title
stringlengths
0
199
text
stringlengths
3
3.18k
id
stringlengths
23
32
url
stringlengths
56
65
地域間産業連関分析拡張レオンチェフモデル-理論と応用-
本年度は、申請者がこれまで進めてきた1地域での産業連関分析内生化モデルを地域間モデルに拡張するため、家計行動を内生的に扱った産業連関分析の拡張モデルや社会勘定体系(SAM体系)による産業構造分析への応用モデル、さらに家計の所得増加による追加的な財・サービス別消費需要を議論した消費行動システムに関する既存研究のレビューを集中的に行った。こうした文献・資料調査、さらに本研究課題が目指す地域間産業連関分析拡張レオンチェフモデルの構築・展開のため、カーディフ大学(英国、ウェールズ)のビジネススクール(物流運営管理グループ)で約一月のフィールドワークを行った。また地域間SAM体系による日本を対象とした実証分析で用いるデータベースの整備・構築のため、申請者が過去に行った日本全体のSAM体系によるデータベースを基に、統計資料及びデータ等の収集を行った。地域間SAM体系によるデータベースの作成にあたっては、得られたデータにおける不整合、あるいは地域ベースでは入手不可能なデータなど、その作成において多くの問題が生じる。そのため、データベースの整備・構築と平行して、産業連関分析でしばしば用いられるノンサーベイ手法に関する既存研究のレビューや申請者が所属する研究グループで別途進めていた地域産業連関表の作成方法に関する議論を進めた。本来であれば来年度(平成15年度)も研究期間であるが、学位取得及び専任ポストへの就職のため、申請者は本年度末での辞退となる。今後も本年度の研究成果を基にし、本研究課題を継続していきたいと考える。本年度、申請者らが進めるCGEモデルにより、日本経済における情報化の影響に関する実証分析を行ったが、こうした長期的一般均衡による実証分析と本研究課題が分析対象とする短期的な効果との比較議論、また本モデルを複数タイプの家計部門に応用することで、所得階層別あるいは就業形態別に政策議論を行っていきたい。本年度は、申請者がこれまで進めてきた1地域での産業連関分析内生化モデルを地域間モデルに拡張するため、家計行動を内生的に扱った産業連関分析の拡張モデルや社会勘定体系(SAM体系)による産業構造分析への応用モデル、さらに家計の所得増加による追加的な財・サービス別消費需要を議論した消費行動システムに関する既存研究のレビューを集中的に行った。こうした文献・資料調査、さらに本研究課題が目指す地域間産業連関分析拡張レオンチェフモデルの構築・展開のため、カーディフ大学(英国、ウェールズ)のビジネススクール(物流運営管理グループ)で約一月のフィールドワークを行った。また地域間SAM体系による日本を対象とした実証分析で用いるデータベースの整備・構築のため、申請者が過去に行った日本全体のSAM体系によるデータベースを基に、統計資料及びデータ等の収集を行った。地域間SAM体系によるデータベースの作成にあたっては、得られたデータにおける不整合、あるいは地域ベースでは入手不可能なデータなど、その作成において多くの問題が生じる。そのため、データベースの整備・構築と平行して、産業連関分析でしばしば用いられるノンサーベイ手法に関する既存研究のレビューや申請者が所属する研究グループで別途進めていた地域産業連関表の作成方法に関する議論を進めた。本来であれば来年度(平成15年度)も研究期間であるが、学位取得及び専任ポストへの就職のため、申請者は本年度末での辞退となる。今後も本年度の研究成果を基にし、本研究課題を継続していきたいと考える。本年度、申請者らが進めるCGEモデルにより、日本経済における情報化の影響に関する実証分析を行ったが、こうした長期的一般均衡による実証分析と本研究課題が分析対象とする短期的な効果との比較議論、また本モデルを複数タイプの家計部門に応用することで、所得階層別あるいは就業形態別に政策議論を行っていきたい。
KAKENHI-PROJECT-02J06236
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02J06236
不定元を含む文字列表現を用いた実数などの連続空間の計算構造の研究
実数空間などの連続な構造をもつ位相空間上の計算的構造について、不定元⊥(ボトム)を含む文字列集合への埋め込みなどの手法で研究を行った。計算的に自然な埋め込みが持つべき性質(定義の再帰性や冗長性のなさなど)を考え、そのような埋め込みを表す位相空間論的な概念を導入し、それがどのような位相空間において存在するかなどの問題について調べた。定数時間計算可能性を保存するコード変換、formal ballのなす空間のLawson位相と距離空間の双曲位相の関係などについても調べた。グレイコ-ドという不定元を用いた実数の表現を基本として,実数などの連続な空間の上の計算構造,および,それと関連した,位相構造などの空間の数学的な構造について研究を行う。それは,実数などの連続空間を近似するための数学的構造の研究である,ドメイン理論をはじめ,プログラミング言語理論,位相空間論,計算可能性理論,力学系,フラクタル理論などの多くの分野と関連がある。これら様々な分野との関わりを用いて,連続で無限な空間の表現とその表現を用いた計算が,その空間の構造とどう係わるかを調べる。実数空間などの連続な構造をもつ位相空間上の計算的構造について、不定元⊥(ボトム)を含む文字列集合への埋め込みなどの手法で研究を行った。計算的に自然な埋め込みが持つべき性質(定義の再帰性や冗長性のなさなど)を考え、そのような埋め込みを表す位相空間論的な概念を導入し、それがどのような位相空間において存在するかなどの問題について調べた。定数時間計算可能性を保存するコード変換、formal ballのなす空間のLawson位相と距離空間の双曲位相の関係などについても調べた。実数などの距離空間の上の計算構造を与える構造に,formal ballのなす順序集合がある。この順序集合には,順序集合の上の計算構造に対応した,Scott位とLawson位相という2つの位相が入る。このうち,Lawson位相は,formal ballに関して正の情報と負の情報の両方を与えるものであり,⊥入り文字列の考え方と対応している。一方,formal ballの空間には,自然に直積位相が入る。この2つの位相の関係について,直積位相のほうがLawson位相よりも強く,両者が異なることがあることを示した。また,正の情報と負の情報の間に,不定の領域が存在するが,それは,もとの距離空間と1:1の対応をなし,それを通じてLawson位相が距離空間の上に導出する位相が存在する。その位相は,距離空間に一般化された双曲線の片側を部分基にしており,双曲位相と名づけた。双曲位相が,不定な領域の取り方に依存せず,常に同一になること,また,距離空間上の距離位相と双曲位相が一致するかという問題と,formal ball空間上で,積位相とLawson位相が一致するかという問題が同値になることを示した。この結果については,投稿中である。1.連続な空間の計算構造の表現の一つである,距離空間上の形式球のなすドメイン構造が、距離位相とは異なる,自然な位相構造,(双曲位相)を距離空間上に導出することを示した。形式球のなす空間上で積位相とLawson位相が一致することと距離空間上で距離位相と双曲位相が一致することが同値となる。この結果を論文にまとめた。また,幾つかの具体的な距離空間で,この2つの位相が一致するかどうかを調べ、国際会議で発表した。これは,計算概念が連続な空間上に導出する新しい数学的構造であり,この位相構造および,それと関係した近似概念について、さらに研究を深めたい。2.実数空間の文字列表現であるグレイコードと二進展開を比べる中で,有限時間計算可能関数の概念を定義し,有限時間計算可能性を保存するコード変換について調べた。二進展開からグレイコードへの変換は有限時間計算可能性を保存するコード変換であるか,逆はそうではなく,グレイコードの方が,二進展開より多くの有限時間計算可能関数を持つ。このことを国際会議で発表した。ある条件下で有限時間計算可能性を保存する変換の定式化を行った。無限言語の理論や,プログラミング言語理論との関係も見えてきたので,そういう観点から研究を続けたい。3.計算可能な不連続実関数について考える時に現れるフラクタル構造について,無限の分岐の繰り返し関数族が定義するフラクタルの理論としてフラクタル次元などについて調べ、国際会議で発表し、論文を投稿した。再帰的に定義された実関数は自然にフラクタル構造を持つが,この研究の発展により,フラクタル理論から,そのような計算の特性が見えてくることを期待している。4.ボトム入り文字列表現が生成する部分基に無駄がないことを意味するindependent subbaseをもつ空間の定式化を行った。1.実際の数学でよく表れる距離空間において、距離位相と双曲位相が一致するかどうかしらべた。特に、測度空間Lpにおいては、双曲位相と距離空間が一致するための必要十分な条件を与えることができた。それの特別な場合として、無限列のなす空間では、11においては両者一致するが、p2および1については一致しないことを示した。2.グレイコード、および、グレイコード変換を拡張して有限時間計算可能関数、および、有限時間計算可能性を保存するコード変換の概念を導入し、全域的に定義された有限時間計算可能性を保存するコード変換は、拡張されたスライディングブロック関数と同値であることを示した。有限時間計算可能性を保存するコード変換は、接尾辞一致性も保存する。
KAKENHI-PROJECT-18500013
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18500013
不定元を含む文字列表現を用いた実数などの連続空間の計算構造の研究
しかし、前者よりも後者の方が、より一般的な概念であることを示した。3.計算可能な不連続関数であり、ファイン一様連続ではない関数の代表例であるVascoの関数のグラフがなすフラクタル構造について調べた。特に、それは、無限個の縮小写像からなるフラクタルとして表現できることを示し、そのようなフラクタルのハウスドルフ次元および測度について調べた。4.独立部分基は、ボトム入り文字列によっる効率よい表現に対応する位相概念である。どのような距離空間が独立部分基を持つか調べ、独立部分基をもつこととdense in itselfであることが同値であることを示した。1.ある計算的な性質を満たす、不定元を含む文字列を用いた空間の表現は、Dyadic Subbaseという部分基を空間に与えることと対応している。その中でも、independent subbaseという部分基は、空間の無駄のない表現に対応している。全ての空間はDyadic Subbaseを持つこと、距離空間においてDyadic Subbaseを持つこととdense initselfであることが同値であることを示した。2.無駄のない空間の表現に対応する部分基として、上記2つの間にcanonically representing subbaseという概念を考えていたが、それより弱い概念でweakly canonically representingという概念が存在することを示し、それらの間の関係について調べた。3.計算に用いることができるためには、Dyadic Subbaseが再帰的な定義を持つ必要がある。シェルピンスキーガスケット上に、再帰的に定義されたindependent subbaseを構成できることを示した。4.Dyadic Subbaseの再帰的な定義の中でもっとも自然なものは、力学系の旅程を用いたものである。力学系に由来するDyadic Subbaseの概念を導入し、I^2上の力学系に由来する部分基を分類する問題を考えた。5.フラクタルを描画する手続きとして、Random Iteration Algorithmがあるが、それをGraph-Directed Setに拡張し、その性質を調べた。
KAKENHI-PROJECT-18500013
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18500013
胆汁酸と脂質・糖ホメオスタシスとの関連精査による新たな代謝性疾患治療法の開発
胆汁酸刺激培養細胞中のプロテオームを解析し、α-enolaseやperoxiredoxin-1の翻訳後修飾に変動が見られることが判明した。肝細胞中の胆汁酸結合タンパク質を調べたところ、peroxiredoxin-1の他に、細胞内キャリアータンパク質や胆汁酸代謝に関与する酵素等が抽出された。18O一置換標識法を構築し、プロテオーム変動解析に応用可能であることが判明した。抱合型胆汁酸のメタボローム解析法を構築したところ、フォーカシングメタボロミクスにより、疾患特異的な代謝物を見出すことが可能であった。胆汁酸刺激培養細胞中のプロテオームを解析し、α-enolaseやperoxiredoxin-1の翻訳後修飾に変動が見られることが判明した。肝細胞中の胆汁酸結合タンパク質を調べたところ、peroxiredoxin-1の他に、細胞内キャリアータンパク質や胆汁酸代謝に関与する酵素等が抽出された。18O一置換標識法を構築し、プロテオーム変動解析に応用可能であることが判明した。抱合型胆汁酸のメタボローム解析法を構築したところ、フォーカシングメタボロミクスにより、疾患特異的な代謝物を見出すことが可能であった。HeLa S3細胞にデオキシコール酸(終濃度:50μM)を添加した後、一定時間経過ごとに細胞を取り出してタンパク質試料を調製し、それぞれ2次元ゲル電気泳動により分離した。その結果、α-enolaseの翻訳後修飾タンパク質を詳細に解析すると、刺激後1時間でスポットの塩基性側へのシフトが認められ、8時間後にはほぼコントロールと同じパターンに戻ることが判った。また、peroxiredoxin-1においてもほぼ同様の変化が認められ、刺激1時間後には最も酸性側のスポットの染色強度は極めて薄くなったものの、8時間後にはほぼコントロールの状態に戻った。このことから、これらの変動は刺激により一過性に起こるものの、細胞内にその修復機構が存在することが示唆された。次に、各スポットに含まれるタンパク質を詳細に解析したところ、α-enolaseのスポットには、Rab GDP dissociation inhibitor beta、elongation factor 1-gamma等の他のタンパク質も含まれていることが明らかとなった。ケノデオキシコール酸固定化cleavableaffinitygelを用いて、Hep G2細胞やラット肝組織中の結合タンパク質の抽出を試みた。その結果、Hep G2細胞からperoxredoxin-1の他、tubulin-α,β、elongation factor 1、Importin-1,7、exportin-2、dihydrodiol dehydrogenase等が、またラット肝細胞質画分からperoxiredoxin-1、glutathione transferase、glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase、3-oxo-5-beta-steroid 4-dehydrogenase、elongation factor-1、bile salt sulfotransferase等が選択的に抽出された。特に、peroxiredoxin-1は極めて効率よく濃縮されたことから、本タンパク質がケノデオキシコール酸と強く結合する可能性が示唆された。しかも、本タンパク質は、デオキシコール酸刺激によって変動することが確認されており、両者の結果を考え併せると極めて興味深い。モデル試料として牛血清アルブミンを用い、還元アルキル化後、^<18>O標識水中でトリプシンによる酵素消化に付した。反応液のpH、および酵素活性部位における競合剤として用いるモノエタノールアミン濃度の影響を調べたところ、50mMのモノエタノールアミンを含むpH11のリン酸緩衝液中、37°Cで48時間インキュベートすると、最も効率よく^<18>O-置換反応が進行することが判った。次に、^<18>O-置換標識体と非標識体の混合試料をnanoLC/ESI-MS/MS分析に付し、yイオン強度比を解析したところ、100倍以上の混合モル比の範囲で相関が認められた。次に、2名の健常人血清各1μLに対して疑似バイオマーカーとして鶏由来のリゾチームを10あるいは100pmol添加した試料につき、血清アルブミン及びIgGを除去後還元アルキル化し、一方を^<18>O標識水中で、他方を非標識水中で酵素消化した。両者を混合した後にnanoLC/ESI-MS/MS分析し、疑似バイオマーカーの存在比を求めた。同じ試料をiTRAQ法で分析し、得られた結果を比較したところ、今回開発した^<18>O標識法による方がより精度の高い結果が得られることが判明した。抱合型胆汁酸の各標品を用いてCID条件を検討し、それぞれプリカーサーイオンスキャン、ニュートラルロススキャンによるフォーカシング法を検討した。その結果、グリシン、タウリン抱合体はそれぞれm/z74、m/z124のプリカーサーイオンスキャンで、硫酸抱合体はm/z97のプリカーサーイオンスキャンで、またN-アセチルグルコサミン抱合体は質量差203のニュートラルロススキャンでフォーカシング可能であることが明らかとなった。これまでの検討から、培養細胞を用いるin vitroのデータと組織等を用いるin vivoのデータに乖離があることが判明している。通常接着細胞を培養すると細胞増殖により平面的にコロニーが拡大していくが、3次元的に培養するとむしろ分化する傾向があり、より生体内組織に近い細胞群が得られるものと考えられる。そこで、細胞を3次元的に培養し、通常の培養の場合とプロテオームを比較することとした。HepG2細胞を用いて検討したところ、可用性画分中の一部のタンパク質の存在量が全く異なることが判明した。
KAKENHI-PROJECT-21390006
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21390006
胆汁酸と脂質・糖ホメオスタシスとの関連精査による新たな代謝性疾患治療法の開発
特に、acy1-CoA binding proteinやtriosephosphate isomerase、cofilin-1などの乖離が大きく、現在その理由を調査している。一方、より多種類のタンパク質を一斉に解析することを目的にnanoLC分離の2次元化を試みた。強カチオン交換カラムを用いて分離したフラクションをオンラインでODS系のnanoLCカラムでさらに分離し、それぞれのプロテオームを解析したところ、1次元分離に比べてより多種類のプロテオームを解析可能なことが判明した。これまでに構築したメタボローム解析法を用いて、各種抱合型胆汁酸のフォーカシングメタボロミクスを試みた。健常人およびコレステロール代謝に異常を来す遺伝性疾患の新生児尿につき比較検討したところ、健常人に比べて患者尿中に多量でかつ多種類の硫酸抱合型胆汁酸類が存在することが判明した。しかも、それぞれのフォーカシングマップの比較から、簡単にマルチ抱合体を特定でき、多くの多重抱合体が見出された。3β-HSD欠損症患者尿中には、酵素欠損により蓄積した3β-sulfooxy-Δ5系の胆汁酸類が多量に存在した。一方、Niemann-Pick病typeC患者の場合は、3β-sulfooxy-Δ5系の胆汁酸の7β位がN-アセチルグルコサミンで抱合され、かつ側鎖末端がグリシンあるいはタウリンにより抱合された多重抱合型胆汁酸類が高濃度で存在することが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-21390006
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21390006
子ども向け「こころの科学」教育:科学的思考力を育む知覚学習キットの開発研究
本研究では、心理学で扱う知覚現象を科学教材に取り入れ、子どもの科学的思考力の"解発"と"育成"に向けて、知覚学習キットの開発、および、学習キットを用いた教育プログラムの開発を行い、その効果を授業実践において検証することが目的である。これまで、主に、中学生を対象として、学習キットの開発(教授法開発)、授業実践、授業評価の3点に取り組んできた。特に、最終年度(平成19年度)は知覚学習キットの完成を目指した。知覚学習キットの開発:錯視現象を素材とした学習教材および学習プロセスを考案し、これをパーソナルコンピュータ上で一連のステップで実行できるようにプリケーション化した。本アプリケーションは、これまでの理科教材に類を見ないオリジナル性の高い科学教材(学習支援装置)として、現在、特許出願中である。授業実践:前年度に引続き、本研究のなかで考案してきた学習教材や学習プロセスを導入した「こころの科学」教育プログラム(出前授業形式)を定期的に実施した(都内中学校5校、約150名)。授業評価:授業前後にアンケート調査を行ない、本教育プログラムの学習効果を検証した。学習態度、学習意欲、理解度を効果の変数として、教材内容や指導法などについて分析したところ、その有効性が確認された。さらに、生徒に対して、学習体験は「なぜ?」という考えに至ったかどうか、また、その現象が起こる理由を知りたいという考えに発展したかどうか、あるいは、他の現象の因果関係にも関心が拡がったかどうかなど、科学的思考に関わる意識調査を行い、本教育プログラムの効果を総合的に分析、評価した。本教育プログラムの展開:知覚学習キットを用いて、現場の先生が、自ら「こころの科学」教育を実践できるよう、現在、先生と生徒のための学習マニュアルを作成しており、今後はその普及活動にも取り組んでいく。1)「こころの科学」授業実施説明会:都内某区教育委員会に出席(5月)。小・中学校の校長先生を対象に「こころの科学」(『知覚の不思議を体験しよう-実験でみるこころの科学-』)授業について概要を説明。高い関心を得られたが、小学校では年度内のカリキュラムが全て決定しているため、授業の実施は見送るとの結論に至った。中学校から、「選択理科」の時間に「出前授業」をしてほしいとの要望が出た。出前授業の実施に向けて、実施検討会、および、授業研究会を開くことを決めた。2)実施検討会・授業研究会の開催:中学校・理科の先生5名と、授業の実施にむけて検討会および研究会を開催(6月)。対象学年・授業レベル・時間配分・実験材料など、授業の具体的方向性および実施校を設定した。出前授業を実施する前に、先生方を対象に模擬授業を行うことを決めた。3)「こころの科学」模擬授業の実施:中学校・理科の先生を対象に「こころの科学」模擬授業(プレゼンテーション)を実施(8月)。実際の授業時間、実験手順に基づいて授業を行い、内容の修正、改善を図った。また、今年度秋に都内某区立中学校1校にて、授業を実施することが決まった。4)「こころの科学」授業の実施:都内区立中学校にて、12月1日、8日の選択理科の時間(約45分×2回)に、中学3年生16名を対象に、「"ものの世界"と"見えの世界"-錯視体験を通して学ぶ-」と題して、出前授業を行った。1週目は、錯視例(ハーマンの格子、カニッツァの三角形、エビングハウスの錯視、他)を通して、物理世界と知覚世界が異なることを「体験する」と同時に、ミューラー・リアの錯視図形を使って錯視量を「測定する」ことを行った。2週目は、さらに他の錯視体験(ベンハムのコマ)や知覚現象(両眼立体視)を通して、ものを見る「しくみ」について考えることを行った。授業の前後(1週目の授業前と2週目の授業後)にアンケートを行い、「見る」「脳」「こころ」「測る」といった関係について、理解変化を調査した。調査結果をまとめ、現在、学会誌へ投稿準備中である。引続き、対象を拡大して授業を行う。その他)「こころの科学」出前授業活動:群馬県立女子大学が推進している「一般向け教育活動」と連携して出前授業を行った(11月)。県内某校にて、「視覚の不思議を体験しよう」と題して、小学生から中学生の計30名を対象に授業を行い、子どもたちの感想をまとめた。1)「こころの科学」授業-実践と教育効果:お茶の水女子大学・サイエンス&エデュケーションセンターと北区が共催する「理科実験教室」において、中学生(2、3年生)を対象に、ミューラー-リヤーの錯視実験キットを用いた「こころの科学」授業を実施した。学習のねらいは、(1)錯視の体験を通して、人間の知覚現象そのものに興味をもたせる、(2)実際に錯視量を測定することにより、物理世界と知覚世界が異なることを実感させる、(3)錯視の仕組みを問うことにより、人間は目でものを見ているのではなく、目を通して脳でものを見ていることを学ぶ、(4)科学の対象は、物理世界(自然科学)に限られたものではなく、人間の反応や行動も科学の対象(人間科学)になり得る、ということを導く点にあった。受講者40名(20名募集のところ、40名の応募者)の学習効果を検証した結果、もともと科学に対する興味の高い生徒たちであったにも関わらず、授業後、科学や脳に対する興味・関心がさらに高くなった(p<.05)と同時に、学習のねらい(4)に関する具体的な記述(理解の展開)も確認された。
KAKENHI-PROJECT-17650255
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17650255
子ども向け「こころの科学」教育:科学的思考力を育む知覚学習キットの開発研究
2)錯視実験キットからe-learningプログラムへの展開:錯視実験キットを用いた実践研究の成果に基づいて、Web上で実行できる錯視実験ツール(アプリケーション)を開発および改良中である。本実験ツールを用いた実践授業は、今年度、都内中学校(B区、M市、他)で行う予定である。3)研究成果の発表:池田まさみ・田中美帆・石口彰2006「こころの科学教育-錯視を通して学ぶ"ものの世界"と"見えの世界"日本心理学会第70回大会発表(福岡)本研究では、心理学で扱う知覚現象を科学教材に取り入れ、子どもの科学的思考力の"解発"と"育成"に向けて、知覚学習キットの開発、および、学習キットを用いた教育プログラムの開発を行い、その効果を授業実践において検証することが目的である。これまで、主に、中学生を対象として、学習キットの開発(教授法開発)、授業実践、授業評価の3点に取り組んできた。特に、最終年度(平成19年度)は知覚学習キットの完成を目指した。知覚学習キットの開発:錯視現象を素材とした学習教材および学習プロセスを考案し、これをパーソナルコンピュータ上で一連のステップで実行できるようにプリケーション化した。本アプリケーションは、これまでの理科教材に類を見ないオリジナル性の高い科学教材(学習支援装置)として、現在、特許出願中である。授業実践:前年度に引続き、本研究のなかで考案してきた学習教材や学習プロセスを導入した「こころの科学」教育プログラム(出前授業形式)を定期的に実施した(都内中学校5校、約150名)。授業評価:授業前後にアンケート調査を行ない、本教育プログラムの学習効果を検証した。学習態度、学習意欲、理解度を効果の変数として、教材内容や指導法などについて分析したところ、その有効性が確認された。さらに、生徒に対して、学習体験は「なぜ?」という考えに至ったかどうか、また、その現象が起こる理由を知りたいという考えに発展したかどうか、あるいは、他の現象の因果関係にも関心が拡がったかどうかなど、科学的思考に関わる意識調査を行い、本教育プログラムの効果を総合的に分析、評価した。本教育プログラムの展開:知覚学習キットを用いて、現場の先生が、自ら「こころの科学」教育を実践できるよう、現在、先生と生徒のための学習マニュアルを作成しており、今後はその普及活動にも取り組んでいく。
KAKENHI-PROJECT-17650255
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17650255
エバネセント光散乱法による界面近傍分子の動的物性研究
近年、物質が界面近傍において特異的に示す構造や物性が注目を集めている。特に電場や磁場、温度などの外場に対して敏感に応答する液晶や高分子・生体系などの複雑流体は、それが固体と接するとき界面が持つ異方形状や界面吸着分子が作る静電層などの影響を受け、バルク中とは異なった構造やふるまいを示すものが多い。この構造を調べるため、界面のごく近傍における液体のダイナミクスを調べる新しい手法として動的エバネセント光散乱法の開発に着手した。エバネセント光は全反射条件において固液界面から液体側に一波長程度しみだす光であり、この光を動的光散乱測定のプローブとして用いることにより、界面の近傍における分子のダイナミクスを抽出して調べることができる。本研究の目的は、動的エバネセント光散乱法を開発して界面近傍物性の新しい測定手段を確立し、これを用いて界面と分子や分子集合体との相互作用をミクロなレベルで研究することである。本研究ではまず微小粒子によるエバネセント光の散乱からその拡散運動を調べる動的エバネセント光散乱法を開発し、その界面近傍の動的物性測定手段としての性能の評価を行った。さらにこの装置を用いて界面近傍における微小球状粒子のブラウン運動の測定を行い、自由空間中とは異なる熱揺らぎ現象を見出した。結果について、界面との流体力学的相互作用を考慮した揺動散逸定理を用いて考察した。これに加えてさらに、エバネセント波からエバネセント波への散乱過程という現象に着目した新しい光散乱法であるフラストレートエバネセント光散乱測定法の開発を行った。これらの研究の結果、界面近傍における微小粒子の異方的拡散係数や流体の粘性を決定する新たな手法を確立することができた。この技術は、固液界面において特異な物性を示す液晶や高分子吸着膜などの微視的な構造とダイナミクスを研究する上で有力な手段となることが期待される。近年、物質が界面近傍において特異的に示す構造や物性が注目を集めている。特に電場や磁場、温度などの外場に対して敏感に応答する液晶や高分子・生体系などの複雑流体は、それが固体と接するとき界面が持つ異方形状や界面吸着分子が作る静電層などの影響を受け、バルク中とは異なった構造やふるまいを示すものが多い。この構造を調べるため、界面のごく近傍における液体のダイナミクスを調べる新しい手法として動的エバネセント光散乱法の開発に着手した。エバネセント光は全反射条件において固液界面から液体側に一波長程度しみだす光であり、この光を動的光散乱測定のプローブとして用いることにより、界面の近傍における分子のダイナミクスを抽出して調べることができる。本研究の目的は、動的エバネセント光散乱法を開発して界面近傍物性の新しい測定手段を確立し、これを用いて界面と分子や分子集合体との相互作用をミクロなレベルで研究することである。本研究ではまず微小粒子によるエバネセント光の散乱からその拡散運動を調べる動的エバネセント光散乱法を開発し、その界面近傍の動的物性測定手段としての性能の評価を行った。さらにこの装置を用いて界面近傍における微小球状粒子のブラウン運動の測定を行い、自由空間中とは異なる熱揺らぎ現象を見出した。結果について、界面との流体力学的相互作用を考慮した揺動散逸定理を用いて考察した。これに加えてさらに、エバネセント波からエバネセント波への散乱過程という現象に着目した新しい光散乱法であるフラストレートエバネセント光散乱測定法の開発を行った。これらの研究の結果、界面近傍における微小粒子の異方的拡散係数や流体の粘性を決定する新たな手法を確立することができた。この技術は、固液界面において特異な物性を示す液晶や高分子吸着膜などの微視的な構造とダイナミクスを研究する上で有力な手段となることが期待される。電場や磁場,温度などの外場に対して敏感に応答する液晶や光分子、生体系などの複雑流体は,それが固体の界面と接するとき界面が持つ異方性や界面吸着分子がつくる静電層などの影響を受け、バルク中とは異なった構造や振る舞いを示すものが多い。また界面およびその近傍の液体の性質は,分散系の凝集や濡れ現象などに重要な影響を及ぼす。これら界面と分子の相互作用をミクロなレベルで調べることは,物性研究のみならず工学的応用の面からも重要である。本研究では,界面のごく近傍における液体のダイナミクスを調べる新しい手法として,エバネセント光を用いた動的光散乱法を開発することを目的とする。本年度は、高出力YAGレーザーを光源としたエバネセント光散乱装置を設計・製作し、これを界面近傍微粒子のブラウン運動の観察に応用することによりその性能の評価を試みた。レーザー光を固体一液体の界面に臨界角以上で入射すると光は全反射されるが、このとき屈折率の小さい液体側に波長程度の厚みだけ染み出すエバネセント光を生成する。このエバネセント場に光と結合する屈折率分布が存在すると、光は通常の伝搬する光に変換され光散乱を示す。実験ではまず試料として粒径があらかじめ知られたポリスチレン微粒子のラテックスを用い、媒質中での粒子のブラウン運動を観察した。これにより界面近傍の粒子の運動のみを選択して抽出できることが明らかとなった。さらに界面近傍では、粒子と界面の流体力学的相互作用の結果増加する見かけの粘性の影響をうけて、ブラウン運動が抑制されることをはじめて確認した。さらに現在、界面近傍における液晶性分子の配向緩和現象を観察する試みを進めている。
KAKENHI-PROJECT-10450033
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10450033
エバネセント光散乱法による界面近傍分子の動的物性研究
電場や磁場、温度などの外場に対して敏感に応答する液晶やゲル、生体系などの複雑流体は、それが固体の界面と接するとき界面が持つ異方性や界面吸着分子がつくる静電層などの影響を受け、バルク中とは異なった構造や振る舞いを示すものが多い。これら界面と分子の相互作用をミクロなレベルで調べることは、物性研究のみならず工学的応用の面からも重要である。本研究では界面のごく近傍における液体のダイナミクスを調べる新しい手法として、エバネセント光を用いた動的光散乱法を開発することを目的とする。本年度は、昨年度に制作した動的エバネセント光散乱装置を用いて、熱揺動に伴なう界面近傍微粒子の拡散運動の測定を行った。レーザー光を固体-液体の界面に臨界角以上で入射すると光は全反射されるが、このとき屈折率の小さい液体側に波長程度の厚みだけしみ出すエバネセント光を生成する。このエバネセント場に光と結合する屈折率分布が存在すると、光は通常の伝搬する光に変換され光散乱を示す。実験ではまず試料として粒径があらかじめ知られたポリスチレン微粒子のラテックスを用い、媒質中での粒子のブラウン運動を観察した。これにより界面近傍の粒子の運動のみを選択して抽出できることが明らかとなった。さらに界面近傍では、粒子と界面の流体力学的相互作用の結果増加する見かけの粘性の影響を受けて、ブラウン運動が抑制されることをはじめて確認した。さらに現在、界面近傍における液晶性分子の配向緩和現象を観察する試みを進めている。さらに新しい界面測定手段であるフラストレート全反射光散乱法の開発を行った。この測定法は、界面近傍における屈折率の不均一により生ずる全反射条件の破れを調べるもので、界面方向の運動のみを抽出して測定できるという利点を持つ。測定結果は理論と良く一致し、本測定法の有効性を確認することができた。
KAKENHI-PROJECT-10450033
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10450033
大規模分散システムのための実時間オブジェクトアーキテクチャ
原子力プラント,航空機管制システム,月面作業ロボット,人工衛星制御システム,分散マルチメディアシステム等,実時間性を要する大規模分散システムに対する需要がますます高まっている.これらを支援する計算機システムもまた,ネットワーク上などでの本格的な大規模分散の時代を迎えているところである.本研究課題では,従来,その場凌ぎ的なアドホックな手法によってなされてきた大規模分散処理記述を,(1)記述:並行オブジェクト指向に柔軟な実時間性を取り入れた分散実時間オブジェクト指向,(2)実行環境:動的負荷分散,実時間スケジューリング等による動的かつ実時間的実行計算制御,さらに(3)理論:非同期名前渡しプロセス計算及び時間的並行プロセス計算という3点に焦点を絞り議論した.具体的には,(a)分散実時間プログラミング言語DROLのARTSカーネル及びRT-Mach実時間カーネル上への実装,分散計算システム実験環境(慶応義塾大学,電気通信大学,IBM PC-AT互換機10台)上での性能や応用可能性の評価,(b)動的実時間システムのための柔軟なスケジューリングアルゴリズムの提案,(c)局所時間性を考慮した分散オブジェクトの形式化及びプロセス代数による実時間プログラミング言語の意味論の確率という3つのテーマを軸に研究を発展,それぞれの分野において得られた有意義な成果を統合,大規模分散実時間アプリケーションを安全かつ効率的に記述可能なプログラミングパラダイス及びその基礎理論を構築した.原子力プラント,航空機管制システム,月面作業ロボット,人工衛星制御システム,分散マルチメディアシステム等,実時間性を要する大規模分散システムに対する需要がますます高まっている.これらを支援する計算機システムもまた,ネットワーク上などでの本格的な大規模分散の時代を迎えているところである.本研究課題では,従来,その場凌ぎ的なアドホックな手法によってなされてきた大規模分散処理記述を,(1)記述:並行オブジェクト指向に柔軟な実時間性を取り入れた分散実時間オブジェクト指向,(2)実行環境:動的負荷分散,実時間スケジューリング等による動的かつ実時間的実行計算制御,さらに(3)理論:非同期名前渡しプロセス計算及び時間的並行プロセス計算という3点に焦点を絞り議論した.具体的には,(a)分散実時間プログラミング言語DROLのARTSカーネル及びRT-Mach実時間カーネル上への実装,分散計算システム実験環境(慶応義塾大学,電気通信大学,IBM PC-AT互換機10台)上での性能や応用可能性の評価,(b)動的実時間システムのための柔軟なスケジューリングアルゴリズムの提案,(c)局所時間性を考慮した分散オブジェクトの形式化及びプロセス代数による実時間プログラミング言語の意味論の確率という3つのテーマを軸に研究を発展,それぞれの分野において得られた有意義な成果を統合,大規模分散実時間アプリケーションを安全かつ効率的に記述可能なプログラミングパラダイス及びその基礎理論を構築した.平成6年度における研究成果を,交付申請書研究実施計画に記載した個別の研究テーマごとにまとめる.1.記述言語:分散実時間記述言語DROLの有効性評価・・・分散実時間システム記述言語DROLの特徴は,最小被害戦略を導入したオブジェクト間交信にある.アプリケーション・プログラムを記述,その動作例を検証することにより,交信相手が過負荷状態にある状況,あるいは,通信経路上で予期せぬ遅延が発生した状況で,なお安定した動作が求められる問題領域において,最小被害戦略に基づく交信セマンティックスが有効であることが示された.2.実行環境:実時間ネットワーク・プロトコルの提案・・・FDDIネットワーク上で稼働する実時間プロトコルRtPを設計・実装した.RtPは,VSLモデルの枠組に基づき,2つの仮想チャネルを導入,実時間OS RT-Machと統合することにより,実時間通信を実現する.画像情報の転送等,実時間性を要する幅広い分野での応用が期待できる.3.実行環境:動的な実時間スケジューリング・アルゴリズムの提案・・・TV会議システム等,周期タスクの動的な生成・消滅およびタスクの時間特性の動的変更を必要とするシステムが存在する.DROL実行環境における支援を目的として,動的な時間特性を持つタスク・セットに適用可能な,時間特性調整アルゴリズムMARTを提案した.このアルゴリズムにより,常に変化し続ける環境上での動的かつ柔軟な実時間システム構築が可能となった.4.理論背景:局所時間性に基づく分散実時間計算のための形式系の確立・・・分散実時間システムにおける各計算機の局所的時間の相違に着目し,分散実時間システムの動作内容と局所的時間性を記述・解析するための形式系をプロセス計算体系であるCCSに基づいて定式化した.本形式系により,局所的時計の相違と誤差による分散プロセスの動作内容と時間的特性への影響を明示的に解析できるようになった.5.実験環境:高速ネットワーク実験環境の構築・・・FDDIを基幹とする高速ネットワーク実験環境を構築し,次年度以降に予定される各種実験に関する基礎データを収集した.本テーマにあわせて,本年度設備備品費によりFDDI/CDDIワークグループハブ1台を購入した(平成7年2月納入).また次年度以降の実験環境の整備を目的として,本年度設備備品費により購入したIBM互換機3台を購入した(平成6年11月納入).テーマ1.2.および4.の研究成果は,個別に論文としてまとめられ,日本ソフトウェア科学会コンピュータソフトウェアに投稿,採録されている.また,テーマ3.の研究成果をまとめた論文は,IEEE主催の国際ワークショップWorkshop on Parallel and Distributed Real-Time Systems,WPDRTS'94に投稿,受理された.平成7年度における研究成果を,交付申請書研究実施計画に記載した個別の研究テーマごとにまとめる.1.記述言語:分散実時間記述言語DROLの有効性評価...分散実時間アプリケーション・プログラム(Airplane Navigation System)をDROLで記述,その動作例を検証することにより,DROLの特徴である2つの概念,最小被害,最大サービスの有効性を評価した。
KAKENHI-PROJECT-06452244
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06452244
大規模分散システムのための実時間オブジェクトアーキテクチャ
これにより,交信相手が過負荷状態にある状況,あるいは,通信経路上で予期せぬ遅延が発生した状況で,なお安定した動作が求められる問題領域において,両概念に基づく交信セマンティックスが有効であることが示された.2.実行環境:DROL実行環境のマイクロカーネル上での実現...これまでARTSカーネル上で実現されていた記述言語DROLの実行環境を本プロジェクトのプラットフォームである実時間マイクロカーネルRT-Mach上に新たに設計・実装,リモート・オブジェクト呼出時間等の基本データを収集した。結果,プラットホォ-ムとしてのRT-Machの選択が適切であることが確認できた.3.実行環境:実時間ネットワーク・プロトコルの評価...FDDIネットワーク上で稼働する実時間プロトコルRtPを設計・実装・評価した.実時間OS RT-Mach上での基本性能の評価,ならびに連続メディア・アプリケーションによる実用性の評価を行った.これにより画像情報の転送等の分野で有効であることが確認された.原子力プラント,航空機管制システム,月面作業ロボット,人工衛星制御システム,分散マルチメディアシステム等,実時間性を要する大規模分散システムに対する需要がますます高まっている.これらを支援する計算機システムもまた,ネットワーク上などでの本格的な大規模分散の時代を迎えているところである.本研究課題では,従来,その場凌ぎ的なアドホックな手法によってなされてきた大規模分散処理記述を,(1)記述:並行オブジェクト指向に柔軟な実時間性を取り入れた分散実時間オブジェクト指向,(2)実行環境:動的負荷分散,実時間スケジューリング等による動的かつ実時間的実行計算制御,さらに(3)理論:非同期名前渡しプロセス計算及び時間的並行プロセス計算という3点に焦点を絞り議論した.具体的には,(a)分散実時間プログラミング言語DROLのARTSカーネル及びRT-Mach実時間カーネル上への実装,分散計算システム実験環境(慶應義塾大学,電気通信大学,IBM PC-AT互換機10台)上での性能や応用可能性の評価,(b)動的実時間システムのための柔軟なスケジューリングアルゴリズムの提案,(c)局所時間性を考慮した分散オブジェクトの形式化及びプロセス代数による実時間プログラミング言語の意味論の確立という3つのテーマを軸に研究を発展,それぞれの分野において得られた有意義な成果を統合,大規模分散実時間アプリケーションを安全かつ効率的に記述可能なプログラミングパラダイム及びその基礎理論を構築した.
