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日本南西諸島ハブ属ヘビの種と毒腺アイソザイムの進化の関係 | 日本南西諸島に棲息するハブ属ヘビの中でも、島同士が明らかに隔離しており、背中の模様や体長などが島特異的なハブ属ヘビ(トカラハブ、サキシマハブ、イヘヤジマハブ)を対象として、それぞれの粗毒に含まれる毒腺ホスホリパーゼA2(PLA2)アイソザイムの組成やアミノ酸配列を明らかにした。島特異的なこれらの分子進化と、ミトコンドリアDNAの塩基配列を基にした各ヘビの分岐関係とを照らし合わせ、毒腺PLA2は餌などの棲息環境因子に適応して進化してきたことを見出した。日本南西諸島に棲息するハブ属ヘビの中でも、島同士が明らかに隔離しており、背中の模様や体長などが島特異的なハブ属ヘビ(トカラハブ、サキシマハブ、イヘヤジマハブ)を対象として、それぞれの粗毒に含まれる毒腺ホスホリパーゼA2(PLA2)アイソザイムの組成やアミノ酸配列を明らかにした。島特異的なこれらの分子進化と、ミトコンドリアDNAの塩基配列を基にした各ヘビの分岐関係とを照らし合わせ、毒腺PLA2は餌などの棲息環境因子に適応して進化してきたことを見出した。【サキシマハブ(石垣島)の毒腺PLA_2アイソザイムの解析】サキシマハブ粗毒より3種類のPLA_2アイソザイムタンパク質を単離・解読し、サキシマハブ毒腺cDNAライブラリーの網羅的な解析からこれらをコードするcDNAクローンを単離した。これらのPLA_2アイソザイムは、49番目のアミノ酸がArgであるものを始めとして全く新新規の分子であった。さらにこれらのアミノ酸配列を基にした系統解析から、毒腺PLA_2の分岐過程がハブ属ヘビの棲息島の成立過程と一致することを報告した(Toxicon,48,2006 672-682)。【トカラハブ(小宝島)の毒腺PLA_2アイソザイムの解析】トカラハブ毒腺PLA_2をコードするcDNAクローンを3種類決定し、その塩基配列解析からトカラハブ毒腺PLA_2遺伝子は極めて高度に保存される特徴をもつことを見いだした。【イヘヤジマハブ(伊平屋島)の毒腺PLA_2アイソザイムの解析】イヘヤジマハブ粗毒より3種類のPLA_2アイソザイムタンパク質を単離し、部分アミノ酸配列を決定した。【サキシマハブの血清PLA_2インヒビター(PLI)の解析】サキシマハブ血清PLIをコードする4種類のcDNAを単離し、それらのコードするアミノ酸配列をもとに系統解析を行い、すべてのヘビはγ型PLIを普遍的にもつこと、その分子の進化過程はヘビの種分化過程と一致することを示した。加えて、BLAST検索から乳類ゲノム中にもハブγPLIに相同な血中分泌タンパク質をコードする遺伝子が存在することを見いだした(Toxicon,2007投稿中)。【ミトコンドリアD-loop領域の塩基配列によるハブ属ヘビの系統解析】奄美大島、徳之島、沖縄本島北部、沖縄本島南部、伊平屋島、久米島、子宝島、西表島、それぞれ島のハブ血球細胞よりミトコンドリアDNAを抽出した。【トカラハブ(小宝島)の毒腺PLA_2アイソザイムの解析】トカラハブ粗毒の定石どおりのクロマトグラフィー解析を行い、3種類の主なトカラハブ毒腺PLA_2をアイソザイムを単離・解析した。その結果、溶血性の中性[Asp^<49>]PLA_2、浮腫誘導性の塩基性[Asp^<49>]PLA_2および筋壊死性の[Lys^<49>]PLA_2が含まれることが明らかとなった。特に[Lys^<49>]PLA_2は、他のハブ属ヘビと異なりいわゆるBPIだけが発現していることは着目すべき結果である。また、トカラハブ毒腺cDNAライブラリーを解析し、神経毒性の塩基性[Asp^<49>]PLA_2が発現していることも見出した。【イヘヤジマハブ(伊平屋島)の毒腺PLA_2アイソザイムの解析】イヘヤジマハブ粗毒より単離・解析した3種類のPLA_2アイソザイムタンパク質のうち、筋壊死性の[Lys^<49>]PLA_2タイプのタンパク質が配列が非常によく似た2種類含まれていることが明らかになった。この結果は、伊平屋島から約110kmしか離れていない沖縄本島のホンハブには筋壊死性の[Lys^<49>]PLA_2が含まれていないことから非常に興味深い結果と考えられる。【ハブの血清PLA_2インヒビター(PLI)の解析】ハブ血清より新規のγPLI-Bを中心として、全てのヘビのγPLI-B分子の進化過程を議論した論文は本年J.Mol.Evol.に掲載予定となっている。また、γPLI-Bをコードするゲノム遺伝子も単離・解析し、既知のγPLI-Aとはその成り立ちがまったく異なっていることを見出した。【ミトコンドリアD-loop領域の塩基配列によるハブ属ヘビの系統解析】奄美大島、徳之島、沖縄本島北部、沖縄本島南部、伊平屋島、久米島、子宝島、西表島、それぞれ島のハブのミトコンドリアDNAに含まれるD-loop領域、NADH dehydrogenase subunit4、12Sおよび16S small subunit ribosomalDNAの塩基配列を比較解析したところ、これらのハブがトカラ+奄美大島+徳之島(北群)、沖縄+久米島(中部群)、サキシマ(南群)の3群に分かれることを見出した。 | KAKENHI-PROJECT-18687016 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18687016 |
日本南西諸島ハブ属ヘビの種と毒腺アイソザイムの進化の関係 | 以下の特徴的な島嶼ハブ属ヘビについて、その毒腺タンパク質とcDNAに含まれるPLA_2アイソザイムを網羅的に特徴付け、各ヘビの系統関係をミトコンドリアDNA(mtDNA)の塩基配列を基に明らかにした。【トカラハブ(小宝島)】この粗毒には、溶血性の中性[Asp^<49>]PLA_2 : PLA2、浮腫誘導性の塩基性[Asp^<49>]PLA_2 : PLA-B(仮)、神経毒性の塩基性[Asp^<49>]PLA_2および筋壊死性の[Lys^<49>]PLA_2 : BPIの4種類が含まれることを見出した。このうち、PLA2は日本南西諸島ハブ属ヘビ毒PLA2と完全に一致していた。また、強力な筋壊死成分である[Lys^<49>]PLA2はBPIの1種類しか含まれていないこと、塩基性[Asp^<49>]PLA_2アイソザイムはトカラハブ毒特異的なアミノ酸置換が3箇所含まれることがわかった(投稿準備中)。【イヘヤジマハブ(伊平屋島)】この粗毒には、溶血性の中性[Asp^<49>]PLA_2 : PLA2、浮腫誘導性の塩基性[Asp^<49>]PLA_2 : PL-Y(仮)、神経毒性の塩基性[Asp^<49>]PLA_2 : PLA-N(0)の3種類が含まれることを見出した。このうち、PLA2は日本南西諸島ハブ属ヘビ毒PLA2と完全に一致していた。また、強力な筋壊死成分である[Lys^<49>]PLA_2は偽遺伝子化していること、塩基性[Asp^<49>]PLA_2アイソザイムはイヘヤジマハブ特異的なアミノ酸置換が2箇所含まれることがわかった(投稿準備中)。【mtDNA全塩基配列の決定とハブ属ヘビの系統解析】小宝島、奄美大島、徳之島、伊平屋島、久米島、西表島のハブのmtDNAの全塩基配列を決定し、これらが北部、中部、南部の3つのクレードを形成することを見出した。 | KAKENHI-PROJECT-18687016 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18687016 |
リアルタイム抗がん剤濃度コントロールによる革新的閉鎖循環下骨盤内抗がん剤灌流療法 | 本研究では即時的血中プラチナ濃度測定法をウサギモデルとブタモデルを用いて研究する予定であったが、有効な即時的血中プラチナ濃度測定法の確立に至ることができなかった。ウサギモデルおよびブタモデルに於いてプラチナ濃度計測実験を行い得た。また、企業や有識者と会議を行い今後の研究に有用な見識を得ることができた。期間途中での所属変更も重なったことが要因の一つと考えられた。平成27年度は即時的血中プラチナ濃度測定とウサギモデルにおける骨盤内灌流療法モデルの作成およびブタモデルにおけるリアルタイム抗がん剤濃度コントロール法の確立を行う予定であった。即時的血中プラチナ濃度測定では、血中タンパクに抱合されていないフリープラチナ濃度の測定に時間がかかるため即時のプラチナ濃度計測法の確立が肝要である。今年度はまず血中プラチナ濃度測定を実際に行ったが、時間的制約および測定誤差が非常に大きいことから5分以内の即時的濃度測定法は確立し得なかった。またウサギモデルを使用して閉鎖循環回路作成のための予備実験を行った。閉鎖循環回路のため右大腿動静脈に4Frシースを挿入し骨盤部血管造影を行った。ウサギモデルにおける骨盤部血管造影は手技的に問題なく可能であり、両側内腸骨動脈の描出は良好であった。骨盤部閉鎖循環下灌流療法の作成は可能と考えられた。この時点で即時的血中プラチナ濃度測定法の確立がなしえていないため、資材や資源を投入する必要のあるウサギモデルによる実験は、余剰な出費となると考えられたため、閉鎖循環下骨盤内灌流療法のウサギモデル作成は不要と考えられた。また、H27年度中に予定していたブタモデルにおけるリアルタイム抗がん剤濃度コントロール法の確立を行う予定であったが、こちらも同様に計測法の確立をなしえていないため、翌年度以降に持ち越すこととした。本手法の検討につき識者との面会や口頭における検討を学会や研究会に合わせて実施した。来年度以降は即時的血中プラチナ濃度計測について企業との会議や検体提供を含め引き続き検討や必要に応じ実験を実施していく。プラチナ濃度の即時プラチナ濃度測定法が確立した時点でブタモデルによるリアルタイム抗がん剤濃度コントロール法を作成すべく実験を行っていく予定である。即時的プラチナ濃度測定法の確立に時間がかかっており、これが本研究のキーとなるため本研究は遅れている。本法の確立ができた時点でブタモデルによるリアルタイム抗がん剤濃度コントロール法の実験に移る予定であり、ブタモデルにおける通常の閉鎖循環下骨盤内灌流療法は既に実験済みであることから、プラチナ濃度測定と濃度コントロール法の確立に即座に移行できる体制である。平成28年度は即時的プラチナ濃度計測について企業との会議や検体提供を行う予定であった。また即時的プラチナ濃度計測法が確立した時点ブタモデルによるリアルタイム抗がん剤濃度コントロール法を確立していく方針としていた。即時的プラチナ濃度計測法確立に先立ち動物実験での血中プラチナ濃度計測用のサンプルを作成する必要があり、ボストンサイエンティフィック社との共同研究を締結し、宮崎にあるボストンサイエンティフィック社の動物実験施設に於いて動物実験を行った。平成28年度中には即時的プラチナ濃度計測法の確立は困難であり、結果的に本年度予定されていたリアルタイム抗がん剤濃度コントロール法の実験的検証には至らなかった。しかしながら、本手法の検討について識者との面会や口頭における検討を学会や研究会に合わせて実施した。また、昨年時点で閉鎖循環下骨盤内抗がん剤灌流療法が先進医療Bとして認可され、それに伴い臨床試験でのプロトコルが確立し、閉鎖循環に用いる抗がん剤の剤型が液剤から粉末に変更となった。これを受けて、今後、本研究におけるリアルタイム抗がん剤濃度コントロール法の有用性はより高まったと考えられた。これらから平成28年度に予定されていた即時的プラチナ濃度計測によるリアルタイム抗がん剤濃度コントロール法のブタモデル実験には至らなかった。平成29年度は引き続き即時的プラチナ濃度計測法確立のため、企業との打ち合わせや識者との会合を重ねていく方針である。また、研究代表者である小野澤志郎が平成29年4月より帝京大学へ異動となったため、動物実験施設の確保から行う必要があり、当初の計画より大きな予算が動物実験に必要となる可能性が考えられた。即時的プラチナ濃度測定法の確立に時間がかかっており、これが本研究のキーとなるため本研究は遅れている。一方で、すでにブタにおける閉鎖循環下骨盤内抗がん剤灌流療法モデルは十分に実験済みであるため、即時的プラチナ濃度計測が可能となれば、動物実験に移行可能であるものの、所属施設の異動に伴い動物実験施設の確保が予算上困難となる可能性が考えられる。このため、動物実験を行える企業との連携、共同研究も合わせて行ってく必要が生じている。平成29年度は引き続き即時的プラチナ濃度計測法確立のため、企業との打ち合わせや識者との会合を重ね、さらに異動先の帝京大学において動物実験を行う方針であった。しかしながら、予算および動物実験のための倫理員会書類作成、許可など多くの事務作業が生じてしまったため、当初の計画通りの実験を遂行することができなかった。平成27年度から28年度にかけての実験計画の遅延と施設の移動が大きく関与する形となったと考えられた。このため、研究予算の有効活用と今後の検討を計画するため、国内外の専門家や企業との会合を行うことを平成29年度の主方針とした。一昨年時点で閉鎖循環下骨盤内抗がん剤灌流療法が先進医療Bとして認可され、それに伴い臨床試験でのプロトコルが確立し、閉鎖循環に用いる抗がん剤の剤型が液剤から粉末に変更となった。 | KAKENHI-PROJECT-15K19821 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K19821 |
リアルタイム抗がん剤濃度コントロールによる革新的閉鎖循環下骨盤内抗がん剤灌流療法 | 粉末製材では今までの液体製剤より高濃度のプラチナを目的部位に灌流することが可能となるため、本研究におけるリアルタイム抗がん剤濃度コントロール法の有用性はより高まったと考えられた。灌流時間や透析時間の検討にも即時的プラチナ濃度計測は重要な課題であるため、引き続き研究計画をブラッシュアップする必要があると考えられた。一方で粉末製剤は液体製剤に比較して高価であるため、実験予算の分配が重要であることが再認識された。以上から平成29年度は施設面および予算面から主に企業との打ち合わせと国内外の専門家との打ち合わせ、会合を行うにとどまった。現時点で即時的プラチナ濃度計測法の確立に至ることはできなかった。本研究では即時的血中プラチナ濃度測定法をウサギモデルとブタモデルを用いて研究する予定であったが、有効な即時的血中プラチナ濃度測定法の確立に至ることができなかった。ウサギモデルおよびブタモデルに於いてプラチナ濃度計測実験を行い得た。また、企業や有識者と会議を行い今後の研究に有用な見識を得ることができた。期間途中での所属変更も重なったことが要因の一つと考えられた。即時的血中プラチナ濃度測定法の確立のため、企業と検討を行っていく。場合によっては他企業の模索も必要になると考えられ、そちらも平行して調査していく予定である。プラチナ濃度測定法が確立し次第、ブラモデルにおけるリアルタイム抗がん剤濃度コントロール法の実験に移行する予定である。本研究における現時点での課題は大きく2点あり、1点は即時的プラチナ濃度計測法の確立が当初予定していたものよりも困難であった点、2点目は動物実験施設確保が困難である点である。1点目は、今後他企業を含めて打ち合わせを行い、必要に応じて検体提供などを行い平成29年度中に本法の確立を目指す方針である。2点目については、予算上の問題が大きく関与しており、予算残額とも合わせて、動物実験施設のある企業と共同研究を行うことで、実験予算の低減を目指す方針である。概ね予算の予定通りに使用できた。少額の調整を行わなかったため、次年度に4401円が持ち越された。コンピューターソフトウェアを購入予定であったが、予算不足であったため、翌年度に持ち越すこととした。予定通り使用していく計画であるコンピューターソフトウェア(endonete)を購入予定である。 | KAKENHI-PROJECT-15K19821 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K19821 |
糖尿病スクリーニングの最適な測定間隔に関する研究 | 初年度、健診患者における糖尿病のリスク分類ごとHbA1cの経時的な傾きを把握し、健診における測定間隔を検討した。糖尿病リスクが高い集団ほど、HbA1c検査の最適な測定間隔は短くなり、健常者ほど長くなることがわかり、日本で現在行われているような毎年の健診は必要がないことが示唆された。2年目は、血糖状態が安定している糖尿病患者の最適なHbA1c検査の測定間隔を検討した。日本では2ヶ月程度に1度検査が行われているが、年1度で十分であることが示唆された。最終年はリスク分類ごとに測定間隔を変えるスクリーニングが毎年の健診よりも費用効果がよいことを証明する分析を行った。平成26年度は、計画通りに分析が完了し、既に論文作成に着手している。抄録を下に示す。【背景】日本では、多くの成人(就業者)は年に1度の健診を受診して、HbA1cの測定も行って糖尿病のリスクをモニタリングしているが、毎年の検査は頻度が高すぎるとの指摘もある。Kahnらは、30歳45歳の米国の健常者はHbA1cの測定は35年で十分であるという報告している。日本のデータを用いた分析結果は未だ報告がない。【目的】1)最適なHbA1c測定間隔を血液検査のSignalとNoiseを考慮し提案する。2)最適なHbA1c測定間隔を提案するとき、どの層別を採用すべきかを検討する。【方法】2005年1月2014年12月に聖路加国際病院予防医療センターを2度以上受診した30歳以上の健常者66805名。統計解析にはランダムエフェクトモデルを用いて、B値の分散値をSignal、モデルから得られたHbA1cと実測のHbA1cの残差をNoiseとし、SignalとNoiseの積が1を超える時間を最適な測定間隔と定義した。また、フラミンガムスコア(0-5%、5-10%、10-15%、15-20%、20%以上)、家族歴(あり、なし)、BMIカテゴリー(25未満(正常)、25-27(太り気味)、27以上(太りすぎ))の層別化分析を行い、どの層別が最も測定間隔に違いをもたらすかを検討した。【結果】最も測定間隔に違いをもたらす層別はBMIカテゴリーで、BMIが正常な者は9.5年に1度の測定間隔が最も適しており、太り気味の者は5.5年、太りすぎの者は4.5年であった。【結語】DMのリスクが高いと考えられる者ほど測定間隔が短くなる測定間隔を提案することができた。1年に1度の健診は太りすぎの者であっても必要がなく、現在行われている年1度の測定は、頻度が高すぎると考えられる。昨年度に分析を完了した、1つ目の課題(H26年度)である健常者におけるHbA1cの最適な測定間隔について、さらにコホート(山梨県のデータを加えることで研究結果の一般化の向上を図った)を追加して再分析を行った。論文の執筆を完了し、ジャーナルへの投稿した。現在、BMC Medicineからの結果を待っているところである。2つ目の課題(H27年度)であるDM患者の測定間隔の研究についても分析を行った。概要としては、糖尿病と診断された患者のHbA1cの推移、薬剤投与、蛋白尿、eGFR、クレアチニンなどの腎機能のデータを入手し、4500名の糖尿病患者の最適な測定間隔を求めることを目的としている。データを取り寄せてみたところ、糖尿病患者が糖尿病と診断されてからの治療計画が様々であり、データ取り扱いに苦労していたが、薬剤治療開始後、HbA1cコントロールが良好な患者を定義して、健常者のデータ同様にHbA1cのSignalとNoiseを算出し、最適な測定間隔の算出をした。分析の最終確認を行った後、論文の作成に移行する予定である。また今年度は、次年度予定(H28年度)している費用効果分析の準備も行った。費用効果分析に必要なツリーの作図については完了している。1年間かけて必要なデータをそろえ、費用効果分析を次年度完了する予定である。糖尿病患者のデータを入手して、糖尿病患者の治療計画が様々でありデータ取り扱いに苦労したが、薬剤治療開始後、HbA1cコントロールが良好な患者を対象とすることで、分析が成功し、SignalとNoiseを計算することができた。今年度は次年度(H28年度)検討している費用効果分析についても進展することができたため、全体としては、ほぼ計画通り、おおむね順調に進展している。本研究は、3つのテーマに沿って研究を行い、1)健診患者における糖尿病のリスク分類ごとHbA1cの経時的な傾きを把握し、健診における測定間隔を検討し、2) II型糖尿病治療を開始している患者にとって重大な合併症である、糖尿病性腎症や透析導入、心血管イベントを避けるためにどのくらいの測定間隔が妥当であるかを検討し、最後に3)糖尿病歴のない成人男女にはどのくらいの測定間隔で糖尿病スクリーニングを実施することが最も費用効果が高いかを検査料、薬価、日本人における合併症の発生頻度を推定して検討する。であった。 | KAKENHI-PROJECT-26860429 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26860429 |
糖尿病スクリーニングの最適な測定間隔に関する研究 | 1)の健診患者を対象としたHbA1cの測定間隔は、仮説通りリスク分類にBMI、フラミンガムスコアを採用し、肥満になればなるほど、心血管イベントリスクが上がれば上がるほど、最適な測定間隔が短かくなることが確認できた。本研究は、Ohde S et al. Diabetesscreening intervals based on riskstratification. BMC Endocrine Disorders.2016:16(1), 65.として論文発表した。2)のII型糖尿病治療を開始している患者の測定間隔については、薬剤治療開始後のHbA1cが7.0以下で安定した患者を対象にHbA1cの測定間隔について検討した。結果、欧米の現行のガイドラインでは3-6ヶ月に1度のHbA1cが推奨されていて、日本においては2-3ヶ月に1度の外来受診でHbA1c検査が行われているが、HbA1c検査の特性を加味すれば1年に1度の検査で十分であることがわかった。本研究は、論文にまとめDiabetes Research and Clinical Practiceに投稿し、結果を待っているところである。3)の費用効果分析については、すべての必要パラメーターの収集とモデル構築を終え分析中である。初年度、健診患者における糖尿病のリスク分類ごとHbA1cの経時的な傾きを把握し、健診における測定間隔を検討した。糖尿病リスクが高い集団ほど、HbA1c検査の最適な測定間隔は短くなり、健常者ほど長くなることがわかり、日本で現在行われているような毎年の健診は必要がないことが示唆された。2年目は、血糖状態が安定している糖尿病患者の最適なHbA1c検査の測定間隔を検討した。日本では2ヶ月程度に1度検査が行われているが、年1度で十分であることが示唆された。最終年はリスク分類ごとに測定間隔を変えるスクリーニングが毎年の健診よりも費用効果がよいことを証明する分析を行った。平成26年度は、計画通りに分析が完了し、既に論文作成に着手している。また、2年目で計画している糖尿病患者のデータセットも入手し、すでに分析を開始している。糖尿病患者を対象とした分析をH28年度早々に終わられせ、論文を書きあげる予定である。続いて、H28年度に予定している費用効果分析に着手する予定である。臨床疫学今年度は、糖尿病患者のデータを用いて、合併症なども含めたモデルの構築を試み、3年度に予定している費用効果分析モデルの準備も進めていく予定である。研究計画書に記載してあるとおり、オックスフォード大学、山梨大学とも定期的なミーティングを行いながら研究を進めており、今後もスカイプなどを用いて定期的な会議を開催しながら進めていく予定である。旅費が思った以上に支出が少なく、多くの会議がスカイプミーティングで済んだこと。書籍購入を内部研究費で賄うことになったことによる修正次年度に繰り越し、現在投稿している論文の出版費用に充てたいと考えます。論文投稿費に充てる予定 | KAKENHI-PROJECT-26860429 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26860429 |
光ファイバ遅延時間高速走査法による低コヒーレンス干渉計測の研究 | 第一に、2モードファイバのモード間の音響光学結合を利用して機械的可動部のない時間遅延走査法を開発した。ボウタイ型高複屈折(HiBi)ファイバ(遮断波長830nm)を使用し、中心波長740nm、コヒーレンス長35μmのSLDでLP_<01>モードを励振する。ファイバは被覆を除去して直線状に張り両端をV溝に固定する。ファイバの一点に小さなAl製円錐ホーンの尖端を接着剤で接合する。ホーンをPZTディスクにマウントし、PZTをファイバのビート長が音波波長と等しくなる11.07MHzの高周波矩形バーストパルス信号で変調することでLP_<11>モードへの変換を発生させ、これにより時間遅延差4.3ps/mの移動ビームスプリッタを実現した。音波パルスによるモード間結合はLP_<01>モードの損失測定から810%と見積られた。干渉ピーク位置の測定から音波の群速度は3636m/sであり、このファイバ音響光学スキャナは2.08psの時間遅れを145μsで走査することができた。第二に、開発した遅延時間走査法の低コヒーレンス・ファイバ干渉計測への応用を研究した。ファイバ音響光学スキャナを用いて低コヒーレンス干渉計を構成し、発生した生の干渉信号をアナログ回路を使って干渉縞束の包絡線およびその微分曲線を出力した後、高速比較器によって方形波パルス化した。方形波の立ち下がり位置を2台の時間間隔測定カウンタを用いて測定することで、時間遅延を絶対測定した。センサ実験として、偏光軸を傾けて縦接続した2本のHiBiファイバを用い、それをチェンバ内に挿入した。チェンバの温度を20、32、45、65°Cと階段的に変え、0-1600μεの引張り歪みをファイバに印加した。得られた温度、歪み感度はそれぞれK_T=-2.4fs/°C-m^<-1>、K_ε=0.014fs/μεであった。カウンタ出力の標準偏差から求めたセンサ分解能は0.7°C、40μεと良好な結果が得られ、歪み温度の分離・絶対測定を可能にする新しい有効な手法が実証できた。第一に、2モードファイバのモード間の音響光学結合を利用して機械的可動部のない時間遅延走査法を開発した。ボウタイ型高複屈折(HiBi)ファイバ(遮断波長830nm)を使用し、中心波長740nm、コヒーレンス長35μmのSLDでLP_<01>モードを励振する。ファイバは被覆を除去して直線状に張り両端をV溝に固定する。ファイバの一点に小さなAl製円錐ホーンの尖端を接着剤で接合する。ホーンをPZTディスクにマウントし、PZTをファイバのビート長が音波波長と等しくなる11.07MHzの高周波矩形バーストパルス信号で変調することでLP_<11>モードへの変換を発生させ、これにより時間遅延差4.3ps/mの移動ビームスプリッタを実現した。音波パルスによるモード間結合はLP_<01>モードの損失測定から810%と見積られた。干渉ピーク位置の測定から音波の群速度は3636m/sであり、このファイバ音響光学スキャナは2.08psの時間遅れを145μsで走査することができた。第二に、開発した遅延時間走査法の低コヒーレンス・ファイバ干渉計測への応用を研究した。ファイバ音響光学スキャナを用いて低コヒーレンス干渉計を構成し、発生した生の干渉信号をアナログ回路を使って干渉縞束の包絡線およびその微分曲線を出力した後、高速比較器によって方形波パルス化した。方形波の立ち下がり位置を2台の時間間隔測定カウンタを用いて測定することで、時間遅延を絶対測定した。センサ実験として、偏光軸を傾けて縦接続した2本のHiBiファイバを用い、それをチェンバ内に挿入した。チェンバの温度を20、32、45、65°Cと階段的に変え、0-1600μεの引張り歪みをファイバに印加した。得られた温度、歪み感度はそれぞれK_T=-2.4fs/°C-m^<-1>、K_ε=0.014fs/μεであった。カウンタ出力の標準偏差から求めたセンサ分解能は0.7°C、40μεと良好な結果が得られ、歪み温度の分離・絶対測定を可能にする新しい有効な手法が実証できた。低コヒーレンス光を用いる干渉計測法(LGI)は、レーザ干渉法では困難な光路差を絶対計測や位置のコード化による分布計測が可能であり、強い関心を集めているが、本研究では光ファイバを同一方向に進行する2つのモード間の音響光学結合と光ファイバのモード分散を利用してLCIにおける遅延時間走査を行う超音波駆動の光ファイバ遅延時間走査方式(FTDS)を開発した。これは2モードファイバを受信干渉計の2つのアームとし、PZTにより超音波パルスを照射すると超音波パルスは等速移動ビームスプリッターとして働くので光路差の走査が高速で行われることを利用している。1.全ファイバ音響光学遅延時間スキャナー(FTDS)の開発単一モードファイバピグテ-ルSLD光を、ファイバ偏光子を通し、ファイバ偏光コントローラで、2モードHiBiファイバの一偏光基本モードLP_<01>(x)を励起し、LP^<even>_<11>(x) | KAKENHI-PROJECT-09450027 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09450027 |
光ファイバ遅延時間高速走査法による低コヒーレンス干渉計測の研究 | へのモード変換を起こさせることができることを確認した。次にコーティングを一部除去し軽く引っ張りを加え緊張状態にした50cm程度の2モードファイバの側面からPZTディスクに装着した円錐振動子を精密に位置制御して接触させ、電気短パルスをミックスした正弦波駆動信号を印可することによって励振超音波パルスを周期的に発生させられることができ、この超音波パルスにより2モードファイバ中で光路差の走査が高速で行われることを確認し、FTDSの基本動作を実現することができた。2.信号処理システムの研究計測の実時間性、単純性を重視し、ロ-パスフィルタ、微分回路、飽和増幅回路を構成要素とする高速アナログ信号処理電子回路を作成した。この回路により干渉出力信号のフリンジ位置を測定することが可能となった。3.干渉計実験作成したFTDSを用いファイバ歪みセンサや歪み/温度の同時測定等の干渉計実験を行い基礎的知見を得た。第一に、2モードファイバのモード間の音響光学結合を利用して機械的可動部のない時間遅延走査法を開発した。ボウタイ型高複屈折(HiBi)ファイバ(遮断波長830nm)を使用し、中心波長740nm、コヒーレンス長35μmのSLDでLP_<01>モードを励振する。ファイバは被覆を除去して直線状に張り両端をV溝に固定する。ファイバの一点に小さなAl製円錐ホーンの尖端を接着剤で接合する。ホーンをPZTディスクにマウントし、PZTをファイバのビート長が音波波長と等しくなる11.07MHzの高周波矩形バーストパルス信号で変調することでLP_<11>モードへの変換を発生させ、これにより時間遅延差4.3ps/mの移動ビームスプリッタを実現した。音波パルスによるモード間結合はLP_<01>モードの損失測定から810%と見積られた。干渉ピーク位置の測定から音波の群速度は3636m/sであり、このファイバ音響光学スキャナは2.08psの時間遅れを145μsで走査することができた。第二に、開発した遅延時間走査法の低コヒーレンス・ファイバ干渉計測への応用を研究した。ファイバ音響光学スキャナを用いて低コヒーレンス干渉計を構成し、発生した生の干渉信号をアナログ回路を使って干渉縞束の包絡線およびその微分曲線を出力した後、高速比較器によって方形波パルス化した。方形波の立ち下がり位置を2台の時間間隔測定カウンタを用いて測定することで、時間遅延を絶対測定した。センサ実験として、偏光軸を傾けて縦接続した2本のHiBiファイバを用い、それをチェンバ内に挿入した。チェンバの温度を20、32、45、65°Cと階段的に変え、0-1600μεの引張り歪みをファイバに印加した。得られた温度、歪み感度はそれぞれK_T=-2.4fs/°C・m^<-1>、K_e=0.014fs/μεであった。カウンタ出力の標準偏差から求めたセンサ分解能は0.7°C、40μεと良好な結果が得られ、歪み温度の分離・絶対測定を可能にする新しい有効な手法が実証できた。 | KAKENHI-PROJECT-09450027 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09450027 |
地球放射線帯の相対論的エネルギー電子の加速メカニズムの観測とモデルからの解明 | 人工衛星「あけぼの」の放射線モニター観測により、内部磁気圏に存在する高エネルギー電子放射線帯外帯では、数時間という短時間で高エネルギー電子強度が増大することを確認した。放射線帯モデルを使った計算機シミュレーションをおこない、磁気嵐の大規模サブストームによる磁場変動が引き起こす誘導電場による電子の輸送と加速が、観測と一致する時間スケールで、放射線帯を再構築できることを検証した。人工衛星「あけぼの」の放射線モニター観測により、内部磁気圏に存在する高エネルギー電子放射線帯外帯では、数時間という短時間で高エネルギー電子強度が増大することを確認した。放射線帯モデルを使った計算機シミュレーションをおこない、磁気嵐の大規模サブストームによる磁場変動が引き起こす誘導電場による電子の輸送と加速が、観測と一致する時間スケールで、放射線帯を再構築できることを検証した。人工衛星「あけぼの」搭載の放射線モニターによる地球放射線帯の観測を継続し、1989年3月から2011年3月まで、太陽活動周期11年の2倍に当たる22年間のデータの蓄積を続けている。このような長期間の放射線帯の高エネルギー電子強度の継続的な観測は、世界でも例がない。太陽活動周期の4つの相(発達、極大、減衰、極小)においての代表的な放射線帯外帯の高エネルギー電子の分布について、予備的な結果を得た。しかしながら、太陽活動は周期性から2010年にはかなり高くなり極大期になると予測されたが、低活動期が継続したため、太陽活動が高くなりつつある発達相での高エネルギー電子の分布についての信頼できるデータが不足している。さらに2年ある研究期間の観測の継続によって、より完全なデータとすることとする。一方、放射線外帯での急速な(1時間程度)高エネルギー電子強度の増加については2006年に、「磁気嵐中のサブストームが引き起こす大規模な双極子型への磁場変動中に誘導される電場によって、電子が加速と輸送される」というモデルを提案していた。この実証のために、2008年9月4日のイベントについて、太陽風のデータを入力として磁気圏の大規模構造についてモデル計算し、内部磁気圏の磁場と電場の時間空間分布を求め、その場の中で放射線帯変動のシミュレーションを行った。ほぼ期待されるように、高エネルギー電子が加速輸送されるという結果を得た。提案したモデルを実証するために、いろいろな場合に相当する多くのイベントについてシミュレーションを行いモデルの実証を目指せる基礎ができあがった。人工衛星「あけぼの」搭載の放射線モニターによる地球放射線帯の観測を継続することにより、1989年3月から2012年3月まで、太陽活動周期11年の2倍以上に当たる23年間のデータベースの作成を続けている。このような長期間の放射線帯の高エネルギー電子強度の継続的な観測は、世界でも例のないものとなっている。今まで行ってきた検出器のキャリブレーションについてのGIANT4を使った計算機シミュレーションについて、まとめられるようになった。高エネルギーの電子チャンネルについては、ほぼ設計に合う粒子検出効率があることを確認した。しかし、低いエネルギーの電子チャンネルについては、粒子検出効率が低いことがわかり、観測結果の解釈に注意することが必要なことがわかった。このことにより、一般のデータユーザーへのデータベースの公開の方針を確立できた。2008年9月と2009年7月の磁気嵐により引き起こされた放射線帯外帯の高エネルギー電子フラックスの急激な増加が、Nagai et al. (2006)により提案されたモデル「磁気嵐中の大規模サブストームにともなる磁場変動が作る誘導電場による電子の加速」により説明できるか、計算機実験を行った。「サブストームのような大きな磁場変動ない状態での磁気嵐による大規模対流電場」や「波動による電子加速」だけでは、放射線帯外帯で十分な量の電子の加速が起きないことを示した。磁気圏全体を観測された太陽風を入力としてMHDモデルにより、静止軌道で実際に観測された急激な磁場電場変動のあるなかでの電場磁場の中で電子の輸送加速を計算した場合のみ、放射線外帯の電子のフラックス増加を作り出せることが示された。このことにより、Nagai et al. (2006)により提案されたモデルの有効性を示した。人工衛星「あけぼの」搭載の放射線モニターによる地球放射線帯の観測を継続することにより、1989年3月以来から2013年3月まで、太陽活動周期11年の2倍以上に当たる24年間のデータベースの作成を続けている。アメリカの人工衛星SAMPEXが2012年末に寿命となったこと、2機の編隊衛星Van Allen Probes (Radiation Belts Storm Probes)の観測が2012年9月から始まったことにより、観測継続の重要性は高まってきている。Nagai et al. (2006)により提案されたモデル「磁気嵐中の大規模サブストームにともなる磁場変動が作る誘導電場による電子の加速」がどのような場合に有効に働いているかについて、2010年3月-8月の期間の観測、特に4つの磁気嵐期間に得られた「あけぼの」のデータについて、他の衛星NOAAとGOESや地上観測との詳細な比較検討を行った。これらの4つの例については、放射線帯外帯の電子フラックスの増加は、3時間以内にかなりの電子加速が、進んでいることを示した。このことは、従来言われている「波による電子加速」の典型的時間スケールの半日から1日程度に比べ、かなり短いため、「波による電子の加速」だけでは、これらの電子加速を説明できない可能性を示した。 | KAKENHI-PROJECT-22540458 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22540458 |
地球放射線帯の相対論的エネルギー電子の加速メカニズムの観測とモデルからの解明 | ただし、サブストームによる大規模磁場電場の変動については、これらの例では、よい位置に観測衛星がなかったため、不十分な結果である。このことは、Nagai et al. (2006)により提案されたモデルの厳密な検証とはならないが、モデルを支持するものであることが示せた。さらに、「電子の加速」のメカニズムを厳密に検証するためにどのようなことが必要かも示せた。本研究では、人工衛星「あけぼの」による観測を継続し、Nagai et al. (2006)において提唱した「磁気嵐中の大規模サブストームによる電場による電子の直接的加速」について、検証することであった。観測機器は順調に観測を継続できているうえ、観測機器のキャリブレーションについても、一定の結論を得ることができた。大規模の磁気圏と放射線帯を結合したシミュレーションを行うことにより、大規模サブストームで、十分な量の電子の輸送と加速ができることを示せた。24年度が最終年度であるため、記入しない。本研究で行っている人工衛星「あけぼの」による観測を継続するとともに、今年度行ってシミュレーションを行ったような観測レにについて、さらに解析を継続する。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22540458 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22540458 |
磁場による極冷中性子閉込め制御の基礎研究 | 核融合研究で開発された磁場によるプラズマ閉じ込め方式を利用して、磁気双極子モーメントを持つ中性子の輸送、閉じ込めに関する基礎研究を行なった。一般的な従来の方式は中性子ミラーによる反射を利用する方式であるが、磁場を利用した方式では、ミラーの表面や接続部で起こる中性子の損失や漏洩が避けられ、中性子の純粋な輸送、閉じ込めが実現できる。(1)多極磁場配位を用いた中性子輸送断面5cm×3.5cm、長さ30cmの真空配管外側に永久磁石列を配置し、配管内部にオクタポール磁場を形成し、中性子輸送の実験を行った。装置を京大原子炉実験所のUCN(超冷中性子)発生装置に取付けて測定した。測定結果は、中性子軌道についての計算機シミュレーションで得られた結果と一致し、多極磁場配位による中性子輸送の有効性が確認された。(2)UCN閉じ込め装置の設計製作と予備実験2種類の閉じ込め方式を検討した。(a)2本のリングコイルの作るミラー磁場と、ミラーの中心軸に平行に円筒管上に配置した偶数の直線電流により生じる多極磁場を重ね合わせてできる絶対極小磁場配位を検討した。しかし、原子炉内ではコイル用冷却水に使用制限があること、又実際の装置を設計した場合閉じ込められる中性子のエネルギー範囲と閉じ込め空間がかなり小さくなることが分かった。(b)プラズマ閉じ込めに使用されている永久磁石列による多極磁場配位で最適化を行った結果、閉じ込め有効ポテンシャル20neV、閉じ込め空間約23,000cm^3を持つ装置が設計できた。後者を採用し、装置を設計製作した。閉じ込められた中性子の測定法として、中性子崩壊時に放出される陽子を、閉じ込め容器の上方部に置かれた半導体検出器(-50100kV印加)で検出する方式を検討した。容器内(静電場と多極磁場が存在)各点で発生した陽子を計算機で軌道追跡した結果、約40%の検出効率が得られた。更に補正電極の取付け等を含め最適化を行えば、高検出効率が得られると判断される。一方、京大原子炉内で半導体検出器の試験を行ったが、γ線によるノイズレベルが高く、S/N比の改善が必要であることが分かった。今後は京都大学原子炉実験所との共同研究により、製作したUCN閉じ込め装置による中性子の輸送、閉じ込めに関する研究を引き続き行なう予定である。核融合研究で開発された磁場によるプラズマ閉じ込め方式を利用して、磁気双極子モーメントを持つ中性子の輸送、閉じ込めに関する基礎研究を行なった。一般的な従来の方式は中性子ミラーによる反射を利用する方式であるが、磁場を利用した方式では、ミラーの表面や接続部で起こる中性子の損失や漏洩が避けられ、中性子の純粋な輸送、閉じ込めが実現できる。(1)多極磁場配位を用いた中性子輸送断面5cm×3.5cm、長さ30cmの真空配管外側に永久磁石列を配置し、配管内部にオクタポール磁場を形成し、中性子輸送の実験を行った。装置を京大原子炉実験所のUCN(超冷中性子)発生装置に取付けて測定した。測定結果は、中性子軌道についての計算機シミュレーションで得られた結果と一致し、多極磁場配位による中性子輸送の有効性が確認された。(2)UCN閉じ込め装置の設計製作と予備実験2種類の閉じ込め方式を検討した。(a)2本のリングコイルの作るミラー磁場と、ミラーの中心軸に平行に円筒管上に配置した偶数の直線電流により生じる多極磁場を重ね合わせてできる絶対極小磁場配位を検討した。しかし、原子炉内ではコイル用冷却水に使用制限があること、又実際の装置を設計した場合閉じ込められる中性子のエネルギー範囲と閉じ込め空間がかなり小さくなることが分かった。(b)プラズマ閉じ込めに使用されている永久磁石列による多極磁場配位で最適化を行った結果、閉じ込め有効ポテンシャル20neV、閉じ込め空間約23,000cm^3を持つ装置が設計できた。後者を採用し、装置を設計製作した。閉じ込められた中性子の測定法として、中性子崩壊時に放出される陽子を、閉じ込め容器の上方部に置かれた半導体検出器(-50100kV印加)で検出する方式を検討した。容器内(静電場と多極磁場が存在)各点で発生した陽子を計算機で軌道追跡した結果、約40%の検出効率が得られた。更に補正電極の取付け等を含め最適化を行えば、高検出効率が得られると判断される。一方、京大原子炉内で半導体検出器の試験を行ったが、γ線によるノイズレベルが高く、S/N比の改善が必要であることが分かった。今後は京都大学原子炉実験所との共同研究により、製作したUCN閉じ込め装置による中性子の輸送、閉じ込めに関する研究を引き続き行なう予定である。 | KAKENHI-PROJECT-07454093 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07454093 |
リアルタイム3D超音波断層法による僧帽弁輪立体構造の計測と弁逆流発生機序の解析 | 心臓を構成する左心室、僧帽弁、大動脈弁の機能障害は重篤な結果を引き起こすため、その診断治療は社会的にも重要な課題である。そのため、弁尖部の動態評価や、弁逆流の診断が行われ、治療・外科手術が実施されてきた。しかし従来は方法論的制約のため、2次元の超音波断層法による撮像が主体であり、来立体的構造を持つ弁輪形態を平面的に2次元で評価するに止まっていた。本研究は、リアルタイム3D超音波診断装置により僧帽弁構造を立体的に計測して弁輪構造の三次元的動態解析を行い、僧帽弁逆流発生機序を解明することを目的とする。最終年度は、これまで試作したプログラムの検証と臨床応用への具体的検討を実施した。(1)弁輪構造の定量的評価法の確立:抽出した弁輪構造を定量的に評価する指標について検討した。弁輪形態は健常時には鞍馬状の形態をしている為、単純に二次元平面に展開した弁輪形態の長径、短経のみならず、心室長軸方向への変形(弁輪高さ)の評価を行った。人工弁輪の形状計測による、弁輪構造の評価精度を検討した結果、超音波断層装置の画素サイズの3倍以下(2mm以下)の精度を維持できることがわかった。(2)臨床計測による検討:3D心エコー法を用いた弁輪構造のリアルタイム評価を行い、各種疾患モデルと弁輪構造の特徴を明らかにするため、臨床計測を実施した。これまでの基礎検討結果を元にして、臨床でルーチンとして実施している心エコー検査時に3Dエコーの検査をあわせて実施し、臨床診断への応用を図った。実際の計測では、計測時間は7心拍だけのため、息止め時間は10秒程度であった。そのため、測定を実施できない例はなく、被験者への負担は通常のエコー検査と同程度であった。健常者の弁輪形状は開口面に対して収縮期には湾曲が強く、拡張期には平坦化した。一方、僧帽弁逆流患者の弁輪形状は収縮期においても弁輪の湾曲は少なく平坦であることが明確になった。人口構造の超高齢化に伴い心疾患患者が増加している。特に心臓を構成する左心室、および僧帽弁、大動脈弁の機能障害は重篤な結果を引き起こすため、それらの診断治療は社会的にも重要な課題となっている。そのため、これまで超音波診断装置に代表される各種の医療機器を用いて、弁尖部の動態評価や、弁逆流の診断が行われ、治療・外科手術が実施されてきた。本研究では、リアルタイム3D超音波診断装置により僧帽弁構造を立体的に計測して弁輪構造の三次元的動態解析を行い、僧帽弁逆流発生機序を解明することを目的とした。本年度はリアルタイム3D超音波装置により得られる心エコー像(3Dデータ)から弁輪構造を抽出する手法について検討した。(1)超音波プローブのアプローチの検討:大型実験動物(犬)の弁輪構造により基本的なアプローチを検討した。基本ルーチンとして、前胸壁心尖部アプローチにて二次元断層像を確認し、90度回転断層像で2腔断層像、225度回転断層像で心尖部長軸断層像を描出確認した後、リアルタイムにて僧帽弁輪を含む3D心エコー像(3Dデータ)を取得するプロトコールを確立した。(2)弁輪構造抽出:取得した3D心エコー像(3Dデータ)から、弁輪部の検出をおこなうため、解析システムを用いて3Dデータから僧帽弁輪構造を含む断層像を作成(画像処理)し、心長軸を回転中心軸とする従来型の心断層像(10度ごとに18枚)を再構成した。再構成して得られた断層像から僧帽弁輪部を用手的に抽出した。用手的に抽出された弁輪部形状を評価するための特徴パラメータについて検討した。専門医によって用手的に抽出した弁輪部分を教師データとして、弁輪位置の自動抽出を試みた。推定値は、教師データと平均4pixelの差を生じていた。推定値の確認時に一部データを専門医が校正することにより弁輪抽出時間が短縮できることがわかった。心臓を構成する左心室、僧帽弁、大動脈弁の機能障害は重篤な結果を引き起こすため、その診断治療は社会的にも重要な課題である。そのため、弁尖部の動態評価や、弁逆流の診断が行われ、治療・外科手術が実施されてきた。しかし従来は方法論的制約のため、2次元の超音波断層法による撮像が主体であり、来立体的構造を持つ弁輪形態を平面的に2次元で評価するに止まっていた。本研究は、リアルタイム3D超音波診断装置により僧帽弁構造を立体的に計測して弁輪構造の三次元的動態解析を行い、僧帽弁逆流発生機序を解明することを目的とする。最終年度は、これまで試作したプログラムの検証と臨床応用への具体的検討を実施した。(1)弁輪構造の定量的評価法の確立:抽出した弁輪構造を定量的に評価する指標について検討した。弁輪形態は健常時には鞍馬状の形態をしている為、単純に二次元平面に展開した弁輪形態の長径、短経のみならず、心室長軸方向への変形(弁輪高さ)の評価を行った。人工弁輪の形状計測による、弁輪構造の評価精度を検討した結果、超音波断層装置の画素サイズの3倍以下(2mm以下)の精度を維持できることがわかった。(2)臨床計測による検討:3D心エコー法を用いた弁輪構造のリアルタイム評価を行い、各種疾患モデルと弁輪構造の特徴を明らかにするため、臨床計測を実施した。 | KAKENHI-PROJECT-16650115 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16650115 |
