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公認会計士試験/平成30年第II回短答式/企業法/問題12
監査役設置会社の業務の適正を確保するための体制(以下「内部統制システム」という。)に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) ア.大会社でない取締役会設置会社において,取締役会は,内部統制システムの整備の決定につき,取締役に委任することができる。 イ.大会社である取締役会設置会社において,取締役会は,内部統制システムの整備について決定しなければならない。 ウ.取締役会設置会社でない大会社において,取締役は,内部統制システムの整備について決定しないことができる。 エ.株式会社は,内部統制システムの整備について決定したときは,その決定の内容の概要及び当該内部統制システムの運用状況の概要について,事業報告に記載しなければならない。 5 ア.大会社でない取締役会設置会社において,取締役会は,内部統制システムの整備の決定につき,取締役に委任することができる。できない。362条4項柱書6号 イ.大会社である取締役会設置会社において,取締役会は,内部統制システムの整備について決定しなければならない。362条4項6号5項 ウ.取締役会設置会社でない大会社において,取締役は,内部統制システムの整備について決定しないことができる。決定しなければならない。348条3項4号4項 エ.株式会社は,内部統制システムの整備について決定したときは,その決定の内容の概要及び当該内部統制システムの運用状況の概要について,事業報告に記載しなければならない。348条3項4号362条4項6号,施行規則118条2号
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "監査役設置会社の業務の適正を確保するための体制(以下「内部統制システム」という。)に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.大会社でない取締役会設置会社において,取締役会は,内部統制システムの整備の決定につき,取締役に委任することができる。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.大会社である取締役会設置会社において,取締役会は,内部統制システムの整備について決定しなければならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.取締役会設置会社でない大会社において,取締役は,内部統制システムの整備について決定しないことができる。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.株式会社は,内部統制システムの整備について決定したときは,その決定の内容の概要及び当該内部統制システムの運用状況の概要について,事業報告に記載しなければならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "5", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.大会社でない取締役会設置会社において,取締役会は,内部統制システムの整備の決定につき,取締役に委任することができる。できない。362条4項柱書6号", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.大会社である取締役会設置会社において,取締役会は,内部統制システムの整備について決定しなければならない。362条4項6号5項", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.取締役会設置会社でない大会社において,取締役は,内部統制システムの整備について決定しないことができる。決定しなければならない。348条3項4号4項", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.株式会社は,内部統制システムの整備について決定したときは,その決定の内容の概要及び当該内部統制システムの運用状況の概要について,事業報告に記載しなければならない。348条3項4号362条4項6号,施行規則118条2号", "title": "解説" } ]
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: [[../問題11|←前の問題]] : [[../問題13|次の問題→]] == 問題 ==  監査役設置会社の業務の適正を確保するための体制(以下「内部統制システム」という。)に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.大会社でない取締役会設置会社において,取締役会は,内部統制システムの整備の決定につき,取締役に委任することができる。 イ.大会社である取締役会設置会社において,取締役会は,内部統制システムの整備について決定しなければならない。 ウ.取締役会設置会社でない大会社において,取締役は,内部統制システムの整備について決定しないことができる。 エ.株式会社は,内部統制システムの整備について決定したときは,その決定の内容の概要及び当該内部統制システムの運用状況の概要について,事業報告に記載しなければならない。 </div> <div style="column-count:6;"> :1.アイ :2.アウ :3.アエ :4.イウ :5.イエ :6.ウエ </div> == 正解 == 5 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.大会社でない取締役会設置会社において,取締役会は,内部統制システムの整備の決定につき,取締役に委任することが<del>できる。</del><ins>できない。362条4項柱書6号</ins> イ.大会社である取締役会設置会社において,取締役会は,内部統制システムの整備について決定しなければならない。<ins>362条4項6号5項</ins> ウ.取締役会設置会社でない大会社において,取締役は,内部統制システムの整備について<del>決定しないことができる。</del><ins>決定しなければならない。348条3項4号4項</ins> エ.株式会社は,内部統制システムの整備について決定したときは,その決定の内容の概要及び当該内部統制システムの運用状況の概要について,事業報告に記載しなければならない。<ins>348条3項4号362条4項6号,施行規則118条2号</ins> </div> == 参照法令等 == * [http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=417AC0000000086 会社法] * [http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=418M60000010012_20180326_430M60000010005&openerCode=1 会社法施行規則] : [[../問題11|←前の問題]] : [[../問題13|次の問題→]] [[カテゴリ:企業法]]
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2022-11-29T05:10:05Z
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公認会計士試験/平成30年第II回短答式/企業法/問題14
連結計算書類に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) ア.連結計算書類を作成した株式会社は,計算書類ではなく,連結計算書類に基づいて分配可能額を算出し,その範囲内で剰余金の配当をすることができる。 イ.事業年度の末日において大会社であって金融商品取引法の規定により有価証券報告書の提出義務を負うものは,当該事業年度に係る連結計算書類を作成しなければならない。 ウ.監査等委員会設置会社における連結計算書類は,法務省令で定めるところにより,監査等委員会及び会計監査人の監査を受けなければならない。 エ.連結計算書類を作成した取締役会設置会社は,当該連結計算書類について定時株主総会の承認を受けなければならない。 4 ア.連結計算書類を作成した株式会社で,連結配当規制適用会社に関する注記を個別注記表に表示した会社は,計算書類ではなく,および連結計算書類に基づいて分配可能額を算出し,その範囲内で剰余金の配当をすることができる。連結配当規制適用会社は,連結配当規制を適用しない場合の分配可能額から一定の額を減じて分配可能額を算定する。会社計算規則98条1項18号158条4号 イ.事業年度の末日において大会社であって金融商品取引法の規定により有価証券報告書の提出義務を負うものは,当該事業年度に係る連結計算書類を作成しなければならない。444条3項 ウ.監査等委員会設置会社における連結計算書類は,法務省令で定めるところにより,監査等委員会及び会計監査人の監査を受けなければならない。444条4項 エ.連結計算書類を作成した取締役会設置会社は,当該連結計算書類について定時株主総会取締役会の承認を受けなければならない。取締役会の承認後,連結計算書類の内容及び監査の結果を定時株主総会に報告しなければならない。444条5項7項
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: [[../問題13|←前の問題]] : [[../問題15|次の問題→]] == 問題 ==  連結計算書類に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.連結計算書類を作成した株式会社は,計算書類ではなく,連結計算書類に基づいて分配可能額を算出し,その範囲内で剰余金の配当をすることができる。 イ.事業年度の末日において大会社であって金融商品取引法の規定により有価証券報告書の提出義務を負うものは,当該事業年度に係る連結計算書類を作成しなければならない。 ウ.監査等委員会設置会社における連結計算書類は,法務省令で定めるところにより,監査等委員会及び会計監査人の監査を受けなければならない。 エ.連結計算書類を作成した取締役会設置会社は,当該連結計算書類について定時株主総会の承認を受けなければならない。 </div> <div style="column-count:6;"> :1.アイ :2.アウ :3.アエ :4.イウ :5.イエ :6.ウエ </div> == 正解 == 4 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.連結計算書類を作成した株式会社<ins>で,連結配当規制適用会社に関する注記を個別注記表に表示した会社</ins>は,計算書類<del>ではなく,</del><ins>および</ins>連結計算書類に基づいて分配可能額を算出し,その範囲内で剰余金の配当をすることができる。<ins>連結配当規制適用会社は,連結配当規制を適用しない場合の分配可能額から一定の額を減じて分配可能額を算定する。会社計算規則98条1項18号158条4号</ins> イ.事業年度の末日において大会社であって金融商品取引法の規定により有価証券報告書の提出義務を負うものは,当該事業年度に係る連結計算書類を作成しなければならない。<ins>444条3項</ins> ウ.監査等委員会設置会社における連結計算書類は,法務省令で定めるところにより,監査等委員会及び会計監査人の監査を受けなければならない。<ins>444条4項</ins> エ.連結計算書類を作成した取締役会設置会社は,当該連結計算書類について<del>定時株主総会</del><ins>取締役会</ins>の承認を受けなければならない。<ins>取締役会の承認後,連結計算書類の内容及び監査の結果を定時株主総会に報告しなければならない。444条5項7項</ins> </div> == 参照法令等 == * [http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=417AC0000000086 会社法] * [http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=418M60000010013&openerCode=1 会社計算規則] : [[../問題13|←前の問題]] : [[../問題15|次の問題→]] [[カテゴリ:企業法]]
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2022-11-29T05:10:12Z
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公認会計士試験/平成30年第II回短答式/企業法/問題15
株式会社の資本金及び準備金に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) ア.株式会社が剰余金の配当をする場合には,法務省令で定めるところにより,当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に10分の1を乗じて得た額を,資本準備金又は利益準備金として,法務省令で定める限度まで計上しなければならない。 イ.取締役会設置会社が株式の発行と同時に準備金の額を減少する場合において,当該準備金の額の減少の効力発生日後の準備金の額が,当該効力発生日前の準備金の額を下回らないときは,当該準備金の額の減少は,取締役会の決議によって決定する。 ウ.取締役会設置会社が準備金の額を減少する場合において,減少する準備金の額の全部を資本金とするときは,当該準備金の額の減少は,取締役会の決議によって決定する。 エ.資本金の額の減少の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定したときは,当該資本金の額の減少は,当該資本金の額の減少の効力発生日に遡ってその効力を失う。 1 ア.株式会社が剰余金の配当をする場合には,法務省令で定めるところにより,当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に10分の1を乗じて得た額を,資本準備金又は利益準備金として,法務省令で定める限度まで計上しなければならない。445条4項(参考:施規116条9号,計規22条) イ.取締役会設置会社が株式の発行と同時に準備金の額を減少する場合において,当該準備金の額の減少の効力発生日後の準備金の額が,当該効力発生日前の準備金の額を下回らないときは,当該準備金の額の減少は,取締役会の決議によって決定する。448条3項 ウ.取締役会設置会社が準備金の額を減少する場合において,減少する準備金の額の全部を資本金とするときは,当該準備金の額の減少は,取締役会の決議株主総会普通決議によって決定する。448条1項2号 エ.資本金の額の減少の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定したときは,当該資本金の額の減少は,当該資本金の額の減少の効力発生日に遡って将来に向かってその効力を失う。839条834条5号
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "株式会社の資本金及び準備金に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.株式会社が剰余金の配当をする場合には,法務省令で定めるところにより,当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に10分の1を乗じて得た額を,資本準備金又は利益準備金として,法務省令で定める限度まで計上しなければならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.取締役会設置会社が株式の発行と同時に準備金の額を減少する場合において,当該準備金の額の減少の効力発生日後の準備金の額が,当該効力発生日前の準備金の額を下回らないときは,当該準備金の額の減少は,取締役会の決議によって決定する。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.取締役会設置会社が準備金の額を減少する場合において,減少する準備金の額の全部を資本金とするときは,当該準備金の額の減少は,取締役会の決議によって決定する。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.資本金の額の減少の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定したときは,当該資本金の額の減少は,当該資本金の額の減少の効力発生日に遡ってその効力を失う。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "1", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.株式会社が剰余金の配当をする場合には,法務省令で定めるところにより,当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に10分の1を乗じて得た額を,資本準備金又は利益準備金として,法務省令で定める限度まで計上しなければならない。445条4項(参考:施規116条9号,計規22条)", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.取締役会設置会社が株式の発行と同時に準備金の額を減少する場合において,当該準備金の額の減少の効力発生日後の準備金の額が,当該効力発生日前の準備金の額を下回らないときは,当該準備金の額の減少は,取締役会の決議によって決定する。448条3項", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.取締役会設置会社が準備金の額を減少する場合において,減少する準備金の額の全部を資本金とするときは,当該準備金の額の減少は,取締役会の決議株主総会普通決議によって決定する。448条1項2号", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.資本金の額の減少の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定したときは,当該資本金の額の減少は,当該資本金の額の減少の効力発生日に遡って将来に向かってその効力を失う。839条834条5号", "title": "解説" } ]
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: [[../問題14|←前の問題]] : [[../問題16|次の問題→]] == 問題 ==  株式会社の資本金及び準備金に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.株式会社が剰余金の配当をする場合には,法務省令で定めるところにより,当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に10分の1を乗じて得た額を,資本準備金又は利益準備金として,法務省令で定める限度まで計上しなければならない。 イ.取締役会設置会社が株式の発行と同時に準備金の額を減少する場合において,当該準備金の額の減少の効力発生日後の準備金の額が,当該効力発生日前の準備金の額を下回らないときは,当該準備金の額の減少は,取締役会の決議によって決定する。 ウ.取締役会設置会社が準備金の額を減少する場合において,減少する準備金の額の全部を資本金とするときは,当該準備金の額の減少は,取締役会の決議によって決定する。 エ.資本金の額の減少の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定したときは,当該資本金の額の減少は,当該資本金の額の減少の効力発生日に遡ってその効力を失う。 </div> <div style="column-count:6;"> :1.アイ :2.アウ :3.アエ :4.イウ :5.イエ :6.ウエ </div> == 正解 == 1 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.株式会社が剰余金の配当をする場合には,法務省令で定めるところにより,当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に10分の1を乗じて得た額を,資本準備金又は利益準備金として,法務省令で定める限度まで計上しなければならない。<ins>445条4項(参考:施規116条9号,計規22条)</ins> イ.取締役会設置会社が株式の発行と同時に準備金の額を減少する場合において,当該準備金の額の減少の効力発生日後の準備金の額が,当該効力発生日前の準備金の額を下回らないときは,当該準備金の額の減少は,取締役会の決議によって決定する。<ins>448条3項</ins> ウ.取締役会設置会社が準備金の額を減少する場合において,減少する準備金の額の全部を資本金とするときは,当該準備金の額の減少は,<del>取締役会の決議</del><ins>株主総会普通決議</ins>によって決定する。<ins>448条1項2号</ins> エ.資本金の額の減少の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定したときは,当該資本金の額の減少は,<del>当該資本金の額の減少の効力発生日に遡って</del><ins>将来に向かって</ins>その効力を失う。<ins>839条834条5号</ins> </div> == 参照法令等 == * [http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=417AC0000000086 会社法] * [http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=418M60000010012_20180326_430M60000010005&openerCode=1 会社法施行規則] * [http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=418M60000010013&openerCode=1 会社計算規則] : [[../問題14|←前の問題]] : [[../問題16|次の問題→]] [[カテゴリ:企業法]]
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2022-11-29T05:10:15Z
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公認会計士試験/平成30年第II回短答式/企業法/問題17
株式会社が行う事業譲渡に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。なお,定款に別段の定めはないものとする。(5 点) ア.最高裁判所の判例によれば,事業の全部を休止している株式会社がその全部の資産を譲渡する場合で,譲受会社が譲渡会社の事業活動を受け継がないときは,当該譲渡会社の株主総会決議の手続を要しない。 イ.株式会社がその事業の全部を譲渡する場合,譲渡会社は,当該譲渡の効力発生日に清算手続を経ることなく当然に消滅する。 ウ.事業譲渡の無効は,訴えによらずに主張することができる。 エ.最高裁判所の判例によれば,事業譲渡について譲渡会社の株主総会決議の手続が必要であるのにそれを経ないまま事業譲渡が行われた場合,そのことは当該事業譲渡の無効原因であるが,譲受会社がそのことについて善意かつ無重過失であったときは,当該譲渡会社は当該事業譲渡の無効を主張することができない。 2 ア.最高裁判所の判例によれば,事業の全部を休止している株式会社がその全部の資産を譲渡する場合で,譲受会社が譲渡会社の事業活動を受け継がないときは,当該譲渡会社の株主総会決議の手続を要しない。事業譲渡とは「一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産(得意先関係等の経済的価値のある事実関係を含む。)の全部または重要な一部を譲渡し、これによつて、譲渡会社がその財産によつて営んでいた営業的活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に...競業避止業務を負う結果を伴うもの」(最判昭和40年9月22日)である。譲渡会社が事業を休止していることから、営業的活動のを譲受人が受け継ぐとはいえず、事業譲渡ではない。したがって株主総会決議の手続を要しない。 イ.株式会社がその事業の全部を譲渡吸収合併する場合,譲渡会社吸収合併消滅会社は,当該譲渡の効力発生日に清算手続を経ることなく当然に消滅する。会社法471条4号475条1号かっこ書 ウ.事業譲渡の無効は,訴えによらずに主張することができる。一般原則による無効の主張ができる。 エ.最高裁判所の判例によれば,事業譲渡について譲渡会社の株主総会決議の手続が必要であるのにそれを経ないまま事業譲渡が行われた場合,そのことは常に当該事業譲渡の無効原因であるがり,譲受会社がそのことについて善意かつ無重過失であったときはも,当該譲渡会社は当該事業譲渡の無効を主張することができないできる。最判昭和61年9月11日
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: [[../問題16|←前の問題]] : [[../問題18|次の問題→]] == 問題 ==  株式会社が行う事業譲渡に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。なお,定款に別段の定めはないものとする。(5 点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.最高裁判所の判例によれば,事業の全部を休止している株式会社がその全部の資産を譲渡する場合で,譲受会社が譲渡会社の事業活動を受け継がないときは,当該譲渡会社の株主総会決議の手続を要しない。 イ.株式会社がその事業の全部を譲渡する場合,譲渡会社は,当該譲渡の効力発生日に清算手続を経ることなく当然に消滅する。 ウ.事業譲渡の無効は,訴えによらずに主張することができる。 エ.最高裁判所の判例によれば,事業譲渡について譲渡会社の株主総会決議の手続が必要であるのにそれを経ないまま事業譲渡が行われた場合,そのことは当該事業譲渡の無効原因であるが,譲受会社がそのことについて善意かつ無重過失であったときは,当該譲渡会社は当該事業譲渡の無効を主張することができない。 </div> <div style="column-count:6;"> :1.アイ :2.アウ :3.アエ :4.イウ :5.イエ :6.ウエ </div> == 正解 == 2 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.最高裁判所の判例によれば,事業の全部を休止している株式会社がその全部の資産を譲渡する場合で,譲受会社が譲渡会社の事業活動を受け継がないときは,当該譲渡会社の株主総会決議の手続を要しない。<ins>事業譲渡とは「一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産(得意先関係等の経済的価値のある事実関係を含む。)の全部または重要な一部を譲渡し、これによつて、譲渡会社がその財産によつて営んでいた営業的活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に…競業避止業務を負う結果を伴うもの」(最判昭和40年9月22日)である。譲渡会社が事業を休止していることから、営業的活動のを譲受人が受け継ぐとはいえず、事業譲渡ではない。したがって株主総会決議の手続を要しない。</ins> イ.株式会社が<del>その事業の全部を譲渡</del><ins>吸収合併</ins>する場合,<del>譲渡会社</del><ins>吸収合併消滅会社</ins>は,当該譲渡の効力発生日に清算手続を経ることなく当然に消滅する。<ins>会社法471条4号475条1号かっこ書</ins> ウ.事業譲渡の無効は,訴えによらずに主張することができる。<ins>一般原則による無効の主張ができる。</ins> エ.最高裁判所の判例によれば,事業譲渡について譲渡会社の株主総会決議の手続が必要であるのにそれを経ないまま事業譲渡が行われた場合,そのことは<ins>常に</ins>当該事業譲渡の無効原因であ<del>るが</del><ins>り</ins>,譲受会社がそのことについて善意かつ無重過失であったとき<del>は</del><ins>も</ins>,当該譲渡会社は当該事業譲渡の無効を主張することが<del>できない</del><ins>できる</ins>。<ins>最判昭和61年9月11日</ins> </div> == 参照法令等 == * [http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=417AC0000000086 会社法] * [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53752 最判昭和40年9月22日] * [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=62867 最判昭和61年9月11日] : [[../問題16|←前の問題]] : [[../問題18|次の問題→]] [[カテゴリ:企業法]]
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2022-11-29T05:10:21Z
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公認会計士試験/平成30年第II回短答式/企業法/問題18
株式会社が行う吸収分割において株主が吸収分割会社に対して行う株式買取請求に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) ア.吸収分割をするために株主総会の決議を要する場合において,当該株主総会で議決権を行使できる株主が株式買取請求をするためには,当該株主総会に先立って当該吸収分割に反対する旨を会社に通知し,かつ,当該株主総会において当該吸収分割に反対することを要する。 イ.最高裁判所の判例によれば,吸収分割により企業価値の増加が生じない場合,株式買取請求に係る株式の買取価格である「公正な価格」とは,原則として,吸収分割契約に定められていた吸収分割の対価が公正なものであったならばその株式が有していると認められる価格をいう。 ウ.株式買取請求をした株主は,いつでも自由に,その請求を撤回することができる。 エ.株式買取請求があった場合において,株式の買取価格の決定につき株主と株式会社との間に協議が整ったときは,当該株式会社は,吸収分割の効力発生日から60日以内にその支払をしなければならない。 3 ア.吸収分割をするために株主総会の決議を要する場合において,当該株主総会で議決権を行使できる株主が株式買取請求をするためには,当該株主総会に先立って当該吸収分割に反対する旨を会社に通知し,かつ,当該株主総会において当該吸収分割に反対することを要する。785条1項2項1号イ イ.最高裁判所の判例によれば,吸収分割により企業価値の増加が生じない場合以外の場合,株式買取請求に係る株式の買取価格である「公正な価格」とは,原則として,吸収分割契約に定められていた吸収分割の対価が公正なものであったならばその株式が有していると認められる価格をいう(最判平成24年2月29日)。吸収分割により企業価値の増加が生じない場合,株式買取請求に係る株式の買取価格である「公正な価格」とは,原則として,当該株式買取請求がされた日におけるナカリセバ価格(吸収分割契約等を承認する旨の株主総会の決議がされることがなければその株式が有したであろう価格)をいう(最判平成23年4月19日)。 ウ.株式買取請求をした株主は,いつでも自由に吸収分割会社の承諾を得た場合に限り,その請求を撤回することができる。785条7項 エ.株式買取請求があった場合において,株式の買取価格の決定につき株主と株式会社との間に協議が整ったときは,当該株式会社は,吸収分割の効力発生日から60日以内にその支払をしなければならない。786条1項
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "株式会社が行う吸収分割において株主が吸収分割会社に対して行う株式買取請求に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.吸収分割をするために株主総会の決議を要する場合において,当該株主総会で議決権を行使できる株主が株式買取請求をするためには,当該株主総会に先立って当該吸収分割に反対する旨を会社に通知し,かつ,当該株主総会において当該吸収分割に反対することを要する。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.最高裁判所の判例によれば,吸収分割により企業価値の増加が生じない場合,株式買取請求に係る株式の買取価格である「公正な価格」とは,原則として,吸収分割契約に定められていた吸収分割の対価が公正なものであったならばその株式が有していると認められる価格をいう。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.株式買取請求をした株主は,いつでも自由に,その請求を撤回することができる。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.株式買取請求があった場合において,株式の買取価格の決定につき株主と株式会社との間に協議が整ったときは,当該株式会社は,吸収分割の効力発生日から60日以内にその支払をしなければならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "3", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.吸収分割をするために株主総会の決議を要する場合において,当該株主総会で議決権を行使できる株主が株式買取請求をするためには,当該株主総会に先立って当該吸収分割に反対する旨を会社に通知し,かつ,当該株主総会において当該吸収分割に反対することを要する。785条1項2項1号イ", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.最高裁判所の判例によれば,吸収分割により企業価値の増加が生じない場合以外の場合,株式買取請求に係る株式の買取価格である「公正な価格」とは,原則として,吸収分割契約に定められていた吸収分割の対価が公正なものであったならばその株式が有していると認められる価格をいう(最判平成24年2月29日)。吸収分割により企業価値の増加が生じない場合,株式買取請求に係る株式の買取価格である「公正な価格」とは,原則として,当該株式買取請求がされた日におけるナカリセバ価格(吸収分割契約等を承認する旨の株主総会の決議がされることがなければその株式が有したであろう価格)をいう(最判平成23年4月19日)。", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.株式買取請求をした株主は,いつでも自由に吸収分割会社の承諾を得た場合に限り,その請求を撤回することができる。785条7項", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.株式買取請求があった場合において,株式の買取価格の決定につき株主と株式会社との間に協議が整ったときは,当該株式会社は,吸収分割の効力発生日から60日以内にその支払をしなければならない。786条1項", "title": "解説" } ]
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: [[../問題17|←前の問題]] : [[../問題19|次の問題→]] == 問題 ==  株式会社が行う吸収分割において株主が吸収分割会社に対して行う株式買取請求に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.吸収分割をするために株主総会の決議を要する場合において,当該株主総会で議決権を行使できる株主が株式買取請求をするためには,当該株主総会に先立って当該吸収分割に反対する旨を会社に通知し,かつ,当該株主総会において当該吸収分割に反対することを要する。 イ.最高裁判所の判例によれば,吸収分割により企業価値の増加が生じない場合,株式買取請求に係る株式の買取価格である「公正な価格」とは,原則として,吸収分割契約に定められていた吸収分割の対価が公正なものであったならばその株式が有していると認められる価格をいう。 ウ.株式買取請求をした株主は,いつでも自由に,その請求を撤回することができる。 エ.株式買取請求があった場合において,株式の買取価格の決定につき株主と株式会社との間に協議が整ったときは,当該株式会社は,吸収分割の効力発生日から60日以内にその支払をしなければならない。 </div> <div style="column-count:6;"> :1.アイ :2.アウ :3.アエ :4.イウ :5.イエ :6.ウエ </div> == 正解 == 3 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.吸収分割をするために株主総会の決議を要する場合において,当該株主総会で議決権を行使できる株主が株式買取請求をするためには,当該株主総会に先立って当該吸収分割に反対する旨を会社に通知し,かつ,当該株主総会において当該吸収分割に反対することを要する。<ins>785条1項2項1号イ</ins> イ.最高裁判所の判例によれば,吸収分割により企業価値の増加が生じない場合<ins>以外の場合</ins>,株式買取請求に係る株式の買取価格である「公正な価格」とは,原則として,吸収分割契約に定められていた吸収分割の対価が公正なものであったならばその株式が有していると認められる価格をいう<ins>(最判平成24年2月29日)</ins>。<ins>吸収分割により企業価値の増加が生じない場合,株式買取請求に係る株式の買取価格である「公正な価格」とは,原則として,当該株式買取請求がされた日におけるナカリセバ価格(吸収分割契約等を承認する旨の株主総会の決議がされることがなければその株式が有したであろう価格)をいう(最判平成23年4月19日)。</ins> ウ.株式買取請求をした株主は,<del>いつでも自由に</del><ins>吸収分割会社の承諾を得た場合に限り</ins>,その請求を撤回することができる。<ins>785条7項</ins> エ.株式買取請求があった場合において,株式の買取価格の決定につき株主と株式会社との間に協議が整ったときは,当該株式会社は,吸収分割の効力発生日から60日以内にその支払をしなければならない。<ins>786条1項</ins> </div> == 参照法令等 == * [http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=417AC0000000086 会社法] * [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=81262 最判平成23年4月19日] * [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=82063 最判平成24年2月29日] : [[../問題17|←前の問題]] : [[../問題19|次の問題→]] [[カテゴリ:企業法]]
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2022-11-29T05:10:24Z
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24,643
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/管理会計論/問題2
当工場では部門別原価計算を採用しており,補助部門費の配賦においては,これまで「補助部門間相互の用役の授受を計算上無視する配賦方法」を用いてきた。しかし,この方法では正確性に欠けるのではないかとの懸念から,配賦方法を変更する必要性について現在,検討中である。次の〔資料〕に基づき,「補助部門間相互の用役の授受について計算上も完全に反映する配賦方法」によって計算した場合,補助部門費配賦後の第一製造部門費と第二製造部門費の正しい組合せとして最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,計算過程で端数が生じる場合,計算途中では四捨五入せず,最終数値の円未満を四捨五入すること。(7点) 〔資料〕 1.部門費データ 2.補助部門費の配賦データ 5 修繕部門費をX円,動力部門費をY円とする。 X=114,000+30,000+0.1Y Y=401,100+30,000+0.1X これを解くと,X=189,000円,Y=450,000円.この解を上記式に代入して,
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "当工場では部門別原価計算を採用しており,補助部門費の配賦においては,これまで「補助部門間相互の用役の授受を計算上無視する配賦方法」を用いてきた。しかし,この方法では正確性に欠けるのではないかとの懸念から,配賦方法を変更する必要性について現在,検討中である。次の〔資料〕に基づき,「補助部門間相互の用役の授受について計算上も完全に反映する配賦方法」によって計算した場合,補助部門費配賦後の第一製造部門費と第二製造部門費の正しい組合せとして最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,計算過程で端数が生じる場合,計算途中では四捨五入せず,最終数値の円未満を四捨五入すること。(7点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "〔資料〕", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "1.部門費データ", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "2.補助部門費の配賦データ", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "5", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "修繕部門費をX円,動力部門費をY円とする。", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "X=114,000+30,000+0.1Y", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "Y=401,100+30,000+0.1X", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "これを解くと,X=189,000円,Y=450,000円.この解を上記式に代入して,", "title": "解説" } ]
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: [[../問題1|←前の問題]] : [[../問題3|次の問題→]] == 問題 ==  当工場では部門別原価計算を採用しており,補助部門費の配賦においては,これまで「補助部門間相互の用役の授受を計算上無視する配賦方法」を用いてきた。しかし,この方法では正確性に欠けるのではないかとの懸念から,配賦方法を変更する必要性について現在,検討中である。次の〔'''資料'''〕に基づき,「補助部門間相互の用役の授受について計算上も完全に反映する配賦方法」によって計算した場合,補助部門費配賦後の第一製造部門費と第二製造部門費の正しい組合せとして最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,計算過程で端数が生じる場合,計算途中では四捨五入せず,最終数値の円未満を四捨五入すること。(7点) 〔'''資料'''〕 1.部門費データ {| class="wikitable" |+ |第一製造部門 |第二製造部門 |修繕部門 |動力部門 |工場事務部門 |- |3,480,000円 |2,280,000円 |114,000円 |401,100円 |300,000円 |} 2.補助部門費の配賦データ {| class="wikitable" |+ | |配賦基準 |第一製造部門 |第二製造部門 |修繕部門 |動力部門 |工場事務部門 |- |修繕部門費 |修繕回数(回) |50 |40 |- |10 |- |- |動力部門費 |動力供給量(kwh) |60,000 |30,000 |10,000 |- |- |- |工場事務部門費 |従業員数(人) |40 |40 |10 |10 |10 |} {| class="wikitable" |+ | |第一部門製造費 |第二部門製造費 |- |1. |3,938,400円 |2,636,700円 |- |2. |3,960,733円 |2,614,367円 |- |3. |3,962,610円 |2,612,490円 |- |4. |3,964,210円 |2,610,890円 |- |5. |3,964,500円 |2,610,600円 |} == 正解 == 5 == 解説 == === 工場事務部門費の配賦 === {| class="wikitable" |+ ! !第一製造部門 !第二製造部門 !修繕部門 !動力部門 !工場事務部門 !計 |- !配賦割合(資料2より) |40% |40% |10% |10% |- |100% |- !工場事務部門費 |120,000 |120,000 |30,000 |30,000 |- |300,000 |} === 立式 === 修繕部門費をX円,動力部門費をY円とする。 {| class="wikitable" |+ 部門費 ! !第一製造部門 !第二製造部門 !修繕部門 (X) !動力部門 (Y) |- !配賦前 |3,480,000円 |2,280,000円 |114,000円 |401,100円 |- !工場事務部門費配賦額 |120,000円 |120,000円 |30,000円 |30,000円 |- !修繕部門費 |0.5X |0.4X |- |0.1X |- !動力部門費 |0.6Y |0.3Y |0.1Y |- |- !計 |3,480,000 +120,000 +0.5X +0.6Y |2,280,000 +120,000 +0.4X +0.3Y |114,000 +30,000 +0.1Y |401,100 +30,000 +0.1X |} X=114,000+30,000+0.1Y Y=401,100+30,000+0.1X これを解くと,X=189,000円,Y=450,000円.この解を上記式に代入して, ;第一部門費 :3,480,000 +120,000 +0.5×189,000 +0.6×450,000 =3,964,500 ;第二部門費 :2,280,000 +120,000 +0.4×189,000 +0.3×450,000 =2,610,600 : [[../問題1|←前の問題]] : [[../問題3|次の問題→]] [[カテゴリ:管理会計]]
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2022-11-28T16:28:23Z
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24,644
生成文法/数学
生成文法の文献によく現れる数学の概念を説明します。
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生成文法の文献によく現れる数学の概念を説明します。
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24,645
生成文法/集合
集合 set は個体 individual や命題 proposition などの集まりです。集合を構成するものを元(あるいは成員)member と言います。 集合の例を考えます。我々の世界にいる 🐈、🐕、🐇、🐿、🐖、🐄、・・・(これらを実在のものそのものとしましょう)の集合 A は次のように表されます: (1) A = {🐈, 🐕, 🐇, 🐿, 🐖, 🐄, ...} 実在のものの代わりに記号を使うことにします。 (2) 🐈 = c, 🐕 = d, 🐇 = r, 🐿 = s, 🐖 = p, 🐄 = o, ... 記号を使って書き換えると、 (3) A = {c, d, o, p, r, s, ...} となります。ここで実在のものを記号で表現しましたが、置き換えたとしても記号は実在のものを指すものとします。これを「外延性の原理」と言います。 さて、ある元がある集合に属していることを示す場合、 (4) e ∈ S と書きます。上の例でいうと、 (5) c ∈ A, d ∈ A, ... です。この元には、元を何も持たない集合が含まれます。これを「空集合」といい、Ø と書きます。すなわち、 (6) Ø ∈ A です。
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集合 set は個体 individual や命題 proposition などの集まりです。集合を構成するものを元(あるいは成員)member と言います。 集合の例を考えます。我々の世界にいる 🐈、🐕、🐇、🐿、🐖、🐄、・・・(これらを実在のものそのものとしましょう)の集合 A は次のように表されます: (1) A = {🐈, 🐕, 🐇, 🐿, 🐖, 🐄, ...} 実在のものの代わりに記号を使うことにします。 (2) 🐈 = c, 🐕 = d, 🐇 = r, 🐿 = s, 🐖 = p, 🐄 = o, ... 記号を使って書き換えると、 (3) A = {c, d, o, p, r, s, ...} となります。ここで実在のものを記号で表現しましたが、置き換えたとしても記号は実在のものを指すものとします。これを「外延性の原理」と言います。 さて、ある元がある集合に属していることを示す場合、 (4) e ∈ S と書きます。上の例でいうと、 (5) c ∈ A, d ∈ A, ... です。この元には、元を何も持たない集合が含まれます。これを「空集合」といい、Ø と書きます。すなわち、 (6) Ø ∈ A です。
集合 set は個体 individual や命題 proposition などの集まりです。集合を構成するものを元(あるいは成員)member と言います。 集合の例を考えます。我々の世界にいる 🐈、🐕、🐇、🐿、🐖、🐄、・・・(これらを実在のものそのものとしましょう)の集合 A は次のように表されます: (1) A = {🐈, 🐕, 🐇, 🐿, 🐖, 🐄, ...} 実在のものの代わりに記号を使うことにします。 (2) 🐈 = c, 🐕 = d, 🐇 = r, 🐿 = s, 🐖 = p, 🐄 = o, ... 記号を使って書き換えると、 (3) A = {c, d, o, p, r, s, ...} となります。ここで実在のものを記号で表現しましたが、置き換えたとしても記号は実在のものを指すものとします。これを「外延性の原理」と言います。 さて、ある元がある集合に属していることを示す場合、 (4) e ∈ S と書きます。上の例でいうと、 (5) c ∈ A, d ∈ A, ... です。この元には、元を何も持たない集合が含まれます。これを「空集合」といい、Ø と書きます。すなわち、 (6) Ø ∈ A です。 [[カテゴリ:生成文法]]
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2022-12-01T17:26:59Z
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24,647
聖書ヘブライ語入門/前置詞(1)/単語2
10.6 単語
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "10.6 単語", "title": "" } ]
10.6 単語
10.6 単語 {| |- |style="text-align:left" |君主 |style="text-align:left" |נָשִֹיא |- |style="text-align:left" |アブサロム |style="text-align:left" |אַבְשָׁלוֹם |- |style="text-align:left" |タマル |style="text-align:left" |תָּמָר |- |style="text-align:left" |尊い |style="text-align:left" |יָקָר |- |style="text-align:left" |知恵 |style="text-align:left" |חָכְמָה |- |style="text-align:left" |遠い |style="text-align:left" |רָחֹק |} [[カテゴリ:聖書ヘブライ語]]
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2022-11-22T17:11:29Z
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24,652
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/管理会計論/問題4
当工場では,製造部門費について予定配賦を行う実際部門別個別原価計算を採用している。次の〔資料〕に基づき,組立部門費配賦差異の計算を行い,予算差異として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,計算過程で端数が生じる場合,計算途中では四捨五入せず,最終数値の円未満を四捨五入すること。(8 点) 〔資料〕 1.年間の予算データ 2.当月の実績データ 3. 計算条件 3 ※予定用役消費量が不明なためフル操業と仮定して、予定用役消費量と用役消費能力が等しいと考える。 予算許容額(@280×6,350時間+固定費37,500,000÷12カ月) -実際発生額(1,761,000+3,100,000) =42,000(有利差異)
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "当工場では,製造部門費について予定配賦を行う実際部門別個別原価計算を採用している。次の〔資料〕に基づき,組立部門費配賦差異の計算を行い,予算差異として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,計算過程で端数が生じる場合,計算途中では四捨五入せず,最終数値の円未満を四捨五入すること。(8 点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "〔資料〕", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "1.年間の予算データ", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "2.当月の実績データ", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "3. 計算条件", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "3", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "※予定用役消費量が不明なためフル操業と仮定して、予定用役消費量と用役消費能力が等しいと考える。", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "予算許容額(@280×6,350時間+固定費37,500,000÷12カ月) -実際発生額(1,761,000+3,100,000) =42,000(有利差異)", "title": "解説" } ]
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:[[../問題3|←前の問題]] :[[../問題5|次の問題→]] == 問題 ==  当工場では,製造部門費について予定配賦を行う実際部門別個別原価計算を採用している。次の〔資料〕に基づき,組立部門費配賦差異の計算を行い,予算差異として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,計算過程で端数が生じる場合,計算途中では四捨五入せず,最終数値の円未満を四捨五入すること。(8 点) 〔'''資料'''〕 1.年間の予算データ : (1) 部門費予算額と基準操業度 {| class="wikitable" |- | || 固定費 || 変動費 || 基準操業度 |- | 組立部門 || 30,300,000円 || 16,680,000円 || 75,000時間 |- | 塗装部門 || 15,000,000円 || 7,020,000円 || 50,000時間 |- | 動力部門 || 12,000,000円 || 7,200,000円 || - |} : (2) 各製造部門における動力消費能力 :: 組立部門  3,600 kwh &emsp; 塗装部門  2,400 kwh 2.当月の実績データ : (1) 部門費実際発生額と実際操業度 {| class="wikitable" |- | || 固定費 || 変動費 || 基準操業度 |- | 組立部門 || 2,500,000円 || 1,425,000円 || 6,350時間 |- | 塗装部門 || 1,065,000円 || 645,000円 || 4,520時間 |- | 動力部門 || 1,050,000円 || 630,000円 || - |} : (2) 各製造部門における動力実際消費量 :: 組立部門  280 kwh &emsp; 塗装部門  220 kwh 3. 計算条件 :(1) 各製造部門費の製品への配賦基準は機械作業時間である。 :(2) 補助部門である動力部門の製造部門への配賦については,複数基準配賦法による予定配賦を行っている。 :(3) 補助部門の固定費および変動費は,製造部門においても固定費および変動費として扱う。 {| |- | 1.28,000 円(有利差異) | 2.34,000 円(不利差異) | 3.42,000 円(有利差異) |- | 4.46,000 円(不利差異) | 5.54,000 円(有利差異) | |} == 正解 == 3 == 解説 == === 予定配賦率 === {| class="wikitable" |+ 変動費率 |- ! !! 組立部門 !! 塗装部門 |- | 部門費 || 16,680,000 || 7,020,000 |- | 動力部門費 | 4,320,000<ref>7,200,000÷(3,600+2,400kwh) ×3,600</ref> | 2,880,000 |- | 製造部門費 || 21,000,000 || 9,900,000 |- | 変動費率 || 280円/時間 || 198円/時間 |} ※予定用役消費量が不明なためフル操業と仮定して、予定用役消費量と用役消費能力が等しいと考える。 {| class="wikitable" |+ 固定費率 |- ! !! 組立部門 !! 塗装部門 |- | 部門費 || 30,300,000 || 15,000,000 |- | 動力部門費 | 7,200,000<ref>動力部門変動費率12,000,000÷(3,600+2,400kwh)=1,200円/kwh<br>配賦額1,200円/kwh×3,600kwh</ref> | 4,800,000 |- | 製造部門費 || 37,500,000 || 19,800,000 |- | 固定費率 || 500円/時間 || 396円/時間 |} === 実際発生額 === {| class="wikitable" |+ 変動費配賦 |- ! !! 組立部門 !! 塗装部門 |- | 部門費 || 1,425,000 || 645,000 |- | 動力部門費 | 336,000<ref>1,200円/kwh×280kwh</ref> | 264,000 |- | 製造部門費 || 1,761,000 || 909,000 |} {| class="wikitable" |+ 固定費配賦 |- ! !! 組立部門 !! 塗装部門 |- | 部門費 || 2,500,000 || 1,065,000 |- | 動力部門費 | 600,000<ref>12,000,000÷(3,600+2,400kwh) ×3,600kwh ÷12カ月</ref> | 400,000 |- | 製造部門費 || 3,100,000 || 1,465,000 |} === 予算差異 === 予算許容額(@280×6,350時間+固定費37,500,000÷12カ月) -実際発生額(1,761,000+3,100,000) =42,000(有利差異) <references /> :[[../問題3|←前の問題]] :[[../問題5|次の問題→]] [[カテゴリ:管理会計]]
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2022-11-28T16:28:30Z
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24,653
解析学基礎/偏微分方程式
(en:Calculusよりインポートを依頼予定です)
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "(en:Calculusよりインポートを依頼予定です)", "title": "" } ]
(en:Calculusよりインポートを依頼予定です)
([[:en:Calculus]]よりインポートを依頼予定です) [[カテゴリ:微分方程式]]
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2022-11-23T12:08:33Z
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24,655
統計学基礎/仮説検定
世の中には、無数の異なったデータの種類に対して、無数の異なった検定方法があります。検定をするにあたっては、自分がどんな種類のデータを持っているかを理解することです。変数は量的でしょうか、それとも質的でしょうか?どんな検定がどんなタイプのデータに向いているかは、データのサイズであったり、分布や尺度の種類に左右されます。加えて、データの標本がどのように異なりうるかを理解することは重要です。量的データのを特徴づける3つの主な要素は、中心、広がり、形状です。 ほとんどの人が「検定」を行うとき、「中心を表す代表値」をテストしがちです。なぜでしょう?今、あなたは2つのデータセットを持っていて、それらが異なるものか否かを知りたいと思っているとしましょう。これをテストする1つの方法は、それらの中心(例えば、それらの平均値)が異なるか否かを調べることでしょう。 2つの左右対称なベル型のカーブと、それらの中央にまっすぐに引かれた直線(このページに表示してあります)をイメージしてください。もし一方の標本が他方と大幅に異なっていれば(値が非常に大きく出ている、等)、平均値は典型的な異なりを見せるでしょう。だから、2つの標本が異なっているかを見るための検定では、普通は2つの平均値を比較します。 2つの中央値(メディアン、これも中心を表す代表値)を比較することもできます。また時には、2つの標本が同じ広がり(分散)を持っているかを知るために検定を行いたいということもあるかもしれません。中心を表す代表値、広がりを表す代表値、etc. の統計値は別々の分布に従うため、異なる検定手法がなされ、活用されなければなりません。 最後に。大半の人は仮説検定の結果をある特定の数値―p値によって要約します。もしp値が有意水準(普通は α = 5 % {\displaystyle \alpha =5\%} ですが、科学の他の分野、例えば医学ではもっと低い水準であることもあります)を下回っていたら、帰無仮説は棄却されます。しかし、これは対立仮説を受容するということを意味してはいません。p値は本質的には、極めて観測されにくいような検定統計量の値が得られる確率です。もしp値が有意水準よりも大きかったら、帰無仮説の棄却に失敗したということですが、これは帰無仮説が正しいことを意味しているのではありません。
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世の中には、無数の異なったデータの種類に対して、無数の異なった検定方法があります。検定をするにあたっては、自分がどんな種類のデータを持っているかを理解することです。変数は量的でしょうか、それとも質的でしょうか?どんな検定がどんなタイプのデータに向いているかは、データのサイズであったり、分布や尺度の種類に左右されます。加えて、データの標本がどのように異なりうるかを理解することは重要です。量的データのを特徴づける3つの主な要素は、中心、広がり、形状です。 ほとんどの人が「検定」を行うとき、「中心を表す代表値」をテストしがちです。なぜでしょう?今、あなたは2つのデータセットを持っていて、それらが異なるものか否かを知りたいと思っているとしましょう。これをテストする1つの方法は、それらの中心(例えば、それらの平均値)が異なるか否かを調べることでしょう。 2つの左右対称なベル型のカーブと、それらの中央にまっすぐに引かれた直線(このページに表示してあります)をイメージしてください。もし一方の標本が他方と大幅に異なっていれば(値が非常に大きく出ている、等)、平均値は典型的な異なりを見せるでしょう。だから、2つの標本が異なっているかを見るための検定では、普通は2つの平均値を比較します。 2つの中央値(メディアン、これも中心を表す代表値)を比較することもできます。また時には、2つの標本が同じ広がり(分散)を持っているかを知るために検定を行いたいということもあるかもしれません。中心を表す代表値、広がりを表す代表値、etc. の統計値は別々の分布に従うため、異なる検定手法がなされ、活用されなければなりません。 最後に。大半の人は仮説検定の結果をある特定の数値―p値によって要約します。もしp値が有意水準を下回っていたら、帰無仮説は棄却されます。しかし、これは対立仮説を受容するということを意味してはいません。p値は本質的には、極めて観測されにくいような検定統計量の値が得られる確率です。もしp値が有意水準よりも大きかったら、帰無仮説の棄却に失敗したということですが、これは帰無仮説が正しいことを意味しているのではありません。
[[File:Gaussian_differences.svg|thumb|alt=Two examples of how the means of two distributions may be different, leading to two different statistical hypotheses|分布の種類は同一だけど、平均値が異なっている。]] 世の中には、無数の異なったデータの種類に対して、無数の異なった検定方法があります。検定をするにあたっては、自分がどんな種類のデータを持っているかを理解することです。変数は量的でしょうか、それとも質的でしょうか?どんな検定がどんなタイプのデータに向いているかは、データのサイズであったり、分布や尺度の種類に左右されます。加えて、データの標本がどのように異なりうるかを理解することは重要です。量的データのを特徴づける3つの主な要素は、中心、広がり、形状です。 ほとんどの人が「検定」を行うとき、「中心を表す代表値」をテストしがちです。なぜでしょう?今、あなたは2つのデータセットを持っていて、それらが異なるものか否かを知りたいと思っているとしましょう。これをテストする1つの方法は、それらの中心(例えば、それらの平均値)が異なるか否かを調べることでしょう。 2つの左右対称なベル型のカーブと、それらの中央にまっすぐに引かれた直線(このページに表示してあります)をイメージしてください。もし一方の標本が他方と大幅に異なっていれば(値が非常に大きく出ている、等)、平均値は典型的な異なりを見せるでしょう。だから、2つの標本が異なっているかを見るための検定では、普通は2つの平均値を比較します。 2つの中央値(メディアン、これも中心を表す代表値)を比較することもできます。また時には、2つの標本が同じ広がり(分散)を持っているかを知るために検定を行いたいということもあるかもしれません。中心を表す代表値、広がりを表す代表値、etc. の統計値は別々の分布に従うため、異なる検定手法がなされ、活用されなければなりません。 最後に。大半の人は仮説検定の結果をある特定の数値―p値によって要約します。もしp値が有意水準(普通は<math>\alpha=5\%</math>ですが、科学の他の分野、例えば医学ではもっと低い水準であることもあります)を下回っていたら、帰無仮説は棄却されます。しかし、これは対立仮説を受容するということを意味してはいません。p値は本質的には、極めて観測されにくいような検定統計量の値が得られる確率です。もしp値が有意水準よりも大きかったら、帰無仮説の棄却に失敗したということですが、これは帰無仮説が正しいことを意味しているのではありません。 [[カテゴリ:統計学]]
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2022-11-20T10:36:08Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E7%B5%B1%E8%A8%88%E5%AD%A6%E5%9F%BA%E7%A4%8E/%E4%BB%AE%E8%AA%AC%E6%A4%9C%E5%AE%9A
24,658
解析学基礎/ベクトル値関数
(en:Calculusよりインポートを依頼予定です)
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "(en:Calculusよりインポートを依頼予定です)", "title": "" } ]
(en:Calculusよりインポートを依頼予定です)
{{substub}} ([[:en:Calculus]]よりインポートを依頼予定です) [[カテゴリ:解析学]]
2018-11-27T04:21:35Z
2023-10-26T12:34:40Z
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24,678
線型代数学/行列の対角化
n 次正方行列 A があるとします。 n 次正則行列 P を上手くとって、 P とその逆行列とをそれぞれ右と左から掛けて(このようにサンドイッチにすることを相似変換といいます)、 のように n 次対角行列 D にすることを、行列 A の対角化といいます。対角化はできる場合とできない場合があるので、できる場合を対角化可能といいます。後に理由が明らかになりますが、対角化のことを固有値分解とも言います。対角化は固有値と非常に深い関係があるのです。 定義式を成分で表示してみると、 両辺に左からPを掛けると: ここで、Pを列ベクトル α → i {\displaystyle {\vec {\alpha }}_{i}} を並べて表記すると となるので、定義式は次のように書き直すことができます。 つまり、P の構成する各列ベクトルは Aの固有ベクトルであり、対応する対角成分はその固有ベクトルに対応する固有値になっているのです。 行列 P が正則であることは、これらの固有ベクトルが線形独立である(= n次元ベクトル空間の基底になっている)ことを意味します(「行列のランク」で習ったことを思い出しましょう)。 ここまでの議論は完全に逆向きにたどることができます。つまり、 行列Aの固有ベクトルだけで n 次元ベクトル空間の基底が構成できるならば、それら縦ベクトルを横に並べた行列 P は正則行列となり、 が成り立ち、 D の対角成分には A の固有値が並ぶのです。 これが対角化できるためのひとつの必要十分条件です。同時に、実際に対角化を行うための手順にもなっています。 次の行列は対角化可能かどうか判断し、可能な場合は対角化しなさい。 固有値と固有ベクトルを計算すると、 固有ベクトルを並べた の行列式は0でないため、これを使って対角化できます。実際に計算すると、
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n 次正方行列 A があるとします。 n 次正則行列 P を上手くとって、 P とその逆行列とをそれぞれ右と左から掛けて(このようにサンドイッチにすることを相似変換といいます)、 のように n 次対角行列 D にすることを、行列 A の対角化といいます。対角化はできる場合とできない場合があるので、できる場合を対角化可能といいます。後に理由が明らかになりますが、対角化のことを固有値分解とも言います。対角化は固有値と非常に深い関係があるのです。
''n'' 次正方行列 ''A'' があるとします。 ''n'' 次正則行列 ''P'' を上手くとって、 ''P'' とその逆行列とをそれぞれ右と左から掛けて(このようにサンドイッチにすることを相似変換といいます)、 : <math> P^{-1} A P = D </math> のように ''n'' 次対角行列 ''D'' にすることを、行列 ''A'' の'''対角化'''といいます。対角化はできる場合とできない場合があるので、できる場合を'''対角化可能'''といいます。後に理由が明らかになりますが、対角化のことを'''固有値分解'''とも言います。対角化は固有値と非常に深い関係があるのです。 == 対角化可能であるための必要十分条件 == 定義式を成分で表示してみると、 : <math>P^{-1}AP = \begin{pmatrix} \lambda_1 & 0 & \dots & 0 \\ 0 & \lambda_2 & \dots & 0 \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ 0 & 0 & \dots & \lambda_n \end{pmatrix}</math> 両辺に左から''P''を掛けると: : <math>AP = P\begin{pmatrix} \lambda_1 & 0 & \dots & 0 \\ 0 & \lambda_2 & \dots & 0 \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ 0 & 0 & \dots & \lambda_n \end{pmatrix}</math> ここで、''P''を列ベクトル <math>\vec{\alpha}_{i}</math> を並べて表記すると :<math>P = \begin{pmatrix}\vec{\alpha}_1 & \vec{\alpha}_2 & \cdots & \vec{\alpha}_n\end{pmatrix}</math> となるので、定義式は次のように書き直すことができます。 :<math>A\vec{\alpha}_i = \lambda_i\vec{\alpha}_i\qquad(i=1,2,\cdots,n)</math> つまり、''P'' の構成する各列ベクトルは ''A''の'''固有ベクトル'''であり、対応する対角成分はその固有ベクトルに対応する'''固有値'''になっているのです。 行列 ''P'' が正則であることは、これらの固有ベクトルが線形独立である(= ''n''次元ベクトル空間の基底になっている)ことを意味します(「行列のランク」で習ったことを思い出しましょう)。 ここまでの議論は完全に逆向きにたどることができます。つまり、 '''行列''A''の固有ベクトルだけで ''n'' 次元ベクトル空間の基底が構成できる'''ならば、それら縦ベクトルを横に並べた行列 ''P'' は正則行列となり、 : <math> P^{-1} A P = D </math> が成り立ち、 ''D'' の対角成分には ''A'' の固有値が並ぶのです。 これが対角化できるためのひとつの必要十分条件です。同時に、実際に対角化を行うための手順にもなっています。 == 計算例 == 次の行列は対角化可能かどうか判断し、可能な場合は対角化しなさい。 :<math>A=\begin{pmatrix} 1& 2 & 0 \\ 0 & 3 & 0 \\ 2 & -4 & 2 \end{pmatrix}</math> 固有値と固有ベクトルを計算すると、 :<math> \lambda_1 = 3, \quad \lambda_2 = 2, \quad \lambda_3= 1 </math> :<math>v_1 = \begin{pmatrix} -1 \\ -1 \\ 2 \end{pmatrix}, \quad v_2 = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}, \quad v_3 = \begin{pmatrix} -1 \\ 0 \\ 2 \end{pmatrix}</math> 固有ベクトルを並べた :<math>P= \begin{pmatrix} -1 & 0 & -1 \\ -1 & 0 & 0 \\ 2 & 1 & 2 \end{pmatrix}</math> の行列式は0でないため、これを使って'''対角化できます'''。実際に計算すると、 :<math>P^{-1}AP = \begin{pmatrix} 0 & -1 & 0 \\ 2 & 0 & 1 \\ -1 & 1 & 0 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1 & 2 & 0 \\ 0 & 3 & 0 \\ 2 & -4 & 2 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} -1 & 0 & -1 \\ -1 & 0 & 0 \\ 2 & 1 & 2 \end{pmatrix}</math> :<math>=\begin{pmatrix} 3 & 0 & 0 \\ 0 & 2 & 0 \\ 0 & 0 & 1\end{pmatrix}</math> [[カテゴリ:線形代数学]]
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線型代数学/行列の三角化
n 次正方行列 A があるとします。 n 次正則行列 P を上手くとり、 P とその逆行列とをそれぞれ右と左から掛けることで(このようにサンドイッチにすることを相似変換といいます)、 のように n 次上三角行列 U にすることを、行列 A の三角化といいます。 対角化はできる場合とできない場合がありましたが、三角化に関しては、成分が複素数でもよい(実数にこだわらない)ならば、常に可能であることがわかっています。 三角化も対角化と同じく、固有値と深い関係があります。 次の行列の三角化を試みます。 まず、固有値と固有ベクトルを求めてみましょう(なぜそうするのかは後で明かされます)。固有値を λ {\displaystyle \lambda } とすると、固有方程式は よって λ 1 = − 5 {\displaystyle \lambda _{1}=-5} 、 λ 1 = 3 {\displaystyle \lambda _{1}=3} とします。 λ 1 {\displaystyle \lambda _{1}} に対応した固有ベクトルを とすると、 ここで、1行目と3行目は同値なので、x , y , z に対する独立な1次条件式は2つです。よって、 λ 1 {\displaystyle \lambda _{1}} に対する固有空間の次元は1です。 スカラー倍を除いた唯一の固有ベクトルは、例えば、 のようにとれます。 ここで、もう一方の固有値のことはいったん忘れて、 v 1 → {\displaystyle {\vec {{\mathbf {v} }_{1}}}} と線形独立な列ベクトル2本を何でもいいから持ってきます。例えば、 これらを横に並べて3次の正方行列を作ります。 P 1 {\displaystyle P_{1}} は正則行列なので逆行列が存在します。そこで P 1 − 1 A P 1 {\displaystyle {P_{1}}^{-1}AP_{1}} を作ると、1列目は (1,1) 成分を除いて0になります。つまり、1列目に限っては「上三角化」ができたということです。 これを確かめるため、行列を単位ベクトル に(左から)掛けることで1列目だけを取り出すと、 実際計算してみると、 次は、右下の2×2の小行列 A ~ = ( − 5 0 − 8 3 ) {\displaystyle {\tilde {A}}={\begin{pmatrix}-5&0\\-8&3\end{pmatrix}}} に注目します。ここまでの流れと全く同じようにして、2次正則行列を使って、この小行列を1列目に限っては「上三角化」ができることがわかります。手順は全く同じなので省略すると、例えば、 P 2 ~ = ( 1 1 1 0 ) {\displaystyle {\tilde {P_{2}}}={\begin{pmatrix}1&1\\1&0\end{pmatrix}}} のようにとると、 となるので、これを3次行列に「拡大」して、 とすれば、 " ⋆ {\displaystyle \star } " は、計算すればわかる何らかの定数です(上三角化が完了したことに注意を向けたかったのであえて明示しませんでした)。 これら2段階を組み合わせれば、まさに行いたかった三角化が達成されます。つまり、 とおけば、 上記の長い例題で行った手順は、行列がどんな大きさであろうと実行できます。標語的に書けば、 「 n 次正方行列の1列目だけを上三角化」→「 (n-1) 次正方行列の1列目だけを上三角化」→ ... →「2次正方行列の1列目だけを上三角化」 と (n-1) 回の同様な作業を反復して、出てきた正則行列をすべて掛け合わせれば、必ず上三角化ができるわけです。 この証明をきちんと書き下すには数学的帰納法を使う必要がありますが、何をすべきかはほとんど明らかになっているので明記はしないでおきます。
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n 次正方行列 A があるとします。 n 次正則行列 P を上手くとり、 P とその逆行列とをそれぞれ右と左から掛けることで(このようにサンドイッチにすることを相似変換といいます)、 のように n 次上三角行列 U にすることを、行列 A の三角化といいます。 対角化はできる場合とできない場合がありましたが、三角化に関しては、成分が複素数でもよい(実数にこだわらない)ならば、常に可能であることがわかっています。 三角化も対角化と同じく、固有値と深い関係があります。
''n'' 次正方行列 ''A'' があるとします。 ''n'' 次正則行列 ''P'' を上手くとり、 ''P'' とその逆行列とをそれぞれ右と左から掛けることで(このようにサンドイッチにすることを相似変換といいます)、 : <math> P^{-1} A P = U </math> のように ''n'' 次上三角行列 ''U'' にすることを、行列 ''A'' の'''三角化'''といいます。 対角化はできる場合とできない場合がありましたが、三角化に関しては、成分が複素数でもよい(実数にこだわらない)ならば、常に可能であることがわかっています。 三角化も対角化と同じく、固有値と深い関係があります。 == 三角化の手順 == 次の行列の三角化を試みます。 :<math>A=\begin{pmatrix} 4 & -8 & 1 \\ 1 & -5 & 1 \\ -9 & 8 & -6 \end{pmatrix}</math> まず、固有値と固有ベクトルを求めてみましょう(なぜそうするのかは後で明かされます)。固有値を <math>\lambda</math> とすると、固有方程式は :<math> \det(A - \lambda I_3)</math> :<math>=\det \begin{pmatrix} 4 - \lambda & -8 & 1 \\ 1 & -5 - \lambda & 1 \\ -9 & 8 & -6- \lambda \end{pmatrix}</math> :<math>\begin{align} & = \{ (4 - \lambda)(-5 - \lambda)(-6- \lambda)+72+8 \} \\ & -\{ -9(-5 - \lambda)-8(-6- \lambda)+8(4 - \lambda) \} \\ & = - \lambda^3 -7\lambda^2 +5\lambda +75 =0 \end{align}</math> よって :<math>(\lambda +5)^2(\lambda -3)=0 </math> <math>\lambda_1 = -5</math> 、<math>\lambda_1 = 3</math> とします。<math>\lambda_1</math> に対応した固有ベクトルを :<math>\vec{{\mathbf v}_1} = \begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}</math> とすると、 :<math>\begin{pmatrix} 9 & -8 & 1 \\ 1 & 0 & 1 \\ -9 & 8 & -1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix} =\begin{pmatrix} 9x & -8y & z \\ x & 0 & z \\ -9x & 8y & -z \end{pmatrix} =\begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}</math> ここで、1行目と3行目は同値なので、''x'' , ''y'' , ''z'' に対する独立な1次条件式は2つです。よって、 <math>\lambda_1</math> に対する固有空間の次元は1です<ref>固有方程式における重複度2を下回ってしまったので、この時点で、対角化は不可能だということがわかります。詳しくは、「固有値と固有ベクトル」、「行列の対角化」等を参照のこと。</ref>。 スカラー倍を除いた唯一の固有ベクトルは、例えば、 :<math>\vec{{\mathbf v}_1} = \begin{pmatrix} 1 \\ 1 \\ -1 \end{pmatrix}</math> のようにとれます。 ここで、もう一方の固有値のことはいったん忘れて、 <math>\vec{{\mathbf v}_1}</math> と線形独立な列ベクトル2本を'''何でもいいから'''持ってきます。例えば、 :<math>\vec{{\mathbf u}} = \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}, \vec{{\mathbf w}} = \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix}</math> これらを横に並べて3次の正方行列を作ります。 :<math>P_1 = \begin{pmatrix}\vec{{\mathbf v}_1} & \vec{{\mathbf u}} & \vec{{\mathbf w}}\end{pmatrix}</math> <math>P_1</math> は正則行列なので逆行列が存在します。そこで <math>{P_1}^{-1} A P_1</math> を作ると、1列目は (1,1) 成分を除いて0になります。つまり、'''1列目に限っては「上三角化」'''ができたということです。 これを確かめるため、行列を単位ベクトル :<math>\vec{{\mathbf e}_1} = \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}</math> に(左から)掛けることで1列目だけを取り出すと、 :<math>{P_1}^{-1} A P_1 \vec{{\mathbf e}_1} = {P_1}^{-1} A \begin{pmatrix}\vec{{\mathbf v}_1} & \vec{{\mathbf u}} & \vec{{\mathbf w}}\end{pmatrix} \vec{{\mathbf e}_1} = {P_1}^{-1} A \vec{{\mathbf v}_1} = \lambda_1 {P_1}^{-1} \vec{{\mathbf v}_1}</math> :<math> = \lambda_1 {P_1}^{-1} \begin{pmatrix}\vec{{\mathbf v}_1} & \vec{{\mathbf u}} & \vec{{\mathbf w}}\end{pmatrix} \vec{{\mathbf e}_1} = \lambda_1 {P_1}^{-1} P_1 \vec{{\mathbf e}_1} = \begin{pmatrix} \lambda_1 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}</math> 実際計算してみると、 :<math>{P_1}^{-1} = \begin{pmatrix} 0 & 0 & -1 \\ 1 & 0 & 1 \\ 0 & 1 & 1 \end{pmatrix}</math> :<math>{P_1}^{-1} A P_1 = \begin{pmatrix} -5 & 9 & -8 \\ 0 & -5 & 0 \\ 0 & -8 & 3 \end{pmatrix}</math> 次は、右下の2×2の小行列 <math>\tilde{A} =\begin{pmatrix} -5 & 0 \\ -8 & 3 \end{pmatrix}</math> に注目します。ここまでの流れと全く同じようにして、2次正則行列を使って、この小行列を'''1列目に限っては「上三角化」'''ができることがわかります。手順は全く同じなので省略すると、例えば、<math> \tilde{P_2} = \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 1 & 0 \end{pmatrix}</math> のようにとると、 :<math>{\tilde{P_2}}^{-1} \tilde{A} \tilde{P_2} = \begin{pmatrix} -5 & -8 \\ 0 & 3 \end{pmatrix}</math> となるので、これを3次行列に「拡大」して、 :<math>P_2 = \begin{pmatrix} 1 & \begin{matrix} 0 & 0 \end{matrix} \\ \begin{matrix} 0 \\ 0 \end{matrix} & \tilde{P_2} \end{pmatrix} , {P_2}^{-1} = \begin{pmatrix} 1 & \begin{matrix} 0 & 0 \end{matrix} \\ \begin{matrix} 0 \\ 0 \end{matrix} & {\tilde{P_2}}^{-1} \end{pmatrix} </math> とすれば、 :<math>{P_2}^{-1} \begin{pmatrix} -5 & 9 & -8 \\ 0 & -5 & 0 \\ 0 & -8 & 3 \end{pmatrix} P_2</math> :<math>=\begin{pmatrix} 1 & \begin{matrix} 0 & 0 \end{matrix} \\ \begin{matrix} 0 \\ 0 \end{matrix} & {\tilde{P_2}}^{-1} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} -5 & 9 & -8 \\ 0 & -5 & 0 \\ 0 & -8 & 3 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1 & 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回の同様な作業を反復して、出てきた正則行列をすべて掛け合わせれば、必ず上三角化ができるわけです。 この証明をきちんと書き下すには数学的帰納法を使う必要がありますが、何をすべきかはほとんど明らかになっているので明記はしないでおきます。 == 脚注 == {{reflist}} [[カテゴリ:線形代数学]]
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2022-11-22T17:06:38Z
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線型代数学/行列と行列式/第三類
索引
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ベクトル ベクトル 内積 外積 直線・平面 行列 行列の定義・和・差 行列の積 ブロック分けによる積 行列式 連立一次方程式 線形空間 線形写像 行列の標準形1 行列の標準形2 行列の標準形3 二次形式 索引
*ベクトル **[[線型代数学/行列と行列式/第三類/ベクトル|ベクトル]] **[[線型代数学/行列と行列式/第三類/内積|内積]] **[[線型代数学/行列と行列式/第三類/外積|外積]] **[[線型代数学/行列と行列式/第三類/直線・平面|直線・平面]] *行列 **[[線型代数学/行列と行列式/第三類/行列の定義・和・差|行列の定義・和・差]] **[[線型代数学/行列と行列式/第三類/行列の積|行列の積]] **[[線型代数学/行列と行列式/第三類/ブロック分けによる積|ブロック分けによる積]] *行列式 *連立一次方程式 *線形空間 *線形写像 *行列の標準形1 *行列の標準形2 *行列の標準形3 *二次形式 [[線型代数学/行列と行列式/第三類/索引|索引]] [[カテゴリ:線形代数学]]
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線型代数学/行列と行列式/第三類/ベクトル
中等課程でもベクトルを取扱ったが,線形代数ではベクトルは抽象的に定義していく. 中等課程では,ベクトルを「向き」と「大きさ」を持った矢印として定義した. そして,そのベクトルの始点を座標平面の原点に合わせたとき,ベクトルの終点の座標をベクトルの成分表示とした. しかし,線形代数でのベクトルは,必ずしも矢印である必要はない. 線形代数ではベクトルを成分表示から定義していく. いくつか数字を並べて,和や実数倍を定めたものをベクトルとするのである. 和や実数倍の計算の仕方は次のように,平面ベクトルや空間ベクトルの成分計算の自然な拡張になっている. 定義1 ベクトル n {\displaystyle n} 個の実数 a 1 , ... , a n {\displaystyle a_{1},\dots ,a_{n}} を並べた ( a 1 ⋮ a n ) {\displaystyle \left({\begin{array}{c}a_{1}\\\vdots \\a_{n}\end{array}}\right)} を, n {\displaystyle n} 次元実数ベクトルという. n {\displaystyle n} 次元実数ベクトルの集合を R n {\displaystyle R^{n}} で表す. また,ベクトルの和,ベクトルの実数倍を次のように定める. 和: ( a 1 ⋮ a n ) + ( b 1 ⋮ b n ) = ( a 1 + b 1 ⋮ a n + b n ) {\displaystyle \left({\begin{array}{c}a_{1}\\\vdots \\a_{n}\end{array}}\right)+\left({\begin{array}{c}b_{1}\\\vdots \\b_{n}\end{array}}\right)=\left({\begin{array}{c}a_{1}+b_{1}\\\vdots \\a_{n}+b_{n}\end{array}}\right)} 実数倍: k ( a 1 ⋮ a n ) = ( k a 1 ⋮ k a n ) {\displaystyle k\left({\begin{array}{c}a_{1}\\\vdots \\a_{n}\end{array}}\right)=\left({\begin{array}{c}ka_{1}\\\vdots \\ka_{n}\end{array}}\right)} ( k {\displaystyle k} は実数) ◼ {\displaystyle \blacksquare } 中等課程では、平面のベクトル( R 2 {\displaystyle R^{2}} :2 次元ベクトル)と空間ベクトル( R 3 {\displaystyle R^{3}} :3次元ベクトル)を扱っていたことになる. ここでいう R {\displaystyle R} とは実数全体の集合を表している. ベクトルを成分で表したが, ( a 1 ⋮ a n ) {\displaystyle \left({\begin{array}{c}a_{1}\\\vdots \\a_{n}\end{array}}\right)} を一つの文字 a {\displaystyle \mathbf {a} } で表すことにする.これは a → {\displaystyle {\vec {a}}} と表したのと同じである. 成分がすべて 0 {\displaystyle 0} のベクトル ( 0 ⋮ 0 ) {\displaystyle \left({\begin{array}{c}0\\\vdots \\0\end{array}}\right)} をゼロベクトルと呼び, 0 {\displaystyle \mathbf {0} } で表す. 上では数字の並べ方を縦にしたが、数字に関数演算の規則にこそベクトルの定義としての意味があるから、数字は縦に並べて書いても横に並べて書いても構わない. 表記に注目して、数字を縦に書いて並べたベクトルを縦ベクトルまたは列ベクトル, 横に書いて並べたベクトルを横ベクトルまたは行ベクトルという. 縦ベクトル・列ベクトル ( 2 8 5 3 ) {\displaystyle \left({\begin{array}{c}2\\8\\5\\3\end{array}}\right)} . {\displaystyle \quad } 横ベクトル・行ベクトル ( 2 8 5 3 ) {\displaystyle \left(\quad 2\quad 8\quad 5\quad 3\quad \right)} ベクトルの和と実数倍のついて、次のような計算法則が成り立つことは,平面ベクトル,空間ベクトルを考えるのと同様で実感を持って納得できるだろう. 定理1 ベクトルの計算法則 a , b , c {\displaystyle \mathbf {a} ,\mathbf {b} ,\mathbf {c} } を n {\displaystyle n} 次元実ベクトル, k , l {\displaystyle k,l} を実数とすると,次が成り立つ. (1) a + b = b + a {\displaystyle \mathbf {a} +\mathbf {b} =\mathbf {b} +\mathbf {a} } (2) ( a + b ) + c = a + ( b + c ) {\displaystyle (\mathbf {a} +\mathbf {b} )+\mathbf {c} =\mathbf {a} +(\mathbf {b} +\mathbf {c} )} (3) ( k + l ) a = k a + l a {\displaystyle (k+l)\mathbf {a} =k\mathbf {a} +l\mathbf {a} } (4) k ( a + b ) = k a + k b {\displaystyle k(\mathbf {a} +\mathbf {b} )=k\mathbf {a} +k\mathbf {b} } 証明 ベクトル a {\displaystyle \mathbf {a} } の i {\displaystyle i} 番目の成分(実数)を a i {\displaystyle a_{i}} , ベクトル b {\displaystyle \mathbf {b} } の i {\displaystyle i} 番目の成分(実数)を b i {\displaystyle b_{i}} , ベクトル c {\displaystyle \mathbf {c} } の i {\displaystyle i} 番目の成分(実数)を c i {\displaystyle c_{i}} と置くと, (1) の左辺: a i + b i {\displaystyle a_{i}+b_{i}} , (1) の右辺: b i + a i {\displaystyle b_{i}+a_{i}} により,(左辺) = {\displaystyle =} (右辺) にて成立. (2) の左辺: ( a i + b i ) + c i = a i + b i + c i {\displaystyle (a_{i}+b_{i})+c_{i}=a_{i}+b_{i}+c_{i}} . (2) の右辺: a i + ( b i + c i ) = a i + b i + c i {\displaystyle a_{i}+(b_{i}+c_{i})=a_{i}+b_{i}+c_{i}} .(2) は実数の足し算の結合律に帰することができ、そして実数の足し算は結合律を満たすので(左辺) = {\displaystyle =} (右辺) にて成立. (3) の左辺: ( k + l ) a i = k a i + l a i {\displaystyle (k+l)a_{i}=ka_{i}+la_{i}} . (3) の右辺: k a i + l a i {\displaystyle ka_{i}+la_{i}} より (左辺) = {\displaystyle =} (右辺) にて成立. (4) の左辺: k ( a i + b i ) = k a i + k b i {\displaystyle k(a_{i}+b_{i})=ka_{i}+kb_{i}} . (4) の右辺: k a i + k b i {\displaystyle ka_{i}+kb_{i}} より (左辺) = {\displaystyle =} (右辺) にて成立. ◼ {\displaystyle \blacksquare }
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "中等課程でもベクトルを取扱ったが,線形代数ではベクトルは抽象的に定義していく. 中等課程では,ベクトルを「向き」と「大きさ」を持った矢印として定義した. そして,そのベクトルの始点を座標平面の原点に合わせたとき,ベクトルの終点の座標をベクトルの成分表示とした.", "title": "" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "しかし,線形代数でのベクトルは,必ずしも矢印である必要はない. 線形代数ではベクトルを成分表示から定義していく. いくつか数字を並べて,和や実数倍を定めたものをベクトルとするのである. 和や実数倍の計算の仕方は次のように,平面ベクトルや空間ベクトルの成分計算の自然な拡張になっている.", "title": "" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "定義1 ベクトル", "title": "" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "n {\\displaystyle n} 個の実数 a 1 , ... , a n {\\displaystyle a_{1},\\dots ,a_{n}} を並べた ( a 1 ⋮ a n ) {\\displaystyle \\left({\\begin{array}{c}a_{1}\\\\\\vdots \\\\a_{n}\\end{array}}\\right)} を, n {\\displaystyle n} 次元実数ベクトルという. n {\\displaystyle n} 次元実数ベクトルの集合を R n {\\displaystyle R^{n}} で表す.", "title": "" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "また,ベクトルの和,ベクトルの実数倍を次のように定める.", "title": "" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "和: ( a 1 ⋮ a n ) + ( b 1 ⋮ b n ) = ( a 1 + b 1 ⋮ a n + b n ) {\\displaystyle \\left({\\begin{array}{c}a_{1}\\\\\\vdots \\\\a_{n}\\end{array}}\\right)+\\left({\\begin{array}{c}b_{1}\\\\\\vdots \\\\b_{n}\\end{array}}\\right)=\\left({\\begin{array}{c}a_{1}+b_{1}\\\\\\vdots \\\\a_{n}+b_{n}\\end{array}}\\right)}", "title": "" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "実数倍: k ( a 1 ⋮ a n ) = ( k a 1 ⋮ k a n ) {\\displaystyle k\\left({\\begin{array}{c}a_{1}\\\\\\vdots \\\\a_{n}\\end{array}}\\right)=\\left({\\begin{array}{c}ka_{1}\\\\\\vdots \\\\ka_{n}\\end{array}}\\right)} ( k {\\displaystyle k} は実数)", "title": "" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "◼ {\\displaystyle \\blacksquare }", "title": "" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "中等課程では、平面のベクトル( R 2 {\\displaystyle R^{2}} :2 次元ベクトル)と空間ベクトル( R 3 {\\displaystyle R^{3}} :3次元ベクトル)を扱っていたことになる. ここでいう R {\\displaystyle R} とは実数全体の集合を表している.", "title": "" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "ベクトルを成分で表したが, ( a 1 ⋮ a n ) {\\displaystyle \\left({\\begin{array}{c}a_{1}\\\\\\vdots \\\\a_{n}\\end{array}}\\right)} を一つの文字 a {\\displaystyle \\mathbf {a} } で表すことにする.これは a → {\\displaystyle {\\vec {a}}} と表したのと同じである.", "title": "" }, { "paragraph_id": 10, "tag": "p", "text": "成分がすべて 0 {\\displaystyle 0} のベクトル ( 0 ⋮ 0 ) {\\displaystyle \\left({\\begin{array}{c}0\\\\\\vdots \\\\0\\end{array}}\\right)} をゼロベクトルと呼び, 0 {\\displaystyle \\mathbf {0} } で表す.", "title": "" }, { "paragraph_id": 11, "tag": "p", "text": "上では数字の並べ方を縦にしたが、数字に関数演算の規則にこそベクトルの定義としての意味があるから、数字は縦に並べて書いても横に並べて書いても構わない.", "title": "" }, { "paragraph_id": 12, "tag": "p", "text": "表記に注目して、数字を縦に書いて並べたベクトルを縦ベクトルまたは列ベクトル, 横に書いて並べたベクトルを横ベクトルまたは行ベクトルという.", "title": "" }, { "paragraph_id": 13, "tag": "p", "text": "縦ベクトル・列ベクトル ( 2 8 5 3 ) {\\displaystyle \\left({\\begin{array}{c}2\\\\8\\\\5\\\\3\\end{array}}\\right)} . {\\displaystyle \\quad } 横ベクトル・行ベクトル ( 2 8 5 3 ) {\\displaystyle \\left(\\quad 2\\quad 8\\quad 5\\quad 3\\quad \\right)}", "title": "" }, { "paragraph_id": 14, "tag": "p", "text": "ベクトルの和と実数倍のついて、次のような計算法則が成り立つことは,平面ベクトル,空間ベクトルを考えるのと同様で実感を持って納得できるだろう.", "title": "" }, { "paragraph_id": 15, "tag": "p", "text": "定理1 ベクトルの計算法則", "title": "" }, { "paragraph_id": 16, "tag": "p", "text": "a , b , c {\\displaystyle \\mathbf {a} ,\\mathbf {b} ,\\mathbf {c} } を n {\\displaystyle n} 次元実ベクトル, k , l {\\displaystyle k,l} を実数とすると,次が成り立つ.", "title": "" }, { "paragraph_id": 17, "tag": "p", "text": "(1) a + b = b + a {\\displaystyle \\mathbf {a} +\\mathbf {b} =\\mathbf {b} +\\mathbf {a} }", "title": "" }, { "paragraph_id": 18, "tag": "p", "text": "(2) ( a + b ) + c = a + ( b + c ) {\\displaystyle (\\mathbf {a} +\\mathbf {b} )+\\mathbf {c} =\\mathbf {a} +(\\mathbf {b} +\\mathbf {c} )}", "title": "" }, { "paragraph_id": 19, "tag": "p", "text": "(3) ( k + l ) a = k a + l a {\\displaystyle (k+l)\\mathbf {a} =k\\mathbf {a} +l\\mathbf {a} }", "title": "" }, { "paragraph_id": 20, "tag": "p", "text": "(4) k ( a + b ) = k a + k b {\\displaystyle k(\\mathbf {a} +\\mathbf {b} )=k\\mathbf {a} +k\\mathbf {b} }", "title": "" }, { "paragraph_id": 21, "tag": "p", "text": "証明", "title": "" }, { "paragraph_id": 22, "tag": "p", "text": "ベクトル a {\\displaystyle \\mathbf {a} } の i {\\displaystyle i} 番目の成分(実数)を a i {\\displaystyle a_{i}} , ベクトル b {\\displaystyle \\mathbf {b} } の i {\\displaystyle i} 番目の成分(実数)を b i {\\displaystyle b_{i}} , ベクトル c {\\displaystyle \\mathbf {c} } の i {\\displaystyle i} 番目の成分(実数)を c i {\\displaystyle c_{i}} と置くと,", "title": "" }, { "paragraph_id": 23, "tag": "p", "text": "(1) の左辺: a i + b i {\\displaystyle a_{i}+b_{i}} , (1) の右辺: b i + a i {\\displaystyle b_{i}+a_{i}} により,(左辺) = {\\displaystyle =} (右辺) にて成立.", "title": "" }, { "paragraph_id": 24, "tag": "p", "text": "(2) の左辺: ( a i + b i ) + c i = a i + b i + c i {\\displaystyle (a_{i}+b_{i})+c_{i}=a_{i}+b_{i}+c_{i}} . 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中等課程でもベクトルを取扱ったが,線形代数ではベクトルは抽象的に定義していく. 中等課程では,ベクトルを「向き」と「大きさ」を持った矢印として定義した. そして,そのベクトルの始点を座標平面の原点に合わせたとき,ベクトルの終点の座標をベクトルの成分表示とした. しかし,線形代数でのベクトルは,必ずしも矢印である必要はない. 線形代数ではベクトルを成分表示から定義していく. いくつか数字を並べて,和や実数倍を定めたものをベクトルとするのである. 和や実数倍の計算の仕方は次のように,平面ベクトルや空間ベクトルの成分計算の自然な拡張になっている. 定義1 ベクトル n 個の実数 a 1 , … , a n を並べた を, n 次元実数ベクトルという. n 次元実数ベクトルの集合を R n で表す. また,ベクトルの和,ベクトルの実数倍を次のように定める. 和: + = 実数倍: k = ◼ 中等課程では、平面のベクトルと空間ベクトルを扱っていたことになる. ここでいう R とは実数全体の集合を表している. ベクトルを成分で表したが, を一つの文字 a で表すことにする.これは a → と表したのと同じである. 成分がすべて 0 のベクトル をゼロベクトルと呼び, 0 で表す. 上では数字の並べ方を縦にしたが、数字に関数演算の規則にこそベクトルの定義としての意味があるから、数字は縦に並べて書いても横に並べて書いても構わない. 表記に注目して、数字を縦に書いて並べたベクトルを縦ベクトルまたは列ベクトル, 横に書いて並べたベクトルを横ベクトルまたは行ベクトルという. 縦ベクトル・列ベクトル . 横ベクトル・行ベクトル ベクトルの和と実数倍のついて、次のような計算法則が成り立つことは,平面ベクトル,空間ベクトルを考えるのと同様で実感を持って納得できるだろう. 定理1 ベクトルの計算法則 a , b , c を n 次元実ベクトル, k , l を実数とすると,次が成り立つ. (1) a + b = b + a (2) + c = a + (3) a = k a + l a (4) k = k a + k b 証明 ベクトル a の i 番目の成分(実数)を a i , ベクトル b の i 番目の成分(実数)を b i , ベクトル c の i 番目の成分(実数)を c i と置くと, (1) の左辺: a i + b i , (1) の右辺: b i + a i により,(左辺) = (右辺) にて成立. (2) の左辺: + c i = a i + b i + c i . (2) の右辺: a i + = a i + b i + c i .(2) は実数の足し算の結合律に帰することができ、そして実数の足し算は結合律を満たすので(左辺) = (右辺) にて成立. (3) の左辺: a i = k a i + l a i . (3) の右辺: k a i + l a i より (左辺) = (右辺) にて成立. (4) の左辺: k = k a i + k b i . (4) の右辺: k a i + k b i より (左辺) = (右辺) にて成立. ◼
中等課程でもベクトルを取扱ったが,線形代数ではベクトルは抽象的に定義していく. 中等課程では,ベクトルを「向き」と「大きさ」を持った矢印として定義した. そして,そのベクトルの始点を座標平面の原点に合わせたとき,ベクトルの終点の座標をベクトルの成分表示とした. しかし,線形代数でのベクトルは,必ずしも矢印である必要はない. 線形代数ではベクトルを成分表示から定義していく. いくつか数字を並べて,和や実数倍を定めたものをベクトルとするのである. 和や実数倍の計算の仕方は次のように,平面ベクトルや空間ベクトルの成分計算の自然な拡張になっている. <!-- def:001:start --> <strong>定義1</strong> <strong>ベクトル</strong> <math>n</math> 個の実数 <math>a_1, \dots, a_n</math> を並べた <math> \left( \begin{array}{c} a_1 \\ \vdots \\ a_n \end{array} \right) </math> を,<math>n</math> 次元実数ベクトルという. <math>n</math> 次元実数ベクトルの集合を <math>R^n</math> で表す. また,ベクトルの和,ベクトルの実数倍を次のように定める. 和: <math> \left( \begin{array}{c} a_1 \\ \vdots \\ a_n \end{array} \right) + \left( \begin{array}{c} b_1 \\ \vdots \\ b_n \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} a_1 + b_1 \\ \vdots \\ a_n + b_n \end{array} \right) </math> 実数倍: <math> k \left( \begin{array}{c} a_1 \\ \vdots \\ a_n \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} k a_1 \\ \vdots \\ k a_n \end{array} \right) </math> (<math>k</math> は実数) <math>\blacksquare</math> <!-- def:001end --> 中等課程では、平面のベクトル(<math>R^2</math>:2 次元ベクトル)と空間ベクトル(<math>R^3</math>:3次元ベクトル)を扱っていたことになる. ここでいう <math>R</math> とは実数全体の集合を表している. ベクトルを成分で表したが, <math> \left( \begin{array}{c} a_1 \\ \vdots \\ a_n \end{array} \right) </math> を一つの文字 <math>\mathbf{a}</math> で表すことにする.これは <math>\vec{a}</math> と表したのと同じである. 成分がすべて <math>0</math> のベクトル <math> \left( \begin{array}{c} 0 \\ \vdots \\ 0 \end{array} \right) </math> を'''ゼロベクトル'''と呼び,<math>\mathbf{0}</math> で表す. 上では数字の並べ方を縦にしたが、数字に関数演算の規則にこそベクトルの定義としての意味があるから、数字は縦に並べて書いても横に並べて書いても構わない. 表記に注目して、数字を縦に書いて並べたベクトルを縦ベクトルまたは列ベクトル, 横に書いて並べたベクトルを横ベクトルまたは行ベクトルという. 縦ベクトル・列ベクトル <math> \left( \begin{array}{c} 2 \\ 8 \\ 5 \\ 3 \end{array} \right) </math>.<math>\quad</math> 横ベクトル・行ベクトル <math>\left(\quad 2 \quad 8 \quad 5 \quad 3 \quad \right)</math> ベクトルの和と実数倍のついて、次のような計算法則が成り立つことは,平面ベクトル,空間ベクトルを考えるのと同様で実感を持って納得できるだろう. <!-- th:001:start --> <strong>定理1</strong> <strong>ベクトルの計算法則</strong> <math>\mathbf{a}, \mathbf{b}, \mathbf{c}</math> を <math>n</math> 次元実ベクトル, <math>k, l</math> を実数とすると,次が成り立つ. (1) <math>\mathbf{a} + \mathbf{b} = \mathbf{b} + \mathbf{a}</math> (2) <math>(\mathbf{a} + \mathbf{b}) + \mathbf{c} = \mathbf{a} + (\mathbf{b} + \mathbf{c})</math> (3) <math>(k + l)\mathbf{a} = k\mathbf{a} + l\mathbf{a}</math> (4) <math>k(\mathbf{a} + \mathbf{b}) = k\mathbf{a} + k\mathbf{b}</math> <strong>証明</strong> ベクトル <math>\mathbf{a}</math> の <math>i</math> 番目の成分(実数)を <math>a_i</math>, ベクトル <math>\mathbf{b}</math> の <math>i</math> 番目の成分(実数)を <math>b_i</math>, ベクトル <math>\mathbf{c}</math> の <math>i</math> 番目の成分(実数)を <math>c_i</math> と置くと, (1) の左辺:<math>a_i + b_i</math>, (1) の右辺:<math>b_i + a_i</math> により,(左辺) <math>=</math> (右辺) にて成立. (2) の左辺:<math>(a_i + b_i) + c_i = a_i + b_i + c_i</math>. (2) の右辺:<math>a_i + (b_i + c_i) = a_i + b_i + c_i</math>.(2) は実数の足し算の結合律に帰することができ、そして実数の足し算は結合律を満たすので(左辺) <math>=</math> (右辺) にて成立. (3) の左辺:<math>(k + l)a_i = ka_i + la_i</math>. (3) の右辺:<math>ka_i + la_i</math> より (左辺) <math>=</math> (右辺) にて成立. (4) の左辺:<math>k(a_i + b_i) = ka_i + kb_i</math>. (4) の右辺:<math>ka_i + kb_i</math> より (左辺) <math>=</math> (右辺) にて成立. <math>\blacksquare</math> <!-- th:001end --> [[カテゴリ:線形代数学]]