KAKENHI-PROJECT-06452244
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06452244
p-HPPHを分子標的とした新規創傷治癒促進薬の開発
抗てんかん薬であるphenytoin (PHT)は,てんかんの大発作を抑制するのに優れた効果を持つが,副作用として歯肉増殖症を発症させることが臨床上の問題となる。近年、その副作用を利用して皮膚の創傷の治癒促進にPHTを用いようとする試みがあるが、強い薬理作用があるPHTを生体に応用するには抵抗感があるのも事実である。我々はPHTの副作用である歯肉増殖を抑制および治療する薬剤の開発を目的に研究を進めてきた。その結果、PHTの代謝産物である5-(phydroxyphenyl)-5-phenylhydantoin (p-HPPH)が歯肉増殖の副作用に大きく関与していることが明らかとなってきた。PHTは肝臓において、その大部分がp-HPPHに代謝され経時的に尿中に排泄されるが、p-HPPHにはPHTのような薬理作用はない。本研究は、PHTの代わりにその代謝産物であるp-HPPHを創傷治癒促進剤として応用するという着想のもと、p-HPPHによる創傷治癒促進メカニズムを解明し、新しい創傷治癒促進薬の開発を目指すものである。昨年度までの研究で,p-HPPHに細胞遊走の促進作用があり、その作用にはERKのリン酸化が関与している可能性があることが分かった。そこで、本年度はヒト皮膚3次元モデル(EFT-400)を用いて創傷治癒効果の検討を行った。EFT-400は、表皮角化細胞と線維芽細胞から構成され、表皮層と真皮層を有する皮膚モデルで、このモデルを用いることにより、動物実験レベルと同等の創傷治癒効果の検討を行うことができる。その結果、コントロール群に比べてp-HPPH投与群の方が治癒を促進することが明らかとなった。【目的】抗てんかん薬であるphenytoin (PHT)は,てんかんの大発作を抑制するのに優れた効果を持つが,副作用として歯肉増殖症を発症させる。近年、その副作用を利用して皮膚の創傷の治癒促進にPHTを用いようとする試みがあるが、その強い薬理作用のため生体に応用できない。我々は以前の研究で、PHTの代謝産物である5-(p-hydroxyphenyl)-5-phenylhydantoin (p-HPPH)も歯肉増殖に大きく関与していることを明らかとした。p-HPPHにはPHTのような薬理作用はないためPHTの代わりにp-HPPHを創傷治癒促進剤として応用することが可能である。そこで、本研究ではヒト歯肉線維芽細胞におけるp-HPPHによる細胞遊走の促進作用について検討したので報告する。【材料と方法】細胞はヒト歯肉線維芽細胞(HGF)を使用し、培地は10%濃度のFBSを含有するDMEMを用い、37°C、5%CO2条件下にて培養を行った。1.増殖試験: DMSOに溶解したp-HPPHを、10μg/ml、15μg/ml、20μg/mlの濃度に調整した10%FBS含有培地にてHGFを培養した。コントロール群には、実験群と等量のDMSOを加えた培地を用いた。細胞数は、0日、1日後、2日後にCell counting kitを用いて、マイクロプレートリーダーにて吸光度を測定して求めた。【結果】p-HPPHは、HGFの増殖に影響を及ぼさなかった。濃度20μg/mlのp-HPPHはコントロールと比較して有意に細胞遊走の促進がみられた。p-HPPHの創傷治癒促進作用を検討するため、細胞増殖試験と細胞遊走試験を行い、予想通りの結果を得ることができた。創傷治癒過程における細胞の遊走、細胞間の接着には、高分子の3量体G蛋白質や単量体の低分子量型G蛋白質などのさまざまな細胞内G蛋白質が関与している。とくに近年では、Rhoファミリーの低分子量G蛋白質(Cdc42、Rac1、Rho A)が創傷治癒過程で線維芽細胞に大きく影響することが明らかになりつつある。抗てんかん薬であるphenytoin (PHT)は,てんかんの大発作を抑制するのに優れた効果を持つが,副作用として歯肉増殖症を発症させることが臨床上の問題となる。近年、その副作用を利用して皮膚の創傷の治癒促進にPHTを用いようとする試みがあるが、強い薬理作用があるPHTを生体に応用するには抵抗感があるのも事実である。我々はPHTの副作用である歯肉増殖を抑制および治療する薬剤の開発を目的に研究を進めてきた。その結果、PHTの代謝産物である5-(p-hydroxyphenyl)-5-phenylhydantoin (p-HPPH)が歯肉増殖の副作用に大きく関与していることが明らかとなってきた。PHTは肝臓において、その大部分がp-HPPHに代謝され経時的に尿中に排泄されるが、p-HPPHにはPHTのような薬理作用はない。本研究は、PHTの代わりにその代謝産物であるp-HPPHを創傷治癒促進剤として応用するという着想のもと、p-HPPHによる創傷治癒促進メカニズムを解明し、新しい創傷治癒促進薬の開発を目指すものである。昨年度の研究で,p-HPPHに細胞遊走の促進作用があることが分かった。そこで、本年度は、濃度15μg/mlのp-HPPHを含有したserum freeの培地にて、0分、5分、15分、30分、60分間HGFを刺激後、タンパク質を回収し、Western blotting法にて、MAPキナーゼシグナルのERK1/2、JNKのリン酸化について検討した。その結果、ERKのリン酸化が関与している可能性があることが分かった。
KAKENHI-PROJECT-16K11805
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K11805
p-HPPHを分子標的とした新規創傷治癒促進薬の開発
p-HPPHの創傷治癒促進作用における細胞シグナルを検討した。創傷治癒過程における細胞遊走には、Rhoファミリーの低分子量Gタンパク質(特にRhoAとRac1)が関与していることが分かっている。本年度は、そのシグナル経路の下流に当たるMAPキナーゼのERKとJNKのリン酸化について検討を行った。現在、RhoAとRac1の活性化について検討を進める予定である。抗てんかん薬であるphenytoin (PHT)は,てんかんの大発作を抑制するのに優れた効果を持つが,副作用として歯肉増殖症を発症させることが臨床上の問題となる。近年、その副作用を利用して皮膚の創傷の治癒促進にPHTを用いようとする試みがあるが、強い薬理作用があるPHTを生体に応用するには抵抗感があるのも事実である。我々はPHTの副作用である歯肉増殖を抑制および治療する薬剤の開発を目的に研究を進めてきた。その結果、PHTの代謝産物である5-(phydroxyphenyl)-5-phenylhydantoin (p-HPPH)が歯肉増殖の副作用に大きく関与していることが明らかとなってきた。PHTは肝臓において、その大部分がp-HPPHに代謝され経時的に尿中に排泄されるが、p-HPPHにはPHTのような薬理作用はない。本研究は、PHTの代わりにその代謝産物であるp-HPPHを創傷治癒促進剤として応用するという着想のもと、p-HPPHによる創傷治癒促進メカニズムを解明し、新しい創傷治癒促進薬の開発を目指すものである。昨年度までの研究で,p-HPPHに細胞遊走の促進作用があり、その作用にはERKのリン酸化が関与している可能性があることが分かった。そこで、本年度はヒト皮膚3次元モデル(EFT-400)を用いて創傷治癒効果の検討を行った。EFT-400は、表皮角化細胞と線維芽細胞から構成され、表皮層と真皮層を有する皮膚モデルで、このモデルを用いることにより、動物実験レベルと同等の創傷治癒効果の検討を行うことができる。その結果、コントロール群に比べてp-HPPH投与群の方が治癒を促進することが明らかとなった。【I型コラーゲンに関する実験】HGFのコラーゲン産生能および分解能に及ぼす影響についての検討各群の培地で2日間培養したHGFを採取し、TrIsol (Invitrogen)を使用して、totalRNAを抽出する。各群から抽出したRNAから、I型コラーゲンのmRNAおよびMMP-1(I型コラーゲン分解酵素)のmRNAの発現量を測定する。検出はTaKaRaSYBR Premix Ex TaqII(タカラバイオ)によるリアルタイム2Step RT-PCR反応により行う。各群のmRNAのレベルは、GAPDHを用いて標準化し、比較Ct法による定量を行う。【創傷治癒モデルマウスを用いた実験】麻酔下で背部を剃毛し、直径8 mmの皮膚トレパンにて皮筋を含む皮膚全層欠損創を作製する。作製直後より1日2回、朝夕に創傷部にp-HPPH単独薬剤および増強因子併用薬剤を塗布する。肉眼的観察のため開始より3、7、12日後にポリプロピレンシートを創部に直接密着させ、創の形状をマジックでマーキングし、シートに記入した創の面積はスキャナーで取り込み、NIH image(USA)で測定する。
KAKENHI-PROJECT-16K11805
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K11805
インド洋の赤道を横切る南北循環の力学:数十年周期の気候変動の理解に向けて
二つのテーマについて研究を行った。現場観測と数値シミュレーションの結果を解析し、単純化されたモデルで実験を行った。一つ目のテーマは赤道上の流れである。赤道を横切る南北方向の流れに関する研究を行い、東西ジェットがモルジブ諸島に衝突した結果生じることを明らかにした。赤道上の東西ジェットの変動を調べ、波動の力学に関連づけた。二つ目のテーマはインド洋全体の南北循環である。現場観測を収集してインド洋の循環の全体像を描き出した。気候変動に関する政府間パネルの評価報告書に用いられた数値モデルの出力を調べ、循環がモデル内で正しく再現されていないことを明らかにした。上記の結果を4本の論文として国際誌に発表した。研究計画に基づき赤道インド洋の南北方向の流れの力学を音響式流速計の観測データと数値モデルを用いて調べた。当初はインド洋の海盆規模の循環をターゲットにしていたが、音響式流速計から得られた現場観測データにはそれとは明らかに異なる、従来の研究で指摘されたことのないシグナルが見られた。海洋大循環モデルの出力の解析および現実を単純化した1.5層モデルによる数値実験の結果から、新たに発見されたシグナルは赤道上の東向きジェット(ウィルツキ・ジェット)がモルジブ諸島に衝突した際に形成される島に捕捉された定在波であることが分かった。1.5層モデルの実験から、この定在波は定常状態において存在でき、力学は非線形で、流線に沿って渦位が保存され、東向きジェットが島に衝突した際には現れるがジェットが西向きの場合には見られないことなどが分かった。これらは中緯度亜熱帯・亜寒帯循環の(たとえば黒潮続流域などの)東向きジェットの蛇行の特徴と共通している。このような定在波が赤道上に現れることを初めて示した。これらの結果を論文にまとめ、国際誌であるJournal of Physical Oceanographyに投稿し、受理された。平成27年度以降は線形モデルやレイヤーモデルを使用して研究を進める計画であったが、循環の湧昇・沈降など等密度面を横切る流れの物理を陽に表現するためには海洋大循環モデルが必要であると考えるに至った。地球シミュレータで動作する大循環モデルのソースコードを他の研究プロジェクトの関連で入手することができたので、モデルの設定を変え、本研究課題に使用できるよう準備している。アルゴフロートのデータを入手し、簡単な品質管理を行い、最適内挿法でグリッドデータを作成した。得られたデータを用いて、南インド洋で沈み込んだ海水やインドネシア多島海から流入した水塊が赤道域に到達する経路に関する研究を開始した。アメリカ大気海洋庁/太平洋海洋環境研究所が赤道インド洋に展開している10基の音響式流速計のデータを入手し、赤道の海流系の研究に着手した。このデータはまだ一般には公開されていない。このデータを用いてインド洋の赤道潜流の研究を行い、流れの鉛直構造および東西方向の位相速度を調べ力学について議論した。赤道潜流それ自体は赤道に沿って東西に流れる流れであるが、中緯度での沈降流と結びついており、大規模な南北循環の一部であることが知られている。インド洋の南北循環の力学の解明にも貢献できると期待される。平成29年度に実施する予定であった、各国の研究機関から提供されている様々な大気海洋結合モデルの出力データの解析を前倒しで開始した。インド洋の南北循環の湧昇域であるソマリアやオマーン沖の海域に注目しモデルの出力を調べたところ、結合モデル内ではアラビア海の温度躍層が観測より100 m以上深すぎ、そのせいでソマリアやオマーン沖の湧昇水が観測値よりも高くなる傾向にあることが分かった。このアラビア海の局所的なモデルバイアスが原因で、結合モデル内のインド洋の南北熱輸送は現実よりも弱くなっている可能性がある。この亜表層の高温バイアスは、ペルシャ湾からの流出水、アラビア海の風、およびアラビア海北部の混合層の深さがモデル内で正しく再現されていないためであると考えられる。海洋大循環モデルを用いた数値実験を行うと共に、ハワイ大学を訪問し現地の研究者と結果について議論した。赤道域の流系と中緯度循環の関連を調べ、南北循環の全体像を把握するため、アルゴフロートのデータを用いた研究を開始した。次年度以降の成果が見込まれる。また、一般には公開されていない音響式流速計のデータを入手し、データ解析を開始した。赤道から離れた中緯度海域においては流れは地衡バランスしており、観測から得られる水温・塩分場から流れの構造が良い精度で推定できる。しかし赤道域に関してはそのような推定法を用いることはできず、流速計による直接観測が必要である。この意味で、赤道上の流れの現場観測値は貴重であり、次年度以降の成果につながると期待される。さらに、最終年度に行う予定であった大気海洋結合モデルの出力の解析を前倒しして開始した。インド洋の南北循環の主要な湧昇域であるアラビア海のソマリア・オマーン沖は、インドモンスーンの風とそれによる湧昇、湧昇によって形成される水温前線、ペルシャ湾や紅海からの流出水など複雑な現象が入り混じる海域であるが、本年度に行ったデータ解析によって結合モデルの能力とその限界について一定のアイデアを得た。アルゴフロートの観測値から得た水温・塩分場をグリッド化して地衡流計算を行うと共に、アルゴフロートのパーキング深度の絶対流速データを入手してグリッド化し、インド洋の平均循環場を推定した。海洋再解析データから計算された平均循環場と比較し、計算の妥当性を確認した。
KAKENHI-PROJECT-26800249
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26800249
インド洋の赤道を横切る南北循環の力学:数十年周期の気候変動の理解に向けて
米国大気海洋庁/太平洋海洋環境研究所の共同研究者を訪問し、結果の新規性に関して議論を行った。現在、パーキング深度流速のグリッド値の精度を向上させると共に、論文を作成中である。米国大気海洋庁/太平洋海洋環境研究所が赤道インド洋に展開している音響式流速系の観測データを入手し、赤道インド洋の平均流を調べるとともに、季節変動スケールでの赤道波の伝播について調べた。結果をとりまとめ国際誌(Journal of Physical Oceanography)に投稿し、受理・出版された。平成29年度に実施する予定であった、各国の研究機関が提供する大気海洋結合モデルの長期積分結果を比較を前倒しで行った。インド洋の南北循環の湧昇域であるアラビア海について調べたところ、結合モデルには温度躍層の深さの水温が観測と比べて暖かすぎることがわかった。このようなモデルバイアスが発生する原因について調べ、アラビア海北部の冬季混合層が深すぎるため、高温・高塩な北アラビア海高塩分水とペルシャ湾水がモデル内で過剰に生成され、このためモデル内に高温バイアスが生じていることを明らかにした。現在結果を論文にまとめている。赤道域の音響式流速系の観測値を解析し国際誌から論文を出版した。アルゴフロートの現場観測値を用いたインド洋の平均南北循環の推定は、データ処理を進めると共に、論文の執筆を開始した状況である。この研究の結果は南インド洋の沈降域、赤道近傍の流れ、北インド洋のモンスーンに関連した流れを含んでいる。インド洋に関するこのような流れの全体像の把握はアルゴフロートの拡充によって初めて可能になったことであり、本研究は貴重な情報を提供すると予想される。得られた結果から、太平洋や大西洋との循環の差異についても明らかになっており、興味深い情報が多い。これらの成果を次年度に公表する。大気海洋結合モデルについては、ハワイ大学の共同研究者とほぼ毎日メールやスカイプで連絡をとり、密接な議論を重ねた。結合モデルでは、現実にはあり得ないような物理過程によって変動やバイアスが発生することがあるが、本研究もそのような事例である。共同研究者との議論を通じてモデル内の物理過程を逐一綿密に議論し、その大方を把握することができた。この成果も論文を投稿する準備を進めている。モルジブ諸島周辺の流れの構造を調べた。赤道上の二点(東経80.5度と90度)に設置された音響式流速系の現場観測値と大循環モデルの出力を調べるとともに、単純化された1.5層モデルを用いて理想化された数値実験を行った。その結果、インド洋の表層赤道ジェットがモルジブ諸島に衝突した結果、ジェットの蛇行が生じ、音響式流速系の流れの観測値に現れていたことがわかった。赤道インド洋付近に展開されている10基の音響式流速計の観測値を用い、密度躍層より上の流れの鉛直構造および東西方向の位相速度を調べ力学について議論した。その結果、季節や深さによって異なる波動モードが卓越し、位相速度の向きが時空間的に複雑に変動することが分かった。アルゴフロートの観測値から得た水温・塩分プロファイル、および漂流深度(約1000 m)における絶対流速データを用い、統計的手法によってインド洋の循環の平均場のマップを作成した。
KAKENHI-PROJECT-26800249
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26800249
アメリカ・ドイツにおける企業・資本市場法制
アメリカ・ドイツにおける企業・資本市場法制を研究課題として掲げ、具体的には、アメリカ証券取引委員会(U.S.Securties and Exchange Commission)が2003年に制定した、議決権行使情報の開示を投資顧問業者に義務づける規則(Release No.33-8188,Release No. IA-2106)の研究を、日本学術振興会特別研究員としての平成15年度から平成16年度にかけての研究期間(平成15年10月1日から平成17年3月31日まで)の中で行いました。有効な経営監督システムのひとつとして、また機関投資家(投資顧問業者)の受託者責任のひとつとして、機関投資家による議決権行使を位置づける動きは多くの先進国において一般的となっていますが、その実効性をさらに一歩推し進めるものとしてアメリカ証券取引委員会は投資顧問業者に議決権行使情報の開示を義務づけています。具体的には、「FORM N-PX」というアメリカ証券取引委員会への提出書類により実際の議決権行使についてその内容が詳細に開示されます。日本においても、厚生年金基金連合会が「株主議決権行使に関する実務ガイドライン」や株主議決権行使基準」を策定するなど、機関投資家の議決権行使を重要視する傾向が年々強まっているものの、アメリカのように実際の議決権行使についてその内容の開示を義務づける制度はなく、機関投資家(投資顧問業者)による適切な議決権行使を制度として担保する仕組みを欠いていると言うことができます。研究成果としての論文では、日本にもアメリカ同様の制度を導入すべきとの論旨のもとに、アメリカ証券取引委員会に実際に提出され開示されているFORM N-PXを参考に現在執筆中です(「アメリカにおける投資顧問業者の議決権行使情報の開示について(仮題)」)。日本学術振興会特別研究員としての平成15年度から平成16年度にかけての研究期間の中で、アメリカ・ドイツにおける企業・資本市場法制の研究を通して、企業・資本市場法制における株主・投資家像の分析を行い、その具体的な研究成果を論文の形で公表することを計画しています。平成15年度においては、アメリカ証券取引委員会(U.S.Securities and Exchange Commission)が2003年に制定した、議決権行使情報の開示を投資顧問業者に義務づける新規則(Release No.33-8188,Release No.IA-2106)の研究を行いました。アメリカの証券規制当局がこの規則を制定した背景には、エンロンやワールドコムなどの大型企業不祥事を受けて、実効性のある経営監督システムを模索するなか、投資顧問業者(の議決権行使)にその一端を担うことを期待したものであると指摘することができます。アメリカのみならず日本を含む世界の先進国は、各国独自の経営監督システムに実効性を付与することに腐心していますが、現実には絶対的なシステムが存在するわけではなく、経営監督につながる種々の法制度を有機的に結合させることの巧拙が問われており、その中で経営監督システムの一端を担うことになる投資顧問業者の議決権行使について、その情報開示を義務づけるアメリカの新規則を手掛かりに、企業・資本市場法制における株主・投資家像の分析を行っています。平成16年度の最終的な研究成果の公表を念頭に、研究課題に継続的に取り組んでいますが、年度途中に特別研究員採用となった平成15年度は、論文作成には研究期間が十分ではなかったことから、研究成果としての論文の年度内の発表は見送りました。アメリカ・ドイツにおける企業・資本市場法制を研究課題として掲げ、具体的には、アメリカ証券取引委員会(U.S.Securties and Exchange Commission)が2003年に制定した、議決権行使情報の開示を投資顧問業者に義務づける規則(Release No.33-8188,Release No. IA-2106)の研究を、日本学術振興会特別研究員としての平成15年度から平成16年度にかけての研究期間(平成15年10月1日から平成17年3月31日まで)の中で行いました。有効な経営監督システムのひとつとして、また機関投資家(投資顧問業者)の受託者責任のひとつとして、機関投資家による議決権行使を位置づける動きは多くの先進国において一般的となっていますが、その実効性をさらに一歩推し進めるものとしてアメリカ証券取引委員会は投資顧問業者に議決権行使情報の開示を義務づけています。具体的には、「FORM N-PX」というアメリカ証券取引委員会への提出書類により実際の議決権行使についてその内容が詳細に開示されます。日本においても、厚生年金基金連合会が「株主議決権行使に関する実務ガイドライン」や株主議決権行使基準」を策定するなど、機関投資家の議決権行使を重要視する傾向が年々強まっているものの、アメリカのように実際の議決権行使についてその内容の開示を義務づける制度はなく、機関投資家(投資顧問業者)による適切な議決権行使を制度として担保する仕組みを欠いていると言うことができます。研究成果としての論文では、日本にもアメリカ同様の制度を導入すべきとの論旨のもとに、アメリカ証券取引委員会に実際に提出され開示されているFORM N-PXを参考に現在執筆中です(「アメリカにおける投資顧問業者の議決権行使情報の開示について(仮題)」)。
KAKENHI-PROJECT-03J53221
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03J53221
ゲノム構築に基づいた場の情報シグナルによる細胞系譜制御プログラムの解析
個体発生に伴う生体内各器官・組織の形成においては様々な細胞系譜の厳密な制御プログラムの基盤となるゲノム構築システムの存在が必須である。各々の器官・組織を構成する種々の細胞系譜のもととなる器官・組織特異的幹細胞の分化制御はそれら幹細胞が存在する場に働く増殖分化因子や接着因子などからの細胞外来性の情報シグナルによる遺伝子の発現制御が重要な役割を担っていると考える。また、場の情報シグナルという細胞外来性のシグナルとは別に、ゲノム情報の発現制御にはDNAメチル化やヒストンアセチル化などのエピジェネティックな修飾に代表される細胞内在性のプログラムも重要な役割を果たしている。本研究はこのような背景をもって、細胞系譜制御機構をゲノム情報の制御という観点から明らかにすることを目的として実施された。成果1:中枢神経系幹細胞のin vitroでの多分化能維持に必要な因子basic FGFを添加した神経幹細胞培養画分とbasic FGFを除いた培養画分からmRNAを抽出してマイクロアレイにて解析し、両者に発現量の変化のあるクローンを幾つか見いだしたので、時空間的発現解析と機能解析を実施中である。成果2:ニューロンやアストロサイトのもとになる前駆細胞は共通でありながら胎生中期の脳ではニューロン分化は盛んに生じるがアストロサイト分化は皆無で、一方胎生終期になるとニューロン分化は殆ど見られず代わってアストロサイト分化が優位となる点に着目した研究を実施した。アストロサイト特異的マーカー分子GFAPの遺伝子プロモーターにはGFAP遺伝子発現にクリティカルな転写因子STAT3の認識配列が存在する。そのSTAT3認識配列に存在するシトシンが胎生中期では高度にメチル化され、胎生後期にはそのメチル化が外れることと、そのSTAT3認識配列のメチル化がSTAT3のDNA結合と転写活性化とを阻害することを見いだした。これらの結果はアストロサイトの細胞系譜の制御にはDNAメチル化というエピジェネティックなシグナル制御機構が関与することがわかった。個体発生に伴う生体内各器官・組織の形成においては様々な細胞系譜の厳密な制御プログラムの基盤となるゲノム構築システムの存在が必須である。各々の器官・組織を構成する種々の細胞系譜のもととなる器官・組織特異的幹細胞の分化制御はそれら幹細胞が存在する場に働く増殖分化因子や接着因子などからの細胞外来性の情報シグナルによる遺伝子の発現制御が重要な役割を担っていると考える。また、場の情報シグナルという細胞外来性のシグナルとは別に、ゲノム情報の発現制御にはDNAメチル化やヒストンアセチル化などのエピジェネティックな修飾に代表される細胞内在性のプログラムも重要な役割を果たしている。本研究はこのような背景をもって、細胞系譜制御機構をゲノム情報の制御という観点から明らかにすることを目的として実施された。成果1:中枢神経系幹細胞のin vitroでの多分化能維持に必要な因子basic FGFを添加した神経幹細胞培養画分とbasic FGFを除いた培養画分からmRNAを抽出してマイクロアレイにて解析し、両者に発現量の変化のあるクローンを幾つか見いだしたので、時空間的発現解析と機能解析を実施中である。成果2:ニューロンやアストロサイトのもとになる前駆細胞は共通でありながら胎生中期の脳ではニューロン分化は盛んに生じるがアストロサイト分化は皆無で、一方胎生終期になるとニューロン分化は殆ど見られず代わってアストロサイト分化が優位となる点に着目した研究を実施した。アストロサイト特異的マーカー分子GFAPの遺伝子プロモーターにはGFAP遺伝子発現にクリティカルな転写因子STAT3の認識配列が存在する。そのSTAT3認識配列に存在するシトシンが胎生中期では高度にメチル化され、胎生後期にはそのメチル化が外れることと、そのSTAT3認識配列のメチル化がSTAT3のDNA結合と転写活性化とを阻害することを見いだした。これらの結果はアストロサイトの細胞系譜の制御にはDNAメチル化というエピジェネティックなシグナル制御機構が関与することがわかった。
KAKENHI-PROJECT-13206063
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13206063
日本の聴覚障害教育の制度的・方法的整備とドイツ情報の影響に関する比較教育学的研究
明治期にドイツ留学を経験した耳鼻咽喉科医師である岡田和一郎は、帰国後、「聾唖」児の残存聴力の評価と適切な活用による教育の必要性とともに、聾唖教育の義務化、無教育聾唖者のための保護施設の設置等を主張した。久保猪之吉は、大学耳鼻咽喉科教室の研究・臨床環境の整備を通して地方および全国の両レベルで聾唖教育に関わった。しかし、聾唖学校や小学校に難聴児のために学級が設置されるのは、岡田の最初の主張から四半世紀後の1926年のことであった。本研究は、日本の聴覚障害教育が制度的・方法的に整備される過程で、その手本となった先進国の一つであるドイツからの情報がどのように摂取され、日本の聴覚障害教育の制度的・方法的整備にいかなる影響を与えたのかを究明することを目的とする。具体的には、次の手順をとる。(1)明治期から昭和戦前期を対象として、ドイツ渡航を経験した聴覚障害教育の関係者が残した足跡を整理し、ドイツから紹介された情報が日本の聴覚障害教育の制度的・方法的整備にどのように関係していったのかを明らかにする。(2)戦後期については、アメリカ教育使節団からのアメリカ情報の流入により、ドイツ的要素がどのように変容したのかを1960年代までを区切りとして明らかにしていく。明治期にドイツ留学を経験した耳鼻咽喉科医師である岡田和一郎は、帰国後、「聾唖」児の残存聴力の評価と適切な活用による教育の必要性とともに、聾唖教育の義務化、無教育聾唖者のための保護施設の設置等を主張した。久保猪之吉は、大学耳鼻咽喉科教室の研究・臨床環境の整備を通して地方および全国の両レベルで聾唖教育に関わった。しかし、聾唖学校や小学校に難聴児のために学級が設置されるのは、岡田の最初の主張から四半世紀後の1926年のことであった。本研究の目的は、日本の聴覚障害教育が制度的・方法的に整備される過程で、ドイツからの情報がどのように摂取され、いかなるに影響を与えたのかを究明することである。平成19年度は、以下の二点に集約される文献の収集をおこなった。第一は、明治期以降の教育、科学、文化、政治等の日独交流史に関する文献であり、第二は、明治期以降にドイツを主要な留学先として飛躍的に発展し、日本の聴覚障害教育の方法的整備にも影響があったと考えられる耳鼻咽喉科学分野の文献である。後者の文献については、本邦耳鼻咽喉科学の草創期に開設された九州帝国大学医学部耳鼻咽喉科学教室(現・九州大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科学教室)にて収集されてきた史資料の調査を行った。同教室は、1906 (明治39)年4月に開設され、翌年2月、ドイツ留学を終えた久保猪之吉(1874-1939)を教授に迎え、1927 (昭和2)年5月には、本邦最古の耳鼻咽喉科学博物館である久保記念館を設立、翌1928 (昭和3)年には専門雑誌「耳鼻咽喉科」を創刊させた。九州大学附属中央図書館および医学分館、久保記念館、そして耳鼻咽喉科教室図書室等でおこなった史資料調査の結果、部分的ではあるが以下の仮説が導き出された。1.九州帝国大学の耳鼻咽喉科学教室は、明治末期から昭和戦前期の耳鼻咽喉科学の臨床・研究、及び情報発信の一大拠点であった。2.明治30年代後半から耳鼻咽喉科医師の聴覚障害教育への関心は存在したが、昭和初期以降になると、「声音及言語障害」の研究分野としての確立や、聴力検査機器の導入により、さらに顕著となった。3.明治期から昭和初期の耳鼻咽喉科医師と聴覚障害教育との関わりは、聴器疾患や言語治療の臨床面だけでなく、聾唖教育の普及や聾唖者の社会的地位の向上といった社会的側面にも及ぶものであった。平成20年度の研究実績は、以下の二点に集約される。第一は、明治末期以降の聾唖教育の方法的整備における耳鼻咽喉科学の役割の分析である。とくに今年度は、九州帝国大学医学部耳鼻咽喉科学教室を検討対象とした。同教室は、1906(明治39)年4月に開設され、翌年2月にドイツ留学から帰国した久保猪之吉(1874-1939)を教授に迎えて以降、内外の耳鼻咽喉科学の拠点の一つとなった。同教室が、明治末期から昭和戦前期における聾唖教育の方法的整備に果たした役割として、(1)「無響室」「声音言語障碍治療部」等の設置による聾唖や残聴利用についての基礎的・臨床的研究の促進、(2)臨床・研究上の知見に基づく、近隣の福岡盲唖学校の口話教育・残聴利用の教育との連携、(3)聾唖教育関係者への日本初の検査設備・機器の紹介という三点をあげることができる。第二は、ドイツ共和国バイエルン州ミュンヘン市への訪問調査である。
KAKENHI-PROJECT-19730556
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19730556
日本の聴覚障害教育の制度的・方法的整備とドイツ情報の影響に関する比較教育学的研究
訪問目的は、東京帝国大学医学部耳鼻咽喉科学講座の主任候補として、1896(明治29)年3月から1899(明治32)年12月にかけて、ドイツ、オーストリアに留学した岡田和一郎(1864-1938)の足跡を辿ること、彼の留学先の一つであったルードヴィッヒ・マクシミリアン大学(ミュンヘン大学)での、ドイツの聴覚障害教育に関する史資料の収集、同大学の聴覚障害教育の研究者から研究助言指導を得ることであった。ミュンヘン市での調査では、大学附属図書館、国立ミュンヘン図書館等において、ドイツ聴覚障害教育史に関する史資料を収集するとともに、上述の岡田和一郎に関する資料の所蔵を確認した。聴覚障害教育の研究者からは、史資料収集の場所や時期等について情報を得た。また、現代ドイツの聴覚障害教育をめぐる諸問題(とくに人工内耳に関わる)について情報を得るため、ミュンヘン大学医学部耳鼻咽喉科の医師と言語病理学者、また人工内耳装用児を育てる家族と、それぞれ面談をおこなった。1.ドイツロ話法の思想的基盤の歴史的検討ドイツロ話法の父であるサミュエル・ハイニッケの創設したライプツィヒ聾学校の聴覚言語障害文庫にて、貴重資料の閲覧・複写、特に20世紀初頭のドイツの難聴児教育に関する資料を収集するとともに、今後、ドイツの聴覚障害教育の歴史的研究を深めていく上で有用となる史資料の所蔵状況の把握、文庫責任者との面談による情報収集をおこなった。2.日本の聴覚障害教育における耳鼻咽喉科学の役割の総合的検討昨年度に引き続き、九州帝国大学医学部耳鼻咽喉科学教室の役割に関する分析をおこない、今後解明すべき4つの課題を示した。第一に、明治末期から昭和戦前期において、連続音叉やオージオメータを用いた検査がどの程度の判定力をもったのかという点、第二に、聾〓児の聴力評価が聾〓学校の教育方法上の開発や、別種の学校・学級の設置といった制度上の整備とどう関係したのかという点、第三に、教育方法の実質的な変化が生じる時期とその結果、そして第四に、他大学の耳鼻咽喉科教室による臨床・研究活動や聾〓教育への関与との異同である。3.現代ドイツの聴覚障害教育の研究動向および現状の調査ミュンヘン大学心理教育学部附属図書館での聴覚障害教育・福祉・医療関係の諸資料の調査から、ドイツでは人工内耳に対する関心が高まっていると同時に、聴覚障害のある子どものアイデンティティ形成についても問題関心が持たれていること、成人聴覚障害者が文化的活動や聴覚障害者の生活史・教育史への強い関心をもっていることが了解された。ライプツィヒでは、義務教育段階後の聴覚障害青年の教育・訓練の場の一つである、ライプツィヒ聴覚言語障害者のための職業訓練センターの見学、市内の初等学校で聴覚障害児が1名在籍するクラスの授業見学をおこない、聴覚障害のある青年の社会参加に向けた取り組みの特徴、通常学校で学ぶ聴覚障害児への教育的支援の現状を把握した。1.日本の耳鼻咽喉科医師の聴覚障害教育への関与の分析明治末期にドイツ留学を経験し、その後、日本の聴覚障害教育に関与した岡田和一郎(東京帝国大学医学部耳鼻咽喉科初代教授)および久保猪之吉(九州帝国大学医学部耳鼻咽喉科学教室初代教授)の役割を改めて分析した。岡田が「残存聴力」の程度を評価し、その活用を主張する上で、ウィーンおよびミュンヘンでの学びは重要な意味をもった。久保は岡田の教え子として、留学前から「残存聴力」を活用する教育や新しい補聴器の紹介をおこなった。帰国後の久保は、耳鼻咽喉科学領域の学術雑誌や書籍の編纂、内外諸研究の摂取に尽力し、学術・研究面からも聴覚障害教育に関与した。両者は、聴覚障害者の福祉的課題への関心もあった。2.国際聾教育学会での研究成果の発表上述の内容について、第21回国際聾教育会議(バンクーバー)の「教育におけるテクノロジー/手話とろう文化」のポスター・セッションにて発表をおこなった。北米のろう者との質疑では、耳鼻咽喉科医師の関与がろう当事者の生活にどのようなインパクトを与えたのかという視点からの分析が必要との示唆を得た。一方で、聴覚活用は今日までの日本の聴覚障害教育の特徴でもあり、その特長と課題の把握には、耳鼻咽喉科学の関与という視点からさらに研究を進める必要があると思われた。3.日独の聴覚障害教育の方法論の歩みの比較検討
KAKENHI-PROJECT-19730556
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19730556
幼児の目撃証言時の記憶に関する実験的検討
(1)幼児の顔の識別に及ぼす髪型と眼鏡の影響(日本教育心理学会第43回総会(2001)発表論文集p.11)本研究では,髪型の変化や眼鏡の有無が幼児の顔の識別能力に及ぼす影響について検討するために,幼児と成人を被験者とし,ターゲット刺激と同じ人物の写真を3枚の写真(ターゲットの髪型や眼鏡を変化させた正答刺激1枚と2枚のディストラクタ)から選択させる課題を行った。その結果,成人であればすべての課題において正答率がほぼ100%であったのに対して,幼児は,ターゲットと正答刺激の髪型が異なる課題の正答率が低く,特に,ターゲットと正答刺激の髪型と眼鏡の有無の両方が異なる課題ではほとんど正答できないことなどが明らかになった。(2)幼児と成人による顔の性別判断に及ぼす髪型と顔つきの影響(日本心理学会第65回大会(2001)発表論文集p.282)本研究では,性別判断の正確さに髪型と顔つきがどの程度影響するのかを検討するために,幼児と成人を被験者とし,髪型(髪なし,ショートヘア,ロングヘア)と顔つき(男っぽい男,女っぽい男,男っぽい女,女っぽい女)を組み合わせて作成した顔刺激について性別判断を求めた。その結果は以下の通りである。(1)髪なしとショートヘアの場合:成人は男っぽい女に対して,あとの3つの顔つきより正確な判断ができず,また,その3つの顔つきに対して判断の正確さに差はなかった。しかし幼児は,男よりも女に対してのほうが正確な判断ができず,さらに,男の中では女っぽい男に対して,女の中では男っぽい女に対して,正確な判断ができなかった。(2)ロングヘアの場合:成人は女に対する判断よりも男っぽい男に対する判断が正確になった。しかし,幼児は女よりも男に対する正確な判断ができず,その中でも特に,女っぽい男に対する判断は不正確であった。(1)ある出来事の行為者の顔と周辺人物の記憶に関する発達的検討幼児がある出来事とその行為者の顔や服装をどの程度結びつけて記憶できるかを検討した従来の実験的研究(杉村:1998,1999)では,行為者の顔の記憶は幼児より成人の方が優れていること,服装の記憶に関しては成人であっても難しいことなどが明らかにされている。本研究では同様のパラダイムを用いて,主要な行為を行っていない周辺人物の行動や顔についてどの程度記憶されているかを検討した。その結果,(1)行為と行為者の顔とを結びつけて記憶することは幼児よりも成人のほうが優れていること,(2)周辺人物の顔の記憶は成人であっても難しいこと,(3)幼児は主要な行為を行っていない周辺人物についてはその存在すら認識しておらず,周辺人物の顔や行動についてはほとんど記憶していないことが明らかになった。(2)成人が幼少期の社会的出来事を回想する際の誤記憶の検討生前,就学前,小学校期の社会的出来事(芸能・事件)に関する記憶について,生起時の誤った既知感(生前に起こった出来事に対して,起こった当時のことを憶えていると判断するなど)や,誤った生起時期の認識(生前に起こった出来事を,小学校の時に起こったと判断するなど)がどの程度おきるのかについて検討した。まず,生起時の誤った既知感については,芸能よりも事件の方が誤った既知感をもつ者が多い傾向にあった。次に,生起時期の判断については,小学校期の出来事が一番正答率が高く,生前と就学前の出来事を比較すると,就学前の出来事に対して誤った判断をする割合が高い傾向があった。(1)幼児の顔の識別に及ぼす髪型と眼鏡の影響(日本教育心理学会第43回総会(2001)発表論文集p.11)本研究では,髪型の変化や眼鏡の有無が幼児の顔の識別能力に及ぼす影響について検討するために,幼児と成人を被験者とし,ターゲット刺激と同じ人物の写真を3枚の写真(ターゲットの髪型や眼鏡を変化させた正答刺激1枚と2枚のディストラクタ)から選択させる課題を行った。その結果,成人であればすべての課題において正答率がほぼ100%であったのに対して,幼児は,ターゲットと正答刺激の髪型が異なる課題の正答率が低く,特に,ターゲットと正答刺激の髪型と眼鏡の有無の両方が異なる課題ではほとんど正答できないことなどが明らかになった。(2)幼児と成人による顔の性別判断に及ぼす髪型と顔つきの影響(日本心理学会第65回大会(2001)発表論文集p.282)本研究では,性別判断の正確さに髪型と顔つきがどの程度影響するのかを検討するために,幼児と成人を被験者とし,髪型(髪なし,ショートヘア,ロングヘア)と顔つき(男っぽい男,女っぽい男,男っぽい女,女っぽい女)を組み合わせて作成した顔刺激について性別判断を求めた。その結果は以下の通りである。(1)髪なしとショートヘアの場合:成人は男っぽい女に対して,あとの3つの顔つきより正確な判断ができず,また,その3つの顔つきに対して判断の正確さに差はなかった。しかし幼児は,男よりも女に対してのほうが正確な判断ができず,さらに,男の中では女っぽい男に対して,女の中では男っぽい女に対して,正確な判断ができなかった。(2)ロングヘアの場合:成人は女に対する判断よりも男っぽい男に対する判断が正確になった。しかし,幼児は女よりも男に対する正確な判断ができず,その中でも特に,女っぽい男に対する判断は不正確であった。
KAKENHI-PROJECT-12710064
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12710064
有機薄膜/半導体接合を用いる高感度分子センサーに関する研究
本研究は有機物の薄膜が気体分子を選択的に吸着したり、溶液中のイオンを特異吸着して表面電位が変化する現象を利用して、無機半導体に有機物薄膜を接合した系を用い、有機薄膜上の化学種の吸脱着による表面電位の変化を、無機半導体の表面電気伝導度および反応電流の変化として検出するセンサーを作製することを目的としている。作用電極としてはn型Sn【O_2】-Nafion薄膜系を用いた。検出の選択性を賦与するために、Nafion中のプロトンを他の陽イオン、たとえば【Fe^(3+)】イオンに置換した。測定系は対極が白金、参照極がAg/AgClの三極セルを用いて行なった。プロトンをキャリヤーとするNafion膜を用いた場合、この作用電極のフラットバンド電位は溶液のプロトン濃度と共に負にシフトした。その傾きは-60mV/pHであった。Nafion中の【H^+】を【Fe^(3+)】に置換した作用電極の場合は、プロトン濃度によってフラットバンド電位は影響を受けなかったが、溶液中の【Fe^(3+)】の濃度を変化するとフラットバンド電位は20mV/p【Fe^(3+)】の割合でアノード方向にシフトした。この系のフラットバンド電位がSn【O_2】の仕事関数に等しくなるときの【Fe^(3+)】濃度は、Cpzc=【10^(-4.4)】Mであった。以上の結果から、この作用電極におけるn型Sn【O_2】の表面電位はVs=20(mV)×log(C【Fe^(3+)】/Cpzc)+【V_x】-【V_w】と表わされることがわかった。ここで、【V_x】はSn【O_2】の仕事関数、【V_w】は作用電極の電位である。このことからまた、アノードバイアス下での表面電気伝導度はC【Fe^(3+)】/Cpzcの対数に比例することがわかる。作用電極の電位を負方向にシフトさせると反応電流が流れはじめる。表面電流をIs、反応電流を【I_R】とすると、1+(【I_R】/Is)はC【Fe^(3+)】と線型関係にあることがわかった。このように、両電流成分Isと【I_R】を同時に測定することにより、溶液中のイオン種の濃度を高精度かつ選択性良く求められることがわかった。本研究は有機物の薄膜が気体分子を選択的に吸着したり、溶液中のイオンを特異吸着して表面電位が変化する現象を利用して、無機半導体に有機物薄膜を接合した系を用い、有機薄膜上の化学種の吸脱着による表面電位の変化を、無機半導体の表面電気伝導度および反応電流の変化として検出するセンサーを作製することを目的としている。作用電極としてはn型Sn【O_2】-Nafion薄膜系を用いた。検出の選択性を賦与するために、Nafion中のプロトンを他の陽イオン、たとえば【Fe^(3+)】イオンに置換した。測定系は対極が白金、参照極がAg/AgClの三極セルを用いて行なった。プロトンをキャリヤーとするNafion膜を用いた場合、この作用電極のフラットバンド電位は溶液のプロトン濃度と共に負にシフトした。その傾きは-60mV/pHであった。Nafion中の【H^+】を【Fe^(3+)】に置換した作用電極の場合は、プロトン濃度によってフラットバンド電位は影響を受けなかったが、溶液中の【Fe^(3+)】の濃度を変化するとフラットバンド電位は20mV/p【Fe^(3+)】の割合でアノード方向にシフトした。この系のフラットバンド電位がSn【O_2】の仕事関数に等しくなるときの【Fe^(3+)】濃度は、Cpzc=【10^(-4.4)】Mであった。以上の結果から、この作用電極におけるn型Sn【O_2】の表面電位はVs=20(mV)×log(C【Fe^(3+)】/Cpzc)+【V_x】-【V_w】と表わされることがわかった。ここで、【V_x】はSn【O_2】の仕事関数、【V_w】は作用電極の電位である。このことからまた、アノードバイアス下での表面電気伝導度はC【Fe^(3+)】/Cpzcの対数に比例することがわかる。作用電極の電位を負方向にシフトさせると反応電流が流れはじめる。表面電流をIs、反応電流を【I_R】とすると、1+(【I_R】/Is)はC【Fe^(3+)】と線型関係にあることがわかった。このように、両電流成分Isと【I_R】を同時に測定することにより、溶液中のイオン種の濃度を高精度かつ選択性良く求められることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-60211008
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60211008
日本中世古文書フルテキストデータベースの構築方法に関する研究
本研究の目的は、第一に歴史文字資料の全文をコンピュータに入力する際の前処理の方法、第二に管理情報の付与の形態、第三に文字・キーワード・検索方式の研究の三点にあった。1については、HTML形式で入力して前処理を基本的に省略する仕様を確定し、学界・社会からの要請のスピードにあわせて、フルテキストを形成し、同時に、将来、電算印刷情報をデータベース化する際の受け皿の基本的考え方につなげることができた。2の管理情報付与の形式については、刊本資料集にはかならず存在する「目次」を利用するという単純な結論となった。これは、近年のア-カイヴスの動向の中で大きな問題となっているが、大量に存在している目次を史料構成要素の最基礎段階(ITEM段階)を機械的に総覧する道具として使用することが実際的なことを確定できた。3については、中世史料処理のための必須漢字表を集成したこと(これは今後のコンピュータの文字文化の議論の有力な手段となる)、歴史語彙としては最高数(約8万件)のキーワード辞書を形成したこと(これは歴史語彙コーパス形成のための今後の語彙学との学際的議論の前提となる)、KWIC検索方式(コンコーダンス方式)を確定したことなど、多様な成果があった。さらに、データ形成と公開については、本研究によって、『平安遺文』と『大日本古記録』(平安時代分)を中軸とすると「平安時代史料フルテキストデータベース」を構築し、史料編纂所ホームページから公開したこと、本件級の中心をなした『平安遺文』(竹内理三編纂)については、CD-ROMの発行を実現したこと(1998年4月予定)、本研究の発展として『大日本古文書』のフルテキストデータベース構築(1997年度より研究成果公開促進費、データベース)が開始されたことをあげておきたい。以上、コンピュータデータベース構築における公開原則の先進例を提供することができたと考えている。本研究の目的は、第一に歴史文字資料の全文をコンピュータに入力する際の前処理の方法、第二に管理情報の付与の形態、第三に文字・キーワード・検索方式の研究の三点にあった。1については、HTML形式で入力して前処理を基本的に省略する仕様を確定し、学界・社会からの要請のスピードにあわせて、フルテキストを形成し、同時に、将来、電算印刷情報をデータベース化する際の受け皿の基本的考え方につなげることができた。2の管理情報付与の形式については、刊本資料集にはかならず存在する「目次」を利用するという単純な結論となった。これは、近年のア-カイヴスの動向の中で大きな問題となっているが、大量に存在している目次を史料構成要素の最基礎段階(ITEM段階)を機械的に総覧する道具として使用することが実際的なことを確定できた。3については、中世史料処理のための必須漢字表を集成したこと(これは今後のコンピュータの文字文化の議論の有力な手段となる)、歴史語彙としては最高数(約8万件)のキーワード辞書を形成したこと(これは歴史語彙コーパス形成のための今後の語彙学との学際的議論の前提となる)、KWIC検索方式(コンコーダンス方式)を確定したことなど、多様な成果があった。さらに、データ形成と公開については、本研究によって、『平安遺文』と『大日本古記録』(平安時代分)を中軸とすると「平安時代史料フルテキストデータベース」を構築し、史料編纂所ホームページから公開したこと、本件級の中心をなした『平安遺文』(竹内理三編纂)については、CD-ROMの発行を実現したこと(1998年4月予定)、本研究の発展として『大日本古文書』のフルテキストデータベース構築(1997年度より研究成果公開促進費、データベース)が開始されたことをあげておきたい。以上、コンピュータデータベース構築における公開原則の先進例を提供することができたと考えている。1、古文書全文の電算化前処理の研究。すでに活字化されている古文書史料の前処理方針の要点として、(1)割書、傍書、訂正、注の処理、(2)活字版面の行組を生かし、前処理を簡便化し、フルテキストの行統御情報にも利用(なお、検索語彙が行を越える場合は改行符を無視してキ-付与する方式を考案)、(3)管理情報は古文書聖教DBおよび別途開発の汎用架蔵コードの体系を装備{消耗品費、旅費などを使用}。2、多様な利用の可能となるシステムの構築。(1)検索システム。メインコンピュータ、ACOS上で作動する単漢字検索とEWS上にカスタマイズしたキーワード検索ソフト(future/happiness)の二重性。(2)検索結果の表示方式。ACOS上でのコンコーダンス表示、全文詳細表示、キーワード検索ソフトの表示の多重性。(3)目録DBとしての古文書聖教DBシステムとのリンク。(4)キーワード検索ソフト(future/happiness)の導入によるネットワーク公開の準備など。{その他、システム開発費使用}3、データ入力。当初、入力対象とした東京大学史料編纂所編纂の『大日本古文書』東大寺文書でなく、竹内理三氏編纂の『平安遺文』を入力対象とし、その半分(6冊、文書約3000点)を入力した{その他、外注経費使用}。4.語彙・漢字字種の研究、日本史史料の電算化のためにどのようなJIS第二水準外漢字が必要かについての研究を開始し一応の成果をえた。歴史辞書としては最高数(約8万件)のキーワード辞書をEWS上に形成した。(1)システムの開発:メインフレームのACOSとfuture/happinessの二重システムをより有効に利用し、システムの連関性を強化するためにデータ長・DOS出力などに関するシステム開発の追加を行った。
KAKENHI-PROJECT-06401021
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06401021
日本中世古文書フルテキストデータベースの構築方法に関する研究
これは史料編纂所における歴史資料の目録データベース、画像データベースとフルテキストデータベースの複合システムの一部である。(2)データ入力と公開・竹内理三氏編纂の『平安遺文』を入力対象とし、その全体(11冊、文書約5300点)を入力し、基本部分の校正を終了した。特定の時代の文書をすべてフルテキストデータベース化し、(著作権者・版権者との協議の上)CD-ROM化による公開を見通しえたという意味で、コンピュータを利用した日本史研究の発展の上で画期的な成果である。また従来より別途蓄積してきた古記録フルテキストの内、小右記、御堂関白記、貞信公記、九暦などの平安時代の重要古記録をこの新システムに移行させ、公開・利用可能にした。(3)語彙・漢字字種の研究:平安時代古文書のほとんどを収載している『平安遺文』の全文を実際に入力することにより、日本史史料の電算化のためにどのようなJIS第二水準外漢字が必要かについて研究し、平安時代について一覧表(稿)を作成した。また歴史辞書としては最高数(約8万件)のキーワード辞書をEWS上に形成した。以上、94年度(平成6年度)における全体システムの開発を前提として、本年度も、所期の成果を挙げることができた。特に、全文歴史情報の研究にとって最大の隘路であった公開に目処をつけたこと、活字本のコンピュータ化は翻刻の誤りや誤植訂正する上で有効なことを確認した点などは評価すべきと考える。本年度は、古記録フルテキストとのシステム関係の処理、ハイパーテキスト方式による東大寺文書・真珠庵文書などの全文フルテキストの蓄積などで予算を使用し、所期の成果を収めた。しかし、本年度の最大の成果は、これまで開発してきたシステムを前提として、史料編纂所編纂の『大日本古記録』(岩波書店発行)の内、『貞信公記』『九暦』『小右記』『御堂関白記』『後二条師通記』の5点、『平安遺文』(竹内理三氏編纂、東京堂出版発行)のフルテキストデータをインターネット上で公開したことである(97年2月から3月)。これによって、(古文書のみでなく古記録をふくめて)平安時代の歴史史料の基本部分を全世界から簡便に検索することが可能となった。この過程で特に問題であったのは、版権をゆうする出版社との折衝であったが、インターネットブラウザ上で、任意のキーワードを中心に前後各約10字のみを公開し、全文情報については別途の協議事項とするという形で合意をうることができた。本グループが開発したKWIC(キーワードインコンテキスト)方式、あるいはいわゆるコンコーダンス方式の検索は、あくまでもフルテキストデータの学術的大量処理と公開のために構想されたものであるが、それが現状のコンピュータ文化の中で、版権者の権利に対する技術的配慮の側面でも有効性をもつことになったのは、その必要性や当否は別として意外な結果であった。なお、『平板遺文』のテキストの最終校正などの問題は、科研グループの手を離し、版権者などの努力で、97年度中にも、フルテキストを収めたCD-ROMが発売される予定である。
KAKENHI-PROJECT-06401021
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06401021
血管新生阻害因子エンドスタチンの腫瘍血管における動態と作用機構の解明
