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In vitro発毛システムの開発とWntシグナルによる発毛再生機序の解明 | 発毛には、皮膚上皮幹細胞(EpSCs)と毛乳頭細胞(DPCs)が必須であるが、これらのin vitro培養系の確立はいまだ達成されていない。そこで、本研究では、それらの細胞の培養方法を確立し、in vitro発毛システムに適用することで、試験管内における毛包の再生を検討した。成体マウスから単離したEpSCsは、Wnt-3aにより未分化な状態を維持できる可能性が示唆された。また、DPCsに対しWnt-10bは、細胞増殖および発毛誘導能の維持に効果的であった。このようにして得られたEpSCsとDPCsのin vitro共培養(in vitro発毛システム)を行った結果、毛様構造が認められた。発毛には、皮膚上皮幹細胞(EpSCs)と毛乳頭細胞(DPCs)が必須であるが、これらのin vitro培養系の確立はいまだ達成されていない。そこで、本研究では、それらの細胞の培養方法を確立し、in vitro発毛システムに適用することで、試験管内における毛包の再生を検討した。成体マウスから単離したEpSCsは、Wnt-3aにより未分化な状態を維持できる可能性が示唆された。また、DPCsに対しWnt-10bは、細胞増殖および発毛誘導能の維持に効果的であった。このようにして得られたEpSCsとDPCsのin vitro共培養(in vitro発毛システム)を行った結果、毛様構造が認められた。近年、毛包組織内の発毛に関わる細胞種として、毛包上皮幹細胞(Hair follicle epithelial stem cells ; EpSCs)が注目されている。EpSCsは毛乳頭以外の毛包組織を構築することができるため、毛包の完全再生が実現可能であると言えるが、いまだin vitroでの発毛(毛包組織再構築)は実現できていない。そこで、EpSCsを毛包再構築のソースにする「in vitro発毛システム」を開発し、特に発毛過程で最近注目されているWntシグナルに焦点を当てて解析を進めることを本研究の目的とした。まず本年度は、in vitro発毛システムを実現するためのソース(細胞)の準備およびキャラクタリゼーションを行った。即ち、EpSCsおよび毛乳頭細胞(dermal papilla cells ; DPCs)を長期培養系の樹立、さらに各種Wntを強制発現させた細胞株の樹立を行った。EpSCsは、成体マウスの背部皮膚組織より単離し、さらにCD34,CD49fの染色後、ソーティングを行うことで単離した。また、DPCsは、マウス口髭より単離し、bFGFを加えた培養系により維持可能な系を確立した。In vitroの培養系で、EpSCsに対して種々のWntを付加した結果、Wnt-3aのみが未分化な状態を維持できる可能性が示唆された。また、Wnt-3aによって維持されたEpSCsはヌードマウスを用いた発毛誘導実験において毛包の新生を認めた。来年度、確立した培養EpSCsとDPCsをin vitroで共培養することで、in vitroにおいても毛包が再構築されるか否かの検証することで、in vitro発毛システムを開発し、さらにWntシグナルにより毛包構築が如何に変化するかを検討する。毛包の再生には、少なくとも2種の細胞(上皮系細胞・間葉系細胞)が必須であり、これらのin vitro培養系の確立はいまだ達成されていない。そこで、本研究では、それらの細胞の培養方法を確立し、in vitro発毛システムに適用することで、試験管内における毛包の再生を検討した。平成22年度、毛包上皮幹細胞(hair follicle epithelial stem cells;EpSCs)の単離および培養に成功し、それらのキャラクタリゼーションを行った。今年度(平成23年度)は、毛包再生に必要な、もう一つの細胞種である毛乳頭細胞(dermal papilla cells;DPCs)に注目し、in vitro培養系の確立を行った。DPCsの培養維持には、bFGFを加えた培養系の報告があるが、今年度は、私が注目してきたWntシグナルのWnt-10bのDPCsに対する影響を調べた。DPCsをマウス口髭より単離し、Wnt-10bを加えた場合、増殖能を亢進させ、ヌードマウスを用いた発毛実験において毛包の新生を認めた。このことから、Wnt-10bは、増殖および発毛誘導能の維持に対して効果的であることが示唆された。このようにして得られたEpSCsとDPCsのin vitro共培養を行った結果、毛様構造が認められた。今後は、この毛様構造物を詳細に解析し、さらに培養条件を検討することで、in vitroでの発毛システムの確立を目指す。更に、Wntシグナルによる毛包構築の変化等を検討することで、Wntシグナルの発毛現象における関わりを解明する。 | KAKENHI-PROJECT-22791083 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22791083 |
スウェーデンにおける幼小接続の政策及び実践から見た思想的特徴に関する研究 | 本研究は、スウェーデンにおける就学前保育・教育と学校教育の接続について、背景となっている思想的な特徴について探求することを目的とする。その際、地方自治体間の地域差、及び自治体における政策と実践の差異を焦点化する。これにより、「政策ー実践」と「地域(地方自治体)」という二つの位相から、スウェーデンの幼小接続について、より実情に迫った形で、背景としての思想的特徴を構造的に明らかにする。本研究は、スウェーデンにおける就学前保育・教育と学校教育の接続について、背景となっている思想的な特徴について探求することを目的とする。その際、地方自治体間の地域差、及び自治体における政策と実践の差異を焦点化する。これにより、「政策ー実践」と「地域(地方自治体)」という二つの位相から、スウェーデンの幼小接続について、より実情に迫った形で、背景としての思想的特徴を構造的に明らかにする。 | KAKENHI-PROJECT-19J22958 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19J22958 |
世界人口センサスの方法的転回と政府統計体系の変容にかんする国際比較研究 | 本研究の課題は、構造的な転換期を迎えた人口センサスの方法的転回と統計体系の変容方向を把握するために、米・英・独・仏国と日本について実証的な国際比較分析を行い、21世紀における統計情報政策の政策科学的な基礎を国際的な視野から構築することであった。本調査研究では、第1に、2000年ラウンド世界人口センサスの実施経過と2010年ラウンド世界人ロセンサスの構想・企画にかんする実地調査(平成1316年度:英・独・米・仏国)を実時間的に行い、欧米諸国における人口過少把握問題の具体相とセンサス方法の変革状況、とくにEU大陸諸国におけるセンサス方法の基本的な転換(全数調査様式から行政→統計登録簿様式)の動向を精査した。第2に共同研究会(平成14年度:国際シンポジウム・九大経済学部と日本学術会議、平成16年度:熊本学園大学(経済統計学会)と青山学院大学学術研究所を開催することによって、先進主要国における人口センサスの方法転換の動因が、(1)各国民の人口センサスにたいする受容度の低下、(2)調査経費の肥大化と地方実査機構の脆弱化、および(3)政府省庁における多様な行政情報-行政登録簿システムの電算化・自動化にあることを確認するとともに、2010年ラウンド世界人口センサスに向けて、方法転換の方向性が、(1)英米国の未回答者追跡型(Form Tracking System)、(2)仏国の輪番型センサス(Rolling Census)、および(3)独国の行政登録簿型センサスと、克服の重点が置かれる動因と各国の統計事情によって異なることを確証し、センサス方法の転換が、日本の国勢調査においても迫られていることを明確にした。これらの分析結果は、いずれも日本統計研究所『研究所報』に特集され、それを踏まえて、平成17年国勢調査の方法転換問題における意義について政策的な発言を行った。本研究プロジェクトの課題は、構造的な転換期を迎えた行政→統計登録簿システムによる人口センサスの方法的転回と統計体系の変容方向を把握するために、米・英・独・仏国と日本について実証的な国際比較分析を行い、21世紀における統計情報政策の政策科学的な基礎を国際的な視野から明らかにすることである。初年度である平成13年度は,日本統計学会(昨年9月)において、研究代表者である濱砂敬郎と分担者の西村善博が、展開方向が異なるドイツとフランスにおける新しい人口センサスの構想(行政登録簿方式とローリング方式)にかんして研究発表を行うことによって、人口センサスに方法様式の転換を迫る社会的動因が(1)統計調査環境問題の深刻化(都市住民の調査非協力意識の拡大と調査員業務の困難化等)、(2)(1)が引き起こす調査経費の肥大化と統計機構の脆弱化(地方自治体等の統計実査機構の負担の増加)および(3)政府各省庁における行政目的の個人記録情報の集積とその自動処理システム化にあることを明らかにした。また,研究発表によって、本研究プロジェクトの問題認識と研究計画について国内の統計研究者や政府統計指導者の情報・意見を求めることができ、それにもとづいて、本研究プロジェクトの研究会を開催し,研究計画の再点検を行っている。他方、濱砂と研究分担者の森博美をドイツとイギリスに派遣することによって、センサス様式の改編にかんする実情調査を実施するとともに、来年度の共同調査にかんする打合せを行っている。さらにわが国の平成12年度国勢調査の最高指導者であった井上達夫元総務省統計局長と舟岡史雄統計審議会人口・労働統計部会長にたいしてヒャリングを行い、統計行政の観点からみた人口センサスの現状と課題について機関内情報を得ている。本研究の課題は、構造的な転換期を迎えた人口センサスの方法的転回と統計体系の変容方向を把握するために、米・英・独・仏国と日本について実証的な国際比較分析を行い、21世紀における統計情報政策の政策科学的な基礎を国際的な視野から構築することであった。本調査研究では、第1に、2000年ラウンド世界人口センサスの実施経過と2010年ラウンド世界人ロセンサスの構想・企画にかんする実地調査(平成1316年度:英・独・米・仏国)を実時間的に行い、欧米諸国における人口過少把握問題の具体相とセンサス方法の変革状況、とくにEU大陸諸国におけるセンサス方法の基本的な転換(全数調査様式から行政→統計登録簿様式)の動向を精査した。第2に共同研究会(平成14年度:国際シンポジウム・九大経済学部と日本学術会議、平成16年度:熊本学園大学(経済統計学会)と青山学院大学学術研究所を開催することによって、先進主要国における人口センサスの方法転換の動因が、(1)各国民の人口センサスにたいする受容度の低下、(2)調査経費の肥大化と地方実査機構の脆弱化、および(3)政府省庁における多様な行政情報-行政登録簿システムの電算化・自動化にあることを確認するとともに、2010年ラウンド世界人口センサスに向けて、方法転換の方向性が、(1)英米国の未回答者追跡型(Form Tracking System)、(2)仏国の輪番型センサス(Rolling Census)、および(3)独国の行政登録簿型センサスと、克服の重点が置かれる動因と各国の統計事情によって異なることを確証し、センサス方法の転換が、日本の国勢調査においても迫られていることを明確にした。これらの分析結果は、いずれも日本統計研究所『研究所報』に特集され、それを踏まえて、平成17年国勢調査の方法転換問題における意義について政策的な発言を行った。 | KAKENHI-PROJECT-13303002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13303002 |
世界人口センサスの方法的転回と政府統計体系の変容にかんする国際比較研究 | 本研究プロジェクトの課題は、構造的な転換期を迎えた人口センサスの方法的転回(全数調査方式から行政→統計登録簿システムへの転換)と統計体系の変容方向を把握するために、米・英・独・仏国と日本について実証的な国際比較分析を行い、21世紀における統計情報政策の政策科学的な基礎を国際的な視野から明らかにすることである。平成14年度は、本研究プロジェクトの初年度である平成13年度における海外調査、学会における準備報告と討論、および政府統計関係者にたいするヒアリングを踏まえて、日本学術会議との共催によって2000年ラウンド世界人口センサスと今後の展望にかんする国際シンポジウムを、平成14年11月に九州大学大学院経済学研究院(福岡)と日本学術会議(東京)において企画・開催した。シンポジウムには、イギリス、ドイツ、およびアメリカ、さらには国内研究機関から人口センサスの指導的な専門家やセンサス機関関係者を講演者として招き、センサス様式の転換の様相とセンサスマイクロデータの利用について情報交換を行い、とくにアメリカからは、次期2010年ラウンド世界人口センサスの方法的構想が報告された。それは、センサスの全数性を放棄するフランスの方法的転換(研究分担者の西村善博の調査研究)とは異なって、センサスの調査事項を人口の基本属性に限定することによって、全数性を確保する人口センサスの本源的な様式への回帰であって、ドイツの新しい人口統計登録簿による完全センサス(レジスターベースセンサスー浜砂の調査研究)とあわせて考慮すると、人口センサスの方法的転換が多様な方向を辿りつつある様相が確認された。また、国際シンポジウムでは、来年度以降の共同研究について協議し、それにもとづいて、浜砂は平成15年1月にドイツ連邦統計局を訪問し、現在進行中である新しい人口センサスのための試験調査の実施状況を実地に調査している。本研究プロジェクトの課題は、構造的な転換期を迎えた人口センサスの方法的転回と統計体系の変容方向を把握するために、米・英・独・仏国と日本について実証的な国際比較分析を行い、21世紀における統計情報政策の政策科学的な基礎を国際的な視野から明らかにすることである。平成15年度は、本研究プロジェクトのこれまでの調査研究と国際研究集会(平成13年度の海外調査、学会報告、平成14年度政府統計関係者ヒアリング、日本学術会議との共催による2000年ラウンド世界人口センサスと今後の展望にかんする国際シンポジウム:11月に九大大学院経済学研究院(福岡)と日本学術会議(東京))によって得られた研究成果をWorkshop on Population and Census Micro Data(日本統計研究所(法政大:英文論文5編)として刊行するとともに、2010年人口センサスに向けて、多様な方法転換(米国:調査項目を限定し、全数把握の貫徹化・仏国:ローリングセンサスによる全数性の放棄、独国:行政登録簿=人口統計登録簿ベースの完全センサス化、英国:調査員方式から郵送方式への転換等)を辿り始めた各国の動因と計画について、資料調査と実地調査を実施した(派遣延べ5名)。また、欧米諸国とは異なる統計事情にある発展途上国のセンサス様式に調査研究を拡張するために、ベトナムに濱砂を派遣した。 | KAKENHI-PROJECT-13303002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13303002 |
未解決のCoffin-Siris症候群に対する戦略的遺伝子探索 | Coffin-Siris症候群(Coffin-Siris Syndrome;CSS)は、1970年にCoffin医師とSiris医師により、知的障害、発育不全、小頭、特異的顔貌、第5指・趾爪の低形成を伴う症候群として初めて報告された。その大多数は孤発例で、遺伝的原因は不明であった。これまで多くのCSS症例を集積し、次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝子変異の探索を行ってきた。その結果、解析した全症例148症例中88症例(59.5 %)でSMARCB1、SMARCA4、SMARCE1、ARID1A、ARID1B、あるいはSOX11のいずれかのサブユニットに変異を認めた。Coffin-Siris症候群(Coffin-Siris Syndrome,CSS)は、1970年にCoffin医師とSiris医師により、知的障害、発育不全、疎な頭髪および睫毛、特異顔貌、第5指・趾爪の低形成もしくは欠失を伴う症候群として報告された。我々は,CSS症例のゲノムDNAを用いて、次世代シークエンサーを用いた全エクソーム解析(Whole Exome Sequencing,WES)を行い、2012年に世界で初めてクロマチンリモデリング因子の1種であるBAF複合体の構成サブユニットをコードする5つの遺伝子(SMARCB1・SMARCA4・ARID1A・ARID1B・SMARCE1)を同定した。この遺伝子異常を病因としたCSS症例は全体のおよそ55.0 %であり、未解決の症例では新たな遺伝子の関与が示唆されていた。そこで、BAF複合体の構成サブユニットをコードする遺伝子群に異常を認めないCSS症例とその両親検体を用いて、WESにより遺伝子変異探索を行った。その結果、2例においてSOX11にde novo変異を見出した。転写因子であるSOX11はBAF複合体ネットワークの下流で、神経細胞の分化制御などに重要な役割を果たしていることが報告されている。本遺伝子がヒトの脳組織で発現していることを確認し、ゼブラフィッシュにおいて、モルフォリノアンチセンスオリゴにより相同遺伝子の機能を阻害すると、頭部の縮小、中枢神経の細胞死などの異常が認められ、CSSの症状を模倣していた。本年度は、新たなCSS検体を用いて、NGSによる網羅的遺伝子変異の探索を行った。その結果、CSS6例においてARID1Bに変異が認められ、責任遺伝子が同定された。2015年4月より所属機関が変更となり、研究の立ち上げに時間を要したため。しかしその後は、着実にNGSを用いた解析を行っており、6症例において責任遺伝子を同定した。Coffin-Siris症候群(Coffin-Siris Syndrome,CSS)は、1970年にCoffin医師とSiris医師により、知的障害、小頭、発育不全、特異的顔貌、第5指・趾爪の低形成を特徴とする症候群として初めて報告された。遺伝形式は、家族の中には全く罹患者がみられない孤発例が大多数を占めるが、家族例や同胞例も報告されていることから、常染色体優性遺伝、常染色体劣性遺伝、X連鎖性遺伝も想定される。我々は世界で初めて、エクソンキャプチャー法と次世代シークエンス技術を組み合わせた、全エクソーム解析(WES)により、クロマチン再構成因子の1種であるBAF複合体の構成サブユニットをコードする遺伝子群、SMARCB1、SMARCA4、ARID1A、ARID1B、およびSMARCE1の5種類の遺伝子のいずれかに変異を認めた。この5種類の遺伝子群を病因としない未解決の症例も存在していることから、新たな遺伝子の関与が示唆されていた。そこで、WESにより網羅的遺伝子変異の探索を行ったところ、2症例においてSOX11のde novo変異を同定した。本研究では、引き続きCSS症例を集積し、次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝子変異の探索を行った。その結果、これまで解析した全症例を含めて、148症例中88症例(59.5%)で、SMARCA4(14症例、15.9%)、SMARCB1(10症例、11.4%)、SMARCE1(2症例、2.3%)、ARID1A(6症例、6.8%)、ARID1B(54症例、61.4%)、あるいはSOX11(2症例、2.3%)に変異を認めた。責任遺伝子が明らかになることにより、早期に遺伝子診断を行うことが可能となり、また病態が解明されることにより、早い段階で適切な療育が施され、患児の長期的予後は改善することが期待される。Coffin-Siris症候群(Coffin-Siris Syndrome;CSS)は、1970年にCoffin医師とSiris医師により、知的障害、発育不全、小頭、特異的顔貌、第5指・趾爪の低形成を伴う症候群として初めて報告された。その大多数は孤発例で、遺伝的原因は不明であった。これまで多くのCSS症例を集積し、次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝子変異の探索を行ってきた。その結果、解析した全症例148症例中88症例(59.5 %)でSMARCB1、SMARCA4、SMARCE1、ARID1A、ARID1B、あるいはSOX11のいずれかのサブユニットに変異を認めた。責任遺伝子が同定された症例に関しては、その遺伝子産物の性状に応じた機能解析を行っていく。 | KAKENHI-PROJECT-15K19660 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K19660 |
未解決のCoffin-Siris症候群に対する戦略的遺伝子探索 | 既知の責任遺伝子が同定できない症例に関しては、WESをトリオ解析(患児、両親)で行い、de novo変異を確認し、新規責任遺伝子の同定を試みる。人類遺伝学2015年4月より所属機関が変更となり、研究の立ち上げに時間を要したため。学会発表のための旅費や、研究のための消耗品費に使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-15K19660 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K19660 |
地域分散型解析による地震の系統的震源情報取得のための研究 | 地震は急激な断層運動で起こるが、その断層の向き・大きさやすべりの時空間分布など、起こり方は決して単純ではない。地震の起こり方が何で決まるのかを理解するには、多くの事例に対して、同じ手法で導かれた震源モデルの解析結果を蓄積することが重要である。近年、世界各地で設置が進んでいる地域的規模の広帯域地震観測網のデータには、遠地データでは検出しにくい地震の震源特性の情報が含まれる。遠地の記録に比べ、より小さな地震の震源特性を調べることもできる。本研究では、そのような地域的な地震波形データを使用して系統的な震源モデル解析を推し進めるために、地震の震源パラメタ(震源メカニズム解、すべりの方位特性・時空間分布など)を容易に推定できる解析プログラムを開発した。チリ、トルコ、パキスタン等の地震の解析に適用され、震源メカニズム解、すべり時空間分布、応力降下量、応力場などを導くことに成功した。最終的なテストは、2005年チリ北部で発生したやや深い地震について行った。この地震の震動は、チリ大学所有の5台の加速度強震計により震央距離300km以内で記録され、本解析プログラムを日本国外で試す絶好の機会となった。内部速度構造モデルの不確定さが解析上の問題となったが、震源再決定の操作を加えることで、簡便に、効率的に問題を取り除くことに成功した。この改良により、世界に多く存在するだろう、速度モデルが確立されていない地域においても、本開発プログラムがより確実に解をもたらすことが期待できる。トルコ、パキスタンでは、少ない広帯域地震計の記録から、小さな地震の震源メカニズム解を決定、その解は応力場の推定に使われた。本研究で完成した解析プログラムは、英文操作説明書とともに希望者に配布している。今後の地震への更なる適用により、全世界における系統的な地震の震源情報の取得・蓄積が期待される。地震は急激な断層運動で起こるが、その断層の向き・大きさやすべりの時空間分布など、起こり方は決して単純ではない。地震の起こり方が何で決まるのかを理解するには、多くの事例に対して、同じ手法で導かれた震源モデルの解析結果を蓄積することが重要である。近年、世界各地で設置が進んでいる地域的規模の広帯域地震観測網のデータには、遠地データでは検出しにくい地震の震源特性の情報が含まれる。遠地の記録に比べ、より小さな地震の震源特性を調べることもできる。本研究では、そのような地域的な地震波形データを使用して系統的な震源モデル解析を推し進めるために、地震の震源パラメタ(震源メカニズム解、すべりの方位特性・時空間分布など)を容易に推定できる解析プログラムを開発した。チリ、トルコ、パキスタン等の地震の解析に適用され、震源メカニズム解、すべり時空間分布、応力降下量、応力場などを導くことに成功した。最終的なテストは、2005年チリ北部で発生したやや深い地震について行った。この地震の震動は、チリ大学所有の5台の加速度強震計により震央距離300km以内で記録され、本解析プログラムを日本国外で試す絶好の機会となった。内部速度構造モデルの不確定さが解析上の問題となったが、震源再決定の操作を加えることで、簡便に、効率的に問題を取り除くことに成功した。この改良により、世界に多く存在するだろう、速度モデルが確立されていない地域においても、本開発プログラムがより確実に解をもたらすことが期待できる。トルコ、パキスタンでは、少ない広帯域地震計の記録から、小さな地震の震源メカニズム解を決定、その解は応力場の推定に使われた。本研究で完成した解析プログラムは、英文操作説明書とともに希望者に配布している。今後の地震への更なる適用により、全世界における系統的な地震の震源情報の取得・蓄積が期待される。平成16年度、以下の3点を実施した。(2)(3)の成果は、2004年アメリカ地球物理学連合で発表した。(1)プログラム公開にむけた準備公開にむけてプログラムの整備を実施。マニュアル等の製作をすすめた。(2)実体波の振幅値および比を用いた震源解析の可能性の検討短周期地震計のP波やS波の振幅およびその比を用いることによる、震源解析の可能性を検討した。(3)他のプログラムパッケージをもとにアジア諸国での地震の震源解析での問題点の検証他の解析プログラムパッケージを用いて、フィリピンで発生した地震の震源解析を実施。アジア諸国での震源解析における問題点を明らかにするとともに、プログラム公開時にどのような情報が必要となるのかを調査した。対象は1994年フィリピン・ミンドロ地震(Ms7.1)とした。この地震は右横ずれ地震ながら、大きな津波を伴い被害をもたらした。津波を起こしたメカニズムは未だ謎である。プログラムパッケージが公開されている遠地実体波逆問題解析により、多点震源メカニズム解と矩形断層面上すべり分布の2つの震源モデルを決定した。得られた結果では、南方に伝播する横ずれ断層成分が卓越。P波初動解やハーバード大学CMT解とも調和的である。また、遠地長周期表面波の振幅・位相の方位特性も、横ずれ断層が卓越するメカニズムで説明できる。一方で、P波波形偉複雑な様相を呈する。世界各地の地震波形から、南北に分布する2つのサブイベントの存在が確認できる一方、距離や方位に対する地震波形の特徴の変化から、波形を複雑にみせている地震波には、地震の震源起因ではなく、地表での反射波や地下構造に起因すると思われるものがある。 | KAKENHI-PROJECT-16540385 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16540385 |
地域分散型解析による地震の系統的震源情報取得のための研究 | 震源解析において、これらの評価が必要であることを暗示する。本研究で開発した解析プログラムを2005年6月チリ北部で起きたやや深い地震へ適用、プログラムのテスト・改良を行った。この地震の震動は、チリ大学所蔵の5台の加速度強震計により震央距離300km以内で記録されており、本解析プログラムを国外で試す絶好の機会となった。本開発プログラムから得たモーメントテンソル解は、水平および鉛直方向の節面をもつ縦ずれ成分に卓越するメカニズムである。この解は、ハーバード大学の解と類似し、遠地P波の初動分布とも調和的である。求めたメカニズム解の2つの節面を使って、面上でのすべり分布を本解析プログラムから決定した。水平な面上でのすべり分布は、鉛直な面に比べて観測地震波形をよく説明する。余震の分布が水平であることにも合い、地震が水平な断層面で起こったことを示唆する。高すべり領域は、震源付近にある。大きさは4020km四方、静的応力降下量は10-80MPaとなる。ほとんどのすべりは、開始から20秒以内に終わっている。これらの応力降下量やすべり継続時間は、深い地震やプレート内部地震について過去に調べられた値に近い。この地震の特徴が深い地震やプレート内部地震の特徴に由来することが伺える。すべり分布を推定するに当たって、使用データから震源を再決定する必要があった。NEIC震源を用いた場合、地震波の到着時刻がずれ、正しいすべり分布を得られなかった。この問題は、速度モデルの改善では解決できなかった。一方、震源再決定の操作により、速度モデルの誤差を簡単に効率的に消せた。この結果から、本解析プログラムに、新たに、震源決定プログラムを追加した。これにより、速度モデルがよく調べられていない地域においても、本開発プログラムがより確実に解をもたらすことが期待できる。完成したプログラムは、操作案内とともに希望者に配布を始めている。 | KAKENHI-PROJECT-16540385 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16540385 |
苦しみと身体についての倫理学的研究 | 「苦しみ」、「身体」、「他者」、「性」を基幹のテーマとする本研究は、とくにそれらの交差する、「生殖」、「性差」、「女性的なもの」というより具体的なテーマに焦点を当て、一方で、レヴィナス思想研究においてこれらのテーマの重要性を明らかにするとともに、他方で、フェミニスト思想を参照しつつ、生殖を他なるものと性差、苦しみの観点から考察し、さらには生殖技術の現状や問題点を具体的に把握した上で、当技術の意味や影響などを哲学・倫理学的にどのようにとらえられるかについても考察した。「苦しみ」、「身体」、「他者」、「性」を基幹のテーマとする本研究は、とくにそれらの交差する、「生殖」、「性差」、「女性的なもの」というより具体的なテーマに焦点を当て、一方で、レヴィナス思想研究においてこれらのテーマの重要性を明らかにするとともに、他方で、フェミニスト思想を参照しつつ、生殖を他なるものと性差、苦しみの観点から考察し、さらには生殖技術の現状や問題点を具体的に把握した上で、当技術の意味や影響などを哲学・倫理学的にどのようにとらえられるかについても考察した。倫理学において、重点的に考察されることの必ずしも多くない、人間存在の負の在り方に焦点を合わせ、とくに苦しみや悪という観点からそれを明らかにすることが本研究の大きな目的であるが、本年度は、下記のいくつかの側面からこれを部分的に達成することができた。第一に、博士論文まで中心に行っていた、レヴィナス研究を基にしつつも、レヴィナスにとどまらない思想、たとえばレヴィナスが批判的にであれ引き継いだ現象学をはじめとする思想や、レヴィナスと関連性をもつ精神分析や心理学をも含めた諸テキストにおいて、広く、苦しみ、悪、身体といった問題を考察した。第二に、女性をめぐる身体と苦しみというテーマに関わる研究にも本格的に着手した。これは前年度末に発表した「初期レヴィナスにおける「女性的なもの」と「存在のエコノミー」」に連なるもので、レヴィナス思想全体における「女性的なもの」と身体性の意義を考察することに加え、レヴィナスを超えて、ジェンダー論も視野に入れた女性をめぐる身体と苦しみについて考察する研究も開始した。この研究は、女性あるいはジェンダーという新たな切り口を取り入れた点で、また、これまでのレヴィナス研究を軸とした理論的研究と、本研究がもう一つの柱にしようと考えている実践的研究の橋渡しとなる点で意義がある。また本年度刊行した、「問いつめる」(『哲学への誘いII哲学の振る舞い』、東信堂)においては、問うことについての哲学的考察を行う際に、苦しみや悪を被ることを、「問い」との関連で哲学的に考察した。一方で、実践的研究の一環として、広く先端医療技術に関わる文献調査と読解を行うとともに、前年度から引き続き、文献調査や研究会参加等を通じて実践的研究の方法論的研究も行った。本研究は、倫理学の研究の中でも、善や正義、愛など積極的な側面ではなく、いわばそうした光に対する影の部分、人間存在の負のあり方に焦点を当て、それをとりわけ苦しみや悪という主題から明らかにしようとするものである。その際とくに「身体」を考察の軸とし、土台とすることによって、人間存在の負の側面を、それを被っている個々の人間に沿って、しかもここの差異を捨象することなく、ありのままに浮かび上がらせることを目指している。本研究のそのような研究計画のうち、本年度はとくに「女性」をめぐる苦しみと身体という主題に的を絞り、研究を進めた。2010年に発表した、「初期レヴィナスにおける『女性的なもの』と『存在のエコノミー』」という論文ですでに、レヴィナスの概念のひとつである「女性的なもの」の位置づけとその果たす役割を、彼の初期の思想にかぎって考察したが、本年度はそれを基に、レヴィナスの思想全体における「女性的なもの」の位置づけや意義、そしてその重要な変遷について、身体性との関連から考察した。またレヴィナスの「女性的なもの」や、それと関連する家族や家にかかわる諸概念は、ユダヤ思想の影響を多く受けているが、そうしたユダヤ思想との関係を視野に入れた、レヴィナスの思想における女性的なものについての研究を、身体の観点に重点をおきつつ行い、2011年12月に京都ユダヤ思想学会主催で行われる「レヴィナス記念シンポジウム-ユダヤ思想とレヴィナス哲学-」で発表する予定である。このような研究は、本年度はレヴィナス思想にかぎって行ったものの、今後、哲学や倫理学において、女性や、ケアなど女性的とみなされているものについて、とくに身体や苦しみとの関連で、広く学際的に考察していく上での足がかりになるだろう点で意義がある。昨年度に引き続き、「苦しみと身体をめぐる倫理学的研究」のうち、とくに性、ジェンダー、女性、生殖に重点をおきつつ研究を進めた。昨年度は、生殖技術を中心主題におき研究を進め、その成果のうちとくに「出生前診断」をめぐる問題について、4月に行われた第4回東アジア応用倫理学・応用哲学国際会議にて発表した。今年度は昨年度の成果を踏まえながらも、生殖や生殖にかかわる性差についての哲学・倫理学的考察や、フェミニスト哲学・倫理学の視点からの考察により重点を置いた。まずフェミニスト倫理学の核の一つである「ケアの倫理」に焦点を当て、その起こりから、ケアの倫理への批判、第二世代以降の展開などについて基礎から学び直した。また、妊娠・出産・育児に関するフェミニスト現象学やフェミニスト哲学の研究を検討し、レヴィナスの生殖や性差に関する主張と合わせて、生殖と性差に関して、哲学的かつ具体的経験に沿った考察を行い、次年度初頭に北欧現象学会で講演する原稿執筆を行った。 | KAKENHI-PROJECT-21720013 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21720013 |
苦しみと身体についての倫理学的研究 | 昨年度の生殖技術を中心とする研究においては、科学技術に関する倫理的問題や現在の日本や諸外国の状況についての応用倫理的な研究は広げることができたが、他方で、生殖や性差に関する哲学、倫理学的観点からの掘り下げた考察や、理論構築、またフェミニズム思想、フェミニズム倫理学の視点からの考察がいまだ不十分であった。今年度の研究においてはこれらの側面をある程度補強することができた。これは生殖技術関連の研究を、本研究課題である、「苦しみと身体についての倫理学的研究」という大きな枠組みにつなげ、そこに位置づける試みでもあり、最終年度にふさわしい研究成果と言える。年度初めの研究実施計画に掲げていた通り、今年度は女性と身体についての倫理学的研究を主要なテーマとして研究を進めた。昨年度後半にユダヤ思想協会のシンポジウムにて、レヴィナス思想における「女性的なもの」について提題したが、今年度初めにはそれを推敲し直して論文にまとめた。さらにその内容をもとに昨夏には研究会で研究発表を行った。それらの考察と議論を経ることで、レヴィナス思想における「女性的なもの」の意義を明らかにするとともに、女性的なものを身体性、苦しみ、倫理的関係との関連の中で考察することで本研究課題全体の研究の中に有意味なかたちで位置づけることができた。またそれジェンダー研究との関連を意識しつつ行うことで、レヴィナス思想にとどまらない女性と身体についての倫理学的考察を行う足がかりをある程度築くことができた。また、実践的研究の重要な一部を成す、生殖技術にかかわる研究に関しても、ジェンダー・女性・身体という観点に重点をおきつつ哲学・倫理学的に考察し、11月の哲学会大会のワークショップ「動物と生殖」において「生殖と他なるもの」という主題で提題を行った。さらに今年度初頭に行われた第4回東アジア応用倫理学・応用哲学国際会議での発表準備として、生殖技術のうちとくに出生前診断をめぐる問題に焦点をしぼって研究を進めた。この過程で、出生前診断やそれと関係の深い人工妊娠中絶をめぐって、女性やカップルがときに苦しみ葛藤する状況、またその中心に女性の身体がおかれている様を浮き彫りにすることができた。レヴィナス思想を超えて広く苦しみと身体について考察する理論的研究に関して、とくに女性をめぐる主題についての足がかりは得られたものの、まだ本格的に踏みこむには至っていない。また実践的研究の計画の具体化や環境づくりが遅れている。25年度が最終年度であるため、記入しない。年度初めに計画していた研究について、大部分において実際に遂行することができたから。まず理論的研究において本年度進めてきた、女性をめぐる苦しみと身体について、レヴィナス思想にとどまらず、ジェンダー論や生命・医療倫理の領域に踏み込んだ研究を行うことで、理論的研究の射程を広げると同時に、生殖医療に関する実践的研究の具体化をはかる。それと並行して、メルロ=ポンティをはじめとする現象学における身体性についての研究を進め、文献的、実践的両方向からの、苦しみと身体についての倫理学研究の理論的基盤を固める。25年度が最終年度であるため、記入しない。これまでの研究でまだ十分に達成されていない以下の点に重点を置きつつ研究を進める。 | KAKENHI-PROJECT-21720013 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21720013 |
歯周病患者における炎症性サイトカイン遺伝子多型性の解析 | 成人性歯周炎患者におけるIL-1α、IL-1β発現調節領域遺伝子の遺伝的多型性を解析し、同遺伝子型が成人性歯周炎の重篤度、罹患性及ぼす影響の検討を計画した。大阪大学歯学部附属病院歯周病診療室を受診し、重篤な全心疾患を有さず、年齢が35歳以上55歳以下の非喫煙患者から、大阪大学歯学部倫理委員会の承認のもと、実験参加の承諾が得られた者を被験者として選択した。初診時全顎デンタルレントゲン写真を画像解折した結果をもとに、被験者を健常群と成人性歯周炎患者群とに分けた。即ち、24歯以上の残存歯を有し、かつレントゲン的に3mm以上の骨吸収を示す部位が2部位以下の被験者を健常群とした。中等度以上の成人性歯周炎患者群は、12歯以上の残存歯を有し、骨吸収の全顎の平均値が3mm以上、または3mm以上の骨吸収を示す歯牙が少なくとも10歯以上存在し、かつ各1/4顎に3mm以上の骨吸収を示す部位が2部以上存在することを基準に選択した。その結果、平成10年度の被験者から、健常群18名(男性18名)、患者群41名(男性8名、女性33名)の参加を得て解析を開始した。被験者の末梢血細胞由来ゲノムDNAを鋳型として、IL-1α及ひIL-1βの遺伝子多型性が存在するプロモーター領域を本研究費で購入したコンピューター装置を用いて設計したPCRプライマーにて増幅し、両遺伝子の多型性固有のDNA配列を認識する制限酵素で切断した。DNAの泳動パターンからIL-1αとIL-1βの両者を高発現する遺伝子型を有する被験者をIL-1陽性と判定した。その結果、健常群18名中からは0名、患者群41名中1名がIL-1陽性を示した。また、上記分類以外の軽度歯周病患者47名中4名がIL-1陽性であった。白人をもとにした解析結果に比較してIL-1陽性率が著しく低いため、今後更に検体数を増やして解析を進めることが望まれる。成人性歯周炎患者におけるIL-1α、IL-1β発現調節領域遺伝子の遺伝的多型性を解析し、同遺伝子型が成人性歯周炎の重篤度、罹患性及ぼす影響の検討を計画した。大阪大学歯学部附属病院歯周病診療室を受診し、重篤な全心疾患を有さず、年齢が35歳以上55歳以下の非喫煙患者から、大阪大学歯学部倫理委員会の承認のもと、実験参加の承諾が得られた者を被験者として選択した。初診時全顎デンタルレントゲン写真を画像解折した結果をもとに、被験者を健常群と成人性歯周炎患者群とに分けた。即ち、24歯以上の残存歯を有し、かつレントゲン的に3mm以上の骨吸収を示す部位が2部位以下の被験者を健常群とした。中等度以上の成人性歯周炎患者群は、12歯以上の残存歯を有し、骨吸収の全顎の平均値が3mm以上、または3mm以上の骨吸収を示す歯牙が少なくとも10歯以上存在し、かつ各1/4顎に3mm以上の骨吸収を示す部位が2部以上存在することを基準に選択した。その結果、平成10年度の被験者から、健常群18名(男性18名)、患者群41名(男性8名、女性33名)の参加を得て解析を開始した。被験者の末梢血細胞由来ゲノムDNAを鋳型として、IL-1α及ひIL-1βの遺伝子多型性が存在するプロモーター領域を本研究費で購入したコンピューター装置を用いて設計したPCRプライマーにて増幅し、両遺伝子の多型性固有のDNA配列を認識する制限酵素で切断した。DNAの泳動パターンからIL-1αとIL-1βの両者を高発現する遺伝子型を有する被験者をIL-1陽性と判定した。その結果、健常群18名中からは0名、患者群41名中1名がIL-1陽性を示した。また、上記分類以外の軽度歯周病患者47名中4名がIL-1陽性であった。白人をもとにした解析結果に比較してIL-1陽性率が著しく低いため、今後更に検体数を増やして解析を進めることが望まれる。 | KAKENHI-PROJECT-10771215 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10771215 |
網膜色素上皮細胞の細胞内pH調節機構の解明 | 増殖性糖尿病、増殖性硝子体網膜症の成因には各種のGrowth factorとそれによる網膜色素上皮細胞(RPE)の異常増殖が関与していることが知られている。したがってRPEの異常増殖をコントロールするファクターを調査することが重要と考えられる。そのファクターの一つとしてGrowth factorによるRPE細胞内PHの変化について研究している。胎芽7日目のchickenの眼球を摘出し赤道部にて二分割し硝子体、網膜を剥離した後0.5%EDTAにてRPEを脈絡膜より剥離しそのRPEをトリプシンにて単一の細胞に分解し、dishの上に播き、培養液にて培養し、dish内をconfluentにする。測定方法はconfluentになったRPEにPHsensitive dye BCECF-AMを付加させRPEがdyeを取り込むまで約40分待つ。その後Nacl-Hepes Bufferを貫流しその中へGrowth factorを貫流させ、細胞内PHの変化を蛍光色素の明るさの変化として計測する。FBSを付加させると細胞内PHはアルカリ化の反応を示した。EGF10ng/ml,FGF10ng/ml,EGF1マイクロg/ml,FGF25マイクロg/ml付加させた状態では反応は認められなかった。tGF-b付加ではアルカリ化を示した。今後の方針としては元々の貫流液をより生理的状態に近い炭酸Bufferに変えて試みること、また、各種のGrowth factorにたいする培養内RPEの反応をSITカメラを用いて、反応の状態を調べる実験も計画している。増殖性糖尿病、増殖性硝子体網膜症の成因には各種のGrowth factorとそれによる網膜色素上皮細胞(RPE)の異常増殖が関与していることが知られている。したがってRPEの異常増殖をコントロールするファクターを調査することが重要と考えられる。そのファクターの一つとしてGrowth factorによるRPE細胞内PHの変化について研究している。胎芽7日目のchickenの眼球を摘出し赤道部にて二分割し硝子体、網膜を剥離した後0.5%EDTAにてRPEを脈絡膜より剥離しそのRPEをトリプシンにて単一の細胞に分解し、dishの上に播き、培養液にて培養し、dish内をconfluentにする。測定方法はconfluentになったRPEにPHsensitive dye BCECF-AMを付加させRPEがdyeを取り込むまで約40分待つ。その後Nacl-Hepes Bufferを貫流しその中へGrowth factorを貫流させ、細胞内PHの変化を蛍光色素の明るさの変化として計測する。FBSを付加させると細胞内PHはアルカリ化の反応を示した。EGF10ng/ml,FGF10ng/ml,EGF1マイクロg/ml,FGF25マイクロg/ml付加させた状態では反応は認められなかった。tGF-b付加ではアルカリ化を示した。今後の方針としては元々の貫流液をより生理的状態に近い炭酸Bufferに変えて試みること、また、各種のGrowth factorにたいする培養内RPEの反応をSITカメラを用いて、反応の状態を調べる実験も計画している。 | KAKENHI-PROJECT-06771513 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06771513 |
高出力紫外レ-ザ用光学平面の超精密加工と表面の評価 | 日本の工業技術を先導している半導体産業において、VLSIをより高集積化する努力が精力的になされ、リソグラフィ-用光源として紫外光であるエキシマレ-ザが注目され、レ-ザの開発並びにその応用の研究が鋭意進められている。また、レ-ザ核融合研究においても、燃料ペレットへの効率的なレ-ザ源として非線型光学結晶で高調波に変換した紫外レ-ザが注目されている。いずれにしても、紫外光を扱うため、光学材料が従来のものと異なり、かつ波長が短かいため従来よりも形状精度が高く、表面粗さが小さい面が必要となり、エネルギ-が高いためレ-ザ損傷が問題となっている。このような要求を満たす平面光学素子を提供するため、以下のような研究を行なった。1)超精密加工および超精密表面粗さ測定のための恒温・恒湿のクリ-ンル-ムを構築し、各装置に対しては防振基礎を設置した。2)ノマルスキ-式微分干渉顕微鏡搭載の走査型トンネル顕微鏡(STM)に写真撮影装置を設置し、より明瞭な表面観察を可能とした。STMによる測定の較正を回折格子を使用して行ない、より正確な表面粗さ測定を可能とした。MnーZnフェライトについては、無コ-ティングでSTM像を得ることに成功した。3)各種光学ガラスを超精密平面研削盤によりワンパス研削し、従来の光学部品よりも滑かな面に仕上げることに成功した。また、レ-ザガラスに対しては、超精密研削により従来の光学研磨面に比べレ-ザ耐力の高い面が得られることを明らかにした。レ-ザ耐力は表面粗さの関数であると共に、コンタミネ-ションに強く依存することを明らかにした。4)上記レ-ザガラス研削面にフロ-ト・ポリシングを施すことにより、30J/cm^2のレ-ザ耐力が得られ、従来の光学研磨面の2倍のレ-ザ耐力を示した。日本の工業技術を先導している半導体産業において、VLSIをより高集積化する努力が精力的になされ、リソグラフィ-用光源として紫外光であるエキシマレ-ザが注目され、レ-ザの開発並びにその応用の研究が鋭意進められている。また、レ-ザ核融合研究においても、燃料ペレットへの効率的なレ-ザ源として非線型光学結晶で高調波に変換した紫外レ-ザが注目されている。いずれにしても、紫外光を扱うため、光学材料が従来のものと異なり、かつ波長が短かいため従来よりも形状精度が高く、表面粗さが小さい面が必要となり、エネルギ-が高いためレ-ザ損傷が問題となっている。このような要求を満たす平面光学素子を提供するため、以下のような研究を行なった。1)超精密加工および超精密表面粗さ測定のための恒温・恒湿のクリ-ンル-ムを構築し、各装置に対しては防振基礎を設置した。2)ノマルスキ-式微分干渉顕微鏡搭載の走査型トンネル顕微鏡(STM)に写真撮影装置を設置し、より明瞭な表面観察を可能とした。STMによる測定の較正を回折格子を使用して行ない、より正確な表面粗さ測定を可能とした。MnーZnフェライトについては、無コ-ティングでSTM像を得ることに成功した。3)各種光学ガラスを超精密平面研削盤によりワンパス研削し、従来の光学部品よりも滑かな面に仕上げることに成功した。また、レ-ザガラスに対しては、超精密研削により従来の光学研磨面に比べレ-ザ耐力の高い面が得られることを明らかにした。レ-ザ耐力は表面粗さの関数であると共に、コンタミネ-ションに強く依存することを明らかにした。4)上記レ-ザガラス研削面にフロ-ト・ポリシングを施すことにより、30J/cm^2のレ-ザ耐力が得られ、従来の光学研磨面の2倍のレ-ザ耐力を示した。日本の工業技術を先導している半導体産業において、VLSIをより高集積化する努力が精力的になされ、リソグラフィ-用光源として紫外光であるエキシマレ-ザが注目され、レ-ザの開発並びにその応用の研究が鋭意進められている。また、レ-ザ核融合研究においても、燃料ペレットへの効率的なレ-ザ源として非線型光学結晶で高調波に変換した紫外レ-ザが注目されている。いずれにしても、紫外光を扱うため、光学材料が従来のものと異なり、かつ波長が短かいため従来よりも形状精度が高く、表面粗さが小さい面が必要となり、エネルギ-が高いためレ-ザ損傷が問題となっている。このような要求を満たす平面光学素子を提供するため、以下のような研究を行なった。1)超精密加工および超精密表面粗さ測定のための恒温・恒湿のクリ-ンル-ムを構築し、各装置に対しては防振基礎を設置した。2)ノマルスキ-式微分干渉顕微鏡搭載の走査型トンネル顕微鏡(STM)に写真撮影装置を設置し、より明瞭な表面観察を可能とした。STMによる測定の較正を回析格子を使用して行ない、より正確な表面粗さ測定を可能とした。MnーZnフェライトについては、無コ-ティングでSTM像を得ることに成功した。3)各種光学ガラスを超精密平面研削盤によりワンパス研削し、従来の光学部品よりも滑かな面に仕上げることに成功した。また、レ-ザガラスに対しては、超精密研削により従来の光学研磨面に比べレ-ザ耐力の高い面が得られることを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-02650104 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02650104 |