リアルタイム3D超音波断層法による僧帽弁輪立体構造の計測と弁逆流発生機序の解析 | これまでの基礎検討結果を元にして、臨床でルーチンとして実施している心エコー検査時に3Dエコーの検査をあわせて実施し、臨床診断への応用を図った。実際の計測では、計測時間は7心拍だけのため、息止め時間は10秒程度であった。そのため、測定を実施できない例はなく、被験者への負担は通常のエコー検査と同程度であった。健常者の弁輪形状は開口面に対して収縮期には湾曲が強く、拡張期には平坦化した。一方、僧帽弁逆流患者の弁輪形状は収縮期においても弁輪の湾曲は少なく平坦であることが明確になった。 | KAKENHI-PROJECT-16650115 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16650115 |
金属錯体の第二配位圏に構築したπ空間における小分子の活性化 | 金属酵素活性中心においては、ヒスチジンのイミダゾール基やシステインのチオール基、および、アスパラギン酸やグルタミン酸のカルボキシル基などに保持された単核および多核金属中心上で様々な小分子の活性化(分子状酸素の還元的活性化、分子状酸素や窒素の多電子還元、窒素酸化物の還元、水の酸化など)が達成されており、それらの機構解明や応用を目指したモデル化学的研究が活発に展開されてきた。しかし、これまでの研究では金属中心(第一配位圏)の配位構造や酸化還元電位、およびスピン状態などに焦点をあてた研究が殆どであり、いわゆる第二配位圏の影響や役割に着目した研究は少なかった。一方、金属酵素活性中心の第二配位圏には芳香族系のアミノ酸側鎖が比較的多く存在し、疎水的な環境や特異なπ空間を形成している場合が多い。しかし、そのような第二配位圏内の環境が反応に及ぼす効果は殆ど見落とされてきた。そこで本申請研究では、このように金属酵素活性中心の第二配位圏内に存在する特異なπ空間の役割を解明し、応用することを目的として検討を行った。具体的には、金属配位場の近傍に様々な芳香族系置換基を導入した新しい配位子を設計・合成し、それを用いて調製した銅錯体やニッケル錯体の構造や物性(分光学的特性、酸化還元電位、磁気的性質など)、酸素の活性化について詳細に検討を行った。また、小分子結合の可逆性制御を可能にする分子認識場や、小分子の活性化と反応性・選択性の自在制御を可能にする反応場の創成のために必要な基礎的データの収集を行った。金属酵素活性中心においては、ヒスチジンのイミダゾール基やシステインのチオール基、および、アスパラギン酸やグルタミン酸のカルボキシル基などに保持された単核および多核金属中心上で様々な小分子の活性化(分子状酸素の還元的活性化、分子状酸素や窒素の多電子還元、窒素酸化物の還元、水の酸化など)が達成されており、それらの機構解明や応用を目指したモデル化学的研究が活発に展開されてきた。しかし、これまでの研究では金属中心(第一配位圏)の配位構造や酸化還元電位、およびスピン状態などに焦点をあてた研究が殆どであり、いわゆる第二配位圏の影響や役割に着目した研究は少なかった。一方、金属酵素活性中心の第二配位圏には芳香族系のアミノ酸側鎖が比較的多く存在し、疎水的な環境や特異なπ空間を形成している場合が多い。しかし、そのような第二配位圏内の環境が反応に及ぼす効果は殆ど見落とされてきた。そこで本申請研究では、このように金属酵素活性中心の第二配位圏内に存在する特異なπ空間の役割を解明し、応用することを目的として検討を行った。具体的には、金属配位場の近傍に様々な芳香族系置換基を導入した新しい配位子を設計・合成し、それを用いて調製した銅錯体やニッケル錯体の構造や物性(分光学的特性、酸化還元電位、磁気的性質など)、酸素の活性化について詳細に検討を行った。また、小分子結合の可逆性制御を可能にする分子認識場や、小分子の活性化と反応性・選択性の自在制御を可能にする反応場の創成のために必要な基礎的データの収集を行った。 | KAKENHI-PUBLICLY-21108515 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-21108515 |
遺伝性赤血球膜異常症における遺伝子発現の制御機構と病態発症機序の研究 | 本研究計画において当初設定された研究目的に関して、次の如き研究成果が得られた。(1)我が国における赤血球膜異常症の特質の解明:我が国の赤血球膜異常症のうち、最も頻度の高い遺伝性球状赤血球症(HS)について、そのphenotypeとgenotypeの同定を行った。(1)Phenotypeの決定:その結果、HS検索100家系118症例のうち、常染色体優性遺伝(AD)型HSは30家系48症例であるのに対して、非AD型HSは70家系70症例に達し、我が国のHSでは、非AD型が少なくとも過半数に及んでいることが判明した。臨床血液学的には、この両者はほぼ同程度の病態を呈した。膜蛋白欠損は、band 3欠損症例が約1/4、protein 4.2欠損症例が約1/3、非欠損症例が約1/3であるのに対して、ankyin欠損症例はほとんど認められなかった。(2)Genotypeの決定:(II)遺伝子発現に関する制御機構の研究:赤血球膜蛋白関連遺伝子として、EPB3、ELB42、およびβ-spectrin遺伝子(SPTB)の3種を選び、そのpromoter領域の5′-CpG-3′のmethylationの程度を検索した。これらの3種の遺伝子はいずれも著しくmethylation-sensitiveであった。また、SPTBは常にunmethylatedであるのに対して、EPB3とELB42はほぼmethylatedであった。SPTBは終始unmethylatedであり、EPB3はmethylatedであるのに対して、ELB42は幼若赤芽球ではunmethylatedであるが、その成熟にしたがってmethylatedに転ずることが判明した。本研究計画において当初設定された研究目的に関して、次の如き研究成果が得られた。(1)我が国における赤血球膜異常症の特質の解明:我が国の赤血球膜異常症のうち、最も頻度の高い遺伝性球状赤血球症(HS)について、そのphenotypeとgenotypeの同定を行った。(1)Phenotypeの決定:その結果、HS検索100家系118症例のうち、常染色体優性遺伝(AD)型HSは30家系48症例であるのに対して、非AD型HSは70家系70症例に達し、我が国のHSでは、非AD型が少なくとも過半数に及んでいることが判明した。臨床血液学的には、この両者はほぼ同程度の病態を呈した。膜蛋白欠損は、band 3欠損症例が約1/4、protein 4.2欠損症例が約1/3、非欠損症例が約1/3であるのに対して、ankyin欠損症例はほとんど認められなかった。(2)Genotypeの決定:(II)遺伝子発現に関する制御機構の研究:赤血球膜蛋白関連遺伝子として、EPB3、ELB42、およびβ-spectrin遺伝子(SPTB)の3種を選び、そのpromoter領域の5′-CpG-3′のmethylationの程度を検索した。これらの3種の遺伝子はいずれも著しくmethylation-sensitiveであった。また、SPTBは常にunmethylatedであるのに対して、EPB3とELB42はほぼmethylatedであった。(III)赤芽球成熟過程におけるgene methylationと各膜蛋白発現:SPTBは終始unmethylatedであり、EPB3はmethylatedであるのに対して、ELB42は幼若赤芽球ではunmethylatedであるが、その成熟にしたがってmethylatedに転ずることが判明した。(1)我が国における赤血球膜異常症の特質に関する研究:先天性溶血について研究を行った(Blood 90 : 5a,1997 ; Blood90 : 8b,1997)。特に,本年度は遺伝性球状赤血球症(HS)に焦点を絞り、HS37系92例および正常対照34例について,赤血球膜蛋白分析,当該膜蛋白の遺伝子解析を行った。その結果,欧米諸国において本症の主要病因であるankyrin(Ank)欠損は,わが国のHSでは膜蛋白レベルで8%にすぎず,この成績はAnk遺伝子解析によっても確認された。すなわち,Ank遺伝子では12種の塩基変異を検出したが,2例を除いて全アミノ酸変異を伴わないsilent mutationであることが判明した。(II)膜蛋白関連遺伝子の発現とそのmethylationの研究:赤血球膜構築in situに関する電顕的検索を行い,その病態的意義を明らかにした(Blood 90:2471-2481,1997)。(I)我が国における赤血球膜異常症症例の集積と検索(1)平成10年度において遺伝性赤血球膜異常症48家系70症例の検索を行い得た(八幡・山田)。(2)上記症例のうち,特に遺伝性球状赤血球症(HS)を中心に,臨床血液学的検索(山田・杉原),膜蛋白分析(矢田),電顕的解析(八幡)からそのphenotypeを決定した。(3) Genotypeの同定はgenomicDNAおよびmRNAを用いたRT-PCRによるcDNAを用いて行った。その結果,HS多数例についてband3遺伝子変異,またankyrin変異を発見し得た。(II)遺伝子発現に関する制御機構の研究(八幡・神崎)(III)赤芽球分化・成熟過程における赤血球膜蛋白,特にprotein4.2の遺伝子および膜蛋白の発現の研究(八幡・和田・神崎)末梢血BFU-Eあるいは骨髄由来赤芽球を用いて,上記検索を行った結果,正常ヒト赤芽球では,まずspectrinが発現し,次いでband3,さらにprotein4.lが発現し,最後にprotein4.2が発現することを見出した。 | KAKENHI-PROJECT-09470235 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09470235 |
遺伝性赤血球膜異常症における遺伝子発現の制御機構と病態発症機序の研究 | (IV)細胞膜蛋白の発現,細胞質内移動と,膜形態形成に関する研究(八幡・神崎・和田)本研究に現在着手し,遂次研究を遂行中である。(I)我が国における赤血球膜異常症症例の集積と検索:(1)平成11年度において遺伝性球状赤血球症(HS)44家系47症例の検索を行った(八幡・山田)。(2)上記のHS症例について、臨床血液学的検索(山田・杉原)、膜蛋白分析(神崎・和田・三上)、電顕的解析(八幡)、膜物性学的解析(末次)を行い、その病態のphenotypeを決定した。(3)上記HS家系について、ankyrin遺伝子に関するgenotypeの解析(八幡・神崎・賀来)を行った。その結果、病因遺伝子変異として16種、すなわち、nonsense変異4種、frameshift変異8種、splicing変異4種を同定し得た。これらは、わが国固有の遺伝子変異であることが判明した。これらの変異のうち、4種は常染色体優性遺伝(AD)形式HSに認められたのに対して、他の12種は非AD型HSで認められた。次に、正常日本人164allelesおよびHS日本人116allelesについて、missense変異2種、silent変異15種、計17種がpolymorphismとして同定された(八幡・神崎・賀来)。(II)遺伝子発現に関する制御機構の研究(八幡・神崎・賀来):(III)赤芽球分化・成熟過程における赤血球膜蛋白に関する遺伝子発現と細胞膜のmorphogenesisの研究(八幡・和田・神崎):上記の如く、膜蛋白の発現が5'-CpG-3'sitesのmethylationと関連している可能性が高いことから、現在、その膜蛋白発現を分子電顕学的に精査中である。 | KAKENHI-PROJECT-09470235 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09470235 |
ファレノプシスのジベレリンによる花成誘導機構のRNAシーケンスによる解析 | ファレノプシスのGAによる花成誘導機構を明らかにするために,RNA-Seqによる網羅的な遺伝子発現解析を行った。GAを投与すると頂芽において,SPL,AP2,FT,AP1などの花成関連遺伝子と,GA20ox,GA3ox,GA2ox,GID1,DELLA等のGA生合成・シグナル伝達遺伝子が大きく変動した。茎頂部のPhFTの発現量は,GA投与前に比べ処理開始7週目に840倍に増加し,ORAP13は8.3倍に増加した。したがって,GAによる頂芽の花成誘導では,茎頂部においてPhFTが著しく発現し,それにつづいてORAP13の発現量も高まるという特徴的な機構の存在が示された。ファレノプシスは世界的に重要な鉢花の一つである。申請者は高濃度のGA3を頂芽に投与すると通常は開花しない主茎が急速に伸長し,花成誘導することを見いだした。このため,ファレノプシスの花成はGAによって直接誘導され,本種は園芸植物の中でGAによる花成誘導を研究するモデル植物になり得ると考えられる。そこで,本研究では次世代シーケンサーによりGA関連遺伝子,花成誘導関連遺伝子をRNA-Seqにより網羅的に解析し,ファレノプシスのGAによる花成誘導機構を解明する。ファレノプシスの成熟株にGA3を8週間毎週投与し,投与開始から16週間にわたって毎週茎頂部をサンプリングした。GAを投与した株は全て主茎頂部に花序を形成した。処理開始時(0週)とGA投与4週間後(4週)のサンプルからtotal RNAを抽出し,stranded mRNA-Seq用ライブラリーを調製した後,次世代シーケンサー(Hiseq2000)にてペアエンド100bpで4Gbのデータを取得した。その後,ファレノプシスCDSをリファレンスとしてCLC Genomics Workbenchにて発現解析(CLCによって計算されるExpression valueを使用)を行い,http://orchidbase.itps.ncku.edu.tw/EST/home2012.aspxの情報を元にアノテーションを行った。その結果,FTは0週には発現は0であったが,4週には1000以上となり,ORAP13(AP1/FULのホモログ)は約27倍に増加した。一般にFTは葉で発現しFTタンパク質が茎頂部に移動して花成を誘導するが,ファレノプシスでは茎頂部でFTが発現する植物であることがわかった。また,GAによる花成誘導経路に関係する遺伝子およびGAの感受性と生合成にかかわる遺伝子も多数検出され,GA投与の有無によってこれらの遺伝子の発現量に大きな違いが見られた。次世代シーケンサーによる分析及びシーケンスデータの解析は順調に進んでおり,FTをはじめとした花成関連遺伝子群やGA生合成にかかわる遺伝子群の発現の違いが明らかとなった。これらは当初予定した計画通りの進捗であり,一部の遺伝子に関するq-PCR解析の条件設定等を行っている。次年度に向けての準備も進んでおり,研究全体についても概ね順調に進展すると考えられる。昨年度に引き続いて,GAを施用されたファレノプシスの頂芽におけるRNA-seq解析を行った。GID1では4個,GID2では3個,DELLAでは7個,SPLでは15個,AP2では16個,FTでは5個,AP1では2個のホモログが見つかった。そのうち,GA施用によってPhSPL4,PhFT1-1,ORAP13が顕著に増加し,PhAP2-8が顕著に減少していたことから,これらがGAによる花成経路で主要に働いている可能性がある。GID1はGA施用によって減少,DELLAはGAによって増加し,外部からの大量のGA施用の影響を回避する反応が見られた。GA生合成遺伝子では,GA施用によってPhGA2ox1-2が顕著に増加,PhGA20ox3,PhGA3ox3-2が顕著に減少しており,GA施用によって内生GA量を減らす方向に遺伝子が制御されていた。次に,低温処理した株の遺伝子発現解析を行うため,低温処理(昼25°C/夜20°C)を行い処理開始0,1,2,3,4,5,6,7,8,9週間後に腋芽または腋芽から伸長した花序の先端部を採取した。これらのサンプルから,前述のNGSから得られたGA生合成遺伝子のシーケンスから得られた,GA20ox,GA3ox,GA2oxの合計21個のホモログについてqPCRを行った。腋芽の新鮮重は低温処理開始3週間後から増加し,4週間後には肉眼で腋芽の発生が確認された。顕著な発現が見られたのはPhGA20ox1-2のみであり,低温処理開始2週間後に約2倍に増加し,9週間後には3倍に達した。一方,GA3oxとGA2oxの変化は比較的小さかった。過去のデータから低温処理によって腋芽中の内生GA量は処理開始4週間後から大きく増加することが明らかとなっている。このことから,内生GA量の増加は主にPhGA20ox1-2の発現量の増加によってもたらされているものと考えられた。2年目までの実験計画ではGA処理株のNGSによるRNA-seq解析と個々の遺伝子発現解析を行うこと,および低温処理株のNGSによるRNA-seq解析と個々の遺伝子発現解析を行うこととなっている。このうち,本年度までに達成できたものはGA処理株の各種解析が完了し,低温処理株においてもGA処理株から得られたシークエンスを用いて低温処理株の各種遺伝子発現解析を優先して行った。 | KAKENHI-PROJECT-15K07300 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K07300 |
ファレノプシスのジベレリンによる花成誘導機構のRNAシーケンスによる解析 | このため,低温処理株のRNA-seqを行えなかったが,RNA-seq解析にも習熟し来年度は低温処理株のRNA-seq解析をより迅速に行えると考えられることから,概ね当初の予定にそって研究が進行していると判断した。本年は低温処理期による腋芽の内生GA量とFT遺伝子の発現の変化を調査した。ファレノプシスを平均気温約20°Cのガラス温室内で低温処理した。低温処理開始時から毎週1回,計10回サンプリングを行った。サンプリングは頂部から数えて第4節の腋芽を対象とした。GAは常法により抽出し,UPLC/MS/MSにて定量した。FT発現解析用サンプルは,一昨年に作成したFT解析用プライマーを用いてRT-qPCR解析を行った。腋芽は低温処理開始4週後に集中して発生した。GA53は4週目にピークに達し,その後減少した。GA19は5週目に頂点に達し,その後減少した。GA20は全体的に量が少なかったが,全体的にみると増加傾向であった。GA1は5週目にはピークを迎えた。昨年の結果ではGA生合成遺伝子であるPhGA20ox1-2の顕著な増加を観察している。今回の内生GAの定量結果においてはGA20oxが触媒するGA20とGA19の内,特にGA19はGA20oxの発現量の増加とほぼ一致する傾向が見られた。一方,低温処理開始時からGA53の内生量が高まっていることから,GA20oxよりも更に上流域にあるent-カウレン酸化酵素,ent-カウレン合成酵素等の遺伝子の活性が大きく変化している可能性が示唆された。FTの発現量は,低温処理開始2週間後には4倍にまで増加した。しかし,反復間のバラツキが大きく有意な差は見られなかった。一昨年の実験では頂芽に対するGA投与実験では頂芽のFTはGA投与直後から著しく高くなったが,本年の腋芽ではGA内生量の増加に伴うFTの顕著な発現量の増加は見られなかった。ファレノプシスのFTには5つのホモログが存在している。今回の実験では茎頂にGAを投与すると発現が高まるFTを対象にして腋芽における発現量を調査したが,腋芽においてはそれ以外のFTが花成に関係している可能性が考えられた。ファレノプシスのGAによる花成誘導機構を明らかにするために,RNA-Seqによる網羅的な遺伝子発現解析を行った。GAを投与すると頂芽において,SPL,AP2,FT,AP1などの花成関連遺伝子と,GA20ox,GA3ox,GA2ox,GID1,DELLA等のGA生合成・シグナル伝達遺伝子が大きく変動した。茎頂部のPhFTの発現量は,GA投与前に比べ処理開始7週目に840倍に増加し,ORAP13は8.3倍に増加した。したがって,GAによる頂芽の花成誘導では,茎頂部においてPhFTが著しく発現し,それにつづいてORAP13の発現量も高まるという特徴的な機構の存在が示された。1.平成27年度に得られたGA投与によって発現量が大きく変動した遺伝子から,特に花成のGA経路に関係が深いと考えられる候補遺伝子をピックアップし,それらの遺伝子の発現をサンプリングした16週分すべてについてRT-qPCRにて解析する。2.低温処理による腋芽の花成誘導機構の解明を行うために,低温処理開始から腋芽を経時的にサンプリングする。昨年度と同様にRNA-seqを行って変動が大きい遺伝子を検出し,それらの発現解析を行う。 | KAKENHI-PROJECT-15K07300 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K07300 |
体温及び摂食調節系における免疫制御物質の意義 | 本研究は脳による免疫系の制御という問題攻略の第一歩として、免疫系が発する化学信号に対し、環境ホメオスタシス系を統御する視床下部がどのように応答し、如何なる適応反応を発現するかを明らかにする目的で、体温及び摂食調節系に関与する視床下部細胞への免疫制御物質の作用機構を解析し、以下の点を明らかにした。1免疫サイトカイン(IL-1、IFNα、TNF)の視束前野温度感受性ニューロンに対する作用を、ラット脳スライス標本で解析した。これらの物質は温ニューロン活動を抑制、冷ニューロン活動を促進したが、非温度ニューロンには影響しなかった。このニューロン活動変化から、これらの物質により惹起される発熱を設明できる。また、PG合成阻害物質やナロキソンを併用した解析から、IL-1とTNFの作用には、局所におけるPG合成が必要であること、及びIFNαの作用はニューロンのオピエート受容体機構への作用によることが明らかになった。2.視床下部腹内側核のグルコース受容ニューロンに対し、生物学的量のIL-1とIFNαが直接作用し、食欲を抑制する方向にニューロン活動を変化させた。IL-1の作用はPG合成阻害物質、及びαMSHで抑制され、IFNαの作用はナロキソンで抑えられる。これらの事はリンパ球でも認められており、これら免疫サイトカインの視床下部ニューロン及びリンパ球に対する作用機構の同一性が判明した。3.IL-1、IFNαをラット第3脳室内に投与すると発熱を惹起する。その発熱は、それぞれサルチル酸ナトリウム、ナロキソンでブロックされ、ニューロンレベルで得られた知見と一致した。4.ラットの脾臓NK細胞の腫瘍細胞障害活性が、低温曝露により抑制される事を明らかにした。本研究は脳による免疫系の制御という問題攻略の第一歩として、免疫系が発する化学信号に対し、環境ホメオスタシス系を統御する視床下部がどのように応答し、如何なる適応反応を発現するかを明らかにする目的で、体温及び摂食調節系に関与する視床下部細胞への免疫制御物質の作用機構を解析し、以下の点を明らかにした。1免疫サイトカイン(IL-1、IFNα、TNF)の視束前野温度感受性ニューロンに対する作用を、ラット脳スライス標本で解析した。これらの物質は温ニューロン活動を抑制、冷ニューロン活動を促進したが、非温度ニューロンには影響しなかった。このニューロン活動変化から、これらの物質により惹起される発熱を設明できる。また、PG合成阻害物質やナロキソンを併用した解析から、IL-1とTNFの作用には、局所におけるPG合成が必要であること、及びIFNαの作用はニューロンのオピエート受容体機構への作用によることが明らかになった。2.視床下部腹内側核のグルコース受容ニューロンに対し、生物学的量のIL-1とIFNαが直接作用し、食欲を抑制する方向にニューロン活動を変化させた。IL-1の作用はPG合成阻害物質、及びαMSHで抑制され、IFNαの作用はナロキソンで抑えられる。これらの事はリンパ球でも認められており、これら免疫サイトカインの視床下部ニューロン及びリンパ球に対する作用機構の同一性が判明した。3.IL-1、IFNαをラット第3脳室内に投与すると発熱を惹起する。その発熱は、それぞれサルチル酸ナトリウム、ナロキソンでブロックされ、ニューロンレベルで得られた知見と一致した。4.ラットの脾臓NK細胞の腫瘍細胞障害活性が、低温曝露により抑制される事を明らかにした。本研究は脳による免疫系の制御という問題攻略の第一歩として,免疫系の発する化学信号に対し,環境適応ホメオスタシス系を統御する視床下部がどのように応答し,如何なる適応反応を発現するかを明らかにする目的で,体温及び摂食調節系における免疫制御物質の作用を調べ,次の点を明らかにした.I.視束前野ニューロンに対する作用:(1)ヒトILー1及びγIFNαは,それぞれ生理的濃度で,視束前野の温ニューロン活動を抑制し,冷ニューロン活動を促進するものが多く,非温度感受性ニューロンには無効のものが多い.(2) ILー1βとIFNαはprimaryの温度ニューロンに,シナプス伝達を介さず,直接作用する.(3) ILー1の効果は,ホマホリパーゼA_2阻害物質やcyclooxy genase inhibitorで可逆的にブロックされることから, ILー1の効果の出現には,アラキドン酸カスケードのcyclooxygenase系の物質の産生が必要である.(4) IFNαはニューロンのオピエート受容体に作用してその効果を発現する.II.脳室内投与の効果:(1) ILー1及びIFNαをラットの第3脳室内に投与すると,それぞれ発熱を惹起する.(2)それらの発熱はそれぞれサリチル酸ナトリウケ,及びナロキソンでブロックされ,視束前野温度ニューロンレベルで得られた知見と一致する.III視床下部肢四側核(VMH)ニューロンへの作用:(1)IFNαは,ニューロン活動を促進するものが多く,その効果はナロキソンでブロックされるが,サリチル酸ナトリウム, αMSHではブロックされない.(2) ILー1でVMHニューロン活動の1/3が促進, 1/3が抑制を受けた.(3)このILー1の作用は,サリチル酸ナトリウム, αMSHで阻害される. | KAKENHI-PROJECT-62480115 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62480115 |
体温及び摂食調節系における免疫制御物質の意義 | (4)グルコース受容細胞は両者で促進されるものが多く,これら刺激物質による食欲減退の一部を説明できる.本研究は脳による免疫系の制御という問題攻略の第一歩として、免疫系が発する化学信号に対し、環境ホメオスタシス系を統御する視床下部がどのように応答し、如何なる適応反応を発現するかを明らかにする目的で、体温及び摂食調節系に関与する視床下部細胞への免疫制御物質の作用機構を解析し、次の点を明らかにした。(1)免疫サイトカイン(IL-1,IFNα,TNF)の視束前野温度感受性ニューロン活動に対する作用を、ラット摘出脳スライス標本で解析した。これらの物質は温ニューロン活動の抑制と冷ニューロン活動を促進を起し、非温度ニューロン活動には影響しなかった。このニューロン活動の変化は、これらの物質により惹起される発熱を説明できる。PG合成阻害物質やナロキソンなどを併用した解析から、IL-1とTNFα作用には、局所におけるPG合成が必要であること、およびIFNαの作用はニューロンのオピエート受容体機構への作用によることが明らかになった。(2)食欲を減退させる方向に活動する視床下部腹内側核のグルコース受容ニューロンに対し、生物学的量のIL-1とIFNαが直接作用し、食欲を抑制する方向にニューロン活動を変化させる。IL-1の作用はPG合成阻害物質およびαMSHにより抑制され、IFNαの作用はナロキソンで抑えられる。これらの事はリンパ球でも認められており、これら免疫サイトカインの視床下部ニューロンおよびリンパ球に対する作用機構の同一性が判明した。(3)ラットの脾臓NK細胞の腫瘍細胞障害活性が、低温曝露により抑制されることを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-62480115 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62480115 |
歯科を受診する自閉症におけるメラトニンの機能解明:自然免疫との接点について | 自閉症は睡眠障害が深刻な問題である。サーカディアンリズムを司る松果体ホルモンであるメラトニン量が少ないとの報告もあり、実際に睡眠導入薬としてメラトニンやメラトニン受容体作動薬を服用している患者がいる。しかしながら、メラトニンは免疫系に対する抑制作用が報告されており、実際に、自閉症の口腔内において、口腔清掃状態が良好であるにも関わらず、歯周病が難治化する症例がみられることから、メラトニン服用と歯周病悪化との関連性が懸念されている。申請者らはメラトニン処理したマクロファージでは炎症性サイトカインの遺伝子発現がシグナル特異的に抑制されることを発見した。またマイクロアレイのクラスター解析の結果、メラトニンは細菌だけでなくウイルス感染の抑制に関わることが示唆された。そこで本研究では、メラトニンによる自然免疫抑制の分子メカニズム解明を目的とした。本年度はマクロファージのウイルス感染時のメラトニンの影響について解析を行った。脳炎や神経疾患の原因物質となる脳心筋炎ウイルス(EMCV)を用いて、マクロファージにウイルス感染させ、メラトニンの影響を解析したところ、細胞内で著しくウイルスRNA量が減少していた。また、インターフェロンベータの発現誘導について解析したところ、メラトニンにより抑制されていた。今後はメラトニンの抗ウイルスシグナルの抑制効果のメカニズムについて、ストレス顆粒形成、インターフェロンベータ転写ファミリーにおいて解析を行う。マクロファージのウイルス感染実験の再現性が不十分であったため、予備実験に時間を要し計画通りの進捗が達成できなかった。本年度にEMCVを用いた際のプロトコールが確立できたので、今後は問題なく進行できると考えている。メラトニンのマクロファージにおける細菌、ウイルス感染時のメラトニンの影響を解析し、メラトニンの免疫抑制機序を解明することを目的とし今後も研究を進めていく。ウイルス感染時のストレス顆粒形成の影響、細胞膜に局在しているホスファチジルイノシトール-2リン酸の影響について解析し、インターフェロンベータの発現誘導抑制機序を明らかにする。自閉症は睡眠障害が深刻な問題である。サーカディアンリズムを司る松果体ホルモンであるメラトニン量が少ないとの報告もあり、実際に睡眠導入薬としてメラトニンやメラトニン受容体作動薬を服用している患者がいる。しかしながら、メラトニンは免疫系に対する抑制作用が報告されており、実際に、自閉症の口腔内において、口腔清掃状態が良好であるにも関わらず、歯周病が難治化する症例がみられることから、メラトニン服用と歯周病悪化との関連性が懸念されている。申請者らはメラトニン処理したマクロファージでは炎症性サイトカインの遺伝子発現がシグナル特異的に抑制されることを発見した。またマイクロアレイのクラスター解析の結果、メラトニンは細菌だけでなくウイルス感染の抑制に関わることが示唆された。そこで本研究では、メラトニンによる自然免疫抑制の分子メカニズム解明を目的とした。本年度はマクロファージのウイルス感染時のメラトニンの影響について解析を行った。脳炎や神経疾患の原因物質となる脳心筋炎ウイルス(EMCV)を用いて、マクロファージにウイルス感染させ、メラトニンの影響を解析したところ、細胞内で著しくウイルスRNA量が減少していた。また、インターフェロンベータの発現誘導について解析したところ、メラトニンにより抑制されていた。今後はメラトニンの抗ウイルスシグナルの抑制効果のメカニズムについて、ストレス顆粒形成、インターフェロンベータ転写ファミリーにおいて解析を行う。マクロファージのウイルス感染実験の再現性が不十分であったため、予備実験に時間を要し計画通りの進捗が達成できなかった。本年度にEMCVを用いた際のプロトコールが確立できたので、今後は問題なく進行できると考えている。メラトニンのマクロファージにおける細菌、ウイルス感染時のメラトニンの影響を解析し、メラトニンの免疫抑制機序を解明することを目的とし今後も研究を進めていく。ウイルス感染時のストレス顆粒形成の影響、細胞膜に局在しているホスファチジルイノシトール-2リン酸の影響について解析し、インターフェロンベータの発現誘導抑制機序を明らかにする。平成30年度に実施したマクロファージウイルス感染実験に時間を要したため、研究が予定よりやや遅れていることにより、次に行う予定の実験を実施できず、消耗品の購入量も現状では当初の予定より後になっているために繰越金が生じた。当該消耗品は次年度に使用予定のため、次年度請求としている。 | KAKENHI-PROJECT-18K17264 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K17264 |
反芻思考に焦点づけた認知行動療法の自閉スペクトラム症への効果とその脳基盤の検討 | 自閉スペクトラム症(ASD)は、抑うつ・不安症状を併発することが多いが、成人ASDの抑うつ・不安に対して有用な認知行動療法(CBT)は確立されていない。近年、ASDの認知特性とうつ病に特徴的とされる反芻思考との関連が脳画像研究で示されており、うつ病への有効性が確立された反芻思考に焦点づけた認知行動療法(Rumination-focused CBT)はASDに併存する抑うつ・不安症状にも有効性が期待される。本研究では、成人ASDの抑うつ・不安症状に対するRfCBTの治療効果を検討し、ASDの抑うつ・不安症状発現とその回復の脳内メカニズムを検討することで、ASD当事者に適したCBTの確立を目指す。自閉スペクトラム症(ASD)は、抑うつ・不安症状を併発することが多いが、成人ASDの抑うつ・不安に対して有用な認知行動療法(CBT)は確立されていない。近年、ASDの認知特性とうつ病に特徴的とされる反芻思考との関連が脳画像研究で示されており、うつ病への有効性が確立された反芻思考に焦点づけた認知行動療法(Rumination-focused CBT)はASDに併存する抑うつ・不安症状にも有効性が期待される。本研究では、成人ASDの抑うつ・不安症状に対するRfCBTの治療効果を検討し、ASDの抑うつ・不安症状発現とその回復の脳内メカニズムを検討することで、ASD当事者に適したCBTの確立を目指す。 | KAKENHI-PROJECT-19K14447 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K14447 |
論文の細粒度情報を用いた研究の相互関係理解 | 今年度は、学術論文の評価指標に関する研究を中心に推進した。まず、学術論文の客観的評価に関する研究として、アブストラクトを含む学術論文の書誌情報と該当論文の引用数の関係を分析した。研究対象のデータとして(1)コンピュータサイエンス分野の著名な論文誌及びプロシーディングの計20誌から抽出した38,766件の論文の書誌情報、(2)Bibliometrics(計量書誌学)分野の論文として論文データベースから抽出した10,186件の論文の書誌情報を準備した。これらの論文の書誌情報を素性とした特徴ベクトルを生成し、機械学習によって引用数で論文を分類する分類器を生成した。分類する引用数の閾値を変化させた大量の分類器の性能評価から、書誌情報と引用数に一定の関係が存在することを示した。この情報を用いることで学術論文の適切な選択や、学術論文間の関係抽出の精度を改善できる可能性がある。この点に関する研究を継続中である。加えて、引用数ではなく引用グループ数を用いた論文評価手法についての研究を行った。上記(2)の10,186件の論文を引用している論文に関して著者グループを構築し、どの著者グループがどの論文を引用しているかについて分析を行い、特定の研究グループによる多数の引用に比べて、多くの研究グループによる引用は該当論文の影響の広さを示す指標となりうることを示した。引用数などの他の評価指標と組み合わせることで、学術論文の多面的な評価を行うことが可能となる。論文自体の分析を中心に行った結果、アンケート調査に入れなかったため、やや遅れているとした。引き続き、論文自体を分析する研究、分析手法に関する研究、を並行して行って行く。特に、論文の関係を最適にとらえることができる粒度の決定に関しては、各種の言語データに加えて、複数の手法を組み合わせ、高速計算機による大規模計算を行う予定である。また、研究者による論文引用の決め方に関してアンケート分析等を行いながら、そのシステム化を進める。今年度は、学術論文の評価指標に関する研究を中心に推進した。まず、学術論文の客観的評価に関する研究として、アブストラクトを含む学術論文の書誌情報と該当論文の引用数の関係を分析した。研究対象のデータとして(1)コンピュータサイエンス分野の著名な論文誌及びプロシーディングの計20誌から抽出した38,766件の論文の書誌情報、(2)Bibliometrics(計量書誌学)分野の論文として論文データベースから抽出した10,186件の論文の書誌情報を準備した。これらの論文の書誌情報を素性とした特徴ベクトルを生成し、機械学習によって引用数で論文を分類する分類器を生成した。分類する引用数の閾値を変化させた大量の分類器の性能評価から、書誌情報と引用数に一定の関係が存在することを示した。この情報を用いることで学術論文の適切な選択や、学術論文間の関係抽出の精度を改善できる可能性がある。この点に関する研究を継続中である。加えて、引用数ではなく引用グループ数を用いた論文評価手法についての研究を行った。上記(2)の10,186件の論文を引用している論文に関して著者グループを構築し、どの著者グループがどの論文を引用しているかについて分析を行い、特定の研究グループによる多数の引用に比べて、多くの研究グループによる引用は該当論文の影響の広さを示す指標となりうることを示した。引用数などの他の評価指標と組み合わせることで、学術論文の多面的な評価を行うことが可能となる。論文自体の分析を中心に行った結果、アンケート調査に入れなかったため、やや遅れているとした。引き続き、論文自体を分析する研究、分析手法に関する研究、を並行して行って行く。特に、論文の関係を最適にとらえることができる粒度の決定に関しては、各種の言語データに加えて、複数の手法を組み合わせ、高速計算機による大規模計算を行う予定である。また、研究者による論文引用の決め方に関してアンケート分析等を行いながら、そのシステム化を進める。研究機関の変更予定に伴い、研究機材の購入等を延期したため、その分の費用を繰り越している。 | KAKENHI-PROJECT-18K11990 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K11990 |
MEMS技術を用いた集積流体慣性センサ | Si基板平面上にガス流体回路を構成し、その上に複数の温度検知用エレメントを最適配置することによって、標準的なMEMSプロセス技術により製作することが可能な新たな3軸流体ジャイロスコープを考案した。3軸ジャイロスコープの実現により、これまでに開発してきた2軸加速度センサと同一チップ上に集積し、5成分の運動量の計測が可能な集積慣性センサを実現することができた。2009年4月から2009年9月までに取り組んだ研究内容を以下に示す。流体式慣性センサの製作・パッケージングジャイロセンサの流路と、センシングエレメントとしてマイクロスケールのSiホットワイヤーブリッジを平面上に製作した。さらに同一基枚上に、3軸のジャイロセンサと2軸の加速度センサを集積した多軸慣性センサの製作およびパッケージングに成功した。流体式慣性センサ用マイクロジェットポンプの設計・シミュレーションと試作・評価マイクロポンプを開発・試作し、その特性を評価した。流体式センサに関して重要な特性であるジェットフローを作り出すことに成功した。また、センシングエレメントを有する流体回路デバイスも製作した。これは自動制御システム、バイオシステムの応用に有用である。さらに本研究では新しいセンシングエレメントの開発に向けてシングルウオールカーボンナノチューブ(SWNT)の熱的特性とアプリケーションを調査した。合成して並べられたSWNTフォレストフィルムのピエゾ抵抗効果とゼーベック効果に関して調査した。ピエゾ抵抗係数はシリコンの2倍であることが確認された。ゼーベック効果は金属の6倍であった。本研究はMEMS技術を用いた流体式多軸慣性センサの開発に関する研究である。マイクロスケールのセンシングエレメントを有する3軸の流体式ジャイロスコープと3軸の流体式加速度センサを一つのシリコン基板上に集積することによって、3軸角速度と3軸加速度を同時に高精度検知することができる。2007年10月から2008年3月までに取り組んだ研究内容を以下に示す。1)センシングエレメントを一平面上に配置した流体式3軸ジャイロスコープの設計とシミュレーション検出原理に、角速度が印加されたときにガス分子に作用するコリオリカと、センシングエレメントの熱抵抗効果を利用することで電圧出力を得ることができる。センサを平面上に配置することによって、フォトリソグラフィー技術との適合性が高まり、大量生産、高信頼性につながる。2)流体式慣性センサ用マイクロジェットポンプの設計・シミュレーションと試作・評価マイクロポンプのプロトタイプを試作し、その特性を評価した。流体式ジャイロスコープに関して重要な特性であるジェットフローを作り出すことに成功した。3)流体式慣性センサの製作・パッケージング方法の研究流体式慣性センサの流路と、センシングエレメントとしてマイクロスケールのSiホットワイヤーブリッジを平面上に製作した。本研究はMEMS技術を用いた流体式多軸慣性センサの開発に関する研究である。マイクロスケールのセンシングエレメントを有する3軸の流体式ジャイロスコープと3軸の流体式加速度センサを一つのシリコン基板上に集積することによって、3軸角速度と3軸加速度を同時に高精度検知することができる。検出原理に、角速度が印加されたときにガス分子に作用するコリオリカと、センシングエレメントの熱抵抗効果を利用することで電圧出力を得ることができる。センサを平面上に配置することによって、フォトリソグラフィー技術との適合性が高まり、大量生産、高信頼性につながる。2008年4月から2009年3月までに取り組んだ研究内容を以下に示す。1.流体式慣性センサ用マイクロジェットポンプの設計・シミュレーションと試作・評価マイクロポンプのプロトタイプを開発・試作し、その特性を評価した。流体式ジャイロスコープに関して重要な特性であるジェットフローを作り出すことに成功した。これを元にMEMS技術でマイクロジェットポンプを製作・評価した。また、センシングエレメントを有するフロウデバイスも作った。2.流体式慣性センサの製作・パッケージング流体式ジャイロセンサの流路と、センシングエレメントとしてマイクロスケールのSiホットワイヤーブリッジを平面上に製作した。さらに加速度センサを同一基枚に複合させ、多軸慣性センサ3軸のジャイロセンサと2軸の加速度センサの製作およびパッケージングは成功した。Si基板平面上にガス流体回路を構成し、その上に複数の温度検知用エレメントを最適配置することによって、標準的なMEMSプロセス技術により製作することが可能な新たな3軸流体ジャイロスコープを考案した。3軸ジャイロスコープの実現により、これまでに開発してきた2軸加速度センサと同一チップ上に集積し、5成分の運動量の計測が可能な集積慣性センサを実現することができた。2009年4月から2009年9月までに取り組んだ研究内容を以下に示す。流体式慣性センサの製作・パッケージングジャイロセンサの流路と、センシングエレメントとしてマイクロスケールのSiホットワイヤーブリッジを平面上に製作した。さらに同一基枚上に、3軸のジャイロセンサと2軸の加速度センサを集積した多軸慣性センサの製作およびパッケージングに成功した。流体式慣性センサ用マイクロジェットポンプの設計・シミュレーションと試作・評価マイクロポンプを開発・試作し、その特性を評価した。流体式センサに関して重要な特性であるジェットフローを作り出すことに成功した。また、センシングエレメントを有する流体回路デバイスも製作した。これは自動制御システム、バイオシステムの応用に有用である。さらに本研究では新しいセンシングエレメントの開発に向けてシングルウオールカーボンナノチューブ(SWNT)の熱的特性とアプリケーションを調査した。合成して並べられたSWNTフォレストフィルムのピエゾ抵抗効果とゼーベック効果に関して調査した。ピエゾ抵抗係数はシリコンの2倍であることが確認された。ゼーベック効果は金属の6倍であった。 | KAKENHI-PROJECT-07F07386 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07F07386 |
軟X線発光分光法による薄膜型太陽電池の非破壊的電子状態分析技術の確立 | 軟X線発光分光法を用いて薄膜型CIS(Cu、In、Se)化合物系太陽電池における光吸収層の非破壊的電子状態分析技術を確立することを目的に、13.5 keV領域にあるCu、In、Se等のL発光スペクトルを同時計測するための広帯域Ni/C多層膜回折格子分光器を開発した。具体的には、イオンビームスパッタ法で非周期構造のNi/C多層膜を積層した回折格子及びトロイダル前置鏡を製作し、放射光を用いてそれらの光学特性を評価した。その結果、本研究で考案した非周期Ni/C多層膜は回折格子の回折効率及び反射鏡の反射率の広帯域化に有効であることを実験的にも確認することができた。軟X線発光分光法を用いて薄膜型CIS(Cu、In、Se)化合物系太陽電池における光吸収層の非破壊的電子状態分析技術を確立することを目的に、13.5 keV領域にあるCu、In、Se等のL発光スペクトルを同時計測するための広帯域Ni/C多層膜回折格子分光器を開発した。具体的には、イオンビームスパッタ法で非周期構造のNi/C多層膜を積層した回折格子及びトロイダル前置鏡を製作し、放射光を用いてそれらの光学特性を評価した。その結果、本研究で考案した非周期Ni/C多層膜は回折格子の回折効率及び反射鏡の反射率の広帯域化に有効であることを実験的にも確認することができた。本研究では、シンクロトロン放射光励起による軟X線発光・吸収分光法を用いて薄膜型CIS化合物系太陽電池における光吸収層CIS(銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se))の非破壊的電子状態分析技術を確立する。本課題達成のために、従来のX線分光器では困難であった幅広いエネルギー帯域(13.5 keV)に現れるCIS化合物及び界面からの発光スペクトル(Cu-L(0.9 keV)、In-L(3.4 keV)、Se-L(1.4 keV)等)とその微細構造を高分解能・同時計測することができる新しい多層膜を応用したラミナー型(矩形状)不等間隔溝多層膜回折格子分光器を開発する。今年度はラミナー型不等間隔溝多層膜回折格子の設計及び前置鏡付分光器の製作を行った。先行研究で開発した回折格子(有効格子定数:1/2400 mm、溝深さ:3 nm、曲率半径:11,200 mm)をベースに、13.5 keV領域に結像特性を持つように新たに分光光学系を設計した。一定の入射角で当該エネルギー領域を高効率化にするために、基本周期長5.6 nmのNiとCからなる非周期多層膜構造を新たに考案し、これを多層膜回折格子として応用した。これにより、従来に比して取り込み角を大きくでき、明るい光学系の設計が可能となった。更に、上記の非周期多層膜構造をトロイダル面に積層した前置鏡として応用することで、全エネルギー領域で分解能300以上を期待できることが分かった。前置鏡付分光器の製作では、放射光実験施設での実験を想定して軽量・小型となるよう設計した。本装置は、上記の新分光光学系に準拠した位置に前置鏡、入射スリット、回折格子、検出器(CCD)等を設置でき、各調整機構により入射角や位置を高精度に設定出来るようにした。本研究では、シンクロトロン放射光励起による軟X線発光・吸収分光法を用いて薄膜型CIS化合物系太陽電池における光吸収層CIS(銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se))の非破壊的電子状態分析技術を確立することを目的としている。本課題達成のために、従来のX線分光器では困難であった幅広いエネルギー帯域(13.5 keV)に現れるCIS化合物及び界面からの発光スペクトル(Cu-L(0.9 keV)、In-L(3.4 keV)、Se-L(1.4 keV)等)とその微細構造を高分解能・同時計測することができる新しい多層膜を応用したラミナー型(矩形状)不等間隔溝多層膜回折格子分光器を開発した。今年度は、(1)広帯域Ni/C多層膜回折格子の製作、(2)広帯域Ni/C多層膜トロイダル前置鏡の製作、(3)放射光による多層膜光学素子の性能評価、(4)軟X線分光器による発光分光実験を実施した。残念ながら(4)については、装置の調整不足から未だCIS化合物からの発光スペクトルを計測するまでに至っていないが、(3)の放射光を用いた評価実験により、本研究で考案した広帯域Ni/C多層膜が機能していることを明らかにできた。従って、本課題はほぼ達成できたと考える。今後、装置の調整を行い、13.5 keV領域に現れるCu、In、SeのL発光の同時計測が可能であることを明らかにしたい。総合理工当初の目標を概ね達成できた要因として、ひとつは、多層膜設計において光学特性を計算するために自作のプログラムコードを利用して膜構造を任意に設定し、入射角度依存性と波長依存性を明らかにできたことが挙げられる。また、本研究において新たに考案し、光学特性のシミュレーション計算に用いた非周期多層膜構造を所属機関が保有する成膜装置(イオンビームスパッタリング装置)で成膜可能であることも本研究課題の実現可能性の観点から重要であった。 | KAKENHI-PROJECT-25790060 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25790060 |