エンドスタチンは内因性の血管新生阻害剤であり、血管などの基底膜を構築するXVIII型コラーゲンの分解産物であり抗がん剤としての臨床試験が進行中である。しかしエンドスタチンの作用機構に関しては依然として不明であるのが現状である。本研究の究極的な目標はがんの増殖抑制、浸潤や転移阻害における分子メカニズムを解明することである。私達はエンドスタチンが種々のMMP(Matrix Metalloproteinase)の活性を阻害することを見出し、特にゼラチンを分解するMMP-2、9に対する阻害活性が高いこと、またMMP-12、13、14に対しても相対的に高い阻害活性を示すことを明らかにした。これらのMMPはいずれもがんの浸潤、転移に深く関与することが知られており、エンドスタチンのMMP阻害活性は抗がん作用・抗炎症作用の一翼を担っていると考えられる。MMP-14は細胞膜に存在しインテグリンαvβ3と複合体を形成することからエンドスタチンの受容体である可能性が示唆されたが、エンドスタチンを反応させた血管内皮細胞において細胞膜上にエンドスタチンとMMP-14、インテグリンαvβ3とが共存するか否かを共焦点レーザー顕微鏡で3次元的に解析した結果、共局在像が観察されないことから受容体である可能性は低いと考えられた。血管内皮細胞のエンドスタチンに対する応答性の差異を明らかにするために、応答性の異なる2種の細胞の遺伝子発現をジーンチップマイクロアレイによって比較した。この結果応答性の細胞では非応答性細胞に比較して発現が亢進している遺伝子が1.86%、発現が減少している遺伝子が2.9%、変化の認められない遺伝子が95%であった。エンドスタチンは内因性の血管新生阻害剤であり、血管などの基底膜を構築するXVIII型コラーゲンの分解産物であり抗がん剤としての臨床試験が進行中である。しかしエンドスタチンの作用機構に関しては依然として不明であるのが現状である。本研究の究極的な目標はがんの増殖抑制、浸潤や転移阻害における分子メカニズムを解明することである。私達はエンドスタチンが種々のMMP(Matrix Metalloproteinase)の活性を阻害することを見出し、特にゼラチンを分解するMMP-2、9に対する阻害活性が高いこと、またMMP-12、13、14に対しても相対的に高い阻害活性を示すことを明らかにした。これらのMMPはいずれもがんの浸潤、転移に深く関与することが知られており、エンドスタチンのMMP阻害活性は抗がん作用・抗炎症作用の一翼を担っていると考えられる。MMP-14は細胞膜に存在しインテグリンαvβ3と複合体を形成することからエンドスタチンの受容体である可能性が示唆されたが、エンドスタチンを反応させた血管内皮細胞において細胞膜上にエンドスタチンとMMP-14、インテグリンαvβ3とが共存するか否かを共焦点レーザー顕微鏡で3次元的に解析した結果、共局在像が観察されないことから受容体である可能性は低いと考えられた。血管内皮細胞のエンドスタチンに対する応答性の差異を明らかにするために、応答性の異なる2種の細胞の遺伝子発現をジーンチップマイクロアレイによって比較した。この結果応答性の細胞では非応答性細胞に比較して発現が亢進している遺伝子が1.86%、発現が減少している遺伝子が2.9%、変化の認められない遺伝子が95%であった。エンドスタチンは内因性の血管新生阻害剤であり、血管などの基底膜を構成するXVIII型コラーゲンの分解産物で抗がん剤としての臨床試験が進行中である。しかしエンドスタチンの作用機作は依然として明らかではなく、本研究の究極的な目標はがんの増殖抑制、浸潤や転移阻害作用における分子メカニズムを解明することである。私達はエンドスタチンが数種のMMP(Matrix Metalloproteinase)の活性を阻害することを見出し、特にゼラチンを分解するMMP-2,9,MT1-MMPに対して高い阻害活性を示すことを明らかにした。MMPはがん細胞に強く発現され、がんの浸潤、転移に深く関与していることから、この阻害活性がエンドスタチンの抗がん作用、抗炎症作用の一翼を担っていると考えられる。さらにMT1-MMPは血管内皮細胞の細胞膜上に発現していることからエンドスタチン結合蛋白と推定され、コラーゲン基質上ではエンドスタチンと結合能を有するインテグリンαvβ3と会合して存在することから、両者の複合体がエンドスタチンの高親和性受容体である可能性が高いと考えられた。この仮説を証明するために血管内皮細胞にFLAG-エンドスタチンを作用させ、抗MT1-MMP抗体、抗αvβ3抗体、抗FLAG抗体を用いて染色し各々の局在を調べたところ、これらは細胞膜上、特に内皮細胞間や偽足状の突起の先端部位に強く発現しており、かつ共存している像が観察された。さらにMT1-MMPがエンドスタチンと結合するのみならず、受容体として機能している可能性を検討するために、内皮細胞にMT1-MMPを強制的に高発現させた場合並びにsiRNAを用いて発現を阻害した場合におけるエンドスタチンに対する反応性の相違を内皮細胞遊送阻害実験にて検討している。エンドスタチンは内因性の血管新生阻害剤であり、血管などの基底膜を構成するXVIII型コラーゲンの分解産物で抗がん剤としての臨床試験が進行中である。しかしエンドスタチンの作用機作は依然として明らかではなく、本研究の究極的な目標はがんの増殖抑制、浸潤や転移阻害作用における分子メカニズムを解明することである。
KAKENHI-PROJECT-16591250
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16591250
血管新生阻害因子エンドスタチンの腫瘍血管における動態と作用機構の解明
昨年度の研究成果からエンドスタチンが数種のMMP(Matrix Metalloproteinase)の活性を阻害し、特に血管内皮細胞膜上に発現するMT1-MMPの活性阻害が顕著なことからMT1-MMPとintegrinα_vβ_3との複合体がエンドスタチンの受容体として機能していると考えられた。この仮説を立証するために種々の抗体を用いて局在を調べたところ、蛍光顕微鏡による観察ではエンドスタチンを暴露した内皮細胞膜上でエンドスタチンとMT1-MMPが共局在していると判断される像が得られた。しかし共焦点レーザー顕微鏡下で3次元的に局在を精査すると、細胞の形態によってエンドスタチンとの局在が異なることが明らかになった。すなわち伸展接着している細胞では、エンドスタチンは細胞の基底面に班状に染色されるが、伸展していない球状の細胞ではエンドスタチンは細胞質内に取り込まれていることが示された。現在integrinとの共局在の可能性を検討しているが、接着班に局在している可能性は低いという結果が得られている。一方異なるアプローチでエンドスタチン受容体の検索を開始した。血管内皮細胞にはエンドスタチンに応答する細胞と、応答性が低下している細胞が存在するが、各々の内皮細胞の発現遺伝子をマイクロアレイにより比較したところ、発現量に有意差が認められた遺伝子は245であり、発現比(log_2)が2以上に亢進している遺伝子が20,-2以下に発現が減弱している遺伝子が8であった。これらの遺伝子発現情報に基づき、エンドスタチンの応答性を支配している遺伝子を特定することにより、受容体をはじめとする反応機構を明らかにする試みを開始した。
KAKENHI-PROJECT-16591250
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16591250
末梢神経損傷に対する細胞移植治療を目的とした新規シュワン細胞誘導法
ゼノフリーの培養系の樹立の検討我々が線維芽細胞から直接転換で誘導したシュワン細胞の臨床応用を考えた時、導入の過程で動物由来の血清を使用することは、未知のウィルスの混入などをの可能性を完全に排除することができないことなど、使用上の安全面において障壁となる。そこで、遺伝子導入後のヒト線維芽細胞を、FBS添加培地に換えて種々の無血清合成培地、またはヒト血清を添加した培地を用いて培養を行い、最適なゼノフリー培養条件を検討した。しかしながら、FBS添加培地に比して、シュワン細胞へのダイレクト・リプログラミングの効率が37%から5%に低下した。また誘導した誘導シュワン細胞のViabilityも低下することが明らかとなった。今後、誘導したシュワン細胞の培養下維持のためにFBSに含有されている必須の因子を同定することが必要であり、今後の重要な研究課題と思える。線維芽細胞以外の体細胞(血液リンパ球、脂肪由来の間質細胞)からの誘導皮膚線維芽細胞以外のさらなる低侵襲な体細胞として、血液由来の細胞もしくは脂肪組織由来の間質細胞が考えられる。これらの細胞を、線維芽細胞と同様の方法で遺伝子導入後、シュワンに誘導される効率と誘導に要する期間を比較し、もっとも適した細胞を検討した。血管内皮細胞を細胞材料としても、20%近くの効率でシュワン細胞に誘導できたが、内皮細胞の増殖力が乏しく、遺伝子の導入効率に問題があった。一方、皮膚線維芽細胞の代替え細胞として脂肪組織由来の間質細胞は、皮膚線維芽細胞を上回る(45%)導入効率を示した。しかし、われわれが目指した線維芽細胞60%以上のシュワン細胞への誘導効率を持つ代替え細胞ソースが見いだされた。今後、線維芽細胞に代わる細胞材料として脂肪間質細胞が注目されていくことが予想される。シュワン細胞の発生や分化に大きく関わる因子合計9因子のうち2因子の強制発現でヒト線維芽細胞の約30%をシュワン細胞に直接誘導できる(Direct reprogramming schwann cell:dSC)ことが明らかとなった。われわれは、まず真(内在性の)のシュワン細胞(Primary Schwann cell:pSC)と比較するためにヒト由来培養シュワン細胞の分離・培養を行った。皮膚由来ヒト線維芽細胞(HDF)からiSCへの細胞転換を分子生物学的に確認するため、dSC、pSC、HDFのそれぞれについて免疫組織学的染色とRT-PCRを行い、細胞の表面抗原や遺伝子発現プロファイリングの比較を行った。結果、dSCはpSC同様、s100b,p75NTR,NG2、GAP43といったシュワン細胞マーカーの陽性であったが、通常の条件ではグリアマーカーであるGFAPやミエリンマーカーであるMBPやP0は陰性であった。遺伝子レベルにおいても同様のパターンがみられた。次にdSCの神経突起伸長効果などの細胞機能の検証を行った。そこで、dSC由来の神経再生関連放出因子をELISA法で検討したところ、pSCとdSCの神経栄養因子発現パターンは類似しており、いずれもConに比較して発現量は有意に増加していた。われわれの方法で誘導したシュワン細胞をマウス坐骨神経欠損部に移植する場合の足場の設定に予定以上に時間を費やしている。また後根神経との培養条件の設定に予定より大幅な時間が必要となった。本年度はダイレクト・リプログラミング技法により誘導できたiSCについてのシュワン細胞に特有のミエリン化形成能やin vivoにおける移植効果などのさらなる細胞機能についての検討が重要であると考えた。そこで後根神経節細胞との共培養によりミエリン化形成能の有無についての検討を行った。また免疫不全マウス坐骨神経障害モデルにおいてiSCの移植を行い、神経再生効果についてヒト線維芽細胞(HDF)、ヒト培養SC (HCSC)と比較検討を行った。評価項目は坐骨神経機能、織学的検索(再生架橋、ミエリン形成)、支配筋の委縮・変性とした。また移植したiSCのミエリン形成能についても組織学検討を行った。結果としてin vitroモデルでiSCのミエリン化が確認された。神経損傷部位への移植実験ではHDF群に比較してiSC群でより優れた神経再生効果が確認され、一部の評価項目ではiSC群はHCSC群に匹敵していた。また移植したiSCは再生神経内で直接ミエリン形成していることも明らかとなった。以上よりiSCは、SC細胞と同等の神経再生機能とミエリン形成能を有していることが証明された。実験結果がわれわれのの当初の仮説と大きく矛盾するようなこがなかったためと思われる。本年度はダイレクト・リプログラミング技法により誘導できたdSCについてのin vivoにおける移植効果についてさらなる細胞機能についての検討が重要であると考えた。そこで免疫不全マウス坐骨欠損モデルへのdSCの移植し、細胞を移植しない群とプライマリーcultureSC(pSC)をconにその末梢神経再生能を比較検討した。再生された神経架橋についてはマクロ像でのcon群よりしっかりとした架橋が生成されており、pSCとも明らかな差異はみられなかった。再生神経の短軸切片のLuxol fast blueによるミエリン染色により、再生したミエリン数を比較したところCon群に比較して有意にミエリン再生が優れており、pSC群に匹敵していた。坐骨神経機能インデックスでは12Wの時点でdSC群はpSCに匹敵する坐骨神経機能の回復がみられた。また支配筋の委縮についてもCon群と比較して委縮は軽度であり、dSCとdSC間での有意差はみられなかった。
KAKENHI-PROJECT-15K10946
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K10946
末梢神経損傷に対する細胞移植治療を目的とした新規シュワン細胞誘導法
次に誘導したdSCのミエリン形成能を評価するために、あらかじめGFPでマーキングしたdSCを後根神経節細胞と共培養することで、in vivoの系では同様にGFPにラべリングしたdSCを神経欠損部に移植してから10週後に再生神経内で移植したdSCがミエリン化マーカーを発現しているかを検討した。GFPでマーキングしたiSCとDRGnとの共培養においてDRGの神経突起に沿って移植したシュワン細胞がみられ、多数のGFP細胞がミエリンマーカーとOverlapしていた。これらはMBPとP0の2種類のミエリンマーカーで確認された。以上よりわれわれが誘導したシュワン細胞(dSC)は真のシュワン細胞に近似した機能を保持していることが強く示された。臨床応用を考えた場合、さらに低侵襲な細胞材料として、有望な体性細胞である脂肪組織由来細胞のも見当の必要性があると考えられた。当初購入したセルライン脂肪組織由来細胞の細胞分裂能が低いため、遺伝子導入効率に問題があったが、初代培養の細胞を新しく用いることで、この問題は解決できが、その分研究が遅延してしまった。ゼノフリーの培養系の樹立の検討我々が線維芽細胞から直接転換で誘導したシュワン細胞の臨床応用を考えた時、導入の過程で動物由来の血清を使用することは、未知のウィルスの混入などをの可能性を完全に排除することができないことなど、使用上の安全面において障壁となる。そこで、遺伝子導入後のヒト線維芽細胞を、FBS添加培地に換えて種々の無血清合成培地、またはヒト血清を添加した培地を用いて培養を行い、最適なゼノフリー培養条件を検討した。しかしながら、FBS添加培地に比して、シュワン細胞へのダイレクト・リプログラミングの効率が37%から5%に低下した。また誘導した誘導シュワン細胞のViabilityも低下することが明らかとなった。今後、誘導したシュワン細胞の培養下維持のためにFBSに含有されている必須の因子を同定することが必要であり、今後の重要な研究課題と思える。線維芽細胞以外の体細胞(血液リンパ球、脂肪由来の間質細胞)からの誘導皮膚線維芽細胞以外のさらなる低侵襲な体細胞として、血液由来の細胞もしくは脂肪組織由来の間質細胞が考えられる。これらの細胞を、線維芽細胞と同様の方法で遺伝子導入後、シュワンに誘導される効率と誘導に要する期間を比較し、もっとも適した細胞を検討した。血管内皮細胞を細胞材料としても、20%近くの効率でシュワン細胞に誘導できたが、内皮細胞の増殖力が乏しく、遺伝子の導入効率に問題があった。一方、皮膚線維芽細胞の代替え細胞として脂肪組織由来の間質細胞は、皮膚線維芽細胞を上回る(45%)導入効率を示した。しかし、われわれが目指した線維芽細胞60%以上のシュワン細胞への誘導効率を持つ代替え細胞ソースが見いだされた。今後、線維芽細胞に代わる細胞材料として脂肪間質細胞が注目されていくことが予想される。今後、さらに因子導入効率および直接転換効率を改善していける余地があると思われる。またdSCの神経再生に対する機能性についてもさらに詳細に検証していく必要がある。
KAKENHI-PROJECT-15K10946
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K10946
高感度電気化学的酵素イムノアッセイ法の研究
メディエーター(Med)/ジアホラーゼ(Dia)/NADH系によるNADHの接触酸化電流(Ic)に基礎を置くNADHの高感度定量法と、この方法に基礎を置く酵素イムノアッセイ法について研究した。Med/Dia/NADH反応系は(1)1電子Med(Hexacyanoferrate(-3/-4)及びFerrocene(+1/0)系)ではSequencial機構により、また2電子Med(DCIP)ではPing-Pong機構により進行する事を、電気化学分析法及び分光化学分析法を用いて明らかにした。(2)いづれの機構によるとしても、Med濃度が十分薄い場合には、IcはMed濃度について一次、Dia濃度については1/2次反応式で与えられる同じ形式の基本式であたえられる。(3)Dia/NADH反応系は基質(NADH)阻害を受ける事が見いだされた。(4)競争的阻害及び非競争的阻害における反応速度式を導き、Icに対するNADH濃度の影響を解析した結果、阻害反応はNADH濃度について一次反応である事が示され、実効阻害定数Kiが求められた。(5)これらの結果に基づき、接触電流によるMedの高感度分析のためのNADHの至適濃度として0.25mMが設定され、この新しい設定条件の基でMed(4-aminophenol)の5x10^<-11>Mの検出が可能になった。(6)4-aminophenolphosphateのAlkalinephosphatase(Alkp-ase)による加水分解反応を上記(5)のほうほうで追跡する方法により、Alkp-aseの5x10^<-8>U/50μlは定量可能であることが示された。(7)Alkp-aseの高感度定量法に基礎を置く酵素イムノアッセイ法の可能性について具体的に論じた。メディエーター(Med)/ジアホラーゼ(Dia)/NADH系によるNADHの接触酸化電流(Ic)に基礎を置くNADHの高感度定量法と、この方法に基礎を置く酵素イムノアッセイ法について研究した。Med/Dia/NADH反応系は(1)1電子Med(Hexacyanoferrate(-3/-4)及びFerrocene(+1/0)系)ではSequencial機構により、また2電子Med(DCIP)ではPing-Pong機構により進行する事を、電気化学分析法及び分光化学分析法を用いて明らかにした。(2)いづれの機構によるとしても、Med濃度が十分薄い場合には、IcはMed濃度について一次、Dia濃度については1/2次反応式で与えられる同じ形式の基本式であたえられる。(3)Dia/NADH反応系は基質(NADH)阻害を受ける事が見いだされた。(4)競争的阻害及び非競争的阻害における反応速度式を導き、Icに対するNADH濃度の影響を解析した結果、阻害反応はNADH濃度について一次反応である事が示され、実効阻害定数Kiが求められた。(5)これらの結果に基づき、接触電流によるMedの高感度分析のためのNADHの至適濃度として0.25mMが設定され、この新しい設定条件の基でMed(4-aminophenol)の5x10^<-11>Mの検出が可能になった。(6)4-aminophenolphosphateのAlkalinephosphatase(Alkp-ase)による加水分解反応を上記(5)のほうほうで追跡する方法により、Alkp-aseの5x10^<-8>U/50μlは定量可能であることが示された。(7)Alkp-aseの高感度定量法に基礎を置く酵素イムノアッセイ法の可能性について具体的に論じた。今年度は昨年度につづきDiaphorase/NADH/Mediator(Med、4-アミノフェノール(2e-酸化還元系化合物)の酸化-還元系について、測定条件のより詳細な検討を行った。その結果、1)NADHの濃度効果について、上記酸化-還元酵素反応系にNADHの基質阻害効果が存在する事が推定された。そこで、上記効果を考慮した酵素反応速度式およびMedの接触電流(Ic)の理論式を誘導した。得られた理論式は既報の理論式を包含する形状を示した。2)つぎに、上記理論式の実験的検証を行った。その結果、上記基質阻害効果を無視できる条件下の接触電流(Ic)と従来の条件で得られた電流値(Ic*)との比(Ic/Ic*=)は1.3を示し、Medの検出限界濃度は5×10^<-11>M(従来の検出限界濃度は10^<-10>M)であった。3)また上記実験の結果によれば、Medの低濃度領域において電気的雑音の影響が著しいことが明瞭となった。以上の結果今後の課題として、まず実用的な問題としては電気的雑音の低減の重要性が明らかとなった。つぎに理論的な観点によれば、1e^-酸化還元系Medを利用したときの酵素反応機構についていまだに実験的に確定されていない。(この点について理論的な検討は上記1)と同時に行ったが)この問題は実用の観点からも重要な課題と考えられる。Mediator(Medと略記)/Diaphorase/NADHの系の接触電流について、(1)1e電子系と2e電子系Medにおける反応機構の違いを電気化学法および分光光度によって明確にした。(2)速度論的検討によりSequential反応機構で進行する1e電子系Medの場合においても低濃度領域ではPing-Pong反応機構を用いて解析可能なことを明らかにした。つぎに、
KAKENHI-PROJECT-06660137
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06660137
高感度電気化学的酵素イムノアッセイ法の研究
(3)酵素反応系(Diaphorase/NADH系)が基質阻害反応を伴うことを電気化学法および分光光度法によって実証し、速度論的手法を用いて解析を行った。その結果、(4)Medの微量分析の立場から溶液条件、特にNADH濃度の選択が重要な因子となることを明らかにし、上記解析結果を用いて至適NADH濃度を決定した。実験の結果によればMed(p-aminophenol)の5x10-11 Mの検出が可能となることが確認された。(5)本測定法を加水分解酵素の微量定量に適用したところ、Alkalinephosphataseの5x10-8 Uの検出が可能であった。
KAKENHI-PROJECT-06660137
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06660137
体軸形成におけるAxinの作用機構の解析
細胞間分泌蛋白質Wntは、生物種を越えて胎生期における体軸形成や細胞の増殖や分化を制御する。アフリカツメガエルの初期胚にWntやDsh(Dvl)、β-cateninを導入すると二次体軸が形成される。GSK-3β結合蛋白質AxinはAPCやGSK-3β、β-catenin、Dvlと複合体を形成し、GSK-3βによるβ-cateninのリン酸化と分解を促進してWnt依存性の体軸形成を抑制する。Axin自体もGSK-3βによってリン酸化されるがその生理的な意義は不明であった。そこで、動物細胞にAxinを発現させてGSK-3β阻害剤LiClやプロテインホスファターゼ2A(PPSA)阻害剤オカダ酸で処理したところ、Axinの蛋白質量は、LiCl処理により減少し、オカダ酸処理により増加した。さらに、Axin上のGSK-3βリン酸化モチーフを破壊した変異体を作成すると野生型Axinよりも半減期が短縮し、細胞をWnt刺激するとAxinが減少した。したがって、WntのシグナルはAxinを脱リン酸化して不安定化することにより、β-cateninの蓄積を促進する可能性が示唆された。Dvlは遺伝学的にWntのシグナルをGSK-3βに伝達しGSK-3βの活性を抑制すると考えられているが、その作用機構は不明であった。Dvlは、Axinと結合することや、Dvlの存在下ではAxin依存性のGSK-3βによるβ-cateninのリン酸化やGSK-3βによるAxinのリン酸化が抑制されることを見出した。Dvlの中央部のPDZ領域を欠損させた変異体を発現させた動物細胞では、Wnt依存性のβ-cateninの蓄積が起こらないことから、WntのシグナルはDvlのPDZ領域を通じてGSK-3βやβ-cateninに伝達されることが明らかになった。細胞間分泌蛋白質Wntは、生物種を越えて胎生期における体軸形成や細胞の増殖や分化を制御する。アフリカツメガエルの初期胚にWntやDsh(Dvl)、β-cateninを導入すると二次体軸が形成される。GSK-3β結合蛋白質AxinはAPCやGSK-3β、β-catenin、Dvlと複合体を形成し、GSK-3βによるβ-cateninのリン酸化と分解を促進してWnt依存性の体軸形成を抑制する。Axin自体もGSK-3βによってリン酸化されるがその生理的な意義は不明であった。そこで、動物細胞にAxinを発現させてGSK-3β阻害剤LiClやプロテインホスファターゼ2A(PPSA)阻害剤オカダ酸で処理したところ、Axinの蛋白質量は、LiCl処理により減少し、オカダ酸処理により増加した。さらに、Axin上のGSK-3βリン酸化モチーフを破壊した変異体を作成すると野生型Axinよりも半減期が短縮し、細胞をWnt刺激するとAxinが減少した。したがって、WntのシグナルはAxinを脱リン酸化して不安定化することにより、β-cateninの蓄積を促進する可能性が示唆された。Dvlは遺伝学的にWntのシグナルをGSK-3βに伝達しGSK-3βの活性を抑制すると考えられているが、その作用機構は不明であった。Dvlは、Axinと結合することや、Dvlの存在下ではAxin依存性のGSK-3βによるβ-cateninのリン酸化やGSK-3βによるAxinのリン酸化が抑制されることを見出した。Dvlの中央部のPDZ領域を欠損させた変異体を発現させた動物細胞では、Wnt依存性のβ-cateninの蓄積が起こらないことから、WntのシグナルはDvlのPDZ領域を通じてGSK-3βやβ-cateninに伝達されることが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-11152226
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11152226
ブナ天然林北進最前線における分布拡大過程の解明
ブナ分布北限地域の最前線における正確な分布を調べるために、空中写真解析と現地調査を併用した結果、ブナの孤立林は最大約4km間隔で9箇所分布していることが判明した。これらの孤立林は、ブナの連続分布域から鳥などによって運ばれた種子が育ち、成立した可能性がある。遺伝的解析の結果、孤立ブナ林では孤立度が高く、多様度は低下する傾向がみられたものの、ブナの樹齢は120年以下の若い個体が多く、ブナは林冠のかく乱などを契機として今後もゆっくりと分布範囲を拡大すると考えられた。ブナ分布北限地域の最前線における正確な分布を調べるために、空中写真解析と現地調査を併用した結果、ブナの孤立林は最大約4km間隔で9箇所分布していることが判明した。これらの孤立林は、ブナの連続分布域から鳥などによって運ばれた種子が育ち、成立した可能性がある。遺伝的解析の結果、孤立ブナ林では孤立度が高く、多様度は低下する傾向がみられたものの、ブナの樹齢は120年以下の若い個体が多く、ブナは林冠のかく乱などを契機として今後もゆっくりと分布範囲を拡大すると考えられた。北限域におけるブナの分布拡大過程を多角的に明らかにすることを目的として,今年度はブナ林分の群落構造の把握,遺伝構造解析のためのサンプリング,野鳥による種子散布距離推定のための行動圏調査,空中写真判読のための写真のデジタル化を開始した。群落構造の把握のために,ブナ林に20x20mの調査枠を設定し,樹種構成,胸高直径を記録した。樹齢を推定するために,成長錐によるサンプリングを行った。サンプルは研究室において年輪の読み取りを行っている。遺伝構造の把握のために葉サンプルを研究室に持ち帰り,遺伝子解析を開始し,現在分析中である。この結果の一部から,北限域のブナ孤立林分の遺伝子構造には,複数の系統が存在する可能性が示唆されている。過去の空中写真の判読に関しては,現在デジタル化を進めているが,枚数が多いために,現在作業を継続中である。種子散布距離を推定するために,黒松内町添別ブナ林において,ヤマガラ1羽に超小型電波発信器を装着し,ラジオテレメトリ法による行動圏の調査を行った。この結果,北限域に生息するヤマガラの,秋の行動圏はおおよそ2から6へクタール程度であることが示唆された。このことは,ヤマガラがブナの種子を林分内に散布し,その距離はネズミ類よりも遠くへ運ぶ可能性を示唆する。また同時に,孤立林分内部におけるブナの密度上昇に貢献していることを示唆するが,数キロメートル離れた場所にある他のブナ孤立林分ヘブナ種子を運ぶ可能性は低いと考えられた。したがって,ブナが現在も北進中であると過程しても,ヤマガラが直接ブナの分布拡大に貢献するのではなく,むしろ一度定着したブナ林において,その分布面積の拡大に貢献していることが示唆された。昨年度から継続して調査、解析を行ってきた結果が明らかになりつつある。遺伝解析の結果から,最も隔離の程度が高い北限域ブナ林の3集団、三之助、ツバメの沢、裏ツバメのブナ林はそれぞれまったく違った遺伝組成になっていたことが判明した。これは3集団がそれぞれ孤立度が高く、また孤立した状態が長期間に及ぶためである。その他の集団は個々に違いはあるが、概して祖先的な遺伝組成を持っており、全体として現在の分布の大きな流れを担っていると予想された新たに発見したチョポシナイ川のブナ林について,その長期的な変化を複数年の航空写真を用いて解析した結果、1960,1974年において樹冠が疎であった林分が,1974年以降に密になった箇所が多く見られた。また,樹冠が密になるとともに,樹冠が大きくなり,樹冠サイズの小さい単木が点在している状態から,複数の単木によってパッチを形成して行く過程が明らかとなった。北限のブナ林である添別ブナ林において捕獲したヤマガラの行動から推定した一日の行動圏は、2.1haから6.5haと推定され,3日間全体では11.4haであった。また,一日の行動圏から推定したヤマガラによる種子散布の限界距離は,163mから529mであった。ヤマガラの平均移動速度は,6.6m/分から10.5m/分で,3日間全体では8.5m/分であった。これらの結果から、北限域のブナの孤立林分は長期的には分布を拡大している様子が判明しつつある。ブナ連続分布ライン付近に存在する下チョポシナイ川流域において,ブナ孤立林の植生プロット調査を2ヶ所で行い,以下の結果を得た。プロット1のブナは樹齢80年から100年をピークとする若いブナ林であることが判明した。一方でプロット2では120年から140年の個体が最も多いものの,220年や301年と推定された個体も記録され,幅広い樹齢のブナが生育していることが明らかになったプロット2の樹齢301年のブナは,現時点ではブナ北限域における最高齢のブナであると考えられる。ブナは,樹齢が同じでもDBHが数十センチ異なる場合があるため,DBH階級の情報による森林群落の樹齢推定や回転率の考察には注意が必要であることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-21580189
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21580189
ブナ天然林北進最前線における分布拡大過程の解明
下チョポシナイ川流域では一斉更新した弱齢林と老齢なブナを含む過熟林のパッチが混在しており,過去の林冠疎開の後にもブナの生育が順調で,次第に林冠を埋めつつある。林冠疎開後におけるブナの増加は,分布北限域のその他の孤立林であるツバメの沢や三之助沢のブナ林でも報告されており,ブナ北限最前線域における一貫した傾向である可能性が示唆された。孤立ブナ林の遺伝子多様性解析の結果,分布限界へ近づくにつれて,遺伝子多様度は低下傾向にあった。また黒松内低地帯を通過したブナは,目名峠に到達した後に南北へと分散し,それぞれが分布拡大しながら現在の地理的分布を形成してきた可能性が示唆された。これらのことは過去のブナの分布拡大過程や,将来の北進を考察する上で貴重な情報である。
KAKENHI-PROJECT-21580189
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21580189
細菌性髄膜炎の発症につながる新規細菌伝播経路と感染制御法の探索
肺炎球菌性髄膜炎は,成人における致死率や後遺症の発症率が依然として高い,極めて予後が不良な中枢神経系感染症である.本疾患では,鼻咽腔や口腔の常在細菌が血流を介して髄腔内に到達し,脳実質に炎症が波及すると推察されているが,細菌が脳組織へ指向性を示す機構や血液脳関門を突破する機構は不明である.本疾患の臨床像に鑑みて,鼻咽腔に定着した肺炎球菌は血液脳関門を介さず,嗅上皮中の嗅神経の軸索もしくは周囲腔を介して直接的にくも膜下腔に到達すると推察した.本研究では,鼻粘膜に定着した肺炎球菌が嗅上皮-嗅神経を介して脳内の嗅球に到達する機構を培養細胞感染モデルおよびマウス感染モデルで検証した.正常ヒト鼻粘膜上皮細胞に肺炎球菌を感染させ,感染細胞における細胞間接着分子群の発現を解析した結果,アドへレンスジャンクション構成分子であるE-カドヘリンの発現量の低下を認めた.また,E-カドヘリン細胞外ドメインに対する組換えタンパク質を作製し,肺炎球菌臨床分離株の培養上清画分もしくは菌体表層画分と反応させた.その結果,複数の臨床分離株の菌体表層画分によるE-カドヘリンの分解が認められた.菌体表層画分によるE-カドヘリンの分解はプロテアーゼ阻害剤の添加により抑制された.以上の結果から,肺炎球菌は菌体表層に発現する分子のプロテアーゼ活性により上皮バリアの機能維持に重要なE-カドヘリンを分解し,鼻粘膜上皮バリアを破綻させることが示唆された.肺炎球菌の菌体表層プロテアーゼによる細胞間接着分子E-カドヘリンの分解を証明した.また,マウス鼻腔に定着する肺炎球菌株を収集し,これらの株を使用した肺炎球菌の鼻腔定着マウスモデルの構築が進捗しているため,おおむね順調である.鼻粘膜上皮-嗅上皮のin vitro共培養細胞モデルおよび肺炎球菌の鼻腔定着マウスモデルを構築し,鼻粘膜上皮-嗅上皮バリアの機能障害,ならびに肺炎球菌もしくは菌体成分の鼻腔から脳内への移行性を,細胞層のインピーダンス測定法およびin vivoイメージングシステムで解析する.また,肺炎球菌性髄膜炎の病態形成への関与が認められた細菌分子および宿主分子について,感染防御抗原もしくは創薬ターゲットとしての可能性を検討する.肺炎球菌性髄膜炎は,成人における致死率や後遺症の発症率が依然として高い,極めて予後が不良な中枢神経系感染症である.本疾患では,鼻咽腔や口腔の常在細菌が血流を介して髄腔内に到達し,脳実質に炎症が波及すると推察されているが,細菌が脳組織へ指向性を示す機構や血液脳関門を突破する機構は不明である.本疾患の臨床像に鑑みて,鼻咽腔に定着した肺炎球菌は血液脳関門を介さず,嗅上皮中の嗅神経の軸索もしくは周囲腔を介して直接的にくも膜下腔に到達すると推察した.本研究では,鼻粘膜に定着した肺炎球菌が嗅上皮-嗅神経を介して脳内の嗅球に到達する機構を培養細胞感染モデルおよびマウス感染モデルで検証した.正常ヒト鼻粘膜上皮細胞に肺炎球菌を感染させ,感染細胞における細胞間接着分子群の発現を解析した結果,アドへレンスジャンクション構成分子であるE-カドヘリンの発現量の低下を認めた.また,E-カドヘリン細胞外ドメインに対する組換えタンパク質を作製し,肺炎球菌臨床分離株の培養上清画分もしくは菌体表層画分と反応させた.その結果,複数の臨床分離株の菌体表層画分によるE-カドヘリンの分解が認められた.菌体表層画分によるE-カドヘリンの分解はプロテアーゼ阻害剤の添加により抑制された.以上の結果から,肺炎球菌は菌体表層に発現する分子のプロテアーゼ活性により上皮バリアの機能維持に重要なE-カドヘリンを分解し,鼻粘膜上皮バリアを破綻させることが示唆された.肺炎球菌の菌体表層プロテアーゼによる細胞間接着分子E-カドヘリンの分解を証明した.また,マウス鼻腔に定着する肺炎球菌株を収集し,これらの株を使用した肺炎球菌の鼻腔定着マウスモデルの構築が進捗しているため,おおむね順調である.鼻粘膜上皮-嗅上皮のin vitro共培養細胞モデルおよび肺炎球菌の鼻腔定着マウスモデルを構築し,鼻粘膜上皮-嗅上皮バリアの機能障害,ならびに肺炎球菌もしくは菌体成分の鼻腔から脳内への移行性を,細胞層のインピーダンス測定法およびin vivoイメージングシステムで解析する.また,肺炎球菌性髄膜炎の病態形成への関与が認められた細菌分子および宿主分子について,感染防御抗原もしくは創薬ターゲットとしての可能性を検討する.平成30年度に肺炎球菌の鼻腔定着マウスモデルを構築し,菌体および菌体成分の脳内移行に関する解析を行う予定であったが,マウス鼻腔に定着する肺炎球菌臨床分離株の収集と選出に時間を要したため,マウス感染実験は次年度に行うように研究計画を修正した.このため,次年度使用額が生じた.
KAKENHI-PROJECT-18K19643
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K19643
蛍光を利用した不斉触媒のハイスループットスクリーニング系の構築と応用
私は「蛍光を利用した不斉触媒のハイスループットスクリーニング系の構築と応用」を研究テーマとして研究を進めている。本研究ではHenry反応をターゲットとし、まず、Henry反応の進行によって蛍光強度が増大する蛍光プローブを開発し、Henry反応触媒の蛍光HTS系を構築した。そして、Henry反応の生成物であるnitroaldol体のalcoholがアシル化されると容易に脱離反応を起こし、光誘起電子移動によって蛍光の消光を起こしたnitroolefinを生成することを見出した。この反応を利用することにより、nitroaldolの不斉炭素に直結した水酸基に対するアシル化反応による光学分割の効率を、蛍光強度の変化によって評価することが可能なHTS系を構築した。さらに、この新しく構築した光学分割触媒のHTSを利用することによって、benzotetramisoleが効率的に光学分割を行うことが可能であることを明らかとした。また、benzotetramisoleの光学分割能を利用することによって、Henry反応生成物の不斉収率を蛍光強度の変化から評価することの出来るHTS系を構築することに成功した。このHTS系と、はじめに構築したHenry反応の進行を捉えるHTS系を組み合わせることで、不斉触媒をターゲットとした蛍光HTS系の構築に成功した。これまでに報告された蛍光HTS系には不斉誘起度を評価可能なものは存在せず、本研究は不斉触媒の蛍光HTS系に関する初めての報告と成り得る。私は「蛍光を利用した不斉触媒のハイスループットスクリーニング系の構築と応用」を研究テーマとして研究を進めている。本研究ではHenry反応をターゲットとして選択し、その第1歩としてHenry反応生成物であるnitroalcohol構造を持つ化合物について、その不斉点における化学反応を光誘起電子移動を利用した蛍光特性の変化へと繋げる事で、光学分割触媒の蛍光ハイスループットスクリーニング系の構築を達成することを目標とした。本年度はまず、不斉点を持つ蛍光性分子について光学分割に取り組んだ。種々の光学分割用キラルHPLCカラムによる分離を試みた結果、ダイセル社のCHIRALPAK IAによって効率的に光学分割が達成できることを見出し、光学分割に成功した。続いて、不斉点を持つ蛍光性分子のnitroalcohol部分が酢酸等によってエステル化されると容易に脱離反応を起こし、nitrovinylへと変化する反応を利用し、光誘起電子移動による蛍光の制御を行うことで光学分割反応の前後での大きな蛍光強度変化を達成した。これにより、Henry反応生成物の光学分割触媒について、その活性を網羅的に調べることの出来るHTS系の構築に成功した。現在、光学分割した蛍光性分子の絶対配置を決定するべく、分子にヨウ素を導入した誘導体を合成し、結晶化及びX線による結晶構造解析に取り組んでいる。また、これと同時進行で優れた光学分割触媒の探索にも取り組んでおり、不斉触媒の蛍光HTS系の構築に向けて研究を進めている。私は「蛍光を利用した不斉触媒のハイスループットスクリーニング系の構築と応用」を研究テーマとして研究を進めている。本研究ではHenry反応をターゲットとし、まず、Henry反応の進行によって蛍光強度が増大する蛍光プローブを開発し、Henry反応触媒の蛍光HTS系を構築した。そして、Henry反応の生成物であるnitroaldol体のalcoholがアシル化されると容易に脱離反応を起こし、光誘起電子移動によって蛍光の消光を起こしたnitroolefinを生成することを見出した。この反応を利用することにより、nitroaldolの不斉炭素に直結した水酸基に対するアシル化反応による光学分割の効率を、蛍光強度の変化によって評価することが可能なHTS系を構築した。さらに、この新しく構築した光学分割触媒のHTSを利用することによって、benzotetramisoleが効率的に光学分割を行うことが可能であることを明らかとした。また、benzotetramisoleの光学分割能を利用することによって、Henry反応生成物の不斉収率を蛍光強度の変化から評価することの出来るHTS系を構築することに成功した。このHTS系と、はじめに構築したHenry反応の進行を捉えるHTS系を組み合わせることで、不斉触媒をターゲットとした蛍光HTS系の構築に成功した。これまでに報告された蛍光HTS系には不斉誘起度を評価可能なものは存在せず、本研究は不斉触媒の蛍光HTS系に関する初めての報告と成り得る。
KAKENHI-PROJECT-08J10376
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J10376
微細加工電極により分極・駆動される強誘電体の超音波原子間力顕微鏡による非破壊評価
走査プローブ顕微鏡により逆圧電応答を計測する圧電応答顕微鏡(PFM)により、強誘電体メモリ用薄膜の疲労現象やMEMSのアクチュエータ用薄膜の性能向上のメカニズムが明らかにされつつある。しかしデバイスの動作環境、すなわち分極反転過程および逆圧電駆動中の分域をナノスケールの空間分解能で観察する手法は確立されていない。本研究では、表面に作製した電極対(表面電極対)の微小なギャップを利用してデバイスの動作環境の再現を試み、ナノスケールにおける弾性特性評価が可能な超音波原子間力顕微鏡(UAFM)により評価して、強誘電体材料の実用的な環境における材料評価技術の確立を目的とした。強誘電体材料には様々なものがあるが、ここでは特定の結晶方位に分極処理を施すことで従来の材料に比べて著しく高い圧電係数を発現することで近年注目されているマグネシウムニオブ酸鉛(Pb(Mg2/3Nb1/3)O3-PbTiO3:PMN-PT)単結晶について実験を行った。その結果、この材料はキュリー点が130°Cと低いために真空蒸着による電極作製時の入熱で脱分極分域組織が発生してしまったものの、表面電極対の電場で分域構造を駆動可能なことが初めて示された。その際に発生した分域境界をUAFMで観察した結果、表面下で斜めになっていることを示唆する結果が得られた。これはPFMのように誘電率の高い材料で電場が表面に集中する状況では不可能な測定であり、UAFMによる表面下欠陥の3次元構造の解析の可能性を実証できた。このように強誘電体材料の分域構造の評価において表面電極対を用いた電界印加およびUAFMによる非破壊評価が有用なことを初めて実証した。以上の研究により微細加工電極により分極・駆動される強誘電体の超音波原子間力顕微鏡による非破壊評価に関する基盤技術が確立でき当初の目的を達成した。走査プローブ顕微鏡により逆圧電応答を計測する圧電応答顕微鏡(PFM)により、強誘電体メモリ用薄膜の疲労現象やMEMSのアクチュエータ用薄膜の性能向上のメカニズムが明らかにされつつある。しかしデバイスの動作環境、すなわち分極反転過程および逆圧電駆動中の分域をナノスケールの空間分解能で観察する手法は確立されていない。本研究では、表面に作製した電極対(表面電極対)の微小なギャップを利用してデバイスの動作環境の再現を試み、ナノスケールにおける弾性特性評価が可能な超音波原子間力顕微鏡(UAFM)により評価して、強誘電体材料の実用的な環境における材料評価技術の確立を目的とした。強誘電体材料には様々なものがあるが、ここでは特定の結晶方位に分極処理を施すことで従来の材料に比べて著しく高い圧電係数を発現することで近年注目されているマグネシウムニオブ酸鉛(Pb(Mg2/3Nb1/3)O3-PbTiO3:PMN-PT)単結晶について実験を行った。その結果、この材料はキュリー点が130°Cと低いために真空蒸着による電極作製時の入熱で脱分極分域組織が発生してしまったものの、表面電極対の電場で分域構造を駆動可能なことが初めて示された。その際に発生した分域境界をUAFMで観察した結果、表面下で斜めになっていることを示唆する結果が得られた。これはPFMのように誘電率の高い材料で電場が表面に集中する状況では不可能な測定であり、UAFMによる表面下欠陥の3次元構造の解析の可能性を実証できた。このように強誘電体材料の分域構造の評価において表面電極対を用いた電界印加およびUAFMによる非破壊評価が有用なことを初めて実証した。以上の研究により微細加工電極により分極・駆動される強誘電体の超音波原子間力顕微鏡による非破壊評価に関する基盤技術が確立でき当初の目的を達成した。本研究では、強誘電体材料の実用的な環境における材料評価技術を確立することを目的として、材料の表面に作製した電極対の微小なギャップを利用したデバイスの動作環境の再現およびナノスケールにおける弾性特性評価が可能な超音波原子間力顕微鏡(UAFM)による評価を行う。研究計画は(1)微細なギャップを持つ電極の作製、(2)分極反転過程の分域組織の観察・評価、(3)交流電界による分極組織の駆動と分域の観察・評価、(4)圧電特性の定量評価であり、今年度には下記の研究を行い、成果を得た。1.微細加工電極対の作製フォトリソグラフィのリフトオフプロセスを用いて間隙が210μmの電極対を作製する技術を習得し、PMN-PT単結晶に作製することに成功した。ここでPMN-PTは圧電係数が著しく大きく医療用超音波探触子に重要な材料であるが抗電界(分極反転の閾電界)が小さいために、本手法の有効性を検証するのに適すると考えられる。そして強誘電体テスター(高電圧発生器+電荷アンプ)によりマクロな電界-分極特性を測定した結果、表面電極対により分極反転の誘起が可能なことがわかった。2.反転過程の分域組織の観察・評価表面電極対の基本的な有効性が検証できたのでDC電界強度の増加に伴う分域の挙動をUAFMにより評価した。ここでUAFMは強誘電体分域の弾性異方性や分域境界の弾性異常を評価できる。またUAFMの観察結果と分域構造との関係を検証するために圧電応答力顕微鏡(PFM)を適用した。その結果、±10Vの電圧印加により分域構造の変化が現れることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-17560627
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17560627
微細加工電極により分極・駆動される強誘電体の超音波原子間力顕微鏡による非破壊評価
さらに電極近傍において特異な形状の強誘電体分域が誘起された。ここで誘起された組織の弾性特性を高精度に評価するためには、UAFMにおけるカンチレバーの振動スペクトルに重畳するスプリアス振動を抑制する必要があった。そこで原因の究明を行い、解決策を見出した。本研究では、強誘電体材料の実用的な環境における材料評価技術を確立することを目的として、材料の表面に作製した電極対の微小なギャップを利用したデバイスの動作環境の再現およびナノスケールにおける弾性特性評価が可能な超音波原子間力顕微鏡(UAFM)による評価を行った。その結果、以下の成果を得た。(1)微細なギャップを持つ電極の作製著しく高い圧電係数を有するPMN-PT単結晶に表面電極対を作製した。リフトオフ加工には真空蒸着が適していた。電界印加時の電極の剥離を防止するために水晶基板などで実績のあるAu/Cr膜を用いた結果、10μmの間隙を十分な精度で作製できた。材料本来の分域構造を保つためにはキュリー点(約130°C)よりも低温で作製する必要があるが、真空蒸着では基板の水冷などの対策を行っても達成が困難だった。(2)分極反転過程の分域組織の観察・評価PMN-PTでは分域構造の観察にねじり振動により分極の面内成分を評価するラテラル圧電応答力顕微鏡(L-PFM)が有用である。試料作製の状況(1)からギャップ領域には入熱による脱分極構造が見られたため、DC電場を印加して分極処理を試みた。5kV/cm以下の電場では可逆的な分極反転がL-PFMにより見られ、このとき分域境界は移動しないことがUAFMにより観察された。一方それ以上電場では分域境界は移動して、印加した電場に対して優先的な方位の分域の成長が観察された。これらの結果から熱脱分極組織は表面に局在化した構造であることがわかった。またUAFMにより表面下で分域境界が傾斜して存在していることを支持する結果が得られた。(3)水平曲げ振動モードの分域境界のせん断弾性特性の評価ねじりモードUAFMはせん断弾性の情報を得られるが低感度が欠点だった。本研究でカンチレバーのスプリアス応答を抑制した結果、水平曲げモードの測定に成功し感度を改善できる見込みが得られた。PMN-PTに適用した結果、分域境界でせん断弾性が低下する可能性が初めて実証された。
KAKENHI-PROJECT-17560627
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17560627
実戦的なシステム分析・IT技術者教育のためのCASEツール統合・高度化の研究
我が国の経済を回復するには、産業へ更に深くITを適用することが不可欠である。しかし、大規模合併銀行の情報システムが大きな社会問題を起こした等の事例は多い。このように、我が国の大規模情報システム開発の実戦的な能力は必ずしも高くはない。その中で、ビジネス・リエンジニアリングのためのシステム分析能力と、大規模システム開発のためのプロジェクト・マネジメント能力は特に問題である。一方、e-Japan構想では高度なIT技術者・研究者の人材教育が重視されている。しかし、大学などにおいて、大規模情報システム開発の実戦的能力を育成するための教育方法は、未開発である。そこで、以下の研究を行った。(1)UML・仕様大規模合成大規模情報システム開発に必要なUML記述仕様の合成をレビューするためのルーズリー結合の支援ツールを研究した。また、その評価によって弱点と判明した動的モデルについて、ルールベースの記述法を導入した。組込みソフトウェアの仕様については、イベントドリブンに着目した仕様理解のための抽象構造も研究した。(2)システム分析(3)プロジェクト・マネジメントプロジェクト要件の価値管理が可能なERVM(Earned Requirement Value Management)のモデリングとツールを研究した。さらに,その研究をソフトウェア開発の上流工程へ拡張して、品質管理とリスク管理に有効なトレーサビリティモデルを研究した。我が国の経済を回復するには、産業へ更に深くITを適用することが不可欠である。しかし、大規模合併銀行の情報システムが大きな社会問題を起こした等の事例は多い。このように、我が国の大規模情報システム開発の実戦的な能力は必ずしも高くはない。その中で、ビジネス・リエンジニアリングのためのシステム分析能力と、大規模システム開発のためのプロジェクト・マネジメント能力は特に問題である。一方、e-Japan構想では高度なIT技術者・研究者の人材教育が重視されている。しかし、大学などにおいて、大規模情報システム開発の実戦的能力を育成するための教育方法は、未開発である。そこで、以下の研究を行った。(1)UML・仕様大規模合成大規模情報システム開発に必要なUML記述仕様の合成をレビューするためのルーズリー結合の支援ツールを研究した。また、その評価によって弱点と判明した動的モデルについて、ルールベースの記述法を導入した。組込みソフトウェアの仕様については、イベントドリブンに着目した仕様理解のための抽象構造も研究した。(2)システム分析(3)プロジェクト・マネジメントプロジェクト要件の価値管理が可能なERVM(Earned Requirement Value Management)のモデリングとツールを研究した。さらに,その研究をソフトウェア開発の上流工程へ拡張して、品質管理とリスク管理に有効なトレーサビリティモデルを研究した。平成15年度の研究実績は以下のとおりである.(1)UML・仕様大規模合成情報システム開発の初期に来る要求分析工程において仕様の大規模合成が必要となっているが,現在その作業が大きな課題となっている.そこで,UMLで記述した仕様をいくつも合成した要求仕様のレビュー作業を支援するためのCASEツールを研究し,そのプロトタイプを作成した.UML自体のCASEツールは既に多数,存在しているので,それらのツールをルーズリーに結合するためのシステムを作成した.(2)システム分析業務分析の種々の手法について情報を集めるとともに,その試行も行った.従来,無駄を排除するためのリーン・メソッドが良く適用されていたが,最近は組織の全体最適化を図るための制約理論(TOC, Theory Of Constraint)に期待が集まっている.これらの手法の組み合わせ適用を試行することによって,それぞれの手法の役割が判明した.また,従来適用されて来たリーン・メソッドについては,当方で研究中の業務分析プロセス・モデリング技術を適用して,CASEツールのプロトタイプを作成した.(3)プロジェクト・マネジメントプロジェクトの進捗を管理するための方法として,従来からEVM(Earned Value Management)が存在している.一方,変化の激しい現在においては,システムを開発している途中に,プロジェクト要件の価値評価が変化することがある.さらに,その変化を考慮して,プロジェクト計画を修正することもある.そこで,ERVM(Earned Requirement Value Method)をモデリングし,そのモデルを適用したCASEツールのプロトタイプを作成した.その際,既存のプロジェクト・マネジメント用ツールに存在する機能は活用するため,そのツールとの結合を図った.国内において,プロジェクト・マネジメントは現在,発展期にある.そこで,平成15年10月にプロジェクト・マネジメント学会の九州支部を設立し,九州・山口地域においてプロジェクト・マネジメントの普及を図るとともに,プロジェクト・マネジメントの最新動向を吸収し,研究へ反映している.1 UML・仕様大規模合成情報システム開発の要求分析工程において仕様の大規模合成が必要であり,現在大きな技術課題となっている.昨年度は、UML記述の仕様をいくつも合成した要求仕様のレビュー作業を支援するためのCASEッールを試作した.本年度はそれを評価した結果,動的モデルの合成の問題が明確になった.そこで,UMLの動的モデルは記述力が弱いので,ルール・ベースの記述へ拡張し,組込みシステムを事例に仕様合成法を研究し,その有効性を確認した.2システム分析(ビジネス・リエンジニアリング)本年度は実際の中小企業を調査させていただき,業務分析のためのデータをCASEツールに投入して、リエンジニアリングのための業務分析を試行した.その結果,最近はやりつつあるTOC(Theory Of Constraint)の観点から見ると,種々の問題点が指摘された.3プロジェクト・マネジメント昨年度はプロジェクト要件の価値変化に対応できるERVM(Earned Requirement Value Method)をモデリングし,その試作も行った.この方式は品質機能展開QFDを適用しているが,最近の情報システム開発には高品質が要求されている.
