title
stringlengths
0
199
text
stringlengths
3
3.18k
id
stringlengths
23
32
url
stringlengths
56
65
ナノ構造界面・断面構造の評価と制御に関する研究
本年度はナノ構造形成への応用が考えられるステップのバンチングとファセッティングについて調べた。これらの方法により、原子レベルで平坦なステップフリーの広いテラスが得られ、ナノ構造の形成や量子機能の発現に有利であるほか、高さや密度を制御した多段ステップを量子細線の作製に利用したり、核生成サイトとしての応用が考えられる。Si(111)微斜面における直流電流の通電によるステップのバンチングおよびデバンチングの過程をin situで観察することができる光散乱測定装置を試作した。超高真空中チャンバ内に置いた試料に対して約1240°Cでステップダウン方向に通電加熱を行ない回折光を測定した。その結果、平均テラス幅は314ミクロンの広い範囲にわたって時間の1/2乗に比例して増加することがわかった。またテラス幅分布の標準偏差は平均テラス幅の0.24倍であった。次にステップアップ方向に通電を行なったところ回折ピークの位置は変化せず次第にピークが消滅する様子が観察された。デバンチングにおいてはバンチの間隔は変化せずに各バンチが崩壊していることを示している。また、Si(113)微斜面においてアニールによるファセッティングの様子を超高真空STMで調べた。高温側ではsingle step相となるのに対して、700°C以下ではファセッティングが進行し、テラス幅が時間の1/6乗で増加することを確認した。また、近距離でのステップ間相互作用を考慮したモンテカルロシミュレーションによってこれを再現した。本年度はナノ構造形成への応用が考えられるステップのバンチングとファセッティングについて調べた。これらの方法により、原子レベルで平坦なステップフリーの広いテラスが得られ、ナノ構造の形成や量子機能の発現に有利であるほか、高さや密度を制御した多段ステップを量子細線の作製に利用したり、核生成サイトとしての応用が考えられる。Si(111)微斜面における直流電流の通電によるステップのバンチングおよびデバンチングの過程をin situで観察することができる光散乱測定装置を試作した。超高真空中チャンバ内に置いた試料に対して約1240°Cでステップダウン方向に通電加熱を行ない回折光を測定した。その結果、平均テラス幅は314ミクロンの広い範囲にわたって時間の1/2乗に比例して増加することがわかった。またテラス幅分布の標準偏差は平均テラス幅の0.24倍であった。次にステップアップ方向に通電を行なったところ回折ピークの位置は変化せず次第にピークが消滅する様子が観察された。デバンチングにおいてはバンチの間隔は変化せずに各バンチが崩壊していることを示している。また、Si(113)微斜面においてアニールによるファセッティングの様子を超高真空STMで調べた。高温側ではsingle step相となるのに対して、700°C以下ではファセッティングが進行し、テラス幅が時間の1/6乗で増加することを確認した。また、近距離でのステップ間相互作用を考慮したモンテカルロシミュレーションによってこれを再現した。
KAKENHI-PROJECT-09233220
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09233220
後発工業国企業の成長に関する実証研究-グローバル・バリュー・チェーンの適用
経済のグローバル化の中で、後発工業国企業が、先発工業国企業との取引の中で技術能力を向上させ成長するという様相が広く観察されるようになってきた。本研究は、これを後発工業国の産業発展の重要な契機と捉え、「グローバル・バリュー・チェーン」というアプローチを援用し、既存の国ベースではなく、企業ベースの視点から、後発工業国企業(主としてマレーシアと台湾)が先発工業国企業とつながりその相互作用の中で成長する経路を明らかにした。経済のグローバル化の中で、後発工業国企業が、先発工業国企業との取引の中で技術能力を向上させ成長するという様相が広く観察されるようになってきた。本研究は、これを後発工業国の産業発展の重要な契機と捉え、「グローバル・バリュー・チェーン」というアプローチを援用し、既存の国ベースではなく、企業ベースの視点から、後発工業国企業(主としてマレーシアと台湾)が先発工業国企業とつながりその相互作用の中で成長する経路を明らかにした。初年度である本年度の主な活動内容は、文献・資料調査、定例研究会の実施、ワークショップ開催などである。まず、最新の研究成果を収集・解題し、未解明である問題点の洗い出しを行い、各自の課題を設定した。作業は各メンバーがそれぞれ行い、定例研究会にて共有した。定例研究会は、第1回を九州産業大学で、第2回をアジア経済研究所で行った。平成22年度の研究は、グローバルバリューチェーンに組み込まれた後発工業国企業のアップグレードと、バリューチェーンの中の企業間関係の変化に主眼を置いた。まず、グローバルバリューチェーンに組み込まれた後発工業国企業が研究開発にまで範疇を広げ、またその立地を他国に求めていることにも着目し、台湾企業を中心に中国での調査も行った。その結果、複数国に分散して行う研究開発の成果に否定的な先行研究が多数あるにもかかわらず、台湾企業が中国で開発活動を行っているのは、コスト削減よりもむしろ、中国の豊富な技術者の活用・生産拠点のそばに設置することの利便性・リスク分散といった様々なメリットを求めてのことであること、生産拠点に付随する開発拠点で製品開発を行い、独立した開発拠点では基礎・応用研究を行っていること、経済発展度合いの劣る国の子会社から後発工業国の本社への知識の流れが起こっていることなどが明らかになった。また、経済危機後の激動する世界経済の中の電機産業のグローバルバリューチェーンにおける企業間関係の変化および後発工業国企業の役割の変化について、研究を進めた。その結果、ネットブック、スマートフォン、GPSなどの機器の普及が、電機産業のバリューチェーン内の企業間関係に変化を生じさせ、後発工業国企業の成長空間を増大させていることが明らかになった。以上により、グローバルバリューチェーンの中の後発工業国企業のアップグレードおよび企業間関係の変化について、新しい知見を得られたと考える。まず、グローバルバリューチェーン形成プロセスに関連して、途上国の地場企業がグローバル多国籍企業に接近する契機としての地場企業創成プロセスを分析するための理論的フレームワークを提示した。地場企業の生成をダイナミックなプロセスとして把握することが有益であることを論じ、各発展段階の帰結が次の段階の初期条件となるプロセスを通じて、地場企業がグローバルバリューチェーンにコミットしていく様態を明らかにした。そして、グローバルバリューチェーン論を適用した後発国企業の成長過程の実証分析として、台湾企業によるネットブック市場の創出過程に関する分析を行った。イノベーション論の知見とグローバルバリューチェーン分析の視角を組み合わせることにより、台湾企業がネットブックという新たな市場を創り出すに至った過程を、バリューチェーンに参与する産業アクターの間の付加価値の取り合いのダイナミクスに即して明らかにした。また、エレクトロニクス産業における中間財取引の拡大が東アジアの域内経済統合の駆動力となっていること、同産業の中間財取引の拡大がグローバルバリューチェーンの拡大・深化によって引き起こされたものであることを明らかにした。また、台湾・中国の企業間のグローバルバリューチェーンの形成過程を分析し、これが、台湾企業のバリューチェーン内の役割の高度化と中国企業の急速なキャッチアップを引き起こしていることを論じた。一方で、グローバルバリューチェーンに統合された台湾企業が、開発拠点を後発工業国に立地させ、そこで本国や他国の開発拠点とのネットワークを結んだ製品開発を行っていることについて分析した。またそれは、一部には台湾の理系人材不足に起因することから、台湾における理系人材育成政策および海外からの人材導入政策、グローバルバリューチェーンの中での台湾企業・中国企業相互の人材獲得の動きについて論じた。
KAKENHI-PROJECT-21530285
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21530285
早期臨床開発を目指した革新的生体膜透過ブースティング技術の確立
本研究は、難吸収性物質に分類される医薬品候補化合物や既存の薬物(バイオ薬物およびEfflux transporter基質である低分子薬)および薬物担体(ナノ粒子)の経口創薬に有効活用できる生体膜透過デリバリー基盤技術を確立することを目的とした。昨年度までに、CPPsの構成アミノ酸であるアルギニンモノマーが、それ自身でも十分なインスリン消化管吸収促進効果を示すことを見出し、in vivo経口投与実験によりその効果を実証し、特許を出願した。その研究の過程で、CPPsがその作用を発現する際にアルギニンに加えて、鍵となる構成アミノ酸といわれているトリプトファンについても検討を加えた結果、当初予想していた以上に強い吸収促進効果があることが確認された。トリプトファンにおいては、インスリンのみならず、数種のバイオ医薬の消化管吸収性を飛躍的に高めることが動物実験において新規に見出され、この結果を特許に追加することができた。今年度は早期臨床開発の可能性がより高いトリプトファンを対象として、バイオ医薬の消化管吸収促進作用の応用性ならびに安全性について詳細に検討をした。トリプトファンは、インスリン、GLP-1およびExendin-4の消化管吸収を著明に増加させる一方、1)粘膜や細胞傷害性は認められず、2)光学異性体で作用に違いがあり、3)細胞実験ではin vivoの効果が再現できない、4)Tight junctionの開口作用はない、ということを明らかにした。一方、難吸収性低分子に対する研究では、代表的CPPであるD-Penetratinが分子量1,000以下の低膜透過性薬物(ビンクリスチン、メトトレキサート、ザナミビル、リセドロネートおよびメトホルミン)の膜透過性を上昇させることが明らかとなり、その強さは分子量と良く相関する傾向が示された。現在、創薬全体において、新規薬物候補化合物の“難吸収性(低膜透過性)の克服"という大きな難題が立ちはだかっており、その普遍的な解決方法ーすなわち高度に有効なバイオアベイラビリティ(BA)ブースター技術開発が世界中の経口製剤市場に強く求められている。このような背景から、本研究は、難吸収性物質に分類される医薬品候補化合物や既存の薬物(バイオ薬物・Efflux transporter基質である低分子薬)及び薬物担体(ナノ粒子)の経口創薬に有効活用できる生体膜透過デリバリー基盤技術を確立することを目的とする。さらに、本基盤技術は細胞膜透過ペプチド(CPPs)の卓越した膜透過ブースティング作用に基づくものであるが、我々の最新の知見である“アルギニンモノマーによる強い膜透過ブースティング作用"を導入して、本技術の早期臨床開発に着手することを目指している。当該年度では、まずインスリン消化管吸収促進作用がすでに実証されているD体R8(1mM)を基準として、D体およびL体のR4(2mM)、R2(4mM)およびR(8mM)によるインスリン吸収促進効果をSD系雄性ラットの回腸を用いたin situ loop実験で比較検討した。その結果、アルギニンモノマーでも十分なインスリン消化管吸収促進効果があることを見出した。一方、他の塩基性アミノ酸では同様の効果は認められないことも明らかにした。アルギニンモノマーについては、用量依存的にインスリンの吸収を促進することも明らかにし、経口投与実験によりその効果を実証し、特許を出願した。次に、低分子難吸収性薬物への効果についても検討を開始してその効果を認め、特許を出願した。アルギニンモノマーによるインスリン経口吸収促進効果をin vivo経口投与実験で実証することができたため、早期臨床試験の実施に向けて大きな一歩を進めたと考えている。また低分子化合物への作用も実証することができ、合わせて特許出願2つができたことから、おおむね順調に進展していると判断した。現在、創薬全体において、新規薬物候補化合物の“難吸収性(低膜透過性)の克服"という大きな難題が立ちはだかっており、その普遍的な解決方法ーすなわち高度に有効なバイオアベイラビリティ(BA)ブースター技術開発が世界中の経口製剤市場に強く求められている。このような背景から、本研究は、難吸収性物質に分類される医薬品候補化合物や既存の薬物(バイオ薬物・Efflux transporter基質である低分子薬)及び薬物担体(ナノ粒子)の経口創薬に有効活用できる生体膜透過デリバリー基盤技術を確立することを目的とする。さらに、本基盤技術は細胞膜透過ペプチド(CPPs)の卓越した膜透過ブースティング作用に基づくものであるが、我々の最新の知見である“アルギニンモノマーによる強い膜透過ブースティング作用"を導入して、本技術の早期臨床開発に着手することを目指している。前年度に、CPPsの構成アミノ酸であるアルギニンモノマーが、それだけでも十分なインスリン消化管吸収促進効果があることを見出し、経口投与実験によりその効果を実証し、特許を出願した。その検討の過程で、CPPsがその作用を発現する際にアルギニンに加えて、鍵となる構成アミノ酸といわれているトリプトファンについても検討を加えた結果、当初予想していた以上に強い吸収促進効果があることが確認された。トリプトファンにおいては、インスリンのみならず、数種のバイオ医薬の消化管吸収性を飛躍的に高めることが動物実験において新規に見出され、この結果を特許に追加することができた。さらに、pKaおよび分子量が異なる数種の低分子難吸収性薬物へのCPPsの膜透過促進効果についても検討を開始して、CPPsの作用発現と薬物の物性との間に一定の傾向を見出すことができた。アルギニンモノマーによるインスリン
KAKENHI-PROJECT-16K08211
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K08211
早期臨床開発を目指した革新的生体膜透過ブースティング技術の確立
経口吸収促進効果をin vivo経口投与実験で実証することができ、また、サプリメントとしてすでにヒトに用いられているトリプトファンについても、様々なバイオ医薬の消化管吸収性を著明に改善するという新規の知見が得られたため、早期臨床試験の実施に向けて大きな一歩を進めたと考えている。また複数の低分子化合物への作用も実証することができ、合わせて特許出願2つができたことから、おおむね順調に進展していると判断した。本研究は、難吸収性物質に分類される医薬品候補化合物や既存の薬物(バイオ薬物およびEfflux transporter基質である低分子薬)および薬物担体(ナノ粒子)の経口創薬に有効活用できる生体膜透過デリバリー基盤技術を確立することを目的とした。昨年度までに、CPPsの構成アミノ酸であるアルギニンモノマーが、それ自身でも十分なインスリン消化管吸収促進効果を示すことを見出し、in vivo経口投与実験によりその効果を実証し、特許を出願した。その研究の過程で、CPPsがその作用を発現する際にアルギニンに加えて、鍵となる構成アミノ酸といわれているトリプトファンについても検討を加えた結果、当初予想していた以上に強い吸収促進効果があることが確認された。トリプトファンにおいては、インスリンのみならず、数種のバイオ医薬の消化管吸収性を飛躍的に高めることが動物実験において新規に見出され、この結果を特許に追加することができた。今年度は早期臨床開発の可能性がより高いトリプトファンを対象として、バイオ医薬の消化管吸収促進作用の応用性ならびに安全性について詳細に検討をした。トリプトファンは、インスリン、GLP-1およびExendin-4の消化管吸収を著明に増加させる一方、1)粘膜や細胞傷害性は認められず、2)光学異性体で作用に違いがあり、3)細胞実験ではin vivoの効果が再現できない、4)Tight junctionの開口作用はない、ということを明らかにした。一方、難吸収性低分子に対する研究では、代表的CPPであるD-Penetratinが分子量1,000以下の低膜透過性薬物(ビンクリスチン、メトトレキサート、ザナミビル、リセドロネートおよびメトホルミン)の膜透過性を上昇させることが明らかとなり、その強さは分子量と良く相関する傾向が示された。バイオ医薬品(分子量1,000100,000(ペプチドから抗体薬まで))を対象に、代表的な細胞膜透過ペプチド(CPPs)であるオリゴアルギニン、ペネトラチンに、アルギニンモノマーの効果を実証したことを踏まえてアルギニンも評価に加え、小腸吸収促進効果の比較および薬物との分子間相互作用を測定し、本技術の応用性と限界について明らかにする実験を進める。難吸収性低分子薬に対しては、各種トランスポーター基質の薬物を対象薬とし、CPPsとしてとしてはアルギニン、オリゴアルギニンあるいはペネトラチンを用い、細胞実験と分子間相互作用実験により応用性を評価する。DDSキャリアに対しては、生理的条件下anion、cationあるいはneutralとなるように表面修飾した蛍光標識ポリスチレンナノ粒子(直径200nm)を用いて難吸収性低分子薬と同様の検討を行い、応用性と限界を明らかにしたいと考えている。上記で得られた知見を基に、早期臨床試験への実施に進みたい。
KAKENHI-PROJECT-16K08211
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K08211
敗血症の経時的変化に対するカリウムチャネル阻害作用を有する鎮痛薬の効果
敗血症における低血圧は、体血管のアデノシン三リン酸感受性カリウム(KATP)チャネルの活性化や過剰発現によって引き起こされる。また、トラマドールはKATPチャネルを介する血管拡張反応を阻害する作用を有するとされる。よって今回我々は、トラマドールが敗血症による血管拡張反応を抑制し、さらには炎症性サイトカインの産生を抑制するという仮説を立て、敗血症モデルラットを用い検討することを目的とした。方法として,まず、CLP敗血症モデルラットにおけるモルヒネおよびトラマドールの循環動態に対する影響を検討することを目標とした。Wistar雄性ラットをハロセン麻酔下およびトラマドール(0.03-0.3mg/kg)あるいはモルヒネ(0.3-3mg/kg)腹腔内投与下に開腹し、CLPを施行するCLP群と盲腸をmanupirationするコントロール群を作成し、閉腹する。モルヒネあるいはトラマドールは3時間おきに同量の投与を繰り返す。開腹手術後、6時間、12時間、24時間、48時間で動脈血採血とノルエピネフリン(1μg/kg)を行い血圧変化を記録する。途中で死亡した場合は、経過時間を記録する。採取した血液は、フローサイトメトリー法(BDTM Cytometric Beads Array)を用いて、インターフェロン(IFN)γ、インターロイキン(IL)-1α、IL-4、IL-6、IL-10、およびTNFを測定して各群間で比較し、敗血症モデルの確立、および敗血症に及ぼすモルヒネとトラマドールの作用を検証するつもりであった。しかし、今年度は、方法論の中心となるフローサイトメトリー法の結果に、非常にばらつきがあった。敗血症における低血圧は、体血管のアデノシン三リン酸感受性カリウム(KATP)チャネルの活性化や過剰発現によって引き起こされる。また、トラマドールはKATPチャネルを介する血管拡張反応を阻害する作用を有するとされる。よって今回我々は、トラマドールが敗血症による血管拡張反応を抑制し、さらには炎症性サイトカインの産生を抑制するという仮説を立て、敗血症モデルラットを用い検討することを目的とした。方法として、初年度は、まず、CLP敗血症モデルラットにおけるモルヒネおよびトラマドールの循環動態に対する影響を検討することを目標とした。Wistar雄性ラットをハロセン麻酔下およびトラマドール(0.03-0.3mg/kg)あるいはモルヒネ(0.3-3mg/kg)腹腔内投与下に開腹し、CLPを施行するCLP群と盲腸をmanupirationするコントロール群を作成し、閉腹する。モルヒネあるいはトラマドールは3時間おきに同量の投与を繰り返す。開腹手術後、6時間、12時間、24時間、48時間で動脈血採血とノルエピネフリン(1μg/kg)を行い血圧変化を記録する。途中で死亡した場合は、経過時間を記録する。採取した血液は、フローサイトメトリー法(BDTM Cytometric Beads Array)を用いて、インターフェロン(IFN)γ、インターロイキン(IL)-1α、IL-4、IL-6、IL-10、およびTNFを測定して各群間で比較し、敗血症モデルの確立、および敗血症に及ぼすモルヒネとトラマドールの作用を検証するつもりであった。しかし、初年度に引き続き昨年度も、方法論の中心となるフローサイトメトリー法の習得に時間を要してしまっている状況であった。敗血症における低血圧は、体血管のアデノシン三リン酸感受性カリウム(KATP)チャネルの活性化や過剰発現によって引き起こされる。また、トラマドールはKATPチャネルを介する血管拡張反応を阻害する作用を有するとされる。よって今回我々は、トラマドールが敗血症による血管拡張反応を抑制し、さらには炎症性サイトカインの産生を抑制するという仮説を立て、敗血症モデルラットを用い検討することを目的とした。方法として、初年度は、まず、CLP敗血症モデルラットにおけるモルヒネおよびトラマドールの循環動態に対する影響を検討することを目標とした。Wistar雄性ラットをハロセン麻酔下およびトラマドール(0.03-0.3mg/kg)あるいはモルヒネ(0.3-3mg/kg)腹腔内投与下に開腹し、CLPを施行するCLP群と盲腸をmanupirationするコントロール群を作成し、閉腹する。モルヒネあるいはトラマドールは3時間おきに同量の投与を繰り返す。開腹手術後、6時間、12時間、24時間、48時間で動脈血採血とノルエピネフリン(1μg/kg)を行い血圧変化を記録する。途中で死亡した場合は、経過時間を記録する。採取した血液は、フローサイトメトリー法(BDTM Cytometric Beads Array)を用いて、インターフェロン(IFN)γ、インターロイキン(IL)-1α、IL-4、IL-6、IL-10、およびTNFを測定して各群間で比較し、敗血症モデルの確立、および敗血症に及ぼすモルヒネとトラマドールの作用を検証するつもりであった。しかし、初年度は、方法論の中心となるフローサイトメトリー法の習得に時間を要してしまっている状況である。敗血症における低血圧は、体血管のアデノシン三リン酸感受性カリウム(KATP)チャネルの活性化や過剰発現によって引き起こされる。また、トラマドールはKATPチャネルを介する血管拡張反応を阻害する作用を有するとされる。よって今回我々は、トラマドールが敗血症による血管拡張反応を抑制し、さらには炎症性サイトカインの産生を抑制するという仮説を立て、敗血症モデルラットを用い検討することを目的とした。
KAKENHI-PROJECT-24791621
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24791621
敗血症の経時的変化に対するカリウムチャネル阻害作用を有する鎮痛薬の効果
方法として,まず、CLP敗血症モデルラットにおけるモルヒネおよびトラマドールの循環動態に対する影響を検討することを目標とした。Wistar雄性ラットをハロセン麻酔下およびトラマドール(0.03-0.3mg/kg)あるいはモルヒネ(0.3-3mg/kg)腹腔内投与下に開腹し、CLPを施行するCLP群と盲腸をmanupirationするコントロール群を作成し、閉腹する。モルヒネあるいはトラマドールは3時間おきに同量の投与を繰り返す。開腹手術後、6時間、12時間、24時間、48時間で動脈血採血とノルエピネフリン(1μg/kg)を行い血圧変化を記録する。途中で死亡した場合は、経過時間を記録する。採取した血液は、フローサイトメトリー法(BDTM Cytometric Beads Array)を用いて、インターフェロン(IFN)γ、インターロイキン(IL)-1α、IL-4、IL-6、IL-10、およびTNFを測定して各群間で比較し、敗血症モデルの確立、および敗血症に及ぼすモルヒネとトラマドールの作用を検証するつもりであった。しかし、今年度は、方法論の中心となるフローサイトメトリー法の結果に、非常にばらつきがあった。フローサイトメトリーの操作、技術の習得に予想以上に時間を要しているためと思われる。対策として、勉強会や技術習得のための講習会には積極的に参加している。フローサイトメトリーの操作、技術の習得に予想以上に時間を要しているためと思われる。対策として、勉強会や技術習得のための講習会には積極的に参加している。フローサイトメトリー法を習得できれば、初年度の目標に沿って、敗血症モデルの確立や、モルヒネおよびトラマドールの影響を検討していく方針である。もし、今後もフローサイトメトリー法の習得が難しい状況であれば、他の方法論である等尺性張力変化やrealフローサイトメトリー法を習得できれば、初年度の目標に沿って、敗血症モデルの確立や、モルヒネおよびトラマドールの影響を検討していく方針である。当初の予定通り研究が進行しておらず、必要な実験器具、試薬を購入する過程まで至らなかったため。実験動物の購入費や、各研究の試薬などに使用する予定である。実験動物の購入費や、各研究の試薬などに使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-24791621
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24791621
セレノシステイン特異的伸長因子SelBの結晶構造解析
セレノシステインSecは"21番目のアミノ酸"と呼ばれ、遺伝子上に巧みにコードされた特殊なアミノ酸である。mRNA上の通常終止コドンであるUGAが引き続く特殊な2次構造をもつRNA配列(SECIS)が存在するとき、UGAコドンがSecの遺伝子コードに変身し、蛋白質中に取り込まれる。その際に特殊な伸長因子SelBが必要となる。SelBは通常の伸長因子EF-Tuと異なり、セレノシステイン特異的tRNAを結合するEF-Tuに相同性の高いN末端ドメインと、SECISRNAを認識する特別なC末端ドメインを持つ。これまでに我々は4つのwinged helix(WH)様構造を有するC末端ドメインのうちmRNA結合最小ドメイン(WH3-WH4,512-634)とRNAとの複合体の結晶構造解析に成功し、新規のRNA認識機構を明らかにした。本研究では、引き続きC末端ドメイン全長の動的な構造変化をX線結晶構造解析により明らかにすることを目指す。本年度は、昨年度得られたM.thermoacetica SelBC末端ドメイン全長(SelB-C、377-634)とSECIS mRNAヘアピンとの複合体の結晶からSpring8にて得られた回折データを用いて、分子置換法により構造決定を行うことに成功した。その結果、これまでのSelB-SECIS RNA相互作用以外に、予想外のRNA結合様式が存在することがわかった。これは、SelB-Cの4つのWHドメインうちWH3-4とWH2の間がRNA結合に伴い、正電荷に偏った表面構造を作り出すことにより形成されることがわかった。また、この部分ではRNAのリン酸骨格のみが認識され、塩基特異性はないと考えられたことから、tRNAやrRNAの認識に重要な役割を果たす可能性を明らかにすることができた。同時にSelB全体の動的な構造変化とリボソームの間でのコミュニケーションを考察することができた。セレノシステインSecは"21番目のアミノ酸"と呼ばれ、遺伝子上に巧みにコードされた特殊なアミノ酸である。mRNA上の通常終止コドンであるUGAが引き続く特殊な2次構造をもつRNA配列(SECIS)が存在するとき、UGAコドンがSecの遺伝子コードに変身し、蛋白質中に取り込まれる。その際に特殊な伸長因子SelBが必要となる。SelBは通常の伸長因子EF-Tuと異なり、セレノシステイン特異的tRNAを結合するEF-Tuに相同性の高いN末端ドメインと、SECIS RNAを認識する特別なC末端ドメインを持つ。これまでに我々はwinged helix様構造を有するC末端ドメインのうち一部であるmRNA結合最小ドメイン(SelB-M、512-634)とRNAとの複合体の結晶構造解析に成功し、新規のRNA認識機構を明らかにした。そこで、本研究では、引き続きC末端ドメイン全長の動的な構造変化とSelB全長の翻訳過程におけるコミュニケーションの構造的基盤をX線結晶構造解析により明らかにすることを目指す。本年度はM.thermoacetica SelBC末端ドメイン全長(SelB-C、377-634)を作製した。このSelB-C蛋白質と20残基からなるSECIS mRNAヘアピンとの複合体を作製し、結晶化を試みた。その結果、2種類の異なる条件で結晶を得ることに成功した。現在Spring8にて得られた結晶回折データを用いて、これまでに決定したSelB-MとSECIS複合体の構造を基に、分子置換法により、構造決定を試みている。また、N末端ドメインについても大腸菌での発現系の構築を進めている。セレノシステインSecは"21番目のアミノ酸"と呼ばれ、遺伝子上に巧みにコードされた特殊なアミノ酸である。mRNA上の通常終止コドンであるUGAが引き続く特殊な2次構造をもつRNA配列(SECIS)が存在するとき、UGAコドンがSecの遺伝子コードに変身し、蛋白質中に取り込まれる。その際に特殊な伸長因子SelBが必要となる。SelBは通常の伸長因子EF-Tuと異なり、セレノシステイン特異的tRNAを結合するEF-Tuに相同性の高いN末端ドメインと、SECISRNAを認識する特別なC末端ドメインを持つ。これまでに我々は4つのwinged helix(WH)様構造を有するC末端ドメインのうちmRNA結合最小ドメイン(WH3-WH4,512-634)とRNAとの複合体の結晶構造解析に成功し、新規のRNA認識機構を明らかにした。本研究では、引き続きC末端ドメイン全長の動的な構造変化をX線結晶構造解析により明らかにすることを目指す。本年度は、昨年度得られたM.thermoacetica SelBC末端ドメイン全長(SelB-C、377-634)とSECIS mRNAヘアピンとの複合体の結晶からSpring8にて得られた回折データを用いて、分子置換法により構造決定を行うことに成功した。その結果、これまでのSelB-SECIS RNA相互作用以外に、予想外のRNA結合様式が存在することがわかった。これは、SelB-Cの4つのWHドメインうちWH3-4とWH2の間がRNA結合に伴い、正電荷に偏った表面構造を作り出すことにより形成されることがわかった。また、この部分ではRNAのリン酸骨格のみが認識され、塩基特異性はないと考えられたことから、tRNAやrRNAの認識に重要な役割を果たす可能性を明らかにすることができた。同時にSelB全体の動的な構造変化とリボソームの間でのコミュニケーションを考察することができた。
KAKENHI-PROJECT-17026031
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17026031
二成分密度汎関数法を用いた固体表面における陽電子状態の第一原理的研究
固体表面における陽電子状態を明らかにすべく、1.リチウムや酸素を吸着した鉄(001)表面における陽電子状態、2.ルチル型二酸化チタン表面における陽電子状態を、二成分密度汎関数法を用いて解析した。以下ではその成果について述べる。1.の解析の結果、スピンに依存する陽電子寿命は、磁性体表面第一原子層の磁化の変化に対して強い相関を示した。これは、表面に束縛された陽電子が固体表面第一層から真空側に分布するため、陽電子が固体最表面の電子を見ながら対消滅したためである。このため、表面に束縛される陽電子のスピンに依存した陽電子寿命を通して、表面の磁化に関する情報が得られることが期待される。本成果は国内外の学会及び投稿論文として発表を行った。2.の研究のモチベーションは、二酸化チタン表面に陽電子を入射することで、表面から一価の酸素正イオンが脱離する現象に、表面における陽電子の挙動が関連する点にある。この脱離模型として、表面に捕獲された陽電子が表面原子の内殻電子と対消滅を起こした結果、イオン脱離が起こると考えられてきた。しかし、これまでに二酸化チタン表面と陽電子の相互作用を詳細に調べた報告はない。そのため、陽電子と二酸化チタン表面の微視的な相互作用の理解を目的とし、二成分密度汎関数法による解析を行った。数値解析の結果、固体表面の陽電子は数パーセントの確率で内殻電子と対消滅を起こすことが明らかになった。本研究成果は国内の学会で発表を行い、今後投稿論文として発表を行う予定である。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。固体表面における陽電子状態を明らかにすべく、1.リチウムや酸素を吸着した鉄(001)表面における陽電子状態、2.ルチル型二酸化チタン表面における陽電子状態を、二成分密度汎関数法を用いて解析した。以下ではその成果について述べる。1.の解析の結果、スピンに依存する陽電子寿命は、磁性体表面第一原子層の磁化の変化に対して強い相関を示した。これは、表面に束縛された陽電子が固体表面第一層から真空側に分布するため、陽電子が固体最表面の電子を見ながら対消滅したためである。このため、表面に束縛される陽電子のスピンに依存した陽電子寿命を通して、表面の磁化に関する情報が得られることが期待される。本成果は国内外の学会及び投稿論文として発表を行った。2.の研究のモチベーションは、二酸化チタン表面に陽電子を入射することで、表面から一価の酸素正イオンが脱離する現象に、表面における陽電子の挙動が関連する点にある。この脱離模型として、表面に捕獲された陽電子が表面原子の内殻電子と対消滅を起こした結果、イオン脱離が起こると考えられてきた。しかし、これまでに二酸化チタン表面と陽電子の相互作用を詳細に調べた報告はない。そのため、陽電子と二酸化チタン表面の微視的な相互作用の理解を目的とし、二成分密度汎関数法による解析を行った。数値解析の結果、固体表面の陽電子は数パーセントの確率で内殻電子と対消滅を起こすことが明らかになった。本研究成果は国内の学会で発表を行い、今後投稿論文として発表を行う予定である。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-16J09076
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J09076
商用周波交流用超電導ケ-ブリング導体の特性評価法
商用周波交流用超電導線材(極細多芯線)は、一本の電流容量が小さい為に、実用上は多数本をケ-ブリングした導体という形状で使われる。その交流損失や安定性などの特性は、ケ-ブリングの方法や導体構成法に大きく依存する。本研究は、超電導交流機器の実現の為に重要な基礎研究として、これらの評価法に関する下記の検討を行い次の結果を得た。(1)商品周波交流用超電導導体の高感度磁化測定法の検討:この測定感度を決定する要因を詳細に検討し、実際に40200Hzの高感度磁化測定装置を試作した。測定感度を決定する主な誤差要因について定量的に検討し、それぞれに対策を施した。この装置は、従来の装置に比べ測定感度を1桁高くすることができた。(2)超電導導体のストランド間接触抵抗の評価法の検討:実際の導体のおかれる環境下では直接測定するのが困難なこの接触抵抗について、新しい間接的な評価法を提案した。その有用性を実証するために、視覆の施されていない交流用線材3本をケ-ブリングしたモデル導体を用いてシミュレ-シュン測定を行った。上述(1)の装置を用いて実際に評価したところ、通常の交流用導体の接触抵抗値は、コイル形状試料への巻線張力を変えても影響されず、線材表面の薄い酸化層がこの特性を決定づけていることが明らかになった。(3)大型導体の交流損失評価装置の試作と検討:この装置は、スプリット型のレ-ストラックマグネットと超電導トランスそれに超電導ヒ-トスイッチとから成り、0約3.5Tの直流バイアス磁界に、0.2200Hzの微小交流磁界が重畳できる。この磁界中で、断面が30mmで長さ500mmまでの直線状短尺試料の測定ができるが、実際に20kA級の大型導体について損失測定のできることを確かめた。さらに有限要素法による損失計算を行い、抵損失導体構造についても検討した。商用周波交流用超電導線材(極細多芯線)は、一本の電流容量が小さい為に、実用上は多数本をケ-ブリングした導体という形状で使われる。その交流損失や安定性などの特性は、ケ-ブリングの方法や導体構成法に大きく依存する。本研究は、超電導交流機器の実現の為に重要な基礎研究として、これらの評価法に関する下記の検討を行い次の結果を得た。(1)商品周波交流用超電導導体の高感度磁化測定法の検討:この測定感度を決定する要因を詳細に検討し、実際に40200Hzの高感度磁化測定装置を試作した。測定感度を決定する主な誤差要因について定量的に検討し、それぞれに対策を施した。この装置は、従来の装置に比べ測定感度を1桁高くすることができた。(2)超電導導体のストランド間接触抵抗の評価法の検討:実際の導体のおかれる環境下では直接測定するのが困難なこの接触抵抗について、新しい間接的な評価法を提案した。その有用性を実証するために、視覆の施されていない交流用線材3本をケ-ブリングしたモデル導体を用いてシミュレ-シュン測定を行った。上述(1)の装置を用いて実際に評価したところ、通常の交流用導体の接触抵抗値は、コイル形状試料への巻線張力を変えても影響されず、線材表面の薄い酸化層がこの特性を決定づけていることが明らかになった。(3)大型導体の交流損失評価装置の試作と検討:この装置は、スプリット型のレ-ストラックマグネットと超電導トランスそれに超電導ヒ-トスイッチとから成り、0約3.5Tの直流バイアス磁界に、0.2200Hzの微小交流磁界が重畳できる。この磁界中で、断面が30mmで長さ500mmまでの直線状短尺試料の測定ができるが、実際に20kA級の大型導体について損失測定のできることを確かめた。さらに有限要素法による損失計算を行い、抵損失導体構造についても検討した。
KAKENHI-PROJECT-02203122
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02203122
ハンドウイルカの群れ構造と行動生態の解析のためのモニタリング手法の開発-気球を用いた上空からの群れ撮影とソノブイによる鳴音連続収録-
天草通詞島の周辺海域あるいは長島海峡に現れるハンドウイルカを対象として,上空から群れの撮影を行う気球システム、ソノブイによる鳴音連続収録システム,群れの音響的追跡手法の開発を試みた.さらに水中マイクロホンによる鳴音収録,測量機器のセオドライトを用いた群れの出現位置の計測,群れの写真撮影および群れの行動観察を行った.気球システムは実用化のレベルに達した.このシステムを運搬できる範囲に鯨類が出現するという条件が満たされれば,他の鯨類にも適用可能である.ソノブイを用いた鳴音収録に関して,24時間連続収録が可能となるなど,システムの進展が見られた.1台のソノブイの探知距離は現状では数100mであるが,多くのソノブイを複数の地点に昼夜を問わず置くことができれば,群れの1日の行動圏の把握と群れの1日の行動や生活の把握が期待できるレベルに達した.本研究では複数のモニタリング手法を組み合わせたハンドウイルカの行動生態調査を試みた.気球システムから得られた群れ画像を用いて,出生率を年あたり2.1%以上,出産盛期を春から秋と推定した.ソノブイより群れの鳴音を連続的に収録できた.水中マイクロホンによる鳴音収録から,ハンドウイルカは数m先を音響探査することもあれば,200m程度先を探すこともあることが分かった.セオドライト観測から,群れは概して朝方に通詞島の東の海域に出現し,昼間に島の北側に滞在し,夕方に島の西の海域に移動することを明らかにした.群れの行動観察から,概して朝夕に活発に活動するのに対し,昼間は特定の場所に停滞し,水上行動をほとんど示さずに潜水・浮上を繰り返すことが多いことが分かった.識別個体の撮影履歴データを用いて,識別可能個体の死亡率を年あたり3.4%と推定した.また1994年から98年まで個体数は200頭前後で年々ほぼ安定していた.天草通詞島の周辺海域あるいは長島海峡に現れるハンドウイルカを対象として,上空から群れの撮影を行う気球システム、ソノブイによる鳴音連続収録システム,群れの音響的追跡手法の開発を試みた.さらに水中マイクロホンによる鳴音収録,測量機器のセオドライトを用いた群れの出現位置の計測,群れの写真撮影および群れの行動観察を行った.気球システムは実用化のレベルに達した.このシステムを運搬できる範囲に鯨類が出現するという条件が満たされれば,他の鯨類にも適用可能である.ソノブイを用いた鳴音収録に関して,24時間連続収録が可能となるなど,システムの進展が見られた.1台のソノブイの探知距離は現状では数100mであるが,多くのソノブイを複数の地点に昼夜を問わず置くことができれば,群れの1日の行動圏の把握と群れの1日の行動や生活の把握が期待できるレベルに達した.本研究では複数のモニタリング手法を組み合わせたハンドウイルカの行動生態調査を試みた.気球システムから得られた群れ画像を用いて,出生率を年あたり2.1%以上,出産盛期を春から秋と推定した.ソノブイより群れの鳴音を連続的に収録できた.水中マイクロホンによる鳴音収録から,ハンドウイルカは数m先を音響探査することもあれば,200m程度先を探すこともあることが分かった.セオドライト観測から,群れは概して朝方に通詞島の東の海域に出現し,昼間に島の北側に滞在し,夕方に島の西の海域に移動することを明らかにした.群れの行動観察から,概して朝夕に活発に活動するのに対し,昼間は特定の場所に停滞し,水上行動をほとんど示さずに潜水・浮上を繰り返すことが多いことが分かった.識別個体の撮影履歴データを用いて,識別可能個体の死亡率を年あたり3.4%と推定した.また1994年から98年まで個体数は200頭前後で年々ほぼ安定していた.初年度の研究として,九州天草通詞島周辺海域のハンドウイルカを対象としたモニタリングシステムの改良を行った.群れを上空からビデオ撮影する気球システムの小型化と堅牢化に成功するとともに,空中でのビデオカメラの姿勢安定性を向上させた.ハンドウイルカの鳴音を含む海中音響を自動計測するソノブイを新たに作成し,高周波領域のクリックスと低周波領域のホイッスルを収録できるようになった.このシステムを通詞島周辺海域で使用した.気球調査は主として群れの構成個体数の計数と親子連れの比率の推定に焦点をあてて行った.他海域と異なり百頭を越える大きな群れを作ることを実証する画像を多く得た.夏に親子連れの比率が高まり,出産盛期がこの頃であることを示唆するデータも得た.ソノブイによるハンドウイルカの鳴音連続収録に成功した.ただし,漁業との関係で3台のソノブイの設置場所を自由に変更できなかったために,当初目論んでいた夜間の群れの出現場所の確認は行えなかった.水中マイクを用いて高周波領域に焦点をあてた鳴音収録を行った.ハンドウイルカは数m先を音響探査することもあれば,200m程度先を探すこともあった.測量機器のセオドライトを用いて群れの移動を連続的に追跡した結果,概して朝方に通詞島の東の海域に出現し,昼間に島の北側に滞在し,夕方に島の西の海域に移動することが分かった.群れの行動観察を行った結果,概して朝夕に活発に種々の水上行動を示すのに対し,昼間は特定の場所に停滞し,水上行動をほとんど示さずに潜水・浮上を繰り返すことが多いことが分かった.群れの活動状態と鳴音特性の関係の解明は次年度の課題である.
KAKENHI-PROJECT-10460086
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10460086
ハンドウイルカの群れ構造と行動生態の解析のためのモニタリング手法の開発-気球を用いた上空からの群れ撮影とソノブイによる鳴音連続収録-
気球システム(ビデオカメラを装着した気球を空中に上げ、群れを上空から撮影するシステム)は実用のレベルに達したので、ソノブイ(海中音響の自動連続計測装置を持つブイ)の高度化を図った.いままでは6時間ごとのテープ交換のために,海中に浮かべたソノブイを設置した場所まで船を使って行く必要があった.流れの速い場所での夜間のテープ交換が危険を伴うために,夜間の連続収録は実施できなかった.そこで,24時間連続計測を可能にするために,ソノブイで収録した音響を無線で陸上に送り,陸上で録音するシステムの開発を試みた.さらに,開発終了した気球システムの代わりに,背鰭の傷に基づいて識別した個体の体長推定のためのステレオカメラシステムの開発に取り組んだ.これらシステムを九州天草通詞島周辺海域のハンドウイルカのモニタリングに使用した.新ソノブイシステムによる24時間連続計測に成功した.ステレオカメラによる個体の体長推定そのものは可能と判断されたが,悪天候のため,また多くのウォッチングボードが群れを取り囲んでいたために,十分な撮影時間が取れず,個体識別用の背鰭の傷の拡大写真と噴気孔から背鰭までの写真を同一個体から撮る機械がなかった.ステレオカメラシステムの実用化は次年度の課題である.通詞島での調査では個体識別用の写真撮影も行った.標識再捕法を応用して群れ構成個体数の推定を試みた.その結果,気球システムにより得られていた浮上群の個体数計測値とよく対応した推定値を得た.気球システム(ビデオカメラを装着した気球を空中に上げ、群れを上空から撮影するシステム)の実用化およびソノブイ(海中音響の自動連続計測装置を持つブイ)の高度化は目標レベルに達したので,鯨類の群れを鳴音受信により追跡する音響システムの開発に取り組んだ.モニタリング手法開発の対象としていた鯨類は通詞島(天草下島の北端)周辺に現れるハンドウイルカであったが,ほとんどの個体が通詞島周辺から長島海峡(天草下島の南端)に移動したことを両海域での写真撮影調査から明らかにした.そこで主たる調査海域を長島海峡周辺海域に変更した.調査時期に悪天候が続いたために新音響システムの検証に十分な時間をとれなかったが,パッシブ魚群探知機方式により鳴音探知に成功し,高SN比聴音方式により雑音除去の効果が認められ,ステレオ聴音方式により鳴音を出した群れの方位が分かった.これら新システムを長島海峡の環境・生物雑音の特性に合わせたシステムへと改良すれば,目視追跡の不可能な夜間の群れ追跡が行える可能性を見い出せた.なお,測量機器のセオドライトを用いた群れ出現位置の連続計測は,高度が高く,見晴らしが良く,群れを長時間にわたって観察できる場所が長島海峡周辺になかったために,行わなかった.識別個体の撮影履歴データを用いて,識別可能個体の死亡率を年あたり3.4%と推定した.また1994年から98年まで個体数は200頭前後で年々ほぼ安定していたことを明らかにした.気球システムから得られた群れ画像データを用いて,出生率を年あたり2.1%以上,出産盛期を春から秋と推定した.