軟X線発光分光法による薄膜型太陽電池の非破壊的電子状態分析技術の確立 | また、先行研究にて開発した回折格子を利用できることを見出せたことも本課題達成要因の一因として挙げられる。イオンビームスパッタ法を用いて回折格子表面に誤差±1%以下の精度で非周期Ni/C多層膜を積層し、多層膜回折格子を製作する。膜構造は、X線回折パターンで確認する。次に、多層膜回折格子の回折効率を高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリ(PF)の軟X線ビームラインを用いて実施し、13.5 keVの全エネルギー領域に渡り高効率化が実現できていることを明らかにする。PFの利用にあたっては、共同利用実験のための課題申請を行う。更に、今年度製作した分光器に多層膜回折格子を搭載し、軟X線分光実験を行う。対象とする元素の吸収端近傍で元素選択励起し、CIS化合物から放出される軟X線発光スペクトルを計測すると共に、含有する元素ごとの全光電子収量スペクトルを計測し、両スペクトル間にある禁制帯幅等を明らかにすることで、本研究で開発した多層膜回折格子分光器がCIS化合物及び界面の非破壊的電子状態分析に有用であることを示す。軟X線分光器の製作費が当初の見積額を僅かに下回ったため。研究費はPFでの実験に用いる分光器及び評価装置の運搬費(約4割)に用いる。残りは比較実験のためのエネルギー分散型X線分析費と旅費等(学会参加費を含む)に用いる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-25790060 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25790060 |
「冷戦の終焉」と米国の移民・移民政策--その歴史的分析- | 従来、日本における米国移民史研究では、エスニシティーの問題という観点から研究がなされることが多い。移民史と民族学、杜会学、人類学、心理学、文学などとの接点が追究されてきた。しかしながら移民史は米国の国家形成や対外関係に密接に結びついている。筆者はこれまでに米国の対外政策(特に対共産圏戦略)と輸出管理との関係を研究してきたが、移民研究を行うことにより、第二次世界大戦後の米国の対外政策履行において、人の移動と物の移動が連動して動いてきたことが鮮明になった。筆者が行ってきた戦後の対共産圏輸出規制網の研究は、移民史研究とは全く別個のように思われ、筆者自身も長いあいだ両者を別個の研究ジャンルとみなしてきた。しかし、実際はそうではなく同じ分析視角で研究することができる。「冷戦の終焉」はどのような連続性と非連続性をもたらしているのだろうか。対共産圏戦略の消滅という点ではあきらかに非連続性があり、他方、テロ対策、大量破壊兵器の不拡散、テクノナショナリズムなど-いずれも「冷戦の終焉」以前から輸出管理、移民規制のどちらにもみられるものである。移民史に関していえば、そのほかにも伝染病対策などの面においても、これは英領植民地時代から今日までの連続性がある。移民規制と地域との関係についていえば、2001年9月のテロ攻撃の衝撃は大きく、今日の時点では中国や日本ファクターより中東地域からの移民に関心が集まっている。米国の規定する「ならず者国家」(rogue nations)と人、物の移動との関係をさらに分析することもできるだろう。従来、日本における米国移民史研究では、エスニシティーの問題という観点から研究がなされることが多い。移民史と民族学、杜会学、人類学、心理学、文学などとの接点が追究されてきた。しかしながら移民史は米国の国家形成や対外関係に密接に結びついている。筆者はこれまでに米国の対外政策(特に対共産圏戦略)と輸出管理との関係を研究してきたが、移民研究を行うことにより、第二次世界大戦後の米国の対外政策履行において、人の移動と物の移動が連動して動いてきたことが鮮明になった。筆者が行ってきた戦後の対共産圏輸出規制網の研究は、移民史研究とは全く別個のように思われ、筆者自身も長いあいだ両者を別個の研究ジャンルとみなしてきた。しかし、実際はそうではなく同じ分析視角で研究することができる。「冷戦の終焉」はどのような連続性と非連続性をもたらしているのだろうか。対共産圏戦略の消滅という点ではあきらかに非連続性があり、他方、テロ対策、大量破壊兵器の不拡散、テクノナショナリズムなど-いずれも「冷戦の終焉」以前から輸出管理、移民規制のどちらにもみられるものである。移民史に関していえば、そのほかにも伝染病対策などの面においても、これは英領植民地時代から今日までの連続性がある。移民規制と地域との関係についていえば、2001年9月のテロ攻撃の衝撃は大きく、今日の時点では中国や日本ファクターより中東地域からの移民に関心が集まっている。米国の規定する「ならず者国家」(rogue nations)と人、物の移動との関係をさらに分析することもできるだろう。本年度は,まず文献の収集につとめた。移民や人の移動に関する洋書および和書のほか,米国の各研究所による移民に関する報告書を集めたマイクロフィルム(Immigration;Special Studies Series,1969-1984,18reels)を購入した。本研究は,米国の移民史を米国の対外戦略と結びつけて考察するものであり,とくに本年度においては「冷戦の終焉」前後の変化と移民政策との関係に焦点をあてた。一般には1989年からのソ連・東欧共産圏の崩壊が一時代を画したものとして論じられるが,筆者は最近は「冷戦の終焉」による断絶よりは,連続性に関心をよせるようになった。米国の対外戦略の変化にしても,東アジアに関しては「冷戦の終焉」は欧州ほど明確でなく,むしろ国家間の対外政策には連続性がみられる。また,移民史に関しても,技術者の優遇は英領植民地だった時代からの一貫した米国の政策の特徴である。しかし,情報技術革命の進展に伴い今日では,米国だけでなく日本,欧州諸国も海外からの優秀な技術者の獲得を目指している。そうした中で筆者は,米国の対外戦略の変化だけでなく,資本主義の変容と国民国家との関係が米国移民史の分析対象として重要であると考えるようになった。以上は,大きな枠組みからの筆者の関心の変化であるが,米国の90年代に関しては,経済が好調な間は移民に対する摩擦は軽減される。しかし,持続した好景気が米国で崩壊しつつある今日,移民に対する軋轢が増加することが懸念される。筆者は3月に米国への出張を予定しており,こうした本年度の成果を論文として発表すべく,現在準備中である。平成13年度は、文献の収集につとめると同時に、日本における米国移民史研究のあり方を検討し、研究会で「移民史研究のフロンティア」と題して報告した。また、ブッシュ政権の移民政策や、平成13年9月のテロ攻撃が米国の移民史上に与える影響について分析を進めた。ブッシュ政権は、合法移民については帰化申請プロセスや家族統合の迅速化を求め、不法移民については取り締まり強化をめざした。しかし、1990年代の米国経済の活況は、外国からの人の流入を促進させ、移民に対する米国人の反発は米国社会の底流にくすぶっている。こうしたなかで9月のテロ攻撃があり、移民規制論が声高に語られるようになってきた。 | KAKENHI-PROJECT-12620092 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12620092 |
「冷戦の終焉」と米国の移民・移民政策--その歴史的分析- | しかしながら、テロ攻撃と移民規制論がもたらす問題点は、新しく生じたものではない。米国の輸出規制は移民規制と連動することが多いが、「冷戦の終焉」以前には、共産圏は「国家安全保障上の統制」に分類され、1980年代以降にはイラク、イラン、アフガニスタンといった国々やテロ対策は「外交政策上の統制」に分類されたものの、どちらにも輸出規制が実施されてきた。テロ対策は「冷戦の終焉」以前からのものであるが、テロ攻撃に伴う移民規制強化がもたらす問題も「冷戦の終焉」以前からの連続性を示している。例えば、米国の国防省は、外国人が高度技術に関わらないよう規制を強化しようとしているが、米国ではハイテク関連に海外の技術者が多く、移民政策も高度技術者の米国への流入を促進させてきたから、規制強化が実施されれば困難な状況が生じることが懸念されている。国家安全保障とグローバル化が進む経済と人の移動の問題は、9月のテロ攻撃に象徴的にあらわれているが、「冷戦の終焉」以前から持続する問題でもある。締め切りのある仕事が他にあったことや活字化が遅れていることもあって研究成果がまだ出版されていないが、今後一年以内に成果を出す予定である。 | KAKENHI-PROJECT-12620092 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12620092 |
日本語学習者の動詞活用メカニズムの解明 | 本研究では、「食べる-食べた」のような動詞活用を、日本語学習者及び日本語母語話者がどのように処理するかを明らかにすることを目的として調査を行った。造語と実在語を用いた動詞活用形の正誤判断課題、プライミング課題を実施した結果、学習者と母語話者には異なる反応が得られた。日本語学習者は明示的な文法知識に頼る傾向があるのに対し、母語話者は暗示的な語彙的処理に近い方略が確認された。さらに、日本語学習者の動詞活用の処理には促音のような発音上の難易も関わっていることも示唆された。テ形やナイ形などの動詞活用は日本語教育において、重要な学習事項とみなされるている。動詞活用の習得とそのメカニズムを明らかにするという本研究の目的に従い、以下のように理論的研究とデータ収集・分析、及び、発表を行った。(1)国内外の先行研究から、これまでに行われた動詞形態素に関するオンライン実験、オフライン実験の成果を検討した。その成果の一部は、東北大学・タマサート大学大学間学術交流協定締結記念国際シンポジウムにおいて講演を行った。(2)学習者言語の変化をみるために,中国の学習者を対象として、留学1ヶ月前と7カ月後の2回,実在語・造語動詞の活用テストを実施した。分析の結果,実在語テストでは留学前後で有意に得点が伸びていたのに対し,造語テストについては有意な伸びがないことがわかった。こうした結果には,ルール適用型か項目学習型かの個人差が影響した可能性があり、個人差は造語動詞で顕著であることがわかった。以上の成果は、日本語教育学会研究集会において発表を行った。(3)前年度に台湾人学習者を対象として実施した動詞テ形の判断実験について、データ分析を行った。その結果、学習者はいずれの動詞タイプでも正確に判断できるが、反応時間には活用タイプにより違いがあることがわかった。以上の成果は、第2言語習得研究会(関東)において発表を行った。(4)3の成果を踏まえ、実験方法について調整を行った上で、日本語母語話者・台湾人学習者を対象に、動詞テ形の判断実験を継続した。動詞活用は言語学や第二言語習得研究において注目される研究対象であり、日本語教育においても重要な学習項目とみなされている。日本語の動詞活用の習得とそのメカニズムを明らかにするという本研究の目的に従い、平成25年度は、以下のように理論的研究とデータ収集・分析、及び、成果発表を行った。1.動詞を中心とした形態素の処理・習得に関する先行研究を検討した。その成果の一部として、動詞テ形の習得研究を中心としたレビュー論文を作成し、これまでの知見と今後の研究課題について論じた。2.平成23年ー24年度に実施した台湾人学習者と日本語母語話者のテ形実験の分析を進めた。実在動詞を用いた実験では、母語話者には動詞タイプによる違いが見られなかった。一方、日本語学習者には動詞タイプの影響が見られ、-iru/-eru、-(w)u/-ruが困難なことがわかった。これらの動詞における困難点には、促音の難しさが関わっている可能性がある。以上の結果は、台湾日本語教育国際学術シンポジウムにてポスター発表を行った。研究結果はシンポジウム予稿集にも論文として発表した。3.2の実験は意識的な動詞の処理を検討したものであった。無意識的な動詞形態素処理を検討するためにプライミング実験を計画し、日本語母語話者、日本語学習者を対象に予備実験を行った。本研究では、「食べる-食べた」のような動詞活用を、日本語学習者及び日本語母語話者がどのように処理するかを明らかにすることを目的として調査を行った。造語と実在語を用いた動詞活用形の正誤判断課題、プライミング課題を実施した結果、学習者と母語話者には異なる反応が得られた。日本語学習者は明示的な文法知識に頼る傾向があるのに対し、母語話者は暗示的な語彙的処理に近い方略が確認された。さらに、日本語学習者の動詞活用の処理には促音のような発音上の難易も関わっていることも示唆された。日本語教育において、テ形やナイ形などの動詞活用は重要な学習事項とみなさている。日本語の動詞活用の習得とそのメカニズムを明らかにするという本研究の目的に従い、平成23年度は、以下のように理論的研究とデータ収集・分析を行った。(1)国内外の先行研究から、これまでに行われた動詞活用実験について理論的枠組と調査方法を検討し、第二言語学習者の動詞活用の習得について考察を行った。その成果の一部は中国文化大学にて講演を行い、台湾の日本語教育関係者からフィードバックを受けた。(2)文法性判断テストのデータ(n=61)を用い、日本語の動詞アスペクト形式の習得について、これまで研究の少ない習慣相(例:毎日公園を走っている)を中心に分析を行った。その結果、ルとテイル(または、タとテイタ)の二つの形式が可能な場合でも、日本語レベルの下位群は前者のみを選択しやすいことがわかった。これは、学習者は一つの意味に一つの形式を結びつけやすいという傾向(the One to One Principle)に一致していた。一方、上位群は両形式を正しいと判断できる割合が上昇していた。以上の結果は、アメリカ応用言語学会においてポスター発表を行った。(3)1の先行研究のレビューをもとに実験デザインを検討し、動詞テ形に関する反応時間実験を行った。まず、日本語学習者、日本語母語話者を対象に予備調査を行い、その結果を踏まえて調査方法を修正した。そして、3月には台湾の日本語学習者(n=63)を対象に本実験を行った。 | KAKENHI-PROJECT-23520608 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23520608 |
日本語学習者の動詞活用メカニズムの解明 | 日本語の動詞活用の習得とそのメカニズムを明らかにするという本研究の目的に従い、平成26年度は以下のようにデータ収集と分析を継続し、成果発表を行った。(1)日本語母語話者と学習者を対象に行った造語動詞のテ形判断実験の分析を進めた。その結果、日本語学習者は正確に正誤判断がてきていたのに対し、母語話者は約3割が誤答であった。全体の反応時間も日本語学習者の上位群と同程度であり、正確さ、迅速さともに困難を示していた。以上の結果は、台湾日語教育国際学術シンポジウムにおいてポスター発表を行い、予稿集にも論文として発表した。(2)動詞形態素プライミング実験の予備調査結果をまとめ、超認知心理学会においてポスター発表を行った。研究の概要は日本認知心理学会発表論文集にも掲載されている。また、発表時に得たコメントをもとにさらにデータの収集と考察を進めた。(3)縦断的会話データを用いてアスペクトを中心とする動詞形態素の分析を進めた。その成果はEuropean Association for Japanese Studies (EAJS)において発表を行った。(4)アスペクトを中心とした先行研究のレビューを執筆した。その成果は、論文集として発行される予定である。(5)テ形、ナイ形等の動詞語形の聞き取り練習を行うE-learningサイトを開発した。サイトは既に一般公開をしており、留学生を対象とする日本語授業においても活用している。日本語教育当初の研究目的に従い、平成24年度は、日本語母語話者、日本語学習者を対象とした実験を実施した。また、これまでに収集したデータについて着実に分析を進め、口頭発表を行った。その際には、日本語教育関係者から有益なフィードバックを受け、今後の研究方針への示唆を得ることができた。研究目的に従い、平成25年度は、これまでに収集した実験結果を台湾の国際シンポジウムにおいて発表を行った。その際には、日本語教師や学習者の立場から有益なコメントを得ることができた。また、理論的研究の成果としては、テ形習得研究のレビュー論文も発表している。以上の成果をもとに、新たな実験計画と予備実験を実施しており、順調に進展していると考えられる。当初の計画に従い、平成23年度は反応時間実験のデザインを確定して予備実験を行い、台湾での本調査までを行うことができた。理論的研究の成果は台湾の中国文化大学において講演を行い、日本語教育関係者からのフィードバックを得た。また、オフラインデータの分析結果は、アメリカ応用言語学会においてポスター発表を行い、研究成果を発信することができた。平成23年度、24年度に得られた結果を基にして、以下のように研究を継続する。(1)収集したデータの分析を進め、動詞活用において学習者がどのような方略を取っているか、また、それは日本語学習の進行によって変化していくのか、データ収集方法による比較、日本語母語話者との比較も含めて考察する。(2)上記(1)を発展させ、自動化された知識を問う実験をデザインし、日本語母語話者及び学習者を対象に予備実験を行う。 | KAKENHI-PROJECT-23520608 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23520608 |
イオン液体母核への側鎖の導入と側鎖の変換反応に関する研究 | 平成21年度において我々は通常の有機化合物にイオン液体構造を導入する反応の開発とイオン液体構造をもつ生理活性化合物の合成を行った。さらに,共同研究者がイオン液体溶媒中で合成した光学活性なアリルアルコールを使って,更に複雑な分子へ変換する反応開発を行った。具体的な成果は以下の通り。(1)我々はピコリン酸基がアリル化反応の良好な脱離基として働くことを以前報告した。今回,この第2級アリルピコレートとイミダゾール基をもつ酢酸エチルとの反応に応用した。反応はα位(脱離基のついている炭素上)で位置選択的に進行し,不斉転写率はほぼ100%であった。そして,生成物にBnBrを反応させて4級化すると相当するイミダゾリウム塩に変換できた。(2)アミノ基とリン酸基かち成るイオン液体構造を有し,特定のタンパク質脱リン酸化酵素を阻害する分子の合成を行った。この様なイオン液体構造を通常の有機化合物に導入する方法を開発するため,ホスラクトマイシンI-j(PLM I-j)とロイストロダクシンB(LSN B)を具体的なターゲット分子として選び,アミノ基とリン酸基を導入する試薬の検討と導入のタイミングについて検討した。窒素原子は(AllylOCO)_2NHを使った光延反応を行って導入できた。その後,(AllylOCO_2)-N(i-Pr)_2を使ってリン酸基を導入した。そして,最後の脱アリル化反応はPd(cat.)/HCO_2Hを用いて行ない,目的の分子を合成することができた。(3)イオン液体中で合成した光学活性なγ-アリールアルコールを用いてアリル化反応を検討し,高選択的かつ高収率で生成物を与えた。この反応を応用して(S)-インペラネンの合成に成功した。側鎖上に不斉炭素をもつイミダゾールやピリジン誘導体を効率よく合成する方法の開発と分子内にイオン性部位をもつホスラクトマイシン類の合成を行った。(1)我々は最近, Grignard試薬(RMgX)とCuBr・Me_2Sから調製した銅試薬と光学活性な第2級アリルピコレートとのantiS_N2'選択的アリル化反応を開発しており,この反応を活用した。この際,イミダゾールやピリジンからGrignard試薬を調製することは困難であるため,直接リチオ化やハロゲン・リチウム交換によって容易に調製可能なリチウムアニオンを用いて検討した。まず,予備実験としてPhLiとCuBr・Me_2Sから調製した銅試薬を用いてアリル化反応を検討したところ,反応は遅く,目的物とピコリン酸基の外れたアルコールとの混合物を生じた。しかし,これにMgBr_2を加えると目的の反応が加速され,かつanti S_N2'生成物のみを効率的に生成した。次に同条件下, N-メチルおよびN-ペンジル・イミダゾールから調製したリチウムアニオンについて検討したところ,いずれの場合も効率よく反応し,相当するanti S_N2'生成物を与えた。不斉転写率は>95%以上であった。これらのanti S_N2'生成物をMeIもしくはBnBrを用いて4級化するとアモルファスもしくは固体状のアンモニウム塩(カウンターアニオンはBr^-, I^-)が得られた。次に,これらの塩のカウンターアニオンをN(Tf)_2に置き換えると,液状化合物に変化した。つぎに,プロモピリジンをリチオ化して調製したピリジルリチウムを用いて同様の反応を行った。この場合もアリル化反応は効率的に進行した。続いて, 4級化とカウンターアニオン交換を行い,液状のピリジル塩を合成することができた。(2)ホスラクトマイシン類の合成では光学活性な六員環パートをキナ酸から合成した。この方法はステップ数と収率の点で不斉Diels-Alder反応を上回っていた。そして,ホスラクトマイシンI-jの合成を完成することができた。平成21年度において我々は通常の有機化合物にイオン液体構造を導入する反応の開発とイオン液体構造をもつ生理活性化合物の合成を行った。さらに,共同研究者がイオン液体溶媒中で合成した光学活性なアリルアルコールを使って,更に複雑な分子へ変換する反応開発を行った。具体的な成果は以下の通り。(1)我々はピコリン酸基がアリル化反応の良好な脱離基として働くことを以前報告した。今回,この第2級アリルピコレートとイミダゾール基をもつ酢酸エチルとの反応に応用した。反応はα位(脱離基のついている炭素上)で位置選択的に進行し,不斉転写率はほぼ100%であった。そして,生成物にBnBrを反応させて4級化すると相当するイミダゾリウム塩に変換できた。(2)アミノ基とリン酸基かち成るイオン液体構造を有し,特定のタンパク質脱リン酸化酵素を阻害する分子の合成を行った。この様なイオン液体構造を通常の有機化合物に導入する方法を開発するため,ホスラクトマイシンI-j(PLM I-j)とロイストロダクシンB(LSN B)を具体的なターゲット分子として選び,アミノ基とリン酸基を導入する試薬の検討と導入のタイミングについて検討した。窒素原子は(AllylOCO)_2NHを使った光延反応を行って導入できた。その後,(AllylOCO_2)-N(i-Pr)_2を使ってリン酸基を導入した。 | KAKENHI-PROJECT-20031009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20031009 |
イオン液体母核への側鎖の導入と側鎖の変換反応に関する研究 | そして,最後の脱アリル化反応はPd(cat.)/HCO_2Hを用いて行ない,目的の分子を合成することができた。(3)イオン液体中で合成した光学活性なγ-アリールアルコールを用いてアリル化反応を検討し,高選択的かつ高収率で生成物を与えた。この反応を応用して(S)-インペラネンの合成に成功した。 | KAKENHI-PROJECT-20031009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20031009 |
南西諸島北部の民謡旋律の系統に関する発展的研究 | 平成30年度は昨年度に引き続き、奄美諸島北東に位置する喜界島の八月踊り旋律と奄美大島の八月踊り旋律の比較分析作業を推し進め、昨年度の学会発表(奄美沖縄民間文芸学会喜界島大会)で暫定的に作成・公開した「奄美大島・喜界島八月踊り旋律比較表」のチェック作業を進めた。それと同時に、これまで未公開である八月踊り旋律の資料公開に向けて楽譜作成作業を進めていった。喜界島では、昨年度の学会発表(前述)において比較分析用資料として取り上げた7集落(小野津、城久、赤連、荒木、上嘉鉄、阿伝、佐手久)の八月踊り旋律延べ98曲の楽譜のコンピュータ入力及び浄書作業を進めた。この結果、第一弾として赤連、上嘉鉄、阿伝集落の八月踊り旋律の採譜資料を令和元年度中に公開する予定を立てている。この作業によって、喜界島全域に伝わる八月踊り旋律について、奄美大島八月踊り旋律との異同・伝播関係の概略がほぼ把握できたと考えている。奄美大島では、昨年度の学会発表(前述)において比較分析用資料として取り上げた7集落(瀬戸内町嘉鉄、宇検村湯湾、大和村今里、旧住用村西仲間、龍郷町秋名、旧笠利町用、旧笠利町笠利1区)の八月踊り旋律の中で未だ採譜資料が公開されていない宇検村湯湾、旧笠利町用の八月踊り旋律延べ58曲の楽譜のコンピュータ入力及び浄書作業を進めた。この結果、両集落の八月踊り旋律の採譜資料を令和元年度中に公開する予定を立てている。残された課題としては、第一に旋律の比較分析作業が奄美諸島の徳之島、沖永良部島、与論島については分析作業が不十分のまま残されていること。第二に、トカラ列島以北の島嶼の民謡旋律については旋律の存在確認のみに終わり、本格的な分析作業に至らなかったことが挙げられる。6月に第1班(金城厚担当:比較分析、沖縄本島・奄美諸島)と第2班(久万田晋担当:資料整備・比較分析、奄美諸島・トカラ列島、種子島・屋久島、三島村)合同の全体会議を沖縄県立芸術大学において開催し、今後の作業計画と研究の展開について打ち合わせた。第1班(金城)は、沖縄本島の臼太鼓系旋律について5線譜化された資料を検討し、小林公江による「沖縄本島ウシデーク旋律の系統関係に関する研究」の再検討を進めた。また第2班が作成中の奄美諸島の八月踊り系旋律の比較譜に関して、沖縄本島のウシデーク系旋律との比較分析のための資料を整備し試行的に比較分析を試みた。また第2班と共に奄美諸島(奄美大島、喜界島)、トカラ列島への調査を計画したが、9月中旬の台風到来により、調査は実施できなかった。第2班(久万田)は、奄美大島の八月踊り系旋律のデータ整備(現行科研で未着手地域の八月踊り旋律の五線譜化)を進めた。それと共に喜界島、徳之島について既存の音源・映像資料を活用して、奄美諸島の旋律比較のための採譜分析作業を進めた。特に奄美大島の中で従来の研究で未報告であった数か所(奄美市笠利町用、奄美市名瀬小湊、宇検村湯湾)の八月踊り旋律採譜作業をほぼ完了した。また第1班と共に奄美諸島(奄美大島、喜界島)、トカラ列島への調査を計画したが、9月中旬の台風到来により、調査は実施できなかった。また11月および2月にも、第1班・第2班合同の全体会議を開催し、各班の作業の進行状況を確認した。そして本年度の総括を行うと共に、次年度に向けての資料調査と分析作業の方針を協議した。沖縄本島臼太鼓系旋律と、奄美諸島の八月踊り系旋律の系統の比較分析作業を進めた。この分析作業の基礎となる音源資料の一層の充実整備のため、奄美諸島(奄美大島、喜界島)、トカラ列島への調査を計画したが、いずれも9月の台風襲来のために調査を断念した。そのため、比較の基礎となる音源資料の整備がやや遅れている。6月に第1班(金城厚担当:比較分析、沖縄本島・奄美諸島)と第2班(久万田晋担当:資料整備・比較分析、奄美諸島・トカラ列島、種子島・屋久島、三島村)合同の全体会議を沖縄県立芸術大学において開催し、本年度の作業計画と研究の展開について打ち合わせた。第1班(金城)は、昨年度に引き続き沖縄本島の臼太鼓系旋律について5線譜化された資料の検討作業を進めた。第2班が作成中の奄美諸島の八月踊り系旋律の比較譜に関して、沖縄本島の臼太鼓系旋律との比較分析のための資料を整備し試行的に比較分析を試みた。第2班(久万田)は、奄美大島の八月踊り系旋律のデータ整備(現行科研で未着手地域の八月踊り旋律の五線譜化)を進めた。それと共に喜界島(全域の中から7集落を選定)について既存の音源・映像資料を活用して、奄美諸島の旋律比較のための採譜分析作業を進めた。9月中旬にはその成果を「喜界島と奄美大島の八月踊り旋律の系統関係」と題し、奄美沖縄民間文芸学会喜界島大会において発表した。それと共に奄美大島・喜界島の八月踊り旋律について未収集の関係資料を収集した。また8月下旬および2月中旬には、鹿児島市にて三島村、屋久島・種子島、十島村に関する民謡資料の文献調査を実施した。2月末には第1班・第2班合同の全体会議を開催し、各班の作業の進行状況と今後の研究の進め方について確認を行った。 | KAKENHI-PROJECT-16K02247 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K02247 |
南西諸島北部の民謡旋律の系統に関する発展的研究 | そして本年度の総括を行うと共に、最終年度に向けての資料調査と分析作業の方針を協議した。沖縄本島臼太鼓系旋律と、奄美諸島の八月踊り系旋律の系統の比較分析作業は順調に進み、特に奄美諸島北部(喜界島奄美大島)における民謡旋律の系統関係については、かなりの研究の進展が見られた。ただしトカラ列島、種子島・屋久島、三島村の地域については、本年度も日程調整ができなかったため現地調査が行えず、あまり進展が見られなかった。そのため、比較の基礎となる音源・文献資料の収集・整備を進めた。平成30年度は昨年度に引き続き、奄美諸島北東に位置する喜界島の八月踊り旋律と奄美大島の八月踊り旋律の比較分析作業を推し進め、昨年度の学会発表(奄美沖縄民間文芸学会喜界島大会)で暫定的に作成・公開した「奄美大島・喜界島八月踊り旋律比較表」のチェック作業を進めた。それと同時に、これまで未公開である八月踊り旋律の資料公開に向けて楽譜作成作業を進めていった。喜界島では、昨年度の学会発表(前述)において比較分析用資料として取り上げた7集落(小野津、城久、赤連、荒木、上嘉鉄、阿伝、佐手久)の八月踊り旋律延べ98曲の楽譜のコンピュータ入力及び浄書作業を進めた。この結果、第一弾として赤連、上嘉鉄、阿伝集落の八月踊り旋律の採譜資料を令和元年度中に公開する予定を立てている。この作業によって、喜界島全域に伝わる八月踊り旋律について、奄美大島八月踊り旋律との異同・伝播関係の概略がほぼ把握できたと考えている。奄美大島では、昨年度の学会発表(前述)において比較分析用資料として取り上げた7集落(瀬戸内町嘉鉄、宇検村湯湾、大和村今里、旧住用村西仲間、龍郷町秋名、旧笠利町用、旧笠利町笠利1区)の八月踊り旋律の中で未だ採譜資料が公開されていない宇検村湯湾、旧笠利町用の八月踊り旋律延べ58曲の楽譜のコンピュータ入力及び浄書作業を進めた。この結果、両集落の八月踊り旋律の採譜資料を令和元年度中に公開する予定を立てている。残された課題としては、第一に旋律の比較分析作業が奄美諸島の徳之島、沖永良部島、与論島については分析作業が不十分のまま残されていること。第二に、トカラ列島以北の島嶼の民謡旋律については旋律の存在確認のみに終わり、本格的な分析作業に至らなかったことが挙げられる。初年度(H28)における音源資料の充実整備を目指した調査が夏期の台風到来のため計画通り進まなかったことを受け、次年度(H29)には、奄美諸島(奄美大島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島)、トカラ列島について、夏期以外に秋期冬期の調査も計画し、調査計画の遅れを取り戻したいと考えている。最終年度であるH30年度は、沖縄本島地域から奄美諸島の民謡旋律の系統関係についてのこれまでの研究成果を報告としてまとめることを第一目標とする。そして未着手である鹿児島県本土トカラ列島と沖縄本島・奄美諸島の民謡旋律の系統関係について、夏期に部分的にでも調査を実施する。その上で、今後どのように調査研究を進めてゆくかの方針を立てることとする。初年度(H28)9月に計画していた奄美諸島(奄美大島、喜界島)、トカラ列島への資料収集調査が台風のため実施できなかった。そのため、旅費が未執行になり、そのデータ整理・分析作業に計画していた謝金の執行も進まなかった。H29年度に計画していたトカラ列島、種子島・屋久島、三島村への資料収集調査が実施できなかった。また奄美諸島(奄美大島、喜界島)の調査旅費は他財源で賄った。そのため旅費が未執行となり、データ整理・分析作業に計画していた謝金の執行も計画したほどには進まなかった。次年度は夏期に旅費を執行してこれまで未調査の地域地について調査を実施する。 | KAKENHI-PROJECT-16K02247 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K02247 |
正則化法による逆問題の高精度近似理論と次世代計算環境による数値的実現 | 数値的に不安定性な問題に対する多倍長計算の有効性を示し,正則化法および再生核理論に基づく高精度離散化と合わせて非適切問題の高精度数値計算を実現した.また広く知られている安定性条件のもとでも丸め誤差が指数的に増大する例を構成して数値実験と理論解析の双方で示し,丸め誤差の影響と偏微分方程式の数値解析における安定性理論とが密接にかかわるものの本質的に異なる概念であることを明確にし,数値計算の信頼性について新たな知見を得た.本研究は、逆問題の数値計算において最大の困難点である不安定性に対する高精度数値計算手法の確立を目的とするものである。平成24年度は二階線型偏微分方程式を対象として、再生核理論に基づく離散化手法の提案とその数値的実現について研究をおこなった。これは、不安定性な問題の典型例であるLaplace逆変換の数値計算に対して、再生核空間を適当に設定することで数値計算に成功した先行研究をもとにするものである。本手法は近似解を適当な再生核Hilbert空間で求めるものであり、再生核の再生性による函数の表現を利用する。これを方程式に代入して、領域から適当に選んだ有限個の選点上でそれが成立することを要請する。アルゴリズムとしては、再生核を如何に近似的に構成するかが問題となるが、ひとたび再生核を構成することができれば、境界値が変更された場合であっても高速に解を求めることができるという特徴をもつ。同時に、本手法は差分法のような規則格子を利用しないため、領域が矩形でなくとも適用可能となっている。また、変数係数の場合や、設定が必ずしもHadamardの意味で適切でない場合にも適用可能という特徴をもつ。本手法で提案する再生核の近似構成は正値対称行列を係数とする連立一次方程式の求解に帰着され、その行列の条件数が大きくなるために倍精度計算では高精度な計算が達成されないことがわかった。これについては報告者が提案する次世代計算環境である多倍長計算で対処することにより、現実的な計算資源(プロセサ、メモリ、時間)のもとで精度の高い数値解が構成可能であることが示された。数値実験により収束性をもつことも示唆されており、今後はその証明や高速計算法が課題として考えられる。本研究は、逆問題の数値計算などの数値的不安定性を有する問題に対し、高精度かつ信頼できる数値計算の枠組みを与えるものである。平成25年度は特に計算の信頼性と丸め誤差に対応する考察をおこない、偏微分方程式に対する数値的安定性の概念についての考察をおこない、数値計算の信頼性について新たな知見を得た。これは報告者の属する研究グループにおける成果である。得られた結果を標語的に述べると「安定性条件のもとでの数値計算においても、丸め誤差の指数的に増大または零に減衰により数値計算は破綻し得る」というものである。数値解析学においては丸め誤差が急激に累積しない目安として安定性条件の研究が重要な概念の一つである。多くの場合、適当なノルムを設定することで離散化方程式の解が初期値に対して連続に依存する条件として与えられ、その条件の下での数値計算での丸め誤差は計算ステップ数に対して多項式程度の増大で、それにより計算は破綻しないと言われてきた。例えば差分法では熱方程式でのNeumann条件や一階双曲型方程式でのCourant-Friedrichs-Lewyの条件が基本概念として知られている。本研究成果として得られたのは、浮動小数点演算の標準規格IEEE754のもとで丸めの方向を制御し、これら安定性条件のもとで、正の無限大に指数的に発散する場合、0に指数的に減衰する例などの構成に成功した。また単に数値例を作るのみならず、その挙動に対して数学的証明を与えた。これらの結果は「数値計算の信頼性をどのように考えるか?」という根本的な問いに対し、従来の安定性理論は密接な関連をもつものの、決定的な答とはなっていなかったことを示すものであり、報告者らた本研究においても推進した多倍長計算の有効性を示すものと考えている。数値的に不安定性な問題に対する多倍長計算の有効性を示し,正則化法および再生核理論に基づく高精度離散化と合わせて非適切問題の高精度数値計算を実現した.また広く知られている安定性条件のもとでも丸め誤差が指数的に増大する例を構成して数値実験と理論解析の双方で示し,丸め誤差の影響と偏微分方程式の数値解析における安定性理論とが密接にかかわるものの本質的に異なる概念であることを明確にし,数値計算の信頼性について新たな知見を得た.本研究は、非適切問題の離散化で現れる数値的に不安定な問題に対し、多倍長数値計算を適用することにより高精度数値計算を目指すものである。特に、正則化法に代表される安定化手法の近似誤差、離散化の誤差、および丸め誤差のそれぞれの影響に適切に対処することによる高精度数値計算手法の確立を目指すものである。初年度は、非適切問題の数値計算における数値的不安定性を定量的に調べるための指標を提案した。この指標は、数値的に不安定であるほど丸め誤差の増大が大きくなることに着目し、多倍長計算において計算精度が可変であるという特徴をもちいて事後誤差解析として算出するものである。この指標が実際に利用される数値計算アルゴリズムに適用可能であることを示すために、複素逆Laplace変換の数値計算手法のうち細野の方法とSheenの方法に適用し、それぞれの数値計算における不安定性を調べた。 | KAKENHI-PROJECT-23740075 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23740075 |
正則化法による逆問題の高精度近似理論と次世代計算環境による数値的実現 | その結果、いずれも数学的にはBromwichの方法に対する数値計算アルゴリズムでありながら、Sheenの方法においては逆変換像を求める計算点の値が増大するごとに不安定性が増大することが示されたのに対し、細野の方法においては、不安定性は計算点の値に依存せず、ほぼ一定であることが示された。これは細野の方法で採用されている安定化手法である核近似の特徴であると考えられ、引き続き、この核近似の意味について調べることが重要であると考えられる。また、眞鍋秀悟氏(申請者が研究指導を務る修士大学院生)との共同研究により、近年並列計算の分野で利用される画面描画用途のプロセサGPUをもちい、その並列演算性能の高さに着目した多倍長精度のベクトル演算ライブラリの構築をおこなった。本研究は、計算環境の整備と数値計算の理論面の双方の研究から、次世代の高精度数値計算手法を確立を目指すものである。このうち後者については予定を超えた進展をみせ、次年度においてより具体的な応用問題に取り組むための準備をおこなうことができた。一方、前者については、報告者がこれまで構築してきたexflibの並列化による高速化を目指し、IvyBridgeマイクロアーキテクチャのAVX機能を利用することを考えていた。exflibは64ビット整数演算機能をもちいた高速演算が特徴であるが、AVX機能においては当初の予想と異なり、浮動小数点演算についてはSIMDによる並列演算が実装されているものの、整数型のSIMD演算については後継のAVX2において実装予定であると発表された。浮動小数点演算をもちいた多倍長演算は、報告者の先行研究により効率的でないことが示されているため、24年度のAVXによる具体的な実装は見送り、AVXにおけるSIMD並列計算の利用法の習得に留めた。具体的には、AVXを効率的に利用するためのアセンブリ言語の習得を指しているが、これはAVX2においても高速化などにおいて必須の技術であり、これにより次年度以降にAVX2機能を有するプロセサの入手後、直ちにexflibの移植に移ることができると考えている。以上を考慮し、理論面においては当初の計画以上に進展し、計算環境の整備においてはやや遅れた面は否めないが次年度からの円滑な研究進展のための基礎技術を習得できたことを勘案し、全体としておおむね順調に進展していると判断した。本研究の目的は、多倍長計算環境を利用し、非適切問題の高精度数値計算手法を確立するものである。そのために理論的な側面および多倍長計算環境の構築という計算科学の側面を合わせた研究である。初年度は、当初の計画に従って理論的な側面の研究として、典型的な非適切問題である複素逆Laplace変換に対し、安定化手法を適用する高精度数値計算を実現した。また、この複素逆Laplace変換を例として、数値的不安定性を定量的に評価するための指標を提案し、具体的に2つの複素Laplace逆変換手法の特性を明らかにしたが、その原因の究明には至らなかったため、引き続き検討が必要であると考えられる。一方、これと合わせて、研究2年目に予定していた多倍長計算の高速化についても研究を開始し、大学院生との共同研究によりGPUを利用した並列多倍長計算環境の構築をおこなった。この多倍長計算環境は固定小数点演算に限られているものの、科学技術計算に頻繁に現れるベクトル演算の高速化を実現するものである。 | KAKENHI-PROJECT-23740075 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23740075 |
言語と政治支配の史的研究 | 本研究は人類の活動の基礎であり、諸民族のアイデンティティーを示す重要な手段としての言語をさまざまな政治権力や政治集団がその政治支配と貫徹させるためにどのように扱ってきたか、という角度からヨーロッパ史を検討することによって、さまざまな政治支配体制と諸国家における社会のありかたを明らかにしようとしたものである。その成果は簡単にまとめれば以下の通りである。1)古代中世においては、たとえばギリシア正教が布教の過程で、ラテン語ではなく諸民族語での祈祷を認めた結果、さまざまなバリアントをもつ正教の世界を創り出したとはいえ、ヨーロッパ世界を2分する大勢力となた。布教における諸民族語への対応の問題はその後のカトリックにおける宗教改革の過程でも大きな意味をもつことになった。2)近現代史においても、民族言語の再生運動は第一次大戦後のロシア帝国やハプスブルク帝国の崩壊にともなうナショナリズムの高揚のなかでも見られる。その際、ハプスブルク帝国が諸民族の言語に一定の自律性を与えていたのに比べて、ロシア帝国では一部を除きロシア語が強制されていた。そのため言語問題が革命運動と結び付き諸民族国家の独立後は民族語の開花をもたらせた。3)しかし、独立国家は同時に自己の少数民族や少数派となったロシア人をかかえており、今度は彼らに独立国家の民族語を強制することで新たな紛争を呼び起こすことになった。現在でもバルト3国などがロシア語を法的に締めだそうとして、ロシアとの対立を生み出している。4)言語と政治支配の問題に対して意識的な対応がおこなわれるのは、ハプスブルク帝国においてであるが、米国、ロシア、EUなど、現在のあらゆる多民族国家が、依然として言語と政治の関係のあり方について、感情的な対立と激しい論争をかかえている。5)多民族国家における言語政策は国際関係と関係づけて研究する必要があり、また国家権力による言語政策の成功度と国家支配の安定性の間には密接な関係がある。本研究は人類の活動の基礎であり、諸民族のアイデンティティーを示す重要な手段としての言語をさまざまな政治権力や政治集団がその政治支配と貫徹させるためにどのように扱ってきたか、という角度からヨーロッパ史を検討することによって、さまざまな政治支配体制と諸国家における社会のありかたを明らかにしようとしたものである。その成果は簡単にまとめれば以下の通りである。1)古代中世においては、たとえばギリシア正教が布教の過程で、ラテン語ではなく諸民族語での祈祷を認めた結果、さまざまなバリアントをもつ正教の世界を創り出したとはいえ、ヨーロッパ世界を2分する大勢力となた。布教における諸民族語への対応の問題はその後のカトリックにおける宗教改革の過程でも大きな意味をもつことになった。2)近現代史においても、民族言語の再生運動は第一次大戦後のロシア帝国やハプスブルク帝国の崩壊にともなうナショナリズムの高揚のなかでも見られる。その際、ハプスブルク帝国が諸民族の言語に一定の自律性を与えていたのに比べて、ロシア帝国では一部を除きロシア語が強制されていた。そのため言語問題が革命運動と結び付き諸民族国家の独立後は民族語の開花をもたらせた。3)しかし、独立国家は同時に自己の少数民族や少数派となったロシア人をかかえており、今度は彼らに独立国家の民族語を強制することで新たな紛争を呼び起こすことになった。現在でもバルト3国などがロシア語を法的に締めだそうとして、ロシアとの対立を生み出している。4)言語と政治支配の問題に対して意識的な対応がおこなわれるのは、ハプスブルク帝国においてであるが、米国、ロシア、EUなど、現在のあらゆる多民族国家が、依然として言語と政治の関係のあり方について、感情的な対立と激しい論争をかかえている。5)多民族国家における言語政策は国際関係と関係づけて研究する必要があり、また国家権力による言語政策の成功度と国家支配の安定性の間には密接な関係がある。本年度は旧ソ連・東欧、イギリス、フランスの近現代史の研究に重点を置きつつ、言語と政治体制・政治支配の関係について検討した。研究代表者の藤本は旧ソ連・東欧の崩壊の過程で再生した民族運動のなかで、バルト3国、ウクライナ、ベラルーシなどにおける民族言語の復権をめざす運動が既存政治体制の転換に果たした役割を、国内の民主化運動や環境破壊を告発する運動などとの比較で検討し、言語再生運動が民衆運動の原動力としてもつ力の大きさを確認した。またこの民族言語再生運動は第一次世界大戦後のロシア帝国やオーストリア・ハンガリー帝国の崩壊にともなうナショナリズムの高揚のなかでも見られる。その際、オーストリア・ハンガリー帝国が諸民族言語に一定の自律性を与えていたのに比べて、ロシア帝国ではフィンランドなど一部を除きロシア語が強制されていたため、これがロシア帝国内の諸民族の革命運動と結びつき、諸民族国家の独立後は民族語の開花をもたらせた。しかし、それぞれ独立した国家はそのなかにまた別の少数民族やロシア人をかかえており、今度は彼らに国家語として独立国家の民族語を強制することで、新たな紛争を呼び起こすことになった。現在バルト3国などがロシア語を法的に締め出そうとすることで、ロシアとの対立を生み出しており、多民族国家における言語政策を国際関係と結び付けて研究することも必要なことが明らかになっている。また川北・松浦は大英帝国の拡大・強化にはたした英語普及政策、堀井はフランス語教育の問題をとりあげ、国家権力による言語政策の成功度と国家支配の安定性の度合について討論した。 | KAKENHI-PROJECT-05451069 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05451069 |
言語と政治支配の史的研究 | 平成5年度に行われた旧ソ連・東欧(藤本)、イギリス(川北、松浦)、フランス(堀井)の近現代史における言語と政治体制・政治支配に関する研究によって、多民族国家における言語政策を国際関係と関係づけて研究する必要があること、また国家権力による言語政策の成功度と国家支配の安定性の間に密接な関係があることが具体的に明らかにされた。本年度はこれらの問題提起を受け研究会を組織し、森本がイギリスにおけるアイルランド問題を14世紀以来のケルト民族であるアイルランド人に対するイングランド諸侯の侵略とその言語政策という側面から検討し、英語によるゲ-ル語使用の淘汰の歴史的過程を明らかにした。しかし20世紀の現在でもゲ-ル語を母語とする人々は西部海岸地帯に少数ながら残っていること、またアイルランド共和国では英語とゲ-ル語を公用語として、学校教育でゲ-ル語を再教育することにより、国家の自立がはかられていることの意味の重要性が強調された。さらに竹中がドイツの近代化における言語問題、合阪と中谷が古代・中世における言語と政治支配の関係について問題提起し検討した。合阪はローマ帝国支配下のギリシア語使用集団に対する帝国の政策を、中谷はギリシア正教が布教において、ラテン語ではなく諸民族語での祈祷を認めたことが、正教会のスラブ民族圈への拡大に大きな意味をもったことを具体的に明らかにした。また江川は中世後期北フランスのパリ方言が国家語となる過程を国権との関係で考察した。平成5年度以来、研究参加者相互の認識の共有をはかりつつ言語と政治支配の関係をヨーロッパ史のなかに位置づけることを目標に研究会を続けてきた。本研究の最終年度である平成7年度は、森本真美が19世紀から20世紀のイギリスをとりあげ、今日なお世界中で読みつがれている少年文学が、後に名をなした政治家や文筆家に、その「胸おどる物語」に織り込まれた「帝国」のモチーフによって大英帝国の未来を担う者としての自覚を少年たちの深層心理に植えつける上で果たした役割を論じた。研究代表者の藤本はこれまでの旧ソ連・東欧、イギリス、フランスおよび古代・中世における言語と政治支配の関係の報告討論で得られた成果を研究会で総括し、その総括をめぐって各研究者から補足的報告と意見を受けた。言語と政治支配の問題に対して意識的な対応がおこなわれるのは、ハプスブルク帝国においてであるが、米国、ロシア、EUなど、現在のあらゆる多民族国家が、依然として言語と政治の関係のあり方については、感情的な対立と激しい論争をかかえており、今後もより深い研究が必要であることを確認した。本研究の結果を基に最終的な報告書の執筆と作成をおこなった。 | KAKENHI-PROJECT-05451069 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05451069 |