KAKENHI-PROJECT-15500024
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15500024
実戦的なシステム分析・IT技術者教育のためのCASEツール統合・高度化の研究
そこで,本年度は、システム開発の上流工程において品質管理の部分を強化し,品質クリティカル・パスの概念を研究した.なお,昨年度秋にプロジェクト・マネジメント学会の九州支部を設立し,九州地域においてプロジェクト・マネジメントの知識普及や研究課題発掘を図るとともに,プロジェクト・マネジメントの最新動向を吸収し,本研究へ反映している.本年度は研究計画の最終年度に当たり,以下の研究を行った.1.UML・仕様大規模合成UMLの動的モデルは記述力が弱く,特に仕様合成には不向きである.そのため,ルール・ベースの記述へ拡張して,組込みソフトの仕様記述を行った.さらに,イベント・ドリブンに着目した仕様の抽象構造を研究し,仕様の階層も研究した.この仕様の抽象構造と階層は,仕様の合成に良い見通しを与えることができる.2.システム分析(ビジネス・リエンジニアリング)最近は,社会が急激な変化を受けているので,プロジェクト形式の業務が増えている.そこで、現在流行りつつあるTOC(Theory Of Constraint)に着目して、プロジェクト形式の業務のビジネスのリエンジニアリングについて研究した.具体的には,TOCにおけるCCPM(Critical Chain Project Management)導入の成功事例を,PMBOKの知識エリアや,CMMIのレベルや,社員の心理的な側面から分析することによって,リエンジニアリングの条件を明らかにした.なお,CCPMのバッファ・マネジメントのツールも作成した.3.プロジェクト・マネジメント昨年度はシステム開発の上流工程における品質管理に着目したプロジェクト・マネジメントのモデルを作成したので,本年度は更に上流工程へ研究を進めた.具体的には,システムに対するユーザー要求を出発点とするトレーサビリティのモデルを作成した.このモデルにより,システム開発上流工程における作業の順序関係を定義できる.また,仕様修正の影響範囲も容易に確認でき,レビュー項目の整理にも有効である.特に,組込みソフトウェア開発の上流工程においては要求分析と設計が錯綜しているので,本モデルの活用が望まれる.
KAKENHI-PROJECT-15500024
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15500024
骨髄腫細胞におけるCD19遺伝子の転写調節因子の変異
骨髄腫細胞は正常の形質細胞と全く異なり細胞表面抗原CD19を発現していない。このCD19発現の消失が形質細胞の発癌機構となんらかの関連があるものと考え、本研究を行なった。骨髄腫細胞における細胞表面抗原CD19の発現消失はCD19遺伝子の発現のないことによった。更にCD19遺伝子発現の消失はその転写因子Pax-5遺伝子の発現消失によることがわかった。Pax-5遺伝子にコードされているBSAP活性をゲル・シフト法で調べると、骨髄腫細胞ではBSAP活性は検出されないことも確認された。従って、骨髄腫細胞においてはPax-5遺伝子の発現に変異があることが明らかになったので、平成8年度は、Pax-5遺伝子の転写調節機構を明らかにするべく、ヒトPax-5遺伝子5'側上流のDNA断片をPCRによるgene walking法にてクローニングし塩基配列を決定した。クローン化した全長1,050bp DNAの塩基配列から予想される転写因子の結合部位にはLyf-1(Ik-1),Ikaros-2(Ik-2),bHLH,E-47,Sox-5等の結合部位が認められた。また、クローン化した全長1,050bp DNA断片のうちで、promoter活性として5'上流から70bpから820bpの領域が必要であることが明らかにした。Pax-5遺伝子を発現しているB細胞株Rajiから核抽出物を得、クローン化した1,050bp DNAからのDNA断片をtemplateにしてgel shift assayを行い、各probeに特異的に結合する因子活性を認めた。以上より、本研究により骨髄腫細胞ではCD19遺伝子の転写因子であるBSAPの発現がなく、それはBSAPをコードするPax-5遺伝子の発現変異によることが明らかとなった。更に、ヒトPax-5遺伝子の5'上流の転写調節領域のDNA塩基配列を明らかにし、その予想される結合因子部位を明らかにした。本研究でクローン化した5'上流1,050bpの転写調節領域の更なる研究は今後骨髄腫の癌化を明らかにする上で極めて重要となることが期待される。骨髄腫細胞は正常の形質細胞と全く異なり細胞表面抗原CD19を発現していない。このCD19発現の消失が形質細胞の発癌機構となんらかの関連があるものと考え、本研究を行なった。骨髄腫細胞における細胞表面抗原CD19の発現消失はCD19遺伝子の発現のないことによった。更にCD19遺伝子発現の消失はその転写因子Pax-5遺伝子の発現消失によることがわかった。Pax-5遺伝子にコードされているBSAP活性をゲル・シフト法で調べると、骨髄腫細胞ではBSAP活性は検出されないことも確認された。従って、骨髄腫細胞においてはPax-5遺伝子の発現に変異があることが明らかになったので、平成8年度は、Pax-5遺伝子の転写調節機構を明らかにするべく、ヒトPax-5遺伝子5'側上流のDNA断片をPCRによるgene walking法にてクローニングし塩基配列を決定した。クローン化した全長1,050bp DNAの塩基配列から予想される転写因子の結合部位にはLyf-1(Ik-1),Ikaros-2(Ik-2),bHLH,E-47,Sox-5等の結合部位が認められた。また、クローン化した全長1,050bp DNA断片のうちで、promoter活性として5'上流から70bpから820bpの領域が必要であることが明らかにした。Pax-5遺伝子を発現しているB細胞株Rajiから核抽出物を得、クローン化した1,050bp DNAからのDNA断片をtemplateにしてgel shift assayを行い、各probeに特異的に結合する因子活性を認めた。以上より、本研究により骨髄腫細胞ではCD19遺伝子の転写因子であるBSAPの発現がなく、それはBSAPをコードするPax-5遺伝子の発現変異によることが明らかとなった。更に、ヒトPax-5遺伝子の5'上流の転写調節領域のDNA塩基配列を明らかにし、その予想される結合因子部位を明らかにした。本研究でクローン化した5'上流1,050bpの転写調節領域の更なる研究は今後骨髄腫の癌化を明らかにする上で極めて重要となることが期待される。骨髄腫細胞は正常の形質細胞と異なり細胞表面抗原CD19を発現していない。このCD19発現の消失が形質細胞の発癌機構となんらかの関連があるものと考えられる。CD19遺伝子の発現機構をその転写因子Pax-5遺伝子の発現調節の面から検討した。高γグロブリン血症および骨髄腫患者の骨髄穿刺液からそれぞれ正常形質細胞と骨髄腫細胞を、既報のごとくセル・ソーターで分取し、RNAを注出しRT-PCR法でCD19,Pax-5,E2AおよびId遺伝子mRNAの発現を調べた。その結果、正常形質細胞ではこれらすべてのmRNA発現を認めたが、骨髄腫細胞ではCD19とPax-5mRNAの発現は認められなかった。つまり、骨髄腫細胞における表面抗原CD19の発現の消失は、CD19mRNA発現の消失さらにPax-5mRNA発現の消失によることが示された。更に、Pax-5遺伝子にコードされているBSAP活性をゲル・シフト法で調べると、骨髄腫細胞および骨髄腫細胞株にはBSAP活性は検出されなかった。これらの研究成果により、骨髄腫細胞におけるCD19遺伝子の発現消失はその転写調節因子Pax-5遺伝子の発現の消失によることが明らかになった。現在、Pax-5遺伝子の転写調節機構を明らかにするべく、Pax-5遺伝子5′側上流のDNA断片をクローニングし塩基配列を決定しつつある。
KAKENHI-PROJECT-07671209
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07671209
骨髄腫細胞におけるCD19遺伝子の転写調節因子の変異
骨髄腫細胞は正常の形質細胞と異なり細胞表面抗原CD19を発現していない。このCD19発現の消失はその転写因子Pax-5遺伝子の発現消失によることが前年の研究より明らかとなったので、本年度は、Pax-5遺伝子の転写調節機構を明らかにすべく、ヒトPax-5遺伝子5′側上流のDNA断片をPCRによるgene walking法にてクローニングし塩基配列を決定した。クローン化した全長1,050 bp DNAの塩基配列から予想される転写因子の結合部位にはLyf-1(Ik-1), Ikaros-2(Ik-2), bHLH, E-47, Sox-5等の結合部位が認められた。また、クローン化した全長1,050 bp DNA断片は陽性コントロールと同等のpromoter活性を示した。820 bpの欠失mutant (Δ-820)で全長のDNA断片と同等のpromoter活性を示した。また、70bp欠失mutant(Δ-70)では、ほとんどpromoter活性がなかった。従って、promoter活性として5′上流70 bpから820 bpの領域が必要であると考えられた。この領域の中にE2A (E-47), Sox-5, Ikaros, bHLH等の結合部位が認められたことは、すでに報告されているE2A, Sox-4,あるいはIkarosのknockoutマウスでのPax-5遺伝子発現の欠失と符合した。Pax-5遺伝子を発現しているB細胞株Rajiから核抽出物を得、クローン化した1,050 bp DNAからのDNA断片(probeA, BあるいはC)をtemplateにしてgel shift assayを行った。probeAではOct-1, GATA-1, Sox-5、probeBではIk-2, GATA-2, GATA-3, E47の、さらにprobeCではLyf-1, Ik-2, bHLHの結合部位があり、各probeに特異的に結合する因子活性を認めた。本年度はPax-5遺伝子の5′上流の転写調節領域のDNA塩基配列を明らかにし、その予想される結合因子部位を明らかにした。promoter活性として、少なくとも5′上流-70から-820bp領域が同定された。
KAKENHI-PROJECT-07671209
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07671209
清朝における八旗の支配構造と生計問題に関する財政史的研究
本研究の課題は,東北アジアで満洲を中核として成立し中国に進出した清朝が,中国経済の只中におかれることとなった八旗の生計をいかに保護していたのかを解明することである。私はその課題に通貨問題の側面から取り組み,論文「清,康熙末年から乾隆初年の京師における制銭供給と八旗兵餉-「征服王朝」清朝による八旗生計の保護に関連して-」(『史学研究』第249号)において,銅銭の対銀比価高騰によって八旗生計が打撃を受けていることを清朝中央が問題視し,採算割れにも関わらず京師宝泉・宝源両局の制銭鋳造を拡大し,八旗兵餉への制銭搭放を拡充していったことを明らかにした。さらに,かかる通貨問題・通貨政策が清代貨幣史・清朝貨幣政策史の全体のなかでどのような位置を占めるものなのかを解明するため,各省をも考察対象に含めて,江南の銭貴問題と江蘇・浙江両省の対応を分析した「清代乾隆初年の江南における銭貴の発生と清朝政府の対応」(『東洋学報』第87巻4号),銅銭の使用が極めて限定的であった清初の各省における清朝の制銭供給政策の政策的意図を検討した「清初各省の制銭供給政策-銀の時代の清朝と銅銭-」(『史学』第74巻4号,印刷中),京師や江南で銭貴が問題化していた時期に銅産省である雲南省でいかなる制銭鋳造が行われていたのかを跡づけた「清代雍正年間から乾隆前半の雲南における制銭鋳造の展開」(『社会文化史学』第48号,印刷中)を発表した。なお,2006年8月には中国第一歴史档案館(中華人民共和国・北京市)において未刊行档案史料である「戸科史書」の調査を行った。前掲「清初各省の制銭供給政策-銀の時代の清朝と銅銭-」はその成果である。口頭発表「明朝における銀財政の成立と貨幣政策」(歴史人類学会例会,筑波大学,2004年7月2日)では,明代中葉に銀財政が成立した後に大運河で課される内地関税および京師(首都北京)における商税で銅銭の徴収が続いていた理由を分析し,大運河の関税における銅銭徴収は宦官の財源保持の結果に過ぎず,京師の商税における銅銭徴収は官銭の流通を図った施策だったことを解明した。そして,以後の貨幣政策が徴税における銀への換算・代替の徹底と京師への一方的・大規模な銅銭供給に向かっていったことを指摘した。これをもとに,論文「明,嘉靖万暦初年の船料・商税における銅銭と宝妙-銀財政最初期の貨幣政策の実情-」(『史境』第49号,35-48頁,2004年)を発表した。また,口頭発表「清,雍正乾隆初年の京師における戸工両部の制銭支出と禁旅八旗の兵餉」(第41回日本アルタイ学会,藤屋旅館,2004年7月19日)では,清代雍正年間から乾隆初年に京師において銭価(銅銭の対銀比価)が高騰した際,清朝政府が採算割れに陥りながらも銅銭を積極的に鋳造して八旗兵への給与の一部に支出していた理由を分析し,八旗兵は給与として銀を得ても民間で銅銭に兌換しなければならず,それが銭価高騰の要因になると同時に金融業者による銭価吊り上げを惹起していたので,清朝は八旗兵の生計を保護するため給与の一部を銅銭に置き換えていたことを明らかにした。本研究の課題は,東北アジアで満洲を中核として成立し中国に進出した清朝が,中国経済の只中におかれることとなった八旗の生計をいかに保護していたのかを解明することである。私はその課題に通貨問題の側面から取り組み,論文「清,康熙末年から乾隆初年の京師における制銭供給と八旗兵餉-「征服王朝」清朝による八旗生計の保護に関連して-」(『史学研究』第249号)において,銅銭の対銀比価高騰によって八旗生計が打撃を受けていることを清朝中央が問題視し,採算割れにも関わらず京師宝泉・宝源両局の制銭鋳造を拡大し,八旗兵餉への制銭搭放を拡充していったことを明らかにした。さらに,かかる通貨問題・通貨政策が清代貨幣史・清朝貨幣政策史の全体のなかでどのような位置を占めるものなのかを解明するため,各省をも考察対象に含めて,江南の銭貴問題と江蘇・浙江両省の対応を分析した「清代乾隆初年の江南における銭貴の発生と清朝政府の対応」(『東洋学報』第87巻4号),銅銭の使用が極めて限定的であった清初の各省における清朝の制銭供給政策の政策的意図を検討した「清初各省の制銭供給政策-銀の時代の清朝と銅銭-」(『史学』第74巻4号,印刷中),京師や江南で銭貴が問題化していた時期に銅産省である雲南省でいかなる制銭鋳造が行われていたのかを跡づけた「清代雍正年間から乾隆前半の雲南における制銭鋳造の展開」(『社会文化史学』第48号,印刷中)を発表した。なお,2006年8月には中国第一歴史档案館(中華人民共和国・北京市)において未刊行档案史料である「戸科史書」の調査を行った。前掲「清初各省の制銭供給政策-
KAKENHI-PROJECT-04J11901
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04J11901
清朝における八旗の支配構造と生計問題に関する財政史的研究
銀の時代の清朝と銅銭-」はその成果である。
KAKENHI-PROJECT-04J11901
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04J11901
訪問看護師が把握する高齢の親及び高齢ひきこもり者の実態と包括的支援モデルの構築
本研究の目的は、訪問看護師が把握する高齢の親及び高齢ひきこもり者の実態の把握と包括的支援モデルの構築である。筆者はこれまでの研究で訪問看護師と親子の関わりを調査し、当事者が親の介護を通して成長する姿をとらえた。一方で、当事者支援は看護師の個人的努力に負う点が大きいため、支援の手からこぼれおちる当事者もおり、継続的なサポートが難しいという問題が顕在化した。本研究では訪問看護師が把握する、介護が必要になった高齢の親及び同居する主として40歳以上のひきこもり当事者の実態と当事者への継続支援が困難になる要因を明らかにする。初年度は訪問看護をきっかけにひきこもり当事者が社会資源や支援に繋がった事例と繋がらなかった事例について訪問看護ステーションに所属する看護師への聞き取り調査を実施した。まず、先進的な取り組みで継続支援の成果を上げている訪問看護ステーションに、支援に繋がった事例の実際や地域連携において成功している要因、地域包括ケアシステムのあり方などについて聞き取り調査を行った。また、親への訪問終了と同時に当事者との関係が途絶えた事例についても、調査協力者が考える問題点や必要と考える地域包括ケアシステムのあり方などについて聞き取り調査を行った。当初の計画では訪問看護ステーションのみへの聞きとり予定であった。しかし、課題に入る前にひきこもり当事者及び親の支援に深く関わっている、社会福祉協議会職員や高齢ひきこもり当事者への就労支援を行っている事業主などへも事前の調査が必要と考えて聞きとりを行った。現在聴取内容を逐語化し分析を行っているところである。当初の計画では10施設の訪問看護師への聞きとり予定であった。しかし、問題や課題を明確化し、質的及び量的調査に繋げるためには看護師以外の他職種に対しても聞きとりが必要であると考えた。その結果、課題に入る前にひきこもり当事者及び親の支援に深く関わっている、社会福祉協議会職員や高齢ひきこもり当事者への就労支援を行っている事業主など、関連他職種への聞きとりを行ったために、本年度実施予定の訪問看護師への聞きとり調査が遅れる結果となった。10か所の訪問看護ステーションに所属する訪問看護師に対し、ひきこもり当事者が社会資源・支援に繋がった例と繋がらなかった例の聞き取り調査を完成させる。当初の予定では訪問看護師のみが聞き取り調査の対象であったが、追加で地域包括支援センター職員にも聞き取り調査を実施していくこととする。データは逐語録を作成し、コード化、カテゴリ化し質的に分析する。カテゴリをもとに質問項目を作成し、訪問看護ステーション及び地域包括支援センターへのアンケート調査を実施する予定である。本研究の目的は、訪問看護師が把握する高齢の親及び高齢ひきこもり者の実態の把握と包括的支援モデルの構築である。筆者はこれまでの研究で訪問看護師と親子の関わりを調査し、当事者が親の介護を通して成長する姿をとらえた。一方で、当事者支援は看護師の個人的努力に負う点が大きいため、支援の手からこぼれおちる当事者もおり、継続的なサポートが難しいという問題が顕在化した。本研究では訪問看護師が把握する、介護が必要になった高齢の親及び同居する主として40歳以上のひきこもり当事者の実態と当事者への継続支援が困難になる要因を明らかにする。初年度は訪問看護をきっかけにひきこもり当事者が社会資源や支援に繋がった事例と繋がらなかった事例について訪問看護ステーションに所属する看護師への聞き取り調査を実施した。まず、先進的な取り組みで継続支援の成果を上げている訪問看護ステーションに、支援に繋がった事例の実際や地域連携において成功している要因、地域包括ケアシステムのあり方などについて聞き取り調査を行った。また、親への訪問終了と同時に当事者との関係が途絶えた事例についても、調査協力者が考える問題点や必要と考える地域包括ケアシステムのあり方などについて聞き取り調査を行った。当初の計画では訪問看護ステーションのみへの聞きとり予定であった。しかし、課題に入る前にひきこもり当事者及び親の支援に深く関わっている、社会福祉協議会職員や高齢ひきこもり当事者への就労支援を行っている事業主などへも事前の調査が必要と考えて聞きとりを行った。現在聴取内容を逐語化し分析を行っているところである。当初の計画では10施設の訪問看護師への聞きとり予定であった。しかし、問題や課題を明確化し、質的及び量的調査に繋げるためには看護師以外の他職種に対しても聞きとりが必要であると考えた。その結果、課題に入る前にひきこもり当事者及び親の支援に深く関わっている、社会福祉協議会職員や高齢ひきこもり当事者への就労支援を行っている事業主など、関連他職種への聞きとりを行ったために、本年度実施予定の訪問看護師への聞きとり調査が遅れる結果となった。10か所の訪問看護ステーションに所属する訪問看護師に対し、ひきこもり当事者が社会資源・支援に繋がった例と繋がらなかった例の聞き取り調査を完成させる。当初の予定では訪問看護師のみが聞き取り調査の対象であったが、追加で地域包括支援センター職員にも聞き取り調査を実施していくこととする。データは逐語録を作成し、コード化、カテゴリ化し質的に分析する。カテゴリをもとに質問項目を作成し、訪問看護ステーション及び地域包括支援センターへのアンケート調査を実施する予定である。当初の計画では、2018年度に10か所の訪問看護ステーション及び訪問看護師にインタビューを行い、データ分析する予定であったが研究に遅れが生じたため、予算を執行することができなかった。【使用計画】遅れている(2018年度分の)調査を、2019年度に実施し分析する予定である。
KAKENHI-PROJECT-18K10664
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K10664
簡便分析試薬としての新規なデンドリマー型蛍光性化学センサーの開発
簡便分析試薬となる、新規なデンドリマー型蛍光性化学センサーを合成し、その性質について調べた。分岐鎖にアミノ基とエステル基をもつTG0,TG1,NG1,NGIは、Al^<3+>,Fe^<3+>,Cu^<2+>,Zn^<2+>を添加すると、長波長側の蛍光が減少し、340nm付近のナフタレン環由来の蛍光が増大した。これは、3級アミンとナフタレン環との分子内相互作用による分子内エキサイプレクスが、3級アミンに金属イオンが配位されることで、形成されなくなったためである。TG1の部分骨格はNG0と類似の構造のため、金属イオンの補捉に関する選択性はよく似ており、Zn^<2+>に対して最も強い蛍光を示した。一方、NGIではAl^<3+>に対して最も強い蛍光を示した。TG1,NG0,NG1の蛍光強度のモル比プロットから、NG0は金属イオンと1:1錯体を形成し、TG1は少なくとも2個以上の金属イオンと、NG1は段階的に金属イオンを補捉していく様子が示され、分子サイズが大きくなるほど多くの金属を捕捉できることが示唆された。分岐鎖にアミノ基とアミド基をもつN8,N4,N1は、N8とN4で、金属塩の添加によりナフタレンの発光極大(340nm)の蛍光強度の増大が見られた。N4は、試料濃度に対する金属イオンの濃度が数倍のところで蛍光強度が一定となり、金属イオンの種類による蛍光強度の違いは殆ど見られなかった。一方、N8では、Mg^<2+>,Ca^<2+>,Ba^<2+>,Co^<2+>,Ag^<+>に対してはN4と同様に試料濃度に対する金属イオン濃度が数倍のところで蛍光強度はほぼ一定となったが、Zn^<2+>,Cd^<2+>,Al^<3+>,Ni^<2+>に対しては、金属塩を更に添加すると蛍光強度はなだらかに増加し続け、分子サイズが大きくなることで金属イオンの選択性が向上することがわかった。簡便分析試薬となる、新規なデンドリマー型蛍光性化学センサーを合成し、その性質について調べた。分岐鎖にアミノ基とエステル基をもつTG0,TG1,NG1,NGIは、Al^<3+>,Fe^<3+>,Cu^<2+>,Zn^<2+>を添加すると、長波長側の蛍光が減少し、340nm付近のナフタレン環由来の蛍光が増大した。これは、3級アミンとナフタレン環との分子内相互作用による分子内エキサイプレクスが、3級アミンに金属イオンが配位されることで、形成されなくなったためである。TG1の部分骨格はNG0と類似の構造のため、金属イオンの補捉に関する選択性はよく似ており、Zn^<2+>に対して最も強い蛍光を示した。一方、NGIではAl^<3+>に対して最も強い蛍光を示した。TG1,NG0,NG1の蛍光強度のモル比プロットから、NG0は金属イオンと1:1錯体を形成し、TG1は少なくとも2個以上の金属イオンと、NG1は段階的に金属イオンを補捉していく様子が示され、分子サイズが大きくなるほど多くの金属を捕捉できることが示唆された。分岐鎖にアミノ基とアミド基をもつN8,N4,N1は、N8とN4で、金属塩の添加によりナフタレンの発光極大(340nm)の蛍光強度の増大が見られた。N4は、試料濃度に対する金属イオンの濃度が数倍のところで蛍光強度が一定となり、金属イオンの種類による蛍光強度の違いは殆ど見られなかった。一方、N8では、Mg^<2+>,Ca^<2+>,Ba^<2+>,Co^<2+>,Ag^<+>に対してはN4と同様に試料濃度に対する金属イオン濃度が数倍のところで蛍光強度はほぼ一定となったが、Zn^<2+>,Cd^<2+>,Al^<3+>,Ni^<2+>に対しては、金属塩を更に添加すると蛍光強度はなだらかに増加し続け、分子サイズが大きくなることで金属イオンの選択性が向上することがわかった。簡便分析試薬となる、新しい蛍光性化学センサーとして、分岐鎖にアミノ基とエステル基をもつデンドリマーの外殻末端部に複数のナフタレン環を導入した系を合成し、その分光学的性質について調べた。今回合成した系は、デンドリマーのコアと分子サイズの異なるTG0,TG1,NG0,NG1の4化合物である。TG0,TG1,NG0,NG1は、いずれもMg^<2+>,Ca^<2+>,Ba^<2+>,Co^<2+>,Ni^<2+>,Cu^<2+>,Zn^<2+>,Cd^<2+>,Ag^<+>,Fe^<3+>,Al^<3+>の各過塩素酸塩の添加による吸収スペクトルの変化は観測されなかった。また、TG0は、蛍光スペクトルの変化も観測されなかった。しかし、TG1,NG0,NG1の蛍光スペクトルは、Al^<3+>,Fe^<3+>,Cu^<2+>,Zn^<2+>を添加すると、長波長側の蛍光が減少し、340nm付近に発光極大をもつナフタレンの蛍光が増大した。
KAKENHI-PROJECT-17550070
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17550070
簡便分析試薬としての新規なデンドリマー型蛍光性化学センサーの開発
これは、TG1では分岐鎖の3級アミンとナフタレン環、NG0ではコアの3級アミンとナフタレン環、NG1ではコアと分岐鎖の3級アミンとナフタレン環との分子内相互作用により形成されていた分子内エキサイプレクスが、3級アミンに金属イオンが配位されることで、形成されなくなったためである。TG1の部分骨格はNG0と類似の構造のため、金属イオンの捕捉に関する選択性はよく似ており、Zn^<2+>に対して最も強い蛍光を示した。一方、NG1ではAl^<3+>に対して最も強い蛍光を示した。TG1,NG0,NG1の蛍光強度のモル比プロット(観測波長:340nm,425nm)から、NG0は金属イオンと1:1錯体を形成し、TG1は少なくとも2個以上の金属イオンと、NG1は段階的に金属イオンを捕捉していく様子が示され、分子サイズが大きくなるほど、多くの金属を捕捉できることが示唆された。簡便分析試薬となる、新規なデンドリマー型蛍光性化学センサーを合成し、その性質について調べた。分岐鎖にアミノ基とエステル基をもつTG0,TG1,NG0,NG1は、A1^<3+>,Fe^<3+>,Cu^<2+>,Zn^<2+>を添加すると、長波長側の蛍光が減少し、340nm付近のナフタレン環由来の蛍光が増大した。これは、3級アミンとナフタレン環との分子内相互作用による分子内エキサイプレクスが、3級アミンに金属イオンが配位されることで、形成されなくなったためである。TG1の部分骨格はNG0と類似の構造のため、金属イオンの捕捉に関する選択性はよく似ており、Zn^<2+>に対して最も強い蛍光を示した。一方、NG1ではA1^<3+>に対して最も強い蛍光を示した。TG1,NG0,NG1の蛍光強度のモル比プロットから、NG0は金属イオンと1:1錯体を形成し、TG1は少なくとも2個以上の金属イオンと、NG1は段階的に金属イオンを捕捉していく様子が示され、分子サイズが大きくなるほど多くの金属を捕捉できることが示唆された。分岐鎖にアミノ碁とアミド基をもつN8,N4,N1は、N8とN4で、金属塩の添加によりナフタレンの発光極大(340nm)の蛍光強度の増大が見られた。N4は、試料濃度に対する金属イオンの濃度が数倍のところで蛍光強度が一定となり、金属イオンの種類による蛍光強度の違いは殆ど見られなかった。一方、N8では、Mg^<2+>,Ca^<2+>,Ba^<2+>,Co^<2+>,Ag^+に対してはN4と同様に試料濃度に対する金属イオン濃度が数倍のところで蛍光強度はほぼ一定となったが、Zn^<2+>,Cd^<2+>Al^<3+>,Ni^<2+>に対しては、金属塩を更に添加すると蛍光強度はなだらかに増加し続け、分子サイズが大きくなることで金属イオンの選択性が向上することがわかった。
KAKENHI-PROJECT-17550070
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17550070
口腔内環境因子・多菌種間相互作用がもたらす口臭物質産生促進メカニズムの解明
口腔内常在細菌Veillonella属・Actinomyces属による口臭物質硫化水素の産生活性およびその産生機構について検討した結果、これらの細菌が硫化水素産生活性を持ち、その活性はpHや乳酸濃度などの環境により影響されることが示された。また産生機構は同属内でも菌種により少し異なった。実際に糖代謝菌等との共存により硫化水素産生活性が影響を受ける可能性も示唆されたことから、口臭と細菌の関わりが口腔バイオフィルム微生物生体系全体及び口腔環境変動も含めた口腔全体で捉える必要性があることが示唆された。口腔内常在細菌Veillonella属・Actinomyces属による口臭物質硫化水素の産生活性およびその産生機構について検討した結果、これらの細菌が硫化水素産生活性を持ち、その活性はpHや乳酸濃度などの環境により影響されることが示された。また産生機構は同属内でも菌種により少し異なった。実際に糖代謝菌等との共存により硫化水素産生活性が影響を受ける可能性も示唆されたことから、口臭と細菌の関わりが口腔バイオフィルム微生物生体系全体及び口腔環境変動も含めた口腔全体で捉える必要性があることが示唆された。口臭の主な原因は口腔細菌の代謝産物によるものが大部分であると考えられるが、中でも口腔VeillonellaおよびActinomyces属が口臭発生部位である舌苔中の硫化水素産生菌のうち多くをしめることを報告してきた(Washio J et al., 2005)。これらの細菌は口腔常在細菌の一つであり、また硫化水素産生活性を持つことが知られているため、特に口腔疾患を持たないような健常者の口腔内においてH_2Sを産生することで口臭の一因を担うと考えられるが、実際口腔内においてどのような基質から硫化水素を出しているかといった詳細な検討はなされていなかった。そこで、口腔内によくいると考えられているVeillonella属3菌種・Actinomyces属3菌種の標準株を用い、実際にシステインなどのアミノ酸、システインを含有する短鎖ペプチド、トリプトンなどのタンパク質などを基質としてあたえ、硫化水素産生活性を調べたところ、いずれの菌もシステイン、システイン含有ペプチドからはよく硫化水素を産生し、タンパク質やメチオニンは、硫化水素産生の基質としては利用されないもしくはされにくいことがわかった。また、これまでの研究で環境因子の影響により代謝活性が影響を受ける可能性が示唆されてきたことから、現在、この産生に対しても環境因子の影響や菌種間の相互作用などがあるかについて、検討を始めているところである。昨年度までに、口臭の主な原因である硫化水素は口腔内、特に舌苔中のVeillonella属およびActinomyces属によりよく産生され、かつそれらはシステインやシステイン含有ペプチドをよく分解し硫化水素を産生することを報告してきた。そこで本年度は、これらの細菌によるシステインの代謝経路を推定するために、代謝産物の定量分析方法の確立を行った。従来の硫化物の測定に加え、アンモニア、有機酸および代謝中間体の定量分析を試みた。アンモニアの測定には既存のポータブル測定器を用い、有機酸は既存の液体クロマトグラフや、同じく既存のキャピラリー電気泳動装置と飛行時間測定型質量分析計を組み合わせた装置(CE-TOFMS)を用いた。なお、CE-TOFMSはイオン性低分子化合物の同定・分析に優れた機械であり、代謝産物及び代謝中間体の分析に適している。また少量のサンプルより、網羅的な同定・定量分析が可能なことから、本装置を用いての測定手法の確立を試みた。現在、測定手法はほぼ確立し、Veillonellaを用いた実際の測定を進めているところであるが、システインを分解し、アンモニアやその他の代謝中間体が産生される様子が観察されつつある。また、同時に菌体より取り出した粗酵素抽出液を用いた酵素活性の測定を行い、既知の阻害剤などを添加することで関連代謝酵素の特定も試みているところである。当該研究の目的である環境因子の影響についても本手法を用いて検討を始めており、多菌種間の相互作用とあわせて、今後さらに検討していきたい。昨年度までに、既存のキャピラリー電気泳動装置と飛行時間測定型質量分析計を組み合わせた装置(CE-TOFMS)を用いた口腔内細菌の代謝中間体および代謝産物の定量分析(メタボローム解析)方法の確立を行ってきたが、今年度は特に、システインの代謝機構を推定するための代謝中間体および代謝産物の定量分析方法についてさらなる確立を試み、その手法を用いてVeillonella属によるシステイン代謝機構の解明を行った。実験には3種のVeillonella属を用い、各菌の粗酵素抽出液を用いてシステインを分解させたときの代謝中間体・代謝産物を検出・定量し、その変化を詳細に検討することで、各細菌の硫化物産生酵素の特定や、活性測定を試みた。その結果、これまで測定してきた硫化物及びアンモニアの測定結果からだけではわからなかったシステイン代謝機構が、CE-TOFMSを用いた代謝中間体および代謝産物の定量解析結果を加えることで、より詳細に検討できる可能性が示された。まず、菌種により酵素活性は大きく異なり、また検出される物質にも違いがみられた。また、既知の酵素阻害剤などを添加し、検出される代謝産物の違いを比較することで、関連代謝酵素の特定も試みたが、こちらも菌種によりその影響が様々であり、システイン代謝機構は菌種(speciesレベル)の違いにより、関連代謝酵素の種類や性質が少しずつ異なる可能性が示唆された。また、同一菌種でも条件によって活性や検出される代謝中間体の量などに違いがみられたことから、各種条件との関連性などについても、さらなる検討を重ねているところである。
KAKENHI-PROJECT-20791632
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20791632
口腔内環境因子・多菌種間相互作用がもたらす口臭物質産生促進メカニズムの解明
今回確立した手法及び得られた結果は、代表的な口臭物質であり且つ歯周病にも関連する硫化物の産生機構の詳細を明らかにし、また阻害剤の開発(ターゲット物質の選定や抑制効果の検討)を行う上でも、非常に有用な手法・情報になると考えられ、今後の口臭予防や歯周病予防の研究にも寄与できる可能性が高いと考えられた。
KAKENHI-PROJECT-20791632
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20791632
キイロショウジョウバエにおける単為生殖の遺伝学的研究
キイロショウジョウバエで見出された一系統、gyn-F9は、雄不妊突然変異系統ms(3)K81雄と交配すると、きわめて高率で単為生殖個体を産生することがすでに明らかにされている。本研究では、gyn-F9系統の未受精卵が2倍体に復帰する仕組みを細胞遺伝学的手法により明らかにすることを目的とした。1.単為生殖に係わる遺伝子gyn-F9と野性型系統との間の染色体置換系統および組み換え個体について単為生殖能力を調べた結果、gyn-F9の特異な性質は、第2および第3染色体のいずれも中央部に座位を占める2つの劣性突然変異遺伝子が関与し、両座位が同時に劣性ホモ接合のとき、単為発生を高率でおこすことが明らかとなった。2.2倍体化の遺伝的機構複数の劣性可視突然変異をヘテロでもつ雌から得られた単為生殖個体の遺伝子型を調べた結果、未受精卵の2倍体への復帰は、第2減数分裂で作られた4個の卵原核のうち、2個の非姉妹核同志が融合することによっておこることが判明した。3.2倍体化の細胞学的機構卵原核の融合がおこる原因としては、減数分裂の過程に何らかの異常があるためとするのが最も考えやすい。そこで、gyn-F9の性質を支配する2つの遺伝子のそれぞれについてホモ接合系統を作成し、その減数分裂を直接観察することを試みた。しかし、ショウジョウバエの減数分裂は、産卵直後にきわめて短時間におこるため、その観察は困難をきわめ、現在のところ、明確な結論を出すに足る観察例を得るに至らないため、実験を継続中である。キイロショウジョウバエで見出された一系統、gyn-F9は、雄不妊突然変異系統ms(3)K81雄と交配すると、きわめて高率で単為生殖個体を産生することがすでに明らかにされている。本研究では、gyn-F9系統の未受精卵が2倍体に復帰する仕組みを細胞遺伝学的手法により明らかにすることを目的とした。1.単為生殖に係わる遺伝子gyn-F9と野性型系統との間の染色体置換系統および組み換え個体について単為生殖能力を調べた結果、gyn-F9の特異な性質は、第2および第3染色体のいずれも中央部に座位を占める2つの劣性突然変異遺伝子が関与し、両座位が同時に劣性ホモ接合のとき、単為発生を高率でおこすことが明らかとなった。2.2倍体化の遺伝的機構複数の劣性可視突然変異をヘテロでもつ雌から得られた単為生殖個体の遺伝子型を調べた結果、未受精卵の2倍体への復帰は、第2減数分裂で作られた4個の卵原核のうち、2個の非姉妹核同志が融合することによっておこることが判明した。3.2倍体化の細胞学的機構卵原核の融合がおこる原因としては、減数分裂の過程に何らかの異常があるためとするのが最も考えやすい。そこで、gyn-F9の性質を支配する2つの遺伝子のそれぞれについてホモ接合系統を作成し、その減数分裂を直接観察することを試みた。しかし、ショウジョウバエの減数分裂は、産卵直後にきわめて短時間におこるため、その観察は困難をきわめ、現在のところ、明確な結論を出すに足る観察例を得るに至らないため、実験を継続中である。
KAKENHI-PROJECT-61540466
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61540466
エフェクトシステムの表示的意味論にまつわる数学的構造
1. 2017年度に得た、次数付き線形べきコモナドを対称モノイダル圏のなす多重圏におけるモノイドとして特徴づけた研究成果は、理論計算機科学の代表的な国際会議であるFoSSaCS2018にて採択された。2.次数付きモナドの応用の一つとして、アルゴリズムの差分プライバシーを型理論的に保証する研究を行った。この研究はArthur Azevedo de Amorim氏(Carnegie Mellon大学)、Justin Hsu氏(Wisconsin-Madison大学)、Marco Gaboardi氏(Buffalo大学)との共同研究である。この研究の基礎となったのは、ReedとPierceらのアフィン型システムの基本的な部分に対する距離空間を用いた意味論である(2017年度に国際学会POPLで発表)。2018年度の主な成果は、この距離空間的意味論を、確率的計算を表す型に対して拡張した点である。この拡張において導入したのがモナドの次数付き!-持ち上げと呼ばれる構造である。これは、確率的計算を表す型に関する推論規則に自然に対応するものとして導入したが、確率分布モナドと距離空間のセッティングで吟味すると、ある種の性質を満たす確率分布間の距離(Kullback-Leibler divergence、statistical divergence)と丁度対応するものであることがわかった。また、この対応を応用し、確率的計算を表す型を適切な次数付き!-持ち上げにより解釈することで、プログラムの(epsilon, delta)-差分プライバシーを表現できることがわかった。本年度はモナドの次数付き!-持ち上げという構造を導入した。これは次数付きモナドと類似の構造を持ち、ReedとPierceらの計算型をエフェクトで拡張したものを解釈できる。しかも距離空間の圏において、確率分布モナドの!-持ち上げと、合成性とよばれる性質を満たす確率分布間の距離が丁度対応していることがわかった。これらは、エフェクトシステムの表示的意味論にまつわる新たな数学的構造の発見と、その特徴づけを与えた成果である。平成30年度にあげていた研究課題を含む以下の課題について引き続き取り組む予定である。*出力機能を付与した確率的プログラミング言語を用いて、様々なプログラム解析(コスト解析、実行時間解析)を確率的に拡張する方法を考察する。加えて、次数付きモナドの構造を盛り込み、コストや実行時間の期待値に関する見積もりを行える型システムの設計と意味論を考察する予定である。*エフェクト変数の表示的意味論。エフェクト変数のあるエフェクトシステムはプログラムの副作用をより柔軟に見積もることができる。この機構の表示的意味論を、Lawvereのhyperdoctorineを参考にして与える予定である。この意味論の上に1)エフェクト多相性2)エフェクトの再帰方程式の解釈を与え、より強力なエフェクトシステムのための表示的意味論を展開する予定である。また、新しく以下の研究課題についても取り組む予定である。*エフェクトシステムとその双対であるコエフェクトシステムは、プログラムのコスト分析において同等な分析能力を持つことがEzgi Cicekらにより報告されている。本研究課題ではこの同等性の意味論的な対応物を次数付きコモナドと次数付きモナドの間の対応関係から説明することを検討する。本研究ではエフェクトシステムに対し、パラメトリックエフェクトモナド(PEM)を用いて表示的意味論を与えている。これは標準的な圏論の構造であるモナドを一般化したものである。本年度は、モナドの随伴による分解という古典的な事柄をPEMに拡張する研究を行った。ある固定されたモナドTに対し、それを誘導する随伴L -| RのことをT-Resolutionという。T-Resolutionとそれら(随伴)の間の射はT-Resolutionの圏をなし、Kleisli圏とEilenberg-Moore圏を用いたモナドTのResolutionはそれぞれT-Resolutionの圏の始対象と終対象となることが知られている。今年度はこの古典的な結果の類似物をPEMに対して与えた。まずResolutionの概念をPEMに対して拡張した。随伴だけではPEMのデータを復元するには不十分だったため、さらにモノイドの圏に対する作用を加えてResolutionの定義とした。次に、PEMに対するKleisli圏とEilenberg-Moore圏を定義し、それらがResolutionの圏において始対象と終対象となることを示した。本研究のプロジェクトの一つに「PEMの圏論的な性質の分析」があり、このプロジェクトの本年度の目標は「PEMの随伴による分解に関する研究」である。研究実績欄に記したように、本年度のこの目標を達成し、研究は概ね順調に推移していると考えられる。本研究ではモナドの一般化である次数付きモナド(パラメトリックエフェクトモナドから名称を変更)と呼ばれる構造を導入し、エフェクトシステムの表示的意味論に応用してきた。本年度は研究計画を変更し、次数付きモナドと次数付きコモナドの間の分配束の定式化と、その具体例の研究を行った。プログラミング言語の表示的意味論において、計算効果を表す構造としてモナドが用いられる一方、プログラムが消費する資源を(モナドの双対である)コモナドで表すアプローチがある。ここで、モナドとコモナドの間に分配束とよばれる構造を導入すると、これらの意味論を組み合わせ、資源を消費し外界に作用するプログラムの意味を合成的に与えることができる。このアプローチを次数付きモナド及びコモナドに拡張することで、副作用の生成と資源の消費の両方を詳細に捉える型システムと、その意味論が展開できると考えた。
KAKENHI-PROJECT-15K00014
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K00014
エフェクトシステムの表示的意味論にまつわる数学的構造
この着想の元、次数付きモナドと次数付きコモナドの間の分配束を定義し、その具体例を与えた。また、この分配束を与えるにはモナドおよびコモナドの次数の間に外部Zappa-Szep積の構造が必要であることがわかった。また、関連する研究として、領域の圏と距離空間の圏を融合した圏を構成し、この中で高階プログラミング言語Fuzzの距離空間的意味論を与えた。本年度行った次数付きモナドと次数付きコモナドの間の分配束に関する研究は、本研究のプロジェクトの一つである「次数付きモナドの圏論的な性質の分析」における成果に該当し、本研究の進展に貢献している。本研究ではモナドの一般化である次数付きモナドと呼ばれる構造を導入し、エフェクトシステムの表示的意味論に応用してきた。本年度はその双対となる次数付きコモナドの研究を行った。Girardの導入した線形論理は冪様相で始まる論理式に対して自由にcontractionやweakeningを行うことができる。後にGirard, Scedrov, Scottらは有界線形論理を導入し、冪様相にパラメータを追加してcontractionやweakeningの回数を制御できるようにした。このパラメータ化された冪様相は非明示的計算量理論において威力を発揮した他、関数型言語のコンパイルや、プログラムのロバストネスを見積もるのに応用されている。パラメータ化された冪様相の圏論的意味論は、Gaboardiらの2014年の研究で「次数付き線形べきコモナド」として与えられているが、その定義は複雑で、端的にどのような構造を表しているのか不明であった。これは線形論理の冪様相に対応する圏論的構造(線形べきコモナド)が対称モノイダル随伴から導かれるというエレガントな特徴づけがあるのとは対照的である。本研究は「次数付き線形べきコモナドはどのような構造を表しているのか?」という疑問に取り組み、以下の成果を得た。まず最初に、次数付き線形べきコモナドの定義中の4つの非自明な公理が、対称モノイダル圏のなす二重圏の2-セルに関する公理の2通りのインスタンスとなっていることを見出した。次に対称モノイダル圏のなす二重圏の水平方向を多重圏へと拡張した結果、次数付き線形べきコモナドはこの多重圏の中の特定の形式のモノイドとぴったり対応することがわかった。そしてこの特徴づけを利用して、次数付き線形べきコモナドのEilenberg-Moore圏に相当するものを導出し、これが線形べきコモナドの分解を与えることを示した。本年度の研究により、次数付き線形べきコモナドという複雑な構造を(複雑な圏の)モノイドとして簡潔に特徴づけた。そしてこの特徴づけを応用し、次数付き線形べきコモナドの分解を与えた。これらの成果をまとめた論文は、その新規性が評価され、理論計算機科学の著名な国際学会であるFoSSaCS'18で採択されるに至った。
KAKENHI-PROJECT-15K00014
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K00014
鉄による脳の老化制御に関する研究
わが国は、鉄摂取の不足が進行している一方で、マンガン摂取の過剰傾向が続いている。特に女性は男性に比べて鉄の必要量が高いにも関わらず、鉄摂取量は男性より少なく、鉄欠乏の有病率が高い。この状況において女性の脳の変性疾患が著明に増加している。そこで、食事性鉄欠乏ーマンガン過剰が脳の代謝や機能にどのような影響を及ぼすか、ラットを用いた基礎実験により検討している。鉄無添加ならびに米国National Research Councilの定める鉄必要量レベルの計2段階とマンガン必要量の1, 3, 6, 9倍レベルの計4段階に設定した2要因条件で飼育したラットの脳各部位中マンガン濃度を測定した。2元配置分散分析の結果では、重度鉄欠乏ですべての脳の部位におけるマンガン濃度が有意に上昇した。また、分散分析の結果、大脳皮質、線条体、小脳中マンガン濃度に対するマンガンレベルの主効果が有意であった。順位相関分析では、海馬、間脳、小脳においては、重度鉄欠乏時のみに飼料中マンガンレベルと各部位中マンガン濃度の間に有意な正の相関関係があった。大脳皮質および線条体では、重度鉄欠乏時も充足時も、飼料中マンガンレベルと脳部位中マンガン濃度の間に正の相関関係があったが、大脳皮質では重度鉄欠乏時に相関係数が増加した。以上の結果から、部位によっては飼料中マンガンレベル依存性のマンガン濃度の上昇が、重度鉄欠乏によって増強されることが明らかとなった。また、従来検討されて来なかった重度鉄欠乏時にペアードフィーディングを行なった結果、重度鉄欠乏時にみられる血液・肝臓中脂質異常は概ね鉄欠乏自体に起因するが、肝臓中リン脂質濃度には鉄欠乏よりも飼料摂取量の低下の影響が見られることが明らかとなった。今後、鉄欠乏に伴うマンガン貯留のメカニズムやマンガン貯留が行動に及ぼす影響について検討していきたい。重度鉄欠乏ーマンガン負荷時における脳各部位のマンガン濃度の分析、並びに、行動異常の解析がほぼ終了し、研究計画はおおむね順調に進展している。この結果、重度鉄欠乏によってすべての脳部位においてマンガン濃度が上昇し、脳の部位によっては用量依存性のマンガン濃度の上昇が重度鉄欠乏によって増強されることが明らかとなった。重度鉄欠乏ーマンガン負荷時のすべての脳部位におけるマンガン分析ならびに行動解析を実施したので、今後、当初の計画に従って、実施可能な脳の部位については、どの画分でマンガン濃度が上昇したのか測定し、さらに、鉄欠乏ラットの脳試料を用いて脳のマンガン取り込みならびに老化にかかわる遺伝子発現に対する鉄欠乏の影響について解析したい。研究成果は国内外の学会または国際誌において発表する予定である。わが国の食生活は、鉄の摂取が不足し、マンガンが摂取過剰傾向にある特徴があり、女性において鉄欠乏症の有病率が高い。一方、脳の変性疾患が近年増加にあるが、男性に比べ女性において特に顕著である。そこで、食事性鉄欠乏ーマンガン過剰が脳の代謝や機能にどのような影響を及ぼすか、ラットを用いた基礎実験により検討した。2段階の飼料中鉄レベルと4段階の飼料中マンガンレベルの2要因条件で飼育したラットの脳各部位を灰化し、マンガン濃度を誘導結合プラズマ質量分析法で測定した。データを線形模型、一般線形模型、非線形飽和模型で解析した。海馬および線条体では、線形模型が最小の赤池情報量を与え、マンガン濃度に対して飼料中鉄レベルと飼料中マンガンレベルが線形に寄与した。これらの部位では、鉄欠乏によってマンガン濃度が上昇し、マンガンの負荷によってマンガン濃度が増加した。大脳皮質では、非線形飽和模型が最小の赤池情報量を与えた。大脳皮質では、マンガン負荷量に対してマンガン濃度は飽和曲線で示される用量ー効果関係を呈し、マンガン負荷に伴うマンガンの蓄積は鉄欠乏によって増強されることが明らかとなった。オープンフィールド法を用いたラットの行動解析の結果、鉄欠乏によってグルーミング開始までの時間が遅延し、移動距離、移動時間、不動時間が増加し、鉄充足時にはほぼ見られなかった無活動時間が鉄欠乏によって出現するようになる等の変化が認められた。また、マンガン負荷によって中央部での滞在時間が延長するなどの行動の異常が認められた。以上の結果から、鉄欠乏およびマンガン負荷によって脳各部位のマンガン濃度が増加し、行動異常を来たすことが明らかとなった。今後、脳の測定部位を増やし、行動解析をさらに続け、食事性鉄欠乏が招く脳の代謝異常と機能異常を明らかにして行きたい。おおむね順調に進展しており、単純な鉄欠乏、マンガン過剰だけではなく、脳部位におけるマンガン濃度や行動に対する両者の交互作用も検討することができた。わが国は、鉄摂取の不足が進行している一方で、マンガン摂取の過剰傾向が続いている。特に女性は男性に比べて鉄の必要量が高いにも関わらず、鉄摂取量は男性より少なく、鉄欠乏の有病率が高い。この状況において女性の脳の変性疾患が著明に増加している。そこで、食事性鉄欠乏ーマンガン過剰が脳の代謝や機能にどのような影響を及ぼすか、ラットを用いた基礎実験により検討している。鉄無添加ならびに米国National Research Councilの定める鉄必要量レベルの計2段階とマンガン必要量の1, 3, 6, 9倍レベルの計4段階に設定した2要因条件で飼育したラットの脳各部位中マンガン濃度を測定した。2元配置分散分析の結果では、重度鉄欠乏ですべての脳の部位におけるマンガン濃度が有意に上昇した。また、分散分析の結果、大脳皮質、線条体、小脳中マンガン濃度に対するマンガンレベルの主効果が有意であった。
KAKENHI-PROJECT-17K00877
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K00877