高出力紫外レ-ザ用光学平面の超精密加工と表面の評価 | レ-ザ耐力は表面粗さの関数であると共に、コンタミネ-ションに強く依存することを明らかにした。4)上記レ-ザガラス研削面にフロ-ト・ポリシングを施すことにより、30J/cm^2のレ-ザ耐力が得られ、従来の光学研磨面の2倍のレ-ザ耐力を示した。 | KAKENHI-PROJECT-02650104 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02650104 |
シロイヌナズナにおけるジベレリン受容体AtGID1の解析 | シロイヌナズナにおける3種のジベレリン(GA)受容体(GID1a,GID1b,GID1c)間の生理機能の差異が生じる原因を解る明する為に、以下の2点について解析を行った。(1)GID1の量的な違いの検出gld1a gid1c二重変異体花茎の矮性形質、および、gid1a gid1b二重変異体雄蘂の伸長不良形質に焦点を絞り、これら異常形質の原因が唯一残るGA受容体の量的欠乏である可能性を検証した。ownプロモーター&レポーター遺伝子発現ラインを作出して検討した結果、「花茎ではGID1b遺伝子が少なからず発現するが、その翻訳産物は何らかの理由により安定的に蓄積されず、結果、GID1bしか存在しないgid1a gid1c二重変異体花茎でGA受容体が欠乏して矮性形質が現れた」と結論した。(2)GID1の質的な違いの検出GAシグナルが伝わるためには、シグナル抑制因子DELLAはGID1-GA複合体に捕捉される必要がある。この反応は平衡反応であって、15通りのGID1-DELLA間の組み合わせ中に「親和性が他に比べて弱いことが主原因となってGID1-GA複合体に捕捉されにくく、そのためにDELLAとしての機能が残存するケース」があるとの作業仮説を立て、three hybrid系を用いて検証した。結果、雄蘂中の主要DELLAに対するGID1cの捕捉機能が弱いことがgid1a gid1b二重変異体雄蘂の伸長不良の原因である可能性を支持する結果が得られた。以上、3つのジベレリン受容体の各々の機能分担に関する知見を得ることができ、現在論文を投稿中である。シロイヌナズナにおける3種のジベレリン(GA)受容体(GID1a,GID1b,GID1c)間の生理機能の差異が生じる原因を解る明する為に、以下の2点について解析を行った。(1)GID1の量的な違いの検出gld1a gid1c二重変異体花茎の矮性形質、および、gid1a gid1b二重変異体雄蘂の伸長不良形質に焦点を絞り、これら異常形質の原因が唯一残るGA受容体の量的欠乏である可能性を検証した。ownプロモーター&レポーター遺伝子発現ラインを作出して検討した結果、「花茎ではGID1b遺伝子が少なからず発現するが、その翻訳産物は何らかの理由により安定的に蓄積されず、結果、GID1bしか存在しないgid1a gid1c二重変異体花茎でGA受容体が欠乏して矮性形質が現れた」と結論した。(2)GID1の質的な違いの検出GAシグナルが伝わるためには、シグナル抑制因子DELLAはGID1-GA複合体に捕捉される必要がある。この反応は平衡反応であって、15通りのGID1-DELLA間の組み合わせ中に「親和性が他に比べて弱いことが主原因となってGID1-GA複合体に捕捉されにくく、そのためにDELLAとしての機能が残存するケース」があるとの作業仮説を立て、three hybrid系を用いて検証した。結果、雄蘂中の主要DELLAに対するGID1cの捕捉機能が弱いことがgid1a gid1b二重変異体雄蘂の伸長不良の原因である可能性を支持する結果が得られた。以上、3つのジベレリン受容体の各々の機能分担に関する知見を得ることができ、現在論文を投稿中である。 | KAKENHI-PROJECT-08J00469 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J00469 |
ケモカインによる細胞挙動の制御と初期血管パターニング | 血管ネットワークは成体の隅々にまで張り巡らされ、酸素や栄養補給など重要な生理機能を発揮する。これらの血管ネットワークはどのようにして形成されるのであろうか?この問いに答えるために、初期胚における血管形成のしくみを研究した。個体発生の過程において、血管組織は一定のルールに従って作られる。そこでは動脈・静脈などのサブタイプに加えて、血管が作られるべき場所が厳密に規定される。血管形成の場所やタイミングがどのように制御されるのかについて、ケモカインSDF1とその受容体CXCR4の役割に注目した解析を行った。これまでに、SDF1/CXCR4シグナルは、背側大動脈から分岐する肋間血管の形成に重要な役割をもつことを見出している。興味深いことに、CXCR4は、形成されつつある細い血管において発現される一方で、それらの血管形成が終了し周囲を壁細胞で覆われる頃になると、CXCR4の発現が消失する。これらのことから、CXCR4は細胞移動の制御のみならず、血管内皮細胞の分化・成熟にも関わる可能性が見えてきた。これらの制御機構をさらに詳細に理解するために、CXCR4の下流で働く分子群の同定を試みた。候補分子の機能解析にあたり、トリ胚を用いた血管特異的な遺伝子導入法を開発した。解析の結果、さまざまな細胞接着関連分子群や、低分子量GTPase RhoファミリーがCXCR4と協調的に働く可能性が高まった。血管形成におけるケモカインシグナルの下流の分子メカニズムはこれまでほとんど知られておらず、本研究による成果は、血管パターンの形成機構を理解する上で、新たな知見を提供するものである。血管ネットワークは、体の生理機能の発揮と維持にとってもっとも重要な器官である。血管形成のしくみに関しては、血管内皮細胞の分化機構はよく解析されている一方で、3次元的パターンをとるネットワークが体の中でどのように構築されるのかはほとんどわかっていない。我々は、これらの問題について、血管パターニングとそれを制御する細胞外環境という観点から、特にケモカインシグナルに注目して研究を進めている。これまでに、ケモカインSDF1の受容体であるCXCR4のノックアウトマウスでは、肋間血管の重篤な形成異常がみられるが、背側大動脈は正常であるなどの観察結果を得ている。両血管とも体節中胚葉に由来する組織であり、肋間血管は背側大動脈から分岐して作られる。では、CXCR4はどのようにして肋間血管の形成のみに関わるのだろうか?これらの問いに答えるために、CXCR4mRNAの発現を発生段階を追って観察したところ、その発現は背側大動脈にはほとんど認められなかったが、伸展中の肋間血管には高い発現が認められた。また、CXCR4のリガンドであるSDF1は、肋間血管の周辺組織において特異的な発現をみせた。独自の手法を用いて、背側大動脈内でCXCR4の発現を高めたところ、本来は太い直径で肉厚の血管壁をもつはずの大動脈が、薄い血管壁をもつ不定形の構造へと変化した。加えて、RNAiによってCXCR4を阻害された細胞は、肋間血管の形成には寄与せず、背側大動脈内にとどまるという傾向がみられた。これらの観察結果から、肋間血管に発現するCXCR4は周囲組織からのSDF1によって活性化され、血管内皮細胞の動態(接着分子など)を変化させることで、血管サブタイプの決定に関与している可能性が強まった。本研究は、これまでほとんど未解明であった血管サブタイプの確立機構に、新たな知見を提供するものと思われる。血管ネットワークは成体の隅々にまで張り巡らされ、酸素や栄養補給など重要な生理機能を発揮する。これらの血管ネットワークはどのようにして形成されるのであろうか?この問いに答えるために、初期胚における血管形成のしくみを研究した。個体発生の過程において、血管組織は一定のルールに従って作られる。そこでは動脈・静脈などのサブタイプに加えて、血管が作られるべき場所が厳密に規定される。血管形成の場所やタイミングがどのように制御されるのかについて、ケモカインSDF1とその受容体CXCR4の役割に注目した解析を行った。これまでに、SDF1/CXCR4シグナルは、背側大動脈から分岐する肋間血管の形成に重要な役割をもつことを見出している。興味深いことに、CXCR4は、形成されつつある細い血管において発現される一方で、それらの血管形成が終了し周囲を壁細胞で覆われる頃になると、CXCR4の発現が消失する。これらのことから、CXCR4は細胞移動の制御のみならず、血管内皮細胞の分化・成熟にも関わる可能性が見えてきた。これらの制御機構をさらに詳細に理解するために、CXCR4の下流で働く分子群の同定を試みた。候補分子の機能解析にあたり、トリ胚を用いた血管特異的な遺伝子導入法を開発した。解析の結果、さまざまな細胞接着関連分子群や、低分子量GTPase RhoファミリーがCXCR4と協調的に働く可能性が高まった。血管形成におけるケモカインシグナルの下流の分子メカニズムはこれまでほとんど知られておらず、本研究による成果は、血管パターンの形成機構を理解する上で、新たな知見を提供するものである。 | KAKENHI-PROJECT-20057017 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20057017 |
ドイツ生命倫理研究の現状とその分析 | 当初の目的に従って、アングロサクソンの生命倫理との相違点を際立たせながら、ドイツ生命倫理の特徴を明らかにした。ドイツの生命倫理は現在二つの根本問題で揺れている。一つは安楽死問題、もう一つはヒト胚問題である。これらは別問題のように見えるが、生命操作への可能性を含む点で共通しナチズムを髣髴させる。安楽死はオランダやベルギーで合法化され、フランスもこれに同調する勢いである。このような隣国の動きは少なからずドイツにも影響を与えている。しかし自己決定権を拠り所にした安楽死容認論は必ずしもドイツ生命倫理の趨勢ではない。ドイツでは安楽死問題に関しても、「生命」の意味を根源的に問い直すことから議論が開始される。他方、ヒト胚研究に関しては、国益と理念の板挟みになっているというのが実情である。「人間の尊厳」は、ドイツ国民の歴史的誓いとしてドイツ憲法にしっかりと根を張っている。そしてこの理念をより具体化したものが「胚保護法」である。このようにドイツの生命倫理は、アングロサクソンのように生命功利主義に偏ることなく、「人間の尊厳」の理念に立ち返りながら生死問題を論じている。本研究においては、こうしたドイツ生命倫理の実情を明らかにするために、初年度はドイツの生命倫理研究所やセンターに赴いて資料収集にあたり、主要文献を訳出して図書や雑誌等々で紹介した。次年度以降は、各種の学会や研究会において「人間の尊厳」の原理的根拠について自らの考えを披露しそれを論文にまとめた。当初の目的に従って、アングロサクソンの生命倫理との相違点を際立たせながら、ドイツ生命倫理の特徴を明らかにした。ドイツの生命倫理は現在二つの根本問題で揺れている。一つは安楽死問題、もう一つはヒト胚問題である。これらは別問題のように見えるが、生命操作への可能性を含む点で共通しナチズムを髣髴させる。安楽死はオランダやベルギーで合法化され、フランスもこれに同調する勢いである。このような隣国の動きは少なからずドイツにも影響を与えている。しかし自己決定権を拠り所にした安楽死容認論は必ずしもドイツ生命倫理の趨勢ではない。ドイツでは安楽死問題に関しても、「生命」の意味を根源的に問い直すことから議論が開始される。他方、ヒト胚研究に関しては、国益と理念の板挟みになっているというのが実情である。「人間の尊厳」は、ドイツ国民の歴史的誓いとしてドイツ憲法にしっかりと根を張っている。そしてこの理念をより具体化したものが「胚保護法」である。このようにドイツの生命倫理は、アングロサクソンのように生命功利主義に偏ることなく、「人間の尊厳」の理念に立ち返りながら生死問題を論じている。本研究においては、こうしたドイツ生命倫理の実情を明らかにするために、初年度はドイツの生命倫理研究所やセンターに赴いて資料収集にあたり、主要文献を訳出して図書や雑誌等々で紹介した。次年度以降は、各種の学会や研究会において「人間の尊厳」の原理的根拠について自らの考えを披露しそれを論文にまとめた。長期夏休暇を利用して2001年8月1日から8月26日まで独訪し、フランクフルトを拠点にして、フランクフルト大学、ミュンスター大学、マインツ大学、ベルリン大学、ボン大学、マールブルク大学、ハイデルベルグ大学、ミュンヘン大学などの図書館や研究室で資料を収集したほか、ドイツ国内のみならず他の欧米諸国の生命倫理関連資料を集積したドイツ有数の研究所である、ボンの「科学と倫理のための研究所」(lnstitut fur Wissenschaft und Ethik)と「生命諸科学における倫理のためのドイツ情報資料センター」(Deutsches Referenzzentrum fur Ethik in den Biowissenschaften)、及びミュンスターの「生命倫理学際研究所」(interdisziplinare Forschungsstelle zur Bioethik)にも赴いて資料の収集に当たった。さらにフランクフルト大学のヴィーデンホファー教授やホフマン教授、ミュンスター大学のジープ教授やクヴァンテ講師らとの会見を通じて、目下、ドイツを二分しているヒトES細胞研究をめぐる問題やオランダ安楽死法のドイツへの影響について情報を得たほか、ベルリン郊外のパンコーで開催された「国際社会倫理学会」(Societas Ethica)にも立ち寄って、ヨーロッパにおける生命倫理の動向について情報を得た。国内では東京大学、京都大学、千葉大学などを中心にして資料収集に当たった。これらの資料については、来年度内にインターネットで公開する予定である。また研究会(西日本応用倫理センター部会)活動の一環として、2002年3月8日にミュンスター大学神学部教授アウティエロ氏を招いて日独シンポジウムを開催し、日本側代表として「日本における生命倫理の受容と展開」という発題(「FINE広島」に掲載予定)で、アングロサクソンの生命倫理とは異なる日独の生命倫理の特色を明らかにしつつ、ヒトES細胞研究のあり方について提言をした。前年度はドイツ生命研究者との相互交流や情報交換、ならびに資料収集が中心であった。今年度はドイツ生命倫理における問題の整理と考察をすすめ、各種研究会や学会でその成果を披露した。平成14年7月「広島医事法学研究会」、平成14年10月「岡山生命倫理研究会」、平成14年11月「日本生命倫理学会」、平成14年12月「福岡応用倫理研究会」などでの講演や口頭報告がそうである。目下、生命倫理の最先端の話題は、「ES細胞研究」と「クローン人間」である。この点では、日本でも、ヨーロッパでも、とりわけドイツでも事情は同じである。この流れを受けて、バイオエシックスの原点に立ち返り、「生命とは何か」 | KAKENHI-PROJECT-13610041 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13610041 |
ドイツ生命倫理研究の現状とその分析 | 「人間とは何か」が問われている。こうしたなかで「人間の尊厳」の概念がにわかに注目されるようになった。「人間の尊厳」を主題としたシンポジウムやフォーラムが日本各地で開催され、また新聞や雑誌紙上でもたびたび話題にされた。しかしこれまではどちらかといえば喧しさばかりが目立ち、該概念は暖昧に使用されることが多かった。この度の動向調査により、「人間の尊厳」が了解概念としてドイツ生命倫理の推進役となっていることが確認できた。日本の生命倫理との大きな相違点である。研究成果の一部は、「ヒト胚の取り扱いと人間の尊厳」や「医療倫理から生命倫理へ-日本における生命倫理の現在-」と題して学内紀要や報告集などで公表ずみである。またドイツ生命倫理研究の現状と動向を知る文献資料として外国人招待講演の翻訳紹介を試みた。この作業を通じて、ドイツ生命倫理の特徴、とりわけアングロサクソン生命倫理が見落としがちな宗教との関係について知見をえた。さらに、自らが監修や翻訳に携わった『ドイツ応用倫理学の現在』や『医の倫理課題』などの図書を刊行した。本年度は過去2年間の研究成果を受けてドイヅ生命倫理関連資料の収集・整理をさらに進める傍ら、アングロサクソンの生命倫理との相違点を際立たせつつドイツ生命倫理の特徴を明らかにした。アングロサクソンにおいては、ロック以来の能力主義的人格論が中心となる。ドイツにおいては、中世以来の実体論的・存在論的な人格論が中心となる。このような人格論はキリスト教的生命論とも一致する。しかしドイツ生命倫理の特徴はこれにとどまらない。アングロサクソンでは生命功利主義が中心となるのに対して、ドイツでは何かに付けて「人間の尊厳」が重要な役割を果たす。ドイツの生命倫理は現在二つの根本問題で揺れている。一つは安楽死問題、もう一つはヒト胚問題である。これらは別問題のように見えるが、いずれも生命操作の可能性を含み、ナチズムに繋がる点で共通する。安楽死はオランダやベルギーで合法化ざれ、フランスもこれに同調する勢いであるが、このような隣国の動きは少なからずドイツにも影響を与えている。これらの国々においては自律が安楽死容認の根拠とされる。しかしドイツの生命倫理は、個人の自律を究極的根拠とすることには懐疑的であって、環境倫理をも包括するより高次の立場から生命を捉え直すことに腐心している。このような生命の視点が顕著となったのがヒトクローン胚やヒトES細胞をめぐる問題においてである。ドイツには胚保護法がある。これによれば受精直後からヒト胚は人間として保護されなければならない。そのためにドイツではヒト胚研究に制限があり、この分野の研究者の海外流出が続いている。ここから研究の推進と人間の尊厳の板挟みになっているドイツ生命倫理の現状を伺い知るこ主ができる。このようなドイツ生命倫理の事情を明らかにし、それを論文にまとめた。 | KAKENHI-PROJECT-13610041 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13610041 |
広島県豊島の漁業者の家族と相互援助的養育コミュニティに関する歴史的・文化的研究 | 広島県豊田郡豊浜町豊島の漁業者の多くは、夫婦で漁に出て年間の大半を実子と離れて暮らしてきた。近年ではこのような漁業者も少なくなったが、親子の関係が物理的に希薄であっても子どもが育つという相互援助的な養育コミュニティが長年存在してきた。本研究では、このように特殊な家族関係を成立させているコミュニティの歴史的・文化的背景に焦点を当て、面接および生活の中への参加観察を通して、コミュニティの特徴を明らかにすることを目的とした。写真や物、記録などの歴史的資料の収集と、それらを回想の手がかりとした面接の結果、次のようなコミュニティの特徴が明らかになった。1)この漁業のコミュニティには、大きくは乳幼児期・学童期・青年期・成人期・壮年期・老年期の発達段階が存在していた。2)子どもの主たる養育者は乳幼児期は実親、学童期は祖父母、青年期は他人というように段階によって変遷していた。3)世代間教育のうち特に青年期の教育関係は特徴的で、多感な青年に対しては年齢的に近い成人期の他人が青年の心情を理解し活動できる場(青年宿)を提供していた。4)各段階はそれぞれある程度完結したサブカルチャーを保持しており、同世代内での縦の教育関係も存在していた。5)このような社会的教育・養育関係は、親戚・仲人親子兄弟・近所・講・仕事仲間など、多層的な人間関係の網の目の上に成り立っていた。また、日常生活への参加観察を通して、6)過去のコミュニティの社会システムのほとんどは昭和中期以降姿を消しているが、その心性は歴史的に現在まで流れていることが明らかになった。このように、豊島では親子が物理的に離れていても子どもが育ちうる豊かな社会的関係や文化的慣例が子どもの発達段階に応じて組織されていた。広島県豊田郡豊浜町豊島の漁業者の多くは、夫婦で漁に出て年間の大半を実子と離れて暮らしてきた。近年ではこのような漁業者も少なくなったが、親子の関係が物理的に希薄であっても子どもが育つという相互援助的な養育コミュニティが長年存在してきた。本研究では、このように特殊な家族関係を成立させているコミュニティの歴史的・文化的背景に焦点を当て、面接および生活の中への参加観察を通して、コミュニティの特徴を明らかにすることを目的とした。写真や物、記録などの歴史的資料の収集と、それらを回想の手がかりとした面接の結果、次のようなコミュニティの特徴が明らかになった。1)この漁業のコミュニティには、大きくは乳幼児期・学童期・青年期・成人期・壮年期・老年期の発達段階が存在していた。2)子どもの主たる養育者は乳幼児期は実親、学童期は祖父母、青年期は他人というように段階によって変遷していた。3)世代間教育のうち特に青年期の教育関係は特徴的で、多感な青年に対しては年齢的に近い成人期の他人が青年の心情を理解し活動できる場(青年宿)を提供していた。4)各段階はそれぞれある程度完結したサブカルチャーを保持しており、同世代内での縦の教育関係も存在していた。5)このような社会的教育・養育関係は、親戚・仲人親子兄弟・近所・講・仕事仲間など、多層的な人間関係の網の目の上に成り立っていた。また、日常生活への参加観察を通して、6)過去のコミュニティの社会システムのほとんどは昭和中期以降姿を消しているが、その心性は歴史的に現在まで流れていることが明らかになった。このように、豊島では親子が物理的に離れていても子どもが育ちうる豊かな社会的関係や文化的慣例が子どもの発達段階に応じて組織されていた。 | KAKENHI-PROJECT-05851023 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05851023 |
フゴッペ洞窟・岩面刻画の総合的研究 | 4年間の共同研究において、(1)まず、フゴッペ洞窟前庭部5カ所をポーリング調査することにより、フゴッペ洞窟の成立年代を紀元前後の弥生海進時と確定できたことがあげられ、(2)それにより、岩面刻画制作年代の上限を紀元後1世紀と断定することができた。(3)一方、制作年代の下限に関しては、フゴッペ洞窟の主な利用者集団であった後北C_2・D式土器を残した人々(紀元後34世紀)が、堆積層中から発見されていた「刻画のある石片」に対して無関心であったと、状況証拠から判断できることにより、紀元後2世紀であると、研究代表者の小川は考えている。(ただし、この考え方は研究分担者から必ずしも賛同を得ているわけではない。)(4)岩面画一般にその制作年代の決定はきわめて困難であり、フゴッペ洞窟・岩面刻画も例外ではないが、4年間の共同研究とそれに先立つ、小川の3年間の個人研究による科研をあわせた7年間の調査研究の成果として、フゴッペ洞窟・岩面刻画の制作年代を紀元後1世紀後半2世紀後半の約100年間のいずれかの時期であるとの仮説を提出することができた。これは従来の紀元後3世紀4世紀とする説を約200年さかのぼらせるものであり、フゴッペ洞窟・岩面刻画の研究史に一石を投じることができたのではないだろうか。(5)また、小川の個人研究も含めた7年間の成果として、岩面刻画作品の新たな図面とカタログを作成して発表することになったが、これも従来の実測図を一新していて、今後の解釈論的研究に大いに寄与することだろう。4年間の共同研究において、(1)まず、フゴッペ洞窟前庭部5カ所をポーリング調査することにより、フゴッペ洞窟の成立年代を紀元前後の弥生海進時と確定できたことがあげられ、(2)それにより、岩面刻画制作年代の上限を紀元後1世紀と断定することができた。(3)一方、制作年代の下限に関しては、フゴッペ洞窟の主な利用者集団であった後北C_2・D式土器を残した人々(紀元後34世紀)が、堆積層中から発見されていた「刻画のある石片」に対して無関心であったと、状況証拠から判断できることにより、紀元後2世紀であると、研究代表者の小川は考えている。(ただし、この考え方は研究分担者から必ずしも賛同を得ているわけではない。)(4)岩面画一般にその制作年代の決定はきわめて困難であり、フゴッペ洞窟・岩面刻画も例外ではないが、4年間の共同研究とそれに先立つ、小川の3年間の個人研究による科研をあわせた7年間の調査研究の成果として、フゴッペ洞窟・岩面刻画の制作年代を紀元後1世紀後半2世紀後半の約100年間のいずれかの時期であるとの仮説を提出することができた。これは従来の紀元後3世紀4世紀とする説を約200年さかのぼらせるものであり、フゴッペ洞窟・岩面刻画の研究史に一石を投じることができたのではないだろうか。(5)また、小川の個人研究も含めた7年間の成果として、岩面刻画作品の新たな図面とカタログを作成して発表することになったが、これも従来の実測図を一新していて、今後の解釈論的研究に大いに寄与することだろう。今年度は4年間にわたる計画の初年度に当たり、研究参加者の基本的な認識を統一するところから始めざるを得なかった。7月以降小川と下川はフゴッペ洞窟及びその周辺で現地調査を重ね、平川と右代は北海道開拓記念館所蔵のフゴッペ洞窟出土品の整理と検討、及び発掘時の調査記録の再検討などに従事した。8月にはフゴッペ洞窟の現地で参加者全員による第1回研究会を開催し、今後の研究の方向性を確認した。また、11月には大阪で第2回研究会を持ち、それまでの各参加者の研究成果を中間発表し、それを検討することで、基本的理解を共有することができた。その後も、小川と下川はそれぞれ現地調査を行い、来年度以降の研究の進展のための予備的な成果を得ているところである。具体的に発表しうる成果はまだないが、小川は刻画のある落石の時間的・空間的分布を確定したところで、今後岩面刻画の制作年代の解明へ至ろうとしている。木村は、作品と堆積層の年代的関係について研究を進めている。平川は、出土品の整理、検討を通じてフゴッベ洞窟を利用した人々の生活復元の作業に入っている。右代は、下川と共同で地質的事実から紀元前後の洞窟周辺の古環境をラグーンと推定し、そこでの海産物の利用状況などについて考察している。下川は、洞窟及びその周辺の地質を観察し、洞窟の成因を海蝕によると考え、来年度以降の地質調査地点の決定を行った。以上、作品の制作年代の確定など、本研究の目的に関し、複雑な状況ゆえに、必ずしも容易には明らかにできないだろうとの予測も出ているが、今後さらに現地調査と、資料検討、さらに参加者及び来年度以降の研究協力者を交えての徹底的な議論を通じて、研究を維持してゆく予定である。今年度は4年間にわたる計画の第2年目に当たり、それぞれの研究分担者が具体的な調査・研究を開始した。年度始めには、下川を中心に右代を加えて、フゴッペ洞窟の周辺で、概観調査を行い、ボーリング地点を決定した。ボーリングは、フゴッペ洞窟の成因、および形成年代を特定するためのもので、その後準備期間を経て、10月末に現地で右代立ち会いのもと実際にボーリングを行った。 | KAKENHI-PROJECT-10410017 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10410017 |
フゴッペ洞窟・岩面刻画の総合的研究 | その成果としては、明確なものは得られなかったが、柱状図などを作成し、現在、分析を行っており、来年度以降の研究に大いに資するところがあったといえよう。また、7月には小川らが余市町で研究打ち合わせを行い、第3会研究会を計画した。そこで立案した第3会研究会は10月中旬に2日間にわたって余市町で行い、初日は木村が「世界の先史岩面画」と題した特別講演を行って、世界の先史岩面画の中にフゴッペ洞窟・岩面刻画を位置づける基礎的な視点を提出した。第2日目には、下川に加えて、研究分担者の乾芳宏(余市水産博物館)、浅野敏昭(余市水産博物館)、石川直章(小樽市教育委員会)、丑野毅(東京大学)、小林幸雄(北海道開拓記念館)の計6名が研究発表し、その後、発表を受けて、参加者全員でパネル・ディスカッションを行った。発表はそれぞれ基礎的な知見をもたらすものであり、また、パネル・ディスカッションは今後の調査・研究に向けて総合的な視点を研究参加者に与える充実したものとなった。なお、この研究会は一般公開で行い、一般参加者の質問にも答えることができ、共同研究の情報公開という点では、大きな意義があったと自負している。小川、平川、右代はこの研究会には司会として参加した。以上、研究対象が複雑なものである以上、2年間の調査・研究を経てもまだまだ具体的な成果は得られていないが、着実に基礎的な問題を探求しており、来年度以降の飛躍的な展開を期待させる段階に至っているといえよう。本年度は、昨年のフゴッペ洞窟周辺ボーリング調査などの成果を受けて、岩面刻画の制作年代に関して、約2000年前の「弥生海進」以降に作品の制作環境が整ったことを明らかにすることができた。このように制作年代の上限を明確にできたことは大きな研究成果であり、今後の制作年代論の基礎を築くことができたといえる。制作年代の下限に関しては、考古学的共伴物の年代から、従来紀元後3、4世紀という仮説が提出されていたが、研究代表者である小川は、これまで明らかになった多くの要素を総合的に判断して、紀元後1世紀後半から2世紀前半ではないかという仮説をまとめ、7月にオーストラリア、アリス・スプリングスで開催された国際学会でも発表した。ただし、これについては、研究分担者、および協力者の中にもまだ異論があり、共同研究としての結論となっているわけではなく、2月には第4回研究会を開催して、討議を重ねたところである。他にも、関連する他の科学研究費による共同研究の一環として、本科研のメンバーも、9月から10月にかけて、ロシア極東地域の先史岩面画遺跡群を調査し、また、11月には北海道余市町で、公開による大規模な「フゴッペ洞窟シンポジウム-過去・現在・末来」を開催し、各メンバーがそれぞれの議論を展開させることができた。来年度は、本研究の最終年度に当たり、充実した報告書の刊行へ向けて、各研究者がそれぞれの成果をまとめ上げる段階に入りつつあるところである。今年度は4年間にわたる計画の最終年度にあたり、研究代表者及び研究分担者は各自のテーマに基づき、それぞれまとめの作業につとめた。また、今年度の研究協力者としてカナダ・ヴィクトリア大学のトーマス・ハイド博士(現在、ドイツ・コットブス大学に客員教授として出張中)を招聘し、この研究でもっとも重要な岩面刻画の年代決定に関し、世界的にも最新の調査方法を駆使して、研究代表者の小川と共同で検討した結果、紀元後1世紀後半2世紀後半にかけてという結論を得た。これは、従来考古学的に考えられてきた紀元後34世紀という年代に比べ、150年ないし100年さかのぼるものであり、本研究の学界に貢献する成果のひとつといえよう。 | KAKENHI-PROJECT-10410017 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10410017 |
毛髪再生を目指した毛周期に依存して発現する遺伝子群の同定および機能解析 | 脱毛・薄毛など毛髪に関する問題は男性ホルモンや社会的ストレス、薬物使用など様々な精神的・身体的要因が考えられ、近年では男性ばかりでなく女性においても増加傾向にある。毛髪には、成長期、退行期、休止期を繰り返す毛周期が存在し、この毛周期に伴って発現変化を示す分子が脱毛や薄毛に関与するという報告がなされている。しかしながら、これらの分子が同定されているにもかかわらず、毛髪の成長と周期性を調節する分子機構は明らかになっていない。本研究では、毛髪の生え変わりの生理的なメカニズムに関わる遺伝子同定のため、毛周期に依存して発現変動する遺伝子の探索を、成長期、退行期、休止期のマウス背部皮膚からcDNAを調製し、サブトラクション法とマイクロアレイの二つの方法を用いて行い、候補遺伝子群を同定した。本年度は、毛髪の成長には毛乳頭細胞と毛母細胞の細胞同士のシグナル伝達が不可欠であることから、細胞間のシグナル伝達に必要な受容体に候補を絞り、その発現パターンを調べた。マウス背部皮膚から新たにcDNAを調製し、Real-time PCR法によって周期的な発現パターンを調べた。58種類の遺伝子から、成長期に発現上昇を示す13種類が得られた。これらは、オーファン受容体3個を含んでいた。また、毛髪の成長・維持という表現型に直結する機能を有する遺伝子を同定するためにmiRNAを利用したノックダウンマウスの作製に着手しベクターの完成したものについて受精卵にインジェクションする段階まで行ったものの、期間内に目的のノックダウンマウスの作出には至らなかった。本研究で明らかになった受容体遺伝子は毛周期の調節に関与する可能性があり、毛髪の成長に関与する新たな分子機構解明、さらには、受容体をターゲットとした脱毛・薄毛の治療薬開発につながる重要な知見となった。毛周期に伴って発現が変化する遺伝子群同定のため、マイクロアレイを用いた解析を次のように行った。1)成長期、退行期、休止期のマウス背部皮膚よりRNAの抽出を行い、cDNAを合成した。それぞれのサンプルをCy3,Cy5で蛍光標識し、退行期/成長期、休止期/成長期、成長期/成長期の組み合わせでマイクロアレイの解析を行った。発現変動が2倍となる値をcut off値として解析を行った結果、成長期で発現上昇する遺伝子937個、退行期で発現上昇する遺伝子766個、休止期で発現上昇する遺伝子2214個が得られた。2)発現変動の認められた遺伝子について、各周期における変動の大きさを基準にリスト化した。その結果、成長期では毛髪構成成分であるKIFやKAPの発現が顕著に上昇した。退行期では、機能未知遺伝子が高発現し、休止期では、細胞外タンパク質をコードする遺伝子の発現が上昇した。3)次にOntology分類を行い、各周期間での比較を行った。その結果、成長期では退行期や休止期に比べて転写因子活性を持つ遺伝子が多く含まれていた(6.3%)。退行期ではアポトーシスに関連する遺伝子が多く含まれていた(2.2%)。休止期では、細胞外タンパク質をコードする遺伝子の割合が多く含まれていた(18.7%)。4)さらに、以前行ったサブトラクションデータと比較すると、成長期で発現する遺伝子は、サブトラクションデータの14.6%にマイクロアレイデータと整合性が認められた。また、退行期・休止期で発現する遺伝子は28.7%の整合性が認められた。発現変動をReal-time PCRにより確認すると整合性の得られなかった遺伝子、すなわち一方のデータでのみ陽性となった遺伝子においても毛周期に伴った発現変動を示すものが得られた。本研究では原理の異なる実験方法を組み合わせることで、毛周期に伴って発現変動する遺伝子のより網羅的な同定が可能であることを示した。脱毛・薄毛など毛髪に関する問題は男性ホルモンや社会的ストレス、薬物使用など様々な精神的・身体的要因が考えられ、近年では男性ばかりでなく女性においても増加傾向にある。毛髪には、成長期、退行期、休止期を繰り返す毛周期が存在し、この毛周期に伴って発現変化を示す分子が脱毛や薄毛に関与するという報告がなされている。しかしながら、これらの分子が同定されているにもかかわらず、毛髪の成長と周期性を調節する分子機構は明らかになっていない。本研究では、毛髪の生え変わりの生理的なメカニズムに関わる遺伝子同定のため、毛周期に依存して発現変動する遺伝子の探索を、成長期、退行期、休止期のマウス背部皮膚からcDNAを調製し、サブトラクション法とマイクロアレイの二つの方法を用いて行い、候補遺伝子群を同定した。本年度は、毛髪の成長には毛乳頭細胞と毛母細胞の細胞同士のシグナル伝達が不可欠であることから、細胞間のシグナル伝達に必要な受容体に候補を絞り、その発現パターンを調べた。マウス背部皮膚から新たにcDNAを調製し、Real-time PCR法によって周期的な発現パターンを調べた。58種類の遺伝子から、成長期に発現上昇を示す13種類が得られた。これらは、オーファン受容体3個を含んでいた。また、毛髪の成長・維持という表現型に直結する機能を有する遺伝子を同定するためにmiRNAを利用したノックダウンマウスの作製に着手しベクターの完成したものについて受精卵にインジェクションする段階まで行ったものの、期間内に目的のノックダウンマウスの作出には至らなかった。 | KAKENHI-PROJECT-17790777 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17790777 |
毛髪再生を目指した毛周期に依存して発現する遺伝子群の同定および機能解析 | 本研究で明らかになった受容体遺伝子は毛周期の調節に関与する可能性があり、毛髪の成長に関与する新たな分子機構解明、さらには、受容体をターゲットとした脱毛・薄毛の治療薬開発につながる重要な知見となった。 | KAKENHI-PROJECT-17790777 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17790777 |
枯草菌Levansucraseによる新糖合成とその生理活性 | 蔗糖以外に単糖或はオリゴ糖を共存させた条件下で反応を行いフルクトースの転移したヘテロフルクトオリゴ糖を生成させその構造について研究し受容体の還元性末端C1にフルクトースC2を優先的に転移する特性を有すること,しかもその特異性も絶対的でなくC1が結合に関与したトレハロース或はマルチトール等でも収量は劣るものの転移生成物が生じ主にC6に転移したものが得られることが判明した.活性化CHSephadex4Bと共有結合させた固定化Levansucraseは温度安定性が40°Cまで増加しマルトオリゴ糖へのフルクトース転移を試みたところ失活することなく反履使用が可能であった.固定化酵素によるマルトースーF,マルトトリオースーF,マルトテトラオースーFの合成は収量約30%で同程度の転移効率を示した.上述マルトースシリーズにフルクトースー分子を転移させて生じた非還元性マルトフルクトオリゴ糖はヒト起源のアミラーゼの分別定量に利用可能である.マルトースーFはα-グルコシダーゼのみが分解可能で他のものは作用しなかった.またマルトトリオース以上のものは難易の差はあるもののすべて分解可能であった.イソマルトースにフルクトースが転移したものは人尿中のα-グルコシダーゼのα-1, 6結合切断可能なα-グルコシダーゼ間の強弱判定で特異性の違いを識別しうることが判明した.上述の合成ヘテロオリゴ糖は新たな特異性の酵素の検策に利用可能である.蔗糖以外に単糖或はオリゴ糖を共存させた条件下で反応を行いフルクトースの転移したヘテロフルクトオリゴ糖を生成させその構造について研究し受容体の還元性末端C1にフルクトースC2を優先的に転移する特性を有すること,しかもその特異性も絶対的でなくC1が結合に関与したトレハロース或はマルチトール等でも収量は劣るものの転移生成物が生じ主にC6に転移したものが得られることが判明した.活性化CHSephadex4Bと共有結合させた固定化Levansucraseは温度安定性が40°Cまで増加しマルトオリゴ糖へのフルクトース転移を試みたところ失活することなく反履使用が可能であった.固定化酵素によるマルトースーF,マルトトリオースーF,マルトテトラオースーFの合成は収量約30%で同程度の転移効率を示した.上述マルトースシリーズにフルクトースー分子を転移させて生じた非還元性マルトフルクトオリゴ糖はヒト起源のアミラーゼの分別定量に利用可能である.マルトースーFはα-グルコシダーゼのみが分解可能で他のものは作用しなかった.またマルトトリオース以上のものは難易の差はあるもののすべて分解可能であった.イソマルトースにフルクトースが転移したものは人尿中のα-グルコシダーゼのα-1, 6結合切断可能なα-グルコシダーゼ間の強弱判定で特異性の違いを識別しうることが判明した.上述の合成ヘテロオリゴ糖は新たな特異性の酵素の検策に利用可能である.枯草菌の培養菌体より微アルカリ性緩衝液で遊離させた酵素を塩析,DEAE-セルロース,ハイドロキシアパタイト及びセファデックスのクロマト操作により電気泳動的に単一標品とした。本酵素標品を基質(蔗糖)の濃度を一定とし、受容体糖の濃度を変えると転移効率(【G-F/G】×100)は受容体の濃度の増加にともない増大し、受容体糖/基質(蔗糖)が1以上で80%に達した。転移糖の合成はHPLCにより確認し、BioGel P-2のクロマトにより分離し酵素分解及びTLCで同定した。試みた還元性二糖に対し全て還元末端Cl位にフルクトースが転移した。また、非還元性二糖であるトレハロースに対しても転移効率は劣るもののTrehaLose-Fが生じた(本生成物の構造については検討中)。マルトースシリーズのオリゴ糖にフルクトースを転移させて生じた非還元性オリゴ糖はヒト起源のα-グルコシダーゼと膵及び唾液α-アミラーゼによる分解性をテストした結果、マルトース-Fはα-グルコシダーゼのみが分解し、マルトトリオース-Fはα-グルコシダーゼ,サフマイモβ-アミラーゼ,ヒト膵及び唾液α-アミラーゼにより速度の差はあるものの分解を受けた。また、イソマルトース-Fは精製した膵α-グルコシダーゼでは分解を受けないがヒト尿中にはこれを分解する酵素が存在すること、またセロビオース-Fはセルロシン等セルラーゼ酵素剤中のExo型セルラーゼのスクリーニング基質として有効であることが判明した。固定化酵素は酵素と活性化SepharoseABのゲルを0.02M酢酸緩衝液(pH6.0)中でインキュベートすることにより多少の活性低下はみられるが容易に調製できまた酵素反応の後遠心により反応液から分離,洗浄し,反覆利用も可能である。合成新糖の甘味剤としての有用性とビフィダス菌等腸内細菌の増殖効果については今後検討行う予定である。 | KAKENHI-PROJECT-61560105 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61560105 |
新しい表面リアルタイムイメージング法による精密反応プロセスの解析に関する研究 | 次世代化合物半導体デバイスや100%の選択性を有する高効率完全触媒の開発には、表面の反応を利用し、原子・分子レベルで精密に制御された表面を作る技術の確立が必要であるが、これを達成するためには、原子・分子レベルでの表面化学現象を追跡し、化学反応素過程を解明する必要があるだけでなく、それらが集合して形成する原子集団やその表面における化学反応プロセス全体の挙動を明らかにする必要がある。特に、このサブミクロンミクロン領域における表面化学反応の結果、脱離してくる反応生成物の種類やその脱離方向の角度分布をリアルタイムで調べることにより、表面反応プロセスを総合的に理解することができる。そこで本研究では、新しいリアルタイム表面イメージングシステムであるin-situ複合表面イメージングシステムを開発し、STM(走査トンネル顕微鏡)とESDIAD(電子刺激脱離イオン角度分布)を組み合わせて、表面の化学状態や原子の動きと反応脱離生成物の同定および脱離角度分布をリアルタイムで観察し、反応素過程の原子・分子レベルでの解明を行うことを目的とした。その結果、半導体や酸化物半導体上における金属の空間的な動きを直接PEEMやMEM法などの表面イメージング法でリアルタイムに観察することに成功するとともに、吸着種1個1個を分離して、STM観測することに成功した。さらに、メタノールの分解反応過程を直接追跡し、分解反応に必要な表面との相互作用を明らかにした。本年度は1年目ということで、装置の整備を主に行った。XPEEM装置は、in-situ条件下で、X線による表面原子や電子状態を識別して、表面mappingをするためのものであり、新たに開発した装置である。まずこの装置の高感度化を行った。そのために、低ノイズCCDカメラを取り付けた。これにより、積算時間を上げることができるため、S/B比の大きな像として、表面の画像化をすることができるようになった。反応条件下のin-situ観察を行うため、このXPEEM装置にガス導入システムを装備した。マスフローコントローラにより、一定量のガスをコントロールして導入できるようにし、定常反応条件下のXPEEM像を観測できるように改造した。さらに、画像処理用に新たにパーソナルコンピュータを購入した。これにより、コントラストを増強したり、平滑化処理を行ったりして、画像を鮮明にすることができる。同時に、X線光電子スペクトルを測定するためのパルスカウンティングシステムの構築も行った。一方リアルタイムイメージングのテストサンプルとして、Si基盤上のAgの昇華過程を追跡し、融解することなく、周辺よりAgが徐々に昇華していくことをリアルタイムで追跡することに成功した。一方、温度変化ESDIAD装置によりRu(001)面上におけるメタノールの分解過程のリアルタイム観察を行い、中間体やその配向に関する情報を得ることに成功した。次世代化合物半導体デバイスや100%の選択性を有する高効率完全触媒の開発には、表面の反応を利用し、原子・分子レベルで精密に制御された表面を作る技術の確立が必要であるが、これを達成するためには、原子・分子レベルでの表面化学現象を追跡し、化学反応素過程を解明する必要があるだけでなく、それらが集合して形成する原子集団やその表面における化学反応プロセス全体の挙動を明らかにする必要がある。特に、このサブミクロンミクロン領域における表面化学反応の結果、脱離してくる反応生成物の種類やその脱離方向の角度分布をリアルタイムで調べることにより、表面反応プロセスを総合的に理解することができる。そこで本研究では、新しいリアルタイム表面イメージングシステムであるin-situ複合表面イメージングシステムを開発し、STM(走査トンネル顕微鏡)とESDIAD(電子刺激脱離イオン角度分布)を組み合わせて、表面の化学状態や原子の動きと反応脱離生成物の同定および脱離角度分布をリアルタイムで観察し、反応素過程の原子・分子レベルでの解明を行うことを目的とした。その結果、半導体や酸化物半導体上における金属の空間的な動きを直接PEEMやMEM法などの表面イメージング法でリアルタイムに観察することに成功するとともに、吸着種1個1個を分離して、STM観測することに成功した。さらに、メタノールの分解反応過程を直接追跡し、分解反応に必要な表面との相互作用を明らかにした。次世代化合物半導体デバイスや100%の選択性を有する高効率完全触媒の開発には、表面の反応を利用し、原子・分子レベルで精密に制御された表面を作る技術の確立が必要であるが、これを達成するためには、原子・分子レベルでの表面化学現象を追跡し、化学反応素過程を解明する必要があるだけでなく、それらが集合して形成する原子集団やその表面における化学反応プロセス全体の挙動を明らかにする必要がある。特に、このサブミクロンミクロン領域における表面化学反応の結果、脱離してくる反応生成物の種類やその脱離方向の角度分布をリアルタイムで調べることにより、表面反応プロセスを総合的に理解することができる。そこで本研究では、新しいリアルタイム表面イメージングシステムであるin-situ複合表面イメージングシステムを開発し、STM(走査トンネル顕微鏡)とESDIAD(電子刺激脱離イオン角度分布)を組み合わせて、表面の化学状態や原子の動きと反応脱離生成物の同定および脱離角度分布をリアルタイムで観察し、反応素過程の原子・分子レベルでの解明を行うことを目的とした。その結果、半導体や酸化物半導体上における金属の空間的な動きを直接PEEMやMEM法などの表面イメージング法でリアルタイムに観察することに成功するとともに、吸着種1個1個を分離して、STM観測することに成功した。さらに、メタノールの分解反応過程を直接追跡し、分解反応に必要な表面との相互作用を明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-09440195 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09440195 |