KAKENHI-PROJECT-10460086
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10460086
アドレノメデュリンの脂肪組織における病態生理学的意義の解明
アドレノメデュリン(以下AM)は強力な降圧活性等、循環系に多彩な作用を有し、循環調節並びに循環器疾患の病態に深く関与している。最近の研究で脂肪組織においてもAMが高度に発現している事が示されている。我々も脂肪細胞がAMを著明に分泌している事を示し、AMが脂肪細胞分化を促進すること、lipolysis作用を有すること、ブドウ糖取り込み作用を有することなどを示した。しかしながら生体内におけるAMの脂肪細胞における意義は明らかでない事から本研究ではAMの脂肪組織特異的なKOマウスの樹立を試みた。AM遺伝子の第4 exonのAMをコードする領域の上流と下流にloxP配列を挿入し、第2,3exonに存在するもう1つの生理活性ペプチドPAMPはそのままにし、AM遺伝子のみを欠損させるコンディショナルKOマウスである。AM floxマウスをまず樹立した。次に脂肪細胞に特異的に発現するaP2をプロモーターに用いて、Creリコンビナーゼ過剰発現マウスを作製し、floxマウスと交配させて、最終的に脂肪細胞特異的AM欠損マウスを樹立した。このマウスの脂肪細胞ではPAMP遺伝子発現は野生型とかわらず、AM遺伝子発現のみが約20%に低下した。表現系としてはAM KOマウスで血圧が高い傾向が認められた。体型は野生型に比し、AM KOマウスで軽度やせ型であり、内臓脂肪も精巣周囲、腸間膜等、野生型に比べて少ない傾向を認めた。また開腹すると体重の増加は野生型に比べて低下傾向を認めたが、摂食量に差はなかった。今後この遺伝子改変マウスを用いてAMの糖代謝・脂質代謝における意義を解明していく予定である。脂肪由来のAMの血管・リンパ管新生作用なども合わせて検討し、脂肪組織でおこる慢性炎症細胞浸潤のドレナージにおけるAMの新しい意義も検討する予定である。24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度が最終年度であるため、記入しない。申請者はアドレノメデュリン(以下AM)の発見以来、AMの意義について臨床的・基礎的両面から研究を進めてきた。AMはヒト脂肪組織にも高発現し、冠動脈疾患群では心外膜周囲の脂肪組織のAM発現は亢進し、培養系では、lipolysis作用、ブドウ糖取り込み作用を有する事を示した。本申請研究では、脂肪組織におけるAMの意義をさらに明らかにするために、脂肪細胞特異的AM欠損マウスを樹立し、このマウスを用いて詳細に検討することで、脂肪由来のAMの糖代謝・脂質代謝における意義を解明し、さらに脂肪由来のAMのリンパ管新生作用なども合わせて検討し、脂肪組織でおこる慢性炎症細胞のドレナージとしてのAM/リンパ管系の新しい意義も探る予定である。本年度は脂肪細胞特異的AM遺伝子ノックアウトマウスの作製を試みた。AMの遺伝子は4つのexonからなり、第2exonにPAMPが、第4exonにAMがコードされている。AMノックアウトマウスは、ホモは胎生致死であり、実験に用いることが出来ない。そこで脂肪細胞特異的なコンディショナルノックアウトマウスの作製を行い、生体でのAMの役割を明らかにすることを目的とした。本年度は連携研究者の桑原と共にAM fIoxedマウスの作製に成功し、homozygous floxed AMマウスの作成にも成功した。交配も順調に行うことが出来、この系のマウスの維持も出来た。脂肪細胞に特異的に発現するaP2をプロモーターに用いて脂肪細胞に特異的に過剰発現したCreマウスとの交配により、AMを脂肪細胞で特異的に欠損したマウスを作製する予定でこのマウスの樹立にも時間がかかったが成功し、homozygous floxed AMマウスとの交配を行っているところである。予備的研究ではあるが、予想外に生まれるマウスの仔の数が少なかった。次年度、詳細に検討予定である。アドレノメデュリン(以下AM)は強力な降圧活性等、循環系に多彩な作用を有し、循環調節並びに循環器疾患の病態に深く関与している。最近の研究で脂肪組織においてもAMが高度に発現している事が示されている。我々も脂肪細胞がAMを著明に分泌している事を示し、AMが脂肪細胞分化を促進すること、lipolysis作用を有すること、ブドウ糖取り込み作用を有することなどを示した。しかしながら生体内におけるAMの脂肪細胞における意義は明らかでない事から本研究ではAMの脂肪組織特異的なKOマウスの樹立を試みた。AM遺伝子の第4 exonのAMをコードする領域の上流と下流にloxP配列を挿入し、第2,3exonに存在するもう1つの生理活性ペプチドPAMPはそのままにし、AM遺伝子のみを欠損させるコンディショナルKOマウスである。AM floxマウスをまず樹立した。次に脂肪細胞に特異的に発現するaP2をプロモーターに用いて、Creリコンビナーゼ過剰発現マウスを作製し、floxマウスと交配させて、最終的に脂肪細胞特異的AM欠損マウスを樹立した。このマウスの脂肪細胞ではPAMP遺伝子発現は野生型とかわらず、AM遺伝子発現のみが約20%に低下した。表現系としてはAM KOマウスで血圧が高い傾向が認められた。体型は野生型に比し、AM KOマウスで軽度やせ型であり、内臓脂肪も精巣周囲、腸間膜等、野生型に比べて少ない傾向を認めた。また開腹すると体重の増加は野生型に比べて低下傾向を認めたが、摂食量に差はなかった。
KAKENHI-PUBLICLY-23126511
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-23126511
アドレノメデュリンの脂肪組織における病態生理学的意義の解明
今後この遺伝子改変マウスを用いてAMの糖代謝・脂質代謝における意義を解明していく予定である。脂肪由来のAMの血管・リンパ管新生作用なども合わせて検討し、脂肪組織でおこる慢性炎症細胞浸潤のドレナージにおけるAMの新しい意義も検討する予定である。24年度が最終年度であるため、記入しない。本申請研究の主要な研究テーマは脂肪細胞特異的なAMノックアウトマウスの作成による脂質代謝、糖代謝のへの影響の解析である。そのため、まずAM Floxマウスの作成が必須であったが、時間がかかったが成功した。ホモにしても交配はでき、外見上のフェノタイプも変わりがない。aP2をプロモーターに脂肪細胞に特異的に発現するCre過剰発現マウスも現在誕生し、ホモAMFIoxマウスとの掛け合わせを行っている。24年度が最終年度であるため、記入しない。まだ掛け合わせを開始し時間がたっていないが、誕生した仔数も少ないが、仔数が少ない傾向を認め、今後注意してみていく予定である。今後は出来るだけ脂肪細胞特異的AMノックアウトマウスを増やして、種々の解析を行う予定である。脂肪細胞特異的にAMをノックアウトされたマウスのフェノタイプを通常食でまず解析し、体重、脂肪量、血中のT-Cho、TG、FFA、血糖値、インスリン値、インスリン抵抗性、組織学的検討(脂肪細胞のサイズなど)、免疫組織学的検討(浸潤する細胞T細胞、マクロファージの同定など)、脂肪組織におけるにおける各種遺伝子発現(PEPCK,AP2,Glut4,LPL,adiponectin,leptin)などを測定し野生型と比較検討予定である。さらに高脂肪食負荷を行い、その時の変化をAM Floxマウスと比較予定である。
KAKENHI-PUBLICLY-23126511
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-23126511
動物ウイルスの持続感染・再活性化機構の解明
ウイルスの持続感染では、免疫の存在にもかかわらず、ウイルスは体内に潜伏し、宿主の免疫から巧みに逃れる。しかし疫学的、免疫学的、生物学的誘因により、時にはウイルスが再活性化され、その産生が起こり症状が発現する。以下得られた結果を述べる。1.In vitroにおけるネコ免疫不全ウイルス(FIV)潜伏感染系をFIVを接種した人由来Molt4細胞を用いて確立した。この細胞において、FIVゲノムは感染初期に潜伏状態となり、TPA処理により活性化し、ウイルスを産生することが明らかとなった。2.FIVのサブタイプA(Petalumaの株)およびサブタイプB(TM2株)のそれぞれを接種したSPF猫を約9年間観察した。全者は感染後8年4ケ月で腹腔内出血で死亡したが、後者は現在でも(9年以上)生存している。この結果、FIVの持続感染の場合、発病を左右する因子としてはウイルスのサブタイプ間の病原性の強弱並びに飼育環境下の差(例えば他の病原体に暴露されない場所)などが重要であると考られた。3.マレックス病ウイルス(MDV)は血清学的、遺伝学的に3つに分けられ、全て持続感染する。MDV-1は腫瘍原性を有するのに対して、MDV-2は非腫瘍原性である。持続感染並びに腫瘍原性の機構を遺伝子レベルで明らかにするために、MDV-2遺伝子を解析し、その90%以上を決定した。4.猫ヘルペスウイルス1型(FHV-1)の潜伏感染から再活性化する際に、最初に転写・翻訳される前初期蛋白ICP4をコードする遺伝子の同定を行い、この遺伝子の転写は2つのブロ-モーターにより制御されていることが示された。また、この2つのブロ-モーターの間には転写に抑制的に作用する繰り返し配列が存在した。5.犬ジステンバーウイルス(CDV)・Yananka株を持続感染させたB95a細胞から回収したウイルスは感染性を持つものの、CPEや、細胞死を起こさない変異株であり、このウイルス株をYanaka-BP株と命名した。Yanaka-BP株のFおよびH蛋白の大きさはYananka株と同じであったが、F蛋白の塩基配列解析により、in vitroでの開始コドンと考えられている3番目のATGコドンがATAに変異していた。ウイルスの持続感染では、免疫の存在にもかかわらず、ウイルスは体内に潜伏し、宿主の免疫から巧みに逃れる。しかし疫学的、免疫学的、生物学的誘因により、時にはウイルスが再活性化され、その産生が起こり症状が発現する。以下得られた結果を述べる。1.In vitroにおけるネコ免疫不全ウイルス(FIV)潜伏感染系をFIVを接種した人由来Molt4細胞を用いて確立した。この細胞において、FIVゲノムは感染初期に潜伏状態となり、TPA処理により活性化し、ウイルスを産生することが明らかとなった。2.FIVのサブタイプA(Petalumaの株)およびサブタイプB(TM2株)のそれぞれを接種したSPF猫を約9年間観察した。全者は感染後8年4ケ月で腹腔内出血で死亡したが、後者は現在でも(9年以上)生存している。この結果、FIVの持続感染の場合、発病を左右する因子としてはウイルスのサブタイプ間の病原性の強弱並びに飼育環境下の差(例えば他の病原体に暴露されない場所)などが重要であると考られた。3.マレックス病ウイルス(MDV)は血清学的、遺伝学的に3つに分けられ、全て持続感染する。MDV-1は腫瘍原性を有するのに対して、MDV-2は非腫瘍原性である。持続感染並びに腫瘍原性の機構を遺伝子レベルで明らかにするために、MDV-2遺伝子を解析し、その90%以上を決定した。4.猫ヘルペスウイルス1型(FHV-1)の潜伏感染から再活性化する際に、最初に転写・翻訳される前初期蛋白ICP4をコードする遺伝子の同定を行い、この遺伝子の転写は2つのブロ-モーターにより制御されていることが示された。また、この2つのブロ-モーターの間には転写に抑制的に作用する繰り返し配列が存在した。5.犬ジステンバーウイルス(CDV)・Yananka株を持続感染させたB95a細胞から回収したウイルスは感染性を持つものの、CPEや、細胞死を起こさない変異株であり、このウイルス株をYanaka-BP株と命名した。Yanaka-BP株のFおよびH蛋白の大きさはYananka株と同じであったが、F蛋白の塩基配列解析により、in vitroでの開始コドンと考えられている3番目のATGコドンがATAに変異していた。ウイルスの持続感染はウイルス側としては生体防御を回避し、生体内に存続する一つの寄生戦略として、また宿主側としては寄生体の排除よりむしろ共存を図る高度な戦略として捉えられる。本研究はネコ、イヌ、ニワトリで臨床上重要なネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ネコヘルペスウイルス1型(FHV-1),イヌジステンパーウイルス(CDV)、ニワトリのマレック病ウイルス(MDV)による持続感染と再活性化の機構を培養細胞及び自然宿主を用いて、主として分子生物学的手法によって分子レベル、細胞レベル及び個体レベルを解明することを目的とする。本年度は以下のような成績を得た。1)FIV感染猫のPBMC内で潜伏状態にあるFIVは調節遺伝子をコードしているmultiple-spliceのRNAを高率に発現するが、構造遺伝子やvif遺伝子をコードしている非spliceおよびsingle spliceのRNAの発現はほとんどない。
KAKENHI-PROJECT-06404015
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06404015
動物ウイルスの持続感染・再活性化機構の解明
しかし、PBMCをマイトジェンで刺激すると後者RNAは発現し、ウイルス産生が促進された。このことは潜伏状態のFIVは、その転写物の発現パターンを調節して、ウイルス産生を抑制していると考えられる。又FIVの潜伏状態から再活性化には調節遺伝子をコードしている転写物の発現バランスが重要と思われる。2)FIV遺伝子発現の活性化および抑制にはLTRに存在するC/EBP結合部位がpositiveとnegativeの両方に関与することが示された。3)In vitroにおけるFIV潜伏感染系をFIVを接種した人由来Molt4細胞を用いて確立した。この細胞において、FIVゲノムは感染初期に潜伏状態となり、TPA処理により活性化し、ウイルスを産生することが明かとなった。ウイルスの持続感染はウイルス側としては生体防御を回避し、生体内に存続する一つの寄生戦略として、また宿主側としては寄生体の排除よりむしろ共存を図る高度な戦略として捉える。本研究はネコ、イヌ、ニワトリで臨床上重要なネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ネコヘルペスウイルスI型(FHV-1)、イヌジステンパーウイルス(CDV)、ニワトリのマレック病ウイルス(MDV)による持続感染と再活性化の機構を培養細胞及び自然宿主を用いて、主として分子生物学的手法によって分子レベル、細胞レベル及び個体レベルで解明することを目的とする。本年度は以下のような成績を得た。1) FIVのLTR内のAP-1、ATF siteに細胞核内蛋白が特異的に結合していることが示された。これらの2つの結合部位は互いの配列により拮抗阻害されることから、何らかの相互作用を持つことが示唆された。2) FIVのLTR内のAP-1siteを欠損した組み換えウイルスの作製に成功した。このウイルスは培養細胞における増殖に変化は見られなかったが、ネコに接種したところ若干の増殖抑制が見られたことより、AP-1 siteが宿主動物での増殖に関与していることが明らかとなった。3) FHV-1の潜伏感染から再活性化する際に、最初に転写・翻訳される前初期蛋白ICP4をコードする遺伝子の同定を行い、この遺伝子の転写は2つのプロモーターにより制御されていることが示された。また、この2つのプロモーターの間には転写に抑制的に作用する繰り返し配列が存在した。ウイルスの持続感染はウイルス側としては生体防御を回避し、生体内に存続する一つの寄生戦略として、また宿主側としては寄生体の排除よりむしろ共存を図る高度な戦略として捉えられる。本研究は、ネコ、イヌ、ニワトリで臨床上重要なネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ネコヘルペスウイルス1型(FHV-1)、イヌジステンパーウイルス(CDV)、ニワトリのマレック病ウイルス(MDV)による持続感染と再活性化の機構を培養細胞及び自然宿主を用いて、主として分子生物学的手法によって分子レベル、細胞レベル及び個体レベルで解明することを目的とする。本年度は以下のような成績を得た。1.FIVのLTR内のAP-1及びATF結合部位に細胞核内蛋白が特異的に結合しており、さらにそれら結合蛋白が実際にJunおよびATF関連蛋白であることがゲルスーパーシフトアッセイにより示された。2.ネコのCD8α鎖に対するモノクローナル抗体を作製し、CD8β鎖を認識するモノクローナル抗体を共に利用して、FIV感染ネコにおけるCD8細胞の動態を詳細に調べた。
KAKENHI-PROJECT-06404015
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06404015
低放射化金属材料の照射損傷に起因するトリチウム蓄積量の実験的評価
バナジウム、バナジウム合金、銅、アルミニウム及び鉄などの核融合炉低放射化候補材料について、トリチウムインベントリ(蓄積量)を評価するための実験的研究を実施した。実験方法は次の通りである。先ず、照射環境を模擬するために種々のイオンを試料に照射し、プラズマ環境を模擬するため試料の片面を重水素プラズマに曝し続けた。次にイオンビーム分析法を用いて、試料中の重水素の深さ方向分布をその場観察した。バナジウムでは照射損傷に起因する捕捉サイトがインベントリを著しく増加させ得ることや、この捕捉サイトは500Kで消滅するため、核融合炉運転条件ではあまり問題にならないことが分かった。バナジウムとV-Cr-Ti系合金ではインベントリに大きな差違が見られないことも分かった。銅の場合は損傷に起因する捕捉サイトが2種類生成した。これらの捕捉サイトと溶解サイトとの平衡を表す定数や捕捉サイトの数密度を予測するための比例定数を実験的に得た。銅においては捕捉サイトがインベントリに及ぽす影響は大きいこともわかった。アルミニウムについては少なくとも常温以上の温度においては有意な捕捉現象は確認できず、常温において残存している欠陥は捕捉サイトとして働かないことがわかった。鉄については損傷に起因する捕捉サイトが1種類生成した。この捕捉サイトは空孔と考えられ、転位等によって安定化している可能性がある。銅と同様に平衡を表す定数や数密度を予測する比例定数を実験的に得た。また、捕捉サイトの回復温度についてもデータを得た。以上の実験的研究により、バナジウム、バナジウム合金、銅及び鉄について、損傷量や燃料粒子フラックス等の条件を与えればトリチウムインベントリを定量的に評価できるようになった。バナジウム、バナジウム合金、銅、アルミニウム及び鉄などの核融合炉低放射化候補材料について、トリチウムインベントリ(蓄積量)を評価するための実験的研究を実施した。実験方法は次の通りである。先ず、照射環境を模擬するために種々のイオンを試料に照射し、プラズマ環境を模擬するため試料の片面を重水素プラズマに曝し続けた。次にイオンビーム分析法を用いて、試料中の重水素の深さ方向分布をその場観察した。バナジウムでは照射損傷に起因する捕捉サイトがインベントリを著しく増加させ得ることや、この捕捉サイトは500Kで消滅するため、核融合炉運転条件ではあまり問題にならないことが分かった。バナジウムとV-Cr-Ti系合金ではインベントリに大きな差違が見られないことも分かった。銅の場合は損傷に起因する捕捉サイトが2種類生成した。これらの捕捉サイトと溶解サイトとの平衡を表す定数や捕捉サイトの数密度を予測するための比例定数を実験的に得た。銅においては捕捉サイトがインベントリに及ぽす影響は大きいこともわかった。アルミニウムについては少なくとも常温以上の温度においては有意な捕捉現象は確認できず、常温において残存している欠陥は捕捉サイトとして働かないことがわかった。鉄については損傷に起因する捕捉サイトが1種類生成した。この捕捉サイトは空孔と考えられ、転位等によって安定化している可能性がある。銅と同様に平衡を表す定数や数密度を予測する比例定数を実験的に得た。また、捕捉サイトの回復温度についてもデータを得た。以上の実験的研究により、バナジウム、バナジウム合金、銅及び鉄について、損傷量や燃料粒子フラックス等の条件を与えればトリチウムインベントリを定量的に評価できるようになった。核融合炉プラズマ対向壁の低放射化候補材料であるバナジウムについて、トリチウムインベントリ(蓄積量)を評価するための実験的研究を実施した。プラズマ対向壁には多量の中性子が入射するため、この環境を模擬するために中性子と同じ質量の水素イオンをバナジウム試料に照射し、損傷を生成させた。また、試料の片面を模擬重水素プラズマに曝し続けた。次に、イオンビーム分析法を用いて、試料中に存在する重水素の深さ方向分布をその場観察した。実験で観察された深さ方向分布は、シミュレーションで予測した損傷分布に一致しており、照射損傷に起因する捕捉サイトが生成したことが確認できた。本研究の条件下では、捕捉サイトはほぼ重水素で占められていること、インベントリ全体に対する捕捉の寄与は最大80%に達することなどが判った。一方で、試料温度が450Kを超えると捕捉サイトの数が減少し始め、520K付近では完全に消滅することも判った。ただし、捕捉サイトは空孔または複空孔であり、これらの欠陥の回復挙動は材料中の不純物に大きく依存するため、バナジウム合金の場合には高温でも捕捉サイトが存在することが予想され、今後の実験で明らかにする必要がある。インベントリには固溶するトリチウムも寄与するため、その量を評価するための再結合定数などの物性値も同様の実験によって求めた。その結果、プラズマに曝されている表面は清浄であり、再結合定数は溶解熱の単純な関数で表されること、固溶量はプラズマの条件を与えれば定量的に予測できることが示された。以上をまとめると、500K付近を境界として、それ以上の温度では固溶のみを、それ以下の温度では固溶と捕捉とを考慮する必要があり、固溶量については定量的に、捕捉量についてはほぼ定量的に予測することが可能である。核融合炉の低放射化候補材料について、トリチウムインベントリ(蓄積量)を評価するための実験的研究を実施した。研究は計画通りに進行しており、候補材料のうちバナジウム、バナジウム合金及び銅について実験を行った。
KAKENHI-PROJECT-16360458
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16360458
低放射化金属材料の照射損傷に起因するトリチウム蓄積量の実験的評価
具体的には、プラズマ対向壁の照射環境を模擬するため、水素イオンやヘリウムイオンをバナジウム等の試料に照射し、損傷を生成させた。また、試料の片面を模擬重水素プラズマに曝し続けた。次に、イオンビーム分析法を用いて、試料中に存在する重水素の深さ方向分布をその場観察した。昨年度は、バナジウム中に照射損傷に起因する水素同位体捕捉サイトが生成すること、この捕捉サイトは特に低温におけるインベントリを著しく増加させるが、450520Kで消滅することを示した。今年度の結果によると、捕捉サイトの生成率も消滅の熱的挙動もバナジウムとその合金(V-4Cr-4Ti)との間には明確な差が無いことが分かった。このことは、捕捉サイトが損傷起因であることと、合金のトリチウムインベントリは純バナジウムと同じパラメータを用いて評価可能であることを示している。銅の場合は損傷に起因する捕捉サイトが2種類生成した。1つはポテンシャルが深く、その密度が損傷量に比例することから複空孔と考えられる。もう1つはポテンシャルが比較的浅く、その密度が損傷量に対して飽和することから格子間型の転位ループと考えられる。これらの捕捉サイトのインベントリへの寄与は極めて大きく、捕捉サイトが存在する場合のインベントリは、無い場合の10,000倍にも成り得ることが分かった。このような大きな差異は銅が吸熱的に水素同位体を吸収することが原因であり、発熱的に吸収するバナジウムでは見られない。核融合炉の低放射化候補材料について、トリチウムインベントリ(蓄積量)を評価するための実験的研究を実施した。過去2年間においては、バナジウム及びバナジウム合金について研究を行った。今年度は銅、アルミニウム及び鉄について実験を行った。実験方法は次の通りである。先ず、照射環境を模擬するために種々のイオンを試料に照射し、プラズマ環境を模擬するため試料の片面を重水素プラズマに曝し続けた。次にイオンビーム分析法を用いて、試料中の重水素の深さ方向分布をその場観察した。銅の場合は損傷に起因する捕捉サイトが2種類生成した。これらの捕捉サイトと溶解サイトとの平衡を表す定数や捕捉サイトの数密度を予測するための比例定数を実験的に得た。捕捉サイトのポテンシャルや数密度から1つは複空孔、もう1つは格子間型の転位ループと推測された。これらの捕捉サイトがトリチウムインベントリに及ぼす影響は大きいこともわかった。アルミニウムについては少なくとも常温以上の温度においては有意な捕捉現象は確認できず、常温において残存している欠陥は捕捉サイトとして働かないことがわかった。トリチウムインベントリに関してはアルミニウムは良好な性質を示す。鉄については損傷に起因する捕捉サイトが1種類生成した。この捕捉サイトは空孔と考えられ、転位等によって安定化している可能性がある。銅と同様に平衡を表す定数や数密度を予測する比例定数を実験的に得た。また、捕捉サイトの回復温度についてもデータを得た。以上の実験的研究により、バナジウム、バナジウム合金、銅及び鉄について、損傷量や燃料粒子フラックス等の条件を与えればトリチウムインベントリを定量的に評価できるようになった。
KAKENHI-PROJECT-16360458
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16360458
出生前検査を希望する妊婦と夫への意識調査
出生前診断を受けるか否かの意思決定の際に、妊婦と夫の知識や意識がどのように影響を及ぼしているかを明らかにした。調査の結果、出生前診断を受けるか否かについて話し合いを持ったのは6割で、検査の詳細や検査後の対応について話し合ったのは半数以下であった。話し合いが「不十分であった」との回答は2割であった。話し合いの際に不足していた知識は、検査の種類や方法、母体や胎児への影響と回答した割合が高かった。これらから、出生前診断を受けるか否かについて話し合う妊娠初期に、妊婦にも夫にも知識提供が必要性であることが示唆された。出産年齢の高齢化や医療技術の進歩により、妊婦の出生前検査に対しての関心が高まっている。さらに、2013年に非侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)の開始の際の報道で、出生前診断の対象となる妊婦だけではなく、一般の医療機関に通院するローリスク妊婦にも、出生前診断を希望するものが増加した。しかし、遺伝の専門家である臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーの数は少なく、遺伝カウンセリングを受検できる施設も限られており、一般の医療機関に通院するローリスク妊婦への支援体制は十分ではない。また、出生前診断を受検するか否かの意思決定において、妊婦は、夫と十分に話し合い、理解を深め、同意することが重要である。そこで、出生前診断を受けるか否かの意思決定の際の一般医療機関に通院するローリスク妊婦と夫のニーズを明らかにし、支援体制を構築する。H27年度は、妊婦と夫の夫婦関係に関して文献検討を実施し、出生前診断を受検した経験を持つ、一般医療機関で出産したローリスクの褥婦と夫に半構成的面接法を実施し、カップルで分析を行う研究の研究実施計画書を作成し、倫理審査を受けた。研究協力が得られた一般医療機関の研究協力者に、研究実施の説明をし、了承を得た。現在は、研究対象者に、研究協力を依頼し、リクルートと登録を行っている。また、国際学会にて、一般医療機関で出産したローリスクの褥婦の出生前診断を受検した体験について発表し、本テーマの研究領域についての情報収集を行った。【出生前診断を受けた経験のある褥婦と夫へのインタビュー調査】H27年度は、48月に妊婦と夫の夫婦関係、児への愛着形成について文献検討をした。さらに、国際学会に参加し情報収集を行った。910月に研究実施計画書を作成した。11月に畿央大学研究倫理委員会に倫理申請をし、承認された。研究協力が得られた一般医療機関の研究協力者に、研究実施の説明をし、了承を得た。H28年2月より、対象者のリクルートを行い、出生前診断を受検し、結果に問題の無かった妊婦、数名から研究協力の了承を得た。今後、その妊婦が出産し、母児共に問題が無ければ、再度、研究への依頼をし、同意が得られれば、半構造的面を実施する。質問内容が出生前診断という個人的な内容であったため、対象者の倫理的配慮について研究協力施設の研究協力者との話しあいの時間を、予定よりも多く費やした。さらに、出産後の入院期間中に行う夫婦揃ってのインタビューであるため、夫の都合を予測することが難しく、予定よりも研究参加予定者の集まりが悪い。進行状況としてはやや遅れている。【妊娠22週以降の妊婦とその夫への質問紙調査】H27年3月より、ローリスク妊婦とその夫に出生前診断を受けるか否かの意思決定の際の知識や意識、サポートについて質問紙調査のための質問紙と研究実施計画書を作成を開始した。妊婦とその夫をカップルで分析をするため、研究参加者のリクルートが難しく、回収率が低いことが予測され、前倒しにし、準備を始めた。夫婦の出生前診断に関しての知識や意識を明らかにすることを目的に、出生前診断を希望し、遺伝相談を受けたのちに受検し、その結果が陰性であった経験を持つ褥婦と夫に、一次調査「出生前検査を希望した夫婦の出産にいたるまでの体験の研究」でインタビューを行った。質的帰納的に、受検理由、検査説明の際に必要と思った情報やケア、受検する際の不安、受検時に夫婦間で話しあった内容、受検時のパートナーへの要望の5項目について分析した。その結果、妻と夫、あるいはどちらか一方が妊娠前から出生前診断について知っていても、妊娠前に話し合うことはなく、妊娠後に話し合うのみであることが明らかとなった。その話し合いの内容は、受検するかどうかに関してのみであり、予想していた結果と異なった場合の対応については充分に話し合われていなかった。さらに、夫は「多少の不安があったが、妻が普通に過ごしていたので話し合おうと思わなかった」「結果は大丈夫と思って受けていたので、話し合いは必要ないと思った」と考え、検査結果が出るまでの期間に、妻と出生前診断についての話し合いの機会を持つ必要性を感じていなかった。また、検査の事前説明の際に、検査の種類・方法・リスク・結果について夫婦で一緒に説明を受けており、その際にわからないと感じることはなかったと話していた。これらより、医療者は、出生前診断の事前説明後に、夫婦で十分に話し合う機会を持つような関わりが必要であることが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-15K11690
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K11690
出生前検査を希望する妊婦と夫への意識調査
出生前診断を受検するか否かを選択する際の夫が妊婦に及ぼす影響と必要な援助を明らかにすることを目的に、一次調査の結果を参考に、出生前診断に関する知識や意識、希望するサポートに関しての質問紙を作成し、二次調査「出生前検査に対する妊婦とその夫への意識調査」を実施した。一次調査「出生前検査を希望した夫婦の出産にいたるまでの体験の研究」:H28年67月に対象者へのインタビューを実施した。79月にインタビュー結果の分析をし、スーパーバイズを受けた。二次調査「出生前検査に対する妊婦とその夫への意識調査」:H28年67月に1次調査の結果を参考に質問紙を作成し、研究計画書を作成し、畿央大学研究倫理委員会に申請し承認を得た。89月に研究協力施設のリクルートを行った。9月より調査協力が得られた施設で質問紙の配布を開始した。H29年13月に、質問紙の回収率が予測より少なかったため、研究協力施設の追加のリクルートを行い、質問紙の配布と回収を行った。その他:H28年49月に、H27年度に実施した妊娠期の夫婦関係に関する文献検討の結果を論文としてまとめ投稿した。さらに、H28年9月H29年3月にーシャルメディアにおける高年妊婦の出生前診断に関する情報ニーズを分析し、学会で発表した。二次調査「出生前検査に対する妊婦とその夫への意識調査」の質問紙の回収が予定より遅れているため、進行状況としてはやや遅れている。出生前診断を受けるか否かの意思決定において,夫婦の意見が尊重されることが重要である。妊婦が出生前診断を受けるか否かの意思決定の際に,夫の知識や意識,サポートがどのように影響を及ぼしているかを明らかにし,出生前診断を希望する妊婦と夫への援助の示唆を得ることを目的として調査を実施した。研究施設の産婦人科医が母体と胎児の経過に問題がなく本調査に耐えうると判断した,妊娠22週以降のローリスク妊婦とその夫を対象とした。妊婦も夫も出生前診断に関する認知度が高かったが,出産前診断に関する自身の知識が不十分だと8割が回答し,妊婦よりも夫の方がその割合が高かった。また,出生前診断に関する知識を医療職者から得ていたのは,妊婦も夫も2割に満たなかった。一方で,出生前診断に関する夫婦での話し合いをもったと回答したのは6割であった。しかし,話し合いが不十分だったと4割が回答した。さらに,出生前診断の受検経験のある妊婦と夫に,出生前診断に関する夫婦での話し合いを行っていないとの回答があった。今回の調査で,ローリスク妊婦と夫の出生前診断に関する知識や話し合いの状況を明らかにしたことで,出生前診断を受けるか否かを話し合う際の妊婦とその夫へのケアへの示唆を得ることができた。出生前診断に関する話し合いを行うための知識が不十分だと思っている妊婦と夫は多く,その傾向が夫に強かったことから,妊婦だけでなく夫も利用しやすい,医療者に相談できるシステムの構築が必要である。また,非侵襲的な出生前診断であっても受検する夫婦間での話し合いは重要であり,医療者は夫婦間での話し合いの過程にも十分に配慮し援助する必要があることが明らかとなった。出生前診断を受けるか否かの意思決定の際に、妊婦と夫の知識や意識がどのように影響を及ぼしているかを明らかにした。調査の結果、出生前診断を受けるか否かについて話し合いを持ったのは6割で、検査の詳細や検査後の対応について話し合ったのは半数以下であった。話し合いが「不十分であった」との回答は2割であった。話し合いの際に不足していた知識は、検査の種類や方法、母体や胎児への影響と回答した割合が高かった。
KAKENHI-PROJECT-15K11690
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K11690
陰陽道の展開と浸透に関する民俗学的研究
民俗における陰陽道系知識の浸透と展開について本研究で明らかになったのは大別して次の4点である。第1は鹿児島県奄美地方における年中行事と干支によって表わされた方位観との密接な関連である。同地方の豊年祭りの相撲においてサスガン(殺生神)の所在する方角はモノシリやトネヤの管理者などの宗教的知識を持つ者によって占定されるが、こうした神格と知識とは陰陽道の方位観念の変容と考えられる。第2に沖縄県八重山地方における暦書の制作の問題が挙げられる。本土と著しく風土の異なる同地方において近世後半から日本と中国との暦書を参考に八重山独自の暦書を作成しようとする動きがあったことが見いだされた。書物を媒介にした陰陽道の知識の受容形態として注目すべきものである。第3は宮崎県高千穂地方における神楽に見られる陰陽道系要素である。神楽を歴史的に意味づける十二社明神(高千穂神社)の由来書には陰陽道系の知識が縦横に駆使されており、実際の神楽の執行においても従来注意されてきた修験道の祭式の中に陰陽道的な要素が多く見いださせることが明らかとなった。第4にこうした陰陽道の知識の浸透に大きな役割を果たしたと思われる近世近代の陰陽道書の内容検討と民族的な展開過程への見通しが挙げられる。具体的には『年中運気指南』(正徳5年・1715刊)の作者岡本一包子の伝説及びその内容の分析と近世以降一般化した暦注である三隣亡の民俗化との2つの方面からのアプローチである。前者によって近世医学の啓蒙的な部分と陰陽道との結びつき、後者によってさまざまな民俗的禁忌を取り込み、忌日から凶日へと展開してきた様相が明らかになった。第1第3の点については資料整理を進め、来年以降の研究発表を目指している。第4の点にかかわる成果は『宗教研究』(日本宗教学会)。『文経論叢』(弘前大学人文学部)に報告を試みた。民俗における陰陽道系知識の浸透と展開について本研究で明らかになったのは大別して次の4点である。第1は鹿児島県奄美地方における年中行事と干支によって表わされた方位観との密接な関連である。同地方の豊年祭りの相撲においてサスガン(殺生神)の所在する方角はモノシリやトネヤの管理者などの宗教的知識を持つ者によって占定されるが、こうした神格と知識とは陰陽道の方位観念の変容と考えられる。第2に沖縄県八重山地方における暦書の制作の問題が挙げられる。本土と著しく風土の異なる同地方において近世後半から日本と中国との暦書を参考に八重山独自の暦書を作成しようとする動きがあったことが見いだされた。書物を媒介にした陰陽道の知識の受容形態として注目すべきものである。第3は宮崎県高千穂地方における神楽に見られる陰陽道系要素である。神楽を歴史的に意味づける十二社明神(高千穂神社)の由来書には陰陽道系の知識が縦横に駆使されており、実際の神楽の執行においても従来注意されてきた修験道の祭式の中に陰陽道的な要素が多く見いださせることが明らかとなった。第4にこうした陰陽道の知識の浸透に大きな役割を果たしたと思われる近世近代の陰陽道書の内容検討と民族的な展開過程への見通しが挙げられる。具体的には『年中運気指南』(正徳5年・1715刊)の作者岡本一包子の伝説及びその内容の分析と近世以降一般化した暦注である三隣亡の民俗化との2つの方面からのアプローチである。前者によって近世医学の啓蒙的な部分と陰陽道との結びつき、後者によってさまざまな民俗的禁忌を取り込み、忌日から凶日へと展開してきた様相が明らかになった。第1第3の点については資料整理を進め、来年以降の研究発表を目指している。第4の点にかかわる成果は『宗教研究』(日本宗教学会)。『文経論叢』(弘前大学人文学部)に報告を試みた。
KAKENHI-PROJECT-06710184
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06710184
創傷治療における、セレクチンとそのリガンドの関与
創傷治癒は極めて重要な防御機構である。細胞接着分子は白血球の創部への浸潤制御を介して創傷治癒過程に重要な役割を演じている。そこで細胞接着分子であるP-selectin glycoprotein-1(PSGL-1)と、そのリガンドであるP/E-セレクチンの、創傷治癒における役割についてノックアウトマウスを用いて解析したところ、PSGL-1は主としてP-selectinと結合することによって創傷治癒を制御していることが明らかとなった。創傷治癒は極めて重要な防御機構である。細胞接着分子は白血球の創部への浸潤制御を介して創傷治癒過程に重要な役割を演じている。そこで細胞接着分子であるP-selectin glycoprotein-1(PSGL-1)と、そのリガンドであるP/E-セレクチンの、創傷治癒における役割についてノックアウトマウスを用いて解析したところ、PSGL-1は主としてP-selectinと結合することによって創傷治癒を制御していることが明らかとなった。本研究の目的はE,P-selectin、PSGL-1の創傷治癒過程における役割とその相互作用を明らかにすることである。本年度は、PSGL-1ノックアウト(PSGL-1-/-)マウス、P-selectin-/-マウス、E-selectin-/-マウスの皮膚に6mm径のパンチバイオプシーを用いて創を作成し、(1)創面積、(2)上皮間距離、(3)肉芽組織の面積、(4)血管密度をパラメータとして創傷治癒過程を評価した。受傷3日後の創面積は、P-selectin-/-マウス、PSGL-1-/-マウス、およびP-selectin-/-マウスに抗E-selectin抗体を投与したマウスにおいて野生型マウスと比較して有意に増加していた。E-selectin-/-マウスと野生型マウスの間に有意な差は認められなかった。これらの差は受傷7日後には認められなかった。同様の創傷治癒遅延は、上皮間距離でも認められた。一方、受傷3日後の肉芽組織の面積については、PSGL-1-/-マウス、およびP-selectin-/-マウスに抗E-selectin抗体を投与したマウスにおいて野生型マウスと比較して有意に減少していた。E-selectin-/-マウス、P-selectin-/-マウス、および野生型マウスの間には差は認められなかった。受傷7日後の肉芽組織の面積は、PSGL-1-/-マウスおよびP-selectin-/-マウスに抗E-selectin抗体を投与したマウスにおいて野生型マウスと比較して有意に減少していた。さらに、受傷3日後の血管密度については、P-selectin-/-マウス、PSGL-1-/-マウスおよびP-selectin-/-マウスに抗E-selectin抗体を投与したマウスは野生型マウスと比較して有意な減少を示した。同様の傾向は受傷7日後の血管密度についても認められた。このように、主としてPSGL-1とP-selectinは創傷治癒過程に関与していることが明らかとなった。本研究の目的は細胞接着分子であるE-selectin, P-selectin、PSGL-1の創傷治癒過程における役割を明らかにすることである。本年度は、PSGL-1ノックアウト(PSGL-1-/-)マウス、P-selectin-/-マウス、E-selectin-/-マウスの創傷治癒過程における炎症細胞浸潤および細胞成長因子発現を解析した。昨年度の解析によって明らかにされたPSGL-I-/-マウスにおける創傷治癒、特に早期における遅延は、好中球、マクロファージ、肥満細胞の浸潤の有意な低下を伴っていた。さらに、受傷3日後および7日後におけるIL-6、IL-10、TNF-α、TGF-β、PDGF、bFGFの創部での発現も、同様に野生型マウスに比較して有意に減少していた。しかし、受傷7日後のbFGFの発現とマクロファージの浸潤については、PSGL-1-/-マウスにて有意な低下は認められなかった。このことは、PSGL-1-/-マウスでは、受傷7日後の創面積と上皮間距離が正常であったことを説明しうる所見と考えられる。同様に、P-selectin-/-マウスおよびP-selectin-/-マウスに抗E-selectin抗体を投与したマウスにおいても、PSGL-1-/-マウスと同様に、それらの創傷治癒遅延と並行して、炎症細胞浸潤および細胞成長因子発現が野生型マウスと比較して有意に低下していた。対照的に、創傷治癒遅延が認められなかったE-selectin-/-マウスでは、炎症細胞浸潤および細胞成長因子発現は正常であった。このように、本研究ではPSGL-1とP-selectinが創傷治癒過程に関与していることが明らかとなり、その創傷治癒遅延は創部への炎症細胞浸潤(特にマクロファージ)と細胞成長因子(特にbFGF)の発現と相関していることが明らかとなった。本研究の目的は細胞接着分子であるE-selectin,P-selectin、PSGL-1の創傷治癒過程における役割を明らかにすることである。本年度は、PSGL-1ノックアウト(PSGL-1-/-)マウス、P-selectin-/-マウス、E-selectin-/-マウスの創傷治癒過程における炎症細胞浸潤についてさらに詳細に解析した。
KAKENHI-PROJECT-21591469
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21591469
創傷治療における、セレクチンとそのリガンドの関与
創部における1時間後の好中球浸潤は創傷治癒遅延の認められなかったE-selectin-/-マウスでは野生型マウスと有意差はなかったが、創傷治癒遅延が認められたP-selectin-/_マウスでは有意に減少していた。さらにP-selectin-/-マウスより肉芽組織の形成が障害されていたPSGL-1-/-マウスやP-selectin-/-マウスに抗E-selectin抗体を投与したマウスでは、P-selectin-/-マウスと比較してさらに好中球浸潤が減少していた。4時間後の好中球浸潤でも同様の傾向が見られた。さらに、受傷3日後のマクロファージ浸潤でも同様の結果が得られたが、受傷7日後には、各変異マウスと野生型マウスとの間の有意差は全く認められなくなった。従って、受傷早期のマクロファージの浸潤数が創傷治癒遅延とより強く相関している可能性が示唆された。受傷3日後の肥満細胞浸潤については、野生型マウスに比べて、P-selectin-/-マウス、PSGL-1-/-マウス、P-selectin-/-マウスに抗E-selectin抗体を投与したマウス全て有意に肥満細胞浸潤の減少を認めたが、この3種類の間に有意差は見られなかった。受傷7日後の肥満細胞浸潤については、ほぼ同様の結果であったが、野生型マウスとP-selectin-/-マウスとの間の有意差は消失した。以上より各変異マウスにおける創傷治癒遅延は、好中球、マクロファージ、肥満細胞の浸潤と概して相関が認められた。
KAKENHI-PROJECT-21591469
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21591469
ラット骨肉腫MSK培養細胞亜株を用いた骨芽細胞の機能的特性の解析
2)形態学的に、9種のクローン株は多角形あるいは紡鍾形の細胞で、各クロ-ン細胞株間に差異が認められた。また、同一のクローン細胞においてもある程度pleomorphismが存在した。3)9種のクロ-ン細胞のアルカリフォスファターゼ活性はMSK母細胞の16%から308%と著しい格差がみられた。これらは各クローン細胞の産生するハイドロキシプロリン量、副甲状腺ホルモン(PTH)反応性との間に相関が認められなかった。しかし、各々の細胞株をラットへ再移植した場合、形成された骨肉腫の肺転移の確率と細胞の持つ酵素活性の強弱は相関すると考えられた。すなわち、高いアルカリフォスファターゼ活性を持ったクローン細胞を移植した場合、ラット肺に高率に転移腫瘍の形成が認められ、逆に低アルカリフォスファターゼ活性株は転移が認められなかった。4)in vitroにおいて形成されたハイドロキシプロリン量も各クローン間で格差がみられたが、これらはそれぞれの細胞株の飽和細胞密度と相関した。このことから、少なくとも各クローン細胞のコラーゲン合成は細胞の多層化によって促進される可能性が示唆された。5)副甲状腺ホルモン(PTH)に対する反応性をcyclic AMP量の上昇によって測定すると、9つのクローンは全て母細胞株MSKより反応性が高く、最も反応性のある亜株でMSK細胞の7倍のcyclic AMPの上昇を認めた。6)PTH高反応性の亜株はラットに対するin vivo移植において豊富な軟骨を含む骨肉腫を再形成した。従来からPTHの標的細胞は分化した骨芽細胞であると考えられていたが、我々の実験結果から、それ以前の分化の段階にある軟骨形成に関与する細胞が高いPTH反応性を有する可能性が示された。7)9つの亜株のうち数株について細胞が培養液中に放出するコラゲナーゼを測定し、高いコラゲナーゼ活性を検出した。2)形態学的に、9種のクローン株は多角形あるいは紡鍾形の細胞で、各クロ-ン細胞株間に差異が認められた。また、同一のクローン細胞においてもある程度pleomorphismが存在した。3)9種のクロ-ン細胞のアルカリフォスファターゼ活性はMSK母細胞の16%から308%と著しい格差がみられた。これらは各クローン細胞の産生するハイドロキシプロリン量、副甲状腺ホルモン(PTH)反応性との間に相関が認められなかった。しかし、各々の細胞株をラットへ再移植した場合、形成された骨肉腫の肺転移の確率と細胞の持つ酵素活性の強弱は相関すると考えられた。すなわち、高いアルカリフォスファターゼ活性を持ったクローン細胞を移植した場合、ラット肺に高率に転移腫瘍の形成が認められ、逆に低アルカリフォスファターゼ活性株は転移が認められなかった。4)in vitroにおいて形成されたハイドロキシプロリン量も各クローン間で格差がみられたが、これらはそれぞれの細胞株の飽和細胞密度と相関した。このことから、少なくとも各クローン細胞のコラーゲン合成は細胞の多層化によって促進される可能性が示唆された。5)副甲状腺ホルモン(PTH)に対する反応性をcyclic AMP量の上昇によって測定すると、9つのクローンは全て母細胞株MSKより反応性が高く、最も反応性のある亜株でMSK細胞の7倍のcyclic AMPの上昇を認めた。6)PTH高反応性の亜株はラットに対するin vivo移植において豊富な軟骨を含む骨肉腫を再形成した。従来からPTHの標的細胞は分化した骨芽細胞であると考えられていたが、我々の実験結果から、それ以前の分化の段階にある軟骨形成に関与する細胞が高いPTH反応性を有する可能性が示された。7)9つの亜株のうち数株について細胞が培養液中に放出するコラゲナーゼを測定し、高いコラゲナーゼ活性を検出した。本年度における研究から以下の結果を得た。(1)9種のクロ-ン細胞のアルカリフォスファタ-ゼ活性はMSK母細胞の16%から308%であり著しい差がみられた。これらは各クロ-ン細胞のハイドロキシプロリン量や、PTHに対する反応性と相関が認められなかった。しかし、各々の細胞株をラットへ再移植した場合、形成された骨肉種の肺転移の確率と細胞の持つ酵素活性の強弱は相関すると考えられた。すなわち、高いアルカリフォスファタ-ゼ活性を持ったクロ-ン細胞はラット肺に高率に転移腫瘍の形成が認められ、逆に低アルカリフォスファタ-ゼ活性株は転移が認められなかった。(2)in vitroにおいて形成されたハイドロキシプロリン量も各クロ-ン間で格差がみられたが、これらは細胞株の飽和細胞密度と相関した。(3)PTHに対する反応性をcyclic AMPで測定すると9つのクロ-ンは全て母細胞株MSKより高く、最も反応性のある亜株でMSK細胞の7倍の上昇を認めた。興味あることに高反応性の亜株はラットに対するin vivo移植において豊富な軟骨を含む骨肉腫を再形成した。従来からPTHの標的細胞は骨芽細胞と考えられていたが、我々の実験結果から軟骨形成に関与する細胞が高いPTH反応性を有している可能性が示唆された。(4)9つの亜株のうち数株について細胞が培養液中に放出するコラゲナ-ゼを測定した。またこれらの亜株において、各々の細胞をトリプシン単離してラット肝超薄生切片に播種し細胞の組織接着性を検討した。その結果コラゲナ-ゼ活性が高い細胞株は肝切片への接着性が高かった。
KAKENHI-PROJECT-02670887
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02670887
ラット骨肉腫MSK培養細胞亜株を用いた骨芽細胞の機能的特性の解析
また同時に酵素活性の高い細胞株はラットに対する移植で高率に肺転移が認められた。これらのことからコラゲナ-ゼは少なくとも我々のラット骨肉腫細胞群においては遠隔転移、あるいは組織接着に関連があると考えられた。2)形態学的に、9種のクロ-ン株は多角形あるいは紡錘形の細胞で、各クロ-ン細胞株間に差異が認められた。また、同一のクロ-ン細胞においてもある程度pleomorphismが存在した。3)9種のクロ-ン細胞のアルカリフォスファタ-ゼ活性はMSK母細胞の16%から308%と著しい格差がみられた。これらは各クロ-ン細胞の産生するハイドロキシプロリン量、副甲状腺ホルモン(PTH)反応性との間に相関が認められなかった。しかし、各々の細胞株をラットへ再移植した場合、形成された骨肉腫の肺転移の確率と細胞の持つ酵素活性の強弱は相関すると考えられた。すなわち、高いアルカリフォスファタ-ゼ活性を持ったクロ-ン細胞を移植した場合、ラット肺に高率に転移腫瘍の形成が認められ、逆に低アルカリフォスファタ-ゼ活性株は転移が認められなかった。4)in vitroにおいて形成されたハイドロキシプロリン量も各クロ-ン間で格差がみられたが、これらはそれぞれの細胞株の飽和細胞密度と相関した。このことから、少なくとも各クロ-ン細胞のコラ-ゲン合成は細胞の多層化によって促進される可能性が示唆された。5)副甲状腺ホルモン(PTH)に対する反応性をcyclic AMP量の上昇によって測定すると、9つのクロ-ンは全て母細胞株MSKより反応性が高く、最も反応性のある亜株でMSK細胞の7倍のcyclic AMPの上昇を認めた。6)PTH高反応性の亜株はラットに対するin vivo移植において豊富な軟骨を含む骨肉腫を再形成した。従来からPTHの標的細胞は分化した骨芽細胞であると考えられていたが、我々の実験結果から、それ以前の分化の段階にある軟骨形成に関与する細胞が高いPTH反応性を有する可能性が示された。7)9つの亜株のうち数株について細胞が培養液中に放出するコラゲナ-ゼを測定し、高いコラゲナ-ゼ活性を検出した。
