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心不全に対する新たな治療法の開発
小胞体機能が虚血、再灌流、低栄養、低酸素、スーパーオキシド、毒物などの外界からの侵襲や遺伝子変異によって阻害されると、小胞体内に折り畳み構造の異常な蛋白質が蓄積し、分子シャペロンの産生増加、蛋白合成の抑制、異常蛋白質の分解、細胞死といった小胞体ストレス反応が起こる。近年こうした小胞体ストレス反応が神経変性疾患や躁鬱病、糖尿病を始めとする種々の疾患に関与している事が示唆されている。我々は、KDEL受容体による逆行性輸送が小胞体ストレス反応に重要であり、それが障害されると細胞は侵襲に弱くなる事を培養細胞で示して来たが、最近変異KDEL受容体を発現するトランスジェニックマウスを作製し、実際にin vivoでもKDEL受容体が小胞体ストレス反応、小胞体qualitycontrolに重要であり、KDEL受容体によるゴルジ体から小胞体への逆行輸送の障害によって、心筋細胞に異常蛋白が蓄積し、小胞体ストレス反応、細胞死が誘発され、心筋症が発症する事を報告した(MCB24,P8007-17,2004、医学のあゆみ216、P886-889,2006)。我々はKDEL受容体の機能を強化する事で、小胞体quality controlの能力が高まり異常蛋白の心筋細胞への蓄積が減少し、心筋のストレスに対する抵抗性を高める事になる、即ち、心不全に対する治療になるのではないかと考えた。そこで正常KDEL受容体発現マウスの心筋細胞を形態学的に、また生化学的に解析した。正常KDEL受容体発現マウスの心筋細胞では老化に伴うユビキテン化異常タンパク質の蓄積が少なく、電子顕微鏡所見でも微細構造が若年マウスと同様に良く保存されていた。また、正常KDEL受容体あるいは輸送変異KDEL受容体が発現するトランスジェニックマウスの腹部大動脈を縮窄し心臓に圧負荷を加えたところ、正常KDEL受容体トランスジェニックマウスの方が圧負荷に抵抗性がある傾向が見られた。現在正常KDEL受容体遺伝子アデノウイルスベクターを作製途上であり、今後、正常マウス正常KDEL受容体を過剰発現させ圧負荷を加えた場合の心筋細胞障害が緩和されるかどうか検討する。分泌蛋白や膜蛋白は小胞体に挿入されて、小胞体に局在する分子シャペロンであるBiP/GRP78、carleticulin等との相互作用によって、折り畳み構造が形成され、糖鎖付加、複合体形成がなされ、機能的にも成熟して小胞体から分泌される。こうした過程が虚血、再灌流、低栄養、低酸素、スーパーオキシド、毒物などの外界からの侵襲や遺伝子変異によって阻害されると、小胞体内に折り畳み構造の異常な蛋白質が蓄積し、分子シャペロンの産生増加、蛋白合成の抑制、異常蛋白質の分解、細胞死といった小胞体ストレス反応が起こる。近年こうした小胞体ストレス反応が神経変性疾患や躁鬱病、糖尿病を始めとする種々の疾患に関与している事が示唆されている。我々は、KDEL受容体による逆行性輸送が小胞体ストレス反応に重要であり、それが障害されると細胞は侵襲に弱くなる事を培養細胞で示して来たが、最近変異KDEL受容体を発現するトランスジェニックマウスを作製し、実際にin vivoでもKDEL受容体が小胞体ストレス反応、小胞体quality controlに重要であり、KDEL受容体によるゴルジ体から小胞体への逆行輸送の障害によって、心筋細胞に異常蛋白が蓄積し、小胞体ストレス反応、細胞死が誘発され、心筋症が発症する事を報告した(MCB 24, p8007-17, 2004)。我々はKDEL受容体の機能を強化する事で、小胞体quality controlの能力が高まり異常蛋白の心筋細胞への蓄積が減少し、心筋のストレスに対する抵抗性を高める事になる、即ち、心不全に対する治療になるのではないかと考えた。そこで正常KDEL受容休あるいは輸送変異KDEL受容体が発現するトランスジェニックマウスの腹部大動脈を縮窄し心臓に圧負荷を加えたところ、正常KDEL受容体トランスジェニックマウスの方が圧負荷に抵抗性がある様な傾向が見られた。次に正常KDEL受容体遺伝子アデノウイルスベクターを作製し、今後、正常マウスに圧負荷を加えた場合の心筋細胞障害が緩和されるかどうか検討する。小胞体機能が虚血、再灌流、低栄養、低酸素、スーパーオキシド、毒物などの外界からの侵襲や遺伝子変異によって阻害されると、小胞体内に折り畳み構造の異常な蛋白質が蓄積し、分子シャペロンの産生増加、蛋白合成の抑制、異常蛋白質の分解、細胞死といった小胞体ストレス反応が起こる。近年こうした小胞体ストレス反応が神経変性疾患や躁鬱病、糖尿病を始めとする種々の疾患に関与している事が示唆されている。我々は、KDEL受容体による逆行性輸送が小胞体ストレス反応に重要であり、それが障害されると細胞は侵襲に弱くなる事を培養細胞で示して来たが、最近変異KDEL受容体を発現するトランスジェニックマウスを作製し、実際にin vivoでもKDEL受容体が小胞体ストレス反応、小胞体qualitycontrolに重要であり、KDEL受容体によるゴルジ体から小胞体への逆行輸送の障害によって、心筋細胞に異常蛋白が蓄積し、小胞体ストレス反応、細胞死が誘発され、心筋症が発症する事を報告した(MCB24,P8007-17,2004、医学のあゆみ216、P886-889,2006)。
KAKENHI-PROJECT-17659078
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17659078
心不全に対する新たな治療法の開発
我々はKDEL受容体の機能を強化する事で、小胞体quality controlの能力が高まり異常蛋白の心筋細胞への蓄積が減少し、心筋のストレスに対する抵抗性を高める事になる、即ち、心不全に対する治療になるのではないかと考えた。そこで正常KDEL受容体発現マウスの心筋細胞を形態学的に、また生化学的に解析した。正常KDEL受容体発現マウスの心筋細胞では老化に伴うユビキテン化異常タンパク質の蓄積が少なく、電子顕微鏡所見でも微細構造が若年マウスと同様に良く保存されていた。また、正常KDEL受容体あるいは輸送変異KDEL受容体が発現するトランスジェニックマウスの腹部大動脈を縮窄し心臓に圧負荷を加えたところ、正常KDEL受容体トランスジェニックマウスの方が圧負荷に抵抗性がある傾向が見られた。現在正常KDEL受容体遺伝子アデノウイルスベクターを作製途上であり、今後、正常マウス正常KDEL受容体を過剰発現させ圧負荷を加えた場合の心筋細胞障害が緩和されるかどうか検討する。
KAKENHI-PROJECT-17659078
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17659078
Clifford-Klein形とDolbeaultコホモロジー
群作用・固有性・コホモロジーに関わる幾何学を探究する。具体的には以下の研究に取り組む予定である。群作用・固有性・コホモロジーに関わる幾何学を探究する。具体的には以下の研究に取り組む予定である。
KAKENHI-PROJECT-19K14529
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K14529
ピラガス法による希薄予混合燃焼における不安定性の制御
希薄予混合燃焼は燃焼温度が通常の予混合燃焼と比較すると低いため、NOx排出量を減少させることができる高効率な燃焼形態であることが知られている。しかし、希薄予混合燃焼は理論混合比より高い比率で空気を導入するために混合気中の燃料割合が高い部分と低い部分が混在し不安定燃焼を起こしやすい。この不安定燃焼をカオスと捉えカオス制御法を適用することで希薄予混合燃焼器の効率を飛躍的に高めるための基礎実験を行い、浮き上がり火炎の安定化制御に成功した。光学センサーシステムとスピーカー型シンセティックジェットアクチュエータを供試燃焼器に取り付け制御実験を行った。光学センサーは高速度CCDカメラにより火炎全体を計測するシステムと、フォトダイオードアレイを使って燃焼ガスが放出する特定周波数の光を光学フィルターでとり出すスペクトロスコピー(分光計)を用いた。また、フォトダイオードアレイシステムより更に高速な単一フォトダイオードと光学ナローバンドフィルターを使ったシステムも開発した。アクチュエータはボイススピーカーを使ったシンセティックジェットを使用したが、プラズマシンセティックジェットアクチュエータ(PSJA)も開発を進めた。後者は燃焼制御アクチュエータとして有望であるが、動作特性等に未知な部分が多いため熱線風速計での詳細な実験により基礎データを収集した。また、数値実験によりPSJAによるピラガス制御の最適化に関して、翼後流などの基本的な流れ場での特性を調べ、PSJAの動作原理に関する重要な知見をえた。センサーからアクチュエータまでの能動制御系を構築し、ピラガス制御(ディレードフィードバック制御)により、不安定な浮き上がり火炎の安定化制御が可能であることを実証した。今後、より実用的な制御手法の開発を目指して研究を続ける。希薄予混合燃焼は燃焼温度が通常の予混合燃焼と比較すると低いため、NOx排出量を減少させることができる高効率な燃焼形態であることが知られている。しかし、希薄予混合燃焼は理論混合比より高い比率で空気を導入するために混合気中の燃料割合が高い部分と低い部分が混在し不安定燃焼を起こしやすい。この不安定燃焼をカオスと捉えカオス制御法を適用することで希薄予混合燃焼器の効率を飛躍的に高めるための基礎実験を行い、浮き上がり火炎の安定化制御に成功した。光学センサーシステムとスピーカー型シンセティックジェットアクチュエータを供試燃焼器に取り付け制御実験を行った。光学センサーは高速度CCDカメラにより火炎全体を計測するシステムと、フォトダイオードアレイを使って燃焼ガスが放出する特定周波数の光を光学フィルターでとり出すスペクトロスコピー(分光計)を用いた。また、フォトダイオードアレイシステムより更に高速な単一フォトダイオードと光学ナローバンドフィルターを使ったシステムも開発した。アクチュエータはボイススピーカーを使ったシンセティックジェットを使用したが、プラズマシンセティックジェットアクチュエータ(PSJA)も開発を進めた。後者は燃焼制御アクチュエータとして有望であるが、動作特性等に未知な部分が多いため熱線風速計での詳細な実験により基礎データを収集した。また、数値実験によりPSJAによるピラガス制御の最適化に関して、翼後流などの基本的な流れ場での特性を調べ、PSJAの動作原理に関する重要な知見をえた。センサーからアクチュエータまでの能動制御系を構築し、ピラガス制御(ディレードフィードバック制御)により、不安定な浮き上がり火炎の安定化制御が可能であることを実証した。今後、より実用的な制御手法の開発を目指して研究を続ける。希薄予混合燃焼は燃焼温度が通常の予混合燃焼と比較すると低いため、NQ_X排出量を減少させることができる高効率な燃焼形態であることが知られている。しかし、希薄予混合燃焼は理論混合比より高い比率で空気を導入するために混合気中の燃料割合が高い部分と低い部分が混在し不安定燃焼を起こしやすい。本研究の目的は、この不安定燃焼をカオスと捉えカオス制御法を適用することで希薄予混合燃焼器の効率を飛躍的に高めることある。実時間制御に必要な光学的あるいは音響学的計測技術を確立するとともに、導入空気量を変えないで火炎の安定化を図るアクチュエータを開発し、これまでにない制御系の基礎を確立することを目的とする。15年度は希薄予混合燃焼器動作特性を計測するシステムを作製するとともに、供試実験装置において不安定燃焼を起こす条件を見出した。本研究費で購入した高速度カラーカメラにより燃焼状態を可視化するとともに、予混合燃焼部の特徴である青色火炎の抽出に成功した。また、フォトダイオードアレイ分光計によりリフト火炎が不安定化する過程により発光スペクトルが異なり、特定の波長成分の観測により火炎リフト量を定量化できることを確認した。制御アクチュエータとしてはボイススピーカーを用いたシンセティックジェット発生装置を作製した。アクチュエータの特性を同定するため、入力周波数・入力電力による噴流の流体力学的特性を熱線流速計により計測した。その結果、作製したアクチュエータは火炎制御に十分有効であることが確認された。燃焼制御に必要なセンサーとアクチュエータを供試燃焼器に取り付けオープンループの制御実験を行った。センサはフォトダイオードアレイ分光計と高速度カメラの双方を使った。その結果、本システムはリフト火炎のリフト量を計測およて陶脚可能であることが確認できた。次年度は、ピラガス制御により鰍暁制御が可能か否かを調べる。希薄予混合燃焼は燃焼温度が通常の予混合燃焼と比較すると低いため、NOx排出量を減少させることができる高効率な燃焼形態であることが知られている。しかし、希薄予混合燃焼は理論混合比より高い比率で空気を導入するために混合気中の燃料割合が高い部分と低い部分が混在し不安定燃焼を起こしやすい。
KAKENHI-PROJECT-15360122
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15360122
ピラガス法による希薄予混合燃焼における不安定性の制御
本研究の目的は、この不安定燃焼をカオスと捉えカオス制御法を適用することで希薄予混合燃焼器の効率を飛躍的に高めることある。15年度に完成させた光学センサーシステムとスピーカー型シンセティックジェットアクチュエータを供試燃焼器に取り付け制御実験を行った。光学センサーは高速度CCDカメラにより火炎全体を計測するシステムと、フォトダイオードアレイを使って燃焼ガスが放出する特定周波数の光を光学フィルターでとり出すスペクトロスコピー(分光計)を用いた。また、フォトダイオードアレイシステムより更に高速な単一フォトダイオードと光学ナローバンドフィルターを使ったシステムも開発した。アクチュエータはボイススピーカーを使ったシンセティックジェットを使用したが、プラズマシンセティックジェットアクチュエータ(PSJA)も開発を進めた。後者は燃焼制御アクチュエータとして有望であるが、動作特性等に未知な部分が多いため熱線風速計で詳細な実験を行い基礎データを収集した。また、数値実験によりPSJAによるピラガス制御の最適化に関して、翼後流などの基本的な流れ場での特性を調べ、PSJAの動作原理に関する重要な知見をえた。最終的にセンサーからアクチュエータまでの能動制御系を構築し、ピラガス制御(ディレードフィードバック制御)により、不安定な浮き上がり火炎の安定化制御が可能であることを実証した。
KAKENHI-PROJECT-15360122
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15360122
細胞間・細胞内ネットワークに注目した環境汚染物質によるアレルギー増悪機構の解明
本研究では、環境汚染物質(ベンゾ[a]ピレンやフタル酸エステル等)がアレルギーを増悪する作用機序の解明を目的とし、種々の免疫担当細胞の活性化および細胞間・細胞内ネットワークに及ぼす影響とその役割について検討した。当該環境汚染物質は脾細胞中のT細胞と抗原提示細胞(マクロファージ、樹状細胞、B細胞)を活性化したが、T細胞に対する直接的な作用は認められず、抗原提示細胞とT細胞の相互作用が重要であることが示された。特に、T細胞上のCD3/CD28を介した細胞間ネットワーク、その後の細胞内シグナル伝達(細胞内ネットワーク)とTh2サイトカイン産生の増加等が、アレルギー増悪作用に重要であることが示された。本研究では、環境汚染物質(ベンゾ[a]ピレンやフタル酸エステル等)がアレルギーを増悪する作用機序の解明を目的とし、種々の免疫担当細胞の活性化および細胞間・細胞内ネットワークに及ぼす影響とその役割について検討した。当該環境汚染物質は脾細胞中のT細胞と抗原提示細胞(マクロファージ、樹状細胞、B細胞)を活性化したが、T細胞に対する直接的な作用は認められず、抗原提示細胞とT細胞の相互作用が重要であることが示された。特に、T細胞上のCD3/CD28を介した細胞間ネットワーク、その後の細胞内シグナル伝達(細胞内ネットワーク)とTh2サイトカイン産生の増加等が、アレルギー増悪作用に重要であることが示された。本研究では、疫学や動物モデルを用いたこれまでの研究によりアレルギー疾患を増悪することが既に明らかにされている環境汚染物質を主たる対象とし、アレルギー増悪影響においてkey roleを担っている免疫担当細胞および細胞内分子とそのネットワークを明らかにすることを目的としている。本年度は、ディーゼル排気微粒子の有機抽出成分(DEP-OC)とベンゾ[a]ピレン(BaP)を対象とし、アトピー素因を有するマウスの免疫担当細胞を用いて影響を評価した。これまでに、これらの化学物質の曝露は、脾細胞のTCRやCD69、MHC class II、CD86等の発現を増強し、T細胞と抗原提示細胞いずれも活性化することを明らかにしている。そこで、脾細胞からT細胞や抗原提示細胞(B細胞、マクロファージ、樹状細胞)を単離または除去した後、これらにDEP-OCとBaPを曝露し、細胞表面分子の発現の変化を検討した。その結果、DEP-OCは、T細胞およびB細胞、マクロファージを直接的に活性化するが、樹状細胞には直接的に影響を及ぼさないことを明らかにした。BaPは、T細胞およびB細胞、マクロファージ、樹状細胞を直接的に活性化したが、単離したT細胞に対してはその活性化作用が弱まったことから、抗原提示細胞とT細胞の相互作用による影響増強効果の存在が示唆された。本研究では、疫学や動物モデルを用いたこれまでの研究によりアレルギー疾患を増悪することが明らかにされている環境汚染物質を主対象とし、アレルギー増悪影響においてkey roleを担っている免疫担当細胞および細胞内分子とそのネットワークを明らかにすることを目的としている。複数の免疫担当細胞が存在するマウスの脾細胞を使用し、MACS Microbeadsを用いた細胞分離法により、特定のT細胞や抗原提示細胞(B細胞、マクロファージ、樹状細胞)を単離または除去した後、実験に使用した。これまでに、大気中微小粒子等に含有されるベンゾ[a]ピレン(BaP)の影響について検討し、分離前の脾細胞に対するT細胞活性化作用に比べて、B細胞やマクロファージを除去した細胞群や単離T細胞ではその作用が弱まったことから、抗原提示細胞とT細胞の相互作用による影響の増強効果の存在を見出している。本年度は、プラスチックの可塑剤であるフタル酸エステル(フタル酸ジエチルヘキシルとフタル酸ジイソノニル)を評価対象とした。T細胞および抗原提示細胞(B細胞、マクロファージ、樹状細胞)を単離または除去した各細胞群を、フタル酸エステルに曝露した後、T細胞の活性化マーカー分子(TCR,CD3,CD69)、抗原提示細胞の活性化マーカー分子(MHC class II, CD86)の発現の変化を検討した。その結果、フタル酸エステル曝露による脾細胞中のTCRやCD69陽性細胞率の増加は、B細胞またはマクロファージの除去によりあるいは単離T細胞では低減されたが、樹状細胞の除去による低減は認められなかった。一方、フタル酸エステル曝露による脾細胞中のCD86陽性細胞率の増加は、T細胞を除去しても観察され、単離したB細胞、マクロファージ、樹状細胞においても増加が認められた。これより、BaPと同様に、フタル酸エステル曝露によるT細胞の活性化にはB細胞やマクロファージなどの抗原提示細胞を介した相互作用が重要であり、抗原提示細胞の活性化には直接的な作用が大きい可能性が示唆された。本研究では、疫学や動物モデルを用いたこれまでの研究によりアレルギー疾患を増悪することが明らかにされている環境汚染物質を主対象とし、アレルギー増悪影響においてkey roleを担う免疫担当細胞および細胞内分子とそのネットワークを明らかにすることを目的としている。細胞は、複数の免疫担当細胞より構成される脾細胞を使用し、MACSを用いた磁気細胞分離法により、特定のT細胞や抗原提示細胞(B細胞、マクロファージ、樹状細胞)を単離または除去した後、実験に使用した。
KAKENHI-PROJECT-22241015
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22241015
細胞間・細胞内ネットワークに注目した環境汚染物質によるアレルギー増悪機構の解明
これまで、ベンゾ[a]ピレン(BaP)やフタル酸エステル(フタル酸ジエチルへキシルとフタル酸ジイソノニル)の影響について検討し、当該化学物質によるT細胞の活性化にはB細胞やマクロファージなどの抗原提示細胞を介した相互作用が重要である可能性を見出している。本年度は、脾細胞の活性化分子の増加に寄与するシグナル伝達系について検討したが、当該化学物質による影響は軽微であった。一方、作用機序として、これまでに、抗原提示細胞の活性化を介したT細胞の活性化亢進の可能性を見出していることから、それを詳細に検証するため、脾細胞からT細胞のみを単離し、抗CD3/CD28抗体を用いて、抗原提示細胞からの一定の刺激を模擬した条件下で、化学物質の影響を検討した。その結果、BaP等の化学物質は、抗CD3/CD28抗体の非存在下では影響を及ぼさなかったが、抗CD3/CD28抗体の刺激下ではT細胞のCD69の発現やサイトカイン(IL-2, IL-4等)の産生、細胞増殖を顕著に促進した。これより、当該化学物質は、T細胞上のCD3/CD28を介した抗原提示細胞からのシグナルを増強することにより、T細胞を活性化する可能性が示唆された。また、これには、抗原提示細胞由来の液性因子やCD40Lなど他の分子を介した抗原提示細胞との相互作用は必須ではなかったが、抗原提示細胞の存在によって、よりT細胞の活性化が促されることも示された。本研究では、疫学や動物モデルを用いたこれまでの研究によりアレルギー疾患を増悪することが明らかにされている環境汚染物質を主対象とし、アレルギー増悪影響においてkey roleを担っている免疫担当細胞および細胞内分子とそのネットワークを明らかにすることを目的とした。細胞は、複数の免疫担当細胞が存在するマウス脾細胞を使用し、MACS Microbeadsを用いた細胞分離法により特定のT細胞や抗原提示細胞(B細胞、マクロファージ、樹状細胞)を単離または除去した後実験に使用した。これまで、ベンゾ[a]ピレン(BaP)やプラスチックの可塑剤であるフタル酸エステル(フタル酸ジエチルへキシルとフタル酸ジイソノニル)の影響について検討し、当該化学物質によるT細胞の活性化にはB細胞やマクロファージなどの抗原提示細胞を介した相互作用が重要である可能性を見出している。本年度は、脾細胞に対する当該化学物質の作用点・機序におけるタンパクリン酸化酵素や転写因子、ホルモンレセプターの関与を明らかにするため、それらの阻害剤で処理し、BaPに曝露した。その結果、脾細胞の一部の活性化分子の増加が、p38 MAPKやNFAT等の阻害剤や甲状腺ホルモンレセプターの拮抗剤で軽減される傾向がみられたが、その効果は軽微であったことから、影響に関わる複数の経路の存在が示唆された。また、これまでの検討では、脾細胞中の樹状細胞の活性にはあまり影響が認められなかったが、骨髄細胞から分化誘導した樹状細胞に及ぼす影響について検討した結果、BaP等の曝露により、少数細胞群ではあるが形質細胞様樹状細胞の増加もみられ、化学物質が樹状細胞のサブセット構成に影響を与える可能性が示唆された。樹状細胞は、免疫-炎症反応の調節に重要な役割を担っていることから、化学物質によるそのサブセット構成の変化は、その後の生体影響に関係する要因と考えられる。本研究は、「『疫学や動物モデルを用いたこれまでの研究によりアレルギー疾患を増悪することが既に明らかにされている環境汚染物質』を主たる対象とし、アレルギー増悪作用のメカニズムをアトピー動物とその免疫担当細胞を用いて解明する。
KAKENHI-PROJECT-22241015
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22241015
Superfluorescence, free-induction decay, and four-wave mixing: experimental and numerical studies of the propagation of free-electron laser pulses through dense atomic/ionic media
本研究の目的は、可視光領域のレーザー技術開発によって可能となった様々な量子光学手法を、より短い波長(極端紫外線や軟X線)への応用です。成功すれば、原子や分子の電子状態と光との相互作用を制御する鍵になります。又、適切の原子系を選ぶことによって、逆に光の性質(波長、パルス長、コヒーレンス性)の制御にも繋がります。具体的に、最初の目的は自由電子レーザーの極端紫外パルスを用いて、高密度ヘリウムイオン試料における超蛍光、四波混合を研究対象とします。本研究の目的は、可視光領域のレーザー技術開発によって可能となった様々な量子光学手法を、より短い波長(極端紫外線や軟X線)への応用です。成功すれば、原子や分子の電子状態と光との相互作用を制御する鍵になります。又、適切の原子系を選ぶことによって、逆に光の性質(波長、パルス長、コヒーレンス性)の制御にも繋がります。具体的に、最初の目的は自由電子レーザーの極端紫外パルスを用いて、高密度ヘリウムイオン試料における超蛍光、四波混合を研究対象とします。
KAKENHI-PROJECT-19K12636
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K12636
多層ディラック電子系における新奇な磁気伝導現象の開拓とバンド構造制御
昨年度から引き続き,磁性ディラック電子系EuMnBi2における,ディラック電子の量子輸送現象と磁気秩序の結合に関する研究を行なった.EuMnBi2はディラック電子をもつBiの正方格子シートと,磁性を持つEuとMnを含む絶縁層からなる層状化合物である.申請者は前年度までに,外部磁場により絶縁層の磁気構造を変化させることで,ディラック電子の量子伝導を制御できることを示した.また,この系の磁気構造を,ゼロ磁場,磁場中を含む全ての相について詳細に明らかにした.本年度はこのEuMnBi2の微視的な電子状態に対する磁気構造の影響を調べることで,この系の特異な磁気輸送現象の起源を明らかにすることを目的として研究を行なった.EuMnBi2の電子状態を調べるため,量子振動現象の解析をゼロ磁場反強磁性相,磁場中スピンフロップ相の両方について行なった.磁場方位を傾けたときの振る舞いから,ディラック電子が形成するランダウ準位におけるゼーマン分裂を見出し,さらにゼーマン分裂の大きさが反強磁性相とスピンフロップ相で変化するという特異な振る舞いを明らかにした.第一原理計算との比較を行なった結果,スピンフロップ相ではEuスピンとディラック電子の間で働く交換相互作用がディラック電子バンドのスピン分裂をもたらし,これがゼーマン効果に繰り込まれることによってゼーマン分裂の大きさが変化していることが示唆された.この結果については原著論文として投稿した(H. Masuda et al., PRB98, 161108 (2018)).平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。本年度は,申請者が過去に見いだした希少な磁性ディラック電子系のモデル物質であるEuMnBi2について,詳細な磁気構造と電子構造の解明,ならびに周辺物質における新奇な輸送特性の開拓を目的として研究を進めた.EuMnBi2はディラック電子をもつBiの正方格子シートと,磁性を持つEuとMnを含む絶縁層からなる層状化合物である.申請者は前年度までに,外部磁場により絶縁層の磁気構造を変化させることで,ディラック電子の量子伝導を制御できることを示した.本年度はまず,この現象について微視的な電子構造の観点から精査した.EuMnBi2における異なる磁気構造に対して,電子構造を分析する強力な手段である量子振動現象の詳細な測定・解析を行い,ディラック電子状態が磁気構造の変化から受ける影響を定量的に明らかにした.さらに磁場方位を傾けたときの振る舞いから,強磁場下においてディラック電子が形成するランダウ準位に大きなゼーマン分裂が生じることを示した.これは重元素であるBiに由来する強いスピン軌道相互作用を反映していると考えられる.また,ゼーマン分裂の大きさが磁気構造によって変化するという予想外の結果も得られた.これらの結果は,現在申請者が論文にまとめている.さらに,EuMnBi2の周辺物質の開拓を行った結果,BiサイトをSbで置換したEuMnSb2の純良単結晶の育成に成功し,基礎物性の測定を進めた.その結果,この物質では正方格子シートがわずかに歪んでおり,また絶縁層の磁気構造がEuMnBi2とは大きく異なることが分かった.さらに固溶系EuMn(Sb,Bi)2の単結晶育成を行い,組成のわずかな変化によって正方格子シートの歪みが解消すること,またその場合にはEuMnBi2と類似した磁気構造が実現することが分かり,正方格子シートの歪みと磁気構造が強くカップルしていることを示した.主要な研究目的であったEuMnBi2の電子構造の精査について,異なる磁気構造に対して量子振動現象の詳細な測定・解析を行い,ディラック電子状態が磁気構造の変化から受ける影響を定量的に示すことができた.さらに強磁場下において,ディラック電子が形成するランダウ順位に大きなゼーマン分裂が生じること,その分裂の大きさが磁気構造に依存することなど,当初は予想していなかった結果も得られている.これらの結果は,現在申請者が論文にまとめている.また周辺物質の開拓についても新物質EuMnSb2ならびに固溶系の単結晶育成に成功し,正方格子シートの歪みと磁気構造の相関を新たに見いだした.以上の理由から,当初計画していた以上の進捗が得られたと判断した.本年度は,申請者が過去に発見した磁性ディラック電子系化合物EuMnBi2について,前年度に引き続き詳細な磁気構造の解明,並びに周辺化合物の開拓を目的として研究を進めた.EuMnBi2はディラック電子を持つBiの正方格子シートと,磁性元素であるEu/Mnを含む絶縁層からなる,層状構造を持つディラック電子系である.申請者はこれまでの研究において,外部磁場により絶縁層の磁気構造を変化させることで,ディラック電子の量子伝導を制御できることを示した.本年度はこの現象について微視的な理解を目的として,まず磁気構造について詳しく調べた.具体的にはEu, Mnの反強磁性秩序の解明を目指してゼロ磁場,磁場中での単結晶中性子回折の測定を行なった.フラックス法によって育成した大型の単結晶と,J-PARC, MLFの高効率な単結晶中性子回折用ビームラインSENJUを用いることにより,Euによる強い中性子吸収にもかかわらず明瞭な回折シグナルを得ることができ,EuMnBi2の磁気構造について詳細な情報を得ることができた.
KAKENHI-PROJECT-16J10114
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J10114
多層ディラック電子系における新奇な磁気伝導現象の開拓とバンド構造制御
この結果は,今後EuMnBi2の磁気輸送特性を理解する上で重要な情報を与えると期待され,現在申請者が論文にまとめている段階である.また,EuMnBi2の微視的な電子状態について,これまでの量子振動現象による解析に加え,ARPESと第一原理計算による解明を進めている.これらの実験・計算は外部の研究者と共同で行なった.特にゼロ磁場,磁場中での第一原理計算と量子振動を比較することにより,Euの反強磁性秩序がディラック電子状態に及ぼす影響について一定の理解を得ることができた.この結果については,現在論文を投稿する準備を進めている段階である.主要な研究目的の一つであったEuMnBi2の磁気構造の精査について,単結晶中性子回折を用いてゼロ磁場,磁場中における詳細な反強磁性磁気構造を明らかにすることができた.またディラック電子状態がEu反強磁性秩序から受ける影響についても,これまで量子振動現象の解析によって明らかになった微視的な電子状態の変化について,第一原理計算との比較により一定の理解を得ることができた.これらの結果は,現在申請者がそれぞれ論文にまとめている.今後これらの結果をもとに,EuMnBi2の磁気輸送現象についての理解が進むと期待される.以上の理由から,研究は概ね順調に進展していると判断した.昨年度から引き続き,磁性ディラック電子系EuMnBi2における,ディラック電子の量子輸送現象と磁気秩序の結合に関する研究を行なった.EuMnBi2はディラック電子をもつBiの正方格子シートと,磁性を持つEuとMnを含む絶縁層からなる層状化合物である.申請者は前年度までに,外部磁場により絶縁層の磁気構造を変化させることで,ディラック電子の量子伝導を制御できることを示した.また,この系の磁気構造を,ゼロ磁場,磁場中を含む全ての相について詳細に明らかにした.本年度はこのEuMnBi2の微視的な電子状態に対する磁気構造の影響を調べることで,この系の特異な磁気輸送現象の起源を明らかにすることを目的として研究を行なった.EuMnBi2の電子状態を調べるため,量子振動現象の解析をゼロ磁場反強磁性相,磁場中スピンフロップ相の両方について行なった.磁場方位を傾けたときの振る舞いから,ディラック電子が形成するランダウ準位におけるゼーマン分裂を見出し,さらにゼーマン分裂の大きさが反強磁性相とスピンフロップ相で変化するという特異な振る舞いを明らかにした.第一原理計算との比較を行なった結果,スピンフロップ相ではEuスピンとディラック電子の間で働く交換相互作用がディラック電子バンドのスピン分裂をもたらし,これがゼーマン効果に繰り込まれることによってゼーマン分裂の大きさが変化していることが示唆された.この結果については原著論文として投稿した(H. Masuda et al., PRB98, 161108 (2018)).当初の計画通り,引き続きEuMnBi2の詳細な電子構造,磁気構造の解明を進める.現在磁場下での中性子散乱,X線共鳴磁気散乱の実験が進行中であり,詳細な磁気構造の解明を試みる予定である.また電子構造についても量子振動に加えてARPESによる電子状態の観測を試みる.EuMn(Sb,Bi)
KAKENHI-PROJECT-16J10114
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高レベル言語で記述されたソフトウェアの時相的・関係的仕様の検証
本研究では、研究代表者がこれまでに研究・開発を行ってきた高レベル言語のための検証理論であるリファインメント型システムおよびホーン節制約解消法、関数型言語OCamlのための全自動・高精度検証ツールであるRCamlを発展させ、実用上重要であるにも関わらず既存手法では十分に扱えなかった言語機能(再帰データ構造・参照セル・オブジェクト・モジュール機構・例外処理機構・マルチスレッド機構)および仕様(時相的仕様・関係的仕様)の全自動・高精度検証法の確立を目指している。前年度までの成果である、依存リファインメント型・エフェクトシステムによる依存時相仕様検証問題から不動点論理式の妥当性判定問題への帰着法と妥当性判定のための演繹体系だけでは、全自動で高レベルプログラムの検証を行うことができなかった。そこで、本年度は依存時相仕様および関係的仕様の自動検証の実現を目指して研究を行い、以下の成果を得た。(1)不動点論理の妥当性判定問題の自動解消法を提案した。提案手法は妥当性判定問題を、ホーン節制約解消問題を一般化した述語制約解消問題に帰着した上で、反例駆動帰納的合成法と決定木学習、テンプレートに基づく解探索法を組み合わせて解くものである。(2)述語制約解消問題を解くための別の手法として、機械学習分野で研究されてきた因子グラフおよびマルコフ確率場のための確率伝搬法とシステム検証分野で研究されてきた反例駆動帰納的合成法、述語抽象、SATソルバを組み合わせたものを提案した。(3)不動点論理式の妥当性判定を関係的仕様検証に応用できるようにするため、一階不動点論理の循環証明体系を提案し、前年度までの成果である不動点論理の妥当性判定のための演繹体系との関係を調査した。研究実績の概要で述べたとおり、ホーン節制約解消問題を一般化した述語充足可能性判定問題の解消法、不動点論理の妥当性判定の述語充足可能性判定への帰着法、不動点論理の妥当性判定のための循環証明体系といった先駆的な成果を得ている。これらの成果の一部は、ホーン節制約解消に関する国際ワークショップであるHCVS'18の招待講演で発表した。また、HCVS'19併設のCHC競技会に提案手法を実装したツールであるPCSatを提出し、類似ソルバとの比較評価を行うなど、理論面だけでなく実装・評価においても大きな進展があった。今後も計画通り研究を推進する。2019年度には、これまでに得られた依存リファインメント型・エフェクトシステムに関する研究成果に基づき、OCaml言語用検証ツールRCamlを拡張することによって、高階・再帰データ構造、参照セル、オブジェクト、モジュール機構、例外処理機構、マルチスレッド機構といった高度な言語機能を扱うOCamlやJavaで記述された高レベルプログラムを対象とし、その依存時相仕様検証問題を不動点論理の妥当性判定問題に帰着するツールを完成させる。それと今年度までの成果である不動点論理の妥当性判定のためのソルバを組み合わせることによって、高レベルプログラムの時相的仕様検証および関係的仕様検証、それらを包含する仕様クラスであるHyperpropertiesの全自動検証が実現する。さらに、検証法の評価のために、情報セキュリティ(機密性・完全性・可用性)への応用を行う。本研究では、研究代表者がこれまでに研究・開発を行ってきた高レベル言語のための検証理論であるリファインメント型システムおよびホーン節制約解消法、関数型言語OCamlのための全自動・高精度検証ツールであるRCamlを発展させ、実用上重要であるにも関わらず既存手法では十分に扱えなかった言語機能(再帰データ構造・参照セル・オブジェクト・モジュール機構・例外処理機構・マルチスレッド機構)および仕様(時相的仕様・関係的仕様)の全自動・高精度検証法の確立を目指している。本年度は以下の成果を得た。1.再帰データ構造を扱うプログラムを高精度に検証できるようリファインメント型システムを拡張した上で、再帰データ構造によるオブジェクトのエンコード法を考案・実装することによって、オブジェクトを扱うプログラムの高精度検証を実現した。さらに、ホーン節制約解消法を代数データ構造を扱えるよう拡張することによって、拡張された型システムのための型推論を実現し、全自動・高精度検証を可能とした。2.無交代様相μ計算の論理式として記述された時相的仕様の検証のために、論理式と検証対象の高レベルプログラムの積をとることによって得られる無限状態Buechiゲームを、RCamlが扱える停止性・非停止性検証問題に帰着して解く手法を考案・実装した。3.高レベルプログラムの関係的仕様検証のため、帰納的定理証明に基づくホーン節制約解消法を拡張して、ヒープ制約の解消、関係的プログラム合成、余帰納法の自動化を実現した。研究実績の概要で述べたとおり、リファインメント型システムおよびホーン節制約解消法の拡張の柱となる部分については順調に進展している。一方、本年度中の実施を予定していた、例外処理機構・マルチスレッド機構の再帰データ構造を用いたエンコード法の確立や、一般の様相μ計算の論理式として記述された時相的仕様の検証といった発展的な研究については当初の計画より遅れている。その理由は平成29年度以降に実施を予定していた関係的仕様検証のための拡張を前倒しして実施したためであり、そちらに関してはシステム検証に関するトップ会議であるCAVに論文が採択されるなど顕著な成果が得られている。
KAKENHI-PROJECT-16H05856
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高レベル言語で記述されたソフトウェアの時相的・関係的仕様の検証
本研究では、研究代表者がこれまでに研究・開発を行ってきた高レベル言語のための検証理論であるリファインメント型システムおよびホーン節制約解消法、関数型言語OCamlのための全自動・高精度検証ツールであるRCamlを発展させ、実用上重要であるにも関わらず既存手法では十分に扱えなかった言語機能(再帰データ構造・参照セル・オブジェクト・モジュール機構・例外処理機構・マルチスレッド機構)および仕様(時相的仕様・関係的仕様)の全自動・高精度検証法の確立を目指している。本年度は以下の成果を得た。(1)分岐仕様の検証のためのリファインメント型システムを提案し、そのメタ理論を整備した。(2)依存時相仕様の検証のためのリファインメント型システムを提案し、型検査問題が不動点述語論理の妥当性判定問題に帰着されることを示した。さらに、妥当性判定のための演繹体系を提案した。また、型システムおよび演繹体系のメタ理論を整備した。(3)高階プログラムの時相仕様記述のための動的命題論理HOT-PDLを提案し、そのセキュリティおよびリファインメント型検査への応用を示した。さらに、高階プログラムに対するHOT-PDLモデル検査問題の決定可能性を示した。(4)昨年度までに得られた成果である帰納的定理証明に基づくホーン節制約解消法を拡張し、余帰納的述語を扱えるようにし、プログラムの双模倣性自動検証への道筋をたてた。(5)帰納的定理証明に基づくホーン節制約解消法を拡張し、関係的仕様からのプログラム合成を可能とした。(6)リファインメント型システムと分離論理およびホーア型理論を融合することによって、破壊的変更が可能なデータ構造を扱うプログラムの検証をヒープの理論H上のホーン節制約解消に帰着する手法を考案した。さらに、帰納的定理証明に基づくホーン節制約解消法を拡張することによって、ヒープの理論H上のホーン節制約解消を可能にした。研究実績の概要で述べたとおり、リファインメント型システム、ホーン節制約解消、および時相仕様記述のための論理に関する研究で大きな成果を得ている。特に研究実績の概要で述べた成果1,2,3については、それぞれプログラミング言語のトップ会議POPL、計算機科学における論理のトップ会議LICS、システム検証のトップ会議CAVに論文が採択されている。さらに4,5については国内の研究大会(日本ソフトウェア科学会第34回大会)において学生がそれぞれ学生奨励賞と優秀発表賞を受賞している。本研究では、研究代表者がこれまでに研究・開発を行ってきた高レベル言語のための検証理論であるリファインメント型システムおよびホーン節制約解消法、関数型言語OCamlのための全自動・高精度検証ツールであるRCamlを発展させ、実用上重要であるにも関わらず既存手法では十分に扱えなかった言語機能(再帰データ構造・参照セル・オブジェクト・モジュール機構・例外処理機構・マルチスレッド機構)および仕様(時相的仕様・関係的仕様)の全自動・高精度検証法の確立を目指している。前年度までの成果である、依存リファインメント型・エフェクトシステムによる依存時相仕様検証問題から不動点論理式の妥当性判定問題への帰着法と妥当性判定のための演繹体系だけでは、全自動で高レベルプログラムの検証を行うことができなかった。そこで、本年度は依存時相仕様および関係的仕様の自動検証の実現を目指して研究を行い、以下の成果を得た。(1)不動点論理の妥当性判定問題の自動解消法を提案した。
KAKENHI-PROJECT-16H05856
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レジリエンスの神経回路基盤:プロラクチン放出ペプチド神経回路の役割
レジリエンスとはストレスを負荷された状態から、正常な状態に戻ろうとする復元力や回復力を示す。このレジリエンスが不充分だとうつ病や心的外傷後ストレス障害といったストレス関連精神神経障害を発症するという概念がある。臨床的にはこの妥当性は認知されているが、その分子基盤は判っていない。申請者はレジリエンスを担う候補因子としてプロラクチン放出ペプチド(PrRP)を見出した。PrRPは脳の延髄孤束核、延髄腹外側部、視床下部背内側核の3カ所に限局して発現する神経ペプチドである。またPrRPの受容体としてGPR10が同定されている。脳内におけるGPR10発現領域はよく判っていない。申請者はこれまでに、1社会的敗北ストレス負荷により延髄孤束核、延髄腹外側部、視床下部背内側核の3カ所のPrRP産生ニューロンが活性化されること(未発表データ)、2PrRP遺伝子欠損マウスに慢性の社会的ストレスを負荷すると、うつ様行動の一つである同種マウスに対する社会的探索意欲の減弱が起こること(未発表データ)、3PrRP遺伝子欠損マウスは条件恐怖学習における恐怖記憶が増強すること(YoshidaらEndocrinoogy 2014)、4PrRPを視床下部背内側核に局所投与すると不安行動が減弱すること(未発表データ)を見出した。これらの結果はPrRPがストレス負荷状態からの回復を促進するレジリエンス亢進因子であることを示唆している。本研究ではPrRP/GPR10システムにはレジリエンス作用があるという仮説を検証する実験を行っている。1独自に作製したPrRP産生細胞レポーターラットとアデノ随伴ウイルス(AAV)を用いてPrRP産生ニューロンの軸索投射を明らかにする実験系の開発を行った。PrRPプロモーター制御下で緑色蛍光タンパク質を発現するBACトランスジェニックラットにおいて、蛍光タンパク質がPrRP産生細胞において特異的に発現することを確認した。AAV/Cre-DOGシステムを用いて、脳において緑色蛍光タンパク質依存的にCre活性が誘導される実験系を構築した。また、軸索に局在する赤色蛍光タンパク質を作成した。2CRISPR/Cas9システムを用いて独自に作製したPrRP受容体遺伝子欠損マウスのゲノムシークエンスを行い、フレームシフト変異が起こる2種類の遺伝子欠損ラインを構築した。3CRISPR/Cas9システムを用いて独自に作製したPrRP受容体発現細胞レポーターマウスにおいて目的の遺伝子が正しく挿入されているかの確認作業を行った。作製した1ラインにおいて、レポーターとして挿入したVenus遺伝子がPrRP遺伝子座に1コピー挿入されていることを確認した。1PrRP産生細胞レポーター動物、AAV/Cre-DOGシステム、軸索局在型赤色蛍光タンパク質を組み合わせ、延髄孤束核、延髄腹外側部、視床下部背内側核に存在するPrRP産生ニューロンの軸索投射を明らかにする。2CRISPR/Cas9システムを用いて独自に作製したPrRP受容体遺伝子欠損マウスの脳切片に対するリガンド結合実験を用いて機能的なPrRP受容体タンパク質が欠失していることを確認する。慢性の社会的ストレスを負荷すると、PrRP遺伝子欠損マウスと同様に、社会的探索意欲の減弱が起こるかを解析する。3樹立中のPrRP受容体発現細胞レポーターマウスにおいてVenus遺伝子が正しく挿入されているかをゲノムシークエンスによって確認する。このレポーターマウスを用いて、これまでに明らかになっていないPrRP受容体の脳内発現とその特性を明らかにする。また、社会敗北ストレス時に活性化するPrRP受容体ニューロンを特定する。4CRISPR/Cas9システムを用いて、時間・空間的にPrRP受容体遺伝子を欠損できる動物の開発を行っている。現在、目的のDNA配列が正しく挿入されているかを確認している。ストレスを負荷された状態から、正常な状態に戻ろうとする復元力・回復力(レジリエンス)が不充分だとうつ病や心的外傷後ストレス障害といったストレス関連精神神経障害を発症するとされている。臨床的にはこの妥当性は認知されているが、その分子基盤は判っていない。申請者はレジリエンスを担う候補因子としてプロラクチン放出ペプチド(PrRP)を見出した。PrRPは延髄孤束核、延髄腹外側部、視床下部背内側核の3カ所に限局して発現する神経ペプチドである。申請者はこれまで、1社会的ストレス負荷により上記3カ所のPrRP産生ニューロン全てが活性化されること、2PrRP遺伝子欠損マウスに慢性の社会的ストレスを負荷すると、うつ様行動の一つである同種マウスに対する社会的探索意欲の減弱が起こること(以上、未発表データ)、3PrRP遺伝子欠損マウスは条件恐怖学習における恐怖記憶が増強すること(YoshidaらEndocrinol.2014)、4PrRPを視床下部背内側核に局所投与すると不安行動が減弱すること(未発表データ)を見出した。これらの結果はPrRPがストレス負荷状態からの回復を促進するレジリエンス亢進因子であることを示唆している。本研究ではPrRPにはレジリエンス作用があるという仮説を検証する。PrRP産生ニューロンを時間・空間的に選択破壊できる動物、PrRP受容体遺伝子欠損動物、PrRP受容体発現細胞レポーター動物、時間・空間的にPrRP受容体遺伝子を欠損できる動物の開発を行った。1プロラクチン放出ペプチド(PrRP)産生ニューロンを時間・空間的に選択破壊する実験系の開発を行った。すなわち、独自で開発したPrRP産生ニューロン特異的にヒトIL-2受容体αサブユニットを発現するBAC
