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四肢前後軸を形成する転写ネットワークの解析
多指症を含む四肢の形成疾患は、ヒトでは1000人に一人といった高頻度で生じ、ヒトの先天性疾患としては最も報告例の多い疾患である。現在までに多指症として221の症候群が報告されているが、原因遺伝子として記載されているのはわずかに15遺伝子のみであり、さらなる研究の進展が望まれている。我々はヒト多指症の原因遺伝子の候補としてIrx3に注目し、マウス胚を用いて解析を行った。Irx3ノックアウトマウスを作製し、その表現型を調べたところ、後肢特異的に多指を生じることが明らかになった。ここで観察された多肢形成の様式には、親指の前側に第一指様の多肢を生じるパターンと第二指様の多肢を生じるパターンの2つが同程度の割合で混在していた。次にこれまでに前後軸形成に関わることが知られている遺伝子についてqRT-PCR法を用いて解析を行ったところ、Irx3ノックアウトマウスにおいては、Alx4の発現量が半分程度に減少しており、またFGF4、Gremlin、dHand、Ptch1、Hoxd13、Hoxd10などの遺伝子について発現量が増加していることを明らかにした。Alx4は軸前多肢変異マウス(Strong's luxoid)の原因遺伝子であり、Alx4ヘテロマウスでは、後肢特異的に軸前多肢(第二指様)を生じることが知られている。In situハイブリダイゼーション法を用いてこれらの遺伝子の発現領域の変化を調べたところ、Shhについては、一部の肢芽において、前側領域に異所的に発現していることを確認した。またFGF4、Gremlinについてもその発現領域が前側まで拡大していることが確認できた。以上の研究結果を総合すると、新規転写因子Irx3は四肢前後軸形成に必須の分子ネットワークの一部を構成しており、またヒトの多指症の原因遺伝子の一つとなっている可能性を明らかにした。我々はこれまでにマウス転写因子1,520の胎仔期3ステージにおける発現データベースEMBRYSを構築し、各組織ごとの網羅的な発現情報を分類化した。その中で、四肢前後(AP)軸形成に関わると思われる転写因子群を新規に同定し、Shh,Gli3などのKOマウスを用いた解析により、Irx3遺伝子がこのAP軸形成に関わる新規の遺伝子ではないかと予想し、そのノックアウトマウスを作製した。その結果、後肢特異的な軸前多指症を有意に生じることを見出し、Irx3が四肢AP軸形成を担う新規の転写因子であり、ヒト多指症の原因遺伝子である可能性を強めた。本申請ではこれらの仮説を検証する研究計画を立案した。当該年においては、Irx3-KO胎仔を細かいステージごとに分けて採取し、四肢AP軸形成を担うShh、Fgf4,5'Hoxdなどの発現が肢芽前側に異所性に発現誘導されていないかを検討した。さらに、Irx3-KO肢芽を用いてDNAマイクロアレイを行ない、その下流標的遺伝子群を同定した。その次に、Irx3/Irx5、及びIrx3/Alx4のダブルノックアウトマウスを作製し、それが多指症に及ぼす影響を解析した。これらのKOマウスをツールとして、これまでEMBRYSデータベースにおいて同定しているAP軸に沿って特徴的に発現している転写因子群の発現を各々のノックアウトマウスにおいて調査し、Gli3,Shh-KOを用いた解析と合わせ、AP軸形成における新規の転写因子群の網羅的なネットワークの同定を試みた。以上の研究結果として、Irx3が四肢AP軸形成に必須の分子ネットワークを構築していることが明らかとなった。多指症を含む四肢の形成疾患は、ヒトでは1000人に一人といった高頻度で生じ、ヒトの先天性疾患としては最も報告例の多い疾患である。現在までに多指症として221の症候群が報告されているが、原因遺伝子として記載されているのはわずかに15遺伝子のみであり、さらなる研究の進展が望まれている。我々はヒト多指症の原因遺伝子の候補としてIrx3に注目し、マウス胚を用いて解析を行った。Irx3ノックアウトマウスを作製し、その表現型を調べたところ、後肢特異的に多指を生じることが明らかになった。ここで観察された多肢形成の様式には、親指の前側に第一指様の多肢を生じるパターンと第二指様の多肢を生じるパターンの2つが同程度の割合で混在していた。次にこれまでに前後軸形成に関わることが知られている遺伝子についてqRT-PCR法を用いて解析を行ったところ、Irx3ノックアウトマウスにおいては、Alx4の発現量が半分程度に減少しており、またFGF4、Gremlin、dHand、Ptch1、Hoxd13、Hoxd10などの遺伝子について発現量が増加していることを明らかにした。Alx4は軸前多肢変異マウス(Strong's luxoid)の原因遺伝子であり、Alx4ヘテロマウスでは、後肢特異的に軸前多肢(第二指様)を生じることが知られている。In situハイブリダイゼーション法を用いてこれらの遺伝子の発現領域の変化を調べたところ、Shhについては、一部の肢芽において、前側領域に異所的に発現していることを確認した。またFGF4、Gremlinについてもその発現領域が前側まで拡大していることが確認できた。以上の研究結果を総合すると、新規転写因子Irx3は四肢前後軸形成に必須の分子ネットワークの一部を構成しており、またヒトの多指症の原因遺伝子の一つとなっている可能性を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-22591696
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22591696
バイオポリエステル生合成系酵素エノイル-CoAヒドラターゼの基質認識機構の解明
(R)-ヒドラターゼは、A. caviaeにおいてバイオポリエステル生合成に必須な酵素である。脂肪酸中間代謝物である2-エノイル-CoAに作用してバイオポリエステルモノマーである(R)-3-ヒドロキシアシル-CoAを作る。本酵素は2量体を形成し、サブユニットの分子量は約14,000である。結晶構造解析の結果、本酵素のサブユニットの主鎖骨格は5本のβストランドから成る1枚のβシートと、2本のαヘリックス、そして2つの短いヘリックスを含むループ領域から成る、いわゆる「ホットドッグ構造」であることが判った。活性部位は2つのサブユニットの間隙にあり、3つの極性残基Asp-31、His-36、Ser-62^*が配置されている。これら3つの残基の変異実験から、Asp-31とHis-36が触媒残基であることが判った。さらにD31A-クロトニル-CoA複合体を解析したところ、クロトニル-CoAがα位のリン酸基部分で折れ畳まれた形で結合することが判った。酵素はクロトニル-CoAのアデノシン3'-リン酸部分に対してSer-82、Lys-84、Arg-103、Lys-131を介した相互作用により特異的に結合する。活性部位近傍においては、Gly-54の主鎖アミド窒素がクロトニル-CoAのチオエステル結合のカルボニル酸素と水素結合しており、オキシアニオンホールを構成する。基質の脂肪鎖が結合する領域は疎水的な環境となっており、その周りは酵素の主鎖やLeu-65などの側鎖によって囲まれている。そこで、Leu-65、Val-130をアラニンやグリシンに変えて酵素の炭素鎖長特異性の変化を調べてみた。すると、L65A、L65G、V130Gにおいては野生型酵素ではほとんど見られなかったC8およびC10の基質に対する活性が増加し、C8、C10成分を含むバイオポリエステルの蓄積が確認された。ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は微生物が作る生体高分子の一つで、熱可塑性のみならず生分解性も有し、環境適合型材料(バイオポリエステル)として開発が期待されている。PHA生産菌Aeromonas caviaeが持つPHA生合成系酵素は物性改良に向けたPHAのエンジニアリングに有用である。本研究の目的は、モノマー供給に働く(R)-ヒドラターゼについて立体構造に基づいてその反応機構・基質認識機構を解明することにより、PHAエンジニアリングへ応用することにある。これまでに本酵素の結晶化・構造解析に成功し、分解能1.7Åの結晶構造を明らかにし、また活性に関与するアミノ酸残基を同定していた。本酵素は活性部位近傍にループ領域が挿入されたホットドッグ構造をしており、洞窟状の基質結合領域を持っている。洞窟の奥に活性残基Asp-31、His-36が配置されている。本年度はSPring-8放射光を用いてさらに高分解能のデータを収集し、分解能1.5Åにおいてモデルの精密化を行った。得られたモデルのFree R-factorは22.3%まで収束した。また、本酵素と基質との複合体の構造を明らかにするために変異体酵素D31Aの設計、発現系の構築、精製、結晶化を行った。変異体酵素について得られた結晶は野生型酵素の結晶とほぼ同じ結晶学的パラメータを持っていた。しかし、放射光を用いたX線回折において得られた反射点の最高分解能は3.0Åであり、活性部位における基質分子の結合モードを解析するにはデータ不足であった。一方、基質分子を含む複合体結晶については、分解能3.2Åまでしか反射が得られなかった。複合体結晶においては結晶学的パラメータは野生型酵素結晶のものと異なっており、基質結合の際に酵素が構造変化を起こしていることを示唆してる。(R)-ヒドラターゼは、A. caviaeにおいてバイオポリエステル生合成に必須な酵素である。脂肪酸中間代謝物である2-エノイル-CoAに作用してバイオポリエステルモノマーである(R)-3-ヒドロキシアシル-CoAを作る。本酵素は2量体を形成し、サブユニットの分子量は約14,000である。結晶構造解析の結果、本酵素のサブユニットの主鎖骨格は5本のβストランドから成る1枚のβシートと、2本のαヘリックス、そして2つの短いヘリックスを含むループ領域から成る、いわゆる「ホットドッグ構造」であることが判った。活性部位は2つのサブユニットの間隙にあり、3つの極性残基Asp-31、His-36、Ser-62^*が配置されている。これら3つの残基の変異実験から、Asp-31とHis-36が触媒残基であることが判った。さらにD31A-クロトニル-CoA複合体を解析したところ、クロトニル-CoAがα位のリン酸基部分で折れ畳まれた形で結合することが判った。酵素はクロトニル-CoAのアデノシン3'-リン酸部分に対してSer-82、Lys-84、Arg-103、Lys-131を介した相互作用により特異的に結合する。活性部位近傍においては、Gly-54の主鎖アミド窒素がクロトニル-CoAのチオエステル結合のカルボニル酸素と水素結合しており、オキシアニオンホールを構成する。基質の脂肪鎖が結合する領域は疎水的な環境となっており、その周りは酵素の主鎖やLeu-65などの側鎖によって囲まれている。
KAKENHI-PROJECT-12780431
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12780431
バイオポリエステル生合成系酵素エノイル-CoAヒドラターゼの基質認識機構の解明
そこで、Leu-65、Val-130をアラニンやグリシンに変えて酵素の炭素鎖長特異性の変化を調べてみた。すると、L65A、L65G、V130Gにおいては野生型酵素ではほとんど見られなかったC8およびC10の基質に対する活性が増加し、C8、C10成分を含むバイオポリエステルの蓄積が確認された。
KAKENHI-PROJECT-12780431
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12780431
脳疾患に伴うコミュニケーション障害に対する定量的評価法の開発に関する研究
脳損傷に伴う語用論的コミュニケーション障害を定量的に評価するための尺度を開発した。観察式の評価法として、「日本語版Pragmatic Rating Scale(PRS)」を開発した。これは対象者のコミュニケーション行動の、プロソディ、顔の表情、話題の維持、結束性、冗長さ、話題の管理などの16項目について、それぞれ適度な水準であるかを5件法で評点するものである。日本語版PRSは十分な信頼性、妥当性、検査精度を備えていることを確認した。さらに検査式の評価法として、動詞の言語流暢性課題と新規比喩の理解課題を開発した。これらは脳損傷に伴うコミュニケーション障害の臨床の質の向上に大きく寄与するであろう。本研究の目的は、認知コミュニケーション障害を簡便かつ定量的に評価する新しい(日本で初めての)方法を開発・確立することである。25年度は、昨年度の研究で開発した観察方式の評価法である「日本語版PRS(Pragmatic Rating Scale)」について、研究の成果をまとめて学会誌に論文投稿した。その結果、いくつかの点において再検討を求められたので、それらについてデータの確認や評価用紙の修正を行い再投稿し、現時点で審査中である。また、これと並行して、検査方式の評価法について検討した。小規模のパイロット実験を繰り返した結果、比喩の理解課題が認知コミュニケーション障害を的確に測定できる可能性が高いことが明らかになった。その中で、その比喩が慣用句的か否かが成績に大きな影響を与えることがわかり、試行錯誤を繰り返しながら、課題文の慣用句性をコントロールした「比喩理解課題」を作成した。それを用いて健常高齢者、認知コミュニケーション障害のない脳損傷者、認知コミュニケーション障害のある脳損傷者(認知症者を含む)のデータを収集し、それがほぼ終了した段階である。さらに、24年度の研究で「言語流暢性課題」が認知コミュニケーション障害の評価に有効であることを発見した。25年度は、この成果を論文にまとめ学会誌に投稿し掲載された(高次脳機能研究33巻4号,pp.421-427)。さらにそれと並行して、脳損傷者のデータを収集し、現在解析しているところである。脳損傷に伴う語用論的コミュニケーション障害を定量的に評価するための尺度を開発した。観察式の評価法として、「日本語版Pragmatic Rating Scale(PRS)」を開発した。これは対象者のコミュニケーション行動の、プロソディ、顔の表情、話題の維持、結束性、冗長さ、話題の管理などの16項目について、それぞれ適度な水準であるかを5件法で評点するものである。日本語版PRSは十分な信頼性、妥当性、検査精度を備えていることを確認した。さらに検査式の評価法として、動詞の言語流暢性課題と新規比喩の理解課題を開発した。これらは脳損傷に伴うコミュニケーション障害の臨床の質の向上に大きく寄与するであろう。本研究は、認知コミュニケーション障害を簡便かつ定量的に評価する新しい(日本で初めての)方法を開発・確立することである。本年度は、まずは欧米においてすでに開発・発表されている認知コミュニケーション障害のテストバッテリーを取り寄せ、その特性や長所・短所について、研究代表者・研究分担者・研究協力者で検討した。そして、日本の文化に適合していて日本でも無理なく使えるであろう観察評価尺度を1つに絞り、まずは原版(The Pragmatic Rating Scale)の著者から使用許諾を得た。次にこれを日本語に翻訳し、さらに日本語・英語のバイリンガルに逆翻訳を依頼し、原版との照合を行った。また、このパイロット版を、本評価法の適用者として想定されている成人の認知機能障害者(高次脳機能障害者)の小集団に使用した。それらによって見つかった不具合に対し、パイロット版に若干の加筆・修正を行い、日本語版試案を完成させた。日本語版試案が完成したので、認知コミュニケーション障害を示す高次脳機能障害者24名の談話のようすを撮影・収録したビデオを作成し、3名の評価者に対して独立して、試案を用いてそのコミュニケーションのようすを評定するように求めた。評定値を統計学的に検定したところ、満足すべき一致係数が得られたので、本試案は十分な信頼性をもつ、臨床において使用可能な尺度として公表することが可能となった。ここまでの実績については、研究協力者の藤本憲正らと論文にまとめ、学会誌に投稿準備中である(平成25年4月に投稿済み)。また、上記の開発の過程で、認知コミュニケーション障害の評価法の1つとして「言語流暢性課題」が用いられることを発見し、第1段階として高齢者におけるデータを収集した。この成果についても、研究協力者の藤本憲正・李ダヒョンらと論文にまとめ、学会誌に投稿準備中である(平成25年5月に投稿済み)。脳血管疾患、脳変性疾患、脳外傷などに起因する認知機能障害者に生じるコミュニケーションの問題は、構音障害や失語症以外にも、まとまりのない脱線した発話、社会的手がかりを読み取ることの困難、暗示的意味の理解困難などの問題として現れることが多い。しかし、このような語用論的なコミュニケーション障害に対する評価の方法は確立していない。本研究の目的は、語用論的コミュニケーション障害を評価するための方法を、日本で初めて開発することである。臨床現場で容易に施行できるためには、それは比較的簡潔で、結果が量的に表現されるものである必要がある。まずは、欧米における語用論的コミュニケーション評価尺度を可能な限り収集し、内容を吟味した。
KAKENHI-PROJECT-24590628
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24590628
脳疾患に伴うコミュニケーション障害に対する定量的評価法の開発に関する研究
そしてMacLennanら(2002)のPragmatic Rating Scale(PRS)を選定し,翻訳と逆翻訳を経て日本語版(試案)を作成した。これは、「プロソディ」「顔の表情」「話題の維持」「結束性」「冗長さ」「話題の管理」など16項目の日常コミュニケーション行動が、それぞれ適度な水準であるかを5件法で評点するものである。評価法の信頼性を検証したところ、原版と同様の方法で算出した評定者間信頼性の値は原版と同等で、weightedκ係数による全項目平均は評定者間0.66、評定者内0.83と十分に高かった。また、妥当性に関しても十分な判別的妥当性と基準関連妥当性を備えていて、検査精度も高かった。本研究において、日本で初めての観察式の語用論的コミュニケーション障害評価尺度を開発した。また本研究では、語用論的コミュニケーション障害の評価のための言語流暢性課題と新規比喩の理解課題の有用性についても検討した。特に、日本で初めて動詞の言語流暢性課題を実施し、遂行機能の低下(語用論的コミュニケーション障害の背景)を検出するのに有用であることを示した。言語聴覚障害学25年度の計画は、1観察方式の認知コミュニケーション障害の評価法を1つ新たに発表すること、2それを認知症者に適用できるか確かめること、3検査方式の認知コミュニケーション障害の評価法を1つ新たに開発することであった。このうち1については、尺度の信頼性と妥当性は確認し、開発した尺度について論文としてまとめあげ学会誌に投稿している。学会誌での審査が長引き、現時点では受理され公表できる段階にない点が、予定より若干進行が遅れている部分である。しかしこれについては、ほぼ受理・掲載の目処がたち、深刻な遅れとはいえない。2については、3の試案とあわせて現在、データを収集している段階である。1の遅れに伴い予定より若干の遅れ(3ヶ月程度)があるが、今後取り戻せる範囲内である。3については、24年度の研究の過程で、「言語流暢性課題」が認知コミュニケーション障害の評価に有効なことがわかり、それについて学会誌に論文が掲載され公表することが出来た。さらに、「比喩理解課題」が認知コミュニケーション障害の評価に有効であろうことが小規模のパイロット実験の段階ではほぼわかり、現在大規模の対象群でデータを収集している段階である。このように、検査方式の尺度についてはすでに1つ開発し、さらに1つのものを開発途中である。3については当初の計画以上に進展しているといえる。以上の状況をあわせると、おおむね順調に進展している状況といえる。上記の通り、本年度はまず、認知コミュニケーション障害の簡便かつ定量的な評価法(観察評価尺度)を1つまとめあげることが出来た。当初の計画では、評価法の信頼性に関しての基礎データを得るところまでを今年度の計画としていたので、予定以上に早く研究が進展していることになる。この理由としては、われわれが選定した原版(英語における尺度)が予想よりも良質のものであり、日本語においても安定した測定が可能なものであったことが上げられる。
KAKENHI-PROJECT-24590628
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24590628
高速半導体光スイッチを用いた光パケットスイッチング用機能デバイスの開発
InAIGaAs/InAIAs高速半導体光スイッチについて、これまでに低電流動作が得られたマッハ・ツェンダ干渉計構造において実用上重要な偏光無依存動作の実現にまず取り組んだ。偏光依存性の原因の解明により、MM導波路はハイメサ構造、屈折率変調領域はミドルメサ構造というハイブリッド構造を採用することとし、また同時に導波路は完全単一導波路化とした結果、偏光無依存で-20dB以下の低クロストーク、約5mAの低スイッチング電流、数nsの高速動作という高性能なデバイスを実現した。これらの成果をIEEE Photonics Technology Letters誌に投稿した。偏光無依存動作の実現に時間を要し、10Gb/sでの誤り率測定及び4×4の多ポート化を実現することが出来なかったが、現在鋭意検討を進めている。また高速光スイッチと光ファイバ遅延線を用いた光バッファについて、まず低損失動作のためのスポットサイズコンバータ(SSC)の検討を行い、InP系光スイッチ上に高屈折材料であるが熱膨張係数の異なるSi膜をスパッタ堆積するためにGeをドープすることによりクラックのない良好な膜が形成出来ることを明らかにし、現在SSGへの適用を検討している。光パケットスイッチングでのインターコネクション用低コスト汎用光スイッチとしてポリマーを用いた熱光学(TO)効果変調マッハ・ツェンダ干渉計型光スイッチを作製し、導波路構造や電極構造などの最適化により、最小の3.5mWという低消費電力動作を実現すると共に、約100μsというTO効果用いたポリマー光スイッチとしては実用的な構造対して高速なスイッチング動作を実現した。また波長選択光スイッチング動作に適用可能なポリマー光フィルタ用回折格子付導波路を、量産性に向いたナノインプリント法で作製し、初期的な特性を得た。本研究の目的は、高速光パケットスイッチングシステム実現のためのキーデバイスである高速光スイッチと実用的な光バッファを主に開発することにあり、今年度は、申請者によりこれまでナノ秒での高速応答が示された半導体部分屈折率変調多モード干渉型光スイッチ(MlPS-P)を見直し、一層の高速応答化、低電流動作化、偏光無依存化、そしてコンパクト化を達成すべく、マッハツェンダ型(MIPS-MZ)に構造をシフトし、特性向上の検討を行った。また当該高速光スイッチを適用した、現実的なファイバ遅延型光バッファ実現のための基本構成並びに課題について検討を行った。さらに、高速光ネットワークに不可欠な光再生デバイスやシリコンフォトニックデバイスの検討も行った。主な実績は以下の通りである。1,キャリア閉じ込めに優れたInAIGaAs/InAIAsを用いたMIPS-MZ光スイッチによリ、3.5mAという低電流での動作が実現した。また数nsでの光スイッチングも実証し、低消費電力、高速光スイッチとして有望であることを示した。他方、若干の偏光依存性が残存したが、その解決方法について知見を得、現在検討中である。他方、多段化のために、コンパクトなデバイス構造について検討を行い、知見を得た。2,光ファイバ遅延線と半導体高速光スイッチを用いた現実的な光バッファを検討し、そのための基本課題として低損失な光ファイバ・導波路間の結合を達成すべく、新たなスポットサイズ変換器について考案した。作製行程について検討を進めている。3.光再生信号処理デバイスとして、周期構造装荷非線形結合導波路型デバイスを提案し、解析により光3R動作の可能性と、特性について評価を行った。現在鋭意素子作製を行っている。4,シリコンフォトニックデバイスとして、波長多重光ネットワークで有効なバンド選択インターリーバスイッチを実現した。InAIGaAs/InAIAs高速半導体光スイッチについて、これまでに低電流動作が得られたマッハ・ツェンダ干渉計構造において実用上重要な偏光無依存動作の実現にまず取り組んだ。偏光依存性の原因の解明により、MM導波路はハイメサ構造、屈折率変調領域はミドルメサ構造というハイブリッド構造を採用することとし、また同時に導波路は完全単一導波路化とした結果、偏光無依存で-20dB以下の低クロストーク、約5mAの低スイッチング電流、数nsの高速動作という高性能なデバイスを実現した。これらの成果をIEEE Photonics Technology Letters誌に投稿した。偏光無依存動作の実現に時間を要し、10Gb/sでの誤り率測定及び4×4の多ポート化を実現することが出来なかったが、現在鋭意検討を進めている。また高速光スイッチと光ファイバ遅延線を用いた光バッファについて、まず低損失動作のためのスポットサイズコンバータ(SSC)の検討を行い、InP系光スイッチ上に高屈折材料であるが熱膨張係数の異なるSi膜をスパッタ堆積するためにGeをドープすることによりクラックのない良好な膜が形成出来ることを明らかにし、現在SSGへの適用を検討している。光パケットスイッチングでのインターコネクション用低コスト汎用光スイッチとしてポリマーを用いた熱光学(TO)効果変調マッハ・ツェンダ干渉計型光スイッチを作製し、導波路構造や電極構造などの最適化により、最小の3.5mWという低消費電力動作を実現すると共に、約100μsというTO効果用いたポリマー光スイッチとしては実用的な構造対して高速なスイッチング動作を実現した。また波長選択光スイッチング動作に適用可能なポリマー光フィルタ用回折格子付導波路を、量産性に向いたナノインプリント法で作製し、初期的な特性を得た。
KAKENHI-PROJECT-19023010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19023010
調和解析における線形作用素から多重線形作用素への拡張
本研究の目的は、調和解析における種々の結果を、線形の設定から多重線形の設定へと拡張し、その過程で様々な考察を行い、両者を比較検討することである。線形から多重線形へと拡張することにより、初めて応用可能となる偏微分方程式論への適用例も知られている等、この拡張は単なる一般化を意味しない。そして近年、調和解析の分野において、このテーマでの研究は盛んに行われている。本年度は、年次計画で述べていた研究内容のうち、「多重線形フーリエマルチプライヤー作用素の有界性」に関して主に研究を行った。フーリエマルチプライヤー作用素とは、偏微分方程式論の研究において重要な役割を果たす作用素である。本年度は、昨年度において未解決な部分があった問題について解決に至った。具体的には、多重線形の作用素が持つ積分核を、線形の手法を受け継ぐことが可能な部分と、そうではない部分に分解し、後者について解決に至った。次年度は、この問題の更なる一般化と精緻化を行うことを目標とする。また、情報収集のため、国内の研究集会に参加させていただき、研究に必要な書籍と備品も購入させていただいた。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。本研究の目的は、調和解析における種々の結果を、線形の設定から多重線形の設定へと拡張し、その過程で様々な考察を行い、両者を比較検討する事である。線形から多重線形へと拡張する事により、初めて応用可能となる偏微分方程式への適用例も知られている等、この拡張は単なる一般化を意味しない。ここに、このテーマの面白さがあると申請者は考えている。そして近年、調和解析の分野において、このテーマでの研究は盛んに行われている。具体的な問題としては、フーリエマルチプライヤー作用素に関していくつかの問題に取り組んだ。その中で、多重線形の作用素が持つ積分核を、“線形の設定を受け継ぐ事が可能な部分"と“それが不可能な部分"に分解し、それぞれに対して考察を行った。後者では、線形の設定とは別の手法が必要となり、より多重線形らしさが要求される事が分かった。また、経費に関しては、情報収集を行う為、国内と海外の研究集会に参加させて頂いた。どれも調和解析の研究者が多数参加する活発な研究集会であった。また、研究に必要な書籍と備品も購入させて頂いた。本研究の目的は、調和解析における種々の結果を、線形の設定から多重線形の設定へと拡張し、その過程で様々な考察を行い、両者を比較検討することである。線形から多重線形へと拡張することにより、初めて応用可能となる偏微分方程式論への適用例も知られている等、この拡張は単なる一般化を意味しない。そして近年、調和解析の分野において、このテーマでの研究は盛んに行われている。本年度は、年次計画で述べていた研究内容のうち、「多重線形フーリエマルチプライヤー作用素の有界性」に関して主に研究を行った。フーリエマルチプライヤー作用素とは、偏微分方程式論の研究において重要な役割を果たす作用素である。本年度は、昨年度において未解決な部分があった問題について解決に至った。具体的には、多重線形の作用素が持つ積分核を、線形の手法を受け継ぐことが可能な部分と、そうではない部分に分解し、後者について解決に至った。次年度は、この問題の更なる一般化と精緻化を行うことを目標とする。また、情報収集のため、国内の研究集会に参加させていただき、研究に必要な書籍と備品も購入させていただいた。具体的な問題について、これまでの手法で解決出来る部分と出来ない部分の見極めを行った。また後者に関しては、これまでに知られている方法では、どこが上手くいかないのかを、一つずつ確認をした。これらの考察を下に、次年度は新しい手法の開発等によって、問題を完全に解決させる。また、2014年度は海外の研究集会において、発表を1件行った。27年度が最終年度であるため、記入しない。具体的な問題に関して、多重線形の作用素が持つ積分核を、“線形の設定を受け継ぐ事が可能な部分"と“それが不可能な部分"に分解し、後者に関しては、線形の設定とは別の手法が必要となるので、新しい手法の開発等によって、問題を完全に解決させる事を目標とする。その後、問題の更なる一般化と精密化を行う。また、情報収集と成果発表の為、国内と海外の研究集会への参加を予定している。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-14J01169
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J01169
環境価値共創による自然環境保全活動の継続性向上効果に関する実証研究
地域の環境保全や防災力を高めるためには,住民主体の活動の活性化が欠かせない.しかし,それを継続させることは容易ではなく,リーダーの資質に頼っているのが現状である.そこで,「地域価値の共創」によって,地域の自然環境保全や防災などの活動の継続性が高まるという仮説をたて,調査研究を行った.その結果,誇りや信頼といった価値が活動意図に強く影響していることが示唆された.つまり,地域に誇りが持たれる,活動する仲間と相互の信頼関係があると,活動は継続されやすいということである.また,誇りと信頼を醸成させるためには,「協同の学び」が有効であることも提案することができた.本研究の目的は,「環境活動の主催者,参加者らによる新たな環境価値の共創が活動の継続性向上を高める」といった代表者らの仮説を実証し,それを社会技術化することである.本研究では,活動の継続性の問題をブレークスルーできる新たな社会技術を作ることとした.具体的には,文献調査,協働型環境活動の事例分析,社会実験を行い,1.共創が生じるために必要な条件を明らかにし,2.共創と活動継続性との関係の一般化と社会技術化を図る.本年度は,下記の4つのことを行い,研究成果を得ることができた.(1)活動の継続要因に関する文献調査:文献レビューを行った結果,郷土資源,教育,継承,楽しみ,興味・関心,情報発信,交流,信頼,情熱,無理しない,人的資源,財政的資源,地元住民の支持,連携,行政支援などのキーワードが得られたが,本研究での仮説である「環境価値」,「共創」といった言葉は見あたらなかった.(2)活動を行っている団体関係者へのヒアリング:文献調査以外に,1地域住民による工夫の余地があるか?,2技術手法の分かりやすさ,3環境改善効果が見える,わかる,4地域課題の解決に貢献できるか?,5多様な人の参加が可能か?などが得られた.(3)ホースセラピーを活かした海辺の学習事例:1時間のホースセラピーと1時間の体験型の海の環境ゲームを行った.乗馬体験ができるということで,約200名もの中学生が集い,そこで環境学習を行ったところ,短時間であったが,海辺での楽しく学習であったことも相まって,大半の中学生の環境意識が変化し,「楽しい,私たちの海」といった新しい価値観が海に付与された.【本研究の目的】「環境活動の主催者,参加者らによる新たな環境価値の共創が活動の継続性向上を高める」といった代表者らの仮説を実証し,それを社会技術化することである.【結果】1.「ふるさと」と呼ばれる環境が存在し,それは多数の人の関与によって創造される,環境価値の共創であると考えた.2.人口変遷,政治,学術,世相,定義が相互に影響しあっており,その時代ごとに「ふるさと」の扱われ方は移り変わっていた.また現代に近づくにつれて社会の「ふるさと」への関心は高まっていることが示唆された.さらに,近代に入り,ふるさとの意味に心情的,文化的な意味が付加され,より抽象化されていることも明らかになった.3.近年はふるさとに愛着,誇りを持たせる時代に入っていると考えられる.そのために,今後「ふるさと」に必要な要素は「愛着」,「誇り」,「帰属意識」であることがわかった.4.「ふるさと」への「愛着」や「誇り」また,「ふるさと」を維持することへの「責任」が強い学生ほど幸福度が高いことがわかった.つまり,ふるさとへの愛着を持つ学生ほど誇りを持っていて,ふるさとを守る意識や維持することへの責任を感じる.5.「ふるさと」の課題は,社会の関心は高まっているものの,依然「ふるさと」から離れたままになっている.今後はより「ふるさと」を具体的に定義し,「ふるさと」と関わる仕組みづくりが必要と考える.【考察】「ふるさと」は共創される価値であることがわかった.また「ふるさと」の意識が維持される限り,その環境とのかかわりは直接的間接的にも継続されると思われる.かかわりの要因は,「愛着」,「誇り」,「帰属意識」であり,それが醸成されると「責任」へとつながることが示唆された.「ふるさと」という広く社会に認識されるものが,環境に共創される価値の一つであることを指摘することができた.また「ふるさと」と認識されると,その環境への間接的,直接的なかかわりが増えるといった成果を挙げることができた.今後は「ふるさと」意識を醸成させるプログラムとその技術化が課題であるが,それには,「愛着」,「誇り」,「帰属意識」を持たせることが重要となることを指摘することもできた.
KAKENHI-PROJECT-26550111
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26550111
環境価値共創による自然環境保全活動の継続性向上効果に関する実証研究
なお,本成果の発表論文はないが,平成28年度中に2編の論文を作成中で,土木学会に投稿する予定である.本研究の目的は,環境活動の参加者による新たな環境価値の共創が活動の継続性に及ぼす影響を明らかにすることである.新しい仮説として「活動の主催者と参加者の間で行われる,新たな環境価値やその形成プロセス(価値共創)が,参加意欲や活動の継続性を高める」ことを提案し,それを実証する.今年度は,地域に醸成される信頼価値に注目し,信頼が地域のために活動する意欲との関係について調査研究を行った.対象とする課題は,地域の防災活動と,環境とは異なるが,住民が主体的に取り組むべき地域課題である点は共通しており,一般性は高い.対象とした地域は,南海トラフ巨大地震で甚大な津波被害が想定されている,徳島市津田地区で,申請者らは,安価でかつ簡単に貼付できる想定津波浸水深表示シール(以下,津波シール)を考案し,地元の津田中学生,自主防災組織と一緒に,住民の目に付き易い住宅や店舗の壁に津波シールを貼付する活動を行った.その結果,貼付承諾率は8割をも越し,津波シールの認知率はハザードマップよりも2倍高く,自宅の防災対策を促す効果もあった.特に,対象とした住民にアンケートを取ると,「防災対策を充実させる人」は「中学生に対する責任」を強く感じていることを統計的に明らかにすることができた.津田中学生の防災活動は,「ぼうさい甲子園」で毎年表彰されるなどのレベルにあり,住民はその活動を高く評価,中学生を信頼し,また自身も信頼されたいと考え,自身の防災対策を進める動機になっていることがわかった.これは地域で継続的に活動する子ども世代がいると,成人や高齢者それを頼りにし,また彼らに信頼されたいと思い,それが自身の行動意図になることを示唆している.今回は防災の活動を対象に検討したが,地域の環境問題でも同様のことが期待でき,環境への関心や危機感の低い人へは,こうした働きかけも有効であると思われる.地域の環境保全や防災力を高めるためには,住民主体の活動の活性化が欠かせない.しかし,それを継続させることは容易ではなく,リーダーの資質に頼っているのが現状である.そこで,「地域価値の共創」によって,地域の自然環境保全や防災などの活動の継続性が高まるという仮説をたて,調査研究を行った.その結果,誇りや信頼といった価値が活動意図に強く影響していることが示唆された.つまり,地域に誇りが持たれる,活動する仲間と相互の信頼関係があると,活動は継続されやすいということである.また,誇りと信頼を醸成させるためには,「協同の学び」が有効であることも提案することができた.予定していた項目については,一定の成果を得ることができ,来年度の課題も整理することができた.1共創が生じるために必要な条件:継続をするために必要な要件とトップダウンで文献調査およびヒアリングを行ったが,「共創」という意識は見られないことがわかった.ただし,環境意識が変容し,それを共有することで共創が起こっていることを見出すことはできた.2共創と活動継続性との関係の一般化:継続性との関係については,この研究成果を受けて,来年度実施する予定である.昨年度の結果より,「ふるさと」という共創される価値を見出し.そのために必要な要素を抽出することができた.今後は,実際に長期間,地域活動が行われているグループにヒアリングを行い,「ふるさと」意識と活動継続とのかかわりについて検討する.また,プログラム化,技術化についても取り組む.環境工学昨年度の調査研究から,適切なプログラムを実施すれば,時間の多寡にかかわらず,新しい価値観が環境に付与され,それが多くの仲間で共有,認識されれば,価値の共創につながると期待された.今年度は,防災の要素も加えたプログラムを実施し,災害も自然の一面であることを教え,自然との共生の意味を理解させる.さらに,共創することによる「幸福度」を測定することを試み,幸福度と活動の継続性についても考察を加える.年度末に使用予定の調査出張が先方の予定で延期となったため.ヒアリング調査のための出張に使用する.
