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作物モデル及びドローンデータを用いた水稲病害による減収リスク評価手法の構築 | 気候変動による作物病害発生と穀物収量の損失が懸念されており、食料の確保と貧困回避の観点から、熱帯地域において総合的な病害防除への取組が重要課題となっている。そこで、インドネシアにおいて多発しているイネ白葉枯病といもち病を対象として、作物モデル、気象データ、ドローンデータ、疫病調査データを駆使して、発病確率判定手法の構築、罹病時期と最終収量の減収程度の特定、気象データとSIMRIW-RSモデルによる病害発生徴候検出後の予測による減収リスク評価手法を構築する。得られる結果は新たな水稲病害計測情報と評価手法の提示となり、減収リスクを考慮した被害拡大の阻止と軽減のための判断情報となる。気候変動による作物病害発生と穀物収量の損失が懸念されており、食料の確保と貧困回避の観点から、熱帯地域において総合的な病害防除への取組が重要課題となっている。そこで、インドネシアにおいて多発しているイネ白葉枯病といもち病を対象として、作物モデル、気象データ、ドローンデータ、疫病調査データを駆使して、発病確率判定手法の構築、罹病時期と最終収量の減収程度の特定、気象データとSIMRIW-RSモデルによる病害発生徴候検出後の予測による減収リスク評価手法を構築する。得られる結果は新たな水稲病害計測情報と評価手法の提示となり、減収リスクを考慮した被害拡大の阻止と軽減のための判断情報となる。 | KAKENHI-PROJECT-19H03078 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H03078 |
単位根から緩やかな乖離のある確率過程の時系列分析 | 移動平均モデルは応用可能なモデルが多いにもかかわらず自己回帰モデル(ARモデル)と比較して理論的な研究は分析の困難さもあってか、十分な研究が行われてこなかった。そこで、本研究では、移動平均モデルの漸近理論への貢献を目指し、近接単位根よりも収束のオーダーの小さい緩やかな乖離のある(Moderate Deviation)過程において係数パラメータの推定問題を考察した。Moderate Deviation過程は単位根の近傍でありもともとは、ARモデルに対してGiraitis and Phillips(2006)によって考えだされたものである。前年度(平成23年度)はTanaka(1990)で単位根検定のために提案されたスコア検定統計量のModerate Deviation過程のもとでの漸近特性に関して考察した。本年度(平成24年度)は、Moderate Deviation過程におけるパラメータの推定量に関する研究を行った。具体的には、条件付き最小二乗推定量の漸近分布を導出した。漸近分布は移動平均モデルの誤差項の初期値に依存しており、初期値がゼロの場合とゼロではない場合に場合分けされることを示した。初期値がゼロの場合は条件付き最小二乗推定量は最尤推定量と有限標本のもとでも一致することが知られているため、最尤推定量の漸近分布も初期値がゼロの場合には得られた。初期値がゼロの場合は、漸近正規性があるが、初期値がゼロではない場合は収束のオーダーに極限が依存し、3つの場合にわかれることがわかった。移動平均モデルは応用可能なモデルが多いにもかかわらず自己回帰モデル(ARモデル)と比較して理論的な研究は分析の困難さもあってか、十分な研究が行われてこなかった。そこで、本研究では、移動平均モデルの漸近理論への貢献を目指し、近接単位根よりも収束のオーダーの小さい緩やかな乖離のある(Moderate Deviation)過程において係数パラメータの推定問題を考察した。Moderate Deviation過程は単位根の近傍でありもともとは、ARモデルに対してGiraitis and Phillips(2006)によって考えだされたものである。前年度(平成23年度)はTanaka(1990)で単位根検定のために提案されたスコア検定統計量のModerate Deviation過程のもとでの漸近特性に関して考察した。本年度(平成24年度)は、Moderate Deviation過程におけるパラメータの推定量に関する研究を行った。具体的には、条件付き最小二乗推定量の漸近分布を導出した。漸近分布は移動平均モデルの誤差項の初期値に依存しており、初期値がゼロの場合とゼロではない場合に場合分けされることを示した。初期値がゼロの場合は条件付き最小二乗推定量は最尤推定量と有限標本のもとでも一致することが知られているため、最尤推定量の漸近分布も初期値がゼロの場合には得られた。初期値がゼロの場合は、漸近正規性があるが、初期値がゼロではない場合は収束のオーダーに極限が依存し、3つの場合にわかれることがわかった。平成23年度に得られた結果により、本計画の多くの部分を肯定的に解決することができた。また、本研究は基礎研究のみが中心であったがNg and Perron(2001)で提案されているモデルとの関連があり、応用問題への大きな貢献が期待できることがわかった。平成24年度はNg and Perron(2001)で提案されたモデルに対して本研究で得られた推定量の漸近特性の結果を応用する研究を行う予定である。彼らは誤差項にModerate deviationのある自己回帰移動平均モデルの単位根検定を提案しており、多くの実証研究に用いられている。しかし、情報量基準によるラグ選択など複雑な計算を要する上、彼らの考えている誤差項はModerate deviationの特殊ケースであるため制約的である。そのため、条件付き最小二乗推定量を用いた一般化最小二乗推定量を行いより広いモデルに応用でき、より簡便な検定手法を提案したいと考えている。 | KAKENHI-PROJECT-11J00506 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J00506 |
リボソーム生合成因子がプロテアソーム形成を制御する機構を解明する | ユビキチン・プロテアソームシステムに欠損を示す新たな変異の取得を目指し1)アミノ酸アナログ感受性、2)26Sプロテアソームによって分解されるモデル基質の分解遅延、3)既知の26Sプロテアソーム変異との二重変異による合成増殖阻害、の3つの条件を満たす出芽酵母変異株のスクリーニングにより行なった。その結果、必須遺伝子TIF6の変異株を単離した。Tif6はリボソーム合成に必要な分子で、60Sサブユニットの形成に関わると同時に80Sリボソームを形成しても良いかどうかのチェックポイント機能も果たす分子である。Tif6は保存性の高いタンパク質で哺乳類オーソログとしてeIF6が存在する。Tif6/eIF6を調べてタンパク質合成とタンパク質分解という細胞内での2大イベントをつなぐ仕組みを明らかにすることが本申請課題の目的であった。eIF6のノックダウン実験の結果、26Sプロテアソームの触媒サブユニットであるcore particle (CP)量の減少が見られた。さらにCPの形成に関わるシャペロン分子Ump1の蓄積と、CPを形成するβサブユニットの前駆体型が観察されることがわかった。これらのことはeIF6のノックダウンでCP形成のどこかが阻害されていることを示唆する。そして実際にeIF6のノックダウンでCPサブユニットを含み完全なCPより小さい分子量を持つCP形成中間体と思われるものが観察された。またeIF6のノックダウンで見られるCP形成中間体と思われる構造体はCPサブユニットβ5をノックダウンした時の形成中間体と同じ分子量を示した。このことから、eIF6はβ5の組み込みに関わっていることが示唆された。一方ノックダウンに用いるsiRNAの配列によって表現型が異なる場合があることが判明し、eIF6とプロテアソームとの関係は異なる種類のデータで補強する必要がある。細胞内の恒常性は絶え間ないタンパク質合成とタンパク質分解により保たれていると考えられる。細胞内におけるタンパク質合成を担うリボソーム、選択的なタンパク質分解を担う26Sプロテアソームはいずれも数十のタンパク質が集まって形成される巨大なタンパク質複合体である。これらの複合体を形成するための形成過程は複雑でまた不確かなところが多く残されている。申請者らはプロテアソーム形成に異常を示す変異を探索し、リボソーム生合成に関わるeIF6の変異を得た。この遺伝学的関連を分子レベルで説明することを目的とする。これによって、eIF6による新しいプロテアソーム形成制御機構を明らかにするとともに、タンパク質合成とタンパク質分解という細胞内での2大イベントを連携させる仕組みというこれまで全く知られていない機構の解明につなげることを目指す。今年度の解析の結果、eIF6のノックダウンはタンパク質分解活性を有し7種のαサブユニット、βサブユニットから形成されるαリングとβリングがαββαの4層に重なって形成されている20S core particle (CP)の形成に異常を示すことがわかった。また、eIF6に対するポリクローナル抗体を作製し、細胞抽出液をグリセロール密度勾配遠心法により分画し内在性のeIF6の局在を観察すると完成した26Sプロテアソームが含まれる画分にはeIF6は検出されなかった。このことからeIF6が26Sプロテアソームサブユニットと直接相互作用するとしたら、完成した26Sプロテアソームに含まれるサブユニットではなく、形成途中のプロテアソームサブユニットと結合している可能性が高いと考えられる。これらのことからeIF6の解析によりタンパク質合成とタンパク質分解のマシナリーが相互に協調している可能性が考えられる。1. eIF6のノックダウンにより20S core particleの形成異常がβサブユニットの組み込みにあることが明らかになってきたが、当初予定していたeIF6ノックダウン細胞から形成不全を起こして蓄積したプロテアソーム形成中間体をNative-PAGE、もしくはグリセロール密度勾配遠心法により分離し、それをさらにアフィニティー精製することで単離精製し、得られた形成中間体の構成成分を質量分析法によって明らかにするところまでには至っていないため。2.酵母ツーハイブリッド法により検出されているeIF6とプロテアソームサブユニットとの結合が実際に動物細胞内で見られるかどうかを分画後のサンプルを用いた共免疫沈降実験により検証中である。内在性のeIF6を検出するためのポリクローナル抗体を作製した。またeIF6と直接相互作用するプロテアソームサブユニットの同定をin vitrotranscription/translationを用いた方法と大腸菌を用いたリコンビナントタンパク質作製などにより調べている途中である。3. eIF6の機能減弱時における26Sプロテアソーム形成異常が、全般的なリボソーム機能異常によるものでないということを出芽酵母の変異株を用いて検証できた。eIF6と同様にリボソーム生合成に関わるタンパク質の出芽酵母における変異株を用いてプロテアソーム活性を測定したところ、少なくとも調べた5つの変異株においてeIF6での変異株において見られるようなプロテアソーム活性の低下は見られなかった。このことからeIF6は特異的にリボソーム生合成とプロテアソーム形成とに関わっている可能性が高いと考えられる。タンパク質合成を担うリボソームと選択的なタンパク質分解を担うプロテアソームはいずれも数十のサブユニットから構成される巨大な複合体である。プロテアソームの形成過程は近年明らかになってきたが、形成過程を促進、もしくは促進するような制御機構に関しては解析が未だ不十分である。申請者らはプロテアソーム形成に異常を示す出芽酵母の変異を探索し、リボソーム生合成に関わるTif6/eIF6の変異を得た。 | KAKENHI-PROJECT-16K07342 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07342 |
リボソーム生合成因子がプロテアソーム形成を制御する機構を解明する | この遺伝学的関連を分子レベルで説明することを目指し、タンパク質合成とタンパク質分解という細胞内での2大イベントを連携させる仕組みに対する手がかりを得ることを目的として研究を行った。1、Tif6/eIF6とプロテアソームとの関係の発見はTif6の発現減弱型変異であるtif6-DAmPとプロテアソームサブユニットPre9の欠損変異やプロテアソーム形成シャペロンUmp1欠損変異との二重変異によって強く増殖遅延が見られたことに由来する。今年度はさらに異なる遺伝学的相互作用も観察した。これらのことからTif6とユビキチン・プロテアソーム系はお互いに厳密な量的制御を受けていると思われた。2、動物細胞のeIF6がプロテアソームによるプロセシングを受けている可能性を示した。プロセシングを受けたeIF6のみが、60Sリボソームとの相互作用が可能だとすると、この現象はリボソーム形成には正常なプロテアソーム機能が必要であり、タンパク質合成が行われるための基盤としてプロテアソームによる正常なタンパク質分解が必要である可能性を示唆している。1、遺伝学的相互作用としてUmp1もしくはユビキチン・プロテアソーム関連遺伝子の転写に広く関わるRpn4の欠損とtif6-DAmP変異とを組み合わせることでアミノ酸アナログであるアゼチジン2カルボン酸(AZC)の感受性が弱められることを発見した。またTif6を過剰発現させると増殖遅延を起こすが、同時にRpn4を過剰発現させると、この増殖遅延は抑圧される。これらのことからTif6とユビキチン・プロテアソーム系は厳密な量的制御を受けていると思われた。2、eIF6のN末端がプロセシングを受けている可能性があることを発見した。eIF6のN末端、C末端のそれぞれにmycタグ、もしくはflagタグを付加したものを細胞内で発現させるとflag抗体では分子量の異なる2種類のeIF6が観察され、myc抗体ではflag抗体で認識された2種類の分子種のうち分子量の大きな方しか検出されない。さらにそのプロセシングはプロテアソーム阻害剤のボルテゾミブで抑制されることから、プロテアソーム活性に依存してeIF6のプロセシングが起きていることが示唆された。3、ショ糖密度勾配遠心によって細胞抽出液を分画し、プロセシングを受けたeIF6と受けていないeIF6がどのフラクションに含まれるのか、リボソームの40S、60S、80S、ポリソームの分画位置と比較して調べた。その結果、発現させた大半のeIF6は40S以下のフラクションに分画され、一部のみが60Sリボソームと同じフラクションに分画されたが、60Sリボソームと同じフラクションに分画されたのはプロセシングを受けたeIF6だけだった。以上を合わせてeIF6のリボソームにおける機能にプロテアソームが関与し、タンパク質合成とタンパク質分解とが相互に密接な機能調節を受けている可能性を明らかできたため。 | KAKENHI-PROJECT-16K07342 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07342 |
リニアマイクロ塗付プロセスによる異方性有機半導体薄膜の創製と電子・光機能応用 | 本研究では、メソゲン基を有する共役分子・高分子について分子配向制御を検討した。非対称型基板に対して毛細管現象に伴う自発的溶液フローを利用し、ライン状の分子配向薄膜の作製に成功した。光学的異方性、電気的異方性を明らかにすると共に、置換基長に依存した電荷輸送特性を明らかにした。また、発光特性を調べ、薄膜中で生成する励起子の拡散長を明らかにすると共に、分子間距離及びコンフォメーションとの相関性を明らかにした。本研究では、高い蛍光量子効率を有し、大電流密度の電流注入可能な両極性共役分子・高分子及びその複合体薄膜を用いた配向膜の作製手法の開発とそのレーザー応用を目的とし、平成26年度は以下について検討を行った。(1)毛細管現象を利用した溶液フローに伴う分子配向制御を検討した。100ミクロン以下の均一な空間をもつ非対称型基板を作製し、溶液の滴下と毛細管現象により自発的溶液フローが起こり、ライン状の薄膜の作製に成功した。特に、メソゲン基を有するπ共役系高分子を溶質として用いた場合について、単体及び複合体薄膜の作製に成功した。(2)作製した薄膜について、SEM、AFM、偏光顕微鏡での観察を行い、凝集状態、分子配向状態、モルフォロジーについて明らかにした。複合体については混合比に依存したミクロ相分離構造を明らかにした。(3)面内、面外XRD測定により、薄膜中の結晶構造を調べ、分子配向秩序を明らかにした。特に、基板界面近傍では基板表面の規制力が働くのに対し、バルク内部では配向方向が異なることがわかった。(4)吸収及び蛍光スペクトルなどの光物性を調べた。偏光分光解析より、二色性比と遷移双極子モーメントの方向を明らかにした。時間分解蛍光測定により、蛍光寿命を明らかにし、配向膜中における共役分子・高分子の励起子の挙動と格子緩和の動的過程についての知見が得られた。(5)ITO基板上へのサンドイッチ構造、シリコン基板を用いたボトムコンタクト型電界効果トランジスタ構造を作製し、導電率やキャリア移動度の異方性を明らかにした。現時点では、光学的な異方性に比べ、電気的異方性は低く、その詳細を検討する必要がある。本研究では、高い蛍光量子効率を有し、大電流密度の電流注入可能な両極性共役分子・高分子及びその複合体薄膜を用いた配向膜の作製手法の開発とそのレーザー応用を目的とし、平成27年度は以下について検討を行った。(1)超短パルス光励起により、発光特性および電荷生成特性を評価し、その分子配向度に依存した発光強度、電荷移動度を明らかにした。(2)三角波パルス電圧印加時における過渡光電流応答波形を計測し、電圧上昇に伴う電流値の非線形的変化を見出した。応答波形解析により、薄膜中における正孔移動度の算出に成功し、電気的異方性を明らかにした。また、置換基長の異なる同族列分子における電荷輸送特性においては、分子間距離及びコンフォメーションに依存した電荷輸送特性を有することを明らかにした。(3)高速駆動用の単結晶薄膜の成長条件を見出し、この単結晶薄膜を用いた微小なデバイスの作製を行った。マイクロプローブ付き真空チャンバー中での測定により、電気的性質及び温度特性を明らかにし、電界効果移動度を明らかにした。(4)発光効率の測定を行い、薄膜中で生成する励起子の拡散長を明らかにした。また、置換基長のことなる同属列分子について比較検討し、分子間距離及びコンフォメーションとの相関性を明らかにした。本研究では、メソゲン基を有する共役分子・高分子について分子配向制御を検討した。非対称型基板に対して毛細管現象に伴う自発的溶液フローを利用し、ライン状の分子配向薄膜の作製に成功した。光学的異方性、電気的異方性を明らかにすると共に、置換基長に依存した電荷輸送特性を明らかにした。また、発光特性を調べ、薄膜中で生成する励起子の拡散長を明らかにすると共に、分子間距離及びコンフォメーションとの相関性を明らかにした。平成26年度の研究計画に記載した内容について予定通り遂行した。適用可能な材料が多種多様であることが判明し、両極性のπ共役系分子については、詳細な検討を平成27年度で行う予定である。作製については、ストライプ状の薄膜形成の手法についても検討済みであり、今後詳細が明らかになる見込みである。もちろん27年度は研究計画どおり、本研究で開発した薄膜作製手法を用いて、デバイス作製を行い、測定、評価、解析を行う予定である。電気電子材料・デバイス平成27年度は、以下の研究について推進する。(1)超短パルス光励起により、レーザー発振特性を評価し、その分子配向度と発振閾値との関係を明らかにする。また、レーザー発振しきい値の低減化についての条件を検討する。(2)短パルスの電圧印加における注入電流及び発光の過渡応答を計測し、電圧上昇に伴う電流値および発光強度の非線形的変化を明らかにする。また、電流値上昇に伴う温度及び発熱量を測定し、電流値の非線形的変化との相関性について評価を行う。さらに、配向膜内で起こるコンフォメーション変化を考慮して、電流注入メカニズムを解明する。(3)短パルス入力による高速駆動のため、電気的時定数を抑制するデバイス構造を設計し、作製を行う。マイクロプローブ付き真空チャンバーを用い、電気的性質及び温度特性、電界発光特性を明らかにする。 | KAKENHI-PROJECT-26600073 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26600073 |
リニアマイクロ塗付プロセスによる異方性有機半導体薄膜の創製と電子・光機能応用 | (4)電荷注入によって観測される発光効率を測定し、従来型の発光素子との比較検討を行う。更にクライオスタット中で液体窒素温度以下での低温測定を行い、温度依存性を明らかにする。また、発光スペクトルをCCDカメラ等を用いて測定し、その発光観測方向の角度依存性、偏光特性、パルス駆動時の周波数特性を明らかにする。 | KAKENHI-PROJECT-26600073 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26600073 |
部分因子環とその自己同型の研究 | 数理物理のsuperselection sectorの概念はセクター理論としてR.Longoにより数学的に整備拡張され、指数理論、部分因子環の解析の為に極めて有効な道具となっている。これを基本道具として、III型因子環の対の構造の研究、またこのような対に対する自己同型の研究を行った。具体的な成果は次の点である。1.因子環の対の構造を調べる為には対に対する自己同型の研究が極めて重要であり、なかでも近年、strongly onter及びstrougly freeと呼ばれる二つのクラスの自己同型の研究が注目を集めている。これら二つのクラスの関係を明かにして、III_λ(0<λ【less than or equal】1)の場合のnon-strongly freeな自己同型の構造を完全に決定する事に成功した。このような自己同型は富田竹崎理論のmodular自己同型、及び与えられた対からセクター理論を使う事により自然に決まるfnsion ruleを調べる事によってわかる自己同型(つまりnon-strongly onterな自己同型)の合成の形に表される2.セクター理論の典型的な応用として、(III型因子環のConnesによる分類の際基本的な不変量として導入された)T-setの概念の部分因子環版を研究しその基本性質を証明する事が出来た。またこの不変量(relative T-set)はIII_1型因子環の部分因子環を区別するのに極めて有効である事が分かった。実際、ある種の性質を共有するが、異なっているIII_1型因子環の非可算無限個の部分因子環を区別する事が出来た。数理物理のsuperselection sectorの概念はセクター理論としてR.Longoにより数学的に整備拡張され、指数理論、部分因子環の解析の為に極めて有効な道具となっている。これを基本道具として、III型因子環の対の構造の研究、またこのような対に対する自己同型の研究を行った。具体的な成果は次の点である。1.因子環の対の構造を調べる為には対に対する自己同型の研究が極めて重要であり、なかでも近年、strongly onter及びstrougly freeと呼ばれる二つのクラスの自己同型の研究が注目を集めている。これら二つのクラスの関係を明かにして、III_λ(0<λ【less than or equal】1)の場合のnon-strongly freeな自己同型の構造を完全に決定する事に成功した。このような自己同型は富田竹崎理論のmodular自己同型、及び与えられた対からセクター理論を使う事により自然に決まるfnsion ruleを調べる事によってわかる自己同型(つまりnon-strongly onterな自己同型)の合成の形に表される2.セクター理論の典型的な応用として、(III型因子環のConnesによる分類の際基本的な不変量として導入された)T-setの概念の部分因子環版を研究しその基本性質を証明する事が出来た。またこの不変量(relative T-set)はIII_1型因子環の部分因子環を区別するのに極めて有効である事が分かった。実際、ある種の性質を共有するが、異なっているIII_1型因子環の非可算無限個の部分因子環を区別する事が出来た。 | KAKENHI-PROJECT-06221257 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06221257 |
中国における所得格差の長期変動 | 中国における急速な経済成長と所得格差の拡大は、「中所得の罠」の重要な事例として注目を集めている。本研究は、研究代表者が参加する国際共同研究プロジェクトーChina Household Income Project (CHIP)ーが1980年代末以降行ってきた世帯調査のデータにもとづいて、中国の所得格差の長期変動を総合的に考察することを目的とする。平成30年度には、第1に、2007年と2013年のCHIPデータの比較から、近年の特徴的事実を整理した。その主要な事実発見は、ジニ係数で測った中国全体の所得不平等度に一定の低下傾向が認められること、また都市ー農村間格差、沿海ー内陸間格差などについても格差緩和傾向が見られること、他方で世帯間の資産格差は急速に拡大していることなどである。第2に、中国経済に特徴的な二重の構造変動(経済発展と経済体制移行)を理解するカギとなる農村地域に焦点を当てて、農村世帯所得の構造変化および公共政策(農村開発政策、税制改革、医療制度改革、社会保障改革など)の所得再分配効果を検証した。世帯所得の構成要素のうち、農業所得については、総所得に占める比重の低下と所得格差全体への影響度の低下が顕著であること、賃金(「出稼ぎ」所得含む)については、総所得に占める比重の上昇と賃金所得自体の格差縮小が合成された効果として、所得格差全体への影響度は1990年代に急上昇した後に比較的安定していること、2000年代に入ってから総所得に占める資産所得および帰属家賃の比重が顕著に上昇したことなどが主な事実発見である。また公的な移転所得(租税公課等の支払いと社会保障等の受け取りを足した純移転額)の所得再分配効果は、1990年代において著しく逆進的であったが、2000年代以降には、個別の政策ごとに効果は異なるものの、全体として所得格差縮小に寄与する方向に転じたことを確認した。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。本研究の目的は、市場経済化の初期段階(1980年代)から今日に至る中国の所得格差の長期変動を、全国的代表性を有する世帯調査にもとづいて、(1)都市・農村格差、(2)資産格差、(3)公共政策を通じた所得再分配などの側面から多角的に分析し、所得格差の拡大が中国の経済発展と経済システム移行に与える影響を明らかにすることにある。この目的を達成するために、平成27年度においては以下のように研究活動を実施した。第1に、研究代表者も参画する中国の世帯所得変動に関する国際共同プロジェクト(CHIP調査)にもとづいて、賃金、自営所得,帰属家賃など主要な所得項目の時系列的整合性、生計費の地域的差異(地域別PPP)などの問題に注意を払いながら、1980年代後半から2013年までをカバーする世帯所得分布の作業用データセットを作成した。第2に、作業用データセットを活用して、平成28年5月に北京で開催される所得格差に関する国際ワークショップでの発表に向けて、中国農村における世帯所得構造の長期的変動と公共政策(税制、社会保障、生産補助金など)の所得再分配効果に関するディスカッションペーパーを執筆した。第3に、人口・労働、財政、社会保障など所得分配に関連の深い分野に関する全国および地域別の公式統計を系統的に収集すると共に、戸籍管理、社会保障、税制などに関する制度改革と政策動向のレビューを行った。第5に、研究成果の一部として、査読付き論文2本(都市の規模と就業・所得機会創出との関係に関する英文論文1本および農村における協同組合的組織と農業所得の関係を論じた和文論文1本)を発表した。1980年代後半から2013年までをカバーする中国の世帯所得変動に関する作業用データセットを作成し、それにもとづいて国際ワークショップ向けのディスカッションペーパーを執筆した。査読付き論文2本(和文1本,英文1本)を発表した。本研究の目的は、市場経済化の初期段階(1980年代)から今日に至る中国の個人・世帯所得格差の長期変動を、全国的代表性を有する世帯調査にもとづいて、(1)都市・農村格差、(2)資産格差、(3)公共政策を通じた所得再分配などの側面から多角的に分析し、所得格差の拡大が中国の経済発展と経済システム移行に与える影響を明らかにすることにある。この目的を達成するために、平成28年度においては以下の研究活動を実施した。第1に、都市・農村格差の長期変動と公共政策による所得再分配効果の変動という視点から、農村ー都市間労働移動をはじめとする世帯の就業・所得構造の変化によって農村内の所得格差が長期的にどのように変動していったか、また2000年代初頭以降における農業保護政策、農村税制改革や社会保障政策などの新たな公共政策が農村所得格差と貧困にどの程度の影響を与えたかを地域別に推計した論文を執筆し、国際学会において報告を行った(平成28年5月に北京師範大学で開催されたCHIP調査に関する国際ワークショップおよび平成29年3月にトロントで開催されたAssociation for Asian Studies年次総会)。第2に、内陸地域(少数民族集住地域)に焦点を当てて、都市と農村における貧困動態の比較分析、公共政策の所得再分配効果の分析などを行った論文集を海外共同研究者との共著により中国語で出版した。第3に、農村における租税公課負担の地域的差異を、地方党・政府の所在地からの物理的距離と政治的距離(共産党組織の強さ)の両側面から政治地理学的に分析した英文論文を発表した。第4に、研究課題に関連する全国・地域統計の収集、制度改革と政策動向のレビューを継続して行った。 | KAKENHI-PROJECT-15H03340 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H03340 |
中国における所得格差の長期変動 | 平成28年度において、(1)農村所得格差の長期変動と所得再分配政策の効果に関する論文の執筆と国際学会における報告、(2)内陸地域に焦点を当てて、都市と農村における貧困動態の比較分析、公共政策の所得再分配効果の分析などを行った中国語論文集の出版、(3)農村における租税公課負担の地域的差異を分析した英文論文の発表など、研究成果を国際的に発信した。上記の研究成果を取りまとめる過程において、研究課題に関連する全国・地域統計の収集、制度改革と政策動向のレビューを継続して行い、また海外の共同研究者との議論を深めた。平成29年度における研究実績は以下のとおりである。第1に,平成28年5月に北京師範大学において開催された,CHIP調査にもとづく中国の所得格差に関する国際ワークショップの成果をまとめた中国語および英文の論文集を,共同研究者とともに編集し,中国および海外の定評のある出版社から出版することを目指して,準備を進めた。中国語論文集については,平成29年12月に李実・岳希明・史泰麗・佐藤宏共編『中国収入分配格局的最新変化』(北京:中国財政経済出版社)として出版した。英文論文集については,オックスフォード大学出版会に出版のプロポーザルを行い,平成29年度末現在,出版社による審査(外部専門家による査読と出版社内部の審査)の過程が進行中である。第2に,過去5回のCHIP調査(1988年,1995年,2002年,2007年,2013年)をまとめて作成した農村世帯所得のデータセットを活用し,中国の農村世帯所得構造の長期変動および2000年以降に導入された新たな公共政策(農業保護政策,農村税制改革,社会保障政策,農村インフラ建設など)の所得再分配効果を分析した英文論文を,共同研究者とともに完成させた。なおこの論文は,平成28年度末開催のAssociation for Asian Studies年次総会(カナダ・トロント)における口頭報告を基礎として,同学会におけるコメントを取り入れながら執筆したものである。第3に,ミクロデータの分析に役立てるために,平成28年度に引き続き,地域別および分野別(人口・労働・財政・社会保障など)の公式統計を進めるとともに,社会保障、地方財政など本研究と関連の深い領域における制度改革や政策動向のレビューを行った。第1に,平成28年5月に北京師範大学において開催された中国の所得格差に関する国際ワークショップや平成29年3月にカナダ・トロントで開催されたAssociation for Asian Studiesの2017年年次総会で口頭報告を行うなど,研究開始当初から一貫して,中国経済研究の国際的なネットワークの中で研究を推進してきた。第2に,中国・カナダ等の共同研究者とともに,CHIP調査にもとづく中国の所得格差・貧困および公共政策に関する中国語および英文の論文集を編集した。中国語論文集については平成29年12月に刊行済みであり,また英文論文集についても平成29年度中にプロポーザルと原稿を出版社に提出し出版に向けた審査を受けるなど,研究成果を着実に,国際的に見える形で公表している。中国における急速な経済成長と所得格差の拡大は、「中所得の罠」の重要な事例として注目を集めている。 | KAKENHI-PROJECT-15H03340 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H03340 |
食品加工排出物の高機能無機質化による物質循環プロセスの構築 | セラミックスプロセスの観点から、これに関わる物質の投入・排出の両面で他産業排出物の有効利用とプロセス改善に道を開く技術開発を目的として研究をおこなった。食品加工業から排出される有用な無機物資源をセラミックス原料に再資源化する技術の開発を通じて、食品加工-セラミックスの双方において新規な物質循環が可能になるようなプロセスの開発を追求した。バイオセラミックスの原料として水産加工排出物(魚あら)を再資源化するため要素技術の開発および材料評価を行ったところ、ハイドロキシアパタイト質および無機リン酸塩化合物が有効に利用できその機能化もはかることができることを見出した。まず複合化プロセスによる新材料開発要素技術としてリン酸基セラミックスのための魚骨の材料化技術を研究した。魚あら等の水産加工排出物からいくつかのプロセスを経て作製したハイドロキシアパタイトセラミックスは、その作成条件の最適化により多孔性と強度をもった優れた材料に転換できることがわかった。異なる原料粉体および焼結体作製のプロセスを研究したところ合成原料を使用する場合に比べても十分な強度を有する多結晶緻密体を作製できた。さらに、高機能化研究として、汚染水中の重金属除去特性を調査し、このセラミックスが鉛などの重金属類を高収率で除去できる機能を有することを明らかにした。以上の実験および調査研究によって、食品加工廃棄物から有用なセラミックスを作製し、また環境浄化に貢献する天然物質の再利用循環プロセスを提案した。セラミックスプロセスの観点から、これに関わる物質の投入・排出の両面で他産業排出物の有効利用とプロセス改善に道を開く技術開発を目的として研究をおこなった。食品加工業から排出される有用な無機物資源をセラミックス原料に再資源化する技術の開発を通じて、食品加工-セラミックスの双方において新規な物質循環が可能になるようなプロセスの開発を追求した。バイオセラミックスの原料として水産加工排出物(魚あら)を再資源化するため要素技術の開発および材料評価を行ったところ、ハイドロキシアパタイト質および無機リン酸塩化合物が有効に利用できその機能化もはかることができることを見出した。まず複合化プロセスによる新材料開発要素技術としてリン酸基セラミックスのための魚骨の材料化技術を研究した。魚あら等の水産加工排出物からいくつかのプロセスを経て作製したハイドロキシアパタイトセラミックスは、その作成条件の最適化により多孔性と強度をもった優れた材料に転換できることがわかった。異なる原料粉体および焼結体作製のプロセスを研究したところ合成原料を使用する場合に比べても十分な強度を有する多結晶緻密体を作製できた。さらに、高機能化研究として、汚染水中の重金属除去特性を調査し、このセラミックスが鉛などの重金属類を高収率で除去できる機能を有することを明らかにした。以上の実験および調査研究によって、食品加工廃棄物から有用なセラミックスを作製し、また環境浄化に貢献する天然物質の再利用循環プロセスを提案した。 | KAKENHI-PROJECT-12015223 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12015223 |
唾液由来エクソソーム中のmiRNA解析による白板症の悪性化診断マーカーの同定 | 本研究では「唾液由来エクソソーム中のmiRNA解析による白板症の悪性化診断マーカーの同定」を目的として、現在遂行中である。具体的には、以下の研究を行っている。1)唾液由来エクソソームおよびRNAの回収健常者、白板症患者および舌癌患者それぞれ4症例ずつより舌表面から唾液を200 μl採取する。唾液を5 mlに希釈しエクソソームを回収後にRNAを抽出中である。2)悪性化に伴い存在量が変動するmiRNAの同定1で明らかにしたmiRNA発現プロファイルを基に健常者に比べ、白板症患者および舌癌患者で存在量が変化しているmiRNAを同定を現在行っている。患者のサンプル収集に予想以上の時間を要しているため。そのため、補助事業期間を1年間延長した。研究計画に従い、現在進行中の研究計画に加え、以下の研究を行う予定である。1)候補miRNAの新規診断マーカーとしての有用性の検討:健常者、白板症患者および舌癌患者それぞれ20症例から唾液由来エクソソームを回収し、候補miRNAの存在量をqPCR法にて測定し、最も発現量に変化がみられたmiRNAを診断マーカーとして同定する。またこのときマーカーとしての有用性を確認するために同一症例から血液サンプルを採取し血液由来のエクソソーム中に含まれるmiRNAの存在量と比較し発現量との相関を検討する。2-2)組織切片を用いたマーカーの有用性の検討miRNAはタンパク質の発現を制御することが知られているため、同定したmiRNAによって発現制御を受けているタンパク質を検索する。白板症患者および舌癌患者由来の組織切片を用いて検索したタンパク質の発現を免疫染色にて確認し悪性化に関与するタンパク質マーカーを同定する。本研究では「唾液由来エクソソーム中のmiRNA解析による白板症の悪性化診断マーカーの同定」を目的として、現在遂行中である。具体的には、以下の研究を行った。1)唾液由来エクソソームおよびRNAの回収健常者、白板症患者および舌癌患者それぞれ4症例ずつより舌表面から唾液を200 μl採取する。唾液を5 mlに希釈しエクソソームを回収後にRNAを抽出中である。2)悪性化に伴い存在量が変動するmiRNAの同定1で明らかにしたmiRNA発現プロファイルを基に健常者に比べ、白板症患者および舌癌患者で存在量が変化しているmiRNAを同定を現在行っている。患者のサンプル収集に予想以上の時間を要しているため。本研究では「唾液由来エクソソーム中のmiRNA解析による白板症の悪性化診断マーカーの同定」を目的として、現在遂行中である。具体的には、以下の研究を行っている。1)唾液由来エクソソームおよびRNAの回収健常者、白板症患者および舌癌患者それぞれ4症例ずつより舌表面から唾液を200 μl採取する。唾液を5 mlに希釈しエクソソームを回収後にRNAを抽出中である。2)悪性化に伴い存在量が変動するmiRNAの同定1で明らかにしたmiRNA発現プロファイルを基に健常者に比べ、白板症患者および舌癌患者で存在量が変化しているmiRNAを同定を現在行っている。患者のサンプル収集に予想以上の時間を要しているため。そのため、補助事業期間を1年間延長した。以下の研究を行う予定である。1)候補miRNAの新規診断マーカーとしての有用性の検討健常者、白板症患者および舌癌患者それぞれ20症例から唾液由来エクソソームを回収し、候補miRNAの存在量をqPCR法にて測定し、最も発現量に変化がみられたmiRNAを診断マーカーとして同定する。またこのときマーカーとしての有用性を確認するために同一症例から血液サンプルを採取し血液由来のエクソソーム中に含まれるmiRNAの存在量と比較し発現量との相関を検討する。2)組織切片を用いたマーカーの有用性の検討miRNAはタンパク質の発現を制御することが知られているため、同定したmiRNAによって発現制御を受けているタンパク質を検索する。白板症患者および舌癌患者由来の組織切片を用いて検索したタンパク質の発現を免疫染色にて確認し悪性化に関与するタンパク質マーカーを同定する。研究計画に従い、現在進行中の研究計画に加え、以下の研究を行う予定である。1)候補miRNAの新規診断マーカーとしての有用性の検討:健常者、白板症患者および舌癌患者それぞれ20症例から唾液由来エクソソームを回収し、候補miRNAの存在量をqPCR法にて測定し、最も発現量に変化がみられたmiRNAを診断マーカーとして同定する。またこのときマーカーとしての有用性を確認するために同一症例から血液サンプルを採取し血液由来のエクソソーム中に含まれるmiRNAの存在量と比較し発現量との相関を検討する。2-2)組織切片を用いたマーカーの有用性の検討miRNAはタンパク質の発現を制御することが知られているため、同定したmiRNAによって発現制御を受けているタンパク質を検索する。白板症患者および舌癌患者由来の組織切片を用いて検索したタンパク質の発現を免疫染色にて確認し悪性化に関与するタンパク質マーカーを同定する。(理由)当初の研究計画より、購入する試薬等が少なかったため。(使用計画)次年度以降の試薬等の購入費に充当する。研究計画が遅延しているため。なお、繰り越したものは試薬や実験動物購入等、次年度以下の物品購入に充当する。 | KAKENHI-PROJECT-17K17109 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K17109 |
金属原子層の通信利用への挑戦-遠隔地無線通信と超高層大気観測の両立をめざして- | 高度100km付近には、ナトリウム原子、鉄原子など様々な金属が原子状態で存在する金属原子層がある。本研究では、この層に地上からレーザー光を照射して、遠隔地との通信を行うと同時にこの付近の高度の大気の様子を調べる大気観測を行うことのできるシステムについて、首都大学東京と国立極地研究所の5.3km離れたキャンパス同士で送受信実験を行い、また観測法/通信法を詳細に検討を行って、実現可能であることを示した。高度100km付近には、ナトリウム原子、鉄原子など様々な金属が原子状態で存在する金属原子層がある。本研究では、この層に地上からレーザー光を照射して、遠隔地との通信を行うと同時にこの付近の高度の大気の様子を調べる大気観測を行うことのできるシステムについて、首都大学東京と国立極地研究所の5.3km離れたキャンパス同士で送受信実験を行い、また観測法/通信法を詳細に検討を行って、実現可能であることを示した。本研究では、高度100km付近の超高層大気下端にある金属原子層にレーザーを照射して、遠隔地(距離100-200km)との光通信を行う発案をし、これまでの金属原子層の観測研究成果からその基礎設計をして、現有設備を活用して実証実験を行う。その伝搬特性を検討し、「新しい無線通信手段と超高層観測モニターシステム」が両立した通信・観測ネットワークシステムを提案することを目的とする。1)変復調部の開発半導体レーザー等CWレーザーを用いて超高層大気観測およびデータ通信を行うためのパルス変調方式を検討し、変調用の制御装置を設計して導入した。2)送受信システムの制御レーザービームの方向と受信望遠鏡の方向を正確に合わせ、かつ不要な干渉・雑音を最小にするための検討を、コロラド州立大学との協力で行った。またこめための受信望遠鏡とマウントを導入した。視野合わせの実験については別経費で準備中のレーザーの導入が遅れたため次年度の早い時期に実施する予定である。3)総合試験と将来システム提案将来システムの提案のための調査として、CWレーザーのバイスタティック送受により計測可能な物理量や精度の検討、可能なサイエンス課題等の調査検討を行った。課題2, 3については、コロラド州立大のShe教授が客員として国立極地研に滞在している間に集中的に展開して、予想以上に研究を進展することができた。これらの成果の一部はすでに論文投稿し、受理されている。以上のように本研究課題は課題により若干の進み遅れがあるが全体として順調に進展している。本研究では、高度100km付近の超高層大気下端にある金属原子層にレーザーを照射して、遠隔地(距離100-200km)との光通信を行う発案をし、これまでの金属原子層の観測研究成果からその基礎設計をして、現有設備を活用して実証実験を行う。その伝搬特性を検討し、「新しい無線通信手段と超高層観測モニターシステム」が両立した通信・観測ネットワークシステムを提案することを目的とする。本年度は以下の成果を得た。1)変復調部の開発送信側のレーザーについて首都大と極地研での実験セットアップの容易さと散乱強度を考慮し、ナトリウム共鳴散乱での実験が可能な送信系の開発を行った。首都大日野キャンパスにおける送受実験を行い送信系を確認した。2)送受信システムの制御送信点および受信点の間の同期を取る方法として検討の結果GPS衛星の信号を用いる方法を採用し、専用のハードウェアを開発して日野市と立川市の間で衛星に同期して装置を動かすことに成功した。3)総合試験と将来システム提案首都大からレーザー光を発射し、国立極地研究所で受信を行う情報伝送実験を行い、本研究で提案するバイスタティックの共鳴散乱通信および観測システムの実現可能性を示すことができた。なお、レーザーのトラブル等のために十分な受信実験統計データを得るまでにはいたらなかったが、今後レーザーを整備した再実験で今回の成果を確認する予定である。また、バイスタティックシステムの鍵を握る送信光と受信望遠鏡の視野広がりおよび視野重ね方向については予想以上に検討が進展し今後のシステム実用化に対する期待が大きい。 | KAKENHI-PROJECT-22654057 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22654057 |
