は更に高値を示した。活性型ビタミンD_3を投与したマウスの骨組織ではRANKL mRNA発現は上昇したが、脾臓やT細胞ではRANKL mRNAの発現誘導は認められず、OPG欠損マウスに認められる血中の可溶性RANKLは骨芽細胞に由来することが示唆された。(6)OPG欠損マウス由来の骨芽細胞の培養系において、OPG欠損骨芽細胞はRANKLを培養液中に遊離したが、正常骨芽細胞はRANKLを殆んど遊離しなかった。OPGを添加するとOPG欠損骨芽細胞のRANKL遊離は阻害された。(7)OPG欠損マウスにビスフォスホネート(リゼドロネート)を投与し骨形態計測を行ったところ、亢進していた骨吸収は抑制され、同時に骨形成も著明に抑制された。(8)ビスフォスホネートの投与により、OPG欠損マウスの血清ALP活性とオステオカルシン値は正常化したが、血中可溶性RANKL値の低下は認められなかった。(9)骨誘導因子(BMP)をOPG欠損マウスと正常マウスに移植し、異所性骨形成を観察したところ、BMPが誘導する骨形成はOPG欠損と正常マウスに差は認められなかった。以上の知見より、骨吸収と骨形成は共役していること、その共役は局所因子により担われている可能性が示された。また、OPGはRANKLの可溶化を阻害し、局所で破骨細胞を誘導するために重要な役割を果たしていることも示された。OPG欠損マウスを用いて骨代謝共役を解析し、以下の結果を得た。(1)前駆細胞から破骨細胞への分化にp38MAP kinaseが必須であることを証明した。一方、成熟破骨細胞ではp38MAP kinaseシグナル系が作動しないことを見出した。(2)破骨細胞は骨形成促進因子を産生する可能性はあるが、炎症性サイトカインを産生する可能性はないことが示された。(3)骨の形態計測より、OPG欠損マウスは、骨吸収と骨形成がともに亢進していた。また、血中のアルカリホスファターゼ(ALP)活活性とオステオカルシン値は高値を示した。(4)OPG欠損マウスの血中には極めて高濃度の可溶性RANKLが見出された。(5)OPG欠損マウスに活性型ビタミンD_3を投与すると、血中の可溶性RANKL値は更に高値を示した。活性型ビタミンD_3を投与したマウスの骨組織ではRANKL mRNA発現は上昇したが、脾臓やT細胞ではRANKL mRNAの発現誘導は認められず、OPG欠損マウスに認められる血中の可溶性RANKLは骨芽細胞に由来することが示唆された。(6)OPG欠損マウス由来の骨芽細胞の培養系において、OPG欠損骨芽細胞はRANKLを培養液中に遊離したが、正常骨芽細胞はRANKLを殆んど遊離しなかった。OPGを添加するとOPG欠損骨芽細胞のRANKL遊離は阻害された。(7)OPG欠損マウスにビスフォスホネート(リゼドロネート)を投与し骨形態計測を行ったところ、亢進していた骨吸収は抑制され、同時に骨形成も著明に抑制された。(8)ビスフォスホネートの投与により、OPG欠損マウスの血清ALP活性とオステオカルシン値は正常化したが、血中可溶性RANKL値の低下は認められなかった。(9)骨誘導因子(BMP)をOPG欠損マウスと正常マウスに移植し、異所性骨形成を観察したところ、BMPが誘導する骨形成はOPG欠損と正常マウスに差は認められなかった。以上の知見より、骨吸収と骨形成は共役していること、その共役は局所因子により担われている可能性が示された。また、OPGはRANKLの可溶化を阻害し、局所で破骨細胞を誘導するために重要な役割を果たしていることも示された。骨吸収が起こると、続いてその吸収部位に新たな骨組織が形成される。そのため、骨吸収と骨形成を共役させる因子(カップリング因子、共役因子)の存在が想定されている。本基盤研究では、共役因子の同定と存在様式を解析できる新たな実験系の確立を目的に実験を行い、以下のことを明らかにした。1.破骨細胞を用いた共役因子の解析系の確立破骨細胞とC3H10T1/2細胞を共存培養すると、破骨細胞と接したC3H10T1/2細胞はアルカリホスファターゼ(ATPase)陽性細胞に分化した。2.Smadレポーターシステムを用いた解析系の確立 | KAKENHI-PROJECT-13557155 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13557155 |
骨吸収と骨形成の共役機構を解析できる実験系の確立 | BMPシグナルを伝達するSmad1/5複合体が結合する配列(29塩基)を、Id遺伝子のプロモーター解析により同定した。ゲルシブトアッセイより、この配列には、Smad1/5とSamd4の複合体が結合することが示された。さらに、この配列を用いたレポーターアッセイ系を構築し、BMP様因子を検索中である。3.破骨細胞が産生するサイトカインの解析破骨細胞はLPSの受容体であるtoll-like receptor 4を発現することを見いだした。マクロファージと破骨細胞にLPSを作用させ、各種のサイトカインの産生能を検索した。LPSは骨髄由来マクロファージのIL-1β,TNFα,IL-6の産生は著しく促進したが、破骨細胞のそれらのサイトカインの産生を全く促進しなかった。4.破骨細胞と骨髄マクロファージの機能に対するp38MAPKの役割の解析M-CSFとRANKLの存在下で、骨髄マクロファージは破骨細胞に分化したが、RANKL添加時にp38MAPキナーゼの特異的阻害剤であるSB208530を短時間同時に処理するだけで、破骨細胞誘導は完全に抑制された。しかし、SB208530は、RANKLが誘導する破骨細胞の延命と吸収窩形成を全く阻害しなかった。破骨細胞と骨髄マクロファージはともに同じレベルのp38MAPKを発現していた。RANKLは骨髄マクロファージのp38MAPKのリン酸化を促進したが、破骨細胞のp38MAPKのリン酸化を全く促進しなかった。骨吸収が起こると、続いてその吸収部位に新たな骨組織が形成される。本研究では、この骨代謝共役因子の同定と存在様式を解析できる実験系の確立を目的とした。1.破骨細胞が産生するサイトカインの解析(1)LPSは破骨細胞の延命と骨吸収能を促進した。また、LPSは破骨細胞のNF-κB、ERK、p38MAPKを活性化した。(2)破骨細胞前駆細胞である骨髄細胞マクロファージ(Mφ)は、LPSに反応してIL-1、TNFα、IL-6を分泌したが、破骨細胞ではそれらのサイトカインの産生亢進は認められなかった。(3)破骨細胞と未分化間葉系細胞との共存培養系より、破骨細胞は未分化間葉系細胞をアルカリフォスファターゼ(ALP)陽成細胞へ分化させる因子を出していることが示された。(4)このALP陽成細胞の誘導に対して、可溶性BMP受容体(BMPR type-IA)の添加は何ら抑制効果を示さなかった。(5)破骨細胞と間質細胞の直接接触を阻止した条件では、ALP陽性細胞は誘導されなかった。以上の実験より、成熟破骨細胞が骨髄間質細胞をALP陽性細胞に分化誘導させる因子を発現している可能性が示唆された。この骨芽細胞分化誘導因子は破骨細胞の細胞膜表面上に存在しているものと考えられる。2.OPG欠損マウスを用いた骨代謝共役機構の解析OPG欠損マウスにビスフォスホネート(BP)を投与し、骨吸収と骨形成の代謝共役を解析した。(1)骨形態計測を行ったところ、OPG欠損マウスは、骨吸収マーカーと骨形成マーカーがともに亢進していた。(2)BP投与により、骨吸収マーカーの低下とともに骨形成マーカーの著明な低下が認められた。(3)血清ALP活性は、OPG欠損マウスでは高値を示したが、BPの投与によって正常値以下にまで低下した。(4)正常マウスでは、血中に可溶性RANKLは殆んど検出できなかったが、OPG欠損マウスの血中に高濃度の可溶性RANKLが認められた。一方、BPの投与によって骨吸収を抑制しても、OPG欠損マウスの血中RANKL量は低下しなかった。 | KAKENHI-PROJECT-13557155 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13557155 |
リンパ節特異的な細胞動員シグナルによる免疫細胞の組織特異的動員と自己応答性の制御 | 免疫細胞の組織特異的な動員は自己応答性を制御する。本研究では以下の成果を得た。1)接着分子nepmucin/CD300LGは、生理的条件下で多くの組織の細動脈・細静脈・毛細血管に構成的に発現するが、免疫特権部位には発現しない。一方、炎症組織や腫瘍組織の微小環境に由来するシグナルは所属リンパ節におけるnepmucin/CD300LGの発現を負に制御する。2)悪性中皮腫細胞によるがん微小環境の形成において、CD44/HA系とActivin-A/ALK4系がそれぞれスフェア形成とスフェア内でのALDH陽性がん幹細胞様細胞の維持に重要である。本研究は、免疫細胞のリンパ組織への動員と組織内遊走の自己応答性の制御における意義の解明と末梢組織に形成される免疫制御性の微小環境(炎症性微小環境やがん微小環境)がこれに及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。本年度はまず血管内皮細胞に発現し、リンパ球の接着や血管外遊走に関与する細胞接着分子であるnepmucin/CD300LGのリンパ節および種々の末梢組織における組織特異的な発現とその制御機構について解析した。その結果、nepmucin/CD300LGは生理的条件下において多くの組織の細動脈・細静脈・毛細血管に発現しているが、脳・睾丸および子宮などの免疫特権部位には発現しないことが示された。また急性炎症を惹起するとリンパ節におけるnepmucin/CD300LGの発現は急速に減弱し、この発現減少にはTNFαが関与することが示唆された。また腫瘍および所属リンパ節においてnepmucin/CD300LGの発現が減弱することが見いだされ、nepmucin/CD300LGの発現は、炎症および腫瘍が局所に形成する微小環境によって制御されることが示された。次に、腫瘍を取り巻く微小環境と癌幹細胞および免疫細胞の機能に及ぼす影響を解析した。その結果、ヒト悪性中皮腫細胞(MSTO)をsphere形成条件で培養するとaldehyde dehydrogenase (ALDH)陽性で幹細胞関連遺伝子を発現する癌幹細胞様細胞が濃縮されることが示された。またこの癌幹細胞様細胞は特定の炎症性サイトカインを産生することから、癌幹細胞が周囲の免疫環境を積極的に修飾していることが示唆された。さらにこの癌幹細胞様細胞の形質にはTGFβ系のシグナルが関与することが示唆された。本研究は、免疫細胞のリンパ組織への動員と組織内遊走の自己応答性の制御における意義の解明と末梢組織に形成される免疫制御性の微小環境(炎症性微小環境やがん微小環境)がこれに及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。本年度は腫瘍が形成する免疫制御性の微小環境が免疫細胞の機能や癌の幹細胞性に及ぼす影響について解析した。ヒト悪性中皮腫細胞(MSTO)をスフェア形成条件で培養するとaldehyde dehydrogenase (ALDH)陽性で幹細胞関連遺伝子を発現する癌幹細胞様細胞が濃縮され、移植実験において強い造腫瘍性を示す。そこで、免疫制御性の微小環境の形成に関与しうるサイトカイン経路について解析した結果、スフェア形成条件下のMSTOはactivin-Aを産生し、スフェア中に濃縮されるALDH陽性細胞にactivin-A受容体ALK4が発現することが示された。抗activin-A抗体やMSTOに発現するALK4のノックダウンはMSTOのスフェア形成には影響しないが、スフェア中のALDH陽性を著しく減少させた。また、ALK4をノックダウンしたMSTOには造腫瘍性の低下が認められることから、activin-Aとその受容体を介するシグナルはスフェア形成条件下のMSTOに濃縮されるALDH陽性細胞の維持とその造腫瘍性に重要な役割を果たすことが示唆された。また、MSTOが形成する腫瘍はマクロファージ浸潤を伴うがん微小環境を形成する。そこで、MSTOと免疫細胞の機能的な相互作用を解析した結果、MSTOは共培養によりヒト単球様細胞株THP-1にTGF-betaなどの産生を誘導し、M2マクロファージ様細胞に変換することが示唆された。これらの結果から、造腫瘍性を有するMSTO細胞は特定の細胞集団に幹細胞性を維持させるとともに、積極的に周囲の免疫細胞の機能を修飾して免疫制御性の微小環境を形成している可能性が示唆された。本研究は、免疫細胞のリンパ組織への動員と組織内遊走の自己応答性の制御における意義の解明と末梢組織に形成される免疫制御性の微小環境(炎症性微小環境やがん微小環境)がこれに及ぼす影響を明らかにすることを目的として実施した。本年度はがん微小環境に注目した解析を行い、ヒト悪性中皮腫細胞(MSTO)において、癌幹細胞様細胞の濃縮を促進するスフェア形成にCD44とそのリガンドHAが重要な役割を持つことが示された。またがん微小環境におけるエフェクターT細胞の自己反応性を制御する抑制性受容体であるPD-1の発現機構を解析した結果、Jurkat T細胞におけるPD-1発現にカルシウムシグナルが重要であることが示された。研究期間全体を通じて、以下の成果が得られた。1)リンパ球の接着や血管外遊走に関与する細胞接着分子nepmucin/CD300LGは、生理的条件下で多くの組織の細動脈・細静脈・毛細血管に発現するが、急性炎症を惹起したリンパ節ではその発現が急速に減弱し、この発現の減少にTNFαが関与することが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-25460603 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25460603 |
リンパ節特異的な細胞動員シグナルによる免疫細胞の組織特異的動員と自己応答性の制御 | また腫瘍組織においてもnepmucin/CD300LGの発現が減弱することから、nepmucin/CD300LGは炎症および腫瘍が形成する微小環境で発現が制御されることが示された。2)免疫細胞の自己反応性を制御するがん微小環境の形成について解析し、MSTO細胞において、CD44/HA系とActivin-A/ALK4系がそれぞれスフェア形成とスフェア内でのALDH陽性がん幹細胞様細胞の維持に重要であることが示された。ALK4のノックダウン実験から、MSTOスフェアに濃縮されるALDH陽性細胞が造腫瘍性に重要であることが示された。また、がん微小環境中でエフェクターT細胞の自己反応性を制御するPD-1の発現にカルシウムシグナルが重要であることが示唆された。免疫細胞の組織特異的な動員は自己応答性を制御する。本研究では以下の成果を得た。1)接着分子nepmucin/CD300LGは、生理的条件下で多くの組織の細動脈・細静脈・毛細血管に構成的に発現するが、免疫特権部位には発現しない。一方、炎症組織や腫瘍組織の微小環境に由来するシグナルは所属リンパ節におけるnepmucin/CD300LGの発現を負に制御する。2)悪性中皮腫細胞によるがん微小環境の形成において、CD44/HA系とActivin-A/ALK4系がそれぞれスフェア形成とスフェア内でのALDH陽性がん幹細胞様細胞の維持に重要である。平成26年度はがん細胞が形成する免疫制御性の微小環境が免疫細胞の機能やがん細胞の幹細胞性に及ぼす影響について解析し、造腫瘍性を有する悪性中皮腫細胞が細胞集塊中の特定の細胞集団に幹細胞性を維持させつつ、積極的に周囲の免疫細胞の機能を修飾して免疫制御性の微小環境を形成している可能性を示す知見を得ることができた。免疫学平成26年度はがん細胞による免疫細胞の機能的特性の制御とがん幹細胞性の維持に関する分子機構について解析を行った。今後はこれらの知見を発展させ、当初計画に沿ってリンパ組織やがん組織への制御性細胞の動員とその組織微小環境による制御について解析したい。また、がん細胞が作り出す免疫制御性の微小環境が局所リンパ組織における細胞動員シグナルの発現や自己応答性の制御に及ぼす影響についても解析を進めたい。平成25年度は免疫担当細胞の血管内皮細胞への接着や血管外遊走を制御する細胞接着分子の組織特異的な発現とその制御機構の一端を明らかにすることができた。またがん幹細胞様細胞の特性とがん幹細胞様細胞が形成する微小環境の特性について基礎的な知見を得ることができた。平成26年度はがん細胞による免疫細胞の機能修飾とがん幹細胞性の維持に関する基礎的な解析を行った。平成26年度は当初計画に比し、細胞培養などに関する新規品目を少なく抑えることができたため、次年度使用額が生じている。平成25年度は免疫担当細胞の生体内動態を制御し血管内皮細胞に発現する細胞接着分子の特性とがん幹細胞およびその特性について解析を行った。今後はこれらの知見を発展させ、当初計画に沿ってリンパ組織への制御性細胞の動員とその組織微小環境による制御について解析したい。また、がん細胞が局所につくりだす微小環境がリンパ組織における細胞動員シグナルの発現に及ぼす影響や免疫環境を修飾する分子機構についても解析を進めたい。平成27年度は設定した研究期間の最終年次にあたる。 | KAKENHI-PROJECT-25460603 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25460603 |
全血中での使用を目指した新規吸光度検出型バイオセンサにおける発色剤の開発 | 1.ルテニウム錯体の合成吸光度検出型血糖値(グルコース)センサの発色剤として用いるために、ルテニウム(III/II)錯体[Ru(NH_3)_5(L^*)]^<4*/3*>(L^*:4,4'-ビピリジニウムイオン)を合成し、それらの分光化学的性質を調べた。[Ru^<II>(NH_3)_5(L^+)]3^*は580-680nmにモル吸光係数が10^4 M^<-1>cm^<-1>オーダーの電荷移動吸収帯を有するのに対して、[Ru^<III>(NH_3)_5(L^+)]^<4+>は可視部に吸収をもたないことがわかった。2.血糖値(グルコース)センサへの適用[Ru^<III>(NH_3)_5(L^+)]^<4+>が有用な発色剤として作用するためには、還元型グルコースオキシダーゼとの反応が速く、瞬時に[Ru^<II>(NH_3)_5(L^+)]^<3+>となり発色する必要がある。そこで、GOx_<red>+2Ru(III)→GOx_<ox>+2Ru(II)+2H^+の電子移動反応速度定数を求めた。その結果、L^+の違いにより、5.7×10^6-1.7×10^7 M^<-1>s^<-1>となり、オスミウム錯体よりも大きな値を示した。これは、ルテニウム錯体とGOx_<ox>間に静電的相互作用があり、さらにL^+とGOx_<ox>の補酵素であるFADのイソアロキサジン環との間にπ-πスタッキングがあることを、^1HNMRと蛍光スペクトルから明らかにした。このような弱い非共有性相互作用の存在により、大きな電子移動速度定数をもつことを解明した。ルテニウム(III)錯体とGOx_<ox>を含む中性溶液(pH7.0)中にグルコースを添加すると、瞬時に無色から青色に発色した。この際、1cmセルを用いて測定を行ったところ、すべてのL^+において650-750nmの測定波長で5-45μMのグルコース濃度で検量線が直線となり、ヘモグロビンの影響を受けることなくグルコース検出が可能であることが示唆された。1.ルテニウム錯体の合成吸光度検出型血糖値(グルコース)センサの発色剤として用いるために、ルテニウム(III/II)錯体[Ru(NH_3)_5(L^*)]^<4*/3*>(L^*:4,4'-ビピリジニウムイオン)を合成し、それらの分光化学的性質を調べた。[Ru^<II>(NH_3)_5(L^+)]3^*は580-680nmにモル吸光係数が10^4 M^<-1>cm^<-1>オーダーの電荷移動吸収帯を有するのに対して、[Ru^<III>(NH_3)_5(L^+)]^<4+>は可視部に吸収をもたないことがわかった。2.血糖値(グルコース)センサへの適用[Ru^<III>(NH_3)_5(L^+)]^<4+>が有用な発色剤として作用するためには、還元型グルコースオキシダーゼとの反応が速く、瞬時に[Ru^<II>(NH_3)_5(L^+)]^<3+>となり発色する必要がある。そこで、GOx_<red>+2Ru(III)→GOx_<ox>+2Ru(II)+2H^+の電子移動反応速度定数を求めた。その結果、L^+の違いにより、5.7×10^6-1.7×10^7 M^<-1>s^<-1>となり、オスミウム錯体よりも大きな値を示した。これは、ルテニウム錯体とGOx_<ox>間に静電的相互作用があり、さらにL^+とGOx_<ox>の補酵素であるFADのイソアロキサジン環との間にπ-πスタッキングがあることを、^1HNMRと蛍光スペクトルから明らかにした。このような弱い非共有性相互作用の存在により、大きな電子移動速度定数をもつことを解明した。ルテニウム(III)錯体とGOx_<ox>を含む中性溶液(pH7.0)中にグルコースを添加すると、瞬時に無色から青色に発色した。この際、1cmセルを用いて測定を行ったところ、すべてのL^+において650-750nmの測定波長で5-45μMのグルコース濃度で検量線が直線となり、ヘモグロビンの影響を受けることなくグルコース検出が可能であることが示唆された。1.ルテニウム錯体の合成と性質吸光度検出型血糖値センサの発色剤として用いるために,ルテニウム(III/II)錯体[Ru(NH_3)_5(L^+)]^<4+/3+>(L^+=4,4'-ビピリジニウムイオン)を合成し,それらの分光化学的および電気化学的性質を調べた.[Ru^<II>(NH_3)_5(L^+)]^<3+>は580680nmにモル吸光係数が10^4 M^<-1> cm^<-1>以上の電荷移動吸収帯を有するのに対して,[Ru^<III>(NH_3)_5(L^+)] | KAKENHI-PROJECT-17550089 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17550089 |
全血中での使用を目指した新規吸光度検出型バイオセンサにおける発色剤の開発 | ^<4+>は可視部に吸収をもたないことがわかった.また,[Ru(NH_3)_5(L^+)]^<4+/3+>の酸化還元電位は0.150.18V vs.Ag/AgClと比較的低い電位を示した.すなわち,無色の[Ru^<III>(NH_3)_5(L^+)]^<4+>が還元型のグルコースオキシダーゼと反応すると,600nmより長波長に強い吸収を有する[Ru^<II>(NH_3)_5(L^+)]^<3+>を生成するので,全血中のヘモグロビンの影響を受けずにグルコース検出が可能な発色剤になりうることが示唆された.2.ルテニウム(III)錯体とグルコースオキシダーゼ間の電子移動反応3.ルテニウム(II)錯体とグルコースオキシダーゼとの相互作用酵素と錯体間の電子移動反応GOx_<red>+2Ru(III)→GOx_<ox>+2Ru(II)で[Ru^<III>(NH_3)_5(L^+)]^<4+>が大きな速度定数をもつ理由を明らかにするために,[Ru^<II>(NH_3)_5(L^+)]^<3+>とグルコースオキシダーゼとの相互作用を検討した.その結果グルコースオキシダーゼの補酵素であるFADと[Ru^<II>(NH_3)_5(L^+)]^<3+>のL^+との間にスタッキング相互作用があり,L^+が酵素内へ入り込む,いわゆる"アンテナ効果"で大きな速度定数が得られることが示唆された.1.ルテニウム(III)錯体を発色剤とした血糖値センサ吸光度検出型血糖値(グルコース)センサの発色剤として合成したルテニウム(III)錯体[Ru^<III>(NH_3)_5(L^+)]Cl_4(L^+:4,4'-ビピリジニウムイオン)は可視領域に吸収をもたない。一方、還元型の[Ru^<II>(NH_3)_5(L^+)]Cl_3はL^+の違いに応じて、580-680nmにモル吸光係数が10^4M^<-1>cm^<-1>オーダーの電荷移動吸収帯を有するので、(1)、(2)式の反応からグルコースの吸光度検出が可能になる。ルテニウム(III)錯体とGOx_<ox>を含む中性溶液(pH7.0)中にグルコースを添加すると、瞬時に無色から青色に発色した。この際、1cmの石英セルを用いて測定を行ったところ、すべてのL^+において650-750nmの測定波長で5-45μMのグルコース濃度で検量線が直線となり、ヘモグロビンの影響を受けることなくグルコース検出が可能であることが示唆された。これらの成果は次の雑誌に掲載された。"Dipolar ruthenium-ammine complexes with 4,4'-bipyridinium ions accessible for both amperometric and colorimetric glucose sensors, Inorg.Chem.Commun.2006,9,935-938."2.発色剤とグルコースオキシダーゼ間の電子移動反応の解明昨年度(2)式の電子移動反応速度定数を求めたところ、L^+の違いにより、5.7×10^6-1.7×10^7M^<-1>s^<-1>と非常に大きな値であることを明らかにした。これは、ルテニウム錯体とGOx_<ox>間に静電的相互作用があり、さらにそれに加えて4,4'-ビピリジニウムイオンとGOx_<ox>の補酵素であるフラビンアデニンヂヌクレオチドのイソアロキサジン環との間に芳香環同士のπ-πスタッキングがあることが、^1H NMRと蛍光スペクトルから明らかになった。このような弱い相互作用の存在により、大きな電子移動速度定数をもつことを解明した。 | KAKENHI-PROJECT-17550089 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17550089 |
ステロイド骨粗鬆症におけるビタミンD代謝異常の解析 | グルココルチコイドの大量投与により、ステロイド誘導性の骨粗鬆症が発症することが知られている。しかし、ビタミンD代謝におけるグルココルチコイドの影響については不明な点が多い。マウスにグルココルチコイドのDexamethasone(Dex)を投与すると、腎における24-水酸化酵素発現を強く促進することを報告した。そこで、骨と腎の細胞における、24-水酸化酵素発現抑制に対するDexの作用機構を解明する目的で、本研究を行った。Subconfluentになった骨芽細胞様細胞(UMR-106)及び腎尿細管細胞(LLC-PK_1)を無血清培地で24時間培養した。UMR-106の場合、1,25(OH)_2D_3を添加後24時間培養し、さらにDexを加えて448時間培養した。LLC-PK_1には1,25(OH)_2D_3とDexを同時に添加して48時間まで培養した。24-水酸化酵素mRNA発現量の測定は細胞からTotal RNAを抽出してNorthern blot法により行った。10^<-7>Mの1,25(OH)_2D_3の存在下で骨、腎いずれの細胞でも24-水酸化酵素mRNA発現量、及び酵素活性はDexの用量依存的、また経時的に上昇した。この促進作用は他のステロイドホルモン添加では観察されなかったことから、Dexに対し特異的であった。Dex単独の投与では24-水酸化酵素発現はみられなかった。また、Cycloheximideの前処理によってもDexの促進効果は消失した。さらにDex投与によりc-fos mRNA発現量が著明に上昇した。以上の結果から、Dexの24-水酸化酵素発現促進作用は新たなタンパク性の転写促進因子の合成、少なくとも一部はFosタンパク質の合成促進を介して発現するものと考えられた。グルココルチコイドの大量投与により、ステロイド誘導性の骨粗鬆症が発症することが知られている。しかし、ビタミンD代謝におけるグルココルチコイドの影響については不明な点が多い。マウスにグルココルチコイドのDexamethasone(Dex)を投与すると、腎における24-水酸化酵素発現を強く促進することを報告した。そこで、骨と腎の細胞における、24-水酸化酵素発現抑制に対するDexの作用機構を解明する目的で、本研究を行った。Subconfluentになった骨芽細胞様細胞(UMR-106)及び腎尿細管細胞(LLC-PK_1)を無血清培地で24時間培養した。UMR-106の場合、1,25(OH)_2D_3を添加後24時間培養し、さらにDexを加えて448時間培養した。LLC-PK_1には1,25(OH)_2D_3とDexを同時に添加して48時間まで培養した。24-水酸化酵素mRNA発現量の測定は細胞からTotal RNAを抽出してNorthern blot法により行った。10^<-7>Mの1,25(OH)_2D_3の存在下で骨、腎いずれの細胞でも24-水酸化酵素mRNA発現量、及び酵素活性はDexの用量依存的、また経時的に上昇した。この促進作用は他のステロイドホルモン添加では観察されなかったことから、Dexに対し特異的であった。Dex単独の投与では24-水酸化酵素発現はみられなかった。また、Cycloheximideの前処理によってもDexの促進効果は消失した。さらにDex投与によりc-fos mRNA発現量が著明に上昇した。以上の結果から、Dexの24-水酸化酵素発現促進作用は新たなタンパク性の転写促進因子の合成、少なくとも一部はFosタンパク質の合成促進を介して発現するものと考えられた。グルココルチコイドの大量投与により骨粗鬆症が発症することはよく知られている。研究代表者はデキサメタゾン(Dex)をマウスに投与し、腎のビタミンD代謝である1α-および24-水酸化酵素の発現調節について検討を行った。8週齢のddYマウス(雄性)を低カルシウム・ビタミンD欠乏食で2週間飼育し(-Ca-D)、半数に屠殺6日前からグルココルチコイドとしてDexを2.0mg/kg bw/dayで5日皮下投与した。屠殺後、血液採取と腎の摘出を行った。血漿Ca濃度は、-Ca-D群では正常食マウス(+Ca+D)に比べ有意に低下したが、Dex投与により+Ca+D群以上に増加した。P濃度に変化は認められなかった。1,25(OH)_2D_3濃度は-Ca-D群で有意に増加したが、Dex投与による変化は見られなかった。腎の1α-水酸化酵素、24-水酸化酵素、およびビタミンD受容体(VDR)mRNAをノーザンハイブリダイゼーション法により検討したところ、-Ca-D群における腎の1α-水酸化酵素mRNAと酵素活性は、Dex投与により低下した。一方、24-水酸化酵素のmRNAと酵素活性はDex投与により約10倍以上の増加を示した。この時のVDRmRNAはDex投与により1.5倍に上昇した。しかし、Bindin gassayにより機能的VDRの発現量を調べたところ、Dex投与による変化は認められなかった。すなわち、Dexによる24-水酸化酵素遺伝子発現の上昇と1α-水酸化酵素遺伝子発現の低下は、機能的VDRの発現量に起因するのではなく、Dexの直接作用によると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-10470393 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10470393 |