KAKENHI-PROJECT-17K08574
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K08574
レジリエンスの神経回路基盤:プロラクチン放出ペプチド神経回路の役割
トランスジェニック動物に、ヒトIL-2受容体αサブユニットに対するイムノトキシンを脳内局所投与する。これによりPrRP産生ニューロンを局所的に破壊する。イムノトキシン投与によるPrRP産生ニューロンの破壊の効果が確認できた。2PrRP受容体遺伝子欠損動物をCRISPR/Cas9システムを用いて独自に作製している。3PrRP受容体発現細胞レポーター動物を独自に作製している。すなわち、CRISPR/Cas9システムを用いて内在性PrRP受容体遺伝子制御下で蛍光タンパク質Venus遺伝子が発現する動物を開発している。4時間・空間的にPrRP受容体遺伝子を欠損できる動物をCRISPR/Cas9システムを用いて独自に作製している。レジリエンスとはストレスを負荷された状態から、正常な状態に戻ろうとする復元力や回復力を示す。このレジリエンスが不充分だとうつ病や心的外傷後ストレス障害といったストレス関連精神神経障害を発症するという概念がある。臨床的にはこの妥当性は認知されているが、その分子基盤は判っていない。申請者はレジリエンスを担う候補因子としてプロラクチン放出ペプチド(PrRP)を見出した。PrRPは脳の延髄孤束核、延髄腹外側部、視床下部背内側核の3カ所に限局して発現する神経ペプチドである。またPrRPの受容体としてGPR10が同定されている。脳内におけるGPR10発現領域はよく判っていない。申請者はこれまでに、1社会的敗北ストレス負荷により延髄孤束核、延髄腹外側部、視床下部背内側核の3カ所のPrRP産生ニューロンが活性化されること(未発表データ)、2PrRP遺伝子欠損マウスに慢性の社会的ストレスを負荷すると、うつ様行動の一つである同種マウスに対する社会的探索意欲の減弱が起こること(未発表データ)、3PrRP遺伝子欠損マウスは条件恐怖学習における恐怖記憶が増強すること(YoshidaらEndocrinoogy 2014)、4PrRPを視床下部背内側核に局所投与すると不安行動が減弱すること(未発表データ)を見出した。これらの結果はPrRPがストレス負荷状態からの回復を促進するレジリエンス亢進因子であることを示唆している。本研究ではPrRP/GPR10システムにはレジリエンス作用があるという仮説を検証する実験を行っている。1独自に作製したPrRP産生細胞レポーターラットとアデノ随伴ウイルス(AAV)を用いてPrRP産生ニューロンの軸索投射を明らかにする実験系の開発を行った。PrRPプロモーター制御下で緑色蛍光タンパク質を発現するBACトランスジェニックラットにおいて、蛍光タンパク質がPrRP産生細胞において特異的に発現することを確認した。AAV/Cre-DOGシステムを用いて、脳において緑色蛍光タンパク質依存的にCre活性が誘導される実験系を構築した。また、軸索に局在する赤色蛍光タンパク質を作成した。
KAKENHI-PROJECT-17K08574
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K08574
韓国における家事・介護労働者の労働実態と組織化に関する研究
1990年代以降、グローバリゼーションが急速に進み、世界規模での激烈なメガコンペティションが展開された。グローバル企業間の競争に勝つために、労働の規制緩和政策が導入され、全世界的に非正規労働者が急激に増大した。一方、韓国ではこれと相俟って女性の労働力化や少子・高齢化が進んだ結果、これまで家庭に任されていたケアの社会化が促進され、ケアワーカーが大量に生じた。これらの圧倒的多数は、中高年・低学歴の女性非正規労働者によって占められている。本研究は、韓国のケアワーカーの中でも、家事労働者と介護・看病労働者に焦点を当て、ジェンダーの視点から労働実態や、生活実態、さらに労働者の組織化の方法を明らかにしようとするものである。2018年度は、文献資料やケアワーカー協同組合などのインタビュー調査に拠りながら韓国のケアワーカーの労働市場分析を行い、その労働実態や雇用関係の特殊性を明らかにした。すなわち、彼女たちの多くは、雇用労働者というよりは個々の家庭や患者家族と単独にケアサービスの請負契約を結ぶ独立請負業者としての性格が強く、労働法や社会保障制度の保護から排除された「特殊雇用労働者」であることがわかった。したがって、誰が使用者であるかはっきりせず労使関係を形成することもできないため、ケアワーカーの組織化は、労働組合より協同組合という方法が有効であることが浮かび上がった。他方、こうした非正規労働者や特殊雇用労働者の雇用・就労条件を決定づけるもっとも重要な要因の一つに政府の労働・社会政策が挙げられる。2018年度は、「労働尊重」を公約に掲げた文在寅政権の労働・社会・女性政策の分析を行い、労働市場の最周辺部に位置する女性非正規労働者の労働基本権の確立にどれだけ寄与したかを考察した。進行中の政策ではあるが、周辺部労働者の社会的包摂や格差社会の解消にそれほど効果を上げていないことが実証された。韓国のケアワーカーに関する政府統計のraw dataや調査報告書といった文献資料を十分に渉猟し、それらを詳細に分析したこと。同時に、ケアワーカー協同組合及び非正規女性労働者を組織する女性労働組合において、それぞれ2回延べ10時間にわたって、インタビュー調査を実施したこと。これらを通して、韓国のケアワーカーの就労実態や組織化の方法を浮き彫りにすることができ、その成果を学術論文にまとめ発表した。こうして、二つの方向性を持つ当初の研究計画の一方はほぼ達成できた。他方、もう一つの研究計画である文在寅政権の労働・社会・女性政策の考察は、現在進行中の政策であるため、そのつど、報道資料や政府報告書、統計資料の分析を行っている。また、文在寅政権の労働・社会・女性政策を立案、企画する複数のキーパーソンや、労働組合や市民運動の活動家に対するインタビュー調査の約束も取りつけ、2019年度の調査研究の段取りも整った。さらに、2019年度には、韓国の労働改革に直接かかわっている研究者や実務家、労働組合の活動家を日本に招請し、日韓比較の視点から両国の「働き方改革」に関する国際シンポジウムを開催する予定である。2018年度から、本研究の成果を社会に還元するべく、日韓双方と緊密に連絡を取りながら、シンポジウム開催の準備を着々と進めてきた。以上より、現在までの研究課題の進捗状況はおおむね順調に予定通り進んでいると言ってよい。2018年度の研究で得られた知見をもとに、2019年度の研究を鋭意推進していきたい。まず、文在寅政権の労働・社会・女性政策の分析と考察を行う。とくに、文在寅政権の労働改革の3本の柱である、最低賃金額の引き上げ、公共部門の非正規労働者の無期契約職転換、労働時間の短縮がどのように展開されたかを緻密に追い、その実態と問題点を把握する。さらに、それらの政策が非正規女性労働者、中でもケアワーカーの労働・雇用条件にどのような影響を与えたかを文献資料の渉猟と分析、及び政策立案と実行に影響を与えた政府関係者、研究者、実務家、労働・市民運動の活動家に対するインタビューを通じて見ていきたい。また、文在寅政権の労働改革を客観的に捉え、評価するために、韓国から政策立案に影響を与えた研究者や実務家、活動家を招請して、日韓比較の視点から両国の「働き方改革」に関する国際シンポジウムを開催する予定である。このシンポジウムを通して、これまでの研究成果を公表するとともに、日韓両国の「働き方改革」の実態と問題点を明らかにしたい。1990年代以降、グローバリゼーションが急速に進展したことによって、世界規模で激しいメガコンペティションが展開され、この競争に勝つため労働の規制緩和政策が大々的に取られた結果、非正規雇用が全世界的に増大した。一方、これとともに女性の労働力化や社会の少子・高齢化が顕著に進む韓国では、「ケアの社会化」が促進され、ケアサービス労働に従事するケアワーカーが多く生まれたが、これらのケアワーカーの圧倒的多数は女性非正規労働者によって占められている。本研究は、韓国のケアワーカーの中でも、家事労働者と介護労働者に焦点を当て、ジェンダーの視点からその労働実態や生活実態、さらに労働者の組織化の仕方を明らかにしようとするものである。ところで、韓国では、朴槿恵大統領の弾劾・罷免にともない、2017年5月に文在寅政権が発足した。そこで、本研究では、朴政権から文政権への政権移行にともない労働・社会・女性政策がどのように変わり、その結果、労働市場の構造がどのように変わったのか、あるいは変わりつつあるのかの分析から研究をスタートさせた。
KAKENHI-PROJECT-17K04182
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K04182
韓国における家事・介護労働者の労働実態と組織化に関する研究
具体的には、新政権の労働・社会・女性政策の立案・企画に強い影響力を及ぼす研究者、官僚にインタビューを行い、さらに、前政権と新政権の政策報告書や資料・労働統計を渉猟し、比較分析を行った。この結果、新自由主義的な傾向の強い前政権に対し、新政権は労働者保護、とくに女性や若年就労者の法や制度への社会的包摂を目指していることが明らかとなった。これに加え、韓国の女性労働NPOの活動家に対するインタビュー調査を、2017年9月に実施した。同時に、これらの労働NPOと政府系及び民間労働研究所が共同で行った調査研究の結果を入手し、インタビュー調査の結果と併せて詳細に分析している最中である。この作業を通じて、韓国の女性ケアワーカーの生活や労働及び組織化の実態を浮き彫りにすることができよう。韓国の政権が朴槿恵政権から文在寅政権へと突然変わったせいで、新政権の労働・社会・女性政策の分析と考察が必要になったが、むしろ、新自由主義的な前政権と、社会的格差を是正し福祉国家を目指す現政権との対照性が鮮やかになり、非常に興味深い調査及び分析結果が得られた。こうした政策転換によって、女性や若年就労者などの社会的脆弱階層の社会的包摂を目指す現政権の政策の方向性が明らかになった。一方、女性労働NPO団体へのインタビュー調査を通して、労働法や社会保障制度、労働組合の保護に包摂されにくい女性非正規労働者が大部分を占める女性ケアワーカーの実態が浮き彫りになった。とくに、女性労働NPO団体と政府系及び民間労働研究所が共同で行った調査報告書を入手できたため、これらの分析を通して、韓国の介護・家事労働者といった女性ケアワーカーの生活・労働実態を浮き彫りにすることが大いに期待できる。また、これらを通して得られる知見は、2018年度に実施予定の女性ケアワーカーに対するインタビュー調査や設問調査の質問設計を行うのに大きな助けとなるだろう。加えて、韓国における社会的企業や労働者協同組合との人間関係を構築することができたことで、それらが女性ケアワーカーをいかに組織化し、地域社会に包摂しようとしているかについての調査の段取りができた。したがって、現在までの研究課題の進捗状況は、おおむね順調に予定通り進んでいると言ってよい。1990年代以降、グローバリゼーションが急速に進み、世界規模での激烈なメガコンペティションが展開された。グローバル企業間の競争に勝つために、労働の規制緩和政策が導入され、全世界的に非正規労働者が急激に増大した。一方、韓国ではこれと相俟って女性の労働力化や少子・高齢化が進んだ結果、これまで家庭に任されていたケアの社会化が促進され、ケアワーカーが大量に生じた。これらの圧倒的多数は、中高年・低学歴の女性非正規労働者によって占められている。本研究は、韓国のケアワーカーの中でも、家事労働者と介護・看病労働者に焦点を当て、ジェンダーの視点から労働実態や、生活実態、さらに労働者の組織化の方法を明らかにしようとするものである。2018年度は、文献資料やケアワーカー協同組合などのインタビュー調査に拠りながら韓国のケアワーカーの労働市場分析を行い、その労働実態や雇用関係の特殊性を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-17K04182
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K04182
高齢者福祉における自治体行政と公私関係の変容に関する社会学的研究
1990年代の高齢者保健福祉サービスの計画的な整備と、介護保険制度の実施が、高齢者福祉における自治体行政と福祉ミックスに与えた影響について実証的に解明することを目的として、自治体の事例調査、住民組織・NPOの調査、及び自治体単位の統計データの分析を行った。自治体事例調査の結果、介護保険制度後のサービス供給体制における自治体行政の役割や福祉ミックスの状況が、社会経済的・政治的要因、財政状況に加えて、公私関係の歴史的展開、医療機関の整備状況や医療関係者の介護サービスへの認識、介護サービスの多元化と市場化に関する首長と担当職員の認識などの要因に規定されることが明らかになった。また、社会福祉事業主体の自由化の動向や、「保健・医療・福祉複合体」の事業展開、自治体の労使関係や公設民営施設のあり方などにも着目することが必要であることが明らかになり、これらのテーマに焦点をしぼった分析を行った。住民組織・NPOに関する調査の主要な知見としては、第一に、福祉NPOによる指定事業者または基準該当事業者としての介護保険への対応が予測に反して低調であること、第二に、事業者として積極的にサービス提供に取り組むNPO法人と,生活支援・介護予防事業の中で住民へのきめこまかい援助活動に取り組む福祉NPOとに二分化してきていることをあげることができる。また、NPOに関しては、団体の設立背景,ミッション,構成員の性格,地域性などを考慮したきめこまかな分析が必要であることも明らかになった。1990年代の高齢者保健福祉サービスの計画的な整備と、介護保険制度の実施が、高齢者福祉における自治体行政と福祉ミックスに与えた影響について実証的に解明することを目的として、自治体の事例調査、住民組織・NPOの調査、及び自治体単位の統計データの分析を行った。自治体事例調査の結果、介護保険制度後のサービス供給体制における自治体行政の役割や福祉ミックスの状況が、社会経済的・政治的要因、財政状況に加えて、公私関係の歴史的展開、医療機関の整備状況や医療関係者の介護サービスへの認識、介護サービスの多元化と市場化に関する首長と担当職員の認識などの要因に規定されることが明らかになった。また、社会福祉事業主体の自由化の動向や、「保健・医療・福祉複合体」の事業展開、自治体の労使関係や公設民営施設のあり方などにも着目することが必要であることが明らかになり、これらのテーマに焦点をしぼった分析を行った。住民組織・NPOに関する調査の主要な知見としては、第一に、福祉NPOによる指定事業者または基準該当事業者としての介護保険への対応が予測に反して低調であること、第二に、事業者として積極的にサービス提供に取り組むNPO法人と,生活支援・介護予防事業の中で住民へのきめこまかい援助活動に取り組む福祉NPOとに二分化してきていることをあげることができる。また、NPOに関しては、団体の設立背景,ミッション,構成員の性格,地域性などを考慮したきめこまかな分析が必要であることも明らかになった。本研究は、1990年代における高齢者福祉サービスの計画的な整備と、2000年4月からの介護保険制度の実施によって、高齢者福祉における自治体行政の役割と公私関係(福祉ミックス)にどのような変化が生じたのかを、実証的に解明することを目的として実施された。本年度は、第一に、研究の理論枠組の検討を行うとともに、既存の統計データを用いて、自治体を類型化する方法を検討した。研究の理論枠組に関しては、(1)非営利組織の多様化や、社会福祉法人の位置づけの特殊性を考慮し、福祉ミックス論を日本の状況に応じて修正する必要があること、(2)疑似市場論は、介護保険の制度設計の特質を考慮した上で分析に適用すべきであること、(3)参加志向型と市場志向型、利用者補助型とサービス購入型という多元的サービス供給の類型が有効であることなどが明らかになった。自治体の類型化に関しては、介護保険制度実施前のサービス利用状況の指標に基づいて類型化を行ったが、介護保険のサービス利用実績の指標との関連の分析は、次年度の課題となった。第二に、首都圏と関西圏の20の自治体に関して高齢者福祉と介護保険に係わる基本的な文書と統計資料を収集するとともに、自治体担当者へのヒアリング調査を実施した。このうち5団体については、社会福祉協議会、医療・社会福祉機関へのヒアリング調査もあわせて実施し、特に90年代後半における介護サービスの供給体制と、介護保険制度実施に伴うその変化との関連に重点をおいて、資料の分析を行った。その結果、(1)在宅介護支援センターを中核としたケアマネジメントとサービス調整の体制の整備状況、(2)自治体の計画機能の強化への取り組みの状況、(3)法人施設と行政のこれまでの関わり方、(4)介護サービスの基盤整備の進捗状況等の要因が介護サービス供給体制の変化のあり方を規定していることが明らかになった。1990年代における高齢者保健福祉サービスの計画的な整備と、2000年度からの介護保険制度の実施が、高齢者福祉における自治体行政のあり方と福祉ミックスに与えた影響について実証的に解明することを目的として、自治体の事例調査、住民組織・NPOの調査、および自治体単位のマクロ統計データの分析を行った。自治体事例調査は、20の自治体に関して実施し、うち5団体については、サービス供給組織、住民組織・NPOに対して集中的なヒアリング調査を実施した。得られた知見は多岐にわたるが、介護保険制度後のサービス供給体制における自治体行政の役割、福祉ミックスの状況については、社会経済的・政治的要因、財政状況に加えて、公私関係の歴史的展開、医療機関の整備状況や医療関係者の介護サービスへの認識、介護サービスの多元化と市場化に関する首長と担当職員の認識などの要因に規定されることが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-12410050
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12410050
高齢者福祉における自治体行政と公私関係の変容に関する社会学的研究
住民組織・NPOの調査についても様々な知見が得られたが、介護保険の影響に関しては、福祉NPOの指定事業者または基準該当サービス提供事業者としての介護保険への対応は、予測に反して低調であること、及び、事業者として介護保険サービスを提供していくNPO法人と,生活支援・介護予防事業の中で住民のニーズにあったきめこまかいサービスを提供していく福祉NPOとに二分化してきていることが明らかになった。NPOに関しては、その実態は多様であって、その団体の設立背景,ミッション,構成員の性格,地域性などを考慮したきめこまかな分析が必要であることが明らかになった。自治体単位のマクロ統計データの分析については、介護保険実施前の状況の分析にとどまったが、施設サービスの水準の高低と在宅サービスの水準の高低を基準とした類型化が可能であることが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-12410050
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歴史史料・考古資料活用による次世代作物資源の多様性構築に向けた学際的研究
本研究は、東アジア食文化で重要な位置を占め、日本と中国の農書など歴史史料に記載が多いアブラナ科作物を研究材料とする。アブラナ科作物は全世界各地で栽培され、東アジアの米主食文化圏では中心的副食で、近年ではこれら品種の保存を通じ、遺伝的多様性の重要度への認識が高まっている。本研究では、公刊の歴史史料の記述や図像、地方文書等の在地史料から、品種・栽培技術・栽培環境に関する情報を収集し、過去の品種の形態的特徴や栽培方法を人文学的側面から把握する。また、現品種にどの形質が受け継がれ、どの形質が選抜の過程で失われたかという問題や、現存品種間の交雑、遺伝解析、各作物が持つゲノムが環境、肥培管理から受ける要因を、比較ゲノム等の手法により、農学的・植物学的な理解を行う。最終的に文理融合による解釈から、アブラナ科作物品種の歴史的変化を踏まえた将来の農資源の在り方、多様性を理解することを目的としている。2018年度は採択内示が7月末であったことから、年度後半より活動を開始した。まずは、研究代表者と分担者による意見交換を行い、研究計画案の策定を実施して、その上で史料調査活動と各品種の試験栽培とその遺伝子解析から開始することとした。解析作業は、オンラインよりB.napusを始めとするアブラナ科作物のゲノム配列情報を探索・取得し、系統間のゲノム情報比較解析などに着手し、取得した情報に対するマイニングを効率化するためにデータベース化を進めている。また史料調査は、京都近辺の近世史料を対象として、まずは所蔵調査から着手して内容把握へと進んでいる。最終的には2019年2月に研究班関係者が参加して研究会議を開催し、本科研の活動方針や計画に関する議論、また目標の再確認と史料調査の成果、さらには関連の科研で得られた知見とも併せた成果物をとりまとめ、2019年度に一般向けの教養書として刊行する予定となった。採択が年度途中であったことから、国内調査がほとんど実施できていないが、史料調査や研究方針・目標等の議論について鋭意進めている。その議論の延長上で、関連科研での知見とも併せていくつかの成果をとりまとめ、一般向けの教養書として刊行する準備を行っている。2019年度は、前述の成果物の刊行を年度前半期に行い、さらには国内調査および海外調査(アジア方面を想定)を行いつつ、国内調査で入手した遺伝子サンプルに関する分析と古文書調査を継続させ、年度末には成果報告会議を開催して、研究期間前半の成果の評価と、後半期の活動に向けた議論等を行う計画である。本研究は、東アジア食文化で重要な位置を占め、日本と中国の農書など歴史史料に記載が多いアブラナ科作物を研究材料とする。アブラナ科作物は全世界各地で栽培され、東アジアの米主食文化圏では中心的副食で、近年ではこれら品種の保存を通じ、遺伝的多様性の重要度への認識が高まっている。本研究では、公刊の歴史史料の記述や図像、地方文書等の在地史料から、品種・栽培技術・栽培環境に関する情報を収集し、過去の品種の形態的特徴や栽培方法を人文学的側面から把握する。また、現品種にどの形質が受け継がれ、どの形質が選抜の過程で失われたかという問題や、現存品種間の交雑、遺伝解析、各作物が持つゲノムが環境、肥培管理から受ける要因を、比較ゲノム等の手法により、農学的・植物学的な理解を行う。最終的に文理融合による解釈から、アブラナ科作物品種の歴史的変化を踏まえた将来の農資源の在り方、多様性を理解することを目的としている。2018年度は採択内示が7月末であったことから、年度後半より活動を開始した。まずは、研究代表者と分担者による意見交換を行い、研究計画案の策定を実施して、その上で史料調査活動と各品種の試験栽培とその遺伝子解析から開始することとした。解析作業は、オンラインよりB.napusを始めとするアブラナ科作物のゲノム配列情報を探索・取得し、系統間のゲノム情報比較解析などに着手し、取得した情報に対するマイニングを効率化するためにデータベース化を進めている。また史料調査は、京都近辺の近世史料を対象として、まずは所蔵調査から着手して内容把握へと進んでいる。最終的には2019年2月に研究班関係者が参加して研究会議を開催し、本科研の活動方針や計画に関する議論、また目標の再確認と史料調査の成果、さらには関連の科研で得られた知見とも併せた成果物をとりまとめ、2019年度に一般向けの教養書として刊行する予定となった。採択が年度途中であったことから、国内調査がほとんど実施できていないが、史料調査や研究方針・目標等の議論について鋭意進めている。その議論の延長上で、関連科研での知見とも併せていくつかの成果をとりまとめ、一般向けの教養書として刊行する準備を行っている。2019年度は、前述の成果物の刊行を年度前半期に行い、さらには国内調査および海外調査(アジア方面を想定)を行いつつ、国内調査で入手した遺伝子サンプルに関する分析と古文書調査を継続させ、年度末には成果報告会議を開催して、研究期間前半の成果の評価と、後半期の活動に向けた議論等を行う計画である。採択が年度途中であったことや、研究計画の議論等に入念な時間をかけたこともあり、結果として国内外の調査の一部を次年度以降の実施とせざるを得なかったため、次年度使用額が生じている。
KAKENHI-PROJECT-18KT0048
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磁気刺激による誘発反応の研究
正常人10名に対して、経頭蓋的磁気刺激を行い刺激前、中、後の背景脳波と視覚誘発反応の変化を分析した。その結果、刺激前および刺激後400msec以降においては背景脳波の各周波数帯域のパワースペクトルムや頭皮上の電位分布に変化を認めなかった。刺激前後のパターン反転刺激視覚誘発反応に有意差を認めなかった。経頭蓋的磁気刺激を白色家兎に対して最大強度(100%,1.9T)で一日100回刺激で総量5000回以上の慢性実験を行った。その結果、心理物理学的あるいは神経学的な異常を認めなかった。また刺激終了後、還流固定を行い病理組織学的に中枢神経系、視神経、網膜を検討した。その結果、後頭葉視中枢皮質および皮質下視路、視床、海馬、基底核、小脳、脳幹、視神経、網膜などに正常コントロールと比較して有意な形態学的変化を認めなかった。よって中期的には本刺激法は臨床的に安全な方法と考えられた。引き続き長期的な安全性の検討を行う。正常被検者10例の前頭前野area8に対して衝動性眼球運動開始前に経頭蓋的磁気刺激を最大強度(100%,1.9T)で行った結果、開始前100msecで刺激した際において衝動性眼球運動の発現が有意に抑制された。area8は衝動性眼球運動のプログラミングを行っているものと考えられた。滑動性眼球運動中に後頭領域を経頭蓋的に最大強度(100%,1.9T)にて磁気刺激を行ったが、滑動性眼球運動に変化を認めなかった。運動領野と感覚領野において皮質の磁気刺激に対する閾値が異なるものと考えられた。正常被検者10例に対して第7頚椎付近で最大強度(100%,1.9T)の磁気刺激を行い、その前後の瞳孔反応を電子瞳孔計にて計測した。頚部交感神経磁気刺激後1.5±0.49秒で瞳孔面積は最大となった。瞳孔面積は14.0±4.5%拡大し、散瞳持続時間は3.08±1.84秒であった。後頚部磁気刺激は毛様脊髄中枢を初めとする頚部交感神経が刺激され、それにより散瞳が引き起こされたものと考えられた。正常人10名に対して、経頭蓋的磁気刺激を行い刺激前、中、後の背景脳波と視覚誘発反応の変化を分析した。その結果、刺激前および刺激後400msec以降においては背景脳波の各周波数帯域のパワースペクトルムや頭皮上の電位分布に変化を認めなかった。刺激前後のパターン反転刺激視覚誘発反応に有意差を認めなかった。経頭蓋的磁気刺激を白色家兎に対して最大強度(100%,1.9T)で一日100回刺激で総量5000回以上の慢性実験を行った。その結果、心理物理学的あるいは神経学的な異常を認めなかった。また刺激終了後、還流固定を行い病理組織学的に中枢神経系、視神経、網膜を検討した。その結果、後頭葉視中枢皮質および皮質下視路、視床、海馬、基底核、小脳、脳幹、視神経、網膜などに正常コントロールと比較して有意な形態学的変化を認めなかった。よって中期的には本刺激法は臨床的に安全な方法と考えられた。引き続き長期的な安全性の検討を行う。正常被検者10例の前頭前野area8に対して衝動性眼球運動開始前に経頭蓋的磁気刺激を最大強度(100%,1.9T)で行った結果、開始前100msecで刺激した際において衝動性眼球運動の発現が有意に抑制された。area8は衝動性眼球運動のプログラミングを行っているものと考えられた。滑動性眼球運動中に後頭領域を経頭蓋的に最大強度(100%,1.9T)にて磁気刺激を行ったが、滑動性眼球運動に変化を認めなかった。運動領野と感覚領野において皮質の磁気刺激に対する閾値が異なるものと考えられた。正常被検者10例に対して第7頚椎付近で最大強度(100%,1.9T)の磁気刺激を行い、その前後の瞳孔反応を電子瞳孔計にて計測した。頚部交感神経磁気刺激後1.5±0.49秒で瞳孔面積は最大となった。瞳孔面積は14.0±4.5%拡大し、散瞳持続時間は3.08±1.84秒であった。後頚部磁気刺激は毛様脊髄中枢を初めとする頚部交感神経が刺激され、それにより散瞳が引き起こされたものと考えられた。われわれは磁気刺激法の安全性をヒトおよび白色家兎において電気生理学的ならびに形態学的に検討した。正常成人10名および白色家兎10羽に対して八の字コイルを用いてTCMを行い誘発筋電図および刺激前、同中、同後の背景脳波と視覚誘発反応の変化を分析した。刺激部位はC4(運動領)、02(視覚領)近傍と肘部正中神経とした。誘発筋電図は左母指球筋に表面電極を双極誘導で設置し、得られた信号を10回加算平均処理した。脳波およびパターン反転視覚誘発反応分析はSignal processor 7T18 (NEC)で行った。白色家兎は合計1000回以上刺激後に組織学的に検討した。その結果、1.誘発筋電図を肘部正中神経刺激、TSC(C4近傍)により母指球筋の誘発筋電図が記録可能であった。
KAKENHI-PROJECT-04671089
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磁気刺激による誘発反応の研究
2.誘発筋電図の閾値はそれぞれ50V、75V(コイル電圧)であった。3.正中神経刺激では筋収縮と電撃的な感覚(無痛覚)を誘発したが、運動領刺激ではこれらを認めなかった。4.軽い頭痛が残存する事があった以外、心理物理学的な異常反応を認めなかった。5.母指球筋筋電図はTSCの指標となった。6.刺激中および刺激後約400msec以内は背景脳波および視覚誘発反応の分析が困難であった。7.TSC前後において背景脳波の各周波数帯域のパワースペクトルムに変化を認めなかった。8.TSC前後において背景脳波の各周波数帯域の頭皮上分布に変化を認めなかった。9.TSC(02近傍)前後のパターン反転視覚誘発反応に有意差を認めなかった。10.白色家兎をコイル電圧1300V,100回刺激した際、背景脳波は有意に徐波化した。11.白色家兎1300V,1000回刺激では現在までに明らかな組織学的変化を見いだせなかった。今回われわれはヒトにおける背景脳波とパターン反転視覚誘発反応の各周波数帯域のパワースペクトルムと二次元脳電図において著変を認めなかった。よってTSCは限定量(コイル電圧600Vを200回程度、検査時間約2時間)であれば短期的には安全であると考えられる。経頭蓋的磁気刺激を白色家兎に対して最大強度(100%,1.9T)で一日100回刺激で総量5000回以上の慢性実験を行った。その結果、心理物理学的あるいは神経学的な異常を認めなかった。また刺激終了後、還流固定を行い病理組織学的に中枢神経系、視神経、網膜を検討した。その結果、後頭葉視中枢皮質および皮質下視路、視床、海馬、基底核、小脳、脳幹、視神経、網膜などに正常コントロールと比較して有意な形態学的変化を認めなかった。よって中期的には本刺激法は臨床的に安全な方法と考えられた。引き続き長期的な安全性の検討を行う。正常被検者10例の前頭前野area8に対して衝動性眼球運動開始前に経頭蓋的磁気刺激を最大強度(100%,1.9T)で行った結果、開始前100msecで刺激した際において衝動性眼球運動の発現が有意に抑制された。area8は衝動性眼球運動のプログラミングを行っているものと考えられた。正常被検者10名に対して滑動性眼球運動中に後頭領域を経頭蓋的に最大強度(100%,1.9T)にて磁気刺激を行ったが、滑動性眼球運動に変化を認めなかった。運動領野と感覚領野において皮質の磁気刺激に対する閾値が異なるものと考えられた。正常被検者10例に対して第7頸椎付近で最大強度(100%,1.9T)の磁気刺激を行い、その前後の瞳孔反応を電子瞳孔計にて計測した。頸部交感神経磁気刺激後1.5±0.49秒で瞳孔面積は最大となった。瞳孔面積は14.0±4.5%拡大し、散瞳維持時間は3.08±1.84秒であった。後頸部磁気刺激は毛様脊髄中枢を初めとする頸部交感神経が刺激され、それにより散瞳が引き起こされたものと考えられた。
KAKENHI-PROJECT-04671089
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04671089
活性型ビタミンD3外用製剤のマイボーム腺機能不全(MGD)治療への応用
マイボーム腺機能不全(MGD)はドライアイの主因であり、患者数が多いにもかかわらず有効な治療法が確立されていない。我々は、活性型ビタミンD3がMGDの治療薬になるかどうかを研究の目的とした。動物実験において、活性型ビタミンD3の眼瞼塗布治療が眼球や眼周囲組織、全身臓器における副作用を起こさないこと、MGD動物モデルでMGDの改善を誘導することが明らかとなった。また、臨床応用を行い、MGD患者におけるMGDの病変の改善をきたすことを証明した。活性型ビタミンD3はMGDの治療法となりうることが明らかとなった。マイボーム腺開口部を電気焼灼したマイボーム腺機能不全(MGD)マウスモデルを作成し,活性型ビタミンD3のMGDに対する治療効果を検討した。MGDモデルマウスを活性型ビタミンD3塗布群と基剤塗布群の2群に分け,その治療効果を臨床所見と病理組織学的検討とで比較した。MGDモデルマウスでは,対照群と比較して,結膜の充血が顕著で,マイボーム腺が脱落していた。MGDモデルマウスに対する活性型ビタミンD3塗布試験を行うと,基剤塗布群では臨床所見および病理組織学的所見の変化は見られなかったが,活性型ビタミンD3塗布群では充血などの臨床所見が改善し,脱落したマイボーム腺が回復,マイボーム腺面積が,処置後2週および4週にわたり,有意に増加していた。また,角膜に対して活性型ビタミンD3は影響を与えなかった。対照群では,導管内の空砲形成が顕著であったが,活性型ビタミンD3塗布群では,導管内の空砲形成が軽度であり,活性型ビタミンD3塗布がMGD状態を改善しているものと考えられた。本研究から,活性型ビタミンD3はMGDの治療薬になりうる可能性が示唆された。初年度で、マイボーム腺機能不全マウスモデルを作成し、活性型ビタミンD3のマイボーム腺機能不全に対する治療効果を検討し、有効性を確認し、平成27年度では論文作成および投稿を行ったが、複数の指摘を受けた。このため、指摘に沿って、追加実験を行った。正常マウスに対する活性型ビタミンD3の安全性の検討を追試し、角膜上皮障害を生じないことを確認した。有効性の検討では、再試を行い、再現性を確認した。また道管内脂質量を脂肪染色で確認し、活性型ビタミンD3塗布例の方が保持されていることを確認した。マイボーム腺機能不全マウスモデルにおいて、活性型ビタミンD3の2週間塗布により、マイボーム腺機能が保持される可能性が示唆された。(初年度の追加基礎実験が必要となったため施行したが、完了した。臨床試験は遅れている。)予定した動物実験は完了した。論文再投稿に向けての追加実験も終了した。治療効果および安全性が確認でき、臨床応用が可能であると考えている。マイボーム腺機能不全(MGD)は、患者数が多いにもかかわらず、有効な治療法が確立されていない疾患である。活性型ビタミンD3のMGDに対する有効性を証明するため、MGDモデルマウスにおける安全性・有効性の検討と、MGD患者に対する活性型ビタミンD3の治療効果を検討した。MGDモデルマウスにおいて、活性型ビタミンD3眼軟膏の塗布による眼表面および眼内への副反応的異常を認めなかった。MGDをきたしたマイボーム腺に活性型ビタミンD3を塗布すると、拡大したマイボーム腺の導管管腔の縮小を認めた。MGD患者に活性型ビタミンD3眼軟膏を塗布すると、閉塞したマイボーム腺の開放やマイボーム腺面積の拡大、涙液安定性の向上、マイボーム腺分泌物の性質改善などの効果が得られた。活性型ビタミンD3眼軟膏塗布による副反応は観察されなかった。MGDに対する効果的な治療法が確立されていない現在、活性型ビタミンD3がMGDの治療薬となる可能性が示された。マイボーム腺機能不全(MGD)はドライアイの主因であり、患者数が多いにもかかわらず有効な治療法が確立されていない。我々は、活性型ビタミンD3がMGDの治療薬になるかどうかを研究の目的とした。動物実験において、活性型ビタミンD3の眼瞼塗布治療が眼球や眼周囲組織、全身臓器における副作用を起こさないこと、MGD動物モデルでMGDの改善を誘導することが明らかとなった。また、臨床応用を行い、MGD患者におけるMGDの病変の改善をきたすことを証明した。活性型ビタミンD3はMGDの治療法となりうることが明らかとなった。予定していた動物実験は完了している。治療効果および安全性が確認でき,臨床応用を行うことが可能ではないかと考えている。基礎実験での結果をもとに、活性型ビタミンD3を用いた健常者およびマイボーム腺機能不全患者に対する治療の臨床研究を行う。健常者においては、少数の若い世代の男性を対象に、活性型ビタミンD3塗布による角結膜、眼瞼皮膚、マイボーム腺開口部周囲の安全性を観察し、自覚症状の有無も確認する。マイボーム腺機能不全患者においてはその有用性を自覚症状の改善度、涙液パラメータの比較などを用いてビタミンD3塗布の有用性を検討する予定である。眼科学今年度の基礎実験の結果をもとに,当該研究機関である慶応義塾大学医学部附属病院において活性型ビタミンD3を用いたMGDに対する治療の臨床研究を行う。動物を用いた研究が当初予定より進まなかったため、動物購入費及び飼育費用の予算を執行しなかったため。
KAKENHI-PROJECT-26462648
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活性型ビタミンD3外用製剤のマイボーム腺機能不全(MGD)治療への応用
基礎研究が順調に進行し,予備費として考えていた予算の執行を行わずに研究を終了することができたため。前年度進まなかった研究を進めるため、研究予定を再考し、すでに遂行中である。次年度の臨床研究費用として繰り越す予定としている。
KAKENHI-PROJECT-26462648
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26462648
鋼構造柱梁溶接接合部の脆化領域の材質劣化に関する実験
1995年の兵庫県南部地震では、鋼構造物の柱梁溶接接合部の破断現象が多く見られた。それらの中でも破断部位が溶接線に沿ってその近傍の母材側にある場合が多かった。筆者等はこのような破断の原因が溶接ボンド部からやや離れたいわゆる脆化領域の靭性(シャルピ値)劣化にあると考え、従来鋼および新しい建築構造用鋼材を用いて溶接継手部の一部を再現した試験体を製作し、実験によってこれを確かめることを試みた。本研究に関する実験は大きく次の2つに分けられる。(1)鋼板継手の溶接脆化領域の強度・靭性に関する引張り実験(1)梁フランジーダイアフラム溶接継手部(2)柱ーダイアフラムー柱溶接継手部(2)柱梁接合部の溶接脆化領域の強度・靭性に関する曲げ実験(1)梁フランジーダイアフラム溶接継手部実験変数は溶接部のパス間温度、入熱量、並びにルート間隔で、鋼種は梁フランジにSS400鋼を、柱スキンプレートにSTKR400鋼を、ダイアフラムにSS400鋼とSN400Bを用いている。実験結果をまとめると以下のようになる。(1)上記(1)の鋼鈑継手の実験では、脆化領域の靭性劣化が母材破断を生じさせるような現象は見られず、このようにモデル化された引張り実験により筆者等が目論んだ現象を再現できなかった。(2)上記(2)の曲げ実験では、5体の試験体はスカラップ底位置からフランジ外面に亀裂が貫通し、3体の試験体がスカラップ底より内側の位置からフランジ外面に亀裂が貫通した。この3試験体のうち1体の破断位置は溶接部近傍の脆化領域と考えられ、その溶接条件はパス間温度が約440°Cで人熱量が約29Kj/cmであった。1995年の兵庫県南部地震では、鋼構造物の柱梁溶接接合部の破断現象が多く見られた。それらの中でも破断部位が溶接線に沿ってその近傍の母材側にある場合が多かった。筆者等はこのような破断の原因が溶接ボンド部からやや離れたいわゆる脆化領域の靭性(シャルピ値)劣化にあると考え、従来鋼および新しい建築構造用鋼材を用いて溶接継手部の一部を再現した試験体を製作し、実験によってこれを確かめることを試みた。本研究に関する実験は大きく次の2つに分けられる。(1)鋼板継手の溶接脆化領域の強度・靭性に関する引張り実験(1)梁フランジーダイアフラム溶接継手部(2)柱ーダイアフラムー柱溶接継手部(2)柱梁接合部の溶接脆化領域の強度・靭性に関する曲げ実験(1)梁フランジーダイアフラム溶接継手部実験変数は溶接部のパス間温度、入熱量、並びにルート間隔で、鋼種は梁フランジにSS400鋼を、柱スキンプレートにSTKR400鋼を、ダイアフラムにSS400鋼とSN400Bを用いている。実験結果をまとめると以下のようになる。(1)上記(1)の鋼鈑継手の実験では、脆化領域の靭性劣化が母材破断を生じさせるような現象は見られず、このようにモデル化された引張り実験により筆者等が目論んだ現象を再現できなかった。(2)上記(2)の曲げ実験では、5体の試験体はスカラップ底位置からフランジ外面に亀裂が貫通し、3体の試験体がスカラップ底より内側の位置からフランジ外面に亀裂が貫通した。この3試験体のうち1体の破断位置は溶接部近傍の脆化領域と考えられ、その溶接条件はパス間温度が約440°Cで人熱量が約29Kj/cmであった。鋼構造物の柱梁溶接接合部の地震時の破断が溶接線に沿って母材側で生じている場合が多い。この破断は溶接部の脆化領域の靱性(シャルピ値)劣化が要因とも考えられる。そこで、このような現象を溶接継手部の一部を再現した十字継手試験体を用いて、引張り実験を行い確かめる。溶接十字継手の試験体はダイアフラム(板厚25mm)にSS400材或いはSN400B材を、梁フランジ(板厚19mm)にSS400材或いはSN400B材を、柱スキンプレート(板厚19mm)にSTKR400材をそれぞれ用いて製作した。試験体は大きく次の3つのタイプに分けられる。1.ダイアフラムに梁フランジと上下の柱スキンプレートの一部が完全溶け込み溶接され、梁フランジとダイアフラムを引張るタイプ2.梁フランジ無しで、ダイアフラムに上下の柱スキンプレートの一部が完全溶け込み溶接され、上下のスキンプレートを引張るタイプ3.ダイアフラムに梁フランジと上下の柱スキンプレートの一部が完全溶け込み溶接され、上下のスキンプレートを引張るタイプ各タイプの溶接条件は共通で、入熱が(30±10)Kjと(70±10)Kjの2種類、パス間温度の上限が300°Cと500°Cの2種類としている。ダイアフラムと梁フランジの完全溶け込み溶接のルート間隔は7mmと14mmの2種類を採用している。また、引張り試験体と同一の製作条件で製作した試験体の溶接金属部、ボンド部、および熱影響部からシャルピ衝撃試験片を製作し、溶接部およびその近傍の靱性を調べる。
KAKENHI-PROJECT-09650638
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鋼構造柱梁溶接接合部の脆化領域の材質劣化に関する実験
実験結果は、入熱条件、パス間温度、および溶接部のルート間隔が破断位置と破面の状況に与える影響についてまとめられ、またそれらの関係が溶接部各位置のシャルピ値とどの様な関係に有るかを明らかにする。実験は現在進行中で、年度内には終了する予定である。鋼構造物の柱梁溶接接合部の地震時の破断が溶接線に沿って母材側で生じている場合が多い。この破断は溶接部の脆化領域の靭性(シャルピ値)劣化が要因とも考えられる。今年度は、このような現象を柱梁溶接接合部を再現した十字型試験体を用いて、曲げ実験を行い確かめた。柱梁溶接接合部の試験体は、梁にSS400鋼のH-250x100x19x12の断面材、柱にSTKR400鋼の□-250x250xl2の断面材、ダイアフラムにSS400鋼或いはSN400B鋼のPL-300x300x25のプレートを用いて製作した。なお、柱と梁の接合部にはスカラップを設けている。梁フランジとダイアフラムとの完全溶け込み溶接の溶接条件は次のように分類される。1.パス間温度の上限が300°Cで、入熱が(30±10)Kj/cmと(70±10)Kj/cmの2種類2.パス間温度の上限が500°Cで、入熱が(30±10)Kj/cmと(70±10)Kj/cmの2種類試験体は中央に長さ45cmの柱を有し、その左右に長さ102.5cmの梁を有する十字型をした全長230cmのものである。試験体総数は8体である。載荷は梁の両端をピンとローラで支持し、柱の頂部に一方向に単調集中荷重を加えるものである。実験結果は入熱およびパス間温度の溶接条件が梁フランジ溶接接合部の破断位置と破面の状況に与える影響について纏められ、またそれらの条件が破断耐力と変形性能にどの様な相違を示すかを明らかにする。実験は終了し、現在実験データを整理すると同時に結果の検討を行い、纏めを行っている段階である。
KAKENHI-PROJECT-09650638
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蛍光性シクロデキストリンを用いる分子認識センサー
シクロデキストリン(CD)は環状オリゴ糖で空孔を有しており、その空孔内にゲスト分子を包接することができる。本研究では、CDを蛍光性のナフトール単位で修飾したホスト化合物を2種類(1、2)合成し、様々なゲスト分子を検出するセンサーを構築する試みを行なった。6-アミノ化β-CDと6-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸との反応で1を、6-アミノ化β-CDと3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸との反応で2を合成した。ナフトールは、350nm近辺の通常蛍光以外に、励起状態でヒドロキシ基が解離した化学種からの蛍光を420nm近辺に示すことが報告されている。1と2の蛍光スペクトルを測定したところ、通常蛍光の強度は弱いがヒドロキシ基が解離した化学種からの強い蛍光が1では500nmに、2では485nmに観察された。これらの蛍光強度は、ゲスト添加によって1では増大するが2では減少した。この蛍光変化は、ゲスト包接によりナフトール単位がCDの空孔内から空孔外に追い出されることに伴うナフトール周辺の環境変化によるものと考えられる。なお、ゲスト化合物としては、飲料水の汚染に関係するものを選んだ。すなわち、かび臭物質であるジェオスミン、2-メチルイソボルネオール、塩素化合物としてジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素を用いた。ゲスト濃度一定の条件での蛍光変化を感度パラメータとすると、その値はジクロロメタン<1,2-ジクロロエタン<クロロホルム<四塩化炭素<ジェオスミン<2-メチルイソボルネオールの順であった。これらの結果は、1および2が極めて優れたセンサー機能を有することを示している。シクロデキストリン(CD)は環状オリゴ糖で空孔を有しており、その空孔内にゲスト分子を包接することができる。本研究では、CDを蛍光性のナフトール単位で修飾したホスト化合物を2種類(1、2)合成し、様々なゲスト分子を検出するセンサーを構築する試みを行なった。6-アミノ化β-CDと6-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸との反応で1を、6-アミノ化β-CDと3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸との反応で2を合成した。ナフトールは、350nm近辺の通常蛍光以外に、励起状態でヒドロキシ基が解離した化学種からの蛍光を420nm近辺に示すことが報告されている。1と2の蛍光スペクトルを測定したところ、通常蛍光の強度は弱いがヒドロキシ基が解離した化学種からの強い蛍光が1では500nmに、2では485nmに観察された。これらの蛍光強度は、ゲスト添加によって1では増大するが2では減少した。この蛍光変化は、ゲスト包接によりナフトール単位がCDの空孔内から空孔外に追い出されることに伴うナフトール周辺の環境変化によるものと考えられる。なお、ゲスト化合物としては、飲料水の汚染に関係するものを選んだ。すなわち、かび臭物質であるジェオスミン、2-メチルイソボルネオール、塩素化合物としてジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素を用いた。ゲスト濃度一定の条件での蛍光変化を感度パラメータとすると、その値はジクロロメタン<1,2-ジクロロエタン<クロロホルム<四塩化炭素<ジェオスミン<2-メチルイソボルネオールの順であった。これらの結果は、1および2が極めて優れたセンサー機能を有することを示している。