情報構造と形態・統語・意味とのインターフェイス:一致と関連現象を中心に | 2018年度の成果は主に3点ある.1点目は距離一致(Long Disntant Agreement: LDA)と呼ばれる一致のコントローラーとターゲットが異なった節にまたがっている現象に関して,とりわけ情報構造が関わっているデータを包括的に整理したことである.前年度はヒンディ・ウルドゥ語,カシミール語などインド・アーリア語族のデータを中心に整理を進めていたが,その対象をフォックス語(メシュカフキー語),ブラックフット語(Blackfoot),パッサマクオディ語など北米の言語にも広げその類似点と相違点について先行研究を中心にまとめた.当初の予測通り,埋め込み節内にある一致のコントローラーとなる要素が情報構造上の主題(topic)であることがどの言語でも確認された一方で,可能な埋め込みの深さ,埋め込み節と主節との文法関係上の制約,主節内で照応関係にある代理代名詞(proxy pronoun)の有無などに関してバリエーションが存在することが判明した.2点目として,類似点と相違点が整理されたLDAに関して,語彙機能文法(LFG)での分析を提案したことである.昨年度に提案した情報構造の精緻化に加え,f構造においてPIVOTという文法機能を仮定し,LDAを一致自体は局所的に定義できるものとして分析した。この提案により上述したバリエーションに関わらず一致を統一的に扱うことが可能となった。3点目は前年度に課題として挙げた人称格制約(Person Number Constraint: PCC)を包括的に扱う枠組みの提案を行ったことである。本研究では多くの経験的データを基にPCCを「人称階層に見られる代名詞間の相対的際立ちと情報構造における主題性の食い違いを排除するための制約」として捉え,動詞および節構造に関わる一般的な制約として定式化した。研究実績の概要で示したPCCの形式化に関する研究は電子情報通信学会思考と言語研究会(TL)において研究発表の機会を得て,その成果の一部を論文として発表している.より包括的な内容の論文は投稿準備中である.またLDAの研究に関しても,年度末にロンドン大学SOASにおけるSouth East of England LFG meetingで発表を行った.そこで得たフィードバックを基に修正を加えた研究が国際LFG学会に採択済みで,来年度の研究発表と論文出版の準備ができている.これらは概ね研究計画通りの進捗状況である.前年度に課題となっていたゲルマン諸語の構成素配置に関する通時的研究に関しては,先行研究見られるデータの整理と分析のまとめを行い,次年度に行う提案の下地は一定程度作ることができた.またLDAの研究の中で名詞句内における所有句が節レベルの一致のコントローラーとして機能する現象が広く見られることを観察した.この現象は本研究課題の提案を拡張することで分析可能であるため,次年度の中心的研究テーマとして取り込むこととした.2019年度は最終年度にあたり,これまでの行った研究を総括し,研究計画で提示した課題に対して充分な成果を出すことに注力する.まずPCCに関してまとめた執筆中の論文は年度半ばをめどに理論言語学系のジャーナルへの投稿を目指す.7月にLDAに関する研究について国際LFG学会での発表があり,その内容を論文化したものが年度末に出版される予定となっている。この研究は前年度まで行ってきた研究と併せてさらに包括的な枠組みの提案へと発展させることができるため,こちらも年度末まで関連ジャーナルへ投稿できるよう研究をまとめる.主題性を持った所有句が一致のコントローラーとなる現象に関しては,本年度中に研究発表の場を求め,可能であればproceedings等の短い論文の形で試案を出版するよう務める.最終年度であるため,全体の進捗状況を確認しながら,年度内に一定程度目に見える形で個別の研究の成果が現れるよう注意すると同時に,全体として一貫性のある研究としてまとめていく.また本研究課題を通して明らかになったさらなる研究課題については今後新たな研究テーマとして計画を立てられるように整理していく.2017年度の研究成果は大きく3点に分けられる.1点目は情報構造における主題性がどのように一致現象と関わるかについて,比較的広範なデータを集め,整理を行ったことである.とりわけ先行研究に見られるツェズ語に加え,ヒンディ・ウルドゥ語,カシミール語に見られる長距離一致現象,つまり埋め込み節内の主題要素がコントローラーとなり主節動詞と一致を示す現象に関してその特性をまとめた.2点目は情報構造に関して,語彙機能文法(Lexical Functional Grammar; LFG)の枠組みでこれまで先行研究で行われてきた提案を修正する形でより精緻な形式化を試みたことである.LFGの情報構造は近年のモデルでは要素をTOPIC(主題)とFOCUS(焦点)に配置するアプローチが取られているが,そのモデルでは本研究課題が対象とする現象に適切な説明を与えることはできない.本研究ではBACKGROUNDとTAILという範疇を導入し,埋め込み構造を持った情報構造を仮定し,その他の構造との対応づけを提案している.3点目は情報構造や主題性が節内の構成素の配置にも強い影響を及ぼす現象を一致と関連付けながら統合的に説明する方向性を見出したことである.先行研究では例えばゲルマン諸語において従属節内で主語,目的語,二次的目的語,斜格などがどのように配置されるかが情報構造上の主題や焦点との関係の中で通時的な構成素順の変化も含め議論されている.フランス語の接語(clitic)に人称の組み合わせに関して制約があり,同様の制約が他の言語の接語や複数の目的語や斜格の配置にも当てはまることが指摘されている. | KAKENHI-PROJECT-17K02694 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K02694 |
情報構造と形態・統語・意味とのインターフェイス:一致と関連現象を中心に | この制約はPerson Case Constraint (PCC)として通言語的に広く観察されているものだが,本研究では人称素性と情報構造との関わりを考察することで一致とPCCを統一的に扱う枠組みの提案を進めている.当初の研究計画においては初年度から国内外の学会で成果発表を求めていく予定であったが,本年度行ったのは実績の概要で記載したようにデータの整理と大きな理論的枠組みの構想,一致から派生した関連現象への拡張であり,具体的な分析の提案までは至っておらず,研究計画立案当初の予定と比較するとやや遅れているという評価をしている.また本研究課題開始前から一定程度研究をまとめてあったアイスランド語の一致現象に関して方言のバリエーションや通時的変化に関する研究への拡張はまだ取り掛かる段階に至っておらず,次年度以降へ先送りとしている.これら以外の点に関しては概ね計画通りに進んでおり,2年目以降に具体的に分析へと進むための目的語との一致現象,長距離一致現象のデータの整理と先行研究のまとめはほぼ終了している.主辞駆動句構造文法や役割指示文法などLFG以外の理論的枠組みにおける情報構造の形式化に関する提案もまとめ,その知見を基にLFGでの理論的修正も形となっている.2018年度の成果は主に3点ある.1点目は距離一致(Long Disntant Agreement: LDA)と呼ばれる一致のコントローラーとターゲットが異なった節にまたがっている現象に関して,とりわけ情報構造が関わっているデータを包括的に整理したことである.前年度はヒンディ・ウルドゥ語,カシミール語などインド・アーリア語族のデータを中心に整理を進めていたが,その対象をフォックス語(メシュカフキー語),ブラックフット語(Blackfoot),パッサマクオディ語など北米の言語にも広げその類似点と相違点について先行研究を中心にまとめた.当初の予測通り,埋め込み節内にある一致のコントローラーとなる要素が情報構造上の主題(topic)であることがどの言語でも確認された一方で,可能な埋め込みの深さ,埋め込み節と主節との文法関係上の制約,主節内で照応関係にある代理代名詞(proxy pronoun)の有無などに関してバリエーションが存在することが判明した.2点目として,類似点と相違点が整理されたLDAに関して,語彙機能文法(LFG)での分析を提案したことである.昨年度に提案した情報構造の精緻化に加え,f構造においてPIVOTという文法機能を仮定し,LDAを一致自体は局所的に定義できるものとして分析した。この提案により上述したバリエーションに関わらず一致を統一的に扱うことが可能となった。3点目は前年度に課題として挙げた人称格制約(Person Number Constraint: PCC)を包括的に扱う枠組みの提案を行ったことである。本研究では多くの経験的データを基にPCCを「人称階層に見られる代名詞間の相対的際立ちと情報構造における主題性の食い違いを排除するための制約」として捉え,動詞および節構造に関わる一般的な制約として定式化した。 | KAKENHI-PROJECT-17K02694 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K02694 |
古代楽器「土笛」を用いた、一貫型音楽活動体験新教育プログラムの開発 | 本研究は、古代楽器「土笛」を用いて、音楽活動の全て(楽器づくり、創作、鑑賞、演奏、発表、評価)を一貫体験する新教育プログラムの開発を行うと共に、その普及のために、「土笛」の歴史や製作方法、子どもの音楽作品等のDVD映像と簡潔で平易な解説書の開発を行った。本研究によって、学校音楽教育における教師の最も不得意な指導分野とされる創作(音楽づくり)、楽器づくり、鑑賞の指導が有機的に関連させて実践することが可能となる。本研究が取り組むテーマに、教師の経験不足による指導力の不足の問題が最も大きい。教師に粘土そのものを扱う経験がほとんどなく、児童生徒への指導以前の問題が非常に大きい。平成25年度《第1期》では、土笛の製作技術の開発を目的として、粘土や陶芸の知識および指導上の留意点の検討、土笛制作全行程における技術的側面の検討を行った。具体的には、(1)教師を対象とした「粘土」や陶芸の知識と指導上の留意点の検討を行なった。大学の美術科教員(福井大学...宮崎光二、坂本太郎、大阪教育大学...稲富啓一郎)の助言協力を得て、粘土を取り扱う授業実践における問題点や必要事項等を整理、検討し、粘土の必須知識と取り扱い方および指導上の留意点をまとめた。(2)土笛制作の全行程における技術的側面の検討を、独自開発した制作実験を通して行なった。制作実験においては、1素材の吟味、2成形、3乾燥、4焼成(野焼き)の技術的側面の諸問題は一応の解決を見た。(3)土笛の制作の指導方法の検討を、「素材の吟味」、「成形」、「乾燥」、各々の行程毎に行なった。指導内容の検討にむけて、学校現場における授業実践(実証実験)として、小学校3校(4年生129人、5年生192人)、中学校1校(1年生55人)、大学2校(教員養成課程又は教職免許取得予定の大学生23年生:福井大学107人、大阪音楽大学28人)を対象として土笛の成形、試奏、乾燥までを実施した。「「焼成(野焼き)」の指導方法の検討については、実施予定日の天候が予想以上に悪く、延期を余儀なくされ、小学校2校と中学校1は5月に授業実践を実施し、検討を行なう予定である。本研究が取り組むテーマの柱の一つに、「土笛を使って行う音楽活動の検討」がある。内容として1楽器づくり、2創作(音楽づくり)、3演奏、4発表、5評価であり、平成25年度では1の楽器づくりを中心に、土笛の製作技術の開発を目的として、粘土や陶芸の知識および指導上の留意点の検討、土笛製作全行程における技術的側面の検討を行った。平成26年度では、まず前年度で未実施となった実践校における土笛の「焼成(野焼き)」および指導方法の検討を行い、更に、実施場所を問わずに簡便にできる「焼成機器の開発」を行った。次に、研究の大きな柱の一つである「土笛を使って行う音楽活動の検討」を行った。具体的には、125年度に検討した土笛の製作方法を基にして、土笛の使われた国や地域、時代等の歴史や文化的背景を調査研究を行った。主な調査地は大阪府立弥生文化博物館、島根県立八雲立つ風土記の丘、島根県荒神谷遺跡、同加茂遺跡等。2創作(音楽づくり)について、創作の授業実践事例を収集し、土笛を使って創作可能な音楽的手法の検討を行った。授業実践校:大阪府枚方市立津田小学校5年生、以下3・4も)3演奏については、創作過程で行う思想や作品の中間発表の演奏等を、授業でどのように位置づけるか、その評価の有り様も含めて検討を行った。4発表については、作品発表会としての形態や楽譜の発表方法、作品の聴き方等の事例を基に検討した。5評価については14の各活動や、グループ活動、生徒個人の思考も含めて、評価の有り様を検討を開始した。本研究は古代楽器「土笛」を用いて、音楽活動のすべて(楽器づくり、創作、演奏、発表、評価)を一貫体験する教育プログラムの開発と検証、およびその普及のための開発を目的としたものである。学校現場の教師の最も不得意な指導分野となっている「創作(音楽づくり)」、「鑑賞」、「楽器づくり」の指導は、本研究によって有機的に関連させて実践することが可能となり、また、楽器づくりの具体的方法の映像提示や先行研究のない音楽活動のすべてを一貫体験するDVD映像制作によって、学校現場への普及を促進させることができる。最終年度では、土笛製作上の「技術的側面」と「指導上の留意点」の検討を行うとともに、「一貫型音楽活動体験新教育プログラム(試案)」を作成し、それによる実験授業を行い、検証・考察を行い、「古代楽器『土笛』を用いた、一貫型音楽活動体験新教育プログラム」を開発した。普及のための開発として1「新教育プログラム」冊子、2平易な言葉で簡潔にまとめた「小学校でできる!古代楽器『土笛づくり』のすべて形作り乾燥かんたん野焼き」冊子3「土笛」を用いて音楽活動のすべてを一貫体験する教育プログラムの「実践事例映像DVD」を制作した。尚、授業実践は小学校2校で実施し、授業者は次の通り。1、大阪府立枚方市立津田小学校4年生児童(104人)、平成27年10月平成28年2月、授業は石森香織(音楽専科担当)・坂本圭子(4年1組担任)・池邨眞純(2組担任)・橘香理(3組担任)・福守大輔(4組担任)が行った。 | KAKENHI-PROJECT-25381245 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25381245 |
古代楽器「土笛」を用いた、一貫型音楽活動体験新教育プログラムの開発 | 2、大阪府大東市立諸福小学校6年生児童(103人)、平成27年11月平成28年2月、授業は辻田いずみ(音楽専科担当)・戸谷温子(6年1組担任)・河村町蔵(2組担任)・宿利原めぐみ(3組担任)・高島剛(少人数担当)・久保智子(支援学級担任)・中島将友(同左)・神谷幸代(介助員)が行った。本研究は、古代楽器「土笛」を用いて、音楽活動の全て(楽器づくり、創作、鑑賞、演奏、発表、評価)を一貫体験する新教育プログラムの開発を行うと共に、その普及のために、「土笛」の歴史や製作方法、子どもの音楽作品等のDVD映像と簡潔で平易な解説書の開発を行った。本研究によって、学校音楽教育における教師の最も不得意な指導分野とされる創作(音楽づくり)、楽器づくり、鑑賞の指導が有機的に関連させて実践することが可能となる。1、前年度未実施であった土笛の「焼成(野焼き)」(小学校2校、中学校1校、土笛約900個)を56月にかけて行い、土笛制作全行程における技術的側面の検討を終えた。そのことにより26年度の研究は3ヶ月程度遅れての開始となった。その後一貫した音楽活動の検討に必要な研究授業実践校が見つかり、小学校における実践に伴うデータは確保できた。音楽教育学1、27年度では、教育プログラムの(試案)を作成し、その検証を行う。検証については、大阪府枚方市立津田小学校において行う。2、中学校あるいは高校にも授業実践を依頼して、教育プログラム(試案)の検証を可能な限り実施する。3、研究成果の冊子作成に向けて、写真や動画映像の編集を行う。(1)土笛の「焼成(野焼き)」の指導方法の検討における授業実践(実証実験)が未実施である。理由は、平成25年11月平成26年2月の間、例年にない長期の雨や雪等の天候不順のため、小学校および中学校において、児童生徒が製作した土笛の焼成(野焼き)の実施を延期せざるを得なくなった。当該校(小学校2、中学校1)の焼成(野焼き)は、各々の学校と相談して56月に実施する予定で調整中である。1、土笛の制作および土笛を使った音楽活動等を、子どもの様子や教職員の教育活動を学校現場で総合的に指導監督を行った経験のある人を指導講師として招聘する予定であったが、講師の体調不良等により実施が延期となったため。2、過去に土笛を使った音楽活動の指導および実践経験のある小学校への調査計画において、日程調整が不調となったため。27年度に調査実施の予定である。(1)未実施である学校現場における土笛の焼成(野焼き)を実施する。未実施校は小学校2、中学校1であり、その内小学校1校は5月20日に実施予定。(2)土笛の制作の指導方法の検討にむけて、教員養成課程又は教員免許取得予定の大学生への土笛制作を実施し、質問紙法によるアンケート及び面接調査を行なう。(3)土笛を使って行なう音楽活動の検討を行なう。具体的には1「楽器作り」としての土笛の制作方法及び土笛の歴史や文化的背景をまとめる。2「音楽づくり(創作)」の授業実践事例を収集し、土笛を使って創作可能な手法を検討する。3音楽づくり(創作)の過程で行なう中間発表や作品発表会等の「演奏」の授業における位置づけとその評価の有り様を検討する。4作品発表会としての形態や楽譜の発表方法、作品の聴き方等、事例をもとに検討する。5土笛を使った音楽活動の「評価」の有り様を検討する。(4)教育プログラム(試案)を作成する。1、上記の指導助言を受ける講師には、27年度の前半に招聘して指導を受ける。 | KAKENHI-PROJECT-25381245 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25381245 |
バイオ医薬品製造における過酸化水素除染プロセスの設計フレームワーク構築 | 本研究では、注射剤を製造する環境中の微生物を殺滅することで無菌化する除染プロセスを対象に解析をおこなってモデル化する。過酸化水素の凝縮や分解といった反応を考慮し、実験・討議を通して殺菌現象を記述する。高い経済性と品質保証を兼ね備えた医薬品製造に貢献するために、注射剤製造の生産性を考慮した上で除染プロセスの設計を可能とするフレームワークを構築する。本研究では、注射剤を製造する環境中の微生物を殺滅することで無菌化する除染プロセスを対象に解析をおこなってモデル化する。過酸化水素の凝縮や分解といった反応を考慮し、実験・討議を通して殺菌現象を記述する。高い経済性と品質保証を兼ね備えた医薬品製造に貢献するために、注射剤製造の生産性を考慮した上で除染プロセスの設計を可能とするフレームワークを構築する。 | KAKENHI-PROJECT-19J14085 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19J14085 |
レーザ焼入れ条件の設定・制御に関する研究 | レーザ焼入れに用いられる代表的な分布(ガウス分布、矩形分布、矩形ーガウス分布)の熱源による温度分布を熱伝導論に基づいて解析した。また、ビーム吸収性の高いコーティングを付けた銅材のビーム吸収率と表面温度の関係を与える式を導いた。更に、温度分布と硬度分布の関係を示すと共に、最大硬度を与える温度は鋼材のカーバイド分布が粗いほど高くなることを明らかにした。以上の結果より、上記分布熱源にたいする硬化深さを与える高精度で簡単な近似式を導出した。レーザ焼入れ条件を広げ、制御を容易にするための新しい光学系を開発した。この光学系はビーム形状が可変で、ビームシェイピング効率が高くかつ表面コーティング無しに高い吸収率を与えることができる特徴がある。これを用いると鋼材表面の温度を最適値に維持したまま、硬化深さを変化でき、コーティングがなくても50%もの高い吸収率が達成されるので必ずしもコーティングを必要としない。これを用いることによって、じゅうらい不可能であったレーザ焼入れ条件の幅広い設定・制御が可能であることを示した。レーザ焼入れに用いられる代表的な分布(ガウス分布、矩形分布、矩形ーガウス分布)の熱源による温度分布を熱伝導論に基づいて解析した。また、ビーム吸収性の高いコーティングを付けた銅材のビーム吸収率と表面温度の関係を与える式を導いた。更に、温度分布と硬度分布の関係を示すと共に、最大硬度を与える温度は鋼材のカーバイド分布が粗いほど高くなることを明らかにした。以上の結果より、上記分布熱源にたいする硬化深さを与える高精度で簡単な近似式を導出した。レーザ焼入れ条件を広げ、制御を容易にするための新しい光学系を開発した。この光学系はビーム形状が可変で、ビームシェイピング効率が高くかつ表面コーティング無しに高い吸収率を与えることができる特徴がある。これを用いると鋼材表面の温度を最適値に維持したまま、硬化深さを変化でき、コーティングがなくても50%もの高い吸収率が達成されるので必ずしもコーティングを必要としない。これを用いることによって、じゅうらい不可能であったレーザ焼入れ条件の幅広い設定・制御が可能であることを示した。均一な焼入れ層の得られる矩形ビーム光学系き検討を行うと共に,物理光学(干渉縞解析)ならびに幾何光学(平均分布解析)により理論解析を行い,実測強度分布と比較してレーザ焼入れ用熱源としての性質を調べた.本光学系はカライドスコープの原理を利用するもので,断面が矩形の銅角管と2枚のZnSeレンズから構成される.この光学系では第1レンズにより集光した不均一なCO_2レーザビームは角管中での多重反射により均一化され,第2レンズよりワーク上に結像して任意寸法の均一矩形ビームを得る.強度分布は通常の写真乾板を用いて測定した.その乳剤は赤外線に感光しないので,乳剤が温度に依存した可視光感度をもつ性質を利用した.すなわち, CO_2レーザビームをパルス状に乾板へ照射した直後に均一可視光を露光させることにより, CO_2レーザビームの強度分布を乾板上での黒化度の分布としてプリントすることができた.これにより, 0.011J/cm^2の範囲ではレーザ強度と黒化度増加とは直線関係にあることがわかり,微細な強度分布の限定が可能となった.ガウスビームが入射したとき,角管の一辺の長さにたいする長さの比がビームのFナンバの2.53倍のとき,均一分布ビームが得られる.また干渉縞のピッチは十分に細かく,表面焼入れに利用する上では均一ビームとみなしてさしつかえないことが明らかになった.また,本光学系の光軸がレーザビーム軸にたいするミスアラインメントは,位置精度0.6mm,角度精度が約1.5°以内であれば硬化層の不均一に影響しないことがわかった.本光学系の効率は約85%と高く,じゅうらい型のものに較べて高いことが明らかになった.また,本光学系をレーザ焼入れに応用したところ,均一で十分な深さの硬化層が得られた.レーザ焼入れに用いられる代表的な分布(ガウス分布、短形分布、短形ーガウス分布)の熱源による温度分布を熱伝導論に基づいて解析した。また、ビーム吸収性の高いコーティングを付けた鋼材のビーム吸収率と表面温度の関係を与える式を導いた。更に、温度分布と硬度分布の関係を示すと共に、最大硬度を与える温度は鋼機のカーバイド分布が粗いほど高くなることを明らかにした。以上の結果より、上記分布熱源にたいする硬化深さを与える高精度で簡単な近似式を導出した。レーザ焼入れ条件を広げ、制御を容易にするための新しい光学系を開発した。この光学系はビーム形状が可度で、ビームシェイピング効率が高くかつ表面コーティング無しに高い吸収率を与えることができる特徴がある。これを用いると鋼材表面の温度を最適値に維持したまま、硬化深さを変化でき、コーティングがなくても50%もの高い吸収率が達域できるので必ずしもコーティング必要としない。これを用いることによって、じゅうらい不可能であったレーザ焼入れ条件の幅広い設定・制御が可能であることを示した。 | KAKENHI-PROJECT-62550533 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62550533 |
自律神経系に及ぼすサイトカインによる中枢性作用の形態学的解析 | 自律神経系に及ぼすサイトカインによる中枢性作用として摂食抑制作用に着目し、本研究を行った。サイトカインの中枢性作用に関する形態学的な報告はあるが、その摂食抑制作用を司る神経核あるいは神経経路は、特定されていない。サイトカインは、様々な中枢作用を示すため、作用部位に関する単なる形態学的な解析だけでは、その摂食抑制作用への責任領域を特定できない。そこで、摂食抑制物質による食欲抑制に働く神経経路と比較検討することにより、食欲抑制作用のためのサイトカインの作用部位が推定され得ると考え、ラットに摂食抑制物質である内因性有機酸2-buten-4-olide(2-B4O)を投与し、下位脳幹におけるこの物質の作用領域すなわち食欲抑制神経経路を構成する神経核を調べた。形態学的指標としては、神経細胞興奮のmarkerとされるc-fosを用い、c-fos蛋白(Fos)の発現を免疫組織化学的に検出した。2-B4O投与ラットの脳幹では、延髄(腹外側野、最後野、弧束核)、橋(青斑核、外側傍腕核、橋腹外側領域、背側縫線核尾側部、橋縫線核)、中脳(性側縫線核、正中縫線核、中心灰白質)においてFos免疫陽性反応が観察された。これらのFos発現は、脳幹神経細胞が食欲調節に働く上行性ならびに下行性ニューロンネットワークを構成していることを示唆した。また、Fosとカテコラミン合成酵素であるTyrosine Hydroxylase(TH)に対する二重免疫染色を行うと、核内Fosと細胞質THを有する神経細胞が脳幹の各レベルで検出され、カテコラミン作動性ニューロンが食欲抑制系神経経路の一部を成すことを示した。以上の結果を踏まえ、次の段階としてサイトカイン投与による中枢神経系でのFos発現を調べ、今回、明らかにした食欲抑制系神経経路と比較検討し、サイトカインによる摂食抑制を担う神経核および神経経路を同定する。さらに脳幹モノアミン(Catecholamine,Serotonin)系ニューロンの関与についても二重免疫染色を用いて検討する。自律神経系に及ぼすサイトカインによる中枢性作用として摂食抑制作用に着目し、本研究を行った。サイトカインの中枢性作用に関する形態学的な報告はあるが、その摂食抑制作用を司る神経核あるいは神経経路は、特定されていない。サイトカインは、様々な中枢作用を示すため、作用部位に関する単なる形態学的な解析だけでは、その摂食抑制作用への責任領域を特定できない。そこで、摂食抑制物質による食欲抑制に働く神経経路と比較検討することにより、食欲抑制作用のためのサイトカインの作用部位が推定され得ると考え、ラットに摂食抑制物質である内因性有機酸2-buten-4-olide(2-B4O)を投与し、下位脳幹におけるこの物質の作用領域すなわち食欲抑制神経経路を構成する神経核を調べた。形態学的指標としては、神経細胞興奮のmarkerとされるc-fosを用い、c-fos蛋白(Fos)の発現を免疫組織化学的に検出した。2-B4O投与ラットの脳幹では、延髄(腹外側野、最後野、弧束核)、橋(青斑核、外側傍腕核、橋腹外側領域、背側縫線核尾側部、橋縫線核)、中脳(性側縫線核、正中縫線核、中心灰白質)においてFos免疫陽性反応が観察された。これらのFos発現は、脳幹神経細胞が食欲調節に働く上行性ならびに下行性ニューロンネットワークを構成していることを示唆した。また、Fosとカテコラミン合成酵素であるTyrosine Hydroxylase(TH)に対する二重免疫染色を行うと、核内Fosと細胞質THを有する神経細胞が脳幹の各レベルで検出され、カテコラミン作動性ニューロンが食欲抑制系神経経路の一部を成すことを示した。以上の結果を踏まえ、次の段階としてサイトカイン投与による中枢神経系でのFos発現を調べ、今回、明らかにした食欲抑制系神経経路と比較検討し、サイトカインによる摂食抑制を担う神経核および神経経路を同定する。さらに脳幹モノアミン(Catecholamine,Serotonin)系ニューロンの関与についても二重免疫染色を用いて検討する。 | KAKENHI-PROJECT-06780674 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06780674 |
振動型積分作用素理論とそれの量子場のFeynman経路積分への応用 | (1)無限の過去・未来を可算無限回行き交う相対論的電子の経路からなる空間上の、Feynman経路積分の数学的構成を行った。これにより、電子の第2量子化、即ち同時刻に可算無限個の電子・陽電子を導入することが、経路積分理論で可能であることを示した。(2)(1)で構成した経路積分が、相対論的に不変であること、即ちLorentz変換に対するspinor性を持つことを示した。(3)相対論的電子の確率振幅がユニタリ性・因果性を持つことを、経路積分から直接証明した。(4)空間方向に多項式オーダーで増大するポテンシャルを持つSchroedinger方程式に対する、Feynman経路積分の数学的構成を行った。本研究の目的は、相対論的量子電磁気学の非摂動Feynman経路積分の数学的、即ち感覚的でなく、厳密な構成を与えることである。交付申請書において、平成26年度の実施計画は、(1) Schroedinger方程式とDirac方程式に対する、超関数上のFeynman経路積分の数学的構成、(2) Dirac方程式に対するFeynman propagatorの、Feynman経路積分による構成であった。(1)の研究については、従来2乗可積分空間や滑らかな空間について、Feynman経路積分の数学的構成が為されていた。本年度の研究において、Schwartzの緩増加超関数空間において、Schroedinger方程式とDirac方程式に対する、Feynman経路積分の数学的構成に成功した。(2)の研究については、本研究者(一ノ瀬)は2014年の論文で、過去と未来を行き交う経路を考えるFeynman経路積分の数学的構成を行い、Feynmanがノーベル賞講演でその期待を述べていた、反粒子である陽電子の導入に成功した。本年度の研究では、2014年の論文の結果の拡張を行い、無限の過去にも又無限の未来にも可算回行き交う経路を考える、Feynman経路積分の数学的構成を行うことに成功した。これにより、同時刻に、可算個の電子と反電子(陽電子)を同時に考えることが可能になった。従来の結果では、有限個の電子と反電子しか考えることが出来なかった。Feynman propagatorの、Feynman経路積分による構成の研究については、この研究の結果に基づき、平成27年度に行う計画である。交付申請書で書いた以外に得た結果として、Dirac方程式の解が、相対論的な因果律を満たすことの、Feynman経路積分を用いた証明を与えた。この結果は、双曲型偏微分方程式の解の有限伝播性として、偏微分方程式論で良く知られた結果である。偏微分方程式論での証明は、困難なものである。これの直接的で簡明な証明を与えることに成功した。本研究課題の目的は、Feynman経路積分の数学的構成、即ち、論理的に厳密な構成を与えることであり、主に相対論的量子電磁気学を対象とする研究である。交付申請書に記載されているように、平成27年度の実施計画は、相対論的量子電磁気学において、電子に対するFeynman propagatorの、Feynman経路積分による構成であった。本年度の研究実績は、以下の通りである。1. “電子に対するFeynman propagatorの、Feynman経路積分による構成"。研究代表者(一ノ瀬)は2014年の論文で、過去と未来を行き交う経路空間上のFeynman経路積分の数学的構成を行い、Feynmanがノーベル賞講演でその期待を述べていた、反粒子である陽電子の描像の導入に成功した。昨年度から本年度にわたる研究で、2014年の論文の結果の拡張を行い、無限の過去にも未来にも可算無限回行き交う経路空間上の、Feynman経路積分の数学的構成を行うことに成功した。この研究成果は現在、数理物理学の研究で世界のトップに位置する雑誌に投稿中である。電子に対するFeynman propagatorのFeynman経路積分による構成については、現在研究の途中であるが、順調に研究が進んでいる状況である。Dirac方程式に対するFeynman経路積分の構成は、同時刻に可算無限個の電子と反電子(陽電子)を考えることが可能になる形で与えることが出来た。このため、相対論的量子電磁気学に対するFeynman経路積分の研究から見て、ほぼ十分な結果を得ることできた。一方、電子に対するFeynman propagatorのFeynman経路積分による構成について、完全な成果を現在まだ得られていない。このため、研究は当初の研究計画の予定よりやや遅れている。電子に対するFeynman propagatorの研究は、Dirac方程式に比べて難しいということが、この一年の研究で明らかになった。その理由は、Dirac方程式が電子と陽電子を同様に扱うのに対して、Feynman propagatorでは、電子と陽電子は時間の向きについて、その扱いが異なることによる。しかし、この困難も現在克服されつつあり、現在順調に研究は進んでいる。本研究課題の目的は、Feynman経路積分の数学的構成およびその性質を研究することであった。特に相対論的量子電磁気学がその対象であった。3年間の研究により、相対論的粒子の運動を記述するDirac方程式と、非相対論的粒子の運動を記述するSchroedinger方程式について以下の成果を得た。1.過去と未来を行き交う経路空間上のFeynman経路積分の数学的構成を、Dirac方程式に対して行うことに成功した。これにより、Feynmanがノーベル賞講演でその期待を述べていた、経路積分による反粒子の描像の導入が可能になった。 | KAKENHI-PROJECT-26400161 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26400161 |
振動型積分作用素理論とそれの量子場のFeynman経路積分への応用 | 2.上記1の結果の拡張を行い、過去にも未来にも可算無限回行き交う経路空間上の、Feynman経路積分の数学的構成を行うことに成功した。これにより、経路積分において、同時間に可算無限個の粒子、反粒子を導入することに成功した。更に、偏微分方程式論により、Dirac方程式の解がユニタリー性・因果性を持つことが示されている。我々はFeynman経路積分を用いて、これらの結果の別証明を与えることに成功した。3.上記の経路積分について、その相対論的不変性を示した。即ち、Lorentz変換に対するspinor性を、経路積分が持つことを示した。4.時間に依存し空間方向に多項式オーダーで増大するポテンシャルを持つ、Schroedinger方程式に対する、解の存在とその一意性を、重み付きSobolev空間において示した。時間に依存するポテンシャルを持つSchroedinger方程式の研究は、現在困難な問題の一つである。5.時間に依存し空間方向に多項式オーダーで増大するポテンシャルを持つ、Schroedinger方程式に対する、Feynman経路積分の構成に成功した。空間方向に多項式オーダーで増大するポテンシャルを持つ問題は、最も困難な問題として長い間未解決であった。(1)無限の過去・未来を可算無限回行き交う相対論的電子の経路からなる空間上の、Feynman経路積分の数学的構成を行った。これにより、電子の第2量子化、即ち同時刻に可算無限個の電子・陽電子を導入することが、経路積分理論で可能であることを示した。(2)(1)で構成した経路積分が、相対論的に不変であること、即ちLorentz変換に対するspinor性を持つことを示した。(3)相対論的電子の確率振幅がユニタリ性・因果性を持つことを、経路積分から直接証明した。(4)空間方向に多項式オーダーで増大するポテンシャルを持つSchroedinger方程式に対する、Feynman経路積分の数学的構成を行った。交付申請書の実施計画(1)のSchroedinger方程式とDirac方程式に対する、超関数上のFeynman経路積分の数学的構成。この計画については、完全に解決した。即ち、Schwartzの緩増加超関数空間において、Feynman経路積分の数学的構成に成功した。交付申請書の実施計画(2)のDirac方程式に対するFeynman propagatorの、Feynman経路積分による構成。同時刻に、可算個の電子と反電子(陽電子)を同時に考えることが可能になる、非摂動Feynman経路積分の数学的構成に成功した。この経路空間での非摂動Feynman経路積分を用いることで、現在の物理学で知られている摂動論的な場の理論の結果と対応する結果が期待出来るようになった。現代物理学の摂動論的な場の理論では、同時刻に、可算個の電子と反電子を考えているので、Feynman経路積分においても、同じ状況を考える必要性があったが、これを解決したことになる。 | KAKENHI-PROJECT-26400161 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26400161 |
化学反応サイクルを利用した同時脱硫脱硝システム | 1.実験より次の結果を得た。2.プロセスの概念設計で,100MW発電所の排ガス(石炭燃料,硫黄含量0.8wt%)脱硫率を70%とした場合の流動床型反応器を想定した。(1)次の基礎式を得た.W_R=(236)/(α_R) : W_R ;触媒再生塔の触媒重量[kg](2)上式の解の一例として,次の数値を得た.これらは実現可能の範囲内にある.(3)上式のW_S,W_R,Rを大きくすることによって,90%程度まではほぼ比例して脱硫率を上げることが可能である.それ以上の脱硫率を得るには,流動床と固定床の併用が考えられる.(4)硫黄含量の異なる石炭では,W_S,W_R,Rをほぼ比例させて変えることによって対応可能である.(5)SCR反応はSO_2の吸収速度よりもずっと速く,(2)の条件では脱硝率はほぼ100%である.1.実験より次の結果を得た。2.プロセスの概念設計で,100MW発電所の排ガス(石炭燃料,硫黄含量0.8wt%)脱硫率を70%とした場合の流動床型反応器を想定した。(1)次の基礎式を得た.W_R=(236)/(α_R) : W_R ;触媒再生塔の触媒重量[kg](2)上式の解の一例として,次の数値を得た.これらは実現可能の範囲内にある.(3)上式のW_S,W_R,Rを大きくすることによって,90%程度まではほぼ比例して脱硫率を上げることが可能である.それ以上の脱硫率を得るには,流動床と固定床の併用が考えられる.(4)硫黄含量の異なる石炭では,W_S,W_R,Rをほぼ比例させて変えることによって対応可能である.(5)SCR反応はSO_2の吸収速度よりもずっと速く,(2)の条件では脱硝率はほぼ100%である. | KAKENHI-PROJECT-09247209 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09247209 |
行動発現に内在する眼球運動と関連した視覚処理機構の解明 | 本研究では、手の運動発現に内在する眼球運動と関連した視覚処理の機序解明を目標とし、特に、今年度は、自己の手に対して生じる身体意識が眼球運動にどのような影響を与えるかを調べた。ある目標に向かって手を動かすとき、眼球も手の動きに協調して動く。このように眼と手が協調して動くときには、眼球運動システムが手に関する脳内身体表象にアクセスしている可能性が考えられるが、眼球運動システムがどのような身体表象にアクセスしているかはよくわかっていなかった。脳内の身体表象には、少なくとも二つの身体表象があることが知られており、一つは身体イメージと呼ばれ、もう一つは身体スキーマと呼ばれている。本研究では、コンピューターグラフィックスにより作成された手(CGハンド)を提示し、CGハンドに対して自分の身体があると感じる場所(身体定位)を制御できる実験環境を構築した。身体定位を実験的に操作することで、被験者の物理的な右手の位置と主観的に感じている右手の位置を分離することが可能となる。このように、物理的な右手の位置と主観的な右手の位置を分離した状態で、被験者が感じている右手に向かって眼球運動を行うと、どちらの位置にサッカード眼球運動が向けられるかを調べた。その結果、主観的な右手の位置に向くことが示された。この結果は、自己の手に対して生じる身体意識の中でも、身体イメージと呼ばれる視覚に関連する身体表象に、サッカード眼球運動がアクセスしていることを示している。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。本研究では,手の運動発現に内在する眼球運動と関連した視覚処理の機序解明を目標としている.これまで,視覚処理は眼球運動と関連のない受動的な処理過程であるという前提で,視覚情報から手の運動情報に変換する処理過程が調べられてきた.しかし,手作業中に眼球と手は協調して運動することから,眼球運動を伴う能動的な視覚処理が手の運動発現と関わっている可能性が指摘されているが,その視覚処理機構は未知である.近年の研究により,眼球運動に対して生じる適応効果が手の運動に転移することから,眼球運動システムの順応と関連していることが示唆される.この眼球運動の適応効果は,眼球運動後の視覚空間処理と関連づけられており,手と眼球の協調運動においても眼球運動後の視覚信号の操作が鍵となると思われる.そこで本研究では,眼球運動後の視覚信号が視空間の知覚にどのように寄与するのかを調べた.眼球運動を伴うと,眼球の動きにより網膜像が動いてしまうため,眼を動かしても安定した視空間を知覚するための処理機構を視覚系は持つ必要がある.このような処理機構として,眼球運動に変位検出能力の低下(サッカード変位抑制)による処理機構が古くから知られているが,近年ではそのような抑制機構だけでなく別の処理機構の関与が指摘されている.実際には,サッカード抑制が生じている期間にターゲットを一時的に消失させると変位検出能力が改善する.また,サッカード中にターゲットを一時的に消失させ,周囲の刺激の位置をずらすと,周囲の刺激でなくターゲットの変位が知覚される.本研究は,これらの効果がターゲットの輝度コントラストに依存することを示し,輝度過渡信号に選択的に応答する処理経路の関与を示唆した.この成果は,視覚科学の国際一流誌であるVision Research誌に掲載された.本年度は,当初の予定通り,新規に眼球運動計測器を導入し、現有の力覚提示装置と併用する実験環境を開発した.眼球運動後の視覚処理特性を精査することに多くの時間を費やしたが,その基本特性の精査は終了し,手の運動との関連を調べる実験に現在は着手している.概ね,実験準備は終わっている.来年度は,より多くのデータを収集する予定である.本研究では、手の運動発現に内在する眼球運動と関連した視覚処理の機序解明を目標としている。我々は動くものを見るとき、対象物を正確に捉えるために、運動対象を追跡する追従眼球運動を行う。このとき、眼だけで追跡を行うのではなく、手の動きを伴わせることで、追跡中の眼球運動に占める追従眼球運動の割合が増加することが知られている。しかし、このようなパフォーマンスの変化がどのような条件下で起こるのかはまだ分かっていなかった。追従眼球運動の増加は、より効率的で正確な情報の提示や、それを考慮したヒューマンインターフェースの設計につながる。こういった観点から、追従眼球運動の性質や仕組みを明らかにすることは重要である。本年度は,視覚刺激が無い状態での追従眼球運動の生起、およびそういった眼球運動がどのような信号を用いて行われているかについて調査した。その結果、手の動きと視線の動きの方向が一致しているときに、追従眼球運動が増加することが明らかになった。また、サッカード眼球運動前後の視覚信号がどのように視野統合されるのかを調べるために、サッカード抑制が生じている期間にターゲットを一時的に消失させると変位検出能力が改善するブランク効果と呼ばれる現象を利用して、サッカード前と後の刺激の輝度コントラストを独立に変化させたときのブランク効果の強度を測定した。その結果、サッカード前の刺激輝度コントラストがサッカード後の刺激輝度コントラストよりもブランキング効果に大きく影響することがわかった。これより、サッカード前の刺激の位置情報の保持が、サッカード前後の情報統合に重要な役割を果たすことが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-16H03748 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H03748 |
行動発現に内在する眼球運動と関連した視覚処理機構の解明 | 本年度は,当初の予定通り,新規に力覚提示装置を導入し、眼球運動測定装置と併用する実験環境を開発した.手の運動との関連を調べる実験に着手することができた。さらに、手の動きに伴って眼球運動のデータをより詳細に分析する解析ツールの作成も終わったため、来年度は手に関する情報を、体性感覚情報だけでなく、視覚情報も考慮し、眼球運動データを多角的に分析することで、手の行動発現に内在する眼球運動の制御機構を明らかにすることを目指す。本研究では、手の運動発現に内在する眼球運動と関連した視覚処理の機序解明を目標とし、特に、今年度は、自己の手に対して生じる身体意識が眼球運動にどのような影響を与えるかを調べた。ある目標に向かって手を動かすとき、眼球も手の動きに協調して動く。このように眼と手が協調して動くときには、眼球運動システムが手に関する脳内身体表象にアクセスしている可能性が考えられるが、眼球運動システムがどのような身体表象にアクセスしているかはよくわかっていなかった。脳内の身体表象には、少なくとも二つの身体表象があることが知られており、一つは身体イメージと呼ばれ、もう一つは身体スキーマと呼ばれている。本研究では、コンピューターグラフィックスにより作成された手(CGハンド)を提示し、CGハンドに対して自分の身体があると感じる場所(身体定位)を制御できる実験環境を構築した。身体定位を実験的に操作することで、被験者の物理的な右手の位置と主観的に感じている右手の位置を分離することが可能となる。このように、物理的な右手の位置と主観的な右手の位置を分離した状態で、被験者が感じている右手に向かって眼球運動を行うと、どちらの位置にサッカード眼球運動が向けられるかを調べた。その結果、主観的な右手の位置に向くことが示された。この結果は、自己の手に対して生じる身体意識の中でも、身体イメージと呼ばれる視覚に関連する身体表象に、サッカード眼球運動がアクセスしていることを示している。最も時間がかかる実験装置の開発は終わったため,手の適応効果を計測する実験を遂行するのみである.手の動きに伴って眼球運動のデータをより詳細に分析する解析ツールの作成が終わり、手の動きと眼球運動の関連について、過去の研究結果も、新規に設置した実験装置で再現できることを確認し、本研究で計画している実験も着実に進み、データが集まりつつある。今後は、論文の執筆も視野に入れて、研究を進めていく予定である。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-16H03748 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H03748 |