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測度論的確率論/準備/集合
集合
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集合 集合 写像 可算 演習
集合 *[[測度論的確率論/準備/集合/集合|集合]] *[[測度論的確率論/準備/集合/写像|写像]] *[[測度論的確率論/準備/集合/可算|可算]] *[[測度論的確率論/準備/集合/演習|演習]] [[カテゴリ:数学]]
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測度論的確率論/準備/集合/集合
集合とは,「数学的に明確に定義された対象の集まり」をいう. 「数学的に明確に定義された」ということは,一つの対象を持ってきたときに,その集合に属しているか,それとも属していないかが明確に示されることをいう. 例えば「実数空間上に定義された滑らかな関数全体」は集合でない. なぜなら,どのような関数を「滑らか」というかがはっきりしていないからである. しかし「実数空間上に定義された各点で微分可能な関数全体」は集合である. 集合を構成する対象を要素または元という. 以下 M , N , A , B , Ω {\displaystyle M,N,A,B,\Omega } 等の記号は集合を表すものとする. 定義1. {\displaystyle \quad } a {\displaystyle a} が集合 M {\displaystyle M} に属する元であることを a ∈ M {\displaystyle a\in M} と記す. 定義2. {\displaystyle \quad } a {\displaystyle a} が集合 M {\displaystyle M} に属する元でないことを a ∉ M {\displaystyle a\notin M} と記す. 定義3. {\displaystyle \quad } 集合 M {\displaystyle M} が集合 N {\displaystyle N} に含まれるとは をいい, M ⊂ N {\displaystyle M\subset N} または N ⊃ M {\displaystyle N\supset M} と記す. 定義4. {\displaystyle \quad } 集合 M {\displaystyle M} と集合 N {\displaystyle N} が一致するとは をいい, M = N {\displaystyle M=N} と記す. 定義5. {\displaystyle \quad } 集合 M {\displaystyle M} と集合 N {\displaystyle N} の和集合 M ∪ N {\displaystyle M\cup N} とは をいう. 定義6. {\displaystyle \quad } 集合 M {\displaystyle M} と集合 N {\displaystyle N} の共通集合 M ∩ N {\displaystyle M\cap N} とは をいう. 定義7. {\displaystyle \quad } 同様に集合列 A 1 , A 2 , A 3 , ⋯ {\displaystyle A_{1},A_{2},A_{3},\cdots } に対して,どれかの A n {\displaystyle A_{n}} に属する元全体の集合を ⋃ n = 1 ∞ A n {\displaystyle \bigcup _{n=1}^{\infty }A_{n}} と表す. 定義8. {\displaystyle \quad } 集合列 A 1 , A 2 , A 3 , ⋯ {\displaystyle A_{1},A_{2},A_{3},\cdots } に対して,すべての A n {\displaystyle A_{n}} に属する元全体の集合を ⋂ n = 1 ∞ A n {\displaystyle \bigcap _{n=1}^{\infty }A_{n}} と表す. 定義9. {\displaystyle \quad } また「元を持たない集合」を空集合 といい ∅ {\displaystyle \emptyset } で表す. 任意の集合 M {\displaystyle M} について ∅ ⊂ M , M ∪ ∅ = M , M ∩ ∅ = ∅ {\displaystyle \emptyset \subset M,\quad M\cup \emptyset =M,\quad M\cap \emptyset =\emptyset } である. 定理1. {\displaystyle \quad } A , B , C {\displaystyle A,B,C} を集合とするとき (1) ( A ∪ B ) ∩ C = ( A ∩ C ) ∪ ( B ∩ C ) {\displaystyle (A\cup B)\cap C=(A\cap C)\cup (B\cap C)} (2) ( A ∩ B ) ∪ C = ( A ∪ C ) ∩ ( B ∪ C ) {\displaystyle (A\cap B)\cup C=(A\cup C)\cap (B\cup C)} 証明 {\displaystyle \quad } (1) x {\displaystyle x} を ( A ∪ B ) ∩ C {\displaystyle (A\cup B)\cap C} に属する任意の元とする. x ∈ A ∪ B {\displaystyle x\in A\cup B} かつ x ∈ C {\displaystyle x\in C} . すなわち ( x ∈ A {\displaystyle (x\in A} または x ∈ B ) {\displaystyle x\in B)} かつ x ∈ C {\displaystyle x\in C} . これは x ∈ A ∩ C {\displaystyle x\in A\cap C} または x ∈ B ∩ C {\displaystyle x\in B\cap C} となり, x ∈ ( A ∩ C ) ∪ ( B ∩ C ) {\displaystyle x\in (A\cap C)\cup (B\cap C)} すなわち ( A ∪ B ) ∩ C ⊂ ( A ∩ C ) ∪ ( B ∩ C ) {\displaystyle (A\cup B)\cap C\subset (A\cap C)\cup (B\cap C)} ....1 逆に A ⊂ A ∪ B {\displaystyle A\subset A\cup B} , B ⊂ A ∪ B {\displaystyle B\subset A\cup B} より A ∩ C ⊂ ( A ∪ B ) ∩ C {\displaystyle A\cap C\subset (A\cup B)\cap C} , B ∩ C ⊂ ( A ∪ B ) ∩ C {\displaystyle B\cap C\subset (A\cup B)\cap C} . ( X ⊂ Z {\displaystyle X\subset Z} かつ Y ⊂ Z {\displaystyle Y\subset Z} ならば X ∪ Y ⊂ Z {\displaystyle X\cup Y\subset Z} だから) ( A ∩ C ) ∪ ( B ∩ C ) ⊂ ( A ∪ B ) ∩ C {\displaystyle (A\cap C)\cup (B\cap C)\subset (A\cup B)\cap C} ....2 12より ( A ∪ B ) ∩ C = ( A ∩ C ) ∪ ( B ∩ C ) {\displaystyle (A\cup B)\cap C=(A\cap C)\cup (B\cap C)} . (2)(1)に対して定理3を先取りして適用する. ( ( A ∪ B ) ∩ C ) C = ( ( A ∩ C ) ∪ ( B ∩ C ) ) C {\displaystyle ((A\cup B)\cap C)^{C}=((A\cap C)\cup (B\cap C))^{C}} . ∴ ( A ∪ B ) C ∪ C C = ( A ∩ C ) C ∩ ( B ∩ C ) C {\displaystyle \therefore (A\cup B)^{C}\cup C^{C}=(A\cap C)^{C}\cap (B\cap C)^{C}} . ∴ ( A C ∩ B C ) ∪ C C = ( A C ∪ C C ) ∩ ( B C ∪ C C ) {\displaystyle \therefore (A^{C}\cap B^{C})\cup C^{C}=(A^{C}\cup C^{C})\cap (B^{C}\cup C^{C})} .(証明終) 定理2. {\displaystyle \quad } A , A n , n ∈ N {\displaystyle A,A_{n},n\in N} を集合とするとき (1) ( ⋃ n = 1 ∞ A n ) ∩ A = ⋃ n = 1 ∞ ( A n ∩ A ) {\displaystyle \left(\bigcup _{n=1}^{\infty }A_{n}\right)\cap A=\bigcup _{n=1}^{\infty }\left(A_{n}\cap A\right)} (2) ( ⋂ n = 1 ∞ A n ) ∪ A = ⋂ n = 1 ∞ ( A n ∪ A ) {\displaystyle \left(\bigcap _{n=1}^{\infty }A_{n}\right)\cup A=\bigcap _{n=1}^{\infty }\left(A_{n}\cup A\right)} 証明 {\displaystyle \quad } (1)の証明. x ∈ ( ⋃ n = 1 ∞ A n ) ∩ A {\displaystyle x\in \left(\bigcup _{n=1}^{\infty }A_{n}\right)\cap A} とすると, x ∈ ⋃ n = 1 ∞ A n {\displaystyle x\in \bigcup _{n=1}^{\infty }A_{n}} かつ x ∈ A {\displaystyle x\in A} , したがって,ある(少なくとも一つの) n 0 ∈ N {\displaystyle n_{0}\in \mathbf {N} } について x ∈ A n 0 {\displaystyle x\in A_{n_{0}}} かつ x ∈ A {\displaystyle x\in A} . すなわち x ∈ A n 0 ∩ A ⊂ ∪ n = 1 ∞ ( A n ∩ A ) {\displaystyle x\in A_{n_{0}}\cap A\subset \cup _{n=1}^{\infty }(A_{n}\cap A)} であり, これにより ( ⋃ n = 1 ∞ A n ) ∩ A ⊂ ⋃ n = 1 ∞ ( A n ∩ A ) {\displaystyle \left(\bigcup _{n=1}^{\infty }A_{n}\right)\cap A\subset \bigcup _{n=1}^{\infty }(A_{n}\cap A)} ....1 逆に任意の m ∈ N {\displaystyle m\in N} について A m ⊂ ⋃ n = 1 ∞ A n {\displaystyle A_{m}\subset \bigcup _{n=1}^{\infty }A_{n}} であるから A m ∩ A ⊂ ( ⋃ n = 1 ∞ A n ) ∩ A {\displaystyle A_{m}\cap A\subset \left(\bigcup _{n=1}^{\infty }A_{n}\right)\cap A} となり ( A ⊂ Z , B ⊂ Z , C ⊂ Z {\displaystyle A\subset Z,B\subset Z,C\subset Z} ならば A ∪ B ∪ C ⊂ Z {\displaystyle A\cup B\cup C\subset Z} と同じ理由で,) ⋃ n = 1 ∞ ( A n ∩ A ) ⊂ ( ⋃ n = 1 ∞ A n ) ∩ A {\displaystyle \bigcup _{n=1}^{\infty }\left(A_{n}\cap A\right)\subset \left(\bigcup _{n=1}^{\infty }A_{n}\right)\cap A} ....2 12より(1)は証明された. (2)の証明.(1) に定理3を先取りではあるが適用する。 (1)より ( ( ⋃ n = 1 ∞ A n ) ∩ A ) C = ( ⋃ n = 1 ∞ ( A n ∩ A ) ) C {\displaystyle \left(\left(\bigcup _{n=1}^{\infty }A_{n}\right)\cap A\right)^{C}=\left(\bigcup _{n=1}^{\infty }\left(A_{n}\cap A\right)\right)^{C}} . ∴ ( ⋃ n = 1 ∞ A n ) C ∪ A C = ⋂ n = 1 ∞ ( A n ∩ A ) C {\displaystyle \therefore \left(\bigcup _{n=1}^{\infty }A_{n}\right)^{C}\cup A^{C}=\bigcap _{n=1}^{\infty }\left(A_{n}\cap A\right)^{C}} . ∴ ( ⋂ n = 1 ∞ A n C ) ∪ A C = ⋂ n = 1 ∞ ( A n C ∪ A C ) {\displaystyle \therefore \left(\bigcap _{n=1}^{\infty }A_{n}^{C}\right)\cup A^{C}=\bigcap _{n=1}^{\infty }(A_{n}^{C}\cup A^{C})} . (証明終) 定義9. {\displaystyle \quad } ある集合 Ω {\displaystyle \Omega } の部分集合全体をなす集合を ℘ ( Ω ) {\displaystyle \wp (\Omega )} と記す.したがって A ∈ ℘ ( Ω ) {\displaystyle A\in \wp (\Omega )} は A ⊂ Ω {\displaystyle A\subset \Omega } を意味している. 特に ∅ ∈ ℘ ( Ω ) , Ω ∈ ℘ ( Ω ) {\displaystyle \emptyset \in \wp (\Omega ),\quad \Omega \in \wp (\Omega )} である. 定義10. {\displaystyle \quad } また 1 点 ω ∈ Ω {\displaystyle \omega \in \Omega } だけからなる Ω {\displaystyle \Omega } の部分集合を { ω } {\displaystyle \{\omega \}} ,あるいは簡単のため ω {\displaystyle \omega } とも書く. 定義11. {\displaystyle \quad } A ∈ ℘ ( Ω ) {\displaystyle A\in \wp (\Omega )} に対して を A {\displaystyle A} の補集合という.明らかに ( A C ) C = A {\displaystyle (A^{C})^{C}=A} である. 定義12. {\displaystyle \quad } A , B ∈ ℘ ( Ω ) {\displaystyle A,B\in \wp (\Omega )} に対して を集合 A {\displaystyle A} と集合 B {\displaystyle B} の差,また を集合 A {\displaystyle A} と集合 B {\displaystyle B} の対称差という. 演習1. {\displaystyle \quad } Ω ≡ ( 0 , 1 ] × ( 0 , 1 ] ( ⊂ R 2 ) , A ≡ ( 0 , 1 ] × ( 0 , 1 2 ] , B ≡ ( 0 , 1 2 ] × ( 0 , 1 ] {\displaystyle \Omega \equiv (0,1]\times (0,1](\subset \mathbf {R} ^{2}),A\equiv (0,1]\times (0,{\frac {1}{2}}],B\equiv (0,{\frac {1}{2}}]\times (0,1]} とするとき, A ∪ B , A ∩ B , A ∖ B , A △ B {\displaystyle A\cup B,A\cap B,A\setminus B,A\bigtriangleup B} を図示せよ. (解答) 略 定理3. {\displaystyle \quad } A , B ∈ ℘ ( Ω ) {\displaystyle A,B\in \wp (\Omega )} とするとき,次の命題が成り立つ. (1) ( A ∪ B ) C = A C ∩ B C {\displaystyle (A\cup B)^{C}=A^{C}\cap B^{C}} (2) ( A ∩ B ) C = A C ∪ B C {\displaystyle (A\cap B)^{C}=A^{C}\cup B^{C}} 証明 {\displaystyle \quad } (1)を証明する. x ∈ ( A ∪ B ) C {\displaystyle x\in (A\cup B)^{C}} とすると x ∉ A ∪ B {\displaystyle x\not \in A\cup B} すなわち x ∉ A {\displaystyle x\not \in A} かつ x ∉ B {\displaystyle x\not \in B} である. ゆえに x ∈ A C ∩ B C {\displaystyle x\in A^{C}\cap B^{C}} したがって ( A ∪ B ) C ⊂ A C ∩ B C {\displaystyle (A\cup B)^{C}\subset A^{C}\cap B^{C}} が示された. 逆に x ∈ A C ∩ B C {\displaystyle x\in A^{C}\cap B^{C}} であれば X ∉ A {\displaystyle X\not \in A} かつ X ∉ B {\displaystyle X\not \in B} したがって x ∈ ( A ∪ B ) C {\displaystyle x\in (A\cup B)^{C}} となり A C ∩ B C ⊂ ( A ∪ B ) C {\displaystyle A^{C}\cap B^{C}\subset (A\cup B)^{C}} が示された. (2)を証明する. (1)に ( A C ) C = A {\displaystyle (A^{C})^{C}=A} を適用する. (1) より ( ( A ∪ B ) C ) C = ( A C ∩ B C ) C {\displaystyle ((A\cup B)^{C})^{C}=(A^{C}\cap B^{C})^{C}} すなわち A ∪ B = ( A C ∩ B C ) C {\displaystyle A\cup B=(A^{C}\cap B^{C})^{C}} . A = ( A C ) C , B = ( B C ) C {\displaystyle A=(A^{C})^{C},B=(B^{C})^{C}} だから ( A C ) C ∪ ( B C ) C = ( A C ∩ B C ) C {\displaystyle (A^{C})^{C}\cup (B^{C})^{C}=(A^{C}\cap B^{C})^{C}} . A C {\displaystyle A^{C}} をあらためて A {\displaystyle A} , B C {\displaystyle B^{C}} を B {\displaystyle B} と書き直せば A C ∪ B C = ( A ∩ B ) C {\displaystyle A^{C}\cup B^{C}=(A\cap B)^{C}} .(証明終) 定理3 はつぎのように一般化される. 定理4. {\displaystyle \quad } A n ∈ ℘ ( Ω ) , n = 1 , 2 , 3 , ⋯ , {\displaystyle A_{n}\in \wp (\Omega ),n=1,2,3,\cdots ,} とするとき,次の命題が成り立つ. (1) ( ⋃ n = 1 ∞ A n ) C = ⋂ n = 1 ∞ A n C {\displaystyle \left(\bigcup _{n=1}^{\infty }A_{n}\right)^{C}=\bigcap _{n=1}^{\infty }A_{n}^{C}} (2) ( ⋂ n = 1 ∞ A n ) C = ⋃ n = 1 ∞ A n C {\displaystyle \left(\bigcap _{n=1}^{\infty }A_{n}\right)^{C}=\bigcup _{n=1}^{\infty }A_{n}^{C}} 証明 {\displaystyle \quad } (1) ( ⋃ n = 1 m A n ) C = ( ⋃ n = 1 m − 1 A n ∪ A m ) C = ( ⋃ n = 1 m − 1 A n ) C ∩ A m C = ( ⋃ n = 1 m − 2 A n ) C ∩ A m − 1 C ∩ A m C = A 1 C ∩ A 2 C ∩ A 3 C ∩ ⋯ A m C = ⋂ n = 1 m A n C {\displaystyle \left(\bigcup _{n=1}^{m}A_{n}\right)^{C}=\left(\bigcup _{n=1}^{m-1}A_{n}\cup A_{m}\right)^{C}=\left(\bigcup _{n=1}^{m-1}A_{n}\right)^{C}\cap A_{m}^{C}=\left(\bigcup _{n=1}^{m-2}A_{n}\right)^{C}\cap A_{m-1}^{C}\cap A_{m}^{C}=A_{1}^{C}\cap A_{2}^{C}\cap A_{3}^{C}\cap \cdots A_{m}^{C}=\bigcap _{n=1}^{m}A_{n}^{C}} (2) ( ⋂ n = 1 m A n ) C = ( ⋂ n = 1 m − 1 A n ∩ A m ) C = ( ⋂ n = 1 m − 1 A n ) C ∪ A m C = ( ⋂ n = 1 m − 2 A n ) C ∪ A m − 1 C ∪ A m C = A 1 C ∪ A 2 C ∪ A 3 C ∪ ⋯ A m C = ⋃ n = 1 m A n C {\displaystyle \left(\bigcap _{n=1}^{m}A_{n}\right)^{C}=\left(\bigcap _{n=1}^{m-1}A_{n}\cap A_{m}\right)^{C}=\left(\bigcap _{n=1}^{m-1}A_{n}\right)^{C}\cup A_{m}^{C}=\left(\bigcap _{n=1}^{m-2}A_{n}\right)^{C}\cup A_{m-1}^{C}\cup A_{m}^{C}=A_{1}^{C}\cup A_{2}^{C}\cup A_{3}^{C}\cup \cdots A_{m}^{C}=\bigcup _{n=1}^{m}A_{n}^{C}} (証明終)
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "集合とは,「数学的に明確に定義された対象の集まり」をいう. 「数学的に明確に定義された」ということは,一つの対象を持ってきたときに,その集合に属しているか,それとも属していないかが明確に示されることをいう. 例えば「実数空間上に定義された滑らかな関数全体」は集合でない. なぜなら,どのような関数を「滑らか」というかがはっきりしていないからである. しかし「実数空間上に定義された各点で微分可能な関数全体」は集合である. 集合を構成する対象を要素または元という.", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "以下 M , N , A , B , Ω {\\displaystyle M,N,A,B,\\Omega } 等の記号は集合を表すものとする.", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "定義1. {\\displaystyle \\quad } a {\\displaystyle a} が集合 M {\\displaystyle M} に属する元であることを a ∈ M {\\displaystyle a\\in M} と記す.", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "定義2. {\\displaystyle \\quad } a {\\displaystyle a} が集合 M {\\displaystyle M} に属する元でないことを a ∉ M {\\displaystyle a\\notin M} と記す.", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "定義3. {\\displaystyle \\quad } 集合 M {\\displaystyle M} が集合 N {\\displaystyle N} に含まれるとは", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "をいい, M ⊂ N {\\displaystyle M\\subset N} または N ⊃ M {\\displaystyle N\\supset M} と記す.", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "定義4. {\\displaystyle \\quad } 集合 M {\\displaystyle M} と集合 N {\\displaystyle N} が一致するとは", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "をいい, M = N {\\displaystyle M=N} と記す.", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "定義5. {\\displaystyle \\quad } 集合 M {\\displaystyle M} と集合 N {\\displaystyle N} の和集合 M ∪ N {\\displaystyle M\\cup N} とは", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "をいう.", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 10, "tag": "p", "text": "定義6. {\\displaystyle \\quad } 集合 M {\\displaystyle M} と集合 N {\\displaystyle N} の共通集合 M ∩ N {\\displaystyle M\\cap N} とは", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 11, "tag": "p", "text": "をいう.", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 12, "tag": "p", "text": "定義7. {\\displaystyle \\quad } 同様に集合列 A 1 , A 2 , A 3 , ⋯ {\\displaystyle A_{1},A_{2},A_{3},\\cdots } に対して,どれかの A n {\\displaystyle A_{n}} に属する元全体の集合を ⋃ n = 1 ∞ A n {\\displaystyle \\bigcup _{n=1}^{\\infty }A_{n}} と表す.", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 13, "tag": "p", "text": "定義8. {\\displaystyle \\quad } 集合列 A 1 , A 2 , A 3 , ⋯ {\\displaystyle A_{1},A_{2},A_{3},\\cdots } に対して,すべての A n {\\displaystyle A_{n}} に属する元全体の集合を ⋂ n = 1 ∞ A n {\\displaystyle \\bigcap _{n=1}^{\\infty }A_{n}} と表す.", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 14, "tag": "p", "text": "定義9. {\\displaystyle \\quad } また「元を持たない集合」を空集合 といい ∅ {\\displaystyle \\emptyset } で表す. 任意の集合 M {\\displaystyle M} について ∅ ⊂ M , M ∪ ∅ = M , M ∩ ∅ = ∅ {\\displaystyle \\emptyset \\subset M,\\quad M\\cup \\emptyset =M,\\quad M\\cap \\emptyset =\\emptyset } である.", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 15, "tag": "p", "text": "定理1. {\\displaystyle \\quad } A , B , C {\\displaystyle A,B,C} を集合とするとき", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 16, "tag": "p", "text": "(1) ( A ∪ B ) ∩ C = ( A ∩ C ) ∪ ( B ∩ C ) {\\displaystyle (A\\cup B)\\cap C=(A\\cap C)\\cup (B\\cap C)}", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 17, "tag": "p", "text": "(2) ( A ∩ B ) ∪ C = ( A ∪ C ) ∩ ( B ∪ C ) {\\displaystyle (A\\cap B)\\cup C=(A\\cup C)\\cap (B\\cup C)}", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 18, "tag": "p", "text": "証明 {\\displaystyle \\quad }", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 19, "tag": "p", "text": "(1) x {\\displaystyle x} を ( A ∪ B ) ∩ C {\\displaystyle (A\\cup B)\\cap C} に属する任意の元とする. x ∈ A ∪ B {\\displaystyle x\\in A\\cup B} かつ x ∈ C {\\displaystyle x\\in C} . すなわち ( x ∈ A {\\displaystyle (x\\in A} または x ∈ B ) {\\displaystyle x\\in B)} かつ x ∈ C {\\displaystyle x\\in C} . これは x ∈ A ∩ C {\\displaystyle x\\in A\\cap C} または x ∈ B ∩ C {\\displaystyle x\\in B\\cap C} となり, x ∈ ( A ∩ C ) ∪ ( B ∩ C ) {\\displaystyle x\\in (A\\cap C)\\cup (B\\cap C)} すなわち ( A ∪ B ) ∩ C ⊂ ( A ∩ C ) ∪ ( B ∩ C ) {\\displaystyle (A\\cup B)\\cap C\\subset (A\\cap C)\\cup (B\\cap C)} ....1", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 20, "tag": "p", "text": "逆に A ⊂ A ∪ B {\\displaystyle A\\subset A\\cup B} , B ⊂ A ∪ B {\\displaystyle B\\subset A\\cup B} より A ∩ C ⊂ ( A ∪ B ) ∩ C {\\displaystyle A\\cap C\\subset (A\\cup B)\\cap C} , B ∩ C ⊂ ( A ∪ B ) ∩ C {\\displaystyle B\\cap C\\subset (A\\cup B)\\cap C} . ( X ⊂ Z {\\displaystyle X\\subset Z} かつ Y ⊂ Z {\\displaystyle Y\\subset Z} ならば X ∪ Y ⊂ Z {\\displaystyle X\\cup Y\\subset Z} だから) ( A ∩ C ) ∪ ( B ∩ C ) ⊂ ( A ∪ B ) ∩ C {\\displaystyle (A\\cap C)\\cup (B\\cap C)\\subset (A\\cup B)\\cap C} ....2", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 21, "tag": "p", "text": "12より ( A ∪ B ) ∩ C = ( A ∩ C ) ∪ ( B ∩ C ) {\\displaystyle (A\\cup B)\\cap C=(A\\cap C)\\cup (B\\cap C)} .", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 22, "tag": "p", "text": "(2)(1)に対して定理3を先取りして適用する. ( ( A ∪ B ) ∩ C ) C = ( ( A ∩ C ) ∪ ( B ∩ C ) ) C {\\displaystyle ((A\\cup B)\\cap C)^{C}=((A\\cap C)\\cup (B\\cap C))^{C}} . ∴ ( A ∪ B ) C ∪ C C = ( A ∩ C ) C ∩ ( B ∩ C ) C {\\displaystyle \\therefore (A\\cup B)^{C}\\cup C^{C}=(A\\cap C)^{C}\\cap (B\\cap C)^{C}} . ∴ ( A C ∩ B C ) ∪ C C = ( A C ∪ C C ) ∩ ( B C ∪ C C ) {\\displaystyle \\therefore (A^{C}\\cap B^{C})\\cup C^{C}=(A^{C}\\cup C^{C})\\cap (B^{C}\\cup C^{C})} .(証明終)", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 23, "tag": "p", "text": "", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 24, "tag": "p", "text": "定理2. {\\displaystyle \\quad } A , A n , n ∈ N {\\displaystyle A,A_{n},n\\in N} を集合とするとき", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 25, "tag": "p", "text": "(1) ( ⋃ n = 1 ∞ A n ) ∩ A = ⋃ n = 1 ∞ ( A n ∩ A ) {\\displaystyle \\left(\\bigcup _{n=1}^{\\infty }A_{n}\\right)\\cap A=\\bigcup _{n=1}^{\\infty }\\left(A_{n}\\cap A\\right)}", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 26, "tag": "p", "text": "(2) ( ⋂ n = 1 ∞ A n ) ∪ A = ⋂ n = 1 ∞ ( A n ∪ A ) {\\displaystyle \\left(\\bigcap _{n=1}^{\\infty }A_{n}\\right)\\cup A=\\bigcap _{n=1}^{\\infty }\\left(A_{n}\\cup A\\right)}", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 27, "tag": "p", "text": "証明 {\\displaystyle \\quad }", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 28, "tag": "p", "text": "(1)の証明. x ∈ ( ⋃ n = 1 ∞ A n ) ∩ A {\\displaystyle x\\in \\left(\\bigcup _{n=1}^{\\infty }A_{n}\\right)\\cap A} とすると, x ∈ ⋃ n = 1 ∞ A n {\\displaystyle x\\in \\bigcup _{n=1}^{\\infty }A_{n}} かつ x ∈ A {\\displaystyle x\\in A} , したがって,ある(少なくとも一つの) n 0 ∈ N {\\displaystyle n_{0}\\in \\mathbf {N} } について x ∈ A n 0 {\\displaystyle x\\in A_{n_{0}}} かつ x ∈ A {\\displaystyle x\\in A} . すなわち x ∈ A n 0 ∩ A ⊂ ∪ n = 1 ∞ ( A n ∩ A ) {\\displaystyle x\\in A_{n_{0}}\\cap A\\subset \\cup _{n=1}^{\\infty }(A_{n}\\cap A)} であり, これにより ( ⋃ n = 1 ∞ A n ) ∩ A ⊂ ⋃ n = 1 ∞ ( A n ∩ A ) {\\displaystyle \\left(\\bigcup _{n=1}^{\\infty }A_{n}\\right)\\cap A\\subset \\bigcup _{n=1}^{\\infty }(A_{n}\\cap A)} ....1", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 29, "tag": "p", "text": "逆に任意の m ∈ N {\\displaystyle m\\in N} について A m ⊂ ⋃ n = 1 ∞ A n {\\displaystyle A_{m}\\subset \\bigcup _{n=1}^{\\infty }A_{n}} であるから A m ∩ A ⊂ ( ⋃ n = 1 ∞ A n ) ∩ A {\\displaystyle A_{m}\\cap A\\subset \\left(\\bigcup _{n=1}^{\\infty }A_{n}\\right)\\cap A} となり ( A ⊂ Z , B ⊂ Z , C ⊂ Z {\\displaystyle A\\subset Z,B\\subset Z,C\\subset Z} ならば A ∪ B ∪ C ⊂ Z {\\displaystyle A\\cup B\\cup C\\subset Z} と同じ理由で,) ⋃ n = 1 ∞ ( A n ∩ A ) ⊂ ( ⋃ n = 1 ∞ A n ) ∩ A {\\displaystyle \\bigcup _{n=1}^{\\infty }\\left(A_{n}\\cap A\\right)\\subset \\left(\\bigcup _{n=1}^{\\infty }A_{n}\\right)\\cap A} ....2", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 30, "tag": "p", "text": "12より(1)は証明された.", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 31, "tag": "p", "text": "(2)の証明.(1) に定理3を先取りではあるが適用する。", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 32, "tag": "p", "text": "(1)より ( ( ⋃ n = 1 ∞ A n ) ∩ A ) C = ( ⋃ n = 1 ∞ ( A n ∩ A ) ) C {\\displaystyle \\left(\\left(\\bigcup _{n=1}^{\\infty }A_{n}\\right)\\cap A\\right)^{C}=\\left(\\bigcup _{n=1}^{\\infty }\\left(A_{n}\\cap A\\right)\\right)^{C}} . ∴ ( ⋃ n = 1 ∞ A n ) C ∪ A C = ⋂ n = 1 ∞ ( A n ∩ A ) C {\\displaystyle \\therefore \\left(\\bigcup _{n=1}^{\\infty }A_{n}\\right)^{C}\\cup A^{C}=\\bigcap _{n=1}^{\\infty }\\left(A_{n}\\cap A\\right)^{C}} . ∴ ( ⋂ n = 1 ∞ A n C ) ∪ A C = ⋂ n = 1 ∞ ( A n C ∪ A C ) {\\displaystyle \\therefore \\left(\\bigcap _{n=1}^{\\infty }A_{n}^{C}\\right)\\cup A^{C}=\\bigcap _{n=1}^{\\infty }(A_{n}^{C}\\cup A^{C})} . (証明終)", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 33, "tag": "p", "text": "定義9. {\\displaystyle \\quad } ある集合 Ω {\\displaystyle \\Omega } の部分集合全体をなす集合を ℘ ( Ω ) {\\displaystyle \\wp (\\Omega )} と記す.したがって A ∈ ℘ ( Ω ) {\\displaystyle A\\in \\wp (\\Omega )} は A ⊂ Ω {\\displaystyle A\\subset \\Omega } を意味している. 特に ∅ ∈ ℘ ( Ω ) , Ω ∈ ℘ ( Ω ) {\\displaystyle \\emptyset \\in \\wp (\\Omega ),\\quad \\Omega \\in \\wp (\\Omega )} である.", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 34, "tag": "p", "text": "定義10. {\\displaystyle \\quad } また 1 点 ω ∈ Ω {\\displaystyle \\omega \\in \\Omega } だけからなる Ω {\\displaystyle \\Omega } の部分集合を { ω } {\\displaystyle \\{\\omega \\}} ,あるいは簡単のため ω {\\displaystyle \\omega } とも書く.", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 35, "tag": "p", "text": "定義11. {\\displaystyle \\quad } A ∈ ℘ ( Ω ) {\\displaystyle A\\in \\wp (\\Omega )} に対して", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 36, "tag": "p", "text": "を A {\\displaystyle A} の補集合という.明らかに ( A C ) C = A {\\displaystyle (A^{C})^{C}=A} である.", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 37, "tag": "p", "text": "定義12. {\\displaystyle \\quad } A , B ∈ ℘ ( Ω ) {\\displaystyle A,B\\in \\wp (\\Omega )} に対して", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 38, "tag": "p", "text": "を集合 A {\\displaystyle A} と集合 B {\\displaystyle B} の差,また", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 39, "tag": "p", "text": "を集合 A {\\displaystyle A} と集合 B {\\displaystyle B} の対称差という.", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 40, "tag": "p", "text": "演習1. {\\displaystyle \\quad } Ω ≡ ( 0 , 1 ] × ( 0 , 1 ] ( ⊂ R 2 ) , A ≡ ( 0 , 1 ] × ( 0 , 1 2 ] , B ≡ ( 0 , 1 2 ] × ( 0 , 1 ] {\\displaystyle \\Omega \\equiv (0,1]\\times (0,1](\\subset \\mathbf {R} ^{2}),A\\equiv (0,1]\\times (0,{\\frac {1}{2}}],B\\equiv (0,{\\frac {1}{2}}]\\times (0,1]} とするとき, A ∪ B , A ∩ B , A ∖ B , A △ B {\\displaystyle A\\cup B,A\\cap B,A\\setminus B,A\\bigtriangleup B} を図示せよ.", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 41, "tag": "p", "text": "(解答) 略", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 42, "tag": "p", "text": "定理3. {\\displaystyle \\quad } A , B ∈ ℘ ( Ω ) {\\displaystyle A,B\\in \\wp (\\Omega )} とするとき,次の命題が成り立つ.", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 43, "tag": "p", "text": "(1) ( A ∪ B ) C = A C ∩ B C {\\displaystyle (A\\cup B)^{C}=A^{C}\\cap B^{C}}", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 44, "tag": "p", "text": "(2) ( A ∩ B ) C = A C ∪ B C {\\displaystyle (A\\cap B)^{C}=A^{C}\\cup B^{C}}", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 45, "tag": "p", "text": "証明 {\\displaystyle \\quad }", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 46, "tag": "p", "text": "(1)を証明する. x ∈ ( A ∪ B ) C {\\displaystyle x\\in (A\\cup B)^{C}} とすると x ∉ A ∪ B {\\displaystyle x\\not \\in A\\cup B} すなわち x ∉ A {\\displaystyle x\\not \\in A} かつ x ∉ B {\\displaystyle x\\not \\in B} である. ゆえに x ∈ A C ∩ B C {\\displaystyle x\\in A^{C}\\cap B^{C}} したがって ( A ∪ B ) C ⊂ A C ∩ B C {\\displaystyle (A\\cup B)^{C}\\subset A^{C}\\cap B^{C}} が示された.", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 47, "tag": "p", "text": "逆に x ∈ A C ∩ B C {\\displaystyle x\\in A^{C}\\cap B^{C}} であれば X ∉ A {\\displaystyle X\\not \\in A} かつ X ∉ B {\\displaystyle X\\not \\in B} したがって x ∈ ( A ∪ B ) C {\\displaystyle x\\in (A\\cup B)^{C}} となり A C ∩ B C ⊂ ( A ∪ B ) C {\\displaystyle A^{C}\\cap B^{C}\\subset (A\\cup B)^{C}} が示された.", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 48, "tag": "p", "text": "(2)を証明する. (1)に ( A C ) C = A {\\displaystyle (A^{C})^{C}=A} を適用する. (1) より ( ( A ∪ B ) C ) C = ( A C ∩ B C ) C {\\displaystyle ((A\\cup B)^{C})^{C}=(A^{C}\\cap B^{C})^{C}} すなわち A ∪ B = ( A C ∩ B C ) C {\\displaystyle A\\cup B=(A^{C}\\cap B^{C})^{C}} . A = ( A C ) C , B = ( B C ) C {\\displaystyle A=(A^{C})^{C},B=(B^{C})^{C}} だから ( A C ) C ∪ ( B C ) C = ( A C ∩ B C ) C {\\displaystyle (A^{C})^{C}\\cup (B^{C})^{C}=(A^{C}\\cap B^{C})^{C}} . A C {\\displaystyle A^{C}} をあらためて A {\\displaystyle A} , B C {\\displaystyle B^{C}} を B {\\displaystyle B} と書き直せば A C ∪ B C = ( A ∩ B ) C {\\displaystyle A^{C}\\cup B^{C}=(A\\cap B)^{C}} .(証明終)", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 49, "tag": "p", "text": "定理3 はつぎのように一般化される.", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 50, "tag": "p", "text": "", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 51, "tag": "p", "text": "定理4. {\\displaystyle \\quad } A n ∈ ℘ ( Ω ) , n = 1 , 2 , 3 , ⋯ , {\\displaystyle A_{n}\\in \\wp (\\Omega ),n=1,2,3,\\cdots ,} とするとき,次の命題が成り立つ.", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 52, "tag": "p", "text": "(1) ( ⋃ n = 1 ∞ A n ) C = ⋂ n = 1 ∞ A n C {\\displaystyle \\left(\\bigcup _{n=1}^{\\infty }A_{n}\\right)^{C}=\\bigcap _{n=1}^{\\infty }A_{n}^{C}}", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 53, "tag": "p", "text": "(2) ( ⋂ n = 1 ∞ A n ) C = ⋃ n = 1 ∞ A n C {\\displaystyle \\left(\\bigcap _{n=1}^{\\infty }A_{n}\\right)^{C}=\\bigcup _{n=1}^{\\infty }A_{n}^{C}}", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 54, "tag": "p", "text": "証明 {\\displaystyle \\quad }", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 55, "tag": "p", "text": "(1) ( ⋃ n = 1 m A n ) C = ( ⋃ n = 1 m − 1 A n ∪ A m ) C = ( ⋃ n = 1 m − 1 A n ) C ∩ A m C = ( ⋃ n = 1 m − 2 A n ) C ∩ A m − 1 C ∩ A m C = A 1 C ∩ A 2 C ∩ A 3 C ∩ ⋯ A m C = ⋂ n = 1 m A n C {\\displaystyle \\left(\\bigcup _{n=1}^{m}A_{n}\\right)^{C}=\\left(\\bigcup _{n=1}^{m-1}A_{n}\\cup A_{m}\\right)^{C}=\\left(\\bigcup _{n=1}^{m-1}A_{n}\\right)^{C}\\cap A_{m}^{C}=\\left(\\bigcup _{n=1}^{m-2}A_{n}\\right)^{C}\\cap A_{m-1}^{C}\\cap A_{m}^{C}=A_{1}^{C}\\cap A_{2}^{C}\\cap A_{3}^{C}\\cap \\cdots A_{m}^{C}=\\bigcap _{n=1}^{m}A_{n}^{C}}", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 56, "tag": "p", "text": "(2) ( ⋂ n = 1 m A n ) C = ( ⋂ n = 1 m − 1 A n ∩ A m ) C = ( ⋂ n = 1 m − 1 A n ) C ∪ A m C = ( ⋂ n = 1 m − 2 A n ) C ∪ A m − 1 C ∪ A m C = A 1 C ∪ A 2 C ∪ A 3 C ∪ ⋯ A m C = ⋃ n = 1 m A n C {\\displaystyle \\left(\\bigcap _{n=1}^{m}A_{n}\\right)^{C}=\\left(\\bigcap _{n=1}^{m-1}A_{n}\\cap A_{m}\\right)^{C}=\\left(\\bigcap _{n=1}^{m-1}A_{n}\\right)^{C}\\cup A_{m}^{C}=\\left(\\bigcap _{n=1}^{m-2}A_{n}\\right)^{C}\\cup A_{m-1}^{C}\\cup A_{m}^{C}=A_{1}^{C}\\cup A_{2}^{C}\\cup A_{3}^{C}\\cup \\cdots A_{m}^{C}=\\bigcup _{n=1}^{m}A_{n}^{C}}", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 57, "tag": "p", "text": "(証明終)", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 58, "tag": "p", "text": "", "title": "集合" }, { "paragraph_id": 59, "tag": "p", "text": "", "title": "集合" } ]
null
==集合== 集合とは,「数学的に明確に定義された対象の集まり」をいう. 「数学的に明確に定義された」ということは,一つの対象を持ってきたときに,その集合に属しているか,それとも属していないかが明確に示されることをいう. 例えば「実数空間上に定義された滑らかな関数全体」は集合でない. なぜなら,どのような関数を「滑らか」というかがはっきりしていないからである. しかし「実数空間上に定義された各点で微分可能な関数全体」は集合である. 集合を構成する対象を'''要素'''または'''元'''という. 以下 <math>M, N, A, B, \Omega</math> 等の記号は集合を表すものとする. <!-- def:001:start--> <div id="def:1"> <strong>定義1.</strong><math>\quad</math> <math>a</math> が集合 <math>M</math> に属する元であることを <math>a \in M</math>と記す. <!-- def:001:end--> <!-- def:002:start--> <div id="def:2"> <strong>定義2.</strong><math>\quad</math> <math>a</math> が集合 <math>M</math> に属する元でないことを <math>a \notin M</math>と記す. <!-- def:002:end--> <!-- def:003:start--> <div id="def:3"> <strong>定義3.</strong><math>\quad</math> 集合 <math>M</math> が集合 <math>N</math> に'''含まれる'''とは :<math>M</math> に属する任意の元が <math>N</math> に属すること をいい,<math>M \subset N</math> または <math>N \supset M</math> と記す. <!-- def:003:end--> <!-- def:004:start--> <div id="def:4"> <strong>定義4.</strong><math>\quad</math> 集合 <math>M</math> と集合 <math>N</math> が'''一致する'''とは :<math>M \subset N</math> かつ <math>N \subset M</math> なること をいい,<math>M = N</math> と記す. <!-- def:004:end--> <!-- def:005:start--> <div id="def:5"> <strong>定義5.</strong><math>\quad</math> 集合 <math>M</math> と集合 <math>N</math> の'''和集合''' <math>M \cup N</math> とは :<math>M</math> または <math>N</math> に属する元全体の集合 をいう. <!-- def:005:end--> <!-- def:006:start--> <div id="def:6"> <strong>定義6.</strong><math>\quad</math> 集合 <math>M</math> と集合 <math>N</math> の'''共通集合''' <math>M \cap N</math> とは :<math>M</math> と <math>N</math> の両方に属する元全体の集合 をいう. <!-- def:006:end--> <!-- def:007:start--> <div id="def:7"> <strong>定義7.</strong><math>\quad</math> 同様に集合列 <math>A_1, A_2, A_3, \cdots</math> に対して,どれかの <math>A_n</math> に属する元全体の集合を <math>\bigcup_{n = 1}^\infty A_n</math> と表す. <!-- def:007:end--> <!-- def:008:start--> <strong>定義8.</strong><math>\quad</math> 集合列 <math>A_1, A_2, A_3, \cdots</math> に対して,すべての <math>A_n</math> に属する元全体の集合を <math>\bigcap_{n = 1}^\infty A_n</math> と表す. <!-- def:008:end--> <!-- def:009:start--> <div id="def:8"> <strong>定義9.</strong><math>\quad</math> また「元を持たない集合」を'''空集合''' といい <math>\emptyset</math> で表す. 任意の集合 <math>M</math> について <math>\emptyset \subset M, \quad M \cup \emptyset = M, \quad M \cap \emptyset = \emptyset</math> である. <!-- def:009:end--> <!-- theorem:001:start--> <div id="theorem:1"> <strong>定理1.</strong><math>\quad</math> <math>A, B, C</math> を集合とするとき (1) <math>(A \cup B) \cap C = (A \cap C) \cup (B \cap C)</math> (2) <math>(A \cap B) \cup C = (A \cup C) \cap (B \cup C)</math> <strong>証明</strong><math>\quad</math> (1) <math>x</math> を <math>(A \cup B) \cap C</math> に属する任意の元とする. <math>x \in A \cup B</math> かつ <math>x \in C</math>. すなわち <math>(x \in A</math> または <math>x \in B)</math> かつ <math>x \in C</math>. これは <math>x \in A \cap C</math> または <math>x \in B \cap C</math> となり, <math>x \in (A \cap C) \cup (B \cap C)</math> すなわち <math>(A \cup B) \cap C \subset (A \cap C) \cup (B \cap C)</math>.…① 逆に <math>A \subset A \cup B</math>,<math>B \subset A \cup B</math> より <math>A \cap C \subset (A \cup B) \cap C</math>,<math>B \cap C \subset (A \cup B) \cap C</math>. (<math>X \subset Z</math> かつ <math>Y \subset Z</math> ならば <math>X \cup Y \subset Z</math>だから) <math>(A \cap C) \cup (B \cap C) \subset (A \cup B) \cap C</math>.…② ①②より <math>(A \cup B) \cap C = (A \cap C) \cup (B \cap C)</math>. (2)(1)に対して[[測度論的確率論/準備/集合/集合#theorem:3|定理3]]を先取りして適用する. <math>((A \cup B) \cap C)^C = ((A \cap C) \cup (B \cap C))^C</math>. <math>\therefore (A \cup B)^C \cup C^C = (A \cap C)^C \cap (B \cap C)^C</math>. <math>\therefore (A^C \cap B^C) \cup C^C = (A^C \cup C^C) \cap (B^C \cup C^C)</math>.(証明終) <!-- theorem:001:end--> <!-- theorem:002:start--> <div id="theorem:2"> <strong>定理2.</strong><math>\quad</math> <math>A, A_n, n \in N</math> を集合とするとき (1)<math>\left(\bigcup_{n=1}^\infty A_n\right) \cap A = \bigcup_{n=1}^\infty\left(A_n \cap A\right)</math> (2)<math>\left(\bigcap_{n=1}^\infty A_n\right) \cup A = \bigcap_{n=1}^\infty\left(A_n \cup A\right)</math> <strong>証明</strong><math>\quad</math> (1)の証明.<math>x \in \left(\bigcup_{n=1}^\infty A_n\right) \cap A</math> とすると,<math>x \in \bigcup_{n=1}^\infty A_n</math> かつ <math>x \in A</math>, したがって,ある(少なくとも一つの)<math>n_0 \in \mathbf{N}</math> について <math>x \in A_{n_0}</math> かつ <math>x \in A</math>. すなわち <math>x \in A_{n_0} \cap A \subset \cup_{n=1}^\infty (A_n \cap A)</math> であり, これにより <math>\left( \bigcup_{n=1}^\infty A_n \right) \cap A \subset \bigcup_{n=1}^\infty (A_n \cap A)</math>.…① 逆に任意の <math>m \in N</math> について <math>A_m \subset \bigcup_{n=1}^\infty A_n</math> であるから <math>A_m \cap A \subset \left( \bigcup_{n=1}^\infty A_n \right) \cap A</math> となり (<math>A \subset Z, B \subset Z, C \subset Z</math> ならば <math>A \cup B \cup C \subset Z</math> と同じ理由で,) <math>\bigcup_{n=1}^\infty\left(A_n \cap A \right) \subset \left( \bigcup_{n=1}^\infty A_n \right) \cap A</math>.<ref> さらにパラフレーズする.<br /> 任意の <math>m</math> について<math>A_m \cap A \subset \left( \bigcup_{n=1}^\infty A_n \right) \cap A</math><br /> すなわち,<br /> <math>A_1 \cap A \subset \left( \bigcup_{n=1}^\infty A_n \right) \cap A</math>…①<br /> <math>A_2 \cap A \subset \left( \bigcup_{n=1}^\infty A_n \right) \cap A</math>…②<br /> <math>A_3 \cap A \subset \left( \bigcup_{n=1}^\infty A_n \right) \cap A</math>…③<br /> <math>\cdots</math><br /> 各式の左辺の変化している部分に着目する.それは <math>A_1, A_2, A_3, \cdots</math> であり,今,左辺の和集合を考えると <math>(A_1 \cap A) \cup (A_2\cap A) \cup (A_3\cap A) \cup \cdots</math> であるが,<br /> ①②③…,により <math>A_1\cap A</math> はある集合 <math>Z</math> に対して <math>A_1\cap A \subset Z</math> だといっている.<br /> 同様に <math>A_2 \cap A\subset Z, A_3 \cap A\subset Z, \cdots</math> だといっている. したがって <math>(A_1 \cap A) \cup (A_2 \cap A) \cup (A_3 \cap A) \cup \cdots \subset Z = \left( \bigcup_{n=1}^\infty A_n \right) \cap A</math> といえることになるであろう.<br /> </ref>…② ①②より(1)は証明された. (2)の証明.(1) に[[測度論的確率論/準備/集合/集合#theorem:3|定理3]]を先取りではあるが適用する。 (1)より <math>\left( \left(\bigcup_{n=1}^\infty A_n \right) \cap A \right)^C = \left( \bigcup_{n=1}^\infty \left( A_n \cap A \right) \right)^C</math>. <math>\therefore \left( \bigcup_{n=1}^\infty A_n \right)^C \cup A^C = \bigcap_{n=1}^\infty \left( A_n \cap A \right)^C</math>. <math>\therefore \left( \bigcap_{n=1}^\infty A_n^C \right) \cup A^C = \bigcap_{n=1}^\infty ( A_n^C \cup A^C)</math>. (証明終) <!-- theorem:002:end--> <!-- def:009:start--> <div id="def:9"> <strong>定義9.</strong><math>\quad</math> ある集合 <math>\Omega</math> の部分集合全体をなす集合を <math>\wp(\Omega)</math> と記す.したがって <math>A \in \wp(\Omega)</math> は <math>A \subset \Omega</math> を意味している. 特に <math>\emptyset \in \wp(\Omega),\quad \Omega \in \wp(\Omega)</math> である. <!-- def:009:end--> <!-- def:010:start--> <div id="def:10"> <strong>定義10.</strong><math>\quad</math> また 1 点 <math>\omega \in \Omega</math> だけからなる <math>\Omega</math> の部分集合を <math>\{\omega \}</math>,あるいは簡単のため <math>\omega</math> とも書く. <!-- def:010:end--> <!-- def:011:start--> <div id="def:11"> <strong>定義11.</strong><math>\quad</math> <math>A \in \wp(\Omega)</math> に対して :<math>A^C \equiv \{ a \in \Omega | a \not\in A \}</math> を <math>A</math> の'''補集合'''という.明らかに <math>(A^C)^C = A</math> である. <!-- def:011:end--> <!-- def:012:start--> <div id="def:12"> <strong>定義12.</strong><math>\quad</math> <math>A, B \in \wp(\Omega)</math> に対して :<math>A \setminus B \equiv A \cap B^C = \{ a \in A : a \not\in B \}</math> を集合 <math>A</math> と集合 <math>B</math> の'''差''',また :<math>A \bigtriangleup B \equiv (A \cup B) \setminus (A \cap B)</math> を集合 <math>A</math> と集合 <math>B</math> の'''対称差'''という. <!-- def:012:end--> <!-- ex:001:start--> <div id="ex:1"> <strong>演習1.</strong><math>\quad</math> <math>\Omega \equiv (0, 1] \times (0, 1](\subset \mathbf{R}^2), A \equiv (0, 1] \times (0, \frac{1}{2}], B \equiv (0, \frac{1}{2}] \times (0, 1]</math> とするとき,<math>A \cup B, A \cap B, A \setminus B, A \bigtriangleup B</math> を図示せよ. (解答) 略 <!-- ex:001:end-> <!-- theorem:003:start--> <div id="theorem:3"> <strong>定理3.</strong><math>\quad</math> <math>A, B \in \wp(\Omega)</math> とするとき,次の命題が成り立つ. (1) <math>( A \cup B)^C = A^C \cap B^C</math> (2) <math>( A \cap B)^C = A^C \cup B^C</math> <strong>証明</strong><math>\quad</math> (1)を証明する.<math>x \in (A \cup B)^C</math> とすると <math>x \not\in A \cup B</math> すなわち <math>x \not\in A</math> かつ <math>x \not\in B</math> である. ゆえに <math>x \in A^C \cap B^C</math> したがって <math>(A \cup B)^C \subset A^C \cap B^C</math> が示された. 逆に <math>x \in A^C \cap B^C</math> であれば <math>X \not\in A</math> かつ <math>X \not\in B</math> したがって <math>x \in (A \cup B)^C</math> となり <math>A^C \cap B^C \subset (A \cup B)^C</math> が示された. (2)を証明する. (1)に <math>(A^C)^C = A</math> を適用する. (1) より <math>((A \cup B)^C)^C = (A^C \cap B^C)^C</math> すなわち <math>A \cup B = (A^C \cap B^C)^C</math>. <math>A = (A^C)^C, B = (B^C)^C</math> だから <math>(A^C)^C \cup (B^C)^C = (A^C \cap B^C)^C</math>. <math>A^C</math> をあらためて <math>A</math>,<math>B^C</math> を <math>B</math> と書き直せば <math>A^C \cup B^C = (A \cap B)^C</math>.(証明終) <!-- theorem:003:start--> 定理3 はつぎのように一般化される. <!-- theorem:004:start--> <div id="theorem:4"> <strong>定理4.</strong><math>\quad</math> <math>A_n \in \wp(\Omega), n = 1, 2, 3, \cdots, </math> とするとき,次の命題が成り立つ. (1)<math>\left( \bigcup_{n=1}^\infty A_n \right)^C = \bigcap_{n=1}^\infty A_n^C</math> (2)<math>\left( \bigcap_{n=1}^\infty A_n \right)^C = \bigcup_{n=1}^\infty A_n^C</math> <strong>証明</strong><math>\quad</math> (1)<math>\left( \bigcup_{n=1}^m A_n \right)^C = \left( \bigcup_{n=1}^{m-1} A_n \cup A_m \right)^C = \left( \bigcup_{n=1}^{m-1} A_n \right)^C \cap A_m^C = \left( \bigcup_{n=1}^{m-2} A_n \right)^C \cap A_{m-1}^C \cap A_m^C = A_1^C \cap A_2^C \cap A_3^C \cap \cdots A_m^C = \bigcap_{n=1}^m A_n^C </math> (2)<math>\left( \bigcap_{n=1}^m A_n \right)^C = \left( \bigcap_{n=1}^{m-1} A_n \cap A_m \right)^C = \left( \bigcap_{n=1}^{m-1} A_n \right)^C \cup A_m^C = \left( \bigcap_{n=1}^{m-2} A_n \right)^C \cup A_{m-1}^C \cup A_m^C = A_1^C \cup A_2^C \cup A_3^C \cup \cdots A_m^C = \bigcup_{n=1}^m A_n^C </math> (証明終) <!-- theorem:004:start--> <references /> [[カテゴリ:数学]]
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2022-11-30T16:09:22Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B8%AC%E5%BA%A6%E8%AB%96%E7%9A%84%E7%A2%BA%E7%8E%87%E8%AB%96/%E6%BA%96%E5%82%99/%E9%9B%86%E5%90%88/%E9%9B%86%E5%90%88
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大学教養 理系学部の生物学
※ 2018年現在の高校生物のカリキュラムでは、(高校の化学でなく)高校の生物科目でも「ペプチド結合」とか習ってるので、もし分からなければ、まず高校生物の復習をせよ。 染色体の末端のあたりにテロメアと言われる、DNA配列で(ヒトのテロメアでは) TTAGGG の塩基配列が繰り返している部分があるのだが、これが細胞分裂のたびに短くなる。 テロメアの長さが一定以下になると、細胞が分裂しなくなる。 このようにして、どうやらテロメアは、細胞のおおよその分裂回数を記録したりする役割をしているらしく、よく時計などにたとえられ、また、生体の寿命や老化に関係していると考えられている。 (1999年のクローン羊のドリーも、他の羊よりも早死にしたが、テロメアが普通の羊よりも短くなっていたらしい。) しかし、幹細胞では、テロメラーゼという酵素によって、テロメアの繰り返し回数が伸ばされ、テロメアの長さが保たれている。生殖細胞でもテロメラーゼが働いているだろう、と考えられている。 (試験管やペトリ皿などに)培養した体細胞では、一定回数しか分裂できないことが昔から知られている(いわゆる「ヘイフリック限界」。用語は大学教養では、ほぼ範囲外なので、暗記しなくていい)。この原因も、テロメアが関係していると見るのが、有力説である。 どうやらテロメアは、細胞分裂に必要となるDNAポリメラーゼがけ結合する際の足場になっているようである、と生物学では一般に考えられている。 そしてテロメアが短くなる理由も、DNAポリメラーゼは足場のテロメア部分を複製できないため、細胞分裂のたびにテロメアが短くなっていくのだろう、と生物学では一般に考えられている。 がん細胞では、テロメアおよびテロメラーゼが暴走しているらしく、そのような仮説が有力である 。ただし、あくまでも仮説である。がん細胞の研究は難しく、未解明のことも多い。 細胞周期のチェックポイントの制御にかかわる物質が見つかっており、それは後述するサイクリンとCDKという物質である。 細胞内で、サイクリンという物質があり、サイクリンの濃度が高まるとサイクリン依存性キナーゼ(CDK)が活性化し、CDKが標的タンパク質をリン酸化することで、細胞周期の制御が行われる。 この際、サイクリンがCDKに結合していると考えられており、サイクリンとCDKが結合したもののことを「サイクリン-CDK複合体」などと呼ばれている。 高校では習わないが、近年、Gタンパク質というのが分かった。 Gタンパク質は、GTP(グアノシン三リン酸)という物質をGDP(グアノシン2リン酸)に変える働きをしている。 高校ではATPをエネルギーの貯蔵庫だのエネルギーの貨幣だと習っただろうが、とりあえずGタンパク質のGTPはエネルギーとはあまり関係ない。 では、Gタンパク質でのGTPやGDPは何かというと、どうも細胞へのなんらかのシグナル到達の合図と、それによる細胞内での様々なシグナル開始の合図のようである。 細胞内では、環状AMPなどのシグナル伝達物質がある。 まず、Gタンパク質に付随する受容体に、たとえばアセチルコリンなどの物質が結合し、シグナルを受け取る。 すると、「三量体Gタンパク質」が活性化される。 Gタンパク質とは何かというと、とくに「三量体Gタンパク質」の部分が、Gタンパク質であると言われる場合が多い。 この三量体Gタンパク質は、GTPをGDPに変化させる。 その後の経路として、数通りかの経路がある。 特に重要と思われる経路のひとつとして、環状AMPの合成の経路がある。 三量体Gタンパク質がGTPをGDPに変化させた際、三量体Gタンパク質は、環状AMP(cAMP)を合成する酵素 アデニル酸シクラーゼを刺激して環状AMPを合成させ、細胞内のシグナル伝達を開始する。 セカンドメッセンジャーとか二次メッセンジャーとかいう。 そして、Gタンパク質の近くに、7回膜貫通タンパク質というのがある。7回膜貫通タンパク質は「Gタンパク質共役型受容体」とも言われる。 本wikibooksでは区別をしやすくするため、「7回膜貫通タンパク質」で呼ぶことにする。名前だけでは分かりづらいかもしれないが、7回膜貫通タンパク質は受容体として働く。 受容体であるということは、それに結合する物質があるわけだ。 人体の場合、7回膜貫通タンパク質は、筋肉などに存在し、アドレナリンが7回膜貫通タンパク質に結合し、筋肉への神経からの伝達に関わっている。 神経情報伝達のほか、いくつかのホルモンにも、7回膜貫通タンパク質は関わっている。 など、いくつかのホルモンの受容体としても、使われている。 だからといって、けっしてすべてのホルモン受容体が7回膜貫通タイプなわけではなく、たとえば、すい臓のインスリン受容体は異なるタイプ(酵素型受容体)である。 かならずしも人体のすべての受容体が7回膜貫通タンパク質ではなく、たとえばイオンチャネル型の受容体など(7回膜貫通ではない種類の受容体)も存在する。 さて、7回膜貫通タンパク質の構造などについては、7回膜貫通タンパク質は1本のポリペプチドから構成されているαヘリックスの物質であり、疎水性であり、細胞膜を7回貫通している。 神経伝達物質のひとつとしてアセチルコリンがある。 アセチルコリン受容体は、種類としては主に2種類あり、ムスカリン性受容体 と ニコチン性受容体 という2種類のアセチルコリン受容体がある。 ニコチン性受容体という名前は、タバコの主要成分でもあるニコチンが結合できるので、こういう名前がついた 。 いっぽう、ムスカリンとは、キノコのベニテングダケのコケ毒の成分である。ムスカリン受容体には、薬物(ほぼ毒物?)のムスカリンが結合するので、こういう名前がついた。 ニコチン性受容体は、イオンチャネル型の受容体である。 ムスカリン性受容体は、7回膜貫通タンパク質型の受容体であるが、最終的にKチャネル(カリウムチャネル)を開閉する 。 高校では、免疫グロブリンについて、可変領域が、抗原に結合する、と習った。 じつは可変領域の内部で、「超可変領域」といわれる、特に可変の程度の高い部分があることが分かっており、H鎖とL鎖の各鎖に3箇所ある(つまり、合計12個ある)。この超可変領域こそが多様性に富んで、抗原に特異的であることが分かっている。「超可変領域」のことを「相補性決定領域」ともいう。 (※ wikiに超可変領域の画像ファイルが無いので、市販の教科書などお読みください。) 細胞膜の表面にあるMHC(主要組織適合性複合体、Major Histocompatibility Complex)には2種類あり、MHCクラスIとMHCクラスIIという二種類がある。 MHCクラスIは、ほぼすべての有核細胞に発現している。 いっぽう、MHCクラスIIは、樹状細胞やマクロファージやB細胞にある。 キラーT細胞がMHCクラスIで病原体を提示している細胞を殺す仕事をする。 いっぽう、MHCクラスIIの役割は、ヘルパーT細胞への情報提示である。 T細胞側の、MHCと結合する相手の分子は、「T細胞受容体」(TCR)と呼ばれる。 ところで高校で、免疫グロブリンの先端に可変領域があると習い、遺伝子の再編などで多様な組み合わせを実現していると習っただろう。 じつはTCRの先端にも可変領域があり、遺伝子の再編で多様な組み合わせを実現していることが分かっている。 さて、ヘルパーT細胞にはCD4という分子がある。 いっぽう、キラーT細胞にはCD8という分子がある。 CD4やCD8は、MHCやTCRとは別物である。 エイズウイルスは、CD4と結合することが分かっている。 モノクローナル抗体とは、細胞融合の技術を使って、健康なB細胞と、増殖力の高い腫瘍細胞とを融合させることで、B細胞のつくる抗体を大量に入手する方法のことの方法そのものは、高校でも習ったように、センダイウイルスやポリエチレングリコールなどを用いて可能である。 そもそもB細胞は抗体産生細胞である。 手順としては、 こうして、目的の抗体を大量に入手できる。 高校でも「ステロイド」はステロイドホルモンなどとして名前だけ習ったと思う。 ひとくちに「ステロイド」といわれても色々な構造があるが、おおむね構造は、図のようにステロイドの基本骨格を含む構造である なお、大学の化学構造式の書き方は高校と変わり、図のように、炭素Cや、炭素に隣接した水素Hを省略する場合も多い。こう描く理由はおそらく、有機化合物の高分子では、炭素と水素を省略しないと、構造が見づらくなるからであろう。 副腎皮質ホルモンや性ホルモンもステロイドである。 ひとくちに性ホルモンといっても、女性ホルモンに限定しても何種類もあるので、大学ではたとえば具体的に「エストラジオール」(女性ホルモンの一種,エストロゲンの別名)など物質名で呼ぶ。 このように、構造式で見ると、男性ホルモンや女性ホルモンがステロイドであることが一目瞭然である。 「ステロイド」と聞くと、なんとなく薬物的なイメージがあるかもしれないが、しかし真核細胞の細胞膜の成分にもステロイドが含まれている。また、ホルモンなどにもステロイドは多い。 精液の中にプロスタグランジンという、子宮筋や平滑筋を収縮させる作用をもつ物質が含まれている。この物質は発見時、前立腺(プロステート・グランド)で生成されると考えられていたので、プロスタグランジンという名前がついている。 しかし、のちにプロスタグランジンには数種類あることが分かった。プロスタグランジンF2αとかプロスタグランジンE2など、何種類かある。 また、存在場所も精液だけでなく、ほぼ全身で、この物質が必要に応じて分泌されることが分かった。 またプロスタグランジンの作用は解明されていき、平滑筋の収縮のほかにも、血管の拡張などの作用があることが分かった。 風邪などのさいの炎症や発熱の調整にも、プロスタグランジンが関わっている。 なお、プロスタグランジンの合成経路については、脂肪酸の一種のアラキドン酸を原料にしてプロスタグランジンは合成される。合成経路について、細胞膜を構成するリン脂質が酵素によって分解されてプロスタグランジンが合成される、と考えられている。 分類について、プロスタグランジンをホルモンの一種として分類する場合もあれば、ホルモンとは別の「生理活性物質」や「エイコサノイド」(イコサノイドともいう)としてプロスタグランジンを分類する場合もある。 なお、エイコサとはラテン語の数字20のことであり、エイコサノイドとはアラキドン酸の炭素数が20個であることから、そういってるだけである。 なので学生は、プロスタグランジンがホルモンであるかどうかは、あまり気にしなくていい。 脳内で分泌される快楽物質のひとつとしてアナンダミドというのがあるが、構造がプロスタグランジンに近い。(※ 参考文献: 『グラフィックライフサイエンス』) 軟骨の主な成分は、プロテオグリカンという糖タンパク質である。 ちなみに硬骨の主成分はリン酸カルシウムである。 なお、混同しやすい物質として、名前の似ている「ペプチドグリカン」という物質も自然界にあるが、ペプチドグリカンは細菌の細胞壁の成分である。混同しないように。 ペプチドグリカンは、細菌(原核細菌)の細胞壁として、よく存在する成分であり、比較的に硬い成分である。ブドウ球菌や大腸菌なども、細胞壁の主成分がペプチドグリカンである。 ペプチドグリカンの構造は、網目構造になっており、主に糖からなる炭水化物(より正確には、糖とグリシン)を、ペプチド(アミノ酸のつながったもの)で架橋している構造になっている。 抗生物質のペニシリンは、このペプチドグリカンのペプチド結合を阻害するため、よってペニシリンはペプチドグリカンの形成を阻害できるので、結果として細胞壁に穴が開き、細菌を殺せるので、ペニシリンは抗生物質として機能している。つまり、ペニシリンは、分子生物学的かつ薬理学的に言えば、細胞壁合成の阻害剤である。 なお、これらペプチドグリカンのある細菌の多くは、細胞内の内圧が高く、それを硬い細胞壁で守っているので、ペプチドグリカンの合成が阻害されると、細菌の細胞が破裂する(溶菌)。 また、ヒトの涙や胃腸液に含まれる成分であるリゾチームも、ペプチドグリカンを加水分解して破壊する。 ビタミンCは、アスコルビン酸という物質である。 ビタミンには水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンとがある。ビタミンCは水溶性である。つまり、アスコルビン酸は水溶性である。(関連付けて覚えよう。) 脳は、部位ごとに、その部位がつかさどる機能が違っている。 たとえば、1861年の外科医ブローカーは、ある失語症の患者を調べて、その患者は言葉を理解するが自分からは「タン、タン」としか話せないと報告した。死後、患者が解剖され、脳の左半球の前頭葉の一部に損傷を発見した。現在では、左半球の前頭葉のこの部位の機能として、顔の筋肉などの運動機能をつかさどることが分かり、現在、この部位は「ブローカ野」または「運動性言語中枢」呼ばれている。 また、ウェルニッケは1874年、別の患者で、言葉を話せるが理解していない患者を報告した。死後の解剖で、ウェルニッケの報告した患者の脳の側頭葉に損傷のあることが発見された。現在、この部位は「ウェルニッケ野」または「感覚性言語中枢」と呼ばれている。 その後、事故などで脳に損傷を負った患者が発生するの症例が調べられたり(※ 参考文献『グラフィック ライフ サイエンス』)、他には実験的に脳のさまざまな部位に電気刺激を加えるなどの人体実験や動物実験などにより、脳のどの部位がどの機能をつかさどっているかが、調べられた。(※ 参考文献: 羊土社『理系総合のための生命科学』) 現代では、わざわざ電気刺激を加えなくても、MRI(核磁気共鳴診断法)やPET診断などで、脳の働きを外部から観察できる。 MRIの種類にもよるが、水素原子核のある部分を映し出す性質をもつ観察手法なので、造影剤をつかわなくても観察できる利点がある。 だが、MRIは検査に時間がやや長く掛かる。 なお、磁場を使うので患者はメガネや時計などの金属をすべて外す必要がある。このため、体内にペースメーカーや人工骨など金属医療器具の埋め込まれている患者には、MRIは禁忌である。 ※ 「禁忌」(きんき)とは医学用語で、禁止・厳禁のこと。日本語では、禁忌の「忌」は、「忌み嫌う」(いみきらう)の「忌み」。国語では、嫌悪感が激しく、強く嫌っている場合などに「忌み」を使う場合もあるが、古風かつ、やや宗教的・文化人類学的な表現である。英語でいうタブー (taboo) のようなもの。 脳で「海馬」(英: hippocampus)と呼ばれる部分が、主に記憶をつかさどっている。 なお、日本語の「海馬」とはタツノオトシゴのこと。英語の hippocampus とは、ギリシア神話に出てくる半馬半魚の怪獣。 脳の機能はともかく、とにくかく解剖学的にいくつかの領域に分けて脳を図示したものとして、ブロードマンの脳地図が、古くから提案されている。 脳のなかで、どの部位が、身体のどの部位をつかさどってるかを図示したものとして、「ペンフィールソのホムンクルス」とか「脳のホムンクルス」とか「脳の小人」などと呼ばれる図が、古くから提案されている。なお、「ホムンクルス」とは人造人間という意味の語である。 図で描かれた手や顔など身体各部位の大きさは、神経の多さに比例していると考えられて、このホムンクルスの絵が描かれている。 精子が卵に到達して受精の瞬間になるとき、精子が卵に接触した点を中心にCaの増減が波として卵全体に伝わっている。(※ ← 大学教養の教科書で、よくある内容。) これはどうやって確認されたかというと、一例として、イクオリンというカルシウムに反応する物質を、あらかじめウニの卵に注射して混ぜたあとに受精させることで確認された。(※ 参考文献: 羊土社『基礎から学ぶ生物学・細胞生物学』、第3版、243ページのコラム) オワンクラゲは、緑色発光タンパク質GFPをもつ。世間ではノーベル賞受賞にもなったGFPが有名であるが、じつはオワンクラゲはGFPのほかにもイクオリンという青色発光タンパク質をもち、イクオリンがカルシウムと反応すると青色の光を発生する。 なお、(受精波の観測の件は別にして、)単に受精膜の形成の際にカルシウムが必要かどうかを確かめるだけの実験なら、上記とは異なる実験例として、カルシウムの効果を打ち消す薬品を未受精卵に注入して、精子と反応させても受精膜が形成されないことを見るなどの実験例もある(※ 2013年センター試験の生物I本試験で紹介された実験例)。ほか、何らかの方法で未受精卵の内部のカルシウム濃度を減らし、受精膜が形成されないことを見る実験もある(同センター試験の出題例)。 ヒトなど哺乳類の性別は、性染色体で決まる場合が普通である。 しかし、動物や植物のなかには、性別の決まり方がヒトなどとは違うものもある。 鳥類では、メスは性染色体にヘテロに性染色体のZとWをもっており(メスはZW)おり、いっぽう、オスはホモに性染色体をもっている(オスはZZである)。 また、キイロショウジョウバエでは、性染色体と常染色体との比率で性別が決まる。 また、遺伝的要因ではなく環境要因で性別の決まる生物もいる。 たとえば爬虫類(カメなど)では、卵の孵化時の環境の温度で、性別が決まる場合が多い。 ある種類のカメは、孵化時に低温でオス、高温でメスになる。 逆に、ある種類のワニ(ミシシッピワニなど)では、孵化時に低温でメス、高温でオスになる。 ヒトの場合、通常の性染色体は女のXXおよび男のXYだが、受精後の発生のときなどによる染色体の分離時の異常などにより、その他の組み合わせの性染色体をもつ人間が生まれる場合がある。 人間だけに限らず、ほかの生物でも染色体異常(chromosomal abnomality)は起こりうるが、まずは簡単な例として人間の場合で説明する。また、性染色体に限らず常染色体でも異常は起こりうる。 ヒトの場合、場合によっては染色体異常により、性染色体にXXYやXXXやXXXXやXXYYなどの染色体を持つ人間が生まれる場合もある。これらの染色体上の人間は、一般的に、先天的な障害(身体障害・知能障害)など身体の異常や知能の異常を持つ傾向がある。 これら性染色体異常の場合の、男女の性決定は、つぎの通り。 一般的にヒトの場合、どの性染色体異常でもX染色体の数が多ければ、そのぶん女性的な特徴をもつ。同様に、Yが多ければ、そのぶん男性的な特徴を持つ。ヒトの場合、Y染色体を一つでも性染色体に持つと、男になり、男性器および精巣をもつのが一般的である。 これらはヒトの場合であり、ほかの動物の場合は、かならずしも、同じような結果になるとは限らない。 なお、染色体の価数(かすう)(XXやXYは2価。XXYやXYYなどは3価。)が3価や1価などの異常が起きりうる染色体は、けっして性染色体だけに限ったことではないので、勘違いしないように。 RNA干渉というのがあって、よく高校や大学の生物教科書のコラムなどで紹介されてるが、まだ未解明のことが多いので、暗記しなくていい。 ※ RNA干渉についてはwikibooks高校生物でも解説しておいた。 がん(cancer)という症状は、一般に、細胞の過剰な異常増殖である。正常な細胞は、もとの位置にとどまっている。しかしがん細胞は、周囲に浸潤(しんじゅん)したり、遠くの器官に転移したりする。やや専門的な言い方をすれば、(増殖に歯止めを掛けるための抑制の機構をその細胞が失うなどして)自律的に増殖する細胞が、がん細胞である。 なお、腫瘍(しゅよう、tumor)とは一般に、過剰増殖するようになった体細胞の集団である。また、「悪性新生物」とは一般に、悪性の腫瘍のことである。 白血病も、がん の一種に含めるのが慣習である。 下記の節で後述するように、がん の原因のいくつかは遺伝子にあると考えられている。 がん という病気の生物学的な原因としては、がん は遺伝子の病気であると考えられている。 もとは正常だった遺伝子が、なんらかの原因により、病的な遺伝子となって、がんが起きていると考えられている。 (体細胞を念頭に)正常な細胞は、培養器で培養すると、培養器の底に広がった後、しばらくすると、分裂をしなくなる。 しかし、がん細胞は、栄養があるかぎり無尽蔵に分裂を続ける。 正常な細胞には、むやみに分裂しないような機構があり、細胞周期チェックポイントのG0期で留まることができる。しかし、どうやら がん細胞は、どうやらブレーキが壊れた状態のようなもので、細胞周期のチェックポイントで留まることができないようである。 さて、先ほど述べたように、がん は遺伝子の病気であると考えられている。がん細胞から取り出した、がんを起こしている責任のある細胞を「がん遺伝子」(oncogene)という。 また、「がん遺伝子」になる前の状態の遺伝子(正常な遺伝子でもいい)のことを「がん原遺伝子」(proto-oncogene)という。 具体例として、Gタンパク質の一種でRasタンパク質というのがある。Rasタンパク質自体は、正常なタンパク質である。Rasタンパク質が、(なんらかの原因により、)がん化した際のがん遺伝子をras遺伝子という。(紛らわしいが、大文字Rasと小文字rasで意味が違う。) これ以外にも、多くの がん遺伝子が生物学で見つかっている。 いっぽう、がん などの異常増殖を抑制する遺伝子の存在も知られており、「がん抑制遺伝子」(tumor suppressor gene)といい、ヒトの場合はp53遺伝子が「がん抑制遺伝子」である。なお、ヒトの17番染色体上腕にp53遺伝子が存在する。(余談だが、p53の名前の由来は、分子量53000(つまり53k)のタンパク質(protein)という意味である。) がん抑制遺伝子の機能が失われた場合にも、がんの発生の可能性が高まる。 じっさい、マウスを使った動物実験で、遺伝子組み換え実験でマウスのp53遺伝子をノックアウトしたマウスを作成すると、全身が がん化 するマウスが誕生するので、早死にする。(※ 参考文献: チャート式生物) さて、2012年のノーベル賞でiPS細胞が受賞したが、しかし、導入によってiPS細胞を作れるとする4つの遺伝子のうちに、がん遺伝子 c-myc が含まれている。 なお、iPS細胞化に必要な4つの遺伝子のことを「山中因子」と呼ぶ。 つまり、山中因子のうちのひとつの遺伝子はがん遺伝子 c-myc である。 歴史的には1911年に、アメリカの病理学者ラウスが、ニワトリの肉腫の別のニワトリへの移植や、その ろ液 の注射などの実験を通じて、病原体(今で言う「ウイルス」)によるがん発生を発見した。(今で言う「ラウス肉腫ウイルス」) のち、ニワトリに肉腫を起こすウイルスは、レトロウイルスであることが分かり、今で言うラウス肉腫ウイルスであることが分かった。 このラウス肉腫ウイルスに含まれる遺伝子が v-src が、当初は がん の原因だと有力視されていたが、しかし正常なニワトリにも相同な遺伝子が存在することが分かり、わずかに一部の配列が正常な遺伝子と違うことで、がんを引き起こしていることが分かった。 バイオテクノロジーを使って、培養設備内で、がん細胞と、B細胞など他の細胞とを融合させて、その研究対象の細胞を増殖させて、 実験材料としての細胞を大量生産する方法があり、ハイブリドーマという。特にB細胞とのがん細胞とのハイブリドーマが研究が進んでいる。「モノクローナル抗体」と言われるものの培養にもハイブリドーマが使われている場合が多い(つまり、モノクローナル抗体は通常、がん細胞とB細胞を細胞融合させて作られる)。 タールに含まれる物質でもあるベンゾピレンなどの化学物質などにより、がんが起きやすくなることが知られている。 化学物質以外にも、ある種のウイルスの感染によって がん になりやすくなることも知られている。パピローマウイルスの感染が 子宮頸がん を引き起こす。B型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルスは、肝臓がん を引き起こす。 ウイルスだけでなく細菌もがんの原因になる。ピロリ菌は 胃がん を引き起こす。 なお、アスベストの吸引による悪性中皮腫も がん として分類されるので、アスベストも 発がん物質 に分類される。