KAKENHI-PROJECT-11121209
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11121209
地下構造と熱水流動の数値実験に基づく水蒸気爆発の物理過程の解明
水蒸気爆発は国内外で数多く発生し、2014年の御嶽山の噴火のように、人命を奪う災害になるにも拘らず、その発生機構は未だにわかっていない。一般に、マグマ噴火に比べ規模が小さく、前駆的な物理・化学現象が微小なためである。浅部熱水系で発生した小規模な水蒸気爆発は、現状では予測が難しく、噴火を事前に予測できる観測項目が提唱されていない。そこで、2015年に小規模な水蒸気爆発が発生した箱根大涌谷の熱水系の構造を明らかにするため、3次元比抵抗構造調査を行なった。箱根大涌谷は、噴火に付随した地震や地盤変動などが観測されており、3次元比抵抗構造と比較することにより、水蒸気爆発に必要な構造を検出できる可能性が高い。箱根大涌谷を中心に4月と6月の二度にわけて、AMT観測点29点を設置し、電場と磁場を測定した。ノイズの大きな観測点もあったが、5Hz以上では比較的良好なデータを得ることができた。推定された大涌谷の比抵抗構造から、大涌谷を中心とした逆U字型の低比抵抗帯が広がっていることが明らかになった。これは、地下浅部に発達したキャップ構造だと解釈された。キャップ構造とは、透水性の低い熱水変質鉱物からなる低比抵抗の層(キャップロック)と、その下部で温度圧力が高められたガス溜りを指す。水蒸気爆発を繰り返し行なってきた立山地獄谷の比抵抗構造では、類似したキャップ構造の存在が明らかとなっており、水蒸気爆発発生のキーとなる構造だと示唆される。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。立山(弥陀ヶ原)火山は飛騨山脈に位置する活火山で、現在は地獄谷と呼ばれる場所で活発な噴気・温泉活動が行われている。地獄谷の直下には水蒸気爆発の発生場である火山体浅部熱水系が発達していることが期待される。火山ガスは、深いマグマ溜まりから地表に達するまでの移動速度が速いため、その成分比は火山活動の変化をいち早く反映する。従って、火山活動をモニタリングする上で重要な観測項目の1つであると考えるが、立山地獄谷の火山ガスに関する学術的報告は、水谷ほか(2000)を最後に行われていない。そこで、立山地獄谷の熱水系の構造をより良く理解し、現在の火山活動を評価するために、温泉水に加えて火山ガスの採取を2016年9月に行った。分析の結果、地獄谷の中でも活発な噴気活動をしている場所でHClを含む火山ガスが採取された。水谷ほか(2000)で分析された火山ガスよりもHCl濃度の大きなガスも見つかった。また、3He/4Heは高い値を示し、大半のHeはマグマ起源であることがわかった。温泉水との関係では、Cl/SO4が小さな値を示す温泉水(SO4-type)は、その周辺で採取された火山ガスのSO2/H2Sが小さく、H2S主体の火山ガスにより形成されたと考えられ、δ34SSO4の値も低かった。一方で、HClを含む火山ガスのSO2/H2Sは大きく、周囲では活発な地熱兆候を観察することができる。その周辺で採取された温泉水のイオン濃度は大きな値を示し、水の同位体比は地獄谷の中で最も高い値を示した。温泉水成分の経年変化をみると、いくつかの温泉水はCl/SO4の時間変化が大きいことがわかった。これは、浅部に存在する気液二相の流体の温度や気相の割合の変化を反映していると考えられ、キャップロック直下の熱水系の状態を推定する指標になりうる。火山ガスの調査分析は全てデータを揃えることができ、また良好なデータをとることができた。温泉水の結果を含め、キャップ構造直下の変化をとらえることができ、火山活動の評価に使用できる。立山地獄谷の熱水系構造を得ることが出来たので、今後は数値計算に早く手を付けたい。水蒸気爆発は国内外で数多く発生し、2014年の御嶽山の噴火のように、人命を奪う災害になるにも拘らず、その発生機構は未だにわかっていない。一般に、マグマ噴火に比べ規模が小さく、前駆的な物理・化学現象が微小なためである。浅部熱水系で発生した小規模な水蒸気爆発は、現状では予測が難しく、噴火を事前に予測できる観測項目が提唱されていない。そこで、2015年に小規模な水蒸気爆発が発生した箱根大涌谷の熱水系の構造を明らかにするため、3次元比抵抗構造調査を行なった。箱根大涌谷は、噴火に付随した地震や地盤変動などが観測されており、3次元比抵抗構造と比較することにより、水蒸気爆発に必要な構造を検出できる可能性が高い。箱根大涌谷を中心に4月と6月の二度にわけて、AMT観測点29点を設置し、電場と磁場を測定した。ノイズの大きな観測点もあったが、5Hz以上では比較的良好なデータを得ることができた。推定された大涌谷の比抵抗構造から、大涌谷を中心とした逆U字型の低比抵抗帯が広がっていることが明らかになった。これは、地下浅部に発達したキャップ構造だと解釈された。キャップ構造とは、透水性の低い熱水変質鉱物からなる低比抵抗の層(キャップロック)と、その下部で温度圧力が高められたガス溜りを指す。
KAKENHI-PROJECT-16J00808
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J00808
地下構造と熱水流動の数値実験に基づく水蒸気爆発の物理過程の解明
水蒸気爆発を繰り返し行なってきた立山地獄谷の比抵抗構造では、類似したキャップ構造の存在が明らかとなっており、水蒸気爆発発生のキーとなる構造だと示唆される。本年度は水蒸気爆発を2015年に発生した箱根大涌谷でAMT観測調査が予定され、立山地獄谷との比較研究を行う。観測点は28点予定しており、比抵抗構造の3次元解析を行う。実際に水蒸気爆発が発生した箱根大涌谷の熱水系構造は、今回の電磁気調査が初めてであり、貴重なデータになるはずだ。数値計算はソフトを整えることが出来たため、今後は実際に計算をまわしていく方針である。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-16J00808
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J00808
高温高圧その場熱測定によるマントル鉱物の融解に関する研究
水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)の圧力-体積-温度の状態方程式を前年度に報告したが、本年度はそれを用いて水酸化マグネシウムの平衡分解曲線を計算した。さらにマルチアンビルを用いた高温高圧実験を行うことで、水酸化マグネシウムの高温状態を反映している組織を観察した。その結果、水酸化マグネシウムが4万気圧以下ではフルイッドと酸化マグネシウムに脱水分解し、10万気圧以上の圧力下では水酸化マグネシウムは不一致溶融し酸化マグネシウムとMgO成分に富んだ液体へと分解することを解明した。このことは国際学会で発表し、国際学術誌に掲載予定である。融解の熱量測定結果から融体の熱力学的性質を求めるためには、融解する前の固体の熱力学的性質を知る必要がある。これまでは体積の温度圧力変化から高温高圧条件での熱力学的性質を推測するよりなかったが、鉱物に対するX線ラマン散乱を用いた新しいエンタルピー推定法を行うため、前年度末より準備していた実験を行った。フランスでの議論・実験準備を経て、SPring-8にて放射光を行った。定量的解析を行うことこそできないが、ケイ酸塩鉱物に対して適応できる可能性を示す重要なデータを得ることができたので本研究を終了する。本研究補助金は、日本-フランス間の旅費と放射光実験および研究室での実験に必要な消耗品の購入に用いた。高圧下での示唆熱分析(DTA)法を用いた定量的熱測定法の確立のため、Mg(OH)_2ブルーサイトの脱水反応熱を基準の熱量として高圧DTAセルの校正を行い、3回の測定結果から1.19×10^-3 J/K・secという値を得た。次に銅の融解反応を同システムにより測定し、融解反応熱を評価した。その結果、融解熱として0.81kJ/molという値を得た。この値は、1気圧の熱力学的パラメータの外挿から得られる値12.9kJ/molに比べ、一桁ほど小さい値となった。これは、使用した高圧セル中の熱電対の配置に問題があり、DTAピーク感度が試料の熱拡散率に強く依存することによるものだと思われる。そのため、高圧DTAセルを次の点で改良した。1.熱電対の測温点をヒーター部分と試料もしくは基準物質との間に配するようにする。2.試料温度を測る熱電対と基準物質の温度を測る熱電対とを熱的に隔離されたような環境に配する。一番目の工夫により物質に依存しない熱の流れ込みを測定できるようになり、二番目の改良により、系の温度制御にも使われる基準物質の温度が試料に起こる相転移の影響を受けないようにした。現在はこの新しく設計された高圧DTAセルを用いて実験を行っている。また、Mg(OH)_2ブルーサイトの状態方程式を更なるX線その場観察実験を行うことでより精密に決定した。得られた温度圧力体積の関係から高圧下での熱膨張係数を計算することができ、これを解析することでブルーサイト中に存在する水素原子の挙動の変化が結晶格子に与える影響について議論した。これは現在論文にして雑誌に投稿中である。昨年度の報告書に記した高圧下での熱膨張測定結果からMg(OH)_2ブルーサイトにおける水素原子の挙動の変化が結晶格子に与える影響について議論した論文は国際誌に受理され出版された。また同じく前年度の報告書中にある、Mg(OH)_2ブルーサイトの脱水反応熱を基準の熱量として用いた高圧下での示差熱分析(DTA)法を用いた定量的熱測定法の確立について新たに論文を執筆し、国内誌に投稿、受理された。前年度に問題となった高圧セル中の熱電対を配置する場所や発熱ヒーターとサンプルの大きさなどの影響を理解するために、有限要素法を用いた熱伝導解析プログラムを使用することで、高圧セルの材料や寸法、温度測定位置と実際の試料温度の見積もりなどが可能となった。この模擬計算の結果、大阪大学既存の装置を用いた定量実験はこのままでは難しいと判断し、大阪大学ではこれまでのセルサイズを踏襲した半定量的熱測定を行うこととし、定量的熱測定は岡山大学付属固体地球研究センターの1500トンプレスを用いて行うこととした。この際に高圧セル全体を加熱するヒーターとは別に試料部だけを加熱するヒーターを別に組み込み測定を行う新しい方法の開発を行っている。また半定量的熱測定では、小さなセルの持つ問題点を克服するためにアンビル近くでの発熱量を増やすようなヒーターを設計し、感度の上昇を狙ったセルを用いた実験を行っている。これらの実験の試料としては、従来まで行ってきたブルーサイトを用いると共に、低融点珪酸塩であるアルバイトを合成し現在実験を行っている。水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)の圧力-体積-温度の状態方程式を前年度に報告したが、本年度はそれを用いて水酸化マグネシウムの平衡分解曲線を計算した。さらにマルチアンビルを用いた高温高圧実験を行うことで、水酸化マグネシウムの高温状態を反映している組織を観察した。その結果、水酸化マグネシウムが4万気圧以下ではフルイッドと酸化マグネシウムに脱水分解し、10万気圧以上の圧力下では水酸化マグネシウムは不一致溶融し酸化マグネシウムとMgO成分に富んだ液体へと分解することを解明した。このことは国際学会で発表し、国際学術誌に掲載予定である。融解の熱量測定結果から融体の熱力学的性質を求めるためには、融解する前の固体の熱力学的性質を知る必要がある。
KAKENHI-PROJECT-02J04570
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02J04570
高温高圧その場熱測定によるマントル鉱物の融解に関する研究
これまでは体積の温度圧力変化から高温高圧条件での熱力学的性質を推測するよりなかったが、鉱物に対するX線ラマン散乱を用いた新しいエンタルピー推定法を行うため、前年度末より準備していた実験を行った。フランスでの議論・実験準備を経て、SPring-8にて放射光を行った。定量的解析を行うことこそできないが、ケイ酸塩鉱物に対して適応できる可能性を示す重要なデータを得ることができたので本研究を終了する。本研究補助金は、日本-フランス間の旅費と放射光実験および研究室での実験に必要な消耗品の購入に用いた。
KAKENHI-PROJECT-02J04570
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02J04570
血液細胞高精度遺伝子発現解析を用いた膵臓癌分子マーカーの探索
膵臓癌の有用バイオマーカーを開発するために、膵臓癌罹患者血液細胞を用いて、発癌による血液細胞の遺伝子発現状態の変化を調べた。患者17名と健常者4名の高精度大規模遺伝子発現解析(8919種類のmRNA型転写産物の量測定)を行った結果、罹患者群と健常者群では発現パターンが異なった。群間差の大きい転写産物を絞り込んで評価することで、今後、症例と対照の高精度な弁別ができる可能性が示唆された。目標症例数10名を目指して重粒子線治療適応膵がん罹患者への研究協力依頼をおこない、12名の協力罹患者を得て血液検体を確保した。また対照として健常人4名からも血液検体の提供を受けた。検体から血漿画分と白血球画分を調製し、それぞれからRNAを分取した。予想外の事態として白血球画分RNAの発現解析用測定機が故障し長期間稼働困難となった。そのため、血漿から調製したmiRNA画分のマイクロアレイ法による発現解析を優先実施した。この解析から、膵がん罹患者の中にmiRNA発現パターンの異なる2群が見出された。うち1群では健常人対照と比べて高発現傾向を示すmiRNA群が見出された。もうひとつの群では、健常人対照と大きな差が見出されなかった。罹患数の大きな難治性がんである膵臓癌の局所制御および早期発見に役立つ高精度バイオマーカーを開発するために、最終年度に膵癌罹患者17名と健常者4名の白血球画分からRNAを調製し、放医研が特許保有する測定技術により高精度な大規模遺伝子発現解析を実施した。計画の目標症例数は10名であるが、治療経過や服薬状況などにより最終的に解析対象外となる被験者が生じうるので、余裕を持たせるため上記症例数を解析した。8919種類のmRNA型転写産物の量測定をcDNA-AFLP変法にておこなった。各検体の発現パターンを距離法にて系統評価した結果、罹患者群と健常者群は別個のクラスタを形成した。特に群間差の大きい100転写産物に着目することで、両群の高精度な弁別が可能と考えられた。当該手法で得られた結果は、前年度に実施した血漿由来miRNA解析による罹患群検出能力よりも遙かに高感度であった。前年度の解析は膵癌細胞そのものから放出される特異的miRNAの捕捉によるバイオマーカーを期待したものであり、本年度の解析は膵癌という疾患組織が血液細胞へ及ぼす遺伝子発現変化の検出によるバイオマーカー開発を期待するものである。両解析を通して得られた結果からは、膵癌高感度バイオマーカーの開発研究を、罹患者血液細胞を対象として発展させることの重要性が判明した。今後は将来のスクリーニングへの応用を目指して、更なる症例集積と上述の100転写産物の絞り込みを行いたい。膵臓癌の有用バイオマーカーを開発するために、膵臓癌罹患者血液細胞を用いて、発癌による血液細胞の遺伝子発現状態の変化を調べた。患者17名と健常者4名の高精度大規模遺伝子発現解析(8919種類のmRNA型転写産物の量測定)を行った結果、罹患者群と健常者群では発現パターンが異なった。群間差の大きい転写産物を絞り込んで評価することで、今後、症例と対照の高精度な弁別ができる可能性が示唆された。膵がん罹患者の当所目標検体数を確保した。これらの検体を使用して血漿エキソソーム由来miRNAの発現解析を実施し、膵がん罹患者に複数のmiRNA発現パターンがあることを見出した。いっぽう本研究実施に必須の測定機に予想外の故障が発生し、白血球由来RNAの発現解析に遅れを生じている。予防医学2015年度には重粒子治療後の血液検体が得られるので、健常人と罹患者との比較解析に加えて、同一罹患者の治療前と治療後の比較解析が実施可能となる見込みである。いっぽう、故障していた測定機の修理が完了したので白血球RNAの発現解析を進めることで、がん側(miRNA)と宿主側(白血球RNA)の重層トランスクリプトーム解析による多面的バイオマーカー探索をおこなう。また、治療経過や服薬状況などにより最終的に本研究の解析から外れる検体が生じうるので、2015年度も引き続き研究協力罹患者のリクルートを実施する。本研究実施に必須の測定機に予想外の故障が発生し、白血球由来RNAの発現解析に遅れを生じているため、それに関わる消耗品の購入時期が遅れたことによる。次年度に予定している白血球由来RNAの発現解析に関わる消耗品の購入に使用する。
KAKENHI-PROJECT-26670570
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治療抵抗性・再発卵巣癌における代謝解析とそれを応用した予後予測・治療戦略の構築
メタボローム解析の開発により近年発展してきた代謝の観点と、同様に近年急速に発展しているディープラーニング等の解析技術を組み合わせることで、プラチナ感受性・抵抗性の予測モデルを構築する。代謝活性というのはある代謝酵素の発現の高い低いだけでは本来決められるものではなく、細胞内全体の各種経路のバランスが大切である。こうした解析にはニューラルネットワークやディープラーニングは極めて相性がよく、患者それぞれに適した治療戦略を構築できるようになるものと考えられる。得られた結果を元に、代謝に着目したオンコパネルの開発や、新しい診断システムの開発(PET/CT等)、創薬に取り組みたいと考えている。メタボローム解析の開発により近年発展してきた代謝の観点と、同様に近年急速に発展しているディープラーニング等の解析技術を組み合わせることで、プラチナ感受性・抵抗性の予測モデルを構築する。代謝活性というのはある代謝酵素の発現の高い低いだけでは本来決められるものではなく、細胞内全体の各種経路のバランスが大切である。こうした解析にはニューラルネットワークやディープラーニングは極めて相性がよく、患者それぞれに適した治療戦略を構築できるようになるものと考えられる。得られた結果を元に、代謝に着目したオンコパネルの開発や、新しい診断システムの開発(PET/CT等)、創薬に取り組みたいと考えている。
KAKENHI-PROJECT-19K18703
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K18703
移植片対宿主病ラットの口腔粘膜病変に関する研究
I.形態観察移植片対宿主病(GVHD)誘導後、1、3、5、7日目および発症時(10日14日目)のF1ラットより得られた舌粘膜の粘膜固有層内に存在する樹状細胞のin vivoでの存在様式および形態学的変化を、随時免疫電顕的手法を加えながら電顕的に観察検討した。1、3、5日目では対称群と同様に、樹状細胞は粘膜固有層の血管周囲に散在しており、形態学的にも目立った変化は認められなかった。誘導後7日目になると樹状細胞は血管周囲から上皮下に集簇するようになり、また形態学的にも大型化し、またリソソームをはじめ種々の細胞内小器官の発達が認められるようになった。II.表現型の分析発症時のF1ラットより得られた舌粘膜を用いて、抗MHC class II(OX-6)と接着分子に対する種々の抗体(抗ICAM-1、抗LFA-1α、抗LFA-1β、抗Mac-1、抗VLA-4、抗VLA-6、抗CD44)などのモノクローナル抗体による免疫組織学的2重染色を行い樹状細胞の表現型を調べた。その結果病変初期に粘膜固有層に増加する樹状細胞はICAM-1、LFA-1α、LFA-1β、Mac-1、CD44陽性であることが判明した。III.機能分析電顕観察により樹状細胞内のBirbeck顆粒の存在、数などについて検討したがBirbeck顆粒は確認できなかった。また細胞質内のリソソームは誘導後7日目より明らかな増加が認められた。I.形態観察移植片対宿主病(GVHD)誘導後、1、3、5、7日目および発症時(10日14日目)のF1ラットより得られた舌粘膜の粘膜固有層内に存在する樹状細胞のin vivoでの存在様式および形態学的変化を、随時免疫電顕的手法を加えながら電顕的に観察検討した。1、3、5日目では対称群と同様に、樹状細胞は粘膜固有層の血管周囲に散在しており、形態学的にも目立った変化は認められなかった。誘導後7日目になると樹状細胞は血管周囲から上皮下に集簇するようになり、また形態学的にも大型化し、またリソソームをはじめ種々の細胞内小器官の発達が認められるようになった。II.表現型の分析発症時のF1ラットより得られた舌粘膜を用いて、抗MHC class II(OX-6)と接着分子に対する種々の抗体(抗ICAM-1、抗LFA-1α、抗LFA-1β、抗Mac-1、抗VLA-4、抗VLA-6、抗CD44)などのモノクローナル抗体による免疫組織学的2重染色を行い樹状細胞の表現型を調べた。その結果病変初期に粘膜固有層に増加する樹状細胞はICAM-1、LFA-1α、LFA-1β、Mac-1、CD44陽性であることが判明した。III.機能分析電顕観察により樹状細胞内のBirbeck顆粒の存在、数などについて検討したがBirbeck顆粒は確認できなかった。また細胞質内のリソソームは誘導後7日目より明らかな増加が認められた。
KAKENHI-PROJECT-09470415
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09470415
映画DVD対応CALL教材作成支援システムの開発
本研究では英語学習者が高い興味を持つ映画に着目し、DVD-Videoを使用して「三ラウンド・システム」に基づいたCALL教材作成支援システムを開発した。さらに、本システムを使用して実際に一種「英語CALL教材」を作成し、実際の英語学習の現場で試用し、その効果を検証したところ、期待通りの成果を挙げ、システムの機能と実用性を検証できた。本システムの開発により、他のDVDの動画素材を使用したCALL教材シリーズ開発が可能になった。本研究では英語学習者が高い興味を持つ映画に着目し、DVD-Videoを使用して「三ラウンド・システム」に基づいたCALL教材作成支援システムを開発した。さらに、本システムを使用して実際に一種「英語CALL教材」を作成し、実際の英語学習の現場で試用し、その効果を検証したところ、期待通りの成果を挙げ、システムの機能と実用性を検証できた。本システムの開発により、他のDVDの動画素材を使用したCALL教材シリーズ開発が可能になった。本研究は英語学習者が高い興味を持つ映画に着目し,映画DVDを使用したCALL教材の作成支援システムを開発して今後の教材開発に供するとともに,実際に一種「英語CALL教材」を作成してシステムの機能と実用性を検証することを目的とする.本研究では三ラウンド・システムに基づき,開発済の教材作成支援システム(高橋他,2006)の機能を最大限活用して教材開発する方針であるが,開発済のシステムは著作権の許諾が得られた動画をWMVファイルの形式で使用し,CD-Rやインターネット等の手段で配布して複数のパソコンで使用することを前提としている.しかし,映画をCD-Rにコピーしたりインターネットで配信したりするような許諾を得ることは困難であり,本研究では学習者がひとり1枚のDVDを購入するか,業務使用の許諾を得られたDVDを借りることによって使用することとした.教材作成支援システムにDVD-Videoを直接制御する機能を実装するなどの改変作業は,綿密な打ち合わせを重ねながら業者に委託し,第一の目的であった映画DVD対応CALL,教材作成支援システムの開発に成功した.第二の目的である教材の試作をするために,映画作品の選定作業も並行して行った.前述の方法で映画の著作権を侵害することにはならないと考えるが,慎重を期して映画DVD配給会社1社と交渉して使用許諾を得た.候補となる映画61作品の一覧表を作成した後,さらに分野,内容,制作年やDVDの価格等の基準により候補を10作品に絞り込み,さらに難易度や関心度の観点から二段階に分けて英語学習者に対するアンケート調査を実施し,教材としてふさわしい作品1点を選定した.以上の研究成果に基づき,平成19年度の教材開発計画を進める予定である.本研究は英語学習者が高い興味を持つ映画に着目し,映画DVDを使用したCALL教材の作成支援システムを開発して今後の教材開発に供するとともに,実際に一種「英語CALL教材」を作成してシステムの機能と実用性を検証することを目的とする。昨年度開発に成功した映画DVD対応CALL教材作成支援システムに加え,今年度はDVD-Videoに収録された映画のうち教材に使用する部分(セグメント)の開始部分と終了部分をタイムコードで記録するプログラムを業者委託により開発した。これらのオーサリングシステムを活用七,今年度は映画作品1編を使用した教材を試作した。具体的には,(1)映像は各セグメントのタイムコードをエクセルに記述し,(2)テキスト情報は三ラウンド、システムの指導理論に基づき,設問,ヒント情報,正解例,解説情報,参考情報,補助情報,発展情報などをエクセルに入力し,これらのエクセルファイルをXMLファイルに変換した。その他,(3)参考情報および発展情報で使用する音声はネイティブスピーカー2名に依頼して録音スタジオでの収録とデジタル化を行い,(4)画像は業者委託および自作のグラフィックスを使用し,(5)これらのマルチメディア情報を統合してブラウザ上で実行可能な教材が完成した。完成した教材をCD-Rで配布してハードディスクにインストールするためのインストーラーも業者に開発委託した。教材開発の過程全体で技術的問題は発生せず,教材作成支援システムの機能と実用性も検証でき,当初の計画通り映画DVDを使用した教材の開発体制が整ったと結論した。以上の研究成果に基づき,平成20年度は開発した教材の試用と改善を行う予定である。本研究は英語学習者が高い興味を持つ映画に着目し,映画DVDを使用したCALL教材の作成支援システムを開発して今後の教材開発に供するとともに,実際に一種「英語CALL教材」を作成してシステムの機能と実用性を検証することを目的とする.今年度は一昨年度と昨年度の研究で開発を完了したソフトウェアおよび教材システムを実際の英語学習の現場で試用し,その効果を検証することを最重要課題とした.具体的にはTOEICで500点以上の学習者を対象とした半期15回の英語クラスにおいて29名の学生に試用してもらい,使用後に教員自作のアンケート(5段階評価および自由筆記),大学指定様式のアンケート(5段階)による他の英語授業との比較,TOEICを受験した学生の得点上昇量,の3つの観点で多面的に調査した.アンケート結果ではいずれも肯定的な結果が得られ,他の授業との比較においては15項目のアンケートすべてで本CALL教材を使用した授業のほうが高く評価された.TOEICについては受験した学生が3名のみで参考データとしたが,いずれも大きく得点を上昇させた。以上の結果,本システムは期待通りの成果を挙げ,映画DVDを使用したCALL教材作成支援システムの機能と実用性を検証でき,他のDVDの動画素材を使用したCALL教材シリーズ開発が可能になった.今年度で科研費を使用した研究は終了したが,本システムを活用して新たに米国のテレビドラマのDVDを使用したCALL教材の開発に着手することもできた.
KAKENHI-PROJECT-18300276
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琉球言語資料のデジタル化とその活用方法の研究
昔話・伝説・歌謡・芸能は、言葉による伝達の他に、音声・表情・ゼスチャーなどが伴う。特に、口頭伝承が豊かな沖縄の伝統文化は、身体表現による伝達の割合が大きい。しかし、伝承の〈時〉と〈場〉の変化とともに、伝統的な〈様式〉と〈精神性〉は変容してきた。なかでも、古典音楽の琉歌や古典芸能は、近代演劇の影響を受けて、〈声〉〈音〉〈身体〉は大きく変容した。したがって、琉歌・組踊・古典舞踊の琉球王朝文化については、琉球士族の言葉と身体様式、その精神性に焦点をあてて研究を進めた。昔話・伝説・歌謡・芸能は、言葉による伝達の他に、音声・表情・ゼスチャーなどが伴う。特に、口頭伝承が豊かな沖縄の伝統文化は、身体表現による伝達の割合が大きい。しかし、伝承の〈時〉と〈場〉の変化とともに、伝統的な〈様式〉と〈精神性〉は変容してきた。なかでも、古典音楽の琉歌や古典芸能は、近代演劇の影響を受けて、〈声〉〈音〉〈身体〉は大きく変容した。したがって、琉歌・組踊・古典舞踊の琉球王朝文化については、琉球士族の言葉と身体様式、その精神性に焦点をあてて研究を進めた。2012年度は、沖縄語・宮古語・八重山語による歌謡と昔話のデジタル化作業に向けての機器備品の調達を行い、音声のデジタル化作業に取り組んだ。また、祭りや芸能の映像資料については、専門の業者に依頼してデジタル化作業を行った。そして、デジタル化した歌謡・昔話・芸能等を基に、以下の調査研究を行った。1昔話の調査研究では、粟国島の祭り及び昔話調査を行い、また公開講演会及びシンポジウムを開催して語りの特性とその保存継承方法について議論した。2歌謡の調査研究では、八重山歌謡及び琉球古典音楽をデジタル化した歌の試聴会を開き、その音及び声の特徴が現在と相違していることをテーマに討論した。3昔話の話型とユタの呪詞の構造を比較検討するために沖縄語を使用するユタとともに、八重山で実践的な調査を行ったが、沖縄語を知らない八重山では言葉の意味よりも唱えの音声の力が大きな役割を果たしていた。4芸能の調査研究では、組踊の所作と唱えについて、デジタル化した映像資料と現在の組踊役者の演技ついて比較検討した。以上の調査研究の結果、口頭伝承の昔話や民間巫者のユタの唱えは、それぞれの地域の言葉で語られるので、地域差による言葉の相違があった。特に、昔話では、竹富島・小浜島・黒島などの島ごとの言葉の相違、あるいは道路を隔てた字ごとの言葉の相違が顕著であった。しかし、それに対して、歌謡の詞章や芸能のセリフでは、地域差の相違よりも、士族と農民の身分差による言葉の違いのほうが際立った。要するに、昔話とユタの唱えはその地域の言葉で語り、唱えているが、歌謡の詞章と芸能のセリフは首里を中心とした琉球士族語が多用されている。特に、琉歌と組踊の詞章は、琉球士族の言葉が基調であり、庶民のウチナーグチ(沖縄口=沖縄方言)とは相違していることが明らかになった。2013年度は、沖縄諸島・宮古諸島・八重山諸島のシマ言葉による歌謡・昔話・芸能のデジタル化作業を行うと共に、素人では困難なカビの付着したVHSテープ等を専門の業者に委託してデジタル化作業を行った。そして、デジタル化した歌謡・昔話・芸能を活用方法について、以下の調査研究を行った。昔話の調査研究では、徳島県鳴門市に所蔵されていた福田晃氏の沖縄の昔話テープ及びノート等を調査すると共にそのテープを持ち帰りデジタル化作業を行った。ただし、ユタの祭祀伝承に関わる昔話のシンポジウムについては、予定していた山下欣一氏の体調不良のため実現できなかったが、ユタの個人祭祀の在り方を中心に公的なツカサ・ノロ等の祭祀の在り方との相違についての調査研究を行った。歌謡及び祭祀伝承の調査では、粟国島のヤガン折目、竹富島の種子取祭及び祭祀伝承、宮古島の祭祀歌謡について調査した。また、昭和四十年代に採集された八重山の古謡及び節歌のデジタル化を行うと共に、現在の歌い方との相違についての研究を行った。芸能の調査研究では、「沖縄の古典芸能を考えるII」と題して、組踊「大川敵討ー糺の場ー」と琉球古典舞踊の研究上演を東京の国立劇所小劇場で行うと共に、その研究上演をとおして琉球古典芸能役者の身体と日本本土の儀礼文化及び能楽等の身体との比較研究を行った。今年度の調査研究では、琉球士族文化の組踊や琉歌等の琉球文語と庶民文化の口語(シマ言葉)の位相について行ったが、琉球王家を中心とした琉球士族文化における言葉・身体は組踊や琉球古典舞踊に継承されており、特に「唱え」を発する組踊用語と口語(庶民のシマ言葉)の位相を明らかにすると同時に、琉球士族の身体は組踊等の古典芸能に継承され、また庶民の身体は民俗芸能へと継承されていることが明らかになった。平成26年度の研究実施計画は、「琉球の宮廷文化の系譜と地域の庶民文化の系譜に分けて琉球言語資料の研究を進める必要がある」との観点で研究を進めた。そして、身体動作を伴う芸能と祭祀歌謡の調査では、琉球王朝の式楽である組踊と琉球古典舞踊の調査を行った。組踊の場合は本研究で考案した舞台様式で「大川敵討」の〈前段の場〉を上演し、琉球古典舞踊は伊勢神宮での奉納舞踊を調査した。また、地域の庶民文化の視点から、宮古島の神歌の実演を沖縄国際大学で行った。
KAKENHI-PROJECT-24242036
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琉球言語資料のデジタル化とその活用方法の研究
いずれも、実演家や観客の意識及び身体表現とその精神性について調査した。宮廷芸能は、品格を重んじ、師匠の教えに忠実であることを強調する。それに対して、庶民の祭祀歌謡の宮古の神歌の演唱者は、我が神歌の継承が常に正当であったことを強調すると同時に、神から教わったことを主張する。宮廷歌謡と民謡の関係については、国際基督教大学のマットギラン氏との意見交換会を行い、宮廷音楽と民謡の曲調・テンポなどの相違について議論した。また、説話については調査・研究の結果、昔話が伝説や史譚となる傾向が強く、村落祭祀の起源譚や琉球王国の起源伝承として語られる特性があることがわかった。ただし、琉球王国時代の歌謡・説話・芸能等は、王朝文化と庶民文化が相互に影響を受けており、琉球王国が近世本土の幕藩制封建社会に比べて身分差がはっきりしなかったことが窺える。また、琉球語には奄美・沖縄・宮古・八重山の地域差があり、それに加えて琉球の宮廷社会の琉球士族語があり多様である。ただし、話し言葉は通じ合わなくても、文字言語の及び士族社会の琉球文が共通語の役割を果たしていた。したがって、デジタル化した琉球言語資料を活用するにあたっては、以上のような琉球沖縄の文化的な特性を考慮すること、伝承者のプライバシーを尊重して、アーカイブ化を試験的に行う必要があるとの結論を得た。26年度が最終年度であるため、記入しない。琉球文学・琉球芸能・民俗学26年度が最終年度であるため、記入しない。デジタル化した音声及び映像資料を活用しての調査研究は、全体として順調に進んでいる。特に、歌謡と芸能については、その音声及び映像資料から、士族と庶民の身分差による身体の相違があり、身分差によって、体の動きや使い方、言葉の発音や用語が異なっていることを明らかにした。身分差による言葉や身体の相違は、本土では当然のこととして認知されているが、沖縄では近代化以降、特に戦後においては共通語化が促進されたため、その問題が意識されなくなった。また、沖縄の説話・歌謡・芸能のフィールド調査は、地域差を中心に文字化による文献中心の研究を目的として録音・録画が行われてきたが、本研究では言葉の意味よりも、声・音の聴覚や体の動きの視覚に注目して音声資料と映像資料を分析し、現在の祭祀・昔話・歌謡、そして組踊や地域の村踊りの比較検討を行った。つまり、従来の琉球言語文化の研究では、奄美諸島・沖縄諸島・宮古諸島・八重山諸島という地域間の相違に目を向け、各地域を幅広く踏査し、地域の相違に着目して研究する民俗学的な方法が中心であったが、その方法は首里を中心にした琉球士族文化の研究をおろそかにすることにつながったのである。したがって、今後は琉球の士族文化を中心にした研究が必要であり、そのことを踏まえて、本研究では身体・声・音を総合的に表現する組踊研究を進めることが有効であると考える。ただし、レコードやビデオテープのデジタル化が順調に進んでいるのに対して、当初デジタル化作業のメインと考えていた昔話のデジタル化作業がかなり遅れている。その理由は、カセットテープがすぐに切れてしまうという問題を抱えているからである。今後も、切れたカセットテープをつなぎ直してデジタル化を進めることになるが、これはかなりの時間を要すると思われる。レコードのデジタル化作業は、延べ数で、琉球古典音楽351曲、民謡444曲、沖縄芝居・沖縄歌劇24作品と八重山の歌謡等がほぼ完了した。また、組踊及び琉球舞踊の映像のデジタル化もほぼ終了し、祭祀の神歌等の映像資料のデジタル化もほぼ終了した。
KAKENHI-PROJECT-24242036
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B細胞における遺伝的拘束性を決定する要因の分子生物学的解析
われわれはこれまでの研究において、BALB/cマウスにM104Eミエロ-マ蛋白を免疫したとき、M104E CRI特異的に抗体産生を増強するB細胞群を同定した。このイディオタイプ特異的増強性B細胞活性は、抗体産生(CRI産生)B細胞との間の協同作用に主要組織適合性抗原(MHC)の一致を必要とし、その拘束性はクラスII分子によるものであった。またイディオタイプ特異的増強性B細胞活性が誘導されるためには、その個体がM104ECRI産生能を有しておらねばならないことを明らかにした。これらMHC拘束性分子の本体、ならびに、Igh拘束性の可能性を検索するためには、増強活性を有したB細胞クロンを得なければならない。そこでわれわれが以前確立した方法に従って、B細胞の長期培養とクロン化を行なった。M104Eミエロ-マ蛋白で免疫したBALB/cB細胞を、コンカナバリン刺激マウス脾細胞培養上清を含む合成培地で培養し、M104Eで刺激を続けた。約6ケ月後、クロン化して、増強性B細胞活性を持つB細胞クロンB19ー1^dを得た。このクロンはそれ自体では抗体を産生しないがLPSで刺激すると抗体産生細胞に分化した。LPS刺激したクロンをP3U1細胞と融合してハイブリド-マ(HB19)を得、これからcDNAを得た。一方M104EからもDNAをクロン化し、両者の塩基配列を決定した。両者の塩基配列を比較すると、互いに異なったDーJ遺伝子断片を用いてはいるが、leader peptide領域、VH遺伝子領域は極めて類似性が高く、DNAレベルで91%、アミノ酸レベルで89%の類似性を示した。文献的に、BALB/cマウスのJ558germ line gene subfamilyと比較しても、他subfamilyとの類似性がたかだか70ー80%ぐらいにとどまっており両者は極めて密に連関したgerm line遺伝子由来の抗体遺伝子であると考えられ、この類似性がIgh拘束性の本体であることが強く示唆された。われわれはこれまでの研究において、BALB/cマウスにM104Eミエロ-マ蛋白を免疫したとき、M104E CRI特異的に抗体産生を増強するB細胞群を同定した。このイディオタイプ特異的増強性B細胞活性は、抗体産生(CRI産生)B細胞との間の協同作用に主要組織適合性抗原(MHC)の一致を必要とし、その拘束性はクラスII分子によるものであった。またイディオタイプ特異的増強性B細胞活性が誘導されるためには、その個体がM104ECRI産生能を有しておらねばならないことを明らかにした。これらMHC拘束性分子の本体、ならびに、Igh拘束性の可能性を検索するためには、増強活性を有したB細胞クロンを得なければならない。そこでわれわれが以前確立した方法に従って、B細胞の長期培養とクロン化を行なった。M104Eミエロ-マ蛋白で免疫したBALB/cB細胞を、コンカナバリン刺激マウス脾細胞培養上清を含む合成培地で培養し、M104Eで刺激を続けた。約6ケ月後、クロン化して、増強性B細胞活性を持つB細胞クロンB19ー1^dを得た。このクロンはそれ自体では抗体を産生しないがLPSで刺激すると抗体産生細胞に分化した。LPS刺激したクロンをP3U1細胞と融合してハイブリド-マ(HB19)を得、これからcDNAを得た。一方M104EからもDNAをクロン化し、両者の塩基配列を決定した。両者の塩基配列を比較すると、互いに異なったDーJ遺伝子断片を用いてはいるが、leader peptide領域、VH遺伝子領域は極めて類似性が高く、DNAレベルで91%、アミノ酸レベルで89%の類似性を示した。文献的に、BALB/cマウスのJ558germ line gene subfamilyと比較しても、他subfamilyとの類似性がたかだか70ー80%ぐらいにとどまっており両者は極めて密に連関したgerm line遺伝子由来の抗体遺伝子であると考えられ、この類似性がIgh拘束性の本体であることが強く示唆された。イディオタイプ特異的に、抗体産生を増強するB細胞群を同定した。この活性を有するB細胞のクロン化を試み、B細胞クロンB19-1^d及びそのハイブリド-マ細胞HB19の樹立に成功した。B-B細胞間相互作用は、免疫グロブリン重鎖遺伝子群、及び主要組織適合性抗原による遺伝子的拘束性が存在することが証明できた。そこで、B細胞クロン由来ハイブリド-マHB19、及び標的イディオタイプの典型としてのHOPC104Eミエロ-マ細胞からcDNAライブラリ-を作成し、V-D-J領域の遺伝子クロ-ニングを行ない、それぞれの塩基配列を決定した。その結果、両者は極めて類似した塩基配列を示し、その相同性は89%であった。このことは、両者が同じV_H遺伝子サブファミリ-に属する近縁関係にあることが予想される。次いで、両V_H遺伝子のGerm Line DNA上の相対的位置関係を推定する目的で、両者のgenomic DNAをクロ-ニングした。HB19及び、MOPC104EよりDNAを得、J_Hをプロ-ブとしてrearranged DNA E_<CO>KI断片をλgt10ファ-ジにクロ-ニングし、次いでpuC19にサブクロ-ニングした。
KAKENHI-PROJECT-01570271
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01570271
B細胞における遺伝的拘束性を決定する要因の分子生物学的解析
次いで、それぞれに特異的なDNAプロ-ブを遺伝子5'側上流に求めた。E_<CO>RI genomic DNA断片上最も5'側の部分をpuC19にサブクロ-ニングし、得た断片をプロ-ブとして、マウス肝高分子DNAとサザンハイブリダイゼ-ションを行なった。その結果、high stringency conditionにおいて、それぞれの5'側プロ-ブに反応するDNA断片が検出された。この結果は、5'側プロ-ブがV_H遺伝子の特異的プロブになり得ることを示唆する。一方、このプロ-ブを用い、肝DNAライブラリ-、charon 28 LIO16をスクリ-ニングしたところ、両者にハイブリダイズするクロ-ンが1つだけ見つかった。現在、その遺伝子構造の解析を行なっている。われわれはこれまでの研究において、BALB/cマウスにM104Eミエロ-マ蛋白を免疫したとき、M104E CR1特異的に抗体産生を増強するB細胞群を同定した。このイディオタイプ特異的増強性B細胞活性は、抗体産生(CRI産生)B細胞との間の協同作用に主要組織適合性抗原(MHC)の一致を必要とし、その拘束性はクラスII分子によるものであった。またイディオタイプ特異的増強性B細胞活性が誘導されるためには、その個体がM104E CR1産生能を有しておらねばならないことを明らかにした。これらMHC拘束性分子の本体、ならびに、Igh拘束性の可能性を検索するためには、増強活性を有したB細胞クロンを得なければならない。そこでわれわれが以前確立した方法に従って、B細胞の長期培養とクロン化を行なった。M104Eミエロ-マ蛋白で免疫したBALB/c B細胞を、コンカナバリン刺激マウス脾細胞培養上清を含む合成培地で培養し、M104Eで刺激を続けた。約6ヶ月後、クロン化して、増強性B細胞活性を持つB細胞クロンB19ー1^dを得た。このクロンはそれ自体では抗体を産生しないがLPSで刺激すると抗体産生細胞に分化した。LPS刺激したクロンをP3U1細胞と融合してハイブリド-マ(HB19)を得、これからcDNAを得た。一方M104EからもDNAをクロン化し、両者の塩基配列を決定した。両者の塩基配列を比較すると、互いに異なったDーJ遺伝子断片を用いてはいるが、leader peptide領域、VH遺伝子領域は極めて類似性が高く、DNAレベルで91%、アミノ酸レベルで89%の類似性を示した。文献的に、BALB/cマウスのJ558germ line gene subfamilyと比較しても、他subfamilyとの類似性がたかだか70ー80%ぐらいにとどまっており両者は極めて密に連関したgerm line遺伝子由来の抗体遺伝子であると考えられ、この類似性がIgh拘束性の本体であることが強く示唆された。
KAKENHI-PROJECT-01570271
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Gjb2のコンディショナル・ノックアウト・マウスの遺伝子導入による難聴レスキュー
先天性難聴の原因として、GJB2遺伝子変異が重要であることはよく知られている。ヒトでの解析には限界があるので、動物モデルでの解析が検討されている。Cre recombinase存在下でgjb2遺伝子翻訳領域が切り取られるようなコンストラクトを作成し、ES細胞に相同組換えにより導入した。ネオマイシンによる選別を行いサザンブロット法により組替え体を同定した。ES細胞をB6マウスの胚盤胞へ注入してキメラマウスを作製した。続いてB6マウスと戻し交配を行いF1マウスを得た。Cre recombinaseを持つトランスジェニックマウスと交配させ、遺伝子欠失マウスを同定し解析に供した。聴性脳幹反応で聴力閾値を測定し、内耳を採取、パラフィンまたはエポンに包埋した。パラフィンに包埋したサンプルをヘマトキシリン・エオジン(H & E)染色、免疫組織染色で解析した。(Gjb2欠失マウスでは最大100dBのクリック音刺激でも脳幹反応を得ることができなかった。一方、野生型ではI-V波の明瞭な聴性脳幹反応を認め、閾値は30dB以下であった。欠失マウスではspiral limbusの線維細胞の減少が認められた。またコルチ器の構造がやや虚脱している所見が得られ、優性的阻害効果のあるgjb2変異マウスに類似した。血管条、ラセン靱帯の線維細胞、ラセン神経節細胞、ライスネル膜、蓋膜などは両者に明らかな違いは認めなかった。聴性脳幹反応による聴力検査では変異体では極めて高度な難聴像を示した。今回作製したマウスはヒトのGJB2の異常による言語習得前の高度難聴と極めて類似した表現型を示すことが判明し、ヒト(GJB2遺伝子変異による難聴のマウスモデルとなることが示唆された。先天性難聴の原因として、GJB2遺伝子変異が重要であることはよく知られている。ヒトでの解析には限界があるので、動物モデルでの解析が検討されている。Cre recombinase存在下でgjb2遺伝子翻訳領域が切り取られるようなコンストラクトを作成し、ES細胞に相同組換えにより導入した。ネオマイシンによる選別を行いサザンブロット法により組替え体を同定した。ES細胞をB6マウスの胚盤胞へ注入してキメラマウスを作製した。続いてB6マウスと戻し交配を行いF1マウスを得た。Cre recombinaseを持つトランスジェニックマウスと交配させ、遺伝子欠失マウスを同定し解析に供した。聴性脳幹反応で聴力閾値を測定し、内耳を採取、パラフィンまたはエポンに包埋した。パラフィンに包埋したサンプルをヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色、免疫組織染色で解析した。Gjb2欠失マウスでは最大100dBのクリック音刺激でも脳幹反応を得ることができなかった。一方、野生型ではI-V波の明瞭な聴性脳幹反応を認め、閾値は30dB以下であった。欠失マウスではspiral limbusの線維細胞の減少が認められた。またコルチ器の構造がやや虚脱している所見が得られ、優性的阻害効果のあるgjb2変異マウスに類似した。血管条、ラセン靱帯の線維細胞、ラセン神経節細胞、ライスネル膜、蓋膜などは両者に明らかな違いは認めなかった。聴性脳幹反応による聴力検査では変異体では極めて高度な難聴像を示した。今回作製したマウスはヒトのGJB2の異常による言語習得前の高度難聴と極めて類似した表現型を示すことが判明し、ヒトGJB2遺伝子変異による難聴のマウスモデルとなることが示唆された。先天性難聴の原因として、GJB2遺伝子変異が重要であることはよく知られている。ヒトでの解析には限界があるので、動物モデルでの解析が検討されている。Cre recombinase存在下でgjb2遺伝子翻訳領域が切り取られるようなコンストラクトを作成し、ES細胞に相同組換えにより導入した。ネオマイシンによる選別を行いサザンブロット法により組替え体を同定した。ES細胞をB6マウスの胚盤胞へ注入してキメラマウスを作製した。続いてB6マウスと戻し交配を行いF1マウスを得た。Cre recombinaseを持つトランスジェニックマウスと交配させ、遺伝子欠失マウスを同定し解析に供した。聴性脳幹反応で聴力閾値を測定し、内耳を採取、パラフィンまたはエポンに包埋した。パラフィンに包埋したサンプルをヘマトキシリン・エオジン(H & E)染色、免疫組織染色で解析した。(Gjb2欠失マウスでは最大100dBのクリック音刺激でも脳幹反応を得ることができなかった。一方、野生型ではI-V波の明瞭な聴性脳幹反応を認め、閾値は30dB以下であった。欠失マウスではspiral limbusの線維細胞の減少が認められた。またコルチ器の構造がやや虚脱している所見が得られ、優性的阻害効果のあるgjb2変異マウスに類似した。血管条、ラセン靱帯の線維細胞、ラセン神経節細胞、ライスネル膜、蓋膜などは両者に明らかな違いは認めなかった。聴性脳幹反応による聴力検査では変異体では極めて高度な難聴像を示した。