KAKENHI-PROJECT-26550111
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ブロックコポリマーテンプレート法によるスマート量子電極の開発
ブロック共重合体リソグラフィ(BCL)は、トップダウン・ボトムアップ融合型のナノパターニング手法として注目されている。本手法は、ブロック共重合体のミクロ相分離したナノドメインをリソグラフィのテンプレートとして用いることを特徴としている。本研究では、ブロックコポリマー(BCP)テンプレートプロセスによる電界放射、半導体光機能、圧電特性などを有する超高密度ナノワイヤーアレイ(ZnO、ZnO-Au、ZnO-ZnS)薄膜の作製とその構造特異的機能探索を目的とする。また、ナノワイヤーアレイのロッドの直径、長さおよび密度と電流効率の相対関係の評価、ナノセンサーアレイ、光電子デバイスとしての光電特性の評価を目指す。電子線・レーザーを使う加工技術やナノインプリントリソグラフィーは、プロセスが複雑で莫大なコストがかかり、作製効率が低いため、50nm以下のナノ配列体材料の作製は困難である。この点に関して、ブロックコポリマー(BCP)は溶融体、固体、溶液状態においても、組成などの要素パラメータを制御することにより、様々な形態を自己組織的に形成するため、強い注目を集めている。我々は、c軸が基板に垂直に配向した結晶系を有する純度の高いZnOナノ粒子のパターン化配列体を、BCPテンプレートを用いた簡便な合成法で作製した。また、PEOシリンダーと同サイズの純粋な結晶性単一ナノ粒子を、BCP膜中のそれぞれのシリンダーと完全に同じ場所に得られることを明らかにした。さらに、六方に配列したPEOドメインの周期構造(直径と中心間距離)がBCPの構成成分の体積分離を変化させることで制御できることを示した。結晶性のZnOナノロッドのパターン化配列体は、密度制御されたZnOナノワイヤの垂直生長の触媒となり、ナノ発電体、ナノ圧電体、ナノセンサー、太陽電池など幅広い応用が期待される。ブロック共重合体リソグラフィ(BCL)は、トップダウン・ボトムアップ融合型のナノパターニング手法として注目されている。本手法は、ブロック共重合体のミクロ相分離したナノドメインをリソグラフィのテンプレートとして用いることを特徴としている。本研究では、ブロックコポリマーテンプレートプロセスによる圧電特性を有する超高密度ナノワイヤーアレイ(ZnO、ZnO-Au、ZnO-ZnS)薄膜の作製と、Smart Field Emission Electrodeの開発を目的とする。さらに、ナノワイヤーアレイのロッドの直径、長さおよび密度と電流効率の相対関係の評価、ナノセンサーアレイ、光電子デバイスとしての光電特性の評価を目指す。本年度は、垂直配向シリンダー構造を形成する両親媒性液晶ブロック共重合体PEOm-b-PMA(Az)nの合成と自立膜作製の技術を習得し、ZnOナノピラーアレイの作製法を検討した。ブロックコポリマーテンプレート法におけるプロセス適合性の検討課題を抽出した。さらに、垂直配向シリンダーの成長のためのブロック共重合体の構造周期のコントロールするために、分子量分布と共重合組成を制御した両親媒性液晶型ブロック共重合体PEOm-b-PMA(Az)nの相転移と相分離構造をDSC-SAXS同時測定を検討した。PEOm-b-PMA(Az)nはPEOシリンダー構造を選択的に形成すること、液晶形成と親水性シリンダー形成が関連していることが明らかとなった。ブロック共重合体リソグラフィ(BCL)は、トップダウン・ボトムアップ融合型のナノパターニング手法として注目されている。本手法は、ブロック共重合体のミクロ相分離したナノドメインをリソグラフィのテンプレートとして用いることを特徴としている。本研究では、ブロックコポリマー(BCP)テンプレートプロセスによる電界放射、半導体光機能、圧電特性などを有する超高密度ナノワイヤーアレイ(ZnO、ZnO-Au、ZnO-ZnS)薄膜の作製とその構造特異的機能探索を目的とする。また、ナノワイヤーアレイのロッドの直径、長さおよび密度と電流効率の相対関係の評価、ナノセンサーアレイ、光電子デバイスとしての光電特性の評価を目指す。電子線・レーザーを使う加工技術やナノインプリントリソグラフィーは、プロセスが複雑で莫大なコストがかかり、作製効率が低いため、50nm以下のナノ配列体材料の作製は困難である。この点に関して、ブロックコポリマー(BCP)は溶融体、固体、溶液状態においても、組成などの要素パラメータを制御することにより、様々な形態を自己組織的に形成するため、強い注目を集めている。我々は、c軸が基板に垂直に配向した結晶系を有する純度の高いZnOナノ粒子のパターン化配列体を、BCPテンプレートを用いた簡便な合成法で作製した。また、PEOシリンダーと同サイズの純粋な結晶性単一ナノ粒子を、BCP膜中のそれぞれのシリンダーと完全に同じ場所に得られることを明らかにした。さらに、六方に配列したPEOドメインの周期構造(直径と中心間距離)がBCPの構成成分の体積分離を変化させることで制御できることを示した。結晶性のZnOナノロッドのパターン化配列体は、密度制御されたZnOナノワイヤの垂直生長の触媒となり、ナノ発電体、ナノ圧電体、ナノセンサー、太陽電池など幅広い応用が期待される。
KAKENHI-PROJECT-10F09251
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シッフ塩基錯体の高分子化による酸素化触媒能の高度化
1.(1)高分子化可能なビニルベンジルオキシ基を導入したsalen型シッフ塩基配位子を,2,4ーdihydroxysalicylalde hyde,pーCMS,及びエチレンジアミンから合成し,スチレン(ST)とジビニルベンセン(DVB)との共重合体(A),アクリルアミド(AM)とDVBとの共重合体(B),及びAMとMDAAとの共重合体(C)を合成した。(2)単量体レベルでの検討の結果,反応性・選択性ともCo^<3+><Ni^<2+><Mの^<3+>であったので,上記高分子A,B,CにMn^<3+>を導入し,組成とMn含有量を元素分析により決定した。また,反射スペクトルからMn^<3+>錯体を同定した。2.(1)上記高分子Mn錯体を固体触媒とするシクロヘキセンの酸素化を行い,酸素化率と選択率をガスクロ法により求めた。その結果,(2)過酸化水素を酸素源とする水ーアセトニトリル混合溶媒中での反応性(酸素化率)は,C(18%)<B(23%)<A(100%)であり,Bの場合は単量体の酸素化率23%と同程度であるが,Cの場合は大きく上回っており,高分子化によって触媒の長寿命化が計れることが判明した。エポキシドの選択性はC(49%)<A,B(70%)であった。ただし,固体触媒化により反応速度は遅くなった。(3)ヨウドシルベンゼンを酸素源とするANー水中でのCの反応性は100%であり,繰り返し使用も可能で,エポキシ選択性も88%と高く,かつ,反応も速かった。この他,種々の検討結果から,(4)触媒の寿命については,Mn^<3+>の含有率の他に,高分子部の親水性・疎水性に伴う膨潤性及び疎水性基質の濃縮効果が重要な役割を果たすことが見いだされた。(5)選択性に関しては,親水性ポリマ-の方が高いことが判ったが,これは,錯体部への親水性溶媒の溶媒和と関係があることが推定された。(6)本系の高分子錯体触媒の反応速度については,酸素化剤と基質の両者に対し親和性がある場合に速いことが示唆された。1.(1)高分子化可能なビニルベンジルオキシ基を導入したsalen型シッフ塩基配位子を,2,4ーdihydroxysalicylalde hyde,pーCMS,及びエチレンジアミンから合成し,スチレン(ST)とジビニルベンセン(DVB)との共重合体(A),アクリルアミド(AM)とDVBとの共重合体(B),及びAMとMDAAとの共重合体(C)を合成した。(2)単量体レベルでの検討の結果,反応性・選択性ともCo^<3+><Ni^<2+><Mの^<3+>であったので,上記高分子A,B,CにMn^<3+>を導入し,組成とMn含有量を元素分析により決定した。また,反射スペクトルからMn^<3+>錯体を同定した。2.(1)上記高分子Mn錯体を固体触媒とするシクロヘキセンの酸素化を行い,酸素化率と選択率をガスクロ法により求めた。その結果,(2)過酸化水素を酸素源とする水ーアセトニトリル混合溶媒中での反応性(酸素化率)は,C(18%)<B(23%)<A(100%)であり,Bの場合は単量体の酸素化率23%と同程度であるが,Cの場合は大きく上回っており,高分子化によって触媒の長寿命化が計れることが判明した。エポキシドの選択性はC(49%)<A,B(70%)であった。ただし,固体触媒化により反応速度は遅くなった。(3)ヨウドシルベンゼンを酸素源とするANー水中でのCの反応性は100%であり,繰り返し使用も可能で,エポキシ選択性も88%と高く,かつ,反応も速かった。この他,種々の検討結果から,(4)触媒の寿命については,Mn^<3+>の含有率の他に,高分子部の親水性・疎水性に伴う膨潤性及び疎水性基質の濃縮効果が重要な役割を果たすことが見いだされた。(5)選択性に関しては,親水性ポリマ-の方が高いことが判ったが,これは,錯体部への親水性溶媒の溶媒和と関係があることが推定された。(6)本系の高分子錯体触媒の反応速度については,酸素化剤と基質の両者に対し親和性がある場合に速いことが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-03640509
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03640509
視覚の空間情報の脳内再現における前頭眼野領域の役割-MST野活動との比較による解析-
網膜中心窩が発達した霊長類では、眼前の3次元空間をゆっくり動く対象物からの視覚情報を適切に取り込むために、滑動性眼球運動と輻輳運動が使われる。滑動性眼球運動は、視覚対象が前額面を動くときに左右の目を同じ方向に動かし、輻輳運動は奥行き方向に動く視覚対象に対して左右の目を反対方向に動かす。これら2種類の眼球運動は、網膜に投影される視覚情報の異なった成分を使い、脳幹の最終出力の段階で両運動指令が統合されることがこれまで報告されてきた。本研究代表者らは前頭眼野後部領域の滑動性眼球運動ニューロンの応答を詳細に調べた結果、その大多数(67%)は、輻輳運動にも応答した。MT/MST野ニューロンについても、同一課題を用いて、同一サルで調べた結果、滑動性眼球運動と輻輳運動の両者に応答したのは、わずか12%であった。大多数(76%)は滑動性眼球運動のみに応答し、少数(14%)が輻輳運動のみに応答した。従って滑動性眼球運動と輻輳運動信号の統合は、前頭眼野後部領域で行われることが示唆される。そこで前頭眼野後部領域における統合原理を調べたところ、滑動性眼球運動と輻輳運動の両者が要求される課題中の応答は、個々の眼球運動課題の応答のほぼ線形加算によって説明できた。さらに、これらニューロンについて、サルが静止視標を固視しているとき、第2の視標を前額面と奥行き方向に動かして視標運動に対する視覚応答を調べた結果、過半数(52%)は、前額面での視標運動に対しても奥行き方向の視標運動に対しても応答し、その最適応答方向は、滑動性眼球運動あるいは輻輳運動の最適方向と一致した。従って、これらニューロンは視覚情報を、前額面のみならず奥行き方向でも担い、その方向の眼球運動信号の形成に関わることが示唆される。網膜中心窩が発達した霊長類では、眼前の3次元空間をゆっくり動く対象物からの視覚情報を適切に取り込むために、滑動性眼球運動と輻輳運動が使われる。滑動性眼球運動は、視覚対象が前額面を動くときに左右の目を同じ方向に動かし、輻輳運動は奥行き方向に動く視覚対象に対して左右の目を反対方向に動かす。これら2種類の眼球運動は、網膜に投影される視覚情報の異なった成分を使い、脳幹の最終出力の段階で両運動指令が統合されることがこれまで報告されてきた。本研究代表者らは前頭眼野後部領域の滑動性眼球運動ニューロンの応答を詳細に調べた結果、その大多数(67%)は、輻輳運動にも応答した。MT/MST野ニューロンについても、同一課題を用いて、同一サルで調べた結果、滑動性眼球運動と輻輳運動の両者に応答したのは、わずか12%であった。大多数(76%)は滑動性眼球運動のみに応答し、少数(14%)が輻輳運動のみに応答した。従って滑動性眼球運動と輻輳運動信号の統合は、前頭眼野後部領域で行われることが示唆される。そこで前頭眼野後部領域における統合原理を調べたところ、滑動性眼球運動と輻輳運動の両者が要求される課題中の応答は、個々の眼球運動課題の応答のほぼ線形加算によって説明できた。さらに、これらニューロンについて、サルが静止視標を固視しているとき、第2の視標を前額面と奥行き方向に動かして視標運動に対する視覚応答を調べた結果、過半数(52%)は、前額面での視標運動に対しても奥行き方向の視標運動に対しても応答し、その最適応答方向は、滑動性眼球運動あるいは輻輳運動の最適方向と一致した。従って、これらニューロンは視覚情報を、前額面のみならず奥行き方向でも担い、その方向の眼球運動信号の形成に関わることが示唆される。前頭眼野が滑動性眼球運動とともに輻輳開散運動にも関与するかどうかを調べるため、ニホンサル2頭を用い、眼前に垂直スクリーンと水平スクリーンを設置し、これらスクリーン上でレーザースポット(視標)を左右上下および奥行き方向に動かし、滑動性眼球運動と輻輳開散眼球運動を訓練した。そのうち一頭のサルで、これまで121個のニューロンを前頭眼野領域から記録した。その内訳は、121個中32個(26%)は滑動性眼球運動のみに応答し、輻輳開散運動には応答しなかった。18個(15%)は輻輳開散運動のみに応答し、滑動性眼球運動には応答しなかった。しかし、大多数の81個(67%)は、両眼球運動に応答し、輻輳運動応答ニューロンと開散運動応答ニューロンの比率はほぼ等しかった。また、奥行き方向の視標呈示を左右どちらか一方に一致させ、他眼のみの運動を行わせると、その大多数は、どちらの眼球の運動に対しても、同様の輻輳あるいは開散応答を示した。さらにこれらニューロンに前庭回転刺激とスポット刺激を垂直スクリーン上に呈示し、眼窩内眼球運動と視線運動を乖離させると、これらは視線運動に対して応答した。以上の結果は、前頭眼野の視線応答ニューロンは、奥行き方向の視標刺激に対しても、視線運動に応答することを示す。
KAKENHI-PROJECT-12480244
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12480244
視覚の空間情報の脳内再現における前頭眼野領域の役割-MST野活動との比較による解析-
最近、GamlinとYoon(Nature 2000)は、前頭眼野では輻輳運動応答ニューロンはサッカード領域よりもさらに吻側部に存在し、滑動性眼球運動ニューロンとは異なるシステムであることを示唆したが、本研究は、前頭眼野ではこの2つの眼球運動サブシステムは独立するというよりはむしろ、共通の神経機構を介することが明らかになった。現在、これらニューロンの滑動性眼球運動と輻輳開散運動に対する応答特性を定量的に比較解析しているところである。視覚情報は、網膜から受動的に取り込まれるだけでなく、種々の眼球運動システムが感覚入力に依存して使い分けられることにより能動的に取り込まれる。視覚の空間情報の脳内再現における前頭眼野領域の役割を調べることを目的として、昨年度、前頭眼野後部領域の滑動性眼球運動ニューロンの大多数が輻輳運動にも応答することを明らかにした。本年度は、3次元空間で動く仮想視標をコンピューターモニター画面上に作成し、LCDシャッター付き眼鏡を通して3次元提示することにより、これらニューロンの担う信号を詳しく調べた。その結果、これらニューロンは両眼視差に応答したが、視標を奥行き方向に滑らかに動かしその速度を上げると、ニューロン応答も増加したので視標速度にも応答することが示唆される。さらにその視標を追跡させると、大多数のニューロンの発射頻度は輻輳速度に比例した。次に、滑動性眼球運動と輻輳運動の両者が干渉する課題条件下でのニューロン応答を調べるため、水平方向の滑動性眼球運動の最適方向を持つニューロンについて、矢状面右眼或いは左眼上での非対象性輻輳運動時の応答を解析した。両眼球運動に対する応答が増加する方向ではニューロン応答は、さらに増強し、反対方向では減少してニューロンによっては殆ど応答しなかった。これらの応答は、正中矢状方向での輻輳運動と滑動性眼球運動応答の線形加算により、ほぼ説明出来た。また前庭刺激を加えることにより、大多数のニューロンは前額面での視線速度に応答し、奥行き方向の直線加速度に応答するニューロンも記録された。以上の結果は、前頭眼野後部領域ですでに滑動性眼球運動と輻輳運動の統合が行われ、それは両応答成分の線形加算によっており、それにより3次元空間のあらゆる方向に動く視標の追跡のための視線運動信号がこの領域に再現されていることを示唆する。視覚の空間情報の脳内再現における前頭眼野の役割を調べることを目的として、昨年度、前頭眼野後部領域の滑動性眼球運動ニューロンの大多数が輻輳運動にも応答することを明らかにした。本年度は、同様の統合がMT/MST野ですでに起こっているかどうかを、同一課題を用いて、同一サルで調べた。その結果ゆっくり動く視標の追跡眼球運動に関連して応答したMT/MST野ニューロン計143個のうち、滑動性眼球運動と輻輳運動の両者に応管したのは、わずか12%であった。大多数(76%)は滑動性眼球運動のみに応答し、少数(14%)が輻輳運動のみに応答した。従って前頭眼野後部領域における滑動性眼球運動と輻輳運動信号の統合は、MST野での結果を受けたものでない。そこで前頭眼野後部領域における滑動性眼球運動と輻輳運動の統合原理を調べるため、個々のニューロンについて両眼球運動が要求される視標追跡課題中の応答を、個々の眼球運動課題の応答と比較した。その結果、滑動性眼球運動の最適方向が水平の場合も水平以外の場合も、滑動性眼球運動と輻輳運動の両者が要求される課題中の応答は、個々の眼球運動課題の応答のほぼ線形加算によって説明できた。従って前頭眼野後部領域で両眼球運動成分が線形加算されることにより、3次元空間に最適ベクトルを持つ眼球運動信号をコードすると解釈できる。これらニューロンについて、サルが静止視標を固視しているとき、第2の視標を前額面と奥行き方向に動かして視標運動に対する視覚応答を調べた。その結果、過半数(52%)は前額面での視標運動に対しても奥行き方向の視
KAKENHI-PROJECT-12480244
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12480244
スマート強安定系の構成について
プロセス制御分野では現在もPID制御が中心であるが,技術の高度化の過程においてモデル予測制御の適用が進められてきた.これまで申請者は制御系の安全性を高めるため,既約分解を用いた強安定予測制御系の構成に関する研究を行い,その中で,安全率のようにどれくらい強安定化できるのかといった強安定率という指標を提案した.これに対し本研究では,この強安定率を常に高い値に維持し続ける制御系(以下,スマート強安定系と呼ぶ)の構成法を開発することが目的である.そこで,平成30年度は昨年度に引き続き強安定系の構成に関する研究を行った.具体的には,平成29年度以降の計画に従い,スマート強安定系の構成と理論的発展を目指し,モデルベースドな制御手法において強安定系を構成する設計パラメータを,定数または多項式とした場合を中心に検討した.さらに多入力多出力系への拡張を行うため,状態空間表現を利用した設計法についても検討した.これらの検討では,制御法として一般化最小分散制御法や予測制御法を扱った.また,制御則が高次になる可能性を小さくするため,平成29年度に引き続き既約分解表現を用いずに制御則を直接拡張する手法を考察するとともに,申請者が提案しているオンデマンド型フィードバック制御法についても得られた入出力データによって同定した制御対象のパラメータ値に基づき制御則を構成する手法や制御則を直接構成する手法の開発を行った.さらに今後の応用研究に向け,スマート強安定系の構成法をPID制御系に適用するための考察を進めている.これらの成果については国内の会議等で報告を行った.引き続き,スマート強安定の構成法の開発を継続する.多入力多出力系に拡張するために状態空間表現を用いた構成法を検討していることや予測制御法に基づいたスマート強安定系の検討を進めているため.スマート強安定系の構成法を論文としてまとめるとともに,予測制御系やPID制御系への展開を進めていく.プロセス制御分野では現在もPID制御が中心であるが,技術の高度化の過程においてモデル予測制御の適用が進められてきた.これまで申請者は制御系の安全性を高めるため,既約分解を用いた強安定予測制御系の構成に関する研究を行い,その中で,安全率のようにどれくらい強安定化できるのかといった強安定率という指標を提案した.これに対し本研究では,この強安定率を常に高い値に維持し続ける制御系(以下,スマート強安定系と呼ぶ)の構成法を開発することが目的である.そのため,本年度は強安定系の構成に関する研究を中心に行った.具体的には,平成28年度の計画に従い,強安定率を一定値に維持し続ける制御系設計法の開発を目指し,モデルベースドな制御手法において強安定系を構成するための設計パラメータを定数とした場合について検討を行った.本検討では,制御法として一般化最小分散制御法を扱ったが,既約分解によって制御則が従来法と比較して高次になる可能性を小さくするため,新しいアプローチとして,既約分解を用いず制御則を直接拡張する手法を開発した.この手法は,新しく定義した一般化出力に対して従来法と同じ手順で制御則が得られる(既約分解を用いる必要がない)ため,実装が容易になると考えられる.さらに,この一般化出力には新たな設計パラメータを導入しており,このパラメータを変化させることで制御則の極を調整できることを確認した.また,フィードバック信号の大きさも調整できることから,申請者が提案しているオンデマンド型フィードバック制御系の構成も可能となるなど,さらなる発展が見込まれる.また,これらの成果については国内の会議等で報告した.引き続き,スマート強安定系の構成法の開発を進める.設計パラメータの構造を定数とするだけでなく,有理関数とした場合についても数値実験が行えているため.プロセス制御分野では現在もPID制御が中心であるが,技術の高度化の過程においてモデル予測制御の適用が進められてきた.これまで申請者は制御系の安全性を高めるため,既約分解を用いた強安定予測制御系の構成に関する研究を行い,その中で,安全率のようにどれくらい強安定化できるのかといった強安定率という指標を提案した.これに対し本研究では,この強安定率を常に高い値に維持し続ける制御系(以下,スマート強安定系と呼ぶ)の構成法を開発することが目的である.そのため,昨年度に引き続き強安定系の構成に関する研究を行った.具体的には,平成29年度以降の計画に従い,スマート強安定系の構成と理論的発展を目指し,モデルベースドな制御手法において強安定系を構成する設計パラメータを多項式や有理関数とした場合を中心にして検討した.本検討では制御法として一般化最小分散制御法を扱っており,また,既約分解によって制御則が高次になる可能性を小さくするため,制御則を直接拡張する手法を開発したが,これまでは設計パラメータを定数に限定していた.そこで,前述の通りこのパラメータを新たに多項式や有理関数とすることで制御則を構成する自由度を増した.この手法は,新しく定義した一般化出力に対して従来法と同じ手順で制御則が得られるため,実装が容易になると言える.さらに,一般化出力に導入した多項式や有理関数の設計パラメータを適切に選ぶことで,出力に現れる雑音の影響が抑えられることを確認した.また,フィードバック信号の大きさも調整できることから,申請者が提案しているオンデマンド型フィードバック制御系についても,フィードバック信号の量と出力に現れる雑音の影響を調整するなど,さらなる発展が見込まれる.これらの成果については国内の会議等で報告した.引き続き,スマート強安定系の構成法の開発を進める.設計パラメータの構造を多項式,有理関数とした場合についても数値実験を行い,出力に現れる雑音の影響が抑えられることも確認できたため.プロセス制御分野では現在もPID制御が中心であるが,技術の高度化の過程においてモデル予測制御の適用が進められてきた.
KAKENHI-PROJECT-16K06415
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K06415
スマート強安定系の構成について
これまで申請者は制御系の安全性を高めるため,既約分解を用いた強安定予測制御系の構成に関する研究を行い,その中で,安全率のようにどれくらい強安定化できるのかといった強安定率という指標を提案した.これに対し本研究では,この強安定率を常に高い値に維持し続ける制御系(以下,スマート強安定系と呼ぶ)の構成法を開発することが目的である.そこで,平成30年度は昨年度に引き続き強安定系の構成に関する研究を行った.具体的には,平成29年度以降の計画に従い,スマート強安定系の構成と理論的発展を目指し,モデルベースドな制御手法において強安定系を構成する設計パラメータを,定数または多項式とした場合を中心に検討した.さらに多入力多出力系への拡張を行うため,状態空間表現を利用した設計法についても検討した.これらの検討では,制御法として一般化最小分散制御法や予測制御法を扱った.また,制御則が高次になる可能性を小さくするため,平成29年度に引き続き既約分解表現を用いずに制御則を直接拡張する手法を考察するとともに,申請者が提案しているオンデマンド型フィードバック制御法についても得られた入出力データによって同定した制御対象のパラメータ値に基づき制御則を構成する手法や制御則を直接構成する手法の開発を行った.さらに今後の応用研究に向け,スマート強安定系の構成法をPID制御系に適用するための考察を進めている.これらの成果については国内の会議等で報告を行った.引き続き,スマート強安定の構成法の開発を継続する.多入力多出力系に拡張するために状態空間表現を用いた構成法を検討していることや予測制御法に基づいたスマート強安定系の検討を進めているため.今後の研究の推進方策として,多入力多出力系への拡張をふまえ,伝達関数法ではなく状態空間法による制御系の構成法の開発も進める.また,オンデマンド型フィードバック制御系の構成についても検討を進めていく.多入力多出力系への拡張をふまえ,状態空間法による制御系の構成法の開発を進めていく.また,一般化最小分散制御法だけでなく,予測制御法への展開やオンデマンド型フィードバック制御系の構成についても検討を進めていく.スマート強安定系の構成法を論文としてまとめるとともに,予測制御系やPID制御系への展開を進めていく.当初計画よりも本申請課題の採択時期が遅れたため.(理由)研究補助として計画した予算を使用しなかったため.(使用計画)消耗品費(ソフトウェア,電子部品,機械材料)として40万円,旅費(IEEE ETFA2018(イタリア),SICE2018(奈良))として40万円,研究成果投稿費用として40万円を計画しています.(理由)本研究課題に関する論文投稿に時間を要したため.(使用計画)研究成果投稿費として6万円,それ以外は旅費(SICE2019(広島))と消耗品費として計画しています.
KAKENHI-PROJECT-16K06415
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K06415
Arf-like GTPaseが介在する細胞内ロジスティクスと関連疾患
低分子量Gタンパク質ARL8に関して、線虫ARL8欠損変異体を用いた表現型解析、及び精製リコンビナントタンパク質を用いたARL8の生化学的性状の解析を行った。まず、リコンビナントタンパク質を用いたpull-down assayにより、線虫ARL8がHOPS複合体の構成因子であるVPS41と物理的に相互作用することを明らかにした。この相互作用は、ARL8のグアニンヌクレオチドフォームに依存しており、GTP結合型のARL8が、GDP結合型に比べて、より強くVPS41と結合した。よって、VPS41がARL8のエフェクターとして機能する可能性が考えられた。HOPS複合体は酵母液胞の融合の際にtethering factorとして機能することが知られている。前年度までの研究から、線虫ARL8欠損変異体では、ファゴソームとリソソームの融合が殆ど起こらないこと、野生型の線虫においてARL8がリソソームやファゴサイトーシスの膜に局在することを見いだしており、本年度の結果を考え合わせると、ARL8がHOPS複合体をオルガネラ膜にリクルートすることによって、ファゴソームとリソソームの融合を正に制御している可能性が考えられた。一般にARF/ARLファミリーGタンパク質の解析においては、C末端にタグを付加することが多いが、タグの付加がGタンパク質の機能に影響する可能性が考えられる。そこで、タグ除去後にC末端に余分なアミノ酸が一つしか残らない発現ベクターを用いて、ARL6を題材にリコンビナントタンパク質を調整したところ、グアニンヌクレオチド結合活性の高いARL6を調整することができた。またARL13bに関しては、ARL13bの相互作用因子群の同定を行うため、ARL13b-Flagを恒常的に発現するIMCD3細胞を樹立し、免疫沈降による相互作用因子群の探索を行い、いくつかの候補分子を同定した。24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度が最終年度であるため、記入しない。繊毛は細胞膜から突出した特徴的な構造体であり、哺乳動物において多様な組織の細胞に存在し、水流の発生や、繊毛に存在する受容体を介した細胞外環境の感知などの機能を担っている。繊毛局在性Arf/ArlファミリーGタンパク質Arl13bは、一次繊毛の形成や機能に重要であることが知られているGタンパク質であり、最近、繊毛症の一つであるJoubert症候群の原因遺伝子であることが報告された。Arl13bの機能発現には、Arl13bが繊毛に局在することが重要であるが、Arl13bの繊毛への局在化機構については全く未解明である。本年度の研究において、Arl13bの繊毛への輸送機構の検討を行い、以下の知見を得た。1.Arl13bの繊毛局在性には、N末端のパルミトイル化修飾とC末端近傍に存在するRVxPモチーフの両者が必要である2.Arl13bは、ゴルジ体に局在するDHHCファミリータンパク質によってパルミトイル化修飾を受ける可能性がある3.ゴルジ体に局在する膜蛋白質にRVxPモチーフを付加すると繊毛への局在能を獲得する以上の結果から、細胞質で合成されたArl13bは、ゴルジ体へ輸送され、そこでパルミトイル化修飾を受けたのち、RVxPモチーフが認識されて繊毛に局在することが想定された。RVxPモチーフはArl13b以外の繊毛局在性膜タンパク質のいくつかにも存在しており、Arl13bのRVxPモチーフを介した繊毛への輸送機構の解析が、未だ謎の多い繊毛への選別輸送機構の解明に貢献すると考えられる。低分子量Gタンパク質ARL8に関して、線虫ARL8欠損変異体を用いた表現型解析、及び精製リコンビナントタンパク質を用いたARL8の生化学的性状の解析を行った。まず、リコンビナントタンパク質を用いたpull-down assayにより、線虫ARL8がHOPS複合体の構成因子であるVPS41と物理的に相互作用することを明らかにした。この相互作用は、ARL8のグアニンヌクレオチドフォームに依存しており、GTP結合型のARL8が、GDP結合型に比べて、より強くVPS41と結合した。よって、VPS41がARL8のエフェクターとして機能する可能性が考えられた。HOPS複合体は酵母液胞の融合の際にtethering factorとして機能することが知られている。前年度までの研究から、線虫ARL8欠損変異体では、ファゴソームとリソソームの融合が殆ど起こらないこと、野生型の線虫においてARL8がリソソームやファゴサイトーシスの膜に局在することを見いだしており、本年度の結果を考え合わせると、ARL8がHOPS複合体をオルガネラ膜にリクルートすることによって、ファゴソームとリソソームの融合を正に制御している可能性が考えられた。一般にARF/ARLファミリーGタンパク質の解析においては、C末端にタグを付加することが多いが、タグの付加がGタンパク質の機能に影響する可能性が考えられる。そこで、タグ除去後にC末端に余分なアミノ酸が一つしか残らない発現ベクターを用いて、ARL6を題材にリコンビナントタンパク質を調整したところ、グアニンヌクレオチド結合活性の高いARL6を調整することができた。またARL13bに関しては、ARL13bの相互作用因子群の同定を行うため、ARL13b-Flagを恒常的に発現するIMCD
KAKENHI-PUBLICLY-23113706
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-23113706
Arf-like GTPaseが介在する細胞内ロジスティクスと関連疾患
3細胞を樹立し、免疫沈降による相互作用因子群の探索を行い、いくつかの候補分子を同定した。24年度が最終年度であるため、記入しない。繊毛への膜タンパク質の輸送機構に関しては不明な点が多いが、本年度の研究により、RVxPモチーフがゴルジ体以降で選別輸送シグナルとして機能する可能性を見出した。この知見は繊毛への輸送機構の解明に貢献すると考えられる。24年度が最終年度であるため、記入しない。RVxPモチーフによる選別輸送機構を解明するためには、RVxPモチーフを認識する因子(結合する因子)の同定が重要であり、アフィニティーカラムや共沈降実験などにより、その同定を目指す。
KAKENHI-PUBLICLY-23113706
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-23113706
18世紀フランスにおける教育思想と教育システムの変容に関する研究
本研究の目的は、18世紀フランスにおける教育の変容を、当時の最も主要な学校であったコレージュcolle'geを対象として、思想と実体の両面から全体的に捉えて考察することであった。(コレージュは今日の中等教育機関に相当する。)平成11年度は、以下の3つの作業を中心に研究を進めた。2.『学習論』がもった影響力の解明3.フランス18世紀後半における教育改革の実態の解明これらの作業から明らかにされた点と、前年度に報告した内容を総合するならば、本研究の成果とそれに基づく新たな仮説は次の3点に要約できる。1.ロランの『学習論』は、教育の原理とコレージュでの教育を論じた著作である。前者については、人間形成の課題が幼児期から、また、女子も対象に含めて論じられている。後者に関しては、教育内容および方法の改善が、中世以来の伝統に立ちつつ学問の進展を積極的に摂取する姿勢で提起されている。2.18世紀後半のコレージュ教師クレヴィエや、学校制度改革を推進した官僚ロラン・デルスヴィルなどの著作には、シャルル・ロランの『学習論』が基本文献として影響を与えていた事実が確認できる。3.以上から、18世紀を通じたコレージュ教育の変容について、世紀前半にシャルル・ロランが行った理論上の集大成が、1760年代以降の改革動向の中で徐々に現実化され、それはさらに19世紀以降のブルジョアあるいはエリート層における学校教育と結び付いた教養を形成していった、という仮説が導き出される。本研究は、18世紀フランスにおける教育の変容を思想面と実態面から総合的に考察することを目的とし、平成10年度は以下の作業を進めた。2.クレヴィエ『ロラン「学習論」に関する考察』(1780)の内容を検討した。これらの作業から、現在までに次の点が解明されている。1.ロラン『学習論』の内容は大きく三つに整理できる。(1)幼児と女子も対象に含む教育原理論。(2)古典(ギリシア、ラテン)語、詩学、修辞学、弁論術、歴史、哲学、以上各分野の教育内容および方法論。(3)コレージュ(当時の最も主要な学校:現代の中等教育機関に相当)での生徒指導法と教師の職務論。2.フランスの教育界からジェズイット教団が追放され、教育の世俗化が進展した1760年代以降において、ロラン『学習論』は、教育改革を論じた行政官や教師たちによって基本文献として参照されていた。以上に基づいて、ロラン『学習論』は、18世紀後半に現実的な有効性を認められていた教育論であり、また、啓蒙/反啓蒙といった思想的立場の違いを越えて、当時の知識人にとっての一般的教養を集約していた著作であると考えられる。この解釈は、平成10年12月に研究代表者が渡仏し研究計画のレヴューを受けた際に、フランス国立教育研究所のピエール・カスパール教育史部長からも承認された。本研究の目的は、18世紀フランスにおける教育の変容を、当時の最も主要な学校であったコレージュcolle'geを対象として、思想と実体の両面から全体的に捉えて考察することであった。(コレージュは今日の中等教育機関に相当する。)平成11年度は、以下の3つの作業を中心に研究を進めた。2.『学習論』がもった影響力の解明3.フランス18世紀後半における教育改革の実態の解明これらの作業から明らかにされた点と、前年度に報告した内容を総合するならば、本研究の成果とそれに基づく新たな仮説は次の3点に要約できる。1.ロランの『学習論』は、教育の原理とコレージュでの教育を論じた著作である。前者については、人間形成の課題が幼児期から、また、女子も対象に含めて論じられている。後者に関しては、教育内容および方法の改善が、中世以来の伝統に立ちつつ学問の進展を積極的に摂取する姿勢で提起されている。2.18世紀後半のコレージュ教師クレヴィエや、学校制度改革を推進した官僚ロラン・デルスヴィルなどの著作には、シャルル・ロランの『学習論』が基本文献として影響を与えていた事実が確認できる。3.以上から、18世紀を通じたコレージュ教育の変容について、世紀前半にシャルル・ロランが行った理論上の集大成が、1760年代以降の改革動向の中で徐々に現実化され、それはさらに19世紀以降のブルジョアあるいはエリート層における学校教育と結び付いた教養を形成していった、という仮説が導き出される。
KAKENHI-PROJECT-10710126
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10710126
「見えない・飼えない」土着天敵を効率的につかまえ、ふやすには?
ハダニアザミウマ・ハダニタマバエ・ケシハネカクシ類・クロヒメテントウ類(以下、土着天敵)は、果樹園やチャ園等に発生する害虫ハダニ類の有力な土着天敵であるが、微小(体長約1ミリ)な天敵昆虫を野外で見つけるのは難しく、室内飼育も難しい。本研究では、新たな材料(ハダニを接種したコマツナ株)を用いた天敵トラップを開発し、野外での生態調査に利用できることを示した。また、ハダニ接種コマツナ株を用いた天敵飼育法を開発し、従来よりも効率的かつ簡単に飼育できることを示した。「見えない・飼えない」土着天敵を効率的につかまえ、ふやすことが可能となり、生態解明や害虫防除に向けた研究が進むと思われる。1天敵トラップの開発と誘引メカニズムの解明:ハダニが寄生するコマツナ株(コマツナトラップ)やインゲンマメ株(インゲントラップ)を用いた天敵捕獲試験をチャ園内や周辺環境で行い、トラップの形状や設置場所、設置時期が捕獲数に及ぼす影響を調査した。チャ園や周辺環境ではハダニの有力土着天敵である4種類の天敵昆虫(ケシハネカクシ・クロヒメテントウ・ハダニアザミウマ・ハダニタマバエ)の発生密度が低く、これらの目視観察は困難であったが、そのような状況下でも両トラップには4種類の天敵昆虫が多数捕獲され、本研究課題のテーマである「見えない天敵を効率的につかまえる」ことに成功した。また、インゲントラップでは葉上の毛に天敵昆虫が絡まり、天敵回収率が低い一方、コマツナトラップでは天敵回収率が高く、生きた状態での天敵回収にはコマツナトラップが適していることが明らかとなった。2コマツナ等を用いた天敵増殖法の開発:ハダニ寄生コマツナ株をアクリル製の大型飼育容器に定期的に導入し、4種類の天敵昆虫を簡易に飼育する方法を開発した。これにより、本研究課題のテーマである「飼えない天敵昆虫を簡単に増やす」ことに成功した。3天敵昆虫の生態解明と放飼効果の検証:チャ園や周辺環境において捕獲される天敵昆虫の種類や個体数を調査した結果、コマツナトラップやインゲントラップにはハダニタマバエが最も多く捕獲され、いずれの調査地でも優占種となった。また、コマツナトラップで回収された天敵昆虫を2の簡易飼育法で増殖することに成功した。さらに、その過程で、ハダニタマバエ幼虫に寄生する寄生蜂も回収することに成功した。1天敵トラップの開発と誘引メカニズムの解明:ハダニ寄生コマツナ(コマツナトラップ)やインゲンマメ(インゲントラップ)を用いた天敵捕獲試験を果樹園や周辺環境(クズ群落)で実施した。前年度の試験では、乾燥による植物の枯死や害虫による食害が問題となったため、水を張ったバット等にトラップを設置する方法を考案し、それらの問題を解決した。コマツナトラップでハダニの土着天敵昆虫類(ハダニタマバエ、ハダニアザミウマ、ケシハネカクシ類、クロヒメテントウ類)を効率的に捕獲・回収する方法を確立し、トラップの最適設置時期等の絞り込みを進めた。一方、インゲントラップは天敵カブリダニ類(ケナガカブリダニ、ミヤコカブリダニ等)の捕獲・回収に適しており、捕獲対象に合わせた使い分けが良いと考えられた。2コマツナ等を用いた天敵増殖法の開発:前年度は、ハダニ寄生コマツナ株を大型飼育容器内に導入し、4種類の天敵昆虫類を飼育する方法を開発した。今年度は、ハダニ寄生コマツナ葉を用いた小型飼育容器内での増殖試験を実施し、ハダニアザミウマやケシハネカクシ類の飼育が可能であることを確認した。また、ハダニ寄生インゲン株を用い、温室でケナガカブリダニを簡易飼育する方法を開発した。3天敵昆虫の生態解明と放飼効果の検証:生態解明については、コマツナトラップで回収されたハダニタマバエ幼虫に寄生する寄生蜂の種類(ヒゲナガクロバチ科の未記載種Aphanogmus sp.)や発生時期、寄生率等を明らかにし、「ハダニと天敵昆虫、天敵昆虫の寄生蜂」の相互作用について新たな知見を得た。放飼効果については、ハダニ寄生ナシ苗木に対するハダニアザミウマやクロヒメテントウ類の簡易放飼試験を実施し、放飼に伴う害虫密度抑制効果を確認した。また、ハダニ寄生イチゴ苗におけるケナガカブリダニの放飼試験を恒温室内で実施し、害虫密度抑制効果を確認した。1天敵トラップの開発と誘引メカニズムの解明:前年度に開発した天敵トラップについて、トラップ植物の枯死や害虫食害等の問題点を解決し、最適設置条件の絞り込みを行うことで、当初計画通りに天敵昆虫類や天敵カブリダニ類の効率的な捕獲・回収法を確立した。2コマツナ等を用いた天敵増殖法の開発:前年度の成果をベースに、小型飼育容器を用いたより簡易な天敵昆虫飼育法を開発したほか、温室での天敵カブリダニの簡易飼育法を開発した。3天敵昆虫の生態解明と放飼効果の検証:モモ園やチャ園、周辺環境(クズ群落)において天敵トラップを用いた生態調査を実施し、天敵の種構成や発生時期、ハダニの天敵昆虫(ハダニタマバエ)を寄生する寄生蜂の種特定を行った。
KAKENHI-PROJECT-26450070
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26450070
「見えない・飼えない」土着天敵を効率的につかまえ、ふやすには?
放飼効果については、天敵昆虫類(クロヒメテントウ類やハダニアザミウマ)やケナガカブリダニを用いた簡易放飼試験を実施し、一定の効果が観察できた。これらのことから、上記3テーマについてはそれぞれ計画通りの進捗状況と言える。1天敵トラップの開発と誘引メカニズムの解明:前年度に続き、ナミハダニ寄生のコマツナ(コマツナトラップ)やインゲンマメ(インゲントラップ)を用いた天敵捕獲調査を果樹園(ナシ園やチャ園等)で実施した結果、ハダニの土着天敵昆虫類(ハダニタマバエやハダニアザミウマ等)が捕獲された。インゲントラップでは天敵が葉上のカギ状毛に捕捉されて死亡することが多く、コマツナトラップでは生きた状態で容易に捕獲できた。また、果樹園で天敵昆虫が目視確認されない時期にも天敵昆虫がトラップに捕獲される場合があり、園周辺の街路樹(サワラ等)を詳細に調査したところ、天敵昆虫が低密度に生息することが判明し、トラップを使用すれば調査ができることが分かった。誘引メカニズムについては、トラップから放出されるサリチル酸メチル等の揮発性情報化学物質(Herbivore-induced plant volatiles)に誘引されることが行動観察やGC-MSによる化学分析から示唆された。また、チャ園で問題となるチャトゲコナジラミについても、天敵寄生蜂シルベストリコバチの野外調査や行動観察が難しいことから、天敵を生きた状態で捕獲するトラップ(ミカントゲコナジラミ寄生ミカン)を開発した。2コマツナ等を用いた天敵増殖法の開発:ナミハダニ寄生コマツナ等を用いた上記の天敵昆虫類や土着カブリダニの簡易増殖法を前年度までに開発したが、害虫化のリスクが低いナミハダニモドキを用いた天敵増殖法を開発した。また、ミカントゲコナジラミ寄生ミカンを用いたシルベストリコバチの簡易増殖法を開発した。3天敵昆虫の生態解明と放飼効果の検証:最終年度に予定していた、簡易増殖した天敵を用いた薬剤感受性試験を実施した。ハダニ寄生コマツナで飼育した上記4種の天敵昆虫類、およびケナガカブリダニを用い、各種の殺虫剤や殺ダニ剤、殺菌剤を用いた感受性試験を実施した。ハダニアザミウマ・ハダニタマバエ・ケシハネカクシ類・クロヒメテントウ類(以下、土着天敵)は、果樹園やチャ園等に発生する害虫ハダニ類の有力な土着天敵であるが、微小(体長約1ミリ)な天敵昆虫を野外で見つけるのは難しく、室内飼育も難しい。本研究では、新たな材料(ハダニを接種したコマツナ株)を用いた天敵トラップを開発し、野外での生態調査に利用できることを示した。また、ハダニ接種コマツナ株を用いた天敵飼育法を開発し、従来よりも効率的かつ簡単に飼育できることを示した。「見えない・飼えない」土着天敵を効率的につかまえ、ふやすことが可能となり、生態解明や害虫防除に向けた研究が進むと思われる。下記の3テーマについて、以下の通りである。1天敵トラップの開発と誘引メカニズムの解明:天敵トラップの開発、ならびにチャ園や周辺環境での天敵昆虫捕獲試験について、H26年度の計画通りに調査を進めた。天敵昆虫の目視観察が困難な状況下でも天敵トラップによる捕獲・回収が可能であることを実証し、誘引メカニズムの解明につながる貴重な知見を得た。さらに、H27年度計画の一部を前倒しし、生きた状態での天敵回収率をトラップ間で比較を行い、コマツナトラップの優位性を示した。本項目については、当初予定以上のペースで研究調査が進んでいると言える。2コマツナ等を用いた天敵増殖法の開発: H26年度の計画通り、ハダニ寄生コマツナ株を用いた簡易飼育法を開発し、好適飼育条件の絞り込みや飼育効率等を明らかにした。本項目については、当初予定通りのペースで進展していると言える。3天敵
KAKENHI-PROJECT-26450070
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26450070
調節システムの分子デザイン
1.熱ショックによりrpoH遺伝子p2プロモーターからの転写が上昇することがわかった.3.ヒトHarvey rasプロトオンコジーンのプロモーター領域の制御タンパク質結合部位の固定を行った.4.ニワトリのδクリスタリン遺伝子の第3イントロン内に,水晶体特異的なエンハンサーがあることを発見した.5.大腸菌のHusAタンパク質がRNAポリメラーゼと結合しRNA合成の一次停止と転写終結を促進させることを見い出した.6.CoCE2のOri機能とInc機能を有する最小領域を決定した.7.プラスミドR6Kの転写終結性が約200bpの領域に存在することを明らかにした.8.枯草菌の複製開始反応も,大腸菌と同様に, DnaAタンパクとその結合配列との相互作用で調節されていることを明らかにした.9.酵母キャッピング酵素遺伝子をクローニングし, α, βのサブユニットが〓々の遺伝子によりコードされていることを見い出した.10.大腸菌全ゲノムの制限酵素地図の作製を行った.11.SecYタンパク質が10ヶ所の膜貫通部位で膜にくみ込まれていることを明らかにした.12.mRNAのスプライシング反応で, 2つのイントロンの除去が独立的に起こること,除去に一定の順序がないことを示した.1.熱ショックによりrpoH遺伝子p2プロモーターからの転写が上昇することがわかった.3.ヒトHarvey rasプロトオンコジーンのプロモーター領域の制御タンパク質結合部位の固定を行った.4.ニワトリのδクリスタリン遺伝子の第3イントロン内に,水晶体特異的なエンハンサーがあることを発見した.5.大腸菌のHusAタンパク質がRNAポリメラーゼと結合しRNA合成の一次停止と転写終結を促進させることを見い出した.6.CoCE2のOri機能とInc機能を有する最小領域を決定した.7.プラスミドR6Kの転写終結性が約200bpの領域に存在することを明らかにした.8.枯草菌の複製開始反応も,大腸菌と同様に, DnaAタンパクとその結合配列との相互作用で調節されていることを明らかにした.9.酵母キャッピング酵素遺伝子をクローニングし, α, βのサブユニットが〓々の遺伝子によりコードされていることを見い出した.10.大腸菌全ゲノムの制限酵素地図の作製を行った.11.SecYタンパク質が10ヶ所の膜貫通部位で膜にくみ込まれていることを明らかにした.12.mRNAのスプライシング反応で, 2つのイントロンの除去が独立的に起こること,除去に一定の順序がないことを示した.1.大腸菌シグマ32会合型RNAポリメラーゼを精製し、プロモーター選択能などを解析した。シグマ抗体と反対するペプチド数種を同定した。2.合成DNA配列を用い、大腸菌CAMP受容タンパク質により転与が抑制または促進される人為的調節系をつくることに成功した。3.核抽出液などを用い、ヒトHarvey rasプロトオンコジーンおよびアデノウィルスE4プロモーター領域の制御配列を明らかにした。4.δ-グリスタリン遺伝子の発現の組織特異性が調節モジュールの組合せで生まれることを明らかにした。5.大腸菌転写終結因子PおよびNusAの変異株および変異タンパク質を単離し、遺伝学的・生化学的解析を行った。NusAがRNA上の特異的シグナルと結合することを証明した。6.ColEZの複製開始部位が、複製開始機能をもつ領域と共存プラスミド排除機能をもつ領域とから構成されていることがわかった。7.大腸菌の複製終結能を有するDNA断片の簡便なアッセイ法を確立した。8.枯草菌の複製開始領域のシグナルを明らかにした。9.キャッビング酵素がmRNAグアニル酸転移酵素とRNA5'トリホスファターゼ両活性からなることを見い出した。10.染色体ライブラリークローンワーティング法を開発した。13.マクスミエリン塩基性タンパク質遺伝子全域をふくむコスミドクローンを分離した。
KAKENHI-PROJECT-61304067
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非可換代数幾何学の大域的な問題の研究
アフィン空間上のシンプレクティック多項式自己写像について、研究代表者はアフィン空間上にある加群の層を定義した。それが自明であることが多項式写像のワイル環の環自己準同型へのリフトの存在と同値である。次に、反射的加群の挙動に関する阿部-吉永の定理を用いて、無限遠超平面でのある種の反射的加群の特異性の有無が、件の加群の層の自明性を分ける不変量であることを示した。これは非可換代数幾何学に射影空間のような「コンパクト」な空間の議論を関係付けられることを示唆している。非可換幾何学の対象を目に見えるがごとく見えるようにするために、必要な数学的道具を整備し、具体例を通して内容の充実と応用をはかる。すなわち、非可換幾何学において、大域的な構造を目に見えるがごとくに扱えるようにする。アフィン空間上のシンプレクティック多項式自己写像について、研究代表者はアフィン空間上にある加群の層を定義した。それが自明であることが多項式写像のワイル環の環自己準同型へのリフトの存在と同値である。次に、反射的加群の挙動に関する阿部-吉永の定理を用いて、無限遠超平面でのある種の反射的加群の特異性の有無が、件の加群の層の自明性を分ける不変量であることを示した。これは非可換代数幾何学に射影空間のような「コンパクト」な空間の議論を関係付けられることを示唆している。非可換幾何学の話題について、例えばWey1環の環自己準同型φに、我々の基本的な道具である「正標数の世界に還元して処理し、そのあと超フィルタに戻す」という手法を適用することは、本研究年度以前から継続して研究してきたところである。当年度はその還元をアフィン空間Aの完備化たる射影空間Pまで拡張することにより、もとの環自己準同型φの性質が更に詳細に研究できることがわかった。詳しく言うと以下の通りである。1.正標数の世界では、φに対応してWey1環の左イデアルが対応すること、そしてその左イデアルが左加群として射影的であることが明らかにされ、その結果これまでに知られていたWey1環の片側イデアルの研究結果とWey1環の自己準同型を結びつけられることとなった。2.更に、正標数の世界では、Wey1環の射影的左加群はすべて射影空間Pにまで拡張できること、その拡張はP上reflexiveであるだろうことが強く示唆された。これにより、通常の(可換)代数幾何学の標準的手法を適用できる。3.Wey1環自身について上記手法を適用することにより、Wey1環の延長が直線束の直和であるだろうということも強く示唆された。これらの結果の証明のためにはまだいくつかの点検、検討すべき点が残っているが、それらをクリアしたあとで近々まとめられて発表される予定である。ワイル代数Aの研究は、Jacobian問題やDixmier予想と密接に結び付いている。とくに、A上の階数1の射影加群がどのくらいあるか、それの構造がどんなものであるか、は基本的な疑問である。本年度、研究代表者はA上の射影加群をよく調べるために、考える対象をA上の反射的加群にまで広げてみた。結果は二つで、まず一つ目として、Wは二つの単項イデアルの共通部分として表されることを示した。これにより、反射的加群の例をいくらでも構成することができ、そのなかから射影的加群を選びだすというアプローチが可能になる。つぎに二つ目として、Wの射影空間への反射的層としての延長Fが存在することを示した。Fは、「Serre捻り」を除いて一意的で、とくにその特異点はWのみから決定される。さらに、Fは、Wが自明でない場合には必ず特異点を持つことも示した。このことは、Fの特異点集合がWの不変量として機能することを表している。現在論文を投稿中のこれらの結果は「アフィン空間のシンプレクティック自己写像がすべてWeyl環の自己準同型写像の影として得られる」という予想の解決の大きなステップと考えられ、これと研究代表者による過去の結果を合わせることによりDixmier予想の解決の進展が期待されるところである。その他、非可換幾何学についての多様な例が研究分担者のアイディアを用いることで得られることが認識された。具体的には、代数群の作用に関する不変微分作用素のなす環が挙げられる。これはWeyl環に関する議論の自然な拡張とみなせるから、以後の研究の有力な題材を与えることになる予定である。ワイル代数Aの研究は、Jacobian予想やDixmier予想と密接に結び付いている。本年度は前年度の研究を受けてAの射影加群WのA準同型のなす環End(W)の構造を研究した。これについても反射的加群自体に対して行ったのと同様の解析を行うことができ、無限遠点における挙動が大変重要になることがわかった。すなわち、End(W)が局所自由な層として無限遠点にまで伸びることがAと同型か否かの大変重要な判定基準になる。次に、Wの例でよく知られているものについてEnd(W)の無限遠点における具体的な挙動を詳細に検討した。その特異点の様子は具体的に計算可能であり、WのシワがイチモンジとするならばEnd(W)のそれは十字がたにできるということがわかった。これはEnd(W)に関する上記考察とうまく合致している。
KAKENHI-PROJECT-20540046
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非可換代数幾何学の大域的な問題の研究
今後の方針として、一般の場合について同様のことが成り立つかどうか、局所環論的な手法を援用することにより研究するという方向性を得た。その他、非可換幾何学についての多様な例が研究分担者のアイディアを用いることで得られることが前年以上に認識された。現在予備計算を行っているところであり、これは以後の研究の有力な話題となる予定である。ワイル代数Aの研究は、Jacobian予想やDixmier予想と密接に結び付いている。2n次元アフィン空間にシンプレクティック構造を通常良くみられるように入れたものについて、そのシンプレクティック多項式自己写像fが、Aの自己同型の「影」であるかというKontsevich氏の予想も絡んで、非可換代数幾何学の実際の様子を詳細に観察するのに大変良い場になっている。本年度は前年度の研究を受けてAの射影加群WのA準同型のなす環End(W)の、射影空間に延長した時の無限遠での構造を、Kontsevich氏の予想をひとつの道標として研究した。前年度の研究で明らかになったとおり、End(W)が局所自由な層として無限遠点にまで伸びることがAと同型か否かの大変重要な判定基準になる。この判定基準については、阿部、吉永による射影多様体上の反射的加群の考察(Horrocksの定理の拡張)が本質的に使われており、可観幾何学の非可換幾何学への応用の一つの好例となっている。)上述のようなfは、自明なものからホモトピーで変形することにより必ず得られることがわかっていることから、Wについて、自明なものとホモトピックならばそれ自身自明であるとの予想を立てたが、それは誤りであることが実例で示された。その他、非可換幾何学の将来に役立つであろう諸研究が研究協力者によりなされ、研究代表者の研究のための着想の大きな源となった。
KAKENHI-PROJECT-20540046
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古代インドの女性観(古典サンスクリット文学、法典、ヒンドゥ教、仏教を中心として)
平成13年度以来同16年迄の4年間、幸い科学研究費補助金の支給を受け、研究協力者の助言を得ながら研究を続行し得た成果を以下に報告する。近時ジェンダー研究が盛んで本邦に於いても社会学者を中心に所謂「女性差別」「男女平等」を学問的に研究しようとする気運が昂まった。筆者はこの問題を自らが専攻する古代インドの文献に徴して学問的に研究しようと試み、方法論を筆者の専攻する文献学に取り、斯学の世界的リーダーとして令名の高かったロンドン大学のJ.Lisley博士の精神的支持を得てその研究に従事した。不幸にして同博士は昨年急逝したが、同種の研究に従事する「ギリシャの女たち」の著者桜井万里子氏(東大教授)やタイ国の法制史を研究し比丘尼の生活規範を纏め上げた石井米雄氏(文化功労者、京大名誉教授)の助言を得ながら同学のインド古典研究者、仏教学者を研究協力者として研究を進めた。ここに提示するものは過去四年間に亘って研究代表者が発表したもの中心に同類の「女性」に関する過去の研究を一括したものである。その結果分量が大部となり、従って研究協力者の論文は今回見合わせざるを得ず、それらは別の機会に発表する事とした。古代インドの「貞女」「烈女」「淫女」の諸相、「妻」「娘」の地位を中心に「男尊女卑」の系譜を辿ると共に、「貞節」「不倫」の諸問題を系統的に文献に徴して整理したものである。平成13年度以来同16年迄の4年間、幸い科学研究費補助金の支給を受け、研究協力者の助言を得ながら研究を続行し得た成果を以下に報告する。近時ジェンダー研究が盛んで本邦に於いても社会学者を中心に所謂「女性差別」「男女平等」を学問的に研究しようとする気運が昂まった。筆者はこの問題を自らが専攻する古代インドの文献に徴して学問的に研究しようと試み、方法論を筆者の専攻する文献学に取り、斯学の世界的リーダーとして令名の高かったロンドン大学のJ.Lisley博士の精神的支持を得てその研究に従事した。不幸にして同博士は昨年急逝したが、同種の研究に従事する「ギリシャの女たち」の著者桜井万里子氏(東大教授)やタイ国の法制史を研究し比丘尼の生活規範を纏め上げた石井米雄氏(文化功労者、京大名誉教授)の助言を得ながら同学のインド古典研究者、仏教学者を研究協力者として研究を進めた。ここに提示するものは過去四年間に亘って研究代表者が発表したもの中心に同類の「女性」に関する過去の研究を一括したものである。その結果分量が大部となり、従って研究協力者の論文は今回見合わせざるを得ず、それらは別の機会に発表する事とした。古代インドの「貞女」「烈女」「淫女」の諸相、「妻」「娘」の地位を中心に「男尊女卑」の系譜を辿ると共に、「貞節」「不倫」の諸問題を系統的に文献に徴して整理したものである。初年度に当たり、研究代表者と分担者はそれぞれに必要な備品を購入し、又内外の女性史研究文献の蒐集に心掛けた。又研究代表者は2001年8-9月の間ドイツ連邦共和国ハンブルク大学に滞在して研究に従事し、又ポーランドのクラコフで開催された国際会議に出席して欧米の研究者と該当の問題に関して意見を交換する機会を持った。その中でもインド女性史研究の主導的地位を占めるロンドン大学のJulia Leslie博士は我々の企画に賛同し、これまでの博士の研究成果を研究代表者のもとに送付された事は今後の研究に明るい展望を開くものであった。これによってほぼ研究態勢は整備されたので、代表者はここに二篇の研究論文を纏める事が出来た。(1)「二つの性転換物語」田賀龍彦博士古稀記念論文集PP.1-15.(2)「古代インドの女性観1」国際仏教学大学院大学研究紀要5pp.1-39.前者は古代インドの叙事詩マハーバーラタよりSex-changeの物語二篇を邦訳研究したものである。その中でも女性が男性に性転換を欲してそれを企てるものは、女体を不浄劣悪なものとして描いている。女体を卑しみ厭う思想はそのまま古代インドの男尊女卑に通じ、それを端的且つ雄弁に物語っている。後者は古代インドの叙事詩や物語文学の中から幾つかの「貞女」の物語を邦訳解説し、「貞節」の神秘力を検討したものである。女性の「貞節」はそのまま一種の力となって諸々の奇跡を可能ならしめた。それを敢えて「1」と銘打っている所以のものは今後引き続き「悪女」「淫女」を論じることを予告するものに他ならない。初年度初頭に研究分担者鎌田茂雄の逝去(平成13年5月6日)、第二年度後期に研究分担者平川彰の逝去(平成14年3月31日)という不慮の事態が発生したため、研究代表者は分担者各位に諮り、今回より新たにデレアヌフロリン、田辺和子、岡田真美子、堀伸一郎の四氏を補充して態勢の再編成を試みた。重要メンバーの欠落はこれ迄の計画の大幅な変更を余儀なくされ、それは今後の計画推進にも支障を来たす憂いがあるが、新規研究分担者がそれぞれの専門領域から新たな研究課題を選んで参加を承諾した事は今後の研究計画に新鮮味を添えるものと信じる。
