title
stringlengths 0
199
| text
stringlengths 3
3.18k
| id
stringlengths 23
32
| url
stringlengths 56
65
|
---|---|---|---|
岩手県九戸郡山形村沼袋在、大型石刃出土地点の発掘調査 | 日本旧石器時代に関する最近の研究において、石材の消耗過程に表われる原石産地遺跡と各消費地遺跡間の関係性から先史狩猟採集民の居住形態・移動様式を推測しようとする新しい研究法が注目されている。この観点に立つと、早坂平遺跡の石器分析によって明らかとなった次の諸点が重要である。1.在地産頁岩の露頭から直線距離して百メ-トル余の地点に位置する原石産地遺跡であること。2.石器素材として利用可能な良質の頁岩の露頭範囲が狭く、そのため大産地にしばしば見られるように利用時期が重複したり、その場での作業が複合したりしていないこと。3.考古学的時間でいえば、この遺跡が利用された期間はきわめて短く極端にいえば、一回性として限定できること。4.遺跡は原石そのものを採りに来た場所でなく、その場で大型の原石を加工してその後に使う石核・石刃の形態にして持ち出していること。5.石刃技法は一義的でなく、石材の形態に応じた技術的変異を明示していること。6.遺跡では石器素材の獲得以外の活動は行われていないこと。7.編年・系統関係の示準となる特定の石器器種を組成していなくてもそのことがかえってその場の機能を単純に示唆できる点を示していること。8.奥羽山脈以西の珪質頁岩地帯の石刃石器群とは異質の石器群が北上高地以東に存在するらしいこと。現在、発掘参加者による報告書の分担執筆がほぼ完了し、原稿が印刷にまわされている。小生の分担は、まとめとしての総論「日本旧石器時代構造変動試論」である。昭和53年の道路改修工事の際、山形村在住の長内三蔵氏が大型石刃類を採集していた早坂平遺跡を平成元年8月27日から9月5日にわたって発掘調査した。遺跡は久慈川上流、川井川と遠別川の合流点に向かって延びる河岸段丘上に位置する。黒色表土層下に6層のロ-ム層が確認された。N層が大型石刃石器群、III層が尖頭器の包含層で、表土から縄文時代前期前半の土器が出ており、V層とII層に降下火山灰の可能性もみられるので、東北地方北半の太平洋側の基準編年となりえよう。大型石刃石器群は約300点からなり、掻器1点、彫器2点、石槌1点の他は石核の整形・調整と石刃剥離に際して生じた剥片が多く、当遺跡は遠別川対岸100メ-トルの地点で見つかった頁岩露頭から石材を運んできて、石器素材の石刃を生産した製作址と考えられる。石核から想定できる剥離技術は極めて特異で、奥羽山系の石刃石器群にみられる石刃技法とは地域差を示している。尖頭器は採集資料1点、発掘資料6点の計6点と尖頭器を製作する際に生じるポイント・フレイクが数点出土した。尖頭は全長が10センチ前後の木葉形を呈するものが多く、縄文時代直前のものと考えられる。以上のように石器は道路で削平された部分にブロックの半分を有する大型石刃の一群と、それよりやや上層の南側に分布する尖頭器(石槍)の一群の二群が確認された。石刃石器群は地理的分布からみて北海道渡島半島と東北奥羽出脈以西の大型石刃石器群と何らかの関係を有するものと考えられるが、在地産の頁岩を使っていることや石刃の剥離技術等に地域的特色がみられ、その性質の同定は現在進めている整理作業の結果を待って、報告書のなかで行う予定である。日本旧石器時代に関する最近の研究において、石材の消耗過程に表われる原石産地遺跡と各消費地遺跡間の関係性から先史狩猟採集民の居住形態・移動様式を推測しようとする新しい研究法が注目されている。この観点に立つと、早坂平遺跡の石器分析によって明らかとなった次の諸点が重要である。1.在地産頁岩の露頭から直線距離して百メ-トル余の地点に位置する原石産地遺跡であること。2.石器素材として利用可能な良質の頁岩の露頭範囲が狭く、そのため大産地にしばしば見られるように利用時期が重複したり、その場での作業が複合したりしていないこと。3.考古学的時間でいえば、この遺跡が利用された期間はきわめて短く極端にいえば、一回性として限定できること。4.遺跡は原石そのものを採りに来た場所でなく、その場で大型の原石を加工してその後に使う石核・石刃の形態にして持ち出していること。5.石刃技法は一義的でなく、石材の形態に応じた技術的変異を明示していること。6.遺跡では石器素材の獲得以外の活動は行われていないこと。7.編年・系統関係の示準となる特定の石器器種を組成していなくてもそのことがかえってその場の機能を単純に示唆できる点を示していること。8.奥羽山脈以西の珪質頁岩地帯の石刃石器群とは異質の石器群が北上高地以東に存在するらしいこと。現在、発掘参加者による報告書の分担執筆がほぼ完了し、原稿が印刷にまわされている。小生の分担は、まとめとしての総論「日本旧石器時代構造変動試論」である。 | KAKENHI-PROJECT-01510243 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01510243 |
口腔カンジダ菌の病原性獲得に関わる因子の検討ならびに抗菌ペプチドによるその制御 | 口腔カンジダ症に対する新しい治療戦略を構築すべく口腔カンジダの病原性獲得に関連する因子を検討した結果、口腔カンジダの病原性獲得には唾液中のラクトフェリンやヒスタチン5などの抗菌ペプチドの減少が大きく関与していることが明らかとなった。この結果は、抗菌ペプチドが口腔カンジダ症の発症予防ならびに治療に有用である可能性を示唆しているものと思われる。口腔カンジダ症に対する新しい治療戦略を構築すべく口腔カンジダの病原性獲得に関連する因子を検討した結果、口腔カンジダの病原性獲得には唾液中のラクトフェリンやヒスタチン5などの抗菌ペプチドの減少が大きく関与していることが明らかとなった。この結果は、抗菌ペプチドが口腔カンジダ症の発症予防ならびに治療に有用である可能性を示唆しているものと思われる。【目的】口腔常在菌として存在するカンジダ菌が病原性を獲得する機序については十分に明らかにされていない。そこで、カンジダ菌の遺伝子型と病原性との関連の有無を検討した。【対象および方法】口腔カンジダ症患者の口腔内より分離したカンジダ菌101株を対象とし、CHROMagarにてC.albicans、C.tropicalisおよびC.kruseiを同定し、それ以外のコロニーについては、血液寒天培地およびAPI 20C AUX培地を用いて菌種を同定した(Phenotyping)。これらとともに一方では、カンジダ菌よりDNAを抽出し、DiversiLabシステムにてRep-PCR解析を行なうとともに、一部の菌では25S rRNAのPCRあるいはrDNAのITS1-5.8S-ITS2領域のシークエンスを行いました(Genotyping)。さらには、各カンジダ菌に対するAMPH-B、FLCZおよびITCZのMICを測定した。【結果】(1)カンジダ菌のPhenotypeは、C.albicansが59株(58.4%)、C.glabrataが26株(25.7%)、C.tropicalisが8株(8.0%)、C.parapsilopsisが4株(4.0%)、C.kruseiが2株(2.0%)、C.guiliemondiiが2株(2.0%)であった。(2)Genotypingの結果、PhenotypingによりC.albicansと判定されたものの中にC.dubliniensisが存在することが明らかとなった。(3)Rep-PCR解析(カットオフ値:95%)にて、C.albicans(54株)およびC.glabrata(26株)のGennotypeはいずれの菌も6グループに分類された。(4)C.albicansおよびC.glabrataいずれの菌においても、GenotypeとAMPH-B、FLCZおよびITCZのMICとの間に関連は認められなかった。【まとめ】口腔カンジダ菌において、PhenotypingによりC.albicansと判定されたものの中にC.dubliniensisが存在することが明らかとなった。c.albicansおよびc.glabrataずれの菌においても、Genotypeと抗真菌剤に対する感受性との間に関連は認められなかった。【目的】口腔常在菌として存在するカンジダが口腔内において病原性を獲得する機序を明らかにすべく、カンジダの遺伝子型と病原性との関連を検討するとともにその病原性に及ぼす唾液の影響を検討した。【材料および方法】口腔カンジダ症患者の口腔内より分離したCandida albicans (C.albicans)の遺伝子型をRep-PCR法にて解析するとともに、カンジダの増殖能、上皮への付着能、プロテアーゼ/ホスホリパーゼ産生能、SAP活性、菌糸形成に関与する遺伝子の発現、抗真菌剤に対する感受性を測定し、両者間の関連を検討した。さらに、これらの病原性に及ぼす健常人および口腔カンジダ症患者の唾液の影響を検討した。【結果】分離されたC.albicansは、Rep-PCR解析のカットオフ値を95%に設定すると6グループに分けることができた。C.albicansの増殖能および上皮細胞への付着能はグループ間に違いは認められなかった。さらに、SAP2、EFG1、CPH1、HWP1、TUP1、NRG1およびRFG1のmRNA発現レベルにおいてもグループ間に違いはなく、アムホテリシンBおよびイトラコナゾールに対する感受性もグループ間に差は認められなかった。これらとともに、C.albicansの増殖能および上皮細胞への付着能は唾液により抑剃され、その抑制の程度は口腔カンジダ症患者の唾液によるものが健常人の唾液によるものより強かった。しかし、カンジダにおけるSAP2、EFG1、CPH1、HWP1、TUP1、NRG1およびRFG1のmRNA発現レベルは唾液の影響をほとんど受けなかった。【まとめ】以上より、C.albicansの病原性は遺伝子型によって規定されているのではなく、唾液等の環境因子によって規定されるのではないかと考えられた。口腔常在菌として存在するカンジダがどのような機序で病原性を獲得するかについては十分には明らかにされていないが、口腔内に存在するカンジダが病原性を獲得するためには口腔内の種々の因子が関与していると考えられる。そこで、カンジダの病原性に及ぼす好中球、口腔粘膜上皮からの液性因子等の影響を明らかにするとともに、我々が開発したラクトフェリン由来抗菌ペプチド(Peptide 2)のカンジダの病原性獲得に及ぼす影響および安全性を検討した。1.カンジダを健常人より分離した末梢血好中球と非接触状態で共 | KAKENHI-PROJECT-22592217 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22592217 |
口腔カンジダ菌の病原性獲得に関わる因子の検討ならびに抗菌ペプチドによるその制御 | 培養すると、カンジダの増殖および菌糸形成が抑制された。2.カンジダを健常人より分離した口腔粘膜上皮細胞と非接触状態で共培養した時のカンジダの増殖および菌糸形成は、いずれもカンジダ単独培養と同程度であった。3.口腔カンジダ症患者より分離したカンジダを各濃度のPeptide 2およびHistatin 5で処理したところ、いずれのカンジダも両抗菌ペプチド濃度依存的に増殖ならびに菌糸形成が抑制された。4.カンジダの増殖を抑制する低濃度のPeptide2で株化口腔扁平上皮癌細胞(OSC細胞)あるいは健常人より分離した口腔粘膜上皮細胞を処理しても、これらの細胞の増殖は抑制されなかった。以上より、口腔のカンジダの増殖は主に唾液中の好中球によって制御されているとともに、その制御に対する抗菌ペプチドの有用性が明らかとなった。得られた結果はNegative dataではあるものの、当初の研究計画に沿った研究を実施することができていることより、おおむね順調に進展していると評価した。24年度が最終年度であるため、記入しない。以下の検討を行う。1)カンジダの病原性に及ぼす免疫担当細胞の影響:カンジダを健常人より分離した末梢血好中球あるいは単核球と混合培養し(直接コンタクトさせ培養する系とミロポアフィルターを介して非接触状態で培養する系の両者で行う)、その後、カンジダの病原性を検討する。2)カンジダの病原性に及ぼす口腔粘膜上皮細胞の影響:カンジダを健常人より分離した口腔粘膜上皮細胞と共培養し(直接コンタクトさせ培養する系とミロポアフィルターを介して非接触状態で培養する系の両者で行う)、その後、カンジダの病原性を検討する。3)抗菌ペプチドのカンジダの病原性に及ぼす影響:各種のカンジダを抗菌ペプチド(Peptide 2およびHistatin 5)で処理し、カンジダの病原性に及ぼす影響を検討する。4)抗菌ペプチドの安全性薬理試験・薬物動態試験・毒性試験5)抗菌ペプチドの免疫毒性試験・生殖・発生毒性試験6)抗菌ペプチドの遺伝毒性試験・癌原性試験・局所刺激性試験24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22592217 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22592217 |
カタクチイワシの回遊二型における成長と回遊履歴の解析 | カタクチイワシの飼育実験の結果、耳石に見られる微細輪紋は水温15°C以上では1日1本の日周性をもつが、12°Cでは日周性はなくなることがわかった。餌量は輪紋間隔に影響した。耳石に含まれるマンガン、ストロンチウムなど68種の微量元素を分析した結果、元素組成により60100%の正しさで採集海域が判別できた。誤判別は互いに近い地点間であった。発生時からある程度の空間的まとまりをもって分布し、成長していくことが示唆された。カタクチイワシの飼育実験の結果、耳石に見られる微細輪紋は水温15°C以上では1日1本の日周性をもつが、12°Cでは日周性はなくなることがわかった。餌量は輪紋間隔に影響した。耳石に含まれるマンガン、ストロンチウムなど68種の微量元素を分析した結果、元素組成により60100%の正しさで採集海域が判別できた。誤判別は互いに近い地点間であった。発生時からある程度の空間的まとまりをもって分布し、成長していくことが示唆された。1.全国各地10地点から採集した成魚耳石サンプルについてICP-AESを用いて6つの微量元素(Sr,Na,Zn,Mn,Fe,Mg)の発光強度を測定した。判別関数分析により10地点のサンプルを関数値から地理的な整合性のある7つのグループに分類することができた。中でも相模湾と燧灘については、他のサンプルとは明瞭に異なる元素組成を示した。2.2006年4月2007年7月に、相模湾でほぼ毎月、計12回にわたって本種を採集した。各サブサンプルについて前項と同様に処理し、耳石中の各元素およびCaの濃度を推定した。Mn,Mg,Srの季節変化から4つの季節グループに大別できた。相模湾には夏と冬に高いMn/Ca比を示す回遊履歴の異なる個体群が出現することが分かった。3.カタクチイワシの未成魚および成魚をいくつかの条件の下で飼育し、耳石微細輪紋に標識を導入して、微細輪紋の日周性についての検証と、餌および水温の影響について調べた。これより、冬季の低水温下では不明瞭になるが、カタクチイワシの未成魚・成魚期の耳石に明瞭に見られる輪紋は日周輪であることがわかった。また、輪紋間隔は餌環境の影響を受けることがわかった。1.成魚期における耳石微細輪紋の日周性の水温による影響を調べるために、15°Cと12°Cの一定水温で飼育実験を行った。ALCによる二重染色法によりその間の経過日数と輪紋数を比較した。その結果体長10cmを超える成魚期に於いても15°Cでは輪紋間隔が非常に狭くなるものの日周性を確認できた。一方。12°Cでは輸紋構造は不鮮明になり、輪紋数を読み取ることは困難であった。冬季には15°C以下の水温を実際に経験することがあり得るので、冬季を経たと想定される個体で輪紋構造が不鮮明な部分がある場合には齢査定には注意が必要であることがわかった。2.太平洋系群として、相模湾、銚子沖、常磐沖、道東沖、本州東方沖合の5地点、ならびに比較のために対馬暖流系群に属する長崎沖の標本を用いて、ICP-AESによりSr,Na,Zn,Mn,Fe,Mgの6元素を分析した。系群の異なる長崎沖標本の元素組成はほかと完全に区別された。太平洋系群においても78%が元素組成により採集地点が判別できた。6元素の中ではMnとSrが判別に寄与していた。本州東方沖合域標本はほかの海域と区別された。誤判別は太平洋岸の互いに近い地点であった。多くの個体は南北、東西に広く回遊せず、一部が近接海域と交流していると考えられる。1.ICP-AESによる耳石微量元素組成の地理的変異:北海道から九州まで、さらに本州東方沖合移行域を含めて計13海域で採集されたカタクチイワシ成魚耳石を用いて、Mn、Fe、Mg、Sr、Ba、Naの6元素の対Ca重量比を求めた。判別関数分析の結果、正判別率は56.9%となった。海域ごとにある程度のクラスターを形成し、誤判別となったサブサンプルの多くは地理的に比較的近い海域間で生じた。各海域の個体鮮である程度まとまりつつも、生息海域の重複があることが示された。正準得点のMnで特徴づけられる軸は採集点の沿岸-沖合方向の配置と一致し、Srで特徴つけられる軸はおよそ南北方向と一致した。2.IA-ICP-MSによる生活史を通した耳石微墨元素:レーザー照射型の耳石微量元素分析により個体の生活段階ごとに分析した。移行域と三陸から熊野などまでの計10海域において採集されたカタクチイワシについて耳石中のLi、Na、Mg、K、Mn、Sr、Ba、Caのイオンカウント数を測定し、各元素の対Ca mol比を算出した。レーザーを照射するスポットは、核から縁辺に向け各個体につき計6スポットとした。 | KAKENHI-PROJECT-20580195 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20580195 |
カタクチイワシの回遊二型における成長と回遊履歴の解析 | スポット内海域間での判別分析の正判別率は、SP0で50.0%、LP1で70.0%、LP2で72.5%、LP3で75.0%、LP4で82.6%、LP5で100.0%となり、体長が大きくなるにつれて正判別率が高くなった。SP0内およびLP1内での海域間誤判別は様々な海域に及び、最も離れた移行域B-熊野灘間でも生じたことから、生活史初期においては、サンプル全体での交流が存在する。しかし、スポット0で50.0%という正判別率を示したことと、発達と共に判別率が上昇したことから、発生時からある程度の空間的まとまりをもって成長していくと考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-20580195 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20580195 |
ペルー近海における外洋と沿岸の海洋力学リンクに関する学術調査 | 2015年に各地で異常気象を引き起こしたエルニーニョ現象は2016年末にはラニーニャ現象に遷移することが予報され、エルニーニョ・サイクルの不規則性がますます際立ってきた。本研究ではこれまで独立して実施されることが多かった沿岸と外洋の観測を連携して実施、近年のエルニーニョ・サイクルの変遷の原因を明らかにすることをめざす。今年度はペルー沿岸域での継続観測と外洋域での亜表層観測を実施した。また、沿岸と外洋のクロスカッティングな解析について基盤を構築した。具体的には前年度に引き続き、ペルー沿岸にてデータロガーの観測を実施した。前年度の観測の結果、塩分センサ内蔵のデータロガーの信頼性を考慮に入れ、継続性を重視しつつ適切にセンサを選択した。7月、2月に海外調査を行い、これまでのデータを回収・確認するとともにあらたなロガーを設置することができた。ENSOイベントが活性化している時期に継続的に取得していた水温時系列データを更新できたことは本海外調査の大きな成果である。また、外洋の観測としては、深海型自動昇降型ブイ観測を実施し、現在までに7プロファイルの水温塩分データを取得している。データはJAMSTEC Argoのサイトから公開されている。昇降のタイミングを1ヶ月毎とすることで、想定通り、疑似係留観測として同海域にとどまっていることを確認できた。今後、これらのデータを同時に解析することで海洋環境の把握とペルー沿岸域への影響評価を大きく前進させることに資する。当初計画通り、沿岸観測としてペルーでのロガー観測とそれに付随する渡航調査を2回実施し、データを取得できた。また、外洋観測として、こちらも計画通りに自動昇降型ブイによる亜表層観測を実施し、継続的にプロファイルを取得している。どちらもロガーの入れ替え、フロートミッションの更新など、順調に進捗し、研究計画通りの海外調査を続けている。本年度に引き続き、ペルー沿岸にて時系列水温・塩分データを継続して取得する。そのためデータロガーの回収・設置を、2回(8月、2月予定)、ペルーに渡航し行う。渡航調査にあたっては、研究協力者(海外共同研究者)であるLa Molina国立農科大学水産学部のLuis Icochea教授の協力を得る。同時に、海洋地球研究船「みらい」にて投入に成功した深海型自動昇降型ブイによる疑似係留観測を継続する。これにより外洋での海洋亜表層変動を把握し、先の沿岸データからあらわになった海況変動との関連などを調べ、科学的知見を獲得する。2015年に各地で異常気象を引き起こしたエルニーニョ現象は2016年末にはラニーニャ現象に遷移することが予報され、エルニーニョ・サイクルの不規則性がますます際立ってきた。本研究ではこれまで独立して実施されることが多かった沿岸と外洋の観測を連携して実施、近年のエルニーニョ・サイクルの変遷の原因を明らかにすることをめざす。今年度はペルー沿岸域での継続観測と外洋域での亜表層観測を実施した。また、沿岸と外洋のクロスカッティングな解析について基盤を構築した。具体的には前年度に引き続き、ペルー沿岸にてデータロガーの観測を実施した。前年度の観測の結果、塩分センサ内蔵のデータロガーの信頼性を考慮に入れ、継続性を重視しつつ適切にセンサを選択した。7月、2月に海外調査を行い、これまでのデータを回収・確認するとともにあらたなロガーを設置することができた。ENSOイベントが活性化している時期に継続的に取得していた水温時系列データを更新できたことは本海外調査の大きな成果である。また、外洋の観測としては、深海型自動昇降型ブイ観測を実施し、現在までに7プロファイルの水温塩分データを取得している。データはJAMSTEC Argoのサイトから公開されている。昇降のタイミングを1ヶ月毎とすることで、想定通り、疑似係留観測として同海域にとどまっていることを確認できた。今後、これらのデータを同時に解析することで海洋環境の把握とペルー沿岸域への影響評価を大きく前進させることに資する。当初計画通り、沿岸観測としてペルーでのロガー観測とそれに付随する渡航調査を2回実施し、データを取得できた。また、外洋観測として、こちらも計画通りに自動昇降型ブイによる亜表層観測を実施し、継続的にプロファイルを取得している。どちらもロガーの入れ替え、フロートミッションの更新など、順調に進捗し、研究計画通りの海外調査を続けている。2015年に各地で異常気象を引き起こしたエルニーニョ現象は2016年末にはラニーニャ現象に遷移することが予報され、エルニーニョ・サイクルの不規則性がますます際立ってきた。本研究ではこれまで独立して実施されることが多かった沿岸と外洋の観測を連携して実施、近年のエルニーニョ・サイクルの変遷の原因を明らかにすることをめざす。平成29年度はペルー沿岸域での継続観測の実施と外洋域での亜表層観測の準備を行った。具体的にはこれまでに継続的に実施していたペルー沿岸でのデータロガーを用いた水温観測を充実させながら、電気伝導率ロガーを用いた沿岸の塩分観測を実施した。実施には現地研究協力者のラ・モリーナ国立農科大学水産学部Luis Icochea教授の協力を得た。電気伝導度ロガーに関しては、海洋研究開発機構の試験バス、塩分検定装置などを活用することで事前検定を高精度で行っている。 | KAKENHI-PROJECT-17H04579 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H04579 |
ペルー近海における外洋と沿岸の海洋力学リンクに関する学術調査 | 平成29年8月、平成30年2月の2回、海外調査を行い、予定していたペルー沿岸の観測地点8か所を中心にこれまでの水温データを回収・確認するとともに新たな水温・電気伝導率ロガーを設置することができた。また、並行して水温の鉛直分布観測も実施した。外洋の観測としては、現地船舶事情などの関連で平成29年度中の投入ができなかったため、深海型自動昇降型ブイのデータ送信機能確認のための通信試験などを行い陸上での準備を整えた。また、ブイ投入予定海域付近のArgoフロートデータの解析を実施した。深海型自動昇降型ブイは平成30年12月に海洋地球研究船「みらい」にて投入した。沿岸観測としてペルーでのロガー観測とそれに付随する渡航調査を2回実施し、データを取得できた。また、外洋観測として、深海型自動昇降型ブイの投入準備を完了し、平成30年12月に当該海域に投入した。投入までの期間は周辺海域のArgoフロートでモニタリングを続け、外洋の海洋環境把握を実施することでカバーした。深海型自動昇降型ブイの疑似係留観測の検証に関しては、平成31年からの観測でも本研究の取りまとめ時期には間に合うと考えている。本年度に引き続き、ペルー沿岸にて時系列水温・塩分データを継続して取得する。そのためデータロガーの回収・設置を、2回(8月、2月予定)、ペルーに渡航し行う。渡航調査にあたっては、研究協力者(海外共同研究者)であるLa Molina国立農科大学水産学部のLuis Icochea教授の協力を得る。同時に、海洋地球研究船「みらい」にて投入に成功した深海型自動昇降型ブイによる疑似係留観測を継続する。これにより外洋での海洋亜表層変動を把握し、先の沿岸データからあらわになった海況変動との関連などを調べ、科学的知見を獲得する。本年度に引き続き、ペルー沿岸にて時系列水温・塩分データを継続して取得する。そのためデータロガーの回収・設置を、平成30年度に2回(7-8月、2月)、ペルーに渡航して行う。その後も引き続き年2回の渡航調査にて継続的な沿岸データを取得する予定しており、現地研究協力者との調整を行っている。平成30年度12月に、海洋地球研究船「みらい」にて投入の深海型自動昇降型ブイを用いて疑似係留観測を実施しつつ、Argoフロートデータなども活用しながら、外洋での海洋亜表層変動を把握する。深海型自動昇降型ブイのデータが蓄積した時点で、沿岸、外洋のデータを比較し、科学的知見を獲得する。 | KAKENHI-PROJECT-17H04579 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H04579 |
宇宙の音:ミューオン検出器を用いた素粒子楽器のアートディレクション | 実験物理学者とサウンドアーティスト/デザイナーの協働によって、宇宙の音(エネルギーの振動)を人間が享受する体験を創造できるのではないか。そうした問いのもと、本研究の目的は、地球上に降り注ぐ宇宙線に含まれる素粒子の検出器を用いた楽器のプロトタイプを国際・学際協働して制作し、ユーザ体験と演奏を通じた検証を繰り返すことで、素粒子楽器の研究・実践を発展させる基盤をつくることである。また、本研究は素粒子物理と音楽をつなぐ方法をアートディレクションの視点から模索し、社会に展開するものである。実験物理学者とサウンドアーティスト/デザイナーの協働によって、宇宙の音(エネルギーの振動)を人間が享受する体験を創造できるのではないか。そうした問いのもと、本研究の目的は、地球上に降り注ぐ宇宙線に含まれる素粒子の検出器を用いた楽器のプロトタイプを国際・学際協働して制作し、ユーザ体験と演奏を通じた検証を繰り返すことで、素粒子楽器の研究・実践を発展させる基盤をつくることである。また、本研究は素粒子物理と音楽をつなぐ方法をアートディレクションの視点から模索し、社会に展開するものである。 | KAKENHI-PROJECT-19K13027 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K13027 |
低コストで使い捨てが可能な歩行計測用スマートインソールの開発 | ■研究の目的:「歩き方」や「走り方」を評価するために,市販の安価なセンサと他の材料を組み合わせて,足底荷重分布と足圧中心軌跡,足部アーチの動的変化を携帯端末でリアルタイム計測できる,低コストで使い捨てが可能な歩行計測用機器を開発する。■研究の意義:「高価で,高性能な」部品と特殊な加工技術を用いる精密機器開発における従来の発想を転換させ,誰でも入手できる「安価で,低精度な」部品を用いて,これまでと同等以上の性能をもつ歩行計測用機器の開発に挑戦する。研究成果は,スポーツ指導,転倒メカニズムの解明,下肢機能の評価,術前・術後の比較分析を行う場面で貢献し,歩行分析の発展に学術的・社会的意義をもたらす。■研究の目的:「歩き方」や「走り方」を評価するために,市販の安価なセンサと他の材料を組み合わせて,足底荷重分布と足圧中心軌跡,足部アーチの動的変化を携帯端末でリアルタイム計測できる,低コストで使い捨てが可能な歩行計測用機器を開発する。■研究の意義:「高価で,高性能な」部品と特殊な加工技術を用いる精密機器開発における従来の発想を転換させ,誰でも入手できる「安価で,低精度な」部品を用いて,これまでと同等以上の性能をもつ歩行計測用機器の開発に挑戦する。研究成果は,スポーツ指導,転倒メカニズムの解明,下肢機能の評価,術前・術後の比較分析を行う場面で貢献し,歩行分析の発展に学術的・社会的意義をもたらす。 | KAKENHI-PROJECT-19K22810 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K22810 |
最適化手法に基づく複数住宅での温水需要予測技術とマネジメント技術の開発 | 本研究では、温水の融通・共有により高効率給湯器をより効果的に活用し、経済性、省エネルギー、環境負荷低減といった導入効果を最大化するためのマネジメントシステムの開発を行った。エネルギー需要予測手法を開発し、それを組み込んだ予測モデル、最適化モデル、逐次運用モデルの3つから構成されるエネルギーマネジメントシステムを開発した。需要予測手法としては、ボトムアップアプローチによる手法とサポートベクター回帰による手法とを開発した。実際の住宅のエネルギー需要を用いて運用シミュレーションを行い、性能を評価・検証した。本研究課題の研究項目は、予測モデルと最適化モデル、逐次運用モデルおよび検証実験から構成される。これらについて、平成26年度の実施状況は次の通りである。[予測モデル]複数住戸(2-6戸)単位の温水消費を、前日に予測する手法開発のための影響因子を抽出するために、温水消費データの解析を行った。外気温、居住者の在宅/不在宅状況、平日/休日、湯張りの有無および過去のエネルギー消費実績と実際のエネルギー消費実績との相関を調べた。その結果からは、特定の一つの因子が支配的であるとの確証は得られなかった。そこで、複数の因子による予測手法の検討を行った。サポートベクターマシンを用いた統計的手法による予測と、湯張り、追い焚きおよびシャワーといった用途別消費データに基づくボトムアップアプローチによる予測の両方について検討を行った。戸別の需要および複数住戸の一括需要の両方の予測について検討を行った。いずれも予測モデルのプロトタイプを構築し、パラメータ調整等を行いながら、モデルのブラッシュアップを行っている。[最適化モデル]予測手法の開発と並行して、予測需要をもとに翌日の機器最適運用計画を立案するモデルの開発を行った。数理計画法により温水融通・共有を行う複数住戸を一括して最適化するモデルを構築した。目的関数は複数住戸のエネルギー費用(電気代+ガス代)合計値の最小化(経済性)とした。制約条件としては、給湯器の運転制約(起動停止頻度、運転時間)や部分負荷効率、温水融通時や貯湯槽における放熱特性を考慮した。以上を混合整数問題として定式化したモデルを構築した。平成27年度は、予測モデル、最適化モデルおよび逐次運用モデルを構築し、それらを統合して運用シミュレーションを行うDEM-SEM(Demand- side Energy Management Simulation and Evaluation Model)を開発した。住宅4戸を対象とした具体的なエネルギーシステムやエネルギー料金形態を複数想定してシミュレーションを行った。各モデルに関する実施状況は次の通りである。[予測モデル]前年度の解析結果をもとに、住戸単位の温水消費を前日に予測する手法を開発した。サポートベクターマシンを用いて、外気温、居住者の在宅/不在宅状況、平日/休日といった影響因子を学習データとして入力し、温水消費量を予測するモデルを構築した。影響因子の取捨選択や学習期間等による予測精度の違い、予測および逐次運用の結果について比較を行った。ボトムアップアプローチ予測手法についても一部アルゴリズムの見直しを行った。[最適化モデル]エネルギー費用最小化(経済性)に加えて、一次エネルギー最小化およびCO2排出量最小化も考慮した多目的最適化モデルに拡張した。また、異なるエネルギーシステムを扱えるようにモデルの見直しを行った。[逐次運用モデル]運用計画に基づいて、当日、温水消費やタンクの貯湯量を考慮しながら逐次運用するため、逐次、機器を制御する機能と運用計画を修正する機能とを構築した。シミュレーションはDEM-SEM上で行うこととしており、10分毎に、温水消費状況から湯張り時刻等予測を修正し、貯湯量を考慮して、最適化モデルにより修正した運用計画を立案する機能を構築した。[検証実験]検証実験のための準備として実験設備の改造・追加を行った。沸かし上げ量を制御できるようにCO2ヒートポンプ給湯機を改造し、コージェネの熱供給に見合った温水を供給するための設備を増設した。各モデルについて順調に構築が完了するとともに、全体を統括して運用シミュレーションを行うDEM-SEMを構築した。検証実験の整備もハードウェアについては完了した。以上から、平成27年度の目標は達成されている。本研究では、住宅のエネルギー需要予測技術と、それを実装した予測モデルおよび最適化モデルと逐次運用モデルから構成されるエネルギーマネジメントシステム(EMS)とを開発した。[住宅のエネルギー需要予測技術]エネルギー需要(電気・温水)予測手法を開発した。予定では、温水のみを対象としていたが、電気についても対象に含めた。温水については、住宅のエネルギー需要データ(電気・温水、6戸、2秒間隔、4年間)を解析し、過去のエネルギー消費実績と、エネルギー消費行動や各種環境要因(過去の同時刻の温水消費実績、気温、平日/休日、在宅/不在宅)との相関を調べ、温水消費行動分析に基づくボトムアップ予測手法と、サポートベクター回帰(SVR)を用いた手法の、2つの手法を構築した。[EMS]予測モデルのほかに、最適化モデルと逐次運用モデルとを構築し、EMSモデルを構築した。需要家のエネルギーシステムとしては、住宅4戸に対し、家庭用燃料電池やヒートポンプ給湯機を設置した場合を想定した。住戸間における電気・温水の融通や共同利用も想定した。機器仕様(性能、貯湯容量)と機器の組み合わせ、運用制約(逆潮流と温水融通の可否)およびエネルギー価格(経済性)について、様々に想定して運用シミュレーションを行った。最適化モデルでは、機器の特性や運転制約などを考慮した多目的の混合整数計画モデルを構築し、需要予測に基づいて機器運用計画を立案する。逐次運用モデルでは、運用計画に従って運用を行いながら、状況の変化に応じて運用計画を修正していく。 | KAKENHI-PROJECT-26420892 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26420892 |
最適化手法に基づく複数住宅での温水需要予測技術とマネジメント技術の開発 | また、機器の状況や温水消費状況により需要予測や運用計画を見直す機能も実装した。[検証実験]最後に、実際の給湯機器から構成される実験設備を用いて、構築したEMSの動作と効果の検証を試みるべく、実験設備の構築を行った。本研究では、温水の融通・共有により高効率給湯器をより効果的に活用し、経済性、省エネルギー、環境負荷低減といった導入効果を最大化するためのマネジメントシステムの開発を行った。エネルギー需要予測手法を開発し、それを組み込んだ予測モデル、最適化モデル、逐次運用モデルの3つから構成されるエネルギーマネジメントシステムを開発した。需要予測手法としては、ボトムアップアプローチによる手法とサポートベクター回帰による手法とを開発した。実際の住宅のエネルギー需要を用いて運用シミュレーションを行い、性能を評価・検証した。予測モデルについては温水消費データ解析が完了し、予測手法の検討に着手している。最適化モデルについても機器最適運用計画を立案するモデルの構築が完了している。以上から、平成26年度の目標は達成されている。DEM-SEMを活用し、異なるエネルギーシステムや料金形態にも対応したエネルギーマネジメントシステムの構築を目指す。エネルギーシステム工学予測モデルについてはサポートベクターマシンとボトムアップアプローチの2つの手法による予測手法の構築を目指す。最適化モデルについては多目的問題に拡張する。さらに逐次運用モデルを構築して、各モデルが連携し、エネルギーマネジメントシステムと機能するようなシステムの構築を図る。また次年度に予定している検証実験の準備を進める。次年度使用額は、文献、実験補助員費および検証実験設備の整備に要する費用の一部について、使用しなかったために生じた。文献および検証実験設備の整備に要する費用の一部は、他予算を充当したため、科研費を使用しなかった。実験補助員費は、研究代表者自らが作業を行ったため執行しなかった。次年度使用額は、文献、英文校閲および学会参加費について、使用しなかったために生じた。文献および学会参加費は、他予算を充当したため、科研費を使用しなかった。英文校閲は、執筆していた論文について予期せぬ成果が得られる見込みが出たため、さらに研究を続けてから提出すべきと判断し、平成26年度中に提出しなかったため執行しなかった。検証実験における予想外の不具合等に備えた予備的な資金として留保しておく。大きな不具合なく実験可能となった場合は、実験補助員費や成果発表に要する英文校閲や学会発表旅費等に充当することで、より多くのデータ取得・成果獲得や、積極的な成果発表のために活用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-26420892 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26420892 |
スーパーキャパシタ用非晶質マンガン酸化物電極のソノケミカル合成と特性評価 | 近年、電気自動車やハイブリッド自動車等に用いられる高出力電源の性能向上が求めれられている。昨年度までに高出力Liイオン電池用の電極材料として、非晶質マンガン酸化物を導電助剤であるアセチレンブラックやケッチェンブラック表面にコーティングしたナノ複合体をソノケミカル合成した。ケッチェンブラックとの複合体では10,50A g^<-1>という非常に大きな電流密度下でも放電容量の大きな低下は見られず、155,127mAh g^<-1>の初回放電容量を示した。最大1300m^3 g^<-1>と非常に大きな比表面積を有する炭素を用いることで、電気化学に対する有効体積が拡大して高速な充放電でも充分にリチウムとの反応が行われたためであると考えられる。本年度はこれらの複合体が、特にケッチェンブラックとの複合体がどのような微細構造を有しているかについて詳細に研究を行った。アセチレンブラックとの複合体では非晶質のマンガン酸化物がアセチレンブラックの表面に数ナノメートルの厚みでコーティジグされていることがTEMとEDSにより明確に確認された。一方、ケッチェンブラックとの複合体では、EDS分析によりケッチェンブラックの表面にマンガン酸化物が存在することが示唆されるが、TEM観察では明確なマンガン酸化物相は確認できなかうた。ケッチェンブラックは中空構造を有しておりその中にマンガン酸化物が存在する可能性もあったが、合成前後のBET比表面積により見積もった細孔体積の変化よりこれについては否定された。ケッチェンブラックの表面がアセチレンブラックと比較して起伏が非常に激しく、マンガン酸化物はその凹部分に少量堆積したような構造であるものと結論づけられる。このようにTEMによっても観察が難しいほどに薄くコーティングされていることが上述の既存の電池材料を凌駕するような高い高出力特性を導いたものと思われる。近年、電気自動車やハイブリッド型自動車等に用いられる高出力電源の性能向上が求めれられている。リチウム電池の高出力化のためにはリチウムイオン拡散距離の短縮と電子伝導性の向上が必要であり、電極材料のナノ化と導電助剤炭素との複合化が有効である。本研究はスーパーキャパシタ用の電極材料として、非晶質マンガン酸化物を導電助剤であるアセチレンブラック表面にコーティングしたナノ複合体をソノケミカル合成し、その特性を評価することを目的とする。マンガン酸化物はVII価の過マンガン酸イオンをIV価に還元することで得られるが、本研究では超音波照射によるソノケミストリーを用い還元を行った。超音波を水溶液に照射するとキャビティーが発生し、それが成長・崩壊する際には内部が数千度にも達するホットスポットと呼ばれる場が生じる。ホットスポット周辺では水の分解により還元性のラジカルが生じ、それらが主に還元反応を起こすものと思われる。合成後の複合体試料を透過電子顕微鏡により観察すると、導電助剤のアセチレンブラックの表面に非晶質の物質が数ナノメートルの厚みでコーティングされていた。EDS分析、ICP分析により、このコーティングはナトリウム含有水和マンガン酸化物であることが明らかとなった。この試料の電極性能を充放電試験により評価した。その結果、電流密度0.059、0.59、5.9、59A/gの条件で、それぞれ265,271,218,212mAh/gの初回放電容量が得られた。特に59A/gという高速充放電条件下では、約10秒というごく短時間で200mAh/g以上の要領が得られており、コーティング構造が高速充放電に適していることを表している。近年、電気自動車やハイブリッド自動車等に用いられる高出力電源の性能向上が求めれられている。昨年度までに高出力Liイオン電池用の電極材料として、非晶質マンガン酸化物を導電助剤であるアセチレンブラックやケッチェンブラック表面にコーティングしたナノ複合体をソノケミカル合成した。ケッチェンブラックとの複合体では10,50A g^<-1>という非常に大きな電流密度下でも放電容量の大きな低下は見られず、155,127mAh g^<-1>の初回放電容量を示した。最大1300m^3 g^<-1>と非常に大きな比表面積を有する炭素を用いることで、電気化学に対する有効体積が拡大して高速な充放電でも充分にリチウムとの反応が行われたためであると考えられる。本年度はこれらの複合体が、特にケッチェンブラックとの複合体がどのような微細構造を有しているかについて詳細に研究を行った。アセチレンブラックとの複合体では非晶質のマンガン酸化物がアセチレンブラックの表面に数ナノメートルの厚みでコーティジグされていることがTEMとEDSにより明確に確認された。一方、ケッチェンブラックとの複合体では、EDS分析によりケッチェンブラックの表面にマンガン酸化物が存在することが示唆されるが、TEM観察では明確なマンガン酸化物相は確認できなかうた。ケッチェンブラックは中空構造を有しておりその中にマンガン酸化物が存在する可能性もあったが、合成前後のBET比表面積により見積もった細孔体積の変化よりこれについては否定された。ケッチェンブラックの表面がアセチレンブラックと比較して起伏が非常に激しく、マンガン酸化物はその凹部分に少量堆積したような構造であるものと結論づけられる。このようにTEMによっても観察が難しいほどに薄くコーティングされていることが上述の既存の電池材料を凌駕するような高い高出力特性を導いたものと思われる。 | KAKENHI-PROJECT-03J01605 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03J01605 |
皮膚免疫の加齢変化における皮膚resident memory T細胞の役割の検討 | 20歳以上のさまざまな年齢において、16検体より直径6mm大の皮膚と7ml相当の血液を回収し、T細胞レパトア解析を行ったところ、血液中T細胞、皮膚T細胞とも、細胞数は若年者、高齢者で相違がなかったものの、血液中T細胞は、有意に多様性が減じることが判明した。一方で、皮膚T細胞の多様性は高齢者でも低下しなかった。このことから、皮膚T細胞が、血中T細胞と比較して、加齢過程で多様性を保ちつづけることが判明した。サイトカイン産生については、血中T細胞と比較して皮膚T細胞は強いサイトカイン産生能を有し、加齢に伴い、IL-17産生傾向からIFNg産生傾向へシフトすることがわかった。また、皮膚T細胞は、加齢に伴い表皮内に蓄積される傾向があり、resident memory T細胞のマーカーの中では、CD8 T細胞におけるCD49aの発現が高まることがわかった。CD49a発現は細胞のIFNg産生と相関することが知られており、CD49a発現CD8 T細胞の増数が、加齢に伴うIFNg産生細胞の増数を反映していると考えられた。今後、血中T細胞をCFSEでラベル付けした後に加熱処理黄色ブドウ球菌・カンジダ・サイトメガロウィルス断片と共培養し、T細胞の増殖能、抗原応答性のサイトカイン産生の変化を見極めると同時に、皮膚片にこれらの抗原を直接注入し、皮膚T細胞の増殖をKi-67陽性率で評価し、サイトカイン産生能もフローサイトメトリーで検討し、加齢に伴う血中T細胞と皮膚T細胞の反応性の相違を明らかにしていく。研究計画に沿って順調に結果が得られている。皮膚resident memory T細胞分画自体の加齢変化も、複数のマーカーを比較した結果、その中でCD49aのみに加齢との相関が見られた。また、T細胞レパトア解析も症例数を集めることができ、血液で有意に多様性が下がる一方で皮膚では保たれることが判明した。本年度の研究計画にも着手できている。今後は、皮膚T細胞、血中T細胞の抗原応答性に着目し、上述のように複数の加熱処理あるいは断片化した抗原を用いて、T細胞の抗原応答性の増殖能、サイトカイン産生能が加齢に伴いどのように変化していくか比較検討していく。20歳から100歳までの幅広い年齢層からの検体収集を継続していく。同時に論文化の準備を進める。20歳以上のさまざまな年齢において、16検体より直径6mm大の皮膚と7ml相当の血液を回収し、T細胞レパトア解析を行ったところ、血液中T細胞、皮膚T細胞とも、細胞数は若年者、高齢者で相違がなかったものの、血液中T細胞は、有意に多様性が減じることが判明した。一方で、皮膚T細胞の多様性は高齢者でも低下しなかった。このことから、皮膚T細胞が、血中T細胞と比較して、加齢過程で多様性を保ちつづけることが判明した。サイトカイン産生については、血中T細胞と比較して皮膚T細胞は強いサイトカイン産生能を有し、加齢に伴い、IL-17産生傾向からIFNg産生傾向へシフトすることがわかった。また、皮膚T細胞は、加齢に伴い表皮内に蓄積される傾向があり、resident memory T細胞のマーカーの中では、CD8 T細胞におけるCD49aの発現が高まることがわかった。CD49a発現は細胞のIFNg産生と相関することが知られており、CD49a発現CD8 T細胞の増数が、加齢に伴うIFNg産生細胞の増数を反映していると考えられた。今後、血中T細胞をCFSEでラベル付けした後に加熱処理黄色ブドウ球菌・カンジダ・サイトメガロウィルス断片と共培養し、T細胞の増殖能、抗原応答性のサイトカイン産生の変化を見極めると同時に、皮膚片にこれらの抗原を直接注入し、皮膚T細胞の増殖をKi-67陽性率で評価し、サイトカイン産生能もフローサイトメトリーで検討し、加齢に伴う血中T細胞と皮膚T細胞の反応性の相違を明らかにしていく。研究計画に沿って順調に結果が得られている。皮膚resident memory T細胞分画自体の加齢変化も、複数のマーカーを比較した結果、その中でCD49aのみに加齢との相関が見られた。また、T細胞レパトア解析も症例数を集めることができ、血液で有意に多様性が下がる一方で皮膚では保たれることが判明した。本年度の研究計画にも着手できている。今後は、皮膚T細胞、血中T細胞の抗原応答性に着目し、上述のように複数の加熱処理あるいは断片化した抗原を用いて、T細胞の抗原応答性の増殖能、サイトカイン産生能が加齢に伴いどのように変化していくか比較検討していく。20歳から100歳までの幅広い年齢層からの検体収集を継続していく。同時に論文化の準備を進める。 | KAKENHI-PROJECT-18K08291 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K08291 |