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "※ 2018年現在の高校生物のカリキュラムでは、(高校の化学でなく)高校の生物科目でも「ペプチド結合」とか習ってるので、もし分からなければ、まず高校生物の復習をせよ。", "title": "※ まえがき: 高校で習う範囲" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "染色体の末端のあたりにテロメアと言われる、DNA配列で(ヒトのテロメアでは) TTAGGG の塩基配列が繰り返している部分があるのだが、これが細胞分裂のたびに短くなる。", "title": "細胞" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "テロメアの長さが一定以下になると、細胞が分裂しなくなる。", "title": "細胞" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "このようにして、どうやらテロメアは、細胞のおおよその分裂回数を記録したりする役割をしているらしく、よく時計などにたとえられ、また、生体の寿命や老化に関係していると考えられている。", "title": "細胞" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "(1999年のクローン羊のドリーも、他の羊よりも早死にしたが、テロメアが普通の羊よりも短くなっていたらしい。)", "title": "細胞" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "しかし、幹細胞では、テロメラーゼという酵素によって、テロメアの繰り返し回数が伸ばされ、テロメアの長さが保たれている。生殖細胞でもテロメラーゼが働いているだろう、と考えられている。", "title": "細胞" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "", "title": "細胞" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "(試験管やペトリ皿などに)培養した体細胞では、一定回数しか分裂できないことが昔から知られている(いわゆる「ヘイフリック限界」。用語は大学教養では、ほぼ範囲外なので、暗記しなくていい)。この原因も、テロメアが関係していると見るのが、有力説である。", "title": "細胞" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "どうやらテロメアは、細胞分裂に必要となるDNAポリメラーゼがけ結合する際の足場になっているようである、と生物学では一般に考えられている。 そしてテロメアが短くなる理由も、DNAポリメラーゼは足場のテロメア部分を複製できないため、細胞分裂のたびにテロメアが短くなっていくのだろう、と生物学では一般に考えられている。", "title": "細胞" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "がん細胞では、テロメアおよびテロメラーゼが暴走しているらしく、そのような仮説が有力である 。ただし、あくまでも仮説である。がん細胞の研究は難しく、未解明のことも多い。", "title": "細胞" }, { "paragraph_id": 10, "tag": "p", "text": "細胞周期のチェックポイントの制御にかかわる物質が見つかっており、それは後述するサイクリンとCDKという物質である。", "title": "細胞" }, { "paragraph_id": 11, "tag": "p", "text": "細胞内で、サイクリンという物質があり、サイクリンの濃度が高まるとサイクリン依存性キナーゼ(CDK)が活性化し、CDKが標的タンパク質をリン酸化することで、細胞周期の制御が行われる。", "title": "細胞" }, { "paragraph_id": 12, "tag": "p", "text": "この際、サイクリンがCDKに結合していると考えられており、サイクリンとCDKが結合したもののことを「サイクリン-CDK複合体」などと呼ばれている。", "title": "細胞" }, { "paragraph_id": 13, "tag": "p", "text": "", "title": "細胞" }, { "paragraph_id": 14, "tag": "p", "text": "高校では習わないが、近年、Gタンパク質というのが分かった。", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 15, "tag": "p", "text": "Gタンパク質は、GTP(グアノシン三リン酸)という物質をGDP(グアノシン2リン酸)に変える働きをしている。", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 16, "tag": "p", "text": "高校ではATPをエネルギーの貯蔵庫だのエネルギーの貨幣だと習っただろうが、とりあえずGタンパク質のGTPはエネルギーとはあまり関係ない。", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 17, "tag": "p", "text": "では、Gタンパク質でのGTPやGDPは何かというと、どうも細胞へのなんらかのシグナル到達の合図と、それによる細胞内での様々なシグナル開始の合図のようである。", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 18, "tag": "p", "text": "", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 19, "tag": "p", "text": "細胞内では、環状AMPなどのシグナル伝達物質がある。", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 20, "tag": "p", "text": "まず、Gタンパク質に付随する受容体に、たとえばアセチルコリンなどの物質が結合し、シグナルを受け取る。 すると、「三量体Gタンパク質」が活性化される。", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 21, "tag": "p", "text": "Gタンパク質とは何かというと、とくに「三量体Gタンパク質」の部分が、Gタンパク質であると言われる場合が多い。", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 22, "tag": "p", "text": "この三量体Gタンパク質は、GTPをGDPに変化させる。", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 23, "tag": "p", "text": "その後の経路として、数通りかの経路がある。", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 24, "tag": "p", "text": "特に重要と思われる経路のひとつとして、環状AMPの合成の経路がある。", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 25, "tag": "p", "text": "三量体Gタンパク質がGTPをGDPに変化させた際、三量体Gタンパク質は、環状AMP(cAMP)を合成する酵素 アデニル酸シクラーゼを刺激して環状AMPを合成させ、細胞内のシグナル伝達を開始する。", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 26, "tag": "p", "text": "セカンドメッセンジャーとか二次メッセンジャーとかいう。", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 27, "tag": "p", "text": "", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 28, "tag": "p", "text": "そして、Gタンパク質の近くに、7回膜貫通タンパク質というのがある。7回膜貫通タンパク質は「Gタンパク質共役型受容体」とも言われる。", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 29, "tag": "p", "text": "本wikibooksでは区別をしやすくするため、「7回膜貫通タンパク質」で呼ぶことにする。名前だけでは分かりづらいかもしれないが、7回膜貫通タンパク質は受容体として働く。", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 30, "tag": "p", "text": "受容体であるということは、それに結合する物質があるわけだ。", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 31, "tag": "p", "text": "人体の場合、7回膜貫通タンパク質は、筋肉などに存在し、アドレナリンが7回膜貫通タンパク質に結合し、筋肉への神経からの伝達に関わっている。", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 32, "tag": "p", "text": "神経情報伝達のほか、いくつかのホルモンにも、7回膜貫通タンパク質は関わっている。", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 33, "tag": "p", "text": "など、いくつかのホルモンの受容体としても、使われている。", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 34, "tag": "p", "text": "だからといって、けっしてすべてのホルモン受容体が7回膜貫通タイプなわけではなく、たとえば、すい臓のインスリン受容体は異なるタイプ(酵素型受容体)である。", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 35, "tag": "p", "text": "かならずしも人体のすべての受容体が7回膜貫通タンパク質ではなく、たとえばイオンチャネル型の受容体など(7回膜貫通ではない種類の受容体)も存在する。", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 36, "tag": "p", "text": "さて、7回膜貫通タンパク質の構造などについては、7回膜貫通タンパク質は1本のポリペプチドから構成されているαヘリックスの物質であり、疎水性であり、細胞膜を7回貫通している。", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 37, "tag": "p", "text": "", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 38, "tag": "p", "text": "", "title": "Gタンパク質と受容体" }, { "paragraph_id": 39, "tag": "p", "text": "神経伝達物質のひとつとしてアセチルコリンがある。", "title": "神経系" }, { "paragraph_id": 40, "tag": "p", "text": "アセチルコリン受容体は、種類としては主に2種類あり、ムスカリン性受容体 と ニコチン性受容体 という2種類のアセチルコリン受容体がある。", "title": "神経系" }, { "paragraph_id": 41, "tag": "p", "text": "ニコチン性受容体という名前は、タバコの主要成分でもあるニコチンが結合できるので、こういう名前がついた 。", "title": "神経系" }, { "paragraph_id": 42, "tag": "p", "text": "いっぽう、ムスカリンとは、キノコのベニテングダケのコケ毒の成分である。ムスカリン受容体には、薬物(ほぼ毒物?)のムスカリンが結合するので、こういう名前がついた。", "title": "神経系" }, { "paragraph_id": 43, "tag": "p", "text": "ニコチン性受容体は、イオンチャネル型の受容体である。", "title": "神経系" }, { "paragraph_id": 44, "tag": "p", "text": "ムスカリン性受容体は、7回膜貫通タンパク質型の受容体であるが、最終的にKチャネル(カリウムチャネル)を開閉する 。", "title": "神経系" }, { "paragraph_id": 45, "tag": "p", "text": "", "title": "神経系" }, { "paragraph_id": 46, "tag": "p", "text": "高校では、免疫グロブリンについて、可変領域が、抗原に結合する、と習った。", "title": "免疫" }, { "paragraph_id": 47, "tag": "p", "text": "じつは可変領域の内部で、「超可変領域」といわれる、特に可変の程度の高い部分があることが分かっており、H鎖とL鎖の各鎖に3箇所ある(つまり、合計12個ある)。この超可変領域こそが多様性に富んで、抗原に特異的であることが分かっている。「超可変領域」のことを「相補性決定領域」ともいう。", "title": "免疫" }, { "paragraph_id": 48, "tag": "p", "text": "(※ wikiに超可変領域の画像ファイルが無いので、市販の教科書などお読みください。)", "title": "免疫" }, { "paragraph_id": 49, "tag": "p", "text": "細胞膜の表面にあるMHC(主要組織適合性複合体、Major Histocompatibility Complex)には2種類あり、MHCクラスIとMHCクラスIIという二種類がある。", "title": "免疫" }, { "paragraph_id": 50, "tag": "p", "text": "MHCクラスIは、ほぼすべての有核細胞に発現している。 いっぽう、MHCクラスIIは、樹状細胞やマクロファージやB細胞にある。", "title": "免疫" }, { "paragraph_id": 51, "tag": "p", "text": "キラーT細胞がMHCクラスIで病原体を提示している細胞を殺す仕事をする。", "title": "免疫" }, { "paragraph_id": 52, "tag": "p", "text": "いっぽう、MHCクラスIIの役割は、ヘルパーT細胞への情報提示である。", "title": "免疫" }, { "paragraph_id": 53, "tag": "p", "text": "T細胞側の、MHCと結合する相手の分子は、「T細胞受容体」(TCR)と呼ばれる。", "title": "免疫" }, { "paragraph_id": 54, "tag": "p", "text": "ところで高校で、免疫グロブリンの先端に可変領域があると習い、遺伝子の再編などで多様な組み合わせを実現していると習っただろう。", "title": "免疫" }, { "paragraph_id": 55, "tag": "p", "text": "じつはTCRの先端にも可変領域があり、遺伝子の再編で多様な組み合わせを実現していることが分かっている。", "title": "免疫" }, { "paragraph_id": 56, "tag": "p", "text": "さて、ヘルパーT細胞にはCD4という分子がある。", "title": "免疫" }, { "paragraph_id": 57, "tag": "p", "text": "いっぽう、キラーT細胞にはCD8という分子がある。", "title": "免疫" }, { "paragraph_id": 58, "tag": "p", "text": "CD4やCD8は、MHCやTCRとは別物である。", "title": "免疫" }, { "paragraph_id": 59, "tag": "p", "text": "エイズウイルスは、CD4と結合することが分かっている。", "title": "免疫" }, { "paragraph_id": 60, "tag": "p", "text": "", "title": "免疫" }, { "paragraph_id": 61, "tag": "p", "text": "", "title": "免疫" }, { "paragraph_id": 62, "tag": "p", "text": "モノクローナル抗体とは、細胞融合の技術を使って、健康なB細胞と、増殖力の高い腫瘍細胞とを融合させることで、B細胞のつくる抗体を大量に入手する方法のことの方法そのものは、高校でも習ったように、センダイウイルスやポリエチレングリコールなどを用いて可能である。", "title": "免疫" }, { "paragraph_id": 63, "tag": "p", "text": "そもそもB細胞は抗体産生細胞である。", "title": "免疫" }, { "paragraph_id": 64, "tag": "p", "text": "手順としては、", "title": "免疫" }, { "paragraph_id": 65, "tag": "p", "text": "こうして、目的の抗体を大量に入手できる。", "title": "免疫" }, { "paragraph_id": 66, "tag": "p", "text": "高校でも「ステロイド」はステロイドホルモンなどとして名前だけ習ったと思う。", "title": "生理と物質" }, { "paragraph_id": 67, "tag": "p", "text": "ひとくちに「ステロイド」といわれても色々な構造があるが、おおむね構造は、図のようにステロイドの基本骨格を含む構造である", "title": "生理と物質" }, { "paragraph_id": 68, "tag": "p", "text": "なお、大学の化学構造式の書き方は高校と変わり、図のように、炭素Cや、炭素に隣接した水素Hを省略する場合も多い。こう描く理由はおそらく、有機化合物の高分子では、炭素と水素を省略しないと、構造が見づらくなるからであろう。", "title": "生理と物質" }, { "paragraph_id": 69, "tag": "p", "text": "副腎皮質ホルモンや性ホルモンもステロイドである。", "title": "生理と物質" }, { "paragraph_id": 70, "tag": "p", "text": "ひとくちに性ホルモンといっても、女性ホルモンに限定しても何種類もあるので、大学ではたとえば具体的に「エストラジオール」(女性ホルモンの一種,エストロゲンの別名)など物質名で呼ぶ。", "title": "生理と物質" }, { "paragraph_id": 71, "tag": "p", "text": "このように、構造式で見ると、男性ホルモンや女性ホルモンがステロイドであることが一目瞭然である。", "title": "生理と物質" }, { "paragraph_id": 72, "tag": "p", "text": "「ステロイド」と聞くと、なんとなく薬物的なイメージがあるかもしれないが、しかし真核細胞の細胞膜の成分にもステロイドが含まれている。また、ホルモンなどにもステロイドは多い。", "title": "生理と物質" }, { "paragraph_id": 73, "tag": "p", "text": "", "title": "生理と物質" }, { "paragraph_id": 74, "tag": "p", "text": "精液の中にプロスタグランジンという、子宮筋や平滑筋を収縮させる作用をもつ物質が含まれている。この物質は発見時、前立腺(プロステート・グランド)で生成されると考えられていたので、プロスタグランジンという名前がついている。", "title": "生理と物質" }, { "paragraph_id": 75, "tag": "p", "text": "しかし、のちにプロスタグランジンには数種類あることが分かった。プロスタグランジンF2αとかプロスタグランジンE2など、何種類かある。", "title": "生理と物質" }, { "paragraph_id": 76, "tag": "p", "text": "また、存在場所も精液だけでなく、ほぼ全身で、この物質が必要に応じて分泌されることが分かった。", "title": "生理と物質" }, { "paragraph_id": 77, "tag": "p", "text": "またプロスタグランジンの作用は解明されていき、平滑筋の収縮のほかにも、血管の拡張などの作用があることが分かった。", "title": "生理と物質" }, { "paragraph_id": 78, "tag": "p", "text": "風邪などのさいの炎症や発熱の調整にも、プロスタグランジンが関わっている。", "title": "生理と物質" }, { "paragraph_id": 79, "tag": "p", "text": "なお、プロスタグランジンの合成経路については、脂肪酸の一種のアラキドン酸を原料にしてプロスタグランジンは合成される。合成経路について、細胞膜を構成するリン脂質が酵素によって分解されてプロスタグランジンが合成される、と考えられている。", "title": "生理と物質" }, { "paragraph_id": 80, "tag": "p", "text": "", "title": "生理と物質" }, { "paragraph_id": 81, "tag": "p", "text": "分類について、プロスタグランジンをホルモンの一種として分類する場合もあれば、ホルモンとは別の「生理活性物質」や「エイコサノイド」(イコサノイドともいう)としてプロスタグランジンを分類する場合もある。", "title": "生理と物質" }, { "paragraph_id": 82, "tag": "p", "text": "なお、エイコサとはラテン語の数字20のことであり、エイコサノイドとはアラキドン酸の炭素数が20個であることから、そういってるだけである。", "title": "生理と物質" }, { "paragraph_id": 83, "tag": "p", "text": "なので学生は、プロスタグランジンがホルモンであるかどうかは、あまり気にしなくていい。", "title": "生理と物質" }, { "paragraph_id": 84, "tag": "p", "text": "", "title": "生理と物質" }, { "paragraph_id": 85, "tag": "p", "text": "脳内で分泌される快楽物質のひとつとしてアナンダミドというのがあるが、構造がプロスタグランジンに近い。(※ 参考文献: 『グラフィックライフサイエンス』)", "title": "生理と物質" }, { "paragraph_id": 86, "tag": "p", "text": "軟骨の主な成分は、プロテオグリカンという糖タンパク質である。", "title": "軟骨" }, { "paragraph_id": 87, "tag": "p", "text": "ちなみに硬骨の主成分はリン酸カルシウムである。", "title": "軟骨" }, { "paragraph_id": 88, "tag": "p", "text": "なお、混同しやすい物質として、名前の似ている「ペプチドグリカン」という物質も自然界にあるが、ペプチドグリカンは細菌の細胞壁の成分である。混同しないように。", "title": "軟骨" }, { "paragraph_id": 89, "tag": "p", "text": "", "title": "軟骨" }, { "paragraph_id": 90, "tag": "p", "text": "ペプチドグリカンは、細菌(原核細菌)の細胞壁として、よく存在する成分であり、比較的に硬い成分である。ブドウ球菌や大腸菌なども、細胞壁の主成分がペプチドグリカンである。", "title": "ペプチドグリカン" }, { "paragraph_id": 91, "tag": "p", "text": "ペプチドグリカンの構造は、網目構造になっており、主に糖からなる炭水化物(より正確には、糖とグリシン)を、ペプチド(アミノ酸のつながったもの)で架橋している構造になっている。", "title": "ペプチドグリカン" }, { "paragraph_id": 92, "tag": "p", "text": "抗生物質のペニシリンは、このペプチドグリカンのペプチド結合を阻害するため、よってペニシリンはペプチドグリカンの形成を阻害できるので、結果として細胞壁に穴が開き、細菌を殺せるので、ペニシリンは抗生物質として機能している。つまり、ペニシリンは、分子生物学的かつ薬理学的に言えば、細胞壁合成の阻害剤である。", "title": "ペプチドグリカン" }, { "paragraph_id": 93, "tag": "p", "text": "なお、これらペプチドグリカンのある細菌の多くは、細胞内の内圧が高く、それを硬い細胞壁で守っているので、ペプチドグリカンの合成が阻害されると、細菌の細胞が破裂する(溶菌)。", "title": "ペプチドグリカン" }, { "paragraph_id": 94, "tag": "p", "text": "また、ヒトの涙や胃腸液に含まれる成分であるリゾチームも、ペプチドグリカンを加水分解して破壊する。", "title": "ペプチドグリカン" }, { "paragraph_id": 95, "tag": "p", "text": "", "title": "ペプチドグリカン" }, { "paragraph_id": 96, "tag": "p", "text": "ビタミンCは、アスコルビン酸という物質である。", "title": "ビタミン" }, { "paragraph_id": 97, "tag": "p", "text": "ビタミンには水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンとがある。ビタミンCは水溶性である。つまり、アスコルビン酸は水溶性である。(関連付けて覚えよう。)", "title": "ビタミン" }, { "paragraph_id": 98, "tag": "p", "text": "", "title": "ビタミン" }, { "paragraph_id": 99, "tag": "p", "text": "脳は、部位ごとに、その部位がつかさどる機能が違っている。", "title": "脳" }, { "paragraph_id": 100, "tag": "p", "text": "たとえば、1861年の外科医ブローカーは、ある失語症の患者を調べて、その患者は言葉を理解するが自分からは「タン、タン」としか話せないと報告した。死後、患者が解剖され、脳の左半球の前頭葉の一部に損傷を発見した。現在では、左半球の前頭葉のこの部位の機能として、顔の筋肉などの運動機能をつかさどることが分かり、現在、この部位は「ブローカ野」または「運動性言語中枢」呼ばれている。", "title": "脳" }, { "paragraph_id": 101, "tag": "p", "text": "また、ウェルニッケは1874年、別の患者で、言葉を話せるが理解していない患者を報告した。死後の解剖で、ウェルニッケの報告した患者の脳の側頭葉に損傷のあることが発見された。現在、この部位は「ウェルニッケ野」または「感覚性言語中枢」と呼ばれている。", "title": "脳" }, { "paragraph_id": 102, "tag": "p", "text": "", "title": "脳" }, { "paragraph_id": 103, "tag": "p", "text": "その後、事故などで脳に損傷を負った患者が発生するの症例が調べられたり(※ 参考文献『グラフィック ライフ サイエンス』)、他には実験的に脳のさまざまな部位に電気刺激を加えるなどの人体実験や動物実験などにより、脳のどの部位がどの機能をつかさどっているかが、調べられた。(※ 参考文献: 羊土社『理系総合のための生命科学』) 現代では、わざわざ電気刺激を加えなくても、MRI(核磁気共鳴診断法)やPET診断などで、脳の働きを外部から観察できる。", "title": "脳" }, { "paragraph_id": 104, "tag": "p", "text": "MRIの種類にもよるが、水素原子核のある部分を映し出す性質をもつ観察手法なので、造影剤をつかわなくても観察できる利点がある。", "title": "脳" }, { "paragraph_id": 105, "tag": "p", "text": "だが、MRIは検査に時間がやや長く掛かる。", "title": "脳" }, { "paragraph_id": 106, "tag": "p", "text": "なお、磁場を使うので患者はメガネや時計などの金属をすべて外す必要がある。このため、体内にペースメーカーや人工骨など金属医療器具の埋め込まれている患者には、MRIは禁忌である。", "title": "脳" }, { "paragraph_id": 107, "tag": "p", "text": "※ 「禁忌」(きんき)とは医学用語で、禁止・厳禁のこと。日本語では、禁忌の「忌」は、「忌み嫌う」(いみきらう)の「忌み」。国語では、嫌悪感が激しく、強く嫌っている場合などに「忌み」を使う場合もあるが、古風かつ、やや宗教的・文化人類学的な表現である。英語でいうタブー (taboo) のようなもの。", "title": "脳" }, { "paragraph_id": 108, "tag": "p", "text": "", "title": "脳" }, { "paragraph_id": 109, "tag": "p", "text": "脳で「海馬」(英: hippocampus)と呼ばれる部分が、主に記憶をつかさどっている。", "title": "脳" }, { "paragraph_id": 110, "tag": "p", "text": "なお、日本語の「海馬」とはタツノオトシゴのこと。英語の hippocampus とは、ギリシア神話に出てくる半馬半魚の怪獣。", "title": "脳" }, { "paragraph_id": 111, "tag": "p", "text": "", "title": "脳" }, { "paragraph_id": 112, "tag": "p", "text": "脳の機能はともかく、とにくかく解剖学的にいくつかの領域に分けて脳を図示したものとして、ブロードマンの脳地図が、古くから提案されている。", "title": "脳" }, { "paragraph_id": 113, "tag": "p", "text": "", "title": "脳" }, { "paragraph_id": 114, "tag": "p", "text": "脳のなかで、どの部位が、身体のどの部位をつかさどってるかを図示したものとして、「ペンフィールソのホムンクルス」とか「脳のホムンクルス」とか「脳の小人」などと呼ばれる図が、古くから提案されている。なお、「ホムンクルス」とは人造人間という意味の語である。", "title": "脳" }, { "paragraph_id": 115, "tag": "p", "text": "図で描かれた手や顔など身体各部位の大きさは、神経の多さに比例していると考えられて、このホムンクルスの絵が描かれている。", "title": "脳" }, { "paragraph_id": 116, "tag": "p", "text": "", "title": "脳" }, { "paragraph_id": 117, "tag": "p", "text": "精子が卵に到達して受精の瞬間になるとき、精子が卵に接触した点を中心にCaの増減が波として卵全体に伝わっている。(※ ← 大学教養の教科書で、よくある内容。)", "title": "受精波" }, { "paragraph_id": 118, "tag": "p", "text": "これはどうやって確認されたかというと、一例として、イクオリンというカルシウムに反応する物質を、あらかじめウニの卵に注射して混ぜたあとに受精させることで確認された。(※ 参考文献: 羊土社『基礎から学ぶ生物学・細胞生物学』、第3版、243ページのコラム)", "title": "受精波" }, { "paragraph_id": 119, "tag": "p", "text": "オワンクラゲは、緑色発光タンパク質GFPをもつ。世間ではノーベル賞受賞にもなったGFPが有名であるが、じつはオワンクラゲはGFPのほかにもイクオリンという青色発光タンパク質をもち、イクオリンがカルシウムと反応すると青色の光を発生する。", "title": "受精波" }, { "paragraph_id": 120, "tag": "p", "text": "なお、(受精波の観測の件は別にして、)単に受精膜の形成の際にカルシウムが必要かどうかを確かめるだけの実験なら、上記とは異なる実験例として、カルシウムの効果を打ち消す薬品を未受精卵に注入して、精子と反応させても受精膜が形成されないことを見るなどの実験例もある(※ 2013年センター試験の生物I本試験で紹介された実験例)。ほか、何らかの方法で未受精卵の内部のカルシウム濃度を減らし、受精膜が形成されないことを見る実験もある(同センター試験の出題例)。", "title": "受精波" }, { "paragraph_id": 121, "tag": "p", "text": "", "title": "受精波" }, { "paragraph_id": 122, "tag": "p", "text": "ヒトなど哺乳類の性別は、性染色体で決まる場合が普通である。", "title": "性別の生物学" }, { "paragraph_id": 123, "tag": "p", "text": "しかし、動物や植物のなかには、性別の決まり方がヒトなどとは違うものもある。", "title": "性別の生物学" }, { "paragraph_id": 124, "tag": "p", "text": "鳥類では、メスは性染色体にヘテロに性染色体のZとWをもっており(メスはZW)おり、いっぽう、オスはホモに性染色体をもっている(オスはZZである)。", "title": "性別の生物学" }, { "paragraph_id": 125, "tag": "p", "text": "また、キイロショウジョウバエでは、性染色体と常染色体との比率で性別が決まる。", "title": "性別の生物学" }, { "paragraph_id": 126, "tag": "p", "text": "また、遺伝的要因ではなく環境要因で性別の決まる生物もいる。", "title": "性別の生物学" }, { "paragraph_id": 127, "tag": "p", "text": "たとえば爬虫類(カメなど)では、卵の孵化時の環境の温度で、性別が決まる場合が多い。", "title": "性別の生物学" }, { "paragraph_id": 128, "tag": "p", "text": "ある種類のカメは、孵化時に低温でオス、高温でメスになる。", "title": "性別の生物学" }, { "paragraph_id": 129, "tag": "p", "text": "逆に、ある種類のワニ(ミシシッピワニなど)では、孵化時に低温でメス、高温でオスになる。", "title": "性別の生物学" }, { "paragraph_id": 130, "tag": "p", "text": "ヒトの場合、通常の性染色体は女のXXおよび男のXYだが、受精後の発生のときなどによる染色体の分離時の異常などにより、その他の組み合わせの性染色体をもつ人間が生まれる場合がある。 人間だけに限らず、ほかの生物でも染色体異常(chromosomal abnomality)は起こりうるが、まずは簡単な例として人間の場合で説明する。また、性染色体に限らず常染色体でも異常は起こりうる。", "title": "性別の生物学" }, { "paragraph_id": 131, "tag": "p", "text": "ヒトの場合、場合によっては染色体異常により、性染色体にXXYやXXXやXXXXやXXYYなどの染色体を持つ人間が生まれる場合もある。これらの染色体上の人間は、一般的に、先天的な障害(身体障害・知能障害)など身体の異常や知能の異常を持つ傾向がある。 これら性染色体異常の場合の、男女の性決定は、つぎの通り。", "title": "性別の生物学" }, { "paragraph_id": 132, "tag": "p", "text": "一般的にヒトの場合、どの性染色体異常でもX染色体の数が多ければ、そのぶん女性的な特徴をもつ。同様に、Yが多ければ、そのぶん男性的な特徴を持つ。ヒトの場合、Y染色体を一つでも性染色体に持つと、男になり、男性器および精巣をもつのが一般的である。", "title": "性別の生物学" }, { "paragraph_id": 133, "tag": "p", "text": "これらはヒトの場合であり、ほかの動物の場合は、かならずしも、同じような結果になるとは限らない。", "title": "性別の生物学" }, { "paragraph_id": 134, "tag": "p", "text": "なお、染色体の価数(かすう)(XXやXYは2価。XXYやXYYなどは3価。)が3価や1価などの異常が起きりうる染色体は、けっして性染色体だけに限ったことではないので、勘違いしないように。", "title": "性別の生物学" }, { "paragraph_id": 135, "tag": "p", "text": "RNA干渉というのがあって、よく高校や大学の生物教科書のコラムなどで紹介されてるが、まだ未解明のことが多いので、暗記しなくていい。", "title": "未解明の分野" }, { "paragraph_id": 136, "tag": "p", "text": "※ RNA干渉についてはwikibooks高校生物でも解説しておいた。", "title": "未解明の分野" }, { "paragraph_id": 137, "tag": "p", "text": "がん(cancer)という症状は、一般に、細胞の過剰な異常増殖である。正常な細胞は、もとの位置にとどまっている。しかしがん細胞は、周囲に浸潤(しんじゅん)したり、遠くの器官に転移したりする。やや専門的な言い方をすれば、(増殖に歯止めを掛けるための抑制の機構をその細胞が失うなどして)自律的に増殖する細胞が、がん細胞である。", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 138, "tag": "p", "text": "なお、腫瘍(しゅよう、tumor)とは一般に、過剰増殖するようになった体細胞の集団である。また、「悪性新生物」とは一般に、悪性の腫瘍のことである。", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 139, "tag": "p", "text": "白血病も、がん の一種に含めるのが慣習である。", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 140, "tag": "p", "text": "下記の節で後述するように、がん の原因のいくつかは遺伝子にあると考えられている。", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 141, "tag": "p", "text": "がん という病気の生物学的な原因としては、がん は遺伝子の病気であると考えられている。", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 142, "tag": "p", "text": "もとは正常だった遺伝子が、なんらかの原因により、病的な遺伝子となって、がんが起きていると考えられている。", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 143, "tag": "p", "text": "(体細胞を念頭に)正常な細胞は、培養器で培養すると、培養器の底に広がった後、しばらくすると、分裂をしなくなる。", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 144, "tag": "p", "text": "しかし、がん細胞は、栄養があるかぎり無尽蔵に分裂を続ける。", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 145, "tag": "p", "text": "正常な細胞には、むやみに分裂しないような機構があり、細胞周期チェックポイントのG0期で留まることができる。しかし、どうやら がん細胞は、どうやらブレーキが壊れた状態のようなもので、細胞周期のチェックポイントで留まることができないようである。", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 146, "tag": "p", "text": "さて、先ほど述べたように、がん は遺伝子の病気であると考えられている。がん細胞から取り出した、がんを起こしている責任のある細胞を「がん遺伝子」(oncogene)という。", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 147, "tag": "p", "text": "また、「がん遺伝子」になる前の状態の遺伝子(正常な遺伝子でもいい)のことを「がん原遺伝子」(proto-oncogene)という。", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 148, "tag": "p", "text": "具体例として、Gタンパク質の一種でRasタンパク質というのがある。Rasタンパク質自体は、正常なタンパク質である。Rasタンパク質が、(なんらかの原因により、)がん化した際のがん遺伝子をras遺伝子という。(紛らわしいが、大文字Rasと小文字rasで意味が違う。)", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 149, "tag": "p", "text": "これ以外にも、多くの がん遺伝子が生物学で見つかっている。", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 150, "tag": "p", "text": "いっぽう、がん などの異常増殖を抑制する遺伝子の存在も知られており、「がん抑制遺伝子」(tumor suppressor gene)といい、ヒトの場合はp53遺伝子が「がん抑制遺伝子」である。なお、ヒトの17番染色体上腕にp53遺伝子が存在する。(余談だが、p53の名前の由来は、分子量53000(つまり53k)のタンパク質(protein)という意味である。)", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 151, "tag": "p", "text": "がん抑制遺伝子の機能が失われた場合にも、がんの発生の可能性が高まる。", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 152, "tag": "p", "text": "じっさい、マウスを使った動物実験で、遺伝子組み換え実験でマウスのp53遺伝子をノックアウトしたマウスを作成すると、全身が がん化 するマウスが誕生するので、早死にする。(※ 参考文献: チャート式生物)", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 153, "tag": "p", "text": "さて、2012年のノーベル賞でiPS細胞が受賞したが、しかし、導入によってiPS細胞を作れるとする4つの遺伝子のうちに、がん遺伝子 c-myc が含まれている。 なお、iPS細胞化に必要な4つの遺伝子のことを「山中因子」と呼ぶ。 つまり、山中因子のうちのひとつの遺伝子はがん遺伝子 c-myc である。", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 154, "tag": "p", "text": "", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 155, "tag": "p", "text": "歴史的には1911年に、アメリカの病理学者ラウスが、ニワトリの肉腫の別のニワトリへの移植や、その ろ液 の注射などの実験を通じて、病原体(今で言う「ウイルス」)によるがん発生を発見した。(今で言う「ラウス肉腫ウイルス」)", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 156, "tag": "p", "text": "のち、ニワトリに肉腫を起こすウイルスは、レトロウイルスであることが分かり、今で言うラウス肉腫ウイルスであることが分かった。", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 157, "tag": "p", "text": "このラウス肉腫ウイルスに含まれる遺伝子が v-src が、当初は がん の原因だと有力視されていたが、しかし正常なニワトリにも相同な遺伝子が存在することが分かり、わずかに一部の配列が正常な遺伝子と違うことで、がんを引き起こしていることが分かった。", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 158, "tag": "p", "text": "", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 159, "tag": "p", "text": "バイオテクノロジーを使って、培養設備内で、がん細胞と、B細胞など他の細胞とを融合させて、その研究対象の細胞を増殖させて、 実験材料としての細胞を大量生産する方法があり、ハイブリドーマという。特にB細胞とのがん細胞とのハイブリドーマが研究が進んでいる。「モノクローナル抗体」と言われるものの培養にもハイブリドーマが使われている場合が多い(つまり、モノクローナル抗体は通常、がん細胞とB細胞を細胞融合させて作られる)。", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 160, "tag": "p", "text": "", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 161, "tag": "p", "text": "タールに含まれる物質でもあるベンゾピレンなどの化学物質などにより、がんが起きやすくなることが知られている。", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 162, "tag": "p", "text": "化学物質以外にも、ある種のウイルスの感染によって がん になりやすくなることも知られている。パピローマウイルスの感染が 子宮頸がん を引き起こす。B型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルスは、肝臓がん を引き起こす。", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 163, "tag": "p", "text": "ウイルスだけでなく細菌もがんの原因になる。ピロリ菌は 胃がん を引き起こす。", "title": "がん" }, { "paragraph_id": 164, "tag": "p", "text": "なお、アスベストの吸引による悪性中皮腫も がん として分類されるので、アスベストも 発がん物質 に分類される。", "title": "がん" } ]
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{{stub}} == ※ まえがき: 高校で習う範囲 == ※ 2018年現在の高校生物のカリキュラムでは、(高校の'''化学'''でなく)高校の生物科目でも「ペプチド結合」とか習ってるので、もし分からなければ、まず高校生物の復習をせよ。 == 細胞 == === テロメア === 染色体の末端のあたりにテロメアと言われる、DNA配列で(ヒトのテロメアでは) TTAGGG の塩基配列が繰り返している部分があるのだが、これが細胞分裂のたびに短くなる。 テロメアの長さが一定以下になると、細胞が分裂しなくなる。 このようにして、どうやらテロメアは、細胞のおおよその分裂回数を記録したりする役割をしているらしく、よく時計などにたとえられ、また、生体の寿命や老化に関係していると考えられている。 (1999年のクローン羊のドリーも、他の羊よりも早死にしたが、テロメアが普通の羊よりも短くなっていたらしい。) :※ 上記のテロメアの話題は、高校の生物IIでも発展項目などでコラム紹介している場合がある。 しかし、幹細胞では、テロメラーゼという酵素によって、テロメアの繰り返し回数が伸ばされ、テロメアの長さが保たれている。生殖細胞でもテロメラーゼが働いているだろう、と考えられている。 ;発展的な話題 (一部の教科書にある記述) (試験管やペトリ皿などに)培養した体細胞では、一定回数しか分裂できないことが昔から知られている(いわゆる「ヘイフリック限界」。用語は大学教養では、ほぼ範囲外なので、暗記しなくていい)。この原因も、テロメアが関係していると見るのが、有力説である<ref>南江堂『Essential 細胞生物学』、原書第4版、716ページ</ref>。 どうやらテロメアは、細胞分裂に必要となるDNAポリメラーゼがけ結合する際の足場になっているようである、と生物学では一般に考えられている<ref>羊土社『基礎から学ぶ生物学・細胞生物学』第3版、250ページ</ref>。 そしてテロメアが短くなる理由も、DNAポリメラーゼは足場のテロメア部分を複製できないため、細胞分裂のたびにテロメアが短くなっていくのだろう、と生物学では一般に考えられている。 がん細胞では、テロメアおよびテロメラーゼが暴走しているらしく、そのような仮説が有力である<ref>東京化学同人『分子細胞生物学』、第7版、1001ページ</ref> <ref>南江堂『Essential 細胞生物学』、原書第4版、716ページ</ref>。ただし、あくまでも仮説である。がん細胞の研究は難しく、未解明のことも多い。 ;主な参考文献または脚注 <references/> === 細胞周期とサイクリン === 細胞周期のチェックポイントの制御にかかわる物質が見つかっており、それは後述するサイクリンとCDKという物質である。 細胞内で、サイクリンという物質があり、サイクリンの濃度が高まるとサイクリン依存性キナーゼ(CDK)が活性化し、CDKが標的タンパク質をリン酸化することで、細胞周期の制御が行われる。 この際、サイクリンがCDKに結合していると考えられており、サイクリンとCDKが結合したもののことを「サイクリン-CDK複合体」などと呼ばれている。 == Gタンパク質と受容体 == [[画像:Activation protein kinase C.svg|430px|thumb|G<sub>q</sub>がホスホリパーゼCとプロテインキナーゼCを活性化する様子。]] [[画像:Activatoin-Adenylate cyclase-outlined.svg|thumb|430px|G<sub>s</sub>がアデニル酸シクラーゼを活性化する様子。]] 高校では習わないが、近年、Gタンパク質というのが分かった。 Gタンパク質は、GTP(グアノシン三リン酸)という物質をGDP(グアノシン2リン酸)に変える働きをしている。 高校ではATPをエネルギーの貯蔵庫だのエネルギーの貨幣だと習っただろうが、とりあえずGタンパク質のGTPはエネルギーとはあまり関係ない。 では、Gタンパク質でのGTPやGDPは何かというと、どうも細胞へのなんらかのシグナル到達の合図と、それによる細胞内での様々なシグナル開始の合図のようである。 細胞内では、環状AMPなどのシグナル伝達物質がある。 まず、Gタンパク質に付随する受容体に、たとえばアセチルコリンなどの物質が結合し、シグナルを受け取る。 すると、「三量体Gタンパク質」が活性化される。 Gタンパク質とは何かというと、とくに「三量体Gタンパク質」の部分が、Gタンパク質であると言われる場合が多い。 この三量体Gタンパク質は、GTPをGDPに変化させる。 その後の経路として、数通りかの経路がある。 特に重要と思われる経路のひとつとして、環状AMPの合成の経路がある。 ;環状AMPの経路 三量体Gタンパク質がGTPをGDPに変化させた際、三量体Gタンパク質は、環状AMP(cAMP)を合成する酵素 アデニル酸シクラーゼを刺激して環状AMPを合成させ、細胞内のシグナル伝達を開始する。 セカンドメッセンジャーとか二次メッセンジャーとかいう。 [[画像:GPCR in membrane.png|thumb|300px|典型的なGタンパク質共役受容体の模式図。N末端が細胞外に、C末端が細胞内にあり、7つの膜貫通ドメインと細胞内と細胞外にそれぞれ3つずつループがある。]] そして、Gタンパク質の近くに、7回膜貫通タンパク質というのがある。7回膜貫通タンパク質は「Gタンパク質共役型受容体」とも言われる。 本wikibooksでは区別をしやすくするため、「7回膜貫通タンパク質」で呼ぶことにする。名前だけでは分かりづらいかもしれないが、7回膜貫通タンパク質は受容体として働く。 受容体であるということは、それに結合する物質があるわけだ。 人体の場合、7回膜貫通タンパク質は、筋肉などに存在し、アドレナリンが7回膜貫通タンパク質に結合し、筋肉への神経からの伝達に関わっている。 神経情報伝達のほか、いくつかのホルモンにも、7回膜貫通タンパク質は関わっている。 :・ すい臓に作用するセクレチン(ホルモン名)の受容体も7回膜貫通タンパク質<ref>羊土社『理系総合のための生命科学』、2007年2月25日 第1版、177ページの下の表、(※ 下記の甲状腺刺激ホルモンまで、同じ参考文献)</ref>。 :・ 副腎皮質に作用する副腎皮質刺激ホルモン(ホルモン名)の受容体も7回膜貫通タンパク質。 :・ 甲状腺刺激ホルモンの受容体も7回膜貫通タンパク質。 など、いくつかのホルモンの受容体としても、使われている。 だからといって、けっしてすべてのホルモン受容体が7回膜貫通タイプなわけではなく、たとえば、すい臓のインスリン受容体は異なるタイプ(酵素型受容体)である。 かならずしも人体のすべての受容体が7回膜貫通タンパク質ではなく、たとえばイオンチャネル型の受容体など(7回膜貫通ではない種類の受容体)も存在する。 さて、7回膜貫通タンパク質の構造などについては、7回膜貫通タンパク質は1本のポリペプチドから構成されている<ref>医学書院『標準生理学』第8版、33ページの右下の本文</ref>αヘリックスの物質であり、疎水性であり、細胞膜を7回貫通している。 ;主な参考文献または脚注 <references/> == 神経系 == 神経伝達物質のひとつとしてアセチルコリンがある。 アセチルコリン受容体は、種類としては主に2種類あり、ムスカリン性受容体 と ニコチン性受容体 という2種類のアセチルコリン受容体がある。 ニコチン性受容体という名前は、タバコの主要成分でもあるニコチンが結合できるので、こういう名前がついた<ref>裳華房『理工系のための生物学』、改訂版、91ページ</ref> <ref>医学書院『標準生理学』、第8版、149ページ</ref>。 いっぽう、ムスカリンとは、キノコのベニテングダケのコケ毒の成分である。ムスカリン受容体には、薬物(ほぼ毒物?)のムスカリンが結合するので、こういう名前がついた。 ニコチン性受容体は、イオンチャネル型の受容体である。 ムスカリン性受容体は、7回膜貫通タンパク質型の受容体であるが、最終的にKチャネル(カリウムチャネル)を開閉する 。 ;主な参考文献または脚注 <references/> == 免疫 == === 免疫 === ;免疫グロブリン 高校では、免疫グロブリンについて、可変領域が、抗原に結合する、と習った。 じつは可変領域の内部で、「超可変領域」といわれる、特に可変の程度の高い部分があることが分かっており、H鎖とL鎖の各鎖に3箇所ある(つまり、合計12個ある)。この超可変領域こそが多様性に富んで、抗原に特異的であることが分かっている。「超可変領域」のことを「相補性決定領域」ともいう。 (※ wikiに超可変領域の画像ファイルが無いので、市販の教科書などお読みください。) ;MHC 細胞膜の表面にあるMHC(主要組織適合性複合体、Major Histocompatibility Complex)には2種類あり、MHCクラスIとMHCクラスIIという二種類がある。 :(※ 高校では、MHCに2種類あることは、原則的には教えてない。また、どの細胞にMHCがあるかも、高校ではボカしている。) MHCクラスIは、ほぼすべての有核細胞に発現している。 いっぽう、MHCクラスIIは、樹状細胞やマクロファージやB細胞にある。 キラーT細胞がMHCクラスIで病原体を提示している細胞を殺す仕事をする。 いっぽう、MHCクラスIIの役割は、ヘルパーT細胞への情報提示である。 T細胞側の、MHCと結合する相手の分子は、「T細胞受容体」(TCR)と呼ばれる。 ところで高校で、免疫グロブリンの先端に可変領域があると習い、遺伝子の再編などで多様な組み合わせを実現していると習っただろう。 じつはTCRの先端にも可変領域があり、遺伝子の再編で多様な組み合わせを実現していることが分かっている。 ;CD4やCD8 さて、ヘルパーT細胞にはCD4という分子がある。 いっぽう、キラーT細胞にはCD8という分子がある。 CD4やCD8は、MHCやTCRとは別物である。 エイズウイルスは、CD4と結合することが分かっている。 ;免疫グロブリンの5種類のクラス === モノクローナル抗体 === モノクローナル抗体とは、細胞融合の技術を使って、健康なB細胞と、増殖力の高い腫瘍細胞とを融合させることで、B細胞のつくる抗体を大量に入手する方法のことの方法そのものは、高校でも習ったように、センダイウイルスやポリエチレングリコールなどを用いて可能である。 そもそもB細胞は抗体産生細胞である。 手順としては、 # まず、マウスに抗原を注射して、目的の抗体を産生できるB細胞をマウスに産生させる。 # このB細胞と、ガン化した骨髄細胞であるミエローマ細胞を融合させる。こうして、ガン細胞と融合してできた抗体産生細胞のことを、ハイブリドーマという。 # 実際の手順では、ハイブリドーマ以外の細胞が混ざったり、抗体産生能力の低い細胞も混ざっているので、まず、ハイビリドーマだけが生き残ることのできるように調整された培養液で、培養していく。こうして、ハイブリドーマ以外を殺していく。 # 実際に得られるハイブリドーマは均一ではなく様々な種類のハイブリドーマが混ざっている。なので、細胞を1個ずつ取り出し、容器を別々の容器に分けるなどして、いくつかのハイブリドーマを選び出し、それぞれ培養していく。(実際には、専用の容器があり、すでに数十個のクボミのある培養皿のキットがあるので、そういうのを利用することになる。) # 培養していったハイブリドーマが、それぞれ、どんな抗体を産生するか調べる。必要に応じて培養し、上澄み液から抗体を入手する。 こうして、目的の抗体を大量に入手できる。 == 生理と物質 == === ステロイド === 高校でも「ステロイド」はステロイドホルモンなどとして名前だけ習ったと思う。 [[File:Steroid common.svg|thumb|ステロイドの基本骨格<br>図では全体構造を見やすくするため、炭素Cや水素Hを省略している。]] ひとくちに「ステロイド」といわれても色々な構造があるが、おおむね構造は、図のようにステロイドの基本骨格を含む構造である なお、大学の化学構造式の書き方は高校と変わり、図のように、炭素Cや、炭素に隣接した水素Hを省略する場合も多い。こう描く理由はおそらく、有機化合物の高分子では、炭素と水素を省略しないと、構造が見づらくなるからであろう。 副腎皮質ホルモンや性ホルモンもステロイドである。 ひとくちに性ホルモンといっても、女性ホルモンに限定しても何種類もあるので、大学ではたとえば具体的に「エストラジオール」(女性ホルモンの一種,エストロゲンの別名)など物質名で呼ぶ。 [[File:Estradiol.png|thumb|エストラジオール(エストロゲン、女性ホルモン)]] [[File:Testosteron.svg|thumb|テストステロン(男性ホルモン)]] このように、構造式で見ると、男性ホルモンや女性ホルモンがステロイドであることが一目瞭然である。 [[File:Cholesterol with numbering.svg|thumb|コレステロール]] 「ステロイド」と聞くと、なんとなく薬物的なイメージがあるかもしれないが、しかし真核細胞の細胞膜の成分にもステロイドが含まれている。また、ホルモンなどにもステロイドは多い。 {{-}} === プロスタグランジン === [[Image:Prostaglandin E1.svg|thumb|200px|プロスタグランジンE<sub>1</sub> (PGE<sub>1</sub>) の構造式]] [[File:Arachidonic acid1.svg|thumb|500px|アラキドン酸]] 精液の中にプロスタグランジンという、子宮筋や平滑筋を収縮させる作用をもつ物質が含まれている。この物質は発見時、前立腺(プロステート・グランド)で生成されると考えられていたので、プロスタグランジンという名前がついている。 しかし、のちにプロスタグランジンには数種類あることが分かった。プロスタグランジンF2αとかプロスタグランジンE2など、何種類かある。 また、存在場所も精液だけでなく、ほぼ全身で、この物質が必要に応じて分泌されることが分かった。 またプロスタグランジンの作用は解明されていき、平滑筋の収縮のほかにも、血管の拡張などの作用があることが分かった。 風邪などのさいの炎症や発熱の調整にも、プロスタグランジンが関わっている。 なお、プロスタグランジンの合成経路については、脂肪酸の一種のアラキドン酸を原料にしてプロスタグランジンは合成される。合成経路について、細胞膜を構成するリン脂質が酵素によって分解されてプロスタグランジンが合成される、と考えられている。 ;分類について 分類について、プロスタグランジンをホルモンの一種として分類する場合もあれば、ホルモンとは別の「生理活性物質」や「エイコサノイド」(イコサノイドともいう)としてプロスタグランジンを分類する場合もある。 なお、エイコサとはラテン語の数字20のことであり、エイコサノイドとはアラキドン酸の炭素数が20個であることから、そういってるだけである。 なので学生は、プロスタグランジンがホルモンであるかどうかは、あまり気にしなくていい。 ;脳内麻薬との関係 (※ 発展的な話題) [[File:Cannabis Encyclopedia (Gaiduk) Pictures 009.png|thumb|アナンダミド]] 脳内で分泌される快楽物質のひとつとしてアナンダミドというのがあるが、構造がプロスタグランジンに近い。(※ 参考文献: 『グラフィックライフサイエンス』) == 軟骨 == 軟骨の主な成分は、プロテオグリカンという糖タンパク質である。 ちなみに硬骨の主成分はリン酸カルシウムである。 なお、混同しやすい物質として、名前の似ている「ペプチドグリカン」という物質も自然界にあるが、ペプチドグリカンは細菌の細胞壁の成分である。混同しないように。 :※ 軟骨の成分名よりも重要なこととして、軟骨は、化石には残りづらいことが考古学的に重要である。そのため、軟骨魚類であるサメの化石は、例外的にサメの硬骨の部分である歯の化石しか見つからない。 == ペプチドグリカン == :※ 高校生物でもチャート式で、ペプチドグリカンと抗生物質ペニシリンとの関係が書いてある。 :※ 大学教養ではあまり習わないが、高校参考書でも習うので、ついでに紹介。 :※ 高校の化学の教科書では、ペニシリンについて習う。高校の「生物」科目では、免疫の単元で、ペニシリンのアナフィラキシーについて習うようだ。 [[Image:Mureine.svg|thumb|200px|right|ペプチドグリカンの構造]] ペプチドグリカンは、細菌(原核細菌)の細胞壁として、よく存在する成分であり、比較的に硬い成分である。ブドウ球菌や大腸菌なども、細胞壁の主成分がペプチドグリカンである<ref>医学書院『標準微生物学』、第12版、306ページ</ref>。 :※ 真核微生物(「真菌」という)には、後述のペニシリンが効かない。キノコやカビなどが、真菌である。真菌の細胞壁の主成分は、菌の種類にもよるが、キチン(物質名)などのペプチドグリカン以外の物質が主成分であり<ref>チャート式の生物、平成26年版</ref>、細胞壁にペプチドグリカンが無いからである。そもそもペニシリン自体、アオカビから発見された物質である。そもそもペニシリンの名前の由来が、アオカビの学名「ペニシリウム」(Penicillium)が由来である。 :※ 高校生物の教科書では、「真菌」と言う用語を習わない。代わりに「菌類」と言う用語で教えている。 ペプチドグリカンの構造は、網目構造になっており、主に糖からなる炭水化物(より正確には、糖とグリシン<ref>東京化学同人『ストライヤー生化学』、第7版、222ページ</ref>)を、ペプチド(アミノ酸のつながったもの)で架橋している構造になっている。 抗生物質のペニシリンは、このペプチドグリカンのペプチド結合を阻害するため、よってペニシリンはペプチドグリカンの形成を阻害できるので、結果として細胞壁に穴が開き、細菌を殺せるので、ペニシリンは抗生物質として機能している。つまり、ペニシリンは、分子生物学的かつ薬理学的に言えば、細胞壁合成の阻害剤である。 なお、これらペプチドグリカンのある細菌の多くは、細胞内の内圧が高く、それを硬い細胞壁で守っているので、ペプチドグリカンの合成が阻害されると、細菌の細胞が破裂する(溶菌)。 また、ヒトの涙や胃腸液に含まれる成分であるリゾチームも、ペプチドグリカンを加水分解して破壊する<ref>東京化学同人『分子細胞生物学』、第7版、35ページ</ref>。 ;参考文献 <references/> == ビタミン == ビタミンCは、アスコルビン酸という物質である。 ビタミンには水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンとがある。ビタミンCは水溶性である。つまり、アスコルビン酸は水溶性である。(関連付けて覚えよう。) == 脳 == [[File:BrocasAreaSmall (ja).png|thumb|ブローカ野とウェルニッケ野]] 脳は、部位ごとに、その部位がつかさどる機能が違っている。 たとえば、1861年の外科医ブローカーは、ある失語症の患者を調べて、その患者は言葉を理解するが自分からは「タン、タン」としか話せないと報告した。死後、患者が解剖され、脳の左半球の前頭葉の一部に損傷を発見した。現在では、左半球の前頭葉のこの部位の機能として、顔の筋肉などの運動機能をつかさどることが分かり、現在、この部位は「ブローカ野」または「運動性言語中枢」呼ばれている。 また、ウェルニッケは1874年、別の患者で、言葉を話せるが理解していない患者を報告した。死後の解剖で、ウェルニッケの報告した患者の脳の側頭葉に損傷のあることが発見された。現在、この部位は「ウェルニッケ野」または「感覚性言語中枢」と呼ばれている。 その後、事故などで脳に損傷を負った患者が発生するの症例が調べられたり(※ 参考文献『グラフィック ライフ サイエンス』)、他には実験的に脳のさまざまな部位に電気刺激を加えるなどの人体実験や動物実験などにより、脳のどの部位がどの機能をつかさどっているかが、調べられた。(※ 参考文献: 羊土社『理系総合のための生命科学』) 現代では、わざわざ電気刺激を加えなくても、MRI(核磁気共鳴診断法)やPET診断などで、脳の働きを外部から観察できる。 MRIの種類にもよるが、水素原子核のある部分を映し出す性質をもつ観察手法なので、造影剤をつかわなくても観察できる利点がある。 だが、MRIは検査に時間がやや長く掛かる<ref>文部科学省『高等学校用 疾病と看護』、平成25年1月20日発行、P71</ref>。 なお、磁場を使うので患者はメガネや時計などの金属をすべて外す必要がある。このため、体内にペースメーカーや人工骨など金属医療器具の埋め込まれている患者には、MRIは禁忌である<ref>文部科学省『高等学校用 疾病と看護』、平成25年1月20日発行、P71</ref>。 ※ 「禁忌」(きんき)とは医学用語で、禁止・厳禁のこと。日本語では、禁忌の「忌」は、「忌み嫌う」(いみきらう)の「忌み」。国語では、嫌悪感が激しく、強く嫌っている場合などに「忌み」を使う場合もあるが、古風かつ、やや宗教的・文化人類学的な表現である。英語でいうタブー (taboo) のようなもの。 * 海馬 [[File:Gray739-emphasizing-hippocampus.png|thumb|青く示している部分が海馬]] 脳で「海馬」(英: hippocampus)と呼ばれる部分が、主に記憶をつかさどっている。 :※ 「海馬」は世間では比較的に有名だが、なんと高校の検定教科書では紹介していない。 なお、日本語の「海馬」とはタツノオトシゴのこと。英語の hippocampus とは、ギリシア神話に出てくる半馬半魚の怪獣。 [[ファイル:Hippocampus and seahorse cropped.JPG|thumb|300px|脳の海馬(左)とタツノオトシゴ(右)。]] {{-}} * その他 ;ブロードマンの脳地図 [[File:Brodmann areas 3D.png|thumb|ブロードマンの脳地図<br>ブロードマンの脳地図では、図の色の異なる部分が、それぞれ異なる領域として分類されている。]] 脳の機能はともかく、とにくかく解剖学的にいくつかの領域に分けて脳を図示したものとして、ブロードマンの脳地図が、古くから提案されている。 {{-}} ;ペンフィールドのホムンクルス [[File:Somatosensory cortex ja.png|thumb|ペンフィールドのホムンクルス]] 脳のなかで、どの部位が、身体のどの部位をつかさどってるかを図示したものとして、「ペンフィールソのホムンクルス」とか「脳のホムンクルス」とか「脳の小人」などと呼ばれる図が、古くから提案されている。なお、「ホムンクルス」とは人造人間という意味の語である。 図で描かれた手や顔など身体各部位の大きさは、神経の多さに比例していると考えられて、このホムンクルスの絵が描かれている。 {{-}} == 受精波 == 精子が卵に到達して受精の瞬間になるとき、精子が卵に接触した点を中心にCaの増減が波として卵全体に伝わっている。(※ ← 大学教養の教科書で、よくある内容。) これはどうやって確認されたかというと、一例として、イクオリンというカルシウムに反応する物質を、あらかじめウニの卵に注射して混ぜたあとに受精させることで確認された。(※ 参考文献: 羊土社『基礎から学ぶ生物学・細胞生物学』、第3版、243ページのコラム) オワンクラゲは、緑色発光タンパク質GFPをもつ。世間ではノーベル賞受賞にもなったGFPが有名であるが、じつはオワンクラゲはGFPのほかにもイクオリンという青色発光タンパク質をもち、イクオリンがカルシウムと反応すると青色の光を発生する。 なお、(受精波の観測の件は別にして、)単に受精膜の形成の際にカルシウムが必要かどうかを確かめるだけの実験なら、上記とは異なる実験例として、カルシウムの効果を打ち消す薬品を未受精卵に注入して、精子と反応させても受精膜が形成されないことを見るなどの実験例もある(※ 2013年センター試験の生物I本試験で紹介された実験例)。ほか、何らかの方法で未受精卵の内部のカルシウム濃度を減らし、受精膜が形成されないことを見る実験もある(同センター試験の出題例)。 == 性別の生物学 == === 性決定 === :※ 文科系の生物学の教科書にも、よくある話題であるが、理科系の生物学の教科書(たとえば羊土社『理系総合のための生命科学』など)でも紹介されることがある。 ヒトなど哺乳類の性別は、性染色体で決まる場合が普通である。 しかし、動物や植物のなかには、性別の決まり方がヒトなどとは違うものもある。 鳥類では、メスは性染色体にヘテロに性染色体のZとWをもっており(メスはZW)おり、いっぽう、オスはホモに性染色体をもっている(オスはZZである)。 また、キイロショウジョウバエでは、性染色体と常染色体との比率で性別が決まる。 また、遺伝的要因ではなく環境要因で性別の決まる生物もいる。 たとえば爬虫類(カメなど)では、卵の孵化時の環境の温度で、性別が決まる場合が多い。 ある種類のカメは、孵化時に低温でオス、高温でメスになる。 逆に、ある種類のワニ(ミシシッピワニなど)では、孵化時に低温でメス、高温でオスになる。 === 性染色体の異常のばあいの性別 === :※ あまり2010年代の現代の理系の教養課程では習わないが、過去に教養生物で教えてたり、文系の生物学で教えてたり、YY染色体が生きられないことと関係して教えてたり、・・・するので、一応、紹介。 :※ 高校生物の教科書には下記のクラインフェルター症候群など書かれてないし、同様に高校生用の資料集にも参考書にも書かれておらず、ほぼ完全に高校の範囲外。(もしかしたら教師用指導書(高等学校用)などに紹介されている可能性もあるが、一般人が検証できないので、高校の範囲外とみなそう。) ヒトの場合、通常の性染色体は女のXXおよび男のXYだが、受精後の発生のときなどによる染色体の分離時の異常などにより、その他の組み合わせの性染色体をもつ人間が生まれる場合がある。 人間だけに限らず、ほかの生物でも染色体異常(chromosomal abnomality)は起こりうるが、まずは簡単な例として人間の場合で説明する。また、性染色体に限らず常染色体でも異常は起こりうる。 ヒトの場合、場合によっては染色体異常により、性染色体にXXYやXXXやXXXXやXXYYなどの染色体を持つ人間が生まれる場合もある。これらの染色体上の人間は、一般的に、先天的な障害(身体障害・知能障害)など身体の異常や知能の異常を持つ傾向がある。 これら性染色体異常の場合の、男女の性決定は、つぎの通り。 :XXXは女性であるが、知能障害などを持つ場合が多い。YYの人間は生きられず死んでしまう。 :XXY、XXYYは男であるが、精巣の機能不全や乳房肥大などの傾向を持ち、クラインフェルター症候群(Klinefelter syndrome)という。 :XYYは身長が高い男となる。 :Xのみの場合(これを「XO」(エックスオー)と書く)は、女性であり、低身長など発育の不全を持つ。このXOの場合をターナー症候群(Turner syndrome)という。 一般的にヒトの場合、どの性染色体異常でもX染色体の数が多ければ、そのぶん女性的な特徴をもつ。同様に、Yが多ければ、そのぶん男性的な特徴を持つ。ヒトの場合、Y染色体を一つでも性染色体に持つと、男になり、男性器および精巣をもつのが一般的である。 これらはヒトの場合であり、ほかの動物の場合は、かならずしも、同じような結果になるとは限らない。 なお、染色体の価数(かすう)(XXやXYは2価。XXYやXYYなどは3価。)が3価や1価などの異常が起きりうる染色体は、けっして性染色体だけに限ったことではないので、勘違いしないように。 == 未解明の分野 == RNA干渉というのがあって、よく高校や大学の生物教科書のコラムなどで紹介されてるが、まだ未解明のことが多いので、暗記しなくていい。 ※ RNA干渉についてはwikibooks高校生物でも解説しておいた。 == がん == :※ 高校生物に がん の単元は無い。 :※ チャート式の参考書は、コラムとして、がん遺伝子などを解説している。 === そもそも「がん」とは === がん(cancer)という症状は、一般に、細胞の過剰な異常増殖である。正常な細胞は、もとの位置にとどまっている。しかしがん細胞は、周囲に浸潤(しんじゅん)したり、遠くの器官に転移したりする。やや専門的な言い方をすれば、(増殖に歯止めを掛けるための抑制の機構をその細胞が失うなどして)自律的に増殖する細胞が、がん細胞である。 なお、腫瘍(しゅよう、tumor)とは一般に、過剰増殖するようになった体細胞の集団である。また、「悪性新生物」とは一般に、悪性の腫瘍のことである。 白血病も、がん の一種に含めるのが慣習である。 下記の節で後述するように、がん の原因のいくつかは遺伝子にあると考えられている。 === がんと遺伝子 === :※ 高校の理科の『科学と人間生活』(実教出版)で、「原がん遺伝子」や「がん抑制遺伝子」を習う。 がん という病気の生物学的な原因としては、がん は遺伝子の病気であると考えられている。 もとは正常だった遺伝子が、なんらかの原因により、病的な遺伝子となって、がんが起きていると考えられている。 (体細胞を念頭に)正常な細胞は、培養器で培養すると、培養器の底に広がった後、しばらくすると、分裂をしなくなる。 しかし、がん細胞は、栄養があるかぎり無尽蔵に分裂を続ける。 正常な細胞には、むやみに分裂しないような機構があり、細胞周期チェックポイントのG0期で留まることができる。しかし、どうやら がん細胞は、どうやらブレーキが壊れた状態のようなもので、細胞周期のチェックポイントで留まることができないようである。 さて、先ほど述べたように、がん は遺伝子の病気であると考えられている。がん細胞から取り出した、がんを起こしている責任のある細胞を「がん遺伝子」(oncogene)という。 また、「がん遺伝子」になる前の状態の遺伝子(正常な遺伝子でもいい)のことを「がん原遺伝子」(proto-oncogene)という。 具体例として、Gタンパク質の一種でRasタンパク質というのがある。Rasタンパク質自体は、正常なタンパク質である。Rasタンパク質が、(なんらかの原因により、)がん化した際のがん遺伝子をras遺伝子という。(紛らわしいが、大文字Rasと小文字rasで意味が違う。) これ以外にも、多くの がん遺伝子が生物学で見つかっている。 いっぽう、がん などの異常増殖を抑制する遺伝子の存在も知られており、「がん抑制遺伝子」(tumor suppressor gene)といい、ヒトの場合はp53遺伝子が「がん抑制遺伝子」である。なお、ヒトの17番染色体上腕にp53遺伝子が存在する。(余談だが、p53の名前の由来は、分子量53000(つまり53k)のタンパク質(protein)という意味である。) がん抑制遺伝子の機能が失われた場合にも、がんの発生の可能性が高まる。 じっさい、マウスを使った動物実験で、遺伝子組み換え実験でマウスのp53遺伝子をノックアウトしたマウスを作成すると、全身が がん化 するマウスが誕生するので、早死にする。(※ 参考文献: チャート式生物) さて、2012年のノーベル賞でiPS細胞が受賞したが、しかし、導入によってiPS細胞を作れるとする4つの遺伝子のうちに、がん遺伝子 c-myc が含まれている。 なお、iPS細胞化に必要な4つの遺伝子のことを「山中因子」と呼ぶ<ref>河本宏『もっとよくわかる!免疫学』、羊土社、2018年5月30日第8刷発行、</ref>。 つまり、山中因子のうちのひとつの遺伝子はがん遺伝子 c-myc である。 * がん遺伝子の研究の初期 歴史的には1911年に、アメリカの病理学者ラウスが、ニワトリの肉腫の別のニワトリへの移植や、その ろ液 の注射などの実験を通じて、病原体(今で言う「ウイルス」)によるがん発生を発見した。(今で言う「ラウス肉腫ウイルス」) のち、ニワトリに肉腫を起こすウイルスは、レトロウイルスであることが分かり、今で言うラウス肉腫ウイルスであることが分かった。 このラウス肉腫ウイルスに含まれる遺伝子が v-src が、当初は がん の原因だと有力視されていたが、しかし正常なニワトリにも相同な遺伝子が存在することが分かり、わずかに一部の配列が正常な遺伝子と違うことで、がんを引き起こしていることが分かった。 * ハイブリドーマ :※ 京都大学の学部の入試過去問で、ハイブリドーマに関する思考問題が出題された事あり。普通に市販の受験参考書(旺文社あたりのヤツ)で確認できた。 バイオテクノロジーを使って、培養設備内で、がん細胞と、B細胞など他の細胞とを融合させて、その研究対象の細胞を増殖させて、 実験材料としての細胞を大量生産する方法があり、ハイブリドーマという。特にB細胞とのがん細胞とのハイブリドーマが研究が進んでいる。「モノクローナル抗体」と言われるものの培養にもハイブリドーマが使われている場合が多い(つまり、モノクローナル抗体は通常、がん細胞とB細胞を細胞融合させて作られる)。 :※ iPS細胞を使って実験細胞を培養する比較的に新しい技術があるが、実は既にハイブリドーマという技術で、(B細胞など)一部の細胞に限定的だが(ハイブリド-マでも)似たような事が出来る。 :(研究者個人の経歴の事を言うと、iPS細胞の発明者・発見者の山中は京都大に在籍する研究者であるという事と合わせて考えると、なんか色々と入試問題で婉曲的に学生に伝えようとしているっぽいですね。) === がんの原因になりうる物質など === タールに含まれる物質でもあるベンゾピレンなどの化学物質などにより、がんが起きやすくなることが知られている。 化学物質以外にも、ある種のウイルスの感染によって がん になりやすくなることも知られている。パピローマウイルスの感染が 子宮頸がん を引き起こす。B型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルスは、肝臓がん を引き起こす。 ウイルスだけでなく細菌もがんの原因になる。ピロリ菌は 胃がん を引き起こす。 なお、アスベストの吸引による悪性中皮腫も がん として分類されるので、アスベストも 発がん物質 に分類される。 [[Category:大学教育|りけいかくふのせいふつかく]] [[Category:教養科目|りけいかくふのせいふつかく]]
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2020-12-21T00:24:21Z
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大学教養
ここでは主に大学の学部1~2年生を対象とした、教養科目の教科書を載せています。 などから1つを選択。 現状は一般向けの語学と共通のものを使用する。
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ここでは主に大学の学部1~2年生を対象とした、教養科目の教科書を載せています。
{{Pathnav|メインページ|日本における大学での学習|frame=1|small=1}} ここでは主に大学の学部1~2年生を対象とした、教養科目の教科書を載せています。 ==人文科学== *[[大学教養/哲学]] *[[大学教養/倫理学]] *[[大学教養/心理学]] *[[大学教養/歴史学]] *[[大学教養/考古学]] *[[大学教養/文学]] *[[大学教養/文化人類学]] ==社会科学== *[[大学教養/社会学]] *[[大学教養/社会思想史]] *[[大学教養/日本国憲法]] *[[大学教養/政治学]] *[[大学教養/経済学]] *[[大学教養/教育学]] *[[大学教養/地理学]] ==自然科学== *[[大学教養/物理学]] *[[大学教養/化学]] *[[大学教養/地学]] *[[大学教養/理系学部の生物学]] *[[大学教養/一般数学]] *[[大学教養/統計学]] ==主題科目== *[[大学教養/女性学]] *[[大学教養/平和学]] *[[大学教養/環境学]] *[[大学教養/異文化理解]] ==外国語== *[[英語]] *[[ドイツ語]] *[[フランス語]] *[[中国語]] *[[韓国語]] *[[ロシア語]] などから1つを選択。 現状は一般向けの語学と共通のものを使用する。 ==体育・健康== *[[大学教養/体育・健康科学理論]] [[Category:大学教育|たいかくきようよう]] [[Category:教養科目|たいかくきようよう]]
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2018-12-02T05:37:11Z
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公認会計士試験/平成30年第II回短答式/管理会計論/問題6
当工場では,等級製品Aと等級製品Bとを生産し,実際等級別総合原価計算を採用している。次の〔資料〕に基づき,等級製品Bの原料費および加工費の等価係数の数値の組合せとして最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,計算過程で端数が生じる場合,計算途中では四捨五入せず,最終数値の円未満を四捨五入すること。(8 点) 〔資料〕 1. 生産データ 2. 原価データ 3. 等価係数(等級製品Aに対する比率) 4. 計算条件 6 ∴製品A@55 : 製品B@44 = 1 : 0.8 ∴製品A@40 : 製品B@28 = 1 : 0.7
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "当工場では,等級製品Aと等級製品Bとを生産し,実際等級別総合原価計算を採用している。次の〔資料〕に基づき,等級製品Bの原料費および加工費の等価係数の数値の組合せとして最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,計算過程で端数が生じる場合,計算途中では四捨五入せず,最終数値の円未満を四捨五入すること。(8 点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "〔資料〕", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "1. 生産データ", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "2. 原価データ", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "3. 等価係数(等級製品Aに対する比率)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "4. 計算条件", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "6", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "∴製品A@55 : 製品B@44 = 1 : 0.8", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "∴製品A@40 : 製品B@28 = 1 : 0.7", "title": "解説" } ]
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: [[../問題5|←前の問題]] : [[../問題7|次の問題→]] == 問題 ==  当工場では,等級製品Aと等級製品Bとを生産し,実際等級別総合原価計算を採用している。次の〔資料〕に基づき,等級製品Bの原料費および加工費の等価係数の数値の組合せとして最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,計算過程で端数が生じる場合,計算途中では四捨五入せず,最終数値の円未満を四捨五入すること。(8 点) 〔'''資料'''〕 1. 生産データ {| class="wikitable" |+ | | |(単位:個) |- | |等級製品A |等級製品B |- |月初仕掛品 |20,000(0.25) |10,000(0.75) |- |当月投入 |180,000 |140,000 |- |正常仕損 |500 |- |- |月末仕掛品 |24,500(0.5) |20,000(0.2) |- |完成品 |175,000 |130,000 |} : (注)( )内の数値は,加工費進捗度を示している 2. 原価データ {| class="wikitable" |+ | | | |(単位:円) |- | |等級製品A |等級製品B |合計 |- |月初仕掛品 | | | |- | 原料費 |1,247,500 |492,000 |1,739,500 |- | 加工費 |215,000 |258,000 |473,000 |- |  計 |1,462,500 |750,000 |2,212,500 |- |当月製造費用 | | | |- | 原料費 |各自算定 |各自算定 |各自算定 |- | 加工費 |各自算定 |各自算定 |各自算定 |- |完成品 | | | |- | 原料費 |9,800,000 |5,772,000 |15,572,000 |- | 加工費 |7,035,000 |3,688,000 |10,723,000 |- |  計 |16,835,000 |9,460,000 |26,295,000 |} 3. 等価係数(等級製品Aに対する比率) {| class="wikitable" |+ | |等級製品A |等級製品B |- |原料費 |1 |各自算定 |- |加工費 |1 |各自算定 |} 4. 計算条件 : (1) 原料は工程の始点で投入され,等価係数は原料費と加工費とに区分している。 : (2) 完成品と月末仕掛品への製造原価の按分は先入先出法によっている。 : (3) 正常仕損は,工程の終点で当月投入分のみから発生し,処分価額はない。 {| class="wikitable" |+ | |原料費の等価係数 |加工費の等価係数 |- |1. |0.6 |0.6 |- |2. |0.6 |0.7 |- |3. |0.7 |0.5 |- |4. |0.7 |0.8 |- |5. |0.8 |0.6 |- |6. |0.8 |0.7 |} == 正解 == 6 == 解説 == === 原料費 === {| class="wikitable" |+等級製品A ! !原料費 !数量 !数量 !原料費 ! |- |月初 |1,247,500 |20,000 |20,000 |1,247,500 |初→完 |- | rowspan="3" |当月 | rowspan="3" |∴@55×180,000 =9,900,000 | rowspan="3" |180,000 |155,000 | rowspan="2" |8,552,500 ∴@55円 |当→完 |- |500 |仕損 |- |24,500 | |月末 |} {| class="wikitable" |+等級製品B ! !原料費 !数量 !数量 !原料費 ! |- |月初 |492,000 |10,000 |10,000 |492,000 |初→完 |- | rowspan="2" |当月 | rowspan="2" |∴@44×6,160,000 =6,160,000 | rowspan="2" |140,000 |120,000 |5,280,000 ∴@44円 |当→完 |- |20,000 | |月末 |} ∴製品A@55 : 製品B@44 = 1 : 0.8 === 加工費 === {| class="wikitable" |+等級製品A ! !加工費 !数量 !数量 !加工費 ! |- |月初 |215,000 |5,000 |5,000 |215,000 |初→完 |- | rowspan="3" |当月 | rowspan="3" |∴@40×182,750 =7,310,000 | rowspan="3" |182,750 |170,000 | rowspan="2" |6,820,000 ∴@40円 |当→完 |- |500 |仕損 |- |12,250 | |月末 |} {| class="wikitable" |+等級製品B ! !加工費 !数量 !数量 !加工費 ! |- |月初 |258,000 |7,500 |7,500 |258,000 |初→完 |- | rowspan="2" |当月 | rowspan="2" |∴@28×126,500 =3,542,000 | rowspan="2" |126,500 |122,500 |3,430,000 ∴@28円 |当→完 |- |4,000 | |月末 |} ∴製品A@40 : 製品B@28 = 1 : 0.7 : [[../問題5|←前の問題]] : [[../問題7|次の問題→]] [[カテゴリ:管理会計]]
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2022-11-28T16:28:36Z
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24,708
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/管理会計論/問題8
製品Aを製造している当社では,標準原価計算制度を採用している。次の〔資料〕に基づき,当月の原価差異の分析を行った結果についての次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。なお,計算過程で端数が生じる場合,計算途中では四捨五入せず,最終数値の円未満を四捨五入すること。(7 点) 〔資料〕 1. 製品Aの1個当たりの標準原価カード 2. 当月の生産データ 3. 当月の原価データ ア.当月の標準原価差異の合計額は223,000 円の不利差異であったが,直接費差異は87,400 円の有利差異であった。 イ.材料価格差異は77,600 円の有利差異であったが,材料数量差異でそれを上回る不利差異が発生したため,直接材料費差異は不利差異であった。 ウ.直接労務費差異は75,000 円の不利差異であったが,その原因は作業時間差異の有利差異の金額を上回る賃率差異における不利差異の発生によるものである。 エ.製造間接費差異は134,600 円の不利差異であった。 1. アイ 2. アウ 3. アエ 4. イウ 5. イエ 6.ウエ 4 ∴アは誤り,イは正しい ∴ウは正しい ∴エは誤り
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "製品Aを製造している当社では,標準原価計算制度を採用している。次の〔資料〕に基づき,当月の原価差異の分析を行った結果についての次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。なお,計算過程で端数が生じる場合,計算途中では四捨五入せず,最終数値の円未満を四捨五入すること。(7 点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "〔資料〕", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "1. 製品Aの1個当たりの標準原価カード", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "2. 当月の生産データ", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "3. 当月の原価データ", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "ア.当月の標準原価差異の合計額は223,000 円の不利差異であったが,直接費差異は87,400 円の有利差異であった。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "イ.材料価格差異は77,600 円の有利差異であったが,材料数量差異でそれを上回る不利差異が発生したため,直接材料費差異は不利差異であった。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "ウ.直接労務費差異は75,000 円の不利差異であったが,その原因は作業時間差異の有利差異の金額を上回る賃率差異における不利差異の発生によるものである。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "エ.製造間接費差異は134,600 円の不利差異であった。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "1. アイ 2. アウ 3. アエ 4. イウ 5. イエ 6.ウエ", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 10, "tag": "p", "text": "4", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 11, "tag": "p", "text": "∴アは誤り,イは正しい", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 12, "tag": "p", "text": "∴ウは正しい", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 13, "tag": "p", "text": "∴エは誤り", "title": "解説" } ]
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:[[../問題7|←前の問題]] :[[../問題9|次の問題→]] == 問題 ==  製品Aを製造している当社では,標準原価計算制度を採用している。次の〔資料〕に基づき,当月の原価差異の分析を行った結果についての次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。なお,計算過程で端数が生じる場合,計算途中では四捨五入せず,最終数値の円未満を四捨五入すること。(7 点) 〔'''資料'''〕 1. 製品Aの1個当たりの標準原価カード : {| |直接材料費 |@600×3kg |1,800円 |- |直接労務費 |@2,500×2時間 |5,000円 |- |製造間接費 |@700×6時間 |4,200円 |- | | |11,000円 |} 2. 当月の生産データ : {| |月初仕掛品 |400個 |(0.8) |- |当月投入 |2,200個 | |- | 合計 |2,600個 | |- |月末仕掛品 |350個 |(0.4) |- |完成品 |2250個 | |} : (注) 材料は工程の視点で投入される。 :   ( ) 内の数値は,加工費進捗度を示している。 3. 当月の原価データ : {| |実際直接材料費 |3,972,400円 |(実際消費量 |6,750kg) |- |実際直接労務費 |10,425,000円 |(実際直接作業時間 |4,120時間) |- |実際製造間接費 |8,829,600円 | | |} <div style="margin-left:1em;text-indent:-1em"> ア.当月の標準原価差異の合計額は223,000 円の不利差異であったが,直接費差異は87,400 円の有利差異であった。 イ.材料価格差異は77,600 円の有利差異であったが,材料数量差異でそれを上回る不利差異が発生したため,直接材料費差異は不利差異であった。 ウ.直接労務費差異は75,000 円の不利差異であったが,その原因は作業時間差異の有利差異の金額を上回る賃率差異における不利差異の発生によるものである。 エ.製造間接費差異は134,600 円の不利差異であった。 </div> 1. アイ 2. アウ 3. アエ 4. イウ 5. イエ 6.ウエ == 正解 == 4 == 解説 == {| class="wikitable" |+生産データ(単位:個) ! !原材料 !加工換算量 ! !原材料 !加工換算量 |- |月初 |400 |(320) |完成 |2,250 |(2,250) |- |当月 |2,200 |(2,070) |月末 |350 |(140) |} {| class="wikitable" |+直接材料費差異 | | colspan="2" |材料価格差異 77,600 |- |@600円 |標準原価 @600×6,600kg |材料数量差異 △90,000 |- | |6,600kg (=@3kg×2,200個) |6,750kg |} ∴アは誤り,イは正しい {| class="wikitable" |+直接労務費差異 | | colspan="2" |賃率差異 △125,000 |- |@2,500円 |標準原価 @2,500円×4,140h |作業時間差異 50,000 |- | |4,140h (=@2h×2,070個) |4,120h |} ∴ウは正しい ;製造間接費差異 :@4,200×2,070-実際8,829,600=△135,600 ∴エは誤り :[[../問題7|←前の問題]] :[[../問題9|次の問題→]] [[カテゴリ:管理会計]]
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2022-11-28T16:28:43Z
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24,710
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/管理会計論/問題10
次の〔資料〕に基づき,甲社の前期および当期の収益性分析に関する以下の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。なお,計算過程で端数が生じる場合,各数値の小数点第2位を四捨五入すること。また,( * )に当てはまる数値は各自推定すること。(8点) 〔資料〕 ア.総資本経常利益率は,前期から当期で3.9 ポイント低下したが,その原因の一つには,売上高経常利益率が2.2 ポイント低下したことがある。 イ.売上高経常利益率は,前期から当期で悪化しているが,これは営業外収支の悪化が原因である。 ウ.総資本回転率が前期から当期で0.1 回転悪化したが,その原因の一つには,固定資産回転率が0.6 回転悪化したことがある。 エ.売上高経常利益率は,前期から当期で悪化しているが,これは売上高総利益率が前期から当期で2.2 ポイント低下したことが主たる原因である。 1. アイ 2. アウ 3. アエ 4. イウ 5. イエ 2
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "次の〔資料〕に基づき,甲社の前期および当期の収益性分析に関する以下の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。なお,計算過程で端数が生じる場合,各数値の小数点第2位を四捨五入すること。また,( * )に当てはまる数値は各自推定すること。(8点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "〔資料〕", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "ア.総資本経常利益率は,前期から当期で3.9 ポイント低下したが,その原因の一つには,売上高経常利益率が2.2 ポイント低下したことがある。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "イ.売上高経常利益率は,前期から当期で悪化しているが,これは営業外収支の悪化が原因である。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "ウ.総資本回転率が前期から当期で0.1 回転悪化したが,その原因の一つには,固定資産回転率が0.6 回転悪化したことがある。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "エ.売上高経常利益率は,前期から当期で悪化しているが,これは売上高総利益率が前期から当期で2.2 ポイント低下したことが主たる原因である。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "1. アイ 2. アウ 3. アエ 4. イウ 5. イエ", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "2", "title": "正解" } ]
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:[[../問題9|←前の問題]] :[[../問題11|次の問題→]] == 問題 ==  次の〔資料〕に基づき,甲社の前期および当期の収益性分析に関する以下の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。なお,計算過程で端数が生じる場合,各数値の小数点第2位を四捨五入すること。また,( * )に当てはまる数値は各自推定すること。(8点) 〔'''資料'''〕 {| class="wikitable" |+<u>貸借対照表</u> (単位:百万円) |資産 |前期 |当期 |負債・純資産 |前期 |当期 |- |現金預金 |574 |482 |仕入債務 |1,232 |1,486 |- |売上債権 |1,092 |1,138 |短期借入金 |420 |468 |- |たな卸資産 |462 |642 |その他流動負債 |168 |138 |- |その他流動資産 |28 |16 |長期借入金 |560 |62 |- |固定資産 |1,260 |( * ) |純資産 |1,036 |1,058 |- |合計 |( * ) |3,752 |合計 |( * ) |3,752 |} {| class="wikitable" |+<u>損益計算書(抜粋)</u> (単位:百万円) | |前期 |当期 |- |売上高 |5,544 |5,628 |- |売上総利益 |( * ) |1,594 |- |販売費及び一般管理費 |1,344 |1,376 |- |営業外収益 |70 |76 |- |営業外費用 |140 |( * ) |- |経常利益 |266 |148 |} <div style="margin-left:1em;text-indent:-1em"> ア.総資本経常利益率は,前期から当期で3.9 ポイント低下したが,その原因の一つには,売上高経常利益率が2.2 ポイント低下したことがある。 イ.売上高経常利益率は,前期から当期で悪化しているが,これは営業外収支の悪化が原因である。 ウ.総資本回転率が前期から当期で0.1 回転悪化したが,その原因の一つには,固定資産回転率が0.6 回転悪化したことがある。 エ.売上高経常利益率は,前期から当期で悪化しているが,これは売上高総利益率が前期から当期で2.2 ポイント低下したことが主たる原因である。 </div> 1. アイ 2. アウ 3. アエ 4. イウ 5. イエ == 正解 == 2 == 解説 == {| class="wikitable" |+ ! !前期 !当期 !増減 |- |総資本経常利益率 (=経常利益÷総資本) |7.8% |3.9% | -3.9ポイント |- |売上高経常利益率 (=経常利益÷売上高) |4.8% |2.6% | -2.2ポイント |- |売上高総利益率 (=売上総利益÷売上高) |30.3% |28.3% | -2.0ポイント |- |総資本回転率 (=売上高÷総資本) |1.6回転 |1.5回転 | -0.1回転 |- |固定資産回転率 (=売上高÷固定資産) |4.4回転 |3.8回転 | -0.6回転 |- |営業外収支 (=営業外収益-営業外費用) | -70百万円 | -70百万円 | ±0 |} :[[../問題9|←前の問題]] :[[../問題11|次の問題→]] [[カテゴリ:管理会計]]
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2022-11-28T16:27:03Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%85%AC%E8%AA%8D%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%A3%AB%E8%A9%A6%E9%A8%93/%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B4%E7%AC%ACII%E5%9B%9E%E7%9F%AD%E7%AD%94%E5%BC%8F/%E7%AE%A1%E7%90%86%E4%BC%9A%E8%A8%88%E8%AB%96/%E5%95%8F%E9%A1%8C10
24,722
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/管理会計論/問題12
S社の製品Xおよび製品Yに関する前月の予算・実績は次の〔資料〕のとおりであった。 次の〔資料〕に基づき,セールズ・ミックス差異の正しい金額として最も適切なものの番号 を一つ選びなさい。(7点) 〔資料〕 (計算条件) セールズ・ミックス差異は,セールズ・ミックスの変化による平均貢献利益率の変動を 計算し,その数値を基礎に差異を計算する方法もあるが,S社ではこの方法を採用してお らず,単位当たり貢献利益を基礎として計算している。 3
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "S社の製品Xおよび製品Yに関する前月の予算・実績は次の〔資料〕のとおりであった。 次の〔資料〕に基づき,セールズ・ミックス差異の正しい金額として最も適切なものの番号 を一つ選びなさい。(7点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "〔資料〕", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "(計算条件)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "セールズ・ミックス差異は,セールズ・ミックスの変化による平均貢献利益率の変動を 計算し,その数値を基礎に差異を計算する方法もあるが,S社ではこの方法を採用してお らず,単位当たり貢献利益を基礎として計算している。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "3", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "", "title": "解説" } ]
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:[[../問題11|←前の問題]] :[[../問題13|次の問題→]] == 問題 ==  S社の製品Xおよび製品Yに関する前月の予算・実績は次の〔資料〕のとおりであった。 次の〔資料〕に基づき,セールズ・ミックス差異の正しい金額として最も適切なものの番号 を一つ選びなさい。(7点) 〔'''資料'''〕 (計算条件) {| class="wikitable" |+ | | colspan="2" |販売価格 | colspan="2" |販売数量 | colspan="2" |単位当たり変動費 |- |製品 |製品X |製品Y |製品X |製品Y |製品X |製品Y |- |予算 |160円 |200円 |2,800個 |2,000個 |80円 |130円 |- |実績 |180円 |220円 |2,360個 |2,200個 |90円 |110円 |}  セールズ・ミックス差異は,セールズ・ミックスの変化による平均貢献利益率の変動を 計算し,その数値を基礎に差異を計算する方法もあるが,S社ではこの方法を採用してお らず,単位当たり貢献利益を基礎として計算している。 {| class="wikitable" |1. |2,600円(不利差異) |- |2. |2,800円(不利差異) |- |3. |3,000円(不利差異) |- |4. |3,400円(不利差異) |- |5. |3,600円(不利差異) |} == 正解 == 3 == 解説 == {| class="wikitable" |+貢献利益 ! !製品X !製品Y |- |販売価格 |160円 |200円 |- |変動費 |80円 |130円 |- |貢献利益 |80円 |70円 |} {| class="wikitable" |+差異分析 | |セールズ・ミックス差異 製品X:△24,000円 製品Y:21,000円 計:△3,000円 | |総販売数量差異 製品X:△11,200円 製品Y:△7,000円 計:△18,200円 | |- |実際 製品X 2,360個 製品Y 2,200個 合計 4,560個 | |予算ミックス 製品X 2,660個 製品Y 1,900個 合計 4,560個 | |予算総販売量 製品X 2,800個 製品Y 2,000個 合計 4,800個 |} <br /> :[[../問題11|←前の問題]] :[[../問題13|次の問題→]] [[カテゴリ:管理会計]]
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2022-11-28T16:27:10Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%85%AC%E8%AA%8D%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%A3%AB%E8%A9%A6%E9%A8%93/%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B4%E7%AC%ACII%E5%9B%9E%E7%9F%AD%E7%AD%94%E5%BC%8F/%E7%AE%A1%E7%90%86%E4%BC%9A%E8%A8%88%E8%AB%96/%E5%95%8F%E9%A1%8C12
24,723
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/管理会計論/問題14
当社は工作機械の製品Pを受注生産する製造業を営んでいる。この度A社から特注品(製品Pの上位機種)の引合いがあり,それを受けるか否か検討している。検討に当たっては,引合いを受ける前の売上総利益を維持できることが前提である。なお,当該引合いを受けても既存顧客への影響はないものとする。そこで,次の〔資料〕に基づき,当社が引合いを受けるのに必要な最低販売単価として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(8点) 〔資料〕 1.製品Pの単位当たり製造原価は,直接材料費50,000 円,直接労務費78,000 円,減価償却費48,000 円,その他の製造間接費24,000 円(うち4,000 円は変動費)である。 2.製品Pの年間受注数量は12,000 個であり,これらは全て当期に製造し販売しているため,期末に在庫は残っていない。 3.特注品は年間4,000 個を希望しているが,その場合生産能力に限界があり,製品Pの生産量を30 %減少させなければならない。ただし,当該希望数量4,000 個にかかる単位当たり直接労務費は2 %増加する。 4.当該特注品は製品Pに比べて単位当たり直接材料費は20 %増加するが,設備は現状のものが使用できることがわかっている。ただし,当該特注品の製造にかかる修理費25,000,000 円,さらに保守費用5,000,000 円が追加で発生する。 5.特注品の製造原価は,上記3.および4.に記述したもの以外については,製品Pの製造原価からの変動はない。 6.特注品を製造する前の売上総利益は480,000,000 円であった。 4 ※以下、単位を円とする 固定製造間接費:製品P@68,000×12,000個+特注品(25,000,000+5,000,000)=846,000,000 販売数量:製品Pは12,000×70%=8,400個,特注品は4,000個 ∴993,040,000円÷4,000個=248,260円/個
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:[[../問題13|←前の問題]] :[[../問題15|次の問題→]] == 問題 ==  当社は工作機械の製品Pを受注生産する製造業を営んでいる。この度A社から特注品(製品Pの上位機種)の引合いがあり,それを受けるか否か検討している。検討に当たっては,引合いを受ける前の売上総利益を維持できることが前提である。なお,当該引合いを受けても既存顧客への影響はないものとする。そこで,次の〔資料〕に基づき,当社が引合いを受けるのに必要な最低販売単価として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(8点) 〔'''資料'''〕 1.製品Pの単位当たり製造原価は,直接材料費50,000 円,直接労務費78,000 円,減価償却費48,000 円,その他の製造間接費24,000 円(うち4,000 円は変動費)である。 2.製品Pの年間受注数量は12,000 個であり,これらは全て当期に製造し販売しているため,期末に在庫は残っていない。 3.特注品は年間4,000 個を希望しているが,その場合生産能力に限界があり,製品Pの生産量を30 %減少させなければならない。ただし,当該希望数量4,000 個にかかる単位当たり直接労務費は2 %増加する。 4.当該特注品は製品Pに比べて単位当たり直接材料費は20 %増加するが,設備は現状のものが使用できることがわかっている。ただし,当該特注品の製造にかかる修理費25,000,000 円,さらに保守費用5,000,000 円が追加で発生する。 5.特注品の製造原価は,上記3.および4.に記述したもの以外については,製品Pの製造原価からの変動はない。 6.特注品を製造する前の売上総利益は480,000,000 円であった。 {| |- | 1. 239,060円 || 2. 241,160円 || 3. 245,760円 |- | 4. 248,260円 || 5. 252,560円 || |} == 正解 == 4 == 解説 == ※以下、単位を円とする {| class="wikitable" |+製品Pの販売価格 |売上高 |'''∴240,000''' |- |直接材料費 |50,000 |- |直接労務費 |78,000 |- |変動製造間接費 |4,000 |- |固定製造間接費(含:減価償却費) |68,000 |- |売上総利益 |40,000 |} === 特注品 === 固定製造間接費:製品P@68,000×12,000個+特注品(25,000,000+5,000,000)=846,000,000 販売数量:製品Pは12,000×70%=8,400個,特注品は4,000個 {| class="wikitable" |+特注品の売上高 | |特注品 4,000個 |製品P 8,400個 |- |売上高 |'''∴993,040,000''' |@240,000×8,400個=2,016,000,000 |- |直接材料費 |@60,000×4,000個=240,000,000 |@50,000×8,400個=420,000,000 |- |直接労務費 |@79,560×4,000個=318,240,000 |@78,000×8,400個=655,200,000 |- |変動製造間接費 |@4,000×4,000個=16,000,000 |@4,000×8,400個=33,600,000 |- |貢献利益 |'''∴418,800,000''' |@108,000×8,400個=907,200,000 |- |固定製造間接費 | colspan="2" |846,000,000 |- |売上総利益売上総利益 | colspan="2" |480,000,000 |} ∴993,040,000円÷4,000個=248,260円/個 :[[../問題13|←前の問題]] :[[../問題15|次の問題→]] [[カテゴリ:管理会計]]
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2022-11-28T16:27:18Z
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高等学校生物/生物I/細胞の増殖
細胞分裂(cell division)には、体細胞分裂(たいさいぼう ぶんれつ)と減数分裂(げんすう ぶんれつ)がある。 ここでは体細胞分裂について扱う。 多細胞生物は多数の細胞でできている。 これらの細胞は元は1つの細胞であり、細胞が分裂することによって構造を維持している。 この分裂を体細胞分裂(somatic cell division)と呼ぶ。 分裂の前の細胞を母細胞(ぼさいぼう、ははさいぼう、mother cell)、分裂で生じた2個の細胞を娘細胞(むすめさいぼう、daughter cells)と呼ぶ。 体細胞分裂では核が2つに分裂する核分裂(かくぶんれつ、karyokinesis)が起こる。 体細胞分裂の核分裂は染色体の数が核分裂の前後で変わらない同数分裂()である。 また、核分裂の終わりには細胞質が2つに分かれる細胞質分裂(cytokinesis)が起こる。 核分裂と核分裂の間の時期を間期(かんき、interphase)と呼ぶ。 核分裂が行われる時期を分裂期(ぶんれつき、M phase)と呼ぶ。分裂期をM期ともいう。 分裂期は、その段階により、さらに、前期(prophase)・中期(metaphase)・後期(anaphase)・終期(telophase)に分けられる。 細胞分裂の準備が行われる。 DNAやタンパク質を合成し、染色体を複製する(複製された染色体は離れてしまわないように、つながれている)。DNAは間期に複製され2倍になっている。 染色体は核内に分散している。 間期はG1期、S、G2期からなる。 G1期は合成準備期。 S期は合成期。 G2期は分裂準備期。 細胞分裂の過程は、まず最初に、核分裂がおこる。つづいて細胞質分裂がおこる。 M期は前期、中期、後期、終期に分けられる。 前期にあらわれる染色体は、核内に分散していた染色体が凝縮したもの。 分裂期に染色体が等分されるとともに、DNAも等分される。よって、分裂後の最終的な染色体数およびDNA数は、もとの細胞と同じである。 核膜が消失し、核の中にあった染色体が現れる。分散していた染色体が細長いひも状に集まっている。 核膜と核小体は消失する。 両極から紡錘糸(ぼうすいし、spindle fiber)が伸びて紡錘体(ぼうすいたい、spindle)ができはじめる。 このとき、動物細胞では、中心体が両極へ移動し、星状体(せいじょうたい、aster)となり、その星状体から紡錘糸が伸びる。 やがて、染色体は太く短い棒状になり、裂け目(縦裂)が生じる。 紡錘糸(ぼうすいし)は染色体のくびれた部分である動原体(どうげんたい, centromere)に付着する。 染色体が細胞の中央の面にあつまる。この、染色体が集まってる細胞の中央の面を赤道面(せきどうめん)という。紡錘体が完成し、すべての染色体の動原体が細胞の赤道面に並ぶ。 それぞれの染色体が2本に分離して、細胞の両極に移動する。分離の際、染色体が縦裂面で2つに分かれ、紡錘糸に引かれるように(実際には引っ張られるわけではない)両極に移動する。 核が現れ始め、染色体は核内に分散する。集まっていた染色体が次第に分散していき、 核膜と核小体が再び出現する。また、この頃に細胞質分裂もはじまり、植物細胞の場合、細胞板(さいぼうばん、cell plate)があらわれる。植物細胞では、ゴルジ体から細胞板が形成され、細胞を二分する。動物細胞では、赤道面で細胞膜がくびれ、細胞を二分する。 以上のような、細胞分裂の分裂の周期のことを細胞周期(cell cycle)という。 細胞の中には分裂を停止しているものもあり、これをG0期(ジーゼロき)という。「G」とはgap(ギャップ)。 染色体の数、大きさ、形は種によって決まっている。 体細胞の多くは大きさや形が同じ2つの染色分体をもっており、 これを相同染色体(そうどう せんしょくたい、homologous chromosomes)と呼ぶ。 相同染色体は、それぞれ両親から受け継いだものである。 生殖細胞は、染色体数が半分になっている。 体細胞では、染色体は父母から継いだ相同染色体が一対になっており、相同染色体1対あたり2個の染色体である。 このような関係を表すため、一般に染色体の対の数を n で表し、したがって体細胞の染色体数を 2n で表す。つまり、生殖細胞の染色体数は n で表す。生殖細胞は減数分裂によって染色体数が、体細胞と比べて、半減している。 ヒトの場合、染色体数は46本あり、23対である。常染色体が22対、性染色体が1対である。 ヒトの場合、n=23である。 このようなnや2nの表記を核相(かくそう)という。 生殖細胞などnのことを単相(たんそう)といい、体細胞など2nのことを複相(ふくそう)という。 核相の表記のアルファベットは、nで表すのが慣習である。 精子や卵などの生殖細胞を作る際、通常の分裂とは違う。生殖細胞をつくる分裂は減数分裂といい、分裂が2回起きる。減数分裂での1回目の分裂を第一分裂といい、2回目の分裂を第二分裂という。 減数分裂でも、分裂前の間期のS期にDNAが複製される。複製されたDNAが第一分裂で分配されるので、第一分裂後のDNA量は複製前(G1期)と同じである。 第二分裂ではDNAの複製は行われず、第二分裂後にDNA量が複製前の半分になる。 2本鎖DNAの塩基どうしの結合が、一部分、ほどける。そして、部分的に1本鎖になったDNAが2本ぶんできる。 1本鎖のそれぞれが鋳型となって複製が始まる。それぞれの一本鎖の塩基に対応するヌクレオチドが結合して(AとT、GとCが結合)、相補的な塩基の対が出切る。そして塩基対どうしの新しい鎖のほうのヌクレオチドは、酵素のDNAポリメラーゼなどの働きによって、となりあったヌクレオチドのリン酸と糖が結合して、次々と連結していって新しい鎖ができ、よって2本鎖のDNAになる。複製前のDNAのもう一方のほうの一本鎖も同様に複製されて2本鎖になる。こうして、複製前のDNAのそれぞれの一本鎖が2本鎖のDNAになり、複製後はDNAが2個になる。 このような複製のしくみを半保存的複製(はんほぞんてき ふくせい)といい、アメリカのメセルソンとスタールによって1958年ごろに大腸菌と窒素の同位元素(通常のNと、同位元素のN)を用いた実験で証明された。 まず、基準として、あらかじめ通常の窒素Nをふくむ培地で、大腸菌を培養しておく。この基準とはべつに、もう一種類、重窒素Nをふくむ培地を、次のように用いる。 (1) 大腸菌を培養する際、区別のため、重窒素Nをふくむ塩化アンモニウム(NH4Cl)を窒素源とする培地で、培養して増殖させる。 すると、大腸菌の窒素原子に、すべて重窒素Nだけをふくむ大腸菌が得られる。 まず、この大腸菌を保存しておく。もうひとつの基準とするため。 (2) さらに、Nだけをふくむ大腸菌を、ふつうの窒素Nをふくむ培地に移して培養して、分裂1回目・2回目・・・といった分裂ごとにDNAを抽出するため遠心分離機で遠心分離して、DNAの比重を調べる。 結果 ・ 1回分裂後のDNAからは、NとNを半々にふくむDNAだけが得られ、重さは中間の重さだった。 ・ 2回分裂直後のDNAからは、N-Nの半々のDNAと、NだけをふくむDNAが、1:1の割合で得られた。 重さは、NだけをふくむDNAが、もっとも軽い。 ・ 3回目の分裂後は、軽いDNAと中間の重さのDNAの比が3:1だった。 ・ 4回目の分裂後は、軽いDNAと中間の重さのDNAの比が7:1だった。 ・ n回目の分裂後は、軽いDNAと中間の重さのDNAの比が 2-1:1 だった。 中間の重さのDNAは、何世代たっても消滅しなかった。 この実験によって、DNAの半保存的複製は証明された。 アメーバ、ミドリムシ、ゾウリムシなど、個体が単一の細胞からできている生物は単細胞生物(unicellular organism)と呼ばれる。 例えばゾウリムシは、一つの細胞で、繊毛を使って泳いだり、細胞口を使って食べたり、食胞を使って消化したりしている。 単細胞生物に対して、形や働きの異なる多くの細胞からなる生物は多細胞生物(multicellular organism)と呼ばれる。多細胞生物において、藻類や腔腸動物は、種子植物や脊椎動物に比べると簡単な構造を持っている。 例えばヒドラは、8種類約10万個の細胞からなる多細胞生物であり、刺細胞で攻撃したり、腺細胞で消化液を分泌したり、消化細胞で消化を行ったりしている。
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15, "tag": "p", "text": "ヒトの場合、染色体数は46本あり、23対である。常染色体が22対、性染色体が1対である。 ヒトの場合、n=23である。 このようなnや2nの表記を核相(かくそう)という。", "title": "細胞の増殖と生物体の構造" }, { "paragraph_id": 16, "tag": "p", "text": "生殖細胞などnのことを単相(たんそう)といい、体細胞など2nのことを複相(ふくそう)という。", "title": "細胞の増殖と生物体の構造" }, { "paragraph_id": 17, "tag": "p", "text": "核相の表記のアルファベットは、nで表すのが慣習である。", "title": "細胞の増殖と生物体の構造" }, { "paragraph_id": 18, "tag": "p", "text": "", "title": "細胞の増殖と生物体の構造" }, { "paragraph_id": 19, "tag": "p", "text": "精子や卵などの生殖細胞を作る際、通常の分裂とは違う。生殖細胞をつくる分裂は減数分裂といい、分裂が2回起きる。減数分裂での1回目の分裂を第一分裂といい、2回目の分裂を第二分裂という。", "title": "細胞の増殖と生物体の構造" }, { "paragraph_id": 20, "tag": "p", "text": "減数分裂でも、分裂前の間期のS期にDNAが複製される。複製されたDNAが第一分裂で分配されるので、第一分裂後のDNA量は複製前(G1期)と同じである。", "title": "細胞の増殖と生物体の構造" }, { "paragraph_id": 21, "tag": "p", "text": "第二分裂ではDNAの複製は行われず、第二分裂後にDNA量が複製前の半分になる。", "title": "細胞の増殖と生物体の構造" }, { "paragraph_id": 22, "tag": "p", "text": "", "title": "細胞の増殖と生物体の構造" }, { "paragraph_id": 23, "tag": "p", "text": 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"paragraph_id": 29, "tag": "p", "text": "まず、この大腸菌を保存しておく。もうひとつの基準とするため。", "title": "細胞の増殖と生物体の構造" }, { "paragraph_id": 30, "tag": "p", "text": "(2) さらに、Nだけをふくむ大腸菌を、ふつうの窒素Nをふくむ培地に移して培養して、分裂1回目・2回目・・・といった分裂ごとにDNAを抽出するため遠心分離機で遠心分離して、DNAの比重を調べる。", "title": "細胞の増殖と生物体の構造" }, { "paragraph_id": 31, "tag": "p", "text": "結果 ・ 1回分裂後のDNAからは、NとNを半々にふくむDNAだけが得られ、重さは中間の重さだった。", "title": "細胞の増殖と生物体の構造" }, { "paragraph_id": 32, "tag": "p", "text": "・ 2回分裂直後のDNAからは、N-Nの半々のDNAと、NだけをふくむDNAが、1:1の割合で得られた。 重さは、NだけをふくむDNAが、もっとも軽い。", "title": "細胞の増殖と生物体の構造" }, { "paragraph_id": 33, "tag": "p", "text": "・ 3回目の分裂後は、軽いDNAと中間の重さのDNAの比が3:1だった。", "title": "細胞の増殖と生物体の構造" }, { "paragraph_id": 34, "tag": "p", "text": "・ 4回目の分裂後は、軽いDNAと中間の重さのDNAの比が7:1だった。", "title": "細胞の増殖と生物体の構造" }, { "paragraph_id": 35, "tag": "p", "text": "・ n回目の分裂後は、軽いDNAと中間の重さのDNAの比が 2-1:1 だった。", "title": "細胞の増殖と生物体の構造" }, { "paragraph_id": 36, "tag": "p", "text": "中間の重さのDNAは、何世代たっても消滅しなかった。", "title": "細胞の増殖と生物体の構造" }, { "paragraph_id": 37, "tag": "p", "text": "この実験によって、DNAの半保存的複製は証明された。", "title": "細胞の増殖と生物体の構造" }, { "paragraph_id": 38, "tag": "p", "text": "", "title": "細胞の増殖と生物体の構造" }, { "paragraph_id": 39, "tag": "p", "text": "アメーバ、ミドリムシ、ゾウリムシなど、個体が単一の細胞からできている生物は単細胞生物(unicellular organism)と呼ばれる。 例えばゾウリムシは、一つの細胞で、繊毛を使って泳いだり、細胞口を使って食べたり、食胞を使って消化したりしている。", "title": "細胞の増殖と生物体の構造" }, { "paragraph_id": 40, "tag": "p", "text": "単細胞生物に対して、形や働きの異なる多くの細胞からなる生物は多細胞生物(multicellular organism)と呼ばれる。多細胞生物において、藻類や腔腸動物は、種子植物や脊椎動物に比べると簡単な構造を持っている。 例えばヒドラは、8種類約10万個の細胞からなる多細胞生物であり、刺細胞で攻撃したり、腺細胞で消化液を分泌したり、消化細胞で消化を行ったりしている。", "title": "細胞の増殖と生物体の構造" } ]