KAKENHI-PROJECT-13410008
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古代インドの女性観(古典サンスクリット文学、法典、ヒンドゥ教、仏教を中心として)
新規の者を含め、分担者は初年度に引き続きそれぞれに更に必要図書を購入し、又必要備品を整備した。その大半が図書整備に当てられたのは今年度の特徴である。一方研究代表者は又2002年12月タイ国の首都バンコクに出張し、又同地で開催された国際仏教学会の大会にも参加して外国人研究者と意見を交換する機会を持ち、参集した世界中の著名な仏教学者より仏教の女性観について多くを学ぶ機会があった。その成果は以下に揚げる今年度の発表論文にも反映している。「古代インドの女性観(2)」国際仏教学大学院大学研究紀要6号この論文は古代インドの叙事詩マハーバーラタの一挿話Bakavadhaparvanを詳細な注を付してその邦訳を試み、その中から幾つの問題を論じたものである。その中には妻と娘の一家の危機に処する心構えが語られ、それはそのまま往時の家庭内に於ける女性の義務を如実に反映したものである。次年度は次に「烈女」の物語を同一の方法に拠って検討する積りである。今年度本研究Projectはその第三年目を迎えたが、初年度(平成13年度)第二年度(平成14年度)に経験した研究分担者の逝去もなく、企画は比較的順調に推移した。ただ逝去者の補充として新たに参加した研究分担者に新規に図書購入費、設備備品費を用意したため、経費の使用内容が当初の計画と大幅に相違している事を予め断って置かねばならない。その内容は主として図書整備に当てられている。研究代表者は2003年5月29日から31日までイタリヤ国の首都ローマに出張し、ローマ大学で開催されたPassioni d'Oriente(東洋の情熱)と題する公開シンポジウムに参加して、自らもWords for Love in Sanskritの題名の下に研究発表を行った。参加者は欧米インドから約70名で、前後一週間にわたってこれらの専門研究者と「古代インドの女性観」「古代インドの愛の概念」について意見情報を交換する機会に恵まれた。それらは将来久しくこの企画に指針を与えるものとなるであろう。この間、研究代表者は「古代インドの女性観(3)」をまとめ上げるため大学の演習に随時原典を読みながらその研究に従事した。それは「国際仏教学大学院大学紀要8号」に掲載される予定である。そこには本論文の副題が示す通り、古代インドの叙事詩マハーバーラタや、物語伝説集プラーナより「貞女」「烈女」「淫女」の代表的物語が注釈解説を伴って邦訳されている。その中、「貞女」の章には不具の夫への妻の献身的愛が自然界の運行を妨げて太陽を10間昇らせなかった故事を伝えるMarkandeya Puranaの物語、「烈女」の章には不甲斐なき息子を叱る武人の妻の物語、「淫女」の章には誠実な夫を裏切って姦通した悪妻の物語が紹介されている。最終章の序には「女の本姓」(Strisvabhava)を論じる一節が用意され女性は「諸悪の根源」となす男尊女卑の思想が紹介されている。次年度はこのProjectの最終年に当たる故に、研究分担者とより密に連絡を保ってより体系的なものとしたい意向である。これまで過去四年間、本研究を遂行する間に二名の研究分担者が世を去り、一名は定年退職して人員の組み替えを余儀なくされたが、今年度は昨年九月これまで海外より本研究を評価し援助を惜しまれなかったロンドン大学のJulia Lislie博士が急逝した。博士は国際的にこの問題をリードした存在であったから、その死は斯学に従事する者にとり痛恨の極みであった。併しながら研究は順調に進捗し、研究代表者は今年度は五月にイスパニア王国バルセロナのカルタニア学士院と、九月にドイツ連邦共和国のハレ大学に出張する機会を得た。特にハレにおいて一週間に亘って開催された第29回ドイツ東洋学者会議においては自ら研究発表を行い、数多くの碩学や若き研究者と歓談する機会に恵まれた。
KAKENHI-PROJECT-13410008
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1930年代日本の経済統制をめぐる業界団体と労働組合
本研究では、1930年代の日本で展開された経済統制に関して、以下の3つの課題に取組んだ。(1)大恐慌を契機として経済統制政策が実際に登場するに至る歴史的・社会的な背景に関する考察、(2)当該期に展開された電球工業統制に着目し、その全体的かつ重層的な構造を明らかにすること、(3)電球硝子工業統制に着目し、その展開をめぐって業界団体(工業組合など)と労働組合とが、それぞれいかなる協力を行い、どのような役割を果たしたかについて検討することである。これらの研究課題に取組んだ成果として、第1に、大恐慌下の物価下落、企業活動の状況あるいはその結果生じた社会問題および他の政策展開との関連から改めて経済統制の登場とその歴史的意義について明らかにすることができた。第2に、電球工業統制の研究では、当時の日本が植民地をも抱えた「帝国としての日本」であったことも踏まえた形で、中小工業統制の重層的な構造を明らかにし、事例研究の豊富化に寄与できた。第3として、電球硝子統制に関する研究では、業界団体(東京バルブ会、東京電球硝子工業組合)の成立経緯、その活動内容について詳しい情報を得ることができた。特に東京電気による余剰バルブ外販問題の発生に対する業界団体の対応を新たに解明し得た結果、国内電球統制と電球硝子統制との関連や類似性についても比較検討することができた。また労働組合の活動に関しても、電球産業全般にわたる統制構想、電球販売事業の展開や自主管理工場の運営についての史実を発掘しえた。さらに労働組合が業界団体と連携して、企業内福利の充実や統制違反者に対する制裁措置を行い業界の安定化と労働条件の維持・向上を図った実態を明らかにすることができた。本研究では、1930年代の日本で展開された経済統制に関して、以下の3つの課題に取組んだ。(1)大恐慌を契機として経済統制政策が実際に登場するに至る歴史的・社会的な背景に関する考察、(2)当該期に展開された電球工業統制に着目し、その全体的かつ重層的な構造を明らかにすること、(3)電球硝子工業統制に着目し、その展開をめぐって業界団体(工業組合など)と労働組合とが、それぞれいかなる協力を行い、どのような役割を果たしたかについて検討することである。これらの研究課題に取組んだ成果として、第1に、大恐慌下の物価下落、企業活動の状況あるいはその結果生じた社会問題および他の政策展開との関連から改めて経済統制の登場とその歴史的意義について明らかにすることができた。第2に、電球工業統制の研究では、当時の日本が植民地をも抱えた「帝国としての日本」であったことも踏まえた形で、中小工業統制の重層的な構造を明らかにし、事例研究の豊富化に寄与できた。第3として、電球硝子統制に関する研究では、業界団体(東京バルブ会、東京電球硝子工業組合)の成立経緯、その活動内容について詳しい情報を得ることができた。特に東京電気による余剰バルブ外販問題の発生に対する業界団体の対応を新たに解明し得た結果、国内電球統制と電球硝子統制との関連や類似性についても比較検討することができた。また労働組合の活動に関しても、電球産業全般にわたる統制構想、電球販売事業の展開や自主管理工場の運営についての史実を発掘しえた。さらに労働組合が業界団体と連携して、企業内福利の充実や統制違反者に対する制裁措置を行い業界の安定化と労働条件の維持・向上を図った実態を明らかにすることができた。本研究は、1930年代日本の電球工業およびその関連部品産業である電球ガラス工業における経済統制の展開過程で、業界団体(工業組合)と労働組合がそれぞれ果たした役割について、多面的かつ歴史実証的に検討することを目的としたものである。この目的にそう形で、研究の1年目にあたる本年度は、特に以下の資料調査と収集を重点的に行った。第1は、電気機械工業や化学工業などにおける社史および業界団体史の調査と収集を精力的に行うことである。それを通じて、電球および電球ガラス工業をとりまく当時の業界の状況ならびに関連する企業や業界団体の活動をより鮮明にすることが可能となった。第2に、関連産業の労働組合史の収集も精力的に行った。またそれと並行して、電球および電球ガラス工業における労働組合の活動実態や産業協力・団体協約運動に関する当時の1次資料等の調査・収集も行なった。特に後者に関しては、本研究の計画段階では想定していなかった関西地域の組合(大阪電球労働組合)活動に関する資料をも、未だ断片的ではあるが、発見することができた。この成果を受けて来年度は、この資料の分析にも力を入れることで、関東地域のみならず関西地域も含めた当該期における労働組合活動の実態の解明を試みることにしたい。第3として、中小工業分野に属する電球および電球ガラス工業との比較研究の観点から、大工業分野(製綱業)で同様にみられた労働協約締結運動や産業協力・団体協約運動に関する資料の調査と収集を行った。もっとも、本年度は、上記電球および電球ガラス工業の資料調査と収集に重点をおいたことから、さらなる調査の展開は来年度の課題としたい。とはいえ、本年度においても、製綱労働組合創立事情に関する貴重な資料を発見するなど、一定の成果をあげることができた。本研究は、1930年代日本の電球工業およびその関連部品産業である電球ガラス工業における経済統制の展開過程で、業界団体(工業組合)と労働組合がそれぞれ果たした役割について、多面的かつ歴史実証的に検討することを目的としたものである。この目的にそう形で、昨年度は上記産業における労働組合の活動実態や産業協力
KAKENHI-PROJECT-13630085
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1930年代日本の経済統制をめぐる業界団体と労働組合
・労働協約締結に関する資料調査と収集を主に行なった。これに対して本年度の前半は、昨年十分に行なうことができなかった製綱業における労働協約締結・産業協力および東京製綱の経営関係の資料調査と収集を重点的に行なった。その過程で、(1)30年代前半期に東京製綱と製綱労働組合とによって行なわれた労働条件協定委員会の経過や毎年の協定内容、(2)当該期の東京製綱の経営状況、(3)敗戦直後(1946年)における東京製綱の労働協約などに関するファクト・ファインディングを行なうことができた。これによって、企業の経営実態を踏まえつつ、また戦後の労働協約とも対比する形で、30年代の労働協約締結・産業協力運動の特徴を具体的に明らかにすることが可能となった。また本年度は、30年代における工業組合活動の特徴をより鮮明にする研究の一環として、電機産業を対象として戦後の工業協同組合活動に関する資料調査と収集をも行なうことができた。そのうえで本年度の後半は、これまで行なってきた資料調査を踏まえ、データ整理および同インプット作業などを含めて、本研究のとりまとめを行なった。それとともに、本研究過程で集めた資料を活用することによって、30年代初頭の日本における経済統制登場の歴史的背景に関する論文を本研究成果の1つとして発表することができた。
KAKENHI-PROJECT-13630085
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13630085
小胞体ストレス誘導体アポトーシスに関わるヒト・カスパーゼとその制御因子の同定
アポトーシスの実行因子であるカスパーゼ族は健常細胞中では不活性な前駆体として存在している。カスパーゼ前駆体がプロセスされて活性化するステップは、細胞がアポトーシスへ進むかどうかの重要な決定点の一つであるので、このステップの制御に焦点を当てて研究を進めた。「平成14年度」カスパーゼ-12活性化制御因子の同定を行った。マウス・カスパーゼ-12に結合し、その活性を正または負に制御する因子を酵母2ハイブリッド法によって探索した。探索相手としてHeLa細胞のcDNAライブラリーを使用したところ、腫瘍特異的蛋白質の一つ、MAGE-3(Melanoma associated antigen-3)がカスパーゼ-12特異的結合蛋白質として得られた。MAGE-3はカスパーゼ-12前駆体に結合し、その活性化(プロセシング)を抑制することが判明した。MAGE-3を高発現させた培養細胞株を樹立した。この株は小胞体ストレスに対して抵抗性を獲得した。「平成15年度」もともとMAGE-3を発現している腫瘍細胞株ではMAGE-3がアポトーシス制御に何らかの機能を果たしている事を仮定し、アンチセンスRNAやアンチセンスcDNAによってMAGE-3量を低下させたところ、細胞によっては小胞体ストレスに対する感受性が有意に上昇する結果を得た。MAGE-3にFLAGタグ配列を付与したものをトランスフェクションによりヒト細胞株293Tで大量発現させた。トランスフェクタントから細胞抽出液を調製後、FLAGタグに対する特異的抗体によってMAGE-3を沈降させた。MAGE-3と共に沈降してくる蛋白質がSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動による解析で20種以上検出された。現時点ではカスパーゼ類似蛋白質は検出されていないが、解析したものの多くは小胞体内外に存在する蛋白質である事から、第二の結合因子が含まれている可能性について検討している。アポトーシスの実行因子であるカスパーゼ族は健常細胞中では不活性な前駆体として存在している。カスパーゼ前駆体がプロセスされて活性化するステップは、細胞がアポトーシスへ進むかどうかの重要な決定点の一つであるので、このステップの制御に焦点を当てて研究を進めた。「平成14年度」カスパーゼ-12活性化制御因子の同定を行った。マウス・カスパーゼ-12に結合し、その活性を正または負に制御する因子を酵母2ハイブリッド法によって探索した。探索相手としてHeLa細胞のcDNAライブラリーを使用したところ、腫瘍特異的蛋白質の一つ、MAGE-3(Melanoma associated antigen-3)がカスパーゼ-12特異的結合蛋白質として得られた。MAGE-3はカスパーゼ-12前駆体に結合し、その活性化(プロセシング)を抑制することが判明した。MAGE-3を高発現させた培養細胞株を樹立した。この株は小胞体ストレスに対して抵抗性を獲得した。「平成15年度」もともとMAGE-3を発現している腫瘍細胞株ではMAGE-3がアポトーシス制御に何らかの機能を果たしている事を仮定し、アンチセンスRNAやアンチセンスcDNAによってMAGE-3量を低下させたところ、細胞によっては小胞体ストレスに対する感受性が有意に上昇する結果を得た。MAGE-3にFLAGタグ配列を付与したものをトランスフェクションによりヒト細胞株293Tで大量発現させた。トランスフェクタントから細胞抽出液を調製後、FLAGタグに対する特異的抗体によってMAGE-3を沈降させた。MAGE-3と共に沈降してくる蛋白質がSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動による解析で20種以上検出された。現時点ではカスパーゼ類似蛋白質は検出されていないが、解析したものの多くは小胞体内外に存在する蛋白質である事から、第二の結合因子が含まれている可能性について検討している。アポトーシスの実行因子であるカスパーゼ族は健常細胞中では不活性な前駆体として存在している。カスパーゼ前駆体がプロセスされて活性化するステップは、細胞がアポトーシスへ進むかどうかの重要な決定点の一つである。本申請課題はヒト・小胞体ストレス誘導性アポトーシスの実行機構をカスパーゼ活性の制御の面から解明することを目指している。本年度はカスパーゼ42活性化制御因子の同定を行った。マウス・カスパーゼ-12に結合し、その活性を正または負に制御する因子を酵母2ハイブリッド法によって探索した。探索相手としてHeLa細胞のcDNAライブラリーを使用した。約1600万クローンをスクリーンしたところ、腫瘍特異的蛋白質の一つ、MAGE-3(Melanoma associated antigen-3)がカスパーゼ-12特異的結合蛋白質として得られた。MAGE-3は精巣以外の正常組織では発現が見られないが、多くの腫瘍組織(約半数)で発現が検出されている。しかし、MAGE-3の機能については全く不明である。MAGE-3がカスパーゼ-12の活性化やプロテアーゼ活性を阻害するかどうかを試験管内及び細胞内で検討した。MAGE-3の発現系を大腸菌を用いて構築し、MAGE-3蛋白質を得た。MAGE-3はカスパーゼ-12前駆体に結合し、その活性化(プロセシング)を抑制することが判明した。MAGE-3はカスパーゼ-12活性化型のプロテアーゼ活性は阻害しなかった。MAGE-3を高発現させた培養細胞株を樹立した。この株は小胞体ストレスに対して抵抗性を獲得した。
KAKENHI-PROJECT-14599014
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14599014
小胞体ストレス誘導体アポトーシスに関わるヒト・カスパーゼとその制御因子の同定
これらの結果はMAGE-3がカスパーゼ-12の活性化抑制因子として機能していることを示唆しており、癌細胞がアポトーシスを起こしにくくなっていることに寄与している可能性が考えられた。平成14年度に私はマウス・カスパーゼ-12の特異的結合因子、MAGE-3(melanoma associated antigen-3)を同定した。MAGE-3はマウス、ヒト共通に存在することから、ヒト細胞においてカスパーゼ-12オーソログと結合し、アポトーシス制御に関わる可能性を追究した。1.小胞体ストレスに対するMAGE-3の効果の検討。数種類のヒト細胞株を用い、MAGE-3を高発現させたトランスフェクタントを作製したが、小胞体ストレスに対する感受性に変化が見られなかった。小胞体ストレス誘導性アポトーシスに対するカスパーゼ-12への依存度が低い細胞株ではMAGE-3の効果が見えない可能性が考えられた。もともとMAGE-3を発現している細胞株ではMAGE-3がアポトーシス制御に何らかの機能を果たしている事を仮定し、アンチセンスRNAやアンチセンスcDNAによってMAGE-3量を低下させたところ、細胞によっては小胞体ストレスに対する感受性が有意に上昇する結果を得た。今後は、感受性の変化した細胞株に対してカスパーゼ-12の探索を進めていきたい。2.免疫共沈降法による探索。MAGE-3にFLAGタグ配列を付与したものをトランスフェクションによりヒト細胞株293Tで大量発現させた。トランスクェクタントから細胞抽出液を調製後、FLAGタグに対する特異的抗体によってMAGE-3を沈降させた。MAGE-3と共に沈降してくる蛋白質はSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動による解析で20種以上検出された。再現性よく沈降してくる蛋白質については質量分析法によるアミノ酸配列の推定と蛋白質の同定を試みた。現時点ではカスパーゼ類似蛋白質は検出されていないが、解析したものの多くは小胞体内外に存在する蛋白質である事から、第二の結合因子が含まれている可能性についても検討している。
KAKENHI-PROJECT-14599014
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新規糖蛋白ポドカンのコラーゲン結合能を利用した腎線維化巣特異的遺伝子治療法の開発
今回我々はすでに繊維化が進んでいる病巣に、細胞外基質分解酵素であるMMP1遺伝子を腎間質に導入することで、腎繊維化巣の改善が認められるかどうかの検討を行った。6週齢SD雄ラットに片側尿管結紮を施行して進行性腎線維化モデルを作成し、結紮術後10日後にMMP1遺伝子をHVJ-liposomeに封入して結紮側尿管の口側から逆行性経尿管的に導入した。遺伝子導入効果の判定のため、MMP1遺伝子にはtagをfusionさせた。同時に比較検討のため、tagを付けたLacZ cDNAを導入する群を作成する。遺伝子導入後、4日目に屠殺し、摘出した腎臓の組織学的検討およびウェスタンブロッティングから、遺伝子が通常の10倍程度に導入、発現されたことを確認した。αSMA抗体と導入遺伝子の抗体との二重染色から、腎間質に遺伝子導入されたことを確認した。次にマッソントリクロム染色およびH-E染色により各群の遺伝子導入による組織形態、線維化の変化を評価したところ、MMP1導入群で組織学的に腎繊維化の改善傾向は見られたがスコアリングによる定量化およびコラーゲン染色の定量化では有意差は見られなかった。しかしながら尿中ヒドロキシプロリン、PICPの含有量およびウェスタンブロッティング、RT-PCR法によるコラーゲン、ファイブロネクチンなど各種線維化マーカーの発現の変動を比較検討したところ、MMP1導入群において有意にコラーゲン発現が低下していた。以上の結果から、MMP1遺伝子を腎繊維化巣に導入することは病巣の進行を抑え、沈着した繊維化巣の治療につながりうる可能性が示唆された。さらに今回新規糖蛋白ポドカンのコラーゲン結合部位がLRR23に存在することがコラーゲン結合法から示され、この部位とMMP1遺伝子との融合遺伝子をsubcloningにて作成した。現在、この融合遺伝子を腎繊維芽細胞に過剰発現させ機能解析中である。この検討が終わり次第、作成した融合遺伝子を上記の方法でラット腎繊維化巣に導入し検討する予定である。今回我々はすでに繊維化が進んでいる病巣に、細胞外基質分解酵素であるMMP1遺伝子を腎間質に導入することで、腎繊維化巣の改善が認められるかどうかの検討を行った。6週齢SD雄ラットに片側尿管結紮を施行して進行性腎線維化モデルを作成し、結紮術後10日後にMMP1遺伝子をHVJ-liposomeに封入して結紮側尿管の口側から逆行性経尿管的に導入した。遺伝子導入効果の判定のため、MMP1遺伝子にはtagをfusionさせた。同時に比較検討のため、tagを付けたLacZ cDNAを導入する群を作成する。遺伝子導入後、4日目に屠殺し、摘出した腎臓の組織学的検討およびウェスタンブロッティングから、遺伝子が通常の10倍程度に導入、発現されたことを確認した。αSMA抗体と導入遺伝子の抗体との二重染色から、腎間質に遺伝子導入されたことを確認した。次にマッソントリクロム染色およびH-E染色により各群の遺伝子導入による組織形態、線維化の変化を評価したところ、MMP1導入群で組織学的に腎繊維化の改善傾向は見られたがスコアリングによる定量化およびコラーゲン染色の定量化では有意差は見られなかった。しかしながら尿中ヒドロキシプロリン、PICPの含有量およびウェスタンブロッティング、RT-PCR法によるコラーゲン、ファイブロネクチンなど各種線維化マーカーの発現の変動を比較検討したところ、MMP1導入群において有意にコラーゲン発現が低下していた。以上の結果から、MMP1遺伝子を腎繊維化巣に導入することは病巣の進行を抑え、沈着した繊維化巣の治療につながりうる可能性が示唆された。さらに今回新規糖蛋白ポドカンのコラーゲン結合部位がLRR23に存在することがコラーゲン結合法から示され、この部位とMMP1遺伝子との融合遺伝子をsubcloningにて作成した。現在、この融合遺伝子を腎繊維芽細胞に過剰発現させ機能解析中である。この検討が終わり次第、作成した融合遺伝子を上記の方法でラット腎繊維化巣に導入し検討する予定である。
KAKENHI-PROJECT-17790561
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風評被害対策に向けた情報の重要度を決める要因の抽出・分析と重要度の自動推定
近年のインターネット時代では、日々の生活で多数の人々がウェブ上の重要度の情報を探そうとしており、重要な情報を自動的に取り出し表示する方法を切望している。そこで、本研究では、各情報の重要度を推定する方法に関する研究を行った。新聞社や一般の多くの人が重要と考える情報の重要度を約90%程度で推測する方法を構築した。個々の個人の興味情報が、その個人がどういう情報を重要と考えるかと相関があることも確認した。近年のインターネット時代では、日々の生活で多数の人々がウェブ上の重要度の情報を探そうとしており、重要な情報を自動的に取り出し表示する方法を切望している。そこで、本研究では、各情報の重要度を推定する方法に関する研究を行った。新聞社や一般の多くの人が重要と考える情報の重要度を約90%程度で推測する方法を構築した。個々の個人の興味情報が、その個人がどういう情報を重要と考えるかと相関があることも確認した。本年度は一般的な情報の重要度に関する研究を行った。新聞の一面に書かれている記事は他の面の記事よりも重要であり、長い記事は短い記事よりも重要であると思われる。それを手がかりとした新聞データを利用した教師あり機械学習の実験を行った。新聞データを学習データとして利用した場合、入力された二つの新聞の記事のうち、いずれが1面の記事であるかを9割以上の精度で推定できた。これにより新聞の面情報を基準とした重要度は計算機で比較的容易に学習できることがわかった。また、どちらの記事の方が重要かを問う被験者実験を行った。300人以上の被験者により560組のデータ(以降被験者データと呼ぶ)を作成した。それを手がかりとした実験も行った。被験者データを学習データとして、被験者が重要と考える方の記事を機械学習により推定したところ約7割の精度で推定できた。被験者が重要と考えるものの特定は新聞の面情報を基準とするものよりも難しいが、それでもある程度の精度で推定できることがわかった。また、テキストマイニング技術や教師あり機械学習の学習過程で得られるパラメータの情報から新聞記事中のどのような単語が記事の重要度に寄与しているかを調べた。その結果、「年金」「殺人」「事件」「政府」「事故」といった単語が重要度の大きいものと思われる。この知見は今後の重要度推定システムの構築に役立つものである。情報の重要度の推定処理の高度化を目指して受身文を能動文に変換する研究も行った。本年度はユーザ個人が考える情報の重要度に関する研究を行った。ユーザ同士の判断の一致度を知るために、記事ペアにおいてどちらの記事が重要であるかのユーザによる判定についてKappa値を計算した。Kappa値は0.08という非常に低い一致度の値が得られた。このことからどういう情報を重要と考えるかは人によって異なることがわかった。教師有り機械学習法を用いた実験により、個々のユーザが二つの記事のうちどちらが重要であると判断するかを65%前後の精度で予測できることがわかった。アンケートにおいて答えてもらったユーザ個人の興味情報と、教師有り機械学習により得られた各個人が重要と考える事柄の一致具合を検証した。興味情報が機械学習で重要とされた上位500個の単語の方と有意に重なりが多かった被験者は53人で、下位500個の単語の方が重なりが多かった被験者は2人であった。53人と2人は検定で有意差があるため、ユーザ個人の興味情報が、そのユーザの重要な記事の判断と相関があることがわかった。教師あり機械学習の学習過程で得られるパラメータの情報から、男性は「トヨタ」「野球」を女性は「出産」「懐妊」という事柄を重要と考えていることがわかった。これらの単語が示すものは情報の重要度に大きな寄与をしているものと思われる。この知見は今後の重要度推定システムの構築に役立つものである。情報の重要度の推定処理の応用および発展を目指して特許文書中で特に重要な箇所である請求項とその実施例の比較と対応付けの研究も行った。
KAKENHI-PROJECT-19700154
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聴覚障害児における情報処理様式の個人差に関する研究
聴覚障害児(聾学校児童36年35名)を対象に、視覚的刺激の持つ形態的情報と音韻的情報に対する処理様式について、ストループテストの干渉度(反応時間差)を指標として実験的に検討した。聴覚障害児の干渉度と言語発達との関連を検討するため、聴力レベル、発語明瞭度、語音聴取能力、読話能力との相関を求めた。さらに、干渉度と文字に対する処理様式との関連を検討するために平仮名文字およびカタカナ文字の音の異同判断課題を実施し、反応時間を求めた。後者については、健聴児童および大学生との比較検討も行った。ストループ干渉度については、聴覚障害児と健聴児との間に有意な差は見られなかった。しかし、分布をみると聴覚障害児には健聴児よりも干渉度の小さい者、および干渉度の大きい者がいることが示された。干渉度と前述の言語発達の各測度との相関に一定の傾向は認められなかった。さらに、仮名文字の異同判断に要する時間は干渉度との間に有意な正の相関がみられた。このことから、ストループ干渉度は音韻的な情報処理傾向の強さを示すものというよりも、視覚的情報に対して、形態的な処理と音韻的な処理との間での選択のしやすさを表す指標であることが示唆された。これにより、聴覚障害児については通常のストループ干渉だけでなく、いわゆる逆ストループ刊渉についても検討する必要性が示された。。このことを検討するために、さらに聴覚障害児童(35年28名)を対象として、ストループ干渉と逆ストループ干渉との関係、およびそうした干渉度と、文字情報と図形情報とが競合する視覚的刺激を処理する時間との関係について検討した。聴覚障害児(聾学校児童36年35名)を対象に、視覚的刺激の持つ形態的情報と音韻的情報に対する処理様式について、ストループテストの干渉度(反応時間差)を指標として実験的に検討した。聴覚障害児の干渉度と言語発達との関連を検討するため、聴力レベル、発語明瞭度、語音聴取能力、読話能力との相関を求めた。さらに、干渉度と文字に対する処理様式との関連を検討するために平仮名文字およびカタカナ文字の音の異同判断課題を実施し、反応時間を求めた。後者については、健聴児童および大学生との比較検討も行った。ストループ干渉度については、聴覚障害児と健聴児との間に有意な差は見られなかった。しかし、分布をみると聴覚障害児には健聴児よりも干渉度の小さい者、および干渉度の大きい者がいることが示された。干渉度と前述の言語発達の各測度との相関に一定の傾向は認められなかった。さらに、仮名文字の異同判断に要する時間は干渉度との間に有意な正の相関がみられた。このことから、ストループ干渉度は音韻的な情報処理傾向の強さを示すものというよりも、視覚的情報に対して、形態的な処理と音韻的な処理との間での選択のしやすさを表す指標であることが示唆された。これにより、聴覚障害児については通常のストループ干渉だけでなく、いわゆる逆ストループ刊渉についても検討する必要性が示された。。このことを検討するために、さらに聴覚障害児童(35年28名)を対象として、ストループ干渉と逆ストループ干渉との関係、およびそうした干渉度と、文字情報と図形情報とが競合する視覚的刺激を処理する時間との関係について検討した。
KAKENHI-PROJECT-05801018
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05801018
言語分析による妄想の客観評価法
1、妄想の定義に関する文献、言語論に関する文献の収集・整理を、引き続きおこなった。このために、補助金により購入されたパソコン・スキャナー・MOドライブを使用した。2、妄想定義の問題については、コネクショニズムの観点から考察した。脳という非論理的なネットワークシステムから論理的な思考が生まれるという事実から、正常な思考と妄想が区別されるには、環境と経験が本質的な役割を果たすと結論できた。3、妄想を特徴付けるための補助テストとして用いた常識・見当識のテスト、および思考能力のテストを、同意をえられた患者に対して施行し、そのデータを研究補助者が入力保存した。その結果、妄想を語る患者は、知的な障害を持っている場合もかなりみられた。定義上、妄想は知的な障害がない患者の言動について言われなければならないため、この面からも、妄想定義の変更が求められた。4、補助金によって購入された録音器具を用いて、妄想的陳述の資料収集を引き続きおこなった。その際、インフォームドコンセントおよびプライバシーの保護には、できる限り配慮した。5、4の資料を、補助金により購入された音声分析ソフトで解析した。妄想を語る場合、音声が変わる例があることは認められが、客観的に確認できるだけのデータは得られなかった。6、Sentenceの構造分析からは、従来妄想と呼ばれていた現象を、思考障害として特徴付けることができた。7、倫理的問題から症例の収集が困難であるので、今後とも長期的にデータを集め、種々の結果の実証性を高めていきたい。1,妄想の定義に関係する文献、言語論に関する文献を収集・整理した。このために、補助金により購入されたパソコン・スキャナー・MOドライブを使用した。言語学や分析哲学の諸理論の検討から、妄想を意味論的に扱うには患者の話の中のsentenceの構造分析を中心に据えるべきであることがわかった。2,被験者に対する本研究への協力同意書を作成した。3,妄想と思考障害の識別・妄想と単なる思い違いとの識別は、理論的にも実際上も非常に難しい。その弁別のために、常識・見当識のテスト及び論理的思考能力のテストを構成した。これらのテストは、WAIS-Rなどの既に十分標準化された知能テストから抜粋・簡略化したものである。4,研究に協力することに同意した被験者に対して、上記の諸テストを施し、その陳述を補助金により購入されたテープレコーダーに記録した。5,上記テープレコーダーの記録から妄想と正常の陳述を同定し、双方をそれぞれ一定量研究補助者によりパソコンに入力し、MOに保存した。6,平成10年度の研究では、確信の表現の仕方が妄想においては独特である可能性が示されたが、未だ被験者数が十分ではなく平成11年度以降の研究の進展にまつところが大きい。7,現在のところ最も新しいSpitzer.Mの妄想定義は、妄想と錯覚の区別がつきにくくなる難点がある。妄想の定義が本研究の課題の一つであるので平成11年度は錯覚の問題も検討事項に入れる予定である。また、妄想を語る時の声の音声学的な分析も、妄想を客観評価するためには有効であると思われるので今後の課題としたい。1,妄想の定義に関係する文献、言語論に関する文献を収集・整理を、前年度に引き続きおこなった。このために、補助金により購入されたパソコン・スキャナー・MOドライブを使用した。2,妄想定義の問題については、従来の妄想定義の諸説を、対象と基準という二つの観点からまとめ直した。後者の妄想の判断基準は、更に、様相・内容・原因・その他の4つに分けて検討した。その結果、「妄想は誤った判断である」という通説は問題が多いことを報告した。3,妄想の定義を研究するなかで、妄想概念の拡張が必要であることが分かった。この拡張によって、これも通説であった「メランコリー親和型は性格である」という見方は誤りであり、メランコリー親和型は妄想の一形態として解釈されるべきであることが示された。これに関する論文は現在投稿中である。4,妄想を特徴付けるための補助テストとして構成した常識・見当識のテスト、及び論理的思考能力のテストを実際に使用してみたが、その標準化には、時間がかかりそうであった。5,妄想の音声学的な分析については、補助金により音声分析ソフトを購入した。ただし、ソフトの完成が、遅れたため今のところ十分な分析結果は出ていない。6,妄想的陳述の資料収集を、補助金により購入された録音器具を用いて、平成10年度に引き続きおこなった。その際、インフォームドコンセント及びプライバシーの保護には、できる限り配慮した。7,平成12年度は、従来からの研究である妄想定義の問題・妄想の言語分析の問題を、情報論的な観点からも分析し、新しい妄想の評価法を探っていきたい。1、妄想の定義に関する文献、言語論に関する文献の収集・整理を、引き続きおこなった。このために、補助金により購入されたパソコン・スキャナー・MOドライブを使用した。2、妄想定義の問題については、コネクショニズムの観点から考察した。脳という非論理的なネットワークシステムから論理的な思考が生まれるという事実から、正常な思考と妄想が区別されるには、環境と経験が本質的な役割を果たすと結論できた。3、妄想を特徴付けるための補助テストとして用いた常識・見当識のテスト、および思考能力のテストを、同意をえられた患者に対して施行し、そのデータを研究補助者が入力保存した。その結果、妄想を語る患者は、知的な障害を持っている場合もかなりみられた。
KAKENHI-PROJECT-10877150
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10877150
言語分析による妄想の客観評価法
定義上、妄想は知的な障害がない患者の言動について言われなければならないため、この面からも、妄想定義の変更が求められた。4、補助金によって購入された録音器具を用いて、妄想的陳述の資料収集を引き続きおこなった。その際、インフォームドコンセントおよびプライバシーの保護には、できる限り配慮した。5、4の資料を、補助金により購入された音声分析ソフトで解析した。妄想を語る場合、音声が変わる例があることは認められが、客観的に確認できるだけのデータは得られなかった。6、Sentenceの構造分析からは、従来妄想と呼ばれていた現象を、思考障害として特徴付けることができた。7、倫理的問題から症例の収集が困難であるので、今後とも長期的にデータを集め、種々の結果の実証性を高めていきたい。
KAKENHI-PROJECT-10877150
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10877150
SHP2によるparafibrominの脱リン酸化を介した発癌分子機構の解析
平成24年度;(1)チロシン脱リン酸化されたParafibrominを機能模倣する(β-cateninと複合体を形成し、Wnt経路を活性化する)がん症例由来のParafibromin点変異を同定した。(2)Parafibrominのチロシンリン酸化を亢進する核内チロシンキナーゼを同定した。平成25年度;(3)SHP2がHippo経路の転写共役分子であるYAPおよびTAZと細胞内で複合体を形成することを見出した。Parafibrominのチロシン脱リン酸化を介してWnt経路の活性化を促進するSHP2の核内集積は、細胞密度依存的に制御を受けるYAP/TAZによって調節されることを明らかにした。SHP2による核内基質Parafibrominのチロシン脱リン酸化が、発がんに関与するWntシグナル経路の活性化に必須の役割を担うことが示されてきた。SHP2は細胞質および核内に分布することから、SHP2の核内移行メカニズムの解明がParafibromin-Wnt経路の制御機構を明らかにすると考えられた。平成25年度の研究実績SHP2の細胞内分布が高密度培養環境では細胞質局在を示す一方で、低密度培養環境では核内分布を示すことを見出した。細胞密度の変化に応答した細胞増殖制御を担うHippoシグナル経路関連分子の関与を検討した結果、Hippo経路の転写共役分子YAP/TAZが細胞内でSHP2と複合体を形成することを明らかにした。種々の欠損変異分子を用いた解析から、SHP2およびYAP/TAZ分子内に存在する複合体形成に関わる領域を特定した。YAP/TAZは細胞密度変化に応答したHippoシグナルによる制御を受け、SHP2と同様に高密度環境では細胞質に分布し、低密度環境では核内に集積する。細胞密度依存的なSHP2の細胞内分布変化は、YAP/TAZの発現抑制および核内集積型TAZ改変分子の発現によって喪失した。TAZの一過性の発現は、Wnt標的遺伝子の転写活性化を引き起こした一方で、SHP2あるいはParafibrominの発現抑制はTAZ依存的なWnt標的遺伝子の活性化を抑制した。一連の結果から、SHP2は細胞密度に応答して核内移行するYAP/TAZと複合体を形成し、これらを核内移行のキャリアーとして利用することで、Parafibrominのチロシン脱リン酸化を介したWnt標的遺伝子の活性化を惹起することが示された。平成24年度;(1)チロシン脱リン酸化されたParafibrominを機能模倣する(β-cateninと複合体を形成し、Wnt経路を活性化する)がん症例由来のParafibromin点変異を同定した。(2)Parafibrominのチロシンリン酸化を亢進する核内チロシンキナーゼを同定した。平成25年度;(3)SHP2がHippo経路の転写共役分子であるYAPおよびTAZと細胞内で複合体を形成することを見出した。Parafibrominのチロシン脱リン酸化を介してWnt経路の活性化を促進するSHP2の核内集積は、細胞密度依存的に制御を受けるYAP/TAZによって調節されることを明らかにした。parafibrominチロシン脱リン酸化の発がんへの関与を明らかにする為に、ラット由来RK3E細胞にチロシンリン酸化耐性型(Y290、293、315F)parafibromin分子を発現させた。チロシンリン酸化耐性型parafibrominを一過性に発現する細胞が、細胞ー細胞間接触による増殖阻害から逸脱する結果は現在までに得られていない。実験条件の改善を進めるとともに、足場非依存的な増殖能の測定など他の悪性形質転換実験系を用いて解析を行う。チロシン脱リン酸化型parafibrominを機能模倣する機能獲得型parafibromin変異の探索に関して、既知の疾患由来の変異の中からparafibrominの機能への影響が同定されていない数種類の変異を選出した。それぞれの変異parafibrominの発現ベクターをクローニングし、これをヒト培養細胞に発現させ免疫沈降実験を行った。その結果、チロシンリン酸化耐性型parafibrominと同様に著しく強いbーcatenin結合能を持つ変異体の同定に成功し、この新規変異型parafibrominがチロシンリン酸化耐性型parafibrominと同様にWnt経路を構成的に活性化することを明らかにした。parafibrominを基質とするチロシンキナーゼの同定に関して、核内分布が報告されているチロシンキナーゼの発現ベクターを哺乳動物培養細胞に導入したところ、parafibrominのY290、Y293、Y315におけるリン酸化レベルの亢進が見られた。このキナーゼ発現が引き起こすparafibrominのチロシンリン酸化の亢進は、SHP2ホスファターゼの一過性共発現によって減弱することから、このチロシンキナーゼはparafibrominのY290、Y293、Y315のリン酸化に関してSHP2と拮抗関係にあることが考えられる。交付申請時に設定した平成24年度の研究計画3項目(研究実績の概要に記載)のうち、2項目についてほぼ順調に進展しているため。交付申請時に作成した平成25年度の研究計画に基づいて推進しながらも、予想外の解析結果などにより必要に迫られた場合には研究計画に非記載の解析も新規に取り入れ、本研究課題の目的の達成を目指す。交付申請時に作成した平成25年度における研究費使用計画を基本とし、研究目的の達成に向けて効率良く適切に使用する。
KAKENHI-PROJECT-24700965
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24700965
デュアルデリバリーシステムによる新規歯周組織再生医療の創生
本研究の目的は、効率的かつ一般医療に普及可能な新規歯周組織再生医療の開発であり、その結果新規スキャフォールドの応用と細胞外微小環境のイオン制御により、各種細胞成長因子の発現と歯周組織細胞を含む硬組織形成細胞の分化・増殖応答の亢進が誘導されることが明らかとなった。本研究の成果は、細胞治療を応用しなくとも、スキャフォールドのトポグラフィーとイオン徐放性を工夫した上でサイトカイン投与を行うことで、高率に歯周組織再生が行える治療法が開発できる可能性を示すものと考えられる。本研究の目的は、効率的かつ一般医療に普及可能な新規歯周組織再生医療の開発であり、その結果新規スキャフォールドの応用と細胞外微小環境のイオン制御により、各種細胞成長因子の発現と歯周組織細胞を含む硬組織形成細胞の分化・増殖応答の亢進が誘導されることが明らかとなった。本研究の成果は、細胞治療を応用しなくとも、スキャフォールドのトポグラフィーとイオン徐放性を工夫した上でサイトカイン投与を行うことで、高率に歯周組織再生が行える治療法が開発できる可能性を示すものと考えられる。本研究においては、効率的かつ一般医療にも普及可能な歯周組織再生医療の開発を目的とする。再生医療においては、3大要素として(1)再生を担う細胞、(2)サイトカイン、(3)スキャフォールドが必要とされる。これらのうち、幹細胞などの再生を担う細胞を培養供給することは最もコストがかかるばかりでなく、その供給を受ける医療機関の設備体制の充実が必要とされ、再生医療の一般医療の普及に制限を加えている、従って、細胞供給を行う代わりに、再生の場に存在する細胞の増殖・分化能力を最大限に高めることを目的として、細胞の増殖分化因子(サイトカイン)等に対する感受性を遺伝子導入(ジーンデリバリー)法により上昇させると同時に、薬物徐放性を有するスキャフォールドを用いて受容体のリガンド分子を配送する(ドラッグデリバリー)システムを開発することを着想した(デュアルデリバリーシステム)。具体的には研究期間内に(1)塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)とその受容体遺伝子のデュアルデリバリーによる歯周組織再生の検討、(2)カルシウム受容体(CsR)遺伝子-Ca^<2+>デュアルデリバリーシステムによる歯周硬組織形成促進の検討を研究期間内に実施する。平成20年度の研究においては、まず歯周組織再生効果の定量的評価系であるマイクロCTを用いた規格化歯槽骨欠損モデルを完成させた。これによりスキャフォールドあるいは成長因子単体とデュアルデリバリーシステムとの歯周組織再生効果の違いの定量的検討が可能となった。また新規スキャフォールドとしてのハニカムフィルムのトポグラフィー効果ならびにセメント芽細胞の増殖・分化に果たすWntシグナル及びCaイオンの役割について明らかにした。以上の成果から次年度以降のデュアルシステム構築に重要な情報が得られた。本研究においては、効率的かつ一般医療にも普及可能な歯周組織再生医療の開発を目的とする。そのためスキャフォールドの細胞賦活能及び骨伝導能を最大限に発揮できるよう最適な形状と素材を探索するとともに、細胞増殖因子あるいはCa受容体遺伝子を細胞導入して、歯周組織形成促進がみられるかどうかを明らかにすることを目指す。本年度においては、骨伝導能の優れたスキャフォールドとしてのOctacalcium(OCP)の気孔率や粒径が硬組織形成に及ぼす効果をin vivoにおいて明らかにした。その結果、OCPの粒径を大きくすることにより気孔率が上昇し、それに伴って硬組織形成が増加することがラットモデルを用いて明らかになった(Murakami Y.et al,2010).また歯及び歯周組織に存在する硬組織形成細胞である歯髄細胞及びセメント芽細胞を用いて、Ca濃度の増加及びWntシグナルが細胞の増殖と分化にいかなる影響を及ぼすかを検討した。その結果、Wntシグナルはこれまで考えられていたように細胞の分化を促すのではなく歯周組織細胞に対してはむしろ増殖を誘導すること(Nemoto E.et al,2009)、それに対してCa濃度の増加はカルシウムチャンネル依存的・非依存的にBMP-2遺伝子発現を誘導して細胞の分化を誘導することを明らかにした(Tada H et al,2010)。さらにカルシウムチャンネル非依存的なBMP-2遺伝子誘導はERKの活化を介するが、これが今回のターゲットであるCa受容体を介すものであることが示唆された。本年度においてはさらに細胞賦活化の手段としてトポグラフィーに着目して,新規開発されたハニカムフィルムを用いて歯根膜細胞を培養することを試みた。その結果、ハニカムフィルムは同細胞の増殖能や細胞の変形能を刺激して、立体培養による細胞シート作製に有効であることを明らにした。なおこの成果については、代表研究者の島内が2009年アメリカ歯周病学会年次大会において発表し、最優秀ポスター賞を受賞するとともに、イギリスのグラスゴー大学において招待講演を行った(2009年9月)。本研究においては、効率的かつ一般医療にも普及可能な歯周組織再生医療の開発を目的とする。そのためスキャフォールドの細胞賦活能及び骨伝導能を最大限に発揮できるよう最適な形状と素材を探索するとともに、細胞増殖因子あるいはCa受容体遺伝子発現の人為的な増強を行うことで、歯周組織形成促進がみられるかどうかを明らかにすることを目指す。平成22年度に実施した研究においては、1)歯及び歯周組織由来の硬組織形成細胞の増殖・分化に対する細胞外無機イオンの影響を検討したところ、細胞外PO_4^<2->イオンの増加はERK依存性にBMP-2遺伝子発現を増強することが明らかとなった(Tada H.et al)。
KAKENHI-PROJECT-20390527
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デュアルデリバリーシステムによる新規歯周組織再生医療の創生
一方、細胞外Ca^<2+>イオンはセメント芽細胞においてcAMP/PKA依存性にFGF-2遺伝子発現を増強することも示された(Kanaya S. et al)。次いで2)細胞賦活化の手段としてトポグラフィーに着目して,新規開発されたハニカムフィルム上で培養した歯根膜細胞の挙動についてさらに解析を行った。その結果、昨年度の本研究で明らかになったフィルム内への細胞侵入による多層細胞培養シート作製の可能性に加えて、ハニカムフィルム上で培養した歯根膜細胞の表面にオステオポンチンタンパクの発現が増強されることが示された(lwama et al.学会発表)。この結果はスキャフォールドの表面トポグラフィーが、歯根膜細胞の細胞増殖のみならず、硬組織形成細胞への分化をも刺激していることを示すものと考えられた。以上の結果から、歯周組織構成細胞の増殖・分化に重要な分子(サイトカインや分化マーカー)の発現増強は、細胞外微小環境やスキャフォールド性状の調整によって達成されることが明らかとなり、細胞治療のみに依存しない歯周組織再生治療の創生が行える展望が明確に示された。
KAKENHI-PROJECT-20390527
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地球環境の変動と人口の変動
1.長期的巨視的人口変動にについては、主として従来の研究成果に依拠しながら、日本と中国に関して、大づかみな趨勢を描くことが可能になった。その結果、日本においては17世紀の増大、18世紀の停滞、19世紀の再増大が、中国においては、16世紀の増大、17世紀の停滞、18・19世紀の増大がみとめられ、時間差をもって、両国では工業化以前に3倍から4倍に達する増大のあったことが確認された。これが共通の要因によるものなのか否かについいての解明は、今後に残された重要な研究課題である。2.短期的人口変動については、個別史科の得られる18世紀の東北日本に関し、宝暦・天明の飢饉時の人口変動の内容を中心に検討したが、太平洋側の諸地域の減少が著しく、とくに出生率が低下したこと、および、高齢者の死亡率が上昇したことが認められた。出生率が低下したので、この地域の人口の回復は遅れることになる。会津、郡山およびその周辺農村には、良質の人口史科が残存しており、将来の分析結果が期待される。3.都市化と人口変動との関係については、近畿地方の都市、京都、大阪、奈良、高砂(播州)の史科から、都市人口の持つ性質、男女比のアンバランス、高い独身率、低い出生率、高い死亡率、居住の不安定性などが検出され、付近農村から大量の人口の流入がなければ、人口の維持すら不可能であることが検証できた。4.以上の観察結果を総合すると、日本でも中国でも、人口変動には地域的な違いがあり、かつ、長期的には増大していても、タイムラグがあることがはっきりした。個々の研究は、完全に達成された訳ではなく、むしろ、今後実施すべき研究課題が明らかになった点もあるが、なかでも、日本と同様の「記名型史科」を有する中国(遼寧省)、オットマン帝国、ベルギー、スェーデンとの比較研究の必要性が見出されたことの意味は大きい。1)自然環境変動.時間的・空間的に極めてて限定された範囲内での自然環境の変動を、歴史文献から追うことは不可能に近く、多くの労力を割くことは、得ることの出来る結果を考えるならば、避けるべきであるとの結論に達した。むしろ、現在行われている他の研究の成果を利用する方向に転換する。2)社会変動.とくに近世日本における農業の展開、とくに特産物を伴う地域的特性、稲作の地域性を明らかにし、人口変動との関係を考える基礎作業を行った。3)巨視的人口変動.自然環境の短期的変動の影響を最も敏感に受ける奥羽地方について、各藩の人口調査資料を収集し、江戸時代の人口趨勢を明らかにすることが出来た。また国勢調査以前の人口統計を整備し、全国の人口変動について、詳細な分析が可能となるよう準備を行った。4)微視的人口変動.江戸時代の巨視的人口変動に対応して、その詳細を知り得るような史料、宗門改帳・人別改帳を調査し、その整理分析を通じて、人口や家族の変化を観察した。今年度は、前年度以来引続き、福島県の旧二本松藩領、会津地方、および、近畿地方の都市(京都、奈良、大阪、高砂)を対象として観察を行い、史料の読み取り、整理シート作成、コンピュータ入力、分析を行った。これらの個別研究を積み重ねることを通じて、巨視的人口変動の中身を実証的に明確にすることが出来た。5)中国については、明清時代の糸譜類および方誌(地方誌)の収集分析を通じ、人口変動の内容を明らかにする基礎作業を継続して行った。1.長期的巨視的人口変動にについては、主として従来の研究成果に依拠しながら、日本と中国に関して、大づかみな趨勢を描くことが可能になった。その結果、日本においては17世紀の増大、18世紀の停滞、19世紀の再増大が、中国においては、16世紀の増大、17世紀の停滞、18・19世紀の増大がみとめられ、時間差をもって、両国では工業化以前に3倍から4倍に達する増大のあったことが確認された。これが共通の要因によるものなのか否かについいての解明は、今後に残された重要な研究課題である。2.短期的人口変動については、個別史科の得られる18世紀の東北日本に関し、宝暦・天明の飢饉時の人口変動の内容を中心に検討したが、太平洋側の諸地域の減少が著しく、とくに出生率が低下したこと、および、高齢者の死亡率が上昇したことが認められた。出生率が低下したので、この地域の人口の回復は遅れることになる。会津、郡山およびその周辺農村には、良質の人口史科が残存しており、将来の分析結果が期待される。3.都市化と人口変動との関係については、近畿地方の都市、京都、大阪、奈良、高砂(播州)の史科から、都市人口の持つ性質、男女比のアンバランス、高い独身率、低い出生率、高い死亡率、居住の不安定性などが検出され、付近農村から大量の人口の流入がなければ、人口の維持すら不可能であることが検証できた。4.以上の観察結果を総合すると、日本でも中国でも、人口変動には地域的な違いがあり、かつ、長期的には増大していても、タイムラグがあることがはっきりした。個々の研究は、完全に達成された訳ではなく、むしろ、今後実施すべき研究課題が明らかになった点もあるが、なかでも、日本と同様の「記名型史科」を有する中国(遼寧省)、オットマン帝国、ベルギー、スェーデンとの比較研究の必要性が見出されたことの意味は大きい。
KAKENHI-PROJECT-04212117
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地形傾度に対応した植生パターンに関する研究
3年間にわたって地形と植生との関係について研究を行った。気候要因によってその分化が起こるマクロスケールでの植生帯に対して、その下位のメソ-スケールでの植生分化は地形条件によってその分布・分化が引き起こされる。地形は複合的な環境傾度で、具体的には地形にともなう温度、水分、栄養塩、地表面の安定性、土壌の厚さなどが植物分布を支配する。しかし、これらいずれの条件も単独で効くことはなく、相互に強い相関関係で結ばれている。したがって、ここではこのようなメカニズムで形成される群落一般をさして複合的環境としての地形に着目して地形的群落(topo-community)と名付けた。成果報告書で詳しく述べたように日本のどの気候的植生帯においても、このような地形複合環境傾度に対応していると考えられる植生パターンが一般的に存在することが確認できた。亜熱帯・暖温帯常緑広葉樹林域では安定した頂部平坦面にはスダジイ、カシ類などの亜中形葉(notophyll)を持つ常緑広葉樹林が分布し、やや岩塊根的になるとツガ、アカマツ、ヒメコマツなどの針葉樹類が卓越するようになる。さらにこの領域で特徴的なのは孤立峰や海洋島の山頂部、痩せ尾根、裸地などのように風衛、貧栄養、遷移初期など一般的にシビアなストレス環境下では小形葉(microphyll)の森林に移行するというパターンがみられる点である。これはいずれの場合も環境条件が平滑斜面に発達するnotophyll林の成立を許さない場合であって、これら2種の生活型群、あるいは生態群はnotophyll群が一方的にmicropyll群を競争排除するという関係にあることを確認できた。また、平滑斜面と麓部斜面、下部谷壁斜面、あるいは崩壊地などいわゆる谷型落葉樹林との関係も同様であり、平滑斜面の常緑notophyll林は谷型落葉樹林を競争的に排除していることが明らかになった。同様の分析を冷温帯落葉広葉樹林域でも行った。落葉広葉樹林域では頂部平坦面にミズナラ、岩塊尾根にツガ、斜面にブナといったパターンが形成されるが、この場合は斜面表層物質の安定性が実生の定着、生残に大きく影響していることが明らかになった。これは湿潤変動帯における植生の特徴である。3年間にわたって地形と植生との関係について研究を行った。気候要因によってその分化が起こるマクロスケールでの植生帯に対して、その下位のメソ-スケールでの植生分化は地形条件によってその分布・分化が引き起こされる。地形は複合的な環境傾度で、具体的には地形にともなう温度、水分、栄養塩、地表面の安定性、土壌の厚さなどが植物分布を支配する。しかし、これらいずれの条件も単独で効くことはなく、相互に強い相関関係で結ばれている。したがって、ここではこのようなメカニズムで形成される群落一般をさして複合的環境としての地形に着目して地形的群落(topo-community)と名付けた。成果報告書で詳しく述べたように日本のどの気候的植生帯においても、このような地形複合環境傾度に対応していると考えられる植生パターンが一般的に存在することが確認できた。亜熱帯・暖温帯常緑広葉樹林域では安定した頂部平坦面にはスダジイ、カシ類などの亜中形葉(notophyll)を持つ常緑広葉樹林が分布し、やや岩塊根的になるとツガ、アカマツ、ヒメコマツなどの針葉樹類が卓越するようになる。さらにこの領域で特徴的なのは孤立峰や海洋島の山頂部、痩せ尾根、裸地などのように風衛、貧栄養、遷移初期など一般的にシビアなストレス環境下では小形葉(microphyll)の森林に移行するというパターンがみられる点である。これはいずれの場合も環境条件が平滑斜面に発達するnotophyll林の成立を許さない場合であって、これら2種の生活型群、あるいは生態群はnotophyll群が一方的にmicropyll群を競争排除するという関係にあることを確認できた。また、平滑斜面と麓部斜面、下部谷壁斜面、あるいは崩壊地などいわゆる谷型落葉樹林との関係も同様であり、平滑斜面の常緑notophyll林は谷型落葉樹林を競争的に排除していることが明らかになった。同様の分析を冷温帯落葉広葉樹林域でも行った。落葉広葉樹林域では頂部平坦面にミズナラ、岩塊尾根にツガ、斜面にブナといったパターンが形成されるが、この場合は斜面表層物質の安定性が実生の定着、生残に大きく影響していることが明らかになった。これは湿潤変動帯における植生の特徴である。地形と植生との動的関係を調査した.調査地は那須,日光,秩父,清澄山などである.那須,日光,秩父などについては地形計測と植生分布パタ-ンの解析など記載的な調査を行った段階である.斜面以外の地形単位では気候的極相種が定着できずミズナラ林,コメツガ林などといわゆる地形的極相が成立するメカニズムが解明されつつある.清澄山では尾根,斜面,谷の地形に対応した植生分布を調べ,それぞれの植生の成立過程について具体的な知見を得た.約10年前に当時50年生の一斉再生林に設定したパ-マネントコドラ-トで再調査したところ尾根はスダジイ,斜面中部はアカガシ,斜面下部はウラジロガシがそれぞれ成長率が最も高く,次第に地形に応じたすみわけが明瞭になりつつあった.自然林地域で地形と植生のパタ-ンを調べると尾根は針葉樹,常緑樹,落葉樹が混交しており,針葉樹実生の連続的更新が可能であった.