ステロイド骨粗鬆症におけるビタミンD代謝異常の解析 | おそらく、グルココルチコイドの未知の作用機序により24-水酸化酵素発現が上昇したと推測される。以上の結果より、低カルシウム・ビタミンD欠乏食で飼育したマウスの腎では、グルココルチコイド投与により1α-水酸化酵素発現が抑制され、24-水酸化酵素が強く誘導されることが示された。グルココルチコイドの大量投与によりステロイド誘導性骨粗鬆症が発症することが知られている。そこで研究代表者は、カルシウムの恒常性を維持する上で極めて重要なステップである腎での25OHD_3代謝に対する、グルココルチコイド、Dexamethasone(Dex)、の効果をin vivoで検討した。その結果、Dexは24-水酸化酵素発現を強く促進し、一方、1α-水酸化酵素発現を緩徐に抑制することを見い出した(Akeno et al. J.Endocinology 164:339-348,2000)。Dexの作用は24-水酸化酵素において強く発現することから、骨と腎の細胞における24-水酸化酵素発現制御に対するDexの作用機構を解明するために、本研究を行った。10^<-7>Mの1,25(OH)_2D_3の存在下で、骨、腎いずれの細胞でも24-水酸化酵素mRNA発現量はDex10^<-6>M添加で著明に上昇した。上昇のピークは骨細胞でDex投与後8時間であったのに対し腎細胞ではDex投与後24時間であった。24-水酸化酵素活性が最高値を示したのは骨細胞、腎細胞とも48時間であった。また、Dexの促進効果は用量依存的であり、10^<-7>Mで有意な上昇がみられ、10^<-6>Mで最大となった。この促進作用は他のステロイドホルモン添加では観察されなかったことから、Dexに対し特異的であった。Dex単独の投与では24-水酸化酵素発現はみられなかった。また、Cycloheximideの前処理によってもDexの促進効果は消失した。Dexは骨と腎において、1,25(OH)_2D_3により誘導された24-水酸化酵素発現を増強する。これはDexにより誘導された転写促進因子がビタミンD受容体複合体と相互作用をすることにより引き起されるものと推察された。グルココルチコイドの大量投与により、ステロイド誘導性の骨粗鬆症が発症することが知られている。しかし、ビタミンD代謝におけるグルココルチコイドの影響については不明な点が多い。マウスにグルココルチコイドのDexamethasone(Dex)を投与すると、腎における24-水酸化酵素発現を強く促進することを報告した。そこで、骨と腎の細胞における、24-水酸化酵素発現抑制に対するDexの作用機構を解明する目的で、本研究を行った。Subconfluentになった骨芽細胞様細胞(UMR-106)及び腎尿細管細胞(LLC-PK_1)を無血清培地で24時間培養した。UMR-106の場合、1,25(OH)_2D_3を添加後24時間培養し、さらにDexを加えて448時間培養した。LLC-PK_1には1,25(OH)_2D_3とDexを同時に添加して48時間まで培養した。24-水酸化酵素mRNA発現量の測定は細胞からTotal RNAを抽出してNorthern blot法により行った。10^<-7>Mの1,25(OH)_2D_3の存在下で骨、腎いずれの細胞でも24- | KAKENHI-PROJECT-10470393 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10470393 |
軽度外傷性脳損傷に対するジンセノサイドRb1と誘導体の治療効果に関する研究 | 軽度外傷性脳損傷(Mild Traumatic brain injury, MTBI)では、脳に明確な損傷部位を特定できない場合が多い。記憶力、注意力の低下などの高次脳機能障害がよく見られる。グリア細胞の活性化などによる神経炎症がMTBIに共通する病理所見として注目されている。紅蔘成分ジンセノサイドRb1(gRb1)及びその誘導体ジヒドロジンセノサイドRb1(dgRb1)が神経炎症抑止作用を介して脊髄損傷/脳梗塞治療効果を示した。そこで、本研究では神経炎症を主たる病態とするMTBIモデル動物を用いてgRb1及びその誘導体dgRb1の治療効果とその作用機構を検討することを目的とする。軽度外傷性脳損傷(Mild Traumatic brain injury, MTBI)では、脳に明確な損傷部位を特定できない場合が多い。記憶力、注意力の低下などの高次脳機能障害がよく見られる。グリア細胞の活性化などによる神経炎症がMTBIに共通する病理所見として注目されている。紅蔘成分ジンセノサイドRb1(gRb1)及びその誘導体ジヒドロジンセノサイドRb1(dgRb1)が神経炎症抑止作用を介して脊髄損傷/脳梗塞治療効果を示した。そこで、本研究では神経炎症を主たる病態とするMTBIモデル動物を用いてgRb1及びその誘導体dgRb1の治療効果とその作用機構を検討することを目的とする。 | KAKENHI-PROJECT-19K09395 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K09395 |
人工ナノ細胞創製 -水中物質反応in-situ高分解能TEM観察への展開- | ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を用いてコレステロールを添加したリポソームを合成した。リン脂質二重層の相安定性についてはFT-IR分光法により評価した。超純水、生理的食塩水、もしくはヨウ化セシウム水溶液を内包させた強化リポソームは通常の透過型電子顕微鏡により観察した。これらのリポソームが確かに電子顕微鏡の室温真空中で安定であることを確認した。そして電子線照射により、水は徐々に抜けリポソーム中に単結晶塩が析出する事を確認した。本研究では真空中・電子線照射下で、より強靭なナノスケールのリポソームカプセルを合成し、内部に物質を導入し、水熱反応・結晶析出反応の現場を高分解能電顕観察することを目的とする.具体的には水溶液を内包したリポソームカプセルに生起する物質反応を真空中に持ち来し、その場観察を行う.そのための課題は、1高分解能観察に適した大きさのナノ・リポソーム実現.2電子線照射に対する耐久性の向上.3ナノ・リポソーム中に物質を導入した人工ナノ細胞の創製.である。平成25年度はまず、金属ナノ粒子の形成とその捕獲方法を検討するために、イオン液体を基板として用いて金のスパッタリングを行い比較的粒径分布の狭いナノ粒子の作成に成功した。一方で、リン脂質(ジパルミトイル・フォスファチジルコリン; DPPC)に30%のコレステロールを混合し、リン脂質二重層のラメラ構造を超音波処理によりラメラ構造を分離、自己組織化による、いわゆるバンガム法によりリポソームを合成した。これらの要素を組み合わせて金ナノ粒子を包み込んだセルの合成を行い、その電子顕微鏡観察を行った。その結果、二重層は確認されず、ミセルが形成されていることが予想された。これを受けてはじめにミセルを形成し、それにDPPCを被覆するマイクロカプセル化法によるリポソーム合成方法の検討を開始した。当初予定していたDPPC+コレステロールの状態図作成については赤外分光セルの改良が遅れたため次年度に実施することとなった。本研究では真空中・電子線照射下で、より強靭なナノスケールのリポソームカプセルを合成し、内部に物質を導入し、水中反応・結晶析出反応の現場を高分解能電顕観察することを目的としている。具体的には水溶液を内包したリポソームカプセルに生起する物質反応を真空中に持ち来し、その場観察を行う。そのための課題は、1高分解能観察に適した大きさのナノ・リポソーム実現.2電子線照射に対する耐久性の向上.3ナノ・リポソーム中に物質を導入した人工ナノ細胞の創製.である。平成25年度はまず、金属ナノ粒子の形成とその捕獲方法を検討するために、イオン液体を基板として用いて金のスパッタリングを行い比較的粒径分布の狭いナノ粒子の作成に成功し、さらにリン脂質(DPPC)にコレステロールを混合し、自己組織化による、いわゆるバンガム法によりリポソームを合成した。平成26年度にはDPPC+コレステロールの混合系に対して温度を制御した透過赤外分光分析を行い、CH2伸縮振動及びH2O伸縮振動の吸光度変化を検出し、コレステロール導入による低温のゲル相から高温の液晶相への相転移に伴う変化を捉えることに成功した。コレステロール量増加に伴い相転移点近傍の吸光度変化がステップ状変化からなめらかな変化へ移行することが明らかとなった。また、水を含んだリポソームの電子顕微鏡内における変化を捉え、食塩水を内包したリポソームにおいては食塩結晶の析出過程をその場観察することに成功した。更に本科研費にて高感度の質量分析器をtop-entry型電子顕微鏡に装着し、検出感度について検討を行った。本研究では真空中・電子線照射下で、より強靭なナノスケールのリポソームカプセルを合成し、内部に物質を導入し、水中反応・結晶析出反応の現場を高分解能電顕観察することを目的とした.具体的には水溶液を内包したリポソームカプセルに生起する物質反応を電子顕微鏡の真空中に持ち来し、その場観察を行う.そのために・高分解能観察に適した厚さのナノ・リポソーム実現し、電子線照射に対する耐久性を向上させ、ナノ・リポソーム中に物質を導入した人工ナノ細胞の創製が必要である.平成25年度には、リン脂質(ジパルミトイル・フォスファチジルコリン; DPPC)にコレステロール添加量を変化させてリン脂質二重層ラメラ構造を作製し、この結果を踏まえてバンガム法によりリポソームの合成プロセスを検討した。加えて水溶液の透過赤外分光を行うための光学セルの作製に着手した。平成26年度には、リン脂質二重層ラメラ構造の温度安定性を透過赤外分光法により評価し、相転移点の検出とコレステロール添加量により相転移点が消失することを確認した。そしてリポソーム作製条件の最適化を行い、食塩水中で合成したリポソームの観察に成功した。加えて既存の透過型電子顕微鏡に本科研費にて購入したイオントラップ質量分析計を装着し、電子線照射に伴う飛散粒子の検出システムを構築した。平成27年度には水、食塩水、CdI水溶液、等を内包するリポソームに対してその場電顕観察を行い、電子線照射に伴う溶液の揺らぎ、放出水分子の検出、脱水に伴う単結晶成長を確認した。以上の結果、電子顕微鏡内の真空でもコレステロール添加により強化したリポソームは確かに水を内包して存在しており、溶液中反応の観察環境を提供し単結晶成長の場となることを確認した。 | KAKENHI-PROJECT-25630269 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25630269 |
人工ナノ細胞創製 -水中物質反応in-situ高分解能TEM観察への展開- | ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を用いてコレステロールを添加したリポソームを合成した。リン脂質二重層の相安定性についてはFT-IR分光法により評価した。超純水、生理的食塩水、もしくはヨウ化セシウム水溶液を内包させた強化リポソームは通常の透過型電子顕微鏡により観察した。これらのリポソームが確かに電子顕微鏡の室温真空中で安定であることを確認した。そして電子線照射により、水は徐々に抜けリポソーム中に単結晶塩が析出する事を確認した。人工的に作製したリポソーム中に水もしくは水溶液を内包していることを確認できている。今後は放出粒子の同定により傍証を行うとともに、溶液中反応観察の実施例を増やしてゆきたいと考えている。ナノ材料平成26年度までの結果を踏まえて実験の再現性を確認すると同時に、リポソームからの放出粒子の検出をTop-entry型の電子顕微鏡からSide-entry型の電子顕微鏡に装着変更して実施し、電子線照射による放出粒子の同定を行う。そして以上の結果を総括して研究をまとめる。イオン液体を基板としたスパッタ法によるナノ粒子形成条件を見出しTEM観察を行った。リポソームをバンガム法により作製し、TEM観察を行い電子線照射実験を行った。DPPCにコレステロール添加効果については状態図作成のための赤外分光セルの行路長条件が確定しておらず実験は継続中である。バンガム法に加えてマイクロカプセル化法を検討し、ナノ粒子包埋リポソームの形成条件に付いてさらに検討する。既存のTEMに高感度の質量分析器を装着し、電子線照射による放出原子・分子のその場検出実験を行う。 | KAKENHI-PROJECT-25630269 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25630269 |
植物の生殖器分化、伸長生長の制御に関与する遺伝子のクローニングと機能の解析 | フサシダ科植物の一種、Anemia phyllitidisの原糸体において雄性生殖器官である造精器の分化形成機構を追究する観点から、その主要造精器誘導物質であるantheridicacidにより発現が誘導あるいは抑制される遺伝子のクローニングを試みた。サブトラクション法により、誘導、抑制遺伝子が濃縮されたと考えられるcDNAプールを得、これらをプローブとして誘導、抑制遺伝子のスクリーニングを行ったが、誘導、あるいは抑制遺伝子を単離するには至っていない。現在、スクリーニング法についても更に検討を加えている。一方、キュウリの胚軸から、ディファレンシャルスクリーニングにより数種類のGA_4(キュウリの伸長成長を制御する活性型GA)誘導性遺伝子のcDNAクローンを得た。その内、GA_4処理後比較的早期に転写が誘導される遺伝子のcDNAクローン(cCRG16)のインサートについて塩基配列を決定した。この塩基配列、および推定アミノ酸配列に対しホモロジー検索を行ったが相同性のあるものは認められなかった。CRG16がコードしていると推定されるタンパク質は、65個のアミノ酸残基からなるが、プロリンに富む中央部の比較的親水性の部分を除き殆どが疎水性のアミノ酸で構成されているなどユニークな特徴を有している。また、CRG16 mRNAの発現のkineticsおよび器官特異性の検討からCRG16にコードされているタンパク質がキュウリ胚軸の伸長生長に密接に関与していることが示唆された。フサシダ科植物の一種、Anemia phyllitidisの原糸体において雄性生殖器官である造精器の分化形成機構を追究する観点から、その主要造精器誘導物質であるantheridicacidにより発現が誘導あるいは抑制される遺伝子のクローニングを試みた。サブトラクション法により、誘導、抑制遺伝子が濃縮されたと考えられるcDNAプールを得、これらをプローブとして誘導、抑制遺伝子のスクリーニングを行ったが、誘導、あるいは抑制遺伝子を単離するには至っていない。現在、スクリーニング法についても更に検討を加えている。一方、キュウリの胚軸から、ディファレンシャルスクリーニングにより数種類のGA_4(キュウリの伸長成長を制御する活性型GA)誘導性遺伝子のcDNAクローンを得た。その内、GA_4処理後比較的早期に転写が誘導される遺伝子のcDNAクローン(cCRG16)のインサートについて塩基配列を決定した。この塩基配列、および推定アミノ酸配列に対しホモロジー検索を行ったが相同性のあるものは認められなかった。CRG16がコードしていると推定されるタンパク質は、65個のアミノ酸残基からなるが、プロリンに富む中央部の比較的親水性の部分を除き殆どが疎水性のアミノ酸で構成されているなどユニークな特徴を有している。また、CRG16 mRNAの発現のkineticsおよび器官特異性の検討からCRG16にコードされているタンパク質がキュウリ胚軸の伸長生長に密接に関与していることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-06269201 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06269201 |
可変ゲイン振動制御に関する研究 | 本研究でいう可変ゲイン制御とは一種の非線形状態フィードバック制御であり,線形制御と見なしたときの等価ゲインを制振対象のエネルギーの関数として調整することにより効果的に振動制御を行おうとするものである.このような制御はCMG(コントロール・モーメント・ジャイロ)による剛体振子の振動制御において研究代表者らが用いたことがあり,CMGのジンバル角の飽和を防ぎ,時間的になめらかな制振トルクを発生させることができるなどの効果を確認している.本年度は,まず,線形1自由度系に可変ゲイン速度フィードバックを構成することにより,基本的な制御特性の確認を行った.ここでは,制振効果を確認するため,フォッカープランク方程式を導き,白色雑音励振の仮定の下で解析解を求めた.励振力が強い場合,アクチュエータの出力飽和が生じない範囲内において定ゲイン制御と比較して制振対象の振動エネルギは約1/3に抑えられることなどを確認した.続いて,ハイブリッド動吸振器への適用を検討したところ,通常のハイブリッド動吸振器の機構構成ではストローク制約のもとで制御則が構成し難いことが判明した.この問題点はアクチュエータを動吸振器の受動要素と並列に設置することに起因するものと考えられる.そこで,これに代えて,アクチュエータを直列に入れるカスケード構造を検討した.可変ゲイン制御とは独立に,本構成法はハイブリッド化の効果が高いものと考えられる.また,同構造により可変ゲイン制御が構成しやすくなることも確認できた.本研究でいう可変ゲイン制御とは一種の非線形状態フィードバック制御であり,線形制御と見なしたときの等価ゲインを制振対象のエネルギーの関数として調整することにより効果的に振動制御を行おうとするものである.このような制御はCMG(コントロール・モーメント・ジャイロ)による剛体振子の振動制御において研究代表者らが用いたことがあり,CMGのジンバル角の飽和を防ぎ,時間的になめらかな制振トルクを発生させることができるなどの効果を確認している.本年度は,まず,線形1自由度系に可変ゲイン速度フィードバックを構成することにより,基本的な制御特性の確認を行った.ここでは,制振効果を確認するため,フォッカープランク方程式を導き,白色雑音励振の仮定の下で解析解を求めた.励振力が強い場合,アクチュエータの出力飽和が生じない範囲内において定ゲイン制御と比較して制振対象の振動エネルギは約1/3に抑えられることなどを確認した.続いて,ハイブリッド動吸振器への適用を検討したところ,通常のハイブリッド動吸振器の機構構成ではストローク制約のもとで制御則が構成し難いことが判明した.この問題点はアクチュエータを動吸振器の受動要素と並列に設置することに起因するものと考えられる.そこで,これに代えて,アクチュエータを直列に入れるカスケード構造を検討した.可変ゲイン制御とは独立に,本構成法はハイブリッド化の効果が高いものと考えられる.また,同構造により可変ゲイン制御が構成しやすくなることも確認できた. | KAKENHI-PROJECT-07750261 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07750261 |
瀬戸内海地域における商品輸送・廻船の実態把握と生産の地帯構造に関する研究ーコンピュ-タ-処理による文安2(1445)年「兵庫北関入舩納帳の分析ー | 本研究は、15世紀なかば兵庫津に入津した船の一年間にわたる関税納入帳簿である「兵庫北関入舩納帳」(以下「納帳」と略称)の各項目をコンピュ-タ-入力してデ-タベ-スを作成し、これをもとにして当該時期の瀬戸内海地域における商品輸送・廻船の実態をデ-タベ-スからえられた各種統計を分析して多方面・総合的に明らかにしようとしたものである。「納帳」には、文安2年1月から文安3年1月にいたる期間の兵庫津への船の、入港年月日・船籍地・積載品目・数量・船頭名・問丸名・関銭額・納入日の基本情報に加えて、使用枡の注記、関銭納入に関する注記などが詳細に記録されている。入港総船数1964、延べ積載商品数2645にのぼり、各項目の情報量は約20,000項目に達している。初年度は(平成2年)、これらの記載事項の確定(史料解釈)、コンピュ-タ-入力のための統一と調整、確定事項のコンピュ-タ-への入力に重点をおいて作業を進めた。平成3年度において、ほぼコンピュ-タ-入力を終え、デ-タベ-スとして利用可能な状態にすることができた。さらに、これをもとに時期別・商品別・船籍別等各種統計表を作成し、兵庫津への入津量の月別変化や集荷先の移動について具体的に明らかにすることができた。平成3年度においては、「米」について検討したが、今後「塩」をじめとする積載品目すべてにわたって検討を加え、瀬戸内海における商品輸送の実態を明らかにすることにつとめたい。本研究は、15世紀なかば兵庫津に入津した船の一年間にわたる関税納入帳簿である「兵庫北関入舩納帳」(以下「納帳」と略称)の各項目をコンピュ-タ-入力してデ-タベ-スを作成し、これをもとにして当該時期の瀬戸内海地域における商品輸送・廻船の実態をデ-タベ-スからえられた各種統計を分析して多方面・総合的に明らかにしようとしたものである。「納帳」には、文安2年1月から文安3年1月にいたる期間の兵庫津への船の、入港年月日・船籍地・積載品目・数量・船頭名・問丸名・関銭額・納入日の基本情報に加えて、使用枡の注記、関銭納入に関する注記などが詳細に記録されている。入港総船数1964、延べ積載商品数2645にのぼり、各項目の情報量は約20,000項目に達している。初年度は(平成2年)、これらの記載事項の確定(史料解釈)、コンピュ-タ-入力のための統一と調整、確定事項のコンピュ-タ-への入力に重点をおいて作業を進めた。平成3年度において、ほぼコンピュ-タ-入力を終え、デ-タベ-スとして利用可能な状態にすることができた。さらに、これをもとに時期別・商品別・船籍別等各種統計表を作成し、兵庫津への入津量の月別変化や集荷先の移動について具体的に明らかにすることができた。平成3年度においては、「米」について検討したが、今後「塩」をじめとする積載品目すべてにわたって検討を加え、瀬戸内海における商品輸送の実態を明らかにすることにつとめたい。本研究は2年間で完了する予定であり、研究の初年度にあたる本年度は、研究対象としている文安2(1445)年の「兵庫北関入舩納帳」(以下「納帳」と略記)に記録された兵庫入港の全船舶(1965件)の入港月日・船籍地・積載商品とその数量・関税額とその納入日・船頭名・荷受主(問丸)のすべて(全項目数約14,000件)について、(1)デ-タの確定作業、(2)コンピュ-タへの入力、(3)現地調査等、分析のための基礎作業をおこなった。(1)デ-タの確定作業:「納帳」に記載されている事項について、個々に検討を加え、解読と解釈をおこなって、コンピュ-タへの入力可能な状態にデ-タを確定する作業をおこなった。(2)コンピュ-タへの入力:確定することができたデ-タをコンピュ-タに入力する作業を研究補助者(大学院生)の手をかりて遂次すすめている。現在(平成3年2月現在)全デ-タの約70パ-セント程度のインプットを完了しており、ほぼ当初の予定通り作業は進歩している。(3)現地調査:「納帳」には108か所の港湾が船籍地として記載されているが、そのすべてについて現在地、その機能等について明らかになっているわけではない。現地調査によって現在地との比定をおこなうとともに当該地において補助史料の調査・収集等につとめた。以上のように、今年度は、15世紀なかばの瀬戸内海海運の実態解明にとって不可欠な史料である「納帳」の具体的研究と分析のためのデ-タ・ベ-スの作成につとめてきた。当初の研究計画はほぼ予定通り進歩しているので、これらのデ-タ・ベ-スを基礎にして、研究の完了年度である来年度は、瀬戸内海地域の海上交通の実態、商品生産の地帯構造、流通構造の変化等について分析をおこない、15世紀の瀬戸内海地域の海上交通と商品生産のあり方を総合的・体系的に明らかにしたい。 | KAKENHI-PROJECT-02630041 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02630041 |
瀬戸内海地域における商品輸送・廻船の実態把握と生産の地帯構造に関する研究ーコンピュ-タ-処理による文安2(1445)年「兵庫北関入舩納帳の分析ー | 本研究は、15世紀なかば兵庫津に入津した船の一年間にわたる関税納入帳簿である「兵庫北関入舩納帳」(以下「納帳」と略称)の各項目をコンピュ-タ入力してデ-タベ-スを作成し、これをもとにして当該時期の瀬戸内海地域における商品輸送・廻船の調態をデ-タベ-スからえられた各種統計を分析して多方面・総合的に明らかにしようとしたものである。平成3年度は、前年に引き続いて「納帳」の各項目の史料としての確定とそのコンピュ-タ-への入力を継続するとともに、このデ-タベ-スから統計表を作成し、兵庫津への商品の入津量、商品輸送のあり方等について分析をおこなうことができた。本年はとくに「米」について検討を加えた。兵庫津への米積載船458船、年間総入津量31,000石であるが,入津量に3・4月と11・12月の二つのピ-クがあること、3・4月の場合には主として四国産の米が、11・12月の場合には播磨産の米が、多く入津し、米の集荷先に時期による顕著な違いがみられること等を明らかにすることができた(なお詳しくは、「研究成果報告書」を参照されたい)。「納帳」記載の項目についてはほぼコンピュ-タ-への入力を終え、デ-タベ-スとして利用可能な状態にすることができたので、今後瀬戸内海地域のもっとも重要な商品である塩をはじめ50数種類にのぼる「納帳」記載の商品について、さまざまな角度から分析を継続し、瀬戸内海における商品輸送の実態を明らかにすることにつとめたい。 | KAKENHI-PROJECT-02630041 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02630041 |
包括的ペプチド利用による生体情報伝達ネットワークの加齢による変容・破綻の解明 | 生体は部分的な機能障害が原因で個体全体の機能不全に陥ることがないよう種々の情報伝達ネットワークを形成している。加齢により生体は恒常性が維持されている状態から、生理的老化、病的老化を経て老化関連疾患を発症し最終的に死に至る。老化の全体像を俯瞰するためには、このネットワークの変容や破綻を捉えることが不可欠である。本研究では包括的なペプチド利用により生体情報伝達ネットワークの加齢による変容解明を図る。生体は部分的な機能障害が原因で個体全体の機能不全に陥ることがないよう種々の情報伝達ネットワークを形成している。加齢により生体は恒常性が維持されている状態から、生理的老化、病的老化を経て老化関連疾患を発症し最終的に死に至る。老化の全体像を俯瞰するためには、このネットワークの変容や破綻を捉えることが不可欠である。本研究では包括的なペプチド利用により生体情報伝達ネットワークの加齢による変容解明を図る。 | KAKENHI-PROJECT-19H04031 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H04031 |
瀬戸内海海洋浄化副生バイオマスのエネルギー有効利用技術の開発 | 大阪湾湾奥部の環境変動に準じた条件において、疑似現場養殖実験を行い、成長効率および環境修復能力を確認した。また、実海域において養殖を行う際の、植え付けおよび回収方法を検討した。工場排水(淡水)を海水に混合すれば、水処理を行う植物として非常に有望である。海洋バイオマスは水熱前処理によってスラリー状となることを確認し、アルギン酸を単一炭素源としてエタノールを生成する菌叢を得た。発酵残渣の臨界水ガス化を行い、塩の添加が反応特性に及ぼす影響を明らかとした。これらの結果を踏まえてシステム設計を行った。エネルギー生産のみを目指した場合には、経済的なメリットは少ないが、システムを構築することは可能と考えられる。大阪湾湾奥部の環境変動に準じた条件において、疑似現場養殖実験を行い、成長効率および環境修復能力を確認した。また、実海域において養殖を行う際の、植え付けおよび回収方法を検討した。工場排水(淡水)を海水に混合すれば、水処理を行う植物として非常に有望である。海洋バイオマスは水熱前処理によってスラリー状となることを確認し、アルギン酸を単一炭素源としてエタノールを生成する菌叢を得た。発酵残渣の臨界水ガス化を行い、塩の添加が反応特性に及ぼす影響を明らかとした。これらの結果を踏まえてシステム設計を行った。エネルギー生産のみを目指した場合には、経済的なメリットは少ないが、システムを構築することは可能と考えられる。資源確保の観点からも、地球温暖化対策の観点からも海洋バイオマスエネルギーの有効利用技術基盤の確立は重要である。既存技術を用いた海洋バイオマスの単純利用は、水分、塩分、経済性のために困難である。ここでは、経済性を確保するために環境浄化に伴って発生する副生バイオマスを用い、水分と塩分を効率よく除去し、除去しきれない水分と塩分に耐性のある技術を用いた効率よくエネルギー変換・利用するための技術開発を、瀬戸内海を想定対象として実施するものである。本研究では、海藻を用いた海洋浄化、水熱前処理と水分および塩分の膜分離、耐塩性エタノール発酵、耐塩性超臨界水ガス化を用いたシステムを構築し、その実現のために求められる知見を実験的に得るとともに、システムの評価を実施する。平成21年度には、三島は大阪湾の浅海における水温変化を確認し、また、アンモニアならびにリンの取り込み量を評価した。吉田は、実際にひじきを水熱前処理し、エタノール発酵のための原料を得た。西尾と中島田はアルギン酸資化エタノール生成菌群のスクリーニングを行い、有機酸とエタノールを安定的に生成し、エタノール生産量が1番高い菌叢HUA-1を得、その中の主要エタノール生産菌を数株単離した。さらに、水熱前処理したびしきを発酵、希釈率による生成物の生産比率変化の可能性を確認した。金指は、新規な無機系逆浸透/ナノ瀘過膜を開発、その透過係数を測定した。松村はエタノール発酵残渣を超臨界水ガス化し、反応速度定数を決定、活性炭触媒の効果についても測定した。美濃輪は、これらのデータを用いてシステム評価を行う基礎プログラムを作成した。三島は、大阪湾疑似現場環境の培養実験で、夏期の条件では平均成長速度8%程度、N,Pの取り込み速度60μmol-N/g-ww/d、3μmoL-P/g-ww/d以上の高い環境浄化能力を確認した。また、ひじきの成分分析を行い、水熱処理で有機物含有量は8%程度低下し、大部分が炭水化物の分解によることを確認した。吉田は、ひじきの水熱処理を85-180°Cで行い、水可溶化生成物の温度依存性を確認した。液体回収物中のTOC収率は高温ほど高く、特に105140°Cで大きく向上した。SEC分析で、単糖類より低分子量の成分は生成しないことが示された。この単糖類は、ひじきの貯蔵物質であるマンニトール(20°Cでの水への溶解度は100g/L以上)と考えられる。金指は、ビストリエトキシシリルエタンを用いて有機無機ハイブリッドシリカ膜を作製した。2000ppmNaCl水溶液に対して阻止率96%を示し、世界に先駆けてシリカ系ゾルゲル膜の逆浸透の可能性を示した。イソプロピルアルコール阻止率は90%で分子篩がおもな分離機構であることが示唆された。さらに,最高90°CでNaCl濾過実験を行った後も,25°C阻止率・透水性ともに再現性を示し、十分な耐水性を確認した。中島田と西尾は、前年度分離したエタノール生産候補株HUA-1について分子生物学的微生物同定を行い、本株がこれまでにアルギン酸分解の報告がないDysgonomonas capnocytophagoidesの近縁種であることを確認した。5g/Lのアルギン酸基質で培養条件を検討し、酢酸およびエタノールをそれぞれ25mMおよび5mM生産する条件を見出した。松村はエタノール発酵残渣の超臨界水ガス化に及ぼす塩濃度の影響を確認、わずかな塩濃度でもガス化速度が大きく低下することを確認、反応速度式を得た。美濃輪は、北海道のコンブ養殖場の調査を行い、養殖システムの評価を行った。資源確保の観点からも、地球温暖化対策の観点からも海洋バイオマスエネルギーの有効利用技術基盤の確立は重要である。既存技術を用いた海洋バイオマスの単純利用は、水分、塩分、経済性のために困難である。 | KAKENHI-PROJECT-21246148 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21246148 |