KAKENHI-PROJECT-02670887
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02670887
刺激応答性ロタキサン型分子スケールダイオードの創製
外部刺激によりロッキング運動を制御しうるロタキサン合成と、ロッキング運動がもたらすロタキサンの双極子変化を用いた分子スケールダイオードへの応用等、分子素子への応用の可能性を探ることが本研究の目的である。21年度は、申請書に記載の刺激応答性輪分子を合成するとともに、対応するロタキサンの軸分子の一方のストッパーを基板へ担持するために、軸分子へ異なるストッパーを導入する反応を開発する計画を立てた。本計画に従って研究を遂行したところ、研究実施計画に記載の輪分子および対応するロタキサンの合成を完了した。そこで、本ロタキサンの合成研究の部分までを成果として学会報告をおこなった。また、得られたロタキサン合成の知見と取り扱いの知見を用いて、新たに合成したロタキサンのデスリッピング反応に関する成分内水素結合の効果に関する研究の成果を得ることが出来たので、本件に関しての学会報告を行うとともに、論文としてまとめた。しかし、基盤への担持用に開発したロタキサンの量が少量であること、またそのロタキサンの不安定性が予想以上に大きかったため、スペクトルで得られたロタキサンの構造が確認されたに留まっている。目的のロタキサンを、安定がつ大量に合成する事が出来れば、基板への担持とその動的挙動の確認に進行させることが出来る。これまで得られた知見によって、基盤への担持部位を改良することにより目的の基盤担持ロタキサンを得ることが出来る目途をたてることが出来た。本研究は外部刺激によりロッキング運動を制御しうるロタキサン合成と、ロッキング運動がもたらすロタキサンの双極子変化を用いた分子スケールダイオードへの応用等、分子素子への応用の可能性を探ることを目的としている。19年度は、申請書に記載の3種類の刺激応答性輪分子を必要量合成すると共に熱的安定性、耐久性等基礎物性を定量的に測定する計画を立てた。また、反応の進行状況に応じて、ジアリールエテンをクラウンエーテルに組み込んだ新しいタイプの輪分子の合成および物性評価へと研究を進めることまでを計画に含めた。本計画にのっとり、研究を実行したところ、計画通りに研究は進展し、研究実施計画に記載の3種類の輪分子の設計・合成・物性測定を完了した。またこれら三種の輪分子は光で定量的に閉環型の輪分子になり、熱を与えるともとの開環型の輪分子に戻ることが確かめられた。これら輪分子の光反応および熱反応性やそれらの繰り返しに対する耐久性等の基本性能を詳細に、しかも定量的に測定し、その研究成果を論文に記載することが出来た。また、一連の合成実験を通して得た知見を展開し、ロタキサンの新合成法とデスリッピング反応に関する成果に結びつけ、論文と学会報告を行うとともに、ロタキサン合成反応に応用したクラウンエーテルの錯形成に基づく知見を、新たなクラウンエーテルの研究に展開し、これも論文にまとめることが出来た。一方、より高い活性化エネルギーを付与して高い熱安定性を持たせれば、分子メモリー等の新規材料になりえると考えられる。申請者は速度論的に十分に安定なロタキサンを開発するために、熱安定性が高くしかも環サイズを外部刺激により可逆的に変えることのできるフォトクロミックコンポーネントとして、ジアリールエテンをクラウンエーテルに組み込んだ環サイズ可変輪分子を設計した。現在までのところ、環化反応の前段階にまで到達している。本研究の目的は外部刺激によりロッキング運動を制御しうるロタキサン合成と、ロッキング運動がもたらすロタキサンの双極子変化を用いた分子スケールダイオードへの応用等、分子素子への応用の可能性を探ることである。20年度は、申請書に記載の3種類の刺激応答性輪分子を必要量合成するとともに、対応するロタキサンの軸分子の一方のストッパーを基板へ担持するために、軸分子へ異なるストッパーを導入する反応を開発する計画を立てた。更に、昨年度は研究がはかどりジアリールエテンをクラウンエーテルに組み込んだ新しいタイプの輪分子の合成に取り組み、環化反応の前段階に到達している。そこで、今年はこの環化反応の見極めまでを計画に含めた。本計画にのっとり研究を実行したところ、研究実施計画に記載の輪分子および対応するロタキサンの設計・合成・物性測定を完了した。この研究成果を論文にまとめたところ、高い評価を得て、学術論文の表紙として採用されるに至った。また、一連の実験を通して得た知見を展開し、ロタキサンのデスリッピング反応に関する成果に結びつけ、学会報告を行うとともに、論文としてまとめた。一方、より高い活性化エネルギーを付与して高い熱安定性を持たせるため、速度論的に十分に安定なジアリールエテンをクラウンエーテルに組み込んだ環サイズ可変輪分子を有するロタキサンを開発するために輪分子の環化反応を試みたが、分解物のみが得られることが判った。今後は、計画記載の輪分子に絞り、基板への配列制御と分子ダイオード研究へと展開する予定である。外部刺激によりロッキング運動を制御しうるロタキサン合成と、ロッキング運動がもたらすロタキサンの双極子変化を用いた分子スケールダイオードへの応用等、分子素子への応用の可能性を探ることが本研究の目的である。21年度は、申請書に記載の刺激応答性輪分子を合成するとともに、対応するロタキサンの軸分子の一方のストッパーを基板へ担持するために、軸分子へ異なるストッパーを導入する反応を開発する計画を立てた。本計画に従って研究を遂行したところ、研究実施計画に記載の輪分子および対応するロタキサンの合成を完了した。そこで、本ロタキサンの合成研究の部分までを成果として学会報告をおこなった。
KAKENHI-PROJECT-19655048
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19655048
刺激応答性ロタキサン型分子スケールダイオードの創製
また、得られたロタキサン合成の知見と取り扱いの知見を用いて、新たに合成したロタキサンのデスリッピング反応に関する成分内水素結合の効果に関する研究の成果を得ることが出来たので、本件に関しての学会報告を行うとともに、論文としてまとめた。しかし、基盤への担持用に開発したロタキサンの量が少量であること、またそのロタキサンの不安定性が予想以上に大きかったため、スペクトルで得られたロタキサンの構造が確認されたに留まっている。目的のロタキサンを、安定がつ大量に合成する事が出来れば、基板への担持とその動的挙動の確認に進行させることが出来る。これまで得られた知見によって、基盤への担持部位を改良することにより目的の基盤担持ロタキサンを得ることが出来る目途をたてることが出来た。
KAKENHI-PROJECT-19655048
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19655048
省エネルギー熱輸送システム用蓄熱材包含中空粒子の創製
パラフィンは蓄熱効率が高く,高効率の熱輸送システムが期待されるが,乳化剤による乳化方式では高剪断下により乳化パラフィン滴が破壊されてパラフィンと媒体が相分離してしまう。それに対してパラフィンのマイクロカプセル化法ではそのような問題は生じず最も現実的である。しかしながら,奇妙なことにカプセル化によりパラフィンの過冷却の発生や潜熱量の低下が観察されており,この現象は未解明のままである。これらを解消するために,高級アルコールなど高融点試薬を含有させる手法が検討されているが,現象論にとどまっている。本研究では,マイクロカプセル化されたパラフィンの特異な凝固・融解挙動を詳細に検討し,ミクロ空間でのパラフィンの相転移挙動における界面の存在の影響を明らかにする。さらに,独自のマイクロカプセル合成法を熱輸送物質の高効率カプセル化法として確立することを目指している。昨年度は,マイクロカプセル化に伴う潜熱量の低下を抑制/防止することを目的にカプセル壁を構成するポリマーに焦点をあて検討を行った結果,カプセル壁に極性の高い成分を用いることにより,純パラフィンの高い潜熱量を維持したマイクロカプセルの作成に成功した。本年度は,高い潜熱量を維持し,さらに過冷却が抑制されたカプセル粒子の作製を試みた。極性の高い架橋モノマーを用いることにより,高い潜熱量を維持したほぼ真球状のカプセル粒子を得ることが出来た。これまでの知見から,粒子径がより大きいほど過冷却が抑制されることが期待されたが,これまでの重合処方では,大粒径のカプセル粒子を得ることができなかった。重合条件を詳細に検討した結果,重合は完結し,凝集物もなくカプセル粒子を得ることができる重合処方を見出した。得られたパラフィン含有カプセル粒子中は,純パラフィンの高い潜熱量を維持し,過冷却の程度も半減した,高効率の蓄熱性を有していた。パラフィンは蓄熱効率が高く,高効率の熱輸送システムが期待されるが,乳化剤による乳化方式では高剪断下により乳化パラフィン滴が破壊されてパラフィンと媒体が相分離してしまう。それに対してパラフィンのマイクロカプセル化法ではそのような問題は生じず最も現実的である。しかしながら,奇妙なことにカプセル化によりパラフィンの過冷却の発生や潜熱量の低下が観察されており,この現象は未解明のままである。これらを解消するために,高級アルコールなど高融点試薬を含有させる手法が検討されているが,現象論にとどまっている。本研究では,マイクロカプセル化されたパラフィンの特異な凝固・融解挙動を詳細に検討し,ミクロ空間でのパラフィンの相転移挙動における界面の存在の影響を明らかにすることである。さらに独自のマイクロカプセル合成法を熱輸送物質の高効率カプセル化法として確立することを目指している。本年度は,カプセル壁を構成するポリマーに焦点をあて検討を行った。架橋性成分(ジビニルベンゼン(DVB))に極性の高い成分(各種アクリル酸エステル)を様々な組成で共重合した。重合挙動および生成カプセル粒子の構造解析を行うことにより,特にアクリル酸ブチル(BA)を共電合させると,DVBとBAの共重合反応性の違いから,得られたカプセル壁は内側にBA成分のリッチな層を有する傾斜構造を取っていた。このBAリッチな層の存在により,過冷却温度は5°C程度改善され,熱容量では非常に高い値を示した。これらは単独系の時より,カプセル壁とパラフィンの界而での相互作用が悪くなり,カプセル壁付近のパラフィンが相転移しやすくなったためであると考えられた。また,カプセル化したパラフィンの凝固挙動の検討も行ったところ,パラフィンの凝固は外側から内側に向かって起こっていることを明らかにした。パラフィンは蓄熱効率が高く,高効率の熱輸送システムが期待されるが,乳化剤による乳化方式では高剪断下により乳化パラフィン滴が破壊されてパラフィンと媒体が相分離してしまう。それに対してパラフィンのマイクロカプセル化法ではそのような問題は生じず最も現実的である。しかしながら,奇妙なことにカプセル化によりパラフィンの過冷却の発生や潜熱量の低下が観察されており,この現象は未解明のままである。これらを解消するために,高級アルコールなど高融点試薬を含有させる手法が検討されているが,現象論にとどまっている。本研究では,マイクロカプセル化されたパラフィンの特異な凝固・融解挙動を詳細に検討し,ミクロ空間でのパラフィンの相転移挙動における界面の存在の影響を明らかにする。さらに,独自のマイクロカプセル合成法を熱輸送物質の高効率カプセル化法として確立することを目指している。昨年度は,マイクロカプセル化に伴う潜熱量の低下を抑制/防止することを目的にカプセル壁を構成するポリマーに焦点をあて検討を行った結果,カプセル壁に極性の高い成分を用いることにより,純パラフィンの高い潜熱量を維持したマイクロカプセルの作成に成功した。本年度は,高い潜熱量を維持し,さらに過冷却が抑制されたカプセル粒子の作製を試みた。極性の高い架橋モノマーを用いることにより,高い潜熱量を維持したほぼ真球状のカプセル粒子を得ることが出来た。これまでの知見から,粒子径がより大きいほど過冷却が抑制されることが期待されたが,これまでの重合処方では,大粒径のカプセル粒子を得ることができなかった。重合条件を詳細に検討した結果,重合は完結し,凝集物もなくカプセル粒子を得ることができる重合処方を見出した。
KAKENHI-PROJECT-20655051
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20655051
省エネルギー熱輸送システム用蓄熱材包含中空粒子の創製
得られたパラフィン含有カプセル粒子中は,純パラフィンの高い潜熱量を維持し,過冷却の程度も半減した,高効率の蓄熱性を有していた。
KAKENHI-PROJECT-20655051
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20655051
タンガニイカ湖の魚類を中心とする個体群生態学的研究
タンガニイカ湖沿岸域の魚類群集が複雑であり,ほとんどの種が湖岸の岩礁域に生息し,競争的であると同時に協力的な種間関係を保ちながら共存することが徐々に明らかになりつつある。特にカワスズメ科魚類の種分化が顕著であり,それぞれの種が多様な社会構造によって個体群を維持していることが明らかにされてきた。本調査では,特に群集組成のまったく異なるタンガニイカ湖の北部水域と南部水域の魚類個体群の社会構造,個体群間および種間の関係および個体群動態に係わる生物的要因を比較し,それぞれの種の生態的地位を検討した。また,沖合性魚類各種の資源量を推定し,種間の量的な相互関係の解を試みた。さらに,最終年度にはザイール国の魚類研究者ションボを日本に招へいし,タンガニイカ湖で得られた資料の解析とそれらの論文化を行ってもらった。岩礁域のカワスズメ科魚類については,これまで必らずしも十分でなかった北部水域の魚類相を仲谷が分類学的に検討し,109種の中で81種を記録した。しかし,数種の未確認種を含む多数の標本について現在も検討中である。名越,柳沢,神田,越智,服部,狩野,ガシャガザおよびションボはザイール国で北部水域の沿岸岩礁域に生息するカワスズメ科魚類のうち,これまでに生態学的知見に乏しい種について潜水観察によって調査を行った。典型的な基質産卵・保育型のNeolamprologus tretocephalusでは,子供の発育段階および両親の組合せによって両親の子供保護の役割が異なること,子供の数がある程度まで減少すると,子供を放棄することを明らかにした。Xenotilapia flavipinnisでは,子供の保護期間中にしばしば他の両親へ子供を預けるいわゆる“子預け"の現象が認められた。ParacyprichromisbrieniとCyprichromis microlepidotusは他の他の口内保育型の魚類と異なる特異的な産卵行動をすることが明らかにされた。藻類食者であるPetrochromis polyodonとPatrochromis orthognathusについて口内保育中の摂餌がテリトリーの防衛程度に関係することが明らかにされた。越智,服部および狩野は,ザンビア国で南部水域の沿岸岩礁域に生息するカワスズメ科魚類について潜水観察による調査をした。タンガニイカ湖のLamprologiniの中で唯一の藻類食者のNeolamprologus mooriiの両親は子供が25mm以上に成長すると繁殖なわばり内で子供を攻撃するようになることが明らかにされた。Microdontochromis tenuidentatusの雌は口内保育中でも摂餌することが明らかにされた。Petrochromis fasciolatusでは雄の繁殖なわばりは,雄が除去されると新たな雄がそこになわばりをもつようになり,資源としての繁殖場所の不足していることが明らかにされた。Julidochromis ornatusの繁殖場所がN. mooriiの摂餌なわばりの影響を受けるという種間関係が明らかにされた。南北両水域の岩礁性カワスズメ科の毎年の定量調査から,それぞれの種が特異的な場所を継続して利用していることが明らかにされた。このことについてはザイール国の研究者ガシャガザが1991年度に論文にまとめ,京都大学で理学博士の学位を取得した。成田は,魚類の餌として極めて重要な沿岸域のエビ類の生態調査から,これらの生息量が水深によって異なり,月令によって湖底からの浮上数の異なることを明らかにした。木村は,これまで明らかにされていなかった漁業上重要なニシン科魚類2科Stolothrissa tanganicaeとLimnothrissa miodonの年令と成長を耳石の日周輪か推定することに成功した。前者の寿命は約1年で最大体長は12cm,後者の寿命は2年余で最大体長は雌で18cm,雄で16cmであることを明らかにした。白木原とフィリはザンビア国でタンガニイカ湖南部水域の沖合性魚類の分布および資源量の解析のため,過去の漁狩統計資料の調査と漁業実態調査を行い,現在これらの解析に当っている。また,白木原は,魚群探知機を用い北部水域の沖合性魚類の分布と資源の調査を行い,これらについても現在解析を進めている。さらに,漁獲統計資料から北部水域では沖合性魚類の資源量が近年著しく減少していることを明らかにしている。タンガニイカ湖沿岸域の魚類群集が複雑であり,ほとんどの種が湖岸の岩礁域に生息し,競争的であると同時に協力的な種間関係を保ちながら共存することが徐々に明らかになりつつある。特にカワスズメ科魚類の種分化が顕著であり,それぞれの種が多様な社会構造によって個体群を維持していることが明らかにされてきた。本調査では,特に群集組成のまったく異なるタンガニイカ湖の北部水域と南部水域の魚類個体群の社会構造,個体群間および種間の関係および個体群動態に係わる生物的要因を比較し,それぞれの種の生態的地位を検討した。また,沖合性魚類各種の資源量を推定し,種間の量的な相互関係の解を試みた。さらに,最終年度にはザイール国の魚類研究者ションボを日本に招へいし,タンガニイカ湖で得られた資料の解析とそれらの論文化を行ってもらった。岩礁域のカワスズメ科魚類については,これまで必らずしも十分でなかった北部水域の魚類相を仲谷が分類学的に検討し,109種の中で81種を記録した。しかし,数種の未確認種を含む多数の標本について現在も検討中である。
KAKENHI-PROJECT-02041058
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02041058
タンガニイカ湖の魚類を中心とする個体群生態学的研究
名越,柳沢,神田,越智,服部,狩野,ガシャガザおよびションボはザイール国で北部水域の沿岸岩礁域に生息するカワスズメ科魚類のうち,これまでに生態学的知見に乏しい種について潜水観察によって調査を行った。典型的な基質産卵・保育型のNeolamprologus tretocephalusでは,子供の発育段階および両親の組合せによって両親の子供保護の役割が異なること,子供の数がある程度まで減少すると,子供を放棄することを明らかにした。Xenotilapia flavipinnisでは,子供の保護期間中にしばしば他の両親へ子供を預けるいわゆる“子預け"の現象が認められた。ParacyprichromisbrieniとCyprichromis microlepidotusは他の他の口内保育型の魚類と異なる特異的な産卵行動をすることが明らかにされた。藻類食者であるPetrochromis polyodonとPatrochromis orthognathusについて口内保育中の摂餌がテリトリーの防衛程度に関係することが明らかにされた。越智,服部および狩野は,ザンビア国で南部水域の沿岸岩礁域に生息するカワスズメ科魚類について潜水観察による調査をした。タンガニイカ湖のLamprologiniの中で唯一の藻類食者のNeolamprologus mooriiの両親は子供が25mm以上に成長すると繁殖なわばり内で子供を攻撃するようになることが明らかにされた。Microdontochromis tenuidentatusの雌は口内保育中でも摂餌することが明らかにされた。Petrochromis fasciolatusでは雄の繁殖なわばりは,雄が除去されると新たな雄がそこになわばりをもつようになり,資源としての繁殖場所の不足していることが明らかにされた。Julidochromis ornatusの繁殖場所がN. mooriiの摂餌なわばりの影響を受けるという種間関係が明らかにされた。南北両水域の岩礁性カワスズメ科の毎年の定量調査から,それぞれの種が特異的な場所を継続して利用していることが明らかにされた。このことについてはザイール国の研究者ガシャガザが1991年度に論文にまとめ,京都大学で理学博士の学位を取得した。成田は,魚類の餌として極めて重要な沿岸域のエビ類の生態調査から,これらの生息量が水深によって異なり,月令によって湖底からの浮上数の異なることを明らかにした。木村は,これまで明らかにされていなかった漁業上重要なニシン科魚類2科Stolothrissa tanganicaeとLimnothrissa miodonの年令と成長を耳石の日周輪か推定することに成功した。前者の寿命は約1年で最大体長は12cm,後者の寿命は2年余で最大体長は雌で18cm,雄で16cmであることを明らかにした。白木原とフィリはザンビア国でタンガニイカ湖南部水域の沖合性魚類の分布および資源量の解析のため,過去の漁狩統計資料の調査と漁業実態調査を行い,現在これらの解析に当っている。また,白木原は,魚群探知機を用い北部水域の沖合性魚類の分布と資源の調査を行い,これらについても現在解析を進めている。さらに,漁獲統計資料から北部水域では沖合性魚類の資源量が近年著しく減少していることを明らかにしている。本研究はザイ-ルおよびザンビア国のタンガニイカ湖沿岸水域で行われた。
KAKENHI-PROJECT-02041058
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02041058
アディクション問題にかかわる看護職支援モデルの試案作成
サンフランシスコで働く看護師(計9人)へのグループインタビューの結果をもとに、アディクション(主として薬物依存症)看護に携わる看護師の考えや実践の変化について明らかにした。その結果を、これまでの研究結果(日本での看護師へのインタビュー調査)と比較検討し、看護の質を向上する上での、看護職に対する支援のあり方について考察した。また、アディクションの問題にかかわる看護師を対象として、看護師を支援するためのグループを定期的に行い(参加者10人程度)、グループで語られた内容から、支援の意義やあり方について検討した。これらの結果をもとに、アディクション問題にかかわる看護職支援モデルの試案を作成した。本研究は、次の二つ目的の研究を行い、アディクション問題にかかわる看護師支援のためのモデルの試案を作成することである。本年度の実績は次の通りである。目的1:アディクション問題にかかわる看護師サポートグループの実践内容の質的な分析を通して、支援の意義やあり方を明らかにする。これまでの調査から、アディクション問題をもつ人とのかかわりにおいて、看護師は怒りや無力感といったネガティブな感情を体験し、疲弊しやすい傾向にあることが明らかとなった。また、そういった体験をしながらも患者とのかかわりに意味を見出していった看護師の特徴として、他者からのサポートを得ていたことが確認された。そこで、援助職サポートの必要性を認識し、2010年度よりグループを開始した。2012年11月から2013年8月まで、3クール目(90分×10回を1クール)を実施した。内容は参加者の同意を得て録音して逐語録を作成し、質的に分析を進めた。得られた結果よりグループの継続の必要性が確認され、2013年12月より2014年9月までの予定で、4クール目を開催している。現在も、分析/解釈しながらグループを継続中である。目的2:米国(サンフランシスコ)でのアディクション問題にかかわる援助職者支援について調査し、支援の意義やあり方を明らかにする。サンフランシスコ在住の研究者の協力を得て、2013年11月に薬物依存症の治療病院1か所と地域での回復支援施設3か所を訪問し、アディクション問題や援助職の現状について講義や情報提供を受け、意見交換を行った。意見交換を通して、米国と日本ではアディクション問題の表面化している状況には違いがあるが、日本同様に、援助職はネガティブな感情を体験し、バーンアウト予防がテーマとなっていることが確認された。そこで、次年度に援助職へのインタビュー調査を行うこととし、その調査準備に着手した。本研究は、次の二つの目的の研究を行い、アディクション問題にかかわる看護師支援のためのモデルの試案を作成することである。本年度の実績は次の通りである。目的1:アディクション問題にかかわる看護師サポートグループの質的な分析を通して、支援の意義やあり方を明らかにする。2010年度から実施している10回を1クールとした看護師サポートグループを継続し、2014年度においては、9月に4クール目のグループを終了した。それまでの実践については、12月にサンフランシスコにて、アディクション領域のサイコロジストとしての実績が豊富なN. Piotrowski博士のコンサルテーションを受け、分析をすすめた。その結果、サポートとしての意義や教育的実践の必要性についても明らかとなった。5クール目の実施内容について検討し、これまで通りの方法で実施することとし、3月に参加者をつのるチラシを配布した。目的2:米国(サンフランシスコ)でのアディクション問題にかかわる援助職者支援について調査し、支援の意義やあり方を明らかにする。2013年度に実施した、サンフランシスコでのアディクション治療・回復支援にかかわる病院や施設視察で得られたネットワーク等を通して、アディクション看護の実践への考え方や考え方の変化等についてのグループインタビューへの参加者を募った。その結果、計9名から参加への同意が得られ、参加者の可能な日時によって調整し、3つのグループに分け、インタビューを実施した。その結果を受けての個人インタビューも予定していたが、本研究でテーマとしていた内容については、共通する特徴が得られたので、今回はグループインタビューの結果を詳細に分析することとした。現在、分析中である。本研究では、次の二つの目的の研究を行い、それらを総合してアディクション問題にかかわる看護師支援のためのモデルの試案を作成する。目的1:アディクション問題にかかわる看護師サポートグループの質的な分析を通して、支援の意義やあり方を明らかにする。目的2:米国(サンフランシスコ)でのアディクション問題にかかわる援助者支援について、支援の意義やあり方を明らかにする。目的1:平成27年度には月1回で10回を1クールとしたグループの5クール目を実践した。3グループ目までの実施結果を総合して分析し、4(平成26年度実施)・5クール目及び学会の交流集会でのサポートグループの実践を通し、分析結果の妥当性・信頼性について確認した。2クール目までの総合結果は、平成27年度第25回国際看護師協会大会にて発表した。アディクション問題に関連して様々な感情が喚起され、エモーショナルリテラシーを高めるサポートの重要性が確認された。目的2に関して:平成26年度に実施した、サンフランシスコでの看護師へのグループインタビューについて分析を行い、アディクション(主として薬物依存症)看護の実践への考え方やその変化等についての特徴を明らかにした。感情・価値・知識・態度の変化は、関連しながら現任教育や周囲の人々からのサポートの中で生じていた。
KAKENHI-PROJECT-25463571
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25463571
アディクション問題にかかわる看護職支援モデルの試案作成
明らかとなった特徴については、分析結果の妥当性および日本の薬物依存症看護実践への適応等について検討するため、薬物依存症看護の熟練看護師6名の協力を得て、薬物依存症看護実践者会議を開催し、さらに考察を深めた。本結果に関しては、日本での調査結果との比較を行い、平成27年度第19回東アジア看護学研究者フォーラムEAFONSにて発表した。目的1と目的2の結果をもとに、アディクション問題にかかわる看護師支援のためのモデルの試案を検討した。試案については、今後発表予定である。サンフランシスコで働く看護師(計9人)へのグループインタビューの結果をもとに、アディクション(主として薬物依存症)看護に携わる看護師の考えや実践の変化について明らかにした。その結果を、これまでの研究結果(日本での看護師へのインタビュー調査)と比較検討し、看護の質を向上する上での、看護職に対する支援のあり方について考察した。また、アディクションの問題にかかわる看護師を対象として、看護師を支援するためのグループを定期的に行い(参加者10人程度)、グループで語られた内容から、支援の意義やあり方について検討した。これらの結果をもとに、アディクション問題にかかわる看護職支援モデルの試案を作成した。目的1については、途中経過の結果の発表がやや遅れている。目的2については、2014年度末までに分析を終える予定であったが、現在分析中である。看護学・地域老年看護学目的1:アディクション問題にかかわる看護師サポートグループを2015年5月から2016年2月まで実施する予定である。実施内容の逐語録を作成し、分析しながら、実施する。また、2クール目までの分析結果は、6月にICN学会で発表予定である。目的2:現在分析中のサンフランシスコでのグループインタビュー調査の結果について、妥当性等について確認するため、日本のアディクション看護領域での熟練看護師による専門家会議またはグループインタビューを開催する。また、サンフランシスコでのインタビュー参加者等にも、確認しながら、アディクション問題にかかわる看護職支援モデルの試案を作成する。目的1:やや遅れている。サポートグループの実践は、予定通りすすんでおり、逐語録の作成および部分的な分析/解釈はすすんでいる。しかし、2013年度中に、3クール目までのデータを総合的に分析/解釈して、学会での発表準備の予定であったが、90分×30回、計2,700分の逐語録の分析/解釈に時間を費やし、発表準備が遅れている。目的2:ほぼ予定通り進行中当初海外での調査を8月か9月に予定していたが、打ち合わせ準備や、研究協力者、訪問先の状況によって、訪問が11月となった。米国での具体的な調査に向けての打ち合わせを2014年3月ころに予定していたが、米国在住の研究協力者が日本への帰国に合わせて、国内にて行った。現地でのフィールドワークや意見交換の報告書については、現在作成中ある。また、予定通り、インタビュー調査の計画を作成中である。目的1:2013年12月より2014年9月までの予定で開催している4クール目のサポートグループを、分析/解釈しながら実施する。
KAKENHI-PROJECT-25463571
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25463571
熱帯モンスーン常緑林流域における水・土砂流出機構の解明と土砂流出予測
世界では年間5.2万km2の森林が消失しており、東南アジア諸国においても森林減少は深刻な問題である。森林伐採による土壌侵食量の増加は、豪雨の際に下流の河川の河床上昇や洪水氾濫のリスク増加を引き起こす可能性が非常に高い。斜面での土砂生産は、降雨強度などの気象条件と土壌、土地利用、地形改変などの立地環境条件により規定される。また、流域スケールでの土砂の移動プロセスを理解するためには、土砂の生産および輸送に深く関係する洪水流出の発生プロセスを明らかにする必要がある。本年度は、森林開発が進み、かつて森林だったが現在は、畑地が大半を占めるオーテックロー流域において1年間の土砂観測結果が得られた。洪水時には、水流および堆積土砂による圧力が増大して簡易土砂測定用簡易堰が破壊されたため、直接最大時土砂堆積量の測定はできなかったが、毎日定期観測する委託者の記録により、最大土砂量の高さは確認できた。これによって、2017年5月から1年間の堆積最大土砂量の推定は可能となった。計算の結果、1年間の堆積土砂量は約8 m3と推定された。これを流域面積で除算すると1.98 ×10-3 mmとなった。これは非常に小さい値であり、侵食量が小さいとされる日本の森林地なみの値であった。しかしながら、現地踏査や流域DEMデータにより、対象流域はきわめて平坦な地形であり、土地利用変化が生じても直ちに侵食した土砂が河道まで流れ込むとは考えにくい地域であることが分かっている。このことから、侵食した土砂が河道まで到達するエリアは、対象流域内では、河道近傍の限られたエリアに限定されるものと推測された。また、個別の土地利用ごとの土砂流出特性の解明のための侵食プロットの設置を完了し、降雨ごとの水と土砂のサンプリングを開始した。現地観測の結果、開発が進んだ森林流域における年間生産土砂量を把握するための基礎データを取得した。これにより流域スケールの土砂移動に関する実態把握が進んだ。また、個別の土地利用ごとの土砂流出特性の解明のための侵食プロットの設置を完了し、降雨ごとの水と土砂のサンプリングを開始した。これらのことから、研究の進捗状況はおおむね順調に進展している。1)個別の土地利用ごとの土砂流出特性の解明のための侵食プロットデータの取得侵食プロットでの観測を継続し、土地利用ごとの流出土砂量の観測を行う。2)斜面スケールでの水と土砂の移動特性解明のため現地観測とデータ処理侵食ピンプロットのデータ解析を進め、森林内の斜面における土砂移動の実態把握を進める世界では年間5.2万km2の森林が消失しており、東南アジア諸国においても森林減少は深刻な問題である。森林伐採による土壌侵食量の増加は、豪雨の際に下流の河川の河床上昇や洪水氾濫のリスク増加を引き起こす可能性が非常に高い。斜面での土砂生産は、降雨強度などの気象条件と土壌、土地利用、地形改変などの立地環境条件により規定される。また、流域スケールでの土砂の移動プロセスを理解するためには、土砂の生産および輸送に深く関係する洪水流出の発生プロセスを明らかにする必要がある。本研究では、カンボジアの熱帯モンスーン常緑林流域において森林率の大きく異なる2つの流域(A流域,B流域)を対象に、1)土地利用の違いが水と土砂の移動特性に及ぼす影響を解明する。2)100km2単位での流域スケールを対象に土地利用および伐採インパクトを含めた水と土砂の流出特性を定量化する。3)上記1)および2)の解析結果に基づいて、水と土砂移動の統合分布型モデルを開発し、適用する。本年度は、土地利用ごとの土砂流出調査を行うためにA流域およびB流域の代表的な土地利用(常緑林、混交林、裸地など)を選定し、侵食プロット作成に着手した。また、A流域とB流域の降水量、流出量の水文観測サイトを選定し、水文観測システムを構築した。各サイトでの雇用者に水と土砂のサンプリング方法を習得させ、安定同位体を測定するための定期採水を開始した。また、両流域における河道を踏査し、堆積土砂量の測定のために好適な場所を選定し、この場所に流出土砂を捕捉するための簡易ダムを設定した。流域スケールとプロットスケールの土砂移動に関する実態把握を行うためのサイトを選定し、それぞれの観測を開始することができたことから、研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると考えられた。なお、侵食プロットおよび土砂観測サイトについては安定的な観測を継続するためには、構造的な改善が必要であると思われたので、これに関しては、次年度以降、順次改良していく計画とした。世界では年間5.2万km2の森林が消失しており、東南アジア諸国においても森林減少は深刻な問題である。森林伐採による土壌侵食量の増加は、豪雨の際に下流の河川の河床上昇や洪水氾濫のリスク増加を引き起こす可能性が非常に高い。斜面での土砂生産は、降雨強度などの気象条件と土壌、土地利用、地形改変などの立地環境条件により規定される。また、流域スケールでの土砂の移動プロセスを理解するためには、土砂の生産および輸送に深く関係する洪水流出の発生プロセスを明らかにする必要がある。本研究では、カンボジアの熱帯モンスーン常緑林流域において森林率の大きく異なる2つの流域(A流域,B流域)を対象に、1)土地利用の違いが水と土砂の移動特性に及ぼす影響を解明する。2)100km2単位での流域スケールを対象に土地利用および伐採インパクトを含めた水と土砂の流出特性を定量化する。3)上記1)および2)の解析結果に基づいて、水と土砂移動の統合分布型モデルを開発し、適用する。
KAKENHI-PROJECT-16K07799
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07799
熱帯モンスーン常緑林流域における水・土砂流出機構の解明と土砂流出予測
本年度は、土砂移動を把握するために侵食ピンプロットおよび堆積土砂測定用簡易堰を設置した。侵食ピンプロットは森林斜面からの土砂移動の実態を把握するために,斜面傾斜の異なる2つの地点(プロットNo1とNo2)に侵食ピンプロットを設置した。流域スケールの土砂流出量を把握するために,森林開発の程度の異なる2つの森林流域に堆積土砂測定用簡易堰を設置した。いずれの箇所についても現地測量を実施し、土砂移動の解析に必要となる微地形図を作成した。個別の土地利用ごとの生産土砂量を把握するために必要な侵食プロットの設置を進めたが、観測するためには構造的な改善が必要であることがわかった。流域スケールとプロットスケールの土砂移動に関する実態把握を行うためのサイトを選定し、それぞれの観測を開始することができたことから、研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると考えられた。個別の土地利用ごとの生産土砂量を把握するために必要な侵食プロットの設置に関しては、構造的な改善が必要であるため、次年度、改良を加えたのち観測を開始する予定である。世界では年間5.2万km2の森林が消失しており、東南アジア諸国においても森林減少は深刻な問題である。森林伐採による土壌侵食量の増加は、豪雨の際に下流の河川の河床上昇や洪水氾濫のリスク増加を引き起こす可能性が非常に高い。斜面での土砂生産は、降雨強度などの気象条件と土壌、土地利用、地形改変などの立地環境条件により規定される。また、流域スケールでの土砂の移動プロセスを理解するためには、土砂の生産および輸送に深く関係する洪水流出の発生プロセスを明らかにする必要がある。本年度は、森林開発が進み、かつて森林だったが現在は、畑地が大半を占めるオーテックロー流域において1年間の土砂観測結果が得られた。洪水時には、水流および堆積土砂による圧力が増大して簡易土砂測定用簡易堰が破壊されたため、直接最大時土砂堆積量の測定はできなかったが、毎日定期観測する委託者の記録により、最大土砂量の高さは確認できた。これによって、2017年5月から1年間の堆積最大土砂量の推定は可能となった。計算の結果、1年間の堆積土砂量は約8 m3と推定された。これを流域面積で除算すると1.98 ×10-3 mmとなった。これは非常に小さい値であり、侵食量が小さいとされる日本の森林地なみの値であった。しかしながら、現地踏査や流域DEMデータにより、対象流域はきわめて平坦な地形であり、土地利用変化が生じても直ちに侵食した土砂が河道まで流れ込むとは考えにくい地域であることが分かっている。このことから、侵食した土砂が河道まで到達するエリアは、対象流域内では、河道近傍の限られたエリアに限定されるものと推測された。また、個別の土地利用ごとの土砂流出特性の解明のための侵食プロットの設置を完了し、降雨ごとの水と土砂のサンプリングを開始した。現地観測の結果、開発が進んだ森林流域における年間生産土砂量を把握するための基礎データを取得した。これにより流域スケールの土砂移動に関する実態把握が進んだ。
KAKENHI-PROJECT-16K07799
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07799
生体色素の光反応にカップリングした高速蛋白ダイナミクスの時間分解振動分光法による解明
蛋白質の特色は、それが柔い構造体であって、その立体構造を変えながら機能を遂行するところにある。したがってダイナミカルな構造を論じる実験データが蛋白質機能を論じるうえで必須である。「一体蛋白質はどれ程大きな構造変化をどの程度の速さで起こし、それがどのように高次構造変化につながるのか?」この問いに答えるのが本研究である。実験法としては、光感受性蛋白の光反応開始の時を時刻ゼロとし、その分子振動の振動数を時間の関数として観測する。観測法として共鳴ラマン分光法を採用した。その理由は、水溶液の測定に適しているだけでなく、(1)共鳴効果と(2)高い時間分解能の2つの利点を生かせるからである。(1)はラマン散乱の励起波長を分子の吸収帯に近づけると、その吸収帯を与える発色団の分子振動の一部が強いラマン線を与える現象の事である。共鳴条件下では試料の濃度を下げる事ができ、また励起波長を変える事によって発色団を選択して観測する事が可能になる。本研究に用いたミオグロビン(Mb)の場合、可視レーザーを用いると色中心のヘムの分子振動が見え、紫外レーザー光を用いるとグロビンの分子振動が見える。(2)はレーザー光源のパルス性を利用し、レーザー光のパルス幅が2.4ピコ秒であったので、ピコ秒の時間刻みで構造変化を追跡した。CO結合型Mbに可視パルス光を照射すると100フェムト秒内にFe-CO結合は切れ、Feの低スピンから高スピンへの変化は2.4ピコ秒内に起こった。それに伴う:Feイオンの面外変位はFe-His伸縮ラマンバンドの強度変化として表れ、-20ピコ秒で起こった。グロビンの構造変化は104ピコ秒の時定数で起こり、その時定数は溶媒の粘度が高くなると長くなった。244nm励起の紫外共鳴ラマンの実験からチロシン151とトリプトファン7がCO脱離により構造変化する事が明らかになった。このようなリガンド脱着による蛋白構造変化はセンサー蛋白の機能発現に必須であり、その方向に研究を進めていく予定である。蛋白質の特色は、それが柔い構造体であって、その立体構造を変えながら機能を遂行するところにある。したがってダイナミカルな構造を論じる実験データが蛋白質機能を論じるうえで必須である。「一体蛋白質はどれ程大きな構造変化をどの程度の速さで起こし、それがどのように高次構造変化につながるのか?」この問いに答えるのが本研究である。実験法としては、光感受性蛋白の光反応開始の時を時刻ゼロとし、その分子振動の振動数を時間の関数として観測する。観測法として共鳴ラマン分光法を採用した。その理由は、水溶液の測定に適しているだけでなく、(1)共鳴効果と(2)高い時間分解能の2つの利点を生かせるからである。(1)はラマン散乱の励起波長を分子の吸収帯に近づけると、その吸収帯を与える発色団の分子振動の一部が強いラマン線を与える現象の事である。共鳴条件下では試料の濃度を下げる事ができ、また励起波長を変える事によって発色団を選択して観測する事が可能になる。本研究に用いたミオグロビン(Mb)の場合、可視レーザーを用いると色中心のヘムの分子振動が見え、紫外レーザー光を用いるとグロビンの分子振動が見える。(2)はレーザー光源のパルス性を利用し、レーザー光のパルス幅が2.4ピコ秒であったので、ピコ秒の時間刻みで構造変化を追跡した。CO結合型Mbに可視パルス光を照射すると100フェムト秒内にFe-CO結合は切れ、Feの低スピンから高スピンへの変化は2.4ピコ秒内に起こった。それに伴う:Feイオンの面外変位はFe-His伸縮ラマンバンドの強度変化として表れ、-20ピコ秒で起こった。グロビンの構造変化は104ピコ秒の時定数で起こり、その時定数は溶媒の粘度が高くなると長くなった。244nm励起の紫外共鳴ラマンの実験からチロシン151とトリプトファン7がCO脱離により構造変化する事が明らかになった。このようなリガンド脱着による蛋白構造変化はセンサー蛋白の機能発現に必須であり、その方向に研究を進めていく予定である。微量色素タンパク質としてHeme Binding Protein 23(HBP23)とsoluble Guanylate Cyclase(sGC)をとり上げた。HBP23はラット肝細胞質より単離された分子量23kDaの蛋白質でペルオキシダーゼ活性を示し、ヘムと高い親和性(Kd=55nM)を示すが、ヘムの存在下ではペルオキシダーゼ活性は消える。HBP23とヘムは1:1で結合する。そのヘム結合状態の可視共鳴ラマンスペクトルを種々の励起波長で測定した。そのスペクトルパターンから、Fe^<3+>状態では6配位低スピン型であり鉄の軸配位子はNかS原子と推定された。Fe^<2+>状態では5配位高スピン型であるが、Fe-His伸縮バンドが観測されないので、鉄の軸配位子はヒスチヂンではないと思われた。sGCはウシ肺より単離、精製した。4kgの肺より3.2mgとれた。そのCO結合形の共鳴ラマンスペクトルを測定したところ、これまでの酵素と違ってFe-CO伸縮振動のラマン線を2本与えた。
KAKENHI-PROJECT-12045264
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12045264
生体色素の光反応にカップリングした高速蛋白ダイナミクスの時間分解振動分光法による解明
これにYC-1という有機分子を加えると、その内の1本が弱くなり、GTPを加えると完全に1本になった。それらのバンドは^<13>C^<18>Oを用いると振動数シフトを示すことから帰属に間違いはなく、別の標品でも再現性よく観測されることを確認した。消えた方のバンドの振動数はアメリカのグループが報告しているものに近く、残った方は我々が2年前に報告したものと同じであることから、sGCに2種のコンフォメーションがあって、その平衡がエフェクターとなる有機分子やGTPにより変えられる可能性が示唆された。生体色素の光反応として、本研究では一酸化炭素結合形ミオグロビン(MbCO)のCO光解離を取り上げた。ミオグロビン(Mb)のFe-CO結合は可視レーザー光照射により300フェムト秒以内に切れる。COは蛋白外に出ていき、蛋白はdeoxyMbの平衡構造に向かって変化していくが、その過程をピコ秒の時間分解共鳴ラマン分光法で調べた。主光源は1.5ps幅、82MHz繰り返し、平均出力0.7WのTi:sapphireレーザーで、それをNd:YLFレーザーの倍数(527nm)で増幅し、1kHz繰り返しのパルス列にしてから2系列に分け、各々の波長に変換した。光解離にはOPG法で変換した540nmのパルスを用い、ラマン散乱励起光としてはメタンの誘導ラマン散乱で得た442nmのパルスを用いた。両パルスの時間相関幅は2.3psで遅延時間のゼロは0.2psの精度で決まっている。この測定系は国際的にもトップレベルで、同レベルのデータをとれるグループは国際的にも無いと云える。光解離1ps後のスペクトルでは、Fe-His伸縮(V_<Fe-His>)は222cm^<-1>に、ヘムの面外振動(γ_7)が300cm_<-1>に、側鎖C_βC_cC_d変角振動[δ(C_βC_cC_d)]が369cm^<-1>に観測された。V_<Fe-His>およびγ_7バンドの面積強度を遅滞時間に対してプロットすると、γ_7は速い立ち上がりの後、一定強度を示したが、V_<Fe-His>はその後20ps迄じわじわと強度増加を示した。解析の結果、これはMbCO形でヘム面内に位置していた鉄イオンが、deoxy形でヘム面より0.3ÅだけHis側にずれる構造変化を反映している事がわかった。その変化の80%は非常に速いが残り20%が120psで起こる。一方V_<Fe-His>振動数は時定数106±14psで低波数シフトしたが、ポルフィリン環のγ_7やδ(C_βC_cC_d)バンドはその様なシフトを示さなかった。また蛋白のない鉄ポルフィリンイミダゾール錯体のCO光解離でも、V_<Fe-Im>はV_<Fe-His>バンドと同じように強度の時間変化を示したが、振動数変化は示さなかった。したがってV_<Fe-His>の振動数の時間変化は、蛋白質の3次構造の時間変化を反映しているものと思われる。5月に特定領域の領域会議があり、第一班の班長として班員の研究発表会を主催すると共に、自分の研究成果の報告をした。また2002年9月の化学会秋季年会と合同で開催された本特定領域の公開シンポジウムにおいて「酸素分子センサー蛋白、HemATの情報感知機構」と題する招待講演をした。ミオグロビンの一酸化炭素光解離後の蛋白構造変化をピコ秒の時間分解共鳴ラマン法で追跡し、鉄-ヒスチジン伸縮振動の振動数が時定数100ピコ秒で変化する事を見つけた。その時定数が溶液の粘度を高くすると長くなり、両者を対数プロットすると直線になる事から、この振動数変化が蛋白全体の構造変化を反映している事がわかった。
KAKENHI-PROJECT-12045264
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12045264
石英粒におけるESR信号強度消失の力学的条件
1.本年度の研究の大半は,回転装置付圧縮試験機の試作に費された.試作上の工夫点は以下のとおりである.(1)油圧装置に中空シリンダータイプを用いた.このことによって試料ホルダー垂直応力を作用させつつ試料ホルダーを回転させることが容易となった.(2)回転の駆動力は電動モーターによるが,回転数の変更を容易にするためにモータードライブの変速器をセットした.(3)試料ホルダーは,汎用性をもたせるように底面は共通の仕様とした.上面のみを目的にあわせて変えられるようにしてある.例えば,本研究の目的である石英粒の粉砕のためには,円弧を描く溝がホルダーの上面に切ってある.断層破砕帯の類似物を作るためには,ディスク状に整形した岩石をホルダー上面にエポキシ系接着材ではりつけたものを用いた.このようにして,実験装置の骨格が試作された.2.試作された実験装置を用いて, 2種類のテストランが繰り返された.1つは石英粒の粉砕であり,他の1つは,花コウ岩を用いた破砕帯類似物の形成である.垂直応力の可変域は070バールでそれ以上の垂直応力に抗して試料を回転させるにはより強力なモーターが必要である.このような低応力実験しかできなかったのは,摩擦係数を0.1としてトルク計算をした設計上のミスによるものである.回転数は110r.p.mとした.3.このような低垂直応力下,低回転数下でも1分間程度実験を継続するならば,石英粒は完全に粉砕され,類似的な断層破砕物を形成することが明らかとなった.当初目的であったESR信号強度消失の力学的条件を決定するには至らなかったが,そのための実験装置の骨格は製作されたといえよう.なお,力学的条件を決定する実験のためには,試作された本装置のモーターをより大きなトルクを持つものに取り換える必要があるが,それは容易である.1.本年度の研究の大半は,回転装置付圧縮試験機の試作に費された.試作上の工夫点は以下のとおりである.(1)油圧装置に中空シリンダータイプを用いた.このことによって試料ホルダー垂直応力を作用させつつ試料ホルダーを回転させることが容易となった.(2)回転の駆動力は電動モーターによるが,回転数の変更を容易にするためにモータードライブの変速器をセットした.(3)試料ホルダーは,汎用性をもたせるように底面は共通の仕様とした.上面のみを目的にあわせて変えられるようにしてある.例えば,本研究の目的である石英粒の粉砕のためには,円弧を描く溝がホルダーの上面に切ってある.断層破砕帯の類似物を作るためには,ディスク状に整形した岩石をホルダー上面にエポキシ系接着材ではりつけたものを用いた.このようにして,実験装置の骨格が試作された.2.試作された実験装置を用いて, 2種類のテストランが繰り返された.1つは石英粒の粉砕であり,他の1つは,花コウ岩を用いた破砕帯類似物の形成である.垂直応力の可変域は070バールでそれ以上の垂直応力に抗して試料を回転させるにはより強力なモーターが必要である.このような低応力実験しかできなかったのは,摩擦係数を0.1としてトルク計算をした設計上のミスによるものである.回転数は110r.p.mとした.3.このような低垂直応力下,低回転数下でも1分間程度実験を継続するならば,石英粒は完全に粉砕され,類似的な断層破砕物を形成することが明らかとなった.当初目的であったESR信号強度消失の力学的条件を決定するには至らなかったが,そのための実験装置の骨格は製作されたといえよう.なお,力学的条件を決定する実験のためには,試作された本装置のモーターをより大きなトルクを持つものに取り換える必要があるが,それは容易である.