KAKENHI-PROJECT-02640503
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地形傾度に対応した植生パターンに関する研究
斜面では常緑樹が卓越し,林床での針葉樹の更新は不可能であった.また,谷は落葉樹が優占し,針葉樹は定着可能であるが,頻繁な攪乱によって成長する個体はほとんど無い.頻繁に崩壊を繰り返す谷の崩壊斜面にはフサザクラの優占群落が成立する.この斜面の地形を細かく計測して調査したところ,攪乱頻度が高い部分は先駆的な落葉低木,また,安定しつつある斜面では下層に常緑樹が侵入して周囲のインタクトな斜面の植生と類似してくる.その両者の中間,高木種が定着可能な最前線にフサザクラ林が成立している.この種はパイオニアとしては地形と無関係に広く出現する.したがってこのパタ-ンの成因は安定立地ではフサザクラが競争的に排除されてしまうためである.まとめると,特殊地形は制約要因となって出現種を限定するが,一般地形は種間競争を介して競争的に有利な種を定着させる.次年度以降は地形的制約要因の解明とそれに対する種の適応,種間競争を決める競争的ヒエラルキ-の解明をする.2年目にあたる今年度は、昨年と同様、那須、日光、秩父、清澄山などで調査を継続した。秩父山地の針葉樹・落葉樹混交林での調査の結果、昨年度報告した清澄山の常緑広葉樹林の場合とも整台性のある興味深い結果を得た。山地帯下部にあたる標高1250mにパ-マネントコドラ-トを設置し、2年間にわたって詳しいパタ-ン解析を行ったところ、凸型斜面はブナ・ツガ型、凹型斜面にはブナ・イヌブナ型の森林が対応していた。この植生パタ-ンの成因を樹齢解析、実生の生残過程などによって調べてみると、ブナの実生は地形に無関係にどこにでも出現する。しかし、ツガの実生は凸型斜面では定着するが、凹型斜面では地表面の小撹乱があるために定着できない。ツガが定着する凸型斜面ではツガの定着後は林床の照度が足りず下層に後継樹は侵入できないので、ツガの枯死後はミズメなど先駆性落葉樹が侵入し、針葉樹と落葉樹の間でサイクリックな動態を示す。凹型斜面では落葉樹か枝折れや幹折れなどの撹乱を受れ易く、林冠が完全にはうっぺいしないので、ナツツバキ、コハウチワカエデなどの先駆性・途中相性の落葉樹が混在することが多く、多様性の高い群落が維持されている。それぞれの群落型の成立する立地の土壌の水分条件、林床の光条件などを計測しても群落の成立の第一義的な要因にはならない場合が多かった。日本のように湿潤変動帯に位置する山岳地では清澄山や今回の秩父での例のように地形にともなう地表の安定性が植生の成立に大きな意味を持っていることが明らかになった。その場合は、実生のサイズ、崩落や埋没後の萌芽再生能力などが重要である。また、常緑針葉樹と落葉広樹といった生活型の差異はそれぞれの定着後の後継樹の出現パタ-ンを決定する重要な要因となる。したがって、種間競争を決める競争的ヒエラルキ-は地形単位ごとに設定されねばならない。最終年度である今年度はこれまでの結果をとりまとめる方向で研究を行った。1年目、2年目の調査経過については既に各年次ごとに報告してあるので、ここでは最終的に得られた結果を一般化する方向で報告する。地形に対応した植生パターンの成因が明確に把握されたのは日光、秩父、清澄山などであった。那須でも調査を行ったが、ここでは短期間であったことと、若令林分であったために斜面方位に対応した植生パターンは把握できたものの、その成因までは明確にできなかったので、今後も調査を進める予定である。
KAKENHI-PROJECT-02640503
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西洋における世界国家の経営と民族問題
本年度も,昨年度に引き続いて西洋史上に現われた様々な形態の世界国家=「帝国」における広義の統治システムと帝国内部・周辺諸民族の対応との相互作用について,具体的な事例を通して考察を深化させるために,以下の研究会を開催し,そこでの報告・討論を中心に,問題点の提示・整理・検討を行なった。(1)「20世紀初頭・バルトのドイツ義勇軍について」(報告者・山田義顕):現在のバルト問題にも関連する,第一次対戦後におけるバルト,特にラトビアの独立問題について。(2)「ウェ-ルズにおける宗教改革とウェ-ルズ語」(報告者・指昭博):ウェ-ルズ語の聖書のこの地でのナショナリズムへの影響について。(3)「スラヴ人ト-マスの反乱とビザンツ帝国」(報告者・中谷功治):多民族国家ビザンツにおける被支配民族の動向を反乱を通しての検討。(4)「ドイツ帝国の成立期における民衆と自由」(報告者・南直人):支配者の側からの帝国の枠組みの登場と,これに対する民衆の自由の木に象徴される自由観。(5)「フランス革命と彫像の時代」(報告者・阿河雄二郎):(6)「ロ-マ帝国の衰退と変容(再論)」(報告者・合阪學):ロ-マからフランクへの「帝国の遷移」の当時の文学作品等での受け止めについて。(7)「ノ-ス・カロライナ植民地におけるレギュレ-タ-運動」(報告者・和田光弘):アメリカ植民地時代における内乱を、セクショナリズムと移民問題との関連で検討。以上の発表の成果は,『研究成果報告書』に掲載されるほか,なお検討を要するものについては後日別の形態にて発表を予定している。本年度も,昨年度に引き続いて西洋史上に現われた様々な形態の世界国家=「帝国」における広義の統治システムと帝国内部・周辺諸民族の対応との相互作用について,具体的な事例を通して考察を深化させるために,以下の研究会を開催し,そこでの報告・討論を中心に,問題点の提示・整理・検討を行なった。(1)「20世紀初頭・バルトのドイツ義勇軍について」(報告者・山田義顕):現在のバルト問題にも関連する,第一次対戦後におけるバルト,特にラトビアの独立問題について。(2)「ウェ-ルズにおける宗教改革とウェ-ルズ語」(報告者・指昭博):ウェ-ルズ語の聖書のこの地でのナショナリズムへの影響について。(3)「スラヴ人ト-マスの反乱とビザンツ帝国」(報告者・中谷功治):多民族国家ビザンツにおける被支配民族の動向を反乱を通しての検討。(4)「ドイツ帝国の成立期における民衆と自由」(報告者・南直人):支配者の側からの帝国の枠組みの登場と,これに対する民衆の自由の木に象徴される自由観。(5)「フランス革命と彫像の時代」(報告者・阿河雄二郎):(6)「ロ-マ帝国の衰退と変容(再論)」(報告者・合阪學):ロ-マからフランクへの「帝国の遷移」の当時の文学作品等での受け止めについて。(7)「ノ-ス・カロライナ植民地におけるレギュレ-タ-運動」(報告者・和田光弘):アメリカ植民地時代における内乱を、セクショナリズムと移民問題との関連で検討。以上の発表の成果は,『研究成果報告書』に掲載されるほか,なお検討を要するものについては後日別の形態にて発表を予定している。本年度は、西洋における世界国家の経営と民族問題を究明するために、以下の研究会を開催し、そこでの報告・討論を中心に、問題点の提示・整理・検討をおこなった。1.「文化の多様化と画一化--ロ-マ帝政下の属州に於ける」(報告書・合阪學)では、ロ-マ帝国解体期の5世紀における帝国北方ノリクム属州の諸都市に焦点を当て、ロ-マ軍団の進出・駐屯・撤退過程にあわせて、地方都市の成立(ロ-マ化)とキリスト教化、さらにはゲルマン諸族の侵攻(ゲルマン化)を詳細に報告した。とりわけ、ロ-マ軍不在の属州において、司教や修道士(後に聖人になる)の政治的活躍には注目すべきものがある。本報告の主要な史料は、エウギッピウスの著した『聖セウェリヌス伝』であるが、これについては、報告者が本年2月に発表した論文(裏面参照)において、翻訳・解説・分析がなされている。2.「テュ-ダ-史再論」(報告者・栗山義信)では、イギリスが世界国家としての全貌を現わす以前、テュ-ダ-期・ヘンリ-8世の時代をとりあげ、宗教改革の視点から、その巧みな統治のメカニズムの一端を明らかにした。聖書をめぐる神学上の論争に触れつつも、その背景となる民衆の心性に大いに注目し、後のイギリス世界帝国への道程との関連で、議論が深められた。3.「神話の効用--「マドック伝説」とケルト辺境問題」(報告者・川北稔)では、イギリス帝国支配に関わるひとつの神話=「マドック伝説」を通じて、世界国家経営の一側面を照らしだした。それは支配構造のソフトな部分の解明であると同時に、ケルト辺境という民族問題をも包含する。民族問題と複雑に錯綜した世界国家の重層構造が、具体的なかたちで明らかにされた。本年度は、昨年度の研究成果の更なる発展を目指し、分担者の担当地域・時代ごとに研究課題である「西洋における世界国家の経営と民族問題」を考察するために、次にあげる研究会を開催し、そこでの具体的な報告をもとに、まとめの作業をおこなった。(1)「20世紀初頭・バルトのドイツ義勇軍」(報告者:山田義顕)
KAKENHI-PROJECT-01301048
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西洋における世界国家の経営と民族問題
(2)「ウェ-ルズにおける宗教改革とウェ-ルズ語」(報告者:指昭博)(3)「スラヴ人ト-マスの反乱とビザンツ帝国」(報告者:中谷功治)(4)「ドイツ帝国の成立期における民衆と自由」(報告者:南直人)(5)「フランス革命と彫像の時代」(報告者:阿河雄二郎)(6)「ロ-マ帝国の衰退と変容《再論》」(報告者:合阪學)(7)「ノ-ス・カロライナ植民地におけるレギュレ-タ-運動」(報告者:和田光弘)以上の内、(1)・(2)・(3)・(6)と昨年度の川北稔による発表の内「マドック伝説」に関係する部分が、討論を重ねた上で『研究成果報告書』にまとめられ、(7)の和田論文は雑誌『西洋史学』160号に掲載されることになった。その他については、更に検討が必要との結論に達し、後日別の形態での発表となった。なお、川北稔の研究報告の残りの成果は、著書『民衆の大英帝国ー近代イギリス社会とアメリカ移民ー』として昨年刊行された。
KAKENHI-PROJECT-01301048
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01301048
肝前駆細胞由来肝癌の発癌・進展に関わるmicroRNAとその診断・治療への応用
肝切除時ミラノ基準内で、その後ミラノ基準外の再発をきたしたものと、肝切除時ミラノ基準外であったものの再発を認めなかった症例で比較すると67遺伝子が前者で発現増強していた。肝細胞癌においては36%の症例にezrin発現がみられ、CK19の発現と有意に関連しており、それは独立した有意な再発危険因子であることを見出した。JHH1株に対してsiRNAを利用し、ezrin発現を抑制すると増殖能が抑制された。肝内胆管癌ではNotch2が癌細胞に、そのリガンドであるJagged1が癌細胞と間質細胞に発現していることを明らかにした。肝切除時ミラノ基準内で、その後ミラノ基準外の再発をきたしたものと、肝切除時ミラノ基準外であったものの再発を認めなかった症例で比較すると67遺伝子が前者で発現増強していた。肝細胞癌においては36%の症例にezrin発現がみられ、CK19の発現と有意に関連しており、それは独立した有意な再発危険因子であることを見出した。JHH1株に対してsiRNAを利用し、ezrin発現を抑制すると増殖能が抑制された。肝内胆管癌ではNotch2が癌細胞に、そのリガンドであるJagged1が癌細胞と間質細胞に発現していることを明らかにした。1.肝細胞癌における遺伝子発現プロファイリング肝細胞癌に対する肝移植の際に用いられるミラノ基準内の症例においても外科切除後再発をきたす症例が認められるのに対し,ミラノ基準外の症例の中には外科切除後全く再発をきたさない症例も存在する。このようなheterogeneityは同じ肝細胞癌の中に生物学的に異なるsubgroupが存在することを示唆するものであり,Leeらはそのheterogeneityを発癌起源細胞の違いにその原因を求めている。そこで,ミラノ基準内外と再発の有無の関係からDNAマイクロアレイ法を用いて肝細胞癌の遺伝子発現プロファイリングを行い,その違いにつき検討した。現在までにROBO1,STMN1,CKAP2,CCNE1,FGFR4の5遺伝子が候補遺伝子として抽出されており,これらとCK7,CK19,ezrinと関係について検討するとともに,microRNAアレイによるプロファイリングに備えている。2.肝細胞癌におけるezrin(Vi12 gene)の発現評価主に免疫組織染色を用いて,ezrinの発現について検討した。正常肝組織ではezrinの発現はみられず,慢性障害肝では肝前駆細胞活性化を反映するといわれるductular reactionに強く発現がみられた。この結果はezrin発現と肝前駆細胞との関連を示唆するものである。肝細胞癌においては36%の症例にezrin発現がみられ,それらは,CK19の発現と有意に関連していることを示すとともに,ezrinの発現は独立した有意な再発危険因子であることを見出した。ただし,ezrinは炎症性浸潤細胞にも発現していることが明らかになったため,Vi12 geneの発現を組織で検討するのは不適当と判断された。細胞株になかではJHH1株にezrinの高発現がみられたため,それに対してsiRNAを利用し,増殖能などの検討をしている。現在のところezrin発現を抑制すると増殖能が抑制されるという結果を得ている。肝内胆管癌についてもNotchシグナルを中心に現在検討中である。1.肝細胞癌における遺伝子発現プロファイリング肝細胞癌に対する肝移植の際に用いられるミラノ基準内の症例においても外科切除後再発をきたす症例が認められるのに対し、ミラノ基準外の症例の中には外科切除後全く再発をきたさない症例も存在する。このようなheterogeneityは同じ肝細胞癌の中に生物学的に異なるsubgroupが存在することを示唆するものであり、Leeらはそのheterogeneityを発癌起源細胞の違いにその原因を求めている。そこで、ミラノ基準内外と再発の有無の関係からDNAマイクロアレイ法を用いて肝細胞癌の遺伝子発現プロファイリングを行い、その違いにつき検討した。ROBO1、STMN1、CKAP2、CCNE1、FGFR4の5候補遺伝子中、ROBO1とSTMN1についてCK19、ezrinとの関係を免疫組織学的に検討しているが、いまだ有意な結果は得られず、その評価について再検討するとともに、mRNAレベルでの検討を考慮している。2.肝細胞癌におけるezrin(Vi12 gene)の発現評価主に免疫組織染色を用いて、ezrinの発現について検討した。正常肝組織ではezrinの発現はみられず、慢性障害肝では肝前駆細胞活性化を反映するといわれるductular reactionに強く発現がみられた。この結果はezrin発現と肝前駆細胞との関連を示唆するものである。肝細胞癌においては36%の症例にezrin発現がみられ、それらは、CK19の発現と有意に関連していることを示すとともに、ezrinの発現は独立した有意な再発危険因子であることを見出した。ただし、ezrinは炎症性浸潤細胞にも発現していることが明らかになったため、Vi12 geneの発現を組織で検討するのは不適当と判断された。細胞株のなかではJHH1株にezrinの高発現がみられたため、それに対してsiRNAを利用し、増殖能・浸潤能の検討をした。その結果、ezrin発現を抑制すると増殖能が抑制されるという結果が得られたため、現在ezrin高発現肝細胞癌に対する増殖抑制効果をin vivoにおいて検討することを考慮している。肝内胆管癌についてもNotchシグナルを中心に検討しているが、免疫組織学的にNotchタンパクは癌細胞に、Jaggedタンパクは癌細胞と間質細胞に発現していることを見出している。
KAKENHI-PROJECT-19591576
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19591576
薬物吸収部位としての大腸粘膜の評価:薬物透過障壁能の物理化学的解析
大腸粘膜のバリアー能について、透過し得る分子サイズの小腸粘膜との差を明らかにするため、水溶性化合物で分子量の異なるpolyethylene glycol(PEG)300,600及び1000を用いて、in situループ法によりラット小腸及び大腸からの吸収を検討した。用いたPEGはそれぞれ分子量300,600及び1000を中心に、重合度の異なる各種分子量のPEGの混合物である。その結果、小腸では分子量600付近まで吸収が認められるのに対して、大腸では分子量300以上では吸収は困難であった。これらのPEGについては細胞間隙を通るいわゆる経細胞側路が考えられるが、両部位での透過可能な分子量すなわち分子サイズの差は細胞間隙の大きさの違いに基づくものと思われる。この点については電気生理学的解析によっても裏付けられた。また、細胞間隙の帯電状態の違いも示唆されたが、細胞間隙に作用する吸収促進剤EDTAの作用はその帯電状態への影響も含むことが明らかとなった。一方、経細胞路の透過性は薬物の親油性に左右されるが、小腸と大腸では吸収の親油性との関係に違いが見られた。3種のアシルサリチル酸を用いて吸収実験を行った結果、小腸部の方が大腸部より極めて吸収がよく、大腸の中では結腸の方が直腸より吸収が良好であった。これは大腸よりも小腸、特に小腸上部では吸収表面積が大きいことが寄与していると考えられる。また、どの部位でもアシル鎖が長くなるに従って吸収が良好になっているが、小腸部では親油性が増しても、吸収が頭打ちになった。そこで、親油性の異なる2種類の薬物acetaminophenとindomethacinの吸収を評価したところ、高親油性薬物の場合には小腸と大腸で吸収速度に差がなくなることが分かった。これらの現象は粘膜表面近傍に存在する非攪拌水層の抵抗の部位差で説明することができた。大腸粘膜のバリアー能について、透過し得る分子サイズの小腸粘膜との差を明らかにするため、水溶性化合物で分子量の異なるpolyethylene glycol(PEG)300,600及び1000を用いて、in situループ法によりラット小腸及び大腸からの吸収を検討した。用いたPEGはそれぞれ分子量300,600及び1000を中心に、重合度の異なる各種分子量のPEGの混合物である。その結果、小腸では分子量600付近まで吸収が認められるのに対して、大腸では分子量300以上では吸収は困難であった。これらのPEGについては細胞間隙を通るいわゆる経細胞側路が考えられるが、両部位での透過可能な分子量すなわち分子サイズの差は細胞間隙の大きさの違いに基づくものと思われる。この点については電気生理学的解析によっても裏付けられた。また、細胞間隙の帯電状態の違いも示唆されたが、細胞間隙に作用する吸収促進剤EDTAの作用はその帯電状態への影響も含むことが明らかとなった。一方、経細胞路の透過性は薬物の親油性に左右されるが、小腸と大腸では吸収の親油性との関係に違いが見られた。3種のアシルサリチル酸を用いて吸収実験を行った結果、小腸部の方が大腸部より極めて吸収がよく、大腸の中では結腸の方が直腸より吸収が良好であった。これは大腸よりも小腸、特に小腸上部では吸収表面積が大きいことが寄与していると考えられる。また、どの部位でもアシル鎖が長くなるに従って吸収が良好になっているが、小腸部では親油性が増しても、吸収が頭打ちになった。そこで、親油性の異なる2種類の薬物acetaminophenとindomethacinの吸収を評価したところ、高親油性薬物の場合には小腸と大腸で吸収速度に差がなくなることが分かった。これらの現象は粘膜表面近傍に存在する非攪拌水層の抵抗の部位差で説明することができた。
KAKENHI-PROJECT-05671782
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非等方格子QCDによるB中間子の物理の数値的研究
平成14年度は、B中間子の物理の数値計算に用いるための非等方格子QCD作用の理論的研究を行った。具体的には、いくつかの非等方格子フェルミオン作用について摂動の1次までの計算を行うことにより、重いボトムクォークに対する非等方格子の方法の有効性を調べた。本研究では、従来良く用いられていたクローバー型の作用と我々により新たに提案されたD234型の作用の2つを用いた。クローバー型の作用では非等方格子上のボトムクォークに対し、非物理的な状態が余分に現れてしまうという問題があるが、D234型作用では、新たな相互作用項を含むためこの問題は回避できる。私は摂動0次でクォークのエネルギー運動量関係式を計算することにより、このことを確認した。従ってD234型作用はボトムクォークを含むB中間子の物理の数値計算に用いることができる。次に、私は上の二つの非等方格子フェルミオン作用について、フェルミオンの静止質量と運動学的質量を摂動の1次までで計算し、これによりフェルミオン質量に依存した格子離散化の系統誤差を見積もった。この計算の結果、クローバー型作用とD234型作用のいずれの場合でも、フェルミオン質量に依存した系統誤差は非等方格子では非常に小さいことがわかった。この結果は、非等方格子の方法を用いれば系統誤差を抑えつつ、B中間子の物理量を精度良く測定できることを示唆している。平成14年度は、B中間子の物理の数値計算に用いるための非等方格子QCD作用の理論的研究を行った。具体的には、いくつかの非等方格子フェルミオン作用について摂動の1次までの計算を行うことにより、重いボトムクォークに対する非等方格子の方法の有効性を調べた。本研究では、従来良く用いられていたクローバー型の作用と我々により新たに提案されたD234型の作用の2つを用いた。クローバー型の作用では非等方格子上のボトムクォークに対し、非物理的な状態が余分に現れてしまうという問題があるが、D234型作用では、新たな相互作用項を含むためこの問題は回避できる。私は摂動0次でクォークのエネルギー運動量関係式を計算することにより、このことを確認した。従ってD234型作用はボトムクォークを含むB中間子の物理の数値計算に用いることができる。次に、私は上の二つの非等方格子フェルミオン作用について、フェルミオンの静止質量と運動学的質量を摂動の1次までで計算し、これによりフェルミオン質量に依存した格子離散化の系統誤差を見積もった。この計算の結果、クローバー型作用とD234型作用のいずれの場合でも、フェルミオン質量に依存した系統誤差は非等方格子では非常に小さいことがわかった。この結果は、非等方格子の方法を用いれば系統誤差を抑えつつ、B中間子の物理量を精度良く測定できることを示唆している。
KAKENHI-PROJECT-02J04280
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先天性副腎リポイド過形成の病因の同定
先天性副腎リポイド過形性は、副腎・性腺ステロイドホルモンの合成初期段階の異常で全てのステロイドホルモン分泌不全を来す病因不明の疾患である。この酵素はP450sccならびにアドレノドキシン還元酵素・アドレノドキシンより構成されるとミトコンドリア内膜酵素である。本症は胎児期性腺の男性ホルモン産成不全のため全て性表現形が女性となるが、46、XYの染色体型では異所性精巣を持ち治療摘出する必要がある。精巣からRNAを抽出しP450sccのcDNAをRT-PCR法で採取し精製DNAを直接塩基配列法により決定したが、正常人にも見られる1アミノ酸置換のみ検出された。さらにWesternblot法でP450sccの蛋白発現は正常に認められた。以上から予想に反して我々の検討した症例ではP450sccは正常であった(UCLA,Millerならびに九州大学第三内科の症例も同様所見)。さらにアドレノドキシン還元酵素の蛋白発現を見た所これが我々の例では著しく低い事を見いだした。(精巣ミトコンドリアの抽出ならびに酵素活性の測定・アドレノドキシン還元酵素添加による酵素活性の変動ならびにミトコンドリア内膜の脂肪酸構成を検討した(中村学園大学原孝之博士と共同)。この結果脂肪酸構成が症例では正常と異なる事(lysophosphatidylcholine=LPCがコントロールの6倍高い)が判明した。LPCの増加でこの酵素活性が低下する事がすでに示されている(J.Biol Chem261:14118-24、86/Biochemistry 25:6446-6466,86)。ミトコンドリア脂肪酸の異常が他の細胞で認められるかどうかを検討するため、症例リンパ球をセルライン化した。このミトコンドリアについて検討中である。脂肪酸構成を規定する酵素に的を絞り既に得られた精巣cDNAから解析する事で病因に結びつくと考え研究を遂行中である。先天性副腎リポイド過形性は、副腎・性腺ステロイドホルモンの合成初期段階の異常で全てのステロイドホルモン分泌不全を来す病因不明の疾患である。この酵素はP450sccならびにアドレノドキシン還元酵素・アドレノドキシンより構成されるとミトコンドリア内膜酵素である。本症は胎児期性腺の男性ホルモン産成不全のため全て性表現形が女性となるが、46、XYの染色体型では異所性精巣を持ち治療摘出する必要がある。精巣からRNAを抽出しP450sccのcDNAをRT-PCR法で採取し精製DNAを直接塩基配列法により決定したが、正常人にも見られる1アミノ酸置換のみ検出された。さらにWesternblot法でP450sccの蛋白発現は正常に認められた。以上から予想に反して我々の検討した症例ではP450sccは正常であった(UCLA,Millerならびに九州大学第三内科の症例も同様所見)。さらにアドレノドキシン還元酵素の蛋白発現を見た所これが我々の例では著しく低い事を見いだした。(精巣ミトコンドリアの抽出ならびに酵素活性の測定・アドレノドキシン還元酵素添加による酵素活性の変動ならびにミトコンドリア内膜の脂肪酸構成を検討した(中村学園大学原孝之博士と共同)。この結果脂肪酸構成が症例では正常と異なる事(lysophosphatidylcholine=LPCがコントロールの6倍高い)が判明した。LPCの増加でこの酵素活性が低下する事がすでに示されている(J.Biol Chem261:14118-24、86/Biochemistry 25:6446-6466,86)。ミトコンドリア脂肪酸の異常が他の細胞で認められるかどうかを検討するため、症例リンパ球をセルライン化した。このミトコンドリアについて検討中である。脂肪酸構成を規定する酵素に的を絞り既に得られた精巣cDNAから解析する事で病因に結びつくと考え研究を遂行中である。
KAKENHI-PROJECT-06670769
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06670769
乳癌におけるゲノム不安定性を利用した新規診断法・治療法の開発
1ゲノム不安定性(GIN)に起因する腫瘍内不均一性をsurrogate markerにすることにより、ER陽性/HER2陰性乳癌の高リスク症例を層別することが可能であった。また、FFPE標本を用いたアレイCGHの結果を予測する因子として、dsDNA比率が有用であることを発見した。2術前診断が困難な乳腺嚢胞内腫瘍について、針細胞診の手技で採取したDNAをアレイCGHで解析することにより(FNAB-aCGH)、GINによる術前良悪性診断を行う手法を開発した。3PARP阻害薬のOlaparibと相同組み替え阻害作用のあるGimeracilの併用は、GINの高い乳癌細胞株において増殖抑制効果を示した。本研究の目的は、ゲノム不安定性の定量的測定の実地臨床応用をめざし、乳癌の新規診断法及び治療法を開発することにある。具体的な研究項目は以下の3項目である。1) HR陽性/HER2陰性乳癌における、ゲノム不安定性を指標にしたハイリスク症例の層別化2)診断困難な乳腺腫瘍に対する、ゲノム不安定性を指標にした良悪性鑑別3)細胞株・動物モデルを用いた、乳癌のゲノム不安定性を標的とした薬剤治療法の開発1)に関して、昨年から引き続きHR陽性/HER2陰性乳癌の臨床病理学的検討を行い、ゲノム不安定性を背景としたHER2遺伝子増幅の腫瘍内不均一性に注目し、増殖マーカー(Ki67 Labeling index等)および予後との関連について全国学会で報告した。この知見は国際学会でも報告予定である。また、多数のホルマリン固定標本からDNAを抽出し、アレイCGH解析を行なう過程で、アレイCGH解析における品質予測因子を同定したが、この成果が学術雑誌に掲載された。この報告により、困難とされるホルマリン固定標本を用いたaCGHについての品質管理が可能となり、膨大なアーカイブを活用可能となる。2)に関して、ゲノム不安定性を指標にすることによって針細胞診等の微量な試料から良悪性鑑別を行う新規診断法(FNAC-aCGH法)についての前向き観察研究を行ってきた。FNAC-aCGHにおけるプロファイルと主腫瘍から抽出したDNAを用いたaCGHのプロファイルとの比較では、ゲノム上のコピー数が一致した領域の割合は平均97.0% (100-93.1%)と高率であった。また、悪性腫瘍は良性腫瘍と比べてゲノム上のコピー数変化を来した領域が有意に大きく、高いゲノム不安定性を示した(13.0% vs 3.4%, P=0.005)。鑑別の難しい乳腺腫瘍の良悪性診断を分子遺伝学的手法を用いて行った初めての報告であり、国際学会にて成果を報告し、論文は学術雑誌に掲載された。1ゲノム不安定性(GIN)に起因する腫瘍内不均一性をsurrogate markerにすることにより、ER陽性/HER2陰性乳癌の高リスク症例を層別することが可能であった。また、FFPE標本を用いたアレイCGHの結果を予測する因子として、dsDNA比率が有用であることを発見した。2術前診断が困難な乳腺嚢胞内腫瘍について、針細胞診の手技で採取したDNAをアレイCGHで解析することにより(FNAB-aCGH)、GINによる術前良悪性診断を行う手法を開発した。3PARP阻害薬のOlaparibと相同組み替え阻害作用のあるGimeracilの併用は、GINの高い乳癌細胞株において増殖抑制効果を示した。本年度は試料の収集が想定以上に進み、来年度で予定していた2), 3)の研究項目についても前倒しして行うことにした。1) HR陽性/HER2陰性乳癌の臨床病理学的検討を行い、その特徴を全国学会で報告した。また、多数のFFPE標本からDNAを抽出してアレイCGH解析を行なう過程で、アレイCGH解析における品質予測因子を同定した。全国学会・国際学会にて発表し、成果は学術雑誌に掲載予定である。この知見により、困難とされるFFPE標本を用いたaCGHについての品質管理が可能となり、膨大なアーカイブを活用可能となる。2)GINを指標にした乳腺腫瘍の新規診断法(FNAC-aCGH法)についての検討を行った(前向き観察研究)。FNAC-aCGHにおけるプロファイルと主腫瘍からのものの比較では、コピー数一致領域は平均97.0% (100-93.1%)と高率であった。また、悪性腫瘍は良性腫瘍と比べてコピー数変化領域が有意に大きく、高いGINを示した(13.0% vs 3.4%, P=0.005)。成果は全国学会にて報告し、学術雑誌に投稿中である。本手法により、診断困難な乳腺腫瘍においても非侵襲的な良悪性鑑別の可能性が示唆された。3)Subtypeの異なる乳癌細胞株(MCF7, MDA-MB436, MDA-MB468)においてGINをターゲットとした合成致死を評価すべく、OlaparibとGimeracilの相乗効果を検討した。GINの高いMDA-MB436 (TN, BRCA1 mut+)ではOlaparibのみで増殖抑制を認め、MDA-MB468 (TN, p53 mut+)では併用において増殖抑制を認めた。MCF7では併用においても増殖抑制は認めなかった。今回の結果より、GINを標的とした治療法を開発すれば、副作用が少なく、癌にのみ効果のある治療となる可能性が示唆された。全体的に、想定以上の進捗状況である。
KAKENHI-PROJECT-24791382
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24791382
乳癌におけるゲノム不安定性を利用した新規診断法・治療法の開発
外来および手術症例の増加により試料の収集が予想以上に進んだこと、研究費の前倒しによりマイクロアレイ等の実験器具を揃えることができたことが原因に挙げられる。1) HR陽性/HER陰性乳癌における再発リスクとGINの関係をアレイCGHにより定量化してきたが、多数サンプルでこの検討を行うことはリソース的に難しく、臨床応用への障害となる。よって、GINの定量解析において、アレイCGHに替わる、より安価・簡便なsurrogate markerの探索を行う予定である。2)既に予定の20症例についての検討が終了し、成果を学術雑誌に投稿中である。3)乳癌細胞株をサブタイプ別に分類し、本年度使用した3つの株以外の細胞株についての検討を行いたい。また、乳癌細胞株をヌードマウスに移植し、PARP阻害剤または/およびGimeracilを腹腔内投与する。マウスの生存、腫瘍径、腫瘍重量、肺転移個数等を調べることにより、DNA修復酵素阻害剤のin vivoでの乳癌増殖抑制効果を検討する。1) GINのsurrogateとして我々が注目しているmarkerは、Ki67とTP53の共発現である。Ki67は増殖期に入っている細胞の核に発現する増殖マーカーであり、TP53はゲノムの安定性維持に係る癌抑制遺伝子p53の産物である。この二つのタンパクが同一細胞で共発現している場合、ゲノムの安定性維持機構の破綻が明らかであり、その細胞のGINは高いと考えられる。アレイCGH解析を行った症例について、Ki67/TP53の蛍光二重染色との相関を明らかにし、surrogate markerとしての可能性を探る。よって、蛍光免染に関する器材が必要となる。2)英文校正、雑誌掲載に関する費用が必要となる。3)細胞培養に関する器材と動物実験に関する器材に使用予定である。
KAKENHI-PROJECT-24791382
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24791382
社会変動分析の方法論的研究と理論的展開
社会変動分析の方法論的課題として、1.自然主義-反自然主義2.ミクロ-マクロ3.歴史主義-反歴史主義の3つに注目し、それぞれ検討した。まず1.自然主義(自然主義的な立場)-反自然主義(反自然主義的な立場)、2.ミクロ(方法論的個人主義)-マクロ(方法論的集合主義)の問題を解決するために、社会変動分析において「意味」の問題を考えることが重要であること.「意味」の問題を考える糸口として・ギデンズの提唱するプラクティス(practice)があることを明らかにした。プラクティスとは慣例的行動もしくは日常行動と訳されるものであり、我々の日常生活の中に沈澱した行動に注目して、社会制度や社会構造の成立を説明しようとするものである。プラクティスは、これまでの社会学の概念である集合意識、エートス、社会的性格と重なりあうものであることを明らかにした。つぎに3.歴史主義-反歴史主義については、歴史的説明の代表的な例である趨勢命題(産業化、官僚制化、合理化)を理論的説明として精綴化していく方法を検討した。社会変動論の代表として市民社会論と近代化論があるが、本研究ではとりわけ市民社会論に焦点を当てて、西欧社会で市民社会論が登場してきた歴史的背景と、日本の社会科学の展開に市民社会論がはたした役割を考察した。市民社会論と近代化論はともにモダンの社会変動論であるため、近年の冷戦構造の終〓と世界社会化の中では、それなりの限界を有するものであるが、ポストモダンの社会変動論として再生していく方法を研究した。社会変動分析の方法論的課題として、1.自然主義-反自然主義2.ミクロ-マクロ3.歴史主義-反歴史主義の3つに注目し、それぞれ検討した。まず1.自然主義(自然主義的な立場)-反自然主義(反自然主義的な立場)、2.ミクロ(方法論的個人主義)-マクロ(方法論的集合主義)の問題を解決するために、社会変動分析において「意味」の問題を考えることが重要であること.「意味」の問題を考える糸口として・ギデンズの提唱するプラクティス(practice)があることを明らかにした。プラクティスとは慣例的行動もしくは日常行動と訳されるものであり、我々の日常生活の中に沈澱した行動に注目して、社会制度や社会構造の成立を説明しようとするものである。プラクティスは、これまでの社会学の概念である集合意識、エートス、社会的性格と重なりあうものであることを明らかにした。つぎに3.歴史主義-反歴史主義については、歴史的説明の代表的な例である趨勢命題(産業化、官僚制化、合理化)を理論的説明として精綴化していく方法を検討した。社会変動論の代表として市民社会論と近代化論があるが、本研究ではとりわけ市民社会論に焦点を当てて、西欧社会で市民社会論が登場してきた歴史的背景と、日本の社会科学の展開に市民社会論がはたした役割を考察した。市民社会論と近代化論はともにモダンの社会変動論であるため、近年の冷戦構造の終〓と世界社会化の中では、それなりの限界を有するものであるが、ポストモダンの社会変動論として再生していく方法を研究した。
KAKENHI-PROJECT-05610148
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05610148
町田嘉章の民謡調査にみる民謡調査史の基礎的研究
本研究は、町田嘉章(佳聲)の民謡調査を取り上げ、戦前から戦後にかけての民謡研究の状況を明らかにすることを目的とし、未整理だった町田の遺稿の複写と整理を行った。町田嘉章(佳聲)(1888-1981)は日本民謡の調査者であるとともに、新民謡の作曲家、邦楽評論家としても活躍した人物である。彼の遺稿のうち戦前の採集手帳と町田が編纂した出版物を照合し、町田の初期の民謡調査の足跡を分析した。本研究は、町田嘉章(佳聲)の民謡調査を取り上げ、戦前から戦後にかけての民謡研究の状況を明らかにすることを目的とし、以下の調査研究を行った。町田の蔵書を所蔵している(財)日本民謡協会の協力を得て、町田の採集手帳および、未整理の草稿・楽譜・手紙等の撮影、出版原稿の複写を行った。遺稿資料を整理した結果、当初の予想よりはるかに多い2万枚を超え、その内容も民謡調査に関わるものだけでなく、戦前の新日本音楽運動に関する資料、町田の作曲作品、邦楽資料まで多岐にわたっていることが分かった。採集手帳のうち戦前分の調査旅程、収集曲、その他の情報をリスト化し、町田が編纂した『日本民謡集成』と『日本民謡大観』(全9巻の一部)の収録曲、その他の情報もリスト化した。リスト化した情報のうち、昭和14年から16年分を照合し、一次資料(採集手帳)がどの程度、どのように二次資料(『日本民謡集成』等の出版物)で整理・分類されていったかを確認した。照合作業が終わった調査資料をもとに、町田の初期の民謡調査の足跡を分析した論文を出版した。併せて、民謡調査の成果を理論化する過程を民謡理論史としてまとめた論文も出版した。また、町田の未整理遺稿の調査の過程で、大量の楽譜が出てきた。これには、民謡の採譜と、町田や同時代人が作曲した新民謡の草譜の2種類がある。これらは、戦前の新日本音楽運動において、作曲家が日本民謡を採譜することで、新しい音楽をつくる参考にしていた痕跡といえる。町田の伝記によると、第二次世界大戦時の空襲で多くの資料が消失したとされているが、未整理資料の調査の結果、戦前の資料の一部を発見した。発見された戦前の資料を今後、吟味することによって、特に、町田の戦前の調査の詳細や『日本民謡大観』の初期の調査(昭和16年以降)の状況の一部が明らかになると思われる。本研究は、町田嘉章(佳聲)の民謡調査を取り上げ、戦前から戦後にかけての民謡研究の状況を明らかにすることを目的とし、未整理だった町田の遺稿の複写と整理を行った。町田嘉章(佳聲)(1888-1981)は日本民謡の調査者であるとともに、新民謡の作曲家、邦楽評論家としても活躍した人物である。彼の遺稿のうち戦前の採集手帳と町田が編纂した出版物を照合し、町田の初期の民謡調査の足跡を分析した。本研究は、町田嘉章(佳聲)の民謡調査を取り上げ、戦前から戦後にかけての民謡研究の状況を明らかにし、再評価することを目的とする。23年度は以下の調査研究を行った。(1)一次資料の収集:町田の蔵書を所蔵・公開している(財)日本民謡協会の協力を得て、町田のフィールドノート(11冊)と手帳(4冊)資料の撮影(ファイル数1,261)および、未整理の草稿・手紙等の撮影(ダンボール6箱、ファイル数7743)、出版原稿の複写を行った。作業の過程で、予想よりもはるかに未整理草稿が多いことが判明し、作業は完了しなかった。(2)収集した資料の整理:フィールドノートのうち戦前分の調査旅程、収集曲、その他の情報をリスト化、町田が編纂した『日本民謡集成』と『日本民謡大観』(全9巻の一部)の収録曲、その他の情報をリスト化した。(1)の収集調査が完了しなかったため、資料整理も完了しなかった。他方、次年度の計画を一部前倒しして行った。(3)情報の照合:(2)で整理した情報の一部を照合し、一次資料(フィールドノート)がどの程度、どのように二次資料(『日本民謡集成』等の出版物)で整理・分類されていったかを確認した。(4)成果の出版:収集と照合作業が終わった昭和14年から16年にかけての調査資料をもとに論文を出版した。町田の伝記によると、第二次世界大戦時の空襲で多くの資料が消失したとされているが、未整理資料の調査の結果、戦前の資料の一部を発見した。発見された戦前の資料を今後、吟味することによって、特に、町田の戦前の調査の詳細や『日本民謡大観』の初期の調査(昭和16年以降)の状況の一部が明らかになると思われる。作業の過程で、予想よりもはるかに未整理草稿が多いことが判明し、収集・整理作業は完了しなかったが、収集・整理が終わった部分については、次年度の作業を前倒しして、二次資料との照合作業と研究成果の執筆・出版を行ったため、おおむね順調に進展していると評価できる。前年度に完了しなかった作業を完了させるとともに、次年度の計画を遂行する。次年度に完了しなかった作業を行うために、研究費は主に、旅費、複写費に使用する。また、収集した資料の容量が当初の予定よりも大きくなることが予想されるため、それに見合ったノートPCの購入とハードディスク等の物品費にも使用する。
KAKENHI-PROJECT-23652034
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線虫の神経回路レベルで成立する嗅覚順応の分子メカニズム
線虫の神経回路レベルで成立する嗅覚順応において、Ras-MAPK経路とGLR-1グルタミン酸レセプターが介在神経で重要な働きをすることが、以前の研究によりわかってきた。さらにin vitroリン酸化実験により、MAPKがGLR-1の616番セリンを直接リン酸化することが示された。それらの結果を踏まえ、本年度はGLR-1グルタミン酸レセプターのリン酸化に焦点を当てて解析を行い、以下の成果を得ることができた。1. 616番セリンをアラニンに置換したGLR-1を介在神経に発現させても、glr-1変異体の順応異常が回復しなかったことから、この部位のリン酸化が順応に必要であることがわかった。2. 616番セリンのリン酸化を認識する、抗リン酸化型GLR-1抗体を作製した。3.免疫組織染色実験を行い、順応が成立する条件の匂い刺激を与えたときに、介在神経においてリン酸化GLR-1の染色が観察されることを見出した。また、生体内でRasの活性化をライブイメージングできる蛍光分子Raichu-Rasの、線虫神経系への導入を行った。まず、匂い刺激に応答してRasが活性化することがわかっている嗅覚神経AWCにRaichu-Rasを発現させた株を確立した。匂い刺激を与えてRaichu-Rasの蛍光変化を観察したところ、匂い刺激から数秒後にRasが活性化し、さらに数秒後に不活性化することがわかった。これらの結果は、Rasの活性化を生体内で観察した初の報告である。また、嗅覚神経AWCでは匂い刺激をなくしたときにカルシウムイオン濃度が上昇することが報告されている(Sreekanth et al,. Nature, 450, 63-70, 2007)。このことから、カルシウムイオン濃度の低下に伴ってRasが活性化する可能性が示唆された。線虫の神経回路レベルで成立する嗅覚順応において、Ras-MAPK経路が介在神経で重要な働きをしている。また、GLR-1グルタミン酸レセプターがこの嗅覚順応に関わっていることも既にわかっている。そこで、本年度はRas-MAPK経路とGLR-1グルタミン酸レセプターとの関係に焦点を当てて解析を行い、以下の成果を得ることができた。1.まず、免疫沈降により線虫体内からGLR-1タンパクを安定して得られる系を確立した。2.そのGLR-1タンパクと活性化型MAPキナーゼを用いてin vitroリン酸化実験を行い、GLR-1がMAPKにより直接リン酸化を受けるという結果を得ることができた。3.MAPKがリン酸化する部位を同定するために、候補アミノ酸である616番セリンをアラニンに置換した改変型GLR-1を作製した。4.この改変型GLR-1を線虫の神経に発現させ、免疫沈降により取得した。次に、in vitroリン酸化実験を行ったところ、改変型GLR-1はMAPKによるリン酸化が約1/10に減少するという結果が得られた。これらの結果は、MAPKがGLR-1の616番セリンをリン酸化することにより、その活性や局在を制御する可能性を示唆している。グルタミン酸レセプターがMAPKにより直接制御を受ける例は、他の生物を含めて知られておらず、新規性の高い知見であると考えられる。また、この嗅覚順応に関わる新規因子を探索することを目的として、嗅覚順応異常変異体のスクリーニングを行った。その結果、候補因子を複数得ることに成功した。線虫の神経回路レベルで成立する嗅覚順応において、Ras-MAPK経路とGLR-1グルタミン酸レセプターが介在神経で重要な働きをすることが、以前の研究によりわかってきた。さらにin vitroリン酸化実験により、MAPKがGLR-1の616番セリンを直接リン酸化することが示された。それらの結果を踏まえ、本年度はGLR-1グルタミン酸レセプターのリン酸化に焦点を当てて解析を行い、以下の成果を得ることができた。1. 616番セリンをアラニンに置換したGLR-1を介在神経に発現させても、glr-1変異体の順応異常が回復しなかったことから、この部位のリン酸化が順応に必要であることがわかった。2. 616番セリンのリン酸化を認識する、抗リン酸化型GLR-1抗体を作製した。3.免疫組織染色実験を行い、順応が成立する条件の匂い刺激を与えたときに、介在神経においてリン酸化GLR-1の染色が観察されることを見出した。また、生体内でRasの活性化をライブイメージングできる蛍光分子Raichu-Rasの、線虫神経系への導入を行った。まず、匂い刺激に応答してRasが活性化することがわかっている嗅覚神経AWCにRaichu-Rasを発現させた株を確立した。匂い刺激を与えてRaichu-Rasの蛍光変化を観察したところ、匂い刺激から数秒後にRasが活性化し、さらに数秒後に不活性化することがわかった。これらの結果は、Rasの活性化を生体内で観察した初の報告である。また、嗅覚神経AWCでは匂い刺激をなくしたときにカルシウムイオン濃度が上昇することが報告されている(Sreekanth et al,. Nature, 450, 63-70, 2007)。このことから、カルシウムイオン濃度の低下に伴ってRasが活性化する可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-18700319
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自然免疫によるウィルス感染細胞認識機構の解明