KAKENHI-PROJECT-15659402
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15659402
Gjb2のコンディショナル・ノックアウト・マウスの遺伝子導入による難聴レスキュー
今回作製したマウスはヒトのGJB2の異常による言語習得前の高度難聴と極めて類似した表現型を示すことが判明し、ヒト(GJB2遺伝子変異による難聴のマウスモデルとなることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-15659402
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次世代型心不全治療法の開発へ向けたゲノム編集による老化心筋幹細胞の若返り
近年、高齢者由来心筋幹細胞が幹細胞老化に陥っている可能性が指摘されており、特に高齢患者に対する心筋幹細胞移植の実施には慎重な対応が迫られている。本研究では、2-83歳の26名の心不全患者から単離した心筋幹細胞を用いて個体老化と心筋幹細胞老化との関係性を明らかにし、心筋幹細胞の老化誘導因子の同定と老化幹細胞の若返り誘導法の開発を当初の目的とした。しかし結果として、高齢患者由来のヒト心筋幹細胞における“老化"は極めて限定的であり、若返りの必要性は必ずしもないことが明らかとなった。このことは、高齢者が大半を占める重症心不全患者に対する自己心筋幹細胞移植療法の実施を大いに後押しする成果である。心筋幹細胞は、不全心に対する細胞移植治療において極めて有用な細胞種の一つである。しかし、加齢や背景疾患の影響により組織内在性の体性幹細胞の機能が低下してしまう可能性が示唆されており、心不全患者の大半を占める高齢者に対する自己心筋幹細胞移植治療の効果に疑問が残る。そこで本研究では、当院および関連病院において開胸手術を施行する患者から心筋幹細胞を採取し、年齢および背景疾患と心筋幹細胞の機能との関連性について検討する。また、細胞老化関連因子を同定し、老化心筋幹細胞の若返り法を開発することを本研究の目的の一つとする。平成27年度は、2歳児から83歳までの計26人の患者から心筋幹細胞をそれぞれ単離した。患者由来ヒト心筋幹細胞において、細胞老化に関連する遺伝子群の発現解析を行ったところ、患者年齢と各遺伝子群との間で有意な差は認められなかった。次に、ヒト心筋幹細胞の増殖能、細胞老化率、DNA損傷率、血管形成能、などについて比較検討したところ、驚くべきことに、これまでの報告とは異なり年齢と心筋幹細胞の基礎的な性質との間に有意な差は認められなかった。すなわち、心筋幹細胞の機能低下は、加齢に直接影響を受けるものではないことを示唆している。得られた成果については、関連学術誌への投稿および関連学会での発表により積極的な情報発信を行った。平成28年度には、さらに詳細な検討を進め、心筋幹細胞を用いた心不全治療の新たな可能性を提示したい。平成27年度は、山口大学医学部附属病院および関連病院において小児から高齢者まで26名の心臓組織を採取し、さらにそれらの組織から心筋幹細胞を樹立することができた。ゆえに研究は順調に進展していると言える。細胞老化に関連する遺伝子の同定には至らなかったが、一方で、心筋幹細胞の基礎機能に加齢が与える影響は小さいという重要な発見がなされたことは評価に値する。前年度までに、山口大学医学部附属病院で心臓手術を施術された2歳児から83歳までの26例の患者から採取した心筋幹細胞を用いて、細胞の増殖能、細胞成長因子産生能、細胞老化状態、等を比較検討したところ、患者年齢と心筋幹細胞老化との間に有意な相関性は見出されなかった。このことは、定説となりつつあった「高齢患者由来心筋幹細胞=老化幹細胞」の図式を崩す極めて興味深い結果である。本年度は、qPCR法を用いて、高齢者由来心筋幹細胞と若齢患者由来心筋幹細胞との間で発現変化の見られる因子について比較検討を行った。特に、これまで細胞老化誘導因子として報告されてきた因子に注目したところ、高齢者由来心筋幹細胞においてsFRP1の発現が有意に亢進していることが明らかとなった。sFRP1は、DNA障害により発現が誘発される因子として知られ、事実、我々の検討においても平均値の比較では差は認められないものの、高齢患者ほど心筋幹細胞のDNA障害率が高まっている傾向があることを見出しており、関連性が強く示唆される。近年、高齢者由来心筋幹細胞が幹細胞老化に陥っている可能性が指摘されており、特に高齢患者に対する心筋幹細胞移植の実施には慎重な対応が迫られている。本研究では、2-83歳の26名の心不全患者から単離した心筋幹細胞を用いて個体老化と心筋幹細胞老化との関係性を明らかにし、心筋幹細胞の老化誘導因子の同定と老化幹細胞の若返り誘導法の開発を当初の目的とした。しかし結果として、高齢患者由来のヒト心筋幹細胞における“老化"は極めて限定的であり、若返りの必要性は必ずしもないことが明らかとなった。このことは、高齢者が大半を占める重症心不全患者に対する自己心筋幹細胞移植療法の実施を大いに後押しする成果である。最終年度である平成28年度には、樹立した26株の心筋幹細胞を用いて、加齢による幹細胞機能への影響についてさらに詳細に検証する。また、平成27年度には同定できなかった細胞老化誘導因子の同定についても引き続き検討する。具体的には、樹立した細胞株にストレスを与えることで人為的に細胞老化を誘導し、細胞老化関連因子群の発現解析を行う。心臓外科平成27年度に行う予定であった網羅的発現解析を行わずに、標的とする遺伝子を絞った発現解析法に変更したため次年度使用額が発生した。平成27年度に予定していた網羅的解析を平成28年度に実施する。
KAKENHI-PROJECT-15K15508
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上皮増殖因子前駆体細胞内ドメインをターゲットとした新規薬剤開発
【目的】炎症性腸疾患において、腸管の持続する活動性炎症より大腸癌(colitic cancer)を合併する。しかしそのメカニズムは不明である。潰瘍性大腸炎では、炎症細胞や腸管上皮から放出される炎症性サイトカイン(IL-8)がcolitic cancerの増殖・進展に重要な役割を果たしている。HB-EGF C末端細胞内ドメイン(HB-EGF-CTF)核移行が細胞増殖に重要な役割を果たす。HB-EGF-CTF核移行を阻害することが新たな癌治療戦略になり得ると考え新規薬剤の探索を行い、その候補薬剤の細胞増殖抑制効果を調べた。【方法】HB-EGF-CTFとPLZFとの結合を抑制する6000種類のchemical compoundをAlpha Screensystemを用い網羅的にスクリーニングした。数種の大腸癌細胞株を使用し細胞増殖カーブにて検討した。HB-EGF-CTFおよびPLZFに対する蛍光免疫染色を行い、細胞内局在の変化を調べた。EGFRリン酸化については、免疫沈降にて確認した。【結果】HB-EGF-CTFとPLZFとの結合を抑制する薬剤として化合物No.8016が得られ、No.8016と類似構造をもつ2種類の化合物(compoundA,B)をみつけだすことができた。IL-8による細胞増殖抑制効果は、compoundBに比べAの方が強かった。IL-8刺激によるHB-EGF-C末端核移行は、compoundAのみで阻害できた。compoundA,B共にEGFRリン酸化を阻害しなかった。【結論】compoundAは、IL-8により誘導されるHB-EGF-CTF核移行を抑制することにより、細胞増殖抑制作用を発揮すると考えられた。HB-EGF-CTF核移行シグナルを抑制するcompoundAは、新たな癌治療戦略になりうる薬剤と考えられた。【目的】炎症性腸疾患において、腸管の持続する活動性炎症より大腸癌(colitic cancer)を合併する。しかしそのメカニズムは不明である。潰瘍性大腸炎では、炎症細胞や腸管上皮から放出される炎症性サイトカイン(IL-8)がcolitic cancerの増殖・進展に重要な役割を果たしている。HB-EGF C末端細胞内ドメイン(HB-EGF-CTF)核移行が細胞増殖に重要な役割を果たす。HB-EGF-CTF核移行を阻害することが新たな癌治療戦略になり得ると考え新規薬剤の探索を行い、その候補薬剤の細胞増殖抑制効果を調べた。【方法】HB-EGF-CTFとPLZFとの結合を抑制する9000種類のchemical compoundをAlpha Screensystemを用い網羅的にスクリーニングした。大腸癌細胞株(HT29, HCT116)を使用し細胞増殖カーブおよびMTSアッセイにて検討した。HB-EGF-CTFおよびPLZFに対する蛍光免疫染色を行い、細胞内局在の変化を調べた。EGFRリン酸化については、免疫沈降にて確認した。【結果】HB-EGF-CTFとPLZFとの結合を抑制する薬剤として化合物No.8016が得られ、No.8016と類似ビフェニール構造をもつ2種類の化合物(カンデサルタン、テルミサルタン)をみつけだすことができた。IL-8による細胞増殖抑制効果は、カンデサルタンに比べテルミサルタンの方が強かった。IL-8刺激によるHB-EGF-C末端核移行は、テルミサルタンのみで阻害できた。カンデサルタン、テルミサルタン共にEGFRリン酸化を阻害しなかった。【結論】テルミサルタンは、IL-8により誘導されるHB-EGF-CTF核移行を抑制することにより、細胞増殖抑制作用を発揮すると考えられた。HB-EGF-CTF核移行シグナルを抑制するテルミサルタンは、新たな癌治療戦略になりうる薬剤と考えられた。【結論】telmisartanやその誘導体によるHB-EGF-CTF核内移行シグナル抑制は、新たな大腸癌治療戦略になりうると考えられた。9000種類のchemical compoundをAlpha Screensystemを用い網羅的にスクリーニングした結果、テルミサルタンとNo.8016がHB-EGF-CTFとPLZFとの結合を抑制する薬剤であるとわかった。また、これら薬剤が増殖抑制効果も発揮することが示された。24年度が最終年度であるため、記入しない。さらにこれら薬剤が、in vivo(マウス発癌実験)においても、増殖抑制効果が認められることが示せれば、臨床応用も可能となってくる。アゾキシメタンを投与後慢性DSS腸炎惹起発癌モデルにおいて、これら薬剤を同時投与し、大腸癌増殖進展が抑えられれば、in vivo実験でも示せたことになる。現在、実験準備、進行中。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22590704
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全身性強皮症を含む皮膚線維化疾患におけるlong non-coding RNA
平成27年度は、TSIXが強皮症患者の病変部皮膚で他の疾患や正常皮膚よりも発現が増加しており、さらにその局在は皮膚線維細胞であることを突き止めた。また、TSIX siRNAによりcollagen mRNAの安定性が有意に減少した。そして平成28年度は、多数の強皮症患者群で血清TSIX濃度を測定したところ、正常対照群に比較して強皮症患者群で有意に増加していたため診断に有用である可能性が示唆された。平成29年度は皮膚線維化モデルマウスにおいてTSIXを阻害して、生じる変化を観察した。その結果、TSIX siRNAはブレオマイシンによる皮膚真皮厚の増加を有意に抑制した。平成27年度は、皮膚線維化疾患や膠原病の皮膚組織からRNAを抽出し、全身性強皮症の病態に関係する可能性の高い3種類のlncRNAを中心にreal-time PCRやin situ hybridizationで病変部での発現量・局在を調べた。その結果、TSIXは強皮症患者の病変部皮膚で他の疾患や正常皮膚よりも発現が増加しており、さらにその局在は皮膚線維芽細胞であることを突き止めることができた。その他のlncRNA(XISTやHAR1A)については、強皮症とそれ以外のサンプルで有意な差を認めなかった。次に、siRNAやexpression vectorで培養細胞における機能解析を行った。TSIXsiRNAを培養皮膚線維芽細胞に強発現すると、collagenのmRNAあるいは蛋白の発現が減少することが分かった。そのメカニズムとして、TSIX siRNAによりcollagen mRNAのstabilityが有意に減少していた。つまり、TSIXそのものは皮膚線維芽細胞においてcollagen mRNAのstabilityを維持することでコラーゲン発現をコントロールするが、強皮症皮膚線維芽細胞ではTSIXが増加することでコラーゲン発現が恒常的に増加し、ひいては組織の線維化が誘導されると考えられた。以上より、本研究によりTSIXは本症の病態に強く関わる因子であるとともに、新しい治療のターゲットになりうることが明らかとなった。すでに平成27年度の研究計画については完了し、平成28年度以降に計画していた血清中lncRNAの解析に進んでいるため。平成27年度は、TSIXが強皮症患者の病変部皮膚で他の疾患や正常皮膚よりも発現が増加しており、さらにその局在は皮膚線維細胞であることを突き止めることができた。また、TSIX siRNAによりcollagen mRNAのstabilityが有意に減少した。つまり、TSIXそのものは皮膚線維芽細胞においてcollagen mRNAのstabilityを維持することでコラーゲン発現をコントロールするが、強皮症皮膚線維芽細胞ではTSIXが増加することでコラーゲン発現が恒常的に増加し、ひいては組織の線維化が誘導されると考えられた。つまり本研究によりTSIXは本症の病態に強く関わる因子であるとともに、新しい治療のターゲットになり得ることが明らかとなった。そして平成28年度は、TSIXの血清中濃度の疾患マーカーとしての有用性を評価するため、少数の血清サンプルからRNAを抽出し、TSIXが実際に血清中にも発現していることをreal-time PCRで確認することができた。また、多数の強皮症患者群で血清TSIX濃度を測定したところ、正常対照群に比較して強皮症患者群で有意に増加していたため診断に有用である可能性が示唆された。さらに患者群において臨床症状との相関を調べたところ、スキンスコアとの相関を認め、病勢マーカーとしての有用性も示唆された。以上の結果をExp Dermatol雑誌に投稿し掲載された(Wang Z et al. Exp Dermatol 2016)。すでに平成27-28年度の研究計画については完了し、平成29年度以降に計画していたマウスモデルを用いた研究に進んでいるため平成27年度は、TSIXが強皮症患者の病変部皮膚で他の疾患や正常皮膚よりも発現が増加しており、さらにその局在は皮膚線維細胞であることを突き止めることができた。また、TSIX siRNAによりcollagen mRNAのstabilityが有意に減少した。そして平成28年度は、TSIXの血清中濃度の疾患マーカーとしての有用性を評価するため、少数の血清サンプルからRNAを抽出し、TSIXが実際に血清中にも発現していることをreal-time PCRで確認することができた。また、多数の強皮症患者群で血清TSIX濃度を測定したところ、正常対照群に比較して強皮症患者群で有意に増加していたため診断に有用である可能性が示唆された。さらに患者群において臨床症状との相関を調べたところ、スキンスコアとの相関を認め、病勢マーカーとしての有用性も示唆された。・平成29年度は震災や異動により研究が遅延したが、in vivoでのTSIXをターゲットとした治療の効果を調べるため、皮膚線維化モデルマウスにおいてTSIXを阻害して、生じる変化を観察することで治療応用の可能性を明らかにした。過去のmicroRNAの投与実験に準じて(Makino K, et al. J Immunol 2013)、TSIX siRNAを週に一度腹腔内注射し、ブレオマイシン28日間連続局注による皮膚の線維化を抑制出来るかを評価した。その結果、TSIX siRNAはブレオマイシンによる皮膚真皮厚の増加を有意に抑制した。また、TSIXsiRNAはコラーゲンmRNAの発現を抑制していたことより、抗線維化作用は想定された機序によると考えられた。平成27年度は、TSIXが強皮症患者の病変部皮膚で他の疾患や正常皮膚よりも発現が増加しており、さらにその局在は皮膚線維細胞であることを突き止めた。また、TSIX siRNAによりcollagen mRNAの安定性が有意に減少した。
KAKENHI-PROJECT-15K09771
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全身性強皮症を含む皮膚線維化疾患におけるlong non-coding RNA
そして平成28年度は、多数の強皮症患者群で血清TSIX濃度を測定したところ、正常対照群に比較して強皮症患者群で有意に増加していたため診断に有用である可能性が示唆された。平成29年度は皮膚線維化モデルマウスにおいてTSIXを阻害して、生じる変化を観察した。その結果、TSIX siRNAはブレオマイシンによる皮膚真皮厚の増加を有意に抑制した。現在、同定された強皮症の疾患特異的・機能的lncRNAの血清中濃度の疾患マーカーとしての有用性を評価するため、血清からRNAを抽出し、特異的lncRNAが実際に血清中にも発現しているかを少数のサンプルを用いてreal-time PCRで確認している。今後、血清中での発現が確認されたlncRNAについては多数の患者群で血清lncRNA濃度を測定し、正常対照群や他疾患との比較を行い診断マーカーとしての評価をする。さらに患者群において臨床症状との相関を調べて病勢マーカーとしての評価も行う。具体的には、例えば全身性強皮症においてはスキンスコアや皮膚潰瘍および肺病変・腎病変の有無との相関を調べる。本年度はin vivoでのTSIXをターゲットとした治療の効果を調べるため、皮膚線維化モデルマウスにおいてTSIXを強発現あるいは阻害して、生じる変化を観察することで治療応用の可能性を明らかにする。例えば過去のmicroRNAの投与実験に準じて(Makino K, et al. J Immunol 2013)、TSIX siRNAを週に一度腹腔内注射して、ブレオマイシン28日間連続局注による皮膚の線維化を抑制出来るかを評価する。加えて他の各疾患においても、増加しているlncRNAについてはsiRNAで抑制し、減少しているlncRNAについてはlncRNAを補充して治療薬としての有用性を検討する。皮膚科学
KAKENHI-PROJECT-15K09771
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糸状菌由来セルロース膨潤タンパク質の機能解析
セルロース膨潤タンパク質Swolleninの反応機構とセルラーゼの反応促進における役割を解明することに成功した。また,Swolleninの作用によるセルロースの構造変化を明らかにし,セルラーゼによる反応との違いを見出すことに成功した。本結果は,セルロース分解に携わるタンパク質の新規反応機構を明らかにしただけでなく,セルロースの加水分解反応を促進する新たな因子としてバイオマスの有効利用において活用できる可能性が考えられる。セルロース膨潤タンパク質であるSwolleninを遺伝子組換え技術によって作成し,その反応機構と反応によって調製されたセルロースの構造解析を行った。1.セルロースの膨潤は,Swolleninによる加水分解反応によって引き起こされるのかーSwolleninのセルロース膨潤活性は,セルロース表面のごく一部で生じ,機器分析によって膨潤に起因する結果を得ることはできなかった。しかし,セルラーゼ活性の促進効果を調べることでSwolleninの作用を定量化することに成功した。一方,Swolleninによるセルロースの加水分解力を生成物のゲル浸透クロマトグラフィーによって定量化することにも成功した。その結果,Swolleninの作用によって,高重合度のセルロースに対しても,可溶性の糖質は確認されないものの,重合度の低下が起こり加水分解が生じていることが明らかとなった。また,加水分解とセルラーゼ活性の促進効果には関連性が確認された。同様に,Swolleninと類似した構造をもつTrichoderma reesei由来エンド型セルラーゼ(EG5)を用いて同様の実験を行った。本酵素の添加によってもセルラーゼの活性促進効果が確認されるが,その効果はSwolleninに比較して明らかに低く,Swolleninの促進効果はその加水分解力だけでなく,他の要因が関与していることが示唆された。2.セルロース膨潤に関与するアミノ酸残基の同定ーカルボキシメチルセルロースを基質としてSwolleninの加水分解生成物のアノマー型を決定した。その結果,反転型であることを明らかにした。この結果は,Swolleninと類似した構造を持つEG4の特性と一致しており,構造のみならず反応機構も類似していることが示唆された。EG5においては,加水分解に寄与する2つの触媒アミノ酸残基はアスパラギン酸であることが判明しており,Swolleninに保存されているアスパラギン酸の変異体の作出を試みる予定でいる。1. Swolleninの局在部位の特定1Swolleninペプチド抗体の作製と反応性ーSwolleninに特異的なアミノ酸配列から抗原となる配列を決定し,ペプチド抗体を作製した。T. reeseiの培養液上清を用いて抗体の反応性を調査したところ,Swolleninと思われる約70 kDaのタンパク質と反応性を示した。今後は,本抗体を使用してバイオマス中におけるSwolleninの局在性を調査する予定である。2Swolleninのセルロースへの吸着力ーSwolleninのセルロースへの吸着力を各種CBM1を有するセルラーゼと比較した。Swolleninは,CBH1と同様にセルロースに吸着したタンパク質の90%以上が離脱することから,可逆的な吸着であると考えられた。2. Swolleninの発現時期と発現量の調査リアルタイムPCR法によって調査を行った。Swolleninの発現時期はセルラーゼ(cbh1, cbh2, eg1)と完全に一致していることが明らかとなった。セルロースをC源としたときの発現量は,cbh1と比較して約4%であり,Reference gene (act1)に比較すると約200%であった。3.各種セルラーゼ成分の調製Swolleninによる活性促進効果を調査するために,T. reesei由来の各種セルラーゼ成分を組換え酵素として調製した。麹菌を利用した発現系を構築し,計画通りにCBH1, CBH2, EG1, EG2, EG4, BGL1の発現に成功し,精製を完了した。1.セルラーゼ加水分解反応に及ぼすSwoleninの活性促進効果T.reesei由来各種セルラーゼによるセルロースの分解反応にSwolleninを添加して,その分解率を測定した。セルラーゼ成分としてCBH1,CBH2およびβ-Glucosidaseなどのエキソ型グルカナーゼに対しては,高い相乗効果が確認された。一方,EG1,EG2, EG5, EG4 (Cel61A)などのエンド型酵素に対しては相乗効果は確認できたものの,その程度は低かった。これらの結果は,Swolleninはセルロース鎖内部をエンド型に分解していることを支持するものであった。2.Swolleninの反応機構とセルラーゼの関連性平成26年度までに作製したSwolleninアミノ酸変異体を使用して,反応機構を調査した。活性中心と考えられる2つのアミノ酸残基を同定し,これらの変異によってSwolleninによるセルラーゼの分解反応促進効果が消失することを明らかにした。このことは,Swolleninは活性は弱いが加水分解酵素の一種であり,反応によって生じたセルロース末端が増えることでエキソ型グルカナーゼの反応を促進している可能性が考えられた。セルロース膨潤タンパク質Swolleninの反応機構とセルラーゼの反応促進における役割を解明することに成功した。また,Swolleninの作用によるセルロースの構造変化を明らかにし,セルラーゼによる反応との違いを見出すことに成功した。本結果は,セルロース分解に携わるタンパク質の新規反応機構を明らかにしただけでなく,セルロースの加水分解反応を促進する新たな因子としてバイオマスの有効利用において活用できる可能性が考えられる。
KAKENHI-PROJECT-25450498
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糸状菌由来セルロース膨潤タンパク質の機能解析
当初の予定よりも抗体の反応性の評価に時間を要し,Swolleninの局在性の調査が年度内に実施できなかったため,やや遅れていると判断した。その他の項目については,当初の研究計画を予定通り実行できている。酵素化学平成26年度の結果を受けて,以下のように実施する。1. Swolleninの局在性の調査(H26年度に未実施の項目)2.セルラーゼ反応に対するSwolleninの活性促進効果3. Swolleninによるセルロースの膨潤とセルラーゼ反応の関連性の調査平成25年度における,研究計画を実施・終了したため。Swolleninの作用機構を解明するために,その基礎となる知見を明らかとした。具体的には,セルロース膨潤作用の定量化,加水分解とセルロース膨潤作用の関連性および生成物のアノマー型の同定である。平成25年度の結果を受けて,以下の事項について実行する。1.Swollenin存在部位の特定ーSwolleninのセルラーゼ活性促進効果には,加水分解力以外の要因も関与していることが明らかとなった。これには,バクテリアExpansinでも報告されているセルロースへの吸着作用が関与している可能性がある。平成26年度実施予定の抗体によるセルロースへの吸着部位の特定では,その吸着力をセルラーゼと比較することを実施する。2.Swollenin発現量と発現時期の特定ーSwolleninの役割を解明するために,RT-qPCRによって発現時期と発現量を調査する。1で作成した抗体によって,タンパク質レベルでの調査も実施する。
KAKENHI-PROJECT-25450498
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老化ストレスシグナルによる腸管上皮幹細胞制御機構の解明
腸管上皮細胞は様々な異物に対するバリアーとなるとともに,`生理的炎症'に常に曝されている。このような環境において,腸管上皮幹細胞は遺伝子変異を加齢とともに蓄積していくと考えられる。このようなステムセルエイジングは,加齢に伴う大腸がん率上昇や潰瘍性大腸炎のがん化に寄与すると考えられる。我々は,大腸がんも含め,慢性的な炎症ストレスシグナルがステムセルエイジングを介した発がんを導くと考え,本研究を考案した。申請者は腸管上皮幹細胞培養技術の開発に成功し,幹細胞の加齢現象を細胞生物学的に追及することができる(Nature 2009, Nature Medicine 2011)。既に,ヒト腸管上皮幹細胞はマウスに比し高い細胞ストレス感受性をもつことを見出し(Gastroenterology 2011),長寿命であるヒトの組織を用いたステムセルエイジング研究に着目した。本研究は加齢に伴う腸管上皮幹細胞のゲノム・トランスクリプトーム変化と幹細胞機能異常を包括的に理解し,加齢を誘導する分子およびシグナル機構を解明することを目的とする。ヒト大腸がんや正常大腸上皮からオルガノイドライブラリーを構築し,様々な年齢や疾患を有するオルガノイドの包括的な分子プロファイルを取得した(Cell Stem Cell 2016).また,ヒト大腸オルガノイドのマウスへの同所異種移植システムを確立し,幹細胞の組織内の動態を観察するプラットフォームを開発した.その結果,マウスに比して,ヒトの大腸上皮幹細胞は細胞増殖スピードが遅いことを見出した(Cell Stem Cell 2018).さらに,様々な年齢の潰瘍性大腸炎患者の大腸オルガノイドの作製と遺伝学的解析を行った(submitted).こうしたデータは,加齢や炎症ストレスが大腸上皮幹細胞にどのような生物学的な変動をもたらすかを知る鍵になると考えられる.平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。腸管上皮細胞は腸内細菌や食餌抗原などの様々な異物に対するバリアーとなるとともに,`生理的炎症'に常に曝されている.このような過酷な環境において,腸管上皮幹細胞は遺伝子変異やエピゲノム変化を加齢とともに蓄積していくと考えられる.このようなステムセルエイジングは,加齢に伴う大腸がんの発症率上昇や潰瘍性大腸炎のがん化に寄与すると考えられる.潰瘍性大腸炎は,国内に14万人の患者を有し,比較的若年者においても大腸発がんリスクを有することから社会的問題となっている.我々は,通常の大腸がんも含め,慢性的な炎症ストレスシグナルがステムセルエイジングを介した発がんを導くと考え,本研究を考案した.佐藤らはこれまで不可能であった腸管上皮幹細胞培養技術の開発に成功し,幹細胞の加齢現象を細胞生物学的に追及することができる(Nature 2009, Nature Medicine 2011).既に,ヒト腸管上皮幹細胞はマウスに比し細胞ストレスに対して高い感受性をもつことを見出しており(Gastroenterology 2011),長寿命であるヒトの組織を用いたステムセルエイジング研究に着目した.本研究は加齢に伴う腸管上皮幹細胞の(エピ)ゲノム・トランスクリプトーム変化と幹細胞機能異常を包括的に理解し,加齢を誘導する分子およびシグナル機構を解明することを目的とする.さらに,加齢分子メカニズムに基づいた人工的な加齢誘導モデルを作製し,加齢変化を抑制する全く新しい発がん予防治療の創出を目指す.また,包括的ゲノムデータを数理化し,ステムセルエイジングによる大腸がんハイリスクグループの予測を目指す.慢性炎症による発がんは本邦で発症率の高い慢性胃炎や慢性肝炎などを背景とするため,本研究の成果は我が国のライフサイエンスの進展ならびに健康長寿社会の実現につながると考える.腸管上皮細胞は腸内細菌や食餌抗原などの様々な異物に対するバリアーとなるとともに,`生理的炎症'に常に曝されている.このような過酷な環境において,腸管上皮幹細胞は遺伝子変異やエピゲノム変化を加齢とともに蓄積していくと考えられる.このようなステムセルエイジングは,加齢に伴う大腸がんの発症率上昇や潰瘍性大腸炎のがん化に寄与すると考えられる.我々は,通常の大腸がんも含め,慢性的な炎症ストレスシグナルがステムセルエイジングを介した発がんを導くと考え,本研究を考案した.佐藤らはこれまで不可能であった腸管上皮幹細胞培養技術の開発に成功し,幹細胞の加齢現象を細胞生物学的に追及することができる(Nature 2009, Nature Medicine 2011).既に,ヒト腸管上皮幹細胞はマウスに比し細胞ストレスに対して高い感受性をもつことを見出しており(Gastroenterology 2011),長寿命であるヒトの組織を用いたステムセルエイジング研究に着目した.本研究は加齢に伴う腸管上皮幹細胞の(エピ)ゲノム・トランスクリプトーム変化と幹細胞機能異常を包括的に理解し,加齢を誘導する分子およびシグナル機構を解明することを目的とする.
KAKENHI-PLANNED-26115007
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-26115007
老化ストレスシグナルによる腸管上皮幹細胞制御機構の解明
さらに,加齢分子メカニズムに基づいた人工的な加齢誘導モデルを作製し,加齢変化を抑制する全く新しい発がん予防治療の創出を目指す.また,包括的ゲノムデータを数理化し,ステムセルエイジングによる大腸がんハイリスクグループの予測を目指す.慢性炎症による発がんは本邦で発症率の高い慢性胃炎や慢性肝炎などを背景とするため,本研究の成果は我が国のライフサイエンスの進展ならびに健康長寿社会の実現につながると考える.平成26年度に計画していた,潰瘍性大腸炎患者及び健常者の臨床大腸粘膜サンプルからのオルガノイドクローン樹立ならびにエキソーム解析を8検体終了している.また,TP53変異を可視化したVillinCreER/RosaLacZ/TP53fl/flマウスにDextran Sodium Sulfateの定期的投与を行い,TP53変異腸管上皮クローンの腸炎による領域拡大への寄与を検討した.TP53変異頻度と腸炎の期間に応じて大腸がんを発症頻度が変化することを見出し,九州大学波江野共同研究者との数理モデルのためのデータ収集を行っている.現在まで,実験計画は計画通り進んでいる.腸管上皮細胞は腸内細菌や食餌抗原などの様々な異物に対するバリアーとなるとともに,`生理的炎症'に常に曝されている。このような過酷な環境において,腸管上皮幹細胞は遺伝子変異やエピゲノム変化を加齢とともに蓄積していくと考えられる。このようなステムセルエイジングは,加齢に伴う大腸がんの発症率上昇や潰瘍性大腸炎のがん化に寄与すると考えられる。我々は,通常の大腸がんも含め,慢性的な炎症ストレスシグナルがステムセルエイジングを介した発がんを導くと考え,本研究を考案した。佐藤らはこれまで不可能であった腸管上皮幹細胞培養技術の開発に成功し,幹細胞の加齢現象を細胞生物学的に追及することができる(Nature 2009, Nature Medicine 2011)。既に,ヒト腸管上皮幹細胞はマウスに比し細胞ストレスに対して高い感受性をもつことを見出しており(Gastroenterology 2011),長寿命であるヒトの組織を用いたステムセルエイジング研究に着目した。本研究は加齢に伴う腸管上皮幹細胞の(エピ)ゲノム・トランスクリプトーム変化と幹細胞機能異常を包括的に理解し,加齢を誘導する分子およびシグナル機構を解明することを目的とする。さらに,加齢分子メカニズムに基づいた人工的な加齢誘導モデルを作製し,加齢変化を抑制する全く新しい発がん予防治療の創出を目指す。また,包括的ゲノムデータを数理化し,ステムセルエイジングによる大腸がんハイリスクグループの予測を目指す。慢性炎症による発がんは本邦で発症率の高い慢性胃炎や慢性肝炎などを背景とするため,本研究の成果は我が国のライフサイエンスの進展ならびに健康長寿社会の実現につながると考える。平成26年度に計画していた,潰瘍性大腸炎患者及び健常者の臨床大腸粘膜サンプルからのオルガノイドクローン樹立ならびにエキソーム解析を15検体終了している。また,TP53変異を可視化したVillinCreER/RosaLacZ/TP53fl/flマウスにDextran Sodium Sulfateの定期的投与を行い,TP53変異腸管上皮クローンの腸炎による領域拡大への寄与を検討した。TP53変異頻度と腸炎の期間に応じて大腸がんを発症頻度が変化することを見出し,九州大学波江野共同研究者との数理モデルのためのデータ収集を行っている。現在まで,実験計画は計画通り進んでいる。腸管上皮細胞は腸内細菌や食餌抗原などの様々な異物に対するバリアーとなるとともに,`生理的炎症'に常に曝されている。このような過酷な環境において,腸管上皮幹細胞は遺伝子変異やエピゲノム変化を加齢とともに蓄積していくと考えられる。
KAKENHI-PLANNED-26115007
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-26115007
ヒト生活史の背景文脈を構成する匂いが過去の時間解釈を書き換える-その脳基盤の解明
ヒト生活史において、匂い自体がエピソードの主役であることは多くないが、匂いと結びついエピソードは多いかもしれない。例えば、2年前にピクニックで嗅いだ花の匂い。4年前に付き合っていた彼女の香水の匂い。などである。これら過去のエピソードはこころの中で時間の前後関係をもって記憶されている。想起する際に、その過去の匂いに暴露された場合、その前後関係は修飾されるのかわかっていない。我々は、行動実験で過去の匂いに暴露された条件下で想起すると、時間の前後関係に関して錯覚を起こすことが分かった。この錯覚効果を起こす脳部位を同定するためにMRI脳機能画像法を用いて調べた。まず、過去の匂いに暴露されず、錯覚を起こさず時間の前後関係を知覚する脳部位を求めた。既報に一致して海馬傍回、側頭葉、角回などが関与していると考えた。これを時間順序回路と名づけた。過去の匂いで時間順序に錯覚を起こす場合、海馬、後部帯状皮質などが活性化していることが分かった。これら活性化部位が角回と強く機能連関を持つことが分かった。一方で、角回は時間順序回路との結びつきが弱くなった。以上から、過去の匂いが海馬、後部帯状皮質を活性化させ、時間順序回路の作動を妨害する。割り込んで角回と結びつくことで錯覚を起こさせるのではないかと考えた。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。ヒト生活史において、匂い自体がエピソードの主役であることは多くないが、匂いと結びついエピソードは多いかもしれない。例えば、2年前にピクニックで嗅いだ花の匂い。4年前に付き合っていた彼女の香水の匂い。などである。これら過去のエピソードはこころの中で時間の前後関係をもって記憶されている。想起する際に、その過去の匂いに暴露された場合、その前後関係は修飾されるのかわかっていない。我々は、行動実験で過去の匂いに暴露された条件下で想起すると、時間の前後関係に関して錯覚を起こすことが分かった。この錯覚効果を起こす脳部位を同定するためにMRI脳機能画像法を用いて調べた。まず、過去の匂いに暴露されず、錯覚を起こさず時間の前後関係を知覚する脳部位を求めた。既報に一致して海馬傍回、側頭葉、角回などが関与していると考えた。これを時間順序回路と名づけた。過去の匂いで時間順序に錯覚を起こす場合、海馬、後部帯状皮質などが活性化していることが分かった。これら活性化部位が角回と強く機能連関を持つことが分かった。一方で、角回は時間順序回路との結びつきが弱くなった。以上から、過去の匂いが海馬、後部帯状皮質を活性化させ、時間順序回路の作動を妨害する。割り込んで角回と結びつくことで錯覚を起こさせるのではないかと考えた。匂いによる過去の時間順序の錯覚効果と関係のある脳部位を同定することができた。データをさらに詳細に解析して論文で発表する予定である。ヒト生活史において、匂い自体がエピソードの主役であることは多くないが、匂いと結びついエピソードは多いかもしれない。例えば、2年前にピクニックで嗅いだ花の匂い。4年前に付き合っていた彼女の香水の匂い。などである。これら過去のエピソードはこころの中で時間の前後関係をもって記憶されている。想起する際に、その過去の匂いに暴露された場合、その前後関係は修飾されるのかわかっていない。我々は、行動実験で過去の匂いに暴露された条件下で想起すると、時間の前後関係に関して錯覚を起こすことが分かった。この錯覚効果を起こす脳部位を同定するためにMRI脳機能画像法を用いて調べた。まず、過去の匂いに暴露されず、錯覚を起こさず時間の前後関係を知覚する脳部位を求めた。既報に一致して海馬傍回、側頭葉、角回などが関与していると考えた。これを時間順序回路と名づけた。過去の匂いで時間順序に錯覚を起こす場合、海馬、後部帯状皮質などが活性化していることが分かった。これら活性化部位が角回と強く機能連関を持つことが分かった。一方で、角回は時間順序回路との結びつきが弱くなった。以上から、過去の匂いが海馬、後部帯状皮質を活性化させ、時間順序回路の作動を妨害する。割り込んで角回と結びつくことで錯覚を起こさせるのではないかと考えた。現段階の成果を論文で発表する。この結果をもとに新しい問いが生まれた。さらに新しい研究に発展させる。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-16H01494
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-16H01494
活性化アストロサイトの神経栄養効果における細胞接着因子、細胞外マトリックスの役割
当教室では、サイトカインにより活性化されたアストロサイトが、脳損傷時の神経機能維持、再生に重要な役割を果たしていると想定し、fibroblast growth factor(FGF)、trnsforming growth factor-β1(TGF-β1)などの、脳に障害が生じた際に供給される各種サイトカインが、アストロサイトによるNGFをはじめとする様々なneurotrophic factorの産生もしくは分泌を増強することを明らかにしてきた。本年度は、これらの液性因子に加え、アストロサイト、神経細胞に発現している細胞接着因子のサイトカインによる発現調節を解明することを目的とした。2.同様にアストロサイトの初代培養を行い、その培養上清(ACM)、また上記サイトカインにて刺激した培養上清(SACM)を神経細胞の初代培養系に作用させ、1と同様にNCAMの発現を検討した。その結果、ACM,SACMでは、神経細胞に発現しているNCAMに明らかな変化は認められなかった。結論として、神経細胞に発現しているNCAMには、変化は認められなかったものの、アストロサイトに発現しているNCAMは、TGF-β1により発現調節を受けていることが明らかとなった。これにより、サイトカインにより刺激されたアストロサイトは、液性因子の産生、分泌を増強することに加え、自らに発現しているNCAM等の細胞接着因子を調節することにより、障害された神経回路網の修復に一役を担っている可能性が示唆された。当教室では、サイトカインにより活性化されたアストロサイトが、脳損傷時の神経機能維持、再生に重要な役割を果たしていると想定し、fibroblast growth factor(FGF)、trnsforming growth factor-β1(TGF-β1)などの、脳に障害が生じた際に供給される各種サイトカインが、アストロサイトによるNGFをはじめとする様々なneurotrophic factorの産生もしくは分泌を増強することを明らかにしてきた。本年度は、これらの液性因子に加え、アストロサイト、神経細胞に発現している細胞接着因子のサイトカインによる発現調節を解明することを目的とした。2.同様にアストロサイトの初代培養を行い、その培養上清(ACM)、また上記サイトカインにて刺激した培養上清(SACM)を神経細胞の初代培養系に作用させ、1と同様にNCAMの発現を検討した。その結果、ACM,SACMでは、神経細胞に発現しているNCAMに明らかな変化は認められなかった。結論として、神経細胞に発現しているNCAMには、変化は認められなかったものの、アストロサイトに発現しているNCAMは、TGF-β1により発現調節を受けていることが明らかとなった。これにより、サイトカインにより刺激されたアストロサイトは、液性因子の産生、分泌を増強することに加え、自らに発現しているNCAM等の細胞接着因子を調節することにより、障害された神経回路網の修復に一役を担っている可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-07771116
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07771116
電気伝導度から地殻内部の水を探る
本研究の目的は,地震波速度や電気伝導度の観測から地殻内部の間隙流体圧を推定する手法を考案することである.間隙流体圧を知ることにより,地震発生の危険性を評価することが可能となる.本研究期間では,その基礎として,含水岩石の電気伝導度を研究するための,間隙流体圧制御機構を開発した.また,狭い間隙に存在する水が通常の水とは異なる物性を示すこと,黒雲母が比較的高い電気伝導度を示すことを明らかにした.本研究の目的は,地震波速度や電気伝導度の観測から地殻内部の間隙流体圧を推定する手法を考案することである.間隙流体圧を知ることにより,地震発生の危険性を評価することが可能となる.本研究期間では,その基礎として,含水岩石の電気伝導度を研究するための,間隙流体圧制御機構を開発した.また,狭い間隙に存在する水が通常の水とは異なる物性を示すこと,黒雲母が比較的高い電気伝導度を示すことを明らかにした.本研究の目的は,含水岩石の電気伝導度をクラック密度およびクラック開口の関数として明らかにし,地殻内部の間隙流体圧の推定を可能にすることである.次の2つの研究を進めてきた.1.封圧,流体圧を制御した含水岩石の電気伝導度測定今年度は主として測定システムの整備を進めた.(1)低周波(>0.01μHz)まで制御可能な信号発生器を導入して,電気インピーダンス測定システムを整備した.これにより測定周波数の下限を6桁下げることができるようになった.(2)現有の圧力容器を改造し,計測用リードを8本に増設した.しかし,リード取り出し部から油漏れが生じるという不具合があり,設計の変更等をメーカーと検討中である.(3)圧力容器内での電気インピーダンス測定用エンドピースの基本設計を行った.試作品を用いてテストを行う予定であったが,圧力容器の不具合のためテストには至っていない.2.水-固体シート積層構造についての物性測定含水岩塩を用いた電気インピーダンス測定のデータを解析し,濡れ角測定からは予測されない連結した粒界水の存在を明らかにした.これは国際会議"変形メカニズム・レオロジー・テクトニクス"(ミラノ大学)で発表済みであり,論文を準備中である.また,このような薄膜状の水の物性を明らかにするために,カバーガラスではさんだ水の誘電率測定,およびガラス表面に吸着した水の電気伝導度測定を開始した.表面吸着水の測定から,ごく少量の水であっても電気物性が大きく変化する結果を得ている.次年度以降,測定を精密化させていく予定である.本研究の目的は,含水岩石の電気伝導度をクラック密度およびクラック開口の関数として明らかにし,地殻内部の間隙流体圧の推定を可能にすることである.次の2つの研究を進めてきた.1.封圧,流体圧を制御した含水岩石の電気伝導度測定(1)物性測定用リードの改造:圧力容器の測定用リードを8本に増設し,2方向での弾性波速度測定(パルス透過法)と4電極法による電気インピーダンス測定とを同時に行えるようにした.リード取り出し方法の改良により油漏れはなくなった.また,同軸ケーブルの使用により良好な高周波信号が得られるようになった.(2)油圧-水圧変換機構の改造:本研究の大きな特徴は,電気インピーダンス測定と間隙流体圧の制御を両立させることである.含水岩石試料の電気インピーダンスを測定するためには,間隙流体(水)が圧力容器等の金属部分から絶縁されていなければならない.この絶縁を保ちつつ間隙流体圧を制御することが大きな問題であった,ここでは,油圧-水圧変換機構を介して,圧力容器外側のハンドポンプから加えた油圧で間隙流体の水圧を制御することを試みている.昨年度から試験を行ってきた変換機構では強度不足であったため,新たな変換機構を開発した.(3)雲母族鉱物の電気伝導度測定:雲母族鉱物は地殻物質中に多く存在する鉱物であり,その電気物性は乾燥岩石の電気伝物性を理解する上で不可欠である.本研究では,常圧高温(<800C)で黒雲母,白雲母,金雲母の電気伝導度を測定し,黒雲母がほぼ同じ結晶構造の白雲母,金雲母よりも桁で高い電気伝導度を示すことを明らかにした.これは,黒雲母中で等価なサイトを占める2価,3価の鉄イオンのホッピングによるものと考えている.この結果はアメリカ地球物理学連合秋季大会で発表した.2.狭い間隙に存在する水の物性含水岩塩中を用いた電気インピーダンス測定のデータを解析し,濡れ角測定からは予測されない連結した粒界水の存在を明らかにした.このような粒界水の存在は,狭い間隙の水がバルクの水とは大きく異なる性質をもつことを示唆している.これらのことをまとめた論文がGeological Society of London, Special Publicationに受理された.狭い間隙の水の挙動を調べるため,マイクロメータのアンビルを電極と使用し,ガラスやマイカシートに挟まれた塩化ナトリウム水溶液の誘電率を測定した.層厚のコントロールが不十分なためか,まだ有意な誘電率の変化は得られていない.本研究の目的は,含水岩石の電気伝導度をクラック密度およびクラック開口の関数として明らかにし,地殻内鄙の間隙流体圧の推定を可能にすることである.次の2つの研究を進めた.