瀬戸内海海洋浄化副生バイオマスのエネルギー有効利用技術の開発 | ここでは、経済性を確保するために環境浄化に伴って発生する副生バイオマスを用い、水分と塩分を効率よく除去し、除去しきれない水分と塩分に耐陛のある技術を用いて効率よくエネルギー変換・利用するための技術開発を、瀬戸内海を想定対象として実施する。海洋バイオマスの利用にあたって重要なのは、含水率の低下と塩分の除去、そして経済性の向上である。また、バイオマスの利用にあたっては、生産および回収と変換の段階にわけて議論される。さらに、変換の段階は前処理と変換そのもの、そして後処理のそれぞれが適切に行われる必要がある。本研究では、この観点から、海藻を用いた海洋浄化、水熱前処理と水分および塩分の膜分離、耐塩性エタノール発酵、耐塩性超臨界水ガス化を用いたシステムを構築し、その実現のために求められる知見を実験的に得るとともに、システムの評価を実施した。海洋バイオマスの生産ならびに回収については、三島が大阪湾湾奥部の環境変動に準じた条件において、疑似現場養殖実験を行い、成長効率および環境修復能力を確認した。また、実海域において養殖を行う際の、植え付けおよび回収方法を検討した。工場排水(淡水)を海水に混合すれば、水処理を行う植物として非常に有望である事が明らかとなった。吉田は水熱前処理によって試料がスラリー状となることを確認した。また、西尾と中島田は、アルギン酸を単一炭素源としてエタノールを生成する菌叢を得た。松村は臨界水ガス化を行い、塩の添加が灰応特性に及ぼす影響を明らかとし、これらの結果を踏まえて美濃輪が、システム設計を行った。エネルギー生産のみを目指した場合には、経済的なメリットは少ないが、システムを構築することは可能と考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-21246148 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21246148 |
腸内細菌叢プロファイル変化に対応した食物由来成分による心血管内皮傷害予防法の開発(国際共同研究強化) | 共同研究先のPrincipal Investigatorと渡航前までに本共同研究の目的と計画を十分にe-mailやSkypeで協議した結果、心血管内皮機能の改善及び腸内微生物叢の構成や活性に働く可能性のある新規の食物由来の低分子化合物を探索することを本研究の大きな目的とした。研究代表者が有する食物由来の低分子化合物の候補と共同研究先の低分子化合物ライブラリと照合した結果、柑橘類由来フラボノイド中から分離・同定したある特定の低分子化合物(m/z=300.085)など、数種類の低分子化合物の活性を共同研究先の研究機関で評価することにした。これらの食物由来低分子化合物が血中にて検出されるか、液体クロマトグラフィー・時間飛行型質量分析装置(LC-TOFMS)で測定した。これらの精製品を野生型マウス(C57BL6)に経口投与すると、これら化合物のポジティブイオンが検出された。よって、これらの低分子化合物が腸内微生物細菌叢や慢性代謝性疾患、血管内皮機能に効果的か評価を行った。培養細胞モデル及び動物モデルを用いて生理活性を評価すると、これまでに2種類の化合物が概日リズム(Circadian Rhythm)を調整することで慢性代謝性疾患及び血管内皮機能の改善に働く可能性が示唆される結果が得られた。ある核内受容体がその化合物の標的分子である可能性を示す結果が得られており、今後はその同定を中心に解析を継続していく。内定年度:2015共同研究先での研究の日程の調整や代替人員確保及び日程調整に時間を要したため、本研究課題の交付申請までに時間を要した。本申請が日本学術振興会に受理されたのが平成29年3月24日であったため、まだ実績が得られていない状況である。本研究課題を進める前の環境を整備するのに時間を要してしまった。まずは代替人員の確保に時間を要した。また、次年度の勤務先での教育・研究担当業務と共同研究先での研究可能な期間・日程の調整に時間を要したため、交付申請が予定より遅れてしまった。現在も勤務先への長期研修に関する手続き及び共同研究先での受け入れ手続きで時間と労力を費やしている状況である。共同研究先のPrincipal Investigatorと渡航前までに本共同研究の目的と計画を十分にe-mailやSkypeで協議した結果、心血管内皮機能の改善及び腸内微生物叢の構成や活性に働く可能性のある新規の食物由来の低分子化合物を探索することを本研究の大きな目的とした。研究代表者が有する食物由来の低分子化合物の候補と共同研究先の低分子化合物ライブラリと照合した結果、柑橘類由来フラボノイド中から分離・同定したある特定の低分子化合物(m/z=300.085)など、数種類の低分子化合物の活性を共同研究先の研究機関で評価することにした。これらの食物由来低分子化合物が血中にて検出されるか、液体クロマトグラフィー・時間飛行型質量分析装置(LC-TOFMS)で測定した。これらの精製品を野生型マウス(C57BL6)に経口投与すると、これら化合物のポジティブイオンが検出された。よって、これらの低分子化合物が腸内微生物細菌叢や慢性代謝性疾患、血管内皮機能に効果的か評価を行った。培養細胞モデル及び動物モデルを用いて生理活性を評価すると、これまでに2種類の化合物が概日リズム(Circadian Rhythm)を調整することで慢性代謝性疾患及び血管内皮機能の改善に働く可能性が示唆される結果が得られた。ある核内受容体がその化合物の標的分子である可能性を示す結果が得られており、今後はその同定を中心に解析を継続していく。共同研究先とは定期的及び随時Skypeやemailで連絡を取り合い、最新の研究成果やエビデンスをやり取りしながら、本研究課題の計画の見直しや新たな戦略を練っているところである。共同研究先への出向までもう少し時間があるので、共同研究先で実施すべき実験や解析の計画を整理し、本学で実施すべき食物由来成分と腸内微生物叢との関連を検討するMicrobiome解析やMetabolome解析の準備している状況である。 | KAKENHI-PROJECT-15KK0345 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15KK0345 |
免疫調整剤による魚類マクロファージの貪食能増強機構に関する研究 | Streptomyces olivaceogriseus sp.の培養液から抽出された免疫活性ペプチド、heptanoyl-γ-D-glutamyl(L)-meso-diaminopimelyl(D)-alanine(FK-565)を1mg/kgの割で感染1日前に腹腔内に接種したニジマスは、Aeromonas salmonicida強毒生菌の攻撃に対して強い感染防御能を示すと同時に食細胞の貪食能を亢進させる作用を有することをみいだした。そこで、FK-565のニジマスの食細胞貪食能の活性化機構を解明するため、活性酸素能に及ぼす影響についてはTD-400を用いた化学発光法により、走化性に及ぼす影響については、Boydenのchamber法により比較検討した。化学発光法の試験方法は、実験開始3日前に20%proteosepeptoneをニジマスの腹腔内に約1mlずつ接種し、その後2日目にFK-565を1mg/kg,B.W.になるように腹腔内に接種した。翌日MS-222で麻酔し、100U/ml加Hank's液を腹腔内に注入し、腹腔内食細胞を収集した。5mM HEPES-buffer加Eagle's minimum essential medium(MEM.pH7.4,フェノール不含)を用い、10×【10^6】cells/mlの濃度の食細胞浮遊液を作成した。またホルマリン不活化A.salmonicidaを5mM HEPES加MEMに1.0×【10^6】cells/mlの濃度(【OD_(620nm)】;0.4)に調整した菌液を準備した。プラスチックセルに細胞浮遊液200μlを注入し、luminol(片山化学)原液をMEMで5倍に希釈したもの100μlを同セルに添加し、20°Cで30分間作用させ、基底値が一定になったところで細菌浮遊液200μlを添加して測定を開始した。FK-565処理群由来の食細胞浮遊液では、3分から4分の間で最大の活性値を示したのに対して正常対照群由来の食細胞浮遊液では4分前後にピークが出現したが、そのCPMはFK-565処理群の方が明らかに高い値を示した。走化能試験では、FK-565処理群と正常対照群との間に有意差は認められなかった。Streptomyces olivaceogriseus sp.の培養液から抽出された免疫活性ペプチド、heptanoyl-γ-D-glutamyl(L)-meso-diaminopimelyl(D)-alanine(FK-565)を1mg/kgの割で感染1日前に腹腔内に接種したニジマスは、Aeromonas salmonicida強毒生菌の攻撃に対して強い感染防御能を示すと同時に食細胞の貪食能を亢進させる作用を有することをみいだした。そこで、FK-565のニジマスの食細胞貪食能の活性化機構を解明するため、活性酸素能に及ぼす影響についてはTD-400を用いた化学発光法により、走化性に及ぼす影響については、Boydenのchamber法により比較検討した。化学発光法の試験方法は、実験開始3日前に20%proteosepeptoneをニジマスの腹腔内に約1mlずつ接種し、その後2日目にFK-565を1mg/kg,B.W.になるように腹腔内に接種した。翌日MS-222で麻酔し、100U/ml加Hank's液を腹腔内に注入し、腹腔内食細胞を収集した。5mM HEPES-buffer加Eagle's minimum essential medium(MEM.pH7.4,フェノール不含)を用い、10×【10^6】cells/mlの濃度の食細胞浮遊液を作成した。またホルマリン不活化A.salmonicidaを5mM HEPES加MEMに1.0×【10^6】cells/mlの濃度(【OD_(620nm)】;0.4)に調整した菌液を準備した。プラスチックセルに細胞浮遊液200μlを注入し、luminol(片山化学)原液をMEMで5倍に希釈したもの100μlを同セルに添加し、20°Cで30分間作用させ、基底値が一定になったところで細菌浮遊液200μlを添加して測定を開始した。FK-565処理群由来の食細胞浮遊液では、3分から4分の間で最大の活性値を示したのに対して正常対照群由来の食細胞浮遊液では4分前後にピークが出現したが、そのCPMはFK-565処理群の方が明らかに高い値を示した。走化能試験では、FK-565処理群と正常対照群との間に有意差は認められなかった。 | KAKENHI-PROJECT-61560217 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61560217 |
鳥類の音声知覚における発声神経系の役割 | 1.発声神経系の発声信号に対する応答1)成鳥雄キンカチョウの中枢発声系のMANとHVcは、発声信号(歌の要素・note)に対して明確に異なった反応を示した。MANはnoteの周波数特性(周波数組合せ)に対して応答し、HVc周波数組合せに関係ない応答をする。2)聴覚隔離(生後親鳥から鳴声を含めて、外界の音から遮断する)後1年令(成鳥)の雄キンカチョウMANは、正常雄キンカチョウHVcに似た応答をする。3)成鳥雌キヤカチョウMANは、2)の聴覚隔離と同様な反応を示す。2.発声系の損傷による応答変化1)成鳥雄キンカチョウはnoteの特性を刺激としたオペラント学習に成功した。noteの周波数組合せ特徴を区別して学習することがわかった。2)上記のキンカチョウのMANを損傷させるとオペラント学習は不能となった。しかし、刺激として単純な音の弁別(純音とノイズ)は可能である。以上1と2の結果からキンカチョウの発声系のMANは発声信号(歌)の弁別に不可欠な部位であり、自らの歌を学習するのに重要な働きをする事が示唆される。1.発声神経系の発声信号に対する応答1)成鳥雄キンカチョウの中枢発声系のMANとHVcは、発声信号(歌の要素・note)に対して明確に異なった反応を示した。MANはnoteの周波数特性(周波数組合せ)に対して応答し、HVc周波数組合せに関係ない応答をする。2)聴覚隔離(生後親鳥から鳴声を含めて、外界の音から遮断する)後1年令(成鳥)の雄キンカチョウMANは、正常雄キンカチョウHVcに似た応答をする。3)成鳥雌キヤカチョウMANは、2)の聴覚隔離と同様な反応を示す。2.発声系の損傷による応答変化1)成鳥雄キンカチョウはnoteの特性を刺激としたオペラント学習に成功した。noteの周波数組合せ特徴を区別して学習することがわかった。2)上記のキンカチョウのMANを損傷させるとオペラント学習は不能となった。しかし、刺激として単純な音の弁別(純音とノイズ)は可能である。以上1と2の結果からキンカチョウの発声系のMANは発声信号(歌)の弁別に不可欠な部位であり、自らの歌を学習するのに重要な働きをする事が示唆される。 | KAKENHI-PROJECT-05206111 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05206111 |
蒸発と凝縮が混在するマイクロスケール閉鎖系の伝熱特性の解明 | 本研究では,これまでは直接的な観測が困難であった,マイクロメートルスケールで蒸発面と凝縮面が対向している閉鎖系の熱状態を測定する方法を確立し,そこで起きている伝熱現象を明らかにすることを目的としている。このような伝熱現象を詳細に理解するためには,局所的温度と局所熱流束を同時に測定する必要がある。そこで,温度に依存した傾向を発する感温塗料を応用した,高い空間分解能を持ち,かつ温度と熱流束を同時に測定可能な薄膜型デバイスを開発し,これを用いて,このような微小領域の熱現象を可視化する。本研究では,これまでは直接的な観測が困難であった,マイクロメートルスケールで蒸発面と凝縮面が対向している閉鎖系の熱状態を測定する方法を確立し,そこで起きている伝熱現象を明らかにすることを目的としている。このような伝熱現象を詳細に理解するためには,局所的温度と局所熱流束を同時に測定する必要がある。そこで,温度に依存した傾向を発する感温塗料を応用した,高い空間分解能を持ち,かつ温度と熱流束を同時に測定可能な薄膜型デバイスを開発し,これを用いて,このような微小領域の熱現象を可視化する。 | KAKENHI-PROJECT-19K15414 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K15414 |
木本性植物,とくに柑橘,カキの遺伝子解析による類縁関係に関する研究 | その来歴や類縁関係に不明な点が多いカキ属植物の分類に関する知見をうるために、その種、品種について、諸形質を変数とした数量化理論による数量分類と、葉の各種アイソザイム分析よる化学分類学的手法を試みた。数量分類は42品種の種苗特性分類調査報告書を基に、変数となる形態形質は、それぞれに関して葉枝13、葉18、花10、果実53、計94形質を用いた。計算法は数量化理論第3類を適用した。アイソザイム分析には新葉100gを用い、まず各酵素の最適分析時期を決定するために、展葉直前、同中、完全展葉について分析した。この結果に基き、カキ(Diospyros kaki)24品種、マメガキ(D.latus)、リュウキュウマメガキ(D.kuroiwai)、アメリカガキ(D.virginiana)2系統、ラオヤーシー(D.rhombifolia)、アブラガキ(D.oleifera)を用い、9酵素について電気泳動Davis法に基ずき活性染色した。数量化理論第3類による計算の結果、主要栽培品種中、平核無がとくに遠く位置したのは、種子の形質が唯一無核であった結果である。これを除くと、次郎、富有と西条、筆柿が最も離れ、御所系品種は集団化した結果となった。葉から抽出したアイソザイムを、展葉時の段階別に活性染色した結果、Peroxidaseは完全に展葉した段階で良い結果がえられたが、他の酵素は展葉直前で最も活性が強かった。この条件で各酵素を活性染色した結果、Peroxidase、Esterase,Phosphoglucomutase,6-phosphogluconate dehydrogenaseでは明瞭なパターンがみられた。他の5酵素でも活性はみられたが弱く、バンド数の決定は困難であった。種間では明らかに各酵素における主要バンドに差が認められ、また品種間においても、パターンに差異があることを指摘しえた。今後は活性の弱い酵素の分析条件の検討を行うと共に、より多くの種、品種を用いた分析を行い、数量分類の結果や他物質の結果も併せたカキ属の類縁関係や分類について考察を行いたい。その来歴や類縁関係に不明な点が多いカキ属植物の分類に関する知見をうるために、その種、品種について、諸形質を変数とした数量化理論による数量分類と、葉の各種アイソザイム分析よる化学分類学的手法を試みた。数量分類は42品種の種苗特性分類調査報告書を基に、変数となる形態形質は、それぞれに関して葉枝13、葉18、花10、果実53、計94形質を用いた。計算法は数量化理論第3類を適用した。アイソザイム分析には新葉100gを用い、まず各酵素の最適分析時期を決定するために、展葉直前、同中、完全展葉について分析した。この結果に基き、カキ(Diospyros kaki)24品種、マメガキ(D.latus)、リュウキュウマメガキ(D.kuroiwai)、アメリカガキ(D.virginiana)2系統、ラオヤーシー(D.rhombifolia)、アブラガキ(D.oleifera)を用い、9酵素について電気泳動Davis法に基ずき活性染色した。数量化理論第3類による計算の結果、主要栽培品種中、平核無がとくに遠く位置したのは、種子の形質が唯一無核であった結果である。これを除くと、次郎、富有と西条、筆柿が最も離れ、御所系品種は集団化した結果となった。葉から抽出したアイソザイムを、展葉時の段階別に活性染色した結果、Peroxidaseは完全に展葉した段階で良い結果がえられたが、他の酵素は展葉直前で最も活性が強かった。この条件で各酵素を活性染色した結果、Peroxidase、Esterase,Phosphoglucomutase,6-phosphogluconate dehydrogenaseでは明瞭なパターンがみられた。他の5酵素でも活性はみられたが弱く、バンド数の決定は困難であった。種間では明らかに各酵素における主要バンドに差が認められ、また品種間においても、パターンに差異があることを指摘しえた。今後は活性の弱い酵素の分析条件の検討を行うと共に、より多くの種、品種を用いた分析を行い、数量分類の結果や他物質の結果も併せたカキ属の類縁関係や分類について考察を行いたい。 | KAKENHI-PROJECT-61560025 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61560025 |
マルチメディア議事録間の関係記述によるコミュニティ発見に関する研究 | 研究代表者のグループはディスカッションマイニングと題して、実世界における人間同士の知識交換の場であるミーティングの活動を記録し、再利用可能な知識を抽出するための技術および研究領域について提案してきた。ディスカッションマイニングでは、映像・音声情報やテキスト情報、メタデータなどの実世界情報の獲得と利用、これらのコンテンツを組み合わせるマルチメディア情報の知的統合、そして重要情報や因果関係などの知識発見をターゲットとしている。計算機の処理能力の向上と通信回線の広帯域化により、映像や音声をデジタルアーカイブとして配信可能になった。また、実世界における情報を再現性高く利用するため、マルチメディア議事録のようなデジタルアーカイブを配信する要求が高まっている。そして配信されたコンテンツ間の意味的関係をアノテーションなどにより記述することによってコンテンツ間の関係からなるネットワークを形成することができる。そこで本研究では、コンテンツ間の関係により結びついたネットワークの構築を視野に入れたマルチメディア議事録を半自動的に構築・蓄積する技術の研究・開発を行った。そして、メディア情報の意味構造を拡張し、会議を構成する要素の意味関係を明確にする手法を考案し、会議構成要素を抽象化した概念記述および要素間の関係記述であるディスカッションオントロジーを構築した。このディスカッションオントロジーによって、会議という人間活動に関する体系的な知識と、それらを計算機上で扱うための枠組みを確立することができた。そして、内容・状況に基づく意味的情報を付与することで、大域的な知識発見と議事録コンテンツを中心とするコミュニティ発見を行った。本年度は、議事録作成における映像・音声などのメディア情報の間の連結法を設計・実装し、いくつかの実証実験によって経験を深めた上で、より一般的なタスクにおける、音声・映像・言語などのメディア情報処理の現状と可能性について考察を加え、それらの統合方式について検討を行った。次に、メディア情報の認識技術を用いた半自動アノテーション、コンテンツ検索や要約、議事録からの知識発見などの具体的な要素・応用技術について研究・開発を行った。そして、コンテンツ間の関係記述の方式について考え、コンテンツを中心とするネットワークの形成、ならびにそこからのコミュニティの発見についての検討を行った。具体的にはまず会議コンテンツへの意味的アノテーション、および議事録との関連付けの設計を行った。映像や音声を含む会議コンテンツのデジタルアーカイブの高度化、およびそれらコンテンツに対するアノテーション作成の自動化に必要な機能、さらにその実現方式について検討を行い、また音声・映像データと議事録との関連付けや、他の議事録のコンテンツとの関連付けを行い、複数のメディア処理を統合し、複数の議事録とコンテンツをネットワーク化するための方式について検討した。次に、会議コンテンツからの知識発見と議事録集合の高度な可視化を行うため、意味的アノテーションの付与されたコンテンツや議事録集合から抽出された重要フレーズ、重要イベントを元に、議論の展開や重要発言・重要発言者といった知識発見を行った。そして発見された知識が議事録閲覧者やその後の議論における影響、他のコミュニティに対する影響について知見を得ることができた。研究代表者のグループはディスカッションマイニングと題して、実世界における人間同士の知識交換の場であるミーティングの活動を記録し、再利用可能な知識を抽出するための技術および研究領域について提案してきた。ディスカッションマイニングでは、映像・音声情報やテキスト情報、メタデータなどの実世界情報の獲得と利用、これらのコンテンツを組み合わせるマルチメディア情報の知的統合、そして重要情報や因果関係などの知識発見をターゲットとしている。計算機の処理能力の向上と通信回線の広帯域化により、映像や音声をデジタルアーカイブとして配信可能になった。また、実世界における情報を再現性高く利用するため、マルチメディア議事録のようなデジタルアーカイブを配信する要求が高まっている。そして配信されたコンテンツ間の意味的関係をアノテーションなどにより記述することによってコンテンツ間の関係からなるネットワークを形成することができる。そこで本研究では、コンテンツ間の関係により結びついたネットワークの構築を視野に入れたマルチメディア議事録を半自動的に構築・蓄積する技術の研究・開発を行った。そして、メディア情報の意味構造を拡張し、会議を構成する要素の意味関係を明確にする手法を考案し、会議構成要素を抽象化した概念記述および要素間の関係記述であるディスカッションオントロジーを構築した。このディスカッションオントロジーによって、会議という人間活動に関する体系的な知識と、それらを計算機上で扱うための枠組みを確立することができた。そして、内容・状況に基づく意味的情報を付与することで、大域的な知識発見と議事録コンテンツを中心とするコミュニティ発見を行った。 | KAKENHI-PROJECT-17700147 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17700147 |
人工現実感を用いた人間運動スキルの動的特性の解析・獲得システムに関する研究 | 本研究は人間の感覚運動制御機能の解明,そのスキルの獲得と工学的応用を目標とし,それに人工現実感の方法論を試みる.まず感覚運動特性の計測にDDリニアモータ2台で機械インタフェースを構築して,操作に用いる質量バネダンパを含む柔軟対象物をモータを制御することによって仮想的に作り出し,両腕でそれを操作する時に加わる力とスライダの位置を計測する.制御パラメータ値を変えることによって,異なる動特性の対象物の操作時の人腕の示す特性を見た.一方,両腕の表面筋電位と姿勢も同時に計測した.感覚運動制御特性としてまず,腕に加わる力と腕の運動間の線形化されたインピーダンスモデルを用い,両腕で対象物を操作する中に外乱を与えてパラメータ推定を行なった.その結果,対象物が硬くなるにつれ腕の慣性係数や粘性係数および両腕が対象物を把持するための内力が大きく,弾性係数は小さくなる現象,ならびに両手協調動作中のほうが静止時や片手動作よりも弾性係数は小さくなるに対して,慣性係数や粘性係数は同程度だった,などが見られた.これらにより操作する対象物の粘弾性特性によって両腕の制御戦略を調整していることがわかった.一方,ボールの捕捉・打撃のようなスキルに富んだ作業において,人間が目でボールを捉えてから腕でバットを振りまでの視覚運動処理系に数十数百ミリ秒の時間遅れがあるにもかかわらず,ボールを正確に捉えたり打ち返したりできる.そして,素振りなどを通じてボールの変化により的確に対処しよりパワフルな打ち方を習得していく.このような能力を有する感覚運動制御系のモデルとして,適切な評価基準に基づいた規範軌道の生成,ボール動きの予測,およびボール動きの変動に対する追従を含めたものを提案した.それを適用したバッティングロボットのシミュレーションを行い,ロボット駆動力の限界値を使いつつ最速の打撃振りを実現でき有効性を検証した.本研究は人間の感覚運動制御機能の解明,そのスキルの獲得と工学的応用を目標とし,それに人工現実感の方法論を試みる.まず感覚運動特性の計測にDDリニアモータ2台で機械インタフェースを構築して,操作に用いる質量バネダンパを含む柔軟対象物をモータを制御することによって仮想的に作り出し,両腕でそれを操作する時に加わる力とスライダの位置を計測する.制御パラメータ値を変えることによって,異なる動特性の対象物の操作時の人腕の示す特性を見た.一方,両腕の表面筋電位と姿勢も同時に計測した.感覚運動制御特性としてまず,腕に加わる力と腕の運動間の線形化されたインピーダンスモデルを用い,両腕で対象物を操作する中に外乱を与えてパラメータ推定を行なった.その結果,対象物が硬くなるにつれ腕の慣性係数や粘性係数および両腕が対象物を把持するための内力が大きく,弾性係数は小さくなる現象,ならびに両手協調動作中のほうが静止時や片手動作よりも弾性係数は小さくなるに対して,慣性係数や粘性係数は同程度だった,などが見られた.これらにより操作する対象物の粘弾性特性によって両腕の制御戦略を調整していることがわかった.一方,ボールの捕捉・打撃のようなスキルに富んだ作業において,人間が目でボールを捉えてから腕でバットを振りまでの視覚運動処理系に数十数百ミリ秒の時間遅れがあるにもかかわらず,ボールを正確に捉えたり打ち返したりできる.そして,素振りなどを通じてボールの変化により的確に対処しよりパワフルな打ち方を習得していく.このような能力を有する感覚運動制御系のモデルとして,適切な評価基準に基づいた規範軌道の生成,ボール動きの予測,およびボール動きの変動に対する追従を含めたものを提案した.それを適用したバッティングロボットのシミュレーションを行い,ロボット駆動力の限界値を使いつつ最速の打撃振りを実現でき有効性を検証した. | KAKENHI-PROJECT-08750518 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08750518 |