本研究では、NK細胞等の自然免疫細胞が発現するペア型レセプターによるウィルス感染細胞認識機構を明らかにし、自然免疫細胞による新たなウィルス感染制御機構を解明することを目的に研究を進めた。その結果、新たな活性化ペア型レセプタークローニング方法であるFlag-trap法を用いることにより、新たに、新規CD200レセプターやPILRといった新たな活性化ペア型レセプターをクローニングした。CD200レセプターに関しては、ある種のヘルペスウィルスにそのリガンドが発現していることが明らかになり、実際、ウィルスCD200発現細胞は、NK細胞に抵抗性を示したことから、ウィルスCD200様分子は、ウィルスの持つ免疫逃避機構の一つに関与していると考えられた。また、PILRのリガンドとして新規分子PILR-Lをクローニングした。PILR-Lは、2B4やEL-4といったIL-4産生細胞に高い発現が認められた他、Th2などのT細胞に発現が認められ、T細胞の活性化制御分子として重要であると考えられた。さらに、結核菌のPE-PGRSと約20%の相同性を示したことから、PILRは自然免疫による結核菌の認識にも関与している可能性が考えられた。以上より、本研究により明らかにした新たな活性化ペア型レセプターは、自然免疫による病原体の新たな認識機構に関与していることが考えられた(Shiratori et al.J.Exp.Med.2004)。今後、これらの、新たなレセプターやリガンドのノックアウトマウスを作成することにより、これらの分子、自然免疫における機能がさらに解明されると思われ、ワクチン開発や、感染防御方法の開発に貢献すると思われる。本研究では、NK細胞等の自然免疫細胞が発現するペア型レセプターによるウィルス感染細胞認識機構を明らかにし、自然免疫細胞による新たなウィルス感染制御機構を解明することを目的に研究を進めた。その結果、新たな活性化ペア型レセプタークローニング方法であるFlag-trap法を用いることにより、新たに、新規CD200レセプターやPILRといった新たな活性化ペア型レセプターをクローニングした。CD200レセプターに関しては、ある種のヘルペスウィルスにそのリガンドが発現していることが明らかになり、実際、ウィルスCD200発現細胞は、NK細胞に抵抗性を示したことから、ウィルスCD200様分子は、ウィルスの持つ免疫逃避機構の一つに関与していると考えられた。また、PILRのリガンドとして新規分子PILR-Lをクローニングした。PILR-Lは、2B4やEL-4といったIL-4産生細胞に高い発現が認められた他、Th2などのT細胞に発現が認められ、T細胞の活性化制御分子として重要であると考えられた。さらに、結核菌のPE-PGRSと約20%の相同性を示したことから、PILRは自然免疫による結核菌の認識にも関与している可能性が考えられた。以上より、本研究により明らかにした新たな活性化ペア型レセプターは、自然免疫による病原体の新たな認識機構に関与していることが考えられた(Shiratori et al.J.Exp.Med.2004)。今後、これらの、新たなレセプターやリガンドのノックアウトマウスを作成することにより、これらの分子、自然免疫における機能がさらに解明されると思われ、ワクチン開発や、感染防御方法の開発に貢献すると思われる。
KAKENHI-PROJECT-15019014
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地域医療におけるリスク・ベネフィットコミュニケーション:薬局情報支援モデルの構築
医薬品の適正な使用に資するため,薬物治療に関する適正な情報を提供する必要があるが,そのための教育的なアウトリーチ手法として,エビデンスに基づいたAcademic Detailing(AD)活動が注目されている.薬局等における薬剤師の情報活動についてアンケート調査を行った結果,エビデンスに基づいた情報の入手や活用が十分ではなかった.今回,国内外の診療ガイドラインやEBM(根拠に基づく医療)関連資料を参考に,ADのための情報基盤サイトを構築した。個別の医薬品情報や,薬物治療に関しては,日本版の資材を開発した.また,薬局で使用できる漢方薬のセルフチェックカードを作成し資材としての有用性を評価した.地域医療の重要な拠点として、薬局は、要指導医薬品・一般用医薬品(OTC)、医薬部外品や健康食品の販売から在宅療養支援活動までを担っており、薬局に対する期待は高まっている。しかしながら、実際には、患者・生活者および薬剤師やその他の医療従事者に対する中立的な情報提供支援体制は十分とは言えないのが現状である。本研究では、わが国における地域医療を担う薬局および患者・生活者に対する情報支援サービスの体系的な標準モデルシステム構築を目的として、以下の研究を有機的に連携して実施した。薬局における情報支援モデルである薬局版アカデミックディテーリングについては、中立的な情報支援のモデルとして、websiteのプロトタイプを構築した。代表的な疾患として糖尿病を取り上げ、関連する医薬品情報についても、各国の評価情報を中心に作成した。薬局での需用者の選択に資するシェルフトーカー及び薬剤師用資材については、18種の一般用漢方製剤について、症状、体質及び体調等を分かり易い言葉とし、また、代替薬を示す等の工夫を加え試作した。これを踏まえ、薬局に対するOTC販売状況に関するアンケートは、来年度のシェルフトーカーのパイロットスタディ実施後に、シェルフトーカーに関する事項とともに実施することとした。薬局と医療機関の連携による糖尿病治療支援を行う日本型アッシュビルプロジェクトは、一地域で12ヶ月の支援期間で実施した。薬局における支援の品質は、薬剤師への研修とその修了確認で担保し、患者満足度により品質を評価した。薬局情報をもとに地域住民の健康状態を把握するヘルスヴィジランスについては、インフルエンザ薬の処方数の変動から感染流行を把握する手法について検討した。本年度は、患者向け資材の開発、医療者向けの資材の開発並びにそのためのサイトを再構築し更新した。また、一般消費者に対する医薬品情報の利活用に関する調査を行った。患者向け資材として、適正使用の観点から医療用医薬品の患者向けの説明書を作成し、その理解度を測るため一般の人にユーザーテストを行い、アンケート調査を行いその評価方法について検討した。また、セルフメディケーションに使用される一般用漢方製剤(OTC漢方薬)の選択には、体質、症状、体調を勘案し選択する必要がある。このため、需要者への教育と薬剤師などの専門家への相談を促すためのツールとして、「セルフチェックカード(SCC)」を作成した。SCCには、必要に応じ平易な言葉で、また、高齢者にも読みやすい文字サイズで記載した。かぜ、咳・のど、肩こり・関節痛・神経痛、尿の悩み、婦人の悩みの5領域から18処方のSCCを作成した。医療者、薬剤師向けの情報として、腎疾患や精神疾患に関連した各種ガイドラインや治療に関する最新のエビデンスの情報収集を行い、具体的には、腎疾患について、NICE等のガイドラインに加えて、最新の文献情報について精査し、情報の整備を行った。統合失調症の薬物治療の中でも、薬物相互作用に関しての最新のエビデンス収集と精査を行い、精神科診療医・薬剤師への情報提供を行った。うつ病や双極性障害、認知症等の他の精神疾患についてのガイドライン情報の精査と最新のエビデンスの収集を開始した。さらに、オーストラリアの患者向けの医療情報基盤であるNPS MedicineWiseは政府から独立した機関であり、アカデミックディテーリング活動を通してエビデンスに基づいた中立的な情報提供を行い医薬品の適正使用を推進している。今回、NPSを訪問し、その運営状況などについて調査した。一般の人の医薬品情報に関する利活用に関する調査を行い、医療者向け医療用医薬品の患者向け情報については、作成したモデル例に対しユーザーテストを実施した。そのためのサイトもリニューアルした。患者向け資材の慢性腎臓病や精神疾患については、疾患と治療に関する中立的な評価を行っており、海外のガイドラインや診療・治療アルゴリズムに基づく情報構築を進めている。また、「セルフチェックカード(SCC)」を必要に応じ平易な言葉で、また、高齢者にも読みやすい文字サイズで1かぜ、2咳・のど、3肩こり・関節痛・神経痛、4尿の悩み、5婦人の悩みの5領域から18処方のSCCを作成したこと。このような状況からおおむね順調に進展している。H28年度は、医療従事者および患者のための情報基盤サイト(Academic Detailingのための評価情報ー基盤疾患と医薬品情報ー)を拡充し、新規情報の追加を行った。オーストラリアNPS(National Prescribing Service)との情報提携、特にChoosing wisely活動について広報活動を行った。また、薬局薬剤師および一般消費者に対し、医薬品、OTCおよび健康食品の情報提供に関する実態調査を行い、医療者と患者のニーズ関する比較を行った。情報サイト(http://www.ad-di.jp/)の構築にあたっては、感染症、神経疾患や精神疾患、腎疾患に関連した各種ガイドラインや治療に関する最新のエビデンスの情報収集を行った。また、性差医療に関する情報も同様に集積し、サイトに掲載した。具体的には、認知症や統合失調症、うつ病に関する最新のエビデンスを収集して精査後、精神科診療医・薬剤師への情報提供のみならず、一般消費者へも平易な用語を用いて発信した。
KAKENHI-PROJECT-26350872
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地域医療におけるリスク・ベネフィットコミュニケーション:薬局情報支援モデルの構築
また、実験例や他の報告などから女性では薬物副作用や生活習慣病のリスクが女性では高いことを見出し、これらの知見を情報発信した。さらに、薬剤性腎障害時の治療方針の標準化を目指して、「がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン」の作成委員として、ガイドラインを作成し、発表した。薬剤師の情報提供と患者のニーズ関する比較調査では、薬剤師が医薬品の情報提供で重きを置いていることと一般人の要望することには殆ど差はなかった。一般消費者はOTC医薬品の説明が十分と答えた人、薬剤師も情報提供ができたと思う人はどちらも3割を超える程度であった。健康食品の情報が十分と答えたのは、一般消費者は2割弱、薬剤師は1割弱にとどまった。OTC医薬品および健康食品に関する確かな情報源の確保やさらなる情報提供が望まれる。一名の分担研究者が継続不可能となった。2名の分担研究者が熊本大学のため、熊本地震の影響を受けた。また、情報基盤サイトの構築に時間を要した。H29年度は、各種疾患に関連した各種ガイドラインや治療に関する最新のエビデンスの情報収集を行い、これらの情報をホームページ等で掲載し、社会へ発信した。また、熊本県薬剤師会と株式会社ファーマダイワの薬局薬剤師を対象に、医薬品情報活動の現状とAcademic Detailingサイト構築に向けたweb調査を実施した。具体的には、高血圧や脳血管障害、てんかん、片頭痛、感染症、慢性腎臓病等のガイドラインや最新のエビデンスに関する情報を収集して精査後、薬剤師への情報提供のみならず、一般住民へも平易な用語を用いて発信した。また、上記アンケート結果、101名の薬剤師から回答を得ると同時に、処方薬に加え、市販薬、健康食品、サプリメントなどの情報入手・提供の実態を調査し、情報支援のあり方や今後の取り組みについて検討した。さらに、アンケート結果から、Academic Detailing(AD)の研修会の必要性を鑑み、にアカデミックディテーラー養成のためのワークショップを開催した。参加者は病院薬剤師が20名(75%)で、他は大学教員3名、学生が2名、保険薬局薬剤師、製薬企業が各1名計27名であった。今回は、診療ガイドライン「脂質異常症」から、適切な薬剤選択のための、エビデンスに基づいた評価を行った。関連文献(臨床試験)、代謝、動態、化学構造、費用対効果などを検討し、実際にADに用いる資材の作成を行った。Evidence Documentは米国のNarCADの資材を参考にし、日本の実情を踏まえ、Summary Brochure,Reference Card,Patient Cardsの資材を作成した。模擬医師を相手に、プラクティスに向けたADのロールプレイを行い評価した。
KAKENHI-PROJECT-26350872
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スクリーニングで同定した抗ヘルペスウイルス化合物を用いたウイルス増殖機序の解析
我々は、これまでにサイトメガロウイルス(CMV)や水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の感染を迅速に検出できるレポーター細胞株を用いて化合物ライブラリーから各ウイルスに有効な化合物を数種類ずつ同定した。本研究では同定化合物の作用機序を解析し、1)抗VZV化合物45B5がORF54がコードするポータル蛋白を標的とし、カプシドからウイルスDNAを核内に注入する過程を阻害すること、2)両ウイルスに効果のある133G4がウイルス前初期蛋白による転写活性化を、おそらく宿主因子を介して阻害すること、3)抗CMV化合物35C10は、CMVの細胞内侵入から前初期蛋白発現の間の過程を阻害すること、などを明らかにした。レポーター細胞株を用いて同定した抗サイトメガロウイルス(CMV)、抗水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)化合物各数種の作用機序を解析し、新規薬剤開発を進めるとともに、ウイルス増殖過程に関与するウイルス及び宿主因子を解析することが本研究の目的である。得られた成果は以下の通り。1)抗VZV化合物7種類の中で、3化合物がVZVと同程度に、3化合物が弱く、抗HSV活性を示した。VZVにのみ効果があった141B3の類似化合物をいくつか用意し、チオフェン基側鎖をベンゼン基にした化合物のみが、EC50が2-3倍程度悪くなるものの抗VZV活性を有することを示した。ベンゼン基のパラ位をフルオロ化もしくはニトロ化した場合、活性が失われた。2)抗VZV化合物141B3に対する耐性株候補の作出に成功したが、抗CMV化合物DPPCの耐性株は得られなかった。3) 133G4及び類似する2化合物は、HSV,VZV,CMVの増殖を阻害した。転写活性化因子であるCMV IE2及びVZV IE62による初期及び後期遺伝子の発現誘導を広範に阻害した。VZV IE62の161アミノ酸残基の活性化ドメインのGAL4融合蛋白により、GAL4結合配列のみしか持たないプロモーターで転写活性化が見られ、133G4はTATA配列特異的にこれを阻害した。TATA結合蛋白TBPのDNA結合ドメインとGAL4融合蛋白は、GAL4単独に比して、IE2やIE62によるプロモーター活性化の程度が上昇したが、依然133G4による阻害を受けた。従って、TBPを含む複合体形成ではなく、ポリメラーゼII複合体形成過程を133G4は阻害すると考えられ、ChIPアッセイにおいて、そのことが確認された。4) VZVのカプシド形成を阻害する35B2の類似化合物を9種類用意し、3化合物が弱い活性を保持しているが、残りは活性がないことを明らかにした。レポーター細胞株を用いて同定した抗サイトメガロウイルス(CMV)、抗水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)化合物各数種の作用機序を解析し、新規薬剤開発を進めるとともに、同時に、ウイルス増殖の各過程に関与するウイルス及び宿主因子を解析することが本研究の目的である。本年度得られた成果は以下の通り。1)抗CMV化合物35C10は、選択指標(SI)が10以上の特異性があること、ウイルス粒子の細胞への吸着は阻害せず、一方で前初期蛋白の発現を阻害することから、ウイルスの侵入から前初期蛋白発現までの間のステップを阻害する新規作用点を有する化合物であることを明らかにした。また、ヒトCMVにのみならず、マウスCMVに対しても抗ウイルス活性を示した。また、35C10の側鎖のひとつメトキシ基をクロル基やフッ素基に置換した化合物では抗ウイルス活性が低下したため、この側鎖が活性に関与することが示された。一方、別の側鎖のアミノ基が失われた35C10-3では、抗ウイルス活性は低下しなかったが細胞毒性のため、SIが8程度になった。2)抗CMV化合物131G4はヘルペスウイルス前初期蛋白の転写活性化を阻害することを昨年度明らかにしたが、この阻害はヒト及びアカゲザルの線維芽細胞及び上皮細胞株では見られるがモルモットやマウスなどげっ歯類由来の細胞株では見られないことから、宿主依存性があることを明らかにした。3)抗VZV化合物45B5及び上記35C10に対する耐性株候補の作出に成功した。現在、変異の同定を進めている。4) VZVと同じVaricellovirus属のウマヘルペスウイルス1型に同定した10種類の抗VZV化合物が効果を有するか検討した結果、41E2がヒト、ウマ、マウスの細胞株でウマヘルペスウイルス1型の増殖を阻害することを明らかにした。レポーター細胞株を用いて9600化合物から同定した抗サイトメガロウイルス(CMV)、抗水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)化合物各数種の作用機序を解析し、新規薬剤の開発を進めるとともに、ウイルス増殖の各過程に関与するウイルスおよび宿主因子を解析することが本研究の目的である。本年度の成果は以下の通り。1)抗VZV化合物45B5は、臨床分離株、アシクロビル耐性株、35B2耐性株のいずれにも効果があった。一方、昨年度作出した45B5耐性株は、いずれの株でもEC50が3-5倍程度になっていた。2) 45B5耐性株のひとつについて、全翻訳領域の塩基配列を決定したところ、感受性である親株に比して13箇所に塩基
KAKENHI-PROJECT-25460578
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スクリーニングで同定した抗ヘルペスウイルス化合物を用いたウイルス増殖機序の解析
配列変異が同定され、そのうちORF54、ORF48、ORF50、ORF16、ORF23、ORF36の6遺伝子にアミノ酸変異が同定された。他の耐性株7株について、これらの6遺伝子の配列を検討したところ、カプシド構成蛋白でありウイルスゲノムDNAの出入口に当るポータル蛋白をコードするORF54遺伝子に共通して変異が見られた。45B5は少なくともDNA複製もしくはそれ以前の過程を阻害したこと、単独発現させたポータル蛋白の細胞内局在やそのscaffold蛋白(ORF33がコード)との相互作用には45B5は影響を与えなかったことなどから、カプシドから核内にDNAを注入する過程を阻害する新規の作用機序を有する抗ウイルス化合物と考えられた。3) VZVおよびCMV両方に抗ウイルス効果を示す133G4は、前初期蛋白IE62、IE2による初期蛋白発現を阻害している。IE62の転写活性化ドメインのみを用いた解析でも効果を示すことから、宿主の転写因子とIE62の相互作用を阻害すると考え、候補となるTBP、USF1、Med25について解析したが、いずれとの相互作用も阻害しないことから、これまで考えられていない機序で阻害すると思われた。我々は、これまでにサイトメガロウイルス(CMV)や水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の感染を迅速に検出できるレポーター細胞株を用いて化合物ライブラリーから各ウイルスに有効な化合物を数種類ずつ同定した。本研究では同定化合物の作用機序を解析し、1)抗VZV化合物45B5がORF54がコードするポータル蛋白を標的とし、カプシドからウイルスDNAを核内に注入する過程を阻害すること、2)両ウイルスに効果のある133G4がウイルス前初期蛋白による転写活性化を、おそらく宿主因子を介して阻害すること、3)抗CMV化合物35C10は、CMVの細胞内侵入から前初期蛋白発現の間の過程を阻害すること、などを明らかにした。複数のプロジェクトを同時進行させており、大半が順調に進行しているが、化合物ごとの解析になりがちであるため、一部に進展が遅れているプロジェクトがある。ウイルス学26年度の継続を含め、当初の計画通り研究を行う。特に、耐性株のゲノム配列解析から作用機序を明らかにすることに重点を置く。複数のプロジェクトを同時進行させており、大半が順調に進行しているが、DPPCに対する耐性株の作出がうまくいかなかったことや、35B2の変異を導入したVZV-BACの構築が思ったよりも時間がかかっていることなどが計画に対し遅れた部分となっている。残額が少額で実際に必要で購入できる物品に制約があるため、次年度予算とあわせて使用することとした25年度の継続を含め、当初の計画通り研究を行う。なお、VZVと同じVaricellovirus属のウマヘルペスウイルス1型に対して同定した抗VZV化合物が効果を有するかを検討することを計画に加える。物品費の一部とする残額が小額で実際に必要で購入できる物品に制約があるため、次年度予算とあわせて使用することとした物品費の一部とする。
KAKENHI-PROJECT-25460578
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25460578
内湾域における漁獲生物から漁場環境を推定するための生物指標の作成
一般的に,漁業では狙った生物以外の生物が混獲されることがある。直接的に海面下の環境をモニタリングすることのできない漁業者は,種々の生物の混獲状況から漁場の環境変化を推し測っている。本研究では水温や底質に注目し,あなご筒漁業で漁獲される混獲生物の関係を調査した。その結果,混獲個体数が多かった種より,幅はあるものの混獲時の水温との関係が明らかになるとともに,これらの種は環境指標生物として有効とあることが示唆された。今回対象としたあなご筒漁では,飼育実験から水温と混獲の関係は,対象生物の摂餌行動に依存しているものと考えられた。漁業現場で環境状況を推定できる指標生物の選定と環境の関係を明らかにする事を目的として,あなご筒漁と小型底引き網漁を対象に調査を計画し実施してきた。昨年の結果から,24年度の調査はあなご筒を中心に概ね計画通りに,月12回程度実施した。そして,指標生物の候補として上げた生物と内湾の漁場環境の関係について,以下の傾向をつかむことができた。1魚類は水温約15°Cを境に混獲される種とされない種に分かれた(15°C以上アミウツボ,ハタタテヌメリ,15°C以下ヌタウナギ)。2甲殻類は水温が約15°Cを下回ると混獲されなくなった。3ヨコエビは水温の低い方が,出現頻度が高くなる。4貝類の分布は底質と水深に依存している。5本調査以前より漁場の水温が季節を通じて高水温になっていた。その影響か,マダコの混獲が見られなかった。ここまでの調査結果を踏まえて,平成24年度日本水産学会秋季大会において「東京湾あなご筒漁における混獲生物調査」として発表し,さらに第16回アナゴ漁業資源研究会にて「東京湾あなご筒漁業における混獲調査報告」として発表した。ここまでの研究の目的である,調査の実施と解析は概ね順調に進んでいる。解析を進める中で,漁場環境のうち主に水温と漁獲される生物の関係や底質の関係が明らかになってきた。あなご筒漁は,生物の摂餌意欲が漁獲に左右する。すなわち,漁場で得られた水温と混獲生物の関係をより正確に把握するためには,水温をコントロールしながらの飼育実験を行い,水温と摂餌意欲の関係を明らかにする必要性が確認された。内湾で漁業を営む漁船の多くは5トン未満で,これらの漁船に搭載される装備は限られている。主な装備は,水深や魚群の有無を知るための魚群探知機と自船の位置を知るためのGPSなどであり,漁場の環境を知るためのモニタリング装置を装備した船はほどんとない。こうした中で漁業者は,漁獲される様々な生物から水温の変化や海底の変化などを経験的に推測している。一方で資源の減少が言われる中,経験に頼った方法だけでは効率的な操業が行えないだけでなく,漁業者の減少が言われる中で新規参入者の妨げにもなっている。そこで東京湾のあなご筒漁をモデルケースとして,混獲される生物から漁場環境を推定する手法の開発を試みた。本研究では,混獲される生物と底質,水温などの関係から,生物指標となる生物を選定した。そして漁場にてそれら生物の出現と環境の関係をモニタリングした。混獲個体数が多かった7種(マルバガニ,フタホシイシガニ,ケブカエンコウガニ,ハナムシロ,ヌタウナギ,ウミフクロウ,ヨコエビ)を指標生物として水温と混獲の関係を明らかにした。特にこれらのうち2種類(マルバガニ,フタホシイシガニ)について,飼育実験によって,水温の変化が実際に生物の行動にどう影響を与えているのか,観察を行った。ケブカエンコウガニは21°C以下,ヌタウナギは11°C以上18°C以下,ヨコエビは11°C以上22°C以下の生物指標となる可能性が示された。フタホシイシガニとマルバガニについて,調査から,17°C以上で生物指標となる可能性が示された。さらに,飼育実験から,17°C以下において混獲されなくなる原因は,動作が緩慢になったことより,摂餌に対する積極性が失われたためと考えられた。また、ハナムシロとウミフクロウは広範囲の水温で混獲されていたが、ハナムシロは,13°C以下において,ウミフクロウでは,16°C以下において,混獲される量が増加する傾向が見られた。一般的に,漁業では狙った生物以外の生物が混獲されることがある。直接的に海面下の環境をモニタリングすることのできない漁業者は,種々の生物の混獲状況から漁場の環境変化を推し測っている。本研究では水温や底質に注目し,あなご筒漁業で漁獲される混獲生物の関係を調査した。その結果,混獲個体数が多かった種より,幅はあるものの混獲時の水温との関係が明らかになるとともに,これらの種は環境指標生物として有効とあることが示唆された。今回対象としたあなご筒漁では,飼育実験から水温と混獲の関係は,対象生物の摂餌行動に依存しているものと考えられた。漁業現場で環境状況を推定できる指標生物の選定と環境の関係を明らかにする事を目的として,あなご筒漁と小型底引き網漁を対象に調査を行った。
KAKENHI-PROJECT-23780192
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23780192
内湾域における漁獲生物から漁場環境を推定するための生物指標の作成
あなご筒漁に関しては,ほぼ予定通り,月一回の調査を行うことができたが,底引網に関しては当初執行された予算と漁期の関係から1回しか行うことができなかった。一方で,あなご筒漁の調査結果から,指標として利用可能な底生成物の選定はできた。以下初年度の研究項目とその成果1)小型底びき網による調査:1回の調査しか行うことはできなかったが,漁場毎に異なる生物相を確認することができた。2)あなご筒漁具による調査:予定通り月1回の調査を実施した(7月から7回)。また,東京湾と似た伊勢湾においてもあなごかご漁にて同様の調査を実施し,データの取得を行った。3)生物指標生物の選出:初年度の調査から,ヨコエビ,ハナムシロ,ウミフクロウ,クモヒトデ,イトマキヒトデ,マヒトデ,フタホシイシガニ,マルバガニ,ケブカエンコウガニ,ヌタウナギを指標生物として選定した。初年度の調査結果内容の一部は,The 8th International Symposium on SEASTAR2000 and Asian Bio-logging Scienceにて「Observation behavior of White Spotted Conger-eel Conger myriaster to baited trap」,平成24年度日本水産学会にて「晩秋の東京湾におけるマアナゴの分布特性」として発表した。底曳網による調査が実施できなかっため,一部調査計画を修正しながら研究を進めているが,あなご筒漁による調査から順調にデータを得ることができている。蓄積したデータの解析経過からも期待された結果が得られていることから,研究は概ね順調に進んでいると判断している。調査開始当初,予算の全額執行されるかが定かでなかったため,底引網での調査時期を逃してしまったが,あなご筒漁の方で十分なデータを取得することができたため,調査としては概ね順調に進展している。実績外洋でも述べたが,漁場で得られた水温と混獲生物の関係をより正確に把握するためには,水温をコントロールしながらの飼育実験を行い,水温と摂餌意欲の関係を明らかにする必要性が確認された。そこで,補完的にフィールで調査を行うとともに,得られた指標生物を研究室に持ち帰り簡便な飼育実験を行う。また,学会や研究会に参加し情報交換を行うとともに,得られた傾向を他の内湾でも応用するため,大阪湾,伊勢湾などでの調査も計画する。合わせてデータの取りまとめを行い,論文に取りまとめ投稿すると共に,得られた結果を所属研究室のHPなどで公開し,漁業現場などへの普及を図る。今年度は予定通り,初年度の調査から指標生物として選出された種を中心に調査を継続し,同時に生物指標の作成を進める。調査は,初年度と同じ方法とするが,生物指標を作成する上でより特徴的な傾向の見られた時期に集中的に実施する。また,昨年度の最初の調査が7月であったため,今年度4月,5月,6月に調査を実施することで通年を通したデータとして,7月以降は予定通り,二月に一回程度の調査として行く予定である。また初年度の結果を取りまとめ,秋に行われる日本水産学会にて発表する予定である。フィールド調査によって発生する旅費,およびサンプルの買い上げ費用,学会・研究会への参加費を計上する。また,飼育実験を行う上で必要となる消耗品費用を一部計上する。そして年度内の論文投稿を目指すとともにそれによって発生する投稿費用を計上する。昨年度,予算の執行の遅れなどで調査時期を逃したため,予算の一部を繰り越した。この分に関しては,今年度の調査の充実化を図る上で,使用を計画する。配分される研究費を勘案し,当初予定してた調査の回数を東京湾で9回,他の海域での調査3回として概ね予定通り実施する。
KAKENHI-PROJECT-23780192
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フォトクロミック錯体の創製と機能化
これまでに、フォトクロミック部位としてアゾベンゼンを導入したジイミン型配位子を設計し、対応するPd(II)錯体を調整して、イソプロピリデンジアリルマロネートをモノマーとした重合挙動を検討してきた。その結果、アゾベンゼン型配位子では、配位子そのものの光応答性は良好であったものの、錯体体の光反応性が低く、in situでの異性化反応は困難であることが分かった。また、得られたポリマーはこれまで報告例のないジシンジオタクティック型の配列を有しており、有機溶媒と特異なゲル化挙動を示すことが分かった。これはジシンジオタクティック型ポリマーの構造が主鎖とほぼ垂直方向に置換基が出ているため、歯車がかみ合うような形で効率的にファンデルワールス相互作用を起こしているためではないかと考えられる。また、光反応性が低い理由としては、パラジウム錯体が共存するため、MLCTによる消光が起きていることが考えられる。そこで今回、新たにアゾベンゼンに代わりジアリールエテン部位を導入したジイミン型環状配位子(open-2,closed-3)を設計した。アゾベンゼンと比較して、ジチエニルエテンの異性化光反応は高速で起こるため、MLCTによる消光が起きにくいことを期待した。実際、種々検討を行った結果、イソプロピルアニリンおよびチオフェンを原料としておよそ18ステップを経て、目的とする環状フォトクロミック配位子を合成することに成功した。この配位子でもアゾベンゼン型の配位子と同様に、パラジウム錯体が得られることが分かった。フォトクロミック部位としてアゾベンゼンを有するジイミン型配位子を合成した。この配位子の光応答性を検討したところ、室温で紫外可視光照射することにより、可逆的にシストランス異性化反応を起こすことが分かった。この配位子に二価パラジウムを作用させたところ、対応するパラジウム錯体を得ることができた。さらに、トランス体の錯体についてはX線結晶構造解析に成功し、平面4配位しているパラジウムイオンの片側を、アゾベンゼン架橋が覆うような形で配置した、非対称な構造を有する錯体であることが明らかになった。この錯体の重合活性を検討したところ、イソプロピリデンジアリルマロネートに対して重合活性を有し、閉館重合体としてシクロペンタン骨格を有するポリオレフィンが得られることが分かった。活性そのものは、既報にあるジイミン型配位子と同程度であった。興味深いことに、得られたポリマーの立体規則性を詳細に調べたところ、トレオジシンジオタクティックであることが分かった。これまでトレオジイソタクティック型のポリマーの合成例は報告されていたが、今回の配位子で初めてトレオジシンジオタクティック型のポリマーが得られた。さらに興味深いことに、このポリマーはハロゲン系の有機溶媒に対しゲル可能をすることがかった。透過型電子顕微鏡および走査型電子によりゲルおよびキセロゲルを観察したところ、ナノサイズのファイバー状構造体か観測された。トレオジシンジオタクティック型のポリマーは分子間相互作用により集積化し、ナノファイバーを与えることが分かった。これまでに、フォトクロミック部位としてアゾベンゼンを導入したジイミン型配位子を設計し、対応するPd(II)錯体を調整して、イソプロピリデンジアリルマロネートをモノマーとした重合挙動を検討してきた。その結果、アゾベンゼン型配位子では、配位子そのものの光応答性は良好であったものの、錯体体の光反応性が低く、in situでの異性化反応は困難であることが分かった。また、得られたポリマーはこれまで報告例のないジシンジオタクティック型の配列を有しており、有機溶媒と特異なゲル化挙動を示すことが分かった。これはジシンジオタクティック型ポリマーの構造が主鎖とほぼ垂直方向に置換基が出ているため、歯車がかみ合うような形で効率的にファンデルワールス相互作用を起こしているためではないかと考えられる。また、光反応性が低い理由としては、パラジウム錯体が共存するため、MLCTによる消光が起きていることが考えられる。そこで今回、新たにアゾベンゼンに代わりジアリールエテン部位を導入したジイミン型環状配位子(open-2,closed-3)を設計した。アゾベンゼンと比較して、ジチエニルエテンの異性化光反応は高速で起こるため、MLCTによる消光が起きにくいことを期待した。実際、種々検討を行った結果、イソプロピルアニリンおよびチオフェンを原料としておよそ18ステップを経て、目的とする環状フォトクロミック配位子を合成することに成功した。この配位子でもアゾベンゼン型の配位子と同様に、パラジウム錯体が得られることが分かった。
KAKENHI-PUBLICLY-21021002
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日本の対中政策における外務省の居留地(租界)政策の研究
本研究は、日清戦後から第一次世界大戦期までの日本の対中進出を、中国における日本人居留民の経済活動に焦点を当てて明らかにするものである。従来、日本の対中進出は日本帝国主義研究として進められてきたため、国家資本による資本輸出や、日本国内で何等かの形で独占を形成しうる綿業、石炭業、貿易業等といった大企業にのみ焦点が当てられてきた。しかしそれだけでなく、中小商人によって生産から輸出までが担われる雑貨の輸出も対中輸出の中で無視できない比重を占めており、加えて中国の日本居留地・外国租界へ進出した日本人居留民の主体となったのが、こうした雑貨輸出に携わる中小商人たちだったのである。こうした日本商の存在が本国経済にとってどのような意味を持ったのかを明らかにすることは、従来の帝国主義研究では明らかにされてこなかった対中進出の重層性を解明することにつながるのである。こうした意義に加え、本研究は主として中国史分野で中国・日本において進められてきた中国の外国租界研究と、日本史分野で日本において進められてきた対中進出研究をリンクさせるという国際的かつ学際的な意義を持つ。中国史の視点からの研究は従来外国租界が中国社会に与えた影響にのみ焦点が当てられ、外国租界が本国の社会および経済とどのようにつながっていたかは等閑視されているためである。本研究は日本政府が居留地および居留民に対して取った諸政策から、本国がそれらに対して持っていた利害関係を明らかにすることで、上記の課題を解決することを目指した。これまでに政策分析の前提としてこれまでに各国の「集団的非公式帝国」である中国においては各国の諸政策の立案・試行に制約がかかっていたことを明らかにすることができた。さらに今年度の科研費補助金で上海において半年間の史料調査・研究交流を行い、現在は大阪-上海貿易の政策と実態の史料収集を完了し、分析を進めている。当初の研究課題を掘り下げるにつれ、想定していなかった大きな研究上の意義があることが分かった。そのため投稿中であった論文の内容を一部改訂し「集団的非公式帝国」である中国の日本人居留民・日本租界に対する政策の立案・試行の特殊性を解明するものとし、発表した。今年度の上海調査では上海の日本商と取引のあった中国商(東洋荘)についての史料を収集したほか、復旦大学朱蔭貴氏、上海の日本人居留民研究の第一人者である陳祖恩氏から研究についてのアドバイスを受け、上海史の視点から本研究を見直すことができた。現在、上海調査の成果を「日本製雑貨の中国市場進出と上海の日本商」として執筆中である。明治四十年代に国内の卸売商が多数上海に進出し、日本製雑貨の対中輸出の担い手として本国経済とリンクし、本国に利益をもたらす存在に昇格するものの、第一次世界大戦期から生産拠点を上海に移す日本商が出現し、国内との競争関係が形成される過程を明らかにする。次に、日清戦後から第一次世界大戦期における天津の日本商の経済活動に着手する。こちらは上海とは異なり、天津領事の居留地経営と直隷総督の清末新政という二つの政策に牽引されたという観点から、上海との比較を行いつつ、博士論文の執筆を目指す。本研究は日本政府の居留地(租界)経営政策とその実態の分析を通じて、日清戦争後から第一次世界大戦期までの日本の対中経済進出の実態の一端を明らかにするとともに、近代日中関係において居留地が果たした役割の実態を解明しようとするものである。中国の日本居留地・居留民の実態に関する研究は従来二つの角度からなされてきた。一つは日本居留地・居留民が中国社会に与えた影響を解明するため、その背景となる日本居留地・居留民の実態を明らかにするものである(高綱博文、小林元裕ら)。もう一つは日本政府の対中政策の形成に日本人居留民が何らかの影響を与えたとみるものである(柳沢遊、桂川光正、幸野保典ら)。前者は広い時期を扱うが日本政府と居留地との関係を解明するものではなく、後者は政府と居留地との関係を扱っているが、反日運動等に中間関係が緊張する1920年代以降を対象としたものであり、それ以前は対象とされない。さらに日清戦争後から第一次世界大戦期の対中進出は政府主導であることが先行研究で明らかにされており(高村直助ら)、当該時期の居留地経営政策は居留民の声よりも政府の対中進出政策の一環として分析されるべきであろう。居留地を通じた対中進出を政策的に分析する本研究の意義はこの点にある。本年度は第一に開設期の中国における日本居留地を研究する前提として、従来韓国におけるそれの延長として考えられてきた居留地経営政策を、中国に則して再検討した。これは「居留民団法の制定過程と中国の日本居留地-韓国との比較から」として、現在再投稿準備中である。第二に日本の対中進出の背景となる租界をめぐる国際環境について明らかにするため、19世紀の東アジアにおける国際関係を主導していたイギリスの外交文書と議会文書の調査を行った。特に、89月にイギリスNAにおいて調査を行い、FO228のうち、天津・上海等主要な開港場駐在領事と本省とのやり取りを中心に収集した。本研究は、日清戦後から第一次世界大戦期までの日本の対中進出を、中国における日本人居留民の経済活動に焦点を当てて明らかにするものである。従来、日本の対中進出は日本帝国主義研究として進められてきたため、国家資本による資本輸出や、日本国内で何等かの形で独占を形成しうる綿業、石炭業、貿易業等といった大企業にのみ焦点が当てられてきた。
KAKENHI-PROJECT-11J11167
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J11167
日本の対中政策における外務省の居留地(租界)政策の研究
しかしそれだけでなく、中小商人によって生産から輸出までが担われる雑貨の輸出も対中輸出の中で無視できない比重を占めており、加えて中国の日本居留地・外国租界へ進出した日本人居留民の主体となったのが、こうした雑貨輸出に携わる中小商人たちだったのである。こうした日本商の存在が本国経済にとってどのような意味を持ったのかを明らかにすることは、従来の帝国主義研究では明らかにされてこなかった対中進出の重層性を解明することにつながるのである。こうした意義に加え、本研究は主として中国史分野で中国・日本において進められてきた中国の外国租界研究と、日本史分野で日本において進められてきた対中進出研究をリンクさせるという国際的かつ学際的な意義を持つ。中国史の視点からの研究は従来外国租界が中国社会に与えた影響にのみ焦点が当てられ、外国租界が本国の社会および経済とどのようにつながっていたかは等閑視されているためである。本研究は日本政府が居留地および居留民に対して取った諸政策から、本国がそれらに対して持っていた利害関係を明らかにすることで、上記の課題を解決することを目指した。これまでに政策分析の前提としてこれまでに各国の「集団的非公式帝国」である中国においては各国の諸政策の立案・試行に制約がかかっていたことを明らかにすることができた。さらに今年度の科研費補助金で上海において半年間の史料調査・研究交流を行い、現在は大阪-上海貿易の政策と実態の史料収集を完了し、分析を進めている。先行研究を精査したことにより、従来明確に意識されることの少なかった日清戦後から第一次世界大戦期の居留地研究、居留民研究と対中進出研究の関係性を明確にし、本研究の意義と今後の研究方針を定めることができた点は、当初の計画以上の成果であるといえる。また政府の居留地経営政策の実態分析の対象として北清-阪神ルートと横浜・神戸-揚子江ルートの二つを想定しているが、前者については史料収集をほぼ完了している。また当初の計画通り、イギリスNAにおける史料調査も行った。当初の研究課題を掘り下げるにつれ、想定していなかった大きな研究上の意義があることが分かった。そのため投稿中であった論文の内容を一部改訂し「集団的非公式帝国」である中国の日本人居留民・日本租界に対する政策の立案・試行の特殊性を解明するものとし、発表した。今年度の上海調査では上海の日本商と取引のあった中国商(東洋荘)についての史料を収集したほか、復旦大学朱蔭貴氏、上海の日本人居留民研究の第一人者である陳祖恩氏から研究についてのアドバイスを受け、上海史の視点から本研究を見直すことができた。本年度の課題は横浜・神戸-揚子江ルートの実態分析と、こうした外国側の居留地(租界)経営に対して清国地方官がそれぞれどのように対応したのかを明らかにすることである。平成23年3月から予定していた4か月間の上海調査は、受け入れ先の復旦大学朱蔭貴氏と相談の上、より深く調査ができるよう半年間に拡充し、平成24年9月から実施する予定である。渡航前にイギリス外交文書・議会文書、東亜同文書院関係史料、神戸・横浜等の商業会議所関係史料を中心に横浜・神戸-揚子江ルートの概要を把握しておき、上海では中国における先行研究を調査するとともに、劉坤一・張之洞ら清国地方官の経済政策とその中の外国租界への対応を中心に調べる予定である。現在、上海調査の成果を「日本製雑貨の中国市場進出と上海の日本商」として執筆中である。
KAKENHI-PROJECT-11J11167
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J11167
多様な典型元素―遷移金属結合を環内に含む多元素メタラサイクルの合成と性質
(1)鉄-ケイ素-リンからなる三員環メタラサイクルの合成および有機小分子との反応我々は昨年度,鉄-ケイ素-リンからなる三員環錯体Cp^*(CO)Fe{κ^2(Si,P)-Me_2SiPPh_2}の低温での合成単離に成功しており,またこの錯体は環歪みのために反応性が高く,水やケトンと瞬時に反応して付加物を与えることを見出していた。今年度はさらに,ヒドロホスフィン,第2級アミンおよびアニリンとの反応を検討し,これらの小分子とも室温で瞬時に反応して,やはりケイ素-リン結合が開いて小分子のE-H結合(E=P,N)が付加した錯体がほぼ定量的に生成することを明らかにした。また,リン上にかさ高いアルキル基を持つ誘導体Cp^*(CO)Fe{κ^2(Si,P)-Me_2SiPCy_2}(Cy=シクロヘキシル)の合成にも成功し,この錯体はPh誘導体よりも熱的に安定であるが,水やアルコールとは瞬時に反応して,付加体を与えることを確認した。(2)1,2-アリール転位を経由するシリル錯体からドナー安定化シリレン錯体への異性化(3)ヒドリド(ヒドロシリレン)タングステン錯体の合成と構造かさ高いトリヒドロシランH_3SiC(SiMe_3)_3とタングステン錯体Cp^*(CO)_3WMeとの光反応により,シリレン配位子上に水素を持つシリレン錯体Cp^*(CO)_2W(H)=SiHC(SiMe_3)_3の合成に成功した。X線構造解析の結果,タングステン上のヒドリド配位子はタングステンとケイ素を架橋し,3中心2電子結合を形成していることがわかった。(4)ガランマンガン錯体の合成と構造カルボニルマンガン錯体とキヌクリジンガランとの反応により,ガランがGa-H結合でマンガンに配位したガランマンガン錯体の合成およびその結晶構造解析に成功した。(1)鉄-ケイ素-リンからなる3員環メタラサイクルの高収率合成とその反応性ホスフィノシリル鉄錯体の光反応により生成する鉄-ケイ素-リンからなる3員環メタラサイクルは、その3員環の環歪みに加えて、ケイ素が正にリンが負に分極した性質を持つため、それらに基づく高い反応性が期待される。今回、低温で光反応を行うことによりこの錯体の高収率合成を達成した。また、ケトンと室温で瞬時に反応し、カルボニル基の酸素と炭素がそれぞれケイ素とリンと結合を作り、新たな鉄-リン-炭素-酸素-ケイ素結合を持つ5員環メタラサイクルを定量的に生成することを見出した。アルコールや水との反応でも、アルコキシ基やヒドロキシ基がケイ素に、水素がリンに付加した錯体が選択的に得られた。(2)鉄-ケイ素-窒素を含む5員環メタラサイクルの合成と性質(2-ピリジルオキシ)シリル鉄錯体に光照射すると、ピリジル基のキレート配位により鉄-ケイ素-酸素-炭素-窒素結合を持つ新たな5員環メタラサイクルが生成した。この錯体は、ホスフィン等の2電子供与体と反応し、ピリジル基が解離して2電子供与体が付加した生成物を与えた。(3)キサントシル配位子を有する8員環ルテナサイクルの反応性キサントシル配位子は、その2つのシリル基とエーテル性酸素とで金属に3座配位可能であるが、エーテル性酸素の配位能の弱さから、基質との反応において配位不飽和部位を容易に発生させ得ると考えられる。今回、3座キサントシル配位子を持つルテニウム錯体を一酸化炭素やホスフィンなどの小分子と反応させると、期待通りキサントシル配位子の酸素の配位が外れて、小分子が付加した生成物を高収率で与えた。一方、配位性の低いアセトニトリルでは、アセトニトリルとキサントシル酸素の配位の競合が見られた。このキサントシル酸素の可逆的な配位特性は、新しい触媒反応開発の鍵となり得ると期待される。(1)鉄-ケイ素-リンからなる三員環メタラサイクルの合成および有機小分子との反応我々は昨年度,鉄-ケイ素-リンからなる三員環錯体Cp^*(CO)Fe{κ^2(Si,P)-Me_2SiPPh_2}の低温での合成単離に成功しており,またこの錯体は環歪みのために反応性が高く,水やケトンと瞬時に反応して付加物を与えることを見出していた。今年度はさらに,ヒドロホスフィン,第2級アミンおよびアニリンとの反応を検討し,これらの小分子とも室温で瞬時に反応して,やはりケイ素-リン結合が開いて小分子のE-H結合(E=P,N)が付加した錯体がほぼ定量的に生成することを明らかにした。また,リン上にかさ高いアルキル基を持つ誘導体Cp^*(CO)Fe{κ^2(Si,P)-Me_2SiPCy_2}(Cy=シクロヘキシル)の合成にも成功し,この錯体はPh誘導体よりも熱的に安定であるが,水やアルコールとは瞬時に反応して,付加体を与えることを確認した。(2)1,2-アリール転位を経由するシリル錯体からドナー安定化シリレン錯体への異性化(3)ヒドリド(ヒドロシリレン)タングステン錯体の合成と構造かさ