ベクター蚊におけるフィラリア媒介能獲得機構の遺伝学的分子基盤の解明 | 犬糸状虫症はペットで最も重大な致死性の寄生虫性感染症である。一般にはフィラリア症として知られるこの感染症を予防するためには、ペットの生涯にわたり抗寄生虫薬を投与し続ける必要がある。犬糸状虫症は蚊によって媒介される。そこで本研究では、どのようなメカニズムで犬糸状虫が蚊の体内で成長し、蚊によって媒介されるのか、そのメカニズムを分子レベルで明らかにすることを目指す。このような解析をもとに、犬糸状虫を媒介しない蚊によるフィラリア症の制御法の確立に寄与することを目指す。犬糸状虫症はペットで最も重大な致死性の寄生虫性感染症である。一般にはフィラリア症として知られるこの感染症を予防するためには、ペットの生涯にわたり抗寄生虫薬を投与し続ける必要がある。犬糸状虫症は蚊によって媒介される。そこで本研究では、どのようなメカニズムで犬糸状虫が蚊の体内で成長し、蚊によって媒介されるのか、そのメカニズムを分子レベルで明らかにすることを目指す。このような解析をもとに、犬糸状虫を媒介しない蚊によるフィラリア症の制御法の確立に寄与することを目指す。 | KAKENHI-PROJECT-19H03121 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H03121 |
軽い中性子過剰核におけるソフト・ダイポール共鳴の理論的探索 | 本研究の目的は,中性子過剰核の典型である^6Heおよび^<11>Li核におけるソフト・ダイポール共鳴状態の存在を理論的に探索し、存在するかどうかの理論的結論を得ることである。H12-14年度の3年間に渡る研究をつうじて、3つの課題について以下のように期待した成果を得ることができた。(1)3体クーロン分解反応断面積に見られるソフト・ダイポール共鳴の研究^6He→^4He+n+nクーロン分解反応の理論的研究(H12)、^<11>Li→^9Li+n+nクーロン分解反応の理論的研究(H14):複素座標スケーリング法を用いて、3体分解反応を理論的に取り扱う新しい理論をつくった。この新しい理論を^6He,^<11>Li,のクーロン分解反応に適用し、ソフト・ダイポール共鳴の寄与を明らかにし、連続状態からの寄与を分析して2体共鳴状態を経由する反応からの寄与が大きいことを明らかにした(2)コアの自由度を取り入れた拡張されたコア+n+n模型による結合・励起機構の研究^6Heについて(H12)はテンソル力の効果と考えられる^4He-n-n3体力を摂動論的に扱い,コアの自由度から共鳴構造に対する寄与を明らかにした。^<11>Liに対する(H13,14),^9Li+n+n模型の問題点を明らかにし、外殻中性子だけでなくコアの中性子対相関の自由度を平等に扱う新しい拡張されたコア+n+n模型を提案し、チャネル結合3体問題を解き、^<11>Liの結合エネルギー、s波成分の混合によるハロー構造出現機構を議論した。(3)s-軌道が仮想状態として存在する機構の研究^4He-n相互作用、^9Li-n相互作用の研究(H12、H13):Jost関数法を用いて3波仮想状態の分析を行い、相互作用の特徴と中性子ハロー構造との関係を明らかにした。本研究の目的は,中性子過剰核の典型である^6Heおよび^<11>Li核におけるソフト・ダイポール共鳴状態の存在を理論的に探索し、存在するかどうかの理論的結論を得ることである。H12-14年度の3年間に渡る研究をつうじて、3つの課題について以下のように期待した成果を得ることができた。(1)3体クーロン分解反応断面積に見られるソフト・ダイポール共鳴の研究^6He→^4He+n+nクーロン分解反応の理論的研究(H12)、^<11>Li→^9Li+n+nクーロン分解反応の理論的研究(H14):複素座標スケーリング法を用いて、3体分解反応を理論的に取り扱う新しい理論をつくった。この新しい理論を^6He,^<11>Li,のクーロン分解反応に適用し、ソフト・ダイポール共鳴の寄与を明らかにし、連続状態からの寄与を分析して2体共鳴状態を経由する反応からの寄与が大きいことを明らかにした(2)コアの自由度を取り入れた拡張されたコア+n+n模型による結合・励起機構の研究^6Heについて(H12)はテンソル力の効果と考えられる^4He-n-n3体力を摂動論的に扱い,コアの自由度から共鳴構造に対する寄与を明らかにした。^<11>Liに対する(H13,14),^9Li+n+n模型の問題点を明らかにし、外殻中性子だけでなくコアの中性子対相関の自由度を平等に扱う新しい拡張されたコア+n+n模型を提案し、チャネル結合3体問題を解き、^<11>Liの結合エネルギー、s波成分の混合によるハロー構造出現機構を議論した。(3)s-軌道が仮想状態として存在する機構の研究^4He-n相互作用、^9Li-n相互作用の研究(H12、H13):Jost関数法を用いて3波仮想状態の分析を行い、相互作用の特徴と中性子ハロー構造との関係を明らかにした。本研究の目的は、中性子過剰核の典型である^<11>Li核のソフト・ダイポール共鳴状態の存在を理論的に探索し、存在するかどうかの理論的結論を得ることである。そのために、本年度(H12)は次の2つの課題が取り上げられた。本課題は^9Li+n+n模型研究の第2段階として,^9Li-コアの自由度と外殻中性子の結合を取り上げ、その効果を明らかにすることである。そこで、^9Liの内部自由度して中性子対相関を取り上げ、外殻中性子との相互作用の重要な効果であるパウリ・ブロッキングによるs-波、p-波の縮退を引き起こす^9Li-n相互作用について、ヨスト関数法を用い詳細に分析した。その結果、s-波の仮想状態をもたらす現象論的^9Li-n相互作用がパウリ・ブロッキング効果を取り入れた微視的理論で再現されることが明らかになった。複素座標スケーリング法を用いて、3体分解反応を理論的取り扱う新しい枠組みを作成した。この新たな理論を用いて、^6He核のクーロン分解反応を分析し,2体・3体連続状態の構造とそれらがどのように分解反応断面積への寄与するか,また3体共鳴状態からの寄与を明らかにした。その結果、3体分解反応の反応機構において,2体の連続状態を経て,3体に分解するというシーケンシャル分解が重要であることが分かった。また、^6He核の3体分解反応ではソフト・ダイポール共鳴状態が大きな寄与をしていないことも明らかになった。これらの課題は、3月現在,ほぼ予定どおり完成し、既にそれぞれの課題に対応して論文2編公表された。 | KAKENHI-PROJECT-12640246 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12640246 |
軽い中性子過剰核におけるソフト・ダイポール共鳴の理論的探索 | また、2001年春の物理学会でも報告される予定である。さらに、次年度の計画についても具体的に検討が始められつつある。1.11Li核に対して、中性子対相関を考慮し、多重コア配位9Li+n+n模型を新たに提出した。その新たな模型を用いて、3体チャンネル結合計算を実行し、11Li核の中性子ハロー構造の問題を詳細に分析し、外殻中性子だけでなく、9Liコア内中性子の対相関が重要であることを明らかにした。その結果は、2001年京都で開催された不安定核国際会議で発表報告され、論文にもまとめられ、現在投稿中である。2.11Li核におけるハロー構造と深く関わるs-軌道成分の問題と、10Liのs-波仮想状態の存在の問題を統一的に理解するため、Jost関数法を用いて、仮想共鳴状態および散乱問題を解き、分解反応断面積と9Liコア-中性子相互作用の性質を分析し、その結果を論文にまとめつつある。3.11Li核のソフト・ダイポール共鳴の分析を進め、クーロン分解反応の断面積を多重コア配位9Li+n+n模型に複素スケーリングを適用して計算を行ってきた。これまでの4He+n+n3体クラスター系とは異なるダイポール遷移強度分布が得られ、その結果はH14年春物理学会で報告する予定である。4.1中性子ハロー核11Beのダイポール遷移強度の分析をコアの変形を取りれた10Be+n模型を用いて行った。クーロン分解反応への連続状態、共鳴状態からの寄与を、拡張された完全系を用いて、分離して示すことができた。5.仮想状態など複素座標スケーリング法では求めることができない多体系のS行列の極を調べるために、パウリ原理を考慮したJost関数法の開発を行った。チャンネル結合系についても適用可能な方法を完成させ、今後の研究にとってきわめて強力な計算法が得られた。本研究の目的は,中性子過剰核の典型である^<11>Li核のソフト・ダイポール共鳴状態の存在を理論的に探索し、存在するかどうかの理論的結論を得ることである。本年度(H14)は最終年度で、以下のようには^<11>Li核のクーロン分解反応の計算が終了し、当初の目的とするところを完了した。(1)拡張された^9Li+n+n模型研究本課題は^9Li+n+n模型研究の第2段階として、^9Li-コアの中性子対相関と外殻中性子の結合を取り上げる。チャンネル結合3体問題を解き挙げ、^9Liの外殻中性子との相互作用の重要な効果であるパウリ・ブロッキングによるs-波、p-波の縮退を引き起こす^9Li-n相互作用が、^<11>Liのハロー構造を実現する重要な要因になることが示された。昨年、複素座標スケーリング法を用いて、3体分解反応を理論的取り扱う新しい枠組みを作成した。この新たな理論を用いて、^6He核のクーロン分解反応を分析し,その有効性を確かめた。本年度、この方法を^<11>Li→^9li+n+nクーロン分解反応に適用し、これまで得られている実験データと比較することを行った。その結果、理研グループによるデータとよく一致することが示された。これらの課題は、ほぼ予定どおり完成し、(1)は論文として公表され、(2)は論文準備中である。本研究から、これまでのところソフト・ダイポール共鳴の存在を示唆する結果を得ることはできなかった。しかし、本研究によって、複素座標スケーリング法による連続状態の構造研究の道が開かれた。 | KAKENHI-PROJECT-12640246 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12640246 |
重力波天文学の総括的研究 | 重力波の直接検出が成功すれば、一般相対論の有効性が実験的に支持され、天文学は新しい観測手段を獲得し、自然認識が格段に深められることになる。このように、重力波の観測は物理学と天文学の両面から要請されており、その認識の下、現在、国際的にも重力波の直接観測を目指して数グループが今世紀末までに国際観測網を実現する計画を進めており、わが国もその一翼を担うべきレーザー干渉計を用いる重力波天文台を建設することが期待されている。これに応えて、振幅h10^<-21>-10^<-22>の重力波を検出するのに必要な基礎技術を開発し、それに従ってモデル装置を建設し、併せて重力波研究者の層を厚くするのが本領域の目的であった。本年度は平成3年度から6年度の「重力波天文学」のまとめに当たる。主に行ったことは1.最終シンポジウムを平成7年8月28日から29日、東京大学・山上会館において行った。参加人数は約80名。ここで評価委員の皆様から全体のまとめをして頂いた。2.秋に文部省で行われた最終ヒヤリング用の資料作りを行った。3.理論グループの最終まとめ「一般相対論と重力波」研究会を平成8年1月22日から25日、名古屋大学・シンポジオンホールにおいて行った。参加人数は約120名。4.最終報告書の作成を行った。の4点である。重点領域の目標はkmクラスの干渉計のfeasibility studyを作るということであったが、本領域で得られた成果はむしろ、中間スケール(300m)の装置を作る方がよいということを示唆した。実際これをもとに平成7年度が創成的基礎研究に関する新プログラム(重力波天文学)古在由秀代表がスタートした。連星中性子星の合体や超新星爆発時に放出される重力波は、振幅h10^<-21>に達し、年間23イペントはあると考えられている。基線長4Kmの大型レーザー干渉計を用いれば、原理的には、この感度は達成可能であるが、コストは1台およそ100億円と見られ、現在世界中にあるプロトタイプの感度を3ケタ以上あげる必要がある。このようなスケールアップが現実的に可能かどうかは明かではなく、技術的・物理的問題の多くは未解決なのが現状である。本重点領域では(A1)20mFPプロトタイプの開発(A2)基線長100mのDLプロトタイプ(B)高出力高安定レーザーの開発(C)干渉計要素技術の開発(D)理論シミュレーションによる重力波源の研究の5つの計画研究を柱とする。今年度の研究成果は以下の通りである。(A1)20mファブリー・ペロー干渉計用真空容器と実験室を完成させ、真空試験を終了し、10-8Torr台の真空を実現した。これにより、計画研究B,Cと協力して本格的な干渉計の設置のための準備を完了した。(A2)既存の10mアンテナの感度向上と安定な動作の実現に努力し、散乱光の影響を大幅に除去することにより、低周波領域とバースト信号に対する雑音特性に顕著な改良が得られたとともに、長時間(159時間)を行った.100m干渉計への拡張作業が、並行して行われ、建物.真空装置.ミラーなど本格的な実験への準備が完了した.(B)モノリシック型のリング共振器固定レーザー(MISER)の周波数安定化実験では.1KHz領域でショット雑音の1.5倍の355μHz1(Hz)1/2という世界最高水準の安定度を達成し、A1A2に供給できるようになった.(C)強力な永久磁石の渦電流によるバッシプな3重振子を用いた防振系を作り予定通り高性能(1KHz付近で-240dB)を得た。(D)連星中性子星の合体について、中性子星のスピンや衝突速度も入れた三次元数値シミュレーションを実行し、重力波の波形から起こっているダイナミックスがわかることを示した.総括班としては、以下の活動を行った。1)シンポジウムの開催(1994年1月11日から14日山上会館、のべ参加人数150名)2)総括班会議(1993年7月と1994年1月)で今年度の方針と将来計画の検討を行った。3)月1回実験グループを中心に開いている技術検討会の支援(特に謝金)を行った。4)理論グループが開催した重力に関する広範囲な分野をカバーした研究会(1994年1月17日から20日の4日間、山上会館、のべ参加人数150名)を主催した。5)1994年度で本領域は終了するので、まとめ方(特に業績評価)についての検討をはじめた。総括班としては、以下の活動を行った。1)シンポジウムの開催(1994年10月5日から7日、国立天文台、のべ参加人数100名)2)総括班会議(4月28日)で今年度の方針と将来計画の検討を行った。3)月1回実験グループを中心に開いている技術検討会の支援を行った。4)理論グループが開催した重力に関する広範囲な分野をカバーした研究会(1994年11月28日から)12月1日の4日間、京大基研,のべ参加人数150名)を主催した。5)1994年度で本領域は終了するので、まとめ方(特に業績評価)についての検討をはじめた。 | KAKENHI-PROJECT-04234105 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04234105 |
重力波天文学の総括的研究 | 重力波の直接検出が成功すれば、一般相対論の有効性が実験的に支持され、天文学は新しい観測手段を獲得し、自然認識が格段に深められることになる。このように、重力波の観測は物理学と天文学の両面から要請されており、その認識の下、現在、国際的にも重力波の直接観測を目指して数グループが今世紀末までに国際観測網を実現する計画を進めており、わが国もその一翼を担うべきレーザー干渉計を用いる重力波天文台を建設することが期待されている。これに応えて、振幅h10^<-21>-10^<-22>の重力波を検出するのに必要な基礎技術を開発し、それに従ってモデル装置を建設し、併せて重力波研究者の層を厚くするのが本領域の目的であった。本年度は平成3年度から6年度の「重力波天文学」のまとめに当たる。主に行ったことは1.最終シンポジウムを平成7年8月28日から29日、東京大学・山上会館において行った。参加人数は約80名。ここで評価委員の皆様から全体のまとめをして頂いた。2.秋に文部省で行われた最終ヒヤリング用の資料作りを行った。3.理論グループの最終まとめ「一般相対論と重力波」研究会を平成8年1月22日から25日、名古屋大学・シンポジオンホールにおいて行った。参加人数は約120名。4.最終報告書の作成を行った。の4点である。重点領域の目標はkmクラスの干渉計のfeasibility studyを作るということであったが、本領域で得られた成果はむしろ、中間スケール(300m)の装置を作る方がよいということを示唆した。実際これをもとに平成7年度が創成的基礎研究に関する新プログラム(重力波天文学)古在由秀代表がスタートした。 | KAKENHI-PROJECT-04234105 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04234105 |
並列投機実行を支援するバイナリトランスレーション方式の研究 | 本年度は並列投機実行の検証を行うシミュレータの作成と並列投機実行最適化を行うバイナリトランスレーション方式の基本方式の検討および実装を行ったシミュレータはSolaris8マルチプロセッサ上で複数のプロセッサのシミュレーションを行うことが可能なマルチスレッドシミュレータとなっており、マルチプロセッサシステムと同様に共有メモリ上にデータ空間をもち、通信はマルチスレッドライブラリを用いて実現されている。また、プログラム生成は移植したクロスコンパイラシステムによって生成され、実験が容易にできるようになっている。また、バイナリトランスレーションの最適化においては、実行時再構成方式が生成するプログラムの事前生成を行い実行の最適化手法について(1)並列実行するに対応したレジスタ割付方式および命令再構成を行うことにより命令実行数を減少できること、(2)要素プロセッサに投機実行用命令を追加することにより、メモリアクセスのハードウエアを減少できること、また、実行時再構成方式での重複実行において分岐命令の実行を可能にすることによって投機実行の精度を上昇させることが可能であることを示し、バイナリトランスレータに実装した。バイナリトランスレータは最適化のために実行時と同様にプログラムをバイナリプログラムフォーマットにしたがって制御構造を読み取り並列実行可能部分を検索する。昨年度の研究成果を用いて、検索時に並列実行回数のサイズを特定しループ構造であれば適切な繰り返しサイズになるようにアンローリングして解析を行い、上記の最適化を行うようになっている。実行時の分岐予測によるコントロールフロー生成が困難な場合には本方式による、最適化が有効であり、特にgccなどの基本ブロックサイズが小さいプログラムでは、速度向上に貢献することが分かった。本年度は並列投機実行の検証を行うシミュレータの作成と並列投機実行最適化を行うバイナリトランスレーション方式の基本方式の検討および実装を行った。シミュレータはSolaris8マルチプロセッサ上で複数のプロセッサのシミュレーションを行うことが可能なマルチスレッドシミュレータとなっており、マルチプロセッサシステムと同様に共有メモリ上にデータ空間をもち、通信はマルチスレッドライブラリを用いて実現されている。また、プログラム生成は移植したクロスコンパイラシステムによって生成され、実験が容易にできるようになっている。基本機能については検証がおわり、現在は、SPECベンチマークを用いて機能のデバッグを行っている。また、バイナリトランスレーションの最適化においては、実行時再構成方式が生成するプログラムの事前生成を行い実行の最適化手法について(1)並列実行するに対応したレジスタ割付方式および命令再構成を行うことにより命令実行数を減少できること、(2)要素プロセッサに投機実行用命令を追加することにより、メモリアクセスのハードウエアを減少できること、また、実行時再構成方式での重複実行において分岐命令の実行を可能にすることによって投機実行の精度を上昇させることが可能であることを示し、バイナリトランスレータに実装した。バイナリトランスレータは最適化のために実行時と同様にプログラムをバイナリプログラムフォーマットにしたがって制御構造を読み取り並列実行可能部分を検索する。本年度の研究成果から、検索時に並列実行回数のサイズを特定しループ構造であれば適切な繰り返しサイズになるようにアンローリングして解析を行い、上記の最適化を行うようになっている。本年度は並列投機実行の検証を行うシミュレータの作成と並列投機実行最適化を行うバイナリトランスレーション方式の基本方式の検討および実装を行ったシミュレータはSolaris8マルチプロセッサ上で複数のプロセッサのシミュレーションを行うことが可能なマルチスレッドシミュレータとなっており、マルチプロセッサシステムと同様に共有メモリ上にデータ空間をもち、通信はマルチスレッドライブラリを用いて実現されている。また、プログラム生成は移植したクロスコンパイラシステムによって生成され、実験が容易にできるようになっている。また、バイナリトランスレーションの最適化においては、実行時再構成方式が生成するプログラムの事前生成を行い実行の最適化手法について(1)並列実行するに対応したレジスタ割付方式および命令再構成を行うことにより命令実行数を減少できること、(2)要素プロセッサに投機実行用命令を追加することにより、メモリアクセスのハードウエアを減少できること、また、実行時再構成方式での重複実行において分岐命令の実行を可能にすることによって投機実行の精度を上昇させることが可能であることを示し、バイナリトランスレータに実装した。バイナリトランスレータは最適化のために実行時と同様にプログラムをバイナリプログラムフォーマットにしたがって制御構造を読み取り並列実行可能部分を検索する。昨年度の研究成果を用いて、検索時に並列実行回数のサイズを特定しループ構造であれば適切な繰り返しサイズになるようにアンローリングして解析を行い、上記の最適化を行うようになっている。実行時の分岐予測によるコントロールフロー生成が困難な場合には本方式による、最適化が有効であり、特にgccなどの基本ブロックサイズが小さいプログラムでは、速度向上に貢献することが分かった。 | KAKENHI-PROJECT-12780192 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12780192 |
不死化歯原性細胞との相互作用を利用した人工多能性幹(iPS)細胞による歯再生医療 | 本研究では,申請者らが樹立した不死化歯原性細胞株との相互作用によって,iPS細胞の歯原性細胞への分化誘導を行うとともに,申請者らが開発した炭酸アパタイトの歯再生用scaffoldとしての有用性について検討した.iPS細胞から直接歯原性細胞へ分化誘導することができなかったため,iPS細胞を一度間葉系幹細胞へ分化誘導させ,骨,軟骨,脂肪への分化能を確認した.一方,scaffoldとしては,低結晶性炭酸アパタイトは生体内で破骨細胞によって吸収され,炭酸アパタイト上で培養した間葉系幹細胞が骨芽細胞へ分化した.また,BMPと複合化した炭酸アパタイトがラット背部皮下で異所性に骨を形成した.平成25年度は,歯の再生医療の細胞ソースとして用いるiPS細胞のフィーダーレス培養法を確立するとともに,細胞ストックを作成した.また,低結晶性炭酸アパタイト顆粒をラット背部皮下に埋植して,長期間の生体内での反応について検討した.iPS細胞の細胞ストック作製とフィーダーレス培養法の確立:理化学研究所から購入したヒトiPS細胞(HPS0002)を実験に用いた.まず,iPS細胞をマウス胎仔線維芽細胞(MEF)をフィーダーとして培養を行い,十分な細胞ストックを作成した.また,フィーダーレス培養法の確立を行った.フィーダーレス培養法で継代培養,凍結保存を行ったiPS細胞について,免疫染色とアルカリフォスファターゼ染色を行って多能性を維持していることを確認した.低結晶性炭酸アパタイトの生体内での反応:ラット背部皮下に埋植した炭酸アパタイト顆粒の生体内での反応を長期間で評価した.BMP-2と複合化させた炭酸アパタイト顆粒をラット背部皮下に埋植し,2,4,8,12,28週後に試料を摘出した.HE染色による組織学的評価では,異所性の硬組織形成がBMP 50マイクログラムと複合化した炭酸アパタイトを埋植したラットでアパタイト顆粒を取り囲むようにみられた.OsterixとRunx2の免疫染色の結果では,埋植後24週で炭酸アパタイト顆粒の周囲に多数の発現細胞を認めた.Osterix発現細胞は,28週まで顆粒周囲や新生骨周囲に存在したが,Runx2発現細胞は,8週以降は減少したことから,異所性の骨形成は48週までに活発に行われていると考えられた.また,摘出物のマイクロCTから炭酸アパタイトの顆粒径を測定したところ,顆粒径は経時的に小さくなった.さらに,脱灰切片のTRAP染色では顆粒周囲に陽性細胞が多数みられたことから,生体内で吸収されたことが明らかとなった.本研究では,申請者らが樹立した不死化歯原性細胞株との相互作用によって,iPS細胞の歯原性細胞への分化誘導を行うとともに,申請者らが開発した炭酸アパタイトの歯再生用scaffoldとしての有用性について検討した.iPS細胞から直接歯原性細胞へ分化誘導することができなかったため,iPS細胞を一度間葉系幹細胞へ分化誘導させ,骨,軟骨,脂肪への分化能を確認した.一方,scaffoldとしては,低結晶性炭酸アパタイトは生体内で破骨細胞によって吸収され,炭酸アパタイト上で培養した間葉系幹細胞が骨芽細胞へ分化した.また,BMPと複合化した炭酸アパタイトがラット背部皮下で異所性に骨を形成した.平成24年度は,歯の再生医療の細胞ソースとして用いるiPS細胞の培養系を確立し,その特性について検討した.また,申請者らが開発した低結晶性炭酸アパタイトの顆粒をラット背部皮下に埋植して,生体内での反応について検討した.1iPS細胞の培養系の確立:理化学研究所から購入したヒトiPS細胞(HPS0002)を実験に用いた.マイトマイシンC処理したマウス胎仔線維芽細胞をフィーダー細胞として用いて,iPS細胞を培養して継代した後,凍結保存を行った.さらに,維持培養,凍結,解凍を繰り返し行ったiPS細胞について,免疫染色(Nanog,E-cadherin,SSEA-3,SSEA-4,TRA-1-60,TRA-1-81)とアルカリフォスファターゼ染色を行って多能性を維持していることを確認した.なお,ヒトiPS細胞は増殖が遅く,十分な細胞ストックが作成できていない.2低結晶性炭酸アパタイトの生体内での反応:炭酸アパタイト顆粒(粒径:300600μm)にBMP-2溶液を滴下含浸させて複合化(BMP-2量:0,5,50μg)し,ラット背部皮下に埋植した.埋植2,4,8週後に試料を摘出して脱灰切片を作製し,HE染色による組織学的評価を行った.ラット背部皮下での異所性の硬組織形成は,BMP 0μgおよび5μgと複合化した炭酸アパタイトを埋植したラットではみられなかったが,BMP 50μgと複合化した炭酸アパタイトを埋植したラットでは,アパタイト顆粒を取り囲むように硬組織の形成がみられた.硬組織の形成は4週までに行われ,8週ではほぼ終了していた.OsterixとRunx2の免疫染色の結果では,埋植後24週で炭酸アパタイト顆粒の周囲に多数の発現細胞を認めたが,8週では発現細胞は減少した.また,炭酸アパタイトの顆粒径は経時的に小さくなり,生体内で吸収されることが明らかとなった. | KAKENHI-PROJECT-24592989 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24592989 |
不死化歯原性細胞との相互作用を利用した人工多能性幹(iPS)細胞による歯再生医療 | 平成26年度は,歯の再生医療の細胞ソースとして用いるiPS細胞の間葉系幹細胞への分化誘導と,低結晶性炭酸アパタイトの再生医療のスキャッフォールドとしての有用性の検証を行った.iPS細胞の間葉系幹細胞への分化誘導:コンフルエントに達したiPS細胞をペトリディッシュ上に播種し,形成された胚様体を細胞培養用ディッシュに移して,レチノイン酸を加えたDMEM-10% FCSで培養した.8日後に,全細胞を回収し,ゼラチンコートした細胞培養用ディッシュで1時間培養し,接着細胞を血清低減培養液にbFGFを加えた間葉系間細胞用培地で継代培養し,iPS細胞由来の間葉系幹細胞を得た.得られたiPS細胞由来の間葉系幹細胞は骨,軟骨,脂肪への分化能を有していたが,その分化効率に問題があったため,現在,CXCR4をマーカーとして,iPS細胞由来間葉系幹細胞をさらに純化している.低結晶性炭酸アパタイトの再生医療のスキャッフォールドとしての有用性の検証:iPS細胞由来間葉系幹細胞の歯原性細胞への分化誘導が困難であったため,iPS細胞由来間葉系幹細胞を低結晶性炭酸アパタイト顆粒に播種してヌードマウス背部皮下への移植を行い,再生医療のスキャッフォールドとしての有用性を組織学的に評価した.背部皮下での異所性骨形成は観察できなかったが,顆粒表面にはiPS細胞由来間葉系幹細胞と考えられる細胞が接着していることが確認できた.医歯薬学まず,歯の再生医療の細胞ソースとして用いるヒトiPS細胞の培養系(フィーダー細胞を用いた培養とフィーダーレス培養)を確立し,その特性を検討した.免疫染色とアルカリフォスファターゼ染色の結果では,維持培養,凍結,解凍を繰り返し行ったiPS細胞が多能性を維持していることを確認した.本研究を行うためには,均質で十分なヒトiPS細胞のストックが必要であるが,ヒトiPS細胞の増殖が遅く,細胞ストックの作成に時間を費やした.続いて,基底膜成分,エナメル蛋白,分化増殖因子など歯の分化に関わる因子によるヒトiPS細胞の歯原性細胞への分化誘導を行った.すなわち,ヒトiPS細胞を,マトリゲル,ラミニン,IV型コラーゲンで表面処理した培養皿上で培養した.また,エナメル蛋白(エムドゲイン)で表面処理した培養皿上でも培養した.現在,これらのヒトiPS細胞のエナメル芽細胞および象牙芽細胞への分化を検討している.一方,歯再生用のスキャホールドとして用いる低結晶性炭酸アパタイトの生体内での反応について検討では,ラット背部皮下に埋植した炭酸アパタイト顆粒の長期間での反応を検討した.顆粒径は経時的に小さくなり,長い期間をかけて生体内で吸収されることが明らかとなった.また,BMPー2(50マイクログラム)と複合化した炭酸アパタイトを埋植したラットでは,アパタイト顆粒を取り囲むように硬組織の形成がみられた.この硬組織形成は埋植後48週で活発に行われていたことから,移植後比較的早い段階で細胞の分化が起こっていることが明らかとなった.しかしながら,個体差が大きかったことから,その制御が歯再生用スキャホールドとしては問題になると考えられた.本研究では,申請者らが樹立した不死化歯原性細胞との相互作用によって,エナメル芽細胞や象牙芽細胞などの歯原性細胞へ分化させたiPS細胞を歯の再生医療の細胞ソースとして用いる.さらに,申請者らが開発した生体吸収性の低結晶性炭酸アパタイトを応用して新しい歯の再生用スキャホールドを開発する.平成24年度の当初の計画では,(1)不死化歯原性細胞株との共培養によるiPS細胞の歯原性細胞への分化誘導,(2)基底膜成分,エナメル蛋白,分化増殖因子など歯の分化に関わる因子によるiPS細胞の歯原性細胞への分化誘導を行い,さらに(3)歯原性細胞へ分化誘導させた細胞をヌードマウスの皮下あるいは腎被膜下に移植し,生体内での分化を検討する予定であった. | KAKENHI-PROJECT-24592989 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24592989 |
口腔扁平苔癬の病態進展における上皮-樹状細胞ネットワーク機構の解明 | OLPは、上皮と樹状細胞を主体とした免疫細胞との相互作用により病態形成している可能性が考えられる。本研究では、OLPの病態進展における上皮-樹状細胞間のネットワーク機構の解明を目的に、LMC(レーザーマイクロダイセクション)法により病変上皮を選択的に抽出し、DNAマイクロアレイによる疾患関連分子の網羅的解析を行った。それにより発現上昇を認めた遺伝子(76遺伝子)のうち、Th細胞の活性化に関連する分子として「カテプシンk」に注目した。カテプシンKはシステインプロテアーゼの1つであり、破骨細胞に発現しI型コラーゲンの分解(骨吸収)を促進することが知られているが、近年の研究で破骨細胞以外の上皮細胞や樹状細胞、マクロファージにも発現しており、Th17誘導型の炎症にも関与していることが示唆されている。OLP病変組織におけるカテプシンKの発現と局在の検索のため、免疫組織化学染色法を行った。その結果、OLP病変局所では粘膜上皮内と上皮直下の浸潤炎症細胞にて強い発現を認めたが、他の類似粘膜疾患(過角化症、上皮性異形成)では上皮直下の浸潤炎症細胞にのみ僅かな発現を認めた。カテプシンKはpDC細胞膜上にあるTLR9を標的分子としているため、蛍光二重免疫染色法にてその局在の検索を行ったところ、上皮内および上皮直下の浸潤炎症細胞の一部に発現の一致を認めた。また、Validation(real-time PCR)を行ったところ、正常粘膜組織と比較してOLP病変組織ではカテプシンKのmRNA発現の亢進を認めた。以上の結果より、OLPの病態形成にはカテプシンKが関与していることが示唆された。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。本研究の目的は、OLP病変局所における発症・病態進展に関わる分子を同定・解析することにより、OLPの病態形成における上皮-樹状細胞ネットワーク機構を解明することで、最終的には新規標的分子治療の確立を目指す。OLPの病巣の成立には遅延型アレルギーに類似した細胞性免疫反応が関与しており,上皮内のmDCが未知の抗原を認識してT細胞を感作し,IL-12、INF-γ、INF-αを始めとする様々なサイトカインおよびケモカインの産生が誘導、これら液性因子により上皮下への著明なCD4およびCD8陽性T細胞の浸潤が惹起されて,上皮基底細胞,傍基底細胞等に対する細胞障害と変性を生じることが本疾患の病態発生に重要であると考えられている。よって、LCMによって選択的に採取したOLP上皮を用いてDNAマイクロアレイを行い、上皮由来の疾患関連因子(サイトカイン・ケモカイン)について網羅的解析を行うこととした。当該年度ではOLPの病態形成における上皮-樹状細胞ネットワーク機構の関連分子およびケモカインに関して、上皮由来の疾患関連候補因子(EGFR、IL-6など)を抽出したが、現在バリデーションのためのサンプル採集を行い、その発現や局在の定量化を行っている。また、同一OLPサンプルにおける病変上皮および正常粘膜部上皮、過角化症上皮において同様に検査を行い、その共通点や類似点について比較検討を行う。また、粘膜上皮だけでなく粘膜下組織についても比較対象疾患に同じ炎症性疾患である非特異性潰瘍を加えて同様の検討を行う予定である。おおむね当初の予定通りに進捗しているが、研究のバリデーションや候補分子の発現や局在の定量化を行う上で多量のサンプルを必要とするため、サンプル採集に苦慮することがありやや遅延している。OLPは、上皮と樹状細胞を主体とした免疫細胞との相互作用により病態形成している可能性が考えられる。本研究では、OLPの病態進展における上皮-樹状細胞間のネットワーク機構の解明を目的に、LMC(レーザーマイクロダイセクション)法により病変上皮を選択的に抽出し、DNAマイクロアレイによる疾患関連分子の網羅的解析を行った。それにより発現上昇を認めた遺伝子(76遺伝子)のうち、Th細胞の活性化に関連する分子として「カテプシンk」に注目した。カテプシンKはシステインプロテアーゼの1つであり、破骨細胞に発現しI型コラーゲンの分解(骨吸収)を促進することが知られているが、近年の研究で破骨細胞以外の上皮細胞や樹状細胞、マクロファージにも発現しており、Th17誘導型の炎症にも関与していることが示唆されている。OLP病変組織におけるカテプシンKの発現と局在の検索のため、免疫組織化学染色法を行った。その結果、OLP病変局所では粘膜上皮内と上皮直下の浸潤炎症細胞にて強い発現を認めたが、他の類似粘膜疾患(過角化症、上皮性異形成)では上皮直下の浸潤炎症細胞にのみ僅かな発現を認めた。カテプシンKはpDC細胞膜上にあるTLR9を標的分子としているため、蛍光二重免疫染色法にてその局在の検索を行ったところ、上皮内および上皮直下の浸潤炎症細胞の一部に発現の一致を認めた。また、Validation(real-time PCR)を行ったところ、正常粘膜組織と比較してOLP病変組織ではカテプシンKのmRNA発現の亢進を認めた。以上の結果より、OLPの病態形成にはカテプシンKが関与していることが示唆された。引き続き、下記の順序で研究を行う。1)候補分子のバリデーション(疾患関連分子の同定)(real-time PCR法、免疫組織化学染色法、蛍光二重免疫染色、フローサイトメトリー) | KAKENHI-PROJECT-17H06950 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H06950 |
口腔扁平苔癬の病態進展における上皮-樹状細胞ネットワーク機構の解明 | DNAマイクロアレイにより抽出された関連分子およびサイトカインに関して、上記各種検査法を用い、その発現や局在を検索し定量化を行う。また、同一OLPサンプルにおける病変上皮および正常粘膜部上皮、過角化症上皮において同様に検査を行い、その共通点や類似点について比較検討を行う。また、粘膜上皮だけでなく粘膜下組織についても比較対象疾患に同じ炎症性疾患である非特異性潰瘍を加えて同様の検討を行う予定である。2)疾患関連分子(サイトカイン・ケモカイン)による樹状細胞の活性因子産生能の解析前述の検討により、OLPに特徴的に関連する分子を見出すことができた際には、MACSにより病変局所から樹状細胞を抽出して、疾患関連分子による刺激実験を行い、上皮-樹状細胞ネットワーク機構を明らかにする。なお、病変組織からの免疫細胞の抽出については、すでに口腔扁平上皮癌組織から免疫細胞を抽出する手技を確立しており(Kubota K, et al. Sci Rep 2017)、口腔粘膜からの樹状細胞の抽出も可能である。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-17H06950 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H06950 |
「赤ちゃんとのふれあい体験」の効果的な実践プログラムモデルの開発 | 2018年度は、学校教育現場における「赤ちゃんとのふれあい体験」の動向把握を目的として、フィールド調査3件(国内と海外)とメール調査1件を実施した。まず、国内フィールド調査ではNPO法人ママの働き方応援隊「赤ちゃん先生プロジェクト」を活用して行われた愛知県名古屋市のT高等学校の授業の観察調査、および事業主体代表と家庭科担当教師へのヒアリング調査を実施した。同プロジェクトによって「赤ちゃんとのふれあい体験」を行う場合の利点や課題等について確認することができた。次に、海外フィールド調査では、Roots of Empathy(共感教育)研究の第一人者であるキンバリー・スコット教授(ブリティッシュコロンビア大学)とブリティッシュコロンビア州の学校教育現場において同プログラムの実施をマネージメントするダーシー・モーガン氏へのヒアリング調査を実施した。Roots of Empathyに関する資料を入手したほか、カナダと日本における実施条件の違いなど新たな知見を得ることができた。さらに、ESD推進先進国であるドイツのバイエルン州の学校教育現場を視察した。参観した授業は、ヴュルツブルク大学の教員、地域人材、教員によって協働されていること、倫理的な行動について考え市民性を育むことをねらいとしていることなど、社会資源と学校教育との協働をベースとした本研究と重なる部分が多くあり、プログラムモデル開発につながる示唆を得ることができた。メール調査は、研究協力者であるふれあいサポートネット「ふわっと」(静岡県浜松市)の「赤ちゃんとのふれあい体験」事業に参加したすべての保護者を対象に実施した。対象者の日ごろの意識や行動の実態、体験事業に対する意識や課題の捉え方などについて調査した。現在分析を進めているところであり、結果は2019年度日本家庭科教育学会例会(東京学芸大学)において発表する予定である。時宜を得て実施した国内外でのフィールド調査により、体験事業を広い視野でとらえなおすことができた。また、体験事業の成立にあたり重要な主体である赤ちゃんの保護者を対象としたメール調査を実施することができた。2019年度2020年度にかけて、選定した6自治体が実施するプログラムの観察調査および事業主体へのヒアリング調査を進めたいと考えているが、日程や相手方の都合等の関係で実施が困難になる可能性もある。その場合には同様の成果が期待できる別事例の選定を検討する。2018年度は、学校教育現場における「赤ちゃんとのふれあい体験」の動向把握を目的として、フィールド調査3件(国内と海外)とメール調査1件を実施した。まず、国内フィールド調査ではNPO法人ママの働き方応援隊「赤ちゃん先生プロジェクト」を活用して行われた愛知県名古屋市のT高等学校の授業の観察調査、および事業主体代表と家庭科担当教師へのヒアリング調査を実施した。同プロジェクトによって「赤ちゃんとのふれあい体験」を行う場合の利点や課題等について確認することができた。次に、海外フィールド調査では、Roots of Empathy(共感教育)研究の第一人者であるキンバリー・スコット教授(ブリティッシュコロンビア大学)とブリティッシュコロンビア州の学校教育現場において同プログラムの実施をマネージメントするダーシー・モーガン氏へのヒアリング調査を実施した。Roots of Empathyに関する資料を入手したほか、カナダと日本における実施条件の違いなど新たな知見を得ることができた。さらに、ESD推進先進国であるドイツのバイエルン州の学校教育現場を視察した。参観した授業は、ヴュルツブルク大学の教員、地域人材、教員によって協働されていること、倫理的な行動について考え市民性を育むことをねらいとしていることなど、社会資源と学校教育との協働をベースとした本研究と重なる部分が多くあり、プログラムモデル開発につながる示唆を得ることができた。メール調査は、研究協力者であるふれあいサポートネット「ふわっと」(静岡県浜松市)の「赤ちゃんとのふれあい体験」事業に参加したすべての保護者を対象に実施した。対象者の日ごろの意識や行動の実態、体験事業に対する意識や課題の捉え方などについて調査した。現在分析を進めているところであり、結果は2019年度日本家庭科教育学会例会(東京学芸大学)において発表する予定である。時宜を得て実施した国内外でのフィールド調査により、体験事業を広い視野でとらえなおすことができた。また、体験事業の成立にあたり重要な主体である赤ちゃんの保護者を対象としたメール調査を実施することができた。2019年度2020年度にかけて、選定した6自治体が実施するプログラムの観察調査および事業主体へのヒアリング調査を進めたいと考えているが、日程や相手方の都合等の関係で実施が困難になる可能性もある。その場合には同様の成果が期待できる別事例の選定を検討する。今年度のフィールド調査の件数が予定件数より少なかったためを、データ分析に要すると見込んでいた人件費が生じなかったため。次年度は複数の国内のフィールド調査を実施予定のため、今年度の残額を加えた次年度予算の多くは、旅費及び人件費への支出に充当されると見込んでいる。 | KAKENHI-PROJECT-18K13158 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K13158 |
褐藻の青色光応答反応の解析 | オーレオクロムは黄色植物専用の青色光受容体である。黄色植物は珪藻、褐藻や赤潮を形成するラフィド藻など多様な生物群が含まれており、青色光によって形態形成や運動反応を誘導されることが報告されている。本研究では、褐藻に着目し、オーレオクロム依存的な生理応答と遺伝子情報取得を主な課題として行った。2種の褐藻類において、青色光依存的な葉状体形成や生活環の変化が起こることがわかった。またトランスクリプトーム解析を行った結果、多数のオーレオクロムホモログが存在し、三つのグループに分かれることやオーレオクロムの発現に関しては、オーソログ間で差が見られた。下流の遺伝子群についても単色光による発現差がみられた。2007年に、新奇の転写因子型青色光受容体、オーレオクロム(AUREOCHROME)を発見した。オーレオクロムは、褐藻やケイ藻を含む黄色植物(独立栄養ストラメノパイル)のみによく保存されているので、黄色植物共通の重要な機能を担っていると推定できる。オーレオクロムは黄色植物フシナシミドロでは青色光誘導分枝形成に関与しているが、褐藻やケイ藻はじめ他の黄色植物での機能は全く未解明である。本研究では、室内実験で培養系を確立した褐藻ヤハズグサ(Dictyopteris latiuscula)とアカモク(Sargassum horneri)を用いて、どのような光反応がオーレオクロムによって制御されているかを明らかにし、黄色植物共通の標的反応を推定することである。2014年度は、本研究で使用する褐藻2種ヤハズグサとアカモクの核酸単離法の開発を主に行った。褐藻類は特有の多糖が含まれているが複合的な核酸単離法を工夫することによってDNA、RNAの単離が可能になった。特にアカモクに関しては4種の光条件下でのmRNAを単離し、次世代シークエンスを用いたトランスクリプトームが終了し、共同研究者によりデータベースの構築を終えた。現在、アセンブル・アノテーションを行った遺伝子について発現量解析を詳細に行う予定である。一方、アカモクとヤハズグサの光応答反応について生理学的解析を行っており、波長(光)依存的な現象が見いだせている。今後、陸上植物で使用されているホルモンや細胞骨格等の阻害剤を用いて検討する予定である。オーレオクロム(Aureochrome)は、転写因子型の青色光受容体であり、褐藻や珪藻、赤潮の原因藻類であるラフィド藻を含む黄色植物のみが持つ。現在、黄緑藻類フシナシミドロと珪藻において、オーレオクロムが形態形成や細胞増殖に効果があると報告されている。しかし、多細胞化し進化的・水産業的に有用な褐藻においては、このオーレオクロムの効果は解析されていない。本研究では、褐藻2種(ヤハズグサ、アカモク)を用い、青色応答反応の解析と光受容体の探索等を主な目的としている。昨年度まで、2種のトランスクリプトームが終了し、現在アカモクのゲノムを解析中である。トランスクリプトームおいてはオーレオクロムのオーソログを含む青色光受容体が発見された。一方オーレオクロムは転写因子でもあるため、ゲノム解析を行って、遺伝子上流のシス配列の解析を行っている。今後、単離された各種青色光受容体について生化学的解析を行う予定である。本研究では、トランスクリプトームを主体として、光受容体の単離や発言パターンを重要な課題としていたが、おおむね順調に進んでいる。一方、ゲノム解析が申請時より安価になったため、現在PacBioを用いたゲノム上のシス配列の取得まで解析中である。これらによって、オーレオクロムからの遺伝子カスケードが理解できるようになると考えられる。黄色植物に保存されている転写因子型光受容体オーレオクロムは、黄緑藻フシナシミドロの青色光誘導分枝形成、また珪藻においては細胞分裂に関与しているが、褐藻含む他の黄色植物での機能は全く未解明である。本研究では、培養系を確立している褐藻用いて、どのような青色光反応がオーレオクロムによって制御されているか明らかにすることを目的とした。青色光初期生理反応解析を行った結果、植物ホルモン・オーキシンの輸送阻害剤が、青色光で誘導される葉状体形成を阻害した。また、葉状体形成時に必須な核分裂の日周性を観察すると、明期開始直前に核分裂頻度が高まっていた。オーレオクロムが間接的にオーキシンに作用し、核分裂を誘導し、葉状体形成を促していると考えられた。次世代シークエンスを使ったトランスクリプトーム解析を行った結果、オーレオクロム遺伝子がみつかり、オーソログの数は6つであった。他の黄色植物に属するフシナシミドロや珪藻と同様な遺伝子数であり、系統解析を行うと、3つのグループに分かれることもわかった。また様々な光条件によるオーレオクロム遺伝子の発現レベルを調査した結果、オーソログ間において暗期・明期で発現差が見られることもわかった。ゲノム解析も同時に行ったが、シス配列を特定するようなデータは得られなかった。また褐藻の生化学的な解析に関してはGCコンテンツが高く、大腸菌を用いたタンパク質発現等では、芳しい結果が得られなかった。期間を通して、分子生物学的な課題は、達成できたが、生化学的や分子遺伝学的な研究に関して、解決しなくてはならない課題がのこった。オーレオクロムは黄色植物専用の青色光受容体である。 | KAKENHI-PROJECT-26440156 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26440156 |