EAP技能統合型タスクの教材開発に向けた学習者の習熟度と目的の観点からのメタ分析 | 1.EAPタスクのチェックリストの改訂:前年度に作成したEAPタスクに必要な要素を記載したチェックリストについて,BALEAP(British Association of Lecturers in English for Academic Purposes)が策定したAccreditation Schemeの項目との整合性を精査した。その結果,特定のカリキュラムに依存せずに活用でき,かつ,授業設計のプロセスの妥当性をより担保できるリストに改訂できた。2.授業モデルの検証実験:上記の改訂リストに基づいて,EAP授業モデルを設計・実施し,次の3つの観点から教育効果を検証した。一点目として,言語技能の向上について,学習者の成果物を分析した。二点目として,学習者の動機付けへの影響について,質問紙調査を実施した。三点目として,授業モデルの適切性について,第三者による資料分析に基づくモデルの評価や授業の観察評価を行った。その結果,目標とする能力と実際の能力との乖離のためにタスクに困難さを感じる学習者に対して,授業外の足場がけを十分に行うことが必要であることがわかった。3.教授者向けのプラットフォームの開発:代表者の所属機関で利用されているコースマネージメントシステム上に,EAPライティングタスクとそれを導入した授業モデル(15回分),タスクで利用するリソース(タスクシート,ビデオ教材,ルーブリックなど),足場がけのためのリソース(参照リンクやオンラインツールなど)を整備した。1.国内外のTBLTの枠組みを用いたEAPタスクの研究事例の収集:研究代表者の所属先の図書館の論文検索システムを利用し,国内外の高等教育機関におけるTBLTの実践と教育効果に関する研究成果を収集した。2.統合型タスクにおける足場がけの効果の検証:4技能のうち複数技能の統合を要求する統合型タスクでは,課題遂行のために高度な要求を課す場合が多く,学習者の習熟度との間の乖離が指摘されている。その乖離を埋める適切な足場がけ(Scaffolding:学習補助)を検討するために,講義視聴と筆記による要約からなる統合型タスクを実施し,その事前タスクとして3種類の異なる足場がけを学習者に提供し,教育効果を比較した。3.メタ分析に向けたタグ付与の検討:翌年度のメタ分析に先立ち,収集した研究事例を検索・分析可能なものにするためのタグ付けに関する検討を行った。Robinson (2011)やLittlejohn (1998)のタスク分析に関する先行研究の分類を参考とし,学習目的,対象となる学習者の習熟度,学習環境,目標言語技能,タスクサイクル,内容,期待される教育効果,課題などの観点からどのようなタグが分別的であるか検討を行った。4.研究発表や学会への参加:国内の関連学会での発表や国内外の学会出席を通じて,最新の研究成果について学ぶと共に専門家と情報交換を行った。TBLTの研究事例が多かったこと,またTBLTと判断する基準についての議論が深まったことから,分類タグの設定,収集した研究事例に対するタグ付与の作業が年度内に完了しなかった。1.TBLTのメタ分析に向けた準備:平成27年度に収集したTBLTの枠組みを用いたEAPタスクの事例にタグを付与し,データベース化した。タグは当初予定していた学習目的,対象となる学習者の習熟度,学習環境,目標言語技能,タスクサイクル,内容,期待される学習・教育効果,課題の観点だけでなく,平成27年度から研究を進めている足場がけ(学習補助)の有無と内容,目標言語技能の到達レベルの詳細,タスクの特徴,学習者のタスクへの参加度,教師の役割,学習・教育効果の検証方法も付け加えた。2.EAPタスクのカリキュラムにおける位置づけの調査・分析:新たなタグとして,カリキュラムやコース全体において,そのEAPタスクがどのように位置づけられているかの観点を取り入れることにした。収集した事例のうち,論文内で言及されていないものについては他の関連論文やオンライン上のシラバスなどを調査して把握できる範囲で,各EAPタスクのカリキュラムやコース全体における学習順や難易度順を調査した。3.統合型タスクにおける足場がけの効果の検証:平成27年度に引き続き,複数技能の統合的な育成を図るタスクにおいて,どのような足場がけが必要か検討を行った。4.研究会や学会への参加:研究会や学会での情報収集や意見交換を通じて,研究活動の活性化を図った。平成27年度の遅延に伴い,平成28年度の研究計画を変更した(平成27年度の研究実施状況報告書に記載)。当初,平成28年度には(1)タグ付けした研究事例をデータベース化し,それを用いてメタ分析を行うこと,(2)メタ分析により,EAPタスクの特徴を把握することを予定していたが,(2)の内容については平成29年度の前半に当該年度の研究と並行して実施することとした。この変更した研究計画通りに,進めることができている。1.メタ分析によるEAPタスクの特徴の整理とチェックリストの作成:前年度のメタ分析結果に基づき,EAPタスクの特徴をまとめ,タスクの適切性をチェックするリストを作成した。2.EAPタスクとそれを導入した授業モデルの設計:TBLTと教育設計学(インストラクショナルデザイン)における手法を整理し,それらを融合した枠組みを用いて,EAPタスクの設計を行った。また,上記のチェックリストでタスクの適切性を確認した。3.リソースの整備:タスクのリソースとして,タスクシート,ビデオ教材,参照リンク,テストや課題,ルーブリックを作成した。これらのリソースは,研究代表者の所属機関で利用されているSakaiをベースとしたコースマネージメントシステム上に構築した。また,MAP Grammarのアプローチを用いたオンライン教材を開発した。4.授業モデルの試行と改善:3名の大学院生を対象として,授業モデルを試行した。 | KAKENHI-PROJECT-15K02715 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K02715 |
EAP技能統合型タスクの教材開発に向けた学習者の習熟度と目的の観点からのメタ分析 | タスクの内容や難易度,有効性に関するインタビューを通じて,指示の不明瞭さ,ポストタスクやフィードバックの不備が明らかになった。それらの改善とともに,学習者のレベルに合わせた足場がけを整備した。また,検証実験の試行として,MAP Grammarを取り入れたリスニングタスクについて調査を行い,その教育効果を明らかにした。5.授業モデルの検証実験に向けた準備:平成30年度の前半に授業モデルの教育効果を検証する本実験を行うため,その計画案を検討した。また,課題や質問紙などの作成を行った。平成29年度には,設計したEAPの授業モデルを実施し,その教育効果の検証を行うとともに,その検証結果を踏まえたモデルの改善及び改善モデルの検証までを行う予定であった。しかしながら,学習者として検証実験に参加する研究協力者の日程の調整が年度内にかなわず,授業モデルの検証については平成30年度の前半に行うことになった。1.EAPタスクのチェックリストの改訂:前年度に作成したEAPタスクに必要な要素を記載したチェックリストについて,BALEAP(British Association of Lecturers in English for Academic Purposes)が策定したAccreditation Schemeの項目との整合性を精査した。その結果,特定のカリキュラムに依存せずに活用でき,かつ,授業設計のプロセスの妥当性をより担保できるリストに改訂できた。2.授業モデルの検証実験:上記の改訂リストに基づいて,EAP授業モデルを設計・実施し,次の3つの観点から教育効果を検証した。一点目として,言語技能の向上について,学習者の成果物を分析した。二点目として,学習者の動機付けへの影響について,質問紙調査を実施した。三点目として,授業モデルの適切性について,第三者による資料分析に基づくモデルの評価や授業の観察評価を行った。その結果,目標とする能力と実際の能力との乖離のためにタスクに困難さを感じる学習者に対して,授業外の足場がけを十分に行うことが必要であることがわかった。3.教授者向けのプラットフォームの開発:代表者の所属機関で利用されているコースマネージメントシステム上に,EAPライティングタスクとそれを導入した授業モデル(15回分),タスクで利用するリソース(タスクシート,ビデオ教材,ルーブリックなど),足場がけのためのリソース(参照リンクやオンラインツールなど)を整備した。今後の推進方策:タグ付与のマニュアルを整備し,大学院生アルバイトにその作業に関わってもらうことで,作業の迅速化を図り,遅れを取り戻す予定である。研究計画の変更:当初案では,平成28年度には(1)タグ付けした研究事例のデータをデータベース化し,それを用いてメタ分析を行うこと,(2)メタ分析により,EAPタスクの特徴を把握することを予定していた。 | KAKENHI-PROJECT-15K02715 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K02715 |
高齢者の心理社会的変数と健康アウトカムとの関連における免疫炎症機序の検証 | 群馬県草津町在住の地域高齢者571人を対象とした横断調査(2008年)からは、就学年数、健康度自己評価をはじめ心理社会変数のいくつかは,潜在的な交絡要因を調整しても免疫・炎症性マーカーと有意な関連性を示した。また、東京都老人総合研究所長期縦断研究(TMIG-LISA)の初回調査(1991年)を受診した東京都小金井市在住の地域高齢者379人の追跡研究からは健康度自己評価や生活満足度など心理変数は既知の交絡要因を統制後も4年後の一部の免疫・炎症性マーカー(IL6、白血球数)の変化を予測した。群馬県草津町在住の地域高齢者571人を対象とした横断調査(2008年)からは、就学年数、健康度自己評価をはじめ心理社会変数のいくつかは,潜在的な交絡要因を調整しても免疫・炎症性マーカーと有意な関連性を示した。また、東京都老人総合研究所長期縦断研究(TMIG-LISA)の初回調査(1991年)を受診した東京都小金井市在住の地域高齢者379人の追跡研究からは健康度自己評価や生活満足度など心理変数は既知の交絡要因を統制後も4年後の一部の免疫・炎症性マーカー(IL6、白血球数)の変化を予測した。【目的】心理・社会的因子が神経-免疫-内分泌軸を介して身体・心理的健康アウトカムに影響を及ぼすとの説がある。同仮説を検証すべく、免疫・炎症性マーカーである血清IL-6,TNF-□,高感度CRP,およびCMV(サイトメガロウイルス)抗体,HSV抗体(単純ヘルペスウイルス)と心理・社会的因子との関連を横断的に分析した。【方法】2008年7月、群馬県草津町で実施された高齢者総合健康診査を受診した65歳以上高齢者571人を対象として、心理,社会的変数を含む生活問診,血液検査を含む医学,認知,体力検査を行った。血液は採血後すぐ遠心分離し、冷凍保存(-80°C)された血清を用いて、IL-6,TNF-□,高感度CRP,およびCMV-IgG抗体,HSV-IgG抗体の濃度を測定した。【結果・考察】血清IL-6(<1.9vs.≧1.9),TNF-□(1.2≧vs1.2<),高感度CRP(0.56≧vs0.56<),CMV-IgG抗体(<27.7vs.≧27.7),HSV-IgG抗体(<58.6vs.≧58.6)を目的変数とした多重ロジスティック回帰分析により,性,年齢,就学年数,喫煙歴,BMI,慢性疾患,総合的移動能力を強制投入すると共に,各目的変数と有意な単相関を認めた心理,社会変数をすべて投入し,ステップワイズ法により独立した関連要因を抽出した。社会活動性指標の個人活動得点が低いこととIL-6高値との間には独立した関連がみられた(1点低下することのOR=0.86,95%CI:0.78-0.96)。同様に,健康度自己評価が低いことはTNF-□高値と(OR=2.12,95%CI:1.12-4.02),外出頻度が低いことは高感度CRP高値と(1カテゴリー低下するごとのOR=1.37,95%CI:1.05-1.78),就学年数が短い(9年以下)ことはCMV-IgG抗体高値と(OR=1.62,95%CI:1.06-2.47),別居子・親戚との交流がないことはHSV-IgG抗体高値と(OR=1.81,95%CI:1.13-2.90),それぞれ独立した関連性があった。今後、これらの関連を縦断的に観察する必要がある。【目的】健康度自己評価(SRH)は高齢者の生命予後や障害発生の予知因子として知られるが、そのメカニズムは明らかでない。在宅自立高齢者においてSRHが身体・心理的交絡要因および炎症性マーカーを調整後も8年後のADL障害の発生を予測するかどうかを調べる。【方法】対象は長期縦断研究(TMIG-LISA)の初回調査(199192年)を受診し、ADL(移乗、着衣、食事、排泄、入浴)障害がない高齢者(≧65歳)1.048人(男439.女609)である。初回調査では問診、血液採取、体力測定等からなる健診を実施した。その後、対象を1999年1月(小金井)あるいは2000年8月(南外)まで7.7年(中央値)追跡し、ADL障害の新規発症の有無を確認した。SRHは、「あなたは普段ご自分で健康だと思いますか」という質問に対しA「非常に健康」、B「まあ健康」、C「あまり健康でない」、D「健康でない」の4択で回答を求めた。【結果】追跡期間中471人(男196、女275)がADL障害を発症し、累積発症率はD、C、B、A群の順に高かった。生存分析(Log-rank法)では、男のA、B群間を除く、全ての群間で有意差が見られた。 | KAKENHI-PROJECT-20390190 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20390190 |
高齢者の心理社会的変数と健康アウトカムとの関連における免疫炎症機序の検証 | A群に比べたB、C、D群の未調整ハザード比(HR)は1.50(95%CI;1.12-2.01)、2.19(1.60-3.00)、4.37(2.82-6.78)であった。性、年齢、調査地域、既知の交絡要因(慢性疾患の既往、血圧、HbA1c、HDL-Cho1、ALB、飲酒・喫煙歴、歩行速度、GDS短縮版、生活満足度LSIK)および炎症性マーカー(IL-6、CRP、TNF-α、WBC)調整後のHRは、B群1.42(1.03-1.96)、C群1.68(1.17-2.42)、D群2.54(1.52-4.24)であった。【結論】在宅自立高齢者においてSRHは身体・心理的交絡要因および炎症性マーカーを調整後もADL障害の発症を予測した。【目的】心理・社会的因子が神経-免疫-内分泌軸を介して身体・心理的健康アウトカムに影響を及ぼすとの説がある。同仮説を検証すべく、炎症性マーカーである血清IL-6,高感度CRPおよび、白血球数と心理・社会的因子との関連を縦断的に分析した。【方法】長期縦断研究(TMIG-LISA)の初回調査(1991年)を受診した東京都小金井市に在住する高齢者(≧65歳)379人(男173人、女206人)を対象に1995年度に再度調査した。解析対象は両調査ともに受診した259人(男128人、女131人)である。両調査では問診、血液採取、体力測定等からなる健診を実施した。初回調査の健康度自己評価(SRH)は、「あなたは普段ご自分で健康だと思いますか」という質問に対しA「非常に健康」、B「まあ健康」、C「あまり健康でない」、D「健康でない」の4択で回答を求めた。QOLについては生活満足度(LSIK)、抑うつについてはGeriatric depression scale15項目短縮版(GDS-15)を用いた。【結果】性、年齢、教育年数、初回調査の各炎症性マーカー、既知の交絡要因[慢性疾患保有数、喫煙歴(現在ありvs.なし)、手段的自立得点(5点vs.4点以下))を統制後に4年後にIL6が高値(2pg/mL以上)となることのOdds比(OR)は健康度自己評価が1カテゴリー劣化することに1.64(95%信頼区間:1.01-2.65)であった。同様に白血球数が高値(5000/mm^3以上)となることのORはLSIKが1点上昇ごとに1.22(95%信頼区間:1.02-1.46)であった。【結論】地域在宅高齢者においてSRHやLSIKなど心理変数は既知の交絡要因を統制後も4年後の一部の炎症性マーカーの変化を予測した。 | KAKENHI-PROJECT-20390190 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20390190 |
核膜と細胞質微小管の間に出現するクロスブリッジ構造の分析 | 細胞分化に係わるシグナル伝達が開始される細胞性粘菌の集合期には、核と微小管をつなげるクロスブリッジ構造が出現することから、微小管関連蛋白質(MPAPs)の分析法を応用して、この構造を構成する分子の検索を目指した。MPAPs画分をSDS-PAGEで分析したところ、予想に反して集合期に特異的なバンドは検出されなかった。しかし約42、52、55、59、72、75、95、220、280kDaおよびそれ以上の一つの高分子の10成分が、増殖期と集合期細胞に供通して見られた。大量の細胞上清を用いて得られた各成分をウェスタンブロッティングおよび部分アミノ酸配列分析することにより次のような結果が判明した。1.55kDaは、加えたブタ脳微小管が部分的に脱重合したチューブリンである。2.アクチンおよびアクチン結合蛋白質が検出された。42kDaはアクチン、95kDaはアクチン架橋蛋白質であるαアクチニンであり、75kDaはアクチンキャッピング機能を持つHSP70であるらしい。3.アクチンやその結合蛋白質が微小管に結合することは知られていない。免疫-ネガティブ染色法で検討したところ、抗アクチン抗体のシグナルは微小管に直接ではなく、末端部に結合した構造に検出された。これが+端であれば、膜直下における微小管とアクチン繊維の関係の観点から興味が持たれるので、今後検討したい。4.280kDaはヒトケラチンと一致していた。このバンドは再現性良く検出され、しかもケラチンの分子量は64kDaである。単なるヒト成分の混入なのか実際にヒトコラチンに似たものなのかを継続検討したい。5.他の成分についてはまだ十分な情報が得られていない。現段階ではクロスブリッジ構造分子を確定するにいたっていないが、今後各成分の抗体を作成し、細胞内分布を確認することにより確定できると予測している。細胞分化に係わるシグナル伝達が開始される細胞性粘菌の集合期には、核と微小管をつなげるクロスブリッジ構造が出現することから、微小管関連蛋白質(MPAPs)の分析法を応用して、この構造を構成する分子の検索を目指した。MPAPs画分をSDS-PAGEで分析したところ、予想に反して集合期に特異的なバンドは検出されなかった。しかし約42、52、55、59、72、75、95、220、280kDaおよびそれ以上の一つの高分子の10成分が、増殖期と集合期細胞に供通して見られた。大量の細胞上清を用いて得られた各成分をウェスタンブロッティングおよび部分アミノ酸配列分析することにより次のような結果が判明した。1.55kDaは、加えたブタ脳微小管が部分的に脱重合したチューブリンである。2.アクチンおよびアクチン結合蛋白質が検出された。42kDaはアクチン、95kDaはアクチン架橋蛋白質であるαアクチニンであり、75kDaはアクチンキャッピング機能を持つHSP70であるらしい。3.アクチンやその結合蛋白質が微小管に結合することは知られていない。免疫-ネガティブ染色法で検討したところ、抗アクチン抗体のシグナルは微小管に直接ではなく、末端部に結合した構造に検出された。これが+端であれば、膜直下における微小管とアクチン繊維の関係の観点から興味が持たれるので、今後検討したい。4.280kDaはヒトケラチンと一致していた。このバンドは再現性良く検出され、しかもケラチンの分子量は64kDaである。単なるヒト成分の混入なのか実際にヒトコラチンに似たものなのかを継続検討したい。5.他の成分についてはまだ十分な情報が得られていない。現段階ではクロスブリッジ構造分子を確定するにいたっていないが、今後各成分の抗体を作成し、細胞内分布を確認することにより確定できると予測している。細胞分化に係わるシグナル伝達が開始される細胞性粘菌の集合期には、核と微小管をつなげるクロスブリッジ構造が出現することから、核と微小菅の機能的関連が予測される。そこで微小菅関連蛋白質を単離・分析する方法を応用して、この構造を構成する分子の検索を目指した。増殖期あるいは集合期の150,000g細胞上清に、タキソール存在下で重合させたブタ脳チューブリンを加えてインキュベートし、その沈殿からMgATPあるいは0.4M NaCl処理で遊離してくる成分をSDS-PAGEで分析した。予想に反して、集合期細胞に特異的に出現あるいは増加するバンドは見い出せなかった。しかし、約42、70、105および220kDのバンドが共通して検出された。このうち42kD成分がアクチンであることはウェスタンブロッティングで確認された。また220kDバンドは、ATP存在下でより多く遊離することから、微小菅に非特異的に付着したミオシン重鎖であると判断された。そこで70および105kD成分のアミノ酸配列の分析を自動エドマン分析法で行ったが、N末端アミノ酸が修飾されているらしく解析できなかった。現在はさらにリシルエンドペプチダーゼ分解で得たペプチドを分析する方法を用いて検討しているところである。 | KAKENHI-PROJECT-05804051 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05804051 |
核膜と細胞質微小管の間に出現するクロスブリッジ構造の分析 | 一方、目的とする分子が核一微小菅複合体のまま沈殿してしまうために、集合期細胞に特異的なバンドが見い出せなかったという可能性は、ウェスタンブロッティング法で15,000g沈殿画分にチューブリンが検出されなかったことから否定された。しかし念のため150,000g沈殿を分析したところ20%程度のチューブリンが存在することが判明したので、現在この画分の分析も行っている。細胞分化に係わるシグナル伝達が開始される細胞性粘菌の集合期には、核と微小管をつなげるクロスブリッジ構造が出現することから、微小管関連蛋白質の分析法を応用して、この構造を構成する分子の検索を目指した。1.大量の細胞上清を用いてSDS-PAGEで分析したところ、約42、72、75、95、220、280kDおよびそれ以上の一つの高分子成分が検出されるようになった。2.昨年度のウェスタンブロッティング分析に加えて、部分アミノ酸配列分析でも42kD成分がアクチンであることが確認された。また95kDの部分アミノ酸配列は、細胞性粘菌のアクチニンと一致していた。しかしアクチンが微小管に直接結合することは知られていない。そこで免疫-ネガティブ染色法で検討したところ、抗アクチン抗体のシグナルは微小管に直接ではなく、末端部に結合した構造に検出された。これが+端であれば、膜直下における微小管とアクチン繊維の関係の観点から興味が持たれるので、今後検討したい。3.75kDの部分アミノ酸配列は、この蛋白質が未知のものあるらしいことを示していた。4.280kDバンドから得られたポリペプタイドの幾つかのアミノ酸配列は、ヒトケラチンと一致していた。このバンドは再現性良く検出され、しかも分子量もケラチンとは異なることから、単なるヒト成分の混入とは考えにくいので、他のポリペプタイドの分析を継続している。5.72、220kDおよび高分子成分については量が少ないため、まだ十分な情報が得られていない。6.現段階ではクロスブリッジ構造分子を確定するにいたっていないが、今後さらに各成分のアミノ酸配列に基づいて抗体を作成し、細胞内分布を確認することによりその同定ができるものと予測している。 | KAKENHI-PROJECT-05804051 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05804051 |
根管拡大形成操作解析装置の開発―シミュレータ使用のための検証― | 科学研究費交付期間において(1)歯の根管模型に対して根管形成を行う時に作用するトルク、荷重を記録するコンピュータシステムを開発した。同システムではサンプリングされたデータはリアルタイムで2次元直交座標系にトルク-荷重曲線として表示される。(2)コンピュータ上の視覚情報により術者が操作のトルクあるいは荷重を変化可能であることが明らかになった。(3)トルク・荷重記録から特定の根管形成操作パターン(watch-winding motion)を抽出するために正規表現に基づく新規の手法を開発した。本課題は根管形成時に根管模型へ作用するトルク、荷重をひずみゲージをセンサとして200Hzでサンプリングを行い、モニタ上にリアルタイムでトルクをx軸、荷重をy軸とする2次元直交座標のデータ点として描記する装置の開発、および同装置を用いて自己操作のデータ点軌跡視認下での特定の根管形成操作(Watch-winding motion)訓練が同操作の技能向上に及ぼす影響について検証し、シミュレータとしての使用可能性を検討するものである。25年度は2次元直交座標上のデータ点運動パターン評価について検討を進めた。座標平面上の各データ点は時間順序を有しており、その単位時間での座標変化は座標平面上の速度と考えることができる。また、その速度はデータ点のトルク、荷重値と各々の隣接するサンプリング時刻データ値との差分を成分とするベクトルにより表される。トルクおよび荷重のデータ差分を算出後、正、負、ゼロに分類した。次に3分類されたトルク差分と荷重差分を組み合わせて9種類の速度状態を定義し、各サンプリング時刻の速度状態を求めた。ここで視点を変え、座標平面上のデータ点移動を速度状態間の遷移として捉えれば、ベクトル量から離れて、速度状態を名義変数として扱うことが可能である。各速度状態を排他的な1文字で命名し、一連のサンプリング時刻毎の速度状態を文字列へ変換し、正規表現を用いて特定の状態遷移に対応する文字列を検索する方法が本研究の運動パターン検索原理である。今回は4象限、原点で同様の速度状態を設定し、計45の速度状態で検索した。同一データで検討の結果、本運動パターン評価は過去に行ったデータ点の座標位置による評価と異なる結果を与える可能性が判明し、本装置による技能評価を単一の評価法により行えないことが明らかとなった。これらの検討は日本歯科保存学会平成25年度春季大会に発表した。現在論文の作成を行っている。科学研究費交付期間において(1)歯の根管模型に対して根管形成を行う時に作用するトルク、荷重を記録するコンピュータシステムを開発した。同システムではサンプリングされたデータはリアルタイムで2次元直交座標系にトルク-荷重曲線として表示される。(2)コンピュータ上の視覚情報により術者が操作のトルクあるいは荷重を変化可能であることが明らかになった。(3)トルク・荷重記録から特定の根管形成操作パターン(watch-winding motion)を抽出するために正規表現に基づく新規の手法を開発した。本課題はファイルによる模型根管への根管形成操作時に模型へ作用するトルク、荷重をひずみゲージをセンサとして200Hzでサンプリングを行い、モニタ上の2次元直交座標にサンプリングデータ点をリアルタイムで描記する装置の開発、および同装置を用いて自己操作のデータ点軌跡視認下での特定の根管形成操作(Watch-winding motion以下WWM)訓練が同操作の技能向上に及ぼす影響について検証し、シミュレータとしての使用可能性を検討するものである。24年度はWWMによるファイル操作の評価方法について検討を行った。訓練による技能向上を評価するためには描記された全てのデータ点軌跡からWWMパターンを抽出し解析することが必要となる。そのためのパターン抽出法として以下の方法を開発した。はじめにトルク(x軸)、荷重(y軸)のサンプリング数値データに対し、トルク、荷重各々に隣接データ差分により速度を定義し、次にこれを正、負、ゼロに3分類して組み合わせ、任意サンプリング時刻データ点の状態を運動方向により9状態に分類した。さらに別にデータ点が存在する位置状態として2次元直交座標の4象限領域および原点の5状態に分類し、前述の9状態と組み合わせて45状態に細分して英数字1文字(大文字、小文字を区別)で各状態を命名した。サンプリング数値データを状態名の文字列へ変換した後、第3および第4象限相互間の一方向トルク変動を表す(荷重変動は許容)正規表現により検索することでWWMパターンを抽出することが可能であった。本検討の内容は日本歯科保存学会平成25年度春季大会に発表予定である。24年度、25年度はファイル等により根管模型へ作用するトルク、荷重が共に独立であるとするモデルに基づき、2つの異なる任意時刻間で観察されるのトルク値、荷重値を2次元直交座標系上での連続するデータ点運動と捉え、その軌跡の解析を行う根管形成操作解析システムの開発を行なってきた。その過程で2次元直交座標系上の単純な運動軌跡を判定、抽出する方法を開発し、学会発表を行った。平成26年度はこれまで行ってきた根管模型に負荷される力学的作用の解析に加え、より直接的に根管形成時のファイルあるいは手指等の3次元運動解析が可能となるよう検討を行った。検討に用いた3次元運動解析装置(VICON: Vicon Motion Systems, UK)は複数の高速度カメラから同期して取得された画像を利用し、マーカー点のトラッキングを行って、その3次元位置を幾何学的原理から算出するものであり、記録画像のフレームレートと同期したアナログ入力機能を有している。 | KAKENHI-PROJECT-24592864 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24592864 |
根管拡大形成操作解析装置の開発―シミュレータ使用のための検証― | このアナログ入力機能を用い、同装置にこれまでに開発を行なってきたトルク、荷重センサシステムを接続することにより、ファイル等の運動に加えて根管模型へ作用するトルク、荷重を同期記録することが可能である。本年度はシステム開発に係る技術の検討、装置およびソフトウエア開発を行なった。また実験遂行のため倫理審査受審(新潟大学歯学部倫理委員会:承認番号26-R46-12-10)を行った。歯科保存学検証を目的としたファイル操作パターン(Watch-winding motion)の術者操作技能評価に関し、トルクをx軸、荷重をy軸とする2次元直交座標を用い、その座標位置および運動パターンによる2つの評価方法の策定が完了している。しかしながら両評価方法による評点の一致性を検討した結果、同一記録データに対し異なる評価を与える可能性が示唆されたことから、より正当な技能評価のためにさらに別視点の評価を加えて検討することが必要との結論に達した。現在そのための新たな評価方法の策定を行っている。25年度に行った所属学会への成果発表に用いたデータ評価はサンプリングデータに事後の解析を加えたものであり、当該の評価については術者への即時のフィードバックは不可能であった。その後サンプリングソフトウエアに事後解析と同等の解析機能を付与しデータ取得後、直ちに位置、運動パターンについて評価およびフィードバックが可能となっている。本課題で使用するトルク荷重計測表示システムのハードウエアはプロトタイプ開発がほぼ終了しており、現在のシステム開発はソフトウエア開発が中心となっている。本システムではこれまで評価方法として特定の根管操作(WWM)による2次元直交座標上でのトルク荷重データ点描記位置をモデル化した長方形領域を設定し、領域内のデータ点数により評価を行っていたが、24年度に開発した運動パターン抽出法を組み合わせて使用することでさらに詳細に技能評価を行うことが可能となった。本法検討の過程では正規表現を簡便に取り扱えるPerl言語を動作検証ソフトウエアの一部に使用した。検証により、パターン抽出が可能であったことから正規表現を本システムソフトウエア記述言語であるC言語で使用することを目的として既存の正規表現ライブラリ(PCRE:Perl Compatible Regular Expressions)の使用が容易なコンピュータOS (linux)へ開発環境変更を行って、これまで開発したソフトウエアを新環境へ移植した。今回開発した運動パターン評価方法が特定の操作(Watch-winding motion)以外の操作方法にも検索方法として有効かどうかを検証することは本法の他分野への応用可能性を探る観点から重要な意義を有すると考えている。また最近課題代表者が所属する研究機関に高精度3次元位置計測システム(Vicon Motion Systems)が導入された。同システムは複数の計測点を追尾計測可能であり、外部センサ出力をアナログデジタル変換により取り入れ、3次元位置計測と同期して計測する機能を有している。 | KAKENHI-PROJECT-24592864 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24592864 |
「産業主義」と「社会主義」との思想連関にかんするサン・シモンとフーリエの比較研究 | 「社会主義」という用語は,一般に,サン・シモン派に属したことのあるPルソーにより, 1834年発表の論稿で初めて「個人主義」と対比して使われたといわれる.しかしその10年前に「産業主義」という用語を造ったサン・シモンは,すでに著書『組織者』のなかで,「文明の状態に比例したune doctrine socialeを確立すること」を説き,「社会教養(学説)」という表現を用いているのである.たしかにサン・シモンは「社会主義」という語を用いてはいない.しかし彼が「産業主義」を提唱したのは,一方で当時支配的な封建的「軍事主義」を根底的に批判することを主目的としつつ,他方で自らの思想を個人的利得の増大への自由な努力,つまり個別的・特殊的利害の追求を最優先する自由主義的経済学者のそれと区別するためであった.したがって彼は,「利己主義は人類の道徳的な癌」と批判し,一般的利害と特殊的利害との統一を主唱したのであり,そのためにこそ「博愛主義」としての「道徳」「宗教」を説き,そしてここから「共感」をその根幹とする単一化された普遍的協同社会を構想するのである.それに対してフーリエは,確かにサン・シモン(派)の賞掲する「産業主義」を論難した.しかし彼は,「商業の虚偽性」と「農業の分割化」を批判し,「産業(勤労)」自体を否定しているのではない.むしろ彼は産業を人間本来の「情念」に合致するように組織し直すこと,すなわち「労働を喜びに変える」「産業的魅力の機制」の組織化を主張するのである.そして彼は「情念」を説き,「反感」をも内包する統合的な協同社会を構想する.「産業主義」への懐疑を基本的性格とする現代の「脱産業社会」論者がフーリエに注目するのは,サン・シモンに欠如していた地域社会」「家族」,さらには「生活」「環境」「レジャー」の諸論にフーリエが言及しているからであろう.サン・シモンの「人間論」「芸術論」が課題である.「社会主義」という用語は,一般に,サン・シモン派に属したことのあるPルソーにより, 1834年発表の論稿で初めて「個人主義」と対比して使われたといわれる.しかしその10年前に「産業主義」という用語を造ったサン・シモンは,すでに著書『組織者』のなかで,「文明の状態に比例したune doctrine socialeを確立すること」を説き,「社会教養(学説)」という表現を用いているのである.たしかにサン・シモンは「社会主義」という語を用いてはいない.しかし彼が「産業主義」を提唱したのは,一方で当時支配的な封建的「軍事主義」を根底的に批判することを主目的としつつ,他方で自らの思想を個人的利得の増大への自由な努力,つまり個別的・特殊的利害の追求を最優先する自由主義的経済学者のそれと区別するためであった.したがって彼は,「利己主義は人類の道徳的な癌」と批判し,一般的利害と特殊的利害との統一を主唱したのであり,そのためにこそ「博愛主義」としての「道徳」「宗教」を説き,そしてここから「共感」をその根幹とする単一化された普遍的協同社会を構想するのである.それに対してフーリエは,確かにサン・シモン(派)の賞掲する「産業主義」を論難した.しかし彼は,「商業の虚偽性」と「農業の分割化」を批判し,「産業(勤労)」自体を否定しているのではない.むしろ彼は産業を人間本来の「情念」に合致するように組織し直すこと,すなわち「労働を喜びに変える」「産業的魅力の機制」の組織化を主張するのである.そして彼は「情念」を説き,「反感」をも内包する統合的な協同社会を構想する.「産業主義」への懐疑を基本的性格とする現代の「脱産業社会」論者がフーリエに注目するのは,サン・シモンに欠如していた地域社会」「家族」,さらには「生活」「環境」「レジャー」の諸論にフーリエが言及しているからであろう.サン・シモンの「人間論」「芸術論」が課題である. | KAKENHI-PROJECT-62510106 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62510106 |
運動錯覚と運動イメージを同期させたニューロリハビリテーションデバイスの開発 | 本研究の目的は、運動錯覚生成メカニズムに及ぼす運動イメージ能力の影響を解明し、ニューロリハビリテーション介入時に運動イメージ能力を高めながら、感覚運動機能を改善させる効果的な脳内神経機能再編成システムを構築することであった。振動刺激時の脳内神経活動についてMicrostate法解析を行った結果、錯覚誘起には運動イメージ能力が影響を及ぼすことが明らかとなった。また、脳卒中片麻痺患者に対して、我々が開発した脳波周波数パターン認識型システムを用いた介入を実施した結果、感覚運動関連脳領域の神経活動性に向上を認め運動主体感も改善を認めた。以上より、本システムの介入手法としての有用性が示唆された。これまで,振動刺激によって生成される運動錯覚は,健常者の脳内感覚運動皮質領野の神経活動性を高めることを見出した。しかし,その生成に影響を及ぼすとされる運動イメージ能力との関連性は未だ明らかではなく,脳血管障害患者にみられるような脳機能障害を呈する状態とのメカニズムに関する機能的差異は解明されていない。これらの点が明らかとなれば,振動刺激を用いた治療介入時に,同期的に運動イメージをシミュレートさせることで,より強力に感覚運動機能の再編へ向けた神経基盤の構築が可能になる。本研究は,運動錯覚生成過程における感覚運動領野を中心とした脳内関連領野の神経活動性および脳機能ネットワークを解明し,さらにそれらの結果を応用することで,ニューロリハビリテーションツールとしての多感覚刺激装置を開発するための基礎研究である。平成27年度は,装置の基本システムの実証と運動錯覚生成メカニズムに及ぼす運動イメージ能力の影響および機能解明を目的に取り組んだ。まず,装置開発の基本的なシステムとなるニューロフィードバックの介入効果について検討した。難治性疼痛患者に対して脳波信号のフィードバック介入を実施した結果,疼痛や不安傾向に減少が認められ,かつ脳波周波数解析から脳神経活動も変化することを報告した。さらに,脳血管障害患者に対する振動刺激によって,脳内に惹起される運動錯覚が脳神経活動へ及ぼす影響を検討した。その結果,運動イメージ誘起に関与するとされる感覚運動領野の有意な神経活動性を認めた。運動障害をもつ脳血管障害患者においても,運動錯覚が感覚運動領野の神経活動性を高める可能性を報告した。これらのことから,運動錯覚と運動イメージ能力の関係性や基本システムの有用性は明らかとなったが,装置開発に向けて,脳の半球間の活動特性や機能的関連性についての詳細な検証は,現在も研究を継続中である。平成27年度,多感覚刺激装置開発へ向けたシステム構築において重要となる,脳機能障害患者における運動錯覚の影響とニューロフィードバックの有用性に関しては,検討し報告した。中でも,運動の実行へ向けた脳内神経活動に関して,その事前の活動として必要不可欠となる運動イメージ能力を誘起する脳領野が,運動錯覚の影響を受けることを明らかにした点は大きな進展であると考える。本年度は,ニューロリハビリテーションツールとしての多感覚刺激装置を開発するための基礎研究に取り組んだ。まず,脳血管障害患者においても健常者と同様に振動刺激による運動錯覚が脳内に誘起されるかどうかについて検証した。その結果,運動イメージ創出に関連する感覚運動領野の神経活動性を認め,その手法の有用性を報告した。しかし,半球間の機能バランスの回復が優先となる重度の麻痺を有する患者などへの介入手段とするためには,障害のない脳機能状態において,運動イメージ中の両側同期的に活動する領域の存在やそれらの機能的な連関性について検証しておくことが重要となる。そのため,健常者における左右の運動イメージ時の脳活動領域で出現する周波数パターンの様相について,検討を行った。方法は,運動イメージに関連する電位は運動準備電位(MP)を分析した。運動イメージ時の脳領域として左右のSMC,PMCおよびM1を関心領域として設定し,MP出現時における本領域の神経活動性および神経相関について脳機能イメージング法sLORETA解析を用いて検証した。その結果,MPでは左右関心領域の神経活動性を認め,各課題時における運動指令側の周波数パターンは半球間に神経相関を認めた。以上より,左右一側ずつの手指運動イメージを別々に行っても同一個体では同様の周波数パターンを呈することが明らかとなった。本結果を踏まえ,非損傷脳のイメージ中の脳機能パターンをセンシングし損傷脳へティーチングするシステム(特許申請中)を考案し,現在も研究を継続中である。平成28年度,多感覚刺激装置開発へ向けたシステム構築において,脳機能障害者においても,運動錯覚により創出される運動イメージが脳内神経活動を賦活させることを報告した。また,健常脳における運動準備時の脳活動において,補足運動野が両側同期的に活動する可能性も見出されたが,脳活動時の周波数パターンの同定を現在実施しているため「おおむね順調に進展している。」と判断した。平成27および28年度を通じて、ニューロリハビリテーションツールとしての多感覚刺激装置を開発するための基礎研究の実施と、脳卒中片麻痺患者の非損傷脳のイメージ中脳機能パターンをセンシングし損傷脳へティーチングするシステム(特開2017-102504)を考案した。本年度は、本システムの臨床応用を目標に、脳卒中患者への介入を実施した。感覚運動障害を呈する延髄梗塞の患者に対してトレーニングを行った。方法は、まず健側手指運動イメージ時の脳神経活動パターンが、非障害側脳からセンシングされた脳波周波数パターンと一致した際、患側手指の上に設置したモニター上の自身の手指画像が伸展方向へ動くようにシステムを設定した。 | KAKENHI-PROJECT-15K01439 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K01439 |
運動錯覚と運動イメージを同期させたニューロリハビリテーションデバイスの開発 | 結果、開始時所見に比較し最終時所見では、Fugl-Meyer Assessment上肢(FMA)、運動主体感に関する質問(麻痺している手指を動かした際、自分自身が動かしたという感覚はどれくらいありますか?)のNRS(0-10点)、精神症状を評価するHospital Anxiety and Depression scale(HADS)不安項目、身体認知の評価であるThe Bath CRPS Body Perception Disturbance Scale(BPDS)において改善を認めた。また、最終週のトレーニング成功回数は、1週目の平均回数9.8回から、59.7回と向上した。脳波イメージングでは、開始時に比べ最終時の方が両側補足運動野を中心とした感覚運動関連領域の高い神経活動性を認めた。これらの結果から脳波解析手法を基盤とした本システム介入手法が有用である可能性が示唆された(第10回日本運動器疼痛学会および第22回日本ペインリハビリテーション学会学術大会にて報告)。本研究の目的は、運動錯覚生成メカニズムに及ぼす運動イメージ能力の影響を解明し、ニューロリハビリテーション介入時に運動イメージ能力を高めながら、感覚運動機能を改善させる効果的な脳内神経機能再編成システムを構築することであった。振動刺激時の脳内神経活動についてMicrostate法解析を行った結果、錯覚誘起には運動イメージ能力が影響を及ぼすことが明らかとなった。また、脳卒中片麻痺患者に対して、我々が開発した脳波周波数パターン認識型システムを用いた介入を実施した結果、感覚運動関連脳領域の神経活動性に向上を認め運動主体感も改善を認めた。以上より、本システムの介入手法としての有用性が示唆された。平成27年度に引き続き,当初計画していた通りに研究を遂行する。脳血管障害患者における解析は,運動錯覚と運動イメージの関連性については検証することができ順調である。平成28年度は,本患者のように脳の左右に機能的差異を有する状態において,運動イメージ能力が運動錯覚生成過程へどのような影響を及ぼし誘掖しているのか,健常者との違いを明らかにし,さらにイメージを創出した際の機能側性を詳細に検討する。これらを進めることで,運動錯覚に相乗的に運動イメージを付加できるような装置の開発を目指す。平成28年度に引き続き,計画通りに研究を遂行する。感覚運動障害を有する脳血管障害患者に対して介入を実施し,本周波数パターンセンシングシステムを基盤としたBCIシステムの有用性を検証していく。これらを進めることで,脳機能障害患者などに対する神経機能再編成を具現化できるようツールの確立を目指す。リハビリテーション科学・福祉工学研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため,当初の見込み額と執行額が異なった。しかし,研究計画に変更はなく,当初予定通りの計画を進めていく。プロトタイプでの機器を使用した臨床介入がやや遅れたことが理由として挙げられる。解析機器の購入および対象者への謝礼がなかったため残額が生じた。 | KAKENHI-PROJECT-15K01439 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K01439 |
イヌでの消炎ステロイド療法における動態学的薬物間相互作用の可能性 | 本研究ではイヌにおいて汎用される消炎ステロイドが薬物間相互作用を引き起こす可能性について検討した。その結果、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾンやトリアムシノロンでイヌを治療中した際には薬物の酸化的代謝能や組織移行性を支配する血漿タンパク結合に影響する可能性が示された。このため、これらステロイドを一部の薬物と併用した場合、それら薬物の代謝速度や組織への移行性に影響し、その薬物の副作用を招く可能性が示唆された。本研究ではイヌにおいて汎用される消炎ステロイドが薬物間相互作用を引き起こす可能性について検討した。その結果、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾンやトリアムシノロンでイヌを治療中した際には薬物の酸化的代謝能や組織移行性を支配する血漿タンパク結合に影響する可能性が示された。このため、これらステロイドを一部の薬物と併用した場合、それら薬物の代謝速度や組織への移行性に影響し、その薬物の副作用を招く可能性が示唆された。1.消炎ステロイドのCYP代謝への影響のin vitro試験での評価トリアムシノロンの臨床用量でイヌを1週間処置し、肝マイクロソーム中のエトキシレゾルフィン脱エチル化(CYP1A活性)、トルブタミド水酸化(CYP2C活性)、ブフラロール水酸化(CYP2D活性)およびミダゾラム水酸化(CYP3A活性)を測定し、ミカエリス・メンテン動態を解析した。得られた最大速度に基づくと、CYP1A活性は有意な影響を受けなかったが、CYP2C、2Dおよび3A活性は有意に増加した。したがって、トリアムシノロンは臨床用量でCYP2C,2Dおとび3Aを誘導するものと考えられた。ラットにプレドニゾロン、トリアムシノロンおよびヒドロコルチゾンを1週間処置した結果、トリアムシノロンがCYP2C活性を増加させた以外は、いずれのCY活性も有意に低下した。このため、阻害実験を行った。その結果、いずれの消炎ステロイドも可逆的あるいは非可逆的にCYP活性を阻害したが、各反応に対して得られた阻害定数は比較的大きく、75μM5600μMであった。したがって、得られたCYP活性の低下は酵素がダウンレグレーションされたためと考えられた。このため、消炎ステロイドのCYP活性への影響には種差があることが示された。2.血漿中α_1酸性糖タンパク(AGP)濃度への影響の評価トリアムシノロンで処置中のイヌにおける血漿中AGP濃度は、経日的に低下し、投与後5日以降で有意な低下を示した。一方、ラットではいずれの消炎ステロイドでも増加の傾向を示した。1.消炎ステロイドCYP活性への影響のIn vitro試験での評価プレドニゾロン(PDSL)およびヒドロコルチゾン(HCZ)の臨床用量をイヌに1週間投与し、肝マイクロソーム中のCYP活性およびα_1酸性糖タンパク(AGP)濃度血漿中への影響を検討した。いずれもCYP2Dおよび3Aの活性を低かさせ、down regulationの可能性を示唆した。しかし、トリアムシノロン(TAN)で認められた血漿中α_1酸性糖タンパク濃度(AGP)の低下は認められなかった。2.消炎ステロイドのCYP活性に対する阻害作用の評価PDSL、HCZおよびTANのCYP1A、2C、2Dおよび3A活性に対する阻害作用を、肝マイクロソームを用いて検討した。いずれのステロイドもCYP1A、2Cおよび2D活性に対しては比較的弱い阻害作用を示し、CYP3A活性に対して比較的強い阻害作用を示した。特にHCZでは、臨床においてCYP3Aの基質となる薬物と有意な薬物間相互作用を引き起こす可能性が示唆された。3.イヌに汎用される塩基性薬物のin vitro試験での結合動態の評価イヌでの血漿を用い、リドカイン、プロプラノロール、キニジン、リンコマイシン、クリンダマイシンの結合動態を検討した。いずれも低濃度で高い結合率を示し、算出された解離定数は数μM以下(0.233.84μM)であった。イヌのAGP溶液とアルブミン溶液を用い、これら薬物の結合を検討した結果、いずれもがAGPにだけ結合することが示された。プレドニゾロン(PDSL)およびヒドロコルチゾン(HCZ)を頸動・静脈にカテーテルを装着したSDラットにイヌの抗炎症の目的で用いる用量を1週間経口投与した。その後、イソフルランの全身麻酔下でCYP3Aの基質であるキニジンを静注し、キニジンの体内動態に対するステロイド処置の影響を検討した。その結果、いずれのステロイド処置群においてもキニジンの全身クリアランスは対照群と比較して有意に低く、AUCは高かった。消失半減期は対照群よりも長い傾向を示した。以上の結果から、PDSLおよびHCZはイヌの臨床用量の経口投与でCYP3Aを阻害し、CYP3Aの基質となる薬物を併用した場合には代謝に起因する薬物間相互作用の原因となる可能性が示唆された。ビーグル犬にPDSLを4週間にわたって抗炎症用量で経口投与した。投与2週間前、投与開始2日後、2週間後および4週間後にキニジンを静注し、キニジンの体内動態に対するPDSL処置の影響を検討した。その結果、PDSL処置開始後、2週間及び4週間では、全身クリアランスが増加する傾向を示したが、定常状態分布容積も有意に増加した。 | KAKENHI-PROJECT-19380176 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19380176 |