KAKENHI-PROJECT-14044010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14044010
多様な典型元素―遷移金属結合を環内に含む多元素メタラサイクルの合成と性質
高いトリヒドロシランH_3SiC(SiMe_3)_3とタングステン錯体Cp^*(CO)_3WMeとの光反応により,シリレン配位子上に水素を持つシリレン錯体Cp^*(CO)_2W(H)=SiHC(SiMe_3)_3の合成に成功した。X線構造解析の結果,タングステン上のヒドリド配位子はタングステンとケイ素を架橋し,3中心2電子結合を形成していることがわかった。(4)ガランマンガン錯体の合成と構造カルボニルマンガン錯体とキヌクリジンガランとの反応により,ガランがGa-H結合でマンガンに配位したガランマンガン錯体の合成およびその結晶構造解析に成功した。
KAKENHI-PROJECT-14044010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14044010
常陸国中世武家の系譜と在地基盤に関する基礎的研究
1.小田氏関係史料の研究『筑波町史史料集』(中世編I-II)に収載されている小田氏関係史料に新たに関係史料の追加を試みた。そして小田氏と同族の下野国茂木氏の伝来文書(秋田県大館市吉成家蔵)を実現して、小田氏関係で唯一残存する家伝文書群の重要性を確認した(成果は『茨城県史科中国編V』所載)。他に小田氏故地陸奥国小田保、小田氏流高野氏故地陸奥国高野部の踏査を行った。2.宍戸氏関係史料の研究『友部町史中世文献目録』所載の宍戸氏関係史料(計180点余)のうち、宍戸庶子家一木氏・真家氏伝来文書の採訪・調査を行った。小田氏同様、宍戸本宗家の伝来文書が無い現状では上記2氏の存在と伝来文書は常陸中世武家研究の上で貴重である。真壁氏関係史料の研究『真壁町史料』(中世編I・II)所載史料に加えて約190点余の真壁氏および中世真壁部(壯)関係史料が収集し了えた(成果は『真壁町史科中世編III』所載、近刊)。これで関係史料約400点が直接・間接的に真壁氏研究を支えることとなる。4.常陸平氏流氏族関係史料の研究鹿島・行方・小栗・大掾氏などが上記真壁氏同様に史料収集の対象となるが、小栗氏についてはその系譜と在地基盤の基礎的整理がつれられた(成果は『協和町史』所載)。他は作業継続中である。5.佐竹氏関係史料の研究「秋田藩家蔵文書」中の佐竹氏関係史料の総点検を行い、かつその他に入手可能な佐竹氏および常陸国奥七群関係中世史科の収集・点検・編年を行った。収集史科は多く、解釈・利用は今後の課題として残るが、この一連の作業から佐竹氏に関する親知見を得たことは間違いない(成果の一部は近刊の『新修日立市史』所載)。上記15の作業を通して常陸国中世武家の系譜と在地基盤に関する研究の基本条件が部分的にせよ整備されたと考える。そして同様の作業を継続し、各武家の研究の深化、発展に務めたい。1.小田氏関係史料の研究『筑波町史史料集』(中世編I-II)に収載されている小田氏関係史料に新たに関係史料の追加を試みた。そして小田氏と同族の下野国茂木氏の伝来文書(秋田県大館市吉成家蔵)を実現して、小田氏関係で唯一残存する家伝文書群の重要性を確認した(成果は『茨城県史科中国編V』所載)。他に小田氏故地陸奥国小田保、小田氏流高野氏故地陸奥国高野部の踏査を行った。2.宍戸氏関係史料の研究『友部町史中世文献目録』所載の宍戸氏関係史料(計180点余)のうち、宍戸庶子家一木氏・真家氏伝来文書の採訪・調査を行った。小田氏同様、宍戸本宗家の伝来文書が無い現状では上記2氏の存在と伝来文書は常陸中世武家研究の上で貴重である。真壁氏関係史料の研究『真壁町史料』(中世編I・II)所載史料に加えて約190点余の真壁氏および中世真壁部(壯)関係史料が収集し了えた(成果は『真壁町史科中世編III』所載、近刊)。これで関係史料約400点が直接・間接的に真壁氏研究を支えることとなる。4.常陸平氏流氏族関係史料の研究鹿島・行方・小栗・大掾氏などが上記真壁氏同様に史料収集の対象となるが、小栗氏についてはその系譜と在地基盤の基礎的整理がつれられた(成果は『協和町史』所載)。他は作業継続中である。5.佐竹氏関係史料の研究「秋田藩家蔵文書」中の佐竹氏関係史料の総点検を行い、かつその他に入手可能な佐竹氏および常陸国奥七群関係中世史科の収集・点検・編年を行った。収集史科は多く、解釈・利用は今後の課題として残るが、この一連の作業から佐竹氏に関する親知見を得たことは間違いない(成果の一部は近刊の『新修日立市史』所載)。上記15の作業を通して常陸国中世武家の系譜と在地基盤に関する研究の基本条件が部分的にせよ整備されたと考える。そして同様の作業を継続し、各武家の研究の深化、発展に務めたい。
KAKENHI-PROJECT-05610275
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学校と社会が連携した科学教育システムに関する国際学術調査
本研究は1997年2月に発足した「科学教育システム研究会」が中心となって実施したものであり、日本の内外における科学教育システムの実態調査を実施した。海外については、中国、オーストラリア、ニュージーランド、イギリス、フランス、ドイツ、インドネシア、アメリカにおける調査を実施し、国内では、東京都内の学校や科学技術関係の博物館、千葉県、群馬県、山口県、茨城県の各県立博物館、川越市、松本市、京都市、名古屋市、防府市、仙台市の各市立博物館、茨城県総和町、福島県三春町の学校等の関係施設を訪問し、調査を実施した。その他、「青少年のための科学の祭典」全国大会への参加・観察、読売新聞社が主催するサイエンス・ジャンボリーへの参加・観察、日本と海外の理科教員研修・学校教育と博物館学芸員の人的交流の実態調査等を実施し、資料の収集を行った。また、中国の吉林省長春市の東北師範大学物理学部の韓長明教授を海外特別協力研究者に委嘱し、中国・吉林省における科学技術教育普及活動の調査(吉林省長春市東北師範大学、中国科学技術館、北京市科学技術協会)も3年間にわたり実施して、貴重な資料を入手することができた。本研究は1997年2月に発足した「科学教育システム研究会」が中心となって実施したものであり、日本の内外における科学教育システムの実態調査を実施した。海外については、中国、オーストラリア、ニュージーランド、イギリス、フランス、ドイツ、インドネシア、アメリカにおける調査を実施し、国内では、東京都内の学校や科学技術関係の博物館、千葉県、群馬県、山口県、茨城県の各県立博物館、川越市、松本市、京都市、名古屋市、防府市、仙台市の各市立博物館、茨城県総和町、福島県三春町の学校等の関係施設を訪問し、調査を実施した。その他、「青少年のための科学の祭典」全国大会への参加・観察、読売新聞社が主催するサイエンス・ジャンボリーへの参加・観察、日本と海外の理科教員研修・学校教育と博物館学芸員の人的交流の実態調査等を実施し、資料の収集を行った。また、中国の吉林省長春市の東北師範大学物理学部の韓長明教授を海外特別協力研究者に委嘱し、中国・吉林省における科学技術教育普及活動の調査(吉林省長春市東北師範大学、中国科学技術館、北京市科学技術協会)も3年間にわたり実施して、貴重な資料を入手することができた。平成11年度の研究では、研究分担者・研究協力者による5回の研究会を実施し、研究の促進を図った。また、国内の科学教育実施機関(科学系博物館等)および科学の普及行事(科学の祭典等)等約10個所、ならびに中国、オーストラリア、ニュージーランドにおける学校と社会が連携して行っている科学教育の関係機関等を訪問して、外国の状況の現地調査を実施した。その他、それ以前に実施した準備段階で得た理論研究・事例研究をまとめた「研究資料集」を200部作成し、研究グループ内およびこの研究に協力いただく専門家や関係機関等に配布して研究への理解とその推進のために役立てた。調査研究の内容としては、国内・国外の実施調査により収集した資料やインタビュー調査の分析ととりまとめを実施するとともに、次年度に実施する予定のアンケート調査等の準備を行った。それらの一部は日本科学教育学会等の研究会での発表や紀要等への投稿により公表を行った。また、国際比較を実施するための最初の外国人協力者として、中国吉林省長春市に所在する東北師範大学物理系主任の韓長明教授を委嘱して、中国の学校における科学教育の普及に関する活動の概要の報告を依頼した。平成11年度における研究の内容は現在とりまとめ中であり、平成12年度中頃に「中間報告書」としてまとめ、印刷する予定である。平成12年度の研究では、当初の年次計画に従い国内、海外の科学教育の調査を11年度に引き続き実施した。国内調査については、インタビューや資料収集を関連の研究会への出席や出版物によって行うことが多かったので、国内旅費の使用が予定より少なくなった。海外調査については、中国、ドイツ、イギリス、スイスへ研究分担者がそれぞれ出張して各国の研究者等へのインタビューと資料収集を実施した。さらに中国からは4人の研究者を日本に招聘し、研究会等による交流と資料の交換を行った。また、本研究を推進し、研究分担者・研究協力者の密接な情報交換と研究進度の調整を行うため、6月と12月に各1回の研究会を実施した。その他、科学教育の歴史等に関する資料の収集を行った。本年度の研究で特に注目したことは、欧米先進国と日本との比較においては、学校とその他の機関(特に博物館)との関係においては、科学教育の指導者(特に理科教員)の教育・研修システムにおける協力関係の違いであり、この分野では日本がまだまだ欧米諸国のシステムに対して質・量が不十分であり、今後大いに拡充すべきであるとともに、内容的にも解決すべき課題がたくさんあることが明らかになった。また、日本と中国との比較においては、現代中国が経済の急速な発展を行っている中で、科学教育の内容とシステムに対して抱えている課題は、かって日本が高度経済成長時代に抱えていた問題と類似しており、その意味で中国が日本の経験、教育政策や教科書、教員養成等の実績を参考として学習しようとする意欲が高いことが明らかになった。平成13年度は、6月に研究打ち合わせを行い、最終年度としての報告書をまとめるための調査研究の方針について協議した。各研究分担者および協力者はこの協議の結果に従い、調査研究の実施とまとめを進めることになった。海外調査については、8月にインドネシア、9月に中国とアメリカについて実施する予定であったが、アメリカの調査については9月11日に起こったテロ事件のため、3月に延期して実施することとなった。
KAKENHI-PROJECT-11691101
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学校と社会が連携した科学教育システムに関する国際学術調査
中国については、11年度以降調査を続けていた東北師範大学、中国科学技術館、北京市科学技術協会のほかに、全国組織である中国科学技術協会を訪問調査することができ、全国の科学技術普及の現状に関する貴重な資料を入手することができた。また、中国については、海外共同研究者である韓長明東北師範大学教授から吉林省における科学技術教育普及に関する近年の政策指導資料を入手することができたために、それらを日本語訳して、研究報告書の参考資料として添付することとした。国内においては、「青少年のための科学の祭典(全国大会)に参加するとともに、東京学芸大学、同世田谷附属中学校、同附属高等学校、千葉県立総合教育センター、(独立行政法人)教員研修センター等を訪問し、科学教育と教員等の研修の実態調査を行った。また、国内外における理科教員研修と学校教育と科学博物館との教員・指導者の交流に関する調査も実施した。
KAKENHI-PROJECT-11691101
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セロトニン-キヌレニン経路破綻に着目した抗がん剤誘発精神機能障害の病態解明
実臨床においてがん患者における不安症状、うつ症状などの精神症状についてはよく知られた事実である。この精神機能低下は患者のQOLに悪影響を及ぼしているにも関わらず、適正な薬物治療が行われていない現状である。一方、申請者らは従来から精神疾患と深く関連している「セロトニン2A受容体機能亢進仮説」の側面からの研究を行い報告してきた。このセロトニン2A受容体機能亢進仮説がさらに進展することにより、抗がん剤により誘発される精神機能低下に対する薬物療法の開発は加速的に進んでいくと考えられる。さらに、キヌレニン関連物質の関与は全く不明であることから、精神機能低下の病態像として新たな理論展開も期待される。実臨床においてがん患者における不安症状、うつ症状などの精神症状についてはよく知られた事実である。この精神機能低下は患者のQOLに悪影響を及ぼしているにも関わらず、適正な薬物治療が行われていない現状である。一方、申請者らは従来から精神疾患と深く関連している「セロトニン2A受容体機能亢進仮説」の側面からの研究を行い報告してきた。このセロトニン2A受容体機能亢進仮説がさらに進展することにより、抗がん剤により誘発される精神機能低下に対する薬物療法の開発は加速的に進んでいくと考えられる。さらに、キヌレニン関連物質の関与は全く不明であることから、精神機能低下の病態像として新たな理論展開も期待される。
KAKENHI-PROJECT-19K07192
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K07192
鉄鋼のベイナイト変態に及ぼす微量添加元素の影響の解明
鉄鋼材料では,高強度・高靱性の鋼板を作成するためにベイナイト組織が注目を浴びている.ベイナイト鋼の強度や靱性を決定するのは,ブロック・パケットなどの結晶粒径や,セメンタイト・MAなどの第二相組織である.現在,ベイナイト組織を得るために様々な元素添加がされているが,元素添加が結品粒径や第二相組織に与える影響は明らかでない.そこで本年度では元素添加がベイナイト組織に与える影響を明らかにする.Fe-0.15C-1.5Mn-0.05SiにB,Nb,Nb+Bを微l量添加した合金を用い,等温変態時の変態速度・変態組織に対する元素添加の影響・連続冷却時の組織形成について調査した.ベイナイト変態開始は元素添加を行なうとNb,B,Nb+B添加の順に変態開始が遅延する.また,Nb添加によって変態停留が現われる.不完全変態が発現する場合,変態停留が発現するまでは方位差が小さいベイニティックフェライト(BF)が生成する.変態再開後では,オーステナイト(γ)は転位密度が低い方位関係を持った方位差の小さなフェライトに分解しやすいが,方位差の大きなBF間のγはフェライトあるいはパーライトにも変態することが明らかになった、さらに,連続冷却時の細織形成に及ぼす元素添加の影響については,等温変態と同様の順に変態開始が遅延し,元素添加によって,より低温で生成する組織が生成するようになる.また,MAはNb添加によって生成量が増加し,その形状は周囲のBFの結晶学的特徴に影響を受ける」連続冷却では変態組織が粒界・粒内など場所により異なり,粒界近傍に炭化物析出を伴わないBFが粗大なベイナイトが高温で生成し,粒内ではセメンタイト析出を伴うBFが微細なベイナイトが低温で生成する.MAとして残留しやすい粗大BF間の微細な・中の炭素濃度は,変態停留中のγの炭素濃度であるTOに対して100J/molの過冷度を考慮した組成を外挿した値に近く,連続冷却変態におけるMA生成機構と等温変態での不完全変態機構は密接に関係することが明らかになった.鉄鋼材料では,高強度・高靱性の鋼板を作成するためにベイナイト組織が注目を浴びている.ベイナイト鋼の強度や靱性を決定するのは,ブロック・パケットなどの結晶粒径や,セメンタイト・MAなどの第2層組織である.本年度の研究実施状況としては,ブロック・パケットなどを形成するバリアントの中でも特に隣接しやすいバリアントを定量的に示すことに成功した.ベイナイト組織やマルテンサイト組織は,オーステナイトとKurdjumov-Sachs(K-S)の方位関係を持つことが知られているが,実際の合金では方位関係は理想的なK-S関係からずれることや合金によって方位関係が変化すること,また残留オーステナイトが室温で残留しにくい合金では実際に方位関係を調べることが非常に難しいことから,この手法によって隣接しやすいバリアントを調べることは非常に困難であった.そこで,室温でオーステナイトが残留しない試料において,変態完了後の組織の結晶方位を測定することによって,母相オーステナイトとの方位関係を求める手法を開発した.そうして得られた実際の方位関係を使用して,各バリアント間の関係を計算した.また,方位差が非常に近いバリアント間を区別するため,方位差だけでなく回転軸も考慮に入れることにした.その結果,マルテンサイトでは同一の晶癖面を共有するバリアントの中でも方位差の小さなバリアントが,低温で生成するベイナイトでは双晶関係のバリアントが,高温で生成するベイナイトでは同一のベイン対応を共有するバリアントの中でも特に方位差が小さなバリアントが隣接しやすいことが明らかになった.また,マルテンサイトと中間温度で生成するベイナイトの結晶学的特徴はほぼ同じものであると考えられていたが,この手法によって実際には中間温度で生成するベイナイトは,低温で生成するベイナイトと高温で生成するベイナイトの中間的な特徴を示し,マルテンサイトとは異なる事が明らかになった.鉄鋼材料では,高強度・高靱性の鋼板を作成するためにベイナイト組織が注目を浴びている.ベイナイト鋼の強度や靱性を決定するのは,ブロック・パケットなどの結晶粒径や,セメンタイト・MAなどの第二相組織である.現在,ベイナイト組織を得るために様々な元素添加がされているが,元素添加が結品粒径や第二相組織に与える影響は明らかでない.そこで本年度では元素添加がベイナイト組織に与える影響を明らかにする.Fe-0.15C-1.5Mn-0.05SiにB,Nb,Nb+Bを微l量添加した合金を用い,等温変態時の変態速度・変態組織に対する元素添加の影響・連続冷却時の組織形成について調査した.ベイナイト変態開始は元素添加を行なうとNb,B,Nb+B添加の順に変態開始が遅延する.また,Nb添加によって変態停留が現われる.
KAKENHI-PROJECT-10J07062
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J07062
鉄鋼のベイナイト変態に及ぼす微量添加元素の影響の解明
不完全変態が発現する場合,変態停留が発現するまでは方位差が小さいベイニティックフェライト(BF)が生成する.変態再開後では,オーステナイト(γ)は転位密度が低い方位関係を持った方位差の小さなフェライトに分解しやすいが,方位差の大きなBF間のγはフェライトあるいはパーライトにも変態することが明らかになった、さらに,連続冷却時の細織形成に及ぼす元素添加の影響については,等温変態と同様の順に変態開始が遅延し,元素添加によって,より低温で生成する組織が生成するようになる.また,MAはNb添加によって生成量が増加し,その形状は周囲のBFの結晶学的特徴に影響を受ける」連続冷却では変態組織が粒界・粒内など場所により異なり,粒界近傍に炭化物析出を伴わないBFが粗大なベイナイトが高温で生成し,粒内ではセメンタイト析出を伴うBFが微細なベイナイトが低温で生成する.MAとして残留しやすい粗大BF間の微細な・中の炭素濃度は,変態停留中のγの炭素濃度であるTOに対して100J/molの過冷度を考慮した組成を外挿した値に近く,連続冷却変態におけるMA生成機構と等温変態での不完全変態機構は密接に関係することが明らかになった.
KAKENHI-PROJECT-10J07062
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日本企業の中国への直接投資の経営学的研究
日本の多国籍企業のアンケート調査から次のようなことが明らかになっている(製造企業の場合。)1.中国に投資している企業が多い(全体の4分の3)。2.1社あたりの中国製造現地法人は40社で、全海外製造現地法人の14%。3.今後の海外生産の対象国としてはアセアンに次いで2番目に高く評価。4.中国での現地生産の評価は、「問題はあるが予想の範囲内」の回答が一番多い(全体の4分の3)。5.中国の投資魅力度は、中期(3年)的ならびに長期(10年)的のいずれにおいても、現在より良くなるとの回答が一番多い。非製造企業の回答からは、次のようなことが明らかになっている。1.中国に投資している企業が結構多い(全体の3分の2)。2.1社あたりの中国現地法人は10.9社で、全体の19%を占める。3.投資対象国としての魅力、中国での経営の評価、中国の将来な投資魅力度については、製造企業の場合とほぼ同様になっている。日本企業の中国現地法人のアンケートの回答データから次のようなことが明らかになっている。1.成功している現地法人が多い(全体の約3分の2)。2.今後事業を拡大すると回答している現地法人が多い(全体の約4分の3)。3.現地法人の最高経営責任者(総経理)には日本人が多い(全体の約4分の3)。4.日本工場より中国工場がコスト競争力で勝っているところが多い(全体の約8割)。5.日本人出向社員が現地で直面している問題点として言葉の問題を上げるところが多い(全体の約8割)。日本の多国籍企業のアンケート調査から次のようなことが明らかになっている(製造企業の場合。)1.中国に投資している企業が多い(全体の4分の3)。2.1社あたりの中国製造現地法人は40社で、全海外製造現地法人の14%。3.今後の海外生産の対象国としてはアセアンに次いで2番目に高く評価。4.中国での現地生産の評価は、「問題はあるが予想の範囲内」の回答が一番多い(全体の4分の3)。5.中国の投資魅力度は、中期(3年)的ならびに長期(10年)的のいずれにおいても、現在より良くなるとの回答が一番多い。非製造企業の回答からは、次のようなことが明らかになっている。1.中国に投資している企業が結構多い(全体の3分の2)。2.1社あたりの中国現地法人は10.9社で、全体の19%を占める。3.投資対象国としての魅力、中国での経営の評価、中国の将来な投資魅力度については、製造企業の場合とほぼ同様になっている。日本企業の中国現地法人のアンケートの回答データから次のようなことが明らかになっている。1.成功している現地法人が多い(全体の約3分の2)。2.今後事業を拡大すると回答している現地法人が多い(全体の約4分の3)。3.現地法人の最高経営責任者(総経理)には日本人が多い(全体の約4分の3)。4.日本工場より中国工場がコスト競争力で勝っているところが多い(全体の約8割)。5.日本人出向社員が現地で直面している問題点として言葉の問題を上げるところが多い(全体の約8割)。日本企業の中国現地法人608社にアンケート質問票を郵送し、162社から有効回答をえた。アンケートの回答データの集計表を作成したが、その集計表からいくつかの知見を得ている。1.成功している現地法人が多い。(全体の約3分の2)。2.今後事業を拡大すると回答している現地法人が多い(全体の約4分の3)。3.現地法人の最高経営責任者(総経理)には日本人が多い(全体の約4分の3)。4.日本工場より中国工場がコスト競争力で勝っているところが多い。(全体の約8割)。5.日本人出向社員が現地で直面している問題点として言葉の問題を上げるところが多い。(全体の約8割)。次年度では、アンケートの回答データの本格的な分析(回帰分析など)を行いたい。アンケート調査と並行して、日本企業の中国現地法人についてのデータを既存のデータブックにもとづいてコンピューター入力する作業を行なった。このデータの分析も次年度に行う計画である。次年度には中国現地法人のケース・スタディも行いたいと考えている。繊維(アパレル)、電機、自動車の3つの業種から12社を選んで、詳細な事例分析を行いたい。日本の多国籍企業(大規模な製造企業149社、大規模な非製造企業107社、中堅中小規模の製造企業52社、中堅中小規模の非製造企業79社、合計387社)に中国投資にかんするアンケート質問票を発送し、219社から有効回答をえた(有効回答率57%)。回答データの集計表の作成を終え、現在はデータの分析中である。アンケート調査からつぎのようなことが明らかになっている(製造企業の場合)。1.中国に投資している企業が多い(全体の4分の3)。2.1社あたりの中国製造現地法人は4.0社で、全海外製造現地法人の14%。3.今後の海外生産の対象国としてはアセアンに次いで2番目に高く評価。4.中国での現地生産の評価は、「問題はあるが予想の範囲内」の回答が一番多い(全体の4分の3)。5.中国の投資魅力度は、中期(3年)的ならびに長期(10年)的のいずれにおいても、現在より良くなるとの回答が一番多い。
KAKENHI-PROJECT-07630106
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07630106
日本企業の中国への直接投資の経営学的研究
非製造企業の回答からは、つぎのようなことが明らかになっている。1.中国に投資している企業がけっこう多い(全体の3分の2)。2.1社あたりの中国現地法人は10.9社で、全体の19%を占める。3.投資対象国としての魅力、中国での経営の評価、中国の将来の投資魅力度につては、製造企業の場合とほぼ同様になっている。中国投資をテーマに松下電器産業、味の素、山九、アイリスの4社にインタビュー調査を実施した。当初の研究スケジュールよりおくれているが、あと半年ほどの間に、この2年間に実施したアンケート調査とインタビュー調査にもとづいて、研究成果をとりまとめることにしたい。
KAKENHI-PROJECT-07630106
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犬摘出肺モデルを用いた末梢気道病変合併気管軟化症の肺機能生理学的検討
本研究は、以下のような測定装置とモデルよりなる。本年度は、測定装置の作成とモデル犬の作成、及び、モデル犬より摘出した肺を用いて計測の一部を行った。〈1〉測定装置密閉可能なボックスにパイプを取り付け、一端はボックス内の肺に、もう一端は流量計に接続する。流量を積分し、気量を求める。ボックスにはさらに吸引回路と圧縮回路が接続し、それぞれ、レギュレーターにより圧の調節が可能である。両回路には電次弁が取り付けられており、その開閉により生理的な呼気吸気を再現する。また、気道内、ボックス内の圧を任意の部位で測定可能である。〈2〉モデル1)コントロール群未処理の犬摘出肺。2)気管軟化症群犬摘出肺の気管部分のみをパパイン溶液に浸水させ作製する。3)末梢気道病変群生犬を全麻挿菅下に経気管支鏡的にパパイン溶液を末梢気道内に注入し、4週間後に肺を摘出。4)末梢気道病変合併気管軟化症群3)に加え、2)の処置を施す。気管軟化症群各モデル群はそれぞれ特徴的なフローボリューム曲線や気道内圧変化を示すことが確認された。本研究は、以下のような測定装置とモデルよりなる。本年度は、測定装置の作成とモデル犬の作成、及び、モデル犬より摘出した肺を用いて計測の一部を行った。〈1〉測定装置密閉可能なボックスにパイプを取り付け、一端はボックス内の肺に、もう一端は流量計に接続する。流量を積分し、気量を求める。ボックスにはさらに吸引回路と圧縮回路が接続し、それぞれ、レギュレーターにより圧の調節が可能である。両回路には電次弁が取り付けられており、その開閉により生理的な呼気吸気を再現する。また、気道内、ボックス内の圧を任意の部位で測定可能である。〈2〉モデル1)コントロール群未処理の犬摘出肺。2)気管軟化症群犬摘出肺の気管部分のみをパパイン溶液に浸水させ作製する。3)末梢気道病変群生犬を全麻挿菅下に経気管支鏡的にパパイン溶液を末梢気道内に注入し、4週間後に肺を摘出。4)末梢気道病変合併気管軟化症群3)に加え、2)の処置を施す。気管軟化症群各モデル群はそれぞれ特徴的なフローボリューム曲線や気道内圧変化を示すことが確認された。
KAKENHI-PROJECT-04807099
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04807099
成人T細胞性白血病ないしリンパ腫の発病を阻止する為の発病前病理診断法の開発
次に、4、HTLV-1感染細胞の腫瘍性格として、Ki67抗原とp53蛋白の発現を検索し、(1)HTLV-1キャリアーでは多核顆粒球の核もKi67抗原を発現し、HTLV-1感染の造血への影響が示唆され、(2)Ser46を含む46-55アミノ酸を標識する抗p53蛋白抗体(1801)はapoptosisに関係したp53蛋白発現を検出することが示唆され、(3)Ser392を標識するp53Phos陽性細胞は、ATL、HTLV-1キャリアー、伝染性単核症で顕著に検出され、p53蛋白の機能障害が生じていることが示唆され、(4)p53Phosと抗p53蛋白抗体(1801)に陽性の細胞の出現は、HTLV-1キャリアーで有意に(Kruskal-Wallisの検定)年齢に伴って観察された。5、自動免疫染色装置による多重免疫染色法の開発を行った。6、web上のDNAデータベースによるin-situ hybridization (ISH)用のオリゴプローブを設計することは可能であり、mRNAの標識ではhybridization溶液とオリゴプローブの検出系が重要であり、DNAを標識するin-situ PCR法での温度制御はスライド表面温度センサーの利用でホットプレートでも可能であることが判明した。次に、4、HTLV-1感染細胞の腫瘍性格として、Ki67抗原とp53蛋白の発現を検索し、(1)HTLV-1キャリアーでは多核顆粒球の核もKi67抗原を発現し、HTLV-1感染の造血への影響が示唆され、(2)Ser46を含む46-55アミノ酸を標識する抗p53蛋白抗体(1801)はapoptosisに関係したp53蛋白発現を検出することが示唆され、(3)Ser392を標識するp53Phos陽性細胞は、ATL、HTLV-1キャリアー、伝染性単核症で顕著に検出され、p53蛋白の機能障害が生じていることが示唆され、(4)p53Phosと抗p53蛋白抗体(1801)に陽性の細胞の出現は、HTLV-1キャリアーで有意に(Kruskal-Wallisの検定)年齢に伴って観察された。5、自動免疫染色装置による多重免疫染色法の開発を行った。6、web上のDNAデータベースによるin-situ hybridization (ISH)用のオリゴプローブを設計することは可能であり、mRNAの標識ではhybridization溶液とオリゴプローブの検出系が重要であり、DNAを標識するin-situ PCR法での温度制御はスライド表面温度センサーの利用でホットプレートでも可能であることが判明した。研究初年度として、成人T細胞白血病・リンパ腫(ATLL)の発病前病理診断には、その第一段階として、皮層病変と末梢血でATLLの早期診断を可能にする為の基礎的な以下の検討を行った。1)既知遺伝子の発現をin-situ hybridizationで検出するOligonucleotide probeの選択は、web上のDNA databaseでのHomology検索とPCR用のprimer設計支援web siteの利用で可能であると共に、キメラ遺伝子の発現を検討するprobeの組み合わせの決定も可能であることが明らかになった。この方法で、DNA損傷の修復を行うDNA methylaseのoligonucleotide probesの選択が可能であることが明らかになっている。2)末梢血組織標本による白血病の病理診断は、末梢血白血球の静置自然沈降凝集現象を利用して末梢血組織標本の作成が可能であり、白血病細胞の免疫学的形質、再増殖能、HTLV-1関連蛋白の発現の検討が可能であることが明らかになった。3)自動免疫染色装置への超高感度免疫組織化学の導入は、通常の間接免疫組織化学の高感度のものまでの導入では、切片の前処理と処理温度管理で通年一定の免疫組織化学が可能であることが明らかになった。超高感度免疫組織化学における非特異反応の問題は、内因性ビオチンによる反応はstreptavidin-biotin complex法の部分のポリマーHoseperoxidase標識二次抗体の導入で回避出来るが、それ以外の顕粒状非特異反応の存在が確認できた。この問題を現在検討中である。その他に、ATLLを含めた白血病の末梢血組織標本継続的収集を行い、現在、50例に達しつつある。研究2年目として、1)成人T細胞性白血病(ATL)、HTLV-1キャリアー、その他の白血病の末梢血自然沈降凝集法による組織標本の作成により、約100例の検索資料の作成が達成できた。血液学的に確立されたHTLV-1関連の白血病発症への各段階でのHTLV-1関連蛋白発現と細胞自体の遺伝子発現の特徴を、この資料を用いて、来年度に以下の自動免疫装置による基準化した組織化学的染色法で、検索を進める予定である。そして、この検索を基礎に、皮膚に於ける異型リンパ球浸潤病変でのHTLV-1感染と白血病発症のマーカーとなる変化を組織化学的に把握する予定である。組織標本を用いた自動免疫染色装置で、2)極微量のHTLV-1関連蛋白のヒト固定組織標本での免疫組織化学的検出を目指す超高感度免疫組織化学的染色法を、Streptavidinbiotin conplex (sABC)法に代わってpolymer法(ダコChemMate EnVision法)を導入することで、非特異反応を抑制した新しい超高感度の免疫組織化学的染色法を確立した。
KAKENHI-PROJECT-13557017
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成人T細胞性白血病ないしリンパ腫の発病を阻止する為の発病前病理診断法の開発
また、3)組織切片中の細胞を少なくとも2つの抗原で標識して、混在する細胞から白血病細胞を同定することを目指し、グリシン緩衝液での発色色素を除く免疫反応産物の除去の基準化を図り、自動免疫染色装置での実施できる二重染色を確立した。そして、現在、4)オリゴDNAプローブによるin-situhybridizationの基準化を行う実験の準備を整えている。研究3年目(最終年度)として、1)前年度確立した超高感度免疫組織化学的染色方法(simplified CSA法)を更に改良し、非特異反応をほぼ無視できるnew simplified CSC法(nsCSA)を確立し、特許申請を行った。2)成人T細胞白血病(ATL)等とHTLV-1キャリアーの末梢血組織標本(PBST)で、このnsCSAにより、増殖サイクルにある細胞が発現するKi67抗原、増殖抑制遺伝子産物であるp53蛋白、DNAとの結合領域のSer392のリン酸化を受けてDNA損傷やcheck pointの制御に関係するp53蛋白の発現を検索し、a)HTLV-1キャリアーをp53蛋白とリン酸化p53蛋白の発現のないA群、リン酸化p53蛋白のみの発現のあるB群、p53蛋白の発現も示すC群にすると、その年齢はA,B,Cの順に高齢化を示し、p=0.049で有意差が認められた(Kruskal-Wallisの検定)。b)HTLV-1キャリアーでは、また、非常に多くの白血球がPBSTでは増殖サイクルにあるか離脱直後であることが判明し、園田の言うHTLV-1キャリアーにおける突発的リンパ球増多をKi67のnsCSA法で検出出来ることが示唆された。c)ATLでは、非常に多くの細胞がKi67抗原陽性で増殖サイクルにあるか離脱直後であり、リン酸化p53蛋白の発現が顕著であり、p53蛋白の発現も見られたが、急性骨髄性白血病やB細胞性慢性リンパ球白血病ではKi67抗原陽性の増殖細胞が少なく、リン酸化p53蛋白の発現も目立たなかった。d)nsCSAによるp53蛋白とリン酸化p53蛋白の発現の検出は、伝染性単核症やリンパ球増多症でも見られ、遺伝子変化による病的現象ではなく、生理的な増殖に関係したものであると考えられた。3)in-situ hybridizationやin-situ PCR法の実施の為の基礎実験として、スライドガラスの表面温度をモニターすることを試み、スライド標本の温度の制御の方法を検討した。
KAKENHI-PROJECT-13557017
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コンドロイチン硫酸を分子基盤とする機能解析と創薬応用
本研究は、生体内で最も複雑な構造と機能を持つグリコサミノグリカン(GAG)の分子レベルでの機能解析を目指し、独自開発のGAGライブラリーを用いて、糖鎖チップによるGAG結合性タンパク質の構造活性相関解析を行い、解析結果を創薬研究に応用することを目的とする。平成29年度に引き続き、合成標的には、コンドロイチン硫酸(CS)、デルマタン硫酸(DS)、ならびにそれらのハイブリット糖鎖の部分構造の合成について取り組んだ。CS、DS部分構造の合成では、糖鎖伸長反応の効率が悪く量的に確保することが難しいことが分かったことから、従来法の四糖構造の合成と並行して合成経路の改良についても検討した。従来法による合成では、DS-E+Eの四糖部分構造の合成について検討し、硫酸化四糖構造への誘導を行った。新規の合成経路においては、グルクロン酸(GlcA)成分、イズロン酸(IdoA)成分の3位にナフチルメチル(NAP)基を持つウロン酸成分を設計し、GlcA-GalNAc配列を持つ二糖共通中間体、IdoA-GalNAc配列を持つ二糖共通中間体の合成を行った。また合成した二糖中間体から糖供与体成分、受容体成分へ誘導し、四糖構造が構築できる五糖体を合成した。現在、糖鎖チップを用いた解析でFGF-2に対して高親和性が見られたCS-E、CS-T、DS-E二糖部分構造に着目し、CS-T+T、CS-E+T、DS-CS-E+E四糖構造への誘導について検討しており、量的確保ができ次第、糖鎖チップによる解析および生物活性試験を行う予定である。一方、二糖構造を固定化した糖鎖チップの解析においては、新規GAG結合分子として、成人T細胞白血病細胞に結合性を示す一本鎖抗体の結合性解析についても検討し、特定のCS部分二糖構造と高い親和性を示すことを明らかにした。本研究は、生体内で最も複雑な構造と機能を持つグリコサミノグリカン(GAG)の分子レベルでの機能解析を目指し、独自開発のGAGライブラリーを用いて、糖鎖チップによるGAG結合性タンパク質の構造活性相関解析を行い、解析結果を創薬研究に応用することを目的とする。H28年度は、主としてコンドロイチン硫酸(CS)、デルマタン硫酸(DS)、ならびにそれらのハイブリット糖鎖の部分構造の合成について取り組んだ。CS部分構造の合成においては、これまでに開発している合成法にしたがって検討を行い、これまでに合成されていない硫酸化パターンを持つCS四糖部分構造の合成を行った。具体的には、糖鎖チップを用いた解析で、FGF-2に対して高親和性が見られたCS-E、CS-T二糖部分構造に着目し、それらを含む四糖構造の合成を行った。またDS部分構造の合成においては、これまでに見出している三糖共通中間体から、IdoA3S構造を有する二糖部分構造の合成について検討し、2種類のDS二糖部分構造を合成した。一方、DS-CSハイブリット四糖構造の合成では、合成法の確立に向け、これまでに設計しているDS、CS二糖共通中間体からの四糖構造への誘導を検討した。合成するハイブリット四糖部分構造としては、GAG結合性タンパク質との親和性が高いと推定される高硫酸化構造である、DS-EとCS-E二糖構造を有する四糖構造とした。その結果、これまでに設計している二糖中間体から効率良く目的の四糖構造を合成することができた。合成した糖鎖構造については、糖鎖チップ化を行い、表面プラズモン共鳴(SPR)センサーを用いてGAG結合性タンパク質との相互作用解析を行う予定である。H28年10月からの執行であったため合成研究に注力した。GAG結合性タンパク質との結合解析については、合成した糖鎖構造も含めて、アレイ型チップを作製し、SPRバイオセンサーの準備が整い次第検討する予定である。本研究は、生体内で最も複雑な構造と機能を持つグリコサミノグリカン(GAG)の分子レベルでの機能解析を目指し、独自開発のGAGライブラリーを用いて、糖鎖チップによるGAG結合性タンパク質の構造活性相関解析を行い、解析結果を創薬研究に応用することを目的とする。H29年度は、主としてコンドロイチン硫酸(CS)、デルマタン硫酸(DS)、ならびにそれらのハイブリット糖鎖の部分構造の合成について取り組んだ。CS、DS部分構造の合成では、生物活性測定のため、数十ミリグラムスケールでの四糖構造の合成について検討した。その結果、糖鎖伸長反応の効率が悪く量的に確保することが難しいことが分かった。そのため、従来法による四糖構造の合成と並行して合成経路の改善についても検討した。従来法では、特にグリコシル化について検討し、授受の糖供与体、糖受容体に変換して検討を行ったが、現在のところ、収率の改善に至っていない。新規合成経路では、グルクロン酸(GlcA)成分の3位にナフチルメチル(NAP)基を持つ二糖共通中間体を設計し、その合成について検討した。糖鎖チップに用いる四糖構造の合成については、これまで通り、糖鎖チップを用いた解析でFGF-2に対して高親和性が見られたCS-E、CS-T、DS-E二糖部分構造に着目し、それらを含む四糖構造の合成について検討した。またDS-CSハイブリット四糖構造の合成では、これまでに設計しているDS、CS二糖共通中間体からの四糖構造への誘導を検討した。それぞれの四糖構造の合成が終わり次第、糖鎖チップによる解析および生物活性試験を行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-16K05848
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コンドロイチン硫酸を分子基盤とする機能解析と創薬応用
生物活性試験を行うため、数十ミリグラムスケールでの四糖構造の合成について検討しているが、四糖構造の合成において、糖鎖伸長の効率が低く、量的に確保が困難であった。現在、従来法では、四糖構造を構築するためのグリコシル化の反応条件について、新規合成経路では共通二糖中間体の改変について検討している。課題解決後、GAG結合性タンパク質との結合解析ならびに生物活性試験を行う予定である。本研究は、生体内で最も複雑な構造と機能を持つグリコサミノグリカン(GAG)の分子レベルでの機能解析を目指し、独自開発のGAGライブラリーを用いて、糖鎖チップによるGAG結合性タンパク質の構造活性相関解析を行い、解析結果を創薬研究に応用することを目的とする。平成29年度に引き続き、合成標的には、コンドロイチン硫酸(CS)、デルマタン硫酸(DS)、ならびにそれらのハイブリット糖鎖の部分構造の合成について取り組んだ。CS、DS部分構造の合成では、糖鎖伸長反応の効率が悪く量的に確保することが難しいことが分かったことから、従来法の四糖構造の合成と並行して合成経路の改良についても検討した。従来法による合成では、DS-E+Eの四糖部分構造の合成について検討し、硫酸化四糖構造への誘導を行った。新規の合成経路においては、グルクロン酸(GlcA)成分、イズロン酸(IdoA)成分の3位にナフチルメチル(NAP)基を持つウロン酸成分を設計し、GlcA-GalNAc配列を持つ二糖共通中間体、IdoA-GalNAc配列を持つ二糖共通中間体の合成を行った。また合成した二糖中間体から糖供与体成分、受容体成分へ誘導し、四糖構造が構築できる五糖体を合成した。現在、糖鎖チップを用いた解析でFGF-2に対して高親和性が見られたCS-E、CS-T、DS-E二糖部分構造に着目し、CS-T+T、CS-E+T、DS-CS-E+E四糖構造への誘導について検討しており、量的確保ができ次第、糖鎖チップによる解析および生物活性試験を行う予定である。一方、二糖構造を固定化した糖鎖チップの解析においては、新規GAG結合分子として、成人T細胞白血病細胞に結合性を示す一本鎖抗体の結合性解析についても検討し、特定のCS部分二糖構造と高い親和性を示すことを明らかにした。GAG糖鎖(特にコンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸)の部分構造の合成研究においては、順調に進んでいる。タンパク質との直接的な会合実験や生物活性評価には、量的不足が懸念されることから、特定の部分構造糖鎖については、数十ミリグラムスケールでの目的物の合成を行う予定である。分子モデリングによる解析については、使用を予定している学内のモデリングソフトのサービスが縮小され、使用時間の確保が難しくなるため、他のソフトウェアでの分子モデリングについても検討する予定である。生理活性評価については、量的に確保できた目的糖鎖構造から順次評価していく予定である。CS、DS四糖構造の合成研究においては、四糖構造構築のためのグリコシル化部分を除いては、順調に進んでいる。タンパク質との直接的な会合実験や生物活性評価には、十分量を確保する必要があるため、数十ミリグラムスケールで目的物を得られるよう、合成経路、反応条件を精査していく予定である。生理活性試験については、量的に確保できた糖鎖構造から順次評価していく予定である。
KAKENHI-PROJECT-16K05848
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蛍光分子の2段階成熟による環境応答性センサー型分子の取得