鉄による脳の老化制御に関する研究
順位相関分析では、海馬、間脳、小脳においては、重度鉄欠乏時のみに飼料中マンガンレベルと各部位中マンガン濃度の間に有意な正の相関関係があった。大脳皮質および線条体では、重度鉄欠乏時も充足時も、飼料中マンガンレベルと脳部位中マンガン濃度の間に正の相関関係があったが、大脳皮質では重度鉄欠乏時に相関係数が増加した。以上の結果から、部位によっては飼料中マンガンレベル依存性のマンガン濃度の上昇が、重度鉄欠乏によって増強されることが明らかとなった。また、従来検討されて来なかった重度鉄欠乏時にペアードフィーディングを行なった結果、重度鉄欠乏時にみられる血液・肝臓中脂質異常は概ね鉄欠乏自体に起因するが、肝臓中リン脂質濃度には鉄欠乏よりも飼料摂取量の低下の影響が見られることが明らかとなった。今後、鉄欠乏に伴うマンガン貯留のメカニズムやマンガン貯留が行動に及ぼす影響について検討していきたい。重度鉄欠乏ーマンガン負荷時における脳各部位のマンガン濃度の分析、並びに、行動異常の解析がほぼ終了し、研究計画はおおむね順調に進展している。この結果、重度鉄欠乏によってすべての脳部位においてマンガン濃度が上昇し、脳の部位によっては用量依存性のマンガン濃度の上昇が重度鉄欠乏によって増強されることが明らかとなった。脳部位におけるマンガン分析が、大脳皮質、海馬、線条体に限られたため、今後、測定部位を増やしマンガンの蓄積と行動異常の関連を明らかにして行きたい。また、脳のマンガン代謝にかかわる遺伝子発現について解析を始めたい。重度鉄欠乏ーマンガン負荷時のすべての脳部位におけるマンガン分析ならびに行動解析を実施したので、今後、当初の計画に従って、実施可能な脳の部位については、どの画分でマンガン濃度が上昇したのか測定し、さらに、鉄欠乏ラットの脳試料を用いて脳のマンガン取り込みならびに老化にかかわる遺伝子発現に対する鉄欠乏の影響について解析したい。研究成果は国内外の学会または国際誌において発表する予定である。(理由)動物の行動解析で種々の変化を発見することができたが、行動解析に手数を要し、マンガン分析に避ける時間が限られた。また、研究分担者が4月に異動したので、当該年度は研究分担者が経費を使用しないで実施できる結果の解析ならびに考察を分担したため次年度使用額が生じた。(使用計画)脳の他の部位におけるマンガン分析等に必要な物品費やその他経費に使用したい。(理由)当該年度は脳の各部位におけるマンガンならびに他の微量元素の分析を主に実施したので、脳のマンガン取り込みにかかわる遺伝子発現の分析は次年度に実施する必要がある。当該年度については、研究分担者が、経費を使用しないで実施できる測定結果の解析ならびに考察を分担したために、次年度使用額が生じた。(使用計画)脳のマンガン取り込みにかかわる遺伝子発現の分析等に必要な物品費やその他経費に使用したい。
KAKENHI-PROJECT-17K00877
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K00877
ガスハイドレート固溶体の分子動力学シミュレーション
本研究の目的は,混合ガスハイドレート(ガスハイドレート固溶体)の諸性質を分子動力学(MD)計算で再現&予言(予測)するとともに,諸性質のあらわれるメカニズムをミクロな原子レベルで考察することにある.経験的に決められた粒子間ポテンシャル(河村)を用いて,構造I型のメタン+二酸化炭素混合ハイドレートについて,格子定数およびモルエンタルピーの組成依存をいくつかの温度・圧力条件下で調べた.なお,混合ガスハイドレートとしては,3種類の系列の固溶体を作成した:1.SケージにCH4分子が,MケージにCO2分子が完全に濃集して分布した固溶体2.SケージとMケージにCH4分子とCO2分子が均等に入った固溶体3.SケージにCO2分子が,MケージにCH4分子が完全に濃集して分布した固溶体得られた特徴的な結果は以下のとおりである.1.格子定数値は結晶中のMケージおよびSケージにおけるCO2存在率[=CO2/(CH4+CO2)]に応じて系統的に変化していくが,特にSケージ中のCO2存在率に敏感である.2.特にSケージ中のCO2存在率が高くなると結晶が圧縮されやすくなる傾向がある.二酸化炭素ハイドレートの体積弾性率はメタンハイドレートのものに比べて約1割小さい.3.CO2ガスがMケージに優先的に入る構造の方が,CH4とCO2が2種類のケージに均等に入った構造よりも低エンタルピーである.このことは,ラマン分光分析でCH4とCO2のケージ占有率を求めた結果(Nakano and Ohgaki, 2000)と調和的である.本研究の目的は,混合ガスハイドレート(ガスハイドレート固溶体)の諸性質を分子動力学(MD)計算で再現&予言(予測)するとともに,諸性質のあらわれるメカニズムをミクロな原子レベルで考察することにある.経験的に決められた粒子間ポテンシャル(河村)を用いて,構造I型のメタン+二酸化炭素混合ハイドレートについて,格子定数およびモルエンタルピーの組成依存をいくつかの温度・圧力条件下で調べた.なお,混合ガスハイドレートとしては,3種類の系列の固溶体を作成した:1.SケージにCH4分子が,MケージにCO2分子が完全に濃集して分布した固溶体2.SケージとMケージにCH4分子とCO2分子が均等に入った固溶体3.SケージにCO2分子が,MケージにCH4分子が完全に濃集して分布した固溶体得られた特徴的な結果は以下のとおりである.1.格子定数値は結晶中のMケージおよびSケージにおけるCO2存在率[=CO2/(CH4+CO2)]に応じて系統的に変化していくが,特にSケージ中のCO2存在率に敏感である.2.特にSケージ中のCO2存在率が高くなると結晶が圧縮されやすくなる傾向がある.二酸化炭素ハイドレートの体積弾性率はメタンハイドレートのものに比べて約1割小さい.3.CO2ガスがMケージに優先的に入る構造の方が,CH4とCO2が2種類のケージに均等に入った構造よりも低エンタルピーである.このことは,ラマン分光分析でCH4とCO2のケージ占有率を求めた結果(Nakano and Ohgaki, 2000)と調和的である.本研究の目的は,混合ガスハイドレート(ガスハイドレート固溶体)の諸性質を分子動力学(MD)計算で再現&予言(予測)するとともに,諸性質のあらわれるメカニズムをミクロな原子レベルで考察することにある.本年度は,メタン+二酸化炭素混合ハイドレート(構造I型,Pm3n)について3種類の系列の固溶体,1.SケージにCH4分子が,MケージにCO2分子が完全に濃集して分布した固溶体2.SケージとMケージにCH4分子と,CO2分子が均等に入った固溶体3.SケージにCO2分子が,MケージにCH4分子が完全に濃集して分布した固溶体を作成し,格子定数およびモルエンタルピーの組成依存を調べた.経験的に決められた粒子間ポテンシャル(河村)を使用し,さまざまな組成(ガス分子の存在比)の結晶について,温度圧力一定条件下でMD計算を行うことによりマクロ量を求めた.現時点までに得られた特徴的な結果は以下の通りである.1.格子定数の組成依存MケージおよびSケージにおけるCO2存在率[=CO2/(CH4+CO2)]に応じて,格子定数は系統的に変化していく.二酸化炭素ハイドレートの格子定数はメタンハイドレートのものに比べて,100Kで0.1%,300Kで0.3%大きい(圧力0.01GPaのとき).格子定数値は,Mケージ中のCO2存在率よりもSケージ中のCO2存在率に敏感である.2.モルエンタルピーの組成依存上記3種類の固溶体の中では,CO2ガスがMケージに優先的に入る系列の構造が最も安定である.このことは,ラマン分光分析でCH4とCO2のケージ占有性を求めた結果(Nakano and Ohgaki, 2000)と調和的である.研究の目的は,混合ガスハイドレート(ガスハイドレート固溶体)の諸性質を分子動力学(MD)計算で再現&予言(予測)するとともに,諸性質のあらわれるメカニズムをミクロな原子レベルで考察することにある.
KAKENHI-PROJECT-14540450
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14540450
ガスハイドレート固溶体の分子動力学シミュレーション
メタン+二酸化炭素混合ハイドレート(構造I型,Pm3n)について3種類の系列の固溶体,1.SケージにCH4分子が,MケージにCO2分子が完全に濃集して分布した固溶体2.SケージとMケージにCH4分子とCO2分子が均等に入った固溶体3.SケージにCO2分子が,MケージにCH4分子が完全に濃集して分布した固溶体を作成し,温度圧力一定条件下でMD計算を行うことにより,格子定数およびモルエンタルピーの組成依存を調べてきた.今年度はまず.H2Oに関する粒子間ポテンシャル(河村)が改訂されたため再計算を行ったところ,昨年度に得られた圧力0.01GPaにおける以下の特徴的な性質が再現された.1.格子定数値は結晶中のMケージおよびSケージにおけるCO2存在率[=CO2/(CH4+CO2)]に応じて系統的に変化していくが,特にSケージ中のCO2存在率に敏感である.2.上記3種類の固溶体の中では,CO2ガスがMケージに優先的に入る系列の構造が最も低エンタルピーである.更に,1.00GPa以下の数通りの圧力条件下(0.25GPa刻み)で同様の計算を行うことにより,結晶格子の大きさの圧力依存を調べた.その結果,特にSケージ中のCO2存在率が高くなると結晶が圧縮されやすくなる傾向がみられた.二酸化炭素ハイドレートの体積弾性率はメタンハイドレートのものに比べて約1割小さい.
KAKENHI-PROJECT-14540450
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14540450
マグマ-マントル相互反応と未分化マグマの形成
上部マントルかんらん岩とメルトの相互反応をかんらん岩および噴出岩より読み取る研究を行い,以下の事実が明らかになった.1.高枯渇度かんらん岩には,水の存在下で生成されたもの(神居古潭帯)や,無水条件下で形成されたもの(パプア)がある.2.オマーン・オフィオライトのモホ遷移帯は基本的にはハルツバ-ジャイトと玄武岩質マグマとの反応の産物であり,太平洋ヘス・ディープのダナイト・トロクトライト・ガブロと類似している.3.海洋底玄武岩の形成モデルを提唱した.海洋底玄武岩は拡大速度によらずほぼ一定の化学組成を有することが知られている.一方,マントルかんらん岩は,拡大速度に依存したかなり大きな不均質性を有する.太平洋とケイマン・トラフのモホ遷移帯のダナイトの組成がほぼ類似していることから,初生マグマ(組成は拡大速度に依存して異なる)がかんらん岩とより低圧で反応することにより,はぼ同様のダナイトと二次的なマグマを生ずるらしい.4.かんらん岩とメルトの相亙反応による二次的メルトには,クロムなどのコンパティブル元素とナトリウム,水などのインコンパティブル成分が同時に濃集する.二次メルトからの晶出物の代表的なものはポディフォーム・クロミタイトである.5.クロミタイトは中程度に枯渇したハルツバ-ジャイトに特徴的に含まれる.また,そのスピネルのCr#は0.8前後のことが多く,海洋的というより島弧的環境を示唆する.6.ピクライト玄武岩はかんらん岩-メルト相互反応物の噴出相である.かんらん岩捕獲岩-アルカリ玄武岩の反応はピクライト的メルト(クリスタル・マッシュ)生成過程のよい類似物である.上部マントルかんらん岩とメルトの相互反応をかんらん岩および噴出岩より読み取る研究を行い,以下の事実が明らかになった.1.高枯渇度かんらん岩には,水の存在下で生成されたもの(神居古潭帯)や,無水条件下で形成されたもの(パプア)がある.2.オマーン・オフィオライトのモホ遷移帯は基本的にはハルツバ-ジャイトと玄武岩質マグマとの反応の産物であり,太平洋ヘス・ディープのダナイト・トロクトライト・ガブロと類似している.3.海洋底玄武岩の形成モデルを提唱した.海洋底玄武岩は拡大速度によらずほぼ一定の化学組成を有することが知られている.一方,マントルかんらん岩は,拡大速度に依存したかなり大きな不均質性を有する.太平洋とケイマン・トラフのモホ遷移帯のダナイトの組成がほぼ類似していることから,初生マグマ(組成は拡大速度に依存して異なる)がかんらん岩とより低圧で反応することにより,はぼ同様のダナイトと二次的なマグマを生ずるらしい.4.かんらん岩とメルトの相亙反応による二次的メルトには,クロムなどのコンパティブル元素とナトリウム,水などのインコンパティブル成分が同時に濃集する.二次メルトからの晶出物の代表的なものはポディフォーム・クロミタイトである.5.クロミタイトは中程度に枯渇したハルツバ-ジャイトに特徴的に含まれる.また,そのスピネルのCr#は0.8前後のことが多く,海洋的というより島弧的環境を示唆する.6.ピクライト玄武岩はかんらん岩-メルト相互反応物の噴出相である.かんらん岩捕獲岩-アルカリ玄武岩の反応はピクライト的メルト(クリスタル・マッシュ)生成過程のよい類似物である.上部マントルかんらん岩とメルトとの相互反応をかんらん岩より読み取る研究を行い,以下の事実を明らかにした.1.かんらん岩とメルトの相互反応の産物である二次的メルトにはコンパティブル元素であCrとNa,Ti,水などのインコンパティブル成分が同時に濃集する.前者はかんらん岩中の斜方輝石よりもたらされ,後者は部分ゾーンメルティング的効果によりもたらされる.二次的メルトからの晶出物の代表的なものがクロミタイト(クロムスピネルに富む岩石)である.2.クロミタイトは中程度に枯渇したハルツバ-ジャイト(クロムスピネルのCr♯が0.40.6程度)に特徴的に含まれる.多くの場合,クロムスピネルのCr♯が0.8前後であり,海洋的というより島孤的環境を示唆する.3.オマーン・オフィオライトなどのウエールライト,トロクトライト,ダナイトなどかんらん石に富む貫入岩(ガブロ,岩脈群に貫入)にはしばしばインコンパティブル成分(Ti,Na,水など)が濃集する.このような貫入岩はクリスタル・マッシュの固結物で,閉塞的なメルト通路での相互反応の産物が上昇,貫入したものである.4.太平洋ヘス・ディープで得られたかんらん岩-トロクトライト-ガブロ複合岩体もかんらん岩/メルト相互反応の産物である.これらの岩石のクロムスピネルには,そのTi含有量がMORB中のスピネルより高いものがかなりある.これらを含む岩石(主としてトロクトライト)は閉塞的な環境下で相互反応を受け,噴出しそこねたMORBからの固結物であろう.5.これらの結果は洪水玄武岩と海台玄武岩の組成の差を説明する.両者ともLIPをなし,巨大なプリュームに由来するものであるが,Tiなどのインコンパティブル元素の含有量が異なる(前者の方が高い).前者は厚いテクトスフェアのためより閉塞的な環境下でマグマを生成した.マントルかんらん岩とメルトの相互反応を研究した.方法・手順は以下の通りである.
KAKENHI-PROJECT-07454131
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07454131
マグマ-マントル相互反応と未分化マグマの形成
(1)かんらん岩体,かんらん岩捕獲岩中のかんらん岩とメルトの反応物を記載し,組織および化学的特徴を明らかにする.(2)Mgに富む火山岩中にかんらん岩/メトル相互反応の証拠を探る.(3)かんらん岩/メトル相互反応の一般化.対象物は以下の通りである.(1)ヘス・ディープ・ケイマン・トラフの海洋底のかんらん岩,トロクトライト,ガブロ.(2)オマーン・オフィオライト,トリニティー・オフィオライト,西南日本三郡帯,北海道神居古潭帯などの超マフィック岩体のかんらん岩およびクロミタイト.(3)日本列島各地,イラヤ火山(フィリピン)およびアバチャ火山(ロシア)のかんらん岩捕獲岩.(4)北海道渡島大島火山などのピクライト玄武岩.また,以下のような成果が得られた.(1)拡大速度を問わず,海洋底深部(モホ遷移帯)ではより初生的なMORBとかんらん岩の相互反応が起きており,ダナイト-トロクトライト-ガブロが生成され,未分化なMORB(修正された組成を持つ)が生成される.また枯渇しているMORBからもNa,Ti,H_2Oなどが濃集し含水鉱物などが晶出しうる.(2)クロミタイトの鉱物組み合わせ,組成から,同岩がメルト/ハルツバ-ジャイトの相互反応とマグマ混合によって形成されることがわかった.また,同岩の形成には系のCr/Al比が重要な役割を果たす.(3)ピクライト玄武岩は(1)のトロクトライトの噴出相であり,やはりかんらん岩とメルトの反応物である.
KAKENHI-PROJECT-07454131
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07454131
知識駆動型アルゴリズムを用いた高精度な手書き文字認識システムに関する研究
手書き文字認識システムは、音声認識システムと共に、ひとにやさしいマルチメディア情報化社会の実現に重要な役割を担うものであることは周知であり、その基礎となる手書き文字認識手法に関わる研究は国内外で盛んに行われている。本研究は、漢字の構造に着目した知識駆動型アルゴリズムおよびそれを用いた高精度な認識システムの構築を目的とする。当初の研究計画に沿って研究を進めた結果、以下の研究成果が得られた。・文字の構造情報に関する知識を計算機に覚え込ませ、知識駆動型アルゴリズムを実現するための文字構造情報抽出を行った。具体的には、仮名およびJIS第1水準全漢字に対し、互いによく間違う字種のグル-ピングを行い、構造的に最も違う部分を抽出し、知識ベース化を行った。・構造情報に関する知識ベースを用い手書き文字認識システムを構築した。また、データベースETL9Bを用いて評価実験を行った。その結果、従来の手法より認識精度が大幅に向上することが確認した。上記の研究成果をまとめ、雑誌論文欄で記載した通り電子情報通信学会論文誌などを通じ公表を行った。手書き文字認識システムは、音声認識システムと共に、ひとにやさしいマルチメディア情報化社会の実現に重要な役割を担うものであることは周知であり、その基礎となる手書き文字認識手法に関わる研究は国内外で盛んに行われている。本研究は、漢字の構造に着目した知識駆動型アルゴリズムおよびそれを用いた高精度な認識システムの構築を目的とする。当初の研究計画に沿って研究を進めた結果、以下の研究成果が得られた。・文字の構造情報に関する知識を計算機に覚え込ませ、知識駆動型アルゴリズムを実現するための文字構造情報抽出を行った。具体的には、仮名およびJIS第1水準全漢字に対し、互いによく間違う字種のグル-ピングを行い、構造的に最も違う部分を抽出し、知識ベース化を行った。・構造情報に関する知識ベースを用い手書き文字認識システムを構築した。また、データベースETL9Bを用いて評価実験を行った。その結果、従来の手法より認識精度が大幅に向上することが確認した。上記の研究成果をまとめ、雑誌論文欄で記載した通り電子情報通信学会論文誌などを通じ公表を行った。
KAKENHI-PROJECT-08680421
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08680421
教職科目と教科専門科目を横断する学際的な教員養成カリキュラムの開発
1各科目間連携の実践改善とその効果の検証として、教職科目・教科専門科目のさらなる連携を試行し、結果を分析した。まず教職科目同士の連携として、「教育の思想と原理」と「初等カリキュラム開発論」(とくに体育科)との連携による各科目担当教員の相互授業参加を各1回行った。次に、教職科目と教科専門科目の連携として、「道徳教育指導法」への「初等音楽科学習指導論」担当教員の授業参加を1回行った。また、教科専門科目同士の連携として、「社会科教育法」と「図画工作科教育法」との連携を各1回行った。これらの連携試行とともに受講学生への意識調査を実施した結果、科目間連携によって、学生の理解・関心の深化や、他の授業科目の内容も横断的に学習しようとする意欲の向上などについて、一定程度の効果があることが確認された。以上の成果の一部は、専門学会大会にて発表を行った。2小学校教員養成カリキュラムの構造的改善の計画立案として、連携の効果をより向上させる開講期・開講時間の調整、シラバスの修正、授業科目の新設・整理・統合などを検討した。昨年度に実施した教職コア・カリキュラムへのシラバス・授業内容の対応などの効果について今後継続的に確認する必要があるため、今年度はカリキュラム上の大幅な変更を行わないこととした。あわせて、上記の各科目間連携の成果をふまえつつ、これを拡大するためのカリキュラムの条件と、現行の学部全体のカリキュラム上の制約について、確認・検討した。昨年度の実施状況報告に記載した今年度研究計画のうち、3附属学校における教育実習との連携とその効果の検証については、十分進めることができなかった。1各科目間連携の実践改善とその効果の検証をもとに、カリキュラム総体としての相互の関連性をさらに多様かつ柔軟に提示する。2各科目間連携をより効果的なものとするための、小学校教員養成カリキュラム全体の構造的改善を、横断的指導力向上の観点から策定する。この成果については、カリキュラムの実際の改訂に反映される。3附属学校における教育実習との連携及び教員研修との連携について検討し、教育委員会との連携のうえで学部教育と教員研修の連続性ある実践的指導力向上プログラムを立案・試行しその効果を検証する。4本研究テーマにかかわる国内外の研究者・教育実践者を招聘して研究発表・交流を行う。そのさい、広島大学大学院教育学研究科に基盤を置き研究代表者・分担者の多くが所属し理事を務める初等教育カリキュラム学会を用いる予定である。1広島大学教育学部における現行の小学校教員養成カリキュラムの学習効果の調査分析の一環として、必修科目間における内容のつながりに対する学生の意識を調査分析した。その結果、教職科目間についての高い意識と、教育系科目・心理系科目間や教職科目・教科専門科目間についてのやや低い意識がそれぞれ確認され、今後の横断的・総合的なカリキュラム改善のための視点が指摘された。2各科目間連携の試行とその効果の検証として、「地域教育実践」(フレンドシップ事業)の事前指導において教職科目・教科専門科目の担当教員複数による講義を導入し、そこで理論と実践の往還的学習を図った。実践的指導力育成を軸とするこの各科目間連携について、学生の学習効果を分析した。その結果、教職・教科専門科目の講義を通じた学習内容を横断的・総合的に捉え直し、教育実践に応用するための認識を、学生が一定程度獲得していることが確認された。あわせて、今後のさらなる改善点が指摘された。3国内外の教育実践ならびに研究組織の視察・研究交流として、カナダのコンコルディア大学からAnita Sinner准教授を招聘し、2017年10月13日(金)に教員養成・国際研究セミナーを開催した。「小学校教員養成の特質」、「地域との連携による教員養成の強化」、「理論と実践の往還を図る教員養成ポートフォリオ」をトピックとして講演いただき、日本とカナダの比較とその背景などについて議論・交流を行った。その結果、ポートフォリオによる学生の自己認識・目的意識の深化や学習過程の具体化、地域連携による支援の重要性などといった両国の共通点ともに、制度としての教員養成課程や地域文化などにおける相違点も確認された。以上の成果をもとに、次年度の研究ならびにカリキュラム改革実践について計画を協同策定した。「研究実績の概要」に記載のとおり、平成29年度の研究実施計画123のすべてにわたりほぼ予定どおり進展している。1各科目間連携の実践改善とその効果の検証として、教職科目・教科専門科目のさらなる連携を試行し、結果を分析した。まず教職科目同士の連携として、「教育の思想と原理」と「初等カリキュラム開発論」(とくに体育科)との連携による各科目担当教員の相互授業参加を各1回行った。次に、教職科目と教科専門科目の連携として、「道徳教育指導法」への「初等音楽科学習指導論」担当教員の授業参加を1回行った。また、教科専門科目同士の連携として、「社会科教育法」と「図画工作科教育法」との連携を各1回行った。これらの連携試行とともに受講学生への意識調査を実施した結果、科目間連携によって、学生の理解・関心の深化や、他の授業科目の内容も横断的に学習しようとする意欲の向上などについて、一定程度の効果があることが確認された。以上の成果の一部は、専門学会大会にて発表を行った。2小学校教員養成カリキュラムの構造的改善の計画立案として、連携の効果をより向上させる開講期・開講時間の調整、シラバスの修正、授業科目の新設・整理・統合などを検討した。昨年度に実施した教職コア・カリキュラムへのシラバス・授業内容の対応などの効果について今後継続的に確認する必要があるため、今年度はカリキュラム上の大幅な変更を行わないこととした。
KAKENHI-PROJECT-17K04864
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K04864
教職科目と教科専門科目を横断する学際的な教員養成カリキュラムの開発
あわせて、上記の各科目間連携の成果をふまえつつ、これを拡大するためのカリキュラムの条件と、現行の学部全体のカリキュラム上の制約について、確認・検討した。昨年度の実施状況報告に記載した今年度研究計画のうち、3附属学校における教育実習との連携とその効果の検証については、十分進めることができなかった。今後は以下のとおり研究を進めていく。1各科目間連携の実践改善とその効果の検証として、教職科目・教科専門科目のさらなる連携を試行し、結果を分析する。現在、教職科目「教育の思想と原理」と教職科目「初等カリキュラム開発論」(とくに体育科)との連携、教職科目「道徳教育指導法」と教科専門科目「初等音楽科学習指導論」との連携、教科専門科目「社会科教育法」と教科専門科目「図画工作科教育法」との連携がそれぞれ平成30年度内に予定されており、他の科目間連携についても検討中である。2小学校教員養成カリキュラムの構造的改善の計画立案として、連携の効果をより向上させる開講期・開講時間の調整、シラバスの修正、授業科目の新設・整理・統合などを検討し、構造化する。その成果については、カリキュラムの実際の改訂に反映される予定である。3附属学校における教育実習との連携とその効果の検証として、教育実習科目と教職科目・教科専門科目あるいは卒業研究科目との連携を、教育実習校の協力のもとで改善・試行し、結果を分析する。以上の成果については適宜、専門学会において発表・論文投稿を行う。年度終了時に全体を総括し、最終年度である平成31年度の計画を策定する。1各科目間連携の実践改善とその効果の検証をもとに、カリキュラム総体としての相互の関連性をさらに多様かつ柔軟に提示する。2各科目間連携をより効果的なものとするための、小学校教員養成カリキュラム全体の構造的改善を、横断的指導力向上の観点から策定する。この成果については、カリキュラムの実際の改訂に反映される。3附属学校における教育実習との連携及び教員研修との連携について検討し、教育委員会との連携のうえで学部教育と教員研修の連続性ある実践的指導力向上プログラムを立案・試行しその効果を検証する。4本研究テーマにかかわる国内外の研究者・教育実践者を招聘して研究発表・交流を行う。そのさい、広島大学大学院教育学研究科に基盤を置き研究代表者・分担者の多くが所属し理事を務める初等教育カリキュラム学会を用いる予定である。平成29年度については海外の大学研究者との研究交流のために旅費ならびに人件費・謝金を確保していたが、招聘したカナダ・コンコルディア大学の研究者がアジアでの国際学会大会参加とあわせて来日することになり、本科研費研究で負担する旅費等が大幅に節約できた。今年度は、平成30年度分として請求した助成金とこの次年度使用額を合わせて、研究交流のための旅費ならびに調査研究のための人件費・謝金に充てる予定である。平成30年度については、教育実習校との連携等についての調査や研究交流がやや遅れたため、これらにかかわる旅費・人件費・謝金のいち部が未使用となった。
KAKENHI-PROJECT-17K04864
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K04864
がん化学療法患者の精神神経免疫系に及ぼすリラクセーション技法の効果
リラクセーション技法の効果を測るためには何が最も適切な指標であるかについて、文献や専門家のアドバスを受けて決定することが、18年度の課題であった。文献を検討しても研究報告は多くなく、指標もさまざまであった。最終的に専門家のアドバイスを得て、測定する免疫の指標をほぼ決定した。リラクセーション技法を行った場合、それらの免疫指標に変化をもたらすかどうか健常者を使って測ってみた。その結果はまだ出せていないが参考になると思われる。また、リラクセーション技法は対象者がマスターしやすいように複雑でない方法を選択する必要がある。練習のために教材(CDかテープ)を作成することは新たに時間とエネルギーを要するため、すでに作成してある中から選択するつもりであったが、対象者により使いやすい方法を考えると新たに作成した方がよいと考えて作成した。さらに、リラクセーション技法の指導パンフレットやリラクセ・一ション日記等も作成し、対象者の背景シートも整っている。しかし、対象者のがん診断名は決定されていない。前回と同じく消化器がんにするのか、あるいは乳がんなのか、その両方なのかを決定することに困難を極めている。がん患者の入院期間が短縮化しており、化学療法も外来で行う頻度が高くなっている。そのため、対象者に確実にリラクセーション技法を実施してもらうためには、どのような配慮が必要なのか。リラクセーション技法を入院中に行うことは不可能なのだろうか、を模索している。これに関して、さらに抗ガン剤を点摘治療にするのか、内服治療にするのかも決めなければならない。これらの検討課題が残っているため、研究倫理委員会において審査を受けることができていないために、早急にその準備を進めている段階である。リラクセーション技法の効果を測るためには何が最も適切な指標であるかについて、文献や専門家のアドバスを受けて決定することが、18年度の課題であった。文献を検討しても研究報告は多くなく、指標もさまざまであった。最終的に専門家のアドバイスを得て、測定する免疫の指標をほぼ決定した。リラクセーション技法を行った場合、それらの免疫指標に変化をもたらすかどうか健常者を使って測ってみた。その結果はまだ出せていないが参考になると思われる。また、リラクセーション技法は対象者がマスターしやすいように複雑でない方法を選択する必要がある。練習のために教材(CDかテープ)を作成することは新たに時間とエネルギーを要するため、すでに作成してある中から選択するつもりであったが、対象者により使いやすい方法を考えると新たに作成した方がよいと考えて作成した。さらに、リラクセーション技法の指導パンフレットやリラクセ・一ション日記等も作成し、対象者の背景シートも整っている。しかし、対象者のがん診断名は決定されていない。前回と同じく消化器がんにするのか、あるいは乳がんなのか、その両方なのかを決定することに困難を極めている。がん患者の入院期間が短縮化しており、化学療法も外来で行う頻度が高くなっている。そのため、対象者に確実にリラクセーション技法を実施してもらうためには、どのような配慮が必要なのか。リラクセーション技法を入院中に行うことは不可能なのだろうか、を模索している。これに関して、さらに抗ガン剤を点摘治療にするのか、内服治療にするのかも決めなければならない。これらの検討課題が残っているため、研究倫理委員会において審査を受けることができていないために、早急にその準備を進めている段階である。
KAKENHI-PROJECT-18592370
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18592370
愛知県脳卒中救急医療支援システムの構築に関する研究
脳卒中患者への救急医療がスムーズに行えるよう名古屋大学医学部脳神経外科が中心となり名古屋大学医療情報部及び愛知県医師会と脳卒中専門病院とを相互に結びつける地域医療情報ネットワークを構築した。具体的には名古屋大学を中心に愛知県医師会と愛知県内の11病院をイントラネットで接続した(基本はISDN14回線)。構築したネットワークを利用して患者基本情報(文字情報)とCTやMRI等の静止画像の伝送を行った。伝送された静止画像は専門医が十分読影できる画質であることがわかった。一方で3D-CT、3Dアンギオ、血管造影等の動画伝送に必要なシステム環境を検討した。また救急患者に対する治療成績の評価に関わる統計処理ソフトを開発し、ブラウザ上での起動を確認した。その後、実際の救急医療現場での使用を試みた。平成12年度には登録症例数2989症例、画像伝送件数240件、コンサルティング件数69件の運用実績を上げた。従来の遠隔地医療情報ネットワークは「医療」とはいうものの、診断支援に留まっていた。一方、本研究で構築したネットワークは診断のみならず、治療支援も可能にした。登録症例の中には、一刻を争う脳卒中救急医療において本ネットワークが極めて効率よく機能し、脳卒中患者の救命に役立ったケースも数多く見られた。このように本研究を通して愛知県脳卒中救急患者医療支援システムの構築基盤を生み出すことができた。また、今後、本ネットワークを一般病院、診療所、さらには在宅へと広げていくための基盤作りも同時に行えた。今後は、本ネットワークを基盤に地域に密着した総合的医療情報ネットワークの開発を押し進めていく予定である。脳卒中患者への救急医療がスムーズに行えるよう名古屋大学医学部脳神経外科が中心となり名古屋大学医療情報部及び愛知県医師会と脳卒中専門病院とを相互に結びつける地域医療情報ネットワークの構築を行い、これを基盤とした愛知県脳卒中救急患者医療支援システムを作り上げ、脳卒中治療の成績の向上をめざすことを目的とした研究をスタートした。本年度は名古屋大学を中心に愛知県医師会と愛知県内の11病院をイントラネットで接続した情報ネットワークを構築した。構築したネットワークを利用して患者基本情報(文字情報)とCTやMRI等の静止画像を行った。伝送された静止画像は専門医が十分読影できる画質であることがわかった。一方3D-CT、3Dアンギオ、血管造影等の動画伝送においては伝送画像のコマ数があがると読影に必要な画質が得られないことから、現時点での技術で最も適した条件を見出す検討に入ったが、詳細は来年度に継続することとなった。またネットワーク上でのプライバシーを守るためのセキュアネットワークジステムについてはネットワークシステムをイントラネットで構築したこととセキュアシステムの導入により現時点ではほぼ完成しているものと考えられた。また救急患者に対する治療成績の評価に関わる統計処理ソフトを開発し、ブラウザ上での起動を確認した。現在、システムの簡略化等も検討しつつ救急医療での有用性の向上に努めている。本研究では名古屋大学脳神経外科学教室が中心となり、名古屋大学医療情報部、中央放射線部、愛知県医師会と脳卒中専門病院及び一・二次救急病院と相互に結びつける地域医療情報ネットワークを構築した。これを基盤とした静止画、動画転送による画像ネットワークとWeb baseの症例登録システムを含む、全国で初めての脳卒中救急患者医療支援システムを作り上げた。名古屋市及び中核都市からパイロット的に11の当該システムモデルをたちあげ、実際に運用した結果、当該期間に各救急センター病院または指定病院から1,841名の脳卒中患者の詳細な医療情報がデータベースとして登録された。特に重症脳卒中患者の約8割が登録され、治療方針、治療結果などのデータから、適切な治療、管理についての臨床的検討を行えた。また、愛知県救急情報センターとの連携により、各医療機関への搬送状況についての情報交換が可能となった。次に、静止画像転送については156例のアクセスがあり、このうち3例について脳卒中専門医へのコンサルテーションがなされた。また、14例においてはリアルタイム(384Kbpsの回線速度)の動画転送により、脳血管撮影及び脳血管内治療に対する専門医による指導が行われた。特に、クモ膜下出血急性期症例及び脳塞栓症例に対する超急性期治療について、画像転送による遠隔治療支援は大変有用であり、治療の成功と患者の予後改善に大きく貢献した。本システムにより、急性期脳卒中に対する治療戦略について、従来の電話などによる音声情報のみの情報交換から、画像を用いたより正確な情報伝達とテレコンサルテーションが可能となり、救急医療の質的向上に成功した。今後、動画転送のモバイル化、参加施設の拡大、専門医への情報提供の簡便化、他の救急ネットワークとの連携、脳卒中救急医療の教育活動の活用など、改良を加えつつ展開させていくことで、脳卒中救急医療の発展にさらに貢献できると考えられる。脳卒中患者への救急医療がスムーズに行えるよう名古屋大学医学部脳神経外科が中心となり名古屋大学医療情報部及び愛知県医師会と脳卒中専門病院とを相互に結びつける地域医療情報ネットワークを構築した。具体的には名古屋大学を中心に愛知県医師会と愛知県内の11病院をイントラネットで接続した(基本はISDN14回線)。構築したネットワークを利用して患者基本情報(文字情報)とCTやMRI等の静止画像の伝送を行った。伝送された静止画像は専門医が十分読影できる画質であることがわかった。一方で3D-CT、3Dアンギオ、血管造影等の動画伝送に必要なシステム環境を検討した。また救急患者に対する治療成績の評価に関わる統計処理ソフトを開発し、ブラウザ上での起動を確認した。その後、実際の救急医療現場での使用を試みた。
KAKENHI-PROJECT-11794022
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11794022
愛知県脳卒中救急医療支援システムの構築に関する研究
平成12年度には登録症例数2989症例、画像伝送件数240件、コンサルティング件数69件の運用実績を上げた。従来の遠隔地医療情報ネットワークは「医療」とはいうものの、診断支援に留まっていた。一方、本研究で構築したネットワークは診断のみならず、治療支援も可能にした。登録症例の中には、一刻を争う脳卒中救急医療において本ネットワークが極めて効率よく機能し、脳卒中患者の救命に役立ったケースも数多く見られた。このように本研究を通して愛知県脳卒中救急患者医療支援システムの構築基盤を生み出すことができた。また、今後、本ネットワークを一般病院、診療所、さらには在宅へと広げていくための基盤作りも同時に行えた。今後は、本ネットワークを基盤に地域に密着した総合的医療情報ネットワークの開発を押し進めていく予定である。
KAKENHI-PROJECT-11794022
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11794022
IRによるカレッジ・インパクト理論の検証とSTEM教育評価モデルの構築
1)対象データの収集と分析:これまで収集したデータは,大学基本情報,学生の成績,学生による授業評価,学生の学習状況調査である。これらから,高校時代の経験とGPAに相関が認められる場合があった。この分析結果は2019年度に報告する予定である。2)組織の在り方についての検討:IRシステムの大学における,組織上の配置や,その期待される役割を研究期間内で抽出する。初年度は研究大学でのIR組織,地方公立大学でのIR組織,中央官庁におけるIR組織を調査対象として,米国のIR組織(MIT,ニューヨーク市立大学,米国立教育統計センター)の訪問調査を行った。そこから,本年度は報告書にまとめ,IRのモデルとして評価するが提言はしないMITのシステムが望ましいと考察した(宮本他2019)。3)アンケート項目の再検討:データ収集の基礎となるアンケート項目を再検討するために,現在米国で使用されているアンケート項目を日本語に翻訳するとともに,比較検討し,報告した(細川他2019)。4)IRデータの解析手法の検討:大学IRコンソーシアムで得られたビッグデータを使い,学生をその行動特性(アルバイトと部活動の有無)から4グループに分類し,その構成比率により大学を6つに分類した。これら大学間の差異を分析し,分類の有効性などについて報告した(山田他2019)。5)初年次教育へのSTEM教育の導入:初年度教育におけるSTEM教育を検討し,試行した。数学への依存度を少なくするとともに,科学全般の知識をカバーする科目に,最新のアクティブラーニング,e-ラーニング等の新しい教育技術を組み合わせ,実施した。さらに,STEM教育用のテキストを作成し編集し出版した(鈴木他2018)。また,AAC&Uが開催したSTEM教育の年次総会に出席し,その講演や発表等について報告した(鈴木2018)。予定されていた,在学生の調査を実施し,理系文系に分けて分析した。その成果は2019年度に報告する予定である。また,IRデータの解析手法を発展させるために,大学IRコンソーシアムの8万7千名余におよぶ大学1年生を対象にしたアンケート結果からなるビッグデータを用いて,学生の行動特性によって大学を分類し,その大学間の差異を分析し,報告した(山田他2019)。さらに,IR活動のベースである学習状況アンケートについて再検討するために,米国で現在使われているアンケート項目を翻訳した後,リストアップして韓国や日本のアンケートと比較した分析結果を報告した(細川他2019)。研究大学でのIR組織,地方公立大学でのIR組織,中央官庁におけるIR組織を調査対象として,米国のIR組織(MIT,ニューヨーク市立大学,米国立教育統計センター)の訪問調査を昨年度行い,その成果を今年度は報告書にまとめた(宮本他2019)。これより,IR組織のあり方を検討することができた。さらに,初年度教育におけるSTEM教育のためのテキストを作成し,専門家の監修を受けた後出版した(鈴木他2018)。その内容は,物理学,化学,生物学,惑星科学を含み30章,A4で250ページからなるものである。加えて,AAC&Uが開催したSTEM教育に関する年次総会に出席し,その講演や発表等について報告した(鈴木2018)。このように,IRのあり方についてカレッジ・インパクト理論の検証のみならず,アンケート項目の検討や分析方法の検討も平行して実施している。また,難航を極めたSTEM教育用テキストを出版することができた。以上より,本研究は当初の計画以上に進展している。Astinのカレッジ・インパクト理論では,大学に入学した学生の過去の環境や成績とともに,大学の資源や学習状況の学生の成長に及ぼす影響を検討し,主な要因を抽出する点に研究の重要性がある。以下の研究で,それが検討される。北海道大学では2009年からIRシステムによる学習状況調査を導入した。また,大学IRコンソーシアムにも参加し,在学生のうち,1年生および3年生の学習状況調査を継続して実施している。これにより蓄積されたデータには,学習状況のみならず学生のGPA,高校までの学習経歴,大学の施設や教育への満足度,英語能力調査が含まれている。これらのデータに加えて,学習環境を問う卒業時調査,コンピテンシーの習得度合いをたずねる卒業生調査等のデータ収集を加えれば,AstinのモデルのI,E,Oすべてについてのデータを得ることができる。これらの調査は平成29年度に実施し,すでにデータを収集している。また,在学生調査のデータ分析は平成30年度中にも進めてきた。以上のような多面的なデータをもとに,Outs(成果)を指標としてモデルを検証するとともに,成果形成に重要なパラメーターの抽出を行う。以上の分析をもとにAstinのモデルの検証を行うとともに,日本特有あるいは理系特有の学習構造を特定し,報告書にまとめる。また,昨年度に作成したSTEM教育用テキストを活用した講義を実際に運用し,その評価を行うことで高等教育におけるSTEM教育評価の日本型モデルを確立する。加えて,これまでの経験を元に,IR担当者養成のための研修テキストを制作する。その業務に必要なテキストを制作することにより,日本におけるIRシステムのあり方が示されることになる。1)対象データの収集と分析:これまでIRシステム関連で収集したデータは,大学基本情報,学生の成績,学生による授業評価,IRシステムによる学生の学習状況調査であった。本研究では,北海道大学において入手可能な教学関連のデータから理工系学部を中心に抽出し,収集した。今回のデータを学科別に検討したところ,生物学や化学,英語では正の相関が,物理学では負の相関が認められる場合があった。
KAKENHI-PROJECT-17H02657
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H02657
IRによるカレッジ・インパクト理論の検証とSTEM教育評価モデルの構築
2)組織の在り方についての検討:IRシステムの大学における,組織上の配置や,その期待される役割を研究期間内で抽出する。初年度はこの状況を考慮しつつ,STEM教育とともに共通の学生調査を実施している米国の仕組みを調査した。研究大学でのIR組織,地方公立大学でのIR組織,中央官庁におけるIR組織を調査対象として,米国のIR組織(MIT,ニューヨーク市立大学,米国立教育統計センター)の訪問調査を行った。そこから,日本のIRシステムは,MITのIRセンターをモデルにすべきであろうと考察した。3)分析対象の拡大とSTEM教育の検証:理工系学部の教育内容を把握するための4年生を対象にした調査を実施し,データを収集した。1,3年生調査に加えて4年生も調査することで,さらにデータの蓄積を進めた。4)初年次教育へのSTEM教育の導入:初年度教育におけるSTEM教育を検討し,試行した。数学への依存度を少なくするとともに,科学全般の知識をカバーする科目に,最新のアクティブラーニング,e-ラーニング等の新しい教育技術を組み合わせ,実施した。さらに,STEM教育用のテキストを作成し,出版に備えて編集した。その内容は,物理学,化学,生物学,惑星科学を含み30章からなる。誤字脱字を修正するとともにwikiなどからの図譜引用元を整理した。なお,本研究4)の実施にあたり本学地球環境科学研究院田中俊逸教授に研究協力をお願いした。予定されていた,1,3年生調査,4年生調査を実施し,その一部を分析することができた。また,研究大学でのIR組織,地方公立大学でのIR組織,中央官庁におけるIR組織を調査対象として,米国のIR組織(MIT,ニューヨーク市立大学,米国立教育統計センター)の訪問調査を行い,IRシステムのあり方についての考察を得た。さらに,初年度教育におけるSTEM教育を検討し,試行した。数学への依存度を少なくするとともに,科学全般の知識をカバーする科目に,最新のアクティブラーニング,e-ラーニング等の新しい教育技術を組み合わせ,実施した。また,STEM教育用のテキストを作成し,次年度予定の出版に備えて編集した。以上より,計画はおおむね順調に進展している。1)対象データの収集と分析:これまで収集したデータは,大学基本情報,学生の成績,学生による授業評価,学生の学習状況調査である。これらから,高校時代の経験とGPAに相関が認められる場合があった。この分析結果は2019年度に報告する予定である。2)組織の在り方についての検討:IRシステムの大学における,組織上の配置や,その期待される役割を研究期間内で抽出する。初年度は研究大学でのIR組織,地方公立大学でのIR組織,中央官庁におけるIR組織を調査対象として,米国のIR組織(MIT,ニューヨーク市立大学,米国立教育統計センター)の訪問調査を行った。そこから,本年度は報告書にまとめ,IRのモデルとして評価するが提言はしないMITのシステムが望ましいと考察した(宮本他2019)。
KAKENHI-PROJECT-17H02657
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H02657
ゴール形成昆虫による植物ホルモン生産能の進化的獲得機構の解明
本研究では,ゴール形成昆虫が植物ホルモン(オーキシンおよびサイトカイニン)の生合成能を進化的に獲得したことがゴール形成能の獲得に繋がったことを証明するために,量ホルモンの生合成機構を明らかにしようとしている.オーキシン(indole-3-acetic acid, IAA)についてはTrp→IAOx→IAAld→IAAという経路を提唱しており,既にIAAld→IAAの変換を担うaldehyde oxidase(BmIAO1)をカイコから明らかにしていたが,本酵素がIAOx→IAAの変換活性も有することを明らかにした.また,実験条件によっては本酵素存在下では補因子であるFADが非酵素的にTrp→IAAldの変換を引き起こすことも示した.ゴール形成ハバチのRNA-seq解析に基づく配列情報からは,相同なタンパク質が1つ見出され,組換え酵素の発現を行っているが,現時点で微弱な活性しか得られていない.一方,Trp→IAOxおよびTrp→IAAldの変換に関与する可能性のある酵素として,それぞれflavin-containing monooxygenase(FMO)およびaromatic aldehyde synthase(AAS)をゴール形成ハバチのRNA-seq解析から得られた配列情報およびカイコのデータベース情報から選抜し,組換え酵素を作成したところ,いずれもハバチの1クローンずつのみに活性が確認された(PonFMO1,PonAAS2)。サイトカイニンについてはハバチ上にある1つのisopentenyl transferaseおよび数種のP450の機能を酵母発現系にて活性の検討を行ったが,いずれもネガティブな結果であった.今年度新たにデータ取得数を大幅に増やしたRNA-seq解析を行ったことによって,候補となる多数のP450の配列が得られた.予定通りRNA-seq解析に基づく遺伝子配列情報が整備され,今後の生合成酵素の特定に重要な基盤整備が出来た.オーキシン生合成については,微生物のみで知られていたFMOがTrp→IAOxの変換活性を持つこと,またAASがTrp→IAAld活性を持つことが示され,TrpからIAAへ至る一連の変換経路を担う候補となる酵素遺伝子が明らかとなった.今後,これらの酵素に対する抗体の調整等を通して,これらの酵素がハバチにおけるIAA合成において担う役割を明らかにするための重要な手がかりが得られた.オーキシン生合成については,組換えタンパク質における酵素活性が確認されたゴール形成ハバチのflavin-containing monooxygenase(FMO,Trp→IAOxを担う)およびaromatic aldehyde synthase(AAS,Trp→IAAldを担う)が,ハバチ幼虫から調製された酵素液の示す活性をどこまで説明しうるかを明らかにすることを目的に,それぞれの抗体を作成し,抗体による阻害実験等を行う.具体的には,ハバチ酵素液にこれらの酵素が含まれるかをウェスタン解析により明らかにした上で,免疫沈降,あるいはアフィニティークロマトグラフィーによって当該酵素活性を阻害した時の,酵素活性の低下率を測定する.一方,サイトカイニンについては,今年度検討した数種のP450には,酵母発現系においてサイトカイニン側鎖の水酸化活性が認められなかったが,今年度行ったRNA-seq解析情報から,さらに候補となるP450酵素遺伝子が多数見出されたため,これらの活性確認を徹底する.また,サイトカイン生合成の鍵酵素であるisopentenyltransferase(IPT)は唯一見出されたtRNA型と思われる酵素にAMP等の低分子を基質とする活性が認められなかったが,新たに行ったRNA-seq解析データにおいても,同一のクローンしか見出されたかったため,tRNA経由のサイトカイニンの高生産の可能性や,酵母発現系では確認していない水酸化された基質を側鎖に転移する可能性等について検討する.本研究では,ゴール形成昆虫が植物ホルモン(オーキシンおよびサイトカイニン)の生合成能を進化的に獲得したことがゴール形成能の獲得に繋がったことを証明するために,量ホルモンの生合成機構を明らかにしようとしている.オーキシン(indole-3-acetic acid, IAA)についてはTrp→IAOx→IAAld→IAAという経路を提唱しており,既にIAAld→IAAの変換を担うaldehyde oxidase(BmIAO1)をカイコから明らかにしていたが,本酵素がIAOx→IAAの変換活性も有することを明らかにした.また,実験条件によっては本酵素存在下では補因子であるFADが非酵素的にTrp→IAAldの変換を引き起こすことも示した.ゴール形成ハバチのRNA-seq解析に基づく配列情報からは,相同なタンパク質が1つ見出され,組換え酵素の発現を行っているが,現時点で微弱な活性しか得られていない.一方,Trp→IAOxおよびTrp→IAAldの変換に関与する可能性のある酵素として,それぞれflavin-containing monooxygenase(FMO)およびaromatic aldehyde synthase(AAS)をゴール形成ハバチのRNA-seq解析から得られた配列情報およびカイコのデータベース情報から選抜し,組換え酵素を作成したところ,いずれもハバチの1クローンずつのみに活性が確認された(PonFMO1,PonAAS2)。サイトカイニンについてはハバチ上にある1つのisopentenyl transferaseおよび数種のP450の機能を酵母発現系にて活性の検討を行ったが,いずれもネガティブな結果であった.今年度新たにデータ取得数を大幅に増やしたRNA-seq解析を行ったことによって,候補となる多数のP450の配列が得られた.予定通りRNA-seq解析に基づく遺伝子配列情報が整備され,今後の生合成酵素の特定に重要な基盤整備が出来た.