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== 細胞の増殖と生物体の構造 == === 細胞分裂 === [[File:細胞分裂 植物細胞 高校課程.svg|thumb|700px|植物細胞の細胞分裂]] [[File:細胞周期におけるDNA量の変化.svg|thumb|700px|体細胞分裂の細胞周期におけるDNA量の変化。(植物細胞・動物細胞で共通)]] [[File:細胞分裂 動物細胞 高校教育用.svg|thumb|700px|動物細胞の細胞分裂]] [[File:細胞周期 説明図.svg|thumb|400px|細胞周期の説明図]] 細胞分裂(cell division)には、体細胞分裂(たいさいぼう ぶんれつ)と減数分裂(げんすう ぶんれつ)がある。 ここでは体細胞分裂について扱う。 [[File:Animal_cell_cycle_(editors_version).svg|thumb|512px|間期(interphase)、分裂期(mitotic phase)、前期(prophase)・中期(metaphase)・後期(anaphase)・終期(telophase)]] 多細胞生物は多数の細胞でできている。 これらの細胞は元は1つの細胞であり、細胞が分裂することによって構造を維持している。 この分裂を'''体細胞分裂'''(somatic cell division)と呼ぶ。 分裂の前の細胞を'''母細胞'''(ぼさいぼう、ははさいぼう、mother cell)、分裂で生じた2個の細胞を'''娘細胞'''(むすめさいぼう、daughter cells)と呼ぶ。 体細胞分裂では核が2つに分裂する'''核分裂'''(かくぶんれつ、karyokinesis)が起こる。 体細胞分裂の核分裂は染色体の数が核分裂の前後で変わらない同数分裂()である。 また、核分裂の終わりには細胞質が2つに分かれる'''細胞質分裂'''(cytokinesis)が起こる。 核分裂と核分裂の間の時期を'''間期'''(かんき、interphase)と呼ぶ。 核分裂が行われる時期を'''分裂期'''(ぶんれつき、M phase)と呼ぶ。分裂期を'''M期'''ともいう。 分裂期は、その段階により、さらに、'''前期(prophase)・中期(metaphase)・後期(anaphase)・終期(telophase)'''に分けられる。 * 間期 細胞分裂の準備が行われる。 DNAやタンパク質を合成し、染色体を複製する(複製された染色体は離れてしまわないように、つながれている)。DNAは間期に複製され2倍になっている。 染色体は核内に分散している。 間期はG<sub>1</sub>期、S、G<sub>2</sub>期からなる。 G<sub>1</sub>期は合成準備期。 S期は合成期。 G<sub>2</sub>期は分裂準備期。 細胞分裂の過程は、まず最初に、'''核分裂'''がおこる。つづいて'''細胞質分裂'''がおこる。 * 分裂期(M期) M期は'''前期'''、'''中期'''、'''後期'''、'''終期'''に分けられる。 前期にあらわれる染色体は、核内に分散していた染色体が凝縮したもの。 分裂期に染色体が等分されるとともに、DNAも等分される。よって、分裂後の最終的な染色体数およびDNA数は、もとの細胞と同じである。 * 分裂期-前期 核膜が消失し、核の中にあった染色体が現れる。分散していた染色体が細長いひも状に集まっている。 核膜と核小体は消失する。 両極から紡錘糸(ぼうすいし、spindle fiber)が伸びて紡錘体(ぼうすいたい、spindle)ができはじめる。 このとき、動物細胞では、中心体が両極へ移動し、星状体(せいじょうたい、aster)となり、その星状体から紡錘糸が伸びる。 やがて、染色体は太く短い棒状になり、裂け目(縦裂)が生じる。 紡錘糸(ぼうすいし)は染色体のくびれた部分である動原体(どうげんたい, centromere)に付着する。 * 分裂期-中期 染色体が細胞の中央の面にあつまる。この、染色体が集まってる細胞の中央の面を赤道面(せきどうめん)という。紡錘体が完成し、すべての染色体の動原体が細胞の赤道面に並ぶ。 * 分裂期-後期 それぞれの染色体が2本に分離して、細胞の両極に移動する。分離の際、染色体が縦裂面で2つに分かれ、紡錘糸に引かれるように(実際には引っ張られるわけではない)両極に移動する。 * 分裂期-終期 核が現れ始め、染色体は核内に分散する。集まっていた染色体が次第に分散していき、 核膜と核小体が再び出現する。また、この頃に細胞質分裂もはじまり、植物細胞の場合、細胞板(さいぼうばん、cell plate)があらわれる。植物細胞では、ゴルジ体から細胞板が形成され、細胞を二分する。動物細胞では、赤道面で細胞膜がくびれ、細胞を二分する。 以上のような、細胞分裂の分裂の周期のことを'''細胞周期'''(cell cycle)という。 細胞の中には分裂を停止しているものもあり、これをG<sub>0</sub>期(ジーゼロき)という。「G」とはgap(ギャップ)。 === 核相と相同染色体 === 染色体の数、大きさ、形は種によって決まっている。 体細胞の多くは大きさや形が同じ2つの染色分体をもっており、 これを'''相同染色体'''(そうどう せんしょくたい、homologous chromosomes)と呼ぶ。 相同染色体は、それぞれ両親から受け継いだものである。 * 核相(かくそう) 生殖細胞は、染色体数が半分になっている。 体細胞では、染色体は父母から継いだ相同染色体が一対になっており、相同染色体1対あたり2個の染色体である。 このような関係を表すため、一般に染色体の対の数を '''n''' で表し、したがって体細胞の染色体数を 2n で表す。つまり、生殖細胞の染色体数は n で表す。生殖細胞は減数分裂によって染色体数が、体細胞と比べて、半減している。 ヒトの場合、染色体数は46本あり、23対である。常染色体が22対、性染色体が1対である。 ヒトの場合、n=23である。 このようなnや2nの表記を'''核相'''(かくそう)という。 生殖細胞などnのことを'''単相'''(たんそう)といい、体細胞など2nのことを'''複相'''(ふくそう)という。 核相の表記のアルファベットは、nで表すのが慣習である。 {{-}} === 参考: 減数分裂 === [[File:減数分裂 DNA量の変化.svg|thumb|700px|減数分裂におけるDNA量の変化]] [[File:細胞周期におけるDNA量の変化.svg|thumb|700px|体細胞分裂におけるDNA量の変化。(比較用)]] 精子や卵などの生殖細胞を作る際、通常の分裂とは違う。生殖細胞をつくる分裂は減数分裂といい、分裂が2回起きる。減数分裂での1回目の分裂を'''第一分裂'''といい、2回目の分裂を'''第二分裂'''という。 減数分裂でも、分裂前の間期のS期にDNAが複製される。複製されたDNAが第一分裂で分配されるので、第一分裂後のDNA量は複製前(G1期)と同じである。 第二分裂ではDNAの複製は行われず、第二分裂後にDNA量が複製前の半分になる。 {{-}} === DNA複製のしくみ === [[File:DNA replication split.svg|thumb|300px|半保存的複製のイメージ図。]] 2本鎖DNAの塩基どうしの結合が、一部分、ほどける。そして、部分的に1本鎖になったDNAが2本ぶんできる。 1本鎖のそれぞれが鋳型となって複製が始まる。それぞれの一本鎖の塩基に対応するヌクレオチドが結合して(AとT、GとCが結合)、相補的な塩基の対が出切る。そして塩基対どうしの新しい鎖のほうのヌクレオチドは、酵素の'''DNAポリメラーゼ'''などの働きによって、となりあったヌクレオチドのリン酸と糖が結合して、次々と連結していって新しい鎖ができ、よって2本鎖のDNAになる。複製前のDNAのもう一方のほうの一本鎖も同様に複製されて2本鎖になる。こうして、複製前のDNAのそれぞれの一本鎖が2本鎖のDNAになり、複製後はDNAが2個になる。 このような複製のしくみを'''半保存的複製'''(はんほぞんてき ふくせい)といい、アメリカのメセルソンとスタールによって1958年ごろに大腸菌と窒素の同位元素(通常の<sup>14</sup>Nと、同位元素の<sup>15</sup>N)を用いた実験で証明された。 {{-}} * メセルソンとスタールの実験 (発展: 生物IIの範囲) :※ メセルソンとスタールの実験が、第一学習社『生物基礎』の教科書で紹介されている。 まず、基準として、あらかじめ通常の窒素<sup>14</sup>Nをふくむ培地で、大腸菌を培養しておく。この基準とはべつに、もう一種類、重窒素<sup>15</sup>Nをふくむ培地を、次のように用いる。 (1)  大腸菌を培養する際、区別のため、重窒素<sup>15</sup>Nをふくむ塩化アンモニウム(<sup>15</sup>NH<sub>4</sub>Cl)を窒素源とする培地で、培養して増殖させる。 すると、大腸菌の窒素原子に、すべて重窒素<sup>15</sup>Nだけをふくむ大腸菌が得られる。 まず、この大腸菌を保存しておく。もうひとつの基準とするため。 (2)  さらに、<sup>15</sup>Nだけをふくむ大腸菌を、ふつうの窒素<sup>14</sup>Nをふくむ培地に移して培養して、分裂1回目・2回目・・・といった分裂ごとにDNAを抽出するため遠心分離機で遠心分離して、DNAの比重を調べる。 {| style="width:100%" |valign=top style="width:40%;text-indent:0em"| :密度勾配遠心分離法 [[File:塩化セシウム密度勾配法 原理図.svg|thumb|400px|left|密度勾配遠心分離法。<br />この図は原理図であり、実際の遠心分離装置の構造とは違う。]] |valign=top style="width:10%;text-indent:1em"| |valign=top style="width:45%;text-indent:1em"| 塩化セシウム(CsCl)溶液を加えた試験管を遠心分離機に取り付け、高速回転させると、試験管の底ほど塩化セシウム濃度が高くなるという密度勾配が出来る。 このときDNAを混ぜておくと、DNAの密度とつりあう溶液の密度の位置に、DNAが集まる。 こうして、DNAの質量のわずかな違いを検出できる。 |} '''結果'''<br /> ・ 1回分裂後のDNAからは、<sup>15</sup>Nと<sup>14</sup>Nを半々にふくむDNAだけが得られ、重さは中間の重さだった。 ・ 2回分裂直後のDNAからは、<sup>15</sup>N-<sup>14</sup>Nの半々のDNAと、<sup>14</sup>NだけをふくむDNAが、1:1の割合で得られた。 重さは、<sup>14</sup>NだけをふくむDNAが、もっとも軽い。 {| style="width:100%" |valign=top style="width:40%;text-indent:0em"| [[File:メセルソンとスタールの実験 試験管.svg|thumb|350px|メセルソンとスタールの実験。]] |valign=top style="width:10%;text-indent:1em"| |valign=top style="width:45%;text-indent:1em"| [[File:メセルソンとスタールの実験 DNA.svg|thumb|350px|left|メセルソンとスタールの実験。DNAの様子。]] |} ・ 3回目の分裂後は、軽いDNAと中間の重さのDNAの比が3:1だった。 ・ 4回目の分裂後は、軽いDNAと中間の重さのDNAの比が7:1だった。 ・ n回目の分裂後は、軽いDNAと中間の重さのDNAの比が 2<sup>n</sup>-1:1 だった。 中間の重さのDNAは、何世代たっても消滅しなかった。 この実験によって、DNAの半保存的複製は証明された。 {{-}} === 単細胞生物と多細胞生物 === [[w:アメーバ|アメーバ]]、[[w:ミドリムシ|ミドリムシ]]、[[w:ゾウリムシ|ゾウリムシ]]など、個体が単一の細胞からできている生物は'''単細胞生物'''(unicellular organism)と呼ばれる。 例えばゾウリムシは、一つの細胞で、繊毛を使って泳いだり、細胞口を使って食べたり、食胞を使って消化したりしている。 単細胞生物に対して、形や働きの異なる多くの細胞からなる生物は'''多細胞生物'''(multicellular organism)と呼ばれる。多細胞生物において、[[w:藻類|藻類]]や[[w:腔腸動物|腔腸動物]]は、[[w:種子植物|種子植物]]や[[w:脊椎動物|脊椎動物]]に比べると簡単な構造を持っている。 例えば[[w:ヒドラ|ヒドラ]]は、8種類約10万個の細胞からなる多細胞生物であり、刺細胞で攻撃したり、腺細胞で消化液を分泌したり、消化細胞で消化を行ったりしている。 [[カテゴリ:生物学]]
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2022-12-01T10:26:22Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%94%9F%E7%89%A9/%E7%94%9F%E7%89%A9I/%E7%B4%B0%E8%83%9E%E3%81%AE%E5%A2%97%E6%AE%96
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高等学校生物/生物I/生物の体内環境の維持
生物は外界の環境の変化によらず体内の環境を一定に保つ恒常性と呼ばれる働きを持っている。 また、動物は刺激に対して反応することができる。 このページでは、動物の恒常性、様々な刺激の受容と反応、神経系の構造と働き、動物の様々な行動、などを扱う。 生物が、外部環境(external milieu)が変化しても、その内部環境(ないぶかんきょう、internal milieu)(別名:体内環境)を一定に保とうとする働きを恒常性(こうじょうせい、homeostasis)(ホメオスタシス)という。 ヒトの体温が平常では37°C付近なのもホメオスタシスの一例である。恒常性には、温度、浸透圧、養分、酸素などを一定に保とうとする働きがある。 生物が体温を一定に保つ理由は、酵素の働きが温度によって異なるからである。 酵素は温度が約40°Cのとき最もよく働き、低すぎると働きが鈍くなり、高すぎると酵素が破壊され全く働かなくなる。 体温を一定に保つために、暑いときは熱を逃がし、寒いときは熱を逃がさないようにしたり筋肉を震わせて熱を作ったりしている。 脳の間脳と呼ばれる部分が無意識に体温調節をしている。 多細胞の動物の内部環境では、細胞は血液や組織液などの体液(body fluid)で満たされている。 体液には、血管を流れる血液(blood)、細胞間を満たす組織液(interstitial fluid)、リンパ管を流れるリンパ液(lymph)がある。ヒトの成人の場合、体重の約60%は水分である。 血液の成分には、液体成分である血しょう(けっしょう, plasma、血漿)と、有形成分である赤血球(erythrocyte)・白血球(leucocyte)・血小板(platelet)の血球(blood cell)がある。 血球には、酸素を運ぶ赤血球(erythrocyte)、体内に侵入した細菌・異物を排除する白血球(leucocyte)、血液を凝固させ止血する血小板(platelet)がある。有形成分が作られる場所は、ヒトの成人の場合、骨の内部にある骨髄(こつずい、bone marrow)で作られる。 血液が全身の細胞へ酸素や栄養分を送ることで、 細胞は活動することができる。 血液の重さの約55%は血しょうの重さである。血しょうの主成分は水(約90%)であり、それに少量のタンパク質(約7%)やグルコース・タンパク質・脂質・無機塩類などが混ざっている。血しょうのタンパク質は、アルブミン(albumin)やグロブリン(globulin)などのタンパク質である。 組織液は、血しょうが毛細血管(もうさいけっかん、capillary)から染み出たものである。組織液の大部分は再び血管にもどる。 赤血球の形は、直径が約8μmの円盤状であり、中央がくぼんでいる。赤血球には核が無い。ヒトの成人の場合、血液1mmあたりの個数は、男子は500万個/mm、女子は450万個/mm。ヒトの赤血球の寿命は約120日である。古くなった赤血球は肝臓や ひ臓 で壊される。骨髄で赤血球は作られる。 赤血球にはヘモグロビン(hemoglobin)(化学式:Hb と表記)という赤い色素タンパク質が多量に含まれている。このへモグロビンが肺で酸素O2と結合して酸素を運搬する役目を持ち、全身に酸素を運んでいる。ヘモグロビンは鉄(Fe)をふくんでいる。 ヘモグロビンは、酸素濃度が高いと、酸素と結合して酸素ヘモグロビン(HbO2)となる。 また、酸素濃度が低いと、酸素と分離しヘモグロビンに戻る。 このようにして、酸素濃度の高い肺で酸素を受け取り、 酸素濃度の低い組織へ酸素を運ぶ。 植物では、(そもそも植物に赤血球はないし、)植物はヘモグロビンを持ってない。(※ 検定教科書には無いが、センター試験にこういう選択肢が出る。2017年の生物基礎の本試験。) イカなど、いくつかの動物では、銅 Cu をふくむタンパク質のヘモシアニン (Hemocyanin)が血液を介して酸素を運ぶ役目をしている動物もいる。ヘモシアニンをふくむ動物の血液は青い。この青色は銅イオンの色である。イカの青い筋は、このヘモシアニンの色である。(※ 参考文献: 文英堂『理解しやすい生物I・II』、2004年版、205ページ) ヘモシアニンをふくむ動物には、イカ・タコや貝などの軟体動物、エビ・カニなどの甲殻類に見られる。これらの動物(イカ、タコ、エビ、カニ)は、血しょう中にヘモシアニンを含んでいる。 人間の血液は、ヘモシアニンをふくまない。 酸素ヘモグロビンを多くふくみ酸素濃度の高い血液を動脈血(arterial blood)と呼ぶ。 ヘモグロビンを多くふくみ酸素濃度の低い血液を静脈血(venous blood)と呼ぶ。 白血球はヘモグロビンを持たない。白血球は核を持つ。リンパ球やマクロファージは白血球である。体内に侵入した細菌・異物を排除することに白血球は関わる。 血しょうの一部は組織へしみだして組織液になり、栄養分を供給し老廃物を受け取る。 組織液の大部分は血管へ戻り血液となり、一部はリンパ管へ入りリンパ液となる。 リンパ液はリンパ管を通り、鎖骨下静脈で血液と合流する。 血小板は血液の凝固に関わる。血小板は2μm~5μmほどであり、核を持たない。 血管などが傷つくと、まず傷口に血小板が集まる。そして繊維状のタンパク質であるフィブリンがいくつも生成し、フィブリンどうしと赤血球などの血球とが絡んで血ぺい(けっぺい)ができる。血ぺいが傷口をふさぐ。このような一連の反応を血液凝固反応という。 採血した血液を放置した場合でも、血ぺいが生じて、血ぺいが沈殿する。このときの上澄み液を血清(けっせい、serum)という。血清の色は、やや黄色がかっている。なお、注射した血清は数日すると抗体が無くなってしまい(※ チャート式生物)、また免疫記憶も生じないので(※ 東京書籍の生物基礎の教科書)、予防には役立たない。 傷口からトロンボプラスチンが出る。これが他の凝固因子や血しょう中のカルシウムイオンCaとともに、プロトロンビンというタンパク質に作用して、プロトロンビンがトロンビンという酵素になる。 トロンビンは、血しょうに溶けているフィブリノーゲンに作用して、フィブリノーゲンを繊維状のフィブリンに変える。このフィブリンが血球を絡めて血ぺい(けっぺい)をつくる。 血友病(けつゆうびょう)という出血しても止血が始まらない病気は、血液凝固に何らかの不具合があってフィブリンをつくれなくて起きる病気である。 血液は、心臓(heart)によって全身へ送られる。 ヒトの心臓は、右心房(right atrium)、右心室(right ventricle)、左心房(Left atrium)、左心室(Left ventricle)の4部分に分かれていて、2心房2心室である。ほ乳類の心臓は2心房2心室である。 心筋(cardiac muscle)という筋肉でできている。 弁によって血液の逆流を防いでいる。心臓のリズムは、右心房の上部にある洞房結節(どうぼうけっせつ)という特殊な筋肉の出す電気刺激によって作られる。 全身から送られた血液は、大静脈(vena cava)をとおり、右心房・右心室をとおり、肺動脈(pulmonary artery)をとおり肺へと送られる。 肺で酸素を受け取った血液は、肺静脈(pulmonary vein)をとおり、左心房・左心室をとおり、大動脈(aorta)をとおり全身へ送られる。 肺動脈・肺・肺静脈を通る血液の流れを肺循環(pulmonary circulation)と呼び、 大動脈・全身・大静脈を通る血液の流れを体循環(Systemic circulation)と呼ぶ。 バッタなど昆虫やエビなど無脊椎動物(invertebrate)の血管系は、毛細血管をもたない開放血管系(かいほうけっかんけい、open blood-vascular system)である。いっぽう、魚類(pisces)・ほ乳類(mammalia)など脊椎動物(vertebrate)は毛細血管(capillary)をもち、閉鎖血管系(へいさけっかんけい、closed blood-vascular system)である。 人体各部の組織液の一部は毛細血管に戻らず、毛細リンパ管に入り、リンパ管で合流して、リンパ液になる。リンパ管は流れ着く先は、最終的には、静脈に合流する。リンパ管には逆流を防ぐための弁が、ところどころにある。リンパ管のところどころに、球状にふくらんだリンパ節がある。 リンパ液にふくまれるリンパ球(lymphocyte)は白血球の一種であり、マクロファージとともにリンパ球は異物を攻撃して、細菌などを排除する。 リンパ球はリンパ節で増殖する。 外部環境から生体を守るために、異物の侵入を阻止したり、侵入した異物を白血球などが除去したりする仕組みを生体防御(せいたいぼうぎょ)と呼ぶ。 生体防御には、免疫、血液凝固、炎症などがある。 私たち生物の体は栄養豊富なので、もし生体防御の仕組みが無いと、あっという間に病原菌などが繁殖し、私たちは死んでしまう。そうならないのは、生体防御の仕組みが私たちを守っているからである。 生体が異物を非自己と認識して、その異物を排除する仕組みを免疫(めんえき、immunity)と呼ぶ。 免疫は、病原体や毒素を排除する働きを持つ。 免疫には、白血球の食作用などの先天的に生まれつき備わっている自然免疫(innate immunity)と、いっぽう、リンパ球などが抗原抗体反応によって異物の情報を記憶して排除するという後天的に獲得される獲得免疫(acquired immunity)がある。 自然免疫は、好中球(neutrophil)、マクロファージ(単球)、樹状細胞(dendritic cell)、リンパ球といった白血球(leukocyte)が、病原体などの異物を食べる現象である食作用(Phagocytosis)で行われる。食べられた異物は、分解されて排除される。 好中球は自然免疫で、異物を食べて、除去する。攻撃した相手とともに死んでしまう細胞である。そのため寿命は短い。 ケガをしたときに傷口にできる膿は、好中球が死んだものである。 自然免疫で異物を食べる。あとで説明する獲得免疫に、異物の情報をつたえる。 近年、マクロファージや好中球などは、ある程度は異物の種類を認識している事が分かった。マクロファージや好中球や好中球などの細胞膜表面にはトル様受容体(TLR)という受容体がある。 トル様受容体には、いくつかの種類があり、反応できる異物の種類が、トル受容体の種類ごとに、ある程度、(反応できる異物の種類が)限られている。 あるトル様受容体(TLR9)は、ウイルスのDNAやRNAを認識する。また他のあるトル様受容体(TLR2)は、細胞膜や細胞壁の成分を認識する。 (※ 読者への注意: TLR9などの具体的な番号は覚えなくてよい。wikibooks編集者が査読しやすいように補記してあるだけである。) べん毛タンパク質を認識するトル様受容体(TLR5)もある。 出血したときは、血小板などの働きによってフィブリン(fibrin)と呼ばれる繊維状のタンパク質が合成され、 フィブリンが血球と絡み合って血餅(けっぺい, clot)となり止血する。 生体が傷ついたときにおこる、赤く腫れる(はれる)症状を炎症(えんしょう、inflammation)と呼ぶ。炎症は自然免疫の一つであり、白血球が異物を除去している。 まず、赤く腫れる原因は、ヒスタミン(histamine)やプロスタグランジン(prostaglandin、略称:PG)といった警報物質による。(※プロスタグランジンは高校範囲内。数研出版『生物基礎』平成26年発行、P.128 で記述を確認。) なお、プロスタグランジンは脂肪酸から作られる生理活性物質の一つであり、その動物の体の組織・器官などに作用を及ぼす。 ヒスタミンやプロスタグランジンなど、これらの警報物質によって、血管が拡張するので、肌が赤く見えるようになる。また警報物質により、毛細血管の透過性が高くなり、水分が血管外に出るので腫れる。 血管から組織にしみでた血液とともに、血液中の白血球もしみでる。そして、しみでた白血球が異物を認識して除去することで、自然免疫が働く。 炎症の症状としては、発熱・発赤・はれ・痛みなどがある。 炎症の際、神経がプロスタグランジンなどによって刺激されるので、痛みが生じる。この痛みによって、私たちは体の異常を感知できる。 また、炎症によって体温が上がるので、雑菌の繁殖が抑えられ、さらに白血球などが活性化する。 鎮痛剤の「アスピリン」(主成分:アセチルサリチル酸。「アスピリン」は商品名)という医薬品は、このプロスタグランジンの合成を阻害することで、鎮痛作用を及ぼすという仕組みであることが、すでに分かっている。プロスタグランジンを合成する酵素のシクロオキシゲナーゼ(略称:COX)の働きを、アスピリンが阻害することで、プロスタグランジンの合成が阻害されるという仕組みである。そして、プロスタグランジンには、いくつもの種類があるので、種類によっては、痛みの機能以外にも、胃液の分泌調整や、睡眠の調整などの様々な機能を持っている。 なので、プロスタグランジンの阻害をする薬では、胃液の分泌異常などの副作用が起きる場合がある。 だ液(saliva)は弱酸性、胃液は強酸性などのように、外界と接する体液は、中性ではない体液によって、雑菌の繁殖を防いでいる。 獲得免疫には、後述する「体液性免疫」(たいえきせい めんえき、humoral immunity)がある。 なお「細胞性免疫」(さいぼうせい めんえき、cell-mediated immunity)とは、キラーT細胞によって生じる免疫のこと。キラーT細胞は、トリからファブリキウス嚢を除去しても働くので、細胞性免疫を獲得免疫に含めるかどうか微妙であるが、とりあえず冒頭では言及だけしておく。 免疫グロブリンは、血液などの体液中に含まれている。 体液性免疫は、リンパ球の一部であるB細胞が、免疫グロブリンといわれる抗体(こうたい、antibody)を作り行う。抗体は免疫グロブリン(immunoglobulin、Igと略記)というタンパク質で構成されている。 いっぽう、病原体などの異物に対して抗体が作られた時、その異物を抗原(こうげん、antigen)と呼ぶ。 抗原と抗体が反応することを抗原抗体反応(antigen-antibody reaction)と呼ぶ。 病原体などの抗原は、抗体と結合することで、毒性が低下し、また凝集するので、白血球による食作用を受けやすくなる。 免疫グロブリンによる免疫は、体液中の抗体による免疫なので、体液性免疫という。 免疫グロブリンはY字型をしたタンパク質である。 免疫グロブリンの構造は、H鎖とL鎖といわれる2種類のポリペプチドが2個ずつ結合した構造になっている。図のように、免疫グロブリンは、合計4本のポリペプチドから構成されている。 H鎖とL鎖の先端部には可変部(かへんぶ、variable region)という抗体ごとに(免疫グロブリンの可変部の)アミノ酸配列の変わる部分があり、この部分(可変部)が特定の抗原と結合する。そして免疫グロブリンの可変部が抗原と結合することにより、免疫機能は抗原を認識して、一連の免疫反応をする。可変部の配列によって、認識する抗原の構造が異なる。 1種類の抗原に対応する抗体は1種類だけであるが、しかし上述のように可変部が変わりうるので、多種多様な抗原に対応できる仕組みになっている。 免疫グロブリンの構造において、可変部以外のほかの部分は定常部(ていじょうぶ、constant region)という。 また、H鎖同士、H鎖とL鎖はジスルフィド(S-S)結合でつながっている。 そもそも免疫グロブリンはB細胞で産生される。免疫グロブリンの可変部の遺伝子も、そもそもB細胞の遺伝子が断片的に選択されて組み合わせされたものである。このような遺伝子配列の組み合わせによって、配列のパターンが膨大に増えて何百万とおりにもなるので、このような仕組みによって多種多様な病原体(抗原)に対応している。 より細かく言うと、下記のような順序で、産生される。 樹状細胞などの食作用によって分解された断片が、抗原として提示される(抗原提示)。 そして、その抗原が、ヘルパーT細胞(ヘルパーティーさいぼう、helper T cell)によって認識される。 抗原を認識したヘルパーT細胞は活性化し、B細胞(ビーさいぼう)の増殖を促進する。 増殖したB細胞が、抗体産生細胞(こうたい さんせいさいぼう)へと分化する。 そして抗体産生細胞が、抗体として免疫グロブリンを産生する。 この抗体が、抗原と特異的に結合する(抗原抗体反応)。 抗原抗体反応によって、抗体と結合された抗原は毒性が弱まり、またマクロファージによって認識されやすくなり、マクロファージの食作用によって抗原が分解されるようになる。 ヒトの遺伝子は数万種類であるといわれているが(※ 参考文献: 東京書籍の教科書、平成24検定版)、しかし抗体の種類はそれを膨大に上回り、抗体は数百万種類ていどにも対応する。 その仕組みは、B細胞の遺伝子から、選択的に抗体の遺伝子が選ばれるという仕組みになっている。この辺の抗体の種類の計算の仕組みは、1970年代ごろに日本人の生物学者の利根川進などによって研究されており、1987年には利根川進(とねがわ すすむ)はこの業績でノーベル医学・生理学賞を受賞した。 輸血は、血液型が同じ型どうしで輸血するの通常である。 赤血球表面に、抗原にあたる凝集原(ぎょうしゅうげん)AまたはBがある。なお、凝集原の正体は糖鎖である。 血清中に、抗体にあたる凝集素のαまたはβがある。この抗体は、病気の有無に関わらず、生まれつき持っている抗体である。 凝集原と凝集素との組み合わせによって、4つの型に分類される。 Aとαが共存すると凝集する。 Bとβが共存すると凝集する。 たとえばA型の血をB型のヒトに輸血すると、赤血球が凝集してしまうので、輸血するのは危険である。 A型の糖鎖は、H型糖鎖という糖鎖の末端にNアセチルガラクトースアミン(GalNa)が結合している。 B型は、H型糖鎖という糖鎖の末端にガラクトース(Gal)が結合している。 AB型は、この両方の糖鎖が細胞膜にある。O型の糖鎖はH型糖鎖そのものだけである。 トリからファブリキウス嚢を除去してもウイルス感染しない。このため、抗体とは別にウイルスを除去する機構がある事が分かっている そのような抗体とは別のウイルス除去機構の一つとして、キラーT細胞というものがある。 ともかく細胞性免疫について、下記のキラーというものがある。 抗原提示されたヘルパーT細胞は、キラーT細胞(killer T cell)とよばれるT細胞を増殖させる。 キラーT細胞は、ウイルスに感染された自己の細胞を攻撃するが、移植細胞や がん細胞 も攻撃することもある。 細胞性免疫は、キラーT細胞が、抗原を直接攻撃して行う。 臓器移植や皮膚移植などで別の個体の臓器や皮膚などを移植すると、たとえ同種の個体からの移植でも、普通、定着しないで脱落する。これを拒絶反応という。これは細胞性免疫によって異物として移植臓器が認識され、キラーT細胞によって攻撃されたためである。 細胞膜の表面には、MHC(主要組織適合性複合体、Major Histocompatibility Complex)というタンパク質がある。臓器移植で拒絶反応が起きる場合は、MHCが異なる場合であり、キラーT細胞が移植臓器を攻撃しているのである。 MHCは個人ごとに異なるので、普通、他人とは一致しない。 T細胞は、相手方細胞の表面にあるMHCを認識している。つまりMHCの違いによって、ヘルパーT細胞が自己と非自己を認識する。そしてヘルパーT細胞が非自己の物質が侵入したことを感知して、キラーT細胞を活性化させる。 なお、ヒトでは、ヒトの白血球の細胞表面にあるヒト白血球型抗原(HLA、Human Leukocyte Antigen)がMHCとして機能する。血縁関係の無い他人どうしで、HLAが一致する確率は、ほとんど無い。同じ親から生まれた兄弟間で、HLAの一致は4分の1の確率である。移植手術の際、これらの免疫を抑制する必要があり、免疫抑制のために、あるカビから精製した「シクロスポリン」(ciclosporin)という名前の薬剤が、よく免疫抑制剤(めんえきよくせいざい)として使われる。(※ シクロスポリンはいちおう、高校の教科書で紹介されている。) 臓器移植など移植手術での拒絶反応が起きる際の理由も、MHC(ヒトの場合はHLA)が異なって、T細胞が移植片を非自己と認識するからである(※ 参考文献: 第一学習社『高等学校生物』、24年検定版、26年発行、58ページ)、と考えられている。 なおシクロスポリンは、T細胞によるサイトカイン(このサイトカインは細胞性免疫の情報伝達に関わる物質の一種であり、キラーT細胞などの他の免疫細胞を活性化させる役割を持っている)の産生を阻害することにより、細胞性免疫の作用を抑制している。(※ サイトカインは高校の範囲内) 結核菌のタンパク質を投与して、結核菌に対しての免疫記憶があるかどうかを検査するのがツベルクリン反応検査である。 結核菌への免疫があれば、炎症が起こり、赤く腫れる。この反応は細胞性免疫であり、ヘルパーT細胞やマクロファージの働きによるものである。 ツベルクリン反応をされて、赤く腫れる場合が陽性である。いっぽう、赤く腫れない場合が陰性である。 陰性のヒトは免疫が無いので、結核に感染する可能性があり、そのため免疫を獲得させるために弱毒化した結核菌が投与される。 BCGとは、この弱毒化した結核菌のことである。 免疫細胞では、インターロイキン(interleukin)というタンパク質が、主に情報伝達物質として働いている。インターロイキンには、多くの種類がある。 インターロイキンのうち、いくつかの種類のものについては、ヘルパーT細胞からインターロイキンが放出されており、免疫に関する情報伝達をしている。 体液性免疫では、ヘルパーT細胞から(ある種類の)インターロイキンが放出されて、B細胞に情報が伝わっている。こうしてB細胞は抗体産生細胞に変化する。 細胞性免疫では、ヘルパーT細胞が(ある種類の)インターロイキンを放出し、キラーT細胞やマクロファージなどに情報が伝わる。 なお、名前の似ている「インターフェロン」という物質があるが、これはウイルスに感染した細胞から放出され、周囲の未感染細胞にウイルスの増殖を抑える物質を作らせる。(※ チャート式生物(平成26年版)の範囲。) マクロファージや樹状細胞も、病原体などを分解して、そのタンパク質断片を(マクロファージや樹状細胞の)細胞表面で抗原提示をして、ヘルパーT細胞を活性化する、・・・と考えられている。(※ 検定教科書では、MHCかどうかは、触れられてない。) (※ まだ新しい分野でもあり、未解明のことも多く、高校生は、この分野には、あまり深入りしないほうが安全だろう。) T細胞やB細胞の一部は攻撃に参加せず、記憶細胞として残り、抗原の記憶を維持する。そのため、もし同じ抗原が侵入しても、1回目の免疫反応よりも、すばやく認識でき、すばやくT細胞やB細胞などを増殖・分化できる。 このため、すぐに、より強い、免疫が発揮できる。 これを免疫記憶(immunological memory)と呼ぶ。 一度かかった感染病には、再びは、かかりにくくなる。 これはリンパ球の一部が免疫記憶として病原体の情報を記憶しているためである。 免疫記憶は予防接種としても利用されている。 免疫は、個体が未熟なときから存在する。成熟の課程で、リンパ球(T細胞)は、いったん多くの種類が作られ、あらゆる抗原に対応するので、自己の細胞も抗原と認識してしまうリンパ球もできる。いったん自分自身に免疫が働かないように、しかし、自己と反応したリンパ球は死んでいくので、個体の成熟の課程で、自己を排除しようとする不適切なリンパ球は取り除かれる。そして最終的に、自己とは反応しないリンパ球のみが、生き残る。 こうして、成熟の課程で、自己に対しての免疫が抑制される仕組みを免疫寛容(めんえき かんよう)という。 免疫寛容について、下記のことが分かっている。 まず、そもそも、T細胞もB細胞も、おおもとの原料となる細胞は、骨髄でつくられる。 骨髄で作られた未成熟T細胞は、血流にのって胸腺まで運ばれ、胸腺でT細胞として分化・増殖する。 膨大なT細胞が作られる際、いったん、あらゆる抗原に対応できるようにT細胞がつくられるので、作られたT細胞のなかには自己の細胞を抗原として認識してしまうものも存在している。 しかし、分化・成熟の過程で、自己を攻撃してしまうT細胞があれば、その(自己を攻撃する)T細胞は胸腺で取り除かれる。 このようにして、免疫寛容が達成される。 殺しておいた病原体、あるいは無毒化や弱毒化させておいた病原体などをワクチン(英: vaccine)という。このワクチンを、人間に接種すると、もとの病気に対しての抗体と免疫記憶を作らせることができるので、病気の予防になる。こうしてワクチンを接種して病気を予防することを予防接種という。 ワクチン療法の元祖は、18世紀なかばの医師ジェンナーによる、牛痘(ぎゅうとう)を利用した、天然痘(てんねんとう)の予防である。 天然痘は、死亡率が高く、ある世紀では、ヨーロッパ全土で100年間あたり6000万人もの人が死亡したとも言われている。天然痘はウイルスであることが、現在では知られている。 牛痘は牛に感染するが、人間にも感染する。人間に感染した場合、天然痘よりも症状は比較的軽い。 当事のヨーロッパで牛痘に感染した人は、天然痘には感染しにくい事が知られており、また牛痘に感染した人は天然痘に感染しても症状が軽い事が知られていた。このような話をジェンナーも聞いたようであり、牛の乳搾りをしていた農夫の女から聞いたらしい。 ジェンナーは、牛痘に感染した牛の膿を人間に接種することで、天然痘を予防する方法を開発した。 さらに19世紀末にパスツールがワクチンの手法を改良し、天然痘のワクチンを改良するとともに、狂犬病のワクチンなどを開発していった。 狂犬病はウイルスである。 現在では、天然痘のDNAおよび牛痘のDNAの解析がされており、天然痘と牛痘とは塩基配列が似ていることが分かっている。 1980年、世界保健機構(WHO)は、天然痘の根絶宣言を出した。 現在ではインフルエンザの予防にもワクチンが用いられている。インフルエンザには多くの型があり、年によって、流行している型がさまざまである。流行している型とは他の型のワクチンを接種しても、効果が無いのが普通である。 インフルエンザの感染は、鳥やブタやウマなどにも感染するのであり、けっしてヒトだけに感染するのではない。 インフルエンザはウイルスであり、細菌ではない。 インフルエンザのワクチンは、ニワトリの卵(鶏卵)の中で、インフルエンザウイルスを培養させた後、これを薬品処理して無毒化したものをワクチンとしている。このように薬品などで病原体を殺してあるワクチンを不活化ワクチンという。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンである。いっぽう、結核の予防に用いられるBCGワクチンは、生きた弱毒結核菌である。BCGのように生きたワクチンを生ワクチンという。 1918年に世界的に流行したスペイン風邪も、インフルエンザである。 インフルエンザは変異しやすく、ブタなどに感染したインフルエンザが変異して、人間にも感染するようになる場合もある。 ウマやウサギなどの動物に、弱毒化した病原体や、弱毒化した毒素などを投与し、その抗体を作らせる。その動物の血液の中には、抗体が多量に含まれることになる。 血液を採取し、そして血球やフィブリンなどを分離し、血清を回収すると、その血清の中に抗体が含まれている。 マムシやハブなどの毒ヘビにかまれた場合の治療として、これらのヘビ毒に対応した血清の注射が用いられている。このように血清をもちいた治療法を血清療法(けっせいりょうほう)という。血清療法は、免疫記憶は作らないので、予防には役立たない。予防ではなく治療のために血清療法を行う。 ヘビ毒以外には、破傷風(はしょうふう)やジフテリアなどの治療にも血清が用いられる。 血清療法は、1890年ごろ、北里柴三郎が開発した。 (未記述) 抗原抗体反応が過剰に起こることをアレルギー(allergy)と呼ぶ。スギ花粉などが原因で起きる花粉症もアレルギーの一つである。 アレルギーを引き起こす抗原をアレルゲン(allergen)と呼ぶ。 アレルギーによって、じんましんが起きるきともある。 ヒトによっては卵やソバやピーナッツなどの食品もアレルゲンになりうる。、 ダニやホコリなどもアレルゲンになりうる。 抗原抗体反応によって、呼吸困難や血圧低下などの強い症状が起きる場合もあり、または全身に炎症などの症状が現れたりする場合もあり、このような現象をアナフィラキシーという。 (つまり、アレルギー反応によって、呼吸困難や血圧低下などの強い症状が起きる場合や、または全身に炎症などの症状が現れたりする場合もあり、このような現象をアナフィラキシーという。) ハチ毒で、まれにアナフィラキシーが起きる場合がある。ペニシリン(penicillin )などの薬剤でもアナフィラキシーが起きる場合がある。 ※ 「アナフィラキシー・ショック」(anaphylactic shock)と書いても、正しい。(※ 東京書籍の検定教科書『生物基礎』平成23年検定版、124ページでは「アナフィラキシーショック」の用語で紹介している。) ※ 「アナフィラキシー」の結果が、血圧低下なのか、それとも炎症なのかの説明が、検定教科書でもハッキリしていない。東京書籍の教科書では、全身の炎症を「アナフィラキシーショック」の症状として説明している。だが実教出版では、血圧低下や呼吸困難を、「アナフィラキシー」の結果としているし、「アナフィラキシーショック」とはアナフィラキシーの重症化した症状だと(実教出版は)説明している。カッツング薬理学を読んでも、「アナフィラキシ-ショック」と「アナフィラキシー」がどう違うのか、あまり明確には書いてないので、高校生は気にしなくて良い。 エイズ(後天性免疫不全症候群、AIDS)の原因であるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)というウイルスは、ヘルパーT細胞に感染して、ヘルパーT細胞を破壊する。ヘルパーT細胞は免疫をつかさどる細胞である。そのため、エイズ患者の免疫機能が壊れ、さまざまな病原体に感染しやすくなってしまう。エイズ患者ではヘルパーT細胞が壊れているため、B細胞が抗体をつくることが出来ない。 ふつうのヒトでは発病しない弱毒の病原体でも、エイズ患者では免疫機能が無いため発症することもあり、このことを日和見感染(ひよりみ かんせん、opportunistic infection)という。 HIVとは Human Immunodeficiency Virus の略。 AIDSとは Acquired Immune Deficiency Syndrome の略。 HIVの遺伝子は変化をしやすく、そのため抗体を作成しても、遺伝子が変化しているので効果が無く、ワクチンが効かない。開発されているエイズ治療薬は、ウイルスの増加を抑えるだけである。 よって、予防が大事である。 自己の組織や器官に対して、免疫が働いてしまい、その結果、病気が起きることを自己免疫疾患という。 関節リウマチ(rheumatoid arthritis)、重症筋無力症(myasthenia gravis)は自己免疫疾患である。I型糖尿病も自己免疫疾患である。 ヒトの汗や鼻水や涙にはリゾチームという酵素があり、リゾチームは細菌の細胞壁を破壊する。 肝臓(かんぞう、liver)は腹部の右上に位置する最も大きな臓器であり、ヒトの成人では1kg以上の重さがあり、約1200g~2000gである。肝小葉(かんしょうよう)という基本単位が約50万個、集まって、肝臓が出来ている。心臓から出た血液の約4分の1は、肝臓に入る。 肝臓の働きは、栄養分の貯蔵や分解、有害な物質の解毒、不要な物質を胆汁(たんじゅう、bile)として捨てる、などを行っている。 肝臓には肝動脈と肝静脈のほかに、腸からの静脈の血管である肝門脈(かんもんみゃく)が肝臓を通っている。 腸で吸収されたグルコースやアミノ酸などの栄養が関門脈の中を流れる血液に含まれている。 グルコースの一部は肝臓でグリコーゲンへと合成され貯蔵される。グリコーゲンは必要に応じてグルコースに分解されて、エネルギー源として消費される。このようにして、血液中のグルコースの量や濃度(血糖値、血糖量)が、一定に保たれる。 肝臓では血しょうの主なタンパク質のアルブミン(albumin)を合成しており、また血しょう中の血液凝固に関するタンパク質であるフィビリノーゲンも肝臓で合成している。 タンパク質の合成にはアンモニアなど有害な物質が生成するが、肝臓はアンモニアを毒性の低い尿素(にょうそ)に変えている。尿素は腎臓(じんぞう)に集められ、膀胱(ぼうこう)を経て、尿道から体外へと排出される。 哺乳類や両生類では、アンモニアを尿素に変えてから排出する。なお、魚類は生成したアンモニアを直接、外部に放出している。まわりに水が多いため、アンモニアを直接排出しても害が少ないため、と考えられてる。鳥類やハ虫類では、尿素ではなく尿酸を合成しており、尿酸を排出する。鳥類とハ虫類とも、陸で生まれて、かたい卵で生まれる動物である。 そのほか有害な物質の解毒の例としては、アルコールを分解したりしている。 胆汁は肝臓で作られており、胆汁は胆管(bile duct)を通り、胆のう(gallbladder)へ貯蔵され、十二指腸(duodenum)へ分泌される。 胆汁は脂肪を消化吸収しやすくする。胆汁に消化酵素は含まれていない。胆汁は脂肪を小さな粒に変える。このように脂肪を小さな粒に変えることを乳化(にゅうか)という。 古くなった赤血球を破壊する。ヒトの胆汁中に含まれる色素のピリルビンは、古くなって破壊した赤血球に含まれていたヘモグロビンに由来している。便(大便)とともに、ピリルビンは排出される。 合成・分解など様々な化学反応が行われるため、反応熱が発生し、体温の維持にも役立っている。 ヒトなどの高等な動物の場合、腎臓(kidney)は左右一対で背側に位置し、 腎動脈(Renal artery)、腎静脈(renal vein)、輸尿管(ureter)が伸びている。 血液は腎動脈・腎臓・腎静脈を通り、 腎臓は血液中の不要な成分をろ過し尿として輸尿管・膀胱(ぼうこう、bladder)・尿道(にょうどう、urethra)を通り排出する。 腎臓にはネフロン(nephron)と呼ばれる構造上の単位があり、 ネフロンは腎小体(じんしょうたい、renal corpuscle、マルピーギ小体)と細尿管(さいにょうかん、尿細管、腎細管, renal tubule)からなり、 片方の腎臓あたり、ネフロンは約100万個ある。 腎小体は、毛細血管が球状に密集している糸球体(しきゅうたい、glomerulus)と、それを囲むボーマンのう(Bowman's capsule)からなる。 タンパク質以外の血漿は糸球体からボーマンのうに ろ過 されて 原尿(げんにょう、primary urine)となり、 原尿は細尿管で、水の再吸収と、グルコースや無機塩類などの必要な成分が再吸収される。(「再吸収」も用語) グルコースは、健康なら、すべて(100%)吸収される。これらの再吸収は、ATPのエネルギーを用いた能動輸送である。 グルコ-ス以外の、水や無機塩類の再吸収率は、体の状況に応じて再吸収率が調節されている。原則的に、血液の塩類濃度を一定に保とうとする方向に、水や塩類の再吸収率は調節されている。この再吸収率の調整の際、ホルモンが関わっている。 原尿は集合管(しゅうごうかん、collecting duct)を通り、ここで水分が再吸収される。ナトリウムイオンは、腎細管でほとんどが再吸収される。その結果、原尿のナトリウム濃度は低い。 尿素は不要なため、再吸収されない。 そして原尿から水分が吸収されたことで、残された尿素などの老廃物や再吸収されなかったものが濃縮して尿(にょう、urine)となり、体外へ尿として排出される。なお尿素は肝臓で作られる。 ボーマンのうでこし出される原尿は、ヒトの成人男性では1日あたり約170Lもあるが、その大部分は再吸収されるので、最終的に対外に尿として排出される液量は1L~2Lほどになる。99%ほど濃縮されたことになる。 ヒトなどの場合、血液中の塩分濃度が低いと、Naの再吸収がホルモンによって促進される。このホルモンは鉱質コルチコイド(mineral corticoid)という。腎細管でほとんどのナトリウムが再吸収される。鉱質コルチコイドは副腎皮質から分泌されている。 水の再吸収については、脳下垂体からバソプレシン(vasopressin)というホルモンが分泌されることによって、集合管での水の再吸収が促進される。 塩類の過剰な摂取などで、血液中の塩類濃度が上昇して体液の浸透圧が上がったときにも、バソプレシンによって水の再吸収が促進され、塩類濃度を下げさせる。水が吸収された結果、尿の液量は少なくなり、尿は濃くなる。 淡水(たんすい)とは、川や湖のように、塩分をあまり含まない水のことである。海水は、淡水ではない。淡水魚の場合、体内の塩分を失わせないため、淡水魚は水をほとんど飲まない。淡水魚の えら は、塩分を吸収しやすい特殊な作りになっている。 体内の水分を確保するため、まず海水を飲んで塩ごと水分を補給し、そして、えら から塩分を排出することで、体内の水分を確保している。 体液の塩類濃度が海水よりも低いのが一般である(体液が低張液、海水が高張液)。そのため、浸透によって水分が海水に取られてしまう傾向にある。サメやエイなどの硬骨魚類では、体液中に尿素を溶かすことで体液の塩類濃度を上げることで浸透圧を高めており、体液の浸透圧を海水の浸透圧に近づけている。 水分の補給は、海水だけを飲むのだが、余分な塩分を排出する塩類腺(せんるいせん)を持ち、塩類腺から、塩分のたかい液体を排出している。腺の場所はウミガメの場合、目のところに腺があるので、陸上で観察すると、あたかも涙を流しているように見える。 アホウドリなどの海鳥は、鼻のところに塩類腺(せんるいせん)を持つ。 多くの無脊椎動物では、海に暮らす動物の場合でも、いっぽう川に暮らす動物の場合でも、あまり塩類濃度の調節機構が発達していない。 例外的に、いくつかの生物では発達している。 ホルモン(hormone)とは、内分泌腺(ないぶんぴせん)という器官から血液へ分泌される物質であり、他の器官に情報を伝える化学物質である。ホルモンは血液によって全身へと運ばれる。そして、特定の器官へホルモンは作用する。脳下垂体、甲状腺、すい蔵などが内分泌腺である。 ホルモンは自律神経に比べて、反応が現れるまでに時間がかかり、比較的遅く、全身へ作用する。ホルモンの主な成分は、タンパク質や脂質やアミノ酸である。このように脂質は、ホルモンの成分として、情報を全身に伝える役目も持っている。脂質は、けっして単にエネルギー源なだけではないのである。 いっぽう汗のように体外へ物質を分泌する腺を外分泌腺(がいぶんぴせん)という。外分泌腺には、汗を分泌する汗腺、だ液を分泌する だ腺、乳を分泌する乳腺、などがある。 *交感神経と副交感神経 自律神経(autonomic nerve)は、意思とは無関係に、他の器官に情報を伝える神経である。 自律神経はホルモンに比べて、比較的早く、局所へ作用する。 自律神経には、働きの異なる二つの神経系があり、交感神経(こうかんしねけい、sympathetic nerve)と副交感神経(ふくこうかんしんけい、parasympathetic nerve)とに分けられる。 交感神経は、敵と戦うなどの身体が活動的なときや緊張状態のときに働く。一方、副交感神経は、休息したりなどの身体が非活動的なときに働く。 たとえば、動物が、命がけで敵と戦うとか、あるいは敵に襲われて命がけで逃げなければならない、としよう。そのときの神経の働きを考えよう。 このように、交感神経は、闘争(とうそう)や逃走(とうそう)のときに、よく働く。この「闘争や逃走」のことを、英語でも fight or flight (ファイト・オア・フライト)という。 多くの場合、交感神経と副交感神経は、反対の作用を持つので、拮抗(きっこう)的に働く。交感神経と副交感神経は、同じ器官に分布している事が多い。 交感神経は、脊髄の末端から出ていて、分布している。 副交感神経は、中脳・延髄および脊髄の末端から出ている。 自律神経は間脳の視床下部に中枢がある。 神経の末端からは、情報伝達のための神経伝達物質が放出される。 交感神経の末端からは主にノルアドレナリン(noradrenaline)という神経伝達物質が分泌される。副交感神経の末端からは、主にアセチルコリンという神経伝達物質が分泌される。 ホルモンが作用する器官を標的器官(ひょうてき きかん)という。標的器官の細胞には、特定のホルモンが結合できる受容体(じゅようたい)がある。ホルモンの種類ごとに、受容体の種類も異なるので、その受容体を持った特定の器官だけが作用を受けるので、特定の器官だけがホルモンの作用を受ける。 標的器官の細胞で、ホルモンの受容体を持った細胞を標的細胞という。 タンパク質でできたホルモンは、分子量が大きいため、細胞膜を透過できない。このよう細胞膜を透過できないホルモンの受容体は、細胞膜の表面にある。アミノ酸が多数つながった長いものをペプチドというのだが、ペプチドでできたホルモンをペプチドホルモンという。(※ 高校教科書の範囲内) 一般にタンパク質が細胞膜を透過できないため、ペプチドホルモンも細胞膜を透過できないのが普通である。インスリンはペプチドホルモンである。 なおホルモンに限らず、伝達物質が細胞膜にある受容体と結合したあとの、細胞内へ情報が伝わる仕組みは、カルシウムイオンCa を用いて情報伝達をしたり、あるいはcAMP(サイクリックアデノシン一リン酸、サイクリックAMP)や Gタンパク質 が、情報伝達に用いられる。cAMPやGタンパク質は酵素などに作用する。なおcAMPはATPをもtにして酵素反応によって作られる。(※ これらの話題は高校教科書の範囲内) これらカルシウムイオンやcAMPやGタンパク質のような、このような細胞内の情報伝達物質をセカンドメッセンジャー(second messenger)という。 (※ 高校教科書の範囲内) ペプチドホルモンから細胞への情報伝達においても、カルシウムイオンやcAMPやGタンパク質がセカンドメッセンジャ-として機能する。 いっぽう、脂質やアミノ酸を主成分とするホルモンの場合は、細胞膜を透過することができる。なぜなら、これらのホルモンは脂溶性であり、そしてホルモンが脂溶性ならば、リン脂質を主成分とする細胞二重膜を透過できるからである。このような細胞膜を透過するホルモンに結合するための受容体は、細胞内にある。 脂質でできたホルモンには、脂質の一種であるステロイド(steroid)で出来ているホルモンも多い。私たちヒトの脂質のコレステロールも、ステロイドの一種である。ステロイドでできたホルモンをステロイドホルモン(steroid hormone)という。糖質コルチコイドや鉱質コルチコイドは、ステロイドホルモンである。ステロイドホルモンは、脂質に溶けやすく、そのため細胞膜を透過しやすい。(※ 高校教科書の範囲内) つまり糖質コルチコイドや鉱質コルチコイドは、脂質に溶けやすく、細胞膜を透過しやすい。 例外もあり、脂質を主成分としながらも細胞膜に受容体を持つホルモンも発見されている。(※ 高校の範囲外) 胃酸などを含んだ酸性の消化物が十二指腸に入ると、十二指腸からセクレチン(secretin)が分泌される。 当初、これは神経の働きだと考えられていた。 しかし1902年にベイリスとスターリングは、神経を切断した十二指腸に塩酸を注入すると、すい液が分泌される事を発見した。 さらに、体外に取り出した十二指腸の粘膜に塩酸を掛けてしぼった液を、すい臓(pancress)への血管に注射しても、すい液が分泌された。 これらの実験結果によって、十二指腸で作られた物質が血管を通してすい臓へ送られて、すい液の分泌を即していることが分かった。すい液の分泌を促進する物質は、セクレチンと名づけられた。 ホルモン分泌で中心的な役割をしている器官は、間脳にある視床下部(ししょうかぶ、hypothalamus)と、視床下部の下にある脳下垂体である。 脳下垂体には前葉と後葉がある。 間脳の視床下部には、ホルモンを分泌する神経細胞があり、これを神経分泌細胞(しんけい ぶんぴつ さいぼう、neurosecretory cell)という。また、このように神経がホルモンを分泌することを神経分泌(しんけい ぶんぴ)という。この間脳の神経分泌細胞により、脳下垂体の血管中にホルモンが分泌される。この神経分泌のホルモンは、脳下垂体のホルモンを調節するための放出ホルモン(releasing hormone)または放出抑制ホルモン(inhibiting hormone)である。 視床下部から伸びている神経分泌細胞が、脳下垂体に作用して、脳下垂体のホルモン分泌を調節している。 脳下垂体の前葉と後葉とで、分泌される血管の位置が違う。 脳下垂体前葉では、視床下部にある血管に分泌し、その血管が前葉まで続いて脳下垂体に作用している。前葉からは成長ホルモン(growth hormone)などが分泌される。 いっぽう、脳下垂体後葉では、視床下部からつながる神経伝達細胞が後葉まで続いており、後葉中の血管に、神経伝達細胞が直接、ホルモンを分泌している。 後葉からは、水分調節に関わるバソプレシンというホルモンが分泌され、バソプレシンによって腎臓での集合管における水の再吸収などが促進される。 のどの近くにある甲状腺(こうじょうせん、thyroid gland)からはチロキシン(thyroxine)が分泌される。 チロキシンは代謝を活性化するホルモンであり、酸素の消費やグルコースの消費が、活発になる。 視床下部は、チロキシンの濃度を、つぎのような仕組みで調節している。 チロキシンによって、視床下部や脳下垂体による甲状腺刺激が抑制されるという仕組みである。 視床下部や脳下垂体は、チロキシンが多くなりすぎないように、チロキシンによってホルモンを抑制する。チロキシンによって視床下部は甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンを抑制する。また、チロキシンによって、脳下垂体は甲状腺刺激ホルモンを抑制する。こうして、チロキシン自身が最終的に、甲状腺からのチロキシン分泌を抑制するように働きかける。 逆にチロキシンが少なくなると、視床下部や脳下垂体が、甲状腺刺激ホルモンを通して甲状腺にチロキシンを増やすように働きかける。 チロキシンを受け取った細胞では代謝が活発になる。 このように、最終産物(この場合はチロキシン)が、前の段階(この場合は視床下部や脳下垂体)に働きかけることをフィードバック(feedback)という。 フィードバックは生物学に限らず、多くの分野で見られる現象だが、とりあえず生物学を例に説明する。 フィードッバックが前の段階を抑制する場合、負のフィードバック(negative feedback)という。ふつう、ホルモンは負のフィードバックによって、濃度などが一定の範囲内に近づくように調節されている。 腎臓での水の再吸収に関わるバソプレシンも、負のフィードバックによって一定に保たれる。この結果、バソプレシンが人体の水分調節のためのホルモンとして働くことになる。 いっぽう、フィードバックによって、前の段階が促進される場合を正のフィードバックという。電子機械などで見られる現象で、たとえば音声マイクとスピーカーのハウリング現象(マイクをスピーカーに近づけたときの、うるさい現象。※ うるさいので実験しないように。)などが、正のフィードバックにあたる。 ハウリングの起きる仕組みは、マイクから入力された音が、スピーカーから出て、そのスピーカーから出た音をマイクがひろってしまうので、さらにスピーカーから音が出るので、音が大きくなり、その大きくなった音をふたたびマイクがひろってしまうので、さらにスピ-カーから、もっと大きな音が出てしまい、そしてさらに・・・という、とてもうるさい現象である。 心臓の拍動は延髄と自律神経によって調節されている。 運動などによって酸素が消費され、二酸化炭素濃度が高くなると、 延髄は交感神経を働かせ、 交感神経の末端からノルアドレナリン(noradrenaline)が放出され、 心臓の拍動数が増加する。 逆に安静時に酸素の消費量が減り、二酸化炭素濃度が低くなると、 延髄は副交感神経を働かせ、 副交感神経の末端からアセチルコリン(acetylcholine)が放出され、 心臓の拍動数が減少する。 心臓の拍動の調節の実験には、 オットー・レーヴィのカエルの心臓を用いた実験がある。 レーヴィは2つのカエルの心臓を取り出してつなぎ、リンガー液を循環させる装置を作った。 片方の心臓からのびる迷走神経(副交感神経)を刺激すると、その心臓の拍動数が減少し、 しばらくして、もう片方の心臓の拍動数も減少した。 これにより、迷走神経のシナプスから化学物質が分泌され、 心臓の拍動数を制御していることが明らかとなった。 その化学物質は、今日ではアセチルコリンであることが分かっている。 魚類の浸透圧の調節は、えら・腸・腎臓などで行われ、 淡水魚と海水魚の場合でその働きは異なっている。 淡水魚の場合、水分が体内に侵入するため、 えらや腸で無機塩類を吸収し、 腎臓で体液より低張の尿を大量に排出する。 海水魚の場合、水分が体外に出るため、 海水を大量に呑み込み腸で吸収し、 腎臓で体液と等張の尿を少量排出する。 また、えらから無機塩類を排出する。 哺乳類の浸透圧の調節は、腎臓で行われる。 また、腎臓の働きは、間脳視床下部・脳下垂体後葉や副腎皮質(ふくじんひしつ、adrenal medulla)によって調節されている。 水分の摂取などで、低浸透圧になった場合、副腎皮質が働く。 副腎皮質からは鉱質コルチコイド(mineral corticoid)が分泌される。 鉱質コルチコイドは腎臓の細尿管から無機塩類の再吸収を促進する働きがある。 水分の不足などで、高浸透圧になった場合、 間脳視床下部、脳下垂体後葉が働く。 脳下垂体後葉からはバソプレシン(vasopressin)が分泌される。 バソプレシンは腎臓の細尿管から水分の再吸収を促進する働きがある。 血液中に含まれるグルコースを血糖(けっとう、blood glucose)という。 健康なヒトの場合の血糖の含有量は一定の範囲に保たれ、空腹時で血液100mLあたり、ほぼ100mgという濃度である。 このような血統の値を血糖値(けっとうち)という。または血糖量という、または血糖濃度という。 グルコースは細胞の活動に必要な糖である。 血糖値が低すぎたり高すぎたりすると様々な症状を引き起こすため、 ホルモンと自律神経によって一定に保たれている。 食事などで炭水化物や糖質を取ると、一時的に血糖値が上昇する。逆に、急激な運動の後などでは下がっている。 血糖値が60mg以下(血液100mLあたり)だと、意識喪失や けいれん などが起き、危険である。運動などによって低血糖になると、間脳の視床下部が働く。 さて、血糖の調節に関わる器官は、すい臓および視床下部である。 視床下部は、交感神経によって、すい臓と副腎髄質を働かせる。 グリコーゲンが、つぎの仕組みで分解されることで、グリコーゲンからグルコースが取り出され、グルコース濃度を上げる仕組みである。 すい臓のランゲルハンス島のA細胞からはグルカゴン(glucagon)が分泌され、 副腎髄質(ふくじんひしつ、adrenal medulla)からはアドレナリン(adrenaline)が分泌される。 グルカゴンやアドレナリンは、グリコーゲンをグルコースへ分解させる働きがある。 また、視床下部は放出ホルモンで脳下垂体前葉を働かせ、脳下垂体前葉は副腎皮質刺激ホルモンで副腎皮質を働かせ、副腎皮質からアドレナリンが分泌される。 また、副腎皮質が分泌する糖質コルチコイド(glucocorticoid)が、タンパク質を分解させて、その分解された元タンパク質を材料としてグルコースを合成させる。糖質コルチコイドは、タンパク質をグルコースへ分解させる働きがある。 アドレナリンやグルカゴンが、肝臓や筋肉に働きかけ、貯蔵されているグリコーゲンの分解を促進する。(肝臓や筋肉にはグリコーゲンが蓄えられている。) これらの反応の結果、血糖値が上昇する。 食事などによって高血糖になると、すい臓のランゲルハンス島のB細胞が、血糖値の上昇を感知し、B細胞がインスリン(insulin )を分泌する。 インスリンは、グルコースをグリコーゲンへ合成させたり、 グルコースを細胞へ吸収・分解させたりする働きがある。 このインスリンが、細胞でのグルコースを用いた呼吸を促進したり、肝臓でのグリコーゲンの合成を促進するので、結果的にグルコースの消費が促進されるので、グルコースの濃度が下がり、グルコース濃度が通常の濃度に近づくという仕組みである。 また、間脳の視床下部でも血糖値の上昇は感知され、副交感神経の刺激を通じて、すい臓にインスリンの分泌をうながし、すい臓のランゲルハンス島B細胞がインスリンを分泌する。 いっぽう、病気により血糖値が常に200mgを越えると、糖尿病(とうにょうびょう、diabetes )という病気だと判断される。 (※ 高校理科の範囲内) 糖尿病とは、すい臓からのインスリン分泌が、うまくは分泌されなくなってしまった病気である。インスリンが細胞と結合すると、グルコースを消費させる。しかし、インスリン分泌がうまくいかないと、この消費がなくなってしまい、その結果、グルコースが余る。 その結果、原尿にグルコースが高濃度で含まれるので細尿管でのグルコース吸収が間に合わず、尿中に高濃度のグルコースが含まれて排出される。 (もし健康なヒトなら、原尿のグルコースは、ほぼ100%再吸収されてるので、尿中には高濃度のグルコースは排出されない。なのに高濃度のグルコースを含む尿が排出されるという事は、つまり病気に掛かっている事になる。) 高血糖が長く続くと、欠陥が変性して血流が低下してしまい、その結果、眼や腎臓などの、さまざまな器官で障害を起こす。糖尿病には、このような各器官での合併症があるため、危険な病気である。 糖尿病の分類は、大きくは二つの種類に分けられる。 まず、インスリンを分泌する細胞そのものが破壊されていて分泌できない場合のI型糖尿病がある。若くして発症することが多い。 もう一つは、I型とは別のなんらかの原因で、インスリンの分泌量が低下したり、インスリンに細胞が反応しなくなる場合であり、これをII型糖尿病という。肥満や喫煙・運動不足などの生活習慣病などによる糖尿病で、II型糖尿病が多く見られている。 日本の糖尿病患者の多くはII型である。 糖尿病の治療には、I型・II型とも、インスリンの投与が行われる。患者は、食後などに毎回、自分でインスリンを注射しなければならない。 II型の生活習慣が原因と考えられる場合、食事の見直しや、適度な運動なども、治療に必要になる。 糖尿病の症状として頻尿(ひんにょう)がある。(※ 高校の範囲内) この原因は、原尿の浸透圧が血糖によって上昇したことにより、細尿管での水分の再吸収が減るためだと考えられてる。(※ 高校の範囲外) また、頻尿などにより水分が低下するので、のどの渇きが起きる。 血糖値をあげるホルモンの種類は多く仕組みも複雑である。なのに、血糖値を下げるホルモンはインスリンのみしか今のところ知られておらず、また仕組みも単純である。この事から、動物は、飢餓に適応して、血糖値の調節の機構を進化させてきたと考えられている。飽食の時代よりも、飢餓の時代のほうが、圧倒的に多かったのだろうと考えられている。 変温動物は、体温調節が不完全で、体温は外部環境によって変化する。 一方、恒温動物では、体温は、外部環境によらず、一定に保たれている。ヒトの場合、健康なら、体温は約37°Cに保たれる。 体温の調節は、ホルモンや自律神経が行っている。体温調節の中枢のある場所は、間脳の視床下部にある。 寒さによって体温が低下すると、間脳の視床下部が働く。 視床下部は、交感神経やホルモンによって、肝臓や筋肉の代謝を促進し、発熱量を増加させる。 また、交感神経によって皮膚の血管や立毛筋を縮小させ、熱放散を減少させる。また、骨格筋をふるわせることで、熱を産生する。 また、チロキシンやアドレナリンなどが分泌され、肝臓での物質の分解を促進して熱を産生する。 暑さによって体温が上昇すると、間脳の視床下部が働く。 視床下部は、交感神経によって、 皮膚血管を拡張し、汗腺から発汗させ、熱放散を増加させる。 また、副交感神経によって、肝臓での物質の分解が抑制され、熱の産生を抑える。 ヒトの 「のどぼとけ」 の、すぐ下には、甲状腺という器官がある。この甲状腺は、甲状腺ホルモンというホルモンを分泌している器官である。ホルモンとは、体内のいろいろな働きを調節するための分泌物(ぶんぴぶつ)である。くわしくは、中学の保健体育で習うか、または高校生物で習う。 さて、甲状腺ホルモンの主成分はヨウ素である。ヨウ素は、ワカメやコンブなどの海ソウに多く含まれている。 さて、通常のヨウ素には放射能(ほうしゃのう)が無く、安全である。だが、原子力発電などの原子核分裂では、放射性のある様々な原子が作られる。その中に放射性のある特別なヨウ素も作られる場合がある。 原子力発電などの事故などへの対策として、原子力発電所などの近隣地区に ヨウ素剤(ようそ ざい) が配布される理由は、この放射能のある特別なヨウ素が甲状腺に集まらないようにするためである。 体内に吸収されたヨウ素は、甲状腺に集まる性質がある。なので、あらかじめ、普通のヨウ素を摂取しておけば、放射性のある特別なヨウ素を吸収しづらくなるのである。もしくは、仮に吸収してしまっても、通常のヨウ素によって、放射性のあるヨウ素が、うすめられる。 なお、甲状腺ホルモンの働きは、体内での、さまざまな化学反応を促進(そくしん)する働きがある。 科学系に強い文庫である講談社ブルーブックス文庫の『元素118の新知識』によれば、引用「プルトニウムは放射性物質として危険であるだけではなく、化学的にもきわめて毒性が強い元素として知られている。」 中略 引用「経口摂取や吸入摂取により体内に取り込まれ、長く体内に留まる場合には、その放射性および化学的反応性によって発がん性に結びつく。」 である。 経口摂取の無毒性デマを真っ向から講談社ブルーバックスは否定している。 ほかにも、出典が見つからなかったので紹介しないが、放射線医学の専門書などを見ても、プロトニウムの放射性毒性ではなく化学毒性の可能性については、昔からよく学問的にも言われていることである。(※ この段落のwiki著者の地元の図書館に昔は放射線医学の専門書が置いてあったが2022年に図書館の本棚を調べたら文献が消失していた(※ 一般に公立図書館では古い書籍は廃棄処分などをされてしまうので))
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "生物は外界の環境の変化によらず体内の環境を一定に保つ恒常性と呼ばれる働きを持っている。 また、動物は刺激に対して反応することができる。 このページでは、動物の恒常性、様々な刺激の受容と反応、神経系の構造と働き、動物の様々な行動、などを扱う。", "title": "導入" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "生物が、外部環境(external milieu)が変化しても、その内部環境(ないぶかんきょう、internal milieu)(別名:体内環境)を一定に保とうとする働きを恒常性(こうじょうせい、homeostasis)(ホメオスタシス)という。 ヒトの体温が平常では37°C付近なのもホメオスタシスの一例である。恒常性には、温度、浸透圧、養分、酸素などを一定に保とうとする働きがある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "生物が体温を一定に保つ理由は、酵素の働きが温度によって異なるからである。 酵素は温度が約40°Cのとき最もよく働き、低すぎると働きが鈍くなり、高すぎると酵素が破壊され全く働かなくなる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "体温を一定に保つために、暑いときは熱を逃がし、寒いときは熱を逃がさないようにしたり筋肉を震わせて熱を作ったりしている。 脳の間脳と呼ばれる部分が無意識に体温調節をしている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "多細胞の動物の内部環境では、細胞は血液や組織液などの体液(body fluid)で満たされている。 体液には、血管を流れる血液(blood)、細胞間を満たす組織液(interstitial fluid)、リンパ管を流れるリンパ液(lymph)がある。ヒトの成人の場合、体重の約60%は水分である。 血液の成分には、液体成分である血しょう(けっしょう, plasma、血漿)と、有形成分である赤血球(erythrocyte)・白血球(leucocyte)・血小板(platelet)の血球(blood cell)がある。 血球には、酸素を運ぶ赤血球(erythrocyte)、体内に侵入した細菌・異物を排除する白血球(leucocyte)、血液を凝固させ止血する血小板(platelet)がある。有形成分が作られる場所は、ヒトの成人の場合、骨の内部にある骨髄(こつずい、bone marrow)で作られる。 血液が全身の細胞へ酸素や栄養分を送ることで、 細胞は活動することができる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "血液の重さの約55%は血しょうの重さである。血しょうの主成分は水(約90%)であり、それに少量のタンパク質(約7%)やグルコース・タンパク質・脂質・無機塩類などが混ざっている。血しょうのタンパク質は、アルブミン(albumin)やグロブリン(globulin)などのタンパク質である。 組織液は、血しょうが毛細血管(もうさいけっかん、capillary)から染み出たものである。組織液の大部分は再び血管にもどる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "赤血球の形は、直径が約8μmの円盤状であり、中央がくぼんでいる。赤血球には核が無い。ヒトの成人の場合、血液1mmあたりの個数は、男子は500万個/mm、女子は450万個/mm。ヒトの赤血球の寿命は約120日である。古くなった赤血球は肝臓や ひ臓 で壊される。骨髄で赤血球は作られる。 赤血球にはヘモグロビン(hemoglobin)(化学式:Hb と表記)という赤い色素タンパク質が多量に含まれている。このへモグロビンが肺で酸素O2と結合して酸素を運搬する役目を持ち、全身に酸素を運んでいる。ヘモグロビンは鉄(Fe)をふくんでいる。 ヘモグロビンは、酸素濃度が高いと、酸素と結合して酸素ヘモグロビン(HbO2)となる。 また、酸素濃度が低いと、酸素と分離しヘモグロビンに戻る。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "このようにして、酸素濃度の高い肺で酸素を受け取り、 酸素濃度の低い組織へ酸素を運ぶ。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "植物では、(そもそも植物に赤血球はないし、)植物はヘモグロビンを持ってない。(※ 検定教科書には無いが、センター試験にこういう選択肢が出る。2017年の生物基礎の本試験。)", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 10, "tag": "p", "text": "", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 11, "tag": "p", "text": "イカなど、いくつかの動物では、銅 Cu をふくむタンパク質のヘモシアニン (Hemocyanin)が血液を介して酸素を運ぶ役目をしている動物もいる。ヘモシアニンをふくむ動物の血液は青い。この青色は銅イオンの色である。イカの青い筋は、このヘモシアニンの色である。(※ 参考文献: 文英堂『理解しやすい生物I・II』、2004年版、205ページ) ヘモシアニンをふくむ動物には、イカ・タコや貝などの軟体動物、エビ・カニなどの甲殻類に見られる。これらの動物(イカ、タコ、エビ、カニ)は、血しょう中にヘモシアニンを含んでいる。 人間の血液は、ヘモシアニンをふくまない。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 12, "tag": "p", "text": "酸素ヘモグロビンを多くふくみ酸素濃度の高い血液を動脈血(arterial blood)と呼ぶ。 ヘモグロビンを多くふくみ酸素濃度の低い血液を静脈血(venous blood)と呼ぶ。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 13, "tag": "p", "text": "白血球はヘモグロビンを持たない。白血球は核を持つ。リンパ球やマクロファージは白血球である。体内に侵入した細菌・異物を排除することに白血球は関わる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 14, "tag": "p", "text": "血しょうの一部は組織へしみだして組織液になり、栄養分を供給し老廃物を受け取る。 組織液の大部分は血管へ戻り血液となり、一部はリンパ管へ入りリンパ液となる。 リンパ液はリンパ管を通り、鎖骨下静脈で血液と合流する。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 15, "tag": "p", "text": "血小板は血液の凝固に関わる。血小板は2μm~5μmほどであり、核を持たない。 血管などが傷つくと、まず傷口に血小板が集まる。そして繊維状のタンパク質であるフィブリンがいくつも生成し、フィブリンどうしと赤血球などの血球とが絡んで血ぺい(けっぺい)ができる。血ぺいが傷口をふさぐ。このような一連の反応を血液凝固反応という。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 16, "tag": "p", "text": "採血した血液を放置した場合でも、血ぺいが生じて、血ぺいが沈殿する。このときの上澄み液を血清(けっせい、serum)という。血清の色は、やや黄色がかっている。なお、注射した血清は数日すると抗体が無くなってしまい(※ チャート式生物)、また免疫記憶も生じないので(※ 東京書籍の生物基礎の教科書)、予防には役立たない。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 17, "tag": "p", "text": "傷口からトロンボプラスチンが出る。これが他の凝固因子や血しょう中のカルシウムイオンCaとともに、プロトロンビンというタンパク質に作用して、プロトロンビンがトロンビンという酵素になる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 18, "tag": "p", "text": "トロンビンは、血しょうに溶けているフィブリノーゲンに作用して、フィブリノーゲンを繊維状のフィブリンに変える。このフィブリンが血球を絡めて血ぺい(けっぺい)をつくる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 19, "tag": "p", "text": "血友病(けつゆうびょう)という出血しても止血が始まらない病気は、血液凝固に何らかの不具合があってフィブリンをつくれなくて起きる病気である。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 20, "tag": "p", "text": "血液は、心臓(heart)によって全身へ送られる。 ヒトの心臓は、右心房(right atrium)、右心室(right ventricle)、左心房(Left atrium)、左心室(Left ventricle)の4部分に分かれていて、2心房2心室である。ほ乳類の心臓は2心房2心室である。 心筋(cardiac muscle)という筋肉でできている。 弁によって血液の逆流を防いでいる。心臓のリズムは、右心房の上部にある洞房結節(どうぼうけっせつ)という特殊な筋肉の出す電気刺激によって作られる。 全身から送られた血液は、大静脈(vena cava)をとおり、右心房・右心室をとおり、肺動脈(pulmonary artery)をとおり肺へと送られる。 肺で酸素を受け取った血液は、肺静脈(pulmonary vein)をとおり、左心房・左心室をとおり、大動脈(aorta)をとおり全身へ送られる。 肺動脈・肺・肺静脈を通る血液の流れを肺循環(pulmonary circulation)と呼び、 大動脈・全身・大静脈を通る血液の流れを体循環(Systemic circulation)と呼ぶ。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 21, "tag": "p", "text": "バッタなど昆虫やエビなど無脊椎動物(invertebrate)の血管系は、毛細血管をもたない開放血管系(かいほうけっかんけい、open blood-vascular system)である。いっぽう、魚類(pisces)・ほ乳類(mammalia)など脊椎動物(vertebrate)は毛細血管(capillary)をもち、閉鎖血管系(へいさけっかんけい、closed blood-vascular system)である。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 22, "tag": "p", "text": "人体各部の組織液の一部は毛細血管に戻らず、毛細リンパ管に入り、リンパ管で合流して、リンパ液になる。リンパ管は流れ着く先は、最終的には、静脈に合流する。リンパ管には逆流を防ぐための弁が、ところどころにある。リンパ管のところどころに、球状にふくらんだリンパ節がある。 リンパ液にふくまれるリンパ球(lymphocyte)は白血球の一種であり、マクロファージとともにリンパ球は異物を攻撃して、細菌などを排除する。 リンパ球はリンパ節で増殖する。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 23, "tag": "p", "text": "外部環境から生体を守るために、異物の侵入を阻止したり、侵入した異物を白血球などが除去したりする仕組みを生体防御(せいたいぼうぎょ)と呼ぶ。 生体防御には、免疫、血液凝固、炎症などがある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 24, "tag": "p", "text": "私たち生物の体は栄養豊富なので、もし生体防御の仕組みが無いと、あっという間に病原菌などが繁殖し、私たちは死んでしまう。そうならないのは、生体防御の仕組みが私たちを守っているからである。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 25, "tag": "p", "text": "生体が異物を非自己と認識して、その異物を排除する仕組みを免疫(めんえき、immunity)と呼ぶ。 免疫は、病原体や毒素を排除する働きを持つ。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 26, "tag": "p", "text": "免疫には、白血球の食作用などの先天的に生まれつき備わっている自然免疫(innate immunity)と、いっぽう、リンパ球などが抗原抗体反応によって異物の情報を記憶して排除するという後天的に獲得される獲得免疫(acquired immunity)がある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 27, "tag": "p", "text": "自然免疫は、好中球(neutrophil)、マクロファージ(単球)、樹状細胞(dendritic cell)、リンパ球といった白血球(leukocyte)が、病原体などの異物を食べる現象である食作用(Phagocytosis)で行われる。食べられた異物は、分解されて排除される。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 28, "tag": "p", "text": "好中球は自然免疫で、異物を食べて、除去する。攻撃した相手とともに死んでしまう細胞である。そのため寿命は短い。 ケガをしたときに傷口にできる膿は、好中球が死んだものである。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 29, "tag": "p", "text": "自然免疫で異物を食べる。あとで説明する獲得免疫に、異物の情報をつたえる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 30, "tag": "p", "text": "近年、マクロファージや好中球などは、ある程度は異物の種類を認識している事が分かった。マクロファージや好中球や好中球などの細胞膜表面にはトル様受容体(TLR)という受容体がある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 31, "tag": "p", "text": "トル様受容体には、いくつかの種類があり、反応できる異物の種類が、トル受容体の種類ごとに、ある程度、(反応できる異物の種類が)限られている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 32, "tag": "p", "text": "あるトル様受容体(TLR9)は、ウイルスのDNAやRNAを認識する。また他のあるトル様受容体(TLR2)は、細胞膜や細胞壁の成分を認識する。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 33, "tag": "p", "text": "(※ 読者への注意: TLR9などの具体的な番号は覚えなくてよい。wikibooks編集者が査読しやすいように補記してあるだけである。)", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 34, "tag": "p", "text": "べん毛タンパク質を認識するトル様受容体(TLR5)もある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 35, "tag": "p", "text": "", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 36, "tag": "p", "text": "", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 37, "tag": "p", "text": "出血したときは、血小板などの働きによってフィブリン(fibrin)と呼ばれる繊維状のタンパク質が合成され、 フィブリンが血球と絡み合って血餅(けっぺい, clot)となり止血する。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 38, "tag": "p", "text": "生体が傷ついたときにおこる、赤く腫れる(はれる)症状を炎症(えんしょう、inflammation)と呼ぶ。炎症は自然免疫の一つであり、白血球が異物を除去している。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 39, "tag": "p", "text": "まず、赤く腫れる原因は、ヒスタミン(histamine)やプロスタグランジン(prostaglandin、略称:PG)といった警報物質による。(※プロスタグランジンは高校範囲内。数研出版『生物基礎』平成26年発行、P.128 で記述を確認。) なお、プロスタグランジンは脂肪酸から作られる生理活性物質の一つであり、その動物の体の組織・器官などに作用を及ぼす。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 40, "tag": "p", "text": "ヒスタミンやプロスタグランジンなど、これらの警報物質によって、血管が拡張するので、肌が赤く見えるようになる。また警報物質により、毛細血管の透過性が高くなり、水分が血管外に出るので腫れる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 41, "tag": "p", "text": "血管から組織にしみでた血液とともに、血液中の白血球もしみでる。そして、しみでた白血球が異物を認識して除去することで、自然免疫が働く。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 42, "tag": "p", "text": "炎症の症状としては、発熱・発赤・はれ・痛みなどがある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 43, "tag": "p", "text": "炎症の際、神経がプロスタグランジンなどによって刺激されるので、痛みが生じる。この痛みによって、私たちは体の異常を感知できる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 44, "tag": "p", "text": "また、炎症によって体温が上がるので、雑菌の繁殖が抑えられ、さらに白血球などが活性化する。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 45, "tag": "p", "text": "鎮痛剤の「アスピリン」(主成分:アセチルサリチル酸。「アスピリン」は商品名)という医薬品は、このプロスタグランジンの合成を阻害することで、鎮痛作用を及ぼすという仕組みであることが、すでに分かっている。プロスタグランジンを合成する酵素のシクロオキシゲナーゼ(略称:COX)の働きを、アスピリンが阻害することで、プロスタグランジンの合成が阻害されるという仕組みである。そして、プロスタグランジンには、いくつもの種類があるので、種類によっては、痛みの機能以外にも、胃液の分泌調整や、睡眠の調整などの様々な機能を持っている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 46, "tag": "p", "text": "なので、プロスタグランジンの阻害をする薬では、胃液の分泌異常などの副作用が起きる場合がある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 47, "tag": "p", "text": "", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 48, "tag": "p", "text": "だ液(saliva)は弱酸性、胃液は強酸性などのように、外界と接する体液は、中性ではない体液によって、雑菌の繁殖を防いでいる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 49, "tag": "p", "text": "獲得免疫には、後述する「体液性免疫」(たいえきせい めんえき、humoral immunity)がある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 50, "tag": "p", "text": "なお「細胞性免疫」(さいぼうせい めんえき、cell-mediated immunity)とは、キラーT細胞によって生じる免疫のこと。キラーT細胞は、トリからファブリキウス嚢を除去しても働くので、細胞性免疫を獲得免疫に含めるかどうか微妙であるが、とりあえず冒頭では言及だけしておく。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 51, "tag": "p", "text": "", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 52, "tag": "p", "text": "免疫グロブリンは、血液などの体液中に含まれている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 53, "tag": "p", "text": "体液性免疫は、リンパ球の一部であるB細胞が、免疫グロブリンといわれる抗体(こうたい、antibody)を作り行う。抗体は免疫グロブリン(immunoglobulin、Igと略記)というタンパク質で構成されている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 54, "tag": "p", "text": "いっぽう、病原体などの異物に対して抗体が作られた時、その異物を抗原(こうげん、antigen)と呼ぶ。 抗原と抗体が反応することを抗原抗体反応(antigen-antibody reaction)と呼ぶ。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 55, "tag": "p", "text": "病原体などの抗原は、抗体と結合することで、毒性が低下し、また凝集するので、白血球による食作用を受けやすくなる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 56, "tag": "p", "text": "免疫グロブリンによる免疫は、体液中の抗体による免疫なので、体液性免疫という。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 57, "tag": "p", "text": "免疫グロブリンはY字型をしたタンパク質である。 免疫グロブリンの構造は、H鎖とL鎖といわれる2種類のポリペプチドが2個ずつ結合した構造になっている。図のように、免疫グロブリンは、合計4本のポリペプチドから構成されている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 58, "tag": "p", "text": "H鎖とL鎖の先端部には可変部(かへんぶ、variable region)という抗体ごとに(免疫グロブリンの可変部の)アミノ酸配列の変わる部分があり、この部分(可変部)が特定の抗原と結合する。そして免疫グロブリンの可変部が抗原と結合することにより、免疫機能は抗原を認識して、一連の免疫反応をする。可変部の配列によって、認識する抗原の構造が異なる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 59, "tag": "p", "text": "1種類の抗原に対応する抗体は1種類だけであるが、しかし上述のように可変部が変わりうるので、多種多様な抗原に対応できる仕組みになっている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 60, "tag": "p", "text": "免疫グロブリンの構造において、可変部以外のほかの部分は定常部(ていじょうぶ、constant region)という。 また、H鎖同士、H鎖とL鎖はジスルフィド(S-S)結合でつながっている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 61, "tag": "p", "text": "", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 62, "tag": "p", "text": "そもそも免疫グロブリンはB細胞で産生される。免疫グロブリンの可変部の遺伝子も、そもそもB細胞の遺伝子が断片的に選択されて組み合わせされたものである。このような遺伝子配列の組み合わせによって、配列のパターンが膨大に増えて何百万とおりにもなるので、このような仕組みによって多種多様な病原体(抗原)に対応している。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 63, "tag": "p", "text": "より細かく言うと、下記のような順序で、産生される。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 64, "tag": "p", "text": "樹状細胞などの食作用によって分解された断片が、抗原として提示される(抗原提示)。 そして、その抗原が、ヘルパーT細胞(ヘルパーティーさいぼう、helper T cell)によって認識される。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 65, "tag": "p", "text": "抗原を認識したヘルパーT細胞は活性化し、B細胞(ビーさいぼう)の増殖を促進する。 増殖したB細胞が、抗体産生細胞(こうたい さんせいさいぼう)へと分化する。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 66, "tag": "p", "text": "そして抗体産生細胞が、抗体として免疫グロブリンを産生する。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 67, "tag": "p", "text": "この抗体が、抗原と特異的に結合する(抗原抗体反応)。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 68, "tag": "p", "text": "抗原抗体反応によって、抗体と結合された抗原は毒性が弱まり、またマクロファージによって認識されやすくなり、マクロファージの食作用によって抗原が分解されるようになる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 69, "tag": "p", "text": "ヒトの遺伝子は数万種類であるといわれているが(※ 参考文献: 東京書籍の教科書、平成24検定版)、しかし抗体の種類はそれを膨大に上回り、抗体は数百万種類ていどにも対応する。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 70, "tag": "p", "text": "その仕組みは、B細胞の遺伝子から、選択的に抗体の遺伝子が選ばれるという仕組みになっている。この辺の抗体の種類の計算の仕組みは、1970年代ごろに日本人の生物学者の利根川進などによって研究されており、1987年には利根川進(とねがわ すすむ)はこの業績でノーベル医学・生理学賞を受賞した。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 71, "tag": "p", "text": "", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 72, "tag": "p", "text": "", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 73, "tag": "p", "text": "輸血は、血液型が同じ型どうしで輸血するの通常である。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 74, "tag": "p", "text": "赤血球表面に、抗原にあたる凝集原(ぎょうしゅうげん)AまたはBがある。なお、凝集原の正体は糖鎖である。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 75, "tag": "p", "text": "血清中に、抗体にあたる凝集素のαまたはβがある。この抗体は、病気の有無に関わらず、生まれつき持っている抗体である。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 76, "tag": "p", "text": "凝集原と凝集素との組み合わせによって、4つの型に分類される。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 77, "tag": "p", "text": "Aとαが共存すると凝集する。 Bとβが共存すると凝集する。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 78, "tag": "p", "text": "たとえばA型の血をB型のヒトに輸血すると、赤血球が凝集してしまうので、輸血するのは危険である。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 79, "tag": "p", "text": "A型の糖鎖は、H型糖鎖という糖鎖の末端にNアセチルガラクトースアミン(GalNa)が結合している。 B型は、H型糖鎖という糖鎖の末端にガラクトース(Gal)が結合している。 AB型は、この両方の糖鎖が細胞膜にある。O型の糖鎖はH型糖鎖そのものだけである。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 80, "tag": "p", "text": "トリからファブリキウス嚢を除去してもウイルス感染しない。このため、抗体とは別にウイルスを除去する機構がある事が分かっている", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 81, "tag": "p", "text": "そのような抗体とは別のウイルス除去機構の一つとして、キラーT細胞というものがある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 82, "tag": "p", "text": "ともかく細胞性免疫について、下記のキラーというものがある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 83, "tag": "p", "text": "抗原提示されたヘルパーT細胞は、キラーT細胞(killer T cell)とよばれるT細胞を増殖させる。 キラーT細胞は、ウイルスに感染された自己の細胞を攻撃するが、移植細胞や がん細胞 も攻撃することもある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 84, "tag": "p", "text": "細胞性免疫は、キラーT細胞が、抗原を直接攻撃して行う。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 85, "tag": "p", "text": "臓器移植や皮膚移植などで別の個体の臓器や皮膚などを移植すると、たとえ同種の個体からの移植でも、普通、定着しないで脱落する。これを拒絶反応という。これは細胞性免疫によって異物として移植臓器が認識され、キラーT細胞によって攻撃されたためである。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 86, "tag": "p", "text": "細胞膜の表面には、MHC(主要組織適合性複合体、Major Histocompatibility Complex)というタンパク質がある。臓器移植で拒絶反応が起きる場合は、MHCが異なる場合であり、キラーT細胞が移植臓器を攻撃しているのである。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 87, "tag": "p", "text": "MHCは個人ごとに異なるので、普通、他人とは一致しない。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 88, "tag": "p", "text": "T細胞は、相手方細胞の表面にあるMHCを認識している。つまりMHCの違いによって、ヘルパーT細胞が自己と非自己を認識する。そしてヘルパーT細胞が非自己の物質が侵入したことを感知して、キラーT細胞を活性化させる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 89, "tag": "p", "text": "なお、ヒトでは、ヒトの白血球の細胞表面にあるヒト白血球型抗原(HLA、Human Leukocyte Antigen)がMHCとして機能する。血縁関係の無い他人どうしで、HLAが一致する確率は、ほとんど無い。同じ親から生まれた兄弟間で、HLAの一致は4分の1の確率である。移植手術の際、これらの免疫を抑制する必要があり、免疫抑制のために、あるカビから精製した「シクロスポリン」(ciclosporin)という名前の薬剤が、よく免疫抑制剤(めんえきよくせいざい)として使われる。(※ シクロスポリンはいちおう、高校の教科書で紹介されている。)", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 90, "tag": "p", "text": "臓器移植など移植手術での拒絶反応が起きる際の理由も、MHC(ヒトの場合はHLA)が異なって、T細胞が移植片を非自己と認識するからである(※ 参考文献: 第一学習社『高等学校生物』、24年検定版、26年発行、58ページ)、と考えられている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 91, "tag": "p", "text": "なおシクロスポリンは、T細胞によるサイトカイン(このサイトカインは細胞性免疫の情報伝達に関わる物質の一種であり、キラーT細胞などの他の免疫細胞を活性化させる役割を持っている)の産生を阻害することにより、細胞性免疫の作用を抑制している。(※ サイトカインは高校の範囲内)", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 92, "tag": "p", "text": "", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 93, "tag": "p", "text": "", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 94, "tag": "p", "text": "結核菌のタンパク質を投与して、結核菌に対しての免疫記憶があるかどうかを検査するのがツベルクリン反応検査である。 結核菌への免疫があれば、炎症が起こり、赤く腫れる。この反応は細胞性免疫であり、ヘルパーT細胞やマクロファージの働きによるものである。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 95, "tag": "p", "text": "ツベルクリン反応をされて、赤く腫れる場合が陽性である。いっぽう、赤く腫れない場合が陰性である。 陰性のヒトは免疫が無いので、結核に感染する可能性があり、そのため免疫を獲得させるために弱毒化した結核菌が投与される。 BCGとは、この弱毒化した結核菌のことである。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 96, "tag": "p", "text": "", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 97, "tag": "p", "text": "免疫細胞では、インターロイキン(interleukin)というタンパク質が、主に情報伝達物質として働いている。インターロイキンには、多くの種類がある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 98, "tag": "p", "text": "インターロイキンのうち、いくつかの種類のものについては、ヘルパーT細胞からインターロイキンが放出されており、免疫に関する情報伝達をしている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 99, "tag": "p", "text": "体液性免疫では、ヘルパーT細胞から(ある種類の)インターロイキンが放出されて、B細胞に情報が伝わっている。こうしてB細胞は抗体産生細胞に変化する。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 100, "tag": "p", "text": "細胞性免疫では、ヘルパーT細胞が(ある種類の)インターロイキンを放出し、キラーT細胞やマクロファージなどに情報が伝わる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 101, "tag": "p", "text": "なお、名前の似ている「インターフェロン」という物質があるが、これはウイルスに感染した細胞から放出され、周囲の未感染細胞にウイルスの増殖を抑える物質を作らせる。(※ チャート式生物(平成26年版)の範囲。)", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 102, "tag": "p", "text": "", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 103, "tag": "p", "text": "マクロファージや樹状細胞も、病原体などを分解して、そのタンパク質断片を(マクロファージや樹状細胞の)細胞表面で抗原提示をして、ヘルパーT細胞を活性化する、・・・と考えられている。(※ 検定教科書では、MHCかどうかは、触れられてない。)", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 104, "tag": "p", "text": "(※ まだ新しい分野でもあり、未解明のことも多く、高校生は、この分野には、あまり深入りしないほうが安全だろう。)", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 105, "tag": "p", "text": "T細胞やB細胞の一部は攻撃に参加せず、記憶細胞として残り、抗原の記憶を維持する。そのため、もし同じ抗原が侵入しても、1回目の免疫反応よりも、すばやく認識でき、すばやくT細胞やB細胞などを増殖・分化できる。 このため、すぐに、より強い、免疫が発揮できる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 106, "tag": "p", "text": "これを免疫記憶(immunological memory)と呼ぶ。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 107, "tag": "p", "text": "一度かかった感染病には、再びは、かかりにくくなる。 これはリンパ球の一部が免疫記憶として病原体の情報を記憶しているためである。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 108, "tag": "p", "text": "免疫記憶は予防接種としても利用されている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 109, "tag": "p", "text": "免疫は、個体が未熟なときから存在する。成熟の課程で、リンパ球(T細胞)は、いったん多くの種類が作られ、あらゆる抗原に対応するので、自己の細胞も抗原と認識してしまうリンパ球もできる。いったん自分自身に免疫が働かないように、しかし、自己と反応したリンパ球は死んでいくので、個体の成熟の課程で、自己を排除しようとする不適切なリンパ球は取り除かれる。そして最終的に、自己とは反応しないリンパ球のみが、生き残る。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 110, "tag": "p", "text": "こうして、成熟の課程で、自己に対しての免疫が抑制される仕組みを免疫寛容(めんえき かんよう)という。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 111, "tag": "p", "text": "免疫寛容について、下記のことが分かっている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 112, "tag": "p", "text": "まず、そもそも、T細胞もB細胞も、おおもとの原料となる細胞は、骨髄でつくられる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 113, "tag": "p", "text": "骨髄で作られた未成熟T細胞は、血流にのって胸腺まで運ばれ、胸腺でT細胞として分化・増殖する。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 114, "tag": "p", "text": "膨大なT細胞が作られる際、いったん、あらゆる抗原に対応できるようにT細胞がつくられるので、作られたT細胞のなかには自己の細胞を抗原として認識してしまうものも存在している。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 115, "tag": "p", "text": "しかし、分化・成熟の過程で、自己を攻撃してしまうT細胞があれば、その(自己を攻撃する)T細胞は胸腺で取り除かれる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 116, "tag": "p", "text": "このようにして、免疫寛容が達成される。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 117, "tag": "p", "text": "", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 118, "tag": "p", "text": "殺しておいた病原体、あるいは無毒化や弱毒化させておいた病原体などをワクチン(英: vaccine)という。このワクチンを、人間に接種すると、もとの病気に対しての抗体と免疫記憶を作らせることができるので、病気の予防になる。こうしてワクチンを接種して病気を予防することを予防接種という。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 119, "tag": "p", "text": "ワクチン療法の元祖は、18世紀なかばの医師ジェンナーによる、牛痘(ぎゅうとう)を利用した、天然痘(てんねんとう)の予防である。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 120, "tag": "p", "text": "天然痘は、死亡率が高く、ある世紀では、ヨーロッパ全土で100年間あたり6000万人もの人が死亡したとも言われている。天然痘はウイルスであることが、現在では知られている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 121, "tag": "p", "text": "牛痘は牛に感染するが、人間にも感染する。人間に感染した場合、天然痘よりも症状は比較的軽い。 当事のヨーロッパで牛痘に感染した人は、天然痘には感染しにくい事が知られており、また牛痘に感染した人は天然痘に感染しても症状が軽い事が知られていた。このような話をジェンナーも聞いたようであり、牛の乳搾りをしていた農夫の女から聞いたらしい。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 122, "tag": "p", "text": "ジェンナーは、牛痘に感染した牛の膿を人間に接種することで、天然痘を予防する方法を開発した。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 123, "tag": "p", "text": "さらに19世紀末にパスツールがワクチンの手法を改良し、天然痘のワクチンを改良するとともに、狂犬病のワクチンなどを開発していった。 狂犬病はウイルスである。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 124, "tag": "p", "text": "現在では、天然痘のDNAおよび牛痘のDNAの解析がされており、天然痘と牛痘とは塩基配列が似ていることが分かっている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 125, "tag": "p", "text": "1980年、世界保健機構(WHO)は、天然痘の根絶宣言を出した。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 126, "tag": "p", "text": "現在ではインフルエンザの予防にもワクチンが用いられている。インフルエンザには多くの型があり、年によって、流行している型がさまざまである。流行している型とは他の型のワクチンを接種しても、効果が無いのが普通である。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 127, "tag": "p", "text": "インフルエンザの感染は、鳥やブタやウマなどにも感染するのであり、けっしてヒトだけに感染するのではない。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 128, "tag": "p", "text": "インフルエンザはウイルスであり、細菌ではない。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 129, "tag": "p", "text": "インフルエンザのワクチンは、ニワトリの卵(鶏卵)の中で、インフルエンザウイルスを培養させた後、これを薬品処理して無毒化したものをワクチンとしている。このように薬品などで病原体を殺してあるワクチンを不活化ワクチンという。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンである。いっぽう、結核の予防に用いられるBCGワクチンは、生きた弱毒結核菌である。BCGのように生きたワクチンを生ワクチンという。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 130, "tag": "p", "text": "1918年に世界的に流行したスペイン風邪も、インフルエンザである。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 131, "tag": "p", "text": "インフルエンザは変異しやすく、ブタなどに感染したインフルエンザが変異して、人間にも感染するようになる場合もある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 132, "tag": "p", "text": "ウマやウサギなどの動物に、弱毒化した病原体や、弱毒化した毒素などを投与し、その抗体を作らせる。その動物の血液の中には、抗体が多量に含まれることになる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 133, "tag": "p", "text": "血液を採取し、そして血球やフィブリンなどを分離し、血清を回収すると、その血清の中に抗体が含まれている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 134, "tag": "p", "text": "マムシやハブなどの毒ヘビにかまれた場合の治療として、これらのヘビ毒に対応した血清の注射が用いられている。このように血清をもちいた治療法を血清療法(けっせいりょうほう)という。血清療法は、免疫記憶は作らないので、予防には役立たない。予防ではなく治療のために血清療法を行う。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 135, "tag": "p", "text": "ヘビ毒以外には、破傷風(はしょうふう)やジフテリアなどの治療にも血清が用いられる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 136, "tag": "p", "text": "血清療法は、1890年ごろ、北里柴三郎が開発した。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 137, "tag": "p", "text": "(未記述)", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 138, "tag": "p", "text": "抗原抗体反応が過剰に起こることをアレルギー(allergy)と呼ぶ。スギ花粉などが原因で起きる花粉症もアレルギーの一つである。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 139, "tag": "p", "text": "アレルギーを引き起こす抗原をアレルゲン(allergen)と呼ぶ。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 140, "tag": "p", "text": "アレルギーによって、じんましんが起きるきともある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 141, "tag": "p", "text": "ヒトによっては卵やソバやピーナッツなどの食品もアレルゲンになりうる。、", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 142, "tag": "p", "text": "ダニやホコリなどもアレルゲンになりうる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 143, "tag": "p", "text": "抗原抗体反応によって、呼吸困難や血圧低下などの強い症状が起きる場合もあり、または全身に炎症などの症状が現れたりする場合もあり、このような現象をアナフィラキシーという。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 144, "tag": "p", "text": "(つまり、アレルギー反応によって、呼吸困難や血圧低下などの強い症状が起きる場合や、または全身に炎症などの症状が現れたりする場合もあり、このような現象をアナフィラキシーという。)", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 145, "tag": "p", "text": "ハチ毒で、まれにアナフィラキシーが起きる場合がある。ペニシリン(penicillin )などの薬剤でもアナフィラキシーが起きる場合がある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 146, "tag": "p", "text": "※ 「アナフィラキシー・ショック」(anaphylactic shock)と書いても、正しい。(※ 東京書籍の検定教科書『生物基礎』平成23年検定版、124ページでは「アナフィラキシーショック」の用語で紹介している。)", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 147, "tag": "p", "text": "", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 148, "tag": "p", "text": "※ 「アナフィラキシー」の結果が、血圧低下なのか、それとも炎症なのかの説明が、検定教科書でもハッキリしていない。東京書籍の教科書では、全身の炎症を「アナフィラキシーショック」の症状として説明している。だが実教出版では、血圧低下や呼吸困難を、「アナフィラキシー」の結果としているし、「アナフィラキシーショック」とはアナフィラキシーの重症化した症状だと(実教出版は)説明している。カッツング薬理学を読んでも、「アナフィラキシ-ショック」と「アナフィラキシー」がどう違うのか、あまり明確には書いてないので、高校生は気にしなくて良い。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 149, "tag": "p", "text": "", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 150, "tag": "p", "text": "エイズ(後天性免疫不全症候群、AIDS)の原因であるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)というウイルスは、ヘルパーT細胞に感染して、ヘルパーT細胞を破壊する。ヘルパーT細胞は免疫をつかさどる細胞である。そのため、エイズ患者の免疫機能が壊れ、さまざまな病原体に感染しやすくなってしまう。エイズ患者ではヘルパーT細胞が壊れているため、B細胞が抗体をつくることが出来ない。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 151, "tag": "p", "text": "ふつうのヒトでは発病しない弱毒の病原体でも、エイズ患者では免疫機能が無いため発症することもあり、このことを日和見感染(ひよりみ かんせん、opportunistic infection)という。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 152, "tag": "p", "text": "HIVとは Human Immunodeficiency Virus の略。 AIDSとは Acquired Immune Deficiency Syndrome の略。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 153, "tag": "p", "text": "HIVの遺伝子は変化をしやすく、そのため抗体を作成しても、遺伝子が変化しているので効果が無く、ワクチンが効かない。開発されているエイズ治療薬は、ウイルスの増加を抑えるだけである。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 154, "tag": "p", "text": "よって、予防が大事である。