KAKENHI-PROJECT-62540577
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62540577
機能異常リポ蛋白リパ-ゼの遺伝子解析
[目的]高カイロミクロン血症患者の中から、リポ蛋白の界面を認識することに異常のあるリポ蛋白リパ-ゼ(LPL)が見出された。本LPLはTriton Xー100で乳化したtrioleinに分解活性を示さなかったが、リゾレシチンで乳化したtrioleinには、野性型と同等な活性を有していた。この変異LPLの構造を明らかにし、LPLの界面認識機構の解明を試みた。[方法]患者の末梢血白血球,またはEpsteinーBarrーvirusによってtransformしたリンパ芽球からDNAを抽出し、標的遺伝子はpolymerase chain reaction法によって、増幅した。DNA配列の決定はdideoxyーchaintermination methodによって行なった。LPLcDNAは患者の脂肪細胞から、RNAを調製し、これよりcDNAを作成した。発現ベクタ-はSV40を上流に有するpCDEを用い、発現はCOSー1細胞を用いた。リポ蛋白リパ-ゼ活性の測定はTriton Xー100で乳化した[14C]trioleinを基質に用いた。Esterase活性の測定は[14C]tributyrinを基質に用いた。リポ蛋白リパ-ゼの酵素蛋白量の測定は人リポ蛋白リパ-ゼに対する特異抗体を用いて、enzymeーlinked immunoassay法によって行なった。[結果]本患者のLPL遺伝子解析を行なうと、LPLのExon9の塩基配列1595番目のcytidineからguanineへの変異がヘテロ型で認められた。この変異は野性型LPLが448のアミノ酸からなるのに対して、C末端が2残基短い446のアミノ酸からなるLPLが産成されていることを示唆するものであった。この変異LPLcDNAをCosー1 cellにtransfectionし、発現されたLPL[446]はtributyrin分解活性を有していた。しかしtrioleinの分解活性はTriton Xー100で乳化した時には野性型の約1/2であった。リゾレシチンで乳化したtrioleinには、野性型と同等な活性を有していた。[結論]これらの成績からLPL[446]は界面認識異常LPLであり、かつLPLの構造の中で界面を認識する機能の一部にはC末端447、448が関与している可能性が示唆された。[目的]高カイロミクロン血症患者の中から、リポ蛋白の界面を認識することに異常のあるリポ蛋白リパ-ゼ(LPL)が見出された。本LPLはTriton Xー100で乳化したtrioleinに分解活性を示さなかったが、リゾレシチンで乳化したtrioleinには、野性型と同等な活性を有していた。この変異LPLの構造を明らかにし、LPLの界面認識機構の解明を試みた。[方法]患者の末梢血白血球,またはEpsteinーBarrーvirusによってtransformしたリンパ芽球からDNAを抽出し、標的遺伝子はpolymerase chain reaction法によって、増幅した。DNA配列の決定はdideoxyーchaintermination methodによって行なった。LPLcDNAは患者の脂肪細胞から、RNAを調製し、これよりcDNAを作成した。発現ベクタ-はSV40を上流に有するpCDEを用い、発現はCOSー1細胞を用いた。リポ蛋白リパ-ゼ活性の測定はTriton Xー100で乳化した[14C]trioleinを基質に用いた。Esterase活性の測定は[14C]tributyrinを基質に用いた。リポ蛋白リパ-ゼの酵素蛋白量の測定は人リポ蛋白リパ-ゼに対する特異抗体を用いて、enzymeーlinked immunoassay法によって行なった。[結果]本患者のLPL遺伝子解析を行なうと、LPLのExon9の塩基配列1595番目のcytidineからguanineへの変異がヘテロ型で認められた。この変異は野性型LPLが448のアミノ酸からなるのに対して、C末端が2残基短い446のアミノ酸からなるLPLが産成されていることを示唆するものであった。この変異LPLcDNAをCosー1 cellにtransfectionし、発現されたLPL[446]はtributyrin分解活性を有していた。しかしtrioleinの分解活性はTriton Xー100で乳化した時には野性型の約1/2であった。リゾレシチンで乳化したtrioleinには、野性型と同等な活性を有していた。[結論]これらの成績からLPL[446]は界面認識異常LPLであり、かつLPLの構造の中で界面を認識する機能の一部にはC末端447、448が関与している可能性が示唆された。[目的]反復して膵炎に罹患していた高カイロミクロン血症患者の中で血中中性脂肪の分解酵素であるリポ蛋白リパ-ゼ(LPL)の機能に異常のある症例が見出された。そこで1、本患者の機能異常リポ蛋白リパ-ゼの構造解析を行なうために遺伝子解析からアミノ酸配列の異常を明らかにすることを試みた。2、変異LPLを発現させ、その機能を解析し、LPLの活性中心部位と界面認識部位を明らかにし、症例のLPLの機能解析に役立てる。[対象と方法]対象患者はヘパリン静注後血漿中にLPL酵素蛋白は存在しており、長鎖脂肪酸エステルであるトリオレインは分解しなかったが短鎖脂肪酸エステルであるトリブチリン分解し得る性質を有した。リポ蛋白とは結合しなかった。
KAKENHI-PROJECT-02671084
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02671084
機能異常リポ蛋白リパ-ゼの遺伝子解析
遺伝子解析はエクソン1から10までをpolymerase chain reaction(PCR)法によって採取し、そのDNA配列を決定した。変異LPLDNAを作成しこれをCOScellにDEAEデキストラン法にてtransfectionし、LPL蛋白を発現させた。[結果]1、本患者のLPL遺伝子のエクソン1から9までは異常がみられずエクソン10のアミノ酸478番目に相当するコドンのTCAがTGAに変化しストップコドンとなっており、患者はそのヘテロ型であった。次年度この部位の変異型geneを作成して発現させその機能を解析する予定である。2、LPL132のセリンがアルギニンにかわった変異LPLはトリブチリン水解活性を有していたがトリオレイン水解活性は低下していた。脂質界面と結合するとトリブチリン水解活性の上昇が見られるが変異LPLではそのような現象は見られなかった。132セリンの意義をさらに検討する必要がある。[目的]高カイロミクロン血症患者の中から、リポ蛋白の界面を認識することに異常のあるリポ蛋白リパ-ゼ(LPL)が見出された。本LPLはTriton Xー100で乳化したtrioleinに分野活性を示さなかったが、リゾレシチンで乳化したtrioleinには、野性型と同等な活性を有していた。この変異LPLの構造を明らかにし、LPLの界面認識機構の解明を試みた。[方法]患者の末梢血白血球、またはEpsteinーBarrーvirusによってtransformしたリンパ芽球からDNAを抽出し、標的遺伝子はPolymerase chain reaction法によって、増幅した。DNA配列の決定はdideoxyーchaintermination methodによって行なった。LPLcDNAは患者の脂肪細胞から、RNAを調製し、これよりcDNAを作成した。発現ベクタ-はSV40を上流に有するpCDEを用い、発現はCOSー1細胞を用いた。リポ蛋白リパ-ゼ活性の測定はTriton Xー100で乳化した[14C]trioleinを基質に用いた。Esterase活性の測定は[14C]tributyrinを基質に用いた。リポ蛋白リパ-ゼの酵素蛋白量の測定は人リポ蛋白リパ-ゼに対する特異抗体を用いてenzymeーlinked immunoassay法によって行なった。[結果]本患者のLPL遺伝子解析を行なうと、LPLのExon9の塩基配列1595番目のcytidineからguanineへの変異がヘテロ型で認められた。この変異は野性型LPLが448のアミノ酸からなるのに対して、C末端が2残基短い446のアミノ酸からなるLPLが産成されていることを示唆するものであった。この変異LPLcDNAをCosー1 cellにtransfectionし、発現されたLPL[446]はtributyrin分解活性を有していた。しかしtrioleinの分解活性はTriton Xー100で乳化した時には野性型の約1/2であった。リゾレシチンで乳化したtrioleinには、野性型と同等な活性を有していた。
KAKENHI-PROJECT-02671084
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02671084
神経筋疾患ならびにaxonal guidanceにおけるN-CAMの意義
N-CAMは細胞接着を介して、発生、分化、形態形成に大きく関与している。しかし、N-CAMと神経筋疾患患者の筋線維についてはほとんど解明されてない。本研究では、N-CAMが神経筋疾患にどのように関わっているのか、またN-CAMの各isoformが筋や脊髄の発生分化にどのような役割をはたしているのか検討した。本研究の成果から、N-CAMは筋の再生に重要であり、多発性筋炎、筋緊張性ジストロフィー症、肢帯型筋ジィストロフィー症では、再生筋にN-CAMの発現を認めたが、神経原性の筋萎縮側索硬化症では認めなかった。これらはN-CAMが再生筋のマーカーとして有用であると示したものである。ラット心筋で発生分化についてN-CAMとの関わりについて検討した。N-CAMは胎生10、11日には認められず、胎生12日より出現した。出現部位では、12日目には心外膜にのみ認められ、13日目に心筋の最外側部、次いで14日目に心室中隔上部、肉柱に強く出現した。18日目には、ほぼ心室全体に染色性が認められた。成熟ラットでは、胎生期に比べ染色性は低下していた。また、成熟ラットでは筋細胞結合部に強く認められたが、Z帯には認められなかった。またその出現は時間的、空間的に変化し、心筋の形態発生に大きな役割をはたしていることなどが得られた。また、心筋患を有さないヒト剖検心においても、N-CAMは介在板に発現していた。N-CAMは細胞接着を介して、発生、分化、形態形成に大きく関与している。しかし、N-CAMと神経筋疾患患者の筋線維についてはほとんど解明されてない。本研究では、N-CAMが神経筋疾患にどのように関わっているのか、またN-CAMの各isoformが筋や脊髄の発生分化にどのような役割をはたしているのか検討した。本研究の成果から、N-CAMは筋の再生に重要であり、多発性筋炎、筋緊張性ジストロフィー症、肢帯型筋ジィストロフィー症では、再生筋にN-CAMの発現を認めたが、神経原性の筋萎縮側索硬化症では認めなかった。これらはN-CAMが再生筋のマーカーとして有用であると示したものである。ラット心筋で発生分化についてN-CAMとの関わりについて検討した。N-CAMは胎生10、11日には認められず、胎生12日より出現した。出現部位では、12日目には心外膜にのみ認められ、13日目に心筋の最外側部、次いで14日目に心室中隔上部、肉柱に強く出現した。18日目には、ほぼ心室全体に染色性が認められた。成熟ラットでは、胎生期に比べ染色性は低下していた。また、成熟ラットでは筋細胞結合部に強く認められたが、Z帯には認められなかった。またその出現は時間的、空間的に変化し、心筋の形態発生に大きな役割をはたしていることなどが得られた。また、心筋患を有さないヒト剖検心においても、N-CAMは介在板に発現していた。N-CAM(neural cell adhesion molecule)が筋の発生や分化にどの様に関わっているかを明らかにするために、マウスの胎児でN-CAMのisoformの発現をin situ hybridyzationを用いて、mRNAレベルから検討を行った。In situ hybridizationに用いたprobeはriboprobeとした。これはマウスの脳やマウス由来のmuscle cell lineからtotal RNAを抽出し、^<35>SRNAprobeを作製し、使用した。その長さは平均100bpにし、coding部位はいずれexon内で、intron部位を含まないようにした。N-CAMのTransmembane formは胎生10日目、脊髄の前角部やganglionに発現し始めた。この時期は運動神経細胞が前角に出現する頃と一致していた。以後newbornになるまで前角部から脊髄全体にび慢性に発現が認めたが、N-CAMの発現の程度は弱くなっていき、down regulationが認められた。MSD form(muscle specific domain)は胎生12日目からmyotomeに認められ、以後new bornまで認められた。GPI-linked form、secreted formは脳、脊髄、末梢神経、筋肉にいずれも発現を認めなかった。一般にマウスではmyoblastのfusionによりmyotubeの出現は胎生12日目からといわれており,N-CAMのMSD formがこの時期から発現したのは、N-CAMが接着因子としての働きだけでなく、筋細胞の分化をintegrateしているものと考えた。transmembrane formは運動神経細胞が発生する時期に脊髄前角部で強く発現し、その2日後にmyotubeの時期にMSDがmyotomeに認められているので、N-CAMがaxonal guidanceとしての働きと筋細胞の分化に重要な因子を有していることなどの成果を得た。N-CAMは細胞接着を介して、発生、分化、形態形成に大きく関与している。最近N-CAMには,isoformが見いだされ、それぞれのiso-formの働きに大きな関心がよせられている。しかし、N-CAMと神経筋疾患患者の筋線維についてはほとんど解明されてない。本研究では、N-CAMが神経筋疾患にどのように関わっているのか、またN-CAMの各isoformが発生分化にどのような役割をはたしているのか検討した。ラット心筋ではN-CAMは胎生12日目より出現した。
KAKENHI-PROJECT-04670481
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04670481
神経筋疾患ならびにaxonal guidanceにおけるN-CAMの意義
またその出現は時間的、空間的に変化し、心筋の形態発生に大きな役割をはたしていることなどが得られた。
KAKENHI-PROJECT-04670481
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04670481
ビニルホスホナートのナザロフ反応の開発とその縮環テルペン類合成への応用
本年度は、リン酸官能基の電子求引性を利用して二重結合の位置選択性の制御を行うことにより、ビニルホスホナートを用いたNazarov環化反応の一般化を目指した。また二重結合の位置選択性発現機構を解明するために、置換基及び酸の効果を分子軌道計算結果と実験結果との比較によって検討を行った。種々の非環状ジビニルケトンに対し、酸触媒存在下、反応溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用いることによりNazarov環化反応を行った。その結果、基質によってはリン酸官能基の電子求引性からは予想できないリン側に二重結合が形成した環化生成物が得られた。そこでホスホノジビニルケトンでのNazarov環化反応の二重結合の位置選択性発現機構を解明するために、置換基及び酸の効果を分子軌道計算結果と実験結果との比較によって検討した。中間体であるシクロペンテニルカチオンの分子軌道計算(PM3法)の結果、配位したプロトンに対しアンチペリプラナー位の炭素のLUMOの係数が大きくなることが分かった。即ち、配位した酸のアンチペリプラナー位にオレフィンが生成すると予想される。この計算結果と実験結果を比較すると、Lewis酸を用いた場合にはリン酸基との立体反発によってexo-中間体の方が有利となるためリン側に二重結合の生じた生成物が選択的に得られたものと考えられる。一方、プロトン酸の場合には立体反発が軽減されるためendo-中間体の寄与も大きくなり選択性の低下がみられたものと思われる。これら分子軌道計算結果と実験結果との比較により、二重結合の位置選択性に対する置換基及び酸の効果が説明できる。現在、置換基の位置が変化した様々な非環状ジビニルケトンを用いて、二重結合の位置選択性発現機構に及ぼす置換基及び酸の効果の一般則の解明を目指している。本年度は、リン酸官能基の電子求引性を利用して二重結合の位置選択性の制御を行うことにより、ビニルホスホナートを用いたNazarov環化反応の一般化を目指した。また二重結合の位置選択性発現機構を解明するために、置換基及び酸の効果を分子軌道計算結果と実験結果との比較によって検討を行った。種々の非環状ジビニルケトンに対し、酸触媒存在下、反応溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用いることによりNazarov環化反応を行った。その結果、基質によってはリン酸官能基の電子求引性からは予想できないリン側に二重結合が形成した環化生成物が得られた。そこでホスホノジビニルケトンでのNazarov環化反応の二重結合の位置選択性発現機構を解明するために、置換基及び酸の効果を分子軌道計算結果と実験結果との比較によって検討した。中間体であるシクロペンテニルカチオンの分子軌道計算(PM3法)の結果、配位したプロトンに対しアンチペリプラナー位の炭素のLUMOの係数が大きくなることが分かった。即ち、配位した酸のアンチペリプラナー位にオレフィンが生成すると予想される。この計算結果と実験結果を比較すると、Lewis酸を用いた場合にはリン酸基との立体反発によってexo-中間体の方が有利となるためリン側に二重結合の生じた生成物が選択的に得られたものと考えられる。一方、プロトン酸の場合には立体反発が軽減されるためendo-中間体の寄与も大きくなり選択性の低下がみられたものと思われる。これら分子軌道計算結果と実験結果との比較により、二重結合の位置選択性に対する置換基及び酸の効果が説明できる。現在、置換基の位置が変化した様々な非環状ジビニルケトンを用いて、二重結合の位置選択性発現機構に及ぼす置換基及び酸の効果の一般則の解明を目指している。
KAKENHI-PROJECT-10125231
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10125231
ネットワークが希薄な公営住宅におけるコミュニティカフェを活用した予防的介入研究
介入の対象となるK市において、以下の取り組みを実施した。1地域包括支援センターに寄せられる相談内容を通じたニーズの把握と資源の集約,2より効果的なネットワーク構築について共に検討,3検討の結果をもとにネットワーク構築に必要となる取り組みについて検討し、実施また、対象となるK市内の特にコミュニティのつながりが希薄な地域であるU地区(府営住宅)において社会福祉協議会や自治会と合同の定期的な取り組みをスタートさせ、同地区内のソーシャルキャピタルの再構築に対する取り組みを開始した。今後は、同地区内に居住する高齢者を対象に、効果測定の調査を行う予定である。介入の対象となるK市において、以下の取り組みを実施した。1地域包括支援センターに寄せられる相談内容を通じたニーズの把握と資源の集約,2より効果的なネットワーク構築について共に検討,3検討の結果をもとにネットワーク構築に必要となる取り組みについて検討し、実施また、対象となるK市内の特にコミュニティのつながりが希薄な地域であるU地区(府営住宅)において社会福祉協議会や自治会と合同の定期的な取り組みをスタートさせ、同地区内のソーシャルキャピタルの再構築に対する取り組みを開始した。今後は、同地区内に居住する高齢者を対象に、効果測定の調査を行う予定である。介入の対象となるK市において特にコミュニティのつながりが希薄な地域であるU地区(府営住宅)において社会福祉協議会や自治会と合同の定期的な健康相談会の取り組みをスタートさせ、同地区内のソーシャルキャピタルの再構築に対する取り組みを開始した。23年度中の取り組みは下記の通りである。a.自治会における役員会議に定期的に出席し、住民や自治会役員から寄せられる相談から、課題を抽出し、取り組みの糸口を探索する。b.関係機関に寄せられる相談内容や対象者の直接的ニーズ、関係機関が把握している間接的ニーズを集約することで、地域のネットワーク作りの資源の集約、不十分な部分を明確化する。c.上記を踏まえて、社会福祉協議会や市職員との共通認識を構築し、より効果的なネットワーク構築について共に検討する。d.研究者が学会や研究会に参加、先駆的な取り組みの知見を得て、それを担当者と共有する。e.検討の結果をもとにネットワーク構築に必要となる取り組みについて、センターの係員との間で検討を重ねることによって共通の理解を得るように働きかける。f.自治会および社会福祉協議会が実施する高齢者住民の見守りニーズアンケートについて、情報提供および作成、データ処理について協力を行った。g.自治会主催で、ボランティア組織が協力して実施しているコミュニティカフェにおいて、従来社会福祉協議会と在宅支援センターが行っていた「福祉何でも相談会」に、保健師(研究者)が帯同し、「健康相談会」の機能を付与する取り組みを開始した。次年度以降には、主任研究者が担当する調査実施について、協力を得られるよう調整がついている。介入の対象となるK市において特にコミュニティのつながりが希薄な地域であるU地区(府営住宅)において社会福祉協議会や自治会と合同の定期的な健康相談会の取り組みをスタートさせ、同地区内のソーシャルキャピタルの再構築に対する取り組みを開始した。23年度中の取り組みは下記の通りである。a.自治会における役員会議に定期的に出席し、住民や自治会役員から寄せられる相談から、課題を抽出し、取り組みの糸口を探索する。b.関係機関に寄せられる相談内容や対象者の直接的ニーズ、関係機関が把握している間接的ニーズを集約することで、地域のネットワーク作りの資源の集約、不十分な部分を明確化する。c.上記を踏まえて、社会福祉協議会や市職員との共通認識を構築し、より効果的なネットワーク構築について共に検討する。d.研究者が学会や研究会に参加、先駆的な取り組みの知見を得て、それを担当者と共有する。e.検討の結果をもとにネットワーク構築に必要となる取り組みについて、センターの係員との間で検討を重ねることによって共通の理解を得るように働きかける。f.自治会および社会福祉協議会が実施する高齢者住民の見守りニーズアンケートについて、情報提供および作成、データ処理について協力を行った。g.自治会主催で、ボランティア組織が協力して実施しているコミュニティカフェにおいて、従来社会福祉協議会と在宅支援センターが行っていた「福祉何でも相談会」に、保健師(研究者)が帯同し、「健康相談会」の機能を付与する取り組みを開始した。次年度以降には、主任研究者が担当する調査実施について、協力を得られるよう調整がついている。介入の対象となるK市内でも特にコミュニティのつながりが希薄な地域であるU地区(公営住宅)において、社会福祉協議会や自治会と合同の定期的な健康相談会の取り組みを継続し、同地区内のソーシャルキャピタルの再構築に対する取り組みを行っている。当該年度に至るまでの取り組みは以下の通りである。1)自治会における役員会議に出席し、住民や自治会役員より寄せられる相談内容から地域における課題を抽出し、取り組みの糸口を探索する。2)関係機関に寄せられる相談内容や対象者の直接的ニーズ、関係機関が把握している間接的ニーズの集約することで、地域のネットワークづくりの資源を集約し、不十分な部分を明確化する。3)上記を踏まえて、社会福祉協議会や関係機関職員、自治会役員と共通認識を構築し、より効果的なネットワーク構築について検討する。4)研究者kが学会や研究会に参加、先駆的な取り組みの知見を得て、それを関係者と共有する。5)自治会及び社会福祉協議会が実施する恒例住民の見守りニーズ調査について、情報提供及び調査票の作成やデータ処理について協力する。6)自治会主催で民生委員やボランティア組織が協力して実施しているコミュニティカフェにおいて、定期的な継続した健康相談会の開催。
KAKENHI-PROJECT-22792264
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22792264
ネットワークが希薄な公営住宅におけるコミュニティカフェを活用した予防的介入研究
以上を踏まえて、25年度9月16日に介入効果測定のための調査票配布を行う予定であったが、当該地区近辺での台風被害に伴い、実施が困難となった。現在再調整を行うと同時に、測定方法の再検討を行ったため、倫理委員会へ再申請を市、今年度実施の予定である。介入の対象となるK市内でも特にコミュニティのつながりが希薄な地域であるU地区(公営住宅)において、社会福祉協議会や自治会と合同の定期的な健康相談会の取り組みを継続し、同地区内のソーシャルキャピタルの再構築に対する取り組みを行っている。当該年度に至るまでの取り組みは以下の通りである。1)自治会における役員会議に出席し、住民や自治会役員より寄せられる相談内容から地域における課題を抽出し、取り組みの糸口を探索する。2)関係機関に寄せられる相談内容や対象者の直接的ニーズ、関係機関が把握している間接的ニーズの集約することで、地域のネットワークづくりの資源を集約し、不十分な部分を明確化する。3)上記を踏まえて、社会福祉協議会や関係機関職員、自治会役員と共通認識を構築し、より効果的なネットワーク構築について検討する。4)研究者kが学会や研究会に参加、先駆的な取り組みの知見を得て、それを関係者と共有する。5)自治会及び社会福祉協議会が実施する恒例住民の見守りニーズ調査について、情報提供及び調査票の作成やデータ処理について協力する。6)自治会主催で民生委員やボランティア組織が協力して実施しているコミュニティカフェにおいて、定期的な継続した健康相談会の開催。以上を踏まえて、今年度も介入の継続とその効果の測定を行う予定である。当初23年度に実施予定であった初回調査の実施について、当該年度に自治会及び社会福祉協議会、また、自治体の調査が入っており、住民の負担を鑑みて、次年度に調査を実施することとなったため。当初23年度に実施予定であった初回調査の実施について、当該年度に自治会及び社会福祉協議会、また、自治体の調査が入っており、住民の負担を鑑みて、次年度に調査を実施することとなったため。25年度が最終年度であるため、記入しない。研究者が定期的に介入対象となる地域へ出向いて、直接的に健康相談会を開催することによって、介入対象となる高齢入居者と自治会役員との関係性の構築が円滑に行えている。さらにそのことによって、25年度における調査研究への協力の約束を得られていることが、研究遂行の最大のメリットとなっている。自治会長および役員との調整の結果、24年度には調査に協力を得られる旨の言質を確保している。また、健康相談会の実施に伴って、住民やボランティア組織、民生委員との関係性も構築されてきており、協力を得られる体制が醸成されつつある。自治会長および役員との調整の結果、24年度には調査に協力を得られる旨の言質を確保している。また、健康相談会の実施に伴って、住民やボランティア組織、民生委員との関係性も構築されてきており、協力を得られる体制が醸成さねつつある。
KAKENHI-PROJECT-22792264
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22792264
特定の染色体部位に組み込まれる遺伝子導入法の開発
アデノ随伴ウイルス(AAV)の持つヒト第19染色体長腕(q13.4-ter)への特異的に挿入機構を利用して、その特定の領域(AAVS1)に遺伝子ターゲティングできる遺伝子導入法を開発することを目的とした。AAVベクターがAAVS1領域に挿入されるために必須であるが細胞毒性を持つRep蛋白を必要な時だけ短期間に発現させるために、Rep遺伝子をBacteri ophage P1のCre/Lox P系を利用した発現プラスミド(pLRPL)として構築した。このpLRPLプラスミドとCre発現プラスミドおよびITRを持つAAVベクタープラスミドとをそれぞれリポソーム法にてヒト由来の293細胞へ導入したところ、Creの発現に依存したRep蛋白の発現が生じることを確認した。短期間だけ発現するRep蛋白の作用でAAVベクターがAAVS1領域に特異的に挿入さたることをAAVS1とAAVベクターのITRのプライマーを用いるnested-PCR法およびAAVS1領域に設定したオリゴ・ヌクレオチドをプローブとして用いたサザンブロット法により、部位特異的挿入を確認した。Direct-sequenceによりITRおよびAAVS1内の挿入部位を検討したところ、挿入部位はITR部分およびAAVS1部分ともに既報の野生型AAVの挿入部位と類似していた。さらに、ネオマイシン耐性遺伝子導入用のAAVベクタープラスミドを用いて、293細胞のAAVS1領域への導入効率を検討したところ、ネオマイシン耐性コロニーの12%に部位特異的遺伝子導入が認められた。アデノ随伴ウイルス(AAV)の持つヒト第19染色体長腕(q13.4-ter)への特異的に挿入機構を利用して、その特定の領域(AAVS1)に遺伝子ターゲティングできる遺伝子導入法を開発することを目的とした。AAVベクターがAAVS1領域に挿入されるために必須であるが細胞毒性を持つRep蛋白を必要な時だけ短期間に発現させるために、Rep遺伝子をBacteri ophage P1のCre/Lox P系を利用した発現プラスミド(pLRPL)として構築した。このpLRPLプラスミドとCre発現プラスミドおよびITRを持つAAVベクタープラスミドとをそれぞれリポソーム法にてヒト由来の293細胞へ導入したところ、Creの発現に依存したRep蛋白の発現が生じることを確認した。短期間だけ発現するRep蛋白の作用でAAVベクターがAAVS1領域に特異的に挿入さたることをAAVS1とAAVベクターのITRのプライマーを用いるnested-PCR法およびAAVS1領域に設定したオリゴ・ヌクレオチドをプローブとして用いたサザンブロット法により、部位特異的挿入を確認した。Direct-sequenceによりITRおよびAAVS1内の挿入部位を検討したところ、挿入部位はITR部分およびAAVS1部分ともに既報の野生型AAVの挿入部位と類似していた。さらに、ネオマイシン耐性遺伝子導入用のAAVベクタープラスミドを用いて、293細胞のAAVS1領域への導入効率を検討したところ、ネオマイシン耐性コロニーの12%に部位特異的遺伝子導入が認められた。
KAKENHI-PROJECT-09877452
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09877452
オペラッドを用いた埋め込みの空間の研究
余次元が高い結び目の空間とオペラッドの関係を研究した.3次元より高い空間の中の結び目はすべてほどけてしまうが,そのような結び目全体を集めた空間は多様な構造を持つ.一方,オペラッドとは代数構造を支配するものである.足し算や掛け算は2項演算であるが,オペラッドは3項演算や4項演算をもコントロールする.近年の驚くべき進展は結び目とオペラッドが密接に関係することが発見されたことである.筆者はこのような関係について,既存の結果を改善し,重要なオペラッドの例に対して予想に反する性質を証明した.Sinhaのcosimplicial modelの枠付版に付随するスペクトル系列を考えることにより,奇数次元の枠付小球体オペラッドの非形式性を示すことができた.このオペラッドはGoodwillie-Klein-Weissの多様体解析にも現れるもので,通常の小球体オペラッドの形式性と対照的な結果であり,興味深い.また,この結果はGiansiracusaーSalvatoreの問題に部分的に答えるものである.他に,一般の多様体上の結び目の空間と関係するホモロジースペクトル系列をBendersky-Gitlerの配置空間のモデルを使って構成した.これにより,部分的にはホモロジー群の計算が可能になると思われる.本年度は多様体の結び目の空間について、ホモロジーの計算に向けた研究を行った。具体的には計算可能なスペクトル系列の構成である。このスペクトル系列の構成にはCohenTaylorによる多様体の配置空間のホモロジースペクトル系列、Goodwillie-Klein-Weissの多様体解析、Sinhaの余単体モデルなどを用いた。この研究結果について、福岡ホモトピー論セミナーや信州大学トポロジーセミナーで講演を行った。信州大に出張した際には、信州大の境圭一氏や島根大の渡邊忠之氏らとMostovoyの結び目の分類空間に関する論文について研究連絡を行った。また、昨年度の枠付小球体オペラッドの非形式性に関する論文の執筆を進めた。当初の研究の方向性とは少し異なるが、多様体内の結び目のホモロジーと関連のある計算可能なスペクトル系列を得られたのは大きな進歩である。ただ、当初予定していたオペラッドの障害理論の系統的研究については、昨年度の結果である枠付小球体オペラッドの非形式性の例が得られたのみで、それ以降の進展は得られていないのが現状である。そのため、オペラッドに関する一般的理論の進展という意味ではやや遅れている。本年度は他の研究者と共同で,結び目(より正確にはlong knot)について,その分類空間の研究を行った。分類空間は群やモノイド,カテゴリーの研究で非常に重要な対象であるが,セルの貼り付けなどのホモトピー論的な操作で定義されるものである。これについて,筆者らはshort ropeの空間という結び目空間類似の幾何学的な空間が分類空間と弱ホモトピー同値となることを証明した。この結果はJ. Mostovoyの予想を肯定的に解決したものであり,結び目の研究に新しい視点を与えるものと期待される.この証明の中では,S. Galatius, O. Randal-Williamsによって発見された,cobordism categoryの幾何学的モデルであるspace of manifoldを用い,様々なカテゴリーを経由することによって弱ホモトピー同値を証明した。今後はこのshort ropeの空間にGoodwillie-Klein-Weissのembedding calculusを適用することなどを計画している.また,枠付小球体オペラッドのnon-formalityについての論文を執筆した。この研究についてはpreprint sever"arXiv"にアップロードした所,米国Oregon大学のD. Sinha氏から招待を受け,T. Goodwillie氏,R.Koytcheff氏,P. Songhafouo Tsopmene氏,V.Turchin氏らとも研究連絡を行った。この米国旅行により,(non)formalityの研究に関して新しい方向性が定まったと考えている。筆者の研究以外の業務に割く時間が多かったため,当初の研究計画どおりには進んでいない。しかし,新しい研究の方向性を得ることが出来た。本年度は信州大の境氏との共著のshort ropeに関する論文の改訂を進めた.その結果この論文は査読付き論文誌「Algebraic and Geometric Toplogy」にacceptされた.また,埋め込みの空間に関する勉強会を信州大の境氏,島根大の渡邉氏,東大の博士課程の若月氏と開催した.そこで,Kupersのdiffeomorphism群の有限性に関する論文や,de-Brito-Weissのconfiguration categoryとembedding spaceに関する論文について勉強した.Kupersの論文では,境界を「半分だけ」止める埋め込みの空間が重要な役割を果たすことが分かった.diffeomorphism群とGoodwillieのmanifold calculusとの関係について議論し,非常に有益な着想を得た.また,configuration categoryは,一般の埋め込みの空間に対して,接空間の情報を含む部分と,ホモトピー論的な情報を含む部分に分解するための道具で,ホモトピー論的な情報を含む部分に関しては,多様体の配置空間を使って表される.configuration categoryについては,topological chiral homologyなどにも現れ,これからの代数トポロジーで非常に重要な役割を果たすものと考えられる.configuration categoryを定義する自然な枠組みとして,complete Segal spaceが考えられるが,これに関してはかなり扱い方が理解できた.埋め込みの空間やdiffeomorphism群について,最近の研究について理解を深め,知見を広めることができた.diffeomorophism群に対してmanifold calculusを介して,operad formalityを応用することなどが今後の課題である.余次元が高い結び目の空間とオペラッドの関係を研究した.
KAKENHI-PROJECT-26800037
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26800037
オペラッドを用いた埋め込みの空間の研究
3次元より高い空間の中の結び目はすべてほどけてしまうが,そのような結び目全体を集めた空間は多様な構造を持つ.一方,オペラッドとは代数構造を支配するものである.足し算や掛け算は2項演算であるが,オペラッドは3項演算や4項演算をもコントロールする.近年の驚くべき進展は結び目とオペラッドが密接に関係することが発見されたことである.筆者はこのような関係について,既存の結果を改善し,重要なオペラッドの例に対して予想に反する性質を証明した.枠付小球体オペラッドが形式的かというこの分野の研究者ならば誰でも考える問題に奇数次元の場合だけであるが答えられたことは大きな進歩である.また,多様体上の結び目の空間に関して,有理ホモトピー論のモデルを用いることは当初想定していなかったが,それによってスペクトル系列が得られたことは計算に向けての大きな進歩といえる.今後は2つの方向で主に研究を進めて行きたい。一つは多様体内の結び目のホモロジーに関連するスペクトル系列の研究である。このスペクトル系列が実際のホモロジーをどの程度近似するか(収束性)、具体例に関する計算、スペクトル系列のグラフ複体を用いた表示などについて研究する予定である。もう一つは枠付小球体オペラッドの非形式性のより精密な研究である。このオペラッドの重要性からすれば、このオペラッドに絞ってさらに詳しく研究することは十分意義深い。昨年度得られた、形式性に対する障害をヒントとして、このオペラッドの二次近似となるオペラッドのモデルを構成する予定である。そしてこのモデルを用いて形式性に対する2次的な(seocndary)障害が存在するのかどうかを研究する予定である。今後は枠付小球体オペラッドの代数的モデルを28年度に得られた知見を基に構成する。通常の(枠の付いていない)小球体オペラッドについてはKoszul dualityによって極小モデルが知られているので,rotation groupのHopf代数の作用をこの極小モデルに与えることによってモデルを構成したい。また,M.Livernetの研究のSwiss cheeseオペラッドのnon-formalityの研究から,正標数についてformalityがどこまで言えるか?二対手も研究する予定である。代数的位相幾何学非形式性だけでは,計算への応用は限られたものとなる.そのため,この非形式性を加味した,枠付オペラッドのモデルの構成を行う.また,多様体の空間の結び目について,スペクトル系列の収束性,計算などを行う.また,Goodwillie-Klein-Weiss近似の逆元写像の研究にも着手する.