褐藻の青色光応答反応の解析 | 黄色植物は珪藻、褐藻や赤潮を形成するラフィド藻など多様な生物群が含まれており、青色光によって形態形成や運動反応を誘導されることが報告されている。本研究では、褐藻に着目し、オーレオクロム依存的な生理応答と遺伝子情報取得を主な課題として行った。2種の褐藻類において、青色光依存的な葉状体形成や生活環の変化が起こることがわかった。またトランスクリプトーム解析を行った結果、多数のオーレオクロムホモログが存在し、三つのグループに分かれることやオーレオクロムの発現に関しては、オーソログ間で差が見られた。下流の遺伝子群についても単色光による発現差がみられた。1初年度で二つの褐藻類の核酸単離まで順調に進んだ。さらにアカモクに関しては、核酸単離を早々に終了させ、4種の条件下での次世代シークエンスを用いたトランスクリプトームも終了させた。これら次年度以降、データベースを用いてreal time PCRを用いた解析により、確認作業し、光受容からの転写制御の全貌が明らかになることが期待される。2生理現象に関しては、褐藻2種ともに成長が遅く、生理実験の再現性をとることに労力を注いだ。光依存的なアカモクの有性生殖とヤハズグサの再生実験は再現性が得られ、今後、多くの阻害剤等を用いた生理実験により多くの情報が得られると考えている。1最終年度は、アカモクにおける遺伝子発現の変化があった遺伝子の上流のシス配列の探索を行う。2ヤハズグサのトランスクリプトーム解析が終了したことから、生化学的な解析を行う。3上記褐藻2種の生理反応について、植物ホルモン等の効果が得られたことから、より詳細に解析する予定である。以上の三点について論文執筆予定である。植物生理学1前年度に行ったアカモクのトランスクリプトームデータの詳細な解析とreal time PCRによる再現性の確認を行う予定である。2今年度はもう1種のヤハズグサのトランスクリプトームを行う予定である。3以上のデータが揃い次第光受容体関連遺伝子を単離し、生化学的解析を行う予定である。平成25年度に科学研究補助費取得者対象者の研究支援事業として、新学術領域「ゲノム支援」に採択され、本科研費で使用する予定であったトランスクリプトーム解析を、無償で行えたため、少額であるが研究額の余剰が起こっている。昨年度科学研究補助費取得対象者の研究支援として、新学術領域「ゲノム支援」に応募可能になり、応募し採択された。これらによって研究費区分のその他に含んでいた次世代シークエンスの研究費を使用せず、研究費の余剰がおこった。以上の支援事業の結果から、データの解析(遺伝子発現)が進み、別のデータ解析(ゲノム)を行う必要性があることからそれらの解析に充当する予定である。ゲノム支援を採択されたことにより当初予定より研究が加速しているためこれらを生化学物品や分子生物学等の消耗品等に充てる予定である。また今年度も次世代シークエンスをする予定なのでそれらに充当する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-26440156 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26440156 |
臓器特異的遺伝子検出による新しい癌の遺伝子診断法の確立 | 1.内分泌腫瘍(褐色細胞腫)のうちアドレナリン産生タイプのものはアドレナリン産生酵素PNMT遺伝子の発現が亢進していることおよびその機序の一端について明らかにした。2.脳内のみに限局するとされていたオレキシンレセプターの発現が副腎において強力に発現していること、髄質と皮質においてレセプターが異なり作用も異なることを明らかにした。3.カテコールアミン合成の律速酵素であるTyrosine hydroxylase (TH) isoformの発現パターンが正常と腫瘍で大きく異なることを明らかにした。4.テロメラーゼの触媒サブユニットであるhTERT mRNAの発現について検討を行い、内分泌腫瘍の種類によっそは悪性度判定に有用であることを明らかにした。褐色細胞腫においては、感度80%特異度88%と良好であった。5.神経ペプチドPACAPおよびレセプターの褐色細胞腫における発現について検討を行った。PAC1R, VPAC2Rについては副腎外発生のものではその発現がほとんど認められなかった。PACAP mRNA発現とカテコールアミン合成酵素mRNA (TH, DBH, PNMT)、カテコールアミン(とくにアドレナリン)量間に相関が認められ、PACAP1.内分泌腫瘍(褐色細胞腫)のうちアドレナリン産生タイプのものはアドレナリン産生酵素PNMT遺伝子の発現が亢進していることおよびその機序の一端について明らかにした。2.脳内のみに限局するとされていたオレキシンレセプターの発現が副腎において強力に発現していること、髄質と皮質においてレセプターが異なり作用も異なることを明らかにした。3.カテコールアミン合成の律速酵素であるTyrosine hydroxylase (TH) isoformの発現パターンが正常と腫瘍で大きく異なることを明らかにした。4.テロメラーゼの触媒サブユニットであるhTERT mRNAの発現について検討を行い、内分泌腫瘍の種類によっそは悪性度判定に有用であることを明らかにした。褐色細胞腫においては、感度80%特異度88%と良好であった。5.神経ペプチドPACAPおよびレセプターの褐色細胞腫における発現について検討を行った。PAC1R, VPAC2Rについては副腎外発生のものではその発現がほとんど認められなかった。PACAP mRNA発現とカテコールアミン合成酵素mRNA (TH, DBH, PNMT)、カテコールアミン(とくにアドレナリン)量間に相関が認められ、PACAP本研究の目的は、癌の体細胞レベルでの遺伝子診断、すなわち臓器特異的遺伝子を検出して、早期診断や病勢診断を行うことにある。内分泌腫瘍(褐色細胞腫)のうちアドレナリン産生タイプのものは、アドレナリン産生酵素PNMT遺伝子の発現が亢進しており、その機序として1.コルチゾール産生の増加、2.グルココルチコイドレセプターの発現増加、3.Egr-1などの発現増加などが関与していることを明らかにし、PNMT遺伝子診断による病勢診断の可能性を示した。本研究の目的は、癌の体細胞レベルでの遺伝子診断、すなはち臓器特異的遺伝子を検出して、早期診断や病勢診断を行うことにある。われわれは脳内のみに限局すると思われていたオレキシンレセプターが副腎髄質に視床下部と同等くらい強力に発現していることを発見し、その作用の一端も明らかにした。またカテコールアミン合成の律速酵素であるTyrosine hydroxylaseのisoformの発現パターンが、正常副腎髄質と褐色細胞腫で大きく異なっていることを明らかにし、カテコールアミン産生能と関係のあることを明らかにした。副腎髄質においてはアンギオテンシンIIサブタイプ2レセプターの発現が優勢であり、分泌に抑制的に作用することを明らかにした。これら知見が、機能異常解明や病態解析に役立つと思われる。本研究の目的は、癌の体細胞レベルでの遺伝子診断、すなはち臓器特異的遺伝子を検出して、早期診断や病勢診断を行うことにある。われわれはテロメラーゼの触媒サブユニットであるhTERT mRNAの発現について、インフォームドコンセントの得られた各種内分泌腫瘍組織について検討を行い、内分泌腫瘍の種類によっては悪性度判定に有用であることを明らかにした。褐色細胞腫においては、感度80%特異度88%と良好であった。神経ペプチドPACAPは褐色細胞腫のおよそ半数において過剰発現していると報告されているが、そのレセプターに関する報告はない。PACAPレセプターのPAC1R,VPAC1R,VPAC2RすべてについてそのmRNA発現を検討したところ、PAC1R,VPAC2Rについては副腎外発生のものではその発現がほとんど認められなかった。また副腎由来の褐色細胞腫においてはPACAP mRNA発現とカテコールアミン合成酵素mRNA(TH,DBH,PNMT)、カテコールアミン(とくにアドレナリン)量に相関が認められ、PACAPはカテコールアミン過剰発現に関与する因子と考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-11672289 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11672289 |
日本沿岸における波浪の方向集中度出現特性の解明と予測モデルの開発 | 日本沿岸に来襲する波浪の方向集中度の出現特性に関して,全国港湾海洋波浪情報網により観測されているデータから推定される方向集中度および,WAMによる波浪推算で得られる方向集中度の出現特性を明らかにするとともに,合田・鈴木(1975)の提案する値との比較を行った.波浪推算モデルで得られたSmaxを波形勾配別に比較すると大きくばらつくものの,平均Smaxは合田らの設定値と同様に波形勾配の増大とともに減少する傾向がみられた.NOWPHASの観測結果から推定される平均Smaxは波形勾配によらず,概ね1020程度の値であり,風波については合田らの推定値よりやや大きい可能性が示唆された.方向集中度は波浪の方向分散特性を決定する重要なパラメータである.荒天時を対象とした静穏度解析などの実務に方向集中度の情報を活用するためには,波浪推算モデルを活用した方向集中度の時空間情報の利用が有用であろう.しかしながら,その出現特性に関しては,一部海域での観測事例があるのみで,実務においては標準スペクトルとして光易型方向分布関数(光易ら1973)が仮定され,その係数である方向集中度Smaxには,合田・鈴木(1975)がWilsonの式(1965)をもとに工学的利用の観点から便宜的に設定した値が長期にわたり利用され続けている.このうち,風波(Smax=10)については,設定当時の観測・実験データとの比較により,ある程度の裏付けがあるとされているものの,減衰距離の短いうねり(Smax=25)および,減衰距離の長いうねり(Smax=75)については今後の観測により信頼性を高める必要があるとされている.本年度は,日本沿岸に来襲する波浪の方向集中度の出現特性に関する基礎的な検討として,2005年の一年間を対象に全国港湾海洋波浪情報網(NOWPHAS)により観測されているデータから推定される方向集中度および,WAMによる波浪推算で得られる方向集中度の出現特性を明らかにするとともに,合田・鈴木(1975)の提案する値との比較を行った。波浪推算モデルで得られたSmaxを波形勾配別に比較すると、大きくばらつくものの,平均Smaxは、合田らの設定値と同様に、波形勾配の増大とともに減少する傾向がみられた。NOWPHASの観測結果から推定される平均Smaxは波形勾配によらず,概ね1020程度の値であり,風波については合田らの推定値よりやや大きい可能性が示唆された.平成27年度に予定していた研究は,27年度中に実施済みである.成果は28年度中に学会で発表を予定している.主な検討の内容と結果は以下のとおり.風速20m/sの一様風条件で減衰距離70°(約8000km)まで定常状態に達した時点の伝搬距離(緯度)ごとの有義波高,有義波周期および方向集中度を整理し,Smaxは風波条件を想定した減衰距離0°で10程度,風下の無風域では減衰距離とともに増加し,70°程度の減衰距離で50を超える結果を得た.潮岬における1年間のSmaxを波形勾配階級別に整理し,大きなばらつきがあるものの,波浪推算から得られる平均Smaxは合田・鈴木(1975)によって推定されたSmaxと同様、波形勾配の増大とともに減少する傾向を示すことを明らかにした.NOWPHASの観測値に基づくSmaxを整理し,波形勾配の増大に伴う減少傾向はみられず,平均Smaxは10から20前後の値を示すこと,高波浪時であっても方向集中度は時系列に安定した結果が得られず,観測・推定誤差の影響が大きいことを明らかにした.また,高波浪が出現していた期間の方向スペクトルから平均方向スペクトルを算出し,Smaxの算出を試みた結果,吹送距離が限定される日本海側の直江津において、SMAXは14程度であった。方向集中度は波浪の方向分散特性を決定するパラメータであり,漂砂,波力,静穏度などの算定に重要である.しかしながら,実務においては,工学的利用の観点で便宜的に設定された値が半世紀近く利用され続けており,その妥当性については未だ検証されていない.本研究は,全国港湾海洋波浪情報網により観測・保管されている日本沿岸の波浪観測データを解析することにより,日本沿岸に来襲する代表的な風波,うねりについて方向集中度の値を明らかにするとともに,波浪予測モデルを活用し,方向集中度の空間分布特性および方向集中度が波浪の発達に与える影響を明らかにすることを目的とする.方向集中度は波浪の観測に基づく算出が可能であるものの,調査地点が限られるため,擾乱に対する応答特性は十分に解明されていない.一方,波浪推算モデルは任意の海域における波浪情報を得ることができるため,算出される方向スペクトルから方向集中度の平面分布特性を確認可能である.そこで、波浪推算モデルを用いて、台風通過時に着目し,方向集中度の出現特性を整理することにより,波浪推算から推定されるSmaxの出現特性および,Smaxが高くなる気象・海象条件を解明した。風速と方向集中度の関係をみるとモデル台風,実気象ともに大きくばらつくものの,両者とも方向集中度平均値は風速6m程度で最大となり,風速の増大とともに減少する傾向がみられた.Smaxはうねりが想定される波形勾配でかつ,風速10m以下で高い傾向が見られた。 | KAKENHI-PROJECT-15K06237 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K06237 |
日本沿岸における波浪の方向集中度出現特性の解明と予測モデルの開発 | 観測データに基づく方向集中度の出現特性と波浪推算モデルにより算出される方向集中度の出現特性については、予定通りに研究が進んでおり、平成28年度は、成果発表を行った。今年度実施した主な検討内容と結果は以下のとおりである。波浪推算モデルはWAMを使い、モデル台風と実気象の台風で計算を行った.モデル台風については,台風モデルを用い,中心気圧935hPa,最大風速半径90kmの台風が初期位置緯度20°から経度138°上を時速30km/hで北上する条件で海上風を作成した.実気象の台風では気象庁GPVデータ(メソ解析値)からT0402(2004年台風第二号)のデータを使用し波浪推算を行った.領域内での最低中心気圧は975hPaであった.気象条件への応答特性のみを把握するため,波浪計算領域はすべて海としている.Smaxは台風の中心からやや南側を中心とし中心から遠ざかるにつれ、ドーナツ状に高い範囲が見られ,波高が高い場所はSmaxが低くなっている.Smaxはモデル台風と同様に波高が高い海域は低くなっている.ただし,高い海域はドーナツ状には発生しておらず,台風進行方向に対して右後ろと左後ろでのみ高くなっていた.昨年度までの研究により、観測データから推定される方向集中度はばらつきがあり、平均的には波形勾配によらず15程度となるのに対して、波浪推算では任意の海域、期間の情報が比較的簡単に得られ、波浪推算から得られる方向スペクトルをもとに算出した方向集中度(以降推算Smax)はばらつきがあるものの波形勾配別に平均値を求めると、合田ら1975が提案した波形勾配別のSmaxと近い値を示す傾向があることを明らかにしている。本年度は、波浪推算モデルWAMにより算出される方向スペクトルから推定したSmaxがばらつきを有する要因および、波浪推算モデルにより算出される有義波高と有義波周期から得られる波形勾配から合田らの提案した方向集中度(以降理論Smax)に近い値を示す条件を明らかにすることを目的とし、波浪推算により得られる方向集中度の出現特性について再整理を行った。加えて波齢との相関についても整理を行った結果、鳥取における冬季季節風時には波齢とsmaxに相関が見られるものの、その他の地点では明瞭な傾向が見られなかった。推算結果の方向スペクトルから得られる方向集中度は、有義波高と有義波周期から推定される波形勾配別の合田らの方向集中度Smaxの分布と分布形状は良く似ており、50程度の条件では概ね同程度の値を推定可能であるが、20以下の風波条件では過小評価傾向であり、方向集中度が80を越えるような減衰距離の長いうねりについては過大な値を与えることを明らかにした。なお、本研究では違いの特性を明らかにしたが、合田らの提案値と波浪推算から算出される方向集中度のどちらが適切な値であるかについては更なる詳細な検討が望ましいといえる。日本沿岸に来襲する波浪の方向集中度の出現特性に関して,全国港湾海洋波浪情報網により観測されているデータから推定される方向集中度および,WAMによる波浪推算で得られる方向集中度の出現特性を明らかにするとともに,合田・鈴木(1975)の提案する値との比較を行った.波浪推算モデルで得られたSmaxを波形勾配別に比較すると大きくばらつくものの,平均Smaxは合田らの設定値と同様に波形勾配の増大とともに減少する傾向がみられた.NOWPHASの観測結果から推定される平均Smaxは波形勾配によらず,概ね1020程度の値であり,風波については合田らの推定値よりやや大きい可能性が示唆された. | KAKENHI-PROJECT-15K06237 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K06237 |
神経成長円錐の糸状足形成機構に関する分子細胞生物学的研究 | 神経の成長時及び再生時に神経突起の先端に形成される成長円錐は、活発な細胞運動能と高度の分子認識能により、神経経路形成に主要な役割を果たしている。成長円錐において特に運動能と認識能の高い糸状足部分ではアクチンがその構造及び運動の主体となることが形態学的に示されている。本研究では、このような糸状足の形成機構と制御機構を明らかにするために、単離成長円錐画分、in vivoの神経再生系、培養神経細胞の三つの実験系を用いて、アクチン調節蛋白の検索と細胞骨格蛋白の動態分析を行い、以下の結果を得た。1)ラット胎仔脳より成長円錐画分を単離し、ビオチン標識アクチンを用いたゲル・オ-バ-レイ法によりアクチン結合蛋白を検索したところ、成長円錐画分に局在する分子量44kD、pI5.9の蛋白を見出した。DNase Iカラムへの結合も認められるこの44kD蛋白は、胎齢18日の成長円錐に最も多く存在するが、発育に伴って減少し、成熟動物脳シナプトソ-ムには検出されないことから、成長円錐におけるアクチン機能にの調節に関連するものと期待される。2)ラット脊髄前角部に[ ^<35>S]メチオニンを注入することにより、坐骨神経運動繊維内を輸送される細胞骨格蛋白及び関連蛋白を標識し、DNase Iカラム、筋肉Fーアクチンとの共沈実験などにより分析した結果、アクチン結合蛋白として70kDのアネキシンVIと、45kD蛋白が検出された。また、神経再生時には、軸索内アクチン及びチュ-ブリンの溶解性が上昇することにより、その輸送速度が速くなることを見出した。3)ラット後根神経節細胞の初代培養系を用い、[ ^<35>S]メチオニンでパルス標識した細胞骨格蛋白の経時変化から、軸索に特徴的な安定重合型アクチン及びチュ-ブリンの形成過程を追跡した。神経の成長時及び再生時に神経突起の先端に形成される成長円錐は、活発な細胞運動能と高度の分子認識能により、神経経路形成に主要な役割を果たしている。成長円錐において特に運動能と認識能の高い糸状足部分ではアクチンがその構造及び運動の主体となることが形態学的に示されている。本研究では、このような糸状足の形成機構と制御機構を明らかにするために、単離成長円錐画分、in vivoの神経再生系、培養神経細胞の三つの実験系を用いて、アクチン調節蛋白の検索と細胞骨格蛋白の動態分析を行い、以下の結果を得た。1)ラット胎仔脳より成長円錐画分を単離し、ビオチン標識アクチンを用いたゲル・オ-バ-レイ法によりアクチン結合蛋白を検索したところ、成長円錐画分に局在する分子量44kD、pI5.9の蛋白を見出した。DNase Iカラムへの結合も認められるこの44kD蛋白は、胎齢18日の成長円錐に最も多く存在するが、発育に伴って減少し、成熟動物脳シナプトソ-ムには検出されないことから、成長円錐におけるアクチン機能にの調節に関連するものと期待される。2)ラット脊髄前角部に[ ^<35>S]メチオニンを注入することにより、坐骨神経運動繊維内を輸送される細胞骨格蛋白及び関連蛋白を標識し、DNase Iカラム、筋肉Fーアクチンとの共沈実験などにより分析した結果、アクチン結合蛋白として70kDのアネキシンVIと、45kD蛋白が検出された。また、神経再生時には、軸索内アクチン及びチュ-ブリンの溶解性が上昇することにより、その輸送速度が速くなることを見出した。3)ラット後根神経節細胞の初代培養系を用い、[ ^<35>S]メチオニンでパルス標識した細胞骨格蛋白の経時変化から、軸索に特徴的な安定重合型アクチン及びチュ-ブリンの形成過程を追跡した。 | KAKENHI-PROJECT-03833002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03833002 |
低分子ヒドロゲル化剤の戦略的創製を指向したゲル化特性の類型化と評価 | 開発した糖脂質型超分子ヒドロゲル化剤の物性について、レオメーターを使った定性的且つ定量的な評価を行った。目視観察で透明なヒドロゲルを形成する場合、貯蔵弾性率が角周波数に依存せず一定の値を示し、安定なゲルであることが証明ゴされた。一方、白濁したゲルでは、貯蔵弾性率が角周波数に依存し変動し、さらに損失弾性率とほぼ同等の値を示したことから、ゲル化点であるゲルlike物性であることが明らかとなった。複数の超分子ヒドロゲルの物性について系統的に評価した結果、糖部位はGalNAc型、スペーサー部はフマル酸型、コネクター部はグルタミン酸型、脂質テイル部はシクロヘキシルがそれぞれ重要なゲル化剤構造因子であることが明らかとなった。特にフマル酸型スペーサー部位を導入した分子は、光異性化反応による光応答性ゲル-ゾル転移を示した。光応答性ゲルの開発は、高分子・超分子ゲルを含め希少であり、光ゲル-ゾル転移を迅速に示すヒドロゲルとしては初めての報告例となった。この光応答性ゲルファイバー網目(ナノメッシュ)の形成と崩壊制御に着目し、大腸菌の運動やマイクロビーズを修飾したF1-ATPase(モータータンパク質)の一分子レベルでの回転活性を制御することに成功した。開発した超分子ヒドロゲルは、W/Oエマルジョン法によりナノ・ピコリットルサイズのドロプレットへの加工も可能であった。非接着性のドロプレット間界面に光照射すると部分的なゲルーゾル転移が生じ、その結果、光融合を示した。この現象を利用し、酵素反応を時間・空間的に制御した新規セミウェットコンテナーとしての展開にも成功した。上記のように、本年度では糖脂質型超分子ヒドロゲルの構造-物性相関を基に安定な超分子ヒドロゲルを見出し、さらに光応答型超分子ヒドロゲルの開発に成功した。また、開発したゲルを用いて、新規ナノ・マイクロバイオマテリアルとしての可能性も示した。本年度は、糖脂質型超分子ヒドロゲル化剤ライブラリーの拡張を行った。糖脂質型超分子分子は、糖ヘッド、スペーサー、コネクター、脂質テイルの四つのモジュールから構成される。糖ヘッド部位に関してはGalNAc, GlcNAc, Gal, Glu糖を、スペーサー部位には、コハク酸型やアジピン酸誘導体のほかに、二重結合を有するフマル酸やムコン酸型を導入した分子を設計し合成した。また、コネクター部位では、グルタミン酸やアジピン酸型を、脂質テイルに関しては、環状及び直鎖状飽和アルキル鎖を用いた。合成した分子群の水に対するゲル化試験を倒立法で調べた結果、十数種類の糖脂質型超分子ヒドロゲル化剤が見つかった。これらのうち、巨視的に「透明なゲル」と「白濁するゲル」に分別できた。モルフォロジー観察から透明なゲルは細く綿密なゲルファイバーネットワークを形成し、白濁するゲルに関しては、太く粗いゲルファイバーネットワーク形成が確認された。特に、透明なゲルを形成するゲル化剤分子骨格は、糖ヘッドがN-アセチル型糖、スペーサー部位はコハク酸またはフマル酸型、コネクター部位はグルタミン酸型、脂質テイル部位は環状飽和アルキル鎖を共通骨格としていることが分かった。今後は、レオメーターを使った動的粘弾性測定から、これらの結果(透明ゲル、白濁ゲル)を定量的に評価し、ゲルの特性物性を反映する分子構因子の特定を進める。また、ゲル化しなかった分子群の構造とも評価しつつゲル形成に必要な分子構造因子の特定も進めていく予定である。上記研究を遂行している際、興味深い結果も得られた。スペーサー部位がフマル酸型のゲル化剤分子のうち、透明なゲルを形成するゲル化剤に関しては、分解能に優れた光ゲルーゾル転移現象を示した。今後はこの機能を使った応用展開も進めていく予定である。開発した糖脂質型超分子ヒドロゲル化剤の物性について、レオメーターを使った定性的且つ定量的な評価を行った。目視観察で透明なヒドロゲルを形成する場合、貯蔵弾性率が角周波数に依存せず一定の値を示し、安定なゲルであることが証明ゴされた。一方、白濁したゲルでは、貯蔵弾性率が角周波数に依存し変動し、さらに損失弾性率とほぼ同等の値を示したことから、ゲル化点であるゲルlike物性であることが明らかとなった。複数の超分子ヒドロゲルの物性について系統的に評価した結果、糖部位はGalNAc型、スペーサー部はフマル酸型、コネクター部はグルタミン酸型、脂質テイル部はシクロヘキシルがそれぞれ重要なゲル化剤構造因子であることが明らかとなった。特にフマル酸型スペーサー部位を導入した分子は、光異性化反応による光応答性ゲル-ゾル転移を示した。光応答性ゲルの開発は、高分子・超分子ゲルを含め希少であり、光ゲル-ゾル転移を迅速に示すヒドロゲルとしては初めての報告例となった。この光応答性ゲルファイバー網目(ナノメッシュ)の形成と崩壊制御に着目し、大腸菌の運動やマイクロビーズを修飾したF1-ATPase(モータータンパク質)の一分子レベルでの回転活性を制御することに成功した。開発した超分子ヒドロゲルは、W/Oエマルジョン法によりナノ・ピコリットルサイズのドロプレットへの加工も可能であった。非接着性のドロプレット間界面に光照射すると部分的なゲルーゾル転移が生じ、その結果、光融合を示した。この現象を利用し、酵素反応を時間・空間的に制御した新規セミウェットコンテナーとしての展開にも成功した。 | KAKENHI-PROJECT-06J02825 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J02825 |
低分子ヒドロゲル化剤の戦略的創製を指向したゲル化特性の類型化と評価 | 上記のように、本年度では糖脂質型超分子ヒドロゲルの構造-物性相関を基に安定な超分子ヒドロゲルを見出し、さらに光応答型超分子ヒドロゲルの開発に成功した。また、開発したゲルを用いて、新規ナノ・マイクロバイオマテリアルとしての可能性も示した。 | KAKENHI-PROJECT-06J02825 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J02825 |
デオキシアデノシンの神経毒性と分解酵素の神経保護作用の解明 | 本研究では、デオキシアデノシン(dADO)の神経毒性を調査する。アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症の研究から、dADOはADAの活性が低下した場合に増加し、白血球に対する毒性をもたらすことが知られている。しかし、ADA欠損症においては免疫系の異常だけではなく、脳神経系に対する障害も報告されており、dADOの神経細胞に対する作用が疑われる。そこで、本研究ではdADOの神経毒性について、培養系と脳急性スライスを用いて定量化する。初年度は、繊維芽細胞の初代培養を用いてdADOの細胞毒性のアッセイ系を確立した。WST-8・MTT・LDHを用いて細胞毒性を評価する系を試行した。その結果、WST-8を用いたアッセイ系で再現性良く、細胞毒性を評価できることを確認した。この系を用いて、ADAの阻害剤であるデオキシコホルマイシン(dCF)存在下で、dADOに細胞毒性があることを確認した。dCFが無い場合は、dADOを添加しても細胞障害をWST-8によって確認することはできなかった。これは、内因性のADAがdADOの毒性を無効化していることを示している。また、マウス大脳皮質-線条体の急性スライスを作成して、組織に対するdADOの神経毒性評価を試みた。dADOの初代培養系に対する毒性のアッセイを確立した。その結果、内因性のADAを阻害した場合にのみ、dADOに繊維芽細胞に対する毒性があることを確認した。マウス神経細胞の初代培養系とマウス大脳皮質-線条体の急性スライスを作成して、dADOの神経毒性評価を行う。急性スライスおよび神経細胞の初代培養系を用いたデオキシアデノシンの毒性アッセイを行う。本研究では、デオキシアデノシン(dADO)の神経毒性を調査する。アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症の研究から、dADOはADAの活性が低下した場合に増加し、白血球に対する毒性をもたらすことが知られている。しかし、ADA欠損症においては免疫系の異常だけではなく、脳神経系に対する障害も報告されており、dADOの神経細胞に対する作用が疑われる。そこで、本研究ではdADOの神経毒性について、培養系と脳急性スライスを用いて定量化する。初年度は、繊維芽細胞の初代培養を用いてdADOの細胞毒性のアッセイ系を確立した。WST-8・MTT・LDHを用いて細胞毒性を評価する系を試行した。その結果、WST-8を用いたアッセイ系で再現性良く、細胞毒性を評価できることを確認した。この系を用いて、ADAの阻害剤であるデオキシコホルマイシン(dCF)存在下で、dADOに細胞毒性があることを確認した。dCFが無い場合は、dADOを添加しても細胞障害をWST-8によって確認することはできなかった。これは、内因性のADAがdADOの毒性を無効化していることを示している。また、マウス大脳皮質-線条体の急性スライスを作成して、組織に対するdADOの神経毒性評価を試みた。dADOの初代培養系に対する毒性のアッセイを確立した。その結果、内因性のADAを阻害した場合にのみ、dADOに繊維芽細胞に対する毒性があることを確認した。マウス神経細胞の初代培養系とマウス大脳皮質-線条体の急性スライスを作成して、dADOの神経毒性評価を行う。追加採択であったため計画通りの体制を組めず、現有の備品・試薬・消耗品で実施可能な線維芽細胞初代培養系を用いて実験を行ったため。急性スライスおよび神経細胞の初代培養系を用いたデオキシアデノシンの毒性アッセイを行う。 | KAKENHI-PROJECT-16K08923 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K08923 |
スケッチによる手軽でスケーラブルな3Dモデル検索 | スケッチによる手軽でスケーラブルな3Dモデル検索を目指して次の3つのアプローチで研究を行った:(1)スケッチが3Dモデルの見かけとかけ離れている問題を解決するため,検索しやすいスケッチを描画するよう計算機が人を支援する,スケッチを検索要求とした3Dモデル検索の手法,(2)部分を提示し,これを含む3Dモデルを検索するため,3Dモデルをランダムな位置・向き・大きさを持つ多数の部分体積へ分割し,これと検索要求を比べる手法,(3) 3Dモデル相互を高速に比較し検索を行うため,3D形状を直接ないし間接に2値ベクトルとして表現し,これをハミング空間で高速に比較する複数の手法.1.スケッチ検索: 2013年に発表したクロスドメイン多様体ランキング(CDMR)法を改良し,その成果を論文誌に発表した.この手法で3次元モデル検索の国際コンテストSHREC 2014スケッチ検索部門に参加し,2位の成績を収めた.ただ,CDMR法は検索時の計算量が大きい.CDMRグラフは(視点数×3次元モデル)個の3次元モデル画像の特徴等を頂点とする大規模グラフで,生成と格納に時間とメモリ空間を要する.さらに,CDMR法では検索要求ごとCDMRグラフ上で尤度拡散を行う.その結果,3次元モデル数が10万を超えるようなデータベースでの「インタラクティブ(3秒以内)」の検索は不可能であった.そこで,我々は,CDMR法のスケール化したクロスドメイン多様体ハッシング法(CMMH法)を提案した.CMMH法ではCDMRグラフの距離空間をハミング距離空間に非線形にハッシュし,検索要求と3次元モデル(の1視点からの画像)との比較を512ビット程度の2進ベクトル間のハミング距離計算に置き換えた.また,3次元モデル相互の比較法等も改良した.その結果,3次元モデルの数が100万モデル超える3次元モデルデータベースに対しても,CDMR法より高精度で,かつインタラクティブな時間で検索を実現できた.2.部分検索:部分を記述したスケッチをクエリとして,見かけに基づく3次元モデルの検索を行う手法を考案,実装,評価した.その結果,検索精度が低く,かつ,検索の実行速度も,我々が「インタラクティブ検索」の目安としている3秒に比べ,10倍以上と大変遅かった.現在,精度,速度を改善する手法を検討中である.3.スケーラブル検索:上記のCMMH法によるスケッチ検索では,ある程度スケーラブルな検索を実現できた.本研究では,線画スケッチ等,ユーザにとって簡便な検索要求を用い,3次元モデルをその部分または全体形状を指定して検索する手法の開発を目指す.2015年度の成果は以下の通り.1.スケッチ画特徴:スケッチ画からの特徴抽出にDeep Learningを適用した.多量の自然画像で学習の後,スケッチ画像と3Dモデル輪郭レンダリング画像で追加学習した.その結果,スケッチ画と3Dモデル輪郭画像を比較する精度が向上した.現在改良中.2.局所3D形状特徴:3D有効点群から抽出するPosition and Orientation Distribution (POD)法を提案し評価した.PODでは,有効点群の部分体積の向きを正規化し,その体積中の点の位置,向き等を統計化して特徴ベクタとする.評価の結果,これまでの局所3D形状特徴よりも検索精度が高かった.(論文発表済み)3.局所特徴統合法:本研究では,局所特徴を効果的に統合するDiffusion on Manifold(DM)法を提案した.評価実験の結果,多くの場合においてFisher Vector法やSuper Vector法よりも高い精度を得ることができた.(論文発表済み.)4.手本画リアルタイム表示による3Dモデルのスケッチ検索:スケッチ画による3Dモデル検索では,スケッチと,3Dモデルの輪郭レンダリング画像とが大きく異なるために比較精度が低下する.提案手法では,スケッチ描画に合わせ,スケッチの背景に,スケッチと類似した見かけを持つ3Dモデル輪郭画像を手本としてリアルタイムに表示する.プロトタイプ実装を用いた予備実験の結果,手本に誘導されてスケッチ画の描画スタイルがが3Dモデル輪郭画像のそれに近づき,スケッチ画による3Dモデル検索の精度が高まることが分かった.(2016年6月に学会発表予定.)スケッチのリアルタイム描画支援を用いたスケッチによる3Dモデル検索の研究では,処理の手間が当初の予想よりも多く,プロトタイプの実装に時間がかかった.本課題では,手描きスケッチなどの簡便な検索要求を用い,3Dモデルをその部分又は全体形状で比較し,大規模データベースを対象とした,高精度かつ高速な,3Dモデル検索手法の開発を目指して研究を行った.より具体的には次の3つの項目について研究を行った.(1)スケッチ検索:現状におけるスケッチ検索の最大の課題は,検索精度が低いことである.スケッチは,描画のスタイル,抽象化,描画スキル,などにより非常に多様である.これらスケッチ画像と,検索対象である3Dモデルを線画としてレンダリングした画像との隔たりが大きく,うまく比較できないためである.そこで,我々は,人のスケッチ描画を検索システムがリアルタイムで支援し,人の描画を3Dモデルの線画レンダリングに類似した描画に誘導する手法を提案した.評価の結果,検索精度は作画支援が有る場合の方が有意に高く,提案手法の有効性が確認できた.(2)部分検索:部分検索を目指し,ランダム化空間分割を用いた手法を提案した.これは,検索対象を部分体積に細分割し,これら部分体積と検索要求とをバイナリ特徴ベクタを用いて高速に比較する手法である.部分体積はランダムな位置,向き,大きさを持つ直方体である.50k個の3Dモデルからなるデータベースなどを用いて評価した結果,手法の有効性が確認された.(3)スケーラブルな検索: | KAKENHI-PROJECT-26330133 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26330133 |
スケッチによる手軽でスケーラブルな3Dモデル検索 | 大規模なデータベースの検索,あるいは,上記の部分検索手法で現れる非常に多数の部分体積との比較を高速に行うため,コンパクトで比較が高速なバイナリ特徴を抽出する手法を検討した.3Dモデルから直接バイナリ特徴を抽出する手法,機械学習等を用いて実数値特徴ベクタをバイナリ特徴ベクタに写像する手法,等を開発した.スケッチによる手軽でスケーラブルな3Dモデル検索を目指して次の3つのアプローチで研究を行った:(1)スケッチが3Dモデルの見かけとかけ離れている問題を解決するため,検索しやすいスケッチを描画するよう計算機が人を支援する,スケッチを検索要求とした3Dモデル検索の手法,(2)部分を提示し,これを含む3Dモデルを検索するため,3Dモデルをランダムな位置・向き・大きさを持つ多数の部分体積へ分割し,これと検索要求を比べる手法,(3) 3Dモデル相互を高速に比較し検索を行うため,3D形状を直接ないし間接に2値ベクトルとして表現し,これをハミング空間で高速に比較する複数の手法.1.スケッチ検索:十分な達成度が得られた.精度は良いものの処理速度とメモリ負荷に課題があったCDMR法を改良した超ドメイン多様体ハッシング(CMMH)法は,CDMR法に比べ,(単純な比較はできないものの)大まかに言って,精度が同等以上,速度は1001000倍以上となった.2.部分検索:部分スケッチを検索要求とする部分検索は,まだ十分な結果が得られていない.3.スケーラブル検索:十分な達成度が得られた.スケッチ画と3Dモデルの輪郭画像を比較する特徴については,深層学習の適用等により,さらなる高精度化を図る.ただ,深層学習は,精度は高いものの,特徴抽出が比較的遅い.スケッチ描画のリアルタイム描画支援の場合には特徴抽出と比較の高速性が要求されるため,通常の深層学習より高速な手法の考案が必要と思われる.局所3D形状特徴の抽出についても,深層学習の適用を検討中である.ただ,3D形状の場合には,単純に深層学習を適用しても,3Dモデル比較に重要な回転普遍性のある形状特徴を得ることができない.また,2D画像の画素に比べ,3D格子のボクセルはその数が多く,計算の複雑さが増す.局所体積の大きさによっては畳込みニューラルネットワークが複雑すぎて計算が困難な場合がある.この2つの問題を解決する手法を現在検討中である.マルチメディア検索1.スケッチ検索:スケッチ検索に用いる特徴を改良する予定である.例えば,畳込み深層学習を用いたスケッチ画の特徴などを考えている.また,CDMR/CMM法では,スケッチ画相互,スケッチ画と3次元モデル,3次元モデル相互,で個別の比較法を用いることができる.この3つの比較それぞれに寄りより比較手法を検討する.スケッチ検索の課題の一つは,人の描くスケッチがデータベースにある3次元モデルのスケッチ風レンダリング画像と大きく異なる場合があることである. | KAKENHI-PROJECT-26330133 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26330133 |
フィルン試料のハロカーボン測定を利用した過去50年のメタン同位体変動の高精度復元 | 前年度に整備した温室効果ガスやハロカーボン類の大気濃度シナリオやフィルン空気拡散モデルの入力パラメータを用いて、観測データのあるフィルンにおける温室効果ガスやハロカーボン類の深度分布の計算を行った。この結果を観測データと比較したところ、大気濃度シナリオの異なる複数の成分で特定の深度においては再現性が良くなかった。このような傾向は、フィルン空気拡散モデルに入力した拡散係数の深度分布の修正によって低減できると考えられるため、モデル計算に用いた拡散係数を複数の成分を制約条件として用いて最適化することで、多種の温室効果ガスとハロカーボン類についてモデル計算の再現性を向上させることができた。一方で、これらのモデル計算の過程においては、入力値として扱う過去のメタン濃度の変動に、既往研究で考えられていた以上に大きな不確実性があることがわかった。最適化された拡散係数の深度分布を用いて、メタンの炭素と水素の安定同位体比のモデル計算を実施し、フィルン内における分子拡散と重力分離に伴う同位体分別効果を推定した。これらの同位体分別効果を補正することにより、原理的にはフィルンの観測データから過去の時間変動の復元が可能である。しかし、今回の計算結果から復元されたメタンの炭素同位体比の時間変動は南北両半球間で不整合が見られた。この原因は、フィルン内の分子拡散によって起こる同位体分別がメタンの炭素同位体比については非常に大きく、かつ、その大きさがフィルンサイト毎に大きく異なるためと考えられる。したがって、モデル計算に入力する拡散係数およびモデル内での分子拡散の取り扱いが非常に重要であることが確認できた。本研究で得られたフィルン試料の測定データを活用し、多種の温室効果ガスとハロカーボン類について実際のモデル計算および再現性の向上につながるモデルの改良を実施できた。また、上述のようなフィルン空気拡散モデルの課題が見つかった。フィルン内での分子拡散によるメタンの炭素同位体への同位体分別効果の大きさは、これまでに最適化した分子拡散係数だけでなく、モデル内での深度別の分子拡散の定式化にも非常に大きく依存することがわかった。このような分子拡散の取り扱い法について検討することで、本研究でのメタン同位体比の時間復元における不確実性を評価する必要がある。また、これまでのモデル評価を通して見つかった過去のメタン濃度変動の不確実性についても、入手可能なデータとの比較などを通して再調査を行う必要がある。また、フィルンデータに基づくメタン濃度と同位体比の復元結果をメタン放出源の時間変動の観点から解釈するため、過去50年間をカバーするボックスモデルを構築する。この計算結果をもとに、過去50年にわたるメタン放出源の変動について考察する。重要な温室効果ガスであるメタンの全球循環の解明は、その気候への影響やフィードバックの理解と将来予測にとって重要である。過去の変動の復元と要因理解はその重要な手がかりとなるが、現在の諸仮説の検証には観測的証拠が不足している。本研究の目的は、極域氷床上部の空隙層(フィルン)の空気試料から分析したメタン同位体比データから、南北両半球でのメタン放出源の時間変化を過去50年にわたって復元することである。平成29年度には、フィルン空気試料のハロカーボン類の測定とフィルン空気拡散モデルの改良を重点的に実施した。第一に、ハロカーボン測定システムを改良して真空系濃縮ラインを増設し、多様なハロカーボン類を分析対象として分析条件の最適化を行った。これにより、従前のシステムと同等の分析精度を保ちながらも希少なフィルン試料の分析使用量を削減することができた。このシステムを使用して、グリーンランドで採取されたフィルン空気試料の分析を実施した。第二に、得られた測定データを活用するため、現行のフィルン空気拡散モデルでハロカーボン類の計算を行うための準備を行った。具体的には、先行研究を調査し、最新の各種入力パラメータを収集し、成分別の参照大気ヒストリを入手してモデルへ適切に入力できるように整備した。さらに公開データを用いてハロカーボン類の予備計算を実施し、我々のモデルを用いた場合でも、世界の研究グループのモデルと比較しても同レベルの観測再現性能が得られることを確かめた。ハロカーボン類の真空系濃縮ラインを増設・最適化し、分析精度の評価とともに、フィルン試料の分析を実施することができた。さらに、フィルン空気拡散モデルでハロカーボン類の計算を行うために必要な入力データを整備し、公開データでのモデル評価を行い、実際の分析データに合わせたモデル計算を実施する準備が整った。全体として、研究計画通りに進捗している。前年度に整備した温室効果ガスやハロカーボン類の大気濃度シナリオやフィルン空気拡散モデルの入力パラメータを用いて、観測データのあるフィルンにおける温室効果ガスやハロカーボン類の深度分布の計算を行った。この結果を観測データと比較したところ、大気濃度シナリオの異なる複数の成分で特定の深度においては再現性が良くなかった。このような傾向は、フィルン空気拡散モデルに入力した拡散係数の深度分布の修正によって低減できると考えられるため、モデル計算に用いた拡散係数を複数の成分を制約条件として用いて最適化することで、多種の温室効果ガスとハロカーボン類についてモデル計算の再現性を向上させることができた。一方で、これらのモデル計算の過程においては、入力値として扱う過去のメタン濃度の変動に、既往研究で考えられていた以上に大きな不確実性があることがわかった。最適化された拡散係数の深度分布を用いて、メタンの炭素と水素の安定同位体比のモデル計算を実施し、フィルン内における分子拡散と重力分離に伴う同位体分別効果を推定した。 | KAKENHI-PROJECT-17K18342 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18342 |