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 155, "tag": "p", "text": "自己の組織や器官に対して、免疫が働いてしまい、その結果、病気が起きることを自己免疫疾患という。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 156, "tag": "p", "text": "関節リウマチ(rheumatoid arthritis)、重症筋無力症(myasthenia gravis)は自己免疫疾患である。I型糖尿病も自己免疫疾患である。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 157, "tag": "p", "text": "ヒトの汗や鼻水や涙にはリゾチームという酵素があり、リゾチームは細菌の細胞壁を破壊する。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 158, "tag": "p", "text": "", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 159, "tag": "p", "text": "肝臓(かんぞう、liver)は腹部の右上に位置する最も大きな臓器であり、ヒトの成人では1kg以上の重さがあり、約1200g~2000gである。肝小葉(かんしょうよう)という基本単位が約50万個、集まって、肝臓が出来ている。心臓から出た血液の約4分の1は、肝臓に入る。 肝臓の働きは、栄養分の貯蔵や分解、有害な物質の解毒、不要な物質を胆汁(たんじゅう、bile)として捨てる、などを行っている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 160, "tag": "p", "text": "肝臓には肝動脈と肝静脈のほかに、腸からの静脈の血管である肝門脈(かんもんみゃく)が肝臓を通っている。 腸で吸収されたグルコースやアミノ酸などの栄養が関門脈の中を流れる血液に含まれている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 161, "tag": "p", "text": "", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 162, "tag": "p", "text": "グルコースの一部は肝臓でグリコーゲンへと合成され貯蔵される。グリコーゲンは必要に応じてグルコースに分解されて、エネルギー源として消費される。このようにして、血液中のグルコースの量や濃度(血糖値、血糖量)が、一定に保たれる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 163, "tag": "p", "text": "肝臓では血しょうの主なタンパク質のアルブミン(albumin)を合成しており、また血しょう中の血液凝固に関するタンパク質であるフィビリノーゲンも肝臓で合成している。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 164, "tag": "p", "text": "タンパク質の合成にはアンモニアなど有害な物質が生成するが、肝臓はアンモニアを毒性の低い尿素(にょうそ)に変えている。尿素は腎臓(じんぞう)に集められ、膀胱(ぼうこう)を経て、尿道から体外へと排出される。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 165, "tag": "p", "text": "哺乳類や両生類では、アンモニアを尿素に変えてから排出する。なお、魚類は生成したアンモニアを直接、外部に放出している。まわりに水が多いため、アンモニアを直接排出しても害が少ないため、と考えられてる。鳥類やハ虫類では、尿素ではなく尿酸を合成しており、尿酸を排出する。鳥類とハ虫類とも、陸で生まれて、かたい卵で生まれる動物である。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 166, "tag": "p", "text": "そのほか有害な物質の解毒の例としては、アルコールを分解したりしている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 167, "tag": "p", "text": "胆汁は肝臓で作られており、胆汁は胆管(bile duct)を通り、胆のう(gallbladder)へ貯蔵され、十二指腸(duodenum)へ分泌される。 胆汁は脂肪を消化吸収しやすくする。胆汁に消化酵素は含まれていない。胆汁は脂肪を小さな粒に変える。このように脂肪を小さな粒に変えることを乳化(にゅうか)という。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 168, "tag": "p", "text": "古くなった赤血球を破壊する。ヒトの胆汁中に含まれる色素のピリルビンは、古くなって破壊した赤血球に含まれていたヘモグロビンに由来している。便(大便)とともに、ピリルビンは排出される。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 169, "tag": "p", "text": "合成・分解など様々な化学反応が行われるため、反応熱が発生し、体温の維持にも役立っている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 170, "tag": "p", "text": "ヒトなどの高等な動物の場合、腎臓(kidney)は左右一対で背側に位置し、 腎動脈(Renal artery)、腎静脈(renal vein)、輸尿管(ureter)が伸びている。 血液は腎動脈・腎臓・腎静脈を通り、 腎臓は血液中の不要な成分をろ過し尿として輸尿管・膀胱(ぼうこう、bladder)・尿道(にょうどう、urethra)を通り排出する。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 171, "tag": "p", "text": "腎臓にはネフロン(nephron)と呼ばれる構造上の単位があり、 ネフロンは腎小体(じんしょうたい、renal corpuscle、マルピーギ小体)と細尿管(さいにょうかん、尿細管、腎細管, renal tubule)からなり、 片方の腎臓あたり、ネフロンは約100万個ある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 172, "tag": "p", "text": "腎小体は、毛細血管が球状に密集している糸球体(しきゅうたい、glomerulus)と、それを囲むボーマンのう(Bowman's capsule)からなる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 173, "tag": "p", "text": "", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 174, "tag": "p", "text": "タンパク質以外の血漿は糸球体からボーマンのうに ろ過 されて 原尿(げんにょう、primary urine)となり、 原尿は細尿管で、水の再吸収と、グルコースや無機塩類などの必要な成分が再吸収される。(「再吸収」も用語) グルコースは、健康なら、すべて(100%)吸収される。これらの再吸収は、ATPのエネルギーを用いた能動輸送である。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 175, "tag": "p", "text": "グルコ-ス以外の、水や無機塩類の再吸収率は、体の状況に応じて再吸収率が調節されている。原則的に、血液の塩類濃度を一定に保とうとする方向に、水や塩類の再吸収率は調節されている。この再吸収率の調整の際、ホルモンが関わっている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 176, "tag": "p", "text": "原尿は集合管(しゅうごうかん、collecting duct)を通り、ここで水分が再吸収される。ナトリウムイオンは、腎細管でほとんどが再吸収される。その結果、原尿のナトリウム濃度は低い。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 177, "tag": "p", "text": "尿素は不要なため、再吸収されない。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 178, "tag": "p", "text": "そして原尿から水分が吸収されたことで、残された尿素などの老廃物や再吸収されなかったものが濃縮して尿(にょう、urine)となり、体外へ尿として排出される。なお尿素は肝臓で作られる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 179, "tag": "p", "text": "ボーマンのうでこし出される原尿は、ヒトの成人男性では1日あたり約170Lもあるが、その大部分は再吸収されるので、最終的に対外に尿として排出される液量は1L~2Lほどになる。99%ほど濃縮されたことになる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 180, "tag": "p", "text": "", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 181, "tag": "p", "text": "ヒトなどの場合、血液中の塩分濃度が低いと、Naの再吸収がホルモンによって促進される。このホルモンは鉱質コルチコイド(mineral corticoid)という。腎細管でほとんどのナトリウムが再吸収される。鉱質コルチコイドは副腎皮質から分泌されている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 182, "tag": "p", "text": "水の再吸収については、脳下垂体からバソプレシン(vasopressin)というホルモンが分泌されることによって、集合管での水の再吸収が促進される。 塩類の過剰な摂取などで、血液中の塩類濃度が上昇して体液の浸透圧が上がったときにも、バソプレシンによって水の再吸収が促進され、塩類濃度を下げさせる。水が吸収された結果、尿の液量は少なくなり、尿は濃くなる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 183, "tag": "p", "text": "", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 184, "tag": "p", "text": "淡水(たんすい)とは、川や湖のように、塩分をあまり含まない水のことである。海水は、淡水ではない。淡水魚の場合、体内の塩分を失わせないため、淡水魚は水をほとんど飲まない。淡水魚の えら は、塩分を吸収しやすい特殊な作りになっている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 185, "tag": "p", "text": "体内の水分を確保するため、まず海水を飲んで塩ごと水分を補給し、そして、えら から塩分を排出することで、体内の水分を確保している。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 186, "tag": "p", "text": "体液の塩類濃度が海水よりも低いのが一般である(体液が低張液、海水が高張液)。そのため、浸透によって水分が海水に取られてしまう傾向にある。サメやエイなどの硬骨魚類では、体液中に尿素を溶かすことで体液の塩類濃度を上げることで浸透圧を高めており、体液の浸透圧を海水の浸透圧に近づけている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 187, "tag": "p", "text": "水分の補給は、海水だけを飲むのだが、余分な塩分を排出する塩類腺(せんるいせん)を持ち、塩類腺から、塩分のたかい液体を排出している。腺の場所はウミガメの場合、目のところに腺があるので、陸上で観察すると、あたかも涙を流しているように見える。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 188, "tag": "p", "text": "アホウドリなどの海鳥は、鼻のところに塩類腺(せんるいせん)を持つ。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 189, "tag": "p", "text": "多くの無脊椎動物では、海に暮らす動物の場合でも、いっぽう川に暮らす動物の場合でも、あまり塩類濃度の調節機構が発達していない。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 190, "tag": "p", "text": "例外的に、いくつかの生物では発達している。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 191, "tag": "p", "text": "ホルモン(hormone)とは、内分泌腺(ないぶんぴせん)という器官から血液へ分泌される物質であり、他の器官に情報を伝える化学物質である。ホルモンは血液によって全身へと運ばれる。そして、特定の器官へホルモンは作用する。脳下垂体、甲状腺、すい蔵などが内分泌腺である。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 192, "tag": "p", "text": "ホルモンは自律神経に比べて、反応が現れるまでに時間がかかり、比較的遅く、全身へ作用する。ホルモンの主な成分は、タンパク質や脂質やアミノ酸である。このように脂質は、ホルモンの成分として、情報を全身に伝える役目も持っている。脂質は、けっして単にエネルギー源なだけではないのである。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 193, "tag": "p", "text": "いっぽう汗のように体外へ物質を分泌する腺を外分泌腺(がいぶんぴせん)という。外分泌腺には、汗を分泌する汗腺、だ液を分泌する だ腺、乳を分泌する乳腺、などがある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 194, "tag": "p", "text": "*交感神経と副交感神経", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 195, "tag": "p", "text": "自律神経(autonomic nerve)は、意思とは無関係に、他の器官に情報を伝える神経である。 自律神経はホルモンに比べて、比較的早く、局所へ作用する。 自律神経には、働きの異なる二つの神経系があり、交感神経(こうかんしねけい、sympathetic nerve)と副交感神経(ふくこうかんしんけい、parasympathetic nerve)とに分けられる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 196, "tag": "p", "text": "交感神経は、敵と戦うなどの身体が活動的なときや緊張状態のときに働く。一方、副交感神経は、休息したりなどの身体が非活動的なときに働く。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 197, "tag": "p", "text": "たとえば、動物が、命がけで敵と戦うとか、あるいは敵に襲われて命がけで逃げなければならない、としよう。そのときの神経の働きを考えよう。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 198, "tag": "p", "text": "このように、交感神経は、闘争(とうそう)や逃走(とうそう)のときに、よく働く。この「闘争や逃走」のことを、英語でも fight or flight (ファイト・オア・フライト)という。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 199, "tag": "p", "text": "多くの場合、交感神経と副交感神経は、反対の作用を持つので、拮抗(きっこう)的に働く。交感神経と副交感神経は、同じ器官に分布している事が多い。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 200, "tag": "p", "text": "交感神経は、脊髄の末端から出ていて、分布している。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 201, "tag": "p", "text": "副交感神経は、中脳・延髄および脊髄の末端から出ている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 202, "tag": "p", "text": "自律神経は間脳の視床下部に中枢がある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 203, "tag": "p", "text": "神経の末端からは、情報伝達のための神経伝達物質が放出される。 交感神経の末端からは主にノルアドレナリン(noradrenaline)という神経伝達物質が分泌される。副交感神経の末端からは、主にアセチルコリンという神経伝達物質が分泌される。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 204, "tag": "p", "text": "", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 205, "tag": "p", "text": "ホルモンが作用する器官を標的器官(ひょうてき きかん)という。標的器官の細胞には、特定のホルモンが結合できる受容体(じゅようたい)がある。ホルモンの種類ごとに、受容体の種類も異なるので、その受容体を持った特定の器官だけが作用を受けるので、特定の器官だけがホルモンの作用を受ける。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 206, "tag": "p", "text": "標的器官の細胞で、ホルモンの受容体を持った細胞を標的細胞という。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 207, "tag": "p", "text": "タンパク質でできたホルモンは、分子量が大きいため、細胞膜を透過できない。このよう細胞膜を透過できないホルモンの受容体は、細胞膜の表面にある。アミノ酸が多数つながった長いものをペプチドというのだが、ペプチドでできたホルモンをペプチドホルモンという。(※ 高校教科書の範囲内)", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 208, "tag": "p", "text": "一般にタンパク質が細胞膜を透過できないため、ペプチドホルモンも細胞膜を透過できないのが普通である。インスリンはペプチドホルモンである。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 209, "tag": "p", "text": "なおホルモンに限らず、伝達物質が細胞膜にある受容体と結合したあとの、細胞内へ情報が伝わる仕組みは、カルシウムイオンCa を用いて情報伝達をしたり、あるいはcAMP(サイクリックアデノシン一リン酸、サイクリックAMP)や Gタンパク質 が、情報伝達に用いられる。cAMPやGタンパク質は酵素などに作用する。なおcAMPはATPをもtにして酵素反応によって作られる。(※ これらの話題は高校教科書の範囲内)", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 210, "tag": "p", "text": "これらカルシウムイオンやcAMPやGタンパク質のような、このような細胞内の情報伝達物質をセカンドメッセンジャー(second messenger)という。 (※ 高校教科書の範囲内)", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 211, "tag": "p", "text": "ペプチドホルモンから細胞への情報伝達においても、カルシウムイオンやcAMPやGタンパク質がセカンドメッセンジャ-として機能する。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 212, "tag": "p", "text": "いっぽう、脂質やアミノ酸を主成分とするホルモンの場合は、細胞膜を透過することができる。なぜなら、これらのホルモンは脂溶性であり、そしてホルモンが脂溶性ならば、リン脂質を主成分とする細胞二重膜を透過できるからである。このような細胞膜を透過するホルモンに結合するための受容体は、細胞内にある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 213, "tag": "p", "text": "脂質でできたホルモンには、脂質の一種であるステロイド(steroid)で出来ているホルモンも多い。私たちヒトの脂質のコレステロールも、ステロイドの一種である。ステロイドでできたホルモンをステロイドホルモン(steroid hormone)という。糖質コルチコイドや鉱質コルチコイドは、ステロイドホルモンである。ステロイドホルモンは、脂質に溶けやすく、そのため細胞膜を透過しやすい。(※ 高校教科書の範囲内) つまり糖質コルチコイドや鉱質コルチコイドは、脂質に溶けやすく、細胞膜を透過しやすい。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 214, "tag": "p", "text": "例外もあり、脂質を主成分としながらも細胞膜に受容体を持つホルモンも発見されている。(※ 高校の範囲外)", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 215, "tag": "p", "text": "", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 216, "tag": "p", "text": "胃酸などを含んだ酸性の消化物が十二指腸に入ると、十二指腸からセクレチン(secretin)が分泌される。 当初、これは神経の働きだと考えられていた。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 217, "tag": "p", "text": "しかし1902年にベイリスとスターリングは、神経を切断した十二指腸に塩酸を注入すると、すい液が分泌される事を発見した。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 218, "tag": "p", "text": "さらに、体外に取り出した十二指腸の粘膜に塩酸を掛けてしぼった液を、すい臓(pancress)への血管に注射しても、すい液が分泌された。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 219, "tag": "p", "text": "これらの実験結果によって、十二指腸で作られた物質が血管を通してすい臓へ送られて、すい液の分泌を即していることが分かった。すい液の分泌を促進する物質は、セクレチンと名づけられた。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 220, "tag": "p", "text": "ホルモン分泌で中心的な役割をしている器官は、間脳にある視床下部(ししょうかぶ、hypothalamus)と、視床下部の下にある脳下垂体である。 脳下垂体には前葉と後葉がある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 221, "tag": "p", "text": "間脳の視床下部には、ホルモンを分泌する神経細胞があり、これを神経分泌細胞(しんけい ぶんぴつ さいぼう、neurosecretory cell)という。また、このように神経がホルモンを分泌することを神経分泌(しんけい ぶんぴ)という。この間脳の神経分泌細胞により、脳下垂体の血管中にホルモンが分泌される。この神経分泌のホルモンは、脳下垂体のホルモンを調節するための放出ホルモン(releasing hormone)または放出抑制ホルモン(inhibiting hormone)である。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 222, "tag": "p", "text": "視床下部から伸びている神経分泌細胞が、脳下垂体に作用して、脳下垂体のホルモン分泌を調節している。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 223, "tag": "p", "text": "脳下垂体の前葉と後葉とで、分泌される血管の位置が違う。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 224, "tag": "p", "text": "脳下垂体前葉では、視床下部にある血管に分泌し、その血管が前葉まで続いて脳下垂体に作用している。前葉からは成長ホルモン(growth hormone)などが分泌される。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 225, "tag": "p", "text": "いっぽう、脳下垂体後葉では、視床下部からつながる神経伝達細胞が後葉まで続いており、後葉中の血管に、神経伝達細胞が直接、ホルモンを分泌している。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 226, "tag": "p", "text": "後葉からは、水分調節に関わるバソプレシンというホルモンが分泌され、バソプレシンによって腎臓での集合管における水の再吸収などが促進される。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 227, "tag": "p", "text": "のどの近くにある甲状腺(こうじょうせん、thyroid gland)からはチロキシン(thyroxine)が分泌される。 チロキシンは代謝を活性化するホルモンであり、酸素の消費やグルコースの消費が、活発になる。 視床下部は、チロキシンの濃度を、つぎのような仕組みで調節している。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 228, "tag": "p", "text": "チロキシンによって、視床下部や脳下垂体による甲状腺刺激が抑制されるという仕組みである。 視床下部や脳下垂体は、チロキシンが多くなりすぎないように、チロキシンによってホルモンを抑制する。チロキシンによって視床下部は甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンを抑制する。また、チロキシンによって、脳下垂体は甲状腺刺激ホルモンを抑制する。こうして、チロキシン自身が最終的に、甲状腺からのチロキシン分泌を抑制するように働きかける。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 229, "tag": "p", "text": "逆にチロキシンが少なくなると、視床下部や脳下垂体が、甲状腺刺激ホルモンを通して甲状腺にチロキシンを増やすように働きかける。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 230, "tag": "p", "text": "チロキシンを受け取った細胞では代謝が活発になる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 231, "tag": "p", "text": "このように、最終産物(この場合はチロキシン)が、前の段階(この場合は視床下部や脳下垂体)に働きかけることをフィードバック(feedback)という。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 232, "tag": "p", "text": "フィードバックは生物学に限らず、多くの分野で見られる現象だが、とりあえず生物学を例に説明する。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 233, "tag": "p", "text": "フィードッバックが前の段階を抑制する場合、負のフィードバック(negative feedback)という。ふつう、ホルモンは負のフィードバックによって、濃度などが一定の範囲内に近づくように調節されている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 234, "tag": "p", "text": "腎臓での水の再吸収に関わるバソプレシンも、負のフィードバックによって一定に保たれる。この結果、バソプレシンが人体の水分調節のためのホルモンとして働くことになる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 235, "tag": "p", "text": "いっぽう、フィードバックによって、前の段階が促進される場合を正のフィードバックという。電子機械などで見られる現象で、たとえば音声マイクとスピーカーのハウリング現象(マイクをスピーカーに近づけたときの、うるさい現象。※ うるさいので実験しないように。)などが、正のフィードバックにあたる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 236, "tag": "p", "text": "ハウリングの起きる仕組みは、マイクから入力された音が、スピーカーから出て、そのスピーカーから出た音をマイクがひろってしまうので、さらにスピーカーから音が出るので、音が大きくなり、その大きくなった音をふたたびマイクがひろってしまうので、さらにスピ-カーから、もっと大きな音が出てしまい、そしてさらに・・・という、とてもうるさい現象である。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 237, "tag": "p", "text": "心臓の拍動は延髄と自律神経によって調節されている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 238, "tag": "p", "text": "運動などによって酸素が消費され、二酸化炭素濃度が高くなると、 延髄は交感神経を働かせ、 交感神経の末端からノルアドレナリン(noradrenaline)が放出され、 心臓の拍動数が増加する。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 239, "tag": "p", "text": "逆に安静時に酸素の消費量が減り、二酸化炭素濃度が低くなると、 延髄は副交感神経を働かせ、 副交感神経の末端からアセチルコリン(acetylcholine)が放出され、 心臓の拍動数が減少する。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 240, "tag": "p", "text": "心臓の拍動の調節の実験には、 オットー・レーヴィのカエルの心臓を用いた実験がある。 レーヴィは2つのカエルの心臓を取り出してつなぎ、リンガー液を循環させる装置を作った。 片方の心臓からのびる迷走神経(副交感神経)を刺激すると、その心臓の拍動数が減少し、 しばらくして、もう片方の心臓の拍動数も減少した。 これにより、迷走神経のシナプスから化学物質が分泌され、 心臓の拍動数を制御していることが明らかとなった。 その化学物質は、今日ではアセチルコリンであることが分かっている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 241, "tag": "p", "text": "魚類の浸透圧の調節は、えら・腸・腎臓などで行われ、 淡水魚と海水魚の場合でその働きは異なっている。 淡水魚の場合、水分が体内に侵入するため、 えらや腸で無機塩類を吸収し、 腎臓で体液より低張の尿を大量に排出する。 海水魚の場合、水分が体外に出るため、 海水を大量に呑み込み腸で吸収し、 腎臓で体液と等張の尿を少量排出する。 また、えらから無機塩類を排出する。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 242, "tag": "p", "text": "哺乳類の浸透圧の調節は、腎臓で行われる。 また、腎臓の働きは、間脳視床下部・脳下垂体後葉や副腎皮質(ふくじんひしつ、adrenal medulla)によって調節されている。 水分の摂取などで、低浸透圧になった場合、副腎皮質が働く。 副腎皮質からは鉱質コルチコイド(mineral corticoid)が分泌される。 鉱質コルチコイドは腎臓の細尿管から無機塩類の再吸収を促進する働きがある。 水分の不足などで、高浸透圧になった場合、 間脳視床下部、脳下垂体後葉が働く。 脳下垂体後葉からはバソプレシン(vasopressin)が分泌される。 バソプレシンは腎臓の細尿管から水分の再吸収を促進する働きがある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 243, "tag": "p", "text": "血液中に含まれるグルコースを血糖(けっとう、blood glucose)という。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 244, "tag": "p", "text": "健康なヒトの場合の血糖の含有量は一定の範囲に保たれ、空腹時で血液100mLあたり、ほぼ100mgという濃度である。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 245, "tag": "p", "text": "このような血統の値を血糖値(けっとうち)という。または血糖量という、または血糖濃度という。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 246, "tag": "p", "text": "グルコースは細胞の活動に必要な糖である。 血糖値が低すぎたり高すぎたりすると様々な症状を引き起こすため、 ホルモンと自律神経によって一定に保たれている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 247, "tag": "p", "text": "食事などで炭水化物や糖質を取ると、一時的に血糖値が上昇する。逆に、急激な運動の後などでは下がっている。 血糖値が60mg以下(血液100mLあたり)だと、意識喪失や けいれん などが起き、危険である。運動などによって低血糖になると、間脳の視床下部が働く。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 248, "tag": "p", "text": "さて、血糖の調節に関わる器官は、すい臓および視床下部である。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 249, "tag": "p", "text": "視床下部は、交感神経によって、すい臓と副腎髄質を働かせる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 250, "tag": "p", "text": "グリコーゲンが、つぎの仕組みで分解されることで、グリコーゲンからグルコースが取り出され、グルコース濃度を上げる仕組みである。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 251, "tag": "p", "text": "すい臓のランゲルハンス島のA細胞からはグルカゴン(glucagon)が分泌され、 副腎髄質(ふくじんひしつ、adrenal medulla)からはアドレナリン(adrenaline)が分泌される。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 252, "tag": "p", "text": "グルカゴンやアドレナリンは、グリコーゲンをグルコースへ分解させる働きがある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 253, "tag": "p", "text": "また、視床下部は放出ホルモンで脳下垂体前葉を働かせ、脳下垂体前葉は副腎皮質刺激ホルモンで副腎皮質を働かせ、副腎皮質からアドレナリンが分泌される。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 254, "tag": "p", "text": "また、副腎皮質が分泌する糖質コルチコイド(glucocorticoid)が、タンパク質を分解させて、その分解された元タンパク質を材料としてグルコースを合成させる。糖質コルチコイドは、タンパク質をグルコースへ分解させる働きがある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 255, "tag": "p", "text": "アドレナリンやグルカゴンが、肝臓や筋肉に働きかけ、貯蔵されているグリコーゲンの分解を促進する。(肝臓や筋肉にはグリコーゲンが蓄えられている。)", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 256, "tag": "p", "text": "これらの反応の結果、血糖値が上昇する。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 257, "tag": "p", "text": "食事などによって高血糖になると、すい臓のランゲルハンス島のB細胞が、血糖値の上昇を感知し、B細胞がインスリン(insulin )を分泌する。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 258, "tag": "p", "text": "インスリンは、グルコースをグリコーゲンへ合成させたり、 グルコースを細胞へ吸収・分解させたりする働きがある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 259, "tag": "p", "text": "このインスリンが、細胞でのグルコースを用いた呼吸を促進したり、肝臓でのグリコーゲンの合成を促進するので、結果的にグルコースの消費が促進されるので、グルコースの濃度が下がり、グルコース濃度が通常の濃度に近づくという仕組みである。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 260, "tag": "p", "text": "また、間脳の視床下部でも血糖値の上昇は感知され、副交感神経の刺激を通じて、すい臓にインスリンの分泌をうながし、すい臓のランゲルハンス島B細胞がインスリンを分泌する。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 261, "tag": "p", "text": "いっぽう、病気により血糖値が常に200mgを越えると、糖尿病(とうにょうびょう、diabetes )という病気だと判断される。 (※ 高校理科の範囲内)", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 262, "tag": "p", "text": "糖尿病とは、すい臓からのインスリン分泌が、うまくは分泌されなくなってしまった病気である。インスリンが細胞と結合すると、グルコースを消費させる。しかし、インスリン分泌がうまくいかないと、この消費がなくなってしまい、その結果、グルコースが余る。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 263, "tag": "p", "text": "その結果、原尿にグルコースが高濃度で含まれるので細尿管でのグルコース吸収が間に合わず、尿中に高濃度のグルコースが含まれて排出される。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 264, "tag": "p", "text": "(もし健康なヒトなら、原尿のグルコースは、ほぼ100%再吸収されてるので、尿中には高濃度のグルコースは排出されない。なのに高濃度のグルコースを含む尿が排出されるという事は、つまり病気に掛かっている事になる。)", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 265, "tag": "p", "text": "高血糖が長く続くと、欠陥が変性して血流が低下してしまい、その結果、眼や腎臓などの、さまざまな器官で障害を起こす。糖尿病には、このような各器官での合併症があるため、危険な病気である。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 266, "tag": "p", "text": "糖尿病の分類は、大きくは二つの種類に分けられる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 267, "tag": "p", "text": "まず、インスリンを分泌する細胞そのものが破壊されていて分泌できない場合のI型糖尿病がある。若くして発症することが多い。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 268, "tag": "p", "text": "もう一つは、I型とは別のなんらかの原因で、インスリンの分泌量が低下したり、インスリンに細胞が反応しなくなる場合であり、これをII型糖尿病という。肥満や喫煙・運動不足などの生活習慣病などによる糖尿病で、II型糖尿病が多く見られている。 日本の糖尿病患者の多くはII型である。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 269, "tag": "p", "text": "糖尿病の治療には、I型・II型とも、インスリンの投与が行われる。患者は、食後などに毎回、自分でインスリンを注射しなければならない。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 270, "tag": "p", "text": "II型の生活習慣が原因と考えられる場合、食事の見直しや、適度な運動なども、治療に必要になる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 271, "tag": "p", "text": "糖尿病の症状として頻尿(ひんにょう)がある。(※ 高校の範囲内)", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 272, "tag": "p", "text": "この原因は、原尿の浸透圧が血糖によって上昇したことにより、細尿管での水分の再吸収が減るためだと考えられてる。(※ 高校の範囲外)", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 273, "tag": "p", "text": "また、頻尿などにより水分が低下するので、のどの渇きが起きる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 274, "tag": "p", "text": "血糖値をあげるホルモンの種類は多く仕組みも複雑である。なのに、血糖値を下げるホルモンはインスリンのみしか今のところ知られておらず、また仕組みも単純である。この事から、動物は、飢餓に適応して、血糖値の調節の機構を進化させてきたと考えられている。飽食の時代よりも、飢餓の時代のほうが、圧倒的に多かったのだろうと考えられている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 275, "tag": "p", "text": "変温動物は、体温調節が不完全で、体温は外部環境によって変化する。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 276, "tag": "p", "text": "一方、恒温動物では、体温は、外部環境によらず、一定に保たれている。ヒトの場合、健康なら、体温は約37°Cに保たれる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 277, "tag": "p", "text": "体温の調節は、ホルモンや自律神経が行っている。体温調節の中枢のある場所は、間脳の視床下部にある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 278, "tag": "p", "text": "寒さによって体温が低下すると、間脳の視床下部が働く。 視床下部は、交感神経やホルモンによって、肝臓や筋肉の代謝を促進し、発熱量を増加させる。 また、交感神経によって皮膚の血管や立毛筋を縮小させ、熱放散を減少させる。また、骨格筋をふるわせることで、熱を産生する。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 279, "tag": "p", "text": "また、チロキシンやアドレナリンなどが分泌され、肝臓での物質の分解を促進して熱を産生する。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 280, "tag": "p", "text": "暑さによって体温が上昇すると、間脳の視床下部が働く。 視床下部は、交感神経によって、 皮膚血管を拡張し、汗腺から発汗させ、熱放散を増加させる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 281, "tag": "p", "text": "また、副交感神経によって、肝臓での物質の分解が抑制され、熱の産生を抑える。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 282, "tag": "p", "text": "ヒトの 「のどぼとけ」 の、すぐ下には、甲状腺という器官がある。この甲状腺は、甲状腺ホルモンというホルモンを分泌している器官である。ホルモンとは、体内のいろいろな働きを調節するための分泌物(ぶんぴぶつ)である。くわしくは、中学の保健体育で習うか、または高校生物で習う。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 283, "tag": "p", "text": "さて、甲状腺ホルモンの主成分はヨウ素である。ヨウ素は、ワカメやコンブなどの海ソウに多く含まれている。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 284, "tag": "p", "text": "さて、通常のヨウ素には放射能(ほうしゃのう)が無く、安全である。だが、原子力発電などの原子核分裂では、放射性のある様々な原子が作られる。その中に放射性のある特別なヨウ素も作られる場合がある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 285, "tag": "p", "text": "原子力発電などの事故などへの対策として、原子力発電所などの近隣地区に ヨウ素剤(ようそ ざい) が配布される理由は、この放射能のある特別なヨウ素が甲状腺に集まらないようにするためである。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 286, "tag": "p", "text": "体内に吸収されたヨウ素は、甲状腺に集まる性質がある。なので、あらかじめ、普通のヨウ素を摂取しておけば、放射性のある特別なヨウ素を吸収しづらくなるのである。もしくは、仮に吸収してしまっても、通常のヨウ素によって、放射性のあるヨウ素が、うすめられる。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 287, "tag": "p", "text": "なお、甲状腺ホルモンの働きは、体内での、さまざまな化学反応を促進(そくしん)する働きがある。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 288, "tag": "p", "text": "", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 289, "tag": "p", "text": "科学系に強い文庫である講談社ブルーブックス文庫の『元素118の新知識』によれば、引用「プルトニウムは放射性物質として危険であるだけではなく、化学的にもきわめて毒性が強い元素として知られている。」", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 290, "tag": "p", "text": "中略", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 291, "tag": "p", "text": "引用「経口摂取や吸入摂取により体内に取り込まれ、長く体内に留まる場合には、その放射性および化学的反応性によって発がん性に結びつく。」", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 292, "tag": "p", "text": "である。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 293, "tag": "p", "text": "経口摂取の無毒性デマを真っ向から講談社ブルーバックスは否定している。", "title": "体液とその恒常性" }, { "paragraph_id": 294, "tag": "p", "text": "ほかにも、出典が見つからなかったので紹介しないが、放射線医学の専門書などを見ても、プロトニウムの放射性毒性ではなく化学毒性の可能性については、昔からよく学問的にも言われていることである。(※ この段落のwiki著者の地元の図書館に昔は放射線医学の専門書が置いてあったが2022年に図書館の本棚を調べたら文献が消失していた(※ 一般に公立図書館では古い書籍は廃棄処分などをされてしまうので))", "title": "体液とその恒常性" } ]
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== 導入 == 生物は外界の環境の変化によらず体内の環境を一定に保つ恒常性と呼ばれる働きを持っている。 また、動物は刺激に対して反応することができる。 このページでは、動物の恒常性、様々な刺激の受容と反応、神経系の構造と働き、動物の様々な行動、などを扱う。 == 体液とその恒常性 == === 体温の恒常性 === 生物が、'''外部環境'''(external milieu)が変化しても、その'''内部環境'''(ないぶかんきょう、internal milieu)(別名:'''体内環境''')を一定に保とうとする働きを'''恒常性'''(こうじょうせい、homeostasis)('''ホメオスタシス''')という。 ヒトの体温が平常では37℃付近なのもホメオスタシスの一例である。恒常性には、温度、浸透圧、養分、酸素などを一定に保とうとする働きがある。 生物が体温を一定に保つ理由は、酵素の働きが温度によって異なるからである。 酵素は温度が約40℃のとき最もよく働き、低すぎると働きが鈍くなり、高すぎると酵素が破壊され全く働かなくなる。 体温を一定に保つために、暑いときは熱を逃がし、寒いときは熱を逃がさないようにしたり筋肉を震わせて熱を作ったりしている。 脳の間脳と呼ばれる部分が無意識に体温調節をしている。 === 体液の働きとその循環 === [[画像:Red White Blood cells.jpg|thumb|right|320px|左から赤血球、血小板、白血球]] 多細胞の動物の内部環境では、細胞は血液や組織液などの'''体液'''(body fluid)で満たされている。 体液には、血管を流れる'''血液'''(blood)、細胞間を満たす'''組織液'''(interstitial fluid)、リンパ管を流れる'''リンパ液'''(lymph)がある。ヒトの成人の場合、体重の約60%は水分である。 血液の成分には、液体成分である'''血しょう(けっしょう, plasma、血漿)'''と、有形成分である'''赤血球'''(erythrocyte)・'''白血球'''(leucocyte)・'''血小板'''(platelet)の'''血球'''(blood cell)がある。 血球には、酸素を運ぶ'''赤血球'''(erythrocyte)、体内に侵入した細菌・異物を排除する'''白血球'''(leucocyte)、血液を凝固させ止血する'''血小板'''(platelet)がある。有形成分が作られる場所は、ヒトの成人の場合、骨の内部にある'''骨髄'''(こつずい、bone marrow)で作られる。 血液が全身の細胞へ酸素や栄養分を送ることで、 細胞は活動することができる。 血液の重さの約55%は血しょうの重さである。血しょうの主成分は水(約90%)であり、それに少量のタンパク質(約7%)やグルコース・タンパク質・脂質・無機塩類などが混ざっている。血しょうのタンパク質は、アルブミン(albumin)やグロブリン(globulin)などのタンパク質である。 組織液は、血しょうが毛細血管(もうさいけっかん、capillary)から染み出たものである。組織液の大部分は再び血管にもどる。 {{-}} 赤血球の形は、直径が約8μmの円盤状であり、中央がくぼんでいる。赤血球には核が無い。ヒトの成人の場合、血液1mm<sup>3</sup>あたりの個数は、男子は500万個/mm<sup>3</sup>、女子は450万個/mm<sup>3</sup>。ヒトの赤血球の寿命は約120日である。古くなった赤血球は肝臓や ひ臓 で壊される。骨髄で赤血球は作られる。 赤血球には'''ヘモグロビン'''(hemoglobin)(化学式:'''Hb''' と表記)という赤い色素タンパク質が多量に含まれている。このへモグロビンが肺で酸素O<sub>2</sub>と結合して酸素を運搬する役目を持ち、全身に酸素を運んでいる。ヘモグロビンは鉄(Fe)をふくんでいる。 ヘモグロビンは、酸素濃度が高いと、酸素と結合して'''酸素ヘモグロビン'''('''HbO<sub>2</sub>''')となる。 また、酸素濃度が低いと、酸素と分離しヘモグロビンに戻る。 :Hb+O<sub>2</sub> <math>\leftrightarrows</math> HbO<sub>2</sub> このようにして、酸素濃度の高い肺で酸素を受け取り、 酸素濃度の低い組織へ酸素を運ぶ。 :(※ 範囲外: ) 酸素ヘモグロビンのことを「酸素化ヘモグロビン」と書いても、正しい。(※ 参考文献: 医学書院『標準生理学 第8版』、695ページ、監修: 小澤 瀞司/福田 康一郎、発行:2015年8月1日。 参考文献『標準生理学』にて、「酸素化ヘモグロビン」と表記している。) なお、酸素とまったく結合していない状態のヘモグロビンのことを、脱酸素化ヘモグロビン(deoxyhemoglobin)という。(※ 参考文献: 医学書院『標準生理学 第8版』、695ページ、) この反応は、「酸化」反応ではなく「酸素化」(oxygeneation)反応という、別の反応である<ref>KIM E. BARRETT ほか原著改訂、岡田泰伸 監訳『ギャノング生理学 原著23版 』丸善株式会社、平成23年1月31日 発行、P707</ref>。 :※ 高校生は、「酸素化」反応よりも先に「酸化還元反応」のほうを学ぶのが良いだろう。ヘモグロビンにしか応用できない「酸素化」反応よりも、多くの化学反応に応用できる酸化還元反応のほうを優先的に学ぶべきである。wikibooksでは『[[高等学校化学I/酸化還元反応]]』に酸化還元反応の解説がある。そう考えれば、高校生物で「酸素化」という概念を紹介しない事にも、一理ある。 :(※ 範囲外: ) 酸素と結合していない状態のヘモグロビンのことを「還元ヘモグロビン」と書いても正しい。つまり、脱酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンは同じである。「還元ヘモグロビン」もまた、正式な医学用語である。(※ 参考文献: 『標準病理学 第5版』373ページ、で「還元ヘモグロビン」の名称の記載を確認。) :(※ 範囲外: ) 一酸化炭素中毒や喫煙などのせいにより、一酸化炭素と結合してしまったヘモグロビンのことは、「一酸化炭素ヘモグロビン」などという。(※ 保健体育の検定教科書であつかう。第一学習社の保健体育の教科書などで紹介されている。) 植物では、(そもそも植物に赤血球はないし、)植物はヘモグロビンを持ってない。(※ 検定教科書には無いが、センター試験にこういう選択肢が出る。2017年の生物基礎の本試験。) * 酸素解離曲線(oxygen dissociation curve) [[File:酸素解離曲線.svg|thumb|500px|酸素解離曲線]] *発展 イカとヘモシアニン :(※ 文英堂シグマベスト『理解しやすい生物I・II』で記述を確認。教科書範囲外かもしれないが、参考書などで扱われる話題。) イカなど、いくつかの動物では、銅 Cu をふくむタンパク質の'''ヘモシアニン''' (Hemocyanin)が血液を介して酸素を運ぶ役目をしている動物もいる。ヘモシアニンをふくむ動物の血液は青い。この青色は銅イオンの色である。イカの青い筋は、このヘモシアニンの色である。(※ 参考文献: 文英堂『理解しやすい生物I・II』、2004年版、205ページ) ヘモシアニンをふくむ動物には、イカ・タコや貝などの軟体動物、エビ・カニなどの甲殻類に見られる。これらの動物(イカ、タコ、エビ、カニ)は、血しょう中にヘモシアニンを含んでいる。 人間の血液は、ヘモシアニンをふくまない。 :(発展、終わり。) 酸素ヘモグロビンを多くふくみ酸素濃度の高い血液を'''動脈血'''(arterial blood)と呼ぶ。 ヘモグロビンを多くふくみ酸素濃度の低い血液を'''静脈血'''(venous blood)と呼ぶ。 白血球はヘモグロビンを持たない。白血球は核を持つ。リンパ球やマクロファージは白血球である。体内に侵入した細菌・異物を排除することに白血球は関わる。 血しょうの一部は組織へしみだして組織液になり、栄養分を供給し老廃物を受け取る。 組織液の大部分は血管へ戻り血液となり、一部はリンパ管へ入りリンパ液となる。 リンパ液はリンパ管を通り、鎖骨下静脈で血液と合流する。 === 血液の凝固 === [[File:血液の凝固と血清.svg|thumb|血液の凝固と血清]] 血小板は血液の凝固に関わる。血小板は2μm~5μmほどであり、核を持たない。 血管などが傷つくと、まず傷口に血小板が集まる。そして繊維状のタンパク質である'''フィブリン'''がいくつも生成し、フィブリンどうしと赤血球などの血球とが絡んで'''血ぺい'''(けっぺい)ができる。血ぺいが傷口をふさぐ。このような一連の反応を'''血液凝固反応'''という。 採血した血液を放置した場合でも、血ぺいが生じて、血ぺいが沈殿する。このときの上澄み液を'''血清'''(けっせい、serum)という。血清の色は、やや黄色がかっている。なお、注射した血清は数日すると抗体が無くなってしまい(※ チャート式生物)、また免疫記憶も生じないので(※ 東京書籍の生物基礎の教科書)、予防には役立たない。 *発展 血液凝固反応の仕組み 傷口から'''トロンボプラスチン'''が出る。これが他の凝固因子や血しょう中のカルシウムイオンCa<sup>2+</sup>とともに、'''プロトロンビン'''というタンパク質に作用して、プロトロンビンが'''トロンビン'''という酵素になる。 トロンビンは、血しょうに溶けている'''フィブリノーゲン'''に作用して、フィブリノーゲンを繊維状の'''フィブリン'''に変える。このフィブリンが血球を絡めて血ぺい(けっぺい)をつくる。 血友病(けつゆうびょう)という出血しても止血が始まらない病気は、血液凝固に何らかの不具合があってフィブリンをつくれなくて起きる病気である。 === 体液の循環 === [[画像:Diagram of the human heart (cropped) ja.svg|thumb|right|320px|ヒトの心臓の構造<br />血液の流れは白い矢印で示されている]] 血液は、心臓(heart)によって全身へ送られる。 ヒトの心臓は、右心房(right atrium)、右心室(right ventricle)、左心房(Left atrium)、左心室(Left ventricle)の4部分に分かれていて、'''2心房2心室'''である。ほ乳類の心臓は'''2心房2心室'''である。 '''心筋'''(cardiac muscle)という筋肉でできている。 弁によって血液の逆流を防いでいる。心臓のリズムは、右心房の上部にある'''洞房結節'''(どうぼうけっせつ)という特殊な筋肉の出す電気刺激によって作られる。 全身から送られた血液は、大静脈(vena cava)をとおり、右心房・右心室をとおり、肺動脈(pulmonary artery)をとおり肺へと送られる。 肺で酸素を受け取った血液は、肺静脈(pulmonary vein)をとおり、左心房・左心室をとおり、大動脈(aorta)をとおり全身へ送られる。 肺動脈・肺・肺静脈を通る血液の流れを'''肺循環'''(pulmonary circulation)と呼び、 大動脈・全身・大静脈を通る血液の流れを'''体循環'''(Systemic circulation)と呼ぶ。 {{-}} バッタなど昆虫やエビなど無脊椎動物(invertebrate)の血管系は、毛細血管をもたない'''開放血管系'''(かいほうけっかんけい、open blood-vascular system)である。いっぽう、魚類(pisces)・ほ乳類(mammalia)など脊椎動物(vertebrate)は毛細血管(capillary)をもち、'''閉鎖血管系'''(へいさけっかんけい、closed blood-vascular system)である。 === リンパ系 === 人体各部の組織液の一部は毛細血管に戻らず、毛細リンパ管に入り、リンパ管で合流して、'''リンパ液'''になる。リンパ管は流れ着く先は、最終的には、静脈に合流する。リンパ管には逆流を防ぐための弁が、ところどころにある。リンパ管のところどころに、球状にふくらんだ'''リンパ節'''がある。 リンパ液にふくまれる'''リンパ球'''(lymphocyte)は白血球の一種であり、マクロファージとともにリンパ球は異物を攻撃して、細菌などを排除する。 リンパ球はリンパ節で増殖する。 === 生体防御 === 外部環境から生体を守るために、異物の侵入を阻止したり、侵入した異物を白血球などが除去したりする仕組みを'''生体防御'''(せいたいぼうぎょ)と呼ぶ。 生体防御には、免疫、血液凝固、炎症などがある。 私たち生物の体は栄養豊富なので、もし生体防御の仕組みが無いと、あっという間に病原菌などが繁殖し、私たちは死んでしまう。そうならないのは、生体防御の仕組みが私たちを守っているからである。 生体が異物を非自己と認識して、その異物を排除する仕組みを'''免疫'''(めんえき、immunity)と呼ぶ。 免疫は、病原体や毒素を排除する働きを持つ。 免疫には、白血球の食作用などの先天的に生まれつき備わっている'''自然免疫'''(innate immunity)と、いっぽう、リンパ球などが抗原抗体反応によって異物の情報を記憶して排除するという後天的に獲得される'''獲得免疫'''(acquired immunity)がある。 ==== 自然免疫 ==== 自然免疫は、好中球(neutrophil)、マクロファージ(単球)、樹状細胞(dendritic cell)、リンパ球といった白血球(leukocyte)が、病原体などの異物を食べる現象である'''食作用'''(Phagocytosis)で行われる。食べられた異物は、分解されて排除される。 * 好中球 好中球は自然免疫で、異物を食べて、除去する。攻撃した相手とともに死んでしまう細胞である。そのため寿命は短い。 ケガをしたときに傷口にできる膿は、好中球が死んだものである。 * マクロファージ 自然免疫で異物を食べる。あとで説明する獲得免疫に、異物の情報をつたえる。 近年、マクロファージや好中球などは、ある程度は異物の種類を認識している事が分かった。マクロファージや好中球や好中球などの細胞膜表面には'''トル様受容体'''(TLR)という受容体がある。 :(※ チャート式 生物でトル様受容体を扱っています。) :(※ 検定教科書では、第一学習社の教科書などで扱っています。) トル様受容体には、いくつかの種類があり、反応できる異物の種類が、トル受容体の種類ごとに、ある程度、(反応できる異物の種類が)限られている。 あるトル様受容体(TLR9)は、ウイルスのDNAやRNAを認識する。また他のあるトル様受容体(TLR2)は、細胞膜や細胞壁の成分を認識する。 (※ 読者への注意: TLR9などの具体的な番号は覚えなくてよい。wikibooks編集者が査読しやすいように補記してあるだけである。) べん毛タンパク質を認識するトル様受容体(TLR5)もある。 :※ このように、トル様受容体の種類がいろいろとあることにより、どうやら、白血球は異物の種類を、ある程度は認識できているという仕組みのようである。 * 血液凝固 出血したときは、血小板などの働きによってフィブリン(fibrin)と呼ばれる繊維状のタンパク質が合成され、 フィブリンが血球と絡み合って血餅(けっぺい, clot)となり止血する。 * 炎症 生体が傷ついたときにおこる、赤く腫れる(はれる)症状を炎症(えんしょう、inflammation)と呼ぶ。炎症は自然免疫の一つであり、白血球が異物を除去している。 まず、赤く腫れる原因は、ヒスタミン(histamine)や'''プロスタグランジン'''(prostaglandin、略称:PG)といった警報物質による。(※プロスタグランジンは高校範囲内。数研出版『生物基礎』平成26年発行、P.128 で記述を確認。) なお、プロスタグランジンは脂肪酸から作られる生理活性物質の一つであり、その動物の体の組織・器官などに作用を及ぼす。 :※ なお、ひとまとめに「プロスタグランジン」と言ったが、じつは何種類もある。「プロスタグランジンD2」とか「プロスタグランジンE2」とか「プロスタグランジンF2」など、いくつもの種類がある。種類によって、作用対象の器官・組織も違い、作用の内容も違ってくる。なので、プロスタグランジンの全部の種類をまとめて呼びたい場合、専門書などでは「プロスタグランジン類」などのように、語尾に「類」をつけて呼ぶ場合もある。 :: ※ 高校の範囲外。プロスタグランジンの種類や、種類ごとの作用については、高校理科の範囲外なのは確実なので、普通科高校の高校生は覚えなくて良い。 ヒスタミンやプロスタグランジンなど、これらの警報物質によって、血管が拡張するので、肌が赤く見えるようになる。また警報物質により、毛細血管の透過性が高くなり、水分が血管外に出るので腫れる。 血管から組織にしみでた血液とともに、血液中の白血球もしみでる。そして、しみでた白血球が異物を認識して除去することで、自然免疫が働く。 炎症の症状としては、発熱・発赤・はれ・痛みなどがある。 炎症の際、神経がプロスタグランジンなどによって刺激されるので、痛みが生じる。この痛みによって、私たちは体の異常を感知できる。 また、炎症によって体温が上がるので、雑菌の繁殖が抑えられ、さらに白血球などが活性化する。 * 参考: 鎮痛剤の「アスピリン」 (※ 化学!、化学II で、アスピリンとその鎮痛作用を扱う。下記の説明は高校範囲外。) 鎮痛剤の「アスピリン」(主成分:アセチルサリチル酸。「アスピリン」は商品名)という医薬品は、このプロスタグランジンの合成を阻害することで、鎮痛作用を及ぼすという仕組みであることが、すでに分かっている。プロスタグランジンを合成する酵素のシクロオキシゲナーゼ(略称:COX)の働きを、アスピリンが阻害することで、プロスタグランジンの合成が阻害されるという仕組みである。そして、プロスタグランジンには、いくつもの種類があるので、種類によっては、痛みの機能以外にも、胃液の分泌調整や、睡眠の調整などの様々な機能を持っている。 なので、プロスタグランジンの阻害をする薬では、胃液の分泌異常などの副作用が起きる場合がある。 *体液の酸性 だ液(saliva)は弱酸性、胃液は強酸性などのように、外界と接する体液は、中性ではない体液によって、雑菌の繁殖を防いでいる。 ==== 獲得免疫 ==== 獲得免疫には、後述する「体液性免疫」(たいえきせい めんえき、humoral immunity)がある。 なお「細胞性免疫」(さいぼうせい めんえき、cell-mediated immunity)とは、キラーT細胞によって生じる免疫のこと。キラーT細胞は、トリからファブリキウス嚢を除去しても働く<ref>小林芳郎 ほか著『第4版 スタンダード免疫学』、丸善出版、平成25年3月30日、P.135</ref>ので、細胞性免疫を獲得免疫に含めるかどうか微妙であるが、とりあえず冒頭では言及だけしておく。 :(※ 範囲外:) 結核や一部のウイルス感染症に対しては、後述の「抗体」よりも「キラーT細胞」のほうが役割が大きい<ref>小林芳郎 ほか著『第4版 スタンダード免疫学』、丸善出版、平成25年3月30日、P.137</ref>と言う説がある。一方、結核にはBCGやツベルクリンなどのワクチンがある。なので、キラーT細胞は考えようによっては、獲得免疫に含める事もできるかもしれないが、しかしキラーT細胞の獲得免疫的な性質についてはまだ研究途上の分野なので、分類は微妙ではある。 ===== 体液性免疫 ===== [[File:免疫グロブリンの模式図.svg|320px|thumb|免疫グロブリンの構造]] 免疫グロブリンは、血液などの体液中に含まれている。 体液性免疫は、リンパ球の一部であるB細胞が、'''免疫グロブリン'''といわれる'''抗体'''(こうたい、antibody)を作り行う。抗体は'''免疫グロブリン'''(immunoglobulin、Igと略記)というタンパク質で構成されている。 いっぽう、病原体などの異物に対して抗体が作られた時、その異物を'''抗原'''(こうげん、antigen)と呼ぶ。 抗原と抗体が反応することを'''抗原抗体反応'''(antigen-antibody reaction)と呼ぶ。 病原体などの抗原は、抗体と結合することで、毒性が低下し、また凝集するので、白血球による食作用を受けやすくなる。 免疫グロブリンによる免疫は、体液中の抗体による免疫なので、体液性免疫という。 * 免疫グロブリンの構造と機能 免疫グロブリンはY字型をしたタンパク質である。 免疫グロブリンの構造は、H鎖とL鎖といわれる2種類のポリペプチドが2個ずつ結合した構造になっている。図のように、免疫グロブリンは、合計4本のポリペプチドから構成されている。 H鎖とL鎖の先端部には'''可変部'''(かへんぶ、variable region)という抗体ごとに(免疫グロブリンの可変部の)アミノ酸配列の変わる部分があり、この部分(可変部)が特定の抗原と結合する。そして免疫グロブリンの可変部が抗原と結合することにより、免疫機能は抗原を認識して、一連の免疫反応をする。可変部の配列によって、認識する抗原の構造が異なる。 1種類の抗原に対応する抗体は1種類だけであるが、しかし上述のように可変部が変わりうるので、多種多様な抗原に対応できる仕組みになっている。 免疫グロブリンの構造において、可変部以外のほかの部分は'''定常部'''(ていじょうぶ、constant region)という。 また、H鎖同士、H鎖とL鎖は'''ジスルフィド(S-S)結合'''でつながっている。 * 体液性免疫の仕組み そもそも免疫グロブリンはB細胞で産生される。免疫グロブリンの可変部の遺伝子も、そもそもB細胞の遺伝子が断片的に選択されて組み合わせされたものである。このような遺伝子配列の組み合わせによって、配列のパターンが膨大に増えて何百万とおりにもなるので、このような仕組みによって多種多様な病原体(抗原)に対応している。 より細かく言うと、下記のような順序で、産生される。 樹状細胞などの食作用によって分解された断片が、抗原として提示される(抗原提示)。 そして、その抗原が、'''ヘルパーT細胞'''(ヘルパーティーさいぼう、helper T cell)によって認識される。 抗原を認識したヘルパーT細胞は活性化し、'''B細胞'''(ビーさいぼう)の増殖を促進する。 増殖したB細胞が、'''抗体産生細胞'''(こうたい さんせいさいぼう)へと分化する。 そして抗体産生細胞が、抗体として免疫グロブリンを産生する。 この抗体が、抗原と特異的に結合する('''抗原抗体反応''')。 抗原抗体反応によって、抗体と結合された抗原は毒性が弱まり、またマクロファージによって認識されやすくなり、マクロファージの食作用によって抗原が分解されるようになる。 * 利根川進(とねがわ すすむ)の業績 ヒトの遺伝子は数万種類であるといわれているが(※ 参考文献: 東京書籍の教科書、平成24検定版)、しかし抗体の種類はそれを膨大に上回り、抗体は数百万種類ていどにも対応する。 その仕組みは、B細胞の遺伝子から、選択的に抗体の遺伝子が選ばれるという仕組みになっている。この辺の抗体の種類の計算の仕組みは、1970年代ごろに日本人の生物学者の利根川進などによって研究されており、1987年には利根川進(とねがわ すすむ)はこの業績でノーベル医学・生理学賞を受賞した。 {{コラム|定常部は実は定常ではない| ここでいう「可変部」とは、免疫グロブリンのY形の2股の先端部分のことである。 実は、先端以外の、H鎖の「定常部」も、ヘルパーT細胞やサイトカインなどの働きによって形状・構造の変化することが遅くとも1970年代には分かっている。 定説では(一般の動物では?)、免疫グロブリンには5種類あり、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類のクラスがある。(免疫グロブリンの記法は、 Igなんとか のような記号で表すのが一般的である。) 定常部の変化によって免疫グロブリンの種類(クラス)が変わることを'''クラススイッチ'''という。 いっぽう、「可変部」の変化による組み合わせの種類は数百万~数千万ほどの無数にあるし、実際に抗原に結合する(と考えられる)接触部分は「可変部」である。 :(※ 可変部の組み合わせの個数を「数百万~数千万」とした根拠は、たとえば羊土社『基礎から学ぶ生物学・細胞生物学』和田勝 著、第7版、229ページ、 で無数の抗体の個数の一例として「100万個の抗体」という語句があるので、それを参考にした。) :なお 東京化学同人『免疫学の基礎』、小山次郎、第4版、40ページ では、B細胞クローンの(抗体の)種類として、「10<sup>6</sup>~10<sup>8</sup>」(百万~1億)という数字をあげている。 なので、高校の段階では、「可変部」の変化だけを教えることも、それなりに合理的である。 また、クラススイッチの現象が起きて、ある抗体のクラスがスイッチされても、抗体の可変部は前のままであるので、抗原特異性は変わらない。(参考文献: 東京化学同人『ストライヤー生科学』、Jeremy M.Bergほか著、入村達郎ほか訳、第7版、928ページ。) なお、クラススイッチの発見者・研究者でもある本庶 佑(ほんじょ たすく、1942年 - )が、2018年のノーベル賞を受賞した。ただし、受賞内容の研究は、これとは違う研究テーマである。(時事的な話題であるが、大学レベルの免疫学の教科書では、かなり前からクラススイッチは紹介されている。) クラススイッチについては、AIDと呼ばれる酵素・因子が関わることなどが分かっているが(※ 参考文献: 東京化学同人『分子細胞生物学 第7版』、Lodishほか著、石浦章一ほか訳、 ・・・では、「AID」を酵素として紹介している。)、まだ分子機構に未解明の部分が多いので、高校生は単にこういう現象がある事を知っていればいい。 定常部は、その名に反して、あまり定常ではないのである。 「可変部」だの「定常部」だの、歴史的な経緯により、そういう名前がつけられてしまっているが、あまり実態を反映してないので、名前だけを鵜呑みにしないように気をつけよう。 }} ===== ABO式血液型 ===== 輸血は、血液型が同じ型どうしで輸血するの通常である。 赤血球表面に、抗原にあたる凝集原(ぎょうしゅうげん)AまたはBがある。なお、凝集原の正体は糖鎖である。 血清中に、抗体にあたる凝集素のαまたはβがある。この抗体は、病気の有無に関わらず、生まれつき持っている抗体である。 凝集原と凝集素との組み合わせによって、4つの型に分類される。 {| class="wikitable" style="float:right" |+ ABO式血液型の凝集原と凝集素 !   !! 凝集原(抗原) !! 凝集素(抗体) |- ! A型 |  A ||  β |- ! B型 |  B ||  α   |- ! AB型  |  AB || なし |- ! O型   |  なし ||  α、β |- |} Aとαが共存すると凝集する。 Bとβが共存すると凝集する。 たとえばA型の血をB型のヒトに輸血すると、赤血球が凝集してしまうので、輸血するのは危険である。 A型の糖鎖は、H型糖鎖という糖鎖の末端にNアセチルガラクトースアミン(GalNa)が結合している。 B型は、H型糖鎖という糖鎖の末端にガラクトース(Gal)が結合している。 AB型は、この両方の糖鎖が細胞膜にある。O型の糖鎖はH型糖鎖そのものだけである。 ===== 細胞性免疫 ===== トリからファブリキウス嚢を除去してもウイルス感染しない。このため、抗体とは別にウイルスを除去する機構がある事が分かっている<ref>小林芳郎 ほか著『第4版 スタンダード免疫学』、丸善出版、平成25年3月30日、P.135</ref> そのような抗体とは別のウイルス除去機構の一つとして、キラーT細胞というものがある。 :(※ 範囲外: )なお一方で、動物から胸腺を除去することでT細胞を産生・分化できなくすると、B細胞も産生できなくなる<ref>小林芳郎 ほか著『第4版 スタンダード免疫学』、丸善出版、平成25年3月30日、P.135</ref>。 ともかく細胞性免疫について、下記のキラーというものがある。 抗原提示されたヘルパーT細胞は、'''キラーT細胞'''(killer T cell)とよばれるT細胞を増殖させる。 キラーT細胞は、ウイルスに感染された自己の細胞を攻撃するが、移植細胞や がん細胞 も攻撃することもある。 細胞性免疫は、キラーT細胞が、抗原を直接攻撃して行う。 臓器移植や皮膚移植などで別の個体の臓器や皮膚などを移植すると、たとえ同種の個体からの移植でも、普通、定着しないで脱落する。これを'''拒絶反応'''という。これは細胞性免疫によって異物として移植臓器が認識され、キラーT細胞によって攻撃されたためである。 細胞膜の表面には、'''MHC'''('''主要組織適合性複合体'''、Major Histocompatibility Complex)というタンパク質がある。臓器移植で拒絶反応が起きる場合は、MHCが異なる場合であり、キラーT細胞が移植臓器を攻撃しているのである。 :※ 説明の簡単化のため、ヒトのMHCを想定して解説する。 MHCは個人ごとに異なるので、普通、他人とは一致しない。 T細胞は、相手方細胞の表面にあるMHCを認識している。つまりMHCの違いによって、ヘルパーT細胞が自己と非自己を認識する。そしてヘルパーT細胞が非自己の物質が侵入したことを感知して、キラーT細胞を活性化させる。 なお、ヒトでは、ヒトの白血球の細胞表面にある'''ヒト白血球型抗原'''('''HLA'''、Human Leukocyte Antigen)がMHCとして機能する。血縁関係の無い他人どうしで、HLAが一致する確率は、ほとんど無い。同じ親から生まれた兄弟間で、HLAの一致は4分の1の確率である。移植手術の際、これらの免疫を抑制する必要があり、免疫抑制のために、あるカビから精製した「シクロスポリン」(ciclosporin)という名前の薬剤が、よく免疫抑制剤(めんえきよくせいざい)として使われる。(※ シクロスポリンはいちおう、高校の教科書で紹介されている。)<ref>浅島誠『生物基礎』東京書籍、平成26年2月発行、P.121</ref> <ref>吉田邦久『チャート式シリーズ要点と演習 新生物IB・II』東京書籍、P.121</ref> :(※ 範囲外: )シクロスポリンと名前の似ている物質で、抗生物質の「セファロスポリン」があるので、混同しないように。 :(※ 範囲外: )妊娠歴のある女性や輸血を受けた経歴のある人には、免疫抑制剤が効かなくなる場合がある<ref>宮坂昌之ほか『標準免疫学』、医学書院、第3版、301ページ</ref>。※ 高校教育的には、高校でこういう例外的な専門知識まで教えるわけにはいかないので、現在の高校理科ではあまり免疫抑制剤について教えてないことにも、それなりの理由がある。 臓器移植など移植手術での拒絶反応が起きる際の理由も、MHC(ヒトの場合はHLA)が異なって、T細胞が移植片を非自己と認識するからである(※ 参考文献: 第一学習社『高等学校生物』、24年検定版、26年発行、58ページ)、と考えられている。 なおシクロスポリンは、T細胞によるサイトカイン(このサイトカインは細胞性免疫の情報伝達に関わる物質の一種であり、キラーT細胞などの他の免疫細胞を活性化させる役割を持っている)の産生を阻害することにより、細胞性免疫の作用を抑制している。(※ サイトカインは高校の範囲内) :※ 「サイトカイニン」(植物ホルモンの一種)と「サイトカイン」は全く異なる別物質である。 :※ 検定教科箇所では、MHCの和訳を「主要組織適合性複合体」というかわりに「主要組織適合抗原」などという場合もある。大学の教科書でも、教科書出版社によって、どちらの表現を用いているかが異なっており、統一されていない。たとえば東京化学同人『免疫学の基礎』では「主要組織適合抗原系」という表現を用いている。羊土社『理系総合のための生命科学』では、「主要組織適合性複合体」を用いている。 :※ 余談だが、ヒトのHLA遺伝子の場所は解明されており、第6染色体に6対の領域(つまり12か所の領域)があることが分かっている。高校教科書でも図表などで紹介されている(※ 数年出版や第一学習者の教科書など)。(※ 入試にはまず出ないだろうから、暗記しなくて良いだろう。) :いきなり「HLA遺伝子」と言う用語を使ったが、もちろん意味は、HLAを発現する遺伝子のことである。HLA遺伝子の対立遺伝子の数はけっこう多く、そのため、血縁者ではない他人どうしでは、まず一致しないのが通常である(※ 参考文献: 数研出版の教科書)、と考えられている。いっぽう、一卵性双生児では、HLAは一致する(※ 啓林館の教科書)、と考えられている。 :(※ 範囲外 :) 医学的な背景として、一卵性双生児では、移植手術の拒絶反応が起きづらいことが、実験的事実であるとして、知られている。 :また、医学書などでは、このような一卵性双生児の拒絶反応の起きづらい理由として、MHCが一致しているからだ、と結論づけている(※ 専門書による確認: 『標準免疫学』(医学書院、第3版、42ページ、ページ左段) に、MHCが同じ一卵性双生児では移植の拒絶反応が起きないという主旨の記述あり。) :高校教科書の啓林館の教科書が、一卵性双生児にこだわるのは、こういう医学的な背景があるためだろう。 :なお、移植手術の歴史は以外と新しく、1950年代に人類初の、ヒトの移植手術が行われている。いっぽう、MHCの発見は、1940年代にマウスのMHC(マウスの場合はH-2抗原という)が発見されていた。 :(※ 範囲外 :) 余談だが、胎児は母体とMHCが違うにもかかわらず、胎内では免疫反応は起きない。胎盤が抗体の進入を防いでいると考えられている<ref>小林芳郎 ほか著『第4版 スタンダード免疫学』、丸善出版、平成25年3月30日、P.98</ref>。 :※ 余談: (※ 覚えなくていい。一部の教科書にある発展的な記述。) ::MHCが糖タンパク質であることが分かっている(※ 数研出版の教科書で紹介)。MHCには主に2種類あり、クラスIとクラスIIに分類される(※ 数研出版の教科書で紹介)。 ::MHCの先端には、体内に侵入してきた病原体など有機の異物のタンパク質を分解した断片が、くっつけられ、提示される仕組みである(※ 第一学習社の教科書で紹介)。これによって、MHCからT細胞に情報を送る仕組みである。そして、有機の異物が侵入してない場合にも、MHCの先端には自己のタンパク質を分解した断片がくっつけられており、提示されている。自己タンパク質断片の提示される場合では、T細胞は提示された細胞を自己と認識するので、その場合にはT細胞は活性化されないという仕組みである。 :(※ 調査中:) 侵入した異物がタンパク質やアミノ酸などを含まない場合の異物についてはどうか、専門書を見ても、書かれていない。文献では、異物として、細菌やウイルスを構成するタンパク質を想定している文献ばかりだが、「では、栄養素などを構成するタンパク質やアミノ酸も、細胞は異物として認識するために細胞表面に抗原として提示するのかどうか?」については、残念ながら調査した文献の範囲内では書かれていなかった。) {{コラム|「MHC分子」や「MHC遺伝子」などの用語| [[File:MHC molecule alias japanese.svg|thumb|300px|MHCとT細胞受容体]] 検定教科書には、あまり無い用語なのだが、入試過去問などでMHCについて、「MHC分子」および「MHC遺伝子」という用語がある。(※ 旺文社の標準問題精講あたりで発見。実は実教出版の検定教科書『生物基礎』に「MHC分子」だけ用語がある。) この用語はどういう意味かと言うと、「MHC分子」とは、MHCの機能の受容体などに相当する、細胞膜表面のタンパク質のことである。 検定教科書や参考書のイラストなどで、細胞膜の表面にある受容体のようなものによく(※ 正確には、受容体ではなく、MHCの結合相手のT細胞受容体に結合する(MHCにおける)「リガンド」(※ 大学生物学の用語なので暗記は不要)だが)、単に「MHC」と明記してあるが、「MHC分子」とはその受容体っぽいものの事である。つまり、教科書イラストにある「MHC」が「MHC分子」の事である。 数研出版『生物基礎』の教科書では、「MHC抗原」と言ってる部分が、実教出版のいう「MHC分子」のことである。なお、東京書籍『生物』(専門生物)では、「MHCタンパク質」と言ってる部分でもある。 つまり、公式っぽくイコール記号で表せば MHC抗原 = MHC分子 = MHCタンパク質 となる。 「分子」と言っても、けっして化学のH2O分子とかCO2分子のような意味ではない。 いっぽう、「MHC遺伝子」とは、MHC分子を作らせる遺伝子のこと。 歴史的には、「MHC」は用語の意味が微妙に変わっていき、もともとの「MHC」の意味は今で言う「MHC遺伝子」の意味だったのだが、しかし、次第に研究が進んだり普及するうちに、「MHC」だけだと読み手に混乱を起こすので、日本では意味に応じて「MHC分子」または「MHC遺伝子」などと使い分けるようになっている。 細胞膜のMHCのタンパク質部分の呼び名は英語が MHC molecule という言い方が主流なので、それを直訳すると「MHC分子」になるのだが(大学教科書でも「MHC分子」と表現している教材が多い)、しかしハッキリ言って、「分子」という表現は(少なくとも日本では、)やや誤解を招きやすい。(だから日本の高校教科書では、「MHC抗原」とか「MHCタンパク質」とか、いくつかの出版社がそういう言い方にしているのだろう。 なお、グーグル検索すると、 MHC antigen (直訳すると MHC 抗原)という表現も少々、出てくる。 さて、専門書だと、遺伝子のほうを単に「MHC」でゴリ押ししている書籍もあるが、しかし高校生むけの教材なら、遺伝子のほうを表すなら「MHC遺伝子」と説明するほうが合理的だろう。(だから旺文社の参考書でも「MHC遺伝子」表記になっているわけだ。) }} {{コラム|「T細胞受容体」| :(※ ほぼ範囲外) T細胞には、MHCを認識する受容体がある。なお、T細胞には多くの種類の受容体があり、MHCを認識する受容体以外にも、異なる機能をもった受容体が、いくつもある。 T細胞に存在する、抗原を認識する受容体のことを'''T細胞受容体'''(TCR)という。(※ いちおう、東京書籍と第一学習社の高校教科書にTCRの紹介があるが、他社の教科書には見られない。 :※ じつは「T細胞受容体」「TCR」の意味が、まだ専門家どうしにも統一していないようだ。現状、大きく分けて2種類の意味がある。 ::・意味1: 文字通り、T細胞にある、抗原を認識するための受容体の総称。・・・という意味 ::・意味2: MHCを認識する種類の受容体。・・・という意味 高校の検定教科書(東書、第一)では、主に「MHCを認識する種類の受容体。」の意味で使われている。 :※ 高校卒業以降の生物学の勉強のさいは、どちらの意味なのか、文脈から判断すること。大学レベルの教科書などを見ると、たとえば書籍の最初のほうではMHCを認識するタンパク質の意味として「TCR」を使っていたのに、書籍中の後半部で、T細胞の受容体の総称としての意味に「TCR」が変わっていたりする場合もある。(このように、意味が不統一なので、おそらく、あまり入試にTCRは出ないだろう。もし出るとしても、ここは暗記の必要は無いだろう。) なお、MHCをもつ一般の細胞は、病原体や非自己の有機物が入ってきたとき、それを分解して得られたタンパク質をMHCの上に乗せる。MHCに非自己のタンパク質が乗ったとき、T細胞側の受容体が、MHC と MHCの乗ったタンパク質 を抗原として認識する。 ;B細胞のBCR なお、B細胞の表面にある「BCR」と呼ばれる「B細胞受容体」(B Ce Receptor)については、「BCR」とは抗原と結合する部分で、抗原との結合後にB細胞から分離して免疫グロブリンとして分泌されることになる部分のことである。やはりB細胞もT細胞と同様に、「B細胞受容体」と言っても、けっしてB細胞の受容体のことではないので、注意が必要である。つまり、B細胞では、細胞表面に免疫グロブリンの前駆体があり、抗原との結合後にそれが免疫グロブリンとして分離されるが、それが「BCR」と呼ばれる部分である<ref>熊ノ郷淳ほか『免疫学コア講義』、南山堂、2019年3月25日 4版 2刷、P.37</ref>。 }} * ツベルクリン反応 結核菌のタンパク質を投与して、結核菌に対しての免疫記憶があるかどうかを検査するのが'''ツベルクリン反応検査'''である。 結核菌への免疫があれば、炎症が起こり、赤く腫れる。この反応は細胞性免疫であり、ヘルパーT細胞やマクロファージの働きによるものである。 ツベルクリン反応をされて、赤く腫れる場合が陽性である。いっぽう、赤く腫れない場合が陰性である。 陰性のヒトは免疫が無いので、結核に感染する可能性があり、そのため免疫を獲得させるために弱毒化した結核菌が投与される。 BCGとは、この弱毒化した結核菌のことである。 * インターロイキン (※ 実教出版『生物基礎』(平成24年検定版、147ページ)にインターロイキンの説明をするコラムあり。数研出版と啓林館の専門生物(生物II)にも、記述あり。) 免疫細胞では、'''インターロイキン'''(interleukin)というタンパク質が、主に情報伝達物質として働いている。インターロイキンには、多くの種類がある。 インターロイキンのうち、いくつかの種類のものについては、ヘルパーT細胞からインターロイキンが放出されており、免疫に関する情報伝達をしている。 体液性免疫では、ヘルパーT細胞から(ある種類の)インターロイキンが放出されて、B細胞に情報が伝わっている。こうしてB細胞は抗体産生細胞に変化する。 細胞性免疫では、ヘルパーT細胞が(ある種類の)インターロイキンを放出し、キラーT細胞やマクロファージなどに情報が伝わる。 なお、名前の似ている「インターフェロン」という物質があるが、これはウイルスに感染した細胞から放出され、周囲の未感染細胞にウイルスの増殖を抑える物質を作らせる。(※ チャート式生物(平成26年版)の範囲。) * 樹状細胞などの抗原提示について [[File:MHC for beginners jp.svg|thumb|300px|MHCとT細胞受容体]] マクロファージや樹状細胞も、病原体などを分解して、そのタンパク質断片を(マクロファージや樹状細胞の)細胞表面で抗原提示をして、ヘルパーT細胞を活性化する、・・・と考えられている。(※ 検定教科書では、MHCかどうかは、触れられてない。) (※ まだ新しい分野でもあり、未解明のことも多く、高校生は、この分野には、あまり深入りしないほうが安全だろう。) ===== 免疫記憶 ===== T細胞やB細胞の一部は攻撃に参加せず、'''記憶細胞'''として残り、抗原の記憶を維持する。そのため、もし同じ抗原が侵入しても、1回目の免疫反応よりも、すばやく認識でき、すばやくT細胞やB細胞などを増殖・分化できる。 このため、すぐに、より強い、免疫が発揮できる。 これを'''免疫記憶'''(immunological memory)と呼ぶ。 一度かかった感染病には、再びは、かかりにくくなる。 これはリンパ球の一部が免疫記憶として病原体の情報を記憶しているためである。 免疫記憶は予防接種としても利用されている。 ===== 免疫寛容 ===== 免疫は、個体が未熟なときから存在する。成熟の課程で、リンパ球(T細胞)は、いったん多くの種類が作られ、あらゆる抗原に対応するので、自己の細胞も抗原と認識してしまうリンパ球もできる。いったん自分自身に免疫が働かないように、しかし、自己と反応したリンパ球は死んでいくので、個体の成熟の課程で、自己を排除しようとする不適切なリンパ球は取り除かれる。そして最終的に、自己とは反応しないリンパ球のみが、生き残る。 こうして、成熟の課程で、自己に対しての免疫が抑制される仕組みを'''免疫寛容'''(めんえき かんよう)という。 免疫寛容について、下記のことが分かっている。 まず、そもそも、T細胞もB細胞も、おおもとの原料となる細胞は、骨髄でつくられる。 骨髄で作られた未成熟T細胞は、血流にのって胸腺まで運ばれ、胸腺でT細胞として分化・増殖する。 膨大なT細胞が作られる際、いったん、あらゆる抗原に対応できるようにT細胞がつくられるので、作られたT細胞のなかには自己の細胞を抗原として認識してしまうものも存在している。 しかし、分化・成熟の過程で、自己を攻撃してしまうT細胞があれば、その(自己を攻撃する)T細胞は胸腺で取り除かれる。 このようにして、免疫寛容が達成される。 ==== 免疫の利用 ==== ===== 予防接種 ===== 殺しておいた病原体、あるいは無毒化や弱毒化させておいた病原体などを'''ワクチン'''(英: vaccine<ref>高等学校外国語科用『Standard Vision Quest English Logic and Expression I』、啓林館、令和3年3月5日検定済、令和3年12月10日発行、P121</ref>)という。このワクチンを、人間に接種すると、もとの病気に対しての抗体と免疫記憶を作らせることができるので、病気の予防になる。こうしてワクチンを接種して病気を予防することを'''予防接種'''という。 ワクチン療法の元祖は、18世紀なかばの医師ジェンナーによる、牛痘(ぎゅうとう)を利用した、天然痘(てんねんとう)の予防である。 天然痘は、死亡率が高く、ある世紀では、ヨーロッパ全土で100年間あたり6000万人もの人が死亡したとも言われている。天然痘はウイルスであることが、現在では知られている。 牛痘は牛に感染するが、人間にも感染する。人間に感染した場合、天然痘よりも症状は比較的軽い。 当事のヨーロッパで牛痘に感染した人は、天然痘には感染しにくい事が知られており、また牛痘に感染した人は天然痘に感染しても症状が軽い事が知られていた。このような話をジェンナーも聞いたようであり、牛の乳搾りをしていた農夫の女から聞いたらしい。 ジェンナーは、牛痘に感染した牛の膿を人間に接種することで、天然痘を予防する方法を開発した。 さらに19世紀末にパスツールがワクチンの手法を改良し、天然痘のワクチンを改良するとともに、狂犬病のワクチンなどを開発していった。 狂犬病はウイルスである。 現在では、天然痘のDNAおよび牛痘のDNAの解析がされており、天然痘と牛痘とは塩基配列が似ていることが分かっている。 1980年、世界保健機構(WHO)は、天然痘の根絶宣言を出した。 現在ではインフルエンザの予防にもワクチンが用いられている。インフルエンザには多くの型があり、年によって、流行している型がさまざまである。流行している型とは他の型のワクチンを接種しても、効果が無いのが普通である。 インフルエンザの感染は、鳥やブタやウマなどにも感染するのであり、けっしてヒトだけに感染するのではない。 インフルエンザはウイルスであり、細菌ではない。 インフルエンザのワクチンは、ニワトリの卵(鶏卵)の中で、インフルエンザウイルスを培養させた後、これを薬品処理して無毒化したものをワクチンとしている。このように薬品などで病原体を殺してあるワクチンを'''不活化ワクチン'''という。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンである。いっぽう、結核の予防に用いられるBCGワクチンは、生きた弱毒結核菌である。BCGのように生きたワクチンを'''生ワクチン'''という。 1918年に世界的に流行したスペイン風邪も、インフルエンザである。 インフルエンザは変異しやすく、ブタなどに感染したインフルエンザが変異して、人間にも感染するようになる場合もある。 ===== 血清療法 ===== ウマやウサギなどの動物に、弱毒化した病原体や、弱毒化した毒素などを投与し、その抗体を作らせる。その動物の血液の中には、抗体が多量に含まれることになる。 血液を採取し、そして血球やフィブリンなどを分離し、血清を回収すると、その血清の中に抗体が含まれている。 マムシやハブなどの毒ヘビにかまれた場合の治療として、これらのヘビ毒に対応した血清の注射が用いられている。このように血清をもちいた治療法を'''血清療法'''(けっせいりょうほう)という。血清療法は、免疫記憶は作らないので、予防には役立たない。予防ではなく治療のために血清療法を行う。 ヘビ毒以外には、破傷風(はしょうふう)やジフテリアなどの治療にも血清が用いられる。 血清療法は、1890年ごろ、北里柴三郎が開発した。 ===== 白血病と骨髄移植 ===== (未記述) ==== 病気と免疫 ==== ===== アレルギー ===== 抗原抗体反応が過剰に起こることを'''アレルギー'''(allergy)と呼ぶ。スギ花粉などが原因で起きる'''花粉症'''もアレルギーの一つである。 アレルギーを引き起こす抗原を'''アレルゲン'''(allergen)と呼ぶ。 アレルギーによって、じんましんが起きるきともある。 ヒトによっては卵やソバやピーナッツなどの食品もアレルゲンになりうる。、 ダニやホコリなどもアレルゲンになりうる。 抗原抗体反応によって、呼吸困難や血圧低下などの強い症状が起きる場合もあり、または全身に炎症などの症状が現れたりする場合もあり、このような現象を'''アナフィラキシー'''という。 (つまり、アレルギー反応によって、呼吸困難や血圧低下などの強い症状が起きる場合や、または全身に炎症などの症状が現れたりする場合もあり、このような現象を'''アナフィラキシー'''という。) ハチ毒で、まれにアナフィラキシーが起きる場合がある。ペニシリン(penicillin <ref>高等学校学外国語科用『CROWN English Expression II New Edition』、三省堂、2022年3月30日 発行、P56</ref>)などの薬剤でもアナフィラキシーが起きる場合がある。 ※ 「アナフィラキシー・ショック」(anaphylactic shock)と書いても、正しい。(※ 東京書籍の検定教科書『生物基礎』平成23年検定版、124ページでは「アナフィラキシーショック」の用語で紹介している。) :また、医学用語でも「アナフィラキシーショック」は使われる。(※ 参考文献: 医学書院『標準生理学 第8版』、657ページ、監修: 小澤 瀞司/福田 康一郎、発行:2015年8月1日。 『標準生理学』にて「アナフィラキシーショック」の用語を利用している。)欧米では薬学書として権威的な「カッツング薬理学」シリーズの『カッツング薬理学 原書第10版』和訳版にも「アナフィラキシ-ショック」という用語がある<ref>Bertram G.Katzung 著、柳沢輝行ほか訳『カッツング薬理学 原書第10版』、丸善株式会社、平成21年3月25日 発行、P136</ref>。どうやら、けっして「アナフィラキシ-ショック」日本独自の造語ではなく、欧米でも「アナフィラキ-ショック」という用語は使われるようである。 ※ 「アナフィラキシー」の結果が、血圧低下なのか、それとも炎症なのかの説明が、検定教科書でもハッキリしていない。東京書籍の教科書では、全身の炎症を「アナフィラキシーショック」の症状として説明している。だが実教出版では、血圧低下や呼吸困難を、「アナフィラキシー」の結果としているし、「アナフィラキシーショック」とはアナフィラキシーの重症化した症状だと(実教出版は)説明している。カッツング薬理学を読んでも、「アナフィラキシ-ショック」と「アナフィラキシー」がどう違うのか、あまり明確には書いてないので、高校生は気にしなくて良い<ref>Bertram G.Katzung 著、柳沢輝行ほか訳『カッツング薬理学 原書第10版』、丸善株式会社、平成21年3月25日 発行、P136</ref>。 :※ 「ショック」という用語が医学用語で意味をもつが、高校理科の範囲外なので、あまり「アナフィラキシーショック」の用語には深入りしなくていい。「アナフィラキシー」で覚えておけば、大学入試対策では、じゅうぶんだろう。 :医学などでも、語尾に「ショック」のついてない「アナフィラキシー」という表現もよく使われるので、高校生は「アナフィラキシー」、「アナフィラキシーショック」の両方の言い回しとも覚えておこう。 ===== HIV ===== '''エイズ'''('''後天性免疫不全症候群'''、'''AIDS''')の原因である'''HIV'''('''ヒト免疫不全ウイルス''')というウイルスは、ヘルパーT細胞に感染して、ヘルパーT細胞を破壊する。ヘルパーT細胞は免疫をつかさどる細胞である。そのため、エイズ患者の免疫機能が壊れ、さまざまな病原体に感染しやすくなってしまう。エイズ患者ではヘルパーT細胞が壊れているため、B細胞が抗体をつくることが出来ない。 ふつうのヒトでは発病しない弱毒の病原体でも、エイズ患者では免疫機能が無いため発症することもあり、このことを'''日和見感染'''(ひよりみ かんせん、opportunistic infection)という。 HIVとは Human Immunodeficiency Virus の略。 AIDSとは Acquired Immune Deficiency Syndrome の略。 HIVの遺伝子は変化をしやすく、そのため抗体を作成しても、遺伝子が変化しているので効果が無く、ワクチンが効かない。開発されているエイズ治療薬は、ウイルスの増加を抑えるだけである。 よって、予防が大事である。 ===== 自己免疫疾患 ===== 自己の組織や器官に対して、免疫が働いてしまい、その結果、病気が起きることを'''自己免疫疾患'''という。 関節リウマチ(rheumatoid arthritis)、重症筋無力症(myasthenia gravis)は自己免疫疾患である。I型糖尿病も自己免疫疾患である。 :(※ ほぼ範囲外?)甲状腺ホルモンの分泌過剰の病気であるバセドウ病(Basedow's Disease)の原因は、おそらく自己免疫疾患という説が有力である。書籍によってはバセドウ病は自己免疫疾患だと断定している。 :自己免疫疾患で、自己の甲状腺刺激ホルモンに対して抗体が作られてしまい、その抗体が甲状腺刺激ホルモンと似た作用を示し、抗体が甲状腺の受容体と結合して甲状腺ホルモンが過剰に分泌される、という仕組みがバセドウ病の原因として有力である。 :バセドウ病の症状では、眼球が突出するという症状がある。 ==== その他 ==== ヒトの汗や鼻水や涙にはリゾチームという酵素があり、リゾチームは細菌の細胞壁を破壊する。<ref>『生物基礎』東京書籍、p.114</ref> {{コラム|(※ 範囲外) 「T細胞」と「B細胞」の名前の由来| :※ 啓発林館の生物基礎など。 「T細胞」のTの語源は胸腺(Thymus)である。 「B細胞」の語源は、ニワトリなど鳥類にあるファブリキウス嚢(Bursa of Fabricus)である。研究の当初、まずニワトリのファブリキウス嚢が、ニワトリでは抗体産生に必要なことがわかった。また、ファブリキウス嚢を失ったニワトリは、抗体産生をしないことも分かった。 のちに、哺乳類では骨髄(Bone Marrow)でB細胞がつくられることが分かったが、偶然、Boneも頭文字がBであったので、名前を変える必要は無かったので、現代でもそのままB細胞と呼ばれている。 なお、動物実験で、ニワトリの(ファブリキウス嚢ではなく)胸腺を摘出した場合、この胸腺なしニワトリに(他の個体の皮膚を)皮膚移植をすれば他の個体の皮膚が定着する。 あるいは遺伝的に胸腺の無いヌードマウスなど、胸腺の無い個体の場合、拒絶反応が起きない。(第一学習社の「生物基礎」教科書で、遺伝的に胸腺の無いヌードマウスの皮膚移植を紹介。) }} === 肝臓とその働き === [[画像:Surface projections of the organs of the trunk.png|thumb|right|ヒトの肝臓(liver)、腎臓(kidney)]] 肝臓(かんぞう、liver)は腹部の右上に位置する最も大きな臓器であり、ヒトの成人では1kg以上の重さがあり、約1200g~2000gである。'''肝小葉'''(かんしょうよう)という基本単位が約50万個、集まって、肝臓が出来ている。心臓から出た血液の約4分の1は、肝臓に入る。 肝臓の働きは、栄養分の貯蔵や分解、有害な物質の解毒、不要な物質を胆汁(たんじゅう、bile)として捨てる、などを行っている。 肝臓には肝動脈と肝静脈のほかに、腸からの静脈の血管である'''肝門脈'''(かんもんみゃく)が肝臓を通っている。 腸で吸収されたグルコースやアミノ酸などの栄養が関門脈の中を流れる血液に含まれている。 *血糖値の調節 グルコースの一部は肝臓で'''グリコーゲン'''へと合成され貯蔵される。グリコーゲンは必要に応じてグルコースに分解されて、エネルギー源として消費される。このようにして、血液中のグルコースの量や濃度('''血糖値'''、血糖量)が、一定に保たれる。 *タンパク質の合成・分解 肝臓では血しょうの主なタンパク質の'''アルブミン'''(albumin)を合成しており、また血しょう中の血液凝固に関するタンパク質である'''フィビリノーゲン'''も肝臓で合成している。 *尿素の合成 タンパク質の合成にはアンモニアなど有害な物質が生成するが、肝臓はアンモニアを毒性の低い'''尿素'''(にょうそ)に変えている。尿素は腎臓(じんぞう)に集められ、膀胱(ぼうこう)を経て、尿道から体外へと排出される。 :(※編集者へ ここに「オルチニン回路」の図を追加してください。) 哺乳類や両生類では、アンモニアを尿素に変えてから排出する。なお、魚類は生成したアンモニアを直接、外部に放出している。まわりに水が多いため、アンモニアを直接排出しても害が少ないため、と考えられてる。鳥類やハ虫類では、尿素ではなく尿酸を合成しており、尿酸を排出する。鳥類とハ虫類とも、陸で生まれて、かたい卵で生まれる動物である。 *アルコールなどの分解 そのほか有害な物質の解毒の例としては、アルコールを分解したりしている。 *胆汁 胆汁は肝臓で作られており、胆汁は胆管(bile duct)を通り、胆のう(gallbladder)へ貯蔵され、十二指腸(duodenum)へ分泌される。 胆汁は脂肪を消化吸収しやすくする。胆汁に消化酵素は含まれていない。胆汁は脂肪を小さな粒に変える。このように脂肪を小さな粒に変えることを'''乳化'''(にゅうか)という。 *古くなった赤血球の破壊 古くなった赤血球を破壊する。ヒトの胆汁中に含まれる色素の'''ピリルビン'''は、古くなって破壊した赤血球に含まれていたヘモグロビンに由来している。便(大便)とともに、ピリルビンは排出される。 *体温の維持 合成・分解など様々な化学反応が行われるため、反応熱が発生し、体温の維持にも役立っている。 === 腎臓とその働き === <gallery widths=200px heights=200px> File:Gray1120-kidneys.png|腎臓(kidoney)<br />(※編集者へ あとで、他の簡略図に差し替えてください。) Image:Kidney PioM.png|腎臓の片側の模式図。 3.腎動脈 4.腎静脈 7.輸尿管 13.ネフロン <br />(※編集者へ あとで、他の簡略図に差し替えてください。) </gallery> ヒトなどの高等な動物の場合、腎臓(kidney)は左右一対で背側に位置し、 腎動脈(Renal artery)、腎静脈(renal vein)、輸尿管(ureter)が伸びている。 血液は腎動脈・腎臓・腎静脈を通り、 腎臓は血液中の不要な成分をろ過し尿として輸尿管・膀胱(ぼうこう、bladder)・尿道(にょうどう、urethra)を通り排出する。 [[File:Nephron illustration.svg|thumb|200px|ネフロン<br />1. 腎小体, 5~9あたりは集合管  赤い血管は動脈 青い血管は静脈。  図のように毛細血管が集合している。<br />(※編集者へ あとで、他の簡略図に差し替えてください。)]] 腎臓には'''ネフロン'''(nephron)と呼ばれる構造上の単位があり、 ネフロンは'''腎小体'''(じんしょうたい、renal corpuscle、マルピーギ小体)と'''細尿管'''(さいにょうかん、'''尿細管、腎細管''', renal tubule)からなり、 片方の腎臓あたり、ネフロンは約100万個ある。 腎小体は、毛細血管が球状に密集している'''糸球体'''(しきゅうたい、glomerulus)と、それを囲む'''ボーマンのう'''(Bowman's capsule)からなる。 {{-}} [[File:腎臓の働きと再吸収.svg|thumb|500px|腎臓の働きと再吸収]] タンパク質以外の血漿は糸球体からボーマンのうに ろ過 されて 原尿(げんにょう、primary urine)となり、 原尿は細尿管で、水の'''再吸収'''と、グルコースや無機塩類などの必要な成分が'''再吸収'''される。(「再吸収」も用語) グルコースは、健康なら、すべて(100%)吸収される。これらの再吸収は、ATPのエネルギーを用いた'''能動輸送'''である。 グルコ-ス以外の、水や無機塩類の再吸収率は、体の状況に応じて再吸収率が調節されている。原則的に、血液の塩類濃度を一定に保とうとする方向に、水や塩類の再吸収率は調節されている。この再吸収率の調整の際、ホルモンが関わっている。 原尿は集合管(しゅうごうかん、collecting duct)を通り、ここで水分が再吸収される。ナトリウムイオンは、腎細管でほとんどが再吸収される。その結果、原尿のナトリウム濃度は低い。 尿素は不要なため、再吸収されない。 そして原尿から水分が吸収されたことで、残された尿素などの老廃物や再吸収されなかったものが濃縮して'''尿'''(にょう、urine)となり、体外へ尿として排出される。なお尿素は肝臓で作られる。 ボーマンのうでこし出される原尿は、ヒトの成人男性では1日あたり約170Lもあるが、その大部分は再吸収されるので、最終的に対外に尿として排出される液量は1L~2Lほどになる。99%ほど濃縮されたことになる。 *再吸収とホルモンとの関係 ヒトなどの場合、血液中の塩分濃度が低いと、Naの再吸収がホルモンによって促進される。このホルモンは'''鉱質コルチコイド'''(mineral corticoid)という。腎細管でほとんどのナトリウムが再吸収される。鉱質コルチコイドは副腎皮質から分泌されている。 水の再吸収については、脳下垂体から'''バソプレシン'''(vasopressin)というホルモンが分泌されることによって、集合管での水の再吸収が促進される。 塩類の過剰な摂取などで、血液中の塩類濃度が上昇して体液の浸透圧が上がったときにも、バソプレシンによって水の再吸収が促進され、塩類濃度を下げさせる。水が吸収された結果、尿の液量は少なくなり、尿は濃くなる。 :※参考  このように尿量を減らす作用がバソプレシンにあるため、バソプレシンは「抗利尿ホルモン」(ADH)とも呼ばれる。<ref>嶋田正和ほか『生物基礎』数研出版、平成26年発行、p.119</ref>(※ 検定教科書での「抗利尿ホルモン」の記載を確認。) 専門書などでは「抗利尿ホルモン」の名称のほうを紹介している場合もある。 *再吸収の計算例とイヌリン {{-}} ---- === 水中生物の塩類濃度調節 === ==== 脊椎動物の場合 ==== *淡水魚の場合 淡水(たんすい)とは、川や湖のように、塩分をあまり含まない水のことである。海水は、淡水ではない。淡水魚の場合、体内の塩分を失わせないため、淡水魚は水をほとんど飲まない。淡水魚の えら は、塩分を吸収しやすい特殊な作りになっている。 *海水魚の場合 体内の水分を確保するため、まず海水を飲んで塩ごと水分を補給し、そして、えら から塩分を排出することで、体内の水分を確保している。 体液の塩類濃度が海水よりも低いのが一般である(体液が低張液、海水が高張液)。そのため、浸透によって水分が海水に取られてしまう傾向にある。サメやエイなどの硬骨魚類では、体液中に尿素を溶かすことで体液の塩類濃度を上げることで浸透圧を高めており、体液の浸透圧を海水の浸透圧に近づけている。 ---- *ウミガメの場合 水分の補給は、海水だけを飲むのだが、余分な塩分を排出する塩類腺(せんるいせん)を持ち、塩類腺から、塩分のたかい液体を排出している。腺の場所はウミガメの場合、目のところに腺があるので、陸上で観察すると、あたかも涙を流しているように見える。 *海鳥 アホウドリなどの海鳥は、鼻のところに塩類腺(せんるいせん)を持つ。 ---- ==== 無脊椎動物の場合 ==== 多くの無脊椎動物では、海に暮らす動物の場合でも、いっぽう川に暮らす動物の場合でも、あまり塩類濃度の調節機構が発達していない。 例外的に、いくつかの生物では発達している。 :'''カニの場合''' :*モズクガニ ::川と海を行き来する。浸透圧の調節機構が発達している。 :*ケアシガニ ::外洋のみで暮らす。あまり塩類濃度の調節機構が発達していない。 :*ミドリイサ ガザミ (カニの一種) ::河口付近に生息。浸透圧の調節機構が発達している。 ---- :'''ゾウリムシの場合'''<br /> ::'''収縮胞'''で余分な水を排出する。ゾウリムシは淡水に住む。 ---- === ホルモン === '''ホルモン'''(hormone)とは、'''内分泌腺'''(ないぶんぴせん)という器官から血液へ分泌される物質であり、他の器官に情報を伝える化学物質である。ホルモンは血液によって全身へと運ばれる。そして、特定の器官へホルモンは作用する。'''脳下垂体'''、'''甲状腺'''、'''すい蔵'''などが内分泌腺である。 ホルモンは自律神経に比べて、反応が現れるまでに時間がかかり、比較的遅く、全身へ作用する。ホルモンの主な成分は、タンパク質や脂質やアミノ酸である。このように脂質は、ホルモンの成分として、情報を全身に伝える役目も持っている。脂質は、けっして単にエネルギー源なだけではないのである。 {| class="wikitable" style="float:right" |+ おもなホルモンのはたらき !colspan="2"|  内分泌 !! ホルモン !! はたらき |- | colspan="2"|視床下部 ||  放出ホルモン||  脳下垂体のホルモン分泌の調整 |- | rowspan="4"|脳<br />下<br />垂<br />体 ||rowspan="3"|前葉 || 成長ホルモン ||  成長の促進。タンパク質の合成を促進。<br />血糖値をあげる。 |- | 甲状腺刺激ホルモン||  チロキシン(甲状腺ホルモン)の分泌を促進。 |- | 副腎皮質刺激ホルモン ||糖質コルチコイドの分泌を促進。 |-  |後葉 || バソプレシン ||  腎臓での水分の再吸収を促進。<br />血圧の上昇。 |-  | colspan="2"|甲状腺 ||  チロキシン||  体内の化学反応を促進。 |-  | colspan="2"|副甲状腺 ||  パラトルモン||  血液中のカルシウムイオン濃度を増加。 |-  | rowspan="2"|すい臓 ||A細胞 || グルカゴン ||  血糖値を上げる。 |- | B細胞 || インスリン ||  血糖値を下げる。 |- | rowspan="3"|副腎 ||髄質 || アドレナリン ||  血糖値を上げる。 |- | rowspan="2"|皮質 || 糖質コルチコイド ||  血糖値を上げる。 |- | 鉱質コルチコイド ||  血液中の無機塩類イオン濃度(Na<sup>+</sup>とK<sup>+</sup>)の調節。 |- |} *外分泌腺 いっぽう汗のように体外へ物質を分泌する腺を外分泌腺(がいぶんぴせん)という。外分泌腺には、汗を分泌する汗腺、だ液を分泌する だ腺、乳を分泌する乳腺、などがある。 {{-}} *交感神経と副交感神経 {| class="wikitable" style="float:right" |+ 自律神経系のはたらき !  器官 !! 交感神経の作用 !! 副交感神経の作用 |- | ひとみ || 拡大 ||  縮小 |- | 心臓(拍動) || 促進 ||  抑制 |- | 血圧 || 上げる ||  下げる |- | 気管支 || 拡張 ||  収縮 |- | 胃腸(ぜん動) || 抑制 ||  促進 |- | すい臓<br />(すい液の分泌) || 抑制 ||  促進 |- | 立毛筋 || 収縮 ||  (分布していない) |- | 排尿(ぼうこう) || 抑制 ||  促進 |- |} 自律神経(autonomic nerve)は、意思とは無関係に、他の器官に情報を伝える神経である。 自律神経はホルモンに比べて、比較的早く、局所へ作用する。 自律神経には、働きの異なる二つの神経系があり、'''交感神経'''(こうかんしねけい、sympathetic nerve)と'''副交感神経'''(ふくこうかんしんけい、parasympathetic nerve)とに分けられる。 交感神経は、敵と戦うなどの身体が活動的なときや緊張状態のときに働く。一方、副交感神経は、休息したりなどの身体が非活動的なときに働く。 たとえば、動物が、命がけで敵と戦うとか、あるいは敵に襲われて命がけで逃げなければならない、としよう。そのときの神経の働きを考えよう。 :まず、命がけなので緊張をするはずである。なので、交感神経が働く。敵と戦うにしても、逃げるにしても、すばやく力強く活動をする必要があるので、心臓の拍動が激しくなって、血行が良くなる。また、呼吸が活発になることで、すばやく力強く動けるようになる。いっぽう、敵から攻撃されたときの出血を減らすため、血管は収縮している。交感神経の働きは、このような働きになっている。 このように、交感神経は、闘争(とうそう)や逃走(とうそう)のときに、よく働く。この「闘争や逃走」のことを、英語でも fight or flight (ファイト・オア・フライト)という。 多くの場合、交感神経と副交感神経は、反対の作用を持つので、拮抗(きっこう)的に働く。交感神経と副交感神経は、同じ器官に分布している事が多い。 交感神経は、脊髄の末端から出ていて、分布している。 副交感神経は、'''中脳'''・'''延髄'''および脊髄の末端から出ている。 自律神経は間脳の視床下部に中枢がある。 神経の末端からは、情報伝達のための'''神経伝達物質'''が放出される。 交感神経の末端からは主に'''ノルアドレナリン'''(noradrenaline)という神経伝達物質が分泌される。副交感神経の末端からは、主に'''アセチルコリン'''という神経伝達物質が分泌される。 :(※ 図 レーヴィの実験) {{-}} ==== ホルモンの受容体 ==== ホルモンが作用する器官を'''標的器官'''(ひょうてき きかん)という。標的器官の細胞には、特定のホルモンが結合できる'''受容体'''(じゅようたい)がある。ホルモンの種類ごとに、受容体の種類も異なるので、その受容体を持った特定の器官だけが作用を受けるので、特定の器官だけがホルモンの作用を受ける。 標的器官の細胞で、ホルモンの受容体を持った細胞を'''標的細胞'''という。 *ペプチドホルモン タンパク質でできたホルモンは、分子量が大きいため、細胞膜を透過できない。このよう細胞膜を透過できないホルモンの受容体は、細胞膜の表面にある。アミノ酸が多数つながった長いものをペプチドというのだが、ペプチドでできたホルモンを'''ペプチドホルモン'''という。(※ 高校教科書の範囲内)<ref>吉里勝利ほか『高校生物』第一学習社、平成26年2月10日発行、p.54</ref> :もし読者が高校科学をまだ習ってなくてペプチドとは何かを分からなければ、とりあえずペプチドとはタンパク質のことであり、ペプチドホルモンとはタンパク質で出来たホルモンだと思えばよい。 一般にタンパク質が細胞膜を透過できないため、ペプチドホルモンも細胞膜を透過できないのが普通である。インスリンはペプチドホルモンである。 