肝におけるウイルス発癌と化学発癌の相互干渉に関する研究 | アヒルB型肝炎ウイルス(DUCK HEPATITIS B VIRUS-DHBV)の感染から肝発癌までの実験系を確立し、この系において各種発癌剤との相互関係を三年間に渡り検討し以下の結果を得た。1)DHBV感染アヒルはウイルス感染のみで肝発癌を来たす。発生年次はウイルス感染後三年と、後述する化学剤発癌例に比し、長い年月を要した。これら発癌例においては、その癌細胞に組み込まれたウイルスDNAが高頻度に見い出され、ヒト肝発癌と類似していた。なお、非癌部はアヒルにおいては硬変化を示さなかった。2)化学発癌剤群では一年目より肝癌発生を見る症例があり、二年目には高頻度となった。3)DHBV感染群に化学発癌剤を投与した群では高頻度に発癌を見た。なお、これら発癌した癌細胞中での組み込まれたウイルスDNAの検索を行ったが、ウイルスDNAの組み込みは見い出されなかった。なお、化学発癌剤単独群との間に有意な発癌率の差異は認められなかった。以上の事実より、ウイルス発癌と化学発癌の相互干渉に関しては、ウイルスのDNAの組み込まれた肝細胞に化学発癌剤が働き癌化を促進するという現象は認められなかった。むしろ異った癌化の過程を得て癌発生に至ると考えられる。アヒルB型肝炎ウイルス(DUCK HEPATITIS B VIRUS-DHBV)の感染から肝発癌までの実験系を確立し、この系において各種発癌剤との相互関係を三年間に渡り検討し以下の結果を得た。1)DHBV感染アヒルはウイルス感染のみで肝発癌を来たす。発生年次はウイルス感染後三年と、後述する化学剤発癌例に比し、長い年月を要した。これら発癌例においては、その癌細胞に組み込まれたウイルスDNAが高頻度に見い出され、ヒト肝発癌と類似していた。なお、非癌部はアヒルにおいては硬変化を示さなかった。2)化学発癌剤群では一年目より肝癌発生を見る症例があり、二年目には高頻度となった。3)DHBV感染群に化学発癌剤を投与した群では高頻度に発癌を見た。なお、これら発癌した癌細胞中での組み込まれたウイルスDNAの検索を行ったが、ウイルスDNAの組み込みは見い出されなかった。なお、化学発癌剤単独群との間に有意な発癌率の差異は認められなかった。以上の事実より、ウイルス発癌と化学発癌の相互干渉に関しては、ウイルスのDNAの組み込まれた肝細胞に化学発癌剤が働き癌化を促進するという現象は認められなかった。むしろ異った癌化の過程を得て癌発生に至ると考えられる。肝炎ウイルス(DHBV)感染群,化学発癌剤投与群プロモーター投与群及びこれらを重複投与群での発癌実験を開始し,すでに発癌剤投与群3羽に肝癌の発生を見た.これらはいづれも肝炎ウイルスに感染した群であった.スプロモータ(フェノバルビタール)投与感染アヒルにも肝発癌を観察し,現在更に長期追跡中である.本年はまた,すでにあった肝癌,及び非癌部からDNAを抽出し,クローニングの手法により,癌部から3個,非癌部から1個の組み込まれたDHBVーDNAクローンを得てその構造解析を行った.まづ癌部から得たクローンは以下の特徴を有していた.a)DHBV-DNAのDRという部分から組み込まれている頻度が高かった. b)組み込まれたDNAは欠損,再編成が著しく,特にCーgeneの欠損が著しかった. c)組み込まれた周辺の細胞DNAも再編成をきたしていた.これらの特徴はヒトHBVで見られた肝癌DNA中の組み込まれたDNAの構造と同様であり,DHBVがヒト発癌のモデルとなり得る事が分子生物学的な面からも明らかとなった.また,癌と非癌部の組み込みDNAの構造の差異を検討する目的で非癌部からのウイルスDNAの構造も解析した.癌部と異なり,得られたクローンには欠損,再編成は見られづ,極めてDHBVーDNA本来の形態をとどめていた.しかしながらその長さはウイルスDNA1個の長さよりも長く,2個のウイルスDNAが組み込まれたその面端が欠損された形態を示していた.以上より,癌部及び非癌部の間には組み込まれたDHBVーDNAの形態に大きな差がある点が明らかとなり,この差異の機能的な面を追求する事により,ウイルス発癌の機構解明にせまれるものと考える.昭和63年度は既に発生した肝癌の癌部、非癌部からDNAを抽出しクローニングの手法により癌部から3個、非癌部から1個の組みこまれたDHBV DNAクローンを得てその構造解析を行った。まず、癌部から得られたクローンは以下の特徴を有していた。a)DHBV DNAのDRという部分から組みこまれている頻度が高かった。b)組み込まれたDNAは欠損、再編成が著しく、特にc-geneの欠損が著しかった。c)組みこまれた周辺の細胞DNAも再編成をきたしていた。これらの特徴はヒトHBVで見られた肝癌DNA中の組み込まれたDNAの構造と同様でありDHBVがヒト発癌のモデルとなりうる事が更に明確となった。非癌部からのウイルスDNAの構造解析も行った。癌部と異なり、得られたクローンには欠損、再編成はなく極めてDHBV DNA本来の形態をとどめていた。癌部、非癌部の間には組み込まれたDHBV DNAの形態に差異がある事が明かとなった。。 | KAKENHI-PROJECT-62480192 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62480192 |
肝におけるウイルス発癌と化学発癌の相互干渉に関する研究 | 又本年度はRAS発癌遺伝子のPOINT MUTATION検索の為の基本的技術を確立した。すなわち、polymerase chain reaction (PCR)を用いて、RAS発癌遺伝のコドン、12、13、61のすべてを直接塩基配列を決定しうる方法を確立した。現在この方法を用いて化学発癌剤、ウイルス発癌による肝癌中のpoint mutationを検索中である。平成元年度は化学発癌、ウイルス発癌及び両者によって発生した肝癌につき以下の結論を得た。1)ウイルス(DUCK.HEPATITIS B VIRUS,以下DHBV)のみの発癌では癌発生の時期は遅く数年を要した。発生した癌にはDHBV DNAが高頻度に組み込まれていた。その組み込まれたDHBV DNAの構造は両編成、欠損などの変化を示していた。しかしながらDHBV DNAのDRと云われる部分から宿主のDNA中に入り込んでいる形態が多く見られた。2)ウイルスと化学発癌剤の両者を受けた群では早期より肝発癌が見られた。しかしながら癌細胞中にはDHBVDNAの組み込みは認められない。このことは、DNAの組み込まれた肝細胞の発癌を化学発癌剤が促進するというよりは、化学発癌とウイルス発癌は異った癌化への道をたどるのではという点が明らかになった。3)化学発癌剤のみの群でRas発癌遺伝子のPoint mutationをPCR法により模索したがRas遺伝子の点突然変異は認められなかった。平成元年度の研究成果は以上であります。 | KAKENHI-PROJECT-62480192 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62480192 |
抗うつ薬による遺伝子発現制御機構の解明と抗うつ関連蛋白質のクローニング | 抗うつ薬は、治療効果を現わすまで数週間に渡る連続投与を必要としていることから、その作用機序に比較的長時間を要する遺伝子発現制御を介した機構が関与することが想像される。そこで、その点に着目した研究を行ない、imipramineが連投により脳内のセロトニン2Cサブタイプ受容体(5-HT2C)mRNA量を増大させることをin situ hybridization法を用いて見い出した。その作用様式について検討したところ、imipramineはヒト常用量にほぼ相当する5mg/kg、4日間経口投与においても5-HT2CmRNA増大作用を示し、20mg/kgまで濃度に依存して発現量が増大した。また20mg/kgを用いて投与日数による変化を検討したところ、投与4日目に発現量がピークに達し、その後少なくとも14日間はそのレベルを維持していた。Imipramine以外の抗うつ薬についても検討したところ、desipramine、mianserinが5-HT2CmRNA増大作用を示したが、nomifensineは無効であった。この結果は、抗うつ薬による5-HT2C遮断作用とよく一致した。5HT2CmRNA以外の遺伝子発現変化について、differential display法を用いて検討したところ、160bpの遺伝子がimipramine20mg/kg14日間投与により顕著に増大した。この遺伝子をDRF24と名付けたが、その分布をin situ hybridization法により検討したところ、vasolateral amygdaloid nucleusにおいてimipramine連投により発現が増大する可能性が示された。現在この遺伝子の全長のクローニングと生理機能の解明を行なっている。また、DRF24以外の同様の因子の検索も行ない、相互の関連性についても検討を行なう予定である。抗うつ薬は、治療効果を現わすまで数週間に渡る連続投与を必要としていることから、その作用機序に比較的長時間を要する遺伝子発現制御を介した機構が関与することが想像される。そこで、その点に着目した研究を行ない、imipramineが連投により脳内のセロトニン2Cサブタイプ受容体(5-HT2C)mRNA量を増大させることをin situ hybridization法を用いて見い出した。その作用様式について検討したところ、imipramineはヒト常用量にほぼ相当する5mg/kg、4日間経口投与においても5-HT2CmRNA増大作用を示し、20mg/kgまで濃度に依存して発現量が増大した。また20mg/kgを用いて投与日数による変化を検討したところ、投与4日目に発現量がピークに達し、その後少なくとも14日間はそのレベルを維持していた。Imipramine以外の抗うつ薬についても検討したところ、desipramine、mianserinが5-HT2CmRNA増大作用を示したが、nomifensineは無効であった。この結果は、抗うつ薬による5-HT2C遮断作用とよく一致した。5HT2CmRNA以外の遺伝子発現変化について、differential display法を用いて検討したところ、160bpの遺伝子がimipramine20mg/kg14日間投与により顕著に増大した。この遺伝子をDRF24と名付けたが、その分布をin situ hybridization法により検討したところ、vasolateral amygdaloid nucleusにおいてimipramine連投により発現が増大する可能性が示された。現在この遺伝子の全長のクローニングと生理機能の解明を行なっている。また、DRF24以外の同様の因子の検索も行ない、相互の関連性についても検討を行なう予定である。 | KAKENHI-PROJECT-08772085 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08772085 |
経頭蓄的運動野刺激による下行性脊髄, 電位および頚神経根電位に関する実験的および臨床的研究 | 1.Digitimer180とDISA1500による経頭蓄的大脳皮質刺激(TCS)による運動電位(MEP)の比較:前者による頚髄部からの脊髄電位の導出はアーチファクトが大きく,後者を改良することによって安定した電位を得ることができた.2.術中,導出電極固定装置の試作:ステンレス棒で枠を組み,ボールジョイントクランプを固定する装置を作った.これは脊髄・末梢神経神経束・神経根からの電位の導出に非常に役立った.3.TCSによる脊髄・神経根・末梢神経MEPの関係:臨床的な検討の結果,脊髄MEPの波形は末梢神経MEPの出現の有無では変化しない.大きく影響するのは麻酔深度で,深いと末梢神経MEPは出現しない.神経根MEPは不安定であり,引きぬき損傷の診断には,神経根刺激による脊髄SEP, SC_2-SEP_2C_<1/2>刺激の神経根電位が役立つ.4.脊髄横断面上硬膜周囲における8チャンネル同時導出脊髄誘発電位:本電位を脊髄腫瘍5例で導出し, TCSの刺激様式で左右の電位の出現,振幅が異なることが判明し,双極刺激では脊髄の前方,側方で最も振幅が高いことが判明した.さらにこの方式を髄内腫瘍の摘出時,モニタリングに応用し有用であったことから,脊髄下行路の客観的評価に役立つと判断された.5.TCSの安全性の問題:ネコのTCSにおいて(経内板的),内板の厚さ(0.4mm), 90μc/phでは脳血液開門(BBB)の破綻を生じるが, SEPに変化はみられない. 180μc/phとなれば, SEPの陰性成分の消失を生じるが,なお可逆性であった.しかし, 450μc/phになると,血管内凝固・出血を生じ, BBBは不可逆性となったが,一旦,平坦化したSEPはまた元に復した.しかし,この刺激量で内板の厚さを2mm(ヒトの内板の厚さ)にすれば, BBBの破綻はみられなかった.ヒトにおいては,最大98mc/phであるため,安全であると結論された.これまで136例のTCSで合併症はない.1.Digitimer180とDISA1500による経頭蓄的大脳皮質刺激(TCS)による運動電位(MEP)の比較:前者による頚髄部からの脊髄電位の導出はアーチファクトが大きく,後者を改良することによって安定した電位を得ることができた.2.術中,導出電極固定装置の試作:ステンレス棒で枠を組み,ボールジョイントクランプを固定する装置を作った.これは脊髄・末梢神経神経束・神経根からの電位の導出に非常に役立った.3.TCSによる脊髄・神経根・末梢神経MEPの関係:臨床的な検討の結果,脊髄MEPの波形は末梢神経MEPの出現の有無では変化しない.大きく影響するのは麻酔深度で,深いと末梢神経MEPは出現しない.神経根MEPは不安定であり,引きぬき損傷の診断には,神経根刺激による脊髄SEP, SC_2-SEP_2C_<1/2>刺激の神経根電位が役立つ.4.脊髄横断面上硬膜周囲における8チャンネル同時導出脊髄誘発電位:本電位を脊髄腫瘍5例で導出し, TCSの刺激様式で左右の電位の出現,振幅が異なることが判明し,双極刺激では脊髄の前方,側方で最も振幅が高いことが判明した.さらにこの方式を髄内腫瘍の摘出時,モニタリングに応用し有用であったことから,脊髄下行路の客観的評価に役立つと判断された.5.TCSの安全性の問題:ネコのTCSにおいて(経内板的),内板の厚さ(0.4mm), 90μc/phでは脳血液開門(BBB)の破綻を生じるが, SEPに変化はみられない. 180μc/phとなれば, SEPの陰性成分の消失を生じるが,なお可逆性であった.しかし, 450μc/phになると,血管内凝固・出血を生じ, BBBは不可逆性となったが,一旦,平坦化したSEPはまた元に復した.しかし,この刺激量で内板の厚さを2mm(ヒトの内板の厚さ)にすれば, BBBの破綻はみられなかった.ヒトにおいては,最大98mc/phであるため,安全であると結論された.これまで136例のTCSで合併症はない.1.電極固定装置の試作:(1)脊椎・腕神経叢の手術時、ステンレス棒を手術台の両側に立て、両者をステンレス棒で連結させて枠を組み、これにXブロックを取り付け、ボールジョイントクランプを固定する。これで電極を挾み固定する。(2)四肢の神経の手術に際しては、多刺激電極固定装置を購入し、これを板に取り付け、術野に置くことにした。(3)研究計画62年度1)2)3)の実験的研究は63年度に行う。2.脊髄横断面上における8チャンネル同時導出脊髄誘発電位(63年度に予定していた計画をEvomatic8000が入手できたため繰り上げる):経頭蓋内板的大脳皮質の電気刺激(TS)による脊髄電位を脊髄横断面上における硬膜の外側から8チャンネル同時記録可能な表面電極によって導出した。対象は脊髄腫瘍5例である。(1)片側双極電極を用いた弱いTSでは対側脊髄表面における電極から下行性電位が記録されるが、刺激を漸次増してゆくと、電位は両側性に出現するようになる。 | KAKENHI-PROJECT-61570724 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61570724 |
経頭蓄的運動野刺激による下行性脊髄, 電位および頚神経根電位に関する実験的および臨床的研究 | その際、対側脊髄における電位の振幅の増大が停止した後も、同側脊髄における電位の振幅は増大してゆく。このことから弱刺激では片側性の刺激となるが、強刺激では両側の脊髄下行路が刺激されると判断された。さらに、下行性電位の振幅は脊髄の前・側方で最も大きく記録されることから、この電位の起源は脊髄下行路に由来すると考えられた。(2)TSによる電位は脊髄病巣部では上行性電位ととも陽体化するが、その左右差とみると、臨床上における運動麻痺の強い方の陽性化が強く、臨床症状と合致する。したがって本電位によって、脊髄下行路の状態を客観的に評価可能であるとみなされた。。(3)TSによる電位を胸髄髄内腫瘍摘出時のモニターとして使用し、下肢における運動麻痺の発現の予防には役立った。今後、広く普及させてゆく必要性を痛感している。 | KAKENHI-PROJECT-61570724 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61570724 |
RNAiを用いた血管新生因子の制御による尋常性乾癬の治療法の開発 | RNAiとは、標的である内在性のmRNAに相同な二本鎖RNAを細胞内に導入して、標的遺伝子の発現抑制を起こす現象として知られている。この現象は多細胞生物にはきわめて普遍的な生命現象であり、ほ乳類でも保存されている。特異的遺伝子発現抑制のためRNAiの応用技術が急速に開発されており創薬研究に盛んに用いられている。我々は、尋常性乾癬の皮疹部にみられる毛細血管の拡張や伸長、増殖サイクルに入った血管内皮細胞の存在より、血管異常に血管新生因子が関与していると考え、本疾患を血管新生病と位置付け血管新生因子をRNAi技術の応用により発現抑制する新しい治療法の確立を目指した。注目した血管新生因子は、vascular endothelial growthfactor(VEGF)とplacental growthfactor(PIGF)で、これらの蛋白発現を検討した。乾癬病変部、無疹部、正常人の皮膚組織から可溶性蛋白を抽出し、ELISA法でVEGF, PIGFの蛋白濃度を測定したところ乾癬病変部では、無疹部、正常皮膚に比較して有意に高かった。さらに血清中のVEGF濃度も乾癬患者群で有為に上昇していた。そこでこれらの病変部で高発現し、かつ正常皮膚では検出されない血管新生因子を標的にsiRNAを設計した。これと同時にsiRNAを局所に安定かつ効率的に運搬するための新しい基剤(ドラッグデリバリーシステム)を作製、検討中である。RNAiとは、標的である内在性のmRNAに相同な二本鎖RNAを細胞内に導入して、標的遺伝子の発現抑制を起こす現象として知られている。この現象は多細胞生物にはきわめて普遍的な生命現象であり、ほ乳類でも保存されている。特異的遺伝子発現抑制のためRNAiの応用技術が急速に開発されており創薬研究に盛んに用いられている。我々は、尋常性乾癬の皮疹部にみられる毛細血管の拡張や伸長、増殖サイクルに入った血管内皮細胞の存在より、血管異常に血管新生因子が関与していると考え、本疾患を血管新生病と位置付け血管新生因子をRNAi技術の応用により発現抑制する新しい治療法の確立を目指した。注目した血管新生因子は、vascular endothelial growthfactor(VEGF)とplacental growthfactor(PIGF)で、これらの蛋白発現を検討した。乾癬病変部、無疹部、正常人の皮膚組織から可溶性蛋白を抽出し、ELISA法でVEGF, PIGFの蛋白濃度を測定したところ乾癬病変部では、無疹部、正常皮膚に比較して有意に高かった。さらに血清中のVEGF濃度も乾癬患者群で有為に上昇していた。そこでこれらの病変部で高発現し、かつ正常皮膚では検出されない血管新生因子を標的にsiRNAを設計した。これと同時にsiRNAを局所に安定かつ効率的に運搬するための新しい基剤(ドラッグデリバリーシステム)を作製、検討中である。RNAiとは、標的である内在性のmRNAに相同な二本鎖RNAを細胞内に導入して、標的遺伝子の発現抑制を起こす現象として知られている。この現象は多細胞生物にはきわめて普遍的な生命現象であり、ほ乳類でも保存されている。特異的遺伝子発現抑制のためRNAiの応用技術が急速に開発されており創薬研究に盛んに用いられている。我々は、尋常性乾癬の皮疹部にみられる毛細血管の拡張や伸長、増殖サイクルに入った血管内皮細胞の存在より、血管異常に血管新生因子が関与していると考え、本疾患を血管新生病と位置付け血管新生因子をRNAi技術の応用により発現抑制する新しい治療法の確立を目指した。注目した血管新生因子は、vascular endothelial growthfactor(VEGF)とplacental growthfactor(PlGF)で、これらの蛋白発現を検討した。乾癬病変部、無疹部、正常人の皮膚組織から可溶性蛋白を抽出し、ELISA法でVEGF, PlGFの蛋白濃度を測定したところ乾癬病変部では、無疹部、正常皮膚に比較して有意に高かった。さらに血清中のVEGF濃度も乾癬患者群で有意に上昇していた。現在、マウスの皮膚炎症モデルを使用し、これらの血管新生因子のsiRNAを用い、蛋白発現が抑制され炎症反応が軽減するかを確認している。RNAiとは、標的である内在性のmRNAに相同な二本鎖RNAを細胞内に導入して、標的遺伝子の発現抑制を起こす現象として知られている。この現象は多細胞生物にはきわめて普遍的な生命現象であり、ほ乳類でも保存されている。特異的遺伝子発現抑制のためRNAiの応用技術が急速に開発されており創薬研究に盛んに用いられている。我々は、尋常性乾癬の皮疹部にみられる毛細血管の拡張や伸長、増殖サイクルに入った血管内皮細胞の存在より、血管異常に血管新生因子が関与していると考え、本疾患を血管新生病と位置付け血管新生因子をRNAi技術の応用により発現抑制する新しい治療法の確立を目指した。病変部で高発現している血管新生因子を標的にsiRNAを設計した。これと同時にsiRNAを局所に安定かつ効率良く皮膚に運搬するための新しい基剤(ドラッグデリバリーシステム)を検討した。 | KAKENHI-PROJECT-16591100 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16591100 |
大航海時代後の美術における他者像の類型・系譜とその象徴的機能 | 本研究は、スペインの植民地を中心とする新大陸の先住民像に焦点を当て、その類型と系譜、社会的機能を明らかにしようとするものである。ペルー、メキシコ、およびヨーロッパ各地で調査をおこない、そこで得られた作品および一次資料の分析に基づき、その表象が、自然科学的探査の成果と、古代のテクストなどの典拠に由来する人文主義的関心の双方に依拠して構築されたことを明らかにした。またその人工的なイメージは、植民地の先住民の自己表象の形成に重大な影響を与えたこと、先住民エリートの植民地社会への適応を演出する図像的な装置の役割を、祝祭などの場において果たしたことを明らかにした。本研究は、スぺイン植民地を中心とする新大陸の先住民像に焦点を当て、その類型と系譜を明らかにしようとするものである。この目的に基づき、本年度は8月13日から9月16日にかけて、ペルーおよびスペインに出張した。ペルーでは、クスコ文書館において、植民地時代インカ貴族の美術品収集について、リマ国立文書館において、植民地時代リマの特権層の財産目録における美術品収集に関する記録文書を収集した。スペインでは、インディアス総合文書館(セビーリャ)、マドリードのアルバ公爵家文書館、ラサロ・ガルディアーノ美術館図書館、国立図書館、アメリカ博物館において、植民地時代先住民首長およびスペイン人征服者の紋章図像に関する史料調査と、関連作品の調査を行った。その結果、植民地時代初期の先住民首長・征服者の紋章図像およそ300点を確認することが出来た。また、それらの紋章授与をめぐって、先住民首長らが本国スペインの王権に対し、どのような交渉を展開したのかについても具体的な事実関係を知る史料を発見した。さらに、そうした先住民首長の行動が、中世以来のレコンキスタ時代を通して、スペインに確立した貴族認証の制度をなぞるものであることも検証した。これらの事実を中心に、本年は収集を重ねた文献資料も踏まえつつ、植民地先住民エリートの、紋章図像を中心とする自己表象の系統的分析を重ねた。本研究は、スペイン植民地を中心とする新大陸の先住民像に焦点を当て、その類型と系譜、社会的機能を明らかにしようとするものである。この目的にもとづき、本年度は、クラクフ(ポーランド)およびマドリード(スペイン)に出張し、史資料調査をおこなった。クラクフでは、ヤギロン大学図書館において、アルベルト・エクハウトの手になるブラジル先住民に関する未公刊素描の調査をおこなった。その詳細な分析を通し、「民族誌的素描」ともよばれるこのイメージ群が、対象の精密な観察に基づく写実的描写に基づく一方、類型的な他者像の図像要素を織り込んでいる点を明らかにした。またマドリードでは、前年度に引き続き、新大陸の先住民首長の紋章についての調査をおこない、その図像に、スペイン本国において類型化された新大陸と先住民のイメージが取り入れられていくプロセスをつぶさに検証した。以上の最終年度の調査結果も含め、本研究は、当初の計画の通り、ヨーロッパおよび新大陸において征服以降形成された先住民像について、アステカ、インカの君主像、首長像、戦士像を中心として、画像資料の包括的な収集整理を完了した。また、その図像群の制作と受容に関する情報の収集を通して、それらが、ヨーロッパ側・先住民側双方の相互作用のもとで形成されたことを解明した。先住民首長の紋章図像が示すのは、彼ら被征服者エリートが、征服者の側によって「他者像」としてつくり出された先住民イメージを積極的に受け入れ、みずからの社会的生存を図ったことである。たほう、征服者の側は、先住民君主の像を操作することで、征服以前の歴史を征服後の統治と接続しようとした。これらの研究成果は、大航海時代後の「越境する美術」の重要な社会的機能を明らかにする点で大きな意義があると考える。本研究は、スペインの植民地を中心とする新大陸の先住民像に焦点を当て、その類型と系譜、社会的機能を明らかにしようとするものである。ペルー、メキシコ、およびヨーロッパ各地で調査をおこない、そこで得られた作品および一次資料の分析に基づき、その表象が、自然科学的探査の成果と、古代のテクストなどの典拠に由来する人文主義的関心の双方に依拠して構築されたことを明らかにした。またその人工的なイメージは、植民地の先住民の自己表象の形成に重大な影響を与えたこと、先住民エリートの植民地社会への適応を演出する図像的な装置の役割を、祝祭などの場において果たしたことを明らかにした。本研究は、スペイン植民地を中心とする新大陸の先住民像に焦点を当て、その類型と系譜を明らかにしようとするものである。この目的に基づき、本年度は10月にメキシコに出張し、1)国立文書館、国立人類学博物館文書館において、植民地先住民の紋章図像に関する史料調査、2)国立図書館、メキシコ国立自治大学美術研究所図書館などにおいて植民地美術に関する資料調査、3)イスミキルパン、アクトパン、クアウティンチャン、テカマチャルコなどにおいて宣教修道院の美術装飾に関する実地調査をおこなった。また、12月にロサンゼルスに出張し、ロサンゼルス郡立美術館において開催されたラテンアメリカ植民地美術に関する展覧会および国際シンポジウムにおいて、情報収集と研究打合せをおこなった。さらに、これらの調査成果に加え、継続的に関連資料の入手にも務め、新大陸植民地に関わる図像文化における他者像の類型・系譜とその社会的機能の系統的分析を進めた。 | KAKENHI-PROJECT-23520120 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23520120 |
大航海時代後の美術における他者像の類型・系譜とその象徴的機能 | その結果、1)1538年にメキシコ市において、宣教師と先住民首長の協力関係に基づいて制作された《聖グレゴリウスのミサ》の羽根モザイク聖画が、当時ヨーロッパで論争となっていた「先住民の理性」に関する解釈において、先住民の立場を擁護するイメージ操作の一環をなしていたこと、2)そのイメージ操作が、征服後の先住民が積極的に乗り出した紋章の獲得と、その図像による自己像の構築と軌を一にすること、さらに、3)こうした先住民の関与する美術の中核に、イスミキルパンなどの宣教修道院の壁画装飾図像が位置することを明らかにした。これらは近年の植民地美術研究における、先住民の関与についての認識の深まりを踏まえるとともに、そこに新たな事例を通しての論証を加えるものである。この点において大きな意義があると考えている。美術史本研究の目的は、スぺイン植民地を中心とする新大陸の先住民像に焦点を当て、その類型と系譜を明らかにすると同時に、「発見」された他者の像として、あるいは、征服者側から他者の役割を与えられた自己の像として、それら先住民像がヨーロッパ、植民地双方の受容空間において、どのような象徴的機能や意味を担ったのかを解明しようとするものである。本年はこのうち特に、植民地先住民の紋章/自己表象図像について、ペルーおよびスペインにおいて計画した実地・史料調査を進め、当初想定した程度の成果を挙げることが出来た。その成果を含めた著作は、現在すでに脱稿し、出版の準備を進めている。本研究の目的は、スペイン植民地を中心とする新大陸の先住民像に焦点を当て、その類型と系譜を明らかにすると同時に、「発見」された他者の像として、あるいは、征服者側から他者の役割を与えられた自己の像として、それら先住民像がヨーロッパ、植民地双方の受容空間において、どのような象徴的機能や意味を担ったのかを解明しようとするものである。本年はこのうち特に、16世紀メキシコ(ヌエバ・エスパーニャ副王領)の事例について、計画した実地調査に基づいて研究を進め、当初想定した程度の成果を挙げることが出来た。また、その成果を1編の比較的分量のある論文(24000字程度)にまとめ、公刊することが出来た。昨年度に続き、関連する史資料を蔵する文書館、図書館の調査を進める。本年度は、ヤギロン図書館(クラコフ)などでの史料調査を軸に、おもにヨーロッパにおいて生成された他者表象としての新大陸先住民像についての研究をおこなう。また、これまでに収集した史資料の分析もいっそう精密におこなう。1)新大陸の先住民像の類型と系譜を系統的に明らかにするとともに、2)「発見」された他者の像として、あるいは、征服者側から他者の役割を与えられた自己の像として、それら先住民像がヨーロッパ、植民地双方の受容空間において、どのような象徴的機能や意味を担ったのかを解明する。本年度に継続して、ヨーロッパおよびラテンアメリカ各地の文書館、図書館、および作品所在地における実地調査を中心に、関連する文献資料などの継続的な入手もおこないながら、研究を進める。1)新大陸の先住民像の類型と系譜を系統的に明らかにsするとともに、2)「発見」された他者の像として、あるいは、征服者側から他者の役割を与えられた自己の像として、それら先住民像がヨーロッパ、植民地双方の受容空間において、どのような象徴的機能や意味を担ったのかを解明する。本年度は、本研究の重要な課題のひとつである、ヤギロン図書館(クラコフ)蔵のアルベルト・エックハウトのブラジル先住民素描集(未公刊)の調査をおこなう。 | KAKENHI-PROJECT-23520120 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23520120 |