初期瑜伽行派における大乗仏教思想の形成過程の解明-伝統的教義との融合と発展- | 本研究の目的は、初期瑜伽行派の基本的文献の一つである『大乗荘厳経論』のうち、それ以前に存在する部派仏教の思想を色濃く反映している第18章「菩提分品」の解読と分析を通して、一般的には小乗仏教思想から大乗仏教思想へと移行していった仏教思想の変遷を究明することにある。その中でも、章の初めに説かれる羞恥については、以下に挙げる研究成果として、その概念の思想史的変遷についてまとめることができた。章の中心テーマである三十七菩提分法や、次章との関連も深いと目される人法二無我についても、その修行方法の変化ではなく、菩薩にとっての修行方法として意図する目的や目指すべき境地の違いによって、一般の修行者たちとの差別化を図っていることが明らかにされている。三十七菩提分法の一部である四念処については、研究論文としてまとめられており、『大乗荘厳経論』という一論書と『大方大集経』等といった大乗経典との関連性も浮き彫りとなり今後の研究の進展にも貢献しているといえる。本研究によって、第18章の各項目の一つ一つについても内実が明らかにされたため、注釈家たちの時代の瑜伽行派思想の理解もより鮮明になった。同様にこれまで分かっていなかった『大乗荘厳経論』における第18章の位置づけが、菩薩に必要な自利・利他行を具体的に実現するための手段を説く章であることが明確に知られた。そのため、『学集論』その他の菩薩の修行道との関係性とも比較できるだけの素地も整ったといえ、今後さらなる研究の進展が見込まれる。『大乗荘厳経論』第十八章の内容分析を中心として、大乗仏教の一学派である、初期瑜伽行唯識学派の思想史の変遷がどのように進展していったかを明らかにすることが本研究の目的である。そのために、『大乗荘厳経論』のサンスクリット原典解読に従事している。現存する二本のチベット語訳註釈書を手掛かりとして、改めてその内容を精査することが主な研究内容である。平成23年度は、このチベット語訳注釈書の内容分析をはじめとして、関連するテキスト(特に『瑜伽師地論』「菩薩地」)との比較検討を行ってきた。その結果、これまで知られてこなかった『瑜伽師地論』「菩薩地」という論書と『法華経』という大乗経典の接点を良医の喩例を通して見いだされた。従って、従来、大乗経典の影響を後の論書が受け継いでいることについては、活発な議論がなされてきたが、その根拠となる一部を今回発見することができた。この研究成果については、雑誌論文への掲載と、国際学会での口頭発表によって、国内外に知らしめるに至っている。また、『大乗荘厳経論』の二本の注釈書のうちで、スティラマティによる注釈書中で、数多くの経典引用が見出されており、さらに『大方大集経』「無尽意品」からの引用であることが判明している。このことによって、世親作『大乗荘厳経論』にみられる思想が、『大方大集経』由来のものである可能性が高いことが知られる。今後、本地分「菩薩地」との比較検討をする上で、重要な手がかりになるといえる。本研究の目的は、初期瑜伽行派の基本的文献の一つである『大乗荘厳経論』のうち、それ以前に存在する部派仏教の思想を色濃く反映している第18章「菩提分品」の解読と分析を通して、一般的には小乗仏教思想から大乗仏教思想へと移行していった仏教思想の変遷を究明することにある。その中でも、章の初めに説かれる羞恥については、以下に挙げる研究成果として、その概念の思想史的変遷についてまとめることができた。章の中心テーマである三十七菩提分法や、次章との関連も深いと目される人法二無我についても、その修行方法の変化ではなく、菩薩にとっての修行方法として意図する目的や目指すべき境地の違いによって、一般の修行者たちとの差別化を図っていることが明らかにされている。三十七菩提分法の一部である四念処については、研究論文としてまとめられており、『大乗荘厳経論』という一論書と『大方大集経』等といった大乗経典との関連性も浮き彫りとなり今後の研究の進展にも貢献しているといえる。本研究によって、第18章の各項目の一つ一つについても内実が明らかにされたため、注釈家たちの時代の瑜伽行派思想の理解もより鮮明になった。同様にこれまで分かっていなかった『大乗荘厳経論』における第18章の位置づけが、菩薩に必要な自利・利他行を具体的に実現するための手段を説く章であることが明確に知られた。そのため、『学集論』その他の菩薩の修行道との関係性とも比較できるだけの素地も整ったといえ、今後さらなる研究の進展が見込まれる。予定していた通り、チベット語訳注釈書二本の内容解読に従事した。これによって、『大乗荘厳経論』第十八章の内容を把握することができた。また、平成23年度は9か月あまりドイツの仏教学研究所で研究滞在を行うことができ、この期間にサンスクリット写本の解読の訓練を行うことができ、当初の計画以上に進展しているといえる。本研究の特徴は、サンスクリット原典に対して、二本のチベット語注釈書を用いて、その内容分析を試みることにある。 | KAKENHI-PROJECT-11J01751 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J01751 |
初期瑜伽行派における大乗仏教思想の形成過程の解明-伝統的教義との融合と発展- | しかし、今年度の研究成果によって、時代の近いサンスクリット語文献との関連性が重要であると考えられる。またサンスクリット語原典自体の精度が、従来の校訂テキストでは不十分であるとの結論を得たために、今後は現存するサンスクリット写本の用いた新しい校訂テキスト作成に取り組む。 | KAKENHI-PROJECT-11J01751 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J01751 |
荒天時における船舶機関の運転制御および波浪影響の連携評価による新運航システム | 本研究ではばら積み貨物船を対象に実海域データを約6年間にわたって計測しており、荒天時の意識的減速に関する目安として示されている鉛直加速度、横揺角、海水打ち込みおよびスラミングの発生確率を計算した。一方、荒天航海時は船橋だけでなく、機関室においても主機の過負荷を防止する目的で、様々なパラメーターをモニタリングしていると言われる。このため主機関係の指標も多面的にデータ処理し、他のパラメーターとの変動関係性についても比較検証していき、ばら積み貨物船の荒天航海時に対する船速低下を支配する要因を考察した。荒天航海時の機関運転および自動制御の状況に関する現地調査およびデータ分析として、国際航海に従事するばら積み貨物船を調査し、過去の荒天航海時における機関運転に関連した資料・データの収集を行った。これより、波浪などの外力条件により危険と判断、人的判断で減速運転したケースも明らかとなったが、回転数、出力、燃料消費量などのデータによる裏付けを進めているところである。現場関係者を対象をに聞き取り調査も実施しており、28年度には運航関係者を対象に広範囲なアンケート調査を実施する準備が整った。荒天航海時におけるプロペラ推進力、エンジン馬力の変動成分に関する推定モデル開発については、関連研究を参照の上、燃料流量を説明変数とするBondarenkoの理論をベースにエンジントルクとプロペラトルクの差による推進モデルの開発、さらに燃料消費量の推定およびCO2排出量の予測まで進めることができた。今年度は主機の過負荷を防止するために自動制御として機能しているガバナーの影響を組み込むことで高度化を図る計画である。一方、実海域での耐航性能に関しては、周波数領域で波浪場の三次元影響をランキンパネル法にて実用性を失わずに計算精度を向上させる計画であるが、船体表面の四角形パネルの高次オーダー処理が計画どおりに進んでおらず、28年度に促進を図る計画である。機関運転の評価に関するデータ計測、資料収集、モデルの構築は計画どおりに進行している。ランキンパネル法の高次オーダー化については、理論解析は目処がついているものの、プログラムへのコード化の部分で多くの時間を消費しているため。この点については、研究分担者の助力も適宜得ながら、進めていく。平成27年度の実施内容をもとに平成28年度は実海域におけるばら積み貨物船の荒天航海における計測データをもとに主機の制御モードごとに船速低下を評価可能な数値シミュレーションモデルを構築、再現計算を行い、その精度を詳細に検証した。得られた結論は以下に要約できる。(1)南半球の3海域における荒天航海の状況について、主機制御の状況を詳細に分析した。この結果、2ケースについては、船速が低下しているにもかかわらず主機出力や推力が一定値となっている出力一定制御の状況に近く、1ケースは船速や回転数の低下とともに主機出力や推力も大きく変動している状況が混在していることが明らかとなった。後者については主機の排気温度を過大とさせないように人為的に制御している可能性が高く、この点のさらなるデータ分析とモデル化が必要である。(2)2010年度および2013年度における主機出力、燃料消費量の特性を統計的に分析した。荒天航海中と静穏時における比較、通常負荷および減速運転における特性の違いについても違いを明らかとした。縦揺れの有義振幅が4度を超える状況では船速低下は顕著となり、1海里あたりの燃料消費量は60リットルから100リットルまで大幅に増加、減速運転によって静穏時は5リットル/海里程度の減少、主機出力と船速を3次曲線にて近似した場合の傾きが1.6より2.5に大きく変化することも明らかとなった。よって荒天航海時には通常時とは異なった特性曲線による評価が必要である。(3)南半球の荒天航海について、船速低下のシミュレーションを実施した。この結果、抵抗増加の計算モデルによる差異は波浪条件が4m以下の場合は非常に小さく、一方で気象データベースや風モデルの考慮の有無による波浪推算値の差異による影響が非常に大きいことが明らかとなった。この後、ウェザールーティングにてこの点を考慮する必要性も明らかとなった。当初計画したタービン船での研究はまだ実現できていないが、ディーゼル船による荒天航海時のデータを数年間にわたり分析でき、静穏時との違いや数値シミュレーションにおける再現性を時系列レベルにて詳細に精度検証も実施できた。この点について、船速低下の影響評価と船舶の機関運転の関係はかなり明確なものとできたと考えている。しかし、主機運転から見た減速運転の評価として主機内の排気温度が重要であることを今年度に発見し(当初、予期していなかった)、この点については長期的な視点で理論的およびデータからも明らかとしていく必要性を感じている。平成27年度および28年度に実施した内容をベースに、実海域での船舶性能データをもとに荒天航海時の船速低下ならびに主機運転特性に関する研究を以下の通り進めた。平成27年度の成果にて荒天時の船速低下に関し、主機を自動制御したと仮定したケースでの数値計算を可能としているが、実際には主機の状態をモニタリングしながら危険状況に応じて適宜対応している点についての状況調査をまず実施した。方法として船会社の機関士を対象に、荒天航海時の対応状況に関するアンケート調査を実施、約70件の回答を得た。これより、荒天時には主機の排気温度、掃気圧力、過給器回転数、その他複数のパラメーターをモニタリングし、それぞれが設定した閾値を超えないよう、主機への燃料投入量を手動で調整するなど行っていることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-15K12474 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K12474 |
荒天時における船舶機関の運転制御および波浪影響の連携評価による新運航システム | これをもとに28,000DWTばら積み貨物船にて計測された荒天航海時の主機、過給器関係の計測データを整理分析し、船体に生じる鉛直加速度や海水打ち込みの確率など従来指標との比較を行った。この結果、荒天時には大きな変針を伴わない場合においても操舵量が大きく増大し、主機出力、燃料消費量も2分程度の周期でこれに連動して強い周波数応答が見られる。また、周期10分程度のところにもピークが存在し、主機の過負荷を防止するために人為的に燃料投入量を操作した影響と考えられ、アンケート結果ともほぼ一致することがわかった。これをもとに今後、荒天航海時の船速低下を再現できる数理モデルを構築、現在のウェザールーティングに連携することにより精度向上を図る基礎資料が構築できた。本研究ではばら積み貨物船を対象に実海域データを約6年間にわたって計測しており、荒天時の意識的減速に関する目安として示されている鉛直加速度、横揺角、海水打ち込みおよびスラミングの発生確率を計算した。一方、荒天航海時は船橋だけでなく、機関室においても主機の過負荷を防止する目的で、様々なパラメーターをモニタリングしていると言われる。このため主機関係の指標も多面的にデータ処理し、他のパラメーターとの変動関係性についても比較検証していき、ばら積み貨物船の荒天航海時に対する船速低下を支配する要因を考察した。28年度は、ランキンパネル法の高次オーダー処理に取り組むエフォートを増大させ、機関運転モデルとの連携を図り、SMPモデルの近づくように促進を図る。さらにタービンエンジンを有するLNG船などを対象とした調査にも着手し、ディーゼルエンジンとの違いについても検証を続けていく方策としている。前述したとおり、ディーゼル機関における主機出力一定制御とした場合の数値シミュレーションによる再現性を見極めたため、最終年度は主機の意識的な減速を支配する要因について、排気温度やその他で重要な指標を明らかとし、これまで船体運動や加速度にて評価されていた状況に対して新たな評価関数の構築を目指す。さらにばら積み貨物船にて計測されたデータをもとに多くの研究者が提案した意識的減速の閾値が実際とどの程度当てはまっているのかについても判定を行い、その有効性と主機パラメーターによる減速判断との関係を明確としていきたい。船舶海洋工学27年度は予定していた計算機の購入と海外への調査が都合により実施できなかったため、当初の予算消化よりも使用額が少なくなっている。平成28年度に予定していた実海域データにおける主機関係データの分析作業に予定よりも時間を要し、荒天時における機関士から見た運用状況の調査やタービン船における同様の分析作業が実施できなかった。このため想定していた予算を次年度に繰り越すこととした。28年度は海外への調査を実施するほか、荒天航海時の機関運転に関するデータ計測を新しい船舶を対象に実施する計画としている。これにより前年度に繰り越した予算も消化する計画としている。平成29年度は最終年度であり、前年度に予定していた作業を大学院生を割り当てた上で実施する計画である。 | KAKENHI-PROJECT-15K12474 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K12474 |
ジェンダー視点を取り入れた大学院生の科学コミュニケーション教育プログラムの開発 | 本研究は,科学研究を社会(特に女性)にわかりやすく伝える能力をもった科学者を養成することを目的として,未来の科学者である大学院生に対する科学コミュニケーション教育プログラムを開発するものである。平成30年度は,これまでの調査で得られたデータの分析を進めるとともに,科学コミュニケーション関連授業のシラバス分析を行い,それらの結果を2つの学会で発表した。さらに,教育プログラムの教材の一つとして,「プレゼン評価シート」と「キャリアシート」を開発・実践した。併せて,27年度調査で収集した大学院生による科学講演の1講演ビデオ映像,2スライド内容のデータを補完するため,改めて12データを収集し,行動コーディング分析ソフトによる分析準備を進めた。本研究で得られた主な結果は次の2点である。1)自然科学系大学院生を対象としたアンケート調査では,「科学コミュニケーション」の認知度は3割程度と低かったが,それに相当する実践経験を多く積んでいるほど,自由記述において生活や地域など「社会とのつながり」を示すキーワードが多く回答されており,社会に対する意識が高い傾向があることが示唆された。2)大学院生による科学講演を受講した中高生の「講師への注目度」を分析した結果,男子生徒は主に「声の大きさ・抑揚」に注目する傾向があるのに対し,女子生徒は男子生徒に比べ,講師の振る舞い(声の大きさ・抑揚,口調,身振り手振り,質問の仕方,目線)に満遍なく注目する傾向があることが明らかとなった。特に目線への注目は,女性講師×女子生徒の組合せの際にもっとも強くなることを示唆する結果も得られた。受講者の講師への注目度や実際の講師の振る舞いについては,非言語コミュニケーションの性差とも関連することが推察され,特に女性にわかりやすく伝える技術に繋がる可能性があるため,この点について,更なる調査研究を進める予定である。本研究は,科学研究を社会(特に女性)にわかりやすく伝える能力をもった科学者を養成することを目的として,未来の科学者である大学院生に対する科学コミュニケーション教育プログラムを開発するものである。初年度である平成26年度は,大学院生の科学コミュニケーション教育の現状の調査として,1)大学院生の科学イベント時の参加者への対応観察調査,2)大学院生対象Webアンケート調査のための質問紙の作成と予備調査,およびこれらに必要な科学コミュニケーション教育に関する文献収集を行った。対応観察調査では,2日間にわたって大学構内で開催された女子中高生対象の科学イベントにおいて,その応対者となる女性大学院生の6名の行動を,代表者の立会及びビデオ撮影により観察記録した。調査項目は,声の大きさや視線,身振り等,客観的に観察可能な行動としてその回数及び量を測定し,それを個人の積極性と協調性に対応させることを試みた。また,観察対象者には聞き取り調査を行い,それぞれの科学コミュニケーションの認識度合いと教育経験を確認した。これにより,科学コミュニケーションにおける観察調査の視点を得ることができた。大学院生の科学コミュニケーション教育に関するWebアンケートは,研究代表者と分担者および科研費研究員が研究打合せを行い,男女大学院生の1これまでに受けた科学コミュニケーション教育とその内容,2科学コミュニケーションの実践経験の有無,3伝える相手に対する理解と配慮,4キャリア意識の4点を軸とした質問紙を作成した。質問内容の過不足を確認するため,自然科学および社会科学を専門とする男女大学院生に予備調査を行った。これにより,大学院生対象の科学コミュニケーション教育に関するWebアンケート調査の実施準備が整った。本研究は,科学研究を社会(特に女性)にわかりやすく伝える能力をもった科学者を養成することを目的として,未来の科学者である大学院生に対する科学コミュニケーション教育プログラムを開発するものである。平成27年度は,前年度に作成した大学院生の科学コミュニケーション教育の現状を把握するための質問紙によるWebアンケートを実施した。調査対象機関として国立大学2機関を取り上げ,自然科学系大学院生2140人を対象とした調査を行った。調査期間は1か月とし,調査方法はURLとパスワードを付したアンケート調査依頼メールを当該機関の許可を得て対象者に配信するものとした。本調査により,大学院生の性別や研究分野ごとに,1これまでに受けた科学コミュニケーション教育とその内容,2科学コミュニケーションの実践経験の有無,3伝える相手に対する理解と配慮,4キャリア意識,5科学コミュニケーション教育の必要性の5つの視点に関する認識や現状を把握することができた。また,実際の科学講演において,受講者が講演者のどのような表現に注目しているのか,それが内容の理解や興味とどう関係しているのかを明らかにするため,科学講演の機会を利用して受講者への質問紙調査と講演者の講演表現を記録する調査を行った。質問紙では,特に講演者の身振り等への関心度を測る項目と講演内容の理解度に関する項目を取り上げた。理解度については,講演ごとに科学的基礎事実についての説明1か所を取り上げ,それに関連する3つの質問の正答率を測った。その際の講演を講演者の許可の下にビデオ映像に記録することにより,受講者の注目度と内容の理解度,講演者の講演表現との間にどのような関係があるのかを明らかにするためのデータを蓄積することが出来た。平成27年度は,前年度に準備した大学院生の科学コミュニケーション教育の現状を把握するためのWebアンケート調査を実施し,Webアンケート調査が継続して行える環境を整えることができた。これにより,今後,調査範囲を拡大しより精度の高い結果を得ることが出来ると予想される。 | KAKENHI-PROJECT-26350228 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26350228 |
ジェンダー視点を取り入れた大学院生の科学コミュニケーション教育プログラムの開発 | また当初計画であった受講者への質問紙調査と講演者の講演表現調査についても実施することができたが,受講者の質問紙だけでなく講演者のビデオ映像の分析にも膨大な量のデータ解析が必要となることから,これらのデータの分析結果を得るには至らなかった。これらを総合して「おおむね順調」と判断した。本研究は,科学研究を社会(特に女性)にわかりやすく伝える能力をもった科学者を養成することを目的として,未来の科学者である大学院生に対する科学コミュニケーション教育プログラムを開発するものである。平成28年度は,前年度に得られたデータから「受講者の講師への注目度と内容の理解度,及びそれらと講演者の講演表現との間の関係」を解析するため,27年度に実施した大学院生による科学講演について,1受講者への質問紙調査,2講演ビデオ映像,3スライド内容のデータを精査し,これら3種のデータが揃う男女の講師による講演のサンプリングを行った。また,数回の研究打合せにより,1および3についての解析方針を検討した。2については,ビデオカメラの故障に見舞われたためデータの修復を行った。しかしながら,研究代表者が本務において多忙を極めたこと,研究の補助的作業を行う研究員の雇用が出来なかったことから,解析は思うようには進まず,結果を得るには至らなかった。平成28年度は,数回の研究打合せにより今後の研究方針を決定したり,データを精査したりすることができたが,研究代表者が本務において多忙を極めたこと,研究の補助的作業を行う研究員の雇用が出来なかったことから,データの解析が進まなかった。また,当初計画していた改良されたWebアンケート調査も実施できなかったため,「遅れている」と判断した。本研究は,科学研究を社会(特に女性)にわかりやすく伝える能力をもった科学者を養成することを目的として,未来の科学者である大学院生に対する科学コミュニケーション教育プログラムを開発するものである。平成29年度は,講演者の講演表現を数値化するため,前年度に抽出した講演ビデオ映像,及び,スライド内容の解析方法を検討し,講演中の大学院生の身振り手振りなどの回数,スライドの文字の量や大きさなど,検証すべきポイントを絞り込むことに成功した。また,受講者への質問紙調査に対するバックグラウンドデータを得るため,研究協力を依頼した生徒への「理数系科目の志向に関するアンケート調査」を実施した。その結果,調査対象の男子生徒と女子生徒の間に,理数系科目(数学,物理,化学,生物,地学,技術)の志向(好き・嫌い,得意・不得意)の違いがあることが分かった。この結果と,受講者の講師への注目度や講演者の講演表現との関係を明らかにするための解析にも着手し,女性講師と男性講師,女子生徒と男子生徒とで、注目箇所に異なる傾向があることが明らかになった。さらに,「大学院生の科学コミュニケーション経験とキャリア意識に関するアンケート調査」の自由記述欄の内容分析として,計量テキスト分析手法の一種であるKH-Coderによる解析を行った。頻出語のクラスター分析から,大学院生の科学コミュニケーションに対する意識の傾向をつかむことができた。 | KAKENHI-PROJECT-26350228 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26350228 |
新手法による日本人集団の形成に関する研究 | 本研究では、先史時代集団の離乳期間が農耕導入によって短縮し、それが人口増加につながったという作業仮説を検討するために、骨の同位体分析、エナメル質減形成、乳幼児死亡率という3つの方法で先史時代集団の離乳期間を推定するために、方法開発を行った。現状ではそれぞれの方法での推定結果は必ずしも一致しないが、方法論の改良によって正確な離乳期の推定か可能になると考えられる。予備的な結果では、縄文集団でも授乳期間に集団差・地域差がある可能性が示された。本研究では、縄文時代から弥生時代にかけての古人骨を対象に、古病理学的研究、古人口学的研究、同位体分析による離乳期推定法を組み合わせることで、渡来系弥生集団の人口増加に穀物由来の離乳食の利用が寄与しているという作業仮説を検証することを主な目的としている。そのために、古病理学的な研究では、エナメル質減形成による離乳ストレス期の推定の高度化、古人口学的研究では乳幼児死亡率の推定方法の改良、同位体分析では窒素同位体比による離乳期推定法の確立を目指す。これら3つの手法を組み合わせることによって、これまで検証することが難しかった、縄文時代・弥生時代における乳幼児の死亡率とその要因、離乳食の有無、女性ひとりあたりの産児数の比較などが可能となり、渡来系弥生人の人口爆発という日本人起源論で未だ検証されていない問題に有効な知見を提供する。本研究では、先史時代集団の離乳期間が農耕導入によって短縮し、それが人口増加につながったという作業仮説を検討するために、骨の同位体分析、エナメル質減形成、乳幼児死亡率という3つの方法で先史時代集団の離乳期間を推定するために、方法開発を行った。現状ではそれぞれの方法での推定結果は必ずしも一致しないが、方法論の改良によって正確な離乳期の推定か可能になると考えられる。予備的な結果では、縄文集団でも授乳期間に集団差・地域差がある可能性が示された。本年度は、幼児骨に保存された窒素同位体比および放射性炭素年代の測定に係る前処理系を構築し、その精度評価を実施した。また、実際の資料として北海道網走市モヨロ貝塚から出土した幼児骨約40点を分析しぐ、およそ2才の個体まで、窒素同位体比が上昇している傾向が認められた。このことから、中世オホーツク文化集団では、(1)授乳期間の短縮がおこってい一ること、(2)離乳食は大人の食料が利用されており、植物質など特別な材料によるものを利用したのではないこと、が明らかになった。また、北海道伊達市有珠モシリ貝塚から出土した幼児骨約30体から分析試料を採取した(北海道文理大学所蔵)。また、東京都千代田区一橋高校遺跡から出土した江戸時代の幼児骨約50点から分析試料を採取したく聖マリアンナ医科大学所蔵)。同位体データから、過去の離乳習慣を復元するために、現代人の幼児成長曲線を基準として骨量増加を推定し、骨コラーゲンにおける同位体比の変化から、年齢ごとの食性の変化(すなわち離乳食の導入、増加、離乳完了)を検出するためのモデルを構築した。これによって、骨コラーゲンの窒素同位体比の変化から、実際に離乳力弐完了した年齢を推定することが可能となり、離乳習慣の変化による産児数増加の可能性を検討することが可能となった。ただし、母親における食性の変動をキャンセルせねばならず、さらにモデルを改良することが必要である。また、栄養ストレスなどを反映する歯のエナメル質減形成、幼児死亡パターン、乳歯の咬耗パターンの研究を行っている連携研究者と、2回の研究集会と1回の公開シンポジウム(於、日本人類学会大会)を実施し、さらに本研究に関するホームページを開設し、研究成果の発信を開始した。本研究では、縄文時代から弥生時代にかけての古人骨を対象に、古病理学的研究、古人口学的研究、同位体分析による離乳期推定法を組み合わせることで、渡来系弥生集団の人口増加に穀物由来の離乳食の利用が寄与しているという作業仮説を検証することを主な目的としている。そのために、以下の研究を行った。1.古病理学的な研究では、縄文時代におけるエナメル質減形成のデータ採取を行った(連携研究者:澤田純明)。2.古人口学的研究では乳幼児死亡率の推定方法の改良のため、近世の堺市濠都市遺跡から出土した胎児骨・乳児骨で詳細な年齢推定を行った。また、乳幼児骨を多数包含している愛知県東海市・長光寺遺跡出土資料のクリーニング、副葬品の調査などを行った(連携研究者:長岡朋人・安部みき子・嶋谷和彦)3.同位体分析では窒素同位体比による離乳期推定法の確立するために、196070年代の乳幼児骨および乳製品における放射性ストロンチウム濃度のデータから、乳幼児骨における置換速度を推定し、新しい離乳期復元モデルを構築した。さらに同様のアプローチを、北部九州の渡来系弥生集団に対しても実施するため、具体的には、福岡県筑紫野市の隈・西小田遺跡から出土した弥生時代人骨について、乳幼児を中心に同位体分析のサンプルを採取した。4.縄文時代人骨の同位体に係る結果を中心に、日本人類学会骨考古学分科会シンポジウムとして「縄文生業の地域性と多様性をさぐる」を主催した。5.日本人形成に係る重要な人骨資料について、直接的に放射性年代測定を測定し、資料の帰属年代を確認した。 | KAKENHI-PROJECT-20370095 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20370095 |
新手法による日本人集団の形成に関する研究 | 今年度は、東大博物館所蔵の弥生時代の頭蓋骨と、沖縄県白保竿根田原洞窟から出土した人骨について、測定を実施したところ、後者は更新世後期の2万から1万6千年前の人骨であることが明らかになった。以上の研究データをもちより、考古学的側面から乳幼児の死因や埋葬形式を研究している連携研究者(日本歯科大学・奈良貴史)などと議論をするために、研究集会を実施した。本研究では、縄文時代から弥生時代にかけての古人骨を対象に、古病理学的研究、古人口学的研究、同位体分析による離乳期推定法を組み合わせることで、渡来系弥生集団の人口増加に穀物由来の離乳食の利用が寄与しているという作業仮説を検証することを主な目的としている。そのために、平成22年度は以下の研究を行った。1.古病理学的な研究では、エナメル質減形成のデータ解釈法についての方法論的検討を実施した(連携研究者:澤田純明)。2.古人口学的研究では乳幼児死亡率の推定方法の改良のため、近世の堺市濠都市遺跡から出土した胎児骨・乳児骨で詳細な年齢推定を引き続き行った。また、乳幼児骨を多数包含している愛知県東海市・長光寺遺跡出土資料のクリーニング、副葬品の調査などを継続した(連携研究者:長岡朋人・安部みき子・嶋谷和彦)。3.同位体分析では窒素同位体比による離乳期推定法の確立するために、乳幼児骨における置換速度の年齢変化について、推定値の誤差に関する評価方法を確立した。この新しい離乳期復元モデルに関しては、昨年度、論文を執筆し、学術雑誌に投稿中である。また、このモデルを実際の古人骨資料に応用するために、北海道の続縄文文化に属する有珠モシリ遺跡から出士した乳幼児骨の窒素同位体データ39点について解析を行った。5.日本人形成に係る重要な人骨資料について、直接的に放射性年代測定を測定し、資料の帰属年代を確認した。今年度も引き続き、東大博物館所蔵の弥生時代の頭蓋骨と、沖縄県白保竿根田原洞窟から出土した人骨について、測定を実施した。以上の研究データをもちより、考古学的側面から乳幼児の死因や埋葬形式を研究している連携研究者(日本歯科大学・奈良貴史)などと議論をするために、研究集会を実施した(4月)。本研究では、縄文時代から弥生時代にかけての遺跡出土古人骨を研究対象として、これまで系統的に比較検討が行われてこなかった古人口学的研究とコラーゲンの同位体分析による離乳期推定法を組み合わせることで、渡来系弥生集団の人口増加に穀物由来の離乳食が寄与しているという作業仮説を検証することを主な目的とする。最終年度の平成23年度は下記の研究を実施した。1,古病理学的な視点から、エナメル質減形成の出現時期についての方法論的な見直しを反映して、あらたに縄文時代および弥生時代集団における幼少期の各種ストレス履歴を検討した。2.古人口学的な研究手法の改良として本研究で開発にとりくんだ、ベイズ推定を組み込んだ乳児死亡率推定法を用いて、あらたに縄文時代および弥生時代集団における乳幼児死亡パターンおよび死亡率を再検討した。3.先史時代の離乳・授乳習慣を推定するためのあらたな手法として本研究で開発にとりくんだ窒素同位体比の年齢別変動パターンの解析方法をもちいて、北海道の続縄文時代の有珠モシリ遺跡と、同じく北海道の中世オホーツク文化期のモヨロ貝塚集団の比較検討を行ったところ、有珠モシリ集団では妊娠期間中に母親が特殊な食事を送っている可能性と、初期乳児にも何らかの代替食品が与えられた可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-20370095 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20370095 |
液胞構築における酵母VAM3遺伝子産物の機能 | 酵母の液胞コンパートメントの構築に機能するVam3pは一次構造上、神経細胞のシナプス終端でのシナプス小胞の膜融合に関与しているタンパク質であるシンタクシンや,小胞体-ゴルジ装置間の小胞輸送に関与するSeb5p,あるいはゴルジ-細胞膜間の小胞輸送に関与するSso1p,Sso2pなどのタンパク質と高い相同性を示す.Vam3pの機能を明らかにする目的で以下の研究を行った.Vam3p特異的抗体の調製:大腸菌内でGST-Vam3pを大量発現させ,これを精製してウサギに免疫し,抗Vam3p抗血清を得た.これを,別に発現させ,精製した6X-His-Vam3pを用いてアフィニティー精製を行い,Vam3p特異的抗体を得た.Vam3pの細胞内局在:酵母細胞のライゼ-トを超遠心によって細胞分画を行い,得られた抗Vam3p抗体を用いてVam3pの局在を解析したところ,Vam3pは液胞画分に見いだされた.このことをさらに確かめるため,蛍光抗体染色法でVam3pの細胞内局在を解析すると,液胞の周辺,すなわち液胞膜が特異的に染色された.VAM3遺伝子破壊株での液胞蛋白質ソーティング:VAM3遺伝子破壊株を作成し,この株における液胞蛋白質carboxypeptidase Yの液胞への選別輸送をpulse label法により解析した.VAM3遺伝子破壊株においては,液胞蛋白質の液胞型への変換が遅れてはいるものの,他のClass Ivam変異株で見られたような細胞表層への誤輸送は見いだされなかった.以上の結果,Vam3pは液胞形成のおそらくは最後の,大きな液胞コンパートメントを構築する際の膜融合において機能していることが示された.酵母の液胞コンパートメントの構築に機能するVam3pは一次構造上、神経細胞のシナプス終端でのシナプス小胞の膜融合に関与しているタンパク質であるシンタクシンや,小胞体-ゴルジ装置間の小胞輸送に関与するSeb5p,あるいはゴルジ-細胞膜間の小胞輸送に関与するSso1p,Sso2pなどのタンパク質と高い相同性を示す.Vam3pの機能を明らかにする目的で以下の研究を行った.Vam3p特異的抗体の調製:大腸菌内でGST-Vam3pを大量発現させ,これを精製してウサギに免疫し,抗Vam3p抗血清を得た.これを,別に発現させ,精製した6X-His-Vam3pを用いてアフィニティー精製を行い,Vam3p特異的抗体を得た.Vam3pの細胞内局在:酵母細胞のライゼ-トを超遠心によって細胞分画を行い,得られた抗Vam3p抗体を用いてVam3pの局在を解析したところ,Vam3pは液胞画分に見いだされた.このことをさらに確かめるため,蛍光抗体染色法でVam3pの細胞内局在を解析すると,液胞の周辺,すなわち液胞膜が特異的に染色された.VAM3遺伝子破壊株での液胞蛋白質ソーティング:VAM3遺伝子破壊株を作成し,この株における液胞蛋白質carboxypeptidase Yの液胞への選別輸送をpulse label法により解析した.VAM3遺伝子破壊株においては,液胞蛋白質の液胞型への変換が遅れてはいるものの,他のClass Ivam変異株で見られたような細胞表層への誤輸送は見いだされなかった.以上の結果,Vam3pは液胞形成のおそらくは最後の,大きな液胞コンパートメントを構築する際の膜融合において機能していることが示された. | KAKENHI-PROJECT-06740592 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06740592 |
食品由来CB2アゴニストのメタボリック症候群予防・改善作用の検証 | メタボリック症候群は、内臓脂肪型肥満に加えて高血糖、高血圧、脂質代謝異常を併発する病態であり、先進諸国での患者数の増加が社会問題となっている。とりわけ、メタボリック症候群の肝臓における表現型と言われている非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、進行によって肝硬変や肝癌になる可能性があるにもかかわらず、現在までに有効な治療法は確立されていない。クローブなどの食品に含まれるベータ・カリオフィレンは、カンナビノイド2型受容体(CB2)の活性化を介して、肝細胞の脂肪蓄積抑制や、高脂肪食負荷による肥満及びNAFLDの予防に有効であることを明らかにしている。一方で、生体内でのカンナビノイド受容体のリガンドの多くは脂肪酸アミド化合物であることから、脂肪酸アミド化合物をスクリーニングし、肝細胞の脂肪蓄積を抑制する化合物を探索した。その結果、生体内はもとより、セロリシードなどの食品にも含まれるオレアミド(オレイン酸アミド)が肝細胞の脂肪蓄積を顕著に抑制することが判明した。そこで、オレアミドの脂肪蓄積抑制作用の機構解明を試みたところ、オレアミドは長鎖脂肪酸の細胞内取り込みに関与するCD36に作用し、脂肪酸の細胞内取り込みを抑制する可能性が明らかになった。このことは生体内に存在するオレアミドが脂肪酸代謝に関与することを示唆している。肥満などの疾患で遊離脂肪酸の肝臓への取り込みが増加し、NAFLDが誘発されることと、血中オレアミドの量に相関関係が認められるならば、オレアミドのバイオマーカーとしての応用や、オレアミド量が変動するメカニズムの解析など、オレアミドの新たな生理学的な役割を検証したい。脂肪酸アミド化合物のスクリーニングの結果、オレアミドが脂肪蓄積抑制効果を有することが判明した。そこで、肝臓細胞内で脂質代謝を司るAMP活性化プロテインキナーゼのリン酸化レベルを評価したが、オレアミド添加による変化は認められなかった。また、CB2アゴニストであるベータ・カリオフィレンには、蓄積脂肪を分解する作用が認められた一方、オレアミドはその効果を示さなかった。さらに、既知のオレアミド受容体の阻害剤やカンナビノイド受容体の阻害剤とオレアミドを共処理した場合でも、オレアミドの脂肪蓄積抑制効果は打ち消されなかったことから、オレアミドの作用標的の探索は困難を極めた。蛍光標識脂肪酸の細胞内取り込みを評価した結果、オレアミド処理によって細胞内への脂肪酸取り込みが顕著に抑制されることが判明したことから、肝臓細胞の膜表面に発現する脂肪酸受容体CD36に着目した。siRNAまたはCD36阻害剤を用いた結果、オレアミドによる脂肪蓄積抑制効果が打ち消されたことから、オレアミドの作用標的はCD36であることが推察された。このように、オレアミドの新規作用点を推定し、CD36の関与を示唆することができたため、概ね順調に進行していると考える。オレアミドとCD36との相互作用を示すために、表面プラズモン共鳴法を利用した解析を検討している。CD36は膜タンパク質であり、可溶化や精製が困難であることが予想されるため、CD36の外部ドメインのみを発現するコンストラクトを作製し、哺乳動物細胞で発現させることで、目的タンパク質の発現・精製を試みる。十分量のタンパク質が得られた場合は結晶構造解析を行い、オレアミドとCD36の相互作用をより詳細に解析したい。また、個体レベルでのオレアミドの抗肥満効果を検証するため、高脂肪食負荷またはob/obマウスにオレアミドを経口投与し、体重の変化や血中パラメーターを測定する。生体内のオレアミドの濃度については議論があることから、安定同位体希釈法を用いた生体内オレアミドのLC-MS/MSによる検出・定量法についても確立し、オレアミドの肥満における生理学的な役割を明らかにする予定である。メタボリック症候群は、内臓脂肪型肥満に加えて高血糖、高血圧、脂質異常症のうち2つ以上を併発する病態であり、先進諸国での患者数の増加が社会問題となっている。とりわけ、メタボリック症候群の肝臓における表現型と言われている非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、進行によって肝硬変や肝癌になる可能性があるにもかかわらず、現在までに有効な治療法は確立されていない。これまでに、クローブなどの食品に含まれるベータ・カリオフィレンが、培養肝細胞を用いたNAFLDモデルにおいて、カンナビノイド2型受容体(CB2)を介して肝細胞の脂肪蓄積を抑制する作用を見出し、その機構を解明した。本研究では、ベータ・カリオフィレンが高脂肪食負荷肥満モデルマウスにおいて、NAFLDを予防するかを検証するとともに、ベータ・カリオフィレンがメタボリック症候群の予防に有効であるか否かを検証した。ベータ・カリオフィレンは、高脂肪食負荷に伴う体重増加を有意に抑制することが判明し、マウスの脂肪組織の重量を比較した結果、皮下脂肪の重量がベータ・カリオフィレン投与群において顕著に減少したことから、ベータ・カリオフィレンはマウスの皮下脂肪に作用することで、体重の増加を抑制する可能性が示唆された。さらに、ベータ・カリオフィレン投与群では、高血糖、高インスリン血症の予防や、肝臓中の中性脂肪量及びトリグリセリド量、並びに血清中ALT及びASTレベルの増加が抑制された。また、エネルギー代謝を司るAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の肝臓でのリン酸化レベルを評価した結果、ベータ・カリオフィレン投与群において、AMPKのリン酸化レベルが有意に上昇することを明らかにした。以上の結果から、ベータ・カリオフィレンはNAFLDを予防するだけでなく、肥満や高血糖を予防する可能性が示唆された。高脂肪食負荷 | KAKENHI-PROJECT-17J08787 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J08787 |
食品由来CB2アゴニストのメタボリック症候群予防・改善作用の検証 | 肥満モデルマウスにベータ・カリオフィレンを混餌投与することによって、高脂肪食によって誘導される肥満、皮下脂肪組織の増大、高血糖、高インスリン血症の発症を予防することが判明した。また、肝臓におけるメタボリック症候群の表現型であるNAFLDに対しても、肝臓中の中性脂肪量及びトリグリセリド量、並びに血清中ALT及びASTレベルの増加が抑制され、肝臓AMPKのリン酸化レベルが有意に上昇することを見出した。これらのことから、食品由来CB2アゴニストであるベータ・カリオフィレンのメタボリック症候群予防作用について、概ね順調に評価できていると考える。メタボリック症候群は、内臓脂肪型肥満に加えて高血糖、高血圧、脂質代謝異常を併発する病態であり、先進諸国での患者数の増加が社会問題となっている。とりわけ、メタボリック症候群の肝臓における表現型と言われている非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、進行によって肝硬変や肝癌になる可能性があるにもかかわらず、現在までに有効な治療法は確立されていない。クローブなどの食品に含まれるベータ・カリオフィレンは、カンナビノイド2型受容体(CB2)の活性化を介して、肝細胞の脂肪蓄積抑制や、高脂肪食負荷による肥満及びNAFLDの予防に有効であることを明らかにしている。一方で、生体内でのカンナビノイド受容体のリガンドの多くは脂肪酸アミド化合物であることから、脂肪酸アミド化合物をスクリーニングし、肝細胞の脂肪蓄積を抑制する化合物を探索した。その結果、生体内はもとより、セロリシードなどの食品にも含まれるオレアミド(オレイン酸アミド)が肝細胞の脂肪蓄積を顕著に抑制することが判明した。そこで、オレアミドの脂肪蓄積抑制作用の機構解明を試みたところ、オレアミドは長鎖脂肪酸の細胞内取り込みに関与するCD36に作用し、脂肪酸の細胞内取り込みを抑制する可能性が明らかになった。このことは生体内に存在するオレアミドが脂肪酸代謝に関与することを示唆している。肥満などの疾患で遊離脂肪酸の肝臓への取り込みが増加し、NAFLDが誘発されることと、血中オレアミドの量に相関関係が認められるならば、オレアミドのバイオマーカーとしての応用や、オレアミド量が変動するメカニズムの解析など、オレアミドの新たな生理学的な役割を検証したい。脂肪酸アミド化合物のスクリーニングの結果、オレアミドが脂肪蓄積抑制効果を有することが判明した。そこで、肝臓細胞内で脂質代謝を司るAMP活性化プロテインキナーゼのリン酸化レベルを評価したが、オレアミド添加による変化は認められなかった。また、CB2アゴニストであるベータ・カリオフィレンには、蓄積脂肪を分解する作用が認められた一方、オレアミドはその効果を示さなかった。さらに、既知のオレアミド受容体の阻害剤やカンナビノイド受容体の阻害剤とオレアミドを共処理した場合でも、オレアミドの脂肪蓄積抑制効果は打ち消されなかったことから、オレアミドの作用標的の探索は困難を極めた。蛍光標識脂肪酸の細胞内取り込みを評価した結果、オレアミド処理によって細胞内への脂肪酸取り込みが顕著に抑制されることが判明したことから、肝臓細胞の膜表面に発現する脂肪酸受容体CD36に着目した。 | KAKENHI-PROJECT-17J08787 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J08787 |
X線CTスキャナーを活用した出土木製品の構造解析に係る基礎研究 | 本研究は、遺跡から出土する水浸出土木製品を対象に、X線CTスキャナを活用して木製品内部の状態や保存処理における薬剤の分布を非破壊で可視化することを目的とした。木製品の保存処理薬剤として一般的に広く普及しているトレハロースを対象として、木製品内部の薬剤分布について、トレハロースの濃度・含浸時間・種類毎に検証を行い、各調査項目毎に薬剤分布の状況や傾向を明らかにした。トレハロースは木製品内部では針葉状・塊状となり内部にまで広く浸透する傾向があることを確認した。本研究は、遺跡から出土する水浸出土木製品を対象に、X線CTスキャナを活用して木製品内部の状態や保存処理における薬剤の分布を非破壊で可視化することを目的とした。木製品の保存処理薬剤として一般的に広く普及しているトレハロースを対象として、木製品内部の薬剤分布について、トレハロースの濃度・含浸時間・種類毎に検証を行い、各調査項目毎に薬剤分布の状況や傾向を明らかにした。トレハロースは木製品内部では針葉状・塊状となり内部にまで広く浸透する傾向があることを確認した。本研究は、出土木製品の保存処理における薬剤の含浸状況や処理中・処理後の状態変化についてX線CTスキャナにより解析することを目的としている。X線CTスキャナの活用により、従来は困難とされていた出土木製品の保存処理中・処理後の内部状態について、非破壊且つ3次元的な可視化が期待されるためである。研究初年度となる平成24年度は、上記目的達成のため、処理薬剤の濃度差による状態変化についてX線CTスキャナにより調査を行った。なお、処理薬剤は出土木製品の保存処理として広く普及しているトレハロースを使用した。まず、水溶液中の薬剤分布を確認するため、0%(蒸留水)、トレハロース20%・40%・60%水溶液、トレハロース粉末(結晶)を作成し、X線CTスキャナでそれぞれ状態を確認した。トレハロース20%・40%水溶液は、水によるX線散乱の影響が強く、濃度差による明確な差異はみられない。一方、トレハロース60%水溶液はX線の吸収が高いためか、他の水溶液と比べわずかながら色調の差異が確認できた。この他、トレハロース粉末(結晶)は、水によるX線散乱の影響が殆どないことから、他の水溶液と比較して色調に明瞭な差異が確認できた。次に、サンプル材(遺跡出土木材、3×3×1.5cm、樹種:ケヤキ)に薬剤(トレハロース70%)を含浸して内部をX線CTスキャナで確認した。薬剤の含浸期間は16時間から12週間、含浸後のサンプル材は重量が恒量に達することを確認、十分な結晶化を行った。X線CTスキャナによる調査の結果、サンプル材は含浸期間に比例して内部にX線吸収の高い箇所が広がっている様子が確認された。16時間含浸では表面と導管要素付近に集中するが、1週間含浸以降はサンプル材内部と木繊維にまで範囲が拡大している様子が確認できた。平成25年度は、出土木製品の保存処理における薬剤の含浸状況や処理中・処理後の状態変化の解析を目的に研究を実施した。特に従来は困難とされていた出土木製品の保存処理中・処理後の内部状態について、X線CTスキャナによる非破壊で3次元的な可視化を研究の主眼とした。上記した研究目的を達成するため、1水溶液中の薬剤(トレハロース水溶液)、2出土木材サンプル、3保存処理後の出土木製品を対象にX線CTスキャナによる解析を実施した。水溶液中の薬剤は、0%(蒸留水)、トレハロース20・40・60%水溶液、トレハロース粉末を作成した。トレハロース20・40%水溶液は、水分によるX線散乱の影響が強く、濃度差による明確な差異はみられない。一方、トレハロース60%水溶液はX線の吸収が高いためか、他の水溶液と比べわずかながら差異が確認できた。サンプル材(3×3×1.5cm樹種:ケヤキ)は、薬剤(トレハロース70%)を含浸して内部をX線CTスキャナで確認した。薬剤の含浸期間は16時間から12週間、含浸後のサンプル材は重量が恒量に達することを確認、十分な結晶化を行った。調査の結果、サンプル材は含浸期間に比例して内部にX線吸収の高い箇所が広がっている様子が確認された。16時間含浸では表面と導管要素付近に集中するが、1週間含浸以降はサンプル材内部と木繊維にまで範囲が拡大している様子が確認できた。保存処理後の出土木製品は、遺跡出土木製品(含水率560%樹種:スギ)に保存処理(トレハロース含浸処理法含浸工程:30%→50%→70%)を行った。処理後の木製品は、サンプル材と同様にX線吸収の高い箇所が確認された。処理後の木製品は、サンプル材とは異なり表面と内部に顕著な差異は確認されず、薬剤含浸が深部にまで達していることが確認された。また、X線吸収の高い箇所は、木製品の放射方向に筋状に広がる様子が確認された。本研究は、出土木製品の保存処理における薬剤の含浸状況や処理中・処理後の状態変化についてX線CTスキャナにより解析することを目的としている。研究初年度となる平成24年度は、上記目的達成のため、濃度の異なる薬剤水溶液と遺跡出土木材によるサンプル資料を作成して、処理薬剤(トレハロース)の濃度の違いによる出土木製品の状態変化についてX線CTスキャナにより調査を行った。 | KAKENHI-PROJECT-24800094 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24800094 |