イヌでの消炎ステロイド療法における動態学的薬物間相互作用の可能性 | 分布容積の増加はキニジンの血漿タンパク結合の低下に起因するものと考えられるので、キニジンに対する血漿中の主要な結合タンパクであるα_1-酸性糖タンパク(AGP)濃度が低下し、このため、分布容積は増加したものと推察された。また、血漿タンパク結合率の増加は全身クリアランスの増加を導くので、血漿中AGP濃度の低下によって全身クリアランスが増加したものと考えられた。消失半減期には有意な変化が認められなかったことから、PDSL処置のCYP3Aへの影響はさほどないものと予想された。以上の試験結果から、イヌにおいては、PDSL処置はAGPへの影響を介した血漿タンパク結合に起因する薬物間相互作用をもたらす可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-19380176 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19380176 |
社会資本の役割と負債残高の影響に焦点をあてた発展途上国における国及び地域経済システムの分析 | 目的は発展途上国における国内・国外負債残高がその国の発展にどのような影響を及ぼすかを定量的に分析し、経済発展のための有効な政策を提言することである。そのためのマクロ計量経済モデルの中核部分は、新たな負債(借入)額の決定と、負債残高が為替市場に影響を与え、それが国際貿易に影響を与える相互依存関係を定式化することである。特に国外への負債(external debt)は、貿易収支の赤字分が自動的に借入に結びつく面と、国の経済発展を目的とする大型プロジェクトのために戦略的に借入を行う面がある。しかし一方、負債残高を無制限に増加することも、貸手側の信用評価を低下させるのでできない。19702002年のパキスタンのデータを用いて、新規外部負債・GDP比率を非説明変数としたモデルでは、パキスタン通貨(ルビー)建て為替レートの変化率は有意に正であり、借り入れを行うとすれば将来よりも現在すべきであるということを示唆している。また為替レート水準そのものの係数は有意に負であり、負債の返済条件の悪化が借入れを抑制している、負債残高・GDP比率は有意に負で貸手側の信用評価が働いていることを示唆している。また、財政赤字・GDP比率は有意に正で、戦略的開発プロジェクトのための大型公共投資は外部負債に依存することを示している。貿易赤字・GDP比率は有意に負で、貸手から見た返済条件の悪化を意味する。このモデルの適合度は0.62でそれほど高くないが、第一段階の検定としては、経済的仮説を支持している。一方、為替レートを説明するモデルの推定では、外部負債残高は有意に正であり仮説を裏付けている。新規借入額も有意ではなかったが正の係数をもつ。貿易収支は期待通り有意に負の符号をもつ。今後、それらを含むマクロモデルを構築する。発展途上国経済における公的資本の役割を分析するために、パキスタンを対象とした地域計量経済モデルを構築した。まず、セクターレベルでの地域生産関数を推定し、公的資本と私的生産要素の生産効率性が分析された。地域人口、地域労働雇用関数も推定され、国全体としての効率性と地域間格差について分析がなされた。主要な結果は以下の通りである。1.パキスタンの4地域間の一人当り生産額で測定した格差は恒常的に存在し、労働生産性や雇用率の格差は1982年以降拡大している。2.推定によれば民間資本の90%近くは先進地域に配分されており、そのような先進地域では公的資本は効率的に使用されているが、民間資本が少ない後進地域では公的資本の役割が小さい。すなわち、公的資本と民間資本の補完性が強くある。3.民間資本の配分はその地域の技術水準にも有意な影響を与え、それが地域間格差を更に拡大している。4.地域間人口移動の多くは、雇用機会の地域間差異によって引き起こされる。5.シミュレーション分析によれば公的、民間資本の地域間配分が、国レベルでの効率性と地域間格差に大きな影響を与える。一国の効率性と地域間格差の間には逆U字型の関係が得られる。目的は発展途上国における国内・国外負債残高がその国の発展にどのような影響を及ぼすかを定量的に分析し、経済発展のための有効な政策を提言することである。そのためのマクロ計量経済モデルの中核部分は、新たな負債(借入)額の決定と、負債残高が為替市場に影響を与え、それが国際貿易に影響を与える相互依存関係を定式化することである。特に国外への負債(external debt)は、貿易収支の赤字分が自動的に借入に結びつく面と、国の経済発展を目的とする大型プロジェクトのために戦略的に借入を行う面がある。しかし一方、負債残高を無制限に増加することも、貸手側の信用評価を低下させるのでできない。19702002年のパキスタンのデータを用いて、新規外部負債・GDP比率を非説明変数としたモデルでは、パキスタン通貨(ルビー)建て為替レートの変化率は有意に正であり、借り入れを行うとすれば将来よりも現在すべきであるということを示唆している。また為替レート水準そのものの係数は有意に負であり、負債の返済条件の悪化が借入れを抑制している、負債残高・GDP比率は有意に負で貸手側の信用評価が働いていることを示唆している。また、財政赤字・GDP比率は有意に正で、戦略的開発プロジェクトのための大型公共投資は外部負債に依存することを示している。貿易赤字・GDP比率は有意に負で、貸手から見た返済条件の悪化を意味する。このモデルの適合度は0.62でそれほど高くないが、第一段階の検定としては、経済的仮説を支持している。一方、為替レートを説明するモデルの推定では、外部負債残高は有意に正であり仮説を裏付けている。新規借入額も有意ではなかったが正の係数をもつ。貿易収支は期待通り有意に負の符号をもつ。今後、それらを含むマクロモデルを構築する。 | KAKENHI-PROJECT-02F00017 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02F00017 |
鉱物・融体中におけるコヒーレントな拡散係数の測定と拡散-結晶構造の相関原理の研究 | ある鉱物中における各含有元素間の拡散係数の従来の報告はバラツキが大きく、鉱物内の色々な現象の解析のための基礎データとして使用に耐えない。本研究では各元素の拡散係数についての相対性(コヒーレント性)を重視して測定し、拡散を支配する原理を実験的に求めることである。今年度はペロブスカイトCaTi【O_3】を測定試料として選び、拡散係数測定を行なった。試料のペロブスカイトはFZ法によって合成し、6mm【◯!/】×20mmの単結晶を得た。拡散実験のため、これを3mm角に定方位に切出して研磨し、その研磨面上に標準岩石試料JB-2を真空蒸着し、約50nm厚の多成分系酸化物薄膜を形成させた。その試料を酸素雰囲気中1000-1500度°Cの温度域で5-20時間アニールさせて薄膜中の全元素をペロブスカイト中に同時に拡散させた。微量元素を含む多数の元素を同時に測定するために、筑波大学分析センターのCamaca IMS-3f型二次イオン質量分析計(SIMS)での深さ方向分析法を用いた。この手法は数nmのプロフィル分解能を有する。一次イオンビームはビーム径約50umの【O^-】を用い、試料上の約150×150umの領域をラスターし、その領域の中心部約10μmφからの2次イオンビームのみを質量分析した。その結果、Si,Al,Fe,Mg,Mn,Na,K,Liの8元素の拡散プロフィルを得た。解析は今回開発したプログラム(DIFFUS)によって行ない、拡散係数(D),活性化エネルギー(Q)と拡散係数(Do)を計算した。経験的にQとlogDoとの間に正の相関があることが知られている(Compensation law)が、ペロブスカイトにおいてもこの関係が非常によく成り立っていることが判明した。今年度の実験によって、多成分同時拡散と多成分深さ方向分析法の組合わせによるコヒーレントな拡散係数を求める手法がほぼ確立した。より測定精度を上げるためには、ビームのスパッタ速度を上げることと、薄膜中の元素の数と含有量を増やすことが重要である。ある鉱物中における各含有元素間の拡散係数の従来の報告はバラツキが大きく、鉱物内の色々な現象の解析のための基礎データとして使用に耐えない。本研究では各元素の拡散係数についての相対性(コヒーレント性)を重視して測定し、拡散を支配する原理を実験的に求めることである。今年度はペロブスカイトCaTi【O_3】を測定試料として選び、拡散係数測定を行なった。試料のペロブスカイトはFZ法によって合成し、6mm【◯!/】×20mmの単結晶を得た。拡散実験のため、これを3mm角に定方位に切出して研磨し、その研磨面上に標準岩石試料JB-2を真空蒸着し、約50nm厚の多成分系酸化物薄膜を形成させた。その試料を酸素雰囲気中1000-1500度°Cの温度域で5-20時間アニールさせて薄膜中の全元素をペロブスカイト中に同時に拡散させた。微量元素を含む多数の元素を同時に測定するために、筑波大学分析センターのCamaca IMS-3f型二次イオン質量分析計(SIMS)での深さ方向分析法を用いた。この手法は数nmのプロフィル分解能を有する。一次イオンビームはビーム径約50umの【O^-】を用い、試料上の約150×150umの領域をラスターし、その領域の中心部約10μmφからの2次イオンビームのみを質量分析した。その結果、Si,Al,Fe,Mg,Mn,Na,K,Liの8元素の拡散プロフィルを得た。解析は今回開発したプログラム(DIFFUS)によって行ない、拡散係数(D),活性化エネルギー(Q)と拡散係数(Do)を計算した。経験的にQとlogDoとの間に正の相関があることが知られている(Compensation law)が、ペロブスカイトにおいてもこの関係が非常によく成り立っていることが判明した。今年度の実験によって、多成分同時拡散と多成分深さ方向分析法の組合わせによるコヒーレントな拡散係数を求める手法がほぼ確立した。より測定精度を上げるためには、ビームのスパッタ速度を上げることと、薄膜中の元素の数と含有量を増やすことが重要である。 | KAKENHI-PROJECT-60221004 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60221004 |
分泌蛋白質mRNAの神経突起伸長点への蓄積機序の解明 | 神経細胞内でのmRNAは一般に神経細胞の細胞体周囲のみに限局して存在すると考えられている。しかし、最近になって神経細胞において特定の種類のmRNAが細胞体外から樹状突起および軸索などへ輸送されることが報告されている。本研究課題では、神経突起伸長因子Amphoterinの細胞体外mRNAの局在機構について解析を行った。(平成14年度研究実績)Amphoterinは細胞外へ分泌されることにより、そのレセプターであるRAGEと結合し、神経突起伸長を促す。しかし、Amphoterinは典型的な分泌シグナルを保持していない。このため、神経細胞からのAmphoterinの分泌には突起伸長点におけるAmphoterinの局在が深く関与している可能性が示唆されている。in situ hybridization法を用いた解析結果より、神経突起伸長点におけるAmphoterin mRNAの蓄積が明らかに認められた。Amphoterin mRNAはその領域内に長い3'非翻訳領域(UTR)を含んでいる。さらに、この3'-UTRにはβ-アクチンで同定されたzipcodeと呼ばれる領域に相同性の高い領域を含んでいた。このため、Amphoterin mRNAの突起伸長点への局在には3'-UTRが深く関与している可能性が示唆された。一般にmRNAの突起伸長点への輸送には細胞骨格成分が重要な役割を担っていることが知られている。また、我々はAmphoterinの突起伸長点への局在能がボルナ病ウイルス(BDV)感染細胞では低下していることを既に報告している。そこで、BDV感染細胞における細胞骨格形成能について検討した結果、BDV感染細胞では細胞骨格形成能が明らかに低下していた。以上の結果より、Amphoterin mRNAの突起伸長点への局在には細胞骨格に依存する輸送経路が深く関与していることが示唆された。神経細胞内でのmRNAは一般に神経細胞の細胞体周囲のみに限局して存在すると考えられている。しかし、最近になって神経細胞において特定の種類のmRNAが細胞体外から樹状突起および軸索などへ輸送されることが報告されている。本研究課題では、神経突起伸長因子Amphoterinの細胞体外mRNAの局在機構について解析を行った。(平成14年度研究実績)Amphoterinは細胞外へ分泌されることにより、そのレセプターであるRAGEと結合し、神経突起伸長を促す。しかし、Amphoterinは典型的な分泌シグナルを保持していない。このため、神経細胞からのAmphoterinの分泌には突起伸長点におけるAmphoterinの局在が深く関与している可能性が示唆されている。in situ hybridization法を用いた解析結果より、神経突起伸長点におけるAmphoterin mRNAの蓄積が明らかに認められた。Amphoterin mRNAはその領域内に長い3'非翻訳領域(UTR)を含んでいる。さらに、この3'-UTRにはβ-アクチンで同定されたzipcodeと呼ばれる領域に相同性の高い領域を含んでいた。このため、Amphoterin mRNAの突起伸長点への局在には3'-UTRが深く関与している可能性が示唆された。一般にmRNAの突起伸長点への輸送には細胞骨格成分が重要な役割を担っていることが知られている。また、我々はAmphoterinの突起伸長点への局在能がボルナ病ウイルス(BDV)感染細胞では低下していることを既に報告している。そこで、BDV感染細胞における細胞骨格形成能について検討した結果、BDV感染細胞では細胞骨格形成能が明らかに低下していた。以上の結果より、Amphoterin mRNAの突起伸長点への局在には細胞骨格に依存する輸送経路が深く関与していることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-14035232 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14035232 |
回転体上の三次元境界層の乱流構造の解明 | 本研究は軸流中の回転円筒上のねじれた速度分布の乱流境界層の乱流構造を実験的に解明しようとするものである。このためにまず平均速度とレイノルズ応力6成分をプローブ回転法により測定し,その変化の特徴,および平均流エネルギと乱れエネルギの収支を明らかにした。次に微小V型熱線プローブを用いて瞬時のu,v変動の時系列データを収録し,これより平均と変動の成分エネルギの収支,u,v変動のパワースペクトル,u,vのクロススペクトルを調べ,以下のような成果を得た。層外主流速度と円筒周速度の合成速度U_<RO>を代表速度として,これにより無次元化したu,w変動の実効値u',w'は速度比によらずほぼ相似になるが,v'は円筒回転時の方が静止時より大きくなること,-uw/U_<RO>^2は速度比とともにやや減少し,-uv/U_<RO>^2は円筒回転時に壁近傍で非常に大きくなることを明らかにした。さらに,円筒回転時には渦動粘度が大きくなり,しかも等方的渦粘性の仮定は成立しないこと,混合距離が非常に増大することを明らかにした。次に,平均流エネルギの対流項と拡散項は,境界層の外層部でほぼ釣り合い,速度比の増加とともに絶対値が減少すること,乱れエネルギの生成項と散逸項は,境界層全域にわたって支配的でほぼ釣り合っており,平衡境界層となっていることを確認した。また,u,v変動のパワーペクトル分布から、壁近くに大規模渦構造が存在することが示唆された。さらに,平均流の成分エネルギの収支から,境界層の内層部では,Uエネルギに対しては生成,粘性散逸,粘性輸送項が損失,拡散項が利得であり,Vエネルギに対しては生成,粘性散逸,拡散項が損失,粘性輸送項が利得となること,外層部ではUエネルギに対する対流と拡散項,Vエネルギに対する生成と拡散項がそれぞれほぼ釣り合うを明らかにした。また,u,v変動のクロススペクトルから,内層部にはスペクトルの低波数域にuとvの強い相関があり,大規模渦構造と関連していることが示唆された。本研究は軸流中の回転円筒上のねじれた速度分布の乱流境界層の乱流構造を実験的に解明しようとするものである。このためにまず平均速度とレイノルズ応力6成分をプローブ回転法により測定し,その変化の特徴,および平均流エネルギと乱れエネルギの収支を明らかにした。次に微小V型熱線プローブを用いて瞬時のu,v変動の時系列データを収録し,これより平均と変動の成分エネルギの収支,u,v変動のパワースペクトル,u,vのクロススペクトルを調べ,以下のような成果を得た。層外主流速度と円筒周速度の合成速度U_<RO>を代表速度として,これにより無次元化したu,w変動の実効値u',w'は速度比によらずほぼ相似になるが,v'は円筒回転時の方が静止時より大きくなること,-uw/U_<RO>^2は速度比とともにやや減少し,-uv/U_<RO>^2は円筒回転時に壁近傍で非常に大きくなることを明らかにした。さらに,円筒回転時には渦動粘度が大きくなり,しかも等方的渦粘性の仮定は成立しないこと,混合距離が非常に増大することを明らかにした。次に,平均流エネルギの対流項と拡散項は,境界層の外層部でほぼ釣り合い,速度比の増加とともに絶対値が減少すること,乱れエネルギの生成項と散逸項は,境界層全域にわたって支配的でほぼ釣り合っており,平衡境界層となっていることを確認した。また,u,v変動のパワーペクトル分布から、壁近くに大規模渦構造が存在することが示唆された。さらに,平均流の成分エネルギの収支から,境界層の内層部では,Uエネルギに対しては生成,粘性散逸,粘性輸送項が損失,拡散項が利得であり,Vエネルギに対しては生成,粘性散逸,拡散項が損失,粘性輸送項が利得となること,外層部ではUエネルギに対する対流と拡散項,Vエネルギに対する生成と拡散項がそれぞれほぼ釣り合うを明らかにした。また,u,v変動のクロススペクトルから,内層部にはスペクトルの低波数域にuとvの強い相関があり,大規模渦構造と関連していることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-08650195 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08650195 |
ツメガエル発生過程におけるNek2の機能解析 | 私はこれまでに、初期発生におけるNek2Bの機能解析を行い、Nek2Bが中心体の成熟に関与する事を明らかにしてきた。今年度は、後期発生過程で発現するNek2Aの機能解析を行った。Nek2AとNek2Bはスプライスバリアントであるため、Nek2Aのみを特異的に阻害するためにツメガエル受精卵にNek2Aの配列に特異的なモルフォリノオリゴおよびsiRNAを導入した。その結果、モルフォリノオリゴを導入した胚ではNek2A蛋白質の発現量が微減したに留まり、形態的な変化はほとんど見られず、siRNAを導入した胚ではRT-PCRでNek2AのmRNA量の減少が認められなかった。このため、Nek2A特異的中和抗体を作成し、現在機能阻害実験を遂行中である。また、初期胚発生特異的に発現するCdc25Aフォスファターゼの活性制御機構の解析を同時に行っている。Cdc25Aは中期胞胚期にChk1によってリン酸化され、分解される。私はCdc25Aが分解のみならず、Chk1により抑制される必要があることを見出し、この抑制にCdc25AのC末端領域のリン酸化が関与していること、C末端領域をリン酸化されたCdc25AはCdk-サイクリン複合体から解離することを見出した。また、このC末端のChk1によるリン酸化配列はCdc25Aのみならず全てのCdc25ファミリーに存在し、同様のChk1による制御を受けている事を明らかにした。私はツメガエルNek2キナーゼの単離及び機能解析を行ってきた。これまでに、Nek2が中心体に局在し細胞周期のG2期における中心体の成熟・構造の維持に必要であることを明らかにしてきた。今年度は以下の点で進展が見られた。Nek2Aの分解機構解析:Nek2Aは分裂期(M期)の前中期に分解されはじめ、その分解はG1期まで持続する。私はNek2Aタンパクの一次配列内にある2つの分解シグナル(KENボックス及びMR配列)を同定した。Nek2AはAnaphase-promoting complex (APC)と呼ばれる複合体型ユビキチンリガーゼによってユビキチン化され分解される。APCは2つの基質認識サブユニットを用いて基質と結合するが、分裂期前中期から後期にかけてはFZYサブユニットを用い、分裂期終期からG1期にかけてはFZRサブユニットを用いている。FZYは基質のDボックス(RXXL配列)を認識して結合するとされるが、Nek2AはDボックスを持たず、FZYとの結合にはMR配列が必要であった。FZRは基質のKENボックスを認識するとされるが、Nek2AとFZRとの結合にはKENボックスとMR配列が同様に重要であった。これらの結果は、MR配列が新規のAPCによる認識配列であることを強く示唆している。このほかにも、私はツメガエルの卵割期から典型的体細胞分裂期へ移行する中期胞胚遷移(MBT)における細胞周期の伸長に、DNA複製チェックポイント機構が用いられており、そのエフェクターとしてChk1キナーゼが必須であることを明らかにした。また、MBTで分解される卵割期特異的なCdc25AフォスファターゼがChk1キナーゼにより直接的にリン酸化され、このリン酸化が分解に必須であることを明らかにした。私はこれまでに、初期発生におけるNek2Bの機能解析を行い、Nek2Bが中心体の成熟に関与する事を明らかにしてきた。今年度は、後期発生過程で発現するNek2Aの機能解析を行った。Nek2AとNek2Bはスプライスバリアントであるため、Nek2Aのみを特異的に阻害するためにツメガエル受精卵にNek2Aの配列に特異的なモルフォリノオリゴおよびsiRNAを導入した。その結果、モルフォリノオリゴを導入した胚ではNek2A蛋白質の発現量が微減したに留まり、形態的な変化はほとんど見られず、siRNAを導入した胚ではRT-PCRでNek2AのmRNA量の減少が認められなかった。このため、Nek2A特異的中和抗体を作成し、現在機能阻害実験を遂行中である。また、初期胚発生特異的に発現するCdc25Aフォスファターゼの活性制御機構の解析を同時に行っている。Cdc25Aは中期胞胚期にChk1によってリン酸化され、分解される。私はCdc25Aが分解のみならず、Chk1により抑制される必要があることを見出し、この抑制にCdc25AのC末端領域のリン酸化が関与していること、C末端領域をリン酸化されたCdc25AはCdk-サイクリン複合体から解離することを見出した。また、このC末端のChk1によるリン酸化配列はCdc25Aのみならず全てのCdc25ファミリーに存在し、同様のChk1による制御を受けている事を明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-01J09808 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01J09808 |
ウニ胚におけるDNA複製速度の発生レベルでの調節 | 動物の発生初期胚は細胞当り、大腸菌の数千倍、一般の真核生物の数百倍と現存の細胞中最高のDNA複製速度を持つが、発生後期ではその十分の一から百分の一に低下する。これは胚発生特有のDNA複製の調節が働いていることを示唆する。本研究ではこの胚発生におけるDNA複製速度の発生レベルでの調節について主にウニ胚を用いて染色体DNA上のDNA複製開始部位とDNA複製装置の観点から解析した。また、発生レベルでのDNA複製調節の意義を他の細胞増殖系(哺乳動物のホルモン依存の細胞増殖、同調増殖している細胞性粘菌細胞)と比較することにより検討した。発生の各時期にあるウニ胚よりDNAを単離し電子顕微鏡によりDNA複製を解析した結果、DNA複製単位はいわゆる"複製目(replication eyes)"として、また、DNA複製開始部位は"複製目"の中点として観察された。発生初期胚では"複製目"は12キロ塩基長へだてて4-5個の群として染色体DNAに存在するのに対して、発生後期では単一の"複製目"が30キロ塩基長以上離れて散在することを思いだした。このことより、ウニ胚では発生の時期に依存して染色体上のDNA複製開始部位数が変動することが判明し、この複製開始点退かずによりDNA複製速度が調節されていることを解明した。また、DNA複製に参加しているDNA複製装置の数が発生初期胚では後期胚に比べかなり多く、この数が発生の時期に依在して変動することを見いだした。しかし、このDNA複製に参加するDNA複製装置の数は単に細胞中に存在する装置の数ではなく、この装置を"始動"にする因子が存在し、この因子の数によりDNA複製速度が発生レベルで調節されている可能性を明らかにした。動物の発生初期胚は細胞当り、大腸菌の数千倍、一般の真核生物の数百倍と現存の細胞中最高のDNA複製速度を持つが、発生後期ではその十分の一から百分の一に低下する。これは胚発生特有のDNA複製の調節が働いていることを示唆する。本研究ではこの胚発生におけるDNA複製速度の発生レベルでの調節について主にウニ胚を用いて染色体DNA上のDNA複製開始部位とDNA複製装置の観点から解析した。また、発生レベルでのDNA複製調節の意義を他の細胞増殖系(哺乳動物のホルモン依存の細胞増殖、同調増殖している細胞性粘菌細胞)と比較することにより検討した。発生の各時期にあるウニ胚よりDNAを単離し電子顕微鏡によりDNA複製を解析した結果、DNA複製単位はいわゆる"複製目(replication eyes)"として、また、DNA複製開始部位は"複製目"の中点として観察された。発生初期胚では"複製目"は12キロ塩基長へだてて4-5個の群として染色体DNAに存在するのに対して、発生後期では単一の"複製目"が30キロ塩基長以上離れて散在することを思いだした。このことより、ウニ胚では発生の時期に依存して染色体上のDNA複製開始部位数が変動することが判明し、この複製開始点退かずによりDNA複製速度が調節されていることを解明した。また、DNA複製に参加しているDNA複製装置の数が発生初期胚では後期胚に比べかなり多く、この数が発生の時期に依在して変動することを見いだした。しかし、このDNA複製に参加するDNA複製装置の数は単に細胞中に存在する装置の数ではなく、この装置を"始動"にする因子が存在し、この因子の数によりDNA複製速度が発生レベルで調節されている可能性を明らかにした。動物の発生初期胚は大腸菌や一般の真核細胞に比べ細胞当り数百数十倍のDNA複製速度を持つが,発生後期ではその数十分の一に低下する.本研究ではこの現象を発生中のウニ胚よりDNAを単離し,電子顕微鏡によりDNA上の複製領域を観察することに解析した.その結果,単離したDNA上にDNA複製部位は複製フォーク(replication fork)として,複製単位(replicon)は複製目(repliction eye)としてそれぞれ観察された.複製目ではその60%に内部にトランス位に配位した岡崎断片(Okazaki fragment)合成の場と思われる約100-200塩基長の一本鎖DNA部分がフォーク部に存在するのが判明した.このことよりDNA複製は複製開始点より二方向に等速に半不連続(semi-discontinuous)に進行することが証明された.複製フォークの構造は発生の時期にかかわりなく一定であった.しかし,複製単位の長さや頻度は発生の時期に依存して大きく変わっていた.すなわち,初期胚(桑実胚)より単離したDNA(10-30キロ塩基長)の29%に複製目が存在したのに対して,後期胚(プルテウス胚)では1%以上であった.さらに,初期胚で複製目は平均1.2キロ塩基長へだてて4-5個が群がって存在した.このことより,初期胚では1.2キロ塩基長へだてて群になった複製開始点が多数のDNA上に存在しDNA複製に関与するのに対して,後期胚では少なくとも10-30キロ塩基長以上離れた複製開始点よりDNA複製が開始されることが判明した.以上より,本研究により動物(ウニ)初期胚のDNA複製速度は発生に依存して出現するDNA複製開始点の数により調節されていることが解明された.また,本研究ではこの調節がウニ胚の核に特異的に行われているものか,否かを調べる目的でウニのミトコンドリア,細胞性粘菌の核,ラットの核のDNA複製に関しても生化学的側面から並行して研究した. | KAKENHI-PROJECT-62540537 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62540537 |
ウニ胚におけるDNA複製速度の発生レベルでの調節 | DNA複製装置(DNA複製複合体)の観点よりDNA複製速度の調節についてウニ胚及び他の細胞増殖系(同調増殖時の細胞性粘菌、哺乳動物細胞等)を用いて比較検討した。その結果、(1)ホルモン依存性の哺乳動物細胞増殖系ではDNA複製速度はホルモンによって誘導されるDNA複製酵素(装置)の数に関係するが、その数のみによってDNA複製速度が調節されているのではないこと、(2)細胞性粘菌の細胞周期でのDNA複製では核マトリックス上のDNA複製装置の一定数以上の存在とこの装置を"始動"にする因子によりDNA複製速度が調節されていること等を解明した。さらに、(3)DNA複製装置を"始動"にする因子としてDNA合成期に細胞質から核へ移動する微小管会合蛋白質(MAP2)がDNA複製速度の調節に関与していることを解明した。以上の結果をもとにウニ胚でのDNA複製速度の発生レベルでの調節を検討した結果、ウニ胚でも細胞内に存在するDNA複製装置の数とその複製装置を"始動"にする因子がDNA複製速度の調節に関与していることを明らかにした。ウニ胚より単離した核(DNA複製装置を含む)でのDNA合成を先述の微小管会合蛋白質は促進し、促進のメカニズムは粘菌細胞の場合と同じ(DNAの基質であるデオキシボヌクレオチドのDNA複製装置への親和性を高めると同時にDNA合成速度を高める)であった。このことより微小管会合蛋白質がウニ胚でもDNA複製の調節に関与していることが示唆された。また、DNA複製装置に結合している微小管会合蛋白質の数は発生初期で多く発生後期で減少することを明らかにした。これらの結果より微小管会合蛋白質のDNA複製装置へ結合する数によってウニ胚のDNA複製速度の発生レベルでの調節が行われていることが解明された。 | KAKENHI-PROJECT-62540537 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62540537 |
水中考古遺物の保存に関する研究(海中保存環境の経年変化の調査研究と処理後遺物の追調査) | 2年にわたる研究で海底温の変化、海水の科学的、微生物学的調査を通して、海底保存されている開陽丸の現状の一部が以下のように明らかとなった。海底温については一年を通して見ると22°C4°C迄大きく変動している。これに加えて、低気圧の通過時、冬型の気圧配置を取ったとき一時的に急激な温度変化を示す。これは江差港内水の交替によるもので、港内粒子の流出がこの際起きると推測される。このことは銅イオンと、堆積物で還元環境を作り防虫効果を一年中求めることは難しいことを意味している。溶存酸素は季節変化のみで経年変化は認められなかった。銅イオンは銅網の直上水で溶解が確認されたが、中間水、表面水には見られないため周囲の汚染は現時点では問題にならないようである。銅網は海水のよくあたる箇所の消耗が一番激しく、当初懸念されていたヘドロの成分による消耗はあまり心配ないようである。一般細菌はいずれの資料からも10^210^3オーダーで検出された。この付近の海底は5m前後であることから中低層海水に差異が認められず好気的な海域と考えられるが、これは硫酸還元菌の有無からも裏付けられた。現場は低温海域に属するため微生物による腐食は問題ないと思われるが、地方の港としては驚愕に値する濁りは、これに起因するヘドロと微生物で腐食が加速的に進むと考えられる。以上の結果から総合的に判断すると、早期に引き揚げを行うべきとの結論に達する。収蔵遺物は、仮収蔵庫の湿度が7月後半から9月前半にかけて80%台になるなど大変劣悪な状態である。その影響を一番受けているのは金属製品で、ことに鉄製品に著しい。これも早期に再処理を行い、設備の整った収蔵庫に収めるべきと思われる。2年にわたる研究で海底温の変化、海水の科学的、微生物学的調査を通して、海底保存されている開陽丸の現状の一部が以下のように明らかとなった。海底温については一年を通して見ると22°C4°C迄大きく変動している。これに加えて、低気圧の通過時、冬型の気圧配置を取ったとき一時的に急激な温度変化を示す。これは江差港内水の交替によるもので、港内粒子の流出がこの際起きると推測される。このことは銅イオンと、堆積物で還元環境を作り防虫効果を一年中求めることは難しいことを意味している。溶存酸素は季節変化のみで経年変化は認められなかった。銅イオンは銅網の直上水で溶解が確認されたが、中間水、表面水には見られないため周囲の汚染は現時点では問題にならないようである。銅網は海水のよくあたる箇所の消耗が一番激しく、当初懸念されていたヘドロの成分による消耗はあまり心配ないようである。一般細菌はいずれの資料からも10^210^3オーダーで検出された。この付近の海底は5m前後であることから中低層海水に差異が認められず好気的な海域と考えられるが、これは硫酸還元菌の有無からも裏付けられた。現場は低温海域に属するため微生物による腐食は問題ないと思われるが、地方の港としては驚愕に値する濁りは、これに起因するヘドロと微生物で腐食が加速的に進むと考えられる。以上の結果から総合的に判断すると、早期に引き揚げを行うべきとの結論に達する。収蔵遺物は、仮収蔵庫の湿度が7月後半から9月前半にかけて80%台になるなど大変劣悪な状態である。その影響を一番受けているのは金属製品で、ことに鉄製品に著しい。これも早期に再処理を行い、設備の整った収蔵庫に収めるべきと思われる。海底環境については以下の如く調査を行ないそれぞれの知見を得た。海底水温の時間変化は1991年8月7日から1992年2月28日迄2時間毎に測定した。9月中旬迄は2023°Cでほぼ安定しているが、その後徐々に下がり2月には25°Cが卓越する。11月から1月の間は温度変動が大きく急激な変化を示すこともあった。これは潮汐よりも季節風の強弱によっていると思われ、港内の海底堆積物を港外に運び出すことに関与していると思われる。8月の観測時に見られた懸濁物質や海底堆積物が2月に海底に見られないという目視観測の結果を裏付けるものである。化学分析の為の海水は1991年8月7日と1992年2月28日にダイバ-より港内中層、海底付近、堆積物中から採取された。8月の溶存酸素は海底付近で表層に比べて少なく、堆積物中では表層付近から還元環境になっている。しかし冬期には海水混合が激しく、2月の海底付近と表層水の間で酸素濃度に差がないことから堆積物中でもかなりの深さまで酸化環境であると思われる。尚8月の間隙水においても硫化水素臭は無かった。2月に銅網内から得た間隙水は直上水より化学物質が高濃度になっている。銅網からの溶出と堆積物内での輸送によると思われ、銅網が遺物保存に一役かっている可能性が見い出された。海水中の微生物については堆積ヘドロ及び海水中の一般細菌、産生菌、硫酸還元菌等の菌相に有為な差は認められない。しかし菌数的には嫌気的条件下で生育する酸生菌並びに還元菌が堆積ヘドロ中では多かった。不蝕生成物については顕微鏡下で観察分析していった。 | KAKENHI-PROJECT-03451057 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03451057 |
水中考古遺物の保存に関する研究(海中保存環境の経年変化の調査研究と処理後遺物の追調査) | 腐蝕がかなり進んでいるものもあり、防錆処理の見直して収蔵庫の改善に資するようにしたい。昨年度に引き続き海底温の測定、海水の化学的、徴生物学的調査を行なった。海底温については1992年2月29日から7月迄のデータが得られ、過去一年間の変化を得ることができた。これによると海底温の上昇は気温上昇より遅れ、5、6月に始まり7月初めではまだ最高温度に達していない。10月後半から92年7月迄短い周期の温度変化が急激に起っている。これは低気圧の通過、冬型の気圧配置になった時期と一致し港内水が急激に入れ替わると推測される。これにより湾内底層に堆積した粒子がこの流れにのり港外に運び出され、夏期に見られた生物生産で作られた粒子が2月の観測で見られないことが裏付けられた。堆積物で遺物を覆い還元環境を作り木部を虫害から守るという当初の目的は夏期の港内水の滞留時期を除き、あまり期待するのは難しい事を意味する。溶存酸素は去年と同様の値を示している。即ち海底付近と表層水の間では差が無く、堆積物の中でもかなりの深さ迄酸化環境と思われる。このことは徴生物学的調査からも裏付けられ、硫酸還元菌が今年度の夏の資料からも検出できず、僅かに低層海水及びヘドロから検出されたにすぎず、冬の資料からは全く検出されなかった。銅イオンは銅網付近で高濃度が得られたが、その他のサンプルでは見られない。また銅網を状況別にサンプリングし消耗具合、腐食生成物の調査を行なった。その結果ヘドロによる消耗破損は現段階ではあまり心配無いと思われる。収蔵環境調査のため仮収蔵庫と復元開陽丸に温湿度計を6月から設置し収蔵環境を測定したが、仮収蔵庫が高湿度の劣悪な状態であることが判明した。これにより特に夏期に腐食が促進するのが観察された。 | KAKENHI-PROJECT-03451057 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03451057 |
時間軸を持つ3Dデータ及び映像・音響データを用いたアーカイブシステムの開発 | メディアアート作品の保存・修復過程への寄与を目的として、作品の展示空間と鑑賞行動双方の変化を時間的3Dデータとして記録・閲覧するシステムの開発を行う。本研究では、これまでの研究成果を踏まえ、課題となっていた作品向け点群スキャナの精度向上、スキャニング範囲の拡張を前提とした新たな3Dスキャニングシステムの開発を行い、時間軸を持つ作品点群データ、鑑賞者ボーンデータ、映像・音響データを同期して閲覧可能な「タイムベーストデータビューワー」を開発する。メディアアート作品の保存・修復過程への寄与を目的として、作品の展示空間と鑑賞行動双方の変化を時間的3Dデータとして記録・閲覧するシステムの開発を行う。本研究では、これまでの研究成果を踏まえ、課題となっていた作品向け点群スキャナの精度向上、スキャニング範囲の拡張を前提とした新たな3Dスキャニングシステムの開発を行い、時間軸を持つ作品点群データ、鑑賞者ボーンデータ、映像・音響データを同期して閲覧可能な「タイムベーストデータビューワー」を開発する。 | KAKENHI-PROJECT-19K00232 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K00232 |
日中の筋電図バイオフィードバックが夜間ブラキシズム抑制に及ぼす効果の多施設検証 | 覚醒時ブラキシズム(AB)に対するバイオフィードバック訓練(EMG-BF)が睡眠時ブラキシズム(SB)に及ぼす抑制効果を検証した.ブラキシズムを有する男性被験者14名(26.3±2.7歳)を実験群(BF群)と対照群(CO群)に7名ずつ振り分け,3週間の覚醒時および睡眠時のEMG測定を行った.2週目に,BF群ではEMG-BF訓練を行い,CO群ではEMG測定のみ行い,各週のABおよびSB平均イベント数を比較した.BF群において,2週目および3週目のABおよびSB平均イベント数が,1週目に対し有意に減少し(Tukey),ABに対するEMG-Bが,SB抑制効果を示すことが示唆された.日中のクレンチングに対してEMG-BF訓練を行うことによる夜間のブラキシズム抑制に対する効果を検証することを目的として本研究を行った【方法】智歯を除いて歯列に欠損のない健常な男性3名(2329歳)を被験者として以下の実験を行った.昼食をはさむ日中と夜間睡眠時のそれぞれ5時間にEMGを記録した.EMG記録およびBF訓練には携帯型EMG-F装置を使用した.EMG記録開始蒔に,3秒間の最大咬みしめを30秒のインターバルで3回行うよう指示し,その平均を100%咬みしめ(100%MVC)とした.実験スケジュールとして,1日目にBF時の閾値設定に必要となるベースラインデータを記録し.2日目および3日目に電子音を用いた聴覚BFを日中に行い,夜間はEMG測定のみ行った.その後,専用の解析ソフトを用いて,記録されたEMGを機能運動と非機能運動に識別し,筋活動量10,20,30%MVCと筋活動持続時間19秒の組合せによる27通りの閾値におけるイベント数と算出した.その後3名から得られたイベント数の平均を算出し,BF訓練前を基準としてBF訓練後の変化をWilcoxonの符号付順位検定により統計解析を行った.【結果と考察】閾値を20%MVC,持続時間2秒とした場合の夜間のイベント数を比較したところ,被験者1では,訓練前におけるイベント数が11回,BF訓練後の2日目と3日目ではそれぞれ0回と3回であった.被験者2では,訓練前におけるイベント数が4回,BF訓練後の2日目と3日目では1回と0回であった被験者3では,訓練前におけるイベント数が6回,BF訓練後の2日目と3日目では5回と0回であった.3名全員にBF訓練後のイベント数の減少が見られたが有意差は生じなかった(p>0.05).今回の実験では,被験者が3名と少ないことに加え,長期にわたる効果についての実験を行っていないことから,被験者を追加し今後の検討課題としたい日中のクレンチングに対するバイオフィードバック訓練(BF訓練)が夜間睡眠時のブラキシズムに及ぼす抑制効果を調べることを目的として実験を行った.日中のくいしばりの自覚,夜間の歯ぎしりの指摘がある男性被験者10名(27.8±2.4歳)をバイオフィードバック群(BF群)とコントロール群(CO群)にそれぞれ5名ランダムに分け,連続した3週間の日中および夜間睡眠時のEMG測定を各5時間行った.EMG測定部位として主咀嚼側側頭筋部を選択した.BF群では,クレンチング時にBF信号が発生し,その行動を本人に認識させるBF訓練を2週目に行った.CO群はいずれの週にもEMG-BF訓練を行わず,EMG測定のみ実施した.その後,ベースラインデータとなる1週目の測定で得られたEMG記録から,個人ごとに設定した一定の閾値を超えたEMGイベント数を算出した.個人ごとに算出したEMGイベント数から各週のブラキシズム平均イベント数を求めた.統計処理にはtwo-way repeated measures ANOVAと,その後の多重比較にTukeyのHSD検定をおこなった.日中では,BF群において2週目および3週目の平均イベント数が有意に減少した.夜間睡眠時でも,BF群において2週目および3週目の平均イベント数が,1週目に対して有意に減少した.また,夜間睡眠時の3週目のBF群のイベント数はCO群に対し有意に減少した.CO群においては日中及び夜間睡眠時いずれにおいても,イベント数に有意な変化を認めなかった.日中のクレンチングと夜間睡眠時のブラキシズムのイベント数に相関を認めたとの報告もあり,日中のBF効果が夜間睡眠時にも影響を及ぼしたものと考えられる.また,3週目においてもベースラインデータに比較してイベント数の減少が保たれていたことから,訓練1週後において学習効果が得られたことが示された.方法:日中のくいしばりの自覚,ないしは夜間の歯ぎしり指摘のある男性被験者10名(27.8±2.4歳)をバイオフィードバック(BF)群とコントロール(CO)群に5名ずつランダムに分け,3週間の日中および夜間睡眠時のEMG測定を各5時間行った.EMG測定部位として主咀嚼側側頭筋部を選択した.BF群ではクレンチング時にBF信号が発生し,その行動を本人に認識させるBF訓練を2週目に行った.CO群はいずれの週にもEMG測定のみ実施した.その後,ベースラインデータとなる1週目の測定で得られたEMG記録から,Watanabeらの報告に準じて,個人ごとに設定した一定の閾値を超えたEMGイベント数を算出した.個人ごとに算出したEMGイベント数から各週のブラキシズム平均イベント数を求めた. | KAKENHI-PROJECT-23390447 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23390447 |
日中の筋電図バイオフィードバックが夜間ブラキシズム抑制に及ぼす効果の多施設検証 | 統計処理にはSPSS ver17.0を使用し、two-way repeated measuresANOVAと,その後の多重比較にTukeyのHSD検定をおこなった.結果:日中では,BF群において2週目および3週目の平均イベント数が,1週目に対して有意に減少した.また,3週目のBF群の平均イベント数はCO群に対して有意に減少した.夜間睡眠時でも,BF群において2週目および3週目の平均イベント数が,1週目に対して有意に減少した.また,夜間睡眠時の3週目のBF群のイベント数はCO群に対し有意に減少した.CO群においては日中及び夜間睡眠時いずれにおいても,1,2,3週の間でイベント数に有意な変化を認めなかった.日中のクレンチングと夜間睡眠時のブラキシズムのイベント数に相関を認めたとの報告2)もあり,日中のBF効果が夜間睡眠時にも影響を及ぼしたものと考えられる.また,3週目においてもベースラインデータに比較してイベント数の減少が保たれていたことから,訓練1週後において学習効果が得られたことが示された.覚醒時ブラキシズムに対するバイオフィードバック訓練(BF訓練)が夜間のブラキシズムに及ぼす影響を検証した.日中の食いしばりと夜間の歯ぎしりを自覚する健常な成人男性10名を対象として3週間の実験を行った.BF群において,1日目に対して3日目のイベント数は有意な減少を認めた.3週目ではCO群のイベント数に比較しBF群のイベント数が有意に減少した. BF訓練が,夜間のブラキシズム抑制に効果をもたらす事が示唆された.また,携帯型筋電計のブラキシズムイベント測定精度を検証した.携帯型筋電計で測定した筋電図の検出能を検証することを目的とし,夜間にポリソムノグラム(PSG)との同時測定を行い,サンプリングレートの違いがブラキシズムイベントの検出に及ぼす影響について検討した. Tonic型のイベント数は携帯型筋電計とポリソムノグラムの両者ともほぼ同様の値を示しており,検出率は94.1%であり,サンプリングレートの違いはTonic型イベントの検出には大きく影響しないことが示された.覚醒時ブラキシズム(AB)に対するバイオフィードバック訓練(EMG-BF)が睡眠時ブラキシズム(SB)に及ぼす抑制効果を検証した.ブラキシズムを有する男性被験者14名(26.3±2.7歳)を実験群(BF群)と対照群(CO群)に7名ずつ振り分け,3週間の覚醒時および睡眠時のEMG測定を行った.2週目に,BF群ではEMG-BF訓練を行い,CO群ではEMG測定のみ行い,各週のABおよびSB平均イベント数を比較した.BF群において,2週目および3週目のABおよびSB平均イベント数が,1週目に対し有意に減少し(Tukey),ABに対するEMG-Bが,SB抑制効果を示すことが示唆された.26年度が最終年度であるため、記入しない。歯科補綴学26年度が最終年度であるため、記入しない。分担研究者との打合せを行い、先行している明海大学と共通のフォーマットで日中と夜間の筋電図を無拘束で測定できる環境を設定できた。また、明海大学では7名の被験者で日中と夜間のブラキシズムの相関を調べ、ブラキシズムの自覚がある被験者で相関が高い(r=0.662,p<0.001)ことを検証した。当初の目的である覚醒時ブラキシズムに対する咀嚼筋筋電図バイオフィードバックが日中のブラキシズムのみならず、睡眠時のブラキシズムに対しても抑制効果があることが判明した。 | KAKENHI-PROJECT-23390447 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23390447 |