多様体のホモトピー論的研究 | (1)石本は、m次元球面に何個かのq-ハンドルを付けて得られる初等多様体に対して、ポアンカレ予想に相当するものが安定域において成立するかどうかを研究した。その為にJames-Whiteheadの定理を初等多様体へ拡張することを考え、初等多様体のホモトピー型を特徴づける双一次形式が巡回群に値をとる場合について、James-Whiteheadの定理の拡張に成功した。そして、既に得ていた結果に加え、最初の難関である巡回群がZ^<24>の場合について、ポアンカレ予想に相当するものが、やはり成立することを、ほぼ証明することができた。(2)藤岡は、平均曲率一定曲面の自然な一般化である調和逆平均曲率曲面と呼ばれるものの基本的性質について調べた。特に、曲率を用いて表されるある量を保つ変換を許容するものとして、そのような曲面を特徴づけた。また、それらと深い関係にある定曲率ボンネ曲面などについて調べた。(3)泊は、filtered ringの重複度理論を研究し、応用として、超曲面孤立特異点を定義するfのミルナー数に関して、座標に与えられた重みと、それによるテイラー展開の言葉による評価式を与えた。そして、等号成立によって、fがsemi-quasihomogeneous関数になるという判定基準を与えた。(4)森下は、絡み目群とガロア群の類似に基づき、素数と結び目、代数体と3次元多様体の間の類似について研究を進め、代数的整数論と3次元トポロジーの間の類似を研究した。また、村杉邦男氏(カナダ、トロント大)と共同研究を行い、いくつかの結果を得た。(5)菅野は、3次ユニタリー群上の正則保型形式の数論的研究において、Eisenstein級数及び:Kudla lift imageに対し、primitive theta関数による展開を明示的に求め、Kudla liftが消えないための条件を周期等の言葉で記述した。(1)石本は,m次元球面に何個かのq-ハンドルを付けて得られる初等多様体に対しても,ポアンカレ予想に相当するものが安定域(2p>q>1,p=m-q)では成立するかどうかを研究した.本年度においては,最も重要な,しかし困難が予想される(p,q)=(n-3,n+1)の場合について,Z/24に値をとる双一次写像の標準形を定めると共に,James-Whiteheadの定理に関して,この場合に適用できるように,その一般化の目処をつけた.(2)藤岡は,平均曲率一定の曲面の自然な一般化に相当するものを定義し,基本的性質を調べると共に,変分法的に解釈されるある方程式からも自然に定義されることを示した。また,対応するボンネ曲面との関連について調べた.(3)泊は,特異点のセグレ積の有理特異性の判定および多重種数についての加法公式を証明した.また,特異点の多重種数に関する上下からの評価を行い,filteredbrowing-upによる標準モデルや正規孤立特異点について結果を得た.(4)森下は,古典的な数の幾何を等質空間上のアデール幾何,積分幾何の観点からの一般化を行った.また,素数と絡み目の類似について,ガロア群と絡み目群の類似の観点から,ミルナー不変量の類似をガロア群に導入した.(5)菅野は,3次ユニタリー群上の正則保型形式の数論的研究において,Eisenstein級数の原始的データによる分解を与えた.尖点形式に対してもこのような展開を求めるために,kudla liftについて考察を進めた.(1)石本は、m次元球面に何個かのq-ハンドルを付けて得られる初等多様体に対して、ポアンカレ予想に相当するものが安定域において成立するかどうかを研究した。その為にJames-Whiteheadの定理を初等多様体へ拡張することを考え、初等多様体のホモトピー型を特徴づける双一次形式が巡回群に値をとる場合について、James-Whiteheadの定理の拡張に成功した。そして、既に得ていた結果に加え、最初の難関である巡回群がZ^<24>の場合について、ポアンカレ予想に相当するものが、やはり成立することを、ほぼ証明することができた。(2)藤岡は、平均曲率一定曲面の自然な一般化である調和逆平均曲率曲面と呼ばれるものの基本的性質について調べた。特に、曲率を用いて表されるある量を保つ変換を許容するものとして、そのような曲面を特徴づけた。また、それらと深い関係にある定曲率ボンネ曲面などについて調べた。(3)泊は、filtered ringの重複度理論を研究し、応用として、超曲面孤立特異点を定義するfのミルナー数に関して、座標に与えられた重みと、それによるテイラー展開の言葉による評価式を与えた。そして、等号成立によって、fがsemi-quasihomogeneous関数になるという判定基準を与えた。(4)森下は、絡み目群とガロア群の類似に基づき、素数と結び目、代数体と3次元多様体の間の類似について研究を進め、代数的整数論と3次元トポロジーの間の類似を研究した。また、村杉邦男氏(カナダ、トロント大)と共同研究を行い、いくつかの結果を得た。(5)菅野は、3次ユニタリー群上の正則保型形式の数論的研究において、Eisenstein級数及び:Kudla lift imageに対し、primitive theta関数による展開を明示的に求め、Kudla liftが消えないための条件を周期等の言葉で記述した。(1)石本は、m次元球面に何個かのq-ハンドルを付けて得られる初等多様体に対して、James-Whiteheadの定理の拡張を研究した。 | KAKENHI-PROJECT-11640069 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11640069 |
多様体のホモトピー論的研究 | 本年度においては、初等多様体のホモトピー型を特徴づける双一次形式が巡回群に値をとる場合について、James-Whiteheadの定理の拡張を得ることができた。また、その結果を用いて、初等多様体に対するポアンカレ予想を研究し、最も重要な(p,q)=(n-3,n+1)の場合について、ほぼ、成立の見込みをつけた。(2)藤岡は、平均曲率一定曲面の自然な一般化に相当するものを定義し、その基本的性質について調べると共に、それらと深い関連のある定曲率ボンネ曲面、及び時間的ボンネ曲面について調べた。(4)森下は、結び目群とガロア群の類似に基づき、結び目と素数、3次元多様体と代数体の間の類似について研究を進め、また、村杉邦男氏(カナダ、トロント大)と共同研究を行い、いくつかの結果を得た。(5)菅野は、3次ユニタリー群上の正則保型形式の数論的研究において、primitive theta関数による展開に関して、Weil表現のlattice modelによる実現を用いて、local primitive thetaの詳細な研究を行った。(1)石本は、m次元球面に何個かのq-ハンドルを付けて得られる初等多様体に対して、ポアンカレ予想に相当するものが安定域において成立するかどうかを研究した。初等多様体のホモトピー型を特徴づける双一次形式が巡回群に値をとる場合について、James-Whiteheadの定理を拡張し、その精密な証明を行った。そして、巡回群がZ_<24>である場合について、ポアンカレ予想に相当するものが成立することを、ほぼ証明することができた。(2)藤岡は、平均曲率一定曲面の自然な一般化である調和逆平均曲率曲面と呼ばれるものの基本的性質について調べた。特に、曲率を用いて表されるある量を保つ変換を許容するものとして、そのような曲面を特徴づけた。(3)泊は、超曲面孤立特異点を定義するfのミルナー数に関して、座標に与えられた重みと、それによるテイラー展開の言葉による評価式を与えた。そして、等号成立によって、fがsemi-quasihomogeneous関数になるという判定基準を与えた。(4)森下は、結び目群とガロア群の類似に基づき、素数と結び目、代数体と3次元多様体の間の類似について研究を進め、代数的整数論と3次元トポロジーの間の類似を研究した。(5)菅野は、3次ユニタリー群上の正則保型形式の数論的研究において、Eisenstein級数及びKudla lift imageに対し、primitive theta関数による展開を明示的に求め、Kudla liftが消えないための条件を周期等の言葉で記述した。 | KAKENHI-PROJECT-11640069 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11640069 |
小中学校のための地図教材システムの開発とそれを用いた学習の指導法に関する研究 | 我々は,この研究で開発した地図教材システムが学習指導に有効であることを吟味した.我々は,小中学校の児童・生徒および教師を利用者と想定した,地図教材システムを開発した.本システムは,基盤となる地図情報として国土地理院の電子国土システムのサーバから提供される地図を利用している.その地図に本システムが設定するメッシュ図をオーバーレイする.協調学習の課題は,地図の利用として典型的な土地利用図を1クラスの児童が協同してメッシュの色塗り作業で作成することとし,そのための操作が簡単な編集機能をシステムに用意した.作成したメッシュ図は協調学習の成果(ポートフォリオ)として,システムに蓄積する.また,このポートフォリオを基に別のポートフォリオを制作できるように,本システムでは,ポートフォリオをクラス外に公開し,他のクラスまたは他校が制作したメッシュ図と情報統合し,別のポートフォリオを派生して制作できる持続的生産過程のための機能を持たせた.これらの学習用の知識表現にはRDF(Resource Description Framework)やRDF schemaを用いている.指導案を作成し,システムをインターネットで公開した.本システムは2004年1月の公開以来現在までに210のメッシュ図が登録され,その中には土地利用図の他に,蛍の分布図や危険箇所図も作成された.これは本システムの有効性と他教科教材としても利用できる汎用性を示していると考える.また,システムには,開発した土地利用図などの主題図を用いた学習の支援システムによる知識の形成・結合・共有の機能を持たせ,学習者の協働の知識形成を支援する.一人の学習者が地図を読図して獲得した地理的な知識を,Web上で凡例付きのメッシュ地図として表現し,さらにその凡例をもとに作成されるメッシュ地図を共有しながら,協働の知識として個人レベルからクラス単位,学校間へと結合して拡張することを可能にする.我々は,この研究で開発した地図教材システムが学習指導に有効であることを吟味した.我々は,小中学校の児童・生徒および教師を利用者と想定した,地図教材システムを開発した.本システムは,基盤となる地図情報として国土地理院の電子国土システムのサーバから提供される地図を利用している.その地図に本システムが設定するメッシュ図をオーバーレイする.協調学習の課題は,地図の利用として典型的な土地利用図を1クラスの児童が協同してメッシュの色塗り作業で作成することとし,そのための操作が簡単な編集機能をシステムに用意した.作成したメッシュ図は協調学習の成果(ポートフォリオ)として,システムに蓄積する.また,このポートフォリオを基に別のポートフォリオを制作できるように,本システムでは,ポートフォリオをクラス外に公開し,他のクラスまたは他校が制作したメッシュ図と情報統合し,別のポートフォリオを派生して制作できる持続的生産過程のための機能を持たせた.これらの学習用の知識表現にはRDF(Resource Description Framework)やRDF schemaを用いている.指導案を作成し,システムをインターネットで公開した.本システムは2004年1月の公開以来現在までに210のメッシュ図が登録され,その中には土地利用図の他に,蛍の分布図や危険箇所図も作成された.これは本システムの有効性と他教科教材としても利用できる汎用性を示していると考える.また,システムには,開発した土地利用図などの主題図を用いた学習の支援システムによる知識の形成・結合・共有の機能を持たせ,学習者の協働の知識形成を支援する.一人の学習者が地図を読図して獲得した地理的な知識を,Web上で凡例付きのメッシュ地図として表現し,さらにその凡例をもとに作成されるメッシュ地図を共有しながら,協働の知識として個人レベルからクラス単位,学校間へと結合して拡張することを可能にする.本研究は、地図を教材とした学習について、地理学的アプローチから関連する教科との学習の連携を図る地図教材システムを開発し、その効果的な指導法について検討するものである。初年度(平成14年度)においては、小中学校向けの地図教材を教師の教授戦略や生徒の学習環境に合わせて再構築して提供する配信システムを開発した。これは、教師の教授戦略に基づく地図教材コンテンツの作成支援と、利用目的にあわせて再構成される地図教材コンテンツを配信するシステムとの位置づけた本研究の基盤となるシステムである。配信するコンテンツは、XML技術を活用した様々な地図の可視化を行える地図コンテンツとそれらを提示する教材コンテンツからなる。システムは、これらの検索手段に利用するメタデータを管理する機構を有する。これにより、利用目的別に地図利用、教材利用のための検索や、生徒の教材利用、教師の教材開発のための検索など、複合的な検索を可能にする。また、有効な教材の再利用という観点から、地図教材を構成する機能を分割して管理し、必要に応じて再構築して利用できるような仕組みについての検討も行った。この機能は、教材を利用目的別に分類し、部品化して管理することで実現する。そして部品化したものを教師の教授戦略や生徒の理解度、そして授業内容に合わせて再構築し、新たな地図教材コンテンツとして配信できるようにした。小学校4年の社会科の授業を計画し実施した。計画は、予定通り完了しシステムも正常に動作した。授業後にアンケート調査を行い、児童の関心度について調査した結果、興味と関心の高さが確認でき、本システムの利用の可能性を確認できた。本研究は、小中学校のためのイシターネット地図教材ツールについて、複数の科目間での利用を目論んだ教材システムの開発し、それを授業でどのように使い指導していくかについて研究を行っている。本年度(2年目)は、地図表現の意味的データ構造と小中学校で利用するための視覚伝達のための可視化データ構造を検討し、地図教材ツールの開発を行った。設計した教材を小学校の授業で試行しながら、適宜フードバックさせて教材ツールとしての完成度を高めた。 | KAKENHI-PROJECT-14580317 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14580317 |
小中学校のための地図教材システムの開発とそれを用いた学習の指導法に関する研究 | 本ツールは、インターネット技術でデータ交換を行うためのXML言語を利用している。地図は、国土地理院が研究をすすめている電子国土Webの情報とも連携し、これにより詳細な情報活用ができる環境を構築した。また、次のような調べ学習をすすめるためのツールを充実させた。1)土地利用の特長についてメッシュ地図を作成できる。2)調べた箇所についてのレポートを地図上にリンク登録する。3)あるテーマ毎に、児童・生徒が調べ歩いた情報(ルート情報)を登録し、発表の場で順番に地図の場所を変化させて紹介するツール。本システムの地図に付与する情報は、画像、ベクターデータで記述している。それらを学習活動毎に構造化したデータとして蓄積していく。本教材を用いることで、調べた情報の位置関係、点・線・面の概念を扱う利用法、調べた内容について、分析や判断を行うプラットフォームとして本ツールを活用することができる。このように本教材は、他の教科との連携の図れる教材を狙い、特に総合的な学習の中で様々な教科と連携した教材開発を進めている。また、教師の授業設計を支援するための部品化したツールとそれを組み合わせて利用することを可能にした、児童・生徒-教師間で利用するシステムである。本研究は、小中学校のためのインターネット地図教材ツールについて、複数の科目間での利用を目論んだ教材システムの開発し、それを授業でどのように使い指導していくかについて研究を行っている。本ツールは、国土地理院が研究をすすめている電子国土Webの地図情報と連携している。本年度(3年目)は、本教材を利用する授業計画を設計し、教材としての有効性について検証を行った。本年度は、社会科以外の科目についてカリキュラム設計をおこなった。一つは、理科教育における授業計画とその実践である。これは野外調査において,環境に関わるデータ(測定データ)を収集しながら,子ども達自身が行った活動を振り返り,観察から得られた情報を地図上に表現し連携させることで,学びを確かな知識へと補強させていくことを狙った学習目標のもとに計画したものである。調査の際に、PDAなどIT技術を導入した支援を行い、まとめの際に、本地図教材システムを活用した。これは、小学5年生の総合的な学習の時間において実施された,「酸性雨」を計測し、環境破壊について学ぼうというものである。成果としては、これらのITツールの活用は,児童の主体的な野外調査活動に,スムーズに受け入れられた.その際、目標の発見,計画,調査項目については,児童の主体的な活動を阻害しないよう配慮した.調査結果を踏まえ,子ども達は,酸性雨への関心が高まった.もう一つは、授業設計として、図工の中での地図の活用を試みた。危険な場所や、案内図を作成する際のランドマークの選択、表現方法について、地図から情報を読み取り、独自の案内図を作成するものである。 | KAKENHI-PROJECT-14580317 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14580317 |
熱帯産花木ジャカランダの種間交雑不和合性の解明と打破に関する研究 | 青紫色花のジャカランダと赤紫色花とのオオバジャカランダの種内および種間交配を行なったところ,種内交配に比べて種間交配の着果率はきわめて低かった.これらの交配における花柱内での花粉管の行動を調査したところ,交配48時間後に胚珠まで到達した花粉管の数はジャカランダの種内交配では多かったが,種間交配では少なかった.このことから,ジャカランダの種間交配にみられる低い着果率は,胚珠まで到達する花粉管が少ないことが原因であると思われた.青紫色花のジャカランダと赤紫色花とのオオバジャカランダの種内および種間交配を行なったところ,種内交配に比べて種間交配の着果率はきわめて低かった.これらの交配における花柱内での花粉管の行動を調査したところ,交配48時間後に胚珠まで到達した花粉管の数はジャカランダの種内交配では多かったが,種間交配では少なかった.このことから,ジャカランダの種間交配にみられる低い着果率は,胚珠まで到達する花粉管が少ないことが原因であると思われた.青紫色の花を咲かせる高木生のジャカランダ(Jacaranda mimosifolia)と赤紫色の花を咲かせる低木性のオオバジャカランダ(J.cuspidifolia)を用い,2010年5月下旬から7月上旬にかけて,これらの相互交配を行ない着果率を調査した.その結果,ジャカランダの種内交配における平均着果率は22.6%だったのに対し,ジャカランダ×オオバジャカランダの交配では7.9%,オオバジャカランダ×ジャカランダの交配では1.9%であり,種内交配に比べて種間交配の着果率はきわめて低かった.交配6か月後にこれらの種子を果実から取り出して播種したところ,ジャカランダの種内交配およびジャカランダ×オオバジャカランダの交配で得られた種子の発芽率はいずれも約60%だったが,オオバジャカランダ×ジャカランダの交配で得られた種子の発芽率は2.8%と低かった.つぎに,ジャカランダの種内交配およびジャカランダとオオバジャカランダとの種間交配における花柱内での花粉管の行動を調査したところ,いずれの交配においても柱頭上での花粉の発芽不良,花粉管の伸長停止および異常な形状をした花粉管はみられなかった.すべての交配において,交配48時間後には胚珠周辺まで花粉管は到達しており,一部は胚珠内への侵入も見られた.交配48時間後に胚珠まで到達した花粉管の数はジャカランダの種内交配でもっとも多く,次いでジャカランダ×オオバジャカランダの交配であり,オオバジャカランダ×ジャカランダの交配で最も少なかった.先に示したように,オオバジャカランダ×ジャカランダの交配では,ジャカランダの種内交配やジャカランダ×オオバジャカランダの交配に比べて着果率が低かった.このことはオオバジャカランダ×ジャカランダの交配において,胚珠まで到達する花粉管が少ないことが原因であると思われた.ジャカランダ(Jacaranda mimosifolia)はアルゼンチン北部原産の高性の花木で,初夏に青紫色の花を樹冠全体に咲かせ,その美しさから世界三大花木のひとつと言われている.一方,オオバジャカランダ(J.cuspidifolia)はジャカランダよりも大型の葉や花を持ち,花色はジャカランダよりも赤みが強いのが特徴である.本課題では両種の交雑育種における種間交雑不和合性の要因解明とその打破を目的としており,本年度は研究実施計画書[課題1]:両種の花色の違いの要因を明らかにした.ジャカランダの花弁にはアントシアニンであるマルビジン配糖体とともにフラボン類および桂皮酸類が含まれているが,オオバジャカランダの花弁にはフラボン類がほとんど含まれていなかった.ジャカランダ生花弁の吸収スペクトルの極大吸収波長は539,575および625nmであった.本種の花弁から抽出したアントシアニン分画単独,またはアントシアニンと桂皮酸類分画の混合溶液は赤色を示したが,アントシアニン分画10mg/mlに対しフラボン分画3mg/ml以上の割合で混合した溶液は青紫色を呈し,スペクトル曲線は生花弁のそれと酷似していた.数種の花卉類ではアントシアニンとフラボン類,もしくはアントシアニンと桂皮酸類とが液胞内で共存し,複合体を形成することによるコピグメンテーション(補色素効果)によって花色が青色化することが報告されている.このことから,ジャカランダ花弁の青紫色はアントシアニンとフラボン類によるコピグメンテーションによって発色しているのに対し,オオバジャカランダではコピグメンテーションが起きていないために赤みの強い花色になっている可能性が示唆された.これまでの調査で,青紫色の花色をもつジャカランダ(Jacaranda mimosifolia)と赤紫色の花色をもつオオバジャカランダ(J. cuspidifolia)の主要な花弁内アントシアニンはマルビジン(malvidin)に2個のグルコース(glucose)が結合し,さらに脂肪族有機酸が結合するという複雑な構造をもつことが推定されていた. | KAKENHI-PROJECT-22580035 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22580035 |
熱帯産花木ジャカランダの種間交雑不和合性の解明と打破に関する研究 | 本年度は1H-NMR,質量分析さらにTLCおよびHPLCにより両種花弁の主要なアントシアニンを同定した.それぞれの花弁の粗抽出液をHPLC分析したところ,いずれも5種類以上のアントシアニンが検出されたが,予備的な試験の結果,これらのうち,2つのアントシアニンはジャカランダとオオバジャカランダの両種に共通であった.また,このうちのひとつのアントシアニンはそれぞれの花弁の総アントシアニンの60%以上を占める最も主要なアントシアニンであった.質量分析の結果,ジャカランダとオオバジャカランダの両種に共通で,花弁の最も主要なアントシアニンの分子量は697であることが明らかとなった.このアントシアニンを酸加水分解したところ,アントシアニジンとしてマルビジンが,また結合糖としてグルコースが検出され,これまでの結果を支持するものとなった.さらに,1H-NMR分析の結果から,2つのグルコースは発色団であるマルビジンの3位と7位に結合しており,さらに,3位に結合したグルコースの6位にアセチル基が結合していることが明らかとなった.以上のことから,ジャカランダとオオバジャカランダの花弁の最も主要なアントシアニンは,malvidin 3-O-(6-O-acetylglucoside)-7-O-glucosideと同定された.また,両種に共通である他のひとつのアントシアニンはmalvidin 3,7-diglucosideと同定した.平成22年度から開始した本研究は2年を経過し,これまでにジャカランダとオオバジャカランダとの種間交雑不和合性の原因が花粉管の侵入不良によるものであることを明らかにすることができた.この成果は本年7月にベルギーで開催される2nd International Symposium on Woody Ornamental sof the Temperate Zone」で発表の予定である.また,すでに得られている雑種個体のなかには本年度開花するものもあるものと思われ,これらの個体の形質調査や花色素分析などを行い優良な形質をもつ個体の選抜を行う予定である.このように,本研究は計画に沿った活動が行われてきており,おおむね順調に進展している.24年度が最終年度であるため、記入しない。これまでの研究で,青紫色の花をもつジャカランダと,赤紫色の花をもつオオバジャカランダとの主要なアントシアニンは同一で,基本の発色団としてマルビジンをもち,それにグルコースが2分子直鎖状に結合してさらに酢酸と思われる有機酸が結合していると推定されている.今後は,この主要なアントシアニンの構造を正確に決定する予定である.また,ジャカランダの青紫色の発現に関与しているフラボン(アピゲニン配糖体)についても定性を試みる.さらに,すでに得られているジャカランダとオオバジャカランダとの雑種個体については,本年度開花するものもあると思われるので,葉や花器の形態調査,花色素構成の調査を進める予定である.24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22580035 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22580035 |
母材を大幅に凌ぐ高強度・高延性継手を達成するツールレス新規摩擦接合技術の確立 | 回転ツールを用いずに材料同士を摩擦させながら接合する接合法において、界面近傍まで素材の温度上昇を抑制、すなわち素材の強度低下を抑制することで、接合界面に大きな加工ひずみを導入することにより、回転ツールが不要な新規接合技術を確立した。これにより、加工組織を経て、微細に再結晶した組織からなる高強度な界面構造を有する接合体を得ることに成功した。H29年度までに用いた鋼材組成を中心に接合実験行い、摩擦圧接では、円柱あるいは円筒のみでは試料形状に制限されるため、回転ではなく、直線的な駆動をする線形駆動摩擦接合システムを構築した。直線振動の振動数、振幅、印加圧力などの接合パラメータを最適化をすることで、100%の継手効率を得ることができた。特に、印加圧力によって、接合温度を任意に制御できることを発見したのは、特筆に値する。制御方式としては、オフセット制御を用い、微細組織、硬度分布等の機械的特性によって継手の評価を行った。A1点以下の温度で接合を行った場合には、フェライトと球状セメンタイトからなる組織が得られ、強度ならびに靭性の良好な継手が得られた。A3点以上の温度で接合した場合に、界面で大幅な硬度上昇が生じるのと対照的に、界面での硬度上昇がみられず、無変態で接合ができたことが分かった。これにより、炭素量に関係なく、鉄鋼材料を接合する技術が確立できた。加えて、この技術をステンレス鋼とTi合金の異種接合へ展開し、本手法が異種材料の接合に対しても有効であることを明らかにした。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。当研究所に既存の摩擦圧接装置を活用し、液体CO2を用いた冷却機構を組み合わせることで、界面近傍に強ひずみ加工を付与することを可能とし、日本発新規摩擦接合法の基礎となる技術を開発した。接合パラメータの最適化および液体CO2による冷却方法の最適化を行った。制御方式としてはブレーキ式、摩擦時間の制御方法は時間制御および変位制御とした。継手の微細組織の観察や硬度分布などの機械的特性の評価によって、最適化を行った。尚、液体CO2は液体N2と比較すると温度は高いが、比熱が大きく冷却能が高い。また、液体N2を用いる場合のような気体の発生による冷却能が低下の問題が生じない。一方で、オーステナイトを室温で残留させる条件を求めるため、C量およびMo量を変化させたFe-C-Mo鋼について検討し、それぞれの鋼材のCCT線図を作成し、冷却速度と組織に関する基礎的データを取得した。本研究では、オーステナイトを室温で残留させるためには、以下の2つの条件を同時に満たす必要がある。加工による転位密度が増大によってオーステナイトが安定化する一方で、転位密度が増加すると、拡散変態も促進され、すなわち、ノーズが左側へシフトする。したがって、Mo等の元素によって、ノーズを右側へシフトさせ、フェライト/ベイナイトの生成を抑制するか、冷却速度を増大さえる必要があった。既存の熱履歴再現試験装置を用いて、本年度は、ひずみを付与しない条件で上述の鋼材の冷却曲線を作成した。温度は、まずは以下の条件で設定した。15°C/secで1000°Cまで昇温、25分間1000°Cで保持、3一定の速度で冷却(冷却速度に応じてHe冷却を使用)。冷却速度は0.1°C/sec100°C/secの範囲の8条件で行い、冷却中の試験片の温度と長さの変化を記録し、CCT線図を作成した。今年度予定していた新規摩擦攪拌接合技術の開発を行うとともに、平成30年度に予定していた線形摩擦接合技術にもその手法を一部展開した。S45C,S55Cなどの鋼材に対して接合実験を行い、摩擦圧力、アップセット圧力、摩擦時間、回転速度などの接合パラメータの最適化、冷却方法の最適化を試みた。制御方式としてはブレーキ式、摩擦時間の制御方法は時間制御とし、微細組織、硬度分布等の機械的特性によって継手の評価を行った。当初は、液体CO2による冷却によって、界面近傍にまで十分に強ひずみ加工が施すことを検討していたが、印加圧力によって界面の温度を任意に制御でき、印加荷重を増大させることで、接合温度をA1点以下に制御できることを明らかとなり、液体CO2を用いない簡便な手法を確立することができた。SCM420材に対してCCTを作成し、得られた継手組織を比較することで、オーステナイト域で加工を加えることによって、オーステナイトが安定化することを示した。また、種々の鉄鋼材料の強度の温度依存性を測定することにより、印加圧力によって接合温度を任意に決定することができるメカニズムについて明らかにした。さらに、平成30年度に予定していた線形摩擦接合にも、予定を前倒ししてとりくみ、摩擦圧接の場合と同様に印加圧力によって界面の温度を任意に制御でき、印加荷重を増大させることで、接合温度をA1点以下に制御できることを明らかにした。また、β+α型チタン合金においても、βトランザス以下の温度で接合することで、従来のラメラ組織ではなく、等軸のα+β組織が得られることを明らかにした。これらの手法は、ツール寿命が問題となっている摩擦攪拌接合の問題を解決し、鋼材の種類に関係なく接合できる技術として、応用範囲が極めて広いと思われる。平成30年度に予定していた線形摩擦接合にも、予定を前倒ししてとりくみ、一定の成果が得られたため。 | KAKENHI-PROJECT-15H04133 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H04133 |