赤外線による食品の加熱に関する基礎的研究 | 食品の調理・加工を行う際の加熱の条件が製品に大きく影響し、特に食品の乾燥や焙焼を行う際には赤外線加熱が使用されることが多いが、その有効性に関する理論的データがなかった。そこで、平成4年度の研究において、赤外線加熱の有効性を確認するための実験を行った結果、赤外線加認は食品表面の温度上昇に有効であることを明らかにした。平成6年度においては、その有効性の理由を明らかにするために、赤外線で加熱した場合の食品表面近傍の温度分布を測定し、伝導伝熱で表面から伝熱されたと仮定したときの温度分布と比較する事によって赤外線の浸透の状態を推定した。伝導伝熱で伝熱したと仮定した場合の温度分布を求めるために、食品モデルの熱伝導率を測定し、熱拡散率を求めた。また、薄膜試料を用い分光光度計によって波長毎の吸収の測定を試みた。食品モデルとして寒天ゲル、コーンスターチゲルおよび魚すり身を用い、放射特性の異なるヒーターで加熱した。表面近傍での温度分布の測定のためには、0.127mmの熱電対を束ねて7mmの間に12点の測定部を持つ測定装置を試作して使用した。熱伝導率の測定にはディスク試料用熱伝導率計を用いた。分光光度計としては、近赤外線分光光度計及びフーリエ変換赤外分光光度計を使用した。食品表面近傍での温度分布の測定結果と測定した熱伝導率から伝導伝熱で伝熱したと仮定し計算した温度分布を比較すると、測定値は明らかに高い値を示し、赤外線が食品表面に浸透して熱に変わることが推論できた。特に、近赤外線領域において吸収が大きいことが示され、吸収の深さは食品によってことなった。この結果は、分光光度計による測定でも裏付けられた。これらのことより、食品加熱における赤外線加熱の特長は食品表面での浸透によるものであることが明らかとなった。今後、食品成分及び波長による浸透の深さを詳細に測定することが課題である。食品の調理・加工を行う際の加熱の条件が製品に大きく影響し、特に食品の乾燥や焙焼を行う際には赤外線加熱が使用されることが多いが、その有効性に関する理論的データがなかった。そこで、平成4年度の研究において、赤外線加熱の有効性を確認するための実験を行った結果、赤外線加認は食品表面の温度上昇に有効であることを明らかにした。平成6年度においては、その有効性の理由を明らかにするために、赤外線で加熱した場合の食品表面近傍の温度分布を測定し、伝導伝熱で表面から伝熱されたと仮定したときの温度分布と比較する事によって赤外線の浸透の状態を推定した。伝導伝熱で伝熱したと仮定した場合の温度分布を求めるために、食品モデルの熱伝導率を測定し、熱拡散率を求めた。また、薄膜試料を用い分光光度計によって波長毎の吸収の測定を試みた。食品モデルとして寒天ゲル、コーンスターチゲルおよび魚すり身を用い、放射特性の異なるヒーターで加熱した。表面近傍での温度分布の測定のためには、0.127mmの熱電対を束ねて7mmの間に12点の測定部を持つ測定装置を試作して使用した。熱伝導率の測定にはディスク試料用熱伝導率計を用いた。分光光度計としては、近赤外線分光光度計及びフーリエ変換赤外分光光度計を使用した。食品表面近傍での温度分布の測定結果と測定した熱伝導率から伝導伝熱で伝熱したと仮定し計算した温度分布を比較すると、測定値は明らかに高い値を示し、赤外線が食品表面に浸透して熱に変わることが推論できた。特に、近赤外線領域において吸収が大きいことが示され、吸収の深さは食品によってことなった。この結果は、分光光度計による測定でも裏付けられた。これらのことより、食品加熱における赤外線加熱の特長は食品表面での浸透によるものであることが明らかとなった。今後、食品成分及び波長による浸透の深さを詳細に測定することが課題である。1.食品加熱における放射伝熱の有効性についての検討。全伝熱量に占める放射伝熱量が異なり、金属ブロックに対する伝熱量は同じであるような加熱条件で食品(ケーキ、クッキー)を内部温度が同じになるまで加熱した場合の加熱所要時間、食品表面の着色、水分蒸発量を測定した結果、加熱所要時間は理論値とほぼ一致するが、表面の焼き色は放射伝熱量の割合が大きいほど濃くなることが明らかとなった。この事から、赤外線加熱は対流伝熱より食品表面の焼き色の形成に有効であることが明らかとなった。2.食品加熱における波長の影響。波長特性の異なるヒーターを使用して食品(パン、魚、クッキー)を加熱した場合、放射温度計で測定した表面温度、水分蒸発量、表面の着色状態には差が生じ、放射伝熱の波長特性が食品の焼け具合に影響することが明らかとなった。放射波長の長い遠赤外線ヒーターでは、表面の温度上昇が早く、表面温度が高く着色し易く、波長の短いハロゲンヒータでは、表面温度は低く、着色しにくく、表面のクラストが厚くなることが明らかになった。3.食品表面の放射率の測定。食品表面の放射率を明らかにするため、黒色塗装した金属と食品の受熱量の差から放射率を求めようと試みたが、表面からの水分の蒸発および食品内での水分の移動、成分の変性などが同時に起こるため正確に計算できなかった。また、分光光度計によって乾燥させたクッキーの表面の放射率の測定を行った結果、0.70.9の値を得た。 | KAKENHI-PROJECT-04680064 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04680064 |
赤外線による食品の加熱に関する基礎的研究 | 4.食品の表面近傍での赤外線の浸透度の測定。赤外線加熱が食品表面の着色に有効である理由の一つは、赤外線の食品内への浸透によるものであろうと考えられるので、食品の表面付近の温度分布を細かく測定するための装置を試作した。今後この測定装置を利用して測定を行い浸透度の推定の実験を行う計画である。食品の調理・加工を行う際の加熱の条件が製品に大きく影響し、特に食品の乾燥や焙焼を行う際には赤外線加熱が使用されることが多いが、その有効性に関する理論的データーがなかった。そこで、平成4年度の研究において、赤外線加熱の有効性を確認するための実験を行った結果、赤外線加熱は食品表面の温度上昇に有効であることを明らかにした。平成6年度においては、その有効性の理由を明らかにするために、赤外線で加熱した場合の食品表面近傍の温度分布を測定し、伝導伝熱で表面から伝熱されたと仮定したときの温度分布と比較する事によって赤外線の浸透の状態を推定した。伝導伝熱で伝熱したと仮定した場合の温度分布を求めるために、食品モデルの熱伝導率を測定し、熱拡散率を求めた。また、薄膜試料を用いて分光光度計によって波長毎の吸収の測定を試みた。食品モデルとして寒天ゲル、コーンスターチゲルおよび魚すり身を用い、放射特性の異なるヒーターで加熱した。表面近傍での温度分布の測定のためには、0.127mmの熱電対を束ねて7mmの間に12点の測定部を持つ測定装置を試作して使用した。熱伝導率の測定にはディスク試料用熱伝導率計を用いた。分光光度計としては、近赤外線分光光度計及びフーリェ変換赤外分光光度計を使用した。食品表面近傍での温度分布の測定結果と測定した熱伝導率から伝導伝熱で伝熱したと仮定し計算した温度分布を比較すると、測定値は明らかに高い値を示し、赤外線が食品表面に浸透して熱に変わることが推論できた。特に、近赤外線領域において吸収が大きいことが示され、吸収の深さは食品によってことなった。この結果は、分光光度計による測定でも裏付けられた。これらのことより、食品加熱における赤外線加熱の特長は食品表面での浸透によるものであることが明らかとなった。今後、食品成分及び波長による浸透の深さを詳細に測定することが課題である。 | KAKENHI-PROJECT-04680064 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04680064 |
ゴーイング・コンサーン情報と企業継続能力との整合性 | 新監査実務指針第570号「継続企業」は、IAASBによるクラリティ・プロジェクトを受けて行われた短期間における大量の監査実務指針改正の中で設定・公表されたものである。ここで継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるか否かについて「流動負債が流動資産を超過している状態」を判定基準とすることは、英米とは異なり我が国の制度においては未定着である点、ドイツ及び米国の監査基準と比して、経営者及び監査人の評価期間との関係において理論的整合性が十分に確保されていない問題がある。そのため、当該判定基準に代えて支払能力の有無を検討する新たな判定基準を規定することが望ましいと考えられる。ゴーイング・コンサーン情報とは、継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況が存在する場合における、財務諸表への注記開示、そして監査人による継続企業の前提に重要な疑義が認められる事項が財務諸表等に適切に記載されているか否かについて検討及び当該重要な疑義に関する事項について監査報告書等への追記情報である。ここで、継続企業の前提が成立していないことが一定の事実により明らかな場合には,継続企業を前提として財務諸表を作成することは不適切であると判断しなければならない。この「一定の事実」とは、破産手続など清算型法的倒産処理手続の申立て等が該当するとされており、再生型法的倒産処理手続の申立てについては、制度上は継続企業前提の不成立とは考えられていない。しかし、清算型であっても再生型であっても法的倒産処理手続の申立ては、利害関係者に与える被害は甚大となる可能性が大きく、この点において財務情報の利用者と開示制度の期待ギャップが存在すると考えられる。また、ゴーイング・コンサーンの前提に重要な疑義を抱かせる状況として、例えば支払不能が挙げられる。この支払不能の判定について、実務上負の流動比率判定することがよていされている。しかし、流動比率が負の状態であっても、支払能力を有し事業を継続することが不可能とは限らない。すなわち、事業活動の前提である支払能力は資金が足りているか否かによるものであり、単純に資産と負債の大小関係で判定することに問題がある。そこで、ゴーイング・コンサーン情報の開示、法的倒産処理手続の開始原因について、諸外国の制度と比較しつつ、その関係を明らかにし、ゴーイング・コンサーン情報の企業倒産に関する情報としての有用性について明らかにする。ゴーイング・コンサーン情報が、実際に企業の継続能力を反映しているか否かについて、特にゴーイング・コンサーン情報に関する制度の規定から、その問題点を明らかにした。この点につき、2011年12月22日に監査基準委員会報告書第570号「継続企業」(以下、新監査実務指針第570号)が公表され、すでに2012年4月1日以後開始する事業年度に係る監査(及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間監査)から適用されているが、この改正は、IAASBによるクラリティ・プロジェクトを受けて行われた短期間における大量の監査実務指針改正の中で設定・公表されたものである。そのため、クラリティ版ISA570号「継続企業」の内容が、我が国の制度にマッチするか、基準内外での理論的整合性は確保されているかについて、十分に検討されないまま我が国実務指針に導入され、規定化されたおそれがある。特に、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるか否かについて「流動負債が流動資産を超過している状態」を判定基準とすることは、支払不能テストを実施してきた英米とは異なり我が国の制度においては未定着である点、ドイツ及び米国の監査基準と比して、経営者及び監査人の評価期間との関係において理論的整合性が十分に確保されていない問題がある。そのため、当該判定基準に代えて支払能力の有無を検討する新たな判定基準を規定することが望ましいと考えられる。新監査実務指針第570号「継続企業」は、IAASBによるクラリティ・プロジェクトを受けて行われた短期間における大量の監査実務指針改正の中で設定・公表されたものである。ここで継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるか否かについて「流動負債が流動資産を超過している状態」を判定基準とすることは、英米とは異なり我が国の制度においては未定着である点、ドイツ及び米国の監査基準と比して、経営者及び監査人の評価期間との関係において理論的整合性が十分に確保されていない問題がある。そのため、当該判定基準に代えて支払能力の有無を検討する新たな判定基準を規定することが望ましいと考えられる。ゴーイング・コンサーン情報とは、継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況が存在する場合における、財務諸表への注記開示、そして監査人による継続企業の前提に重要な疑義が認められる事項が財務諸表等に適切に記載されているか否かについて検討及び当該重要な疑義に関する事項について監査報告書等への追記情報である。ここで、継続企業の前提が成立していないことが一定の事実により明らかな場合には,継続企業を前提として財務諸表を作成することは不適切であると判断しなければならない。この「一定の事実」とは、破産手続など清算型法的倒産処理手続の申立て等が該当するとされており、再生型法的倒産処理手続の申立てについては、制度上は継続企業前提の不成立とは考えられていない。しかし、清算型であっても再生型であっても法的倒産処理手続の申立ては、利害関係者に与える被害は甚大となる可能性が大きく、この点において財務情報の利用者と開示制度の期待ギャップが存在すると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-23530597 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23530597 |
ゴーイング・コンサーン情報と企業継続能力との整合性 | また、ゴーイング・コンサーンの前提に重要な疑義を抱かせる状況として、例えば債務超過が挙げられる。この債務超過の判定は、実務上(連結)貸借対照表の資産簿価を負債簿価が上回る状況によって判定されている。しかし、債務超過であっても、支払能力を有し事業を継続することが不可能とは限らない。すなわち、事業活動の前提である支払能力は資金が足りているか否かによるものであり、単純に資産と負債の大小関係で判定することに問題がある。また、債務超過に関連して、破産手続の開始原因としても債務超過を判定するが、同様の問題があると考えられる。そこで、ゴーイング・コンサーン情報の開示、法的倒産処理手続の開始原因について、諸外国の制度と比較しつつ、その関係を明らかにし、ゴーイング・コンサーン情報の企業倒産に関する情報としての有用性について明らかにする。ゴーイング・コンサーン情報に関する監査判断の観点から、監査実務指針の改正における問題点が明らかになった。例えば、ゴーイング・コンサーン情報開示の基準として、新たに負の流動比率という指標が規定されたが、資産および負債を正常営業循環基準により流動・固定分類する下では、負の流動比率が短期的支払能力の欠如を示すとは限らない。そのため、この指標により形式的に判定すると、利害関係者に誤った情報を提供する可能性がある。そこで、当該指標を用いる際の注意点や実質判断の方法等を明らかにする必要があると考えられる。ゴーイング・コンサーン情報開示の観点から、他の会計基準の動向における問題点が明らかになった。例えば、「四半期財務諸表に関する会計基準」の平成23年改正は、四半期報告を簡素化することを趣旨とするものであるが、四半期財務諸表の作成者の便宜に偏向しており、四半期財務諸表の利用者にとって必要な情報が不足する問題があり、ゴーイング・コンサーン情報の精度が低下するおそれもある。そこで、四半期財務諸表の利用者は、企業のゴーイング・コンサーン能力判定のために、不足する情報を自ら作成する必要がある。この点につき、キャッシュ・フロー情報は利用者側である程度は作成可能であり、かつ利用者側が四半期キャッシュ・フロー計算書を作成・分析する場合に必要な情報が手当てされている。しかし、四半期損益情報は、これを四半期財務諸表の利用者側が推計した場合、歪んだ情報によって誤解するおそれがある。そこで、四半期財務諸表作成者の負担にならない範囲で情報不足を補うためには、例えば、重要な在外子会社が存在する場合に外貨ベースでの四半期情報や関連する為替相場の注記開示を行うこと等が少なくとも必要があると考えられる。企業倒産は、企業倒産の原因となる事象が存在し、これを原因として法的倒産処理手続が申し立てられることによって生ずる。企業倒産の原因となる事象については、ファイナンス理論等に関する研究の蓄積があり、法的倒産処理手続開始原因には倒産法に関する研究及び判例の蓄積がある。本研究では、これらの研究成果等を援用しつつ、会計理論の見地から利害関係者への情報提供のあり方を考察する。企業倒産は、企業倒産の原因となる事象が存在し、これを原因として法的倒産処理手続が申し立てられることによって生ずる。企業倒産の原因となる事象については、ファイナンス理論等に関する研究の蓄積があり、法的倒産処理手続開始原因には倒産法に関する研究及び判例の蓄積がある。 | KAKENHI-PROJECT-23530597 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23530597 |
環境負荷の軽減と循環型資源の形成を目指した安全・安心なリサイクル発酵調味料の開発 | 本研究の目的は練製品製造工程や消費期限内に回収される製品(蒲鉾ロス)を調味料に変換し、得られた調味料とその調味料を利用して製造した練製品の品質を調査することである。ニギスと蒲鉾ロスおよびその混合物に醤油麹と乳酸菌を添加してテストプラントレベルで約6ヶ月間常温発酵を行った。その結果、得られた発酵調味料は食品添加物の高度濃縮がなく、ヒスタミンレベルも低い安全安心な発酵調味料であること、官能評価と味覚分析から調味料の蒲鉾への再利用が可能であることから、本技術により食品ロスの削減が可能であることが明らかとなった。本研究の目的は練製品製造工程や消費期限内に回収される製品(蒲鉾ロス)を調味料に変換し、得られた調味料とその調味料を利用して製造した練製品の品質を調査することである。ニギスと蒲鉾ロスおよびその混合物に醤油麹と乳酸菌を添加してテストプラントレベルで約6ヶ月間常温発酵を行った。その結果、得られた発酵調味料は食品添加物の高度濃縮がなく、ヒスタミンレベルも低い安全安心な発酵調味料であること、官能評価と味覚分析から調味料の蒲鉾への再利用が可能であることから、本技術により食品ロスの削減が可能であることが明らかとなった。本研究の目的は練製品製造工程で発生する製造ロス(L)を主原料として麹と乳酸菌の添加によりヒスタミン(Hm)や食品添加物(FA)レベルの低い発酵調味料の製造し,発酵中のもろみと最終製品の品質を調査することである.現状調査ではLの種類は渦巻き蒲鉾(赤巻きと昆布巻)が多く,L量は生産量(月別)の約3%であった,Lを赤巻きとそれ以外に選別し,それぞれニギス魚肉を混合しない試料(A0とK0)と等量混合した試料(A1とK1)に対して食塩,水,醤油麹(A. oryzae),好塩性乳酸菌(T. halophilus)を混合し,常温で約6ヶ月間発酵させた.なお,ニギス魚肉のみを用いた試料を対照(C0)とし,発酵促進のため上記の試料にスミチームLP20(S)を仕込み時に添加した試料を同様に調製した(SC0, SA0, SK0, SA1, SK1).その結果,全窒素分はS添加有無にかかわらず経時的に緩やかに増加し,180日後はL量が多い程低値であった.pHをみると,C0は15日まで低下後,発酵終了まで緩やかに増加したが,L添加試料では発酵初期にpHが低下しその後発酵終了まで緩やかに推移した.一方,S添加試料ではいずれの試料も発酵に伴いpHが低下したが,SA1はその低下が緩やかであった.HmレベルをみるとC0とSA1は発酵中に上昇しそれぞれ45と90日目で1000ppmレベルに達したが,その他の試料では200ppm以下で推移した.Hm生成菌数もC0とSA1では発酵中に10^4/gレベル以上の増殖期間が他の試料よりも長かった.FAの調査からソルビン酸量は仕込み時にC0とSC0以外では230-850ppmであったが,発酵に伴い減少し,最終製品では検出限界以下,また,重合リン酸塩は仕込み時で既にいずれの試料にもピロリン酸やトリポリリン酸は検出されず,オルトリン酸のみが検出された.β-カロテンはK1とSK1のみで24-31ppm検出されたが,発酵に伴い減少し,最終製品では検出限界以下となった.最終製品の味覚分析からK0とSK0はバランスタイプ,K1とSK1は濃厚・コクタイプに分別された.本研究の目的は練製品製造工程で発生する製造ロス(L)を主原料として麹と乳酸菌の添加によりヒスタミン(Hm)や食品添加物(FA)レベルの低い発酵調味料の製造し,発酵中のもろみと最終製品の品質を調査することである.平成23年度はFA残存量の確認(1);品質向上のためのスミチームLP50(S)の添加効果(2)および最終製品の品質特性に関する実験室レベル(Lab)とテストプラントレベル(TP)で共通点と相違点(3)について調査した.得られた結果を以下に示す.1.残存FAレベル:平成22年度の最終製品についてFA残存量の調査を実施した結果,Lを主原料にした試料ではS添加有無にかかわらずソルビン酸,リコピンおよびカプサンチン量はそれぞれ33-163ppm,2mg/L以下および51-121mg/Lであり,練製品製造時の添加量の約1/10以下°C減少していることが分かった.2.Sの添加効果(実験室レベル):Lを赤巻きとそれ以外に選別し,細切後に等量混合した.これに食塩,水,醤油麹(A.oryzae),好塩性乳酸菌(T.halophilus)を混合し,Sを添加(4A,4B)または無添加(3A,3B)後,試料瓶に詰めて6ヶ月間25°Cで発酵させた.Lの代わりにニギス魚肉を用いてSを添加(2A,2B)または無添加(1A,1B)後,同様に発酵させた.その結果,1A,1B,2Aおよび2Bでは発酵申にpHが一度低下するが,その後発酵終了まで上昇し,約6.0となった.3A,3B,4Aおよび4Bではいずれの試料も発酵4週まで4.8まで低下後,緩やかに低下し,24週では3Blを除き約4.6となった. | KAKENHI-PROJECT-22500769 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22500769 |
環境負荷の軽減と循環型資源の形成を目指した安全・安心なリサイクル発酵調味料の開発 | 3Bは16週から増加し,24週で5.0となった.1A,1B,2Aおよび2Bでは16週にHmが急激に増加し,24週には1400PPm以上に達した.一方,3A3B,4Aおよび4Bでは3Bを除き24週後でも20ppm以下であった.3Bは20週後に増加し,24週に600ppmに達した.各種もろみのHm量の変化はHm生成菌数の変化と対応していた.最終製品の味覚分析ではS添加有無にかかわらずL試料は酸味主体であり,ニギス魚肉試料は苦味由来のコク,うま味・塩味主体であった.3.LabとTPでの最終製品の品質:味覚分析では原料の違いによる味のバランスの違いは両者で類似していた.Sの添加効果をみるとLabとTPでは前者の方が後者に比べて全窒素分が多い点等で相違していた.本研究の目的は練製品製造工程で発生する製造ロスを主原料として麹と好塩性乳酸菌の添加によりヒスタミンや食品添加物レベルの低い発酵調味料を製造し、発酵中のもろみと最終製品の品質を調査することである。平成24年度は3種類の発酵調味料を実際に製造されている赤巻かまぼこに添加して再利用した際の製品(ニギス蒲鉾、混合蒲鉾、ロス蒲鉾)の品質を味覚分析と官能評価から調査した。また、本研究の実施による月別平均ロスの発生率とロスの再生率についての調査を行った。以下、結果を示す。1.味覚分析によると、3種類の蒲鉾に5倍量の純水を加えてフードプロセッサで咀嚼状態を作り出し味の抽出、ろ過を行い、測定サンプルとし、常温で味覚の測定を行った。その結果、味わいのバランスチャートではコク、甘味、塩味、うま味を比較すると、類似したレイダーチャートが示され、試料間の全体的な味わいの質がほぼ同じであることが分かった。次に、味の強弱を示す味わいマップでは縦軸に苦味由来のコク、横軸にうま味をプロットすると、3種類の蒲鉾では味数値の差が1以内であった。したがって、3種類の蒲鉾では全体の味わいの質や各味の強さには差異がないことが明らかとなった。2.男性44名、女性33名、計77名、平均年齢38.9歳で蒲鉾が嫌いでないパネルで、全体味、色調、香りおよび全体の品質に関しての順位法による官能評価を実施した。その結果、色調と香りではいずれの試料間にも有意差が見られないが、全体味と全体の品質ではロス蒲鉾がその他の蒲鉾に比べて有意に好まれないことが分かった。したがって、ロスと魚肉を混合して発酵調味料を製造することで蒲鉾への再利用が可能であることが市販製品のレベルで確認された。3.2010年7月から2011年6月までの月別平均ロスの発生率は3.5%で、ロスの再生率は48.9%であることが(株)梅かまの自社調査から明らかとなった。本研究の目的である循環型資源形成のための安全・安心な発酵調味料の創出という点ではほぼ目的は達している。しかし、本研究は発酵調味料の調製に約6ヶ月を必要とするためその後のもろみと最終製品の成分分析には1年程度の時間を必要とすることや発酵は温度やスケール等様々な要因で変動することから品質調査の面でやや遅れていると判断される。24年度が最終年度であるため、記入しない。平成23年度までに練製品製造ロスは発酵の原料としての活用に有効的で、しかも得られた発酵調味料中のヒスタミンレベルが低く、食品添加物の残存量も少ないことから練製品への再利用が可能であることが分かった。また、平成22年7月12月の平均月別再生量の調査から発生したロスの約半分を再利用することが可能となった。したがって、この方法を活用することで食品ロスの低減が可能であることから研究協力者である(株)梅かまで蒲鉾製造ロスの年次調査を行う。得られた異なる味覚特性を示す発酵調味料の食品への再利用について異なる種類の練り製品での嗜好性試験も実施する。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22500769 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22500769 |
放電プラズマによる癌の転移抑制効果の検証 | 申請者はこれまでの研究で、放電プラズマをマウスの癌に照射すると、癌に対するマウスの免疫が高まり、切除した癌の再発抑制や全身の癌に対する抗癌効果が得られる可能性を動物実験で示してきた。本研究ではこれを発展させ、放電プラズマをマウスの癌に照射して癌に対するマウスの免疫を高め、癌の転移を抑制できるかどうかを動物実験で検証する。本年度は、皮膚癌の一種であるマウスメラノーマ細胞(B16F10)を用いて実験を行った。このB16F10はマウスの肺に転移しやすいことが知られており、転移を調べる実験に適していると考えられる。マウスの右脚に癌細胞を皮下注射して腫瘍を作り、プラズマ照射を1日10分間で5日間行った。その後、腫瘍を切除し、プラズマ照射により誘起されたマウスの免疫が活性化するのに2週間程度時間をあけた。2週間後、今度はマウスの尾静脈から癌細胞を注射して、これが肺に転移する様子を測定した。その結果、プラズマ照射をしなかったマウスに比べて、プラズマ照射をしたマウスの肺転移が抑制されたことを示唆する結果が1回目の実験で得られたが、2回目の同じ実験ではどちらかというと逆の傾向を示す結果が得られた。この実験は非常に難易度が高いため、まだ適切な実験条件および実験手法が得られておらず、これは次年度の課題となる。また、予想に反して肺以外にも様々な箇所にB16F10が転移してしまっており、これも実験を乱す要因となった。次年度もメラノーマを使った実験を予定しているが、B16F10は転移能が強すぎて実験がうまくいかなかった可能性も考慮し、転移能の弱い別の癌(大腸癌CT26)を用いた予備実験も初年度に平行して行った。また、プラズマのどの活性種が効いているかを調べる研究の一環として、ストリーマ放電の活性種計測の研究も行った。初年度となる今年度は、皮膚癌の一種であり、また肺転移しやすいことでも知られているマウスメラノーマ細胞(B16F10)を用いた。「研究実績の概要」でも記したように、マウスの右脚に腫瘍を作り、プラズマ照射を5日間行った後に腫瘍を切除した。その後、プラズマ照射で誘起された免疫が活性化する期間を2週間あけて、今度はマウスの尾静脈から癌細胞を注射し、これが肺に転移する様子を測定した。肺転移の様子をプラズマ照射していないマウスと比較し、プラズマ照射の効果を調べた。同じ実験を2回行ったが、1回目はポジティブ、2回目はややネガティブな結果が得られた。実験ではB16F10細胞に発酵酵素ルシフェラーゼを付与したB16F10-lucとよばれる特殊な細胞を用いることで、IVISと呼ばれる装置でマウスの体内の癌腫瘍をレントゲンのように透過して観測する技術を用いた。その結果、肺転移した癌の定量評価を行うことができたと同時に、予想に反して肺以外に転移してしまった癌も多数存在することが明らかになった。以上のように、初年度の実験は改良の点が多々あるが、まずは難易度の高い転移抑制効果を調べる実験を、実際に行えたこと自体が大きな成果である。本実験の問題点も、いくつか明らかにすることができた。また、B16F10の転移能が強すぎて実験がうまくいかなかった可能性も考慮し、転移能の弱い別の癌(大腸癌CT26)を用いた予備実験も平行して行ったことも本年度の研究成果である。初年度の実験を継続するが、初年度に明らかになった問題の改善を図る。第一に、2回の実験で異なる結果が出た件について、プラズマによる免疫の活性化が弱かった可能性がある。改善策として、プラズマを5日間照射後にすぐに切除していた原発腫瘍の切除時期を延長し、免疫細胞が腫瘍に作用する期間を延ばすことが考えられる。この切除時期を遅くしすぎると、原発腫瘍が大きく成長し、マウスに苦痛を与えるエンドポイントに達して実験を終了しなければならなくなる。その前に腫瘍を切除する必要があり、時期の見極めが必要となる。少なくとも、切除時期をあと数日は延長できる可能性がある。第二に、肺以外への転移を抑制する必要がある。これは容易ではないが、転移能の強いB16F10に変えて、転移能の弱い別の癌種CT26を用いることがひとつの方法である。しかし、この場合、肺への転移も弱くなるため、実験が成立しなくなる可能性もある。肺以外への転移も許容してB16F10を用い、すべての転移を合算して評価する方法もあるが、異なる臓器への転移をどのように定量化するかは難しい問題である。厳密な定量性を放棄して、おおまかに転移抑制効果があるかどうかのみ調べる方法もある。肺転移の評価方法では、IVISを用いるよりも、マウス安楽殺後に取り出した肺を顕微鏡で観察したり、肺の質量を測定して転移を調べる方法が一般的である。この手法では、転移能の弱いCT26や肺癌などを用いた実験が多くの論文でなされており、これらの実験手法を踏襲することも考えている。申請者はこれまでの研究で、放電プラズマをマウスの癌に照射すると、癌に対するマウスの免疫が高まり、切除した癌の再発抑制や全身の癌に対する抗癌効果が得られる可能性を動物実験で示してきた。本研究ではこれを発展させ、放電プラズマをマウスの癌に照射して癌に対するマウスの免疫を高め、癌の転移を抑制できるかどうかを動物実験で検証する。 | KAKENHI-PROJECT-18K18846 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K18846 |
放電プラズマによる癌の転移抑制効果の検証 | 本年度は、皮膚癌の一種であるマウスメラノーマ細胞(B16F10)を用いて実験を行った。このB16F10はマウスの肺に転移しやすいことが知られており、転移を調べる実験に適していると考えられる。マウスの右脚に癌細胞を皮下注射して腫瘍を作り、プラズマ照射を1日10分間で5日間行った。その後、腫瘍を切除し、プラズマ照射により誘起されたマウスの免疫が活性化するのに2週間程度時間をあけた。2週間後、今度はマウスの尾静脈から癌細胞を注射して、これが肺に転移する様子を測定した。その結果、プラズマ照射をしなかったマウスに比べて、プラズマ照射をしたマウスの肺転移が抑制されたことを示唆する結果が1回目の実験で得られたが、2回目の同じ実験ではどちらかというと逆の傾向を示す結果が得られた。この実験は非常に難易度が高いため、まだ適切な実験条件および実験手法が得られておらず、これは次年度の課題となる。また、予想に反して肺以外にも様々な箇所にB16F10が転移してしまっており、これも実験を乱す要因となった。次年度もメラノーマを使った実験を予定しているが、B16F10は転移能が強すぎて実験がうまくいかなかった可能性も考慮し、転移能の弱い別の癌(大腸癌CT26)を用いた予備実験も初年度に平行して行った。また、プラズマのどの活性種が効いているかを調べる研究の一環として、ストリーマ放電の活性種計測の研究も行った。初年度となる今年度は、皮膚癌の一種であり、また肺転移しやすいことでも知られているマウスメラノーマ細胞(B16F10)を用いた。「研究実績の概要」でも記したように、マウスの右脚に腫瘍を作り、プラズマ照射を5日間行った後に腫瘍を切除した。その後、プラズマ照射で誘起された免疫が活性化する期間を2週間あけて、今度はマウスの尾静脈から癌細胞を注射し、これが肺に転移する様子を測定した。肺転移の様子をプラズマ照射していないマウスと比較し、プラズマ照射の効果を調べた。同じ実験を2回行ったが、1回目はポジティブ、2回目はややネガティブな結果が得られた。実験ではB16F10細胞に発酵酵素ルシフェラーゼを付与したB16F10-lucとよばれる特殊な細胞を用いることで、IVISと呼ばれる装置でマウスの体内の癌腫瘍をレントゲンのように透過して観測する技術を用いた。その結果、肺転移した癌の定量評価を行うことができたと同時に、予想に反して肺以外に転移してしまった癌も多数存在することが明らかになった。以上のように、初年度の実験は改良の点が多々あるが、まずは難易度の高い転移抑制効果を調べる実験を、実際に行えたこと自体が大きな成果である。本実験の問題点も、いくつか明らかにすることができた。また、B16F10の転移能が強すぎて実験がうまくいかなかった可能性も考慮し、転移能の弱い別の癌(大腸癌CT26)を用いた予備実験も平行して行ったことも本年度の研究成果である。初年度の実験を継続するが、初年度に明らかになった問題の改善を図る。第一に、2回の実験で異なる結果が出た件について、プラズマによる免疫の活性化が弱かった可能性がある。改善策として、プラズマを5日間照射後にすぐに切除していた原発腫瘍の切除時期を延長し、免疫細胞が腫瘍に作用する期間を延ばすことが考えられる。この切除時期を遅くしすぎると、原発腫瘍が大きく成長し、マウスに苦痛を与えるエンドポイントに達して実験を終了しなければならなくなる。その前に腫瘍を切除する必要があり、時期の見極めが必要となる。少なくとも、切除時期をあと数日は延長できる可能性がある。 | KAKENHI-PROJECT-18K18846 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K18846 |
魚類ビテロジェニンのユニバーサル抗体を用いた測定系の開発 | サケマス類及びコイ類を対象種としてビテロジェニンの構成蛋白である卵黄蛋白質に対するモノクロナール及びポリクロナール抗体を用いて,免疫測定法を確立し,広く魚種に共通するビテロジェニンの測定系を開発し,実用化を目指すことを目的とした。本年度は昨年度に引き続き研究し以下の成果を得た。1.抗体の特性:サクラマス精製β′-コンポーネント及びリポビテリン,コイのリポビテリンに対する抗体を家兎及びマウスを用いて作製したポリクロナール及びモノクロナール抗体について特異性を検討した。コイにおいてはβ′-コンポーネントは同定されなかった。2.β′-コンポーネントのアミノ酸配列:サクラマスより精製した蛋白のアミノ酸配列をN端より35個決定した。この配列は報告されているニジマスビテロジェニンの配列の一部と良く一致した。3.ビテロジェニン測定法の確立:コイビテロジェニンの測定法として,化学発光イムノアッセイ(CLIA)を確立した。測定時間は4時間で2-1000ng/mlで測定可能であった。免疫交叉性はサケ科魚類とはなく,コイ科魚類と反応性が認められた。一方,サケ科魚類のビテロジェニンの測定は,酵素抗体法(EIA)及びCLIAを確立した。EIAはポリクローナル及びモノクローナル抗体を用いた固相サンドイッチ法により行った。最小検出濃度は0.3ng/mlであった。また,CLIAでは2種類の抗体を用いたワンステップCLIAを確立した。6-9時間で122 pg/ml-1000ng/mlの測定範囲をカバーした。両方法ともサケ科魚類ビテロジェニンに反応し,サケ科魚類に対してユニバーサル的に使用可能であった。4.ビテロジェニンアッセイの市販品作製:CLIA,EIAを行う一次スクリーニングとして25-1000μg/mlをカバーするsingle radial immunodiffusionの簡易定量プレートの開発を行い,市販する準備が整った。サケマス類及びコイ類を対象種としてビテロジェニンの構成蛋白である卵黄蛋白質に対するモノクロナール及びポリクロナール抗体を用いて,免疫測定法を確立し,広く魚種に共通するビテロジェニンの測定系を開発し,実用化を目指すことを目的とした。本年度は昨年度に引き続き研究し以下の成果を得た。1.抗体の特性:サクラマス精製β′-コンポーネント及びリポビテリン,コイのリポビテリンに対する抗体を家兎及びマウスを用いて作製したポリクロナール及びモノクロナール抗体について特異性を検討した。コイにおいてはβ′-コンポーネントは同定されなかった。2.β′-コンポーネントのアミノ酸配列:サクラマスより精製した蛋白のアミノ酸配列をN端より35個決定した。この配列は報告されているニジマスビテロジェニンの配列の一部と良く一致した。3.ビテロジェニン測定法の確立:コイビテロジェニンの測定法として,化学発光イムノアッセイ(CLIA)を確立した。測定時間は4時間で2-1000ng/mlで測定可能であった。免疫交叉性はサケ科魚類とはなく,コイ科魚類と反応性が認められた。一方,サケ科魚類のビテロジェニンの測定は,酵素抗体法(EIA)及びCLIAを確立した。EIAはポリクローナル及びモノクローナル抗体を用いた固相サンドイッチ法により行った。最小検出濃度は0.3ng/mlであった。また,CLIAでは2種類の抗体を用いたワンステップCLIAを確立した。6-9時間で122 pg/ml-1000ng/mlの測定範囲をカバーした。両方法ともサケ科魚類ビテロジェニンに反応し,サケ科魚類に対してユニバーサル的に使用可能であった。4.ビテロジェニンアッセイの市販品作製:CLIA,EIAを行う一次スクリーニングとして25-1000μg/mlをカバーするsingle radial immunodiffusionの簡易定量プレートの開発を行い,市販する準備が整った。サケマス類およびコイ類を対象種としてビテロジェニンの構成蛋白の1つであるβ'-コンポーネントに対するモノクロナールおよびポリクロナール抗体を作製する。広く魚種をカバーするユニバーサル抗体を選抜し,これを用いて酵素免疫測定法を確立し,広く魚種に共通してビテロジェニンの測定ができる系を開発し,実用化を目指す事を目的とした。本年度は以下の成果を得た。1.β'-コンポーネントの精製:サケマス類及びコイ類の卵黄蛋白質よりβ'-コンポーネントを精製を行った。コイにおいてはβ'-コンポーネントは同定されておらず,これまで行ってきたサケマス類での精製法を参考にしたが,卵黄中にはβ'-コンポーネント様蛋白は量的に少ないことが明らかとなった。2.β'コンポーネントのアミノ酸配列:サクラマスより精製した蛋白のアミノ酸配列をN端より35個決定した。この配列は報告されているニジマスビテロジェニンの配列の一部と良く一致した。3.ポリクロナール及びモノクロナール抗体の作製:サクラマス精製β'-コンポーネント及びリポビテリン,コイのリポビテリンに対する抗体を家兎及びマウスを用いてそれぞれポリクロナール及びモノクロナール抗体を作製した。4.ビテロジェニンの測定系:サケ科魚類ビテロジェニンの測定系として,β'-コンポーネント及びリポビテリンに対するポリクロナール及びモノクロナール抗体を組み合わせてサンドイッチ酵素免疫測定法(ELISA)を確立した。最小検出感度は0.2ng/mlであった。 | KAKENHI-PROJECT-11556038 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11556038 |
魚類ビテロジェニンのユニバーサル抗体を用いた測定系の開発 | また,化学発光物質をトレーサーとした迅速簡便な化学発光イムノアッセイ(CLIA)による測定法も確立した。一方,コイに関してはリポビテリンに対する抗体を用いてワンステップCLIAを確立した。サケマス類及びコイ類を対象種としてビテロジェニンの構成蛋白である卵黄蛋白質に対するモノクロナール及びポリクロナール抗体を用いて,免疫測定法を確立し,広く魚種に共通するビテロジェニンの測定系を開発し,実用化を目指すことを目的とした。本年度は昨年度に引き続き研究し以下の成果を得た。1.抗体の特性:サクラマス精製β′-コンポーネント及びリポビテリン,コイのリポビテリンに対する抗体を家兎及びマウスを用いて作製したポリクロナール及びモノクロナール抗体について特異性を検討した。2.ビテロジェニン測定法の確立:コイビテロジェニンの測定法として,化学発光イムノアッセイ(CLIA)を確立した。測定時間は4時間で2-1000ng/mlで測定可能であった。免疫交叉性はサケ科魚類とはなく,コイ科魚類と反応性が認められた。一方,サケ科魚類のビテロジェニンの測定は,酵素抗体法(EIA)及びCLIAを確立した。EIAはポリクローナル及びモノクローナル抗体を用いた固相サンドイッチ法により行った。最小検出濃度は0.3ng/mlであった。また,CLIAでは2種類の抗体を用いたsimultaneous two-site法を確立した。6-9時間で122pg/ml-1000ng/mlの測定範囲をカバーした。両方法ともサケ科魚類ビテロジェニンに反応し,サケ科魚類に対してユニバーサル的に使用可能であった。3.ビテロジェニンアッセイの市販品作製:CLIA,EIAを行う一次スクリーニングとして25-1000μg/mlをカバーするsingle radial immunodiffusionの簡易定量プレートの開発を行い,ほぼ日常的に利用できるプレートが完成し,市販する準備が整った。 | KAKENHI-PROJECT-11556038 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11556038 |
カリックスアレーンを基盤とするピコレベルでの生体機能物質識別蛍光センサーの開発 | 1.合成ルートの開発本研究ではupper rimのフェノール環に種々の官能基を導入したヘキサホモオキサカリックス[3]アレーンの簡便な合成ルートの開発がKey Stepとなる。そこで、本年度ではp-ヒドロキシ安息香酸エチルからの合成法を検討し、p-エトキシカルボニルホモオキサカリックス[3]アレーンが簡便な操作で2段階での合成ルートの開発に成功した。さらに、エトキシカルボニル基-COOEtを-COOH, -CH2OH, -CHO, NH2(CON3のクルチウス転位を用いて)等への変換を行った。2.フェノール性水酸基への蛍光性官能基の導入上述の成果を基にして、ヘキサホモオキサカリックス[3]アレーンのフェノール性水酸基へのピレン、アントラセン等の蛍光性官能基の導入を行った。すなわち、本申請者がすでに確立しているフェノール性水酸基へのアミノエチル基の導入、ついでピレン-1-イソシアニドおよび9-アンスリルイソシアニドとの反応によって容易に行うことが明らかとなった。3.アルキルアンモニウムイオンに対する包接機能に関する研究合成した一連のアミン蛍光性センサーのアルキルアンモニウムイオンを用いてセンサーとしての評価を行う。さらに、lower rim上のウレア部分とアニオン(ハライドイオン、リン酸イオン、硫酸イオン、酢酸イオン等)との錯体形成に伴うアロステリック効果の発現についても核磁気共鳴分光法を用いる滴定実験および蛍光スペクトル法により検討した。アニオン認識部を導入したヘテロダイトピックヘキサホモトリオキサカリックス[3]アレーンを基盤とするピコレベル(10-12 M)まで検出可能なアルキルアンモニウムイオン蛍光性化学センサーの開発に成功した。1.合成ルートの開発本研究ではupper rimのフェノール環に種々の官能基を導入したヘキサホモオキサカリックス[3]アレーンの簡便な合成ルートの開発がKey Stepとなる。そこで、本年度ではp-ヒドロキシ安息香酸エチルからの合成法を検討し、p-エトキシカルボニルホモオキサカリックス[3]アレーンが簡便な操作で2段階で合成可能なルートの開発に成功した。さらに、エトキシカルボニル基-COOEtを-COOH, -CH2OH, -CHO, NH2(CON3のクルチウス転位を用いて)等への変換を行った。2.フェノール性水酸基への蛍光性官能基の導入上述の成果を基にして、ヘキサホモオキサカリックス[3]アレーン類のフェノール性水酸基へのピレン、アントラセン等の蛍光性官能基の導入を行った。すなわち、本申請者がすでに確立しているフェノール性水酸基へのアミノエチル基の導入、ついでピレン-1-イソシアニドおよび9-アンスリルイソシアニドとの反応によって容易に行うことが明らかとなった。3.アルキルアンモニウムイオンに対する包接機能に関する研究合成した一連のアミン蛍光性センサーのアルキルアンモニウムイオンを用いてセンサーとしての評価を行う。さらに、lower rim上のウレア部分とアニオン(ハライドイオン、リン酸イオン、硫酸イオン、酢酸イオン等)との錯体形成に伴うアロステリック効果の発現についても核磁気共鳴分光法を用いる滴定実験および蛍光スペクトル法により検討した。アニオン認識部を導入したヘテロダイトピックヘキサホモトリオキサカリックス[3]アレーンを基盤とするピコレベル(10-12 M)まで検出可能なアルキルアンモニウムイオン蛍光性化学センサーの開発に成功した。C3対称を持つホモオキサカリックス[3]アレーン誘導体を開発し、lower rimのフェノール性水酸基にアルキルアンモニウムイオンとの錯体形成可能な官能基および蛍光性官能基の導入に成功し、アロステリック機能を有するカリックス[3]アレーンを基盤とする蛍光性化学センサーの簡便な合成ルートの開発に成功した。さらに、本成果を元に、種々の生体機能分子との水素結合に基づく分子認識機能を蛍光スペクトル測定および核磁気共鳴スペクトル法を用いて評価するなど、着実に本研究の当初の目的を達成している。本研究成果は、アメリカ化学会、イギリス化学会、ワイリージャーナル等に公表し、国際的に高い評価を得ている。今後は、生物学的に重要なアミンレセプターを分子設計し、構造と分子識別能との相関関係を調べ、分子レベルでのドーパミン、セロトニン結合機構の解明にチャレンジする。1.合成ルートの開発本研究ではupper rimのフェノール環に種々の官能基を導入したヘキサホモオキサカリックス[3]アレーンの簡便な合成ルートの開発がKey Stepとなる。そこで、本年度ではp-ヒドロキシ安息香酸エチルからの合成法を検討し、p-エトキシカルボニルホモオキサカリックス[3]アレーンが簡便な操作で2段階での合成ルートの開発に成功した。さらに、エトキシカルボニル基-COOEtを-COOH, -CH2OH, -CHO, NH2(CON3のクルチウス転位を用いて)等への変換を行った。2.フェノール性水酸基への蛍光性官能基の導入上述の成果を基にして、ヘキサホモオキサカリックス[3]アレーンのフェノール性水酸基へのピレン、アントラセン等の蛍光性官能基の導入を行った。すなわち、本申請者がすでに確立しているフェノール性水酸基へのアミノエチル基の導入、ついでピレン-1-イソシアニドおよび9-アンスリルイソシアニドとの反応によって容易に行うことが明らかとなった。3.アルキルアンモニウムイオンに対する包接機能に関する研究合成した一連のアミン蛍光性センサーのアルキルアンモニウムイオンを用いてセンサーとしての評価を行う。 | KAKENHI-PROJECT-16K05702 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K05702 |