KAKENHI-PROJECT-19540444
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19540444
電気伝導度から地殻内部の水を探る
1.封圧,流体圧を制御した含水岩石の電気伝導度測定電気インピーダンス測定と間隙流体圧の制御を両立させることが本研究の大きな目標であった.これを実現するため,われわれは,圧力容器外部のハンドポンプから加えた油圧で岩石間隙流体(水)の圧力を制御する"油圧ー水圧変換機構"の開発に取り組んできた.過去2年間の試行錯誤を経て,今年度,プラスチック製ピストンを用いた油圧ー水圧変換機構の開発に成功した.圧力0150MPaの範囲における範囲で,変換機構テスト機の油圧ー水圧の線形関係,再現性ともに非常に良好であり,ピストンの摩擦による油圧と水圧との圧力差も23%程度であった.現在,この変換機構を実際に圧力容器内に組み込むための実機の設計段階である.本研究期間内に,封圧,間隙流体圧を独立に制御した電気インピーダンス測定を行うには至らなかったが,油圧ー水圧変換機構の基本的なデザインを確立することができた.今後は,これを圧力容器内に組み込み,含水岩石の物性測定を進めていく予定である.2.狭い間隙に存在する水の物性狭い間隙に存在する水の物性がバルク水とどのように異なるのか,物性を間隙の厚さの関数として明らかにすることが目標であった.水の構造を特徴づける物性として,水分子の回転しやすさを反映する誘電率に着目し,ガラスに挟まれた水の誘電率を測定した.その結果として,狭い間隙に存在する水の誘電率がバルク水よりも1桁低いという結果を得た.これは水ーガラス界面の影響により水分子の回転が阻害されるからと理解される.ただし,厚さの推定ができていないため,誘電率を厚さの関数として求めるには至っていない.この結果は,イギリスで行われた国際会議で発表した.
KAKENHI-PROJECT-19540444
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19540444
マウスの腎形成におけるWntシグナル及びSall遺伝子の分子機構の解析
多くの器官は、間充織と上皮の相互作用によって構築される。無数のネフロンからなる高度に組織化された腎臓も、後腎間充織(間充織)と尿管芽(上皮)の相互作用によって誘導される。Six遺伝子ファミリーはショウジョウバエからヒトまで保存された転写因子であり、後腎間充織に発現するSix1はマウス腎発生に必須であること及び、Sall1遺伝子の上流であることが近年明らかになった。また、同じファミリーに属するSix3遺伝子はWntシグナルの制御に関わる事が報告されている。そこで、Six遺伝子に注目して、腎形成におけるWntシグナルとSall1遺伝子の関係を明らかにする為に研究を行っている。Six1単独の欠失マウスでは、不完全ながら腎臓が形成される個体も存在しているため、他の遺伝子によってsix1の機能の一部が補われている可能性が考えられていた。その候補としてsix4を考え、six1/six4欠失マウスを用いて解析を行った。その結果、six1/six4欠失マウスは、six1欠失マウスと比べ重篤に腎臓発生が阻害された。残念ながら初期腎発生における、Six1及びSix4遺伝子とWntシグナルの明らかな関係は確認されなかった。しかし、six1/six4欠失マウスの解析によって明らかにした、six1とsix4が協調的にGdnfの発現を制御することで尿管芽を引寄せ、間充織と上皮の相互作用に関与しているという研究成果に関しては論文に発表した。一方、あらたにSix1/Six4欠失マウスでは、雄の雌への性の分化異常の表現型が確認された。遺伝学的にXYの個体で構造的にかっ遺伝子発現的に、精巣が卵巣として発生していた。さらに、性分化の決定期に性腺において雌だけで発現が観察される雌化に関わるWnt4遺伝子の発現の上昇が確認された。従って、生殖領域においては、WntシグナルがSix1及びSix4によって抑えられている可能性が示唆された。腎臓形成におけるSall1遺伝子とWntシグナルの機能を解析する為に、Sall1の上流であることが示唆され、Wntシグナルの制御に関わる因子がファミリーの中に存在するSix遺伝子に注目して研究を行っている。Six1遺伝子のノックアウトマウスは腎臓が欠損した表現型を示す事が知られている。Six1遺伝子の腎形成における役割の内、何がSall1遺伝子によって担われているかを調べる為に、Six1遺伝子の配座にSall1遺伝子を挿入したSix1Sall1ノックインマウスを作成し、Six1Sall1KIホモのマウスの腎臓の表現型について調べた。結果、ホモの個体の約20%が外見上、野生型と同等の腎臓をもつものが得られ、Six1KOマウスの腎臓における異常の弱い緩和が観察された。Sall1は、腎形成において尿管芽の間充織への侵入の段階に必要とされる事が示唆されている。この結果は、Sall1遺伝子が腎形成におけるSix1遺伝子の機能の一部であると推定される尿管芽の侵入の段階の役割を果たしている可能性がある事を示唆する。Six1の機能はSix1遺伝子と発現領域の重なる同じファミリーに属するSix4遺伝子によって、その機能が一部重複していることが示唆される。従って、Six遺伝子の腎形成における正確な機能を知る上では、Six1/4ダブルノックアウトマウスを用いた研究が必要となる。まず、Six1/4KOマウスのHE切片を作成し観察した結果、予定腎臓領域でSix1KOマウスで異常が観察されるより早い段階の胎生10.5日目において、すでに間充織の欠失という形態的異常が認められた。そこで、胎生9.5日胚において腎形成に重要な役割を果たす遺伝子の発現をSix1KO,とSix1/4KOマウスとで予定腎臓領域で比較した結果、間充織におけるPax8及びGDNFの発現がSix1/4KOマウスにおいて減少していた。このことは、Six4遺伝子がSix1遺伝子と一部共同して、腎形成に重要な遺伝子の発現の制御に関わっている可能性を示唆する。Six1は腎形成に必須であり、Sall1遺伝子の上流であることが報告されている。また、同じファミリーに属するSix3遺伝子は、Wntシグナルの制御に関わることが知られている。そこで現在、Six遺伝子に注目して、腎形成におけるWntシグナルとSall1遺伝子のかかわりを明らかにする為に研究を行っている。Six1遺伝子変異マウスでは、表現型間の差が大きく、ともに腎形成間充織に発現するSix4遺伝子との間に機能的重複が示唆されたので、Six/Six4二重遺伝子変異マウスを作成し、腎形成におけるSixの機能解析を行っている。Six/Six4二重遺伝子変異マウスの腎発生領域を、HE切片及び免疫染色を用いて調べた。結果、二重遺伝子変異マウスでは、Six1遺伝子変異マウスと比べ早い時期から腎形成間充織の凝集の阻害及び欠失、さらに、Six1を発現しうる細胞の欠失も観察された。さらに、in situハイブリダイゼーションを用いて、遺伝子発現の変化について調べた。結果、Sall1以外に、Pax2、Pax8、Gdnfの発現の減少が観察された。しかし、遺伝子変異マウスにおいて類似の表現型を示し、ウォルフ管に発現するWnt9bの発現の抑制は観察されなかった。ところで、近年、Six1及びSix4遺伝子のエンハンサーにTcfの結合配列があることが報告された。
KAKENHI-PROJECT-04J50261
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04J50261
マウスの腎形成におけるWntシグナル及びSall遺伝子の分子機構の解析
このことから、Wntシグナルが、Six1及びSix4遺伝子の発現を介して、Sall1遺伝子の発現を制御している可能性が示唆される。さらに二重遺伝子変異マウスの性別を、遺伝学的及び形態学的に調べた。結果、二重遺伝子変異マウスでは遺伝学的にオスである(SRY陽性)にもかかわらず、精巣を含むオスの生殖器を有さず、卵巣を含むメスの生殖器を有する個体が高頻度に生じ、メス化が生じていた。ところで、Wnt4遺伝子変異マウスではオス化が生じ、また、Sall1遺伝子は子宮に発現が観察される。このことから、生殖器形成において、Sixの機能がWntシグナル及びSall1遺伝子の制御と関係する可能性が考えられる。多くの器官は、間充織と上皮の相互作用によって構築される。無数のネフロンからなる高度に組織化された腎臓も、後腎間充織(間充織)と尿管芽(上皮)の相互作用によって誘導される。Six遺伝子ファミリーはショウジョウバエからヒトまで保存された転写因子であり、後腎間充織に発現するSix1はマウス腎発生に必須であること及び、Sall1遺伝子の上流であることが近年明らかになった。また、同じファミリーに属するSix3遺伝子はWntシグナルの制御に関わる事が報告されている。そこで、Six遺伝子に注目して、腎形成におけるWntシグナルとSall1遺伝子の関係を明らかにする為に研究を行っている。Six1単独の欠失マウスでは、不完全ながら腎臓が形成される個体も存在しているため、他の遺伝子によってsix1の機能の一部が補われている可能性が考えられていた。その候補としてsix4を考え、six1/six4欠失マウスを用いて解析を行った。その結果、six1/six4欠失マウスは、six1欠失マウスと比べ重篤に腎臓発生が阻害された。残念ながら初期腎発生における、Six1及びSix4遺伝子とWntシグナルの明らかな関係は確認されなかった。しかし、six1/six4欠失マウスの解析によって明らかにした、six1とsix4が協調的にGdnfの発現を制御することで尿管芽を引寄せ、間充織と上皮の相互作用に関与しているという研究成果に関しては論文に発表した。一方、あらたにSix1/Six4欠失マウスでは、雄の雌への性の分化異常の表現型が確認された。遺伝学的にXYの個体で構造的にかっ遺伝子発現的に、精巣が卵巣として発生していた。さらに、性分化の決定期に性腺において雌だけで発現が観察される雌化に関わるWnt4遺伝子の発現の上昇が確認された。従って、生殖領域においては、WntシグナルがSix1及びSix4によって抑えられている可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-04J50261
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04J50261
三価の超原子価有機臭素化合物を活用する反応の開発とその化学的特性の解明
有機合成化学における新領域、三価の超原子価有機臭素化合物の化学の分野を開拓することが目的である。I.超原子価アルキニル臭素化合物をMichael受容体とする反応の開発:これまでに三価の超原子価アルキニル臭素を合成することに初めて成功し、固体構造をX線結晶解析により明らかにした。三価の超原子価アルキニル臭素にアルキニルスズを作用させると、Michael付加反応が進行することを見出し、非対称1,3-ジインの合成反応を開発することに成功した。アルキニルスズのアルキニル臭素へのMichael付加をアルキニル臭素化合物の合成反応と組み合わせると、一段階でのアルキニルスズの酸化的二量化が進行し、対称1,3-ジインの直接合成へと拡張できた。II.三価の臭素置換基の超脱離能の測定:シクロヘキセニルスズにジフルオロアリールブロマンを作用させて、臭素-スズ交換反応を行い、環状超原子価シクロヘキセニル臭素化合物を合成することに成功したが、この化合物は不安定であり-30度でも分解してしまうため、超脱離能の測定には向いていない。そこで、環状超原子価シクロペンテニル臭素化合物の加溶媒分解反応を実施した。生成物の詳細な解析により、本反応がシクロペンテニルカチオンを発生するS_N1反応であることを証明した。また、本加溶媒分解反応の反応速度を測定することにも成功した。現在、本加溶媒分解反応の溶媒効果について検討中である。環状超原子価シクロペンテニルヨウ素化合物は極めて安定であり、シクロペンテニルカチオンを発生する加溶媒分解反応は全く進行しない。この結果は、三価の超原子価臭素置換基が超脱離能を示す三価のヨウ素置換基よりも遙かに大きな脱離能を持つことを強く示唆している。III.超原子価アルケニル臭素化合物のビニル位S_N2型求核置換反応の開発:超原子価ビニル臭素化合物の立体選択的合成に成功し、そのビニル位炭素原子上でのS_N2型求核置換反応が進行することを見出しつつある。なお、求核試剤としてはハロゲン陰イオンを使用している。IV.超原子価アルケニル臭素化合物を用いたアルキリデンカルベン発生反応の開発:本課題については現在その原料を合成中である。有機合成化学における新領域、三価の超原子価有機臭素化合物の化学の分野を開拓することが目的である。I.超原子価アルキニル臭素化合物をMichael受容体とする反応の開発:これまでに三価の超原子価アルキニル臭素を合成することに初めて成功し、固体構造をX線結晶解析により明らかにした。三価の超原子価アルキニル臭素にアルキニルスズを作用させると、Michael付加反応が進行することを見出し、非対称1,3-ジインの合成反応を開発することに成功した。アルキニルスズのアルキニル臭素へのMichael付加をアルキニル臭素化合物の合成反応と組み合わせると、一段階でのアルキニルスズの酸化的二量化が進行し、対称1,3-ジインの直接合成へと拡張できた。II.三価の臭素置換基の超脱離能の測定:シクロヘキセニルスズにジフルオロアリールブロマンを作用させて、臭素-スズ交換反応を行い、環状超原子価シクロヘキセニル臭素化合物を合成することに成功したが、この化合物は不安定であり-30度でも分解してしまうため、超脱離能の測定には向いていない。そこで、環状超原子価シクロペンテニル臭素化合物の加溶媒分解反応を実施した。生成物の詳細な解析により、本反応がシクロペンテニルカチオンを発生するS_N1反応であることを証明した。また、本加溶媒分解反応の反応速度を測定することにも成功した。現在、本加溶媒分解反応の溶媒効果について検討中である。環状超原子価シクロペンテニルヨウ素化合物は極めて安定であり、シクロペンテニルカチオンを発生する加溶媒分解反応は全く進行しない。この結果は、三価の超原子価臭素置換基が超脱離能を示す三価のヨウ素置換基よりも遙かに大きな脱離能を持つことを強く示唆している。III.超原子価アルケニル臭素化合物のビニル位S_N2型求核置換反応の開発:超原子価ビニル臭素化合物の立体選択的合成に成功し、そのビニル位炭素原子上でのS_N2型求核置換反応が進行することを見出しつつある。なお、求核試剤としてはハロゲン陰イオンを使用している。IV.超原子価アルケニル臭素化合物を用いたアルキリデンカルベン発生反応の開発:本課題については現在その原料を合成中である。有機合成化学における新領域、三価の超原子価有機臭素化合物の化学の分野を開拓することが目的である。I.超原子価アルキニル臭素化合物をMichael受容体とする反応の開発我々はつい最近、これまでに合成例の全く無い三価の超原子価アルキニル臭素化合物を合成することに初めて成功し、その固体構造をX線結晶解析により明らかにした。アルキニル銅と同じように、アルキニルスズが不飽和カルボニル化合物に対しMichael供与体として直接作用することはない。C-Sn結合の分極が小さいことが原因である。ところが、三価の超原子価アルキニル臭素化合物にアルキニルスズを作用させると、そのMichael付加反応が進行することを見出した。そこでこの反応を詳細に検討し、非対称1,3-ジインの合成反応を開発することに成功した。アルキニルスズの超原子価アルキニル
KAKENHI-PROJECT-18390005
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三価の超原子価有機臭素化合物を活用する反応の開発とその化学的特性の解明
臭素化合物へのMichael付加をアルキニル臭素化合物の合成反応と組み合わせると、一段階でのアルキニルスズの酸化的二量化が進行し、対称1,3-ジインの直接合成へと拡張できた。反応系中で最初に生成するアルキニル臭素化合物が過剰のアルキニルスズと反応している。ジエニルスズを用いた1,3,5,7-テトラインの合成反応も開発した。ビス(トリメチルスタンニル)アセチレンの酸化的二量化を反応系中で連続して行うと、興味ある物性の期待される鎖状ポリアセチレンの合成が可能であるが、その収率は低い。求核性の極めて小さなトリフラートイオンでさえも、超原子価アルキニル臭素化合物に対してMichael供与体となることも見出した。また、このトリフラートのMichael付加を利用して、全く未知の化合物であった1-アルキニルトリフラートの合成反応を開発することにも成功した。II.三価の臭素置換基の超脱離能の測定シクロペンテニルボラートにBF_3-Et_2O存在下ジフルオロアリールブロマン(ArBrF_2)を作用させて、臭素(III)-ホウ素交換反応を行い、環状超原子価ビニル臭素化合物を合成することに初めて成功した。シクロヘキセニルボラートとの反応を現在検討中である。今後、超原子価ビニル臭素化合物の加溶媒分解反応を実施して、その反応速度を測定し、三価の超原子価臭素置換基の脱離能を調べる予定である。有機合成化学における新領域、三価の超原子価有機臭素化合物の化学の分野を開拓することが目的である。I.三価の臭素置換基の超脱離能の測定:シクロヘキセニルスズにBF_3-Et_20存在下ジフルオロアリールブロマン(ArBrF_2)を作用させて、臭素(III)-スズ交換反応を行い、環状超原子価シクロヘキセニル臭素化合物を合成することに成功したが、この化合物は不安定であり-30度でも分解してしまうため、超脱離能の測定には向いていない。そこで、環状超原子価シクロペンテニル臭素化合物の加溶媒分解反応を実施した。生成物の詳細な解析により、本反応がシクロペンテニルカチオンを発生するS_N1反応であることを証明した。ヨードベンゼンの存在下に加溶媒分解反応を実施すると、環状超原子価シクロペンテニルヨウ素化合物が生成することも見出している。また、本加溶媒分解反応の反応速度を測定することにも成功している。現在、本加溶媒分解反応の溶媒効果について検討中である。環状超原子価シクロペンテニルヨウ素化合物は極めて安定であり、シクロペンテニルカチオンを発生する加溶媒分解反応は全く進行しない。この結果は、三価の超原子価臭素置換基が超脱離能を示す三価の超原子価ヨウ素置換基よりも遙かに大きな脱離能を持つことを強く示唆している。II.超原子価アルケニル臭素化合物のビニル位S_N2型求核置換反応の開発:超原子価ビニル臭素化合物の立体選択的合成に成功し、そのビニル位炭素原子上でのS_N2型求核置換反応が進行することを見出しつつある。なお、求核試剤としてはハロゲン陰イオンを使用している。III.超原子価アルケニル臭素化合物を用いたアルキリデンカルベン発生反応の開発:本課題については現在その原料を合成中である。
KAKENHI-PROJECT-18390005
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分子ダイオードを指向した新規な電位勾配制御能をもつ三元系シクロファンの創出と評価
将来、分子エレクトロニクスの実現により、現在の固体エレクトロニクスに代わる単一分子エレクトロニクスが人類の情報技術を支えていることが予想される。本研究では、固体エレクトロニクスに代わる単一分子デバイスとしての分子ダイオードを指向した新奇な三元系シクロファン分子を創出し、物性評価することを目的とした。最終年度に、電位勾配制御部(G)の電子供与性基としてメトキシ基、ドナー(D)としてテトラチアフルバレン(TTF)のhalf-unitである1,4-ジチアフルベン(DTF)、アクセプター(A)としてテトラシアノエチレン(TCNE)のhalf-unitであるジシアノエチリデン(DCE)を導入したドナー、アクセプター、電位勾配制御部を三次元的に配置した電位勾配制御機能を有するD-B(G,G)-A三元系シクロファンの合成に成功し、剛直なシクロファン構造(B)に電位勾配制御部としてのゲート機能を付与し、ドナー、アクセプターを三次元的に配置した新規なD-B(G)-A三元系シクロファンを創出するという当初の研究目的が達成できた。また、D-B(G,G)-D及びA-B(G,G)-A三元系シクロファンのシクロファンベンゼンに電位勾配制御部として導入した電子供与基及び電子求引基による電子物性チューニングが、ドナー、アクセプター及び基本構造に効率よく行われた結果、シクロファン架橋部のドナー及びアクセプターのエネルギー準位が制御され、ドナー及びアクセプターの酸化還元電位制御が可能であることが明らかになった。更にD-B(G,G)-A三元系シクロファンにおいては、ドナー及びアクセプターのエネルギー準位制御によって、分子系全体における電位勾配制御の可能性が示唆された。このため、本研究は電位勾配制御機能を利用した分子ダイオード開発に向けての一つの指針となる。本研究課題の目的は、ドナー(D)、アクセプター(A)、電位勾配制御部(G)を三次元的に配置した電位勾配制御機能を有するD-B(G1,G2)-A三元系シクロファンを創製することである。平成28年度は、電位勾配制御部(G)としてG1、G2に同じ電子供与性基あるいは電子求引性基をシクロファンベンゼンに組み込んだD-B(G,G)-D三元系シクロファン及びD-B(G,G)-A三元系シクロファンを合成し、電子供与性基あるいは電子求引性基がドナーに対して電位勾配制御部として機能するか、また導入する置換基による制御能の違いがあるかを明らかにする。今回、電子供与性基としてメトキシ基、電子求引性基として臭素及び塩素基、ドナーとしてTTF類縁体の1,3-ジチオール環(DT)を導入したD-B(G,G)-D三元系シクロファン(1ー6)の合成に成功した。電子供与性基のメトキシ基及び電子求引性基の臭素と塩素基が電位勾配制御部として機能するかをDTドナーの酸化電位測定によって検討したところ、電子供与性基であるメトキシ基を導入したD-B(G,G)-D三元系シクロファン(1,2)では、導入した電子供与性基の増大に伴い、母体である無置換D-B-D三元系シクロファンに比べて、DTドナーの第一酸化電位が負電位側へシフトした。一方、電子求引性基である臭素及び塩素基を導入したD-B(G,G)-D三元系シクロファン(3ー6)では、電子求引性及び導入した電子求引性基の増大に伴い、DTドナーの第一酸化電位が正電位側へシフトした。この結果から、導入する電位勾配制御部の電子供与性基あるいは電子求引性基の種類・導入数によって、シクロファンに組み込まれたDTドナーの第一酸化電位が制御可能であることが示唆された。計画していた電位勾配制御部(G)としてG1、G2に同じ電子供与性基あるいは電子求引性基を1つあるいは2つシクロファンベンゼンに組み込んだD-B(G,G)-D三元系シクロファンを合成することができた。合成したD-B(G,G)-D三元系シクロファンにおいて、電子供与性基あるいは電子求引性基がドナー(D)に対して電位勾配制御部として機能すること及び導入する置換基によって制御能の違いを明らかにすることができた。一部の成果については平成28年度の学会発表において既に報告している。しかし一方、1つのドナーを導入したD-B(G,G)-oneシクロファンの選択的合成の収率が低かったために、当初予定していたドナー(D)、アクセプター(A)、電位勾配制御部(G)を三次元的に配置した電位勾配制御機能を有するD-B(G,G)-A三元系シクロファンの合成にまで至らなかったため、やや遅れていると判断した。本研究課題の目的は、剛直なシクロファン(B)の架橋部にドナー(D)としてTTF類縁体を、アクセプター(A)としてジシアノエチリデン等を、電位勾配制御部(G)として電子供与性・電子求引性部位をシクロファンベンゼンに導入した、ドナー(D)、アクセプター(A)、電位勾配制御部(G)を三次元的に配置した電位勾配制御機能を有するD-B(G1,G2)-A三元系シクロファンを創製することである。
KAKENHI-PROJECT-16K05693
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分子ダイオードを指向した新規な電位勾配制御能をもつ三元系シクロファンの創出と評価
平成29年度は、ドナー(D)、アクセプター(A)、電位勾配制御部(G)を三次元的に配置した電位勾配制御機能を有するD-B(G,G)-A三元系シクロファンの前駆体として、電子供与性基としてメトキシ基とドナー(D)としてテトラチアフルバレン(TTF)のhalf-unitである1,4-ジチアフルベン(DTF)を導入したD-B(G,G)-oneシクロファンの選択的合成に成功した。また、D-B(G,G)-A三元系シクロファンへの前段階として、電子供与性基としてメトキシ基とアクセプター(A)としてテトラシアノエチレン(TCNE)のhalf-unitであるジシアノエチリデン(DCE)を導入したA-B(G,G)-A三元系シクロファンの合成にも成功した。A-B(G,G)-A三元系シクロファンでは、導入した電位勾配制御部の電子求引性基の導入数によって、シクロファンに組み込まれたアクセプター(A)の第一還元電位が制御可能であることが示唆された。更にD-B(G1,G2)-A三元系シクロファンへの試金石となりうる1つの電位勾配制御部(G)と1つのドナーを導入したD-B(G)-oneシクロファンの選択的合成にも成功した。電位勾配制御部(G)としてG1、G2に同じ電子供与性基を2つシクロファンベンゼンに組み込んだD-B(G,G)-A三元系シクロファンの前駆体であるD-B(G,G)-oneシクロファンを選択的に合成することができた。また、D-B(G,G)-oneシクロファンへのAの導入過程に応用できるA-B(G,G)-A三元系シクロファンについても合成できており、その物性についても電子供与性基がアクセプター(A)に対して電位勾配制御部として機能することを明らかにし、一部の成果については平成29年度の学会発表において既に報告している。D-B(G1,G2)-A三元系シクロファンへの試金石となる1つの電位勾配制御部(G)と1つのドナー(D)を導入したD-B(G)-oneシクロファンの選択的合成にも成功した。平成30年度に予定しているD-B(G1,G2)-A三元系シクロファンの合成について予備的検討を進めているところであり、今後は、計画通り開発を推進していく予定である。研究の進展と発表に関して、当初の計画にほぼ沿っており、おおむね順調に進展しているといえる。将来、分子エレクトロニクスの実現により、現在の固体エレクトロニクスに代わる単一分子エレクトロニクスが人類の情報技術を支えていることが予想される。本研究では、固体エレクトロニクスに代わる単一分子デバイスとしての分子ダイオードを指向した新奇な三元系シクロファン分子を創出し、物性評価することを目的とした。最終年度に、電位勾配制御部(G)の電子供与性基としてメトキシ基、ドナー(D)としてテトラチアフルバレン(TTF)のhalf-unitである1,4-ジチアフルベン(DTF)、アクセプター(A)としてテトラシアノエチレン(TCNE)のhalf-unitであるジシアノエチリデン(DCE)を導入したドナー、アクセプター、電位勾配制御部を三次元的に配置した電位勾配制御機能を有するD-B(G,G)-A三元系シクロファンの合成に成功し、剛直なシクロファン構造(B)に電位勾配制御部としてのゲート機能を付与し、ドナー、アクセプターを三次元的に配置した新規なD-B(G)-A三元系シクロファンを創出するという当初の研究目的が達成できた。また、D-B(G,G)-D及びA-B(G,G)-A三元系シクロファンのシクロファンベンゼンに電位勾配制御部として導入した電子供与基及び電子求引基による電子物性チューニングが、ドナー、アクセプター及び基本構造に効率よく行われた結果、シクロファン架橋部のドナー及びアクセプターのエネルギー準位が制御され、ドナー及びアクセプターの酸化還元電位制御が可能であることが明らかになった。更にD-B(G,G)-A三元系シクロファンにおいては、ドナー及びアクセプターのエネルギー準位制御によって、分子系全体における電位勾配制御の可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-16K05693
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光不斉誘導反応の研究
期待される色々な光不斉誘導反応のうち、ラセミ体を一方のエナンチオマーに誘導する反応は生物のタンパク質がなぜL型アミノ酸より構成されているかという問題とも関連して興味ある課題である。今年度は、光平衡反応系における不斉誘導の諸条件を明らかにするために、モデル化合物として、スピロシクロプロパンフルオレンカルボン酸誘導体のジアステレオ選択的光異性平衡反応(【1!_】【→!←】【2!_】)を選び詳細に検討した。その結果次のような興味ある結果ならびに結論が得られた。1.光平衡定常状態における選択性は、光学活性捕助基(R)中にフェニル基をもつ場合は低いが1-ナフチル基をもつ場合はかなり高い選択性を示す。2.この選択性は分子間増感剤の影響も受け増感剤の三重項エネルギーが小さい程高い選択性を示す(例:アセトフェノン(【E_T】=7)3.7kcal/mol:1e/2e=81:19:p-フェニルアセトフェノン(【E_T】=61.1):1e/2e=94:6)。3.1と2の結果はナフチル基からフルオレン部への分子内エネルギー移動の重要性を示唆しており、このことは選択的励起が可能なフェナントリル誘導体(【1!_】,【2!_】【f_1】【f_3】)におけるフェナントリル基の励起状態の寿命がジアステレオマーにより顕著に異なることから立証された。4.すなわち、ジアステレオマーにより光感受性が違い、光平衡は感受性の低いジアステレオマーの方に移動する。5.またこの光不斉誘導反応は温度が低い程、また濃度が高い程、高い選択性を示す。ここで見い出された分子内エネルギー移動による不斉誘導(立体制御)は一般性が期待され、検討課題である。期待される色々な光不斉誘導反応のうち、ラセミ体を一方のエナンチオマーに誘導する反応は生物のタンパク質がなぜL型アミノ酸より構成されているかという問題とも関連して興味ある課題である。今年度は、光平衡反応系における不斉誘導の諸条件を明らかにするために、モデル化合物として、スピロシクロプロパンフルオレンカルボン酸誘導体のジアステレオ選択的光異性平衡反応(【1!_】【→!←】【2!_】)を選び詳細に検討した。その結果次のような興味ある結果ならびに結論が得られた。1.光平衡定常状態における選択性は、光学活性捕助基(R)中にフェニル基をもつ場合は低いが1-ナフチル基をもつ場合はかなり高い選択性を示す。2.この選択性は分子間増感剤の影響も受け増感剤の三重項エネルギーが小さい程高い選択性を示す(例:アセトフェノン(【E_T】=7)3.7kcal/mol:1e/2e=81:19:p-フェニルアセトフェノン(【E_T】=61.1):1e/2e=94:6)。3.1と2の結果はナフチル基からフルオレン部への分子内エネルギー移動の重要性を示唆しており、このことは選択的励起が可能なフェナントリル誘導体(【1!_】,【2!_】【f_1】【f_3】)におけるフェナントリル基の励起状態の寿命がジアステレオマーにより顕著に異なることから立証された。4.すなわち、ジアステレオマーにより光感受性が違い、光平衡は感受性の低いジアステレオマーの方に移動する。5.またこの光不斉誘導反応は温度が低い程、また濃度が高い程、高い選択性を示す。ここで見い出された分子内エネルギー移動による不斉誘導(立体制御)は一般性が期待され、検討課題である。
KAKENHI-PROJECT-61223016
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嫌気性原生動物の機能を活用した都市下水処理UASB法の安定化・高性能化
本研究は、嫌気性原生動物の機能を活用した都市下水処理UASB法の安定化・高性能化を達成するため、嫌気性原生動物の至適培養条件を解明し、UASB槽内に原生動物を高濃度に保持することで、高い有機物除去率・メタン生成量を達成できる最適運転条件を確立することを目的としている。本年度は、原生動物の生理学的特性を明らかにするために、昨年度に引き続き、UASB槽内の原生動物の分離培養を試みた。原生動物の培養には無機塩培地に、基質としてEscherichia coliを添加し、室温、嫌気条件下で培養を行った。培養実験の結果、Cerocozoa門に属するCercomonas sp. ATCC 50367に近縁(相同性97%)な鞭毛虫類を培養することに成功した。本年度に培養に成功したCercomonas sp.と昨年度に分離した嫌気性原生動物Cyclidium sp.、Trichomitus sp.の3種を様々な細菌を基質として培養実験を行った結果、3種の原生動物は、捕食可能な細菌種及び代謝される有機酸が異なった。よって、これらの原生動物は種ごとに異なる捕食性、代謝経路を持つことが明らかになった。さらに、13C標識されたE. coliを用いたトレーサー実験を行った結果、すべての実験系から13CO2が検出されたため、13C標識されたE. coliが原生動物に捕食、分解されたことが明らかとなった。さらに、Cyclidium sp.の実験系においては13CH4も同時に検出された。Cyclidium sp.細胞内にはメタン生成古細菌が共生していることが確認されており、Cyclidium sp.の代謝で発生した二酸化炭素が、メタン生成古細菌に受け渡され、メタンへ転換されることを確認できた。嫌気性処理における原生動物の知見は少なく、特にUASB槽内の原生動物種の多くは未培養であり、その生理学的特性も不明なものが多い。そこで本研究ではこれまで、原生動物の最適な環境条件や増殖因子に関わる情報を明らかにするため、UASB槽内の原生動物の分離培養を試みてきた。その結果、3種の嫌気性原生動物の分離培養に成功し、それぞれの種が異なる捕食性、代謝経路を持つことが明らかになった。しかし、原生動物の増殖を促進できる因子に関する情報は得られなかった。今後は、嫌気性原生動物の機能を活用した都市下水処理UASB法の安定化・高性能化を達成するためには、原生動物を高濃度に培養できる条件を調査していく必要がある。都市下水を処理するUASB槽内で原生動物を高濃度に維持できる運転条件を確立するため、今後は、これまでに培養に成功した嫌気性原生動物種の最適な生育条件を調査する。具体的には様々な基質での原生動物の培養実験を行い、最も高い最大増殖量、増殖速度が条件を調査する。また、原生動物の培養には、補助基質として脂質や脂肪酸を添加することが必要であることも明らかとなっており、原生動物の増殖を促進しうる補助基質などの条件も調査していく。これらの得られた情報を基に、原生動物の高濃度培養に最適な環境条件(温度、pH、ORP[酸化還元電位])、基質(微生物・有機物の種類、基質濃度)、増殖促進因子等を明らかにする。本研究は、嫌気性原生動物の機能を活用した都市下水処理UASB法の安定化・高性能化を達成するため、嫌気性原生動物の至適培養条件を解明し、UASB槽内に原生動物を高濃度に保持することで、高い有機物除去率・メタン生成量を達成できる最適運転条件を確立することを目的としている。本年度は、原生動物の生理学的特性を明らかにするために、UASB槽内の原生動物の分離培養を試みた。培養には、Bacteroides sp.、Escherichia coliなどの細菌を基質として使用し、原生動物の培養における補助基質として知られている脂肪酸(オレイン酸及びステアリン酸)、脂質(エルゴステロール及びスティグマステロール)を添加した。培養実験の結果、補助基質として脂質を添加した系ではMetamonada門に属するTrichomitus batrachomrumに近縁な鞭毛虫が、脂肪酸を添加した系ではCiliophora門に属するCyclidium porcatumに近縁な繊毛虫が増殖した。さらに、基質としてE. coliを添加し、Cyclidium sp.の細菌捕食速度とそれによって発生する代謝産物の調査を行った。11日間の培養実験より、全細菌数の減少量からCyclidium sp.の細菌捕食速度を算出すると、Cyclidium sp.一個体当たり、1時間に1.2×103 cellsのE.coliを捕食していたことが明らかとなった。また、代謝産物として酢酸、プロピオン酸などの有機酸とメタンが生成されることが明らかとなった。本実験に用いたCyclidium sp.は細胞内からメタン生成古細菌に特有の補酵素F420由来の自家蛍光が確認されており、Cyclidium sp.細胞内の共生メタン生成古細菌によってメタンが生成されたと考えられた。嫌気性処理における原生動物の知見は少なく、特にUASB槽内の原生動物種の多くは未培養であり、その生理学的特性も不明なものが多い。そこで本年度では、原生動物の生理学的特性を明らかにするために、UASB槽内の原生動物の分離培養を試みた。細菌を基質とした培養実験により、UASB槽内に生息する嫌気性原生動物種を2種培養することに成功した。
KAKENHI-PROJECT-17J09970
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J09970
嫌気性原生動物の機能を活用した都市下水処理UASB法の安定化・高性能化
また、原生動物の培養には、補助基質として脂質や脂肪酸を添加することが必要であることも明らかとなった。しかし、安定同位体による捕食性、捕食能力調査の実験等は予定して行うことができなかった。本研究は、嫌気性原生動物の機能を活用した都市下水処理UASB法の安定化・高性能化を達成するため、嫌気性原生動物の至適培養条件を解明し、UASB槽内に原生動物を高濃度に保持することで、高い有機物除去率・メタン生成量を達成できる最適運転条件を確立することを目的としている。本年度は、原生動物の生理学的特性を明らかにするために、昨年度に引き続き、UASB槽内の原生動物の分離培養を試みた。原生動物の培養には無機塩培地に、基質としてEscherichia coliを添加し、室温、嫌気条件下で培養を行った。培養実験の結果、Cerocozoa門に属するCercomonas sp. ATCC 50367に近縁(相同性97%)な鞭毛虫類を培養することに成功した。本年度に培養に成功したCercomonas sp.と昨年度に分離した嫌気性原生動物Cyclidium sp.、Trichomitus sp.の3種を様々な細菌を基質として培養実験を行った結果、3種の原生動物は、捕食可能な細菌種及び代謝される有機酸が異なった。よって、これらの原生動物は種ごとに異なる捕食性、代謝経路を持つことが明らかになった。さらに、13C標識されたE. coliを用いたトレーサー実験を行った結果、すべての実験系から13CO2が検出されたため、13C標識されたE. coliが原生動物に捕食、分解されたことが明らかとなった。さらに、Cyclidium sp.の実験系においては13CH4も同時に検出された。Cyclidium sp.細胞内にはメタン生成古細菌が共生していることが確認されており、Cyclidium sp.の代謝で発生した二酸化炭素が、メタン生成古細菌に受け渡され、メタンへ転換されることを確認できた。嫌気性処理における原生動物の知見は少なく、特にUASB槽内の原生動物種の多くは未培養であり、その生理学的特性も不明なものが多い。そこで本研究ではこれまで、原生動物の最適な環境条件や増殖因子に関わる情報を明らかにするため、UASB槽内の原生動物の分離培養を試みてきた。その結果、3種の嫌気性原生動物の分離培養に成功し、それぞれの種が異なる捕食性、代謝経路を持つことが明らかになった。しかし、原生動物の増殖を促進できる因子に関する情報は得られなかった。今後は、嫌気性原生動物の機能を活用した都市下水処理UASB法の安定化・高性能化を達成するためには、原生動物を高濃度に培養できる条件を調査していく必要がある。今後は、培養に成功した嫌気性原生動物種に対して、SIP法を用いた捕食性の評価を行う。原生動物に対して、安定同位体によるトレーサー実験を行い、原生動物が実際に微生物を捕食しているかを調査する。また、供給した細菌の除去量や代謝物を調査することで原生動物の捕食能力を把握する。さらに、異なる条件での原生動物の培養実験を行い、最適な生育条件を解明する。具体的には、様々な基質での培養実験を行い、原生動物の最大増殖量、増殖速度、基質消費量の測定を行う。得られた情報を基に、原生動物の高濃度培養に最適な環境条件(温度、pH、ORP[酸化還元電位])、基質(微生物・有機物の種類、基質濃度)、増殖促進因子等を明らかにする。
KAKENHI-PROJECT-17J09970
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プラトンにおける詩作と技術――弁論術とミーメーシスの考察を手がかりに――
今年度(2010年度)の主な研究成果は、8月に東京で開催された「国際プラトン学会」にて口頭発表を行った、プラトン『国家』第五巻末の議論での「対象」の意味の再検討である。プラトンは、ここでの議論において、「知識」と「思わく」を「能力」と定義し、そのそれぞれに「あるもの」と「ありかつあらぬもの」という異なる「対象」を振り分け、両者の心的状態を明確に区別した。しかしながら、多くの解釈者たちは、この「あるもの」と「ありかつあらぬもの」をそれぞれ「真実在」(イデア)と「感覚物」と伝統的にみなしてきた。その考えに従うならば、プラトンによるこの区別は「私たちが知りうるのはイデアのみで、自分たちの身の回りの世界については何も知りえない」といういわゆる「二世界説」に帰着する他はない。しかしながら、この「二世界説」は、われわれ現代の認識論的立場から到底受け入れられないばかりでなく、プラトン自身の他の対話篇、さらには『国家』における彼の哲人王のプログラム自体とも重大な齪齬をきたすため、それがプラトンの真意であったかどうかは慎重に判断する必要がある。私は今回の発表で、この「二世界説」問題に取り組む多くの論者の中でも、とりわけ影響力のあるファインとゴンザレスの解釈を詳細に分析し、両者の見解もまた伝統的解釈と同様に「対象」を「外延的」に捉えているために、問題解決に向けて不十分であることを指摘した。対して、私自身は「能力」の「対象」をその「仕事」と決して切り離すことができない「内包的対象」と捉えることで「二世界説」問題を根本的に解決することを試みた。この見解は、学会のProceedingsの形式で紙媒体としてすでに発表されている。なお、口頭発表での議論を踏まえた正式な論文は、本学会のSelected Papersに投稿し、現在はその査読結果を待っているところである。我々は技術を価値中立的なものとして考える傾向にある。現代の科学技術をみてみれば、それらが純粋な手段の追求であり、それをどのように使用するかという目的の側面はまた別の問題である、という考え方がごく自然なものとして定着していることがわかる。けれども、プラトンは真の技術にそのような価値中立的なあり方を認めず、必ず「対象の善を目指す」ということを要求している。このプラトンの技術概念は、現在の高度に発展した科学技術社会の中で生じている様々な弊害の原因をその根本から考察する上で、とりわけ注目に値するものと言ってよい。しかしながら、彼の述べる「対象」と「善」がそれぞれどのような事柄を指示しているのか、という点に関して現在までに研究者の意見が分かれ、時には全く正反対とも思われるほど多くの解釈が提出されてきた。このような状況の中で、私はまずプラトンの「対象」が属性から区別された実体のような外延的なものではないことに注意し、技術の働きと密接に結びついた内包的なものであることを示した。さらに、技術の目指すべき「善」の意味については、倫理性を技術の内在的な原理として読み込む解釈に対して、プラトンによってそれぞれの技術に負荷された価値とは、あくまでそれらの働きに応じた技術的な善であることを示した。その上で、個別的な技術の範囲を超えて諸技術の階層関係までを考慮する段階ではじめて、そのような倫理性がそれぞれの技術に外在的な原理として組み込まれる可能性があることを明確に論じた。今年度に得られたこの研究の成果は、プラトンの『国家』中心巻で語られる<善>のイデアとの連絡が大いに予想され、広い視野からプラトンの認識論を捉え直す可能性をもっていると考えられる。引き続きこの研究が進展し完成するならば、プラトン哲学だけでなく現代の技術観、そして認識論一般に対しても一石を投じる機縁となるだろう。今年度(2010年度)の主な研究成果は、8月に東京で開催された「国際プラトン学会」にて口頭発表を行った、プラトン『国家』第五巻末の議論での「対象」の意味の再検討である。プラトンは、ここでの議論において、「知識」と「思わく」を「能力」と定義し、そのそれぞれに「あるもの」と「ありかつあらぬもの」という異なる「対象」を振り分け、両者の心的状態を明確に区別した。しかしながら、多くの解釈者たちは、この「あるもの」と「ありかつあらぬもの」をそれぞれ「真実在」(イデア)と「感覚物」と伝統的にみなしてきた。その考えに従うならば、プラトンによるこの区別は「私たちが知りうるのはイデアのみで、自分たちの身の回りの世界については何も知りえない」といういわゆる「二世界説」に帰着する他はない。しかしながら、この「二世界説」は、われわれ現代の認識論的立場から到底受け入れられないばかりでなく、プラトン自身の他の対話篇、さらには『国家』における彼の哲人王のプログラム自体とも重大な齪齬をきたすため、それがプラトンの真意であったかどうかは慎重に判断する必要がある。私は今回の発表で、この「二世界説」問題に取り組む多くの論者の中でも、とりわけ影響力のあるファインとゴンザレスの解釈を詳細に分析し、両者の見解もまた伝統的解釈と同様に「対象」を「外延的」に捉えているために、問題解決に向けて不十分であることを指摘した。対して、私自身は「能力」の「対象」をその「仕事」と決して切り離すことができない「内包的対象」と捉えることで「二世界説」問題を根本的に解決することを試みた。
KAKENHI-PROJECT-09J03681
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J03681
プラトンにおける詩作と技術――弁論術とミーメーシスの考察を手がかりに――
この見解は、学会のProceedingsの形式で紙媒体としてすでに発表されている。なお、口頭発表での議論を踏まえた正式な論文は、本学会のSelected Papersに投稿し、現在はその査読結果を待っているところである。
KAKENHI-PROJECT-09J03681
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GABAインターニューロン形成を制御する甲状腺ホルモンの新規作用機序の解明
実験動物として用いるマウスは、マウスと同じくげっ歯類であるラットと比較して抗甲状腺剤に対する抵抗性を有することが知られている。このため、本実験では抗甲状腺剤単独使用ではなく、メチマゾールおよびパークロレートに加えて、ヨード含量を著しく低下させた配合飼料(低ヨード食)を用いて先天性甲状腺機能低下症モデル動物を作成した。妊娠17日に目の母親をこれらの薬剤を用いて甲状腺機能低下を誘発させ、出産した仔マウス(先天性甲状腺機能低下症モデルマウス)の大脳皮質および海馬におけるGABA作動性インターニューロンの亜集団構成比の変化を免疫組織学的に精査した。その結果、生後14日齢の幼若マウスの大脳皮質および海馬においてパルブアルブミン陽性細胞数の顕著な減少を認め、また海馬においてはソマトスタチン陽性細胞の増加が観察された。これらの現象は、遺伝的に2型硫酸基転移酵素に変異があり、TSH応答性を失った甲状腺機能低下突然変異モデルマウスでも同様に観察され、抗甲状腺剤による副作用(毒性)ではなく、甲状腺ホルモンの欠乏に伴う現象であることが示唆された。さらに、出生直後から甲状腺ホルモンの補充を行うことで、薬剤誘導性甲状腺機能低下症モデルマウスにおいても、また突然変異マウスにおいても同様に亜集団構成比の変化が改善された。これらのことから、GABA作動性インターニューロンはその成熟段階において、甲状腺ホルモンに対する感受性を持つことが強く示唆された。24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度が最終年度であるため、記入しない。本年度は、抗甲状腺剤による甲状腺機能低下症モデル動物および甲状腺刺激ホルモン受容体突然変異マウスを用いて、GABAインターニューロン形成に与える甲状腺ホルモンの影響を検討した。その結果、出生後から生後3週目にかけての甲状腺ホルモンがGABAインターニューロン形成に非常に重要な役割を演じていることが明らかになった。本研究より、幼若期の甲状腺ホルモン不全は、大脳皮質や海馬におけるGABAインターニューロンの亜集団構成比を変化させることが明らかになった。大脳皮質や海馬にはカルシウム結合タンパク質の一種であるパルブアルブミン(PV)を含有するGABAインターニューロンが多数存在するが、甲状腺機能低下を示すマウスでは、このPV陽性細胞の減少が観察される。とくに大脳皮質の連合野および運動野では、その減少率が極めて顕著であり、また海馬錐体細胞においてもPV陽性細胞数の著しい減少が認められた。一方、PV陽性細胞と共通の神経前駆細胞から発生するソマトスタチン(Sst)陽性GABAインターニューロン数を計測したところ、甲状腺機能低下を示す動物の海馬では、PVを含有する細胞の立ち居振る舞いとは逆に、細胞数の増加が確認された。とくに海馬のstratum oriensではSst陽性細胞の顕著な増加が観察された。次に、甲状腺機能不全動物に甲状腺ホルモン補充しインターニューロン形成異常の改善効果を期待した。その結果、甲状腺ホルモン補充によるニューロン形成異常の改善効果が認められるのは生後3週間まであり、この時期を過ぎるとその効果が失われることが明らかになった。また組織学的解析から、PVおよびSst陽性GABAインターニューロンには甲状腺ホルモン受容体サブタイプα1の発現が観察されたことから、甲状腺ホルモンがこれらのニューロンの分化・成熟を直接制御する可能性も示唆された。実験動物として用いるマウスは、マウスと同じくげっ歯類であるラットと比較して抗甲状腺剤に対する抵抗性を有することが知られている。このため、本実験では抗甲状腺剤単独使用ではなく、メチマゾールおよびパークロレートに加えて、ヨード含量を著しく低下させた配合飼料(低ヨード食)を用いて先天性甲状腺機能低下症モデル動物を作成した。妊娠17日に目の母親をこれらの薬剤を用いて甲状腺機能低下を誘発させ、出産した仔マウス(先天性甲状腺機能低下症モデルマウス)の大脳皮質および海馬におけるGABA作動性インターニューロンの亜集団構成比の変化を免疫組織学的に精査した。その結果、生後14日齢の幼若マウスの大脳皮質および海馬においてパルブアルブミン陽性細胞数の顕著な減少を認め、また海馬においてはソマトスタチン陽性細胞の増加が観察された。これらの現象は、遺伝的に2型硫酸基転移酵素に変異があり、TSH応答性を失った甲状腺機能低下突然変異モデルマウスでも同様に観察され、抗甲状腺剤による副作用(毒性)ではなく、甲状腺ホルモンの欠乏に伴う現象であることが示唆された。さらに、出生直後から甲状腺ホルモンの補充を行うことで、薬剤誘導性甲状腺機能低下症モデルマウスにおいても、また突然変異マウスにおいても同様に亜集団構成比の変化が改善された。これらのことから、GABA作動性インターニューロンはその成熟段階において、甲状腺ホルモンに対する感受性を持つことが強く示唆された。24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22591005
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岩手山火山活動の推移と住民・行政の防災意識・対応との関連に関する総合研究
1.終戦直後の開拓事業から展開してきた岩手山麓の農業は販売農家率が高く、後継者の同居率が高い。当該地帯は、被災後にも農業再建を目指す潜在力が高いと判断された。2.岩手山の約6000年前の噴火と、磐梯山1888年噴火は極めて類似しており、磐梯山での住民の対応記録の分析で学んだことは、岩手山で災害が生起した際の避難行動のために、役立つ。3.住民の郵送調査と面接調査、防災マップの収集と分析、行政のヒアリング等を行い、高齢者の避難や冬季の避難の対策、防災マップのノウハウの蓄積が重要であることを示した。4.火山活動情報が岩手山周辺の宿泊施設等への入り込み数に与える影響の数量分析、宿泊施設への聞き取り調査、雲仙普賢岳に事例を比較した総合的な考察を行った。5.災害の発生予測、被害緩和と訓練との関係の認知、予想被害の深刻さの認知、地域社会との関係の認知、避難訓練の参加コストの見積もり等が、住民の防災への対応に影響することを示した。6.災害時の通信に関しては、有効な方法をすべて調査し無線LANの優位性を示した。次に無線LANベースの情報ネットワークを構築し、その上でインターネットを利用する安否情報システムを開発した。さらに双方向ビデオ通信システムを開発し、実験で有効性を確認した。7.社会福祉分野における危機管理として、住民への直接的情報伝達におけるユニバーサルデザインの配慮が求められる。また、災害時の情報伝達システムには、ケアマネジメントとの連動、ニーズ変化等動的情報への対応、サポートネットワーク変容への視点が重要である。8.被災者の医療・看護体制に関しては、被災が予想される地域住民の健康状況及び防災調査の結果に基づき、災害弱者の避難方法、治療継続の保証を確保することに重点をおいて対策を実施した。弱者救援の組織化と慢性疾患患者の自己管理の情報提供である。1.終戦直後の開拓事業から展開してきた岩手山麓の農業は販売農家率が高く、後継者の同居率が高い。当該地帯は、被災後にも農業再建を目指す潜在力が高いと判断された。2.岩手山の約6000年前の噴火と、磐梯山1888年噴火は極めて類似しており、磐梯山での住民の対応記録の分析で学んだことは、岩手山で災害が生起した際の避難行動のために、役立つ。3.住民の郵送調査と面接調査、防災マップの収集と分析、行政のヒアリング等を行い、高齢者の避難や冬季の避難の対策、防災マップのノウハウの蓄積が重要であることを示した。4.火山活動情報が岩手山周辺の宿泊施設等への入り込み数に与える影響の数量分析、宿泊施設への聞き取り調査、雲仙普賢岳に事例を比較した総合的な考察を行った。5.災害の発生予測、被害緩和と訓練との関係の認知、予想被害の深刻さの認知、地域社会との関係の認知、避難訓練の参加コストの見積もり等が、住民の防災への対応に影響することを示した。6.災害時の通信に関しては、有効な方法をすべて調査し無線LANの優位性を示した。次に無線LANベースの情報ネットワークを構築し、その上でインターネットを利用する安否情報システムを開発した。さらに双方向ビデオ通信システムを開発し、実験で有効性を確認した。7.社会福祉分野における危機管理として、住民への直接的情報伝達におけるユニバーサルデザインの配慮が求められる。また、災害時の情報伝達システムには、ケアマネジメントとの連動、ニーズ変化等動的情報への対応、サポートネットワーク変容への視点が重要である。8.被災者の医療・看護体制に関しては、被災が予想される地域住民の健康状況及び防災調査の結果に基づき、災害弱者の避難方法、治療継続の保証を確保することに重点をおいて対策を実施した。弱者救援の組織化と慢性疾患患者の自己管理の情報提供である。被災が予想される岩手山麓における集落立地・展開に関する研究では、戦後開拓の諸資料により戦後の開拓集落を把握した。また、種々の土地条件を検討した結果、開拓地の傾斜上限値が7度前後であることが明らかになった。火山活動および住民対応の比較研究では、磐梯山1888年噴火の際の、災害の時系列的推移を検討し山麓各地の住民の対応に関する地域的差異を明らかにし、岩手山で予想される被害への対応のあり方を探った。防災に関する住民・行政の意識調査では、防災マップの認知、避難への不安、避難手段の選択などを規定する要因を探り、高齢者の非難や情報提供のあり方など、防災に関する課題を指摘した。火山活動情報の観光などへの経済的影響に関しては、観光宿泊施設が分布する岩手山北麓・南麓の地域別に入込み数を所得、その他の変数に回帰させて係数を推定し地域別に入込み減少の要因を確認した。災害時の通信確保に関する研究では、現在の情報通信システムの問題点と災害情報ネットワークに要求される条件を検討し、災害時でも被災地住民が情報の発信と収集ができ、被災地以外の人々も情報を入手可能なシステムを提案した。災害発生時の行動に関する心理学的研究では、住民の災害への不安感や危機意識を避難訓練行動、避難行動予測、実際の避難行動に的確に発展させていく、態度形成・教育訓練の社会心理学的手法の導入の必要性が明らかにされた。危機管理用福祉情報システムの構築に関する研究では、高齢者等の情報を共有化し、災害時の支援活動に提携するシステムの開発が県内市町村の課題となっていることから、コープこうべの地域福祉総合ネットワークシステム調査を実施した。疾病を持つ被災者の医療・看護体制に関する研究では、岩手山の災害予想