X線CTスキャナーを活用した出土木製品の構造解析に係る基礎研究 | 出土木製品の保存処理は、処理前・処理中・処理後の3段階に区分できる。このうち、平成24年度年度の研究では、薬剤水溶液とサンプル資料により処理前と処理後の状態を把握することを目的とした。薬剤水溶液では処理前の状態、サンプル資料では処理後の状態をそれぞれ対象としている。これら平成24年度に実施した内容により、研究全体の50%程度が達成されたものと考えている。研究概要は前述のとおりであるが、具体的な内容として、出土木製品の保存処理前と処理後において処理薬剤(トレハロース)の濃度差による状態変化について良好な成果が得られた。特に、サンプル資料による保存処理後の状態においては、トレハロースの濃度差により出土木製品の内部に明確な差異が生じることが確認された。一方、処理前の状態については、水によるX線の散乱が著しく明瞭な変化を確認するに至っておらず、この点については課題となる。この課題の解決には、X線CTスキャナによる視覚的な画像解析に加え、X線吸収係数により出土木製品の状態変化を明確にしていく必要がある。なお、研究最終年度となる平成25年度は出土木製品の処理中の状態について研究を実施することで当初研究目的を達成できるものと考えている。25年度が最終年度であるため、記入しない。研究最終年度となる平成25年度は、出土木材の保存処理中における処理薬剤(トレハロース)の含浸状況や状態変化についてX線CTスキャナによる調査を行う。研究の具体的な推進方策として、遺跡出土木材によるサンプル資料を作成してトレハロース含浸処理を施し、保存処理の各工程においてサンプル資料をX線CTスキャナにより解析する。サンプル資料の保存処理は、トレハロース水溶液20%から処理を開始して、30%・40%・50%・60%・70%と段階的に濃度を上昇させる。現在、出土木製品の保存処理として実施されている手法と同様の工程とする。各濃度における含浸期間は10日間から2週間とし、全含浸期間は3ヶ月以内とする。含浸中はサンプル資料の重量測定を行い、重量が恒量となるまで含浸させる。なお、薬剤含浸が70%まで終了したサンプル資料は、処理薬剤から取り出し送風機により風乾させる。送風機による強制的な乾燥環境を作り出すことで、サンプル資料内部の処理薬剤(トレハロース)を速やかに結晶化させる。X線CTスキャナによるサンプル資料の解析では、平成24年度の研究成果により、処理中のサンプル資料は水によるX線散乱の影響により、個々の状態の差異を確認することが困難となることが予想される。これに対する方策として、X線CTスキャナの解析時に得られるX吸収係数により各資料の状態の差異を明確化する。また、X線CTスキャナの解析時には、処理中のサンプル資料と標準資料(未処理のサンプル資料)を同時に解析することで処理前と処理中の状態を比較する。25年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-24800094 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24800094 |
ヒト椎骨の形態変化特徴と姿勢との機能的関係 | ヒトの特徴である直立二足性に関する研究は,人類学において基本的重要性をもつものと思われる。ヒトが四足歩行から二足歩行に進化する過程において,脊柱の形態はS字カーブのように変化したが,脊柱を構成するひとつひとつの椎骨もそれに伴って,変化したことが想像される(葉山,1986)。しかしながら,直立二足姿勢をとったときに脊柱にかかる負荷に対して,ヒトの椎骨の形状がどのように適応変形したかについて,まだ詳細に解明されていない。これまで脊柱二足適応の解析の多くは,ヒトと霊長類との比較形態学的研究,運動学的研究を中心に行われてきた。しかし,二足適応のメカニズムを詳細に知るためには,前述のようなアプローチの方法ばかりではなく,遺伝的に統制された動物を用いて実験的研究を行う必要があると考えられる。二足動物に閧する先駆的な研究としてはイヌ(Fuld,1901)やラット(Colton,1929)やヤギ(Slijper,1942)などがあげられる。その後,多くの研究者が二足性の動物モデルを用いた実験形態学的な手法により,二足立位行動をとることによって,生ずる力学的環境の変化が下肢骨,脊柱,頭蓋などに及ぼす影響を調べようと試みてきた。一方,二足姿勢が頚椎から腰椎にわたる椎骨の形態に及ぼす影響に関しては,ほとんど行なわれていない。本研究の目的は,以上のことを踏まえ,力学的な手法と動物実験の手法を用いて,ヒトの椎骨の連続的な形態変化を直立二足歩行による力学的作用との閧連から解析を進め,ヒトと他の喃乳類のなかでの種間の差について,椎骨の形態変化に基づいて考察していくことである。解析に用いた資料は現代日本人男女各26個体,チンパンジー(Pan troglodytesメス)6個体,ニホンザル(Macaca fuscataオス)30個体,ニホンカモシカ(Capricornis crispusメス,成獣)6個体である。更に,成長期Sprague-Dawley系オスラット,実験群9個体と対照群8個体について,二足起立運動負荷が椎体の形態に対する影響を調べた。直立二足姿勢と関連する特徴は,(1)断面積(A)と左右方向の断面2次モーメント(I_x)は腰椎部において,著しく増加する。(2)前後方向の断面2次モーメント(I_y)は頚椎から最終腰椎まで徐々に増加し,最終腰椎で最大となる。(3)最大主断面2次モーメント(I_<max>)は第10胸椎から最終腰椎まで著しく増加する・(4)最小主断面2次モーメント(I_<min>)は頚椎から最終腰椎まで徐々に増加する。(5)断面2次極モーメント(I_p)は第11胸椎から最終腰椎まで強い増加が見られる。(6)断面示数(SI)は頚椎と腰椎部では円形から楕円形に変化していく傾向がある。(7)いずれの値も習慣性直立二足歩行姿勢をとるヒトの方が明らかに大きい。以上からヒトの腰椎部は他の動物と比べ,かなり頑丈であり,特に左右方向の曲げに対して強いということが明らかになった。ヒトの特徴である直立二足性に関する研究は,人類学において基本的重要性をもつものと思われる。ヒトが四足歩行から二足歩行に進化する過程において,脊柱の形態はS字カーブのように変化したが,脊柱を構成するひとつひとつの椎骨もそれに伴って,変化したことが想像される(葉山,1986)。しかしながら,直立二足姿勢をとったときに脊柱にかかる負荷に対して,ヒトの椎骨の形状がどのように適応変形したかについて,まだ詳細に解明されていない。これまで脊柱二足適応の解析の多くは,ヒトと霊長類との比較形態学的研究,運動学的研究を中心に行われてきた。しかし,二足適応のメカニズムを詳細に知るためには,前述のようなアプローチの方法ばかりではなく,遺伝的に統制された動物を用いて実験的研究を行う必要があると考えられる。二足動物に閧する先駆的な研究としてはイヌ(Fuld,1901)やラット(Colton,1929)やヤギ(Slijper,1942)などがあげられる。その後,多くの研究者が二足性の動物モデルを用いた実験形態学的な手法により,二足立位行動をとることによって,生ずる力学的環境の変化が下肢骨,脊柱,頭蓋などに及ぼす影響を調べようと試みてきた。一方,二足姿勢が頚椎から腰椎にわたる椎骨の形態に及ぼす影響に関しては,ほとんど行なわれていない。本研究の目的は,以上のことを踏まえ,力学的な手法と動物実験の手法を用いて,ヒトの椎骨の連続的な形態変化を直立二足歩行による力学的作用との閧連から解析を進め,ヒトと他の喃乳類のなかでの種間の差について,椎骨の形態変化に基づいて考察していくことである。解析に用いた資料は現代日本人男女各26個体,チンパンジー(Pan troglodytesメス)6個体,ニホンザル(Macaca fuscataオス)30個体,ニホンカモシカ(Capricornis crispusメス,成獣)6個体である。更に,成長期Sprague-Dawley系オスラット,実験群9個体と対照群8個体について,二足起立運動負荷が椎体の形態に対する影響を調べた。直立二足姿勢と関連する特徴は,(1)断面積(A)と左右方向の断面 | KAKENHI-PROJECT-12640697 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12640697 |
ヒト椎骨の形態変化特徴と姿勢との機能的関係 | 2次モーメント(I_x)は腰椎部において,著しく増加する。(2)前後方向の断面2次モーメント(I_y)は頚椎から最終腰椎まで徐々に増加し,最終腰椎で最大となる。(3)最大主断面2次モーメント(I_<max>)は第10胸椎から最終腰椎まで著しく増加する・(4)最小主断面2次モーメント(I_<min>)は頚椎から最終腰椎まで徐々に増加する。(5)断面2次極モーメント(I_p)は第11胸椎から最終腰椎まで強い増加が見られる。(6)断面示数(SI)は頚椎と腰椎部では円形から楕円形に変化していく傾向がある。(7)いずれの値も習慣性直立二足歩行姿勢をとるヒトの方が明らかに大きい。以上からヒトの腰椎部は他の動物と比べ,かなり頑丈であり,特に左右方向の曲げに対して強いということが明らかになった。本年度の椎骨の写真計測は計画通り完成し,各サンプルの椎体頭側面写真の輪郭にそって,DIGITIZERにより,パソコンに入力し,各椎骨レベルの断面特性値を算出した。その結果を報告する。資料はいずれも病変のなく,保存状態のよいものを選んだ。現代日本人の資料は東京大学総合研究博物館所蔵の椎骨標本,男女各26個体,合計52個体,ヒト以外の霊長類資料は京都大学霊長類研究所,獨協医科大学解剖学(マクロ)教室所蔵のチンパンジー(Pan troglodytesメス)6個体,ニホンザル(Macaca fuscataオス)30個体,ヒト以外の有蹄類資料は東京大学人類学教室所蔵のニホンカモシカ(Capricornis crispusメス,成獣)6個体を用いた。いずれの標本も骨端が閉じた成獣である。写真撮影は,ニコン社製の一眼レフレックスカメラ(F3)とMicro-NIKKOR f=55mmのレンズと富士社製のネオパンSS ISO 100/21°の白黒フィルムを用いた。椎体頭側面がレンズの軸と垂直になるように調整し,焦点距離は215mmと一定にして撮影した。断面写真は無伸縮印画紙で2.5倍に拡大して焼きつけた。断面特性値は断面積,X,Y軸まわりの断面二次モーメント,主断面二次モーメント,断面2次半径,断面二次極モーメント,断面示数の7つの項目を計算した。また,各種の間にボディサイズの影響を無くし,比較できるようにするため,本研究は断面特性値に対して基準化をし,解析を行った。その結果、以下のような事柄が明らかになった。1)断面積(A)は,ヒトとチンパンジーが他の動物と異なり,第11胸椎から最終腰椎にかけ,著しく増加する傾向を示している。2)断面2次モーメント(I_x,I_y)では,ヒトの左右方向軸まわりの断面2次モーメント(I_x)が第10胸椎から最終腰椎にかけて著しい増加が見られる。ヒト,チンパンジーとニホンザルの前後方向軸まわりの断面2次モーメント(I_y)が頚椎から最終腰椎に向かって徐々に増加する傾向を示している。3)主断面2次モーメント(I_<max>,I_<min>)では,ヒト,チンパンジーとニホンザルのI_<max>が第10胸椎から最終腰椎にかけ,著しい増加が見られる。一方I_<min>は頚椎から最終腰椎に向かって徐々に増加する傾向がある。4)断面2次極モーメント(I_p)では,ヒト,チンパンジー,ニホンザルが第11胸椎から最終腰椎にかけて,著しい増加が見られる。 | KAKENHI-PROJECT-12640697 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12640697 |
超塑性の新しい展開 | 平成10年度で本領域の研究はひとまず終了し、平成11年度はそれまでに得られた研究成果のとりまとめと、学術論文および国際会議での成果発表を主に行った。本領域の成果の中でも、例えば超塑性から結晶粒界塑性を目指したアプローチは、本領域の活動によってもたらされた斬新な成果として、国内外から高く評価されている。例えば、従来脆性材料として扱われてきたセラミックス材料において、優れた超塑性特性をGe添加TZP系や種々の酸化物を添加したAl_2O_3系セラミックスにおいて見出し、その超塑性特性を粒界塑性の立場から、破壊エネルギーやXPS等で測定される化学結合状態との関連で整理しうるという知見を見出しており、今年度欧文学術誌や第8回クリープ国際会議(The eighth international conference on creep and fracture of engineering materials and structures, 1999年11月1日5日、つくば)をはじめ幾つかの国際会議の場において紹介した。また、2000年JFCCワークショップ(国際シンポジウム、2000年3月15日17日、名古屋)本領域の成果の一端を引き継ぐ形で、粒界・界面の立場から材料の特性を議論し、本領域で得られた成果を紹介した。特定領域研究「超塑性の新しい展開」では計画研究期間平成8年平成10年度において,ナノ結晶,非平衡材料,複合材料,ファインセラミックスなどの広範囲に亘る新材料の超塑性現象を,実験的に詳細に解析するとともに,「結晶粒界塑性」という新しい立場から,これらの材料の超塑性を統一的に記述するための力学体系の構築を行った.その結果,新材料の超塑性における粒界の役割や変形機構を解明し,また超塑性加工技術の創出に成功した.また本総括班は,特定領域研究によって得られた新しい研究成果を,学会発表を通じて公表・衆知させるための活動を重ねており,本総括班が主体となって国際シンポジウム"Towards Innovation in Superplasticity I・II"をはじめ3件の国際会議を開催するに至った.また国際会議ICSAM-97等の,超塑性に関連する国内外の学協会活動を積極的に行ってきた.この種の活動は,国際的にも高く評価されており,例えば本領域代表者佐久間はICSAMのInternational Advisory BoardのChairmanに選出され,1998年1月より国際的な超塑性研究を主導する立場に立つこととなった.なお国内の学会活動としては,本特定領域のメンバーが中心となって,日本金属学会,日本機械学会,日本塑性加工学会等でシンポジウム等の企画を実現させた.平成8年度は、総括班として以下のような活動を企画、実行した。(1)平成8年4月30日(火)に大阪大学吹田キャンパスにおいて総括班会議を開催し、今年度の活動計画、研究計画の進め方などについて討議した。(3)平成8年9月19日(木)、20日(金)の2日間にわたって、京都において日本学術会議材料研究連合講演会が開催され、その中に超塑性に関するセッションとしを設けて講演会を開催し、活発な検討を行った。(4)平成9年1月29日(水)2月1日(土)まで、インドのBangaloreにおいて超塑性国際会議が開かれた。本総括班より多くの研究者がこの会議に参加し、研究成果を公表し、国際的に高い評価を得た。平成9年度には、主として以下の4件の会議において本領域の研究成果を公表するとともに、国内外に多大なインパクトを与えたと自負している。(3)日本金属学会平成9年秋季大会シンポジウム「超塑性の新しい展開」、(1997年9月24日26日、仙台)(4)重点領域研究公開報告会「超塑性の新しい展開」、(1997年12月9日10日、福岡)これらの発表会はいずれも、本領域の研究者がオ-ガナイザー、基調講演、招待講演などの主要な役割を果たした。これらの会議で公表された数々の成果の中でも、例えば超塑性から結晶粒界塑性を目指したアプローチは、他に例をみない斬新なものであり、国内外から高く評価されている。この点については、文部省での研究経過ヒアリングでも評価いただいたものと認識している。平成10年度には、主として以下の3件の会議において本領域の研究成果を公表した。(3)特定領域研究公開報告会「超塑性の新しい展開」、(1998年12月11日12日、京都)これらの発表会のうち、(2)は本領域の総括班が主催した国際会議であり、諸外国から一流の研究者の参加を得て極めてレベルの高い会議であった。これらの会議で公表された数々の成果の中でも、例えば超塑性から結晶粒界塑性を目指したアプローチなど、本領域の活動によって初めてもたらされた斬新な成果として、国内外から高く評価されている。平成10年度で本領域の研究はひとまず終了し、平成11年度はそれまでに得られた研究成果のとりまとめと、学術論文および国際会議での成果発表を主に行った。本領域の成果の中でも、例えば超塑性から結晶粒界塑性を目指したアプローチは、本領域の活動によってもたらされた斬新な成果として、国内外から高く評価されている。 | KAKENHI-PROJECT-08242102 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08242102 |
超塑性の新しい展開 | 例えば、従来脆性材料として扱われてきたセラミックス材料において、優れた超塑性特性をGe添加TZP系や種々の酸化物を添加したAl_2O_3系セラミックスにおいて見出し、その超塑性特性を粒界塑性の立場から、破壊エネルギーやXPS等で測定される化学結合状態との関連で整理しうるという知見を見出しており、今年度欧文学術誌や第8回クリープ国際会議(The eighth international conference on creep and fracture of engineering materials and structures, 1999年11月1日5日、つくば)をはじめ幾つかの国際会議の場において紹介した。また、2000年JFCCワークショップ(国際シンポジウム、2000年3月15日17日、名古屋)本領域の成果の一端を引き継ぐ形で、粒界・界面の立場から材料の特性を議論し、本領域で得られた成果を紹介した。 | KAKENHI-PROJECT-08242102 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08242102 |
遊離組織移植における基礎的研究 | 生体顕微鏡を用いてラットの腸間膜の生理的微小循環単位(microcirculation unit:MU)を観察し、VTRに記録した。つづいて腸間膜の静脈鬱血状態を作成するのに、腸間膜静脈をクランプするのではなく、微小ガラス製の圧迫装置を考案しこれを用いることによりMU単位で様々な循環状態を作成することが可能となった。すなわち圧迫の強さにより静脈のみ遮断、動静脈遮断ができるため静脈の鬱血状態、完全阻血状態の作成がMU単位で作り出すことが容易となった。これにより顕微鏡の視野をわずかにずらすだけで様々な循環状態を同時に観察することができ、細かい比較検討が可能となった。またこのとき各血球の流速を測定するだけでなく、鬱血または阻血状態においてどのような異常な動きをするのかを観察中である。これまで報告の多い白血球の血管内皮細胞への吸着や壁に沿う運動のみならず、赤血球の運動抵止や方向の転換が興味深いところである。すなわち当研究の目的であるシャント発生のメカニズム解明に向け、MU単位の観察が可能になったことは大きな進歩であるといえる。さらに微小ガラス製圧迫装置は自由に様々な循環状態を作成可能なだけでなく、透明であるので直接顕微鏡下に観察できる強みを持っている。いくつか同時に用いることにより、複雑な回路も作ることができシャントを任意の場所に作成できるのではないかと期待される。また異常循環状態を作成後それを解除することによる正常な状態への復帰の機序も解明されるものと思われる。これからは静脈鬱血の定量化を図り、シャント発生の閾値を測定すること、シャント量の増加を図ることなどを目的にラットの実験例数を増しているところである。全体顕微鏡を用いてラットの腸間膜の生理的微小循環単位(microcirculaton unit:MU)を観察し、VTRに記録した。つづいて腸間膜の静脈鬱血状態を作成するのに、腸間膜静脈をクランプするのではなく、微小ガラス製の圧迫装置を考案しこれを用いることによりMU単位で様々な循環状態を作成することが可能となった。すなわち圧迫の強さにより静脈のみ遮断、動静脈遮断ができるため静脈の鬱血状態、完全阻血状態の作成がMU単位で作り出すことが容易となった。これにより顕微鏡の視野をわずかにずらすだけで様々な循環状態を同時に観察することができ、細かい比較検討が可能となった。またこのとき各血球の流速を測定するだけでなく、鬱血または阻血状態においてどのよな異常な動きをするのかを観測中である。これまで報告の多い白血球の血管内皮細胞への吸着や壁に沿う運動のみならず、赤血球の運動抵止や方向の転換が興味深いところである。すなわち当研究の目的であるシャント発生のメカニズム解明に向け。MU単位の観察が可能となったことは大きな進歩であるといえる。さらに微小ガラス製圧迫装置は自由に様々な循環状態を作成可能なだけでなく、透明であるので直接顕微鏡下に観察できる強みを持っている。いくつか同時に用いることにより、複雑な回路も作ることができシャントを任意の場所に作成できるのではないかと期待される。また異常循環状態を作成後それを解除することによる正常な状態への復帰の機序も解明されるものと思われる。これからは静脈鬱血の定量化を図り、シャント発生の闘値を測定すること、シャント量の増加を図ることなど主に研究を進めていきたい。生体顕微鏡を用いてラットの腸間膜の生理的微小循環単位(microcirculation unit:MU)を観察し、VTRに記録した。つづいて腸間膜の静脈鬱血状態を作成するのに、腸間膜静脈をクランプするのではなく、微小ガラス製の圧迫装置を考案しこれを用いることによりMU単位で様々な循環状態を作成することが可能となった。すなわち圧迫の強さにより静脈のみ遮断、動静脈遮断ができるため静脈の鬱血状態、完全阻血状態の作成がMU単位で作り出すことが容易となった。これにより顕微鏡の視野をわずかにずらすだけで様々な循環状態を同時に観察することができ、細かい比較検討が可能となった。またこのとき各血球の流速を測定するだけでなく、鬱血または阻血状態においてどのような異常な動きをするのかを観察中である。これまで報告の多い白血球の血管内皮細胞への吸着や壁に沿う運動のみならず、赤血球の運動抵止や方向の転換が興味深いところである。すなわち当研究の目的であるシャント発生のメカニズム解明に向け、MU単位の観察が可能になったことは大きな進歩であるといえる。さらに微小ガラス製圧迫装置は自由に様々な循環状態を作成可能なだけでなく、透明であるので直接顕微鏡下に観察できる強みを持っている。いくつか同時に用いることにより、複雑な回路も作ることができシャントを任意の場所に作成できるのではないかと期待される。また異常循環状態を作成後それを解除することによる正常な状態への復帰の機序も解明されるものと思われる。これからは静脈鬱血の定量化を図り、シャント発生の閾値を測定すること、シャント量の増加を図ることなどを目的にラットの実験例数を増しているところである。 | KAKENHI-PROJECT-09671217 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09671217 |
電子ニュートリノ振動事象におけるバックグラウンドの研究 | ミューニュートリノから電子ニュートリノへのニュートリノ振動測定において、水チェレンコフ検出器でのバックグラウンド測定について研究を行った。研究は2つの方向から進められ、同タイプの前置検出器による測定の可能性とバックグラウンドを人工的に発生させる装置の開発を行った。ミューニュートリノから電子ニュートリノへのニュートリノ振動測定において、水チェレンコフ検出器でのバックグラウンド測定について研究を行った。研究は2つの方向から進められ、同タイプの前置検出器による測定の可能性とバックグラウンドを人工的に発生させる装置の開発を行った。本研究は次期長基線ニュートリノ振動実験(T2K実験)において、ミューニュートリノから電子ニュートリノヘの振動(V_μ→V_e振動)における水チェレンコフ検出器中のバックグランドを精密に測定することが目的である。T2K実験においてニュートリノビーム発生場所から2キロメートル離れた地点に水チェレンコフ検出器を主体とする複合前置検出器(2KM検出器)を設置することが検討されている。この水チェレンコフ検出器の主な系統誤差である有効体積をキャリブレーションする手段として、有効体積境界に小型光電子増倍管を設置した検出器のデザインを行い、シミュレーションにて有効体積の系統誤差の評価を行った。また疑似チェレンコフ光生成器(コーンジェネレータ)を用いた電子ニュートリノ事象検出効率のキャリブレーションについても研究を進めている。バックグラウンドの多くは中性パイ粒子崩壊事象の誤認識によるものであり、この擬似パターン光を用いて、電子ニュートリノ・中性パイ粒子識別効率校正を考えている。実際にキャリブレーションを行うには、あらかじめ疑似チェレンコフ光の放射パターンを精密に測定する必要がある。そのために測定セットアップを構築し、そのパターン測定を行った。今年度にて実際にスーパーカミオカンデにて疑似チェレンコフ光のテストおよび解析を行う予定である。本研究は次期長基線ニュートリノ振動実験(T2K実験)において、ミューニュートリノから電子ニュートリノへの振動(ν_μ→ν_e振動)における水チェレンコフ検出器中のバックグランドを精密に測定することが目的である。本年度は擬似チェレンコフ光生成器(コーンジェネレータ)を用いた電子ニュートリノ事象検出効率のキャリブレーションについて、その放射分布測定のための測定器の改良を進めた。バックグラウンドの多くは中性パイ粒子崩壊事象の誤認識によるものであり、この擬似パターン光を用いて、電子ニュートリノ・中性パイ粒子識別効率校正を考えている。実際にキャリブレーションを行うには、あらかじめ擬似チェレンコフ光の放射パターンを精密に測定する必要があり、以前の測定器では精度が不十分であった。そのため上記の測定器を改良し、測定を進めるとともに、測定データの取得、解析を行った。本研究は長基線ニュートリノ振動実験(T2K実験)において、ミューニュートリノから電子ニュートリノへの振動(υ_μ→υ_e振動)における水チェレンコフ検出器中のバックグランドについて研究することが目的である。本年度は疑似チェレンコフ光生成器(コーンジェネレータ)を用いた電子ニュートリノ事象検出効率のキャリブレーションについて研究を進めた。バックグラウンド事象の多くは中性パイ粒子崩壊事象の誤認識によるものであり、この擬似パターン光を用いて、電子・中性パイ粒子事象の識別効率のキャリブレーションを行うことによりバックグラウンド測定の精度向上が大いに期待される。まず生成器の放射分布測定のための測定器改良を行った。実際にキャリブレーションを行うには、あらかじめ生成器の放射パターンを精密に測定する必要があり、以前の測定器では精度が不十分であった。今年度その測定装置の改良を完成させ、放射パターンのデータを取得した。そのデータに基づいて水チェレンコフ検出器で期待されうる事象をシミュレーションで作成した。また実際T2K実験で使われるスーパーカミオカンデで擬似チェレンコフ事象のデータで取得を行い、シミュレーションと合わせて解析を行うことができた。これによりT2K実験での疑似チェレンコフ光生成器による電子・中性パイ粒子事象間の識別効率の検証が期待される。 | KAKENHI-PROJECT-18740135 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18740135 |
正規反射的凸多面体に付随するδ多項式のunimodal性に関する研究 | 本研究は,格子凸多面体の組合せ論的不変量であるδ多項式を組合せ論的及び代数的手法を用いて調べることを目的としている.特に,可換代数や代数幾何と繋がりが深い反射的凸多面体に注目する.具体的な研究計画としては,(1) regular unimoduar triangulation (RUT)を持たない正規反射的凸多面体,(2) flag RUTを持つ反射的凸多面体,(3)非特異反射的凸多面体の3つの多面体に関して,それぞれのδ多項式の性質を調べ,正規反射的凸多面体のδ多項式はunimodalであることと,flag RUTを持つ反射的凸多面体のδ多項式はγ-positiveであることを示す.本研究は,格子凸多面体の組合せ論的不変量であるδ多項式を組合せ論的及び代数的手法を用いて調べることを目的としている.特に,可換代数や代数幾何と繋がりが深い反射的凸多面体に注目する.具体的な研究計画としては,(1) regular unimoduar triangulation (RUT)を持たない正規反射的凸多面体,(2) flag RUTを持つ反射的凸多面体,(3)非特異反射的凸多面体の3つの多面体に関して,それぞれのδ多項式の性質を調べ,正規反射的凸多面体のδ多項式はunimodalであることと,flag RUTを持つ反射的凸多面体のδ多項式はγ-positiveであることを示す. | KAKENHI-PROJECT-19K14505 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K14505 |
企業特性の不均一性と貿易投資政策に関する理論的研究 | 本年度は主に企業の生産性の違いと直接投資行動(FDI)の関係について、国家間の自由貿易協定(FTA)の締結とFTAに付随する原産地規則の効果に着目しつつ検証を行った。FTAの締結は域内国間で関税を撤廃するが、それは条件付き撤廃であり、原産地規制により無関税での輸出権利を得るためにはFTA域内で一定割合以上の中間財を用いなければならない場合が現実に多くある。FTA域内で提供される中間財の質が悪くコストが高い場合、そのような原産地規則は域外企業の域内への輸出基地型FDIを阻害することになるが、その影響の大きさは企業の生産性に依存することになる。国際寡占モデルによる分析の結果、原産地規則があまり厳しくない場合、FTAの締結は生産性の高い企業の輸出基地型FDIを促すが、原産地規則が厳しい場合は、生産性の低い企業の輸出基地型FDIを促すか、あるいは固定費が余計にかかる市場指向型FDIを促してしまう。すなわちFTAの締結は、その原産地規則が厳しい場合、効率的な企業のFDIを非効率的な企業のFDIへと転換したり、輸出基地FDIを市場指向型FDIへと転換する「直接投資転換効果」をもたらし世界厚生を悪化させる可能性がある。しかし、FTA締結国は戦略的な目的で敢えてFDIの転換を選択してしまうかもしれない。これらの結果は従来指摘されてこなかったものであり、学術的な意義が高いだけでなく、政策含意に富んだもある。また、昨年度から引き続き取り組んでいる一橋大学の石川城太教授とニューサウスウェルズ大学の森田穂高教授と行っている共同研究を上海とバレンシアでそれぞれ開催された国際コンファレンスで報告するとともに、その改訂作業を行い2008年3月に学習院大学経済経営研究所ディスカッションペーパー(No.07-1)として公開した。また、2008年5月中には査読付きの学術雑誌に投稿する予定である。研究テーマである「企業特性の不均一性」には様々な側面があるが、本年度は主にサービス産業へのアクセスに関する国内企業と外国企業の不均一性に注目して研究を行った。自動車や電気機械等の製品が生産され消費者の手元に届くまでには、流通やアフターサービスの提供が必要不可決であるが、国外に商品を提供する場合には、必要なサービスを十分に現地で提供するためにはサービス部門の直接投資を行い現地にサービス拠点を設立する事が必要となる。しかし、サービス部門の直接投資には固定費がかかるため、代替手段として現地のライバル企業にサービスの提供を委託するケースが現実多く見られる。一橋大学の石川城太教授とニューサウスウェルズ大学の森田穂高教授と行った共同研究の結果、サービスが現地ライバル企業に委託されている場合は、貿易自由化は通常のケースとは逆に消費者の損失となり、国内企業の利益となる可能性が不完全競争モデルにより示された。この結果は貿易自由化が世界の厚生を改善するためには、サービス直接投資の自由化が必要条件であることを意味しており、WTOのGATS等におけるサービス貿易自由化の取り組みに対して大きな含意を有するものである。また、サービスが特に消費者向けの修理サービスである場合、貿易自由化により外国企業も損失を受ける可能性も示された。本年度はさらに、多国籍企業の直接投資に関する政策に関して、オーストラリアやカナダへ出張し複数の研究者と「中間財価格の価格支配力と貿易自由化の関係」・「移転価格の設定方法」・「耐久財のレンタルサービス・リースサービスと貿易政策の関係」について議論を行い、来年度以降の研究の方向性を具体化させた。本年度は主に企業の生産性の違いと直接投資行動(FDI)の関係について、国家間の自由貿易協定(FTA)の締結とFTAに付随する原産地規則の効果に着目しつつ検証を行った。FTAの締結は域内国間で関税を撤廃するが、それは条件付き撤廃であり、原産地規制により無関税での輸出権利を得るためにはFTA域内で一定割合以上の中間財を用いなければならない場合が現実に多くある。FTA域内で提供される中間財の質が悪くコストが高い場合、そのような原産地規則は域外企業の域内への輸出基地型FDIを阻害することになるが、その影響の大きさは企業の生産性に依存することになる。国際寡占モデルによる分析の結果、原産地規則があまり厳しくない場合、FTAの締結は生産性の高い企業の輸出基地型FDIを促すが、原産地規則が厳しい場合は、生産性の低い企業の輸出基地型FDIを促すか、あるいは固定費が余計にかかる市場指向型FDIを促してしまう。すなわちFTAの締結は、その原産地規則が厳しい場合、効率的な企業のFDIを非効率的な企業のFDIへと転換したり、輸出基地FDIを市場指向型FDIへと転換する「直接投資転換効果」をもたらし世界厚生を悪化させる可能性がある。しかし、FTA締結国は戦略的な目的で敢えてFDIの転換を選択してしまうかもしれない。これらの結果は従来指摘されてこなかったものであり、学術的な意義が高いだけでなく、政策含意に富んだもある。また、昨年度から引き続き取り組んでいる一橋大学の石川城太教授とニューサウスウェルズ大学の森田穂高教授と行っている共同研究を上海とバレンシアでそれぞれ開催された国際コンファレンスで報告するとともに、その改訂作業を行い2008年3月に学習院大学経済経営研究所ディスカッションペーパー(No.07-1)として公開した。また、2008年5月中には査読付きの学術雑誌に投稿する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18730172 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18730172 |
精密化されたゲージ理論的不変量の研究 | 今年度の研究では,ある位相的条件をみたす3次元多様体にたいしてSeiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型を定義し, Seiberg-Witten安定コホモトピー不変量の貼り合わせ公式を構成した.ここでのSeiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型の定義はKronheimer-Manolescuによる構成を, Melrose-Piazzaによって導入されたSpectral sectionというものを利用して,修正したものである.この構成法ではspectral sectionの取り方に依存し, 3次元多様体の不変量になっていない.しかし,貼り合わせ公式を構成には十分である.第一Betti数が0の場合に定義されているSeiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型を第一Beitti数が正の3次元多様体へ拡張することは自然な問題である.平成25年度の研究では, 3次元多様体がある位相的条件を満たす場合, Seiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型を構成した.さらに平成26年度の研究では, Seiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型のいくつかの応用を行った.より具体的には, 2つの3次元多様体の連結和のSeiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型はそれぞれのSeiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型のスマッシュ積と同型であることを示した。また、4次元多様体への曲面の埋め込みに関するある応用を得た.第一Betti数が正の場合は, 3次元多様体がある条件を満たす場合にのみ定義されている。現在、より一般の3次元多様体にどのように拡張するかを研究している。これは平成27年度の課題となる.最終年度はIPMUのT. Khandhawit氏, UCLAのJ. Lin氏と共同研究でSeiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型を研究した.Seiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型は, Seiberg-Witten方程式を用いて定義される3次元多様体の不変量である.それは位相空間のU(1)-同変安定ホモトピー型として定義され,そのU(1)-同変ホモロジーを取ると, Kronheimer-Mrowkaによって構成されたSeiberg-Witten-Floerホモロジーと同型になるものである.3次元多様体の第一Betti数が正のとき,このような不変量を構成するためには障害があることが知らている.今年度の研究で, Seiberg-Witten-Floerホモロジーを適当な局所係数で捻ったものに対応するSeiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型であれば障害が現れず,一般の3次元多様体に対して定義できることを証明した.さらに,我々はこのSeiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型を用いて,境界付きスピン4次元多様体の交差形式への応用を行った.Seiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型は,重要で強力な不変量であるが,扱いが難しく,この研究を始める以前はほとんど進展がなかった.特に3次元多様体の第一Betti数が正の場合は,構成自体が困難であった.この研究を通して,第一Betti数が正の場合の構成は進展し,また,研究計画を立てた時には想定していなかった応用も得ることができた.一方,この研究のもう一つの目的であった, 3次元多様体の手術に関するSeiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型の振る舞いに関しては,未だ研究の途上であり,今後の課題として残った.本研究の目的は, Seiberg-Witten-Fleor安定ホモトピー型の構成とその応用である. Seiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型の構成に関して、ある条件のもとで、実際に構成できた。また、応用に関しても、すでにいくつかの応用を得ている。トポロジー現在、第一Betti数が正の3次元多様体に対しては、ある条件のもとSeiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型定義されている。今後の研究では、この条件が満たされない3次元多様体に対して、いかにSeiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型を定義するかを研究する。また、Seiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型の計算、応用についても研究する。より具体的には、3次元多様体に結び目が入っている時、その結び目に沿って手術することによって、新たな3次元多様体を得る。もとの3次元多様体のSeiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型と新たに得たSeiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型の間にどのような関係を得るかを調べる。これにより、多くの3次元多様体のSeiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型の情報を得られると考えている。研究目的のひとつであるSeiberg-Witten安定コホモトピー不変量の貼り合わせ公式の構成を達成できた. | KAKENHI-PROJECT-25800040 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25800040 |
フランス近現代文学における眠りの表象 | 本研究は、入眠から夢を経て目覚めにいたる眠りの様々な側面が、ロマン主義以降のフランス文学においてどのような役割を果たしてきたかを検討するものである。二年間にわたる研究を通して、眠りが必ずしも意識の虚無を意味しないことがはっきりしてきた。始めに「夢」は、数多くの作家・詩人たちによって、単なる幻想の世界ではなく、しばしばある研ぎすまされた意識のあり方として捕らえられている。したがって、夢のない眠りを除く眠りの諸相は、なによりも睡眠下でのある特殊な覚醒意識と、通常の覚醒時の意識が様々な形でせめぎあった状態として把握されている。眠りは「自我」が失われる領域ではなく、「自我」が新たな形で活動し始める領域なのである。我々はこの視点を、具体的には次の三つの個別作家研究を通して展開した。1.19世紀の詩人ロートレアモンの作品を分析、ロートレアモンが夢を見ることと本を読むこととの類似性に着目し、それを最大限活かしながら自らの詩学を確立していったことを明らかにした(研究協力者・原大地)。2.20世紀の作家ミシェル・レリスの作品において重要なモチーフとなっている半睡状態の意義を検討した(研究協力者・本田貴久)。3.20世紀の詩人ヴァレリーは「睡眠下意識」と覚醒時の意識の関係を詳細に研究したが、そのなかでも夢と言語の関係に関する考察を取り上げ、分析した(塚本)。今後は、「フランス近現代文学における「夢の詩学」」(平成10、11年度)で行った研究と合わせ、フランス近現代文学における夢・眠りの研究をより包括的視点から統合することを目指したい。本研究は、入眠から夢を経て目覚めにいたる眠りの様々な側面が、ロマン主義以降のフランス文学においてどのような役割を果たしてきたかを検討するものである。二年間にわたる研究を通して、眠りが必ずしも意識の虚無を意味しないことがはっきりしてきた。始めに「夢」は、数多くの作家・詩人たちによって、単なる幻想の世界ではなく、しばしばある研ぎすまされた意識のあり方として捕らえられている。したがって、夢のない眠りを除く眠りの諸相は、なによりも睡眠下でのある特殊な覚醒意識と、通常の覚醒時の意識が様々な形でせめぎあった状態として把握されている。眠りは「自我」が失われる領域ではなく、「自我」が新たな形で活動し始める領域なのである。我々はこの視点を、具体的には次の三つの個別作家研究を通して展開した。1.19世紀の詩人ロートレアモンの作品を分析、ロートレアモンが夢を見ることと本を読むこととの類似性に着目し、それを最大限活かしながら自らの詩学を確立していったことを明らかにした(研究協力者・原大地)。2.20世紀の作家ミシェル・レリスの作品において重要なモチーフとなっている半睡状態の意義を検討した(研究協力者・本田貴久)。3.20世紀の詩人ヴァレリーは「睡眠下意識」と覚醒時の意識の関係を詳細に研究したが、そのなかでも夢と言語の関係に関する考察を取り上げ、分析した(塚本)。今後は、「フランス近現代文学における「夢の詩学」」(平成10、11年度)で行った研究と合わせ、フランス近現代文学における夢・眠りの研究をより包括的視点から統合することを目指したい。ロマン主義以降のフランス文学において、眠りのはらむさまざまな側面は数多くの作家・詩人たちの注意を引き、創作意欲を掻きたててきた。本研究の目的は、この眠りをめぐるテクストの分析を通して、フランス近現代文学の特質を再検討することである。初年度にあたる今年度は、まだ十分なデータが蓄積されていないこの分野で、今後の研究の基礎となるコーパスの整備に努めた。とりわけ19世紀中葉から20世紀初頭にかけてフランスで発展した実証的心理学研究、そして近年研究が飛躍的に進展しつつある散文詩に関する文献表を充実させることができた。その文献渉猟の過程で、ゾラやモーパッサン等19世紀後半の小説家たちが精神病理をどのように捕らえていたかが、あらたな研究課題として浮上してきた。同時に、当初の計画にある通り、プルースト、ヴァレリー、ブルトンが、眠りをどのようにして創作の方法に取り入れていったのかを検討した。今後さらに、眠りに対する彼らの態度が、プレ・ロマン派の作家たちの態度とどのように関係しているのか、同時代の実証心理学の言説にどのように影響されているのか等々の問いを吟味することで、考察をさらに展開していきたい。最後に、今年度はヴァレリーの専門家であるパリ第12大学のセレレット=ピェトリ教授と、映画監督のジャン・ジャック=ベネックス氏の講演会を開催し、研究交流を深めることができた。今後もさまざまな研究者・作家との交流をおこない、この問題にどのようなアプローチが可能なのかをさらに探っていきたい。本研究は、入眠から夢をへて目覚めにいたる眠りのさまざまな側面が、ロマン主義以降のフランス文学においてどのような役割を果たしてきたかを検討するものである。今年度の研究活動においては、夢と文学との関係を中心に、以下の諸点に関して成果が得られた。1.19世紀の詩人ロートレアモンが、夢の形成力をどのように作品の中に取り込んでいったかを分析した(研究協力者・原大地)。この詩人が、夢と読書との類似関係に着目し、それを最大限活かしながら自らの詩学を確立していったことが明らかとなった。2.シュルレアリストたちは「夢の万能」を標榜したが、その中でもとりわけ夢を自らの文学活動に取り込もうとしたミシェル・レリスの詩学を検討した(研究協力者・本田貴久)。 | KAKENHI-PROJECT-13610603 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13610603 |
フランス近現代文学における眠りの表象 | レリスの作品においては、半覚半醒の状態が重要な役割を果たしており、覚醒した意識と夢の中の意識のせめぎ合いが、テクストを産み出す大きなモチーフとなっている。3.20世紀の詩人ヴァレリーは、覚醒した意識と眠りの中の意識との緊張関係を極限にまで押し進めることで、独自の夢の詩学を構築しようと試みた。そのなかでも、覚醒時の言語とは異なる夢の言語のあり方を分析し、夢の言語を自らの詩的言語に取り入れようとした試みを検討した(塚本:2002年10月23日、成均館大学校(ソウル)で開催された国際研究集会で、「夢の言語、イメージの言語」と題して発表)。また、ヴァレリーの専門家であるクレルモン=フェラン大学のロバート・ピッケリング教授に、目覚めを主題とした散文詩と、ヴァレリー自身が描いたデッサンとの関係についての研究発表を依頼した(2002年12月2日、東京大学)。全体に、「夢」が、それをみている限りでは覚醒した意識のひとつのあり方であることが、数多くの作家たちの注意を引いたことが明らかとなった。眠りは、覚醒時の意識との関係においてこそ問題とされているのである。 | KAKENHI-PROJECT-13610603 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13610603 |