母材を大幅に凌ぐ高強度・高延性継手を達成するツールレス新規摩擦接合技術の確立 | H28年度までに用いた鋼材に数種類の鋼材を加え接合実験を行い、摩擦圧力、アップセット圧力、摩擦時間、回転速度などの接合パラメータの最適化、液体CO2による冷却方法の最適化を試みた。制御方式としてはブレーキ式、摩擦時間の制御方法は寄り代制御とした。また、H30年度に実施予定していた、線形摩擦接合についても先行しで研究を実施し、振幅、振動数、押しつけ圧力を3つのパラメータとし、接合の最適化を行った。その結果、両手法とも押しつけ圧力(摩擦圧力)を変化させることにより、接合温度が制御可能であることを明らかにした。押しつけ圧力(摩擦圧力)が増加するにつれて、接合温度が低下する。摩擦圧接法においては、半径方向の温度差が顕著である。これに関しては、低い回転数を用いることで、界面温度が比較的均一になることや、液体CO2を高温となる外周部に吹きかけることでより、温度差の小さい継手を得ることができることを明らかにした。加えて、高荷重を加えた際、外周部が先行して加熱されるため、比較的低温で強度を保った中心部がこの高荷重をささえることとなり、見かけの圧力が上昇し、さらに平衡温度が低下することを突き止めた。これに対しては、接合途中で圧力を低下させる多段階圧力制御方式を用いることで改善できることを明らかにした。上記の方法を用いることにより、液体CO2を用いなくても、界面近傍に強ひずみ加工を与えることが可能であることを明らかとなった。H30年度に予定されいた線形摩擦摩擦接合に取り組むとともに、液体CO2を用いずに界面に強ひずみ加工を付与できる方法を明らかにしたため。回転ツールを用いずに材料同士を摩擦させながら接合する接合法において、界面近傍まで素材の温度上昇を抑制、すなわち素材の強度低下を抑制することで、接合界面に大きな加工ひずみを導入することにより、回転ツールが不要な新規接合技術を確立した。これにより、加工組織を経て、微細に再結晶した組織からなる高強度な界面構造を有する接合体を得ることに成功した。H29年度までに用いた鋼材組成を中心に接合実験行い、摩擦圧接では、円柱あるいは円筒のみでは試料形状に制限されるため、回転ではなく、直線的な駆動をする線形駆動摩擦接合システムを構築した。直線振動の振動数、振幅、印加圧力などの接合パラメータを最適化をすることで、100%の継手効率を得ることができた。特に、印加圧力によって、接合温度を任意に制御できることを発見したのは、特筆に値する。制御方式としては、オフセット制御を用い、微細組織、硬度分布等の機械的特性によって継手の評価を行った。A1点以下の温度で接合を行った場合には、フェライトと球状セメンタイトからなる組織が得られ、強度ならびに靭性の良好な継手が得られた。A3点以上の温度で接合した場合に、界面で大幅な硬度上昇が生じるのと対照的に、界面での硬度上昇がみられず、無変態で接合ができたことが分かった。これにより、炭素量に関係なく、鉄鋼材料を接合する技術が確立できた。加えて、この技術をステンレス鋼とTi合金の異種接合へ展開し、本手法が異種材料の接合に対しても有効であることを明らかにした。界面部におけるオーステナイトの安定化を目指して、摩擦圧力、アップセット圧力、摩擦時間、回転速度などの接合パラメータの最適化、液体CO2による冷却方法の最適化を試みる。制御方式としてはブレーキ式、摩擦時間の制御方法は時間制御または寄りしろ制御とする。 | KAKENHI-PROJECT-15H04133 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H04133 |
有機無機相互作用のその場状態分析と反応経路解析 | 地球の表層での物質循環に大きな役割を果たしていると考えられる様々な有機物と無機物の相互作用の機構と速度を明らかにするため,低温でのいくつかの代表的な有機無機相互作用の実験的研究を行い,また反応中間生成物の化学形態を現代的な分光学的手法等によってその場観測する試みを行った.まず,黄鉄鉱,水酸化鉄,アモルファスシリカ,珪酸ガラスの溶解・沈澱実験を有機物の存在しない条件下で,あるいは存在下で予備的に,常温から180°C程度の温度範囲で行った.黄鉄鉱の120°Cでの沈澱実験では,S/Fe比が約1の非晶質細粒物質がまず迅速に沈澱し,ここから球状の黄鉄鉱がゆっくり生成していくことがわかった.現在ラマン分光計で非晶質細粒物質の化学形態を分析中である.水酸化鉄については,針鉄鉱の低温での生成速度を可視光スペクトル(色)から見積ることに成功した.また,鉄とシリカの共沈実験を行い,従来鉄だけの系と異なる針鉄鉱や赤鉄鉱の生成条件を得た.アモルファスシリカの脱水・熟成実験では,純水よりも脂肪酸,単糖,OHを持つアミノ酸の順にシリカの熟成を促進することが赤外スペクトルからわかった.珪酸ガラスの溶解実験では,様々な塩化物溶液による溶解の他,モノカルボン酸及びジカルボン酸等の溶液による溶解実験を行い,主に,顕微赤外分光法でガラス表面の水和層の評価を行っている.一方,天然の物質系の中に有機無機複合体を探す試みも開始し,深海底堆積物中の珪藻の一粒の顕微赤外スペクトルから,含水シリカとペプチドの共存を確認した.また,チャート研磨片表面のラマン・スペクトルによりグラファイト様有機物を検出することに成功した.今後,このような研究を系統的に継続し,反応中間生成物,反応機構,速度,平衡定数等を測定し,従来仮想的定性的なモデルしか存在しなかった地球表層での有機無機相互作用のいくつかについて,これらがどのような地球化学的な環境において重要な物質循環過程となるかを質的かつ量的に判断する研究手法を確立する.地球の表層での物質循環に大きな役割を果たしていると考えられる様々な有機物と無機物の相互作用の機構と速度を明らかにするため,低温でのいくつかの代表的な有機無機相互作用の実験的研究を行い,また反応中間生成物の化学形態を現代的な分光学的手法等によってその場観測する試みを行った.まず,黄鉄鉱,水酸化鉄,アモルファスシリカ,珪酸ガラスの溶解・沈澱実験を有機物の存在しない条件下で,あるいは存在下で予備的に,常温から180°C程度の温度範囲で行った.黄鉄鉱の120°Cでの沈澱実験では,S/Fe比が約1の非晶質細粒物質がまず迅速に沈澱し,ここから球状の黄鉄鉱がゆっくり生成していくことがわかった.現在ラマン分光計で非晶質細粒物質の化学形態を分析中である.水酸化鉄については,針鉄鉱の低温での生成速度を可視光スペクトル(色)から見積ることに成功した.また,鉄とシリカの共沈実験を行い,従来鉄だけの系と異なる針鉄鉱や赤鉄鉱の生成条件を得た.アモルファスシリカの脱水・熟成実験では,純水よりも脂肪酸,単糖,OHを持つアミノ酸の順にシリカの熟成を促進することが赤外スペクトルからわかった.珪酸ガラスの溶解実験では,様々な塩化物溶液による溶解の他,モノカルボン酸及びジカルボン酸等の溶液による溶解実験を行い,主に,顕微赤外分光法でガラス表面の水和層の評価を行っている.一方,天然の物質系の中に有機無機複合体を探す試みも開始し,深海底堆積物中の珪藻の一粒の顕微赤外スペクトルから,含水シリカとペプチドの共存を確認した.また,チャート研磨片表面のラマン・スペクトルによりグラファイト様有機物を検出することに成功した.今後,このような研究を系統的に継続し,反応中間生成物,反応機構,速度,平衡定数等を測定し,従来仮想的定性的なモデルしか存在しなかった地球表層での有機無機相互作用のいくつかについて,これらがどのような地球化学的な環境において重要な物質循環過程となるかを質的かつ量的に判断する研究手法を確立する. | KAKENHI-PROJECT-06452099 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06452099 |
緩傾斜護岸の越波特性に及ぼす風の影響に関する研究 | 風洞付き2次元不規則波造波水槽を用いて、緩傾斜護岸を対象とした越波実験を行い、その越波特性に及ぼす風の影響を検討した。護岸の表のり勾配は3、5、7および10割とし、比較のために直立護岸についても実験を行った。なお、3および7割勾配護岸の場合には、不透水性のものに加えて、のり面の開孔率が30%の透水性を有するものについても実験を行い、その越波特性に及ぼす護岸のり面の透水性の影響を調べた。実験条件は、波形勾配とのり先水深・波長比はいずれも一定にし、相対天端高を2種類、風速は3種類に変化させた。得られた結果を要約すると、以下のようである。1)越波率は、のり面勾配が緩やかなものほど小さく、この傾向は風速が増大しても変化しない。また、有風時の越波率は、表のり勾配が5割から7割にかけて急減し、この傾向は無風時の場合と同じである。2)越波流量も、のり面勾配が緩やかなものほど小さく、いずれの護岸の場合も風速の増大とともに減少する。この傾向は、直立護岸の場合にもみられる。越波流量の低減効果がもっとも大きい護岸は、7割勾配で、のり面の開孔率が30%のものである。3)代表越波量比に及ぼす風の影響は、直立や3割勾配護岸の場合には、あまりみられないが、5、7および10割勾配護岸では著しく、その代表越波量比は風速の増大とともに増大する。このことは、防災上好ましい特性ではない。4)緩傾斜護岸の越波量分布は、Weibull分布に適合するが、いずれの勾配の場合にも、風速の増大とともに適合度は若干劣ってくる。また、Weibull分布の形状母数は、越波した波だけを対象とした場合には、風速の増大とともに減少するが、全波を対象とした場合の形状母数は風速によってはほとんど変化しない。風洞付き2次元不規則波造波水槽を用いて、緩傾斜護岸を対象とした越波実験を行い、その越波特性に及ぼす風の影響を検討した。護岸の表のり勾配は3、5、7および10割とし、比較のために直立護岸についても実験を行った。なお、3および7割勾配護岸の場合には、不透水性のものに加えて、のり面の開孔率が30%の透水性を有するものについても実験を行い、その越波特性に及ぼす護岸のり面の透水性の影響を調べた。実験条件は、波形勾配とのり先水深・波長比はいずれも一定にし、相対天端高を2種類、風速は3種類に変化させた。得られた結果を要約すると、以下のようである。1)越波率は、のり面勾配が緩やかなものほど小さく、この傾向は風速が増大しても変化しない。また、有風時の越波率は、表のり勾配が5割から7割にかけて急減し、この傾向は無風時の場合と同じである。2)越波流量も、のり面勾配が緩やかなものほど小さく、いずれの護岸の場合も風速の増大とともに減少する。この傾向は、直立護岸の場合にもみられる。越波流量の低減効果がもっとも大きい護岸は、7割勾配で、のり面の開孔率が30%のものである。3)代表越波量比に及ぼす風の影響は、直立や3割勾配護岸の場合には、あまりみられないが、5、7および10割勾配護岸では著しく、その代表越波量比は風速の増大とともに増大する。このことは、防災上好ましい特性ではない。4)緩傾斜護岸の越波量分布は、Weibull分布に適合するが、いずれの勾配の場合にも、風速の増大とともに適合度は若干劣ってくる。また、Weibull分布の形状母数は、越波した波だけを対象とした場合には、風速の増大とともに減少するが、全波を対象とした場合の形状母数は風速によってはほとんど変化しない。 | KAKENHI-PROJECT-05680379 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05680379 |
伝統的木造市街地における防火地域制の見直しに関する研究 | 1)準防火地域の要求防火性能の把握防火地域及び準防火地域の制定経過を文献により歴史的に考察をし、その性能が(1)大火を抑制するという地域防火的側面と(2)隣家拡大(類焼)を防止するという建築防火的側面の両面から規定されていることを明らかにした。また、地域防火的側面で要求される性能は、建物と地域の構成、さらには消防力との関係で判断されるものであることをも、明確にした。2)延焼シミュレ-ションによる要求性能の数量化室崎式とよばれる延焼速度式を用いて都市大火が起らない条件を求めた。これによると延焼速度が8090m/時以内であれば大火が起らない、また木造建ペい率が3040%以内であれば大火が起らない、木造建ぺい率が4050%であっても、それが防火的構造であれば大火が起きないことが確認された。3)火災統計による類焼防止性能の把握火災事例を京都及び奈良市の消防局から提供をうけ、類焼要因に家屋構造が如何に影響するかをみた。これによると、準防火地域と無指定地域、さらには普通木造と防火木造の違いによって、類焼危険に差のないことが明らかとなった。4)防火地域制への提案以上より、防火地域及び準防火地域の見直しが、消防力の増強また家屋構造の変化のなかで、必要であることを示した。また、準防火地域については、伝統的な普通木造を一定の条件下で認めてもよいことを明らかにし、新しい防火地域制限の考え方を提示した。1)準防火地域の要求防火性能の把握防火地域及び準防火地域の制定経過を文献により歴史的に考察をし、その性能が(1)大火を抑制するという地域防火的側面と(2)隣家拡大(類焼)を防止するという建築防火的側面の両面から規定されていることを明らかにした。また、地域防火的側面で要求される性能は、建物と地域の構成、さらには消防力との関係で判断されるものであることをも、明確にした。2)延焼シミュレ-ションによる要求性能の数量化室崎式とよばれる延焼速度式を用いて都市大火が起らない条件を求めた。これによると延焼速度が8090m/時以内であれば大火が起らない、また木造建ペい率が3040%以内であれば大火が起らない、木造建ぺい率が4050%であっても、それが防火的構造であれば大火が起きないことが確認された。3)火災統計による類焼防止性能の把握火災事例を京都及び奈良市の消防局から提供をうけ、類焼要因に家屋構造が如何に影響するかをみた。これによると、準防火地域と無指定地域、さらには普通木造と防火木造の違いによって、類焼危険に差のないことが明らかとなった。4)防火地域制への提案以上より、防火地域及び準防火地域の見直しが、消防力の増強また家屋構造の変化のなかで、必要であることを示した。また、準防火地域については、伝統的な普通木造を一定の条件下で認めてもよいことを明らかにし、新しい防火地域制限の考え方を提示した。 | KAKENHI-PROJECT-03650492 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03650492 |
ヒト食道扁平上皮癌における腫瘍随伴マクロファージによる抗癌剤耐性機序の解明 | 食道扁平上皮癌の抗癌剤耐性における腫瘍随伴マクロファージの意義を検討するため、CD68とCD204の免疫染色を行った。CD204陽性細胞は、抗癌剤耐性などの悪性度に関連する種々の臨床病理学的因子と有意に相関した。CD204陽性細胞の浸潤密度の高い症例は低い症例と比較して予後が悪い傾向にあったが、有意差は得られなかった。抗癌剤耐性への関与が指摘されているADAM10分子の免疫染色を施行したところ、CD204陽性細胞数の多い症例では癌細胞におけるADAM10陽性率が有意に高かった。CD204陽性マクロファージは、癌細胞のADAM10発現上昇を介して抗癌剤耐性に関与している可能性が考えられた。ヒト食道扁平上皮癌における抗癌剤耐性機序を解明することを目的として研究を行った。外科手術単独例30例、術前化学療法例30例を用いて、マクロファージの浸潤度や形態的特徴との関連について解析した。汎マクロファージマーカーとして抗CD68抗体、腫瘍の促進に作用するとされるM2型マクロファージのマーカーとして抗CD204抗体を使用して免疫組織化学染色により食道癌組織中のマクロファージ浸潤数を評価した。その結果、術前化学療法群では手術単独群と比較してCD68陽性マクロファージとCD204陽性マクロファージの浸潤数が高かった。組織学的治療奏功度に基づき、術前化学療法群をresponder, non-responderの2群に分類して解析したところ、non-responderではresponder群と比較してCD204陽性マクロファージの浸潤数が多い傾向にあった。更に、癌の浸潤部に出現し、上皮間葉転換(EMT)の指標になるとされる簇出(tumor budding)とマクロファージの浸潤数との相関を検討したところ、CD204陽性マクロファージの浸潤が多い症例でtumor buddingが多数出現する症例が多い傾向にあることを見出した。以上の結果から、CD204陽性のM2型マクロファージは化学療法耐性に関与している可能性があり、EMTを誘導することにより化学療法耐性を発揮している可能性が示唆された。マクロファージによる化学療法耐性機序を解明するため、M2型マクロファージの浸潤とADAM分子の発現の相関を見ることを計画しており、まずはヒト食道扁平上皮癌組織の病理切片を用いて免疫組織化学染色により評価する予定としている。プロテアーゼ活性を有する主要なADAM分子の免疫組織化学染色を行うにあたり、その染色条件の決定が順調にいかず、実験のやり直しに思いのほか時間を要した。結果として複数種類の抗体を比較検討することで良好な染色条件を決定することができたため、引き続き症例の集積と発現解析を行っていく予定である。ヒト食道扁平上皮がんにおける抗がん剤耐性機序を解明することを目的として、食道扁平上皮がんの手術症例を用いて免疫染色を行った。がん微小環境を構成する腫瘍随伴マクロファージに着目して、汎マクロファージマーカーとしてCD68、M2型マクロファージマーカーとしてCD204に対する免疫染色を行った。浸潤部における陽性細胞の数を顕微鏡下でカウントし、各種臨床病理学的因子との関連を検討した。その結果、CD68陽性マクロファージおよびCD204陽性マクロファージの浸潤密度の高い症例では、抗がん剤による組織学的治療効果の乏しい症例が有意に多かった。また、CD204陽性マクロファージの浸潤密度は、深達度、リンパ管侵襲、静脈侵襲、リンパ節転移と有意に相関することが見出された。CD204陽性細胞の浸潤密度の高い症例は、浸潤密度の低い症例と比較して、全生存期間が短い傾向にあったが、有意差は得られなかった。次に、CD204陽性マクロファージによる抗がん剤耐性機構を知るために、主要な微小環境代謝因子の一つであるADAM(A disintegrin and metalloproteinase)分子に着目した。他のがん種において抗がん剤耐性への寄与が指摘されているADAM10の免疫染色を行ったところ、CD204陽性マクロファージの浸潤密度の高い症例では食道がん組織のADAM10陽性率が有意に高かった。以上のことから、M2型マクロファージは食道扁平上皮がんにおいてADAM10分子の発現亢進を誘導することで抗がん剤耐性に関与している可能性が考えられた。食道扁平上皮癌の抗癌剤耐性における腫瘍随伴マクロファージの意義を検討するため、CD68とCD204の免疫染色を行った。CD204陽性細胞は、抗癌剤耐性などの悪性度に関連する種々の臨床病理学的因子と有意に相関した。CD204陽性細胞の浸潤密度の高い症例は低い症例と比較して予後が悪い傾向にあったが、有意差は得られなかった。抗癌剤耐性への関与が指摘されているADAM10分子の免疫染色を施行したところ、CD204陽性細胞数の多い症例では癌細胞におけるADAM10陽性率が有意に高かった。CD204陽性マクロファージは、癌細胞のADAM10発現上昇を介して抗癌剤耐性に関与している可能性が考えられた。ヒト食道扁平上皮癌組織におけるADAM分子の発現と化学療法耐性、M2型マクロファージの浸潤の程度、臨床病理学的因子、病理組織学的特徴ならびに予後との相関を統計学的に解析する。また、ヒト食道扁平上皮癌由来の細胞株およびヒト由来マクロファージを用いての共 | KAKENHI-PROJECT-15K19058 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K19058 |
ヒト食道扁平上皮癌における腫瘍随伴マクロファージによる抗癌剤耐性機序の解明 | 培養系を確立し、in vitroの系を用いてマクロファージがヒト食道扁平上皮癌細胞に及ぼす化学療法耐性効果とその機序の解明を目指す。人体病理学M2型マクロファージによる化学療法耐性機序を解明するため、M2型マクロファージの浸潤とADAM分子の発現の相関を見ることを計画しており、まずはヒト食道扁平上皮癌組織の病理切片を用いて免疫組織化学染色により評価する予定としていた。ADAM分子の免疫染色を行うにあたり、その染色条件の決定が順調にいかず、実験のやり直しに3カ月以上を要した。そのため、予定としていた症例の更なる集積と多数例のヒト食道扁平上皮癌症例を用いた免疫染色、in vitroの検討に遅れが生じ、次年度使用額として繰り越さざるを得ない状況となった。多数例のヒト食道扁平上皮癌症例での免疫組織化学染色に使用する試薬、細胞培養、マクロファージをM2型マクロファージに誘導するためのサイトカインなどの試薬、RT-PCR法やwestern blot法のための関連試薬や抗体、細胞死の測定キットや各種消耗品の支出に充てる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-15K19058 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K19058 |
胃上皮オルガノイドを用いた平面内細胞極性動態解析系の創出による胃発がん機序の解明 | 私は今日までにピロリ菌由来発がんタンパク質CagAが1Wnt-PCP(Planar Cell Polarity:平面内細胞極性)シグナル伝達を撹乱すること;2PCP主要制御分子と細胞内で複合体を形成することを見出している。本研究では、哺乳動物胃上皮由来試料のPCP極性動態を可視化する解析系を新規に開発することで、胃上皮組織の恒常性維持にPCP極性制御が果たす役割を明らかにする。同時に、CagAが胃上皮細胞内でPCPシグナル/PCP極性の脱制御を引き起こす分子機序を明らかにし、PCP極性の破壊が胃がんやその他の胃粘膜病変の発症に促進的に寄与するか検討を行う。私は今日までにピロリ菌由来発がんタンパク質CagAが1Wnt-PCP(Planar Cell Polarity:平面内細胞極性)シグナル伝達を撹乱すること;2PCP主要制御分子と細胞内で複合体を形成することを見出している。本研究では、哺乳動物胃上皮由来試料のPCP極性動態を可視化する解析系を新規に開発することで、胃上皮組織の恒常性維持にPCP極性制御が果たす役割を明らかにする。同時に、CagAが胃上皮細胞内でPCPシグナル/PCP極性の脱制御を引き起こす分子機序を明らかにし、PCP極性の破壊が胃がんやその他の胃粘膜病変の発症に促進的に寄与するか検討を行う。 | KAKENHI-PROJECT-19K05945 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K05945 |
PHA2型原因遺伝子WNKのショウジョウバエ相同遺伝子の解析 | WNK1及びWNK4は、偽性低アルドステロン症II型(PHAII)と呼ばれる遺伝性疾患の原因遺伝子である。既に、WNKシグナル伝達経路の制御異常がPHAIIで見られる高血圧症の発症原因であることが知られているが、身体の奇形や精神発達遅延などの他の病態の発症メカニズムはいまだ解明されていない。そこで、ショウジョウバエを用い、WNKと相互作用する因子の探索を行った結果、新たにWNKの下流で機能する転写因子を単離し、その機能の解析を行った。これらの研究を通して、発症メカニズムの解明を目指した。WNK1及びWNK4は、偽性低アルドステロン症II型(PHAII)と呼ばれる遺伝性疾患の原因遺伝子である。既に、WNKシグナル伝達経路の制御異常がPHAIIで見られる高血圧症の発症原因であることが知られているが、身体の奇形や精神発達遅延などの他の病態の発症メカニズムはいまだ解明されていない。そこで、ショウジョウバエを用い、WNKと相互作用する因子の探索を行った結果、新たにWNKの下流で機能する転写因子を単離し、その機能の解析を行った。これらの研究を通して、発症メカニズムの解明を目指した。偽性低アルドステロン症2型は、特定疾患にも指定されている難病であり、低レニン性高血圧症と共に、歯や骨の発育不全、精神発達遅延、身体の奇形を伴った症状を示す常染色体優性の遺伝病である。その原因遺伝子として、WNKキナーゼが単離され、腎臓においてナトリウムやカリウムの共輸送体を制御していること、その制御の異常が高血圧症の原因となるであろうことが既に示された。しかしながら、腎臓での制御異常が精神発達遅延や身体の奇形といった症状の原因とは考えられず、共輸送体の制御機構以外のシグナル伝達系の因子との関連が疑われている。そこで、我々は、遺伝学的手法が発達しているショウジョウバエを用いて、WNKキナーゼと相互作用する因子の特定と機能解析を行っている。現在までにショウジョウバエのWNK相同遺伝子DWNKを単離し、異所発現系を構築した。成虫の翅でDWNKを異所発現させたところ、Notchシグナル伝達系やWntシグナル伝達系に関わる遺伝子の変異体と似た表現型が得られ、相互作用すると考えられる。また、DWNK突然変異体は、胚期後期から2令幼虫において致死となった。胚期において神経の軸索誘導欠損が観察され、神経系の発生でも重要な機能を果たしていることが示唆された。以上のように、WNKキナーゼは、共輸送体の制御以外にも様々な機能を持っていることが推測され、今後は関連する因子の特定及びその因子のより詳細な解析を行っていく予定である。また、それらの因子のヒトやマウスの相同遺伝子の機能を解析することで、偽性低アルドステロン症の発症メカニズムの解明に繋がり、治療薬のターゲットの候補を増やすことができると考えている。偽性低アルドステロン症2型は、特定疾患にも指定されている難病であり、低レニン性高血圧症と共に、歯や骨の発育不全、精神発達遅延、身体の奇形を伴った症状を示す常染色体優性の遺伝病である。その原因遺伝子として、WNKキナーゼが単離され、腎臓においてナトリウムやカリウムの共輸送体を制御していること、その制御の異常が高血圧症の原因となるであろうことが既に示された。しかしながら、腎臓での制御異常が精神発達遅延や身体の奇形といった症状の原因とは考えられず、共輸送体の制御機構以外のシグナル伝達系の因子との関連が疑われている。そこで、我々は、遺伝学的手法が発達しているショウジョウバエを用いて、WNKと相互作用する因子の探索を行うことにし、解析を行っている。DWNKの異所発現系と共に、ヒトのWNK1、及び下流因子であるマウスのOSR1、そのショウジョウバエ相同因子Frayの異所発現系を構築したところ、全ての異所発現系で同じ表現型が観察された。このことは、WNKシグナル伝達経路が、ショウジョウバエからヒトまで広く保存されていることを示唆している。また、DWNK突然変異体の解析、及びキナーゼ不活性型の異所発現系の解析から、下流で機能する転写因子の存在が推測された。この転写因子のほ乳類における相同因子は、培養細胞系を用いた解析からも、WNKの下流で機能することを明らかにした。さらに、この転写因子は、口腔部の形成やアセチルコリン作動性神経の発生において重要な機能を果たしていることが知られている。PHAIIの患者において歯や骨の発育不全や精神発達遅延などの症状が現れることを考えると、非常に重要な因子である可能性が高い。今後は、この転写因子の発現調節機構等の解析を通じて、偽性低アルドステイン症の発症メカニズムの解明、及び創薬の可能性についても探っていきたい。 | KAKENHI-PROJECT-20790249 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20790249 |
近代建設業の成立と展開に関する史的研究-北海道を対象として | 1.大工棟梁、請負人、建設企業に関する基礎資料の収集と整理:(1)本研究分担者角幸博の北海道戦前期の建設業者に関する予備的調査で収集済みの、明治前期の請負業者、諸職人98名、明治後期の主要請負業者59名をもとに、これに10数名を加えて、各データの補足を行ない、全体をデータベース化した。(2)うち特に、北海道で重要な役割を果たした旧越後出身の大工棟梁について、そのルーツや主業績の調査を行なった。その概要は1997年8月日本建築学会論文報告集に『北海道における越後大工の活動』として報告した。2.建設企業の詳細調査:(3)北海道の近代建設企業を代表する(株)伊藤組について、創業者の渡道以降の事跡、社業の整備と事業展開について詳細な調査を行なった。その成果を1998年2月『伊藤組百年史』として刊行した。(4)北海道と密接な関係をもちながら未調査であった南サハリンの旧日本統治期の建築について調査を行ない、特に当地で主導的な建設業者であった遠藤米七の事跡を初めて明らかにすることができた。3.特定建築工事にかかわる諸業者および諸職人の事例調査:(5)明治後期から昭和初期にかけて一貫した史料を遺している北海道大学関係営繕資料について、各建築工事の工事契約、施工実施形態、工事関係者の組織形態などについて整理した。(6)明治期の北海道西沿岸部の民家建築事例を調査し、これにかかわった大工棟梁について基礎史料を得た。1.大工棟梁、請負人、建設企業に関する基礎資料の収集と整理:(1)本研究分担者角幸博の北海道戦前期の建設業者に関する予備的調査で収集済みの、明治前期の請負業者、諸職人98名、明治後期の主要請負業者59名をもとに、これに10数名を加えて、各データの補足を行ない、全体をデータベース化した。(2)うち特に、北海道で重要な役割を果たした旧越後出身の大工棟梁について、そのルーツや主業績の調査を行なった。その概要は1997年8月日本建築学会論文報告集に『北海道における越後大工の活動』として報告した。2.建設企業の詳細調査:(3)北海道の近代建設企業を代表する(株)伊藤組について、創業者の渡道以降の事跡、社業の整備と事業展開について詳細な調査を行なった。その成果を1998年2月『伊藤組百年史』として刊行した。(4)北海道と密接な関係をもちながら未調査であった南サハリンの旧日本統治期の建築について調査を行ない、特に当地で主導的な建設業者であった遠藤米七の事跡を初めて明らかにすることができた。3.特定建築工事にかかわる諸業者および諸職人の事例調査:(5)明治後期から昭和初期にかけて一貫した史料を遺している北海道大学関係営繕資料について、各建築工事の工事契約、施工実施形態、工事関係者の組織形態などについて整理した。(6)明治期の北海道西沿岸部の民家建築事例を調査し、これにかかわった大工棟梁について基礎史料を得た。1.大工棟梁、請負人、建設企業に関する基礎資料の収集と整理:本研究分担者角幸博の北海道戦前期の建設業者に関する予備的調査で、明治前期の請負業者、諸職人98名、明治後期の主要請負業者59名について簡単なカード整理ができているが、本年はこれをもとに10数名を加えて全体をデータベース化し、各データについて補強の作業を行なった。特に旧越後國出身で北海道に進出活躍した大工棟梁について、そのルーツや、主事績の調査を行ない、データを集積することができた。その概要については研究論文として次年度に報告の予定である。2.建設企業の詳細資料調査:北海道の近代建設企業を代表する(株)伊藤組について、創業者の渡道からの事績、社業の整備と事業展開について詳細な調査を行ない、通史の形で整理した。なお北海道と密接な関係を有した樺太(サハリン)における主要建設と建設業者遠藤米七に関して現地調査を行ない、基礎的な資料を得ることができた。3.特定建築工事にかかわる諸業者および諸職人の事例調査:工事契約、施工実施形態、工事関係者の組織形態などについて、精細に一式記録の残されている北海道大学営繕資料(明治後期の札幌農学校移転新築工事から昭和初期まで)について、資料整理を行なった。1.大工棟梁、請負人、建設企業に関する基礎資料の収集と整理:(1)本研究分担者角幸博の北海道戦前期の建設業者に関する予備的調査で収集済みの、明治前期の請負業者、諸職人98名、明治後期の主要請負業者59名をもとに、これに10数名を加えて、各データの補足を行ない、全体をデータベース化した。(2)うち特に、北海道で重要な役割を果たした旧越後出身の大工棟梁について、そのルーツや主業績の調査を行なった。その概要は1997年8月日本建築学会論文報告集に『北海道における越後大工の活動』として報告した。2.建設企業の詳細調査:(3)北海道の近代建設企業を代表する(株)伊藤組について、創業者の渡道以降の事跡、社業の整備と事業展開について詳細な調査を行なった。その成果を1998年2月『伊藤組百年史』として刊行した。(4)北海道と密接な関係をもちながら未調査であった南サハリンの旧日本統治期の建築について調査を行ない、特に当地で主導的な建設業者であった遠藤米七の事跡を初めて明らかにすることができた。3.特定建築工事にかかわる諸業者および諸職人の事例調査: | KAKENHI-PROJECT-08455282 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08455282 |