KAKENHI-PROJECT-26800037
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26800037
アフリカに生息する小型草食獣の生体情報を使った環境評価、資源活用、家畜疾病の調査
野生動物の生息環境を監視するため、小型草食獣から得られる糞便や被毛などの生体情報を用いた評価法を確立した。糞便由来腸内細菌の薬剤耐性と遺伝的多様性を調査した。また、寄生虫や血液原虫を用いて家畜と野生動物の分子系統学解析による疾病伝播調査を実施した。肉や被毛を用いた野生動物の種判別法を確立し、野生動物精巣の形態学的観察や精子と糞便中のテストステロンを定量して非侵襲的な繁殖機能診断法を確立した。さらに、土壌や水系環境と生息動物(カバ)の金属汚染調査を行った。野生動物の生息環境を監視するため、小型草食獣から得られる糞便や被毛などの生体情報を用いた評価法を確立した。糞便由来腸内細菌の薬剤耐性と遺伝的多様性を調査した。また、寄生虫や血液原虫を用いて家畜と野生動物の分子系統学解析による疾病伝播調査を実施した。肉や被毛を用いた野生動物の種判別法を確立し、野生動物精巣の形態学的観察や精子と糞便中のテストステロンを定量して非侵襲的な繁殖機能診断法を確立した。さらに、土壌や水系環境と生息動物(カバ)の金属汚染調査を行った。平成21年8月および22年3月に研究班員はアフリカ・ザンビアに出張し、海外研究協力者のザンビア大学獣医学部教員と協力して現地調査を行った。大学所在地のルサカから北東450kmに位置するサウスルアンガ国立公園で採材した。保護区域内に生息する小型草食動物(Puku, Imparaなど)の新鮮な糞便および接地していた土壌、近辺の水など合計112検体を採取した。またルサカ近郊のチャミヌカゲームランチ(野生動物を囲い込み、観光や狩猟目的の私的牧場)からも19検体を採取した。また同ゲームランチよりPuku, Eland, Impara, Lechweなどの解体時に年齢査定技術確立のための歯牙標本を得て、分析を進めている。サウスルアンガ採取材料74検体、チャミヌカ採取材料16検体から合計321株の大腸菌を分離した。薬剤耐性菌分離率はサウスルアンガで2.7%、チャミヌカで12.5%だった。Lechwe 5頭から得た糸状虫類14虫体について、形態学的および分子系統学的に解析しLechwe由来の6虫体はS.bicornata、8虫体はS.boulengeriと同定された。近隣の牛13頭から得た糸状虫類25虫体はS.labiatopapillosaと同定された。小型草食動物の繁殖生理状況を非侵襲的に探索する手法を開発する目的で、野生のPuku, ImparaおよびゲームランチのLechwe糞中ステロイドホルモンをDELFIA時間分解蛍光で解析出来るか否かを検討した結果、迅速に繁殖に関わるホルモン検出が可能である手法を確立できた。また、密猟野生動物の肉の摘発活動をサポートする目的で、遺伝学的手法による「種判別方法」の開発に着手した。今年度は、ゲームランチ等で得た19種の野生動物と4種の家畜の組織からDNAを抽出し、PCRを行った。平成22年8月および23年3月に研究班員はザンビアに出張し、海外研究協力者のザンビア大学獣医学部教員と協力して現地調査を行った。8月にはカフェおよびロッキンバー国立公園、およびその近郊の農場で小型草食野生動物のプクや牛の生体材料を採取した。またチャミヌカゲームランチで草食野生動物の材料採取協力が得られた。これらの材料を使って、プク雄4頭から寄生虫の検出を試みた。検出された蠕虫類は、腹腔から糸状虫(Setaria pillelsi 16虫体、Setaria bicornata 7虫体)、腸間膜静脈より住血吸虫(Schistosoma spp.27虫体)、第1胃より双口吸虫(Calicophoron calicophorum多数)、小腸より線虫類(Cooperia conchaeti多数、Bunostomum spp.多数)、大腸より線虫(Oesophagostomum sp.1 38虫体、Oesophagostomum sp.2 16虫体、Trichuris sp.3虫体)、肝臓実質より舌虫(Porocephalidae gen.sp.6虫体)であった。野生動物や牛の糞便や水からは、大腸菌と腸球菌の分離,ヘルペスウィルスの検査を行った。野生動物間の大腸菌伝播はまれであり、腸球菌の薬剤耐性評価では,野生のバッファロー,ゾウ各1検体からオキシテトラサイクリン耐性Enterococcus faecalisが分離された(耐性率2.78%,n=72).野生動物由来腸球菌の菌種構成を比較したところ,食性による差が認められた.プク(4個体)由来DNAを用いたヘルペスウィルス検査(nested PCR)ではすべて陰性だった.草食動物の雄(プク11頭・インパラ6頭)の滅菌乾燥処理した糞中からステロイドホルモンを時間分解蛍光免疫測定法(TR-FIA)によりテストステロン濃度の測定が可能であり、非侵襲的な繁殖機能の検査として利用可能であることが示された。Impara43頭,Puku15頭,Eland1頭,Lechwe9頭の下顎から切歯または/および犬歯を採取して年齢査定を行っている。野生動物の遺伝子による種判別を目的にPCRを実施した。また、市場における密猟肉摘発への応用を考慮し、野生動物肉と比較するために家畜(牛、豚、鶏など)の肉についても検討した。
KAKENHI-PROJECT-21255010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21255010
アフリカに生息する小型草食獣の生体情報を使った環境評価、資源活用、家畜疾病の調査
平成23年8月及び24年3月に研究班員はザンビア共和国に出張し、ザンビア大学獣医学部の研究協力者と現地調査を行った。ザンビア大学附属農場で山羊を、民間野生動物観光施設とルサカ市内の国際会議場敷地内に放牧されているインパラの糞便中大腸菌を分離して薬剤耐性試験を行った。得られた229菌株得中薬剤耐性大腸菌は16菌株であった。人との接触頻度が高いザンビア大学農場山羊と国際会議場インパラから、薬剤耐性大腸菌及び多剤耐性大腸菌が分離されたのに対し、人との接触頻度が低い民間野生動物観光施設の野生動物からは薬剤耐性大腸菌が分離されず、人との接触頻度の高さが家畜及び野生動物の薬剤耐性菌保有率に関与していることが示唆された。射殺後のプク雄6個体の睾丸の形態、精子形成及びテストステロン濃度を調べた。全個体の精巣及び精巣上体に精子が観察された。テストステロン濃度は血中で2.822.6ng/ml、糞中で29.459.3ng/gであり、両者に相関性は見られなかった。睾丸薄切標本の免疫染色では全個体で精巣の間質細胞にのみ3β-HSDの発現が認められた。45月に採取した個体では3β-HSD陽性細胞が多数観察でき、精巣内ステロイド合成の活発化が見られたが、69月では3β-HSD陽性細胞数が減少し、3β-HSD発現量の低下がうかがわれた。草食動物の雄(プク7頭・インパラ6頭)の乾熱滅菌処理糞中のテストステロンを時間分解蛍光免疫測定法により測定するために、蒸留水撹拌とエーテル抽出法の糞便前処理法を検討した。エーテル抽出法が優れており、本測定法は有用な非侵襲的な繁殖機能検査であることと示唆された。43種の野生動物及び家畜の筋肉のmtDNA12SRNAを用いた種判別手法の有効性を検証したところ38種で判別に成功した。遺伝子分析に基づく種判別手法は、野生動物に関わる密猟犯罪の抑止力に有用である。23年度が最終年度であるため、記入しない。23年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-21255010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21255010
テラヘルツ近接場測定技術を用いた擬似局在表面プラズモンの時空間分解測定
本研究では、テラヘルツ周波数帯に重くのしかかる回折限界による制限を取り除くための研究を行っている。そのための有力なツールとして、擬似局在表面プラズモンに着目して研究を行い、その基礎的性質を明らかにした。具体的には、微細加工技術を用いて様々な大きさの金属構造を作成し、共鳴周波数の変化を実験的に確かめた。その結果は理論的予測と一致しており、擬似局在表面プラズモンの性質を制御することに成功した。また、軌道角運動量を持つ光渦を用いた高次擬似局在表面プラズモンの励起を行った。その結果、全角運動量の保存を満たす選択則が確認できた。これは、可視域のプラズモニクスで予測されていた結果と同じであり、擬似局在表面プラズモンがその名の通り擬似的に局在表面プラズモンの性質を再現していることを示した。これらの結果は、擬似局在表面プラズモンを用いる事で、可視域プラズモニクスで実現している高分解能、高感度測定技術をテラヘルツ帯に応用できる可能性を示している。また、電磁場解析シミュレーションを行うことで擬似局在表面プラズモンの理解を深めた。また、新たな取り組みとして、金属アンテナ構造を用いた回折限界の突破を行った。具体的には、放射状に並べた4組のダイポールアンテナを金属微細加工技術を用いて作成し、広帯域テラヘルツパルスを照射した。その結果、中心部分に存在する波長以下のギャップ部分(直径役50マイクロメートル)に波長600マイクロメートル程度のテラヘルツ波の縮小レプリカが生成されることがわかった。位相分布の測定により、波長の選択はダイポールアンテナの半波長共鳴周波数により選択されていることがわかった。さらに、この金属構造は軌道角運動量を持つテラヘルツ光渦も回折限界以下に縮小する機能を持つことを実験的に示した。テラヘルツ周波数帯における回折限界による制限を取り除くための有力なツールとして、擬似局在表面プラズモンに着目し、その基礎的性質を調べた。擬似局在表面プラズモンの性質は金属構造の大きさに依存することが理論的に示されている。今年度は微細加工技術を用いて様々な大きさの金属構造を作成することで、このことを実験的に確かめた。その結果は理論的予測を概ね一致しており、擬似局在表面プラズモンの性質を制御することに成功した。また、軌道角運動量を持つ光渦を用いた高次擬似局在表面プラズモンの励起を行った。その結果、全角運動量の保存を満たす選択則が確認できた。これは、可視域のプラズモニクスで予測されていた結果と同じであり、擬似局在表面プラズモンがその名の通り擬似的に局在表面プラズモンの性質を再現していることを示した。これらの結果は、擬似局在表面プラズモンを用いる事で、可視域プラズモニクスで実現している高分解能、高感度測定技術をテラヘルツ帯に応用できる可能性を示している。より高い空間分解能で擬似局在表面プラズモンを調べるために、測定システムの改善を行った。具体的には、より薄い測定用結晶(電気光学結晶)を用いた。しかし、薄い結晶を用いると信号強度が非常に小さくなる。本研究ではノイズを大幅に削減できる測定技術を取り入れることで、測定を可能にした。その結果、約5マイクロメートルの空間分解能を実現した。この測定システムの改善により、次年度からのさらなる発展的な研究を行う下地が整ったと言える。当初の計画通り、金属構造の微小化に伴う擬似局在表面プラズモンの特性の変化を観測することができた。その結果は理論的予測と概ね一致していた。このことは、実現可能な電場の微小ホットスポットの下限には到達していないことを示しており、さらなる微小化が可能であることを示唆している。また、測定システムの空間分解能の向上に関しては、計画当初にはなかった新しい測定技術を取り入れることで、大きく改善することができた。本研究では、テラヘルツ周波数帯に重くのしかかる回折限界による制限を取り除くための研究を行っている。昨年度までは擬似局在表面プラズモンに着目して研究を行い、実験的にその基礎的性質を明らかにした。今年度はさらにその研究を進めるとともに、電磁場解析シミュレーションと比較することで擬似局在表面プラズモンの理解を深めた。また、新たな取り組みとして、金属アンテナ構造を用いた回折限界の突破を行った。具体的には、放射状に並べた4組のダイポールアンテナを金属微細加工技術を用いて作成し、波長600マイクロメートル程度のテラヘルツ波を照射した。その結果、中心部分に存在する波長以下のギャップ部分(直径役50マイクロメートル)に入射テラヘルツ波の縮小レプリカを作成することに成功した。さらに、この金属構造は軌道角運動量を持つテラヘルツ光渦も回折限界以下に縮小する機能を持つことを実験的に示した。研究開始当初着目していた擬似局在表面プラズモンの基礎的理解は非常に深まった。また、金属アンテナ構造による解析限界の突破という新たな手法の有効性を示すことができた点は今後の研究にとって非常に重要である。金属アンテナ構造は擬似局在表面プラズモンを用いる手法よりも単純であり、拡張性が高い。今後は金属アンテナ構造を用いた手法に注力することで、さらなる発展が期待できる。本研究では、テラヘルツ周波数帯に重くのしかかる回折限界による制限を取り除くための研究を行っている。そのための有力なツールとして、擬似局在表面プラズモンに着目して研究を行い、その基礎的性質を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-16K17529
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K17529
テラヘルツ近接場測定技術を用いた擬似局在表面プラズモンの時空間分解測定
具体的には、微細加工技術を用いて様々な大きさの金属構造を作成し、共鳴周波数の変化を実験的に確かめた。その結果は理論的予測と一致しており、擬似局在表面プラズモンの性質を制御することに成功した。また、軌道角運動量を持つ光渦を用いた高次擬似局在表面プラズモンの励起を行った。その結果、全角運動量の保存を満たす選択則が確認できた。これは、可視域のプラズモニクスで予測されていた結果と同じであり、擬似局在表面プラズモンがその名の通り擬似的に局在表面プラズモンの性質を再現していることを示した。これらの結果は、擬似局在表面プラズモンを用いる事で、可視域プラズモニクスで実現している高分解能、高感度測定技術をテラヘルツ帯に応用できる可能性を示している。また、電磁場解析シミュレーションを行うことで擬似局在表面プラズモンの理解を深めた。また、新たな取り組みとして、金属アンテナ構造を用いた回折限界の突破を行った。具体的には、放射状に並べた4組のダイポールアンテナを金属微細加工技術を用いて作成し、広帯域テラヘルツパルスを照射した。その結果、中心部分に存在する波長以下のギャップ部分(直径役50マイクロメートル)に波長600マイクロメートル程度のテラヘルツ波の縮小レプリカが生成されることがわかった。位相分布の測定により、波長の選択はダイポールアンテナの半波長共鳴周波数により選択されていることがわかった。さらに、この金属構造は軌道角運動量を持つテラヘルツ光渦も回折限界以下に縮小する機能を持つことを実験的に示した。本年度に高い空間分解能を持つ測定システムを実現したことで、当初計画していた実験が可能になった。具体的には、光渦を用いた高次の擬似局在表面プラズモンを用いた電場の微小ホットスポット実現や、様々な金属構造を用いた擬似局在表面プラズモンの制御に取り組む。金属アンテナ構造を用いた回折限界の突破手法をより発展させる。金属構造の大きさ、配置など、最適なパラメータを見つけるための系統的実験を行いたい。そのために、縮小機構の理解を進める。また、回折限界を超えた光渦の縮小により、光から物質への軌道角運動量転写をより効率的に起こすことができると期待できる。このような応用的研究も進めていきたい。学会参加費に含まれていた飲食代が当初の想定より少なく、請求額が少なくなったから。翌年度の物品費として有効活用する。
KAKENHI-PROJECT-16K17529
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K17529
予防的観点から捉えた肯定的自動思考の抑うつ低減・緩衝効果に関する基礎研究
本研究の目的は,予防的観点から,ポジティブな状況において不随意的に生起する肯定的自動思考の長期的変化の諸相について検討することであった。予備研究においては,大学生を対象とした自由記述式調査により,肯定的/否定的自動思考が生起する状況(出来事)を収集・分類整理した。本調査では,大学生を対象として半年間にわたり計4回の縦断調査を実施し,肯定的自動思考が将来の抑うつに与える正負両面の影響を見出した。本研究の目的は,予防的観点から,ポジティブな状況において不随意的に生起する肯定的自動思考の長期的変化の諸相について検討することであった。予備研究においては,大学生を対象とした自由記述式調査により,肯定的/否定的自動思考が生起する状況(出来事)を収集・分類整理した。本調査では,大学生を対象として半年間にわたり計4回の縦断調査を実施し,肯定的自動思考が将来の抑うつに与える正負両面の影響を見出した。抑うつへの有効性が実証されている認知療法の創始者Beck(1976)の理論で扱われる認知のひとつに自動思考がある。自動思考は,肯定-否定の二次元で捉えられており,ポジティブ-ネガティブな出来事を体験しているときにそれぞれ不随意的に生起する親和的な考えと定義される。両自動思考は一軸上の両極にある概念ではなく,抑うつに対してそれぞれ独自の影響を与えるとされているが,これまでの研究のほとんどは治療的観点から否定的自動思考について扱ったものであり,肯定的自動思考の特徴や機能に特化した研究は非常に少ない、そこで,本研究では,昨今治療と同様に重要視され始めている予防に重点をおき,肯定的自動思考の抑うつ予防機能について,実践への応用を見据えた基礎研究を行う。肯定的自動思考が時間経過やその間の出来事との関係においてどのように変化し,どのように抑うつへ影響を与えていくのかについて,すなわち肯定的自動思考の長期的な変化の諸相を明らかにすることは,肯定的自動思考を抑うつ予防に活かす上での必須の資料となる。今年度は,そのための予備研究として,肯定的/否定的自動思考が生起する状況(出来事)にはどのようなものがあるかについて,大学生を対象に自由記述による調査を実施,得られた回答内容を分類整理した。今現在の大学生が日常的に経験するポジティブ/ネガティブな出来事について把握することで,本調査(縦断研究)にて肯定的自動思考とともに査定される出来事経験の指標を得た。本研究は,“ポジティブな状況で不随意的に生起する親和的思考"と定義される肯定的自動思考の抑うつ予防機能について,実践への応用を見据えた基礎研究を行うものである。本年度は,肯定的自動思考が,時間経過やその間に経験した出来事との関係においてどのように変化し,どのように抑うつに影響を与えていくのか,すなわち肯定的自動思考の変化の諸相について縦断研究を実施した。出来事の査定には,前年度に大学生より収集および分類整理した“肯定的/否定的自動思考が生起する出来事"119項目を使用した。関東および関西に居住する大学生を対象として,半年間にわたり計4回の調査を実施した。各時点における調査協力者は,初回の調査が167名,2週間後に実施された2回目調査が97名,2か月後の3回目が93名,半年後の4回目が82名であった。この内,4回すべての調査に協力したものは62名であった。複数時点間の尺度得点の変化を基に,肯定的自動思考の下位因子(肯定的感情表現,自己および将来に対する自信,肯定的自己評価,被受容感,肯定的気分の維持願望)の安定性,肯定的自動思考の抑うつ低減・緩衝効果について分析し,本研究の総括を行った。24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22730533
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22730533
ゴルジ装置に局在するプロ蛋白質の変換酵素に関する研究
1.フューリンのCOS細胞での発現フューリンは酵母のKeX2プロテアーゼと高いホモロジーを示すことから,前駆体蛋白質の限定加水分解に係ることが推測されていた。本研究において,フューリンのcDNAと血漿アルブミンあるいは補体第3成分(C3)のcDNAを同時にCOS細胞にトランスフェクトしたところ,アルブミンとC3の前駆体(プロアルブミン,プロC3)からそれぞれの成熟型への変換を顕著に促進した。さらに,精製したフューリンを用いたインビトロの系において,フューリンがプロアルブミンとプロC3を変換する能力を有することを証明できた。これらの事実は,フューリングが発現された細胞内で直接に前駆体蛋白質の変換に係っていることを強く支持するものである。2.血漿蛋白質前駆体のプロセシングにはカルシウム依存性のプロテアーゼが関与している。初代培養肝細胞あるいはHEPG2細胞をカルシウムイオンが枯渇する条件下で培養し,分泌されてくる血漿蛋白質の解析を行ったところ,成熟蛋白質の分泌は全く認められず,替りに前駆体(プロアルブミン.プロC3)が培地中の分泌されることが判明した。さらに,補体第4成分(C4)の分泌においても,前駆体(プロC4)のみがカルシウムイオンの枯渇の条件下に分泌されて来ることが確認され,カルシウム依存性のプロテアーゼが各前駆体のプロセシングに関与していることが示唆された。以上のことは,カルシウム依存性のプロテアーゼであるフューリンが,肝細胞のプロセシングプロテアーゼである可能性を示すものであるが最終結論を得るにはさらにくわしい検討が必要となる。1.フューリンのCOS細胞での発現フューリンは酵母のKeX2プロテアーゼと高いホモロジーを示すことから,前駆体蛋白質の限定加水分解に係ることが推測されていた。本研究において,フューリンのcDNAと血漿アルブミンあるいは補体第3成分(C3)のcDNAを同時にCOS細胞にトランスフェクトしたところ,アルブミンとC3の前駆体(プロアルブミン,プロC3)からそれぞれの成熟型への変換を顕著に促進した。さらに,精製したフューリンを用いたインビトロの系において,フューリンがプロアルブミンとプロC3を変換する能力を有することを証明できた。これらの事実は,フューリングが発現された細胞内で直接に前駆体蛋白質の変換に係っていることを強く支持するものである。2.血漿蛋白質前駆体のプロセシングにはカルシウム依存性のプロテアーゼが関与している。初代培養肝細胞あるいはHEPG2細胞をカルシウムイオンが枯渇する条件下で培養し,分泌されてくる血漿蛋白質の解析を行ったところ,成熟蛋白質の分泌は全く認められず,替りに前駆体(プロアルブミン.プロC3)が培地中の分泌されることが判明した。さらに,補体第4成分(C4)の分泌においても,前駆体(プロC4)のみがカルシウムイオンの枯渇の条件下に分泌されて来ることが確認され,カルシウム依存性のプロテアーゼが各前駆体のプロセシングに関与していることが示唆された。以上のことは,カルシウム依存性のプロテアーゼであるフューリンが,肝細胞のプロセシングプロテアーゼである可能性を示すものであるが最終結論を得るにはさらにくわしい検討が必要となる。プロ蛋白質の変換酵素の有力な候補であるフュ-リン(furin)の細胞内での局在およびその機能を検討する目的で、フュ-リンのcDNAをCOS1細胞に発現させた。フュ-リンのズブチリシン様領域に存在する配列(10残基)に対するペプチド抗体を家免で調製し、発現したフュ-リンの局在を蛍光抗体法により検討したところ、ゴルジ装置に特異的に存在していることが判明した。また、アルブミン、補体成分C3のcDNAと同時にフュ-リンのcDNAをトランスフェクションすることにより、フュ-リンがプロアルブミンから血清アルブミン、プロC3からC3への変換を著明に促進することを見い出した。以上の結果より、発現したフュ-リンはゴルジ装置で血清蛋白質の前駆体のプロセシングに関与していることが確認された。一方、レニンの前駆体であるプロレニンはフュ-リンとともにCOS1細胞で発現しても活性型レニンへ変換されなかった。部位特異的突然変異法を用いて切断部位近傍のアミノ酸の影響を検討したところ、切断部位より上流4番目(-4位)のアミノ酸と+1位のアミノ酸をそれぞれPro→Arg、leu→Serに変異させるとプロレニンがフュ-リンにより活性型レニンへと切断されることが判明した。従って、フュ-リンはその基質特異性として切断部位である連続した塩基性アミノ酸の他に-4位と+1位のアミノ酸を含めた構造を認識していることが推測された。アルブミンをCOS1細胞で発現させるとプロアルブミンは内在性のプロテア-ゼにより血清アルブミンへ変換後分泌される。部位特異的変異法により+1位のアミノ酸を本来のグルタミン酸から疎水性アミノ酸(Val,leu,Ile)に変えると、プロアルブミンの変換が完全に阻害され、内在性のプロテア-ゼの基質特異性として+1位のアミノ酸の重要性が明らかとなった。(1)初代培養ラット肝細胞をその細胞内のカルシウムイオンを枯渇させる条件で培養したところ、血清アルブミンおよび補体第3成分の前駆体(それぞれプロアルブミン、プロC3)が培地中に分泌されることを見い出した。さらに、人肝癌由来のHepG2細胞においても細胞内
KAKENHI-PROJECT-03833033
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03833033
ゴルジ装置に局在するプロ蛋白質の変換酵素に関する研究
カルシウムイオンの枯渇により、補体第3成分のみならず補体第4成分の前駆体(プロC4)が培地中に分泌されることを確認した。従って、細胞内のカルシウムイオン濃度の低下は、細胞の種類のいかんにかかわらず血漿蛋白質の前駆体のプロセシングを阻害することが判明した。さらにブレフェルジンA処理や低温下での培養実験により、カルシウムイオンの濃度の低下はゴルジ装置での前駆体のプロセシングを阻害するらしいことが推測された。そして、ラット肝より調製したゴルジ分画にプロC3を限定分解し、αおよびβサブユニットへ変換させるカルシウム要求性のプロテアーゼが存在し、それが酵母のKex2プロテアーゼとよく似た性格であることを見い出した。(2)酵母のKex2プロテアーゼと高い相同性を有するカルシウム要求性のプロテアーゼのフューリンが、プロアルブミン、プロC3を効率よく限定加水分解することを、invitroの系ではじめて確認した。このことは、フューリンおよびプロアルブミン、プロC3をCOS細胞で同時に発現させると、ともにアルブミン、C3へプロセシングされるというin vivoの実験ともよく一致した。
KAKENHI-PROJECT-03833033
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03833033
キラル薬物光学異性体間の体内動態の差異とその要因の解明(1)プロパフェノンの場合
本研究では、不整脈の治療に有用性の高いキラル薬物・プロパフェノン(PPF)を対象として、そのR体とS体の体内動態に生じる差異が要因を、肝ミクロソームの薬物代謝と血清タンパク結合の両面から追究した。滋賀医科大学病院に受診中のPPF服用中の不整脈患者(22名)より得られた血液試料について解析した結果、血清中濃度はS体>R体の関係にあること、また、R体の消失速度定数および全身クリアランスは、いずれもS体のそれらに比べ約1.5倍高値を示すことが確認された。上記同様の結果は、マウスへのラセミ体PPFの腹腔内投与後にも得られた。PPFの主要代謝経路に位置する5位水酸化酵素反応における立体選択性をマウス肝ミクロソームレベルで検討した結果、R体を基質とした場合の肝固有クリアランスはS体のそれに比べ約1.3倍高値を示したことから、各光学異性体の肝における5位水酸化代謝の差異が体内動態の差異に反映される一因と考えられた。さらに、各光学異性体の5位水酸化代謝の大部分は共通のcytochromc p-450(P-450)種を介して進行するものの、S体の代謝の一部にはこれとは異なるP-450種が関与することも示された。ヒト新鮮全血あるいは赤血球浮遊液を用いたin vitroでの検討により、血清α_1酸性糖タンパク質(AAG)への各光学異性体の結合率の差異(S体>R体)が、R体とS体の赤血球移行性の差異(R体>S体)に反映され、結果として血清中濃度にS体>R体の関係をもたらす一因となり得るものと考えられた。しかし、PPF服用患者で得られた血清中S体>R体濃度比(0.64.0)の幅に比べ、上記in vitro実験で得られたそれは0.81.3の範囲でしか変動し得ないことから、PPF光学異性体個々の体内動態の差異は、主として肝における酸化的代謝面での立体選択性および関与するP-450種の差異にもとづくものと結論される。本研究では、不整脈の治療に有用性の高いキラル薬物・プロパフェノン(PPF)を対象として、そのR体とS体の体内動態に生じる差異が要因を、肝ミクロソームの薬物代謝と血清タンパク結合の両面から追究した。滋賀医科大学病院に受診中のPPF服用中の不整脈患者(22名)より得られた血液試料について解析した結果、血清中濃度はS体>R体の関係にあること、また、R体の消失速度定数および全身クリアランスは、いずれもS体のそれらに比べ約1.5倍高値を示すことが確認された。上記同様の結果は、マウスへのラセミ体PPFの腹腔内投与後にも得られた。PPFの主要代謝経路に位置する5位水酸化酵素反応における立体選択性をマウス肝ミクロソームレベルで検討した結果、R体を基質とした場合の肝固有クリアランスはS体のそれに比べ約1.3倍高値を示したことから、各光学異性体の肝における5位水酸化代謝の差異が体内動態の差異に反映される一因と考えられた。さらに、各光学異性体の5位水酸化代謝の大部分は共通のcytochromc p-450(P-450)種を介して進行するものの、S体の代謝の一部にはこれとは異なるP-450種が関与することも示された。ヒト新鮮全血あるいは赤血球浮遊液を用いたin vitroでの検討により、血清α_1酸性糖タンパク質(AAG)への各光学異性体の結合率の差異(S体>R体)が、R体とS体の赤血球移行性の差異(R体>S体)に反映され、結果として血清中濃度にS体>R体の関係をもたらす一因となり得るものと考えられた。しかし、PPF服用患者で得られた血清中S体>R体濃度比(0.64.0)の幅に比べ、上記in vitro実験で得られたそれは0.81.3の範囲でしか変動し得ないことから、PPF光学異性体個々の体内動態の差異は、主として肝における酸化的代謝面での立体選択性および関与するP-450種の差異にもとづくものと結論される。滋賀医科大学病院に受診(外来および入院)中のプロパフェノン(PPF)服用中の不整脈患者(22名)より得られた採取時間のランダムな血液試料について、血清中のR体およびS体の濃度推移を解析した結果、いずれの患者においても各光学異性体の濃度比はS体>R体の序列にあり、R体の消失速度定数および全身クリアランス(CL_<tot>)はいずれもS体のそれらに比べ約1.5倍高値を示すことが確認された。同様の結果は、マウスへのPPFの腹腔内投与後にも認められ、PPFラセミ体の20mg/kg投与後のいずれの時間においてもS体の血清中濃度はR体のそれより高値を示し、R体のCL_<tot>はS体のそれに比べ約1.4倍高値であった。PPFの5位水酸化代謝における立体選択性をマウス肝ミクロソームレベルで検討した結果、R体を基質とした場合の肝固有クリアランス(V_<max>/K_m)はS体のそれに比べ約1.3倍高値を示したことから、上記ラセミ体投与後のin vivoの結果には各光学異性体の肝における5位水酸化代謝の差異が反映されているものと考えられた。
KAKENHI-PROJECT-05671897
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671897
キラル薬物光学異性体間の体内動態の差異とその要因の解明(1)プロパフェノンの場合
また、R体およびS体の5位水酸化代謝に関与するcytochrome P-450(P-450)種の特性について、フェノバルビタール誘導後と非誘導後の肝ミクロソームで解析した結果、PPFの各光学異性体は、その大部分は共通のP-450種を介して5位水酸化代謝されるものの、S体の代謝の一部にはR体の代謝には無関係な別個のP-450種が関与することが示唆された。以上、PPF光学異性体間の体内動態は互いに異なること、また、その差異を規定する要因の一つが5位水酸化代謝に関与するP-450の反応性および分子種の違いにあることが認められた。今後、血清α_1酸性糖タンパク質への結合特性における光学異性体間の差異についても解析を進める予定である。前年度までに、抗不整脈薬・プロパフェノン(PPF)光学異性体(R体とS体)間の体内動態は互いに異なること、また、その差異を規定する要因の一つが肝ミクロソームでPPFの5位水酸化代謝に関与するcytochrome P-450(P-450)の反応特性および分子種の違いにあることを確認した。一方、最近、いくつかの塩基性薬物の光学異性体の血清タンパク質、特にα_1酸性糖タンパク質(AAG)への結合に立体選択性のあることが示され、この結合率の差異が光学異性体間の血中動態に影響する可能性が推論されている。本年度は、不整脈患者へのラセミ体PPF投与後の血清試料やin vitroでの検討を中心に、R体とS体のAAGへの結合特性にもとづく赤血球分画への移行性を解析し、血清タンパク結合面からPPF光学異性体間の血中動態の差異に影響する要因を追求した。In vitroでヒト新鮮全血中にPPFラセミ体を添加し保温した結果、各光学異性体の血漿中濃度はPPF服用患者試料の場合と同様、S体>R体の関係にあることが見出だされた。等張化リン酸緩衝液で調整した赤血球浮遊液を用いての検討により、in vitroで得られた血漿中濃度のS体>R体の関係は、両者の赤血球移行性自体の差異やアルブミン関与によるものではなく、血漿中のAAGへの結合特性(結合率:S体>R体)の差異が、赤血球への取り込み量(R体>S体)に反映されて生じるものであることが示された。しかし、実際のPPF服用患者で認められたS体とR体の血清中濃度比(S/R比)は1.23.0であるのにに対し、上述のin vitro実験で得られたS/R比は最大でも1.3に過ぎず、両者の体内動態の差異にAAGへの結合面の差異が果たす役割は比較的小さいものと判断された。
KAKENHI-PROJECT-05671897
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671897
流れ場および反応構造を考慮した衝突噴流熱伝達機構の解明
噴流間の距離が衝突噴流群による固体燃焼の燃焼速度におよぼす影響を明らかにすることを目的として,スリット間隔の異なるノズルを用いて実験を行い,以下のことを明らかにした.・水平方向の燃焼速度分布はスリット間隔によって大きく変化することを示した.間隔が広い場合には燃焼速度が最大となる位置がスリット直下より外側にずれることを示した.・燃焼速度のレイノルズ数依存性を明らかにした.燃焼速度は,非燃焼の場合のよどみ領域と同様,レイノルズ数の0.5乗に比例して大きくなることを示した.一方,スリット間隔が広いときのスリット直下の燃焼速度はレイノルズ数の0.8乗に比例することを示した.噴流間の距離が衝突噴流群による固体燃焼の燃焼速度におよぼす影響を明らかにすることを目的として,スリット間隔の異なるノズルを用いて実験を行い,以下のことを明らかにした.・水平方向の燃焼速度分布はスリット間隔によって大きく変化することを示した.間隔が広い場合には燃焼速度が最大となる位置がスリット直下より外側にずれることを示した.・燃焼速度のレイノルズ数依存性を明らかにした.燃焼速度は,非燃焼の場合のよどみ領域と同様,レイノルズ数の0.5乗に比例して大きくなることを示した.一方,スリット間隔が広いときのスリット直下の燃焼速度はレイノルズ数の0.8乗に比例することを示した.単一の2次元平面ノズルおよび固体燃料を含む実験装置の設計と製作を行い,燃焼実験を実施した.430nmバンドパスフィルタを用いたことで固体上に形成された拡散火炎の詳細な観察が可能となり,よどみ点近傍と試料端では火炎の輝度が異なることがわかった.また,酸化剤流量を変えて同様の実験を行い,ダムケラー数と燃料の後退速度との関係を明らかにした.ダムケラー数がある値よりも小さい条件では火炎が吹き消え,燃料の後退はほとんど起こらなかった(以下,吹き消え時のダムケラー数を限界ダムケラーと呼ぶ).限界ダムケラー数よりも大きくなると,後退速度の変動の大きい遷移領域を経て,後退速度がゆるやかに低下する安定燃焼領域へと燃焼モードは遷移した.実験後の固体燃料の形状は供給した酸化剤流量によって異なった.安定燃焼領域では,後退量はよどみ点近傍で最も大きく,よどみ点から離れるにつれて後退量は減少した.一方,遷移領域では安定領域よりもよどみ点近傍が深く後退している場合と,吹き消えによってよどみ点近傍に凸型の形状が残る場合の二つの場合が見られた.このことと後退速度の変動が大きかったことから,遷移領域で形成される火炎は不安定であることが示唆された.また,限界ダムケラー数以下では燃焼後の燃料中央部に凸型の大きな出っ張りが形成された.これはよどみ点近傍で吹き消えが起こったことによるものと考えられる.凸部の横は後退が進んでいることから,よどみ点で火炎が吹き消えたときも,その横では火炎が保持されていることが示唆された.レイノルズ数に対して後退速度をプロットすると,よどみ点では従来の非燃焼の衝突噴流熱伝達に比べて熱伝達が促進され,よどみ点から離れた位置では,非燃焼の場合とほとんど同程度であることがわかった.酸化剤衝突噴流群と固体燃料の拡散火炎における,固体への熱伝達特性に関する基礎データを得ることを目的として,2つの平面噴流を固体平板上に衝突させた場合について実験を行い,固体表面に沿った燃焼速度の分布を調べた.実験には2種類の噴口中心間距離(p=4,18mm)のノズルを用いた.ノズル出口から固体表面までの衝突距離は24mmとした.中心間距離が広い場合(p=18mm)には,燃焼速度の分布はほぼ中心軸を対象に2箇所でピークを持ち,そのピーク位置は噴口直下よりやや外側にずれることがわかった.非燃焼場での可視化実験から中心付近に渦対が発生していることが確認できた.このことから,ノズルから出た噴流は中心に形成された渦によって外側へ押されていることが示唆された.一方,中心間距離が狭い場合(p=4mm)には,流速が約10m/sまでは中心付近になだらかなピークが1つだけ存在する燃焼速度分布が得られた.これは固体表面で衝突する前に噴流同士が干渉し,擬似的に1つの噴流となって衝突していることを示唆している.流速が大きくなると間隔が広いときと同様,中心のピークは2つに分離しはじめることが確認された.いずれの中心間距離の場合でも,噴流流速が大きくなるにつれて,燃焼速度の最大値は増加することがわかった.この傾向は単一噴流の場合と同様であったが,同じ流速では単一噴流に比べて小さくなり,また.今回の実験を行った流速の範囲では,単一噴流の場合で見られたよどみ点における吹き消えを観察することはできなかった.本研究から,非燃焼の場合と同様に噴流の相互作用の有無によって形成される燃焼場は異なり,その相互作用は噴口の中心間距離によって変化することが示唆された.初年度では,さまざまな実験条件(燃料形状,酸化剤流量,酸素濃度,雰囲気圧力)において単一平面ノズルを用いた燃焼実験を実施し,流れ場や反応構造を決める無次元数と熱伝達率の関係を導出するまでが達成目標であった.