前年度にて濃縮・ヒットしてきた化合物を化学合成し、LC-MS/MS測定等により同定したのち蛍光測定を行うことで、上記の化合物が標的以外の蛋白質には結合せず、標的蛋白質に結合する際のみに蛍光応答するかどうかを検討した。その結果、予期していた蛍光応答自体は観察できたものの、結合特異性および結合力の両面において当初期待していた数値をクリアすることができなかった。前年度に作製したTICT型分子ライブラリーの分子構造の多様性に限界があることが主因と判断し、これを用いるかわりに、新規環境応答性蛍光分子ライブラリーのコンビナトリアル合成を改めて行い、標的に対するスクリーニングを行った。具体的には、標的結合性蛍光分子の構造にシッフ塩基を採用することにより、あえて加水分解するように設計をした蛍光分子ライブラリーを作製した。これにより蛍光分子が標的蛋白質と結合する時のみ疎水性環境下に入ることにより加水分解から逃れ蛍光性を維持し、結合しない時には加水分解され蛍光を失う特性を持たせた。次に、本ライブラリーをモデル標的蛋白質であるヒト血清アルブミン(HSA)と混合したのち、サイズ排除クロマトグラフィーにより、HSAと結合した蛍光分子群を選択した。更に、各々の化合物をフォトダイオードアレイ付きLC-MS/MSにて分離・同定したのち、HSAと結合したときのみ蛍光性をもつ結合体を得ることに成功した。当初の申請書にて提案したTICT型環境応答性蛍光分子ライブラリーの代わりに、Keep-on型蛍光分子ライブラリーの作製を新たに行うことにて課題をバイパスし、モデル標的蛋白質に対する結合体を得ることができ、成果をAnal. Bioanal. Chem.誌(2018)にて速報として発表したため「おおむね順調」と区分した。引き続きKeep-on型蛍光分子ライブラリーの種類を拡張し、HSA以外の様々な生体高分子を標的として、これらに対して特異的に結合させることで蛍光センシングする技術の確立を目指す。並行して、新規環境応答性蛍光分子ライブラリーを作製し、同様の手法にて選択を行っていき、最終的には当初の申請書に記載した2段階成熟技術を確立する予定である。本年度は、新規環境応答性蛍光分子のコンビナトリアル合成と標的蛋白質に対するスクリーニングを行った。まず、ねじれ型分子内電荷移動(TICT; twisted intramolecular charge transfer)型の新規環境応答性蛍光分子ライブラリーをスズキカップリング反応にて網羅的に迅速合成した。次に、各化合物における環境応答性の有無を、緩衝溶液中で有機溶媒存在の有無にて蛍光応答性を示すかどうかスクリーニングすることで確認した。さらに上記スクリーニングにおいて明確な応答性が確認された化合物群を合成し、この中から標的蛋白質に対して弱いながらも相互作用する環境応答性蛍光分子を選択した。具体的には、標的に対してライブラリー化合物をそれぞれ作用させて、標的結合に伴う蛍光強度の増加や変色が見られる化合物を決定して最適分子(ヒット化合物)とした。ヒット化合物分子の持つカルボニル炭素に対して隣の位置(=α位)を反応起点としてBr基を導入して誘導体化したのち、人工分子との反応点であるシステインを持つライブラリーペプチド(T7ファージ上に提示させてあるもの)と、臭素化した蛍光分子とを結合させることで、ハイブリッド分子ライブラリーとした。これを磁性ビーズ上に固定化した標的蛋白質に作用させ、ファージディスプレイ法の要領にて5ラウンドのバイオパニングを行って標的結合分子を濃縮させたのち、DNAシーケンサーにて遺伝情報を解読した。このことで、ランダム化させているペプチド部分のアミノ酸配列を決定した。申請書内に述べてある、上記2段階成熟技術を確立するためのモデル実験において、標的蛋白質に対して弱いながらも相互作用する環境応答性蛍光分子(ヒット化合物)の選択、および、ファージディスプレイ法を用いた濃縮が、当初の予定通り進展しているため。前年度にて濃縮・ヒットしてきた化合物を化学合成し、LC-MS/MS測定等により同定したのち蛍光測定を行うことで、上記の化合物が標的以外の蛋白質には結合せず、標的蛋白質に結合する際のみに蛍光応答するかどうかを検討した。その結果、予期していた蛍光応答自体は観察できたものの、結合特異性および結合力の両面において当初期待していた数値をクリアすることができなかった。前年度に作製したTICT型分子ライブラリーの分子構造の多様性に限界があることが主因と判断し、これを用いるかわりに、新規環境応答性蛍光分子ライブラリーのコンビナトリアル合成を改めて行い、標的に対するスクリーニングを行った。具体的には、標的結合性蛍光分子の構造にシッフ塩基を採用することにより、あえて加水分解するように設計をした蛍光分子ライブラリーを作製した。これにより蛍光分子が標的蛋白質と結合する時のみ疎水性環境下に入ることにより加水分解から逃れ蛍光性を維持し、結合しない時には加水分解され蛍光を失う特性を持たせた。次に、本ライブラリーをモデル標的蛋白質であるヒト血清アルブミン(HSA)と混合したのち、サイズ排除クロマトグラフィーにより、HSAと結合した蛍光分子群を選択した。更に、各々の化合物をフォトダイオードアレイ付きLC-MS/MSにて分離・同定したのち、HSAと結合したときのみ蛍光性をもつ結合体を得ることに成功した。当初の申請書にて提案したTICT型環境応答性蛍光分子ライブラリーの代わりに、Keep-on型蛍光分子ライブラリーの作製を新たに行うことにて課題をバイパスし、モデル標的蛋白質に対する結合体を得ることができ、成果をAnal. Bioanal. Chem.誌(2018)にて速報として発表したため「おおむね順調」と区分した。
KAKENHI-PROJECT-17K05925
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K05925
蛍光分子の2段階成熟による環境応答性センサー型分子の取得
引き続き計画書に記載した通り、濃縮された化合物をそれぞれ化学合成し、各種NMR測定およびLC-MS/MS測定により同定したのち蛍光測定を行うことで、上記の化合物が標的以外の蛋白質には結合せず、標的蛋白質に結合する際のみに蛍光応答するかどうかを確認していく。さらに、スズキカップリング型以外の新規環境応答性蛍光分子ライブラリーを作製し、同様の手法にて選択を行っていく予定である。引き続きKeep-on型蛍光分子ライブラリーの種類を拡張し、HSA以外の様々な生体高分子を標的として、これらに対して特異的に結合させることで蛍光センシングする技術の確立を目指す。並行して、新規環境応答性蛍光分子ライブラリーを作製し、同様の手法にて選択を行っていき、最終的には当初の申請書に記載した2段階成熟技術を確立する予定である。申請書の研究計画・方法欄に当初記載した、「Step 2.選択された最適分子周辺ペプチドの分子進化」における5、6項を本年度行っておらず、そのための消耗品等の予算執行を行っていないため次年度使用額が生じた。先述したように、5、6項を行うためこれを速やかに執行する。蛍光分子ライブラリーの見直しを行ったため、申請書の研究計画・方法欄に当初記載した、(HSA以外の)様々な生体高分子を標的とした一般性検証実験を本年度行っておらず、そのための消耗品等の予算執行を行っていないため次年度使用額が生じた。先述したようなバイパスを行うことで、本年度なるべく早い段階にてこれを執行する。
KAKENHI-PROJECT-17K05925
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K05925
認知機能改善効果の高い運動介入方法の検討:ポールウォーキングに着目した大規模調査
本研究では、認知機能改善効果の高い運動介入方法を解明することを目的としており、当該年度は都市部の高齢女性におけるポールウォーキングと通常ウォーキングの認知機能改善効果を比較する介入研究を実施した。本研究の対象者は東京都豊島区、杉並区、神奈川県川崎市多摩区に居住する70歳以上の女性ボランティア55名とし、ポールウォーキング(PW)群、通常ウォーキング(W)群、健康教育群の3群に無作為に割付け、3ヶ月間の介入プログラムを実施した。全群に対し、認知症予防に有効な生活習慣についての健康教育講座を1回実施し、PW群とW群には、歩数計を配布して日々の歩数をセルフモニタリングするよう指示した。PW群には、PW専用のポールを配布し、自宅で自主的にPWを実施できるよう、ポールの使い方についておよび歩き方についての講習を2時間実施した。介入期間終了後に測定を行った。評価項目として、認知機能、体力指標(握力、バランス能力、最大歩行速度、Timed Up and Go test)、身体活動量を測定し、変化量の群間比較により効果判定した。その結果、全体では群間に有意な差は認められなかったものの、それぞれの運動種目を週1回以上実施した者に限定したサブグループ解析では、PW群はW群と比較して有意に握力、最大歩行速度、認知機能が改善することが示された。以上のことから、PWは通常ウォーキングよりも運動効率が高く、身体機能および認知機能を高める可能性が示唆された。本成果については、現在論文にまとめ、専門の学術誌へ投稿中である。ランダム化比較試験により、通常ウォーキングと比較したポールウォーキングによる身体・認知機能に対する有効性・安全性を明らかにすることができたため。本年度は、オーストラリアのUniversity of QueenslandのWendy Brown教授との共同研究を実施し、研究成果を国内学会ならびに論文投稿により報告する予定である。2019年7月9月にかけて、University of Queenslandに留学し、Brown教授が1996年から継続して実施しているALSWH (The Australian Longitudinal Study on Women's Health)のデータを用いて研究を実施する予定である。本研究を実施するには、ALSWHの事務局から、研究実施の承認を得る必要があるため、海外渡航前に承認を得られるよう準備を進める。対象者はベースライン時点で45ー50歳の女性13,715名とし、1996年から2016年の追跡データを用いて運動種目ごとの認知症発症の危険因子との関連を検討する。評価項目としては、目的変数を認知症発症の予測因子となる体力指標(握力、歩行能力)、説明変数を運動種目(遊び、ランニング、筋力トレーニング、自転車、エアロビクス、ゴルフ、水泳、テニス、ヨガ、体操、ボートなど)、調整変数として基本属性(年齢、教育年数、居住地、世帯収入、就労)、健康状態(合併症、既往歴、身体・精神的健康、BMI)、健康行動(食生活、社会的行動、飲酒、喫煙)とする。統計解析においては、多重代入法による欠測値の補完をし、潜在曲線モデルによって各運動種目と健康指標との関連を検討する。研究成果は、研究協力機関に報告するとともに、対象者についても文書等で説明する。また、関係する国内の学会にて成果報告をする。さらに本年度内に国際誌へ論文投稿をできるよう準備を進める。本研究では、認知機能改善効果の高い運動介入方法を解明することを目的としており、当該年度は都市部の高齢女性におけるポールウォーキングと通常ウォーキングの認知機能改善効果を比較する介入研究を実施した。本研究の対象者は東京都豊島区、杉並区、神奈川県川崎市多摩区に居住する70歳以上の女性ボランティア55名とし、ポールウォーキング(PW)群、通常ウォーキング(W)群、健康教育群の3群に無作為に割付け、3ヶ月間の介入プログラムを実施した。全群に対し、認知症予防に有効な生活習慣についての健康教育講座を1回実施し、PW群とW群には、歩数計を配布して日々の歩数をセルフモニタリングするよう指示した。PW群には、PW専用のポールを配布し、自宅で自主的にPWを実施できるよう、ポールの使い方についておよび歩き方についての講習を2時間実施した。介入期間終了後に測定を行った。評価項目として、認知機能、体力指標(握力、バランス能力、最大歩行速度、Timed Up and Go test)、身体活動量を測定し、変化量の群間比較により効果判定した。その結果、全体では群間に有意な差は認められなかったものの、それぞれの運動種目を週1回以上実施した者に限定したサブグループ解析では、PW群はW群と比較して有意に握力、最大歩行速度、認知機能が改善することが示された。以上のことから、PWは通常ウォーキングよりも運動効率が高く、身体機能および認知機能を高める可能性が示唆された。本成果については、現在論文にまとめ、専門の学術誌へ投稿中である。ランダム化比較試験により、通常ウォーキングと比較したポールウォーキングによる身体・認知機能に対する有効性・安全性を明らかにすることができたため。本年度は、オーストラリアのUniversity of QueenslandのWendy Brown教授との共同研究を実施し、研究成果を国内学会ならびに論文投稿により報告する予定である。2019年7月9月にかけて、University of Queenslandに留学し、Brown教授が1996年から継続して実施しているALSWH (The Australian Longitudinal Study on Women's Health)のデータを用いて研究を実施する予定である。本研究を実施するには、ALSWHの事務局から、研究実施の承認を得る必要があるため、海外渡航前に承認を得られるよう準備を進める。
KAKENHI-PROJECT-18J14616
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J14616
認知機能改善効果の高い運動介入方法の検討:ポールウォーキングに着目した大規模調査
対象者はベースライン時点で45ー50歳の女性13,715名とし、1996年から2016年の追跡データを用いて運動種目ごとの認知症発症の危険因子との関連を検討する。評価項目としては、目的変数を認知症発症の予測因子となる体力指標(握力、歩行能力)、説明変数を運動種目(遊び、ランニング、筋力トレーニング、自転車、エアロビクス、ゴルフ、水泳、テニス、ヨガ、体操、ボートなど)、調整変数として基本属性(年齢、教育年数、居住地、世帯収入、就労)、健康状態(合併症、既往歴、身体・精神的健康、BMI)、健康行動(食生活、社会的行動、飲酒、喫煙)とする。統計解析においては、多重代入法による欠測値の補完をし、潜在曲線モデルによって各運動種目と健康指標との関連を検討する。研究成果は、研究協力機関に報告するとともに、対象者についても文書等で説明する。また、関係する国内の学会にて成果報告をする。さらに本年度内に国際誌へ論文投稿をできるよう準備を進める。
KAKENHI-PROJECT-18J14616
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J14616
シクリトール類からのキラル素子の創製と生理活性天然物合成への応用
天然に豊富に存在するシクリトール類(myo_-イノシトール、L_-クエブラキトール等)を出発原料とし、これらから比較的短い工程数で立体化学の定まったアルキル基や水酸基を有する炭素数3から7の様々なキラル素子を創製する。それらを利用して有用な天然有機化合物を光学活性体として全合成することを目的として、まず天然ゴム採取時のラテックス中より得られる光学活性なシクリトールであるL_-クエブラキトールにメチル基の導入を試みた。L_-クエブラキトールから立体選択的に誘導される3種類のエポキシド体に対し、有機金属試薬を用いた反応を検討したところ、有機アルミニウム試薬を用いた場合、高収率、高位置選択的にメチル基を導入できることがわかった。また基質によっては有機アルミニウム試薬と銅試薬で位置選択性が逆転する知見も得られた。こうして得られた分枝シクリトール類の遊離の水酸基を酸化し、得られたケトンをBaeyer-Villiger酸化に供したところ、ケトンカルボニルのalpha、alpha'位にそれぞれメチル基、アルコキシ基を有する基質の場合、反応は高位置選択的に進行し、アルコキシ基を有する炭素側に酸素が導入された7員環ラクトンが単一の生成物として高収率で得られることを見いだした。こうして、L_-クエブラキトールへのメチル基の立体選択的な導入、シクロヘキサン環の位置選択的な開裂法を開発することができた。現在、この7員環ラクトンを利用して、抗真菌性抗生物質であるラノマイシンを全合成することを試みている。天然に豊富に存在するシクリトール類(myo_-イノシトール、L_-クエブラキトール等)を出発原料とし、これらから比較的短い工程数で立体化学の定まったアルキル基や水酸基を有する炭素数3から7の様々なキラル素子を創製する。それらを利用して有用な天然有機化合物を光学活性体として全合成することを目的として、まず天然ゴム採取時のラテックス中より得られる光学活性なシクリトールであるL_-クエブラキトールにメチル基の導入を試みた。L_-クエブラキトールから立体選択的に誘導される3種類のエポキシド体に対し、有機金属試薬を用いた反応を検討したところ、有機アルミニウム試薬を用いた場合、高収率、高位置選択的にメチル基を導入できることがわかった。また基質によっては有機アルミニウム試薬と銅試薬で位置選択性が逆転する知見も得られた。こうして得られた分枝シクリトール類の遊離の水酸基を酸化し、得られたケトンをBaeyer-Villiger酸化に供したところ、ケトンカルボニルのalpha、alpha'位にそれぞれメチル基、アルコキシ基を有する基質の場合、反応は高位置選択的に進行し、アルコキシ基を有する炭素側に酸素が導入された7員環ラクトンが単一の生成物として高収率で得られることを見いだした。こうして、L_-クエブラキトールへのメチル基の立体選択的な導入、シクロヘキサン環の位置選択的な開裂法を開発することができた。現在、この7員環ラクトンを利用して、抗真菌性抗生物質であるラノマイシンを全合成することを試みている。
KAKENHI-PROJECT-05780425
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05780425
脂肪細胞機能におけるインプリンティング遺伝子産物の生理的・病態生理的意義の解明
【方法と結果】DNAデータベースサーチにより、Peg1/Mest遺伝子産物には、異なる第1エクソンによりコードされる複数のアイソフォームが存在することが明らかになった。real-time PCR法により、肥満の脂肪組織における発現誘導では、各アイソフォームに共通する第2エクソンの約2.3kb上流のゲノム上に位置する第1エクソンより転写開始されることが明らかになった。そして、Peg1/Mest遺伝子中に一塩基ポリモルフィズムを有するC57BL6マウスとJF1マウスを交配し、産仔を肥満させ脂肪組織で発現するPeg1/Mest cDNAの塩基配列を解析することにより、肥満の脂肪組織ではPeg1/Mest遺伝子が父方由来のアレルから転写されていることを見出した。【考察】インプリンティングの概念は個体発生時の遺伝子発現制御機構として位置付けられてきたが、本研究により、成体における肥満の脂肪組織でPeg1/Mestが片親性発現を維持したまま発現が増大することが明らかとなった。以上よりインプリンティング遺伝子Peg1/Mestは、胎仔成長以外にも脂肪細胞機能等、成体細胞の機能にも重要な役割を果たすことが示唆された。【背景と目的】Paternally expressed gene-1(Peg-1)(別名Mesoderm specific transcript (Mest))は、発生時に父親由来のアレルより発現するインプリンティング遺伝子である。我々は既に、肥満動物の肥大化脂肪細胞においてPeg1/Mest遺伝子発現が著しく増大することを見出した(Am.J.Physiol.288:E117-E124,2005)。本研究では、肥満の脂肪組織におけるインプリンティング遺伝子Peg1/Mestの発現制御を解析した。【方法と結果】DNAデータベースサーチにより、Peg1/Mest遺伝子産物には、異なる第1エクソンによりコードされる複数のアイソフォームが存在することが明らかになった。rea1-time PCR法により、肥満の脂肪組織における発現誘導では、各アイソフォームに共通する第2エクソンの約2.3kb上流のゲノム上に位置する第1エクソンより転写開始されることが明らかになった。そして、Peg1/Mest遺伝子中に一塩基ポリモルフィズムを有するC57BL6マウスとJF1マウスを交配し、産仔を肥満させ脂肪組織で発現するPeg1/Mest cDNAの塩基配列を解析することにより、肥満の脂肪組織ではPeg1/Mest遺伝子が父方由来のアレルから転写されていることを見出した。【考察】インプリンティングの概念は個体発生時の遺伝子発現制御機構として位置付けられてきたが、本研究により、成体における肥満の脂肪組織でPeg1/Mestが片親性発現を維持したまま発現が増大することが明らかとなった。以上よりインプリンティング遺伝子Peg1/Mestは、胎仔成長以外にも脂肪細胞機能等、成体細胞の機能にも重要な役割を果たすことが示唆された。【方法と結果】DNAデータベースサーチにより、Peg1/Mest遺伝子産物には、異なる第1エクソンによりコードされる複数のアイソフォームが存在することが明らかになった。real-time PCR法により、肥満の脂肪組織における発現誘導では、各アイソフォームに共通する第2エクソンの約2.3kb上流のゲノム上に位置する第1エクソンより転写開始されることが明らかになった。そして、Peg1/Mest遺伝子中に一塩基ポリモルフィズムを有するC57BL6マウスとJF1マウスを交配し、産仔を肥満させ脂肪組織で発現するPeg1/Mest cDNAの塩基配列を解析することにより、肥満の脂肪組織ではPeg1/Mest遺伝子が父方由来のアレルから転写されていることを見出した。【考察】インプリンティングの概念は個体発生時の遺伝子発現制御機構として位置付けられてきたが、本研究により、成体における肥満の脂肪組織でPeg1/Mestが片親性発現を維持したまま発現が増大することが明らかとなった。以上よりインプリンティング遺伝子Peg1/Mestは、胎仔成長以外にも脂肪細胞機能等、成体細胞の機能にも重要な役割を果たすことが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-18052006
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18052006
重度聴覚障害者のスピーチの明瞭さに及ぼす聴覚フィードバックの機序に関する基礎研究
聴覚障害児における単音節の受聴明瞭度並びに発音明瞭度、そして聴力レベルの相互関連性を検討した結果、受聴明瞭度と発音明瞭度との相関は高いことが見い出され、単音節の発語の明瞭さにおける聴覚フィードバックの重要性が示唆された。また、両明瞭度共、平均聴力レベルとの間に負の相関が認められたが、平均聴力レベルが90110dBにある聴覚障害児・者にあっては個人差が著しく、聴力レベルとの間には一義的な関係にはなかった。平均聴力レベル90123dBの難聴児を対象に、100音節の発語明瞭度、健聴児の発語による母音の受聴明瞭度、母音の発語明瞭度並びに自己の発語による母音の受聴明瞭度の相互関連性を検討した結果、それらの異聴には一定の傾向が見られ、発語において聴覚フィードバックを有効に活用している聴覚障害児の有する音響・音韻的範疇は、健聴児により近似するものであることが推察された。また、母音の発語明瞭度が高くても語音聴取能の低い者は発語明瞭度が低いことが示唆され、子音を含む発語の明瞭さには、母音の発語の明瞭さに加えて聴覚フィードバックが重要であることが示唆された。また、平均聴力レベル90dB以上の難聴児の発語した破裂子音における有声・無声の対立において、健聴者による聴覚的評価とVOT(Voice Onset Time)の差異を分析・検討した結果、聴覚障害児の発語には、聴覚的には同一単音節と評価されるものであっても、当該児の内では相異なる音節として発語されている可能性のあるもののあること、音節によっては、VOTの差が、無声と聴覚的に評価される割合を良く反映しているもののあることが示唆された。個々の症例を見ると、ほぼ全評価者が同一と評価した音節でありながら、無声音のVOTが有声音に比べて明らかに長かった症例が認められると共に、一方で、評価者全員が同一と評価した音節であって、かつVOTに差が認められなかった症例も存在した。平成8年度は、重度聴覚障害者における分節情報のAuditory-Feedbackに関して検討を加えた。具体的には、聴覚障害児の母音発話におけるAuditory-Feedbackについて検討した。そのために、聴覚障害児における単音節母音受聴明瞭度、単音節母音発音明瞭度並びに聴力レベルに関する多数データを得、それらの相互関連性を検討した。その結果、単音節母音受聴明瞭度と単音節母音発音明瞭度との相関は強いことが見い出され、母音発話の明瞭さにおけるAuditory-Feedbackの重要性が示唆された。また、単音節母音受聴明瞭度並びに単音節母音発音明瞭度発音明瞭度共、平均聴力レベルとの間には有意な相関が認められ、総体的には平均聴力レベルの増加に伴い低下する傾向にあるが、聴力レベルがある範囲内にある聴覚障害児・者にあっては、聴力レベルとの間には一義的な関係にはないという結果が得られた。一方、単音節母音受聴明瞭度並びに単音節母音発音明瞭度共、学年、性別の違いによる有意差は認められなかった。ここまでの成果を踏まえ、平成9年度は、重度聴覚障害児の母音発話におけるAuditory-Feedbackについての更なる検討へと発展させていく。また、ある同一の単音節に聴き取られてしまった異なる2つ以上の単音節について、発話音声間の音響音声学的特徴の差異の分析・検討については、データ収集は完了しており、現在分析・検討中である。更には、重度聴覚障害者における韻律情報のAuditory-Feedbackに関する検討へと発展させていく予定である。聴覚障害児における単音節の受聴明瞭度並びに発音明瞭度、そして聴力レベルの相互関連性を検討した結果、受聴明瞭度と発音明瞭度との相関は高いことが見い出され、単音節の発語の明瞭さにおける聴覚フィードバックの重要性が示唆された。また、両明瞭度共、平均聴力レベルとの間に負の相関が認められたが、平均聴力レベルが90110dBにある聴覚障害児・者にあっては個人差が著しく、聴力レベルとの間には一義的な関係にはなかった。平均聴力レベル90123dBの難聴児を対象に、100音節の発語明瞭度、健聴児の発語による母音の受聴明瞭度、母音の発語明瞭度並びに自己の発語による母音の受聴明瞭度の相互関連性を検討した結果、それらの異聴には一定の傾向が見られ、発語において聴覚フィードバックを有効に活用している聴覚障害児の有する音響・音韻的範疇は、健聴児により近似するものであることが推察された。また、母音の発語明瞭度が高くても語音聴取能の低い者は発語明瞭度が低いことが示唆され、子音を含む発語の明瞭さには、母音の発語の明瞭さに加えて聴覚フィードバックが重要であることが示唆された。また、平均聴力レベル90dB以上の難聴児の発語した破裂子音における有声・無声の対立において、健聴者による聴覚的評価とVOT(Voice Onset Time)の差異を分析・検討した結果、聴覚障害児の発語には、聴覚的には同一単音節と評価されるものであっても、当該児の内では相異なる音節として発語されている可能性のあるもののあること、音節によっては、VOTの差が、無声と聴覚的に評価される割合を良く反映しているもののあることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-08610098
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08610098
重度聴覚障害者のスピーチの明瞭さに及ぼす聴覚フィードバックの機序に関する基礎研究
個々の症例を見ると、ほぼ全評価者が同一と評価した音節でありながら、無声音のVOTが有声音に比べて明らかに長かった症例が認められると共に、一方で、評価者全員が同一と評価した音節であって、かつVOTに差が認められなかった症例も存在した。平均聴力レベル90dB以上の重度聴覚障害児75名について、母音受聴明瞭度、母音発音明瞭度並びに自己発話母音受聴明瞭度とそれらの相互関連性を検討した。その結果、それらの異聴には一定の傾向が見られること、聴能を高め、発話において聴覚フィードバックを有効に活用している聴覚障害児の有する聴覚的カテゴリーは、多少のずれは存在するものの、健聴児により近似するものであることが推察された。また、健聴児・者の正常な発音の聴取能を自己発話の受聴に生かし聴覚フィードバックを有効に働かせなければ、発音の明瞭さの向上にはつながらないことが示唆された。また、重度聴覚障害児の発話した破裂子音における有声・無声の対立(/p/⇔/b/,/t/⇔/d/,/k/⇔/g/)において、評価者全員(10名)が正しく無声と聴き取った無声破裂子音発話音声と、60%以上(10名中6名以上)の評価者がその無声破裂子音として聴き取った相対立する(調音部位の同じ)有声破裂子音発話音声について、両発話音声の音響音声学的特徴、具体的にはVOT(Voice Onset Time)の差異を分析・検討した。その結果、1)有声-無声破裂子音のVOTについて、/p/-/b/並びに/k/-/g/にあっては無声のVOTが有意に長かったが、/t/-/d/には有意差が認められなかった。2)無声と評価した評価者数と/t/-/d/間のVOT差との間には相関が認められたが、/p/-/b/間のVOT差並びに/k/-/g/間のVOT差との間には相関は認められなかった。これらのことから、聴覚障害児の単音節発話音声には、聴覚的には同一単音節と評価されるものであっても当該児の内では相異なる音節として発話されている可能性のあるもののあることが示唆された。また、音節によっては、有声・無声の識別の手掛かりの一つであるVOTの差が、無声と聴覚的に評価される割合を良く反映しているもののあることが示唆された。平均聴力レベル90123dBの難聴児を対象に,100音節の発語明瞭度,健聴児の発語による母音の受聴明瞭度,母音の発語明瞭度並びに自己の発語による母音の受聴明瞭度の相互関連性を検討した。その結果,母音の発語明瞭度が高くても語音聴取能の低い者は発語明瞭度が低いことが示唆され,子音を含む発語の明瞭さには,母音の発語の明瞭さに加えて聴覚フィードバックが重要であることが示唆された。更に,100音節の発語明瞭度と自己の発語による母音の受聴明瞭度に高い相関が認められたことからも,発語の明瞭さにおける聴覚フィードバックの重要性が示唆された。一方,健聴児の発語による母音の受聴明瞭度も母音の発語明瞭度も共に低いにも関わらず,自己の発語による母音の受聴明瞭度が高い者がいたことから,健聴者とは異なる独自の母音の音響・音韻的範疇を有する聴覚障害児の存在が示唆された。また,平均聴力レベル90dB以上の難聴児の発語のうち,無声音が全健聴評価者に正しく聴取され,その無声音と同一調音部位の有声音を,50%以上の評価者にその無声音として聴取された無声ー有声破裂子音を分析の対象とし,スペクトログラムからVOT(Voice Onset Time)を測定し,その差異と聴覚的評価との関連性を検討した。
KAKENHI-PROJECT-08610098
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トランスポゾンのゲノム進化動態に与える影響
本研究における重要な点は、トランスポゾンのコピー数変動動態に加えて同時にトランスポゾンの配列の進化動態を詳細に示せることにある。また、トランスポゾン配列からトランスポゾンの転移活性を定義することにより、コピー数変動と転移活性との関係を示すことができる。トランスポゾンが数を増やすことにより宿主の適応度を下げるような選択が強く働く場合、すなわち、コピー数が少ない場合、転移活性は高いまま維持されることが示された。逆に、選択が弱い場合、すなわち、コピー数が多い場合は、転移活性を失ったコピーがその大部分を占めることが示された。ただし、この結果には重大な問題点がある。現在のパラメタでは、一個体中でトランスポゾンが挿入可能なサイトの数が、選択が低い場合のコピー数の最大値の約二倍しかなく、現実的なモデルとはいえない。また、集団中では、ほぼすべてのサイトにトランスポゾンが挿入することになり、あるサイトにおけるトランスポゾンの固定確率が非常に高くなる要因ともなっている。この結果は、転移活性を失ったトランスポゾンが集団中に維持され続けるためには、ある程度そのサイトにおける頻度が高くなくてはならない事を示しているとも言える。ここから、転移活性の高いトランスポゾンは挿入多型を示すことが考えられる。実際に、Aluと言ったレトロトランスポゾンでは、コピー数とともに挿入多型を考慮してそのサブファミリーのエイジを推定している。また、出芽酵母での集団ゲノム解析からも同様の結果が示されている。以上、トランスポゾンの固定確率、トランスポゾンの頻度分布と転移活性の関係に関して結果をまとめ論文として執筆中である。シミュレーションプログラムのバグの修正等に時間がかかり、当初の計画より遅れが生じた。シミュレーションプログラムは構築済みであるため、解析に必要なデータの蓄積を行いつつ、解析を行い、順次論文へとまとめていく。パラメタ設定により非現実的な状態が作られる場合には、全てのデータを作りなおす必要性が出てくる。本年度では、トランスポゾンに対しての古典的モデルに配列情報を加えたモデルへの発展をおこなった。トランスポゾンの転移活性は主にトランスポゾン自身がコードする転移に必須な酵素に依存する。そのため配列情報を用いることでより現実的に転移活性を記述した。また、フレームシフト変異など一度の突然変異により転移活性を失う場合も考慮した。トランスポゾンに対する自然選択としては、そのコピー数と挿入座位に対しての二種類の選択を考え、両選択が働く座位と数に対しての選択のみが働く座位とに分けてモデル化した。以上を考慮したモデルを基にC言語を用いてシミュレーションプログラムを構築しシミュレーションを行った。その結果コピー数動態に関しては、コピー数がほぼ平衡状態であり転移活性が(1)高い状態を維持、(2)徐々に減少、(3)一気に減少と(4)コピー数が振動の4つのパターンに大別できた。また、近隣結合法を用いてトランスポゾン配列の遺伝子系譜を描き、星状度を用いてその系譜の形状を定量的に評価した。この星状度と集団中の平均転移活性、活性を持つコピー数の割合との間にそれぞれ負の相関が見られた。これは、転移活性が高いコピーでは突然変異によって自身の枝を残しつつ多くの分枝ができるが、転移活性が低いまたは無いと自身の枝が消失するとともに新しい分枝ができる確率のほうが高いからと考えられる。今後は、コピー数の振動(パターン4)を生む要因に関しての理論的解析を行うとともに、このモデルをもとに集団動態(種分化や集団サイズの変動)を考慮した研究を行いショウジョウバエにおける実データとの比較検討を行う予定である。本年度は、前年度に引き続きトランスポゾンの配列を考慮したシミュレーションプログラムの結果をもとに、トランスポゾンのコピー数動態とトランスポゾンの配列の進化動態の関係を研究した。前回報告した、トランスポゾンのコピー数に対する負の選択挿入位置による負の選択との力関係や負の選択が高いほどコピー数は少なくなるが、逆に活性の高いコピーが多く占めるといったコピー数動態と選択との関係、トランスポゾン配列の塩基置換率による活性の変化率が大きいほどコピー数が変動しやすいという結果を得た。前回報告したトランスポゾンの欠失率との関係も見られたが、変化率との関係ほど強い相関は見られなかった。またこのデータ群に対して、トランスポゾン全配列を用いた系譜および非同義置換率(Dn)と同義置換率(Ds)の比(Dn/Ds比)の解析を行った。系譜の枝長はその時点でのトランスポゾン集団の活性の構成を反映することが示された。コピー数動態との関係も見られ、コピー数が少ない場合、すなわちトランスポゾンに対する負の選択が強い時、系譜の形状は最初の配列を中心に星型となる傾向が見られ、コピー数が多い場合はそれぞれの枝長は活性を反映するために、全体的に渦を巻く様な形状がとなる傾向が見られた。さらにDn/Ds比においても、枝長とDn/Ds比との間に負の相関が見られた。ただし、コピー数が増加している場合では正の相関が見られる点もあり、コピー数動態の影響を少なからず受けていることが示された。以上の結果を論文としてまとめ、遺伝学分野のトップジャーナルであるGenetics誌に投稿するに至った。本研究における重要な点は、トランスポゾンのコピー数変動動態に加えて同時にトランスポゾンの配列の進化動態を詳細に示せることにある。また、トランスポゾン配列からトランスポゾンの転移活性を定義することにより、コピー数変動と転移活性との関係を示すことができる。トランスポゾンが数を増やすことにより宿主の適応度を下げるような選択が強く働く場合、すなわち、コピー数が少ない場合、転移活性は高いまま維持されることが示された。
KAKENHI-PROJECT-10J06340
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J06340
トランスポゾンのゲノム進化動態に与える影響
逆に、選択が弱い場合、すなわち、コピー数が多い場合は、転移活性を失ったコピーがその大部分を占めることが示された。ただし、この結果には重大な問題点がある。現在のパラメタでは、一個体中でトランスポゾンが挿入可能なサイトの数が、選択が低い場合のコピー数の最大値の約二倍しかなく、現実的なモデルとはいえない。また、集団中では、ほぼすべてのサイトにトランスポゾンが挿入することになり、あるサイトにおけるトランスポゾンの固定確率が非常に高くなる要因ともなっている。この結果は、転移活性を失ったトランスポゾンが集団中に維持され続けるためには、ある程度そのサイトにおける頻度が高くなくてはならない事を示しているとも言える。ここから、転移活性の高いトランスポゾンは挿入多型を示すことが考えられる。実際に、Aluと言ったレトロトランスポゾンでは、コピー数とともに挿入多型を考慮してそのサブファミリーのエイジを推定している。また、出芽酵母での集団ゲノム解析からも同様の結果が示されている。以上、トランスポゾンの固定確率、トランスポゾンの頻度分布と転移活性の関係に関して結果をまとめ論文として執筆中である。シミュレーションプログラム中に致命的なバグが見つかり、プログラムの修正及び再度シミュレーション・データ解析をやり直したため。シミュレーションプログラムのバグの修正等に時間がかかり、当初の計画より遅れが生じた。すべてのコピーが転移を行えるトランスポゾンモデル(本研究では転移活性を有するものだけ転移を行う)に従うシミュレーションプログラムでも少数のマスタージーンまたはソースジーンのみが転移を行えるマスター/ソースジーンモデルに似た動態を示すことを示唆している。しかし、塩基置換率のみを基にした転移時期、特に一時期に多くのトランスポゾンが転移を行った時期(トランスポジション・バーストの時期)の推定には、変異を蓄積しながらコピー数が増加していくためにごさが生じることになる。この点に関してシミュレーションプログラムから得られたデータ群を用いて、統計学的に補正方法を提案するために解析を行っている。また、転移活性やゲノム中のトランスポゾンの挿入位置の分布などからマスター/ソースジーンとなりうる配列の特徴の解析も行なっている。さらに、本研究でのモデルは一種の生物集団を仮定しているが、この集団が分集団化(または種分化)した場合の配列の進化動態に関しても見る必要があるため、シミュレーションプログラムを改正している。シミュレーションプログラムは構築済みであるため、解析に必要なデータの蓄積を行いつつ、解析を行い、順次論文へとまとめていく。パラメタ設定により非現実的な状態が作られる場合には、全てのデータを作りなおす必要性が出てくる。
KAKENHI-PROJECT-10J06340
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アジア発展途上地域における伝統農業技術の生態経済学的評価
この研究の目的は、伝統的な農法を静態経済学的な見地から評価することである。生態系を考慮して、ネパールのカトマンズ盆地および傾斜地農業、インドのシッキム州北部県の傾斜地農業、スリランカのタンク灌漑システム、パキスタンのシンド州の過剰湛水・塩害地域、バングラデシュの汽水域の水稲・エビ養殖システム(ゲールファーミング)、ラオスのメコン河氾濫地域および焼畑農業地域において農村経済調査を実施した。またGPSで作成した実態調査図と経年的な衛星デジタル情報をEARDASで解析し、調査対象地域のエコロジカルな視点からの開発経済分析における有効性を明らかにした。総合要素生産性(TFP)の計測により生態系と生産性増加の関係を分析した。伝統的な農法のTFPは低位にとどまるが、自然災害などのリスク変動を相殺すべく、より広域的な生態系を利用した農業(遊牧など)を組み合わせることによって農家収入を安定的なものにしている。これに対して、近代農法は長期的にTFPの上昇を相殺する負の環境効果が表れ、これを制御するために追加的な投資が必要になる。この時、多くの農家は経済負担に耐え得ない。労働集約度の高い農業地域では、外部不経済発生時の環境制御に大きな差が生じている。農民の自発的な行動は外部不経済を最小限にとどめ、伝統的な農法から近代的な農法への移行を容易にする。ネパールの馬鈴薯灌漑、ラオスの氾濫原における人力移動揚水ポンプ利用、ゲールファーミングはその好例である。伝統農法と近代農法の連続性に対する認識が今後、重要である。この研究の目的は、伝統的な農法を静態経済学的な見地から評価することである。生態系を考慮して、ネパールのカトマンズ盆地および傾斜地農業、インドのシッキム州北部県の傾斜地農業、スリランカのタンク灌漑システム、パキスタンのシンド州の過剰湛水・塩害地域、バングラデシュの汽水域の水稲・エビ養殖システム(ゲールファーミング)、ラオスのメコン河氾濫地域および焼畑農業地域において農村経済調査を実施した。またGPSで作成した実態調査図と経年的な衛星デジタル情報をEARDASで解析し、調査対象地域のエコロジカルな視点からの開発経済分析における有効性を明らかにした。総合要素生産性(TFP)の計測により生態系と生産性増加の関係を分析した。伝統的な農法のTFPは低位にとどまるが、自然災害などのリスク変動を相殺すべく、より広域的な生態系を利用した農業(遊牧など)を組み合わせることによって農家収入を安定的なものにしている。これに対して、近代農法は長期的にTFPの上昇を相殺する負の環境効果が表れ、これを制御するために追加的な投資が必要になる。この時、多くの農家は経済負担に耐え得ない。労働集約度の高い農業地域では、外部不経済発生時の環境制御に大きな差が生じている。農民の自発的な行動は外部不経済を最小限にとどめ、伝統的な農法から近代的な農法への移行を容易にする。ネパールの馬鈴薯灌漑、ラオスの氾濫原における人力移動揚水ポンプ利用、ゲールファーミングはその好例である。伝統農法と近代農法の連続性に対する認識が今後、重要である。食糧問題を解決するためには、なによりも農業生産性を上昇させることが重要である。しかし、一方で、ムラの伝統農業システム(以下では伝統農業と略記する)が変わり、そのエコロジカルな特性が急速に失われつつある。とくに小国において、食糧問題が国際協力の枠組みのもとでの経済問題に変化しつつある今日、市場経済化のもとでの慣行農法の生産性再評価と、そのエコロジカルな特性の経済学的な評価が重要となっている。本年は、研究分担者が各担当地域、ラオスのメコン河流域、ネパールの丘陵地域、インドのシッキム州、スリランカにおいて予備調査を実施した。資本制約下での技術移転の過程おける伝統農法並存の重要性を明らかにするために、伝統農業と近代的農業とが並存するエコロジカルな小地域で農家経済調査の実施可能な地域を選定した(ここで、エコロジカルな小地域とは入会地なども含む広義の農業地域として定義される)。おおむね伝統的な農業は低位均衡の典型的な状態にあるが、市場アクセスが容易なところで「商品」作物が導入され、そこでは伝統的な農業システムを壊すことなく、労働などの余剰資源を有効に利用している。たとえばメコン河の堤防敷地内では家庭用電力を利用した小電動ポンプが利用され、集約度の高い農業が営まれるようになっている。またネパールでは既存水稲灌漑システムを利用して乾季の野菜作への水利用が急速に普及し、商品作物が増加し、農家所得に著しい改善がみられている。農民の投資負担を増加することなく、市場経済化によって生産性を増加させており、外部不経済は顕在化していない。これらの知見は慣行農法の頑健性について、再評価の必要があることを示唆するものである。なおGPSやGISなど、最新の手段を使い小地域を分析する方法を開発中である。本年度は、ネパールの丘陵地域、インドのシッキム州、スリランカ、パキスタンのシンド州、バングラデシュにおいて本調査を実施した。またラオスのメコン河流域については研究協力者が調査を実施した。方法論として、環境要因(外部不経済)を考慮した総合要素生産性(TFP)の計測方法を調査知見にもとづき理論的に検討した。伝統的な農法はTFPが低位で、長期的に一定であるが、自然災害などのリスク変動による年次効果がきわめて大きい。
KAKENHI-PROJECT-14252008
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14252008
アジア発展途上地域における伝統農業技術の生態経済学的評価
これを相殺すべく、広域的な生態系を利用した農業(遊牧など)に依存する傾向がある。これに対して、近代農法はTFPを上昇させる可能性は大きいが、TFPの上昇を相殺する環境効果が長期的に表れる。また調査の知見は、もともと土地利用度の低い地域における水資源開発がもたらした環境悪化と本来労働集約度の高い農業地域での環境悪化とでは、大きな差がある。外部不経済をコントロールする機構をどのように組み込むのかが、TFPの方法改善で重要であることを示唆する。ネパールの農民の自発的な行動による外部不経済を最小限にとどめる努力は、伝統的な農法を理解する上で示唆に富む。ラオスの氾濫原における人力移動式揚水ポンプ利用農業なども同様である。技術移転の過程における伝統農法並存の認識から、連続性へ認識への転換の重要性について確認できた。このほか、EARDASを使用して衛星写真を解析し、GPSにより作成した調査地域図と重ね、調査対象地域のエコロジカルな視点からの開発の特徴を経年的にとらえる方法の経済分析への適用可能性を明らかにした。ネパールのカトマンズ盆地および傾斜地農業、インドのシッキム州北部県の傾斜地農業、スリランカのタンク灌漑システム、パキスタンのシンド州の過剰湛水・塩害地域、バングラデシュの沿海低地の水稲・エビ養殖システム(ゲールファーミング)、ラオスのメコン河氾濫地域および焼畑農業地域において、生態系を考慮した農村経済調査を実施した。調査知見にもとづき、環境要因(外部不経済)の差を考慮して、総合要素生産性(TFP)の計測などにより、生態系と生産性増加の関係を分析した。伝統的な農法はTFPが低位であると考えられがちであるが、自然災害などのリスク変動を相殺すべく、より広域的な生態系を利用した農業(遊牧など)に依存する傾向がある。これに対して、近代農法はTFPを劇的に上昇させるが、TFPの上昇を相殺する環境効果が長期的に表れる。また、もともと土地利用度の低い地域における水資源開発がもたらした環境悪化と本来労働集約度の高い農業地域での環境悪化とでは、農民の環境の制御可能性に大きな差が生じてくる。外部不経済をコントロールする機構をどのように組み込むのかが重要である。ネパールの農民の自発的な行動による外部不経済を最小限にとどめる努力は、伝統的な農法を理解する上で示唆に富む。ラオスの氾濫原における人力移動式揚水ポンプ利用農業なども同様である。技術移転の過程における伝統農法と近代農法並存の認識から、連続性へ認識を転換することが重要である。このほか、EARDASを使用して年代別の衛星写真を解析し、GPSにより作成した調査地域図と重ね、調査対象地域のエコロジカルな視点からの開発経済分析への適用可能性を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-14252008
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14252008
胃粘膜増殖因子REGの細胞内シグナル伝達機構と癌化との関連