なおホルモンに限らず、伝達物質が細胞膜にある受容体と結合したあとの、細胞内へ情報が伝わる仕組みは、カルシウムイオンCa<sup>2+</sup> を用いて情報伝達をしたり、あるいはcAMP(サイクリックアデノシン一リン酸、サイクリックAMP)や Gタンパク質 が、情報伝達に用いられる。cAMPやGタンパク質は酵素などに作用する。<ref>吉里勝利ほか『高校生物』第一学習社、平成26年2月10日発行、p.54</ref>なおcAMPはATPをもtにして酵素反応によって作られる。<ref>浅島誠ほか『生物』東京書籍、平成26年2月10日発行、p.24</ref>(※ これらの話題は高校教科書の範囲内) これらカルシウムイオンやcAMPやGタンパク質のような、このような細胞内の情報伝達物質を'''セカンドメッセンジャー'''(second messenger)という。<ref>吉里勝利ほか『高校生物』第一学習社、平成26年2月10日発行、p.54</ref> (※ 高校教科書の範囲内) ペプチドホルモンから細胞への情報伝達においても、カルシウムイオンやcAMPやGタンパク質がセカンドメッセンジャ-として機能する。 * ステロイドホルモン いっぽう、脂質やアミノ酸を主成分とするホルモンの場合は、細胞膜を透過することができる。なぜなら、これらのホルモンは脂溶性であり、そしてホルモンが脂溶性ならば、リン脂質を主成分とする細胞二重膜を透過できるからである。このような細胞膜を透過するホルモンに結合するための受容体は、細胞内にある。 脂質でできたホルモンには、脂質の一種であるステロイド(steroid)で出来ているホルモンも多い。私たちヒトの脂質のコレステロールも、ステロイドの一種である。ステロイドでできたホルモンを'''ステロイドホルモン'''(steroid hormone)という。糖質コルチコイドや鉱質コルチコイドは、ステロイドホルモンである。ステロイドホルモンは、脂質に溶けやすく、そのため細胞膜を透過しやすい。(※ 高校教科書の範囲内)<ref>吉里勝利ほか『高校生物』第一学習社、平成26年2月10日発行、p.55</ref> つまり糖質コルチコイドや鉱質コルチコイドは、脂質に溶けやすく、細胞膜を透過しやすい。 ---- 例外もあり、脂質を主成分としながらも細胞膜に受容体を持つホルモンも発見されている。<ref>浅島誠ほか『理系総合のための生命科学』羊土社、2007年2月25日発行、p.256</ref>(※ 高校の範囲外) :なお、実際のホルモンでは、タンパク質を成分とするホルモンでも、中には脂肪酸を持っていたりする物があったり、あるいは糖鎖がついていたりなど、より複雑である。<ref>浅島誠ほか『理系総合のための生命科学』羊土社、2007年2月25日発行、p.256</ref>(※ 高校の範囲外) ==== ホルモンの発見の歴史 ==== 胃酸などを含んだ酸性の消化物が十二指腸に入ると、十二指腸から'''セクレチン'''(secretin)が分泌される。 当初、これは神経の働きだと考えられていた。 しかし1902年にベイリスとスターリングは、神経を切断した十二指腸に塩酸を注入すると、すい液が分泌される事を発見した。 さらに、体外に取り出した十二指腸の粘膜に塩酸を掛けてしぼった液を、すい臓(pancress)への血管に注射しても、すい液が分泌された。 これらの実験結果によって、十二指腸で作られた物質が血管を通してすい臓へ送られて、すい液の分泌を即していることが分かった。すい液の分泌を促進する物質は、'''セクレチン'''と名づけられた。 ==== ホルモン分泌の調節 ==== ホルモン分泌で中心的な役割をしている器官は、間脳にある'''視床下部'''(ししょうかぶ、hypothalamus)と、視床下部の下にある'''脳下垂体'''である。 脳下垂体には前葉と後葉がある。 *神経分泌(しんけいぶんぴ) 間脳の視床下部には、ホルモンを分泌する神経細胞があり、これを'''神経分泌細胞'''(しんけい ぶんぴつ さいぼう、neurosecretory cell)という。また、このように神経がホルモンを分泌することを'''神経分泌'''(しんけい ぶんぴ)という。この間脳の神経分泌細胞により、脳下垂体の血管中にホルモンが分泌される。この神経分泌のホルモンは、脳下垂体のホルモンを調節するための放出ホルモン(releasing hormone)または放出抑制ホルモン(inhibiting hormone)である。 視床下部から伸びている神経分泌細胞が、脳下垂体に作用して、脳下垂体のホルモン分泌を調節している。 脳下垂体の前葉と後葉とで、分泌される血管の位置が違う。 脳下垂体前葉では、視床下部にある血管に分泌し、その血管が前葉まで続いて脳下垂体に作用している。前葉からは'''成長ホルモン'''(growth hormone)などが分泌される。 いっぽう、脳下垂体後葉では、視床下部からつながる神経伝達細胞が後葉まで続いており、後葉中の血管に、神経伝達細胞が直接、ホルモンを分泌している。 後葉からは、水分調節に関わる'''バソプレシン'''というホルモンが分泌され、バソプレシンによって腎臓での集合管における水の再吸収などが促進される。 *チロキシン [[File:Thyroxine feedback jp.svg|thumb|450px|チロキシンのフィードバックによる調節]] のどの近くにある甲状腺(こうじょうせん、thyroid gland)からは'''チロキシン'''(thyroxine)が分泌される。 チロキシンは代謝を活性化するホルモンであり、酸素の消費やグルコースの消費が、活発になる。 視床下部は、チロキシンの濃度を、つぎのような仕組みで調節している。 チロキシンによって、視床下部や脳下垂体による甲状腺刺激が抑制されるという仕組みである。 視床下部や脳下垂体は、チロキシンが多くなりすぎないように、チロキシンによってホルモンを抑制する。チロキシンによって視床下部は甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンを抑制する。また、チロキシンによって、脳下垂体は甲状腺刺激ホルモンを抑制する。こうして、チロキシン自身が最終的に、甲状腺からのチロキシン分泌を抑制するように働きかける。 逆にチロキシンが少なくなると、視床下部や脳下垂体が、甲状腺刺激ホルモンを通して甲状腺にチロキシンを増やすように働きかける。 チロキシンを受け取った細胞では代謝が活発になる。 このように、最終産物(この場合はチロキシン)が、前の段階(この場合は視床下部や脳下垂体)に働きかけることを'''フィードバック'''(feedback)という。 フィードバックは生物学に限らず、多くの分野で見られる現象だが、とりあえず生物学を例に説明する。 フィードッバックが前の段階を抑制する場合、負のフィードバック(negative feedback)という。ふつう、ホルモンは負のフィードバックによって、濃度などが一定の範囲内に近づくように調節されている。 :(※編集注 バソプレシンのフィードバックの図を追加。) 腎臓での水の再吸収に関わるバソプレシンも、負のフィードバックによって一定に保たれる。この結果、バソプレシンが人体の水分調節のためのホルモンとして働くことになる。 いっぽう、フィードバックによって、前の段階が促進される場合を正のフィードバックという。電子機械などで見られる現象で、たとえば音声マイクとスピーカーのハウリング現象(マイクをスピーカーに近づけたときの、うるさい現象。※ うるさいので実験しないように。)などが、正のフィードバックにあたる。 ハウリングの起きる仕組みは、マイクから入力された音が、スピーカーから出て、そのスピーカーから出た音をマイクがひろってしまうので、さらにスピーカーから音が出るので、音が大きくなり、その大きくなった音をふたたびマイクがひろってしまうので、さらにスピ-カーから、もっと大きな音が出てしまい、そしてさらに・・・という、とてもうるさい現象である。 ==== ホルモンの働き ==== ===== 心臓の拍動の調節 ===== 心臓の拍動は延髄と自律神経によって調節されている。 運動などによって酸素が消費され、二酸化炭素濃度が高くなると、 延髄は交感神経を働かせ、 交感神経の末端から'''ノルアドレナリン'''(noradrenaline)が放出され、 心臓の拍動数が増加する。 逆に安静時に酸素の消費量が減り、二酸化炭素濃度が低くなると、 延髄は副交感神経を働かせ、 副交感神経の末端から'''アセチルコリン'''(acetylcholine)が放出され、 心臓の拍動数が減少する。 心臓の拍動の調節の実験には、 [[w:オットー・レーヴィ|オットー・レーヴィ]]のカエルの心臓を用いた[[w:オットー・レーヴィ#研究|実験]]がある。 レーヴィは2つのカエルの心臓を取り出してつなぎ、リンガー液を循環させる装置を作った。 片方の心臓からのびる迷走神経(副交感神経)を刺激すると、その心臓の拍動数が減少し、 しばらくして、もう片方の心臓の拍動数も減少した。 これにより、迷走神経のシナプスから化学物質が分泌され、 心臓の拍動数を制御していることが明らかとなった。 その化学物質は、今日ではアセチルコリンであることが分かっている。 ===== 浸透圧の調節 ===== 魚類の浸透圧の調節は、えら・腸・腎臓などで行われ、 淡水魚と海水魚の場合でその働きは異なっている。 淡水魚の場合、水分が体内に侵入するため、 えらや腸で無機塩類を吸収し、 腎臓で体液より低張の尿を大量に排出する。 海水魚の場合、水分が体外に出るため、 海水を大量に呑み込み腸で吸収し、 腎臓で体液と等張の尿を少量排出する。 また、えらから無機塩類を排出する。 哺乳類の浸透圧の調節は、腎臓で行われる。 また、腎臓の働きは、間脳視床下部・脳下垂体後葉や副腎皮質(ふくじんひしつ、adrenal medulla)によって調節されている。 水分の摂取などで、低浸透圧になった場合、副腎皮質が働く。 副腎皮質からは'''鉱質コルチコイド'''(mineral corticoid)が分泌される。 鉱質コルチコイドは腎臓の細尿管から無機塩類の再吸収を促進する働きがある。 水分の不足などで、高浸透圧になった場合、 間脳視床下部、脳下垂体後葉が働く。 脳下垂体後葉からは'''バソプレシン'''(vasopressin)が分泌される。 バソプレシンは腎臓の細尿管から水分の再吸収を促進する働きがある。 ===== 血糖値の調節 ===== 血液中に含まれるグルコースを'''血糖'''(けっとう、blood glucose)という。 健康なヒトの場合の血糖の含有量は一定の範囲に保たれ、空腹時で血液100mLあたり、ほぼ100mgという濃度である。 このような血統の値を'''血糖値'''(けっとうち)という。または血糖量という、または血糖濃度という。 グルコースは細胞の活動に必要な糖である。 血糖値が低すぎたり高すぎたりすると様々な症状を引き起こすため、 ホルモンと自律神経によって一定に保たれている。 食事などで炭水化物や糖質を取ると、一時的に血糖値が上昇する。逆に、急激な運動の後などでは下がっている。 血糖値が60mg以下(血液100mLあたり)だと、意識喪失や けいれん などが起き、危険である。運動などによって低血糖になると、間脳の視床下部が働く。 さて、血糖の調節に関わる器官は、すい臓および視床下部である。 視床下部は、交感神経によって、すい臓と副腎髄質を働かせる。 ---- *低血糖の場合 グリコーゲンが、つぎの仕組みで分解されることで、グリコーゲンからグルコースが取り出され、グルコース濃度を上げる仕組みである。 すい臓の'''ランゲルハンス島'''の'''A細胞'''からは'''グルカゴン'''(glucagon)が分泌され、 副腎髄質(ふくじんひしつ、adrenal medulla)からは'''アドレナリン'''(adrenaline)が分泌される。 グルカゴンやアドレナリンは、グリコーゲンをグルコースへ分解させる働きがある。 また、視床下部は放出ホルモンで脳下垂体前葉を働かせ、脳下垂体前葉は副腎皮質刺激ホルモンで副腎皮質を働かせ、副腎皮質からアドレナリンが分泌される。 また、副腎皮質が分泌する'''糖質コルチコイド'''(glucocorticoid)が、タンパク質を分解させて、その分解された元タンパク質を材料としてグルコースを合成させる。糖質コルチコイドは、タンパク質をグルコースへ分解させる働きがある。 アドレナリンやグルカゴンが、肝臓や筋肉に働きかけ、貯蔵されているグリコーゲンの分解を促進する。(肝臓や筋肉にはグリコーゲンが蓄えられている。) これらの反応の結果、血糖値が上昇する。 *高血糖の場合 食事などによって高血糖になると、すい臓の'''ランゲルハンス島'''の'''B細胞'''が、血糖値の上昇を感知し、B細胞が'''インスリン'''(insulin <ref>高等学校学外国語科用『CROWN English Expression II New Edition』、三省堂、2022年3月30日 発行、P56</ref>)を分泌する。 インスリンは、グルコースをグリコーゲンへ合成させたり、 グルコースを細胞へ吸収・分解させたりする働きがある。 このインスリンが、細胞でのグルコースを用いた呼吸を促進したり、肝臓でのグリコーゲンの合成を促進するので、結果的にグルコースの消費が促進されるので、グルコースの濃度が下がり、グルコース濃度が通常の濃度に近づくという仕組みである。 また、間脳の視床下部でも血糖値の上昇は感知され、副交感神経の刺激を通じて、すい臓にインスリンの分泌をうながし、すい臓のランゲルハンス島B細胞がインスリンを分泌する。 ---- *糖尿病 (※ 高校の範囲'''内''') いっぽう、病気により血糖値が常に200mgを越えると、'''糖尿病'''(とうにょうびょう、diabetes <ref>荻野治雄『データベース4500 完成英単語・熟語【5th Edition】』、桐原書店、2020年1月10日 第5版 第6刷発行、P.388</ref>)という病気だと判断される。<ref>文部科学省『高等学校用 疾病と看護』教育出版、平成25年発行、P.51</ref> (※ 高校理科の範囲内<ref>浅島誠『生物基礎』東京書籍、平成26年2月発行、P.108</ref>) 糖尿病とは、すい臓からのインスリン分泌が、うまくは分泌されなくなってしまった病気である。インスリンが細胞と結合すると、グルコースを消費させる。しかし、インスリン分泌がうまくいかないと、この消費がなくなってしまい、その結果、グルコースが余る。 その結果、原尿にグルコースが高濃度で含まれるので細尿管でのグルコース吸収が間に合わず、尿中に高濃度のグルコースが含まれて排出される。 (もし健康なヒトなら、原尿のグルコースは、ほぼ100%再吸収されてるので、尿中には高濃度のグルコースは排出されない。なのに高濃度のグルコースを含む尿が排出されるという事は、つまり病気に掛かっている事になる。) 高血糖が長く続くと、欠陥が変性して血流が低下してしまい、その結果、眼や腎臓などの、さまざまな器官で障害を起こす。糖尿病には、このような各器官での合併症があるため、危険な病気である。 糖尿病の分類は、大きくは二つの種類に分けられる。 まず、インスリンを分泌する細胞そのものが破壊されていて分泌できない場合のI型糖尿病がある。若くして発症することが多い。 もう一つは、I型とは別のなんらかの原因で、インスリンの分泌量が低下したり、インスリンに細胞が反応しなくなる場合であり、これをII型糖尿病という。肥満や喫煙・運動不足などの生活習慣病などによる糖尿病で、II型糖尿病が多く見られている。 日本の糖尿病患者の多くはII型である。 糖尿病の治療には、I型・II型とも、インスリンの投与が行われる。患者は、食後などに毎回、自分でインスリンを注射しなければならない。 II型の生活習慣が原因と考えられる場合、食事の見直しや、適度な運動なども、治療に必要になる。 糖尿病の症状として頻尿(ひんにょう)がある。<ref>庄野邦彦ほか『生物基礎』実教出版、平成26年1月発行、P.51</ref>(※ 高校の範囲'''内''') この原因は、原尿の浸透圧が血糖によって上昇したことにより、細尿管での水分の再吸収が減るためだと考えられてる。<ref>有田和恵ほか『解剖生理学』照林社、2007年6月発行、P.206</ref>(※ 高校の範囲'''外''') また、頻尿などにより水分が低下するので、のどの渇きが起きる。 ---- 血糖値をあげるホルモンの種類は多く仕組みも複雑である。なのに、血糖値を下げるホルモンはインスリンのみしか今のところ知られておらず、また仕組みも単純である。この事から、動物は、飢餓に適応して、血糖値の調節の機構を進化させてきたと考えられている。飽食の時代よりも、飢餓の時代のほうが、圧倒的に多かったのだろうと考えられている。 ===== 体温の調節 ===== 変温動物は、体温調節が不完全で、体温は外部環境によって変化する。 一方、恒温動物では、体温は、外部環境によらず、一定に保たれている。ヒトの場合、健康なら、体温は約37℃に保たれる。 体温の調節は、ホルモンや自律神経が行っている。体温調節の中枢のある場所は、間脳の視床下部にある。 *体温が低下した場合 寒さによって体温が低下すると、間脳の視床下部が働く。 視床下部は、交感神経やホルモンによって、肝臓や筋肉の代謝を促進し、発熱量を増加させる。 また、交感神経によって皮膚の血管や立毛筋を縮小させ、熱放散を減少させる。また、骨格筋をふるわせることで、熱を産生する。 また、チロキシンやアドレナリンなどが分泌され、肝臓での物質の分解を促進して熱を産生する。 *体温が上昇した場合 暑さによって体温が上昇すると、間脳の視床下部が働く。 視床下部は、交感神経によって、 皮膚血管を拡張し、汗腺から発汗させ、熱放散を増加させる。 また、副交感神経によって、肝臓での物質の分解が抑制され、熱の産生を抑える。 ==== その他 ==== [[File:Thyroide.jpg|thumb|甲状腺(こうじょうせん)の場所]] ヒトの 「のどぼとけ」 の、すぐ下には、甲状腺という器官がある。この甲状腺は、甲状腺ホルモンというホルモンを分泌している器官である。ホルモンとは、体内のいろいろな働きを調節するための分泌物(ぶんぴぶつ)である。くわしくは、中学の保健体育で習うか、または高校生物で習う。 さて、甲状腺ホルモンの主成分はヨウ素である。ヨウ素は、ワカメやコンブなどの海ソウに多く含まれている。 さて、通常のヨウ素には放射能(ほうしゃのう)が無く、安全である。だが、原子力発電などの原子核分裂では、放射性のある様々な原子が作られる。その中に放射性のある特別なヨウ素も作られる場合がある。 原子力発電などの事故などへの対策として、原子力発電所などの近隣地区に ヨウ素剤(ようそ ざい) が配布される理由は、この放射能のある特別なヨウ素が甲状腺に集まらないようにするためである。 体内に吸収されたヨウ素は、甲状腺に集まる性質がある。なので、あらかじめ、普通のヨウ素を摂取しておけば、放射性のある特別なヨウ素を吸収しづらくなるのである。もしくは、仮に吸収してしまっても、通常のヨウ素によって、放射性のあるヨウ素が、うすめられる。 なお、甲状腺ホルモンの働きは、体内での、さまざまな化学反応を促進(そくしん)する働きがある。 :(※ 範囲外)なお、ウランやプルトニウムの経口摂取などでの化学反応的な毒性は、実は不明である。ウランなどの放射線による毒性が高すぎるので、それが経口毒性などを覆い隠してしまうので、もし化学反応的な毒性があったとしても区別がつかない状況である。(※ ネットには、「ウランなどには経口摂取の毒性が無い」というデマがあるので、念のため記述。) 科学系に強い文庫である講談社ブルーブックス文庫の『元素118の新知識』によれば、引用「プルトニウムは放射性物質として危険であるだけではなく、化学的にもきわめて毒性が強い元素として知られている。」<ref>桜井弘『元素118の新知識』、講談社(講談社ブルーバックス文庫)、2017年8月20日 第1版発行、P420、</ref> 中略 引用「経口摂取や吸入摂取により体内に取り込まれ、長く体内に留まる場合には、その放射性および化学的反応性によって発がん性に結びつく。」<ref>桜井弘『元素118の新知識』、講談社(講談社ブルーバックス文庫)、2017年8月20日 第1版発行、P420、</ref> である。 経口摂取の無毒性デマを真っ向から講談社ブルーバックスは否定している。 ほかにも、出典が見つからなかったので紹介しないが、放射線医学の専門書などを見ても、プロトニウムの放射性毒性ではなく化学毒性の可能性については、昔からよく学問的にも言われていることである。(※ この段落のwiki著者の地元の図書館に昔は放射線医学の専門書が置いてあったが2022年に図書館の本棚を調べたら文献が消失していた(※ 一般に公立図書館では古い書籍は廃棄処分などをされてしまうので)) ---- [[カテゴリ:生物学]]
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2022-12-01T10:26:20Z
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高等学校 生物基礎
「生物基礎」は、中学校までに学習した内容を基礎として、日常生活や社会との関連を図りながら生物や生物現象に関わり、理科の見方・考え方を働かせ、見通しをもって観察、実験を行って、科学的に探究するために必要な資質・能力を育成する科目です。 「生物基礎」の特徴は、生物や生物現象に関わる基礎的な内容を扱い、日常生活や社会との関連を図りながら、生物や生物現象について理解させるとともに、科学的に探究する力と態度を育成します。 ※本解説では令和4年以降の新課程東京書籍の生物基礎教科書順番にそってリンクを掲載しています。 私達が住む地球には、どんな生物がいるのでしょうか?そもそも生き物って何なのでしょう?中学校では、細胞から生物の体は出来ており、生きるにはエネルギーが必要だと習いました。では、生きるとはいったいどういう意味なのでしょうか。生物の特徴を知る旅に出かけましょう。 本章は旧生物II(理系のみ)の内容でしたが、現在の教科書では生物基礎で習う項目に移行しています。地理の気候とも絡んでおり、地理の気候の内容をある程度知っておかないと難しい内容といえるでしょう。
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 「生物基礎」は、中学校までに学習した内容を基礎として、日常生活や社会との関連を図りながら生物や生物現象に関わり、理科の見方・考え方を働かせ、見通しをもって観察、実験を行って、科学的に探究するために必要な資質・能力を育成する科目です。  「生物基礎」の特徴は、生物や生物現象に関わる基礎的な内容を扱い、日常生活や社会との関連を図りながら、生物や生物現象について理解させるとともに、科学的に探究する力と態度を育成します。 ※本解説では令和4年以降の新課程東京書籍の生物基礎教科書順番にそってリンクを掲載しています。
[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校理科]]>[[高等学校生物]]>高等学校 生物基礎  「生物基礎」は、中学校までに学習した内容を基礎として、日常生活や社会との関連を図りながら生物や生物現象に関わり、理科の見方・考え方を働かせ、見通しをもって観察、実験を行って、科学的に探究するために必要な資質・能力を育成する科目です。  「生物基礎」の特徴は、生物や生物現象に関わる基礎的な内容を扱い、日常生活や社会との関連を図りながら、生物や生物現象について理解させるとともに、科学的に探究する力と態度を育成します。 ※本解説では令和4年以降の新課程東京書籍の生物基礎教科書順番にそってリンクを掲載しています。 == Feature == # [[高等学校 生物基礎/探究活動の進め方|探究活動の進め方]] # [[高等学校 生物基礎/顕微鏡の使い方|顕微鏡の使い方]] == Part1 生物の特徴==  私達が住む地球には、どんな生物がいるのでしょうか?そもそも生き物って何なのでしょう?中学校では、細胞から生物の体は出来ており、生きるにはエネルギーが必要だと習いました。では、生きるとはいったいどういう意味なのでしょうか。生物の特徴を知る旅に出かけましょう。 === Section1 生物の多様性と共通性=== # [[高等学校 生物基礎/多様な生物の共通性|多様な生物の共通性]] {{進捗|00%|2022-00-00}} # [[高等学校 生物基礎/生物共通の単位(細胞)|生物共通の単位(細胞)]] {{進捗|100%|2022-07-10}} # [[高等学校 生物基礎/個体の成り立ちと多様性|個体の成り立ちと多様性]] {{進捗|100%|2022-07-21}} ## [[高等学校理科 生物基礎/細胞とエネルギー|細胞とエネルギー]] {{進捗|25%|2015-01-16}} === Section2 細胞とエネルギー=== == Part2 遺伝子とその働き== ## [[高等学校理科 生物基礎/遺伝情報とDNA|遺伝情報とDNA]] {{進捗|75%|2018-12-12}} ## [[高等学校理科 生物基礎/遺伝情報の分配|遺伝情報の分配]] {{進捗|75%|2018-12-12}} ## [[高等学校理科 生物基礎/遺伝情報とタンパク質の合成|遺伝情報とタンパク質の合成]](旧課程では生物IIの一部に対応 {{進捗|75%|2018-12-12}} # == Part3 生物の体内環境の維持 == ## [[高等学校理科 生物基礎/体液|体液]] ## [[高等学校理科 生物基礎/血液とその循環|血液とその循環]] ## [[高等学校理科 生物基礎/内臓と体内環境|内臓と体内環境]] ## [[高等学校理科 生物基礎/ホルモンによる体内環境の調節|ホルモンによる体内環境の調節]] {{進捗|75%|2015-01-25}} ## [[高等学校理科 生物基礎/免疫|免疫]] ## [[高等学校理科 生物基礎/神経による体内環境の調節|神経による体内環境の調節]] {{進捗|75%|2015-01-25}} == Part4 生物の多様性と生態系== === Section1 多様な植生と遷移=== # [[高等学校 生物基礎/植物と環境の関わり|植物と環境の関わり]]{{進捗|100%|2022-09-18}} # [[高等学校 生物基礎/様々な植生|様々な植生]]{{進捗|100%|2022-09-18}} # [[高等学校 生物基礎/植生の移り変わり|植生の移り変わり]]{{進捗|00%|2022-07-10}} === Section2 バイオームとその分布===  本章は旧生物Ⅱ(理系のみ)の内容でしたが、現在の教科書では生物基礎で習う項目に移行しています。地理の気候とも絡んでおり、地理の気候の内容をある程度知っておかないと難しい内容といえるでしょう。 # [[高等学校 生物基礎/地球上の植生分布|地球上の植生分布]]{{進捗|100%|2022-09-29}} # [[高等学校 生物基礎/様々なバイオーム|様々なバイオーム]]{{進捗|75%|2022-07-08}} === Section3 生態系とその保全=== ## [[高等学校理科 生物基礎/生態系|生態系]] {{進捗|100%|2022-07-09}} == 関連科目 == # [[高等学校化学I/物質と原子]] {{進捗|75%|2017-02-07}} # [[高等学校化学I/化学結合]] {{進捗|75%|2017-02-07}} # [[高等学校化学I/炭化水素/有機化合物/有機化合物とその構造]] {{進捗|75%|2016-01-10}} [[Category:高等学校教育|生せいふつ1]] [[Category:理科教育|高せいふつ1]] [[Category:生物学|高せいふつ1]] [[category:高校理科|せいふつきそ]]
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2022-11-16T07:17:14Z
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高等学校理科 生物基礎/神経による体内環境の調節
また、脳または脊髄である中枢神経と、それ以外の一般の神経である末梢神経の違いも中学で習っている。 神経には、体内環境の維持に働いている末梢神経があり、自律神経系(じりつしんけいけい、autonomic nervous system)という。 自律神経系には、交感神経(こうかんしんけい、sympathetic nerve)と副交感神経(ふくこうかんしんけい、parasympathetic nerve)がある。交感神経と副交感神経は対抗的に働くことが多い。() 交感神経と副交感神経は、下記のように、働きが異なり、片方の神経が促進の働きならもう一方の神経は抑制のように、互いに反対の働きをしている。このようなことを、交感神経と副交感神経とは「拮抗」(きっこう)している、という。 自律神経が交感神経と副交感神経とで拮抗しあっている理由は、バランスをとるためだというのが定説である(※ 東京書籍の見解)。 (※ 専門生物の範囲 :)ヒトの脳神経は12対であり、脊髄神経は31対である。 このように、自律神経系は、意思とは無関係に、体内を調節している。 また、一部の例外を除き、同じ器官に交感神経と副交感神経の両方の神経がつながっている場合が多い。 一般に、走る・おどろく などの活動的な状態になったときに働くのが交感神経である。 敵があらわれた場合の闘争や(敵に教われるなどの)生きのびるための逃走などの生命の危機のために活動または緊張しなければならない際に(※ 東京書籍の教科書)、交感神経が活発になり、エネルギーを消費する方向に向かう(※ 数研の見解)。 一般に、リラックスしたときに働いているのが副交感神経である。 食事や休息の際に、副交感神経が活発になり、エネルギーを貯蔵する方向に向かう(※ 数研の見解)。 交感神経は、すべて脊髄から出ている。 一方、副交感神経は、ほとんどが中脳または延髄から出ているが(特に延髄から出ている副交感神経が多い)、しかし例外的に、ぼうこうの副交感神経は脊髄末端から出ている。 心臓の拍動は延髄と自律神経によって調節されている。 運動などによって酸素が消費され、二酸化炭素濃度が高くなると、 延髄は交感神経を働かせ、 交感神経の末端からノルアドレナリン(noradrenaline)が放出され、 心臓の拍動数が増加する。 逆に安静時に酸素の消費量が減り、二酸化炭素濃度が低くなると、 延髄は副交感神経を働かせ、 副交感神経の末端からアセチルコリン(acetylcholine)が放出され、 心臓の拍動数が減少する。 心臓の拍動の調節の実験には、 オットー・レーヴィのカエルの心臓を用いた実験がある。 レーヴィは2つのカエルの心臓を取り出してつなぎ、リンガー液を循環させる装置を作った。 片方の心臓からのびる迷走神経(副交感神経)を刺激すると、その心臓の拍動数が減少し、 しばらくして、もう片方の心臓の拍動数も減少した。 これにより、迷走神経のシナプスから化学物質が分泌され、 心臓の拍動数を制御していることが明らかとなった。 その化学物質は、今日ではアセチルコリンであることが分かっている。
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また、脳または脊髄である中枢神経と、それ以外の一般の神経である末梢神経の違いも中学で習っている。 神経には、体内環境の維持に働いている末梢神経があり、自律神経系(じりつしんけいけい、autonomic nervous system)という。 自律神経系には、交感神経(こうかんしんけい、sympathetic nerve)と副交感神経(ふくこうかんしんけい、parasympathetic nerve)がある。交感神経と副交感神経は対抗的に働くことが多い。() 神経系の分類 まとめ 交感神経と副交感神経は、下記のように、働きが異なり、片方の神経が促進の働きならもう一方の神経は抑制のように、互いに反対の働きをしている。このようなことを、交感神経と副交感神経とは「拮抗」(きっこう)している、という。 自律神経が交感神経と副交感神経とで拮抗しあっている理由は、バランスをとるためだというのが定説である。 ヒトの脳神経は12対であり、脊髄神経は31対である。 このように、自律神経系は、意思とは無関係に、体内を調節している。 また、一部の例外を除き、同じ器官に交感神経と副交感神経の両方の神経がつながっている場合が多い。 一般に、走る・おどろく などの活動的な状態になったときに働くのが交感神経である。 敵があらわれた場合の闘争や(敵に教われるなどの)生きのびるための逃走などの生命の危機のために活動または緊張しなければならない際に、交感神経が活発になり、エネルギーを消費する方向に向かう。 一般に、リラックスしたときに働いているのが副交感神経である。 食事や休息の際に、副交感神経が活発になり、エネルギーを貯蔵する方向に向かう。 交感神経は、すべて脊髄から出ている。 一方、副交感神経は、ほとんどが中脳または延髄から出ているが(特に延髄から出ている副交感神経が多い)、しかし例外的に、ぼうこうの副交感神経は脊髄末端から出ている。
:※ 中学校で運動神経と感覚神経を習った。また、脳も神経細胞で出来ている事も中学では習っている。神経には、これ以外にも、体内の環境を調整するための自律神経がある。 :高校では、この自律神経について習う。 また、脳または脊髄である中枢神経と、それ以外の一般の神経である末梢神経の違いも中学で習っている。 神経には、体内環境の維持に働いている末梢神経があり、'''自律神経系'''(じりつしんけいけい、autonomic nervous system)という。 :※ 意思とは無関係なことから「自律」と名づけられているのだろうが、しかし感覚神経とは異なる神経なので混同しないように。 :脳や脊髄なども体内環境の維持に関わっているだろうが、しかし分類上、「自律神経」には脳や脊髄を含めない。自律神経は分類上、末梢神経である事を条件としている。 :(※ 生物基礎の範囲外 :)なお、自律神経以外の感覚神経(sensory nerve)と運動神経(motor neuron)をまとめて'''体性神経'''という。 (※ 専門『生物』の範囲。数研の『生物基礎』教科書には書いてある。) 自律神経系には、'''交感神経'''(こうかんしんけい、sympathetic nerve)と'''副交感神経'''(ふくこうかんしんけい、parasympathetic nerve)がある。交感神経と副交感神経は対抗的に働くことが多い。() * 神経系の分類 まとめ <div style="font-size:120%;"> <pre>           神経系━┳━中枢神経系━┳━脳     ┃       ┗━脊髄     ┃      ┗━抹しょう神経系━┳━体性神経系━┳━運動神経               ┃       ┗━感覚神経               ┃               ┗━自律神経系━┳━交感神経                       ┗━副交感神経 </pre> </div> 交感神経と副交感神経は、下記のように、働きが異なり、片方の神経が促進の働きならもう一方の神経は抑制のように、互いに反対の働きをしている。このようなことを、交感神経と副交感神経とは「拮抗」(きっこう)している、という。 自律神経が交感神経と副交感神経とで拮抗しあっている理由は、バランスをとるためだというのが定説である(※ 東京書籍の見解)。 {| class="wikitable" style="float:right" |+ ヒトの自律神経系の働き !  交感神経  | ! 副交感神経 |- |  拡大 ! 瞳(瞳孔) |  縮小 |- |  促進 ! 心臓<br>(拍動) |  抑制 |- |  拡張 ! 気管支 |  収縮 |- |  抑制 ! 胃<br>(ぜん動) |  促進 |- |  抑制 ! ぼうこう<br>(排尿) |  促進 |- |  抑制 ! 皮ふの血管 | 分布していない |- |  収縮 ! 立毛筋 | 分布していない |} :瞳: 交感神経によって拡大。副交感神経によって縮小。 :心臓の拍動: 交感神経によって促進。副交感神経によって抑制。 :血圧: 交感神経のよって上昇。副交感神経によって下降。 :気管支: 交感神経によって拡充。副交感神経によって収縮。 :胃(ぜん動): 交感神経によって運動(胃の ぜん動)が抑制。副交感神経によって運動が促進。 :ぼうこう(排尿): 交感神経によって排尿が抑制。副交感神経によって排尿が促進。 :皮ふ(ひふ)および立毛筋: 交感神経によって立毛し、また血管は収縮。副交感神経は皮膚には分布していない。 (※ 専門生物の範囲 :)ヒトの脳神経は12対であり、脊髄神経は31対である。 :※ 血圧の交感・副交感については数研出版の教科書に記載あり。 このように、自律神経系は、意思とは無関係に、体内を調節している。 また、一部の例外を除き、同じ器官に交感神経と副交感神経の両方の神経がつながっている場合が多い。 一般に、走る・おどろく などの活動的な状態になったときに働くのが交感神経である。 敵があらわれた場合の闘争や(敵に教われるなどの)生きのびるための逃走などの生命の危機のために活動または緊張しなければならない際に(※ 東京書籍の教科書)、交感神経が活発になり、エネルギーを消費する方向に向かう(※ 数研の見解)。 一般に、リラックスしたときに働いているのが副交感神経である。 食事や休息の際に、副交感神経が活発になり、エネルギーを貯蔵する方向に向かう(※ 数研の見解)。 ;自律神経の場所 交感神経は、すべて脊髄から出ている。 一方、副交感神経は、ほとんどが中脳または延髄から出ているが(特に延髄から出ている副交感神経が多い)、しかし例外的に、ぼうこうの副交感神経は脊髄末端から出ている。 ===== 心臓の拍動の調節 ===== 心臓の拍動は延髄と自律神経によって調節されている。 運動などによって酸素が消費され、二酸化炭素濃度が高くなると、 延髄は交感神経を働かせ、 交感神経の末端から'''ノルアドレナリン'''(noradrenaline)が放出され、 心臓の拍動数が増加する。 逆に安静時に酸素の消費量が減り、二酸化炭素濃度が低くなると、 延髄は副交感神経を働かせ、 副交感神経の末端から'''アセチルコリン'''(acetylcholine)が放出され、 心臓の拍動数が減少する。 心臓の拍動の調節の実験には、 [[w:オットー・レーヴィ|オットー・レーヴィ]]のカエルの心臓を用いた[[w:オットー・レーヴィ#研究|実験]]がある。 レーヴィは2つのカエルの心臓を取り出してつなぎ、リンガー液を循環させる装置を作った。 片方の心臓からのびる迷走神経(副交感神経)を刺激すると、その心臓の拍動数が減少し、 しばらくして、もう片方の心臓の拍動数も減少した。 これにより、迷走神経のシナプスから化学物質が分泌され、 心臓の拍動数を制御していることが明らかとなった。 その化学物質は、今日ではアセチルコリンであることが分かっている。 [[カテゴリ:生物学]]
2018-12-07T03:53:52Z
2023-09-14T01:06:18Z
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高等学校理科 生物基礎/ホルモンによる体内環境の調節
ホルモン分泌で中心的な役割をしている器官は、間脳にある視床下部(ししょうかぶ、hypothalamus)と、視床下部の下にある脳下垂体である。 脳下垂体には前葉と後葉がある。 間脳の視床下部には、ホルモンを分泌する神経細胞があり、これを神経分泌細胞(しんけい ぶんぴつ さいぼう、neurosecretory cell)という。また、このように神経がホルモンを分泌することを神経分泌(しんけい ぶんぴつ)という。この間脳の神経分泌細胞により、脳下垂体の血管中にホルモンが分泌される。この神経分泌のホルモンは、脳下垂体のホルモンを調節するための放出ホルモン(releasing hormone)または放出抑制ホルモン(inhibiting hormone)である。 視床下部から伸びている神経分泌細胞が、脳下垂体に作用して、脳下垂体のホルモン分泌を調節している。 脳下垂体の前葉と後葉とで、分泌される血管の位置が違う。 脳下垂体前葉では、視床下部にある血管に分泌し、その血管が前葉まで続いて脳下垂体に作用している。前葉からは成長ホルモン(growth hormone)などが分泌される。 いっぽう、脳下垂体後葉では、視床下部からつながる神経伝達細胞が後葉まで続いており、後葉中の血管に、神経伝達細胞が直接、ホルモンを分泌している。 後葉からは、水分調節に関わるバソプレシンというホルモンが分泌され、バソプレシンによって腎臓での集合管における水の再吸収などが促進される。 ヒトなどの場合、血液中の塩分濃度が低いと、Naの再吸収がホルモンによって促進される。このホルモンは鉱質コルチコイド(mineral corticoid)という。腎細管でほとんどのナトリウムが再吸収される。鉱質コルチコイドは副腎皮質から分泌されている。 水の再吸収については、脳下垂体からバソプレシン(vasopressin)というホルモンが分泌されることによって、腎臓(じんぞう)の集合管での水の再吸収が促進される。 塩類の過剰な摂取などで、血液中の塩類濃度が上昇して体液の浸透圧が上がったときにも、バソプレシンによって水の再吸収が促進され、塩類濃度を下げさせる。水が吸収された結果、尿の液量は少なくなり、尿は濃くなる。 のどの近くにある甲状腺(こうじょうせん、thyroid gland)からはチロキシン(thyroxine)が分泌される。 チロキシンは代謝を活性化するホルモンであり、酸素の消費やグルコースの消費が、活発になる。 視床下部は、チロキシンの濃度を、つぎのような仕組みで調節している。 チロキシンによって、視床下部や脳下垂体による甲状腺刺激が抑制されるという仕組みである。 視床下部や脳下垂体は、チロキシンが多くなりすぎないように、チロキシンによってホルモンを抑制する。チロキシンによって視床下部は甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンを抑制する。また、チロキシンによって、脳下垂体は甲状腺刺激ホルモンを抑制する。こうして、チロキシン自身が最終的に、甲状腺からのチロキシン分泌を抑制するように働きかける。 逆にチロキシンが少なくなると、視床下部や脳下垂体が、甲状腺刺激ホルモンを通して甲状腺にチロキシンを増やすように働きかける。 チロキシンを受け取った細胞では代謝が活発になる。 このように、最終産物(この場合はチロキシン)が、前の段階(この場合は視床下部や脳下垂体)に働きかけることをフィードバック(feedback)という。 フィードバックは生物学に限らず、多くの分野で見られる現象だが、とりあえず生物学を例に説明する。 フィードッバックが前の段階を抑制する場合、負のフィードバック(negative feedback)という。ふつう、ホルモンは負のフィードバックによって、濃度などが一定の範囲内に近づくように調節されている。 腎臓での水の再吸収に関わるバソプレシンも、負のフィードバックによって一定に保たれる。この結果、バソプレシンが人体の水分調節のためのホルモンとして働くことになる。 いっぽう、フィードバックによって、前の段階が促進される場合を正のフィードバックという。電子機械などで見られる現象で、たとえば音声マイクとスピーカーのハウリング現象(マイクをスピーカーに近づけたときの、うるさい現象。※ うるさいので実験しないように。)などが、正のフィードバックにあたる。 ハウリングの起きる仕組みは、マイクから入力された音が、スピーカーから出て、そのスピーカーから出た音をマイクがひろってしまうので、さらにスピーカーから音が出るので、音が大きくなり、その大きくなった音をふたたびマイクがひろってしまうので、さらにスピ-カーから、もっと大きな音が出てしまい、そしてさらに・・・という、とてもうるさい現象である。 魚類の浸透圧の調節は、えら・腸・腎臓などで行われ、 淡水魚と海水魚の場合でその働きは異なっている。 淡水魚の場合、水分が体内に侵入するため、 えらや腸で無機塩類を吸収し、 腎臓で体液より低張の尿を大量に排出する。 海水魚の場合、水分が体外に出るため、 海水を大量に呑み込み腸で吸収し、 腎臓で体液と等張の尿を少量排出する。 また、えらから無機塩類を排出する。 哺乳類の浸透圧の調節は、腎臓で行われる。 また、腎臓の働きは、間脳視床下部・脳下垂体後葉や副腎皮質(ふくじんひしつ、adrenal medulla)によって調節されている。 水分の摂取などで、低浸透圧になった場合、副腎皮質が働く。 副腎皮質からは鉱質コルチコイド(mineral corticoid)が分泌される。 鉱質コルチコイドは腎臓の細尿管から無機塩類の再吸収を促進する働きがある。 水分の不足などで、高浸透圧になった場合、 間脳視床下部、脳下垂体後葉が働く。 脳下垂体後葉からはバソプレシン(vasopressin)が分泌される。 バソプレシンは腎臓の細尿管から水分の再吸収を促進する働きがある。 血液中に含まれるグルコースを血糖(けっとう、blood glucose)という。 健康なヒトの場合の血糖の含有量は一定の範囲に保たれ、空腹時で血液100mLあたり、ほぼ100mgという濃度である。(※ 検定教科書に普通に書いてある・) ※ 検定教科書にも、「血糖」の内容は「グルコース」だと、書いてある。(啓林館や東京書籍の検定教科書などに「グルコース」だと書いてある。) グルコースは細胞の活動に必要な糖である。 なお、グリコーゲンは、グルコースを貯蔵しやすく体内で変えたものであり、(※ 東京書籍、啓林館)化学構造としてはグルコースが数万個も結合した構造になっている(※ 数研出版の検定教科書版(チャート式ではない))。(なお動物だけでなく植物でもグリコーゲンで貯蔵される。) 動物の場合、肝臓や筋肉で、グリコーゲンとして貯蔵されている(※ 啓林館)。肝臓では、グリコーゲンの合成および分解が行われている。 血糖値が低すぎたり高すぎたりすると様々な症状を引き起こすため、 ホルモンと自律神経によって一定に保たれている。 糖は脳のエネルギー源なので、もし血糖濃度が下がりすぎてしまい、おおむね70mg/100mL以下になると(低血糖)、計算力の低下などの症状が表れ始め、60mg/mL以下になると意識障害や けいれん などの危険がある。(※ 第一学習社、東京書籍の教科書が本文で記述。なお東京書籍は60mg/100mLの数字を採用。第一学習社が70mg/mLを採用。) 食事などで炭水化物や糖質を取ると、一時的に血糖値が上昇する。逆に、急激な運動の後などでは下がっている。 血糖値が60mg以下(血液100mLあたり)だと、意識喪失や けいれん などが起き、危険である。運動などによって低血糖になると、間脳の視床下部が働く。 さて、血糖の調節に関わる器官は、すい臓および視床下部である。 視床下部は、交感神経によって、すい臓と副腎髄質を働かせる。 グリコーゲンが、つぎの仕組みで分解されることで、グリコーゲンからグルコースが取り出され、グルコース濃度を上げる仕組みである。 すい臓のランゲルハンス島のα細胞からはグルカゴン(glucagon)が分泌され、 副腎髄質(ふくじんひしつ、adrenal medulla)からはアドレナリン(adrenaline)が分泌される。 グルカゴンやアドレナリンは、グリコーゲンをグルコースへ分解させる働きがある。 また、視床下部は放出ホルモンで脳下垂体前葉を働かせ、脳下垂体前葉は副腎皮質刺激ホルモンで副腎皮質を働かせ、副腎皮質からアドレナリンが分泌される。 また、副腎皮質が分泌する糖質コルチコイド(glucocorticoid)が、タンパク質を分解させて、その分解された元タンパク質を材料としてグルコースを合成させる。糖質コルチコイドは、タンパク質をグルコースへ分解させる働きがある。 アドレナリンやグルカゴンが、肝臓や筋肉に働きかけ、貯蔵されているグリコーゲンの分解を促進する(肝臓や筋肉にはグリコーゲンが蓄えられている。)。 これらの反応の結果、血糖値が上昇する。 食事などによって高血糖になると、すい臓のランゲルハンス島のβ細胞が、血糖値の上昇を感知し、β細胞がインスリン(insulin) を分泌する。 インスリンは、グルコースをグリコーゲンへ合成させたり、 グルコースを細胞へ吸収・分解させたりする働きがある。 このインスリンが、細胞でのグルコースを用いた呼吸を促進したり、肝臓でのグリコーゲンの合成を促進するので、結果的にグルコースの消費が促進されるので、グルコースの濃度が下がり、グルコース濃度が通常の濃度に近づくという仕組みである。 また、間脳の視床下部でも血糖値の上昇は感知され、副交感神経の刺激を通じて、すい臓にインスリンの分泌をうながし、すい臓のランゲルハンス島β細胞がインスリンを分泌する。 いっぽう、病気により血液100mL中の血糖値が常に200mg(「200mg/100mL」のように書く)を越えると、糖尿病(とうにょうびょう、diabetes mellitus)という病気だと判断される。 (※ 200mgの数値は高校の範囲外だが、実は東京書籍の検定教科書で200mgの数字が本文中にある。糖尿病については高校理科の範囲内、東京書籍や、第一学習社など。) 健康な人では、血糖値はおおむね100~150mgの範囲内であり、空腹時は100前後だが食事などによって150mg/mL近くに上昇する(※ 第一学習社および実教出版の『生物基礎』の検定教科書に図表で記載あり)。 糖尿病とは、すい臓からインスリンが、うまくは分泌されなくなってしまった病気である。インスリンが細胞と結合すると、グルコースを消費させる。しかし、インスリン分泌がうまくいかないと、この消費がなくなってしまい、その結果、グルコースが余る。 その結果、原尿にグルコースが高濃度で含まれるので細尿管でのグルコース吸収が間に合わず、尿中に高濃度のグルコースが含まれて排出される。 (もし健康なヒトなら、原尿のグルコースは、ほぼ100%再吸収されるため、尿中には高濃度のグルコースは排出されない。にもかかわらず高濃度のグルコースを含む尿が排出されるという事は、つまり病気に掛かっている事になる。) 高血糖が長く続くと、欠陥が変性して血流が低下してしまい、その結果、眼や腎臓などの、さまざまな器官で障害を起こす。糖尿病には、このような各器官での合併症があるため、危険な病気である。 糖尿病は、尿に糖が含まれる事自体は、あまり危険視されておらず、目が腎臓などに障害の出ることが危険視されている(※ 数研出版の見解)。 糖尿病の分類は、大きくは二つの種類に分けられる。 まず、インスリンを分泌する細胞そのものが破壊されていて分泌できない場合のI型糖尿病がある。若くして発症することが多い。 もう一つは、I型とは別のなんらかの原因で、インスリンの分泌量が低下したり、インスリンに細胞が反応しなくなる場合であり、これをII型糖尿病という。肥満や喫煙・運動不足などの生活習慣病などによる糖尿病で、II型糖尿病が多く見られている。 日本の糖尿病患者の多くはII型である。 糖尿病の治療には、I型・II型とも、インスリンの投与が行われる。患者は、食後などに毎回、自分でインスリンを注射しなければならない。 II型の生活習慣が原因と考えられる場合、食事の見直しや、適度な運動なども、治療に必要になる。 糖尿病の症状として頻尿(ひんにょう)がある(※ 高校の範囲内)。 この原因は、原尿の浸透圧が血糖によって上昇したことにより、細尿管での水分の再吸収が減るためだと考えられてる(※ 高校の範囲外)。 また、頻尿などにより水分が低下するため、のどの渇きが起きる。 血糖濃度をあげるホルモンの種類は多く仕組みも複雑である。しかし、血糖値を下げるホルモンはインスリンのみしか今のところ知られておらず、また仕組みも単純である。この事から、動物は、飢餓に適応して、血糖値の調節の機構を進化させてきたと考えられている。飽食の時代よりも、飢餓の時代のほうが、圧倒的に多かったのだろうと考えられている。 変温動物は、体温調節が不完全で、体温は外部環境によって変化する。 一方、恒温動物では、体温は、外部環境によらず、一定に保たれている。ヒトの場合、健康なら、体温は約37°Cに保たれる。 体温の調節は、ホルモンや自律神経が行っている。体温調節の中枢のある場所は、間脳の視床下部にある。 寒さによって体温が低下すると、間脳の視床下部が働く。 視床下部は、交感神経やホルモンによって、肝臓や筋肉の代謝を促進し、発熱量を増加させる。 また、交感神経によって皮膚の血管や立毛筋を縮小させ、熱放散を減少させる。また、骨格筋をふるわせることで、熱を産生する。 また、チロキシンやアドレナリンなどが分泌され、肝臓での物質の分解を促進して熱を産生する。 暑さによって体温が上昇すると、間脳の視床下部が働く。 視床下部は、交感神経によって、 皮膚血管を拡張し、汗腺から発汗させ、熱放散を増加させる。 また、副交感神経によって、肝臓での物質の分解が抑制され、熱の産生を抑える。 ヒトの 「のどぼとけ」 の、すぐ下には、甲状腺という器官がある。この甲状腺は、甲状腺ホルモンというホルモンを分泌している器官である。ホルモンとは、体内のいろいろな働きを調節するための分泌物(ぶんぴぶつ)である。くわしくは、中学の保健体育で習うか、または高校生物で習う。 さて、甲状腺ホルモンの主成分はヨウ素である。ヨウ素は、ワカメやコンブなどの海ソウに多く含まれている。 さて、通常のヨウ素には放射能(ほうしゃのう)が無く、安全である。だが、原子力発電などの原子核分裂では、放射性のある様々な原子が作られる。その中に放射性のある特別なヨウ素も作られる場合がある。 原子力発電などの事故などへの対策として、原子力発電所などの近隣地区に ヨウ素剤(ようそ ざい) が配布される理由は、この放射能のある特別なヨウ素が甲状腺に集まらないようにするためである。 体内に吸収されたヨウ素は、甲状腺に集まる性質がある。なので、あらかじめ、普通のヨウ素を摂取しておけば、放射性のある特別なヨウ素を吸収しづらくなるのである。もしくは、仮に吸収してしまっても、通常のヨウ素によって、放射性のあるヨウ素が、うすめられる。 なお、甲状腺ホルモンの働きは、体内での、さまざまな化学反応を促進(そくしん)する働きがある。
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "ホルモン分泌で中心的な役割をしている器官は、間脳にある視床下部(ししょうかぶ、hypothalamus)と、視床下部の下にある脳下垂体である。 脳下垂体には前葉と後葉がある。", "title": "" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "間脳の視床下部には、ホルモンを分泌する神経細胞があり、これを神経分泌細胞(しんけい ぶんぴつ さいぼう、neurosecretory cell)という。また、このように神経がホルモンを分泌することを神経分泌(しんけい ぶんぴつ)という。この間脳の神経分泌細胞により、脳下垂体の血管中にホルモンが分泌される。この神経分泌のホルモンは、脳下垂体のホルモンを調節するための放出ホルモン(releasing hormone)または放出抑制ホルモン(inhibiting hormone)である。", "title": "" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "視床下部から伸びている神経分泌細胞が、脳下垂体に作用して、脳下垂体のホルモン分泌を調節している。", "title": "" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "脳下垂体の前葉と後葉とで、分泌される血管の位置が違う。", "title": "" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "脳下垂体前葉では、視床下部にある血管に分泌し、その血管が前葉まで続いて脳下垂体に作用している。前葉からは成長ホルモン(growth hormone)などが分泌される。", "title": "" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "いっぽう、脳下垂体後葉では、視床下部からつながる神経伝達細胞が後葉まで続いており、後葉中の血管に、神経伝達細胞が直接、ホルモンを分泌している。", "title": "" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "後葉からは、水分調節に関わるバソプレシンというホルモンが分泌され、バソプレシンによって腎臓での集合管における水の再吸収などが促進される。", "title": "" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "", "title": "" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ヒトなどの場合、血液中の塩分濃度が低いと、Naの再吸収がホルモンによって促進される。このホルモンは鉱質コルチコイド(mineral corticoid)という。腎細管でほとんどのナトリウムが再吸収される。鉱質コルチコイドは副腎皮質から分泌されている。", "title": "" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "水の再吸収については、脳下垂体からバソプレシン(vasopressin)というホルモンが分泌されることによって、腎臓(じんぞう)の集合管での水の再吸収が促進される。 塩類の過剰な摂取などで、血液中の塩類濃度が上昇して体液の浸透圧が上がったときにも、バソプレシンによって水の再吸収が促進され、塩類濃度を下げさせる。水が吸収された結果、尿の液量は少なくなり、尿は濃くなる。", "title": "" }, { "paragraph_id": 10, "tag": "p", "text": "", "title": "" }, { "paragraph_id": 11, "tag": "p", "text": "", "title": "" }, { "paragraph_id": 12, "tag": "p", "text": "のどの近くにある甲状腺(こうじょうせん、thyroid gland)からはチロキシン(thyroxine)が分泌される。 チロキシンは代謝を活性化するホルモンであり、酸素の消費やグルコースの消費が、活発になる。 視床下部は、チロキシンの濃度を、つぎのような仕組みで調節している。", "title": "" }, { "paragraph_id": 13, "tag": "p", "text": "チロキシンによって、視床下部や脳下垂体による甲状腺刺激が抑制されるという仕組みである。 視床下部や脳下垂体は、チロキシンが多くなりすぎないように、チロキシンによってホルモンを抑制する。チロキシンによって視床下部は甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンを抑制する。また、チロキシンによって、脳下垂体は甲状腺刺激ホルモンを抑制する。こうして、チロキシン自身が最終的に、甲状腺からのチロキシン分泌を抑制するように働きかける。", "title": "" }, { "paragraph_id": 14, "tag": "p", "text": "逆にチロキシンが少なくなると、視床下部や脳下垂体が、甲状腺刺激ホルモンを通して甲状腺にチロキシンを増やすように働きかける。", "title": "" }, { "paragraph_id": 15, "tag": "p", "text": "チロキシンを受け取った細胞では代謝が活発になる。", "title": "" }, { "paragraph_id": 16, "tag": "p", "text": "このように、最終産物(この場合はチロキシン)が、前の段階(この場合は視床下部や脳下垂体)に働きかけることをフィードバック(feedback)という。", "title": "" }, { "paragraph_id": 17, "tag": "p", "text": "フィードバックは生物学に限らず、多くの分野で見られる現象だが、とりあえず生物学を例に説明する。", "title": "" }, { "paragraph_id": 18, "tag": "p", "text": "フィードッバックが前の段階を抑制する場合、負のフィードバック(negative feedback)という。ふつう、ホルモンは負のフィードバックによって、濃度などが一定の範囲内に近づくように調節されている。", "title": "" }, { "paragraph_id": 19, "tag": "p", "text": "腎臓での水の再吸収に関わるバソプレシンも、負のフィードバックによって一定に保たれる。この結果、バソプレシンが人体の水分調節のためのホルモンとして働くことになる。", "title": "" }, { "paragraph_id": 20, "tag": "p", "text": "いっぽう、フィードバックによって、前の段階が促進される場合を正のフィードバックという。電子機械などで見られる現象で、たとえば音声マイクとスピーカーのハウリング現象(マイクをスピーカーに近づけたときの、うるさい現象。※ うるさいので実験しないように。)などが、正のフィードバックにあたる。", "title": "" }, { "paragraph_id": 21, "tag": "p", "text": "ハウリングの起きる仕組みは、マイクから入力された音が、スピーカーから出て、そのスピーカーから出た音をマイクがひろってしまうので、さらにスピーカーから音が出るので、音が大きくなり、その大きくなった音をふたたびマイクがひろってしまうので、さらにスピ-カーから、もっと大きな音が出てしまい、そしてさらに・・・という、とてもうるさい現象である。", "title": "" }, { "paragraph_id": 22, "tag": "p", "text": "", "title": "" }, { "paragraph_id": 23, "tag": "p", "text": "魚類の浸透圧の調節は、えら・腸・腎臓などで行われ、 淡水魚と海水魚の場合でその働きは異なっている。 淡水魚の場合、水分が体内に侵入するため、 えらや腸で無機塩類を吸収し、 腎臓で体液より低張の尿を大量に排出する。 海水魚の場合、水分が体外に出るため、 海水を大量に呑み込み腸で吸収し、 腎臓で体液と等張の尿を少量排出する。 また、えらから無機塩類を排出する。", "title": "" }, { "paragraph_id": 24, "tag": "p", "text": "哺乳類の浸透圧の調節は、腎臓で行われる。 また、腎臓の働きは、間脳視床下部・脳下垂体後葉や副腎皮質(ふくじんひしつ、adrenal medulla)によって調節されている。 水分の摂取などで、低浸透圧になった場合、副腎皮質が働く。 副腎皮質からは鉱質コルチコイド(mineral corticoid)が分泌される。 鉱質コルチコイドは腎臓の細尿管から無機塩類の再吸収を促進する働きがある。 水分の不足などで、高浸透圧になった場合、 間脳視床下部、脳下垂体後葉が働く。 脳下垂体後葉からはバソプレシン(vasopressin)が分泌される。 バソプレシンは腎臓の細尿管から水分の再吸収を促進する働きがある。", "title": "" }, { "paragraph_id": 25, "tag": "p", "text": "血液中に含まれるグルコースを血糖(けっとう、blood glucose)という。", "title": "" }, { "paragraph_id": 26, "tag": "p", "text": "健康なヒトの場合の血糖の含有量は一定の範囲に保たれ、空腹時で血液100mLあたり、ほぼ100mgという濃度である。(※ 検定教科書に普通に書いてある・)", "title": "" }, { "paragraph_id": 27, "tag": "p", "text": "", "title": "" }, { "paragraph_id": 28, "tag": "p", "text": "", "title": "" }, { "paragraph_id": 29, "tag": "p", "text": "※ 検定教科書にも、「血糖」の内容は「グルコース」だと、書いてある。(啓林館や東京書籍の検定教科書などに「グルコース」だと書いてある。)", "title": "" }, { "paragraph_id": 30, "tag": "p", "text": "グルコースは細胞の活動に必要な糖である。", "title": "" }, { "paragraph_id": 31, "tag": "p", "text": "なお、グリコーゲンは、グルコースを貯蔵しやすく体内で変えたものであり、(※ 東京書籍、啓林館)化学構造としてはグルコースが数万個も結合した構造になっている(※ 数研出版の検定教科書版(チャート式ではない))。(なお動物だけでなく植物でもグリコーゲンで貯蔵される。) 動物の場合、肝臓や筋肉で、グリコーゲンとして貯蔵されている(※ 啓林館)。肝臓では、グリコーゲンの合成および分解が行われている。", "title": "" }, { "paragraph_id": 32, "tag": "p", "text": "血糖値が低すぎたり高すぎたりすると様々な症状を引き起こすため、 ホルモンと自律神経によって一定に保たれている。", "title": "" }, { "paragraph_id": 33, "tag": "p", "text": "糖は脳のエネルギー源なので、もし血糖濃度が下がりすぎてしまい、おおむね70mg/100mL以下になると(低血糖)、計算力の低下などの症状が表れ始め、60mg/mL以下になると意識障害や けいれん などの危険がある。(※ 第一学習社、東京書籍の教科書が本文で記述。なお東京書籍は60mg/100mLの数字を採用。第一学習社が70mg/mLを採用。)", "title": "" }, { "paragraph_id": 34, "tag": "p", "text": "食事などで炭水化物や糖質を取ると、一時的に血糖値が上昇する。逆に、急激な運動の後などでは下がっている。 血糖値が60mg以下(血液100mLあたり)だと、意識喪失や けいれん などが起き、危険である。運動などによって低血糖になると、間脳の視床下部が働く。", "title": "" }, { "paragraph_id": 35, "tag": "p", "text": "さて、血糖の調節に関わる器官は、すい臓および視床下部である。", "title": "" }, { "paragraph_id": 36, "tag": "p", "text": "視床下部は、交感神経によって、すい臓と副腎髄質を働かせる。", "title": "" }, { "paragraph_id": 37, "tag": "p", "text": "グリコーゲンが、つぎの仕組みで分解されることで、グリコーゲンからグルコースが取り出され、グルコース濃度を上げる仕組みである。", "title": "" }, { "paragraph_id": 38, "tag": "p", "text": "すい臓のランゲルハンス島のα細胞からはグルカゴン(glucagon)が分泌され、 副腎髄質(ふくじんひしつ、adrenal medulla)からはアドレナリン(adrenaline)が分泌される。", "title": "" }, { "paragraph_id": 39, "tag": "p", "text": "グルカゴンやアドレナリンは、グリコーゲンをグルコースへ分解させる働きがある。", "title": "" }, { "paragraph_id": 40, "tag": "p", "text": "また、視床下部は放出ホルモンで脳下垂体前葉を働かせ、脳下垂体前葉は副腎皮質刺激ホルモンで副腎皮質を働かせ、副腎皮質からアドレナリンが分泌される。", "title": "" }, { "paragraph_id": 41, "tag": "p", "text": "また、副腎皮質が分泌する糖質コルチコイド(glucocorticoid)が、タンパク質を分解させて、その分解された元タンパク質を材料としてグルコースを合成させる。糖質コルチコイドは、タンパク質をグルコースへ分解させる働きがある。", "title": "" }, { "paragraph_id": 42, "tag": "p", "text": "アドレナリンやグルカゴンが、肝臓や筋肉に働きかけ、貯蔵されているグリコーゲンの分解を促進する(肝臓や筋肉にはグリコーゲンが蓄えられている。)。", "title": "" }, { "paragraph_id": 43, "tag": "p", "text": "これらの反応の結果、血糖値が上昇する。", "title": "" }, { "paragraph_id": 44, "tag": "p", "text": "食事などによって高血糖になると、すい臓のランゲルハンス島のβ細胞が、血糖値の上昇を感知し、β細胞がインスリン(insulin) を分泌する。", "title": "" }, { "paragraph_id": 45, "tag": "p", "text": "インスリンは、グルコースをグリコーゲンへ合成させたり、 グルコースを細胞へ吸収・分解させたりする働きがある。", "title": "" }, { "paragraph_id": 46, "tag": "p", "text": "このインスリンが、細胞でのグルコースを用いた呼吸を促進したり、肝臓でのグリコーゲンの合成を促進するので、結果的にグルコースの消費が促進されるので、グルコースの濃度が下がり、グルコース濃度が通常の濃度に近づくという仕組みである。", "title": "" }, { "paragraph_id": 47, "tag": "p", "text": "また、間脳の視床下部でも血糖値の上昇は感知され、副交感神経の刺激を通じて、すい臓にインスリンの分泌をうながし、すい臓のランゲルハンス島β細胞がインスリンを分泌する。", "title": "" }, { "paragraph_id": 48, "tag": "p", "text": "いっぽう、病気により血液100mL中の血糖値が常に200mg(「200mg/100mL」のように書く)を越えると、糖尿病(とうにょうびょう、diabetes mellitus)という病気だと判断される。 (※ 200mgの数値は高校の範囲外だが、実は東京書籍の検定教科書で200mgの数字が本文中にある。糖尿病については高校理科の範囲内、東京書籍や、第一学習社など。) 健康な人では、血糖値はおおむね100~150mgの範囲内であり、空腹時は100前後だが食事などによって150mg/mL近くに上昇する(※ 第一学習社および実教出版の『生物基礎』の検定教科書に図表で記載あり)。", "title": "" }, { "paragraph_id": 49, "tag": "p", "text": "糖尿病とは、すい臓からインスリンが、うまくは分泌されなくなってしまった病気である。インスリンが細胞と結合すると、グルコースを消費させる。しかし、インスリン分泌がうまくいかないと、この消費がなくなってしまい、その結果、グルコースが余る。", "title": "" }, { "paragraph_id": 50, "tag": "p", "text": "", "title": "" }, { "paragraph_id": 51, "tag": "p", "text": "その結果、原尿にグルコースが高濃度で含まれるので細尿管でのグルコース吸収が間に合わず、尿中に高濃度のグルコースが含まれて排出される。", "title": "" }, { "paragraph_id": 52, "tag": "p", "text": "(もし健康なヒトなら、原尿のグルコースは、ほぼ100%再吸収されるため、尿中には高濃度のグルコースは排出されない。にもかかわらず高濃度のグルコースを含む尿が排出されるという事は、つまり病気に掛かっている事になる。)", "title": "" }, { "paragraph_id": 53, "tag": "p", "text": "高血糖が長く続くと、欠陥が変性して血流が低下してしまい、その結果、眼や腎臓などの、さまざまな器官で障害を起こす。糖尿病には、このような各器官での合併症があるため、危険な病気である。", "title": "" }, { "paragraph_id": 54, "tag": "p", "text": "糖尿病は、尿に糖が含まれる事自体は、あまり危険視されておらず、目が腎臓などに障害の出ることが危険視されている(※ 数研出版の見解)。", "title": "" }, { "paragraph_id": 55, "tag": "p", "text": "糖尿病の分類は、大きくは二つの種類に分けられる。", "title": "" }, { "paragraph_id": 56, "tag": "p", "text": "まず、インスリンを分泌する細胞そのものが破壊されていて分泌できない場合のI型糖尿病がある。若くして発症することが多い。", "title": "" }, { "paragraph_id": 57, "tag": "p", "text": "もう一つは、I型とは別のなんらかの原因で、インスリンの分泌量が低下したり、インスリンに細胞が反応しなくなる場合であり、これをII型糖尿病という。肥満や喫煙・運動不足などの生活習慣病などによる糖尿病で、II型糖尿病が多く見られている。 日本の糖尿病患者の多くはII型である。", "title": "" }, { "paragraph_id": 58, "tag": "p", "text": "糖尿病の治療には、I型・II型とも、インスリンの投与が行われる。患者は、食後などに毎回、自分でインスリンを注射しなければならない。", "title": "" }, { "paragraph_id": 59, "tag": "p", "text": "II型の生活習慣が原因と考えられる場合、食事の見直しや、適度な運動なども、治療に必要になる。", "title": "" }, { "paragraph_id": 60, "tag": "p", "text": "糖尿病の症状として頻尿(ひんにょう)がある(※ 高校の範囲内)。", "title": "" }, { "paragraph_id": 61, "tag": "p", "text": "この原因は、原尿の浸透圧が血糖によって上昇したことにより、細尿管での水分の再吸収が減るためだと考えられてる(※ 高校の範囲外)。", "title": "" }, { "paragraph_id": 62, "tag": "p", "text": "また、頻尿などにより水分が低下するため、のどの渇きが起きる。", "title": "" }, { "paragraph_id": 63, "tag": "p", "text": "血糖濃度をあげるホルモンの種類は多く仕組みも複雑である。しかし、血糖値を下げるホルモンはインスリンのみしか今のところ知られておらず、また仕組みも単純である。この事から、動物は、飢餓に適応して、血糖値の調節の機構を進化させてきたと考えられている。飽食の時代よりも、飢餓の時代のほうが、圧倒的に多かったのだろうと考えられている。", "title": "" }, { "paragraph_id": 64, "tag": "p", "text": "", "title": "" }, { "paragraph_id": 65, "tag": "p", "text": "", "title": "" }, { "paragraph_id": 66, "tag": "p", "text": "変温動物は、体温調節が不完全で、体温は外部環境によって変化する。", "title": "" }, { "paragraph_id": 67, "tag": "p", "text": "一方、恒温動物では、体温は、外部環境によらず、一定に保たれている。ヒトの場合、健康なら、体温は約37°Cに保たれる。", "title": "" }, { "paragraph_id": 68, "tag": "p", "text": "体温の調節は、ホルモンや自律神経が行っている。体温調節の中枢のある場所は、間脳の視床下部にある。", "title": "" }, { "paragraph_id": 69, "tag": "p", "text": "寒さによって体温が低下すると、間脳の視床下部が働く。 視床下部は、交感神経やホルモンによって、肝臓や筋肉の代謝を促進し、発熱量を増加させる。 また、交感神経によって皮膚の血管や立毛筋を縮小させ、熱放散を減少させる。また、骨格筋をふるわせることで、熱を産生する。", "title": "" }, { "paragraph_id": 70, "tag": "p", "text": "また、チロキシンやアドレナリンなどが分泌され、肝臓での物質の分解を促進して熱を産生する。", "title": "" }, { "paragraph_id": 71, "tag": "p", "text": "暑さによって体温が上昇すると、間脳の視床下部が働く。 視床下部は、交感神経によって、 皮膚血管を拡張し、汗腺から発汗させ、熱放散を増加させる。", "title": "" }, { "paragraph_id": 72, "tag": "p", "text": "また、副交感神経によって、肝臓での物質の分解が抑制され、熱の産生を抑える。", "title": "" }, { "paragraph_id": 73, "tag": "p", "text": "ヒトの 「のどぼとけ」 の、すぐ下には、甲状腺という器官がある。この甲状腺は、甲状腺ホルモンというホルモンを分泌している器官である。ホルモンとは、体内のいろいろな働きを調節するための分泌物(ぶんぴぶつ)である。くわしくは、中学の保健体育で習うか、または高校生物で習う。", "title": "" }, { "paragraph_id": 74, "tag": "p", "text": "さて、甲状腺ホルモンの主成分はヨウ素である。ヨウ素は、ワカメやコンブなどの海ソウに多く含まれている。", "title": "" }, { "paragraph_id": 75, "tag": "p", "text": 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==== ホルモン分泌の調節 ==== ホルモン分泌で中心的な役割をしている器官は、間脳にある'''視床下部'''(ししょうかぶ、hypothalamus)と、視床下部の下にある'''脳下垂体'''である。 脳下垂体には前葉と後葉がある。 * 神経分泌(しんけいぶんぴつ) 間脳の視床下部には、ホルモンを分泌する神経細胞があり、これを'''神経分泌細胞'''(しんけい ぶんぴつ さいぼう、neurosecretory cell)という。また、このように神経がホルモンを分泌することを'''神経分泌'''(しんけい ぶんぴつ)という。この間脳の神経分泌細胞により、脳下垂体の血管中にホルモンが分泌される。この神経分泌のホルモンは、脳下垂体のホルモンを調節するための放出ホルモン(releasing hormone)または放出抑制ホルモン(inhibiting hormone)である。 視床下部から伸びている神経分泌細胞が、脳下垂体に作用して、脳下垂体のホルモン分泌を調節している。 脳下垂体の前葉と後葉とで、分泌される血管の位置が違う。 脳下垂体前葉では、視床下部にある血管に分泌し、その血管が前葉まで続いて脳下垂体に作用している。前葉からは'''成長ホルモン'''(growth hormone)などが分泌される。 いっぽう、脳下垂体後葉では、視床下部からつながる神経伝達細胞が後葉まで続いており、後葉中の血管に、神経伝達細胞が直接、ホルモンを分泌している。 後葉からは、水分調節に関わる'''バソプレシン'''というホルモンが分泌され、バソプレシンによって腎臓での集合管における水の再吸収などが促進される。 * 再吸収とホルモンとの関係 ヒトなどの場合、血液中の塩分濃度が低いと、Naの再吸収がホルモンによって促進される。このホルモンは'''鉱質コルチコイド'''(mineral corticoid)という。腎細管でほとんどのナトリウムが再吸収される。鉱質コルチコイドは副腎皮質から分泌されている。 [[File:腎臓の働きと再吸収.svg|thumb|500px|腎臓の働きと再吸収]] 水の再吸収については、脳下垂体から'''バソプレシン'''(vasopressin)というホルモンが分泌されることによって、腎臓(じんぞう)の集合管での水の再吸収が促進される。 塩類の過剰な摂取などで、血液中の塩類濃度が上昇して体液の浸透圧が上がったときにも、バソプレシンによって水の再吸収が促進され、塩類濃度を下げさせる。水が吸収された結果、尿の液量は少なくなり、尿は濃くなる。 :※参考  このように尿量を減らす作用がバソプレシンにあるため、バソプレシンは「抗利尿ホルモン」(ADH)とも呼ばれる。<ref>嶋田正和ほか『生物基礎』数研出版、平成26年発行、p.119</ref>(※ 検定教科書での「抗利尿ホルモン」の記載を確認。) 専門書などでは「抗利尿ホルモン」の名称のほうを紹介している場合もある。 * チロキシン [[File:Thyroxine feedback jp.svg|thumb|450px|チロキシンのフィードバックによる調節]] のどの近くにある甲状腺(こうじょうせん、thyroid gland)からは'''チロキシン'''(thyroxine)が分泌される。 チロキシンは代謝を活性化するホルモンであり、酸素の消費やグルコースの消費が、活発になる。 視床下部は、チロキシンの濃度を、つぎのような仕組みで調節している。 チロキシンによって、視床下部や脳下垂体による甲状腺刺激が抑制されるという仕組みである。 視床下部や脳下垂体は、チロキシンが多くなりすぎないように、チロキシンによってホルモンを抑制する。チロキシンによって視床下部は甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンを抑制する。また、チロキシンによって、脳下垂体は甲状腺刺激ホルモンを抑制する。こうして、チロキシン自身が最終的に、甲状腺からのチロキシン分泌を抑制するように働きかける。 逆にチロキシンが少なくなると、視床下部や脳下垂体が、甲状腺刺激ホルモンを通して甲状腺にチロキシンを増やすように働きかける。 チロキシンを受け取った細胞では代謝が活発になる。 このように、最終産物(この場合はチロキシン)が、前の段階(この場合は視床下部や脳下垂体)に働きかけることを'''フィードバック'''(feedback)という。 フィードバックは生物学に限らず、多くの分野で見られる現象だが、とりあえず生物学を例に説明する。 フィードッバックが前の段階を抑制する場合、負のフィードバック(negative feedback)という。ふつう、ホルモンは負のフィードバックによって、濃度などが一定の範囲内に近づくように調節されている。 :(※編集注 バソプレシンのフィードバックの図を追加。) 腎臓での水の再吸収に関わるバソプレシンも、負のフィードバックによって一定に保たれる。この結果、バソプレシンが人体の水分調節のためのホルモンとして働くことになる。 いっぽう、フィードバックによって、前の段階が促進される場合を正のフィードバックという。電子機械などで見られる現象で、たとえば音声マイクとスピーカーのハウリング現象(マイクをスピーカーに近づけたときの、うるさい現象。※ うるさいので実験しないように。)などが、正のフィードバックにあたる。 ハウリングの起きる仕組みは、マイクから入力された音が、スピーカーから出て、そのスピーカーから出た音をマイクがひろってしまうので、さらにスピーカーから音が出るので、音が大きくなり、その大きくなった音をふたたびマイクがひろってしまうので、さらにスピ-カーから、もっと大きな音が出てしまい、そしてさらに・・・という、とてもうるさい現象である。 ==== ホルモンの働き ==== ===== 浸透圧の調節 ===== 魚類の浸透圧の調節は、えら・腸・腎臓などで行われ、 淡水魚と海水魚の場合でその働きは異なっている。 淡水魚の場合、水分が体内に侵入するため、 えらや腸で無機塩類を吸収し、 腎臓で体液より低張の尿を大量に排出する。 海水魚の場合、水分が体外に出るため、 海水を大量に呑み込み腸で吸収し、 腎臓で体液と等張の尿を少量排出する。 また、えらから無機塩類を排出する。 哺乳類の浸透圧の調節は、腎臓で行われる。 また、腎臓の働きは、間脳視床下部・脳下垂体後葉や副腎皮質(ふくじんひしつ、adrenal medulla)によって調節されている。 水分の摂取などで、低浸透圧になった場合、副腎皮質が働く。 副腎皮質からは'''鉱質コルチコイド'''(mineral corticoid)が分泌される。 鉱質コルチコイドは腎臓の細尿管から無機塩類の再吸収を促進する働きがある。 水分の不足などで、高浸透圧になった場合、 間脳視床下部、脳下垂体後葉が働く。 脳下垂体後葉からは'''バソプレシン'''(vasopressin)が分泌される。 バソプレシンは腎臓の細尿管から水分の再吸収を促進する働きがある。 ===== 血糖値の調節 ===== 血液中に含まれるグルコースを'''血糖'''(けっとう、blood glucose)という。 :※ 「グルコ-ス」とは、ブドウ糖のこと。 :主に化学の分野では「グルコース」と言う。 健康なヒトの場合の血糖の含有量は一定の範囲に保たれ、空腹時で血液100mLあたり、ほぼ100mgという濃度である。(※ 検定教科書に普通に書いてある・) :(※ 範囲外: )このような単位量あたりの血糖の値を'''血糖値'''(けっとうち)という。 :※ 「血糖値」は高校理科教育の用語では「血糖濃度」と言います。東京書籍では「血糖値」のまま書いています。 :※ 高校と大学の生物学では、化学などの用法にあわせてだろうか、高校以降の生物学では「ブドウ糖」とは呼ばずに「グルコース」という。 ※ 検定教科書にも、「血糖」の内容は「グルコース」だと、書いてある。(啓林館や東京書籍の検定教科書などに「グルコース」だと書いてある。) :なおグリコーゲンとグルコースとは別物。 :しかし大学でも医学では、「ブドウ糖」(Grape sugar)と日本では言う。たとえば「低血糖」について医学書の治療法には「ブドウ糖」の輸液とか書いてある。 :グルコースのほうが、貯蔵物質のグルコーゲンとの関係が分かりやすいし、生物学では「グルコース」と表記するほうが合理的である。 グルコースは細胞の活動に必要な糖である。 なお、グリコーゲンは、グルコースを貯蔵しやすく体内で変えたものであり、(※ 東京書籍、啓林館)化学構造としてはグルコースが数万個も結合した構造になっている(※ 数研出版の検定教科書版(チャート式ではない))。(なお動物だけでなく植物でもグリコーゲンで貯蔵される。) 動物の場合、肝臓や筋肉で、グリコーゲンとして貯蔵されている(※ 啓林館)。肝臓では、グリコーゲンの合成および分解が行われている。 血糖値が低すぎたり高すぎたりすると様々な症状を引き起こすため、 ホルモンと自律神経によって一定に保たれている。 糖は脳のエネルギー源なので、もし血糖濃度が下がりすぎてしまい、おおむね70mg/100mL以下になると(低血糖)、計算力の低下などの症状が表れ始め、60mg/mL以下になると意識障害や けいれん などの危険がある。(※ 第一学習社、東京書籍の教科書が本文で記述。なお東京書籍は60mg/100mLの数字を採用。第一学習社が70mg/mLを採用。) :※ 東京書籍の検定教科書のグラフで、健常人の血糖値が80以上になってるのは、低血糖でないという意味だろう。 食事などで炭水化物や糖質を取ると、一時的に血糖値が上昇する。逆に、急激な運動の後などでは下がっている。 血糖値が60mg以下(血液100mLあたり)だと、意識喪失や けいれん などが起き、危険である。運動などによって低血糖になると、間脳の視床下部が働く。 さて、血糖の調節に関わる器官は、すい臓および視床下部である。 視床下部は、交感神経によって、すい臓と副腎髄質を働かせる。 ---- * 低血糖の場合 グリコーゲンが、つぎの仕組みで分解されることで、グリコーゲンからグルコースが取り出され、グルコース濃度を上げる仕組みである。 すい臓の'''ランゲルハンス島'''の'''α細胞'''からは'''グルカゴン'''(glucagon)が分泌され、 副腎髄質(ふくじんひしつ、adrenal medulla)からは'''アドレナリン'''(adrenaline)が分泌される。 グルカゴンやアドレナリンは、グリコーゲンをグルコースへ分解させる働きがある。 また、視床下部は放出ホルモンで脳下垂体前葉を働かせ、脳下垂体前葉は副腎皮質刺激ホルモンで副腎皮質を働かせ、副腎皮質からアドレナリンが分泌される。 また、副腎皮質が分泌する'''糖質コルチコイド'''(glucocorticoid)が、タンパク質を分解させて、その分解された元タンパク質を材料としてグルコースを合成させる。糖質コルチコイドは、タンパク質をグルコースへ分解させる働きがある。 アドレナリンやグルカゴンが、肝臓や筋肉に働きかけ、貯蔵されているグリコーゲンの分解を促進する(肝臓や筋肉にはグリコーゲンが蓄えられている。)。 これらの反応の結果、血糖値が上昇する。 * 高血糖の場合 食事などによって高血糖になると、すい臓の'''ランゲルハンス島'''の'''β細胞'''が、血糖値の上昇を感知し、β細胞が'''インスリン'''(insulin) を分泌する。 インスリンは、グルコースをグリコーゲンへ合成させたり、 グルコースを細胞へ吸収・分解させたりする働きがある。 このインスリンが、細胞でのグルコースを用いた呼吸を促進したり、肝臓でのグリコーゲンの合成を促進するので、結果的にグルコースの消費が促進されるので、グルコースの濃度が下がり、グルコース濃度が通常の濃度に近づくという仕組みである。 また、間脳の視床下部でも血糖値の上昇は感知され、副交感神経の刺激を通じて、すい臓にインスリンの分泌をうながし、すい臓のランゲルハンス島β細胞がインスリンを分泌する。 ---- * 糖尿病 (※ 高校の範囲'''内''') [[File:Blood sugar level graph japanese.svg|thumb|400px|ヒトの血糖濃度]] いっぽう、病気により血液100mL中の血糖値が常に200mg(「200mg/100mL」のように書く)を越えると、'''糖尿病'''(とうにょうびょう、diabetes mellitus)という病気だと判断される。<ref>文部科学省『高等学校用 疾病と看護』教育出版、平成25年発行、P.51</ref> (※ 200mgの数値は高校の範囲外だが、実は東京書籍の検定教科書で200mgの数字が本文中にある。糖尿病については高校理科の範囲内、東京書籍や<ref>浅島誠『生物基礎』東京書籍、平成26年2月発行、P.108</ref>、第一学習社など。) 健康な人では、血糖値はおおむね100~150mgの範囲内であり、空腹時は100前後だが食事などによって150mg/mL近くに上昇する(※ 第一学習社および実教出版の『生物基礎』の検定教科書に図表で記載あり)。 :※ 実教出版の教科書の図表を見ると、糖尿病患者の血糖値が最低値が200mgになってるのは、上述のような理由がある。 糖尿病とは、すい臓からインスリンが、うまくは分泌されなくなってしまった病気である。インスリンが細胞と結合すると、グルコースを消費させる。しかし、インスリン分泌がうまくいかないと、この消費がなくなってしまい、その結果、グルコースが余る。 :※ 「血糖値」は高校理科教育の用語では「血糖濃度」と言います。東京書籍では「血糖値」のまま書いています。なので、右グラフの「血糖濃度」を「血糖値」と書いても、正解です。医学書(『標準生理学』や『生理学テキスト』など)では「血糖値」の表記を使っているので、なるべく「血糖値」という表現に、なれてください。 :※ 血糖値は、「200mg/100mL」と書かずに「200mg」とだけ略記的に書く方法も、慣用的に認められている(※ 東京書籍の検定教科書が本文中で「200mg」というふうに末尾「/100mL」を省略した記法をしている)。 [[File:Diabetic graph with insulin and blood sugar japanese.svg|thumb|400px|グルコース投与による血糖濃度とインスリンの変化<br>グラフは概略である。]] その結果、原尿にグルコースが高濃度で含まれるので細尿管でのグルコース吸収が間に合わず、尿中に高濃度のグルコースが含まれて排出される。 (もし健康なヒトなら、原尿のグルコースは、ほぼ100%再吸収されるため、尿中には高濃度のグルコースは排出されない。にもかかわらず高濃度のグルコースを含む尿が排出されるという事は、つまり病気に掛かっている事になる。) 高血糖が長く続くと、欠陥が変性して血流が低下してしまい、その結果、眼や腎臓などの、さまざまな器官で障害を起こす。糖尿病には、このような各器官での合併症があるため、危険な病気である。 糖尿病は、尿に糖が含まれる事自体は、あまり危険視されておらず、目が腎臓などに障害の出ることが危険視されている(※ 数研出版の見解)。 糖尿病の分類は、大きくは二つの種類に分けられる。 まず、インスリンを分泌する細胞そのものが破壊されていて分泌できない場合のI型糖尿病がある。若くして発症することが多い。 もう一つは、I型とは別のなんらかの原因で、インスリンの分泌量が低下したり、インスリンに細胞が反応しなくなる場合であり、これをII型糖尿病という。肥満や喫煙・運動不足などの生活習慣病などによる糖尿病で、II型糖尿病が多く見られている。 日本の糖尿病患者の多くはII型である。 糖尿病の治療には、I型・II型とも、インスリンの投与が行われる。患者は、食後などに毎回、自分でインスリンを注射しなければならない。 II型の生活習慣が原因と考えられる場合、食事の見直しや、適度な運動なども、治療に必要になる。 糖尿病の症状として頻尿(ひんにょう)がある<ref>庄野邦彦ほか『生物基礎』実教出版、平成26年1月発行、P.51</ref>(※ 高校の範囲'''内''')。 この原因は、原尿の浸透圧が血糖によって上昇したことにより、細尿管での水分の再吸収が減るためだと考えられてる<ref>有田和恵ほか『解剖生理学』照林社、2007年6月発行、P.206</ref>(※ 高校の範囲'''外''')。 また、頻尿などにより水分が低下するため、のどの渇きが起きる。 ---- 血糖濃度をあげるホルモンの種類は多く仕組みも複雑である。しかし、血糖値を下げるホルモンはインスリンのみしか今のところ知られておらず、また仕組みも単純である。この事から、動物は、飢餓に適応して、血糖値の調節の機構を進化させてきたと考えられている。飽食の時代よりも、飢餓の時代のほうが、圧倒的に多かったのだろうと考えられている。 :(※ 範囲外 :) 糖尿病患者でない正常者でも、食後には尿中に糖が排出されるが、これは健康な反応である<ref>無痛症の参考文献 :『やさしい生理学 第7版』、南江堂、2019年 5月20日 第7版 第2刷、105ページ </ref>。 ===== 体温の調節 ===== 変温動物は、体温調節が不完全で、体温は外部環境によって変化する。 一方、恒温動物では、体温は、外部環境によらず、一定に保たれている。ヒトの場合、健康なら、体温は約37℃に保たれる。 体温の調節は、ホルモンや自律神経が行っている。体温調節の中枢のある場所は、間脳の視床下部にある。 * 体温が低下した場合 寒さによって体温が低下すると、間脳の視床下部が働く。 視床下部は、交感神経やホルモンによって、肝臓や筋肉の代謝を促進し、発熱量を増加させる。 また、交感神経によって皮膚の血管や立毛筋を縮小させ、熱放散を減少させる。また、骨格筋をふるわせることで、熱を産生する。 また、チロキシンやアドレナリンなどが分泌され、肝臓での物質の分解を促進して熱を産生する。 * 体温が上昇した場合 暑さによって体温が上昇すると、間脳の視床下部が働く。 視床下部は、交感神経によって、 皮膚血管を拡張し、汗腺から発汗させ、熱放散を増加させる。 また、副交感神経によって、肝臓での物質の分解が抑制され、熱の産生を抑える。 ==== その他 ==== [[File:Thyroide.jpg|thumb|甲状腺(こうじょうせん)の場所]] ヒトの 「のどぼとけ」 の、すぐ下には、甲状腺という器官がある。この甲状腺は、甲状腺ホルモンというホルモンを分泌している器官である。ホルモンとは、体内のいろいろな働きを調節するための分泌物(ぶんぴぶつ)である。くわしくは、中学の保健体育で習うか、または高校生物で習う。 さて、甲状腺ホルモンの主成分はヨウ素である。ヨウ素は、ワカメやコンブなどの海ソウに多く含まれている。 さて、通常のヨウ素には放射能(ほうしゃのう)が無く、安全である。だが、原子力発電などの原子核分裂では、放射性のある様々な原子が作られる。その中に放射性のある特別なヨウ素も作られる場合がある。 原子力発電などの事故などへの対策として、原子力発電所などの近隣地区に ヨウ素剤(ようそ ざい) が配布される理由は、この放射能のある特別なヨウ素が甲状腺に集まらないようにするためである。 体内に吸収されたヨウ素は、甲状腺に集まる性質がある。なので、あらかじめ、普通のヨウ素を摂取しておけば、放射性のある特別なヨウ素を吸収しづらくなるのである。もしくは、仮に吸収してしまっても、通常のヨウ素によって、放射性のあるヨウ素が、うすめられる。 なお、甲状腺ホルモンの働きは、体内での、さまざまな化学反応を促進(そくしん)する働きがある。 ---- [[カテゴリ:生物学]]
2018-12-07T04:21:54Z
2023-10-08T14:22:07Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%90%86%E7%A7%91_%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%9F%BA%E7%A4%8E/%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E4%BD%93%E5%86%85%E7%92%B0%E5%A2%83%E3%81%AE%E8%AA%BF%E7%AF%80
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公認会計士試験/平成30年第II回短答式/管理会計論/問題16
以下の〔資料〕に基づき,次の文中の( ア )および( イ )に当てはまる正しい数値又は語句の組合せとして最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,( * )に当てはまる数値又は語句は各自推定すること。( ** )には,「高い」あるいは「低い」という語句が入る。(7点) 当社では,第1 年度期首に新規設備投資を行うことを検討中である。内部利益率法と単純回収期間法を用い,投資の経済性計算を行った。内部利益率法によれば,当該投資案の内部利益率は( * )%であり,加重平均資本コスト率より( ア )ポイント( ** )ため,投資案は( * )すべきであると結論付けられる。単純回収期間法によれば,当該投資案の回収期間は( * )年であり,投資案は( イ )すべきであると結論付けられる。 〔資料〕 1.新規設備の購入価額は2,078 億円である。購入価額は購入時に一括して支払うものとする。 2.新規設備導入による税引後正味キャッシュ・インフローは毎年500 億円である。キャッシュ・インフローは年度末にまとめて生じると仮定する。 3.新規設備の耐用年数は5 年であり, 5 年後の処分価値はゼロである。 4.投資の経済性計算を行うに当たっては,加重平均資本コスト率を用いる。各種資金調達方法にかかわるデータは次のとおりである。なお,実効税率は40 %とする。 5.年金現価係数は次のとおりである。 6.投資案の採否の判断基準となる回収期間は4 年である。 7.内部利益率は補間法により求める。 8.内部利益率および回収期間の計算結果は小数点第2 位を四捨五入する。 5 割引率6%のときの正味現在価値:CF 500億円×年金現価係数4.212-新規設備2,078億円=28億円 割引率7%のときの正味現在価値:500億円×4.100-2,078億円=△28億円 ∴IRR=6+ 28/(28-△28) =6.5% 新規設備2,078億円÷CF 500億円=4.156年>4年 ∴棄却
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "以下の〔資料〕に基づき,次の文中の( ア )および( イ )に当てはまる正しい数値又は語句の組合せとして最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,( * )に当てはまる数値又は語句は各自推定すること。( ** )には,「高い」あるいは「低い」という語句が入る。(7点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "当社では,第1 年度期首に新規設備投資を行うことを検討中である。内部利益率法と単純回収期間法を用い,投資の経済性計算を行った。内部利益率法によれば,当該投資案の内部利益率は( * )%であり,加重平均資本コスト率より( ア )ポイント( ** )ため,投資案は( * )すべきであると結論付けられる。単純回収期間法によれば,当該投資案の回収期間は( * )年であり,投資案は( イ )すべきであると結論付けられる。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "〔資料〕", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "1.新規設備の購入価額は2,078 億円である。購入価額は購入時に一括して支払うものとする。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "2.新規設備導入による税引後正味キャッシュ・インフローは毎年500 億円である。キャッシュ・インフローは年度末にまとめて生じると仮定する。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "3.新規設備の耐用年数は5 年であり, 5 年後の処分価値はゼロである。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "4.投資の経済性計算を行うに当たっては,加重平均資本コスト率を用いる。各種資金調達方法にかかわるデータは次のとおりである。なお,実効税率は40 %とする。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "5.年金現価係数は次のとおりである。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "6.投資案の採否の判断基準となる回収期間は4 年である。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "7.内部利益率は補間法により求める。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 10, "tag": "p", "text": "8.内部利益率および回収期間の計算結果は小数点第2 位を四捨五入する。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 11, "tag": "p", "text": "5", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 12, "tag": "p", "text": "割引率6%のときの正味現在価値:CF 500億円×年金現価係数4.212-新規設備2,078億円=28億円", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 13, "tag": "p", "text": "割引率7%のときの正味現在価値:500億円×4.100-2,078億円=△28億円", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 14, "tag": "p", "text": "∴IRR=6+ 28/(28-△28) =6.5%", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 15, "tag": "p", "text": "新規設備2,078億円÷CF 500億円=4.156年>4年 ∴棄却", "title": "解説" } ]
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:[[../問題15|←前の問題]] :次の問題→ == 問題 ==  以下の〔資料〕に基づき,次の文中の( ア )および( イ )に当てはまる正しい数値又は語句の組合せとして最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,( * )に当てはまる数値又は語句は各自推定すること。( ** )には,「高い」あるいは「低い」という語句が入る。(7点)  当社では,第1 年度期首に新規設備投資を行うことを検討中である。内部利益率法と単純回収期間法を用い,投資の経済性計算を行った。内部利益率法によれば,当該投資案の内部利益率は( * )%であり,加重平均資本コスト率より( ア )ポイント( ** )ため,投資案は( * )すべきであると結論付けられる。単純回収期間法によれば,当該投資案の回収期間は( * )年であり,投資案は( イ )すべきであると結論付けられる。 〔'''資料'''〕 1.新規設備の購入価額は2,078 億円である。購入価額は購入時に一括して支払うものとする。 2.新規設備導入による税引後正味キャッシュ・インフローは毎年500 億円である。キャッシュ・インフローは年度末にまとめて生じると仮定する。 3.新規設備の耐用年数は5 年であり, 5 年後の処分価値はゼロである。 4.投資の経済性計算を行うに当たっては,加重平均資本コスト率を用いる。各種資金調達方法にかかわるデータは次のとおりである。なお,実効税率は40 %とする。 {| class="wikitable" |資金調達方法 |資金調達割合 |利子率又は資本コスト率 |- |借入金 |40% |5% |- |資本金 |60% |8% |} 5.年金現価係数は次のとおりである。 {| class="wikitable" | |5% |6% |7% |8% |- |5年 |4.329 |4.212 |4.100 |3.993 |} 6.投資案の採否の判断基準となる回収期間は4 年である。 7.内部利益率は補間法により求める。 8.内部利益率および回収期間の計算結果は小数点第2 位を四捨五入する。 {| class="wikitable" | |ア |イ |- |1. |0.2 |採択 |- |2. |0.3 |採択 |- |3. |0.3 |棄却 |- |4. |0.5 |採択 |- |5. |0.5 |棄却 |} == 正解 == 5 == 解説 == {| class="wikitable" |+加重平均資本コスト | |資金調達割合 |利子率又は資本コスト率(税金考慮後) |- |借入金 |40% |5%×(1-40%)=3% |- |資本金 |60% |8% |- |合計 |100% |3%×40%+8%×60%=6% |} === 内部利益率 === 割引率6%のときの正味現在価値:CF 500億円×年金現価係数4.212-新規設備2,078億円=28億円 割引率7%のときの正味現在価値:500億円×4.100-2,078億円=△28億円 {| class="wikitable" |割引率 |6% |IRR |7% |- |NPV |28 |0 |△28 |} ∴IRR=6+ 28/(28-△28) =6.5% === 回収期間法 === 新規設備2,078億円÷CF 500億円=4.156年>4年 ∴棄却 :[[../問題15|←前の問題]] :次の問題→ [[カテゴリ:管理会計]]
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2022-11-28T16:27:25Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%85%AC%E8%AA%8D%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%A3%AB%E8%A9%A6%E9%A8%93/%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B4%E7%AC%ACII%E5%9B%9E%E7%9F%AD%E7%AD%94%E5%BC%8F/%E7%AE%A1%E7%90%86%E4%BC%9A%E8%A8%88%E8%AB%96/%E5%95%8F%E9%A1%8C16
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公認会計士試験/平成30年第II回短答式/財務会計論/問題2
当社は, 5 伝票制を採用しており,商品売買取引は全ていったん掛け取引として処理している。次の〔資料〕に基づき,1および2に当てはまる勘定科目の組合せとして最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(8点) 〔資料〕 (1) (2) (3) 3
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "当社は, 5 伝票制を採用しており,商品売買取引は全ていったん掛け取引として処理している。次の〔資料〕に基づき,1および2に当てはまる勘定科目の組合せとして最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(8点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "〔資料〕", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "(1)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "(2)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "(3)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "3", "title": "正解" } ]
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: [[../問題1|←前の問題]] : [[../問題3|次の問題→]] == 問題 ==  当社は, 5 伝票制を採用しており,商品売買取引は全ていったん掛け取引として処理している。次の〔資料〕に基づき,①および②に当てはまる勘定科目の組合せとして最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(8点) 〔'''資料'''〕 :1.X年5 月1 日から7 日までの全ての取引 ::(1) A商店に商品8,740 千円を注文していたが,同店が取り組んだ荷為替7,000 千円を取引銀行から呈示されたので,これを引き受け,船荷証券を受け取った。 ::(2) B商店から商品3,220 千円を仕入れ,代金は得意先のC商店を名宛て人とする為替手形を振り出し,同店の引き受けを得て,B商店に引き渡した。 ::(3) A商店から受け取った⑴の船荷証券と引き換えに,商品を引き取った。なお,商品引き取りに伴う諸費用300 千円は,現金で支払った。 :2.X年5 月1 日から7 日までに起票された伝票(略式,単位:千円) ::以下の(1)〜(3)は上記1.の各取引に対応している。 (1) {| class="wikitable" |<u>振替伝票(借方)</u> (   )7,000 |<u>振替伝票(貸方)</u> 支払手形 7,000 |} {| class="wikitable" |<u>振替伝票(借方)</u> (   )1,740 |<u>振替伝票(貸方)</u> (   )1,740 |} (2) {| class="wikitable" |<u>仕入伝票</u> B商店 3,220 |} {| class="wikitable" |<u>振替伝票(借方)</u> ( ① )3,220 |<u>振替伝票(貸方)</u> (   )3,220 |} (3) {| class="wikitable" |<u>仕入伝票</u> A商店 (   ) |} {| class="wikitable" |<u>振替伝票(借方)</u> (   )(   ) |<u>振替伝票(借方)</u> ( ② )(   ) |} {| class="wikitable" |<u>出金伝票</u> 仕入 300 |} {| class="wikitable" |+ | |① |② |- |1. |売掛金 |未着商品 |- |2. |売掛金 |積送品 |- |3. |買掛金 |未着商品 |- |4. |買掛金 |積送品 |- |5. |支払手形 |未着商品 |- |6. |支払手形 |積送品 |} : == 正解 == 3 == 解説 == {| | colspan="6" |(1)振替伝票 |- |(借) |未着商品 |7,000 |(貸) |支払手形 |7,000 |- |(借) |未着商品 |1,740 |(貸) |買掛金 |1,740 |- | colspan="6" |(2)仕入伝票 |- |(借) |仕入 |3,220 |(貸) |買掛金(B商店) |3,220 |- | colspan="6" |(2)振替伝票 |- |(借) |'''買掛金''' |3,220 |(貸) |売掛金 |3,220 |- | colspan="6" |(3)仕入伝票 |- |(借) |仕入 |8,740 |(貸) |買掛金(A商店) |8,740 |- | colspan="6" |(3)振替伝票 |- |(借) |買掛金 |8,740 |(貸) |'''未着商品''' |8,740 |- | colspan="6" |(3)出金伝票 |- |(借) |仕入 |300 |(貸) |現金 |300 |} : [[../問題1|←前の問題]] : [[../問題3|次の問題→]] [[カテゴリ:財務会計]]
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2022-11-28T16:35:22Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%85%AC%E8%AA%8D%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%A3%AB%E8%A9%A6%E9%A8%93/%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B4%E7%AC%ACII%E5%9B%9E%E7%9F%AD%E7%AD%94%E5%BC%8F/%E8%B2%A1%E5%8B%99%E4%BC%9A%E8%A8%88%E8%AB%96/%E5%95%8F%E9%A1%8C2
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公認会計士試験/平成30年第II回短答式/財務会計論/問題3
次の〔資料〕に基づき,当期の売上原価の金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(8点) 〔資料〕 5 ※以下,単位は千円
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "次の〔資料〕に基づき,当期の売上原価の金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(8点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "〔資料〕", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "5", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "※以下,単位は千円", "title": "解説" } ]
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: [[../問題2|←前の問題]] : [[../問題4|次の問題→]] == 問題 ==  次の〔資料〕に基づき,当期の売上原価の金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(8点) 〔'''資料'''〕 {| class="wikitable" | |A商品 |B商品 |C商品 |- |期首商品棚卸高 |12,800千円 |16,200千円 |8,900千円 |- |当期商品仕入高 |131,000千円 |182,000千円 |76,000千円 |- |期末商品棚卸高 | | | |- | 帳簿棚卸高 |210個 |95個 |110個 |- | 実地棚卸高 |195個 |80個 |105個 |- | 取得原価 |@60千円 |@190千円 |@85千円 |- | 正味売却価額 |@55千円 |@210千円 |@(?)千円 |} :1.A商品の棚卸減耗については原価性がある。 :2.B商品の棚卸減耗のうち,10 個分については原価性がある。 :3.C商品の棚卸減耗については原価性がある。C商品の見積売却予定価額は@85 千円であり,見積販売直接経費は@2 千円である。 :4.棚卸減耗のうち原価性のあるものは,売上原価として処理する。 :5.当期の収益性の低下による簿価切下額は,臨時の事象に起因しておらず,多額であるとは認められない。 {| |1. |388,085千円 |2. |390,125千円 |3. |391,075千円 |- |4. |391,100千円 |5. |391,310千円 |6. |392,910千円 |} == 正解 == 5 == 解説 == ※以下,単位は千円 ; 期首商品棚卸高 : A商品12,800+B商品16,200+C商品8,900=37,900 ; 当期商品棚卸高 : A商品131,000+B商品182,000+C商品76,000=389,000 ; 期末商品棚卸高 : A商品@60×210個+B商品@190×95個+C商品@85×110個=40,000 === 棚卸減耗損 === ; A商品 : (帳簿210個-実地195個)×@60=900 ; B商品 : 原価性アリ10個×@190=1,900 ; C商品 : (帳簿110個-実地105個)×@85=3,225 ; 計 : A商品900+B商品1,900+C商品425=3,225 === 商品評価損 === ; A商品 : (取得原価@60-正味売却価額@55)×実地195=975 ; B商品 : 取得原価@190<正味売却価額@210より,考慮しない ; C商品 : (取得原価@85-正味売却価額@83)×実地105=210 : ※正味売却価額:見積売却予定価額@85-見積販売直接経費@2=@83 ; 計 : A商品975+C商品210=1,185 === 損益計算書 === {| |売上高 | |xxx |- |売上原価 | | |- | 期首商品棚卸高 |37,900 | |- | 当期商品仕入高 |389,000 | |- |  計 |style="border-top: 1px solid #000"|426,900 | |- | 期末商品棚卸高 |40,000 | |- |  差引 |style="border-top: 1px solid #000"|386,900 | |- | 棚卸減耗損 |3,225 | |- | 商品評価損 |style="border-bottom: 1px solid #000"|1,185 |style="border-bottom: 1px solid #000"|'''391,310''' |- | 売上総利益 | |xxx |} : [[../問題2|←前の問題]] : [[../問題4|次の問題→]] [[カテゴリ:財務会計]]
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2022-11-28T16:36:01Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%85%AC%E8%AA%8D%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%A3%AB%E8%A9%A6%E9%A8%93/%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B4%E7%AC%ACII%E5%9B%9E%E7%9F%AD%E7%AD%94%E5%BC%8F/%E8%B2%A1%E5%8B%99%E4%BC%9A%E8%A8%88%E8%AB%96/%E5%95%8F%E9%A1%8C3
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公認会計士試験/平成30年第II回短答式/財務会計論/問題4
次の〔資料〕に基づき,当社の当期(X1 年4 月1 日〜X2 年3 月31 日)における減価償却費の合計額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(8点) 〔資料〕 当社は,当期において1.〜4.の固定資産を取得または保有している。なお,これ以外の固定資産は取得,除却および保有していない。減価償却方法として,定額法を採用しており,全て残存価額0 円で計算している。 4
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "次の〔資料〕に基づき,当社の当期(X1 年4 月1 日〜X2 年3 月31 日)における減価償却費の合計額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(8点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "〔資料〕", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "当社は,当期において1.〜4.の固定資産を取得または保有している。なお,これ以外の固定資産は取得,除却および保有していない。減価償却方法として,定額法を採用しており,全て残存価額0 円で計算している。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "4", "title": "正解" } ]