カリックスアレーンを基盤とするピコレベルでの生体機能物質識別蛍光センサーの開発 | さらに、lower rim上のウレア部分とアニオン(ハライドイオン、リン酸イオン、硫酸イオン、酢酸イオン等)との錯体形成に伴うアロステリック効果の発現についても核磁気共鳴分光法を用いる滴定実験および蛍光スペクトル法により検討した。アニオン認識部を導入したヘテロダイトピックヘキサホモトリオキサカリックス[3]アレーンを基盤とするピコレベル(10-12 M)まで検出可能なアルキルアンモニウムイオン蛍光性化学センサーの開発に成功した。C3対称を持つホモオキサカリックス[3]アレーン誘導体を開発し、lower rimのフェノール性水酸基にアルキルアンモニウムイオンとの錯体形成可能な官能基および蛍光性官能基の導入に成功し、アロステリック機能を有するカリックス[3]アレーンを基盤とする蛍光性化学センサーの簡便な合成ルートの開発に成功した。さらに、本成果を元に、種々の生体機能分子との水素結合に基づく分子認識機能を蛍光スペクトル測定および核磁気共鳴スペクトル法を用いて評価するなど、着実に本研究の当初の目的を達成している。本研究成果は、アメリカ化学会、イギリス化学会、ワイリージャーナル等に公表し、国際的に高い評価を得ている。今後は、生物学的に重要なアミンレセプターを分子設計し、構造と分子識別能との相関関係を調べ、分子レベルでのドーパミン、セロトニン結合機構の解明にチャレンジする。1.合成ルートの開発本研究ではupper rimのフェノール環に種々の官能基を導入したヘキサホモオキサカリックス[3]アレーンの簡便な合成ルートの開発がKey Stepとなる。そこで、本年度ではp-ヒドロキシ安息香酸エチルからの合成法を検討し、p-エトキシカルボニルホモオキサカリックス[3]アレーンが簡便な操作で2段階での合成ルートの開発に成功した。さらに、エトキシカルボニル基-COOEtを-COOH, -CH2OH, -CHO, NH2(CON3のクルチウス転位を用いて)等への変換を行った。2.フェノール性水酸基への蛍光性官能基の導入上述の成果を基にして、ヘキサホモオキサカリックス[3]アレーンのフェノール性水酸基へのピレン、アントラセン等の蛍光性官能基の導入を行った。すなわち、本申請者がすでに確立しているフェノール性水酸基へのアミノエチル基の導入、ついでピレン-1-イソシアニドおよび9-アンスリルイソシアニドとの反応によって容易に行うことが明らかとなった。3.アルキルアンモニウムイオンに対する包接機能に関する研究合成した一連のアミン蛍光性センサーのアルキルアンモニウムイオンを用いてセンサーとしての評価を行う。さらに、lower rim上のウレア部分とアニオン(ハライドイオン、リン酸イオン、硫酸イオン、酢酸イオン等)との錯体形成に伴うアロステリック効果の発現についても核磁気共鳴分光法を用いる滴定実験および蛍光スペクトル法により検討した。アニオン認識部を導入したヘテロダイトピックヘキサホモトリオキサカリックス[3]アレーンを基盤とするピコレベル(10-12 M)まで検出可能なアルキルアンモニウムイオン蛍光性化学センサーの開発に成功した。1.生体分子に対する包接機能に関する研究今年度開発した蛍光性ヘテロダイトピックヘキサホモオキサカリックス | KAKENHI-PROJECT-16K05702 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K05702 |
紅色光合成細菌をモデルとした光合成の環境応答の分子機構に関する研究 | 本研究は紅色光合成細菌を用いて、光合成効率の制御機構を分子レベルで解明することを目的としている。昨年度までの研究で、光合成遺伝子の発現を抑制する転写因子PpsRは酸化的条件下で分子内ジスルフィド結合を作り、結果としてDNA結合能を上昇させることが明らかとなった。また別の転写因子AppAは酸素と青色光依存的にPpsRの転写抑制能を不活化させることがわかった。本年度はこのAppAの抗転写抑制作用がどのようなメカニズムで行なわれているのかを明らかにすることを目標に研究を進め以下の結果を得た。1.AppAタンパク質のフラビン結合ドメインのみを大腸菌で発現させ精製する手法を確立した。精製したこのフラビン結合ドメインを溶液多次元NMR法により解析し、青色光吸収に伴いフラビンと21番目に保存されているチロシンとのπ結合を介した相互作用が、このドメインのフォトサイクル反応に重要であることが明らかとなった。またこのフォトサイクル反応において、このドメインは構造変化というよりはむしろダイナミクス変化をおこし、それが自身の活性制御に重要であることを明らかにした。2.AppAは青色色素としてフラビンを結合しているが、酸素を感受する補助因子は明らかではなかった。様々な組み換えタンパク質を調べたところ、AppAは鉄イオウクラスターを持っていることが明らかとなり、これが酸素感受性に重要であることが明らかとなった。本研究は紅色光合成細菌を用いて、光合成効率の制御機構を分子レベルで解明することを目的としている。昨年度までの研究で、光合成遺伝子の発現を抑制する転写因子PpsRは酸化的条件下で分子内ジスルフィド結合を作り、結果としてDNA結合能を上昇させることが明らかとなった。また別の転写因子AppAは酸素と青色光依存的にPpsRの転写抑制能を不活化させることがわかった。本年度はこのAppAの抗転写抑制作用がどのようなメカニズムで行なわれているのかを明らかにすることを目標に研究を進め以下の結果を得た。1.AppAタンパク質のフラビン結合ドメインのみを大腸菌で発現させ精製する手法を確立した。精製したこのフラビン結合ドメインを溶液多次元NMR法により解析し、青色光吸収に伴いフラビンと21番目に保存されているチロシンとのπ結合を介した相互作用が、このドメインのフォトサイクル反応に重要であることが明らかとなった。またこのフォトサイクル反応において、このドメインは構造変化というよりはむしろダイナミクス変化をおこし、それが自身の活性制御に重要であることを明らかにした。2.AppAは青色色素としてフラビンを結合しているが、酸素を感受する補助因子は明らかではなかった。様々な組み換えタンパク質を調べたところ、AppAは鉄イオウクラスターを持っていることが明らかとなり、これが酸素感受性に重要であることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-00J07340 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-00J07340 |
アノテーション付与型画像データベースシステムのための汎用プラットフォーム構築 | 本研究では、資料画像にテキスト情報を付与し、画像から文字あるいは単語等のテキストデータを検索できるようなシステム(「アノテーション付与型画像データベースシステム」)について、さまざまな人文学資料を共通の枠組で扱うことを可能にするために、共通のユーザインターフェイスと標準的なデータ構造モデルを作成し、汎用データベースプラットフォームシステムを構築した。本研究ではこのプラットフォームを利用し、古代エジプト語神官文字パピルス資料、明治期日本語文典資料、古代シュメール・アッカド語楔形文字年度版資料のデータベースを構築した。まず、すでに構築を開始している古代エジプト語神官文字データベースについては、外部システムとのデータ交換のために、TEIに準拠したXML文書をエクスポートする機能の試験的な実装を行った。事実上の標準としての地位を確立しているTEIに準拠したXML文書を出力できることは、世界的レベルでデータを共有・交換するために非常に重要であり、今後も継続してTEI/XML文書の構造定義のブラッシュアップを図っていく。また、同データベースについて、ローカルクライアントからCSVファイルをアップロードし、自動的に正規化を行ったうえで、一括してデータを登録する機能の設計を行った。これについては、次年度以降具体的な実装作業を行い、より使い勝手のよいシステムに仕上げていく。次に、明治期日本の国文典資料データベースについて、古川正雄著『絵入智慧の環』(明治3-5年)全8巻の高精細デジタルデータ化(全225ページ)を行い、データ構造の設計とウェブシステムの構築を開始した。これについては、引き続きデータ構造定義およびユーザインターフェイスの再検討を踏まえた上で、正式にウェブ上に公開していく予定である。さらに、これらのシステム用に設計したデータ構造について、より汎用的に利用可能なものとするために、両者を共通化したデータ構造定義の設計を開始した。以上をまとめ、今後は、アノテーション付与型画像データベースシステムにおけるユーザインターフェイスとデータ構造の汎用化を目指し、様々な資料を共通的に扱えるような汎用プラットフォームを構築していく。昨年度までに構築した古代エジプト語神官文字データベースおよび明治期日本語文典資料データベースに加え、今年度は古代シュメール・アッカド語の楔形文字データベースの構築を開始し、試験的に公開した。これまでに設計してきた基本データ構造をさらに改訂し、これら3つの言語・文字のデータを共通の枠組みで取り扱うことが可能なデータ構造を定義した。ウェブシステムの構造としては、これまで上記3つのセータベースが別々のサイト構成であったものを、単一の親サイトの下のサブシステムとしてとりまとめ、共通のCMS(Drupalを使用)を使用したマルチサイト構成へと変更した。これによりサイトのシステム管理におけるメンテナンス性が大幅に向上した。ユーザインターフェイスについては、システム内で使用しているZoomify(画像処理ライブラリ)のバージョンアップに伴い、これまでのFlash版画像ビューアから、JavaScript版画像ビューアへの変更を行った。これにより、HTML5をベースとする、ウェブ標準に準拠したサイト構成となった。これまでクライアント側で必要であったFlashプレイヤーが不要になったため、各種タブレットやスマートフォン(iOS、Android OSを含む)等、より広範囲のクライアントで本データベースへのアクセスが可能になった。画面構成も基本から見直し、使い勝手が大幅に向上している。データ連係の面では、昨年度試験的に実装したTEI形式によるXML文書出力機能を本格的に実装し、他システム側での入力データとしても使えることを確認した。さらに、RDF形式のデータ出力機能も試験的に実装した。最終年度は、前年度までに構築した古代エジプト語神官文字データベース、明治期日本語文典資料データベース、古代シュメール・アッカド語楔形文字データベースの3つを内部的に統合し、他の言語資料にも適用可能な標準パッケージの試作を行った。また、挿絵等の自由領域と文字・語とを関連づけることが可能なようにデータ構造の拡張を行った。さらに、全文テキスト検索およびテキスト出力機能の試験的実装を行った。研究期間全体を通じては、複数種類の歴史的な言語資料を中心に扱い、それらの言語における文字・語・文・文章をまとめて統一的に扱うことのできる、共通のデータ構造を定義した。また、Drupal(代表的なCMSのひとつ)等の各種オープンソースソフトウェアや、JavaScript、HTML5等のウェブ標準技術を用いて、ユーザビリティに優れたインターフェイスを構築した。また、TEIやRDFといった形式のXMLファイルを出力することによって、外部システムとのデータ交換にも対応できるようにした。これらのことにより、複数言語資料を統一的な方法で取り扱うことのできる汎用的なデータベースプラットフォームの基礎を構築することができた。このプラットフォームは、パソコンをはじめ、今日一般にかなり浸透しているタブレット端末やスマートフォンを通じても利用することができる。手近な端末を利用して歴史的資料画像からテキストを手軽に検索できることは、研究者にとっても一般向けにとっても極めて重要な意味を持つ。本研究では、資料画像にテキスト情報を付与し、画像から文字あるいは単語等のテキストデータを検索できるようなシステム(「アノテーション付与型画像データベースシステム」)について、さまざまな人文学資料を共通の枠組で扱うことを可能にするために、共通のユーザインターフェイスと標準的なデータ構造モデルを作成し、汎用データベースプラットフォームシステムを構築した。本研究ではこのプラットフォームを利用し、古代エジプト語神官文字パピルス資料、明治期日本語文典資料、古代シュメール・アッカド語楔形文字年度版資料のデータベースを構築した。当初計画したふたつのデータベース(古代エジプト語神官文字データベースおよび近代日本語文典資料データベース)については計画通り構築が進んでおり、さらに、当初の計画になかった古代シュメール・アッカド語の楔形文字データベースも、これまでの成果を生かす形で構築できたことによる。 | KAKENHI-PROJECT-25330395 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25330395 |
アノテーション付与型画像データベースシステムのための汎用プラットフォーム構築 | 日本語学(日本語文法論)、人文情報学引き続き研究分担者との協力体制を維持し、これまでに構築したデータベースのより一層の発展を目指すとともに、さらに別種の資料を扱うことが可能なシステムとするために、データ構造およびユーザインターフェイスの修正・拡張を目指す。具体的には、動画資料等も視野に入れたシステム設計を考えている。当初目標としたふたつのデータベースシステムの構築を開始し、データ構造の共通化に着手できた。また、外部システムとのデータ交換のために、XML文書を出力する機能を実装する作業に着手できた。計画した各機能ごとの達成状況の多少の出入りについては、翌年度以降十分に対応可能である。引き続き研究分担者との協力体制を維持し、現在構築中のデータベースシステムの発展を目指すとともに、より広範な資料を扱えるシステムとするため、様々な資料への適用可能性を検討していく。そのために、外部研究組織との連携も見据えて研究成果を公表していく。システム設計および構築に注力したため、旅費が想定よりも少なくなった。また人件費がかからなかった。人件費として想定していた分の一部は「その他」の「絵入り智慧の輪デジタル撮影」に支出した。次年度使用額については、成果発表の機会を増やして旅費として使用する。 | KAKENHI-PROJECT-25330395 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25330395 |
局所地形の強風災害に及ぼす影響評価 | 構造物に作用する強風特性は,構造物周辺の局所地形の影響を大きく受けることが知られており,局所地形の影響を耐風設計に反映させることの重要性は認識されているが,我が国のような複雑かつ急峻な地形条件下における風況特性を精度よく推定することは,極めて難しい.そこで,本研究においては,構造物周辺の局所的な地形因子(ミクロ地形因子)を考慮した地形因子解析,周辺の地形を簡略化した地形模型および縮尺地形模型を用いた風洞実験並びに現地風観測等により,構造物周辺の地形を考慮した構造物に作用する強風の予測モデルを作成しようとするものであり,以下の研究成果が得られた.(1)構造物周辺の局所地形が,強風特性に及ぼす影響を局所的な地形因子(ミクロ地形因子)をビデオカメラを用いて抽出し,従来より得られているメソスケールの地形特性が反映された設計基本風速等の風速マップを各風向毎の風速値に修正する手法を四国のAMeDASの風観測資料を用いて検討し,方位別の強風推定式を提案した.また,未観測点の代表風速の推定も試み,かなりの精度で任意地点の代表風速を決定することも可能となった.(2)構造物周辺の局所地形として,丘状地形に注目し,簡略化地形模型(2次元台形模型)を用いた風洞実験から丘による増速効果の推定式を丘の法面傾斜角,接近流(境界層乱流)のべき指数,丘の表面粗度などを説明変数として作成した.(3)大規模な土木工事(切り土及び盛土)が予定されている地域を対象とした縮尺地形模型を用いた風洞実験および現地風観測によって,周辺地形の改変が風環境に及ぼす影響を調査し,(1)及び(2)で得られた強風予測式を適用し,両強風予測式の妥当性が確認された.構造物に作用する強風特性は,構造物周辺の局所地形の影響を大きく受けることが知られており,局所地形の影響を耐風設計に反映させることの重要性は認識されているが,我が国のような複雑かつ急峻な地形条件下における風況特性を精度よく推定することは,極めて難しい.そこで,本研究においては,構造物周辺の局所的な地形因子(ミクロ地形因子)を考慮した地形因子解析,周辺の地形を簡略化した地形模型および縮尺地形模型を用いた風洞実験並びに現地風観測等により,構造物周辺の地形を考慮した構造物に作用する強風の予測モデルを作成しようとするものであり,以下の研究成果が得られた.(1)構造物周辺の局所地形が,強風特性に及ぼす影響を局所的な地形因子(ミクロ地形因子)をビデオカメラを用いて抽出し,従来より得られているメソスケールの地形特性が反映された設計基本風速等の風速マップを各風向毎の風速値に修正する手法を四国のAMeDASの風観測資料を用いて検討し,方位別の強風推定式を提案した.また,未観測点の代表風速の推定も試み,かなりの精度で任意地点の代表風速を決定することも可能となった.(2)構造物周辺の局所地形として,丘状地形に注目し,簡略化地形模型(2次元台形模型)を用いた風洞実験から丘による増速効果の推定式を丘の法面傾斜角,接近流(境界層乱流)のべき指数,丘の表面粗度などを説明変数として作成した.(3)大規模な土木工事(切り土及び盛土)が予定されている地域を対象とした縮尺地形模型を用いた風洞実験および現地風観測によって,周辺地形の改変が風環境に及ぼす影響を調査し,(1)及び(2)で得られた強風予測式を適用し,両強風予測式の妥当性が確認された.構造物に作用する強風特性は、構造物周辺の局所的な地形の影響を大きく受けることが知られており、局所地形の影響を耐風設計に反映させることの重要性は認識されているが、我が国のように、複雑かつ急峻な地形条件下における風況特性を精度良く推定することは、極めて難しい。そこで、本研究においては、構造物周辺の局所的な地形因子を考慮した地形因子解析、周辺の地形を簡略化した地形模型および縮尺地形模型を用いた風洞実験並びに現地風観測等により、周辺の地形の影響を考慮した構造物に作用する強風の予測モデルを作製しようとするものであり、本研年度においては、以下の項目について研究を実施している。(1)構造物周辺の局所地形が、強風特性に及ぼす影響を局所的な地形因子(ミクロ地形因子)をビデオカメラを用いて抽出し、従来より、得られているメソスケールの地形特性が反映された設計基本風速等の風速マップを修正する手法を四国のAMeDASの風観測資料を用いて検討し、四国における方位別の強風補正式を確立した。(2)大規模な土木工事(切土および盛土)が予定されている地域を対象とした縮尺地形模型を用いた風洞実験および現地風観測によって、周辺地形の改変が風環境に及ぼす影響を調査し、(1)で得られた強風予測式の妥当性を検証するとともに、接近流の乱れの特性が、強風特性に及ぼす影響についても検討した。構造物に作用する強風特性は,構造物周辺の局所地形の影響を大きく受けることが知られており,局所地形の影響を耐風設計に反映させることの重要性は認識されているが,我が国のような複雑かつ急峻な地形条件下における風況特性を精度よく推定することは,極めて難しい.そこで,本研究においては,構造物周辺の局所的な地形因子(ミクロ地形因子)を考慮した地形因子解析,周辺の地形を簡略化した地形模型および縮尺地形模型を用いた風洞実験並びに現地風観測等により,構造物周辺の地形を考慮した構造物に作用する強風の予測モデルを作成しようとするものであり,以下の研究成果が得られた. | KAKENHI-PROJECT-06555134 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06555134 |
局所地形の強風災害に及ぼす影響評価 | (1)構造物周辺の局所地形が,強風特性に及ぼす影響を局所的な地形因子(ミクロ地形因子)をビデオカメラを用いて抽出し,従来より得られているメソスケールの地形特性が反映された設計基本風速等の風速マップを各風向毎の風速値に修正する手法を四国のAMeDASの風観測資料を用いて検討し,方位別の強風推定式を提案した.また,未観測点の代表風速の推定も試み,かなりの精度で任意地点の代表風速を決定することも可能となった.(2)構造物周辺の局所地形として,丘状地形に注目し,簡略化地形模型(2次元台形模型)を用いた風洞実験から丘による増速効果の推定式を丘の法面傾斜角,接近流(境界層乱流)のべき指数,丘の表面粗度等を説明変数として作成した.(3)大規模な土木工事(切り土及び盛土)が予定されている地域を対象とした縮尺地形模型を用いた風洞実験及び現地風観測によって,周辺地形の改変が風環境に及ぼす影響を調査し,(1)及び(2)で得られた強風予測式を適用し,両強風予測式の妥当性が確認された. | KAKENHI-PROJECT-06555134 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06555134 |
プロジェクト管理を参照モデルとした反転型完全習得授業手法の開発 | 本研究は中等教育と高等教育を対象として「反転型完全習得授業」の具体的な実施方法を提案することを目的としている.特に「学習者が学習目標を達成すること」をプロジェクトと見立て,「プロジェクト管理」を参照モデルとする点を特徴とする.これに対してプロジェクト管理の知識体系であるPMBOK(Project Management Body Of Knowledge)に対応するような学習管理の知識体系LMBOK(Learning Management Body Of Knowledge)を作成して授業設計・実施をするトップダウンのアプローチと,中等教育(高等学校)における授業設計・実践から実施方法への知見を得るアプローチから研究を進めている.今年度は前者についてはあまり進めることができなかった.一方の中等教育における授業の設計と実践においては,提案する授業方法にゲーミフィケーションの考え方に基づき,前年度に開発した表計算ソフト「エクセル」のマクロによるツールにバッジを付与する機能を付与して授業実践を行った.学習記録データや生徒へのアンケート結果から,バッジの導入が一部の生徒について意欲の向上に寄与することが示唆されたが,ゲーミフィケーションとしては課題も残った.そこで,この授業でのゲーミフィケーションのための学習実績管理を行うWebシステムの開発に着手し,プロトタイプを完成させた.このシステムでは生徒がスマートフォンを用いて計測した学習時間と,提出したワークシートページ数を可視化し,バッジの付与,ランキングの表示などを行う.大学生による試用実験を行い,適切な運用が可能なことを確認したため,次年度の高等学校における実授業において導入する予定である.2つのアプローチのうち,LMBOK(Learning Management Body Of Knowledge)の方は現在作成中であり,今年度進捗があまりなかったため,遅れ気味である.一方で,高等学校における授業実践では,新たにゲーミフィケーションの導入の着想を得て,当初の計画以上に進んでいる.また,開発したツールを利用した授業実践,簡易なゲーミフィケーションの試行についても実授業で行い,評価した.さらに,より本格的なゲーミフィケーションを可能とするためのWebシステムの開発も行えている.したがって,全体としては順調に成果が上がっている.しかし,当初の研究計画においてLMBOKの作成の重要性が高く,この点が遅れていることから「やや遅れいてる」とした.次年度はLMBOK(Learning Management Body Of Knowledge)の作成のエフォートを増加させたい.また,研究チームで議論の時間も確保することで,補助期間終了までに一通りの完成を目指す予定である.高等学校における授業実践は順調に進んでおり,提案した授業方法の有用性の再確認と,開発したゲーミフィケーションのための学習実績管理システムの導入による効果の確認のために,授業実践と評価を行う.本研究は中等教育と高等教育を対象として「反転型完全習得授業」の具体的な実施方法を提案することを目的としている.特に「学習者が学習目標を達成すること」をプロジェクトと見立て,「プロジェクト管理」を参照モデルとする点を特徴とする.これに対してプロジェクト管理の知識体系であるPMBOK(Project Management Body Of Knowledge)に対応するような学習管理の知識体系LMBOK(Learning Management Body Of Knowledge)を作成して授業設計・実施をするトップダウンのアプローチと,中等教育(高等学校)における授業設計・実践から実施方法への知見を得るアプローチから研究を進めた.前者については,まずPMBOK(Project Management Body Of Knowledge)の調査を行った.現段階でPMBOKについては一通りの調査が終了し,研究ミーティングを通して,学習管理の視点から精査している段階である.学習において特有なことやプロジェクト管理ほど細かく管理しなくても良い部分も見えてきており,単純に知識エリアの対応付けだけではLMBOKの作成は難しいことがわかった.一方,中等教育における授業の設計と実践では,比較的学習者のペースで進めやすい選択科目を対象として,先行して検討してきた授業の実施方法を適用した授業実践を進めた.この授業は1.学習管理にプロジェクト管理で用いられるガントチャートを導入したこと,2.学習活動の記録にワークシートを利用したこと,3.学習状況管理のための教員と生徒による進捗会議を行うことなどがある.今後,この授業実践方法の有効性を検証したい.2つのアプローチのうち,LMBOK(Learning Management Body Of Knowledge)の作成の方は調査などの作業は完了しているが,具体的な検討が若干遅れている.プロジェクト管理と学習管理での違いが想定以上に大きいため,もう少し時間をかける必要がある.一方,高等学校における授業設計・実践の方は順調であり,授業設計がかなり具体的にできていることから,当初の予定よりも進んでいるとみることができる.これらから,全体としては概ね順調と判断できる.本研究は中等教育と高等教育を対象として「反転型完全習得授業」の具体的な実施方法を提案することを目的としている.特に「学習者が学習目標を達成すること」をプロジェクトと見立て,「プロジェクト管理」を参照モデルとする点を特徴とする.これに対してプロジェクト管理の知識体系であるPMBOK(Project Management Body Of Knowledge)に対応するような学習管理の知識体系LMBOK(Learning Management Body Of Knowledge)を作成して授業設計・実施をするトップダウンのアプローチと,中等教育(高等学校)における授業設計・実践から実施方法への知見を得るアプローチから研究を進めている.前者については,PMBOK(Project Management Body Of Knowledge)の調査結果をもとに学習管理のためのLMBOKを検討し,作成中である.一方の中等教育における授業の設計と実践においては,授業の実施方法のポイントを明確にした上で,提案する方法を適用した授業の実践を行った.授業実践における学習記録データや生徒へのアンケート結果から一定の効果を得たと思われる. | KAKENHI-PROJECT-16K01077 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K01077 |
プロジェクト管理を参照モデルとした反転型完全習得授業手法の開発 | さらに,生徒の動機付けのためのゲーミフィケーションの導入方法を具体化した.これらの検討結果を基に,学習者の理解度を俯瞰的に捉え,学習スケジュールを管理するためのシステムを設計し,一部を実装した.基本システムはWebベースで開発し,高等学校で利用するシステムは表計算ソフト「エクセル」のマクロによるツールとして開発した.今後,これらのデータを連係させる予定である.2つのアプローチのうち,LMBOK(Learning Management Body Of Knowledge)の方は現在作成中であり,若干遅れ気味である.一方で,高等学校における授業実践では,新たにゲーミフィケーションの導入の着想を得て,当初の計画以上の検討が進んでいる.また,学習者の理解度を俯瞰的に捉え,学習スケジュールを管理するためのシステムおよびツールの開発も順調であることから,全体としては概ね順調と判断している.本研究は中等教育と高等教育を対象として「反転型完全習得授業」の具体的な実施方法を提案することを目的としている.特に「学習者が学習目標を達成すること」をプロジェクトと見立て,「プロジェクト管理」を参照モデルとする点を特徴とする.これに対してプロジェクト管理の知識体系であるPMBOK(Project Management Body Of Knowledge)に対応するような学習管理の知識体系LMBOK(Learning Management Body Of Knowledge)を作成して授業設計・実施をするトップダウンのアプローチと,中等教育(高等学校)における授業設計・実践から実施方法への知見を得るアプローチから研究を進めている.今年度は前者についてはあまり進めることができなかった.一方の中等教育における授業の設計と実践においては,提案する授業方法にゲーミフィケーションの考え方に基づき,前年度に開発した表計算ソフト「エクセル」のマクロによるツールにバッジを付与する機能を付与して授業実践を行った.学習記録データや生徒へのアンケート結果から,バッジの導入が一部の生徒について意欲の向上に寄与することが示唆されたが,ゲーミフィケーションとしては課題も残った.そこで,この授業でのゲーミフィケーションのための学習実績管理を行うWebシステムの開発に着手し,プロトタイプを完成させた. | KAKENHI-PROJECT-16K01077 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K01077 |
フラストレートした分子性化合物におけるクロスオーバー現象の熱的研究 | 本研究は二次元の三角格子構造をもつ分子性強相関電荷移動錯体を対象に、スピンや電荷のフラストレーションの効果を熱力学的な立場から研究するために計画された。平成21度は、アクセプター分子であるPd(dmit)_2とカウンターカチオンの2:1塩であるEtMe_3SbPd_2[dmit]_2塩を中心に低温領域での熱力学的測定を行った。この物質はPd(dmit)_2のダイマーが二次元三角格子を形成する電荷移動塩である。^3He冷凍機、希釈冷凍機を用いた極低温領域での熱容量の測定を行い、低温で有限のγ値を示すことが見出された。これは、以前に、スピン液体を形成することが確認されたK-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3と同様の振る舞いであり、静磁化率の絶対ゼロ度への外挿値とγ値がスケールすることからも熱励起にギャップがないスピン液体状態の形成を意味している。低温領域ではメチル基の回転準位の関係したショットキー熱容量が出現するため、カチオン部のメチル基を重水素置換した塩による極低温測定を行った。その結果、ショットキー熱容量は減少し確かに低温領域でもギャップのない状態が形成されていることが判明した。温度に比例する項が存在する温度領域よりも高い3.2K付近にC_pT^<-1>のブロードな山が存在する。熱容量の詳細な解析からこのブロードなピークはK-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3でみられた5.7Kの熱異常と同様な常磁性状態からスピン液体状態へのクロスオーバーを表していることが示唆される。EtMe_3SbPd_2[dmit]_2とK-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3でと見出された熱的性質は、有機ダイマー型Mott絶縁体三角格子のスピン液体の共通する特徴であると考えられる。重水素化した試料による熱測定から化学圧力に対する効果についての議論も行い、スピン液体状態は圧力印加に関して比較的安定であることが判明した。S=1/2の二次元反強磁性三角格子の基底状態の解明は、フラストレーション科学の重要な問題である。本研究では、有機分子のつくる電荷移動塩の中で三角格子構造をもつためスピン相互作用のフラストレーションによって長距離秩序を形成しない物質について熱容量測定を中心にその基底状態、低エネルギー励起の構造を追跡する実験を進めた。まず、極低温熱容量を行うための測定系の整備を行った。高感度のロックインアンプを用いて、低温で微弱な電流量で感度の良い温度計測が可能となるような温度計測をするシステム構築に成功した。このような装置を用いて有機ドナー分子であるBEDT-TTFからなる二次元のダイマーMott系の三角格子塩、κ-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3で、試料依存性まで含めた詳細な測定を行い極低温熱容量に温度に比例する項が存在すること、さらに5.7K付近で二次元ハイゼンベルグ的な磁性状態からスピン液体にグロスオーバーする温度が存在することを測定したすべての試料で見出した。熱容量の温度に対する比例係数は約15mJK^<-2>mol^<-1>となりこれは絶対零度に外挿した磁化率の値χ_0と盾しない値であり、両者が状態度を通して比例関係にあることを示唆している。さらに同様に理想的な二次元三角格子構造をとるMott絶縁体塩EtMe_3sb[Pd(dmit)_2]_2で極低温熱測定を行ったところ、温度に比例する熱容量と、ブロードな熱異常の存在を見出した。γ値は、約20mJK^<-2>mol^<-1>程度であり、先の塩と比較して30-40%程度大きくなり、また熱容量にブロードな山をもつ温度が約3.2Kとなる。この傾向は、EtMe_3Sb[Pd(dmit)_2]_2塩の方が、ダイマー間のトランスファーの値が小さいことからJ/K_Bの値が小さくなることで理解できる。本研究は二次元の三角格子構造をもつ分子性強相関電荷移動錯体を対象に、スピンや電荷のフラストレーションの効果を熱力学的な立場から研究するために計画された。平成21度は、アクセプター分子であるPd(dmit)_2とカウンターカチオンの2:1塩であるEtMe_3SbPd_2[dmit]_2塩を中心に低温領域での熱力学的測定を行った。この物質はPd(dmit)_2のダイマーが二次元三角格子を形成する電荷移動塩である。^3He冷凍機、希釈冷凍機を用いた極低温領域での熱容量の測定を行い、低温で有限のγ値を示すことが見出された。これは、以前に、スピン液体を形成することが確認されたK-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3と同様の振る舞いであり、静磁化率の絶対ゼロ度への外挿値とγ値がスケールすることからも熱励起にギャップがないスピン液体状態の形成を意味している。低温領域ではメチル基の回転準位の関係したショットキー熱容量が出現するため、カチオン部のメチル基を重水素置換した塩による極低温測定を行った。その結果、ショットキー熱容量は減少し確かに低温領域でもギャップのない状態が形成されていることが判明した。温度に比例する項が存在する温度領域よりも高い3.2K付近にC_pT^<-1>のブロードな山が存在する。 | KAKENHI-PROJECT-20046010 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20046010 |
フラストレートした分子性化合物におけるクロスオーバー現象の熱的研究 | 熱容量の詳細な解析からこのブロードなピークはK-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3でみられた5.7Kの熱異常と同様な常磁性状態からスピン液体状態へのクロスオーバーを表していることが示唆される。EtMe_3SbPd_2[dmit]_2とK-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3でと見出された熱的性質は、有機ダイマー型Mott絶縁体三角格子のスピン液体の共通する特徴であると考えられる。重水素化した試料による熱測定から化学圧力に対する効果についての議論も行い、スピン液体状態は圧力印加に関して比較的安定であることが判明した。 | KAKENHI-PROJECT-20046010 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20046010 |
肺血管内皮細胞傷害の指標の確立 | ウイスターラットに、感染過程で肺血管を傷害する寄生虫(Nipostrongilus Braziliensis幼虫8000隻)を経皮感染させ、ラット呼吸不全モデルを作製し、感染前、感染一日、二日、三日後に眼窩静脈より採血し、血中アンギオテンシン変換酵素(ACE),第8因子関連抗原濃度(VWF)を測定し、感染三日後に肺を摘出し肺病理標本を作製した。さらに化学物質(PMA、エンドトキシン)の経口的気管内投与によってラット呼吸不全モデルを作製し、自発呼吸下に飼育した。化学物質(PMA、エンドトキシン)投与前、投与一日、二日、三日後に眼窩静脈より採血を行い、肺血管内皮細胞よりの逸脱物質(血管内サイトカイン、インターロイキン)を、測定キットを用いて定量し、経時的にデータを検討した。寄生虫感染後、血中ACE活性は一旦減少したが感染三日後上昇したが有意ではなかった。VWFは寄生虫感染三日後、有意に上昇した。また肺病理組織標本では、肺の小血管の破綻と、内皮細胞の変性、膨化、血管周囲間質の浮腫、炎症細胞の浸潤が認められた。化学物質投与による呼吸不全モデルでは、ほとんどのラットが化学物質投与直後死亡してしまい、静脈血採取することができなかった。また、生存例のラットでサイトカイン、インターロイキン等、肺血管内皮細胞よりの逸脱物質は、呼吸不全前後で有意な変化は認められなかった。以上の実験結果より、血中第8因子関連抗原濃度(VWF)は、肺血管内皮細胞傷害の指標となりうる事が示唆された。ウイスターラットに、感染過程で肺血管を傷害する寄生虫(Nipostrongilus Braziliensis幼虫8000隻)を経皮感染させ、ラット呼吸不全モデルを作製し、感染前、感染一日、二日、三日後に眼窩静脈より採血し、血中アンギオテンシン変換酵素(ACE),第8因子関連抗原濃度(VWF)を測定し、感染三日後に肺を摘出し肺病理標本を作製した。さらに化学物質(PMA、エンドトキシン)の経口的気管内投与によってラット呼吸不全モデルを作製し、自発呼吸下に飼育した。化学物質(PMA、エンドトキシン)投与前、投与一日、二日、三日後に眼窩静脈より採血を行い、肺血管内皮細胞よりの逸脱物質(血管内サイトカイン、インターロイキン)を、測定キットを用いて定量し、経時的にデータを検討した。寄生虫感染後、血中ACE活性は一旦減少したが感染三日後上昇したが有意ではなかった。VWFは寄生虫感染三日後、有意に上昇した。また肺病理組織標本では、肺の小血管の破綻と、内皮細胞の変性、膨化、血管周囲間質の浮腫、炎症細胞の浸潤が認められた。化学物質投与による呼吸不全モデルでは、ほとんどのラットが化学物質投与直後死亡してしまい、静脈血採取することができなかった。また、生存例のラットでサイトカイン、インターロイキン等、肺血管内皮細胞よりの逸脱物質は、呼吸不全前後で有意な変化は認められなかった。以上の実験結果より、血中第8因子関連抗原濃度(VWF)は、肺血管内皮細胞傷害の指標となりうる事が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-06771240 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06771240 |
糖鎖の導入によるタンパク質の安定化機構に関する研究 | 本研究は糖鎖の導入によりタンパク質の安定化をはかるとともに,安定化の機構について究明し,人工糖タンパク質造成のための分子論的基盤を確立しようとしたものである.まず,タンパク質へ糖鎖を導入するための新規なアミロ-ス誘導体を開発し,これを用いて調製したニワトリ・リゾチ-ムの糖鎖導入体(AGーリゾチ-ム)の酵素化学的ならびにタンパク化学的諸性質を調べた。その結果,リゾチ-ム分子当り2分子のアミロ-ス誘導体を結合することにより,溶菌活性は消失するがグリコ-ルキチン水解能は75%保持されることを明らかにした。また,糖鎖の導入により,ソゾチ-ムの熱安定性は著るしく増大し,AGーリゾチ-ムでは90°C,30分間の熱処理後も75%の高い残存活性を有することが判明した。一方,AGーリゾチ-ムのトリプシン消化物の解析結果から,糖鎖はリゾチ-ム分子の13位と33位のリゾン残基側鎖に結合していることを明らかにした。ついで,熱処理後の高次構造を円偏光二色性スペクトルにより解析し,糖鎖の導入は熱処理に伴うリゾチ-ムの主鎖構造の変化を抑制することを明らかにした。また,熱および塩酸グアニジンによる変性の二状態転移について螢光および紫外吸収差スペクトルにより解析し,その結果,AGーリゾチ-ムは未変性状態では未修飾リゾチ-ムよりむしろ不安定であるが,変性状態では逆に安定であることが示唆された。さらに,熱処理後の変性状態から未変性状態への巻き戻りはAGーリゾチ-ムの方が速いことも明らかとなった。また,糖鎖の導入により,リゾチ-ムはプロナ-ゼ消化を受け易くなることも判明した。これらの結果から、糖鎖の導入はリゾチ-ム分子の構造をゆるめるが,変性状態への移行を不完全なものとするとともに,変性後の巻き戻り速度を大きくするために,AGーリゾチ-ムで見られるように,熱処理後も高い酵素活性を有するものと結論した。本研究は糖鎖の導入によりタンパク質の安定化をはかるとともに,安定化の機構について究明し,人工糖タンパク質造成のための分子論的基盤を確立しようとしたものである.まず,タンパク質へ糖鎖を導入するための新規なアミロ-ス誘導体を開発し,これを用いて調製したニワトリ・リゾチ-ムの糖鎖導入体(AGーリゾチ-ム)の酵素化学的ならびにタンパク化学的諸性質を調べた。その結果,リゾチ-ム分子当り2分子のアミロ-ス誘導体を結合することにより,溶菌活性は消失するがグリコ-ルキチン水解能は75%保持されることを明らかにした。また,糖鎖の導入により,ソゾチ-ムの熱安定性は著るしく増大し,AGーリゾチ-ムでは90°C,30分間の熱処理後も75%の高い残存活性を有することが判明した。一方,AGーリゾチ-ムのトリプシン消化物の解析結果から,糖鎖はリゾチ-ム分子の13位と33位のリゾン残基側鎖に結合していることを明らかにした。ついで,熱処理後の高次構造を円偏光二色性スペクトルにより解析し,糖鎖の導入は熱処理に伴うリゾチ-ムの主鎖構造の変化を抑制することを明らかにした。また,熱および塩酸グアニジンによる変性の二状態転移について螢光および紫外吸収差スペクトルにより解析し,その結果,AGーリゾチ-ムは未変性状態では未修飾リゾチ-ムよりむしろ不安定であるが,変性状態では逆に安定であることが示唆された。さらに,熱処理後の変性状態から未変性状態への巻き戻りはAGーリゾチ-ムの方が速いことも明らかとなった。また,糖鎖の導入により,リゾチ-ムはプロナ-ゼ消化を受け易くなることも判明した。これらの結果から、糖鎖の導入はリゾチ-ム分子の構造をゆるめるが,変性状態への移行を不完全なものとするとともに,変性後の巻き戻り速度を大きくするために,AGーリゾチ-ムで見られるように,熱処理後も高い酵素活性を有するものと結論した。 | KAKENHI-PROJECT-03660089 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03660089 |
高等教育「市場化」の態様と問題点に関する国際比較研究 | 本年度は第一年目として高等教育の市場化に関して各国で発表された基本的な研究を収集するなどのほか、とくに以下の研究作業を行った。1.ドイツと日本の高等教育改革を比較するために「日独高等教育改革セミナー」を開催した。ドイツ側から二人、日本側から二人の発表を行い、討論をおこなった。この会議の成果は、『Higher Education Reform in Japan and Germany』として東京大学大学総合教育研究センター一から出版された。2.中国はいま、きわめて市場的な高等教育改革が行われており、本研究の視点からは重要なケースをなす。そうした観点から中国東南部において大学、省政府当局等に対してインタビュー調査をおこなった。その成果は、『市場改革下の中国高等教育』として東京大学大学総合教育研究センターから発行される予定である。3.国際的な研究協力の打ち合わせをおこない、具体的な国際比較項目を選定した。本年度は第一年目として高等教育の市場化に関して各国で発表された基本的な研究を収集するなどのほか、とくに以下の研究作業を行った。1.ドイツと日本の高等教育改革を比較するために「日独高等教育改革セミナー」を開催した。ドイツ側から二人、日本側から二人の発表を行い、討論をおこなった。この会議の成果は、『Higher Education Reform in Japan and Germany』として東京大学大学総合教育研究センター一から出版された。2.中国はいま、きわめて市場的な高等教育改革が行われており、本研究の視点からは重要なケースをなす。そうした観点から中国東南部において大学、省政府当局等に対してインタビュー調査をおこなった。その成果は、『市場改革下の中国高等教育』として東京大学大学総合教育研究センターから発行される予定である。3.国際的な研究協力の打ち合わせをおこない、具体的な国際比較項目を選定した。 | KAKENHI-PROJECT-16330163 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16330163 |
着床前期胚における「ゲノムの若返り」機構の解明 | 着床前期胚特異的新規遺伝子についてノックアウトマウス(KO)を作成し機能解析を行った。Kzpi(KRAB-zinc finger)のKOでは有意な産仔数の減少を認めた。Kzpi欠失ES細胞ではimprinted genesの発現異常、アレル特異的メチル化領域(DMR)の低メチル化が認められた。Kzpiは初期胚の脱メチル化に抗しDMRメチル化を維持すると考えられたが、長期継代後は産仔数の減少もDMRメチル化の低下も消失した。本研究では、着床前期胚発生における胚性ゲノムの活性化(ZGA)や分化全能性の獲得などに係る分子機構の解明を目指した。in silico解析により着床前期で特異的に発現していると考えられた新規遺伝子Zfpiに着目し、初期胚発生及びES細胞における役割を明らかにすることを目的とした。Zfpiの全長cDNA解析の結果から、ZfpiはSCNA-zincfingerタンパクをコードすると考えられ、抗ペプチド抗体を作成した。RT-PCRおよび免疫組織化学染色により着床前期各ステージ胚及びマウス成獣多組織において発現解析を行った。RT-PCRでは2細胞期から胚盤胞期の着床前期胚およびES細胞にのみ発現を認めた。免疫組織化学染色においても着床前期胚で発現を認め、特に8細胞期及びES細胞では核への局在が確認された。機能解析のため、本遺伝子の第2および第3エクソンを欠失させたノックアウト(KO)マウスを作成した。KOマウスは成獣まで発生し、生殖能も維持されていた。着床前期胚発生や産仔数にも異常は認められず、KOマウスの胚盤胞からES細胞(KO ES)を樹立することも可能で、KO ES細胞は未分化性、多分化能性にも異常を認めなかった。しかし、核型解析を行ったところ、KO ES細胞のみならず、KOマウス(脾リンパ球)でも高頻度にchromosomal gapが認められることが明らかとなった。KO ES細胞と野生型ES細胞の遺伝子発現を網羅的に比較検討したところ、有意に発現レベルの異なる遺伝子が抽出された(887 transcripts)。以上より、KOマウスの表現型に異常は認められなかったが、体細胞の染色体に構造異常(凝縮不全の疑い)をもつことから、Zfpiはゲノムや染色体の安定性に寄与している可能性が示唆された。本研究では、着床前期胚発生における胚性ゲノムの活性化(ZGA)や分化全能性の獲得などに係る分子機構の解明を目指した。着床前期で特異的に発現している新規遺伝子ZfpiおよびKzpiに着目し、初期胚発生及びES細胞における役割を明らかにすることを目的とした。ZfpiはSCNA-zincfingerタンパクをコードする。ノックアウト(KO)マウスは成獣まで発生し、生殖能も維持されていた。着床前期胚発生や産仔数にも異常は認められず、KOマウスの胚盤胞からES細胞(KO ES)を樹立することも可能で、KO ES細胞は未分化性、多分化能性にも異常を認めなかった。しかし、核型解析を行ったところ、KO ES細胞のみならず、KOマウス(脾リンパ球)でも高頻度にchromosomal gapが認められた。KO ES細胞と野生型ES細胞の遺伝子発現を網羅的に比較検討したところ、有意に発現レベルの異なる遺伝子が抽出された(887 transcripts)。一方、Zfpiを過剰発現するES細胞を作成したが、野生型ES細胞に比べ表現型に変化は認められなかった。Zfpi過剰発現ES細胞で発現するタンパクからZfpiと結合するものを探索するため、免疫沈降、2次元タンパク泳動、LC-MSにより、MEP50がZFPIと結合していると考えられた。MEP50は、PRMT5とも結合し、ヒストンH2A/H4のメチル化に重要な役割を果たす。以上のように、KOマウスの表現型に異常は認められなかったが、体細胞の染色体に構造異常(凝縮不全の疑い)をもつことや、ZFPIがMEP50と結合することから、Zfpiはゲノムや染色体の安定性に寄与している可能性が示唆された。一方、卵細胞および着床前期胚でテロメア長を解析する技術を安定させるため、テロメアqPCR、定量的FISHを用いて、新鮮卵と加齢卵のテロメア長の測定を試みた。その結果、母体加齢により卵のテロメア長が短縮することが明らかとなった。ZfpiはSCAN-zincfingerをコードし、着床前期で特異的に発現している。ノックアウト(KO)マウスは成獣まで発生し、生殖能も維持されていた。着床前期胚発生や産仔数にも異常は認められず、KOマウスの胚盤胞からES細胞(KO ES)を樹立することも可能で、KO ESは未分化性、多分化能性にも異常を認めなかった。しかし、核型解析を行ったところ、KO ESのみならずKOマウス(脾リンパ球)でも高頻度にchromosomal gap(breakはなし)が認められた。KO ESに紫外線照射やマイトマイシン添加を行ったが、野生型ES細胞と比べて増殖速度に有意な差は認められなかった。現在、KO ESのCGHアレイ解析を行い、欠失がないか解析中である。また、KO ESを免疫不全マウスの皮下に移植して奇形腫を形成させると三胚葉への分化を認めたが、一部で胎児性癌を形成することが明らかとなった。KzpiはKRAB-zincfingerをコードし、着床前期で特異的に発現する。 | KAKENHI-PROJECT-25293345 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25293345 |