KAKENHI-PROJECT-18H02141
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H02141
ゴール形成昆虫による植物ホルモン生産能の進化的獲得機構の解明
オーキシン生合成については,微生物のみで知られていたFMOがTrp→IAOxの変換活性を持つこと,またAASがTrp→IAAld活性を持つことが示され,TrpからIAAへ至る一連の変換経路を担う候補となる酵素遺伝子が明らかとなった.今後,これらの酵素に対する抗体の調整等を通して,これらの酵素がハバチにおけるIAA合成において担う役割を明らかにするための重要な手がかりが得られた.オーキシン生合成については,組換えタンパク質における酵素活性が確認されたゴール形成ハバチのflavin-containing monooxygenase(FMO,Trp→IAOxを担う)およびaromatic aldehyde synthase(AAS,Trp→IAAldを担う)が,ハバチ幼虫から調製された酵素液の示す活性をどこまで説明しうるかを明らかにすることを目的に,それぞれの抗体を作成し,抗体による阻害実験等を行う.具体的には,ハバチ酵素液にこれらの酵素が含まれるかをウェスタン解析により明らかにした上で,免疫沈降,あるいはアフィニティークロマトグラフィーによって当該酵素活性を阻害した時の,酵素活性の低下率を測定する.一方,サイトカイニンについては,今年度検討した数種のP450には,酵母発現系においてサイトカイニン側鎖の水酸化活性が認められなかったが,今年度行ったRNA-seq解析情報から,さらに候補となるP450酵素遺伝子が多数見出されたため,これらの活性確認を徹底する.また,サイトカイン生合成の鍵酵素であるisopentenyltransferase(IPT)は唯一見出されたtRNA型と思われる酵素にAMP等の低分子を基質とする活性が認められなかったが,新たに行ったRNA-seq解析データにおいても,同一のクローンしか見出されたかったため,tRNA経由のサイトカイニンの高生産の可能性や,酵母発現系では確認していない水酸化された基質を側鎖に転移する可能性等について検討する.
KAKENHI-PROJECT-18H02141
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H02141
酸化電位水による象牙質表面処理が接着性に与える影響
研究者らは、これまで、リン酸と次亜塩素酸ナトリウムを併用した象牙質表面処理法について検討し、接着強さ及び接着耐久性の向上に効果があることを報告してきた。しかし、この方法は操作が繁雑で処理時間が長く、日常臨床で用いるには問題点がある。本研究では、この処理法に替わるものとして、酸性度が高く次亜塩素酸を含む酸化電位水に着目し、その象牙質への接着性に対する影響及び表面処理剤としての可能性について検討した。その結果、象牙質表面に酸化電位水を15秒間流水処理することにより管間象牙質のスメア層の除去が可能であり、処理時間を延長することによりスメアプラグの除去も可能であった。TEM観察では脱灰層と非脱灰層との境界は比較的明瞭であり、また脱灰層にはコラーゲンのバンド構造が確認できた。剪断接着試験の結果、初期接着強さは無処理の場合に比較して酸化電位水処理時間を増すにつれて低下傾向にあり、酸化電位水処理を行うことの象牙質接着性に対する有効性はみられなかった。そこで、酸化電位水処理した後に、象牙質最表層の脱灰コラーゲン層を除去するために次亜塩素酸ナトリウム処理を追加したところ初期接着強さでは無処理に対して有意に接着強さが向上したものの、熱サイクルを負荷することにより接着強さが低下した。SEM観察では次亜塩素酸ナトリウム処理を追加しても象牙質表面のコラーゲンが完全に除去されずに残留しているのが確認され、これが接着耐久性の低下に要因と考えられる。以上により、酸化電位水による象牙質表面処理は、スメア層は除去できるものの脱灰コラーゲン層は除去できないため、リン酸と次亜塩素ナトリウムによる象牙質表面処理法に替わることは現段階では難しいと思われる。研究者らは、これまで、リン酸と次亜塩素酸ナトリウムを併用した象牙質表面処理法について検討し、接着強さ及び接着耐久性の向上に効果があることを報告してきた。しかし、この方法は操作が繁雑で処理時間が長く、日常臨床で用いるには問題点がある。本研究では、この処理法に替わるものとして、酸性度が高く次亜塩素酸を含む酸化電位水に着目し、その象牙質への接着性に対する影響及び表面処理剤としての可能性について検討した。その結果、象牙質表面に酸化電位水を15秒間流水処理することにより管間象牙質のスメア層の除去が可能であり、処理時間を延長することによりスメアプラグの除去も可能であった。TEM観察では脱灰層と非脱灰層との境界は比較的明瞭であり、また脱灰層にはコラーゲンのバンド構造が確認できた。剪断接着試験の結果、初期接着強さは無処理の場合に比較して酸化電位水処理時間を増すにつれて低下傾向にあり、酸化電位水処理を行うことの象牙質接着性に対する有効性はみられなかった。そこで、酸化電位水処理した後に、象牙質最表層の脱灰コラーゲン層を除去するために次亜塩素酸ナトリウム処理を追加したところ初期接着強さでは無処理に対して有意に接着強さが向上したものの、熱サイクルを負荷することにより接着強さが低下した。SEM観察では次亜塩素酸ナトリウム処理を追加しても象牙質表面のコラーゲンが完全に除去されずに残留しているのが確認され、これが接着耐久性の低下に要因と考えられる。以上により、酸化電位水による象牙質表面処理は、スメア層は除去できるものの脱灰コラーゲン層は除去できないため、リン酸と次亜塩素ナトリウムによる象牙質表面処理法に替わることは現段階では難しいと思われる。
KAKENHI-PROJECT-07771819
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07771819
星間空間におけるC-H系,O-H系分子生成の起源に関する新しい実験研究
星間分子の反応を低温環境下に再現して実験的に精度良く調べることを目的とし,理化学研究所東原子分子物理研究室で開発中の極低温の静電型イオン蓄積リングRIKEN Cryogenicelectrostatic ring (RICE)を用いた「低エネルギーのイオン-中性反応」の実験的研究を行った。蓄積リングへの長時間イオン閉じ込め,および中性ビーム生成技術の開発を行い,合流実験のセットアップが概ね完了した。最終年度前年度に,より発展した研究課題へと再構成され,科研費(基盤B)「星間雲におけるC-H系分子誕生と複雑有機分子への進化(2017-2019年度)」として引き継がれた。当初計画通り,研究初年度である平成26年度は,イオン・中性合流ビーム実験のための装置開発に専念した.具体的には,主に中性ビーム(負イオン源+半導体レーザー)開発と,イオン蓄積リングRICEにおける分子イオン蓄積テストを行った.中性ビーム開発においては,負イオン源セットアップをリング入射に向けて再構成し,イオン蓄積リングに入射するためのビームラインを建設した.また,レーザー光による負イオンビームの中性化効率を従来から2桁向上するために,新たな光学シミュレーションを行い,カスタム設計の大強度半導体レーザー(波長808nm)を導入した.中性化用の真空チャンバーも新規に製作し,組み上げが進行中である.以上の装置開発及びアップグレードは高強度・高品質の中性ビームを生成し,分子イオンビームと衝突実験を行うために鍵となる技術であり,本研究目的達成のために不可欠な要素である.同時に,冷却分子イオンビーム生成のためのイオン蓄積リングRICEの試運転を開始した.ビーム輸送行列,及び有限要素法を用いたビーム軌道シミュレーションを行うとともに,リング内の電極パラメータ調整と,入射ビームの最適化を行い,極低温下(5K)において,15 keVのNe+イオンビームを入射し,30分以上もの間蓄積することに成功した.極低温リングにおけるイオン蓄積の成功は日本で初,世界で2番目となる快挙である.本研究で冷却分子イオン・中性原子の衝突を行うためにも極低温リングの稼働は必須条件であり,年度内に開発フェーズを完了できたことにより当初計画通りに研究を推進することが可能となった.次年度の実験で利用予定の炭化水素系イオンについても,イオンビーム生成テスト及びビーム電流の測定がおおむね完了した.平成27年度は,主に理化学研究所の極低温静電型イオン蓄積リングRIKEN Cryogenic Electrostatic ring (RICE)における分子イオンの蓄積、および中性の粒子検出器の開発に注力し、研究を推進した。極低温リング内の真空度が極めて高く、中性粒子検出によるビーム強度測定が困難であるため、本年度は、一定時間蓄積後(1002000秒)にリングから引き出したビーム強度を繰り返し測定することでビームの寿命を見積り、460秒程度の時定数を得た。また、リング内のキャビティに高周波を印加することにより、蓄積ビームのバンチ化を行った。ピックアップ検出器に5次の楕円フィルターとバッファアンプを実装することにより、高周波の雑音を排除してビームのバンチ構造を検出することに成功した。スペクトルアナライザを用いた、イオン周回周波数のゼロスパン測定によって、蓄積イオン数が時間とともに減衰する様子も観測された。また今年度は、星間分子反応の合流ビーム実験に向け、RICEにおいて初の分子イオンビーム蓄積に成功した。電子シクロトロン共鳴(ECR)イオン源を低パワー、高ガス圧力で運転することにより様々な分子イオンの引き出しを行い、運転条件の最適化を行った。いくつかの分子イオンについてRICEへ入射、蓄積して中性粒子の観測を行った。中性粒子の観測手法としては、Daly検出器を応用した新たな中性粒子検出器を開発し、テスト運転に成功した。中性ビーム入射ラインに関しては、セシウムスパッタ型負イオン源の高圧プラットフォーム上の制御系の改造を行い、Csリザーバの温度とカソード電流値の常時モニタ、ロギングによる運転条件の最適化を行った。負イオンの中性化チャンバーの真空テスト、半導体レーザーの立ち上げまでを完了した。平成27年度は中性ビームをRICEに入射する計画であったが、半導体レーザーの調達、冷却水等のインフラ整備に時間を要し、ビーム入射が送れている。一方で、RICEへの分子イオンビームの入射、および検出系の整備に関しては順調に進行しており、翌年度以降に予定していた様々な分子種についても、既にビーム出しが完了している。実験の構成要素ごとに多少ばらつきはあるものの、総合的な進捗状況として,おおむね順調である.蓄積リング内の残留気体(主に水素分子)は,イオンビームの蓄積寿命を制限するだけでなく,合流ビーム実験においてバックグラウンド信号の元となるため,その密度を定量的に評価することは本研究において重要なポイントである。エネルギー15 keVのNe+ビームを用いて得られたビーム減衰曲線をモデル関数に当てはめることで,残留気体との衝突による寿命をおよそ780秒と見積もった。これより得られた残留気体密度は1立方センチメートルあたり数万個程度であり,室温においておよそ1×10-10 Paの圧力に相当する。また,中性原子ビームに関して,電子脱離用の大強度レーザーの試験用ハッチを設置し,大強度での発振試験,収束光学系の最適化を行った。光学追跡ソフトZEMAXによるシミュレーションをもとに,数パターンの光学系を設計して,ビームの収束サイズをビームプロファイラにて確認した。
KAKENHI-PROJECT-26287141
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26287141
星間空間におけるC-H系,O-H系分子生成の起源に関する新しい実験研究
レーザーアレイの反りや,光学部品の温度上昇などに対策を講じ,中性ビームをRICEに入射するための準備がほぼ整った星間分子の反応を低温環境下に再現して実験的に精度良く調べることを目的とし,理化学研究所東原子分子物理研究室で開発中の極低温の静電型イオン蓄積リングRIKEN Cryogenicelectrostatic ring (RICE)を用いた「低エネルギーのイオン-中性反応」の実験的研究を行った。蓄積リングへの長時間イオン閉じ込め,および中性ビーム生成技術の開発を行い,合流実験のセットアップが概ね完了した。最終年度前年度に,より発展した研究課題へと再構成され,科研費(基盤B)「星間雲におけるC-H系分子誕生と複雑有機分子への進化(2017-2019年度)」として引き継がれた。負イオンビームアップグレードに関しては,真空チャンバ及びレーザー光学系の組み上げがやや計画より遅れている.一方で,イオン蓄積リングRICEにおけるイオン蓄積テストに関しては,電極デザインや使用するイオン種等の軽微な計画変更はあったものの,ほぼ全て予定通りに完了した.さらに次年度に予定していた炭化水素系イオンビームを用いたテスト等も完了している.以上を総合的に鑑みて,おおむね順調に進展していると評価する.初期計画に沿って、極低温イオン・中性合流ビーム実験の実現へ向けて研究開発を行う。進捗の送れている中性化レーザーの整備を進め、生成した中性ビームをRICEヘ入射し、分子イオンビームとの低速衝突反応を観測する。海外の極低温リングも本格運転を開始してきているので、密接に情報交換をしながら研究を進める。28年度が最終年度であるため、記入しない。原子分子物理当初計画通り,中性ビームをイオン蓄積リングRICEへ入射し,星間分子進化を研究対象としたイオン・中性の衝突反応を観測する.年度前半は負イオンビームの中性化セクションの完成を最優先として開発を継続しつつ,イオン蓄積リングにおいて,種々の星間分子イオンの蓄積テストを行う.年度内には当初予定していたC+H3+,あるいはC+CH3+等の合流実験を実施し,衝突速度に依存した反応断面積を得るとともに,これをMaxwell-Boltzmann分布へと畳み込むことで温度に依存した反応速度係数を実験的に決定する.また,より中性化効率を向上するために光増幅キャビティを製作し,年度内にインストールすることを目標に開発を行う.研究経費の収支はほぼ計画通りであるが、電子部品、真空部品類として計上していた消耗品合計350,000円について、研究計画の若干の前後から差異が生じ、115,795円を次年度に繰り越した。28年度が最終年度であるため、記入しない。負イオンビーム中性化用の真空チャンバー及び光学系の組み上げがやや遅れたため,これにともなって消耗品(主として締結部品等)の購入予算15万円程度を次年度に見送った.前年度調達を先延ばしにした電源ケーブルや電子部品等の購入に充当する。28年度が最終年度であるため、記入しない。次年度早々に真空チャンバーの組み上げを行うため,締結部品や架台固定に伴う消耗品の購入を行う予定である.28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-26287141
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26287141
国立国会図書館蔵特500資料群を中心とした戦前・戦中期検閲原本資料に関する研究
平成26年度は、本研究課題の柱である国立国会図書館蔵・検閲関係資料<特500><特501>両資料群の調査を行ないながら、博士論文単行本化のための修正・加筆を進め、刊行に至ることができた。24年度および25年度において、<特500><特501>両資料群の調査は一応完了したが、その後の分析の際に不都合な点があったため、26年度において数度、追加の調査を行なった。資料群の分析にあたっては、主としてデジタル化された紙面のプリントアウト(国立国会図書館内でのサービスによるもの)を用いてきたが、その内の多くが30年程前にモノクロ撮影されたマイクロフィルムをデジタル画像としてコンピューターに取り込んだものであったために不鮮明な箇所があり、検閲官の書き込みやスタンプなどの重要な部分が読み取られない事例が多く存在した。また、読み取りはできても、スタンプや筆記具の色、出版物の色や大きさなどは原本を見ない限りは確認できないため、必要なものについては逐次、国会図書館を訪ね、原本を出納して1点ずつ確認を行なった。今後は、<特500><特501>には分類されずに、一般の請求記号を付与された図書も含めて、両資料群の分析を進めるとともに、周辺に存在する資料への目配りと発掘にも努めたいと考えている。平成24年度に名古屋大学へ提出した博士論文について、単著として刊行するための準備作業を25年度より始めたが、出版社との交渉および完成原稿の執筆作業を経て、26年12月に『伏字の文化史ー検閲・文学・出版ー』というタイトルで森話社より刊行された。単行本の刊行は、今年度の最大の成果であった。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。平成24年度は、本研究課題で最も重要な国立国会図書館蔵・検閲関係資料<特500><特501>両資料群のリストアップとその内容調査作業を主として進めた。前者の<特500>資料群に関しては、そのリスト化と調査を昨年度以前からすでに進めていたので、まず〈特500>資料群全点の調査を終わらせ、その後に未着手であったく特501>資料群のリストアップと内容調査に取り掛かった。<特500>資料群の調査に関しては、早稲田大学20世紀メディア研究所第66回研究会において、途中経過報告として発表を行なった。20世紀メディア研究所は、主として戦後・占領期の検閲に関して調査を行なっている組織であるが、研究領域を異にする方々と意見交換を行うことができ、有意義な発表となった。この時の発表内容は、その後論文化して『インテリジェンス』第13号(2013年3月発行)に掲載された。調査が終了した<特500>資料群は、調査結果の分析を今後行う。平成24年度より調査に着手した<特501>資料群に関しては、スタンプや書き込みなど、<特500>資料群とは採取するデータに相違があるため、リスト化を行いながら資料群の性格をつかみ、その調査におけるメモを記号によって簡略に記入する方式を採った。現在(2013年4月)のところ、944件のうち150件強まで調査を終えた。国立国会図書館では両資料群のデジタル化が完了し、端末で画像を閲覧することが可能であるが、著作権の問題により館内でのみ公開されている資料が全体の半数以上を占めているため、館外から閲覧可能な資料はリスト化の際に分かるようにした上で、国会図書館内でのデジタル画像や原本の閲覧が必要な資料を優先的に調査するようにしている。25年度においては、リスト化と調査の3分の2程度までを終えられるようにしたいと考えている。平成24年度において一応の調査が完了した特500資料群について、25年度は原本による詳細な調査(デジタル端末画面での判読な不可能な文字やスタンプなどの確認)を行なった。同じく平成24年度に着手した特501資料群については継続して調査を行い、こちらも一応の完了をみることができた。今後は、調査内容の分析・データ化と原本による追加調査を行う予定である。平成25年度には、「『新刊弘報』から見る戦時下日本の出版メディア統制」(『出版流通メディア資料集成(二)ー戦時日本出版配給機関誌編』第1巻、文圃文献類従32、金沢文圃閣、平成25年5月)と「萩原朔太郎『月に吠える』発行の経緯に関する考察ー内閲、削除、作者の誤認」(『文学・語学』第206号、平成25年7月)の2本の研究論文を発表した。特に後者は、昨年11月に行われた「全国大学国語国文学会」第106回大会研究発表会における「萩原朔太郎『月に吠える』の削除に関する事情についてー内閲がもたらした影響」を論文化したものである。本論文は、平成26年度中に刊行を予定している単著に1章分として収録する予定である。平成25年5月18日には「出版法制史研究会」第8回例会において、「大正期「内閲」の運用期間とその事例についての考察」(大妻女子大学図書館棟5階会議室)の題目で口頭発表を行なった。
KAKENHI-PROJECT-12J04677
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J04677
国立国会図書館蔵特500資料群を中心とした戦前・戦中期検閲原本資料に関する研究
本報告は、これまでその実態が未詳であった、大正時代における「内閲」(検閲に先立つ法外的な措置としての事前点検)について、具体的な事例や実態を示す資料を紹介し、実施された時期のおおよその特定と、廃止に至った原因について考究した。この成果は、刊行予定の単著で書き下ろしの2章分として収録する予定である。平成26年度は、本研究課題の柱である国立国会図書館蔵・検閲関係資料<特500><特501>両資料群の調査を行ないながら、博士論文単行本化のための修正・加筆を進め、刊行に至ることができた。24年度および25年度において、<特500><特501>両資料群の調査は一応完了したが、その後の分析の際に不都合な点があったため、26年度において数度、追加の調査を行なった。資料群の分析にあたっては、主としてデジタル化された紙面のプリントアウト(国立国会図書館内でのサービスによるもの)を用いてきたが、その内の多くが30年程前にモノクロ撮影されたマイクロフィルムをデジタル画像としてコンピューターに取り込んだものであったために不鮮明な箇所があり、検閲官の書き込みやスタンプなどの重要な部分が読み取られない事例が多く存在した。また、読み取りはできても、スタンプや筆記具の色、出版物の色や大きさなどは原本を見ない限りは確認できないため、必要なものについては逐次、国会図書館を訪ね、原本を出納して1点ずつ確認を行なった。今後は、<特500><特501>には分類されずに、一般の請求記号を付与された図書も含めて、両資料群の分析を進めるとともに、周辺に存在する資料への目配りと発掘にも努めたいと考えている。平成24年度に名古屋大学へ提出した博士論文について、単著として刊行するための準備作業を25年度より始めたが、出版社との交渉および完成原稿の執筆作業を経て、26年12月に『伏字の文化史ー検閲・文学・出版ー』というタイトルで森話社より刊行された。単行本の刊行は、今年度の最大の成果であった。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。国立国会図書館蔵<特500>資料群に関しては、20世紀メディア研究所での発表及び雑誌『インテリジェンス』の論文掲載によって、資料の特性や内容を他領域の研究者へ向けて発信することが出来た。<特501>資料群に関しては未着手であったため、リスト化と調査を同時に行い、全体の20%程まで調査を終えた。平成25年度に予定していた特501資料群のリスト化と調査の大半を終えることができた。また、調査結果を踏まえて検閲制度、内閲、伏字記号に関する研究を単著としてまとめる作業を並行して行うことができた。今後も国会図書館蔵<特501>資料群のリスト化と調査を進め、先行して調査を行なった<特500>資料群の関連性を明らかにする。また、国立国会図書館憲政資料室にマイクロフィルムが所蔵されているアメリカ議会図書館所蔵の検閲資料(占領期の被接収資料)にも目を向け、戦前・戦中期における検閲制度の実態解明に努めたい。現在、3種類刊行されているマイクロフィルム・チェックリストの点検をし、必要な資料や文書の抽出を行なっている。今後、先行研究が触れてこなかった未発見資料の発掘にも力を入れたいと考えている。平成26年度においては、調査が終了した特500・特501資料群に関して、調査結果の分析とデータ化の作業、及び追加調査を行ない、両資料群の性格と資料群から判明した検閲事務の実態解明についての報告を研究会などで行う予定である。25年度には、戦前に内務省警保局図書課で検閲事務に携わっていた役人の日記を入手することができた。
KAKENHI-PROJECT-12J04677
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J04677
心筋再分裂誘導の分子機構と再生医療への応用に関する研究
心筋細胞は生後まもなく増殖能を失い終末分化状態に入る。我々は、これまでに、核移行シグナル付加サイクリンD1(D1NLS)の核内強制発現と、Skp2によってp27を分解することでより安定な培養心筋細胞の再分裂を誘導できることを見出している。また昨年度までに、成体ラット心筋梗塞モデルにD1NLSウイルス(D1NLS群)、D1NLS/Skp2ウイルス(Skp2群)を心筋に直接注入した個体での心機能と心不全の改善効果を確認した。本年度は、詳細な組織学的細胞周期解析を行った。遺伝子導入後4日後の心筋の解析の結果、遺伝子導入部位で増殖マーカーKi67陽性心筋細胞が数多く認められただけでなく、明らかな有糸分裂中の心筋細胞が認められた。その割合はD1NLS群くSkp2群であった。また、細胞質分裂中の心筋細胞が認められ、分裂後の娘細胞も心筋のphenotypeを維持していた。以上の結果から、サイクリンD1・Skp2の強制発現は、組織内心筋細胞をin situにおいてphenotypeを維持したまま分裂させることが示され、またSkp2を追加することによる高い増殖能が認められた。しかし遺伝子導入後7日後のサンプルでは、著しい細胞周期活性の低下が認められた。このことから、心筋細胞には細胞周期活性の持続を妨げているさらなるバリアーがあると考えた。そこで、心筋細胞に増殖刺激を与えた際の細胞周期関連因子のmRNAのレベルを解析することによって、心筋細胞の増殖抑制メカニズムを解明することを目的として、心筋のsingle cell genomics解析を行っている。これまでに、成体ラットの心筋を単離することに成功しており、単離した心筋細胞からmRNAを抽出し、サイクリンD1・Skp2発現によって変動する細胞周期関連因子のmRNAレベルをprofilingしている。心筋細胞は生後まもなく増殖能を失い終末分化状態に入る。我々は、これまでに、核移行シグナル付加サイクリンD1(D1NLS)の核内強制発現と、Skp2によってp27を分解することでより安定な培養心筋細胞の再分裂を誘導できることを見出している。また昨年度までに、成体ラット心筋梗塞モデルにD1NLSウイルス(D1NLS群)、D1NLS/Skp2ウイルス(Skp2群)を心筋に直接注入した個体での心機能と心不全の改善効果を確認した。本年度は、詳細な組織学的細胞周期解析を行った。遺伝子導入後4日後の心筋の解析の結果、遺伝子導入部位で増殖マーカーKi67陽性心筋細胞が数多く認められただけでなく、明らかな有糸分裂中の心筋細胞が認められた。その割合はD1NLS群くSkp2群であった。また、細胞質分裂中の心筋細胞が認められ、分裂後の娘細胞も心筋のphenotypeを維持していた。以上の結果から、サイクリンD1・Skp2の強制発現は、組織内心筋細胞をin situにおいてphenotypeを維持したまま分裂させることが示され、またSkp2を追加することによる高い増殖能が認められた。しかし遺伝子導入後7日後のサンプルでは、著しい細胞周期活性の低下が認められた。このことから、心筋細胞には細胞周期活性の持続を妨げているさらなるバリアーがあると考えた。そこで、心筋細胞に増殖刺激を与えた際の細胞周期関連因子のmRNAのレベルを解析することによって、心筋細胞の増殖抑制メカニズムを解明することを目的として、心筋のsingle cell genomics解析を行っている。これまでに、成体ラットの心筋を単離することに成功しており、単離した心筋細胞からmRNAを抽出し、サイクリンD1・Skp2発現によって変動する細胞周期関連因子のmRNAレベルをprofilingしている。心筋は生後最終分化に入り増殖を停止する。このため心筋梗塞などにより心筋が傷害された場合には、再生されないため重症心不全に陥る例が多い。現在のところ心移植以外に根治療法がないが、申請者は不全心筋に残存した心筋細胞自体を増殖させる「心筋分裂再生治療」を行う技術の開発を目指して心筋細胞の増殖抑制メカニズムについて研究してきた。今までに心筋細胞増殖抑制メカニズムには、まずサイクリンD1の核移行の障害(first barrier)、さらにはp27^<kip1>分解障害(second barrier)の少なくとも2段階の制御機構が存在することを報告した。そこで本研究では核移行シグナルを付加したサイクリンD1(D1NLS)・CDK4・Skp2によるp27分解により心筋梗塞モデルラットの心機能および生命予後を改善するかアデノウイルスを用いて遺伝子導入を行い、その効果を解析した。その結果、(1)遺伝子導入4日後のD1NLS/CDK4/Skp2群の心組織において、遺伝子導入部で増殖マーカー(Ki67)陽性心筋細胞・M期マーカー(Histone H3リン酸化抗体)陽性心筋細胞が多く認められた。(2)遺伝子導入6週間後のエコー、カテーテル検査からD1NLS/CDK4群で軽度、D1NLS/CDK4/Skp2群で明らかな心機能の回復、心筋梗塞巣の縮小、肺重量の軽減が認められた。以上より、サイクリンD1NLS・Skp2の組み合わせによる心筋再分裂により、傷害されたin vivoの心機能回復を促すことが可能であることが示唆された。すなわち、サイクリンD1・Skp2の強制発現は、組織内心筋細胞をin situにおいて分裂させ、心不全などの再生治療応用に利用できる可能性がある。心筋細胞は生後まもなく増殖能を失い終末分化状態に入る。
KAKENHI-PROJECT-17590712
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17590712
心筋再分裂誘導の分子機構と再生医療への応用に関する研究
我々は、これまでに、核移行シグナル付加サイクリンD1(D1NLS)の核内強制発現と、Skp2によってp27を分解することでより安定な培養心筋細胞の再分裂を誘導できることを見出している。また昨年度までに、成体ラット心筋梗塞モデルにD1NLSウイルス(D1NLS群)、D1NLS/Skp2ウイルス(Skp2群)を心筋に直接注入した個体での心機能と心不全の改善効果を確認した。本年度は、詳細な組織学的細胞周期解析を行った。遺伝子導入後4日後の心筋の解析の結果、遺伝子導入部位で増殖マーカーKi67陽性心筋細胞が数多く認められただけでなく、明らかな有糸分裂中の心筋細胞が認められた。その割合はD1NLS群<Skp2群であった。また、細胞質分裂中の心筋細胞が認められ、分裂後の娘細胞も心筋のphenotypeを維持していた。以上の結果から、サイタクリンD1・Skp2の強制発現は、組織内心筋細胞をin situにおいてphenotypeを維持したまま分裂させることが示され、またSkp2を追加することによる高い増殖能が認められた。しかし遺伝子導入後7日後のサンプルでは、著しい細胞周期活性の低下が認められた。このことから、心筋細胞には細胞周期活性の持続を妨げているさらなるバリアーがあると考えた。そこで、心筋細胞に増殖刺激を与えた際の細胞周期関連因子のmRNAのレベルを解析することによって、心筋細胞の増殖抑制メカニズムを解明することを目的として、心筋のsingle cell genomics解析を行っている。これまでに、成体ラットの心筋を単離することに成功しており、単離した心筋細胞からmRNAを抽出し、サイクリンD1・Skp2発現によって変動する細胞周期関連因子のmRNAレベルをprofilingしている。
KAKENHI-PROJECT-17590712
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17590712
ドナー性およびアクセプター性共役高分子ブレンド膜太陽電池の色素増感による高効率化
[1]Al/ポリチオフェン・ショットキーバリア型光電変換素子のポルフィリン色素による増感効果の検討p型半導体であり正孔移動度の比較的大きな立体規則性共役ポリマー:ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)を用いた太陽電池に対して、光吸収率を大きくすることでエネルギー変換効率の向上が見込めるかどうかを検討した。その結果、P3HTにポルフィリン色素やメロシアニン色素をブレンドすることによって、P3HTあるいは色素単独膜を用いた場合よりも数十倍大きな光電流が流れ、格段に良いエネルギー変換効率を得た。この理由を明らかにするために、特に、酸化還元電位や立体的構造を設計・合成しやすいポルフィリン色素をP3HTにブレンドした薄膜素子を用いて詳細に検討した。その結果、ポルフィリンからP3HTへの光誘起ホール移動が起こる場合に光電流の増加が顕著になることが判明した。[2]平滑透明TiO_2電極を用いた有機薄膜太陽電池の検討前節では、Al/有機薄膜/Auサンドイッチ型素子を用いているため、半透明Al電極側から光照射した場合には光のロスが大きいこと、また、湿気がある所でこの素子を作動させるとAlの光腐食が起こることが、このタイプの素子を実用電池とする場合に大問題となる。そこで、透明平滑TiO_2電極をAl電極の代わりに電子輸送電極として用いた。(1)TiO_2/ポリチオフェン/Auサンドイッチ型太陽電池のメロシアニン色素ブレンドによる光電流の増加本研究では、平滑で透明な酸化チタン薄膜を用いたTiO_2/ポリチオフェン界面を有する有機薄膜太陽電池の光利用率を向上させる目的で、共役ポリマーであるポリチオフェンにメロシアニン色素NK2684をブレンドした。さらに、電荷分離を促進するTiO_2/有機膜界面の空乏層領域について詳細に検討を加えた。平滑で透明なTiO_2電極上にP3HTを塗布したTiO_2/P3HT/Auサンドイッチ型太陽電池のP3HTにメロシアニン色素をブレンドすることによって、電池性能が大幅に向上し、太陽擬似光AM1,5-100mWcm^<-2>の照射下、エネルギー変換効率0.32%を得た。光電流発生界面TiO_2/P3HT+NK2684における有機固体側の電荷分離領域は、光照射下では光電流の光学的フィルター効果により40nm以上と見積もられた。この比較的広い範囲の電荷分離領域では、P3HTと色素の光誘起分子間電荷移動によって生じたホールと電子が効率よく電荷分離するために、このタイプの太陽電池としては大きなエネルギー変換効率が得られた。(2)TiO_2/ポリフェニレンビニレン/Auサンドイッチ型太陽電池のDCM化合物ブレンドによる電池性能の向上本研究では、TiO_2/ポリ[2-メトキシ-5-(2'-エチレンヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン(MEH-PPV)からなる太陽電池を検討した。この太陽電池のMEH-PPV層にアクセプター色素DCMをブレンドしたときに著しい電池性能の向上が見られ、太陽擬似光AM1.5-100mWcm^<-2>照射下でエネルギー変換効率0.47%が得られた。[1]Al/ポリチオフェン・ショットキーバリア型光電変換素子のポルフィリン色素による増感効果の検討p型半導体であり正孔移動度の比較的大きな立体規則性共役ポリマー:ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)を用いた太陽電池に対して、光吸収率を大きくすることでエネルギー変換効率の向上が見込めるかどうかを検討した。その結果、P3HTにポルフィリン色素やメロシアニン色素をブレンドすることによって、P3HTあるいは色素単独膜を用いた場合よりも数十倍大きな光電流が流れ、格段に良いエネルギー変換効率を得た。この理由を明らかにするために、特に、酸化還元電位や立体的構造を設計・合成しやすいポルフィリン色素をP3HTにブレンドした薄膜素子を用いて詳細に検討した。その結果、ポルフィリンからP3HTへの光誘起ホール移動が起こる場合に光電流の増加が顕著になることが判明した。[2]平滑透明TiO_2電極を用いた有機薄膜太陽電池の検討前節では、Al/有機薄膜/Auサンドイッチ型素子を用いているため、半透明Al電極側から光照射した場合には光のロスが大きいこと、また、湿気がある所でこの素子を作動させるとAlの光腐食が起こることが、このタイプの素子を実用電池とする場合に大問題となる。そこで、透明平滑TiO_2電極をAl電極の代わりに電子輸送電極として用いた。(1)TiO_2/ポリチオフェン/Auサンドイッチ型太陽電池のメロシアニン色素ブレンドによる光電流の増加本研究では、平滑で透明な酸化チタン薄膜を用いたTiO_2/ポリチオフェン界面を有する有機薄膜太陽電池の光利用率を向上させる目的で、共役ポリマーであるポリチオフェンにメロシアニン色素NK2684をブレンドした。さらに、電荷分離を促進するTiO_2/有機膜界面の空乏層領域について詳細に検討を加えた。平滑で透明なTiO_2電極上にP3HTを塗布したTiO_2/P3HT/Auサンドイッチ型太陽電池のP3HTにメロシアニン色素をブレンドすることによって、電池性能が大幅に向上し、太陽擬似光AM1,5-100mWcm^<-2>の照射下、エネルギー変換効率0.32%を得た。光電流発生界面TiO_2/P3HT+NK2684における有機固体側の電荷分離領域は、光照射下では光電流の光学的フィルター効果により40nm以上と見積もられた。
KAKENHI-PROJECT-14580536
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14580536
ドナー性およびアクセプター性共役高分子ブレンド膜太陽電池の色素増感による高効率化
この比較的広い範囲の電荷分離領域では、P3HTと色素の光誘起分子間電荷移動によって生じたホールと電子が効率よく電荷分離するために、このタイプの太陽電池としては大きなエネルギー変換効率が得られた。(2)TiO_2/ポリフェニレンビニレン/Auサンドイッチ型太陽電池のDCM化合物ブレンドによる電池性能の向上本研究では、TiO_2/ポリ[2-メトキシ-5-(2'-エチレンヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン(MEH-PPV)からなる太陽電池を検討した。この太陽電池のMEH-PPV層にアクセプター色素DCMをブレンドしたときに著しい電池性能の向上が見られ、太陽擬似光AM1.5-100mWcm^<-2>照射下でエネルギー変換効率0.47%が得られた。共役高分子である可溶性ポリチオフェンを用いた有機薄膜太陽電池のポルフィリンによる色素増感について検討した。ポリチオフェンにポルフィリンをブレンドすることによって、それぞれの単独膜に比べて30倍以上のエネルギー変換効率が観測された。このブレンド膜セル(Al/ブレンド膜/Auサンドイッチ型セル)でのエネルギー変換効率の最高値は、半透明Al電極透過後の微弱単色光(20μW/cm^2,430nm)ではあるが、1.17%であった。この色素増感効果は、ブレンド膜内で、ポルフィリンからポリチオフェンへの光誘起ホール移動が容易に起こるためである。すなわち、光照射によって形成した電子励起状態のポルフィリン色素がアクセプター、基底状態のポリチオフェンがドナーとして作用した。この光誘起ホール移動は、ドナー・アクセプター間の酸化電位差(すなわち熱力学的駆動力)と両者の共役骨格の近接の度合いに支配された。そのため、ドナー・アクセプター間の酸化電位差が大きいほど、また、ポリチオフェン分子内のS原子が亜鉛ポルフィリンのZn^<2+>イオンに軸配位して近接するほど大きな光電流が観測された。一方、共役高分子である可溶性ポリフェニレンビニレンと色素のブレンド膜を用いた有機薄膜太陽電池では、上記のような色素増感効果は観測されなかった。この理由は、まだ良く分からない。しかし、可溶性ポリフェニレンビニレンとその共役高分子の共役骨格に電子吸引性のシアノを導入したシアノポリフェニレンビニレンをブレンドしたドナー・アクセプター共役高分子ブレンドセルでは、それぞれの単独薄膜から作製した太陽電池に比べて、格段に良好な光電変換特性を示した。平成15年度は、このタイプの有機薄膜太陽電池の光起電力効果発現機構を検討する予定である。より実用に近い形の有機薄膜太陽電池を開発する目的で、平成14年度に報告したAl/ブレンド膜/Auサンドイッチ型セルの窓材である半透明Alの代わりに、透明で平滑な酸化チタンTiO_2を用いたTiO_2/ブレンド膜/Auサンドイッチ型構造のセルについて、そのブレンド効果(共役高分子ポリチオフェンのメロシアニンによる色素増感)を検討した。可溶性ポリチオフェン(P3HT)にメロシアニン色素(MC)をブレンドすることによって、それぞれの単独膜に比べて格段に良好なエネルギー変換効率が観測された。
KAKENHI-PROJECT-14580536
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14580536
高蓚酸尿症に対するアラニングリオキシル酸変換酵素、グリオキシル酸還元酵素の測定