Regは膵臓再生にかかわる増殖因子として発見され、我々はRegが胃粘膜障害の再生時にも病変部周辺に強く発現することなど、胃粘膜増殖因子である可能性を示唆するデータを報告してきた。本研究ではこれをさらに進め、胃粘膜細胞内でのシグナル伝達や癌化との関連、in vivoにおける増殖促進作用を解析した。申請時に一部記したとうり、我々は培養胃癌細胞を用いてRegによる細胞内シグナル伝達を解析した。結果、Reg刺激により早期に150Kdの蛋白質がチロシンリン酸化され、遅れて古典的MAPキナーゼのリン酸化が観察された。これに伴いH^3チミジンの取り込みが増大した。これらの結果は分化癌由来細胞を使った実験では得られず、未分化癌由来細胞に特異的であった。さらに、ヒト胃癌細胞組織、特に未分化癌において、Regは正常組織にくらべ高発現しており、発癌との関連が示唆された(FEBS Lett.2002)。この論文はSandvikらに高く評価され、コメントが同雑誌に掲載された(FEBS Lett.2003 553(3)P464-5)。また、Regの細胞内シグナル伝達研究をおし進めるため、受容体のクローニングをめざしている。Reg蛋白質をカラムに結合させ、胃癌細胞ライセートとインキュベートしたところ、in vitroのキナーゼアッセイにて上記分子量にだいたい一致する、自己リン酸化蛋白質が検出された。これをReg受容体と考え、さらに精製を進めている。また、Regのin vivoにおける増殖促進作用を評価するためにサイトメガロプロモーターを持つ発現ベクターを用いてトランスジェニックマウスを作製した。このマウスの胃粘膜は、正常マウスに比べ2倍以上の厚さを示し、Regの胃粘膜幹細胞に対する増殖促進作用が示唆された。さらに、免疫染色により、増殖促進された細胞は壁細胞、主細胞のみであることが示され、新たにRegの胃粘膜細胞分化作用が示された。この成果はoncogeneに投稿し、現在in pressの状態である。また、Regはマウスでは、胃では発現が弱く、小腸で発現が強いためトランスジェニックマウスでは胃で、ノックアウトマウスでは小腸での機能が強く形質として出ると予想される。Regノックアウトマウスの消化管の組織形態を検討したところ予想どうり、小腸において明らかに形態の差が見られた。ホモノックアウトマウスの小腸絨毛において、ワイルドタイプに比べ細胞密度が減少していた。この結果により、Regは胃のみならず、小腸などの消化管腺組織全般において、増殖因子として働いている可能性が示唆された。Regは膵臓再生にかかわる増殖因子として発見され、我々はRegが胃粘膜障害の再生時にも病変部周辺に強く発現することなど、胃粘膜増殖因子である可能性を示唆するデータを報告してきた。本研究ではこれをさらに進め、胃粘膜細胞内でのシグナル伝達や癌化との関連、in vivoにおける増殖促進作用を解析した。申請時に一部記したとうり、我々は培養胃癌細胞を用いてRegによる細胞内シグナル伝達を解析した。結果、Reg刺激により早期に150Kdの蛋白質がチロシンリン酸化され、遅れて古典的MAPキナーゼのリン酸化が観察された。これに伴いH^3チミジンの取り込みが増大した。これらの結果は分化癌由来細胞を使った実験では得られず、未分化癌由来細胞に特異的であった。さらに、ヒト胃癌細胞組織、特に未分化癌において、Regは正常組織にくらべ高発現しており、発癌との関連が示唆された(FEBS Lett.2002)。この論文はSandvikらに高く評価され、コメントが同雑誌に掲載された(FEBS Lett.2003 553(3)P464-5)。また、Regの細胞内シグナル伝達研究をおし進めるため、受容体のクローニングをめざしている。Reg蛋白質をカラムに結合させ、胃癌細胞ライセートとインキュベートしたところ、in vitroのキナーゼアッセイにて上記分子量にだいたい一致する、自己リン酸化蛋白質が検出された。これをReg受容体と考え、さらに精製を進めている。また、Regのin vivoにおける増殖促進作用を評価するためにサイトメガロプロモーターを持つ発現ベクターを用いてトランスジェニックマウスを作製した。このマウスの胃粘膜は、正常マウスに比べ2倍以上の厚さを示し、Regの胃粘膜幹細胞に対する増殖促進作用が示唆された。さらに、免疫染色により、増殖促進された細胞は壁細胞、主細胞のみであることが示され、新たにRegの胃粘膜細胞分化作用が示された。この成果はoncogeneに投稿し、現在in pressの状態である。また、Regはマウスでは、胃では発現が弱く、小腸で発現が強いためトランスジェニックマウスでは胃で、ノックアウトマウスでは小腸での機能が強く形質として出ると予想される。Regノックアウトマウスの消化管の組織形態を検討したところ予想どうり、小腸において明らかに形態の差が見られた。ホモノックアウトマウスの小腸絨毛において、ワイルドタイプに比べ細胞密度が減少していた。この結果により、Regは胃のみならず、小腸などの消化管腺組織全般において、増殖因子として働いている可能性が示唆された。Regは膵臓再生にかかわる増殖因子として発見された。Regは胃粘膜障害の再生時にも病変部周辺に高く発現することが知られており、また、in vitroの培養系で胃粘膜細胞の増殖を刺激することが示され、胃粘膜再生や胃癌発癌に関与していると予想された。
KAKENHI-PROJECT-14570471
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14570471
胃粘膜増殖因子REGの細胞内シグナル伝達機構と癌化との関連
本研究はこれらのReg蛋白質のすでに得られている知見をもとに、これをさらに進め、胃粘膜細胞内でのシグナル伝達や癌化との関連、in vivoにおける増殖促進作用を解析する。申請時に一部記したとうり、我々は培養胃癌細胞を用いてRegによる細胞内シグナル伝達を解析した。結果、Reg刺激により早期に150Kdの蛋白質がチロシンリン酸化され、遅れて古典的MAPキナーゼのリン酸化が観察された。これに伴いH^3チミジンの取り込みが増大した。両事象の関連はMAPキナーゼ特異的阻害薬を用いて証明された。これらの結果は分化癌由来細胞を使った実験では得られず、未分化癌由来細胞に特異的であった。さらに、ヒト胃癌細胞組織、特に未分化癌において、Regは正常組織にくらべ高発現しており、発癌との関連が示唆された(FEBS Lett. 2002)。また、Regの細胞内シグナル伝達研究をおし進めるため、受容体のクローニングをめざしている。ヒスチジンtagを融合させたReg蛋白質をCOS細胞内で発現させ、これをニッケルカラムに結合させ、胃癌細胞ライセートとインキュベートしたところ、in vitroのキナーゼアッセイにて上記分子量にだいたい一致する、自己リン酸化蛋白質が検出された。これをReg受容体と考え、さらに精製を進めている。また、Regのin vivoにおける増殖促進作用を評価するためにサイトメガロプロモーターを持つ発現ベクターを用いてトランスジェニックマウスを作製した。このマウスの胃粘膜は、正常マウスに比べ2倍以上の厚さを示し、Regの胃粘膜幹細胞に対する増殖促進作用が示唆された。さらに、免疫染色により、増殖促進された細胞は壁細胞、主細胞のみであることが示され、新たにRegの胃粘膜細胞分化作用が示された。Regは膵臓再生にかかわる増殖因子として発見され、我々はRegが胃粘膜障害の再生時にも病変部周辺に強く発現することなど、胃粘膜増殖因子である可能性を示唆するデータを報告してきた。本研究ではこれをさらに進め、胃粘膜細胞内でのシグナル伝達や癌化との関連、in vivoにおける増殖促進作用を解析している。本研究の前半の成果である胃癌細胞におけるRegの細胞内シグナル伝達および胃癌細胞における発現に関するデータをFEBS Lett.2002 530 p59-64に発表したが、この論文はSandvikらに高く評価され、コメントが同雑誌に掲載された(FEBS Lett.2003 553(3)P464-5)。また、Regのin vivoにおける増殖促進作用を評価するためにサイトメガロウイルスプロモーターを持つ発現ベクターを用いてトランスジェニックマウスを作製したところ、このマウスの胃粘膜は、正常マウスに比べ2倍以上の厚さを示し、Regの胃粘膜幹細胞に対する増殖促進作用が示唆された。さらに、増殖促進された細胞は壁細胞、主細胞のみであることが示され、新たにRegの胃粘膜細胞分化作用が示された。この成果はoncogeneに投稿し、現在in pressの状態である。また、Regはマウスでは、胃では発現が弱く、小腸で発現が強いためトランスジェニックマウスでは胃で、ノックアウトマウスでは小腸での機能が強く形質として出ると予想される。
KAKENHI-PROJECT-14570471
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14570471
四次構造エンジニアリングによる人工サブユニットの開発
本研究では、全く新しい蛋白質機能の制御技術として四次構造エンジニアリングによる人工サブユニット構築を提案した。すなわち、新たに強相関インターフェイスを目的蛋白質に導入し、非共有結合によりde novo合成されたペプチドあるいは既存の蛋白質とのあいだに複合体を形成させることにより新機能を有する強相関ソフトマテリアルの構築をめざした。本研究ではグルコース-3-脱水素酵素をはじめとしたグルコース酸化還元酵素群を対象とし、基質特異性を制御する人工サブユニットならびに電子伝達を行う人工サブユニットを四次構造エンジニアリングにより構築することを目的とした。初年度は特にグルコース-1-脱水素酵素(GDH)を対象とし、ファージディスプレイランダムペプチドライブラリを用いてこの基質特異性を制御するサブユニットの開発を試みた。数回のバイオパンニングの結果、GDHとの相互作用を指標として回収されたファージより、いくつかの7merと12merのGDH結合ペプチドが得られた。それらの合成ペプチドを用いて、ペプチド濃度がGDH活性におよぼす影響について調べたところ、7merであるNo.3-14および12merであるNo.12において、その存在下でGDHの活性の低下が見られた。このことから、これらの合成ペプチドは活性中心近傍に結合している可能性が示された。さらに12merのペプチドはグルコースおよびマルトースに対して、7merの合成ペプチドはラクトースならびにマルトースに対するGDH活性が低下し、同酵素の基質選択性が向上した。今回開発されたGDHの基質特異性を制御する人工サブユニットはGDHの基質認識近傍に結合することにより本酵素の活性を制御しているものと予想され、本研究で提案する手法により蛋白質の機能改良が進められることが示された。今後、ここで明らかになった人工ペプチドと相互作用を有するGDHの領域の構造を解析することにより、強相関インターフェイス、ひいては新規な強相関ソフトマテリアルが設計できるものと期待される。本研究では、全く新しい蛋白質機能の制御技術として四次構造エンジニアリングによる人工サブユニット構築を提案した。すなわち、新たに強相関インターフェイスを目的蛋白質に導入し、非共有結合によりde novo合成されたペプチドあるいは既存の蛋白質とのあいだに複合体を形成させることにより新機能を有する強相関ソフトマテリアルの構築をめざした。本研究ではグルコース-3-脱水素酵素をはじめとしたグルコース酸化還元酵素群を対象とし、基質特異性を制御する人工サブユニットならびに電子伝達を行う人工サブユニットを四次構造エンジニアリングにより構築することを目的とした。初年度は特にグルコース-1-脱水素酵素(GDH)を対象とし、ファージディスプレイランダムペプチドライブラリを用いてこの基質特異性を制御するサブユニットの開発を試みた。数回のバイオパンニングの結果、GDHとの相互作用を指標として回収されたファージより、いくつかの7merと12merのGDH結合ペプチドが得られた。それらの合成ペプチドを用いて、ペプチド濃度がGDH活性におよぼす影響について調べたところ、7merであるNo.3-14および12merであるNo.12において、その存在下でGDHの活性の低下が見られた。このことから、これらの合成ペプチドは活性中心近傍に結合している可能性が示された。さらに12merのペプチドはグルコースおよびマルトースに対して、7merの合成ペプチドはラクトースならびにマルトースに対するGDH活性が低下し、同酵素の基質選択性が向上した。今回開発されたGDHの基質特異性を制御する人工サブユニットはGDHの基質認識近傍に結合することにより本酵素の活性を制御しているものと予想され、本研究で提案する手法により蛋白質の機能改良が進められることが示された。今後、ここで明らかになった人工ペプチドと相互作用を有するGDHの領域の構造を解析することにより、強相関インターフェイス、ひいては新規な強相関ソフトマテリアルが設計できるものと期待される。
KAKENHI-PROJECT-13031021
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13031021
新しい免疫抑制法による腎移植の研究
昨年でのリンパ球刺激シグナルの化学修飾による免疫寛容の実験で、この誘導機序解析の目的にて、T-cell associated cytokinesをRT-PCRにて調べた。移植後5日目のisograftでは、サイトカインのmRNAの発現はみられなかったが、無処置のallograftではIL-2,r-INF(Th1サイトカイン)、IL-4,IL-10(Th2サイトカイン)のすべてが見られた。しかし、化学修飾したドナー脾細胞を投与したものではIL-2mRNAの減少が見られ、Th1/Th2のimmunoredirectionが寛容誘導の機序と考えられた。最近、開発されたFTY720の免疫抑制効果をラット腎移植モデルで検討した。本剤は、リンパ球を特異的に減少させ、allograftの生着を延長させた。この効果は、術前投与で最も強力であった。この長期延長の機序を検索する目的で、脾細胞のapoptosisを調べたが、移植5日目のレシピエントの脾臓にapoptosisは見られなかった。むしろレシピエント脾細胞のサイトカイン分泌の機能変化に起因することが示唆された。臨床的研究では、新しい免疫抑制剤、FK-506の投与患者でこの血中濃度のpharmacokineticsおよび移植腎のserial biopsyがおこなわれた。本剤の血中濃度のmonitoringが腎毒性軽減には、重要であることが判明した。昨年に報告した長期生着腎移植患者の血中および皮膚のmicrochimerismを、ドナーとレシピエントのMLR indexと比較検討したが、有意な関係はみられなかった。これについては、免疫寛容の検索の意味でもさらなる研究が必要と思われる。腎移植患者の増殖因子、HGFを血中レベルで検討するに、拒絶反応では上昇する傾向があるが、有意なものではなかった。慢性拒絶反応では間質の線維化が一般的であり、拒絶反応におけるHGFの意義解明には、移植腎組織上の免疫染色での検討が必要であろう。昨年でのリンパ球刺激シグナルの化学修飾による免疫寛容の実験で、この誘導機序解析の目的にて、T-cell associated cytokinesをRT-PCRにて調べた。移植後5日目のisograftでは、サイトカインのmRNAの発現はみられなかったが、無処置のallograftではIL-2,r-INF(Th1サイトカイン)、IL-4,IL-10(Th2サイトカイン)のすべてが見られた。しかし、化学修飾したドナー脾細胞を投与したものではIL-2mRNAの減少が見られ、Th1/Th2のimmunoredirectionが寛容誘導の機序と考えられた。最近、開発されたFTY720の免疫抑制効果をラット腎移植モデルで検討した。本剤は、リンパ球を特異的に減少させ、allograftの生着を延長させた。この効果は、術前投与で最も強力であった。この長期延長の機序を検索する目的で、脾細胞のapoptosisを調べたが、移植5日目のレシピエントの脾臓にapoptosisは見られなかった。むしろレシピエント脾細胞のサイトカイン分泌の機能変化に起因することが示唆された。臨床的研究では、新しい免疫抑制剤、FK-506の投与患者でこの血中濃度のpharmacokineticsおよび移植腎のserial biopsyがおこなわれた。本剤の血中濃度のmonitoringが腎毒性軽減には、重要であることが判明した。昨年に報告した長期生着腎移植患者の血中および皮膚のmicrochimerismを、ドナーとレシピエントのMLR indexと比較検討したが、有意な関係はみられなかった。これについては、免疫寛容の検索の意味でもさらなる研究が必要と思われる。腎移植患者の増殖因子、HGFを血中レベルで検討するに、拒絶反応では上昇する傾向があるが、有意なものではなかった。慢性拒絶反応では間質の線維化が一般的であり、拒絶反応におけるHGFの意義解明には、移植腎組織上の免疫染色での検討が必要であろう。申請した研究計画では、動物実験モデルでの免疫寛容の誘導、臨床的な腎移植の拒絶反応機序の解明に分けられる。動物実験モデルとしては、ラット同種心移植(BN-LEW)において、胸腺内へのdonor骨髄細胞注入と初期短期間免疫抑制(FK506)により移植心の特異的免疫寛容が得られた。この免疫寛容ラットでは、移植心へのrecipient細胞の移入、recipient各組織へのdonor細胞の移入がみられた。一方beagle犬の実験モデルでは、全身リンパ組織へのレ線照射、donor骨髄細胞の静注およびFK506投与(3カ月間)により移植腎の特異的免疫寛容が得られた。この際、免疫モニタリングで皮膚移植を試みると、皮膚移植片中のIa dendritic細胞のdonor,recipient由来細胞数の比較が、免疫不応答性や拒絶反応の予知に有効であることが判明した。腎移植の臨床に則した研究としては、この拒絶反応のモニタリング法として血清・尿中ネオプテリン、IL-8を測定し、血清ネオプリテリン、IL-8が拒絶反応中に上昇することが判明した。そしてこれらは、FK506投与による腎毒性の場合上昇せず、腎毒性と拒絶反応の鑑別に有効と考えられた。また、拒絶反応機序の解明として、腎移植患者の各種末梢血のリンパ球抗原測定、移植腎生検からのRNA抽出中での各種サイトカイン、接着分子をPCR法にて測定した。これらの解析が進行中であるが、腎尿細胞管由来の特異蛋白(PIVKA II)が拒絶反応中に尿に排泄されることが判明した。
KAKENHI-PROJECT-06304038
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06304038
新しい免疫抑制法による腎移植の研究
腎の保存も移植腎の生着に重要であり、病巣指向型長時間作動性のラジカルスカベンジャーSMA-SODが、阻血腎の障害軽減に有効であることが、犬実験モデルにて判明した。動物移植モデルにて、各種免疫抑制法を検討した。Th2細胞のautocrinegrowthfactorであるIL-4を心臓にのみ発現するトランスジェニックマウスを作製し、この心臓を同種移植した。Th1/Th2細胞の拮抗作用から、移植心は有意に生着が延長した。ラット腎移植(BN→LEW)モデルにて、BN脾細胞をethylcarbodiimideによる処理にてcostimulatory signalを修飾し、この投与後に腎移植をおこなった。長期生着がみられ、これはanergyによるものと推測された。犬腎移植では、DRB1遺伝子不適合間の移植で検討した。移植前の全身リンパ組織のradiation後に腎移植をおこない、これと同時にドナーの腎髄移植とFK506投与をおこなった。有意に移植腎の生着がみられ、長期生着例ではchimerism donorspecific alloresponseを抑制する血清因子が確認された。臨床的研究として、腎移植患者の血液、生検組織で増殖因子(HGF,FGF)、HGF-receptorのc-METを検討した。c-METの免疫染色では、拒絶反応時のみ近位尿細管細胞で発現された。腎移植におけるNO生成を検討する目的にて、腎移植患者の血液・尿のNO_2+NO_3を測定した。急性拒絶反応時にNO生成の亢進がみられ、monitoringの指標としての有効性が示唆された。腎移植生着因子として腎移植患者のmicrochimerismを血液、皮膚にて検討した。DRB1領域に設定したnestedPCR法にて検討した。約50%の患者で、血液、皮膚ともmicrochimerismの発生を確認したが、移植腎予後との相関は不明である。合併症の検討として、FK-506の腎毒性の軽減を目的としてSMA-SOD投与の実験をおこなった。ラットにFK-506、SMA-SODを投与し、FK-506の腎毒性軽減がみられた。昨年でのリンパ球刺激シグナルの化学修飾による免疫寛容の実験で、この誘導機序解析の目的にて、T-cell associated cytokinesをRT-RCRにて調べた。移植後5日目のisograftでは、サイトカインのmRNAの発現はみられなかったが、無処置のallograftではIL-2,γ-INF(Th1サイトカイン)、IL-4,IL-10(Th2サイトカイン)のすべてが見られた。しかし、化学修飾したドナー脾細胞を投与したものではIL-2 mRNAの現象が見られ。Th1/Th2のimmunoredirectionが寛容誘導の機序と考えられた。最近、開発されたFTY720の免疫抑制効果をラット腎移植モデルで検討した。本剤は、リンパ球を特異的に減少させ、allograftの生着を延長させた。この効果は、術前投与で最も強力であった。この長期延長の機序を検索する目的で、脾細胞のapoptosisを調べたが、移植5日目のレシピエントの脾臓にapoptosisは見られなかった。
KAKENHI-PROJECT-06304038
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06304038
ヒト型HIV感染防御抗体・ヒト型エイズ発症防止抗体の創製のための生化学的基礎研究
エイズ発見以来、24年を経過したが、予防のための究極のワクチン開発を行う上で、とても厳しい状況が続いている。そこで、申請者らは、(Shoji et al.,J.Virol.,75,11614-11620(2001))HIV-1 coreceptor-based vaccineを提案し、国際的に評価されている。これまでに、HIV-1が宿主侵入の際に利用するレセプター(ケモカィンレセプター)の第2細胞外ループ(ECL-2)を構成するundecapeptidyl arch(UPA)に注目し、このUPA構造を基礎にしたミミックペプチド抗原を作製した。本抗原をマウスおよびカニクイザルに接種することにより、ケモカインレセプターに対する自己抗体を誘導でき、本抗体はin vitroにおいてHIV-1のさまざまなcladeに対して強力に感染を防止できるだけでなく、カニクイザルを用いたサルエイズモデルにおいて、静脈より攻撃接種されたウイルスの急性感染を抑えることを明らかにできた。そのような背景のもと、本ワクチン戦略をもって実用化ワクチンを開発する場合、アジュバンドが重要なファクターになる。最も、ヒトに対して安全性試験等で優れているアジュバンドタンパク質.として、イシフルエンザワクチンがあるので、インフルエンザタンパク質をキヤリアタンパク質として用いた。申請者等は、本年度UPA構造をもとにしたミミックペプチドとインフルエンザタンパク質とをコンジュゲートさせた抗原の抗原性の有無およびどの程度の免疫応答が誘導されるか検討した。その結果、キャリアタンパク質とUPAミミック抗原の結合比と免疫応答の関係を含め、ヒト抗体遺伝子を組み込んだゼノマウスを用いてケモカインレセプターを標的としたヒト型HIV感染防止抗体・エイズ発症防止抗体を創製するための基礎データを得ることができた。エイズ発見以来、24年を経過したが、予防のための究極のワクチン開発を行う上で、とても厳しい状況が続いている。そこで、申請者らは、(Shoji et al.,J.Virol.,75,11614-11620(2001))HIV-1 coreceptor-based vaccineを提案し、国際的に評価されている。これまでに、HIV-1が宿主侵入の際に利用するレセプター(ケモカィンレセプター)の第2細胞外ループ(ECL-2)を構成するundecapeptidyl arch(UPA)に注目し、このUPA構造を基礎にしたミミックペプチド抗原を作製した。本抗原をマウスおよびカニクイザルに接種することにより、ケモカインレセプターに対する自己抗体を誘導でき、本抗体はin vitroにおいてHIV-1のさまざまなcladeに対して強力に感染を防止できるだけでなく、カニクイザルを用いたサルエイズモデルにおいて、静脈より攻撃接種されたウイルスの急性感染を抑えることを明らかにできた。そのような背景のもと、本ワクチン戦略をもって実用化ワクチンを開発する場合、アジュバンドが重要なファクターになる。最も、ヒトに対して安全性試験等で優れているアジュバンドタンパク質.として、イシフルエンザワクチンがあるので、インフルエンザタンパク質をキヤリアタンパク質として用いた。申請者等は、本年度UPA構造をもとにしたミミックペプチドとインフルエンザタンパク質とをコンジュゲートさせた抗原の抗原性の有無およびどの程度の免疫応答が誘導されるか検討した。その結果、キャリアタンパク質とUPAミミック抗原の結合比と免疫応答の関係を含め、ヒト抗体遺伝子を組み込んだゼノマウスを用いてケモカインレセプターを標的としたヒト型HIV感染防止抗体・エイズ発症防止抗体を創製するための基礎データを得ることができた。
KAKENHI-PROJECT-16659023
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16659023
家族性Moyamoya病の遺伝子発現解析による脳血管疾患の予防医療の確立
常染色体優性家系の連鎖解析によって17q25.3に連鎖領域を同定し、Raptor遺伝子上流の新規SNP (ss161110142)のマイナーアリルが家族性Moyamoya病に共通することを明らかにした。Positional cloningを更に進めた結果、新規遺伝子MysterinをMoyamoya病の感受性遺伝子として同定した。Mysterin遺伝子は、591kDaの巨大タンパクをコードし、その機能は不明である。しかし、Mysterinの発現を抑制するとZebra fishの頭蓋内動脈の異常を生じることから、MysterinはMoyamoya病の主たる病変部位である血管において重要な役割を果たすことが強く示唆された。常染色体優性家系の連鎖解析によって17q25.3に連鎖領域を同定し、Raptor遺伝子上流の新規SNP (ss161110142)のマイナーアリルが家族性Moyamoya病に共通することを明らかにした。Positional cloningを更に進めた結果、新規遺伝子MysterinをMoyamoya病の感受性遺伝子として同定した。Mysterin遺伝子は、591kDaの巨大タンパクをコードし、その機能は不明である。しかし、Mysterinの発現を抑制するとZebra fishの頭蓋内動脈の異常を生じることから、MysterinはMoyamoya病の主たる病変部位である血管において重要な役割を果たすことが強く示唆された。家系および症例の拡大を試みた結果、日本で39家系の参加を得て、孤発例については83名、韓国では4家系8名、孤発例38名、中国例では孤発例24名、ヨーロッパでは29名の孤発例を得て、合計43家系で387人の参加を得た。本年度は、常染色体優性家系を用いた連鎖解析によって17q25.3に連鎖することを証明し、Positional cloningによりRaptor遺伝子上に存在する新規SNP(ss161110142)のマイナーアリルが家族性Moyamoya病に共通することを明らかにした(EHPM, 2009)。日本国内において、Moyamoya病患者におけるss161110142マイナーアリルは相関研究により極めて高い相関が認められた(アリル頻度の検定:患者26%、対照1%,odds比51.5、P=2.08x10^<-29>)。同様に、韓国、中国においてもss161110142マイナーアリルの高い頻度での相関が認められた(韓国患者33%、対象1%、オッズ比84.09、P=9.42×10^<-22>;中国患者4%、対象0%、オッズ比NA、P=3.37×10^-2)。対してヨーロッパではss161110142マイナーアリルは患者群でも対照群でも認められなかった。ss161110142が東アジアにおけるMoyamoya病感受性遺伝子であることが示唆された。さらに欧米と比較したアジアにおけるMoyamoya病の有病率の高さにss161110142の分布の違いが関与する可能性が示された。家系の分析では、Moyamoya病のみならず、片側Moyamoya病や内頚動脈終末部狭窄・閉塞の患者もこのリスクアリルを有しており、一連の狭窄病変についても関与が推定される。さらに浸透率が低いことから、遺伝子以外の関与についても想定される。Moyamoya病患者と対照者集団の収集を日本、韓国、中国を含む東アジアとヨーロッパ諸国において本年度も継続して行った。その結果、現在までに東アジアにおいて家系例患者については日本41家系、韓国1家系、さらに日中韓合計で209名の孤発例患者および757名の健常者に参加いただいた。ヨーロッパ諸国においてはチェコの1家系および7名の孤発例患者、ドイツの42名の孤発例患者および384名の健常者に参加いただいた。常染色体優性家系を用いた連鎖解析によって17q25.3に連鎖することを昨年度報告している。Positional cloningによりRaptor遺伝子上に存在する新規SNP (ss161110142)のマイナーアリルが家族性Moyamoya病に共通することを明らかにした。ss161110142のマイナーアリルは、東アジアでもMoyamoya病患者と高い相関が認められたが、ヨーロッパでは患者群でも対照群でも認められなかった。そこでRaptor遺伝子の近傍にMoyamoya病の原因となる他の変異が存在する可能性を考慮して、Raptor遺伝子の周辺約150kbpの領域に対して、日本人Moyamoya病患者から樹立した不死化末梢リンパ球を用いてBACクローンの作成を行った。家系の分析では、Moyamoya病のみならず、片側Moyamoya病や内頚動脈終末部狭窄・閉塞の患者もこのリスクアリルを有しており、一連の狭窄病変についても関与が推定される。さらに浸透率が低いことから、遺伝子以外の関与についても想定される。
KAKENHI-PROJECT-20590598
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海洋性超好熱菌に由来する超耐熱酵素の分子生物学的解析とその応用
超好熱菌Thermococcus profundusに由来するグルタミン酸脱水素酵素(GDH)のアミノ末端アミノ酸配列に基づきオリゴヌクレオチドを合成し、これをプローブとして本酵素遺伝子をクローン化した。本酵素遺伝子の塩基配列をPCRを用いたcycle sequencing法によって決定した。構造遺伝子は419アミノ酸のポリペプチドをコードしており、その上流には古細菌の典型的なプロモーター配列であるTTTATATA配列、下流には転写終結因子として働くと考えられるpyrimidinerich配列が存在していた。本GDHは中温菌Clostridium difficileのGDHと53%の相同性を有しており、アミノ末端側54-253残基の領域(Domain I)とカルボキシ末端側314-401残基の領域(Domain II)で特に両者間に高い保存性が認められた。Domain Iでは、超好熱菌の酵素においてα-helix領域でのアラニン残基の増加とグリシン残基の減少、loop領域へのプロリン残基の導入が顕著であり、これらのアミノ酸置換によって本GDHが安定化されていると考えられた。一方、Domain IIでは安定化に関わると考えられるアミノ酸置換は認められず、本酵素の特徴である高温下でのα-helixのunfoldingを伴う活性化には、Domain IIが関わっていると推定された。本GDH遺伝子をlacプロモーターの制御下に置き大腸菌で発現させた。生産されたGDHは、元菌由来の酵素と異なりアミノ末端のメチオニンを有していたが、元菌由来の酵素とほぼ同じ性質を示した。また、抗体を用いた解析から大腸菌で発現させた酵素も6量体構造を保持していることが確認された。したがって、本研究により超好熱GDHの超耐熱性と温度依存の活性化機構を大腸菌を用いて蛋白工学的手法により解析することが可能となった。超好熱菌Thermococcus profundusに由来するグルタミン酸脱水素酵素(GDH)のアミノ末端アミノ酸配列に基づきオリゴヌクレオチドを合成し、これをプローブとして本酵素遺伝子をクローン化した。本酵素遺伝子の塩基配列をPCRを用いたcycle sequencing法によって決定した。構造遺伝子は419アミノ酸のポリペプチドをコードしており、その上流には古細菌の典型的なプロモーター配列であるTTTATATA配列、下流には転写終結因子として働くと考えられるpyrimidinerich配列が存在していた。本GDHは中温菌Clostridium difficileのGDHと53%の相同性を有しており、アミノ末端側54-253残基の領域(Domain I)とカルボキシ末端側314-401残基の領域(Domain II)で特に両者間に高い保存性が認められた。Domain Iでは、超好熱菌の酵素においてα-helix領域でのアラニン残基の増加とグリシン残基の減少、loop領域へのプロリン残基の導入が顕著であり、これらのアミノ酸置換によって本GDHが安定化されていると考えられた。一方、Domain IIでは安定化に関わると考えられるアミノ酸置換は認められず、本酵素の特徴である高温下でのα-helixのunfoldingを伴う活性化には、Domain IIが関わっていると推定された。本GDH遺伝子をlacプロモーターの制御下に置き大腸菌で発現させた。生産されたGDHは、元菌由来の酵素と異なりアミノ末端のメチオニンを有していたが、元菌由来の酵素とほぼ同じ性質を示した。また、抗体を用いた解析から大腸菌で発現させた酵素も6量体構造を保持していることが確認された。したがって、本研究により超好熱GDHの超耐熱性と温度依存の活性化機構を大腸菌を用いて蛋白工学的手法により解析することが可能となった。
KAKENHI-PROJECT-08660100
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温度ジャンプスペクトロスコピーによる高分子の焦電ダイナミクスの研究
分極処理を加えた強誘電性高分子にナノ秒YAGレーザパルスによる温度ジャンプを与えると、焦電性に起因する電荷応答が広い時間帯にわたって観測される。本研究はこのような電荷応答の時間スペクトルを定量的に解析することによって、焦電ダイナミクスの機構を解明することを目的に行われた。測定システムとして現有のYAGレーザ(Surelite I)と高速デジタルオシロスコープ(TDS620)に加え2倍波結晶を購入し、プリアンプ部と測定及び解析ソフトウェアを開発した。その結果7nsの温度ジャンプに対し、電荷応答の1ns10sにおける広い時間帯の時間スペクトルの測定が可能となった。試料としてフッ化ビニリデン(VDF)と三フッ化エチレン(TrFE)の75/25mol%共重合体を用い、光熱変換用色素を混入後キャスト法による成膜を行った。フィルムの両面に薄い金電極を蒸着し、分極処理の後測定を行った。得られた電荷応答の時間スペクトルは、温度ジャンプと同時に現れる瞬間成分、厚みおよび長さ方向の熱膨張と圧電性の結合による2つの振動成分および外部への熱拡散による減衰成分からなることがわかった。曲線当てはめによりこれらの成分を分離した結果、瞬間成分は全体の2030%程度であり、熱膨張と圧電性の結合によるいわゆる二次効果が焦電応答の主体であることが明らかとなった。試料の温度を変化させて測定を行ったところ、キュリー点近傍で焦電応答が増大した後、転移とともに減衰、消失した。その際、まず振動成分が先に消失したのち、瞬間成分がより高温において消失することがわかった。この方法で得られる焦電応答は、分極量の温度変化を直接測定して得られる準静的な焦電率測定と比較して温度変化が小さい。このことは,今回測定した焦電応答曲線の時間範囲より長時間側にゆっくりした過程が存在することを示している。分極処理を加えた強誘電性高分子にナノ秒YAGレーザパルスによる温度ジャンプを与えると、焦電性に起因する電荷応答が広い時間帯にわたって観測される。本研究はこのような電荷応答の時間スペクトルを定量的に解析することによって、焦電ダイナミクスの機構を解明することを目的に行われた。測定システムとして現有のYAGレーザ(Surelite I)と高速デジタルオシロスコープ(TDS620)に加え2倍波結晶を購入し、プリアンプ部と測定及び解析ソフトウェアを開発した。その結果7nsの温度ジャンプに対し、電荷応答の1ns10sにおける広い時間帯の時間スペクトルの測定が可能となった。試料としてフッ化ビニリデン(VDF)と三フッ化エチレン(TrFE)の75/25mol%共重合体を用い、光熱変換用色素を混入後キャスト法による成膜を行った。フィルムの両面に薄い金電極を蒸着し、分極処理の後測定を行った。得られた電荷応答の時間スペクトルは、温度ジャンプと同時に現れる瞬間成分、厚みおよび長さ方向の熱膨張と圧電性の結合による2つの振動成分および外部への熱拡散による減衰成分からなることがわかった。曲線当てはめによりこれらの成分を分離した結果、瞬間成分は全体の2030%程度であり、熱膨張と圧電性の結合によるいわゆる二次効果が焦電応答の主体であることが明らかとなった。試料の温度を変化させて測定を行ったところ、キュリー点近傍で焦電応答が増大した後、転移とともに減衰、消失した。その際、まず振動成分が先に消失したのち、瞬間成分がより高温において消失することがわかった。この方法で得られる焦電応答は、分極量の温度変化を直接測定して得られる準静的な焦電率測定と比較して温度変化が小さい。このことは,今回測定した焦電応答曲線の時間範囲より長時間側にゆっくりした過程が存在することを示している。今年度は現有していたレーザ瞬間加熱電荷応答測定システムの改良として、2倍波発生用結晶システムを導入し、また測定システム全般の高精度化をおこなった。まず、今年度購入設備備品である2倍波結晶を現有のYAGレーザSurelite Iに組み込み、波長532nmの可視レーザーパルスの発生を可能とした。また、波長の変更に対応してフィルター、反射鏡等の光学系を変更した。この波長域の可視光を吸収する色素を試料に混入することによって試料全体を均一に加熱することが可能である。さらに、測定および解析ソフトウェアの改良を進め、焦電応答測定の精度を高めた。焦電応答曲線は、瞬間的な加熱による温度変化に伴う焦電一次効果、熱膨張による圧電効果(焦電二次効果)の各過程を含む。均一加熱が可能となったことによって温度変化の立ち上がりがレーザー幅と同等となり、10ns以下の時間分解能が実現した。これによって、瞬間加熱により生じる試料の急激な膨張により誘起される振動が、温度の立ち上がりと分離されて、焦電一次効果と二次効果の分離が可能となった。試料として強誘電性高分子であるフッ化ビニリデン共重合体を用い、この装置を用いて焦電応答曲線測定をおこなった結果、レーザーパルスに対応して立ち上がる過程とそれに引き続いて生じる振動過程が分離され、この振動過程にパルスプロファイルから計算された振動曲線をあてはめることによって、焦電一次効果と二次効果の比率を決定することができた。次年度は、より詳細な解析をおこなうとともに、種々の試料にこの方法を適用する。さらに、瞬間加熱によって相転移を誘起し、そのダイナミクスの研究をおこなう予定である。
KAKENHI-PROJECT-09651003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09651003
温度ジャンプスペクトロスコピーによる高分子の焦電ダイナミクスの研究
分極処理を加えた強誘電性高分子にナノ秒YAGレーザパルスによる温度ジャンプを与えると、焦電性に起因する電荷応答が広い時間帯にわたって観測される。本研究はこのような電荷応答の時間スペクトルを定量的に解析することによって、焦電ダイナミクスの機構を解明することを目的に行われた。測定システムとして現有のYAGレーザ(Surelite I)と高速デジタルオシロスコープ(TDS620)に加え2倍波結晶を購入し、ブリアンプ部と測定及び解析ソフトウェアを開発した。その結果7nsの温度ジャンプに対し、電荷応答の1ns10sにおける広い時間帯の時間スペクトルの測定が可能となった。試料としてフッ化ビニリデン(VDF)と三フッ化エチレン(TrFE)の75/25mol%共重合体を用い、光熱変換用色素を混入後キャスト法による成膜を行った。フィルムの両面に薄い金電極を蒸着し、分極処理の後測定を行った。得られた電荷応答の時間スペクトルは、温度ジャンプと同時に現れる瞬間成分、厚みおよび長さ方向の熱膨張と圧電性の結合による2つの振動成分および外部への熱拡散による減衰成分からなることがわかった。曲線当てはめによりこれらの成分を分離した結果、瞬間成分は全体の2030%程度であり、熱膨張と圧電性の結合によるいわゆる二次効果が焦電応答の主体であることが明らかとなった。試料の温度を変化させて測定を行ったところ、キュリー点近傍で焦電応答が増大した後、転移とともに減衰、消失した。その際、まず振動成分が先に消失したのち、瞬間成分がより高温において消失することがわかった。この方法で得られる焦電応答は、分極量の温度変化を直接測定して得られる準静的な焦電率測定と比較して温度変化が小さい。このことは,今回測定した焦電応答曲線の時間範囲より長時間側にゆっくりした過程が存在することを示している.
KAKENHI-PROJECT-09651003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09651003
敗血症におけるインスリンシグナル調節機構の解明
敗血症時のインスリンシグナルについて、モデルマウス脳および肺組織で解析した。敗血症時には、受傷からある一定期間までは何らかの自己防衛的機序によりシグナルが増大するが、その後減弱に転じ組織傷害も増大させると考えられた。一方、シグナルを持続的に増加させる活性化薬は組織傷害を軽減させた。生体内には酸化・ニトロ化ストレスを軽減させるため、インスリンシグナルを介した組織損傷保護機構があり、それをうまく利用できれば、症状軽減に役立つと期待された。敗血症時のインスリンシグナルについて、モデルマウス脳および肺組織で解析した。敗血症時には、受傷からある一定期間までは何らかの自己防衛的機序によりシグナルが増大するが、その後減弱に転じ組織傷害も増大させると考えられた。一方、シグナルを持続的に増加させる活性化薬は組織傷害を軽減させた。生体内には酸化・ニトロ化ストレスを軽減させるため、インスリンシグナルを介した組織損傷保護機構があり、それをうまく利用できれば、症状軽減に役立つと期待された。多菌性敗血症マウスモデル(CLPマウス)で、組織染色法を用いた解析を中心に、脳、肺、心臓の各組織に生じる変化を検討した。敗血症を代表とする全身性炎症時には意識混濁などの神経症状が生じているが、脳組織の形態学的変化についてはこれまで不明な点が多かった。CLPマウス脳組織でHE染色を行いその組織像を解析すると、大脳皮質および海馬の神経細胞を中心に、細胞核の濃染色、およびその委縮変形像を認めた。加えて、酸化ストレスの指標として反応性窒素酸化物による蛋白質チロシン残基ニトロ化を組織免疫染色法で解析すると、脳血管周囲にニトロチロシン陽性像を認めた。以上のことから、全身性炎症によるストレスを受けると、脳血液関門のバリア機構が障害され、かつ脳組織実質の神経細胞は有害物質による影響によりその機能が障害を受けることが示唆された。一方、肺組織においては、炎症軽減作用が知られているスタチン系薬剤を予め投与しておくと、組織損傷が軽減されることを認めた。その分子基盤を解析してみると、肺胞マクロファージが増加、加えてそのグルココルチコイド受容体発現が増加していた。心臓組織においても、スタチン系薬剤が炎症による組織リモデリングを改善する効果を認めた。スタチン系薬剤は、インスリンシグナル経路のPI3K-Aktシグナルを増強することが知られている。各組織のインスリンシグナルについては、時間経過に伴いそれぞれ変動していることを認めたが、この全身性炎症病態モデルとの関連については、未だ解析途上である。多菌性敗血症マウスモデル(CLPマウス)で、分子生物学的手法、組織免疫染色法を中心とした組織形態解析を、脳、肺、心臓等の組織で行った。CLPマウス脳組織では、脳血管透過性の亢進を認めるとともに、大脳皮質および海馬の神経細胞を中心に、細胞の委縮変形像、濃染色像を認めた。加えて、酸化/ニトロ化ストレスに関して検討すると、CLPマウス脳組織では、脳血管周囲にニトロチロシン陽性像を認めるとともに、ラジカルスカベンジャー処置により細胞傷害度の減少が認められた。これらのことから、全身性炎症による酸化/ニトロ化ストレス増加は、脳血液関門のバリア機構を傷害し、脳組織実質の神経細胞機能にダメージを与えることが示唆された。一方、肺組織においては、炎症軽減作用が知られているスタチン系薬剤を予め投与しておくと、組織損傷が軽減されること、またその分子基盤を解析すると、肺胞マクロファージ増加、グルココルチコイド受容体発現増加、加えてインスリンシグナル経路のPI3K-Aktシグナルが増強していた。さらに心臓組織においても、スタチン系薬剤が炎症による組織リモデリングを改善する効果を認めた。以上のことから、各組織のインスリンシグナルは、糖尿病疾患と同じく、敗血症においても、組織傷害の進行度を防止する過程で何らかの影響を及ぼすことが示唆された。盲腸穿孔敗血症マウスモデル(CLPマウス)の脳、肺、心臓組織において、組織傷害度とインスリンシグナルを、分子生物学的手法、組織免疫法などを用いて解析した。CLPマウス各組織におけるインスリンシグナル分子AktおよびGSK-3βのリン酸化は、モデル作成後いったん増加するものの、その後減少に転じることが確認された。特にCLPマウス肺組織において、オルプリノン、コルホルシン処置により細胞内cAMP濃度を上昇させると、組織傷害度を減じさせたが、その細胞内機序を解析すると、Aktリン酸化レベルは増強持続していた。一方CLPマウス脳組織においては、ルシゲニンの化学発光を用いてNADPH oxidaseの酵素活性を測定すると、時間経過とともに増加していた。さらに組織免疫染色法による解析では、脳血管周囲にニトロチロシン陽性像が増加、色素を用いた解析では脳血管透過性が増加していたことから、脳血管内皮細胞の傷害が示唆された。さらに、脳実質の神経細胞についてHE染色による顕微鏡観察を行うと、CLPマウス群において多数の細胞委縮変形像、濃染色像を認め、ラジカルスカベンジャー、エダラボン処置でそれらが減じることから、酸化/ニトロ化ストレス増加によって、脳血液関門はもとより最終的には脳神経細胞が傷害され、敗血症性脳症の発症につながることが示唆された。その一方では、CLPモデル作成からの時間経過とともに血液中のインスリン濃度が上昇してくることから、酸化/ニトロ化ストレス増加はインスリン作用不全に関連することが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-21590271
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敗血症におけるインスリンシグナル調節機構の解明
つまり、敗血症病態においては、その侵害刺激に対応するため各組織においては反射的にインスリンシグナルを増加させる機構が備わっているが、徐々にインスリン作用不全の状態になり、その保護効果が減弱していくことで病態が進行していくものと予想された。
KAKENHI-PROJECT-21590271
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