KAKENHI-PROJECT-24860002
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24860002
流れ場および反応構造を考慮した衝突噴流熱伝達機構の解明
しかし,大気圧下において酸化剤流量を変えた実験は実施できたが,それ以外のパラメータを変えた実験を実施することはできなかった.上記の結果から,後退速度とレイノルズ数およびダムケラー数との関係は見出したものの,実験パラメータとして流量しか変えていないため,異なる流れ場構造や反応構造で成り立つような相似則はまだ見いだせていない.達成度が遅れた最も大きな原因は,採択後に現在所属の大学への異動があり応募時に見込んでいたエフォートよりも実際のエフォートが少なくなってしまったことだと考えている.それ以外の原因としては下記の理由が挙げられる.本研究では流れ場と火炎の2次元構造を明確に観察するために円筒ノズルではなく平面ノズルを用いていた.この場合は前後方向への火炎の擾乱を防止し,かつ燃焼中の火炎を観察できるように,燃焼場の奥行き方向をガラスで拘束する必要がある.非常に高温となる燃焼場での使用に耐えられるように耐熱ガラスであるバイコールガラスを用いたが,生産量が少なく入手が困難であったため実験装置の完成に時間がかかった.また,酸素濃度が低い場合に従来の方法では着火させることができず,着火方法の確立にも時間がかかったことも原因のひとつである.本研究では既存設備を用いてLDVによる燃焼場の流速計測を実施する予定であった.しかし,申請者の異動のため既存設備を使用できず,LDVによる流速計速を一切実施できなかったことも達成度を低く評価した理由である.現所属機関にはPIVの設備があるため,本年度はLDVの代わりにそれを用いた速度場計測を実施する.25年度が最終年度であるため、記入しない。昨年度の実験に用いた実験系は当時の所属研究室で所持していた装置や部品等をいくつか流用していたため,本年度の研究を遂行するにあたっては申請者の現在の所属機関において再度実験装置を製作する必要がある.新しい実験装置はPIV計測が可能で,かつ酸素濃度も変えることができるものとする.さらに昨年度の研究から明らかとなった問題点はすべて改善する.ただし,達成度が遅れていること,応募者にPIV計測の経験がないことを考慮し,できる限り単純化した装置で実験を実施するために,予定していた雰囲気圧力を変えた実験は行わないことにする.実験装置の製作は7月をめどに完了する予定である.今年度はまず昨年度予定していたが実施できなかった,酸素濃度を変えた実験を行う.酸素濃度を変えることで化学反応速度が異なる条件で比較することが可能となり,昨年度得られた結果を一般論へと拡張することができる.また,壁のある固体燃料を用いた実験も行い,ファウンテン流や二次衝突の影響も調べる.今年度は,さらに当初からの予定である複数ノズルの製作も行い,それを用いた実験も実施する.製作には昨年度に得られたノズル設計のノウハウが利用できる.現時点では無次元熱伝達率であるヌセルト数と流れ場,反応速度および燃料形状などを決める無次元数との関係を導出するまでに至っていないが,単一および複数ノズルの実験で新たに取得するデータと昨年度までに得られたデータをあわせて整理することで,ヌセルト数とそれらの無次元数との関係を導出できるものと考えている.25年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-24860002
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24860002
プロスタグランジンD2の非アルコール性脂肪肝炎における役割の解明
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、肝硬変、肝がんまで進行する重篤な炎症性肝疾患である。日本のNASH患者は、200万人以上と推定されているが、十分なエビデンスを持った薬物療法は確立されていない。我々は、マウスNASHモデル肝臓において、生理活性脂質であるプロスタグランジンD2(PGD2)の合成酵素やその受容体であるDPの発現亢進を見いだした。そこで本研究では、NASHモデル動物や細胞培養系を用い、PGD2のNASH病態形成における役割を解析し、PGD2関連薬物のNASH病態改善効果を検証する。非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、肝硬変、肝がんまで進行する重篤な炎症性肝疾患である。日本のNASH患者は、200万人以上と推定されているが、十分なエビデンスを持った薬物療法は確立されていない。我々は、マウスNASHモデル肝臓において、生理活性脂質であるプロスタグランジンD2(PGD2)の合成酵素やその受容体であるDPの発現亢進を見いだした。そこで本研究では、NASHモデル動物や細胞培養系を用い、PGD2のNASH病態形成における役割を解析し、PGD2関連薬物のNASH病態改善効果を検証する。
KAKENHI-PROJECT-19K07096
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K07096
鉄筋コンクリート造「極脆性柱」及び「せん断柱」の靭性指標と残存軸耐力に関する研究
既存鉄筋コンクリート建物を対象として,耐震診断基準における「極脆性柱」及び「せん断柱」の靭性指標と残存軸耐力の再評価を行った。主要な成果は次のとおりである。1)せん断破壊する柱の靱性指標Fを論理的に求める手法を提案した。この方法により,より精密な靱性の評価が可能となる。2)せん断破壊する柱の残存軸耐力の評価式を提案し,その妥当性を示した。3)柱の軸力減少を考慮した場合,軸力減少の度合いが大きいほど崩壊水平変形が大きくなることを示した。既存鉄筋コンクリート建物を対象として,耐震診断基準における「極脆性柱」及び「せん断柱」の靭性指標と残存軸耐力の再評価を行った。主要な成果は次のとおりである。1)せん断破壊する柱の靱性指標Fを論理的に求める手法を提案した。この方法により,より精密な靱性の評価が可能となる。2)せん断破壊する柱の残存軸耐力の評価式を提案し,その妥当性を示した。3)柱の軸力減少を考慮した場合,軸力減少の度合いが大きいほど崩壊水平変形が大きくなることを示した。旧基準による鉄筋コンクリート(RC)建物の耐震性を評価するうえで重要なのは,柱の崩壊過程や崩壊時の変形について把握し,軸力保持能力を正確に捉えることである。地震のような水平力により柱がせん断破壊すると,それにかかる軸力は梁を介して周辺の健全な柱へ移動する。過去にせん断破壊型RC柱の崩壊性状に関する実験は多数行われているが,せん断破壊に伴う軸力の減少(周辺柱への軸力の移動)を考慮した実験は非常に少ない。そこで本研究では,せん断破壊を生じやすい短柱を対象として,せん断破壊に伴って軸力が減少する場合の崩壊実験を行い,軸力が一定の場合と比較した。試験体は計9体であり,すべて実大とした。柱断面寸法(b×D)を450×450mm,内法高さ(h_o)を900mmとした(h_o/D=2)。実験パラメータは,(1)主筋比Pg,(2)せん断補強筋比Pw,(3)軸力比,(4)載荷履歴,とした。ここで軸力比については,破壊の進行に伴って軸力比を0.16から0.08に減少させた実験を行い,軸力比が0.16で一定の場合と比較した。得られた主な知見を以下に示す。1) Pw, Pg,載荷履歴,軸力を減少させる点に関係なく,軸力を減少させた柱は,一定軸力のものに比べ,崩壊水平変形が大きくなる。また,軸力を減少させた後の水平力の低下度合いや鉛直変形の増加の度合いが軸力を減少させる前に比べ小さくなる。2)軸力を減少させる点が早いほど大きな水平変形,鉛直変形で崩壊または実験終了した。3)非常に崩壊に近い点で軸力を減少させても,崩壊または実験終了時の水平変形は一定軸力の試験体に比べ約26倍程度も大きくなる。4)繰り返し載荷によって一定軸力,減少軸力の両者共に崩壊水平変形が単調載荷の場合より小さくなった。また,軸力を減少させる場合では軸力減少後の水平力の増加が大きくなり,水平力低下の度合いも小さくなった。大地震時の人命保護の立場から柱に要求される最低限度の性能は,軸力を保持することである。過去の大地震では,旧基準によって建てられた鉄筋コンクリート(RC)造柱がせん断破壊し,ついには軸力保持能力を喪失して崩壊するという被害が数多く見られた。これら旧基準のRC建物の耐震性を評価するうえで重要なのが,柱の崩壊過程や崩壊時の変形について把握することである。地震のような水平力により柱にせん断破壊が生じ,鉛直変形が増大すると,その柱にかかる軸力は梁を介して他の周辺の健全な柱へ移動し,周辺の柱や梁が軸力を負担することによって軸力は減少する。しかし,このような軸力の減少を考慮したRC柱の崩壊実験はほとんど行われていない。そこで,本論では軸力の減少時においての挙動を調べることを目的とし,柱の軸力が一定の場合と減少する場合の比較,考察を行う。試験体は計7体であり,すべて実大とした。柱断面寸法(b×D)は450×450mmで全試験体共通とした。内法高さ(h_0)は900mmと1400mmとし,クリアスパン比(h_0/D)は2.0と3.1の2種類とした。主筋比P_gは1.70%,せん断補強筋比P_wは0.21,0.16%の2種類とした。軸力の減少は鉛直変形の増大によって生じると想定されるため,鉛直方向の縮み量が大きくなる崩壊寸前の点において軸力を減少させることを原則とした。実験は最終的に柱が崩壊するまで加力した。得られた主な知見を以下に示す。軸力を減少させた柱は,一定軸力のものに比べ,崩壊水平変形が大きくなる。また,軸力を減少させる度合いが大きくなるほど,崩壊水平変形が大きくなる。具体的には,75%まで軸力を減少させると,崩壊水平変形は2.9倍となる。50%程度まで軸力を減少させると,崩壊水平変形は5倍程度となる。20%まで軸力を減少させると,崩壊水平変形は10倍以上となる。
KAKENHI-PROJECT-21360269
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21360269
鉄筋コンクリート造「極脆性柱」及び「せん断柱」の靭性指標と残存軸耐力に関する研究
過去の大地震では,古い鉄筋コンクリート建物の柱がせん断破壊して崩壊する被害が数多く見られた。一方で,柱がせん断破壊したにもかかわらず,崩壊を免れた事例も見られた。これは,柱にかかる軸力が梁を介して周辺の柱へ移動し,軸力が減少したためだと考えられる。地震のような水平力により柱にせん断破壊が生じ柱の鉛直変形が増大すると,その柱にかかる軸力は梁を介して周辺の健全な柱へ移動するのである。そこで,耐震診断基準における極脆性柱とせん断柱を対象として,軸力の減少度合をパラメータとした崩壊実験を行い,軸力が直定の場合との比較を行った。本研究の主要な成果は以下のとおりである。1)軸力を減少させた試験体は,一定軸力の試験体に比べ,大きな水平変形まで軸力を保持することができる。また,軸力を減少させる度合いが大きくなるほど,軸力減少後の水平力の減少,鉛直変形の増加が緩やかになり,崩壊水平変形が大きくなる。具体的には,もとの軸力の75%まで軸力を減少させると崩壊水平変形は3倍程度となり,50%程度(60%40%)まで軸力を減少させると5倍程度となり,20%まで軸力を減少させると10倍程度となる。2)既往の崩壊水平変形推定式によれば,一定軸力の試験体に対しては,実験値/計算値の平均値は0.57であり,推定式が実験値を過大に評価した。しかし,軸力減少の試験体に対しては,軸力減少前の軸力比で計算すると,実験値/計算値の平均値と変動係数はそれぞれ3.01と0.42であるが,軸力減少後の軸力比で計算すると,実験値/計算値の平均値と変動係数はそれぞれ1.34と0,27となり,実験値との対応は良い。3)各試験体の崩壊水平変形と崩壊鉛直変形は,ほぼ正比例関係にあり,後者/前者の平均値は0.26となった。これは既往研究による後者/前者の平均値である0.22の値とほぼ一致した。
KAKENHI-PROJECT-21360269
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21360269
HTLV-1感染者における免疫抑制機序の解析
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)感染者におけるHTLV-1特異的CD8+T細胞応答の低下は、成人T細胞白血病(ATL)の発症に関与していると考えられている。本研究では、一部の無症候性感染者やATL患者に認められるHTLV-1特異的CD8+T細胞応答の低下は、抗原提示細胞の機能低下や感染細胞を含む制御性T細胞による能動的免疫抑制が主な理由ではなく、HTLV-1特異的T細胞自身の機能喪失が主要な要因である可能性を示唆した。成人T細胞白血病(adult T cell leukemia; ATL)は一部のヒトT細胞白血病ウイルス1型(Human T cell leukemia virus type 1; HTLV-1)感染者に発症する極めて予後不良の悪性腫瘍である。HTLV-1感染において、HTLV-1特異的T細胞性免疫は感染細胞の増殖を制御する重要な因子であるが、ATL患者ではそれが極めて低いことから、このT細胞性免疫の低下がATL発症に大きく関与していると考えられている。したがって、未だ明らかになっていないHTLV-1特異的T細胞性免疫の低下を来す機序の全容解明は、新たなATL発症予防法や治療法の開発に重要な情報を提供できると考えられる。平成24年度は、引き続き感染者のHTLV-1特異的CD8+T細胞の機能解析を行うとともに、感染者の単球より樹状細胞を誘導し、その機能解析を実施したところ、その樹状細胞は機能を保持しており、感染者に認められるTax特異的CD8+T細胞の機能喪失は抗原提示細胞の機能低下が主要な原因である可能性は低いと考えられた。そこで、抗原特異的CD8+T細胞の維持に重要であることが知られているCD4+T細胞に着目し、感染者のHTLV-1特異的CD4+T細胞の機能解析を行うため、同種骨髄移植を行い、寛解に至ったATL患者からHLA-DR1拘束性エピトープ(Tax155-167)を同定し、HLA-DR1/Tax155-167テトラマーを作製した。このテトラマーは、HTLV-1感染者のTax155-167特異的CD4+T細胞を検出することができ、HTLV-1感染における免疫抑制機序の解明に大いに貢献できると考えられる。なお、エピトープに関する結果は論文としてJournal of Immunologyに投稿し掲載された。成人T細胞白血病(adult T cell leukemia; ATL)は一部のヒトT細胞白血病ウイルス1型(Human T cell leukemia virus type 1; HTLV-1)感染者に発症する極めて予後不良の悪性腫瘍である。HTLV-1特異的T細胞性免疫は感染細胞の増殖制御に重要であるが、ATL患者ではそれが極めて低いことから、このT細胞性免疫の低下がATL発症に大きく関与していると考えられている。従って、未だ明らかになっていないHTLV-1特異的T細胞性免疫の低下を来す機序の全容解明は、新規ATL発症予防および治療法の開発に重要な情報を提供できると考えられる。本研究では、ATL患者や無症候性キャリア(AC)を含む感染者のHTLV-1特異的T細胞応答や単球の機能解析を行い、平成24年度までの研究からHTLV-1特異的CD8+T細胞応答の低い感染者がACやATL発症初期段階と考えられているくすぶり型ATL患者の中にも存在し、その機能低下はHTLV-1を認識するCD8+T細胞のみに起こっていること、またそれは単球や樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞の機能低下が主原因である可能性は低いことがわかった。最終年度では、HTLV-1特異的T細胞応答の低いATL患者の単球からDCを誘導し、抗原提示に必要な細胞表面分子の発現状況、アロT細胞刺激能、IL-12産生能および抗原特異的T細胞刺激能を指標に解析を行い、試験した大部分のATL患者の単球から機能的なDCを誘導可能であることがわかった(論文執筆中)。この結果は、ATL患者のようにHTLV-1特異的T細胞応答が抑制されているような生体内環境でも単球が機能的なDCへ分化する能力を保持していることを示している。本研究で得られた知見はHTLV-1感染における免疫抑制機序の解明に大いに貢献できると考えられる。ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)感染者におけるHTLV-1特異的CD8+T細胞応答の低下は、成人T細胞白血病(ATL)の発症に関与していると考えられている。本研究では、一部の無症候性感染者やATL患者に認められるHTLV-1特異的CD8+T細胞応答の低下は、抗原提示細胞の機能低下や感染細胞を含む制御性T細胞による能動的免疫抑制が主な理由ではなく、HTLV-1特異的T細胞自身の機能喪失が主要な要因である可能性を示唆した。ヒトT細胞白血病ウイルス1型(Human T-cell leukemia virus type 1; HTLV-1)は一部の感染者に成人T細胞白血病(Adult T cell leukemia; ATL)を引き起こす。他のウイルス感染症と同様に、感染者のHTLV-1特異的T細胞応答は感染細胞の増殖を制御する重要な因子であり、ATL発症者ではそれが極めて低いことから、HTLV-1特異的T細胞応答の低下がATL発症に大きく関与していると考えられている。このようなHTLV-
KAKENHI-PROJECT-23591414
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23591414
HTLV-1感染者における免疫抑制機序の解析
1特異的T細胞応答の低下を来す免疫抑制機序は未だ明らかになっていないが、その解明は新たなATL発症予防法や治療法の開発に重要な情報を提供できると考えられる。平成23年度では、HTLV-1感染無症候キャリア(AC)をはじめとするHTLV-1感染者におけるHTLV-1Tax特異的CD8+T細胞の頻度およびその機能を評価したところ、ACの中にTax特異的CD8+T細胞は検出されるものの、その機能がほぼ完全に損なわれているケースが存在した。しかし、このACのCMV特異的CD8+T細胞はペプチド刺激により増殖したうえ、感染細胞除去によるTax特異的CD8+T細胞の機能回復が認められなかったことから、このACで認められたTax特異的CD8+T細胞の機能喪失は、抗原提示細胞の機能低下や感染細胞による抑制が原因ではなく、Tax特異的CD8+T細胞自身の機能低下によるものである可能性が示唆された。これはHTLV-1感染者に認められる免疫抑制が無症候期にHTLV-1特異的に始まるケースがあることを示しており、ATL発症者に見られる免疫抑制の原因解明や、ATL発症予防、治療を目的とした新規免疫療法を開発する上で非常に重要な知見である。なお、この結果は論文としてRetrovirologyに投稿し掲載された。H24年度では、H23年度に引き続き、HTLV-1感染者のHTLV-1特異的T細胞の機能評価、感染者の免疫抑制状態に関する情報を収集するとともに、感染者の単球由来樹状細胞の機能解析を行い、HTLV-1特異的CD8+T細胞の機能喪失に、抗原提示細胞の機能低下が主要な原因となっている可能性は低いという結果をこれまでのところ得ている。また、CD8+T細胞の維持に重要な細胞の1つであるCD4+T細胞に着目し、その機能解析を詳細に行うため、HTLV-1特異的CD4+T細胞が認識するエピトープを同定し、HTLV-1特異的CD4+T細胞を検出するテトラマーを作製することができ、概ね順調に進んでいると考えている。H23年度では、HTLV-1感染者のHTLV-1特異的T細胞の機能評価、感染者の免疫抑制状態に関する情報を収集し、免疫抑制状態にある無症候感染者の中には、HTLV-1特異的T細胞自身の機能低下が免疫抑制の原因となっている可能性を示唆するケースが存在することを示すことができ、概ね順調に進んでいると考えている。H25年度もH24年度と同様に、HTLV-1感染者のHTLV-1特異的T細胞の機能評価、感染者の免疫抑制状態に関する情報収集、感染者の単球由来樹状細胞の機能解析を行うとともに、HTLV-1特異的CD4+T細胞のHTLV-1感染状態の検討、機能評価を実施する予定である。また、得られた結果をまとめて、HTLV-1感染によるHTLV-1特異的T細胞応答の抑制機序に関する有用な情報を提供したい。H24年度もH23年度と同様に、HTLV-1感染者のHTLV-
KAKENHI-PROJECT-23591414
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23591414
小腸上皮における薬物輸送解析のためのエンテロイドを用いた新規手法の確立
【目的】消化管吸収機構を明らかにするための既存の方法には、消化管内の生理的状態を保ったままin vitro系で評価する手法や、排出トランスポーターを簡便に評価する実験系が少ないことが問題点であった。小腸から作製されるエンテロイドは、管腔側を内側、血液側を外側にして閉じた構造を持ち、消化管内の生理的状態を維持するため、in vivo系に近いin vitro系として有用な物質輸送解析のツールになる可能性がある。本研究ではエンテロイドを用いる物質輸送実験系を確立して排出トランスポーターの機能評価へ応用することを目的とした。【方法】排出トランスポーターとしてATPを駆動力とするP-gpとMrp2に着目し、基質として蛍光物質のRh123やCDFを使用して、初代,継代,凍結保存エンテロイドを用いた取り込み実験を行った。取り込み実験後の蛍光画像の解析により、阻害剤の有無や培養条件が排出トランスポーターの輸送機能に与える影響を評価した。【結果・考察】Real-time PCRによりエンテロイドの排出トランスポーターのmRNA発現量は、継代や凍結保存により維持されるか増加することが示され、この発現量増加の原因としてエンテロイドに占める上皮細胞割合が増加することが考えられた。取り込み実験により、P-gpやMrp2によるエンテロイド内腔の基質の存在比は、P-gp阻害剤やMrp2阻害剤、ATP産生阻害剤により初代エンテロイドにおいて低下することが確認された。同様の現象は、継代または凍結保存エンテロイドにおいて、P-gpでは確認されたがMrp2では再現されなかった。これらの結果よりエンテロイドを用いてP-gpやMrp2による基質の排出を測定できることが示され、本実験系が排出トランスポーターの輸送機能に及ぼす薬物の影響を評価する有用なスクリーニング系として期待できる。マウス小腸からエンテロイドの調製に成功した。調製したエンテロイドからRNAを抽出し、小腸に発現する薬物排出トランスポーターの発現を確認した。定量的RT-PCRの手法を用いてP糖タンパク質とMRP2の発現量の培養日数による変化をみたところ、培養3日目に比べて7日目の方が多く、エンテロイドをトランスポーターの機能評価に用いる場合には、培養日数の影響を考慮して条件を設定する必要があることが示された。エンテロイドの外側から内腔への輸送は、小腸における漿膜側から頂側膜側への輸送を示す。そこで、エンテロイドを用いて、P糖タンパク質の基質である蛍光物質の輸送を、内腔の蛍光強度の変化を利用して観察した。その結果、エンテロイド内腔の蛍光強度の増強が認められたことから、基質が内腔に蓄積していることが示された。また、ここで認められたエンテロイド内腔への蛍光物質の蓄積は、氷冷下あるいはP糖タンパク質阻害剤であるキニジンやベラパミル、シクロスポリン共存下で阻害され、内腔の蛍光強度が減少した。さらに、P糖タンパク質による輸送がATPをエネルギー源とすることから、ATP産生系阻害剤を添加したところ、同様に内腔への蛍光基質の蓄積が減少した。このとき、エンテロイドの内腔に比べて周囲の細胞層の方が強い蛍光を示した。頂側膜に発現するP糖タンパク質の活性が阻害されたことにより、エンテロイド周囲の細胞内に蓄積した基質が細胞外に流出できなかったためと考えられる。これらのことから、本実験系が薬物排出タンパク質の機能を評価するのに有用であることが示唆された。一方、動物実験によって生理的条件下で消化管吸収ににP糖タンパク質による排出が優位に関与すると考えられる薬物候補が得られた。したがって今後、エンテロイドを用いても評価可能か検証する予定である。本研究は調製したエンテロイドにおける動態関連タンパク質発現の解析と物質輸送活性の解析の両面から検討している。今年度の当初計画では、タンパク質発現の解析の結果を先行する予定であったが、代謝酵素の関するデータを後回しにした。一方で、基質輸送活性に関する検討は当初計画以上に進んでおり、研究全体としてはおおむね順調に進展していると考えられる。前年度に引き続き、マウス小腸から調製したエンテロイドからRNAを抽出し、排出蛋白質であるP-糖タンパク質、MRP2、BCRPおよびナトリウム依存性グルコーストランスポーター(SGLT1)の発現を確認した。その結果、いずれのトランスポーターもマウス小腸粘膜と同様に発現しており、エンテロイドは正常組織の蛋白発現能を維持していることが示唆された。前年度の検討において、P-糖タンパク質の基質である蛍光物質を取り込ませたエンテロイドからイメージング処理の手法で断面の蛍光分布パターンを作成し比較することにより、P-糖タンパク質と相互作用する薬物をスクリーニングできる可能性を示した。そこで本年度は、蛍光画像の解析から蛍光基質取込みに対する阻害の程度を数値化(定量化)する手法の開発を試みた。明視野画像と経口画像からエンテロイドの輪郭を決定し、エンテロイド内腔およびエンテロイドを形成する細胞層それぞれの蛍光強度を積算、これらの比を算出することによりエンテロイド内腔への蛍光基質取り込みに対する阻害の程度を比較することが可能となった。この値を指標として、P-糖タンパク質と相互作用する薬物のスクリーニングや、阻害能の評価に利用できるものと期待される。消化管管腔からの吸収方向の輸送を解析するためには、エンテロイド内腔に薬液を注入する必要があるが、これまで汎用できる手法が確立されていなかった。本研究では、高倍率実体顕微鏡下で薬液を注入する手法を確立したことから、今後、吸収方向に働くトランスポーターの評価への利用も期待される。
KAKENHI-PROJECT-16K08363
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K08363
小腸上皮における薬物輸送解析のためのエンテロイドを用いた新規手法の確立
発現確認するトランスポーターの種類について、当初の計画ではアミノ酸トランスポーター等も含まれていたが、未検討である。また、代謝酵素についても検討予定であったが、蛍光分布パターンを利用したP-糖タンパク質阻害能の解析に注力したため、着手が遅れている。【目的】消化管吸収機構を明らかにするための既存の方法には、消化管内の生理的状態を保ったままin vitro系で評価する手法や、排出トランスポーターを簡便に評価する実験系が少ないことが問題点であった。小腸から作製されるエンテロイドは、管腔側を内側、血液側を外側にして閉じた構造を持ち、消化管内の生理的状態を維持するため、in vivo系に近いin vitro系として有用な物質輸送解析のツールになる可能性がある。本研究ではエンテロイドを用いる物質輸送実験系を確立して排出トランスポーターの機能評価へ応用することを目的とした。【方法】排出トランスポーターとしてATPを駆動力とするP-gpとMrp2に着目し、基質として蛍光物質のRh123やCDFを使用して、初代,継代,凍結保存エンテロイドを用いた取り込み実験を行った。取り込み実験後の蛍光画像の解析により、阻害剤の有無や培養条件が排出トランスポーターの輸送機能に与える影響を評価した。【結果・考察】Real-time PCRによりエンテロイドの排出トランスポーターのmRNA発現量は、継代や凍結保存により維持されるか増加することが示され、この発現量増加の原因としてエンテロイドに占める上皮細胞割合が増加することが考えられた。取り込み実験により、P-gpやMrp2によるエンテロイド内腔の基質の存在比は、P-gp阻害剤やMrp2阻害剤、ATP産生阻害剤により初代エンテロイドにおいて低下することが確認された。同様の現象は、継代または凍結保存エンテロイドにおいて、P-gpでは確認されたがMrp2では再現されなかった。これらの結果よりエンテロイドを用いてP-gpやMrp2による基質の排出を測定できることが示され、本実験系が排出トランスポーターの輸送機能に及ぼす薬物の影響を評価する有用なスクリーニング系として期待できる。当初計画にしたがい、以下の検討を進める。1.薬物および栄養成分の輸送に関わるトランスポーターの発現量解析2.代謝酵素の発現量解析3.エンテロイド中の絨毛様細胞の割合の把握4.エンテロイドを用いた基質輸送機能解析手法の確立本解析法がP-糖タンパク質と相互作用する薬物のスクリーニングに使用できることを検証する。薬物および栄養成分の輸送に関わるトランスポーターおよび代謝酵素の発現解析を進める。年度末に発注予定であった物品が、期限内の入荷が困難であったため別費で処理した。翌年度使用する物品の購入費とする予定。
KAKENHI-PROJECT-16K08363
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K08363
膨張宇宙での構造形成と熱史の研究
膨張宇宙での構造形成論の課題は宇宙背景放射(CMB)、銀河分布の大規模構造、深部探査などの観測の進展で得られる情報と現在の銀河天体の形状、星構成、元素組成、などについて情報との統一的理解を得ることにある。このための膨張宇宙での原始ゆらぎから星質量スケールの天体形成に至る過程の解明が必要である。従来とかく原始ゆらぎ成長の問題は大規模構造との関連だけで論じられ、また星、星団形成は銀河内部の進化問題として原始ゆらぎから分離して研究されてきた。これに対して、当研究課題では原始ゆらぎのより小スケールの部分に着目しその時間発展を明らかにする研究をした。原始ゆらぎの成長が重力収縮まで至った最大のスケールである銀河団スケールではビリアル温度はX線源に見られるような高温になるだけであるが、質量スケールを銀河質量以下に下げてくると衝撃波による加熱の程度が非平衡的な電離と電子を媒介にした水素分子形成に導く興味ある質量範囲がある。当研究ではこの原始雲の非球対称重力収縮、衝撃波加熱、水素分子形成、水素分子による冷却、放射輸送、小質量への分裂、などを詳細に調べた。赤方変移100から10辺りでの種々の天体過程には膨張宇宙の効果とCMBの存在が無視できない。これらに関して、放射天体どうイオン化に影響を与えるかをシュトレームグレン球の進化で調べた。またクエーサー形成に必要な重力崩壊のための角運動量消失を論じた。当研究のテーマでは重力、熱流体、原子分子、放射、の諸過程が何れも重要な寄与をするので数値計算においては特別な技術が要求される。これらに関する基盤的なコードの開発とインフラストラクチャーの整備を行った。CMBゆらぎの観測は大大スケールのものであり、これを当研究で関心のある小スケールにどのように外挿するかはインフレーション説などによる原始ゆらぎの形成の理論に関連してくる。これらは宇宙年齢などの宇宙論の他の問題に関連して論議されている。膨張宇宙での構造形成論の課題は宇宙背景放射(CMB)、銀河分布の大規模構造、深部探査などの観測の進展で得られる情報と現在の銀河天体の形状、星構成、元素組成、などについて情報との統一的理解を得ることにある。このための膨張宇宙での原始ゆらぎから星質量スケールの天体形成に至る過程の解明が必要である。従来とかく原始ゆらぎ成長の問題は大規模構造との関連だけで論じられ、また星、星団形成は銀河内部の進化問題として原始ゆらぎから分離して研究されてきた。これに対して、当研究課題では原始ゆらぎのより小スケールの部分に着目しその時間発展を明らかにする研究をした。原始ゆらぎの成長が重力収縮まで至った最大のスケールである銀河団スケールではビリアル温度はX線源に見られるような高温になるだけであるが、質量スケールを銀河質量以下に下げてくると衝撃波による加熱の程度が非平衡的な電離と電子を媒介にした水素分子形成に導く興味ある質量範囲がある。当研究ではこの原始雲の非球対称重力収縮、衝撃波加熱、水素分子形成、水素分子による冷却、放射輸送、小質量への分裂、などを詳細に調べた。赤方変移100から10辺りでの種々の天体過程には膨張宇宙の効果とCMBの存在が無視できない。これらに関して、放射天体どうイオン化に影響を与えるかをシュトレームグレン球の進化で調べた。またクエーサー形成に必要な重力崩壊のための角運動量消失を論じた。当研究のテーマでは重力、熱流体、原子分子、放射、の諸過程が何れも重要な寄与をするので数値計算においては特別な技術が要求される。これらに関する基盤的なコードの開発とインフラストラクチャーの整備を行った。CMBゆらぎの観測は大大スケールのものであり、これを当研究で関心のある小スケールにどのように外挿するかはインフレーション説などによる原始ゆらぎの形成の理論に関連してくる。これらは宇宙年齢などの宇宙論の他の問題に関連して論議されている。1.宇宙初期の組成からの、星サイズ(1M_<【of sun】>)の構造形成について、三体反応を取り入れた水素分子の生成を考慮して、水素分子による冷却を取り入れて計算した。この結果、角運動量が十分小さくないと、回転が収縮を阻害するためにJeans質量が十分小さくならず、小さい構造が出来にくいことを明らかにした。また、簡単のため一様密度一様温度で収縮すると仮定して計算を勧めているが、この仮定は現実的でないため、球対称や並行平板構造などある程度の対称性は仮定するにしても、密度や温度が一様でない場合の取り扱いについて、議論を進めている。2.球状星団サイズ(10^6M_<【of sun】>)の物体の生成と非線形進化について、一つの物体の質量、物体になった割合、物体中のガスと星の割合をモデルパラメーターとして採用し、単純化したモデルをつくって調べたが、初期条件依存性が大きく、十分本質を表すモデルパラメータを模索している段階であり、まだ成功していない。3.数値実験によるアプローチに関しては、大構造と小規模構造の熱的相互作用が大きく、十分精度良い数値計算を行なえるようコードの改良をはかっている。数値計算コードは、基本的なアルゴリズムを再現することに成功した。さらに、実用的なものにするための作業を継続している。・宇宙初期の組成からの原始天体の出来方について、原子過程のみでなく、原子からの放射の輸送を解く手法、および一次元の流体に原子過程を組み入れたコードを開発した。
KAKENHI-PROJECT-06452021
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06452021
膨張宇宙での構造形成と熱史の研究
両者を組み合わせることにより、一次元ではあるが放射、原子過程、流体力学を全て含む計算が可能になるため、原始天体形成の研究に必要な道具が揃ったことになる。・重力レンズによるハロ-コンパクト天体の観測データから、銀河の密度モデルの自由度を動かして光で観測される星と光っていない質量の比率に対しての知見を得た。極端なケースながら、非パリオン的な暗黒物質を含まない銀河を考える可能性も否定できないことが分かり、原始銀河の形成を考察する上で重要な示唆を与えた。・観測的な元素組成は高温のガスからの放射によるが、これが低温のガスや星などを含めた元素組成になっているとは限らない。そこで、超新星爆発による銀河の重元素による汚染を、高温のため銀河内ガス圧力が高い楕円銀河の場合について考察し、超新星爆発の影響は銀河中に広く拡散できないことが分かった。・数値実験的アプローチに関しては、動的解適応型格子の一次元での計算コードを開発し、合わせて結果の表示方法に開発を行なった。膨張宇宙での構造形成論の課題は宇宙背景放射(CMB)、銀河分布の大規模構造、深部探査などの観測の進展で得られる情報と現在の銀河天体の形状、星構成、元素組成、などについて情報との統一的理解を得ることにある。このための膨張宇宙での原始ゆらぎから星質量スケールの天体形成に至る過程の解明が必要である。従来とかく原始ゆらぎ成長の問題は大規模構造との関連だけで論じられ、また星、星団形成は銀河内部の進化問題として原始ゆらぎから分離して研究されてきた。これに対して、当研究課題では原始ゆらぎのより小スケールの部分に着目しその時間発展を明らかにする研究をした。原始ゆらぎの成長が重力収縮まで至った最大のスケールである銀河団スケールではビリアル温度はX線源に見られるような高温になるだけであるが、質量スケールを銀河質量以下に下げてくると衝撃波による加熱の程度が非平衡的な電離と電子を媒介にした水素分子形成に導く興味のある質量範囲がある。当研究ではこの原始雲の非球対称重力収縮、衝撃波加熱、水素分子形成、水素分子による冷却、放射輸送、小質量への分裂、などを詳細に調べた。赤方変移100から10辺りでの種々の天体過程には膨張宇宙とCMBの存在が無視できない。これらに関して、放射天体どうイオン化に影響を与えるかをシュトレームグレン球の進化で調べた。またクエーサー形成に必要な重力崩壊のための角運動量消失を論じた。当研究のテーマでは重力、熱流体、原子分子、放射、の諸過程が何れも重要な寄与をするので数値計算においては特別な技術が要求される。これらに関する基盤的なコードの開発とインフラストラクチャーの整備を行った。CMBゆらぎの観測は大大スケールのものであり、これを当研究で関心のある小スケールにどのように外挿するかはインフレーション説などによる原始ゆらぎの形成の理論に関連してくる。これらは宇宙年齢などの宇宙論の他の問題に関連して論議されている。
KAKENHI-PROJECT-06452021
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06452021
単身・中年・男性生活困窮者のタイプ別就労支援プログラム開発に関する研究
本研究は、生活困窮者自立支援法「自立相談支援事業」相談者のうち、単身・中年・男性の就労と健康状態(含む障害)に着目し、職歴の分析から就労阻害要因、就労継続困難要因を明らかにする。さらに、生活保護受給者の就労実態との比較検討を行う。より効果的な就労支援のために単身・中年・男性のタイプ別就労支援プログラム開発に取り組むものである。本研究は、生活困窮者自立支援法「自立相談支援事業」相談者のうち、単身・中年・男性の就労と健康状態(含む障害)に着目し、職歴の分析から就労阻害要因、就労継続困難要因を明らかにする。さらに、生活保護受給者の就労実態との比較検討を行う。より効果的な就労支援のために単身・中年・男性のタイプ別就労支援プログラム開発に取り組むものである。
KAKENHI-PROJECT-19K02270
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K02270
有機光導電体を用いたイメージセンサの応答性の改善
有機光導電体ジブロムアンサンスロン(DBAA)を用いたイメージセンサーにおいて、画像読み取り時間に直接関わる光応答性の改善を目的とした。この光応答性を改善するためにその主たる要因であるトラップ準位を温度特性、電界電流特性より検討した。1)温度特性によるトラップ準位と応答特性キャリア発生物質のDBAAとバインダーで構成した単層型センサーは応答速度が2000ms以上と遅い、このセンサーを熱刺激電流測定法(TSC法:本申請購入装置)で測定するとトラップ準位が、0.16eVと浅いことが明らかとなった。これが応答速度を遅くしている原因と考え、DBAAにキャリア輸送物質を添加したセンサーを作製して、応答速度を測定すると、1ms以下と実用的となった。同じくTSC法よりトラップ準位を測定すると0.23eVとなり、応答特性を向上させる結果となった。キャリア輸送物質の添加量を変化させたセンサーで最適な添加量が、TSC法によるトラップ準位の測定からも求められることが明らかとなった。2)電界-電流特性上記のセンサーに対して電界電流特性の測定を行い、このデータを用いてchildの式により電流性を解析したところ、キャリア輸送物質を添加したセンサーはオーム性電流が流れ、このため応答性が良くなる。これに対し、添加しないセンサーは空間電荷制限電流が流れ、キャリアの輸送効率が悪く、応答性が遅くなることが明らかとなった。有機光導電体ジブロムアンサンスロン(DBAA)を用いたイメージセンサーにおいて、画像読み取り時間に直接関わる光応答性の改善を目的とした。この光応答性を改善するためにその主たる要因であるトラップ準位を温度特性、電界電流特性より検討した。1)温度特性によるトラップ準位と応答特性キャリア発生物質のDBAAとバインダーで構成した単層型センサーは応答速度が2000ms以上と遅い、このセンサーを熱刺激電流測定法(TSC法:本申請購入装置)で測定するとトラップ準位が、0.16eVと浅いことが明らかとなった。これが応答速度を遅くしている原因と考え、DBAAにキャリア輸送物質を添加したセンサーを作製して、応答速度を測定すると、1ms以下と実用的となった。同じくTSC法よりトラップ準位を測定すると0.23eVとなり、応答特性を向上させる結果となった。キャリア輸送物質の添加量を変化させたセンサーで最適な添加量が、TSC法によるトラップ準位の測定からも求められることが明らかとなった。2)電界-電流特性上記のセンサーに対して電界電流特性の測定を行い、このデータを用いてchildの式により電流性を解析したところ、キャリア輸送物質を添加したセンサーはオーム性電流が流れ、このため応答性が良くなる。これに対し、添加しないセンサーは空間電荷制限電流が流れ、キャリアの輸送効率が悪く、応答性が遅くなることが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-07650405
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07650405
DNA修復システムに対する運動と摂取カロリー制限の相互作用
低強度運動と40%のカロリー制限を12週間継続した場合,単独では核DNAの酸化ストレスレベルを増大させたが,両者の併用によってそれは消失した.またミトコンドリアDNAにおいては,カロリー制限とは無関係に,継続的な運動が酸化損傷レベルを大きく減弱させた.しかし代表的なDNA修復酵素のmRNA発現は, 12週間の介入による顕著な変動を見せなかった.習慣的な運動やカロリー制限はDNA修復システムの中で,修復酵素の応答性には影響を及ぼさない可能性がある.低強度運動と40%のカロリー制限を12週間継続した場合,単独では核DNAの酸化ストレスレベルを増大させたが,両者の併用によってそれは消失した.またミトコンドリアDNAにおいては,カロリー制限とは無関係に,継続的な運動が酸化損傷レベルを大きく減弱させた.しかし代表的なDNA修復酵素のmRNA発現は, 12週間の介入による顕著な変動を見せなかった.習慣的な運動やカロリー制限はDNA修復システムの中で,修復酵素の応答性には影響を及ぼさない可能性がある.運動のもたらす生体への効果を検討する際には,摂取カロリーの影響をも加味し「動く」,「食べる」という生活者としての視点をもって解析することに真の意義がある.本研究は,習慣的な運動が酸化ストレスに対する耐性を向上させるか,またそれらに対してカロリー制限(CR)がどのような影響を及ぼすかを検討することを目的とする.初年度である平成22年度には,運動刺激に対する適応反応が成立するのに十分な運動期間を探索するための,基礎データ収集を行った.被験動物として7週齢Wistar系雄ラットを用い,4,8,および12週間の習慣的運動を行わせ,体重変化,摂餌量変化を正確に追跡評価した.また,肝臓サンプルを対象に核,およびミトコンドリアDNAの抽出分離を行い,それぞれのDNA酸化損傷レベルを8-bydroxy deoxyguanosine(8-OHdG)含有量の推移から検討した.12週間の体重変化は,コントロール群と運動群の間で有意な差はなかった.同様に給餌量についても,期間の主効果が認められたものの(P<0.01),群間に有意な差は観察されなかった.したがって,本研究の運動負荷は,体重,および給餌量に有意な影響を与えない強度で,極めて低い負荷であったと考えられる.しかしながら,肝臓の核,およびミトコンドリアDNAの8-OHdGレベルは運動によって有意に変動し,特に8週間ではミトコンドリアDNAの酸化的損傷が,運動群でコントロール群と比べて有意に高くなるといった変化が観察された.すなわち,極めて低い強度の運動負荷であっても,DNA修復系酵素(OGG 1,MTH 1)発現レベルが変動する可能性が考えられる.2年目以降は,これらの予備的検討結果を踏まえ,習慣的な運動にCRを組み合わせた場合の交互作用の有無を,酸化的DNA損傷修復システムの動態に焦点を当てて検証する.平成22年度の結果から,12週間の低強度の運動負荷であっても,DNA修復酵素(OGG1,MTH1)発現レベルが変動する可能性が示された.平成23-24年度には,同一運動へのカロリー制限の併用が,酸化ストレス,または酸化ストレス刺激に対するポジティブな生体適応反応に及ぼす影響を,DNA修復酵素の発現動態などから検証することを目的とした.まず平成23年度は,運動に伴う酸化ストレスへの適応反応現象として観察されると考えられる,海馬における神経栄養因子(BDNF)の増大が,カロリー制限によって修飾されるか否かを検証した.7週齢Wistar系雄ラット(n=28)を自由摂餌&非運動群,自由摂餌&運動群,カロリー制限&非運動群,カロリー制限&運動群の4群に分類した.実験期間は12週間とし,運動群には週5日の走運動を行わせた.運動負荷(30分間)は走速度10m/min,斜度5°の低強度運動(約50-55%VO2max相当)とし,カロリー制限は自由摂餌群が示した摂餌量の60%とした.試料は最終運動終了48時間後に採取した.全身性の抗酸化・酸化マーカーとして血清抗酸化力,酸化度,さらに海馬の総抗酸化能,脂質過酸化マーカー4-hydroxy-2-nonenal(4-HNE)量,BDNF量を測定した.その結果,メカニズムの詳細は不明であるが,運動とカロリー制限の単独で増大した海馬内酸化ストレスは,併用によってその上昇が抑制され,酸化ストレス度と海馬BDNF発現量との間に有意な正の相関が確認された.酸化ストレスがトリガーとなって海馬BDNF発現がアップレギュレートされたと考えられる.これらのことから運動とカロリー制限の同時介入は,酸化ストレスに対するDNA修復機構の適応反応にネガティブに作用する可能性が考えられ,平成24年度に順次解析を進めていく必要性が確認された.平成24年度は12週間の低強度運動負荷による,肝臓におけるDNA修復酵素(OGG1,MTH1)発現レベルとDNA損傷マーカーの挙動に関して,カロリー制限(CR)が及ぼす影響を評価する最終年度とした.7週齢Wistar系雄ラット(n=28)を自由摂餌&非運動群,自由摂餌&運動群,CR&非運動群,CR&運動群の4群に分類した.実験期間は12週間とし,運動群には週5日の走運動を行わせた.運動負荷(30分間)は走速度10 m/min,斜度5°の低強度運動(約50-55 % VO2max相当)とし,CRは自由摂餌群が示した摂餌量の60%とした.
KAKENHI-PROJECT-22500607
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22500607
DNA修復システムに対する運動と摂取カロリー制限の相互作用
対象試料は肝臓とし,最終運動終了48時間後に採取した.DNAの酸化マーカーとしての8-OHdG量を肝臓の核とミトコンドリアに分離して評価したところ,核8-OHdG量がCRで増大することが示されたが,運動を併用するとその変化が打ち消された.またミトコンドリア8-OHdG量には「運動」の主効果が確認され,12週間の定期的な低強度運動によってミトコンドリアDNAの酸化損傷が減弱されることが確認された.ヒトをはじめとした動物のミトコンドリアDNAの酸化損傷が,各種疾病の直接的・間接的原因になると指摘されており,長期的な低強度運動の予防医学的意義の一端が示されたと考えられる.しかしながら代表的DNA修復酵素であるOGG1とMTH1のmRNA発現レベルは,総DNA当たりで比較すると運動やCRの影響をほとんど受けておらず,DNA修復制御機構の解釈の難しさを示唆する結果となった.一方,長寿遺伝子と考えられるSIRT1は運動の影響を受けずに,CRによってのみ発現亢進が観察された.したがって少なくとも肝臓レベルでは,DNA損傷を抑制しつつ,長寿遺伝子を賦活するために,低強度運動とCRを組み合わせることの有用性を指摘できる可能性がある.長期的な運動にカロリー制限を加えた場合,生体にもたらされるポジティブな適応がどのように影響されるかを検証することを目的とした.DNA修復酵素の適応を評価することを最終目的としているが,今年度は脳において,両者の相互作用によって正の適応が減弱される可能性を示唆した.部位特異性を考慮しつつ,肝臓など他部位における応答を検証する最終段階に達している.24年度が最終年度であるため、記入しない。運動やカロリー制限が生体内における一種の刺激となって,ポジティブな適応現象が惹起される「ホルミシス効果」を想定した研究はさらに詳細に検討されるべきである.従来から指摘される「適度な刺激」を記述することが予防医学的見地から非常に重要であり,本研究課題はその一側面を支える仮説を明らかにしようとしている.そのため人への還元を視野に入れ,運動やカロリー制限の具体的方法に関して,さらに多角的に検証を加えていくことが求められる.24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22500607
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22500607
遺伝子大量発現による先天代謝異常症の病態研究及び治療法の開発
先天代謝異常症の病態に関して、遺伝子レベルではもちろん、直接的に疾患を規定すると考えられる蛋白質並びに細胞レベルでの解明を目指して、研究を行った。対象疾患として、ファブリー病(α-ガラクトシダーゼ欠損症)とガラクトシアリドーシス(保護蛋白質欠損症)の2つのリソソーム蓄積症をモデルに選んだ。ファブリー病の詳細な臨床的研究を行い、従来知られている典型的臨床像を示す古典型の他に、穏やかな経過をとり、心筋障害を主とする亜型が、存在することを明らかにした。古典型と亜型ファブリー病の病因となる遺伝子変異を同定し、遺伝型と表現型の関係を解析した。前者では、欠失、ナイセンス変異、スプライシング変異やアミノ酸置換など、病因となる変異は多様であるが、最終的に発現される酵素活性は、ほぼ完全に欠損を示した。一方、亜型でみられた変異は、当該遺伝子の特定領域に集中したアミノ酸置換で、いずれも残存酵素活性を示し、このわずかな活性の存在が臨床像の違いを来たすものと考えられた。バキュロウイルス/昆虫細胞の系を用いて、α-ガラクトシダーゼの大量産生系を作製した。発現された酵素蛋白質は、酵素学的性質において、ヒト臓器から精製された酵素と変わりなく、その投与により、患者由来の培養細胞中の酵素活性を回復させた。今後、標的組織への取り込みの効率を上げることにより、酵素補充療法に使用可能と考えられた。基質に対する特異抗体を用いた免疫蛍光染色法と共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いた画像解析法とを組み合わせ、細胞中の基質蓄積度を解析するシステムを作り、ファブリー病の保因者診断法を開発した。ガラクトシアリドーシスの病因となる多くの病因遺伝子変異を同定した。また、ヒト保護蛋白質遺伝子を哺乳類由来の細胞中で発現させ、産物の性状を解析した。その結果、保護蛋白質は、保護機能の他に、それ自体が酵素活性を持つ多機能蛋白であることが示された。先天代謝異常症の病態に関して、遺伝子レベルではもちろん、直接的に疾患を規定すると考えられる蛋白質並びに細胞レベルでの解明を目指して、研究を行った。対象疾患として、ファブリー病(α-ガラクトシダーゼ欠損症)とガラクトシアリドーシス(保護蛋白質欠損症)の2つのリソソーム蓄積症をモデルに選んだ。ファブリー病の詳細な臨床的研究を行い、従来知られている典型的臨床像を示す古典型の他に、穏やかな経過をとり、心筋障害を主とする亜型が、存在することを明らかにした。古典型と亜型ファブリー病の病因となる遺伝子変異を同定し、遺伝型と表現型の関係を解析した。前者では、欠失、ナイセンス変異、スプライシング変異やアミノ酸置換など、病因となる変異は多様であるが、最終的に発現される酵素活性は、ほぼ完全に欠損を示した。一方、亜型でみられた変異は、当該遺伝子の特定領域に集中したアミノ酸置換で、いずれも残存酵素活性を示し、このわずかな活性の存在が臨床像の違いを来たすものと考えられた。バキュロウイルス/昆虫細胞の系を用いて、α-ガラクトシダーゼの大量産生系を作製した。発現された酵素蛋白質は、酵素学的性質において、ヒト臓器から精製された酵素と変わりなく、その投与により、患者由来の培養細胞中の酵素活性を回復させた。今後、標的組織への取り込みの効率を上げることにより、酵素補充療法に使用可能と考えられた。基質に対する特異抗体を用いた免疫蛍光染色法と共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いた画像解析法とを組み合わせ、細胞中の基質蓄積度を解析するシステムを作り、ファブリー病の保因者診断法を開発した。ガラクトシアリドーシスの病因となる多くの病因遺伝子変異を同定した。また、ヒト保護蛋白質遺伝子を哺乳類由来の細胞中で発現させ、産物の性状を解析した。その結果、保護蛋白質は、保護機能の他に、それ自体が酵素活性を持つ多機能蛋白であることが示された。先天代謝異常症の分子レベルでの病態を明らかにすると共に、本格的な酵素補充療法を開発するために、ファブリ-病をモデルとして、その欠損酵素であるヒトαーガラクトシダ-ゼの大量発現系の作製を試みた。発現系としては、糖蛋白産生に適したバキュロウイルス/昆虫細胞系を用いた。正常ヒトαーガラクトシダ-ゼのcDNAを組み込んだリコンビナントウィルスを昆虫由来のSf9細胞に感染させると、αーガラクトシダ-ゼ酵素蛋白が培地中に増加し、培地100ml(2×10^8細胞)当たり0.51mgのαーガラクトシダ-ゼが産生された。この発現系では、培地への酵素排出が可能なため、αーガラクトシダ-ゼは、3種のカラムクロマトグラフィ-操作のみで、容易に精製された。この精製酵素は、分子量44kDaで、そのアミノ末端のアミノ酸配列を決定したところ、最初の50残基がヒト肺αーガラクトシダ-ゼのそれと完全に一致した。従って、本遺伝子大量発現系で作られたαーガラクトシダ-ゼは、ヒト細胞で作られた酵素と同様にシグナルペプチドの切断が起っている事が判明した。至適pHやKm値などの酵素学的性質は、ヒト臓器由来の酵素のそれと差がみられなかったが、ゲルろ過による実験で、組み換えαーガラクトシダ-ゼは単量体として存在する事が示され、ヒト臓器由来のそれが2量体として存在する事との間に差異がみられた。組み換えαーガラクトシダ-ゼをファブリ-病患者由来の線維芽
KAKENHI-PROJECT-03670516
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03670516
遺伝子大量発現による先天代謝異常症の病態研究及び治療法の開発
細胞の培養液中に加えると、時間経過と共に、細胞のαーガラクトシダ-ゼ活性の増加が認められた。そして、2日後には正常の36%の値に達した。今後、ファブリ-病での主な障害組織である血管系への酵素の取り込みを増大させる事で極めて有効な治療法の開発が期待できる。また、ファブリ-病の臨床表現型を決定する遺伝子変異を同定したが、その変異蛋白の発現により詳細な病態の研究が可能になった。ファブリー病でみられるα-ガラクトシダーゼ(α-Gal)遺伝子上の変異が、α-Galの機能や安定性に対してどう影響するかを明らかにすることは、α-Galの機能発現に必要な構造を理解する上で大きな意義を持つ。これまでに発見されたファブリー病の病因となるアミノ酸置換は、α-Gal遺伝子のエクソン2と6とに集中している。この部分は、α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ(α-NAGA)との間で相同性が高い領域に相当する。この領域の機能を調べるため、α-Gal、cDNAを基礎として、そのエクソン2またはエクソン6、さらに両方の部分をα-NAGAの当該塩基配列と置換させた組み換えcDNAを作製した。これをバキュロウイルス/昆虫細胞の大量発現系を用いて発現させ、3種のキメラ蛋白を作って、その性状を解析した。その結果、α-Galの領域4387と領域259286(番号はアミノ酸配列番号)は分子内で相互に作用し、基質の非還元末端ガラストーク残基を認識して、活性部位を形成していることが示唆された。またin vitro mutagenesisの結果から、グルタミン280とスレオニン282が直接活性発現に関与する部位と考えられた。以上から、α-Gal遺伝子のエクソン2または6の変異は、ファブリー病の病態に深く関与すると思われた。また、ファブリー病の病態を細胞レベルで分析するため、基質であるグロボトリアオシルセラミドに対するモノクローナル抗体を用いた間接螢光抗体法で細胞を染色し、反応で得られた螢光をレーザー走査型共焦点顕微鏡で画像解析するシステムを作製した。これにより、ファブリー病ヘテロ接合体由来の細胞群では、基質が蓄積している細胞とそうでない細胞とのモザイクの状態にあること、古典型ファブリー病細胞は、亜型のそれに比べて細胞あたりの基質蓄積量が多いことがわかり、臨床試験にも応用可能と思われた。ファブリー病(alpha-ガラクトシダーゼ欠損症)の病因となる当該遺伝子上の変異を多数同定し、遺伝型と臨床表現型との関連を研究した。このうち、臨床的に緩やかな経過をとり、主に心筋障害を来たす亜型の原因となるQ279Eという変異に注目した。この変異の位置は、発現酵素蛋白質のうち、基質のグロボトリアオシルセラミドの末端にalpha結合したガラクトース残基を認識する領域の近傍に相当した。バキュロウイルスの系を用いてQ279Eの変異遺伝子を発現させ、精製発現酵素蛋白を解析した。変異蛋白質は、VmaxやKmについては正常酵素蛋白質のそれと差がなかったが、中性pHで著明に不安定であった。変異酵素は、200mMのガラクトース添加で安定化された。また、この変異遺伝子をCOS-1細胞で発現させた場合、並びにファブリー病患者由来の細胞を培養した場合、培養液中にガラクトースを加えておくと、alpha-ガラクトシダーゼ活性が著明に増加した。Q279
KAKENHI-PROJECT-03670516
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03670516
親子心中の国際的比較による研究
我が国に頻発する親子心中の解明のため,国際的比較を試みた.本年度の作業仮説は,我が国の親子心中が韓国・台湾・東南アジア地域に見られるものと同種のものであること,即ち親子心中はこれらの国々に共通する土壌の上に見られること,であった.これは次年度の仮説,一部の論者の言うヨーロロッパ諸国などに認められる親子心中に類似の現象,即ち子殺しの後の親の自殺は親子心中とは似て非なるものであり発生の基盤が異なること,と対をなすものである.これに基づく本年度の研究経過と得られた知見は,つぎのようである.1.我が国の親子心中-(1)戦前の小峰茂之の研究の原資料を再分析し,昭和初期の多発の中に本現象の原型を求めた.(2)戦後の新聞記事の分析からも現象の継続性が見られたが,近年その発生は急減しつつあり現象解明の手掛りとなっている.2.韓国-1973年の現地での予備調査をもとに,同地の新聞記事を分析した.その様相は,わが国の戦前から1950年代のものと多くの相似点が認められる.3.台湾-RIN,H.の研究にならい同地の新聞記事とわが国のものとの比較を行った.若干の相違はあるものの両者に多くの共通点が見られる.4.ホンコン・タイ・ベトナムなど東南アジア地域--各国の出先機関・新聞社・団体などを通じて資料を蒐集する一方,在日該国人からの聞き取り調査を実施した.これらの作業によって当初の仮説,即ち我が国の親子心中とこれら諸国のそれとの相似性がおおむね検証されたと考えられる.我が国に頻発する親子心中の解明のため,国際的比較を試みた.本年度の作業仮説は,我が国の親子心中が韓国・台湾・東南アジア地域に見られるものと同種のものであること,即ち親子心中はこれらの国々に共通する土壌の上に見られること,であった.これは次年度の仮説,一部の論者の言うヨーロロッパ諸国などに認められる親子心中に類似の現象,即ち子殺しの後の親の自殺は親子心中とは似て非なるものであり発生の基盤が異なること,と対をなすものである.これに基づく本年度の研究経過と得られた知見は,つぎのようである.1.我が国の親子心中-(1)戦前の小峰茂之の研究の原資料を再分析し,昭和初期の多発の中に本現象の原型を求めた.(2)戦後の新聞記事の分析からも現象の継続性が見られたが,近年その発生は急減しつつあり現象解明の手掛りとなっている.2.韓国-1973年の現地での予備調査をもとに,同地の新聞記事を分析した.その様相は,わが国の戦前から1950年代のものと多くの相似点が認められる.3.台湾-RIN,H.の研究にならい同地の新聞記事とわが国のものとの比較を行った.若干の相違はあるものの両者に多くの共通点が見られる.4.ホンコン・タイ・ベトナムなど東南アジア地域--各国の出先機関・新聞社・団体などを通じて資料を蒐集する一方,在日該国人からの聞き取り調査を実施した.これらの作業によって当初の仮説,即ち我が国の親子心中とこれら諸国のそれとの相似性がおおむね検証されたと考えられる.