細胞間コミュニケーションのライブイメージング | NanoLanternの原理を利用した発光を利用した新規バイオセンサーの開発を行い、論文として発表した。このプローブは、RLuc発光タンパク質を既存のFRETバイオセンサー中のCFP蛍光タンパク質のC末端に融合させたもので、RLucからCFPへのエネルギー移動によりドナー蛍光タンパク質CFPを励起するものである。このHyBRET型と名づけたバイオセンサーは蛍光顕微鏡下にFRETを観察することも、Coelenterazine存在かにBRETを観察することもできるものである。これまでFRETバイオセンサーを使った薬剤効果のスクリーニングは顕微鏡を用いてしかできなかったが、このHyBRET型バイオセンサーの発光モードを用いれば、96 well plateでも十分に薬剤の効果を判定できることがわかった。この成果はScientific Report誌に発表した。また、FRETバイオセンサーの高度化を行った。当初Scarlet、iRFP、Neptune、Cardinalなどの赤ー近赤外波長域蛍光タンパク質を使ったプローブを開発したが、多数の試行錯誤の結果にも関わらずシグナルノイズ比の高いプローブを作成することはできなかった。そこで、あらたにmKO2とmKate2の組み合わせを導入し、その結果、既存のFRETバイオセンサーに匹敵する高感度のProtein Kinase Aのプローブを作ることに成功した。現在、論文投稿準備中である。さらに、ROSA26領域にFRETバイオセンサーを組み込んだトランスジェニックマウスを作製し、その解析も行った。これにより、これまで困難であったT細胞での活性化イメージングが可能となった。その結果、胸腺で分化したT細胞の運動にはERKマップキナーゼの活性が重要であることがわかった。この成果はiScience誌に発表した。HyBRET型プローブと第二世代FRETバイオセンサーの開発は予定通りに進捗したが、近赤外領域を使うバイオセンサーの開発が想定より遅れた。近赤外FRETバイオセンサーのプローブは作成できたので、論文として近く発表する。FRETバイオセンサーはカルシウムやATPなどの低分子、Gタンパク質やタンパク質リン酸化酵素等の情報伝達分子など多様な分子活性や環境情報を可視化することができる。研究室においてはFRETバイオセンサーを培養細胞やトランスジェニックマウス(FRETマウスと呼んでいる)に安定して発現させる技術を開発した。このFRETマウスの表皮基底細胞を多光子顕微鏡で観察したところ、約直径100ミクロンの領域に30分かけてERK活性が打ち上げ花火のように伝搬される様子が観察された。Spatial propagationof radial ERK activity distribution (SPREAD)と命名したこの現象の発見は、FRETマウスの観察がこれまでの培養細胞を用いた研究からは想像もできないような発見をもたらすことの証拠である。神経や免疫細胞以外での細胞間情報伝達を可視化した研究はほとんど知られていないので、これまでの研究を継続し、新しい発見を目指している。さらに、新しい画像処理技術や摂動実験のツールを導入することで、これまでになかった“生きたマウスを使った細胞社会のシステム的研究"を創生しようとしている。現在、単層培養細胞から器官培養へ、そして生体へと情報伝達研究は大きく変化しつつあるので、FRETマウスを用いた研究はこの新しい潮流の駆動力とすべく研究を続けている。FRETバイオセンサーの高度化については、高感度化、長波長化、多色化を進めている。今年度はクサビラオレンジやクサビラグリーンを用いるFRETバイオセンサーの作成を行った。しかし、これまでのシアン蛍光タンパク質および黄色蛍光タンパク質のFRETペア以上のものは作成できなかった。また、第二世代FRETマウスの開発と多様な臓器でのイメージング技術の開発を目指して、BACクローントランスジェニックマウスを作製した。現在、繁殖してどの組織で発現しているかを解析している。3次元画像タイムラプスデータから、細胞間コミュニケーション情報を抽出するプログラムを開発している。2次元では良い結果が得られるものの3次元では細胞の同定が難しく改良が必要である。FRETバイオセンサーを発現する培養細胞やトランスジェニックマウスを蛍光顕微鏡あるいは多光子顕微鏡で観察することで、細胞間コミュニケーションを可視化し、そのメカニズムを解析した。1.RhoファミリーGタンパク質により活性化されるセリンスレオニンリン酸化酵素ROCKの活性を測定するFRETバイオセンサーを作成した。ROCK阻害剤で低下し、Rhoを活性化することで確かにFRET効率が変化することを確認できたので、トランスジェニックマウスの作成を開始した。2.ERKマップキナーゼのFRETバイオセンサーを発現する培養細胞を用いて癌遺伝子の恒常的発現がどのようにERKを制御しているかを解析した。その結果、RasやRafといったERKの上流因子の恒常的活性化においても、細胞密度が高いとERK活性化が抑制されていることがわかった。これは、ERKの活性化に必要なスレオニン残基が脱リン酸化されていることを明らかにした。阻害剤を用いた実験により、PPPサブファミリーのセリンスレオニン脱リン酸化酵素がこの細胞密度依存性ERK抑制に寄与している可能性が示唆された。3.AキナーゼのFRETバイオセンサーを発現するトランスジェニックマウスに腫瘍細胞を接種し、その腫瘍内血管でのPKA活性を測定した。その結果、腫瘍内血管では皮下正常血管と比較するとPKA活性が低く、これが血管透過性の亢進をもたらしていることが示唆された。そこで、PKAの活性をcAMPアナログで上昇させたところ血管透過性が低下した。さらに、血管内皮細胞増殖因子受容体の阻害剤を投与したところPKA活性が上昇し、血管透過性が低下した。 | KAKENHI-PLANNED-15H05949 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-15H05949 |
細胞間コミュニケーションのライブイメージング | これらの結果は、血管内皮細胞増殖因子による血管透過性の少なくとも一部はPKA活性の抑制によることを示している。おおむね順調に進んでいるが、トランスジェニックマウスを作成する実験において、発現量が十分でないものがあり、その計画は若干遅れている。NanoLanternの原理を利用した発光を利用した新規バイオセンサーの開発を行い、論文として発表した。このプローブは、RLuc発光タンパク質を既存のFRETバイオセンサー中のCFP蛍光タンパク質のC末端に融合させたもので、RLucからCFPへのエネルギー移動によりドナー蛍光タンパク質CFPを励起するものである。このHyBRET型と名づけたバイオセンサーは蛍光顕微鏡下にFRETを観察することも、Coelenterazine存在かにBRETを観察することもできるものである。これまでFRETバイオセンサーを使った薬剤効果のスクリーニングは顕微鏡を用いてしかできなかったが、このHyBRET型バイオセンサーの発光モードを用いれば、96 well plateでも十分に薬剤の効果を判定できることがわかった。この成果はScientific Report誌に発表した。また、FRETバイオセンサーの高度化を行った。当初Scarlet、iRFP、Neptune、Cardinalなどの赤ー近赤外波長域蛍光タンパク質を使ったプローブを開発したが、多数の試行錯誤の結果にも関わらずシグナルノイズ比の高いプローブを作成することはできなかった。そこで、あらたにmKO2とmKate2の組み合わせを導入し、その結果、既存のFRETバイオセンサーに匹敵する高感度のProtein Kinase Aのプローブを作ることに成功した。現在、論文投稿準備中である。さらに、ROSA26領域にFRETバイオセンサーを組み込んだトランスジェニックマウスを作製し、その解析も行った。これにより、これまで困難であったT細胞での活性化イメージングが可能となった。その結果、胸腺で分化したT細胞の運動にはERKマップキナーゼの活性が重要であることがわかった。この成果はiScience誌に発表した。HyBRET型プローブと第二世代FRETバイオセンサーの開発は予定通りに進捗したが、近赤外領域を使うバイオセンサーの開発が想定より遅れた。バイオセンサーについては、より多くの蛍光タンパク質について試していく。トランスジェニックマウスについては作成できたものから順次解析を進めていく画像解析プログラムについては、今後、理研の画像解析チームとも協力しながらより性能の向上を目指す。今後も、トランスジェニックマウスの生体観察と中心に進めていく予定である。近赤外 | KAKENHI-PLANNED-15H05949 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-15H05949 |
犬と猫の糸球体腎症における病態機序の解明と新規診断・治療マーカーの探索 | 本研究では、犬と猫(特に犬)の糸球体腎症の病態機序の解明を目的として研究を行った。犬の糸球体腎症では腎機能の低下には間質の線維化が深く関与しており、その病態には糖鎖構造、ネフリン、グレリンなど様々な因子が関連することが明らかになった。しかしながら、糸球体腎症、特に免疫複合体糸球体腎炎(ICGN)に共通する機序は存在せず、これは犬のICGNの進行や病態の複雑さに関連していると考えられた。本研究では、伴侶動物(特に犬)の糸球体腎症の病態機序の解明を目的とする。平成25年度はサンプル採集と免疫複合体の沈着様式の解析を行った。1.サンプル採集:新たに2例の犬について腎生検を実施し、詳細な病理学的検査を実施した。診断は光学顕微鏡、電子顕微鏡および免疫組織化学的所見に基づいて行った。検査の結果、1例は腎アミロイドーシスと診断された。光学顕微鏡検査ではHEおよびPAS染色においてほとんどの糸球体が均質無構造物質に置換されており、この物質はコンゴーレッド染色により橙色に染色された。1例は膜性増殖性糸球体腎炎(I型)と診断された。光学顕微鏡では糸球体にメサンギウム陥入と基底膜の二重化が観察され、電子顕微鏡ではこれらの所見に加えてdens bodyの沈着、足突起の広範な癒合が認められた。2.免疫複合体の沈着様式:これまでの収集した犬の糸球体腎症に上記の膜性増殖性糸球体腎炎を加えた8例のサンプルで解析した。内訳は、膜性腎症2例、膜性増殖性糸球体腎炎5例、巣状性糸球体硬化症1例である。免疫複合体は、IgG, IgA, IgM,補体C3について検索した。上記の膜性増殖性糸球体腎炎のサンプルは未固定凍結切片による蛍光抗体法で検出を行い、その他のサンプルはパラフィン切片による酵素抗体法(標識ストレプトアビジン法)で行った。解析の結果、全ての症例に共通する所見としてIgMと補体C3の沈着が認められた。次いで、IgGの沈着が多く、IgAは明瞭な陽性反応を示すものは1例のみであった。観察結果から、膜性腎症はIgGの沈着が強いこと、膜性増殖性糸球体腎炎はIgGおよびIgAの沈着に一貫性がないこと、巣状性糸球体硬化症はIgGとIgAの沈着が認められないことが示唆された。この結果は、ヒトの糸球体腎症の免疫複合体の沈着様式に類似していると考えられた。本研究では、伴侶動物(特に犬)の糸球体腎症の病態機序の解明を目的とする。平成26年度は、サンプル採集、免疫複合体の検出方法の検討、糸球体スリット膜関連分子の免疫組織化学的解析およびレクチン組織化学的解析を行なった。1.サンプル採集:新たに4例の犬と1例の猫について腎生検を実施し、詳細な病理学的解析を行なった。その結果、犬では2例が免疫複合体糸球体腎炎(IgA腎症と膜性腎症)、2例が非免疫複合体糸球体腎炎と診断された。猫の1例は尿細管リピドーシスと診断された。特に、IgA腎症や尿細管リピドーシスは獣医学領域ではまれな疾患であり、現在、学会および論文発表の準備を進めている。2.免疫複合体の検出方法の検討:前年度の課題としてパラフィン切片による免疫複合体の検出における非特異反応が残されたため、本年度は蛍光抗体法による解析を実施した。蛍光標識二次抗体および蛍光標識ストレプトアビジンを用いて様々な方法で検討したが、パラフィン切片では特異性の低さが改善されなかった。一方、新鮮凍結切片による解析も同時に行ない、新鮮凍結切片ではIgG, IgA, IgMおよび補体C3のすべてを高い特異性で検出できることが明らかになった。3.糸球体スリット膜関連分子の免疫組織化学的解析:ネフリン、ポドシン、CTN4について解析を開始した。現在、抗体の特異性の確認および検出法の決定を行なっているところである。4.レクチン組織化学的解析:7種類のレクチン(ConA, WGA, RCA, PNA, SBA, DBAおよびUEA-1)を用いて犬の糸球体腎症における糖鎖の発現様式の変化を開始した。その結果、RCAやPNAなど幾つかのレクチンでは、糸球体腎症での発現パターンが正常犬と異なっていた。現在、その発現パターンと組織障害、血液学的腎機能マーカー、蛋白尿および高血圧とどのように関連しているのかを解析している。本研究は、伴侶動物(特に犬)の糸球体腎症の病態機序の解明を目的とした。平成27年度は、腎生検による病理学的解析、レクチン組織化学的解析、スリット膜関連分子および腎臓内グレリンの免疫組織化学的解析を行った。1.腎生検による病理学的解析:新たに4例の犬について腎生検を実施した。そのうちの一頭は伴侶動物ではまれなアルポート症候群と診断された。また、残りの3頭は免疫複合体糸球体腎炎と診断された。免疫複合体糸球体腎炎と診断されたヨークシャー・テリアの一頭については、母犬および同腹子も同じ症状(蛋白漏出性腎症)を示しており、本犬種では報告のない家族性の糸球体腎炎と考えられた。2.レクチン組織化学:前年度からの解析を継続して行った。 | KAKENHI-PROJECT-25450446 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25450446 |
犬と猫の糸球体腎症における病態機序の解明と新規診断・治療マーカーの探索 | 免疫複合体糸球体腎炎における各種レクチンの結合パターンを解析し、臨床病理学的および臨床的特徴と比較した。その結果、レクチン結合パターンの変化は、糸球体の濾過機能や尿細管の再吸収能の異常に関連していると考えられた。一方、症例間で共通する結合パターンは認められず、免疫複合体糸球体腎炎で起きる腎組織の糖鎖修飾の変化は症例により異なっていると考えられた。3.腎臓内グレリン:免疫複合体糸球体腎炎における腎臓内グレリンの発現変化を免疫組織化学的に解析した。その結果、免疫複合体糸球体腎炎では腎臓内グレリンの発現は顕著に減少しており、それは糸球体の濾過機能の低下と関連することが明らかになった。4.スリット膜関連分子の解析:免疫複合体糸球体腎炎における3種の分子(ネフリン、ポドシンおよびACTN4)の変化を免疫組織化学的に解析した。その結果、すべてのスリット膜関連分子で発現の低下が認められた。しかしながら、その変化は症例によって異なっていた。現在、その発現パターンと組織障害、血液学的腎機能マーカー、蛋白尿および血圧とどのように関連しているのかを解析している。本研究では、犬と猫(特に犬)の糸球体腎症の病態機序の解明を目的として研究を行った。犬の糸球体腎症では腎機能の低下には間質の線維化が深く関与しており、その病態には糖鎖構造、ネフリン、グレリンなど様々な因子が関連することが明らかになった。しかしながら、糸球体腎症、特に免疫複合体糸球体腎炎(ICGN)に共通する機序は存在せず、これは犬のICGNの進行や病態の複雑さに関連していると考えられた。平成26年度は、腎生検サンプルの採集と病態解析、免疫複合体の検出方法の改善および糸球体スリット膜関連分子の解析を計画していた。腎生検サンプルは5例追加され、これは当該施設では例年以上の数であり順調に病態解析が進行した。免疫複合体の検出は新鮮凍結切片での蛍光抗体法を導入することで特異性が大幅に改善した。糸球体スリット膜関連分子の解析は抗体の特異性の確認や検出方法の決定に時間を費やしたため、本年度の解析は遅れている。一方で、次年度に解析を行なう予定であったレクチン組織化学的解析に着手し、順調に解析が進んでいる。獣医臨床病理学引き続き腎生検サンプルの収集と詳細な病理解析を継続して行なうとともに、犬および猫の糸球体腎症の病態解析のための分子病理学的検索を行なう。最終年度である平成27年度には、蛋白尿の発現メカニズムとして重要な糸球体スリット膜関連分子について解析を進める。本年度にすでに着手し概ね成果を得ているレクチン組織化学的解析については、さらに解析を進めて糸球体腎症の病態と糖鎖の修飾変化との関連性を明らかにする。また、上記以外にも糸球体腎症の病態関連因子についても解析を実施する予定である。解析が終了した成果については、学会および論文発表を行なう。平成25年度は腎生検サンプルの採集と病態解析、および糸球体腎症における免疫複合体の沈着様式の解明を計画していた。腎生検サンプルは2例追加され、これは当施設ではほぼ例年通りの数であり、いずれも光学顕微鏡、電子顕微鏡および免疫染色により詳細な病態解析が実施できた。免疫複合体の解析についても順調に進行し、過去に集積した症例と合わせて8例が終了した。パラフィン切片での解析では、条件設定の予備実験に時間を費やしたが、良好な染色結果を得られるようになった。しかしながら、IgGとIgAについては、やや非特異反応が強く更に検出法を改良する余地があると考えられ、計画以上の成果までは達しなかった。本年度の研究計画の一部を次年度に繰り越したため、その物品費に差額生じた。 | KAKENHI-PROJECT-25450446 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25450446 |
結核菌の膜輸送体の結晶構造解析に向けた大量生産系の構築 | 本研究では、ドラッグターゲットとして有望な結核菌由来の膜輸送体の結晶構造解析に向けた大量発現系の構築を目的とした。平成30年度は昨年に引き続き、結核菌と同属で非病原生のMycobacterium smegmatisを蛋白質発現のホストとし、結核菌由来ctpF(基質不明のイオンポンプ)とmntH(Mn2+輸送体)の発現実験を行った。また、新たなターゲットして結核菌のエネルギー獲得に重要なndh2(II型NADH脱水素酵素)とmqo(リンゴ酸-キノン酸化還元酵素)の発現系構築も試みた。昨年度に導入したM. smegmatisにおけるT7システムを平成30年度も引き続き採用した。まずは昨年度に作製したN/C末端にアフィニティタグとしてHisタグあるいはStrepIIタグを付加したctpF, mntH発現用ベクター(計8種)を導入した形質転換株の発現チェックを行った。しかし、ウエスタンブロットで検出可能な発現量が得られなかったため、発現量の向上を目指し、融合蛋白質の付加を検討した。GFPあるいはSUMO(Small Ubiquitin-like Modifier)タグをctpF, mntH, ndh2, mqoそれぞれのN末端に付加した発現用プラスミドを作成し、M. smegmatisに導入した。表在性膜蛋白質であるndh2とmqoについてはどちらのタグを付加した場合もCBB染色で目的蛋白質由来のバンドを確認できた。GFPよりもSUMOタグを付加したときの方が、発現量は23倍高かった。ctpFとmntHについてはndh2, mqoと比べて発現量は低かったが、GFP由来の蛍光観察では発現が確認できた。今回発現を試みた4種の膜蛋白質に関しては将来的な構造解析に十分な発現量を得ることができた。結核菌にはドラッグターゲットとなる膜輸送体が数多くあるにもかかわらず、大量発現系の構築が困難であるため研究は遅れている。本研究では、結核菌の膜輸送体の結晶構造解析に向けた大量発現系の構築を目的とする。平成29年度は結核菌と同属で非病原生のMycobacterium smegmatisを宿主とし、1新たな蛋白質発現用ベクターの開発、2発現誘導条件の最適化、3結核菌由来ctpF(基質不明のイオンポンプ)とmntH(Mn2+輸送体)の発現実験の3点を並行して行った。1に関してはM.smegmatisを宿主とした可溶性蛋白質の大量発現において実績のある2種の発現系(T7システム、tetORシステム)の導入に加え、Cu+感受性遺伝子のプロモーターを利用した新たな発現系の構築を試みた。Cu+排出ポンプをコードするM.smegmatis由来csoR遺伝子のプロモーター領域をPCRで増幅し、E.coli-M.smegmatisシャトルベクターに導入した。プロモーター下流にレポーターとしてGFP遺伝子を導入し発現強度を比較したところ、発現量が既存のベクターに比べて極めて低いことがわかった。2についてはGFPをレポーター遺伝子として発現誘導条件の検討を行った。その結果、培地中の炭素源としてコハク酸を使用した時に発現量が多い傾向にあった。さらに、ペプトンや酵母抽出物などの添加は菌体量を増やすものの、発現誘導時の目的蛋白質の発現量を大幅に減少させることが分かった。3については結核菌由来の2つの膜輸送体であるctpFとmntHのN/C末端にアフィニティタグとしてHis-tagあるいはStrepII-tagを付加した発現用ベクター(計8種)を設計し、M. smegmatisに導入した。作製した発現候補株については、2で得られた結果をもとに発現誘導条件の検討中である。M.smegmatisの培養特性などが一般的な発現宿主である大腸菌とは大きく異なっており、形質転換、菌体破砕などの実験条件の最適化に予想以上に時間を要した。したがって、当初の計画よりはやや遅れているものの、発現誘導時に最適な炭素源の種類などの新たな知見やノウハウは着実に蓄積している。また、現在までにターゲットとする遺伝子の合成や各種アフィニティタグの付加など基本的コンストラクト設計・構築は完了しており、研究期間内での目的達成は十分に可能であると考えている。本研究では、ドラッグターゲットとして有望な結核菌由来の膜輸送体の結晶構造解析に向けた大量発現系の構築を目的とした。平成30年度は昨年に引き続き、結核菌と同属で非病原生のMycobacterium smegmatisを蛋白質発現のホストとし、結核菌由来ctpF(基質不明のイオンポンプ)とmntH(Mn2+輸送体)の発現実験を行った。また、新たなターゲットして結核菌のエネルギー獲得に重要なndh2(II型NADH脱水素酵素)とmqo(リンゴ酸-キノン酸化還元酵素)の発現系構築も試みた。昨年度に導入したM. smegmatisにおけるT7システムを平成30年度も引き続き採用した。まずは昨年度に作製したN/C末端にアフィニティタグとしてHisタグあるいはStrepIIタグを付加したctpF, mntH発現用ベクター(計8種)を導入した形質転換株の発現チェックを行った。しかし、ウエスタンブロットで検出可能な発現量が得られなかったため、発現量の向上を目指し、融合蛋白質の付加を検討した。GFPあるいはSUMO(Small Ubiquitin-like Modifier)タグをctpF, mntH, ndh2, mqoそれぞれのN末端に付加した発現用プラスミドを作成し、M. smegmatisに導入した。表在性膜蛋白質であるndh2とmqoについてはどちらのタグを付加した場合もCBB染色で目的蛋白質由来のバンドを確認できた。 | KAKENHI-PROJECT-17K15087 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K15087 |
結核菌の膜輸送体の結晶構造解析に向けた大量生産系の構築 | GFPよりもSUMOタグを付加したときの方が、発現量は23倍高かった。ctpFとmntHについてはndh2, mqoと比べて発現量は低かったが、GFP由来の蛍光観察では発現が確認できた。今回発現を試みた4種の膜蛋白質に関しては将来的な構造解析に十分な発現量を得ることができた。初年度には新たな発現用ベクターの開発も試みたが、既存ベクターのプロモーター活性が十分に強いため次年度以降は既存システムを利用する。平成30年度は、構築済みの発現候補株の培養条件を最適化するとともに、目的蛋白質のフォールディングや脂質膜への挿入を促進するタグの付加なども検討する。まずは大腸菌で異種の膜蛋白質の大量発現に成功している融合タグがM.smegmatisにおいても機能するかを検討する。また、本研究でターゲットとしているctpFとmntHは膜貫通ヘリックスが10本以上から構成されており特に発現難度が高い。従って、発現実験のコントロールとして膜表在性蛋白質の発現実験も並行して行う。候補としてはドラッグターゲットとして研究報告があるエネルギー代謝系の酵素の発現を試みる。大量発現が確認できたものについては精製条件の検討、機能解析などを行う初年度には小型振とう培養器を購入予定であったが、予備実験の段階では他予算で購入した機器が使用可能であったため見送った。しかし、現在は検体の増加に伴い既存の機器のみでは対応できない状況である。そこで、平成30年度には振とう培養器を導入し実験の効率化を図りたい。 | KAKENHI-PROJECT-17K15087 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K15087 |
維管束メリステムからの細胞運命決定機構 | 維管束系の全ての細胞はシュート頂と根端のメリステムから連続する幹細胞である維管束前形成層・形成層(すなわち維管束メリステム)に由来するが、維管束メリステム中の隣り合った未分化な細胞がそれぞれ異なる機能を持った維管束細胞へと分化していくメカニズムについてはほとんど分っていない。本研究では、道管の分化を制御するマスター因子として機能するVND7を中心として、VNDファミリーの発現と機能の制御機構を詳細に解析することで、維管束メリステムからの細胞運命の決定機構を明らかにすることを目的とした。今年度は、VND遺伝子の発現を人為的に誘導できる形質転換体を作出したところ、VND6やVND7だけでなく他のVND遺伝子の過剰発現によっても異所的な二次細胞壁の誘導が観察された。一方、VND遺伝子の多重変異体を作出したところ、道管形成の異常が観察された。これらの結果は、VNDファミリーは協調的に道管分化を制御していることを示している。また、トランジェントアッセイによって全てのVND転写因子がVND7の発現を正に制御しうることが明らかとなった。この結果はVNDファミリー間に転写制御のカスケードが存在することを示唆している。VND7の機能制御を理解するため、相互作用因子の探索を行い、NAC転写因子をコードするVNI2を単離した。詳細な解析の結果、VNI2はVND7の転写活性化能を阻害することで、道管分化を負に制御することが明らかとなった。また、VND7-VP16-GRを導入した形質転換体を作出したところ、DEXによる誘導処理により極めて効率よく道管細胞への分化転換を誘導できることが明らかとなった。これまでに、この形質転換シロイヌナズナの表現型を抑制するサプレッサー変異体29ラインを単離し、現在バッククロスが完了した7ラインの表現型解析とマッピングを行っている。さらに、VND7-VP16-GR形質転換体を用いることで、VND7により発現が直接制御される遺伝子の同定に成功した。本研究では、VND6とVND7を中心として、VNDファミリーの発現と機能の制御機構を詳細に解析することで、維管束メリステムからの細胞運命の決定機構を明らかにすることを目的とした。VNDファミリー遺伝子群の発現制御メカニズムを明らかにすることを目的として、パーティクルガンを用いた一過的遺伝子導入解析により、VNDファミリー遺伝子の発現を制御する転写因子の探索を行った。本年度はまず、全てのVNDファミリー転写因子がVND7の発現を正に制御することを確認した。さらに、他のVND遺伝子の発現をVNDファミリーが制御するかどうかを検証したところ、VNDファミリー内でのポジティブフィードバック制御の存在が示唆された。また、前形成層に特異的なVND1の発現はいずれのVND遺伝子によっても誘導されないことが示され、VND1がVNDファミリー遺伝子の発現制御の最上流に位置する可能性が示唆された。つぎに、道管要素の分化過程で発現する約50種類の転写因子の中から、VND7の発現を上昇させる転写因子のスクリーニングを行ったところ、VND7発現の正の制御因子としてすでに報告されているASL18/LBS30、ASL20/LBD18(Soyano et al.Plant Cell 2008)に加え、新たにGATAドメインを持つ転写因子がVND7の発現を有意に誘導することが明らかとなった。現在、このGATA転写因子の発現様式と機能の解析を進めている。VND7の過剰発現による異所的な道管要素分化を抑制するサプレッサー変異体のスクリーニングについては、現時点で単離した29ラインのうち、バッククロスが完了した11ラインについて、変異のホモ化、表現型解析、マッピングを順次進めている。維管束系の全ての細胞はシュート頂と根端のメリステムから連続する幹細胞である維管束前形成層・形成層(すなわち維管束メリステム)に由来するが、維管束メリステム中の隣り合った未分化な細胞がそれぞれ異なる機能を持った維管束細胞へと分化していくメカニズムについてはほとんど分っていない。本研究では、道管の分化を制御するマスター因子として機能するVND7を中心として、VNDファミリーの発現と機能の制御機構を詳細に解析することで、維管束メリステムからの細胞運命の決定機構を明らかにすることを目的とした。今年度は、VND遺伝子の発現を人為的に誘導できる形質転換体を作出したところ、VND6やVND7だけでなく他のVND遺伝子の過剰発現によっても異所的な二次細胞壁の誘導が観察された。一方、VND遺伝子の多重変異体を作出したところ、道管形成の異常が観察された。これらの結果は、VNDファミリーは協調的に道管分化を制御していることを示している。また、トランジェントアッセイによって全てのVND転写因子がVND7の発現を正に制御しうることが明らかとなった。この結果はVNDファミリー間に転写制御のカスケードが存在することを示唆している。VND7の機能制御を理解するため、相互作用因子の探索を行い、NAC転写因子をコードするVNI2を単離した。詳細な解析の結果、VNI2はVND7の転写活性化能を阻害することで、道管分化を負に制御することが明らかとなった。また、VND7-VP16-GRを導入した形質転換体を作出したところ、DEXによる誘導処理により極めて効率よく道管細胞への分化転換を誘導できることが明らかとなった。 | KAKENHI-PUBLICLY-21027031 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-21027031 |
維管束メリステムからの細胞運命決定機構 | これまでに、この形質転換シロイヌナズナの表現型を抑制するサプレッサー変異体29ラインを単離し、現在バッククロスが完了した7ラインの表現型解析とマッピングを行っている。さらに、VND7-VP16-GR形質転換体を用いることで、VND7により発現が直接制御される遺伝子の同定に成功した。 | KAKENHI-PUBLICLY-21027031 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-21027031 |
都市高速道路の料金政策に着目した交通運用に関する研究 | 本研究では、都市高速道路の料金政策を都市道路網の交通運用として位置づけ、都市道路網の交通調整機能を考えた有効な課金方式を導出する。具体的には、都市道路網の交通流変化を分析するための交通均衡分析と知的情報処理を用いた最適化手法を提案した。これより、現実の時間的・空間的な交通流動変化を考慮した弾力的な交通運用を可能とする都市高速道路料金の対距離料金の決定が可能となった。さらに、複数の課金形式を統合した社会的最適料金に関する実用的な料金決定方法を提案した。最終的に、都市道路網の効率的な交通運用に加えて、環境負荷への影響を考慮した、総合的な都市高速道路の課金方法の提案を行った。前年度の検討結果を踏まえて、対距離料金を拡張した現実的な課金政策に関する分析を行った。特に「空間的」な運用視点から、弾力的な料金設定の有効性を検証するとともに、具体的な都市高速道路料金設定方法に関する検討を行った。1)前年度の「対距離料金制」を拡張した料金形式を検討した。具体的には、コードンラインなどを考慮した「区間別料金」等の空間的な料金設定を検討した。これらは多様な料金政策に基づく交通需要調整に対応する。この際、交通需要変動を前提とした定量分析が必要であり「需要変動型交通均衡分析モデル」を開発した。2)空間的に複数料金形式の同時設定法を提案した。異なる多数の関数形状を設定し、交通量推計を内包した組み合せ最適化を実行する場合、演算の実行可能性に問題がある。このため、実用性に配慮した「知的情報処理」による算定法を提案した。3)知的情報処理過程として、1事前に料金形式の複数ケースの定量的評価値を算定する。2設定形式と社会的便益(算定結果)の非線形関係をファジィNN型推計モデルで表現した。3社会的便益推定モデルを内包した組み合わせ最適化問題の定式化を行った。これは、膨大な推計計算を簡略化した近似的な最適解を導出する技術的提案である。これより任意の料金形式の有効性の比較検討が可能となる。4)理論モデル分析により各要素パラメータを最適設定した空間的な料金形式として、区間別(ゾーン別)の一般的な対距離料金を提案した。これより都市高速道路の適切な料金設定が、都市道路網の交通調整面で効果的で、次善料金として有効に機能することを示した。本年度は料金政策を統合化した交通運用について検討した。特に環境負荷を考慮した交通運用と交通制御との関係性を考慮した統合的交通運用について検討した。1)社会的余剰の概念に環境負荷を導入した。道路効率性に加えて、持続可能性を考慮した交通運用に対応する。また環境税の概念を導入した課金形式について、前年度までに開発された解析方法を適用した。またこの際、既存研究の環境負荷量(CO2)の推計方法に関する研究成果を利用した(井ノ口・秋山)。2)道路効率性と持続可能性は必ずしも同時に達成されない。このため都市道路網全体の多目的な交通運用を目指した料金政策について実証的に検討した。特に多目的の最適化問題を基本とした交通運用の決定では知的情報処理による算定方法を利用した(秋山・奥嶋)。3)都市圏全域に対して、道路効率性と持続可能性を考慮した体系的な交通運用方法を提案した。都市高速道路課金による社会的便益について実証的な整理を行うとともに、交通制御と料金政策の有機的な関係性について、具体的に整理した(鈴木・奥嶋・秋山)。4)最終的な研究整理を行うとともに、都市高速道路課金における現実的な問題点を検討した。統合的な交通運用の構成を示し、今後の研究課題を整理した(秋山・井ノ口)。最終的には、都市高速道路の料金政策の時間的・空間的な交通運用方策を体系的に整理した。また各年度の研究成果は土木学会・日本交通学会等で報告するとともに、都市高速道路関係機関において現実的な議論を行った。本研究では、都市高速道路の料金政策を都市道路網の交通運用として位置づけ、都市道路網の交通調整機能を考えた有効な課金方式を導出する。具体的には、都市道路網の交通流変化を分析するための交通均衡分析と知的情報処理を用いた最適化手法を提案した。これより、現実の時間的・空間的な交通流動変化を考慮した弾力的な交通運用を可能とする都市高速道路料金の対距離料金の決定が可能となった。さらに、複数の課金形式を統合した社会的最適料金に関する実用的な料金決定方法を提案した。最終的に、都市道路網の効率的な交通運用に加えて、環境負荷への影響を考慮した、総合的な都市高速道路の課金方法の提案を行った。本研究の初年度として、都市高速道路の料金制度に関する基本的事項を整理するとともに、対距離料金設定方法について考察した。具体的には、以下の手順で検討を行った。1)まず都市圏全体の「社会的余剰」(利用者便益)に基づく料金政策の理論的背景を整理し、次善料金として都市高速道路の有料制の妥当性を検証した。現実的な都市高速道路の料金政策として、「対距離料金」を取り上げ、基本的理念と有効性を交通経済理論の面から整理した。2)需要変動型モデルを都市道路網の実態に関して、京阪神都市圏を対象地域として基本データを収集した。また、京阪神都市圏の都市高速道路の幹線道路網に対して交通需要関数を想定した交通需要変動パターンを提示した。3)都市道路網の基本的な交通均衡解析を実行した。2種類の交通量算定技術を提案した。 | KAKENHI-PROJECT-23560636 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23560636 |
都市高速道路の料金政策に着目した交通運用に関する研究 | すなわち、(1)経路別料金算定と多層型ネットワーク経路探を包含したモデルを定式化した。また、(2)複数回の高速道路利用(乗り継ぎ)を表現可能とするため、最短経路探索に関する「代替的仮想リンク設定法」を提案した。4)ここまでの研究成果を踏まえて、(1)都市高速道路の任意の課金額設定と(2)複数回利用交通の算定を包含した都市道路網の交通均衡分析法を開発した。この際、大規模道路網を対象とすることから、計算時間の増大に対応するため、修正型の計算アルゴリズムを検討した。5)都市高速道路の対距離料金設定に関する社会的便益の算定を実行した。「均一料金」設定時の都市道路網の交通状態との比較に基づく便益を算定した。また、都市道路網における交通状態を算定して、対距離料金決定に伴なう影響範囲を検討した。6)これらの検討結果を踏まえて、都市高速道路の対距離料金の基本的形状に着目した設定方法の有効性を整理した。さらに、対距離料金制の運用にともなって期待される交通混雑緩和および社会的便益の影響範囲について議論を行った。本研究は、都市高速道路の料金政策を都市道路網の交通運用として位置づけ、有効な課金方式を導出することを目的として実行した。特に都市道路網の交通流変化を包含した利用者均衡分析と知的情報処理に基づくメタヒューリステックな最適化法を提案した。このとき、都市道路網の社会的余剰を考慮した課金形式として、対距離料金の妥当性を検証している。すなわち、現実的な交通流動変化を考慮した時間的・空間的な弾力的な交通運用が可能な課金形式が提案できた。また一方で都市道路網の効率的な交通運用に加えて環境負荷を考慮した、都市高速道路の車種別料金の設定方法を提案している。これまで、基本的な乗り継ぎ交通量推計を包含した利用者均衡配分アルゴリズムを開発した。本研究の中間年次にあたる平成24年度には、現実の都市高速道路において対距離料金制が開始され、実証的にも対距離料金制の有効性が確認されている。平成26年度は前年度(研究計画上の最終年度)において、当初計画の内容をほぼ達成しているが、研究成果の整理と報告の充実が求められることから、研究期間の延長申請を受理いただいたものである。したがって、当該年度の研究実績としては、都市道路網に関する理論的分析手順の整理を行うとともに、都市高速道路の交通需要変化を考慮した需要変動型交通量配分の導入を検討した。これらは、本研究の具体的課題である対距離料金制の有効活用という意味で、極めて実用的な提案を与えるものとなっている。このようなことから、本年度は最終的研究整理を行うとともに、対距離料金に基づく都市高速道路課金の応用的提案を行った。特に都市道路網に関する統合的交通運用の構成を検討するための今後の研究課題として、1交通運用と料金政策の統合手法の定式化、2メタヒューリスティック最適化手法の適用性の検討に言及している。都市交通計画本年度の研究成果として、ほぼ当初の計画通りに進展している。特に大局的な研究成果は予定通り得られており、若干の追加的議論が必要であるが特に研究遂行上の支障はない。この点に関連する主要な研究成果と課題に関して以下に整理する。1)現実規模のネットワークに関して、需要変動型の交通均衡配分の実行可能なモデルを開発した。 | KAKENHI-PROJECT-23560636 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23560636 |
強化学習を用いたコンピュータ麻雀プレイヤの構築 | 実施した研究は研究課題にあるように、強化学習を用いた麻雀プレイヤを構築した。今年度の研究では強化学習を用いて序盤の戦略の改良を行った。手法としてはアルファ碁がおこなった局面を自動で生成し、そこから最終的な結果を利用して学習行う方法である。局面生成する基準となるプレイヤと相手プレイヤが対局を行う。その途中で基準となるプレイヤがランダムな手を選択し、その局面を教師データとする。その後の最終的な結果とペアにして学習を行う。基準となるプレイヤは現状の麻雀AIの序盤のアルゴリズムをそのまま用いる。相手はツモ切りを行うプレイヤと基準プレイヤと同じ序盤のアルゴリズムをそのまま用いるプレイヤの二種類用意した。局面数を一億局面生成し、学習した結果、相手をどちらにしても序盤のアルゴリズムと比較して高得点を狙う技術は向上した。しかしながら実際に対戦した結果では、相手を強くするすなわちツモ切りするプレイヤよりも序盤のアルゴリズムをそのまま用いるプレイヤで学習したプレイヤのほうが強い結果ではあったものの、元のプレイヤには実力は届かなかった。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。実施した研究は研究課題にあるように、強化学習を用いた麻雀プレイヤを構築した。今年度の研究では強化学習を用いて序盤の戦略の改良を行った。手法としてはアルファ碁がおこなった局面を自動で生成し、そこから最終的な結果を利用して学習行う方法である。局面生成する基準となるプレイヤと相手プレイヤが対局を行う。その途中で基準となるプレイヤがランダムな手を選択し、その局面を教師データとする。その後の最終的な結果とペアにして学習を行う。基準となるプレイヤは現状の麻雀AIの序盤のアルゴリズムをそのまま用いる。相手はツモ切りを行うプレイヤと基準プレイヤと同じ序盤のアルゴリズムをそのまま用いるプレイヤの二種類用意した。局面数を一億局面生成し、学習した結果、相手をどちらにしても序盤のアルゴリズムと比較して高得点を狙う技術は向上した。しかしながら実際に対戦した結果では、相手を強くするすなわちツモ切りするプレイヤよりも序盤のアルゴリズムをそのまま用いるプレイヤで学習したプレイヤのほうが強い結果ではあったものの、元のプレイヤには実力は届かなかった。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-17J10022 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J10022 |
モデル脊椎動物における新規発生工学解析技術の開発 | CRISPR/Cas9はゼブラフィッシュのゲノム改変に有用であるが、外来遺伝子を標的遺伝子座に精巧に挿入する手法は十分には開発されていない。本研究では、標的ゲノム部位に対する短い相同配列を付加したレポーター遺伝子を用いることで標的遺伝子座にEGFP遺伝子を精巧に挿入することに成功した。さらに、このゲノム改変が生殖系列に移行することを示し新規ノックイン法として機能することを明らかにした。加えて、化学合成したcrRNA、tracrRNAとCas9タンパク質で構成される即効型CRISPR/Cas9を開発し、EGFP遺伝子を標的遺伝子座に挿入できうることを明らかにした。研究代表者は、これまでに新規のゲノム編集技術であるCRISPR/Cas9システムを用いゼブラフィッシュにおける効率的なゲノム改変技術の開発に国内で最初に成功していた。本研究では、CRISPR/Cas9システムを基盤とした次世代型の遺伝子置換法(ノックイン法)を開発することを目指した。当初の実験計画では、Cas9ヌクレアーゼを発現するトランスジェニック系統を基盤としたノックイン法を開発することになっていたが、樹立したGAL4-UASシステムでCas9ヌクレアーゼを発現するトランスジェニック系統は、ゲノム改変に十分なゲノム編集活性が認められないことが判明し、その問題点を克服しなければならない状況となった。我々は、これまでのゲノム編集の技術開発の過程で、標的ゲノム切断部位において短い相同配列を利用したマイクロホモロジー修復が機能していることを見出していた。そこで、CRISPR/Cas9切断部位に標的ゲノム部位と相同な配列(20-40塩基)を組み込んだ新たなベクターシステムを開発した。このシステムが効率的なノックイン法として機能するかを色素合成に関与するチロシネース遺伝子と表皮細胞に高い発現を示すケラチン遺伝子の遺伝子座に蛍光タンパク質が遺伝子置換しうるかを指標に解析を行った。その結果、2つの標的ゲノム部位に高い効率で精巧に遺伝子置換されること、また、この遺伝子置換は、上記の相同配列に依存した現象であることを発見した。さらに、F0胚で確認された精巧な遺伝子置換は、次の世代であるF1胚に生殖系列を介し移行できうることが確認でき、新規の発生工学技術が確立できたことが証明された。これらの研究成果は、オープンジャーナルであるScientific Reportsに発表した。研究代表者は、本研究においてゲノム編集技術CRISPR/Cas9を改良しゼブラフィッシュにおける遺伝子破壊や遺伝子挿入(ノックイン)を簡便に行うことができる新しい発生工学技術の開発を行った。最終年度では、ヌクレアーゼであるCas9タンパク質と化学合成したCRISPR RNA (crRNA)およびtrans-activating crRNA (tracrRNA)をゼブラフィッシュ受精卵に注入する即効型CRISPR/Cas9システムの開発に成功した。即効型CRISPR/Cas9システムを用い色素合成に関与するチロシネース遺伝子の破壊を行うことで色素合成異常の表現型を効率よく誘導できることを見出した。さらに、未解析遺伝子であるepdr1 (ependymin related 1)の遺伝子座にEGFPレポーターを挿入する技術を開発し、本研究の目的である効率的な遺伝子挿入技術の開発に成功し、その研究結果を論文として報告した(Scientific Reports 2015)。また、ゲノム編集技術を用い作成したスフィンゴシン・キナーゼ2(sphk2)のmaternal-zygotic(母性-接合体)変異体が心臓発生に異常を示すことを見出し、論文として報告した(JBC 2015)。CRISPR/Cas9はゼブラフィッシュのゲノム改変に有用であるが、外来遺伝子を標的遺伝子座に精巧に挿入する手法は十分には開発されていない。本研究では、標的ゲノム部位に対する短い相同配列を付加したレポーター遺伝子を用いることで標的遺伝子座にEGFP遺伝子を精巧に挿入することに成功した。さらに、このゲノム改変が生殖系列に移行することを示し新規ノックイン法として機能することを明らかにした。加えて、化学合成したcrRNA、tracrRNAとCas9タンパク質で構成される即効型CRISPR/Cas9を開発し、EGFP遺伝子を標的遺伝子座に挿入できうることを明らかにした。当初の研究計画に従いCas9ヌクレアーゼを発現するトランスジェニック系統を作製し、そのゲノム編集活性を測定したが、遺伝子置換を行うには十分な活性ではないことが明らかとなった。そこで、この問題点を克服するために、新しいベクターシステムを構築し、マイクロホモロジー修復機構を利用した全く新しい発生工学技術を開発した。本研究で開発した手法は、遺伝子置換に利用する相同配列が20-40塩基と非常に短くベクターの構築が極めて簡便である。また、遺伝子置換の効率は、蛍光タンパク質の発現で推測することが可能で、これまでの手法と比較して高い確率でノックイン系統を作製できる。この新規ゲノム編集技術は、受精卵が入手できるあらゆるモデル生物に広く応用可能な大変汎用性のある発生工学技術である。さらに、この手法の開発過程で、ノックイン法を用いた効率的で簡便な新しいゲノム改変生物の作製法へと改良を進めており、その研究成果を学術論文としてまとめている段階であるので、予想以上の研究成果が得られていると考えている。発生生物学研究代表者は、本研究により効率的な遺伝子置換法(ノックイン法)の開発に成功した。今後の研究の方向性としては、我々が開発したノックイン法を基盤とした簡便で効率的な遺伝子破壊ゼブラフィッシュ系統の作製技術の開発を行う。これまでの逆遺伝学的な解析手法は、標的遺伝子内で生じたゲノム改変をシークエンス解析により調べる必要があり、より簡便な解析手法の開発が望まれていた。 | KAKENHI-PROJECT-26640064 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26640064 |
モデル脊椎動物における新規発生工学解析技術の開発 | 研究代表者は、本研究で開発したノックイン法を改良し、さらに、標的遺伝子のプロモーター活性を利用することにより、蛍光タンパク質の発現でゲノム挿入を可視化できる新しい解析システムを構築する。予備的知見として、ゲノム挿入に依存した蛍光タンパク質の発現による可視化に成功しているので、その研究成果を論文として発表することを目指す。研究計画に従い物品の購入などを行い、助成金の大半を使用したが、残額が1062円であった。上記で生じた次年度使用額は、物品購入費として使用する計画である。 | KAKENHI-PROJECT-26640064 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26640064 |