尿路結石形成のリスクファクターの1つである高蓚酸尿症の原因には遺伝性疾患である原発性高蓚酸尿症1型(PH1)、原発性高蓚酸尿症2型(PH2)があるが、大部分は原因不明である。PH1は、肝細胞内に存在するserine/pyruvate:alanine/glyoxylate aminotransferase(SPT/AGT)の異常によって、PH2は、Glyoxylate reductase(GR)の異常によっておこるが、診断方法はいずれも保険収載されておらず、その診断には専門的な注意深い観察、時間・経費を必要とする。原因不明の蓚酸カルシウム含有結石患者の一部はこの酵素異常による可能性が十分にある。近年、GRを抹消血液中の単球を用いて測定し、PH2の診断を行うことが可能であるという報告がなされたが、結石症患者でのGR活性については調査されていないため、本研究を実施する必要性があると考えられる。蓚酸は、尿中で常に過飽和状態にあり、軽度の上昇で速やかに蓚酸カルシウム結晶を作ることがわかっており、この前駆物質の代謝に関わるGR活性の低下によっても尿路結石症を惹起すると考えられる。そこで、本研究においてPH1症例のSPT/AGT活性を測定するとともに尿路結石症の患者におけるGR、L-Glycerateの測定を行うことにより、未だ原因不明である多くの尿路結石症患者の原因の一部を究明に寄与することを目的とする。平成22年度は(1)PH1症例のSPT/AGT活性の蓄積(2)PH2疑いおよび尿路結石症患者におけるGR活性の測定(3)PH2疑いおよび尿路結石症患者におけるL-グリセリン酸の測定を行い症例の集積を行っている状態で、それらを報告するにはいまだ至っていない。尿路結石形成のリスクファクターの1つである高蓚酸尿症の原因には遺伝性疾患である原発性高蓚酸尿症1型(PH1)、2型(PH2)があるが、大部分は原因不明である。PH1は、肝細胞内に存在するSPT/AGTの異常によって、PH2は、GRの異常によっておこるが、診断方法はいずれも保険収載されていない。原因不明の蓚酸カルシウム含有結石患者の一部はこの酵素異常が原因である可能性が十分にあるが、結石症患者でのGR活性については調査されていない。本研究においてPH1症例のSPT/AGT活性を測定するとともに尿路結石症の患者におけるGR、L-Glycerateの測定を行うことにより、未だ原因不明である多くの尿路結石症患者の原因の一部を究明に寄与することを目的とする。平成23年度は(1)PH1症例のSPT/AGT活性の蓄積(2)PH2疑いおよび尿路結石症患者におけるGR活性の測定(3)PH2疑いおよび尿路結石症患者におけるL-グリセリン酸の測定を行い症例の集積を行っていた。(1)PH1患者の確定診断としてのSPT/AGTに関しては4例測定が終了しており、今後さらに1例の測定が予定されている。これをドイツで開かれるPHworkshopにて報告予定である。(2)GR活性の測定は現在サンプルを集積・測定している状態であり、いまだ明らかな傾向が出ていないため、さらにサンプルを集め、検討する予定である。(3)L-グリセリン酸の測定は健常人の測定は可能であったが、結石症患者における測定ではいまだ明らかな傾向はなく、さらにサンプルを集め検討する予定であるが、それに有用なLC-MSの機械の調子が悪いため、機械自体の調整を再度行っているところである。以上の状熊のため、いまだ最終報告を行うには早く、本年度での検討を充分に行う予定である。尿路結石形成のリスクファクターの1つである高蓚酸尿症の原因には遺伝性疾患である原発性高蓚酸尿症1型(PH1)、2型(PH2)があるが、大部分は原因不明である。PH1は、肝細胞内に存在するSPT/AGTの異常によって、PH2は、GRの異常によっておこるが、診断方法はいずれも保険収載されていない。原因不明の蓚酸カルシウム含有結石患者の一部はこの酵素異常が原因である可能性が十分にあるが、結石症患者でのGR活性については調査されていない。本研究においてPH1症例のSPT/AGT活性を測定するとともに尿路結石症の患者におけるGR、L-Glycerateの測定を行うことにより、未だ原因不明である多くの尿路結石症患者の原因の一部を究明に寄与することを目的とする。平成24年度は1PH1症例のSPT/AGT活性の蓄積2PH2疑いおよび尿路結石症患者におけるGR活性の測定3PH2疑いおよび尿路結石症患者におけるL-グリセリン酸の測定を行い症例の集積を行っていた。1PH1患者の確定診断としてのSPT/AGTに関してはそのドナーも含め15例測定が終了しており、SGT活性にて測定可能であった。ドイツで開かれるPHworkshopにて報告した。2GR活性の測定は9例の結石患者に対し行い、平均値は1.81±0.76nmol/min/mg proteinであった。これは健常人より高い値であり、当初の予定度は逆の結果となった。3L-グリセリン酸の測定は52例の健常人と9例の結石患者において測定を行った。全体の値は16.8±9.1μmol/Lであり、結石患者において優位に高かった。
KAKENHI-PROJECT-22591789
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22591789
高蓚酸尿症に対するアラニングリオキシル酸変換酵素、グリオキシル酸還元酵素の測定
今回の研究にて結石患者のL-Glycerateは高く、結石の原因の一端にGRの活性低下が示唆されたが、GRの活性は実際の測定では健常人より高く、矛盾する結果となった。測定機器の故障により、測定が十分に終了していない。24年度が最終年度であるため、記入しない。測定機器の修理が終了後速やかに検体を測定予定である。LC-MSについては修理完了しても調整が困難な場合は光学異性体の分離は困難だが、代替え法によりグリセリン酸を測定可能な状態に調整する。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22591789
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22591789
再生可能エネルギーの利用を促進する社会経済システムの研究
研究課題1として、住宅用太陽光発電を効率的に普及させるための太陽光発電買い取り制度について研究した。社会厚生や電気料金負担の観点からは、設置家計が電力販売量を増やすためにどの程度電力消費を抑制するかが鍵になることを明らかにした。研究課題2として、廃棄物系バイオマス利活用事業の効果的な運営形態について研究した。効果的な運営形態は、投入するバイオマスや生産物の種類等に関連することが示唆された。研究課題1として、住宅用太陽光発電を効率的に普及させるための太陽光発電買い取り制度について研究した。社会厚生や電気料金負担の観点からは、設置家計が電力販売量を増やすためにどの程度電力消費を抑制するかが鍵になることを明らかにした。研究課題2として、廃棄物系バイオマス利活用事業の効果的な運営形態について研究した。効果的な運営形態は、投入するバイオマスや生産物の種類等に関連することが示唆された。再生可能エネルギーから発電された電力の普及策であるRPS(取引可能な利用目標の設定による方法)、FIT固定価格での買い取りによる方法)、ならびに住宅用太陽光発電(PV)の余剰電力購入制度の仕組みや各国での導入状況などについて、研究準備段階での調査の補足を行った。次いで、PVシステムを普及させるためのインセンティブについて、ミクロ経済モデルによる分析を行った。そのインセンティブとは、PVシステムで発電された電力を電力会社が電気料金よりも高い価格で買い取る一方、電力会社は買い取り費用を全家計に適用される電気料金に上乗せするという制度である。そのもとで、政府がある一定の導入件数を目標とする場合の買い取り価格と電気料金との関係を明らかにした。多くの先行研究とは異なり直接、経済性を問題とするのではなく、予算制約やPVに対する評価(つまり効用)が家計ごとに異なるモデルを考案し意思決定を分析した。主な結果は次の通りである。買い取り費用が電気料金に上乗せされない場合、導入家計も未導入家計も「高い買い取り価格・低い電気料金」を選好する一方、電力会社の選好は「低い買い取り価格・高い電気料金」となる。買い取り費用が電気料金に上乗せされる場合、買い取り価格と電気料金は一意に定まる。PV電力の全量買い取りと余剰電力のみの買い取りは、導入件数目標が同じである限り政策効果は同じである。さらに、政府が、PVシステム導入家計に設置補助金(財源は所得税)を与える場合も検討した。そして、買い取り価格、電気料金、補助金額に対する各家計の選好は、所得水準(つまり予算制約)に応じて決まることを明らかにした。我が国では、2009年11月から新たなPV電力の購入制度が導入されるなど、PVの普及を積極的に推進している.本研究は、効率的かっ公平なPVシステムの普及策を検討する上で、重要な示唆を与えるものである。今年度の研究成果は大きく二つに分けられる。一つは、住宅用太陽光発電の普及に関する研究であり、他の一つはバイオマス利活用事業に関する研究である。住宅用太陽光発電の普及に関する研究は、二つに分けられる。一つは、住宅用太陽光発電設備で発電された電力の買い取り方式に関するものである。買い取り方式には、発電量全量買い取り、余剰電力のみの買い取り、精算期間での差額による買い取りの三方式がある。これらの三方式をモデルにより比較した結果、全発電量買い取りが最も効率的であること、効率性についてはパラメータ次第であることを明らかにした。もう一つは、住宅用太陽光発電を設置するためのインセンティブとしての設置補助金、発電した電力の買い取り、電気料金の三変数の関係に関するものである。モデル分析した結果、ある条件の下では、家計はより高い補助金よりも寧ろより高い買い取り価格と電気料金の組み合わせを選好することを明らかにした。本研究は、太陽光発電の導入量拡大のための経済制度の設計において有益な情報を与えるものである。バイオマス利活用事業に関しては、事業の効率的な運営形態について研究した。まず、バイオマス利活用事業を運営形態の面から事例研究した。その結果、主に、利用するバイオマスの種類やバイオマスからの生産物に応じて特徴的な形態があることを明らかにした。次いで、その中でも官民協働という形態の可能性について検討した。その結果、関係各主体の役割分担を考慮に入れて官民協働の有効性を検討する必要があること明らかにした。バイオマスの利活用は、廃棄物問題、地球温暖化問題、地域経済・産業の活性化などに有効と考えられているが、必ずしも全ての事業がうまくいっているわけではない。本研究は、バイオマス利活用事業をより効率的に運営するためのひとつの可能性を提示するものである。今年度は本研究計画の最終年度であることから、住宅用太陽光発電の普及策に関する研究の仕上げと今後の展開への準備、並びにバイオマス利活用研究に関する総括を行った。住宅用太陽光発電の普及策に関しては、昨年度までのモデルを発展させた。太陽光発電の余剰電力もしくは発電量と消費量の差を買い取る方式では家計に節電するインセンティブが生じるが、全発電量を買い取る方式ではそのようなインセンティブは生じない点を新たにモデル化した。買い取り方式間での社会厚生の違いは節電量の大きさに依存し、節電量が大きくなると余剰電力もしくは差を買い取る方式では電気料金への上乗せ額が大きくなる可能性があるという重要な結果を得た。この成果をSolar Energy誌に投稿し、「少しの修正で掲載可能」という査読結果を受け現在修正中である。また、補助金の役割についても、昨年度までの研究を発展させた。まず、これまでの研究成果を世界再生可能エネルギー会議で発表し議論した。
KAKENHI-PROJECT-21560427
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21560427
再生可能エネルギーの利用を促進する社会経済システムの研究
そして、新たに、家計の予算制約を考えない、分析が容易なモデルを考案した。社会厚生を最大にするにはある定額で太陽光発電を買い取り、補助金で普及規模を調整すべきである、また、発電量を最大にするには補助金は導入すべきでないという興味深い結果を得た。これは、2012年6月のエネルギー・資源学会で発表することが決定している。今後の展開として、再生可能エネルギー普及への応用可能性を考えて、ネットワーク科学に関する文献調査も行った。この研究には、来年度から新たな科研費補助金の支援が受けられることが内定している。バイオマス利活用に関しては、これまでの研究成果を総括した。PFIのような民間による公共サービス供給がバイオマス利活用事業にも適用可能かどうかは、バイオマスの種類や技術等に依存するとの結論を得た。今後は、事例研究を通してより詳細な適用条件を求める必要がある。
KAKENHI-PROJECT-21560427
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21560427
ストレス応答性および温度感受性蛋白質核内輸送機構の解析
われわれのグループは放線菌が生産する抗腫瘍抗生物質レプトマイシン(LMB)が核外移行受容体CRMに直接結合し、核外移行シグナル(NES)を介した核外移行を特異的に阻害することを明らかにしてきた。従ってLMBを用いることによって特定の蛋白質について簡便に核外輸送されるかどうかの判定が可能となった。そのため近年、LMBを用いて多くの制御蛋白質が核-細胞質間をシャトルしていることが明らかになりつつある。そこで酸化ストレス、熱ストレスなどによって特異的に核移行する蛋白質に焦点を当て、その特異的な核内輸送調節機構を明らかすることを目的として研究を行なった。まず、p53温度感受性変異体(tsp53)が許容温度(32°C)では核に局在して機能するのに対し、制限温度(37°C)では細胞質に局在し、転写活性化能を示さないメカニズムについて解析を行い、細胞質において変異型p53は、Hsc70と結合し、逆に核移行輸送蛋白質importinとは結合していないが、32°CではHsc70と解離し、importinとの結合が回復することを見いだした。以上の結果から、37°Cでは、Hsc70複合体がNLSをマスクすることによって核移行を阻害するが、32°Cでは解離するため速やかな核移行を許すと考えられる。一方、酸化ストレスに応答して核移行する分裂酵母の転写因子Pap1について詳細な解析を行い、LMBが共有結合するCrm1のCys-529がSerまたはAlaに置換したものがPap1のNESの核外輸送能が大きく低下し、Pap1が核移行して酸化ストレス応答性遺伝子の活性化を引き起こすことを示した。以上の結果から、このシステイン残基周辺がCrm1の基質認識部位であり、酸化ストレス感受性の核外輸送にはNESとCrm1の両者に存在するシステイン残基が重要であることが明らかになった。われわれのグループは放線菌が生産する抗腫瘍抗生物質レプトマイシン(LMB)が核外移行受容体CRMに直接結合し、核外移行シグナル(NES)を介した核外移行を特異的に阻害することを明らかにしてきた。従ってLMBを用いることによって特定の蛋白質について簡便に核外輸送されるかどうかの判定が可能となった。そのため近年、LMBを用いて多くの制御蛋白質が核-細胞質間をシャトルしていることが明らかになりつつある。そこで酸化ストレス、熱ストレスなどによって特異的に核移行する蛋白質に焦点を当て、その特異的な核内輸送調節機構を明らかすることを目的として研究を行なった。まず、p53温度感受性変異体(tsp53)が許容温度(32°C)では核に局在して機能するのに対し、制限温度(37°C)では細胞質に局在し、転写活性化能を示さないメカニズムについて解析を行い、細胞質において変異型p53は、Hsc70と結合し、逆に核移行輸送蛋白質importinとは結合していないが、32°CではHsc70と解離し、importinとの結合が回復することを見いだした。以上の結果から、37°Cでは、Hsc70複合体がNLSをマスクすることによって核移行を阻害するが、32°Cでは解離するため速やかな核移行を許すと考えられる。一方、酸化ストレスに応答して核移行する分裂酵母の転写因子Pap1について詳細な解析を行い、LMBが共有結合するCrm1のCys-529がSerまたはAlaに置換したものがPap1のNESの核外輸送能が大きく低下し、Pap1が核移行して酸化ストレス応答性遺伝子の活性化を引き起こすことを示した。以上の結果から、このシステイン残基周辺がCrm1の基質認識部位であり、酸化ストレス感受性の核外輸送にはNESとCrm1の両者に存在するシステイン残基が重要であることが明らかになった。我々の研究室で発見されたレプトマイシン(LMB)は、NESを介した核外移行の特異的阻害剤である。従ってレプトマイシンを用いることによって特定の蛋白質について簡便に核外輸送されるかどうかの判定が可能となった。そのため近年、レプトマイシンを用いて多くの制御蛋白質が核-細胞質間をシャトルしていることが明らかになりつつある。そこで酸化ストレス、熱ストレスなどによって特異的に核移行する蛋白質に焦点を当て、その特異的な核内輸送調節機構を明らかにすることを目的として研究を行なった。本年度は、特にp53温度感受性変異体(tsp53)が許容温度(32°C)では核に局在して機能するのに対し、制限温度(37°C)でに細胞質に局在し、転写活性代能を示さないメカニズムについて解析を行った。LMBを加えたところ、37°Cでtsp53がゆっくりと核に移行した。また、tsp53の核移行シグナル(NLS)変異体は、構成的に細胞質局在を示したことからtsp53は核と細胞質をシャトルしていることが示唆された。細胞質において変異型p53は、Hsc70と結合し、逆に核移行輸送蛋白質importinとは結合していない。32°CではHsc70と解離し、importinとの結合が回復する。LMB処理によって核蓄積したp53複合体にはHsc70が含まれていなかった。37°Cではみられなかったin vitroでのtsp53-importinの結合が細胞抽出液からHsc70をを除去した場合には回復した。
KAKENHI-PROJECT-13460035
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13460035
ストレス応答性および温度感受性蛋白質核内輸送機構の解析
以上の結果から、37°Cでは、Hsc70複合体がNLSをマスクすることによって核移行を阻害するが、32°Cでは解離するため速やかな移行を許すと考えられる。温度変化による蛋白質立体構造の変化をヒートショック蛋白質であるHsc70がモニターし、その結合によって結果的に細胞質にとどめておく機構は、はじめての例であると考えられ、興味深い。われわれのグループは放線菌が生産する抗腫瘍抗生物質レプトマイシン(LMB)が核外移行受容体CRMに直接結合し、核外移行シグナル(NES)を介した核外移行を特異的に阻害することを明らかにしてきた。従ってLMBを用いることによって特定の蛋白質について簡便に核外輸送されるかどうかの判定が可能となった。そこで酸化ストレス、熱ストレスなどによって特異的に核移行する蛋白質の核内輸送調節機構を明らかすることを目的として研究を行なった。本年度は、酸化ストレスに応答して核移行する分裂酵母の転写因子Pap1について詳細な解析を行った。すでにわれわれは、Pap1のC末端領域のシステインにとんだ領域(CRD)にシステイン残基を含む酸化ストレス応答性のNESが存在することを明らかにしている(J. Biol. Chem.274,15151,1999)。今回、分裂酵母Crm1の各種変異体の中からPap1のNESの輸送のみが低下するようなものをスクリーニングしたところ、驚くべきことにLMBが共有結合するCrm1のCys-529がSerまたはAlaに置換したものがPap1のNESの核外輸送能が大きく低下し、Pap1が核移行して酸化ストレス応答性遺伝子の活性化が引き起こされることが判明した。Cys-529の変異体はHIVのRevのような通常のNESの輸送にはほとんど影響がなかった。さらにCys-529周辺は種間で高度に保存されており(中央部相同領域:CCR)、この部分がNES認識に関与することも考えられた。そこでその周辺に存在する疎水性アミノ酸残基に変異を加えると、HIVのRevのような通常のNESの輸送能が大きく低下した。以上の結果は、CCRがCrm1の基質認職部位であり、酸化ストレス感受性の核外輸送にはNESとCrm1の両者に存在するシステイン残基が重要であることが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-13460035
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13460035
管理行為を包括する総合的土地利用マネジメントの仕組みの検討
人口減少や少子高齢化の進行に伴い土地利用の管理行為の放棄が進むと、土地利用の維持や管理に必要なコストを誰がどのように負担するのかが課題になってくる。これは土地利用のコントロールが現状の制度では、開発時点、開発者、開発行為を軸としており、管理行為がコントロールの対象になっていないからである。本研究では、需要が低下し、管理が放棄されやすいエリアの土地利用の特性を明らかにし、多様な主体の協働による低需要地の土地利用管理の可能性について検討を行った。この結果、前者については需要の急激な低下過程では土地の使い捨てに近い状況が発生していること、後者については管理を通じたまちづくりの可能性が示唆された。研究の初年度は、近年、国内の多くの広域自治体が採用している森林の空間マネジメントのための新たな仕組みである森林環境税の調査に重点を置いて研究を実施した。調査対象地としては、人口が多く森林面積が小さく森林環境税総額の最も大きい神奈川県、森林面積が大きく人口が少ない秋田県(東北エリアの森林環境税導入県のうち被災地は除いた)を選定し、森林環境税による空間管理の実態を現地調査も含めて明らかにした。また、これに加えて都市部の面積の大きい愛知県、兵庫県でも森林環境税の運用実態に関する調査を行った。研究の結果、いずれの自治体でも人工林のうち条件が悪いエリアを環境林に遷移させることを主な目的として森林をゾーニングし、これに基づき森林環境税を活用して強間伐を行うこと、その条件として20年程度の協定を地権者と締結し土地利用を維持する規制を行うこと、一方で林業や生態学分野において人工林を自然林に遷移させるための研究の蓄積がなく、間伐による効果の発現に時間もかかることから、森林整備事業の効果等が科学的に測定できないこと、この結果、各県における森林環境税の歳入により森林空間管理のために実施する事業内容や間伐の頻度に違いがあることが明らかになった。次に、森林エリアに含まれることが多く、非集約的な土地利用が行われている都市計画区域外の土地利用の実態について、比較的人口の多い千葉県内の都市計画区域外のエリアを対象として実態調査を行った。また、被災地における浸水エリア等の非集約化エリアの土地利用の方向性について、現地で実際に緑化による土地利用を行っている事例を対象に調査を行った。海外の自然的土地利用のマネジメントについては、フランス農村における農村活性化政策と自然的土地利用の維持・管理が景観という観点から実現されている事例の現地調査を行った。研究の中間地点となる本年は、交付申請書に記載した研究の目的のうち、都市の縮小過程における土地利用管理に着目し、大都市郊外部の市街化調整区域における土地利用のコントロールと、コミュニティレベルの土地利用の管理行為に関する研究を実施した。具体的には、前者については、以下の2つの研究を実施している。1つは、市街化調整区域における市民農園の成立要件に関する研究である。もともと開発圧力が低い首都圏近郊地帯の縁辺部の自治体における市街化調整区域において、市民農園という形で市民による土地利用の管理が行われている事例を対象に、その成立要件、利用者層、土地利用管理の領域等を把握した。もう1つは、比較的開発圧力の高い地域の市街化調整区域内に存在するハザードエリアにおける土地利用規制の誘導プロセスに関する調査である。ハザードエリアの土地利用を誘導してゆくことは、集約型都市構造の形成において重要な立地誘導策の1つであると認識されている。一方、後者については、特に東日本大震災の津波浸水エリアにおけるコミュニティレベルの土地利用の管理行為に着目した研究を行った。コミュニティガーデンというコミュニティを基盤とした土地利用の管理に着目している。東日本大震災の津波浸水エリアには、コミュニティすら明確な形で残っていない場合がある。こうした厳しい状況において、いかにコミュニティレベルの土地利用の管理が成立するかを把握することで、制度や人的影響を排除したうえで、コミュニティによる土地利用の管理が成立しうる要件を分析した。また、街区公園という身近な空間の住民管理の実態についての把握も行い、コミュニティによる空間管理の効果、課題を明らかにした。本研究は、人口減少や少子高齢化の進行に伴い、管理行為が放棄された土地が増加することにより生じる課題に対応するために、土地利用制度に時間軸・行為主体という2つの概念を新たに組み込むことにより、持続的・包括的な土地利用マネジメントの方法論を検討することを目的としたものである。本年度は、人口が低密で自然環境が豊かな都市計画区域外における開発の実態と、東日本大震災により津波の被害を受けた低平地の土地利用の実態について明らかにした。都市計画区域外は、土地利用制度上は、農地や山林が主な土地利用であり、開発が基本的に行われないエリアとして想定されている。しかし、実際には周辺の都市計画区域における開発圧力や地価の動向に応じて農地や林地の開発が行われており、更に、開発された土地の多くが短期間のうちに放棄され、農林地において開発を通じて土地の荒廃が進行している実態が明らかになった。津波の被害を受けた低平地は、従前市街地であった場合でも、津波で浸水したことにより土地利用が放棄されていることが多い。本研究では先行的に土地利用が行われると考えられる津波浸水エリアの公立小中学校の跡地について調査を行ったが、震災から5年が経過しても未だに土地利用が殆ど決まっておらず、ごく限られたエリアで産業及び住宅系の土地利用が行われていることが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-25340137
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25340137
管理行為を包括する総合的土地利用マネジメントの仕組みの検討
一方で、津波の被害を受けた低平地におけるコミュニティガーデンを通じた土地利用の実態を把握し、供給できる資源に様々な制約がある場合でも、外部の人的・物的資源の活用により、土地利用のマネジメントが可能であり、また広域的・面的な土地利用が出来なくとも、質の高い空間が存在することで周囲の土地にも積極的な影響が見られることを明らかにした。本年度は、リバーススプロールやスマートシュリンク等の時間軸を含んだ土地利用の変容と、荒廃した土地の新たな管理の主体について明らかにすることを予定しており、これらは以下に示すようにおおむね順調に進展した。まず、前者については、都市計画区域外の開発動向から、農林地の荒廃を伴うリバーススプロールが数年という短い時間で発生している実態を明らかにできた。また、低平地の土地利用の実態から、スマートシュリンクが現実的には困難であり、別の観点からの土地利用の集約化を検討しなくてはならないことを明らかにした。一方、後者については、低平地におけるコミュニティガーデンの発現事例から、限られた人的・物的資源であっても、外部資源の活用を通じて、地元の住民が主体となり一定面積の土地利用管理が可能であり、更にそれが周辺にもたらす影響を踏まえると、広域的には面的管理ではなく点的管理であっても、空間の質が維持できることを明らかにできた。以上のことから、研究は概ね順調に進展していると言える。ただし、昨年度のテロの発生により海外渡航を自粛したことから、海外事例の調査を実施し研究全体を完成させるために期間の延長を行うこととした。研究最終年度にあたる本年は、特に東日本大震災で被災した後に居住が制限される災害危険区域に指定された低平地の土地利用マネジメントの仕組みに重点を置いて調査及び研究に取り組んだ。この研究は本課題の中心テーマの1つであるが、2011年からの復興集中期間の最終年度である2016年度に復興系の基幹事業に目途が立ったことから、ようやく各自治体が低平地の土地利用に取り組むようになり、社会的にも低平地の土地利用に注目が集まった。一般に、震災前に住宅が立地していた低平地は土地が細分化されているうえに、地方都市の場合は買い取り対象とならない宅地以外の農地等の土地利用も混在するため、震災後の土地利用マネジメントが極めて困難である。このため、行政が土地を集約して産業誘致をしたり、市民に活用方法を公募するなど、様々な土地利用の方策が提示された。これらはいずれも試験的なものであり、その成果については現時点では明らかになっていないが、最新の情報を収集しつつ、低需要地の土地利用を緑地でマネジメントする方策について、現地の住民や行政とワークショップ等を実施しながら協働で実践的なスタディにも取り組んだ。他の低需要地として、震災後に居住地として整備されている復興土地区画整理事業地を対象に、土地の需要と供給のずれがどのように発生するのかについて分析を行った。また、広域的な観点からの分析として、首都圏近郊整備地帯を対象に、土地の需要がどのように変化し、都市がどのような形態で縮退してゆくのかをGISや人口データ等を活用しながら分析し、管理が放棄される低需要な土地の特性を踏まえて管理行為を包括する総合的な土地利用マネジメントの方向性を提示した。
KAKENHI-PROJECT-25340137
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25340137
20世紀の各国における「ファシズム」の諸相と文化・社会の総合的比較研究
本研究は、「ファシズム」を特殊な一時代の急進主義的な政治現象としてのみ捉えてきた従来の研究に対する反省を踏まえ、各国社会の全領域におよぶ一大文化現象として「ファシズム」をはじめて総合的に検討しようとした。したがって、本研究は政治・経済のレヴェルばかりでなく、芸術・思想など文化一般を巻き込んだファシズムがいかに強力に共同体意識を形成し、相容れぬ立場をいかに巧妙に排除していったかを多角的・広域的に明らかにすることをめざしてきた。その具体的な成果として、1.ファシズムが決してたんに古いもの、おぞましいものではなく、むしろ「新しい魅力的なもの」であったことの確認2.ドイツ・イタリア・スペイン・フランス・日本等の国々における、文学・映画・音楽・思想・イデオロギーといった種々のメディア、また「学会」やマフィアといった社会組織が果たした、翼賛と抵抗の諸相の分析3.ポーランド、アルジェリア、さらにはラテン・アメリカといった「周辺地域」の視点からの、ファシズムの動員と排除のメカニズムの検証などを挙げることができる。これらの成果を通じて本研究は、第二次世界大戦以降の世界にも生き続けている社会・文化各方面の「ファシズム」現象にも照明をあて、今日の「政治と文化」の関わりに実際少なからぬ示唆を与えることができたのである。本研究での成果を踏まえ、今後とも「ファシズム」文化の諸相を共同で研究してゆき、この一年をめどに、すでに内諾を得ている出版社から各自の研究成果を一冊にまとめ刊行する予定である。本研究は、「ファシズム」を特殊な一時代の急進主義的な政治現象としてのみ捉えてきた従来の研究に対する反省を踏まえ、各国社会の全領域におよぶ一大文化現象として「ファシズム」をはじめて総合的に検討しようとした。したがって、本研究は政治・経済のレヴェルばかりでなく、芸術・思想など文化一般を巻き込んだファシズムがいかに強力に共同体意識を形成し、相容れぬ立場をいかに巧妙に排除していったかを多角的・広域的に明らかにすることをめざしてきた。その具体的な成果として、1.ファシズムが決してたんに古いもの、おぞましいものではなく、むしろ「新しい魅力的なもの」であったことの確認2.ドイツ・イタリア・スペイン・フランス・日本等の国々における、文学・映画・音楽・思想・イデオロギーといった種々のメディア、また「学会」やマフィアといった社会組織が果たした、翼賛と抵抗の諸相の分析3.ポーランド、アルジェリア、さらにはラテン・アメリカといった「周辺地域」の視点からの、ファシズムの動員と排除のメカニズムの検証などを挙げることができる。これらの成果を通じて本研究は、第二次世界大戦以降の世界にも生き続けている社会・文化各方面の「ファシズム」現象にも照明をあて、今日の「政治と文化」の関わりに実際少なからぬ示唆を与えることができたのである。本研究での成果を踏まえ、今後とも「ファシズム」文化の諸相を共同で研究してゆき、この一年をめどに、すでに内諾を得ている出版社から各自の研究成果を一冊にまとめ刊行する予定である。今年度は、ドイツ文学者とイタリア・フランス・スペイン・ロシア・日本・中国の「ファシズム」研究者総勢25名が、合宿の形をとる研究会を何度を開き、活発な討論を行なってきた。その度毎に強く感じられたことは、手を携えたように世界各地の政治風土に発生してきた「ファシズム」の同時性である。つまり20世紀初頭、「ファシズム」はどの国でも理知の世界が不可能となった多元的な世界観と利害の統合を、民族共同体の「情」に訴える形で一挙に達成していったのである。群衆に向かって獅子吼する指導者、壮大なスペクタクル劇としての党大会、華やかな集団行進と近代技術を駆使した大量宣伝は、理性を麻痺させ、情念を高揚させて、ばらばらな民衆をたちまち巨大な群衆に変えていった。こうした政治運動も、それをみちびいた思想構造も、決して偶発的に出現してきたものではなかった。したがって、個々の国の「ファシズム」をただ個別的に解析するのではなく、各国「ファシズム」の文化的・社会的な諸相の比較研究を通して「ファシズム」の全体像に迫るのが今年の我々の主な研究目標になったのである。主要な研究会の報告ー(1)栗原幸夫(ゲストスピーカー)「日本浪曼派の《近代の超克》論をめぐって」(2)田中正人「フランス『ファシズム』をめぐって(3)細見和之「ハイデガーとナチズム」(4)斉藤希史「国家/文学/政治ー日本近代文学は何を求めようとしたか」(以上'92年8月19日21日、於城崎)(5)松島征「ルイ・マルの映画『さようなら子供たち』におけるドイツ軍占領下フランスの市民生活」(6)伊藤公雄「スコーラ監督作品『特別な一日』における性と政治」(7)和田忠彦「ズルリーニの映画『激しい季節』における文学作品とその映画化をめぐって」(以上'93年3月3日6日、於富山)(8)山本元尤(ゲストスピーカー)「ハイデガーのナチ荷担をめぐる論争」('93年3月15日16日、趣名古屋)。「ファシズム」を特殊な一時代の急進主義的な政治現象としてのみ捉えるのではなく、各国社会の全領域におよぶ一大文化現象として総合検証しようとする本研究において、今年度は昨年度の成果をふまえ、夏と秋にそれぞれ東京と滋賀において二回の全体研究会をもち、さらに東西の各ブロックで三ヵ月に一度の割合で研究会を行なってきた。
KAKENHI-PROJECT-04301057
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04301057
20世紀の各国における「ファシズム」の諸相と文化・社会の総合的比較研究
東京での全体研究会では、ポーランドの戦中・戦後において文学者によってファシズムがどのように「目撃」されていたか、またアルジェリアとフランスの関係においてファシズムがどう表出・体験されているか、あるいはマフィアという特異な組織がイタリア・ファシズムとどのように拮抗あるいは癒着していたのか、といったきわめて刺激的なテーマについて報告・討論が行なわれた。志賀での全体研究会では、ファシズム下で翼賛、抵抗の両面において重要な契機をなした音楽の問題に焦点をおき、シンポジウム形式で討論を行なった。とりわけこのシンポジウムにパネラーのひとりとして、外部から音楽評論家平井玄氏の参加をえ、貴重な発言を受けたことは本研究にとって大きな成果であった。また、同じく外部から京大農学部助手の崎山氏にラテン・アメリカにおける「ファシズム」の問題について報告を受け、「ヨーロッパ中心主義」的な視点の相対化について重要な示唆を得ることができた。さらに、今年度は本研究の最終年度として、各研究分担者の研究成果の一部を「報告書」にまとめるとともに、今後も関東および関西のブロックを中心に研究を継続し、各自の研究成果を、すでに内諾を得ている出版社から一年をめどに一冊の本として刊行することを確認した。
KAKENHI-PROJECT-04301057
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04301057
肝細胞癌に対する特異的免疫療法
本研究の目的は,癌細胞に特異的に発現されるMAGE遺伝子産物をターゲットとした肝癌特異的な免疫療法の確立をめざすものである.まず,肝臓由来の7種類の細胞株を用い,MAGE遺伝子の異なるExon間に設定したPrimerを用いて,RT-PCR法によりMAGE-1,2,3遺伝子の発現の検討を行った.次に肝癌組織切除術が施行された原発性肝癌症例を対象とし,腫瘍組織よりmRNAを抽出してβ-actinの発現を確認した後,MAGE-1,2,3遺伝子の発現を観察した.肝臓由来細胞株では,MAGE-1,2,3は7種類のうちのそれぞれ4,4,3種類の細胞株でmRNAの発現を認めた.MAGE-1遺伝子の発現は肝細胞癌由来の細胞株に限ると4例中3例(75%)と高い発現率であった.肝癌組織では,MAGE-1遺伝子は20症例中16症例(80%)において腫瘍部の組織でmRNAの発現が認められたのに対し,MAGE-2遺伝子の発現は12症例(60%),MAGE-3遺伝子の発現は,6症例(30%)で認められた。MAGE-2,3遺伝子のmRNAの発現が認められたものは,ほとんどの症例でMAGE-1遺伝子の発現も認められたが,径2cm以下の肝細胞癌2例においてMAGE-2遺伝子のみの発現が認められた。胆管細胞癌では腫瘍サイズがいずれも5cm以上と大きいにもかかわらずいずれのMAGE gene familyの発現は認められなかった.特異抗体を用いてペプチドの発現を検討したが,抗体の特異性の問題のためか明瞭には染色することができなかった.現在,患者と同一のHLA抗原を有した細胞株,あるいはHLA遺伝子を導入してHLA抗原を発現させた細胞にMAGE遺伝子を導入してmRNAおよびペプチドを発現させ,患者から採取したTリンパ球をHLAをマッチさせたMAGE抗原陽性細胞をfeederとして培養して,これらのMAGE抗原発現細胞に特異的な細胞障害活性がみられるか否かを検討中である.細胞障害活性が確認できたら,これらのTリンパ球を増殖して患者の体内に戻すことで,MAGE抗原をターゲットとした免疫療法の臨床応用が可能になると思われる.本研究で肝細胞癌に高頻度のMAGE gene familyの発現がみられることを確認できたことより,自己細胞障害性Tリンパ球を用いた癌特異的免疫療法の臨床応用の可能性を示唆するものと考えられた.癌細胞に特異的に発現されるMAGE遺伝子産物をターゲットとした,肝癌特異的な免疫療法の確立をめざすことが本研究の目的である.そのためまず肝癌細胞におけるMAGE遺伝子の発現について検討した.肝切除術が施行された原発性肝癌症例を対象とし,腫瘍組織よりmRNAを抽出しβ-actinの発現を確認した後,MAGE遺伝子の異なるExon間に設定したPrimerを用いて,RT-PCR法によりMAGE-1,2,3遺伝子の発現を観察した.また,7種類の肝臓由来の細胞株でも同様の検討を行った.MAGE-1遺伝子は,7種の肝臓由来細胞株では,MAGE-1,2,3はそれぞれ4、4、3種類の細胞株でmRNAの発現を認めた.肝細胞癌由来の細胞株に限ると4例中3例(75%)と高い発現率であった.肝癌組織では,20症例中16症例(80%)において腫瘍部の組織でmRNAの発現が認められたのに対し,MAGE-2遺伝子の発現は12症例(60%),MAGE-3遺伝子の発現は6症例(30%)で認められた.MAGE-2,3遺伝子のmRNAの発現が認められたものは,ほとんどの症例でMAGE-1遺伝子の発現が認められたが,径2cm以下の肝細胞癌2例においてMAGE-2遺伝子のみの発現が認められた.胆管細胞癌では腫瘍サイズがいずれも5cm以上と大きいにもかかわらずいずれのMAGE genefamilyの発現も認められなかった.本研究の目的は,癌細胞に特異的に発現されるMAGE遺伝子産物をターゲットとした肝癌特異的な免疫療法の確立をめざすものである.まず,肝臓由来の7種類の細胞株を用い,MAGE遺伝子の異なるExon間に設定したPrimerを用いて,RT-PCR法によりMAGE-1,2,3遺伝子の発現の検討を行った.次に肝癌組織切除術が施行された原発性肝癌症例を対象とし,腫瘍組織よりmRNAを抽出してβ-actinの発現を確認した後,MAGE-1,2,3遺伝子の発現を観察した.肝臓由来細胞株では,MAGE-1,2,3は7種類のうちのそれぞれ4,4,3種類の細胞株でmRNAの発現を認めた.MAGE-1遺伝子の発現は肝細胞癌由来の細胞株に限ると4例中3例(75%)と高い発現率であった.肝癌組織では,MAGE-1遺伝子は20症例中16症例(80%)において腫瘍部の組織でmRNAの発現が認められたのに対し,MAGE-2遺伝子の発現は12症例(60%),MAGE-3遺伝子の発現は,6症例(30%)で認められた。MAGE-2,3遺伝子のmRNAの発現が認められたものは,ほとんどの症例でMAGE-1遺伝子の発現も認められたが,径2cm以下の肝細胞癌2例においてMAGE-2遺伝子のみの発現が認められた。胆管細胞癌では腫瘍サイズがいずれも5cm以上と大きいにもかかわらずいずれのMAGE gene familyの発現は認められなかった.特異抗体を用いてペプチドの発現を検討したが,抗体の特異性の問題のためか明瞭には染色することができなかった.
KAKENHI-PROJECT-08877092
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08877092
肝細胞癌に対する特異的免疫療法
現在,患者と同一のHLA抗原を有した細胞株,あるいはHLA遺伝子を導入してHLA抗原を発現させた細胞にMAGE遺伝子を導入してmRNAおよびペプチドを発現させ,患者から採取したTリンパ球をHLAをマッチさせたMAGE抗原陽性細胞をfeederとして培養して,これらのMAGE抗原発現細胞に特異的な細胞障害活性がみられるか否かを検討中である.細胞障害活性が確認できたら,これらのTリンパ球を増殖して患者の体内に戻すことで,MAGE抗原をターゲットとした免疫療法の臨床応用が可能になると思われる.本研究で肝細胞癌に高頻度のMAGE gene familyの発現がみられることを確認できたことより,自己細胞障害性Tリンパ球を用いた癌特異的免疫療法の臨床応用の可能性を示唆するものと考えられた.