工作機械の自律分散化制御に関する研究 | 次世代の知能化生産システムを構築するために,工作機械の自律分散制御に関する研究を行った。具体的には,外部から制御可能なオーブンアーキテクチャの小型CNC旋盤に通信機能を備えたワークステーションを上位コンピュータとして接続し,高度な情報処理と高精度な旋削加工を行うことが可能な知的工作機械を構築した。構築した工作機械について,自律と協調の観点から研究を行い,以下の研究成果を得た。(1)工作機械の自律のための要素技術開発と検証自律した工作機械のもつ機能のひとつとして,外乱が生じた場合にも高精度の加工を行うことをあげ,必要な要素技術の開発を行った。具体的には,加工中に工作機械の熱変形によって生じる加工誤差を自律的に補正するための制御プログラムを開発した。本手法の有効性は切削実験により検証し,加工誤差を80μmから25μm以下に改善できることを確認した。(2)工作機械の協調のためのアルゴリズム開発と検証生産システム内で工作機械が,集中的な管理機構からの指示を必要とせずに自律的に生産活動を行うためには,他の機械に対して協調を行う必要がある。このための手法として,分散環境下でスケジューリングを行う際に利用可能な再帰的伝播法と名付けた新しい情報交換方法を提案した。提案した手法は,計算機シミュレーションにより検証を行い,従来のディスパッチングルールよるスケジュールよりも良い結果が得られることを明らかにした。複雑な情報管理を必要とする生産システム内で、工作機械の自律分散化をはかり、円滑な生産活動を行うための検討を行っている。平成9年度は、自律化と分散化の観点から以下の検討を行った。(1)工作機械の自律化オープンアーキテクチャCNCコントローラを搭載したCNC施盤に、ワークステーションを組み込み、従来の機械加工の機能に加え、高度な情報処理を行うことを可能にした。自律型工作機械の頭脳に相当するワークステーションは、インターネットに接続されているため、工作機械の内部の情報処理だけでなく、外部の機器とも情報交換・処理を行うことが可能である。本年度は、自律工作機械の基本的な構造を明らかにするとともに、具体的な行動例として、工作機械の熱変形による加工誤差に対する補正制御を行い、有効性を確認した。(2)工作機械の協調アルゴリズム工作機械の協調に関してスケジューリング問題の検討を行った。本年度は、集中管理機構を必要としないスケジュールアルゴリムの検討を行った。本年度は、機械のとる動作が他の機械のスケジュールに与える影響に関して分析を行い、分析結果に基づきスケジュールの近似最適解を求めるアルゴリズムを開発した。開発したアルゴリムの有効性は、計算機シミュレーションにより確認した。次世代の知能化生産システムを構築するために,工作機械の自律分散制御に関する研究を行った。具体的には,外部から制御可能なオーブンアーキテクチャの小型CNC旋盤に通信機能を備えたワークステーションを上位コンピュータとして接続し,高度な情報処理と高精度な旋削加工を行うことが可能な知的工作機械を構築した。構築した工作機械について,自律と協調の観点から研究を行い,以下の研究成果を得た。(1)工作機械の自律のための要素技術開発と検証自律した工作機械のもつ機能のひとつとして,外乱が生じた場合にも高精度の加工を行うことをあげ,必要な要素技術の開発を行った。具体的には,加工中に工作機械の熱変形によって生じる加工誤差を自律的に補正するための制御プログラムを開発した。本手法の有効性は切削実験により検証し,加工誤差を80μmから25μm以下に改善できることを確認した。(2)工作機械の協調のためのアルゴリズム開発と検証生産システム内で工作機械が,集中的な管理機構からの指示を必要とせずに自律的に生産活動を行うためには,他の機械に対して協調を行う必要がある。このための手法として,分散環境下でスケジューリングを行う際に利用可能な再帰的伝播法と名付けた新しい情報交換方法を提案した。提案した手法は,計算機シミュレーションにより検証を行い,従来のディスパッチングルールよるスケジュールよりも良い結果が得られることを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-09750299 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09750299 |
ハビタット分化と密度依存的死亡の相互作用が熱帯林の樹木多様性維持に果たす役割 | ボルネオ熱帯雨林樹木の多様性維持におけるハビタット分化と同種密度効果の役割を長期森林動態データと野外実験によって調べた。長期森林動態データから、同種の密度が高いと死亡率が上がること、その程度が種と立地条件の組み合わせによって変化することが明らかになった。また、実生を用いた野外実験から、死亡率と葉の被食率が同種密度、立地条件、種によって異なることが明らかになった。実生から稚樹の段階で見られた、種、立地条件、同種密度の間の交互作用は、ボルネオ熱帯雨林の多様性維持に貢献している可能性が高い。熱帯雨林の樹木多様性を維持する主要なメカニズムに「ハビタット(ニッチ)分化」と「同種密度依存的死亡」が知られている。本研究の調査地であるマレーシア、サラワク州の熱帯雨林でも、これら2つのメカニズムが働いていることを支持する証拠が個別の研究で示されている。しかし、これら2つのメカニズムは矛盾する部分がある。本研究では、両要因の相互作用が多様性の維持に貢献しているとする新しい仮説を提案し、樹木群集動態調査と実生移植実験を組み合わせて、仮説を検証することを目的とし、以下の調査を行う。(1)樹木群集の動態解析:マレーシア、サラワク州ランビル国立公園に設置されている大面積調査区(52ha)の再測定を行い、直径1cm以上の樹木の動態データを整備する。さらに、動態解析を行って仮説を検証する。(2)稚樹群集の動態解析:稚樹調査区を設置して稚樹の動態データを整備し、稚樹についても仮説を検証する。(3)実生移植実験:ハビタット、同種密度、被食抑制処理を組合わせて、10種の実生を移植する野外実験を行い、ハビタット、同種密度の主効果と交互作用の影響を評価する。(4)DNAバーコードによる実生の同定:形態では種の判別が困難な実生からDNAを採取し、DNAバーコードによる種の判別を試みる。ボルネオ熱帯雨林樹木の多様性維持におけるハビタット分化と同種密度効果の役割を長期森林動態データと野外実験によって調べた。長期森林動態データから、同種の密度が高いと死亡率が上がること、その程度が種と立地条件の組み合わせによって変化することが明らかになった。また、実生を用いた野外実験から、死亡率と葉の被食率が同種密度、立地条件、種によって異なることが明らかになった。実生から稚樹の段階で見られた、種、立地条件、同種密度の間の交互作用は、ボルネオ熱帯雨林の多様性維持に貢献している可能性が高い。1.樹木群集動態:マレーシアサラワク州ランビル国立公園に設置されている大面積調査区(面積52ha)に生育する直径1cm以上の全樹木(約35万本)について、4回目の計測を完了した。測定項目は、既存個体の生死と直径、新規加入個体の樹種、位置、直径である。現在、調査結果のデータベースへの入力を進めている。このデータベースが完成すれば、15年間の膨大な樹木動態データを用いて、密度依存的死亡とハビタット効果に関するより詳細な解析が可能となる。2.大面積調査区の20×20m格子点に面積4m^2の稚樹調査用サブプロットを計1300個設置した。各プロットに出現する高さ20cm以上の全樹木個体に識別票をつけ、樹種と高さの測定を行った。現在、結果をデータベースに入力中である。密度依存的死亡やハビタットの影響は小さな個体ほど顕著であると期待されるため、この稚樹動態データは本研究にとって極めて重要である。今後数年間、稚樹調査サブプロットを継続して調べることで、密度依存的死亡とハビタット効果が稚樹でも起きているかどうかを解析することが可能になる。3.フタバガキ科樹木からのDNA抽出:DNAデータベース構築のため、大面積調査区内のフタバガキ科樹木18種の成熟木から葉を採取し、DNAを抽出した。DNAは一部をサラワク森林研究所のDNAライブラリーに保管し、解析のために一部を日本に持ち帰った。1.樹木および稚樹群集の動態解析:マレーシアサラワク州ランビル国立公園の大面積調査区(52ha)、および、稚樹プロットのデータを用いて、樹木の死亡に対する、個体サイズ、ハビタット、同種密度依存的要因の効果、および、ハビタットと同種密度依存的要因の相互作用がどのサイズクラスに作用しているのかをロジスチック回帰で解析した。その結果、稚樹と直径5cmまでのサイズクラスではすべての効果が認められたが、直径5cm以上では、個体サイズとハゼタツト効果のみが認められた、この結果は、熱帯雨林樹木群集の種多様性とハビタツト依存的分布の形成維持メカニズムとして、ハビタットと同種密度依存的要因の相互作用が重要であることを示唆すると同時に、このメカニズムが稚樹段階から直径5cmまでの長期にわたって作用していることを示している。2.実生移植実験:上記のメカニズムに作用する具体的な要因を調べるために、ハビタットの異なる10種の実生を育て、これらの実生を2ハビタット(砂質土壌、粘土質土壌)、2同種密度(低密度、高密度)、2薬剤処理(殺虫剤・殺菌在有、無)の処理区に移植した。今後、各処理区の実生の死亡、成長、被食率、病気の状態を継続的に測定する。本実験によって、ハビタットと密度依存的な死亡に被食、および、病気が影響しているかどうかを検証できると期待される。3. DNAの採取と解析:調査区内のフタバガキ科全種からのDNAを抽出を完了し、サラワク植物研究センターおよび、日本に保管した。 | KAKENHI-PROJECT-20405011 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20405011 |
ハビタット分化と密度依存的死亡の相互作用が熱帯林の樹木多様性維持に果たす役割 | 一部の樹種について、葉緑体DNA、および核DNAの解析を行い、既存の配列データも用いて予備的な系統樹を作成した。今後・全樹種の解析を実施することで調査区内のフタバガキ科の詳細な系統樹を作成予定である。1.樹木群集の動態解析:マレーシアサラワク州ランビル国立公園の大面積調査区(52ha)の直径1cm以上の全樹木個体(約25万本)に関する第4回目の測定データ(2008年2009年実施)の入力を完了し、入力エラーの点検を進めた。これにより、これまで10年間のデータのみを用いていた、ハビタットと同種密度依存的死亡の効果を15年間のデータを使って解析することが可能となった。2.実生移植実験:ハビタットと同種密度が実生の被食、死亡、成長に与える影響を調べるために昨年度設定した野外実験を継続した。好適ハビタットの異なる10種の実生(計1,680本)をハビタット(砂質土壌、粘土質土壌)、同種密度(低密度、高密度)、薬剤処理(殺虫剤・殺菌在有、無)を変えて移植し、移植時、3ヶ月後、6ヶ月後に実生の生死、高さ、地際直径、葉数、葉の被食率を計測した。移植6ヶ月目までの死亡率を予備的に解析したところ、ほとんどの種で好適ハビタットより不適ハビタットで死亡率が高く、ハビタット効果が認められた。一方、同種密度依存的な死亡は10種中5種でのみ見られたが、一部の樹種では同種密度が低い方が死亡率が高かった。3.稚樹群集の動態解析:上記移植実験に用いた10種について、直径lcm以上の個体に同種密度依存的死亡が見られるかどうかを大面積調査区の19922002年のデータを用いて解析した。その結果、10種全てで同種密度依存的な死亡が認められた。これらの結果は、実験的に植えた実生と直径lcm以上の個体で、同種密度依存的な効果の影響が異なっていることを示唆しており、さらに詳しいデータと解析が必要である。4. DNAの採取と解析:調査区内の全フタバガキ科樹種の詳細な分子系統樹を作成する目的で、採取したDNAの葉緑体DNA、および核DNAの遺伝分析を進めた。1.稚樹群集の動態解析:マレーシアサラワク州ランビル国立公園の大面積調査区の直径1cm以上の全個体、及び、稚樹調査区内の直径1cm未満の個体の動態データを総合し、死亡率に対するハビタット効果と同種密度依存的効果の交互作用をロジスチック回帰分析で再解析した。その結果、群集レベルでは、実生から直径5cmまでのサイズで、好適ハビタットでは同種密度依存的効果が小さくなるという、類似した交互作用が働いていることが確認できた。これは、交互作用がハビタット分割と多種共存の両方に重要な役割を果たしていることを示唆する。2.実生移植実験:10種の実生について、移植14か月後の死亡率、成長量、新葉の被食率を測定した。一般化線形モデルとAICによるモデル選択で、死亡率と被食率に与える種、ハビタット、同種密度、殺虫・殺菌剤の主効果と交互作用を解析した。死亡率では、種と土壌の交互作用のみを含むモデルが選ばれ、ほとんどの種で好適ハビタットと同じ土壌に植えた場合ほど死亡率が低下した。被食率では、全4要因の交互作用を含むモデルが選ばれ、平均的には、粘土質土壌、高い同種密度、殺虫・殺菌剤なしの各処理区で被食率が高くなり、これらの要因が被食に影響していることが示された。また、砂質土壌を好適ハビタットとする種は、粘土質土壌で被食率が大きく増加し、相対的に被食耐性が低いことが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-20405011 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20405011 |
mTORC1を標的とするX連鎖性低リン血症性くる病に対する新たな治療戦略の構築 | 血液中リン濃度は、FGF23により制御されている。X連鎖性低リン血症では、FGF23上昇に伴い低リン血症を呈し、成長障害を伴う。我々は以前の報告から細胞外リン酸刺激によりAKTシグナルが増強することを見出している。また、低リン血症を呈するHypマウスにおいてAKTシグナルを解析したところ、HypマウスではAktシグナルが減弱していた。そこで、本年度はAKTシグナルに着目して解析を行い、AKTシグナルとFGF23/リン制御系の関連性を検討した。FGF23を主たる産生細胞である骨細胞に注目し、骨細胞においてAKTシグナルが増強しているマウスを作成した。方法は、Dmp1ーCreマウスを用いて、PTENを骨細胞でノックアウトした(Dmp1-PTEN KO)。このマウスでは、血清FGF23濃度が減少し、血中リン濃度が増加していた。免疫染色では、骨細胞におけるFGF23のタンパク発現が減少していた。In vitroで解析を行うために、UMR106細胞を用いて検討を行った。UMR106細胞においてPTENの発現をノックダウンしたところ、AKTのリン酸化の亢進とともに、FGF23の発言は減少していた。kの結果は、骨細胞におけるAKTシグナルがリン代謝において重要な役割を果たしていることを示唆した。今後は、AKT以下のシグナル、mTORC1やFoxoの関与を検討し、AKTシグナルとリン代謝の関連性を更に検討していく。HypマウスとDmp1ーPTENKOマウスのダブルノックアウトマウスを作成しているが、充分数のコロニー数がんまだ得られておらず、解析が予定より遅れている。HypマウスとDmp1ーPTENKOマウスのダブルノックアウトマウスを作成し、Hypマウスにおける成長障害、低リン血症なddの表現型がどのようにレスキューされるか検討を行う。低リン血症は、くる病の原因となる。X連鎖性低リン血症性くる病では、低リン血症とともにくる病病変をきたすが、その病態には不明な点が多い。以前の検討から、リンシグナルはPTENの発現を抑制することを報告しているため、X連鎖性低リン血症性くる病のモデルマウスであるHypマウスを用いて、PTENの発現制御に注目し、病態解明のための解析を行った。まず最初に、Hypマウスの成長軟骨帯におけるPTENの発現を検討したところ、野生型マウスでは増殖軟骨層から前肥大化軟骨にかけてPTENの発現を認めたが、Hypマウスでは増殖軟骨層から肥大化軟骨層にかけてPTENの発現を認めた。この結果から、Hypマウスでは肥大化軟骨細胞におけるPTENの発現が増加していることが判明した。次に、骨芽細胞および骨細胞におけるPTENの発現を検討した。野生型マウスに比べ、Hypマウスでは、骨細胞におけるPTENの発現が増加していた。そこで、HypマウスにおけるPTEN上昇の役割を検討するために、組織特異的PTEN欠損マウスを作出し、Hypと交配し、ダブル変異マウスを作出し、HypマウスにおけるPTENの役割の検討を行うこととした。まず、骨細胞における役割を検討するために、Hypマウスと骨細胞特異的PTEN欠損マウスの交配を開始している。また、骨細胞特異的PTEN欠損マウスの解析も併せて行った。骨細胞特異的PTEN欠損マウスでは、血中リン濃度が上昇し、FGF23濃度が低下していた。以上から、骨細胞においてPTENはFGF23の発現制御を担っていると考えられた。骨細胞特異的PTEN欠損マウスの解析もHypマウスとの交配が順調にすすんでいるため血液中リン濃度は、FGF23により制御されている。X連鎖性低リン血症では、FGF23上昇に伴い低リン血症を呈し、成長障害を伴う。我々は以前の報告から細胞外リン酸刺激によりAKTシグナルが増強することを見出している。また、低リン血症を呈するHypマウスにおいてAKTシグナルを解析したところ、HypマウスではAktシグナルが減弱していた。そこで、本年度はAKTシグナルに着目して解析を行い、AKTシグナルとFGF23/リン制御系の関連性を検討した。FGF23を主たる産生細胞である骨細胞に注目し、骨細胞においてAKTシグナルが増強しているマウスを作成した。方法は、Dmp1ーCreマウスを用いて、PTENを骨細胞でノックアウトした(Dmp1-PTEN KO)。このマウスでは、血清FGF23濃度が減少し、血中リン濃度が増加していた。免疫染色では、骨細胞におけるFGF23のタンパク発現が減少していた。In vitroで解析を行うために、UMR106細胞を用いて検討を行った。UMR106細胞においてPTENの発現をノックダウンしたところ、AKTのリン酸化の亢進とともに、FGF23の発言は減少していた。kの結果は、骨細胞におけるAKTシグナルがリン代謝において重要な役割を果たしていることを示唆した。今後は、AKT以下のシグナル、mTORC1やFoxoの関与を検討し、AKTシグナルとリン代謝の関連性を更に検討していく。HypマウスとDmp1ーPTENKOマウスのダブルノックアウトマウスを作成しているが、充分数のコロニー数がんまだ得られておらず、解析が予定より遅れている。Dmp1-PTEN-KOマウスの検討から、PTENの欠損によりFGF23の発現が減少することが示唆されている。そこで、この作用がmTORC1の活性化を介したものなのかin vitroで検討を行う。 | KAKENHI-PROJECT-17K10092 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K10092 |
mTORC1を標的とするX連鎖性低リン血症性くる病に対する新たな治療戦略の構築 | 内在性にFGF23を発現しているUMR106細胞を用いる。予備実験からUMR106細胞でPTENの発現をノックダウンするとFGF23の発現がRNAレベルで著減することを見出している。この現象におけるmTORC1シグナルの役割を解析するために、PTENノックダウン細胞におけるmTORC1の活性亢進をラパマイシンで阻害し、FGF23の発現の変化を確認する。逆に、PTENの強制発現によるmTORC1の活性抑制によるFGF23の発現変化を確認する。さらに、in vivoでの治療研究に向けてPTEN強制発現系におけるFGF23の発現変化が、分岐鎖アミン酸によるmTORC1活性化によりレスキューされるか確認を行う。HypマウスとDmp1ーPTENKOマウスのダブルノックアウトマウスを作成し、Hypマウスにおける成長障害、低リン血症なddの表現型がどのようにレスキューされるか検討を行う。分子生物学的解析の施行が予定より遅れたため、支出が減少したため。前年度に購入した試薬で代用できたため。その他が増加したのは、論文掲載費用を計上したため。 | KAKENHI-PROJECT-17K10092 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K10092 |
輝炎形成開始近傍領域におけるすす粒子生成機構 | 本研究は,メタン・空気予混合ふく射制御火炎(過濃火炎)を対象として,気体分子しか存在しない発熱反応帯とすす粒子が存在する輝炎の間に存在する非発光領域に焦点を絞り,すす粒子の生成過程を明らかにするものである.平成10年度はすす粒子の生成に関与していると考えられるイオンに注目し,静電探針(ダブルプローブ)法により火炎内でのイオン濃度・イオン飽和電流の測定を行った.平成11年度は,すす粒子の前駆物質と考えられている多環芳香族炭化水素に注目し,FIDを用いて濃度測定を行った.その結果,以下の実験結果が得られた.(1)希薄火炎では,最高火炎温度とほぼ等しい位置でイオン濃度は最大となる.(2)輝炎を含む過濃火炎では,最高火炎温度の下流側においてイオン濃度は再度増加する.(3)燃料の酸化領域において,ベンゼンは生成・増加し,最高火炎温度の下流側でほぼ一定となる.(4)フェニルアセチレン,ナフタレン等はベンゼンより遅れて生成・増加し,ベンゼンの濃度が一定となる領域で最大となり,急激に減少する.また,フェニルアセチレンとナフタレンの濃度分布は定性的に同じである.(5)フェニルアセチレンはスチレンよりも遅れて生成する.以上の結果,火炎内のイオンは多環芳香族炭化水素の成長に関与すること,さらに,アセチレン・酸素火炎と同様に本燃焼においても,ベンゼンからフェニルアセチレンを経てナフタレンの経路やベンゼンからスチレンを経てフェニルアセチレンへと成長する経路があるものと考えられる.また,今回の実験より流速により濃度分布の明白な違いはなかった.本研究は,メタン・空気予混合ふく射制御火炎(過濃火炎)を対象として,気体しか存在しない発熱反応帯と輝炎の間に存在する非発光領域に焦点を絞り,すす粒子の生成過程を明らかにするものである.本年度は,すす粒子生成と非常に関係が深いとの指摘もあるイオンに注目して研究を行った.具体的には,静電探針(ダブルプローブ)を製作し,火炎内でのイオン濃度・イオン飽和電流の測定を行った.実験で用いたダブルプローブ(複針法)は,(1)ノイズが少なく,(2)火炎から直接(正味の)電流をとらないので火炎に対する撹乱が少ない等の利点を有している.そこで,実験条件は,当量比0.4(希薄火炎),混合気流速3.8cm/s,当量比1.4(過濃火炎),混合気流速2.3cm/sとした.その結果,以下の実験結果が得られた.(1)希薄火炎では,最高火炎温度とほぼ等しい位置でイオン飽和電流及びイオン濃度は最大となる.(2)過濃火炎においては,最高火炎温度の下流側においてイオン飽和電流及びイオン濃度が急激に増加する.また,発熱反応帯で生成されるイオン飽和電流・濃度より24倍程大きい値である.これまでの研究結果と合わせて考えると,発熱反応帯で生成されるイオンは一般的にこの領域で生成されるイオンには酸素が関わり合っている.一方,過濃火炎において最高火炎温度の下流側で生成されるイオンは,当量比,混合気流速,火炎温度等の関数であるとされている.以上のことより,発熱反応帯近傍でのイオンはすす粒子生成に関与はしないと考えられ,過濃火炎に特有な最高火炎温度下流側でのイオンは,すす粒子の生成に影響があるものと考えられる.本研究は,メタン・空気予混合ふく射制御火炎(過濃火炎)を対象として,気体分子しか存在しない発熱反応帯とすす粒子が存在する輝炎の間に存在する非発光領域に焦点を絞り,すす粒子の生成過程を明らかにするものである.平成10年度はすす粒子の生成に関与していると考えられるイオンに注目し,静電探針(ダブルプローブ)法により火炎内でのイオン濃度・イオン飽和電流の測定を行った.平成11年度は,すす粒子の前駆物質と考えられている多環芳香族炭化水素に注目し,FIDを用いて濃度測定を行った.その結果,以下の実験結果が得られた.(1)希薄火炎では,最高火炎温度とほぼ等しい位置でイオン濃度は最大となる.(2)輝炎を含む過濃火炎では,最高火炎温度の下流側においてイオン濃度は再度増加する.(3)燃料の酸化領域において,ベンゼンは生成・増加し,最高火炎温度の下流側でほぼ一定となる.(4)フェニルアセチレン,ナフタレン等はベンゼンより遅れて生成・増加し,ベンゼンの濃度が一定となる領域で最大となり,急激に減少する.また,フェニルアセチレンとナフタレンの濃度分布は定性的に同じである.(5)フェニルアセチレンはスチレンよりも遅れて生成する.以上の結果,火炎内のイオンは多環芳香族炭化水素の成長に関与すること,さらに,アセチレン・酸素火炎と同様に本燃焼においても,ベンゼンからフェニルアセチレンを経てナフタレンの経路やベンゼンからスチレンを経てフェニルアセチレンへと成長する経路があるものと考えられる.また,今回の実験より流速により濃度分布の明白な違いはなかった. | KAKENHI-PROJECT-10750138 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10750138 |
ネマティック液晶におけるパタ-ン振動モ-ドの不安定化 | 負の誘電異方性をもつネマチック液晶に電圧を加えると,あるしきい値以上で空間的に規則正しい2次元ロ-ル状のパタ-ンが顕微鏡下で観測される。これはウイリアムズ・ドメインと呼ばれ一方向に配列した液晶構成分子が空間的に周期的な変化をした巨視的秩序構成造で非平衡系において現れる典型的な散逸構造である。平衡系の相転移現象である気相ー液相ー固相転移,強磁性,超伝導などでは系を特徴づける秩序パラメ-タの挙動がこれまで詳細に調べられ,巨視的変数である秩序パラメ-タの形成過程において変数の経路ゆらぎが異常に大きくなることが理論的にも実験的にも明らかにされてきた。しかしこれらは空間的には一様な系での秩序パラメ-タの挙動に関してであった。本研究は非平衡系であり,かつ空間構造を持つウイリアムズ・ドメインという秩序構造の形成過程における経路の不安定性,パタ-ンの空間的ゆらぎ等明らかにすることを目的として,ウアリアムスドメインが現れるしきい値以下の電圧からしきい値以上の値を突然印加することによりパタ-ン形成過程における像強度変動のエネルギ-スペクトル,ロ-ル構造を反映する波数スペクトル,空間的不均一性を表わすフラットネス等の挙動を詳細に調べた。その結果次第に現われてくるロ-ル構造の波数スペクトルはロ-レンツ型を示しその構造を維持しつつ成長していくことが分かった。これらの挙動を液晶セルのサイズを幾つか変えて調べた結果波数スペクトルは形成過程においてサイズに依存せず,ウイリアムズドメイン形成はバルク的相互作用が本質的であることが明らかになった。また局所的空間ゆらぎを反映するフラットネスが形成過程の初期から中期において異常に増大することを見いだした。これは巨視的パタ-ン構造を反映する主モ-ドが局所ゆらぎのエネルギ-を引き込んで成長していくことを示している。負の誘電異方性をもつネマチック液晶に電圧を加えると,あるしきい値以上で空間的に規則正しい2次元ロ-ル状のパタ-ンが顕微鏡下で観測される。これはウイリアムズ・ドメインと呼ばれ一方向に配列した液晶構成分子が空間的に周期的な変化をした巨視的秩序構成造で非平衡系において現れる典型的な散逸構造である。平衡系の相転移現象である気相ー液相ー固相転移,強磁性,超伝導などでは系を特徴づける秩序パラメ-タの挙動がこれまで詳細に調べられ,巨視的変数である秩序パラメ-タの形成過程において変数の経路ゆらぎが異常に大きくなることが理論的にも実験的にも明らかにされてきた。しかしこれらは空間的には一様な系での秩序パラメ-タの挙動に関してであった。本研究は非平衡系であり,かつ空間構造を持つウイリアムズ・ドメインという秩序構造の形成過程における経路の不安定性,パタ-ンの空間的ゆらぎ等明らかにすることを目的として,ウアリアムスドメインが現れるしきい値以下の電圧からしきい値以上の値を突然印加することによりパタ-ン形成過程における像強度変動のエネルギ-スペクトル,ロ-ル構造を反映する波数スペクトル,空間的不均一性を表わすフラットネス等の挙動を詳細に調べた。その結果次第に現われてくるロ-ル構造の波数スペクトルはロ-レンツ型を示しその構造を維持しつつ成長していくことが分かった。これらの挙動を液晶セルのサイズを幾つか変えて調べた結果波数スペクトルは形成過程においてサイズに依存せず,ウイリアムズドメイン形成はバルク的相互作用が本質的であることが明らかになった。また局所的空間ゆらぎを反映するフラットネスが形成過程の初期から中期において異常に増大することを見いだした。これは巨視的パタ-ン構造を反映する主モ-ドが局所ゆらぎのエネルギ-を引き込んで成長していくことを示している。負の誘電異方性をもつネマティック液晶に電圧を加えると、あるしきい値以上の空間的に規則正しい二次元ロ-ル状パタ-ンが顕微鏡下で観測される。これはウイリアムズドメインと呼ばれ、一方向に配列した液晶構成分子の空間的配向変化を反映した巨視的秩序構造で非平衡系において現れる典型的な散逸構造である。我々は最近この静的パタ-ンに印加する電圧を大きくしていくとある値以上でウイリアムズドメインのストライプパタ-ンが振動する、空間的にも時間的にもコヒ-レンスの高い秩序構造を見出した。この構造には二種類の振動様式があり、それぞれ異なった電圧でクリティカルに表れる非常に興味深い現象である。平成1年度に購入した画像処理装置(FRM1-512:フォトロン)により振動しているパタ-ンのいくつかの点での像強度変動の時系列を長時間調べ、パワ-スペクトルを求めた。外部パラメ-タ(液晶への印加電圧)を変えて詳細にパタ-ンの挙動、すなわち、カオス化における波数構造の遷移過程を調べ興味ある成果を得た。これらの結果を欧文誌に投稿準備中である。負の誘電異方性をもつネマティック液晶に電圧を加えると、あるしきい値以上で空間的に規則正しい二次元ロ-ル状パタ-ンが顕微鏡下で観測される。これはウイリアムズドメインと呼ばれ、一方向に配列した液晶構成分子の空間的配向変化を反映した巨視的秩序構造で非平衡系において現れる典型的な散逸構造である。我々は最近この静的パタ-ンに印加する電圧を大きくしていくとある値以上でウイリアムズドメインのストライプパタ-ンが振動する、空間的にも時間的にもコヒ-レンスの高い秩序構造を見出した。 | KAKENHI-PROJECT-01540293 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01540293 |
ネマティック液晶におけるパタ-ン振動モ-ドの不安定化 | この構造には二種類の振動様式があり、それぞれ異なった電圧でクリティカルに現れる非常に興味深い現象である。本研究はこの新しい秩序構造の定常状態におけるパタ-ンの振動振幅の挙動、空間相関、ゆらぎ等を詳細に調べ、このリミットサイクルの動的構造を明らかにすること及びその乱流化過程を調べることを目的として、科研費補助金により購入した画像処理装置(FRM1ー512:フォトロン)、コンピュ-タ(PC9801RA:NEC)により、振動しているパタ-ンのいくつかの点での像強度変動の時系列測定、解析を試みた。しかし液晶セル(厚さ38、幅80ー300、長さ300ミクロン)の作成段階でいくつかの問題が生じその解決に多くの時間を要した。今年度の半ば過ぎからようやくデ-タがとれるようになり、現在パタ-ン振動の空間構造の液晶セル幅依存性に焦点を当てて研究を行っている。これまでに得られた成果といて、外部パラメ-タ(液晶への印加電圧)を変えてのパタ-ンの挙動が液晶セル幅に大きく依存していることであり、これ等を像強度変動のパワ-スペクトル、空間相関、フラットネス等による定量的解析を進めている状況である。 | KAKENHI-PROJECT-01540293 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01540293 |
患者状態適応型パスを用いたCOPDの診療・連携パスの質評価に関する研究 | COPD診療における標準的な診療プロセスを電子化パス(PCAPS)に展開し,パス利用により専門医不足をカバーし診療の均てん化を図り,個別の診療状況を評価解析することで診療の質評価を可能とし,最終的にCOPD診療全体の診療の質を向上することを目的とした.COPD増悪時の診療の理論的流れはPCAPS内に表現され,その解析から一定のベンチマーキングが可能であることが確認された.特定の診療アルゴリズムが他の領域にも応用可能との見通しができた(吸入指導は他の抗がん剤などにおける指導管理にも流用できる,訪問看護による評価介入はそのまま患者教育に繋がる等).より実臨床に導入しやすい形態への転換が必要であった本研究の目的はCOPD診療における標準的診療プロセスを電子化パス(患者状態適応型パスPatient Condition Adaptive Pathway System; PCAPS)内に展開し,パスを使用することで専門医不足をカバーし診療の均てん化を図り,さらに個々の診療状況をベンチマーキングすることで評価を可能として,最終的に全体の診療の質を向上することである.25年度はパスの作成が中心となった.1COPD増悪診療パスの構築:これまで調査してきた増悪入院時の治療内容調査の結果を基に,まず増悪入院パスを作成した.重症度の分類を薬物のみ,薬物+酸素療法,薬物+補助換気療法の3段階に分けてルートを作り,それぞれの移行条件を明文化した.補助換気療法以降は集中治療室での治療もあるため,今後さらに精緻化する予定.大筋のパスは完成したため,現時点でのルートの整合性を協力病院における過去のCOPD増悪入院データを基に検証する予定である.2在宅酸素療法の導入・管理パスの作成:COPDをはじめとする慢性呼吸器疾患に対しての在宅酸素療法(HOT)の導入,およびその管理のためのパス作成を行った.パスの内容には評価項目とこれに対応する介入項目とを準備し,これらの項目をどの医療者が担当するのか,すなわちHOTにかかわる医師,看護師,理学療法士,医療工学士,酸素業者についてそれぞれの役割を明文化する作業を行った.一方で職種ごとの評価・介入内容の実態を調査しこれを再度パスに反映する予定.3吸入指導のパス作成:協力薬剤師と共に,吸入治療における指導パスを作成.薬剤師,看護師による指導内容の違いが判明した.本研究の目的はCOPD診療における標準的診療プロセスを電子化パス(患者状態適応型パスPatient Condition Adaptive Pathway System; PCAPS)上に展開し,パスの利用で非専門医でも診療が過不足なく実施できるという診療の均てん化を図り,さらに個々の診療状況をベンチマーキングすることで診療内容を評価可能にし,最終的には診療全体の質を向上させることである.26年度は前年に続いて各種パスの作成と検証を行った.1COPD増悪診療パスの構築:増悪入院時のパスを昨年度作成し,これを基に実際のデータを当てはめて検証を行った.当初,重症=酸素+補助換気療法+薬物療法が必要,中等症=酸素吸入+薬物療法まで必要,軽症=薬物治療のみと定義してパスを構築したが,実際のデータによる検証の結果,薬物療法の終了後も酸素・補助換気療法だけが続くケースが多いことから,新たに呼吸管理のみのユニットを設けた.この改訂版により再検証を行い,実際のデータを100%追跡できることが確認された2在宅酸素療法の導入・維持管理パスの作成:昨年度までに完成しているパスをさらに,医師・看護師・理学療法士・酸素業者別に内容を整備し,各職種毎に異なる評価項目と介入項目をそれぞれの検証を行った.3吸入指導のパス作成:協力薬剤師と供に,吸入薬剤の指導のためのパスを作成.各薬剤に共通する手技,呼吸法などを明文化した.さらに各デバイス毎に評価・介入項目をまとめタブレット端末上に目的薬剤を選択すると指導項目が提示されるシステムを検討中4訪問看護師によるCOPD患者の管理パス:増悪評価,LINQによる患者教育状態の把握と介入項目を整備した.この患者教育に関する評価と介入内容は訪問看護に限らず,COPDの一般診療に応用できる内容であるため,今後,教育用のパスとして別個整備する予定である.PCAPS(Patient Condition Adaptive Pathway System;患者状態適応型パス)により作成したCOPD診療・連携パスを基に,非専門医でも過不足なく診療できるという診療の均てん化を図り,さらに個々の診療状況をベンチマーキングすることにより診療,連携の質を評価するシステムを構築することが本研究の目的である.27年度は前年に続いて,各種パスの作成と検証調査を行った.1在宅酸素療法の導入・維持管理パス:エクセル・ベースにて作成し,認定看護師・医師による検証調査を実施.酸素流量の評価について,夜間評価が7割程度しか実施されていないことが判明した.2吸入指導のパス化:吸入薬剤ごとに手順を整理し,介入ポイントを明文化した.具体的には吸入治療による副作用の有無,臨床効果の有無,重篤な副作用の有無について患者状態を把握するアルゴリズムを作成し,それぞれのイベントと対応する介入内容を整理した.これをさらにエクセル上に展開し,特定薬剤を選択することで必要な介入項目が一覧できるようにソフトウエアを準備した.これを用いての実際の薬剤師による試行を予定.最終的にはタブレット端末を用いて実装することを目指す.本アルゴリズムの内容は抗癌剤治療にも応用できる可能性があった.3訪問看護によるCOPD | KAKENHI-PROJECT-25460857 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25460857 |
患者状態適応型パスを用いたCOPDの診療・連携パスの質評価に関する研究 | 患者の管理パス:増悪後に在宅看護の介入が必要となった患者に対する診療パスであり,主に増悪再燃の有無の把握と対処,日常の患者教育から構成される.それぞれ患者状態に応じた介入方法を準備し,訪問看護師の経験年数によらない均一な評価・介入方法を構築した.4COPD増悪入院パスの検証:対象医療施設は1か所のみとなったが,過去の入院記録を基にパスの精度評価を行い,治療過程のほぼ1OO%を追跡できることが確認された.COPD診療における標準的な診療プロセスを電子化パス(PCAPS)に展開し,パス利用により専門医不足をカバーし診療の均てん化を図り,個別の診療状況を評価解析することで診療の質評価を可能とし,最終的にCOPD診療全体の診療の質を向上することを目的とした.COPD増悪時の診療の理論的流れはPCAPS内に表現され,その解析から一定のベンチマーキングが可能であることが確認された.特定の診療アルゴリズムが他の領域にも応用可能との見通しができた(吸入指導は他の抗がん剤などにおける指導管理にも流用できる,訪問看護による評価介入はそのまま患者教育に繋がる等).より実臨床に導入しやすい形態への転換が必要であった診療パスの作成は概ね予定通り遂行している.診療・質評価のレビューについては時間的問題で取りかかれていない.呼吸器疾患COPD診療パスの作成を中心に進める.外来診療のパス作成についても取りかかり,COPDの全部の診療過程を網羅できるように構築する.これまでの成果についての論文作成も進める.診療パスの作成は概ね予定通り進行している.COPDの地域連携パスおよび,他国での診療・質評価方法のレビュー,専門医のアンケート調査については予定より遅れている.診療パス作成,個別パス作成に難航しているため,連携パスやレビューに取り掛かれなかった.円高による購入資料の費用増加が発生したため,当初予定よりも実際の支出が増えた.次年度にも購入を予定しているため,当該年度を少し残すことで対処する.協力病院における連携パスの作成を優先する.診療・質評価のレビューはパスの作成後でも影響は少ないと判断している.ただし,検証先の状態によっては連携パスが後回しになる可能性があり.この場合は診療・質評価のレビューあるいは専門医に対するアンケート調査に切り替える予定.次年度でも購入予定あり,使い切る予定である | KAKENHI-PROJECT-25460857 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25460857 |
英米モダニズムにおけるJapanismの心理学的考察 | 村形は、これまでのJapanismに関わる東西芸術・文化交流史の基礎的研究を、19世紀後半の英文一次資料翻刻を中心に発展させるとともに(11.「研究発表」刊行物リスト参照)、11月中旬から2週間の海外出張を利用して大英博物館、ヴィクトリア・アルバ-ト美術館(ロンドン)、ギメ美術館(パリ)等の日本美術コレクション、関連展示を調査するかたわら、英米モダニズムとJapanismに関わる文献、スライド資料、W.ルイスの著作・関連図録等を収集した。カンスタブルは購入したスキャナー、ソフトウエア等を活用してW.ルイス作品のコンピュータ・データベース作成準備を開始、将来そのCD化を目指している。また最近の進化論心理学の研究成果を意欲的に吸収しながら、W.ルイス他モダニストたちにおける厭人思想の芸術的表現と彼等のJapanismへの傾倒との関連性を追求した。その成果を今夏カリフォルニア大学サンタ・バ-バラ校で開催予定の人間行動学・進化学会世界大会で口頭発表の上、同学会機関誌に論文として寄稿する予定である。村形は、これまでのJapanismに関わる東西芸術・文化交流史の基礎的研究を、19世紀後半の英文一次資料翻刻を中心に発展させるとともに(11.「研究発表」刊行物リスト参照)、11月中旬から2週間の海外出張を利用して大英博物館、ヴィクトリア・アルバ-ト美術館(ロンドン)、ギメ美術館(パリ)等の日本美術コレクション、関連展示を調査するかたわら、英米モダニズムとJapanismに関わる文献、スライド資料、W.ルイスの著作・関連図録等を収集した。カンスタブルは購入したスキャナー、ソフトウエア等を活用してW.ルイス作品のコンピュータ・データベース作成準備を開始、将来そのCD化を目指している。また最近の進化論心理学の研究成果を意欲的に吸収しながら、W.ルイス他モダニストたちにおける厭人思想の芸術的表現と彼等のJapanismへの傾倒との関連性を追求した。その成果を今夏カリフォルニア大学サンタ・バ-バラ校で開催予定の人間行動学・進化学会世界大会で口頭発表の上、同学会機関誌に論文として寄稿する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-06801057 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06801057 |
19世紀後半における東アジア3港体制の形成に関する比較史的研究 | 3年間にわたる主要史料調査先は以下の通りである。(日本国内)横浜開港資料館、長崎県立図書館、長崎県立博物館、長崎大学、函館市立図書館、函館市史編纂室、北海道立文書館、北海道立図書館、北海道大学、神戸市立博物館,逓信総合博物館、外務省外交史料館(国外)上海市立档案館、上海市立図書館、ロンドン大学アジア・アフリカ研究学院図書館、英国国立公文書館,大英図書館、グラスゴー大学付属文書館、英国国立海洋博物館、大英図書館新聞ライブラリー史料調査の主たる成果は、以下の通りである。上海市立档案館所蔵の上海共同租界の運営主体である工部局董事会の議事録の議事リストの作成上海市工部局関係資料に含まれる日本関係史料のリストの作成英国国立公文書館に所蔵されるラッセル・ペーパーの日本関係史料のリストの作成19世紀中葉におけるロンドン・タイムス掲載の日本関係記事のリストの作成これらのリストを基にして、史料の閲覧および収集を、部分的に着手した。香港関係史料を含めて調査した結果、3港の国際港湾としての性格の共通性(東アジアの国際的地位)と地勢的条件の差から来る港湾都市としての差異が明確となるとともに、各地の居留地(租界)の経営状況と列強の関心の所在、および時代の変化によるそれらの変質の状況がかなり明らかとなった。3年間にわたる主要史料調査先は以下の通りである。(日本国内)横浜開港資料館、長崎県立図書館、長崎県立博物館、長崎大学、函館市立図書館、函館市史編纂室、北海道立文書館、北海道立図書館、北海道大学、神戸市立博物館,逓信総合博物館、外務省外交史料館(国外)上海市立档案館、上海市立図書館、ロンドン大学アジア・アフリカ研究学院図書館、英国国立公文書館,大英図書館、グラスゴー大学付属文書館、英国国立海洋博物館、大英図書館新聞ライブラリー史料調査の主たる成果は、以下の通りである。上海市立档案館所蔵の上海共同租界の運営主体である工部局董事会の議事録の議事リストの作成上海市工部局関係資料に含まれる日本関係史料のリストの作成英国国立公文書館に所蔵されるラッセル・ペーパーの日本関係史料のリストの作成19世紀中葉におけるロンドン・タイムス掲載の日本関係記事のリストの作成これらのリストを基にして、史料の閲覧および収集を、部分的に着手した。香港関係史料を含めて調査した結果、3港の国際港湾としての性格の共通性(東アジアの国際的地位)と地勢的条件の差から来る港湾都市としての差異が明確となるとともに、各地の居留地(租界)の経営状況と列強の関心の所在、および時代の変化によるそれらの変質の状況がかなり明らかとなった。1、東アジア開港場間の社会的・経済的ネットワークの実態を解明するため、本年度は長崎を調査対象に採り上げた。近世の海禁体制から近代の自由貿易体制への転換期における華僑ネットワークの変化を明らかにするため、長崎県立図書館所蔵の唐館貿易の衰退に関する一次資料を調査し、幕末から維新期にかけて、華僑ネットワークが、どのように変化したのか、について調査した。その結果、幕末から維新期にかけて、従来の唐館貿易のシステムが列強の圧力によって崩壊する過程が外交史的に解明された。また、長崎大学に所蔵される幕末明治古写真約5000枚を調査し、欧米系外国人の対日関心のあり方にかんする図像的観点からの分析を行うための基礎データを収集した。その結果、(1)撮影地は遊歩地域を超えて全国に及んでいるが、圧倒的に開港場に集中しており、東京、大阪、京都も少ない、(2)長期にわたって同一地点から撮影されるため、開港場の都市形成のプロセスを明らかにすることができる、などの興味深い特徴を明らかにすることができた。2、開港場の租界経営の実態を解明するため、上海を対象に、共同租界の実態および日本の関与に関する資料の調査研究を行った。上海市档案館において、工部局資料を調査し、主要史料のピックアップリストを作成した。また、同館で刊行した工部局董事会議事録を入手し、議事リストの作成を開始した。また、上海市図書館所蔵の日本語文献リストを入手し、本年夏に公開される日本語文献の調査のための基礎作業を行った。本年度は、日本国内における開港場の調査を中心に実施した。長崎では、引き続き、華僑資本の動向を把握するため、県立長崎図書館の郷土資料を調査し、幕末の唐館貿易の廃止と、それにかわる自由貿易体制の形成過程に関する資料を調査した。また、函館では、明治10年代に本格化する日本の直輸出政策と対中貿易の中心となった広業商会の資料を中心に調査した。その結果、従来東アジア域内貿易においては、中国資本の力が強力で日本は食い込めなかったとされているのに対して、むしろ1880年代には、日・中・韓の3国間において、条約が締結され、欧米資本を介在しない直接貿易が可能となったことが、アジア間貿易の拡大を生み出したのであり、その結果、欧米資本がそれまで果たしてきたアジア域内貿易の中継的性格が衰退したことが明らかになってきた。いわば、東アジア域内における条約体制の整備こそが、1880年代の在アジア欧米資本の衰退の原因であることを、明らかにしうる資料を発掘した。これは、従来、アジアからの衝撃として、開港研究における華僑資本の強靭性が強調されてきたのに対して、アジア資本間の強弱ではなく、欧米中心の不平等条約体制が、1880年代におけるアジア間条約体制の整備によって、動揺を開始したことの重要性を示すものであり、対欧米、対アジアの2項対立的国際関係理解にかわる、グローバルな国際関係理解の可能性を示唆するものである。現在、その資料を分析中である。 | KAKENHI-PROJECT-14510384 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14510384 |