包摂的な教育制度・行政システム構築に関する実証的研究 | 不登校や高校中退など、社会の不安定化を背景に浮上してきている就学困難について、当事者や支援団体、自治体・学校への調査を通して、排除のプロセス、行政の体制、学びと発達の場の実践を分析し、包摂的な教育制度・行政システム構築のための課題と方策を検討した。自治体の中には教育行政と福祉行政等を包括する体制を作り、効果を示している例が見られた。高校中退者等を多く受け入れている高校の調査からは、人格的発達を基底に置いた教育実践の意義が見出された。包摂的な制度・行政システム構築には、包括的な行政体制を作り出すこと、公教育制度の境界線の内外に人格的発達を可能とする場を用意することが必要な要素となる。本研究は、不登校や高校中退など、社会・家庭の不安定化を背景として浮上してきている就学の困難について、当事者や支援団体・機関、自治体行政各部門、学校への聞き取りと資料収集調査を通して、その排除のプロセスと構造、子ども・若者の居場所と学びの場の実態、行政の体制と支援の現状を明らかにし、包摂的な教育制度・行政システム構築のための課題と方策を検討するものである。平成23年度は、自治体不登校・若者支援行政およびフリースクール等に支援団体の現状と課題に関する事例調査を実施した。平成24年度は、高校中退経験者インタビュー調査に集中して研究を進めた。過去に30ケースのインタビューを実施し、分析作業を進めて、学会報告も行った。しかし、ブルデューの社会空間論を枠組みとして分析作業を進める中で、ケースは5つに類型化されたが、各類型のケース数がかなり少なくなること、また紹介によってのケースを集めたため困難なケースがやや少ないと思われることから、ケース数を積みます必要が生じた。そこで困難なケースを中心にインタビューを35ケース実施し、前記と合わせた約60ケースについて、学会で中間まとめを発表した。高校中退経験者を貧困層と捉える研究があるが、本研究では相対的に低所得層が多いものの特定の階層に限定されないこと、その後の軌跡は階層によって規定されるだけでなくどのような人や資源に出会うかで大きく異なってくることが確認された。なお現時点でインタビューの記録整理はほとんど終了している。本研究は、不登校や高校中退など、社会・家庭の不安定化を背景として浮上してきている就学の困難について、当事者や支援団体・機関、自治体行政各部門、学校への聞き取りと資料収集調査を通して、その排除のプロセスと構造、子ども・若者の居場所と学びの場の実態、行政の体制と支援の現状を明らかにし、包摂的な教育制度・行政システム構築のための課題と方策を検討するものである。平成25年度は不登校・高校中退経験者を多く受け入れ、卒業させているA高校を対象として、同校の学校運営・教育実践について調査を行い、これを通じて高校中退等経験者がやり直していける学びの場とはどのようなものかを検討した。同校の実践の基本には生徒の人格的発達(生徒間、生徒教師間の人間的な関係形成を通じた自己の再構築)が置かれており、それが困難な状況のもとで生きてきた生徒たちを支えていることが明かとなった。困難な状況にある子どもたちが高校教育から次のステージへと移行するには、単に学力面の保障だけでなく、その基底に人格的発達を置いた教育実践が有効といえる。不登校・高校中退への対応には多面的な取り組みが必要であるが、高卒資格が大きな意味をもつ現代日本においては学び直しの機会を保障することが非常に重要である。しかし、現在においていまだそれは不十分であり、本調査からはこうした面からの後期中等教育の再構築を図る必要性が示唆される。今年度調査については、北海道教育学会で発表しており、近く論文として刊行する予定である。また前年度までの不登校行政調査についての論稿を図書(共著)に収載した。前年度高校中退経験者調査についても報告書をまとめているところである。不登校や高校中退など、社会の不安定化を背景に浮上してきている就学困難について、当事者や支援団体、自治体・学校への調査を通して、排除のプロセス、行政の体制、学びと発達の場の実践を分析し、包摂的な教育制度・行政システム構築のための課題と方策を検討した。自治体の中には教育行政と福祉行政等を包括する体制を作り、効果を示している例が見られた。高校中退者等を多く受け入れている高校の調査からは、人格的発達を基底に置いた教育実践の意義が見出された。包摂的な制度・行政システム構築には、包括的な行政体制を作り出すこと、公教育制度の境界線の内外に人格的発達を可能とする場を用意することが必要な要素となる。本研究は、不登校や高校中退など、社会・家庭の不安定化を背景として浮上してきている就学の困難について、当事者や支援団体・機関、自治体行政各部門への聞き取りと資料収集調査を通して、その排除のプロセスと構造、子ども・若者の居場所と学びの場の実態、行政の体制と支援の現状を明らかにし、包摂的な教育制度・行政システム構築のための課題と方策を検討するものである。平成23年度の研究実績は次の3つである。(1)調査研究:(1)札幌市不登校行政とフリースクール調査。札幌市教育委員会・子ども未来局、相談指導学級、教育センター教育相談室、訪問型フリースクール漂流教室への聞き取り・資料収集調査を実施した。札幌市は複数の支援の場を設置しているが、そこへ通える子どもの割合は低く、学校と教育行政が対応できていない不登校の子どもは相当割合にのぼる。同市では近年子ども未来局を設置したが、不登校の子どもへの支援策には進展がない。 | KAKENHI-PROJECT-23531036 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23531036 |
包摂的な教育制度・行政システム構築に関する実証的研究 | この事例調査から、不登校に対する包括的な調査や体系的な施策の形成には、教育行政と福祉等行政のはざまへの落ち込みを防ぐよう、行政責任主体を明確にする行政システムの構築が用件となることが確認された。(2)子ども・若者支援行政調査。佐賀市と三条市で構築された総合的な子ども・若者支援システムについて、自治体各部門と若者支援そのほかの民間団体等へ聞き取り・資料収集調査を実施した。これらでは、従来を越える支援が行われ始めているが、いずれも教育委員会内に子ども課を設置し、そこが媒介となって多様な行政部門・民間組織との連携を取りうるシステムが作られており、こうした行政総合化の有効性を示す事例と言える。(2)データ分析・理論研究と学会発表:先行的に実施した高校中退経験者調査のデータと理論枠組みの再検討を行った。ブルデューの社会空間論を分析の基底に置いて、各ケースの位置づけを再整理し、それを学会で発表した。本研究は、1)自治体不登校・若者支援行政と学校・フリースクール等民間支援団体の調査、2)高校中退経験者へのインタビューによるケース分析を中心的な課題としている。平成23年度は1)の自治体支援行政とフリースクールの調査に取り組み、平成24年度は2)を集中的に実施して調査自体は終了させることができた。当初の予定どおり、札幌市不登校行政・フリースクールの調査、道外自治体の総合的な子ども・若者支援行政システムの調査は実施し、高校中退経験者調査についての学会発表も行った。しかし、高校中退経験者へのインタビュー追加調査は、中間まとめを学会で発表した後に取り組む予定としていたが、8月の学会発表を通じて、データ分析と理論枠組みの検討をより深める必要があると認識した。そこで、再検討を行い、その結果を翌年3月に別の学会で発表することとしたため、追加調査は次年度に取り組むこととした。今後も、本研究課題を申請した当初の計画をもとに進めていく。この2年間の研究作業を踏まえ、平成25年度は、上記(11.現在までの達成度)の2)の分析とまとめの執筆、1)の自治体・フリースクールの追加調査と高校調査を実施する。また、1行政機構論・multi-agency論、2若者移行過程論。3海外の高校ドロップアウト、truancy論。4教育からの排除と包摂、social pedagogy論などの理論・先行研究の検討を行い、報告書の執筆を進めていく。今後も、本研究課題を申請した当初の計画をもとに進めていく。(1)調査研究(1)不登校調査:札幌市の補充調査、道内他都市の調査。(2)高校中退調査:経験者インタビューの推進。(3)道外自治体の子ども・若者総合支援行政システム調査。(2)理論研究(1)行政機構論・multi-agency論、(2)若者移行過程論。(3)海外の高校ドロップアウト、truancy論。(4)教育からの排除と包摂、social pedagogy論。(3)研究成果発表(1)学会発表、(2)報告書の作成と論文作成。なお、本研究以外にも共通する課題を研究している研究者と協力・交流を推進し、研究成果の発表を行いたい。前年度研究費は26,000円ほど残したが、インタビュー調査記録整理を一部次年度に回したことが理由。 | KAKENHI-PROJECT-23531036 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23531036 |
アルミ缶の物質フローの解析とリサイクルの検討 | 本研究は、日本における飲料用アルミ缶の原料製造-原料加工-缶製造-飲料充填-流通・使用-廃棄-リサイクルにわたるマテリアルフローを調査し、それをもとにして回収率、缶材率(回収した使用済みアルミ缶を再び缶に戻す割合)に対するエミッションの変化を調べ、アルミ缶のライフサイクルにわたるエミッションの低減対策の一助となることを目的として、行った。研究は以下の順で行った。(1)飲料用アルミ缶のライフサイクルにわたるインベントリーを行い、アルミ缶のマテリアルフローを作製した。インベントリーデータは、主として1997年度の日本における実データを収集、採用した。なお新地金は日本でほとんど生産されていないため、EAA(European Aluminum Association)のデータを採用した。(2)それをもとにしてアルミ缶のLCIソフトウェアを作製した。このソフトウェアの特徴として、使用済みアルミ缶の回収率、缶材率、缶材製造や缶製造中に発生するアルミ屑発生率、ドロス発生率、空き缶輸送距離、缶重量等のアルミ缶リサイクルに重要な役割を果たすと予想される可変のパラメーターが導入されている。(3)可変のパラメーターを変化させ、回収率と缶材率を変えてシミュレーションを行い、アルミ缶のライフサイクルにわたる環境負荷とリサイクルについて解析を以下のように行った。通産省により、アルミ缶の回収率と缶材率を2002年度までにそれぞれ80%とする数値目標が示された。現在値(1997年度)をもとに過去(1995年度)、目標値(2002年度)、および限界点である回収率、缶材率とも100%の状態についてそれぞれのエミッションを調べた。その結果、1997年度現在と比較して、回収率および缶材率が目標値に達したとすると、エネルギー消費、CO2、NOx.SOx、固形廃棄物は10%程度減少するが、水質汚濁物質(BOD、COD)はほとんど変わらないという結果が得られた。本研究は、日本における飲料用アルミ缶の原料製造-原料加工-缶製造-飲料充填-流通・使用-廃棄-リサイクルにわたるマテリアルフローを調査し、それをもとにして回収率、缶材率(回収した使用済みアルミ缶を再び缶に戻す割合)に対するエミッションの変化を調べ、アルミ缶のライフサイクルにわたるエミッションの低減対策の一助となることを目的として、行った。研究は以下の順で行った。(1)飲料用アルミ缶のライフサイクルにわたるインベントリーを行い、アルミ缶のマテリアルフローを作製した。インベントリーデータは、主として1997年度の日本における実データを収集、採用した。なお新地金は日本でほとんど生産されていないため、EAA(European Aluminum Association)のデータを採用した。(2)それをもとにしてアルミ缶のLCIソフトウェアを作製した。このソフトウェアの特徴として、使用済みアルミ缶の回収率、缶材率、缶材製造や缶製造中に発生するアルミ屑発生率、ドロス発生率、空き缶輸送距離、缶重量等のアルミ缶リサイクルに重要な役割を果たすと予想される可変のパラメーターが導入されている。(3)可変のパラメーターを変化させ、回収率と缶材率を変えてシミュレーションを行い、アルミ缶のライフサイクルにわたる環境負荷とリサイクルについて解析を以下のように行った。通産省により、アルミ缶の回収率と缶材率を2002年度までにそれぞれ80%とする数値目標が示された。現在値(1997年度)をもとに過去(1995年度)、目標値(2002年度)、および限界点である回収率、缶材率とも100%の状態についてそれぞれのエミッションを調べた。その結果、1997年度現在と比較して、回収率および缶材率が目標値に達したとすると、エネルギー消費、CO2、NOx.SOx、固形廃棄物は10%程度減少するが、水質汚濁物質(BOD、COD)はほとんど変わらないという結果が得られた。 | KAKENHI-PROJECT-10141208 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10141208 |
第三大臼歯発生の遺伝子解析-先天奇形患者のHomeobox遺伝子解析から- | ボランティアまたは患者の血液からDNAを調製し、歯胚の歯種および位置の決定に関わるHomeobox遺伝子およびその発現を誘導する成長因子をコードする遺伝子群について調べることが目標の1つである。これに対する準備として、下顎骨の大きさをコードする遺伝子をまず調べることとした。血液試料を採取予定であるので、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」に沿って、手続き、計画を本研究機関の本学歯学研究科・歯学部附属病院・薬学研究科合同のヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理委員会の審査に申請し、承認を得た。すでに約120名の患者より試料を採取し、ゲノムDNAを抽出して保存している。現在、この保存してあるゲノムDNAを、マイクロサテライトマーカーを用いて解析中である。さらに今年度は改めて、上下顎骨の大きさが第三大臼歯の有無に大きく関与することを解明するために、不正咬合を自然発症するモデルマウスを用いて、顎骨の大きさと大臼歯の存在との関与を調査した。その結果、以下の見解を得た。1、このモデルマウスでは下顎骨の大きさが若干小さいが、大臼歯および切歯の歯数に異常は認められなかった。2、下顎骨の大きさが小さいのは、下顎頭軟骨のプロテオグリカン中のグリコサミノグリカンが低硫酸化していることがその原因と考えられた。3、このモデルマウスの原因遺伝子bmは、下顎骨の大きさには関与するが大臼歯の有無には関与しないことが示された。唇顎口蓋裂患者およびHemifacial Microsomia (HFM)の患者の初診時X線写真を用いて、第三大臼歯の有無と上下顎骨の大きさとを計測し、両者の間に相関が見られるかどうか、また先天異常によって第三大臼歯の有無に特定のパターンがあるかを調査することを、今年度の第一の目標とした。上記の研究計画に基づき、対象は本学矯正科に来院したHFM患者のうち、初診時年齢が15歳未満の患者69名(HFM群)とした。資料として原則として初診時に撮影されたパノラマX線写真を用い、初診時年齢が10歳未満で第三大臼歯歯胚の形成が認められないものについては、その後の経年資料として撮影されたパノラマX線写真を用いた。対照として、本学矯正科に来院した先天異常を有しない患者391名(対照群)を用いた。各群内において、第三大臼歯歯胚が4本とも全て存在する患者数の削合(第三大臼歯無欠損者率)、および部位別の第三大臼歯歯胚の欠損率を求め、比較検討した。その結果、以下の見解を得た。第三大臼歯無欠損者率はH.F.M.群の方が対照群と比べて有意に低かった。一方、H.F.M.群内において、通常骨の形成不全が認められる患側と健側の間における第三大臼歯歯胚欠損率には、有意差は認められなかった。以上より、第三大臼歯歯胚の形成の有無は、顎骨の大きさよりもH.F.M.を発現する因子との関連が強い可能性が示唆された。また、ボランティアまたは患者からの血液からDNAを調製し、歯胚の歯種および位置の決定に関わるHomeobox遺伝子およびその発現を誘導する成長因子をコードする遺伝子群について調べることが来年度以降の目標である。これに対する準備として、血液資料を採取予定であるので、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」に沿って、手続き、計画を本研究機関の倫理委員会の審査に申請し、承認を既に得た。今年度は改めて、先天異常をもたない矯正患者の初診時X線写真を用いて、第三大臼歯の有無と上下顎骨の大きさとを計測し、両者の間に相関が見られるかどうかを調査した。上記の研究計画に基づき、対象は本学矯正科に来院した矯正患者のうち、初診時年齢が15歳未満の患者391名とした。資料として原則として初診時に撮影されたパノラマX線写真を用い、初診時年齢が10歳未満で第三大臼歯歯胚の形成が認められないものについては、その後の経年資料として撮影されたパノラマX線写真を用いた。対象を、上顎第三大臼歯存在群と欠損群、また下顎第三大臼歯存在群と欠損群に分け、年齢、性別、上顎骨の大きさ、下顎骨の大きさとの関係を、ロジスティック回帰分析を用いて比較検討した。その結果、以下の見解を得た。1、上顎骨が小さいものでは、上顎第三大臼歯が先天性に欠損している傾向が認められ、この関係は有意なものであった。2、下顎骨の大きさと下顎第三大臼歯の先天性欠損については、有意な関係は認められなかった。また、ボランティアまたは患者の血液からDNAを調製し、歯胚の歯種および位置の決定に関わるHomeobox遺伝子およびその発現を誘導する成長因子をコードする遺伝子群について調べることが目標の1つである。これに対する準備として、下顎骨の大きさをコードする遺伝子をまず調べることとした。血液試料を採取予定であるので、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」に沿って、手続き、計画を本研究機関の本学歯学研究科・歯学部附属病院・薬学研究科合同のヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理委員会の審査に申請し、承認を得た。現在、約50名の患者より試料を採取し、DNAを抽出して保存している。ボランティアまたは患者の血液からDNAを調製し、歯胚の歯種および位置の決定に関わるHomeobox遺伝子およびその発現を誘導する成長因子をコードする遺伝子群について調べることが目標の1つである。 | KAKENHI-PROJECT-14771171 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14771171 |
第三大臼歯発生の遺伝子解析-先天奇形患者のHomeobox遺伝子解析から- | これに対する準備として、下顎骨の大きさをコードする遺伝子をまず調べることとした。血液試料を採取予定であるので、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」に沿って、手続き、計画を本研究機関の本学歯学研究科・歯学部附属病院・薬学研究科合同のヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理委員会の審査に申請し、承認を得た。すでに約120名の患者より試料を採取し、ゲノムDNAを抽出して保存している。現在、この保存してあるゲノムDNAを、マイクロサテライトマーカーを用いて解析中である。さらに今年度は改めて、上下顎骨の大きさが第三大臼歯の有無に大きく関与することを解明するために、不正咬合を自然発症するモデルマウスを用いて、顎骨の大きさと大臼歯の存在との関与を調査した。その結果、以下の見解を得た。1、このモデルマウスでは下顎骨の大きさが若干小さいが、大臼歯および切歯の歯数に異常は認められなかった。2、下顎骨の大きさが小さいのは、下顎頭軟骨のプロテオグリカン中のグリコサミノグリカンが低硫酸化していることがその原因と考えられた。3、このモデルマウスの原因遺伝子bmは、下顎骨の大きさには関与するが大臼歯の有無には関与しないことが示された。 | KAKENHI-PROJECT-14771171 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14771171 |
Papainを用いた喘息・COPDオーバーラップ(ACO)マウスモデルの構築 | 本研究では、喘息およびCOPD両者の特徴をもつ疾患群であるAsthma-COPD Overlap (ACO)について、未だ確立されていないACOマウスモデルの作成を目的としている。システインプロテアーゼであるPapainを用いたマウスモデルについては、濃度・投与回数についての予備的検討を行った後、papainの継続的な気道内投与により、ACO類似病態のマウスモデルを作ることに成功した。このモデルでは、1肺組織所見における気腫性変化および好酸球性の炎症細胞浸潤を伴う胞隔炎、2呼吸機能検査における肺コンプライアンスの上昇、3気管支肺胞洗浄(BAL)液中の白血球細胞分画における好酸球分画の上昇、4気道過敏性の亢進、5体重増加の減弱、といった所見が確認された。これらはACOとしての臨床的特徴が満たされるものであり、非常に有用な実験系であることが期待される。今後は、肺組織での遺伝子発現変化の解析(Real-time PCR、RNA-seq)、肺胞洗浄液中の炎症性サイトカインの定量(ELISA)等を行っていく予定である。papainの継続的投与で構築された本研究でのマウスACOモデルでは、上述の通り、1肺組織所見における気腫性変化および好酸球性の炎症細胞浸潤を伴う胞隔炎、2呼吸機能検査における肺コンプライアンスの上昇、3気管支肺胞洗浄(BAL)液中の白血球細胞分画における好酸球分画の上昇、4気道過敏性の亢進、5体重増加の減弱、といった所見が確認された。これらはACOとしての臨床的特徴が満たされるものであり、非常に有用な実験系であることが期待される。今後は、肺組織での遺伝子発現変化の解析(Real-time PCR、RNA-seq)、肺胞洗浄液中の炎症性サイトカインの定量(ELISA)、血中イムノグロブリン量解析(ELISAによるIgEやIgG subsets測定)、肺胞洗浄(BAL)液の細胞および従属リンパ節細胞のプロファイル評価(FACS、免疫染色)などを行うことを検討している。また、papain投与のモデルを基軸とし、さらに追加で気道に刺激を与えることで、実臨床におけるACO患者に上気道炎が生じた(喘息増悪を想定した)モデルについても、あわせ実験系の構築を検討していく予定である。本研究では、喘息およびCOPD両者の特徴をもつ疾患群であるAsthma-COPD Overlap (ACO)について、未だ確立されていないACOマウスモデルの作成を目的としている。システインプロテアーゼであるPapainを用いたマウスモデルについては、濃度・投与回数についての予備的検討を行った後、papainの継続的な気道内投与により、ACO類似病態のマウスモデルを作ることに成功した。このモデルでは、1肺組織所見における気腫性変化および好酸球性の炎症細胞浸潤を伴う胞隔炎、2呼吸機能検査における肺コンプライアンスの上昇、3気管支肺胞洗浄(BAL)液中の白血球細胞分画における好酸球分画の上昇、4気道過敏性の亢進、5体重増加の減弱、といった所見が確認された。これらはACOとしての臨床的特徴が満たされるものであり、非常に有用な実験系であることが期待される。今後は、肺組織での遺伝子発現変化の解析(Real-time PCR、RNA-seq)、肺胞洗浄液中の炎症性サイトカインの定量(ELISA)等を行っていく予定である。papainの継続的投与で構築された本研究でのマウスACOモデルでは、上述の通り、1肺組織所見における気腫性変化および好酸球性の炎症細胞浸潤を伴う胞隔炎、2呼吸機能検査における肺コンプライアンスの上昇、3気管支肺胞洗浄(BAL)液中の白血球細胞分画における好酸球分画の上昇、4気道過敏性の亢進、5体重増加の減弱、といった所見が確認された。これらはACOとしての臨床的特徴が満たされるものであり、非常に有用な実験系であることが期待される。今後は、肺組織での遺伝子発現変化の解析(Real-time PCR、RNA-seq)、肺胞洗浄液中の炎症性サイトカインの定量(ELISA)、血中イムノグロブリン量解析(ELISAによるIgEやIgG subsets測定)、肺胞洗浄(BAL)液の細胞および従属リンパ節細胞のプロファイル評価(FACS、免疫染色)などを行うことを検討している。また、papain投与のモデルを基軸とし、さらに追加で気道に刺激を与えることで、実臨床におけるACO患者に上気道炎が生じた(喘息増悪を想定した)モデルについても、あわせ実験系の構築を検討していく予定である。実験系としては計画通りに推移しているが、マウス実験の追試を(人員の関係で)翌年度以降に予定したため、次年度使用額が生じた。翌年度分として今後使用の予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18K15946 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K15946 |
東南アジア火山地域で発生した大規模山体崩壊発生後の土砂流出の経年変化に関する研究 | インドネシア共和国南スラウエシ州のバワカレエン山のカルデラ内の山体崩壊堆積土砂を対象に、現地調査と衛星画像解析により以下の研究を行った。(1)山体崩壊により発生した堆積土砂の侵食状況の把握。現地での地形計測と、衛星画像解析による地形データ取得により堆積土砂のガリー形状の地形データを取得し、毎年のデータを比較することによって堆積土砂の侵食量の経年変化を把握した。その結果山体崩壊土砂の堆積直後の1年目が最も侵食土砂量が多く、2,3年目と経過するに連れ、急激に侵食土砂量は減少していった。これは多くの火山において、火砕流などの火山活動により大量の土砂が生産された後の侵食土砂量の経年変化と同様の傾向である。この堆積土砂の急激な侵食は未だ継続しており、侵食の停止する条件の解明が必要である。また1年目には堆積土砂の侵食に伴ってガリーの幅、深さ共に急激な発達を見せたが、その後深さ方向の侵食に比べて幅方向の侵食が大きくなっていった。これは初期にはガリーそのものの形成により顕著な侵食が発生するが、その後はガリーの側壁の渓岸侵食が卓越するようになっていることを示す。侵食停止条件の検討のためには、下流への土砂流出とガリーの発達の関係を検討する必要がある。(2)侵食されて下流に流下した土砂の流出範囲の検討。バワカレエン山カルデラから流下するジェネベラン川において、流下土砂をサンプリングし、それらに含まれる放射性同位体を解析することにより、山体崩壊堆積土砂がどれだけ下流へ流下したかを確認した。ただし流下土砂のサンプリングは2年目であること、そして現地協力者に委託して行ったが、なかなか良好にサンプリングが行えず、結果として採取できたサンプルとその時期が少なかったため、明確な結論は導けなかった。より多くのサンプリングを、より多くの箇所で行う必要がある。インドネシア共和国南スラウエシ州のバワカレエン山のカルデラ内の山体崩壊堆積土砂を対象に、現地調査と衛星画像解析により以下の研究を行った。(1)山体崩壊により発生した堆積土砂の侵食状況の把握。現地での地形計測と、衛星画像解析による地形データ取得により堆積土砂のガリー形状の地形データを取得し、毎年のデータを比較することによって堆積土砂の侵食量の経年変化を把握した。その結果山体崩壊土砂の堆積直後の1年目が最も侵食土砂量が多く、2,3年目と経過するに連れ、急激に侵食土砂量は減少していった。これは多くの火山において、火砕流などの火山活動により大量の土砂が生産された後の侵食土砂量の経年変化と同様の傾向である。この堆積土砂の急激な侵食は未だ継続しており、侵食の停止する条件の解明が必要である。また1年目には堆積土砂の侵食に伴ってガリーの幅、深さ共に急激な発達を見せたが、その後深さ方向の侵食に比べて幅方向の侵食が大きくなっていった。これは初期にはガリーそのものの形成により顕著な侵食が発生するが、その後はガリーの側壁の渓岸侵食が卓越するようになっていることを示す。侵食停止条件の検討のためには、下流への土砂流出とガリーの発達の関係を検討する必要がある。(2)侵食されて下流に流下した土砂の流出範囲の検討。バワカレエン山カルデラから流下するジェネベラン川において、流下土砂をサンプリングし、それらに含まれる放射性同位体を解析することにより、山体崩壊堆積土砂がどれだけ下流へ流下したかを確認した。ただし流下土砂のサンプリングは2年目であること、そして現地協力者に委託して行ったが、なかなか良好にサンプリングが行えず、結果として採取できたサンプルとその時期が少なかったため、明確な結論は導けなかった。より多くのサンプリングを、より多くの箇所で行う必要がある。本研究は2004年3月26日にインドネシア共和国南スラウエシ州にあるベワカレエン山にて発生した総量2.5億m^3の大規模な山体崩壊により、ジェネベラン川源流部に堆積した土砂の侵食流出状況を把握し、かつ今後の経年的な変化を追跡することにより、火山地域に特有な山体崩壊により発生した堆積土砂の、下流への流出の経年変化の特性を把握すると共に、降雨条件などを考慮した流出土砂量の予測手法を確立することを目的とする。また下流への微細土砂の流出についてもその状況を把握し、微細土砂流出予測手法を検討するための基礎資料を取得するものである。そのために平成17年度は以下の項目について研究を実施した。(1)山体崩壊により発生した堆積土砂の侵食状況の把握現地調査により侵食状況を調査し、山体崩壊発生直後、そして平成16年の調査時のそれと比較し、侵食の進行状況を把握した。また山体崩壊発生前と、発生後のいくつかの時期について衛星画像解析を行い、堆積土砂の侵食状況を定量的に把握した。(2)下流への土砂流出状況の把握下流部で採取した流出土砂の放射性同位元素の解析により、土砂流出源の特定を試みた。(3)山体崩壊発生機構の検討現地調査により山体崩壊の発生源の範囲や崩壊量について正確に把握すると共に、崩壊機構について検討した。以上のような活動を実施したが、研究初年度ということで特にまとまった成果の公表は未だない。 | KAKENHI-PROJECT-17405003 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17405003 |
東南アジア火山地域で発生した大規模山体崩壊発生後の土砂流出の経年変化に関する研究 | 本研究は2004年3月26日にインドネシア共和国南スラウエシ州にあるバワカレエン山にて発生した総量2.5億m^3の大規模な山体崩壊により、ジェネベラン川源流部に堆積した土砂の侵食流出状況を把握し、かつ今後の経年的な変化を追跡することにより、火山地域に特有な山体崩壊により発生した堆積土砂の、下流への流出の経年変化の特性を把握すると共に、降雨条件などを考慮した流出土砂量の予測手法を確立することを目的とする。また下流への微細土砂の流出についてもその状況を把握し、微細土砂流出予測手法を検討するための基礎資料を取得するものである。そのために平成18年度は前年度に引き続き以下の項目について研究を実施した。(1)山体崩壊により発生した堆積土砂の侵食状況の把握現地調査により侵食状況を調査し、前年度調査時のそれと比較し、侵食の進行状況を把握した。また山体崩壊発生前と、発生後のいくつかの時期について衛星画像解析を行い、堆積土砂の侵食状況を定量的に把握した。(2)山体崩壊発生機構の検討現地調査により山体崩壊の発生源の範囲や崩壊量について正確に把握すると共に、崩壊機構について検討した。インドネシア共和国南スラウエシ州のバワカレエン山のカルデラ内の山体崩壊堆積土砂を対象に、現地調査と衛星画像解析により以下の研究を行った。(1)山体崩壊により発生した堆積土砂の侵食状況の把握。現地での地形計測と、衛星画像解析による地形データ取得により堆積土砂のガリー形状の地形データを取得し、毎年のデータを比較することによって堆積土砂の侵食量の経年変化を把握した。その結果山体崩壊土砂の堆積直後の1年目が最も侵食土砂量が多く、2、3年目と経過するに連れ、急激に侵食土砂量は減少していった。これは多くの火山において、火砕流などの火山活動により大量の土砂が生産された後の侵食土砂量の経年変化と同様の傾向である。この堆積土砂の急激な侵食は未だ継続しており、侵食の停止する条件の解明が必要である。(2)侵食されて下流に流下した土砂の流出範囲の検討。バワカレエン山カルデラから流下するジェネベラン川において、流下土砂をサンプリングし、それらに含まれる放射性同位体を解析することにより、山体崩壊堆積土砂がどれだけ下流へ流下したかを確認した。ただし流下土砂のサンプリングは2年目であること、そして現地協力者に委託して行ったが、なかなか良好にサンプリングが行えず、結果として採取できたサンプルとその時期が少なかったため、明確な結論は導けなかった。より多くのサンプリングを、より多くの箇所で行う必要がある。 | KAKENHI-PROJECT-17405003 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17405003 |
脳虚血後の、メラトニンの神経保護効果:IL-4によるミクログリアの活性化の経路 | 脳虚血・再灌流後に投与されたメラトニンが、神経保護作用を及ぼすのはIL-4を介してミクログリアの極性を神経保護的なM2作用にシフトするという仮説を検証すべく研究を行った。過去2年間でin vitroでプライマリーミクログリアの培養系を確立。培養ミクログリア細胞は、LPS+ IFN-γ、OGD処理を行い24時間でM1、M2 markerの発現量を免疫組織染色で定量。サイトカイン/ケモカインのELISAArray kitを使用し、サイトカインやケモカインの発現量を検討。NO産生の評価も行い、虚血状態でのM1関連マーカーの上昇を確認。M1が誘導するアポトーシスに対するメラトニン投与の効果を確認した。OGD処理後の神経培養にメラトニン処置を行うことで、ミクログリアの表現型はM2誘導された。メラトニンがミクログリアをM2に誘導することにおいて、IL-4の関与を調べた。メラトニン受容体ノックアウトマウス(MT-1、MT-2)からのミクログリアの初代培養系において、同様のことが再現できるかを確認し、結果をえた。マウス糸上げ法によるICA閉塞による虚血・再灌流モデルにおいて、安定した梗塞領域を確認。これに再灌流後にメラトニンを投与すると、3d、14dにおいて30%の虚血減少効果が得られ、急性期脳梗塞・脳虚血におけるメラトニンの虚血耐性効果が確かめられた。Rotarod testやcorner testでの神経学的、運動感覚評価の行動解析では、メラトニン投与により障害の軽減が得られた。またIL-4欠損マウスで、上記メラトニンの虚血耐性・保護効果は消失し、メラトニンの神経保護効果は、IL-4を関することが示唆された。本研究内容は、本年度のBrain 2019での発表を予定しており、同時に論文化を進行中である。脳虚血・再灌流後に投与されたメラトニンが、神経保護作用を及ぼすのはIL-4を介してミクログリアの極性を神経保護的なM2作用にシフトするという仮説を検証すべく実験を行った。まずはin vitroでプライマリーミクログリアの培養系を確立。培養ミクログリア細胞は、LPS+ IFN-γ、OGD処理を行い24時間でM1、M2 markerの発現量を免疫組織染色で定量した。またサイトカイン/ケモカインのELISArray kitを使用し、サイトカインやケモカインの発現量を検討。NO産生の評価も行い、虚血状態でのM1関連マーカーの上昇を確認した。これは既に報告されている内容の確認でもある。つづいて、M1が誘導するアポトーシスに対するメラトニン投与の効果を確認した。OGD処理後の神経培養にメラトニン処置を行うことで、ミクログリアの表現型はM2誘導された。そしてメラトニンがミクログリアをM2に誘導することにおいて、IL-4の関与を調べた。メラトニン受容体ノックアウトマウス(MT-1、MT-2)からのミクログリアの初代培養系において、同様のことが再現できるかを確認し、結果をえた。上記の内容は、脳神経外科学会の各種学会に参加し、発表する機会をえた。また学会参加することで多方面から情報を収取でき、有用であった。概ね当初の予定どおり、本年度はin vitroの実験系を確立し、ミクログリアの初代培養系での実験を行った。虚血系を確立するのに、やや手技・時間を要したが、その後は安定した培養細胞を確保できた。ELISArray kitも、初回は安定しなかったが手技の修正に伴い結果をえることができた。メラトニン受容体のノックアウトマウスも、同様の手技で培養を行い実験を行った。予定どおり実験が進んでいたと考える。2016年度末には、ベルリンで行われた国際脳循環代謝学会に参加し発表。共同研究者のPittsburgh大学のJun Chen教授らとdiscussionを行い、今後の方針、論文化にむけて討議を行った。糸上げによる中大脳動脈閉塞モデル(MCAO)において、虚血後に松果体ホルモンのメラトニンを投与することで、長期予後の改善に寄与するかを確認とし、メカニズムの解析を目的とした。60分の局所脳虚血、再灌流モデルにおいて、再灌流から1時間後に7日目まで毎日メラトニン(6mg/kg)を投与した。TTC染色では、1日目および3日目の脳梗塞体積においてメラトニン投与群が生食投与群に比べて有意に梗塞縮小を示した。また14日目までの行動解析において、corner testでメラトニン投与群に有意に症状改善を認めた。両群の脳血流は差はなく、血流は保ったまま虚血耐性を示したと考えられた。虚血再灌流後48時間後に行たChemiArrayでは、生食投与に加え、メラトニン投与群はMCP1、TIMP1、sTNFr1、IL-12、KC、TNF-α、IL-6などのサイトカインの減少を認めた。メラトニン投与は抗炎症作用によるものが示唆された。ミクログリアのin vitroでの評価は、OGD投与しM1に分化させたミクログリアは、メラトニン投与により細胞の生存率の上昇、LDH放出による細胞死の減少を認めた。IL-4 knockoutマウスでの実験では、メラトニン投与による脳梗塞後の虚血耐性効果がなくなり、メラトニンの働きはIL-4を介して仲介される可能性が考えられた。当初の予定どおり、メラトニン投与による脳虚血耐性を示すことができでおり、必要な検討を追加している。 | KAKENHI-PROJECT-16K10734 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K10734 |
脳虚血後の、メラトニンの神経保護効果:IL-4によるミクログリアの活性化の経路 | メラトニン投与後に、ミクログリアの働きがM1、M2のどちらにシフトさせているかを、CD16およびCD206での免疫染色にて確認していく。これにより、データが完成する予定である。脳虚血・再灌流後に投与されたメラトニンが、神経保護作用を及ぼすのはIL-4を介してミクログリアの極性を神経保護的なM2作用にシフトするという仮説を検証すべく研究を行った。過去2年間でin vitroでプライマリーミクログリアの培養系を確立。培養ミクログリア細胞は、LPS+ IFN-γ、OGD処理を行い24時間でM1、M2 markerの発現量を免疫組織染色で定量。サイトカイン/ケモカインのELISAArray kitを使用し、サイトカインやケモカインの発現量を検討。NO産生の評価も行い、虚血状態でのM1関連マーカーの上昇を確認。M1が誘導するアポトーシスに対するメラトニン投与の効果を確認した。OGD処理後の神経培養にメラトニン処置を行うことで、ミクログリアの表現型はM2誘導された。メラトニンがミクログリアをM2に誘導することにおいて、IL-4の関与を調べた。メラトニン受容体ノックアウトマウス(MT-1、MT-2)からのミクログリアの初代培養系において、同様のことが再現できるかを確認し、結果をえた。マウス糸上げ法によるICA閉塞による虚血・再灌流モデルにおいて、安定した梗塞領域を確認。これに再灌流後にメラトニンを投与すると、3d、14dにおいて30%の虚血減少効果が得られ、急性期脳梗塞・脳虚血におけるメラトニンの虚血耐性効果が確かめられた。Rotarod testやcorner testでの神経学的、運動感覚評価の行動解析では、メラトニン投与により障害の軽減が得られた。またIL-4欠損マウスで、上記メラトニンの虚血耐性・保護効果は消失し、メラトニンの神経保護効果は、IL-4を関することが示唆された。本研究内容は、本年度のBrain 2019での発表を予定しており、同時に論文化を進行中である。本年度はin vivoでのメラトニン投与の効果を確かめる実験を行っていく。マウス脳虚血モデルはすでに安定して作成することができるので、この虚血・再灌流モデルにおいて、メラトニンを投与。梗塞領域の比較・検討、Rotarod testやcorner testなどでの神経学的、運動感覚評価の行動解析を行う。また虚血後の脳組織を採取。ミクログリアのM2誘導がメラトニン投与においてどうであるかを免疫組織染色、RT-PCRで検討を予定している。また知見がまとめられたら、学会での発表を検討している。論文作成中であり、本年度中の投稿を目指していく。論文校閲費用、追実験が必要な場合は都度検討していく。論文校閲、追加実験のため、次年度経費を捻出いたしました。 | KAKENHI-PROJECT-16K10734 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K10734 |
空気援用潤滑による工作機会主軸の高速化 | 最近の工作機会は、システム化と極限技術の二つの方向に発展しつつある。すなわち超精密化や超高速化は後者に属するもので、工作機械の固有技術を発展せしめる重要な技術になっている。中でも高速化は難しい技術とされていて、軸受及びその周辺の設計技術の進展が必須の条件となっている。本研究では、転がり軸受による工作機械主軸の高速化のために潤滑と冷却が同時に行える新しい潤滑方法である空気援用潤滑方法の適用を試み、その基礎的な研究を行った。本研究で得られた新たな知見を要約すると次のようになる。1.噴霧状の潤滑油を高圧の空気で軸受内に向けて吹き付け、空気の断熱変化を利用した潤滑・冷却方法を明らかにしている。具体的には、最適給油時間間隔、最適供給圧力について回転速度と軸受温度との関係を求め、ノズルの形状、本数、吹き出し角度について明らかにした。2.最近有効性が確認され、実用化が進んでいるオイルエア潤滑との比較を行い、本研究で提案した潤滑方法の方が軸受温度の上昇が小さいことを明らかにした。3.軸受周辺の空気の流れと主軸頭からの排気方法について検討したところ、積極的な排気を行うことによって、軸受の温度を下げられることを明らかにした。4.軸受鋼による軸受とセラミックスによる軸受との比較を行ったところ、本潤滑方法でも、かなりの割合で軸受温度を下げることが可能なことが明らかとなった。最近の工作機会は、システム化と極限技術の二つの方向に発展しつつある。すなわち超精密化や超高速化は後者に属するもので、工作機械の固有技術を発展せしめる重要な技術になっている。中でも高速化は難しい技術とされていて、軸受及びその周辺の設計技術の進展が必須の条件となっている。本研究では、転がり軸受による工作機械主軸の高速化のために潤滑と冷却が同時に行える新しい潤滑方法である空気援用潤滑方法の適用を試み、その基礎的な研究を行った。本研究で得られた新たな知見を要約すると次のようになる。1.噴霧状の潤滑油を高圧の空気で軸受内に向けて吹き付け、空気の断熱変化を利用した潤滑・冷却方法を明らかにしている。具体的には、最適給油時間間隔、最適供給圧力について回転速度と軸受温度との関係を求め、ノズルの形状、本数、吹き出し角度について明らかにした。2.最近有効性が確認され、実用化が進んでいるオイルエア潤滑との比較を行い、本研究で提案した潤滑方法の方が軸受温度の上昇が小さいことを明らかにした。3.軸受周辺の空気の流れと主軸頭からの排気方法について検討したところ、積極的な排気を行うことによって、軸受の温度を下げられることを明らかにした。4.軸受鋼による軸受とセラミックスによる軸受との比較を行ったところ、本潤滑方法でも、かなりの割合で軸受温度を下げることが可能なことが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-01550087 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01550087 |
悪性骨腫瘍に対する液体窒素処理と樹状細胞療法の併用療法 | 37例の悪性骨軟部腫瘍患者に対し、樹状細胞療法を行なった。患者から得た単核球をG-CSFとIL-4により成熟させ、OK-432、液体窒素処理した腫瘍組織から得られたtumor lysateによって樹状細胞を刺激した。得られた樹状細胞を患者に皮下注射するという治療を6回くり返した。結果として、樹状細胞療法による重篤な副作用は見られなかった。また、OK-432、tumor lysateにより樹状細胞の成熟度は上昇した。効果として、6例でSD、1例でPRであり、3年生存率は42.3%、3年無増悪生存率は2.9%であった。主目的は悪性骨腫瘍に対し液体窒素処理した腫瘍組織が生体内に戻ると体内で腫瘍特異的な凍結免疫の活性を誘導し、結果として腫瘍の再発や転移の抑制を導くか追求することである。また、免疫賦活剤や免疫系細胞の併用を行い凍結免疫が最も活性化する方法を開発する。これらの基礎実験をもとに臨床で悪性骨腫瘍に対する液体窒素処理骨移植術による凍結免疫の活性を確認する。さらに液体窒素処理骨移植術に免疫賦活剤や免疫系細胞(樹状細胞)の併用を行うことで凍結免疫と新たな悪性骨腫瘍に対する凍結免疫療法の治療体系を確立する。これまでの計画で行ってきた基礎実験であるTNF-αを併用した樹状細胞療法の安全性試験を臨床試験で行う。前段階の樹状細胞培養において培養6日目に液体窒素処理を行った腫瘍抗原とTNF-αを加えた群と強力な成熟を誘導するOK-432を加えた群の細胞形態の変化と樹状細胞の成熟度の上昇の確認を受けて、この1年で腫瘍抗原とTNF-αを加えた樹状細胞療法を用いて第1相臨床試験を遂行している。これまでに6名の患者に対し投与を行っており、現在経過観察中である。今後はTNF-αを併用した樹状細胞療法の安全性試験を臨床試験を継続して行い、安全性が確認する。さらに、臨床で行ってきた悪性骨腫瘍に対する液体窒素処理骨移植の手術手技にTNF-αを併用した樹状細胞療法を併用することで凍結免疫の増強を得ることができないかを確認する。主目的は悪性骨腫瘍に対し液体窒素処理した腫瘍組織が生体内に戻ると体内で腫瘍特異的な凍結免疫の活性を誘導し、結果として腫瘍の再発や転移の抑制を導くか追求することである。また、免疫賦活剤や免疫系細胞の併用を行い凍結免疫が最も活性化する方法を開発する。これらの基礎実験をもとに臨床で悪性骨腫瘍に対する液体窒素処理骨移植術による凍結免疫の活性を確認する。さらに液体窒素処理骨移植術に免疫賦活剤や免疫系細胞(樹状細胞)の併用を行うことで凍結免疫と新たな悪性骨腫瘍に対する凍結免疫療法の治療体系を確立する。基礎実験であるTNF-αを併用した樹状細胞療法の安全性試験を臨床試験で行う。前段階の樹状細胞培養において培養6日目に液体窒素処理を行った腫瘍抗原とTNF-αを加えた群と強力な成熟を誘導するOK-432を加えた群の細胞形態の変化と樹状細胞の成熟度の上昇の確認を受けて、この1年で腫瘍抗原とTNF-αを加えた樹状細胞療法を用いて第1相臨床試験を遂行している。これまでに6名の患者に対し投与を行っており、現在経過観察中である。主目的は悪性骨腫瘍に対し液体窒素処理した腫瘍組織が生体内に戻ると体内で腫瘍特異的な凍結免疫の活性を誘導し、結果として腫瘍の再発や転移の抑制を導くか追求することである。また、免疫賦活剤や免疫系細胞の併用を行い凍結免疫が最も活性化する方法を開発する。これらの基礎実験をもとに臨床で悪性骨腫瘍に対する液体窒素処理骨移植術による凍結免疫の活性を確認する。さらに液体窒素処理骨移植術に免疫賦活剤や免疫系細胞(樹状細胞)の併用を行うことで凍結免疫と新たな悪性骨腫瘍に対する凍結免疫療法の治療体系を確立する。樹状細胞療法の安全性試験、有効性試験を臨床試験で行った。患者から得た単核球をIL-4、G-CSFで刺激し、さらに腫瘍ライセイート、TNF-α、OK-432で刺激したところ、単核球は良好な成熟と活性化を示した。樹状細胞は患者の腋窩またはソケイリンパ節に注射した。これらの樹状細胞を用いた免疫療法は37例の転移性または再発性肉腫患者に行われた。免疫療法による重篤な合併症はみられなかった。RECISTの評価法では、6例がSD、1例がPRであり、多くの症例はPDであった。治療後3年での全生存率は42.3%、無進行生存率は2.9%であった。以上から、樹状細胞を用いた免疫療法は効果は小さいものの、高い安全性を有するものと考えられた。37例の悪性骨軟部腫瘍患者に対し、樹状細胞療法を行なった。患者から得た単核球をG-CSFとIL-4により成熟させ、OK-432、液体窒素処理した腫瘍組織から得られたtumor lysateによって樹状細胞を刺激した。得られた樹状細胞を患者に皮下注射するという治療を6回くり返した。結果として、樹状細胞療法による重篤な副作用は見られなかった。また、OK-432、tumor lysateにより樹状細胞の成熟度は上昇した。 | KAKENHI-PROJECT-25293318 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25293318 |