KAKENHI-PROJECT-11480103
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11480103
岩手山火山活動の推移と住民・行政の防災意識・対応との関連に関する総合研究
地域住民を対象に疾病状況と防災に対する実態調査を行ない、災害時における避難方法、治療中断の不安が多いことが明らかになった。岩手山麓における集落立地・展開に関する研究の地形計測では、火山麓の上限傾斜が最大12度、最頻値67度であった。この傾斜特性は戦後緊急開拓の開拓可能地に合致し、火山麓縁辺低地に限定されていた集落立地が火山麓へ展開する契機となった。火山活動および住民対応の比較研究では、1888年磐梯山噴火に関する記録・資料を分析し、避難行動の上で、噴出物のfall(降下)とflow(流下)の区分の重要性を明らかにした。防災に関する住民・行政の意識調査では、雫石町において実際の防災マップを用いた面接調査を行いマップの理解しにくい点を確認し、避難時の問題点について検討した。火山活動情報の観光などへの経済的影響に関しては、岩手高原ペンション村と雫石町永山付近のペンションアベニューを対象に、火山活動活発化以降の経営への影響について聞き取り調査を行った。災害時の通信確保に関する研究では、無線LANとモバイルコンピューティングによる情報ネットワークシステムのプロトタイプを学内に構築した。また滝沢村の避難訓練で本システムを住民に使用してもらい有効性をテストした。災害発生時の行動に関する心理学的研究では、避難訓練の観察、防災対策の意識調査、PTSDへの対応、リスク認知、義援金寄付行動を素材に研究を行った。発達段階や被災経験、地域生活への関与度等が災害への対応行動に差異をもたらしていた。危機管理用福祉情報システムの構築に関する研究では、自治体のシステムについて調査を行った。介護保険制度化により情報化は進展しているが、危機管理機能を保有するシステムは、ほとんど構築されていなかった。疾病を持つ被災者の医療・看護体制に関する研究では、岩手山周辺住民の97%が火山災害に不安や心配を持ち、慢性疾患患者で非常用医薬品を準備している人は29%である状況等から、支援ネットワークを立ち上げ集会を持った。岩手山北麓の集落立地・展開については、実地調査、行政・統計資料の分析を行った。玉山村・西根町・松尾村で、水田、畑作、酪農・畜産の生産構造と地域性が明らかになった。火山活動と住民対応については、岩手山の約6000年前の活動と、磐梯山1888年噴火との類似性を見いだした。磐梯山噴火の記録から、岩手山で同種の災害が生起した際に、情報伝達を迅速化し、避難箇所をより離れて、より高い位置とすべきことを明らかにした。防災に関する意識調査では、全国の火山防災マップを比較するとともに、雫石町での面接調査の結果を整理し、今後のマップ作成に向けてノウハウの蓄積が必要であることを示した。火山活動情報の経済的影響に関しては、数量分析と宿泊施設への聞き取り調査を踏まえ、雲仙普賢岳の事例と比較した総合的考察を行ない、火山災害への救援制度について考察した。災害時の通信確保に関しては、安否情報システムを無線LANで利用可能とするため、Ad Hoc Wireless Network Protocolとそのネットワーク資源管理プロトコルを開発した。モバイル端末での安否情報の受信・発信が可能となった。災害時の行動に関する心理学的研究では、防災意識、避難訓練時の行動観察、被災者の心理学的研究の成果を整理した。
KAKENHI-PROJECT-11480103
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Ph+ALLにおけるBCR遺伝子切断点の意義
フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)のBCR遺伝子切断点として、Major-BCR(Ma-BCR)とminor-BCR(mi-BCR)の大きく2つの代表的なものが存在することが知られているが、その分子遺伝学的意義は明らかとはされておらず、今回新たな着目点して研究を進めている。本年度は、初診時において正常血球の同定が困難であった症例において、二重染色を用いて再検討を行った。さらに、初診時の細胞をフローサイトメトリーを用いて分画別に分取し、それぞれの分画における融合シグナルを検討するとともに、遺伝子発現プロファイルの検討を行っている。また、Ph+ALLでは同種造血細胞移植が重要な根治療法と位置付けられているため、日本造血細胞移植学会のレジストリーデータを用いてMa-BCRとmi-BCRの移植成績への影響を検討した。1. MPO染色との二重染色を行うことでごく少数の芽球以外の血球系統にBCR-ABL融合シグナルを検出することが可能となり、Ma-BCRの大多数のみでなく、mi-BCRの一部でも芽球以外に融合シグナルが検出されることが明らかとなった。2.初診時細胞をフローサイトメトリーで分画ごとに分取して融合シグナルを検討し、FISH法とは別の方法でも芽球以外に融合シグナルが認められることを確認している。3. BCR-ABL融合遺伝子の発現している血球系統の分類はBCR遺伝子切断点のみで分かれるものではないことが示唆されたため、遺伝子発現プロファイルを検討し、新たな分類が可能であるかを検討している。4.移植時のMRDと移植ソースによってBCR遺伝子切断点の移植成績に及ぼす影響は異なることを示唆するデータが得られ、現在結果をまとめているところである。当初予定していた形態的な区別では難しい症例でも二重染色を行うことで芽球以外の血球を同定してBCR-ABL融合シグナルの見られる血球系統をより詳細に検討できた。また、BCR遺伝子切断点の治療成績への影響についても順調に検討が進めることができている。研究計画当初はBCR遺伝子切断点によってBCR-ABL融合遺伝子の発現している血球系統が分かれることを想定していたが、一部の症例でBCR遺伝子切断点の違いとBCR-ABL融合遺伝子の発現している血球系統の違いが一致しない例があることが明らかとなったため、遺伝子発現プロファイルを検討してその意義を分子遺伝学的にさらに踏み込んで検討する予定である。フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)のBCR遺伝子切断点として、Major-BCRとmino-BCRの大きく2つの代表的なものが存在することが知られているが、その分子遺伝学的意義は明らかとはされておらず、今回新たな着目点して研究を進めている。本年度は、BCR遺伝子切断点の違いによるBCR-ABL融合遺伝子の発現している血球系統の違いを明らかとするため、FISH法を用いて検討を行った。細胞の保存は一般の臨床病院ではルーチンに行うことは簡単でないが、この方法は初診時の検査で使用した骨髄クロットなど保存されている組織でも可能である。Ph+ALLは大学病院等の研究機関のみでは多数の症例集積が難しい希少疾患であり、症例数の多い協力病院の貴重な症例も解析可能とするためにこの手法を用い、実際に比較的多数の症例集積に成功している。1.末梢血の好中球FISHでは、観察細胞を分葉核細胞と単核球細胞に大別して融合シグナルを検出し、分葉核球にも融合シグナルを認めた場合、芽球以外の正常細胞にも融合遺伝子の発現があると判定した。2.骨髄クロット標本を用いた組織FISHでは、二重免疫染色あるいは連続切片を用いることで融合シグナルを認める血球系統を判断した。順調に症例を蓄積し、検討を進めている。芽球以外の正常細胞にも融合遺伝子発現を認める症例を複数例確認している。発現している血球細胞とBCR遺伝子切断点との間には一定の傾向は認めているが、疾患背景との関連性についてさらに詳細な検討をすすめている。当初の予定通り、研究協力施設の協力を得て、順調に症例を蓄積して解析を行っている。FISH法の工程は確立しており、詳細な背景との関連性を検討する段階にきている。芽球以外にも融合遺伝子シグナルを認める症例を複数例確認しており、興味深い結果につながると考えている。フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)のBCR遺伝子切断点として、Major-BCR(Ma-BCR)とminor-BCR(mi-BCR)の大きく2つの代表的なものが存在することが知られているが、その分子遺伝学的意義は明らかとはされておらず、今回新たな着目点して研究を進めている。本年度は、初診時において正常血球の同定が困難であった症例において、二重染色を用いて再検討を行った。さらに、初診時の細胞をフローサイトメトリーを用いて分画別に分取し、それぞれの分画における融合シグナルを検討するとともに、遺伝子発現プロファイルの検討を行っている。また、Ph+ALLでは同種造血細胞移植が重要な根治療法と位置付けられているため、日本造血細胞移植学会のレジストリーデータを用いてMa-BCRとmi-BCRの移植成績への影響を検討した。1. MPO染色との二重染色を行うことでごく少数の芽球以外の血球系統にBCR-ABL融合シグナルを検出することが可能となり、Ma-BCRの大多数のみでなく、mi-BCRの一部でも芽球以外に融合シグナルが検出されることが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-17K16186
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K16186
Ph+ALLにおけるBCR遺伝子切断点の意義
2.初診時細胞をフローサイトメトリーで分画ごとに分取して融合シグナルを検討し、FISH法とは別の方法でも芽球以外に融合シグナルが認められることを確認している。3. BCR-ABL融合遺伝子の発現している血球系統の分類はBCR遺伝子切断点のみで分かれるものではないことが示唆されたため、遺伝子発現プロファイルを検討し、新たな分類が可能であるかを検討している。4.移植時のMRDと移植ソースによってBCR遺伝子切断点の移植成績に及ぼす影響は異なることを示唆するデータが得られ、現在結果をまとめているところである。当初予定していた形態的な区別では難しい症例でも二重染色を行うことで芽球以外の血球を同定してBCR-ABL融合シグナルの見られる血球系統をより詳細に検討できた。また、BCR遺伝子切断点の治療成績への影響についても順調に検討が進めることができている。1.各血球分画におけるBCR-ABL融合遺伝子発現を初診時の初診時及び初回寛解期の保存細胞をフローサイトメトリー用いて分取した各分化段階の細胞について検討し、BCR遺伝子切断点の違いとの関連性を分析する。2. Ph+ALLにおいてIKZF1欠失は代表的な遺伝子異常であるが、その欠失のパターンなど代表的な遺伝子異常について検討を行い、BCR遺伝子切断点の違いとの関連性を分析する。3. BCR遺伝子切断点の治療成績との関連性を分析する。研究計画当初はBCR遺伝子切断点によってBCR-ABL融合遺伝子の発現している血球系統が分かれることを想定していたが、一部の症例でBCR遺伝子切断点の違いとBCR-ABL融合遺伝子の発現している血球系統の違いが一致しない例があることが明らかとなったため、遺伝子発現プロファイルを検討してその意義を分子遺伝学的にさらに踏み込んで検討する予定である。今年度予定分の検討は検体をまとめて分析することができたために物品費が予定を下回った。追加の詳細な解析を行う予定であり、次年度に使用する予定である。BCR遺伝子切断点による数種類の遺伝子変異パターンの違いを調べる予定であったが、BCR遺伝子切断点のみでBCR-ABL融合遺伝子の発現する血球系統が分かれるわけでは必ずしもないことが判明したため、遺伝子発現プロファイルのパターンの違いを次年度に検討することとしたため。次世代シークエンサー(NGS)を用いた遺伝子発現プロファイルの解析を計画しており、NGS関連の試薬等に使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-17K16186
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K16186
口腔癌におけるMicroRNAの機能解析に基づく放射線増感薬の開発
MicroRNA(miRNA)は20-25塩基からなる短いnon-coding RNAの一種で、標的遺伝子のmRNAの3'非翻訳領域に結合することによりその遺伝子の翻訳を抑制し、遺伝子発現を調節する。近年、様々な癌においてmiRNAの発現異常が示されるとともに、miRNAの発現異常と癌の悪性度・予後との関連(Carcinogenesis, 30 : 1903-1909, 2009)、miRNAの癌幹細胞維持における役割(Cell, 138 : 592-603, 2009)、血清中の腫瘍マーカーとしてのmiRNA、の応用(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 105 : 10513-10518, 2008)、miRNAが治療標的となる可能性(Cancer Res, 70 : 5923-5930, 2010)などが報告されている。しかしながら、放射線に対する感受性とmiRNA発現の関係についての研究はほとんどなされていない。そこで本研究では、放射線増感作用のあるmiRNAを検索し、放射線増感薬としての臨床応用の可能性を検討した。株化口腔扁平上皮癌(OSC)細胞のmiRNAアレイ解析よりmiR-34aについて注目し、放射線感受性におよぼす影響について検討した。OSC細胞にmiR-34aを導入後、放射線照射した時の細胞増殖およびアポトーシス誘導について調べたところ、放射線に対する感受性がわずかであるが増加した。さらに、OSC細胞に放射線照射した時のmiR-34aの発現を調べたところ、miR-34aの発現は増強した。以上の結果より、miR-34aが放射線増感薬として応用できる可能性が示唆された。MicroRNA(miRNA)は20-25塩基からなる短いnon-coding RNAの一種で、標的遺伝子のmRNAの3'非翻訳領域に結合することによりその遺伝子の翻訳を抑制し、遺伝子発現を調節する。近年、様々な癌においてmiRNAの発現異常が示されるとともに、miRNAの発現異常と癌の悪性度・予後との関連(Carcinogenesis, 30 : 1903-1909, 2009)、miRNAの癌幹細胞維持における役割(Cell, 138 : 592-603, 2009)、血清中の腫瘍マーカーとしてのmiRNA、の応用(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 105 : 10513-10518, 2008)、miRNAが治療標的となる可能性(Cancer Res, 70 : 5923-5930, 2010)などが報告されている。しかしながら、放射線に対する感受性とmiRNA発現の関係についての研究はほとんどなされていない。そこで本研究では、放射線増感作用のあるmiRNAを検索し、放射線増感薬としての臨床応用の可能性を検討した。株化口腔扁平上皮癌(OSC)細胞のmiRNAアレイ解析よりmiR-34aについて注目し、放射線感受性におよぼす影響について検討した。OSC細胞にmiR-34aを導入後、放射線照射した時の細胞増殖およびアポトーシス誘導について調べたところ、放射線に対する感受性がわずかであるが増加した。さらに、OSC細胞に放射線照射した時のmiR-34aの発現を調べたところ、miR-34aの発現は増強した。以上の結果より、miR-34aが放射線増感薬として応用できる可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-24792229
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24792229
ヤギにおける形質転換動物作出技術の確立と実用化に関する研究
比較的からだのサイズが小さいヤギ、ヒツジ、ブタなどの偶蹄類における形質転換動物作出は、欧米では商業的な展開がなされるようになった。一方、日本における形質転換動物作出技術は、未だによい結果が出ていない。本研究の目的は、ヤギにおける実用的な形質転換動物作出技術を開発することである。そしてヤギにおける、核移植のドナー細胞としての培養細胞株(CPF1)の樹立、CPF1における染色体数およびテロメア長と世代との関係の解析、超低温保存精子の評価、IVM/IVF法の確立に関する研究がなされた。さらに、偶蹄類家畜のモデルとして、ヤギの遺伝子工学において潜在的に有用なタンパク質をコードする遺伝子やcDNAsの分子クローニングが試みられ、顕著な成果がえられた。骨格筋の発達を調整する「マイオスタチン」や体のサイズに関与するHMGI-Cのクローニングと塩基配列の解析に成功した。また、2つの性決定に関与する遺伝子、SRY, DAX1もクローニングし、塩基配列を解析した、さらにSRYのアンチセンスベクターを発現する遺伝子コンストラクトを構築し、そのTgマウスを作製した。そのコンストラクトのプロモーター/エンハンサーとしては、CAGGSを採用した。えられたファウンダー12匹は、遺伝的および表現型の性が一致していた。そのファウンダー由来のF1においけるその遺伝子の予備的なPCR解祈では、表現型がメスの可能性がある結果がえられた。現在、さらなる確認実験をおこなっている。アンチSRYリボザイムにおいては、我々はいくつかのリボザイムを設計した。これらのSRY mRNAに対するin vitroでの効果について検討し、ハンマーヘッドリボザイムとリボザイム-tRNA複合体が効果的にSRY mRNAに対して分解しうる証拠がえられた。比較的からだのサイズが小さいヤギ、ヒツジ、ブタなどの偶蹄類における形質転換動物作出は、欧米では商業的な展開がなされるようになった。一方、日本における形質転換動物作出技術は、未だによい結果が出ていない。本研究の目的は、ヤギにおける実用的な形質転換動物作出技術を開発することである。そしてヤギにおける、核移植のドナー細胞としての培養細胞株(CPF1)の樹立、CPF1における染色体数およびテロメア長と世代との関係の解析、超低温保存精子の評価、IVM/IVF法の確立に関する研究がなされた。さらに、偶蹄類家畜のモデルとして、ヤギの遺伝子工学において潜在的に有用なタンパク質をコードする遺伝子やcDNAsの分子クローニングが試みられ、顕著な成果がえられた。骨格筋の発達を調整する「マイオスタチン」や体のサイズに関与するHMGI-Cのクローニングと塩基配列の解析に成功した。また、2つの性決定に関与する遺伝子、SRY, DAX1もクローニングし、塩基配列を解析した、さらにSRYのアンチセンスベクターを発現する遺伝子コンストラクトを構築し、そのTgマウスを作製した。そのコンストラクトのプロモーター/エンハンサーとしては、CAGGSを採用した。えられたファウンダー12匹は、遺伝的および表現型の性が一致していた。そのファウンダー由来のF1においけるその遺伝子の予備的なPCR解祈では、表現型がメスの可能性がある結果がえられた。現在、さらなる確認実験をおこなっている。アンチSRYリボザイムにおいては、我々はいくつかのリボザイムを設計した。これらのSRY mRNAに対するin vitroでの効果について検討し、ハンマーヘッドリボザイムとリボザイム-tRNA複合体が効果的にSRY mRNAに対して分解しうる証拠がえられた。偶蹄類の家畜、特に比較的小型で扱いの容易なヤギ、ヒツジ、ブタなどにおける形質転換動物(トランスジェニック動物)の作出は、欧米ですでに商業的な実用化の域に入りつつある。一方、わが国では、これらの動物を含む、家畜における形質転換動物作出技術については、まだ開発研究も十分に行われていない。本研究の目的は、わが国において、ヤギにおける形質転換動物作出技術を確立し実用化することにある。本年度には、ヤギの卵巣内卵胞のin vitro培養系における成熟法、ヤギ精子の凍結保存法、ヤギの体外受精法に関して、基礎的な検討を行った。ヤギ精子の凍結保存法に関しては、抗酸化剤の影響の検討を行った。何れの課題についても、まだ、検討すべき問題が多数残されているが、有用な基礎データが得られつつある。一方、形質転換に用いる有用遺伝子のクローニングに関しては、myostatin,HMGI-Cなど、体の大きさに関連した遺伝子、および性決定に関する遺伝子DAX1の単離とクローニング、ならびに、配列決定が進行中である。また、形質転換動物作出に必要な遺伝子コントラクトの作成に関しては、アンチセンスSRYを組み込んだ発現ベクター、対SRYリボザイムを組み込んだ発現ベクターの構築が進行している。これらのコンストラクトは、何れも、まず、トランスジェニックマウスを作出することを目的として作成しており、さらに、それらの成果を踏まえて、順次、ヤギに展開する予定である。偶蹄類の家畜、特に比較的小型で扱いの容易なヤギ、ヒツジ、ブタなどにおける形質転換動物(トランスジェニック動物)の作出は、欧米ではすでに商業的な実用化の域に入りつつある。一方、わが国では、これらの動物を含む、家畜における形質転換動物作出技術については、まだ開発研究も十分に行われていない。本研究の目的は、わが国において、ヤギにおける形質転換動物作出技術を確立し実用化することにある。
KAKENHI-PROJECT-11356008
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11356008
ヤギにおける形質転換動物作出技術の確立と実用化に関する研究
本年度には、核移植ドナー用のヤギ培養細胞株の樹立、培養細胞株における染色体解析ならびにテロメア長と継代数の相関関係の定量的解析、ヤギの卵巣内卵胞のin vitro培養系における成熟法の開発、ヤギ精子の凍結保存法の開発、ヤギの体外受精法等に関して基礎的な検討を行った。ヤギ精子の凍結保存法に関しては、特に、抗酸化剤の影響の検討を行った。何れの課題についても、まだ、研究の途上であり未解決の問題が多数残されているが、興味深い基礎データが得られつつある。一方、形質転換に用いる有用遺伝子のクローニングに関しては、myostatin,HMGI-Cなど、body sizeに関連した遺伝子、および、性決定に関与する遺伝子SRYならびにDAX1の単離とクローニング、配列決定が進行中である。また、形質転換動物作出に必要な遺伝子コンストラクトの作成に関しては、アンチセンスSRYを組み込んだ発現ベクター、抗SRYリボザイムを組み込んだ発現ベクターの構築が進行中であり、一部については、構築が完了した。これらのコンストラクトは、何れも、まず、トランスジェニックマウスを作出することを目的として作成しており、さらに、それらの成果を踏まえて、順次、ヤギに展開する予定である。マウスアンチセンスSryコンストラクトについては、トランスジェニックマウス作出の予備実験を行いつつある。偶蹄類の家畜、特に比較的小型で扱いの容易なヤギ、ヒツジ、ブタなどにおける形質転換動物(トランスジェニック動物)の作出は、欧米ではすでに商業的な実用化の域に入りつつある。一方、わが国では、これらの動物を含む、家畜における形質転換動物作出技術については、まだ開発研究も十分に行われていない。本研究の目的は、わが国において、ヤギにおける形質転換動物作出技術を確立し実用化することにある。本年度には、核移植ドナー用のヤギ培養細胞株の樹立、培養細胞株における染色体解析ならびにテロメア長と継代数の相関関係の定量的解析、ヤギの卵巣内卵胞のin vitro培養系における成熟法の開発、ヤギ精子の凍結保存法の開発、ヤギの体外受精法等に関して研究を行った。ヤギ精子の凍結保存法に関しては、特に、抗酸化剤の影響の検討を行った。一方、形質転換に用いる有用遺伝子のクローニングに関しては、myostatin, HMGI-Cなど、筋肉の発達や、body sizeに関連した遺伝子、および、性決定に関与する遺伝子SRYならびにDAX1の単離とクローニング、配列決定を行った。また、形質転換動物作出に必要な遣伝子コンストラクトの作成に関しては、アンチセンスSRYを組み込んだ発現ベクター、抗SRYリボザイムを組み込んだ発現ベクターの構築を行い、モデルとして使用しているマウスについては、アンチセンスSry発現ベクターコンストラクトを用いて、トランスジェニックマウスの作出を行った。ベクター系としては、現在、最も強力なpromoter/enhancer complexであるとされる哺乳類細胞における発現ベクターpCAGGS(阪大宮崎純一教授から供与)を用いた。その結果、12匹(雄10、雌2)のトランスジェニックマウスが得られたが、表現型と遺伝型は全て一致していた。
KAKENHI-PROJECT-11356008
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マルチロータ型ヘリコプターを用いた非接触音響探査法に関する研究
前年度の実験により、ドローン(MATRICE 600 Pro, DJI Co., Ltd.)を用いた非接触音響探査法において、加振用音源を搭載したドローンが飛行中に風の影響を受けて流されてしまい、計測箇所に音波が正確に当たらず、計測結果におけるノイズが増加するという傾向が確認された。そこで、ドローンに搭載されているフラットスピーカ(FPS1030M3P1R, FPS Inc.)の指向性を確認する実験を行い、ドローンが風により移動しても問題ない範囲を検討した。その結果、ドローンから計測対象までの距離を4 m程度と仮定した場合、1 m程度であれば計測位置からずれても問題ない結果となった。ただし、加振用音波の周波数により指向性は異なるため、使用音波によっては離隔距離が変化する。これらを踏まえ、熊本県阿蘇郡南阿蘇村にある旧久木野庁舎を対象に、非接触音響探査法を行った。この時の計測は建物の2階と3階の間にあるタイル面を対象に行われたため、ドローンは8 m程飛行した状態で音響加振を行い、超高感度スキャニング振動計(PSV-500 Xtra, Polytec GmbH)を用いて対象面の振動を計測した。その結果、実構造物においても計測対象面に存在する欠陥を検出することが可能である事が確認された。次の実験では、外壁タイル試験体をクレーンで持ち上げコンクリート構造物の上に設置し、上記の計測状況を模擬した状態で計測を行った。この実験では、前述した実験では行わなかった加算平均を使用した場合との比較計測を行った。それらを比較した結果、加算平均を行うことで、ノイズが減少し計測結果が安定することが分かった。ドローンを用いた非接触音響探査法において、飛行中のドローンが風に流されてしまい、音波が正確に計測対象に当たらないということがあったため、搭載しているフラットスピーカ(FPS1030M3P1R, FPS Inc.)の指向性を確認したところ、1 m程度ならば中心からずれても問題ない事が確認された。ドローンの移動は計測後の信号処理に影響している。解析時の計測距離がずれていると、必要な信号を省いてしまう恐れがあるため、現状では計測距離が必要な処理は省略して解析を行っている。実験に関しては、実構造物および試験体を対象に計測を重ねており、両対象において欠陥部の検出が可能である事が確認された。実構造物においては、試験体と比較して内部の欠陥が複雑であることや、風の影響によるドローンの移動および計測用レーザの励振が発生したためノイズが多く発生したが、欠陥部の反応も検出されたため、実構造物においても本手法は適用可能であると考えられる。試験体を対象にした実験では、加算平均を行うことによりノイズの低減を試みた。その結果、ノイズが低下して計測結果が安定することを確認した。今後は、実構造物および試験体を対象に実験を行い、計測中に発生する風等による計測結果への影響について検証を重ねていき、本手法の検出精度を高めていく。特に実構造物内部の欠陥は試験体の模擬欠陥に比べて複雑な構造をしているため、実用化という観点から考えると実構造物を対象にした計測を増やしていく必要がある。また、計測中にドローンが風に流され計測位置から想定した範囲を大きく逸脱した場合、欠陥部を検出することが困難であるため、その場合の対処法を検討する。これは、ドローンが計測範囲から外れた場合、計測を一時的に止めるなどの対策が簡易的な方法として挙げられるが、ドローンの位置制御技術の向上が進めばこれらの問題は解決すると考えられる。風による影響はドローンだけではなく計測機の方にも影響してくるため、そちらの方の対策も検討していく予定である。対策方法としては、計測機周辺に壁を作成し物理的に風を遮る方法や解析時にノイズを除去するなどの方法が考えられる。従来の非接触音響探査法では、加振用音源に長距離音響発生装置(LRAD-300X, LRAD Corp.)を用いることで、対象を励振させていた。しかし、今回の提案手法ではドローンに音源を搭載する必要があるため、この音源を使用することは不可能である。そこで、ドローンに搭載可能と推測される幾つかの音源を用いて、非接触音響探査法が実施可能か検証実験を行った。実験は音源を近接させた状態で、離れた位置からレーザ振動計による計測を行った。検証実験の結果、フラットスピーカ(FPS1030M3P1R, FPS Inc.)がドローン搭載に最適であると考えられた。次に、この音源を搭載し非接触音響探査法に用いることが可能なドローンの選定を行った。ドローンには音源だけでなく、非接触音響探査法に必要な様々な機器を搭載する必要があるため、既存のドローンを改造する必要があった。そこで今回は、商用ドローン業界最大手であるDJIのドローンの改造を行うことが可能であり、独自の開発技術を持っている株式会社日本サーキットにドローン開発の協力を依頼した。その後、非接触音響探査法用ドローンについて協議を行い、積載荷重が多く計測により適したMATRICE 600 Pro(DJI Co., Ltd.)の改造・作成を行った。機体の製作後、本研究の目的であるコンクリート構造物に対する事前実験として、ドローンを用いた性能検証実験を行った。実験対象には、既存の試験体である外壁タイル試験体を選択した。この試験体における模擬欠陥は検出し易く、検証実験としては適当であると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-17K12991
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K12991
マルチロータ型ヘリコプターを用いた非接触音響探査法に関する研究
実験では、計測対象から3 m程度離れた位置からドローンの飛行有り無しの状態で計測を行い、両計測結果において欠陥の検出は十分可能であることを確認した。ドローンに搭載する音源は、検証実験の結果フラットスピーカ(FPS1030M3P1R, FPS Inc.)が現状では最適であると考えられる。ドローンに搭載する方法として下側と真上の2種類を検討していたが、真上に搭載するのはドローンの構造的に困難であり、一から機体の設計をする必要があるため、下側に音源を搭載したドローンを作成した。送信音波に関しては、既存の無音時間が長い波形ではノイズが大きくなる傾向が確認された。これはドローンが風などにより流れてしまい、音波が正確に計測対象に当たらなかったことが原因であると考えられる。風の影響は飛行時間が長い程影響が大きいため、対策として無音時間を無くした波形を使用したところ、計測時間が短縮され計測結果も良好になるという結果となった。既存の信号処理はドローンが風などの影響により移動してしまい、適用させるのは困難であると思われたが、今年度の実験結果では信号処理により計測結果が改善されたため、多少の揺れでは影響は少ないと考えられる。またこの信号処理は、レーザ振動計が加振用音波の反射等による干渉を受けて発生したノイズを処理することを目的として、考案されたものである。そのため、加振用音源を搭載したドローンが単独で遠距離に移動することを想定している本手法では、この信号処理がなくともノイズの影響は少ないと推測される。計測時に音源を搭載したドローンとレーザ振動計を離した状態で計測を行ったが、特に問題なく計測が可能であることを確認した。前年度の実験により、ドローン(MATRICE 600 Pro, DJI Co., Ltd.)を用いた非接触音響探査法において、加振用音源を搭載したドローンが飛行中に風の影響を受けて流されてしまい、計測箇所に音波が正確に当たらず、計測結果におけるノイズが増加するという傾向が確認された。そこで、ドローンに搭載されているフラットスピーカ(FPS1030M3P1R, FPS Inc.)の指向性を確認する実験を行い、ドローンが風により移動しても問題ない範囲を検討した。その結果、ドローンから計測対象までの距離を4 m程度と仮定した場合、1 m程度であれば計測位置からずれても問題ない結果となった。ただし、加振用音波の周波数により指向性は異なるため、使用音波によっては離隔距離が変化する。これらを踏まえ、熊本県阿蘇郡南阿蘇村にある旧久木野庁舎を対象に、非接触音響探査法を行った。この時の計測は建物の2階と3階の間にあるタイル面を対象に行われたため、ドローンは8 m程飛行した状態で音響加振を行い、超高感度スキャニング振動計(PSV-500 Xtra, Polytec GmbH)を用いて対象面の振動を計測した。その結果、実構造物においても計測対象面に存在する欠陥を検出することが可能である事が確認された。次の実験では、外壁タイル試験体をクレーンで持ち上げコンクリート構造物の上に設置し、上記の計測状況を模擬した状態で計測を行った。この実験では、前述した実験では行わなかった加算平均を使用した場合との比較計測を行った。それらを比較した結果、加算平均を行うことで、ノイズが減少し計測結果が安定することが分かった。ドローンを用いた非接触
KAKENHI-PROJECT-17K12991
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アメリカの「表現の自由」論は、フェミニストの批判に如何に対応するか。
アメリカの「表現の自由」論に対して,フェミニストが批判するトピックの1つであるポルノグラフィーについての議論に着目し,ポルノグラフィーをめぐってアメリカ憲法解釈とフェミニズムの議論がどのような理論関係にあるのかを整理した上で、この対立を解消するための、又はフェミニズムの批判に応えるための理論的な前提条件(フェミニズムの批判に応えるために採りうるアメリカ合衆国憲法第一修正解釈のバリエーション)を提示した。アメリカの「表現の自由」論に対して,フェミニストが批判するトピックの1つであるポルノグラフィーについての議論に着目し,ポルノグラフィーをめぐってアメリカ憲法解釈とフェミニズムの議論がどのような理論関係にあるのかを整理した上で、この対立を解消するための、又はフェミニズムの批判に応えるための理論的な前提条件(フェミニズムの批判に応えるために採りうるアメリカ合衆国憲法第一修正解釈のバリエーション)を提示した。アメリカの「表現の自由」論は,ポルノグラフィをめぐって,フェミニストから強い批判を受けている。そのフェミニストの批判に,「表現の自由」についての憲法解釈は,どのように答えるべきなのか,ということを研究すべく,平成19年度は,アメリカのポルノグラフィに関する議論が分散していることを,従来からの研究に蓄積する形で,参照し,検討した。すなわち,ポルノグラフィをめぐっては,ポルノグラフィ規制を求めるフェミニストの議論とポルノグラフィが表現として適当なものでなくても,表現の自由を守るべき立場から,ポルノグラフィ規制に対して慎重な態度をとるリベラリズムの立場との間で,対立構造があった。しかし,その対立構造を認識した上で,フェミニストともリベラリズムの立場とも異なる仕方で議論を展開する論者が一定程度,存在する。そうした諸議論を参照し,検討した。具体的には,ポルノグラフィが女性に対する「沈黙効果」を引き起こすことを重く考え,ポルノグラフィ規制に対し好意的な態度をとるオーウェン・フィス(Owen Fiss)の議論,ポルノグラフィの害悪とその「低い価値」から,ポルノグラフィ規制に対して好意的なキャス・サンスティン(Cass Sunstein)の議論,こうした議論の有効性を認識しながらも,なお「表現の自由」論を慎重に考えなければならないとするロバート・ポスト(Robert Post)の議論を参照し,検討した。これらの議論から,「表現の自由」を保障するアメリカ合衆国憲法第一修正を解釈する際,ポルノグラフィの問題をどのように考えることができるかの選択肢を抽出して,研究目的にアプローチした。その成果を,論文で活字化した。本研究課題は,アメリカの「表現の自由」理論は,フェミニストからの批判に如何に応えるかというものであり,具体的には,ポルノグラフィをめぐる憲法解釈としてフェミニストの主張をいかに取り入れるべきかについて検討した。伝統的な「表現の自由」論においては,自由な表現が個人にとって又は社会にとって非常に重要であることから,ポルノグラフィ規制や表現規制に対しては消極的である。そうした議論に,ポルノグラフィは「表現」ではなく性差別的行為であり,女性の平等権を侵害すると批判したのがラディカル・フェミニズムと称されるキャザリン・マッキノンの議論であった。この議論を契機に,ポルノグラフィは憲法上議論されることになったが,この主張をどのように受け止めるか,すなわち統的な表現の自由論との理論的断絶を如何に克服するかが本研究の問題関心であった。マッキノンはポルノグラフィによる深刻な被害を訴え,その議論には一定の説得力が認められ,アメリカ憲法第一修正解釈に揺らぎをもたらした。本研究課題では,その揺らぎが生んだ,従来の表現の自由論を前提にしつつもフェミニズムの議論に理解を示す第一修正解釈を検討することで,伝統的な表現の自由理論とフェミニズムの対話可能性を探り,対話するための理論的前提条件を提示した。同時にフェミニストの議論も一枚岩ではなく,多様に存在する。そのうち,特にポストモダン・フェミニズムの議論を参照し,フェミニズム側から伝統的な表現の自由理論にアプローチする議論を検討した。このような研究から,課題である伝統的な表現の自由理論がフェミニズムの批判に如何に対応するかについて試論をまとめた。また,フェミニズム法理論は,アメリカの伝統的な表現の自由理論を揺るがすほどのダイナミズム・影響力を内包しているが,同時にフェミニズム法理論内部のジレンマも存在し,その解消という困難な理論的課題も求められていることも結論の一つとした。
KAKENHI-PROJECT-19730016
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19730016
術後疼通に関する電気生理学的研究
脊髄後角第五層型細胞(以下、第五層型細胞)は、末梢受容野からの痛み刺激を上位中枢へ伝えるために重要な働きを果たしていると考えられている。この第五層型細胞活動は、各種吸入麻酔薬で抑制されることを今まで報告してきた。一方、繰り返しの痛み刺激は、この細胞活動を持続的に興奮させ、各種の感覚刺激に対してその細胞活動を過敏にさせるとの報告がある。近年考えられている術後疼通の機序も術中の持続的な痛み刺激によって上述した如くの痛覚過敏が生じているものとされる。基礎的研究として、私は、痛覚過敏を生じさせる侵害刺激としてフォルマリンを用い吸入麻酔薬としてイソフルレン(以下、Isoと略)を用いて第五層型細胞活動の影響について研究した。また、臨床的研究として腹式単純子宮全摘術において、硬膜外麻酔を用いて術中脊髄へ入力するインパルスをブロックして全身麻酔法(GO+Iso)と術後の疼通の程度を比較検討してみた。基礎的研究の方法:L_<1-2>間で脊髄を切断した除脳脊髄猫を用いた。GOF麻酔下で外科的処置を行なう。動脈圧モニターは、頸動脈より、輸液・薬液投与経路は、頸静脈より行なう。猫は、気管切開をおかれパンクロニウムで不動化され、人工呼吸器で換気される。脳固定装置におかれた猫が、脊髄を露出された後、左足先付近に興奮性受容野をもつ第五層型細胞活動は、細胞外微小電極法にて導出される。侵害刺激として用いた5%フォルマリン50ulは、興奮性受容野の中央に皮下注した。フォルマリン投与5分前もしくは5分後よりIso濃度は、それぞれ0.5%、1.5%で60分吸入させ、その後30分間100%酸素下で観察した。これらのデータは、コントロールとして90分間100%酸素下で投与したフォルマリン反応と比較された。結果:1.5%Isoでは、有意にフォルマリン反応を抑制したが、中止後コントロールとほぼ同程度の反応を示した。0.5%Isoでは、有意の抑制はなかった。また、フォルマリン投与5分後と5分前でのoの結果について有意差はなかった。臨床的研究の結果:全身麻酔法単独と比べて硬膜外麻酔法の有用性については観察されなかった。結論:基礎的研究の結果からIsoは、Preemptive analgesiaを生じえない、また、臨床的研究から硬膜外麻酔法は、Preemptive analgesiaに有用ではないことがわかった。脊髄後角第五層型細胞(以下、第五層型細胞)は、末梢受容野からの痛み刺激を上位中枢へ伝えるために重要な働きを果たしていると考えられている。この第五層型細胞活動は、各種吸入麻酔薬で抑制されることを今まで報告してきた。一方、繰り返しの痛み刺激は、この細胞活動を持続的に興奮させ、各種の感覚刺激に対してその細胞活動を過敏にさせるとの報告がある。近年考えられている術後疼通の機序も術中の持続的な痛み刺激によって上述した如くの痛覚過敏が生じているものとされる。基礎的研究として、私は、痛覚過敏を生じさせる侵害刺激としてフォルマリンを用い吸入麻酔薬としてイソフルレン(以下、Isoと略)を用いて第五層型細胞活動の影響について研究した。また、臨床的研究として腹式単純子宮全摘術において、硬膜外麻酔を用いて術中脊髄へ入力するインパルスをブロックして全身麻酔法(GO+Iso)と術後の疼通の程度を比較検討してみた。基礎的研究の方法:L_<1-2>間で脊髄を切断した除脳脊髄猫を用いた。GOF麻酔下で外科的処置を行なう。動脈圧モニターは、頸動脈より、輸液・薬液投与経路は、頸静脈より行なう。猫は、気管切開をおかれパンクロニウムで不動化され、人工呼吸器で換気される。脳固定装置におかれた猫が、脊髄を露出された後、左足先付近に興奮性受容野をもつ第五層型細胞活動は、細胞外微小電極法にて導出される。侵害刺激として用いた5%フォルマリン50ulは、興奮性受容野の中央に皮下注した。フォルマリン投与5分前もしくは5分後よりIso濃度は、それぞれ0.5%、1.5%で60分吸入させ、その後30分間100%酸素下で観察した。これらのデータは、コントロールとして90分間100%酸素下で投与したフォルマリン反応と比較された。結果:1.5%Isoでは、有意にフォルマリン反応を抑制したが、中止後コントロールとほぼ同程度の反応を示した。0.5%Isoでは、有意の抑制はなかった。また、フォルマリン投与5分後と5分前でのoの結果について有意差はなかった。臨床的研究の結果:全身麻酔法単独と比べて硬膜外麻酔法の有用性については観察されなかった。結論:基礎的研究の結果からIsoは、Preemptive analgesiaを生じえない、また、臨床的研究から硬膜外麻酔法は、Preemptive analgesiaに有用ではないことがわかった。
KAKENHI-PROJECT-05671280
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671280
電子・陽子構造による光子構造の研究
ドイツDESY研究所の電子・陽子衝突型加速器HERAにおいて、国際共同実験ZEUS測定器により光子の構造の研究を行った。電子から放出された実光子と陽子とが散乱する光子・陽子反応では、光子はハドロンのように構造を持った粒子として振る舞う。特に高いE_Tを持つハードな過程は、ハドロン散乱と同様、摂動論的量子色力学(pQCD)の描像で記述できると期待され、これをジェット生成や重いクォークの生成の観測により精度よく検証できる。更に、光子がパートンに分解して反応する分解光子反応の散乱断面積から、光子の構造を探ることができる。また、光回折反応と呼ばれる、光子が量子数を保ったままハドロンを生成する過程を用いて、回折反応の性質や、ハドロン散乱の理解のために導入された仮想粒子ポメロンの性質を探ることができる。光子・陽子散乱のジェット生成、荷電粒子生成の断面積は、pQCDの予想とおおむね一致した。このことからハードな光子・陽子散乱はpQCDで記述できると結論でき、更にpQCDに基づいたモデルに多くの制限、特に光子の構造に新たな実験データを加えた。また、光子の反応残骸の横運動量分布から、pQCDの予想どおり光子のクォーク対への点状結合の寄与があることを示唆した。チャームクォークの生成断面積の測定は、光子中にチャームクォークが仮想的に存在するモデルを支持し、更に陽子のグルーオン密度が、軟成分で急速に増加することがわかった。光回折反応では、その特徴であるラピディティ間隙を持つ事象がポメロン交換による予想と合致することを示した。ポメロン中のクォーク分布を測定し、グルーオンがポメロン中に存在することも明らかにした。更にポメロンがパートン対のハードな散乱においても交換されることを観測した。くわえて、光回折反応におけるベクトル中間子生成を通じて、ハードな回折過程はpQCDで記述できることを明らかにした。ドイツDESY研究所の電子・陽子衝突型加速器HERAにおいて、国際共同実験ZEUS測定器により光子の構造の研究を行った。電子から放出された実光子と陽子とが散乱する光子・陽子反応では、光子はハドロンのように構造を持った粒子として振る舞う。特に高いE_Tを持つハードな過程は、ハドロン散乱と同様、摂動論的量子色力学(pQCD)の描像で記述できると期待され、これをジェット生成や重いクォークの生成の観測により精度よく検証できる。更に、光子がパートンに分解して反応する分解光子反応の散乱断面積から、光子の構造を探ることができる。また、光回折反応と呼ばれる、光子が量子数を保ったままハドロンを生成する過程を用いて、回折反応の性質や、ハドロン散乱の理解のために導入された仮想粒子ポメロンの性質を探ることができる。光子・陽子散乱のジェット生成、荷電粒子生成の断面積は、pQCDの予想とおおむね一致した。このことからハードな光子・陽子散乱はpQCDで記述できると結論でき、更にpQCDに基づいたモデルに多くの制限、特に光子の構造に新たな実験データを加えた。また、光子の反応残骸の横運動量分布から、pQCDの予想どおり光子のクォーク対への点状結合の寄与があることを示唆した。チャームクォークの生成断面積の測定は、光子中にチャームクォークが仮想的に存在するモデルを支持し、更に陽子のグルーオン密度が、軟成分で急速に増加することがわかった。光回折反応では、その特徴であるラピディティ間隙を持つ事象がポメロン交換による予想と合致することを示した。ポメロン中のクォーク分布を測定し、グルーオンがポメロン中に存在することも明らかにした。更にポメロンがパートン対のハードな散乱においても交換されることを観測した。くわえて、光回折反応におけるベクトル中間子生成を通じて、ハードな回折過程はpQCDで記述できることを明らかにした。今年度のHERAのデータ取得期間中、5月から11月まで、ZEUS測定器系、データ取得系は正常に作動して、総ルミノシティー約3pb^<-1>の電子・陽子衝突反応のデータを得た。一方、グラフィック型ワークステーションを設置して、解析のソフトウェア基盤を整備した。今年度のデータを再構成する作業と並行して、既に蓄えてあるデータを用いて研究を進め、以下のような成果を得た。結果の一部は既に公表した。同じ手法を今年度得られたデータに応用することにより、さらに詳しい結果が得られる。(1)本研究の基礎データとして、平均エネルギー180GeVの光子・陽子反応の全断面積と、反応のタイプを分けた個々の断面積を測定した。例えば光子回折反応全体の断面積は51μb(マイクロバーン)、非回折的反応の断面積が91μbであった。ρ、φ、J/φ中間子等の個々のベクトル粒子発生反応の断面積も測定した。(2)非回析的反応中でクォーク対に由来するジェット現象の特性を測定した。同様なジェット現象が“ポメロン"-光子反応でも起こることを観測した。(3)非回析反応で重いクォーク対が発生する反応の頻度を左右する、陽子中のグル-オン分布を深非弾性散乱データから評価した。(4)分解光子反応において、分解した光子の破片によると考えられるジェット現象を同定し、特性を詳細に測定、ハードジェットと比較するための手段を開発した。
KAKENHI-PROJECT-06452027
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06452027
電子・陽子構造による光子構造の研究
今年度はHERAが約13pb^<-1>の総ルミノシティーを供給し、汎用測定器ZEUSによって約8pb^<-1>の陽電子・陽子散乱のデータを取得した。その現象再構成作業を進める一方、昨年度得られた3pb^<-1>のデータの解析を行った。その結果、研究目的として挙げたそれぞれのテーマに対して以下のような成果を得た。(1)光子の回折分解の研究:ρ^0、φ、J/Ψの各ベクトル中間子を崩壊粒子の検出によって同定し、散乱電子側から求めたQ^2の大きさにごとに、光子-陽子系のエネルギー(40-140)GeVの範囲で生成断面積を測定した。軽い中間子に対しては光生成反応のエネルギー依存性は少なく、重い中間子の場合とQ^2が有限の領域では、断面積がエネルギーとともに増大することを明らかにした。(2)光子-グル-オン融合反応によるジェット対発生の研究:光子-陽子系エネルギー(130-270)GeVの範囲でハードな2ジェット現象を選び出し、光子のファインマン変数から、直接反応と光子分解反応を選別した。直接反応を用いて陽子中のグル-オン分布、また、光子分解反応から光子の構造関数を測定した。これまで提唱されている模型の計算と比べて断面積が1.5ないし2倍大きいことが分かった。違いの詳細を調べ、2ジェットが共に前方に出ている時に差が大きいこと等が判明し、単に構造関数を変えても再現できないことも分かった。さらに詳しい量子色力学の理論的考察を要することを明らかにした。(3)分解光子反応による光子構造関数の測定:運動学的に分解光子反応を選び出した上で、電子方向に光子の破片とも言えるジェットが出ている反応を初めて識別し、光子ジェットの性質を他のジェットと比較した。個々の粒子の運動量分布はほぼ同じことが確かめられたが、光子ジェット全体の持つ平均の横向き運動量は予想値より大きく(2.1+0.2)GeVであった。これは光子構造に関する新しい情報である。
KAKENHI-PROJECT-06452027
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06452027
CSCL環境を利用した教員養成課程のティーチング・ポートフォリオ
教師は,教科内容,教授方法,学習者に関する知識が統合された複合的な知識をもつことが求められる.研究代表者らは,CSCL環境で社会的相互作用しながらポートフォリオを作成することが,授業に関する複合的な知識を形成させるために大きな力を発揮するのではないかと考え,実践研究を進めてきている.平成16年度は,教育実習を経験した大学4年生が,CSCL環境を通して,教育実習の様子を動画ファイルとして扱うデジタル・ティーチング・ポートフォリオを作成する授業の試行を行った.実践の結果,大学生は教育実習経験を反省し,次の課題を把握するなどの学習効果が認められた.CSCL環境による仲間同士の相互作用が相互作用を促進したと考えられる.また,実習授業のビデオクリップは授業の様子を伝えあうのに有効であったが,反省や課題把握には十分に用いられているとはいえなかった.また情報技術が向上した学生がいる一方,スキル不足から作成に困難を感じる学生もいたことがわかった.そこで平成17年度は,情報スキルの乏しい学生でも入力が容易なシステムとして新たにブログを利用する授業実践を計画した.なおブログ環境はNucleus ver.3.1を利用した.平成16年度授業の受講生であり,かつ,教育実習を経験した大学4年生が,ブログ環境を利用してデジタル・ティーチング・ポートフォリオを作成する授業を行った.4年生の作成したティーチング・ポートフォリオ,コメント,事後調査を,質的・量的に分析した結果,ブログを用いることによって,コンピュータスキルの乏しい受講生でも比較的容易にデジタルティーチング・ポートフォリオを作成でき,その効果は従来の場合と比べて遜色なく時間短縮につながることがわかった.また,ブログのコメント機能によるコミュニケーションも効果的であった.教師は,教科内容,教授方法,学習者に関する知識が統合された複合的な知識をもつことが求められる.研究代表者らは,CSCL環境で社会的相互作用しながらポートフォリオを作成することが,授業に関する複合的な知識を形成させるために大きな力を発揮するのではないかと考え,実践研究を進めてきている.平成16年度は,教育実習前の大学3年生が,CSCL環境を通して,(a)同じ3年生同士,(b)教育実践経験の多い大学院生,(c)教科内容の専門家である大学教員,と相互作用を行うことで,学習指導案を作成・改善する過程をポートフォリオ化する授業を行った.学習過程と成果,事後調査の分析から,3年生の学習指導案等は改善され,学習指導案を分析的に読む力がついたことが確認された.3年生同士と大学院生,教科内容専門の大学教員の発言にはそれぞれ異なる特徴と影響が認められた.このことからCSCL環境下での多様な社会的相互交流は,授業に関する複合的な知識を形成させるために大きな力を発揮することが示唆された.また,教育実習を経験した大学4年生が,CSCL環境を通して,教育実習の様子を動画ファイルとして扱うデジタル・ティーチング・ポートフォリオを作成する授業の試行を行った.実践の結果,大学生は教育実習経験を反省し,次の課題を把握するなどの学習効果が認められた.CSCL環境による仲間同士の相互作用が相互作用を促進したと考えられる.また,実習授業のビデオクリップは授業の様子を伝えあうのに有効であったが,反省や課題把握には十分に用いられているとはいえなかった.また情報技術が向上した学生がいる一方,スキル不足から作成に困難を感じる学生もいたことがわかった.教師は,教科内容,教授方法,学習者に関する知識が統合された複合的な知識をもつことが求められる.研究代表者らは,CSCL環境で社会的相互作用しながらポートフォリオを作成することが,授業に関する複合的な知識を形成させるために大きな力を発揮するのではないかと考え,実践研究を進めてきている.平成16年度は,教育実習を経験した大学4年生が,CSCL環境を通して,教育実習の様子を動画ファイルとして扱うデジタル・ティーチング・ポートフォリオを作成する授業の試行を行った.実践の結果,大学生は教育実習経験を反省し,次の課題を把握するなどの学習効果が認められた.CSCL環境による仲間同士の相互作用が相互作用を促進したと考えられる.また,実習授業のビデオクリップは授業の様子を伝えあうのに有効であったが,反省や課題把握には十分に用いられているとはいえなかった.また情報技術が向上した学生がいる一方,スキル不足から作成に困難を感じる学生もいたことがわかった.そこで平成17年度は,情報スキルの乏しい学生でも入力が容易なシステムとして新たにブログを利用する授業実践を計画した.なおブログ環境はNucleus ver.3.1を利用した.平成16年度授業の受講生であり,かつ,教育実習を経験した大学4年生が,ブログ環境を利用してデジタル・ティーチング・ポートフォリオを作成する授業を行った.4年生の作成したティーチング・ポートフォリオ,コメント,事後調査を,質的・量的に分析した結果,ブログを用いることによって,コンピュータスキルの乏しい受講生でも比較的容易にデジタルティーチング・ポートフォリオを作成でき,その効果は従来の場合と比べて遜色なく時間短縮につながることがわかった.また,ブログのコメント機能によるコミュニケーションも効果的であった.