フィルン試料のハロカーボン測定を利用した過去50年のメタン同位体変動の高精度復元 | これらの同位体分別効果を補正することにより、原理的にはフィルンの観測データから過去の時間変動の復元が可能である。しかし、今回の計算結果から復元されたメタンの炭素同位体比の時間変動は南北両半球間で不整合が見られた。この原因は、フィルン内の分子拡散によって起こる同位体分別がメタンの炭素同位体比については非常に大きく、かつ、その大きさがフィルンサイト毎に大きく異なるためと考えられる。したがって、モデル計算に入力する拡散係数およびモデル内での分子拡散の取り扱いが非常に重要であることが確認できた。本研究で得られたフィルン試料の測定データを活用し、多種の温室効果ガスとハロカーボン類について実際のモデル計算および再現性の向上につながるモデルの改良を実施できた。また、上述のようなフィルン空気拡散モデルの課題が見つかった。これまでの分析で得られたハロカーボンデータを利用して、フィルン空気拡散モデルで使用する拡散係数の最適化を行う。すなわち、前年度までに整備した成分別の大気ヒストリを利用して、複数のハロカーボン類のモデルによる深度分布が、実測定の深度分布と一致するように、フィルン内部の拡散係数をチューニングする。これにより、複数成分で制約された信頼度の高い拡散係数が得られる。これを用いて、メタン濃度と同位体比のモデル計算を行い、過去の大気ヒストリを解として導出する。この際、モデルを用いてフィルン内部での同位体分別効果を評価する。さらに、復元したメタン濃度と同位体比の変動に基づいて過去50年にわたるメタン放出源の時間変化を考察するため、南北両半球と放出源を考慮したボックスモデルを構築し、南北両半球におけるメタン放出源の時間発展を放出源別に考察する。フィルン内での分子拡散によるメタンの炭素同位体への同位体分別効果の大きさは、これまでに最適化した分子拡散係数だけでなく、モデル内での深度別の分子拡散の定式化にも非常に大きく依存することがわかった。このような分子拡散の取り扱い法について検討することで、本研究でのメタン同位体比の時間復元における不確実性を評価する必要がある。また、これまでのモデル評価を通して見つかった過去のメタン濃度変動の不確実性についても、入手可能なデータとの比較などを通して再調査を行う必要がある。また、フィルンデータに基づくメタン濃度と同位体比の復元結果をメタン放出源の時間変動の観点から解釈するため、過去50年間をカバーするボックスモデルを構築する。この計算結果をもとに、過去50年にわたるメタン放出源の変動について考察する。使用計画に合わせて執行したが、使用額欄の通りの残額が発生した。次年度での消耗品購入に使用する。使用計画に合わせて執行したが、収支状況報告書の通りの残額が発生した。次年度の消耗品購入に使用する。 | KAKENHI-PROJECT-17K18342 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18342 |
小児慢性疾患患者の成人移行期支援における患者家族中心の教育プログラムの開発・評価 | 近年の医療の進歩により、小児慢性疾患をもつ子どもの多くが成人期に達していることから成人型医療への移行の必要性が指摘されている。しかし、それらは医療者主体となり、患者家族が主体的かつ中心的に準備を行う体制は未だ整えられていない。移行には、医療者、患者、家族それぞれの課題が多岐にわたり存在していることから、本研究では、10代の小児慢性疾患患者と家族の多様な心理社会的ニーズと、それに対する医療者の支援の内容を明らかにし、患者家族中心の移行期支援における医療者向けの教育プログラムの開発・実施・評価を目的とし、インタビュー等による調査を行うこととする。近年の医療の進歩により、小児慢性疾患をもつ子どもの多くが成人期に達していることから成人型医療への移行の必要性が指摘されている。しかし、それらは医療者主体となり、患者家族が主体的かつ中心的に準備を行う体制は未だ整えられていない。移行には、医療者、患者、家族それぞれの課題が多岐にわたり存在していることから、本研究では、10代の小児慢性疾患患者と家族の多様な心理社会的ニーズと、それに対する医療者の支援の内容を明らかにし、患者家族中心の移行期支援における医療者向けの教育プログラムの開発・実施・評価を目的とし、インタビュー等による調査を行うこととする。 | KAKENHI-PROJECT-19K11036 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K11036 |
CBPRを用いる不眠予防・改善のための包括的介入プログラムの開発と評価 | 最新の睡眠研究の成果を基盤に、身体的・精神的健康の増進を目的とした不眠予防・改善のための包括的介入プログラムの開発・評価を行う。併せて、研究手法として地域密着参加型研究法(Community-Based Participatory Research : CBPR)を用い、住民参加による睡眠の保健事業を開発する方策を検証する。本研究の平成18年度の成果は以下の通りである。1.モデル地域の選定と決定プログラムの適応対象となる候補地域を選定し、順次研究協力を依頼した。茨城県A市に決定した。2.研究組織の設置CBPRの中心概念はコミュニティとのパートナーシップである。パートナーシップ形成の第一段階としてモデル地域の地域看護実践者・行政関係者・研究者から構成される研究組織を設置し、研究計画について参加者の合意を得た。3.地域看護専門職の保健相談対応を向上させるための勉強会の実施睡眠と睡眠障害、不眠の認知行動療法に関して専門家を招聘して勉強会を行った。4.モデル地域に関する資料収集1)既存の2次資料を収集し、地域診断を行った。2)地域住民の睡眠問題の有病率と種類・睡眠習慣・心身の健康状態・生活様式に関する質問紙の作成し、郵送調査を実施した。5.CBPRに関する資料収集と分析米国におけるCBPRに関する文献収集と分析、これまでわが国で報告されている住民協働型保健活動をCBPRの視点で分析した結果を日本公衆衛生学会、日本地域看護学会で発表した。本研究の平成19年度の成果は以下の通りである。1.モデル地域における睡眠に関する市民フォーラムの開催CBPRの中心概念はコミュニティとのパートナーシップである。地域住民と協働して睡眠に関する保健事業を展開する上で、パートナーとなる住民を幅広く募ることを目的に、睡眠に関する市民フォーラムを開催した。2.包括的不眠予防・改善プログラムの作成海外文献および臨床での不眠患者に対する睡眠教育法を参考に、不眠を自覚しているモデル地域の住民13名を対象に、睡眠に関する集団健康教育(計5セッション)を試行し、プログラムの目標・内容・方法・進行等について検討を加え、不眠予防・改善プログラムを作成した。3.日本および米国の地域保健におけるパートナーシップの概念分析これまで米国ならび日本で報告されている地域保健におけるパートナーシップに関する文献を収集し、「パートナーシップ」の概念分析を行い、日本におけるパートナーシップの概念分析結果について日本地域看護学会誌に投稿した。4.CBPRに関するコンサルテーションCBPR研究会において、CBPRの先駆的研究者であるDr. Christmann氏(米国)より、本研究のCBPRの展開方法に関してコンサルテーションを受けた。本研究の平成20年度の成果は以下の通りである。1.包括的不眠予防・改善プログラムの実施平成19年度に作成した不眠予防・改善プログラムに修正を加え、モデル地域の住民24名を対象に、睡眠に関する集団健康教育プログラムを試行した。その結果、本プログラムが不眠症状の軽減に役立つことが示された。特に、介入前の不眠重症度が高い対象者において、プログラムに参加することによって不眠症状が軽減すること、睡眠に関する不適切な信念や態度の低減が、不眠症状の軽減と関連することが示唆された。2.モデル地域における市行政職員を対象とした睡眠に関する疫学調査モデル地域における市行政職員405人を対象に睡眠、生活習慣、こころの健康に関する疫学調査を実施した。その結果を市幹部職員を対象とした健康教育実施と併せて報告した。3.海外の地域保健におけるパートナーシップの概念分析昨年度実施したわが国の地域保健におけるパートナーシップに関する概念分析に加え、海外におけるパートナーシップに関する概念分析を行い、概念の定義と特徴を明らかにした。次いで、日本の地域保健活動への示唆を得ることを目的に、和・英文献に基づく「地域保健活動におけるパートナーシップ」の概念分析の結果から、両概念の共通点と相違点の比較、日本の地域保健活動における援用可能性について検討した。本研究の平成21年度の成果は以下の通りである。1.包括的不眠予防・改善プログラムの実施平成20年度に引き続き、不眠予防・改善プログラムをモデル地域の住民13名を対象に、睡眠に関する集団健康教育プログラムを試行した。これまで(19-21年度)の参加者の資料を検討した結果、本プログラムが不眠症状の軽減に役立つことが示された。介入前の不眠重症度が高い対象者において、プログラムに参加することによって不眠症状が軽減すること、睡眠に関する不適切な信念や態度の低減が、不眠症状の軽減と関連することが示唆された。さらに、睡眠薬を服用していた23名のうち、12名が睡眠薬を中止し、6名が減量した。本プログラムでは睡眠薬の中止・減量を目標として設定しておらず、中止・減量に対する具体的アプローチは行っていないものの、睡眠薬の中止・減量といった副次的効果を有することが示された。一方、睡眠薬に対する誤解や思い込みから医療機関を受診せずに、不眠症状に苦しむ地域住民は少なくないと考えられる。本プログラムは地域保健において、そのような住民に対する改善効果が期待できると考えられた。2.包括的不眠予防・改善プログラムの成果発表上記、プログラムの成果を書籍(共著)として執筆した(平成22年夏刊行予定)。3.パートナーシップの概念分析の成果公表わが国の地域保健におけるパートナーシップに関する概念分析結果を学術雑誌に公表した。 | KAKENHI-PROJECT-18390608 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18390608 |
3Dナノ格子構造体を用いたヒト多能性幹細胞培養系の開発 | 本申請では、3次元ナノ格子構造体を用いた新規細胞外足場を開発し、ヒト多能性幹細胞の新規無血清合成培養系の開発を行うことを目的とする。微細加工技術を基にした3次元格子構造を作製することによって、細胞足場における微細構造を厳密に制御することができるようになった。現在、フィーダー、タンパク質を使用せず、新規3次元ナノ格子の上で、ヒトiPS細胞を培養し、細胞の未分化状態を維持することが成功した。今まで、ヒト多能性幹細胞の培養にはフィーダー細胞やMaterigelやLamininなどを基板として使われていることが一般的である。しかし、将来に臨床医療の応用に関して、動物由来の成分が混在していうことや、コストが高いことなどの問題が既存している。フィーダー細胞を使用せずに、安全性が高く、簡易に幹細胞ができる手法の開発が認められている。一方、現在の培養方法は全て二次元基板上で行われている。生体内で細胞が3次元微小環境の中で存在し、機能を活かしている。生体外でin vivoの3次元の環境を模倣し、細胞培養する手法が求められている。我々の研究グループではナノテクノロジーやマイクロエンジニアリングの技術を用いて、多能性幹細胞を制御することに着目している。特に、3次元構造を持つスカフォード用いて、ヒト多能性幹細胞の機能を向上させることを目指している。例え、ナノファイバーで構築した3次元スカフォードの上で、ヒト多能性幹細胞を長期培養することが成功した(L. Liu et al., Biomaterial, 2014)。本研究では、我々はマイクロエンジニアリング技術を駆使したオリジナルの3次元格子構造を作製することが目指していた。最適化した3次元格子を用いてヒトiPS細胞培養を試みた。その結果、細胞に強い生着性と非毒性であることがわかった。また、3次元格子を用いて、ヒトiPS細胞を継代する条件を見出した。さらに、3次元格子上で培養されていたヒトiPS細胞において、未分化マーカーが強く発現されたことが証明した。一方、同じ材料で構築した2次元基板の上で培養された細胞が分化したことが見られた。すなわち、3次元構造はヒトiPS細胞の未分化状態を維持には非常に重要な要素であることが明らかになった。将来、3次元格子が新規安全性が高い培養スカフォードとして、広く応用することが期待される。本申請では、3次元ナノ格子構造体を用いた新規細胞外足場を開発し、ヒト多能性幹細胞の新規無血清合成培養系の開発を行うことを目的とする。微細加工技術を基にした3次元格子構造を作製することによって、細胞足場における微細構造を厳密に制御することができるようになった。現在、フィーダー、タンパク質を使用せず、新規3次元ナノ格子の上で、ヒトiPS細胞を培養し、細胞の未分化状態を維持することが成功した。現在、iPS/ES細胞などの多能性幹細胞を、未分化状態を維持したまま培養するためには、フィーダー細胞を足場として使用することが基本的である。しかし、この操作にかかる手間と制御の難しさ、そして、将来的に臨床医療へ応用する時、動物由来の成分が混在しているリスクが存在するため、フィーダー細胞を使用せずに、安全性が高く、簡易に幹細胞培養ができる手法の開発が求められている。申請者らは今までの研究成果により、3次元構造を持つスカフォードが、ヒト多能性幹細胞の機能を向上させることを明らかにした。しかし、3次元構造の密度や厚みなどを均一に保つことや、厳密に制御することが困難である。本申請では、3次元格子構造体を用いた新規細胞外足場を開発し、ヒト多能性幹細胞の新規培養系の開発を目的としている。具体的には、微細加工技術を駆使した3次元格子構造を作製することによって、細胞足場における微細構造を厳密に制御する。平成24年度、申請者らは、iPS/ES細胞培養が可能となるように、微細加工作製法でオリジナルの3次元格子構造技術の改善を続け、作製したこの構造の物理的な特性を検討した。具体的に、iPS/ES細胞に適切な材料を検討し、シリコンの一種であるポリジメチルシロキサン(PDMS)に着目した。PDMSは無色透明で、毒性がないなどの利点があり、分子細胞分野への応用が注目されているが、今まで、PDMSを用いての3次元構造作製方法は報告されていなかった。申請者らは、この材料を用いて3次元格子の作製を試み、世界で初めて成功した。さらに、PDMSで作製した3次元格子を細胞の足場として、ヒトiPS細胞培養テストを行った。その結果、細胞との接着力が強く、細胞への毒性がまったくないことが明らかになった。続いて、3次元格子の厚みや間隔、サイズなどを検討し、細胞テストにより、3次元格子構造体作製技術の最適化を行った。当初の計画の通り、一年目に34mmスケールの3次元格子構造体を作製し、ヒトiPS細胞テストにより、最適化を行った。特に、3次元格子を作製する材料について、当初予定していたエポキシ樹脂であるSU-8がヒトiPS細胞に適合性が低いことが分かり、生体適合性材料であるPDMSに変更することによって、世界初のPDMSで3次元構造体の作製が成功し、予想以上の結果を得ることができた。今後、ヒト多能性幹細胞への応用の可能性が広がることを期待する。平成25年度は、これまで最適化したPDMSで作製した3次元格子構造体を用いて、ヒト多能性幹細胞培養とその挙動解析を行う。 | KAKENHI-PROJECT-24651136 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24651136 |
3Dナノ格子構造体を用いたヒト多能性幹細胞培養系の開発 | 具体的には、染色、RT-PCR、FACSなどの方法を用いて、3次元格子構造体上に培養したヒトES/iPS細胞の多機能性を確認する。更に、3次元格子構造体とマイクロ流体デバイスを組み合わせた時空間制御系の開発に取り込む予定である。平成25年度は、前年度の引き続き3次元格子サンプルを作製するために、材料となるPDMSを購入する。さらに、マイクロ流体デバイスを組み合わせるために、デバイス作製する必要な試薬を購入する。ヒトiPS/ES細胞を培養するために、必要な培地や、シャーレや、試薬などを購入する。ヒトiPS/ES細胞の挙動解析を行うために、分子生物学実験を行うために、プライマーや、抗体などを購入する。 | KAKENHI-PROJECT-24651136 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24651136 |
眼内組織増殖調節の分子機構 | 眼内組織増殖に関与する細胞成長因子を分子生物学的手法により証明するため実験研究を行った。1.網膜光凝固後の網膜色素上皮による創傷修復過程における各種細胞成長因子の証明2)光凝固後、局所にあらわれるmacrophageの起源の検索ラット眼に弱い光凝固を行い、光凝固病巣にあらわれるmacrophageを免疫組織科学的に染色すると、主としてED1(macrophage/monocyle抗体)に染色した。これは網膜下腔における色素を貪食したmacrophageは従来、網膜色素上皮由来と思われていたが、実は血液単球由来であることを示した。2.実験的脈絡膜新生血管における各種細胞成長因子の証明ラット眼に強いレーザー光凝固を行い、脈絡膜新生血管を実験的に作成し、局所に上記の1)で示した、各種細胞成長因子の関与を免疫組織化学的手法およびin situ hybridizationによって証明した。光凝固後3日に最も強い発現をみた。3.実験的脈絡膜新生血管に対するインターフェロンβの効果サル眼、ラット眼に作製した脈絡膜新生血管はインターフェロンβの全身投与によって退縮に向かった。これは、インターフェロンが網膜色素上皮の増殖を促進することによった。これらの分子生物学的手法による網膜病変での各種細胞成長因子の証明は、その病理発生機序の解明ならびに今後の新しい薬物療法の基礎となる重要な知見である。眼内組織増殖に関与する細胞成長因子を分子生物学的手法により証明するため実験研究を行った。1.網膜光凝固後の網膜色素上皮による創傷修復過程における各種細胞成長因子の証明2)光凝固後、局所にあらわれるmacrophageの起源の検索ラット眼に弱い光凝固を行い、光凝固病巣にあらわれるmacrophageを免疫組織科学的に染色すると、主としてED1(macrophage/monocyle抗体)に染色した。これは網膜下腔における色素を貪食したmacrophageは従来、網膜色素上皮由来と思われていたが、実は血液単球由来であることを示した。2.実験的脈絡膜新生血管における各種細胞成長因子の証明ラット眼に強いレーザー光凝固を行い、脈絡膜新生血管を実験的に作成し、局所に上記の1)で示した、各種細胞成長因子の関与を免疫組織化学的手法およびin situ hybridizationによって証明した。光凝固後3日に最も強い発現をみた。3.実験的脈絡膜新生血管に対するインターフェロンβの効果サル眼、ラット眼に作製した脈絡膜新生血管はインターフェロンβの全身投与によって退縮に向かった。これは、インターフェロンが網膜色素上皮の増殖を促進することによった。これらの分子生物学的手法による網膜病変での各種細胞成長因子の証明は、その病理発生機序の解明ならびに今後の新しい薬物療法の基礎となる重要な知見である。眼内の組織増殖に関与する細胞成長因子を分子生物学的手法により証明するため実験研究を行った。1.網膜光凝固後の網膜色素上皮による創傷修復過程における各種細胞成長因子の証明2)光凝固後、局所にあらわれるmacrophageの起源の検索ラット眼に弱い光凝固を行い、光凝固後にあらわれるmacrophageを免疫組織化学的に染色すると、主としてED1(macrophage/monocyte抗体)に染色した。これは網膜下腔における色素を貪食したmacrophageは従来、網膜色素上皮由来と思われていたが、実は血液単球由来であることを示している。3)実験的脈絡膜新生血管における各種細胞成長因子の証明ラット眼に強いレーザー光凝固を行い、脈絡膜新生血管を実験的に作成し、局所に(1)で示した、各種細胞成長因子の関与を免疫組織化学的手法およびin situ hybridizationによって証明する。目下、実験を進行中。4)実験的網膜静脈閉塞症における細胞成長因子の証明ラット眼の網膜主幹静脈にレーザー光凝固を行って網膜静脈閉塞症を発生させた。血管閉塞部のb-FGFおよびb-FGF receptorをin situ hybridizationによって検索し、病巣部にその発現を証明した。これらの分子生物学的手法による網膜病変での各種細胞成長因子の証明は、その病理発生機序の解明ならびに今後新しい薬物療法の基礎となる重要な知見である。眼内組織増殖に関与する細胞成長因子を分子生物学的手法により証明するため実験研究を行った。1.網膜光凝固後の網膜色素上皮による創傷修復過程における各種細胞成長因子の証明2)光凝固後、局所にあらわれるmacrophageの起源の検索ラット眼に弱い光凝固を行い、光凝固病巣にあらわれるmacrophageを免疫組織化学的に染色すると、主としてEDI(macrophage/monocyte抗体)に染色した。これは網膜下腔における色素を貧食したmacrophageは従来、網膜色素上皮由来と思われていたが、実は血液単球由来であることを示した。2.実験的脈絡膜新生血管における各種細胞成長因子の証明ラット眼に強いレーザー光凝固を行い、脈絡膜新生血管を実験的に作成し、局所に上記の1)で示した、各種細胞成長因子の関与を免疫組織化学的手法およびin situ hybridizationによって証明した。光凝固後3日に最も強い発現をみた。3.実験的脈絡膜新生血管に対するインターフェロンβの効果サル眼、ラット眼に作製した脈絡膜新生血管はインターフェロンβの全身投与によって退縮に向かった。これは、インターフェロンが網膜色素上皮の増殖を促進することによった。これらの分子生物学的手法による網膜病変での各種細胞成長因子の証明は、その病理発生機序の解明 | KAKENHI-PROJECT-07457418 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07457418 |
眼内組織増殖調節の分子機構 | ならびに今後の新しい薬物療法の基礎となる重要な知見である。 | KAKENHI-PROJECT-07457418 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07457418 |
精密合成された複合ナノクラスターの集積薄膜作製と機能性デバイスへの応用 | 金属原子(M)1個をシリコン原子16個からなるカゴに内包させた「金属内包シリコンケージクラスター(M@Si16)」を精密に集積させたクラスター薄膜を作製し、この薄膜に対して電極からの電荷注入や電気伝導性などの電気特性を評価する。温度、磁場といった条件を制御しながら電気特性評価を行うことで、個々のM@Si16がもつ電子状態とその集合体の電気特性の相関を明らかにする。内包される金属原子を異なる元素で置き換えることでM@Si16がもつ電子状態を制御して、異なる内包金属原子での電気特性の変化を明らかにするとともに、異種のM@Si16をヘテロ接合させることで発現する光機能の観測を目指す。金属原子(M)1個をシリコン原子16個からなるカゴに内包させた「金属内包シリコンケージクラスター(M@Si16)」を精密に集積させたクラスター薄膜を作製し、この薄膜に対して電極からの電荷注入や電気伝導性などの電気特性を評価する。温度、磁場といった条件を制御しながら電気特性評価を行うことで、個々のM@Si16がもつ電子状態とその集合体の電気特性の相関を明らかにする。内包される金属原子を異なる元素で置き換えることでM@Si16がもつ電子状態を制御して、異なる内包金属原子での電気特性の変化を明らかにするとともに、異種のM@Si16をヘテロ接合させることで発現する光機能の観測を目指す。 | KAKENHI-PROJECT-19J22141 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19J22141 |
霜の発生と成長に及ぼす気側乱流の効果 | 本研究の目的は、乱流場での霜の発生と成長機構を実験的に解明することである。この研究は、航空機やヒートポンプの性能劣化に関する深刻な問題につながる固体表面での霜の発生と成長のメカニズムを明らかにし、霜の発生と成長の制御・防止技術を開発することをめざすものであり、熱工学的に極めて重要なものである。特に、従来の研究においては低風速の層流中での霜の発生と成長に関する実験と数値計算が主になされて来ており、現実の問題で頻繁に見られる乱流状態で流れる気流中での研究は全くなされていないので、本研究では気流側の乱流と関連づけて、霜の成長機構を解明することを試みた。本年度は、乱流状態で空気が流れる小型の風洞内に固体冷却面を設置することによりその冷却面上に生成される霜の成長過程をレーザ変位計および赤外線表面温度計で計測した。また、この実験結果を説明するため初期の霜の発生過程を直接数値計算(DNS)によってシミュレーションした。その研究結果をまとめると以下の通りである。1.霜の成長過程には周期的な成長パターンが存在する。また、成長の初期過程には氷粒子が形成される。その後、羽毛、円柱、針状の霜が形成され、霜相の厚みは時間とともに増加するが、その成長速度は減少する。この成長過程は表面温度が0°Cに近づくまで周期的に繰り返される。この周期的な成長過程は既往研究では見つけられていない初めての発見である。2.湿度の増加、冷却面温度の減少に伴い霜相の密度が増加する。また、自然対流の存在する層流場よりも乱流場での方が霜相の密度が増加する。今後、DNSによるシミュレーションを各種の条件を変えて行うことにより、霜の発生と成長の制御・防止技術を開発することをめざしたい。本研究の目的は、霜の発生と成長に及ぼす乱流の効果を実験的に解明する事である。この研究は、航空機やヒートポンプの性能劣化に関する深刻な問題につながる固体表面での霜の発生と成長のメカニズムを明らかにし、霜の発生と成長の制御・防止技術を開発しようとするものであり、熱工学的に極めて重要なものである。特に、従来の研究においては低風速の層流中での霜の発生と成長に関する実験と数値計算が主になされて来ており、現実の問題で頻繁に見られる乱流状態で流れる気流中での研究は全くなされていないので、本研究では気流側の乱流構造と関連づけて気流側乱流が如何なる状態にある場合に、霜の核発生がおこるのかなどを明らかにすることをめざす。本年度は来日後、5ヶ月間の短期間であったため、乱流状態で空気が流れる小型の風洞内に固体冷却面を設置し、冷却面上の気流の瞬間流速等をLDV、PIV、および熱線風速計を用いて計測するための実験装置を製作し、テスト実験に入った段階であり、結果はまだ得られていない。問題は冷却部の定常性を如何に保つかであり、現在、液体窒素を用いた方法を検討している段階である。この実験装置の製作に加えて、放射温度計により霜表面の温度および霜の表面形状の時間的変化の計測法を確立するための予備実験に着手した。その結果、放射温度計により表面温度計測が、また、レーザ光線を用いた変位計にて霜の表面形状を計測可能であることを確認した。今後は、実際の風洞内乱流場での霜形成の実験に応用していく予定である。本研究の目的は、乱流場での霜の発生と成長機構を実験的に解明することである。この研究は、航空機やヒートポンプの性能劣化に関する深刻な問題につながる固体表面での霜の発生と成長のメカニズムを明らかにし、霜の発生と成長の制御・防止技術を開発することをめざすものであり、熱工学的に極めて重要なものである。特に、従来の研究においては低風速の層流中での霜の発生と成長に関する実験と数値計算が主になされて来ており、現実の問題で頻繁に見られる乱流状態で流れる気流中での研究は全くなされていないので、本研究では気流側の乱流と関連づけて、霜の成長機構を解明することを試みた。本年度は、乱流状態で空気が流れる小型の風洞内に固体冷却面を設置することによりその冷却面上に生成される霜の成長過程をレーザ変位計および赤外線表面温度計で計測した。また、この実験結果を説明するため初期の霜の発生過程を直接数値計算(DNS)によってシミュレーションした。その研究結果をまとめると以下の通りである。1.霜の成長過程には周期的な成長パターンが存在する。また、成長の初期過程には氷粒子が形成される。その後、羽毛、円柱、針状の霜が形成され、霜相の厚みは時間とともに増加するが、その成長速度は減少する。この成長過程は表面温度が0°Cに近づくまで周期的に繰り返される。この周期的な成長過程は既往研究では見つけられていない初めての発見である。2.湿度の増加、冷却面温度の減少に伴い霜相の密度が増加する。また、自然対流の存在する層流場よりも乱流場での方が霜相の密度が増加する。今後、DNSによるシミュレーションを各種の条件を変えて行うことにより、霜の発生と成長の制御・防止技術を開発することをめざしたい。 | KAKENHI-PROJECT-02F00324 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02F00324 |
高保磁力亜鉛ボンドSm-Fe-N系永久磁石および高保磁力磁性粉末の開発 | 本研究は、Sm-Fe-N永久磁石材料の高いキューリ-温度と高い磁気異方性の特徴を生かして、高温で使用可能な高保磁力磁性粉末の開発を目指した。亜鉛コーテイングによる高保磁力を目指して、真空蒸着法、電解メッキ法などによりSm-Fe-N粉末試料表面を亜鉛コーテイングして、高保磁力磁性粉末の製作を試み、次の結果を得た。1,原料Sm-Fe-N粉末と亜鉛粉末の混合試料を用いて、プラズマ燒結による高保磁力化を試み、温度、圧力、時間を変えて高保磁力化の最適条件を決定した。その結果、温度420度、圧力5トン/cm^2、時間5分で、最高20kOeの保磁力を得た。この結果は、通常の焼結法に比べて、短時間で底圧力で高い保磁力を得られ、高保磁力粉末磁石を得る方法として有用であることがわかった。2,2種類のサイズの異なるSm-Fe-N微粉末(約20ミクロンメーター:粗粉末、約3ミクロンメーター:微粉末)を用いて、真空蒸着法、電解メッキ法などにより亜鉛コーティングを行なった。それらの粉末を上の条件でプラズマ燒結した。その結果、蒸着法によって粗粉末試料では保磁力の向上が計られたが、微粉末では向上がみられなかった。亜鉛コーティングには新しい方法の開発が必要であることがわかった。3,ピンニングタイプの高保磁力が期待できるMn導入のSm-Fe-N粉末試料の高分解能透過電子顕微鏡観察に成功し、数10nmの直径の微細結晶化がおこっていること見いだし、それらが磁壁のピンニングの原因になっていることを明らかにした。本研究は、Sm-Fe-N永久磁石材料の高いキューリ-温度と高い磁気異方性の特徴を生かして、高温で使用可能な高保磁力磁性粉末の開発を目指している。本年度はこれから3年間での研究の完成のために、実験室レベルでの高保磁力磁性粉末の製作のための次のような基礎研究を行ない成果をあげてきた。1)アーク溶解炉を用いて、種々の組成のSm-Fe母合金を製作して、X線回折、透過電子顕微鏡から、結晶構造および微細構造を調べ、不純物相α-Feの極力少ない母合金の作製条件を決めた。また、熱処理条件によって、Sm_3Fe相の析出微細組織が異なることを見いだし、ピンニング磁石の可能性を検討している。2)Sm-Fe-N微粒子に亜鉛コーティングを行なうことによって、高保磁力の磁性粉末の製作を目指した。亜鉛の蒸気圧の高い点を利用して、Sm-Fe-N微粒子と亜鉛を真空封入して、蒸着法によってSm-Fe-N微粒子の亜鉛コーティングを試み成功し、亜鉛量の少ない所で高保磁力の磁性粉末試料の製作の可能性を見いだし、今後の研究の方針が決められた。3)アンモニアガスを用いた窒化法の装置を組立、最適窒化条件を明らかにした。4)作製した粉末の微細構造を透過電子顕微鏡で観察するための、試料薄膜作製技術の確立を目指し、デインプルグラインダーおよびイオンミリングの最適条件を明らかにした。また、透過電子顕微鏡観察から、Sm-Fe-N微粒子の表面に酸化によると思われる層が存在することが明らかになった。本研究は、Sm-Fe-N永久磁石材料の高いキューリ-温度と高い磁気異方性の特徴を生かして、高温で使用可能な高保磁力磁性粉末の開発を目指した。亜鉛コーテイングによる高保磁力を目指して、真空蒸着法、電解メッキ法などによりSm-Fe-N粉末試料表面を亜鉛コーテイングして、高保磁力磁性粉末の製作を試み、次の結果を得た。1,原料Sm-Fe-N粉末と亜鉛粉末の混合試料を用いて、プラズマ燒結による高保磁力化を試み、温度、圧力、時間を変えて高保磁力化の最適条件を決定した。その結果、温度420度、圧力5トン/cm^2、時間5分で、最高20kOeの保磁力を得た。この結果は、通常の焼結法に比べて、短時間で底圧力で高い保磁力を得られ、高保磁力粉末磁石を得る方法として有用であることがわかった。2,2種類のサイズの異なるSm-Fe-N微粉末(約20ミクロンメーター:粗粉末、約3ミクロンメーター:微粉末)を用いて、真空蒸着法、電解メッキ法などにより亜鉛コーティングを行なった。それらの粉末を上の条件でプラズマ燒結した。その結果、蒸着法によって粗粉末試料では保磁力の向上が計られたが、微粉末では向上がみられなかった。亜鉛コーティングには新しい方法の開発が必要であることがわかった。3,ピンニングタイプの高保磁力が期待できるMn導入のSm-Fe-N粉末試料の高分解能透過電子顕微鏡観察に成功し、数10nmの直径の微細結晶化がおこっていること見いだし、それらが磁壁のピンニングの原因になっていることを明らかにした。本研究では、Sm-Fe-N永久磁石材料の高いキューリ-温度と高い磁気異方性の特徴を生かして、高温で使用可能な高保磁力磁性粉末の開発を目指している。本年度は、亜鉛コーテイングによる高保磁力を目指して、真空蒸着法、電解ハッキ法などによりSm-Fe-N粉末試料表面を亜鉛コーテイングして、高保磁力磁性粉末の製作を試み、次の結果を得た。 | KAKENHI-PROJECT-06555200 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06555200 |
高保磁力亜鉛ボンドSm-Fe-N系永久磁石および高保磁力磁性粉末の開発 | 1)原料Sm-Fe-N微粉末と亜鉛粉末の混合試料を用いて、プラズマ焼結による高保磁力化の基礎データーをとるために、温度、圧力、時間を変えて、高保磁力化の最適条件を決定した。その結果、温度420度、圧力5トン/cm^2、時間5分で、最高20kOeの保磁力を得た。今後、この条件のもとでプラズマ焼結を行ない、Sm-Fe-N粉末表面のスムージン化と亜鉛添加の効果を調べた。2)2種類のサイズの異なるSm-Fe-N粉末(約20ミクロンメーター:粗粉末、約3ミクロンメーター:微粉末)を用いて、真空蒸着法、電解メッキ法などにより亜鉛コーテイングを行なった。それらの粉末を上の条件でプラズマ焼結した。その結果、蒸着法によって粗粉末試料では保磁力の向上が計られたが、微粉末では向上がみられなかった。3)ピンニングタイプの高保磁力が期待できるMn導入のSm-Fe-N粉末試料の高分解能透過電子顕微鏡観察に成功し、数10nmの直径の微細結晶化がおこっていること見いだし、それらが磁壁のピンニングの原因になっていることを明らかにした。本研究は、Sm-Fe-N永久磁石材料の高いキューリ-温度と高い磁気異方性の特徴を生かして、高温で使用可能な高保磁力磁性粉末の開発を目指した。亜鉛コーテイングによる高保磁力を目指して、真空蒸着法、電解メッキ法などによりSm-Fe-N粉末試料表面を亜鉛コーテイングして、高保磁力磁性粉末の製作を試み、次の結果を得た。1.原料Sm-Fe-N微粉末と亜鉛粉末の混合試料を用いて、プラズマ燒結による高保磁力化を試み、温度、圧力、時間を変えて高保磁力化の最適条件を決定した。その結果、温度420度、圧力5トン/cm^2、時間5分で、最高20kOeの保磁力を得た。この結果は、通常の焼結法に比べて、短時間で底圧力で高い保磁力を得られ、高保磁力粉末磁石を得る方法として有力であることがわかった。2.2種類のサイズの異なるSm-Fe-N粉末(約20ミクロンメーター:粗粉末、約3ミクロンメーター:微粉末)を用いて、真空蒸着法、電解メッキ法などにより亜鉛コーテイングを行った。それらの粉末を上の条件でプラズマ燒結した。その結果、蒸着法によって粗粉末試料では保磁力の向上が計られたが、微粉末では向上がみられなかった。亜鉛コーテイングには新しい方法の開発が必要であることがわかった。3.ピンニングタイプの高保磁力が期待できるMu導入のSm-Fe-N粉末試料の高分解能透過電子顕微鏡観察に成功し、数10nmの直径の微細結晶化がおこっていること見いだし、それらが磁壁のピンニングの原因になっていることを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-06555200 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06555200 |
人工の物理的環境による生体影響 | 人工の物理的環境の生体影響評価のため、電場、磁場、イオン流および機械的振動に関し、前二年度の指標決定、実験手法の確立の成果をふまえ、以下のような研究の進展が見られた。1.送電線下電界の解析とその応用:電荷重畳法による電界の数値解析により、樹木が送電線下電界のしゃへいに寄与することを明らかにした。さらに、人体両腕間の誘導電流の位相差につき、水平二回線の送電線下では、電界強度および位相差とも比較的大きな値を有することがわかった。2.体表電界分布、体内電流分布の計測:新たに開発した手法により、体表電界の実測において上限値と下限値の決定を可能とし、また体内電流の実測においては従来のように生体を切断することなく電流分布を実測することを可能とした。3.高電界暴露による皮膚感覚:ヒトの手背、手掌を高電界に暴露した際の感覚につき、実験的検討を加えた結果、30KV/m前後を感知閾値として、毛の振動により感覚が発生するものと考えられた。4.イオン流に対する生体の反応:本研究で開発してきたイオン流Shuttle boxを用い、生体影響の定量的評価を試みた結果、忌避反応を示唆する結果が得られた。5.生体内常磁性種に対する磁場効果:モデル血管内を流れる赤血球の分布状態を調べたところ、赤血球は強い磁場の方に牽引され、管内での分布が不均一になること、また、わずかな量の常磁性赤血球の存在であっても血管内分布に対する影響を生じるのに十分であることがわかった。6.哺乳動物細胞に対する磁場の影響:細胞に対する印加磁場強度の上昇に伴い、コロニー形成率の抑制が強くなること、また3000Oeでは非磁場に対して明らかに統計的有意差をもって抑制されることが認められた。7.機械的振動の血管内皮細胞に及ぼす影響:実験的検討により、機械的振動が直接に血管内皮細胞を刺激して、血液凝固線溶系因子の分泌を促進することなどがわかった。人工の物理的環境の生体影響評価のため、電場、磁場、イオン流および機械的振動に関し、前二年度の指標決定、実験手法の確立の成果をふまえ、以下のような研究の進展が見られた。1.送電線下電界の解析とその応用:電荷重畳法による電界の数値解析により、樹木が送電線下電界のしゃへいに寄与することを明らかにした。さらに、人体両腕間の誘導電流の位相差につき、水平二回線の送電線下では、電界強度および位相差とも比較的大きな値を有することがわかった。2.体表電界分布、体内電流分布の計測:新たに開発した手法により、体表電界の実測において上限値と下限値の決定を可能とし、また体内電流の実測においては従来のように生体を切断することなく電流分布を実測することを可能とした。3.高電界暴露による皮膚感覚:ヒトの手背、手掌を高電界に暴露した際の感覚につき、実験的検討を加えた結果、30KV/m前後を感知閾値として、毛の振動により感覚が発生するものと考えられた。4.イオン流に対する生体の反応:本研究で開発してきたイオン流Shuttle boxを用い、生体影響の定量的評価を試みた結果、忌避反応を示唆する結果が得られた。5.生体内常磁性種に対する磁場効果:モデル血管内を流れる赤血球の分布状態を調べたところ、赤血球は強い磁場の方に牽引され、管内での分布が不均一になること、また、わずかな量の常磁性赤血球の存在であっても血管内分布に対する影響を生じるのに十分であることがわかった。6.哺乳動物細胞に対する磁場の影響:細胞に対する印加磁場強度の上昇に伴い、コロニー形成率の抑制が強くなること、また3000Oeでは非磁場に対して明らかに統計的有意差をもって抑制されることが認められた。7.機械的振動の血管内皮細胞に及ぼす影響:実験的検討により、機械的振動が直接に血管内皮細胞を刺激して、血液凝固線溶系因子の分泌を促進することなどがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-61030002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61030002 |
心理アセスメントにおけるフィードバックの実践的モデルと研修プログラムの開発 | 公認心理師等やスクールカウンセラー等の心理職が,心理アセスメント結果を,子どもや保護者にどのように伝えるか,支援チームにどのように伝え,支援体制を構築するかのモデルを作成し,公認心理師等のフィードバックに関する養成・研修プログラムを開発する研究である。具体的には,(1)海外におけるフィードバックの実態調査,(2)高校生へのフィードバック事例の集積と分析,(3)心理検査の受け手である保護者団体へのアンケート調査を実施し,フィードバックの理論的・実務的モデルを作成する。そのうえで心理職へのフィードバックの教育・研修プログラムを開発し,実際に大学院生に試行してその効果を検証する。公認心理師等やスクールカウンセラー等の心理職が,心理アセスメント結果を,子どもや保護者にどのように伝えるか,支援チームにどのように伝え,支援体制を構築するかのモデルを作成し,公認心理師等のフィードバックに関する養成・研修プログラムを開発する研究である。具体的には,(1)海外におけるフィードバックの実態調査,(2)高校生へのフィードバック事例の集積と分析,(3)心理検査の受け手である保護者団体へのアンケート調査を実施し,フィードバックの理論的・実務的モデルを作成する。そのうえで心理職へのフィードバックの教育・研修プログラムを開発し,実際に大学院生に試行してその効果を検証する。 | KAKENHI-PROJECT-19K03296 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K03296 |
イオン交換法による新機能性層状酸化物の創製とキャリア制御による新展開 | 本研究の目的は、層状酸化物に「遷移金属-アニオン」格子をイオン交換で挿入し、準安定物質を合成する。そして、キャリアを導入することで超伝導化を目指すものである。準安定物質とは、イオン交換のようなソフト化学的手法でのみ得ることが出来るものであり、本研究においては、(MX)Sr_2Nb_3O_<10> (MX=CuCl, FeCl, CoCl, MnCl, PdCl, SrBr, CuBr, FeBr)の合成に成功した。それらの物質に対し、水素中でアニールしてClを欠損させる手法や、Liインターカレーションによって電子キャリアを注入した。これにより、絶縁体から良導体に変化させることには成功したが、未だT=2K以上での超伝導転移は確認できていない。本研究の目的は、層状酸化物に「遷移金属-アニオン」格子をイオン交換で挿入し、準安定物質を合成する。そして、キャリアを導入することで超伝導化を目指すものである。準安定物質とは、イオン交換のようなソフト化学的手法でのみ得ることが出来るものであり、本研究においては、(MX)Sr_2Nb_3O_<10> (MX=CuCl, FeCl, CoCl, MnCl, PdCl, SrBr, CuBr, FeBr)の合成に成功した。それらの物質に対し、水素中でアニールしてClを欠損させる手法や、Liインターカレーションによって電子キャリアを注入した。これにより、絶縁体から良導体に変化させることには成功したが、未だT=2K以上での超伝導転移は確認できていない。本研究の目的は、Dion-Jacoboson型物質であるNbO_2面を3枚有するRbSr_2Nb_3O_<10>と2枚のRbLaNb_2O_7に「遷移金属-アニオン」格子をイオン交換で挿入し準安定物質を合成する。そして、キャリア導入により超伝導化を目指すものである。準安定物質とは、一般の固相反応のような高温では合成できないものであり、イオン交換のようなソフト化学的手法でのみ得ることが出来るものである。本研究の目的は、Dion-Jacoboson相であるNbO_2面を3枚有する層状酸化物に「遷移金属-アニオン」格子をイオン交換で挿入し、NbO_2面の歪が少ない準安定物質を合成する。そして、Liインターカレーションによりキャリアを導入することで超伝導化を目指すものである。今年度は、母体をCsSr_2Nb_3O_<10>として、種々の臭化物をCsサイトにイオン交換することで、金属-アニオン格子を置換することを試みた。x線回折と組成分析の結果、SrBrとCuBrの置換に成功した。SrBrがイオン交換で挿入された報告例は無い。これら(ABr)Sr_2Nb_3O_<10>(A=Sr, Cu)に、電気化学法でLiインターカレーションによるキャリア導入をおこなった。Li量は0.5程度結晶に導入できたが、T=2K以上での超伝導転移は確認できなかった。他方、Aurivillius相であるBi_2O_2SrNaNb_3O_<10>を母体としてイオン交換を行い、Bi_2O_2層をFe_2Br_2層に置換し、この層での超伝導の発現を狙った。これは、最近発見されて注目を集めているFe系超伝導体のひとつであるFeSeとFe_2Br_2層が類似の構造であることに着目したものである。まず、母体に対して酸処理によるプロトン化をおこないH_2SrNaNb_3O_<10>を合成した。つぎに臭化鉄と反応させてイオン交換をした結果、Fe_2Br_2層が導入された(Fe_2Br_2)SrNaNb_3O_<10>の合成に成功した。しかし、不純物相が有り、単相は得られなかった。Liインターカレーションによるキャリア導入もおこなったが、超伝導は確認できなかった。 | KAKENHI-PROJECT-19560005 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19560005 |