悪性骨腫瘍に対する液体窒素処理と樹状細胞療法の併用療法 | 効果として、6例でSD、1例でPRであり、3年生存率は42.3%、3年無増悪生存率は2.9%であった。第1相臨床試験として標準治療に抵抗性な悪性骨軟部腫瘍患者に腫瘍抗原とTNF-αを加えた樹状細胞療法を行い、治療後の患者の経過観察を見るとともに新規症例に対して治療を行っている。27年度が最終年度であるため、記入しない。整形外科臨床において樹状細胞療法の安全性と液体窒素処理骨移植術と樹状細胞療法の併用療法臨床においてTNF-αを用いた樹状細胞療法の安全性を検討2008年から行った標準治療抵抗性の悪性骨軟部腫瘍患者に対し樹状細胞療法による臨床試験(第1相臨床試験)の結果と、基礎実験であるTNF-αを併用した樹状細胞療法の安全性試験を臨床試験で行う。前段階の樹状細胞培養において培養6日目に液体窒素処理を行った腫瘍抗原とTNF-αを加えた群と強力な成熟を誘導するOK-432を加えた群の細胞形態の変化と樹状細胞の成熟度の上昇を確認している。今後、この治療の成績をもとに、臨床において樹状細胞療法の安全性と液体窒素処理骨移植術と樹状細胞療法の併用療法を計画、遂行する。すなわち平成26年度の悪性骨軟部腫瘍に対するTNF-αを併用した樹状細胞療法の安全性試験を受けて、悪性骨腫瘍に対し液体窒素処理骨移植術による再建術を受ける患者に対し、術前1週間前より樹状細胞を分化誘導させ、術中腫瘍組織の凍結処理に投与する液体窒素処理骨移植術と樹状細胞療法の併用療法の臨床試験(第1相臨床試験)を申請する。プライマリーエンドポイントとして本試験の安全性、セカンダリーエンドポイントを1、免疫学的反応(DTH、サイトカイン)、2、腫瘍局所効果判定、3、生存率とする。第1相臨床試験として標準治療に抵抗性な悪性骨軟部腫瘍患者に腫瘍抗原とTNF-αを加えた樹状細胞療法を行っている。もともと悪性骨軟部腫瘍患者が少ない中でクライテリアの条件に当てはまる症例も少ない中で6人も治療できたことは十分と判断する。27年度が最終年度であるため、記入しない。前年度は研究代表者の体調不良のために研究の進行が遅れ、使用額が予想よりも少なくなった。27年度が最終年度であるため、記入しない。臨床において樹状細胞療法の安全性と液体窒素処理骨移植術と樹状細胞療法の併用療法臨床においてTNF-αを用いた樹状細胞療法の安全性を検討2008年から行った標準治療抵抗性の悪性骨軟部腫瘍患者に対し樹状細胞療法による臨床試験(第1相臨床試験)の結果と、基礎実験であるTNF-αを併用した樹状細胞療法の安全性試験を臨床試験で行う。前段階の樹状細胞培養において培養6日目に液体窒素処理を行った腫瘍抗原とTNF-αを加えた群と強力な成熟を誘導するOK-432を加えた群の細胞形態の変化と樹状細胞の成熟度の上昇を確認している。今後、この治療の成績をもとに、臨床において樹状細胞療法の安全性と液体窒素処理骨移植術と樹状細胞療法の併用療法を計画、遂行する。すなわち平成26年度の悪性骨軟部腫瘍に対するTNF-αを併用した樹状細胞療法の安全性試験を受けて、悪性骨腫瘍に対し液体窒素処理骨移植術による再建術を受ける患者に対し、術前1週間前より樹状細胞を分化誘導させ、術中腫瘍組織の凍結処理に投与する液体窒素処理骨移植術と樹状細胞療法の併用療法の臨床試験(第1相臨床試験)を申請する。プライマリーエンドポイントとして本試験の安全性、セカンダリーエンドポイントを1、免疫学的反応(DTH、サイトカイン)、2、腫瘍局所効果判定、3、生存率とする。物品費に使用する予定。27年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-25293318 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25293318 |
Endorsement Based Offline Mobile Payment System for Disaster Areas | 災害地域の人々は商人から救援物資を購入する必要がある。しかし、通信インフラを利用できないため、銀行サーバでの取引と支払いを行うことができない。このプロジェクトでは、ユーザが災害地域での電子取引を行うことを可能にするため、裏書きに基づくモバイル決済システムを提案している。このシステムは、スマートフォンを利用してモバイルアドホックネットワークを組み立てることで通信を実現させるから、速やかに構築できるし、地震の余震によるネットワークノードの故障に対してロバスト性を付けさせる功能も持っている。また、ユーザを認証できるスキーム、結託攻撃と二重支払い攻撃を防ぐスキームも提案している。災害地域の人々は商人から救援物資を購入する必要がある。しかし、通信インフラを利用できないため、銀行サーバでの取引と支払いを行うことができない。このプロジェクトでは、ユーザが災害地域での電子取引を行うことを可能にするため、裏書きに基づくモバイル決済システムを提案している。このシステムは、スマートフォンを利用してモバイルアドホックネットワークを組み立てることで通信を実現させるから、速やかに構築できるし、地震の余震によるネットワークノードの故障に対してロバスト性を付けさせる功能も持っている。また、ユーザを認証できるスキーム、結託攻撃と二重支払い攻撃を防ぐスキームも提案している。 | KAKENHI-PROJECT-15K15981 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K15981 |
寄生植物の自殺発芽誘導剤の開発に資するストリゴラクトン受容機構の構造基盤解析 | 本研究は、寄生植物の種子発芽制御におけるストリゴラクトン(SL)受容メカニズムに立脚して、自殺発芽誘導剤の開発を目指すものである。これにより、寄生植物を防除し、主にアフリカ・中東アジアにおける作物の増産と安定供給への貢献が期待される。またSLシグナル伝達は、寄生植物の最重要な生存システムの一つであり、本研究は構造生物学的アプローチによりSLシグナル伝達の中心的な制御機構の解明に取り組むものでもある。本研究は、寄生植物の種子発芽制御におけるストリゴラクトン(SL)受容メカニズムに立脚して、自殺発芽誘導剤の開発を目指すものである。これにより、寄生植物を防除し、主にアフリカ・中東アジアにおける作物の増産と安定供給への貢献が期待される。またSLシグナル伝達は、寄生植物の最重要な生存システムの一つであり、本研究は構造生物学的アプローチによりSLシグナル伝達の中心的な制御機構の解明に取り組むものでもある。 | KAKENHI-PROJECT-19K15747 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K15747 |
二世代女性作家の書く中国―王安憶と茹志鵑― | 平成29年度申請者は、茹志鵑と王安憶という中華人民共和国の二世代の母娘作家の関係を検討するという問題意識の下、2本の論文を投稿、国際学会報告1回、国内研究会報告を2回行った。論文「『新中国』の親子ー文化大革命後の茹志鵑小説」(『野草百号記念号』)は28年度に提出したものであったが、諸事情により発行が遅れ、担当者も変わったため、改訂の上再提出した。この論文では、文革後の茹志鵑小説において、親(茹志鵑世代)と子(王安憶ら知識青年世代)がいかに書かれたかを検討した。また、「茹志鵑最後の小説「跟上,跟上」(1991)を読むー王安憶「おじさんの物語」(1990)への応答として」(『現代中国』予定)は、茹志鵑最後の小説「跟上,跟上」を、王安憶の「おじさんの物語」への応答として読み解いたものである。茹志鵑の「跟上,跟上」は王安憶の「おじさんの物語」への応答の試みであると同時に、茹志鵑が「六四」への思いを綴った小説であり、女性老革命家の最晩年の気概が込められた小説だと結論付けた。中国文芸研究会における5月の口頭発表(国内)では「合評濱田麻矢『崩れる塔、萎れる花ー張愛玲後期作品における愛のかたちー』について」は、濱田論文を批評した。著者は数年来、王安憶を含む20世紀中国語圏文学をジェンダーの視角から論じ、本稿もかかる問題意識から張愛玲の後期作品を論じている。著者の論考を通読し批評する機会を与えられ、筆者自身の研究を再検討することができた。また、日本中国当代文学研究会における口頭発表(国内)「王安憶『髪廊情話』、『臨淮関』について」は、王安憶の近作短篇の代表作を紹介、分析した。さらに、9月に中国の武漢大学で行った口頭発表(国外)「茹志鵑、王安憶作品中的王嘯平」では、茹志鵑、王安憶母子の文学の中に書かれる王嘯平(王安憶の父、シンガポール出身の演出家)について検討を加えた。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。昨年度報告者は単著の著書『王安憶論ーある上海女性作家の精神史』を刊行した。報告者の現在の研究課題は、王安憶の母で文学者の茹志鵑を、王安憶の文学テクストとの対比の中で読み解いてゆくものである。本書の刊行によって、申請者の学術的成果を社会に還元できたのみならず、現在の研究テーマの基盤となる成果・反響を得られた。研究課題に直接かかわる第一年目の成果として、まず上海の復旦大学で行われたシンポジウムTraveling Text/Image/Media: The Association of Chinese and Comparative Literature Conferenceで行われた、中国語による口頭発表「王安憶文本中的“母親"」がある。王安憶の文学作品から、“母親"像と実母で文学者である茹志鵑の影を見てゆくという切り口の新鮮さと、文学テクスト丹念に読み解く手法とが、海外の研究者に高く評価された。二度目の報告は、2016年3月に日本中国当代文学研究会で行った報告「茹志鵑文学における世代」である。この報告は、茹志鵑文学の中で王安憶ら下の世代がいかに書かれたかに焦点を当て、王安憶が書く“母親"像との対比を試みたものであった。さらに昨年度は、中国文芸研究会の自伝・回想録を読む会にも精力的に出席し、同研究会会報に茹志鵑の自伝的小説の解題を発表したほか、茹志鵑と同世代の著名なジャーナリストである劉賓雁の自伝の報告も行った。また、張業松氏の「戦区の『風景』とテクストの三重性ー東平逸書『向敵人的腹背進軍』発掘報告」の翻訳も発表した。丘東平は茹志鵑と同世代で、同じく新四軍に参加した文学者である。申請者の調査が不十分な新四軍と文学者についてより深く学ぶ好機となった。直接申請者の研究テーマに関わる研究として、昨年度は海外での報告を含めて二度の研究報告を行うことができた。申請者の研究は王安憶と茹志鵑という母娘二世代の女性作家文学テクストを双方向的に読んでゆくものである。そこで昨年6月の上海復旦大学のシンポジウムでは、王安憶文学に“母親"というものがいかに書かれたか、そのこととと実母である茹志鵑がいかにかかわるかを議論し、海外の研究者に高く評価された。さらに2016年3月の当代文学研究会では、茹志鵑文学において王安憶ら子ども世代がいかに書かれたか、また王安憶は上の世代をいかに書いてきたか、の二点を中心に報告を行った。すでに忘れ去られようとしている建国期の文学者茹志鵑を、その娘で現在も文学者として活躍している王安憶の文学と共に読み解くという視点の新しさが大いに評価された。加えて、それまでの申請者の王安憶研究の成果を単著の著書として出版した。 | KAKENHI-PROJECT-15J40009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J40009 |
二世代女性作家の書く中国―王安憶と茹志鵑― | そのことは、王安憶と茹志鵑の二世代の作家を読みとくという現在の研究の大きな礎となった。また研究にあたり当初、中華人民共和国建国当時の古い資料の収集の困難が予想されていた。しかし現在のところ東京大学図書館など大学図書館で大部分の稀少資料が収集できており、研究に支障をきたすことはなく、順調に資料収取が進んでいる。加えて昨年度は「自伝・回想録の会」で、茹志鵑や茹と同世代のジャーナリスト劉賓雁の自伝の解題を作成したり、同じく茹と同世代の作家丘東平に関する張業松氏の論文の翻訳を行ったりした。それによって、日中戦争期から中華人民共和国建国ごろの文学者が置かれた社会背景について造詣を深めることができた。このことも、申請者の研究課題遂行の基礎になる作業となったと確信している。本年度の研究実績は主に以下の4点である。1.現代中国を代表する上海の女性作家王安憶(1954-)の文学における母親像を検討した。王安憶が描いた数種の母親像の中で、特に知識人の母に対し愛憎半ばする表現が行われてきた過程と意味を明らかにし、神戸大学中文研究会『未名』(2016年12月発行)に寄稿した。2.「新中国」建国に貢献した文学者で王安憶の母である茹志鵑(1925-98)文学の単行本、初出雑誌、先行研究を収集、通読し、研究の基盤となる資料を作成した。その上で、文化大革命後の茹志鵑において主要な問題であった親子二世代の関係を検討した。具体的には茹の小説「児女情」、「暖色に染まる雪原」を中心に文革後の革命世代と知識青年世代の親子関係を考察した論文「『新中国』の親子ー文化大革命後の茹志鵑文学」を『野草100号記念号』(未刊行)に寄稿した。3.「六四天安門事件」(1989)直後に執筆された茹志鵑小説「跟上,跟上」について、日本中国学会(2016年10月)で口頭発表を行った。報告では、茹志鵑最後の小説「跟上,跟上」には彼女自身の創作人生の節目となる事件が反映されている点を明らかにし、同時に「六四」後の茹の痛切な思いが落とし込まれているのではないかいう仮説を提起した。4.中国で開催されたの学術会議において、王安憶・茹志鵑文学における革命形象を検討する口頭発表を行った。報告では王安憶が知識人の母へのコンプレックスから革命形象を男性で描いてきた経緯を説明し、さらに5、60年代の革命形象が男性性を帯びてなければならなかったとする先行研究を確認した。その上で、60年代の茹の代表作「静かなる産院」が農村における社会主義革命の成果を賛歌しながらも、女性の身体性が描かれたがゆえに革命的テクストとみなされず、後の茹志鵑小説批判につながったのではないかという仮説を提起した。本年度は前年度より着手した茹志鵑文学の初出雑誌、初版本、先行研究の調査およびその通読と言った茹志鵑研究の基礎作業をほぼ終わらせることができた。そのうえで、二本の論文において、王安憶・茹志鵑文学を読み解き、「新中国」以後の政治の時代を生きた親子二世代の作家についての考察を行った。王安憶と茹志鵑の文学は、著者同士が親子の関係にあるとはいえ、その創作は執筆時期も小説の時代背景も異なり、双方の合意や協力の下で構築されたものではない。本来なら無関係に行われたそれぞれの文学的営為から共通する問題意識を抽出し双方向的な関係を見出すことが本研究の最大の目的であった。本年度に執筆した論考は、ひとつは王安憶文学における母親像の検討を通して、茹志鵑を含む知識人の母を考察したものであり、もうひとつは、文革後の茹志鵑文学から革命世代と知識青年世代の二世代の関係を考察したものである。ふたつの論文は互いに響きあう内容であり、茹志鵑の問題意識を王安憶が引き継ぎながら思考を深めていく過程を説得的に論じることができた。 | KAKENHI-PROJECT-15J40009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J40009 |
球状タンパク質の折りたたみの初期二次構造の解析 | 1.球状タンパク質の折りたたみ反応初期における二次構造形成が一般的な現象であるか否かを検討するため、以下の二次構造パターンの異なるタンパク質を対象として、それらの巻き戻り反応をCDスペクトルの速度論的手法により研究した。対象としたタンパク質は、リゾチーム,α-ラクトアルブミン,パルブアルブミン,フェリチトクロームC,β-ラクトグロブリンである。2.ストップトフロー装置を用いたグアニジン塩酸塩の濃度ジャンプにより各タンパク質の巻き戻り反応を誘起した。リゾチームとα-ラクトアルブミンでは、巻き戻り反応の充分遅い実験条件が実現可能なため、マグネティックスターラを応用した簡便な混合装置も用いた。反応の速度過程をペプチド主鎖のCDスペクトルと側鎖のCDスペクトルにより追跡した。3.いずれのタンパク質においても側鎖三次構造の形成に先立って著しい主鎖二次構造の形成が観測された。リゾチームとα-ラクトアルブミンでは、それらの相同性から予想されるように、反応初期の中間体は、その二次構造及び安定性において互に類似しており、α-ラクトアルブミンの変性中間体と同一であると結論された。パルブアルブミンでは天然の約60%のα-ヘリックス構造が、チトクロームCでは天然状態に匹敵するα-ヘリックス構造が反応初期に回復する。β-シート型タンパク質であるβ-ラクトグロブリンでは、天然構造に匹敵するβ-構造と過剰のα-ヘリックス構造が反応初期に形成される。これらの反応初期の二次構造形成は、いずれもストップトフロー法の不感時間内に完了することも明らかとなった。4.以上の結果より、タンパク質の折りたたみ反応は段階的であり、反応初期に主鎖二次構造のフレームワークが形成されたのち側鎖三次構造の形成が起こるものと結論される。1.球状タンパク質の折りたたみ反応初期における二次構造形成が一般的な現象であるか否かを検討するため、以下の二次構造パターンの異なるタンパク質を対象として、それらの巻き戻り反応をCDスペクトルの速度論的手法により研究した。対象としたタンパク質は、リゾチーム,α-ラクトアルブミン,パルブアルブミン,フェリチトクロームC,β-ラクトグロブリンである。2.ストップトフロー装置を用いたグアニジン塩酸塩の濃度ジャンプにより各タンパク質の巻き戻り反応を誘起した。リゾチームとα-ラクトアルブミンでは、巻き戻り反応の充分遅い実験条件が実現可能なため、マグネティックスターラを応用した簡便な混合装置も用いた。反応の速度過程をペプチド主鎖のCDスペクトルと側鎖のCDスペクトルにより追跡した。3.いずれのタンパク質においても側鎖三次構造の形成に先立って著しい主鎖二次構造の形成が観測された。リゾチームとα-ラクトアルブミンでは、それらの相同性から予想されるように、反応初期の中間体は、その二次構造及び安定性において互に類似しており、α-ラクトアルブミンの変性中間体と同一であると結論された。パルブアルブミンでは天然の約60%のα-ヘリックス構造が、チトクロームCでは天然状態に匹敵するα-ヘリックス構造が反応初期に回復する。β-シート型タンパク質であるβ-ラクトグロブリンでは、天然構造に匹敵するβ-構造と過剰のα-ヘリックス構造が反応初期に形成される。これらの反応初期の二次構造形成は、いずれもストップトフロー法の不感時間内に完了することも明らかとなった。4.以上の結果より、タンパク質の折りたたみ反応は段階的であり、反応初期に主鎖二次構造のフレームワークが形成されたのち側鎖三次構造の形成が起こるものと結論される。 | KAKENHI-PROJECT-60580217 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60580217 |
細胞間接着のよる細胞増殖と分化の制御機構 | 当初計画した遺伝子のうち、オクルディンとモエシンの遺伝子のノックアウトに成功した。前者は細胞レベルで、後者は個体レベルで解析を進めた。【オクルディンのノックアウト細胞の解析】オクルディンの遺伝子を2つともES細胞において破壊し、その細胞を上皮細胞に分化させた。オクルディンの蛋白質は予想通りなくなっていたが、オクルディンがなくても、極性を持った上皮細胞ができること、さらには、よく発達したタイトジャンクションが形成されるという予想外が結果が得られた。以上のことは、オクルディン以外にも、タイトジャンクションを形成する膜蛋白質が存在することを決定的に証明しており、タイトジャンクションの分子生物学に新しい局面を開いた。【モエシンのノックアウトマウスの解析】モエシン遺伝子は、X染色体上に存在するが、この遺伝子を相同組み換えにより破壊し、そのES細胞を用いた胚操作により、ミエシンを欠失するマウスの形成を試みた。これまで主張されてきたモエシンの重要性からは想像できなかったことであるが、モエシン欠失マウスは正常に生まれ、正常に成長した。考えられる限りの検索をおこなったが、異常は発見されなかった。モエシンには、よく似た蛋白質としてエズリンとラディキシンが知られているが、これらが、完全に機能的に重複している可能性が考えられた。当初計画した遺伝子のうち、オクルディンとモエシンの遺伝子のノックアウトに成功した。前者は細胞レベルで、後者は個体レベルで解析を進めた。【オクルディンのノックアウト細胞の解析】オクルディンの遺伝子を2つともES細胞において破壊し、その細胞を上皮細胞に分化させた。オクルディンの蛋白質は予想通りなくなっていたが、オクルディンがなくても、極性を持った上皮細胞ができること、さらには、よく発達したタイトジャンクションが形成されるという予想外が結果が得られた。以上のことは、オクルディン以外にも、タイトジャンクションを形成する膜蛋白質が存在することを決定的に証明しており、タイトジャンクションの分子生物学に新しい局面を開いた。【モエシンのノックアウトマウスの解析】モエシン遺伝子は、X染色体上に存在するが、この遺伝子を相同組み換えにより破壊し、そのES細胞を用いた胚操作により、ミエシンを欠失するマウスの形成を試みた。これまで主張されてきたモエシンの重要性からは想像できなかったことであるが、モエシン欠失マウスは正常に生まれ、正常に成長した。考えられる限りの検索をおこなったが、異常は発見されなかった。モエシンには、よく似た蛋白質としてエズリンとラディキシンが知られているが、これらが、完全に機能的に重複している可能性が考えられた。ES細胞を用いた相同組換え法により、AJ裏打ちの3つの蛋白質をコードする遺伝子をダブルノックアウトし、できたそれぞれのnull-ES細胞を試験管内で旋回培養してembryoid bodyを作らせることにより、上皮細胞に分化させる。この細胞の増殖能と上皮への分化能(極性形成など)を詳細に解析することにより、AJの細胞膜裏打ち蛋白質の細胞増殖と分化における機能を明らかにすることが、本研究の目的であった。本年度は、ラディキシンに似たモエシン、αカテニン、βカテニン、220kD蛋白質(ZO-1)のcDNAを用いてgenomic libraryをスクリーニングし、それぞれの遺伝子の頭の部分を釣り上げた。これらを用いて、2種類の異なる薬剤耐性を利用して、それぞれの遺伝子を2つ(相同染色体にのっているもの)とも破壊することを試みた。(1)モエシン遺伝子のノックアウト(担当:米村重信)(2)カテニン遺伝子のダブルノックアウト(担当:永淵昭良)(3)220kD蛋白質(ZO-1)遺伝子のノックアウト(担当:米村重信)(4)ES細胞の上皮への分化誘導(担当:永淵昭良)ES細胞を旋回培養することにより、embryoid bodyを作製すると、その表面が上皮細胞に分化する。この系を確実に動くようにし、その過程を蛍光顕微鏡法、電子顕微鏡法で追跡できるように準備した。マウスのES細胞は(embryonic stem cell)を用いた相同組換えによる遺伝子ノックアウト法は、近年、飛躍的な進歩を見せた。我々の研究室においても、この技術が導入されて、利用することが可能となった。我々は、以下のように、まず、この方法を用いて細胞レベルで各遺伝子をダブルノックアウトし、出来たnull-細胞の性質の解析を徹底的に行なった後に、その結果を踏まえて、個体レベルでの解析も行った。まず、ラディキシン、αカテニン、220kD蛋白質のcDNAを用いてgenomic libraryをスクリーニングし、それぞれの遺伝子の頭の部分を釣り上げた。これらを用いて、2種類の異なる薬剤耐性を利用して、それぞれの遺伝子を2つ(相同染色体にのっているもの)とも破壊した。そして、得られた各ダブルノックアウト細胞とそれらを上皮に分化させた系を用いて以下の点を調べた。また、必要に応じて、ノックアウトマウスを作製した。a.細胞増殖速度:特に接触阻害が起こるか?b.いわゆるトランスフォームしているか?c.上皮への分化能が残っているか? | KAKENHI-PROJECT-06404083 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06404083 |
哺乳動物網膜における情報処理に関与する神経節細胞の膜特性 | 脊椎動物網膜の視神経には光刺激に対してスパイク発射の増加するON型細胞とスパイク発射が減少するOFF型細胞とがある。光受容細胞である視細胞は全て光刺激に対して過分極性の応答を示す。網膜双極細胞には光刺激に対して脱分極する細胞と過分極する細胞とがあるので、ON型応答とOFF型応答とは双極細胞のレベルで形成されるものと考えられる。視細胞の化学伝達物質であるグルタミン酸が双極細胞にON応答とOFF応答を発生させるメカニズムを解析した。ネコの網膜からパパインを用いて双極細胞を単離し、1mMのcGMPを含むパッチ電極でホ-ルセルクランプの条件下で記録すると、ON型杆体双極細胞では持続性の内向き電流が発生し、これがグルタミン酸を投与すると抑制され、膜コンダクタンスの減少を伴う見かけ上の外向き電流が発生した。この電流はOmV付近で反転し、非選択的な陽イオン電流であることが考えられた。PKC陰性の錐体双極細胞には外向き電流を示すものと、内向き電流を示すものがあった。外向き電流の性質は杆体双極細胞で記録されたものと同じ性質を持っていた。内向き電流を発生した錐体双極細胞はcGMPの注入で持続的な内向き電流は発生せず、グルタミン酸の投与によって内向き電流が発生した。この細胞に対してはAPBは無効であった。以上の結果はPKCはON型応答の発生には直接関与していないこと、杆体双極細胞にはON型とOFF型が存在していることを示唆している。脊椎動物網膜の視神経には光刺激に対してスパイク発射の増加するON型細胞とスパイク発射が減少するOFF型細胞とがある。光受容細胞である視細胞は全て光刺激に対して過分極性の応答を示す。網膜双極細胞には光刺激に対して脱分極する細胞と過分極する細胞とがあるので、ON型応答とOFF型応答とは双極細胞のレベルで形成されるものと考えられる。視細胞の化学伝達物質であるグルタミン酸が双極細胞にON応答とOFF応答を発生させるメカニズムを解析した。ネコの網膜からパパインを用いて双極細胞を単離し、1mMのcGMPを含むパッチ電極でホ-ルセルクランプの条件下で記録すると、ON型杆体双極細胞では持続性の内向き電流が発生し、これがグルタミン酸を投与すると抑制され、膜コンダクタンスの減少を伴う見かけ上の外向き電流が発生した。この電流はOmV付近で反転し、非選択的な陽イオン電流であることが考えられた。PKC陰性の錐体双極細胞には外向き電流を示すものと、内向き電流を示すものがあった。外向き電流の性質は杆体双極細胞で記録されたものと同じ性質を持っていた。内向き電流を発生した錐体双極細胞はcGMPの注入で持続的な内向き電流は発生せず、グルタミン酸の投与によって内向き電流が発生した。この細胞に対してはAPBは無効であった。以上の結果はPKCはON型応答の発生には直接関与していないこと、杆体双極細胞にはON型とOFF型が存在していることを示唆している。 | KAKENHI-PROJECT-03251232 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03251232 |
酵母プリオンSup35の線維成長の実時間イメージング | タンパク質性の感染因子であるプリオンの概念は、羊のスクレイピー(およびクロイツフェルトヤコブ病、狂牛病なども含む)の感染機構を説明するためにprusinerが提唱した概念に端を発する。が、近年では酵母にもプリオン的な挙動をするタンパク質が複数あることがわかってきており、プリオンの概念はかなり普遍的なものとなってきた。通常、異常型プリオンは規則的に重合してアミロイド様の線維となることが知られている。さらには、その線維状タンパク質が正常型を異常型へと変換する際の触媒となる。ということはつまり、プリオンの触媒する構造転換のメカニズムを考える上で、プリオン線維の形成機構を知ることは非常に重要である。しかし、プリオン線維がどのようにできていくのかについて分子レベルでの研究は非常に遅れている。そこで本研究は、近年既に実用の域に達している高感度の蛍光顕微鏡システムを用いて、プリオンの線維形成過程を生きたまま一本一本観察することを目的とした。材料としては安全で変異導入も容易な酵母のプリオンタンパク質を使った。この研究では、多数の分子の平均を観察する従来の生化学の限界を超えて、プリオンの本質に迫ることが可能なはずである。平成14年度は平成13年度に引き続き、固定したプリオン線維の実時間での線維成長観察を行い、その統計的な解析を開始した。さらに、一個一個の単量体が線維に取り込まれるようすを観察するための1分子蛍光顕微鏡(全反射エバネッセント顕微鏡)を作成し、その評価を行った。プリオンはタンパク質性の感染因子である。プリオンの概念は、羊のスクレイピー(およびクロイツフェルトヤコブ病、狂牛病なども含む)の感染機構を説明するためにPrusinerが提唱した概念に端を発する。が、近年では酵母にもプリオン的な挙動をするタンパク質が複数あることがわかってきており、プリオンの概念はかなり普遍的なものとなってきた。通常、異常型プリオンは規則的に重合してアミロイド様の線維となることが知られている。さらには、その線維状タンパク質が正常型を異常型へと変換する際の触媒となる。ということはつまり、プリオンの触媒する構造転換のメカニズムを考える上で、プリオン線維の形成機構を知ることは非常に重要である。しかし、プリオン線維がどのようにできていくのかについて分子レベルでの研究は非常に遅れている。そこで本研究は、近年既に実用の域に達している高感度の蛍光顕微鏡システムを用いて、プリオンの線維形成過程を生きたまま一本一本観察することを目的とした。材料としては安全で変異導入も容易な酵母のプリオンタンパク質を使った。この研究では、多数の分子の平均を観察する従来の生化学の限界を超えて、プリオンの本質に迫ることが可能なはずである。平成13年度はプリオン線維を固定化してリアルタイムで線維成長を観察し、その成長のようすを詳細に解析した。1本1本のプリオン線維成長の速度分布、成長の方向性などを統計的に処理した。その結果、酵母のSup35というプリオン線維は、片側で優先的に成長することが明らかとなった。タンパク質性の感染因子であるプリオンの概念は、羊のスクレイピー(およびクロイツフェルトヤコブ病、狂牛病なども含む)の感染機構を説明するためにprusinerが提唱した概念に端を発する。が、近年では酵母にもプリオン的な挙動をするタンパク質が複数あることがわかってきており、プリオンの概念はかなり普遍的なものとなってきた。通常、異常型プリオンは規則的に重合してアミロイド様の線維となることが知られている。さらには、その線維状タンパク質が正常型を異常型へと変換する際の触媒となる。ということはつまり、プリオンの触媒する構造転換のメカニズムを考える上で、プリオン線維の形成機構を知ることは非常に重要である。しかし、プリオン線維がどのようにできていくのかについて分子レベルでの研究は非常に遅れている。そこで本研究は、近年既に実用の域に達している高感度の蛍光顕微鏡システムを用いて、プリオンの線維形成過程を生きたまま一本一本観察することを目的とした。材料としては安全で変異導入も容易な酵母のプリオンタンパク質を使った。この研究では、多数の分子の平均を観察する従来の生化学の限界を超えて、プリオンの本質に迫ることが可能なはずである。平成14年度は平成13年度に引き続き、固定したプリオン線維の実時間での線維成長観察を行い、その統計的な解析を開始した。さらに、一個一個の単量体が線維に取り込まれるようすを観察するための1分子蛍光顕微鏡(全反射エバネッセント顕微鏡)を作成し、その評価を行った。 | KAKENHI-PROJECT-13780498 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13780498 |
両親媒性元素ブロックポリマーの自己組織化構造を用いた電子機能材料の創製 | 本研究では、疎水性のハイブリッド分子であるシルセスキオキサンに親水性の有機側鎖と水素結合部位を導入し、水素結合部位を有する両親媒性の有機-無機ハイブリッド分子である2DEGNH-DDSQを合成した。さらに合成した化合物を用いて、気液界面を用いて構造化を試み、その組織構造に関して評価を行った。ダブルデッカー型シルセスキオキサン(DDSQ)を用いて、有機部位であるジエチレングリコール鎖と水素結合部位であるカルバメート基を2か所に導入した2DEGNH-DDSQを合成した。NMR, FT-IR, MSより、目的物2DEGNH-DDSQの合成を確認した。続いてこれらの化合物の熱特性を評価するために、TGおよびDSC測定を行った。TG測定の結果、分解温度が230度以上であり、高耐熱性の材料であることがわかった。またDSC測定より、ガラス転移点、結晶化温度、融点が観測され、結晶性ポリマーと同様の熱物性を有する化合物であることが明らかになった。2DEGNH-DDSQの気液界面上における挙動を調べ、膜崩壊後にロッド状の構造体を形成することがわかった。その後、固体基板上への転写を試みてバルクでの状態を調査した。それは基板上に転写を行っても水面上と類似した状態で存在していることがわかった。また、転写する基板においては疎水基板だとドット状の凝集体になってしまい、親水基板だと構造体が転写されたので転写する際に水の影響を強く受けていることが明らかとなった。さらに水面上で時間を置くことで構造体が成長し、崩壊前の膜の場合は大面積のナノシートを形成し、水素結合が寄与していることが示唆された。以上より、本研究では水素結合部位を有する両親媒性の有機-無機ハイブリッド材料を合成し気液界面上で構造化を行うことで大面積ナノシートの作製に成功した。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。これまでかご形シルセスキオキサン(DDSQ)を基盤とした有機ー無機ハイブリッド両親媒性分子の合成を行ってきた。本研究ではハイブリッド両親媒性分子の気液界面を用いた構造化とナノ薄膜化に取り組んだ。はじめにかごの両末端に反応性Si-H基を有する2H-DDSQを用い、これにトルエン中でジエチレングリコールモノビニルエーテルとPt(dvs)触媒を用いたヒドロシリル化反応を行うことで、ジエチレングリコール鎖を導入した。続いて、イソシアン酸エチルを加えることで、エチレングリコール鎖の水酸基を水素結合部位となるカルバメート基に置換した2DEGNH-DDSQを合成した。次に、表面圧ー面積等温曲線測定により目的物の水面上単分子膜挙動の検討を行い、ブリュースター角顕微鏡(BAM)によりその膜構造を観察した。その結果、膜崩壊後にロッド状の集合体が観察された。DSC測定においては2DEGNH-DDSQは結晶化ピークを示さず、ガラス転移温度のみを示すアモルファスな分子であった。そのため、気液界面に束縛されたことで2DEGNH-DDSQが2次元的に構造化されたためと考えられる。そこで、7 mN/mで10時間放置し、親水性シリコン基板に水平付着法で1層転写した。原子間力顕微鏡(AFM)の観察により、厚さ12 nm、50μm2以上の大面積ハイブリッドナノプレートが作製されていることが明らかとなった。これらを基板に5回転写し二次元X線回折測定を行ったところ、積層構造に伴う明確な散乱がout-of-plane方向に観測されたともに2次元結晶化に伴う回折ピークがin-plane方向にも明瞭に観察された。また薄膜のFT-IR測定を行ったところ、カルバメート基が分子間で高度に配向した水素結合ネットワークを形成していることが明らかとなった。無機ー有機ハイブリッド両親媒性分子による自己組織化は当初の狙い通りであり、おおむね順調に進展していると考えられる。本研究では、疎水性のハイブリッド分子であるシルセスキオキサンに親水性の有機側鎖と水素結合部位を導入し、水素結合部位を有する両親媒性の有機-無機ハイブリッド分子である2DEGNH-DDSQを合成した。さらに合成した化合物を用いて、気液界面を用いて構造化を試み、その組織構造に関して評価を行った。ダブルデッカー型シルセスキオキサン(DDSQ)を用いて、有機部位であるジエチレングリコール鎖と水素結合部位であるカルバメート基を2か所に導入した2DEGNH-DDSQを合成した。NMR, FT-IR, MSより、目的物2DEGNH-DDSQの合成を確認した。続いてこれらの化合物の熱特性を評価するために、TGおよびDSC測定を行った。TG測定の結果、分解温度が230度以上であり、高耐熱性の材料であることがわかった。またDSC測定より、ガラス転移点、結晶化温度、融点が観測され、結晶性ポリマーと同様の熱物性を有する化合物であることが明らかになった。2DEGNH-DDSQの気液界面上における挙動を調べ、膜崩壊後にロッド状の構造体を形成することがわかった。その後、固体基板上への転写を試みてバルクでの状態を調査した。それは基板上に転写を行っても水面上と類似した状態で存在していることがわかった。 | KAKENHI-PUBLICLY-15H00720 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-15H00720 |
両親媒性元素ブロックポリマーの自己組織化構造を用いた電子機能材料の創製 | また、転写する基板においては疎水基板だとドット状の凝集体になってしまい、親水基板だと構造体が転写されたので転写する際に水の影響を強く受けていることが明らかとなった。さらに水面上で時間を置くことで構造体が成長し、崩壊前の膜の場合は大面積のナノシートを形成し、水素結合が寄与していることが示唆された。以上より、本研究では水素結合部位を有する両親媒性の有機-無機ハイブリッド材料を合成し気液界面上で構造化を行うことで大面積ナノシートの作製に成功した。無機ー有機ハイブリッド両親媒性分子を気液界面に展開することで、マイクロメートル四方の2次元ハイブリッド結晶膜を作製することができた。この後は圧縮時間をさらに長くすることでミリメートル四方の2次元ハイブリッド結晶膜の作製を行う。さらに作製した薄膜のX線結晶構造を精密に解析することで、その構造を明確にする。これまでの赤外分光測定の結果より2次元ハイブリッド膜においてはDDSQ部分と有機側鎖部分が交互に配列した層内ラメラ構造を取っていることが示唆されている。そこで、大面積2次元膜を基板に転写し、加熱することで有機部位を分解させるとともシルセスキオキサンのかご構造を崩壊させシリカナノラインを形成させる。このように形成させたシリカラインの幅はDDSQの直径である1nm程度であり、またライン間のスペースは有機鎖間距離である2nm程度である。これはnmサイズのラインアンドスペースを基板上に形成できることを示唆している。このように形成させたラインアンドスペースをレジストとしてもちい、ドライエッチングにより下地の基板に、ナノスケールのラインアンドスペースを転写することを試みる。さらに、これまでの知見を元に親水性有機鎖であるエチレングリコールの長さを変えることで、ライン間のスペースを制御し、これより気液界面を用いて階層化した無機ー有機ハイブリッド両親媒性分子がナノレジストとして有用であることを明らかにする。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-15H00720 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-15H00720 |
曲面のある動く立体物へのリアルタイム・プロジェクションマッピング支援システム | 本研究の目的は、「曲面のある立体物」に正確なプロジェクションマッピングが行え、映像とマスクの合成をリアルタイムに計算することで、「動く立体物」にも投影できる制作支援システムを開発することである。プロジェクションマッピングとは、立体物の形状に合わせて変形した映像を投影する技法である。本研究では、プロジェクタを活用して壁面に映った立体物の影からマスクを自動作成し、光の走査で立体物に投影する変換画像の情報を計測する手法と、FPGAによるリアルタイム画像機器を開発した。この開発により、安価な機器を用いて動く立体物にリアルタイムでプロジェクションマッピングが行えるシステムを構築することができた。本研究の目的は,工学的専門知識が無くとも,一般的に困難と言われる「曲面のある立体物」に正確なプロジェクションマッピングが行え,映像とマスクの合成をリアルタイムに計算することで「動く立体物」にも投影できるシステムを開発することである.近年,プロジェクションマッピングは新たな映像コンテンツとして認知度が高まり,自ら制作したいとのニーズが急増している.制作には立体物の形状に合わせて,正確に映像を投影する技術が必要である.しかし,制作者がこうした技術に長けているとは限らず,普及の大きな妨げとなっている.研究初年度となる平成26年度では,まずプロジェクションマッピングとデジタルデバイスの動向調査を行った.その分析を踏まえながら,立体物への投影映像のマスク画像の校正手法と,自動補正の基本技術を開発した.ウェブカメラの入力画像から壁面の凹凸を自動的に検出し,投影する壁面の形状に合わせ,プロジェクタ画像を補正して投影するプログラムを作成した.また,動く立体物(赤い風船)を捉えるため,高精細のハイビジョンカメラの映像からGPUを用いて高速な演算で検出し,その重心をリアルタイムで捉えるプログラムを開発した.次に,同プログラムの実証評価の一例として,動く立体物をリアルタイムで追従するコンテンツの制作を行った.動く赤い風船と緑色のレーザースポットの位置の検出を行い,製作したアクチュエータと組み合わせてリアルタイムに連動しながら動く,射的ロボットを開発した.その結果,プログラムの有用性を確認することができた.本研究の目的は、工学的専門知識が無くても「曲面のある立体物」に正確なプロジェクションマッピングが行え、映像とマスクの合成をリアルタイムに計算することで「動く立体物」にも投影できるシステムを開発することである。「プロジェクションマッピング」とは、建物などの立体物をスクリーンとしてその形状に合わせた映像をプロジェクタで投影する技法である。なかでも、曲面のある立体物や動く物にインタラクティブに投影することが難しいと言われ、技術的な問題が作品制作の妨げとなっている。ゆえに、誰にでも使えるプロジェクションマッピングの制作支援システムを開発することで制作者の負担を軽減し、普及に貢献することができる。初年度の研究で作成した2システムに加えて、本年度はインタラクティブな投影を行うために、3つの基礎技術の開発を行った。最初のシステムは、赤外線を用いた移動物体追従システムである。赤外線を認識できるビデオカメラを用いて、プロジェクタで投影された映像の前面で動く人や物だけを認識し、その動きに追従する仕組みを開発し、評価を行った。2つ目は、カメラ画像差分による投影演出システムである。これはプロジェクタとスクリーンの間にある立体物を避けて、スクリーンだけに映像を投影する仕組みである。カメラが動く立体物を認識してその部分の映像を除くことで、静止した場所だけに映像が投影されるソフトウェアを開発した。このプログラムを応用すると、壁面のような静止した場所だけ、あるいは動いている立体物だけというように制作者が任意の場所を選んで効果的な投影を行うことが可能となり、映像表現の幅を広げることができる。3つ目は、壁に触れると画像が切り替わるシステムである。触覚センサーなどの代わりに壁に設置された2台のwebカメラを活用し、認識範囲に入ると投影された画像が変化する仕組みを作成した。当初の研究計画に沿って、おおむね順調に進んでいる。27年度は(1)赤外線を用いた移動物体追従システム、(2)カメラ画像差分による投影演出システム、(3)壁に触れると画像が切り替わるシステムの3つの仕組みの開発を行った。前年度には、動く物体を追尾するための基礎技術としてカメラ画像から立体物の凹凸を自動的に抽出する手法と、GPUでリアルタイムに演算するプログラムを開発した。さらに動きに追従する射的アクチュエータを作成し、位置を特定するシステムを開発している。本年度の研究成果発表として、日本デザイン学会の研究会にて口頭発表を行った。また、蒲郡市生命の海科学館で行われた招待講演のなかで、研究成果の一部や動向調査から明らかになった事例について発表を行った。プロジェクションマッピングは、建物などの立体物をスクリーンとして、その形状に合わせ変形した映像をプロジェクタで投影する技法である。なかでも、曲面のある立体物や動く物への投影は、制作者にとっての技術的な課題である。本研究の目的は、工学的専門知識が無くても「曲面のある立体物」に正確なプロジェクションマッピングが行え、映像とマスクの合成をリアルタイムに計算することで「動く立体物」にも投影できる制作支援システムを開発することである。本年度はこれまでの研究結果を総合し、立体物のみに投影するためのマスク情報の自動取得、立体物の形状に合わせた変形情報の自動取得、取得したマスクと変形の情報を用いて映像をリアルタイムで変形可能とする3つのシステムを構築し、本研究目的を達成した。マスク情報の取得を次の手順で行った。壁面近くのカメラで撮影したプロジェクタ映像からカメラとプロジェクタの位置関係を取得する。 | KAKENHI-PROJECT-26350025 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26350025 |
曲面のある動く立体物へのリアルタイム・プロジェクションマッピング支援システム | 次に、立体物を壁面の前におくとカメラには立体物の影が映る。この影と上記位置関係からマスク情報を取得した。変形情報の取得を次の手順で行った。カメラを観察者の視点に設置する。次にプロジェクタの映像を多数の円を表示させ、その重心からプロジェクタとカメラの位置関係、すなわち変形情報を取得した。円は4分割しながらカメラが認識できるサイズまで小さくいき、その後はプロジェクタのピクセル単位でずらしていく。この方法で、全ピクセルの位置関係を取得するので、複雑な曲面にも対応できる。リアルタイム変形にはFPGA(プログラム可能な大規模デジタル回路)を用いた。FPGAは、HDMIから入力された映像をマスクと変形の情報を用いてHDMIから出力する映像をリアルタイムに変換する。さらに、マスクと変形の情報を立体物の位置毎に複数記憶しておくことで、立体物の移動に合わせて映像とマスクの合成をリアルタイムに投影した。本研究の目的は、「曲面のある立体物」に正確なプロジェクションマッピングが行え、映像とマスクの合成をリアルタイムに計算することで、「動く立体物」にも投影できる制作支援システムを開発することである。プロジェクションマッピングとは、立体物の形状に合わせて変形した映像を投影する技法である。本研究では、プロジェクタを活用して壁面に映った立体物の影からマスクを自動作成し、光の走査で立体物に投影する変換画像の情報を計測する手法と、FPGAによるリアルタイム画像機器を開発した。この開発により、安価な機器を用いて動く立体物にリアルタイムでプロジェクションマッピングが行えるシステムを構築することができた。当初の研究計画に沿って,おおむね順調に進んでいる.平成26年度は,立体物の凹凸をウェブカメラの入力画像から自動的に抽出する手法と,動く的(赤い風船)を正確に検出するためGPUを用いたリアルタイムに演算するプログラムを開発した.さらに動く風船への追従を応用として,射的アクチュエータを用いた新たなコンテンツを開発し,評価を行った.研究全体の内容について変更は無いが,研究を効率よく進めるために当初計画からプログラム作成の順を入れ替えて進めている.平成26年度は,リアルタイムに画像を認識し,アクチエータを動かすプロトタイプの作成を重点的に行った.また,その研究成果を日本設計工学東海支部の研究会にて2本の口頭発表を行った.本年度は、これまで作成した5つの技術を統合して評価を行い研究を進める。26、27年度の研究から、動く立体物を色認識により追従するプログラム、赤外線により形状認識の検出はできているため、これらをあわせて行うことで、より正確に映像を投影可能なシステムとする。また、立体物の移動予測についてもプログラムの改良を行う予定である。課題として、物体を素早く動かすとPCの処理が追いつかず、赤丸マーカーが滑らかにボールを追尾しないという問題点が明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-26350025 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26350025 |