KAKENHI-PROJECT-62510108
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62510108
生体イメージングによる悪性腫瘍の抗体療法マウスモデル樹立
本研究の目的は、申請者が樹立した生体イメージングに最適化された高度免疫不全マウスを用いて、ヒト悪性腫瘍の抗体療法モデルマウスを樹立することである。そのために、無毛高度免疫不全マウスの樹立と高度免疫不全マウスへのヒト悪性リンパ腫と胆管細胞癌の移植系と抗腫瘍療法の評価系を構築した。ヒト原発性滲出性悪性リンパ腫移植モデル及びヒト胆管細胞がんモデルにおいて抗CD47抗体及び抗IL-6R抗体、抗VEGF抗体の有用性が示された。また、高度免疫不全マウス体内でヒトNK細胞が生着・増殖する系を構築した。本研究の目的は、申請者が樹立した生体イメージングに最適化された高度免疫不全マウスを用いて、悪性腫瘍抗体療法のマウスモデルを樹立することである。特に悪性リンパ腫と胆管細胞癌のマウスモデルを用いて、これらの腫瘍に対する抗体とヒトNK細胞を介したAntibody-dependent cell cytotoxicity (ADCC)の有効性を確認する評価系を構築する。抗体は、抗CD47抗体と抗CD147抗体を用いて、これらの抗体の臨床応用の可能性を探る。平成25年度は、以下の2つの研究を遂行した。1.原発性滲出性悪性リンパ腫(Primary effusion lymphoma;PEL)マウスモデルを用いた抗ヒトCD47抗体療法の有用性の検討: PEL細胞ではCD47が高発現していることを確認した。PEL細胞とマクロファージの共培養系に抗CD47抗体を添加したところ、マクロファージによる貪食の増加を確認した。また、PELマウスモデルに抗CD47抗体を100μg/マウス週3回腹腔内投与したところ、腫瘍性腹水の大幅な減少が認められた。これらの結果から、PELに対する抗CD47抗体の有効性が期待できる(Eur J Cancer in press)。2.胆管細胞癌同所移植モデルによる抗ヒトCD47抗体療法の有用性の検討:Balb/c Rag-2/Jak3二重欠損マウス(Balb/c R/Jマウス)肝臓にmCherrry発現ヒト胆管細胞癌細胞株(M213-mCherry)を移植したところ、生着が認められた。本マウスに抗CD47抗体を100μg/マウス週3回腹腔内投与したところ、腫瘍の縮小が認められた。これらの結果から、CD47を高発現する腫瘍に対する抗ヒトCD47抗体療法の有用性が示唆された。また、高度免疫不全マウスへのヒト腫瘍細胞移植系は、抗体療法の評価に有用であることが示された。本研究の目的は、申請者が樹立した生体イメージングに最適化された高度免疫不全マウスを用いて、悪性腫瘍抗体療法のマウスモデルを樹立することである。特に悪性リンパ腫と胆管細胞癌のマウスモデルを用いて、これらの腫瘍に対する抗体とヒトNK細胞を介したAntibody-dependent cell cytotoxicity (ADCC)の有効性を確認する評価系を構築する。抗体は、抗CD47抗体と抗CD147抗体を用いて、これらの抗体の臨床応用の可能性を探る。平成26年度は、以下の2つの研究を遂行した。1.原発性滲出性悪性リンパ腫(Primary effusion lymphoma;PEL)マウスモデルを用いた抗ヒトVEGF抗体療法の有用性の検討: PEL細胞ではVEGFを分泌していることを確認した。PELマウスモデルに抗VEGF7抗体を100μg/マウス週3回腹腔内投与したところ、腫瘍性腹水の大幅な減少が認められた。これらの結果から、PELに対する抗VEGF抗体の有効性が期待できる。2.胆管細胞癌同所移植モデルによる抗ヒトVEGF抗体療法の有用性の検討:ELISA法により胆管細胞癌は、VEGFを大量に産生していることが判明した。そのため、Balb/c Nude Rag-2/Jak3二重欠損マウス(Nude R/Jマウス)皮下にヒト胆管細胞癌細胞株(M213)を移植し抗VEGF抗体を100μg/マウス週3回腹腔内投与したところ、腫瘍の縮小が認められた。これらのマウスでは、血管新生が阻害されていた。また、Acetazolamideを併用したところ、腫瘍抑制の相乗効果が認められた。これらの結果から、VEGFを分泌する腫瘍に対する抗ヒトVEGF抗体療法の有用性が示唆された。また、高度免疫不全マウスへのヒト腫瘍細胞移植系は、抗体療法の評価に有用であることが示された。本研究の目的は、申請者が樹立した生体イメージングに最適化された高度免疫不全マウスを用いて、悪性腫瘍抗体療法のマウスモデルを樹立することである。特に悪性リンパ腫と胆管細胞癌のマウスモデルを用いて、これらの腫瘍に対する抗体とヒトNK細胞を介したAntibody-dependent cell cytotoxicity (ADCC)の有効性を確認する評価系を構築し、その臨床応用の可能性を探る。平成27年度は、以下の研究を遂行した。2.胆管細胞がん移植モデルによる抗ヒトVEGF抗体療法の有用性の検討:ELISA法により胆管細胞癌は、VEGFを大量に産生していることが判明した。そのため、Balb/c Nude Rag-2/Jak3二重欠損マウス(Nude R/Jマウス)皮下にヒト胆管細胞癌細胞株(M213)を移植し抗VEGF抗体を100μg/マウス週3回腹腔内投与したところ、腫瘍の縮小が認められた。これらのマウスでは、血管新生が阻害されていた。
KAKENHI-PROJECT-25460499
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25460499
生体イメージングによる悪性腫瘍の抗体療法マウスモデル樹立
また、Acetazolamideを併用したところ、腫瘍抑制の相乗効果が認められた。これらの結果から、VEGFを分泌する腫瘍に対する抗ヒトVEGF抗体療法の有用性が示唆された。また、高度免疫不全マウスへのヒト腫瘍細胞移植系は、抗体療法の評価に有用であることが示された。3.ヒトNK細胞移植マウスの樹立:様々な高度免疫不全マウスを樹立し、ヒトNK細胞の移植が可能である事を示した。本研究の目的は、申請者が樹立した生体イメージングに最適化された高度免疫不全マウスを用いて、ヒト悪性腫瘍の抗体療法モデルマウスを樹立することである。そのために、無毛高度免疫不全マウスの樹立と高度免疫不全マウスへのヒト悪性リンパ腫と胆管細胞癌の移植系と抗腫瘍療法の評価系を構築した。ヒト原発性滲出性悪性リンパ腫移植モデル及びヒト胆管細胞がんモデルにおいて抗CD47抗体及び抗IL-6R抗体、抗VEGF抗体の有用性が示された。また、高度免疫不全マウス体内でヒトNK細胞が生着・増殖する系を構築した。ヒト胆管細胞癌の同所移植モデルを樹立した。抗CD47抗体と抗VEGF抗体の有用性をヒト胆管細胞癌と悪性リンパ腫のマウスモデルを用いて証明した。また、培養系における抗CD47抗体活性評価系の確立し、研究成果の一部は既に英文論文として受理されていることなど、研究は概ね順調に進展している。実験血液学ヒト胆管細胞癌の同所移植モデルと原発性滲出性悪性リンパ腫マウスモデルを用いて、ヒト抗CD147抗体等の有効性を検証する。また、ヒトの造血・免疫系を構築したマウスとヒトNK細胞を増殖させたマウスを用いて、NK細胞によるAntibody-dependent cell cytotoxicity (ADCC)活性を評価する系を樹立する。ヒト胆管細胞癌の同所移植モデルを樹立した。抗CD47抗体の有用性をヒト胆管細胞癌と悪性リンパ腫のマウスモデルを用いて証明した。また、培養系における抗CD47抗体活性評価系の確立し、研究成果の一部は既に英文論文として受理されている。平成26年度は、マウスを用いた実験を行うにあたり、主にin vitroにおける条件検討を行っていた。培養系の実験ではそれほど費用がかからないこと、高度免疫不全マウスを用いた実験では比較的高額の費用がかかること、マウス実験は同時期に行った方が効率よく行えることから、研究費を平成27年度に繰り越した。平成27年度は最終年度であり、複数のマウスを用いた実験を計画している。平成25年度の樹立したヒト胆管細胞癌の同所移植モデルと原発性滲出性悪性リンパ腫マウスモデルを用いて、ヒト抗CD147抗体の有効性を検証する。また、ヒトの造血・免疫系を構築したマウスとヒトNK細胞を増殖させたマウスを用いて、NK細胞によるAntibody-dependent cell cytotoxicity (ADCC)活性を評価する系を樹立する。平成27年度は、様々な抗体を用いたマウス実験を計画している。マウス実験は同時期に行った方が効率よく少ない費用で行うことができることから、マウス実験の多くを平成27年度に行うように計画した。マウス投与に必要な量の抗体作成、必要数のマウスの繁殖や解析にかかる費用等を考慮して、平成26年度からの繰越額を用いると十分なマウス実験を行うことができる。
KAKENHI-PROJECT-25460499
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25460499
米国の国際文化政策に関する調査研究-日本の対中南米教育政策との比較を中心に-
平成5年度に注目したところの海外アメリカ人学校の特徴として、1.自然発生的な発展、2.海外アメリカ人学校相互の組織化、コミュニケーションの充実、3.対外政策との関連、4.中南米は海外アメリカ人学校の現地化が最も進んでおり、現地の名門校として根付いていることが少なくないこと、などの点について平成6年度は、それらの特徴を支える仕組を探ることが作業の中心となった。まず、その発生であるが、中南米最古のアメリカ人学校(在メキシコ)の例でみると、アメリカ人コミュニティーの成長と軌を一にして拡大する中で、各国人子弟を包含しその支持を得ていたことが注目される。自立の精神に基づき、各個人の幸福を相互に尊重する教育のあり方が支持をよんだと考えられる。学校相互の関係は、相互の蓄積を持ち寄る場が作られており、教材研究センターが存在するなど組織化が充実している他、認可団体などを通してアメリカ本国との関係も深いことが多い。対外政策との関連はむしろ援助・留学生政策が緊密に関連しているようだ。中南米での現地化については、各学校によりケースが異なることがわかった。いずれも英語を主たる教授用語としながら公認の学校としてのステイタスを有するが、その方法・形態は多様である。共通の組織をもちながらも、外国人コースとホストカントリー市民とを分け、内部に二つの学校が併存するようなケース、現地カリキュラムをオプションとし、全員がアメリカカリキュラムを履修するケース、またはホストカントリーかアメリカかどちらかのカリキュラムを選択するケース、その他の場合など、多様である。学校の歴史的発展の仕方と、原則として学校の自助努力を中心に、それに若干の援助を行うという政府の政策とが現在のあり方を形作ってきたものと考えられる。また、研究の過程で、留学生交流と教育援助もまた米国の国際教育・文化政策分野において大きな重要性を持っていることが一層明らかになった。これらは民間団体の他、国際開発庁や、米国に本拠を置く国際機関を通じて、様々な形で中南米諸国に浸透している。先の課題と合せ、その点を追究することを今後の課題としたい。平成5年度に注目したところの海外アメリカ人学校の特徴として、1.自然発生的な発展、2.海外アメリカ人学校相互の組織化、コミュニケーションの充実、3.対外政策との関連、4.中南米は海外アメリカ人学校の現地化が最も進んでおり、現地の名門校として根付いていることが少なくないこと、などの点について平成6年度は、それらの特徴を支える仕組を探ることが作業の中心となった。まず、その発生であるが、中南米最古のアメリカ人学校(在メキシコ)の例でみると、アメリカ人コミュニティーの成長と軌を一にして拡大する中で、各国人子弟を包含しその支持を得ていたことが注目される。自立の精神に基づき、各個人の幸福を相互に尊重する教育のあり方が支持をよんだと考えられる。学校相互の関係は、相互の蓄積を持ち寄る場が作られており、教材研究センターが存在するなど組織化が充実している他、認可団体などを通してアメリカ本国との関係も深いことが多い。対外政策との関連はむしろ援助・留学生政策が緊密に関連しているようだ。中南米での現地化については、各学校によりケースが異なることがわかった。いずれも英語を主たる教授用語としながら公認の学校としてのステイタスを有するが、その方法・形態は多様である。共通の組織をもちながらも、外国人コースとホストカントリー市民とを分け、内部に二つの学校が併存するようなケース、現地カリキュラムをオプションとし、全員がアメリカカリキュラムを履修するケース、またはホストカントリーかアメリカかどちらかのカリキュラムを選択するケース、その他の場合など、多様である。学校の歴史的発展の仕方と、原則として学校の自助努力を中心に、それに若干の援助を行うという政府の政策とが現在のあり方を形作ってきたものと考えられる。また、研究の過程で、留学生交流と教育援助もまた米国の国際教育・文化政策分野において大きな重要性を持っていることが一層明らかになった。これらは民間団体の他、国際開発庁や、米国に本拠を置く国際機関を通じて、様々な形で中南米諸国に浸透している。先の課題と合せ、その点を追究することを今後の課題としたい。現在までに収集した資料の分析や、インタビュー調査により、以下のことが明らかになっている。1.中南米最古の海外アメリカ人学校の例をたどり、各種の資料から判断した結果、海外アメリカ人学校の多くは海外にすむアメリカ人コミュニティーの内部で自発的に始まった教育活動が次第に発展し、その過程で自然に第三国やホストカントリーの協力を得て、現在の姿となった。アメリカ人学校のオープンな性格はその歴史の中ではぐくまれてきたものである。一方、海外日本人学校は歴史が浅く、成立の経緯が示すように、政府のバックアップが大きく、管主導型でる。日本人コミュニティーのあり方もまだ模索の段階といえる。これらの結果から、コミュニティーの成熟度が学校のあり方を大きく規定するのであり、海外での外国人としてのコミュニティー形成の実情について研究が今後必要である。2.海外アメリカ人学校は世界中に展開しているが、学校相互間を結ぶコミュニケーションの方法がすでにかなり発達している。ヨーロッパに1、アフリカに2、中東・南アジアに1、中南米に5の団体が組織されており、その活動も、教員のみならず生徒のさまざまな競技会などにまで発展している。行われべき教育の目的が明らかであるために、海外学校としてのアイデンティティが確立されていることが、その基盤となっている。3.海外アメリカ人学校への政府援助の開始は、中南米におけるアメリカの対枢軸国政策の一環であった。海外アメリカ人学校はアメリカの対外政策と深く関連している。
KAKENHI-PROJECT-05610225
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05610225
米国の国際文化政策に関する調査研究-日本の対中南米教育政策との比較を中心に-
4.中南米は海外アメリカ人学校の現地化がもっとも進んだ地域であり、しばしばアメリカ市民を上回るホストカントリーの市民を入学させており、地域の名門校として根付いている。しかしながら、中南米の社会体制の中で、階層性を強く反映する存在となっている。平成5年度に注目したところの海外アメリカ人学校の特徴として、1.自然発生的な発展、2.海外アメリカ人学校相互の組織化、コミュニケーションの充実、3.対外政策との関連、4.中南米は海外アメリカ人学校の現地化が最も進んでおり、現地の名門校として根付いていることが少なくないこと、などの点について平成6年度は、それらの特徴を支える仕組を探ることが作業の中心となった。まず、その発生であるが、中南米最古のアメリカ人学校(在メキシコ)の例でみると、アメリカ人コミュニティーの成長と軌を一にして拡大する中で、各国人子弟を包含しその支持を得ていたことが注目される。自立の精神に基づき、各個人の幸福を相互に尊重する教育のあり方が支持をよんだと考えられる。学校相互の関係は、相互の蓄積を持ち寄る場が作られており、教材研究センターが存在するなど組織化が充実している他、認可団体などを通してアメリカ本国との関係も深いことが多い。対外政策との関連はむしろ援助・留学生政策が緊密に関連しているようだ。中南米での現地化については、各学校によりケースが異なることがわかった。いずれも英語を主たる教授用語としながら公認の学校としてのステイタスを有するが、その方法・形態は多様である。共通の組織をもちながらも、外国人コースとホストカントリー市民とを分け、内部に二つの学校が併存するようなケース、現地カリキュラムをオプションとし、全員がアメリカカリキュラムを履修するケース、またはホストカントリーかアメリカかどちらかのカリキュラムを選択するケース、その他の場合など、多様である。学校の歴史的発展の仕方と、原則として学校の自助努力を中心に、それに若干の援助を行うという政府の政策とが現在のあり方を形作ってきたものと考えられる。また、研究の過程で、留学生交流と教育援助もまた米国の国際教育・文化政策分野において大きな重要性を持っていることが一層明らかになった。これらは民間団体の他、国際開発庁や、米国に本拠を置く国際機関を通じて、様々な形で中南米諸国に浸透している。先の課題と合せ、その点を追究することを今後の課題としたい。
KAKENHI-PROJECT-05610225
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05610225
縄文時代クリ利用実態復元のための現生・出土クリに関する基礎的研究
これまでの愛知県小原村での19992002年度の4年間の野生クリの収穫量・収穫期間調査結果をふまえ、2003年度もこの調査を継続して行った。調査の方法としては観察対象樹24本を用いて、これらのクリの木で秋期に実が落ちはじめたら、熟して落ちたクリの実を毎日それぞれの木ごとにに採集して持ち帰った。調査期間は約2ヶ月間は毎日名古屋大学から小原村にクリ採集に通った。採集した1つ1つの実について、木ごとに通し番号をつけ、長さ・幅・厚さを計測し、さらに定温乾燥機によって80°Cで48時間乾燥後に重量を計測し、記録した。この作業を全てのクリの実が落ち終わるまで続けた。この5年間の調査データから収穫量の年変動サイクル等について分析し、その結果を雑誌「考古学と自然科学」47号に「野生クリ(Castanes crenata)の収穫量の年変動について」として発表した。さらに野生クリの特性の地域差を考えるために、2004年の秋には岐阜県恵那市・中津川市において同様の野生クリ採集調査を行った。調査の方法としては、調査地点を恵那市で3地点、中津川市で1地点の計4地点選び、野生クリと思われる調査対象木を10本選定した。これらのクリの木で秋期に実が落ちはじめたら、熟して落ちたクリの実を1日おきに採集することとした。実を毎日採集しないので、実が動物に食べられることを防ぐために、対象木の樹幹を投影した(クリの実が落ちると予想される)範囲には地上に周囲を高くしたネットを設置した。採集した1つ1つの実について、木ごとに通し番号をつけ、長さ・幅・厚さを計測し、さらに定温乾燥機によって80°Cで48時間乾燥後に重量を計測し、記録した。この作業を全てのクリの実が落ち終わるまで続けた。この調査の結果から、縄文人のクリ採集のサイクルについての考察を雑誌「動物考古学」22号に「縄文人はクリを毎日採集したのか?」として発表した。これまでの愛知県小原村での19992002年度の4年間の野生クリの収穫量・収穫期間調査結果をふまえ、2003年度もこの調査を継続して行った。調査の方法としては観察対象樹24本を用いて、これらのクリの木で秋期に実が落ちはじめたら、熟して落ちたクリの実を毎日それぞれの木ごとにに採集して持ち帰った。調査期間は約2ヶ月間は毎日名古屋大学から小原村にクリ採集に通った。採集した1つ1つの実について、木ごとに通し番号をつけ、長さ・幅・厚さを計測し、さらに定温乾燥機によって80°Cで48時間乾燥後に重量を計測し、記録した。この作業を全てのクリの実が落ち終わるまで続けた。この5年間の調査データから収穫量の年変動サイクル等について分析し、その結果を雑誌「考古学と自然科学」47号に「野生クリ(Castanes crenata)の収穫量の年変動について」として発表した。さらに野生クリの特性の地域差を考えるために、2004年の秋には岐阜県恵那市・中津川市において同様の野生クリ採集調査を行った。調査の方法としては、調査地点を恵那市で3地点、中津川市で1地点の計4地点選び、野生クリと思われる調査対象木を10本選定した。これらのクリの木で秋期に実が落ちはじめたら、熟して落ちたクリの実を1日おきに採集することとした。実を毎日採集しないので、実が動物に食べられることを防ぐために、対象木の樹幹を投影した(クリの実が落ちると予想される)範囲には地上に周囲を高くしたネットを設置した。採集した1つ1つの実について、木ごとに通し番号をつけ、長さ・幅・厚さを計測し、さらに定温乾燥機によって80°Cで48時間乾燥後に重量を計測し、記録した。この作業を全てのクリの実が落ち終わるまで続けた。この調査の結果から、縄文人のクリ採集のサイクルについての考察を雑誌「動物考古学」22号に「縄文人はクリを毎日採集したのか?」として発表した。研究代表者はこれまでにも愛知県小原村で19992002年度の4年間に渡って、野生クリの収穫量・収穫期間調査を行ってきたが、2003年度もこの調査を継続して行った。調査の方法としては、19992002年度の調査で使用した観察対象樹24本を用いて、これらのクリの木で秋期に実が落ちはじめたら、熟して落ちたクリの実を毎日それぞれの木ごとに採集して持ち帰った。調査期間は約2ヶ月間であるが、この期間は毎日名古屋大学から小原村にクリ採集に通った。採集した1つ1つの実について、木ごとに通し番号をつけ、長さ・幅・厚さを計測し、さらに定温乾燥機によって80°Cで48時間乾燥後に重量を計測し、記録した。この作業を全てのクリの実が落ち終わるまで続け、各観察対象樹ごとの収穫期間の長さ・その期間中における落果数の日変動・実の平均重量を記録した。クリが縄文時代の主要な食料ならば、年による収穫量の変動こそが人口扶養力を左右する大きな問題であるが、この5年問の調査データから収穫量の年変動サイクルや、年変動は地域を単位とするのか、それとも木ごとに独立で変動するのか等について分析し、その結果を雑誌「考古学と自然科学」47号に「野生クリ(Castanes crenata)の収穫量の年変動について」として発表した。また、新潟県青田遺跡(縄文時代晩期)
KAKENHI-PROJECT-15500668
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15500668
縄文時代クリ利用実態復元のための現生・出土クリに関する基礎的研究
出土クリのDNA分析を行い、ITS領域の塩基配列決定を試みて、その結果を2003年度の日本文化財科学会大会で発表した。研究代表者はこれまで愛知県小原村で19992003年度の5年間に渡って、野生クリの収穫量・収穫期間調査を行ってきた。ここで得られたデータをもとにして、さらに野生クリの特性の地域差を考えるために、2004年の秋には岐阜県恵那市・中津川市において同様の野生クリ採集調査を行った。調査の方法としては、調査地点を恵那市で3地点、中津川市で1地点の計4地点選び、野生クリと思われる調査対象木を10本選定した。これらのクリの木で秋期に実が落ちはじめたら、熟して落ちたクリの実を1日おきに採集することとした。実を毎日採集しないので、採集から次の採集までの間に地面に落ちたクリの実が動物に食べられることを予想し、これを防ぐために対象木の樹幹を投影した(クリの実が落ちると予想される)範囲には、地上に周囲を高くしたネットを設置した。採集した1つ1つの実について、木ごとに通し番号をつけ、長さ・幅・厚さを計測し、さらに定温乾燥機によって80°Cで48時間乾燥後に重量を計測し、記録した。この作業を全てのクリの実が落ち終わるまで続け、各観察対象樹ごとの収穫期間の長さ・その期間中における落果数の日変動・実の平均重量を記録した。この調査の結果から、同一生態系内における人間と動物の食料をめぐる競争について検討し、縄文人のクリ採集のサイクルについての考察を雑誌「動物考古学」22号に「縄文人はクリを毎日採集したのか?」として発表した。
KAKENHI-PROJECT-15500668
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15500668
高齢者の健康増進を目的とした運動・栄養の介入研究
2003年6月7月にかけて、群馬県吾妻郡中之条町において、65歳以上の高齢者約5000名(寝たきり老人や痴呆老人を除く全高齢者)を対象に、身体活動・運動と心身の健康との関係を明らかにするための総合健康調査を実施した。また、調査対象となった高齢者のうち、約300名の高齢者が身体活動・運動の実施度を客観的に測定する機器(加速度センサー付歩数計)を装着しており、月ごとにそのデータ収集を行うために中之条へ出張している。これらの調査は2001年度から継続して行っており、本年はその3年目にあたる。この研究において申請者が主に担当しているのは、特に身体活動・運動の心理社会的効果および身体活動・運動の習慣化に対する行動科学的アプローチに関する内容である。本年度の研究実施状況であるが、わが国の高齢者における客観的に測定された身体活動量に及ぼす人口統計学的(年齢、性、婚姻状況)および生物学的要因(BMI)、行動的要因(喫煙行動、飲酒行動)、心理的要因(セルフ・エフィカシー)、社会的要因(ソーシャルサポート、医師による運動の勧め)、環境的要因(自宅周辺運動環境の認知)の総合的な影響を明らかにした。その結果、わが国における健康づくり対策である健康日本21の身体活動・運動分野における歩数の数値目標を満たす高齢者は満たさない高齢者と比べて、セルフ・エフィカシーおよび自宅周辺運動環境に対して肯定的な評価を示すことが明らかになった。したがって、高齢者の介護予防、健康寿命の延伸を目指した効果的な身体活動促進プログラムを開発する際には、これらの要因を強化するための行動科学の考え方に基づいた働きかけが重要である。これらの成果の一部は、「高齢者における客観的に測定された身体活動指標の規定要因を解明するための前向き研究」としてデサントスポーツ科学に掲載予定である。また、他の調査に関しても、現在分析を終了し、論文執筆している段階である。昨年同様,2002年6月下旬7月上旬にかけて,群馬県吾妻郡中之条町において,65歳以上の高齢者約2000名(寝たきり老人や痴呆老人を除く全高齢者)を対象に,身体活動・運動が心身の健康に及ぼす影響と身体活動・運動習慣を規定する要因を明らかにするための総合健康調査を実施した.本年はこの大規模長期縦断研究の2年目にあたる.この研究は,日常生活での身体活動が睡眠・覚醒リズム(長期間バイオリズム)あるいはDNA(末梢血リンパ球のテロメア長)に及ぼす影響や,運動習慣と骨粗鬆症,肥満,生活習慣病関連遺伝子多型との関係などを検討する,広範にわたる総合的評価を行う学際的プロジェクトである.申請者が主に担当しているのは,身体活動・運動の習慣化を規定している要因を解明する研究である.総合健康調査実施時点から,調査対象となった2000名のうち,約300名の高齢者が身体活動・運動の実施度を客観的に測定する機器(加速度計)を継続装着しており,月ごとにそのデータ収集を行うために現在も中之条町へ出張している.本年度の研究実施状況として,我が国の高齢者における身体活動・運動の実施状況を明らかにするために,調査票によって測定された身体活動度および運動習慣の分析を行うとともに,加速度計によって測定された身体活動量を解析した.その結果,多くの高齢者が運動することに対して無関心であるとともに,客観的に測定された身体活動量には季節変動があることが証明された.さらに,身体活動・運動の習慣化を規定している個人的要因(セルフ・エフィカシー)の影響を明らかにした知見を論文(Am J Health Promot)として投稿している.現在は,社会的(ソーシャル・サポート,医師の勧め),環境的要因(自宅周辺の環境)が高齢者の身体活動・運動に及ぼす影響の程度を分析している段階である.2003年6月7月にかけて、群馬県吾妻郡中之条町において、65歳以上の高齢者約5000名(寝たきり老人や痴呆老人を除く全高齢者)を対象に、身体活動・運動と心身の健康との関係を明らかにするための総合健康調査を実施した。また、調査対象となった高齢者のうち、約300名の高齢者が身体活動・運動の実施度を客観的に測定する機器(加速度センサー付歩数計)を装着しており、月ごとにそのデータ収集を行うために中之条へ出張している。これらの調査は2001年度から継続して行っており、本年はその3年目にあたる。この研究において申請者が主に担当しているのは、特に身体活動・運動の心理社会的効果および身体活動・運動の習慣化に対する行動科学的アプローチに関する内容である。本年度の研究実施状況であるが、わが国の高齢者における客観的に測定された身体活動量に及ぼす人口統計学的(年齢、性、婚姻状況)および生物学的要因(BMI)、行動的要因(喫煙行動、飲酒行動)、心理的要因(セルフ・エフィカシー)、社会的要因(ソーシャルサポート、医師による運動の勧め)、環境的要因(自宅周辺運動環境の認知)の総合的な影響を明らかにした。その結果、わが国における健康づくり対策である健康日本21の身体活動・運動分野における歩数の数値目標を満たす高齢者は満たさない高齢者と比べて、セルフ・エフィカシーおよび自宅周辺運動環境に対して肯定的な評価を示すことが明らかになった。したがって、高齢者の介護予防、健康寿命の延伸を目指した効果的な身体活動促進プログラムを開発する際には、これらの要因を強化するための行動科学の考え方に基づいた働きかけが重要である。これらの成果の一部は、「高齢者における客観的に測定された身体活動指標の規定要因を解明するための前向き研究」としてデサントスポーツ科学に掲載予定である。
KAKENHI-PROJECT-01J07038
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01J07038
高齢者の健康増進を目的とした運動・栄養の介入研究
また、他の調査に関しても、現在分析を終了し、論文執筆している段階である。
KAKENHI-PROJECT-01J07038
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01J07038
インテグリン-ラミニン複合体の結晶構造解析による分子認識機構の解明
細胞外マトリックス中のラミニンと細胞膜上の受容体であるインテグリンを介した細胞接着は,細胞の増殖や分化など様々な細胞活動に関与する細胞生存に欠かせないイベントであるが,その分子認識機構の研究はインテグリンファミリー分子の中でも最も遅れている.その理由の一つは,これらの分子の立体構造情報がほとんどないためである.本研究では,インテグリン-ラミニン複合体の立体構造を明らかにし,その分子認識機構を詳細に解明することを目的とする.インテグリンとラミニンの複合体の立体構造を決定するためには,安定な複合体試料を得ること,そして構造が均一な試料を得ることが重要である.しかし,インテグリンとラミニンの間の結合は,両者だけで安定な複合体が形成されるほど強くはない.そこで,安定な複合体試料を調製するためには,インテグリン活性化抗体(フラグメント化抗体)やインテグリン活性化因子であるMnイオンの添加が必要である.平成30年度は,2種の抗インテグリン抗体(うち1種は活性化抗体)について,研究代表者が開発した安定なフラグメント抗体フォーマットである“Fv-clasp"に変換した試料を調製した.これらのFv-clasp試料およびMnイオンを様々な組み合わせでインテグリン,ラミニン混合試料に添加し,安定な複合体を形成する条件を網羅的に調べた結果,最適な条件を見出すことに成功した.さらに,この複合体試料を用いて結晶化スクリーニングを実施したところ,複数の条件で結晶が得られた.現在までに構造決定を行えるようなデータの取得には至っていないが,結晶が目的複合体のものであることは,結晶溶解試料の電気泳動で確認できている.インテグリン-ラミニン複合体試料については過去に全く結晶が得られていなかったことから,現在得られている複合体試料は,比較的構造が均一で,構造解析に適していることが示唆された.目的タンパク質の安定な複合体試料が得られ,結晶化にも成功しており,目的複合体試料の構造決定に向けて大きく前進した.得られた複合体試料について,引き続き結晶化条件の最適化を行っていく.またそれと並行して,クライオ電子顕微鏡を用いた構造決定も試みる.当初はX線結晶構造解析による高分解能での構造決定を目標としていたが,近年,クライオ電子顕微鏡でも高分解能の立体構造決定が可能になってきたこと,研究代表者の所属機関内にある高性能クライオ電子顕微鏡Titan Kriosが利用可能であること,さらには目的タンパク質にフラグメント抗体を結合させたことにより電子顕微鏡での観察が十分可能なサイズの試料が得られたことなどから,クライオ電子顕微鏡での構造解析も試みることにした.また,複合体の構造が得られた後は,構造の妥当性を証明するための変異体実験等を実施していく.細胞外マトリックス中のラミニンと細胞膜上の受容体であるインテグリンを介した細胞接着は,細胞の増殖や分化など様々な細胞活動に関与する細胞生存に欠かせないイベントであるが,その分子認識機構の研究はインテグリンファミリー分子の中でも最も遅れている.その理由の一つは,これらの分子の立体構造情報がほとんどないためである.本研究では,インテグリン-ラミニン複合体の立体構造を明らかにし,その分子認識機構を詳細に解明することを目的とする.インテグリンとラミニンの複合体の立体構造を決定するためには,安定な複合体試料を得ること,そして構造が均一な試料を得ることが重要である.しかし,インテグリンとラミニンの間の結合は,両者だけで安定な複合体が形成されるほど強くはない.そこで,安定な複合体試料を調製するためには,インテグリン活性化抗体(フラグメント化抗体)やインテグリン活性化因子であるMnイオンの添加が必要である.平成30年度は,2種の抗インテグリン抗体(うち1種は活性化抗体)について,研究代表者が開発した安定なフラグメント抗体フォーマットである“Fv-clasp"に変換した試料を調製した.これらのFv-clasp試料およびMnイオンを様々な組み合わせでインテグリン,ラミニン混合試料に添加し,安定な複合体を形成する条件を網羅的に調べた結果,最適な条件を見出すことに成功した.さらに,この複合体試料を用いて結晶化スクリーニングを実施したところ,複数の条件で結晶が得られた.現在までに構造決定を行えるようなデータの取得には至っていないが,結晶が目的複合体のものであることは,結晶溶解試料の電気泳動で確認できている.インテグリン-ラミニン複合体試料については過去に全く結晶が得られていなかったことから,現在得られている複合体試料は,比較的構造が均一で,構造解析に適していることが示唆された.目的タンパク質の安定な複合体試料が得られ,結晶化にも成功しており,目的複合体試料の構造決定に向けて大きく前進した.得られた複合体試料について,引き続き結晶化条件の最適化を行っていく.またそれと並行して,クライオ電子顕微鏡を用いた構造決定も試みる.当初はX線結晶構造解析による高分解能での構造決定を目標としていたが,近年,クライオ電子顕微鏡でも高分解能の立体構造決定が可能になってきたこと,研究代表者の所属機関内にある高性能クライオ電子顕微鏡Titan Kriosが利用可能であること,さらには目的タンパク質にフラグメント抗体を結合させたことにより電子顕微鏡での観察が十分可能なサイズの試料が得られたことなどから,クライオ電子顕微鏡での構造解析も試みることにした.また,複合体の構造が得られた後は,構造の妥当性を証明するための変異体実験等を実施していく.
KAKENHI-PROJECT-18H02389
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H02389
特異的制御剤の開発によるオートファジー性細胞死の分子機序解明と白血病新治療法
ヒト白血病細胞に対しオートファジーを伴う細胞死を誘導するハイブリッドペプチドの作用機序を解析し、これまでの報告にない新しいモードの非アポトーシス型細胞死であることを見出した。また、ペプチド活性部位の絞り込みを行い、ペプチド配列の短縮化を達成した。得られたペプチドは、従来のアポトーシス誘導型抗がん剤と異なる新たな概念に基づく白血病治療薬開発の創薬ツールとして有用であると期待される。ヒト白血病細胞に対しオートファジーを伴う細胞死を誘導するハイブリッドペプチドの作用機序を解析し、これまでの報告にない新しいモードの非アポトーシス型細胞死であることを見出した。また、ペプチド活性部位の絞り込みを行い、ペプチド配列の短縮化を達成した。得られたペプチドは、従来のアポトーシス誘導型抗がん剤と異なる新たな概念に基づく白血病治療薬開発の創薬ツールとして有用であると期待される。オートファジー性細胞死誘導ペプチドTat-Ram13の構造基盤、およびオートファジー関連分子のGST融合タンパク質の調製の2つを中心に検討を進めた。その成果について以下に記す。1.ペプチドミメティックスによる新規オートファジー制御剤の創製Tat-Ram13(26残基)の構造上、Ram13の5残基のモチーフが活性発現にきわめて重要であることを明らかにした。これより15残基程度までペプチドを短くできる可能性がでてきた。また、構造計算によりこの部分の構造を把握した。2.オートファジー阻害ペプチドの同定とその性格付け3.オートファジー制御剤の白血病細胞を用いた活性評価オートファジー関連分子ノックダウン細胞を調製するため、Tat-Ram13がよく効く白血病細胞株に対して、ATG5とBeclinのshRNA発現ベクターをNucleofector II(設備備品)を用いて細胞導入した。薬剤処理により安定発現株を樹立する直前の段階まで進んだ。4.オートファジー性細胞死誘導の分子機序解析Tat-Ram13の感受性を細胞株間で比較したところ、効く細胞と効かない細胞の2つに分類されることがわかった。これら細胞群のリン酸化シグナルを解析した結果、PI3キナーゼ経路の主要分子の発現の有無で明確に区分されることを見出した。オートファジー性細胞死誘導ペプチドTat-Ram13の構造基盤、細胞死誘導を規定する分子の探索、およびオートファジー関連分子に結合するペプチドの探索を行い、以下の結果を得た。1.ペプチドミメティックスによる新規オートファジー誘導化合物の創製Tat-Ram13のRam13領域(13残基)の5残基のモチーフが活性発現に必要であることを明らかにしたが、さらにAlaスキャンすることでLeu-Trp-Pheの疎水性部が重要であることを見出した。また、ニトロベンジル基を側鎖に持つアミノ酸を別途合成し、疎水性部に組み込んだペプチドミメティックを合成した。2.オートファジー性細胞死誘導の分子機序解析Tat-Ram13により細胞死を起こす細胞群と起こさない群で発現の異なる分子を探索した結果、Tat-Ram13非感受性株では、PTENやBc1-2の発現が高く、p62の発現が低いことがわかった。この変化はmRNAレベルでも維持されていた。今後、これら分子の強制発現およびノックダウンにより、Tat-Ram13の効果に違いがでるかどうか確かめる予定である。3.ファージディスプレイ法によるオートファジー阻害ペプチドの探索オートファジー関連分子(ATG5、ATG16L)のGST融合タンパク質を用いてCX7Cランダムペプチドライブリーから結合ペプチドの単離を行った。固相および磁性体による結合ファージの分離を試みたが、5回のパニングでも配列が収束しなかった。得られた配列の中から20クローンを選び、その結合特性を調べたが特異的結合ファージは得られなかった。現在、パニング条件について最適化を試みている。我々の開発したペプチドTat-Ram13とそのペプチドミメティックの白血病治療へ適用を目的とし、動物実験による抗腫瘍効果の検証と細胞死誘導機序について生化学的解析を行い、以下の結果を得た。1.動物実験による新規ペプチドミメティックの抗腫瘍活性評価CDF1マウス腹腔内にマウス白血病細胞株L1210を接種し、腫瘍モデルを作製した。接種2日後からTat-Raml3およびペプチドミメティック化合物(Dアミノ酸含有)を0.2mg/匹を2日毎に2週間にわたり腹腔内投与し、腹水量の変化と生存日数を調べた。その結果、化合物処理群と未処置群で両値は変わらず、期待した抗腫瘍効果は見られなかった。この理由として、腹腔内投与での希釈による作用減弱が考えられ、評価に適した白血病動物モデルの構築が必要と考えられた。2.オートファジー性細胞死誘導の分子機序解析TatRam13で誘導される細胞死がオートファジー過剰亢進によるものか否か確かめるため、関連分子ATG5を発現低下させたJurkat細胞を用いて細胞死誘導を検討した。その結果、shRNA発現ベクター導入による発現低下の有無で細胞死感受性が変化しなかったことより、オートファジーは細胞死の直接要因ではなく二次的結果であると考えられた。そこで、誘導される細胞死について細胞死前後の蛍光顕微鏡観察とウェスタンブロットによる分子発現解析を行ったところ、Tat-Ram13添加後に細胞膜の物質透過性が亢進すること、核内タンパク質の消失といった特異な現象が観察された。これらは、ネクローシスおよび最近報告されたネクロトーシスとは明らかに異なっていた。
KAKENHI-PROJECT-20200038
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20200038
特異的制御剤の開発によるオートファジー性細胞死の分子機序解明と白血病新治療法
動物実験での効果検証はできなかったが、Tat-Ram13で誘導される細胞死は、既報の何れにも属さない新規な現象である可能性が高く、白血病治療でのアポトーシス耐性克服につながると期待される。
KAKENHI-PROJECT-20200038
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20200038
長ギャップ放電を用いた高効率オゾン生成装置の開発
オゾンは、酸素原子と分子の結合によって作られる。酸素分子が酸素原子に解離するエネルギーは5.1eVであるから放電空間の電子の平均エネルギーがこの近辺にあれば最も効率よくオゾンを作ることができる。従来のオゾナイザーは、(金属・石英ガラス)-微小ギャップ-(石英ガラス・金属)の構成を基本構造としている。これは、放電原理からみれば、ストリーマ放電部に存在する高電界放電現象を利用して、高い平均電子エネルギー領域を発生させているものである。細線と平板の電極配置で、細線に急峻なパルス高電圧を印加すると、細線全体にわたって、強いストリーマ状放電が発生し、平板に達する。この現象を用いれば、広い放電空間に高電界放電を発生させることが出来るので、現在のオゾナイザーの欠点であるギヤップが狭いことからくる、後続放電によるオゾン破壊が減少して、オゾン生成効率を向上させることが出来る。アーク放電はオゾンを熱で破壊するので、アークへの移行を避けつつ大電力を放電ギャップに注入するために、放電安定化部を導入した。これは、2個の微少ギャップを直列にしたものである。交流高電圧は放電安定化部のスイッチ作用で急峻なパルスを形成してオゾン生成部に加えられる。さらに、オゾナイザー細線電極はLC共振によって、急峻な振動パルス電圧が発生するように回路調整を行った。これらの実験は商用周波数の交流電源で行った。生成効率は改善されたが、オゾン発生量が低いので、電源周波数をKHZまで高める実験を継続する予定である。3年度の研究を継続する。これに加えて、電源部の改良を行う。パルス高電圧の発生に、コンデンサーの充放電を用いると、原理的にエネルギー効率は5割以上に達することが出来ないので、パルス高電圧発生部分にサイリスタを用いたパルス回路にする研究を行う。オゾンは、酸素原子と分子の結合によって作られる。酸素分子が酸素原子に解離するエネルギーは5.1eVであるから放電空間の電子の平均エネルギーがこの近辺にあれば最も効率よくオゾンを作ることができる。従来のオゾナイザーは、(金属・石英ガラス)-微小ギャップ-(石英ガラス・金属)の構成を基本構造としている。これは、放電原理からみれば、ストリーマ放電部に存在する高電界放電現象を利用して、高い平均電子エネルギー領域を発生させているものである。細線と平板の電極配置で、細線に急峻なパルス高電圧を印加すると、細線全体にわたって、強いストリーマ状放電が発生し、平板に達する。この現象を用いれば、広い放電空間に高電界放電を発生させることが出来るので、現在のオゾナイザーの欠点であるギヤップが狭いことからくる、後続放電によるオゾン破壊が減少して、オゾン生成効率を向上させることが出来る。アーク放電はオゾンを熱で破壊するので、アークへの移行を避けつつ大電力を放電ギャップに注入するために、放電安定化部を導入した。これは、2個の微少ギャップを直列にしたものである。交流高電圧は放電安定化部のスイッチ作用で急峻なパルスを形成してオゾン生成部に加えられる。さらに、オゾナイザー細線電極はLC共振によって、急峻な振動パルス電圧が発生するように回路調整を行った。これらの実験は商用周波数の交流電源で行った。生成効率は改善されたが、オゾン発生量が低いので、電源周波数をKHZまで高める実験を継続する予定である。3年度の研究を継続する。これに加えて、電源部の改良を行う。パルス高電圧の発生に、コンデンサーの充放電を用いると、原理的にエネルギー効率は5割以上に達することが出来ないので、パルス高電圧発生部分にサイリスタを用いたパルス回路にする研究を行う。オゾンは,酸素原子と分子の結合によって作られる。酸素分子が原子に解離するエネルギ-は約5evであるから放電空間の電子の平均エネルギ-がこの近辺にあれば最も放率よく酸素分子を解離できる。したがってオゾン生成効率も高くなる。平均エネルギ-の高い電子群はア-ク放電,グロ-放電,それらの陰極降下部,負性コロナ放電,あるいは正の定常コロナ放電では得ることが出来ないことが今年度の研究でより明確になった。唯一の方法は正極性ストリ-マ放電である。従来形(Siemens形)のオゾナイザ,増田(東大名誉教授)形オゾナイザは,いずれもこの放電を狭い空間領域で利用したものであると言える。狭い空間で放電を繰り返し生成すると,前の放電で生成されて滯留しているオゾンが次の放電によって破壊されてしまう。このことがオゾン生成効率を低下させている大きな原因の一つである。これを避ける方法として,多数の正針を20mm以上平板から離した放電管を作った。各正針には少容量のセラミックコンデンサ放電によってnsecで立上る急峻パルス電圧を,それぞれ独立回路から供給した。コンデンサの充放電には多接点球ギャップ回転スイッチを開発し用いた。コンデンサ容量,充電電圧,回転スイッチの入切回数を変化させてオゾン生成量を計測した。正のストリ-マ放電のオゾン生成量が最も大きいこと,ギャップが長いので生成されたオゾンの破壊が少いこと等が明確になった。オゾナイザは照声放電あるいはオゾナイザ放電として有名な,電極一誘電体-1mm程の放電ギャップ-電極の構造に交流(50100KHZ)を印加する方式が主流となって,小形から超大形機まで使われている。この方式の長所はギャップに大電力を注入してもアーク放電に移行しない点にある。
KAKENHI-PROJECT-03555053
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03555053
長ギャップ放電を用いた高効率オゾン生成装置の開発
オゾン生成には平均電子エネルギーを高めることが最も重要であるが,これにはストリース放電(正極性)を利用するのが最も優れている。現在多用されているオゾナイザは高電界を加えられる点,放電がストリーマ放電である点極めて優れている。しかし,放電ギャップ部の巾が狭いのが欠点である。短ギャップ放電によって生成されたオゾンが続く放電によってたたかれ破壊されてしまうことになる。これを避けるために長ギャップ,正極性ストリーマ放電を高頻度で発生させてオゾンを作る方式を開発している。長ギャップオゾン生成部に高電圧を供給するために,回転ギャップを直列に接続して,スイッチ機能を持たせた。即ち,低インダクタンスのコンデンサに貯えた電荷を回転球ギャップが放電して,オゾナイザの長ギャップ針一平板電極に印加することにより急峻な立上りパルス電圧を発生させて,ストリーマ放電を促進している。オゾン生成量は印加電圧のほゞ2乗に比例して増加しており,回転球ギャップの回転速度に比例して増加している。(オゾン生成量/電力)は,存来形のものより1.2倍程優れている。昨年度までは、長ギャップ放電を実現するために、20mm間隔の針平板ギャップに回転スイッチを介して、高速に立ち上がるパルス状電圧を加える方式を用いた。この場合には、先行するパルス電圧印加によって放電ギャップが充電されてしまい、ギャップにストリーマ放電が出現する頻度が減少するので、結局オゾン収率が低くなった。これを避けるためには放電ギャップの残存電荷を逃がす必要がある。放電ギャップに並列に抵抗を接続することによってストリーマ放電の出現頻度を高めることができたので、単位時間当りのオゾン生成量を増すことはできたが、抵抗による電力損失が増大したので、単位入力電力当りのオゾン生成量は減少した。今年度は、放電安定化部を開発した。これをオゾン生成用針平板ギャップに直列に接続することによって、誘電体を介した現用されているオゾナイザーと同じ放電、すなわち交流電圧が零点を通過して、正であれ負であれその振幅を増大していく期間は放電が発生する放電状態を、針平板ギャップに実現することができた。これによって、オゾン生成量、効率共に増大することができた。放電安定化部は、球電極・1.5mmギャップ・球電極・1.5mmギャップ・球電極の構造を持つ。
KAKENHI-PROJECT-03555053
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03555053
DNA損傷応答からみた,Barrett食道癌ハイリスク群抽出と異型上皮の質的判別
本研究の目的は,Barrett食道癌の発生母組織を推定することである.従来,Barrett食道癌は腸上皮化生粘膜を母組織として発生すると考えられてきたが,噴門腺型粘膜がBarrett食道癌の発生母組織となるかは明らかでない.表在Barrett食道癌49例に対して免疫染色(CDX2, CD10, MUC2, MUC5AC, MUC6)を施行し,腫瘍隣接粘膜の質および腫瘍自体の形質を検討した.腫瘍径と腸上皮化生粘膜の隣接頻度は相関せず,Barrett食道の広がりと相関した.小型腫瘍(径10 mm以下)の約7割は噴門腺型粘膜のみと接していた.微小腫瘍(径5 mm以下)の約半数は胃型腫瘍で,それ以上の径の腫瘍に比して有意に胃型腫瘍の頻度が高かった.また胃型腫瘍細胞および小型腫瘍隣接噴門腺粘膜にはCDX2が発現していた.以上の結果より,Barrett食道における腸上皮化生は前癌状態ではなく副現象(epiphenomenon)であること,およびCDX2陽性の噴門腺型粘膜が発生母組織である可能性が改めて示唆された.蛍光免疫染色による評価項目(gamma-H2AX, 53BP1)はバーチャルスライドによる取り込み後に行う予定であったが,バーチャルスライド機器の取り込み条件設定中で,結果はまだ出ていない.蛍光免疫染色による評価項目(gamma-H2AX, 53BP1,およびこれらの二重染色)はバーチャルスライドによる取り込み後に行う予定であるが,バーチャルスライド機器の取り込み条件設定に時間を要している(特にESD検体において).バーチャルスライド機器の取り込み条件設定を確定する.その後,DNA二重鎖切断(DSB)を検出するgamma-H2AXに対するモノクローナル抗体による酵素抗体免疫染色・蛍光抗体免疫染色を行い,上皮の質ごとにその核内発現様式(ドット状集積またはびまん性集積)と標識率を算出する.次に,癌抑制遺伝子であるp53の上流でDNA損傷修復仲介因子として重要な役割を担っているp53-binding protein (53BP1)と,gamma-H2AXに対するモノクローナル抗体による二重蛍光免疫染色を行い,早期DNA損傷修復応答を検出する.とくに53BP1とgamma-H2AXの共局在の有無に注目することで,早期DNA損傷修復応答の状況を解明する.本研究の目的は,Barrett食道癌の発生母組織を推定することである.従来,Barrett食道癌は腸上皮化生粘膜を母組織として発生すると考えられてきたが,噴門腺型粘膜がBarrett食道癌の発生母組織となるかは明らかでない.表在Barrett食道癌49例に対して免疫染色(CDX2, CD10, MUC2, MUC5AC, MUC6)を施行し,腫瘍隣接粘膜の質および腫瘍自体の形質を検討した.腫瘍径と腸上皮化生粘膜の隣接頻度は相関せず,Barrett食道の広がりと相関した.小型腫瘍(径10 mm以下)の約7割は噴門腺型粘膜のみと接していた.微小腫瘍(径5 mm以下)の約半数は胃型腫瘍で,それ以上の径の腫瘍に比して有意に胃型腫瘍の頻度が高かった.また胃型腫瘍細胞および小型腫瘍隣接噴門腺粘膜にはCDX2が発現していた.以上の結果より,Barrett食道における腸上皮化生は前癌状態ではなく副現象(epiphenomenon)であること,およびCDX2陽性の噴門腺型粘膜が発生母組織である可能性が改めて示唆された.蛍光免疫染色による評価項目(gamma-H2AX, 53BP1)はバーチャルスライドによる取り込み後に行う予定であったが,バーチャルスライド機器の取り込み条件設定中で,結果はまだ出ていない.蛍光免疫染色による評価項目(gamma-H2AX, 53BP1,およびこれらの二重染色)はバーチャルスライドによる取り込み後に行う予定であるが,バーチャルスライド機器の取り込み条件設定に時間を要している(特にESD検体において).バーチャルスライド機器の取り込み条件設定を確定する.その後,DNA二重鎖切断(DSB)を検出するgamma-H2AXに対するモノクローナル抗体による酵素抗体免疫染色・蛍光抗体免疫染色を行い,上皮の質ごとにその核内発現様式(ドット状集積またはびまん性集積)と標識率を算出する.次に,癌抑制遺伝子であるp53の上流でDNA損傷修復仲介因子として重要な役割を担っているp53-binding protein (53BP1)と,gamma-H2AXに対するモノクローナル抗体による二重蛍光免疫染色を行い,早期DNA損傷修復応答を検出する.とくに53BP1とgamma-H2AXの共局在の有無に注目することで,早期DNA損傷修復応答の状況を解明する.