国際地質対比計画(IGCP)の課題-とくに自然災害と地球環境問題 | この基盤研究は、日本が関わっているIGCPのプロジェクト・リーダー(4人)、および、国内にワーキング・グループが組織されているプロジェクトの代表のうち7人が、国の内外におけるIGCPの活動を通じて地球科学の発展に寄与すると共に、国の重要施策である国際学術交流・協力の充実と発展に貢献するために、IGCPの活動がどのように貢献できるのかを企画調査することを目的として行われた。とくに、西暦2000年にブラジルで開催される「万国地質学会議(IGC)」において、IGCPの共通テーマである自然災害(例えば斜面災害)の軽減や地球環境問題を中心テーマとする「特別シンポジウム」が開催予定であることから、それに対応して、日本のIGCP国内委員会が今後取り組むべき課題を明らかにすることに重点をおいた。そのために研究代表者および分担者は、平成10年6月12日、9月11日、および、平成11年2月22日の3回日本学術会議(東京)において会合をもち、各プロジェクトが進めている活動について情報を交換すると共に、万国地質学会議に向けた課題について議論した。本年度の活動の総括は、「日本IGCP活動報告(英文および邦文)」として出版し各国のIGCP National Committeeを含め関係各方面に配付した。また、平成9年11月30日12月1日には、IGCP383と425を中心に、IGCP特別シンポジウム「文化遺産と自然災害」をカナダ大使館において開催した。内外から約50名が参加者し、20の研究成果が発表され、万国地質学会議の特別シンポジウムに向けた準備を整えた。なお、昨年開催したIGCP特別シンポジウムのうち、カルスト関係の論文をまとめて「カルスト過程と炭素循環」を“Japan Contribution to the IGCP,1999"として本年出版した。この基盤研究は、日本が関わっているIGCPのプロジェクト・リーダー(4人)、および、国内にワーキング・グループが組織されているプロジェクトの代表のうち7人が、国の内外におけるIGCPの活動を通じて地球科学の発展に寄与すると共に、国の重要施策である国際学術交流・協力の充実と発展に貢献するために、IGCPの活動がどのように貢献できるのかを企画調査することを目的として行われた。とくに、西暦2000年にブラジルで開催される「万国地質学会議(IGC)」において、IGCPの共通テーマである自然災害(例えば斜面災害)の軽減や地球環境問題を中心テーマとする「特別シンポジウム」が開催予定であることから、それに対応して、日本のIGCP国内委員会が今後取り組むべき課題を明らかにすることに重点をおいた。そのために研究代表者および分担者は、平成10年6月12日、9月11日、および、平成11年2月22日の3回日本学術会議(東京)において会合をもち、各プロジェクトが進めている活動について情報を交換すると共に、万国地質学会議に向けた課題について議論した。本年度の活動の総括は、「日本IGCP活動報告(英文および邦文)」として出版し各国のIGCP National Committeeを含め関係各方面に配付した。また、平成9年11月30日12月1日には、IGCP383と425を中心に、IGCP特別シンポジウム「文化遺産と自然災害」をカナダ大使館において開催した。内外から約50名が参加者し、20の研究成果が発表され、万国地質学会議の特別シンポジウムに向けた準備を整えた。なお、昨年開催したIGCP特別シンポジウムのうち、カルスト関係の論文をまとめて「カルスト過程と炭素循環」を“Japan Contribution to the IGCP,1999"として本年出版した。 | KAKENHI-PROJECT-10894018 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10894018 |
量子対話知識証明の分析と量子暗号への応用 | 量子力学の原理に基づく新しい通信形態が量子通信である。安全な量子通信を行うためには、現在の情報処理技術で実現可能な量子暗号システムを構築する必要がある。そのためにより現実的な量子デバイスを用い、量子暗号の基本暗号系の一つである量子ゼロ知識証明暗号系を分析する。また、量子通信の誤り訂正を行う量子リスト復号化法と、量子デバイスの能力を高める外部補助情報であるアドバイスの分析も行う。量子力学の原理に基づく新しい通信形態が量子通信である。安全な量子通信を行うためには、現在の情報処理技術で実現可能な量子暗号システムを構築する必要がある。そのためにより現実的な量子デバイスを用い、量子暗号の基本暗号系の一つである量子ゼロ知識証明暗号系を分析する。また、量子通信の誤り訂正を行う量子リスト復号化法と、量子デバイスの能力を高める外部補助情報であるアドバイスの分析も行う。高速通信ネットワーク網の国際的規模での整備が進む中、ハッカーなどの手によって情報通信の安全性(セキュリテー)が脅かされている。この研究では、この様なネットワーク網へのハッカーの侵入を阻止すると共に、ユーザーの個人情報の漏洩を防ぐ汎用性のある暗号システムを考察し、その妥当性を検証することを目標とする。昨今注目を集めている量子力学を応用した新しいタイプの計算・通信モデルに基く『量子暗号』の中でも、特に『量子対話知識証明』と呼ばれる暗号系の構築と運用効率並びにその安全性を解析するのが目的である。現在の技術で実現できる量子計算はその能力に限界があるため、この研究では量子記憶容量や量子通信量に制限のある量子暗号モデルを取り扱っているのが特徴である。平成19年度の研究では、量子記憶媒体を持たない量子計算モデルの計算能力を調べ、単独では能力に劣っていてもネットワーク管理者が通信を行うことで飛躍的にその認識能力が増大することを証明した。更にこのモデル上で、ネットワーク管理者がユーザーに偽装したハッカーを退ける量子アルゴリズムの開発を進めた。また直感とは異なり、複数の攻撃者を同時に取り扱えるシステムでは、量子記憶媒体の無い計算能力が著しく劣るモデルを用いても、複数の証明者を効率良く利用することで優れた安全性を維持でき、暗号として充分機能することを示した。平成19年度で目標とした量子証明に関する基礎固めは着実に進み、次年度への足掛りを築いた。また、初期の研究成果は、6月にチェコで開催された量子情報のワークショップ(CEQIP)で発表された。一般に、量子状態は量子力学の原理に基づく素粒子(光子など)で実現され、量子情報を内包している。量子計算は、こうした量子状態を変換し測定することで行われる。しかし、現在世界で研究が進められている量子計算機の計算能力については、未だ不明な部分が多い。特に、幾つかの量子状態を識別することは、量子計算にとって欠かせない作業の一つであるが、古典情報とは異なり、2つ以上の量子状態を区別することは一般に困難である。この識別作業の困難さを明らかにし、ある種の近似手法が効率的に行われることを示した。量子通信の安全性(セキュリティ)を保証するためには量子暗号の開発が必要不可欠である。量子暗号を用いた量子通信(BB84など)はその実用性が既に検証され、その実用化が近づいている。量子暗号の基本構成要素の一つである量子対話証明系は、「証明者」と「評価者」との二者間量子通信を行う暗号系である。評価者の役割は証明者の与える証明が正しいか間違っているのかを(量子通信を使った)会話を通して判定を下すことである。この研究では、計算能力の高い証明者に対し、評価者は計算資源が限られた量子計算機を用いる場合を想定している。この様な制限の中でも特に、僅かなメモリ容量しか持たない量子計算機を用いた量子証明系を取り扱い、その証明系が認識できる言語の複雑さが、証明者がいない場合と比べ、飛躍的に増大することを発見した。こうした量子証明系の研究結果は、今後の量子暗号系の設計に多大な影響を与えるとともに、更に新しい量子暗号の提案に繋がる。量子力学を基礎とする量子暗号の提案から20年を経て、漸く「量子鍵配送」と呼ばれる量子暗号が実用化されつつある。しかし、量子対話知識証明暗号を始めとするより複雑な量子暗号系の実用化には、その量子計算を支える柱となる量子計算機の実現が必要不可欠である。2009年度の研究では、そうした量子計算機に焦点を合わせ、その優れた性能とまたその計算能力の限界を示した。量子暗号の実用性を考慮した上で、理論的な基礎として一般的な多項式時間計算モデルから離れ、現在の量子情報技術でも実現がより可能な量子計算モデルの一つである「量子オートマトン」を用いた。更に、このモデルに「アドバイス」と呼ばれるコンパクトな外部情報を付与した場合、モデルの計算能力がどの程度向上するかの解析を、同様なアドバイス付きの古典計算モデルとの比較を通して行った。ここでのアドバイスの与え方は、2004年に只木-山上-LINが提案した方式を採用した。アドバイスの種類の中でも特に、決定性アドバイス、確率的アドバイス、また量子アドバイスを用い、それらの能力の違いを分析することで計算量的な限界を示した。古典計算モデルでは、既に知られている決定性アドバイスの結果を拡張し、また確率的アドバイスの能力の限界をゲーム理論的な手法で証明した。これに対し量子計算では新しい解析方法を駆使し、決定性アドバイスの能力の上限を与えた。古典計算モデルとは異なり、量子計算モデルには量子アドバイスを付与することが可能である。この量子アドバイスの限界については、量子情報理論を用いた手法を用いない初等的な証明を与えた。 | KAKENHI-PROJECT-19500015 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19500015 |
長時間曝露法の専門家養成プログラムの開発 | 本研究の成果として3点が挙げられる。第一に、長時間曝露法(以下PE療法)を実施可能な専門家育成システムを構築し、試行したことである。第二は、このシステムを通して実際に専門家を育成したことが挙げられる。第三に、実際にPE療法を実施する際に役立つPE療法実践マニュアルを作成したことである。PE療法の治療者育成は我が国のPTSD治療における急務であり、その育成システムを構築したことはPTSD治療の発展に寄与するものである。本研究の成果として3点が挙げられる。第一に、長時間曝露法(以下PE療法)を実施可能な専門家育成システムを構築し、試行したことである。第二は、このシステムを通して実際に専門家を育成したことが挙げられる。第三に、実際にPE療法を実施する際に役立つPE療法実践マニュアルを作成したことである。PE療法の治療者育成は我が国のPTSD治療における急務であり、その育成システムを構築したことはPTSD治療の発展に寄与するものである。PTSDの治療として有効性が確かめられている長時間曝露法(以下PE療法)であるが、わが国ではPE療法を実施できる専門家の人数や治療施設数が未だ極めて限定されており、PTSD患者が容易に利用できるに至っていない。このような現状を打開するため、PE療法を実施できる専門家を効率よく育成するシステムの構築が早急な課題である。したがって本研究では、治療者育成システムの構築、ならびに指導者(スーパーヴァイザー)養成システムを構策し、欧米のPTSD治療ガイドラインにおいて高く評価されているPE療法を、わが国の精神科医療や心理臨床の現場に普及を図ることを目的とする。【平成21年度研究の成果】1.上智大学臨床心理相談室にて、PE療法を行う治療環境の整備2.上智大学臨床心理相談室におけるPTSD患者に対するPE療法の実施、およびデータ蓄積の開始3.上智大学臨床心理相談室における研究活動の紹介、および治療対象者の募集を募るHPの作成4.上智大学臨床心理相談室で実施されるPE療法の紹介パンフレットの作成および配布5.学会発表を通じて、精神科医療に携わる専門家にPE療法の有効性と本研究の意義の周知に努めた6.研究分担者の著書『心の傷のケアと治療ガイド』において、専門の心理相談機関として上智大学臨床心理相談室が紹介された7.研究分担者および研究協力者によるPE療法のスーパーヴィジョン(月23回)の実施8. PE療法の創始者であるFoa, E.Bのもと、ペンシルベニア大学においてスーパーバイザー養成の養成のための約2週間の集中トレーニングを、研究協力者2名が受講し、PF療法の指導者としての技能を身に付けた。PTSDの治療法として海外で高い評価をうけている長時間曝露法(以下PE療法)は、わが国でもすでに有用性を確かめられている(Asukai, Saito, Tsuruta et al. 2008)。しかしながらわが国では実施できる専門家や施設が未だ極めて限定されており、容易に利用できるに至っていない。PE療法の実施には技法の研修だけでなく、適切なスーパーヴィジョンが必須である(NICEガイドライン,2005)。本研究の目的は、スーパーヴァイザー育成を含めたPE療法の専門家養成であり、研究2年目である本年度は以下のような成果を得た。・上智大学臨床心理相談室及び関連施設においてPE療法の対象者募集を引き続き積極的に行い、定期的スーパーヴィジョンの下での治療者トレーニングを実施した。また治療前後及び追跡調査時点での症状評価データを蓄積した。・よりガイドラインに沿った治療対象者を募集するために、ウェブサイトの修正を行った。・研究分担者の指導の下で、昨年度米国でスーパーヴァイザー訓練を終了した2名の研究協力者を中心に、3月19日-21日の3日間(24時間)技法研修会を開催し、指導法の訓練と、関連施設の臨床心理士等を中心に技法の普及をはかった。・PE療法で得られた知見をもとに博士論文を執筆し、受理された。平成23年度の研究成果としては、以下の8点が挙げられる。1.研究分担者及び研究協力者が、3日間にわたる長時間曝露法(PE療法)のワークショップ講師を行った。2.上智大学臨床心理相談室にてPTSDのクライエントに対しPE療法を実施し、データの蓄積を継続した。3.研究分担者及び研究協力者によるPE療法のスーパーヴィジョンを実施した。4.研究分担者及び研究協力者による、PE療法ワークショップ受講修了者向けのスモールグループの勉強会を継続開催した。(年8回)5.海外の研究者を招いてPE療法のアドバンストセミナーを開催した。6.PE療法実践マニュアルを作成した。7.論文等を通してPE療法の有効性と現場での使用及び治療者育成について周知に努めた。8.研究分担者が児童思春期向けのPE療法をアメリカのニュージャージー及びピッツバーグで学び、それをPE療法ワークショップ受講修了者に伝え、より広い対象にPE療法を適用できるようにした。本研究の目的は、PE療法を実施できる専門家及び指導者を育成するシステムの構築にある。本研究成果の意義としては、第一に、ワークショップの開催、PE療法事例の担当、スーパーヴィジョンの実施、スモールグループの開催、アドバンストセミナーの開催という、PE療法を実施可能な専門家を育成するシステムを構築し試行したことが挙げられる。なおスーパーヴィジョンは、治療者の育成のみならず、指導者がより上位の指導者からスーパーヴァイズ(指導)の内容を監督されることで、指導者を育成するシステムも兼ねている。研究成果の第二の意義としては、ワークショップ等で参加者から出された質問をPE療法実践マニュアルという形でまとめることで、よりPE療法を施行しやすくしたことにある。 | KAKENHI-PROJECT-21530741 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21530741 |
長時間曝露法の専門家養成プログラムの開発 | PE療法の治療者育成は我が国のPTSD治療における急務であり、その育成システムを構築したことはPTSD治療の発展に寄与するものである。 | KAKENHI-PROJECT-21530741 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21530741 |
会社文化の総合的研究 | 本年度は、昨年度に引き続き企業博物館や会社を個人ないし数名で訪問し、聞き取り調査をおこなった。地域別の主な訪問先は次のとおりである(詳細は報告書参照)。北海道:小樽オルゴール堂アンティークミュージアム、小樽ヴェネチア美術館、旧日本郵船株式会社小樽支店、小樽運河工芸館、雪印乳業史料館、サッポロビール博物館、竹鶴資料館、コニカプラザ・サッポロ、らいらっく、ぎゃらりい(北海道銀行)、石炭の歴史村、男山酒作り史料館、優佳良織工芸館、ふらのワイン工場、池田町ワイン城、馬の資料館、太平洋炭礦炭鉱展示館関東:資生堂企業資料館、日本銀行貨幣博物館中部:東海銀行資料館、窯のある広場・資料館(INAX)、日本モンキーセンター(名古屋鉄道)諏訪北澤美術館、SUWAガラスの里近畿:ホンダコレクションホール、パルケエスパーニャ、真珠博物館、竹中大工道具館、島津創業記念資料館九州:西部ガス、ハウステンボス、べっ甲文化資料館このほか住原は原子力発電所PR館のうち昨年度の訪問先以外のすべてを調査するとともに、関電、北電、九電の本社でインタビューをおこない、PR館が原発のしくみや安全性を説明する施設から、リクリエーションや地元文化を紹介する文化観光施設に変わってきたことを明らかにし、記号論者の言う「詩的機能」が付与されヘゲモニ-形成に寄与していることを実証した。会社の求心性や遠心性については、日置が「組織ユニットにおける副の職務」に関して、企業の組織改革の中で自分の役割を主張する機会のないまま、整理対象となっている副の役割について研究をおこなった。会社の記念行事や宗教儀礼にみられるように、経営に宗教的要素が動員されることについては、ダスキンと日立製作所、伏見稲荷神社で調査を実施した。2年度にわたる調査研究の結果、会社文化の研究には「経営人類学」とでも称すべき研究分野が存在することがしだいに明確となり、企業博物館や宗教儀礼の分析を通して、会社の精神的の文化的・経営的側面こそが経済よりもむしろ歴史的に意味をもつ場面のあることを明らかにした。本年度は、昨年度に引き続き企業博物館や会社を個人ないし数名で訪問し、聞き取り調査をおこなった。地域別の主な訪問先は次のとおりである(詳細は報告書参照)。北海道:小樽オルゴール堂アンティークミュージアム、小樽ヴェネチア美術館、旧日本郵船株式会社小樽支店、小樽運河工芸館、雪印乳業史料館、サッポロビール博物館、竹鶴資料館、コニカプラザ・サッポロ、らいらっく、ぎゃらりい(北海道銀行)、石炭の歴史村、男山酒作り史料館、優佳良織工芸館、ふらのワイン工場、池田町ワイン城、馬の資料館、太平洋炭礦炭鉱展示館関東:資生堂企業資料館、日本銀行貨幣博物館中部:東海銀行資料館、窯のある広場・資料館(INAX)、日本モンキーセンター(名古屋鉄道)諏訪北澤美術館、SUWAガラスの里近畿:ホンダコレクションホール、パルケエスパーニャ、真珠博物館、竹中大工道具館、島津創業記念資料館九州:西部ガス、ハウステンボス、べっ甲文化資料館このほか住原は原子力発電所PR館のうち昨年度の訪問先以外のすべてを調査するとともに、関電、北電、九電の本社でインタビューをおこない、PR館が原発のしくみや安全性を説明する施設から、リクリエーションや地元文化を紹介する文化観光施設に変わってきたことを明らかにし、記号論者の言う「詩的機能」が付与されヘゲモニ-形成に寄与していることを実証した。会社の求心性や遠心性については、日置が「組織ユニットにおける副の職務」に関して、企業の組織改革の中で自分の役割を主張する機会のないまま、整理対象となっている副の役割について研究をおこなった。会社の記念行事や宗教儀礼にみられるように、経営に宗教的要素が動員されることについては、ダスキンと日立製作所、伏見稲荷神社で調査を実施した。2年度にわたる調査研究の結果、会社文化の研究には「経営人類学」とでも称すべき研究分野が存在することがしだいに明確となり、企業博物館や宗教儀礼の分析を通して、会社の精神的の文化的・経営的側面こそが経済よりもむしろ歴史的に意味をもつ場面のあることを明らかにした。本年度は2回の研究会を開催するとともに、企業博物館を個人ないし数名で訪問し、聞き取り調査をおこなった。地域別の主な訪問先は、東北:久慈琥珀、吉成銘木店関東:瀧波硝子、ツクダ、エ-ス、ヤオハン、セキグチ、ペンタックス、キッコ-マン、ヒゲタ醤油、日立製作所、日本たばこ産業、日本銀行、ブリジストン、日本皮革産業連合会、乾燥木材工芸、家具の博物館、サッポロビール、東京電力中部:トヨタ、キッツ近畿:ダスキン、松下電器、ミキモト、ヒガシマル醤油、シャープ、UCCコーヒー、俵屋吉富、島津製作所、イシダ中国・四国:林原、丸金醤油、マルヤマ、東邦グラビーズ九州:九州電力、西部ガスである。日本の企業博物館はおよそ350存在するといわれているが、創業者を顕彰し会社の製品を展示するタイプ、会社の業種の一般的啓蒙をはかるタイプ、創業者や社長のコレクションを展示するタイプ、会社の営利事業と密接に関連するタイプなどに大別される。最近の企業博物館は企業のイメージアップにも一役かうなど、意欲的なとりくみがみられる。また、世界の企業博物館に関する資料展と講演会が経団連で開催されたのを機に、関係者と情報交換をおこなった。会社の経営に宗教的要素が動員されることについては、ヤオハンとダスキンで予備的調査をおこなった。従業員からみた会社のありかたについては、シャープの労働組合の幹部に聞き取り調査をおこなった。 | KAKENHI-PROJECT-07309015 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07309015 |
会社文化の総合的研究 | 本年度は、昨年度に引き続き企業博物館や会社を個人ないし数名で訪問し、聞き取り調査をおこなった。地域別の主な訪問先は次のとおりである(詳細は報告書参照)。北海道:小樽オルゴール堂アンティークミュージアム、小樽ヴェネチア美術館、旧日本郵船株式会社小樽支店、小樽運河工芸館、雪印乳業史料館、サッポロビール博物館、竹鶴資料館、コニカプラザ・サッポロ、らいらっく・ぎゃらりい(北海道銀行)、石炭の歴史村、男山酒作り史料館、優佳良織工芸館、ふらのワイン工場、池田町ワイン城、馬の資料館、太平洋炭礦炭鉱展示館関東:資生堂企業資料館、日本銀行貨幣博物館中部:東海銀行資料館、窯のある広場・資料館(INAX)、日本モンキーセンター(名古屋鉄道)諏訪北澤美術館、SUWAガラスの里近畿:ホンダコレクションホール、パルケエスパーニャ、真珠博物館、竹中大工道具館、島津創業記念資料館九州:西部ガス、ハウステンボス、べっ甲文化資料館このほか住原は原子力発電所PR館のうち昨年度の訪問先以外のすべてを調査するとともに、関電、北電、九電の本社でインタビューをおこない、PR館が原発のしくみや安全性を説明する施設から、リクリエーションや地元文化を紹介する文化観光施設に変わってきたことを明らかにし、記号論者の言う「詩的機能」が付与されヘゲモニ-形成に寄与していることを実証した。会社の求心性や遠心性については、日置が「組織ユニットにおける副の職務」に関して、企業の組織改革の中で自分の役割を主張する機会のないまま、整理対象となっている副の役割について研究をおこなった。会社の記念行事や宗教儀礼にみられるように、経営に宗教的要素が動員されることについては、ダスキンと日立製作所、伏見稲荷神社で調査を実施した。2年度にわたる調査研究の結果、社会文化の研究には「経営人類学」とでも称すべき研究分野が存在することがしだいに明確となり、企業博物館や宗教儀礼の分析を通して、会社の精神的・文化的・経営的側面こそが経済よりもむしろ歴史的に意味をもつ場面のあることを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-07309015 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07309015 |
サーキットモデルによる大学での創成教育手法のナレッジマネジメント研究 | 本研究は、大学の内外で近年強調されてきた「人間力育成」の動きに高等教育機関として対応するために、創成学習の学習指導に用いることができる学習プロセスモデルの検討を進め、研究や教育などの知識創造プロセスの促進のためのナレッジマネジメントモデル、プロセスモデルをまとめた。また、地域における学習モデルについても研究し、学校のような組織を持たない地域でも進められるモデルを提示した。本研究は、大学の内外で近年強調されてきた「人間力育成」の動きに高等教育機関として対応するために、創成学習の学習指導に用いることができる学習プロセスモデルの検討を進め、研究や教育などの知識創造プロセスの促進のためのナレッジマネジメントモデル、プロセスモデルをまとめた。また、地域における学習モデルについても研究し、学校のような組織を持たない地域でも進められるモデルを提示した。本研究の目的は、大学の内外で近年強調されてきた「人間力育成」の動きに高等教育機関として対応するために、(1)創成学習の学習指導に用いることができる学習プロセスモデルの検討、(2)大学における研究や教育などの知識創造プロセスの促進のためのナレッジマネジメントモデルの普及版の開発、(3)チーム学習、プロジェクト学習で活用可能なプロセスモデルの検討、(4)学習者の知識創造のプロセスを評価可能な新たな学習評価手法(プロジェクト知識創造試算表)の開発、および(5)地域振興における学習でこのモデルを応用するための多様な知識創造活動の支援方法の検討である。2007年度度は、創成教育などの工学・科学教育に応用するために金沢工業大学のシラバスの改革を参考に、薪たな学習モデルとして、人間力を授業の中で評価できるようなマトリクスを作成した。その内容については論文にまとめて発表した。また学習者による人間力への関心や学習行動の差を見るために、複数のクラスの学生の学習履歴の確認と学生へのインタビューとフォーカスグループ調査を行い、成績や興味関心による差を見出そうとした。その結果は別途とりまとめている。さらに、サーキットモデルの金沢工業大学の新学習プロセス(CLIP)への適合度を確認するために、金沢工業大学での学生を対象とした大規模なアンケート委調査を実施して、新学習プロセスの認識度や人間力の認識などを調査した。地域振興における学習モデルの展開については、北海道黒松内町、浜中町、西興部村などで、地域住民が地域づくりに参加して学ぶ場において、どのような組織学習が進められているかについて調査し、組織的な学習が地域などの組織を持たない場でも進められていることの立証を試みた。本研究の目的は、大学の内外で近年強調されてきた「人間力育成」の動きに高等教育機関として対応するために、(1)創成学習の学習指導に用いることができる学習プロセスモデルの検討、(2)大学における研究や教育などの知識創造プロセスの促進のためのナレッジマネジメントモデルの普及版の開発、(3)チーム学習、プロジェクト学習で活用可能なプロセスモデルの検討、(4)学習者の知識創造のプロセスを評価可能な新たな学習評価手法(プロジェクト知識創造試算表)の開発、および(5)地域振興における学習でこのモデルを応用するための多様な知識創造活動の支援方法の検討である。2008年度度は、創成教育などの工学・科学教育に応用するために金沢工業大学のシラバスの改革に関連するアンケート等を実施し、そのとりまとめを行った。まず学習者による人間力への関心や学習行動の差を見るために、金沢工業大学内の複数のクラスの学生の学習履歴の確認と学生へのインタビューとフォーカスグループ調査をまとめ、成績や興味関心による差を見出そうとした。次に、サーキットモデルの金沢工業大学の新学習プロセス(CLIP)への参加度を確認するために、金沢工業大学での学生を対象としたアンケート調査を実施して、新学習プロセスの認識度や人間力の認識などを調査した。一方地域振興における学習モデルの展開については、北海道浜中町の環境保全に関連するエンパワーメントや地域住民が地域づくりに参加した組織学習について調査し、強固な組織を持たない場でも進められていることの立証を試み、一部の尾成果を発表した。本研究の目的は、大学の内外で近年強調されてきた「人間力育成」の動きに高等教育機関として対応するために、(1)創成学習の学習指導に用いることができる学習プロセスモデルの検討、(2)大学における研究や教育などの知識創造プロセスの促進のためのナレッジマネジメントモデルの普及版の開発、(3)チーム学習、プロジェクト学習で活用可能なプロセスモデルの検討、(4)学習者の知識創造のプロセスを評価可能な新たな学習評価手法(プロジェクト知識創造試算表)の開発、および(5)地域における学習であった。そして創成教育などの工学・科学教育を応用するために金沢工業大学のシラバスの改革に関連するアンケート等を実施し、そのとりまとめを行った。そして、よる人間力への関心や学習行動の差を見るために、金沢工業大学内の複数のクラスの学生の学習履歴の確認と学生へのインタビューとフォーカスグループ調査をまとめた。次に、サーキットモデルの金沢工業大学の新学習プロセス(CLIP)への参加度を確認するために、金沢工業大学での学生を対象としたアンケート調査を実施して、新学習プロセスの認識度や人間力の認識などを調査した。また地域における学習モデルの展開については、北海道浜中町の環境保全に関連するエンパワーメントや地域住民が地域づくりに参加した組織学習について調査し、学校のような組織を持たない地域でも進められるモデルを分析した。 | KAKENHI-PROJECT-19500828 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19500828 |
着せ替え可能なオンデマンド多機能ウイルス様ナノ粒子の開発 | ウイルスは、重篤な感染症を引き起こす病原体である一方で、ウイルスベクターやワクチンなどのバイオマテリアルとして利用されてきた。近年では、その特徴的な構造から、ドラッグ・デリバリー・システム用のキャリアなどのナノ材料としても期待されている。本研究では、ウイルスが有する正二十面体対称の2重殻キャプシドを基に、ウイルス粒子の新たな利用法を開発する。具体的には、交換可能かつ複数の異なる機能を同時に有するウイルス様ナノ粒子(Multi-functional Virus-like Nanoparticle: MVNP)を開発する。ウイルスは、重篤な感染症を引き起こす病原体である一方で、ウイルスベクターやワクチンなどのバイオマテリアルとして利用されてきた。近年では、その特徴的な構造から、ドラッグ・デリバリー・システム用のキャリアなどのナノ材料としても期待されている。本研究では、ウイルスが有する正二十面体対称の2重殻キャプシドを基に、ウイルス粒子の新たな利用法を開発する。具体的には、交換可能かつ複数の異なる機能を同時に有するウイルス様ナノ粒子(Multi-functional Virus-like Nanoparticle: MVNP)を開発する。 | KAKENHI-PROJECT-19K05708 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K05708 |
鳥取砂丘の海浜植生保全と景観保全の両立 | 鳥取砂丘では植林により飛砂害が激減したが,同時に砂丘内の草原化が課題となった。本研究では,1海浜植生の個体群構造定量化,2.地域社会が望む「鳥取砂丘」景観,3.植生保全と景観両立のための具体的施策の提言,を意図した。1.では植生量が1991年まで増加し,その後減少したことを報告した。飛砂量を観測し,少飛砂地と外来植物定着の関係を解明した。2.では砂丘に関する意識調査から,地域社会が除草に肯定的なことを示した。3.では鳥取砂丘の景観保全ゾーニングを,保全団体の会議で提案した。鳥取砂丘では植林により飛砂害が激減したが,同時に砂丘内の草原化が課題となった。本研究では,1海浜植生の個体群構造定量化,2.地域社会が望む「鳥取砂丘」景観,3.植生保全と景観両立のための具体的施策の提言,を意図した。1.では植生量が1991年まで増加し,その後減少したことを報告した。飛砂量を観測し,少飛砂地と外来植物定着の関係を解明した。2.では砂丘に関する意識調査から,地域社会が除草に肯定的なことを示した。3.では鳥取砂丘の景観保全ゾーニングを,保全団体の会議で提案した。鳥取砂丘は国の天然記念物および山陰海岸国立公園の特別保護地区に指定されており日本に残された貴重な大規模海浜砂丘かつ地域の代表的な観光資源でもある。鳥取砂丘では現在海浜植生の保護と砂丘景観の維持との共存を図る管理方法が必要とされている。本研究では平成1820年度に,A)海浜植生の個体群構造定量化・モデル化,B)地域社会が望む「鳥取砂丘」景観の具体化,C)植生保全と景観両立のための具体的施策の提言を行うことを目的として,18年度はこのうち主にA)海浜植生の個体群構造定量化の調査・解析を行った。1.砂丘主要部約130haの植生分布を1mスケールで調査し,鳥取砂丘の現存植生図を初めて作成した。砂丘内には目標物がないため高性能GPSを用いて位置を確定した。外来植物除草(8-9月)前後に調査を行い,除草前後の植生変化をとらえることに成功した。2.各群落において種別被度を草丈と密度の計測を行い生物量の推定を行った。量的な空間分布を明らかにするためデータを解析中である。3.海浜植物の場所による成長・繁殖状況を把握するため,砂丘内の43カ所で1年間の継続調査を行い,代表的な5種の開花・繁殖時期を特定した。いくつかの種で場所による成長・繁殖の違いがあることがわかった。4.130haを対象に毎月,土壌水分調査を行い,表層土壌の乾燥度を把握した。基本的な地形構造を解析するため10mメッシュ標高地図を基にGIS(地理情報システム)を使って地形指標を決定した。5.上記のデータを利用して海浜植生の分布と地形・水分との関係を解析した。コウボウシバの分布が地形や土壌水分によって規定されていること,コウボウムギやケカモノハシなどの優占種は分布が広く,地形構造からは分布が説明できないこと,などが明ちかとなった。18年度の結果に基づき現在投稿論文を準備中である。「鳥取砂丘」は国の天然記念物および国立公園の特別保護地区に指定されている唯一の海岸砂丘である。国内に残された貴重な大規模海浜砂丘であり,地域の代表的な観光資源でもある。鳥取砂丘では1991年以来景観維持のための外来植物除去が続けられており,海浜植生の保護と砂丘景観の維持との共存を図るための将来計画が模索されている。本研究では平成1820年度に,A)海浜植生の個体群構造定量化・モデル化,B)地域社会が望む「鳥取砂丘」景観の具体化,C)植生保全と景観両立のための具体的施策の提言を行うことを目的としている。1.A)の個体群構造について18年度に調査を行った砂丘主要部約130haの1mスケールの植生分布と地形・水分との関係解析を進めた。さらに過去の植生調査報告から1960年代以降の鳥取砂丘の植生変化を解析し,これらの結果を国際学会にて発表した。2.19年度は主にB)地域社会が望む「鳥取砂丘」の景観イメージに関する研究に力を注いだ。(1)過去から現在までの砂丘の変化,(2)除草効果の評価,(3)今後の除草と景観管理のありかたに関して地域の人々や砂丘を訪れた観光客に大規模なアンケート調査を行った。調査用紙に上記1の植生図を提示し具体的な回答を求めた。この結果,観光客と地元の人々の砂丘に対するイメージは異なっており,砂丘の訪問回数が多いほど植物の増加に敏感で,除草による景観管理に積極的であることが明らかとなった。これは鳥取砂丘の景観のあり方に関する初めての資料であり,20年度にとりまとめを急ぎ,C)の提言に結びつける予定である。「鳥取砂丘」は海岸砂丘の典型として国の天然記念物および国立公園の特別保護地区に指定されており,地域の観光資源として重要である。長年の懸案であった周辺の飛砂害は精力的な砂防により激減したが,同時に砂丘内の草原化がすすみ,鳥取砂丘では1991年以来景観維持のための外来植物除去が続けられている。 | KAKENHI-PROJECT-18710038 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18710038 |
鳥取砂丘の海浜植生保全と景観保全の両立 | 本研究では植生保全と景観保全の両立にむけて, A)海浜植生の個体群構造定量化・モデル化, B)地域社会が望む「鳥取砂丘」景観の具体化, C)植生保全と景観両立のための具体的施策の提言を行うことを目的として研究を行ってきた。20年度はとりまとめの年にあたり, 1. A)の個体群構造について解析をすすめ,その成果を国内学会のシンポジウムの席で発表した。また,個体群構造と砂丘の環境条件の関係を明らかにするため,塩分量・飛砂量の定期的な観測を砂丘内50地点で1年間継続して計測した。これらの成果は地域の学会で発表するとともに,現在とりまとめ中である。投稿論文の掲載は今年度には間に合わなかった。2. 19年度におこなった砂丘に関する意識調査の統計処理をおこない,国内学会にて口頭発表した。とりまとめた成果は地元の保全団体に提供するとともに,現在投稿論文化の最中である。3. A), B)のとりまとめをふまえて,鳥取砂丘の景観保全ゾーニングを提唱し,保全団体の会議にて提案した。この提案は平成21年度にまとめられる研究報告書に掲載する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18710038 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18710038 |
Parafibrominチロシンリン酸化の生理・病態生理的役割の解明 | 申請者らは近年、核内タンパク質Parafibrominがチロシンリン酸化状態依存的にWnt経路、Hedgehog経路、Notch経路、Hippo経路という発がんに密接に関わる4つのシグナル経路を統合的に制御することを明らかにした。しかし、このParafibrominのリン酸化依存的機能が個体レベルの生命現象に果たす役割は未だ不明である。そこで本研究では、Parafibrominのリン酸化を担うチロシンキナーゼ群を多重欠損させた遺伝子改変マウスを作製・解析することで、Parafibrominのチロシンリン酸化が担う生理的役割ならびにがんに代表される病態への役割解明を目指す。申請者らは近年、核内タンパク質Parafibrominがチロシンリン酸化状態依存的にWnt経路、Hedgehog経路、Notch経路、Hippo経路という発がんに密接に関わる4つのシグナル経路を統合的に制御することを明らかにした。しかし、このParafibrominのリン酸化依存的機能が個体レベルの生命現象に果たす役割は未だ不明である。そこで本研究では、Parafibrominのリン酸化を担うチロシンキナーゼ群を多重欠損させた遺伝子改変マウスを作製・解析することで、Parafibrominのチロシンリン酸化が担う生理的役割ならびにがんに代表される病態への役割解明を目指す。 | KAKENHI-PROJECT-19K16734 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K16734 |
地域福祉の展開における高齢者の居住・福祉関連施設の整備方策に関する研究 | まず保健婦のサ-ビス必要性判断を基にして、高齢者・家族のサ-ビス要求の表われ方との関係からサ-ビスの需要構造を解明し、1.高齢者自身が「自立」に近い場合、また、家族介護力が豊かな時、サ-ビス不必要と直結していること。家族は要求なし、保健婦は必要の判断と分かれる場合、家族では介護力と意識がかなり規定力となっているが、保健婦は本人のリハビリテ-ションを考えて必要性を判断していること。2.保健婦は(1)家族内で他にも要看護者がいる場合、要医療で介護型入所施設サ-ビス必要と判断しているが、「高度」であっても、すべて在宅サ-ビスで生活可能としていること。(2)「軽度」と「中等度」の間を、ひとりぐらしの在宅生活継続の分かれ目としていること。3.保健婦は、「訪問指導」などはミニマムとして必要と考えており、あとは介護困難状況に応じてサ-ビスを組み合せている。そのパタ-ンは、福祉サ-ビスの場合「高度」では宿泊型と居宅型サ-ビス中心、「中等度」では通所型サ-ビスを中心とした組合せで形成されていることが明かとなった。また介護の観点から家族介護力を型設定し、行動能力と対応させてサ-ビス需要モデルを設定した。このモデルと生活条件、サ-ビス要求出現率、痴呆性重複率等を配慮した上で、主なサ-ビス毎の需要量を算定し、以下の推計値を得た。介護型入所施設サ-ビス0.6%ホ-ムヘルプサ-ビス15.3%居住型入所施設サ-ビス2.1%入浴サ-ビス1.2%宿泊型施設サ-ビス3.9%食事サ-ビス3.1%通所型施設サ-ビス2.5%まず保健婦のサ-ビス必要性判断を基にして、高齢者・家族のサ-ビス要求の表われ方との関係からサ-ビスの需要構造を解明し、1.高齢者自身が「自立」に近い場合、また、家族介護力が豊かな時、サ-ビス不必要と直結していること。家族は要求なし、保健婦は必要の判断と分かれる場合、家族では介護力と意識がかなり規定力となっているが、保健婦は本人のリハビリテ-ションを考えて必要性を判断していること。2.保健婦は(1)家族内で他にも要看護者がいる場合、要医療で介護型入所施設サ-ビス必要と判断しているが、「高度」であっても、すべて在宅サ-ビスで生活可能としていること。(2)「軽度」と「中等度」の間を、ひとりぐらしの在宅生活継続の分かれ目としていること。3.保健婦は、「訪問指導」などはミニマムとして必要と考えており、あとは介護困難状況に応じてサ-ビスを組み合せている。そのパタ-ンは、福祉サ-ビスの場合「高度」では宿泊型と居宅型サ-ビス中心、「中等度」では通所型サ-ビスを中心とした組合せで形成されていることが明かとなった。また介護の観点から家族介護力を型設定し、行動能力と対応させてサ-ビス需要モデルを設定した。このモデルと生活条件、サ-ビス要求出現率、痴呆性重複率等を配慮した上で、主なサ-ビス毎の需要量を算定し、以下の推計値を得た。介護型入所施設サ-ビス0.6%ホ-ムヘルプサ-ビス15.3%居住型入所施設サ-ビス2.1%入浴サ-ビス1.2%宿泊型施設サ-ビス3.9%食事サ-ビス3.1%通所型施設サ-ビス2.5%本研究は、居宅処遇の原則の下に展開されることからの高齢者福祉において、居住・福祉関連施設の整備方策を探ることを目的としている。名古屋市や神戸市などの在宅サービスが先行的に供給されている地域を対象にヒアリング調査を行ったが、いずれの地域においても在宅サービスは未だ試行段階に止まり、在宅サービスの十分な展開の下での施設整備のあり方を実証的に明らかにできる研究プログラムの遂行は困難な状況にあるものと判断した。そこで在宅サービスが十分整備された将来の状態を仮想して、高齢者がどのサービスに該当するかを把握し、現在の該当サービスとの対応を考察することにより、上記研究目的を達成しようとして、今日、社会問題となっている痴呆症高齢者についての下記の調査計画を仙台市において企画した。3次に亘る調査は現在実施の途中であるが、1次調査の結果の概要を報告する。(1)調査方法1次調査;65歳以上の高齢者の20分の1を無作為抽出(対象者数3,692人)し、民生委員による訪問面接アンケート調査。2次調査;1次調査の項目から、痴呆性老人の疑いのある者を抽出(389人)し、保健婦による訪問面接アンケート調査。3付調査;これらの調査票から精神科医グループ(6名)が痴呆性の有無と程度を判定し、判定困難な若干の高齢者については医師が直接面接する調査。(2)1次調査の結果の概要(1)仙台市全体にみる年齢構成では、75歳以上の後期高齢者が38.7%であるのに対し、痴呆性の疑いのある者については80.2%と際立って高い。(2)同様に述べると、寝たきりは3.1%であるのに対して10.8%、虚弱が9.8%に対して33.1%である。(3)子供世帯との同居は、52.9%に対して81.4%と非常に高い。これらから、寝たきり老人と同様に、(疑)痴呆性老人の場合も、介護の必要が高く、家族の介護に対する負担の重さが推測された。 | KAKENHI-PROJECT-63550434 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63550434 |
地域福祉の展開における高齢者の居住・福祉関連施設の整備方策に関する研究 | まず保健婦のサ-ビス必要性判断を基にして、高齢者・家族のサ-ビス要求の表れ方との関係からサ-ビスの需要構造を解明し、1.高齢者自身が「自立」に近い場合、また、家族介護力が豊かな時、サ-ビス不必要と直結していること。家族は要求なし、保健婦は必要の判断と分かれる場合、家族では介護力と意識がかなり規定力となっているが、保健婦は本人のリハビリテ-ションを考えて必要性を判断していること。2.保健婦は(1)家族内で他にも要看護者がいる場合、要医療で看護型入所施設サ-ビス必要と判断しているが、「高度」であっても、すべて在宅サ-ビスで生活可能としていること。(2)「軽度」と「中等度」の間を、ひとりぐらしの在宅生活継続の分かれ目としていること。3.保健婦は、「訪問指導」などはミニマムとして必要と考えており、あとは介護困難状況に応じてサ-ビスを組み合わせている。そのパタ-ンは、福祉サ-ビスの場合「高度」では宿泊型と居宅型サ-ビス中心、「中等度」では通所型サ-ビスを中心とした組合せで形成されていることが明らかとなった。また介護の観点から家族介護力を型設定し、行動能力と対応させてサ-ビス需要モデルを設定した。このモデルと生活条件、サ-ビス要求出現率、痴呆性重複率等を配慮した上で主なサ-ビス毎の需要を算定し、以下の推計値を得た。介護型入所施設サ-ビス0.6%ホ-ムヘルプサ-ビス15.3%居住型入所施設サ-ビス2.1%入浴サ-ビス1.2%宿泊型施設サ-ビス3.9%食事サ-ビス3.1%通所型施設サ-ビス2.5% | KAKENHI-PROJECT-63550434 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63550434 |
妊娠糖尿病患者における早産低体重児出産リスクとしての歯周病の影響 | これまでに『歯周病と糖尿病』、『歯周病と早産』、『歯周病と肥満』に関する研究は数多く行われている。しかし、『歯周病と妊娠糖尿病』に関する報告は少なく、日本における歯周病と妊娠糖尿病に関する調査報告はない。本研究では、妊娠糖尿病と診断された妊婦を被験者とし、早産低体重児出産リスクにおける歯周病の影響度を調査した。その結果、今回調査した被験者において、早産はなかったが低体重児の出産が15%だった。また、妊娠糖尿病と診断された妊婦の多くに脂質代謝のパラメーターの異常値がみられたが、歯周病との関連はみられなかった。調査した被験者数が少なかったため、今後被験者数を増やした調査が必要である。予備実験の整備を行ったが、倫理委員会書類作成時に研究計画の不備を指摘され、現在研究計画を見直している。準備が整い次第、倫理委員会に申請し、受理された後に研究を開始する予定である。本研究の目的は、妊娠糖尿病に罹患する妊婦への歯周病の影響を調査することである。アジア人は遺伝的に糖尿病を発症しやすく、また妊婦の高齢化に伴い妊娠糖尿病の発症増加は懸念される。しかしながら、これまでに日本を含むアジア人に関する妊娠糖尿病と歯周病に関する報告はない。本研究は、昭和大学病院産婦人科、糖尿病内科の協力のもと実施予定で研究計画を立案した。しかし、昨年度より産婦人科妊婦検診のシステムが変更になり研究に協力できる環境が整わなかったため、調査を実施しなかった。新システムでの妊婦検診での環境が整備されたため、それに合わせて計画を一部変更し、調査を開始する予定である。また、当初の計画ではSNPsの解析を実施する予定であったが、現時点では妊娠糖尿病と歯周病との関連性は明らかではないため、SNPsの解析は計画から削除する。そして、今回の研究結果より妊娠糖尿病と歯周病に関連性がある傾向が認められた場合は、改めて別の研究として研究計画を立案する予定である。本研究の目的は、妊娠糖尿病に罹患する妊婦への歯周病の影響を調査することである。アジア人は遺伝的に糖尿病を発症しやすく、また妊婦の高齢化に伴い妊娠糖尿病の発症増加は懸念される。しかしながら、これまでに日本を含むアジア人に関する妊娠糖尿病と歯周病に関する報告はない。本研究は、昭和大学病院産婦人科、糖尿病内科の協力のもと実施予定で研究計画を立案した。しかし、産婦人科妊婦検診のシステムが変更になり、研究に協力できる環境が整わなかったため調査を実施しなかった。新システムでの妊婦検診での環境が整備されたため、計画を一部変更し、調査を開始する。当初の計画ではSNPsの解析を実施する予定であったが、現時点では妊娠糖尿病と歯周病との関連性は明らかではないため、SNPsの解析は計画から削除する。その代わりに、これまで歯周病原細菌の感染度を調査する項目として血清抗体価の測定のみだったが、唾液中の歯周病原細菌数をPCR法にて測定することを追加する。今回の研究結果より妊娠糖尿病と歯周病に関連性がある傾向が認められた場合は、改めて別の研究としてSNPsを解析する研究計画を立案する予定である。研究代表者自身の体調不良のため、研究を実施できなかったため。本研究の目的は、妊娠糖尿病に罹患する妊婦への歯周病の影響を調査することである。アジア人は遺伝的に糖尿病を発症しやすく、また妊婦の高齢化に伴い妊娠糖尿病の発症増加は懸念される。しかしながら、これまでに日本を含むアジア人に関する妊娠糖尿病と歯周病に関する報告はない。本研究は、昭和大学病院産婦人科、糖尿病内科の協力のもと実施した。申請時の計画では、被験者の選定時期を妊娠16週未満と設定した。しかし、当大学産婦人科妊婦検診システムの変更に伴い、妊娠糖尿病のスクリーニングを実施する妊娠初期および中期の2期に選定時期を変更し実施した。また、当初の計画ではSNPsの解析を実施する予定であったが、現時点では日本人における妊娠糖尿病と歯周病との関連性は明らかではないため、倫理委員会の承認が得られなかった。そのため、SNPsの解析は計画から削除した。歯周病原細菌の感染度を調査する項目として血清抗体価の測定を計画したが、使用する予定だった検査キットの販売が終了し使用できなくなった。そのため、唾液中の歯周病原細菌数をPCR法にて測定することに変更し実施した。研究協力に同意が得られた16名の妊婦を被験者とした。妊娠初期に妊娠糖尿病と診断された者は6名だった。本研究における『歯周病』の診断基準は、4mm以上のポケットの部位が1か所以上ある、あるいはプロービング時の出血部位が15%以上ある場合とした。その結果、9名の被験者が歯周病と診断された。妊娠期間はすべての被験者が正期産で、早産で出産した者はいなかった。しかし、児の出生時体重が2500g以下の低体重児を出産した者は2名おり、いずれも歯周病と診断された被験者であった。4000gを超える巨大児を出産した者はいなかった。これまでに『歯周病と糖尿病』、『歯周病と早産』、『歯周病と肥満』に関する研究は数多く行われている。しかし、『歯周病と妊娠糖尿病』に関する報告は少なく、日本における歯周病と妊娠糖尿病に関する調査報告はない。 | KAKENHI-PROJECT-25463227 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25463227 |