KAKENHI-PROJECT-08877092
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08877092
心身障害児巡礼運動から生まれた「共生の思想」の現代的意義および可能性の研究
「共生」の問題への取り組みの具体的事例として、心身障害児巡礼の歴史・理念の研究、および、教皇庁の生命倫理問題への対応と社会(労働・貧困)問題に対する対応との違いの分析を行い、次の二点が明らかになった。(1)知的障害児を産み育てる決断は、「市場経済倫理」に反する「家族(贈与関係)」の決断に関わる倫理として現れる。(2)心身障害児を支援する活動は、市場経済社会における「正義」(現行の経済倫理)を問い直すもの、社会問題への対応は現行の経済倫理に照らした「不正」との戦いの理論化である。「共生」の問題への取り組みの具体的事例として、心身障害児巡礼の歴史・理念の研究、および、教皇庁の生命倫理問題への対応と社会(労働・貧困)問題に対する対応との違いの分析を行い、次の二点が明らかになった。(1)知的障害児を産み育てる決断は、「市場経済倫理」に反する「家族(贈与関係)」の決断に関わる倫理として現れる。(2)心身障害児を支援する活動は、市場経済社会における「正義」(現行の経済倫理)を問い直すもの、社会問題への対応は現行の経済倫理に照らした「不正」との戦いの理論化である。1.具体的研究内容収集したカトリック倫理・社会的カトリシズム運動・障害児支援活動関連資料の分析を進めた。また8月16日から9月6日まで渡仏し、パリとルルドで調査を行った。調査内容は下記の通り:(1)ルルドの聖域資料室で<国際ポリオ巡礼>と<信仰と光>[知的障害児巡礼]の資料収集。(2)聖域資料室責任者の協力を得て、障害児巡礼の草創期を知るかつての聖域司祭にインタビュー。(3)聖域コミュニケーション・サービス・センター長、医局長、前聖域資料室責任者、<ルルドの聖母オスピタリテ>会長と会付き司祭にインタビューを、また<障害者と支援者のためのキリスト教事務局>と<スクール・カトリック>[貧困問題に取り組む平信徒団体]でインタビュー調査を行った。(4)パリ国立図書館でカトリック教会社会教説の資料収集を行うと同時に、<労働-司祭>運動関係者の親族へのインタビューを行った。(5)<障害者と支援者のためのキリスト教事務局>パリ本部でインタビュー調査。2011年に行われる<信仰と光>国際巡礼の担当責任者と今後の打ち合わせを行った。2.当該年度の研究の意義と次年度への課題予定していた関係者とのインタビューにより、新たな情報・資料だけでたく人脈を得ることができた。特に<障害児と支援者のためのキリスト教事務局>パリ本部での調査で事務局創設者との関係が深まったことは、2011年に行われる国際巡礼だけでなく、ヴァチカンとの関係を調査するためにも大きな意義を持つ。また新任の聖域資料室責任者の協力を得て、フランス司教会議の司牧活動の研究に新たな展望が開けつつある。<国際ポリオ巡礼>とヴァチカンの調査は次年度以降の課題として残った。3.成果発表11に記載した成果の他、2010年度に出版される映像人類学に関する論文集掲載論文1件、宗教社会学の研究誌Social Compass掲載論文1件(英語)を執筆した。1.具体的研究内容前年度に渡仏しルルドを訪れた際収集した、<信仰と光>巡礼・<障害者と支援者のためのキリスト教事務局>・<L'Arche>・カトリック倫理・社会的カトリシズム運動・障害児支援活動関連資料の分析を進めるとともに、フランス国外にできた初の<L'Arche>共同体であるトロントの<L'Arche Daybreak>を訪れ、責任者、ボランティア・スタッフ(カナダ、日本、ドイツ、ポーランドの出身者)、入居者(1971年に行われた第一回<信仰と光>巡礼の参加者)へのインタビュー調査を行った。<L'Arche>と<障害者と支援者のためのキリスト教事務局>の霊的指導者である司祭・修道士(アンリ・ビソニエ、フィリップ・トマ、ヘンリ・ナウエン)の活動と思想についても研究を進めた。日本の関東地方に4つある<信仰と光>コミュニティーの月例会へも参加し、調査を進めた。2.当該年度の研究の意義と次年度への課題トロントの共同体の調査により、ボランティア・スタッフの国際性も含めた運動の広がりと、現場のニーズに応えることで生まれる独自性という二面、および、若者の公的資格取得の場になっている点の重要性に気づき、その視角からのアプローチの必要性を認識した。またパリ本部の決定で、2011年の<信仰と光>巡礼が過去4回とは大きく方針を転換し、国際巡礼ではなく、大陸・地域単位で行われることになるという思いがけない事態となったが、日本・韓国・香港・台湾がアジアの<信仰と光>として2011年10月に奈良へ巡礼することになり、その調査研究という新たな可能性が生まれたことは、本研究にとってプラスであった。
KAKENHI-PROJECT-21520069
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21520069
心身障害児巡礼運動から生まれた「共生の思想」の現代的意義および可能性の研究
また、本報告書を作成中の2011年5月1日に前教皇ヨハネ・パウロ二世が列福され、彼の「弱さ」の霊性への関心が高まっていることから、本研究も、知的障害児巡礼とヴァチカンの政策との関係の研究という最終目標に変更はないものの、次年度は、障害児の存在がカトリック教会共同体において持ち得る霊的な重要性を最初に述べたパウロ六世ではなく、ヨハネ・パウロ二世と、ジャン・ヴァニエ(前教皇と非常に親しかった)や上記司祭・修道士との、思想・人間的な関係の研究に集中することとした。1.具体的研究内容本年度は2011年4月20日から25日まで、本課題の主要調査対象である、1971年以来10年に一度開催されてきた知的障害児たちの国際ルルド巡礼<信仰と光>が行われ、パリ・グループの一員として同行した。障害のある人・家族・ボランティア・医師はもちろん、同行したグループには後述の<障害者と支援者のためのキリスト教事務局>の創設者マリー・エレーヌ・マチュー氏や長く韓国で宣教に当たった司教など指導的立場にある人たちも参加しており、それらの立場が異なる人たちと交流を図りながら非常に有益な調査をすることができた。なお、2010年に調査したトロントの<ラルシュ>共同体は今回の巡礼に参加しなかったため、計画していた調査は残念ながらできなかった。巡礼の前後にはパリで、<信仰と光>の主催団体である<障害者と支援者のためのキリスト教事務局>と<ラルシュ>で、スタッフとボランティアの聞き取り調査を行った。10月8日から10日に予定されていた日本・韓国・台湾・香港合同のアジア地域<信仰と光>奈良巡礼は、原発事故の影響で計画が二転三転し、一時は中止も考えられたが、最終的に日本と香港のグループだけで行われ、調査をすることができた。年間を通し、前年度から引き続いて、収集した資料の分析を進めた。2.当該年度の研究の意義と重要性パリとルルドでの調査は計画通り実施でき、24年度以降の調査研究の準備も進んだ。アジアの<信仰と光>活動については、奈良巡礼の規模が縮小され、何もかもが想定外の巡礼だったということで参加者たちにも戸惑いがあり、「フランスと日本(アジア)の比較」のためには十分な調査ができなかったが、今まで交流のなかった関西の<信仰と光>活動とのつながりができた。またこれらの調査を通し、「生命倫理」の問題は、当事者が直面する現実の場面では、同時代の「(市場)経済倫理」によって規定されていることに気づき、23年度の計画(経済・貧困問題ではなく生命倫理問題へのヴァチカンの対応に重点を置く)をあらため、「市場経済倫理(私有と等価交換)」と「贈与行為」の関係について考察を進めるという今後の研究の方向が定まったことが、最大の収穫であった。
KAKENHI-PROJECT-21520069
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21520069
GVHD・GVLに関わる新たなドナーT細胞活性化のメカニズム
同種造血幹細胞移植後のGVHDとGVLに関わる新たなT細胞活性化の二つのメカニズムを見出した。一つは、従来から知られている通常型樹状細胞以外に形質細胞様樹状細胞によって、GVHDを発症するに十分なT細胞活性化が可能であることを見出した。これは移植前処置依存性、MHCクラスII分子依存性であったが、Toll-like receptor(TLR)シグナル非依存性であった。二つ目として、ドナーT細胞上のTLRがアロ応答性T細胞活性化の副刺激として作用し、GVHD、GVLの発症に重要な役割を果たすことが明らかにした。これはCD4+T細胞、CD8+T細胞両者の活性化、サイトカイン産生、キラー活性の発現に重要であり、MyD88シグナルが重要であった。同種造血幹細胞移植後のGVHDとGVLに関わる新たなT細胞活性化の二つのメカニズムを見出した。一つは、従来から知られている通常型樹状細胞以外に形質細胞様樹状細胞によって、GVHDを発症するに十分なT細胞活性化が可能であることを見出した。これは移植前処置依存性、MHCクラスII分子依存性であったが、Toll-like receptor(TLR)シグナル非依存性であった。二つ目として、ドナーT細胞上のTLRがアロ応答性T細胞活性化の副刺激として作用し、GVHD、GVLの発症に重要な役割を果たすことが明らかにした。これはCD4+T細胞、CD8+T細胞両者の活性化、サイトカイン産生、キラー活性の発現に重要であり、MyD88シグナルが重要であった。MyD88-/-マウスとTRIF-/-マウスを交配し,TRIF/MyD88-/-マウスを作成した.MyD88-/-マウスあるいはTRIF-/-マウスをドナーとした骨髄移植ではGVHDの重症度に変化はみられなかった。一方、TRIF/MyD88-/-ドナーからの移植ではGVHDの劇的な軽症化が観察された.次に,骨髄細胞は野生型ドナーより、T細胞はTRIF/MyD88-/-ドナーより移植したところやはりGVHDの軽症化がみられ、T細胞上に発現するToll like receptor(TLR)を介するシグナルがドナーT細胞活性化に重要であることが確認された。また、われわれの開発した各抗原提示細胞のGVHD惹起能をin vivoで検討できる系を用い、形質細胞様樹状細胞(pDC)のGVHD誘導能を検討した。その結果通常のconventional DC(cDC)非存在下で,pDC単独でドナーT細胞活性化がおこり、GVHDが発症することが示された。このGVHDは臨床的、病理学的に、cDCによって誘導されるGVHDと全く同様であった。pDCによるGVHD誘導効果の発現には、移植前処置によるpDCの活性化が必須で、MHCクラスII分子依存性であったが、TLRシグナル非依存性であった。前年度に引き続き、ドナーT細胞の活性化に関わるToll like receptor (TLR)を介するシグナルの関与について検討した。MHC不適合のB6ドナーからB6D2F1レシピエントへの骨髄移植モデルにおいて、野生型、MyD88-/-,TRIF-/-,MyD88/TRIF-/-の4種類のB6マウス由来のT細胞のGVHD誘導能を比較検討した。移植前処置には骨髄破壊的全身放射線照射を用いた。T細胞除去骨髄は一貫して野生型-マウスからのものを用いた。移植後にGVHDの重症度を観察したところ、野生型T細胞、TRIF-/-T細胞の移植では同等に重症なGVHDが発症したのに対し、MyD88-/-,MyD88/TRIF-/-T細胞の移植ではGVHDが有意に軽症であった。この結果はT細胞におけるMyD88シグナルがT細胞活性化に重要な役割をしている可能性を示唆している。次に、移植前処置によって惹起される炎症環境によってもたらされるTLRシグナルがこのT細胞活性化に関与する可能性を検討するために、移植前処置なしに移植可能なSCIDマウスをレシピエントとして各種マウスからのT細胞の移植実験を行った。4種類のドナーT細胞はほぼ同等な重症度のGVHDを発症した。以上の結果から、移植前処置によってもたらされる炎症環境下でのT細胞上のMyD88を介する刺激によってドナーT細胞の活性化が増幅され、GVHDの重症化がもたらされるものと考えられた。前年度に引き続き、ドナーT細胞の活性化に関わるToll likereceptor (TLR)を介するシグナルの関与についてマウスモデルを用いて検討した。MHC不適合のB6ドナーからB6D2F1レシピエントへの骨髄移植モデルにおいて、T細胞上のTLR2の発現をフローサイトメトリー法で検討したところ、ドナー由来T細胞のTLR2の発現亢進が認められた.これはレシピエント由来T細胞には認められず、アロ抗原特異性が示唆された。次にT細胞サブセット別に検討し、CD4+、CD8+T細胞両者でTLR2の発現亢進を認めた。ノックアウトマウス,野生型マウスより採取した両者のmixing experimentを行ったところ、CD4+、CD8+T細胞におけるTLRの発現の両者ともにGVHDの重症化に関与することが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-21390295
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21390295
GVHD・GVLに関わる新たなドナーT細胞活性化のメカニズム
一方、同種造血幹細胞移植後の急性GVHDはドナーT細胞のTh1応答性を主体としたエフェクター機序によって発症するが、慢性GVHDについては明らかではなく、今回、MHC適合のB10.D2→BALB/cの慢性GVHDモデル系を用いて検討した。慢性GVHD発症時のドナーT細胞のサイトカイン産生パターンを検討したところ、移植後早期のTh1,Th2応答性に引き続くTh17応答性がみられ、とくに肝臓、肺へのTh17細胞浸潤が顕著であった。IFN-γ/-,IL-17-/-マウスから分離したT細胞を投与したところ、皮膚、唾液腺の病変の軽減がみられた。合成レチノイドであるAm80はTh1,Th17応答性を抑制することが知られている。Am80の投与で慢性GVHD病変の抑制が可能であった。以上の結果から、Th1,Th17応答性は慢性GVHDの病態形成に関与していることが示唆された。ドナーT細胞の活性化に関わるToll like receptor (TLR)を介するシグナルの関与についてマウスモデルを用いて検討した。T細胞におけるMyd88依存性シグナルが重要であり、その欠損によりT細胞の抗原特異的応答の低反応性が観察された。抗原提示細胞(APC)-freeの培養系を用い、野生型(WT)、Myd88/TRIF double knockout mouse (DKO)よりFACS SortしたCD4+ T細胞を抗CD3抗体と抗CD28抗体の存在下に、PamCSK (TLR2), PolyI:C (TLR3), LPS (TLR4)を加えて培養し、T細胞活性化の程度をみた。DKOのT細胞はこれらTLR ligandsの刺激に反応せず、T細胞におけるTLRの発現は機能的であることが確認された。またTLR2の細胞表面への発現はCD4+およびCD8+ T細胞において、同種骨髄移植後早期に発現亢進しており、in vivoにおいてもTLRシグナルに対する感受性が亢進している可能性が示唆された。一方、自己骨髄移植後にはこの発現亢進は見られず、アロ免疫応答に関連した発現上昇と考えられた。移植前処置によって内因性、外因性のいわゆるdanger signalsが放出され、アロ応答性T細胞の活性化が促進される。移植前処置を用いない移植の場合、DKO-T細胞の活性化の程度はWT-T細胞とほぼ同等であった。以上の結果から、移植前処置のもたらす強い炎症環境が、ドナーT細胞のTLRシグナルを介してT細胞活性化を増強していることが示唆された。これは、従来、認識されてこなかった、新たな抗原特異的T細胞活性化のメカニズムであると考えられた。これは造血幹細胞移植分野に留まらず、腫瘍免疫、感染免疫、臓器移植、自己免疫など幅広い分野に新たな展開をもたらしうる知見であると考えられる。本研究では、1)conventional DCs以外により新たなドナーT細胞活性化のメカニズム,2)TLRシグナルによるT細胞のダイレクトな活性化の2点が研究の主柱であり、1)については、形質細胞様樹状細胞によるT細胞活性化とそのメカニズムに関して一定の成果を示すことができた。2)についても、ほぼ証明されつつあるが、まだその分子メカニズムについては更なる研究が必要である。24年度が最終年度であるため、記入しない。上記課題2)について研究を継続する。In vitroでCD3+28刺激によるAPC-freeのT細胞刺激系にTLR hgandを加え、CFSE解析を指標としたT細胞活性化を定量化できる系を確立する。
KAKENHI-PROJECT-21390295
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21390295
脳はどのように文法を生み出すのか―東アジア言語比較認知神経科学からの探求―
今年度の研究実績は次の通りである。(1)日本語数量表現を使用した予測処理の神経メカニズムを探る事象関連電位計測実験のデータを分析し、数量表現と後続する被修飾名詞とのトランジションプロバビリティーに応じてN400成分が変化し、数量詞の頻度に応じてLeft Anterior Negativity成分が変化することがわかった。この結果は、数量表現の頻度に応じて予測処理の質が異なること、すなわち高頻度な数量表現の処理に統語的な処理が関わることを示唆している。この結果をまとめ、国際学会Neurobiology of Language 2018において発表を実施した。(2)予測処理の神経メカニズムの基盤をさらに追求するため、MEGを使用した脳機能計測実験を実施する準備を進め、パイロット実験を実施した。(3)研究協力者であるエジンバラ大学のJennifer Culbertson博士を招聘し、言語変化と言語習得の関係を実験的に検討する最新の研究成果に関するサマーセミナーを実施した。(4)日本語動詞形態の処理に関する実験結果を論文としてまとめ、国際学術誌に投稿する準備を進めた。(5)日本語VOT知覚に関する実験結果を国際学術誌に投稿したが、査読者から改訂の指示を受けたため、改訂後に再投稿した。(6)日本語漢字処理において音韻情報・表記形態情報が予測処理に使用されるかどうかを探る視線計測実験を実施し、結果をまとめて国際学会Embodied and Situated Language Processingに応募した。(7)日本語モダリティー表現処理の事象関連電位計測実験を実施し、データを分析して国際学会発表を準備中である。(8)視線計測を使用した日本語・スペイン語文産出実験の結果は、国際学術誌Frontiers in Psychologyに掲載された。当初の研究計画通りにすべての研究を実施し、国際学会における発表、サマーセミナーの開催も計画通り実施した。一方、国際学術誌に投稿した論文は1編が掲載されたが、もう1編は改訂再投稿が必要となった。これらを総合的に評価して「おおむね順調である」と判断した。今後は、すでに実施した研究の結果を取りまとめ、すべての成果を国際学会において発表し、国際学術誌に論文として掲載することを目指す。一部の研究計画、特にMEGを使用した予測処理の脳機能計測実験は、本研究課題の範囲で終了することが困難であると考えられるので、課題終了後に継続することを想定して可能な限り研究を進めておく。研究課題の中心である言語学習の計算モデルを構築して文法処理の脳機能を探る研究について,ニューヨーク大学及びロンドン大学の研究者と連携し,新奇動詞を使用した動詞活用形産出実験を実施した.この研究の成果は国際学会において発表が決定し,学術誌への論文投稿も準備が進んでいる.一方,文法処理の脳機能計測研究では,カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者と共同で因果関係処理の事象関連電位計測実験を実施して成果を挙げたが,数量詞処理の事象関連電位計測実験は実施が遅れ,コーパスの分析による刺激の選定と実験デザインの決定,計測システムの整備と実験刺激の作成を行った.次に音韻処理の脳機能に関する共同研究をデラウェア大学の研究者と開始し,日本語母語話者によるVOT知覚の事象関連電位計測実験を実施して結果を分析中である.また,語彙学習を対象として,中日バイリンガル話者による語彙認知の事象関連電位計測実験実施し,研究成果を国際学会(Mental Architecture for Processing and Learning of Language 2016)において発表した.マドリッド自治大学の研究者と共同でスペイン語,日本語,スペイン語を母語とする日本語学習者の関係節産出に関する視線計測研究を実施し,成果をまとめて学術誌への投稿を準備中である.以上を総合して,文法(言語における規則性)がどのように学習され,脳における言語処理に反映されるのかを探る研究を進展させることができた.このように計画通り,もしくは計画以上に進展した研究と,やや実施が遅れている研究が存在するが,全体として十分な研究成果が得られたと考えられる。国際共同研究が当初の予想を超えて進展したことも特筆される成果である.当初計画していた言語処理の脳機能計測実験のうち,数量詞処理の事象関連電位計測実験の実施が遅れたため,予算の繰り越しを行った.一方で,音韻処理,因果推論処理等の事象関連電位計測実験を実施して当初の予想以上の成果を上げたため,総合的に判断して順調に進展していると判断する.研究課題の中心である言語学習の計算モデルを構築して文法処理の脳機能を探る研究について,ニューヨーク大学及びロンドン大学の研究者と連携し,新奇動詞を使用した動詞活用形産出実験を実施した.この研究の成果は国際学会において発表が決定し,学術誌への論文投稿も準備が進んでいる.一方,文法処理の脳機能計測研究では,カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者と共同で因果関係処理の事象関連電位計測実験を実施して成果を挙げたが,数量詞処理の事象関連電位計測実験は実施が遅れ,コーパスの分析による刺激の選定と実験デザインの決定,計測システムの整備と実験刺激の作成を行った.次に音韻処理の脳機能に関する共同研究をデラウェア大学の研究者と開始し,日本語母語話者によるVOT知覚の事象関連電位計測実験を実施して結果を分析中である.また,語彙学習を対象として,中日バイリンガル話者による語彙認知の事象関連電位計測実験実施し,研究成果を国際学会(Mental Architecture for Processing and Learning of Language 2016)において発表した.マドリッド自治大学の研究者と共同でスペイン語,日本語,スペイン語を母語とする日本語学習者の関係節
KAKENHI-PROJECT-15H01881
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H01881
脳はどのように文法を生み出すのか―東アジア言語比較認知神経科学からの探求―
産出に関する視線計測研究を実施し,成果をまとめて学術誌への投稿を準備中である.以上を総合して,文法(言語における規則性)がどのように学習され,脳における言語処理に反映されるのかを探る研究を進展させることができた.このように計画通り,もしくは計画以上に進展した研究と,やや実施が遅れている研究が存在するが,全体として十分な研究成果が得られたと考えられる。国際共同研究が当初の予想を超えて進展したことも特筆される成果である.研究課題の一部である言語学習の計算モデルを構築して文法処理の脳機能を探る研究について,ニューヨーク大学及びロンドン大学の研究所と共同研究を実施し,研究成果を挙げることができた.また,音韻処理の脳機能に関する共同研究をデラウェア大学の研究者と開始し,すでに実験を実施した.一方,文法処理の脳機能計測研究では,因果関係処理の事象関連電位計測実験を実施して成果を挙げたが,数量詞処理の事象関連電位計測実験は実施が遅れた.以上を総合して,このように予想以上の進捗を見せた研究と予想より遅れている研究がともに存在するため,総合的に判断して「順調に進展している」と評価する.今年度の研究実績は次の通りである。(1)日本語数量表現を使用した予測処理の神経メカニズムを探る事象関連電位計測実験のデータを分析し、数量表現と後続する被修飾名詞とのトランジションプロバビリティーに応じてN400成分が変化し、数量詞の頻度に応じてLeft Anterior Negativity成分が変化することがわかった。この結果は、数量表現の頻度に応じて予測処理の質が異なること、すなわち高頻度な数量表現の処理に統語的な処理が関わることを示唆している。この結果をまとめ、国際学会Neurobiology of Language 2018において発表を実施した。(2)予測処理の神経メカニズムの基盤をさらに追求するため、MEGを使用した脳機能計測実験を実施する準備を進め、パイロット実験を実施した。(3)研究協力者であるエジンバラ大学のJennifer Culbertson博士を招聘し、言語変化と言語習得の関係を実験的に検討する最新の研究成果に関するサマーセミナーを実施した。(4)日本語動詞形態の処理に関する実験結果を論文としてまとめ、国際学術誌に投稿する準備を進めた。(5)日本語VOT知覚に関する実験結果を国際学術誌に投稿したが、査読者から改訂の指示を受けたため、改訂後に再投稿した。(6)日本語漢字処理において音韻情報・表記形態情報が予測処理に使用されるかどうかを探る視線計測実験を実施し、結果をまとめて国際学会Embodied and Situated Language Processingに応募した。(7)日本語モダリティー表現処理の事象関連電位計測実験を実施し、データを分析して国際学会発表を準備中である。
KAKENHI-PROJECT-15H01881
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H01881
肺炎桿菌リポ多糖体の極めて強い補体活性化能におけるマンノ-ス結合蛋白の役割
マンノ-スホモ多糖体を0抗原多糖体部分にもつ肺炎桿菌リポ多糖体は、大腸菌、サルモネラ菌のリポ多糖体に比較して1000倍以上高い補体活性化能をもっていることを見いだした(Yokochi,T.et al.,J.Immunol.144:3106,1990)。この強力な補体活性化能は、肺炎桿菌リポ多糖体がもつ極めて強いアジュバント活性と密接に関連している。これらの特徴的な生物活性はマンノ-スホモ多糖体部分をもつリポ多糖体に限られ、マンノ-スホモ多糖体部分の関与が推定された。今回、マンノ-スホモ多糖体がどのような機序で補体を強力に活性化するか、血清補体成分や補体活性化に関与するマンノ-ス結合蛋白などとマンノ-スホモ多糖体との相互作用を検討した。我々は、ヒト血清と肺炎桿菌リポ多糖体と反応させ、補体活性化をさらに詳細に検討したが、ヒト血清の検体によって補体活性化にかなり差がみられた。その検体個々の補体活性化能と補体成分の蛋白量とあまり相関がみられないことから、補体以外の血清蛋白が関与していることが示唆された。そのマンノ-スホモ多糖体を反応する血清蛋白の同定を試みているが、現在いくつかの蛋白が検出されてきている。未だ、マンノ-ス結合蛋白かどうか不明である。一方、マンノ-ス結合蛋白を酵母由来マンナンを用いて、ヒト血清から現在精製中である。マンノ-ス結合蛋白に対する抗体で反応する蛋白が精製されつつあるが、まだ単一な物質となっていない。しかしながら、精製中の蛋白がマンノ-スホモ多糖体部分をもつ肺炎桿菌03リポ多糖体と結合することは予備的な実験で確かめられた。マンノ-スホモ多糖体を0抗原多糖体部分にもつ肺炎桿菌リポ多糖体は、大腸菌、サルモネラ菌のリポ多糖体に比較して1000倍以上高い補体活性化能をもっていることを見いだした(Yokochi,T.et al.,J.Immunol.144:3106,1990)。この強力な補体活性化能は、肺炎桿菌リポ多糖体がもつ極めて強いアジュバント活性と密接に関連している。これらの特徴的な生物活性はマンノ-スホモ多糖体部分をもつリポ多糖体に限られ、マンノ-スホモ多糖体部分の関与が推定された。今回、マンノ-スホモ多糖体がどのような機序で補体を強力に活性化するか、血清補体成分や補体活性化に関与するマンノ-ス結合蛋白などとマンノ-スホモ多糖体との相互作用を検討した。我々は、ヒト血清と肺炎桿菌リポ多糖体と反応させ、補体活性化をさらに詳細に検討したが、ヒト血清の検体によって補体活性化にかなり差がみられた。その検体個々の補体活性化能と補体成分の蛋白量とあまり相関がみられないことから、補体以外の血清蛋白が関与していることが示唆された。そのマンノ-スホモ多糖体を反応する血清蛋白の同定を試みているが、現在いくつかの蛋白が検出されてきている。未だ、マンノ-ス結合蛋白かどうか不明である。一方、マンノ-ス結合蛋白を酵母由来マンナンを用いて、ヒト血清から現在精製中である。マンノ-ス結合蛋白に対する抗体で反応する蛋白が精製されつつあるが、まだ単一な物質となっていない。しかしながら、精製中の蛋白がマンノ-スホモ多糖体部分をもつ肺炎桿菌03リポ多糖体と結合することは予備的な実験で確かめられた。
KAKENHI-PROJECT-03670226
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03670226
中学校・高等学校部活動の設置形態及び活動状況の実態と課題に関する教育社会学的研究
本研究は、中学校・高等学校の部活動の適正設置数を、生徒数・教員数等の学校規模と学校の施設・設備状況、地域社会の社会教育状況等から勘案して探ることを目的としている。本年度は、中学校を対象に、生徒対象のアンケート調査を実施して、部活動の実状と課題を、特に学校規模に焦点化して探ってきた。第一に、前年度の実施した中学校教員対象のアンケート調査の分析を通して、学校規模の違いと教員の技術指導の可否の違いによって、部活動指導にどのような課題があるかを検討した。学校規模の違いによって、活動場所の確保状況に違いがあることが確認された。技術指導の可否の違いによって、第三者からの期待のされ方に違いがあり、それが技術指導のできない顧問教員の部活動指導上のストレスの原因になっている可能性があることが示唆された。第二に、上記の成果をふまえて、11月12月にかけて、5都県の公立中学校22校約3200人を対象に、アンケート調査を行った。現在、詳細な分析・考察を進めている段階であるが、基礎的な集計をまとめたところ、以下のような特徴があることわかった。第一に、学校規模の大きい学校ほど、活動場所を他の部や部員どうしで譲り合ったり、学校外の施設を利用したりして部活動を行っていること。第二に、活動量について、6割が日数にも時間にも満足しており、残りの4割については、日数は少なくしたい生徒がやや多く、時間については多くしたい生徒がやや多いこと。第三に、部活動で楽しみにしていることについて、「練習や活動」・「部員どうしのおしゃべり」・「試合やコンクール」の3つから単一選択してもらったところ、2000年代に行ってきた調査と比べて、「部員どうしのおしゃべり」が約30%から約20%に減り、「練習や活動」が約40%から約50%に増えており、生徒の部活動の意味づけが変わりつつあるようすがうかがえた。前述のとおり、今年度は中学校の生徒対象のアンケート調査を行う計画であったが、その調査を予定どおりに行うことができた。また、その調査から得られた結果も、本研究課題の目的を達成するのに十分資するものであった。この成果をふまえて、次年度予定している調査研究に取り組むことができるので、おおむね順調に進展していると評価している。上述のとおり、この2年間は、計画していた調査研究に取り組むこととそこから仮説を支持する研究成果を得ることができた。今後も、当初の計画に沿って調査研究に取り組んでいく予定である。具体的には、2019年度には、第一に、これまで行ってきた中学校対象調査の成果を統合する考察を行ない、第二に、それをふまえつつ、次の段階として、高校対象調査に取り組み始める。高校対象調査は、2019年度に管理職対象調査を行う予定である。それに向けて、まずは数校を対象に聞き取り調査を行ってから、5都県の公立高校の管理職対象のアンケート調査を行う。2020年度以降は、高校調査の続きとして、教員対象と生徒対象のアンケート調査を行い、以上の成果を考察するための比較対象として、スポーツ・芸術活動の社会教育化が進んでいるドイツにおいてスポーツクラブ等のフィールドワークを行う計画である。本研究は、中学校・高等学校の部活動の適正設置数を、生徒数・教員数等の学校規模と学校の施設・設備状況、地域社会の社会教育状況等から勘案して探ることを目的としている。本年度は、中学校を対象に、管理職及び教諭対象のアンケート調査を実施して、部活動の実状と課題を、とくに学校規模に焦点化して探ってきた。第一に、前の科研費で前年度末に実施した区市町村教育委員会対象のアンケート調査の分析を通して、自治体が中学校部活動の実態と課題をどこまで把握しているのかを検討した。各校の部活動数や顧問教諭数などを把握している自治体もあったが、教育委員会が主体的・積極的に課題の改善に取り組んでいるとは思えない実状がうかがえた。第二に、夏休みに、10都県の公立中学校の半数をサンプルとして、管理職対象のアンケート調査を行った。分析からは、1各学校の部活動設置数は、全国平均の整数の学校規模に勘案すると約12部となること、21部活動あたりの教諭数の平均値である1.88人を境に、実態としての負担状況に違いがみられること、3外部指導者の採用はほとんどが学校の個人的なつてに頼っており、人件費も約半数が支払えていないこと、4部活動数に対して活動場所となる施設が不足している学校が多いことなどがわかった。第三に、冬休みに、5都県の公立中学校の約4分の1をサンプルに、教諭対象のアンケート調査を行った。分析からは、副顧問となっている教諭の負担感の大きさが明らかになったが、その理由は、社会的に関心をもたれている活動量の多さではなく、希望が考慮されない顧問就任経緯や、担当部活動の種目経験のなさなどであることがわかった。また顧問就任や活動量の増減要求などの圧力が周りの教員や保護者からかかっていることもわかり、教育行政によって取り組まれている部活動の改善策が、負担の軽減よりも増幅につながっている可能性が示唆された。前述のとおり、今年度は、中学校を対象に、管理職調査と教諭調査を実施する計画であったが、そのいずれも順調に実施することができた。管理職調査においては、学校規模に応じた部活動設置数の実態を把握することができ、これを1つの基準に据えてこれから他に考慮すべき状況を含めて詳しい検討を行っていくためのベースを設定することができた。
KAKENHI-PROJECT-17H02684
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H02684
中学校・高等学校部活動の設置形態及び活動状況の実態と課題に関する教育社会学的研究
教諭調査においては、これまで何度か行ってきた調査の知見や事前に行った教諭対象の聞き取りなどを参考に、部活動指導に係わる負担は、社会で言われているような教員の多忙状況の中心的な要因とは限らないこと、部活動指導の負担は、社会で言われているような活動量によるのではなく、顧問担当経緯や担当種目の経験の有無、部活動関係者との関係等によると考えられることなどの仮説を立てて、調査を行った。その結果、仮説を支持するような結果を得ることができた。以上の成果をもって次年度予定している調査研究に取り組むことができるので、おおむね順調に進展していると評価している。本研究は、中学校・高等学校の部活動の適正設置数を、生徒数・教員数等の学校規模と学校の施設・設備状況、地域社会の社会教育状況等から勘案して探ることを目的としている。本年度は、中学校を対象に、生徒対象のアンケート調査を実施して、部活動の実状と課題を、特に学校規模に焦点化して探ってきた。第一に、前年度の実施した中学校教員対象のアンケート調査の分析を通して、学校規模の違いと教員の技術指導の可否の違いによって、部活動指導にどのような課題があるかを検討した。学校規模の違いによって、活動場所の確保状況に違いがあることが確認された。技術指導の可否の違いによって、第三者からの期待のされ方に違いがあり、それが技術指導のできない顧問教員の部活動指導上のストレスの原因になっている可能性があることが示唆された。第二に、上記の成果をふまえて、11月12月にかけて、5都県の公立中学校22校約3200人を対象に、アンケート調査を行った。現在、詳細な分析・考察を進めている段階であるが、基礎的な集計をまとめたところ、以下のような特徴があることわかった。第一に、学校規模の大きい学校ほど、活動場所を他の部や部員どうしで譲り合ったり、学校外の施設を利用したりして部活動を行っていること。第二に、活動量について、6割が日数にも時間にも満足しており、残りの4割については、日数は少なくしたい生徒がやや多く、時間については多くしたい生徒がやや多いこと。第三に、部活動で楽しみにしていることについて、「練習や活動」・「部員どうしのおしゃべり」・「試合やコンクール」の3つから単一選択してもらったところ、2000年代に行ってきた調査と比べて、「部員どうしのおしゃべり」が約30%から約20%に減り、「練習や活動」が約40%から約50%に増えており、生徒の部活動の意味づけが変わりつつあるようすがうかがえた。前述のとおり、今年度は中学校の生徒対象のアンケート調査を行う計画であったが、その調査を予定どおりに行うことができた。また、その調査から得られた結果も、本研究課題の目的を達成するのに十分資するものであった。この成果をふまえて、次年度予定している調査研究に取り組むことができるので、おおむね順調に進展していると評価している。上述のとおり初年度は、計画していた調査研究に取り組むこととそこから仮説を支持する研究成果を得ることができた。今後も、当初の計画に沿って調査研究に取り組んでいく予定である。具体的には、編成30年度は、これまでの教員対象の調査結果をふまえて、中学生の部活動への関わり方と考え方を探ることを目的に、中学生対象のアンケート調査を行う計画である。また、その翌年度から実施する予定の高校調査に向けて、予備調査として若干の聞き取り調査を予定している。
KAKENHI-PROJECT-17H02684
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H02684
胃酸分泌変動に伴う腸内細菌叢の動態に関する検討
1)ラット胃酸分泌抑制モデルにおいて、腸内細菌叢を12種の菌種および菌群について糞便の細菌特異的primerによるPCRを行うことで腸内細菌数の半定量化を行い、胃酸分泌抑制ラットで有意に菌数の増加を認めた。2)インフォームド・コンセントを得た被験者の糞便において、1)と同様の菌種・菌群のPCR解析を行った。胃酸減少を伴った被験者において、有意な菌数増加を認めた。多くの菌種・菌群について、胃酸分泌低下により腸内細菌の増加をもたらすことを証明したと考えられる。1)ラット胃酸分泌抑制モデルにおいて、腸内細菌叢を12種の菌種および菌群について糞便の細菌特異的primerによるPCRを行うことで腸内細菌数の半定量化を行い、胃酸分泌抑制ラットで有意に菌数の増加を認めた。2)インフォームド・コンセントを得た被験者の糞便において、1)と同様の菌種・菌群のPCR解析を行った。胃酸減少を伴った被験者において、有意な菌数増加を認めた。多くの菌種・菌群について、胃酸分泌低下により腸内細菌の増加をもたらすことを証明したと考えられる。Control ratにおいて盲腸、下行結腸、直腸の3領域で腸管内容物を採取し、12菌属・菌群を測定した。各菌属・菌群の菌数および割合において3領域間で有意差は認められなかった。また胃酸分泌抑制薬であるオメプラゾール(OPZ)、ラニチジン(RAN)投与群においても同様に有意差は認められなかった。そこで今回は直腸から採取したサンプルにより検討を行った。その結果、胃酸分泌低下モデルラットにおいて、測定した12菌属・菌群中、5菌属・菌群においてOPZ投与群で容量依存性に菌数が増加し、大腸内細菌叢の変動が観察され、胃内腔の完全無酸を達成する容量のOPZ投与で、特に顕著かつ有意な増加が観察された。OPZ少量投与による胃酸分泌の部分的な抑制、あるいは作用時間の短いRANでは菌数増加が顕著ではなかった事から、今回観察された大腸内細菌叢の変動には強力かつ持続的な胃酸分泌抑制が前提になることが強く示唆される。すなわち、従来より言われている胃酸が経口的に生じる細菌侵入に対するバリアーとなっており、胃酸分泌を強力かつ持続的に抑制するOPZはその機構を破綻させる事が想定される。一方ヒトにおいても、広範な萎縮性胃炎を合併する胃酸分泌低下群では、萎縮性胃炎を合併しない正常群に比べ、大腸内細菌叢は測定した12菌属・菌群中、10の菌属・菌群において菌数増加が認められた。動物モデルほど顕著ではないが、Veillonella、Lactobacillusについては、ratで観察されたと同様な有意な菌数増加を認めた。以前より慢性萎縮性胃炎、悪性貧血、薬剤の使用などにより、胃酸分泌が低下することによって胃酸バリアーが崩壊し、胃・十二指腸・上部小腸の菌数が増加する現象"bacterial overgrowth"が生じる事が報告されている。今回の検討は、動物モデル、そして進展した萎縮性胃炎の個体での検討を通して、この点をさらに明確化したものと考えている。研究成果:1)プロトンポンプ阻害薬(PPI)およびH2プロッカー(H2RA)投与ラットおよびcontmlラットに対して、腸内細菌叢を12種の菌種および菌群について糞便の細菌特異的primerによるPCRを行うことで腸内細菌数の半定量化を行った。結果、多くの菌種・菌群について、PPI投与ラットにおいてcontrolラットに対して有意な菌数増加を認めた。PPIの投与量については用量依存的に菌数が増加し、H2RAでは菌数はあまり増加が見られなかったことから、胃酸分泌の減少は腸内細菌の増加をもたらすことを証明したと考えられる。また、いくつかの特定の菌種・菌群において著明な増加を認めたことから、胃酸の減少による特定の腸内細菌の増加が腸疾患の発症の原因の一つとして考えられる。2)インフォームド・コンセントを得た被験者の糞便において、1)と同様の菌種・菌群のPCR解析を行った。血清ペプシノゲン法が陽性である、胃酸減少を伴った被験者において、対照群である被験者に比べて、有意な菌数増加を認めた。1)と同様に胃酸分泌の減少は腸内細菌の増加をもたらすことを証明したと考える。意義・重要性:胃における胃酸は、上部消化管から腸に至るルートにおいて、細菌をブロックするバリアと考えられるが、その破綻によって腸内細菌が増加し、各種疾患を引き起こすものと考えられ、今後のさまざまな腸疾患の病態解明に役立つものと考えられる。
KAKENHI-PROJECT-19590734
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19590734
情報の利活用に伴う法的諸問題の分野横断的研究
本研究は、現代社会において重要性を増している「情報の保護」と「情報の利活用の促進」という、ときに相対立する二つの観点に関わる複数の法分野(刑法、行政法、知的財産法、民法)の研究者が、それぞれの専門分野における当該観点に関する諸問題を分析・検討し、そこで得られた成果をお互いに共有したうえで、各研究者が他分野の知見を踏まえた分野横断的考察を加えるとともに、「情報の保護」と「情報の利活用の促進」の調和を図った法解釈・法制度の構築のために、私法、公法、刑事法がどのように協働すべきかを検討し、適正かつ妥当な法解釈・立法の在り方を明らかにすることを目指すものである。本研究は、現代社会において重要性を増している「情報の保護」と「情報の利活用の促進」という、ときに相対立する二つの観点に関わる複数の法分野(刑法、行政法、知的財産法、民法)の研究者が、それぞれの専門分野における当該観点に関する諸問題を分析・検討し、そこで得られた成果をお互いに共有したうえで、各研究者が他分野の知見を踏まえた分野横断的考察を加えるとともに、「情報の保護」と「情報の利活用の促進」の調和を図った法解釈・法制度の構築のために、私法、公法、刑事法がどのように協働すべきかを検討し、適正かつ妥当な法解釈・立法の在り方を明らかにすることを目指すものである。
KAKENHI-PROJECT-19H01434
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H01434
PET-光イメージングのマルチモダリティの有用性に関する基礎的検討
本研究ではNIRを利用した蛍光色素から得られる情報がどの程度正確であるかを評価するためRIの情報と直接比較、検討することを目的とした。すなわち一つの分子内にRI標識部位と蛍光標識部位を有するプローブを作製し、両者から得られる情報の同一性を明らかにする。さらにこのプローブを用いてPETおよひOptical Imagingの画像を直接比較し、各々の画像の特徴、相違点について検討する[研究方法][研究結果]摘出した臓器の放射能と蛍光角素を検出・比較した実験では、一部明らかに一致しない組織があったが比較的一致した結果が得られた。一方イメージングにおいては組織透過性の高いNIR利用してもOptical Imagingでは体表面付近しか検出できず、体内深部まで検出可能なPET画像とは異なる画像を得る結果となった。摘出臓器への放射能の集積結果と比較して蛍光の画像は必ずしも正確な体内分布を反映しているとは言えないが、皮下に移植した腫瘍の評価には有用であると思われた。本研究ではNIRを利用した蛍光色素から得られる情報がどの程度正確であるかを評価するためRIの情報と直接比較、検討することを目的とした。すなわち一つの分子内にRI標識部位と蛍光標識部位を有するプローブを作製し、両者から得られる情報の同一性を明らかにする。さらにこのプローブを用いてPETおよひOptical Imagingの画像を直接比較し、各々の画像の特徴、相違点について検討する[研究方法][研究結果]摘出した臓器の放射能と蛍光角素を検出・比較した実験では、一部明らかに一致しない組織があったが比較的一致した結果が得られた。一方イメージングにおいては組織透過性の高いNIR利用してもOptical Imagingでは体表面付近しか検出できず、体内深部まで検出可能なPET画像とは異なる画像を得る結果となった。摘出臓器への放射能の集積結果と比較して蛍光の画像は必ずしも正確な体内分布を反映しているとは言えないが、皮下に移植した腫瘍の評価には有用であると思われた。
KAKENHI-PROJECT-08J54052
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J54052
水車出願文書・水力発電出願文書の網羅的検索とその歴史地理学的考証
1課税対象である水車の設置出願・廃止届出を規制していたのは各府県の布達類であるが,これらは歴年の「公報」によって各府県ごとにほぼ経年的にその改廃過程を追跡することができた。2この規制に基づいて提出された水車出願文書が,府県別にみて,ほぼ全域につき長期にわたって保存・管理されているのは,旧東京府,石川県,京都府,次いで群馬県である。県庁の失火によって明治期の文書を欠く栃木県も,大正期以降に関しては保存状態は良好である。3一部の県では,水車存廃の許認可処理事務が,ある時期に県庁から郡役所へ移管されたために文書の残存率が悪く,神奈川県では津久井・足柄上などの数郡,山形県では西村山郡一郡の関連文書を留めるのみである。4さらに残念なのは,かつて多数の水車を擁していた長野県,山梨県,新潟県,岐阜県などにまとまった形で水車出願文書が全く残存していない事実である。その原因は,水車があまりにも多数であったために行政当局が文書処理を疎かにしたことにあると推察される。5水車の用途は精米・製粉を主としながらも,製糸,撚糸,製材,陶石土粉砕,発電等々,各地で多様な種類が認められる。また,埼玉県の利根川筋では特異な水車形式の舟水車の出願があった。6水車の存在が潅漑,舟運などの他種の水利関係者との間に争論を引き起こす事例も,水車出願の関連文書として多く残されていて興味深い。7石川県,宮崎県などに大量に残されている大正期の水力発電出願文書を通じては,地元資本と中央資本,あるいは実業と虚業が入り乱れて繰りひろげた,錯綜した電源開発の状況が判明する。1課税対象である水車の設置出願・廃止届出を規制していたのは各府県の布達類であるが,これらは歴年の「公報」によって各府県ごとにほぼ経年的にその改廃過程を追跡することができた。2この規制に基づいて提出された水車出願文書が,府県別にみて,ほぼ全域につき長期にわたって保存・管理されているのは,旧東京府,石川県,京都府,次いで群馬県である。県庁の失火によって明治期の文書を欠く栃木県も,大正期以降に関しては保存状態は良好である。3一部の県では,水車存廃の許認可処理事務が,ある時期に県庁から郡役所へ移管されたために文書の残存率が悪く,神奈川県では津久井・足柄上などの数郡,山形県では西村山郡一郡の関連文書を留めるのみである。4さらに残念なのは,かつて多数の水車を擁していた長野県,山梨県,新潟県,岐阜県などにまとまった形で水車出願文書が全く残存していない事実である。その原因は,水車があまりにも多数であったために行政当局が文書処理を疎かにしたことにあると推察される。5水車の用途は精米・製粉を主としながらも,製糸,撚糸,製材,陶石土粉砕,発電等々,各地で多様な種類が認められる。また,埼玉県の利根川筋では特異な水車形式の舟水車の出願があった。6水車の存在が潅漑,舟運などの他種の水利関係者との間に争論を引き起こす事例も,水車出願の関連文書として多く残されていて興味深い。7石川県,宮崎県などに大量に残されている大正期の水力発電出願文書を通じては,地元資本と中央資本,あるいは実業と虚業が入り乱れて繰りひろげた,錯綜した電源開発の状況が判明する。1平成7年度は石川県庁,福井県庁,富山県公文書館,新潟県立文書館,埼玉県立文書館,神奈川県立公文書館,佐賀県立図書館,宮崎県立図書館を歴訪して,水車出願文書・水力発電出願文書の検索を行なった。主要な知見は以下の通りである。2大正3年度の石川県文書の中に,他府県ではその例を見ない灌漑用揚水車の出願文書1点を見出した。3埼玉県文書に関しては明治22年度分の中に,明治・大正期に関東・東北の一部地域で流行した舟水車に関する出願文書・図面を発見した。利根川沿いの事例で"水車船"と称しているが,これに関連して陸上の通常の水車は"居水車""地水車"の名称で区別されていたことも判明した。4神奈川県文書の閲覧を通じては,水車設置の許認可権が全国一律に府県知事が掌握していた中で,神奈川県では明治37年の県令で一部を郡長に委譲している事実を知った。5新潟県文書の中で特に印象づけられたのは,水力電気事業の創成期に水車場を転用して村単位の電化が図られる時代趨勢の中,大正3年,ある村の織物生産組合が組合共同工場の水車で発電事業を興すに当たり,その配電先を村内の組合員の家庭だけに限ろうとした,差別的計画が存在していた事実である。6佐賀県に関しては,明治初期の佐賀県全域の精米水車を網羅した「水車一件」文書と,同じく精米・製粉水車出願文書を集めた「諸職業願」を発見した。7宮崎県に関しては,南九州に特徴的な骨粉肥料製造水車・製材水車の出願文書,および水力発電出願文書を多数発見した。1平成8年度には埼玉(県文書館),神奈川(県公文書館),新潟(県文書館),石川(県庁),山梨(県図書館),長野(県歴史館),岐阜(県歴史資料館),福岡(県図書館),佐賀(同上)で文書検索した。
KAKENHI-PROJECT-07458021
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07458021