インフレーション宇宙で探る高エネルギー究極理論の粒子スペクトル | 本研究の目的は原始揺らぎの非ガウス性を用いて高エネルギー理論が予言する新粒子を探索すること,特に有効相互作用の詳細な解析からインフレーションスケールより重い粒子のスピンを読み取る方法論を確立することである.本年度の主な成果は「インフラトンの有効相互作用の符合から,その背後にある重い新粒子のスピンを特定できること」を示したことにある.散乱振幅の解析性やユニタリー性を用いると,インフラトンの有効相互作用のうちのいくつかの符号が普遍的に正になることが知られており,正値性条件として盛んに研究されている.我々は逆に,符号が普遍的に決まらない相互作用に注目した.特に,中間状態がスカラーの時にはその符号が正,中間状態がスピンを持つ時には負になることを散乱振幅の解析から示した.その結果に基づき,原始揺らぎの非ガウス性の符号から重い粒子のスピンを読み取る方法論を提案する論文を現在執筆している(神戸大学の大学院生2名と香港科技大学の大学院生1名との共同研究).そのほか,時間並進対称性の自発的破れに基づく「原始ゆらぎの有効場理論」にインフレーション中の粒子生成の効果を取り込むことに成功し,論文を出版した.構成した有効理論はインフレーションだけでなく時間結晶や同期現象などの物性系への応用も期待される.また,これらの成果を含む「非ガウス性を用いた新粒子探索」に関する講演を国内学会の招待講演1件,国際学会の招待講演1件を行なった.インフラトンの有効相互作用のうち正値性条件で符号が決まらないものに着目し,その符合から中間状態のスピンを読み取るという方針は当初の計画にはなかった新しいアイディアである.この方向性は今後広がりを見せて行くと期待できるため,計画以上に進展していると評価した.技術的な問題から,本年度の成果の適用範囲は「ドジッター共形対称性の破れが小さい場合」に限られる.この領域では非ガウス性が典型的に小さいことが知られており,今後適用範囲を広げて行くことが重要になる.本年度のアイディアを時間並進対称性の自発的破れに基づく「原始ゆらぎの有効場理論」に拡張する.最初のステップとして,まずは原始揺らぎと重いスカラー場が相互作用する一般的な模型を考え,低エネルギーで得られる原始揺らぎの有効相互作用を決定し,この模型で記述されるパラメータ領域を同定する.本研究の目的は原始揺らぎの非ガウス性を用いて高エネルギー理論が予言する新粒子を探索すること,特に有効相互作用の詳細な解析からインフレーションスケールより重い粒子のスピンを読み取る方法論を確立することである.本年度の主な成果は「インフラトンの有効相互作用の符合から,その背後にある重い新粒子のスピンを特定できること」を示したことにある.散乱振幅の解析性やユニタリー性を用いると,インフラトンの有効相互作用のうちのいくつかの符号が普遍的に正になることが知られており,正値性条件として盛んに研究されている.我々は逆に,符号が普遍的に決まらない相互作用に注目した.特に,中間状態がスカラーの時にはその符号が正,中間状態がスピンを持つ時には負になることを散乱振幅の解析から示した.その結果に基づき,原始揺らぎの非ガウス性の符号から重い粒子のスピンを読み取る方法論を提案する論文を現在執筆している(神戸大学の大学院生2名と香港科技大学の大学院生1名との共同研究).そのほか,時間並進対称性の自発的破れに基づく「原始ゆらぎの有効場理論」にインフレーション中の粒子生成の効果を取り込むことに成功し,論文を出版した.構成した有効理論はインフレーションだけでなく時間結晶や同期現象などの物性系への応用も期待される.また,これらの成果を含む「非ガウス性を用いた新粒子探索」に関する講演を国内学会の招待講演1件,国際学会の招待講演1件を行なった.インフラトンの有効相互作用のうち正値性条件で符号が決まらないものに着目し,その符合から中間状態のスピンを読み取るという方針は当初の計画にはなかった新しいアイディアである.この方向性は今後広がりを見せて行くと期待できるため,計画以上に進展していると評価した.技術的な問題から,本年度の成果の適用範囲は「ドジッター共形対称性の破れが小さい場合」に限られる.この領域では非ガウス性が典型的に小さいことが知られており,今後適用範囲を広げて行くことが重要になる.本年度のアイディアを時間並進対称性の自発的破れに基づく「原始ゆらぎの有効場理論」に拡張する.最初のステップとして,まずは原始揺らぎと重いスカラー場が相互作用する一般的な模型を考え,低エネルギーで得られる原始揺らぎの有効相互作用を決定し,この模型で記述されるパラメータ領域を同定する.年度末に滞在予定だった共同研究者の都合が悪くなり,滞在時期に変更が生じたため.次年度前期に招聘することで繰越し分を使用する予定である. | KAKENHI-PROJECT-18K13539 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K13539 |
ボランタリーな学校ネットワークによる教育効果に関する比較研究 | 本研究では、これまでの研究蓄積から、ユネスコスクール・ネットワーク(ASPnet)によって得られる学習成果と教員が主体的に継続的な教育実践を支える環境整備について、調査研究を行った。2014年11月に開催された「国連持続可能な開発のための10年」最終世界会議にあわせ、ASPnetの国際会議(含生徒の自主運営によるフォーラム)に向けた準備プロセスが教員の主体性に関連することが分かった。このことは、ASPnet実践で先行する「バルト海」プロジェクトにおいても同様であることが分かった。研究代表者および各研究分担者は、次のような学校ネットワークに関する研究調査を行った。代表者は、5月に「バルト海プロジェクト」の現場を調査した他、国内ユネスコスクール(ASPnet)の評価者および助言者として、大阪や奈良、東京において調査を行った。その結果、継続性において外部との開かれた連携を重視している特徴を確認し、ただし資金的問題と世代間においてコーディネーター引き継ぎの課題が存在することがわかった。分担者の一人は、ユネスコスクールの高校生会議を運営する生徒の学び、とりわけESDの高校生フォーラムを運営するために、ESD的に運営するということの意味を捉え、仕事の関わり方、ボランティアとしての責任の果たし方、責任を果たすためにも連携することの重要さ、そして共創的なディスカッションによるESD的な提案の仕方などを研究した。また、このユネスコスクールの活動を大学生がボランティアで支援することの理論的、実践的可能性を具体的な支援体制を構築して確かめた。もう一人の分担者は、(1)東京学芸大学大学院教育学研究科教育実践創成専攻〔教職大学院〕において、ESDカリキュラムの開発を行なった。(2)ユネスコ・スクールに加盟しESD実践をしている多摩市の小・中学校のカリキュラム調査及び授業観察を行なった。(3)所沢市で黙示的ESD実践を行なっている小中学校の校長・教頭・教員がESD調査研究協議会でESDの実践研究を深めている。(4)本学附属国際中等教育学校中学1年生を対象にESD授業実践「懐かしい未来との対話ラダックの暮らしと私たち」を試みた。研究代表者および各研究分担者は、次のような学校ネットワークに関する研究調査を行った。2014年は調書および計画で示してきたとおり、「国連持続可能な開発のための教育10年(UNDESD)」の締めくくりとなる世界大会が岡山と名古屋で開催された(2014年11月)。その大会に向けて、国内においては全国各地、海外においても多様な行事および学校ネットワーク(本研究の対象は主にユネスコスクール・ネットワーク(ASPnet))活動が、1年を通して展開された。そうした活動等を対象に調査を行った他、大会の主催者・関係者として実施も行った。具体的には、代表者はこれまで調査対象としてきた「バルト海プロジェクト(BSP)」関係者との共同調査を進め、11月には岡山大会に招聘し、実際に活動する日本の教育関係者(主に教員)との交流も促進した。また、名古屋大会では国際チームの一員として公式サイドイベントでユネスコスクール・ネットワークに関する研究発表を行った。また、1月にはエストニアに赴き、世界大会のフィードバックをBSP国際大会の準備会合で提供した。分担者の一人は日本人として唯一のESDに関するUNESCO専門家としてそれぞれの大会に関与し、関連するESDについて国内においてセミナー等を行い、情報収集・提供および研究の深化を進めた。他の分担者は、学校教育におけるESDカリキュラムの開発、震災も関連させた研究を展開した。そして世界大会スタッフとしても日本を代表して調整した分担者は、800名の関係者が参加した岡山大会の「高校生フォーラム」を成功させた。本研究においては、これまでの研究により、「学習者が主体性を持ち、学習の継続を見せる教育実践には、題材に地元の課題または国境を越えた共通課題を含むことが多い」ことが分かった。そして、次の2点について、研究を行った。(1)ユネスコスクール・ネットワーク(ASPnet)によって得られる学習成果及び課題とは何か、(2)教員の主体性が発揮され、継続的な教育実践を支える環境整備とは何か。2014年11月に開催された、国連持続可能な開発のための10年世界会議にあわせ、ASPnetとして先行する「バルト海」プロジェクトとの連携企画を行い、訪問調査を踏まえたうえで、学校段階・校種の混在(共存)、大学のコミットメント(科学的支援・下支え・メンター・評価手法・教員養成)、国際参加者(直接体験)が重要であることが分かった。本研究では、これまでの研究蓄積から、ユネスコスクール・ネットワーク(ASPnet)によって得られる学習成果と教員が主体的に継続的な教育実践を支える環境整備について、調査研究を行った。2014年11月に開催された「国連持続可能な開発のための10年」最終世界会議にあわせ、ASPnetの国際会議(含生徒の自主運営によるフォーラム)に向けた準備プロセスが教員の主体性に関連することが分かった。このことは、ASPnet実践で先行する「バルト海」プロジェクトにおいても同様であることが分かった。2014年は本研究が主対象とした世界大会および多くの国際的な学校ネットワーク活動が見られたため、精査に時間がかかったが、予定どおり多くの調査結果を得ることができた。教育学今後は、特に2014年に開催された世界大会および関連活動における成果に関する研究を進める。これは当初の予定どおりであり、研究チームとしても対応可能だと予想される。代表者、分担者ともに、国連ESDの10年が2014年に終わることから、様々な取り組みに対して、積極的に研究調査を展開しているため。 | KAKENHI-PROJECT-25590231 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25590231 |
ボランタリーな学校ネットワークによる教育効果に関する比較研究 | 国連ESDの10年世界大会が2014年には開催され、その関係で生じた対応により一部の研究計画に変更が発生したため。2014年度はUNESD最終年会合が日本国内で開催されることから、研究フィードバックが求められるタイミングである。そのため、これまでの研究蓄積と知見を整理し、また国際的に発信する必要性がある。代表者は特に、国際ユネスコスクール事業の評価を行い、分担者の一人はUNESCO専門家として、また他の一人は国際会議ホスト側としてコミットしている。これらを総括して研究を展開する。だが、その変更はわずかなもので、今後の計画に影響することはない。当初予定していた海外調査にかかる航空券代金が安価であったことに加え、予定の日程より2日短く調査を行ったため次年度に繰り越した。本年は国連ESDの10年最終年会合が日本国内で開催されることから、代表者と分担者は当該会合に参加し、さらに海外の研究協力者も招聘する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-25590231 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25590231 |
18〜19世紀イングランドに見る職業教育の実証的研究(20世紀・諸国との対比も含 | イングランド経営史の分野で経営教育・職業教育の研究が遅れている現状にかんがみ、こうした教育活動が活発化していった1819世紀の経営・職業教育の実態を解明すべく、基礎的資料の収集につとめている。これまでの基本実績としては、2002年9月実施の第38回経営史学会全国大会報告「トマス=ワッツの著作と18世紀初頭イングランドにおけるman of businessの概念」がある。引き続き、これを踏まえ、1819世紀イングランドのビジネス・ガイドブック等を利用しつつ、まず18世紀前期の動向を掘り下げているのが現在の進行状況である。研究機関移籍に伴う科学研究費補助金申請資格喪失のため、科学研究費補助期間はわずか数ヶ月にとどまり、資料準備の段階で同期間が終了されざるを得ないが、今回の補助を早急に論文発表等に結実させるべく、作業中である。イングランド経営史の分野で経営教育・職業教育の研究が遅れている現状にかんがみ、こうした教育活動が活発化していった1819世紀の経営・職業教育の実態を解明すべく、基礎的資料の収集につとめている。これまでの基本実績としては、2002年9月実施の第38回経営史学会全国大会報告「トマス=ワッツの著作と18世紀初頭イングランドにおけるman of businessの概念」がある。引き続き、これを踏まえ、1819世紀イングランドのビジネス・ガイドブック等を利用しつつ、まず18世紀前期の動向を掘り下げているのが現在の進行状況である。研究機関移籍に伴う科学研究費補助金申請資格喪失のため、科学研究費補助期間はわずか数ヶ月にとどまり、資料準備の段階で同期間が終了されざるを得ないが、今回の補助を早急に論文発表等に結実させるべく、作業中である。 | KAKENHI-PROJECT-15530247 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15530247 |
環礁州島の州島形成維持メカニズムの解明 | 研究実施計画で予定していたとおり,ツバル国フナフチ環礁フォンガファレ島において現地調査を実施した.現地調査では,ツバル国土地測量局を訪問し,近年のフォンガファレ島沿岸部の海岸地形変化に関する情報収集を行った.現地土地測量局ではすでにドローンによる空撮画像を用いて土地区画の管理を実施しており,多くの空撮画像を有していた.本研究においてこれら空撮画像の利用が可能であるか打診したところ,利用の許可を得ることができたが,データ量が大きすぎたために持ち帰ることができず,来年度の現地調査の際に複製させてもらうこととなった.これより,最近数年間の沿岸地形変化の把握が可能となった.また,申請者らが持参したドローンによる空撮画像の取得を実施するとともに,沿岸堆積物の写真資料を収集した.調査ではフォンガファレ島北端部,南端部および北部の沿岸部を対象に調査を実施し,砂の堆積域およびサンゴ礫の堆積域,砂と礫の混合堆積域という特徴の異なる沿岸でのデータ取得を行った.取得した空撮画像から専用の処理ソフトを用いて3次元地形のデータ作成を行ったところ,おおむね当該沿岸部の特徴を有する地形データを作成することができた.また,現地調査で取得した沿岸堆積物の画像資料を教師データとして空撮画像から沿岸部の堆積物の種別(砂やサンゴ礫)を判別するためのニューラルネットワークモデルの構築を行い,おおむね良い分類結果が得られた.これらを合わせることで,詳細な沿岸地形データの作成が可能となった.当該年度に予定していたフナフチ環礁フォンガファレ島の沿岸地形の空撮画像取得と沿岸堆積物画像資料の取得を行うことができ,空撮画像からリーフを含む沿岸部の地形データ作成を行うことができた.また,沿岸堆積物の分類についてもニューラルネットワークを利用して構築したモデルから可能となった.海岸地形に関するデータの取得に関しては当初の予定通りの成果が得られたと考えている.一方,数年前の研究プロジェクトの際に現地供与された波高・流速計による観測を考えていたが,現地調査の際に機器を確認したところ,必要なメンテナンスが実施されておらず,現状のままでは使用が難しい状況となっていたため,当該年度での観測は実施しなかった.このため,波浪や流動に関する現地観測結果が得られていない状況であるが,以前の研究プロジェクトの際に取得した過去数年分の波浪・流動観測結果がすでにあることから,それらを援用して今後の検討を進めることとした.これらの利用に関して,予定していた研究計画に大きな支障はないものと判断されることから,当該研究計画はおおむね順調に進展していると判断した.次年度は現地土地測量局が取得したドローンによる空撮画像の複製と前年度にの現地調査で取得できなかった沿岸部の画像取得を目的に,補足的な現地調査を実施する.本調査結果と前年度の調査結果から作成したリーフを含む沿岸地形データを利用し,波浪・流れの外力を数値計算から評価するとともに,それら外力によって砂が運搬される状況を検討する.ここでの検討では,リーフ上で砂が堆積する条件やリーフ外へと運ばれる条件に着目して結果の整理を行い,リーフ上での州島形成の要因に着目して検討を進める.研究実施計画で予定していたとおり,ツバル国フナフチ環礁フォンガファレ島において現地調査を実施した.現地調査では,ツバル国土地測量局を訪問し,近年のフォンガファレ島沿岸部の海岸地形変化に関する情報収集を行った.現地土地測量局ではすでにドローンによる空撮画像を用いて土地区画の管理を実施しており,多くの空撮画像を有していた.本研究においてこれら空撮画像の利用が可能であるか打診したところ,利用の許可を得ることができたが,データ量が大きすぎたために持ち帰ることができず,来年度の現地調査の際に複製させてもらうこととなった.これより,最近数年間の沿岸地形変化の把握が可能となった.また,申請者らが持参したドローンによる空撮画像の取得を実施するとともに,沿岸堆積物の写真資料を収集した.調査ではフォンガファレ島北端部,南端部および北部の沿岸部を対象に調査を実施し,砂の堆積域およびサンゴ礫の堆積域,砂と礫の混合堆積域という特徴の異なる沿岸でのデータ取得を行った.取得した空撮画像から専用の処理ソフトを用いて3次元地形のデータ作成を行ったところ,おおむね当該沿岸部の特徴を有する地形データを作成することができた.また,現地調査で取得した沿岸堆積物の画像資料を教師データとして空撮画像から沿岸部の堆積物の種別(砂やサンゴ礫)を判別するためのニューラルネットワークモデルの構築を行い,おおむね良い分類結果が得られた.これらを合わせることで,詳細な沿岸地形データの作成が可能となった.当該年度に予定していたフナフチ環礁フォンガファレ島の沿岸地形の空撮画像取得と沿岸堆積物画像資料の取得を行うことができ,空撮画像からリーフを含む沿岸部の地形データ作成を行うことができた.また,沿岸堆積物の分類についてもニューラルネットワークを利用して構築したモデルから可能となった.海岸地形に関するデータの取得に関しては当初の予定通りの成果が得られたと考えている.一方,数年前の研究プロジェクトの際に現地供与された波高・流速計による観測を考えていたが,現地調査の際に機器を確認したところ,必要なメンテナンスが実施されておらず,現状のままでは使用が難しい状況となっていたため,当該年度での観測は実施しなかった. | KAKENHI-PROJECT-18K04373 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K04373 |
環礁州島の州島形成維持メカニズムの解明 | このため,波浪や流動に関する現地観測結果が得られていない状況であるが,以前の研究プロジェクトの際に取得した過去数年分の波浪・流動観測結果がすでにあることから,それらを援用して今後の検討を進めることとした.これらの利用に関して,予定していた研究計画に大きな支障はないものと判断されることから,当該研究計画はおおむね順調に進展していると判断した.次年度は現地土地測量局が取得したドローンによる空撮画像の複製と前年度にの現地調査で取得できなかった沿岸部の画像取得を目的に,補足的な現地調査を実施する.本調査結果と前年度の調査結果から作成したリーフを含む沿岸地形データを利用し,波浪・流れの外力を数値計算から評価するとともに,それら外力によって砂が運搬される状況を検討する.ここでの検討では,リーフ上で砂が堆積する条件やリーフ外へと運ばれる条件に着目して結果の整理を行い,リーフ上での州島形成の要因に着目して検討を進める.空撮画像の取得に必要となるドローンとその処理に必要となるソフトウェアの購入にあたって,本研究で必要となる空撮画像の取得が可能なより安価なドローンを購入できたこと,および処理ソフトウェアの機能を厳選することでより安価なソフトウェアを購入することができたことから,次年度使用額が生じた.当該年度の現地調査で,現地土地測量局が有するドローン空撮画像を現地にて複製させてもらうことが可能となったことから,大量の画像データを現地で保存して持ち帰るための外部記録装置の購入に次年度使用額を使用する予定である. | KAKENHI-PROJECT-18K04373 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K04373 |
Pre-tRNA cappingが関与する遺伝子発現制御機構の探究 | 平成30年度は、以下の3つの課題を実施した。15'cap修飾を持つpre-tRNAの特定と動態の解析:5'cap修飾されたpre-tRNAのハイスループットシークエンス解析による網羅的な解析法を確立するため様々なパラメータについて条件検討を行い、実際にpre-tRNAを蓄積した出芽酵母細胞を用いて解析を行った。その結果、おそらく全てのpre-tRNAが5'cap修飾されていること、tRNA遺伝子の転写開始点を特定することに成功した。2pre-tRNA cappingが関与する新規の遺伝子発現制御機構の探求:pre-tRNAとキャップ依存的に相互作用していたタンパク質について、ハイスループットシークエンス解析により、このタンパク質と相互作用していたpre-tRNAのNGS解析により網羅的に特定した。この結果、このタンパク質は様々なpre-tRNAと相互作用していること、特に成熟化が進行したpre-tRNAと相互作用していることが確認された。3X cap付加酵素の探索:X cap修飾を持つpre-tRNAを大量に調製し、質量分析によりX cap修飾の構造解析を行い、構造を決定することに成功した。その構造から生合成機構を推測し、X cap修飾酵素の候補遺伝子を絞り込み、それぞれの遺伝子破壊株を構築したが、これら株においてX cap修飾が確認されたことから、X cap修飾酵素はこれら以外であることが判明した。1については、解析手法の確立に時間を要したことで、予定していたさまざまなストレス条件下の酵母細胞やさまざまな生物種について解析を実施することができなかったため。2については、pre-tRNAとキャップ依存的に相互作用していたタンパク質の細胞内局在の解析やその他のタンパク質が関与している可能性を検証できなかったため。3については、おおむね順調に進展していると考えている。計画と比べ若干の遅れがあるので、研究体制を見直し効率的に研究を進めるようにする。研究内容には問題がないと考えているので内容を変更する予定はない。平成30年度は、以下の3つの課題を実施した。15'cap修飾を持つpre-tRNAの特定と動態の解析:5'cap修飾されたpre-tRNAのハイスループットシークエンス解析による網羅的な解析法を確立するため様々なパラメータについて条件検討を行い、実際にpre-tRNAを蓄積した出芽酵母細胞を用いて解析を行った。その結果、おそらく全てのpre-tRNAが5'cap修飾されていること、tRNA遺伝子の転写開始点を特定することに成功した。2pre-tRNA cappingが関与する新規の遺伝子発現制御機構の探求:pre-tRNAとキャップ依存的に相互作用していたタンパク質について、ハイスループットシークエンス解析により、このタンパク質と相互作用していたpre-tRNAのNGS解析により網羅的に特定した。この結果、このタンパク質は様々なpre-tRNAと相互作用していること、特に成熟化が進行したpre-tRNAと相互作用していることが確認された。3X cap付加酵素の探索:X cap修飾を持つpre-tRNAを大量に調製し、質量分析によりX cap修飾の構造解析を行い、構造を決定することに成功した。その構造から生合成機構を推測し、X cap修飾酵素の候補遺伝子を絞り込み、それぞれの遺伝子破壊株を構築したが、これら株においてX cap修飾が確認されたことから、X cap修飾酵素はこれら以外であることが判明した。1については、解析手法の確立に時間を要したことで、予定していたさまざまなストレス条件下の酵母細胞やさまざまな生物種について解析を実施することができなかったため。2については、pre-tRNAとキャップ依存的に相互作用していたタンパク質の細胞内局在の解析やその他のタンパク質が関与している可能性を検証できなかったため。3については、おおむね順調に進展していると考えている。平成29年度は、以下の2つの課題を実施した。15'cap修飾を持つpre-tRNAの特定と動態の解析:5'cap修飾されたpre-tRNAを網羅的かつ高感度に特定するため、CAGE法を利用した5'cap修飾されたtRNAの精製法を確立した後、得られた精製物をハイスループットシークエンサーにより網羅的に解析することを予定していたが、サンプルの回収量が少ないなど問題が生じたため、精製方法およびcDNAライブラリの調製方法など実験系全体を見直し、新たなサンプル調製の方法や条件検討を追加した。具体的には、5'cap修飾されたpre-tRNAの調製には抗メチル化グアノシンキャップ抗体を使用した。また、cDNAライブラリの調製には脱メチル化酵素処理の追加やライゲーション反応や逆転写反応に用いる酵素を変更することで実験系を改善した。2pre-tRNA cappingが関与する新規の遺伝子発現制御機構の探求:5'cap修飾されたpre-tRNAとキャップ修飾依存的に結合するタンパク質が存在しているかどうかを検証するため、相互作用することが期待される複数のタンパク質について、アフィニティータグを融合した発現株を構築し、これら株から調製した細胞抽出液についてアフィニティー精製を行い、得られた精製画分からRNAを調製した後、ノーザンブロットによりpre-tRNAとの相互作用の有無を調べた。その結果、5'cap修飾されたpre-tRNAとキャップ修飾依存的に相互作用するタンパク質が特定された。さらに、pre-tRNAにアフィニティー精製用のRNAアプタマーを挿入した改変株を構築し、細胞抽出液から改変pre-tRNAをアフィニティー精製した後、ペプチドマス解析により5'cap修飾依存的に結合しているタンパク質を網羅的に調べたところ、上述のタンパク質と相互作用していることが確認された。1については目的としていた実験手法の確立が未だ達成できておらず現在継続中である。 | KAKENHI-PROJECT-17H04997 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H04997 |
Pre-tRNA cappingが関与する遺伝子発現制御機構の探究 | この関係で計画していた5' cap修飾されたpre-tRNAの細胞内局在や定量的な解析など他の実験を実施出来ておらず計画に遅れが出ている。2についてはおおむね順調に進展していると考えている。計画と比べ若干の遅れがあるので、研究体制を見直し効率的に研究を進めるようにする。研究内容には問題がないと考えているので内容を変更する予定はない。研究計画と比べて進捗に遅れがあるが、条件検討を慎重に行いながら研究を進める。研究内容には問題がないと考えているので内容は変更せず計画通り研究を進める予定である。 | KAKENHI-PROJECT-17H04997 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H04997 |
共有記憶型並列モデルと分散記憶型並列モデルの結合網に関する研究 | 共有記憶型および分散記憶型の並列計算機モデルの能力を決定する要因が何であるのか,また,最も能力を発揮する結合網の形状がどのようなものであるのかを調べることを目的として研究を行った.平成11年度は以下のような成果を得た.1.メッシュ結合網モデル(分散記憶型)およびメッシュバス結合網モデル(共有記憶型)上でのデータパケットの移動問題に関して,本研究で得られた最新の手法及び研究成果の報告を,1999年度並列アルゴリズムワークショップ(ACM/UMIACS Workshop on Parallel Algorithms)に於いて行った.2.これまでは一対一のパケット移動に対する結合網と処理時間の関係を中心に議論してきたが,より一般的な属性である多対多のパケット移動に対しての処理時間の考察を行なった.確率を巧妙に用いることで2次元メッシュ結合網上では,キューサイズが小さい効率の良いパケット移動アルゴリズムが実現できることを,ヨーロッパアルゴリズム会議(ESA99)で発表した.3.ネットワーク網に故障を含み,構造が一様でないメッシュ結合網モデルに対して,キューサイズを小さくしても処理時間を悪化させることなくパケットの移動を行うことができることを示した.4.定数次元のメッシュバス結合網モデルの能力差について,並列分散計算の英文論文誌で発表した.また,2次元の場合については確率化が有効であることを計算機理論の英文論文誌で発表予定である.共有記憶型および分散記憶型の並列計算機モデルの能力を決定する要因が何であるのか,また,最も能力を発揮する結合網の形状がどのようなものであるのかを調べることを目的として研究を行った.平成10年度は以下のような成果を得た.1.メッシュ結合網(分散記憶型)およびメッシュバス結合網(共有記憶型)において,通信幅や直径,通信リンク数,キューサイズなどの属性パラメータを考えて,それぞれのパラメータ値における行列積演算,ソーティング,ラウティングの計算時間の比較を行い,回路とシステム(軽井沢)ワークショップにおいて発表を行った.2.メッシュバス計算機上での計算処理においては,確率の使用が有効であることが予備実験により判った.その実験をもとに,メッシュバス計算機上での高速なランダムアルゴリズムを示すことに成功した.本結果をCOCOON98で発表した.3. N台のプロセッサからなるメッシュ結合網上での無情報ラウティングに関して,最悪の場合Ω(N)時間が必要であると強く予想されていたが,ヨーロッパアルゴリズム会議(ESA98)において,2次元メッシュ結合網上ではO(N^<0.75>)時間でラウティングできること,3次元の場合はO(N^<0.84>)時間で十分であることを示した.4.さらに,離散アルゴリズムシンポジウム(SODA99)において,2次元メッシュ結合網上では最適なO(N^<0.5>)時間でラウティング可能であることを発表した.本年度は,主に,低次元のメッシュ網を対象にモデルの能力を調べてきた.しかし,例えば,無情報ラウティングに対して2次元メッシュ結合網上では最適なアルゴリズムが存在するのに対して,3次元メッシュ上でのラウティングにはより大きな時間を必要としており,不明な点も残っている.この点については平成11年度の課題としたい.また,より自由な結合網に対する考察も必要と思われる.共有記憶型および分散記憶型の並列計算機モデルの能力を決定する要因が何であるのか,また,最も能力を発揮する結合網の形状がどのようなものであるのかを調べることを目的として研究を行った.平成11年度は以下のような成果を得た.1.メッシュ結合網モデル(分散記憶型)およびメッシュバス結合網モデル(共有記憶型)上でのデータパケットの移動問題に関して,本研究で得られた最新の手法及び研究成果の報告を,1999年度並列アルゴリズムワークショップ(ACM/UMIACS Workshop on Parallel Algorithms)に於いて行った.2.これまでは一対一のパケット移動に対する結合網と処理時間の関係を中心に議論してきたが,より一般的な属性である多対多のパケット移動に対しての処理時間の考察を行なった.確率を巧妙に用いることで2次元メッシュ結合網上では,キューサイズが小さい効率の良いパケット移動アルゴリズムが実現できることを,ヨーロッパアルゴリズム会議(ESA99)で発表した.3.ネットワーク網に故障を含み,構造が一様でないメッシュ結合網モデルに対して,キューサイズを小さくしても処理時間を悪化させることなくパケットの移動を行うことができることを示した.4.定数次元のメッシュバス結合網モデルの能力差について,並列分散計算の英文論文誌で発表した.また,2次元の場合については確率化が有効であることを計算機理論の英文論文誌で発表予定である. | KAKENHI-PROJECT-10780198 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10780198 |
塩分過剰による大動脈解離増悪メカニズム:IL-17によるECM制御機構の解明 | 塩分過剰はIL-17を介してマウス大動脈解離を増悪させた。マウスへの塩分負荷は血漿IL-17Aを変化させずIL-17受容体を増加させ、NFkBを活性化させたことからIL-17感受性を高める可能性が示唆された。また、IL-17ノックアウトはECM遺伝子群の発現パターンを大きく変化させ、その制御因子であるTGF-β経路(pSmad2、Smad7)を活性化し、塩分過剰はTGF-β経路に対して抑制的に作用した。以上から塩分過剰はIL-17を介してECM代謝異常、大動脈解離増悪を引き起こすことが示された。大動脈解離は最近増加傾向にある致死的疾患である。申請者の予備的検討から心血管疾患の危険因子である塩分過剰が大動脈解離を増悪させ、そのメカニズムの中心にIL-17と細胞外マトリックス(ECM)が関与している可能性が示された。塩分過剰が大動脈解離を増悪させるメカニズムを解明し治療戦略を開発すると同時に、IL-17関連因子、ECM関連因子の病態バイオマーカーとしての有用性を検討することを目的に研究を進めた。まず、塩分過剰がIL-17及びIL-17関連因子に及ぼす影響を検討するため、マウス大動脈組織を用いて評価した。バイオプレックスで評価したIL-17aは塩分過剰及び解離刺激で変化しなかった。しかし、リアルタイムPCRで評価したIL-17受容体は塩分過剰で増加した。このことから塩分過剰はIL-17受容体を増やすことで感受性を高めている可能性が推測された。事実、IL-17経路の主要下流因子であるNFkBは塩分過剰により活性化されることが蛍光免疫化学染色により示された。次に、塩分過剰がECMに及ぼす影響をマウス大動脈組織を用いて評価した。ピクロシリウスレッド染色で評価したコラーゲン線維は塩分過剰で有意な変化は見られなかった。しかし、ECM代謝の主要制御因子であるSmad2経路が塩分過剰により活性化されることを蛍光免疫化学染色にて証明した。さらに、IL-17によるECM制御を評価するため、マウス大動脈組織を用いてピクロシリウスレッド染色を行った。結果、IL-17ノックアウトマウスでは野生型マウスと比較し、有意にコラーゲン線維が増加していた。つまり、IL-17はECMを抑制性に制御している可能性が示唆された。これまで、計画1.塩分過剰によるIL-17系活性化機序及び計画2.塩分過剰がECMへ及ぼす影響を概ね解析し、計画3.IL-17によるECM制御機構の解明を行っているところであり、ほぼ予定どおり計画を進行することができている。今後はIL-17がECMを制御するメカニズムをさらに解析し、塩分過剰及び大動脈解離に関連する因子を明らかにし、それらのバイオマーカーとしての有用性を検討していく。大動脈解離は突然発症する致死的疾患であるが、病態は不明で予防方法は存在せず、外科的手術以外の治療法もない。大動脈解離は最近増加傾向にあり、突然死による社会的損失も大きいことから、その予防と治療法の開発は解決すべき重要課題である。申請者の予備的検討から心血管疾患の危険因子である塩分過剰が大動脈解離を増悪させ、そのメカニズムの中心にIL-17と細胞外マトリックス(ECM)が関与している可能性が示された。塩分過剰が大動脈解離を増悪させるメカニズムを解明し、治療戦略を開発することを目的に研究を進めた。マウスへの塩分負荷は大動脈組織のIL-17Aを変化させずIL-17受容体を増加させNFkBを活性化したことから、塩分過剰がL-17感受性を高める可能性が示唆された。マウス大動脈解離モデルの網羅的遺伝子解析では、大動脈解離刺激はECM遺伝子群に大きな影響を及ぼし、IL-17ノックアウトはECM遺伝子群の発現パターンを大きく変化させた。野生型マウス大動脈において塩分負荷はTGFβ経路の抑制分子Smad7の発現を亢進させる一方、IL-17ノックアウトマウスの大動脈ではSmad7の発現低下とSmad2活性亢進が認められた。マウス大動脈組織のピクロシリウスレッド染色では、野生型マウスと比較してIL-17ノックアウトマウスでは中膜コラーゲン線維が増加していた。TGFβ経路はECM代謝制御因子であることから、IL-17はTGF-β経路を介してECM代謝を抑制すると考えられた。以上より、塩分過剰はIL-17を介してECM代謝異常、大動脈解離増悪を引き起こすことが示された。塩分過剰/IL-17経路は大動脈解離の有効な予防および治療ターゲットとなる可能性が高い。今後は、塩分過剰によるTGF-β経路への影響を引き起こすメカニズムの解明を行い、さらなる病態解明と予防・治療ターゲットの同定を目指す。塩分過剰はIL-17を介してマウス大動脈解離を増悪させた。マウスへの塩分負荷は血漿IL-17Aを変化させずIL-17受容体を増加させ、NFkBを活性化させたことからIL-17感受性を高める可能性が示唆された。また、IL-17ノックアウトはECM遺伝子群の発現パターンを大きく変化させ、その制御因子であるTGF-β経路(pSmad2、Smad7)を活性化し、塩分過剰はTGF-β経路に対して抑制的に作用した。 | KAKENHI-PROJECT-16K19973 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K19973 |
塩分過剰による大動脈解離増悪メカニズム:IL-17によるECM制御機構の解明 | 以上から塩分過剰はIL-17を介してECM代謝異常、大動脈解離増悪を引き起こすことが示された。IL-17によるECM制御機構を解明するために、マウス大動脈組織を用いて、細胞外マトリックス関連因子をリアルタイムPCR、ウエスタンブロット、ザイモグラフィーで評価する。また当施設独自に開発した血管引張強度測定器を用いて、血管強度への塩分過剰、IL-17の関与を明らかにする。さらに塩分過剰、大動脈解離活動性を示すバイオマーカーとしてのIL-17、ECM関連因子の有用性をマウス大動脈解離モデル及び健常者ボランティアを用いて検討していく。血管外科、分子血管病態学塩分過剰が大動脈解離病態におけるIL-17及びECMの関与を検討するために、組織学的検討、生化学的検討を行っていったが、予想以上に順調に解析が進んだことで、マウス購入費、実験試薬、消耗品が予定より節約することができた。前述の今後の研究推進方策を進めるために、マウスの購入やマウス実験試薬、消耗品、組織関連試薬や生化学実験消耗品、遺伝学的解析の費用及び成果発表における費用として使用する。これにより当初の計画以上の成果を上げることを目指す。 | KAKENHI-PROJECT-16K19973 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K19973 |
超越整関数のジュリア集合の位相的性質 | 本課題の目的は超越整関数のジュリア集合の位相的性質について研究することにあった.今年度は特にBaker domainの境界の性質について次のような結果を得た.まず,Baker domain UのRiemann mapによる,力学系fの共役写像をgとするとg:D→D(Dは単位円板)は単射であるか,そうでなければ3. C上のtranslationのいずれかに半共役になることがわかった.またDの境界の点で,その点に対応するαUのimpressionが無限遠点を含むようなものの集合をI_∞と書くことにする.このとき上の場合分けにしたがって1と2の場合にはI_∞は少なくともαDのある完全集合を含むことが,また3の場合にはI_∞はαDに一致することが証明された.またgが単射であるときはI_∞の個数は1,2まはた∞であることが証明された.更に,単射の場合も含めた4つの場合のそれぞれについて,実際にそれを実現する具体例が存在することも明らかになった.以上の結果はBaker domainの境界はfがこのBaker domain上で単射でない限り,非常に複雑な構造を持っていることを示している.1,2,3の分類はfのUへの制限の力学系的挙動によってBaker domainを分類したことになっており,上記の結果はこれによってBakerdomainの境界の様子を分類したものである.この点においては当初の目的は一応達成されたと言える.ただし,1,2の場合には「I_∞は少なくともαDのある完全集合を含む」という少し弱い結果しか示されていない.これらの場合にI_∞αDとなることがあるのかどうかは今のところ未解決であり,今後の課題である.本課題の目的は超越整関数のジュリア集合の位相的性質について研究することにあった.今年度は特に連結性と局所連結性についてある程度の結果を得た.まず,ジュリア集合に無限遠点を加えたリーマン球面内のコンパクト集合の連結性については,「連結であることは多重連結な遊走領域を持たないことと同値である」なる必要十分条件が得られた.また更にこれの系としてジュリア集合が連結であるためのいくつかの十分条件を得た.ジュリア集合の連結性については1.ファトウ集合の連結成分がすべて有界である場合2.ファトウ集合が非有界な連結成分を持つ場合の2つの場合に分けて考察した.1.については「ファトウ集合のすべての連結成分が単連結ならばジュリア集合は連結である」という1つの十分条件を得た.2.については,存在する非有界な連結成分がattractivebasin,parabolicbasin,Siegel disk,Bakerdomainのどれであるかに応じてジュリア集合が非連結であるための十分条件を得た.例えばSiegel diskの場合には「無限遠点がaccessibleでる」というのが十分条件である.また局所連結性についてはまず,ファトウ集合の非有界で周期的な連結成分の境界は,一部の場合を除いて局所連結にはならないことを示した.またこの結果を用いて,ファトウ集合が非有界で周期的な連結成分Uを持つ場合には,一部の場合(即ち,Uが周期nのBaker domainでf^n|Uが無限対1の写像であるとき)を除いて,ジュリア集合は局所連結にはならないことを示した.これは超越整関数のジュリア集合の局所連結性が,多項式写像の場合と比べると著しく異なることを示している.また上記の例外的な場合も,Baker domain Uの性質によっては,やはり同じ結論が導かれることも明らかになった.本課題の目的は超越整関数のジュリア集合の位相的性質について研究することにあった.今年度は特にBaker domainの境界の性質について次のような結果を得た.まず,Baker domain UのRiemann mapによる,力学系fの共役写像をgとするとg:D→D(Dは単位円板)は単射であるか,そうでなければ3. C上のtranslationのいずれかに半共役になることがわかった.またDの境界の点で,その点に対応するαUのimpressionが無限遠点を含むようなものの集合をI_∞と書くことにする.このとき上の場合分けにしたがって1と2の場合にはI_∞は少なくともαDのある完全集合を含むことが,また3の場合にはI_∞はαDに一致することが証明された.またgが単射であるときはI_∞の個数は1,2まはた∞であることが証明された.更に,単射の場合も含めた4つの場合のそれぞれについて,実際にそれを実現する具体例が存在することも明らかになった.以上の結果はBaker domainの境界はfがこのBaker domain上で単射でない限り,非常に複雑な構造を持っていることを示している.1,2,3の分類はfのUへの制限の力学系的挙動によってBaker domainを分類したことになっており,上記の結果はこれによってBakerdomainの境界の様子を分類したものである.この点においては当初の目的は一応達成されたと言える.ただし,1,2の場合には「I_∞は少なくともαDのある完全集合を含む」という少し弱い結果しか示されていない.これらの場合にI_∞αDとなることがあるのかどうかは今のところ未解決であり,今後の課題である. | KAKENHI-PROJECT-09740117 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09740117 |
九州南部トカラ列島における巨大噴火の可能性:海底カルデラの検証 | 琉球弧北部のトカラ列島における火山活動の実態解明を目的に,ドレッジを用いた海底調査を実施した。海底より回収された火山岩類は,海面下にも第四紀火山活動が広く分布していることを示す。特に,海底カルデラ地形の近傍では,現地性流紋岩質軽石が確認でき,トカラ列島における巨大海底カルデラの存在を強く示唆する。火山岩類の地球化学的特徴から,北部琉球弧の火山活動や鉱床形成過程は,沈み込むフィリピン海プレートの形状によって支配されている事が判明した。琉球弧北部のトカラ列島における火山活動の実態解明を目的に,ドレッジを用いた海底調査を実施した。海底より回収された火山岩類は,海面下にも第四紀火山活動が広く分布していることを示す。特に,海底カルデラ地形の近傍では,現地性流紋岩質軽石が確認でき,トカラ列島における巨大海底カルデラの存在を強く示唆する。火山岩類の地球化学的特徴から,北部琉球弧の火山活動や鉱床形成過程は,沈み込むフィリピン海プレートの形状によって支配されている事が判明した。九州南部に存在する巨大カルデラ群は、人類史において壊滅的な火山災害をもたらしたと考えられている。これらのカルデラ群は、主に陸上調査に基づいた研究であり。九州の南方海域にこのカルデラ群が連続している可能性がある。高海水準期にあたる現在、これらの海域に巨大カルデラが潜伏しているかもしれない。もしも水没したカルデラ群の存在が明らかとなれば、巨大噴火災害の頻度は現在想定されている数字を大きく上回るであろう。そのような視点に立って、本研究では、これまで詳しく解明されていなかった海域の火山活動を海洋火山学的見地から検討している。平成19年度のトカラ列島南部で実施した海洋および陸上調査を通じて、以下の三つの新事実があきらとなった。(1)ドレッジ調査および岩石学的検討から、水深のDEMデータから推定されるカルデラ地形の近傍に流紋岩質軽石を主体とした火山活動が存在することが明らかとなった。(2)年代測定の結果、これら酸性岩類の噴火年代が数十万年よりも若い活動であることが明らかとなった。(3)これまで安山岩質火山岩のみで構成されると考えられていたトカラ列島の一部に、アルカリ岩系のマグマ活動が存在する。この新事実は、北部琉球火山弧の発展過程を検討する上で重要な制約条件を与えるであろう。以上のような、研究成果は、将来の火山災害予測において極めて重要であるばかりでなく、壊滅的な巨大噴火をもたらすメカニズムを解明する上で重要な基礎データとなるであろう。申請書に記載された研究計画を中心として行なわれてきたトカラ火山列島に関するドレッジを用いた海洋調査は,平成20年度に実施した2航海を含め,6航海に達した(淡青丸航海:KT00-15,KT07-2,KT07-21;長崎丸航海NAG254,NAG267,NAG274)。これら航海期間に,計67回のドレッジ調査を試み,多くの海底から岩石を採集する事に成功した。このような系統的岩石ドレッジは,これまで同海域で行なわれておらず,トカラ列島の火山活動を理解する上で貴重な情報源になるものと思われる。系統的に採取された岩石群に対する火山学的・岩石学的検討から以下のように結論できる。1、トカラ列島の火山活動は,従来考えられているような安山岩類を主体としておらず,酸性火山岩類が海底に広く分布する。採取された流紋岩類の特徴から,酸性の溶岩ドーム周辺を構成した部分や巨大な火砕流噴火に伴ったと思われる軽石類が確認された。これによって,従来考えられている海上部分の火山活動とは別の,流紋岩質火山活動が海底部分に存在する事が明らかとなった。2、火山活動の時期は,岩相上の特徴(軽石類の火山ガラスが未変質のままである,岩石表面にはFe-Mnクラストがほとんど認められないかあってもフィルム状であった)から,比較的若い時代の火山活動によってもたらされたと推定できる。特に,昨年度行なった年代測定のサンプルと火山ガラスの状態が酷似していることから,海底で採取された流紋岩類の多くは,中期更新世以降現在まで活動時期はさかのぼるものと推定される。3、奄美カルデラ周辺から採取された,MoやAsに富むFe-Mn酸化物は,海底カルデラの内部に比較的規模の大きな熱水活動の存在をほのめかす。これらは,九州南部と同様に金属資源の存在を暗示しているのかもしれない。このように,地質学的および岩石学的研究において多くの新発見があった。採取されたサンプルの地球化学的解析は,まだ始まったばかりである。来年度は,これらの解析によって更なる発見が十分期待される。九州南部の活発な火山活動は,陸上や海上に現れた火山活動のみならず,海底にも広く分布しているがこれまでの々の調査で明らかとなってきている(横瀬,2007;横瀬他2010).九州南部を含めたトカラ列島周辺は,地球規の大気・海洋循環における要に対応し,火山防災上,日本列島全体に対して重要な位置となる.これまで,海上部に露出する試料のみで議論されてぎた,トカラ列島の火山岩類は,本研究課題を通じて海底部に分布する火山岩類を含めた検討が可能となり,従来想定されていたトカラ列島の火山活動が,海底部を加味すると全く異なった状況にある事が明らかとなりつつある. | KAKENHI-PROJECT-19340165 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19340165 |