近代建設業の成立と展開に関する史的研究-北海道を対象として | (5)明治後期から昭和初期にかけて一貫した史料を遺している北海道大学関係営繕資料について、各建築工事の工事契約、施工実施形態、工事関係者の組織形態などについて整理した。(6)明治期の北海道面沿岸部の民家建築事例を調査し、これにかかわった大工棟梁について基礎史料を得た。 | KAKENHI-PROJECT-08455282 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08455282 |
平和構築における地域社会の貢献と行政機構との結びつきの研究 | 「紛争影響国における平和構築において地域社会が果たし得る貢献は何か」を中心的な問いとして追及する。本研究では、日本も含め国際社会からの巨額の支援の下で平和構築の取り組みが大規模に実施されてきたアフガニスタンを事例として取り上げる。2001年以降新しくできた中央政府の再建、民主的選挙の実施という「平和構築」の取り組みを、詳細に現地の在り様を見ていく地域研究の視点も生かしつつ地方の文脈から解釈しなおすことを目指す。「紛争影響国における平和構築において地域社会が果たし得る貢献は何か」を中心的な問いとして追及する。本研究では、日本も含め国際社会からの巨額の支援の下で平和構築の取り組みが大規模に実施されてきたアフガニスタンを事例として取り上げる。2001年以降新しくできた中央政府の再建、民主的選挙の実施という「平和構築」の取り組みを、詳細に現地の在り様を見ていく地域研究の視点も生かしつつ地方の文脈から解釈しなおすことを目指す。 | KAKENHI-PROJECT-19K20558 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K20558 |
インスリンによる転写調節の分子機構 | 1.L型ピルビン酸もナーゼ遺伝子のインスリン反応性領域の固定本遺伝子の-76から-170までに肝細胞での転写に必要な3ケ所のシス作用領域が存在し,これらは1つのエンハンサーユニットとして機能する。このユニットがインスリン反応性を有するかどうかをトランスジェニックマウスの柔を用いて検討した。その結果,このユニットは食餌性グルコース(インスリン)のみならず,食餌性フルクトースにも反応することが強く示唆された。次に,培養肝細胞の柔を調べたところ,このユニットはグルコース存在下でインスリンに反応するが,ピルビン酸存在下では反応しないことが示された。以上の成績をこれまでの結果と考え合わせると,インスリンは肝臓のグルコース代謝を促進することにより,フルクトースからと同じ中間代謝産物を,積させ,これが何らかの方法で,エンハンサーユニットを介し,転写を促進するものと考えるれる。2,エンハンサーユニットに結合するタンパク質の解析本ユニットはL-I,L-II,L-IIIの領域からなるが,L-Iに結合するHNF-Iの発現は食餌性グルコースで調節されなかった。L-IIに結合する未知の核タンパク質を高度に純化した。3,グルコキナーゼ遺伝子のインスリン反応性領域の同定培養肝細胞を用いて,CATアッセイにより,インスリン反応性領域の同定を試みた。その結果,転写開始点上流約1.1kbまでに存在すること判明した。1.L型ピルビン酸もナーゼ遺伝子のインスリン反応性領域の固定本遺伝子の-76から-170までに肝細胞での転写に必要な3ケ所のシス作用領域が存在し,これらは1つのエンハンサーユニットとして機能する。このユニットがインスリン反応性を有するかどうかをトランスジェニックマウスの柔を用いて検討した。その結果,このユニットは食餌性グルコース(インスリン)のみならず,食餌性フルクトースにも反応することが強く示唆された。次に,培養肝細胞の柔を調べたところ,このユニットはグルコース存在下でインスリンに反応するが,ピルビン酸存在下では反応しないことが示された。以上の成績をこれまでの結果と考え合わせると,インスリンは肝臓のグルコース代謝を促進することにより,フルクトースからと同じ中間代謝産物を,積させ,これが何らかの方法で,エンハンサーユニットを介し,転写を促進するものと考えるれる。2,エンハンサーユニットに結合するタンパク質の解析本ユニットはL-I,L-II,L-IIIの領域からなるが,L-Iに結合するHNF-Iの発現は食餌性グルコースで調節されなかった。L-IIに結合する未知の核タンパク質を高度に純化した。3,グルコキナーゼ遺伝子のインスリン反応性領域の同定培養肝細胞を用いて,CATアッセイにより,インスリン反応性領域の同定を試みた。その結果,転写開始点上流約1.1kbまでに存在すること判明した。L型ピルビン酸キナ-ゼ(LPK)遺伝子とグルコキナ-ゼ(GK)遺伝子の肝細胞における発現はインスリンによって、転写レベルで制御されている。本研究では、インスリンによる転写調節の分子機構を解明するために、LPKとGKの両遺伝子のインスリン反応性シス作用領域の同定を試みた。LPKについてはトランスジェニックマウスの系を用いて、上流3kbまでにこの領域が存在することを明らかにしているので、上流1.5kbまでを含むトランスジェニックマウスをつくり、インスリン反応性を調べたが、インスリン反応性は認められなかった。そこで、上流1.5から3kbまで、1.5から2.3kbまで、2.3から3kbまでを含むトランスジェニックマウスをつくり、現在解析中である。また、これらの組換え体は初代培養肝細胞へのトランスフェクションの系では、どれもインスリンに反応しなかったが、上流3kbまでと1.5から3kbまでを含むものは肝臓へのin vivoトランスフェクションの系で、インスリンに反応したので、この系を用いて、上流1.5から3kbの間をさらに検索中である。一方、GKについては、in vivoトランスフェクションの系を用いて、上流2218kbまでを検討したが、インスリン反応性を認めることはできなかった。さらに、上流域を調べるべく、遺伝子のクロ-ニングを行っている。また、転写開始点の下流域についても検討している。1.L型ピルビン酸キナーゼ遺伝子のインスリン反応性領域の同定本遺伝子の-76から-170までに肝細胞での転写に必要な3ケ所のシス作用領域が存在し、これらは1つのエンハンサーユニットとして機能する。このユニットがインスリン反応性を有するかどうかを調べるために-189から+37までをクロラムフェニコールアセチルトアンスフェラーゼ(CAT)に連結して融合遺伝子をつくり、受精卵に導入してトランスジェニックマウスを作製した。CATの発現は内因性遺伝子と同じ、肝臓、腎臓、小腸でみられたが、脳、脾臓、骨格筋では認められなかった。肝臓での発現は食餌性グルコースやフルクトースによって、腎臓と小腸での発現はフルクトースによって促進された。次に、同じ融合遺伝子を肝細胞に導入し、インスリンの効果を調べた。インスリンはグルコース存在下でCATの発現を促進したが、ピルビン酸存在下では効果が認められなかった。以上の成績をこれまでの結果と考え合わせると、インスリンは肝臓のグルコース代謝を促進させることにより、フルクトースからと同じ中間代謝産物を蓄積させ、これが何らかの方法で、エンハンサーユニットを介し、本遺伝子の転写を促進するという可能性が考えられる。2.グルコキナーゼ遺伝子のインスリン反応性領域の同定培養肝細胞を用いて、CATアッセイにより、インスリン反応性領域の固定を試みた。その結果、転写開始点上流約1.1kbまでに存在することが判明した。 | KAKENHI-PROJECT-03670122 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03670122 |
日米におけるC型肝炎ウイルスと肝細胞癌の差異 | 肝細胞癌はわが国における悪性新生物死亡の第3位を占め,しかも年々増加の一途をたどっている。1988年にC型肝炎ウイルス(HCV)が同定・報告されてい以来,このウイルスが多くの肝細胞癌症例と密接に関連していることが明らかとなった。米国におけるHCVの保有率は,わが国と同様であるにも拘らず,米国における肝細胞癌死亡は,わが国に比して低いことが知られている。日本および米国において感染しているHCVの遺伝子がクローニングされ,その全塩基配列が決定,比較された。米国で得られたHCVと日本で得られたHCVでは相同性が低く,両国において感染しているHCVの違いが示唆された。その後さらにわが国における多数例を用いた検討では,HCVにはいくつかのサブタイプが存在し,わが国におけるそれらのサブタイプの感染比率が示された。その結果,わが国においては米国型のHCV感染が少ないことが示された。本研究では,こうした日本におけるHCVの違いに注目し,ウイルスの違いが引き起こす肝障害の重症度の関連ひいては両国における肝細胞癌の発症の差異について検討することを目的とする。わが国におけるHCVと肝細胞癌の臨床疫学的関連は小林健一研究室を中心として解析した。金子周一および村上清史分担者は,肝細胞癌症例より感染HCVをクローニングし解析した。米国においてはRobert H. Purcell分担者が米国におけるHCVをクローニング,解析した。両国におけるHCVの違いについて米国において比較・解析した。(1)日米における肝細胞癌の疫学日米におけるHCVの保有率は,それぞれ0.97-1.3%,0.9-1.4%であった。それに対し人口10万人あたりの肝細胞癌死亡率はわが国の男性で24.2,女性で9.1であるのに対し,米国では男性で3.4,女性で2.1と,米国では明らかに肝細胞癌による死亡が定率であった。(2)日米の慢性肝炎例における感染HCVのサブタイプ小林健一研究室においてC型慢性肝炎としてインターフェロン治療を行った38例においてはこれまで報告したJK-NS4型あるいはOkamotoのタイプII型が多く28(75%),米国でHCVのプロトタイプとして報告されたタイプIは認められなかった。これに対して米国においてインターフェロン療法を行った33例では7例(21%)のみが,日本型であるJK-NS4型陽性であり,日本においては米国型が少なく,米国においては日本型が少ない事実が示された。米国において,C肝関連肝がん症例の蓄積を行い,肝がん例における頻度を検討することとになった。(3)日米におけるHCVクローンの比較小林健一研究室において肝細胞癌合併症例より得られたHCVの全塩基配列(9408塩基)を決定し,既に日本において報告されている2HCVクローンと併せて,米国における2つのクローンと比較した。先に示したタイプII型である日本で得られた2つのクローンとは90.7-91.4%の相同性を示したが,タイプIである米国の2つとは78.4-78.8%の相同性しか認めなかった。このことから,日本に多いII型のHCVは全塩基配列において米国で認められるI型と大きく異なっていることが示された。米国においては肝がん合併症例からのHCVクローンは未だ得られていないが,今後クローニングしていくことを計画した。この研究によって,米国においては日本に多いタイプのHCV感染が少ないことが示唆された。さらにゲノムの比較により,その塩基配列は大きく異なっていることが示された。この両国のウイルスタイプの違いによって,肝障害の程度さらには肝細胞癌の発症率の違いが引き起こされているか否かは,さらに広範な検討が必要であると思われた。肝細胞癌はわが国における悪性新生物死亡の第3位を占め,しかも年々増加の一途をたどっている。1988年にC型肝炎ウイルス(HCV)が同定・報告されてい以来,このウイルスが多くの肝細胞癌症例と密接に関連していることが明らかとなった。米国におけるHCVの保有率は,わが国と同様であるにも拘らず,米国における肝細胞癌死亡は,わが国に比して低いことが知られている。日本および米国において感染しているHCVの遺伝子がクローニングされ,その全塩基配列が決定,比較された。米国で得られたHCVと日本で得られたHCVでは相同性が低く,両国において感染しているHCVの違いが示唆された。その後さらにわが国における多数例を用いた検討では,HCVにはいくつかのサブタイプが存在し,わが国におけるそれらのサブタイプの感染比率が示された。その結果,わが国においては米国型のHCV感染が少ないことが示された。本研究では,こうした日本におけるHCVの違いに注目し,ウイルスの違いが引き起こす肝障害の重症度の関連ひいては両国における肝細胞癌の発症の差異について検討することを目的とする。わが国におけるHCVと肝細胞癌の臨床疫学的関連は小林健一研究室を中心として解析した。金子周一および村上清史分担者は,肝細胞癌症例より感染HCVをクローニングし解析した。米国においてはRobert H. Purcell分担者が米国におけるHCVをクローニング,解析した。両国におけるHCVの違いについて米国において比較・解析した。(1)日米における肝細胞癌の疫学日米におけるHCVの保有率は,それぞれ0.97-1.3%,0.9-1.4%であった。 | KAKENHI-PROJECT-03042014 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03042014 |
日米におけるC型肝炎ウイルスと肝細胞癌の差異 | それに対し人口10万人あたりの肝細胞癌死亡率はわが国の男性で24.2,女性で9.1であるのに対し,米国では男性で3.4,女性で2.1と,米国では明らかに肝細胞癌による死亡が定率であった。(2)日米の慢性肝炎例における感染HCVのサブタイプ小林健一研究室においてC型慢性肝炎としてインターフェロン治療を行った38例においてはこれまで報告したJK-NS4型あるいはOkamotoのタイプII型が多く28(75%),米国でHCVのプロトタイプとして報告されたタイプIは認められなかった。これに対して米国においてインターフェロン療法を行った33例では7例(21%)のみが,日本型であるJK-NS4型陽性であり,日本においては米国型が少なく,米国においては日本型が少ない事実が示された。米国において,C肝関連肝がん症例の蓄積を行い,肝がん例における頻度を検討することとになった。(3)日米におけるHCVクローンの比較小林健一研究室において肝細胞癌合併症例より得られたHCVの全塩基配列(9408塩基)を決定し,既に日本において報告されている2HCVクローンと併せて,米国における2つのクローンと比較した。先に示したタイプII型である日本で得られた2つのクローンとは90.7-91.4%の相同性を示したが,タイプIである米国の2つとは78.4-78.8%の相同性しか認めなかった。このことから,日本に多いII型のHCVは全塩基配列において米国で認められるI型と大きく異なっていることが示された。米国においては肝がん合併症例からのHCVクローンは未だ得られていないが,今後クローニングしていくことを計画した。この研究によって,米国においては日本に多いタイプのHCV感染が少ないことが示唆された。さらにゲノムの比較により,その塩基配列は大きく異なっていることが示された。この両国のウイルスタイプの違いによって,肝障害の程度さらには肝細胞癌の発症率の違いが引き起こされているか否かは,さらに広範な検討が必要であると思われた。わが国においては、C型肝炎ウイルス(HCV)が多くの肝細胞癌症例と密接に関連していることが明らかとなった。米国における肝細胞癌死亡は少なく、日米における差異が問題となっている。本研究では日米におけるHCVと肝細胞癌の差異を明らかにし、その原因について検討した。わが国において肝細胞癌を併発した5例によりHCVの構造領域をクロ-ニングし、塩基配列を決定した。5'noncoding領域で〈4.9%、ウイルスのcore領域ので〈6.5%、envelope領域で〈11.1%の相違が示された。米国例との比較では、5'non coding領域が良く保たれているものの、envelope領域に大きな違いがみいだされた。また1例より、全塩基配列を決定し、米国の2例、および日本の3例のHCV株と比較した。その解析から日本型を2種に、米国型を1種の3種に分類することが可能であった。5例のHCVに保存されている領域をプライマ-とした検出系を用いてC型肝炎症例を検討したところ、このプライマ-で検出されるC型肝炎は重篤な病態を有しており、さらにインタ-フェロン療法にも反応性が不良であったことから、さらにHCV遺伝子の違いによって引き起こす病態がことなることが示唆された。米国より、インタ-フェロン療法を行った33例の血清を得た。5'non | KAKENHI-PROJECT-03042014 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03042014 |
細菌外毒素Cholix toxinの新規受容体の同定と毒性発現における役割 | コレラ菌由来Cholix toxin(本毒素)は」タンパク質伸長因子EF2をADP-リボシル化することである種のタンパク質の合成を阻害する毒素である。本年度は、本毒素が誘導する腫瘍壊死因子(INFα産生誘導とそれに伴う細胞致死の亢進について解析した。本毒素を各種ヒト細胞殊に作用させたところ、子宮上皮由来(HeLa)細胞ならびに肝細胞(HepG2)細胞内では作用後12-18時間でのTNF-αmRNAが顕著に誘導されることをRT-PCRならびに定量PCRにより見出した。一方その他(腸管上皮由来・単球由来)の細胞株では、mRNA量に変化は見られなかった。このことから本毒素は、ある種の細胞特異的に炎症性サイトカインを誘導させる可能性が考えられた。次に、TNF-αmRNAの誘導が見られたHepG2細胞に対して、本毒素とTNF-αを同時に作用させた。その結果、本毒素のみの作用と比較して、細胞死が大幅に亢進されていた。その細胞内では、ヒストン結合タンパク質HMGB1の細胞外への放出によるネクローシスならびに炎症性カスパーゼを起点とするアポトーシスといった、二つの細胞死機構が同時に誘導されていた。HepG2細胞へのTNF-αのみの作用は、生存シグナルを活性化させるが、本毒素はTNF受容体複合体が示す細胞生存機構を破綻させることで、致死シグナルの増強を引き起こすことが明らかとなった。これまで本毒素は、細胞の恒常性に関わるタンパク質を合成することのみが報告されていたが、本研究により、サイトカイン感受性に関わる受容体内タンパクとなることが明らかになった。以上の研究から、本毒素が示すTNF-αの産生誘導ならびにTNF-α感受性破綻の両機構が、毒性発現において重要な役割をもつことが示唆された。コレラ菌由来Cholix toxin(本毒素)は」タンパク質伸長因子EF2をADP-リボシル化することである種のタンパク質の合成を阻害する毒素である。本年度は、本毒素が誘導する腫瘍壊死因子(INFα産生誘導とそれに伴う細胞致死の亢進について解析した。本毒素を各種ヒト細胞殊に作用させたところ、子宮上皮由来(HeLa)細胞ならびに肝細胞(HepG2)細胞内では作用後12-18時間でのTNF-αmRNAが顕著に誘導されることをRT-PCRならびに定量PCRにより見出した。一方その他(腸管上皮由来・単球由来)の細胞株では、mRNA量に変化は見られなかった。このことから本毒素は、ある種の細胞特異的に炎症性サイトカインを誘導させる可能性が考えられた。次に、TNF-αmRNAの誘導が見られたHepG2細胞に対して、本毒素とTNF-αを同時に作用させた。その結果、本毒素のみの作用と比較して、細胞死が大幅に亢進されていた。その細胞内では、ヒストン結合タンパク質HMGB1の細胞外への放出によるネクローシスならびに炎症性カスパーゼを起点とするアポトーシスといった、二つの細胞死機構が同時に誘導されていた。HepG2細胞へのTNF-αのみの作用は、生存シグナルを活性化させるが、本毒素はTNF受容体複合体が示す細胞生存機構を破綻させることで、致死シグナルの増強を引き起こすことが明らかとなった。これまで本毒素は、細胞の恒常性に関わるタンパク質を合成することのみが報告されていたが、本研究により、サイトカイン感受性に関わる受容体内タンパクとなることが明らかになった。以上の研究から、本毒素が示すTNF-αの産生誘導ならびにTNF-α感受性破綻の両機構が、毒性発現において重要な役割をもつことが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-24790409 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24790409 |
RFID技術を活用した河川生態系における小型魚の行動モニタリングシステムの構築 | 電磁誘導方式のパッシブタイプと,電波を用いたアクティブタイプのモニタリングシステムを構築した.パッシブRFIDは,作動距離が10cm程度と短いために制約が多いが,アクティブRFIDは水中での電波が減衰するも,実験から淡水であれば深度60cm程度までは利用できる.この電波をデコードする装置を開発し,アクティブRFIDを実用するための知見を得た.また,条件の異なるモニタリングの場合,システムを拡張するアーキテクチャとして,ミドルウェアによるデバイスの統合を実装した.さらに,広域モニタリングと多数の対象物を想定したデータ収集に関して,モニタリングのための圧縮センシングの検証を行った.RFID(Radio Frequency Identificationの略称)モニタリングシステムの最適化を実現のため、そのひな形であるRFIDモニタリングシステムの試作検討を行った。1,3) RFIDモニタリングシステム試作およびRFIDモニタリングシステムの原型構築:水中におけるRFIDの電波伝搬の特性を検討した。その結果、伝搬方式は水の非透磁率がほぼ1であることを利用した電磁誘導による伝搬方式を有力候補として挙げられた。その方式を採用しているBiomark社のRFIDシステムの基本特性を調査し,有効距離が約10cmであること,また水の影響がほぼないことが明らかとなった.また,異種センサネットワークとサーバを連携するデータ収集ネットワークにミドルウェアを用いる方式を国際会議で提案し,その方式をRFIDデータ収集システムに応用して開発を行った.そのシステムによって,RFIDリーダで読み取ったデータを無線LANでサーバに転送し収集することが可能になった.2)試作システムを用いた小型魚の群行動実験RFIDタグのサイズなどを考慮し、群行動実験に使用する対象種の選定およびフィールドの選定を行った。対象生物は、(トゲウオ類、小型サケ科魚類,ザリガニ)を選定した。RFIDモニタリングシステムの試作実験用に室内飼育水槽と環境を整え、対象種のサンプリングおよび飼育を行ない、ハンドリングや装着方法を検討した。さらに、平成27年度に予定している河川設置方法の検討のため、道東標津町の標津サーモン科学館の野外水路を使用できるように要請して協力体制を整えた。RFID(Radio Frequency Identificationの略称)モニタリングシステムの最適化の実現のため、その雛形であるRFIDモニタリングシステムの試作検討を行った。平成26年度に開発した「ミドルウェアを用いたセンサネットワークアーキテクチャ」に基づき、Biomark社製RFID(電磁誘導方式)を用いたモニタリングシステムの構築と基本特性を調べた。RFIDリーダで読み取ったデータをモジュールを介して無線LANで転送し収集するシステムを完成させた。また、実用化を想定した実証試験では、RFIDの読み取り距離は空中では15cmであるが、タグの向き(電磁向き)により、タグの読み取り距離が最大30%まで減衰することが明らかになった。また、小型魚を想定したタグの移動速度実験では650mm/sの速度まで読み取りが可能であり、実施に小型魚を用いた水中実験では、約7cm程度で読み取りが可能であった。試作システムを用いた試作実験用に室内飼育水槽と環境を整え、対象種のサンプリングおよび飼育を行ない、RFIDタグの装着方法とハンドリングの影響を検討した。4-5cmのモツゴおよびザリガニへタグを装着して数ヶ月の飼育を行ないタグの影響が無いことを確認した。また、上記電磁誘導方式のパッシブタグに対して、野外での実用化を目指した新しい検出距離が数10mまで可能なアクティブタブについて調査し,サーキットデザイン社製の水中対応のアクティブタグを想定した基本設計を行ないパッシブタグ同様のシステムを構築した。予定通り、RFIDモニタリングシステムの原型構築がほぼ完成し、実用試験に向けた室内検証実験に着手した。また、新たに検出距離が短かった電磁誘導方式のパッシブタグに対して、野外実用化に向けて検出距離が数10mまで可能なアクティブタブについて調査し、水中対応のアクティブタグを想定した基本設計を行ない改良型RFIDモニタリングシステムを構築した.本格的な行動実験のための対象種選定および実験施設の環境が整い本格的な実証試験に着手している。RFID (Radio Frequency Identification)タグによる水生生物の行動モニタリングシステムの最適化の実現のために、RFIDタグを用いた淡水魚類のモニタリングシステムの開発を行った。今年度は、平成27年度に開発に着手したアクティブタグを用いたシステムの構築を進めた。本システムは、パッシブタグとは異なり、タグ自身が電波を発信するために、水中にリーダーを設置することが不要である。このため、パッシブタグを用いたシステムよりも全体的に小型化・省電力化が可能であるため、野外への導入に適していると考えられる。具体的な流れとしては、サーキットデザイン社製の水中対応のアクティブRFIDタグ(LT-04-2)を想定した基本設計を行い、モジュールを介してリーダーから読み取ったデータを無線LANで転送・収集する。今年度は、まずアクティブタグから得られた電波(アナログ値)の処理方法を改良することによって、RFIDのデコーディングを安定できることを確認し(アクティブタグの電波から、タグ固有のIDを特定する)、アクティブRFIDによる淡水魚類モニタリング装置を開発した。この装置では、RFIDタグからの信号を受信してデコードし、読み取ったIDと日時をファイルに記録するため、無線LANで本装置にアクセスすることによって,リモートでデータファイルをダウンロード可能である。水槽におけるパッシブタグの受信距離テストでは、淡水では60cm程度の水深まで利用できることを確認した。この時、RFIDタグと受信アンテナの距離は約5mであった。このRFIDシステムは、屋外では約10m程度まで信号が届くことを確認している。 | KAKENHI-PROJECT-26292103 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26292103 |
RFID技術を活用した河川生態系における小型魚の行動モニタリングシステムの構築 | またモニタリングシステムの省電力化を検討し、バッテリーで約10日間の稼働を確認した。これによって、小型魚の行動モニタリングを連続して行うことが可能であることが示された。電磁誘導方式のパッシブタイプと,電波を用いたアクティブタイプのモニタリングシステムを構築した.パッシブRFIDは,作動距離が10cm程度と短いために制約が多いが,アクティブRFIDは水中での電波が減衰するも,実験から淡水であれば深度60cm程度までは利用できる.この電波をデコードする装置を開発し,アクティブRFIDを実用するための知見を得た.また,条件の異なるモニタリングの場合,システムを拡張するアーキテクチャとして,ミドルウェアによるデバイスの統合を実装した.さらに,広域モニタリングと多数の対象物を想定したデータ収集に関して,モニタリングのための圧縮センシングの検証を行った.予定どおり、RFIDモニタリングシステムの原型構築に係る水中におけるRFIDの電波伝搬の特性を把握することができた。その結果、伝搬方式は水の非透磁率がほぼ1であることを利用した電磁誘導による伝搬方式を有力候補として挙げられた。また、異種センサネットワークとサーバを連携するデータ収集ネットワークにミドルウェアを用いる方式を国際会議で提案し,その方式をRFIDデータ収集システムに応用して開発を行った。また、本格的な群れ行動実験のための対象種選定および実験施設の環境が整い、次年度に本格的な試験を行う体制が整った。平成28年度は、構築したRFIDモニタリングシステムを自然河川に導入、小型魚類を用いた野外検証を行い、それらをフィードバックさせることで本システムの完成を図ることを目標とする。1)実験河川用RFIDモニタリングシステムの構築:電磁誘導式のパッシブタグによるシステムに加えて、アクティブタグを想定した改良型システムを野外河川に展開して、データ収集システムの性能評価を行う。2)実験河川による魚群行動のモニタリングの有用性の検討・室内擬似河川環境および北海道道南周辺の河川においてモニタリングシステムを設置したモデル領域において、複数魚種にそれそぞれRFIDタグ装着して再放流し、移動情報などの生態情報を収集する。受信情報解析:得られた受信情報より種間の行動特性、生息場所選択などの相違について魚群スケールで解析する。順次得られた結果を、国内外の学会・シンポジウム・論文で発表する。28年度が最終年度であるため、記入しない。生態・環境試作システムを用いた室内実験を反復し、野外で改良型システムの検証を行う。 | KAKENHI-PROJECT-26292103 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26292103 |