着床前期胚における「ゲノムの若返り」機構の解明 | Kzpi KOマウスは成獣まで発生し、生殖能も維持されていたが、有意な産仔数の減少を示した。KO ESに異常は認められず、Kzpiは多能性幹細胞の維持に必須ではないと考えられたが、KO ESのトランスクリプトーム解析でインプリンティング遺伝子の発現異常を認めたため、PBAT法・COBRA法によりDNAメチル化可変領域(DMR)のメチル化レベルを検討したところ、KO ESでは複数のDMRが低メチル化状態であった。Kzpiは初期胚におけるゲノムワイドな脱メチル化から、DMR特異的なメチル化維持に寄与すると考えられた。しかし長期継代を続けた結果、KOマウスの産仔数減少は減弱した。P10の胚盤胞から樹立したKO ESのDMRメチル化レベルを検討しても、野生型ES細胞と有意な低下は認められなくなっていた。そこで、キメラの親から生まれたKzpiヘテロマウスの凍結卵を改めて融解し、再度交配を最初から行い繁殖し再解析を行っている。着床前期胚特異的新規遺伝子についてノックアウトマウス(KO)を作成し機能解析を行った。Kzpi(KRAB-zinc finger)のKOでは有意な産仔数の減少を認めた。Kzpi欠失ES細胞ではimprinted genesの発現異常、アレル特異的メチル化領域(DMR)の低メチル化が認められた。Kzpiは初期胚の脱メチル化に抗しDMRメチル化を維持すると考えられたが、長期継代後は産仔数の減少もDMRメチル化の低下も消失した。ノックアウトマウスの表現型が安定しない。網羅的ゲノムDNAメチル化解析を進めるには、サンプルが稀少であるため、解析結果が安定しない。そこで、Kzpiについては、キメラの親から生まれたヘテロマウスの凍結卵を融解して、再度交配を始めた。ホモマウスを作成し、継代観察するとともに、解析に十分なサンプル量を得る予定である。27年度が最終年度であるため、記入しない。医歯薬学いずれの遺伝子についても、ノックアウトマウスの表現型と遺伝子機能を十分結びつけることができていないため、さらに遺伝子機能の解析を進める。Zfpiについては、染色体不安定性を惹起する分子機構の解明を目指す。まずは、ZfpiノックアウトES細胞について紫外線照射後培養やマイトマイシン添加培養を行う。Kzpiについては、前述の通り新たに得られるノックアウトマウスの生殖細胞と初期胚におけるDMRのメチル化レベルの解析、新たに樹立するノックアウトES細胞におけるKZPIと結合するDNA配列やタンパクを明らかにする。ノックアウトマウスの表現型が安定しない。網羅的ゲノムDNAメチル化解析を進めるには、サンプルが稀少であるため、解析結果が安定しない。染色体不安定性の原因解明が困難。27年度が最終年度であるため、記入しない。研究を予定とおりに進めることができず、やや遅延しているため。研究遅延の理由は以下に因る。ノックアウトマウスの表現型が安定しない。継代を重ねると表現型が減弱する傾向を認めている。また、網羅的ゲノムDNAメチル化解析を進めるには、サンプルが稀少であるため、解析結果が安定しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-25293345 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25293345 |
頭蓋内動脈解離におけるゲノムワイド解析研究 | 頭蓋外頸動脈解離のゲノムワイド関連研究が行われ、原因となりうる候補遺伝子が報告されているが、頭蓋内動脈解離に関してはゲノムワイド解析を行われていない。本研究では国立循環器病研究センターでバイオバンクに登録した頭蓋内動脈解離のデータベース症例の検体を用いて病態ゲノム医学部との連携で日本人の頭蓋内動脈解離患者の候補遺伝子の探索を行う。頭蓋外頸動脈解離のゲノムワイド関連研究が行われ、原因となりうる候補遺伝子が報告されているが、頭蓋内動脈解離に関してはゲノムワイド解析を行われていない。本研究では国立循環器病研究センターでバイオバンクに登録した頭蓋内動脈解離のデータベース症例の検体を用いて病態ゲノム医学部との連携で日本人の頭蓋内動脈解離患者の候補遺伝子の探索を行う。 | KAKENHI-PROJECT-19K17544 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K17544 |
商業メディアの企業性と公共性に関する考察 | 商業メディアの企業性と公共性について憲法学的に考察する本研究は、2018年度においては、1980年代におけるドイツ憲法学を素材にして、私人は商業放送を設立運営する権利を有するのか、そして放送独占は私人による商業放送の設立運営の権利を侵害するのかを検討する予定であった。この点に関しては、内外の文献を調査することによって、当時のドイツにおいて私人による商業放送の設立運営の権利がどのように理解されていたのかを明らかにすることができた。さらに、その研究を遂行する上で、とくにフランスとイタリアの放送の自由をも参照することによって、ドイツの放送理解がどのような比較法的特質を有しているのかを解明することができた。ドイツ、フランス、イタリアでは、放送の自由は、憲法裁判所の放送判決によって形成されてきた。しかし、フランスの商業放送は、公共放送と同じく、内部的多元主義によって規律されるのに対して、ドイツの商業放送は、公共放送とは異なり、外部的多元主義によって規律されている。さらに、イタリアでは、公共放送と商業放送は相互に関係付けられないのに対して、ドイツでは、公共放送と商業放送は一体として理解され、公共放送が最低限度の言論伝達(基本供給)を担う限りにおいて、商業放送を導入することが可能とされている。したがって、ドイツでは、私人による商業放送の設立運営の権利は、憲法上は保障されていないが、立法者が商業放送を導入することを決定した場合には、その決定を尊重する結果として保障されることになっている。こうしたドイツの商業放送の自由の理解は、政治家が放送に介入することを批判するとともに、国家が放送規制を撤廃することにも警戒する必要がある日本の放送法の状況においても、重要な意義を有していると考えられる。すでに上記において述べたように、2018年度は1980年代ドイツにおける商業放送の自由について研究を予定していたが、その研究は順調に遂行することができたので、「おおむね順調に進展している」とした。2019年度は、日本における新聞や民間放送がどのような役割を果たすべきかについて検討する予定である。もっとも、ドイツにおける新聞の企業性の憲法保障については、2017年度で検討することを予定していたが、十分に解明することができなかったので、この点についても引き続き調査する予定である。これらの問題については、主にメディア研究者によって考察されてきたので、憲法や法学以外の文献を参照しながら、商業メデイアの役割について憲法的規範として構成することに尽力したい。商業メディアの企業性と公共性について憲法学的に考察する本研究は、2017年度においては、1970年代におけるドイツ憲法学を素材にして、新聞の内部的自由をいかに確保するか、および新聞に独占禁止法を適用することはいかにして正当化されるかということを検討することによって、新聞の企業性の憲法保障がいかなる理論内容を有するとされたのかを解明する予定であった。この点に関しては、内外の文献を調査することによって、当時のドイツにおいて新聞の独占がいかにして進展し、その結果として新聞の多様性がどのように失われていったのかを明らかにすることができた。しかし、本年度の研究計画は、次の2点において大きく変更することになった。第1に、2017年中に最高裁大法廷が受信料制度の憲法適合性について判断を下すことが予定されていたため、本年度においては、放送の自由に関連して下された日本の裁判例を網羅的に検討することになった。その結果として、民放局設立時における一本化のための行政指導、民放連放送基準の法規範性の有無と程度、民放局による敵対的買収防衛策としての新株予約権発行の適否など、民放局に関する憲法問題について考察を深めることができた。第2に、ドイツにおける新聞企業について研究する中で、私的企業が社会的役割を果たすことが期待されているのは、メディアという領域に限定されないということが強く感じられるようになったため、本研究の検討対象を商業メディアだけでなく株式会社一般に拡大することにした。商業メディアにおける企業性と公共性の関係は、商業メディアを私的企業一般の中に位置付けることによってより明確にすることができると思われたからである。株式会社の社会的責任に関する憲法問題については、最近のフランス公法学において活発に議論されていることが判明したので、2018年3月にはパリに赴き文献を収集することができた。すでに上記において述べたように、2017年度は1970年代ドイツにおける新聞の企業性の憲法保障について研究を予定していたが、その研究を完了する前に、研究対象を変更する必要が生じてしまった。したがって、現在においては、日本における放送の自由についての裁判例を整理しながら、フランスにおける株式会社の社会的責任に関する公法理論を検討しているところである。この問題については、当初の研究計画では想定することができておらず、いまだ十分に文献を読み込むこともできていないので、研究遂行に想定外の時間を要してしまっている。商業メディアの企業性と公共性について憲法学的に考察する本研究は、2018年度においては、1980年代におけるドイツ憲法学を素材にして、私人は商業放送を設立運営する権利を有するのか、そして放送独占は私人による商業放送の設立運営の権利を侵害するのかを検討する予定であった。この点に関しては、内外の文献を調査することによって、当時のドイツにおいて私人による商業放送の設立運営の権利がどのように理解されていたのかを明らかにすることができた。さらに、その研究を遂行する上で、とくにフランスとイタリアの放送の自由をも参照することによって、ドイツの放送理解がどのような比較法的特質を有しているのかを解明することができた。 | KAKENHI-PROJECT-17K18175 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18175 |
商業メディアの企業性と公共性に関する考察 | ドイツ、フランス、イタリアでは、放送の自由は、憲法裁判所の放送判決によって形成されてきた。しかし、フランスの商業放送は、公共放送と同じく、内部的多元主義によって規律されるのに対して、ドイツの商業放送は、公共放送とは異なり、外部的多元主義によって規律されている。さらに、イタリアでは、公共放送と商業放送は相互に関係付けられないのに対して、ドイツでは、公共放送と商業放送は一体として理解され、公共放送が最低限度の言論伝達(基本供給)を担う限りにおいて、商業放送を導入することが可能とされている。したがって、ドイツでは、私人による商業放送の設立運営の権利は、憲法上は保障されていないが、立法者が商業放送を導入することを決定した場合には、その決定を尊重する結果として保障されることになっている。こうしたドイツの商業放送の自由の理解は、政治家が放送に介入することを批判するとともに、国家が放送規制を撤廃することにも警戒する必要がある日本の放送法の状況においても、重要な意義を有していると考えられる。すでに上記において述べたように、2018年度は1980年代ドイツにおける商業放送の自由について研究を予定していたが、その研究は順調に遂行することができたので、「おおむね順調に進展している」とした。以上のように、1970年代ドイツにおける新聞の企業性の憲法保障について、十分に研究を完遂することはできていないが、2018年度においては、フランスにおける株式会社の社会的責任に関する公法理論の検討を継続しながら、ドイツにおける商業放送の自由に関する研究に移ることにしたい。フランスにおける株式会社の社会的責任に関する公法理論は、2018年度中にまとめて論文として公表する予定である。そして、ドイツにおける商業放送の自由に関する研究について、遅滞なく研究を開始するように尽力したい。2019年度は、日本における新聞や民間放送がどのような役割を果たすべきかについて検討する予定である。もっとも、ドイツにおける新聞の企業性の憲法保障については、2017年度で検討することを予定していたが、十分に解明することができなかったので、この点についても引き続き調査する予定である。これらの問題については、主にメディア研究者によって考察されてきたので、憲法や法学以外の文献を参照しながら、商業メデイアの役割について憲法的規範として構成することに尽力したい。次年度使用額は僅少であるため、主に書籍の購入に使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-17K18175 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18175 |
ポリマー超伝導の可能性の探索 | ポリマー超伝導の可能性の探索ポリマー超伝導の可能性の探索有機ポリマーで、加圧による超伝導の可能性を探査した。下記に挙げる導電性ポリマーについて、調査した。i)Polypyrrole(+PF_6)、ii)P3HexTh(+In-)、iii)PDA(polydiacetylene)、iv)PEDOT(+PF_6)。これらの物質は低温に向かって大きな抵抗発散を示さなかった加圧による抵抗減少を期待したが、高圧効果を調べた試料で抵抗減少を示すものは見つけるに至っていない。ポリマー超伝導の探索として、抵抗が低温で落ちる傾向のある物質に超高圧をかけて物性をみるという戦略で研究を進めた。以前、石黒らが報告したPPyPF_6における低温での抵抗の減少が、さらなる圧力印加によってどのように変化するか、キュービックアンビル加圧装置を用いて8GPaまでの加圧下で電気抵抗率測定を行った。(PPy : polypyrrole、PF6はdopant。)測定は直流4端子法を用い、0.7×0.2×0.01mm^3程度の大きさの試料へ直径20μmの金線をカーボンペーストにより端子付けし、Daphne7373と共にテフロンカプセルへ封入後、パイロフィライト製ガスケットにセット後、加圧を行った。室温における抵抗率は圧力の印加により抵抗率は減少していくが、6.5GPa程度からは増大し始めることが明らかになった。キュービックアンビル装置各圧力下での抵抗率の温度依存性測定によると測定全温度領域で絶縁体的温度依存性を示し、室温から温度の低下とともに抵抗は増大を続ける。石黒らの報告にあった低温での抵抗率の減少は見られず、原因として試料の劣化等が考えられるが、現時点では詳細は不明である。キュービックアンビル装置による静水圧力の加圧では温度依存性における本質的な変化は起きず、PPyPF_6の電子状態を変化させることはできなかった。しかし、室温での抵抗率は加圧によって減少しており、何らの影響も及ぼさなかった訳ではなく、導電性ポリマーにおいても結晶性有機導体と同様に、電子状態を圧力によって制御できる可能性は存在すると考えられる。引き続いて、次に山本より提供された試料P3HexTh+In^-について測定を行った。この試料は、室温での抵抗が10^6Ω程度と非常に大きく、温度依存性測定が困難であったため、ドーピング前の試料へよう素ドーピングを当研究室で試みている。本研究では、現在最も研究されているπ共役高分子の一つであるpoly(3-hexylthiophene)(P3HexTh)にヨウ素ドープによって電気伝導性を測定することを試みている。そのために、安定したヨウ素のドーピングを行うため、始めから検討しなおした。ドーピング用の容器としてシュレンクを用いて、ドーピング雰囲気から水蒸気の脱気に注意を払った。また、ヨー素のドーピングが安定すること、ドーピング後の試料を圧力容器に移動すること、また圧力容器中での圧力媒体と反応しないことを狙い、ドーピング直後に試料の被覆を試みた。アクリル塗料X22と溶剤X20を等量混ぜた溶液被覆に用いた。被覆なしの試料とアクリル被覆を何度か施した試料を空気中に放置し、電気抵抗率の経時変化を比較し、ヨウ素が抜けるのをどのくらい抑えられるかを調べた。種々の条件を試みた結果、ヨウ素が抜ける速さは、最も遅い試料では被覆しない場合と比べて1/60となることがわかった。これによって、ドープ終了後に時間の余裕ができ、電気抵抗の温度依存性を測定することが可能になった。また、被覆なしの試料とアクリル被覆を何度か施した試料を空気中に放置し、電気抵抗率の経時変化を比較し、ヨウ素が抜ける度合いの抑制度を調べた。試料の条件を色々変えて測定の結果、ヨウ素が抜ける速さは、最も遅い場合では被覆しない場合と比べて1/60となることがわかった。これによって、ドープ終了後に時間の余裕ができ、電気抵抗の温度依存性を測定することが可能になった。20時間のドープ後、ヨウ素の維持のために、アクリル塗料X22と溶剤X20を等量混ぜた溶液を溶液が表面張力で膨らんだ所に試料を潜らせて塗布し、乾燥させて被覆した。また、塗布とドープを繰り返すなど条件の最適化を行った。また、圧力媒体の特性調査のため、Daphne7373,7474,グリセリンの固化圧力の測定を行った。今回、より結晶性の高い共役性ポリマーの輸送特性を調べ、室温以下の低温電気伝導特性、特に低温での伝導度の向上しそうな新しい物質についての電気伝導特性を探索した。元来、ポリマーは結晶に対比される概念であり、結晶的なポリマーというのは、モノマーが周期性よく重合した物質を指す。今回、トポケミカル重合で作成したポリジアセチレン(PDA)は大阪市立大学の松本章一教授から試料の提供を受けた試料で電気伝導度を測定した。PDAにはいくつかの重合の方法があるなかで、結晶性が抜群によい。ポリジアセチレンは側鎖置換基が化学的に選べることから、Littleの超伝導モデルに近いともいえる。難点は結晶性が良すぎて、ドーピングすら受け付けないことである。電気伝導度は0.010.26S/cmの値を得ている。しかし測定のための接触抵抗がなかなか下がらず500ohm1kohm程度で理想的な測定にはならなかった。 | KAKENHI-PROJECT-21540369 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21540369 |
ポリマー超伝導の可能性の探索 | 但し、電気抵抗は室温よりヘリウム温度まで抵抗値が増大するが、半導体的な発散はせず、高々10倍以内であったが低温特性に特に抵抗の減少は見られなかった。もうひとつ結晶性がよく経時変化につよいまた安定な、thiophene系の物質が入手できたので、これについて調査研究を行った。PEDOT(Poly(3,4-ethylenedioxythiophene))-PSS(polystyrenesulfonate))である。輸送現象の研究を行った。PEDOT-PSS自身は常圧でも、低温金属状態は見られていなかったが、類似系の(PEDOT(PF6))は10K以下、金属性を示し、試料の安定性があったため、高圧効果などは測定することに意味があると考えた。その結果は図5に示すように、抵抗比(ρ1K/ρ300K)<10であり、抵抗の低温発散は認められなかったが、圧力に対しては全く変化が見られなかった。しかし、両物質はもう少し掘り下げた研究をしてみる価値がありそうなことが判明した。 | KAKENHI-PROJECT-21540369 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21540369 |
口腔の知覚伝達系の発達障害に関する神経機能回復モデル構築 | 細胞間のシナプス形成と相互作用、形成された神経回路網の情報伝達メカニズムを明らかにして、ヒト口腔の知覚伝達系機能障害の病態解明のための実験モデルを構築することを目的に研究を実施した。これまでの研究により、サーカディアン振動体としての機能が培養系においても維持されることが明らかにされている視交叉上核の細胞群を対象とし、マルチ電極皿の上で分散培養法による初代神経培養を行い、48個の単一神経細胞の細胞外電位を2週間以上同時計測した。その結果、自発発火する神経細胞間にサーカディアンリズムの同調が認められ、そのリズム同調はNaチャンネルブロッカーであるテトロドトキシンの長期投与によって阻害された。この結果は、細胞間のリズム同調の維持にとって、Naチャンネル依存性シナプス連絡が重要であることを示唆している。次に、口腔からの知覚入力を受ける孤束核と、舌の運動神経が存在する舌下神経核を含む延髄神経核群での神経活動について、新生ラット(生後1-14日:P1-14)でのc-fos発現を指標として吸啜運動前後の発現量を比較した。吸啜運動の後では、孤束核と延髄網様体背側部にc-fos蛋白(Fos)免疫反応陽性細胞の著しい増加が認められた。孤束核でのFos陽性細胞数はP5-7で最高となり、P14では減少したが、延髄網様体背側部でのFos発現に日齢による差は認められなかった。舌下神経核では吸啜運動後においてもFos陽性細胞はほとんど認められなかった。また三叉神経中間亜核では腹側部に少数のFos陽性細胞を認めたが、吸啜後の上昇はみられなかった。以上の結果から、吸啜期ラットの摂食行動には孤束核と延髄網様体背側部のニューロン活動が深く関与していることが明らかになった。今後、これら延髄ニューロン群を含む静置器官培養系を確立し、視交叉上核ニューロン群と同様の解析方法により各々の神経核に固有な神経回路網の機能を明らかにしていく計画である。細胞間のシナプス形成と相互作用、形成された神経回路網の情報伝達メカニズムを明らかにして、ヒト口腔の知覚伝達系機能障害の病態解明のための実験モデルを構築することを目的に研究を実施した。これまでの研究により、サーカディアン振動体としての機能が培養系においても維持されることが明らかにされている視交叉上核の細胞群を対象とし、マルチ電極皿の上で分散培養法による初代神経培養を行い、48個の単一神経細胞の細胞外電位を2週間以上同時計測した。その結果、自発発火する神経細胞間にサーカディアンリズムの同調が認められ、そのリズム同調はNaチャンネルブロッカーであるテトロドトキシンの長期投与によって阻害された。この結果は、細胞間のリズム同調の維持にとって、Naチャンネル依存性シナプス連絡が重要であることを示唆している。次に、口腔からの知覚入力を受ける孤束核と、舌の運動神経が存在する舌下神経核を含む延髄神経核群での神経活動について、新生ラット(生後1-14日:P1-14)でのc-fos発現を指標として吸啜運動前後の発現量を比較した。吸啜運動の後では、孤束核と延髄網様体背側部にc-fos蛋白(Fos)免疫反応陽性細胞の著しい増加が認められた。孤束核でのFos陽性細胞数はP5-7で最高となり、P14では減少したが、延髄網様体背側部でのFos発現に日齢による差は認められなかった。舌下神経核では吸啜運動後においてもFos陽性細胞はほとんど認められなかった。また三叉神経中間亜核では腹側部に少数のFos陽性細胞を認めたが、吸啜後の上昇はみられなかった。以上の結果から、吸啜期ラットの摂食行動には孤束核と延髄網様体背側部のニューロン活動が深く関与していることが明らかになった。今後、これら延髄ニューロン群を含む静置器官培養系を確立し、視交叉上核ニューロン群と同様の解析方法により各々の神経核に固有な神経回路網の機能を明らかにしていく計画である。培養神経細胞を用いて、細胞間の相互作用と可塑的変化、また神経回路網の形成メカニズムを明らかにして、ヒト口腔の知覚伝達系機能障害の病態解明のための実験モデルを構築することを目的に研究を実施した。本年度は、個々の神経細胞の機能を明らかにする上で解析法が確立している視床下部、視交叉上核の細胞群を対象とし、マルチ電極皿(MED)の上で、分散培養法、あるいは静置器官培養法による初代神経培養を行った。新生ラットの神経細胞をマルチ電極ディッシュ上で培養し、48個の単一神経細胞の自発発火を同時計測した。複数の神経スパイクの波形ならびに発火タイミングについて、スパイクトリガによる波形の加算平均および相互相関解析を行って、神経細胞間のシナプス形成とその性質について調べた。分散培養においては、サーカディアンリズムが同調している細胞間ではすべて単一スパイク発火も同期していたが、静置器官培養では、サーカディアンリズムが同調している細胞間でもスパイク同期がみられたものはわずかであった。この結果は、細胞間のサーカディアンリズム同調が、シナプス結合以外のメカニズムによっても可能であること、また分散培養においてはそのような細胞間相互作用が失われていることを示唆している。 | KAKENHI-PROJECT-11557164 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11557164 |
口腔の知覚伝達系の発達障害に関する神経機能回復モデル構築 | 次年度は、視交叉上核細胞群の神経回路網の解析を進めるとともに、同様の方法で三叉神経核の発火活動を単一細胞外記録により連続測定し、細胞間同期と脱同期過程を空間的に解析する。それらの結果をふまえて、三叉神経節細胞と脳幹の三叉神経核細胞との共存培養により、神経系の機能回復モデルを確立する予定である。また、神経幹細胞およびグリア細胞がこの機能回復モデルにおいてどのように関与するかについても、これらに特異的に発現する蛋白およびmRNAについての解析を行う計画である。培養神経細胞を用いて、細胞間のシナプス形成と相互作用、形成された神経回路網の情報伝達メカニズムを明らかにして、ヒト口腔の知覚伝達系機能障害の病態解明のための実験モデルを構築することを目的に研究を実施した。サーカディアン振動体としての機能が明らかにされている視交叉上核の細胞群を対象とし、マルチ電極皿(MED)の上で分散培養法、あるいは静置器官培養法による初代神経培養を行い、48個の単一神経細胞の自発発火を2週間以上同時計測した。各々の培養条件で自発発火のサーカディアンリズムの同調が認められ、そのリズム同調はNaチャンネルブロッカーであるテトロドトキシンの長期投与によって阻害された。この結果は、細胞間のリズム同調の維持にとって、Naチャンネル依存性シナプス連絡が重要であることを示唆している。次に、腔からの知覚入力を受ける孤束核と、舌の運動神経が存在する舌下神経核を含む延髄神経核群での神経活動について、新生ラット(生後1-14日:P1-14)でのc-fos発現を指標として吸啜運動前後の発現量を比較した。吸啜運動の後では、孤束核と延髄網様体背側部にc-fos蛋白(Fos)陽性細胞の著しい増加が認められた。孤束核でのFos陽性細胞数はP5-7で最高となり、P14では減少したが、延髄網様体背側部でのFos発現に日齢による差は認められなかった。舌下神経核では吸啜運動後においてもFos陽性細胞はほとんど認められなかった。また三叉神経中間亜核では腹側部に少数のFos陽性細胞を認めたが、吸啜後の上昇はみられなかった。以上の結果から、吸啜期ラットの摂食行動には孤束核と延髄網様体背側部のニューロン活動が深く関与していることが明らかになった。今後、これら延髄ニューロン群の細胞培養系を確立し、視交叉上核ニューロン群と同様の解析方法により各々の神経核に固有な神経回路網の機能を明らかにしていく計画である。 | KAKENHI-PROJECT-11557164 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11557164 |
グルタール酸尿症の分子遺伝学的解析 | グルタール酸尿症1型は、先天性有機酸代謝異常症の一つである。日本人においては頻度が少ない遺伝性疾患であり、現在まで10例程度の症例が報告されている。我々は自験例のはかもう一家系の日本人症例の細胞を島根医科大学小児科山口清次教授より提供を受けて、このGCDH遺伝子解析を行った。解析方法は培養細胞よりRNAを抽出しRT-PCR法によりcDNAを増幅し、蛋白翻訳領域に過不足のないことを確認し塩基配列の決定を行った。また培養細胞よりDNAを抽出しゲノム検索に用いた。結果は自験例においてはエクソン9においてR355H変異をホモ接合体として検出した。また家族のゲノム検索も行い、両親ともにR355H変異をヘテロ接合体で有している事を確認した。またもう一家系においてはエクソン8においてS305L変異を、エクソン9においてM339V変異を検出した。家族のゲノム検索を行い、S305L変異は母より、M339V変異は父に由来することが判明した。またS305Lは軽症のパレスチナのアラブ人家系において報告されていた。今回解析した日本人症例2家系において、両者ともにエクソン9に変異が存在した。しかし海外の遺伝子解析の結果にはエクソン9の報告は少なく、このことが日本人の人種特異性であることが考えられた。日本人症例解析我々は、脳症様のエピソードで発症し尿有機酸分析による化学診断と、白血球の酵素活性測定による酵素診断により確定診断を受け日本小児科学会雑誌に発表されている姉妹例の患者由来培養皮膚繊維芽細胞を、島根医科大学医学部小児科山口清次教授より供与された。この培養皮膚繊維芽細胞を培養し増殖させた後、RNAとDNAを分離した。このようにして得られたRNAを逆転写酵素によりcDNA化した後PCRを行った(RT-PCR)。この際にGCDH遺伝子の蛋白翻訳領域を4分割し互いにオーバーラップするように増幅した。この得られた4つのPCR産物をダイナビーズにより一本鎖にして塩基配列の決定を行った。結果はエクソン8内にS305L変異及びエクソン9内にM339V変異を検出した。これらの変異をゲノムDNA上で確認するためにエクソン8、エクソン9を含むようにイントロン内にプライマーを設計しPCRで増幅した。S305L変異はドットブロットによるASOハイブリダイゼイションで、またM339V変異は得られたPCR産物を正常アレルならNla IIIで消化され、変異アレルであればBsp1286 1で消化されることでゲノム上に両方の変異が存在することを確認した。また同じ方法によりS305L母親より、M339Vは父親より由来していることが確認された。これにより確認されたS305L変異は軽症のパレスチナのアラブ人症例で発見されているものであった。またM339V変異は既報告には存在していなかった。欧米の既報告においてはエクソン9変異はなくR335H変異と伴せてエクソン9は日本人に多い変異部位である可能性が示唆された。グルタール酸尿症1型は、先天性有機酸代謝異常症の一つである。日本人においては頻度が少ない遺伝性疾患であり、現在まで10例程度の症例が報告されている。我々は自験例のはかもう一家系の日本人症例の細胞を島根医科大学小児科山口清次教授より提供を受けて、このGCDH遺伝子解析を行った。解析方法は培養細胞よりRNAを抽出しRT-PCR法によりcDNAを増幅し、蛋白翻訳領域に過不足のないことを確認し塩基配列の決定を行った。また培養細胞よりDNAを抽出しゲノム検索に用いた。結果は自験例においてはエクソン9においてR355H変異をホモ接合体として検出した。また家族のゲノム検索も行い、両親ともにR355H変異をヘテロ接合体で有している事を確認した。またもう一家系においてはエクソン8においてS305L変異を、エクソン9においてM339V変異を検出した。家族のゲノム検索を行い、S305L変異は母より、M339V変異は父に由来することが判明した。またS305Lは軽症のパレスチナのアラブ人家系において報告されていた。今回解析した日本人症例2家系において、両者ともにエクソン9に変異が存在した。しかし海外の遺伝子解析の結果にはエクソン9の報告は少なく、このことが日本人の人種特異性であることが考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-09770532 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09770532 |
軽度低体温の心筋虚血発生にあたえる影響についての検討 | 軽度低体温が脳神経外科周術期において心筋虚血を助長させないか検討した。対象は脳神経外科予定手術患者47名。患者の同意のもと無作為に軽度低体温群(H群:24名)と常温群(N群:23名)に振り分けた。麻酔は酸素、笑気、フェンタニルとセボフルランまたはプロポフオールで維持した。体温はH群は鼓膜温34.5度を目標に導入後冷却し、主要な術操作終了後復温した。N群では正常温を維持した。ホルター心電図を入室時に装着しV1とV5誘導を24時間記録した。虚血の基準はST部分の1mm以上の降下または2mm以上の上昇とした。覚醒時のシバリング、合併症、在院日数も調べた。統計学的検定はunpaired Student's ttest chi-square testによりp<0.05を有意とした。両群の年令、体重、身長、性別、麻酔時間、手術時間、出血量、尿量、麻酔法に差はなかった。体温は入室時に差はなく、最低時(34.6±0.5vs35.9±0.6)、退室時(35.9±0.9vs36.5±0.5)に有意差があった。術後のシバリングはH群3例、N群2例で発生率に差はなかった。ホルター心電図でのST低下はH群3例、N群5例で差はなく、両群とも術後に重篤な心血管の合併症を認めず、在院日数にも差はなかった。34.5度までの軽度低体温は正常温に比較して脳神経外科周術期の心筋虚血を増加させなかった。軽度低体温が脳神経外科周術期において心筋虚血を助長させないか検討した。対象は脳神経外科予定手術患者47名。患者の同意のもと無作為に軽度低体温群(H群:24名)と常温群(N群:23名)に振り分けた。麻酔は酸素、笑気、フェンタニルとセボフルランまたはプロポフオールで維持した。体温はH群は鼓膜温34.5度を目標に導入後冷却し、主要な術操作終了後復温した。N群では正常温を維持した。ホルター心電図を入室時に装着しV1とV5誘導を24時間記録した。虚血の基準はST部分の1mm以上の降下または2mm以上の上昇とした。覚醒時のシバリング、合併症、在院日数も調べた。統計学的検定はunpaired Student's ttest chi-square testによりp<0.05を有意とした。両群の年令、体重、身長、性別、麻酔時間、手術時間、出血量、尿量、麻酔法に差はなかった。体温は入室時に差はなく、最低時(34.6±0.5vs35.9±0.6)、退室時(35.9±0.9vs36.5±0.5)に有意差があった。術後のシバリングはH群3例、N群2例で発生率に差はなかった。ホルター心電図でのST低下はH群3例、N群5例で差はなく、両群とも術後に重篤な心血管の合併症を認めず、在院日数にも差はなかった。34.5度までの軽度低体温は正常温に比較して脳神経外科周術期の心筋虚血を増加させなかった。平成9年度6月から3月の間に奈良県立医科大学でおこなわれた脳神経外科開頭手術を対象に軽度低体温が心筋虚血発生に与える影響について検討した。なお当初当施設で実施される開頭手術患者全例にホルター心電図を装着する予定であったが、腹臥位手術は体位の固定に心電図の電極を固定するのが困難なうえに、体位の移動にともなう心臓の変異が心電図においても波形の変化をひきおこすため解析が困難との理由から対象からはずした。残った開頭手術例の無作為に軽度低体温群または常温群に割り振られた34例にホルター心電図を装着した。当初の予定では48時間の装着を企図していたが、現有の機器が1台であることより24時間と変更した。この心電図は現在解析の途中であるが、2群の術中の経過において明白な心筋虚血の発生の増加は認め難い。しかし、現在の対象数では統計学的な有意差を検出するに当ってのパワーが不充分と考えられ、平成10年度も引き続き本研究を続行していく予定である。現段階では入院日数、要した治療の増加、死亡率、手術成績といった患者の予後の検討はなされていないので、これらの項目についても検討を続ける。また、本研究の実行にあたって心筋虚血の鋭敏なモニターとしてホルター心電図を採用したが、本機器により患者の不整脈の発生頻度やPQ時間の変化等の連続記録が同時になされている。これらの不整脈や伝導障害が重篤な循環障害を発生させる可能性を指摘する報告もされてきており、心筋虚血発生の差のみならすこれらの事項の与える影響についても今後検討する予定である。軽度低体温が脳神経外科周術期において心筋虚血を助長させないか検討した。対象は脳神経外科予定手術患者47名。患者の同意のもと無作為に軽度低体温群(H群:24名)と常温群(N群:23名)に振り分けた。麻酔は酸素、笑気、フェンタニルとセボフルランまたはプロポフオールで維持した。 | KAKENHI-PROJECT-09671582 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09671582 |
軽度低体温の心筋虚血発生にあたえる影響についての検討 | 体温はH群は鼓膜温34.5度を目標に導入後冷却し、主要な術操作終了後復温した。N群では正常温を維持した。ホルター心電図を入室時に装着しV1とV5誘導を24時間記録した。虚血の基準はST部分の1mm以上の降下または2mm以上の上昇とした。覚醒時のシバリング、合併症、在院日数も調べた。統計学的検定はunpairedStudent'st test,chi-square testによりp<0.05を有意とした。両群の年令、体重、身長、性別、麻酔時間、手術時間、出血量、尿量、麻酔法に差はなかった。体温は入室時に差はなく、最低時(34.6±0.5vs35.9±0.6)、退室時(35.9±0.9vs36.5±0.5)に有意差があった。術後のシバリングはH群3例、N群2例で発生率に差はなかった。ホルター心電図でのST低下はH群3例、N群5例で差はなく、両群とも術後に重篤な心血管の合併症を認めず、在院日数にも差はなかった。34.5度までの軽度低体温は正常温に比較して脳神経外科周術期の心筋虚血を増加させなかった。 | KAKENHI-PROJECT-09671582 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09671582 |
固相置換反応を利用した反応性通電加圧焼結による高硬度・高靭性セラミックスの合成 | まず、反応性通電加圧焼結装置を用いて、固相置換反応B_4C+5W+80WC→4WB+81WCを起こさせながら焼結させ、W-B-C系の複合セラミックス合成のための最適焼結温度を調べた。その結果、1650°C以上で緻密な焼結体が得られることが分かった。1650°Cの焼結体は結晶粒が細かく、硬度が高いが、1700°C以上では非常に粗粒化し、硬度が著しく低下した。このように適切温度範囲が狭いと、品質管理が難しいので、粒成長防止剤を添加して、微細な粒の状態が維持できる焼結温度範囲を広げる必要がある。そこで、WCへの粒成長防止作用のあるVCの添加効果を調べた。VC微量添加のWC粉末を使用して、B_4C-5W-80WCになるように粉末を混合し、反応性通電加圧焼結を行った。VCを含んでいると、1750°C以上で緻密になった。緻密化した1800°Cの焼結体の結晶粒径は原料のWC粉末の粒径からほとんど変化しておらず、優れた粒成長防止効果が認められた。焼結温度1700°Cまでは、WB、W_2B、WC及びW_2Cが生成していたが、焼結温度1750°C以上ではW_2Bが生成せず、WB、WC、及びW_2Cが生成した。添加したVCは、WCには固溶せず、WCの粒界あるいはWBやW_2Bの回りに析出した。かさ密度は1750°Cまで緩やかに増大し、1750°Cを越えるとほぼ15.5gcm^<-3>の一定値を示した。ヤング率は1750°Cまで緩やかに増大し、1750°Cで最大値689GPaになり、その後もほぼ一定であった。ポアソン比は焼結温度に関係なく、ほぼ一定値を示した。ビッカース硬さは焼結温度が高くなっても、粒成長しないため、ほとんど低下せず、焼結温度に関わらず25GPa以上の非常に高い値を示した。破壊靭性値は焼結温度1700と1750°Cの時に最大値5.3MPam^<1/2>を示し、VCを含まない場合より少し低くなった。まず、反応性通電加圧焼結装置を用いて、固相置換反応B_4C+5W+80WC→4WB+81WCを起こさせながら焼結させ、W-B-C系の複合セラミックス合成のための最適焼結温度を調べた。その結果、1650°C以上で緻密な焼結体が得られることが分かった。1650°Cの焼結体は結晶粒が細かく、硬度が高いが、1700°C以上では非常に粗粒化し、硬度が著しく低下した。このように適切温度範囲が狭いと、品質管理が難しいので、粒成長防止剤を添加して、微細な粒の状態が維持できる焼結温度範囲を広げる必要がある。そこで、WCへの粒成長防止作用のあるVCの添加効果を調べた。VC微量添加のWC粉末を使用して、B_4C-5W-80WCになるように粉末を混合し、反応性通電加圧焼結を行った。VCを含んでいると、1750°C以上で緻密になった。緻密化した1800°Cの焼結体の結晶粒径は原料のWC粉末の粒径からほとんど変化しておらず、優れた粒成長防止効果が認められた。焼結温度1700°Cまでは、WB、W_2B、WC及びW_2Cが生成していたが、焼結温度1750°C以上ではW_2Bが生成せず、WB、WC、及びW_2Cが生成した。添加したVCは、WCには固溶せず、WCの粒界あるいはWBやW_2Bの回りに析出した。かさ密度は1750°Cまで緩やかに増大し、1750°Cを越えるとほぼ15.5gcm^<-3>の一定値を示した。ヤング率は1750°Cまで緩やかに増大し、1750°Cで最大値689GPaになり、その後もほぼ一定であった。ポアソン比は焼結温度に関係なく、ほぼ一定値を示した。ビッカース硬さは焼結温度が高くなっても、粒成長しないため、ほとんど低下せず、焼結温度に関わらず25GPa以上の非常に高い値を示した。破壊靭性値は焼結温度1700と1750°Cの時に最大値5.3MPam^<1/2>を示し、VCを含まない場合より少し低くなった。まず、反応性通電加圧焼結装置を用いて、固相置換反応B_4C+5W+80WC→4WB+81WCを起こさせながら焼結させ、W-B-C系の複合セラミックス合成のための最適焼結温度を調べた。その結果、1650°C以上で緻密な焼結体が得られることが分かった。1650°Cの焼結体は結晶粒が細かく、硬度が高いが、1700°C以上では非常に粗粒化し、硬度が著しく低下した。このように適切温度範囲が狭いと、品質管理が難しいので、粒成長防止剤を添加して、微細な粒の状態が維持できる焼結温度範囲を広げる必要がある。そこで、WCへの粒成長防止作用のあるVCの添加効果を調べた。 | KAKENHI-PROJECT-16560625 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16560625 |
固相置換反応を利用した反応性通電加圧焼結による高硬度・高靭性セラミックスの合成 | VC微量添加のWC粉末を使用して、B_4C-5W-80WCに成るように粉末を混合し、反応性通電加圧焼結を行った。得られた焼結体については、生成相の分析を行うとともに、組織観察、機械的性質の評価を行い、焼結温度の影響について検討した。焼結温度1700°CまではWB、W_2B、WC及びW_2Cが生成していたが、焼結温度1750°C以上ではW_2Bが生成せず、WB、WC、及びW_2Cが生成した。かさ密度は1750°Cまで緩やかに増大し、1750°Cを越えるとほぼ15.5g・cm^<-3>の一定値を示した。ヤング率は1750°Cまで緩やかに増大し、1750°Cで最大値689GPaになり、その後もほぼ一定であった。ポアソン比は焼結温度に関係なく、ほぼ一定値を示した。ビッカース硬さは焼結温度に関わらず、25GPa以上の非常に高い値を示した。破壊靭性値は焼結温度1700と1750°Cの時に最大値5.3MPa・m^<1/2>を示した。VCは顕著な結晶粒成長防止効果を示すため、添加すると非常に高い硬度の焼結体が得られるが、破壊靭性値とヤング率を低下させる。本年度では、高い硬度と破壊靭性値を有するWC系複合セラミックス作るために、前年度の反応機構に関する知見をもとに、WCの粒成長防止剤を探索した。WC-Coサーメットの研究で、VCが最も効果的にWCの結晶粒成長を防止するということが多くの研究で分かっているが、Coを含まない場合に効果があるかは確かめられていない。16年度の研究で、+80WC=4WB+81WCの反応で焼結した材料が、最も優れた機械的性質を持つことが分かっているので、これをベースにして、VCを適量添加した試料で焼結温度を変えて焼結し、得られた試料の組織を調べ、硬度、ヤング率、破壊靭性を測定した。B_4CとWとV量で0.43mass%含むWCを用いて、前記の反応式になるように秤量した後、これを放電プラズマ焼結装置を用いて焼結した。焼結は16001800°Cの範囲で行った。焼結後の試料については、切断、研削、研磨を行った後、密度と気孔率の測定、微細組織の観察と分析、結晶粒径の測定、ビッカーズ硬度の測定、ヤング率の測定を行った。VCを含んでいない場合は、1650°Cで完全に緻密になったが、VCを含んでいると、1750°C以上で緻密になった。緻密化した1800°Cの焼結体の結晶粒径は原料のWC粉末の粒径からほとんど変化しておらず、優れた粒成長防止効果が認められた。添加したVCは、WCには固溶せず、WCの粒界あるいはWBやW_2Bの回りに析出した。緻密な焼結体のヤング率は、VCを含まない場合より少し低かった。硬度は、焼結温度が高くなっても、粒成長しないため、ほとんど低下しなかった。破壊靭性値は、VCを含まない場合より少し低くなった。 | KAKENHI-PROJECT-16560625 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16560625 |