九州南部トカラ列島における巨大噴火の可能性:海底カルデラの検証 | 平21度には,長崎丸を使った調査航海を2回実施し,未調査海丘から更に岩石採試料を採集する事が出来た.本研究課題で初めてドレッジされた火山岩類の調査地点は100カ所を越した.平成21年度の調査航海においても,多数の新鮮な(おそらく第四紀)流紋岩質火山岩類が回収された.北部琉球弧の火山フロント上には,海面下において多数の流紋岩質火山活動の存在が確実となった.また,奄美カルデラや口之島カルデラでは,火山性熱水活動を強く示唆するサンプルが回収できた.活発な火山活動は,九州南部から沖縄本島西方海域まで,連続的に存在している事がほぼ確実となった.これまであまり研究の進んでいなかった琉球列島の火山活動は,火山災害軽減のためにも,海底部分を含めたより詳細な研究が今後とも必要不可欠な地域であると言える. | KAKENHI-PROJECT-19340165 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19340165 |
含ホウ素ヘテロ環化合物を基盤とする新規キラルルイス酸触媒の開発 | 向山Michael付加は有機合成の基本骨格の一つである1,5-ジカルボニル化合物を効率的に合成する信頼性の高い合成反応である。近年、キラルルイス酸触媒を用いて様々な反応の不斉化が実現されてきたが、向山Michael付加の不斉化、とりわけ単純な構造の非環式共役エノン外の反応に関する研究は遅れている。我々は最近、O-アシル-N-トシル-(L)-allo-トレオニン(ArCO_2CH(CH_3)CH(NHTs)CO_2H)とジクロロフェニルボランより簡便に調製できるオキサザボロリジノン誘導体が非環式エノンの不斉向山Michael付加反応に有望なキラルルイス触媒であることを見いだした。本触媒は、アミノ酸残基β炭素上のメチル基によりC(α)-C(β)結合の回転が固定され、O-アシル基部分がオキサザボロリジノン環の上部を覆う構造をとると考えられることから、ホウ素原子上に配位したエノンが触媒分子のO-アシル基と平行配置をとる活性錯体が想定される。本研究では、活性錯体の構造に関してより直接的な情報を得るために、エノンと類似した平面構造を有すると同時により配位能が高いピリジンをモデル分子に選び、種々のオキサザボロリジノンとの錯形成実験を検討した。いずれの場合も、オキサザボロリジノン環の上面から配位した構造の錯体が高選択的に生成することが^1HNMR解析から明らかとなった。この結果は、想定した活性錯体の構造を支持するものである。上面からの選択的配位の要因を解明するために、ピリジン環4位における置換基効果を調べたところ、負電荷を帯びたスルホニル酸素原子とホウ素原子への配位により電子欠損となったピリジン環との聞の安定化静電相互作用を示唆する結果が得られた。向山Michael付加は有機合成の基本骨格の一つである1,5-ジカルボニル化合物を効率的に合成する信頼性の高い合成反応である。近年、キラルルイス酸触媒を用いて様々な反応の不斉化が実現されてきたが、向山Michael付加の不斉化、とりわけ単純な構造の非環式共役エノンへの反応に関する研究は遅れている。我々は最近、O-アシル-N-トシル-(L)-allo-トレオニン(ArCO_2CH(CH_3)CH(NHTs)CO_2H)とジクロロフェニルボランより簡便に調製できるオキサザボロリジノン誘導体が非環式エノンの不斉向山Michael付加反応に有望なキラルルイス触媒であることを見いだした。本触媒は、アミノ酸残基β炭素上のメチル基によりC(α)-C(β)結合の回転が固定され、O-アシル基部分がオキサザボロリジノン環の上部を覆う構造をとると考えられることから、ホウ素原子上に配位したエノンが触媒分子のO-アシル基と平行配置をとる活性錯体が想定される。本研究では、エナンチオ選択性に最も影響を与えると考えられるアシル基に注目して触媒の最適化を検討した。ベンザルアセトンとシリルケテンアセタールの反応のエナンチオ選択性は、触媒のアシル基の形状によりかなり変動した。中でもビフェノイル誘導体(Ar=p-biphenyl)を触媒に用いた場合には、これまで最も良好な結果を与えた2-ナフトイル誘導体の反応に比べてより高い選択性(89%ee)が得られた。ビフェノイル誘導体触媒(10mol%)を用いて、様々な非環式エノンとの反応を検討したところ、特に電子供与性基が置換基したベンザルアセトン誘導体に対して大きなエナンチオ選択性の向上が認められた。向山Michael付加は有機合成の基本骨格の一つである1,5-ジカルボニル化合物を効率的に合成する信頼性の高い合成反応である。近年、キラルルイス酸触媒を用いて様々な反応の不斉化が実現されてきたが、向山Michael付加の不斉化、とりわけ単純な構造の非環式共役エノン外の反応に関する研究は遅れている。我々は最近、O-アシル-N-トシル-(L)-allo-トレオニン(ArCO_2CH(CH_3)CH(NHTs)CO_2H)とジクロロフェニルボランより簡便に調製できるオキサザボロリジノン誘導体が非環式エノンの不斉向山Michael付加反応に有望なキラルルイス触媒であることを見いだした。本触媒は、アミノ酸残基β炭素上のメチル基によりC(α)-C(β)結合の回転が固定され、O-アシル基部分がオキサザボロリジノン環の上部を覆う構造をとると考えられることから、ホウ素原子上に配位したエノンが触媒分子のO-アシル基と平行配置をとる活性錯体が想定される。本研究では、活性錯体の構造に関してより直接的な情報を得るために、エノンと類似した平面構造を有すると同時により配位能が高いピリジンをモデル分子に選び、種々のオキサザボロリジノンとの錯形成実験を検討した。いずれの場合も、オキサザボロリジノン環の上面から配位した構造の錯体が高選択的に生成することが^1HNMR解析から明らかとなった。この結果は、想定した活性錯体の構造を支持するものである。上面からの選択的配位の要因を解明するために、ピリジン環4位における置換基効果を調べたところ、負電荷を帯びたスルホニル酸素原子とホウ素原子への配位により電子欠損となったピリジン環との聞の安定化静電相互作用を示唆する結果が得られた。 | KAKENHI-PROJECT-14044051 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14044051 |
顕花植物の自家不和合性の分子機構 | 配偶体型自家不和合性への関与が示唆されている花柱リボヌクレアーゼについて,タバコ(Nicotiana alata)(ナス科)およびニホンナシ(Pyrus serotina)を用いて研究を行った。N.alata由来の酵素に関しては,リボヌクレアーゼT_2と同じ機能構造を有することを確認すること,それぞれのS-アリールに対応する酵素の基質特異性が和合,不和合の識別に直接関与するかどうかを調べること,そして花柱に存在する第三のリボヌクレアーゼの本体を明らかにすることを目的とした。P.serotina由来の酵素に関しては,配偶体型自家不和合性への花柱リボヌクレアーゼの介在の一般性を検証することを第一の目的とした。さらに,不和合性品種の突然変異により和合性に変換した品種が存在する有利さを生かし,これら野生種と突然変異種の比較検討により,このタイプの自家不和合性の分子機構の解明に向けて着実に研究を進めうるとの考えに立ち,その本格的な研究の基礎となるいくつかの問題の解決をはかることを第二の目的とした。そのため,ニホンナシ(バラ科)にこの酢素が存在するかどうかをまず調べ,同様の酵素が存在する場合には,リボヌクレアーゼとしての構造,性質をN.alataなどナス科由来の酵素と比較することを計画した。N.alata由来花柱リボヌクレアーゼをモノヨード酵酸で処理すると,リボヌクレアーゼT_2と同じように酵素活性が低下する。この修飾によってヒスチジン残基のイミダゾール基がカルボキシメチル化される。不活性化した酵素のアミノ酸分析において,修飾ヒスチジン残基以外にも,化学量論的ではないが未同定のピークが検出されたので,その本体について現在検討中である。基質特異性については,短鎖の基質を用いて検討した結果,特異性の厳密さとS-アリールとの直接的な関係を示唆するデータは得られなかった。ヘテロザイゴートの品種の花柱には,各S-アリールに対応する2種のリボヌクレアーゼが同定されているが,これらの酵素以外にも,塩基性の弱いリボヌクレアーゼが少量存在することが見いだされた。この第三の酵素の構造を明らかにするため,構造遺伝子のクローニングを行い,_CDNAの塩基配列からアミノ酸配列を推定した。現在,この配列を蛋白質の分析により確認中である。この酵素の発現と花の成熟過程との関係は,自家不和合性現象との関連性を知るうえで重要である。そのため,花柱の微量分析を行うため,一本の花柱を用いてリボヌクレアーゼを分析する方法を新たに開発し,この新しい分析法を用いて検討を進めている。ニホンナシの自家不和合性品種の花柱(風船状態の花)のホモジネートを調製してリボヌクレアーゼ活性の有無を調べたところ,テストしたすべての品種に酵素活性を検出した。これらの活性は分子量2.5-3万の蛋白質中に見いだされ,分子サイズとしては,既知のN.alata由来花柱リボヌクレアーゼと類似する。同様のテストを自家和合性品種について行ったところ,自家不和合性品種と同じように,リボヌクレアーゼ活性を検出した。これらの結果は,自家不和合性か自家和合性かは花柱リボヌクレアーゼの存否と一義的に関連づけられないことを示している。次にP.serotina由来の酵素のS-アリールとの関係を調べるため,これらの酵素の単離・精製を試みた。しかしニホンナシの花柱ホモジネートは褐変しやすいため,通常の方法では精製が困難であった。褐変を押さえるためホモジネートの調製法に改良を加え,精製操作の時間内の褐変の大幅な抑制に成功した。この改良法を用いることにより,花柱ホモジネートに抽出される酵素活性は大幅に増加し,花柱リボヌクレアーゼが精製できるようになった。実際には,数種の自家不和合性品種の花柱の粗抽出物から,分別沈澱および各種クロマトグラフィーを組合わせた精製法を用い,SDS-PAGE上で単一バンドを与える花柱リボヌクレアーゼを精製した。同じ方法により,自家和合性品種の花柱からリボヌクレアーゼが単離され,精製された。目下,精製できた各リボヌクレアーゼの一次構造解析を蛋白質レベルおよび遺伝子レベルの両方から並行して進めている。配偶体型自家不和合性への関与が示唆されている花柱リボヌクレアーゼについて,タバコ(Nicotiana alata)(ナス科)およびニホンナシ(Pyrus serotina)を用いて研究を行った。N.alata由来の酵素に関しては,リボヌクレアーゼT_2と同じ機能構造を有することを確認すること,それぞれのS-アリールに対応する酵素の基質特異性が和合,不和合の識別に直接関与するかどうかを調べること,そして花柱に存在する第三のリボヌクレアーゼの本体を明らかにすることを目的とした。P.serotina由来の酵素に関しては,配偶体型自家不和合性への花柱リボヌクレアーゼの介在の一般性を検証することを第一の目的とした。さらに,不和合性品種の突然変異により和合性に変換した品種が存在する有利さを生かし,これら野生種と突然変異種の比較検討により,このタイプの自家不和合性の分子機構の解明に向けて着実に研究を進めうるとの考えに立ち,その本格的な研究の基礎となるいくつかの問題の解決をはかることを第二の目的とした。 | KAKENHI-PROJECT-03044095 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03044095 |
顕花植物の自家不和合性の分子機構 | そのため,ニホンナシ(バラ科)にこの酢素が存在するかどうかをまず調べ,同様の酵素が存在する場合には,リボヌクレアーゼとしての構造,性質をN.alataなどナス科由来の酵素と比較することを計画した。N.alata由来花柱リボヌクレアーゼをモノヨード酵酸で処理すると,リボヌクレアーゼT_2と同じように酵素活性が低下する。この修飾によってヒスチジン残基のイミダゾール基がカルボキシメチル化される。不活性化した酵素のアミノ酸分析において,修飾ヒスチジン残基以外にも,化学量論的ではないが未同定のピークが検出されたので,その本体について現在検討中である。基質特異性については,短鎖の基質を用いて検討した結果,特異性の厳密さとS-アリールとの直接的な関係を示唆するデータは得られなかった。ヘテロザイゴートの品種の花柱には,各S-アリールに対応する2種のリボヌクレアーゼが同定されているが,これらの酵素以外にも,塩基性の弱いリボヌクレアーゼが少量存在することが見いだされた。この第三の酵素の構造を明らかにするため,構造遺伝子のクローニングを行い,_CDNAの塩基配列からアミノ酸配列を推定した。現在,この配列を蛋白質の分析により確認中である。この酵素の発現と花の成熟過程との関係は,自家不和合性現象との関連性を知るうえで重要である。そのため,花柱の微量分析を行うため,一本の花柱を用いてリボヌクレアーゼを分析する方法を新たに開発し,この新しい分析法を用いて検討を進めている。ニホンナシの自家不和合性品種の花柱(風船状態の花)のホモジネートを調製してリボヌクレアーゼ活性の有無を調べたところ,テストしたすべての品種に酵素活性を検出した。これらの活性は分子量2.5-3万の蛋白質中に見いだされ,分子サイズとしては,既知のN.alata由来花柱リボヌクレアーゼと類似する。同様のテストを自家和合性品種について行ったところ,自家不和合性品種と同じように,リボヌクレアーゼ活性を検出した。これらの結果は,自家不和合性か自家和合性かは花柱リボヌクレアーゼの存否と一義的に関連づけられないことを示している。次にP.serotina由来の酵素のS-アリールとの関係を調べるため,これらの酵素の単離・精製を試みた。しかしニホンナシの花柱ホモジネートは褐変しやすいため,通常の方法では精製が困難であった。褐変を押さえるためホモジネートの調製法に改良を加え,精製操作の時間内の褐変の大幅な抑制に成功した。この改良法を用いることにより,花柱ホモジネートに抽出される酵素活性は大幅に増加し,花柱リボヌクレアーゼが精製できるようになった。実際には,数種の自家不和合性品種の花柱の粗抽出物から,分別沈澱および各種クロマトグラフィーを組合わせた精製法を用い,SDS-PAGE上で単一バンドを与える花柱リボヌクレアーゼを精製した。同じ方法により,自家和合性品種の花柱からリボヌクレアーゼが単離され,精製された。目下,精製できた各リボヌクレアーゼの一次構造解析を蛋白質レベルおよび遺伝子レベルの両方から並行して進めている。タバコ(N.alata)のSーRNaseについては、自家受粉時の花粉管に生じる成長阻害とリボソ-ムRNAの分解との関連が示され、この分解への関与が示唆された。そこで、in vitroの花粉管成長においてSーRNaseの影響を調べたところ、花粉と花柱のSーアリ-ルの一つが合致する不和合受粉では、SーRNaseが花粉管内に侵入することが明らかになり、侵入したSーRNaseによりリボソ-ムRNAが分解される可能性が示された。Sー | KAKENHI-PROJECT-03044095 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03044095 |
アルツハイマー病βアミロイド線維の試験管内形成及び分解機構の解明 | 脳内におけるアルツハイマー病βアミロイド線維(fAβ)形成・沈着の過程には、fAβおよびAβ蛋白質(モノマー)間の線維形成反応以外にも、様々な生体分子が複雑な分子間相互作用を行い影響を及ぼしていると考えられる。われわれはこれまでに、Aβ蛋白質からのβアミロイド線維形成過程を説明する重合核依存性重合モデル、及び線維伸長過程を説明する一次反応速度論モデルを構築し、アポEなどの生体分子及び種々の抗酸化剤が線維形成に及ぼす影響の詳細な解析を続けている。本年度の実績;試験管内でAβ蛋白質からのfAβ形成を阻害し、かつ形成されたfAβを不安定化する有機化合物を引き続き探索した結果、ビタミンA誘導体、タンニン酸及びクルクミンが強力な線維形成阻害・不安定化作用(有効濃度(EC50)は、0.110μM)を示すことを見出した(Ono, K. et al., Exp Neurol. 189(2):380-392,2004, Ono, K. et al., Biochim Biophys Acta. 1690(3):193-202,2004)。既に検討した一群のポリフェノール化合物(ワインポリフェノール群、カテキン等)との活性比較ならびに、構造機能相関解析を行った。その結果、タンニン酸、クルクミン、レチノール、N-ジヒドログアイアコール酸,ワインポリフェノール群の一部等の活性が高いことが判明した。また、ワインポリフェノール群の内では水酸基の多い分子の活性が高いこと、ビタミンA誘導体ではレチノール、レチナールの活性が高いことが判明した。さらに、これらの線維形成阻害・線維不安定化作用機構を解明するため、ミリセチン等を用いて質量分析法などにより解析を試みた。その結果、これらの薬剤は、非共有結合的な作用により線維を不安定化していることを示唆するデータが得られつつある。脳内におけるアルツハイマー病βアミロイド線維(fAβ)形成・沈着の過程には、fAβおよびAβ蛋白質(モノマー)間の線維形成反応以外にも、様々な生体分子が複雑な分子間相互作用を行い影響を及ぼしていると考えられる。われわれはこれまでに、Aβ蛋白質からのβアミロイド線維形成過程を説明する重合核依存性重合モデル、及び線維伸長過程を説明する一次反応速度論モデルを構築し、アポEなどの生体分子及び種々の抗酸化剤が線維形成に及ぼす影響の詳細な解析を続けている。本年度の実績;試験管内でAβ蛋白質からのfAβ形成を阻害し、かつ形成されたfAβを不安定化する有機化合物を引き続き探索した結果、ビタミンA誘導体、タンニン酸及びクルクミンが強力な線維形成阻害・不安定化作用(有効濃度(EC50)は、0.110μM)を示すことを見出した(Ono, K. et al., Exp Neurol. 189(2):380-392,2004, Ono, K. et al., Biochim Biophys Acta. 1690(3):193-202,2004)。既に検討した一群のポリフェノール化合物(ワインポリフェノール群、カテキン等)との活性比較ならびに、構造機能相関解析を行った。その結果、タンニン酸、クルクミン、レチノール、N-ジヒドログアイアコール酸,ワインポリフェノール群の一部等の活性が高いことが判明した。また、ワインポリフェノール群の内では水酸基の多い分子の活性が高いこと、ビタミンA誘導体ではレチノール、レチナールの活性が高いことが判明した。さらに、これらの線維形成阻害・線維不安定化作用機構を解明するため、ミリセチン等を用いて質量分析法などにより解析を試みた。その結果、これらの薬剤は、非共有結合的な作用により線維を不安定化していることを示唆するデータが得られつつある。 | KAKENHI-PROJECT-16015251 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16015251 |
常磁性フラーレン/典型元素間の相乗的協同効果による機能発現 | 炭素第三の同素体であるフラーレンは、非平面の巨大π電子系分子である。そのフラーレンの内部に金属を取り込んだ金属内包フラーレンは、金属原子が中空空間に孤立して存在するという極めて特異な分子構造を有している。金属内包フラーレンの機能性分子への応用展開を目指す上で、14族元素を用いた化学修飾によりさまざまな機能を導入した誘導体を開発し、構造や物性を解明することは非常に重要である。本研究では、常磁性の金属を内包させた金属内包フラーレンM_2@C_<78>(M=La, Ce)を大量合成し、種々の化学修飾による誘導体を合成するとともに、フラーレンおよび外側の置換基上14族典型元素との相乗的協同効果による電子的特性や磁気的特性の変化を解明することを目的とした。C_<78>ケージに金属原子を二個内包した金属内包フラーレンCe_2@C_<78>の合成、単離に成功した。常磁性NMRスペクトル解析などにより炭素ケージの構造ならびに内包金属原子の局在位置を明らかにした。さらに、Ce_2@C_<78>のビスシリル化反応を行ない、フラーレンケージにシリル基を付加した誘導体の合成・単離に成功した。そのCe_2@C_<78>誘導体について、温度可変測定による詳細な常磁性NMRスペクトル解析を行い、また、誘導体の単結晶X線構造解析にも成功した。それにより、ビスシリル化体において、Ce_2@C_<78>の2つの内包金属原子は局在化していることが分かり、その局在位置についても明らかたした。さらに、Ce_2@C_<78>ビスシリル化体の酸化還元特性についても明らかにした。炭素第三の同素体であるフラーレンは、非平面の巨大π電子系分子である。そのフラーレンの内部に金属を取り込んだ金属内包フラーレンは、金属原子が中空空間に孤立して存在するという極めて特異な分子構造を有している。金属内包フラーレンの機能性分子への応用展開を目指す上で、14族元素を用いた化学修飾によりさまざまな機能を導入した誘導体を開発し、構造や物性を解明することは非常に重要である。本研究では、常磁性の金属を内包させた金属内包フラーレンM_2@C_<78>(M=La, Ce)を大量合成し、種々の化学修飾による誘導体を合成するとともに、フラーレンおよび外側の置換基上14族典型元素との相乗的協同効果による電子的特性や磁気的特性の変化を解明することを目的とした。C_<78>ケージに金属原子を二個内包した金属内包フラーレンCe_2@C_<78>の合成、単離に成功した。常磁性NMRスペクトル解析などにより炭素ケージの構造ならびに内包金属原子の局在位置を明らかにした。さらに、Ce_2@C_<78>のビスシリル化反応を行ない、フラーレンケージにシリル基を付加した誘導体の合成・単離に成功した。そのCe_2@C_<78>誘導体について、温度可変測定による詳細な常磁性NMRスペクトル解析を行い、また、誘導体の単結晶X線構造解析にも成功した。それにより、ビスシリル化体において、Ce_2@C_<78>の2つの内包金属原子は局在化していることが分かり、その局在位置についても明らかたした。さらに、Ce_2@C_<78>ビスシリル化体の酸化還元特性についても明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-20036008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20036008 |
粘菌の知覚行動における自律分散機構 | 粘菌はアメ-バ型細胞で原形質の塊で特に定まった感覚や運動器官を持たない原始的な細胞であるが、外界からくる様々な刺激に対して適切に応答し行動する。この様な細胞全体として統合・協調の取れた知覚行動に見られる自律分散処理の分子機構を解明することが、本プロジェクトの目的である。本年度は化学的自己組織化と位相情報に関して以下の結果を得た。(1)細胞行動発現に伴うリン脂質量の時間・空間ダイナミクスリン脂質の一つフォルチジン酸(PA)が光、紫外線や高濃度の塩などの忌避刺激によって過度的に上昇するが、糖やアミノ酸などの誘引物質では逆に減少することを見いだした。進行している細胞では、Paは進行端で低く後向へ向かって高く、フォスファチジルエタノ-ルアミンは逆に進行端で高く後部では低くなるという極性分布をとった。忌避刺激によりこの極性分布は失われた。このように、「細胞知覚行動は化学的自己組織化に基づく」というわれわれの主張がリン脂質代謝についても成立することが明かになった。(2)二重周期性による行動制御粘菌はどの部位でも収縮弛緩をするので、細胞は自励振動子の集団である。位相匂配を情報として細胞が判断していることをすでに示したが、餌に寄る場合には振動が抑制されこれが情報源にはならないと考えられる。そこで今年度は、振動をそれぞれの位相と振幅成分に分離し、各振動子間の関係を情報理論的に精密に解析した。粘菌の基本振動は,約15分周期の周波数変調を起こし、その位相は誘引物質に応答するさい顕著の後方から前方に伝わっていた。すなわち、餌に集まるような場合には、刺激されていない後部が周波変調により、前進に必要な位相匂配を作り出していることがわかった。粘菌はアメ-バ型細胞で原形質の塊で特に定まった感覚や運動器官を持たない原始的な細胞であるが、外界からくる様々な刺激に対して適切に応答し行動する。この様な細胞全体として統合・協調の取れた知覚行動に見られる自律分散処理の分子機構を解明することが、本プロジェクトの目的である。本年度は化学的自己組織化と位相情報に関して以下の結果を得た。(1)細胞行動発現に伴うリン脂質量の時間・空間ダイナミクスリン脂質の一つフォルチジン酸(PA)が光、紫外線や高濃度の塩などの忌避刺激によって過度的に上昇するが、糖やアミノ酸などの誘引物質では逆に減少することを見いだした。進行している細胞では、Paは進行端で低く後向へ向かって高く、フォスファチジルエタノ-ルアミンは逆に進行端で高く後部では低くなるという極性分布をとった。忌避刺激によりこの極性分布は失われた。このように、「細胞知覚行動は化学的自己組織化に基づく」というわれわれの主張がリン脂質代謝についても成立することが明かになった。(2)二重周期性による行動制御粘菌はどの部位でも収縮弛緩をするので、細胞は自励振動子の集団である。位相匂配を情報として細胞が判断していることをすでに示したが、餌に寄る場合には振動が抑制されこれが情報源にはならないと考えられる。そこで今年度は、振動をそれぞれの位相と振幅成分に分離し、各振動子間の関係を情報理論的に精密に解析した。粘菌の基本振動は,約15分周期の周波数変調を起こし、その位相は誘引物質に応答するさい顕著の後方から前方に伝わっていた。すなわち、餌に集まるような場合には、刺激されていない後部が周波変調により、前進に必要な位相匂配を作り出していることがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-03234201 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03234201 |
肝移植におけるグラフト肝機能不全の発生機序の解明とその予防法の検討(障害発生機序からみた摘出法,保存法ならびに肝viability判定法の検討) | (1)温阻血ならびに肝移植時の肝障害発生機序の解明培養細胞を用いた低温阻血後復温酸素化した際の過酸化脂質量の変化:ラット肝をコラゲナ-ゼで潅流し、肝実質細胞を培養した。培養肝実質細胞を0から24時間の低温阻血をおいた後復温酸素化した。保存中ならびに復温酸素化後の細胞膜成分の脂質過酸化物であるフォスファチジルコリン・ペルオキシド、および脂質過酸化物と特異的に反応するDCFH・DA負荷後の蛍光強度を測定した。保存時間の延長と共にフォスファチジル・コリンの値は増加したが、保存中は軽度の増加にとどまった。DCFH・DA負荷による蛍光強度も保存時間の延長とともに値が増加し、低温阻血後復温酸素化すると肝細胞は脂質過酸化を受け易くなることが明らかとなった。(2)donation,保存法による肝障害抑制の組織学的、生化学的効果判定UW液およびその構成成分についての検討:豚を用いいて肝を摘出し、UW液で保存、経時的に透過型電子顕微鏡象、ミトコンドリア機能、発生するラジカル量を測定した。同液で24時間保存した肝を同所性に移植したところ、6頭中2頭の生存がえられた。類洞内皮細胞は12時間までは良好に保たれていたが、コリンズ液保存に比べてラジカルの発生ならびにミトコンドリアのATP産生能には有為差がなかった。以上の結果よりUW液中に添加されているアロプリノ-ル、グルタチオン、アデノシンは不要であると考えられた。(3)軽自動車でも運搬可能な人工心肺装置の設計を行った。(1)温阻血ならびに肝移植時の肝障害発生機序の解明培養細胞を用いた脂質化酸化反応に関する検討:ラット肝をコラゲナ-ゼで潅流し、肝実質細胞と非実質細胞を分離培養した。それぞれの分画について、0から24時間の低温阻血をおいたのち復温酸素化した。両分画について低温保存時と復温酸素化の際の極超微弱発光を、ケミルミネッセンスアナライザ-で測定した。低温阻血時は24時間まで実質細胞も、非実質細胞も極微弱発光の増加は認めなかった。しかし、実質細胞では復温酸素化後著名な極微弱発光の増加を認め(コントロ-ルの200ー400%)、低温阻血8から12時間後にピ-クを認めた。一方、非実質細胞では低温保存中も復温酸素化後もいずれの保存時間でも、極超微弱発光の増加は認めなかった。以上の結果より、非実質細胞の障害発生に細胞膜の脂質過酸化は関与しないことが示唆された。(2)Donation,保存法の改良による肝障害抑制の組織学的・生化学的効果判定豚を用いて、人工心肺で血液を酸素化しながら肝を冷却し温阻血を伴わずにdonationを行う方法の効果を、ミトコンドリア機能と超微形態の面から検討した。本法を用いて摘出し12時間保存した肝を同所性に移植を行ったところ6例中5例に長期生存を認めた。本法を用いた場合、阻血に弱い類洞内皮細胞もその形態が12時間まで良好に保たれた。加えて、組織ATPやミトコンドリアのATP産生能もいわゆるstandard harvest法による摘出肝に比べて、保存12時間まで有意に高く維持されていた。以上の結果から人工心肺を用いた摘出法は肝のエネルギ-産生系を長時間良好に保ち、ジヌソイドの血流を保証する有効な方法であると考えられた。(1)温阻血ならびに肝移植時の肝障害発生機序の解明培養細胞を用いた低温阻血後復温酸素化した際の過酸化脂質量の変化:ラット肝をコラゲナ-ゼで潅流し、肝実質細胞を培養した。培養肝実質細胞を0から24時間の低温阻血をおいた後復温酸素化した。保存中ならびに復温酸素化後の細胞膜成分の脂質過酸化物であるフォスファチジルコリン・ペルオキシド、および脂質過酸化物と特異的に反応するDCFH・DA負荷後の蛍光強度を測定した。保存時間の延長と共にフォスファチジル・コリンの値は増加したが、保存中は軽度の増加にとどまった。DCFH・DA負荷による蛍光強度も保存時間の延長とともに値が増加し、低温阻血後復温酸素化すると肝細胞は脂質過酸化を受け易くなることが明らかとなった。(2)donation,保存法による肝障害抑制の組織学的、生化学的効果判定UW液およびその構成成分についての検討:豚を用いいて肝を摘出し、UW液で保存、経時的に透過型電子顕微鏡象、ミトコンドリア機能、発生するラジカル量を測定した。同液で24時間保存した肝を同所性に移植したところ、6頭中2頭の生存がえられた。類洞内皮細胞は12時間までは良好に保たれていたが、コリンズ液保存に比べてラジカルの発生ならびにミトコンドリアのATP産生能には有為差がなかった。以上の結果よりUW液中に添加されているアロプリノ-ル、グルタチオン、アデノシンは不要であると考えられた。(3)軽自動車でも運搬可能な人工心肺装置の設計を行った。 | KAKENHI-PROJECT-02670532 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02670532 |
ケタミンが脊髄伝導路および脊髄シナプス伝達に及ぼす作用に関する基礎および臨床研究 | ケタミンは運動誘発電位(MEP)に影響を与えない薬剤として知られているが、我々はケタミンがMEPの振幅を著明に減少させた症例を経験した。平成30年度は、まずその症例報告を執筆した(Furutani K et al. J Med Case Rep 2018;12:204)。それに加えて、ケタミン(1 mg/kg)の単回投与がMEPの振幅に与える作用について、臨床研究を行った。思春期特発性側弯症に対して後方矯正固定術を予定された12歳から18歳の女性を、無作為に生食群とケタミン群に割り付けた。全身麻酔を導入後、MEP測定の準備を行った。その後、腹臥位とし、前脛骨筋をはじめとした6つの筋(左右計12筋)におけるベースラインMEPを記録した後、割付に従い生食もしくはケタミンを静脈内投与した。その後2分おきに10分後までMEPを記録し、ベースライン振幅からの変化を解析した。その結果、ケタミンは各筋において、MEPの振幅を有意に減少させた。立ち上がり潜時も若干延長した。ケタミンは興奮性神経伝達を抑制する薬剤である。ケタミンが脊髄前角ニューロンの興奮性を抑制することにより、MEPの振幅が減少させる可能性はある。前述の通りケタミンはMEPを抑制しない薬剤として知られているので、投与するタイミング、量によっては、術中の神経モニタリングの正確性に悪影響を及ぼし得る。この新たな知見によって、術中神経モニタリングの正確性向上に繋がるものと考えている。以上の成果を日本麻酔科学会、アメリカ麻酔科学会において発表した。臨床研究のパートは予定通り終了し、学会発表を行うことができたため。臨床研究の成果を論文として投稿する。同時に脊髄横断スライスを用いた電気生理学実験を計画する。ケタミンは運動誘発電位(MEP)に影響を与えない薬剤として知られているが、我々はケタミンがMEPの振幅を著明に減少させた症例を経験した。平成30年度は、まずその症例報告を執筆した(Furutani K et al. J Med Case Rep 2018;12:204)。それに加えて、ケタミン(1 mg/kg)の単回投与がMEPの振幅に与える作用について、臨床研究を行った。思春期特発性側弯症に対して後方矯正固定術を予定された12歳から18歳の女性を、無作為に生食群とケタミン群に割り付けた。全身麻酔を導入後、MEP測定の準備を行った。その後、腹臥位とし、前脛骨筋をはじめとした6つの筋(左右計12筋)におけるベースラインMEPを記録した後、割付に従い生食もしくはケタミンを静脈内投与した。その後2分おきに10分後までMEPを記録し、ベースライン振幅からの変化を解析した。その結果、ケタミンは各筋において、MEPの振幅を有意に減少させた。立ち上がり潜時も若干延長した。ケタミンは興奮性神経伝達を抑制する薬剤である。ケタミンが脊髄前角ニューロンの興奮性を抑制することにより、MEPの振幅が減少させる可能性はある。前述の通りケタミンはMEPを抑制しない薬剤として知られているので、投与するタイミング、量によっては、術中の神経モニタリングの正確性に悪影響を及ぼし得る。この新たな知見によって、術中神経モニタリングの正確性向上に繋がるものと考えている。以上の成果を日本麻酔科学会、アメリカ麻酔科学会において発表した。臨床研究のパートは予定通り終了し、学会発表を行うことができたため。臨床研究の成果を論文として投稿する。同時に脊髄横断スライスを用いた電気生理学実験を計画する。臨床研究パートに時間を割いたため、基礎研究に用いる金額が予想よりも少なかったため。繰り越し分は消耗品や薬品の購入に充てる。 | KAKENHI-PROJECT-18K08810 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K08810 |
脳磁場計測による随意運動に対する感覚入力の影響の検討 | 中心溝をはさんで前後に位置する運動野、感覚野の随意運動に対する役割を非侵襲的に明らかにするには、空間的、時間的に解像度の優れた方法でとらえる必要があり、脳磁場計測は有望視されている方法である。感覚刺激として制御簡便な電気刺激は磁場を乱しやすい為に従来の研究では限られた方法でしか利用できていなかったが、2年間の本研究において、電気刺激装置を用いての安定した脳磁場記録方法を確立し、運動と感覚の相互影響を評価した。1。電気刺激による磁場の乱れをとり除く為に種々の機械的な接地を検討し、十分な幅をもった接地電極を刺激電極より近位側周囲を巻絡し、刺激アーチファクトをほぼ完全に除去することに成功した。2。この方法を用いて、正中神経に種々の間隔の対刺激(条件刺激-試験刺激)を与え、体性感覚誘発脳磁場(SEE)の回復曲線を評価した。対刺激間隔が20-60ミリ秒の間は、試験刺激後40-60ミリ秒の成分の抑制が認められたが、それ以降の成分には大きな変化は認められなかった。3。脳磁場における準備脳磁場は、脳波の準備電位に比較して開始が遅いため、種々の運動間隔で運動関連脳磁場記録を検討し、1.5秒の間隔が確保できれば、ひとつの随意運動としての反応を記録できることが確かめられた。4。一側の親指でボタン押しを3秒に1回程度行っている最中に、ランダムな時間間隔(0.9-1.3s)で同側正中神経に電気刺激を与え、両者の時間関係毎に別個に正中神経SEFを加算平均した。ボタン押し後900ミリ秒以内に電気刺激が来た場合のSEFの100ミリ秒以内の成分は抑制されるが、ボタン押しの前900ミリ秒以内の電気刺激に対するSEFでは大きな変化は認められなかった。以上は、一次体性感覚野の感度は、運動準備状態においては大きく変化せず、運動によってもたらされる干渉によって感度低下が引き起こされていることを示している。中心溝をはさんで前後に位置する運動野、感覚野の随意運動に対する役割を非侵襲的に明らかにするには、空間的、時間的に解像度の優れた方法でとらえる必要があり、脳磁場計測は有望視されている方法である。感覚刺激として制御簡便な電気刺激は磁場を乱しやすい為に従来の研究では限られた方法でしか利用できていなかったが、2年間の本研究において、電気刺激装置を用いての安定した脳磁場記録方法を確立し、運動と感覚の相互影響を評価した。1。電気刺激による磁場の乱れをとり除く為に種々の機械的な接地を検討し、十分な幅をもった接地電極を刺激電極より近位側周囲を巻絡し、刺激アーチファクトをほぼ完全に除去することに成功した。2。この方法を用いて、正中神経に種々の間隔の対刺激(条件刺激-試験刺激)を与え、体性感覚誘発脳磁場(SEE)の回復曲線を評価した。対刺激間隔が20-60ミリ秒の間は、試験刺激後40-60ミリ秒の成分の抑制が認められたが、それ以降の成分には大きな変化は認められなかった。3。脳磁場における準備脳磁場は、脳波の準備電位に比較して開始が遅いため、種々の運動間隔で運動関連脳磁場記録を検討し、1.5秒の間隔が確保できれば、ひとつの随意運動としての反応を記録できることが確かめられた。4。一側の親指でボタン押しを3秒に1回程度行っている最中に、ランダムな時間間隔(0.9-1.3s)で同側正中神経に電気刺激を与え、両者の時間関係毎に別個に正中神経SEFを加算平均した。ボタン押し後900ミリ秒以内に電気刺激が来た場合のSEFの100ミリ秒以内の成分は抑制されるが、ボタン押しの前900ミリ秒以内の電気刺激に対するSEFでは大きな変化は認められなかった。以上は、一次体性感覚野の感度は、運動準備状態においては大きく変化せず、運動によってもたらされる干渉によって感度低下が引き起こされていることを示している。1。運動に与える感覚入力の影響を検討する際に、最も制御しやすく、かつ広く用いられている感覚刺激は電気刺激である。しかしながら、従来、脳磁場計測において電気刺激を用いた場合には磁場の乱れが不可避であり、電気刺激での脳磁場の影響を観察する事は困難であった。今回、この磁場の乱れをとり除く為に種々の機械的な接地を検討し、十分な幅をもった接地電極を刺激電極より近位側に用いることにより、刺激アーチファクトをほぼ完全に除去することに成功した。この方法により、運動開始前後の感覚野、運動野の活動状況を詳細に検討することが可能になるものと思われる。2。随意運動に先行する脳活動をとらえる為に、従来は各自のペースでの運動を3秒程度の間隔で施行させていたが、運動障害や感覚障害のある患者においてはこの課題はやや施行困難であり、課題の改良が望まれていた。脳磁場における準備脳磁場は、脳波の準備電位に比較して開始が遅いため、運動間隔を短縮しても支障ないものと考えられ、今回我々は種々の運動間隔で運動関連脳磁場記録を検討し、1.5秒の間隔が確保できれば、ひとつの随意運動としての反応を記録できることが確かめられた。3。上記1、2の結果をもとに、中心溝付近に器質性病変を有する運動障害患者8名において、運動関連脳磁場記録を体性感覚誘発脳磁場と比較し、本人MRI上に重畳させ、運動野、感覚野の解剖学的位置関係を確認した。 | KAKENHI-PROJECT-07670711 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07670711 |
脳磁場計測による随意運動に対する感覚入力の影響の検討 | 電気刺激による体性感覚誘発脳磁場では、第一次感覚野を全例で同定することができたが、運動関連脳磁場では障害側の運動野の偏位を同定できたのは1名のみであった。これは、運動障害により運動そのものの遂行が困難であったことが一因であるが、それ以外に、運動野の偏位により脳溝が頭表に水平よりずれて脳磁場がとらえにくくなった可能性も考えられ、今後の検討が必要である。運動に与える感覚入力の影響を検討する際に、最も制御しやすく、かつ広く用いられている感覚刺激は電気刺激である。しかしながら、従来、脳磁場計測において電気刺激を用いた場合には磁場の乱れが不可避であり、電気刺激での脳磁場の影響を観察する事は困難であった。今回、この磁場の乱れをとり除く為に種々の機械的な接地を検討し、十分な幅をもった接地電極を刺激電極より近位側に用いることにより、刺激アーチファクトをほぼ完全に除去することに成功した。この方法により、運動開始前後の感覚野、運動野の活動状況を詳細に検討することが可能になるものと思われる。随意運動に先行する脳活動をとらえる為に、従来は各自のペースでの運動を3秒程度の間隔で施行させていたが、運動障害や感覚障害のある患者においてはこの課題はやや施行困難であり、課題の改良が望まれていた。脳磁場における準備脳磁場は、脳波の準備電位に比較して開始が遅いため、運動間隔を短縮しても支障ないものと考えられ、今回我々は種々の運動間隔で感動関連脳磁場記録を検討し、1.5秒の間隔が確保できれば、ひとつの随意運動としての反応を記録できることが確かめられた。上記1、2の結果をもとに、中心溝付近に器質性病変を有する運動障害患者8名において、運動関連脳磁場記録を体性感覚誘発脳磁場と比較し、本人MRI上に重畳させ、運動野、感覚野の解剖学的位置関係を確認した。電気刺激による体性感覚誘発脳磁場では、第一次感覚野を全例で同定することができたが、運動関連脳磁場では障害側の運動野の偏位を同定できたのは1名のみであった。これは、運動障害により運動そのものの遂行が困難であったことが一因であるが、それ以外に、運動野の偏位により脳溝が頭表に水平よりずれて脳磁場がとらえにくくなった可能性も考えられ、今後の検討が必要である。 | KAKENHI-PROJECT-07670711 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07670711 |
気道過敏性の成立機序とその制御に関する研究 | A)基礎的研究においては、動物実験より以下のような成果を得た。1.感作したネコにおいて、抗原チャレンジにより、非アドレナリン作動性抑制神経の機能不全が起ることを示した。外因性VIPの気道拡張作用も抑制されることより、肥満細胞から放出されたトリプテ-スによるVIPの分解がこのメカニズムであると考えられた。2.ネコのin situモデルにより、ブラディカイニンによる気道炎症と気道過敏性の関連について検討した。ブラディカイニンは、気道の血管透過性を亢進させ、気道の浮腫をきたし、アセテルコリによる気道収縮反応を増強した。3.モルモットを用い、神経電気刺激、ブラディカイニン投与によっておこる神経原性炎症に対する抑制因子について検討した。Kチャンネルオ-プナ-、NPY、Ibudilast等によって、神経原性炎症が抑制され、新しい喘息治療薬の可能性が示唆された。4.モルモット遅発型喘息反応が、ILー1投与により増強された。5.活性酸素による気道収縮反応をモルモットin vitroで検討した.本反応に対する肥満細胞の関与が示された。以上の動物実験より、気道過敏性の成立機序として神経原性あるいは、活性酸素、抗原抗体反応によるサイトカインの関与が明らかとなった。B)臨床的検討1.ACE阻害剤によっておこる咳のメカニズムを検討した。ACE投与者では、ブラディカイニンによる咳反射が亢進しており、咳において、ブラディカイの代謝障害あるいはサブスタンスP代謝の障害の関与が示唆された。2.喘息患者におけるブラディカイニンによる気道収縮反応が、一部神経ペプタイドの放出を介していることを示した。A)基礎的研究においては、動物実験より以下のような成果を得た。1.感作したネコにおいて、抗原チャレンジにより、非アドレナリン作動性抑制神経の機能不全が起ることを示した。外因性VIPの気道拡張作用も抑制されることより、肥満細胞から放出されたトリプテ-スによるVIPの分解がこのメカニズムであると考えられた。2.ネコのin situモデルにより、ブラディカイニンによる気道炎症と気道過敏性の関連について検討した。ブラディカイニンは、気道の血管透過性を亢進させ、気道の浮腫をきたし、アセテルコリによる気道収縮反応を増強した。3.モルモットを用い、神経電気刺激、ブラディカイニン投与によっておこる神経原性炎症に対する抑制因子について検討した。Kチャンネルオ-プナ-、NPY、Ibudilast等によって、神経原性炎症が抑制され、新しい喘息治療薬の可能性が示唆された。4.モルモット遅発型喘息反応が、ILー1投与により増強された。5.活性酸素による気道収縮反応をモルモットin vitroで検討した.本反応に対する肥満細胞の関与が示された。以上の動物実験より、気道過敏性の成立機序として神経原性あるいは、活性酸素、抗原抗体反応によるサイトカインの関与が明らかとなった。B)臨床的検討1.ACE阻害剤によっておこる咳のメカニズムを検討した。ACE投与者では、ブラディカイニンによる咳反射が亢進しており、咳において、ブラディカイの代謝障害あるいはサブスタンスP代謝の障害の関与が示唆された。2.喘息患者におけるブラディカイニンによる気道収縮反応が、一部神経ペプタイドの放出を介していることを示した。1.遅発型喘息反応による気道過敏性の解明:(1)モルモットにAscarissuumをSilica gelと共に腹腔内に注入し、これを2回繰返した。この後、一度抗原を吸入させておくと、その後の抗原吸入に際し全例に二相性の気道収縮反応を認めた。ところが、三度共腹腔内に抗原を投与するとその後が抗原の吸入により著明な二相性の反応は得られない。このことから、抗原吸入による二相性反応の出現のためには、前もって気道に抗原が投与(気道が直接抗原により感作)されることが必要であることが判明した。(2)抗原吸入投与よる二相性気道収縮反応の後、1日7日間にわたり気道反応性の亢進を認めた。この際気管支肺胞洗浄液(BALF)や、好中球および好酸球の増多を認めたが、特にこのうち好中球の増多の程度と気道の応性亢進の程度ではよく相関していた。またその際の恒〓槽中のStrip muscleの検討では、上皮の有無にかかわらずAChに対し2回等の反応性を示したことにより、この際の上皮からの拡張性物質の欠損が疑われた。よって気道反応性亢進の機序として、好中球の増多と上皮障害にその原因が求められた。2.ネコにキサンチンにつづきキサンチンオキシタ-ゼを吸入させると、気道で反応してス-パ-オキシドが生じ、一過性の気道吸縮が認められる。この後、30分から3時間にわたって気道の反応性の亢進が認められた。これらの反応にはス-パ-オキシドディスミュタ-ゼ(SOD)の投与により抑制された。またオゾン〓露による反応性亢進もSOD投与により抑制された。このことより、気道反応性亢進にはス-パ-オキトジが共通して関与している可能性が示唆された。3.ヒトの好塩基球をエルトリエ-タ-を用いて分離し、それを用いて喘息のBAL中に多くみられる好塩基球の〓定回子の由来と同定を行っているところである。実験動物(ネコ)を用いた、in vivoの気道過敏性測定実験より、次の結果を得た。 | KAKENHI-PROJECT-01440040 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01440040 |
Subsets and Splits