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: [[../問題3|←前の問題]] : [[../問題5|次の問題→]] == 問題 ==  次の〔資料〕に基づき,当社の当期(X1 年4 月1 日〜X2 年3 月31 日)における減価償却費の合計額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(8点) 〔'''資料'''〕  当社は,当期において1.〜4.の固定資産を取得または保有している。なお,これ以外の固定資産は取得,除却および保有していない。減価償却方法として,定額法を採用しており,全て残存価額0 円で計算している。 : 1.備品:当期の第1 四半期末に備品(耐用年数5 年)を本社用に3 台,工場用に2 台取得した。購入価額は1 台2,000 千円であった。本社では,取得した翌日に使用を開始したが,工場では,当期末現在まだ使用を開始していない。 : 2.機械A:自社工場で機械A(耐用年数20 年)を製作した。この機械の製作には,材料費20,000 千円,労務費12,000 千円,外注費35,000 千円を要し,製造間接費として配賦すべき額が3,000 千円あった。製作の完了は当期期首であったが,試運転に時間を要し,実際に製品製造の用に供したのは,第3 四半期期首であった。なお,試運転に要した費用は,6,000 千円であった。 : 3.機械B:取得価額30,000 千円の機械B(耐用年数10 年)を,前々期期首から,製造現場に据え付けて使用していたが,当期期首より使用を中止しており,遊休資産として扱っている。 : 4.建物:賃貸用建物(耐用年数40 年)が,前期末に建設費20,000 千円で完成した。当期第2 四半期期首から入居可能になっており,入居者募集の広告を実施しているが,実際の入居は,当期の第3 四半期期首から始まった。 {| |1. |3,175千円 |2. |4,950千円 |3. |6,025千円 |- |4. |6,175千円 |5. |7,950千円 |6. |8,075千円 |} == 正解 == 4 == 解説 == ; 備品 : @2,000×3台(本社用)÷耐用年数5年÷12カ月×9カ月=900 : ※工場用は使用開始前であるから減価償却しない ; 機械A : (材料費20,000+労務費12,000+外注費35,000+製造間接費3,000+試運転費6,000)÷20年÷12カ月×6カ月=1,900 ; 機械B : 取得原価30,000÷10年=3,000 : ※営業外費用として減価償却費を計上 ; 賃貸用建物 : 20,000÷40年÷12カ月×9カ月=375 : ※入居者募集の広告を実施した第2四半期から減価償却 : [[../問題3|←前の問題]] : [[../問題5|次の問題→]] [[カテゴリ:財務会計]]
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2022-11-28T16:36:05Z
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中高一貫校の学習
ここウィキブックス『中高一貫校の学習』では、ウィキブックスのボランティアが執筆した中高一貫生向けの教科書を収録しています。 中学受験合格おめでとうございます。あなたの頑張りは、後になって必ず生きてきます。これに慢心せずに、頑張ってください。 このページから先の項目は完成していません。まだ内容がしっかりとしていませんので、注意してください。 中等教育前期(中学校)の内容です。発展的な内容も取り扱っています。 中等教育後期(高校)は基本的に一般の高校の教科書と同じです。高校の教科書を参考にしてください。
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "ここウィキブックス『中高一貫校の学習』では、ウィキブックスのボランティアが執筆した中高一貫生向けの教科書を収録しています。", "title": "" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "中学受験合格おめでとうございます。あなたの頑張りは、後になって必ず生きてきます。これに慢心せずに、頑張ってください。", "title": "" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "このページから先の項目は完成していません。まだ内容がしっかりとしていませんので、注意してください。", "title": "" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "中等教育前期(中学校)の内容です。発展的な内容も取り扱っています。", "title": "中等教育前期の内容" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "中等教育後期(高校)は基本的に一般の高校の教科書と同じです。高校の教科書を参考にしてください。", "title": "中等教育後期の内容" } ]
 ここウィキブックス『中高一貫校の学習』では、ウィキブックスのボランティアが執筆した中高一貫生向けの教科書を収録しています。
{{stub}} {{進捗状況}} :* [[小学校・中学校・高等学校の学習]] > 中高一貫校の学習 ----  ここウィキブックス『中高一貫校の学習』では、ウィキブックスのボランティアが執筆した中高一貫生向けの教科書を収録しています。 === 中高一貫校の生徒さんへ ===  中学受験合格おめでとうございます。あなたの頑張りは、後になって必ず生きてきます。これに慢心せずに、頑張ってください。 * '''注意''' ''' このページから先の項目は[[Wikibooks:スタブ|完成していません。]]まだ内容がしっかりとしていませんので、注意してください。''' :''' 中高一貫校は、各校によってカリキュラムが異なります。この教科書は、ウィキブックスのボランティアが想定して作ったものです。これより進んでいる場合は、[[高等学校の学習|高校の教科書]]を参考にしてください。''' == 教育制度 == * 15中9*年とする(義務教育期間) * 内中等教育に含む範囲が6 - 9*歳であり,主に3年間である * 一貫校は中等教育が限りある * 単位:年|月|週|日|時〈2・5:3→内10=7〉 == 中等教育前期の内容 == 中等教育前期(中学校)の内容です。発展的な内容も取り扱っています。 === 国語 === * [[中等教育前期の国語]] {{進捗|00%|2018-12-08}} === 社会 === * [[中等教育前期の社会]] :* [[中等教育前期の社会 地理]] {{進捗|00%|2018-12-08}} :* [[中等教育前期の社会 歴史]] {{進捗|00%|2018-12-08}} :* [[中等教育前期の社会 公民]] {{進捗|00%|2018-12-08}} === 数学 === *[[中等教育前期の数学]] :* [[中等教育前期の数学/代数編/上巻]] {{進捗|00%|2018-12-09}} :* [[中等教育前期の数学/代数編/下巻]] {{進捗|00%|2018-12-09}} :* [[中等教育前期の数学/幾何編/上巻]] {{進捗|00%|2018-12-09}} :* [[中等教育前期の数学/幾何編/下巻]] {{進捗|00%|2018-12-09}} === 理科 === * [[中等教育前期の理科]] :* [[中等教育前期の理科 第1分野]](化学、物理分野){{進捗|00%|2018-12-08}} :* [[中等教育前期の理科 第2分野]](生物、地学分野){{進捗|00%|2018-12-08}} === 外国語 === * [[中等教育前期の英語]] {{進捗|00%|2018-12-08}} == 中等教育後期の内容 == 中等教育後期(高校)は基本的に一般の高校の教科書と同じです。[[高等学校の学習|高校の教科書]]を参考にしてください。 == 関連項目 == * [[中高一貫校生活ガイド]] {{stub}} [[Category:中学校教育|*]] [[Category:書庫|ちゆうとうきよういくかつこうのかくしゆう]] [[Category:中高一貫教育|*]]
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2022-08-31T01:59:11Z
[ "テンプレート:進捗", "テンプレート:Stub", "テンプレート:進捗状況" ]
https://ja.wikibooks.org/wiki/%E4%B8%AD%E9%AB%98%E4%B8%80%E8%B2%AB%E6%A0%A1%E3%81%AE%E5%AD%A6%E7%BF%92
24,748
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/財務会計論/問題6
次の〔資料〕に基づき,X4 年度末の貸借対照表に計上すべき資産除去債務の金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,「資産除去債務に関する会計基準」に従うこと。また,利率(%)は小数点第3 位を四捨五入し,計算結果に端数が生じる場合,千円未満を四捨五入すること。(8点) 〔資料〕 6 X4年度末に見積り額が減少しているから,X4年度末における見積り額を割り引いて求める。割引率には無リスクの税引前の利率を用いる。
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "次の〔資料〕に基づき,X4 年度末の貸借対照表に計上すべき資産除去債務の金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,「資産除去債務に関する会計基準」に従うこと。また,利率(%)は小数点第3 位を四捨五入し,計算結果に端数が生じる場合,千円未満を四捨五入すること。(8点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "〔資料〕", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "6", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "X4年度末に見積り額が減少しているから,X4年度末における見積り額を割り引いて求める。割引率には無リスクの税引前の利率を用いる。", "title": "解説" } ]
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: [[../問題5|←前の問題]] : [[../問題7|次の問題→]] == 問題 ==  次の〔資料〕に基づき,X4 年度末の貸借対照表に計上すべき資産除去債務の金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,「資産除去債務に関する会計基準」に従うこと。また,利率(%)は小数点第3 位を四捨五入し,計算結果に端数が生じる場合,千円未満を四捨五入すること。(8点) 〔'''資料'''〕 : 1.当社は,X1 年度期首に設備(取得原価7,200 千円)を取得し,直ちに使用を開始した。減価償却において,当該設備の耐用年数は6 年,残存価額は0 円と見積もっており,定額法を採用している。 : 2.当社は,当該設備の使用後,当該設備を除去する法的義務を負っている。当該設備を除去するときの支出は,取得時において割引前で1,300 千円を見積もっている。なお,資産除去債務は,当該設備取得時にのみ発生する。 : 3.当該設備取得時における,貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前の利率は1.50 %であり,当社の信用リスクを反映した利率は3.25 %であった。 : 4.X2 年度末において,当該設備を除去するときの支出の割引前の見積額に変更はなかった。 : 5.X3 年度末において,当該設備を除去するときの支出の割引前の見積額を,2,000千円に修正した。また,X3 年度末における貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前の利率は2.50 %であり,当社の信用リスクを反映した利率は4.25 %であった。 : 6.X4 年度末において,当該設備を除去するときの支出の割引前の見積額を,1,500千円に修正した。また,X4 年度末における貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前の利率は3.00 %であり,当社の信用リスクを反映した利率は5.00 %であった。 : 7.将来キャッシュ・フローの減少部分に適用すべき割引率は特定できない。 {| |1. |1,380千円 |2. |1,398千円 |3. |1,407千円 |- |4. |1,414千円 |5. |1,428千円 |6. |1,446千円 |} == 正解 == 6 == 解説 == X4年度末に見積り額が減少しているから,X4年度末における見積り額を割り引いて求める。割引率には無リスクの税引前の利率を用いる。 ; 割引率(加重平均) : (1.50%×当初見積1,300 + 2.50%×増加分700)÷2,000 =1.85% ; X4年度末の資産除去債務 : 見積額1,500÷(1+0.0185)<sup>2</sup>≒'''1,446''' {| class="wikitable" |+資産除去債務に関する仕訳(参考) | colspan="6" |取得時 |- |(借) |設備 |8,389 |(貸) |現金預金 |7,200 |- | | | |(貸) |資産除去債務 |1,189 |- | colspan="6" |X1年度末 |- |(借) |利息費用 |18 |(貸) |資産除去債務 |18 |- | colspan="6" |※1,189×1.50%≒18,資産除去債務期末残高1,189+18=1,207 |- | colspan="6" |X2年度末 |- |(借) |利息費用 |18 |(貸) |資産除去債務 |18 |- | colspan="6" |※1,207×1.50%≒18,期末残高1,207+18=1,225 |- | colspan="6" |X3年度末 |- |(借) |利息費用 |18 |(貸) |資産除去債務 |18 |- | colspan="6" |※1,225×1.50%≒18,残高1,225+18=1,243 |- | colspan="6" |X3年度見積り修正 |- |(借) |設備 |650 |(貸) |資産除去債務 |650 |- | colspan="6" |※見積り増加額700÷(1+0.0250)<sup>3≒</sup>650,期末残高1,225+18=1,893 |- | colspan="6" |X4年度末 |- |(借) |利息費用 |35 |(貸) |資産除去債務 |35 |- | colspan="6" |※1,243×1.50%+650×2.50%=35,残高1,893+35=1,928 |- | colspan="6" |X4年度見積り修正 |- |(借) |資産除去債務 |482 |(貸) |設備 |482 |- | colspan="6" |※直前計上額1,928-見積変更後計上額1,446=482 |} : [[../問題5|←前の問題]] : [[../問題7|次の問題→]] [[カテゴリ:財務会計]]
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2022-11-28T16:36:11Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%85%AC%E8%AA%8D%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%A3%AB%E8%A9%A6%E9%A8%93/%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B4%E7%AC%ACII%E5%9B%9E%E7%9F%AD%E7%AD%94%E5%BC%8F/%E8%B2%A1%E5%8B%99%E4%BC%9A%E8%A8%88%E8%AB%96/%E5%95%8F%E9%A1%8C6
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公認会計士試験/平成30年第II回短答式/財務会計論/問題7
次の〔資料〕に基づき,当期末(X年3 月31 日)の貸借対照表の負債の部に計上すべき引当金の金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,計算結果に端数が生じる場合,百万円未満を四捨五入すること。(8点) 〔資料〕 1 ※単位:百万円
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "次の〔資料〕に基づき,当期末(X年3 月31 日)の貸借対照表の負債の部に計上すべき引当金の金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,計算結果に端数が生じる場合,百万円未満を四捨五入すること。(8点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "〔資料〕", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "1", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "※単位:百万円", "title": "解説" } ]
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: [[../問題6|←前の問題]] : [[../問題8|次の問題→]] == 問題 ==  次の〔資料〕に基づき,当期末(X年3 月31 日)の貸借対照表の負債の部に計上すべき引当金の金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,計算結果に端数が生じる場合,百万円未満を四捨五入すること。(8点) 〔'''資料'''〕 : 1.当社は,自社製品の販売について,販売時より1 年間の保証期間を設けており,保証期間内に当社の責任により故障または不具合が生じた製品を無償修理することを,顧客に約している。製品保証による過去の無償修理費用の売上高に対する実績率は1.25 %であった。また,製品保証を設けている製品の当期の売上高は,640,000 百万円である。 : 2.当社は,営業債権に対する貸倒引当金を設定しており,前期末の貸倒引当金の金額は4,125 百万円であった。前期末営業債権のうち105 百万円が当期に貸倒れとなり,適切な会計処理を行っている。また,当期末の貸倒引当金の決算整理前残高は,当期末に計上すべき貸倒引当金の金額より1,480 百万円不足している。 : 3.当社は,毎年6 月と12 月に従業員に対し,賞与を支払っている。6 月の賞与の支給算定期間は10 月から3 月であり,12 月の賞与の支給算定期間は4 月から9 月である。当期の支給額は6 月に6,840 百万円であり,12 月に7,152 百万円であった。次期6 月の支給については,同年6 月末に7,800 百万円を支払うことが当期末において確定している。 : 4.当社は,B社によるA社への貸付について,A社の債務保証のためB社と保証契約を結んでいる。当社が債務保証をしているB社によるA社への貸付額は,2,500 百万円であり,当期末において当該債務保証に対して保全される金額は,500 百万円である。A社は,B社に対し,返済期日延期の申込みをしており,これを受けて当該貸付金の回収可能性を懸念したB社から当社に対して,当該可能性について問い合わせがあった。当社は,A社による返済の延期は資金繰りの一時的な事情によるものであるとB社に回答した。 {| |1. |8,000百万円 |2. |9,800百万円 |3. |13,500百万円 |- |4. |15,800百万円 |5. |21.300百万円 |6. |23,300百万円 |} == 正解 == 1 == 解説 == ※単位:百万円 ; 1. 製品保証引当金 : 売上高640,000×実積率1.25%=8,000 ; 2. 貸倒引当金 : 資産の部に計上するため,負債の部に計上すべき引当金ではない ; 3. 賞与引当金 : 支給額が確定しているから引当金ではなく未払費用 ; 4. 債務保証損失引当金 : 発生の可能性(A社の負債を当社が代わって弁済する可能性)が高いとはいえないため計上要件を満たさない : [[../問題6|←前の問題]] : [[../問題8|次の問題→]] [[カテゴリ:財務会計]]
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2022-11-28T16:36:15Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%85%AC%E8%AA%8D%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%A3%AB%E8%A9%A6%E9%A8%93/%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B4%E7%AC%ACII%E5%9B%9E%E7%9F%AD%E7%AD%94%E5%BC%8F/%E8%B2%A1%E5%8B%99%E4%BC%9A%E8%A8%88%E8%AB%96/%E5%95%8F%E9%A1%8C7
24,750
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/財務会計論/問題9
当社は割賦販売業を営んでおり,収益の認識基準として回収期限到来基準,また,会計処理方法として対照勘定法を採用している。次の〔資料〕に基づき,X1 年度(X1 年4 月1 日〜X2 年3 月31 日)における売上高および営業利益の金額の組合せとして最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(8点) 〔資料〕 3
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "当社は割賦販売業を営んでおり,収益の認識基準として回収期限到来基準,また,会計処理方法として対照勘定法を採用している。次の〔資料〕に基づき,X1 年度(X1 年4 月1 日〜X2 年3 月31 日)における売上高および営業利益の金額の組合せとして最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(8点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "〔資料〕", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "3", "title": "正解" } ]
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: [[../問題8|←前の問題]] : [[../問題10|次の問題→]] == 問題 ==  当社は割賦販売業を営んでおり,収益の認識基準として回収期限到来基準,また,会計処理方法として対照勘定法を採用している。次の〔資料〕に基づき,X1 年度(X1 年4 月1 日〜X2 年3 月31 日)における売上高および営業利益の金額の組合せとして最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(8点) 〔'''資料'''〕 :1.X2 年1 月5 日に,売価75,000 千円(原価45,000 千円)の商品を10 回払いの割賦契約で販売した。 :2.当該割賦契約では,X2 年1 月からX2 年10 月にわたり,毎月末に7,500 千円を支払うこととされている。 :3.X2 年1 月末とX2 年2 月末は,契約どおりに入金された。しかし,X2 年3 月分は客先都合により入金がなされず,また,決算整理中においても入金されていない。 :4.回収期限が到来している割賦債権については, 5 %の貸倒引当金を設定する。なお,貸倒引当金の期首残高はゼロであり,貸倒引当金繰入額は営業費用(販売費及び一般管理費)として処理する。 :5.割賦債権に含まれる金利要素(利息相当分)に重要性はなく,金利部分は区分処理しないこととする。 {| class="wikitable" | |売上高 |営業利益 |- |1. |15,000 |5,625 |- |2. |22,500 |6,000 |- |3. |22,500 |8,625 |- |4. |75,000 |6,000 |- |5. |75,000 |8,625 |- |6. |75,000 |29,625 |} == 正解 == 3 == 解説 == ; 売上高(X1年度回収期限到来分:1月~3月) : 75,000÷10回×3回=22,500 ; 売上原価 : 45,000÷10回×3回=13,500 ; 営業費用(販売費及び一般管理費) : 7,500×5%=375(回収期限が到来したが未回収の債権に対する貸倒引当金繰入額) ; 営業利益 : 22,500-13,500-375=8,625 {| |+仕訳 | colspan="6" |仕入・販売 |- |(借) |仕入 |45,000 |(貸) |買掛金 |45,000 |- |(借) |割賦販売契約 |75,000 |(貸) |割賦仮売上 |75,000 |- | colspan="6" |X2.1 入金 |- |(借) |現金預金 |7,500 |(貸) |割賦売上 |7,500 |- |(借) |割賦仮売上 |7,500 |(貸) |割賦販売契約 |7,500 |- | colspan="6" |X2.2 入金 |- |(借) |現金預金 |7,500 |(貸) |割賦売上 |7,500 |- |(借) |割賦仮売上 |7,500 |(貸) |割賦販売契約 |7,500 |- | colspan="6" |X2.3 回収期限到来 |- |(借) |割賦売掛金 |7,500 |(貸) |割賦売上 |7,500 |- |(借) |割賦仮売上 |7,500 |(貸) |割賦販売契約 |7,500 |- | colspan="6" |決算整理1. 売上原価 |- |(借) |割賦商品 |31,500 |(貸) |仕入 |31,500 |- | colspan="6" |※45,000÷10回×7回 |- | colspan="6" |決算整理2. 貸倒引当金 |- |(借) |貸倒引当金繰入額 |375 |(貸) |貸倒引当金 |375 |} :[[../問題8|←前の問題]] :[[../問題10|次の問題→]] [[カテゴリ:財務会計]]
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2022-11-28T16:36:22Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%85%AC%E8%AA%8D%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%A3%AB%E8%A9%A6%E9%A8%93/%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B4%E7%AC%ACII%E5%9B%9E%E7%9F%AD%E7%AD%94%E5%BC%8F/%E8%B2%A1%E5%8B%99%E4%BC%9A%E8%A8%88%E8%AB%96/%E5%95%8F%E9%A1%8C9
24,751
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/財務会計論/問題13
次の〔資料〕に基づき,当社が保有する金融商品について,「金融商品に関する会計基準」および「金融商品会計に関する実務指針」にしたがって当期末の貸借対照表価額(個別貸借対照表における価額)を算定した場合,その合計額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(8点) 〔資料〕 1
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "次の〔資料〕に基づき,当社が保有する金融商品について,「金融商品に関する会計基準」および「金融商品会計に関する実務指針」にしたがって当期末の貸借対照表価額(個別貸借対照表における価額)を算定した場合,その合計額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(8点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "〔資料〕", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "1", "title": "正解" } ]
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: [[../問題12|←前の問題]] : [[../問題14|次の問題→]] == 問題 ==  次の〔資料〕に基づき,当社が保有する金融商品について,「金融商品に関する会計基準」および「金融商品会計に関する実務指針」にしたがって当期末の貸借対照表価額(個別貸借対照表における価額)を算定した場合,その合計額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(8点) 〔'''資料'''〕 :1.当期末において当社が保有する金融商品の内訳は,次のとおりである。(単位:千円) {| class="wikitable" |内訳 |種類 |決算整理前帳簿価額 |償却原価 |時価 |- |A社株式 |売買目的有価証券 |1,250 |- |1,450 |- |B社債券 |満期保有目的の債券 |4,500 |4,700 |2,000 |- |C社株式 |その他有価証券 |3,000 |- |3,300 |- |D社債券 |その他有価証券 |900 |950 |800 |- |S社株式 |子会社株式 |2,200 |- |2,400 |- |Gカントリークラブ会員権(供託保証金) |ゴルフ会員権 |500 |- |600 |} :2.B社債券およびD社債券は,その取得価額と債券金額との間に差があるが,当該差額の性格は金利の調整と認められる。 :3.B社債券は,当期末において時価が著しく下落しており,回復する見込みは不明である。 {| |1. |10,250千円 |2. |10,350千円 |3. |10,400千円 |- |4. |10,500千円 |5. |10,550千円 |6. |12,950千円 |} == 正解 == 1 == 解説 == ; A社株式 : 1,450(売買目的有価証券なので,時価評価) ; B社債券 : 2,000(減損処理を行うため,時価評価) ; C社株式 : 3,300(その他有価証券であるため,時価評価) ; D社債券 : 800(その他有価証券であるため,時価評価) ; S社株式 : 2,200(子会社株式であるため,取得原価により評価) ; Gカントリークラブ会員権 : 500(ゴルフ会員権は取得原価により評価) == 参考基準 == * [https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/fv-kaiji.pdf 企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準] * [https://jicpa.or.jp/specialized_field/20180219udt.html 会計制度委員会報告第14号金融商品会計に関する実務指針]223項,311項 : [[../問題12|←前の問題]] : [[../問題14|次の問題→]] [[カテゴリ:財務会計]]
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2022-11-28T16:34:10Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%85%AC%E8%AA%8D%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%A3%AB%E8%A9%A6%E9%A8%93/%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B4%E7%AC%ACII%E5%9B%9E%E7%9F%AD%E7%AD%94%E5%BC%8F/%E8%B2%A1%E5%8B%99%E4%BC%9A%E8%A8%88%E8%AB%96/%E5%95%8F%E9%A1%8C13
24,752
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/財務会計論/問題15
次のア〜エは,連結貸借対照表上の退職給付に係る負債の金額(今年度末の残高)にどのような影響を与えるか,その影響について,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(8点) 5
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "次のア〜エは,連結貸借対照表上の退職給付に係る負債の金額(今年度末の残高)にどのような影響を与えるか,その影響について,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(8点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "5", "title": "正解" } ]
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: [[../問題14|←前の問題]] : [[../問題16|次の問題→]] == 問題 ==  次のア〜エは,連結貸借対照表上の退職給付に係る負債の金額(今年度末の残高)にどのような影響を与えるか,その影響について,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(8点) :ア.今年度から,割引率を1.5 %から1 %に引き下げた。 :イ.今年度から,数理計算上の差異の償却年数を15 年から10 年に短縮した。 :ウ.決算日の当日,企業外部で運用している年金資産への特別拠出を行い,年金資産を10 億円増加させた。 :エ.今年度から,退職金の支給規程を変更し,退職金支払額を従業員1 人当たり10 万円増額した。この変更は,昨年度末においては想定されていなかったものである。 {| class="wikitable" | rowspan="2" | | colspan="4" |退職給付に係る負債の金額に与える影響 |- |必ず増加させる |必ず減少させる |増加させる場合も減少させる場合もある |影響を与えない |- |1. | |ア |イ |ウ,エ |- |2. |エ | |ウ |ア,イ |- |3. |ア,エ |ウ |イ | |- |4. |イ | |ウ |ア,エ |- |5. |ア,エ |ウ | |イ |- |6. |ア,イ | |エ |ウ |} == 正解 == 5 == 解説 == ; ア : 引下げ後の割引率により退職給付債務を計算すると,退職給付債務が増加する。 ; イ : 退職給付債務および年金資産に影響を与えないから,連結貸借対照表上の退職給付に係る負債には影響を与えない。なお,個別貸借対照表上の退職給付引当金には影響を与える。 ; ウ : "退職給付に係る負債=退職給付債務-年金資産"であるから,年金資産の増加は退職給付に係る負債を減少させる。 ; エ : 退職給付見込額が増加すると退職給付債務が増加する。 : [[../問題14|←前の問題]] : [[../問題16|次の問題→]] [[カテゴリ:財務会計]]
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2022-11-28T16:34:19Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%85%AC%E8%AA%8D%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%A3%AB%E8%A9%A6%E9%A8%93/%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B4%E7%AC%ACII%E5%9B%9E%E7%9F%AD%E7%AD%94%E5%BC%8F/%E8%B2%A1%E5%8B%99%E4%BC%9A%E8%A8%88%E8%AB%96/%E5%95%8F%E9%A1%8C15
24,753
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/財務会計論/問題16
当社は,退職一時金と確定給付型年金制度を併用している。次の〔資料〕に基づき,X3年度(X3 年4 月1 日〜X4 年3 月31 日)の個別損益計算書における退職給付費用の金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,計算過程で端数が生じる場合,千円未満を四捨五入すること。(8点) 〔資料〕 6 ※費用処理500=期首4,000÷(10年-2年(X1.4-X3.3)) ※費用処理20=期首180÷(10年-1年(X2.4-X3.3)) ∴6,150+890-360+500+20+190=7,390
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "当社は,退職一時金と確定給付型年金制度を併用している。次の〔資料〕に基づき,X3年度(X3 年4 月1 日〜X4 年3 月31 日)の個別損益計算書における退職給付費用の金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,計算過程で端数が生じる場合,千円未満を四捨五入すること。(8点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "〔資料〕", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "6", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "※費用処理500=期首4,000÷(10年-2年(X1.4-X3.3))", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "※費用処理20=期首180÷(10年-1年(X2.4-X3.3))", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "∴6,150+890-360+500+20+190=7,390", "title": "解説" } ]
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: [[../問題15|←前の問題]] : [[../問題17|次の問題→]] == 問題 ==  当社は,退職一時金と確定給付型年金制度を併用している。次の〔資料〕に基づき,X3年度(X3 年4 月1 日〜X4 年3 月31 日)の個別損益計算書における退職給付費用の金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,計算過程で端数が生じる場合,千円未満を四捨五入すること。(8点) 〔'''資料'''〕 :1.X2 年度末の退職給付引当金は次の項目から構成される。 ::退職給付債務       44,500 千円 ::年金資産         12,000 千円 ::未認識過去勤務費用     4,000 千円(借方) ::未認識数理計算上の差異    180 千円(借方) :2.上記1.の過去勤務費用は,X1 年4 月1 日付で退職給付水準を引き上げる改訂を行ったことにより発生したものである。なお,X2 年度およびX3 年度において退職給付水準の改訂は行われず,新たな過去勤務費用は発生していない。 :3.上記1.の数理計算上の差異は,X2 年度における年金資産の実際運用収益率が長期期待運用収益率を下回ったために発生したものである。 :4.過去勤務費用および数理計算上の差異は,発生年度から10 年の定額法で費用処理している。 :5.X3 年度の勤務費用は6,150 千円である。 :6.主要な数理計算上の計算基礎は,割引率が2 %,長期期待運用収益率が3 %である。 :7.X3 年度における当社からの退職一時金の給付支払額は1,140 千円,年金基金からの給付支払額は410 千円である。 :8.X3 年度における年金基金への拠出額は3,000 千円である。 :9.X3 年度末における退職給付債務の実績額は51,390 千円,年金資産の公正な評価額は14,450 千円である。 :10.過去勤務費用および数理計算上の差異に重要性の原則は適用しない。 {| |1. |5,970千円 |2. |7,098千円 |3. |7,200千円 |- |4. |7,276千円 |5. |7,288千円 |6. |7,390千円 |} == 正解 == 6 == 解説 == {| |+退職給付債務 |style="border-color:#000;border-style:solid;border-width:1px 0 0 0"|一時金支払 1,140 | rowspan="3" style="border-color:#000;border-style:solid;border-width:1px 0 0 1px"|期首 44,500 |- |style="border-color:#000;border-style:solid;border-width:1px 0"|年金支払 410 |- |  |- | rowspan="3"|∴期末 51,390 | style="border-color:#000;border-style:solid;border-width:1px 0 0 1px"|'''勤務費用 6,150''' |- | style="border-color:#000;border-style:solid;border-width:1px 0 0 1px"|'''利息費用 890''' |- | style="border-color:#000;border-style:solid;border-width:1px 0 0 1px"|数理差異 1,400 |} {| |+年金資産 | rowspan="3" style="border-color:#000;border-style:solid;border-width:1px 1px 0 0"|期首 12,000 |style="border-color:#000;border-style:solid;border-width:1px 0 0 0"|年金支払 410 |- |style="border-color:#000;border-style:solid;border-width:1px 0"|数理差異 500 |- |  |- |style="border-color:#000;border-style:solid;border-width:1px 1px 0 0"|'''運用収益 360''' | rowspan="2" |∴期末 14,450 |- |style="border-color:#000;border-style:solid;border-width:1px 1px 0 0"|拠出 3,000 |} {| |+未認識過去勤務費用 | rowspan="2" style="border-color:#000;border-style:solid;border-width:1px 1px 0 0"|期首 4,000 |style="border-color:#000;border-style:solid;border-width:1px 0"|'''費用処理 500''' |- |∴期末 3,500 |} ※費用処理500=期首4,000÷(10年-2年(X1.4-X3.3)) {| |+未認識数理計算上の差異 | rowspan="2" style="border-color:#000;border-style:solid;border-width:1px 1px 0 0"|期首 180 |style="border-color:#000;border-style:solid;border-width:1px 0"|'''費用処理 20''' |- |∴期末 160 |- | rowspan="2" style="border-color:#000;border-style:solid;border-width:1px 1px 0 0"|当期発生 500+1,400=1,900 |style="border-color:#000;border-style:solid;border-width:1px 0"|'''費用処理190''' |- |∴期末 1,710 |} ※費用処理20=期首180÷(10年-1年(X2.4-X3.3)) ∴6,150+890-360+500+20+190='''7,390''' : [[../問題15|←前の問題]] : [[../問題17|次の問題→]] [[カテゴリ:財務会計]]
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2022-11-28T16:34:22Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%85%AC%E8%AA%8D%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%A3%AB%E8%A9%A6%E9%A8%93/%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B4%E7%AC%ACII%E5%9B%9E%E7%9F%AD%E7%AD%94%E5%BC%8F/%E8%B2%A1%E5%8B%99%E4%BC%9A%E8%A8%88%E8%AB%96/%E5%95%8F%E9%A1%8C16
24,754
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/財務会計論/問題17
次の〔資料〕に基づき,市場販売目的のソフトウェア製作費に関してX2 年度に計上すべき費用および損失の総額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,計算結果に端数が生じる場合,千円未満を四捨五入すること。(8点) 〔資料〕 5
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "次の〔資料〕に基づき,市場販売目的のソフトウェア製作費に関してX2 年度に計上すべき費用および損失の総額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,計算結果に端数が生じる場合,千円未満を四捨五入すること。(8点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "〔資料〕", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "5", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "", "title": "解説" } ]
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: [[../問題16|←前の問題]] : [[../問題18|次の問題→]] == 問題 ==  次の〔資料〕に基づき,市場販売目的のソフトウェア製作費に関してX2 年度に計上すべき費用および損失の総額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,計算結果に端数が生じる場合,千円未満を四捨五入すること。(8点) 〔'''資料'''〕 :1.当社(会計期間は毎年3 月31 日を決算日とする1 年である。)は,X1 年4 月1 日にソフトウェアの販売を開始するとともに,ソフトウェア制作費309,120 千円を無形固定資産として計上し,見込販売数量に基づき減価償却を行っている。ソフトウェアの見込有効期間は3 年である。 {| class="wikitable" | |見込販売数量 |見込販売収益 |- |X1年度 |21,600個 |237,600千円 |- |X2年度 |14,400個 |144,000千円 |- |X3年度 |12,000個 |120,000千円 |} :2.販売開始時の見込販売数量および見込販売収益は,次のとおりであった。 :3.X1 年度の販売実績は,販売開始時の見込みどおりであった。また,X2 年度期首において,X2年度およびX3年度の販売見込みは,販売開始時から変更はなかった。 :4.X2 年度の販売実績は,X2 年度期首の見込みより減少し,次のとおりであった。 ::実績販売数量:12,900 個  実績販売収益:129,000 千円 : また,X2 年度期末において,X3 年度の販売見込みは,次のとおりであった。 ::見込販売数量: 9,500 個  見込販売収益: 76,000 千円 :5.見込販売数量および見込販売収益は,その時点での合理的な見積りに基づくものである。 {| |1. |79,499千円 |2. |81,348千円 |3. |83,076千円 |- |4. |85,008千円 |5. |94,016千円 |6. |97,911千円 |} == 正解 == 5 == 解説 == === X1年度 === ; 見込販売数量による減価償却 : 309,120× X1年度実績21,600個/期首見込販売数量合計48,000個 =139,104 ; 残存有効期間による減価償却 : 309,120÷3年=103,040 ; X1年度償却費 : 139,104>103,040より139,104 ; 減損判定 : 未償却残高309,120-139,104=170,016<期末見込販売収益264,000(=X2年度144,000+X3年度120,000) : ∴減損なし === X2年度 === ; 見込販売数量による減価償却 : 170,016× X1年度実績12,900個/期首見込販売数量合計24,600個 =83,076 ; 残存有効期間による減価償却 : 170,016÷2年=85,008 ; X1年度償却費 : 83,076<85,008より85,008 ; 減損判定 : 未償却残高85,008>期末見込販売収益76,000(X3年度) : ∴減損損失85,008-76,000=9,008 ; X2年度に計上すべき費用および損失の総額 : 85,008+9,008=94,016 : [[../問題16|←前の問題]] : [[../問題18|次の問題→]] [[カテゴリ:財務会計]]
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2022-11-28T16:34:25Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%85%AC%E8%AA%8D%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%A3%AB%E8%A9%A6%E9%A8%93/%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B4%E7%AC%ACII%E5%9B%9E%E7%9F%AD%E7%AD%94%E5%BC%8F/%E8%B2%A1%E5%8B%99%E4%BC%9A%E8%A8%88%E8%AB%96/%E5%95%8F%E9%A1%8C17
24,755
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/財務会計論/問題20
次の〔資料〕に基づき,20X3 年度(20X3 年1 月1 日〜20X3 年12 月31 日)の連結損益及び包括利益計算書における為替差損益とその他の包括利益を計算し,正しい金額の組合せとして最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(8点) 〔資料〕 1.20X3 年度における取引 2.留意事項 1
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "次の〔資料〕に基づき,20X3 年度(20X3 年1 月1 日〜20X3 年12 月31 日)の連結損益及び包括利益計算書における為替差損益とその他の包括利益を計算し,正しい金額の組合せとして最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(8点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "〔資料〕", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "1.20X3 年度における取引", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "2.留意事項", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "1", "title": "正解" } ]
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: [[../問題19|←前の問題]] : [[../問題21|次の問題→]] == 問題 ==  次の〔資料〕に基づき,20X3 年度(20X3 年1 月1 日〜20X3 年12 月31 日)の連結損益及び包括利益計算書における為替差損益とその他の包括利益を計算し,正しい金額の組合せとして最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(8点) 〔'''資料'''〕 1.20X3 年度における取引 {| |style="width:5em"|10月1日 |商品100 千ドルを掛けで仕入れた。直物相場は1 ドル当たり120 円であった。 |- |11月1日 |翌20X4 年1 月31 日を決済期日とする為替予約180 千ドルを締結した。当該為替予約は,10 月1 日の買掛金と将来の予定取引(仕入取引)をヘッジする目的で行ったものである。直物相場は1 ドル当たり118 円,予約相場は1 ドル当たり115 円であった。 |- |12月1日 |商品30 千ドルを掛けで仕入れた。直物相場は1 ドル当たり113 円であった。 |} 2.留意事項 :(1) 為替予約の会計処理は,「外貨建取引等会計処理基準」に定める振当処理による。為替予約時における直物相場による換算額と予約相場による換算額との差額(直先差額)は,適切に期間配分する。 :(2) 20X3 年度中に行われた為替予約は,ヘッジ会計の要件を満たしている。 :(3) 税効果は考慮しない。 :(4) 20X3 年度期末における直物相場は, 1 ドル当たり112 円であった。また,為替予約の時価は, 1 ドル当たり2.9 円であった。 {| class="wikitable" | |為替差損益 |その他の包括利益 |- |1. |400千円 |145千円 |- |2. |400千円 |232千円 |- |3. |440千円 |145千円 |- |4. |440千円 |232千円 |- |5. |500千円 |145千円 |- |6. |500千円 |232千円 |} == 正解 == 1 == 解説 == {| style="width:30em" |+<u>10月1日の仕入</u>(取引後に為替予約) | colspan="6" |仕入日 |- |(借) |仕入 |12,000 |(貸) |買掛金 |12,000 |- | colspan="6" |為替予約日 |- |(借) |買掛金 |500 |(貸) |'''為替差損益''' |'''200''' |- | | | |(貸) |前受収益 |300 |- | colspan="6" |決算整理 |- |(借) |前受収益 |200 |(貸) |'''為替差損益''' |'''200''' |} {| class="wikitable" |日付 |X3.10.1 |X3.11.1 |(2カ月) |X3.12.31 |(1カ月) |X4.1.31 |- | | colspan="2" |直々差額@2×100千ドル='''200''' |為替差損益 '''200''' ↑ | |前受収益 100 ↑ | |- |直物相場 |120円/ドル |118円/ドル |│ | |│ | |- | | |(直先差額 @3×100千ドル=300) |│ ┴───── |  ───── |│ ┘ | |- |先物相場 | |115円/ドル | | | | |} {| style="width:30em" |+<u>12月1日の仕入</u>(取引前に為替予約) | colspan="6" |仕入日 |- |(借) |仕入 |3,450 |(貸) |買掛金 |3,450 |- | colspan="6" |決算整理 |- | colspan="6" |※仕訳ナシ |} {| style="width:30em" |+<u>為替予約の未振当部分に対する決算整理</u> |(借) |為替予約 |145 |(貸) |'''繰延ヘッジ損益''' |'''145''' |- | colspan="6" |※未振当部分:180千ドル-100千ドル-30千ドル=50千ドル ※為替予約の時価:50千ドル×2.9円=145千円 |} : [[../問題19|←前の問題]] : [[../問題21|次の問題→]] [[カテゴリ:財務会計]]
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2022-11-28T16:35:27Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%85%AC%E8%AA%8D%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%A3%AB%E8%A9%A6%E9%A8%93/%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B4%E7%AC%ACII%E5%9B%9E%E7%9F%AD%E7%AD%94%E5%BC%8F/%E8%B2%A1%E5%8B%99%E4%BC%9A%E8%A8%88%E8%AB%96/%E5%95%8F%E9%A1%8C20
24,756
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/財務会計論/問題21
次の〔資料〕に基づき,A社が一連の取引について行うべき連結財務諸表上の会計処理として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(8点) 〔資料〕 6 上図より,(2,400+1,200)×60%+120+360=2,640
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "次の〔資料〕に基づき,A社が一連の取引について行うべき連結財務諸表上の会計処理として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(8点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "〔資料〕", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "6", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "上図より,(2,400+1,200)×60%+120+360=2,640", "title": "解説" } ]
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: [[../問題20|←前の問題]] : [[../問題22|次の問題→]] == 問題 ==  次の〔資料〕に基づき,A社が一連の取引について行うべき連結財務諸表上の会計処理として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(8点) 〔'''資料'''〕 :1.A社とB社は,会社分割により,共同で新設会社C社を設立した。C社の設立に際して発行する株式のうち,A社が60 %,B社が40 %をそれぞれ取得した。A社とB社は,C社の事業に関する意思決定を共同で行う旨の契約を締結している。 :2.A社とB社が会社分割により分離した事業に係る識別可能な資産および負債の差額(識別可能純資産)の帳簿価額,識別可能純資産の時価および事業全体の時価は,それぞれ次のとおりである。 {| class="wikitable" | |識別可能純資産の帳簿価額 |識別可能純資産の時価 |事業全体の時価 |- |A社が分離した事業 |2,400百万円 |2,500百万円 |3,000百万円 |- |B社が分離した事業 |1,200百万円 |1,400百万円 |2,000百万円 |} :1.C社を連結し,のれんは計上しない。 :2.C社を連結し,のれん120 百万円を計上する。 :3.C社を連結し,のれん360 百万円を計上する。 :4.C社株式に持分法を適用し,その帳簿価額は2,160 百万円とする。 :5.C社株式に持分法を適用し,その帳簿価額は2,400 百万円とする。 :6.C社株式に持分法を適用し,その帳簿価額は2,640 百万円とする。 == 正解 == 6 == 解説 == {| class="wikitable" |+C社資本 ! rowspan="3" |旧A社 | |0% |60%←--旧A社持分売却--- |100% |- | | style="border-top:2px solid #000;border-left:2px solid #000;border-right:2px solid #000;" | | style="border-top:2px solid #000;border-right:2px solid #000;" |持分変動差額240 | rowspan="2" |旧A社事業の時価 3,000 |- |旧A社事業の簿価 2,400 | style="border-top:3px solid #F00;border-left:3px solid #F00;border-right:3px solid #F00;"| | style="border-top:2px solid #000;border-right:2px solid #000;" |A社売却持分960 |- ! rowspan="4" |旧B社 |旧B社事業の簿価 1,200 |style="border-top:2px solid #000;border-left:3px solid #F00;border-right:3px solid #F00;"|A社持分720 | style="border-top:2px solid #000;border-right:2px solid #000;" | | rowspan="3" |旧B社事業の時価 2,000 |- |旧B社事業評価差額200 | style="border-top:2px solid #000;border-left:3px solid #F00;border-right:3px solid #F00;" |評価差額A社分120 | rowspan="2" style="border-top:2px solid #000;border-right:2px solid #000;border-bottom:2px solid #000;" | |- | | style="border-top:2px solid #000;border-left:3px solid #F00;border-right:3px solid #F00;border-bottom:3px solid #F00;" |のれん360 |- | |0%----旧B社持分の取得---→ |60% |100% |} 上図より,(2,400+1,200)×60%+120+360='''2,640''' === 個別上の処理および連結修正仕訳 === {| |+A社個別上の仕訳 |(借) |C社株式 |2,400 |(貸) |A社事業 |2,400 |} {| |+A社持分法処理 |(借) |C社株式 |240 |(貸) |持分変動差額 |240 |} === 連結あるべき仕訳をA社連結財務諸表に直接行う方法 === {| | colspan="6" |分離事業の持分法評価 |- |(借) |C社株式 |2,400 |(貸) |A社資産 |2,400 |- | colspan="6" |分離事業の売却(100%→60%) |- |(借) |対価 |1,200 |(貸) |C社株式 |960 |- | | | |(貸) |持分変動差額 |240 |- | colspan="6" |旧B社事業持分の取得(0%→60%) |- |(借) |C社株式 |1,200 |(貸) |対価 |1,200 |} : [[../問題20|←前の問題]] : [[../問題22|次の問題→]] [[カテゴリ:財務会計]]
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2022-11-28T16:35:31Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%85%AC%E8%AA%8D%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%A3%AB%E8%A9%A6%E9%A8%93/%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B4%E7%AC%ACII%E5%9B%9E%E7%9F%AD%E7%AD%94%E5%BC%8F/%E8%B2%A1%E5%8B%99%E4%BC%9A%E8%A8%88%E8%AB%96/%E5%95%8F%E9%A1%8C21
24,757
線型代数学/行列と行列式/第三類/内積
中等課程では, a → {\displaystyle {\vec {a}}} と b → {\displaystyle {\vec {b}}} の内積 a → ⋅ b → {\displaystyle {\vec {a}}\cdot {\vec {b}}} を, 矢印ベクトル a → {\displaystyle {\vec {a}}} と b → {\displaystyle {\vec {b}}} のなす角を θ {\displaystyle \theta } として, と定義した. これは平面ベクトルの場合でも,空間ベクトルの場合でもそうだった. また,この式が成分計算では成分ごとの積の和に等しいこと(例えば, a → = ( a 1 a 2 ) , b → = ( b 1 b 2 ) {\displaystyle {\vec {a}}=\left({\begin{array}{c}a_{1}\\a_{2}\end{array}}\right),{\vec {b}}=\left({\begin{array}{c}b_{1}\\b_{2}\end{array}}\right)} であれば, a → ⋅ b → = a 1 b 1 + a 2 b 2 {\displaystyle {\vec {a}}\cdot {\vec {b}}=a_{1}b_{1}+a_{2}b_{2}} )を、余弦定理などにより示した. 線形代数では,成分計算の定義の方が先になる.成分で定義しておけば,次元が 4 {\displaystyle 4} 次以上のときベクトルのなす角のことを想像しなくても済む. 定義2 内積と大きさ n {\displaystyle n} 次元実数ベクトル a = ( a 1 ⋮ a n ) {\displaystyle \mathbf {a} =\left({\begin{array}{c}a_{1}\\\vdots \\a_{n}\end{array}}\right)} , b = ( b 1 ⋮ b n ) {\displaystyle \mathbf {b} =\left({\begin{array}{c}b_{1}\\\vdots \\b_{n}\end{array}}\right)} に関して、内積、大きさを次のように定める. 内積 a ⋅ b {\displaystyle \mathbf {a} \cdot \mathbf {b} } は, a ⋅ b = ( a 1 ⋮ a n ) ⋅ ( b 1 ⋮ b n ) = a 1 b 1 + a 2 b 2 + a 3 b 3 + ⋯ + a n b n {\displaystyle \mathbf {a} \cdot \mathbf {b} =\left({\begin{array}{c}a_{1}\\\vdots \\a_{n}\end{array}}\right)\cdot \left({\begin{array}{c}b_{1}\\\vdots \\b_{n}\end{array}}\right)=a_{1}b_{1}+a_{2}b_{2}+a_{3}b_{3}+\cdots +a_{n}b_{n}} ....1 a {\displaystyle \mathbf {a} } の大きさ | a | {\displaystyle |\mathbf {a} |} は, | a | = a 1 2 + a 2 2 + a 3 2 + ⋯ + a n 2 {\displaystyle |\mathbf {a} |={\sqrt {a_{1}^{2}+a_{2}^{2}+a_{3}^{2}+\cdots +a_{n}^{2}}}} ....2 すると, | a | 2 = a ⋅ a {\displaystyle |\mathbf {a} |^{2}=\mathbf {a} \cdot \mathbf {a} } が成り立つ....3 また, a ≠ 0 , b ≠ 0 {\displaystyle \mathbf {a} \neq 0,\mathbf {b} \neq 0} である a , b {\displaystyle \mathbf {a} ,\mathbf {b} } について, a ⋅ b = 0 {\displaystyle \mathbf {a} \cdot \mathbf {b} =0} のとき,「 a {\displaystyle \mathbf {a} } と b {\displaystyle \mathbf {b} } は直交する」といい,「 a ⊥ b {\displaystyle \mathbf {a} \bot \mathbf {b} } 」と書く. ◼ {\displaystyle \blacksquare } n = 2 , 3 {\displaystyle n=2,3} のとき, a → {\displaystyle {\vec {a}}} の大きさ | a → | {\displaystyle |{\vec {a}}|} は,矢印ベクトルで言えば始点から終点までの長さを表していた. n {\displaystyle n} が 4 {\displaystyle 4} 以上の場合もこれに倣って,同じような成分計算で表された | a | {\displaystyle |\mathbf {a} |} を大きさというわけである. こうして定義した内積に関して,次のような計算法則が成り立つ.これも平面ベクトル・空間ベクトルでの経験から納得してもらえるだろう. 定理2 内積の計算法則 n {\displaystyle n} 次元ベクトル a , b , c {\displaystyle \mathbf {a} ,\mathbf {b} ,\mathbf {c} } と実数 k {\displaystyle k} に関して次が成り立つ. (1) ( k a ) ⋅ b = k ( a ⋅ b ) = a ⋅ ( k b ) {\displaystyle (k\mathbf {a} )\cdot \mathbf {b} =k(\mathbf {a} \cdot \mathbf {b} )=\mathbf {a} \cdot (k\mathbf {b} )} (2) a ⋅ ( b + c ) = a ⋅ b + a ⋅ c {\displaystyle \mathbf {a} \cdot (\mathbf {b} +\mathbf {c} )=\mathbf {a} \cdot \mathbf {b} +\mathbf {a} \cdot \mathbf {c} } (3) ( a + b ) ⋅ c = a ⋅ c + b ⋅ c {\displaystyle (\mathbf {a} +\mathbf {b} )\cdot \mathbf {c} =\mathbf {a} \cdot \mathbf {c} +\mathbf {b} \cdot \mathbf {c} } 証明 (1) の証明. ( k a ) ⋅ b = ∑ i = 1 n ( k a i ) b i , k ( a ⋅ b ) = k ∑ i = 1 n a i b i , a ⋅ ( k b ) = ∑ i = 1 n a i ( k b i ) {\displaystyle (k\mathbf {a} )\cdot \mathbf {b} =\sum _{i=1}^{n}(ka_{i})b_{i},\quad k(\mathbf {a} \cdot \mathbf {b} )=k\sum _{i=1}^{n}a_{i}b_{i},\quad \mathbf {a} \cdot (k\mathbf {b} )=\sum _{i=1}^{n}a_{i}(kb_{i})} .そして ∑ i = 1 n ( k a i ) b i = k ∑ i = 1 n a i b i = ∑ i = 1 n a i ( k b i ) {\displaystyle \sum _{i=1}^{n}(ka_{i})b_{i}=k\sum _{i=1}^{n}a_{i}b_{i}=\sum _{i=1}^{n}a_{i}(kb_{i})} より ( k a ) ⋅ b = k ( a ⋅ b ) = a ⋅ ( k b ) {\displaystyle (k\mathbf {a} )\cdot \mathbf {b} =k(\mathbf {a} \cdot \mathbf {b} )=\mathbf {a} \cdot (k\mathbf {b} )} . (2)の証明. a ⋅ ( b + c ) = ∑ i = 1 n a i ( b i + c i ) = ∑ i = 1 n ( a i b i + a i c i ) = ∑ i = 1 n a i b i + ∑ i = 1 n a i c i = a ⋅ b + a ⋅ c {\displaystyle \mathbf {a} \cdot (\mathbf {b} +\mathbf {c} )=\sum _{i=1}^{n}a_{i}(b_{i}+c_{i})=\sum _{i=1}^{n}(a_{i}b_{i}+a_{i}c_{i})=\sum _{i=1}^{n}a_{i}b_{i}+\sum _{i=1}^{n}a_{i}c_{i}=\mathbf {a} \cdot \mathbf {b} +\mathbf {a} \cdot \mathbf {c} } . (3)の証明. ( a + b ) ⋅ c = ∑ i = 1 n ( a i + b i ) c i = ∑ i = 1 n ( a i c i + b i c i ) = ∑ i = 1 n a i c i + ∑ i = 1 n b i c i = a ⋅ c + b ⋅ c {\displaystyle (\mathbf {a} +\mathbf {b} )\cdot \mathbf {c} =\sum _{i=1}^{n}(a_{i}+b_{i})c_{i}=\sum _{i=1}^{n}(a_{i}c_{i}+b_{i}c_{i})=\sum _{i=1}^{n}a_{i}c_{i}+\sum _{i=1}^{n}b_{i}c_{i}=\mathbf {a} \cdot \mathbf {c} +\mathbf {b} \cdot \mathbf {c} } . ◼ {\displaystyle \blacksquare } 0 {\displaystyle 0} でないベクトル a {\displaystyle \mathbf {a} } をその大きさで割ったベクトル 1 | a | a {\displaystyle {\frac {1}{|\mathbf {a} |}}\mathbf {a} } は,大きさが 1 {\displaystyle 1} になる. ± 1 | a | a {\displaystyle \pm {\frac {1}{|\mathbf {a} |}}\mathbf {a} } のことを単位化したベクトル,あるいは正規化したベクトルという. 平面ベクトルと空間ベクトルでの内積の定義は a → ⋅ b → = | a → | | b → | cos θ {\displaystyle {\vec {a}}\cdot {\vec {b}}=|{\vec {a}}||{\vec {b}}|\cos \theta } であった. ここで,定義よりも突っ込んだ内積の図形的な意味を確認しておく. a → = O A , v → = O B {\displaystyle {\vec {a}}=\mathrm {OA} ,{\vec {v}}=\mathrm {OB} } として図を描く. A {\displaystyle \mathrm {A} } から 直線 B {\displaystyle \mathrm {B} } に下ろした垂線の足を H {\displaystyle \mathrm {H} } とする. O B {\displaystyle \mathrm {OB} } を左回りに回転して O A {\displaystyle \mathrm {OA} } に重なる角を θ {\displaystyle \theta } とする. O B {\displaystyle \mathrm {OB} } に数直線を重ね合わせ, O {\displaystyle \mathrm {O} } に数値 0 {\displaystyle 0} を割り当て目盛りを振ると, H {\displaystyle \mathrm {H} } の目盛りは三角関数の定義から、 O A cos θ {\displaystyle \mathrm {OA} \cos \theta } となる. 内積の式は, と見なすことができる. 特に b → {\displaystyle {\vec {b}}} が単位ベクトル e → {\displaystyle {\vec {e}}} のときを考える. b → {\displaystyle {\vec {b}}} をあらためて e → {\displaystyle {\vec {e}}} とおく. O B = | b → | = | e → | = 1 {\displaystyle \mathrm {OB} =|{\vec {b}}|=|{\vec {e}}|=1} だから a → ⋅ e → {\displaystyle {\vec {a}}\cdot {\vec {e}}} は H {\displaystyle \mathrm {H} } の目盛りを表すことになる. a → {\displaystyle {\vec {a}}} と単位ベクトル e → {\displaystyle {\vec {e}}} との内積は a → {\displaystyle {\vec {a}}} の e → {\displaystyle {\vec {e}}} 方向の成分を表している. 定理3 a → ⋅ b → {\displaystyle {\vec {a}}\cdot {\vec {b}}} の意味 O A → = a → , O B → = e → , e → {\displaystyle {\vec {\mathrm {OA} }}={\vec {a}},\quad {\vec {\mathrm {OB} }}={\vec {e}},\quad {\vec {e}}} は単位ベクトルとする.直線 O B {\displaystyle \mathrm {OB} } に重ねた数直線に A {\displaystyle \mathrm {A} } から下ろした垂線の足を H {\displaystyle \mathrm {H} } とすると、 証明 すでに記述した. ◼ {\displaystyle \blacksquare }
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "中等課程では, a → {\\displaystyle {\\vec {a}}} と b → {\\displaystyle {\\vec {b}}} の内積 a → ⋅ b → {\\displaystyle {\\vec {a}}\\cdot {\\vec {b}}} を, 矢印ベクトル a → {\\displaystyle {\\vec {a}}} と b → {\\displaystyle {\\vec {b}}} のなす角を θ {\\displaystyle \\theta } として,", "title": "" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "と定義した. これは平面ベクトルの場合でも,空間ベクトルの場合でもそうだった. また,この式が成分計算では成分ごとの積の和に等しいこと(例えば, a → = ( a 1 a 2 ) , b → = ( b 1 b 2 ) {\\displaystyle {\\vec {a}}=\\left({\\begin{array}{c}a_{1}\\\\a_{2}\\end{array}}\\right),{\\vec {b}}=\\left({\\begin{array}{c}b_{1}\\\\b_{2}\\end{array}}\\right)} であれば, a → ⋅ b → = a 1 b 1 + a 2 b 2 {\\displaystyle {\\vec {a}}\\cdot {\\vec {b}}=a_{1}b_{1}+a_{2}b_{2}} )を、余弦定理などにより示した.", "title": "" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "線形代数では,成分計算の定義の方が先になる.成分で定義しておけば,次元が 4 {\\displaystyle 4} 次以上のときベクトルのなす角のことを想像しなくても済む.", "title": "" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "定義2 内積と大きさ", "title": "" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "n {\\displaystyle n} 次元実数ベクトル a = ( a 1 ⋮ a n ) {\\displaystyle \\mathbf {a} =\\left({\\begin{array}{c}a_{1}\\\\\\vdots \\\\a_{n}\\end{array}}\\right)} , b = ( b 1 ⋮ b n ) {\\displaystyle \\mathbf {b} =\\left({\\begin{array}{c}b_{1}\\\\\\vdots \\\\b_{n}\\end{array}}\\right)} に関して、内積、大きさを次のように定める.", "title": "" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "内積 a ⋅ b {\\displaystyle \\mathbf {a} \\cdot \\mathbf {b} } は, a ⋅ b = ( a 1 ⋮ a n ) ⋅ ( b 1 ⋮ b n ) = a 1 b 1 + a 2 b 2 + a 3 b 3 + ⋯ + a n b n {\\displaystyle \\mathbf {a} \\cdot \\mathbf {b} =\\left({\\begin{array}{c}a_{1}\\\\\\vdots \\\\a_{n}\\end{array}}\\right)\\cdot \\left({\\begin{array}{c}b_{1}\\\\\\vdots \\\\b_{n}\\end{array}}\\right)=a_{1}b_{1}+a_{2}b_{2}+a_{3}b_{3}+\\cdots +a_{n}b_{n}} ....1", "title": "" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "a {\\displaystyle \\mathbf {a} } の大きさ | a | {\\displaystyle |\\mathbf {a} |} は, | a | = a 1 2 + a 2 2 + a 3 2 + ⋯ + a n 2 {\\displaystyle |\\mathbf {a} |={\\sqrt {a_{1}^{2}+a_{2}^{2}+a_{3}^{2}+\\cdots +a_{n}^{2}}}} ....2", "title": "" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "すると, | a | 2 = a ⋅ a {\\displaystyle |\\mathbf {a} |^{2}=\\mathbf {a} \\cdot \\mathbf {a} } が成り立つ....3", "title": "" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "また, a ≠ 0 , b ≠ 0 {\\displaystyle \\mathbf {a} \\neq 0,\\mathbf {b} \\neq 0} である a , b {\\displaystyle \\mathbf {a} ,\\mathbf {b} } について, a ⋅ b = 0 {\\displaystyle \\mathbf {a} \\cdot \\mathbf {b} =0} のとき,「 a {\\displaystyle \\mathbf {a} } と b {\\displaystyle \\mathbf {b} } は直交する」といい,「 a ⊥ b {\\displaystyle \\mathbf {a} \\bot \\mathbf {b} } 」と書く.", "title": "" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "◼ {\\displaystyle \\blacksquare }", "title": "" }, { "paragraph_id": 10, "tag": "p", "text": "n = 2 , 3 {\\displaystyle n=2,3} のとき, a → {\\displaystyle {\\vec {a}}} の大きさ | a → | {\\displaystyle |{\\vec {a}}|} は,矢印ベクトルで言えば始点から終点までの長さを表していた. n {\\displaystyle n} が 4 {\\displaystyle 4} 以上の場合もこれに倣って,同じような成分計算で表された | a | {\\displaystyle |\\mathbf {a} |} を大きさというわけである.", "title": "" }, { "paragraph_id": 11, "tag": "p", "text": "こうして定義した内積に関して,次のような計算法則が成り立つ.これも平面ベクトル・空間ベクトルでの経験から納得してもらえるだろう.", "title": "" }, { "paragraph_id": 12, "tag": "p", "text": "定理2 内積の計算法則", "title": "" }, { "paragraph_id": 13, "tag": "p", "text": "n {\\displaystyle n} 次元ベクトル a , b , c {\\displaystyle \\mathbf {a} ,\\mathbf {b} ,\\mathbf {c} } と実数 k {\\displaystyle k} に関して次が成り立つ.", "title": "" }, { "paragraph_id": 14, "tag": "p", "text": "(1) ( k a ) ⋅ b = k ( a ⋅ b ) = a ⋅ ( k b ) {\\displaystyle (k\\mathbf {a} )\\cdot \\mathbf {b} =k(\\mathbf {a} \\cdot \\mathbf {b} )=\\mathbf {a} \\cdot (k\\mathbf {b} )}", "title": "" }, { "paragraph_id": 15, "tag": "p", "text": "(2) a ⋅ ( b + c ) = a ⋅ b + a ⋅ c {\\displaystyle \\mathbf {a} \\cdot (\\mathbf {b} +\\mathbf {c} )=\\mathbf {a} \\cdot \\mathbf {b} +\\mathbf {a} \\cdot \\mathbf {c} }", "title": "" }, { "paragraph_id": 16, "tag": "p", "text": "(3) ( a + b ) ⋅ c = a ⋅ c + b ⋅ c {\\displaystyle (\\mathbf {a} +\\mathbf {b} )\\cdot \\mathbf {c} =\\mathbf {a} \\cdot \\mathbf {c} +\\mathbf {b} \\cdot \\mathbf {c} }", "title": "" }, { "paragraph_id": 17, "tag": "p", "text": "証明", "title": "" }, { "paragraph_id": 18, "tag": "p", "text": "(1) の証明. ( k a ) ⋅ b = ∑ i = 1 n ( k a i ) b i , k ( a ⋅ b ) = k ∑ i = 1 n a i b i , a ⋅ ( k b ) = ∑ i = 1 n a i ( k b i ) {\\displaystyle (k\\mathbf {a} )\\cdot \\mathbf {b} =\\sum _{i=1}^{n}(ka_{i})b_{i},\\quad k(\\mathbf {a} \\cdot \\mathbf {b} )=k\\sum _{i=1}^{n}a_{i}b_{i},\\quad \\mathbf {a} \\cdot (k\\mathbf {b} )=\\sum _{i=1}^{n}a_{i}(kb_{i})} .そして ∑ i = 1 n ( k a i ) b i = k ∑ i = 1 n a i b i = ∑ i = 1 n a i ( k b i ) {\\displaystyle \\sum _{i=1}^{n}(ka_{i})b_{i}=k\\sum _{i=1}^{n}a_{i}b_{i}=\\sum _{i=1}^{n}a_{i}(kb_{i})} より ( k a ) ⋅ b = k ( a ⋅ b ) = a ⋅ ( k b ) {\\displaystyle (k\\mathbf {a} )\\cdot \\mathbf {b} =k(\\mathbf {a} \\cdot \\mathbf {b} )=\\mathbf {a} \\cdot (k\\mathbf {b} )} .", "title": "" }, { "paragraph_id": 19, "tag": "p", "text": "(2)の証明. a ⋅ ( b + c ) = ∑ i = 1 n a i ( b i + c i ) = ∑ i = 1 n ( a i b i + a i c i ) = ∑ i = 1 n a i b i + ∑ i = 1 n a i c i = a ⋅ b + a ⋅ c {\\displaystyle \\mathbf {a} \\cdot (\\mathbf {b} +\\mathbf {c} )=\\sum _{i=1}^{n}a_{i}(b_{i}+c_{i})=\\sum _{i=1}^{n}(a_{i}b_{i}+a_{i}c_{i})=\\sum _{i=1}^{n}a_{i}b_{i}+\\sum _{i=1}^{n}a_{i}c_{i}=\\mathbf {a} \\cdot \\mathbf {b} +\\mathbf {a} \\cdot \\mathbf {c} } .", "title": "" }, { "paragraph_id": 20, "tag": "p", "text": "(3)の証明. ( a + b ) ⋅ c = ∑ i = 1 n ( a i + b i ) c i = ∑ i = 1 n ( a i c i + b i c i ) = ∑ i = 1 n a i c i + ∑ i = 1 n b i c i = a ⋅ c + b ⋅ c {\\displaystyle (\\mathbf {a} +\\mathbf {b} )\\cdot \\mathbf {c} =\\sum _{i=1}^{n}(a_{i}+b_{i})c_{i}=\\sum _{i=1}^{n}(a_{i}c_{i}+b_{i}c_{i})=\\sum _{i=1}^{n}a_{i}c_{i}+\\sum _{i=1}^{n}b_{i}c_{i}=\\mathbf {a} \\cdot \\mathbf {c} +\\mathbf {b} \\cdot \\mathbf {c} } .", "title": "" }, { "paragraph_id": 21, "tag": "p", "text": "◼ {\\displaystyle \\blacksquare }", "title": "" }, { "paragraph_id": 22, "tag": "p", "text": "0 {\\displaystyle 0} でないベクトル a {\\displaystyle \\mathbf {a} } をその大きさで割ったベクトル 1 | a | a {\\displaystyle {\\frac {1}{|\\mathbf {a} |}}\\mathbf {a} } は,大きさが 1 {\\displaystyle 1} になる.", "title": "" }, { "paragraph_id": 23, "tag": "p", "text": "± 1 | a | a {\\displaystyle \\pm {\\frac {1}{|\\mathbf {a} |}}\\mathbf {a} } のことを単位化したベクトル,あるいは正規化したベクトルという.", "title": "" }, { "paragraph_id": 24, "tag": "p", "text": "平面ベクトルと空間ベクトルでの内積の定義は a → ⋅ b → = | a → | | b → | cos θ {\\displaystyle {\\vec {a}}\\cdot {\\vec {b}}=|{\\vec {a}}||{\\vec {b}}|\\cos \\theta } であった. ここで,定義よりも突っ込んだ内積の図形的な意味を確認しておく.", "title": "" }, { "paragraph_id": 25, "tag": "p", "text": "a → = O A , v → = O B {\\displaystyle {\\vec {a}}=\\mathrm {OA} ,{\\vec {v}}=\\mathrm {OB} } として図を描く. 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中等課程では, a → と b → の内積 a → ⋅ b → を, 矢印ベクトル a → と b → のなす角を θ として, と定義した. これは平面ベクトルの場合でも,空間ベクトルの場合でもそうだった. また,この式が成分計算では成分ごとの積の和に等しいことを、余弦定理などにより示した. 線形代数では,成分計算の定義の方が先になる.成分で定義しておけば,次元が 4 次以上のときベクトルのなす角のことを想像しなくても済む. 定義2 内積と大きさ n 次元実数ベクトル a = , b = に関して、内積、大きさを次のように定める. 内積 a ⋅ b は, a ⋅ b = ⋅ = a 1 b 1 + a 2 b 2 + a 3 b 3 + ⋯ + a n b n .…① a の大きさ | a | は, | a | = a 1 2 + a 2 2 + a 3 2 + ⋯ + a n 2 .…② すると, | a | 2 = a ⋅ a が成り立つ.…③ また, a ≠ 0 , b ≠ 0 である a , b について, a ⋅ b = 0 のとき,「 a と b は直交する」といい,「 a ⊥ b 」と書く. ◼ n = 2 , 3 のとき, a → の大きさ | a → | は,矢印ベクトルで言えば始点から終点までの長さを表していた. n が 4 以上の場合もこれに倣って,同じような成分計算で表された | a | を大きさというわけである. こうして定義した内積に関して,次のような計算法則が成り立つ.これも平面ベクトル・空間ベクトルでの経験から納得してもらえるだろう. 定理2 内積の計算法則 n 次元ベクトル a , b , c と実数 k に関して次が成り立つ. (1) ⋅ b = k = a ⋅ (2) a ⋅ = a ⋅ b + a ⋅ c (3) ⋅ c = a ⋅ c + b ⋅ c 証明 (1) の証明. ⋅ b = ∑ i = 1 n b i , k = k ∑ i = 1 n a i b i , a ⋅ = ∑ i = 1 n a i .そして ∑ i = 1 n b i = k ∑ i = 1 n a i b i = ∑ i = 1 n a i より ⋅ b = k = a ⋅ . (2)の証明. a ⋅ = ∑ i = 1 n a i = ∑ i = 1 n = ∑ i = 1 n a i b i + ∑ i = 1 n a i c i = a ⋅ b + a ⋅ c . (3)の証明. ⋅ c = ∑ i = 1 n c i = ∑ i = 1 n = ∑ i = 1 n a i c i + ∑ i = 1 n b i c i = a ⋅ c + b ⋅ c . ◼ 0 でないベクトル a をその大きさで割ったベクトル 1 | a | a は,大きさが 1 になる. ± 1 | a | a のことを単位化したベクトル,あるいは正規化したベクトルという. 平面ベクトルと空間ベクトルでの内積の定義は a → ⋅ b → = | a → | | b → | cos ⁡ θ であった. ここで,定義よりも突っ込んだ内積の図形的な意味を確認しておく. a → = O A , v → = O B として図を描く. A から 直線 B に下ろした垂線の足を H とする. O B を左回りに回転して O A に重なる角を θ とする. O B に数直線を重ね合わせ, O に数値 0 を割り当て目盛りを振ると, H の目盛りは三角関数の定義から、 O A cos ⁡ θ となる. 内積の式は, と見なすことができる. 特に b → が単位ベクトル e → のときを考える. b → をあらためて e → とおく. O B = | b → | = | e → | = 1 だから a → ⋅ e → は H の目盛りを表すことになる. a → と単位ベクトル e → との内積は a → の e → 方向の成分を表している. 定理3 a → ⋅ b → の意味 O A → = a → , O B → = e → , e → は単位ベクトルとする.直線 O B に重ねた数直線に A から下ろした垂線の足を H とすると、 証明 すでに記述した. ◼ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑
中等課程では,<math>\vec{a}</math> と <math>\vec{b}</math> の内積 <math>\vec{a} \cdot \vec{b}</math> を, 矢印ベクトル <math>\vec{a}</math> と <math>\vec{b}</math> のなす角を <math>\theta</math> として, :<math>\vec{a} \cdot \vec{b} = |\vec{a}||\vec{b}|\cos \theta</math> と定義した. これは平面ベクトルの場合でも,空間ベクトルの場合でもそうだった. また,この式が成分計算では成分ごとの積の和に等しいこと(例えば, <math> \vec{a} = \left( \begin{array}{c} a_1 \\ a_2 \end{array} \right) , \vec{b} = \left( \begin{array}{c} b_1 \\ b_2 \end{array} \right) </math> であれば,<math> \vec{a} \cdot \vec{b} = a_1b_1 + a_2b_2</math>)を、余弦定理などにより示した<ref> 平面上の三角形 <math>\bigtriangleup OAB, A \ne B</math> において,<math>\vec{OA}</math> と <math>\vec{OB}</math> の成す角を <math>\theta</math> と置くとき,<br /> <math>\vec{OA}</math> と <math>\vec{OB}</math> の内積を <math>\vec{OA}\cdot\vec{OB} = |\vec{OA}||\vec{OB}|\cos\theta</math> …① と定義する.<br /> このとき余弦定理により <math>|\vec{AB}|^2 = |\vec{OA}|^2 + |\vec{OB}|^2 - 2|\vec{OA}||\vec{OB}|\cos\theta</math>…②<br /> また,<math>\vec{OA}</math> の成分表示を <math>\vec{OA} = \begin{pmatrix}a_x \\ a_y\end{pmatrix}</math>,同様に <math>\vec{OB} = \begin{pmatrix}b_x \\ b_y\end{pmatrix}</math><br /> とすれば,①②をもとに内積 <math>\vec{OA}\cdot\vec{OB} = a_xb_x + a_yb_y</math> であることを以下に示す.すなわち <br /><br /> ①②より <br /> <math>|\vec{AB}|^2 = |\vec{OA}|^2 + |\vec{OB}|^2 - 2\vec{OA}\cdot\vec{OB}</math><br /> <math>\vec{OA}\cdot\vec{OB} = \frac{1}{2}\left( |\vec{OA}|^2 + |\vec{OB}|^2 - |\vec{AB}|^2 \right)</math>…③<br /> ここで③の右辺の <math>|\vec{OA}|^2, |\vec{OB}|^2, |\vec{AB}|^2</math> を成分表示に展開すると、<br /> <math>|\vec{OA}|^2 = a_x^2 + a_y^2,\ \ |\vec{OB}|^2 = b_x^2 + b_y^2,\ \ |\vec{AB}|^2 = (a_x - b_x)^2 + (a_y - b_y)^2</math><br /> すなわち、<br /> <math>\vec{OA}\cdot\vec{OB} = \frac{1}{2}\left\{ a_x^2 + a_y^2 + b_x^2 + b_y^2 - (a_x - b_x)^2 - (a_y - b_y)^2 \right\}</math><br /> <math>= \frac{1}{2}\left\{ a_x^2 + a_y^2 + b_x^2 + b_y^2 - ( a_x^2 + b_x^2 - 2a_xb_x + a_y^2 + b_y^2 - 2a_yb_y ) \right\}</math><br /> <math>= \frac{1}{2}\left\{ {\cancel{a_x^2}} + \cancel{a_y^2} + \cancel{b_x^2} + \cancel{b_y^2} - (\cancel{a_x^2} + \cancel{b_x^2} - 2a_xb_x + \cancel{a_y^2} + \cancel{b_y^2} - 2a_yb_y ) \right\}</math><br /> <math>= a_xb_x + a_yb_y</math><br /> <br /> </ref>. 線形代数では,成分計算の定義の方が先になる.成分で定義しておけば,次元が <math>4</math> 次以上のときベクトルのなす角のことを想像しなくても済む. <!-- def:002:start --> <strong>定義2</strong> <strong>内積と大きさ</strong> <math>n</math> 次元実数ベクトル <math>\mathbf{a} = \left( \begin{array}{c} a_1 \\ \vdots \\ a_n \end{array} \right) </math> , <math>\mathbf{b} = \left( \begin{array}{c} b_1 \\ \vdots \\ b_n \end{array} \right) </math> に関して、内積、大きさを次のように定める. 内積 <math>\mathbf{a} \cdot \mathbf{b}</math> は,<math>\mathbf{a} \cdot \mathbf{b} = \left( \begin{array}{c} a_1 \\ \vdots \\ a_n \end{array} \right) \cdot \left( \begin{array}{c} b_1 \\ \vdots \\ b_n \end{array} \right) = a_1b_1 + a_2b_2 + a_3b_3 + \cdots + a_nb_n</math>.…① <math>\mathbf{a}</math> の大きさ <math>|\mathbf{a}|</math> は, <math>|\mathbf{a}| = \sqrt{a_1^2 + a_2^2 + a_3^2 + \cdots + a_n^2}</math>.…② すると,<math>|\mathbf{a}|^2 = \mathbf{a} \cdot \mathbf{a}</math> が成り立つ.…③ また,<math>\mathbf{a} \ne 0, \mathbf{b} \ne 0</math> である <math>\mathbf{a}, \mathbf{b}</math> について,<math>\mathbf{a}\cdot\mathbf{b}=0</math> のとき,「<math>\mathbf{a}</math> と <math>\mathbf{b}</math> は直交する」といい,「<math>\mathbf{a} \bot \mathbf{b}</math>」と書く. <math>\blacksquare</math> <!-- def:002:end --> <math>n = 2, 3</math> のとき,<math>\vec{a}</math> の大きさ <math>|\vec{a}|</math> は,矢印ベクトルで言えば始点から終点までの長さを表していた. <math>n</math> が <math>4</math> 以上の場合もこれに倣って,同じような成分計算で表された <math>|\mathbf{a}|</math> を大きさというわけである. こうして定義した内積に関して,次のような計算法則が成り立つ.これも平面ベクトル・空間ベクトルでの経験から納得してもらえるだろう. <!-- th:002:start --> <strong>定理2</strong> <strong>内積の計算法則</strong> <math>n</math> 次元ベクトル <math>\mathbf{a}, \mathbf{b}, \mathbf{c}</math> と実数 <math>k</math> に関して次が成り立つ. (1) <math>(k\mathbf{a})\cdot \mathbf{b} = k(\mathbf{a} \cdot \mathbf{b}) = \mathbf{a} \cdot (k\mathbf{b})</math> (2) <math>\mathbf{a} \cdot (\mathbf{b} + \mathbf{c}) = \mathbf{a} \cdot \mathbf{b} + \mathbf{a} \cdot \mathbf{c}</math> (3) <math>(\mathbf{a} + \mathbf{b}) \cdot \mathbf{c} = \mathbf{a} \cdot \mathbf{c} + \mathbf{b} \cdot \mathbf{c}</math> <strong>証明</strong> (1) の証明.<math>(k\mathbf{a})\cdot \mathbf{b} = \sum_{i=1}^n (ka_i)b_i,\quad k(\mathbf{a} \cdot \mathbf{b}) = k \sum_{i=1}^n a_ib_i,\quad \mathbf{a} \cdot (k\mathbf{b}) = \sum_{i=1}^n a_i(kb_i)</math>.そして <math> \sum_{i=1}^n (ka_i)b_i = k \sum_{i=1}^n a_ib_i = \sum_{i=1}^n a_i(kb_i)</math> より <math>(k\mathbf{a})\cdot \mathbf{b} = k(\mathbf{a} \cdot \mathbf{b}) = \mathbf{a} \cdot (k\mathbf{b})</math>. (2)の証明.<math>\mathbf{a} \cdot (\mathbf{b} + \mathbf{c}) = \sum_{i=1}^n a_i(b_i + c_i) = \sum_{i=1}^n (a_ib_i + a_ic_i) = \sum_{i=1}^n a_ib_i + \sum_{i=1}^n a_ic_i = \mathbf{a} \cdot \mathbf{b} + \mathbf{a} \cdot \mathbf{c}</math>. (3)の証明.<math>(\mathbf{a} + \mathbf{b}) \cdot \mathbf{c} = \sum_{i=1}^n (a_i + b_i)c_i = \sum_{i=1}^n (a_ic_i + b_ic_i) = \sum_{i=1}^n a_ic_i + \sum_{i=1}^n b_ic_i = \mathbf{a} \cdot \mathbf{c} + \mathbf{b} \cdot \mathbf{c}</math>. <math>\blacksquare</math> <!-- th:002end --> <math>0</math> でないベクトル <math>\mathbf{a}</math> をその大きさで割ったベクトル <math>\frac{1}{|\mathbf{a}|}\mathbf{a}</math> は,大きさが <math>1</math> になる. :<math>\left| \frac{1}{|\mathbf{a}|}\mathbf{a} \right|^2 = \left( \frac{1}{ |\mathbf{a}| } \mathbf{a} \right) \cdot \left( \frac{1}{ |\mathbf{a}| } \mathbf{a} \right)</math><ref> <math>(\because </math> 定義2③<math>)</math></ref><math>= \frac{1}{|\mathbf{a}|^2}(\mathbf{a}\cdot\mathbf{a})</math><ref> <math>\left( \frac{1}{|\mathbf{a}|}\mathbf{a} \right) \cdot \left( \frac{1}{|\mathbf{a}|}\mathbf{a} \right) = \frac{1}{|\mathbf{a}|} \left(\mathbf{a} \cdot \left( \frac{1}{|\mathbf{a}|}\mathbf{a} \right) \right) (\because </math>定理2(1)第1項と第2項 <math>)</math> <math>= \frac{1}{|\mathbf{a}|} \left( \frac{1}{|\mathbf{a}|} \left( \mathbf{a} \cdot \mathbf{a} \right) \right)(\because </math>定理2(1)第2項と第3項<math>)</math> <math>= \frac{1}{|\mathbf{a}|^2}(\mathbf{a}\cdot\mathbf{a})</math>(式の整理) </ref><math>=\frac{1}{|\mathbf{a}|^2}|\mathbf{a}|^2 = 1</math> :<math>\therefore \left| \frac{1}{|\mathbf{a}|}\mathbf{a} \right| = 1</math> <math>\pm \frac{1}{|\mathbf{a}|}\mathbf{a}</math> のことを'''単位化'''したベクトル,あるいは'''正規化'''したベクトルという. 平面ベクトルと空間ベクトルでの内積の定義は <math>\vec{a}\cdot\vec{b} = |\vec{a}||\vec{b}|\cos \theta</math> であった. ここで,定義よりも突っ込んだ内積の図形的な意味を確認しておく. <math>\vec{a}=\mathrm{OA}, \vec{v}=\mathrm{OB}</math> として図を描く. <math>\mathrm{A}</math> から 直線 <math>\mathrm{B}</math> に下ろした垂線の足を <math>\mathrm{H}</math> とする. <math>\mathrm{OB}</math> を左回りに回転して <math>\mathrm{OA}</math> に重なる角を <math>\theta</math> とする.<ref> 「<math>\vec{a}</math> と <math>\vec{b}</math> とのなす角を <math>\theta</math> とする」をより正確に記述した. </ref> <math>\mathrm{OB}</math> に数直線<ref>「目盛りがついたものさし」のイメージである.</ref>を重ね合わせ, <math>\mathrm{O}</math> に数値 <math>0</math> を割り当て目盛りを振ると,<math>\mathrm{H}</math> の目盛りは三角関数の定義から、 <math>\mathrm{OA}\cos\theta</math> となる. [[File:Example.jpg|border|]] [[File:Example.jpg|border|]] 内積の式は, :<math>\vec{a}\cdot\vec{b} = (|a|(\cos\theta)|\vec{b}| = (\mathrm{OA}\cos\theta)\mathrm{OB} = (\mathrm{H}</math> の目盛り <math>) \times \mathrm{OB}</math> と見なすことができる. 特に <math>\vec{b}</math> が単位ベクトル <math>\vec{e}</math> のときを考える.<math>\vec{b}</math> をあらためて <math>\vec{e}</math> とおく. <math>\mathrm{OB} = |\vec{b}| = |\vec{e}| = 1</math> だから <math>\vec{a}\cdot\vec{e}</math> は <math>\mathrm{H}</math> の目盛りを表すことになる. <math>\vec{a}</math> と単位ベクトル <math>\vec{e}</math> との内積は <math>\vec{a}</math> の <math>\vec{e}</math> 方向の成分を表している. <!-- th:003:start --> <strong>定理3</strong> <strong><math>\vec{a}\cdot\vec{b}</math> の意味</strong> <math>\vec{\mathrm{OA}} = \vec{a}, \quad \vec{\mathrm{OB}} = \vec{e}, \quad \vec{e}</math> は単位ベクトルとする.直線 <math>\mathrm{OB}</math> に重ねた数直線に <math>\mathrm{A}</math> から下ろした垂線の足を <math>\mathrm{H}</math> とすると、 :<math>\vec{a}\cdot\vec{b} = (\mathrm{H}</math> の目盛り) <strong>証明</strong> すでに記述した. <math>\blacksquare</math> <!-- th:003end --> <references /> [[カテゴリ:線形代数学]]
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2022-11-22T17:06:15Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E7%B7%9A%E5%9E%8B%E4%BB%A3%E6%95%B0%E5%AD%A6/%E8%A1%8C%E5%88%97%E3%81%A8%E8%A1%8C%E5%88%97%E5%BC%8F/%E7%AC%AC%E4%B8%89%E9%A1%9E/%E5%86%85%E7%A9%8D
24,758
圏論/代数系/代数系