新規な高血圧モデルラットを用いたアスコルビン酸摂取の高血圧病態に対する影響の解析 | 我々の研究室でのみ繁殖・維持しているアスコルビン酸(AsA)合成不能高血圧自然発症ラット(SHR-od)を用いて、下記の研究成果を得た。SHR-od(25週齢、雄、血圧約210mmHg)にAsA無添加飼料を与えて、AsA欠乏を誘発したところ、4週間頃より血圧の低下が観察され、7週間では血圧は110mmHgまで達した。(1)睾丸動脈の壁厚は欠乏群で明らかに減少しており、この変化が高血圧の破綻に寄与している可能性が考えられた。動脈壁の抵抗性には、動脈壁を構成している主要な分子の一つであるコラーゲン(III型、I型、IV型)が重要な役割を持っている。AsA欠乏群の睾丸動脈の電子顕微鏡像の結果から、動脈壁の平滑筋細胞間のマトリクスがAsA欠乏により激減しており、IV型コラーゲンの減少が推定された。AsA無添加食を与えて4週間の時点から大動脈のI、III、IV型コラーゲンα1鎖のmRNAレベルは低下し始め、7週間の時点では対照群に比べて有為に低下していた。これらのことから、AsA欠乏によって動脈壁のコラーゲン量は減少し、動脈構造のリモデリングが起こっていると推定された。そしてその結果、SHR-odの高血圧の破綻が起こっていると考えられた。(2)AsA欠乏による血圧低下の機構を考える上で、昇圧作用を持つノルエピネフリンおよびエピネフリンの合成がAsA欠乏により低下しているのではないかという可能性を考えた。AsAはドーパミンからノルエピネフリンを生成するドーパミンβ-ヒドロキシラーゼのコファクターである点からこの可能性に着目した。しかしながら、個体全体での合成量を反映するとされる尿中ノルエピネフリンおよびエピネフリン量は、AsA欠乏群でむしろ増加していた。また副腎の両物質の濃度もAsA欠乏群で上昇していた。これらの結果からは、AsA欠乏によってノルエピネフリンおよびエピネフリンの産生量が減少したことにより血圧低下が起こった可能性は低いと推定された。2、AsA摂取の高血圧性血管病変の発症抑制効果の検討高血圧症においてはヒトでもSHRでも、腎臓の動脈の形態変化が起こり、血管機能の障害により腎糸球体の機能が低下したり腎機能の損傷が起こる。SHR-odにおいて、AsA無添加飼料を4週間摂取した場合には高血圧には変化が観察されなかったが、腎臓細動脈の高血圧性病変(内膜肥厚、中膜肥厚、血管壊死)の発症が促進されていた。SHR-odに脳卒中易発症性のSHRSP脳卒中発症遺伝子を導入することにより、脳卒中とSHR-odより重篤な高血圧を発症するSHRSP-odを作出することを試みた。SHR-od(雌)とSHRSP(雄)とを交配して得られた子孫(雌)をSHRSP(雄)に戻し交配した世代の中で、od遺伝子に関してod/+(+は野生型)の雌を選抜した。od/+と+/+の判別は、ラットの尾より得たgenomic DNAを鋳型にしたPCRによって行った。そして、このod/+個体をSHRSP(雄)に戻し交配を、8回繰り返してcongenic系統の作成を完了した。現在、このヘテロ(od/+)個体同士を交配して、AsA合成不能ラットを作成している。すなわち、SHRSP-od作出の最終段階を行っている。我々の研究室でのみ繁殖・維持しているアスコルビン酸(AsA)合成不能高血圧自然発症ラット(SHR-od)を用いて、下記の研究成果を得た。SHR-od(25週齢、雄、血圧約210mmHg)にAsA無添加飼料を与えて、AsA欠乏を誘発したところ、4週間頃より血圧の低下が観察され、7週間では血圧は110mmHgまで達した。(1)睾丸動脈の壁厚は欠乏群で明らかに減少しており、この変化が高血圧の破綻に寄与している可能性が考えられた。動脈壁の抵抗性には、動脈壁を構成している主要な分子の一つであるコラーゲン(III型、I型、IV型)が重要な役割を持っている。AsA欠乏群の睾丸動脈の電子顕微鏡像の結果から、動脈壁の平滑筋細胞間のマトリクスがAsA欠乏により激減しており、IV型コラーゲンの減少が推定された。AsA無添加食を与えて4週間の時点から大動脈のI、III、IV型コラーゲンα1鎖のmRNAレベルは低下し始め、7週間の時点では対照群に比べて有為に低下していた。これらのことから、AsA欠乏によって動脈壁のコラーゲン量は減少し、動脈構造のリモデリングが起こっていると推定された。そしてその結果、SHR-odの高血圧の破綻が起こっていると考えられた。(2)AsA欠乏による血圧低下の機構を考える上で、昇圧作用を持つノルエピネフリンおよびエピネフリンの合成がAsA欠乏により低下しているのではないかという可能性を考えた。AsAはドーパミンからノルエピネフリンを生成するドーパミンβ-ヒドロキシラーゼのコファクターである点からこの可能性に着目した。しかしながら、個体全体での合成量を反映するとされる尿中ノルエピネフリンおよびエピネフリン量は、AsA欠乏群でむしろ増加していた。また副腎の両物質の濃度もAsA欠乏群で上昇していた。これらの結果からは、AsA欠乏によってノルエピネフリンおよびエピネフリンの産生量が減少したことにより血圧低下が起こった可能性は低いと推定された。2、AsA摂取の高血圧性血管病変の発症抑制効果の検討 | KAKENHI-PROJECT-11660125 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11660125 |
新規な高血圧モデルラットを用いたアスコルビン酸摂取の高血圧病態に対する影響の解析 | 高血圧症においてはヒトでもSHRでも、腎臓の動脈の形態変化が起こり、血管機能の障害により腎糸球体の機能が低下したり腎機能の損傷が起こる。SHR-odにおいて、AsA無添加飼料を4週間摂取した場合には高血圧には変化が観察されなかったが、腎臓細動脈の高血圧性病変(内膜肥厚、中膜肥厚、血管壊死)の発症が促進されていた。SHR-odに脳卒中易発症性のSHRSP脳卒中発症遺伝子を導入することにより、脳卒中とSHR-odより重篤な高血圧を発症するSHRSP-odを作出することを試みた。SHR-od(雌)とSHRSP(雄)とを交配して得られた子孫(雌)をSHRSP(雄)に戻し交配した世代の中で、od遺伝子に関してod/+(+は野生型)の雌を選抜した。od/+と+/+の判別は、ラットの尾より得たgenomic DNAを鋳型にしたPCRによって行った。そして、このod/+個体をSHRSP(雄)に戻し交配を、8回繰り返してcongenic系統の作成を完了した。現在、このヘテロ(od/+)個体同士を交配して、AsA合成不能ラットを作成している。すなわち、SHRSP-od作出の最終段階を行っている。アスコルビン酸(AsA)合成不能高血圧自然発症ラット(SHR-od)は、通常の高血圧自然発症ラット(SHR)と同様に、雄が顕著な高血圧を呈し、1215週齢時には200230mmHg(正常血圧は110130mmHg)以上となり、それ以降この血圧を維持する。SHR-odは現在、我々の研究室においてのみコロニーが維持されている。25週齢のSHR-od(雄)にAsA無添加飼料(欠乏群)を与えて、血圧が低下し始める実験開始後4週間の時点、血圧の低下が著明な7週間の時点、その後にAsAを投与して高血圧が回復した時点の3点において以下の解析を行った。同時に、AsA添加飼料(通常要求量の300mg/kgを添加)を摂取させる対照群をもうけた。筋型動脈であり、高血圧の発症・維持に重要な役割を持つ睾丸動脈の組織学的解析を行ったところ、欠乏群では4週間の時点で既に動脈壁の薄くなっており、平滑筋細胞間の細胞外マトリクスの明らかな減少が観察された。この現象は7週間でより顕著に見られた。すなわち、AsA欠乏により動脈構造のリモデリングが起こると推定された。細胞外マトリクスの主要な構成成分であるIV型コラーゲン、動脈全体の主要な構成成分であるI、III型コラーゲンの各々のα鎖のmRNAレベルも欠乏群で低下していた。脳卒中易発症性の高血圧モデルラットであるSHRSPの脳卒中発症遺伝子を、SHR-odに導入することにより、脳卒中とSHR-odより重篤な高血圧を発症するSHRSP-odを作出している。SHR-od(雌)とSHRSP(雄)とを交配して得られた子孫(雌)を、SHRSP(雄)に戻し交配し、13回の戻し交配により純系統の作出は完了する。現在、戻し交配は8回目まで、順調に進んでいる。当研究室でのみ維持しているアスコルビン酸生合成不能高血圧自然発症ラット(SHR-od)を用いて、下記の(1)および(2)の項目の実験を行った。また、新たに進行中のアスコルビン酸生合成不能脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP-od)の作出過程について(3)に報告する。AsA欠乏によるSHR-odの血圧低下の機構を考える上で、昇圧作用を持つノルエピネフリンおよびエピネフリンの合成がAsA欠乏により低下しているのではないかという可能性を考えた。 | KAKENHI-PROJECT-11660125 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11660125 |
河口・沿岸海域の水環境管理のためのコンピューター支援システムの開発 | 河口・沿岸海域の水環境管理や環境創造の政策を立案、決定する過程で、目に見えた形で物理現象を捉え、物質の輸送・分散過程を把握することが重要である。施策の対案に対して長所・短所は何か、また変更により何がどのように変化するかを、対話しながら、目で見て判断するシミュレーションが必須である。1.中辻は大阪湾の3次元流動の数値実験を継続するとともに、流動と物質輸送過程の時間変化をアニメーションで表現するシステムの開発を図った。また、パソコンレベルで粒子をラグランジェ風に追跡できるシステムを作った。2.綾は地形情報に基づいた格子生成法と入力情報の自動化、CG利用による数値実験結果の可視化処理の技術開発を行った。3.福嶋は前年度に開発した流線・タイムライン法のプログラムを発展させると同時に、動的な流れを容易に把握できるCGプログラムを開発した。4.藤田は洪水時の航空写真や衛生画像を収集し、それらの画像を対象にしてイメージ・スキャナを用いて対話形式で表面流速の画像解析を可能とするパソコン・システムを開発した。5.冨永は前年度に引き続き複断面水路の大規模構造を可視計測する手法の開発を検討した。6.水鳥は人工衛星からの可視・赤外線画像を用いて沿岸海域の物理現象を可視化するとともに、アルチメーターを用いた海面高度解析も行った。河口・沿岸海域の水環境管理や環境創造の政策を立案、決定する過程で、目に見えた形で物理現象を捉え、物質の輸送・分散過程を把握することが重要である。施策の対案に対して長所・短所は何か、また変更により何がどのように変化するかを、対話しながら、目で見て判断するシミュレーションが必須である。1.中辻は大阪湾の3次元流動の数値実験を継続するとともに、流動と物質輸送過程の時間変化をアニメーションで表現するシステムの開発を図った。また、パソコンレベルで粒子をラグランジェ風に追跡できるシステムを作った。2.綾は地形情報に基づいた格子生成法と入力情報の自動化、CG利用による数値実験結果の可視化処理の技術開発を行った。3.福嶋は前年度に開発した流線・タイムライン法のプログラムを発展させると同時に、動的な流れを容易に把握できるCGプログラムを開発した。4.藤田は洪水時の航空写真や衛生画像を収集し、それらの画像を対象にしてイメージ・スキャナを用いて対話形式で表面流速の画像解析を可能とするパソコン・システムを開発した。5.冨永は前年度に引き続き複断面水路の大規模構造を可視計測する手法の開発を検討した。6.水鳥は人工衛星からの可視・赤外線画像を用いて沿岸海域の物理現象を可視化するとともに、アルチメーターを用いた海面高度解析も行った。河口・沿岸海域の適正な利用のための水環境管理や環境創造の政策を立案・決定する過程で、目に見えた形で河口・海域の物理現象を捉え、物質の輸送・分散過程を把握することが第一義的に重要である。分担者が各自で開発してきた数値モデルや画像解析技術を相補的に利用し合い、さらに衛星写真や航空写真の画像解析技術を駆使して、流れや物質輸送の時間変化を表現できるシステム作りを目指した。得られた成果を分担者別に示せば以下のようになる。1.中辻はワークステーションを用いて大阪湾の三次元流動の数値実験を実施するとともに、流速ベクトルと密度構造を同時に呈示できるCGの開発を行った。2.綾は一般座標系を用いた高精度・高分解能のCG利用による数値実験結果の可視化処理について検討した。3.福嶋は流れのパターンを画面上に表示し、流れに対する理解を深める支援システムの可能性を追求した。具体的には流線、タイムライン等の表示プログラムの作成に努めた。4.藤田は洪水時の航空写真を収集し、それらの画像を対象にしてイメージ・スキャナを用いて表面流速の画像解析を可能とするパソコン・システムを開発した。5.冨永は従来から実施してきた複断面水路の大規模構造を可視計測する手法の開発を行った。6.水鳥は人工衛星からの可視・熱赤外線画像を用いて沿岸海域の物理現象を可視化するとともに、現象の定量化を図る方策について検討した。河口・沿岸海域の水環境管理や環境創造の政策を立案、決定する過程で、目に見えた形で物理現象を捉え、物質の輸送・分散過程を把握することが重要である。施策の対案に対して長所・短所は何か、また変更により何がどのように変化するかを、対話しながら、目で見て判断するシミュレーションが必須である。1.中辻は大阪湾の3次元流動の数値実験を継続するとともに、流動と物質輸送過程の時間変化をアニメーションで表現するシステムの開発を図った。また、パソコンレベルで粒子をラグランジェ風に追跡できるシステムを作った。2.綾は地形情報に基づいた格子生成法と入力情報の自動化、CG利用による数値実験結果の可視化処理の技術開発を行った。3.福嶋は前年度に開発した流線・タイムライン法のプログラムを発展させると同時に、動的な流れを容易に把握できるCGプログラムを開発した。4.藤田は洪水時の航空写真や衛生画像を収集し、それらの画像を対象にしてイメージ・スキャナを用いて対話形式で表面流速の画像解析を可能とするパソコン・システムを開発した。5.冨永は前年度に引き続き複断面水路の大規模構造を可視計測する手法の開発を検討した。6.水鳥は人工衛星からの可視・赤外線画像を用いて沿岸海域の物理現象を可視化するとともに、アルチメーターを用いた海面高度解析も行った。 | KAKENHI-PROJECT-05555146 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05555146 |
アッシャー症候群本邦症例の変異解析:変異-病態スペクトラムの構築と臨床への応用 | アッシャー症候群タイプ2患者10人を対象として、USH2Aの遺伝子解析を行い、8人において14種の疾患原変異を同定した。14種の変異の中で11種は新規であり、さらに1種(c.8559-2A>G)は4人に共通して同定された。このことより、本邦では欧米人とは全くことなる変異によりアッシャー症候群を発症していること、c.8559-2A>Gは本邦USH2A患者における高頻度変異である可能性が高いことを明らかにした。アッシャー症候群タイプ2患者10人を対象として、USH2Aの遺伝子解析を行い、8人において14種の疾患原変異を同定した。14種の変異の中で11種は新規であり、さらに1種(c.8559-2A>G)は4人に共通して同定された。このことより、本邦では欧米人とは全くことなる変異によりアッシャー症候群を発症していること、c.8559-2A>Gは本邦USH2A患者における高頻度変異である可能性が高いことを明らかにした。アッシャー症候群(USH)は、網膜色素変性症(RP)に感音難聴を伴う常染色体劣性遺伝性疾患である。USHは、臨床症状によりタイプ1からタイプ3の3つのタイプに分類され、さらに原因遺伝子がマップまたはクローニングされたものはサブタイプとして分類されている。現在までに、1B1H、2A、2C、2D、3A、3Bの12のサブタイプが知られている。臨床症状よりタイプ2と診断した10家系11名の患者においてUSH2Aの遺伝子解析を行い、8家系9名の患者において14個の疾患原因変異を同定した。14個の疾患原因変異の中で、11個は新規の変異であり、さらに1つの変異は4家系に共通する変異であった。患者数は少ないが、本遺伝子変異は日本人のタイプ2患者に頻度が高い遺伝子変異であると考えられる。USHでは、難聴の出現よりRPの発症がかなり遅れるため、難聴のみからUSHであることの早期の確定診断は困難であるが、本遺伝子変異を解析することは、USHの早期診断に有効であると思われる。遺伝子変異を同定することができた10家系11名の患者において、2アレルでの変異のタイプの組み合わせ(遺伝子型)と症状(表現型)の関連を検討した。ミスセンス変異をM、ミスセンス変異以外の変異(スプライシング変異、ナンセンス変異、欠失)をNとすると、難聴はMM<MN<NNの順に重篤であった。一方、網膜色素変性症では、遺伝子型と表現型に明らかな相関は認められなかった。環境因子による影響に加え、症状を修飾する他の遺伝子の存在が想定され、その寄与があることが推定された。アッシャー症候群(USH)は、網膜色素変性症(RP)に感音難聴(HL)を合併する常染色体劣性遺伝性疾患である。USHは、臨床症状によりタイプ1からタイプ3の3つのタイプに分類され、さらに原因遺伝子がマップまたはクローニングされたものはサブタイプとして分類されている。現在までに、1B1H、2A、2C、2D、3A、3Bの12のサブタイプが知られている。臨床症状よりタイプ2と診断した患者を対象として、タイプ2の原因遺伝子の1つであり、欧米人患者では最も多くの変異が知られているUSH2Aの遺伝子解析を行った。平成21年度は、2人の患者において、3種の疾患原因変異を同定した。平成20年度に10人の患者において同定した14種の変異と合わせて解析を行った。17種の変異の中で、14種は新規であり、さらに1種(c.8559-2A>G)は4人の患者に共通して同定された。このことより、本邦では欧米人とは全く異なる変異によりUSHを生じている可能性が高いこと、c.8559-2A>Gは本邦のタイプ2患者における高頻度変異である可能性が高いことが示唆されたと思われる。欧米からの報告によると、USH2A遺伝子変異例では、難聴は進行しないことが多いとされている。しかし、疾患原因変異を同定することができた10人の中で1人の患者は、HLが急速に進行し、年齢に比較してRPによる視野狭窄も高度であり、非典型的臨床症状を示す遺伝子変異例と考えられた。本症例では、USH2A変異に加えて修飾遺伝子が臨床症状に影響していると考え、MYO7A、CDH23、USH3Aの遺伝子解析を行ったが、変異を同定することは出来なかった。しかし、USH2A遺伝子変異例の中にも非典型的症状を示す患者がいることは、遺伝子検査を臨床応用する上で留意する必要があると思われる。 | KAKENHI-PROJECT-20791189 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20791189 |
脳背景活動の変化に基づくコミュニケーション支援システムの研究 | 局所的な脳血液動態には脳背景活動の情報が含まれる.脳背景活動は脳の状態変化とともに変化する.脳血行動態と他の生体指標(心拍数,脳波振幅等)の関係を調べ,その関係を筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者のための意思伝達支援システムに利用した.脳血行動態,心拍数,脳波振幅の変動間の関係をグレンジャー因果性により検討した結果,それらの関係はALS患者と健常者とで変わらないことが分かった.タスクの実行により関係が変化する現象を利用してYes/No意思伝達を試みたところ,分離度90%を得た.この結果はこの方法が有望であることを示唆する.本研究では,背景活動が局所脳血行動態低周波成分に現れていることを基本的な仮定として,それに関わる重要な因子間の関係によって背景活動を記述しそれを完全閉じ込め状態にある患者のコミュニケーションに利用することを目的とした.平成27年度は1揺らぎ解析ツールの整備,2安静時およびタスク時の局所脳血行動態・脳波振幅・心拍数変動間相互関係の解明,3具体的なBCIシステムの構成を行った.1については,相互の因果関係を表現するGranger因果性と移動エントロピーの関係を確認し,非線形系に対しても適用可という観点から主として後者を用いた.2については,被験者12名に対して安静時および右手指タッピング時の同時計測実験を行った.脳波はC3,C4電極で計測し8-30Hz帯域を対象とした.安静時では,心拍数変動→局所脳血行動態(18%)脳波振幅変動→局所脳血行動態(C3:45%/C4:47%)であった.ここで括弧内数字は局所脳血行動態への寄与率を示す.局所脳血行動態の低周波揺らぎは心拍数と脳波で約60%を説明できた.これに対しタスク時では,心拍数変動→局所脳血行動態(12%)脳波振幅変動→局所脳血行動態(C3:21%/C4:46%)であった.このことから,運動皮質の賦活によって局所脳血行動態・脳波振幅・心拍数変動間相互の因果関係が変わり得ることが示された.3について,近赤外分光(NIRS)計測,脳波計測に基づくブレインーコンピュータ・インタフェース(BCI)システムを構成し,生体信号取得と制御信号送信の原理実験およびNIRS信号による意思判定の有効性確認を終えた.ブレインーコンピュータ・インタフェース(BCI)システムを構成する際,機器の不具合が生じ,それに対する対応が必要になったため,原理実験等を終えるにとどまった.平成28年度は昨年度構成したBCIシステムの有効性を確認し,Yes/No意思判定への応用を試みた.主たる課題は(1)タスクの選定,(2)脳波(EEG)および近赤外分光(NIRS)信号から抽出した局所脳血行動態・脳波振幅・心拍数変動を意思判定に反映するアルゴリズムの考案,(3)意思判定実験による有効性確認である.(1)については4種の想像タスク(無タスクを含む)を選定した.(2)についてはGranger因果性指標を特徴量として3種類の組み合わせをもとに,サポートベクタマシンによる分類を試みた.(3)については,まず, ALS患者,健常者の局所脳血行動態・脳波振幅・心拍数変動の相互関係が本質的に同じであることを確認した.共通の因果関係は,心拍数→脳血行動態,心拍数→脳波(矢印は影響を与える方向を表わす)というものだった.健常者について局所脳血行動態・心拍数変動を用いた場合(特徴量組み合わせ:心拍数→脳血行動態,脳血行動態→心拍数のGranger因果性)の意思伝達では,最適タスク組み合わせを選ぶことにより94%の分離度が得られた(被験者11名).一方,局所脳血行動態・心拍数変動に脳波振幅変動を加えた場合は,被験者によって最適特徴量組み合わせも最適タスク組み合わせも異なる.最適な条件では,91%の分離度が得られ(被験者6名),揺らぎ成分間の因果関係に基づきYes/Noを判定することが有効であることが分かった.以上の結果から,本研究課題の目的である「局所脳血行動態,脳波および心拍を同時計測し,それらに基づき患者の意思を効率的に伝える仕組みを提案し,その有効性を検証すること」は,実質的に達成されたと考えられる.局所的な脳血液動態には脳背景活動の情報が含まれる.脳背景活動は脳の状態変化とともに変化する.脳血行動態と他の生体指標(心拍数,脳波振幅等)の関係を調べ,その関係を筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者のための意思伝達支援システムに利用した.脳血行動態,心拍数,脳波振幅の変動間の関係をグレンジャー因果性により検討した結果,それらの関係はALS患者と健常者とで変わらないことが分かった.タスクの実行により関係が変化する現象を利用してYes/No意思伝達を試みたところ,分離度90%を得た.この結果はこの方法が有望であることを示唆する.昨年度構成したBCIシステムの有効性を確認し,YES/NO意思判定への応用を行う.入力には近赤外分光(NIRS)および脳波(EEG)信号を用い,局所脳血行動態・脳波振幅・心拍数変動を抽出し,想像タスク等の遂行によるそれらの関係の変化を意思判定に利用する. | KAKENHI-PROJECT-15K12605 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K12605 |
脳背景活動の変化に基づくコミュニケーション支援システムの研究 | 平成28年度の主たる課題は1タスクの選定,2EEG信号およびNIRS信号から抽出された局所脳血行動態・脳波振幅・心拍数変動の相互関係変化を意思判定に反映するアルゴリズムの考案,3意思判定実験による有効性確認である.1については想像タスクを中心に有効なタスクを検討する.2については昨年度の結果に基づき比較的簡単なアルゴリズムを考案する.3では,まず,健常者において局所脳血行動態・脳波振幅・心拍数変動の3変数から2変数への絞り込みを行い,その後,本格的な検討を行う.脳科学主たる理由は,10か月間(2015年5月21日2016年3月20日)使用した脳血流計測機器のレンタル料の支払いが2016年4月末になったためである.2016年4月中に脳血流計測機器のレンタル料金(108,000円)を支払い,残額13,543円は実験消耗品等に使用する予定である. | KAKENHI-PROJECT-15K12605 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K12605 |
光磁気二重共鳴を用いたPr^<3+>の状態選択NMRによるLaF_3の結晶場の研究 | Pr^<3+>の電子励起状態^3P_0は全角運動量J=0で真空中では核四重極子相互作用を持たない。しかし結晶中では結晶場の影響により核四重極子分裂をおこすため、結晶中での核四重極子分裂を調べることによりイオンの周囲の環境についての情報が得られる。LaF_3結晶中のPr^<3+>について、^3P_0からの発光を利用した光とラジオ波の二重共鳴分光を行った。単色のcwレーザー光をPr^<3+>の^3P_0への遷移に共鳴させてラジオ波を掃引する。励起状態内で磁気遷移を起こした原子からの発光は励起光と磁気遷移の分だけエネルギーがずれており、この発光を励起光と重ねると2つの光の周波数の差で強度に変調が生じる。この強度変調を検出することにより^3P_0状態の核四重極子遷移を測定した(ラマンヘテロダイン法)。核四重極子分裂はフォトンエコーの実験からは0.73MHzと1.12MHzと報告されているが、今回のcwの実験では全く異なった結果を得た。フォトンエコーの結果が示す1MHz近傍は、レーザー由来のノイズが大きいものの目だった遷移は見らず、2MHzより上の領域に多数の遷移が現れる。核スピンI=5/2のPr核の核四重極子遷移は2本なので、この2本の遷移が何らかの環境との相互作用でさらに分裂しているか、あるいは結晶中に複数の環境が存在することが考えられる。吸収スペクトルは結晶中の複数の環境の存在の可能性を示唆しているが、磁気遷移の励起波長依存性から少なくとも磁気的環境は単一であることが分かった。磁気的パラメータの情報を増やすために外部磁場中でのゼーマン分裂の測定を行ってその解析を進めており、この解析から相互作用についての手掛かりが得られると考えている。Pr^<3+>の電子励起状態^3P_0は全角運動量J=0で真空中では核四重極子相互作用を持たない。しかし結晶中では結晶場の影響により核四重極子分裂をおこすため、結晶中での核四重極子分裂を調べることによりイオンの周囲の環境についての情報が得られる。LaF_3結晶中のPr^<3+>について、^3P_0からの発光を利用した光とラジオ波の二重共鳴分光を行った。単色のcwレーザー光をPr^<3+>の^3P_0への遷移に共鳴させてラジオ波を掃引する。励起状態内で磁気遷移を起こした原子からの発光は励起光と磁気遷移の分だけエネルギーがずれており、この発光を励起光と重ねると2つの光の周波数の差で強度に変調が生じる。この強度変調を検出することにより^3P_0状態の核四重極子遷移を測定した(ラマンヘテロダイン法)。核四重極子分裂はフォトンエコーの実験からは0.73MHzと1.12MHzと報告されているが、今回のcwの実験では全く異なった結果を得た。フォトンエコーの結果が示す1MHz近傍は、レーザー由来のノイズが大きいものの目だった遷移は見らず、2MHzより上の領域に多数の遷移が現れる。核スピンI=5/2のPr核の核四重極子遷移は2本なので、この2本の遷移が何らかの環境との相互作用でさらに分裂しているか、あるいは結晶中に複数の環境が存在することが考えられる。吸収スペクトルは結晶中の複数の環境の存在の可能性を示唆しているが、磁気遷移の励起波長依存性から少なくとも磁気的環境は単一であることが分かった。磁気的パラメータの情報を増やすために外部磁場中でのゼーマン分裂の測定を行ってその解析を進めており、この解析から相互作用についての手掛かりが得られると考えている。 | KAKENHI-PROJECT-08740471 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08740471 |
気泡圧壊誘導による集中放電穿孔法による針なし気泡注射器の創成 | 本研究はこれまで確認されてきた高速発射気泡圧壊現象(キャビテーション)の先鋭形状ガスに放電現象を誘導かつ集中させて,物理的かつ電気的な穿孔を同時に達成し,これまでにない低侵襲かつ穿孔深度の深い穿孔能力を生み出す革新的技術を生み出すものである.これまでの研究において気泡圧壊現象と気液界面に付着する薬剤や遺伝子を用いて細胞レベルの遺伝子導入を達成してきたが,より大きいスケールにおける注射器としての機能を十分に発揮させるためには,より深い穿孔能力と試薬輸送能力が求められる.本研究ではプラズマキャビテーション現象を制御し,またMEMS技術を用いた高密度多筒式インジェクタを作成することによって皮内注射器等実用化レベルの新しい気泡注射器を生み出すことを目標として研究を行った.1年目の研究成果として,2次元多筒式気泡噴出チップのプロトタイプを完成し,それぞれの筒からの気泡発射を確認し,さらに薬液放出機構を追加し,オンデマンド薬液放出チップを達成した.2ー3年目の成果として,未解明であったプラズマ誘起気泡の発生メカニズムの解明に努め,気泡発生の制御性の向上を目指すため,気泡発生のメカニズムについて詳細に計測を行った.特に超高速度カメラを用いることによって,気泡とプラズマの発生する順番や,これまで熱分解か電気分解によって発生していたと考えられていた気泡発生メカニズムを解明することができ,結果としてより効率的に気泡を発生する安価な最適化設計について数多くの知見を得ることができた.気泡発生時におけるプラズマ放電による気液界面には数多くの機能性を有することもわかり,それを用いた新たなアプリケーション(めっきペン等)を生み出すことにも成功し,最終的には生体試料へのアプローチへと導くことに成功した.平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。本研究はこれまで確認されてきた高速発射気泡圧壊現象(キャビテーション)の先鋭形状ガスに放電現象を誘導かつ集中させて,物理的かつ電気的な穿孔を同時に達成し,これまでにない低侵襲かつ穿孔深度の深い穿孔能力を生み出す革新的技術を生み出すものである.これまでの研究において気泡圧壊現象と気液界面に付着する薬剤や遺伝子を用いて細胞レベルの遺伝子導入を達成してきたが,より大きいスケールにおける注射器としての機能を十分に発揮させるためには,より深い穿孔能力と試薬輸送能力が求められる.本研究ではプラズマキャビテーション現象を制御し,またMEMS技術を用いた高密度多筒式インジェクタを作成することによって皮内注射器等実用化レベルの新しい気泡注射器を生み出すことを目標として研究を行いました.1年目の研究成果として,まず多筒式気泡噴出部の設計値の最適化を達成し,3次元構造の気泡噴出と変わらない威力で基板上より気泡を高速で発射することに成功した点が挙げられる.気泡噴出部の内径・外径比や先端気泡リザーバのアスペクト比及び隣り合う筒の間隔により気泡噴出と回りの流体環境がどのように変化するかについての知見を得たことより最適設計に繋げることができた.またもう一つの成果として気泡噴出部を膜で覆われたユニット部にパッケージングすることにより,オンデマンドに薬剤を噴出することのできるインプラント注射としての構成を得ることにも成功した.本研究成果により埋込式もしくはパッチ式2次元注射器としての電界誘起気泡の応用展開の拡張性を広げることについても達成したと言える.これまでの研究において気泡圧壊現象と気液界面に付着する薬剤や遺伝子を用いて細胞レベルの遺伝子導入を達成してきたが,より大きいスケールにおける注射器としての機能を十分に発揮させるために,より深い穿孔能力と試薬輸送能力を達成すべく本研究を進めた結果,初年度の成果として,目標の一つである試薬輸送能力の向上について多筒式インジェクタの実現により達成したといえる.またインプラント注射器などの実用化への応用展開に発展しつつあることより,本研究プロジェクトは概ね順調に進展しているといえる.目標のもう一つである深い穿孔能力にしては,気泡の中に放電が走る特異な現象を制御する研究を進めており,再現性のある気泡の発射の完成まで間近である.この研究項目についても2年目以降もメカトロを専門とする研究者等と連携しながら鋭意研究を進めていきたい.本研究はこれまで確認されてきた高速発射気泡圧壊現象(キャビテーション)の先鋭形状ガスに放電現象を誘導かつ集中させて,物理的かつ電気的な穿孔を同時に達成し,これまでにない低侵襲かつ穿孔深度の深い穿孔能力を生み出す革新的技術を生み出すものである.これまでの研究において気泡圧壊現象と気液界面に付着する薬剤や遺伝子を用いて細胞レベルの遺伝子導入を達成してきたが,より大きいスケールにおける注射器としての機能を十分に発揮させるためには,より深い穿孔能力と試薬輸送能力が求められる.本研究ではプラズマキャビテーション現象を制御し,またMEMS技術を用いた高密度多筒式インジェクタを作成することによって皮内注射器等実用化レベルの新しい気泡注射器を生み出すことを目標として研究を行った.1年目の研究成果として,2次元多筒式気泡噴出チップのプロトタイプを完成し,それぞれの筒からの気泡発射を確認し,さらに薬液放出機構を追加し,オンデマンド薬液放出チップを達成した.一方で,プラズマ誘起気泡の発生メカニズムは未解明な点が多くあった.そこで2年目となる今年度の研究成果として,気泡発生の制御性の向上を目指すため,気泡発生のメカニズムについて詳細に計測を行った. | KAKENHI-PROJECT-16H04307 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H04307 |
気泡圧壊誘導による集中放電穿孔法による針なし気泡注射器の創成 | 特に超高速度カメラを用いることによって,気泡とプラズマの発生する順番や,これまで熱分解か電気分解によって発生していたと考えられていた気泡発生メカニズムを解明することができ,結果としてより効率的に気泡を発生する安価な最適化設計について数多くの知見を得ることができた.一方,気泡発生時におけるプラズマ放電による気液界面には数多くの機能性を有することもわかり,それを用いた新たなアプリケーションを生み出すことにも成功している.今後は生体試料へのアプローチを行いさらに実用化レベルへ展開していく.これまでの研究において気泡圧壊現象と気液界面に付着する薬剤や遺伝子を用いて細胞レベルの遺伝子導入を達成してきたが,より大きいスケールにおける注射器としての機能を十分に発揮させるために,より深い穿孔能力と試薬輸送能力を達成すべく本研究を進めた.初年度には試薬輸送能力の向上のための多筒式気泡発生チップのプロトタイプの完成,並びにオンデマンド薬液放出機構などの開発を行ったが,2年目である今年度は,再現性良くプラズマ誘起気泡を発生させるためのメカニズムの解明,並びにその制御性の向上を行い,その気泡発生メカニズムにおいて数多くの知見を得ることができ,結果として今後の気泡発生部の設計に大きな改善に繋がることとなった.このような状況より順調に進展しているとして判断している.今後もより実用化につながる研究を行っていく.本研究はこれまで確認されてきた高速発射気泡圧壊現象(キャビテーション)の先鋭形状ガスに放電現象を誘導かつ集中させて,物理的かつ電気的な穿孔を同時に達成し,これまでにない低侵襲かつ穿孔深度の深い穿孔能力を生み出す革新的技術を生み出すものである.これまでの研究において気泡圧壊現象と気液界面に付着する薬剤や遺伝子を用いて細胞レベルの遺伝子導入を達成してきたが,より大きいスケールにおける注射器としての機能を十分に発揮させるためには,より深い穿孔能力と試薬輸送能力が求められる.本研究ではプラズマキャビテーション現象を制御し,またMEMS技術を用いた高密度多筒式インジェクタを作成することによって皮内注射器等実用化レベルの新しい気泡注射器を生み出すことを目標として研究を行った.1年目の研究成果として,2次元多筒式気泡噴出チップのプロトタイプを完成し,それぞれの筒からの気泡発射を確認し,さらに薬液放出機構を追加し,オンデマンド薬液放出チップを達成した.2ー3年目の成果として,未解明であったプラズマ誘起気泡の発生メカニズムの解明に努め,気泡発生の制御性の向上を目指すため,気泡発生のメカニズムについて詳細に計測を行った.特に超高速度カメラを用いることによって,気泡とプラズマの発生する順番や,これまで熱分解か電気分解によって発生していたと考えられていた気泡発生メカニズムを解明することができ,結果としてより効率的に気泡を発生する安価な最適化設計について数多くの知見を得ることができた.気泡発生時におけるプラズマ放電による気液界面には数多くの機能性を有することもわかり,それを用いた新たなアプリケーション(めっきペン等)を生み出すことにも成功し,最終的には生体試料へのアプローチへと導くことに成功した.今後の予定としては,もう一つの目標であるより深い穿孔能力の達成にむけた研究を進めるものとする.構造設計の最適化を進めることのベクトルと印加パルスの最適化を進めるベクトルの2つの方向から目標を達成させるべく,研究を進める. | KAKENHI-PROJECT-16H04307 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H04307 |
教員・保育者養成のためのピアノ実技eラーニングコースの設計と開発 | 本研究の成果は、ピアノ弾き歌い演奏の技術習得のための映像コンテンツを作成し、eラーニングコースとして完成したこと、学習者が自ら撮影した演奏映像に対して、指導者が遠隔・非対面で助言をフィードバックする「レッスンシステム」を構築したことである。教員・保育者養成におけるピアノ実技指導の新しい形を提示し、技能伝承におけるe-ラーニングの活用に示唆を与える研究となった。具体的な研究経過は以下の通りである。(1)ピアノ弾き歌い演奏映像の提出縲恚椏s女子大学に録画装置を設置し、必修科目履修者300余名に自身のピアノ弾き歌いを録画させた(平成1820年)。提出回数と実技試験の点数には正の相関があった。(2)演奏に対するアドバイスシートの作成(1)の1年目の提出回数上位7曲の演奏を分析、評価し、遠隔指導者が習熟度別にアドバイスシートを作成した。(3)ピアノ弾き歌い模範演奏コンテンツの制作(2)の7曲(各3アングル)のピアノ弾き歌い模範演奏を撮影し、編集・加工・整形作業を行った。(4)補習学生に対する非対面レッスンの実施非対面・非同期指導の効を分析した。(5)ピアノ弾き歌い模範演奏視聴及び非対面指導の実施選択科目履修者20余名の指導前後のピアノ弾き歌い演奏を比較し、模範演奏視聴及び非対面指導の効果を分析した。(6)声楽模範演奏コンテンツの制作(2)の7曲の声楽模範演奏、歌唱に関するワンポイントアドバイス映像、良い歌唱のためのFAQ映像を撮影し、編集・加工・整形作業を行った。(7)注釈付楽譜の制作(2)に検討を加え、指つかい、履修者が陥りやすい問題点などの説を加えた注釈付楽譜を作成し、データ化した。(8)「教員・保育者養成のためのピアノ実技eラーニングコース」配信(3)(6)(7)をまとめ、解説を付記し、インターネット配信した(配信元:長岡技術科学大学)。本研究の成果は、ピアノ弾き歌い演奏の技術習得のための映像コンテンツを作成し、eラーニングコースとして完成したこと、学習者が自ら撮影した演奏映像に対して、指導者が遠隔・非対面で助言をフィードバックする「レッスンシステム」を構築したことである。教員・保育者養成におけるピアノ実技指導の新しい形を提示し、技能伝承におけるe-ラーニングの活用に示唆を与える研究となった。具体的な研究経過は以下の通りである。(1)ピアノ弾き歌い演奏映像の提出縲恚椏s女子大学に録画装置を設置し、必修科目履修者300余名に自身のピアノ弾き歌いを録画させた(平成1820年)。提出回数と実技試験の点数には正の相関があった。(2)演奏に対するアドバイスシートの作成(1)の1年目の提出回数上位7曲の演奏を分析、評価し、遠隔指導者が習熟度別にアドバイスシートを作成した。(3)ピアノ弾き歌い模範演奏コンテンツの制作(2)の7曲(各3アングル)のピアノ弾き歌い模範演奏を撮影し、編集・加工・整形作業を行った。(4)補習学生に対する非対面レッスンの実施非対面・非同期指導の効を分析した。(5)ピアノ弾き歌い模範演奏視聴及び非対面指導の実施選択科目履修者20余名の指導前後のピアノ弾き歌い演奏を比較し、模範演奏視聴及び非対面指導の効果を分析した。(6)声楽模範演奏コンテンツの制作(2)の7曲の声楽模範演奏、歌唱に関するワンポイントアドバイス映像、良い歌唱のためのFAQ映像を撮影し、編集・加工・整形作業を行った。(7)注釈付楽譜の制作(2)に検討を加え、指つかい、履修者が陥りやすい問題点などの説を加えた注釈付楽譜を作成し、データ化した。(8)「教員・保育者養成のためのピアノ実技eラーニングコース」配信(3)(6)(7)をまとめ、解説を付記し、インターネット配信した(配信元:長岡技術科学大学)。本研究は、ピアノ演奏、弾き歌いの技術習得のための映像コンテンツを作成・加工し、教員養成・保育者養成のための音楽e-ラーニングコースの設計と開発を目的とする2ヵ年にわたる研究である。初年度にあたる今年度に行ったことは以下の通りである。1.京都女子大学のピアノ練習室に映像録画機器「オンデマンドプロジェクター;バーチャル掲示板『研修君』」を設置。児童音楽I履修学生105名によって録画保存されたピアノ弾き歌い演奏画像を分析、評価。2.1の実践において、レベル別に何名かを抽出して学生へのフィードバックの方法の模索。双方向性レッスン・システムの実用段階に備える。3.履修学生が実施したピアノ演奏録画に関するアンケート調査の結果分析。4.ピアノ弾き歌いモデル映像(7曲、各3アングル)の録画と、編集・加工・整形作業。「ピアノ実技e-ラーニングコースのコンテンツ」として完成させる。5.3のコンテンツのエンコード作業と京都女子大サーバーからの配信実験。6.映像録画機器を使用した、補習学生に対する長期間にわたる非対面型授業(レッスン)の実施。7.4で使用した全楽曲について、1での分析・評価に基づいて、運指(指つかい)、履修者が陥りやすい問題点などの解説を加えた楽譜画像を制作(現在作業中)。8.発声に関するアドバイス映像「声楽e-ラーニングコースのコンテンツ」制作のためのシナリオを作成。7と8は3のアンケートにおいて要望の多かったコンテンツである。9.研究代表者が教員養成・保育者養成機関で行なってきたピアノ演奏、弾き歌いの指導方法を「この一冊でわかるピアノ実技と楽典」としてまとめた。 | KAKENHI-PROJECT-18500742 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18500742 |
教員・保育者養成のためのピアノ実技eラーニングコースの設計と開発 | 123については、日本教育工学会と京都女子大発達教育学部紀要で、7の一部については、「この一冊でわかるピアノ実技と楽典」(音楽之友社)で成果発表した。4568に関しては平成19年度に成果発表予定。本研究は、ピアノ演奏、弾き歌いの技術習得のための映像コンテンツを作成・加工し、教員養成・保育者養成向けの音楽e・ラーニングコースの設計と開発を目的とする2カ年にわたる研究である。最終年度にあたる今年度に行ったことは以下の通りである。1.代表的な子どものうた7曲のピアノ弾き歌い模範演奏コンテンツを大学サーバから配信開始。(2007年4月)2.初年度に引き続き、京都女子大学のピアノ練習室に映像録画機器『研修君』((株)フジノン)を設置。学生に自身のピアノ弾き歌いを録画・提出させた結果、提出回数とピアノ弾き歌い実技力向上の間には正の相関が見出された。(2007年67月)3.補習学生に対する非対面レッスンを実施し、非対面(非同期)指導の効果、対面レッスンとの差異などを考察した。4.1.の模範演奏を視聴する前後の演奏を比較し、模範演奏視聴の効果を分析するとともに、映像によるアドバイス(教師が『研修君』で録画)を非対面で行う。(2007年6月7月)5.声楽模範演奏(7曲)、歌唱に関するワンポイントアドバイス映像、良い歌唱のためのFAQ映像制作のためのシナリオ作成(2007年10月12月)6.5.の録画と編集・加工・整形作業。(2007年12月2008月3月)7.運指(指づかい)、履修者が陥りやすい問題点などの解説を加えた注釈付き楽譜画像を制作。(2008月3月)8.「ピアノ実技e-ラーニングコースのコンテンツ」を完成させ、大学サーバからの配信を開始。(2008月4月)研究代表者は、ピアノ演奏、弾き歌いの指導方法を「この一冊でわかるピアノ実技と楽典」としてまとめた。1.2.の研究成果は、日本教育工学会、日本音楽教育学会、International Conference on Computers in Education、などで発表済みである。3.4.5.に関する研究は分析・検証中。研究成果は更なる実践と分析・検証を継続し、平成20年度中に実施する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18500742 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18500742 |
低酸素応答の活性化を介した新たな敗血症性心筋症治療戦略の検討 | 我々はPHD阻害剤が敗血症性心筋症に及ぼす影響について検討した。すべての実験において、812週齢の野生型雄マウスを用い、LPS 35 mg/kgを腹腔内注射しエンドトキシンショックモデルを作製した。前年度までの研究で、PHD阻害剤による敗血症性心筋障害に対する心筋保護作用のメカニズムが以前の報告とは別にあると考え、近年Olenchock1)らが発表したPHD阻害剤の虚血再灌流障害に対する心筋保護作用のメカニズムに注目した。キヌレン酸は血流に放出され、心臓に到達し、心筋保護作用を示すということである。そこで、LPS投与2時間後の血漿中キヌレン酸濃度をELISAで測定した。すると、PHD阻害剤を投与した群で有意にキヌレン酸が増加していることが確認された。つぎに、LPS35mg/kgを腹腔内投与24時間後に総頸動脈から左心室にコンダクタンスカテーテルを挿入して、キヌレン酸2 mgまたは生理食塩水を左外頸静脈から投与し、左室機能の変化を連続的に測定した。キヌレン酸またはVehicle投与後、HR, dp/dtmax, dp/dtmin, Tauそれぞれの5分毎の測定値をbaselineと比較し、その変化率を測定した。キヌレン酸は陽性変時作用、陽性変力作用を示し、左室機能を劇的に改善した。最後に、LPS35mg/kgを投与した直後にKYNA 20mgを項部皮下投与し生存率を観察した。すると、LPS投与7日後の生存率はvehicle群(n=15)で33%であったのに対し、PHD阻害剤群(n=15)では67%と著しく改善した。本研究ではキヌレン酸がエンドトキシンショックによる心機能障害を改善し、生存率を改善することを明らかにした。敗血症性心筋症(SIC: Sepsis-induced cardiomyopathy)は敗血症性ショックにおける心筋障害で、左室の収縮・拡張機能障害を呈し、生命予後に影響を及ぼす。我々の研究室は低酸素応答を司る転写因子HIF( hypoxia-inducible factor)を負に制御しているプロリン水酸化酵素PHDの阻害剤が、LPS誘発性敗血症マウスモデルの生存率を改善することを報告したが、SICとの関連はこれまでに検討していない。今回、我々はPHD阻害剤を用いたHIFの活性化がSICに及ぼす影響について検討した。812週齢の雄C57BL/6JにLPS 35 mg/kgを腹腔内投与後、直ちにPHD阻害剤であるFG-4592 (2 mg/kg)またはVehicleを経口投与(gavage)し、生存率を観察した。LPS投与から24時間後にマウス用コンダクタンスカテーテルを用いて左室機能を測定した。LPS投与48時間後の生存率はvehicle群(n=12)で33%であったのに対し、FG-4592群(n=12)では75%と著明に改善した(P=0.027)。LPS投与24時間後、Vehicle群で認めた左室収縮・拡張機能障害はFG-4592群では有意に軽減していた。昨年度計画していたコンダクタンスカテーテルによる心機能測定は終了しており、前述のように予後改善効果を証明できた。我々は昨年度までに、低酸素応答を司る転写因子HIF(hypoxia-inducible factor)を負に制御しているプロリン水酸化酵素PHDの阻害剤が、マウスのLPS誘発性敗血症性心筋症(SIC: Sepsis-induced cardiomyopathy)を軽減し予後を改善することを報告した。今年度はそのメカニズムにトリプトファン代謝におけるキヌレニン経路の最終代謝産物で、遠隔虚血プレコンディショニングの液性因子の一つであるキヌレン酸(KYNA)が関与しているのではないか、と考え検討した。野生型雄マウスを用い、LPS 35 mg/kg ipにてエンドトキシンショックモデルを作製し、以下の実験を行った。1PHD阻害剤であるFG4592を投与したFG群(LPS投与4時間前と投与直後に各25 mg/kg po)とVehicle群を比較した。LPS投与7日後の生存率はvehicle群(n=15)で27%であったのに対し、FG群(n=18)では72%と著明に改善し(P=0.009)、LPS投与2時間後の血漿中KYNA濃度がFG群で有意に高かった(KYNA 154±62 , Vehicle 59±35 ,ng/ml, P=0.012 n=5)。2LPS投与24時間後にKYNA 2mgまたはVehicleをivし、投与前後の左心室機能の変化率を比較すると、KYNAはLPSによって惹起された左心室機能不全を劇的に軽減した。3LPS投与直後にKYNA 20mg scしたKYNA群とVehicle群を比較した。LPS投与7日後の生存率はvehicle群(n=15)で33%であったのに対し、FG群(n=15)では67%と著しく改善した(P=0.049)。PHD阻害剤によるエンドトキシンショックの予後改善のメカニズムの一部に、KYNAが関与していることが示唆された。昨年度計画していたように敗血症性心筋症の軽減のメカニズムの一つとしてキヌレン酸の関与を解明できた我々はPHD阻害剤が敗血症性心筋症に及ぼす影響について検討した。 | KAKENHI-PROJECT-16K20400 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K20400 |