19世紀後半における東アジア3港体制の形成に関する比較史的研究 | また、時期はやや下るが、上海における居留地経営の象徴とされる公園への中国人の進入禁止規定の廃止過程についても、昨年度上海市档案館で収集した資料の分析により、明らかになった。本年度は、本研究課題の最終年度であり、総括の意味を込めて以下の作業を行なった。史料・情報の収集整理(1)上海の共同租界の工部局董事会議事録の件名目録の作成作業の継続(2)英国ナショナル・アーカイブスにおける香港・上海・横浜関係外交史料の検索と収集(3)グラスゴーにおける対日経済・社会関係資料の検索および収集史料・情報の分析(1)上海の共同租界の工部局董事会議事録の分析これにより、共同租界開設当初における董事会の活動の実態、および英国の主導性がかなり明らかとなった。(2)長崎・函館の外国商館の活動の実態の分析昨年度に収集・調査した実績に基づき分析した結果、従来は史料不足により断片的にしか判明しなかった外国商館、特に中国商館と欧米商館との競合関係がかなり明らかとなり、1880年代における東アジア通商圏の実態と三港の位置づけがより明確となった。(3)本年度は新たに、社会史的観点から3港に関する旅行記の収集および分析を行うことによって、交通・通信上の3港の比較を試みた。その成果の一部として、横浜の世界交通網上の位置について考察した論文を、『湘南の誕生』に掲載した。 | KAKENHI-PROJECT-14510384 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14510384 |
スポット伝達用2ビームステアリング式パラメトリックスピーカの開発 | まず、昨年度予定したように、本課題の2ビーム方式で必要となる2台目の64chパラメトリックスピーカとその駆動アンプを開発し、2台目用のPCと多チャネルオーディオ出力装置を用意してその駆動システムをインプリメントした。以前に開発した1台目は、超音波素子配置のランダム化に伴う疎な素子配置に起因すると思われる能率低下が見られたことから、これについて改善するため、素子分布範囲をより狭めたランダム素子配置スピーカを設計、開発した。次に、ステレオカメラ画像上のポインタ位置に2台のステアリング機能付きパラメトリックスピーカの焦点を自動的に移動させる全体制御システム構築については、昨年開発したものの、3次元位置推定精度に問題のあったステレオ画像からの3次元位置計算プログラムにおけるステレオマッチングの問題を解決し、位置推定精度を実用レベルまで改善した。しかしながら、3台のPCを連携させるための並列処理については、オーディオ出力デバイスを駆動するPC(Mac)と他のOSとのMPI接続が解決せず、開発を継続中である。なお、昨年度、周波数領域処理に基づいた省演算量のステアリング処理付きスピーカ駆動信号生成システムについて投稿し、掲載が決まっていた論文がH30年6月に掲載となった(「周波数領域処理を用いたパラメトリックスピーカ駆動システム」電子情報通信学会論文誌)。また、本課題の直接の目的とは異なるが、パラメトリックスピーカによる空間センシング処理による人の位置検出について検討した結果、探査空間の水平断面上において物体を可視化した場合に高い性能で人の像が可視化できることを確認した。本年度まででステレオカメラによる照射点指示インターフェースを含む2スピーカシステムの全体処理が動作する予定であったが、2台のスピーカ開発とそのPC駆動処理については完了したものの、駆動PCである2台のMacと他のOSのPCとの接続処理に問題があり、全体としての動作がまだ確認できていない。このため、予定に対しては遅れ気味である。昨年度に予定したとおり、2台目のパラメトリックスピーカとその駆動システム作成、および、照射位置指示を含む全体システムの作成を並行して推進した結果、指示システムにおける複数PCの並列接続処理だけが未解決で残ったので、本年度の早い時期にこれを解決し、システム全体の動作を確認する。また、2ビームの交差による自己復調については、指示システムがなくても検討可能であるので、これについては並行して検討する。カメラ画像上の指示位置に2台のステアリング機能付きパラメトリックスピーカの焦点を移動させるシステム構築のため、ステレオカメラの画像に基づいた3次元位置計算プログラム、及び、3台のPCを連携させるための処理について開発を行った。複数PCの連携処理についてはMPIを用いた並列システムを開発し動作することを確認したが、画像上の指示位置計算については、チェッカーボードを用いた場合には動作しても一般の室内風景についてはステレオマッチングの精度によると思われる問題があり、開発を継続中である。一方、当初は既存の1台のパラメトリックスピーカに加えてもう1台全く同じ設計の64chスピーカを開発する予定であったが、疎なランダム素子配置に起因すると思われる高周波数域のパワー低下が見られることがわかったため、高効率を狙ってより密なランダム素子配置について検討してから2台目を作成することとした。追加システムに必要な多チャネルD/A装置とホストPCは既に購入済みである。また、周波数領域処理に基づいた省演算量のステアリング処理付きスピーカ駆動信号生成システムについて論文投稿し、論文誌への掲載が決まった(「周波数領域処理を用いたパラメトリックスピーカ駆動システム」電子情報通信学会論文誌H30年6月号)。さらに、H29年10月の"The 38th Symposium on UltraSonic Electronics (USE2017)"、および、H29年5月の電子情報通信学会超音波研究会においてランダム素子配置パラメトリックスピーカについて研究発表し、また、H30年3月の日本音響学会春季研究発表会においてパラメトリックスピーカによる空間センシングについて研究発表した。当初、1年目のH29年度は2台目のスピーカシステムを作成予定だったが、超音波素子配置の再検討が必要であることがわかったためH30年度に開発することとした。必要な機器の購入は完了している。その代わり、H30年度以降に予定していたカメラ画像に基づく照射位置指示システムに関する基礎検討をH29年度に前倒ししたため、進捗という意味では相殺されておおむね順調と考えられる。まず、昨年度予定したように、本課題の2ビーム方式で必要となる2台目の64chパラメトリックスピーカとその駆動アンプを開発し、2台目用のPCと多チャネルオーディオ出力装置を用意してその駆動システムをインプリメントした。以前に開発した1台目は、超音波素子配置のランダム化に伴う疎な素子配置に起因すると思われる能率低下が見られたことから、これについて改善するため、素子分布範囲をより狭めたランダム素子配置スピーカを設計、開発した。次に、ステレオカメラ画像上のポインタ位置に2台のステアリング機能付きパラメトリックスピーカの焦点を自動的に移動させる全体制御システム構築については、昨年開発したものの、3次元位置推定精度に問題のあったステレオ画像からの3次元位置計算プログラムにおけるステレオマッチングの問題を解決し、位置推定精度を実用レベルまで改善した。しかしながら、3台のPCを連携させるための並列処理については、オーディオ出力デバイスを駆動するPC(Mac)と他のOSとのMPI接続が解決せず、開発を継続中である。なお、昨年度、周波数領域処理に基づいた省演算量のステアリング処理付きスピーカ駆動信号生成システムについて投稿し、掲載が決まっていた論文がH30年6月に掲載となった(「周波数領域処理を用いたパラメトリックスピーカ駆動システム」電子情報通信学会論文誌)。 | KAKENHI-PROJECT-17K00222 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K00222 |
スポット伝達用2ビームステアリング式パラメトリックスピーカの開発 | また、本課題の直接の目的とは異なるが、パラメトリックスピーカによる空間センシング処理による人の位置検出について検討した結果、探査空間の水平断面上において物体を可視化した場合に高い性能で人の像が可視化できることを確認した。本年度まででステレオカメラによる照射点指示インターフェースを含む2スピーカシステムの全体処理が動作する予定であったが、2台のスピーカ開発とそのPC駆動処理については完了したものの、駆動PCである2台のMacと他のOSのPCとの接続処理に問題があり、全体としての動作がまだ確認できていない。このため、予定に対しては遅れ気味である。当初は、まず、2台目のランダム配置パラメトリックスピーカとその駆動システムを作成し、その後に照射位置指示システムの作成を考えていたが、H29年度の検討によってどちらも当初見えなかった問題点が出てきたため、両者を並行して推進した方がよいと思われる。そこで、H30年度は2台目のランダム配置パラメトリックスピーカとその駆動システムを作成するが、並行して照射位置指示システムのための画像処理についても検討する。照射位置指示システムの開発では、ステレオカメラ画像からの3次元位置推定の際、既存の方法だと2つの画像中の同じ場所の画素を特定するステレオマッチングの精度に問題が出た。このシステムの場合は全画素ではなく、照射位置のみのマッチングが必要なだけであるので、まずは手動で両画像中の正解マッチング位置を与えるシステムとし、その後自動で照射位置周囲の画像を用いてステレオマッチングを行うように改良してゆくこととする。また、2台目のスピーカの超音波素子位置の計算については、これまでに用いたランダムに位置を生成して選択するだけでは、素子配置範囲の半径が小さくなるにつれて素子の重なる機会が増加して棄却される配置候補が増え、計算時間が非常に長くかかるようになったため、コスト関数に素子の重なりを考慮したペナルティー関数を用いるなどの修正を施した最適化手法を検討する予定である。昨年度に予定したとおり、2台目のパラメトリックスピーカとその駆動システム作成、および、照射位置指示を含む全体システムの作成を並行して推進した結果、指示システムにおける複数PCの並列接続処理だけが未解決で残ったので、本年度の早い時期にこれを解決し、システム全体の動作を確認する。また、2ビームの交差による自己復調については、指示システムがなくても検討可能であるので、これについては並行して検討する。 | KAKENHI-PROJECT-17K00222 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K00222 |
養育者の絵本選択と子どもとのやりとりに関する実証的研究 | 養育者と子どもの絵本を通したやりとりが子どもの発達に有用であることは広く認知されているが、そのやりとり以前にある、養育者の絵本選択行動の実態や意味については十分明らかでない。そこで本研究は、養育者の絵本選択行動の実態とともに、それが子どもとの絵本を介したやりとりの質にどう関連するのかを明らかにすることを目的とし、乳幼児をもつ養育者を対象とした質問紙調査や面接調査、観察調査を実施する。養育者と子どもの絵本を通したやりとりが子どもの発達に有用であることは広く認知されているが、そのやりとり以前にある、養育者の絵本選択行動の実態や意味については十分明らかでない。そこで本研究は、養育者の絵本選択行動の実態とともに、それが子どもとの絵本を介したやりとりの質にどう関連するのかを明らかにすることを目的とし、乳幼児をもつ養育者を対象とした質問紙調査や面接調査、観察調査を実施する。 | KAKENHI-PROJECT-19K14180 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K14180 |
超高エネルギー重イオン衝突反応におけるクォークグルーオンプラズマのダイナミクス | 高エネルギー重イオン衝突反応で生成されたクォークグルーオンプラズマを統合的ダイナミカルモデルで記述した。このモデルは重イオン衝突反応の3つのステージに対応した3つのモデルを統合し、事象毎のシミュレーションを可能にした。また、終状態の粒子分布の解析も実験グループと同様に行えるようになった。更にマッハコーンのようなQGPの新奇なダイナミクスに注目して解析を行い、最近観測されたジェットの構造を理解する上で重要であることが分かった。高エネルギー重イオン衝突反応で生成されたクォークグルーオンプラズマを統合的ダイナミカルモデルで記述した。このモデルは重イオン衝突反応の3つのステージに対応した3つのモデルを統合し、事象毎のシミュレーションを可能にした。また、終状態の粒子分布の解析も実験グループと同様に行えるようになった。更にマッハコーンのようなQGPの新奇なダイナミクスに注目して解析を行い、最近観測されたジェットの構造を理解する上で重要であることが分かった。本研究の目的は、重イオン衝突反応としては最高衝突エネルギーであるLHCにおける反応のダイナミクスを包括的に記述することである。LHCは昨年度実験が始まり、すでにいくつかの興味深い実験結果が得られている。一方、これまでのエネルギーフロンティアであったRHICにおいて生成された高エネルギー密度の物質クォークグルーオンプラズマ(QGP)は完全流体的に振る舞うことが示されていた。そこで本研究のベースラインとしてまずはこのRHICで得られた描像がLHCにおいて成立するかどうかを調べた。初期条件にカラーグラス凝縮に基づく描像、及び、QGPに完全流体を仮定した場合、流体力学的振る舞いの指標となる楕円型フローはLHC衝突エネルギーの場合、RHICのそれと比べて、実験結果を大きく上回った。このことは単純にはLHCにおけるQGPの粘性の影響が大きいことを意味する。一方で、LHCにおいては大きなエネルギーを持つ多数のジェットが生成されることから、この寄与が楕円型フローを弱める可能性もある。これは当初の目的であるQGP流体とジェットの相互作用を取り入れた枠組みで検証する必要性を示唆している。本研究の目的は、重イオン衝突反応としては最高衝突エネルギーであるLHCにおける反応の新奇なダイナミクスを包括的に記述することである。LHCは昨年度実験が始まり、すでにいくつかの興味深い実験結果が得られている。特に、1.初期状態の揺らぎの影響による方位角分布の高次の異方性と、2.ジェットによって励起されたクォークグルーオンプラズマ流体の時空発展は多くの研究者の注目を集めている。1.本年は、初期条件に揺らぎの影響を取り入れ、空間3次元の完全流体を仮定したモデルで重イオン衝突の時空発展をイベント毎に記述した。従来と違い、イベント毎にダイナミクスを記述する際、二つの問題点があった。一つは如何に実験結果を得るための解析と同様の手法を採用するか、もう一つは如何に多くのイベントを生成すべく計算の高速化を図るかである。これらの問題を解決し、流体モデルのようなイベント平均された量を記述する有効モデルでありながら、実験と直接比較し得る結果を得た。2.流体運動方程式にジェットよるエネルギー運動量流入項を考慮し、わきだし項の存在する相対論的流体力学の定式化を行った。この枠組みを用いて、一様媒質中をジェットが通過する場合、及び、膨張する媒質中を一対のジェットが通過する場合の解析を行い、LHC-CMSグループの得たジェット軸から大角度をなす低運動量粒子の分布を得ることができた。本研究の目的は、RHICやLHCにおける重イオン衝突反応の新奇なダイナミクスを包括的に記述することである。近年は、1.初期状態の揺らぎの影響による方位角分布の高次の異方性パラメータと、2.ジェットによって励起されたクォークグルーオンプラズマ流体の時空発展は多くの研究者の注目が集まっている。1.本年は、初期条件に揺らぎの影響を取り入れ、空間3次元の完全流体を仮定したモデルで重イオン衝突の時空発展をイベント毎に記述し、実験結果との系統的比較を行い、特に、最終的な物理量である高次の異方性パラメータを導出する際の手法を実験解析と同様に行う重要性を指摘した。更に、この手法をRHICにおけるCu+Au衝突のような非対称反応に適用し、事象毎の膨張の振る舞い、特に、中心ラピディティ付近におけるdirected flowの記述を行った。2.昨年までは、デカルト座標を用いて、相対論的流体方程式にジェットよるエネルギー運動量流入項を考慮し、一様媒質中をジェットが通過する場合、及び、膨張する媒質中を一対のジェットが通過する場合の解析を行った。本年は、実際の重イオン衝突反応で生成されるクォークグルーオンプラズマを想定し、衝突軸方向に膨張するBjorken座標系を用いて同様の記述を行った。これにより、現実的なクォークグルーオンプラズマの時空発展のもとでのジェットのエネルギー損失と、失われたエネルギーの伝搬の詳細な記述を行った。特に、ジェットのエネルギーの非対称度の関数として、ジェット錐の内外におけるエネルギーバランスを計算した。このことで、ジェットがクォークグルーオンプラズマ中を伝搬する際に失ったエネルギーが、クォークグルーオンプラズマ流体の膨張を通して広範囲に伝搬することを突き止めた。研究協力者との共同研究により、クォークグルーオンプラズマの新奇な時空発展を示す成果が得られつつあり、LHC-CMS実験によって得られた結果を初めて定量的に解釈する可能性が出てきた。また従来の計算を発展することによって着想を得た揺らぎを取り入れた全く新しい枠組みの構築も初めている。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22740151 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22740151 |
超高エネルギー重イオン衝突反応におけるクォークグルーオンプラズマのダイナミクス | すでに得られている研究成果をもとに論文を執筆し、最終年度としてまとめる。また、計算の過程をより洗練されたモデルを用いることにより、詳細な実験結果との比較を行う。これらの結果を、本年8月にワシントンD.C.で開催される当該分野で最も大きく権威のある国際会議「クォーク物質」にて成果報告を行う。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22740151 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22740151 |
高等植物の生体防御機構-特にモノテルペノイドに対する植物細胞のアポトーシス | 植物が生産するモノテルペノイドは,酵母や細菌あるいは他種植物に対して,他感作用的な成長阻害活性があることが広く知られており,植物がモノテルペノイドの生合成能を獲得したのは自己防衛のためと考えられている。平成10年度には,ゲラニオールなどのモノテルペノイドがゼニゴケ培養細胞にとってストレスとなり,その植物をアポトーシスに導くことを中間報告した。平成11年度は高等植物のゲラニオールによるアポトーシスに関して研究を展開し,種を超える6種の植物(タバコ,セロリ,ダイズ,キュウリ,カミツレ,シロイヌナズナ)を用い,いずれの植物においてもゲラニオールに強いアポトーシス誘導能があることを見い出した。次に,ゲラニオールと共に各種植物ホルモンを投与し,それによってアポトーシスの開始時間が遅延するかどうかを調べた。その結果,ゼアチン,カイネチン,イソペンテニルアデニンなどのサイトカイニン類を共存させたとき,アポトーシスの回避には至らなかったが,アポトーシス開始までの時間が遅延することがわかった。さらに[8-^3H]AMPを用いて,セロリ培養細胞中のイソペンテニルアデニンの生合成過程をトレースした。その結果,通常の細胞ではイソペンテニルアデニンへの[8-^3H]AMPの取り込み量は取り込み開始後5時間まで上昇を続けるのに対し,ゲラニオールを投与した細胞の場合には,[8-^3H]AMPは2時間後からイソペンテニルアデニンに全く取り込まれなくなった。これらのことより,高等植物のアポトーシス過程ではゲラニオールがイソペンテニルアデニンの生合成過程を阻害し,細胞内のサイトカイニン量が減少することがわかった。一般にサイトカイニン類は葉緑体の維持をつかさどっているホルモンであるので,サイトカイニンの急激な減少は葉緑体を崩壊させる。我々はこれまでに,動物の場合と同様に植物においてもアポトーシスの最終シグナルは活性酸素種であることを示しているが,葉緑体の崩壊は光合成初期反応で派生する活性酸素種の解毒・除去を困難にし,細胞内に活性酸素種が蓄積し,このことがアポトーシスの実質的な「引き金」になっていることを明らかにした。植物が生産するモノテルペノイドは,酵母や細菌あるいは他種植物に対して,他感作用的な成長阻害活性があることが広く知られており,植物がモノテルペノイドの生合成能を獲得したのは自己防衛のためと考えられている。平成10年度には,ゲラニオールなどのモノテルペノイドがゼニゴケ培養細胞にとってストレスとなり,その植物をアポトーシスに導くことを中間報告した。平成11年度は高等植物のゲラニオールによるアポトーシスに関して研究を展開し,種を超える6種の植物(タバコ,セロリ,ダイズ,キュウリ,カミツレ,シロイヌナズナ)を用い,いずれの植物においてもゲラニオールに強いアポトーシス誘導能があることを見い出した。次に,ゲラニオールと共に各種植物ホルモンを投与し,それによってアポトーシスの開始時間が遅延するかどうかを調べた。その結果,ゼアチン,カイネチン,イソペンテニルアデニンなどのサイトカイニン類を共存させたとき,アポトーシスの回避には至らなかったが,アポトーシス開始までの時間が遅延することがわかった。さらに[8-^3H]AMPを用いて,セロリ培養細胞中のイソペンテニルアデニンの生合成過程をトレースした。その結果,通常の細胞ではイソペンテニルアデニンへの[8-^3H]AMPの取り込み量は取り込み開始後5時間まで上昇を続けるのに対し,ゲラニオールを投与した細胞の場合には,[8-^3H]AMPは2時間後からイソペンテニルアデニンに全く取り込まれなくなった。これらのことより,高等植物のアポトーシス過程ではゲラニオールがイソペンテニルアデニンの生合成過程を阻害し,細胞内のサイトカイニン量が減少することがわかった。一般にサイトカイニン類は葉緑体の維持をつかさどっているホルモンであるので,サイトカイニンの急激な減少は葉緑体を崩壊させる。我々はこれまでに,動物の場合と同様に植物においてもアポトーシスの最終シグナルは活性酸素種であることを示しているが,葉緑体の崩壊は光合成初期反応で派生する活性酸素種の解毒・除去を困難にし,細胞内に活性酸素種が蓄積し,このことがアポトーシスの実質的な「引き金」になっていることを明らかにした。高等植物の生体防御機構の生化学的解明のために,低分子有機化合物をストレスとした植物細胞の応答反応について研究を行っている。平成10年度は,モノテルペノイドがカミツレ培養細胞に対して強いアポトーシス誘導能を持つことを見いだしたので報告する。アポトーシスの判定には,細胞核の断片化およびDNAのラーダー形成を指標にした。その結果,ゲラニオールに強いアポトーシス誘導能があった。DNAの断片化は,ゲラニオールを投与してから1時間以内に始まり,4時間後にはほぼ完了した。また,ゲラニオールによるアポトーシス誘導は蛋白質合成の阻害剤であるシクロヘキシミドやRNA合成の特異的阻害剤であるアクチノマイシンDによりいずれも阻害されなかった。このことからこのアポトーシス誘導に際しては新たな蛋白質合成もRNA合成も必要としないことが示された。つぎに,受容体からのストレスシグナルの伝達機構を明らかにするために,シグナル伝達の活性化因子および阻害剤を加えて,細胞からの過酸化水素の発生量の変化を調べた。その結果,細胞からの過酸化水素の発生は,GTPgSおよびRp-cAMPSによって活性化され,Sp-cAMPSによって阻害された。 | KAKENHI-PROJECT-10680568 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10680568 |
高等植物の生体防御機構-特にモノテルペノイドに対する植物細胞のアポトーシス | また,モノテルベノイドの投与直後から,細胞内のcAMP量が増加したことより,受容体からのストレスシグナルはG-蛋白質,アデノシンサイクラーゼを経て伝達されることが示された。これらの結果は,脊椎動物の“匂い物質"のシグナル伝達機構に類似しており,植物における低分子化合物のストレスシグナル伝達機構は,高等植物のエリシターに対するストレスシグナル伝達機構とは異なることが示された。植物が生産するモノテルペノイドは,酵母や細菌あるいは他種植物に対して,他感作用的な成長阻害活性があることが広く知られており,植物がモノテルペノイドの生合成能を獲得したのは自己防衛のためと考えられている。平成10年度には,ゲラニオールなどのモノテルペノイドがゼニゴケ培養細胞にとってストレスとなり,その植物をアポトーシスに導くことを中間報告した。平成11年度は高等植物のゲラニオールによるアポトーシスに関して研究を展開し,種を越える6種の植物(タバコ,セロリ,ダイズ,キュウリ,カミツレ,シロイヌナズナ)を用い,いずれの植物においてもゲラニオールに強いアポトーシス誘導能があることを見い出した。次に,ゲラニオールと共に各種植物ホルモンを投与し,それによってアポトーシスの開始時間が遅延するかどうかを調べた。その結果,ゼアチン,カイネチン,イソペンテニルアデニンなどのサイトカイニン類を共存させたとき,アポトーシスの回避には至らなかったが,アポトーシス開始までの時間が遅延することがわかった。さらに〔8-^3H〕AMPを用いて,セロリ培養細胞中のイソペンテニルアデニンの生合成過程をトレースした。その結果,通常の細胞ではイソペンテニルアデニンへの〔8-^3H〕AMPの取り込み量は取り込み開始後5時間まで上昇を続けるのに対し,ゲラニオールを投与した細胞の場合には,〔8-^3H〕AMPは2時間後からイソペンテニルアデニンに全く取り込まれなくなった。これらのことより,高等植物のアポトーシス過程ではゲラニオールがイソペンテニルアデニンの生合成過程を阻害し,細胞内のサイトカイニン量が減少することがわかった。一般にサイトカイニン類は葉緑体の維持をつかさどっているホルモンであるので,サイトカイニンの急激な減少は葉緑体を崩壊させる。我々はこれまでに,動物の場合と同様に植物においてもアポトーシスの最終シグナルは活性酸素種であることを示しているが,葉緑体の崩壊は光合成初期反応で派生する活性酸素種の解毒・除去を困難にし,細胞内に活性酸素種が蓄積し,このことがアポトーシスの実質的な「引き金」になっていることを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-10680568 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10680568 |
脳低温療法定着化への基礎研究:血液脳関門破綻によるニューロン障害の機構解明 | 1.スナネズミ一過性前脳虚血モデルでは,虚血負荷をうけた大脳皮質,海馬で虚血1日後にアルブミンの漏出が始まり,2日後にやや減少,4日後をピークとし,30日後にほぼ漏出が消失する2峰性のパタンを示した。虚血後に長時間の脳低温処置(32°C,24時間)を施すとニューロン死はおこらず,アルブミンの漏出が脳全領域で顕著に減少し,低温処置に強い血液脳関門の破綻抑制作用が認められた。32°Cの低温下で前脳虚血を負荷すると,血液脳関門の機能は保たれ,虚血ニューロン死が発生しないが,別のスナネズミより採取した血清を再灌流時に脳室内に持続投与すると,海馬CA1領域のニューロン死発生率が上昇した。血清アルブミンを持たないNARラットに1時間の中大脳動脈閉塞を行うと,24時間後の梗塞体積は正常ラット群に比較して縮小傾向を示した。血液脳関門の破綻によるアルブミンの脳実質内への漏出が虚血ニューロン死発生に大きく関与している可能性が示唆された。2.培養ミクログリアを用いたPMA刺激による活性酸素の産生反応,LPS刺激によるTNF-αやNOの酸性反応が,血清存在下で増強された。ミクログリアの活性酸素産生能の増強因子は,最小単位がアルブミンのテトラフラグメントであるLHTHであり,TNF-αやNOの産生能の増強因子は,炎症急性期血清に存在するLPS結合蛋白(LPB)である可能性が示唆された。また,アデノシンのアナログである2Cl-adenosineを培養ミクログリアに添加すると,アポトーシスを誘導することも判明した。ミクログリアの活性化が虚血ニューロン死の原因の一つであるならば,LHTHやLPBの拮抗薬の開発が治療のターゲットになりうる可能性が示唆された。3.緑茶の旨味成分であるテアニンと短時間低温処置あるいは軽微低温処置の併用療法によるニューロン保護効果があるかどうか検証した。虚血30日後に短時間低温処置+テアニン投与群,軽微低温処置+テアニン投与群の残存神経細胞数は,それぞれ67%(48%増加),72%(22%増加)で低温処置とテアニン併用により有意なユーロン保護効果が得られた。テアニンも新規脳保護薬と成りうる可能性が示唆された。1.スナネズミ一過性前脳虚血モデルでは,虚血負荷をうけた大脳皮質,海馬で虚血1日後にアルブミンの漏出が始まり,2日後にやや減少,4日後をピークとし,30日後にほぼ漏出が消失する2峰性のパタンを示した。虚血後に長時間の脳低温処置(32°C,24時間)を施すとニューロン死はおこらず,アルブミンの漏出が脳全領域で顕著に減少し,低温処置に強い血液脳関門の破綻抑制作用が認められた。32°Cの低温下で前脳虚血を負荷すると,血液脳関門の機能は保たれ,虚血ニューロン死が発生しないが,別のスナネズミより採取した血清を再灌流時に脳室内に持続投与すると,海馬CA1領域のニューロン死発生率が上昇した。血清アルブミンを持たないNARラットに1時間の中大脳動脈閉塞を行うと,24時間後の梗塞体積は正常ラット群に比較して縮小傾向を示した。血液脳関門の破綻によるアルブミンの脳実質内への漏出が虚血ニューロン死発生に大きく関与している可能性が示唆された。2.培養ミクログリアを用いたPMA刺激による活性酸素の産生反応,LPS刺激によるTNF-αやNOの酸性反応が,血清存在下で増強された。ミクログリアの活性酸素産生能の増強因子は,最小単位がアルブミンのテトラフラグメントであるLHTHであり,TNF-αやNOの産生能の増強因子は,炎症急性期血清に存在するLPS結合蛋白(LPB)である可能性が示唆された。また,アデノシンのアナログである2Cl-adenosineを培養ミクログリアに添加すると,アポトーシスを誘導することも判明した。ミクログリアの活性化が虚血ニューロン死の原因の一つであるならば,LHTHやLPBの拮抗薬の開発が治療のターゲットになりうる可能性が示唆された。3.緑茶の旨味成分であるテアニンと短時間低温処置あるいは軽微低温処置の併用療法によるニューロン保護効果があるかどうか検証した。虚血30日後に短時間低温処置+テアニン投与群,軽微低温処置+テアニン投与群の残存神経細胞数は,それぞれ67%(48%増加),72%(22%増加)で低温処置とテアニン併用により有意なユーロン保護効果が得られた。テアニンも新規脳保護薬と成りうる可能性が示唆された。虚血ニューロン死発生と血液脳関門の破綻およびアルブミンの脳実質内への漏れがニューロン死にどのように関与するかについて検証した。(実験1)スナネズミ一過性前脳虚血モデルで,虚血後の一定時期ごとに蛍光色素(エバンスブルー:EB)を静脈内投与後,脳の各領域(大脳皮質,海馬,小脳など)からEBを抽出し,抽出液の蛍光強度(励起620nm,蛍光680nm)を測定し,血液脳関門障害の程度を経時的に定量分析した。 | KAKENHI-PROJECT-12557131 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12557131 |
脳低温療法定着化への基礎研究:血液脳関門破綻によるニューロン障害の機構解明 | 虚血負荷をうけた大脳皮質,海馬では虚血1日後でEBの漏れが観察され,2日後にはやや減少,4日後をピークとし,30日後にはほぼEBの漏れが改善する2峰性のパタンを示した。海馬では大脳皮質に比べEBの漏れが多かったが,ニューロン死の発生する海馬CA1とニューロン死の発生しないCA3との比較では領域特異性は認められなかった。(実験2)32°Cの低温下でスナネズミに5分間の一過性前脳虚血を負荷した。この低温下脳虚血モデルでは血液脳関門の機能は保たれており,虚血ニューロン死が発生しない。虚血再灌流後より,浸透圧ミニポンプを用いて脳室内に別のスナネズミより採取した血清を持続投与し,海馬CA1領域にニューロン死が発生するかどうか検証した。低温下虚血群,アルブミン投与群の残存ニューロン数は,それぞれ93%,82%で,アルブミン投与によりニューロン死発生率が上昇した。(実験3)血清アルブミンを持たない特殊なSD系ラット(NARラット)を用いて1時間の中大脳動脈閉塞を行い,24時間後に梗塞体積を測定した。正常ラット群の大脳皮質梗塞体積,線条体梗塞体積はそれぞれ139.0mm^3,44.5mm^3に対し,NARラット群の大脳皮質梗塞体積,線条体梗塞体積はそれぞれ127.0mm^3,29.4mm^3と正常ラット群に比較して縮小傾向を示した。以上の結果より,血液脳関門の破綻および血清アルブミンの脳実質内への漏出は虚血ニューロン死発生に大きく関与しているが,血清アルブミン漏出以外のファクターも関与している可能性が示唆された。スナネズミ一過性前脳虚血モデルでは,再潅流1時間後より32°C,24時間の長時間の脳低温処置を施すと,虚血ニューロン死が発生しない。蛋白質トレーサーであるEB(エバンスブルー)を用いて,脳低温処置モデルの血液脳関門障害の程度を定量分析した。単純虚血群では虚血4日後をピークに,前頭葉,頭頂葉,海馬CA1などに強いEBの漏出が観察されたが,脳低温処置群ではEBの漏出は脳全領域で顕著に減少し,低温処置に強い血液脳関門の破綻抑制作用が認められた。培養ミクログリアにおいては,ホルボルエステル(PMA)刺激で活性酸素が産生され,リポポリサッカライド(LPS)刺激によりTNF-αやNOが産生されるが,いずれの反応においても培養液に血清を添加すると,その反応が増強された。ミクログリアの活性酸素産生能の増強因子は,活性化の最小単位がアルブミンのテトラフラグメントであるLHTHであり,TNF-αやNO産生能の増強因子は,炎症急性期の血清に存在するLPS結合蛋白(LBP)である可能性が示唆された。また,活性化を受けたミクログリアは,盛んに細胞増殖し,サイトカイン類やラジカル類を産生した後,アポトーシスによりその数を減らし沈静化すると考えられているが,アデノシンのアナログである2Cl-adenosineを培養ミクログリアに添加すると,アポトーシスを誘導することも判明した。新規脳保護薬の開発の可能性についても模索した。予備実験の結果,緑茶の旨味成分であるテアニンにニューロン保護効果があることが判明している。虚血負荷後の短時間低温処置(32°C,5時間)と軽微低温処置(35°C,24時間)動物では軽度中等度のニューロン保護作用があるが,テアニンの併用投与によるニューロン保護の相乗効果について検討した。対照群,短時間低温処置群,軽微低温処置群,短時間低温処置+テアニン投与群,軽微低温処置+テアニン投与群の残存神経細胞数は,それぞれ5%,19%,50%,67%,72%で低温処置とテアニンの併用投与により有意なニューロン保護効果が得られた。 | KAKENHI-PROJECT-12557131 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12557131 |
重症感染症におけるG-CSFと抗ELAM-1抗体投与効果の検討 | 1)C3H-HeJマウス(8週齢、雄性、体重約20g)をもちい、Wichtermanらの方法に準じた盲腸結紮、穿刺法にて腹膜炎を作成、腹膜炎作成直後より、1)生食100μl/日/皮下投与、2)G-CSF100μl/日、皮下投与、3)G-CSF100μl+抗ELAM-1抗体200IU/kg/日/皮下および腹腔内投与、を3日間施行し、その際の生存率を検討したところ、G-CSF+抗ELAM-1抗体投与群で有意の生存率の延長を認めた。2)上記各群を処理後の24時間目にネンブタール麻酔下に開腹し、腹部大動脈よりヘパリン採血の後、Ficoll-Hypaqueを用いた遠心法にて顆粒球を採取し、顆粒球20X10^6/mlをHbSS-2に浮遊させたの後、^<125>I抗ELAM-抗体0.1mCi(specific activity: 1.25 μCi/μg)を加え、ELAM-1について検討したところ、抗ELAM-1抗体非投与群において有意のELAM-1の発現を認めた。3)貪食能、活性酸素産生能、H_2O_2産生能に関して検討したところ、白血球貪食能には3群間に有意差を認ず、活性酸素産生能では生理食塩水投与群、G-CSF投与群において有意に高値を示した。4)組織学的検討では生理食塩水投与群、G-CSF投与群において、より高度の肺障害を認めた。以上より、G-CSFは重症感染症において、その感染症の軽減を介して臓器障害を軽減するが、一方で危惧される白血球を増加せしめることによる臓器障害には細胞接着因子に対する抗体投与にて対応できると考えられる。1)C3H-HeJマウス(8週齢、雄性、体重約20g)をもちい、Wichtermanらの方法に準じた盲腸結紮、穿刺法にて腹膜炎を作成、腹膜炎作成直後より、1)生食100μl/日/皮下投与、2)G-CSF100μl/日、皮下投与、3)G-CSF100μl+抗ELAM-1抗体200IU/kg/日/皮下および腹腔内投与、を3日間施行し、その際の生存率を検討したところ、G-CSF+抗ELAM-1抗体投与群で有意の生存率の延長を認めた。2)上記各群を処理後の24時間目にネンブタール麻酔下に開腹し、腹部大動脈よりヘパリン採血の後、Ficoll-Hypaqueを用いた遠心法にて顆粒球を採取し、顆粒球20X10^6/mlをHbSS-2に浮遊させたの後、^<125>I抗ELAM-抗体0.1mCi(specific activity: 1.25 μCi/μg)を加え、ELAM-1について検討したところ、抗ELAM-1抗体非投与群において有意のELAM-1の発現を認めた。3)貪食能、活性酸素産生能、H_2O_2産生能に関して検討したところ、白血球貪食能には3群間に有意差を認ず、活性酸素産生能では生理食塩水投与群、G-CSF投与群において有意に高値を示した。4)組織学的検討では生理食塩水投与群、G-CSF投与群において、より高度の肺障害を認めた。以上より、G-CSFは重症感染症において、その感染症の軽減を介して臓器障害を軽減するが、一方で危惧される白血球を増加せしめることによる臓器障害には細胞接着因子に対する抗体投与にて対応できると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-07771025 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07771025 |
琉球語の文字使用-漢字仮名表記体系と琉球語の相互作用 | 本研究計画の初年度である今年度は、研究の基礎となる琉球語資料、とくに琉球王国時代の琉球語に関する文献の収集と、琉球王国の歴史、文化(特に文学)に関する文献の収集を中心におこなった。また、研究協力者である高良倉吉(琉球大学教授・琉球史専攻)、池宮正治(琉球大学教授・琉球文学専攻)を交え、琉球語と琉球における、特に琉球王国時代における文字使用の実態に関する意見の交換をおこなった。琉球王国時代には漢字使用だけの漢文も作られたが、『おもろさうし』に記載された歌、『混効験集』などの辞典や辞令書、その他の文献に出てくる地名や人名など、琉球語を表記するときには、主として仮名文字を使用していたことが確認されている。そして、琉球王国時代に琉球王府から発給された辞令書も平仮名で書かれることがほとんどであったが、薩摩藩による琉球侵略、間接的ではあるが薩摩藩による琉球支配以降に発給された辞令書では、かえって漢字の使用が増える傾向にあるのではないかということがわかった。何故そうなったのかを明らかにするには、中国や日本(薩摩藩)との政治的な関係をも視野に入れながら、資料的な裏づけが必要である。また、琉球語は内部に大きな方言差があり、その言語差が文字使用にどのような影響を与えるかについて、地域ごとの文献資料の収集が必要であり、今年度は、沖縄県立博物館八重山分館、石垣市立博物館など八重山地域での資料の収集をおこなった。本研究計画の初年度である今年度は、研究の基礎となる琉球語資料、とくに琉球王国時代の琉球語に関する文献の収集と、琉球王国の歴史、文化(特に文学)に関する文献の収集を中心におこなった。また、研究協力者である高良倉吉(琉球大学教授・琉球史専攻)、池宮正治(琉球大学教授・琉球文学専攻)を交え、琉球語と琉球における、特に琉球王国時代における文字使用の実態に関する意見の交換をおこなった。琉球王国時代には漢字使用だけの漢文も作られたが、『おもろさうし』に記載された歌、『混効験集』などの辞典や辞令書、その他の文献に出てくる地名や人名など、琉球語を表記するときには、主として仮名文字を使用していたことが確認されている。そして、琉球王国時代に琉球王府から発給された辞令書も平仮名で書かれることがほとんどであったが、薩摩藩による琉球侵略、間接的ではあるが薩摩藩による琉球支配以降に発給された辞令書では、かえって漢字の使用が増える傾向にあるのではないかということがわかった。何故そうなったのかを明らかにするには、中国や日本(薩摩藩)との政治的な関係をも視野に入れながら、資料的な裏づけが必要である。また、琉球語は内部に大きな方言差があり、その言語差が文字使用にどのような影響を与えるかについて、地域ごとの文献資料の収集が必要であり、今年度は、沖縄県立博物館八重山分館、石垣市立博物館など八重山地域での資料の収集をおこなった。 | KAKENHI-PROJECT-03F00172 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03F00172 |
虚血腎に対する内因性降圧利尿物質の作用機構 | ANPの投与量を8ng/kg/minに増量すると、左心室圧の上昇速度を微分したdp/dt・MAXは不変であったが、心拍出量は減少した。一方、VNPは4-8ng/kg/minの投与で心拍出量の増加とdp/dt・MAXの有意な上昇を認めた。以上の成績から、VNPはhANPと同様にGFRの増加、近位並びに遠位尿細管のNa再吸収能抑制等を介して利尿作用を発現することが明らかにされた。一方、心機能に対しては、hANPが抑制作用を示しのに対して、VNPは陽性変力作用(心拍出量とdp/dt・MAXの有意な上昇)を示した。このhANPとVNPの差は、産生母体(ヒトと水中に棲むウナギ)の差、産生組織(心房と心室)の差などから当然考えられることではある。しかしながら、VNPの陽性変力作用と利尿降圧作用は臨床的観点からきわめて興味深い特性である。虚血腎に対する作用、並びにルミネッセンスリーダを用いた活性酸素の産生量と腎機能の相関に関するデータは現在検討中である。尚、ANPとVNPの長期保存、並びに動物のサンプル保存には、今回設備備品として購入した冷凍冷蔵庫(KNT-18)を用いた。ANPの投与量を8ng/kg/minに増量すると、左心室圧の上昇速度を微分したdp/dt・MAXは不変であったが、心拍出量は減少した。一方、VNPは4-8ng/kg/minの投与で心拍出量の増加とdp/dt・MAXの有意な上昇を認めた。以上の成績から、VNPはhANPと同様にGFRの増加、近位並びに遠位尿細管のNa再吸収能抑制等を介して利尿作用を発現することが明らかにされた。一方、心機能に対しては、hANPが抑制作用を示しのに対して、VNPは陽性変力作用(心拍出量とdp/dt・MAXの有意な上昇)を示した。このhANPとVNPの差は、産生母体(ヒトと水中に棲むウナギ)の差、産生組織(心房と心室)の差などから当然考えられることではある。しかしながら、VNPの陽性変力作用と利尿降圧作用は臨床的観点からきわめて興味深い特性である。虚血腎に対する作用、並びにルミネッセンスリーダを用いた活性酸素の産生量と腎機能の相関に関するデータは現在検討中である。尚、ANPとVNPの長期保存、並びに動物のサンプル保存には、今回設備備品として購入した冷凍冷蔵庫(KNT-18)を用いた。 | KAKENHI-PROJECT-04670940 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04670940 |
重陽子融合反応を利用した注入重陽子拡散の新しい測定法 | 重陽子ビームを連続して標的物質に照射しながら、重陽子融合反応から放出される反応陽子数の照射時間に対する変化およびそのエネルギースプクトルを測定する事によって物質中に注入された重水素原子の拡散および深さ方向の重陽子分布を実時間で観察することのできる新しい測定方法を開発した。その大きな特徴は、重陽子ビームが注入する物質であり、かつこの重陽子ビームが標的内部に注入された重陽子の診断プローブの役割をしている点である。従って反応陽子の収量の時間依存性を観測することによって実時間で注入重陽子の挙動を観測することができる。今回の科学研究費の交付により実験を効率よく遂行するため検出器系および測定系の整備を行ない、次のようなパラメーターに対して測定を行った。(1)標的物質の種類(2)結晶構造、単結晶・多結晶の違い(3)温度変化(-5°C90°C)。今回の測定で得られた最も大きな特徴は、金属元素の種類によって、単結晶と多結晶のあいだで反応陽子数の時間変化、すなわち拡散の速さに著しい違いが観測されたことである。今回のような重陽子ビームを注入しながら重陽子の挙動を調べる場合注入重陽子が単に濃度勾配によって標的中を拡散していくという単純な過程に従わないので、注入重陽子が標的中でどのような確率で捕獲されるかという捕獲の過程が重要となってくる。今後これらの過程を取り入れて注入重陽子の拡散機構を解明していく。重陽子ビームを連続して標的物質に照射しながら、重陽子融合反応から放出される反応陽子数の照射時間に対する変化およびそのエネルギースプクトルを測定する事によって物質中に注入された重水素原子の拡散および深さ方向の重陽子分布を実時間で観察することのできる新しい測定方法を開発した。その大きな特徴は、重陽子ビームが注入する物質であり、かつこの重陽子ビームが標的内部に注入された重陽子の診断プローブの役割をしている点である。従って反応陽子の収量の時間依存性を観測することによって実時間で注入重陽子の挙動を観測することができる。今回の科学研究費の交付により実験を効率よく遂行するため検出器系および測定系の整備を行ない、次のようなパラメーターに対して測定を行った。(1)標的物質の種類(2)結晶構造、単結晶・多結晶の違い(3)温度変化(-5°C90°C)。今回の測定で得られた最も大きな特徴は、金属元素の種類によって、単結晶と多結晶のあいだで反応陽子数の時間変化、すなわち拡散の速さに著しい違いが観測されたことである。今回のような重陽子ビームを注入しながら重陽子の挙動を調べる場合注入重陽子が単に濃度勾配によって標的中を拡散していくという単純な過程に従わないので、注入重陽子が標的中でどのような確率で捕獲されるかという捕獲の過程が重要となってくる。今後これらの過程を取り入れて注入重陽子の拡散機構を解明していく。我々は、約100keVのエネルギを持った重陽子ビームを標的物質に照射しながら、重陽子融合反応から放出される反応陽子数の時間変化およびそのエネルギースプクトルを測定する事によって物質中に注入された重水素原子の拡散および深さ方向の重陽子分布を実時間で観察することのできる新しい測定方法を開発した。当初本年度新しく標的加熱装置を接続した真空槽を設計製作し、占有の測定装置(放射線検出器、測定回路系等)を完備する予定であったが、予算の都合上実験を効率よく遂行するため検出器および測定系の整備を行った。また現有の真空槽については、照射ビーム強度が標的上で一様になるようにビーム偏向系およびビーム照射中標的温度を一定に保つためターゲットホルダー系等の改良を行った。特に反応陽子の検出器として大容量のシリコン半導体検出器を導入することによって検出効率が上がり、低いビーム強度でも十分な計数が得られ、ビーム照射による標的の温度変化を最小に押さえることが可能となった。これらの結果については、1999年春および秋の日本原子力学会で報告した。今回測定系全体の整備ができたので、4月から物質中での注入重陽子の拡散の定量的な導出を図るため、標的物質の種類、結晶構造、温度等を変化させ系統的な測定を行う。また重陽子ビーム照射によって単結晶シリコン中で起こるフレーキング現象は、結晶中での重水素原子の挙動に深く関連したもので物性的な測定が不可欠である。今回初めて物性物理学者と協力してラマン分光法による重水素分子の測定を始めた。我々は、約100keVのエネルギを持った重陽子ビームを標的物質に照射しながら、重陽子融合反応から放出される反応陽子数の時間変化を測定する事によって物質中に注入された重水素原子の挙動を実時間で観察することのできる新しい測定方法を開発した。実験を効率よく遂行するため検出器系および測定系の整備を行った。特に反応陽子の検出器として大容量のシリコン半導体検出器を導入し検出の立体角を大きくすることによって検出効率が上がり、低いビーム強度(0.5μA)でも十分な計数が得られ、ビーム照射による標的の温度変化を最小に押さえることが可能となった。照射ビーム強度が標的上で一様になるようにビーム偏向系およびビーム照射中標的温度を一定に保つためターゲットホルダー系等の改良を行った。物質中での注入重陽子の挙動を調べるため次のようなパラメーターに対して測定を行った。(1)標的物質の種類(Al,Co,Ni,Cu,Pd,Au,Pt) | KAKENHI-PROJECT-11680511 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11680511 |
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