KAKENHI-PROJECT-16700560
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16700560
歯肉上皮細胞が産生する分泌型白血球蛋白分解酵素阻害物質の生体防御における役割
培養歯肉上皮細胞および歯肉線繊芽細胞を用いて分泌型白血球蛋白分解酵素阻害物質(SLPI)の産生を検討するとともに、歯周病患者歯肉溝滲出液(GCF)中におけるSLPIの動態について検討した。採取した臨床的健康歯肉から歯肉上皮細胞(GEC)、歯肉線繊芽細胞の分離、培養を行った。酸素抗体法により、GECにおいては、SLPIが存在するとを確認した。一定時間無血清培養した細胞に、サイトカインとしてIL-1α、β(0100U/ml)、TNF-α(01,000ng/ml)を、細菌成分としてA.actiomycetemcomitans(A.a)、P.gingivalis(P.g)、P.intermedia(P.i)から調製したextracellular vesicle(ECV)(0100μg/ml)を添加した。4時間培養後、採取した上清中に含まれるSLPI量、α1-AT量をsandwich ELISA法にて測定した。その結果、GECは無刺激の状態でSLPIを産生し、IL-1α、βの刺激のもとでは、刺激濃度が上昇するにつれてSLPIの産生量は減少する傾向が認められた。TNF-αの刺激のもとでは、刺激濃度が上昇するにつれてSLPIの産生量は有意に抑制された。また、α1-ATの産生はわずかであった。さらに、P.gの刺激濃度が上昇するにつれてSLPIの産生量は有意に抑制され、A.a、P.iの刺激下では高濃度においてSLPIの産生量は若干抑制される傾向がみられた。次に、成人性歯周炎患者10名を対象として、32部位に対して、臨床的診査、DNAprobe法による歯肉縁下プラーク中の8種類の歯周病関連細菌の検出・同定、採取したGCFの量を計測した後、GCF中の好中球エラスターゼ(NE)活性、SLPI量、α1-AT量を測定した。その結果、P.g、B.foesythus、T.denticola(T.d)の菌数が多い部位では少ない部位に比べて、NE活性は上昇し、SLPI量は減少する傾向が認められた。さらに、歯周ポケット内に炎症が認められた場合、P.g、T.dの菌数が多い部位ではSLPI量は有意な減少を示した。培養歯肉上皮細胞および歯肉線繊芽細胞を用いて分泌型白血球蛋白分解酵素阻害物質(SLPI)の産生を検討するとともに、歯周病患者歯肉溝滲出液(GCF)中におけるSLPIの動態について検討した。採取した臨床的健康歯肉から歯肉上皮細胞(GEC)、歯肉線繊芽細胞の分離、培養を行った。酸素抗体法により、GECにおいては、SLPIが存在するとを確認した。一定時間無血清培養した細胞に、サイトカインとしてIL-1α、β(0100U/ml)、TNF-α(01,000ng/ml)を、細菌成分としてA.actiomycetemcomitans(A.a)、P.gingivalis(P.g)、P.intermedia(P.i)から調製したextracellular vesicle(ECV)(0100μg/ml)を添加した。4時間培養後、採取した上清中に含まれるSLPI量、α1-AT量をsandwich ELISA法にて測定した。その結果、GECは無刺激の状態でSLPIを産生し、IL-1α、βの刺激のもとでは、刺激濃度が上昇するにつれてSLPIの産生量は減少する傾向が認められた。TNF-αの刺激のもとでは、刺激濃度が上昇するにつれてSLPIの産生量は有意に抑制された。また、α1-ATの産生はわずかであった。さらに、P.gの刺激濃度が上昇するにつれてSLPIの産生量は有意に抑制され、A.a、P.iの刺激下では高濃度においてSLPIの産生量は若干抑制される傾向がみられた。次に、成人性歯周炎患者10名を対象として、32部位に対して、臨床的診査、DNAprobe法による歯肉縁下プラーク中の8種類の歯周病関連細菌の検出・同定、採取したGCFの量を計測した後、GCF中の好中球エラスターゼ(NE)活性、SLPI量、α1-AT量を測定した。その結果、P.g、B.foesythus、T.denticola(T.d)の菌数が多い部位では少ない部位に比べて、NE活性は上昇し、SLPI量は減少する傾向が認められた。さらに、歯周ポケット内に炎症が認められた場合、P.g、T.dの菌数が多い部位ではSLPI量は有意な減少を示した。培養歯肉上皮細胞を用いて分泌型白血球蛋白分解酵素阻害物質(SLPI)の産生を検討するとともに,歯周病患者歯肉溝滲出液(GCF)中におけるSLPIの動態について検討した。まず,採取した臨床的健康歯肉から歯肉上皮細胞および歯肉線維芽細胞の分離・培養を行った。その後,一定時間無血清培養した細胞にIL-1αおよびIL-1β(0100U/ml),TNF-α(01,000ng/ml)を添加し,4hr培養し,採取した上清中に含まれるSLPI量,α1-AT量をsandwich ELISA法にて測定した。その結果,歯肉上皮細胞は無刺激の状態でSLPIを産生し,IL-1α,IL-1βの刺激のもとでは,刺激濃度が上昇するにつれてSLPIの産生量は減少する傾向が認められた。
KAKENHI-PROJECT-08672201
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08672201
歯肉上皮細胞が産生する分泌型白血球蛋白分解酵素阻害物質の生体防御における役割
TNF-αの刺激のもとでは,刺激濃度が上昇するにつれてSLPIの産生量は有意に抑制された。また,α1-ATの産生は無刺激の状態でわずかであり,サイトカインの刺激に対して若干変動する傾向が認められた。歯肉線維芽細胞のSLPI,α1-ATの産生はサイトカインの刺激にかかわらずほとんど認められなかった。次に,成人性歯周炎患者10名(平均年齢50.7歳)を対象として,被検部位32部位に対して,臨床的診査,DNAprobe法による歯肉縁下プラーク中の8種類の歯周病関連細菌の検出・同定,採取したGCFの量を計測した後,GCF中の好中球エラスターゼ(NE)活性とSLPI量を測定した。その結果,P.gingivalis,B.forsythus,T.denticolaの菌数が多い部位では少ない部位に比べて,NE活性は上昇し,SLPI量は減少する傾向が認められた。さらに,歯周ポケット内に炎症が認められた場合,P.gingivalis,T.denticolaの菌数が多い部位ではSLPI量は有意な減少を示した。以上のことから,SLPIは歯肉上皮細胞から分泌され,歯周組織中ではある種のサイトカインや歯周病関連細菌によって影響を受けていることが示唆された。培養歯肉上皮細胞を用いて分泌型白血球蛋白分解酵素阻害物質(SLPI)の産生を検討するとともに、歯周病患者歯肉溝滲出液(GCF)中におけるSLPIの動態について検討した。まず、採取した臨床的健康歯肉から歯肉上皮細胞の分離、培養を行った。酵素抗体法により、培養細胞内や細胞表面にSLPIが存在することを確認した。次に、一定時間無血清培養した細胞にActinobacillus actinomycetemcomitans(A.a)、Porphyromonas gingivalis(P.g)、Prevotella intermedia(P.i)から調製したextracellular vesicle(ECV)(0100μg/ml)を添加した。4hr培養後、採取した上清中に含まれるSLPI量をsandwich ELISA法にて測定した。その結果、歯肉上皮細胞は無刺激の状態でSLPIを産生し、P.gECVの刺激濃度が上昇するにつれてSLPIの産生量は抑制され、A.a、P.iECVの刺激下では高濃度においてSLPIの産生量は若干抑制される傾向がみられたが、あまり影響を受けなかった。次に、成人性歯周炎患者16名(平均年齢50.7歳)を対象として、被検部位32部位に対して、臨床的診査、DNAprobe法による歯肉縁下プラーク中の8種類の歯周病関連細菌の検出・同定、採取したGCFの量を計測した後、GCF中の好中球エラスターゼ(NE)活性、SLPI量、α1-AT量を測定した。その結果、P.g、B.forsythus、T.denticola(T.d)の菌数が多い部位では少ない部位に比べて、NE活性は上昇し、SLPI量は減少する傾向が認められた。さらに、歯周ポケット内に炎症が認められた場合、P.g、T.dの菌数が多い部位ではSLPI量は有意な減少を示した。以上のことから,SLPIは歯肉上皮細胞から分泌され,歯周組織中では歯周病関連細菌によって影響を受けていることが示された。
KAKENHI-PROJECT-08672201
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08672201
バイオマス含有ポリマー系ナノコンポジット類の創製と機能特性の体系化
これまでも検討してきたセルロースナノファイバーの製造法及びそれとポリオレフィンとの複合化法について実験研究を行い体系化した。前者については、(1)主処理としての超高圧対向衝突処理に組み合わせる前処理や後処理、(2)セルロースの化学修飾、(3)セルロース種の選択、(4)セルロース水懸濁液の濃度、が因子として大きく働くことを明らかにした。後者については(1)混練法の工夫と(2)水溶性ポリマーの共存が決定的因子となることを提示した。これまでも検討してきたセルロースナノファイバーの製造法及びそれとポリオレフィンとの複合化法について実験研究を行い体系化した。前者については、(1)主処理としての超高圧対向衝突処理に組み合わせる前処理や後処理、(2)セルロースの化学修飾、(3)セルロース種の選択、(4)セルロース水懸濁液の濃度、が因子として大きく働くことを明らかにした。後者については(1)混練法の工夫と(2)水溶性ポリマーの共存が決定的因子となることを提示した。(1)ポリオレフィンをマトリックス樹脂とするセルロースナノファイバーによるポリマー系ナノコンポジット調製法の開発と物性改良...(1)1年以上前から検討してきたセルロースナノファイバーの製造法の検討を継続し,超高圧対向衝突法と高速攪拌法の組み合わせによる方法とセルロースへの実用的カルボキシル基前処理導入と超高圧対向衝突法の組み合わせによる方法とを見い出した.(2)水性セルロースナノファイバー懸濁液中での軽度グラフト重合物がポリオレフィン中に分散されやすいことを見い出した.(3)予め二塩基酸無水物の半エステル化反応を行っておくことにより,ナノファイバーが疎水化され,その凝集を抑制した熱可塑性樹脂との複合化が可能なことを知った.(4)無処理のままセルロース粉の超高圧対向衝突と高速撹攪拌により得られたナノファイバーは,再凝集性が高いが,それを二軸押出機の混練トルクを利用してポリオレフィン中に分散させる試行実験より,二軸押出機への導入法とセルロースナノファイバースラリー濃度と量の規制が重要な因子となることを見い出した.SEM観察,物性の測定によりナノコンポジット化を追跡した.(2)フェノール液化木材樹脂,ポリオール液化木材樹脂をマトリックス樹脂とするセルロースナノファイバーによるポリマー系ナノコンポジット調製法の開発と物性改良...フェノール液化木材樹脂,ポリオール液化木材樹脂をマトリックス樹脂としたセルロースナノファイバー及び有機化クレイ系ナノコンポジットを各様に調製し,力学物性,動的粘弾性の温度依存性,SEM観察をそれぞれ行い,ポジティブな知見を得つつある.それらのコンポジット化により材料としての強度物性及び熱安定性の増大が認められてきている.(1)ポリオレフィンをマトリックス樹脂とするセルロースナノファイバーによるポリマー系ナノコンポジット調製法の開発と物性改良....(1)セルロースナノファイバーを極性の全く異なるポリオレフィンにナノファイバー状を保ったまま分散させる方法について改めて検討した。その結果、セルロースナノファイバー水懸濁液と溶融ポリオレフィンとの二軸押出機混練による方法で、条件(ベント部位における圧力調節、スクリュー、パドルのデザイン等)をより的確化することによって、分散性を高めたナノコンポジット化が可能であり、実用性も与え得ることを知った。(2)セルロースナノファイバーの混練中の再凝集防止との関連で、原料セルロース種の影響、セルロースの化学修飾の効果とそれに及ぼす化学修飾種の影響を検討した。(2)フェノール液化木材樹脂及びポリオール液化木材をマトリックスとするセルロースナノファイバー及び有機化クレイ強化ナノコンポジット調製法の開発と物性改良...該ナノコンポジットを各様に作製し、各ナノコンポジットの力学物性、動的粘弾性の温度依存性測定、X線回析、FE-SEM観察、TEMトモグラフィー特性化を行った。たとえば、溶融混練時における温度条件をコントロールすることによりクレイの分散性を高めることができ、クレイナノコンポジットで成型物の物性が高められ、一部塊状として残るクレイの分散性を高めることでさらなる物性の向上が期待できるなど知見が得られた。1.ポリオレフィンをマトリックス樹脂とするセルロースナノファイバー(CNF)によるポリマー系ナノコンポジット調製法の開発と物性改良:平成23年度交付申請書の計画に沿って検討し、実用的・効果的なポリオレフィンに対するCNF補強法をまとめた。プラスチックのCNFを用いる強化は、多くの場合、CNF添加量10%以上で行われている。本研究では1%以下など低濃度添加を検討し、その妥当性を調べた。(1)0.05%というごく低濃度CNF水スラリーの超急速凍結-凍結乾燥物FE-SEM像として、CNFの濃密な三次元配置を見出した。(2)CNF添加量を10%にすると、圧縮強度特性の向上は僅かに認められるが、衝撃強度は低減する。CNFの再凝集とマトリックス樹脂との接着性の悪さが原因として考えられた。(3)CNF添加量を多くすると添加ナノコンポジットの耐水性が低下する。(4)0.5%以下のCNF添加系に対し種々反響があるが、その中でLiイオン電池用隔膜(セパレーター)としての活用に関する共同研究の提案があった。JSTのFS探索タイプでの検討の結果、CNF強化によりポリオレフィンの耐熱性が向上し、熱軟化点以上での形体保持性が満足すべきものであったことが評価された。企業により、セパレーター製造法を連続法に変える検討へと進んでいる。(5)セルロース種の選択の重要性もデータ化された。2。
KAKENHI-PROJECT-21550146
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21550146
バイオマス含有ポリマー系ナノコンポジット類の創製と機能特性の体系化
ポリオール液化木材樹脂をマトリックス樹脂とするクレイ、あるいはCNFによるポリマー系ナノコンポジット調製法の開発と物性改良:(1)バイオマス・有機化クレイ混合物へのカプロラクトン、ラクチド開環重合手法によるコンポジット化の検討、(2)CNFの低濃度ブレンド物をポリオールとするポリウレタン成形物、特に発泡体の調製の検討、(3)バイオマスのポリオール液化物へのCNFのブレンド物の粘度低減法の検討それぞれで成果を得た。
KAKENHI-PROJECT-21550146
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類人猿ゲノムとヒトゲノムの比較解析
本研究では、系統的にヒトに近縁である類人猿(チンパンジーボノボ,ゴリラ、オランウータン,およびテナガザル)および類人猿に次いでヒトに近縁な旧世界猿(ニホンザルを含むマカク属4,ヒヒ属3種)について,いくつかの核DNAの塩基配列を決定した。決定したのは,ABO式血液型,アメロジェニン,FPR1,およびα1,3GTの遺伝子である。その結果,旧世界猿ではABO式血液型のみで高い変異性を示しており,特にヒヒでは他の遺伝子の変異性がとても低かった。それに対して,ABO式血液では,A型とB型の違いが大きく,種を越えた多型あるいは並行置換が生じていたと考えられる。類人猿では,オランウータンのABO式血液型遺伝子の配列がテナガザルに近縁であるという結果が得られたが,同じ個体のDNAを用いても,他の核遺伝子ではそのような傾向はみられなかった。この結果から,過去にオランウータンの祖先種とテナガザルの祖先種で交雑が生じたが,その後のもどし交雑によってゲノムの大部分はオラウータンの種分化のパターンにしたがった。しかし,ゲノム内の微小部分では,現在でも交雑の影響が残っている,という仮説が考えられる。興味深いことに,ABO式血液型遺伝子の中でも,イントロン2の領域ではオランウータンの配列はヒト・チンパンジー・ゴリラに系統的に近い通常パターンであり,A型とB型の違いを決定しているエクソン7の領域のみがテナガザルの配列に近かった。これらの結果をもとに,現在論文を準備中である。本研究では、系統的にヒトに近縁である類人猿(チンパンジーボノボ,ゴリラ、オランウータン,およびテナガザル)および類人猿に次いでヒトに近縁な旧世界猿(ニホンザルを含むマカク属4,ヒヒ属3種)について,いくつかの核DNAの塩基配列を決定した。決定したのは,ABO式血液型,アメロジェニン,FPR1,およびα1,3GTの遺伝子である。その結果,旧世界猿ではABO式血液型のみで高い変異性を示しており,特にヒヒでは他の遺伝子の変異性がとても低かった。それに対して,ABO式血液では,A型とB型の違いが大きく,種を越えた多型あるいは並行置換が生じていたと考えられる。類人猿では,オランウータンのABO式血液型遺伝子の配列がテナガザルに近縁であるという結果が得られたが,同じ個体のDNAを用いても,他の核遺伝子ではそのような傾向はみられなかった。この結果から,過去にオランウータンの祖先種とテナガザルの祖先種で交雑が生じたが,その後のもどし交雑によってゲノムの大部分はオラウータンの種分化のパターンにしたがった。しかし,ゲノム内の微小部分では,現在でも交雑の影響が残っている,という仮説が考えられる。興味深いことに,ABO式血液型遺伝子の中でも,イントロン2の領域ではオランウータンの配列はヒト・チンパンジー・ゴリラに系統的に近い通常パターンであり,A型とB型の違いを決定しているエクソン7の領域のみがテナガザルの配列に近かった。これらの結果をもとに,現在論文を準備中である。
KAKENHI-PROJECT-00J60104
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-00J60104
人口減少下の現代日本社会における地域社会システムと高等教育の将来構想の実証的研究
本研究の目的は、人口減少が進む現代日本社会のなかで、地域の高等教育と社会システム(人口動態、経済状況、雇用環境、初等中等教育の状況、福祉システムなど)の相互関係の変容と将来見通しを実証的に検証することによって、地方における高等教育機関の役割を再構築するための理論的・実証的モデルを提示することにある。人口減少の中で私立大学が構造的に成り立たたなくなりつつある4地域(宮城、島根・鳥取、高知、沖縄北部)の事例調査を行い、地域間比較を通して個別地域をこえた共通課題や地域発展の汎用的な方法論を提示することを企図した。平成30年度は、高等教育機関の設置と地域の社会経済状況をめぐる歴史的経緯と現状に関する文献調査を中心としつつ、翌年度にかけて現地調査を実施する。4地域のうち沖縄北部は、公設民営大学が公立化して高等教育のあり方が変化した地域である。これまでの調査結果の概要は以下のようである。(1)調査対象は名護市の名桜大学である。高等教育への進学機会が県南部に偏在するなかで1994年に設置された。現在の学部構成と募集人員は、国際学群280名と人間健康学部175名である。(2)開学の翌年から志願者が減少し、2009年には定員充足率が5割を下回った。2010年に公立化されると県外の志願者が増加して難易度が上昇した。地域からの進学が困難になり、地元枠を設定した。学生の1/2が県内生である。(3)公立化にともない、教養教育、外国語教育、学修支援体制、就職支援などが強化された。(4)大学が拠点となって名護市が活性化している。県内生の7割、県外生の3割が県内に就職し、観光とITなどの分野で卒業生が地域振興に貢献している。現地調査の進行がやや遅れている。現地調査を積極的にすすめる。本研究の目的は、人口減少が進む現代日本社会のなかで、地域の高等教育と社会システム(人口動態、経済状況、雇用環境、初等中等教育の状況、福祉システムなど)の相互関係の変容と将来見通しを実証的に検証することによって、地方における高等教育機関の役割を再構築するための理論的・実証的モデルを提示することにある。人口減少の中で私立大学が構造的に成り立たたなくなりつつある4地域(宮城、島根・鳥取、高知、沖縄北部)の事例調査を行い、地域間比較を通して個別地域をこえた共通課題や地域発展の汎用的な方法論を提示することを企図した。平成30年度は、高等教育機関の設置と地域の社会経済状況をめぐる歴史的経緯と現状に関する文献調査を中心としつつ、翌年度にかけて現地調査を実施する。4地域のうち沖縄北部は、公設民営大学が公立化して高等教育のあり方が変化した地域である。これまでの調査結果の概要は以下のようである。(1)調査対象は名護市の名桜大学である。高等教育への進学機会が県南部に偏在するなかで1994年に設置された。現在の学部構成と募集人員は、国際学群280名と人間健康学部175名である。(2)開学の翌年から志願者が減少し、2009年には定員充足率が5割を下回った。2010年に公立化されると県外の志願者が増加して難易度が上昇した。地域からの進学が困難になり、地元枠を設定した。学生の1/2が県内生である。(3)公立化にともない、教養教育、外国語教育、学修支援体制、就職支援などが強化された。(4)大学が拠点となって名護市が活性化している。県内生の7割、県外生の3割が県内に就職し、観光とITなどの分野で卒業生が地域振興に貢献している。現地調査の進行がやや遅れている。現地調査を積極的にすすめる。現地調査の遅れにともない、そのために確保していた旅費を年度内に執行できなかった。現地調査を早急に実施して旅費を使用する。
KAKENHI-PROJECT-18K02716
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K02716
恐怖記憶の再燃予防に関わる神経回路の解明
外傷後ストレス障害(PTSD)やパニック障害など恐怖記憶と関連のある精神疾患の治療法の一つに曝露療法がある。曝露療法は世界中で広く用いられているが、未だに治療期間を決めるための客観的な指標はない。本研究は治療期間を決めるための客観的な指標の確立に向け、曝露療法の動物実験モデル(恐怖消去トレーニング)を用いて、恐怖記憶の再燃予防を担う神経回路の解明を試みている。研究の最終年度の目標は、扁桃体基底外側核後部(BLAp)の恐怖消去に対する役割を明らかにすると共にBLApへの神経投射元を明らかにすることであった。サンプルサイズが十分ではないが、イボテン酸によってBLApを破壊することで雄マウスの恐怖消去の安定性が低下する傾向が得られた。今後、さらにサンプルサイズを増やし、BLApの恐怖消去に対する役割を明確にする。フルオロゴールドによる神経投射元解析法の導入に成功した。BLApはmedial septumや恐怖消去に重要な脳領域の一つであるInfralimbic cortexからの投射があることが分かった。これまでの結果が群飼いしたマウスを利用した結果であったが、遺伝子工学を用いた神経細胞活動の制御法を利用するうえで個飼いマウスを利用する必要がある。実験条件によっては飼育環境の違いが恐怖記憶へ影響を及ぼすことが知られていることから、我々の実験条件において個飼いによって恐怖消去に影響が生じるかを調べ、影響がないことを確認し、その結果を国際誌に報告した。本研究を通して、恐怖消去の安定性にBLApとMeAが関与する可能性が得られ、また、遺伝子工学を用いた神経細胞活動の制御法を利用する環境を整えることができた。今後の研究として、本研究の成果を引き継ぎ、恐怖消去の安定性に対するBLApとMeAの役割についてさらに追及する。研究の初年度は、恐怖記憶の再燃予防に関わる脳領域候補を絞り込むことを目的に実施した。研究1として、雄マウスを対象に、恐怖記憶の再燃を予防できない消去トレーニング日数(FE2)と予防できる消去トレーニング日数(FE5)を利用して、恐怖消去トレーニング日数の増加に伴う脳内活動の変動を調べた。その結果、恐怖消去トレーニング日数の増加に伴って下辺縁皮質(IL)、背側海馬(dCA3)および視床室傍核(PVT)の活動が高まることが分かった。研究2として、雄マウスで恐怖記憶の再燃を予防できるが雌マウスでは再燃を予防できない恐怖消去トレーニング日数(FE5)を利用して、恐怖消去トレーニング効果の性差に関わる脳領域を調べた。その結果、性差のある脳領域として背側海馬(dCA3)、視床室傍核(PVT)および扁桃体基底外側核前部(BLAa)を見出した。また、FE5の雄特異的に活動した脳領域として扁桃体基底外側核後部(BLAp)を得た。さらに、これらの結果を比較し、恐怖記憶の再燃予防関連脳領域候補としてdCA3、PVTおよびBLApを得た。先行研究は恐怖記憶が再燃する条件下での恐怖消去関連領域について報告している。これに対し、本研究は恐怖記憶の再燃が生じる条件から再燃が生じない条件へと移行した際の恐怖消去関連領域を見出すことに成功した。この成果は、恐怖記憶の再燃予防に関わる脳内活動の変動へと繋がるものであり、客観的な治療評価マーカーを欠いた精神科領域において重要な成果となりうる。研究1として、雄マウスを対象に恐怖記憶の再燃を予防できる消去トレーニング日数(FE5)と予防できない消去トレーニング日数(FE2)を利用して、恐怖消去トレーニング日数の増加に伴う脳内活動の変動を明らかにした。さらに、研究2として、恐怖消去トレーニング中の雌雄マウスの脳内活動の比較から、恐怖消去トレーニング効果の性差に関わる脳領域も明らかにした。そして、恐怖消去トレーニング日数の増加に伴って変動した脳領域と恐怖消去トレーニング効果の性差に関わる脳領域を比較し、恐怖記憶の再燃予防関連脳領域候補を得るのに成功した。これらの研究は研究実施計画に記載した内容と一致する。外傷後ストレス障害(PTSD)やパニック障害など恐怖記憶と関連のある精神疾患の治療法の一つに曝露療法がある。曝露療法は世界中で広く用いられているが、未だに治療期間を決めるための客観的な指標はない。本研究は治療期間を決めるための客観的な指標の確立に向け、曝露療法の動物実験モデル(恐怖消去トレーニング)を用いて、恐怖記憶の再燃予防を担う神経回路の解明を試みている。その中で、本年度の目的は2つあり、1つ目は恐怖記憶の再燃予防に関わる脳領域候補を薬理学的手法によって破壊し、恐怖記憶・恐怖消去・恐怖記憶の再燃に対する影響を明らかにすること、2つ目は恐怖記憶の再燃に影響があった脳領域の神経投射元を明らかにすることであった。まず、イボテン酸による脳領域破壊実験系の導入を行い、これに成功した。続いて、複数ある脳領域候補のうち、扁桃体内側核(MeA)は恐怖記憶には影響を及ぼさないが、恐怖消去を阻害し、また、恐怖記憶の再燃を強めることを示唆する結果を得た。加えて、別の候補領域である扁桃体基底外側核後部(BLAp)を特異的に破壊するための条件検討を終えた。さらに、逆行性トレーサーであるフルオロゴールドによる神経投射元解析法の導入を行った。所属機関の動物舎で約1か月間の改修工事があった。我々の実験プロトコールは1か月かかるため、実質約2か月間実験ができなかったことが研究の進捗を遅らせた理由として挙げられる。
KAKENHI-PROJECT-16K19791
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K19791
恐怖記憶の再燃予防に関わる神経回路の解明
外傷後ストレス障害(PTSD)やパニック障害など恐怖記憶と関連のある精神疾患の治療法の一つに曝露療法がある。曝露療法は世界中で広く用いられているが、未だに治療期間を決めるための客観的な指標はない。本研究は治療期間を決めるための客観的な指標の確立に向け、曝露療法の動物実験モデル(恐怖消去トレーニング)を用いて、恐怖記憶の再燃予防を担う神経回路の解明を試みている。研究の最終年度の目標は、扁桃体基底外側核後部(BLAp)の恐怖消去に対する役割を明らかにすると共にBLApへの神経投射元を明らかにすることであった。サンプルサイズが十分ではないが、イボテン酸によってBLApを破壊することで雄マウスの恐怖消去の安定性が低下する傾向が得られた。今後、さらにサンプルサイズを増やし、BLApの恐怖消去に対する役割を明確にする。フルオロゴールドによる神経投射元解析法の導入に成功した。BLApはmedial septumや恐怖消去に重要な脳領域の一つであるInfralimbic cortexからの投射があることが分かった。これまでの結果が群飼いしたマウスを利用した結果であったが、遺伝子工学を用いた神経細胞活動の制御法を利用するうえで個飼いマウスを利用する必要がある。実験条件によっては飼育環境の違いが恐怖記憶へ影響を及ぼすことが知られていることから、我々の実験条件において個飼いによって恐怖消去に影響が生じるかを調べ、影響がないことを確認し、その結果を国際誌に報告した。本研究を通して、恐怖消去の安定性にBLApとMeAが関与する可能性が得られ、また、遺伝子工学を用いた神経細胞活動の制御法を利用する環境を整えることができた。今後の研究として、本研究の成果を引き継ぎ、恐怖消去の安定性に対するBLApとMeAの役割についてさらに追及する。28年度の研究から得られた恐怖記憶の再燃予防関連脳領域候補を薬理学的手法を用いて破壊し、その領域の恐怖消去に対する役割を明らかにする。さらに、恐怖記憶の再燃予防関連脳領域候補に順行性および逆行性トレーサーを投与し、恐怖記憶の再燃予防関連脳領域候補の神経回路網を調べる。BLApを破壊し、恐怖記憶・恐怖消去・恐怖記憶の再燃に対する影響を明らかにする。これに加え、BLApのへの神経投射元をトレーサーによって明らかにする。一方、MeAは投射元が明らかになっているため、当初計画にあるように遺伝子工学を用いた神経細胞活動の制御法を利用し、恐怖消去トレーニング中に限定してMeAの活動性を抑制し、恐怖消去の阻害および恐怖記憶の再燃の増強を試みる。BLApは神経投射元を明らかにした後でMeAと同様、恐怖消去トレーニング中に限定して活動性を抑制し、恐怖消去の阻害および恐怖記憶の再燃の増強を試みる。為替の影響を受け、年度末に購入した洋書の価格が予定価格と変わったため。所属機関の動物舎で工事があり、実験が出来なかったため本年度の使用額が予算額を上回る結果となった。従って、翌年度に本年度実施できなかった実験分を行う必要があり、そこに次年度使用額を用いる。差額が26円と少額なため、助成金の使用計画に大きな変更はない。
KAKENHI-PROJECT-16K19791
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小規模廃水処理装置による窒素・リンの同時除去
本研究は,小規模装置内に好気域と嫌気域とを設け,両者の間で汚泥を循環させることにより窒素とリンを同時に連続除去するプロセスの確立を目指したものである.本年度は処理装置として二重管型気泡塔および二槽型上向流式活性汚泥法を選び,脱窒・脱リン過程の速度解析および装置の流動特性解析を行うと共に,モデル廃水を用いた操作を行って処理特性を求めた.1.窒素およびリン除去過程の解析(1)窒素除去速度の解析十分に汚泥が分散されている状態下で,硝化および脱窒過程は0次反応と見なせた.一方汚泥がフロックを形成した場合の挙動は,フロック内での物質移動を考慮した解析により説明出来た.また同一汚泥内で硝化および脱窒が同時に進行する場合について,好気域と嫌気域を設定したモデルにより解析を行い総括速度式を導いた.(2)リン除去速度の解析非曝気と曝気を交互に行う回分操作において,非曝気操作におけるリン放出量とCOD取り込み量の間,およびリン放出量との取込量の間にはそれぞれ良好な相関が得られた.曝気あるいは非曝気開始後のリン放出速度と取り込み速度の間には1.2-2.4倍の相関が得られた.2.処理装置における物質移動および流動特性活性汚泥懸濁液を含む二重管型気泡塔における液循環流量,ガスホールドアップおよび酸素移動容量係数は,いずれも空気線速度の0.6乗および見かけ粘度の-0.21乗に比例した.3.二重管型気泡塔および上向流式活性汚泥法による連続処理操作好気域と嫌気域との設定(体積比)を適切に行うことにより,連続的に安定した窒素除去率が得られた.空気流量および循環流量の増加は装置内を好気的にするため,脱窒率が低下して窒素除去率も抑えられた.リンに関しては,上向流式活性汚泥法の方が高い除去率を示した.これは汚泥が好気域および嫌気域に滞在する時間が長いためと推測された.両反応器のモデル化を行い,シミュレーションをを試みた.本研究は,小規模装置内に好気域と嫌気域とを設け,両者の間で汚泥を循環させることにより窒素とリンを同時に連続除去するプロセスの確立を目指したものである.本年度は処理装置として二重管型気泡塔および二槽型上向流式活性汚泥法を選び,脱窒・脱リン過程の速度解析および装置の流動特性解析を行うと共に,モデル廃水を用いた操作を行って処理特性を求めた.1.窒素およびリン除去過程の解析(1)窒素除去速度の解析十分に汚泥が分散されている状態下で,硝化および脱窒過程は0次反応と見なせた.一方汚泥がフロックを形成した場合の挙動は,フロック内での物質移動を考慮した解析により説明出来た.また同一汚泥内で硝化および脱窒が同時に進行する場合について,好気域と嫌気域を設定したモデルにより解析を行い総括速度式を導いた.(2)リン除去速度の解析非曝気と曝気を交互に行う回分操作において,非曝気操作におけるリン放出量とCOD取り込み量の間,およびリン放出量との取込量の間にはそれぞれ良好な相関が得られた.曝気あるいは非曝気開始後のリン放出速度と取り込み速度の間には1.2-2.4倍の相関が得られた.2.処理装置における物質移動および流動特性活性汚泥懸濁液を含む二重管型気泡塔における液循環流量,ガスホールドアップおよび酸素移動容量係数は,いずれも空気線速度の0.6乗および見かけ粘度の-0.21乗に比例した.3.二重管型気泡塔および上向流式活性汚泥法による連続処理操作好気域と嫌気域との設定(体積比)を適切に行うことにより,連続的に安定した窒素除去率が得られた.空気流量および循環流量の増加は装置内を好気的にするため,脱窒率が低下して窒素除去率も抑えられた.リンに関しては,上向流式活性汚泥法の方が高い除去率を示した.これは汚泥が好気域および嫌気域に滞在する時間が長いためと推測された.両反応器のモデル化を行い,シミュレーションをを試みた.