肝臓の最終分化と増殖を相反的に制御する因子の解明 | 肝細胞の最終分化の分子機構を解析するための第一段階として、セリンデヒドラタ-ゼ(SDH)遺伝子の転写調節因子、SDHの5'上流、-759/-249と-252/+123をプロ-ブとし、胎仔肝と成熟肝の核抽出液を用いて、DNaseIフットプリントを解析した。その結果、1。-595/-565(site A),-102/-56(site B)に結合する因子の存在が胎仔肝と成熟肝核抽出液に認められた。2.それ以外に、-10/+2(site C)に結合する因子が、胎仔肝に特異的に存在することが判明した。Site A,BおよびCの塩基配列には、既知の数種の肝特異的転写因子の中で、結合する可能性があるのは、HNFー2様因子のみであり、このことは、site A,BおよびCに未知の因子が結合していることが予想される。特に、胎仔肝に特異的なsite Cについては、SDH遺伝子の転写抑制に作用する因子が結合している可能性が示唆された。また、site Bについては、フットプリントパタ-ンにおいて、胎仔と成熟肝に相違が認められたので、このsiteに異なる因子が結合することも予想された。現在、site A,B,およびCの配列を含むオリゴヌクレオチドを用いて、結合の競合実験ならびにゲルシフトアッセイを行い、解析を進めている。次に、分化機能を維持しているとされている肝癌細胞(H4IIE,Hep G2)のSDHの発現を酵素活性とmRNAレベルで調べた。これらの細胞では、全くSDHを発現していないことが明かとなった。さらに、SDH遺伝子の5'上流約2kbの下流にchloramphenicol acetyltransferase遺伝子連結した融合遺伝子をこれらの細胞に導入し、CAT assayを行った。CATの発現はみとめられなかった。このことは、初代培養肝細胞では、SDHーCAT遺伝子が発現されることと対比される。このような肝癌細胞におけるSDH遺伝子の発現のOFFは胎仔肝と同様の機構によるのか、という点についても併せて解析する予定である。肝細胞の最終分化の分子機構を解析するための第一段階として、セリンデヒドラタ-ゼ(SDH)遺伝子の転写調節因子、SDHの5'上流、-759/-249と-252/+123をプロ-ブとし、胎仔肝と成熟肝の核抽出液を用いて、DNaseIフットプリントを解析した。その結果、1。-595/-565(site A),-102/-56(site B)に結合する因子の存在が胎仔肝と成熟肝核抽出液に認められた。2.それ以外に、-10/+2(site C)に結合する因子が、胎仔肝に特異的に存在することが判明した。Site A,BおよびCの塩基配列には、既知の数種の肝特異的転写因子の中で、結合する可能性があるのは、HNFー2様因子のみであり、このことは、site A,BおよびCに未知の因子が結合していることが予想される。特に、胎仔肝に特異的なsite Cについては、SDH遺伝子の転写抑制に作用する因子が結合している可能性が示唆された。また、site Bについては、フットプリントパタ-ンにおいて、胎仔と成熟肝に相違が認められたので、このsiteに異なる因子が結合することも予想された。現在、site A,B,およびCの配列を含むオリゴヌクレオチドを用いて、結合の競合実験ならびにゲルシフトアッセイを行い、解析を進めている。次に、分化機能を維持しているとされている肝癌細胞(H4IIE,Hep G2)のSDHの発現を酵素活性とmRNAレベルで調べた。これらの細胞では、全くSDHを発現していないことが明かとなった。さらに、SDH遺伝子の5'上流約2kbの下流にchloramphenicol acetyltransferase遺伝子連結した融合遺伝子をこれらの細胞に導入し、CAT assayを行った。CATの発現はみとめられなかった。このことは、初代培養肝細胞では、SDHーCAT遺伝子が発現されることと対比される。このような肝癌細胞におけるSDH遺伝子の発現のOFFは胎仔肝と同様の機構によるのか、という点についても併せて解析する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-02670111 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02670111 |
転写速度制御を介した統合的遺伝子発現制御機構の解明 | RNAのプロセシングや輸送といったRNA動態制御やエピゲノム制御などの遺伝子発現制御の初期段階は転写と共役して協調的に制御される考えられるが、その全体像や分子機構の詳細はまだわかっていない。本研究では「RNAの動態やエピゲノムがどのように転写と協調的に制御されているのか」という疑問に答えるために、RNAポリメラーゼII(Pol2)のC末ドメインのSer7(CTD-S7)のリン酸化が転写のブレーキとして転写速度を制御し、それがエピゲノム制御、RNA動態制御に深く関与するという独自の知見にもとづき、CTD-S7リン酸化による転写速度制御を介したゲノムワイドな遺伝子発現の協調的制御機構を明らかにする。研究代表者は転写を担うRNAポリメラーゼIIのC末ドメインSer7(CTD-S7)リン酸化が転写のブレーキとして働くことを発見した。本計画では、RNAポリメラーゼIIのC末ドメインのリン酸化がアクセルにもブレーキにも関わりながら、エピゲノム制御、RNA動態制御にどのように関与するのか、分裂酵母の分子遺伝学を用いて解明しようとする計画である。本計画は研究代表者らの知見に基づく独自性の高い研究提案であり、すでに多くの予備的知見も得られており、酵母からヒトまで現在脚光を浴び始めている重要な話題でもある。転写速度制御を介したゲノムワイドな遺伝子発現の協調的制御機構について分裂酵母で解明が進み、哺乳動物細胞へと波及することが期待される。RNAのプロセシングや輸送といったRNA動態制御やエピゲノム制御などの遺伝子発現制御の初期段階は転写と共役して協調的に制御される考えられるが、その全体像や分子機構の詳細はまだわかっていない。本研究では「RNAの動態やエピゲノムがどのように転写と協調的に制御されているのか」という疑問に答えるために、RNAポリメラーゼII(Pol2)のC末ドメインのSer7(CTD-S7)のリン酸化が転写のブレーキとして転写速度を制御し、それがエピゲノム制御、RNA動態制御に深く関与するという独自の知見にもとづき、CTD-S7リン酸化による転写速度制御を介したゲノムワイドな遺伝子発現の協調的制御機構を明らかにする。 | KAKENHI-PROJECT-19H00973 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H00973 |
RF-IDタグによる流通情報を利用したフレキシブルサプライチェーン管理方式 | サプライチェーンを管理する際に最も問題となるのは、チェーンを流れる製品の現在状況を把握することが困難なことである。このため、顧客からの需要を満たすためには適正よりも過剰の在庫を用意しておく必要があり、それが余分なコストとしてかかることになる。インターネットの発達による世界規模での輸送が行なわれるようになるにつれ、このコストは増大する傾向にある。そこでRF-IDタグをサプライチェーン上の製品に添付することで、製造・配送中の製品を効率的に管理するための、データキャリア型サプライチェーン物品管理方式を提案した。従来の基本業務を、分散してデータを保持するデータキャリア型のシステム上に実現するため、それぞれの計算機が自律的にデータの送受信を行う機能を実装した。さらには、これらの機能を備えた、RF-IDタグのリード/ライト機能を備えたプロトタイプシステムの開発を行い、RF-IDタグを備えた物品の情報をサプライチェーン上で適切に管理して物品を流すことが可能であることを確認した。一方で、RF-IDタグと同様に非接触でデータの交換ができ、読み取り距離がRF-IDタグよりも長いBluetoothにも着目し、Bluetoothでデータ送受信を行う基盤技術の実装を行った。Bluetooth端末の配置や受送信データの管理を行うツールを開発するとともに、Bluetootを備えたモバイル端末が通信エリアに移動した時に自動的にBluetoothを介してデータ送受信を行う情報システムの開発を行った。サプライチェーンを管理する際に最も問題となるのは、チェーンを流れる製品の現在状況を把握することが困難なことである。このため、顧客からの需要を満たすためには適正よりも過剰の在庫を用意しておく必要があり、それが余分なコストとしてかかることになる。インターネットの発達による世界規模での輸送が行なわれるようになるにつれ、このコストは増大する傾向にある。そこでRF-IDタグをサプライチェーン上の製品に添付することで、製造・配送中の製品を効率的に管理するための、データキャリア型サプライチェーン物品管理方式を提案した。従来の基本業務を、分散してデータを保持するデータキャリア型のシステム上に実現するため、それぞれの計算機が自律的にデータの送受信を行う機能を実装した。さらには、これらの機能を備えた、RF-IDタグのリード/ライト機能を備えたプロトタイプシステムの開発を行い、RF-IDタグを備えた物品の情報をサプライチェーン上で適切に管理して物品を流すことが可能であることを確認した。一方で、RF-IDタグと同様に非接触でデータの交換ができ、読み取り距離がRF-IDタグよりも長いBluetoothにも着目し、Bluetoothでデータ送受信を行う基盤技術の実装を行った。Bluetooth端末の配置や受送信データの管理を行うツールを開発するとともに、Bluetootを備えたモバイル端末が通信エリアに移動した時に自動的にBluetoothを介してデータ送受信を行う情報システムの開発を行った。サプライチェーンを管理する際に最も問題となるのは、チェーンを流れる製品の現在状況を把握することが困難ことである。このため、顧客からの需要を満たすためには適正よりも過剰の在庫を用意しておく必要があり、それが余分なコストとしてかかることになる。インターネットの発達による世界規模での輸送が行われるようになるにつれ、このコストは増大する傾向にある。そこでRF-IDタグをサプライチェーンに利用することで、製造・配送中の製品を動的な見込み在庫とみなした、統合的なサプライチェーン管理方式を提案する。そのために必要となる「RF-ICタグへの記録データの定義」という基盤技術を検討するとともに、提案した手法を評価するための、RF-ICタグの輸送と、管理計画を自動的に行なうシミュレーションシステムの開発を行なう。まず、研究の対象とするサプライチェーンモデルを作成するために、現実の生産・流通業務の実データを収集し、それらを本研究グループで開発中のサプライチェーンモデリングツールを用いて、モデル化を行った。作成したモデルを分析することで、現在の対象モデルの問題点の分析、RF-IDタグを用いて改善できるポイントを見いだすことができた。また、RF-IDタグの分析のために、RF-IDタグとその読み書き装置を用いて、RF-IDタグを用いたサプライチェーンのシミュレーションシステムの作成を行なった。一方で、RF-IDタグと同様に非接触でデータの交換ができ、読み取り距離がRF-EDタグよりも長いBluetoothにも着目し、データ送受信用のシミュレーションを行うツールと、データの送受信プロトコルについての研究を行なった。サプライチェーンを管理する際に最も問題となるのは、チェーンを流れる製品の現在状況を把握することが困難なことである。このため、顧客からの需要を満たすためには適正よりも過剰の在庫を用意しておく必要があり、それが余分なコストとしてかかることになる。インターネットの発達による世界規模での輸送が行なわれるようになるにつれ、このコストは増大する傾向にある。そこでRF-IDタグをサプライチェーン上の製品に添付することで、製造・配送中の製品を効率的に管理するための、データキャリア型サプライチェーン物品管理方式を提案した。従来の基本業務を、分散してデータを保持するデータキャリア型のシステム上に実現するため、それぞれの計算機が自律的にデータの送受信を行う機能を実装した。さらには、これらの機能を備えた、RF-IDタグのリード/ライト機能を備えたプロトタイプシステムの開発を行い、RF-IDタグを備えた物品の情報をサプライチェーン上で適切に管理して物品を流すことが可能であることを確認した。一方で、RF-IDタグと同様に非接触でデータの交換ができ、読み取り距離がRF-IDタグよりも長いBluetoothにも着目し、Bluetoothでデータ送受信を行う基盤技術の実装を行った。Bluetooth端末の配置や受送信データの管理を行うツールを開発するとともに、Bluetootを備えたモバイル端末が通信エリアに移動した時に自動的にBluetoothを介してデータ送受信を行う情報システムの開発を行った。 | KAKENHI-PROJECT-13450164 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13450164 |
ショウジョウバエにおける抗ウイルス自然免疫分子機構の解析 | 自然免疫は、細胞が病原体由来の分子構造を認識し、病原体を排除する生体防御機構である。近年の研究により、自然免疫に関わる様々な因子が同定されているが、そのシグナル伝達および病原体排除機構において未知の部分が多く残っている。そこで、本研究では、自然免疫の包括的な理解を目指して、DNAウイルス感染に対する自然免疫の制御因子を同定する。具体的には、モデル生物であるショウジョウバエのゲノムワイドRNAiライブラリーを用いて、昆虫特異的DNAウイルスであるバキュロウイルスの増殖抑制に関わる宿主因子の探索を行なった。前年度までに、バキュロウイルスにLuciierase遺伝子を組み込んだ組換えウイルスをレポーターウイルスとして用いて、レポーター遺伝子発現に影響を与える因子をRNAiスクリーニングにより探索した。その結果、複数のヒストンメチル化酵素の遺伝子発現抑制によりバキュロウイルス遺伝子発現が大幅に増強されることが明らかとなり、バキュロウイルスの遺伝子発現がヒストンメチル化により抑制されていることが示唆された。ヒストンメチル化を介したウイルス遺伝子発現抑制が哺乳動物においても保存されていることを確認するために、Hela細胞およびHek293細胞において同定されたヒストンメチル化酵素の遺伝子発現を抑制したところ、バキュロウイルスの遺伝子発現が増強され、哺乳動物においてもヒストンメチル化を介したウイルス遺伝子発現抑制が保存されていることが示された。現在はこのヒストンメチル化酵素がウイルス遺伝子発現を抑制するメカニズムを解明するために、クロマチン免疫沈降により本酵素がウイルスゲノム上のピストンのメチル化状態に与える影響を調べている。自然免疫は、細胞が病原体由来の分子構造を認識し、病原体を排除する生体防御機構である。近年の研究により、自然免疫に関わる様々な因子が同定されているが、そのシグナル伝達および病原体排除機構において未知の部分が多く残っている。そこで、本研究では、自然免疫の包括的な理解を目指して、DNAウイルス感染に対する自然免疫の制御因子を同定する。具体的には、モデル生物であるショウジョウバエのゲノムワイドRNAiライブラリーを用いて、昆虫特異的DNAウイルスであるバキュロウイルスの増殖抑制に関わる宿主因子の探索を行う。本年度は、スクリーニングに用いるレポーターウイルスとして、バキュロウイルスにLuciferase遺伝子を組み込んだ組換えウイルスを作製した。作製した組換えバキュロウイルスは、ショウジョウバエ由来の培養細胞に感染し、Luciferaseを発現することが確認された。興味深いことに、ショウジョウバエ細胞におけるバキュロウイルス遺伝子発現は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を加えることにより促進されることが明らかとなった。このことは、バキュロウイルスの遺伝子発現はショウジョウバエ細胞においてヒストン脱アセチル化を介する機構により増殖が抑制されることを示唆する。今後早急に、ヒストンを介した抗ウイルス因子を含む未知の宿主因子を同定するために、ゲノムワイドRNAiスクリーンによりウイルス増殖抑制に関わる因子を網羅的に同定する予定である。自然免疫は細胞が病原体に特徴的な分子パターンを認識し排除する生体防御機構であり、進化的に高度に保存されている。近年の研究により自然免疫が、病原体の排除および獲得免疫の誘導に必須の役割を果たすことが明らかとなり、その分子機構の解明が期待されている。本研究では、DNAウイルス感染に対する生体防御機構のさらなる理解を目指して、ショウジョウバエ細胞および哺乳動物細胞を用いて抗ウイルス活性を持つ因子の探索を行った。昨年度に作製したDNAウイルスであるバキュロウイルスにLuciferase遺伝子を組み込んだレポーターウイルスを用いて、RNAiにより遺伝子発現を抑制した際に、レポーター遺伝子の発現を促進する因子を探した結果、ヒストンH3の9番目のリジン残基(H3K9)のメチル化酵素が複数同定された。同定されたH3K9メチル化酵素のsiRNAを処理したHela細胞においては、バキュロウイルスのレポーター遺伝子発現の著しい促進が確認された。昨年度の解析において、ヒトおよびショウジョウバエ細胞におけるウイルス遺伝子発現がヒストンアセチル化により抑制されることを示している。また、ウイルスDNAにヒストンが結合することおよびヒストンのアセチル化がウイルス遺伝子発現を抑制することが報告されている。これらと併せて今回H3K9のメチル化酵素が抗ウイルス因子として同定されたことで、ウイルスDNAに結合したヒストンのH3K9によるメチル化およびヒストンのアセチル化がウイルス遺伝子発現の抑制に関わることが示唆される。自然免疫は、細胞が病原体由来の分子構造を認識し、病原体を排除する生体防御機構である。近年の研究により、自然免疫に関わる様々な因子が同定されているが、そのシグナル伝達および病原体排除機構において未知の部分が多く残っている。そこで、本研究では、自然免疫の包括的な理解を目指して、DNAウイルス感染に対する自然免疫の制御因子を同定する。具体的には、モデル生物であるショウジョウバエのゲノムワイドRNAiライブラリーを用いて、昆虫特異的DNAウイルスであるバキュロウイルスの増殖抑制に関わる宿主因子の探索を行なった。前年度までに、バキュロウイルスにLuciierase遺伝子を組み込んだ組換えウイルスをレポーターウイルスとして用いて、レポーター遺伝子発現に影響を与える因子をRNAiスクリーニングにより探索した。その結果、複数のヒストンメチル化酵素の遺伝子発現抑制によりバキュロウイルス遺伝子発現が大幅に増強されることが明らかとなり、バキュロウイルスの遺伝子発現がヒストンメチル化により抑制されていることが示唆された。ヒストンメチル化を介したウイルス遺伝子発現抑制が哺乳動物においても保存されていることを確認するために、Hela細胞およびHek293細胞において同定されたヒストンメチル化酵素の遺伝子発現を抑制したところ、バキュロウイルスの遺伝子発現が増強され、哺乳動物においてもヒストンメチル化を介したウイルス遺伝子発現抑制が保存されていることが示された。 | KAKENHI-PROJECT-10J05695 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J05695 |
ショウジョウバエにおける抗ウイルス自然免疫分子機構の解析 | 現在はこのヒストンメチル化酵素がウイルス遺伝子発現を抑制するメカニズムを解明するために、クロマチン免疫沈降により本酵素がウイルスゲノム上のピストンのメチル化状態に与える影響を調べている。当初の予定通り、抗ウイルス活性をもつ因子のスクリーニングが完了したが、候補因子の機能解析がまだ十分ではないため。今後はスクリーニングにより得られたヒストンH3メチル化酵素がウイルスの遺伝子発現を抑制する分子機構の解析を行う。具体的には、DNAウイルスゲノムに結合したヒストンがH3K9メチル化酵素によりメチル化されることをクロマチン免疫沈降法により確認する。さらに、H3K9メチル化酵素のウイルス感染時における細胞内局在および結合因子の探索を行い、なぜDNAウイルスゲノムに結合したヒストンがH3K9メチル化酵素のターゲットになるのかを明らかにする。 | KAKENHI-PROJECT-10J05695 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J05695 |
生体機能の統合的研究 | 創成的基礎研究「生体機能の統合的研究」班は脳の機能を中心に生体の働きを統合的に解明することを目標とし、平成2年度に発足した。班の構成は総括班および3つのサブグル-プから成っている。総括班は平成3年度の活動方針を年度当初に討議し,3つのグル-プの共同研究を含む研究の推進を援助し,国際シンポジウム「脳の隨意運動制御」(1992年1月28ー30日),合同班会議(2月14,15日)を開催して研究交流をはかってきた。「脳の高次機能の非侵襲的アプロ-チ」班(佐々木和夫班長)は主としてヒトの脳活動を研究の対象とし,独自の見地と方法で研究を進め,共同実験としては生理学研究所に設置された生体磁気計測装置(MEG)を使用した。主な成果は、音声をもつ音響構造による脳活動部位の推定(栗城),手指の自発的運動に伴うMEG計測による一次運動野,補足運動野活動の新知見(柴崎,佐々木),色弁別を伴うGO/NO GO反応課題で運動をしない決断の部位を前頭葉背外側と推定したこと(佐々木),CO_2レ-ザ-光線による皮膚温痛刺激と頭皮上感覚誘発電位からの末梢神経・脊髄視床路伝導速度の決定(柿木),MRIによる内耳微細構造撮影と三次元画像構築(亘),心理物理実験による空間的注意の問題に関する新知見とモデル提唱(下条)等であった。「行動制御による高次脳機能の研究」班(丹治順班長)は動物行動の多くの局面で新しい知見を得た。大脳運動関連領野の研究において,前補足運動野が見出されたこと(丹治),学習過程における運動連合野と前頭連合野の役割(久保田),複雑な手指運動に関与する頭頂葉細胞(酒田),隨意眼球運動の制御において尾状核換、選択的注意に関与し、ド-パミン系が基本であること(彦坂),視床下部のド-パミン系が雄ザルの性行動誘発に関与していること(粟生),尾状核と被殻は外界の環境や内的な記録から運動を選び出す過程で重要なこと(木村),大脳皮質感覚野が,手指運動の習得にも役割を持つこと(入来)等の成果を得た。「高次脳活動の基礎としての神経回路網」班(外山敬介班長)はin vivoおよびin vitro標本を用いて神経回路形成の先天的および学習的制御機構と細胞内信号伝達機構に関して大きな成果をあげた。先天的制御機構については視覚中枢での軸索伸展誘導因子A5分子の発見(高木),外側膝状体と層特異性を保持した結合(外山),小脳プルキンエ細胞、顆粒細胞、バスケット細胞シナプスの特定部位への結合(平野),皮示赤核路の発生再現はP7以前であること(村上),上丘への視神経投射切断後の坐骨神経移植による再生の特性(福田)の報告,学習形成機構ではシナプス後メカニズムによる海馬CA1の長期増強と海馬CA3野の長期増強に代謝型グルタミン酸受容体関与(杉山)の報告がある。細胞内信号伝達系ではカイニン酸誘発のてんかんでcfos遺伝子発現とソマトスタチンmRNA転写が起ること(小幡),ヒヨコ有毛細胞でアセチルコリンはムスカリン受容体に作用し,C^<2+>_a遊離によるKコンダクタンス上昇(大森)が明らかにされた。創成的基礎研究「生体機能の統合的研究」班は脳の機能を中心に生体の働きを統合的に解明することを目標とし、平成2年度に発足した。班の構成は総括班および3つのサブグル-プから成っている。総括班は平成3年度の活動方針を年度当初に討議し,3つのグル-プの共同研究を含む研究の推進を援助し,国際シンポジウム「脳の隨意運動制御」(1992年1月28ー30日),合同班会議(2月14,15日)を開催して研究交流をはかってきた。「脳の高次機能の非侵襲的アプロ-チ」班(佐々木和夫班長)は主としてヒトの脳活動を研究の対象とし,独自の見地と方法で研究を進め,共同実験としては生理学研究所に設置された生体磁気計測装置(MEG)を使用した。主な成果は、音声をもつ音響構造による脳活動部位の推定(栗城),手指の自発的運動に伴うMEG計測による一次運動野,補足運動野活動の新知見(柴崎,佐々木),色弁別を伴うGO/NO GO反応課題で運動をしない決断の部位を前頭葉背外側と推定したこと(佐々木),CO_2レ-ザ-光線による皮膚温痛刺激と頭皮上感覚誘発電位からの末梢神経・脊髄視床路伝導速度の決定(柿木),MRIによる内耳微細構造撮影と三次元画像構築(亘),心理物理実験による空間的注意の問題に関する新知見とモデル提唱(下条)等であった。「行動制御による高次脳機能の研究」班(丹治順班長)は動物行動の多くの局面で新しい知見を得た。 | KAKENHI-PROJECT-03NP0101 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03NP0101 |
生体機能の統合的研究 | 大脳運動関連領野の研究において,前補足運動野が見出されたこと(丹治),学習過程における運動連合野と前頭連合野の役割(久保田),複雑な手指運動に関与する頭頂葉細胞(酒田),隨意眼球運動の制御において尾状核換、選択的注意に関与し、ド-パミン系が基本であること(彦坂),視床下部のド-パミン系が雄ザルの性行動誘発に関与していること(粟生),尾状核と被殻は外界の環境や内的な記録から運動を選び出す過程で重要なこと(木村),大脳皮質感覚野が,手指運動の習得にも役割を持つこと(入来)等の成果を得た。「高次脳活動の基礎としての神経回路網」班(外山敬介班長)はin vivoおよびin vitro標本を用いて神経回路形成の先天的および学習的制御機構と細胞内信号伝達機構に関して大きな成果をあげた。先天的制御機構については視覚中枢での軸索伸展誘導因子A5分子の発見(高木),外側膝状体と層特異性を保持した結合(外山),小脳プルキンエ細胞、顆粒細胞、バスケット細胞シナプスの特定部位への結合(平野),皮示赤核路の発生再現はP7以前であること(村上),上丘への視神経投射切断後の坐骨神経移植による再生の特性(福田)の報告,学習形成機構ではシナプス後メカニズムによる海馬CA1の長期増強と海馬CA3野の長期増強に代謝型グルタミン酸受容体関与(杉山)の報告がある。細胞内信号伝達系ではカイニン酸誘発のてんかんでcfos遺伝子発現とソマトスタチンmRNA転写が起ること(小幡),ヒヨコ有毛細胞でアセチルコリンはムスカリン受容体に作用し,C^<2+>_a遊離によるKコンダクタンス上昇(大森)が明らかにされた。 | KAKENHI-PROJECT-03NP0101 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03NP0101 |
大腸菌のリボゾームタンパク質の細胞内プロセシング | 本年度の研究を通じて、リボゾーム蛋白質S18のアセチル化に関与する遺伝子rimIの全塩基配列を決定し、トランスポゾンγδの挿入による遺伝子不活性化実験を行ない、さらにマキシセル中での発現を調べ、rimIを含むオペロンの構造を明らかにした。rimI遺伝子は429の塩基対の大きさであり、約16Kdの蛋白質をコードしている。現在S1マッピング法により、この遺伝子の細胞内での転写産物を解析している。同様な方法で、rimIとは独立にクローニングを行なって、リボゾーム蛋白質S5のアセチル化に関与する遺伝子rimJの構造と、その発現を解析した。その結果、これらの2つの遺伝子の支配するアセチル化酵素は、基質特異性が異なるだけでなく、構造(塩基配列)も全く異なっていることがわかった。rimJの遺伝子のより詳細な構造解析は現在進行中である。一方、リボゾーム蛋白質L12のN末端はrimL遺伝子の産物でアセチル化されていることがわかっているが、このrimL遺伝子を染色体地図上に位置づける試みは成功しなかったので、大腸菌の野生株の全ゲノムDNAを制限酵素Sau3Aで限定分解し、得られた約40Kbの断片をコスミドpHc79に挿入し、λファージのin vitropackagingを利用してrimLのクローニングを行なった。その結果、rimLをもつクローンが得られたので、このクローンのプラスミドを回収し、制限酵素地図を作成した。その結果、rimLは約3.2KbのSalI断片に含まれることがわかったので、現在その構造解析を進めている。サザンブロット法での解析の結果、rimLとrimIの間にも相同性のないことがわかった。したがって、大腸菌の3種のリボゾーム蛋白質(S5,S18およびL12)をアセチル化する酵素は、構造的に全く異なっていることになり、進化的に興味深い。本年度の研究を通じて、リボゾーム蛋白質S18のアセチル化に関与する遺伝子rimIの全塩基配列を決定し、トランスポゾンγδの挿入による遺伝子不活性化実験を行ない、さらにマキシセル中での発現を調べ、rimIを含むオペロンの構造を明らかにした。rimI遺伝子は429の塩基対の大きさであり、約16Kdの蛋白質をコードしている。現在S1マッピング法により、この遺伝子の細胞内での転写産物を解析している。同様な方法で、rimIとは独立にクローニングを行なって、リボゾーム蛋白質S5のアセチル化に関与する遺伝子rimJの構造と、その発現を解析した。その結果、これらの2つの遺伝子の支配するアセチル化酵素は、基質特異性が異なるだけでなく、構造(塩基配列)も全く異なっていることがわかった。rimJの遺伝子のより詳細な構造解析は現在進行中である。一方、リボゾーム蛋白質L12のN末端はrimL遺伝子の産物でアセチル化されていることがわかっているが、このrimL遺伝子を染色体地図上に位置づける試みは成功しなかったので、大腸菌の野生株の全ゲノムDNAを制限酵素Sau3Aで限定分解し、得られた約40Kbの断片をコスミドpHc79に挿入し、λファージのin vitropackagingを利用してrimLのクローニングを行なった。その結果、rimLをもつクローンが得られたので、このクローンのプラスミドを回収し、制限酵素地図を作成した。その結果、rimLは約3.2KbのSalI断片に含まれることがわかったので、現在その構造解析を進めている。サザンブロット法での解析の結果、rimLとrimIの間にも相同性のないことがわかった。したがって、大腸菌の3種のリボゾーム蛋白質(S5,S18およびL12)をアセチル化する酵素は、構造的に全く異なっていることになり、進化的に興味深い。 | KAKENHI-PROJECT-60214026 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60214026 |
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