妊娠糖尿病患者における早産低体重児出産リスクとしての歯周病の影響 | 本研究では、妊娠糖尿病と診断された妊婦を被験者とし、早産低体重児出産リスクにおける歯周病の影響度を調査した。その結果、今回調査した被験者において、早産はなかったが低体重児の出産が15%だった。また、妊娠糖尿病と診断された妊婦の多くに脂質代謝のパラメーターの異常値がみられたが、歯周病との関連はみられなかった。調査した被験者数が少なかったため、今後被験者数を増やした調査が必要である。研究代表者自身の体調不良、および研究協力先の妊婦検診のシステムが変更になり研究に協力して頂ける環境が整わなかったため、調査を実施できなかったため。修正した研究計画に基づき実施する。歯周病学修正した研究計画に基づいて研究を実施する。倫理委員会書類作成時に研究計画の不備を指摘され、現在研究計画を見直している。当初の計画より調査が遅延しているため。研究が計画通り実施できないと判断し、調査を行わなかったため。遅延した分の調査を実施する。倫理委員会書類作成時に研究計画の不備を指摘され、現在研究計画を見直している。準備が整い次第、倫理委員会に申請し、受理された後に研究を開始する予定である。研究計画に基づいて調査を実施する予定である。初年度の研究計画が予定通り進んでおらず、研究を中止しているため。研究を再開次第、申請した計画に準じて使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-25463227 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25463227 |
神経障害性疼痛モデルにおける抑制性神経伝達物質トランスポーター阻害薬の中枢作用 | 坐骨神経絞扼により神経障害性疼痛モデル(CCI)を作製した。Bennett and Xieの方法により、雄Sprague-Dawleyラットを麻酔下に大腿骨上の皮膚を切開し片側の坐骨神経を4.0-絹糸で4箇所緩く結紮した。処置後4日目から患肢に機械・熱・冷痛覚過敏が出現した。対照には坐骨神経を剥離・露出のみを行うsham手術を施し、痛覚過敏の出現が坐骨神経の結紮によることを確認した。薬物を脳室内に投与するため、右側脳室に22Gのステンレス製ガイドカニューレを頭頂骨より4.0mm挿入し頭部に固定した。不安関連行動に対する作用を検討するため、ALX1393(グリシントランスポーター2:GlyT2阻害薬)25-100μg、SNAP5114(GABAトランスポーター3:GAT3阻害薬)50-200μg、コントロールにはDMSO(25-100%)を29G注入用カニューレで脳室に10μL投与した。投与30分後に1オープンフィールド試験と2高架式十字迷路試験を行った。ビデオトラッキングシステム(ANY-maze ver6.0)を用いて行動解析した。1ではALX1393は高用量でCCIラットの総移動距離を短縮させた。SNAP5114は総移動距離に影響を与えなかった。また、両方とも中央部分(inside zone)の滞在時間に影響を与えなかった。2ではALX1393は高用量で総移動距離を短縮させたがオープンアームの滞在時間に影響を与えなかった。SNAP5114は総移動距離とオープンアームの滞在時間に影響を与えなかった。これらの結果から、ALX1393とSNAP5114は脳室内投与では抗不安作用及び抗うつ作用が発現しないことが示唆された。坐骨神経絞扼により神経障害性疼痛モデル(CCI)を作製した。Bennett and Xieの方法により、雄Sprague-Dawleyラットをペントバルビタール麻酔下に大腿骨上の皮膚を切開し片側の坐骨神経を4.0-silk糸で4箇所緩く結紮すると処置後4日目から患肢に機械・熱・冷痛覚過敏が出現した。対照には坐骨神経を剥離・露出のみを行うsham手術を施した。薬物を脳室内に投与するためラット右側脳室に22Gのステンレス製ガイドカニューレを頭頂骨より4.0mm挿入し歯科用セメントで固定した。処置から7日後に29Gの注入用カニューレでSNAP5114(GABAトランスポーター3阻害薬)とALX1393(グリシントランスポーター2阻害薬)溶液0.5-20mg/mLを脳室内に10μL投与した。30分後から180分後まで1フォンフライ試験(機械痛覚過敏を評価)、2プランター試験(熱痛覚過敏を評価)、3コールドプレート試験(冷痛覚過敏を評価)を行った。ALX1393は用量依存性に1で痛覚閾値を上昇させ、3で逃避反応潜時を延長したが、2の逃避反応潜時には影響を与えなかった。1と3における作用はストリキニーネ(グリシン受容体阻害薬)により完全に抑制された。一方、SNAP5114は123のいずれの試験でも有意な作用が見られなかった。これまでの脳室内投与の結果からALX1393はシナプス間隙のグリシン濃度を上昇させシナプス後膜のグリシン受容体を活性化させることで神経障害性疼痛に対して抗痛覚過敏作用を発現することが示唆された。一方、GABAトランスポーター3は脳内では鎮痛作用にあまり関与していない可能性があると考えられた。脳室内投与で当初は測定結果が安定しなかった。このため二つの薬物効果の判定に予定より多くの実験が必要であった。予定していた脳内投与で結果を得るまでに至らなかった。膵β細胞を選択的に破壊するストレプトゾトシン100mg/kgを4週齢の雄SDラットに腹腔内投与し、1週間後に血糖値が250mg/dL以上のラットを糖尿病(DM)ラットとした。投与から4週以降に高血糖が持続していたラットを実験に用いた。同じ週齢の無処置SDラットを対照群とした。プランター試験でDMラットは対照群ラットと比較して熱痛覚過敏を示さなかったため、機械的痛覚過敏と冷痛覚過敏に対して薬物の作用を評価した。薬物を脳室内に投与するため、右側脳室に22Gのステンレス製ガイドカニューレを頭頂骨より4.0mm挿入し、固定した。7日後に29Gの注入用カニューレでSNAP5114(GABAトランスポーター3阻害薬)とALX1393(グリシントランスポーター2阻害薬)溶液0.5-20mg/mLを脳室内に10μL投与した。30分後から180分後まで1フォンフライ試験(機械痛覚過敏を評価)、2コールドプレート試験(冷痛覚過敏を評価)を行った。ALX1393は用量依存性に1で痛覚閾値を上昇させ、2で逃避反応潜時を延長したが、1と2における作用はストリキニーネ(グリシン受容体阻害薬)を直前に脳室内投与することにより完全に抑制された。一方、SNAP5114は12のいずれの試験でも有意な作用が見られなかった。 | KAKENHI-PROJECT-16K10989 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K10989 |
神経障害性疼痛モデルにおける抑制性神経伝達物質トランスポーター阻害薬の中枢作用 | これまでの脳室内投与の結果から、ALX1393はシナプス間隙のグリシン濃度を上昇させ、シナプス後膜のグリシン受容体を活性化させることで神経障害性痛に対して抗痛覚過敏作用を発現させることが示唆された。一方、DMモデルラットにおいては、GABAトランスポーター3は脳内で鎮痛作用にあまり関与していない可能性が示唆された。糖尿病モデル(DM)ラットの作製で高血糖ラットのうち、機械的痛覚過敏や冷痛覚過敏の発現率が低く、薬物効果の判定に多くの実験が必要だった。このためDMラットならびに坐骨神経絞扼モデルラットで予定していた脳内投与での薬物作用を調べる実験を行うことができなかった。坐骨神経絞扼により神経障害性疼痛モデル(CCI)を作製した。Bennett and Xieの方法により、雄Sprague-Dawleyラットを麻酔下に大腿骨上の皮膚を切開し片側の坐骨神経を4.0-絹糸で4箇所緩く結紮した。処置後4日目から患肢に機械・熱・冷痛覚過敏が出現した。対照には坐骨神経を剥離・露出のみを行うsham手術を施し、痛覚過敏の出現が坐骨神経の結紮によることを確認した。薬物を脳室内に投与するため、右側脳室に22Gのステンレス製ガイドカニューレを頭頂骨より4.0mm挿入し頭部に固定した。不安関連行動に対する作用を検討するため、ALX1393(グリシントランスポーター2:GlyT2阻害薬)25-100μg、SNAP5114(GABAトランスポーター3:GAT3阻害薬)50-200μg、コントロールにはDMSO(25-100%)を29G注入用カニューレで脳室に10μL投与した。投与30分後に1オープンフィールド試験と2高架式十字迷路試験を行った。ビデオトラッキングシステム(ANY-maze ver6.0)を用いて行動解析した。1ではALX1393は高用量でCCIラットの総移動距離を短縮させた。SNAP5114は総移動距離に影響を与えなかった。また、両方とも中央部分(inside zone)の滞在時間に影響を与えなかった。2ではALX1393は高用量で総移動距離を短縮させたがオープンアームの滞在時間に影響を与えなかった。SNAP5114は総移動距離とオープンアームの滞在時間に影響を与えなかった。これらの結果から、ALX1393とSNAP5114は脳室内投与では抗不安作用及び抗うつ作用が発現しないことが示唆された。脳内投与において特定部位に安定して薬物を投与することが課題である。糖尿病性ニューロパチーモデルの作製はこれまでも行っており計画の遂行に問題はなく、坐骨神経絞扼モデルでの脳内投与実験と平行して糖尿病性ニューロパチーモデルを用いた脳室内投与の実験を行う。脳内投与において特定部位に薬物を正確に投与することが今後の課題である。脳内投与で安定した結果が得られない場合、脳室内投与を行い、不安・うつ状態に対するALX1393、SNAP5114の抗不安・抗うつ作用の有無について、オープンフィールド試験、高架式十字迷路試験、強制水泳試験により行動薬理学的に検討する。手術用固定台と試薬の購入に所属機関の研究費を用いたことと今年度は全ての実験装置の修理費用が掛からなかったため。(理由)試薬と実験動物の購入に所属機関の研究費を用いたことや、今年度は全ての実験装置の修理費用と購入費用が掛からなかったため。(使用計画)脳内投与の実験が中心となる。ALX1393の鎮痛作用に関与する部位を同定するほか、不安・抑うつ・記憶・学習関連行動に対する実験を行うため、最終年度はより多くの実験が必要となる。糖尿病性ニューロパチーモデルの作製に必要な試薬は高価で、その飼育期間が2ヶ月程度に及び飼育費を含む実験費用が高くなる。 | KAKENHI-PROJECT-16K10989 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K10989 |
がん患者のR-R間隔心拍変動による自律神経機能解析からのケアプログラムの開発 | 緩和ケア病棟では、清潔のケアとして機械浴が行われている。機械浴のケアを生理学的・心理学的な指標を用いて検証した。機械浴前後での生理学的指標として腋下温、脈拍数、血圧、心拍変動のスペクタル解析から副交感神経、交感神経、自律神経機能の基礎活動指標の定量評価を実施した。また、ギャッジアップ40°の反応性自律神経活動も評価した。心理学的指標は状態・特性不安検査を使用した。生理学的指標については機械浴後に脈拍数のみ低下傾向を示し、心理学的指標については、状態不安が機械浴後に有意に低下した。また、実際の患者さんの言葉から患者さんへのリラックス効果を示唆する所見が得られた。がん患者の自律神経機能を主観的・客観的に検討し、治療中あるいは治療後長期経過後の自律神経機能異常を明らかにする。また、入浴ががん患者に与えるリラクセーションの効果を科学的に検証する。今回用いる自律神経機能測定器機は起立反射を用いて、従来の器機よりも正確な測定が行える利点がある。従って、今回の研究によりがん患者の自律神経機能障害の実態が明らかにされることにより、適切なケアプログラム、薬物療法の開発の端緒となる可能性が考えられる。また、入浴を根拠のある安楽の看護ケアとして位置づける予備的研究になりうる。さらに、がん患者の自律神経障害の薬物療法の開発の目的で、化学療法誘発自律神経機能障害モデルをin vitro, in vivoで作製する。前段階的研究として「看護学科大学生の自律神経機能の検討」を行ってきた。その結果、4年生は1-3年生と比し静止状態では副交感神経の機能低下・交感神経の機能亢進、起立状態では自律神経反射が亢進していた。また、癌患者の自律神経機能の予備的検討では、さまざまな異常があることが判明した。終末期がん患者を対象とした入浴の研究では、病から解放される時間と希望を提供し、スピリチュアルペインの緩和に繋がることや、自覚症状の改善が報告されている。終末期がん患者に対する入浴のリラクセーション効果を科学的に明らかにするために、生理学的、心理学的指標を用いた検討を行い、効果・安全性について明らかにした。今回の研究によりがん患者の自律神経機能障害の実態が明らかにされることにより、がん患者の抱える自律神経機能障害を早期に診断し、より科学的なエビデンスに基づくケアプログラム、副作用対策、介入療法の開発の端緒となる可能性が考えられる。終末期がん患者を対象とした入浴の研究では、病から解放される時間と希望を提供し、スピリチュアルペインの緩和に繋がることや、自覚症状の改善が報告されている。終末期がん患者に対する入浴のリラクセーション効果を科学的に明らかにするために、生理学的、心理学的指標を用いた検討を行い、効果・安全性について明らかにした。今後、終末期がん患者に実施している入浴を、安楽の看護ケアプログラムとして位置づけるための研究を継続する。緩和ケア病棟では、清潔のケアとして機械浴が行われている。機械浴のケアを生理学的・心理学的な指標を用いて検証した。機械浴前後での生理学的指標として腋下温、脈拍数、血圧、心拍変動のスペクタル解析から副交感神経、交感神経、自律神経機能の基礎活動指標の定量評価を実施した。また、ギャッジアップ40°の反応性自律神経活動も評価した。心理学的指標は状態・特性不安検査を使用した。生理学的指標については機械浴後に脈拍数のみ低下傾向を示し、心理学的指標については、状態不安が機械浴後に有意に低下した。また、実際の患者さんの言葉から患者さんへのリラックス効果を示唆する所見が得られた。がん患者の自律神経機能を主観的・客観的に検討し、治療中あるいは治療後長期経過後の自律神経機能異常を明らかにする。今回用いる自律神経機能測定器機は起立反射を用いて、従来の器機よりも正確な測定が行える利点がある。従って、今回の研究によりがん患者の自律神経機能障害の実態が明らかにされることにより、適切なケアプログラム、薬物療法の開発の端緒となる可能性が考えられる。また、入浴を根拠のある安楽の看護ケアとして位置づける予備的研究になりうる。緩和ケア病棟に入院中の患者24名の機械浴前後での生理学的指標として腋下温、脈拍数、血圧、心拍変動のスペクタル解析から副交感神経、交感神経、自律神経機能の基礎活動指標の定量評価を実施した。また、ギャッジアップ40°の反応性自律神経活動も評価しました。心理学的指標は状態・特性不安検査を使用した。結果、生理学的指標については機械浴後に脈拍数のみ低下傾向を示し、心理学的指標については、状態不安が機械浴後に有意に低下した。また、実際の患者の言葉を主観的・客観的情報としてまとめたところ、患者へのリラックス効果を示唆する情報が得られた。緩和ケア病棟の入院患者に対する機械浴は、生理学的には循環動態に大きな変動を及ぼさず、心理学的には不安が低下しリラックスな状態であったことから、安全で安楽な看護ケアであることが示唆された。今後も入院患者自身をはじめ、その家族、そして医師や看護師をはじめとするメディカルスタッフがより快適な入院環境を構築するために、機械浴というケアがより生理学的・心理学的な効果があり安全・安楽であることを科学的な実証するため、多角的な研究の継続が必要であると考えられえる。(1)抗がん剤の中でもタキサン類、白金製剤、ビンカアルカロイド、プロテアソーム阻害剤は末梢神経障害をきたしやすいことは良く知られている。 | KAKENHI-PROJECT-16K15903 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K15903 |
がん患者のR-R間隔心拍変動による自律神経機能解析からのケアプログラムの開発 | さまざまな癌種に対する化学療法レジメン毎に治療経過中の自律神経機能を詳細に検討した報告は認められない。従って、本研究により、抗がん剤治療中の自律神経障害の実態を明らかにし、、適切なケアプログラム・介入治療の新たな途を拓くための研究を展開する。(2)小児がん患者の治療成績は飛躍的に進歩し、長期生存患者が増加している。がんサーバイバーの自律神経機能障害を検討し、その詳細な実態を把握する。(3)化学療法誘発自律神経障害モデルを培養細胞を用いた系、ラットの系で確立する。臨床腫瘍学統計解析を行うデータがまだ揃っていないため。次年度に統計解析を行う予定である。 | KAKENHI-PROJECT-16K15903 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K15903 |
補償光学眼底撮影装置・黄斑部局所網膜電図を用いた網膜形態と視機能の関係の検討 | 本研究では、光干渉断層計、補償光学眼底撮影装置、黄斑部局所網膜電図などのさまざまな解析装置を用いることにより、眼底の微細な所見・変化を解析した。補償光学眼底撮影装置を用いた錐体細胞密度計測法について検討した。黄斑部局所網膜電図の解析では、各波の振幅の起源が錐体細胞密度と関係していることが判明した。網膜血管の観察では、offset modeという撮影方法により、より網膜動脈血管壁を明瞭に描出する方法、増殖糖尿病網膜症の網膜新生血管血流の描出について示した。網膜剥離術後の錐体細胞密度の回復、occult macular dystrophyでの錐体細胞密度の著しい低下についても明らかとなった。近年、光干渉断層計(以下OCT)が大きく進歩することにより網膜、硝子体、さらには脈絡膜の疾患の解明が進みつつある。しかし、OCTの解像度は縦方向に向上しても横方向の解像度の改善は原理的に難しく、さらなる進歩には大きな壁があった。しかし、最近になり横方向の解像度を飛躍的に向上させる補償光学システムを備えた眼底撮影装置が開発されたことにより、高精度な解析が横方向でも可能となってきた。本研究では、縦方向に高い解像度を持つOCTと、この横方向に高い解像度をもつ超高解像度補償光学眼底撮影装置を組み合わせて用いることにより、眼底の微細な所見・変化を3次元的に解析し、また、網膜機能解析検査である黄斑部局所網膜電図も併用し、超微細な形態的および機能的な面からさまざまな網脈絡膜疾患の病態を詳細に調べようとするものである。超高解像度補償光学眼底撮影装置で得られる所見は正常像ですらあまり分かっていないことも多ので、平成25年度には主に正常眼での撮影を多数行い正常所見の理解を深めた。主に、正常視細胞、網膜血管の正常データの集積を行った。また、視細胞密度測定ソフトが予定通り利用可能となったため、それを用いて密度解析を行った。この際、このソフトウェアの精度を調べる検討も行ったところ、視細胞検出の感度・特異度はそれぞれ100%には達せず、また、それらは視細胞密度により変化することが判明し、ソフトウェアの単純な使用については注意が必要なことがわかった。さらに、これらの基本的調査と同時に、網膜変性疾患についても撮影を行い、病態の検討を行った。近年、光干渉断層計(以下OCT)が大きく進歩することにより網膜、硝子体、さらには脈絡膜の疾患の解明が進みつつある。しかし、OCTの解像度は縦方向に向上しても横方向の解像度の改善は原理的に難しく、さらなる進歩には大きな壁があった。しかし、最近になり横方向の解像度を飛躍的に向上させる補償光学システムを備えた眼底撮影装置が開発されたことにより、高精度な解析が横方向でも可能となってきた。本研究では、縦方向に高い解像度を持つOCTと、この横方向に高い解像度をもつ超高解像度補償光学眼底撮影装置を組み合わせて用いることにより、眼底の微細な所見・変化を3次元的に解析し、また、網膜機能解析検査である黄斑部局所網膜電図も併用し、超微細な形態的および機能的な面からさまざまな網脈絡膜疾患の病態を詳細に調べようとするものである。平成26年度では、正常視細胞、網膜血管の正常データの集積を引き続き行った。それらの解析の結果、正常所見の理解を深めることができた。また、利用可能となった視細胞密度測定ソフトについては前年度に問題点が判明したため、補正を加えて解析を行った。また、本年度には血管径測定ソフトウェアも利用可能となったため、評価を行ったところ、得られる数値について補正が必要であることがわかった。さらに、これらの基本的調査と同時に、視細胞については網膜変性疾患、網膜剥離についても撮影を行い、病態の検討を行った。また、網膜血管については動脈硬化眼、糖尿病網膜症についても撮影、解析を行った。近年、光干渉断層計(以下OCT)が大きく進歩することにより網膜、硝子体、さらには脈絡膜の疾患の解明が進みつつある。しかし、OCTの解像度は縦方向に向上しても横方向の解像度の改善は原理的に難しく、さらなる進歩には大きな壁があった。本研究では、縦方向に高い解像度を持つOCTと、横方向に高い解像度をもつ超高解像度補償光学眼底撮影装置を組み合わせて用いることにより、眼底の微細な所見・変化を3次元的に解析し、また、網膜機能解析検査である黄斑部局所網膜電図も併用し、超微細な形態的および機能的な面からさまざまな網脈絡膜疾患の病態を詳細に調べた。方法論の検討では、正常眼の錐体細胞密度は中心窩に近づくほど高くなり、中心1.5度以内では解像度限界から測定不能になるが2度近辺では補正を加えることで再現性のある測定ができることが判明した。黄斑部局所網膜電図の解析では、a波b波OP波の各振幅は錐体細胞密度と相関していることが示され、網膜電図の振幅の起源が錐体細胞と関係していることが判明した。血管の観察では、offset modeを使うことで網膜血管壁が描出されるが、血管に垂直方向にconfocal apertureをshiftすることで最も血管壁のコントラストが高くなることがわかった。また、offset modeを使うことで増殖糖尿病網膜症の新生血管が描出されるが、治療後のこれらの新生血管の消退も観察可能であることも示された。網膜剥離眼では、網膜剥離術後に錐体細胞密度が回復していくが、術後12か月においても僚眼の錐体細胞密度にまでは回復しないことが判明した。 | KAKENHI-PROJECT-25462710 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25462710 |
補償光学眼底撮影装置・黄斑部局所網膜電図を用いた網膜形態と視機能の関係の検討 | Occult Macular Dystrophyでは錐体細胞密度が正常と比べてかなり低下していることも判明した。本研究では、光干渉断層計、補償光学眼底撮影装置、黄斑部局所網膜電図などのさまざまな解析装置を用いることにより、眼底の微細な所見・変化を解析した。補償光学眼底撮影装置を用いた錐体細胞密度計測法について検討した。黄斑部局所網膜電図の解析では、各波の振幅の起源が錐体細胞密度と関係していることが判明した。網膜血管の観察では、offset modeという撮影方法により、より網膜動脈血管壁を明瞭に描出する方法、増殖糖尿病網膜症の網膜新生血管血流の描出について示した。網膜剥離術後の錐体細胞密度の回復、occult macular dystrophyでの錐体細胞密度の著しい低下についても明らかとなった。正常データ、変性疾患について、それぞれ現在解析が行われている。また、他の疾患についてもデータの集積が進みつつある。眼科学今後、正常データの解析のまとめ、論文化を行っていく。また、変性疾患についても論文化を順次行っていく。その他の疾患については、さらにデータ集積、解析を継続し、解析が進めば論文化を順次行っていく。引き続き、網膜血管についても同様に解析を行っていく予定である。当初の計画通り、正常データについては集積が進み、現在解析が行われている。また、変性疾患についてもデータの集積が進みつつある。当初予定していた解析が新規解析ソフトウェアの導入に時間がかかり遅れたため、26年度の研究費に未使用額が生じた。今後、正常データの解析のまとめを行っていく。また、変性疾患についても集積を継続し、順次集積が進めば解析を順次行っていく。さらには、網膜血管についても同様に解析を行っていく予定である。27年度に遅れている解析を進め、当初予定の計画を進めていく。当初予定していた解析システムの構築が遅れたため、25年度の研究費に未使用額が生じた。26年度に遅れている解析システムの構築を完成させ、当初予定の計画を進めていく。 | KAKENHI-PROJECT-25462710 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25462710 |
野球投手ピッチング動作における各投法の動作特性の解明と評価指標の開発 | 本研究課題の目的を達成するため、2年度目以降の課題は、開始年度から2年度前半において確立された統一的な実験手法(3次元画像解析法)を用いて、各研究機関において実験を複数回実施し、データを継続的に蓄積することであった。具体的には、投法別の複数の投手のピッチング動作を2台のハイスピードビデオカメラを用いて3次元撮影した後、画像分析システムを用いて、身体計測点の2次元座標を手動により収集し、3次元化することであった。昨年度まで各研究機関において複数回の実験を終えており、大学および高校生投手計42名の画像データを3次元化し、体幹および投球腕の動きを基準に各投法を定量的に類型化するとともに、各種力学的パラメータを算出して、各投法間の比較検討を行った。これらの結果については、野球科学研究会第6回大会において発表し(下記【抄録】参照)、大会報告集として印刷中である。今年度においては、前年度と同様に複数回の投球実験を実施し、並行的にデータを蓄積して各投法の比較検討を行う予定である。【抄録】野球の投手のピッチング動作は、一般にオーバーハンドスロー、スリークォータースロー、サイドハンドスロー、アンダーハンドスローの4つの投法に分類される。本研究では、先行研究の知見や言説に基づき、体幹と投球腕の動きから、これらの4つの投法を定量的に定義し分類するとともに、各種力学的パラメータを算出し比較することで各投法の動作特性を明らかにすることを目的とした。異なる投法を使用する大学・高校野球部投手計34名を対象とした。各投手のピッチング動作を高速度カメラを用いて3次元画像解析し各種変量を算出した。リリース直前の上胴と投球腕の動きに基づき、各投法が定量的に類型化された。各種キネマティクス・キネティクス変量を算出し、各投法を比較した結果、各投法の動作特性に関する有益な示唆(利点・不利点、投球障害等)が得られた。実験は複数回実施済みであるが、手動でのデジタイズにより、データの3次元化がやや遅れている。これまで収録されたピッチング画像データのデジタイズを早急に済ませ、精力的にデータを蓄積していく予定である。今年度においては、引き続き、各研究機関において精力的に実験を複数回実施し、データの蓄積を加速させることである。なお、アンダーハンドやサイドハンドスローを投じる被験者の確保に難しいことから、昨年度と同様に、これらの投法を過去において習得し、現在オーバーハンドやスリークォータースローへ投法を変更した被験者には、アンダーハンドやサイドハンドスローを用いた試技を実施したもらう予定にしている。本研究課題の目的を達成するため、前年度の課題は、各研究機関において、野球投手ピッチング動作における各投法を、民生用ハイスピードビデオカメラを使用して3次元画像解析を行うための統一的で簡便な計測法の仕様とそれに付随する計測上の問題を解決した。具体的には、投手ピッチング動作の3次元画像分析のために、民生用のCMOSイメージセンサーカメラが使用されるが、算出されるバイオメカニクス変量の算出精度を保証するため、このカメラに特有の"画像ー時間ひずみ"現象を補正するために必要な垂直ブランキング期間を求めた。また、フィールドでの撮影に伴うキャリブレーションを簡便に行うために組み立て型の「スポーク型較正器」を2台製作した。これらの研究については2件の論文(仙台大学紀要48:53-58, 2017;仙台大学紀要48:59-67, 2017)と1件の研究会大会報告集(日本野球科学研究会第4回大会)に掲載された。また、学会発表1件(日本野球科学研究会第4回大会)を行った。概ね順調に進んでいる。前年度、各研究機関において、野球投手ピッチング動作における各投法を、民生用のハイスピードビデオカメラを使用して3次元画像解析を行うための統一的な計測方法とそれに付随する計測上の問題を解決した。また、研究代表者が所属する大学において、計測手順や方法の統一を図るため、大学投手を対象にピッチング動作の3次元動作実験を行った。本研究課題の目的を達成するため、前年度の課題は、前々年度において確立された統一的な実験手法(3次元画像解析法)を用いて、各研究機関において実験を複数回実施し、データを蓄積することであった。具体的には、投法別の複数の投手のピッチング動作を2台のハイスピードビデオカメラを用いて3次元撮影した後、画像分析システムを用いて、身体計測点の2次元座標を手動により収集し、3次元化することであった。なお、3次元化されたデータを用いて、ハイスピードカメラの画像ー時間ひずみの誤差を確認するため、補正データと非補正データを用いて力学パラメータ(速度、角速度、力、トルクなど)を算出し比較したところ、誤差を確認した。各研究機関において統一的な実験を実施するため、前年度において「研究計画実施要綱」を作成したが、幾つかの項目において追加修正や試技数の見直し、実験ミスなどもあり、本実験の実施を円滑に推進出来なかった。また、1チーム内のアンダーハンドやサイドハンドスローで投じる被験者が若干名であり、その確保が難しい状況であった。本研究課題の目的を達成するため、2年度目以降の課題は、開始年度から2年度前半において確立された統一的な実験手法(3次元画像解析法)を用いて、各研究機関において実験を複数回実施し、データを継続的に蓄積することであった。 | KAKENHI-PROJECT-16H03235 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H03235 |
野球投手ピッチング動作における各投法の動作特性の解明と評価指標の開発 | 具体的には、投法別の複数の投手のピッチング動作を2台のハイスピードビデオカメラを用いて3次元撮影した後、画像分析システムを用いて、身体計測点の2次元座標を手動により収集し、3次元化することであった。昨年度まで各研究機関において複数回の実験を終えており、大学および高校生投手計42名の画像データを3次元化し、体幹および投球腕の動きを基準に各投法を定量的に類型化するとともに、各種力学的パラメータを算出して、各投法間の比較検討を行った。これらの結果については、野球科学研究会第6回大会において発表し(下記【抄録】参照)、大会報告集として印刷中である。今年度においては、前年度と同様に複数回の投球実験を実施し、並行的にデータを蓄積して各投法の比較検討を行う予定である。【抄録】野球の投手のピッチング動作は、一般にオーバーハンドスロー、スリークォータースロー、サイドハンドスロー、アンダーハンドスローの4つの投法に分類される。本研究では、先行研究の知見や言説に基づき、体幹と投球腕の動きから、これらの4つの投法を定量的に定義し分類するとともに、各種力学的パラメータを算出し比較することで各投法の動作特性を明らかにすることを目的とした。異なる投法を使用する大学・高校野球部投手計34名を対象とした。各投手のピッチング動作を高速度カメラを用いて3次元画像解析し各種変量を算出した。リリース直前の上胴と投球腕の動きに基づき、各投法が定量的に類型化された。各種キネマティクス・キネティクス変量を算出し、各投法を比較した結果、各投法の動作特性に関する有益な示唆(利点・不利点、投球障害等)が得られた。実験は複数回実施済みであるが、手動でのデジタイズにより、データの3次元化がやや遅れている。これまで収録されたピッチング画像データのデジタイズを早急に済ませ、精力的にデータを蓄積していく予定である。前年度において、各研究機関での実験の統一化を図るため、3次元画像解析法で用いる「スポーク型較正器」を2台製作した。また、民生用ハイスピードビデオカメラを使用するため、このカメラに固有の“画像ー時間ひずみ"現象を補正するために必要な垂直ブランキング期間を求めた。前年度において、統一的な実験環境を整備したので、本年度においては「研究計画実施要綱」に則って、本格的にそれぞれの研究機関において実験を実施していく予定である。具体的には、大学・高校の野球部、社会人の野球チームなどに研究協力を依頼し、各投法に習熟している複数の投手のピッチング動作を2台のハイスピードビデオカメラとスポーク型較正器を用いて3次元動作実験を実施し、3次元逆動力学解析を行うための原データを収集する予定である。今年度においては、引き続き、各研究機関において精力的に実験を複数回実施し、データの蓄積を加速させることである。なお、アンダーハンドやサイドハンドスローを投じる被験者の確保に難しいことから、これらの投法を過去において習得し、現在オーバーハンドやスリークォータースローへ投法を変更した被験者には、アンダーハンドやサイドハンドスローを用いた試技を実施したもらう予定にしている。今年度においては、引き続き、各研究機関において精力的に実験を複数回実施し、データの蓄積を加速させることである。 | KAKENHI-PROJECT-16H03235 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H03235 |
EUにおける先行統合制度の導入と展開 | 4か年の本研究計画は、次の4つの目的からなる。第1に、EUにおいて導入された先行統合制度がどのような概容であり、かつ、どのような過程を経て導入されてきたのかを明らかにすることである。第2に、導入された先行統合制度がどのように運用されているか、初めての運用事例である国際結婚の解消に関する取決めに着目し、その言説と論点を分析することである。第3に、EUが先行統合制度を運用した2番目の事例であるといえる共通特許(「統一特許」と呼ばれる)に焦点を当てて、その言説と論点を分析することである。第4に、先行統合制度が国家間共同体としてのEUにもたらす影響について考察を加えながら、上記の作業に基づいて総括を行なうことである。第1の目的は、平27年度に遂行した。第2および第3の目的は、平28年度から29年度にかけて遂行した。4年目に当たる平30年度は、第4の目的のために、海外出張および国内出張をそれぞれ一回行なった(海外出張:オーストリア、スロヴェニアおよびクロアチア、平30年8月27日9月6日。国内出張:京都、平成31年3月4日)。研究実績の成果の一部は、単著『EU共同体のゆくえー贈与・価値・先行統合』(ミネルヴァ書房)において公表済みである(第9章「先行統合の制度整備ー「より緊密な協力」の導入ー)167-185ページ、第10章「越境協力・家族法・特許保護ー「より緊密な協力」の実行へー」186-204ページ)。4か年の本研究計画は、次の4つの目的からなる。IEUにおける先行統合制度の概容とその導入過程を解明すること(平27-28年度)、IIEUにおける先行統合制度の運用事例(国際結婚の解消に関する取決め)と言説を分析すること(同上)、IIIEUにおける先行統合制度の運用事例(統一特許制度の定立)と言説を分析すること(平28-29年度)、IV先行統合制度が国家間共同体としてのEUにもたらす影響について考察しつつ(平30年度)、これらの作業に基づいて総括を行なう(同)。初年度にあたる平成27年度は、これらの中のIおよびIIについて着手するものであり、以下の実績となった。まず、文献の収集と研究について、政治学関係図書、国際政治学関係図書、EU研究関係図書を20冊ほど購入し、基本的な動向把握に努めた。データベースについては、当初の計画通り、本務校(北九州市立大学)の学術情報予算をもってこれに充てている。さらに、平成27年9月には海外(ブルガリア)に出張し、現地の政策決定関係者および専門家から聴取を行なった。平成28年2月には京都で開かれたEU研究会に国内出張し、EUの現状について意見交換を行なった。当初は経費として計上しなかったものの、図書の印刷保管用にプリンタ用インクおよびA4ファイル等が必要となったために消耗品として購入した。他方、経費として計上していた日本EU学会(大阪)ならびに日本国際政治学会(仙台)への出張については、本務校の個人研究費を充てることによって対応した。上述した4つの研究目的のうち、IおよびIIについては中間報告を兼ねた研究論文を執筆中である。平成28年度中の完成と発表を目指したい。4か年の本研究計画は、次の4つの目的からなる。IEUにおける先行統合制度の概容とその導入過程を解明すること(平27-28年度)、IIEUにおける先行統合制度の運用事例(国際結婚の解消に関する取決め)と言説を分析すること(同上)、IIIEUにおける先行統合制度の運用事例(統一特許制度の定立)と言説を分析すること(平28-29年度)、IV先行統合制度が国家間共同体としてのEUにもたらす影響について考察しつつ(平30年度)、これらの作業に基づいて総括を行なう(同)。2年目に当たる平28年度は、これらの中のIについて単著論文を発表した(山本直「EUにおける先行統合の制度整備ー『より緊密な協力』の実行へー」『北九州市立大学外国語学部紀要』第144号、2017年1月、51-74頁)。IIおよびIIIについては、平28年5月に海外(フランス、ドイツ)に出張し、現地にて聴取および情報収集を行なった。平29年3月には新潟に国内出張し、敬和学園大学で開かれた共同勉強会で先行統合制度の運用状況を報告した。上述した4つの研究目的のうち、IIおよびIIIについて研究論文を執筆中である。平成29年度中の完成と発表を目指したい。4か年の本研究計画は、次の4つの目的からなる。第1に、EUにおいて導入された先行統合制度がどのような概容であり、かつ、どのような過程を経て導入されてきたのかを明らかにすることである。第2に、導入された先行統合制度がどのように運用されているか、初めての運用事例である国際結婚の解消に関する取決めに着目し、その言説と論点を分析することである。第3に、EUが先行統合制度を運用した2番目の事例であるといえる共通特許(「統一特許」と呼ばれる)に焦点を当てて、その言説と論点を分析することである。(平28-29年度)第4に、先行統合制度が国家間共同体としてのEUにもたらす影響について考察を加えながら、上記の作業に基づいて総括を行なうことである。第1の目的は、平27年度から28年度にかけて遂行した。第2の目的についても同様である。 | KAKENHI-PROJECT-15K03327 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K03327 |
EUにおける先行統合制度の導入と展開 | 3年目に当たる平29年度は、第3の目的のために、外国ならびに国内にそれぞれ一回の出張を行なった(外国:イタリアのローマとフィレンツェ、平29年10月28日11月7日。国内:京都、平成30年3月23日)。京都への出張では代表者が研究報告を行なった。研究実績の成果の一部は、平成30年3月に発行した単著『EU共同体のゆくえー贈与・価値・先行統合』(ミネルヴァ書房)において公表済みである。上記「研究実績の概要」で触れたとおり、平成30年3月に発行した単著『EU共同体のゆくえー贈与・価値・先行統合』(ミネルヴァ書房)において研究成果の一部を公表した。研究課題は引き続き最終年度である平30年度にも取り組む。4か年の本研究計画は、次の4つの目的からなる。第1に、EUにおいて導入された先行統合制度がどのような概容であり、かつ、どのような過程を経て導入されてきたのかを明らかにすることである。第2に、導入された先行統合制度がどのように運用されているか、初めての運用事例である国際結婚の解消に関する取決めに着目し、その言説と論点を分析することである。第3に、EUが先行統合制度を運用した2番目の事例であるといえる共通特許(「統一特許」と呼ばれる)に焦点を当てて、その言説と論点を分析することである。第4に、先行統合制度が国家間共同体としてのEUにもたらす影響について考察を加えながら、上記の作業に基づいて総括を行なうことである。第1の目的は、平27年度に遂行した。第2および第3の目的は、平28年度から29年度にかけて遂行した。4年目に当たる平30年度は、第4の目的のために、海外出張および国内出張をそれぞれ一回行なった(海外出張:オーストリア、スロヴェニアおよびクロアチア、平30年8月27日9月6日。国内出張:京都、平成31年3月4日)。研究実績の成果の一部は、単著『EU共同体のゆくえー贈与・価値・先行統合』(ミネルヴァ書房)において公表済みである(第9章「先行統合の制度整備ー「より緊密な協力」の導入ー)167-185ページ、第10章「越境協力・家族法・特許保護ー「より緊密な協力」の実行へー」186-204ページ)。上述のとおり、おおむね順調に進展している。平成28年度も、当初の研究計画にできるだけ沿って進めることにしたい。上述のとおり、おおむね順調に進展している。平成29年度も、当初の研究計画にできるだけ沿って進めることにしたい。平30年度が研究の最終年度であることに鑑み、研究成果を所属学会にて報告のうえ(現在応募中)、学会誌または紀要で論文として公表する予定である。本研究のすべての目的を遂行するうえで、さらに一度海外で現地調査を行なう必要が生じたため。 | KAKENHI-PROJECT-15K03327 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K03327 |
非定常操作下での触媒反応 | 本研究では、担持白金触媒上でのNO-CO反応において,触媒表面吸着種の過渡応答を観察した。触媒は60/80meshに粉砕したアルミナ(JRC-ALO-4)に塩化白金酸を含浸し,焼成・還元して用いた.担持率は1wt%とした.本触媒を本年度申請した拡散反射測定用高温FT-IRチャンバーにセットし,希釈したNO,COを導入し,吸着種(特にNCO種)の経時変化を観察した.また,吸着種の状態が定常的になった時点でCOの供給を停止し,各吸着種の過渡応答を観察した.標準条件はNO:500ppm,CO:2500ppm,He希釈とし,温度は200°Cとした.NO-CO反応が定常となった後,COの供給を停止すると,NCO種の急激な増加が一瞬見られ,その後減少した.その極大はCO停止後数分であった.このNO種も極大を示すように変化したが,その極大値はCO停止後数十分であった.CO種は単調に減少した.興味深い点は,NCOの生成は定常では非常に遅いのに,過渡応答時には非常に速いということである.以上の現象は今のところ不明な点は残されるが,次のような説明が可能である.(1)定常条件では,過剰なCOが優先的に表面を覆ってしまい,NOがほとんど吸着できない.そのため,NO種は観察されず,また吸着NOと吸着COの2分子反応によって生成すると思われるNCO種の生成は遅い.(2)COの供給を停止すると,吸着していたCOが徐々に減少し,NOが吸着できるようになる.その間,NOもCOも表面に同時に存在するので,NCOの生成が起こる.観察されたNCOの生成は非常に速いので,本来のNCO種の生成反応は速いと考えられる.定常条件下でNCO種の生成が遅いのは反応速度定数が小さいためではなく,原料となるNO種の表面濃度が低いためだと考えられる.本研究では、担持白金触媒上でのNO-CO反応において,触媒表面吸着種の過渡応答を観察した。触媒は60/80meshに粉砕したアルミナ(JRC-ALO-4)に塩化白金酸を含浸し,焼成・還元して用いた.担持率は1wt%とした.本触媒を本年度申請した拡散反射測定用高温FT-IRチャンバーにセットし,希釈したNO,COを導入し,吸着種(特にNCO種)の経時変化を観察した.また,吸着種の状態が定常的になった時点でCOの供給を停止し,各吸着種の過渡応答を観察した.標準条件はNO:500ppm,CO:2500ppm,He希釈とし,温度は200°Cとした.NO-CO反応が定常となった後,COの供給を停止すると,NCO種の急激な増加が一瞬見られ,その後減少した.その極大はCO停止後数分であった.このNO種も極大を示すように変化したが,その極大値はCO停止後数十分であった.CO種は単調に減少した.興味深い点は,NCOの生成は定常では非常に遅いのに,過渡応答時には非常に速いということである.以上の現象は今のところ不明な点は残されるが,次のような説明が可能である.(1)定常条件では,過剰なCOが優先的に表面を覆ってしまい,NOがほとんど吸着できない.そのため,NO種は観察されず,また吸着NOと吸着COの2分子反応によって生成すると思われるNCO種の生成は遅い.(2)COの供給を停止すると,吸着していたCOが徐々に減少し,NOが吸着できるようになる.その間,NOもCOも表面に同時に存在するので,NCOの生成が起こる.観察されたNCOの生成は非常に速いので,本来のNCO種の生成反応は速いと考えられる.定常条件下でNCO種の生成が遅いのは反応速度定数が小さいためではなく,原料となるNO種の表面濃度が低いためだと考えられる. | KAKENHI-PROJECT-09218225 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09218225 |