KAKENHI-PROJECT-62602532
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62602532
Possible selfの構造と特性に関する検討
本研究では、(1)小学生から大学生までを対象に、「可能性としての将来の自己」について記述を求めpossible selfの内容を明らかにすること、(2)それに基づいて質問項目を作成し、現実自己、可能自己、理想自己についての評定結果からそれらの相互関係を明らかにすること、(3)自己評価との関連を検討すること、の3点を目的としておこなわれた。(1)については20答法と自由記述法を実施したが、大学生においてさえ記述が困難であった。そこで、大学院生30名に理想自己、現実自己に関する短文を作成するよう求めてそれを整理し、合計7領域50項目からなる質問紙を作成した。そして、大学生(n=110)と成人(n=96)を対象に、理想自己・現実自己・可能自己について5件法で評定させた。まず理想自己における大学生と成人との比較では全体的水準としては違いが見られないが、人間関係やパ-ソナリィティの領域では大学生のほうが得点の高い項目が多く見られる。現実自己・可能自己では、大学生は人間関係で成人より自己認知が肯定的で、パ-ソナリティや学業・仕事領域で否定的である。このことから、大学生は人間関係やパ-ソナリティの領域に関心が集中し、それらに関して理想像を描きそれを内的規準として現実の自己を認知し、また将来の自己の姿を予測していることが示唆される。自己評価とのかかわりについては、理想自己評定を基にそれぞれの項目に対する各個人の重要性を決め、それに従って現実自己と可能自己の得点を算出し、自尊感情との相関を検討したところ、自己にとって重要だとされる項目における現実自己・可能自己の得点と自尊感情との間にはやや強い相関が見出されたのに対して、自己にとって重要でない項目ではほとんど相関が見られなかった。このことから、自己にとって重要な規準を現実の自己がどの程度満たしているか否かという認知およびどの程度達成可能だと認知しているかが自己評価に関係していることが示唆された。本研究では、(1)小学生から大学生までを対象に、「可能性としての将来の自己」について記述を求めpossible selfの内容を明らかにすること、(2)それに基づいて質問項目を作成し、現実自己、可能自己、理想自己についての評定結果からそれらの相互関係を明らかにすること、(3)自己評価との関連を検討すること、の3点を目的としておこなわれた。(1)については20答法と自由記述法を実施したが、大学生においてさえ記述が困難であった。そこで、大学院生30名に理想自己、現実自己に関する短文を作成するよう求めてそれを整理し、合計7領域50項目からなる質問紙を作成した。そして、大学生(n=110)と成人(n=96)を対象に、理想自己・現実自己・可能自己について5件法で評定させた。まず理想自己における大学生と成人との比較では全体的水準としては違いが見られないが、人間関係やパ-ソナリィティの領域では大学生のほうが得点の高い項目が多く見られる。現実自己・可能自己では、大学生は人間関係で成人より自己認知が肯定的で、パ-ソナリティや学業・仕事領域で否定的である。このことから、大学生は人間関係やパ-ソナリティの領域に関心が集中し、それらに関して理想像を描きそれを内的規準として現実の自己を認知し、また将来の自己の姿を予測していることが示唆される。自己評価とのかかわりについては、理想自己評定を基にそれぞれの項目に対する各個人の重要性を決め、それに従って現実自己と可能自己の得点を算出し、自尊感情との相関を検討したところ、自己にとって重要だとされる項目における現実自己・可能自己の得点と自尊感情との間にはやや強い相関が見出されたのに対して、自己にとって重要でない項目ではほとんど相関が見られなかった。このことから、自己にとって重要な規準を現実の自己がどの程度満たしているか否かという認知およびどの程度達成可能だと認知しているかが自己評価に関係していることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-02610039
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02610039
身体性を有するユーザインタフェースに関する研究
本年度は,身体性を有するユーザインタフェースに関する研究における最終年度に当たり,初年度及び次年度の研究成果を用い,ユーザインタフェースが身体性を持つことの意義に関する調査と,人型ロボットの動作生成や運動を指示するための操作方法の検討を行った.情報世界内の人と同様の身体性を持つCGアバタを操作する際に,それと同形状のロボットをユーザインタフェースとして用意する.そして,ロボットとCGアバタの動作を同期させることで,ユーザは直感的にCGアバタを操作することが出来る.この身体性を有するユーザインタフェースでCGアバタを操作するシステムを,日本科学未来館にて4ヶ月間展示を行い,ワークショップも数日間開催して一般の人々に体験してもらうことで,人型ロボットをユーザインタフェースとして使用する意義に関して知見を得ることが出来た.また,人型ロボットの動作や運動を指示する操作手法として,カメラ画像内に映るロボットに対して直感的にペン入力で操作を行うシステムを作成した.これは拡張現実感技術を組み合わせる事により,モニタ上にペンで移動方向を指示することにより,実世界のロボットを直感的に指示した方向へ歩行させることや,ペンでのジェスチャ入力を用いることにより座る,立つといった複数の動作指示も可能とした.ロボットは多くの関節を持つため,複数の関節を用いた動作を生成する際には多くの時間が必要となっていた.これに対し,CGキャラクタのモーション作成では,逆運動学を用いることで手先位置や胴体の位置を指示するのみで複数の関節を同時に,容易に指示することが可能である.このモーション作成手法を実世界での人型ロボットに対して利用することで,多関節を持つロボットの動作作成を容易にすることを可能にした.本年度は,身体性を有する.ユーザインタフェースに関する研究における初年度に当たり,情報空間内に存在させる人型モデルの作成と,人型モデルと形状同期を行わせる手で持って操作することが可能な小型人型ロボットの選定,設計・試作を行った.情報空間内の人型モデルと,実世界の人型ロボットの形状を同期させることで.ユーザは人型ロボットを通じて情報世界への入力や,情報世界からの出力を得ることとなる.この形状同期を行うには,ロボット側では腕や足,頭などの各関節の角度情報の取得と,人型モデルの情報に応じて各関節を動作させる必要がある.これを満たすものとして,ポテンショなどの関節角度を取得するセンサと,関節を動作させるDCモータなどが一体化したアクチュエータで構成される人型ロボットを構成し,使用することとした.情報世界に存在させる人型モデルとしては,人型ロボットと形状同期を行わせるものであるが,システムによっては必ずしも同じ形状,関節数である必要は無いと考えられる.そこで今回は,人型ロボットと同じ形状,関節数を持たせたモデルと,関節数を若干省略したモデルを作成し,その人型モデルと人型ロボットの間で関節の同期を行えることを確認した.また,この人型モデルに関しては,物理法則が働いた情報空間を用意し,その空間内にモデルを生成した.そして,人型モデルの各パーツは質量を持った剛体とし,各関節を拘束して繋げることで,人型モデルの全身動作を違和感の少ないものとした.本年度は,この人型モデルと人型ロボットの形状同期を行うことで,情報空間への入力を可能にするとともに,情報世界で人型モデルが受けた作用を人型ロボットの動作を通じて提示することを可能とした.本年度は,身体性を有するユーザインタフェースに関する研究における2年度に当たり,小型人型ロボットを情報世界や実世界の物体に対する情報の入出力装置として用いた際に人に対して与える効果に関する調査と,物理シミュレーションを利用した人型ロボットの身体動作を拡張するシステムの作製を行った.情報世界内の人型モデルと実世界の人型ロボットの形状を同期させることで,ユーザは人型ロボットを通じて情報世界への入力や出力を得ることが出来る.従来,情報世界内の人型モデルを操作する場合,ボタンやスティックを利用した間接的な入力方法が用いられていた.この従来の方法に対して,人型ロボットを利用した入出力方法ではどのような効果が得られるかに関して,被験者による心理物理実験を行うことで知見を得た.また,実世界の照明や扇風機などの家電製品に対して,人型ロボットの腕を上に動かすと明るさや風量が増すといったような入力や,現在の明るさや風量の情報をロボットが腕を動かすことで出力することが出来る.このような人の身体イメージを利用した入出力方法に関しても,人が人型ロボットを用いてどの程度意図した通りに情報のやり取りが可能であるか評価を行った.そして,人型ロボットの身体動作表現を容易に拡張できるシステムを作製した.これは,物理シミュレーションの適用された情報世界内に人型ロボットと同様の形状,自由度を持つ人型モデルを用意し,その人型モデルと実世界の人型ロボットの間で形状を同期させる.これにより物理シミュレーションにおいて質量や弾性等の物理パラメータを動的に適切に調整することで,情報世界内のCGアバタの動作を変更し,それに伴い実世界の人型ロボットの身体動作も容易に変化させることを可能とした.本年度は,身体性を有するユーザインタフェースに関する研究における最終年度に当たり,初年度及び次年度の研究成果を用い,ユーザインタフェースが身体性を持つことの意義に関する調査と,人型ロボットの動作生成や運動を指示するための操作方法の検討を行った.情報世界内の人と同様の身体性を持つCGアバタを操作する際に,それと同形状のロボットをユーザインタフェースとして用意する.そして,ロボットとCGアバタの動作を同期させることで,ユーザは直感的にCGアバタを操作することが出来る.
KAKENHI-PROJECT-06J07688
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J07688
身体性を有するユーザインタフェースに関する研究
この身体性を有するユーザインタフェースでCGアバタを操作するシステムを,日本科学未来館にて4ヶ月間展示を行い,ワークショップも数日間開催して一般の人々に体験してもらうことで,人型ロボットをユーザインタフェースとして使用する意義に関して知見を得ることが出来た.また,人型ロボットの動作や運動を指示する操作手法として,カメラ画像内に映るロボットに対して直感的にペン入力で操作を行うシステムを作成した.これは拡張現実感技術を組み合わせる事により,モニタ上にペンで移動方向を指示することにより,実世界のロボットを直感的に指示した方向へ歩行させることや,ペンでのジェスチャ入力を用いることにより座る,立つといった複数の動作指示も可能とした.ロボットは多くの関節を持つため,複数の関節を用いた動作を生成する際には多くの時間が必要となっていた.これに対し,CGキャラクタのモーション作成では,逆運動学を用いることで手先位置や胴体の位置を指示するのみで複数の関節を同時に,容易に指示することが可能である.このモーション作成手法を実世界での人型ロボットに対して利用することで,多関節を持つロボットの動作作成を容易にすることを可能にした.
KAKENHI-PROJECT-06J07688
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J07688
コーパスに基づく談話の結束性の研究
本研究では,言語類型論的な観点から,アジアとヨーロッパの11の言語(中国語,タイ語,ラオス語,ビルマ語,インドネシア語,マレーシア語,タガログ語,フランス語,スペイン語,ポルトガル語,ドイツ語)について,会話を中心とした話しことばの結束性および主題化がどのような形で現れるかについての研究を行った。本研究は,1.話しことばの文字コーパスデータの国際的共同研究,2.談話の主題と結束性に関する言語学的な分析研究,3.構築されたデータの外国語教育への応用研究の3つから成り立っている。その成果は国際ワークショップ,学会発表を中心に発表され,また具体的な言語教材の開発に役立てられている。本研究課題の遂行に必要なパソコン,録音機器などのコーパス作成用の備品を購入した。また,コーパス研究のための基礎となる研究として,談話の情報構造や主題と結束性の研究に関する各個別言語の専門書,通言語的類型研究の専門書などの参考図書を購入し,先行研究についての分析を行った。海外調査の際に,現地語による参考図書・音声映像資料の収集を行った。【話し言葉の文字コーパス化】海外の共同研究者の協力のもとに話し言葉(自然談話あるいは会話)を録音し,その文字起こしを行って,コーパスデータ化を進めた(フランス語,ドイツ語,ポルトガル語,ビルマ語)。話し言葉に準ずるものとして,ラオス語の映像作品(映画)に関しても,文字化作業を行った。【書き言葉の文字コーパス化】また,書き言葉についても,タガログ語(およびタガログ語と対照するためのラマホロット語)の小説,物語について文字コーパス作成を行った。【言語学的談話分析】中国語など,既に小説などの書き言葉のコーパス化が行われている言語については,主語の省略や主題の選択についての予備的な分析を行った。タイ語については,主題(topic)とそれに続くコメント内の述語との意味関係についての研究を行った。また,海外調査あるいは海外の共同研究者を招へいすることにより,談話,主題,結束性に関する共同研究を行った。【コーパス化とその利用のための研究】海外での調査により,今後の書き言葉コーパスのユーザーインターフェイスの開発に役立てるため,海外調査によってインターフェイスに関する基礎的な調査を行った(マレーシア語)。【文字コーパス化】海外研究者の協力のもとに話し言葉(自然談話あるいは会話)の録音・その文字起こしを行って,コーパスデータ化を進めた(フランス語,ドイツ語,ポルトガル語,タイ語、ラオス語、ビルマ語)。文体比較データとして、ラオス語の口語体小説に関するコーパス化作業を行った。【言語学的談話分析】中国語など,既に小説などの書き言葉のコーパス化が行われている言語については,主語の省略や主題の選択についての予備的な分析を行った。また,海外調査あるいは海外の共同研究者を招へいすることにより,談話,主題,結束性に関する共同研究を行った。【コーパス化とその利用のための研究】ドイツ語音声データを文字化したファイルに対し、人称代名詞と指示代名詞の使い分けに関するタグを付し、次年度以降、本格的に分析できる状態にした。マレー・インドネシア語のアノテーション付きコーパス整備を目標に、プログラミング講習会を行った。インドネシア語のデータを用いて、全くのゼロの段階から形態情報の付与に必要な辞書ファイルの試作までを行った。【データ分析と研究発表】フランス語、ドイツ語、中国語などについてコーパス分析を行い、その結果を学会で発表した。【研究環境の充実】談話分析用のパソコン,録音機器などの物品について不足分を補充した。またコーパス研究のための基礎となる研究として,各個別言語の専門書,通言語的類型研究の専門書などの参考図書を追加購入し,引き続き先行研究についての分析を行った。海外調査の際に,現地語による参考図書・音声映像資料の収集を行った。・【文字コーパス化】海外研究者の協力のもとに話し言葉(自然談話あるいは会話)の録音・その文字起こしを行って,コーパスデータ化を進めた)。一方,文体比較データとして、ラオス語の現代口語体小説,タイ語のテレビインタビュー番組に関するコーパス化作業,インドネシア語新聞コーパスに関するデータ分析も並行して行った。・【コーパス化とその利用のための研究】各言語の形態レベルの特徴に応じて,代名詞,談話標識などの機能辞を中心としたタグ付けを行った。・【言語学的談話分析】各言語の形態統語論上の特性に応じて,代名詞と指示詞の使い分け,主語の現れと省略,主題の選択,さまざまな談話標識に関わる機能辞,疑問詞や終助詞についての分析を進めた。以下,各言語コーパスの具体的な分析と主な成果発表について述べる。中国語については,叙事,叙情,台詞の3つの叙述タイプ別にみた指示,人称,移動の表現の特徴について,漢日対比語言学研討会において口頭発表した。ラオス語については,機能語「nam」および類似の意味を持つ「kap」の比較分析を行い,その成果をラオスでの学会にて発表した。インドネシア語については,機能辞-lahと-kahの使い分けの分析を進め,インドネシアで開催された国際学会で発表を行った。タガログ語については,談話標識や疑問詞の文法機能について研究を行い、疑問詞の機能については国際ワークショップにて発表を行った。ドイツ語については,語順(特にV2直前の前域の配置方法)と主語の関係について2本の口頭発表を行った。・これまでの分析・研究の成果に関する情報の共有を目的として,英国から2名の専門家を招へいしてワークショップを2回開催した。いずれも具体的な言語についてのコーパス作りとその分析に関する研究の最先端情報を共有するために有益であった。
KAKENHI-PROJECT-25244017
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25244017
コーパスに基づく談話の結束性の研究
本研究課題では,それぞれの言語について話しことばの録音・文字起こしを中心としたコーパス構築と談話分析を進めている。本年度は研究実施の第3年度であり,当初計画に従い、録音、文字起こしを行いつつ,各言語の形態統語論的な特性に応じた分析用タグ付与など、会話コーパスの構築作業を前年度に引き続き行った。これについては研究は順調に進展している。また、話しことばとの比較の観点から、ラオス語の口語体小説のコーパス化も行っている。マレー・インドネシア語やビルマ語では、自動タグ付けの研究も進んでおり、また機能語のアノテーション付与のための研究も進めている。これと並行して,研究課題の共通テーマである談話の結束性の分析についての分析を進めている。今年度は主語,代名詞,指示詞,主題の選択と省略,さまざまな談話標識の帰納的な分析について進展が見られた。コーパス構築からデータ分析と成果発表,成果を反映したコーパスタグ付与の改良という,研究のサイクルが軌道に乗ったということができる。以上のことから、当初研究目的についてはおおむね順調に達成されていると評価する。研究期間の最終年度である今年度は,研究分担者それぞれの担当する多様な言語のコーパス化を継続しつつも,研究の重点を,構築したコーパスデータの分析へと移し,さらにコーパスを用いての国際的な共同研究体制の構築・共同研究の推進への進展を図った。【文字コーパス化】本研究課題の中心テーマである会話資料の録音・録画からのテキストデータベース化を,タイ語,タガログ語,スペイン語,フランス語などについて行って,質的な向上を進めるだけでなく,アジア・ヨーロッパ諸地域の少数言語や方言のデータベース化へと,多様化を図った。【言語学的談話分析】コーパスデータの研究対象の諸言語の特性に応じて,談話の結束性および主題の現れ方について,主題化標識(タイ語),動詞の意味特性(中国語),談話機能辞(ラオ語,インドネシア語,マレーシア語,ビルマ語),構文(ドイツ語,タガログ語)などをテーマとして分析を進めた。【コーパス化の共同利用のための研究】原則として共通の「著作物の公開に関する許諾状」を取得するとともに,タグ付コーパスやテキストデータ公開の作業を進めた。コーパスデータ構築に協力を求めた海外の研究・教育機関との間での共同の分析・研究とデータ公開の論議を深めた。【ワークショップ・研究成果発表】イギリスとトルコから研究者を招聘し,「談話標識に関する国際ワークショップ」および「危機言語に関する国際ワークショップ」を本学で開催した。これらはともに本研究の課題である談話の結束性のありかたの解明に貢献するものである。研究成果の発表を,国内の学会および諸大学で発表するだけでなく,フランス,タイ,インドネシア,中国,オーストラリア,フランスで発表した。
KAKENHI-PROJECT-25244017
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11年〜15年間継続的に追跡した高齢者の体力変化が健康度に及ぼす影響
我々は、高齢者にも安全でかつ高齢者の生活に即した方法を用いて、以前より高齢者に対する体力測定を行い、cross-sectionalなデータによって高齢者の体力の標準的な値を得ると共に、生活の中に軽い運動習慣を取り入れることによって体力が維持できることを示す結果を得ている。平成6年度は、高齢者の体力をlongitudinalに観察し、体力変化が健康度に与える影響について検討することを目的に、11年15年にわたって毎年1回体力測定(6年前から歩行テストを追加)を継続している地域高齢者集団(初年度参加者約300名)を対象とし、恒例の体力測定(6項目のバッテリ-テスト)、歩行テストを行うと同時に、追跡期間中の運動や食生活などの生活様式の変化や健康状態を調査し、欠席者や死亡者については、ADLや死亡状況(死因、就床期間等)の調査を行ない以下の結果を得た。1)longitudinalな体力推移パターンは、全体的にはcross-sectionalなデータとほぼ一致したが、測定項目間での相違も存在する。2)75歳以上の体力低下割合は、それ以下の年齢階級より大きい。3)体力変化の個人差は大きく、積極的に社会活動に参加しようとする意識とともに、軽い運動習慣を持つような健康生活への努力が、加齢に伴う体力の低下を防いでいる。4)本年度欠席者の欠席理由は、他の稽古事や家の用事が約60%、病気や体調28%、外出が不自由4%である。5)回答のあった50名の死亡者の死因はガン45%が最も多く、死亡前には、約70%が普通の活動を行っており、日常生活に手助けを必要とした者はゼロで、ADLがよく保たれている者が多い。7)外出が不自由になっている者や死亡者の一部では、その直前の体力テストの値が低下する場合も見られる。我々は、高齢者にも安全でかつ高齢者の生活に即した方法を用いて、以前より高齢者に対する体力測定を行い、cross-sectionalなデータによって高齢者の体力の標準的な値を得ると共に、生活の中に軽い運動習慣を取り入れることによって体力が維持できることを示す結果を得ている。平成6年度は、高齢者の体力をlongitudinalに観察し、体力変化が健康度に与える影響について検討することを目的に、11年15年にわたって毎年1回体力測定(6年前から歩行テストを追加)を継続している地域高齢者集団(初年度参加者約300名)を対象とし、恒例の体力測定(6項目のバッテリ-テスト)、歩行テストを行うと同時に、追跡期間中の運動や食生活などの生活様式の変化や健康状態を調査し、欠席者や死亡者については、ADLや死亡状況(死因、就床期間等)の調査を行ない以下の結果を得た。1)longitudinalな体力推移パターンは、全体的にはcross-sectionalなデータとほぼ一致したが、測定項目間での相違も存在する。2)75歳以上の体力低下割合は、それ以下の年齢階級より大きい。3)体力変化の個人差は大きく、積極的に社会活動に参加しようとする意識とともに、軽い運動習慣を持つような健康生活への努力が、加齢に伴う体力の低下を防いでいる。4)本年度欠席者の欠席理由は、他の稽古事や家の用事が約60%、病気や体調28%、外出が不自由4%である。5)回答のあった50名の死亡者の死因はガン45%が最も多く、死亡前には、約70%が普通の活動を行っており、日常生活に手助けを必要とした者はゼロで、ADLがよく保たれている者が多い。7)外出が不自由になっている者や死亡者の一部では、その直前の体力テストの値が低下する場合も見られる。
KAKENHI-PROJECT-06680130
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欧米型インクルーシブ教育の超克と東アジア・スタンダード・モデルの構築
本研究では、東アジアは欧米との比較において文化的・社会的・教育的にどのような独自性をもつのか、さらにこうした東アジアの特質に立脚した新たなインクルーシブ教育モデルの提起にはいかなる意義があるのかについて究明することを目的とした。具体的には(1)欧米型インクルーシブ教育の特質とは何かについて、その長所とともに問題点・矛盾点を整理したうえで(2)欧米との比較における東アジアの社会的・教育的基盤(3)東アジアにおけるインクルーシブ教育の認識と実態について検討した。さらに、これらをふまえたうえで(4)国際社会において東アジアモデルを提起することの意義を検討した。本研究では、東アジアは欧米との比較において文化的・社会的・教育的にどのような独自性をもつのか、さらにこうした東アジアの特質に立脚した新たなインクルーシブ教育モデルの提起にはいかなる意義があるのかについて究明することを目的とした。具体的には(1)欧米型インクルーシブ教育の特質とは何かについて、その長所とともに問題点・矛盾点を整理したうえで(2)欧米との比較における東アジアの社会的・教育的基盤(3)東アジアにおけるインクルーシブ教育の認識と実態について検討した。さらに、これらをふまえたうえで(4)国際社会において東アジアモデルを提起することの意義を検討した。今日の国際社会において教育の標準とされるインクルーシブ教育は、その唱導国である欧米の社会的基盤を色濃く反映した理念と制度によって成り立っている。しかし、人々がもつあらゆる差異の尊重を基本理念とするインクルーシブ教育は、画一的なモデルの輸入・模倣ではなく、各国の社会的・文化的基盤に根ざした独自の理念・制度・方法論を構築することによってこそ、初めてその理念を真に実現しうると考える。そこで本研究では、従来、インクルーシブ教育について欧米諸国からの輸入学に終始してきた東アジア地域が、東アジアに独自の教育的・社会的・文化的基盤に根ざしたインクルーシブ教育の理念・制度・方法論を構築するため、東アジアにおいてインクルーシブ教育を成立させる教育的・社会的条件とインクルーシブ教育の構成要素について総合的に究明することを目的とする。初年度に当たる今年度は、日本・韓国の2カ国を主な対象として、両国がこれまで整備してきた障害児や特別な支援を必要とする子どもに対する教育制度の詳細を、その発展経緯・社会的背景とともに比較検討した。さらに、両国が現在直面している教育課題について把握するため、日韓両国の教育関係者を対象として聞き取り調査・意見交換を複数回実施した。また、東アジアの独自性を解明する手段のひとつとして、欧米におけるインクルーシブ教育(今年度はアメリカ合衆国とイギリスを対象とした)の歴史・理念・実態についても分析を行った。こうした研究成果の一部としては、今年度は通常の学会発表、学会誌等への論文投稿に加え、2009年秋に開催された日本特殊教育学会第47回大会では学会企画によるワークショップを主催し、インクルーシブ教育における欧米モデルの制約と東アジアの独自性をテーマとして報告を行った。さらに、韓国の学術雑誌からの依頼により、日本における教育の実態について論文を寄稿した。本研究の目的は、インクルーシブ教育を成立させる教育的・社会的条件とインクルーシブ教育の構成要素について総合的に究明するとともに、東アジアの文化的・社会的基盤に根ざしたインクルーシブ教育の理念・制度・方法論を構築することである。今年度は、前年度に続き資料分析を進めるとともに、日本・韓国を対象として、インクルーシブ教育の実態と教育現場のニーズについて教育関係者を対象に聞き取り調査(予備調査)を実施した。調査の観点は、1.インクルーシブ教育における障害当事者の位置づけの実態と課題2.教育専門家の位置と役割3.学校教育における学力問題・受験競争の実態とインクルーシブ教育への影響4.インクルーシブ教育における地域間格差とした。その結果、とくに障害当事者と専門家の関係性については、日韓両国で大きな差異が存在することが明らかとなった。さらに、そうした差異の背景には、社会における学校の位置づけそのものの違いに加え、両国の政治的・社会的構造の差異や、他国、とりわけ欧米諸国からもたらされる情報やそれによる影響の度合いなどが関わっていることが示唆された。こうした実態把握の一方で、東アジアが培ってきた文化的・社会的基盤と、それが障害児教育にいかなる意味をもったのかを歴史的観点から究明するため、日韓それぞれの草創期の障害児教育を対象として、本格的な検討に着手した。分析の視点としては1.学校教育の担い手2.学校設立の動機3.学校運営における地域社会の貢献とその実態4.障害当事者が果たした役割5.障害のない子どもとの関係性6.障害児学校に対する社会的評価を設定した。本研究は、日本を含む東アジア諸国が、自国の社会的・文化的基盤に根ざしたインクルーシブ教育の理念・制度・方法論を構築するため、インクルーシブ教育を成立させる諸条件とインクルーシブ教育の構成要素について総合的に究明することを目的とする。23年度は、前年度までに入手した資料を用いて、東アジアに共通する基盤と各国に固有の教育課題について、国際横断比較をいっそう進めるとともに、22年度に実施したフィールド研究を踏まえて詳細な聞き取り調査に着手した。この調査は、東アジア各国において、立場の異なる部署や個人が、インクルーシブ教育の理念・制度・実態についていかなる認識を有しているのかを階層的に把握することを意図するもので、23年度はまず、韓国を対象として実施した。インフォーマントは、国および地方の教育行政におけるインクルーシブ教育担当者、インクルーシブ教育を実践する学校の管理職教員であった。
KAKENHI-PROJECT-21330173
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21330173
欧米型インクルーシブ教育の超克と東アジア・スタンダード・モデルの構築
この調査結果は、同国のインクルーシブ教育が、欧米とくにアメリカの影響が濃厚である教育システムの急速な導入と、同じく急速に、しかし決して一様にではなく欧米化が進行している社会的基盤によって、様々な矛盾と混沌が生じている実態を示唆した。さらにこの結果は、欧米モデルのインクルーシブ教育が示す要素の何が東アジアにとって親和的であり、何が非親和的であるのか、いいかえればインクルーシブ教育における欧米的要素とは何かを改めて明示するものでもあった。研究結果については、韓国以外の国を対象として引き続き調査を続行するとともに、欧米との再度の比較検討を通じて、東アジアに導入された欧米的理念・システムは、欧米それ自体といかなる点において共通するのか、あるいは根本において異なるのかについていっそうの分析を行う予定である。最終年度にあたる24年度は、前年度までの成果をふまえたうえで、以下の課題を実施した。第一は、23年度に実施した聞き取り調査の継続である。23年度には、韓国2都市での実施であったが、24年度は日本でも同内容の調査を実施するとともに、韓国でもさらに対象都市を増やすことで、日韓両国の国際比較、ならびに両国内における地域比較を行った。調査内容は、1東アジアのインクルーシブ教育にみる欧米諸国の影響2障害当事者と専門家との関係3地域間格差とその要因4インクルーシブ教育の制度的位置づけと社会システムに関するものであり、インフォーマントは、両国の地方教育行政およびインクルーシブ教育を実践する学校の管理職教員であった。調査結果の一部分については、韓国の研究協力者と合同でワークショップを実施し、概要を報告するとともに、データに基づいて日韓両国の学校教育ならびに社会福祉分野の研究者、学校教員、施設職員等との意見交換を行った。第二の課題は、これまでの研究成果全体を総括したうえで、改めて東アジアのインクルーシブ教育とは何かについて再整理を行うことであった。とりわけ、各国のインクルーシブ教育がいかなる経過をたどって展開されてきたのか、その促進あるいは阻害要因は何であったのかについて、課題1との関係を意識しながら文献の再整理を行った。さらに、研究期間全体の成果に基づき、インクルーシブ教育を専門とする欧州の教育学研究者とディスカッションを行ったが、このことは、東アジアのインクルーシブ教育がもつ特質について、より相対的かつ多面的に把握するうえで極めて有効であった。これまでの3年間の研究状況を総合的にみて、当初の計画以上の成果が得られていると考えている。その最大理由は、これまでに入手できたデータの貴重性である。このことは、資料入手、フィールドワークによる実地のデータの双方に言えることであるが、これにより、研究計画時点のそれを超えるダイナミックな仮説の再構築が可能となった。また研究協力者の点でも、研究計画の時点で想定していなかった複数名の研究者から、研究協力が得られたことで、彼らを通じて研究計画の深化と拡大が可能となった。
KAKENHI-PROJECT-21330173
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21330173
Diffusion kurtosis imagingを用いた2型糖尿病発症予測
102名の患者にDiffusion kurtosis imaging(拡散尖度画像)と言われるMRI拡散強調画像の1種を撮像した。拡散尖度画像から得られる膵実質のK値を非糖尿病群、境界群、糖尿病群の3群で比較した。K値は糖尿病群において、非糖尿病群、境界群と比較し、有意に高い値であり、これまで糖尿病の成因に寄与する膵実質の線維化と相関を示すと報告されていたADC値よりも良い成績であった。これにより拡散尖度画像はより組織の複雑性を反映している可能性があり、糖尿病の進行との関連が示された。これまで膵悪性腫瘍、膵炎患者等を除く、計102例を対象にDiffusion kurtosis imaging(拡散尖度画像)の撮像を終えた。全症例において、拡散尖度画像から得られるK値の測定が可能であり、膵頭部、体部、尾部の3箇所でそれぞれK値を測定し、これらを平均したものを膵実質のK値とした。最大で過去3回分のHbA1c値を平均し、アメリカ糖尿病学会の診断基準に照らし合わせ、被験者を正常群、境界群、糖尿病群の3群に分類した。各群におけるK値とその他、ADC値をはじめとするルーチン撮像された膵MRIの各シーケンスにおける信号値を比較検討した。T1強調画像、ADC値、K値はいずれも糖尿病群において正常群よりも信号値に統計学的に有意な差が証明された。ROC解析の結果より糖尿病群の検出能についてはK値が、他の信号値よりも有意に髙い診断能を有することが証明された。これからこれらのデータをまとめ、報告準備を行っていく予定である。これまで、拡散尖度画像の臨床応用は頭頸部領域、前立腺については報告があるが、上腹部実質臓器における報告例はなく、結果を公表できれば、この領域における拡散尖度画像の臨床応用も発展する可能性がある。また、これまで糖尿病と画像診断を結びつけた報告も見られず、既知の糖尿病患者における膵実質の病理学的変化を画像上の信号変化にて捕らえる可能性があることは臨床的に重要な意義があると思われる。膵悪性腫瘍、膵炎患者等を除く、計102例を対象にDiffusion kurtosis imaging(拡散尖度画像)の撮像を終えた。全症例において、拡散尖度画像から得られるK値の測定が可能であり、膵頭部、体部、尾部の3箇所でそれぞれK値を測定し、これらを平均したものを膵実質のK値とした。最大で過去3回分のHbA1c値を平均し、アメリカ糖尿病学会の診断基準に照らし合わせ、被験者を正常群、糖尿病境界群、糖尿病群の3群に分類した。各群におけるK値とその他、ADC値をはじめとするルーチン撮像された膵MRIの各シーケンスにおける信号値を比較検討した。糖尿病群においては正常群と比較し、ADC値は有意に低値(P=0.009)、K値は有意に高値(P<0.001)を示した。ROC解析の結果よりK値における糖尿病群の検出能は感度90%、特異度88%、AUC0.92であり、ADC値と比較し、有意に高いAUCを示した(P<0.001)。膵悪性腫瘍、膵炎患者を除く、計102例を対象にDiffusion kurtosis imaging(拡散尖度画像)の撮像を行った。全症例において、拡散尖度画像から得られるK値の測定が可能であり、膵頭部、膵体部、膵尾部の3箇所でそれぞれK値を測定し、これらを平均したものを膵実質のK値とした。最大で過去3回分のHbA1c値を平均し、アメリカ糖尿病学会の診断基準に照らし合わせ、被験者を正常群、糖尿病境界群、糖尿病群の3群に分類した。各群におけるK値とその他、ADC値をはじめとするルーチン撮像された膵MRIの各シーケンスにて計測した信号値を比較検討した。糖尿病群においては正常群と比較し、ADC値は有意に低値(P = 0.009)、k値は有意に高値(P < 0.001)を示した。ROC解析の結果より、K値における糖尿病群の検出能は感度90%、特異度88%、AUC値0.92であり、ADC値と比較して有意に高いAUC値を示した(P < 0.001)。糖尿病患者の膵実質にはIAPPと呼ばれるタンパク質の沈着に引き続き、膵実質の線維化が引き起こされる。拡散尖度画像から得られるK値は細胞レベルの微小構造の複雑性を示すと言われており、これまで膵線維化と相関があるとされていたADC値よりも優れた相関を示したことから、K値はより組織の複雑性を反映し、臨床応用も期待される結果となった。102名の患者にDiffusion kurtosis imaging(拡散尖度画像)と言われるMRI拡散強調画像の1種を撮像した。拡散尖度画像から得られる膵実質のK値を非糖尿病群、境界群、糖尿病群の3群で比較した。K値は糖尿病群において、非糖尿病群、境界群と比較し、有意に高い値であり、これまで糖尿病の成因に寄与する膵実質の線維化と相関を示すと報告されていたADC値よりも良い成績であった。これにより拡散尖度画像はより組織の複雑性を反映している可能性があり、糖尿病の進行との関連が示された。データ収集は概ね終了しており、報告準備に取りかかっているため。
KAKENHI-PROJECT-26461820
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26461820
Diffusion kurtosis imagingを用いた2型糖尿病発症予測
膵臓については一定の結果を残すことができたため、乳腺でも同様に拡散尖度画像を撮像し、良性悪性の鑑別等に役立てることができるか検討中である。画像診断今まで得られたデータを解析し、論文作成を行う。また、膵実質の病理学的サンプルが得られれば、islet amyloid polypeptide(IAPP)や線維化等を評価するために各種染色を施し、病理学的所見との相関も検討する。前年度から221,042円の繰越額が生じていたため。研究は順調に進行しているが、50万を超えるような高額物品の購入がなかったためと思われる。研究成果を学会・研究会報告するための旅費に充当する。データ保管用ハードディスクの購入を行っていないため、データ保管用デバイス購入等に充当する。
KAKENHI-PROJECT-26461820
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細胞極性を制御する新規Par3結合蛋白質の作用機構
研究成果の概要(和文):細胞が正常に機能し調節されるためには、細胞の極性(cell polarity)が適切に形成されることが必要である。細胞極性の決定時には、細胞膜の特定の領域に、極性決定のための蛋白質複合体「Par-aPKC複合体」が、形成される。本研究では、私たちが見出した新規Par3結合蛋白質の極性形成における役割を明らかにした。研究成果の概要(和文):細胞が正常に機能し調節されるためには、細胞の極性(cell polarity)が適切に形成されることが必要である。細胞極性の決定時には、細胞膜の特定の領域に、極性決定のための蛋白質複合体「Par-aPKC複合体」が、形成される。本研究では、私たちが見出した新規Par3結合蛋白質の極性形成における役割を明らかにした。細胞が正常に機能し調節されるためには、細胞の極性(cell polarity)が適切に形成されることが必要である。細胞極性が決定される時には、細胞膜の特定の領域に、極性決定のための蛋白質複合体が形成される。本研究の目的は、極性決定に必要な「Par-aPKC複合体」が、哺乳類上皮細胞のタイトジャンクション(TJ)形成部位や、海馬ニューロンの軸索先端の膜直下に、事前に形成されるための分子機構を明らかにすることである。今年度までに、私達は、yeast two-hybrid法を用いたスクリーニングを行い、Par3のPDZに結合する分子としてPar3BMP1(Par3-binding membrane protein 1)を単離した。Par3BMP1は糖鎖を持つtype I膜貫通蛋白質であり、C末端のPDZ結合モチーフを用いてPar3と結合した。内在性Par3BMP1は上皮細胞の細胞間接着部位に集積して局在すること、細胞外領域がホモフィリックに結合することからPar3BMP1が細胞間接着を介して機能することが示唆された。Par3BMP1の過剰発現は、TJ形成(極性形成)を著しく阻害したが、Par3BMP1のC末端(Par3結合領域)を欠失した変異体ではこの阻害効果は見られなかった。このことからPar3BMP1はPar3との結合を介して、Par3の局在を制御することにより上皮細胞の細胞極性形成に重要な役割を果たすことが示唆された。細胞が正常に機能し調節されるためには、細胞の極性(cell polarity)が適切に形成されることが必要である。細胞極性が決定される時には、細胞膜の特定の領域に、極性決定のための蛋白質複合体が形成される。本研究の目的は、極性決定に必要な「Par-aPKC複合体」が、哺乳類上皮細胞のタイトジャンクション(TJ)形成部位や、海馬ニューロンの軸索先端の膜直下に、事前に形成されるための分子機構を明らかにすることである。私達は、yeast two-hybrid法を用いたスクリーニングを行い、Par3のPDZに結合する分子としてPar3BMP1 (Par3-binding membrane protein 1)を単離した。Par3BMP1は糖鎖を持つtype I膜貫通蛋白質であり、C末端のPDZ結合モチーフを用いてPar3と結合した。さらにPar3BMP1はPar3との結合を介してPar6やaPKCとも複合体を形成した。内在性Par3BMP1は上皮細胞の細胞間接着部位に集積して局在すること、細胞外領域がホモフィリックに結合することからPar3BMP1が細胞間接着を介して機能することが予想された。Par3BMP1の過剰発現は、TJ形成(極性形成)を著しく阻害したが、Par3BMP1のC末端(Par3結合領域)を欠失した変異体ではこの阻害効果は全く見られなかった。以上の結果から、Par3BMP1はPar3との結合を介して、「Par-aPKC複合体」の局在を制御し、上皮細胞の細胞極性形成に重要な役割を果たすことが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-20790233
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20790233
一酸化窒素によるナトリウム-カルシウム交換系活性調節に関わる分子機序の解明
当該年度は、当初の研究テーマと関連した研究として、前年度に引き続き、新規のNCX阻害薬の開発を目指したハイスループットスクリーニング系の確立に向けた検討を行った。また、前年度よりスタートさせたテーマである「発育期環境要因における概日リズムの影響」について研究を遂行した。前年度までに、昼間の拘束ストレスが不安様行動の増加、ストレス応答ホルモン(コルチコステロン)分泌の増加、脳内モノアミンレベルの上昇を惹起する一方で、夜間のストレスは不安様行動を減少させ、コルチコステロン分泌や脳内のモノアミンレベルに影響を与えないことを明らかとした。当該年度では、脳内c-fos発現解析により、昼間の拘束ストレスが特定の脳部位の神経活動を上昇させるのに対し、夜間のストレスは影響を与えないことを見出した。本結果より、昼間のストレスはコルチコステロン分泌の増加、脳内モノアミンレベルの上昇、特定脳部位の神経活動の増加を介して不安様行動を増加させる可能性を示した。一方で夜間のストレスは、未知のメカニズムで不安様行動を減少させる可能性が考えられた。また、2週間慢性的に夜間拘束ストレスを負荷したマウスも抗不安様行動を示すが、本作用はストレス解放12時間後には消失することを明らかとした。昼、夜間の拘束ストレスはともに、恐怖条件付け試験における学習記憶能を低下させることを示した。このことから、昼、夜間ストレスの作用の違いは不安様行動選択的である可能性が示された。さらに、GABAA受容体作用薬ペントバルビタール誘発睡眠実験により、昼、夜間拘束ストレスはともにGABA神経機能を低下させることを見出し、昼、夜間ストレスの作用の違いにGABA神経系が関与しないことを見出した。以上の研究成果は、Behavioural Brain Research, 284: 103-111, 2015に掲載された。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。本研究は、一酸化窒素(NO)によるナトリウム-カルシウム交換系(NCX)活性制御機序の解明を目指して、特にNO/cGMPの下流シグナルとして機能するプロテインキナーゼG(PKG)によるリン酸化を介した活性制御に着目して解析を行い、脳NCXの創薬的意義を明らかとすることを目的とした。当該年度では、まず、脳NCXスプライシングバリアント安定発現細胞株の樹立を行った。具体的には、遺伝子工学的手法を用いて構築したC末端部にHisタグおよびV5エピトープタグを付加した脳NCXスプライシングバリアント(His/V5-NCX1.5)の発現プラスミドをHEK293細胞に導入し、抗V5タグ抗体または抗NCX抗体を用いたイムノブロット法により一過的な標的タンパク質の発現を確認した(Ota et al.,in press)。さらに一過的発現細胞対して抗生物質を約2週間負荷することで、安定発現細胞のセレクションを行った後、限界希釈法を用いて細胞をクローン化した。次に、クローン化した細胞株に関して、抗V5抗体を用いたイムノブロット法により標的タンパク質の発現を確認した。また、Ca^<2+>蛍光指示薬fluo・4を用いた解析系により、NCXの機能的発現も認められた。以上の成績より、His/V5-NCX1.5安定発現細胞株の樹立に成功したと考えられた。樹立したHis/V5-NCX1.5安定発現細胞株では、fluo-4を用いた解析系においてNoまたはcGMPアナログ処置は細胞内カルシウム濃度([Ca^<2+>]_i)に影響を与えなかった。さらに、リン酸化タンパク質ゲル染色法によりPKGによる直接的なNCXリン酸化について検討したが、リン酸化は検出されなかった.本研究は、一酸化窒素(NO)によるナトリウム-カルシウム交換系(NCX)活性制御機序の解明を目指して、特にNO/cGMPの下流シグナルとして機能するプロテインキナーゼG(PKG)によるリン酸化を介した活性制御に着目して解析を行い、脳NCXの創薬的意義を明らかとすることを目的とした。前年度、樹立したHis/v5-Ncx1.5安定発現細胞株において、NOまたはcGMPアナログ処置による細胞内カルシウム濃度([Ca2+]i)変化は認められなかった。さらに、PKGによる直接的なNCXリン酸化は観察されなかった。このことは、NOシグナルによるNCX調節が直接的でないことを示している。従って、当初の研究テーマでの研究は困難であることから、当該年度は、新たな研究テーマの立ち上げと、当初の研究テーマと関連した研究、新規のNCX阻害薬の開発を目指したハイスループットスクリーニング系の確立のための予備検討を行った。新たな研究テーマとしては、「発育期環境要因における概日リズムの影響」についても研究を進めている。精神疾患の発症には遺伝要因に加え、ストレス曝露や薬物摂取のような環境要因が重要な役割を担うことが明らかになってきている。私の所属する研究室では、発育期におけるストレスが脳機能障害を引き起こす重要な環境要因となることを示している。一方、ストレス応答を担うホルモンの分泌量には約24時間周期の日内変動が存在することから、ストレスの作用は生体リズムの影響を受ける可能性が考えられる。そこで本研究では発育期環境要因による精神機能変化における生体リズムの影響を追究する目的で、発育期におけるストレスがマウス精神機能に与える作用の昼間と夜間の違いについて検討を行った。現在までに、不安様行動、ストレス応答ホルモン分泌、脳内モノアミンレベルについてストレスの作用が昼間と夜間で異なることを明らかとした。
KAKENHI-PROJECT-12J00523
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J00523
一酸化窒素によるナトリウム-カルシウム交換系活性調節に関わる分子機序の解明
当該年度は、当初の研究テーマと関連した研究として、前年度に引き続き、新規のNCX阻害薬の開発を目指したハイスループットスクリーニング系の確立に向けた検討を行った。また、前年度よりスタートさせたテーマである「発育期環境要因における概日リズムの影響」について研究を遂行した。前年度までに、昼間の拘束ストレスが不安様行動の増加、ストレス応答ホルモン(コルチコステロン)分泌の増加、脳内モノアミンレベルの上昇を惹起する一方で、夜間のストレスは不安様行動を減少させ、コルチコステロン分泌や脳内のモノアミンレベルに影響を与えないことを明らかとした。当該年度では、脳内c-fos発現解析により、昼間の拘束ストレスが特定の脳部位の神経活動を上昇させるのに対し、夜間のストレスは影響を与えないことを見出した。本結果より、昼間のストレスはコルチコステロン分泌の増加、脳内モノアミンレベルの上昇、特定脳部位の神経活動の増加を介して不安様行動を増加させる可能性を示した。一方で夜間のストレスは、未知のメカニズムで不安様行動を減少させる可能性が考えられた。また、2週間慢性的に夜間拘束ストレスを負荷したマウスも抗不安様行動を示すが、本作用はストレス解放12時間後には消失することを明らかとした。昼、夜間の拘束ストレスはともに、恐怖条件付け試験における学習記憶能を低下させることを示した。このことから、昼、夜間ストレスの作用の違いは不安様行動選択的である可能性が示された。さらに、GABAA受容体作用薬ペントバルビタール誘発睡眠実験により、昼、夜間拘束ストレスはともにGABA神経機能を低下させることを見出し、昼、夜間ストレスの作用の違いにGABA神経系が関与しないことを見出した。以上の研究成果は、Behavioural Brain Research, 284: 103-111, 2015に掲載された。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。当該年度に実施した研究によって、脳NCXスプライシングバリアント安定発現細胞株の樹立に成功した。本安定発現細胞は、V5エピトープタグおよびHisタグ付加により、抗タグ抗体を用いて分子解析が容易なこと等の利点を有し、従来のNO-NCXシグナル解析で認められてきた問題点を大きく改善することが期待できるため。前年度、NOシグナルによるNCX調節が直接的でないことを示し、当初の研究テーマでの研究は困難であることが考えられた。そこで当該年度は、新たな研究テーマの立ち上げと、当初の研究テーマと関連した研究、新規のNCX阻害薬の開発を目指したハイスループットスクリーニング系の確立のための予備検討を行ったため。当該年度に実施した研究では、NCX1.5安定発現細胞株においてNOまたはcGMP処置による細胞内カルシウム濃度変化は認められなかった。本問題点の対策として、宿主細胞におけるPKGの機能的発現が低い可能性を考慮し、NCX1.5とPKGの二重発現細胞の作製を計画している。また、PKGによる直接的なリン酸化に関しては、放射性同位体を用いた方法で再度解析を行う。本解析においてNCXリン酸化が認められた場合、リン酸化部位の同定を行う。
KAKENHI-PROJECT-12J00523
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J00523