KAKENHI-PROJECT-16K21040
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K21040
カンボジア北部山岳地域クメール寺院のインベントリー作成
カンボジア北部山岳地域、すなわち現在のプレア・ヴィヒア州を中心とした古代クメール寺院遺構のインベントリー作成を目指し、資料調査と現地踏査により様々なデータを収集すると共に、それらのドキュメンテーションの手法について検討した。資料調査ではフランス極東学院による未刊行の調査資料についてデジタル・データ化を行った。現地踏査ではGPSを用いて各遺跡の位置情報を取得し、それらをGIS上で地形データ(DEM)と統合した。カンボジア北部山岳地域、すなわち現在のプレア・ヴィヒア州を中心とした古代クメール寺院遺構のインベントリー作成を目指し、資料調査と現地踏査により様々なデータを収集すると共に、それらのドキュメンテーションの手法について検討した。資料調査ではフランス極東学院による未刊行の調査資料についてデジタル・データ化を行った。現地踏査ではGPSを用いて各遺跡の位置情報を取得し、それらをGIS上で地形データ(DEM)と統合した。本研究は、古代カンボジアに繁栄したクメール帝国の広域的理解を目的として、特に北部山岳地域に造営された寺院遺構のインベントリーを作成するものである。これらは概して、平野地に展開したアンコールの寺院遺構とは異なる様相を呈しており、山頂を志向する長い軸線を有する縦深型伽藍構成を特徴とすることが、従来の研究でも指摘されてきた。インド渡来の建築文化を受容し、土着の技術を用いて変容させていく過程において、ダンレック山脈を中心に整備された一大宗教拠点は、東南アジア基層文化としての「高地崇拝」の発現として注目される。本研究では、既存資料と現地調査に基づく遺跡インベントリーの作成を通じて、「聖地」の発展過程を再考することを目的としている。平成22年度は、コー・ケーをはじめとして、プレア・ヴィヘア州(クーレン地区、チョアン・スラム地区)、およびシェム・リアップ州のクーレン山近傍に分布する縦深型の寺院遺構を対象としたジェネラル・サーベイを実施し、GPS測位および簡易実測、周辺環境調査、建築意匠・散乱遺物の記録等を行った。とりわけ周壁を前後に二つ接続した「日の字型」伽藍の発生が10世紀中葉に位置付けられることから、縦深型寺院発展の系譜の作成を試みている。資料調査では、フランス極東学院所蔵の「パルマンチエ資料」をはじめとして、未刊行の研究資料の収集と電子化を進めている。これらはpdfにて研究者向けに公開予定である。平成23年度は、プレア・ヴィヒア寺院の踏査を行った。安全上の問題から、トータルステーションやレーザー測距等の機材を使用した実測が不可能であったため、手作業での簡易な測量と、建築装飾に関するインベントリー、並びに、既往研究によって指摘されていた改造の痕跡について目視観察による調査を実施した。なお、この作業にあたっては、早稲田大学大学院生2名の協力を得た。同寺院は2008年のユネスコ世界遺産登録にあたり、様々な分野の専門家による調査がなされているが、実測図面としては1939年に出版されたH.Parmentierによるものが最新であり、再測量と実測図面作成、既往研究の詳細な検討が大きな課題となっている。本研究により実施した改造痕跡調査の概要については、次回日本建築学会大会学術講演会において報告する予定である。踏査困難な場所に位置する遺跡の情報集積にあたっては、リモートセンシングとGISの活用が有効である。本研究では、対象地域の地形データ(DEM)をsrtm及びASTERから入手し、GPS測位によって取得した遺跡の位置情報を、これに重ねて格納した。現在の地形及び水系が寺院造営時のそれと大きく変わらないものと考えるならば、遺跡の分布状況、立地環境をDEMの中で俯瞰的に捉えることができる。プレア・ヴィヒア寺院を中心とする山岳寺院の分布状況、立地環境の解明には、さらなる調査研究が要されるが、リモートセンシングとGISを用いた古代クメール遺跡の情報整理と都市発展史の再考察は、本年度より科学研究費補助金・若手(B)「GISを用いた古代クメール都市発展史の復原的研究」(研究課題番号:24760529)にて継続予定である。
KAKENHI-PROJECT-22860062
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22860062
チャカルタヤでの太陽中性子の観測
平成5年度前半は名古屋大学特定研究経費等を用いて観測に必要なシンチレータを製作した。このシンチレータは、荷電粒子と中性子を弁別し、宇宙線荷電粒子によるバックグラウンドを除去するためのアンチカウンターとして製作された。また、データ読み出し、記録に必要な回路系を購入した。国内での動作試験の後、これらの観測装置を船便でボリビアに発送した。平成6年1月に松原が、2月に村木がボリビアに渡航し、現地の研究者とともに観測装置の設置・組み立てを行い、3月8日より運転を開始した。これにより、既存の観測装置と比較して帯電粒子によるバックグラウンドは1/3に減少し、S/N比が2倍向上した。検出器の有効検出面積は4m^2で、赤道高山にあるため(南緯16°、高度5250m)、世界に既存の太陽中性子検出器の中では最も感度のよい観測装置となった。平成5年7月にカナダのカルガリ-で宇宙線国際会議が開かれたが、会議の場であらためて太陽中性子観測の重要性が認識された。チャカルタヤの新検出器は、名大太陽地球環境研究所が東大宇宙線研究所の乗鞍観測所に有する太陽中性子望遠鏡試作機とともに、中性子と陽子の識別ができること、中性子のエネルギーが測定できることを利点としている。従来の太陽中性子モニターでは得られない特長であり、国際会議の場でも関心を呼んだ。またチャカルタヤは、日本の真夜中に太陽が南中し、24時間ネットワークへの第一歩を踏み出した。平成6年度前半は得られたデータを解析をし、粗解析から太陽中性子イベント探索まで誰でも簡単にできるルーチンを開発した。観測で得られたデータは8mmテープに記録されているが、前年度末にサンアンドレス大学側にワークステーションが導入されたのを考慮して、8mmテープからデータをワークステーションのディスクにコピーして保存する方法を確立した。平成6年8月にデータ収集回路の一部が故障したが、現地研究者の努力でデータ収集の中断には至らなかった。平成6年11月に松原がボリビアに渡航して、チャカルタヤでこの故障箇所を修理し、このような問題が起きないように改善作業を行なった。この際観測装置を構成する各検出器が非常に安定に働いていることが確認された。また、日本で作ったデータ記録・データ解析のソフトウェアをサンアンドレス大学のワークステーションに委嘱し、今後の日本へのデータ配送、データ解析の進め方に関して議論を行ない体制を整えた。平成7年8月に村木が渡航し、回路系の点検を行なった。大まかな運転状況としては、順調であった。しかし、平成6年11月からのデータをよく見ると必ずしも安定に動いていないチャンネルもあり、現地の研究者等がチェックすべき項目の再整理を行なった。平成8年3月には松原が渡航し、現地の研究者等と議論を行ない、基本的に日本人がいない状況での観測体制に関しての確認を行なった。チャカルタヤにおける太陽中性子の観測は、平成9年から始まる次期太陽活動期には格別に重要となる。検出器・データ収集回路・オンラインプログラムとも日本で開発したものを持ち込んでいるため、故障等起こった場合の対処が問題であるが、現地にはマニュアル類を用意してある。それでも駄目な場合にはFAX、電子メールでの連絡により対応することを現在考えている。この間太陽活動は活発ではなかったので、物理的な結果はまだ得られていないが、観測状況については平成7年9月にローマで開かれた宇宙線国際会議で発表した。また、これは本国際学術の経費で行なったものではないが、平成8年の2月から3月にかけて太陽大学核物理センターの加速器によりエネルギーのわかっている中性子を検出器に当てるビームタイムを得ることができた。ボリビアにあるのと同じタイプの検出器を作り、検出器の中性子に対する検出効率やエネルギー分解能を調べた。詳細な解析にはまだ時間がかかるが、シミュレーションから期待された結果とほぼ同様の結果が得られ、本観測でこれから得られる結果について不確定要素はなくなった。平成5年度前半は名古屋大学特定研究経費等を用いて観測に必要なシンチレータを製作した。このシンチレータは、荷電粒子と中性子を弁別し、宇宙線荷電粒子によるバックグラウンドを除去するためのアンチカウンターとして製作された。また、データ読み出し、記録に必要な回路系を購入した。国内での動作試験の後、これらの観測装置を船便でボリビアに発送した。平成6年1月に松原が、2月に村木がボリビアに渡航し、現地の研究者とともに観測装置の設置・組み立てを行い、3月8日より運転を開始した。これにより、既存の観測装置と比較して帯電粒子によるバックグラウンドは1/3に減少し、S/N比が2倍向上した。検出器の有効検出面積は4m^2で、赤道高山にあるため(南緯16°、高度5250m)、世界に既存の太陽中性子検出器の中では最も感度のよい観測装置となった。平成5年7月にカナダのカルガリ-で宇宙線国際会議が開かれたが、会議の場であらためて太陽中性子観測の重要性が認識された。チャカルタヤの新検出器は、名大太陽地球環境研究所が東大宇宙線研究所の乗鞍観測所に有する太陽中性子望遠鏡試作機とともに、中性子と陽子の識別ができること、中性子のエネルギーが測定できることを利点としている。従来の太陽中性子モニターでは得られない特長であり、国際会議の場でも関心を呼んだ。またチャカルタヤは、日本の真夜中に太陽が南中し、24時間ネットワークへの第一歩を踏み出した。平成6年度前半は得られたデータを解析をし、粗解析から太陽中性子イベント探索まで誰でも簡単にできるルーチンを開発した。
KAKENHI-PROJECT-05045020
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05045020
チャカルタヤでの太陽中性子の観測
観測で得られたデータは8mmテープに記録されているが、前年度末にサンアンドレス大学側にワークステーションが導入されたのを考慮して、8mmテープからデータをワークステーションのディスクにコピーして保存する方法を確立した。平成6年8月にデータ収集回路の一部が故障したが、現地研究者の努力でデータ収集の中断には至らなかった。平成6年11月に松原がボリビアに渡航して、チャカルタヤでこの故障箇所を修理し、このような問題が起きないように改善作業を行なった。この際観測装置を構成する各検出器が非常に安定に働いていることが確認された。また、日本で作ったデータ記録・データ解析のソフトウェアをサンアンドレス大学のワークステーションに委嘱し、今後の日本へのデータ配送、データ解析の進め方に関して議論を行ない体制を整えた。平成7年8月に村木が渡航し、回路系の点検を行なった。大まかな運転状況としては、順調であった。しかし、平成6年11月からのデータをよく見ると必ずしも安定に動いていないチャンネルもあり、現地の研究者等がチェックすべき項目の再整理を行なった。平成8年3月には松原が渡航し、現地の研究者等と議論を行ない、基本的に日本人がいない状況での観測体制に関しての確認を行なった。チャカルタヤにおける太陽中性子の観測は、平成9年から始まる次期太陽活動期には格別に重要となる。検出器・データ収集回路・オンラインプログラムとも日本で開発したものを持ち込んでいるため、故障等起こった場合の対処が問題であるが、現地にはマニュアル類を用意してある。それでも駄目な場合にはFAX、電子メールでの連絡により対応することを現在考えている。この間太陽活動は活発ではなかったので、物理的な結果はまだ得られていないが、観測状況については平成7年9月にローマで開かれた宇宙線国際会議で発表した。また、これは本国際学術の経費で行なったものではないが、平成8年の2月から3月にかけて太陽大学核物理センターの加速器によりエネルギーのわかっている中性子を検出器に当てるビームタイムを得ることができた。ボリビアにあるのと同じタイプの検出器を作り、検出器の中性子に対する検出効率やエネルギー分解能を調べた。詳細な解析にはまだ時間がかかるが、シミュレーションから期待された結果とほぼ同様の結果が得られ、本観測でこれから得られる結果について不確定要素はなくなった。当該年度前半は名古屋大学特定研究経費等を用いて観測に必要なシンチレータを製作した。このシンチレータは、荷電粒子と中性子を弁別し、宇宙線荷電粒子によるバックグラウンドを除去するためのアンチカウンターとして製作された。また、データ読み出し、記録に必要な回路系を購入した。国内での動作試験の後、これらの観測装置を船便でボリビアに発送し、平成6年1月に荷物が現地に到着した。これに合わせて平成6年1月に松原が、2月に村木がボリビアに渡航し、現地の研究者とともに観測装置の設置・組み立てを行い、3月8日より運転を開始した。本研究により、現有の観測装置と比較して荷電粒子によるバックグラウンドは1/3に減少し、S/N比が2倍向上した。
KAKENHI-PROJECT-05045020
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05045020
英語教育における高大連携-学校の序列化を超えた価値の創造
学習指導要領が改訂され、大学入試に大きな変化がもたらされている昨今、高等学校をめぐる状況は混沌としている。高校生の大半が英語が重要だと認識しているが、その半数近くが英語に対して苦手意識を持っている。さらに、自分が大人になった時には英語を使う必要がある世の中になっていると考える高校生が多い反面、実際に自分が英語を使って仕事をするイメージを持っている高校生は少ない。このように、英語学習がどこか「他人事」になってしまっている状況には大きな問題があると言わざるを得ない。本研究は、英語に苦手意識を持つ高校生が多く在籍する私立高等学校をフィールドとし、その進学コースの生徒(各学年約60名)と担当教員2名を中心として高大連携の立場から協働を試みるものである。高大の教員が協働し学び合うことにより、高校生が大学や社会生活につながる意欲を高めることのできる英語教育を実施し、教員が高い意識と教育力を持つことができるようになるのが目標である。優秀な高校生を早いうちから大学の現場に招き入れる高大連携とは異なる目標である。2018年度は研究の初年度であった。筆者の本務校と高等学校が距離的に離れていることから、訪問は週末中心の限定的なものとならざるを得ない。2ヶ月に1回の訪問時には、担当教員との打合せ、授業参観などを中心に実施し、訪問できない期間には、インターネットを通して詳細に意思疎通を行った。具体的には2018年度は2018年4月、6月、11月、2019年2月、3月の計5回訪問した。2018年7月にはオンラインによるアンケート調査第1回、2019年3月には第2回を実施した。第1回アンケートの結果は、2018年12月に行われた第10回日本リメディアル教育学会九州・沖縄支部大会で発表した。2019年度はこれら2回のアンケート結果をより詳細に分析し、さらに研究を進める予定である。おおむね順調ではあるが、2018年夏に筆者の家族が緊急入院(翌月に死去)したため、看病等の必要があり、研究及び研究発表の予定をキャンセルせざるを得ない状況があった。いろいろな状況が少し落ち着いた後で研究を再開した。アンケート調査などはおおむね予定していた時期に実施することができたが、当初2018年度に予定していたホームページ開設ができなかった。これは、予算の見積が当初の考えより高額であったことも原因の一つであった。2019年度はこれをどのように進めるか、改めて熟考したうえで進めていく予定である。2019年度は、本務校から学外研修が認められたため、研究を加速する。2018年度は2ヶ月に1回だった高校訪問を毎月行い、高校の状況を把握し、教員と生徒とより強い信頼関係が築けるように努力する。そのうえで、2019年夏には第3回アンケート調査を実施し、高校生がどのようなサポートを必要としているかより詳細に把握する。2019年後半には、教育関係の学会で発表し、論文を執筆することを目指す。研究結果を広く公開することにより、類似の問題を抱える高等学校などに情報提供ができることを目指す。学習指導要領が改訂され、大学入試に大きな変化がもたらされている昨今、高等学校をめぐる状況は混沌としている。高校生の大半が英語が重要だと認識しているが、その半数近くが英語に対して苦手意識を持っている。さらに、自分が大人になった時には英語を使う必要がある世の中になっていると考える高校生が多い反面、実際に自分が英語を使って仕事をするイメージを持っている高校生は少ない。このように、英語学習がどこか「他人事」になってしまっている状況には大きな問題があると言わざるを得ない。本研究は、英語に苦手意識を持つ高校生が多く在籍する私立高等学校をフィールドとし、その進学コースの生徒(各学年約60名)と担当教員2名を中心として高大連携の立場から協働を試みるものである。高大の教員が協働し学び合うことにより、高校生が大学や社会生活につながる意欲を高めることのできる英語教育を実施し、教員が高い意識と教育力を持つことができるようになるのが目標である。優秀な高校生を早いうちから大学の現場に招き入れる高大連携とは異なる目標である。2018年度は研究の初年度であった。筆者の本務校と高等学校が距離的に離れていることから、訪問は週末中心の限定的なものとならざるを得ない。2ヶ月に1回の訪問時には、担当教員との打合せ、授業参観などを中心に実施し、訪問できない期間には、インターネットを通して詳細に意思疎通を行った。具体的には2018年度は2018年4月、6月、11月、2019年2月、3月の計5回訪問した。2018年7月にはオンラインによるアンケート調査第1回、2019年3月には第2回を実施した。第1回アンケートの結果は、2018年12月に行われた第10回日本リメディアル教育学会九州・沖縄支部大会で発表した。2019年度はこれら2回のアンケート結果をより詳細に分析し、さらに研究を進める予定である。おおむね順調ではあるが、2018年夏に筆者の家族が緊急入院(翌月に死去)したため、看病等の必要があり、研究及び研究発表の予定をキャンセルせざるを得ない状況があった。いろいろな状況が少し落ち着いた後で研究を再開した。アンケート調査などはおおむね予定していた時期に実施することができたが、当初2018年度に予定していたホームページ開設ができなかった。
KAKENHI-PROJECT-18K00749
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K00749
英語教育における高大連携-学校の序列化を超えた価値の創造
これは、予算の見積が当初の考えより高額であったことも原因の一つであった。2019年度はこれをどのように進めるか、改めて熟考したうえで進めていく予定である。2019年度は、本務校から学外研修が認められたため、研究を加速する。2018年度は2ヶ月に1回だった高校訪問を毎月行い、高校の状況を把握し、教員と生徒とより強い信頼関係が築けるように努力する。そのうえで、2019年夏には第3回アンケート調査を実施し、高校生がどのようなサポートを必要としているかより詳細に把握する。2019年後半には、教育関係の学会で発表し、論文を執筆することを目指す。研究結果を広く公開することにより、類似の問題を抱える高等学校などに情報提供ができることを目指す。2018年度に予定していたホームページの構築が高額のためできなかった。そのため、2019年度に再度見積を行い、可能と判断すれば構築する予定である。
KAKENHI-PROJECT-18K00749
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K00749
燃料電池の高性能化に関する研究
(1)固体電解質型高温燃料電池高性能化の研究この型の電池電池内の熱収支について検討を行い、電池内部の温度分布を明らかにし、それに応じて電池内にかかる応力を評価し、電池設計の指針を示した。SrCeO_3などのプロトン導電性固体を電解質に用いることを新しく提案し、高い性能の電池となることを示した。多孔性のLa_<0.6>Ca_<0.4>MnO_3をカソードに用いたときの電解質との相互作用、雰囲気、温度の影響を調べ、過電圧の低減、耐食性向上の両面から、優れたカソードをつくるための指針を得た。さらに、ランタン不足の(La,Sr)_<1-×>MnO_3をカソードに用いれば長時間安定であることを明らかにした。(2)溶融炭酸塩型高温燃料電池高性能化の研究この電池については電極の安定性に重点を置いて研究した。多孔性ニッケル電極をタングステンで改質することにより、高い耐食性と触媒性を示すアノードが得られた。また、複合電着被覆法を新しく提案し、アノードに銅・ニッケル合金が適することを示した。さらに、電解液に炭酸リチウム・炭酸ナトリウム混合塩を用い、それに鉄を添加してニッケルフェライトを作成するのがよいことを明らかにした。(3)直接型アルコール燃料電池高性能化の研究燃料にメタノールを用い、それの有効利用を目指して、メタノールを溶解した硫酸を電解質に用いる新しい電池を対象に、安価な高活性触媒の探索と反応促進のための電極構造の設計について研究を行った。炭素繊維に白金とルテニウムの二元系合金を熱分解法あるいはスパッタ法で担持させた電極はアルコールのアノード酸化に対して高い触媒作用を示した。また、高比表面積担体を用い、触媒を分散すると同時に、ポリエチレン薄膜を被覆し、フッ素化することにより、長寿命、高活性電極が得られることを明らかにした。(1)固体電解質型高温燃料電池高性能化の研究この型の電池電池内の熱収支について検討を行い、電池内部の温度分布を明らかにし、それに応じて電池内にかかる応力を評価し、電池設計の指針を示した。SrCeO_3などのプロトン導電性固体を電解質に用いることを新しく提案し、高い性能の電池となることを示した。多孔性のLa_<0.6>Ca_<0.4>MnO_3をカソードに用いたときの電解質との相互作用、雰囲気、温度の影響を調べ、過電圧の低減、耐食性向上の両面から、優れたカソードをつくるための指針を得た。さらに、ランタン不足の(La,Sr)_<1-×>MnO_3をカソードに用いれば長時間安定であることを明らかにした。(2)溶融炭酸塩型高温燃料電池高性能化の研究この電池については電極の安定性に重点を置いて研究した。多孔性ニッケル電極をタングステンで改質することにより、高い耐食性と触媒性を示すアノードが得られた。また、複合電着被覆法を新しく提案し、アノードに銅・ニッケル合金が適することを示した。さらに、電解液に炭酸リチウム・炭酸ナトリウム混合塩を用い、それに鉄を添加してニッケルフェライトを作成するのがよいことを明らかにした。(3)直接型アルコール燃料電池高性能化の研究燃料にメタノールを用い、それの有効利用を目指して、メタノールを溶解した硫酸を電解質に用いる新しい電池を対象に、安価な高活性触媒の探索と反応促進のための電極構造の設計について研究を行った。炭素繊維に白金とルテニウムの二元系合金を熱分解法あるいはスパッタ法で担持させた電極はアルコールのアノード酸化に対して高い触媒作用を示した。また、高比表面積担体を用い、触媒を分散すると同時に、ポリエチレン薄膜を被覆し、フッ素化することにより、長寿命、高活性電極が得られることを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-01603014
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01603014
酸化ストレスによるストレス顆粒形成の制御
細胞内ストレス顆粒は、ヒ素や低酸素などの特定のストレス刺激に応答して一過性に細胞質内に形成される構造体で、細胞の生存に重要な役割を果たす。本研究では、ストレス顆粒の多機能性の解明を目指し、新規ストレス顆粒局在因子の探索、及び複合ストレス条件下でのストレス顆粒形成制御機構の解析を行った。その結果、1)新規ストレス顆粒局在因子として同定したUSP10がストレス顆粒の安定性に寄与することを見出した。また、2)酸化条件下ではストレス顆粒形成が阻害されることを明らかにした。細胞内ストレス顆粒は、ヒ素や低酸素などの特定のストレス刺激に応答して一過性に細胞質内に形成される構造体で、細胞の生存に重要な役割を果たす。本研究では、ストレス顆粒の多機能性の解明を目指し、新規ストレス顆粒局在因子の探索、及び複合ストレス条件下でのストレス顆粒形成制御機構の解析を行った。その結果、1)新規ストレス顆粒局在因子として同定したUSP10がストレス顆粒の安定性に寄与することを見出した。また、2)酸化条件下ではストレス顆粒形成が阻害されることを明らかにした。細胞はヒ素や低酸素などの特定の種類のストレス刺激に応答して細胞質内にストレス顆粒と呼ばれる一過性の構造体を形成する。細胞質内ストレス顆粒は、タンパク質の翻訳を一時的に停止し、細胞損傷を防ぐための構造体であると考えられて来た。しかし、申請者のこれまでの研究から、ストレス顆粒は複合ストレス条件下で、他のストレス応答機構と相互作用し、細胞の生存に寄与する新しい機能を持つことが明らかになった。そこで本研究では、複合ストレス条件下でのストレス顆粒形成の制御に焦点をあて、ストレス顆粒形成制御機構を明らかにするとともに、病態におけるストレス顆粒の細胞生存への寄与を検証する。アルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)に代表される神経変性疾患では、細胞に小胞体ストレスと酸化ストレスの両方が誘導されることが知られるが、病態における両ストレスの相互作用の詳細には不明な点が多い。小胞体ストレスは、翻訳開始因子eIF2αのリン酸化を介してストレス顆粒を誘導するが、活性酸素などの酸化ストレスによるストレス顆粒形成制御に関してはほとんど報告がない。そこでまず、U20S細胞に酸化ストレスとして過酸化水素を添加し、ストレス顆粒形成に与える影響を検証した。次に、ストレス顆粒形成の核となることが知られる数種類の分子に着目し、酸化ストレス依存的に酸化修飾を受ける因子の同定を行った。更に酸化のターゲットとなるCys残基を同定し、Ser残基に置換した変異体を細胞に過剰発現させた時に、ストレス顆粒形成に与える影響を検証した。次年度は更に、小胞体ストレスと酸化ストレスがストレス顆粒形成に与える相互的な作用を検証し、病態への関与を解明する。細胞質内ストレス顆粒はタンパク質の翻訳を一時的に停止し、細胞損傷を防ぐための構造体であると考えられてきた。しかし申請者のこれまでの研究から、ストレス顆粒は複合ストレス条件下で、他のストレス応答機構と相互作用し、細胞の生存に寄与する新しい機能を持つことが明らかになった。そこで本研究では、生体内の複合ストレス環境のモデルとして、小胞体ストレスと酸化ストレスが誘導される神経変性疾患に着目し、神経細胞における複合ストレス条件下でのストレス穎粒形成制御と、細胞生存への寄与の解明を目指した。当該年度は、はじめに培養細胞を用いた実験により酸化ストレスが小胞体ストレスによるストレス穎粒形成を抑制することを見出し、その抑制分子メカニズムの詳細な解析を行った。先行研究から、翻訳開始因子であるeIF2αがリン酸化されることがストレス穎粒形成のトリガーとなることが知られている。一方、酸化ストレスはeIF2αのリン酸化を阻害することなくストレス穎粒形成を抑制することが明らかになった。これまでにストレス顆粒形成を抑制する刺激は報告がないため、本研究で得られた知見の学術的重要性は高い。次に、実際に神経変性疾患において、神経細胞内に生じる酸化ストレスが小胞体ストレスによるストレス穎粒形成を抑制し、その結果細胞死が促進されるかを検証した。はじめに、疾患モデル細胞として伸長ポリグルタミン鎖を発現誘導できる安定細胞株を樹立した。次に、伸長ボリグルタミン鎖の発現、細胞内蓄積に依存して、細胞内に小胞体ストレス及び酸化ストレスが誘導されることを確認した。このモデル細胞を用いて、酸化ストレスと小胞体ストレスが同時に誘導されている際には、ストレス顆粒の形成が抑制されていることを確認した。
KAKENHI-PROJECT-22770188
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22770188
有機半導体単層2分子膜を用いた分子認識センサ機能の開拓
単層2分子膜型の有機半導体という、細胞に似た構造の人工薄膜を用いて生体模倣センサ機能を検討する。はじめに、薄膜トランジスタ(TFT)を周囲のガス環境を変えた中で動作させ、そのTFT特性の系統的な変化から、周囲の極性分子ガス濃度の計測、および繰り返し耐性を調べる。以上をもとにポリマーフィルム上に電極を印刷構築し、フレキシブルセンサを作製・駆動させる。さらに、基板をもたない独立2分子膜構築技術の確立に従事する。脂質分子を用いた独立2重膜とは異なり、有機半導体を用いた独立単層2分子膜を構築することで、従来のストキャスティックセンサの常識を覆す、長寿命のイオンチャネル内包型センサ機能の開拓に努める。単層2分子膜型の有機半導体という、細胞に似た構造の人工薄膜を用いて生体模倣センサ機能を検討する。はじめに、薄膜トランジスタ(TFT)を周囲のガス環境を変えた中で動作させ、そのTFT特性の系統的な変化から、周囲の極性分子ガス濃度の計測、および繰り返し耐性を調べる。以上をもとにポリマーフィルム上に電極を印刷構築し、フレキシブルセンサを作製・駆動させる。さらに、基板をもたない独立2分子膜構築技術の確立に従事する。脂質分子を用いた独立2重膜とは異なり、有機半導体を用いた独立単層2分子膜を構築することで、従来のストキャスティックセンサの常識を覆す、長寿命のイオンチャネル内包型センサ機能の開拓に努める。
KAKENHI-PUBLICLY-19H05321
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-19H05321
球面状反射板の航空機、交通及び一般(屋内)騒音制御への応用
本研究は、ジェット・スクリーチの発生機構に関わる渦擾乱と衝撃波の干渉及びせん断層の不安定との共鳴機構を明らかにし、素の応用を図る.(1)音波のコヒーレンスを同定するため、レーザーによる音波検出装置を設計、製作に取り組んでいる.(2)また、シュリーレン装置と高速度カメラにより、球面反射板を取り付けた場合の流れ場の変化を観測した.その結果、球面反射板を取り付けることにより、ノズル出口における音波が相殺され、不安定波の励起作用を停止したため、擾乱の発生が弱められ、衝撃波との干渉力も減少し、衝撃波構造が乱されること無く下流まで続くことが確認された.この観察は、球面反射板に明けたスリットを通して行なった.球面反射板にスリットを明ける場合の消音効果の変化も調べた。スリットを設けることにより消音効果のレベルは低下するが、スクリーチの相殺は可能であった.(3)平面反射板を音響相殺が発生する位置に設置し、流れ場の変化を観測し、適切な球面板をノズル出口に設置した場合と同じ現象を観測した.(4)球面反射板を気流中に設置した場合の抵抗力の測定の準備を行なった.(5)球面反射板をダクト中に設置した場合の性能調査の準備を行なった.本研究は、ジェット・スクリーチの発生機構に関わる渦擾乱と衝撃波の干渉及びせん断層の不安定との共鳴機構を明らかにし、素の応用を図る.(1)音波のコヒーレンスを同定するため、レーザーによる音波検出装置を設計、製作に取り組んでいる.(2)また、シュリーレン装置と高速度カメラにより、球面反射板を取り付けた場合の流れ場の変化を観測した.その結果、球面反射板を取り付けることにより、ノズル出口における音波が相殺され、不安定波の励起作用を停止したため、擾乱の発生が弱められ、衝撃波との干渉力も減少し、衝撃波構造が乱されること無く下流まで続くことが確認された.この観察は、球面反射板に明けたスリットを通して行なった.球面反射板にスリットを明ける場合の消音効果の変化も調べた。スリットを設けることにより消音効果のレベルは低下するが、スクリーチの相殺は可能であった.(3)平面反射板を音響相殺が発生する位置に設置し、流れ場の変化を観測し、適切な球面板をノズル出口に設置した場合と同じ現象を観測した.(4)球面反射板を気流中に設置した場合の抵抗力の測定の準備を行なった.(5)球面反射板をダクト中に設置した場合の性能調査の準備を行なった.
KAKENHI-PROJECT-03F00224
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03F00224
強いATPの血清アルプミンへの吸着の生理的意義は何か
アルブミンはATPとは相互作用をしない「不活性」なタンパクと考えられている.しかし,ATP依存系やATPase活性が血清アルブミンの存在によって影響を受けることが報告されている.ATPが血清アルブミンに吸着することを限外ろ過法およびNMRにより示した.pH依存性,イオン強度依存性について詳細な検討を加えた.NMRのデータから,ATPのどの部分がタンパクと相互作用しているかを明らかにした.滴定型カロリメトリーを用いて,吸着におけるΔH^○,ΔG^○,ΔS^○を5°C35°Cで求め,吸着の熱力学的性質について検討した.photo-affinity labelingによって,ATPのアルブミンの吸着部位を推定した.3種類のラベル剤を合成し,8-N_3-εATPが最適であることを見いだした.このラベル剤を用いてATPの結合部位はサイトIの近傍であることを明らかにした.サイトI結合物質がATPのアルブミンへの結合をnon-competitiveに阻害することは,この結論を支持する.photo-affinityの実験データの詳細な検討により,2カ所の吸着部位が推定されたが,結合実験からは結合部位数は1であり,一見矛盾する結果となるが,2カ所の吸着部位が直列的につながっていると推定し,報告されているアルブミンの結晶構造から,この推定は妥当であると推論した.この吸着部位の内の1つは,Clの結合部位であることを明らかにした.申請時の予備実験の結果であるATPがアルブミンに結合することを確かめ、その結合を限外ろ過法およびNMRによって詳細に調べた.結合はpH依存的であった.Scatchardプロットにより、pH5.4,6.4および7.4で、解離定数はそれぞれ13,40および120μMであった.pH8.4では結合しなかった.ATP:アルブミンの結合比はすべてのpHで1:1であった.アルブミンの2量体にはATPは結合しなかった.この解離定数は^<31>P-NMRの化学シフトから求められた値と良く一致した.アデノシンは結合を阻害しなかったが、GTP、dCTP、ADP、UTP、AMP、リン酸およびピロリン酸の阻害定数は、それぞれ、25,32,36,50,130,1000および186μMであった.ラウリン酸やパルミチン酸のような脂肪酸はATPの結合を妨害しなかった.ワルファリンは結合を非拮抗阻害した.C1^<-1>は拮抗阻害し、その阻害定数は20mMであり、その値はClのBSAに対する第2結合部位に近いので、ATPはClの第2結合部位に結合すると結論した.アルブミンはATPとは相互作用をしない「不活性」なタンパクと考えられている.しかし,ATP依存系やATPase活性が血清アルブミンの存在によって影響を受けることが報告されている.ATPが血清アルブミンに吸着することを限外ろ過法およびNMRにより示した.pH依存性,イオン強度依存性について詳細な検討を加えた.NMRのデータから,ATPのどの部分がタンパクと相互作用しているかを明らかにした.滴定型カロリメトリーを用いて,吸着におけるΔH^○,ΔG^○,ΔS^○を5°C35°Cで求め,吸着の熱力学的性質について検討した.photo-affinity labelingによって,ATPのアルブミンの吸着部位を推定した.3種類のラベル剤を合成し,8-N_3-εATPが最適であることを見いだした.このラベル剤を用いてATPの結合部位はサイトIの近傍であることを明らかにした.サイトI結合物質がATPのアルブミンへの結合をnon-competitiveに阻害することは,この結論を支持する.photo-affinityの実験データの詳細な検討により,2カ所の吸着部位が推定されたが,結合実験からは結合部位数は1であり,一見矛盾する結果となるが,2カ所の吸着部位が直列的につながっていると推定し,報告されているアルブミンの結晶構造から,この推定は妥当であると推論した.この吸着部位の内の1つは,Clの結合部位であることを明らかにした.
KAKENHI-PROJECT-09877422
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09877422
触媒的脱水環化反応によるオキサゾリン類、チアゾリン類の効率的合成法の開発
酸化モリブデン(VI)触媒を用いてオキサゾリンやチアゾリンなどヘテロ環を含む生物活性物質を合成し、論文にまとめ発表した。また、新たなキラルビス(オキサゾリン)配位子を合成し、銅(II)との錯体を触媒に用いる不斉Diels-Alder反応を開発した。1.ヘテロ環を含む生物活性物質の合成オキサゾリンは酸素原子と窒素原子を、チアゾリンは硫黄原子と窒素原子を含む5員環化合物である。オキサゾリンやチアゾリン、それらが酸化されたオキサゾールやチアゾールは多くの天然有機化合物に含まれる重要なヘテロ環構造である。これらは抗腫瘍活性や抗ウイルス活性などの生物活性を示すことが知られている。著者は、酸化モリブデン(VI)触媒を用いて、アミノ酸誘導体からオキサゾリン、チアゾリンを合成する効率的方法を既に開発している。触媒量で反応が進行し、副生成物が水のみであるという点で、多量の副生成物が生じる従来の脱水縮合剤を用いる方法に比べ、環境低負荷型の優れた反応である。今年度、本合成法を様々な生物活性物質の合成へ応用し、複雑な化合物にも対応しうることを証明することができた。2.銅(II)・キラルビス(オキサゾリン)錯体を用いる触媒的不斉Diels-Alder反応の開発2つのオキサゾリン構造を持つビス(オキサゾリン)は不斉配位子として有用である。著者は開発した酸化モリブデン触媒を用いて新たなビス(オキサゾリン)配位子を合成し、銅(II)との錯体触媒による不斉Diels-Alder反応を開発した。スルホンアミド基をもつビス(オキサゾリン)配位子を用いた場合、様々な基質においてよい収率、高いエナンチオ選択性で目的の化合物が得られた。理論計算により、スルホニル酸素と銅カチオンとの相互作用(カチオン-n相互作用)が示唆されている。このような相互作用を鍵とする触媒の報告例はなく、興味深い結果である。現在、この成果に関しての論文を投稿準備中である。アミノ酸誘導体から生物活性物質によくみられるオキサゾリン、チアゾリンを合成する脱水環化反応をほぼ中性の条件で実現できる酸化モリブデン触媒を既に開発している。触媒量でよく、副生成物が水のみであるという点で、多量の副生成物が生じる従来の脱本縮合剤を用いる方法に比べ、環境低負荷型の反応である点が特長である。本反応を用いて、オキサゾリン、チアゾリン構造を有する生物活性物質の合成を目指し研究を進めた結果、抗腫瘍活性物質BE-70016の全合成を達成することができた。オルトヒドロキシシェニルオキサゾリンを鍵構造に持つ本化合物の合成は、酸化モリブデン触媒のみでは低収率にとどまり、よい結果が得られなかった。しかし、研究を進ある中で,安息香酸誘導体を添加することで収率を改善できることを見出した。そして抗腫瘍活性物質BE-70016の初めての化学合成に成功し、化合物の絶対立体配置を決定することができた。また、3つのオキサゾリシやチアゾリシなどのヘテロ環がつながった環状化合物Tenuecyclamideの合成ブロックを合成ずることができだ。酸性条件下や塩基性条件下ではラセミかしやすいアミノ酸由来の不斉点は、ほぼ沖性条件の本合成法を用いるとラセミ化することなく、目的の化合物を合成できた。以上のように、環境への負荷が小さく、温和な条件で反応が進行する本合成法を用いて、生物活性物質を合成することができた。これらの結果は2報の論文に糞とめ、発表した。酸化モリブデン(VI)触媒を用いてオキサゾリンやチアゾリンなどヘテロ環を含む生物活性物質を合成し、論文にまとめ発表した。また、新たなキラルビス(オキサゾリン)配位子を合成し、銅(II)との錯体を触媒に用いる不斉Diels-Alder反応を開発した。1.ヘテロ環を含む生物活性物質の合成オキサゾリンは酸素原子と窒素原子を、チアゾリンは硫黄原子と窒素原子を含む5員環化合物である。オキサゾリンやチアゾリン、それらが酸化されたオキサゾールやチアゾールは多くの天然有機化合物に含まれる重要なヘテロ環構造である。これらは抗腫瘍活性や抗ウイルス活性などの生物活性を示すことが知られている。著者は、酸化モリブデン(VI)触媒を用いて、アミノ酸誘導体からオキサゾリン、チアゾリンを合成する効率的方法を既に開発している。触媒量で反応が進行し、副生成物が水のみであるという点で、多量の副生成物が生じる従来の脱水縮合剤を用いる方法に比べ、環境低負荷型の優れた反応である。今年度、本合成法を様々な生物活性物質の合成へ応用し、複雑な化合物にも対応しうることを証明することができた。2.銅(II)・キラルビス(オキサゾリン)錯体を用いる触媒的不斉Diels-Alder反応の開発2つのオキサゾリン構造を持つビス(オキサゾリン)は不斉配位子として有用である。著者は開発した酸化モリブデン触媒を用いて新たなビス(オキサゾリン)配位子を合成し、銅(II)との錯体触媒による不斉Diels-Alder反応を開発した。スルホンアミド基をもつビス(オキサゾリン)配位子を用いた場合、様々な基質においてよい収率、高いエナンチオ選択性で目的の化合物が得られた。
KAKENHI-PROJECT-07J02660
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07J02660
触媒的脱水環化反応によるオキサゾリン類、チアゾリン類の効率的合成法の開発
理論計算により、スルホニル酸素と銅カチオンとの相互作用(カチオン-n相互作用)が示唆されている。このような相互作用を鍵とする触媒の報告例はなく、興味深い結果である。現在、この成果に関しての論文を投稿準備中である。
KAKENHI-PROJECT-07J02660
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07J02660