低酸素応答の活性化を介した新たな敗血症性心筋症治療戦略の検討 | すべての実験において、812週齢の野生型雄マウスを用い、LPS 35 mg/kgを腹腔内注射しエンドトキシンショックモデルを作製した。前年度までの研究で、PHD阻害剤による敗血症性心筋障害に対する心筋保護作用のメカニズムが以前の報告とは別にあると考え、近年Olenchock1)らが発表したPHD阻害剤の虚血再灌流障害に対する心筋保護作用のメカニズムに注目した。キヌレン酸は血流に放出され、心臓に到達し、心筋保護作用を示すということである。そこで、LPS投与2時間後の血漿中キヌレン酸濃度をELISAで測定した。すると、PHD阻害剤を投与した群で有意にキヌレン酸が増加していることが確認された。つぎに、LPS35mg/kgを腹腔内投与24時間後に総頸動脈から左心室にコンダクタンスカテーテルを挿入して、キヌレン酸2 mgまたは生理食塩水を左外頸静脈から投与し、左室機能の変化を連続的に測定した。キヌレン酸またはVehicle投与後、HR, dp/dtmax, dp/dtmin, Tauそれぞれの5分毎の測定値をbaselineと比較し、その変化率を測定した。キヌレン酸は陽性変時作用、陽性変力作用を示し、左室機能を劇的に改善した。最後に、LPS35mg/kgを投与した直後にKYNA 20mgを項部皮下投与し生存率を観察した。すると、LPS投与7日後の生存率はvehicle群(n=15)で33%であったのに対し、PHD阻害剤群(n=15)では67%と著しく改善した。本研究ではキヌレン酸がエンドトキシンショックによる心機能障害を改善し、生存率を改善することを明らかにした。計画に沿って低酸素応答の活性化による敗血症性心筋症の軽減の証明をするべく研究を進める。今後はPHD阻害剤によるエンドトキシンショックの予後改善のメカニズムの一部としてのキヌレン酸の関与についてより詳しく解明を進めていく。予定していた消耗品購入が予想よりも安く購入することができたから。予定していた消耗品購入を予想よりも安く購入することができたたため。今年度の物品購入費に充当する予定今年度の物品購入費に充当する予定。 | KAKENHI-PROJECT-16K20400 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K20400 |
ラット破骨細胞におけるプロテアーゼの活性化と分泌の制御機構 | 骨基質分解に重要な役割を担っているリソゾームシステインプロテアーゼであるカテプシンB、H、LおよびカテプシンDの局在をラット破骨細胞で免疫組織化学法を用いて共焦点レーザー顕微鏡で観察し、また凍結超薄切を作成し金コロイド法を行なった。その結果、これら酵素は破骨細胞内の空胞および細胞外の吸収窩に局在し、またこれら酵素の前駆体蛋白は細胞にのみ局在した。またシステインプロテアーゼの特異的阻害剤であるCA030、CA074をラットに100mg/kg、5日間投与し同酵素の発現様式を検索した結果、細胞内に粗大顆粒状の局在を示し、吸収窩での免疫反応性が減弱した。また、ラット脛骨から得られた初代破骨細胞を象牙片上で培養し、さらに同阻害剤を添加した培地で24時間培養すると象牙片上の吸収窩の形成が抑制された。これらの結果から考察すると、骨基質の分解は前駆体から活性を有する成熟型の酵素に変換されたシステインプロテアーゼにより行なわれると考えられ、また阻害剤を用いた実験から骨基質の分解には特にカテプシンLが重要な役割を有することがわかった。さらに骨粗鬆症のモデルとして低Ca食を与えたラットを作製し、同様の検索を行なったところ、単位面積当たりの破骨細胞の数の増加が見られたと共に各酵素の免疫反応性が増加しており、同酵素が関与する骨基質分解が亢進していることが示唆された。現在、分離した初代破骨細胞を^<35>Sメチオニンでパルスラベルを行ない各酵素の細胞外分泌機構について解析中である。骨基質分解に重要な役割を担っているリソゾームシステインプロテアーゼであるカテプシンB、H、LおよびカテプシンDの局在をラット破骨細胞で免疫組織化学法を用いて共焦点レーザー顕微鏡で観察し、また凍結超薄切を作成し金コロイド法を行なった。その結果、これら酵素は破骨細胞内の空胞および細胞外の吸収窩に局在し、またこれら酵素の前駆体蛋白は細胞にのみ局在した。またシステインプロテアーゼの特異的阻害剤であるCA030、CA074をラットに100mg/kg、5日間投与し同酵素の発現様式を検索した結果、細胞内に粗大顆粒状の局在を示し、吸収窩での免疫反応性が減弱した。また、ラット脛骨から得られた初代破骨細胞を象牙片上で培養し、さらに同阻害剤を添加した培地で24時間培養すると象牙片上の吸収窩の形成が抑制された。これらの結果から考察すると、骨基質の分解は前駆体から活性を有する成熟型の酵素に変換されたシステインプロテアーゼにより行なわれると考えられ、また阻害剤を用いた実験から骨基質の分解には特にカテプシンLが重要な役割を有することがわかった。さらに骨粗鬆症のモデルとして低Ca食を与えたラットを作製し、同様の検索を行なったところ、単位面積当たりの破骨細胞の数の増加が見られたと共に各酵素の免疫反応性が増加しており、同酵素が関与する骨基質分解が亢進していることが示唆された。現在、分離した初代破骨細胞を^<35>Sメチオニンでパルスラベルを行ない各酵素の細胞外分泌機構について解析中である。 | KAKENHI-PROJECT-08770012 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08770012 |
ニコチン代謝能の低下は喫煙関連歯周炎を増悪するか?:CYP2A6遺伝子多型の解析 | 喫煙は歯周病の最も影響の強いリスク因子であり、タバコに含まれるニコチンは歯周病に悪影響を与える。生体におけるニコチン代謝はCytochrome P450(CYP)2A6により制御されている。CYP2A6遺伝子多型は、ニコチン代謝能の低下を引き起こし、喫煙後、ニコチンを生体内に長く残留させることが明らかとなっている。しかし、喫煙者の歯周炎とCYP2A6遺伝子多型との関係は明らかでない。本研究課題では、CYP2A6遺伝子の多型の中から、低ニコチン代謝型を示す遺伝子多型について、各被験者の遺伝子型を同定し、患者-対照者群間で遺伝子型頻度解析を行った結果、両群間でその頻度に有意差は認められなかった。喫煙は歯周病の最も影響の強いリスク因子であり、タバコに含まれるニコチンは歯周病に悪影響を与える。生体におけるニコチン代謝はCytochrome P450(CYP)2A6により制御されている。CYP2A6遺伝子多型は、ニコチン代謝能の低下を引き起こし、喫煙後、ニコチンを生体内に長く残留させることが明らかとなっている。しかし、喫煙者の歯周炎とCYP2A6遺伝子多型との関係は明らかでない。本研究課題では、CYP2A6遺伝子の多型の中から、低ニコチン代謝型を示す遺伝子多型について、各被験者の遺伝子型を同定し、患者-対照者群間で遺伝子型頻度解析を行った結果、両群間でその頻度に有意差は認められなかった。本研究課題の目的は、2年以上の喫煙歴を有する者のうち、中等度以上の歯周炎患者と歯周組織健常者を対象に、日本人の低ニコチン代謝に関連のあるCYP2A6遺伝子多型の解析を行うことで、喫煙者の歯周炎とニコチン代謝能との関連性を検討することである。喫煙は歯周病の最も影響の強いリスク因子であり、タバコに含まれる有害物質の中でも、とりわけニコチンは免疫、微小循環系を介し、歯周病態に悪影響を与える。生体におけるニコチン代謝はCytochrome P450(CYP)2A6により制御されている。CYP2A6遺伝子多型は、ニコチン代謝能の低下を引き起こし、喫煙後、ニコチンを生体内に長く残留させることが明らかとなっている。しかし、喫煙者の歯周炎とCYP2A6遺伝子多型との関係は明らかでないことから、それらの関連性を調査することは、喫煙関連歯周炎の発症や進行メカニズムを検討する上で大変重要で、本研究課題は非常に意義深い。平成25年度は、2年以上の喫煙歴を有する中等度以上の慢性歯周炎患者(53人)と、そのコントロールとして2年以上の喫煙歴を有する歯周組織健常者・歯肉炎患者・軽度慢性歯周炎患者(40人)より頬粘膜スワブを行い、その後、ゲノムDNAの抽出を行った。また、被験者らの臨床データ解析をおこない、歯周組織検査結果における部位率(4mm以上の歯周ポケット、7mm以上の歯周ポケット、プロービング時出血)や、平均(歯数、プロービングデプス、ブリンクマン指数、body mass index)を算出した。平成26年度は、CYP2A6遺伝子の多型の中から、低ニコチン代謝型を示す遺伝子多型について、各被験者の遺伝子型を同定し、患者-対照者群間で遺伝子型頻度解析を行い、喫煙者における歯周炎とニコチン代謝能との関連性について検討する。歯周病は生活習慣病で、平成23年歯科疾患実態調査によると、国民の8割以上に歯周病所見が認められると報告されている。一方、2011年国民健康栄養調査では、成人喫煙率は男性32.4%、女性9.7%、全体20.1%で、2003年以降、男女とも減少傾向にあるが、諸外国と比べると高い状況にある。喫煙者の歯周病罹患率は、非喫煙者に比べ約29倍高いことや、禁煙することにより歯周病に対するリスクが軽減することが報告されている。しかし、喫煙者の中に著しい歯周組織の破壊を伴う患者がいる一方で、喫煙者であっても歯周炎が軽度、もしくは発症しない者もいる。タバコの主な有害成分であるニコチンの代謝物にはニコチンのような薬理作用がないため、個人のニコチン代謝能の優劣が、喫煙者における歯周炎の発症や進行のしやすさに関連があるのではないかと考えた。そこで、喫煙歴を有する歯周炎患者群と歯周組織健常者群において、ニコチン代謝能との関連性が示唆されているCYP2A6遺伝子多型解析を行い、両群間の遺伝的なニコチン代謝能の差異を検討することで、歯周炎の宿主因子としてのニコチン代謝能の優劣の関与を明らかにすることを目的とした。最終年度は、研究実施計画にある通り、同意を得た研究被験者からのゲノムDNAのサンプリングを継続実施した。その結果、喫煙歯周炎群93名(現在歯数24.8本、PD 3.63mm、AL 4.38mm、プロービング時の歯肉出血38.7%、ブリンクマン指数655.1)、喫煙対照群39名(PD 2.05mm、AL 2.27mm)となった。 | KAKENHI-PROJECT-25870860 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25870860 |
ニコチン代謝能の低下は喫煙関連歯周炎を増悪するか?:CYP2A6遺伝子多型の解析 | またこれまでに解析を行っていた歯周炎患者とインターロイキン1受容体遺伝子との関連性について、ロジスティック回帰分析を用い、喫煙歴を調整したアリル頻度解析を実施したところ、特定のアリルに関し、統計学的に有意な結果が得られた。歯周病学サンプリング済みの被験者の選定基準やマッチングについて、再検討をおこなった結果、追加サンプリングを行うこととなり、それに時間を要したことが、主な遅延理由として挙げられる。平成26年度もサンプリングを続けるとともに、一部の被験者については、遺伝子型の同定を開始していく。その他、計画通りに、研究を遂行したいと考えている。研究の進捗が遅延しているため、平成25年度に使用する予定であった遺伝子型同定に用いる使用額を、そのまま平成26年度に持ち越したため。平成25年度に使用する予定であった、遺伝子型同定に使用する費用を、そのまま平成26年度に使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-25870860 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25870860 |
移住・労働者送金が母国家計の資本投資支出に与える影響:バングラデシュの例 | 28年度は、博士課程在籍最終年と位置づけ、二本の投稿論文執筆と、博士論文のまとめに取り組んだ。一本目の投稿論文“The Changing Landscape of International Migration: Evidence from Rural Households in Bangladesh, 2000-2014"は、海外出稼ぎ及び海外送金受給家計の属性を時系列的に分析し、その変容について背景を説明しようとするものである。分析の結果、当初は資産家が多く参加していた海外出稼ぎであったが、近年では資産や収入の低い農村家計も出稼ぎを行っていることがわかった。その背景として受け入れ国の非熟練労働者の需要が堅調であること、出稼ぎ資金の調達が容易になったこと、バングラデシュにおける熟練労働者の需要が高まっていることなどがあると分析した。投稿論文は、現在国際学術ジャーナルに投稿中である。博士論文内容・結果について、在東京バングラデシュ大使館にて大使へ直接ブリーフィングを行った。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。4月:昨年度作成した家計調査データベースを使い、初期の準備的データ分析(国内外への出稼ぎ状況、送金受給状況、総家計に占める受給家計の割合、受給家計の時系列な属性の推計)を行い、主指導、副指導教授に報告・発表した。また、関連文献のレビューを継続して行った。5ー8月:出産、育児のため研究中断9ー10月(研究再開準備期間):2014年の家計調査のデータが入手可能となり、データベースの更新作業を行うとともに、上記の準備的データ分析を更新する。日本経済学会の秋学会に参加し、関連セッションを傍聴する。10ー12月:週1回のチュートリアルセッション(指導教授と博士課程学生のセッション)を履修。隔週で研究進捗状況を報告、および関連文献レビューの発表を行う。また、更新したデータベースを使い、送金のインパクトに関する分析を行う。定量、操作変数を使ったモデルを組み、推計を行った。学内博士課程研究プログラムセミナーで研究を進捗発表(11月6日)。しかしながら、送金のインパクト分析について、受給家計の属性の変化が時系列的に大きくみられること、調査年次に送金を受給していなくても、調査年以外で受給していることが多くあり、モデルの再構築が必要であることが判明。よって、送金のインパクトを正確に推計するための初期ステップとして、受給家計の属性を詳しく分析することから始めることにした。2014年の追加サーベイの情報を使い、受給家計の属性の変化を見る分析を行う。1ー3月:受給家計の属性について時系列的に分析を行う。学内博士課程研究プログラムセミナーで研究を進捗発表。月2回のチュートリアルでの研究進捗発表や指導教授との個別指導受給家計の属性の時系列的分析に加え、属性を説明すると思われる労働者の職業選択や賃金の決定、送金額などに関する時系列的分析を行う。3月末で分析が一段落し、結果に基づいた論文執筆を開始した。今年度における研究の実施状況は、15ヶ月の中断(出産・育児のため)をはさんだこと、2当初予定していた送金インパクトの推計方法が、使用するデータでは難しいことが、トライアルの後判明した、などの理由から、計画通り順調に進んだとはいえない。また9月にはバングラデシュへでの追加現地調査に参加予定であったが、育児との両立が当初の予想より難しく、断念することとなり、追加の情報収集ができなかった。一方で、準備的段階の分析として予定していた送金受給家計の属性の分析については、2014年の最新情報を加えたデータセットを作成し、指導教授の下で様々なカテゴリー分析を多様なモデルで繰り返し粘り強く行うことで、その属性が時系列的にどのように変化してきたか、詳細に理解、実証することができてきていると考える。よって、研究計画通り、実質的な研究開始から7ヶ月(中断期間を除く)経った現時点(年度末)で、投稿論文(1本目)の核となるデータ分析ができつつあり、年度初めには投稿論文の執筆を開始する予定である。この準備的分析を綿密に行ったことで、本分析(投稿論文2本目に予定)につながる新たなアイディアも浮かび、今後の研究にも有益であった。28年度は、博士課程在籍最終年と位置づけ、二本の投稿論文執筆と、博士論文のまとめに取り組んだ。一本目の投稿論文“The Changing Landscape of International Migration: Evidence from Rural Households in Bangladesh, 2000-2014"は、海外出稼ぎ及び海外送金受給家計の属性を時系列的に分析し、その変容について背景を説明しようとするものである。分析の結果、当初は資産家が多く参加していた海外出稼ぎであったが、近年では資産や収入の低い農村家計も出稼ぎを行っていることがわかった。その背景として受け入れ国の非熟練労働者の需要が堅調であること、出稼ぎ資金の調達が容易になったこと、バングラデシュにおける熟練労働者の需要が高まっていることなどがあると分析した。投稿論文は、現在国際学術ジャーナルに投稿中である。博士論文内容・結果について、在東京バングラデシュ大使館にて大使へ直接ブリーフィングを行った。研究計画の通り、本年度は昨年度行った計量分析の結果を投稿論文にまとめ、セミナーや学会で発表するとともに、国際学術雑誌へ投稿する。また計画2.本分析を進め、2本目の投稿論文を執筆しセミナーや学会での発表を目指す。また、2本の投稿論文を博士論文としてまとめ、12月をめどに提出をめざす。博士課程研究で得られた結果を現地(バングラデシュ)で発表する機会を設ける。結果は、実務者向けのポリシーブリーフにまとめ、内外の開発援助実施機関(バングラデシュ政府、援助機関)などにも配布する。 | KAKENHI-PROJECT-15J11506 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J11506 |
移住・労働者送金が母国家計の資本投資支出に与える影響:バングラデシュの例 | 昨年度に引き続き、国内外の学会に参加、関連文献、書籍の購読を通じて、最新の研究に触れるとともに、内外の研究者とのネットワーキングに努める。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-15J11506 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J11506 |
可能世界モデルに基づく知識の表現とメタ推論機構に関する研究 | 本研究では、論理を基にした有用な知識表現言語を設計し、高度な知的処理のためのメタ推論といった機構実現のための基礎理論を構築することが目的である。本年度は次の具体的課題について研究を行なった。1.知識表現言語の設計論:論理に様相や高階性の概念を導入し、多様な知識構造を表現可能な知識表現言語を設計する問題について考察し、論理の持つ理論的明快さを保ったまま知識のモジュ-ル構造や階層構造が表現可能なフレ-ム適論理型知識表現言語を具体的に構成した。2.ユニフィケ-ションアルゴリズムの研究:論理型知識表現言語による構文や証明機構と意味構造を結びつけるのがユニフィケ-ション操作であるとの観点から、高階論理におけるユニフィケ-ションアルゴリズムについて考察した。一般に2階以上の論理項間のユニフィケ-ションは非可解であるが、幾つかの可解なクラスや効率的アルゴリズム設計のための理論的性質を明らかにした。3.メタ推論機構の研究:論理の高階性や様相を基にして、知識のモジュ-ル構造、階層性を定義し、これをオブジェクトレベルとメタレベルの知識とみなす新しい観点からのメタ推論や類推といった処理機構を定式化した。このモデルを基に、意味構造に忠実で健全かつ完全な推論機構について幾つかの性質を明らかにした。4.知識処理システムの構成:新しく提案したメタ推論方式を回路の自動合成問題に応用し、具体的に類推による回路設計システムとして実現した。構成システムは、Prologで構成されているが、提案した方式が原理的に可能であることを検証した。本研究では、論理を基にした有用な知識表現言語を設計し、高度な知的処理のためのメタ推論といった機構実現のための基礎理論を構築することが目的である。本年度は次の具体的課題について研究を行なった。1.知識表現言語の設計論:論理に様相や高階性の概念を導入し、多様な知識構造を表現可能な知識表現言語を設計する問題について考察し、論理の持つ理論的明快さを保ったまま知識のモジュ-ル構造や階層構造が表現可能なフレ-ム適論理型知識表現言語を具体的に構成した。2.ユニフィケ-ションアルゴリズムの研究:論理型知識表現言語による構文や証明機構と意味構造を結びつけるのがユニフィケ-ション操作であるとの観点から、高階論理におけるユニフィケ-ションアルゴリズムについて考察した。一般に2階以上の論理項間のユニフィケ-ションは非可解であるが、幾つかの可解なクラスや効率的アルゴリズム設計のための理論的性質を明らかにした。3.メタ推論機構の研究:論理の高階性や様相を基にして、知識のモジュ-ル構造、階層性を定義し、これをオブジェクトレベルとメタレベルの知識とみなす新しい観点からのメタ推論や類推といった処理機構を定式化した。このモデルを基に、意味構造に忠実で健全かつ完全な推論機構について幾つかの性質を明らかにした。4.知識処理システムの構成:新しく提案したメタ推論方式を回路の自動合成問題に応用し、具体的に類推による回路設計システムとして実現した。構成システムは、Prologで構成されているが、提案した方式が原理的に可能であることを検証した。 | KAKENHI-PROJECT-01633503 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01633503 |
アルツハイマー病の病態発生機序における脳特異的アポE受容体の関与 | アポリポ蛋白E (ApoE)には遺伝子多型としてε2,ε3,ε4の3種類が知られている。近年の研究により、ApoEε4はアルツハイマー病発症にあたっての遺伝的な危険因子であることが確認された。分子レベルではApoEがアルツハイマー病の病態形成にどのように関与しているかは明らかになっていないが、VLDL受容体などのApoE受容体の関与を示唆する所見が報告されている。まず、最近相次いで発見された脳に比較的特異的に発現するApoE受容体のうち、ApoE受容体2,LR11,LR5と呼ばれる受容体について特異抗体を用いて脳組織における分布・局在、老人斑や神経原線維変化との関連について免疫組織学的検討を行った。あわせて、脂肪酸の代謝に深く関与している脂肪酸結合蛋白に対する抗体を用いて同様の検討を行った。その結果、抗ApoE受容体2抗体を用いた検討では神経細胞、老人斑変性突起が、抗LR11,抗LR5抗体を用いた検討では神経細胞が陽性に染色された。また、抗脂肪酸結合蛋白抗体を用いた検討では、皮膚型脂肪酸結合蛋白に対する抗体を用いた検討で神経細胞の他に神経原線維変化が陽性に染色された。これらのことから、ApoE受容体の多くは神経細胞に局在することが、また一部の抗ApoE受容体抗体ではアルツハイマー病の異常構造物が陽性に染色されることが明らかとなった。ApoE受容体は神経細胞の脂質代謝で重要な役割をはたしているのみならず。何らかの形で老人斑形成に関与している可能性が考えられた。また、抗皮膚型脂肪酸結合蛋白抗体により神経原線維変化が陽性に染色されたことから、複数の脂質代謝の経路がアルツハイマー病の脳病態形成に関与している可能性も考えられた。アポリポ蛋白E (ApoE)には遺伝子多型としてε2,ε3,ε4の3種類が知られている。近年の研究により、ApoEε4はアルツハイマー病発症にあたっての遺伝的な危険因子であることが確認された。分子レベルではApoEがアルツハイマー病の病態形成にどのように関与しているかは明らかになっていないが、VLDL受容体などのApoE受容体の関与を示唆する所見が報告されている。まず、最近相次いで発見された脳に比較的特異的に発現するApoE受容体のうち、ApoE受容体2,LR11,LR5と呼ばれる受容体について特異抗体を用いて脳組織における分布・局在、老人斑や神経原線維変化との関連について免疫組織学的検討を行った。あわせて、脂肪酸の代謝に深く関与している脂肪酸結合蛋白に対する抗体を用いて同様の検討を行った。その結果、抗ApoE受容体2抗体を用いた検討では神経細胞、老人斑変性突起が、抗LR11,抗LR5抗体を用いた検討では神経細胞が陽性に染色された。また、抗脂肪酸結合蛋白抗体を用いた検討では、皮膚型脂肪酸結合蛋白に対する抗体を用いた検討で神経細胞の他に神経原線維変化が陽性に染色された。これらのことから、ApoE受容体の多くは神経細胞に局在することが、また一部の抗ApoE受容体抗体ではアルツハイマー病の異常構造物が陽性に染色されることが明らかとなった。ApoE受容体は神経細胞の脂質代謝で重要な役割をはたしているのみならず。何らかの形で老人斑形成に関与している可能性が考えられた。また、抗皮膚型脂肪酸結合蛋白抗体により神経原線維変化が陽性に染色されたことから、複数の脂質代謝の経路がアルツハイマー病の脳病態形成に関与している可能性も考えられた。アポリポタンパクE(ApoE)には遺伝子多型としてε2、ε3、ε4の3種類が知られている。近年の研究により、ApoEε4はアルツハイマー病発症にあたっての遺伝的な危険因子であることが確認された。分子レベルでApoEがアルツハイマー病の病態形成にどのように関与しているかは明らかとなっていないが、VLDL受容体などのApoE受容体の関与を示唆する所見が報告されている。そこで、最近相次いで発見された脳に特異的に発現するApoE受容体のうち、ApoE受容体2およびLR11と呼ばれる受容体について特異抗体を作製し、脳組織における分布と局在、老人斑やアルツハイマー神経原線維変化との関連について免疫組織学的検索を行った。その結果、抗ApoE受容体2抗体を用いた検索では、神経細胞および老人斑変性突起が陽性に染色された。抗LR11抗体を用いた検索においても神経細胞が陽性に染色された。これらのことより両受容体とも神経細胞に局在することから、神経細胞の脂質代謝に重要な役割を担っている可能性が、またApoE受容体2は老人斑変性突起に局在することからApoE受容体群を介して何らかの形で老人斑形成に関与している可能性が示唆された。アポリポ蛋白E(ApoE)には遺伝子多型としてε2,ε3、ε4の3種類が知られている。近年の研究により、ApoEε4はアルツハイマー病発症の遺伝的な危険因子であることが確認された。分子レベルでApoEがアルツハイマー病の病態形成にどのように関与しているかは明らかとなっていないが、VLDL受容体などのApoE受容体の関与を示唆する所見が相次いで報告されている。 | KAKENHI-PROJECT-11670610 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11670610 |
アルツハイマー病の病態発生機序における脳特異的アポE受容体の関与 | これまで、本研究により脳に特異的に発現するApoE受容体のうち、ApoE受容体のうち、ApoE受容体2およびLR11と呼ばれる受容体について免疫組織学的検討を行ったところ、アルツハイマー病脳で神経病理学的特徴の1つである老人斑においてその変性突起が陽性に染色されることを報告した。さらに新しいApoE受容体であるLR5について脳内での発現を検討したところ、アルツハイマー病脳においてLR5蛋白が発現していることが明らかとなった。脳内特異的ApoE受容体は多数存在していることから、これらの発現や異常構造物との関連について検討することにより、アルツハイマー病脳病態形成機序におけるApoE及びその受容体の関連を明らかとすることができると思われる。アポリポ蛋白E(ApoE)には遺伝子多型としてε2, ε3, ε4の3種類が知られている。ApoE ε4がアルツハイマー病の危険因子として認識されて久しいが、未だに分子レベルでこのApoEがアルツハイマー病の病態形成にどのように関与しているかは不明である。これまでの研究により、最近相次いで発見されたApoE受容体のうち、VLDL受容体、さらに脳に特異的に発現しているApoE受容体であるApoE受容体2, LR11などについて特異抗体を作製、アルツハイマー病脳の免疫組織学的検索により、異常構造物である老人斑や神経原線維変化、また神経細胞にこれらの免疫原存在することを見いだし、その関与の可能性を指摘してきた。さらにApoE受容体の1つであるLR5についても免疫組織学的検討を行った。その結果神経細胞が陽性に染色されることが明らかとなった。また近年脂質代謝においてApoEと密接な関連を有している脂肪酸結合蛋白についても同様な検討を行った。その結果、皮膚型脂肪酸結合蛋白抗体(新潟大、藤井博士供与)を用いた検討により、神経原線維変化に皮膚型脂肪酸結合蛋白の免疫原性が見いだされた。脂質は大きくわけてコレステロールと中性脂肪が存在することが知られている。これらのことからアルツハイマー病の病態発生機序には、コレステロールのみならず、ApoE・ApoE受容体や脂肪酸など脂質代謝関連物質あるいはその代謝経路に関わる物質が多数が関与している可能性が考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-11670610 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11670610 |
第四紀堆積物の精密年代決定を目的とした超高精度Sr同位体層序の確立 | 本課題は、Sr同位体層序の精密化によって地層の連続性に依存しないシームレスな年代決定を第四紀の海成堆積層・海洋底堆積物に対して実現することを目的として、放射起源Sr同位体比超高精度分析法の技術開発ならびに第四紀の超高精度Sr同位体層序の確立を目指すものである。本年度は、1)従来のSr同位体層序の分析に利用されてきた手法よりも精度の高い放射起源Sr同位体分析を可能とする質量分析技術の開発、ならびに、2)第四紀海水のSr同位体復元に用いる試料の準備をそれぞれ行う計画であった。質量分析技術の開発については、表面電離型質量分析計を用いて放射起源Sr同位体比(87Sr/86Sr)の超高精度分析手法の開発に取り組んだ。ダイナミックマルチコレクション法の採用および分析条件の先鋭化を行い、その結果研究開始の時点では+/- 0.010‰(2SD)程度であった87Sr/86Sr比の長期繰り返し分析精度を、+/- 0.005‰(2SD)程度と2倍向上させることに成功した。また、分析誤差要因の特定および分析法の改良を継続した結果、+/- 0.003‰(2SD)程度の長期繰り返し分析精度を達成しうる見込みを得た。また、第四紀海水のSr同位体復元に用いる試料として、国際深海科学掘削計画(IODP)等で、東太平洋低緯度域(コスタリカ西方沖:IODP Exp. 344)、東インド洋(オーストラリア西岸:IODP Exp. 356)、西赤道太平洋(RVみらいMR14-02航海)より採取された連続性のある海洋底掘削コア試料より、有孔虫の分離および解析を行った。本年度の主たる研究目標は、表面電離型質量分析計を利用した超高精度放射起源Sr同位体分析手法の開発であった。計画当初は、質量分析計における先端的ハードウェアとして高抵抗シグナル増幅器の導入を計画していたが、予算上の問題からこれは実現しなかった。そこで、既存の質量分析計を利用して目標を達成するために、当初の計画には含まれていなかった質量分析計メーカーの工場における訪問実験などを行い、Sr同位体分析における分析誤差要因の洗い出し特定を徹底的に行い、特定したそれぞれの誤差要因に対する対応策の検討を行った。その結果、研究開始の時点と比較して2倍程度の分析精度向上を達成し、またさらなる精度向上の見込みを得た。また、第四紀海水のSr同位体復元を行うための試料の準備状況としては、海洋底掘削コア試料からの有孔虫分離および解析を進めた結果、西赤道太平洋(RVみらいMR14-02航海)の試料については、有孔虫試料の準備が順調に完了し、次年度の超高精度Sr同位体分析が実施可能な状態になった。これらの進捗状況から、本研究は計画の通りおおむね順調に進展していると判断できる。次年度の前半には、表面電離型質量分析計を利用した超高精度放射起源Sr同位体分析手法の開発を継続して行い、これまでに開発した手法の検証として、試薬および現世海水の分析を繰り返し行うことで、(長期)分析精度の確認を行う。また、分析手法の開発が順調に進展した場合には、年度後半より、西赤道太平洋の有孔虫試料の超高精度放射起源Sr同位体分析を開始し、第四紀海水のSr同位体復元に取り掛かる予定である。また、第四紀海水のSr同位体復元を行うための試料の準備として、東太平洋低緯度域(コスタリカ西方沖:IODP Exp. 344)、東インド洋(オーストラリア西岸:IODP Exp. 356)の掘削コア試料からの有孔虫分離および解析を継続的に行う予定である。本課題は、Sr同位体層序の精密化によって地層の連続性に依存しないシームレスな年代決定を第四紀の海成堆積層・海洋底堆積物に対して実現することを目的として、放射起源Sr同位体比超高精度分析法の技術開発ならびに第四紀の超高精度Sr同位体層序の確立を目指すものである。本年度は、1)従来のSr同位体層序の分析に利用されてきた手法よりも精度の高い放射起源Sr同位体分析を可能とする質量分析技術の開発、ならびに、2)第四紀海水のSr同位体復元に用いる試料の準備をそれぞれ行う計画であった。質量分析技術の開発については、表面電離型質量分析計を用いて放射起源Sr同位体比(87Sr/86Sr)の超高精度分析手法の開発に取り組んだ。ダイナミックマルチコレクション法の採用および分析条件の先鋭化を行い、その結果研究開始の時点では+/- 0.010‰(2SD)程度であった87Sr/86Sr比の長期繰り返し分析精度を、+/- 0.005‰(2SD)程度と2倍向上させることに成功した。また、分析誤差要因の特定および分析法の改良を継続した結果、+/- 0.003‰(2SD)程度の長期繰り返し分析精度を達成しうる見込みを得た。また、第四紀海水のSr同位体復元に用いる試料として、国際深海科学掘削計画(IODP)等で、東太平洋低緯度域(コスタリカ西方沖:IODP Exp. 344)、東インド洋(オーストラリア西岸:IODP Exp. 356)、西赤道太平洋(RVみらいMR14-02航海)より採取された連続性のある海洋底掘削コア試料より、有孔虫の分離および解析を行った。 | KAKENHI-PROJECT-18K03814 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K03814 |
第四紀堆積物の精密年代決定を目的とした超高精度Sr同位体層序の確立 | 本年度の主たる研究目標は、表面電離型質量分析計を利用した超高精度放射起源Sr同位体分析手法の開発であった。計画当初は、質量分析計における先端的ハードウェアとして高抵抗シグナル増幅器の導入を計画していたが、予算上の問題からこれは実現しなかった。そこで、既存の質量分析計を利用して目標を達成するために、当初の計画には含まれていなかった質量分析計メーカーの工場における訪問実験などを行い、Sr同位体分析における分析誤差要因の洗い出し特定を徹底的に行い、特定したそれぞれの誤差要因に対する対応策の検討を行った。その結果、研究開始の時点と比較して2倍程度の分析精度向上を達成し、またさらなる精度向上の見込みを得た。また、第四紀海水のSr同位体復元を行うための試料の準備状況としては、海洋底掘削コア試料からの有孔虫分離および解析を進めた結果、西赤道太平洋(RVみらいMR14-02航海)の試料については、有孔虫試料の準備が順調に完了し、次年度の超高精度Sr同位体分析が実施可能な状態になった。これらの進捗状況から、本研究は計画の通りおおむね順調に進展していると判断できる。次年度の前半には、表面電離型質量分析計を利用した超高精度放射起源Sr同位体分析手法の開発を継続して行い、これまでに開発した手法の検証として、試薬および現世海水の分析を繰り返し行うことで、(長期)分析精度の確認を行う。また、分析手法の開発が順調に進展した場合には、年度後半より、西赤道太平洋の有孔虫試料の超高精度放射起源Sr同位体分析を開始し、第四紀海水のSr同位体復元に取り掛かる予定である。また、第四紀海水のSr同位体復元を行うための試料の準備として、東太平洋低緯度域(コスタリカ西方沖:IODP Exp. 344)、東インド洋(オーストラリア西岸:IODP Exp. 356)の掘削コア試料からの有孔虫分離および解析を継続的に行う予定である。本年度は、予算額の問題から計画段階では購入予定であったフラクションコレクターの購入ができず予算執行計画にも変更の必要があり、次年度使用額が生じた。次年度に試薬等の消耗品購入などで使用する計画である。 | KAKENHI-PROJECT-18K03814 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K03814 |
プロトン性イオンを用いた化学振動反応の開拓 | Belousov-Zhabotinsky(BZ)反応はマロン酸等の有機還元剤が臭素酸ナトリウムのような酸化剤でブロモマロン酸に酸化される反応の中でRu(bpy)3のような金属触媒の酸化還元状態が周期的に変化する化学振動反応である。硝酸や硫酸等の強酸存在下で進行することが知られていた反応だが、最近我々はある種の水和プロトン性イオン液体(PILs)を用いると、従来系より温和な条件にも係わらず、安定で長寿命、短周期な振動反応を与えることを見いだした。本研究ではPILsの化学構造を系統的に変化させ、その振動反応に及ぼすカチオン構造の影響を明らかにした。化学振動反応(BZ反応)の寿命、周期、活性化エネルギーに及ぼす水和プロトン性イオン液体(PILs)のカチオン構造の効果を系統的に検討した。PILsのアニオン構造は硫酸水素に固定し、汎用脂肪族アミンおよびアンモニアをカチオンの前駆構造に選択した。結論としてカチオン構造中に含まれる炭素数が4以下の飽和アンモニウムを選択したときに振動反応の顕著な長寿命化効果が発現した。親水的なカチオン構造ではBZ反応の中心金属触媒であるRu(bpy)3と疎水性相互作用に基づく、電子授受反応の阻害効果が生まれないためと結論づけられた。さらに水和PILs中のBZ反応周期は従来の無機強酸(過塩素酸、硫酸、硝酸)水溶液中におけるそれと比べて弱い温度依存性を持つことが明らかになった。アーレニウス解析により、水和PILs中における振動反応の活性化エネルギーは従来系よりも2030 kJmol^-1程度低かった。水和PILs中のBZ反応素過程においては、アンモニウムカチオン由来のフリーアミンが介在する触媒過程の存在を強く示唆する結果であった。既報においてBZ反応の波形解析から水和PILs中ではプロトン生成を伴う中心金属触媒の再還元過程が迅速化している可能性を指摘したが、今回の解析結果はこの考察と矛盾しないと考えられる。以上の結果は高分子討論会、イオン液体討論会など国内の複数の学会で発表され、反響を呼んだ。学術論文の形にも既にまとめてあり、現在査読中である。次年度以降は本年度手つかずであったPILsのアニオン構造の調査等を通してBZ反応機構に及ぼすPILs構造効果の根源的理解を図る。前年度までに、プロトン性イオン液体(PILs)がBZ反応機構に及ぼす影響に関して以下の二点が明らかになっている。1.アルキル鎖長が4以下の親水的アンモニウムカチオンのPILsに限り長寿命化効果が認められる2.振動周期の温度依存性から求まる見かけの活性化エネルギーは従来の無機強酸添加系に比べて20kJ/mol程度低い。特に2に関してはBZ反応の再還元プロセスにおいてPILs由来のフリーアミンが触媒的に作用して迅速化するという実験仮説を矛盾なく説明しており興味深い。本年度はこれら結果をより強固にサポートする実験結果を収集しながら論文投稿準備中である。一方、当初の研究計画に加え、PILsを無機強酸に変わるプロトンソースとして、振動反応の化学エネルギーが直接高分子の力学振動に変換されるようなシステムの構築を試みた。期待通り、PILsを利用することで無機強酸と同様かつ穏和な条件で、BZ反応の金属触媒を側鎖に有する線形高分子をリズム的にコイルーグロビュール転移が起こさせる事がわかった。一方、PILs自身の高い粘性率から、バルクの自励振動高分子ゲルが直接振動することはなかった。そこでゲル自身を微粒子化した後に、バルクサイズに再構築した。この操作によりPILs並びに各種BZ基質のゲル内部への透過性が著しく改善し、PILs由来のプロトンを駆動力とし、かつ大幅な振幅を有する明確な体積振動が実現した。本年度4月に研究代表者の所属研究機関が変更になり、研究環境の整備に専念した。このため年度初期においては研究計画の一部を変更した。一方、前所属研究機関の研究協力者と連携をとりながら実験を進めることはできたことから高分子の振動系にPILs系を展開する事が出来た。総じて進捗状況はおおむね順調であると判断した。プロトン性イオン液体の特にカチオン構造が振動反応に及ぼす影響を調査した。アニオン構造を硫酸水素に固定して各種飽和アルキルアンモニウム系プロトン性イオン液体を合成した。結論として、1.炭素数が4以下のアルキルアンモニウムにおいて振動反応の顕著な安定化効果が生まれる。2.周期の温度依存性からArrheniusプロットを作成し、振動反応の活性化エネルギーを求めたところ従来の無機強酸をプロトンソースとした場合よりおよそ2030 kJ/mol程度低くなることがわかった。1.に関しては中心金属触媒とアンモニウムカチオンとの間に働く疎水性相互作用によって円滑な電子移動反応が阻害されていると結論付けられた。2.に関しては水溶液中のプロトン性イオン液体の平衡反応の結果、発生するフリーアミンが金属触媒の再還元プロセスでプロトンアクセプターとして触媒的に作用するため、反応の活性化エネルギーが低下すると予想された。さらに本年度は振動反応の詳細な波形分離解析により、長年にわたり謎であった3.プロトン性イオン液体系において、なぜ強酸系より強い反応基質依存性が現れるかという問題を分子論的に説明した。以上の内容はアメリカ化学会・物理化学系専門誌Journal of Physical Chemistry B誌に投稿、採録が決定した。 | KAKENHI-PROJECT-26620164 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26620164 |
プロトン性イオンを用いた化学振動反応の開拓 | 本系の応用展開である、化学エネルギーを機械エネルギーに直接変換する系は昨年度までに実現されており、現在投稿準備中である。Belousov-Zhabotinsky(BZ)反応はマロン酸等の有機還元剤が臭素酸ナトリウムのような酸化剤でブロモマロン酸に酸化される反応の中でRu(bpy)3のような金属触媒の酸化還元状態が周期的に変化する化学振動反応である。硝酸や硫酸等の強酸存在下で進行することが知られていた反応だが、最近我々はある種の水和プロトン性イオン液体(PILs)を用いると、従来系より温和な条件にも係わらず、安定で長寿命、短周期な振動反応を与えることを見いだした。本研究ではPILsの化学構造を系統的に変化させ、その振動反応に及ぼすカチオン構造の影響を明らかにした。プロトン性イオン液体(PILs)のカチオン構造がBZ反応機構に及ぼす影響の詳細を明らかにできたことは大きな進捗である。当初は最終年度にPILs系の振動高分子系への適用を考えていたが、予定を繰り上げ来年度から着手する予定である。PILsをはじめとする化学エネルギーを高分子の機械的振動に変換する試みは引き続き行う。一方でPILs型高分子を用いた自励振動高分子の創製はまだ成功していない。具体的にはプロトン供給部位であるPILs構造を自励振動ユニットとランダムに共重合させようとすると重合度が上がらないという問題がある。そこで今後はPILs構造と自励振動高分子成分をセグメント化して組み込む事でプロトン供給部位の濃度を上げつつ、分子量を制御する手段に挑戦する。高分子科学当初の予定にあったように二年度目はプロトン性イオン液体(PILs)のアニオン構造効果の詳細を検討する。さらに線形高分子のコイルーグロビュール振動や高分子ネットワーク(ゲル)の体積振動を本系の特徴を利用して実現する。最終的にはPILs構造を一成分として有するブロック共重合体を精密合成し、還元剤(有機酸)の添加のみで自律的な機械的振動を生起する新しいソフト材料の形を提案する。 | KAKENHI-PROJECT-26620164 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26620164 |
書き言葉コーパスの自動アノテーションの研究 | 日本語コーパスに対する様々な言語情報のアノテーションを自動的に行う言語解析ツールの開発,および,アノテーションの誤り修正やアノテーションを施されたコーパスの柔軟な利用や管理を行うためのコーパスツールの開発を行った.具体的には,形態素解析,係り受け解析,並列構造解析,固有表現認識,述語項構造解析,照応・共参照解析,事象間時間関係解析などの自動解析,および,これらのアノテーションを施したコーパスを構築した.言語学から言語処理研究にいたる様々な基礎・応用分野に役立つコーパスへのタグ付けを行うための支援環境を構築する.形態素,構文,意味,文脈情報等の様々なレベルのタグ付けを対象とし,(1)タグ付けの自動化と,(2)コーパスへタグ付けを行う際の効率や精度を管理・維持するための支援環境の構築という2つの次元から問題を整理する.前者については,単語分かち書き,品詞付与,文節や固有表現の解析,係り受け解析等の構文解析,用言および体言に対する項構造解析,照応解析等の指示対象の解析,文書構造や談話構造解析など,さまざまな言語情報についてのタグ設計およびタグ付け基準の設定を行う.異なるレベルの整合性を保ちつつ記述するための統合的なタグ付け方式の設計を行う.後者については,設計されたタグ方式に従ってコーパスを作成しつつ,タグ付きコーパスからの機械学習に基づいてタグ付けの自動化を行う言語解析システムの構築と、タグ付きコーパスを管理し,利用するための支援ツールの設計と開発を行う.日本語コーパスに対する様々な言語情報のアノテーションを自動的に行う言語解析ツールの開発,および,アノテーションの誤り修正やアノテーションを施されたコーパスの柔軟な利用や管理を行うためのコーパスツールの開発を行った.具体的には,形態素解析,係り受け解析,並列構造解析,固有表現認識,述語項構造解析,照応・共参照解析,事象間時間関係解析などの自動解析,および,これらのアノテーションを施したコーパスを構築した.本年度の主な活動と成果は,「次の通り「である.これまで開発してきたコーパス検索ツール茶器を拡張し,複合語の取り扱いと複合語の構成要素を表示する機能の追加を行なった.また,今後他のシステムとのデータ共有の利便性を考え,形態素解析・係り受け解析済みコーパスのためのデータベーススキーマの整理を行った.さらに,新しい分野の文書の解析精度を高めるために未知語処理を考慮した頑健な形態素解析法の設計を行なった.様々な分かち書き基準に対応するため,確率的単語分割ツールの設計と実装を行なった.機械学習に基づぐ照応解析システムの洗練,および,述語項構造解析システムの設計と実装を行なった.また.これらのシステムの学習・評価データとして,NAISTテキストコーパスを構築し,一般公開した.さらに,セグメントとリンクに基づく汎用タグ付けツールaTagrinの設計を行い,プロトタイブシステムを作成した.コーパスには様々な種類のアノテーションが行なわれる可能性があるが,そのほとんどは文書の特定のセグメントに対するラベル付け,あるいは,セグメント間の関係を表すリンクのいずれかに分類するととができる.aTagrinでは,セグメントとリンクのデータフォーマットを定義し,特に,リンクについてはソースセグメント,ターゲットセグメント,リンクの名称以外にリンクに方向性があるか,また,関係が遷移的かどうかを記述することができるようにし,リンクの意味が明確になるようにした.Webベースのコーパス検索ツールの構築と.コーパス内の単語の共起分析のためのグラフ表示モジュールの作成を行なった.これまで構築してきたセマンティクエディタを,拡張RDFによる言語的構造の一般的表現と可視化が行なえるように拡張し,照応や共参照を含む談話構造の表示・編集ツールを構築した.コーパスに対する自動アノテーションツールの開発:係り受け解析において最適の係り先を比較によって決定する手法の提案,述語項構造解析のための手法の事態名詞への拡張を行い,システムの開発の過程で作成した共参照および項構造情報が付与されたコーパスを公開した。コーパス管理ツールの開発:形態素・係り受け解析コーパス管理ツールに対していくつかの機能拡張を行った。特に、係り受け構造の表示機能の充実、および、高頻度の連続・非連続のパターンのマイニング機能などを開発した。汎用アノテーションツールについてデータ構造の設計の詳細化といくつかの機能拡張を行った。さらに、Webベースのコーパス検索ツールの開発を行った。大規模な固有表現辞書の構築:Wikipediaの構造情報を利用し、自動的に固有表現を抽出する手法を提案し、実際に大規模な固有表現抽出を行った。抽出した大規模固有表現辞書とコーパスからの統計的手法を組み合わせることにより、精度向上を図った。白書コアデータ対する固有表現タグ付け作業を行った。談話構造アノテーションツールの開発:文関数、共参照、項構造を記述するためセマンティックエディタの拡張を行った.一般化された木構造表示ユーザインタフェスの実装を行い、談話構造や述語に対する統語的構成素の記述や文章の埋め込み構造、意味構造を編集する機能をこのユーザインタフェースにプラグインする形で実装した。コーパスに対する自動アノテーションツールの開発:日本語係り受け解析をタグ付け作業に利用する際に,再現率と適合率の関係について調査し,効率的な利用法の検討を行った.文節情報のタグ付けについて検討し,文節まとめ上げのための自動ツールの設計を行った.述語項構造解析のための手法の事態名詞への拡張を行った.事象間の時間関係解析のため,局所的情報と大域的情報の効果的な融合法を提案した.コーパス管理ツールの開発:形態素・係り受け解析済みコーパス管理ツールの再設計を行い,ネットワーク経由での利用が可能になるように拡張した. | KAKENHI-PLANNED-18061005 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-18061005 |