化学的スプライシングによる機能性核酸および細胞機能の制御 | 特定の化学的、物理的刺激により、互いに結合する分子構造をDNA骨格中に複数個導入する。このDNAは、刺激によりこの箇所同士が結合することで全体の“かたち"(グローバルな構造)を劇的に変化させる。一次構造では互いに離れた鎖中の2カ所を繋ぎ留めてΩ型の構造を作ることができれば、それは連結箇所の外側の2つのシークエンスを繋ぎ合わせたことになり、これを(酵素を使わない)DNA“塩基配列の化学的編集"、あるいは“化学的スプライシング"とみなすことができる。ターピリジン、およびアントラセン構造をDNAに組み込み、それぞれ金属錯体形成、および光二量化反応によりΩ構造を形成させることに成功した。DNAコンジュゲートの合成非天然の構造をDNA骨格中に組込むためには、まずそれらの構造を基体とするアミダイト試薬を合成する必要がある。terpy2DNAの合成は既に成功しており、DNAzymeの活性制御に関する基礎的な検討を行っていたが、シークエンスを変更して追加合成を行った。ant2DNAについてはアントラセンをアミダイト化して自動合成装置にて合成した。いずれのコンジュゲートに関しても導入するターピリジンやアントラセンをDNA部分と繋ぐリンカーの長さの異なるいくつかのものを合成した。常法にしたがって逆相HPLCで精製し、MALDI-TOF MSで同定した。Ω型構造形成に関する検討terpy2DNAについては、金属イオン添加前後、相補鎖との間で形成される2本鎖構造の熱安定性の向上をUV融解実験により確認することができた。このことは、terpy2DNAが金属イオンとの相互作用によりΩ型となり、それによって相補鎖との2本鎖形成が促進されたことを示唆している。これを金属イオンをトリガーとする鎖交換反応に利用できないか検討した。結果として金属イオンにより鎖交換反応を進行させることはできなかった。同じ長さ、塩基配列のステムを有する未修飾2本鎖DNAと比較すると、金属イオン存在下でさえもterpy2DNAとその相補鎖の2本鎖の熱安定性はかなり低いためにそもそも鎖交換が起こりにくく、さらにターピリジン部分で2本鎖構造の連続性が切れてしまうことが原因と考えられた。ant2DNAについては、光照射によって分子内でアントラセンの光二量化反応が進行してΩ型構造をとることを確認することができた。二量化反応はアントラセンの外側に相補的な連続配列存在下で著しく加速され、リンカー長に依存した。ループ部分と相補的な配列を共存させると二量化はほぼ完全に阻害されることが分かった。金属イオンとの錯生成や、光二量化を利用したΩ型構造形成に伴うハイブリダイゼーション制御の可能性の如何は、コンジュゲート分子の構造設計に大きく依存すると考えていた。上記、研究実績に記した通り金属イオン共存下、terpy2DNAがΩ型構造を形成してもDNAの鎖交換反応を有意に加速することができなかった。このことは、DNAのハイブリダイゼーションは基本骨格上にレギュラーに配置された核酸塩基の協同的水素結合が多大に寄与している。すなわち2本鎖形成には構造の連続性が極めて重要であり、その意味で骨格中に組み込んだ[M(terpy)2]n+の構造は連続性を大きく損なう結果になったことを意味している。リンカー長の調整、[M(terpy)2]n+の両側のDNAの長さのバランスを考慮してΩ型構造形成により2本鎖が熱力学的により安定化できる構造を模索することができると考えている。ant2DNAに関しては、現在までは予定通り実験がすすみリーズナブルな結果を得ている。すなわち、Ω型構造形成はアントラセンとDNAを結ぶリンカー長に影響を受け、光照射の際にant2DNAが1本鎖構造であったか、あるいは、アントラセンの外側、あるいはループ部分と相補鎖との2本鎖構造を形成していたかで反応をオンオフ制御することができる。この性質を利用すると当初計画していた光による遺伝子発現の制御への応用が可能になる。DNAコンジュゲートの合成非天然の構造をDNA骨格中に組込むためには、まずそれらの構造を基体とするアミダイト試薬を合成する必要がある。ターピリジンを骨格とするアミダイト試薬を合成し、前年度までにterpy2DNAの合成に成功した。DNAzymeの活性制御に関する基礎的な検討を行っていたが、シークエンスを変更して合成を行った。ant2DNAについてはアントラセンをアミダイト化して自動合成装置にて合成した。いずれのコンジュゲートに関しても導入するターピリジンやアントラセンをDNA部分と繋ぐリンカーの長さの異なるいくつかのものを合成した。常法にしたがって逆相HPLCで精製し、MALDI-TOF MSで同定した。Ω型構造形成に関する検討terpy2DNAについては、UV融解実験によりΩ型形成に伴うその基本性能の変化を確認することができた。本年度はこれを金属イオンをトリガーとするペルオキシダーゼ活性を持つDNAzymeの活性制御を行った。いくつかの遷移金属イオンに関して検討したが、中でもCu2+やNi2+を添加した際に著しい活性の増大を確認することができた。また、EDTAの添加、およびターピリジンに挟まれたシークエンスに相補的なDNAを添加した際にはその活性は完全に失われることもわかった。これはターピリジンの錯生成能を反映したものであり、意図したとおりDNAの構造を制御してDNAzymeの活性をコントロールできたことを示している。ant2DNAについては、光照射によって分子内でアントラセンの光二量化反応が進行してΩ型構造をとることを確認することができた。 | KAKENHI-PROJECT-15K13749 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K13749 |
化学的スプライシングによる機能性核酸および細胞機能の制御 | リンカー長に依存することがわかったので異なるリンカー長をもつアントラセンアミダイトを合成し同時に系統的にその反応性を評価した。計画していた細胞系への適用を年度内に行うことができなかったが、これは研究の遅れではなく、terpy2DNAを用いたDNAzymeの系が当初考えていたよりも面白い性質を示したために金属イオンの範囲を広げて検討を行ったためである。terpy2DNAのΩ型構造形成を利用して塩基配列を編集することに成功した。すなわち、遷移金属イオンとの作成により骨格中に導入した二つのターピリジンユニットに挟まれた部位をバイパスして外側に位置する二つの塩基配列を連結することができた。これは、可逆的な化学的スプライシングとみることもできる。これまでになかった全く新しい概念に基づく手法であるため、この研究成果は非常に注目され、幾つかの新聞に取り上げられた。ant2DNAに関しては、現在までは予定通り実験が進みリーズナブルな結果を得ている。すなわち、Ω型構造形成はアントラセンとDNAを結ぶリンカー長に影響を受け、光照射の際にant2DNAが1本鎖構造であったか、あるいは、アントラセンの外側、あるいはループ部分と相補鎖との2本鎖構造を形成していたかで反応をオンオフ制御することができる。金属イオンを刺激としたスプライシングに関しては、ターピリジンを骨格中に組み込んだDNAコンジュゲートterpy2DNAを用いて、in vitroでDNAzymeの活性制御に成功した。29年度は、アントラセンの光二量化反応を利用した人工的な光スプライシングに関する研究を行なった。アントラセンをDNA骨格の互いに離れた箇所に2つ導入したDNAコンジュゲートant2DNAを合成した。アントラセンとDNAを繋ぐリンカー長に関して幾つかのバリエーションを準備した。両アントラセンの外側の配列に対して相補的なタンデムDNA存在下、ant2DNAに366 nmの光を照射し、HPLCで分離・分析した。その結果、2-4成分の新たな生成物が確認できた。これらすべての生成物は、同じ分子量を示し、また312 nmの光照射により反応物であるant2DNAに戻ることなどから、すべて期待した分子内でアントラセンが二量化して生じたΩ型DNAと考えられる。観察された複数の生成物は、アントラセン二量体の構造異性に由来する異性体と考えられる。C2、C4、C6リンカーを有するant2DNAの反応性を比較したところC6の反応がもっとも早かった。Ω型DNAを生じるこの反応は、末端修飾体の環化反応と比べると反応は遅く、鎖の中に挿入したアントラセン同士のスタッキングが前後のDNA構造によりかなり規制を受けていることを示唆している。C2やC4の短いリンカー長だと二つのアントラセンが二量化するために有効なスタッキングが生じ難いと考えられる。さらに、反応性を高めるためにはさらにリンカー長を伸ばす、あるいはアントラセンの置換位置を現在の2,6位から1,4位に変更するなどの方法が有効かもしれない。 | KAKENHI-PROJECT-15K13749 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K13749 |
衛星通信回線における降雨減衰の継続時間特性とデータ伝送効率に関する研究 | 大阪電気通信大学(寝屋川市)構内の衛星通信実験局で過去15年間以上にわたり連続測定を行ったCS-2、CS-3、およびN-StarのKa帯ビーコン波(19.45GHz、右旋偏波、仰角49.5°)を用いて、各種前線通過時の降雨減衰の累積時間と継続時間特性を詳しく調べた。その結果、4dB以下のしきい値では、温暖・寒冷・閉塞前線、5dB以上のしきい値では、停滞前線や夕立・台風による降雨時に発生する減衰がより大きな累積時間率を占めることが分った。また、継続時間分布は310dB程度のしきい値に対し、寒冷前線、停滞前線、夕立・台風の順に大きくなり、しきい値が低い場合には温暖前線が占める時間率が大きくなり、しきい値が高くなると停滞前線南側の影響が大きくなることが示された。同様に過去13年間にわたって連続測定されたKu帯放送衛星電波(11.84GHz、右旋偏波、仰角41.4°)を用い、各種前線通過時におけるKa、Ku両周波数帯間の降雨減衰特性の比較検討を行なった。その結果、減衰比の年変化については、梅雨期に停滞前線上を低気圧が通過する際に発生する降雨では減衰比が大きいのに対し、秋雨期の停滞前線の南側で発生する降雨では夏季の夕立と同様減衰比が小さいことが分った。この変化は主として雨滴粒径分布の差異で生じ、前者は霧雨型、後者は雷雨型との対応が示された。さらに、過去4年間(1995-1998)測定されたKu帯JCSATの上下回線(14/12GHz)の降雨減衰量を用い、軌道位置110°(BS)、132°(N-Star)、および150°(JCSAT)の各衛星間でサテライトダイバシティを行なった際に期待される不稼働率の改善度について数値的に検討を行なった。計算は降雨事象毎の雨滴粒径分布に応じて減衰係数を変換し、衛星間の測定値をKa帯(19.45GHz)あるいはKu帯(11.84GHz)に換算することにより行なった。その結果、Ka帯では1020dB(Ku帯では310dB)程度の減衰量に対し、約2050%の不稼動率の改善が見込めることが分った。大阪電気通信大学(寝屋川市)構内の衛星通信実験局で過去15年間以上にわたり連続測定を行ったCS-2、CS-3、およびN-StarのKa帯ビーコン波(19.45GHz、右旋偏波、仰角49.5°)を用いて、各種前線通過時の降雨減衰の累積時間と継続時間特性を詳しく調べた。その結果、4dB以下のしきい値では、温暖・寒冷・閉塞前線、5dB以上のしきい値では、停滞前線や夕立・台風による降雨時に発生する減衰がより大きな累積時間率を占めることが分った。また、継続時間分布は310dB程度のしきい値に対し、寒冷前線、停滞前線、夕立・台風の順に大きくなり、しきい値が低い場合には温暖前線が占める時間率が大きくなり、しきい値が高くなると停滞前線南側の影響が大きくなることが示された。同様に過去13年間にわたって連続測定されたKu帯放送衛星電波(11.84GHz、右旋偏波、仰角41.4°)を用い、各種前線通過時におけるKa、Ku両周波数帯間の降雨減衰特性の比較検討を行なった。その結果、減衰比の年変化については、梅雨期に停滞前線上を低気圧が通過する際に発生する降雨では減衰比が大きいのに対し、秋雨期の停滞前線の南側で発生する降雨では夏季の夕立と同様減衰比が小さいことが分った。この変化は主として雨滴粒径分布の差異で生じ、前者は霧雨型、後者は雷雨型との対応が示された。さらに、過去4年間(1995-1998)測定されたKu帯JCSATの上下回線(14/12GHz)の降雨減衰量を用い、軌道位置110°(BS)、132°(N-Star)、および150°(JCSAT)の各衛星間でサテライトダイバシティを行なった際に期待される不稼働率の改善度について数値的に検討を行なった。計算は降雨事象毎の雨滴粒径分布に応じて減衰係数を変換し、衛星間の測定値をKa帯(19.45GHz)あるいはKu帯(11.84GHz)に換算することにより行なった。その結果、Ka帯では1020dB(Ku帯では310dB)程度の減衰量に対し、約2050%の不稼動率の改善が見込めることが分った。近年衛星通信回線の利用拡大に伴い、マイクロは帯よりさらに周波数の高い準ミリ波帯やミリ波帯の電波まで実用化されるようになってきたが、まだ周波数20GHzのKa帯以上の電波の大気中の伝搬特性は十分把握されておらず、降雨減衰や交差偏波識別度(XPD)劣化特性に関してはさらにその特性を詳しく検討する必要がある。本研究では、降雨減衰特性の時間率や累積分布確率による長期統計をまず解析した上で、実測データの時系列変動の相関時間等の特徴に注目し、降雨時に観測点上空あるいは近傍を通過した前線の種類や通過速度と比較することにより、雨域の空間スケールの推定を行った。そして、より現実的な降雨減衰の持続時間や降雨発生の時間間隔等の特徴的な値を導きだし、温暖、寒冷、閉塞、停滞前線、あるいは前線の北側、南側、台風の影響等について、各種前線に対するより具体的な位置関係について詳しく検討した。 | KAKENHI-PROJECT-12650403 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12650403 |
衛星通信回線における降雨減衰の継続時間特性とデータ伝送効率に関する研究 | その結果、継続時間分布に関しては、510dB以上の大きな減衰量は従来言われてきたように対流性降雨の影響が主たる原因であり、むしろ前線構造と係わりの薄い夏季の対流雲や雷雨、いわゆる夕立やスコール等亜熱帯性の降雨の影響が大きいことが示された。これに対し今後準ミリ波帯のVSAT等の運用で特に問題となる35dBの低減衰時においては、従来のKu帯以下の衛星通信回線ではあまり問題とされなかった温暖前線等による層状性降雨も大きな継続時間率を占めることが示された。また、雨域の空間スケールに関しては、概して前線の北側は1520kmであるのに対し、南側では1015km程度の特徴的な間隔で雨域が平均的に連続して通過する傾向があることが分かり、この傾向は温暖・寒冷前線のみならず、停滞前線にも概して当てはまることが示された。大阪電気通信大学(寝屋川市)構内の衛星通信実験局で過去15年間以上にわたり連続測定を行ったCS-2、CS-3、およびN-StarのKa帯ビーコン波(19.45GHz、右旋偏波、仰角49.5°)を用いて、各種前線通過時の降雨減衰の累積時間と継続時間特性を詳しく調べた。その結果、4dB以下のしきい値では、温暖・寒冷・閉塞前線、5dB以上のしきい値では停滞前線や夕立・台風による降雨時に発生する減衰がより大きな累積時間率を占めることが分った。また、継続時間分布は310dB程度のしきい値に対し、寒冷前線、停滞前線、夕立・台風の順に大きくなり、しきい値が低い場合には温暖前線が占める時間率が大きくなり、しきい値が高くなると停滞前線南側の影響が大きくなることが示された。同様に過去13年間にわたって連続測定されたKu帯放送衛星電波(11.84GHz、右旋偏波、仰角41.4°)を用い、各種前線通過時におけるKa、Ku両周波数帯間の降雨減衰特性の比較検討を行なった。その結果、減衰比の年変化については、梅雨期に停滞前線上を低気圧が通過する際に発生する降雨では減衰比が大きいのに対し、秋雨期の停滞前線の南側で発生する降雨では夏季の夕立と同様減衰比が小さいことが分った。この変化は主として雨滴粒径分布の差異で生じ、前者は霧雨型、後者は雷雨型との対応が示された。さらに、過去4年間(1995-1998)測定されたKu帯JCSATの上下回線(14/12GHz)の降雨減衰量を用い、軌道位置110°(BS)、132°(N-Star)、および150°(JCSAT)の各衛星間でサテライトダイバシテイを行なった際に期待される不稼働率の改善度について数値的に検討を行なった。計算は降雨事象毎の雨滴粒径分布に応じて減衰係数を変換し、衛星間の測定値をKa帯(19.45GHz)あるいはKu帯(11.84GHz)に換算することにより行なった。その結果、Ka帯では1020dB(Ku帯では310dB)程度の減衰量に対し、約2050%の不稼動率の改善が見込めることが分った。 | KAKENHI-PROJECT-12650403 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12650403 |
3次元形態計測による硬組織の細胞生物学的研究 | 本研究では、まず非脱灰硬組織試料作製のための基本設備(薄切器、研磨器、ソフッテクス)と本研究の中核機種である共焦点レーザー顕微鏡に励起波長、マイクロボクセル、形態計測システムを追加することにより、3次元的組織・細胞学的形態計測法の開発と、個体レベルから細胞レベルに及ぶ硬組織代謝の形態変化を定量的に捉えることを目標に、以下の研究を行った。(1)顎骨の老化現象など骨粗鬆症を主体とした骨組織の生理的・病的組織変化を共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて検索し、その画像データをミクロ画像情報処理システムによりディジタル化して集積した。(2)ファイリングされたディジタル画像データを用いて、顎骨形態計測定量化解析ソフトの開発と定量解析後のデータ処理システムの開発を試み、以下の解析項目についてLuzex-F(ニレコ社製)画像解析装置にて半自動解析を可能にした。:(1)全骨梁面(2)全形成面(3)活性形成面(4)全吸収面(5)活性吸収面(6)全骨量(7)全類骨量(8)全骨組織量(9)線維組織量(10)1重標識面(11)2重標識面(12)2重標識面(13)類骨層幅(14)均骨梁単位幅(15)休止面(16)。低石灰化骨量(3)レーザー顕微鏡から連続的に取り込んだテトラサイクリン・カルセイン標識未脱灰骨標本の光学的切片情報を、本システム7用い解析するとともに、その連続断面画像情報をmicrovoxel (INDEC Systems,Inc.)およびLuzex-III(ニレコ社製)にて立体構築を試みた。その結果、microvoxelを用いることにより、テトラサイクリン・カルセインで標識されている領域を研磨切片の表面から深さ方向100μまで立体的に再構築するとともに、その体積をもとめることが可能となった。(4)surface modelingソフトであるLuzex-III(ニレコ社製)を用いることにより、破骨細胞や骨芽細胞などの細胞成分と標識骨面などを同時に立体的に構築することが可能であることが示された。これらの方法を用い、(1)ラット下顎頭の加齢変化に関する形態学的、免疫組織化学的研究(2)ラット歯槽骨における加齢変化に関する組織学的、組織化学的研究(3)骨形態計測法による副甲状腺ホルモン(PTH)の骨代謝に対する作用の検討-ラットにおける骨の部位による効果の比較-(4)卵巣摘出ラットにおける骨梁減少様式に関する微細構造学的研究:等の骨代謝基礎的研究を行い学会論文等にて発表した。本研究では、まず非脱灰硬組織試料作製のための基本設備(薄切器、研磨器、ソフッテクス)と本研究の中核機種である共焦点レーザー顕微鏡に励起波長、マイクロボクセル、形態計測システムを追加することにより、3次元的組織・細胞学的形態計測法の開発と、個体レベルから細胞レベルに及ぶ硬組織代謝の形態変化を定量的に捉えることを目標に、以下の研究を行った。(1)顎骨の老化現象など骨粗鬆症を主体とした骨組織の生理的・病的組織変化を共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて検索し、その画像データをミクロ画像情報処理システムによりディジタル化して集積した。(2)ファイリングされたディジタル画像データを用いて、顎骨形態計測定量化解析ソフトの開発と定量解析後のデータ処理システムの開発を試み、以下の解析項目についてLuzex-F(ニレコ社製)画像解析装置にて半自動解析を可能にした。:(1)全骨梁面(2)全形成面(3)活性形成面(4)全吸収面(5)活性吸収面(6)全骨量(7)全類骨量(8)全骨組織量(9)線維組織量(10)1重標識面(11)2重標識面(12)2重標識面(13)類骨層幅(14)均骨梁単位幅(15)休止面(16)。低石灰化骨量(3)レーザー顕微鏡から連続的に取り込んだテトラサイクリン・カルセイン標識未脱灰骨標本の光学的切片情報を、本システム7用い解析するとともに、その連続断面画像情報をmicrovoxel (INDEC Systems,Inc.)およびLuzex-III(ニレコ社製)にて立体構築を試みた。その結果、microvoxelを用いることにより、テトラサイクリン・カルセインで標識されている領域を研磨切片の表面から深さ方向100μまで立体的に再構築するとともに、その体積をもとめることが可能となった。(4)surface modelingソフトであるLuzex-III(ニレコ社製)を用いることにより、破骨細胞や骨芽細胞などの細胞成分と標識骨面などを同時に立体的に構築することが可能であることが示された。これらの方法を用い、(1)ラット下顎頭の加齢変化に関する形態学的、免疫組織化学的研究(2)ラット歯槽骨における加齢変化に関する組織学的、組織化学的研究(3)骨形態計測法による副甲状腺ホルモン(PTH)の骨代謝に対する作用の検討-ラットにおける骨の部位による効果の比較-(4)卵巣摘出ラットにおける骨梁減少様式に関する微細構造学的研究:等の骨代謝基礎的研究を行い学会論文等にて発表した。平成6年度は非脱灰硬組織試料作成のための機器を設置するとともに共焦点レーザー顕微鏡を硬組織検索に適したシステムに変更し、以下のような研究を行った。 | KAKENHI-PROJECT-06404063 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06404063 |
3次元形態計測による硬組織の細胞生物学的研究 | 歯牙組織の微細構造学的な観察、およびその石灰化の動態を検索する目的で、カルセイン・テトラサクリンで標識したラットの未脱灰上顎臼歯部を、Villanueva bone stainで染色した後、50μの研磨切片を作成し、共焦点レーザー走査顕微鏡にて観察した。その結果、厚い研磨切片においても、象牙細管や歯髄および歯根膜の細胞成分、エナメル小柱などを高分解能で観察でき、同時にエナメル質や象牙質、セメント質における硬組織時刻描記像についても観察することに成功した。次に加齢に伴うラット下顎頭の組織変化を明らかにする目的で、テトラサイクリン・カルセイン標識した1,4,9,16,24か月齢のラット下顎頭を共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。その結果、下顎頭の加齢変化が、前方部、中央部、後方部で異なるのは、咀嚼を中心とした機能圧、及び骨膜付着部における牽引力が、部位により異なることが示唆された。また下顎頭軟骨は、加齢に伴い硝子軟骨から、線維軟骨様に変化することが明らかとなった。軟骨から骨への置換様式は、いわゆる軟骨内骨化過程から、軟骨基質と骨基質の境界部における血管を中心としたオステオン様の骨添加過程へと変化し、軟骨基質と骨基質の境界が形成されることが示された。軟骨下骨における骨梁幅の拡大と骨梁の癒合は、加齢変化とともに、齧歯類ではかなり頻繁に行われている咀嚼によるメカニカルストレスが重要な因子となって骨形成が刺激された結果であることが示唆された。エナメル質の形成、成熟過程に関する研究としては、ラット下顎切歯におけるCD44、ヘパラン硫酸鎖(HS鎖)の局在について、共焦点走査型レーザー顕微鏡を用いて免疫組織化学的に検索した。その結果、HS鎖の局在は、分化期には主として外エナメル上皮の基底膜に認められ、形成期にいたると中間層細胞の細胞膜にもっとも強く認められた。成熟期にいたると乳頭層細胞の細胞膜が強い反応を示した。また、CD44の局在はエナメル器のすべての細胞において認められたが、形成期では中間層細胞、成熟期では乳頭層細胞が強い免疫反応を示すことが明らかとなった。平成7年度は前年度の研究結果を踏まえ、骨組織の発生、骨代謝メカニズムおよび加齢変化を定量的に捉えられるよう以下の様な研究を行った。副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHRP)遺伝子欠損マウスを用いて形態学的に検索したところ、homozygousマウスでは胎生期の軟骨細胞の増殖と分化の抑制が生じheterozygousマウス(+/-)では、3カ月齢で骨端軟骨における軟骨細胞の細胞増殖とカラム形成、骨梁の形成が抑制され、PTHRPが胎生期、成獣期において軟骨細胞の機能を調節する因子であることが明かとなった。ついで、軟骨から骨組織への置換過程について検索し、石灰化層に侵入する血管に隣接して、DBAレクチン陽性、ALPase活性および酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRAP)活性陰性で、軟骨内骨化過程の血管侵入に重要な血管周囲細胞を明かにした。また、骨の成長、発育と神経性調節機構との関係を明かにするために、骨の発生段階におけるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)陽性神経の発達過程、および神経切断による骨代謝への影響について検討した。CGRP陽性神経は胎生19日に骨膜、骨髄中に認められ、生後10日から骨端部の二次骨化部位に侵入し、軟骨に面した破骨細胞に接する像が多数観察された。 | KAKENHI-PROJECT-06404063 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06404063 |
Ni_3Al基金属間化合物複相箔触媒の創製 | 優れた耐熱箔材料であるNi_3Al基金属間化合物箔の水素製造用の触媒特性を向上させるため、複相ナノ組織化と表面化学処理の2つの手法を用い、Ni_3Al基複相箔の表面に高活性のNi微粒子が分散したナノ組織構造の創製を行った。これによりNi_3Al基箔の触媒特性を著しく改善することができた。Ni_3Al基箔は水素製造用高温マイクロリアクターの構造材と触媒の2役を兼ねることが可能であることが明らかになった。優れた耐熱箔材料であるNi_3Al基金属間化合物箔の水素製造用の触媒特性を向上させるため、複相ナノ組織化と表面化学処理の2つの手法を用い、Ni_3Al基複相箔の表面に高活性のNi微粒子が分散したナノ組織構造の創製を行った。これによりNi_3Al基箔の触媒特性を著しく改善することができた。Ni_3Al基箔は水素製造用高温マイクロリアクターの構造材と触媒の2役を兼ねることが可能であることが明らかになった。優れた耐熱性を有するNi_3Al基金属間化合物箔は水素製造反応に触媒活性を示す。このNi_3Al箔は容器材と触媒の2役を兼ねることができ、水素製造用高温マイクロリアクターへの応用が可能である。本研究では、Ni_3Al箔の水素製造用の触媒特性を向上させるため、複相箔のナノ組織化と酸・アルカリによる表面処理の2つの手法を用い、Ni_3Al基複相箔の表面に高活性のNi微粒子が分散したナノ組織構造を創製する。平成19年度では、精密鋳造と強冷間圧延でNi_3Al/Ni複相箔(組成:Ni-18at%Al;厚さ:30μm)を作製した。メタンから水素を製造反応(メタンの水蒸気改質反応)に対するこの冷間圧延複相箔の基本触媒特性を調べた。また、熱処理により箔の冷間圧延組織に回復・再結晶を起こさせ、複相箔のナノ組織化を試みた。以下の結果が得られた。1)メタンの水蒸気改質反応に対して冷間圧延複相箔が触媒活性を示すことが分かった。その水素ガスの生成速度は温度の上昇と共に増加した。キャラクタリゼーションの結果、反応中箔表面層のAlが選択酸化されることによって、Ni粒子が生成し、触媒活性を担うことと考えられる。2)強冷間圧延複相箔を700-800°Cで短時間熱処理し、一定の回復・再結晶を起こさせれば、複相ナノ構造が形成できることが分かった。これらの結果により、冷間圧延Ni_3Al/Ni複相箔を用いて、ナノ組織化と酸・アルカリ表面処理により触媒特性向上の可能性を明らかにした。優れた耐熱箔材料であるNi_3Al基金属間化合物箔は水素製造反応に触媒活性を示し、貴金属不要の水素製造用高温マイクロリアクターへの応用が期待できる。本研究では、Ni_3Al基金属間化合物箔の水素製造用の触媒特性を向上させる指針の確立を目指す。具体的には、複相箔のナノ組織化と酸・アルカリによる表面処理の2つの手法を用い、Ni_3Al基複相箔の表面に高活性のNi微粒子が分散したナノ組織構造を創製する。主な結果、強冷間圧延で作製したNi_3Al(γ')とNi固溶体(γ)の微細2相組織箔を用いて、酸処理によりγ'相を選択的に溶出し、比表面積が増大することができた。さらに、酸処理した箔をアルカリ処理し、表面層のAlを選択的溶出し、表面にNiリッチ化することができた。このように酸、アルカリ2段処理した箔触媒を用いて、メタンの水蒸気改質反応を行った結果、触媒活性は反応時間の増加に伴い自発的に増大することが分かった。箔表面のキャラクタリゼーションにより、化学表面処理の効果及び触媒反応のメカニズムについて考察した。表面化学処理した箔の表面には反応中に活性なNi微粒子がより多く増加するため、触媒活性が高くなることが分かった。これらの結果から、酸・アルカリによる表面化学処理はNi_3Al/Ni2相箔表面を直接活性化させるだけではなく、反応中に箔表面の自発的活性化することにも寄与することが判明した。また、触媒特性に対する酸、アルカリ処理条件(溶液濃度、処理時間、温度)の影響を調べ、触媒特性の向上には最適な表面処理条件を見出した。本研究の結果から、Ni_3Al基箔は水素製造用高温マイクロリアクターの構造材と触媒の2役を兼ねることが可能であることが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-19560774 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19560774 |
分子生物学的手法を用いた変形性関節症の病態解明と治療法の開発に関する戦略的研究 | 1)Reverse geneticsからの病態解明へのアプローチ:昨年度までの研究で確立した、マイクロサージェリー技術を用いたマウスの膝関節の靱帯・半月板の切離・切除の組み合わせによる4種類のOAモデル(Osteoarthritis Cartilage 13:632,2005)を組織学的に観察することによって、軟骨の破壊・変性に先行してRunx2やCOL10の発現誘導を伴う軟骨細胞の肥大分化が起こることを解明した(Arthritis Rheum 54:2462,2006)。またこのモデルから、我々がクローニングした遺伝子carminerinがOAによる骨棘形成に関与していることを解明した(Nature Med 12:665,2006)。2)Forward geneticsからの病態解明へのアプローチ:昨年度までに構築した4つの地域コホート(和歌山山村コホート、和歌山漁村コホート、板橋コホート、新潟コホート)の内、2つについてベースライン調査を終了した。2,164例のX線写真の解析から、膝OA・腰椎OAの有病率が従来の試算よりもはるかにに高いことが明らかとなった(日本人全体に換算すると、膝OAが3080万人、腰OAが3300万人)。また、地域別、性別に分析した結果、OAの有病率が罹患部位(膝と腰)によって異なる疫学特性を示すことが明らかになった。これらの対象者全員からゲノム解析用の採血を行っており、ゲノムワイドスクリーニングの基盤は固まりつつある。3)軟骨再生のための基礎検討:昨年度までに確立したCOL2-GFP導入細胞による軟骨分化のリアルタモニタリングシステムによって、転写因子Sox5,6,9の組み合わせが非軟骨細胞からでも軟骨分化を誘導する強力なシグナルであることを示し、この標的分子としてS100A1/Bを同定した(EMBO Reports, in press)。にれらの遺伝子をナノミセルを用いて遺伝子導入する方法を開発し、その臨床応用に向けての研究を進めている。本研究課題を更に拡大・発展させるべく、我々は戦略的OA統合研究計画として、ROAD (Research on Osteoarthritis Against Disability)プロジェクトを樹立した。これらのサブテーマを包括・融合して、OAの分子レベルでの病因を解明し、画期的な予防・治療法を開発することが、ROADプロジェクトの最終目標である。1)Reverse geneticsからの病態解明へのアプローチ:昨年度までの研究で確立した、マイクロサージェリー技術を用いたマウスの膝関節の靱帯・半月板の切離・切除の組み合わせによる4種類のOAモデル(Osteoarthritis Cartilage 13:632,2005)を組織学的に観察することによって、軟骨の破壊・変性に先行してRunx2やCOL10の発現誘導を伴う軟骨細胞の肥大分化が起こることを解明した(Arthritis Rheum 54:2462,2006)。またこのモデルから、我々がクローニングした遺伝子carminerinがOAによる骨棘形成に関与していることを解明した(Nature Med 12:665,2006)。2)Forward geneticsからの病態解明へのアプローチ:昨年度までに構築した4つの地域コホート(和歌山山村コホート、和歌山漁村コホート、板橋コホート、新潟コホート)の内、2つについてベースライン調査を終了した。2,164例のX線写真の解析から、膝OA・腰椎OAの有病率が従来の試算よりもはるかにに高いことが明らかとなった(日本人全体に換算すると、膝OAが3080万人、腰OAが3300万人)。また、地域別、性別に分析した結果、OAの有病率が罹患部位(膝と腰)によって異なる疫学特性を示すことが明らかになった。これらの対象者全員からゲノム解析用の採血を行っており、ゲノムワイドスクリーニングの基盤は固まりつつある。3)軟骨再生のための基礎検討:昨年度までに確立したCOL2-GFP導入細胞による軟骨分化のリアルタモニタリングシステムによって、転写因子Sox5,6,9の組み合わせが非軟骨細胞からでも軟骨分化を誘導する強力なシグナルであることを示し、この標的分子としてS100A1/Bを同定した(EMBO Reports, in press)。にれらの遺伝子をナノミセルを用いて遺伝子導入する方法を開発し、その臨床応用に向けての研究を進めている。本研究課題を更に拡大・発展させるべく、我々は戦略的OA統合研究計画として、ROAD (Research on Osteoarthritis Against Disability)プロジェクトを樹立した。これらのサブテーマを包括・融合して、OAの分子レベルでの病因を解明し、画期的な予防・治療法を開発することが、ROADプロジェクトの最終目標である。1)Reverse geneticsからの病態解明へのアプローチ:我々自身がクローニングした軟骨特異的新規遺伝子であるcystatin 10 (Cst10)の遺伝子欠損マウス(Cst10KO)を作出した。Cst10KOでは成長板の肥大軟骨細胞層における石灰化障害が見られたが、成長障害などの生理的な異常は見られなかった。一方、我々が作成した膝関節への力学的負荷による変形性関節症(OA)モデルを負荷したところ、明らかな骨棘形成の抑制が認められた。また、1年間飼育したことろ、老化に伴う膝蓋靭帯やアキレス腱の石灰化が抑制された。以上より、Cst10は、変形性脊椎症などその骨棘形成が臨床上問題となる病態において有効な治療の標的分子になる可能性が示された。2)Forward geneticsからの病態解明へのアプローチ:COL9A3遺伝子全領域にわたる高密度マッピングを行ない、計62箇所の多型を同定した。 | KAKENHI-PROJECT-15209049 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15209049 |
分子生物学的手法を用いた変形性関節症の病態解明と治療法の開発に関する戦略的研究 | これらについて、膝OA患者499例、対照健常人304例について相関解析を行ったところ、intron 25内のくり返し配列(repeat)多型が最も有意な相関を示し(P=0.001)、repeatが1つの場合は2つの場合に比べてOAのリスクが有意に高いことが示された。Luciferase活性およびゲルシフトアッセイによって、このCOL9A3のrepeatはSOX9のpolymorphic enhancerであり、膝OA発症の背景にはSOX9によるCOL9A3の発現誘導が関与することが明らかになった。3)軟骨再生のための基礎検討:我々が確立したII型コラーゲンプロモーター-GFP導入マウス骨髄幹細胞培養系を用いて、軟骨細胞に分化させるための最適条件の決定に成功した。最も強力なシグナルは、SOX9、SOX5、SOX6 (SOX trio)の組み合わせであり、発現プラスミドを、軟骨分化能を全く持たない細胞株、ヒト骨髄間葉系幹細胞、そしてより分化したヒト成人皮膚線維芽細胞に導入したところ、どの細胞からも軟骨マーカーの誘導と組織学的に豊富な軟骨基質の産生を認めた。一方、これらの正常ヒト細胞培養系においてSOX trioの導入は軟骨の肥大化および骨への分化マーカーに対してはむしろ抑制的に働き、永久軟骨として機能すべき関節軟骨などの再生医療のための画期的な手法となると考えられた。本研究は、変形性関節症(OA)の病態解明と治療の開発を目指して、下記の4テーマについて検討を行っている。1)Reverse geneticsからの病態解明へのアプローチ:OA背景分子の候補として、本年度はRunx2 (Cbfal)に注目した。Runx2ヘテロ欠損マウス(Runx2+/-)は生理的条件下では関節軟骨、成長軟骨ともに正常であった。そこで我々の確立したOAモデル(Osteoarthritis Cart, in press)を誘発したところ、関節軟骨の病的肥大化のみならず、軟骨基質の分解も著明に抑制された。以上より、Runx2による病的肥大化および関節軟骨破壊がOA発症の引き金となることが示唆された。2)Forward geneticsからの病態解明へのアプローチ:従来の当科OA患者を対象に行っていたゲノム研究を、更に大規模なゲノム疫学研究に拡大するために新たにデータベースの構築に着手した。板橋区の地域コホートのデータベースの作成を明始した。また、和歌山県の山村と漁村のふたつの住民コホートも利用できることになった。また、東大病院内の新しい研究施設である22世紀医療センター内に寄付講座を設立し更に大規模な統合データベース作成に着手した。4)MPCポリマー処理した人工関節の臨床応用に向けての実験:MPCポリマー処理が、シミュレーターによる摩耗を軽減させること、MPCポリマー処理粉が生物学的に骨吸収を誘導しないことを公表した(Nature Mater 3:829-836,2004)。 | KAKENHI-PROJECT-15209049 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15209049 |
生命科学の事業化におけるバイオベンチャー存続へのリアルオプション機能 | サイエンスリンケージが強くベンチャーが事業化の主体として適するバイオ産業において、リーマンショック後の資本市場を背景に、バイオベンチャーがデスバレーを克服するためのリアルオプションと、製薬大企業との戦略的提携のためのオプションゲームの各意思決定モデルを研究した。具体的には、ジャンプディフュージョン型タイミングオプション、提携での直列型スィッチングオプション、ライセンス料要素の確率最適化などの有効性を検証した。サイエンスリンケージが強くベンチャーが事業化の主体として適するバイオ産業において、リーマンショック後の資本市場を背景に、バイオベンチャーがデスバレーを克服するためのリアルオプションと、製薬大企業との戦略的提携のためのオプションゲームの各意思決定モデルを研究した。具体的には、ジャンプディフュージョン型タイミングオプション、提携での直列型スィッチングオプション、ライセンス料要素の確率最適化などの有効性を検証した。2008年の金融危機によって、デスバレーの長いバイオ医薬ベンチャーにとって研究開発の継続に影響の出る可能性が高い。その場合、金融危機によるVCの消極性と、再生・個別医療など研究進捗とのトレードオフ状況下で、バイオベンチャーのプロジェクト継続維持を可能にする方法の探究が重要となる。このため、今年度のテーマとして、リアルオプションにおける意思決定保留機能に注目した。フレームワークは、R.S.Pyndyck & A.K.Dixitによる不確実性下でのマーシャルの閾値基準への埋没コストによる修正及びHysteresisのアナロジーである。仮想的な医薬開発投資における決定保留オプションの有効性を、埋没コストに加えて適応拡大における期待に関するパラメータに関してシミュレーションによるテストをした。R&D自体が学習オプションであることから、プロジェクト有望性の評価が重要となる。2009年11月にはR.S.Pyndyck & A.K.Dixitに、2010年3月にはL.Trigeorgisに直接会って情報交換した。また、米・中のバイオ産業の状況について北京・上海・SF・NYのJETRO職員と情報交換した。加えて、中国の医薬バイオセンター担当者、バイオベンチャー上海GenPharma、シリコンバレーVCの三井ベンチャーの代表者、カイロのSmart Villageの取締役などとも情報交換した。研究成果は、IAMOT2090&2010、PICMET2009、中小企業学会、研究・技術計画学会などで報告した。意義・重要性は、基礎研究成果の事業化の長期的プロジェクト継続に伴う、高ボラティリティの状況下での頑強性に向けた意思決定保留オプションの有効性・限界のモデルによるテストと、アカデミック・実務の両専門家とのモデル修正と研究方向見極めに向けた情報交換にある。先進国内での突出した急速な高齢化の進捗、東日本大地震による産業復興を踏まえて、本テーマの重要性は益々高まっている。理論面では、主に、生命科学の基礎研究成果を事業化する際のタイミングオプションに関するシミュレーションの洗練化・解析、戦略的提携におけるビジネスモデルのオプションゲームに基づくシミュレーション解析に注力した。実態調査では、2010年6月にスペインのバイオベンチャーGenmedica、Prous Institute、7月にフランスの同ベンチャーCellectius、11-12月にインドの同ベンチャーAccurex、Lupin、Avesthagen、ReaMetix、国立研究所のインキュベーターVenture Center(Pune)、2011年2月にシンガポールにて、バイオクラスターの企画に関与するEDB、Exploited Technologies,及びNUS Industrial LiasonOfficeを、韓国ではSeoul National Univ.、Korea Univ.、Seoul National Univ.of Science&Technologyを、3月にはイタリアのUniv.of SalernoのスピンオフとしてのBioUniverSa、MOMAをそれぞれ訪問調査した。バイオベンチャーの業績はパレート分布に従っている。リーマンショック後のVCの消極化の中で、大型医薬の特許切れと連動し戦略的提携・M&Aが活発化している。事業モデルのシミュレーション分析では、提携は資本市場からの資金調達の重要な補完的経路であり、リアルオプションによってリスクヘッジできることが分かった。また、ライセンス料要素の最適な組み合わせを確率最適化で立案・調整可能なことも分かった。今年度は、当該プロジェクトの最終年度にあたり、単年度の計画と同時に、プロジェクト全体の完了との両側面を念頭に置いた。戦略的提携とオプションゲームの関係については、バイオベンチャーがオーファンドラッグの場合を除いて単独では創薬・医薬開発を遂行するのが非現実的との背景的事実から、ベンチャーから製薬大企業へのライセンスのタイミングを決めるスイッチングオプションのパラメーター(技術的飛躍度・不確実性)に基づき各意思決定スタイルの有効な範囲と境界を示すライセンス決定指針のマッピングの定式化を行なった。また、米国で新たに出現してきたバーチャルバイオベンチャーについては、同じくオプションゲームのアイデアを基に不確実性と市場の競合構造とによって、IPO市場低迷に由来するバイオベンチャーのVCとの関係、ブロックバスター医薬の特許切れ・ジェネリック医薬との競合激化に由来する製薬大企業の外部の技術への依存関係を、従来の特許に基づく独占的構造から完全市場への移行期と捉え、大学・VC・製薬大企業の間の寡占競争構造における「囚人のジレンマ」からパレート最適解への脱出には社会的革新としての戦略的提携が有効であることを、不確実性と競合の両尺度から定量的に示した。その他に、戦略的提携でのライセンスにおけるライセンス料要素の最適な組み合わせをモンテカルロシミュレーション、リアルオプション、確率的最適化などの手法にて検討した。国際会議での研究者間の情報交換の他に、インド・トルコ・ウィーン・テキサスでのベンチャー・エコシステムの実態調査を実施した。予期しない知見の獲得による隣接領域への探索や、新しい資料の理解に関して判断の試行錯誤の時間がどうしても避けられず、時間管理のコストベネフィット分析の難しさが存在する。しかし、プロジェクト管理のスキルを磨く貴重な機会として感謝している。 | KAKENHI-PROJECT-21330090 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21330090 |
生命科学の事業化におけるバイオベンチャー存続へのリアルオプション機能 | 24年度が最終年度であるため、記入しない。基本的には当初の目的に沿って研究を進めるが、次年度が最終年度にあたるために、全体のまとめを意識しながら進捗の管理を図りたい。調査や学会で新たな出会いもあるために、そのような機会も積極的に活用していきたい。また、日本経済の復興に少しでも結び付けられるような知見を探りたい。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-21330090 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21330090 |