書き言葉コーパスの自動アノテーションの研究 | これまでの機能の再検討を行い,基本機能をドットネットフレームワーク上で再実装した.検索履歴を表示する機能の実装を行つた.さらに,検索結果表示の高速化を達成した.汎用アノテーションツールについては,処理の高速化,および,データ構造の設計の詳細化や多重に埋め込まれたタグの記述にも対応可能になるよう格調した.大規模な固有表現辞書の構築とタグ付きコーパスの開発:大規模な固有表現抽出を行ない,また,コアデータの一部に対して,固有表現タグ付け作業をつた.談話構造アノテーションツールの開発:文関係,共参照,項構造を記述するためセマンティックエディタの拡張を行つた.一般化された木構造表示ユーザインタフェースの実装を継続し,談話構造や意味構造を編集する機能をこのユーザインタフェースに実装した.コーパス管理ツール「茶器」のデータベース仕様を見直し,NETフレームワーク上での再構築を行った.統語解析における並列構造のアノテーション仕様について検討し,並列構造の範囲に関するアノテーションと係り受け構造を表示し,修正を行うことができるTreeEditインタフェースを完成させた.述語項構造解析と事象間の時間関係解析に全域的な情報を利用することで精度向上を実現した.また,照応解析について,先行詞候補に制限を与えることで精度を犠牲にせずに効率改善が可能であることを示した.汎用アノテーションツールSLATの機能を拡張し,Ver.2.0の基本設計と一部の実装を完了した.旧版に比べ,アノテーション工程の管理まで視野に入れてデータベース・スキーマを再設計し,また,クライアントの処理の大幅な高速化をはかった.さまざまな書式のコーパスデータに対して統合的なアクセスを可能にするためのアーキテクチャを設計し,これを単一の種類のコーパスデータに関して実装することにより一般に多様なデータを統合するための準備を行なった.20年度作成した拡張固有表現コーパス(白書,書籍,Yahoo!知恵袋)に対して,タグ付けの見直しを行い,さらに新聞(380文書),雑誌(79文書)に対してタグ付けを行った.また,20年度に作成したコーパスを用いて,機械学習アルゴリズムの一つであるCRFをベースに固有表現認識ツールを開発した.評価実験を行ったところ,精度は約80%,再現率約46%,F値約60%という結果を得た.本特定領域研究で構築されるコーパスに対して,様々なアノテーションを施すための自動言語解析ツールとアノテーション支援およびコーパス利用ツールの構築を研究目的とした.日本語コーパスへの形態素情報の付与については,電子化辞書班とデータ班が担当することになっており,我々の研究グループ(ツール班)では,形態素情報より上のアノテーションを担当し,そのための様々な言語解析ツール,アノテーション支援ツールの構築,および,コーパスへの具体的なアノテーション作業を実施した.構築したツールの主なものは,自動言語解析ツールとしては,日本語係り受け解析,固有表現解析,述語項構造解析,照応・共参照解析,モダリティ解析ツールがあり,これらの解析ツールを機械学習を用いて構築するため,および,性能評価のため,それぞれに対応するタグ(アノテーション)付きコーパスを構築するとともに,自然言語解析ツールとして実装した. | KAKENHI-PLANNED-18061005 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-18061005 |
ヒト及びラットに於ける移植臓器生着機序の解析 | 臓器移植患者に生じるclonalanergyの機序についてヒト腎移植患者および腎提供者の末梢血液を用いて検討した。in vitroのリンパ球混合培養、細胞障害性試験およびダブルチャンバー抑制試験においてドナー特異的抑制細胞が存在するレシピエントではドナー特異的抑制細胞がドナー抗原刺激によってのみ非特異的な抑制性液性因子を産生放出し、IL-2産生を抑制するがIL-3,IL-10産生の抑制は認められなかった。一方、ドナー特異的抑制細胞の認められないレシピエントにおいても、ドナー抗原刺激によるIL-2の産生が低下していた。これもリンパ球内のIL-2mRNA発現が低下していることが認められた。ドナー抗原刺激によるリンパ球内のIL-3,IL-10産生の低下は認められず、ドナー抗原刺激に対するIL-2の産生がmRNAレベルでIL-2特異的に低下していることを認めた。以上の結果は移植臓器長期生着移植患者においては抑制細胞の有無にかかわらずドナー抗原刺激に対してmRNAレベルでIL-2の産生が特異的におこらないことによって生じることを明らかにした。ラットにおける生着機序の免疫学的解析のために、PVGラットにLEWラットの肝臓をFK504投与下に移植したトレラントラットを作製した。このラットにヒトIL-2、2500JRUを皮下投与したが拒絶は生じなかった。今後、肝に選択的にIL-2発現が生じる実験系で更に検討する予定である。臓器移植患者に生じるclonalanergyの機序についてヒト腎移植患者および腎提供者の末梢血液を用いて検討した。in vitroのリンパ球混合培養、細胞障害性試験およびダブルチャンバー抑制試験においてドナー特異的抑制細胞が存在するレシピエントではドナー特異的抑制細胞がドナー抗原刺激によってのみ非特異的な抑制性液性因子を産生放出し、IL-2産生を抑制するがIL-3,IL-10産生の抑制は認められなかった。一方、ドナー特異的抑制細胞の認められないレシピエントにおいても、ドナー抗原刺激によるIL-2の産生が低下していた。これもリンパ球内のIL-2mRNA発現が低下していることが認められた。ドナー抗原刺激によるリンパ球内のIL-3,IL-10産生の低下は認められず、ドナー抗原刺激に対するIL-2の産生がmRNAレベルでIL-2特異的に低下していることを認めた。以上の結果は移植臓器長期生着移植患者においては抑制細胞の有無にかかわらずドナー抗原刺激に対してmRNAレベルでIL-2の産生が特異的におこらないことによって生じることを明らかにした。ラットにおける生着機序の免疫学的解析のために、PVGラットにLEWラットの肝臓をFK504投与下に移植したトレラントラットを作製した。このラットにヒトIL-2、2500JRUを皮下投与したが拒絶は生じなかった。今後、肝に選択的にIL-2発現が生じる実験系で更に検討する予定である。臓器移植患者に生じるclonalanergyの機序についてヒト腎移植患者および腎提供者の末梢血液を用いて検討した。ドナー特異的抑制細胞が存在するレシピエントでは抑制細胞がドナー抗原刺激によって液性因子を産生放出し、IL-2産生を抑制するがIL-3,IL-10産生の抑制は認められなかった。これはIL-2mRNAの発現を特異的に抑制することによって生じると考えられた。抑制細胞の認められないレシピエントにおいても、ドナー抗原刺激によるIL-2の産生が低下していた。これもIL-2mRNA発現が低下していることが認められた。以上の結果は臓器移植患者に生じるているclonal anergyはドナー抗原刺激によっては十分なIL-2の産生がおこらないことによって生じること。IL-2の産生低下はIL-2のmRNA発現レベルで生じていることが明らかとなった。臓器移植患者に生じるclonalanergyの機序についてヒト腎移植患者および腎提供者の末梢血液を用いて検討した。ドナー特異的抑制細胞が存在するレシピエントでは抑制細胞がドナー抗原刺激によって液性因子を産生放出し、IL-2産生を抑制するがIL-3,IL-10産生の抑制は認められなかった。これはIL-2-mRNAの発現を特異的に抑制することによって生じると考えられた。ドナー特異的抑制細胞が存在しないレシピエントにおいても、リンパ球内のIL-3,IL-10産生の低下は認められず、ドナー抗原刺激に対するIL-2の産生がmRNAレベルでIL-2特異的に低下していることを認めた。以上の結果は臓器移植患者においては抑制細胞の有無にかかわらずドナー抗原刺激に対してmRNAレベルでIL-2の産生がおこらないことによって生じることが明らかになった。ラットにおける生着機序の免疫学的解析のために末梢血リンパ球を用いるMLR,CMLのassay法を確立した。また、PVGラットにLEWラットの肝臓をFK506投与下に移植しトレラントラットを作製した。臓器移植患者に生じるclonalanergyの機序についてヒト腎移植患者および腎提供者の末梢血液を用いて検討した。in vitroのリンパ球混合培養、および細胞障害性試験においてドナー特異的抑制細胞が存在するレシピエントではドナー特異的抑制細胞がドナー抗原刺激のよってのみ非特異的な抑制性液性因子を産生放出し、IL-2産生を抑制するがIL-3,IL-10産生の抑制は認められなかった。 | KAKENHI-PROJECT-07671307 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07671307 |
ヒト及びラットに於ける移植臓器生着機序の解析 | したがって、ドナー特異的抑制細胞はドナーのアロ抗原刺激によってIL-2-mRNAの発現を抑制する液性因子を産生することによってclonal anergyを生じると考えられた。一方、ドナー特異的抑制細胞の認められないレシピエントにおいても、ドナー抗原刺激によるIL-2の産生が低下していた。これもリンパ球内のIL-2mRAN発現が低下していることが認められた。ドナー抗原刺激によるリンパ球内のIL-3,IL-10産生の低下は認められず、ドナー抗原刺激に対するIL-2の産生がmRNAレベルでIL-2特異的に低下していることを認めた。以上の結果は移植臓器長期生着移植患者においては抑制細胞の有無にかかわらずドナー抗原刺激に対してmRNAレベルでIL-2の産生が特異的におこらないことによって生じることを明らかにした。ラットにおける生着機序の免疫学的解析のために末梢血リンパ球を用いるMLR,CMLのassay法を確立した。また、PVGラットにLEWラットの肝臓を0.2mg/kg3日間連日のFK506投与に移植しトレラントラットを作製した。 | KAKENHI-PROJECT-07671307 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07671307 |
局所広範囲ドラッグデリバリー技術の安定化と汎用化に向けた研究 | 我々は脳内広範囲ドラッグデリバリー法の開発に向けた研究を進めてきた。投薬技術の改良、安定化に向けた研究を進め、超音波併用装置を開発し薬剤分布容積を拡大させることに成功し、特許申請を行った。本研究では、投薬技術のさらなる安定化、効率化を目指して、薬剤注入ポンプを従来の従量式から従圧式へ変更すべく、従圧式ポンプを作成した。一定圧での制御が可能であること、一定圧制御時のばらつきが小さいことなど確認し、使用可能であることを実証した。一方で、専門としてきた脳腫瘍以外への本治療法応用の可能性を示すために、てんかんモデル、腫瘍を含む脊髄モデル、アルツハイマー病モデルへの本投薬装置を用いた投薬を実施した。薬剤投与システムに関して、本年度は従来の従量式ポンプでの投与から、より基礎理論に近い低圧式での投与を実現すべく、定圧式薬剤投与ポンプの作製を行った。圧センサとポンプを組み合わせ、圧駆動型微小薬剤投与ポンプを開発した。このシステムにおいての圧制御の流れは、薬剤注入ルート上に設置した圧力センサの出力を制御用PCへ入力し、制御用ソフトで現在の圧力値から目標圧力値になるようにシリンジポンプを駆動し、それを再度圧力センサで感知する形で双方向性とした。圧センサからの入力を解析し、ポンプ駆動力を制御するコンピュータソフトも同時に作製した。こうして作製したポンプに関して、一定圧制御可否、一定圧制御時の圧力値のばらつき、圧力制御の過渡応答性の3項目を中心に評価を実施した。一定圧の制御が可能であることが確認され、一定圧制御時の圧力値のばらつきは設定圧±1mmHgに抑えることができていることが確認された。今後、従来の従量式投与との比較を行い、どちらがより有効かを検討する。脳腫瘍以外の疾患への応用に関しては、てんかんモデルに対する抗てんかん剤の投与を行い、脳波の鎮静化を確認した。また、パーキンソン病モデルへの投与を考え、AAVベクターを作製、この発現をマウスで確認した。脳梗塞に対しては、脳梗塞に対するMUSE細胞を用いた神経再生の基礎が構築され、今後、神経栄養因子を投与して生着率を向上させる研究を進める予定である。最終年度に計画している、アルツハイマー病に対する新規治療法の構築を試みるために使用するアルツハイマーモデルマウス使用の目処がついた。局所広範囲ドラッグデリバリー技術の安定化に関しては、超音波印加型薬剤投与デバイスの改良を行った。改良を行ったデバイスに関して、薬剤注入安定性、電気的特性、温度特性、薬剤分布容積の安定性などを行い初期のデバイスと比較してより高効率での駆動、デバイス温度上昇の抑制、脳内拡散薬剤分容積の安定など局所広範囲ドラッグデリバリー技術の向上と安定化を図った。現在、改良を行ったデバイスの特許出願準備中である。これで昨年度に実施した従圧式ポンプ開発と合わせて、システム一式の開発が終了したことになる。ただし、デバイス変更により、ポンプに関する最終結論は次年度最初に見送ることとした(下記進捗状況参照)。また、実用化に向けた開発への準備を進めており、脳腫瘍での治療応用を先行させる方向で準備をしている。デバイスに関して最終的に臨床への使用を考えている事から、医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ相談を行い薬事申請が可能となる条件を満たす構成としていく予定である。本技術の汎用化に関しては、脊髄疾患への応用に向けた基礎研究を終え論文投稿しており、現在in pressの状況となっている。また、てんかんへの応用研究も終え、論文作成中である。アルツハイマー病に関しては短期間でアミロイドAβタンパクを蓄積するアルツハイマーモデルマウスの系統を安定して使用できる状況となっており、今後候補としてる薬剤の局所投与による治療を行う予定としている。超音波印加型薬剤投与デバイスの改良を行った。現在、特許出願準備中であり、詳細は割愛する(平成28年度最初に出願完了予定)が、より低電圧での駆動が可能となり、一定した薬剤分布が可能となった。昨年度に作成した従圧式ポンプと合わせて、システム一式の開発が終了したことになるが、ポンプに関しては、旧型の超音波印加型薬剤投与デバイスでの投与に際しては薬液注入ルートの閉塞に伴い、圧が上昇し、ポンプが停止するトラブルが判明し、旧型の超音波印加型薬剤投与デバイスを使用する際には従量式ポンプの方が優れるとの結論に達した。しかし、本年行った改良による新型デバイスにおいてはこの注入ルートの閉塞は起こりにくい構造に改善しており(注入ルートをチューブ型から針型へ変更した)、この新型デバイスでどちらのポンプがより有効かの検証を現在すすめている。このシステム全体で局所広範囲ドラッグデリバリー技術の安定化は達成可能と考えている。また、汎用化に関しては脊髄病変への投薬に関して、基礎データ取得を行い、論文報告した。また、てんかんモデルに対する抗てんかん剤の投与の実験を終了し、現在論文作成中である。アルツハイマー病に関しては、モデル動物の繁殖を行ったが、使用できる状態に到達し、今後研究を進める予定である。また、システムの実用化を目指して、PMDA相談を行っており、脳腫瘍を対象とした実用化に向けた研究を進めている。昨年度より準備を進めていた改良型超音波印加型薬剤投与デバイスに関して2016年6月に特許出願(国内)を行なった。現在、PCT国際出願の準備を行っている状況である。また、先行システムに関して論文報告をした。 | KAKENHI-PROJECT-26293319 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26293319 |
局所広範囲ドラッグデリバリー技術の安定化と汎用化に向けた研究 | 開発を進めてきた従圧式ポンプに関しては、デバイスとしては完成し、実用化を視野に入れた研究を進めたものの圧上昇時の安全機構として設定した上限圧の関係で、薬剤投与の細径チューブの先端の状況により、薬剤注入が停止してしまうことが新たな問題点として浮上した。超音波印加によりこの問題は解除されるものの、PMDA相談を経て、投薬システムとして超音波印加型薬剤投与デバイスとポンプの双方が新規とすると薬事承認をそれぞれ得る必要があるなど開発が非常に困難な事に加え時間を要するとの指摘を受け、まずは従来の従量式ポンプ(既に薬事承認を得て臨床で使用されている機器)での臨床応用へ向かう方針とした。疾患応用に向けた基礎的研究としては、脳腫瘍分野においては薬剤治療と免疫治療を橋渡しする免疫誘導性共刺激因子(CD40)刺激抗体の局所投与による脳腫瘍治療効果を論文報告した。また、脊髄腫瘍に対する抗がん剤局所投与の治療効果も論文報告した。てんかんに対する抗てんかん剤投与の治療効果に関しては論文投稿を行った。アルツハイマー病に対する治療効果に関しては、アルツハイマーモデルマウスに対するネプリライシン投与を実施した。初期条件では有意な脳内蓄積タウ蛋白量の変化が確認できず、条件変更の上研究継続中である。我々は脳内広範囲ドラッグデリバリー法の開発に向けた研究を進めてきた。投薬技術の改良、安定化に向けた研究を進め、超音波併用装置を開発し薬剤分布容積を拡大させることに成功し、特許申請を行った。本研究では、投薬技術のさらなる安定化、効率化を目指して、薬剤注入ポンプを従来の従量式から従圧式へ変更すべく、従圧式ポンプを作成した。一定圧での制御が可能であること、一定圧制御時のばらつきが小さいことなど確認し、使用可能であることを実証した。一方で、専門としてきた脳腫瘍以外への本治療法応用の可能性を示すために、てんかんモデル、腫瘍を含む脊髄モデル、アルツハイマー病モデルへの本投薬装置を用いた投薬を実施した。予定していた従圧式薬剤投与ポンプの開発を行った。薬剤投与ルートの圧をフィードバックして、コンピュータ制御下にポンプ注入を制御することで従圧式の薬剤投与が可能なシステムが出来上がり、設定圧±1mmHgに制御できることが確認された。また、脳腫瘍以外の疾患への応用に関しても特にてんかん、アルツハイマー病で次年度の研究へ向けた準備が整った状況にあることから、順調と考えている。アルツハイマー病モデルへの投薬1)アミロイド分解薬剤の選定:アミロイドAβ蛋白の分解に関与する蛋白分解酵素ネプリライシン、bapineuzumab、solanezumab、ponezumabなどのAβを認識する抗体が考えられる。ラット脳内投与実験を実施し、毒性、脳内投与時の薬剤拡散性を評価し最適な薬剤を選定する。2) MRI画像誘導下アミロイド分解薬剤の局所投薬技術の確立:ラット脳内へMRI造影剤とアミロイド分解薬剤の混合投与を行い、MRI撮影しラット脳内での造影剤の分布を画像化する。ラットを安楽死させ、脳切片を作製しアミロイド分解薬剤の脳内分布を免疫組織化学的に検出する。 | KAKENHI-PROJECT-26293319 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26293319 |
白色照明用蛍光体材料としての2価Eu付活結晶化ガラスの作成と析出結晶相制御 | 照明材料には地球温暖化防止の観点からは出来るだけ高効率な材料が求められ、環境保護の観点からは、蛍光灯に使用されている水銀に代表されるような人体や自然環境に有害な影響を及ぼす物質は可能な限り使用しないことが重要である。現在実用的にもLEDが用いられ始めているが、さらなる耐久性の向上や演色性の改良が必要とされている。本研究ではこれらの問題を改善するべく、2価Eu付活結晶化ガラスの作成を試みた。原子比で60(0.99CaO-0.01EuO_<1.5>)-40SiO_2の割合となるよう計量した出発原料を(5%H_2+N_2)-ガスを導入して1300°Cで3時間還元雰囲気にて焼成することにより目的とするガラス試料を合成した。焼結助剤を添加することによりβ-Ca_2SiO_4の析出結晶粒が約20μmの大きさに成長していることが判明した。ガラス試料を熱処理することにより、2種類の蛍光体が析出している結晶化ガラス合成に成功した。1300°Cで合成したガラス試料はガラスマトリックス中にEu^<2+>を含んだβ-Ca_2SiO_4結晶が混合したものである。このガラス試料を1000°Cで熱処理すると、β-Ca_2SiO_4の他に未同定相が出現した。さらに熱処理温度を上げていくに従ってβ-Ca_2SiO_4相のほかにCa_3Si_2O_7相が出現し、1200°Cではβ-Ca_2SiO_4相は消失しガラスマトリックスとCa_3Si_2O_7相のみになっていることが確かめられた。結晶化のための熱処理を施していないガラス試料の発光は515nmを中心としたブロードなものであった。その試料に結晶化のための熱処理を施すと例えば1200°Cで熱処理をした場合では、先述の515nmを中心にもつブロードな発光は消えて、さらにブロードな600nmを中心とした発光を示すことが明らかになった。今後の課題として析出結晶粒径が光学特性に及ぼす影響を確かめていく必要がある。また白色照明用デバイスとして評価する場合、広い波長をカバーすることにより自然光に近い光を実現できることから、実用に際しては望ましい材料合成に成功した。照明材料には地球温暖化防止の観点からは出来るだけ高効率な材料が求められ、環境保護の観点からは、蛍光灯に使用されている水銀に代表されるような人体や自然環境に有害な影響を及ぼす物質は可能な限り使用しないことが重要である。現在実用的にもLEDが用いられ始めているが、さらなる耐久性の向上や演色性の改良が必要とされている。本研究ではこれらの問題を改善するべく、2価Eu付活結晶化ガラスの作成を試みた。原子比で60(0.99CaO-0.01EuO_<1.5>)-40SiO_2の割合となるよう計量した出発原料を(5%H_2+N_2)-ガスを導入して1300°Cで3時間還元雰囲気にて焼成することにより目的とするガラス試料を合成した。焼結助剤を添加することによりβ-Ca_2SiO_4の析出結晶粒が約20μmの大きさに成長していることが判明した。ガラス試料を熱処理することにより、2種類の蛍光体が析出している結晶化ガラス合成に成功した。1300°Cで合成したガラス試料はガラスマトリックス中にEu^<2+>を含んだβ-Ca_2SiO_4結晶が混合したものである。このガラス試料を1000°Cで熱処理すると、β-Ca_2SiO_4の他に未同定相が出現した。さらに熱処理温度を上げていくに従ってβ-Ca_2SiO_4相のほかにCa_3Si_2O_7相が出現し、1200°Cではβ-Ca_2SiO_4相は消失しガラスマトリックスとCa_3Si_2O_7相のみになっていることが確かめられた。結晶化のための熱処理を施していないガラス試料の発光は515nmを中心としたブロードなものであった。その試料に結晶化のための熱処理を施すと例えば1200°Cで熱処理をした場合では、先述の515nmを中心にもつブロードな発光は消えて、さらにブロードな600nmを中心とした発光を示すことが明らかになった。今後の課題として析出結晶粒径が光学特性に及ぼす影響を確かめていく必要がある。また白色照明用デバイスとして評価する場合、広い波長をカバーすることにより自然光に近い光を実現できることから、実用に際しては望ましい材料合成に成功した。 | KAKENHI-PROJECT-21915021 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21915021 |
サミュエル・ベケットと知覚--分離と統合をめぐる理論と実践の研究 | 本年度はおもにサミュエル・ベケットの作品における言語と抽象絵画についての考察を深め、国内外でその成果を発表する好機を得た。5月に開催された日本フランス語フランス文学会全国大会では、学習院大学のT・マレ氏の呼びかけに応じて「外国語による演劇(Theatre en langue etrangere)」と題されたワークショップに参加、発表を行った。ベケットの創作言語の特異性について、演劇作品『ゴドーを待ちながら』(1952)を分析し、一読して無意味・不条理に思われるような造語や紋切型表現の反復が音声として立ち現れる際に帯びる批判的含意を示した。8月には、アイルランドのトリニティ・カレッジ・ダブリンへ赴き、ベケット国際学会"Draff"に参加、かねてより研究を進めていたベケット後期の散文作品とフランス人画家ジュヌヴィエーヴ・アースの作品との関係について口頭発表を行った。現在参照しうる書簡や伝記の情報では知られていない両者の関係について、「内的な光」や「白色への傾倒」といったテーマの親近性を指摘し、同時代の美術界からの影響の深さについて各国の研究者と討議することができた。その後、ベケットと同時代の美術界の流れを検討する方針を取り、とりわけ「白色」を重用した1960年代に着目することとなった。直接的交流のなかったイタリア人芸術家フォンタナの「空間派」と呼ばれる芸術運動の在り方などを視野に入れ、12月に行われた日本サミュエル・ベケット研究会にて口頭発表を行い、実りある議論の場を得た。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。本年度は、メーテルリンク『群盲』(1890)の重要性を確認する作業から始まった。本研究で扱う作家サミュエル・ベケットが同作品に深い関心を寄せていた事実はすでに知られていたが、盲目性と諸知覚の混同という主題が両作家を結び付けている事実を改めて確認することになった。二人の作家が、盲人を舞台上で見せることの困難と創造的可能性を共有するのみならず、視覚を剥奪された状況下における聴覚と視覚の補完現象が、言語で表現されうる点で通底していたことは、これまで指摘されていない。しかしながら、ベケットの盲目性の追求は、演劇においては盲人を登場させるという表面的なものに過ぎない部分があるため、視覚と聴覚との混同状態に関して、演劇や映像作品を経由したのちの後期の言語表現を再検討する必要があった。そこで「見ること」自体を問いに付す未刊の散文Long Observation of the Ray(1975-77)を分析しながら、視覚の否定から生じる諸知覚の混在状態が、まさに言語以外によって具体化されえないものであることを明らかにした。この後、19601970年代のベケット作品群を概観しながら、「見ること」そのものが不可視性をはらんでいる可能性について考察した。可視/不可視、視覚/聴覚、具象/抽象のあいだで揺れ動く知覚の問題は、画家との共同制作にも表れている。本研究では、未だ取り上げられていない6070年代のフランス抽象絵画との連関からベケットの作品世界における知覚を読み取ることを研究のひとつの骨子としているため、本年度のパリ出張では、Jean Deyrolleとの共同制作工程について考察を深めた。この時期に共同制作を行った画家たちの作品には、幾何学的抽象という共通点が見いだせるが、その幾何学が完全な図形を成すことなく、あえてズレや歪みを含み持つという点で共通していたことは一つの発見であった。採用二年目となる本年度は、サミュエル・ベケットと抽象絵画との関係性に踏み込んだ研究を行い、手ごたえのある成果を得た。前年度のフランス出張時に集めておいた数々の資料がもとになっており、前年度からの研究の前進という上でも満足のいくものとなった。前年度の時点までは、主に知覚主体とその対象との関係性が可逆的であるということ、つまり、知覚される対象は物質ではなく知覚主体そのものでありえ、知覚主体もまた対象物であるという観点から考察を進めてきた。サミュエル・ベケットの1970年前後の作品群において、このような相互的な知覚の関係性を理論化しようとする動きが顕著であったため、本研究の対象はこの年代の作品分析に移っていたが、本年度は視点を変え、この時代のベケットの短い作品群に挿画を寄せたフランスの抽象画家たちとの共同作業のなかに、見るという知覚をともなう文学的実践の在り方を探すことにした。収集した資料から、とりわけジュヌヴィエーヴ・アースという画家とベケットとの共作『放棄されたもの』の分析を進めたが、これまで全く研究対象とされてこなかった希少本であり、最も完成した形で詩的散文と抽象画が共鳴し合った秀作であるだけでなく、この時代のベケットの言語観を知覚主体と対象の問題として定義することができる。ベケットは早くから「非-語の文学」を理想として語り、「カンディンスキーのように、抽象言語へと向かった」と自認していたが、この後期散文作品を1949年代の絵画論と比較検討することによって、1970年頃には、求めていた抽象絵画と同質の世界観を言語表現において獲得していたということが明らかになった。これによって本研究は、ベケット作品における知覚の言語的実践を分析するという研究課題の中核へとたどり着いた。今後さらに舞台作品などについても同様に検討を続ける予定である。当初の研究計画と比しても、本年度は順調に研究を遂行できたと言うことができる。 | KAKENHI-PROJECT-14J07070 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J07070 |
サミュエル・ベケットと知覚--分離と統合をめぐる理論と実践の研究 | 1「抽象化」の概念の考察、2カンディンスキーをはじめとする「抒情的抽象」の系譜の確認とそれに対するサミュエル・ベケットの所見を考察すること、3美術史家ジョルジュ・デュテュイとの往復書簡における作品外での抽象絵画論の深化の過程を検討すること、4戦後パリの抽象画家との共同制作における言語の分析、以上のすべてにおいて一定の満足のいく成果を得ることができた。本年度はおもにサミュエル・ベケットの作品における言語と抽象絵画についての考察を深め、国内外でその成果を発表する好機を得た。5月に開催された日本フランス語フランス文学会全国大会では、学習院大学のT・マレ氏の呼びかけに応じて「外国語による演劇(Theatre en langue etrangere)」と題されたワークショップに参加、発表を行った。ベケットの創作言語の特異性について、演劇作品『ゴドーを待ちながら』(1952)を分析し、一読して無意味・不条理に思われるような造語や紋切型表現の反復が音声として立ち現れる際に帯びる批判的含意を示した。8月には、アイルランドのトリニティ・カレッジ・ダブリンへ赴き、ベケット国際学会"Draff"に参加、かねてより研究を進めていたベケット後期の散文作品とフランス人画家ジュヌヴィエーヴ・アースの作品との関係について口頭発表を行った。現在参照しうる書簡や伝記の情報では知られていない両者の関係について、「内的な光」や「白色への傾倒」といったテーマの親近性を指摘し、同時代の美術界からの影響の深さについて各国の研究者と討議することができた。その後、ベケットと同時代の美術界の流れを検討する方針を取り、とりわけ「白色」を重用した1960年代に着目することとなった。直接的交流のなかったイタリア人芸術家フォンタナの「空間派」と呼ばれる芸術運動の在り方などを視野に入れ、12月に行われた日本サミュエル・ベケット研究会にて口頭発表を行い、実りある議論の場を得た。本年度は、年度毎の研究計画に照らしてみれば、いささか変則的な推進方策を取ることになったと言える。しかし、その内容に関しては、十分な成果を得ることができた。当初の計画では、まずイギリスで草稿資料の調査を行うとしていたが、上述した本年度の研究(後期散文における盲目性の諸問題の発見)により、同時期の抽象絵画との共同制作過程を考察することが先決と思われたため、次年度に予定していたフランスでの資料収集を先取りして行うことになった。この点では、本研究の全体像を早い段階から形づくるという上でも、有益な方法であったと思われる。しかしながら、その研究を下支えする理論的地盤を固める作業は、いまだ着手できていない。これは次年度の課題となった。それ以外の点においては、予定通りであり、盲目性についての研究を日本サミュエル・ベケット研究会において口頭発表する機会を設けたほか、ベケット後期作品における「見るもの」の不可視性についてまとめた論文は、フランスの出版社Classiques Garnierの近代文学叢書より刊行されるベケットシリーズ4に収録され、2015年春の出版が決定している。最終年度には、研究を進めるというだけではなく、初年度・二年目の成果を随時振り返り、また補強していく作業が必要となると考えている。最終年度に予定しているサミュエル・ベケットとモーリス・メルロ=ポンティとの相違を検討するという作業には、前年度から行ってきた抽象絵画論が有効な切り口として機能するはずである。 | KAKENHI-PROJECT-14J07070 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J07070 |
英国資本主義の発展および変化の過程におけるジェンダーとエスニシティ | 本研究の特徴は、特定のマイノリティ・グループに焦点をあてるのではなく、マジョリティとマイノリティとの関係、複数のマイノリティ・グループの相互関係を検討することである。第2次大戦中から戦後にかけて約10年の問に、病院家事労働者不足に対応するために英国政府が主導して、アイルランド人女性、中東欧出身の難民を導入し、さらに政府の意図とは別に植民地出身の女性が40年代末から英国に渡ってきた。研究の焦点をここに当て、政策およびエスニック・グループの相互関係を中心に研究を行なった。研究の得られた知見は以下の5点である。1.第二次世界大戦末期から伝統的な女性労働分野(家事労働・繊維工業)における深刻な女性動力の不足と出生率低下・人口減少への懸念は、1945年以降、外国人労働力の組織的導入政策に密接に結びついた。2.第二次世界大戦後の英国は女性労働力の深刻な不足に悩みながらも、マジョリティ女性については、家内的存在として、「伝統的」性的役割分担を強化しようとしていた。3.マイノリティ女性は、労働力として位置づけられた。政府は、アイルランド人および中東欧難民については、「統制可能性」「扶養家族の有無」など英国社会の利益に従って導入しようとしたが、必ずしも成功しなかった。4.植民地からのカラード女性を英国本国に導入することは政府レヴェルでは全く考慮されず、植民地からの要求を拒否し、省庁間の対立があった。植民地からの(自主的)移民の増加とともに対処を余儀なくされた。他から労働力が十分に得られない病院家事労働者へ「カラード」女性の導入が進んだ。5.政府には、ジェンダーおよびエスニシティの観点から労働者について明確なpreferenceがあり、より望ましい労働力から導入しようとする。逆に政府(社会)によってless preferableとされた労働力が、条件の悪い職に集中する過程を具体的に示すことができた。本研究の特徴は、特定のマイノリティ・グループに焦点をあてるのではなく、マジョリティとマイノリティとの関係、複数のマイノリティ・グループの相互関係を検討することである。第2次大戦中から戦後にかけて約10年の問に、病院家事労働者不足に対応するために英国政府が主導して、アイルランド人女性、中東欧出身の難民を導入し、さらに政府の意図とは別に植民地出身の女性が40年代末から英国に渡ってきた。研究の焦点をここに当て、政策およびエスニック・グループの相互関係を中心に研究を行なった。研究の得られた知見は以下の5点である。1.第二次世界大戦末期から伝統的な女性労働分野(家事労働・繊維工業)における深刻な女性動力の不足と出生率低下・人口減少への懸念は、1945年以降、外国人労働力の組織的導入政策に密接に結びついた。2.第二次世界大戦後の英国は女性労働力の深刻な不足に悩みながらも、マジョリティ女性については、家内的存在として、「伝統的」性的役割分担を強化しようとしていた。3.マイノリティ女性は、労働力として位置づけられた。政府は、アイルランド人および中東欧難民については、「統制可能性」「扶養家族の有無」など英国社会の利益に従って導入しようとしたが、必ずしも成功しなかった。4.植民地からのカラード女性を英国本国に導入することは政府レヴェルでは全く考慮されず、植民地からの要求を拒否し、省庁間の対立があった。植民地からの(自主的)移民の増加とともに対処を余儀なくされた。他から労働力が十分に得られない病院家事労働者へ「カラード」女性の導入が進んだ。5.政府には、ジェンダーおよびエスニシティの観点から労働者について明確なpreferenceがあり、より望ましい労働力から導入しようとする。逆に政府(社会)によってless preferableとされた労働力が、条件の悪い職に集中する過程を具体的に示すことができた。本年度は研究計画の初年度として、申請者の研究が最も進行している第2次世界大戦からアトリー内閣期のイギリス社会における研究に集中した。近年、アトリー内閣期のイギリス社会にかんする研究の進展はイギリス、日本ともに著しい。まず、こうした研究のおよび女性史の近年の進展にかんして徹底的なサーヴェイを行った。その結果、戦争期戦後期のイギリスの戦後政策にジェンダーの視点が欠落していていたこと、また、それにかんする研究の欠如が確認できた。この問題意識に基づき、この時期の女性と政策との関連を示すことが期待できる資料収集を行った。資料はマイクロ資料を中心に、イギリス政府資料、労働党女性部関連資料、女性議員に関連する資料、議会関連資料、女性団体にかんする資料、Mass Observationによる資料である。本年度の後半は、これらの資料をもとに「イギリス戦後復興政策とジェンダー」というテーマで論文を準備している。この論文は15年度中に発表を予定している。この論文においては、戦争中の女性議員の議会内外での活動を中心に分析する。主たる論点は、(1)女性議員が戦後復興政策の策定において女性の登用を精力的に要求していたのにもかかわらず、政府が消極的であった、(2)その一方、女性議員が代表していたのは主として専門職女性であり、専門職女性については男女の平等を主張する一方、女性一般については性的役割分担にもとづいた将来像をえがいていた、(3)1945年の総選挙は女性議員の世代交代をもたらし、労働党の大勝に乗って女性議員が数多く当選したものの、階級をジェンダーよりも重要視する観点のために政策の継続性が失われた、というものである。 | KAKENHI-PROJECT-14530099 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14530099 |
英国資本主義の発展および変化の過程におけるジェンダーとエスニシティ | なお、移民女性の積極的導入をおこなった戦後の女性労働力政策は、エスニシティの観点から分析することも必要である。この点についてもすでに資料収集が進んでいる。本年度前半は、戦間期から第2次世界大戦期における政策形成過程におけるジェンダーの認識、および女性の政策決定過程における関与のあり方に研究を集中させた。その結果、1930年代には国会活動あるいは高級官僚として政策へ影響を及ぼしうる立場にある女性の数は少ないながらも一定数いたものの、政治家の場合は所属政党、官僚の場合はメリットクラシーへの信奉がジェンダー・ブラインドなイデオロギーへの固執を招き、政策に特にジェンダーの視点を生かそうという動きは希薄だったことをしめした。さらに政治家の場合、1930年代から45年まで積極的に両性の平等の推進にかかわった保守党女性議員のほぼ全員が、1945年総選挙で落選し、ジェンダーより階級を重視する労働党女性議員にかわったことが、戦後の女性政策の停滞をまねいたという仮説をうることができた。これらについては、国際学会での報告および発表論文に成果をしめした。本年度の第2次世界大戦終了前後から福祉国家建設期における英国への外国(ヨーロッパにおける難民等)とアイルランドおよび植民地からの女性労働者の導入政策に関する文献収集、およびイギリスでの資料収集に専念した。資料収集の結果一方における第2次世界大戦末期からの女性労働力不足、特に伝統的な(低質金)女性労働分野(家事労働・繊維工業)における深刻な女性動力の不足、他方における出生率低下、人口減少への懸念は、1945年以降、外国人労働力の組織的導入政策となった。しかし、同時に政府の望まない労働力移動が発生し、低賃金労働への植民地出身者の導入の端緒がこの時期に開かれた、と考えられる。この成果については現在論文を執筆中である。本年度は、昨年度末に行ったイギリスでの資料収集の結果、得られた資料を利用しての分析を中心に行った。その際注目したのは、第2次世界大戦後戦後深刻な労働力不足におちいった病院などにおける家事スタッフである。この仕事は女性の未熟練労働とみなされ、他の職を得ることが困難な中年以降の女性の仕事として認識されてきた。戦争中の女性動員のために、これまでの供給源から女性労働力をうることは困難となり、戦前には供給源としての役割を果たしたアイルランドからの女性移民も他の職に就くようになった。終戦後、労働力不足に直面した政府は、東欧系難民女性に着目した導入を図った。この政策には、占領コストを下げる目的もあった。女性の定住をめぐって、政府省庁間に思惑の差があった。結局労働力不足のため、難民女性からドイツ国籍・オーストリア国籍の女性へと拡大された。一方、西インド植民地では、「イギリス帝国臣民女性」が失業している中で外国人女性がイギリス本国に導入されることへの不満が高まり、保健省・労働省、植民地省、植民地政府の考えが鋭く対立した。実験的な導入計画が実行されたが、この計画によって導入された西インド出身女性は少数であった。しかし、「帝国臣民」という立場を利用して、西インドからの移民は戦後増加する。 | KAKENHI-PROJECT-14530099 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14530099 |
器官系の加齢に関する組織化学的研究 | 本研究計画は、実験動物及び人体の各器官系の組織を材料として、生体の加齢によって超える組織細胞の微細構造の変化を、細胞小器官レベルにおいて解明することを目的としている。2年度にわたり、培養細胞系、運動器系、循環器系、消化器系、泌尿生殖器系、内分泌器系、神経感覚器系の組織を、種々の組織化学的方法で検索し、次の結果が得られた。培養細胞系のHeLa細胞は、^3Hーthymidineと^3Hーuridineの標識率が培養開始増加し、1週間で減少した。運動器系のヒト黄色鞁帯は、加齢により石灰化が進行し、鞁帯骨化症となる症例が増加し、その電鈴試料を源水部X線分析すると可溶性Caが増加した。循環器系のマウス脾臓では,酵素活性が生後2週で増加した。核酸,蛋白合成も2週が最高で,収後減少した。内分泌腺では甲状腺と副腎の^3Hーthymidine標識率を検索したが,加齢による変動が認められた。消化器系の腸上皮に出現する杯細胞を^3Hーglucosamineで標識し,ラジオオ-トグラムを観察し,題種の中のSを源水部X線分析で定量すると,糖質合成とS量は2週で最高となり収後減少した。マウス肝臓を^3Hーthymidineで標識すると,胎生期には多数の造血細胞が標識されるが生後9日で0となり,肝細胞,類調内皮細胞等は生後2年まで減少しつつ残った。RNAと蛋白合成は生後2週が最高であった。マウス膵臓ではDNA合成は生後低下したが,RNA,蛋白,脂質,糖質の合成は2週から2ケ月まで高く,収後低下した。泌尿生殖器系についてはマウス腎臓のDNA合成を糖成合のレクチン染色性が加齢により変動した。神経感覚器系についてはマウス網膜と色素皮層の核酸合成とレクチン染色性を検索したが,DNA合成は胎生期に多く,網膜内層,外層色素上皮層において,胎生9日から18日までの間に異なった変動が認められた。RNA合成は生後急速に増加し,網膜で1回,色素上皮で7日が最高となった。レクチン染色性も加齢の変動が認められた。本研究計画は,実験動物(ラット,マウス)及び生検によって得られる人体の各器官系の各種組織を材料として,生体の加齢によって起こる組織細胞の微細形態の変化を細胞小器官レベルにおいて解明することを目的とした。本年度は培養細胞系,運動器系,循環器系,消化器系,呼吸器系,泌尿生殖器系,内分泌器系,神経系,感覚器系の組織をグルタルアルデヒド,四酸化オスミウム固定し,エポン包埋した試料を厚切布片または超薄切片として各種染色を行い,光学顕微鏡または電子顕微鏡で観察した。その結果,培養細胞系では肝細胞の初代培養を行うと1週間で分裂増殖するが,2週で増殖は停止し, ^3Hーthymidiueにより標識するとDNA合成を示すS期細胞は1週で最大値に達し以後減少した。消化器系の小腸上皮はマウスの各日齢について電子顕微鏡により超微形態を観察すると,小胞体,ゴルジ装置,糸粒体系の細胞小器官は胎生期に急速に発達し,生後の変化は少ないが,純毛上皮細胞の高さは生後高くなり,マウスでは生後1月で最高に達し,以後減少した。小腸上皮の杯細胞は粘液顆粒をゴルジ装置で合成するが, ^3Hーglwcosaminで標識すると,顆粒の中に銀粒子が証明され,合成されたムコ多様は生後多くなり,2週で最大値に達し,以後減少した。ムコ多様の成分であるSの量を杯細胞の顆粒について分析電子顕微鏡で定量分析すると,生後2週が最大値を示した。消化器系の膵臓を^3Hーthymidineで標識すると,S期細胞は胎生期に多く,生後減少するが,その変化は細胞の種類により異なり,導管上皮細胞では生後直ちに減少し,腺細胞は生後3日から減少した。肝臓を^3Hthymidineで標識すると,胎生期に造血細胞が多数標識されるが生後は減少し,肝細胞は生後除々に減少し,1年までS期細胞が認められた。その他の器官系についても現在研究が進行中である。本研究計画は、実験動物及び人体の各器官系の組織を材料として、生体の加齢によって超える組織細胞の微細構造の変化を、細胞小器官レベルにおいて解明することを目的としている。2年度にわたり、培養細胞系、運動器系、循環器系、消化器系、泌尿生殖器系、内分泌器系、神経感覚器系の組織を、種々の組織化学的方法で検索し、次の結果が得られた。培養細胞系のHeLa細胞は、^3Hーthymidineと^3Hーuridineの標識率が培養開始増加し、1週間で減少した。運動器系のヒト黄色鞁帯は、加齢により石灰化が進行し、鞁帯骨化症となる症例が増加し、その電鈴試料を源水部X線分析すると可溶性Caが増加した。循環器系のマウス脾臓では,酵素活性が生後2週で増加した。核酸,蛋白合成も2週が最高で,収後減少した。内分泌腺では甲状腺と副腎の^3Hーthymidine標識率を検索したが,加齢による変動が認められた。消化器系の腸上皮に出現する杯細胞を^3Hー | KAKENHI-PROJECT-02454564 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02454564 |
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