高松地域における不圧地下水の流動と水質形成機構に関する研究 | 本研究の目的は,高松平野の水循環や水利用を検討する際に不可欠な不圧地下水の流動と水質の実態を明らかにするとともに,硝酸性窒素による地下水汚染が進んでいる地域において汚染源の特定することである.そのために,平成16年度では(1)高松平野の浅井戸65地点での水位,水質の調査と変動特性の検討,(2)香東川左岸地域での詳細な地下水位,水質の動態調査,(3)流動の数値解析による不圧帯水層と被圧帯水層間での水移動の検討を行った.高松平野において3ヶ月に1回の頻度で行った地下水位・水質調査の結果より,ヘキサダイアグラムを作成し,水質の変化を検討した.その結果,溶存イオン量の多いグループ,少ないグループ,施肥や家庭雑排水の影響を受けているグループ,海水侵入の影響を受けているグループの4つに大別できること,また,年間を通じて硝酸性窒素が環境基準を超えている地点が複数存在することを示した.硝酸性窒素濃度が年間を通して高い地域として香東川左岸の扇状地である地区を選び,土地利用調査,使用している肥料に関するヒアリング,7回の現地調査における水位,EC, pHの測定,主要イオン成分の分析及び2回の窒素,水素,酸素の安定同位体比の分析を行った.その結果,高濃度の硝酸性窒素は無機肥料だけでなく有機肥料や牛舎からの畜産廃棄物によるものと推定された.なお,多くの地点において窒素同位体比が既往の研究の値を大きく超えていたため,アンモニア揮散の影響を考慮した解析を行った.100mメッシュ上で被圧地下水の流動について不圧地下水との水の交換を考慮した2次元数値解析を行った.その結果,詳細な水質調査を行った地区では不圧地下水から被圧地下水への涵養が盛んであることが判明した.このため,不圧地下水の硝酸汚染を軽減することが必要であり,そのために施肥の種類や量を改善することが有効であることを示した.本研究の目的は,高松平野の水循環や水利用を検討する際に不可欠な不圧地下水の流動と水質の実態を明らかにするとともに,硝酸性窒素による地下水汚染が進んでいる地域において汚染源の特定することである.そのために,平成16年度では(1)高松平野の浅井戸65地点での水位,水質の調査と変動特性の検討,(2)香東川左岸地域での詳細な地下水位,水質の動態調査,(3)流動の数値解析による不圧帯水層と被圧帯水層間での水移動の検討を行った.高松平野において3ヶ月に1回の頻度で行った地下水位・水質調査の結果より,ヘキサダイアグラムを作成し,水質の変化を検討した.その結果,溶存イオン量の多いグループ,少ないグループ,施肥や家庭雑排水の影響を受けているグループ,海水侵入の影響を受けているグループの4つに大別できること,また,年間を通じて硝酸性窒素が環境基準を超えている地点が複数存在することを示した.硝酸性窒素濃度が年間を通して高い地域として香東川左岸の扇状地である地区を選び,土地利用調査,使用している肥料に関するヒアリング,7回の現地調査における水位,EC, pHの測定,主要イオン成分の分析及び2回の窒素,水素,酸素の安定同位体比の分析を行った.その結果,高濃度の硝酸性窒素は無機肥料だけでなく有機肥料や牛舎からの畜産廃棄物によるものと推定された.なお,多くの地点において窒素同位体比が既往の研究の値を大きく超えていたため,アンモニア揮散の影響を考慮した解析を行った.100mメッシュ上で被圧地下水の流動について不圧地下水との水の交換を考慮した2次元数値解析を行った.その結果,詳細な水質調査を行った地区では不圧地下水から被圧地下水への涵養が盛んであることが判明した.このため,不圧地下水の硝酸汚染を軽減することが必要であり,そのために施肥の種類や量を改善することが有効であることを示した.本研究の目的は,高松平野における水循環や水利用を検討する際の要となる,不圧地下水の流動と水質の実態を明らかにすることである。高松平野の西部から中央部にかけては扇状地が広がっており,地下水流動の解析には旧河道など地下水が選択的に流れる水ミチを特定することが必要である。そのために,我々がこれまでに調査・分析したデータのみならず他機関によるデータも収集・データベース化し,地下水の流動や水質の場所的・時間的な変化を検討した。平成15年度では,主に,(1)航空写真判読による旧河道位置の推定と不圧帯水層の地質データの収集,(2)74箇所の井戸での不圧地下水の水位・水質(水温,pH,電気伝導度,酸化還元電位,溶存酸素,各種イオン(主要成分と鉄,マンガン))調査・分析,(3)香川県による不圧地下水の水質データの収集・整理を行った.収集した水位データを検討した結果,次のことを明らかにした。(1)地下水位の等値線は標高の等高線にほぼ平行となること,(2)地下水位は8・9月に最高に,3・4月に最低となり,その変動幅は12m程度であること,(3)高松平野全般における地下水位の経年的な変動傾向は認められないこと,(4)降雨に対する水位の応答は近接地点間でも大きく異なり水ミチを考慮することが必要であること,などである。また,水質データの検討より以下の知見を得た。(1)pHが78を示す地点は夏季には平野の北部や西部に偏在するが,冬季には中央部にまで拡大すること, | KAKENHI-PROJECT-15560444 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15560444 |
高松地域における不圧地下水の流動と水質形成機構に関する研究 | (2)酸化還元電位には季節的な変化が認められること,(3)主要イオン量に基づくヘキサダイヤグラムより,溶存イオン量の多いグループ,少ないグループ,施肥や家庭雑排水の影響を受けているグループ,海水侵入の影響を受けているグループの4つに大別できること,(4)年間を通じて硝酸性窒素が環境基準を超えている地点が存在することなどである。本研究の目的は,高松平野の水循環や水利用を検討する際に不可欠な不圧地下水の流動と水質の実態を明らかにするとともに,硝酸性窒素による地下水汚染が進んでいる地域において汚染源の特定することである.そのために,平成16年度では(1)高松平野の浅井戸65地点での水位,水質の調査と変動特性の検討,(2)香東川左岸地域での詳細な地下水位,水質の動態調査,(3)流動の数値解析による不圧帯水層と被圧帯水層間での水移動の検討を行った.高松平野において3ヶ月に1回の頻度で行った地下水位・水質調査の結果より,ヘキサダイアグラムを作成し,水質の変化を検討した.その結果,溶存イオン量の多いグループ,少ないグループ,施肥や家庭雑排水の影響を受けているグループ,海水侵入の影響を受けているグループの4つに大別できること,また,年間を通じて硝酸性窒素が環境基準を超えている地点が複数存在することを示した.硝酸性窒素濃度が年間を通して高い地域として香東川左岸の扇状地である地区を選び,土地利用調査,使用している肥料に関するヒアリング,7回の現地調査における水位,EC,pHの測定,主要イオン成分の分析及び2回の窒素,水素,酸素の安定同位体比の分析を行った.その結果,高濃度の硝酸性窒素は無機肥料だけでなく有機肥料や牛舎からの畜産廃棄物によるものと推定された.なお,多くの地点において窒素同位体比が既往の研究の値を大きく超えていたため,アンモニア揮散の影響を考慮した解析を行った.100mメッシュ上で被圧地下水の流動について不圧地下水との水の交換を考慮した2次元数値解析を行った.その結果,詳細な水質調査を行った地区では不圧地下水から被圧地下水への涵養が盛んであることが判明した.このため,不圧地下水の硝酸汚染を軽減することが必要であり,そのために施肥の種類や量を改善することが有効であることを示した. | KAKENHI-PROJECT-15560444 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15560444 |
miRNAによるRNA干渉効果を用いた新しい血小板遺伝子ノックダウン手法の開発 | ヒトCD34+Progenitor Cell及び、マウス骨髄細胞に、miR RNAi発現ベクターを導入後、In Vitroで血小板細胞に分化させる事で、ターゲット遺伝子の発現が抑制され、トロンビン刺激又は、ADP刺激による血小板凝集能、及びP-selectin発現能が抑制されることを確認することができた。血小板抗体により血小板数が抑制されたマウスに遺伝子ノックダウン血小板を投与することにより、実験モデルを作成することに成功した。そのマウスに、遺伝子ノックダウン血小板を注入することで、肺梗塞の重症度、生存率が改善された。現在、さらに詳細を解析中である。ヒトCD34+Progenitor Cell及び、マウス骨髄細胞に、miR RNAi発現ベクターを導入後、In Vitroで血小板細胞に分化させる事で、ターゲット遺伝子の発現が抑制され、トロンビン刺激又は、ADP刺激による血小板凝集能、及びP-selectin発現能が抑制されることを確認することができた。血小板抗体により血小板数が抑制されたマウスに遺伝子ノックダウン血小板を投与することにより、実験モデルを作成することに成功した。そのマウスに、遺伝子ノックダウン血小板を注入することで、肺梗塞の重症度、生存率が改善された。現在、さらに詳細を解析中である。ヒトCD34+ Progenitor Cellに、miR RNAi発現ベクターを導入後、In Vitroで血小板細胞に分化させる事で、ターゲット遺伝子の発現が抑制され、血小板機能が抑制されるかどうかを確認すること。(In Vitro系)1. miRNAの作成GPllb, CD62P, Akt, P38αをターゲットにしたmiRNA塩基配列作成は、Invitrogen社でReady MadeのDNA64merの人工miR RNAiインサートを購入した。2.アニーリング及びクローニングDouble Strandにアニーリング後pcDNA6.2-GW/EmGFP-miRにクローニングする。3.遺伝子導入Heck-293細胞(培養細胞)に導入後、目的の遺伝子がノックダウンされていることを、Real Time PCR(RNAレベル)及び、Flow Cytometry法(タンパクレベル)で確認した。8.血小板に分化後(約3-4week)、Real Time PCR(RNAレベル)及び、Flow Cytometry法(淡白レベル)で、ターゲットの遺伝子ノックダウンを確認した。以上の結果は、次年度の実験計画が順当に進む可能性を示すものである。平成22年度マウスに21年度で遺伝子ノックダウンに成功したマウス骨髄細胞を末梢血より移植することで、約1ヶ月後の末梢血血小板細胞の発現が抑制され、血小板機能が抑制されるかどうかを確認すること。(In Vivo系、Ex Vivo系)1.C57BL/6マウスにγ線を全身照射し(9,5Gy)(中央動物室)、骨髄抑制を行い、VitroでmiRNAを組み込んだレンチウィルスベクターを導入したマウス骨髄細胞(2,000,000 cell)を、マウスの末梢尾静脈より移植する。2.約1ヶ月後、マウスの中心静脈血から血小板を分離し、Real Time PCR (RNAレベル)及び、Flow Cytometry法(タンパクレベル)でターゲット遺伝子のノックダウンを確認。3.血小板機能の確認GPllb,又はAktの遺伝子ノックダウンにより血小板凝集反応が抑制されている事を、CD62P,又はP38αのノックダウンにより血小板-白血球凝集反応が抑制されていることを確認した。 | KAKENHI-PROJECT-21791466 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21791466 |
ロシア史における保養地事業と公民的ナショナリズム | 近代ロシア帝国における政治秩序を把握するための、あらたな視角を得た。それは「専制の風土論」(geopolitical culture of the autocracy)と呼びうる。それが意味するものは、専制権力、領内の自然、臣民の身体の一体性を実現しようとするイデオロギーである。第一次世界大戦期のロシア帝国において、このイデオロギーが追求される過程を、アーカイヴ史料に基づいて明らかにした。さらに、このイデオロギーが、総力戦という状況を媒介として、専制権力からボリシェヴィキ政権へと継承されるという展望をも示した。近代ロシア帝国における政治秩序を把握するための、あらたな視角を得た。それは「専制の風土論」(geopolitical culture of the autocracy)と呼びうる。それが意味するものは、専制権力、領内の自然、臣民の身体の一体性を実現しようとするイデオロギーである。第一次世界大戦期のロシア帝国において、このイデオロギーが追求される過程を、アーカイヴ史料に基づいて明らかにした。さらに、このイデオロギーが、総力戦という状況を媒介として、専制権力からボリシェヴィキ政権へと継承されるという展望をも示した。研究実施計画にしたがって、本年度は「保養地事業と景観」の問題を中心的に分析した。時期的には帝政期を主に論じた。とくに第一次大戦期の保養地ブームに焦点を当て、帝国の多様な景観がいかなる形で語られたかを分析した。その結果、保養地ブームのなかで称揚された祖国ロシアのイメージは、ロシア民族や大ロシア地域を中心としたものではなく、多様な地域からなる複合的な共同体であったことを明らかにした。ここで抽出された、「一体であると同時に複合的な共同体」としての祖国イメージは、ロシア史研究のみならず、ナショナリズム研究一般にとって、参照可能なものであろう。夏期にはウラジオストックに出張し、図書館で史料収集にあたった。冬期にはモスクワに出張し、図書館および文書館で史料収集にあたった。研究成果の一部は、論文「第一次大戦期ロシア帝国の保養地事業とナショナリズム」として公表した。ソ連期に関しては、1930年代のモスクワ改造を素材として、学会報告「現代都市類型から見た20世紀モスクワ」を行なった。この報告は都市論の側から本研究課題を補足する試みである。具体的には、モスクワ改造における都市景観および身体観の変容を明らかにした。さらに、ロシア革命を公民的ネイション・ビルディングの出発点とする観点に立ち、著作『革命ロシアの共和国とネイション』を公刊した。この著作の準備は、平成19年度よりも前から行なわれてきたものであるが、原稿執筆の最終段階において、本研究課題の遂行によって得られた、ロシア・ナショナリズムに関する知見を盛り込むことができた。研究実施計画にしたがって、本年度は帝政期の「保養地事業と身体」の問題を中心的に分析した(b-1)。第一次世界大戦期の定期刊行物および文書館史料を調査し、傷病兵の保養地への送り出しの過程を解明した。その結果、第一次大戦期の保養地事業が、臣民、とりわけ兵士の身体の管理という問題と密接に関わっていることを明らかにした。さらに、臣民の身体を管理する究極の権威の源泉がロシア皇帝である以上、「保養地事業と身体」の問題は、ロシア帝国の国制である専制の原理の解明、すなわち権力論とも直接に関わっているとの認識を得た。このように権力論を介在させることで、平成21年度に向けて、本研究課題の視角がより深められることとなった。研究成果の一部はロシア史研究会の年次大会で報告した。帝政期の「保養地事業と景観」について、北カフカースの保養地ピャチゴルスクの地方新聞の調査にあたった(a-1)。ソ連期の「保養地事業と景観」に関しては、定期刊行物・旅行案内などの史料収集を進めた(a-2)。また、1930年代のモスクワ改造に関する論文を発表し、都市と人間の有機的な結合に関する当時の支配的イメージを明らかにすることで、都市論の側から「保養地事業と身体」の問題を補足した(b-2)。外国出張に関しては、研究実施計画では極東・シベリアでの調査を行なうことになっていた。だが、平成19年度の調査により、極東・シベリアでの史料の保存状況、および利用環境が当初の想定を下回ることが明らかとなった。そのため、モスクワでの調査を中心的に行なった。研究最終年度にあたる本年度は、研究計画にしたがい、ソ連期について分析を進めた。さらに帝政期についても、下位テーマa「保養地事業と景観」、同b「保養地事業と身体」の両方について、前年度までに遂行しきれなかった部分の研究を行なった。景観論と身体論に立脚して研究を進める中で、ロシア史におけるナショナリズム分析のために、さらなる切り口を見出すこととなった。まず、専制という体制を帝国一般を離れて個別に議論するためには、「権力論」が欠かせないことが明らかとなった。ついで、保養地の発展やそこでの政治・社会関係のあり方を実証分析するためには、「都市論」という観点が有効であることが明らかとなった。このようなあらたな知見にもとづきながら、2本の論文を発表し、1回の学会報告を行なった。さらに、全研究期間の成果を研究書にまとめるための準備に入るとともに、補足的な史料調査のために平成23年2月-3月にモスクワに出張した。モスクワではおもにロシア国立軍事史アーカイヴにおいて、第一次世界大戦期の軍事医療行政について調査を行なった。 | KAKENHI-PROJECT-19720199 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19720199 |
ロシア史における保養地事業と公民的ナショナリズム | 執筆予定の研究書においては、専制権力、臣民の身体、それに祖国の自然が一体のものとして把握される帝政ロシアの政治空間について、保養地行政の観点から実証的な分析が行なわれる予定である。さらに、そうした政治空間の基本的な特徴がソ連期にも継承されたことが論じられる。 | KAKENHI-PROJECT-19720199 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19720199 |
組織マクロファージの分化機構およびその生体内における機能の解析 | 組織マクロファージは機能は存在する組織により異なる。組織マクロファージの分化誘導機構の解析はほとんど行われていない。これまでに脾臓の赤脾髄に存在するマクロファージ(RPM)の分化を特異的に制御する転写因子Spi-Cを同定している。そこで、本研究では組織マクロファージの分化誘導機構の解明を目的として、組織特異的なマクロファージを誘導する組織特異的因子の同定を試みた。RPMをモデル細胞とし、HemeがSpi-cを誘導することを見出した。さらに、Hemeの分解酵素であるHmox1 (HO1)のcKOマウスを用いてマラリア感染におけるRPMの役割についても検討した。組織に存在するマクロファージは細菌や死細胞の除去を基本的な機能として持つが、その他の機能存在するそしきにより異なると考えられている。しかし、機能がことなる組織マクロファージがどのような分子機構により生じてくるのかは全く明らかにされていない。脾臓に存在するRedpulp macrophageを組織特異的マクロファージのモデル系として、組織マクロファージの分化の場、おより誘導シグナルの同定を行う。脾臓、及び骨髄は鉄代謝を行っている重要な臓器である。脾臓に於いて赤血球が分解され鉄がリサイクルされる際に出る代謝産物の一つであるヘムが組織マクロファージの分化を誘導しうることを明らかにした。組織に存在するマクロファージは細菌や死細胞の除去を基本的な機能として持つが、その他の機能存在するそしきにより異なると考えられている。しかし、機能がことなる組織マクロファージがどのような分子機構により生じてくるのかは全く明らかにされていない。脾臓に存在するRedpulp macrophageを組織特異的マクロファージのモデル系として、組織マクロファージの分化の場、おより誘導シグナルの同定を行う。その結果、組織特異的な因子によって組織マクロファージが誘導されていることが明らかとなった。組織に存在するマクロファージは細菌や死細胞の除去という機能を有するが、その他の機能は存在する組織により異なると考えられている。しかし、機能がことなる組織マクロファージがどのようにして分化してくるのか、その詳細なる誘導機構は不明な点が多い。脾臓に存在するRedpulp macrophageを組織マクロファージのモデル系として、組織マクロファージの分化の場、および誘導シグナルの同定を行った。脾臓および骨髄は生体内における鉄代謝を担っている重要な臓器であることに着目し、赤血球の代謝産物がRed pulp macrophageの分化を誘導する可能性を検討した。In vitroにて赤血球の代謝産物一つであるヘム(老化赤血球の代謝物質)で刺激するとSpi-cの発現が誘導され、さらにはF4/80陽性細胞が分化してきた。同時に、SpicがRed pulp macrophageと同様に鉄のリサイクルの機能を有するF4/80+VCAM1+骨髄マクロファージ(Bone marrow macrophage)分化も制御することも明らかとなった。さらに、過剰なヘムはRed pulp macrophageとBone marrow macrophageのアポトーシスを誘導するが、単球におけるSpicの発現も誘導し、Red pulp macrophageとBone marrow macrophageを分化誘導する事も明らかとなった。また、Spi-cの発現誘導はリプレッサーであるBACH1によって阻害され、ヘムはプロテアソーム依存的にBACH1を分解し、Spic転写の阻害を解除した。組織マクロファージの分化が代謝物質よって制御されていることを初めて明らかにした。前年度までに組織マクロファージの一つである赤脾臓に存在するRedpulp macrophageの分化誘導を規定している転写因子Spicが、赤血球の代謝産物であるHemeによってその発現が制御されていることを明らかにしてきた。そこで最終年度において、Red pulp macrophageの生体内における機能の一つとしてマラリア感染における役割について検討した。Heme oxygenase-1 (HO-1)はHemeをbiliverdin、iron、そしてcarbon monoxideに分解する酵素であるが、このHO-1のノックアウトマウス(KO)ではRed pulp macrophageが欠損していた。しかしHO-1はマクロファージのみならず他の細胞でも発現しているため、KOマウスを用いた解析ではRed pulp macrophageのみのマライア感染に於ける役割の解析は難しい。さらに、KOマウスは胎性致死のため実験に必要な匹数のKOマウスを得ることが容易ではない。これらの問題を回避するために、申請者はCD11b-creマウスとHO-1 f/fマウスを掛け合わせ、ミエロイド系の細胞でのみHO-1を欠損しているHO1 f/f x CD11b-cre (cKO)マウスを作製した。このHO-1 cKOマウスでも、Red pulp macrophageの割合が減少していた。現在、マラリア感染におけるRed pulp macrophagの役割について、HO-1 cKOマウスを用いて検討している。組織マクロファージは機能は存在する組織により異なる。組織マクロファージの分化誘導機構の解析はほとんど行われていない。これまでに脾臓の赤脾髄に存在するマクロファージ(RPM)の分化を特異的に制御する転写因子Spi-Cを同定している。そこで、本研究では組織マクロファージの分化誘導機構の解明を目的として、組織特異的なマクロファージを誘導する組織特異的因子の同定を試みた。RPMをモデル細胞とし、HemeがSpi-cを誘導することを見出した。さらに、Hemeの分解酵素であるHmox1 (HO1)のcKOマウスを用いてマラリア感染におけるRPMの役割についても検討した。 | KAKENHI-PROJECT-24590584 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24590584 |
組織マクロファージの分化機構およびその生体内における機能の解析 | Spi-cを発現している細胞を可視化し生体内でもその挙動を追跡が可能であるSpi-c IRES GFPマウスの解析により、Redpulp macrophageの分化誘導に重要な転写因子Spi-cの発現を制御する組織特異的なシグナル(分子)の同定に成功した。しかし、conditional knock-outマウスの作製が遅れたため、その前駆細胞の同定がまだ完了していないため。免疫学作製した遺伝子改変マウスを用い、組織特異的マクロファージの前駆細胞の同定、および分化誘導機構の詳細なる解析をin vitroおよびin vivoにおいて進めていく予定である。現在、組織特異的な因子によってRed pulp macrophageの分化を基底している転写因子であるSpi-cが誘導されてくる事が明らかになったが、生体内での証明までには至っていない。理由の一つとして、conditional knock-outマウスの作成に時間をとられていた事が上げられる。しかし、それらのマウスの作成が完成したので、これらのマウスを用いることで生体内で誘導機構を明らかにできると考えている。遺伝子改変マウスの作製に予定以上に時間を要し、その結果マウスの解析が遅れたため。引き続きin vitroの系を用い、組織特異的マクロファージの誘導に関わる因子の同定、およびその誘導機構の詳細なる解析を行う。さらには、作成して種々のconditional KOマウスを用いてin vivoの系でも解析を行う予定である。引き続きin vitroの系を用い、組織特異的マクロファージの誘導に関わる因子の同定、およびその誘導機構の詳細なる解析を行う。さらには、作成して種々のconditional KOマウスを用いてin vivoの系でも解析を行う予定である。Spic遺伝子欠損マウス、およびSpic IRES-eGFPノックインマウスを解析するにあたり、細胞サブセットを解析するための抗体、細胞を分離してin vitroで培養するための培養機器および培地が必要である。さらに組替えDNA、および組替えタンパク質を作成するための各種試薬、培養器具が必要である。また、感染実験のために各種培養液、およびマウスの維持費が必要である。また、本研究の成果発表のための旅費およびその他校閲代金等が必要である。遺伝子改変マウスの作製に予定以上に時間を要し、その結果マウスの解析が遅れたため。Spic遺伝子欠損マウス、およびSpic IRES-eGFPノックインマウスを解析するにあたり、細胞サブセットを解析するための抗体、細胞を分離してin vitroで培養するための培養機器および培地が必要である。さらに組換えDNA、および組み替えタンパク質を作成するための各種試薬、培養器具等が必要である。 | KAKENHI-PROJECT-24590584 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24590584 |
カレン語のチベット・ビルマ語派に於ける類型論的位置づけから見る中国語の起源 | 本研究は、言語のクレオール化の観点から言語の歴史的発展形態のメカニズムを解明するための基礎調査として、歴史的なデータを保有しない言語-ここでは具体的にはカレン語-を取り上げ、統辞構造の体系的機能を徹底して究明することによって、その基本的類型を特定するためのデータ収集・分析が主な役割だった。報告書本体でも再三、指摘しているように、この言語に関しては一般言語学的議論に耐え得るような研究がほとんど出ていないという現状に鑑みれば、どうしても避けて通れない、一種の予備研究である。当然のことながら、カレン語の起源を裏付ける資料、その歴史的変化-具体的には「動詞後置言語」から「動詞中置言語」-を直接、示唆する記録は存在しない。しかしながら、報告書本体で詳しく取り上げているように、文末に於ける“文法的重力"が(今もって)その存在意義を盛んに主張していることは十分に確認できたと思う。このことが直接、カレン語のクレオール性を暗示しているとは言えないが、現代カレン語が中国語などの場合と全く同じように、現実には動詞自体を中置させつつも、統辞的には動詞の中置性と後置性の両方の属性を保持するという、ある種の“hybrid"的言語である可能性はかなり高い。一般言語学的に最も興味深いのは、いわゆる“Verb Serialization"をパスとする、統辞体系全体のシフトである。動詞の中置自体、仮にピジン段階で導入されたのであればかなり偶発的なものとも考えられるが、統辞体系のその後の発展はカレン語のクレオール化そのものの歴史を物語るからである。その中で、文末に於ける“文法的重力"の位置づけは極めて重要なものとなろう。一般言語学的な視点からも十分に活用できるほどの基礎データが収集できたことから、次段階に於ける周囲の言語との類型論的比較検討のより総合的な展開に期待したい。本研究は、言語のクレオール化の観点から言語の歴史的発展形態のメカニズムを解明するための基礎調査として、歴史的なデータを保有しない言語-ここでは具体的にはカレン語-を取り上げ、統辞構造の体系的機能を徹底して究明することによって、その基本的類型を特定するためのデータ収集・分析が主な役割だった。報告書本体でも再三、指摘しているように、この言語に関しては一般言語学的議論に耐え得るような研究がほとんど出ていないという現状に鑑みれば、どうしても避けて通れない、一種の予備研究である。当然のことながら、カレン語の起源を裏付ける資料、その歴史的変化-具体的には「動詞後置言語」から「動詞中置言語」-を直接、示唆する記録は存在しない。しかしながら、報告書本体で詳しく取り上げているように、文末に於ける“文法的重力"が(今もって)その存在意義を盛んに主張していることは十分に確認できたと思う。このことが直接、カレン語のクレオール性を暗示しているとは言えないが、現代カレン語が中国語などの場合と全く同じように、現実には動詞自体を中置させつつも、統辞的には動詞の中置性と後置性の両方の属性を保持するという、ある種の“hybrid"的言語である可能性はかなり高い。一般言語学的に最も興味深いのは、いわゆる“Verb Serialization"をパスとする、統辞体系全体のシフトである。動詞の中置自体、仮にピジン段階で導入されたのであればかなり偶発的なものとも考えられるが、統辞体系のその後の発展はカレン語のクレオール化そのものの歴史を物語るからである。その中で、文末に於ける“文法的重力"の位置づけは極めて重要なものとなろう。一般言語学的な視点からも十分に活用できるほどの基礎データが収集できたことから、次段階に於ける周囲の言語との類型論的比較検討のより総合的な展開に期待したい。3年計画の初年度に当たる本年度の課題は、本計画の中心となるインフォーマントとのインタビューによるカレン語データの収集と供に、これを周辺から支える文献資料の調査、並びに調査結果を「教科書」の形で公表する際に必要となる、カレン語文字フォントの作成にあった。この計画のうち、フォントの作製を除けば、当初の出遅れは幾分あったものの後半に集中して実行したため、かなりの遅れを取り戻すことができた。カレン語の音韻組織に関しては相当、体系的な捉え方ができるようになったと思えるし、基礎語彙の収集もかなり進んだ。また、まだ文法体系の全体像を提示するところまでは行っていないものの、日常会話のスタイルもある程度、確立できたので、第二年目には本格的な教科書の作成に取りかかれるところまできた。継続申請を出した時点ではまだかなり悲観的だったカレン語フォント作製だが、最近になってWindows用の欧文フォント作成ツールが偶然、入手できたので、実際のフォント開発はかなり時間がかかるものの、現在では相当の期待がもてるようになった。今年度は,昨年度に於ける伝統的な“品詞論"をベースにした調査を,教科書の編纂をも念頭に置いた,inter-subjechveな方向へと移行させた。こうした研究は,カレン語に関してはおそらく初めてのものであろうし,研究書・論文も皆無に近い。そのため,参考にできる資料が全くないので,データ収集から解釈に至るまで試行錯誤の繰り返しであり,ほんの短い対話の文法的分析でもかなり時間が懸かったが,そのせいで真に生の声に近い資料とカレン語全体の実態がかなり明白な形で浮き彫りになりつつある。教科書的な題材も思いのほか早く整い,既に半分以上のレッスンが集った。 | KAKENHI-PROJECT-06801064 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06801064 |
カレン語のチベット・ビルマ語派に於ける類型論的位置づけから見る中国語の起源 | 具体的には,カレン語は文法的にもやはり動詞の中置言語と後置言語の中間に位置し,ビルマ語の影響を強く受けながらも,やはり中置言語としての位置付けをより強くしつつある,という印象を抱く。本研究では中国語に於ける経緯に直接,言及することはできないが,次の研究ステップとしてのクレオール説に関係して、その方向性に十分、基体できるものと思われる。昨年度に引き続き、今年度も"談話"を念頭に置いた、inter-subject面に関する語法を中心に調査した。今年度は本研究の最終年度に当たり、当初の計画ではカレン語教科書の出版を予定していたが、予算の関係から出版自体は来年度の「成果刊行助成金」の方に廻し、昨年度の調査で非常に多くの問題を内抱していることが判明していた「談話機能」を持つ幾多の"不変化詞"の実態調査を、いわゆる"copulative predication"の構文法との絡みで集中的に推進した。その具体的な機能や文法体系内での位置付けに対する言語学的な解釈・評果については本研究全体に対する報告書に譲るが、問題となる"不変化詞"は日本語の体言助詞「は」「が」「も」などに極似した談話機能を持ちつつ、別の視点からは全く別個の行動様式をとる。そもそも、こうした不変化詞は、その典型とされる日本語や朝鮮語などに於ける体言助詞を含め、a prioriに「談話機能マ-カ」として位置づけられるべきものなのか?或いは逆に確固とした、文法体系内に組み込まれている"文法的機能語"としての位置付けが、コンテクストに応じて"流用"されるのか?カレン語のように、まだあまりよく知られていない言語からの認識は、一般言語学的懸案に関する議論に対しても決定的な意味さえ持ちうる。特に過去2年間に渡る調査で、カレン語に関しては、少なくともその実態は相当程度、明らかになり、最初の具体的成果が「カレン語教科書」として示せるはずだが、当該地域を初め、インドシナ各地には、この点に関してはまだまだ調査の進んでいない言語がかなり残っている。今後の調査研究に大いに期待される。類型論的に見ると、インドシナ地域は「動詞中置言語」と「動詞後置言語」の正に"衝突"とする地であり、両方の類型の特質を持つカレン語の位置付けは極めて微妙だ。今後の研究方向の足がかりを付けた、という意味からも、本研究の成果は十分に活用できるものとなるはずである。 | KAKENHI-PROJECT-06801064 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06801064 |
加齢する肢体不自由者の社会参加に関する学際的研究 | 平成14年度の研究概要として、以下の調査内容を実施し結果が明らかとなった。平成13年度に実施した30歳以上の加齢する肢体不自由障害者の「参加」の横断研究のコントロールスタディーとして、30歳以上の障害の無い人々いわゆる健常者に対し同一のアンケート項目を用い比較研究を行った。対象者は、関東地方に在住する30歳以上の健常者2000人に対し郵送によるアンケートを実施した。その結果、319名(有効回収率15.9%)から有効回答を得られた。結果より以下の点が判明した。1)ADLレベルに関しては平成13年度に実施した肢体不自由障害者に比べ健常者は断然高い2)参加の程度に関しても同様に平成13年度に実施した肢体不自由障害者に比べ断然参加の程度が高い。3)主観的満足感に関しては肢体不自由障害者の程度とあまり相違が見られない。つまり2点の結果より、肢体不自由障害者と健常者を比較した場合、ADLレベル及び参加の程度に関しては健常者が著しく高いが、主観的満足に関しては両者間にあまり差が見られない、ということが明らかとなった。この結果は調査実施前に予想していた、健常者は肢体不自由障害者に比べADLレベルはもとより参加の程度及び主観的満足度ともすべてかなりの相違が見られ健常者の方がはるかに高い、という仮設を全面的に支持しない結果となった。尚、今回の健常者の調査の回収率が昨年の肢体不自由障害者の回収率と比較してかなり低かった要因としては、本研究は肢体不自由障害者の参加との比較研究であり、健常者である対象者自身の問題に直接関係しないというネガティブな意識が挙げられるかと考える。平成13年度の研究実績としては次の2項目を実施しその結果以下の点が明確になった。1.先天的あるいは乳幼児期から肢体不自由を持つ人々の追跡調査日本肢体不自由児協会19911992年にかけて実施した生活実態調査の追跡調査を実施し、9年間にわたる機能変化及び社会参加の実態把握を行った。具体的方法としては、1991年に回答した441名全員に研究の趣旨を送付し承諾を得られた180名に対しアンケート調査を郵送にて実施した。評価方法としては、機能変化に関しては1991年に実施されたものと同様のものを用いその変化を見、又社会参加に関しては、CIQ (Community Integration Questionnaires)とR-CHART (Revised Craig Handicap Assessment and Reporting Technique)を用いた。その結果以2点が明らかとなった。1)障害程度が重度な対象者はADLの機能変化がほとんど見られず又ADLの機能変化の中で「外を歩き回る」「部屋の中の移動」「食事能力」は機能低下が見られ統計的にも有意であったが、「着替え」「トイレ」に関してはほとんど変化がなくt-検定の結果統計的に有意ではなかった。2)社会参加に関しては、障害の種別により大きな相違が見られた。対象者の障害の種別については、脳性麻痺・脊髄損傷・ポリオ・カリエス・その他であったが、CIQとR-CHARTを用いた社会参加度の評価結果は、ポリオが最も高く次にカリエス、脳性麻痺と続いており脊髄損傷は最も低かった。2.全国レベルによる加齢する肢体不自由者の社会参加の実態把握30歳以上の日本全国3300人の肢体不自由者(内訳:脊髄損傷障害者1000名・リウマチ700名・脳性麻痺500名・ポリオ1100名)に対し郵送調査にて、ADL機能レベルに関してはFIMを又社会参加に関してはCIQとR-CHARTを用いさらに主観的満足に関してはPGCモラールスケールを用いて評価測定を行った。その結果、1656名からの回答を得られた(回収率50.2%)。結果より次のことが判明した。1)社会参加に関しては障害の種別により大きく差異がみられる。2)社会参加と主観的満足度は比例する。本年度の研究実績としては以上2項目が明らかとなった。尚平成13年度に実施予定していた社会参加の尺度開発に関しては、新たなる障害概念であるICFの発表及びそれに引き続くICFのチェックリストの発表が大幅に遅れたため実施できなかった。よって次年度に実施する予定である。平成14年度の研究概要として、以下の調査内容を実施し結果が明らかとなった。平成13年度に実施した30歳以上の加齢する肢体不自由障害者の「参加」の横断研究のコントロールスタディーとして、30歳以上の障害の無い人々いわゆる健常者に対し同一のアンケート項目を用い比較研究を行った。対象者は、関東地方に在住する30歳以上の健常者2000人に対し郵送によるアンケートを実施した。その結果、319名(有効回収率15.9%)から有効回答を得られた。結果より以下の点が判明した。1)ADLレベルに関しては平成13年度に実施した肢体不自由障害者に比べ健常者は断然高い2)参加の程度に関しても同様に平成13年度に実施した肢体不自由障害者に比べ断然参加の程度が高い。3)主観的満足感に関しては肢体不自由障害者の程度とあまり相違が見られない。つまり2点の結果より、肢体不自由障害者と健常者を比較した場合、ADLレベル及び参加の程度に関しては健常者が著しく高いが、主観的満足に関しては両者間にあまり差が見られない、ということが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-13710122 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13710122 |
加齢する肢体不自由者の社会参加に関する学際的研究 | この結果は調査実施前に予想していた、健常者は肢体不自由障害者に比べADLレベルはもとより参加の程度及び主観的満足度ともすべてかなりの相違が見られ健常者の方がはるかに高い、という仮設を全面的に支持しない結果となった。尚、今回の健常者の調査の回収率が昨年の肢体不自由障害者の回収率と比較してかなり低かった要因としては、本研究は肢体不自由障害者の参加との比較研究であり、健常者である対象者自身の問題に直接関係しないというネガティブな意識が挙げられるかと考える。 | KAKENHI-PROJECT-13710122 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13710122 |
星間ダストから原始惑星系物質への進化解明のための新たなプローブの開発 | 本年度は、以下の研究を行った。1.Oxygen-rich AGB stars星周領域での結晶質シリケイトの存在量を明らかにするために、ダスト形成モデルに基づいてモンテカルロ法による輻射輸送計算を行った。結晶質シリケイトのスペクトル強度は、結晶質シリケイトの存在量だけでなく共存するアモルファスシリケイトの空間分布と温度分布に敏感である。観測にかかるスペクトルが現れる結晶質シリケイトの存在量の下限は、全シリケイトに対する質量比で10%程度であると結論した。2.ISOにより進化段階の異なる種々の天体で観測されたスペクトルの詳細から結晶質シリケイトの化学組成や形状に関する知見を得るために、科学組成が明確な人口及び天然バルク結晶の近赤外から遠赤外にかけての吸収係数の測定を行い、光学定数を算出した。算出した光学定数から結晶質シリケイト微粒子のスペクトルの位置と強度は微粒子の形状に強く依存することが明らかにされた。3.従来の天体環境下でのダスト形成は主に均質核形成過程だけを取り扱っていた。しかしながら最近の隕石中でのpresolar grainsの分析結果や天体観測結果は不均質核形成も重要なダスト形成過程である事を示唆する。天体環境下で形成されるダストの化学組成やサイズを明らかにするために、均質核形成だけでなく不均質核形成の過程を同時に考慮した定式化を完成させた。均質・不均質核形成を同時に考慮した炭素星星周領域でのダスト形成の詳細な考察は現在進行中である。今年度は主として以下の研究を行なった.(2)凝縮時の化学反応を考慮した核生成率の定式化.ダスト形成に関与する気体分子のうち最も衝突頻度の小さな分子種が生成のkineticsを規定するとの仮定のもとに,一般的に凝縮時の化学反応の効果を考慮した定常的核生成率を導出した.最近の宇宙赤外線天文台による観測は従来の常識を覆してoxygen-rich AGB星星周に結晶質シリケイトが存在することを明らかにした.Oxygenn-rich AGB星星周領域での結晶質シリケイトの起源を明らかにするために,均質なAl_2O_3とシリケイトダストだけでなく先に凝縮したAl_2O_3を核としシリケイトのマントルで覆われた不均質ダストの形成と,形成後の結晶化の素過程を考察し,均質なシリケイトダストは非晶質であるが,星からの質量放出量が3×10^<-5>M_<【of sun】>yr^<-1>以上であれば,不均質ダストのマントルシリケイトが結晶化することを示した.本年度は、以下の研究を行った。1.Oxygen-rich AGB stars星周領域での結晶質シリケイトの存在量を明らかにするために、ダスト形成モデルに基づいてモンテカルロ法による輻射輸送計算を行った。結晶質シリケイトのスペクトル強度は、結晶質シリケイトの存在量だけでなく共存するアモルファスシリケイトの空間分布と温度分布に敏感である。観測にかかるスペクトルが現れる結晶質シリケイトの存在量の下限は、全シリケイトに対する質量比で10%程度であると結論した。2.ISOにより進化段階の異なる種々の天体で観測されたスペクトルの詳細から結晶質シリケイトの化学組成や形状に関する知見を得るために、科学組成が明確な人口及び天然バルク結晶の近赤外から遠赤外にかけての吸収係数の測定を行い、光学定数を算出した。算出した光学定数から結晶質シリケイト微粒子のスペクトルの位置と強度は微粒子の形状に強く依存することが明らかにされた。3.従来の天体環境下でのダスト形成は主に均質核形成過程だけを取り扱っていた。しかしながら最近の隕石中でのpresolar grainsの分析結果や天体観測結果は不均質核形成も重要なダスト形成過程である事を示唆する。天体環境下で形成されるダストの化学組成やサイズを明らかにするために、均質核形成だけでなく不均質核形成の過程を同時に考慮した定式化を完成させた。均質・不均質核形成を同時に考慮した炭素星星周領域でのダスト形成の詳細な考察は現在進行中である。 | KAKENHI-PROJECT-10874038 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10874038 |
非線形退化楕円型偏微分方程式の研究 | 非線形楕円型偏微分方程式の粘性解の存在、一意性及びその応用について研究を行った。これまでに得られている結果の検討を行い、各地の専門研究者との研究打ち合せを行い、さらに関連ある研究会等に参加しながら、研究を進めた。具体的な経過としては、半連続な関数に対する最大値原理の定式化とその証明を行った。これは特別な形をした半連続な関数には一般化された2階微分が存在することを主張するもので、粘性解の理論において基本的な役割を果す。この結果により、有限次元空間における粘性解の理論は大変完成度の高いものとなった。ついで、一般化された平均曲率流方程式への応用を研究した。この方程式の特徴は、方程式を定義する関数が1階微分に対応する変数について特異点を持つことである。この研究では、粘性解理論における試験関数として4次関数を取ることにより上記の難点が解消できることを示した。また、スイッチング・ゲームとの関連において現れる偏微分方程式の系への粘性解の理論の拡張を行った。この偏微分方程式系の特徴は未知関数に対応した変数について単調な系であることを指摘し、この意味で単調な系についての粘性解の理論を構築した。その一過程として、微分方程式系に対するペロンの方法の新しい定式化を行った。また、偏微分方程式または確率偏微分方程式で記述されている系の制御あるいは微分ゲームとの関連で2階退化偏微分方程式(ベルマン・アイザックス方程式)を考察し、無限次元空間上の新しい粘性解の概念を導入し、その一意存在についての結果を得た。さらに、2次の非線形項を持つ退化放物型方程式について弱解の存在と一意性についての研究を行った。この研究では弱解に半優調和であることを要請して、解の一意存在を示した。非線形楕円型偏微分方程式の粘性解の存在、一意性及びその応用について研究を行った。これまでに得られている結果の検討を行い、各地の専門研究者との研究打ち合せを行い、さらに関連ある研究会等に参加しながら、研究を進めた。具体的な経過としては、半連続な関数に対する最大値原理の定式化とその証明を行った。これは特別な形をした半連続な関数には一般化された2階微分が存在することを主張するもので、粘性解の理論において基本的な役割を果す。この結果により、有限次元空間における粘性解の理論は大変完成度の高いものとなった。ついで、一般化された平均曲率流方程式への応用を研究した。この方程式の特徴は、方程式を定義する関数が1階微分に対応する変数について特異点を持つことである。この研究では、粘性解理論における試験関数として4次関数を取ることにより上記の難点が解消できることを示した。また、スイッチング・ゲームとの関連において現れる偏微分方程式の系への粘性解の理論の拡張を行った。この偏微分方程式系の特徴は未知関数に対応した変数について単調な系であることを指摘し、この意味で単調な系についての粘性解の理論を構築した。その一過程として、微分方程式系に対するペロンの方法の新しい定式化を行った。また、偏微分方程式または確率偏微分方程式で記述されている系の制御あるいは微分ゲームとの関連で2階退化偏微分方程式(ベルマン・アイザックス方程式)を考察し、無限次元空間上の新しい粘性解の概念を導入し、その一意存在についての結果を得た。さらに、2次の非線形項を持つ退化放物型方程式について弱解の存在と一意性についての研究を行った。この研究では弱解に半優調和であることを要請して、解の一意存在を示した。非線形楕円型偏微分方程式の粘性解の存在、一意性及びその応用について研究を行った。これまでに得られている結果の検討を行い、各地の専門研究者との研究打ち合せを行い、さらに関連ある研究会等に参加しながら、研究を進めた。具体的な経過としては、半連続な関数に対する最大値原理の定式化とその証明を行った。これは特別な形をした半連続な関数には一般化された2階微分が存在することを主張するもので、粘性解の理論において基本的な役割を果たす。この結果により、有限次元空間における粘性解の理論は大変完成度の高いものとなった。ついで、一般化された平均曲率流方程式への応用を研究した。この方程式の特徴は、方程式を定義する関数が1階微分に対応する変数について特異点を持つことである。この研究では、粘性解理論における試験関数として4次関数を取ることにより上記の難点が解消できることを示した。また、スイッチング・ゲ-ムとの関連において現れる偏微分方程式の系への粘性解の理論の拡張を行った。この偏微分方程式系の特徴は未知関数に対応した変数について単調な系であることを指摘し、この意味で単調な系についての粘性解の理論を構築した。その一過程として、微分方程系に対するPerronの方法の新しい定式化を行った。さらに、偏微分方程式または確率偏微分方程式で記述されている系の制御あるいは微分ゲ-ムとの関連で2階退化偏微分方程式(BellmanーIsaacs方程式)を考察し、無限次元空間上の新しい粘性解の概念を導入し、その一意性と存在についての結果を得た。非線形楕円型偏微分方程式の粘性解の存在,一意性及びその応用について研究を行った。これまでに得られている結果の検討を行い,各地の専門研究者との研究打ち合わせを行い,さらに関連ある研究会等に参加しながら,研究を進めた。本年度における研究経過は次のようになる。 | KAKENHI-PROJECT-02640150 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02640150 |
Subsets and Splits
No community queries yet
The top public SQL queries from the community will appear here once available.