5.1 集合 A {\displaystyle A} 上に定義された演算の族 Ω {\displaystyle \Omega } と関係(半演算を含む)の族 Σ {\displaystyle \Sigma } とがあるとき, この三つ組 A ~ = ( A , Ω , Σ ) {\displaystyle {\tilde {A}}=(A,\Omega ,\Sigma )} を代数系といい, A {\displaystyle A} はその底という. 特に Σ = ∅ {\displaystyle \Sigma =\emptyset } のときは A ~ {\displaystyle {\tilde {A}}} を狭義の代数系といい,単に ( A , Ω ) {\displaystyle (A,\Omega )} で表す. X ⊂ A , ⊥ ∈ Ω {\displaystyle X\subset A,\bot \in \Omega } とする. ⊥ {\displaystyle \bot } が多項演算のときも二項演算のときと同様, であるとき X {\displaystyle X} は ⊥ {\displaystyle \bot } について閉じているという(1.3参照). X {\displaystyle X} がすべての ⊥ ∈ Ω {\displaystyle \bot \in \Omega } で閉じているとき X {\displaystyle X} は A ~ {\displaystyle {\tilde {A}}} の部分代数系という. このとき各 ⊥ ∈ Ω {\displaystyle \bot \in \Omega } ( n {\displaystyle n} 項演算)に対して写像 ⊥ : A n → A {\displaystyle \bot :A^{n}\to A} としての ⊥ {\displaystyle \bot } の X n {\displaystyle X^{n}} への制限は X {\displaystyle X} 上の演算となる. これを ⊥ {\displaystyle \bot } の X {\displaystyle X} 上への制限といい,同じ記号 ⊥ {\displaystyle \bot } で表し, またこれらの族も Ω {\displaystyle \Omega } で表す. 同様に各 ρ ∈ Σ {\displaystyle \rho \in \Sigma } ( n {\displaystyle n} 元関係)に対して ρ ∩ X n {\displaystyle \rho \cap X^{n}} は X {\displaystyle X} 上の関係である. これを ρ {\displaystyle \rho } の X {\displaystyle X} への制限といい,同じ記号 ρ {\displaystyle \rho } で表し,またこれらの族も Σ {\displaystyle \Sigma } で表す. このようにして A ~ {\displaystyle {\tilde {A}}} の部分代数系 X {\displaystyle X} はまた一つの代数系 X ~ = ( X , Ω , Σ ) {\displaystyle {\tilde {X}}=(X,\Omega ,\Sigma )} を作る. 定理 {\displaystyle \quad } A ~ = ( A , Ω , Σ ) {\displaystyle {\tilde {A}}=(A,\Omega ,\Sigma )} は代数系, Y {\displaystyle Y} は A {\displaystyle A} の任意の部分集合とする. このとき Y {\displaystyle Y} を含む A ~ {\displaystyle {\tilde {A}}} の部分代数系の中に最も小さいもの Y ̄ {\displaystyle {\overline {Y}}} が存在する. 証明 {\displaystyle \quad } Y {\displaystyle Y} を含む A ~ {\displaystyle {\tilde {A}}} の部分代数系全体の族を X {\displaystyle {\mathfrak {X}}} とし, Y ̄ = ⋂ X {\displaystyle {\overline {Y}}=\bigcap {\mathfrak {X}}} として Y ̄ {\displaystyle {\overline {Y}}} がまた A ~ {\displaystyle {\tilde {A}}} の部分代数系であることを示せばよい. 実際, a , b ∈ Y ̄ {\displaystyle a,b\in {\overline {Y}}} ならばすべての X ∈ X {\displaystyle X\in {\mathfrak {X}}} について a , b ∈ X {\displaystyle a,b\in X} ,よって ⊥ ∈ Q {\displaystyle \bot \in Q} (仮に二項演算とする)に対して a ⊥ b ∈ X {\displaystyle a\bot b\in X} .これがすべての X ∈ X {\displaystyle X\in {\mathfrak {X}}} について成り立つから a ⊥ b ∈ Y ̄ {\displaystyle a\bot b\in {\overline {Y}}} .(証明終) この Y ̄ {\displaystyle {\overline {Y}}} を Y {\displaystyle Y} から生成された A ~ {\displaystyle {\tilde {A}}} の部分代数系という. A ~ = ( A , Ω , Σ ) {\displaystyle {\tilde {A}}=(A,\Omega ,\Sigma )} と B ~ = ( B , Ω ′ , Σ ′ ) {\displaystyle {\tilde {B}}=(B,\Omega ',\Sigma ')} を二つの代数系とする. Ω {\displaystyle \Omega } と Ω ′ {\displaystyle \Omega '} の間に一対一対応があり,各 ⊥ ∈ Ω {\displaystyle \bot \in \Omega } の項数とこれに対応する ⊥ ′ ∈ Ω ′ {\displaystyle \bot '\in \Omega '} の項数とが一致し,また Σ {\displaystyle \Sigma } と Σ ′ {\displaystyle \Sigma '} の元数とが一致するとき, 二つの代数系 A ~ {\displaystyle {\tilde {A}}} と B ~ {\displaystyle {\tilde {B}}} は同種であるという. 特に Ω {\displaystyle \Omega } と Ω ′ {\displaystyle \Omega '} , Σ {\displaystyle \Sigma } と Σ ′ {\displaystyle \Sigma '} の間にそれぞれただ一つの一対一対応を考えているときにはそれらによって対応する演算,関係はしばしば同一視し,同じ記号で書き,また Ω ′ , Σ ′ {\displaystyle \Omega ',\Sigma '} も Ω , Σ {\displaystyle \Omega ,\Sigma } と同一視して同じ記号で書く. さらに一般に二つの互いに素な集合 Ω {\displaystyle \Omega } と Σ {\displaystyle \Sigma } とがあり,これらから自然数の集合 N {\displaystyle {\mathit {\mathit {N}}}} への写像 n : Ω ∪ Σ → N {\displaystyle n:\Omega \cup \Sigma \to {\mathit {\mathit {N}}}} が与えられているとき,対 ( Ω , Σ ) {\displaystyle (\Omega ,\Sigma )} ( / Σ = φ {\displaystyle /\Sigma =\phi } のときは Ω {\displaystyle \Omega } )を 種の型 という.また A {\displaystyle A} が集合で,各 ⊥ ∈ Ω {\displaystyle \bot \in \Omega } に対して一つの n ( ⊥ ) {\displaystyle n(\bot )} 項演算が定義され, 各 ρ ∈ Σ {\displaystyle \rho \in \Sigma } に対して一つの n ( ρ ) {\displaystyle n(\rho )} 元関係が定義されているとき, A ~ = ( A , Ω , Σ ) {\displaystyle {\tilde {A}}=(A,\Omega ,\Sigma )} を種の型 ( Ω , Σ ) {\displaystyle (\Omega ,\Sigma )} を持つ代数系という. 特にただ一つの種の型を考えているときはこれをいちいち示すことは省略し,代数系はその底 A {\displaystyle A} であらわされているものとする. 5.3 A , B , C {\displaystyle A,B,C} は同じ種の型 ( Ω , Σ ) {\displaystyle (\Omega ,\Sigma )} を持つ代数系, f : A → B {\displaystyle f:A\to B} は写像とする. f {\displaystyle f} がすべての ⊥ ∈ Ω {\displaystyle \bot \in \Omega } とすべての ρ ∈ Σ {\displaystyle \rho \in \Sigma } を保存するとき, f {\displaystyle f} は A {\displaystyle A} から B {\displaystyle B} への準同型という. g : B → C {\displaystyle g:B\to C} がまた準同型ならばその合成 g ∘ f : A → C {\displaystyle g\circ f:A\to C} も準同型である. X {\displaystyle X} が A {\displaystyle A} の部分代数系のとき,その A {\displaystyle A} への埋蔵 ι : X → A {\displaystyle \iota :X\to A} は準同型, f ( X ) {\displaystyle f(X)} は B {\displaystyle B} の部分代数系となり,また Y {\displaystyle Y} が B {\displaystyle B} の部分代数系のとき f − 1 ( Y ) {\displaystyle f^{-1}(Y)} は A {\displaystyle A} の部分代数系となる. f : A → B {\displaystyle f:A\to B} と共に g : A → B {\displaystyle g:A\to B} も準同型とする.このとき E = { a | f ( a ) = g ( a ) } {\displaystyle E=\{a|f(a)=g(a)\}} はまた A {\displaystyle A} の部分代数系である. 実際 a , b ∈ E {\displaystyle a,b\in E} で ⊥ ∈ Ω {\displaystyle \bot \in \Omega } (仮に二項演算とする)が何項でも同じ,以下“仮に二項演算とする”と書いたばあいはすべて同様) ならば f ( a ) = g ( a ) {\displaystyle f(a)=g(a)} , f ( b ) = g ( b ) {\displaystyle f(b)=g(b)} で f , g {\displaystyle f,g} は ⊥ {\displaystyle \bot } を保存するから で,よって a ⊥ ∈ E {\displaystyle a\bot \in E} .この E {\displaystyle E} を準同型 f {\displaystyle f} と g {\displaystyle g} の等値核という. f : A → B {\displaystyle f:A\to B} が準同型の一対一対応で,その逆 f − 1 : B → A {\displaystyle f^{-1}:B\to A} も準同型のとき, f {\displaystyle f} は同型写像といい, このとき A {\displaystyle A} と B {\displaystyle B} は同型という. 1 A : A t o A {\displaystyle 1_{A}:A\ toA} は常に同型写像である. 5.4 狭義の代数系,すなわち Σ = φ {\displaystyle \Sigma =\phi } のときは,準同型についてさらにいろいろな定理が成り立つ. まずこのとき一対一の準同型対応は明らかに常に同型写像である. 代数系 A {\displaystyle A} 上の同値関係 ≅ {\displaystyle \cong } で,すべての ⊥ ∈ Ω {\displaystyle \bot \in \Omega } と両立するものを A {\displaystyle A} の上の合同関係, このとき a ≅ b {\displaystyle a\cong b} となる a , b ∈ A {\displaystyle a,b\in A} は合同であるといい,また ≅ {\displaystyle \cong } による同値類はまた合同類ともいわれるが, (4.8) で述べたことから直ちに次の定理を得る. 定理 {\displaystyle \quad } A {\displaystyle A} は狭義の代数系, ≅ {\displaystyle \cong } はその上の合同関係であるとき, ≅ {\displaystyle \cong } による類別 U {\displaystyle {\mathfrak {U}}} の上に Ω {\displaystyle \Omega } の各演算が自然に定義されて, U {\displaystyle {\mathfrak {U}}} は A {\displaystyle A} と同種の代数系になり,その標準射影 p : A → U {\displaystyle p:A\to {\mathfrak {U}}} は準同型となる. 特に B {\displaystyle B} も A {\displaystyle A} と同種の代数系, f : A → B {\displaystyle f:A\to B} が準同型のとき, f {\displaystyle f} の右標準全単分解 ( p , q ) {\displaystyle (p,q)} の p {\displaystyle p} と q {\displaystyle q} は共に準同型で,さらに f {\displaystyle f} が全射的ならば q {\displaystyle q} は同型写像である. この定理で得られる代数系 ( U , Ω ) {\displaystyle ({\mathfrak {U}},\Omega )} を A {\displaystyle A} の ≅ {\displaystyle \cong } による商代数系といい, A / ≅ {\displaystyle A/\!\cong } で表す. 定理 {\displaystyle \quad } 種の型 Ω {\displaystyle \Omega } の代数系 A {\displaystyle A} の上に二つの合同関係 ∼ , ≅ {\displaystyle \sim ,\cong } があり, f : A → A / ∼ , g : A → A / ≅ {\displaystyle f:A\to A/\!\sim ,g:A\to A/\!\cong } はその標準射影とする. もし ≅ {\displaystyle \cong } が ∼ {\displaystyle \sim } より強ければただ一つの準同型 h : A / ∼ → A / ≅ {\displaystyle h:\ A/\!\sim \,\,\to A/\!\cong } が定まり, g = h ∘ f {\displaystyle g=h\circ f} となる. 証明 {\displaystyle \quad } ∼ {\displaystyle \sim } の各合同類 X {\displaystyle X} は ≅ {\displaystyle \cong } の一つの合同類に含まれる(2.5参照). これを h ( X ) {\displaystyle h(X)} とすればこの h {\displaystyle h} が g = h ∘ f {\displaystyle g=h\circ f} をみたすただ一つの写像である. これが準同型であることは A / ∼ , A / ≅ {\displaystyle A/\sim ,A/\cong } 上の演算 ⊥ ∈ Ω {\displaystyle \bot \in \Omega } の定義から見やすい.(証明終) 5.5 定理 {\displaystyle \quad } τ {\displaystyle \tau } は種の型 Ω {\displaystyle \Omega } の代数系 A {\displaystyle A} 上に定められた任意の二元関係とする. このとき A {\displaystyle A} の上の τ {\displaystyle \tau } より強い合同関係の中に最も弱いものが存在する. 証明 {\displaystyle \quad } Ξ {\displaystyle \Xi } は
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "5.1 集合 A {\\displaystyle A} 上に定義された演算の族 Ω {\\displaystyle \\Omega } と関係(半演算を含む)の族 Σ {\\displaystyle \\Sigma } とがあるとき, この三つ組 A ~ = ( A , Ω , Σ ) {\\displaystyle {\\tilde {A}}=(A,\\Omega ,\\Sigma )} を代数系といい, A {\\displaystyle A} はその底という. 特に Σ = ∅ {\\displaystyle \\Sigma =\\emptyset } のときは A ~ {\\displaystyle {\\tilde {A}}} を狭義の代数系といい,単に ( A , Ω ) {\\displaystyle (A,\\Omega )} で表す.", "title": "" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "X ⊂ A , ⊥ ∈ Ω {\\displaystyle X\\subset A,\\bot \\in \\Omega } とする. ⊥ {\\displaystyle \\bot } が多項演算のときも二項演算のときと同様,", "title": "" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "であるとき X {\\displaystyle X} は ⊥ {\\displaystyle \\bot } について閉じているという(1.3参照).", "title": "" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "X {\\displaystyle X} がすべての ⊥ ∈ Ω {\\displaystyle \\bot \\in \\Omega } で閉じているとき X {\\displaystyle X} は A ~ {\\displaystyle {\\tilde {A}}} の部分代数系という. このとき各 ⊥ ∈ Ω {\\displaystyle \\bot \\in \\Omega } ( n {\\displaystyle n} 項演算)に対して写像 ⊥ : A n → A {\\displaystyle \\bot :A^{n}\\to A} としての ⊥ {\\displaystyle \\bot } の X n {\\displaystyle X^{n}} への制限は X {\\displaystyle X} 上の演算となる. これを ⊥ {\\displaystyle \\bot } の X {\\displaystyle X} 上への制限といい,同じ記号 ⊥ {\\displaystyle \\bot } で表し, またこれらの族も Ω {\\displaystyle \\Omega } で表す. 同様に各 ρ ∈ Σ {\\displaystyle \\rho \\in \\Sigma } ( n {\\displaystyle n} 元関係)に対して ρ ∩ X n {\\displaystyle \\rho \\cap X^{n}} は X {\\displaystyle X} 上の関係である. これを ρ {\\displaystyle \\rho } の X {\\displaystyle X} への制限といい,同じ記号 ρ {\\displaystyle \\rho } で表し,またこれらの族も Σ {\\displaystyle \\Sigma } で表す. このようにして A ~ {\\displaystyle {\\tilde {A}}} の部分代数系 X {\\displaystyle X} はまた一つの代数系 X ~ = ( X , Ω , Σ ) {\\displaystyle {\\tilde {X}}=(X,\\Omega ,\\Sigma )} を作る.", "title": "" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "定理 {\\displaystyle \\quad } A ~ = ( A , Ω , Σ ) {\\displaystyle {\\tilde {A}}=(A,\\Omega ,\\Sigma )} は代数系, Y {\\displaystyle Y} は A {\\displaystyle A} の任意の部分集合とする. このとき Y {\\displaystyle Y} を含む A ~ {\\displaystyle {\\tilde {A}}} の部分代数系の中に最も小さいもの Y ̄ {\\displaystyle {\\overline {Y}}} が存在する.", "title": "" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "証明 {\\displaystyle \\quad } Y {\\displaystyle Y} を含む A ~ {\\displaystyle {\\tilde {A}}} の部分代数系全体の族を X {\\displaystyle {\\mathfrak {X}}} とし, Y ̄ = ⋂ X {\\displaystyle {\\overline {Y}}=\\bigcap {\\mathfrak {X}}} として Y ̄ {\\displaystyle {\\overline {Y}}} がまた A ~ {\\displaystyle {\\tilde {A}}} の部分代数系であることを示せばよい. 実際, a , b ∈ Y ̄ {\\displaystyle a,b\\in {\\overline {Y}}} ならばすべての X ∈ X {\\displaystyle X\\in {\\mathfrak {X}}} について a , b ∈ X {\\displaystyle a,b\\in X} ,よって ⊥ ∈ Q {\\displaystyle \\bot \\in Q} (仮に二項演算とする)に対して a ⊥ b ∈ X {\\displaystyle a\\bot b\\in X} .これがすべての X ∈ X {\\displaystyle X\\in {\\mathfrak {X}}} について成り立つから a ⊥ b ∈ Y ̄ {\\displaystyle a\\bot b\\in {\\overline {Y}}} .(証明終)", "title": "" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "この Y ̄ {\\displaystyle {\\overline {Y}}} を Y {\\displaystyle Y} から生成された A ~ {\\displaystyle {\\tilde {A}}} の部分代数系という.", "title": "" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "", "title": "" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "A ~ = ( A , Ω , Σ ) {\\displaystyle {\\tilde {A}}=(A,\\Omega ,\\Sigma )} と B ~ = ( B , Ω ′ , Σ ′ ) {\\displaystyle {\\tilde {B}}=(B,\\Omega ',\\Sigma ')} を二つの代数系とする. 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X {\\displaystyle X} が A {\\displaystyle A} の部分代数系のとき,その A {\\displaystyle A} への埋蔵 ι : X → A {\\displaystyle \\iota :X\\to A} は準同型, f ( X ) {\\displaystyle f(X)} は B {\\displaystyle B} の部分代数系となり,また Y {\\displaystyle Y} が B {\\displaystyle B} の部分代数系のとき f − 1 ( Y ) {\\displaystyle f^{-1}(Y)} は A {\\displaystyle A} の部分代数系となる.", "title": "" }, { "paragraph_id": 12, "tag": "p", "text": "f : A → B {\\displaystyle f:A\\to B} と共に g : A → B {\\displaystyle g:A\\to B} も準同型とする.このとき E = { a | f ( a ) = g ( a ) } {\\displaystyle E=\\{a|f(a)=g(a)\\}} はまた A {\\displaystyle A} の部分代数系である. 実際 a , b ∈ E {\\displaystyle a,b\\in E} で ⊥ ∈ Ω {\\displaystyle \\bot \\in \\Omega } (仮に二項演算とする)が何項でも同じ,以下“仮に二項演算とする”と書いたばあいはすべて同様) ならば f ( a ) = g ( a ) {\\displaystyle f(a)=g(a)} , f ( b ) = g ( b ) {\\displaystyle f(b)=g(b)} で f , g {\\displaystyle f,g} は ⊥ {\\displaystyle \\bot } を保存するから", "title": "" }, { "paragraph_id": 13, "tag": "p", "text": "で,よって a ⊥ ∈ E {\\displaystyle a\\bot \\in E} .この E {\\displaystyle E} を準同型 f {\\displaystyle f} と g {\\displaystyle g} の等値核という.", "title": "" }, { "paragraph_id": 14, "tag": "p", "text": "f : A → B {\\displaystyle f:A\\to B} が準同型の一対一対応で,その逆 f − 1 : B → A {\\displaystyle f^{-1}:B\\to A} も準同型のとき, f {\\displaystyle f} は同型写像といい, このとき A {\\displaystyle A} と B {\\displaystyle B} は同型という. 1 A : A t o A {\\displaystyle 1_{A}:A\\ toA} は常に同型写像である.", "title": "" }, { "paragraph_id": 15, "tag": "p", "text": "", "title": "" }, { "paragraph_id": 16, "tag": "p", "text": "5.4 狭義の代数系,すなわち Σ = φ {\\displaystyle \\Sigma =\\phi } のときは,準同型についてさらにいろいろな定理が成り立つ.", "title": "" }, { "paragraph_id": 17, "tag": "p", "text": "まずこのとき一対一の準同型対応は明らかに常に同型写像である.", "title": "" }, { "paragraph_id": 18, "tag": "p", "text": "代数系 A {\\displaystyle A} 上の同値関係 ≅ {\\displaystyle \\cong } で,すべての ⊥ ∈ Ω {\\displaystyle \\bot \\in \\Omega } と両立するものを A {\\displaystyle A} の上の合同関係, このとき a ≅ b {\\displaystyle a\\cong b} となる a , b ∈ A {\\displaystyle a,b\\in A} は合同であるといい,また ≅ {\\displaystyle \\cong } による同値類はまた合同類ともいわれるが, (4.8) で述べたことから直ちに次の定理を得る.", "title": "" }, { "paragraph_id": 19, "tag": "p", "text": "定理 {\\displaystyle \\quad } A {\\displaystyle A} は狭義の代数系, ≅ {\\displaystyle \\cong } はその上の合同関係であるとき, ≅ {\\displaystyle \\cong } による類別 U {\\displaystyle {\\mathfrak {U}}} の上に Ω {\\displaystyle \\Omega } の各演算が自然に定義されて, U {\\displaystyle {\\mathfrak {U}}} は A {\\displaystyle A} と同種の代数系になり,その標準射影 p : A → U {\\displaystyle p:A\\to {\\mathfrak {U}}} は準同型となる. 特に B {\\displaystyle B} も A {\\displaystyle A} と同種の代数系, f : A → B {\\displaystyle f:A\\to B} が準同型のとき, f {\\displaystyle f} の右標準全単分解 ( p , q ) {\\displaystyle (p,q)} の p {\\displaystyle p} と q {\\displaystyle q} は共に準同型で,さらに f {\\displaystyle f} が全射的ならば q {\\displaystyle q} は同型写像である.", "title": "" }, { "paragraph_id": 20, "tag": "p", "text": "この定理で得られる代数系 ( U , Ω ) {\\displaystyle ({\\mathfrak {U}},\\Omega )} を A {\\displaystyle A} の ≅ {\\displaystyle \\cong } による商代数系といい, A / ≅ {\\displaystyle A/\\!\\cong } で表す.", "title": "" }, { "paragraph_id": 21, "tag": "p", "text": "定理 {\\displaystyle \\quad } 種の型 Ω {\\displaystyle \\Omega } の代数系 A {\\displaystyle A} の上に二つの合同関係 ∼ , ≅ {\\displaystyle \\sim ,\\cong } があり, f : A → A / ∼ , g : A → A / ≅ {\\displaystyle f:A\\to A/\\!\\sim ,g:A\\to A/\\!\\cong } はその標準射影とする. もし ≅ {\\displaystyle \\cong } が ∼ {\\displaystyle \\sim } より強ければただ一つの準同型 h : A / ∼ → A / ≅ {\\displaystyle h:\\ A/\\!\\sim \\,\\,\\to A/\\!\\cong } が定まり, g = h ∘ f {\\displaystyle g=h\\circ f} となる.", "title": "" }, { "paragraph_id": 22, "tag": "p", "text": "証明 {\\displaystyle \\quad } ∼ {\\displaystyle \\sim } の各合同類 X {\\displaystyle X} は ≅ {\\displaystyle \\cong } の一つの合同類に含まれる(2.5参照). これを h ( X ) {\\displaystyle h(X)} とすればこの h {\\displaystyle h} が g = h ∘ f {\\displaystyle g=h\\circ f} をみたすただ一つの写像である. これが準同型であることは A / ∼ , A / ≅ {\\displaystyle A/\\sim ,A/\\cong } 上の演算 ⊥ ∈ Ω {\\displaystyle \\bot \\in \\Omega } の定義から見やすい.(証明終)", "title": "" }, { "paragraph_id": 23, "tag": "p", "text": "", "title": "" }, { "paragraph_id": 24, "tag": "p", "text": "5.5 定理 {\\displaystyle \\quad } τ {\\displaystyle \\tau } は種の型 Ω {\\displaystyle \\Omega } の代数系 A {\\displaystyle A} 上に定められた任意の二元関係とする. このとき A {\\displaystyle A} の上の τ {\\displaystyle \\tau } より強い合同関係の中に最も弱いものが存在する.", "title": "" }, { "paragraph_id": 25, "tag": "p", "text": "証明 {\\displaystyle \\quad } Ξ {\\displaystyle \\Xi } は", "title": "" } ]
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<div id="5.1"> <strong>5.1</strong> 集合 <math>A</math> 上に定義された演算の族 <math>\Omega</math> と関係(半演算を含む)の族 <math>\Sigma</math> とがあるとき, この三つ組 <math> \tilde{A} = (A, \Omega, \Sigma)</math> を'''代数系'''といい,<math>A</math> はその'''底'''という. 特に <math>\Sigma = \emptyset</math> のときは <math>\tilde{A}</math> を'''狭義の代数系'''といい,単に <math>(A, \Omega)</math> で表す. <math>X \subset A, \bot \in \Omega</math> とする. <math>\bot</math> が多項演算のときも二項演算のときと同様, :<math>x_1, x_2, \cdots, x_n \in X</math> ならば <math>\bot(x_1, x_2, \cdots, x_n) \in X</math> であるとき <math>X</math> は <math>\bot</math> について'''閉じている'''という([[圏論/代数系/古典的代数系#1.3|1.3]]参照). <math>X</math> がすべての <math>\bot \in \Omega</math> で閉じているとき <math>X</math> は <math>\tilde{A}</math> の'''部分代数系'''という. このとき各 <math>\bot \in \Omega</math> (<math>n</math> 項演算)に対して写像 <math>\bot : A^n \to A</math> としての <math>\bot</math> の <math>X^n</math> への制限は <math>X</math> 上の演算となる. これを <math>\bot</math> の <math>X</math> 上への'''制限'''といい,同じ記号 <math>\bot</math> で表し, またこれらの族も <math>\Omega</math> で表す. 同様に各 <math>\rho \in \Sigma</math> (<math>n</math> 元関係)に対して <math>\rho \cap X^n</math> は <math>X</math> 上の関係である. これを <math>\rho</math> の <math>X</math> への'''制限'''といい,同じ記号 <math>\rho</math> で表し,またこれらの族も <math>\Sigma</math> で表す. このようにして <math>\tilde{A}</math> の部分代数系 <math>X</math> はまた一つの代数系 <math>\tilde{X} = (X, \Omega, \Sigma)</math> を作る. <strong>定理</strong><math>\quad</math> <math>\tilde{A} = (A, \Omega, \Sigma)</math> は代数系,<math>Y</math> は <math>A</math> の任意の部分集合とする. このとき <math>Y</math> を含む <math>\tilde{A}</math> の部分代数系の中に最も小さいもの <math>\overline{Y}</math> が存在する. <strong>証明</strong><math>\quad</math> <math>Y</math> を含む <math>\tilde{A}</math> の部分代数系全体の族を <math>\mathfrak{X}</math> とし, <math>\overline{Y}=\bigcap \mathfrak{X}</math> として <math>\overline{Y}</math> がまた <math>\tilde{A}</math> の部分代数系であることを示せばよい. 実際,<math>a, b \in \overline{Y}</math> ならばすべての <math>X \in \mathfrak{X}</math> について <math>a, b \in X</math>,よって <math>\bot \in Q</math> (仮に二項演算とする)に対して <math>a \bot b \in X</math>.これがすべての <math>X \in \mathfrak{X}</math> について成り立つから <math>a \bot b \in \overline{Y}</math>.(証明終) この <math>\overline{Y}</math> を <math>Y</math> から'''生成された''' <math>\tilde{A}</math> の部分代数系という. <math>\tilde{A} = (A, \Omega, \Sigma)</math> と <math>\tilde{B} = (B, \Omega', \Sigma')</math> を二つの代数系とする. <math>\Omega</math> と <math>\Omega'</math> の間に一対一対応があり,各 <math>\bot \in \Omega</math> の項数とこれに対応する <math>\bot' \in \Omega'</math> の項数とが一致し,また <math>\Sigma</math> と <math>\Sigma'</math> の元数とが一致するとき, 二つの代数系 <math>\tilde{A}</math> と <math>\tilde{B}</math> は'''同種'''であるという. 特に <math>\Omega</math> と <math>\Omega'</math>,<math>\Sigma</math> と <math>\Sigma'</math> の間にそれぞれただ一つの一対一対応を考えているときにはそれらによって対応する演算,関係はしばしば同一視し,同じ記号で書き,また <math>\Omega', \Sigma'</math> も <math>\Omega, \Sigma</math> と同一視して同じ記号で書く. さらに一般に二つの互いに素な集合 <math>\Omega</math> と <math>\Sigma</math> とがあり,これらから自然数の集合 <math>\mathit{\mathit{N}}</math> への写像 <math>n : \Omega \cup \Sigma \to \mathit{\mathit{N}}</math> が与えられているとき,対 <math>(\Omega, \Sigma)</math>(<math>/\Sigma= \phi</math> のときは <math>\Omega</math>)を <strong>種の型</strong> という.また <math>A</math> が集合で,各 <math>\bot \in \Omega</math> に対して一つの <math>n(\bot)</math> 項演算が定義され, 各 <math>\rho \in \Sigma</math> に対して一つの <math>n(\rho)</math> 元関係が定義されているとき, <math>\tilde{A}=(A, \Omega, \Sigma)</math> を<strong>種の型 <math>(\Omega, \Sigma)</math> を持つ代数系</strong>という. 特にただ一つの種の型を考えているときはこれをいちいち示すことは省略し,代数系はその底 <math>A</math> であらわされているものとする.   <div id="5.3"> <strong>5.3</strong> <math>A, B, C</math> は同じ種の型 <math>(\Omega, \Sigma)</math> を持つ代数系,<math>f:A \to B</math> は写像とする. <math>f</math> がすべての <math>\bot \in \Omega</math> とすべての <math>\rho \in \Sigma</math> を保存するとき, <math>f</math> は <math>A</math> から <math>B</math> への<strong>準同型</strong>という. <math>g: B \to C</math> がまた準同型ならばその合成 <math>g \circ f: A \to C</math> も準同型である. <math>X</math> が <math>A</math> の部分代数系のとき,その <math>A</math> への埋蔵 <math>\iota : X \to A</math> は準同型, <math>f(X)</math> は <math>B</math> の部分代数系となり,また <math>Y</math> が <math>B</math> の部分代数系のとき <math>f^{-1}(Y)</math> は <math>A</math> の部分代数系となる. <math>f:A\to B</math> と共に <math>g:A\to B</math> も準同型とする.このとき <math>E=\{a|f(a)=g(a)\}</math> はまた <math>A</math> の部分代数系である. 実際 <math>a, b \in E</math> で <math>\bot \in \Omega</math>(仮に二項演算とする)が何項でも同じ,以下“仮に二項演算とする”と書いたばあいはすべて同様) ならば <math>f(a)=g(a)</math>,<math>f(b)=g(b)</math> で <math>f, g</math> は <math>\bot</math> を保存するから :<math>f(a\bot b) = f(a)\bot f(b) = g(a)\bot g(b) = g(a\bot b)</math> で,よって <math>a \bot \in E</math>.この <math>E</math> を準同型 <math>f</math> と <math>g</math> の<strong>等値核</strong>という. <math>f: A \to B</math> が準同型の一対一対応で,その逆 <math>f^{-1}: B \to A</math> も準同型のとき,<math>f</math> は<strong>同型写像</strong>といい, このとき <math>A</math> と <math>B</math> は<strong>同型</strong>という.<math>1_A:A \ to A</math> は常に同型写像である. <div id="5.4"> <strong>5.4</strong> 狭義の代数系,すなわち <math>\Sigma = \phi</math> のときは,準同型についてさらにいろいろな定理が成り立つ. まずこのとき一対一の準同型対応は明らかに常に同型写像である. 代数系 <math>A</math> 上の同値関係 <math>\cong</math> で,すべての <math>\bot \in \Omega</math> と両立するものを <math>A</math> の上の<strong>合同関係</strong>, このとき <math>a \cong b</math> となる <math>a, b \in A</math> は<strong>合同</strong>であるといい,また <math>\cong</math> による同値類はまた<strong>合同類</strong>ともいわれるが, [[圏論/代数系/写像,演算#4.8|(4.8)]] で述べたことから直ちに次の定理を得る. <strong>定理</strong><math>\quad</math> <math>A</math> は狭義の代数系,<math>\cong</math> はその上の合同関係であるとき,<math>\cong</math> による類別 <math>\mathfrak{U}</math> の上に <math>\Omega</math> の各演算が自然に定義されて, <math>\mathfrak{U}</math> は <math>A</math> と同種の代数系になり,その標準射影 <math>p: A \to \mathfrak{U}</math> は準同型となる. 特に <math>B</math> も <math>A</math> と同種の代数系,<math>f: A \to B</math> が準同型のとき,<math>f</math> の右標準全単分解 <math>(p, q)</math> の <math>p</math> と <math>q</math> は共に準同型で,さらに <math>f</math> が全射的ならば <math>q</math> は同型写像である. この定理で得られる代数系 <math>(\mathfrak{U}, \Omega)</math> を <math>A</math> の <math>\cong</math> による商代数系といい,<math>A/\!\cong</math> で表す. <strong>定理</strong><math>\quad</math> 種の型 <math>\Omega</math> の代数系 <math>A</math> の上に二つの合同関係 <math>\sim, \cong</math> があり,<math>f:A \to A/\!\sim, g:A \to A/\!\cong</math> はその標準射影とする. もし <math>\cong</math> が <math>\sim</math> より強ければただ一つの準同型 <math>h:\ A/\!\sim \,\, \to A/\!\cong</math> が定まり,<math>g = h \circ f</math> となる. <strong>証明</strong><math>\quad</math> <math>\sim</math> の各合同類 <math>X</math> は <math>\cong</math> の一つの合同類に含まれる[[圏論/代数系/関係, 同値関係#2.5|(2.5参照)]]. これを <math>h(X)</math> とすればこの <math>h</math> が <math>g = h \circ f</math> をみたすただ一つの写像である. これが準同型であることは <math>A/\sim, A/\cong</math> 上の演算 <math>\bot \in \Omega</math> の定義から見やすい.(証明終) <div id="5.5"> <strong>5.5</strong> <strong>定理</strong><math>\quad</math> <math>\tau</math> は種の型 <math>\Omega</math> の代数系 <math>A</math> 上に定められた任意の二元関係とする. このとき <math>A</math> の上の <math>\tau</math> より強い合同関係の中に最も弱いものが存在する. <strong>証明</strong><math>\quad</math> <math>\Xi</math> は
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2019-05-20T12:39:40Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%9C%8F%E8%AB%96/%E4%BB%A3%E6%95%B0%E7%B3%BB/%E4%BB%A3%E6%95%B0%E7%B3%BB
24,759
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/財務会計論/問題23~28
P社の連結財務諸表作成に関する次の〔資料I〕〜〔資料III〕に基づき,以下の問題23~問題28に答えなさい。 〔資料I〕 留意事項 〔資料II〕 連結財務諸表作成に関する事項 〔資料III〕 P社およびS社の個別財務諸表 問題23 当期の連結貸借対照表におけるのれんの金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(4点) 問題24 当期の連結貸借対照表における繰延税金資産(固定)の金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(4点) 問題25 当期の連結貸借対照表における利益剰余金の金額として最も適切なものの番号を一つ選 びなさい。(4点) 問題26 当期の連結貸借対照表における非支配株主持分の金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(4点) 問題27 当期の連結損益計算書における売上原価の金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(4点) 問題28 当期の連結包括利益計算書におけるその他の包括利益の金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(4点)
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "P社の連結財務諸表作成に関する次の〔資料I〕〜〔資料III〕に基づき,以下の問題23~問題28に答えなさい。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "〔資料I〕 留意事項", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "〔資料II〕 連結財務諸表作成に関する事項", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "〔資料III〕 P社およびS社の個別財務諸表", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "問題23 当期の連結貸借対照表におけるのれんの金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(4点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "問題24 当期の連結貸借対照表における繰延税金資産(固定)の金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(4点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "問題25 当期の連結貸借対照表における利益剰余金の金額として最も適切なものの番号を一つ選 びなさい。(4点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "問題26 当期の連結貸借対照表における非支配株主持分の金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(4点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "問題27 当期の連結損益計算書における売上原価の金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(4点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "問題28 当期の連結包括利益計算書におけるその他の包括利益の金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(4点)", "title": "問題" } ]
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: [[../問題22|←前の問題]] : 次の問題→ == 問題 ==  P社の連結財務諸表作成に関する次の〔資料I〕〜〔資料III〕に基づき,以下の<span style="border:1px solid #000">'''問題23'''</span>~<span style="border:1px solid #000">'''問題28'''</span>に答えなさい。 〔'''資料I'''〕 留意事項 :1.P社およびS社の会計期間は,いずれも12 月31 日を決算日とする1 年であり,当期は,X3 年度(X3 年1 月1 日からX3 年12 月31 日まで)である。 :2.P社およびS社の間には,〔資料II〕に示されたもの以外の取引はない。 :3.のれんは,発生した年度の翌年度から5 年間にわたり定額法により償却する。 :4.P社およびS社の法定実効税率を40 %とし,税効果会計を適用する。ただし,連結財務諸表上の修正に当たっては,①S社の資産の時価評価による評価差額,②P社とS社間の取引から生じたものとして消去した未実現損益および③P社とS社間の債権と債務の相殺消去に伴い減額修正した貸倒引当金についてのみ一時差異を認識する。なお,繰延税金資産と繰延税金負債はすべて固定区分に属するものとし,双方を相殺して表示する。 〔'''資料II'''〕 連結財務諸表作成に関する事項 :1.P社は,X1 年度末にS社の発行済株式の15 %を2,100 百万円で取得し,S社を原価法適用会社とした。さらに,P社は,X2 年度末にS社の発行済株式の55 %を8,800 百万円で取得し,S社に対する支配を獲得した。 :2.P社およびS社の純資産額の推移は次のとおりである。 {| class="wikitable" |+ 〈P社〉 (単位:百万円) | |資本金 |利益剰余金 |合計 |- |X1年12月31日 |24,000 |6,500 |30,500 |- |X2年12月31日 |24,000 |8,600 |32,600 |} {| class="wikitable" |+ 〈S社〉 (単位:百万円) | |資本金 |利益剰余金 |合計 |- |X1年12月31日 |8,000 |4,000 |12,000 |- |X2年12月31日 |8,000 |5,200 |13,200 |} :3.S社の土地の簿価および時価の推移は次のとおりである。なお,土地以外の資産および負債には,簿価と時価との間に重要な差異はなかった。 {| class="wikitable" |+(単位:百万円) | |簿価 |時価 |- |X1年12月31日 |8,200 |9,200 |- |X2年12月31日 |8,200 |9,700 |} :4.S社は,当期末に上記の土地(簿価8,200 百万円)のうち,30 %(簿価2,460 百万円)を連結企業集団外部に3,150 百万円で売却し,土地売却益690 百万円を計上した。 :5.S社は,当期よりP社へ商品の一部を掛けで販売している。当期におけるS社からP社への売上高は18,000 百万円であった。なお,この売上高のうち,500 百万円分の商品が決算日現在P社へ未達であった。 :6.P社の当期末の商品棚卸高に含まれているS社からの仕入分は,2,500 百万円(未達商品分は除く。)であった。なお,S社からP社への商品販売における売上総利益率は20 %である。 :7.S社の当期末の売掛金残高のうちP社に対するものは,5,000 百万円(未達商品分を含む。)であった。 :8.S社は,売掛金の期末残高に対して2 %の貸倒引当金を計上している。なお,個別財務諸表上,貸倒引当金に対して繰延税金資産(固定)が計上されている。 :9.S社は,当期中に剰余金の配当600 百万円を行っており,そのうちP社に対する配当は420 百万円であった。なお,P社は,当期中に剰余金の配当850 百万円を行っている。 〔'''資料III'''〕 P社およびS社の個別財務諸表 {| class="wikitable" |+<u>貸借対照表</u><br>X3年12月31日 (単位:百万円) |- ! 資産の部 !! P社 !! S社 !負債・純資産の部 !! P社 !! S社 |- | 現金及び預金 || 6,820 || 3,480 |買掛金 |17,300 |13,400 |- | 売掛金 || 22,000 || 17,500 |短期借入金 |4,800 |3,560 |- | 貸倒引当金 |△440 |△350 |未払法人税等 |2,960 |1,890 |- |商品 |8,800 |6,380 |その他の流動負債 |3,770 |2,820 |- |その他の流動負債 |3,100 |1,290 |その他の固定負債 |3,640 |2,620 |- |建物 |7,870 |5,440 !負債合計 !40,870 !24,290 |- | 減価償却累計額 |△3,800 |△2,900 |資本金 |24,000 |8,000 |- |土地 |16,400 |5,740 |利益剰余金 |11,200 |7,430 |- |S社株式 |10,900 |- !純資産合計 !35,200 !15,430 |- |繰延税金資産(固定) |1,060 |660 | | | |- |その他の固定資産 |3,360 |2,480 | | | |- !資産合計 !76,070 !39,720 !負債・純資産合計 !76,070 !39,720 |} {| style="width:25em" |+'''<u>損益計算書</u>'''<br>X3年1月1日~X3年12月31日 (単位:百万円) | |style="border-bottom:1px solid #000"|P社 |style="border-bottom:1px solid #000"|S社 |- |売上高 |88,200 |41,400 |- |売上原価 |△69,300 |△29,700 |- | 売上総利益 |style="border-top:1px solid #000"|18,900 |style="border-top:1px solid #000"|11,700 |- |販売費及び一般管理費 |△11,050 |△5,730 |- | 営業利益 |style="border-top:1px solid #000"|7,850 |style="border-top:1px solid #000"|5,970 |- |受取利息及び配当金 |860 |310 |- |支払利息 |△410 |△80 |- |土地売却益 |- |690 |- | 税引前当期純利益 |style="border-top:1px solid #000"|8,300 |style="border-top:1px solid #000|6,890 |- |法人税等 |△5,130 |△4,270 |- |法人税等調整額 |280 |210 |- | 当期純利益 |style="border-top:1px solid #000;border-bottom:3px double #000"|3,450 |style="border-top:1px solid #000;border-bottom:3px double #000"|2,830 |} <span style="border:1px solid #000">問題23</span> 当期の連結貸借対照表におけるのれんの金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(4点) <div style="column-count:3;"> :'''1'''. 488百万円 :'''2'''. 618百万円 :'''3'''. 728百万円 </div> <div style="column-count:3;"> : '''4'''. 798百万円 : '''5'''. 824百万円 : '''6'''. 1,064百万円 </div> <span style="border:1px solid #000">問題24</span> 当期の連結貸借対照表における繰延税金資産(固定)の金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(4点) <div style="column-count:3;"> : '''1'''. 1,320百万円 : '''2'''. 1,460百万円 : '''3'''. 1,500百万円 </div> <div style="column-count:3;"> : '''4'''. 1,580百万円 : '''5'''. 1,740百万円 : '''6'''. 1,920百万円 </div> <span style="border:1px solid #000">問題25</span> 当期の連結貸借対照表における利益剰余金の金額として最も適切なものの番号を一つ選 びなさい。(4点) <div style="column-count:3;"> : '''1'''. 11,796百万円 : '''2'''. 11,835百万円 : '''3'''. 12,096百万円 </div> <div style="column-count:3;"> : '''4'''. 12,130百万円 : '''5'''. 12,396百万円 : '''6'''. 12,615百万円 </div> <span style="border:1px solid #000">問題26</span> 当期の連結貸借対照表における非支配株主持分の金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(4点) <div style="column-count:3;"> : '''1'''. 4,701百万円 : '''2'''. 4,728百万円 : '''3'''. 4,746百万円 </div> <div style="column-count:3;"> : '''4'''. 4,809百万円 : '''5'''. 4,899百万円 : '''6'''. 4,908百万円 </div> <span style="border:1px solid #000">問題27</span> 当期の連結損益計算書における売上原価の金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(4点) <div style="column-count:3;"> : '''1'''. 80,400百万円 : '''2'''. 81,000百万円 : '''3'''. 81,100百万円 </div> <div style="column-count:3;"> : '''4'''. 81,500百万円 : '''5'''. 81,600百万円 : '''6'''. 82,100百万円 </div> <span style="border:1px solid #000">問題28</span> 当期の連結包括利益計算書におけるその他の包括利益の金額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(4点) <div style="column-count:3;"> : '''1'''. 4,265百万円 : '''2'''. 4,346百万円 : '''3'''. 4,388百万円 </div> <div style="column-count:3;"> : '''4'''. 4,395百万円 : '''5'''. 4,535百万円 : '''6'''. 4,646百万円 </div> == 正解 == ; 問題23 : 6 ; 問題24 : 3 ; 問題25 : 5 ; 問題26 : 2 ; 問題27 : 5 ; 問題28 : 2 == 解説 == === S社個別財務諸表修正 === {| | colspan="6" |評価差額計上 |- |(借) |土地 |1,500 |(貸) |繰延税金負債(S社) |600 |- | | | |(貸) |評価差額 |900 |- | colspan="6" |評価差額実現 |- |(借) |土地売却益 |450 |(貸) |土地 |450 |- |(借) |繰延税金負債(S社) |180 |(貸) |法人税等調整額 |180 |} === タイムテーブル === {| | |X1.12.31 | |X2.12.31 | |X3.12.31 |- | | | |70% | |70% |- |資本金 | | |8,000 | |8,000 |- |利益剰余金 | | |5,200 |1,981△420<br>-----------→<br>849△180 |7,430 |- |評価差額 | | |900 |△189<br>-----------→<br>△81 |630 |- |合計 | | |14,100 | |16,060 |- |取得持分 | | |9,870 | | |- |S社株式 | | |10,900 | rowspan="2" | <span style="font-size:3em">}</span>支配獲得時時価11,200 | |- |段階取得に係る差益 | | |300 | |- |のれん | | |1,330 |△266 |1,064 |} === 連結修正仕訳 === ==== 資本連結 ==== {| | colspan="6" |段階取得に係る差益 |- |(借) |S社株式 |300 |(貸) |利益剰余金(当期首残高) |300 |- | colspan="6" |支配獲得時の投資と資本の相殺消去 |- |(借) |資本金(当期首残高) |8,000 |(貸) |S社株式 |11,200 |- | |利益剰余金 |5,200 | |非支配株主持分 |4,230 |- | |評価差額 |900 | | | |- | |のれん |1,330 | | | |- | colspan="6" |当期純利益の按分(評価差額の実現を反映済み) |- |(借) |非支配株主帰属純損益 |768 |(貸) |非支配株主持分 |768 |- | colspan="6" |剰余金の配当 |- |(借) |受取配当金 |420 |(貸) |利益剰余金(剰余金の配当) |600 |- | |非支配株主持分 |180 | | | |- | colspan="6" |のれん償却 |- |(借) |販売費及び一般管理費(のれん償却額) |266 |(貸) |のれん |266 |} ==== 成果連結 ==== {| | colspan="6" |未達商品 |- |(借) |商品 |500 |(貸) |買掛金 |500 |- | colspan="6" |売上高・仕入高の相殺消去 |- |(借) |売上高 |18,000 |(貸) |売上原価 |18,000 |- | colspan="6" |棚卸資産の未実現利益 |- |(借) |売上原価 |600 |(貸) |商品 |600 |- | |繰延税金資産(S社) |240 | |法人税等調整額 |240 |- | |非支配株主持分 |108 | |非支配株主帰属純損益 |108 |- | colspan="6" |売上債権・仕入債務の相殺消去 |- |(借) |買掛金 |5,000 |(貸) |売掛金 |5,000 |- | colspan="6" |貸倒引当金の調整 |- |(借) |貸倒引当金 |100 |(貸) |販売費及び一般管理費(貸倒引当金繰入額) |100 |- | |法人税等調整額 |40 | |繰延税金資産(S社) |40 |- | |非支配株主帰属純損益 |18 | |非支配株主持分 |18 |} === 解答数値の算定 === ; 問題23 : 1,064百万円(タイムテーブルより) ; 問題24 : P社:1,060(個別B/S) : S社 :: 繰延税金資産:個別660+未実現利益240-貸倒引当金40=860 :: 繰延税金負債:土地評価差額600-評価差額実現180=420 :: 相殺後:860-420=440 : 連結B/S:1,060+440='''1,500''' ; 問題25 : P社個別:11,200 : 段階取得に係る差益:300(タイムテーブルより) : 当期純利益の按分:1,981(タイムテーブルより) : 受取配当金相殺:△420(タイムテーブルより) : 評価差額の実現:△189(タイムテーブルより) : のれん償却:△266(タイムテーブルより) : 期末商品未実現利益:△600 : 未実現利益に係る税効果:240 : 非支配株主への按分:108 : 貸倒引当金調整100 : 貸倒引当金に係る税効果:△40 : 非支配株主への按分:△18 : 合計:'''12,396''' ; 問題26 : タイムテーブル:16,060×30% : 成果連結:-108+18 : 合計:'''4,728''' ; 問題27 : 個別P/L(69,300+29,700)+相殺消去△18,000+未実現利益600=81,600 ; 問題28 : P社個別:3,450 : 当期純利益の按分:1,981(タイムテーブルより) : 受取配当金相殺:△420(タイムテーブルより) : 評価差額の実現:△189(タイムテーブルより) : のれん償却:△266(タイムテーブルより) : 期末商品未実現利益:△600 : 未実現利益に係る税効果:240 : 非支配株主への按分:108 : 貸倒引当金調整100 : 貸倒引当金に係る税効果:△40 : 非支配株主への按分:△18 : 合計:'''4,346''' : [[../問題22|←前の問題]] : 次の問題→ [[カテゴリ:財務会計]]
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2022-11-28T16:35:40Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%85%AC%E8%AA%8D%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%A3%AB%E8%A9%A6%E9%A8%93/%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B4%E7%AC%ACII%E5%9B%9E%E7%9F%AD%E7%AD%94%E5%BC%8F/%E8%B2%A1%E5%8B%99%E4%BC%9A%E8%A8%88%E8%AB%96/%E5%95%8F%E9%A1%8C23%EF%BD%9E28
24,760
聖書ヘブライ語入門/前置詞(1)/練習
10.7 練習(解答) (1)日本語に訳せ א. נְשׂיא יִשְׂרָאֵל אַתָּה בְּתוֹכֵ֫נוּ ב. טוֹבִים דִּבְרֵי הַנָּבִא מִדִּבְרֵי הַכּׂהֵן ג. לְאַבְשָׁלוֹם בֶּן־דָּוִד אׇחוֹת יָפָה וּשְׁמָהּ תָּמָר ד. יְקָרָה חָכְמָה לַיְשָׁרִים מִכֶּ֫סֶף וּמִזָּהָב ה. בְּבֵית אָבִיו עֲבָדִים רַבִּים ו. רְחׂקִים אֲנַחְנוּ מֵהֶם מְאׂד ז. אֱלֹהִים לְךָ אָנֹכִי יהוה (2)ヘブライ語に訳せ 1.その奴隷は王よりも賢い. 2.私には一人の息子と一人の娘がいる. 3.この庭にはたくさん木がある. 4.母は父より小さい. 5.その少年は父に対して強情だ(=うなじが堅い). 6.王の家には美しい女奴隷たちがいる. (註)「一人の」「一つの」は 8.1.6 のようにそれを強調する場合以外は、名詞の単数・不定形で表される.例えば「一人の人」は אִישׁ 、「一本の樹」は עֵץ 。
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10.7 練習(解答) (1)日本語に訳せ א. נְשׂיא יִשְׂרָאֵל אַתָּה בְּתוֹכֵ֫נוּ ב. טוֹבִים דִּבְרֵי הַנָּבִא מִדִּבְרֵי הַכּׂהֵן ג. לְאַבְשָׁלוֹם בֶּן־דָּוִד אׇחוֹת יָפָה וּשְׁמָהּ תָּמָר ד. יְקָרָה חָכְמָה לַיְשָׁרִים מִכֶּ֫סֶף וּמִזָּהָב ה. בְּבֵית אָבִיו עֲבָדִים רַבִּים ו. רְחׂקִים אֲנַחְנוּ מֵהֶם מְאׂד ז. אֱלֹהִים לְךָ אָנֹכִי יהוה (2)ヘブライ語に訳せ 1.その奴隷は王よりも賢い. 2.私には一人の息子と一人の娘がいる. 3.この庭にはたくさん木がある. 4.母は父より小さい. 5.その少年は父に対して強情だ(=うなじが堅い). 6.王の家には美しい女奴隷たちがいる. (註)「一人の」「一つの」は 8.1.6 のようにそれを強調する場合以外は、名詞の単数・不定形で表される.例えば「一人の人」は ‏ אִישׁ ‎、「一本の樹」は ‏ עֵץ ‎。
10.7 練習([[聖書ヘブライ語入門/前置詞(1)/練習/解答|解答]]) (1)日本語に訳せ א. נְשׂיא יִשְׂרָאֵל אַתָּה בְּתוֹכֵ֫נוּ ב. טוֹבִים דִּבְרֵי הַנָּבִא מִדִּבְרֵי הַכּׂהֵן ג. לְאַבְשָׁלוֹם בֶּן־דָּוִד אׇחוֹת יָפָה וּשְׁמָהּ תָּמָר ד. יְקָרָה חָכְמָה לַיְשָׁרִים מִכֶּ֫סֶף וּמִזָּהָב ה. בְּבֵית אָבִיו עֲבָדִים רַבִּים ו. רְחׂקִים אֲנַחְנוּ מֵהֶם מְאׂד ז. אֱלֹהִים לְךָ אָנֹכִי יהוה (2)ヘブライ語に訳せ 1.その奴隷は王よりも賢い. 2.私には一人の息子と一人の娘がいる. 3.この庭にはたくさん木がある. 4.母は父より小さい. 5.その少年は父に対して強情だ(=うなじが堅い). 6.王の家には美しい女奴隷たちがいる. (註)「一人の」「一つの」は [[聖書ヘブライ語入門/自立人称代名詞/例文|8.1.6]] のようにそれを強調する場合以外は、名詞の単数・不定形で表される.例えば「一人の人」は &rlm; אִישׁ &lrm;、「一本の樹」は &rlm; עֵץ &lrm;。 [[カテゴリ:聖書ヘブライ語]]
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2022-11-22T17:11:36Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E8%81%96%E6%9B%B8%E3%83%98%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%A4%E8%AA%9E%E5%85%A5%E9%96%80/%E5%89%8D%E7%BD%AE%E8%A9%9E(1)/%E7%B7%B4%E7%BF%92
24,761
測度論的確率論/準備/集合/写像
定義13. {\displaystyle \quad } 二つの集合 M , N {\displaystyle M,N} が与えられているとする.任意の a ∈ M {\displaystyle a\in M} に対して, ある f ( a ) ∈ N {\displaystyle f(a)\in N} が対応するとき f {\displaystyle f} を M {\displaystyle M} から N {\displaystyle N} への写像といい, f : M → N {\displaystyle f:M\to N} と表す. 定義14. {\displaystyle \quad } A ⊂ M {\displaystyle A\subset M} に対し, を A {\displaystyle A} の( f {\displaystyle f} による)像といい,特に f ( M ) = N {\displaystyle f(M)=N} のときに f {\displaystyle f} を全射という. 定義15. {\displaystyle \quad } 全射であるとは 定義14は定義15といってもよい.また f {\displaystyle f} が1対1,すなわち 定義16. {\displaystyle \quad } の成り立つときに f {\displaystyle f} は単射という. さらに 定義17. {\displaystyle \quad } f {\displaystyle f} が全射でありかつ単射のときに全単射という. 定義18. {\displaystyle \quad } A ⊂ N {\displaystyle A\subset N} に対して のとき, f − 1 ( A ) {\displaystyle f^{-1}(A)} は A {\displaystyle A} の( f {\displaystyle f} による)逆像という. 定義19. {\displaystyle \quad } 特に f {\displaystyle f} が M {\displaystyle M} から N {\displaystyle N} への全単射であれば b ∈ N {\displaystyle b\in N} に対して b = f ( a ) {\displaystyle b=f(a)} となる a ∈ M {\displaystyle a\in M} が一意的に定まるから f − 1 ( b ) = a {\displaystyle f^{-1}(b)=a} によって逆写像 f − 1 {\displaystyle f^{-1}} を定義する. このとき f − 1 {\displaystyle f^{-1}} も全単射であり,集合 A ⊂ N {\displaystyle A\subset N} による逆像は, A {\displaystyle A} の逆写像 f − 1 ( A ) {\displaystyle f^{-1}(A)} に一致する. 演習2. {\displaystyle \quad } M = [ − 1 , 1 ] , N = R , f ( a ) = a 2 {\displaystyle M=[-1,1],\quad N=\mathbf {R} ,\quad f(a)=a^{2}} とするとき f ( [ 0 , 1 2 ] ) , f − 1 ( [ 0 , 1 2 ] ) {\displaystyle f\left(\left[0,{\frac {1}{2}}\right]\right),\quad f^{-1}\left(\left[0,{\frac {1}{2}}\right]\right)} を求めよ. (解答例) f ( [ 0 , 1 2 ] ) = [ 0 , 1 4 ] , f − 1 ( [ 0 , 1 2 ] ) = [ − 1 2 , 1 2 ] {\displaystyle f\left(\left[0,{\frac {1}{2}}\right]\right)=\left[0,{\frac {1}{4}}\right],\quad f^{-1}\left(\left[0,{\frac {1}{2}}\right]\right)=\left[-{\frac {1}{\sqrt {2}}},{\frac {1}{\sqrt {2}}}\right]} . 定理5. {\displaystyle \quad } f : M → N {\displaystyle f:M\to N} について次の命題が成り立つ. A ⊂ M {\displaystyle A\subset M} であれば A ⊂ f − 1 ( f ( A ) ) {\displaystyle A\subset f^{-1}(f(A))} 証明 {\displaystyle \quad } y ∈ f ( A ) {\displaystyle y\in f(A)} とすると f {\displaystyle f} が単射でない場合 f ( x 1 ) = y {\displaystyle f(x_{1})=y} である x 1 ∈ A {\displaystyle x_{1}\in A} が存在することは必要であるが,同時に f ( x 2 ) = y , x 2 ∉ A {\displaystyle f(x_{2})=y,\quad x_{2}\not \in A} となる x 2 ∈ M {\displaystyle x_{2}\in M} が存在する可能性がある.よって A ⊂ f − 1 ( f ( A ) ) ⊂ M {\displaystyle A\subset f^{-1}(f(A))\subset M} . (証明終) 定理6. {\displaystyle \quad } f : M → N {\displaystyle f:M\to N} について次の命題が成り立つ. A , B ⊂ M {\displaystyle A,B\subset M} であれば f ( A ∪ B ) = f ( A ) ∪ f ( B ) {\displaystyle f(A\cup B)=f(A)\cup f(B)} かつ f ( A ∩ B ) ⊂ f ( A ) ∩ f ( B ) {\displaystyle f(A\cap B)\subset f(A)\cap f(B)} . 証明 {\displaystyle \quad } 定義より任意の y ∈ f ( A ∪ B ) {\displaystyle y\in f(A\cup B)} に対して,ある x ∈ A ∪ B {\displaystyle x\in A\cup B} で y = f ( x ) {\displaystyle y=f(x)} となるものが存在する. このとき x ∈ A {\displaystyle x\in A} または x ∈ B {\displaystyle x\in B} であるから y = f ( x ) ∈ f ( A ) {\displaystyle y=f(x)\in f(A)} または y ∈ f ( B ) {\displaystyle y\in f(B)} . すなわち, y ∈ f ( A ∪ B ) {\displaystyle y\in f(A\cup B)} ならば y ∈ f ( A ) {\displaystyle y\in f(A)} または y ∈ f ( B ) {\displaystyle y\in f(B)} .よって f ( A ∪ B ) ⊂ f ( A ) ∪ f ( B ) {\displaystyle f(A\cup B)\subset f(A)\cup f(B)} ....1 逆は,明らかに f ( A ) ⊂ f ( A ∪ B ) , f ( B ) ⊂ f ( A ∪ B ) {\displaystyle f(A)\subset f(A\cup B),f(B)\subset f(A\cup B)} だから f ( A ) ∪ f ( B ) ⊂ f ( A ∪ B ) {\displaystyle f(A)\cup f(B)\subset f(A\cup B)} ....2 12より f ( A ∪ B ) = f ( A ) ∪ f ( B ) {\displaystyle f(A\cup B)=f(A)\cup f(B)} さらに A ∩ B ⊂ A , A ∩ B ⊂ B {\displaystyle A\cap B\subset A,A\cap B\subset B} であるから f ( A ∩ B ) ⊂ f ( A ) ∩ f ( B ) {\displaystyle f(A\cap B)\subset f(A)\cap f(B)} . (証明終) 定理7. {\displaystyle \quad } f : M → N {\displaystyle f:M\to N} について次の命題が成り立つ. A , B ⊂ N {\displaystyle A,B\subset N} であれば f − 1 ( A ∪ B ) = f − 1 ( A ) ∪ f − 1 ( B ) {\displaystyle f^{-1}(A\cup B)=f^{-1}(A)\cup f^{-1}(B)} . 証明 {\displaystyle \quad } 定義より任意の x ∈ f − 1 ( A ∪ B ) {\displaystyle x\in f^{-1}(A\cup B)} について f ( x ) ∈ A ∪ B {\displaystyle f(x)\in A\cup B} すなわち f ( x ) ∈ A {\displaystyle f(x)\in A} または f ( x ) ∈ B {\displaystyle f(x)\in B} となる. したがって x ∈ f − 1 ( A ) {\displaystyle x\in f^{-1}(A)} または x ∈ f − 1 ( B ) {\displaystyle x\in f^{-1}(B)} であり,ゆえに f − 1 ( A ∪ B ) ⊂ f − 1 ( A ) ∪ f − 1 ( B ) {\displaystyle f^{-1}(A\cup B)\subset f^{-1}(A)\cup f^{-1}(B)} . 逆はあきらかに f − 1 ( A ) ⊂ f − 1 ( A ∪ B ) , f − 1 ( B ) ⊂ f − 1 ( A ∪ B ) {\displaystyle f^{-1}(A)\subset f^{-1}(A\cup B),f^{-1}(B)\subset f^{-1}(A\cup B)} であるから f − 1 ( A ) ∪ f − 1 ( B ) ⊂ f − 1 ( A ∪ B ) {\displaystyle f^{-1}(A)\cup f^{-1}(B)\subset f^{-1}(A\cup B)} . (証明終) 定理8. {\displaystyle \quad } f : M → N {\displaystyle f:M\to N} について次の命題が成り立つ. A , B ⊂ N {\displaystyle A,B\subset N} であれば f − 1 ( A ∩ B ) = f − 1 ( A ) ∩ f − 1 ( B ) {\displaystyle f^{-1}(A\cap B)=f^{-1}(A)\cap f^{-1}(B)} . 証明 {\displaystyle \quad } x ∈ f − 1 ( A ) ∩ f − 1 ( B ) {\displaystyle x\in f^{-1}(A)\cap f^{-1}(B)} のとき x ∈ f − 1 ( A ) {\displaystyle x\in f^{-1}(A)} かつ x ∈ f − 1 ( B ) {\displaystyle x\in f^{-1}(B)} . ゆえに f ( x ) ∈ A {\displaystyle f(x)\in A} かつ f ( x ) ∈ B {\displaystyle f(x)\in B} . ゆえに f ( x ) ∈ A ∩ B {\displaystyle f(x)\in A\cap B} . ゆえに x ∈ f − 1 ( A ∩ B ) {\displaystyle x\in f^{-1}(A\cap B)} . すなわち x ∈ f − 1 ( A ) ∩ f − 1 ( B ) {\displaystyle x\in f^{-1}(A)\cap f^{-1}(B)} ならば x ∈ f − 1 ( A ∩ B ) {\displaystyle x\in f^{-1}(A\cap B)} だから f − 1 ( A ) ∩ f − 1 ( B ) ⊂ f − 1 ( A ∩ B ) {\displaystyle f^{-1}(A)\cap f^{-1}(B)\subset f^{-1}(A\cap B)} . 逆については, A ∩ B ⊂ A {\displaystyle A\cap B\subset A} かつ A ∩ B ⊂ B {\displaystyle A\cap B\subset B} ,よって f − 1 ( A ∩ B ) ⊂ f − 1 ( A ) , f − 1 ( A ∩ B ) ⊂ f − 1 ( B ) {\displaystyle f^{-1}(A\cap B)\subset f^{-1}(A),f^{-1}(A\cap B)\subset f^{-1}(B)} より f − 1 ( A ∩ B ) ⊂ f − 1 ( A ) ∩ f − 1 ( B ) {\displaystyle f^{-1}(A\cap B)\subset f^{-1}(A)\cap f^{-1}(B)} . (証明終) 定理9. {\displaystyle \quad } f : M → N {\displaystyle f:M\to N} について次の命題が成り立つ. A ⊂ N {\displaystyle A\subset N} であれば f − 1 ( A C ) = ( f − 1 ( A ) ) C {\displaystyle f^{-1}(A^{C})=(f^{-1}(A))^{C}} . 証明 {\displaystyle \quad } (証明終)
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==写像== <!-- def:013:start--> <div id="def:13"> <strong>定義13.</strong><math>\quad</math> 二つの集合 <math>M, N</math> が与えられているとする.任意の <math>a \in M</math> に対して, ある <math>f(a) \in N</math> が対応するとき <math>f</math> を <math>M</math> から <math>N</math> への'''写像'''といい, <math>f : M \to N</math> と表す. <!-- def:013:end--> <!-- def:014:start--> <div id="def:14"> <strong>定義14.</strong><math>\quad</math> <math>A \subset M</math> に対し, :<math>f(a) \equiv \{ f(a) \in N : a \in A \}</math> を <math>A</math> の(<math>f</math> による)'''像'''といい,特に <math>f(M) = N</math> のときに <math>f</math> を'''全射'''という. <!-- def:014:end--> <!-- def:015:start--> <div id="def:15"> <strong>定義15.</strong><math>\quad</math> 全射であるとは :任意の <math>b \in N</math> に対して <math>a \in M</math> で <math>b = f(a)</math> となるものが存在する. <!-- def:015:end--> [[測度論的確率論/準備/集合/写像#def:14|定義14]]は[[測度論的確率論/準備/集合/写像#def:15|定義15]]といってもよい.また <math>f</math> が1対1,すなわち <!-- def:016:start--> <div id="def:16"> <strong>定義16.</strong><math>\quad</math> :<math>a, a' \in M</math> で <math>f(a) = f(a')</math> であれば <math>a = a'</math> の成り立つときに <math>f</math> は'''単射'''という. <!-- def:016:end--> さらに <!-- def:017:start--> <div id="def:17"> <strong>定義17.</strong><math>\quad</math> <math>f</math> が全射でありかつ単射のときに'''全単射'''という. <!-- def:017:end--> <!-- def:018:start--> <div id="def:18"> <strong>定義18.</strong><math>\quad</math> <math>A \subset N</math> に対して :<math>f^{-1}(A) \equiv \{ a \in M : f(a) \in A \}</math> のとき,<math>f^{-1}(A)</math> は <math>A</math> の(<math>f</math> による)'''逆像'''という<ref> 逆像 <math>f^{-1}</math> は写像ではない.さらにこの定義を「<math>f^{-1}(A)</math> は,<math>\forall x (x \in f^{-1}(A) \to f(x) \in A)</math> かつ <math>\forall x(x \not\in f^{-1}(a) \to f(x) \not\in A)</math> を満たす」と解釈する. </ref>. <!-- def:018:end--> <!-- def:019:start--> <div id="def:19"> <strong>定義19.</strong><math>\quad</math> 特に <math>f</math> が <math>M</math> から <math>N</math> への全単射であれば <math>b \in N</math> に対して <math>b = f(a)</math> となる <math>a \in M</math> が一意的に定まるから <math>f^{-1}(b) = a</math> によって'''逆写像''' <math>f^{-1}</math> を定義する. このとき <math>f^{-1}</math> も全単射であり,集合 <math>A \subset N</math> による逆像は,<math>A</math> の逆写像 <math>f^{-1}(A)</math> に一致する. <!-- def:019:end--> <!-- ex:002:start--> <div id="ex:2"> <strong>演習2.</strong><math>\quad</math> <math>M = [-1, 1], \quad N = \mathbf{R}, \quad f(a) = a^2</math> とするとき <math>f\left( \left[ 0, \frac{1}{2} \right] \right), \quad f^{-1} \left( \left[ 0, \frac{1}{2} \right] \right)</math> を求めよ. (解答例) <math>f\left( \left[ 0, \frac{1}{2} \right]\right) = \left[ 0, \frac{1}{4} \right], \quad f^{-1}\left( \left[ 0, \frac{1}{2} \right]\right) = \left[ -\frac{1}{\sqrt{2}}, \frac{1}{\sqrt{2}} \right]</math>. <!-- ex:002:end-> <br /> <!-- theorem:005:start--> <div id="theorem:5"> <strong>定理5.</strong><math>\quad</math> <math>f : M \to N</math> について次の命題が成り立つ. <math>A \subset M</math> であれば <math>A \subset f^{-1}(f(A))</math> <strong>証明</strong><math>\quad</math> <math>y \in f(A)</math> とすると <math>f</math> が単射でない場合 <math>f(x_1) = y</math> である <math>x_1 \in A</math> が存在することは必要であるが,同時に <math>f(x_2) = y, \quad x_2 \not\in A</math> となる <math>x_2 \in M</math> が存在する可能性がある.よって <math>A \subset f^{-1}(f(A)) \subset M</math>. (証明終) <!-- theorem:005:start--> <!-- theorem:006:start--> <div id="theorem:6"> <strong>定理6.</strong><math>\quad</math> <math>f : M \to N</math> について次の命題が成り立つ. <math>A, B \subset M</math> であれば <math>f(A \cup B) = f(A) \cup f(B)</math> かつ <math>f(A \cap B) \subset f(A) \cap f(B)</math>. <strong>証明</strong><math>\quad</math> 定義より任意の <math>y \in f(A \cup B)</math> に対して,ある <math>x \in A \cup B</math> で <math>y = f(x)</math> となるものが存在する. このとき <math>x \in A</math> または <math>x \in B</math> であるから <math>y = f(x) \in f(A)</math> または <math>y \in f(B)</math>. すなわち,<math>y \in f(A \cup B)</math> ならば <math>y \in f(A)</math> または <math>y \in f(B)</math>.よって <math>f(A \cup B) \subset f(A) \cup f(B)</math>.…①<br /> 逆は,明らかに <math>f(A) \subset f(A \cup B), f(B) \subset f(A \cup B)</math> だから <math>f(A) \cup f(B) \subset f(A \cup B)</math><ref> <math>A \subset C</math> かつ <math>B \subset C</math> ならば <math>A \cup B \subset C</math>. </ref>.…②<br /> ①②より <math>f(A \cup B) = f(A) \cup f(B)</math> さらに <math>A \cap B \subset A, A \cap B \subset B</math> であるから <math>f(A \cap B) \subset f(A) \cap f(B)</math><ref> <math>A \cap B \subset A</math> かつ <math>A \cap B \subset B</math>,従って <math>f(A \cap B) \subset f(A)</math> かつ <math>f(A \cap B) \subset f(B)</math>. これに 「<math>C \subset A</math> かつ <math>C \subset B</math> ならば <math>C \subset A \cap B</math>」を適用すれば, <math>f(A \cap B) \subset f(A) \cap f(B)</math> が誘導される. </ref><ref> 一方「<math>f(A) \cap f(B) \subset f(A \cap B)</math>」とはいえない.例えば <math>f</math> が単射でなく、<math>x_1 \in A</math> で <math>y = f(x_1)</math> かつ同じ <math>y</math> で <math>x_2 \in B, x_2 \not\in A, y = f(x_2)</math> の場合、<math>y = f(x_1), x_1 \in A</math> より <math>y \in f(A)</math>.それと同時に <math>y = f(x_2) \in B</math> より <math>y \in f(B)</math> でもある.すなわち、 <math>y \in f(A) \cap f(B)</math>. つまり <math>f</math> が単射でないので、 <math> x_2 \not\in A</math> であっても <math>y = f(x_2), x_2 \in B</math> である限り <math>y \in f(A) \cap f(B)</math>. 一つの <math>x \in M</math> に対して <math>y = f(x)</math> は必ず一つの値に定まるが、逆に一つの <math>y</math> を決めるとその <math>y</math> に対して <math>y = f(x)</math> を満たす <math>x</math> が複数存在する可能性があるという、そもそもの写像の定義に、この式が等号ではないことの理由の本質があり、これは[[測度論的確率論/準備/集合/写像#定理5|定理5]]も同様である.実際 [[測度論的確率論/準備/集合/写像#演習2|演習2]]の <math>f</math> にて <math>A = \left[ -\frac{1}{\sqrt{2}}, 0 \right), B = \left[ 0, +\frac{1}{\sqrt{2}} \right]</math> のとき、<math>f(A) \cap f(B) = \left[ 0, \frac{1}{2} \right], A \cap B = \emptyset, f(A) \cap f(B) \not\subset f(A \cap B)</math>. </ref>. (証明終)<!-- 2019/3/31 ここまで --> <!-- theorem:006:endt--> <!-- theorem:007:start--> <div id="theorem:7"> <strong>定理7.</strong><math>\quad</math> <math>f : M \to N</math> について次の命題が成り立つ. <math>A, B \subset N</math> であれば <math>f^{-1}(A \cup B) = f^{-1}(A) \cup f^{-1}(B)</math>. <strong>証明</strong><math>\quad</math> 定義より任意の <math>x \in f^{-1}(A \cup B)</math> について <math>f(x) \in A \cup B</math> すなわち <math>f(x) \in A</math> または <math>f(x) \in B</math> となる. したがって <math>x \in f^{-1}(A)</math> または <math>x \in f^{-1}(B)</math> であり,ゆえに <math> f^{-1}(A \cup B) \subset f^{-1}(A) \cup f^{-1}(B)</math>. 逆はあきらかに <math>f^{-1}(A) \subset f^{-1}(A \cup B), f^{-1}(B) \subset f^{-1}(A \cup B)</math> であるから <math>f^{-1}(A) \cup f^{-1}(B) \subset f^{-1}(A \cup B)</math><ref> <math>A \subset C, B \subset C \therefore A \cup B \subset C</math> </ref>. (証明終) <!-- theorem:007:end --> <!-- theorem:008:start--> <div id="theorem:8"> <strong>定理8.</strong><math>\quad</math> <math>f : M \to N</math> について次の命題が成り立つ. <math>A, B \subset N</math> であれば <math>f^{-1}(A \cap B) = f^{-1}(A) \cap f^{-1}(B)</math>. <strong>証明</strong><math>\quad</math> <math>x \in f^{-1}(A) \cap f^{-1}(B)</math> のとき<ref> さて,いきなり冒頭からこう書き下してしまってよいのだろうか?そもそも[[測度論的確率論/準備/集合/写像#theorem:006|定理6]] の後半部分は等号ではなかったというのに、<math>f^{-1}(A) \cap f^{-1}(B) \ne \emptyset</math> である保証はあるのだろうか?これは「逆像 <math>f^{-1}</math> は実は写像ではない」という点に注意して以下のように説明できる.<br /> [[測度論的確率論/準備/集合/写像#def:18|定義18 ]]の註の定義を仮定すると,<math>f^{-1}(A)</math> および <math>f^{-1}(B)</math> は以下の4式をすべて満たす,すなわち<br /> <math>\forall x (x \in f^{-1}(A) \to f(x) \in A)</math>…①, <math>\forall x(x \not\in f^{-1}(A) \to f(x) \not\in A)</math>…②, <math>\forall x (x \in f^{-1}(B) \to f(x) \in B)</math>…③, <math>\forall x(x \not\in f^{-1}(B) \to f(x) \not\in B)</math>…④.<br /> 特に②④より, <math>\forall x (x \in f^{-1}(A) \lor f(x) \not\in A)</math>…②’, <math>\forall x (x \in f^{-1}(B) \lor f(x) \not\in B)</math>…④’. 今,<math>f(x) \in A \cap B</math> であるとき <math>f(x) \in A</math>,したがって ②’が真となるためには <math>x \in f^{-1}(A)</math> が成立する必要がある.また同様に <math>f(x) \in B</math> より ④’が真となるためには <math>x \in f^{-1}(B)</math> が成立する必要がある. 以上より <math>f(x) \in A \cap B</math> ならば <math>x \in f^{-1}(A) \cap f^{-1}(B)</math>.→すごくおかしい…検討が必要、ここでストップ </ref> <math>x \in f^{-1}(A)</math> かつ <math>x \in f^{-1}(B)</math>. ゆえに <math>f(x) \in A</math> かつ <math>f(x) \in B</math>. ゆえに <math>f(x) \in A \cap B</math>. ゆえに <math>x \in f^{-1}(A \cap B)</math>. すなわち <math>x \in f^{-1}(A) \cap f^{-1}(B)</math> ならば <math>x \in f^{-1}(A \cap B)</math> だから <math>f^{-1}(A) \cap f^{-1}(B) \subset f^{-1}(A \cap B)</math>. 逆については,<math>A \cap B \subset A</math> かつ <math>A \cap B \subset B</math>,よって <math>f^{-1}(A \cap B) \subset f^{-1}(A), f^{-1}(A \cap B) \subset f^{-1}(B)</math> より <math>f^{-1}(A \cap B) \subset f^{-1}(A) \cap f^{-1}(B)</math><ref> <math>C \subset A, C \subset B \therefore C \subset A \cap B</math>. </ref>. (証明終) <!-- theorem:008:end --> <!-- theorem:009:start--> <div id="theorem:9"> <strong>定理9.</strong><math>\quad</math> <math>f : M \to N</math> について次の命題が成り立つ. <math>A \subset N</math> であれば <math>f^{-1}(A^C) = (f^{-1}(A))^C</math>. <strong>証明</strong><math>\quad</math> (証明終) <!-- theorem:009:end --> <references /> [[カテゴリ:数学]]
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B8%AC%E5%BA%A6%E8%AB%96%E7%9A%84%E7%A2%BA%E7%8E%87%E8%AB%96/%E6%BA%96%E5%82%99/%E9%9B%86%E5%90%88/%E5%86%99%E5%83%8F
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高等学校理科 生物基礎/遺伝情報とDNA
DNA(デオキシリボ核酸、英: deoxyribonucleic acid)の構造は、ヌクレオチド (nucleotide) と呼ばれる構成単位をもち、ヌクレオチドはリン酸と糖と塩基の化合物である。ヌクレオチドの糖はデオキシリボース(deoxyribose) である。DNAでは、ヌクレオチドがいくつも結合して、二重らせん構造をつくっている。 塩基には4種類あり、アデニン(adenin)、チミン(thymine)、シトシン(cytosine)、グアニン(guanine)という4種類の塩基である。ヌクレオチド一個に、4種の塩基のうち、どれか一個が、ふくまれる。 生殖細胞では、減数分裂で染色体が半分になることから、遺伝子の正体とは、どうやら染色体に含まれている物質であろう、という事がモーガンなどの1913年ごろのショウジョウバエの遺伝の研究によって、突き止められていた。 遺伝子に含まれる物質にはタンパク質や核酸(かくさん)など、さまざまな物質がある。どの物質こそが遺伝子の正体なのかを突き止める必要があった。核酸の発見は、1869年ごろ、スイスの生化学者ミーシャーによって、膿(うみ)から取り出した細胞の核に、リン酸をふくんだ物質があることが発見され、この物質はタンパク質とは異なることが調べられた。ミーシャ-の発見したのが核酸である。この当時では、まだ核酸が遺伝子の正体だとは考えられていなかった。なお、膿は、白血球を多く含む。 1949年、オーストリアのエルヴィン・シャルガフは、 いろいろな生物の持つDNAを抽出して調べ、どの生物でもアデニン(A)とチミン(T)とは量が等しく1:1であり、グアニン(G)とシトシン(C)とは量が等しく1:1であることを発見した。 このことから、シャルガフは、アデニンはチミンと結合する性質があり、グアニンはシトシンと結合する性質があると考えた。 DNAの、このような、アデニン(A)とチミン(T)とが等量で結合する性質があること、グアニンとシトシンも等量で結合する性質があることを、まとめて、相補性(そうほせい)という。 1953年、アメリカのジェームズ・ワトソンとイギリスのフランシス・クリックは、 シャルガフの塩基組成の研究や、イギリスのモーリス・ウィルキンスのX線回折の研究をもとにして、研究を行った。そしてワトソンとクリックは、DNAが二重らせん構造であることを発見した。 これによると、2本のヌクレオチド鎖が、アデニンとチミン、グアニンとシトシンで対合し、柱状になり、それがらせん状にねじれている。 ゲノム(genome)とは、ある生物のもつ遺伝情報のすべてのことである。(※ 高校教科書では、遺伝情報としてゲノムを定義している。高校以外の教科書では、別の定義をしていることもあるので、気をつけること。) ゲノムのすべてが遺伝子なのではなく、ゲノムの一部が遺伝子である。ヒトのDNAには塩基対が約3億個ある。しかし、そのうち遺伝子として働く部分は、約2万2千個しかない。 ヒトのゲノムを解読しようというヒトゲノムプロジェクトは、2003年に解読が完了した。ヒトゲノム解読により、ヒトの遺伝子の全体が明らかとなった。 現在では、ヒト以外のゲノムの解読も進み、ゲノム研究が食品や医療などに応用されている。 1869年、スイスのフリードリッヒ・ミーシェルは、 細胞核内の物質を発見しヌクレイン(nuclein)と呼んだ。 当時は、遺伝子の本体はタンパク質であると考えられていたが、 今日では、ヌクレインはDNAと呼ばれ、遺伝子の本体であることが明らかになっている。 1928年イギリスのフレデリック・グリフィスは、 肺炎双球菌とネズミを用いて実験を行った。 肺炎双球菌には、被膜を持っていて病原性のあるS(smooth)型菌と、被膜が無く病原性のないR(rough)型菌の2種類がある。 被膜の有無と病原性の有無の、どちらも遺伝形質である。 通常の菌の分裂増殖では、S型とR型との違いという遺伝形質は変わらない。 グリフィスの実験結果は次の通り。 これはR型菌の形質が、加熱殺菌したS型菌に含まれる物質によって、S型菌の形質へ変化したためであり、 これを形質転換(transformation: nuclein)と呼ぶ。 1943年ころ、カナダのオズワルド・アベリーは、グリフィスの実験での形質転換を起こした物質が何かを特定するため、タンパク質分解酵素とDNA分解酵素を用いて、S型菌・R型菌の実験を行った。 実験結果 これによって、R型菌の形質転換を起こしたのはDNAであることがわかった。 細菌に寄生するウイルスのことをバクテリオファージまたは単にファージという。 1952年、アメリカのアルフレッド・ハーシーとマーサ・チェイスは、 T2ファージというファージの一種のウイルスを用いて実験を行った。 T2ファージは細菌に寄生して増殖するウイルスであるバクテリオファージの一種であり、 ほぼタンパク質とDNAからできている。T2ファージの頭部の中にDNAが含まれる。それ以外の外殻(がいかく)はタンパク質で出来ている。 彼らは、放射性同位体のS(硫黄の放射性同位体)およびP(リンの放射性同位体)を目印として用い、硫黄をふくむタンパク質にはSで目印をつけ、PでDNAに目印をつけた。DNAは P(リン)をふくむがS(硫黄)をふくまない。彼らの実際の実験では、タンパク質に目印をつけた実験と、DNAに目印をつけた実験とは、それぞれ別に行った。 実験では、それらの放射性同位体をもつT2ファージを大腸菌に感染させ、さらにミキサーで撹拌し、遠心分離器で大腸菌の沈殿と、上澄みに分けた。 大腸菌からは、Pが多く検出され、あまりSは検出されなかった。このことからT2ファージのDNAが大腸菌に進入したと結論付けた。また、上澄みからはT2ファージのタンパク質が確認された。つまり上澄みはT2ファージの外殻をふくんでいる。 さらに、この大腸菌からは、20~30分後、子ファージが出てきた。子ファージにはSは検出されなかった。 これによって、DNAが遺伝物質であることが証明された。 染色体の構造については、ヒストンと言う球状のタンパク質が幾つもあり、そのヒストンに繊維状のDNAが巻きつくような形で、染色体が出来ている。
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== 遺伝子の本体 == :※ 1990年代のかつて、DNAなどの話題は生物IIによくある話題だったが、現代では『生物基礎』に移動。なお、専門『生物』の教科書には下記のDNAの単元が書かれていないので、受験勉強の時には、まちがえてDNAの単元を飛ばさないように気をつけること。 === DNAの構造 === [[File:DNAのヌクレオチド構造.svg|thumb|300px|DNAのヌクレオチド構造]] [[File:DNAの並び方.png|thumb|DNAの並び方の説明図。アデニン(A)はチミン(T)と結びつく。グアニン(G)はシトシン(C)と結びつく。]] [[画像:DNA animation.gif|thumb|right|DNAの立体構造]] '''DNA'''(デオキシリボ核酸、英: deoxyribonucleic acid)の構造は、'''ヌクレオチド''' (nucleotide) と呼ばれる構成単位をもち、ヌクレオチドは'''リン酸'''と'''糖'''と'''塩基'''の化合物である。ヌクレオチドの糖は'''デオキシリボース'''(deoxyribose) である。DNAでは、ヌクレオチドがいくつも結合して、二重らせん構造をつくっている。 塩基には4種類あり、'''アデニン'''(adenin)、'''チミン'''(thymine)、'''シトシン'''(cytosine)、'''グアニン'''(guanine)という4種類の塩基である。ヌクレオチド一個に、4種の塩基のうち、どれか一個が、ふくまれる。 === 参考: DNAの構造の解明の歴史 === 生殖細胞では、減数分裂で染色体が半分になることから、遺伝子の正体とは、どうやら染色体に含まれている物質であろう、という事がモーガンなどの1913年ごろのショウジョウバエの遺伝の研究によって、突き止められていた。 遺伝子に含まれる物質にはタンパク質や核酸(かくさん)など、さまざまな物質がある。どの物質こそが遺伝子の正体なのかを突き止める必要があった。核酸の発見は、1869年ごろ、スイスの生化学者ミーシャーによって、膿(うみ)から取り出した細胞の核に、リン酸をふくんだ物質があることが発見され、この物質はタンパク質とは異なることが調べられた。ミーシャ-の発見したのが核酸である。この当時では、まだ核酸が遺伝子の正体だとは考えられていなかった。なお、膿は、白血球を多く含む。 1949年、オーストリアの[[w:エルヴィン・シャルガフ|エルヴィン・シャルガフ]]は、 いろいろな生物の持つDNAを抽出して調べ、どの生物でもアデニン(A)とチミン(T)とは量が等しく1:1であり、グアニン(G)とシトシン(C)とは量が等しく1:1であることを発見した。 :A:T = 1:1  、 G:C = 1:1 このことから、シャルガフは、アデニンはチミンと結合する性質があり、グアニンはシトシンと結合する性質があると考えた。 DNAの、このような、アデニン(A)とチミン(T)とが等量で結合する性質があること、グアニンとシトシンも等量で結合する性質があることを、まとめて、相補性(そうほせい)という。 1953年、アメリカの[[w:ジェームズ・ワトソン|ジェームズ・ワトソン]]とイギリスの[[w:フランシス・クリック|フランシス・クリック]]は、 シャルガフの塩基組成の研究や、イギリスの[[w:モーリス・ウィルキンス|モーリス・ウィルキンス]]のX線回折の研究をもとにして、研究を行った。そしてワトソンとクリックは、DNAが'''二重らせん構造'''であることを発見した。 これによると、2本のヌクレオチド鎖が、アデニンとチミン、グアニンとシトシンで対合し、柱状になり、それがらせん状にねじれている。 <gallery widths=200px heights=200px> File:Adenin.png|アデニン(A) File:Timina.svg|チミン(T) File:Guanine chemical structure 2.png|グアニン(G) File:Citosina-es.svg|シトシン(C) </gallery> :※ wikibooksでは化学構造式を紹介したが、検定教科書では化学構造式は紹介していない。 {{-}} === ゲノム === {| class="wikitable" style="float: right;" |+ いろいろな生物のゲノムと遺伝子 |- ! 生物名 !! 塩基対の数<br>(およその数) !! 遺伝子の数<br>(推定値) |- ! 大腸菌 | 460万 || 4400 |- ! 酵母菌 | 1200万 || 6200 |- ! キイロショウジョウバエ | 1億8000万 || 13700 |- ! ヒト | 30億 || 20000 |- |} ゲノム(genome)とは、ある生物のもつ遺伝情報のすべてのことである。(※ 高校教科書では、遺伝情報としてゲノムを定義している。高校以外の教科書では、別の定義をしていることもあるので、気をつけること。) :(※ 編集者の注) 具体的にいうと、ゲノムとはDNAのA,T,G,Cといった塩基配列のパターンのことである。 ゲノムのすべてが遺伝子なのではなく、ゲノムの一部が遺伝子である。ヒトのDNAには塩基対が約3億個ある。しかし、そのうち遺伝子として働く部分は、約2万2千個しかない。 ヒトのゲノムを解読しようというヒトゲノムプロジェクトは、2003年に解読が完了した。ヒトゲノム解読により、ヒトの遺伝子の全体が明らかとなった。 現在では、ヒト以外のゲノムの解読も進み、ゲノム研究が食品や医療などに応用されている。 === (※ ほぼ範囲外:) 遺伝子の本体の研究 === :※ 2010年代の生物基礎・生物の教科書では、形質転換やファージなどの話題が、あまり見当たらない。 :※ 数研出版や第一学習社など、いくつかの教科書にあるが、コラム送りになっている。 1869年、スイスの[[w:フリードリッヒ・ミーシェル|フリードリッヒ・ミーシェル]]は、 細胞核内の物質を発見しヌクレイン(nuclein)と呼んだ。 当時は、遺伝子の本体はタンパク質であると考えられていたが、 今日では、ヌクレインはDNAと呼ばれ、遺伝子の本体であることが明らかになっている。 * グリフィスの実験 [[Image:Griffith_experiment_ja.svg|thumb|400px|right|[[w:グリフィスの実験|グリフィスの実験]]]] 1928年イギリスの[[w:フレデリック・グリフィス|フレデリック・グリフィス]]は、 肺炎双球菌とネズミを用いて[[w:グリフィスの実験|実験]]を行った。 肺炎双球菌には、被膜を持っていて病原性のあるS(smooth)型菌と、被膜が無く病原性のないR(rough)型菌の2種類がある。 被膜の有無と病原性の有無の、どちらも遺伝形質である。 通常の菌の分裂増殖では、S型とR型との違いという遺伝形質は変わらない。 グリフィスの実験結果は次の通り。 :生きたS型菌をネズミに注射すると、ネズミは肺炎を起こして死ぬ。 :生きたR型菌をネズミに注射すると、ネズミは肺炎を起こさない。 :加熱殺菌したS型菌をネズミに注射すると、ネズミは肺炎を起こさない。 :加熱殺菌したS型菌に生きたR型菌を混ぜてネズミに注射すると、ネズミは肺炎を起こして死ぬ。死んだネズミの血液を調べるとS型菌が繁殖していた。 これはR型菌の形質が、加熱殺菌したS型菌に含まれる物質によって、S型菌の形質へ変化したためであり、 これを'''形質転換'''(transformation: nuclein)と呼ぶ。 {{-}} * アベリーの実験 1943年ころ、カナダの[[w:オズワルド・アベリー|オズワルド・アベリー]]は、グリフィスの実験での形質転換を起こした物質が何かを特定するため、タンパク質分解酵素とDNA分解酵素を用いて、S型菌・R型菌の実験を行った。 実験結果 :S型菌のタンパク質を分解した抽出液にR型菌を混ぜると、S型菌へ形質転換した。 :次にS型菌のDNAを分解した抽出液にR型菌を混ぜても、S型菌へ形質転換はしなかった。 これによって、R型菌の形質転換を起こしたのはDNAであることがわかった。 * バクテリオファージの増殖実験 [[Image:Tevenphage.svg|thumb|left|T2ファージの構造]] 細菌に寄生するウイルスのことをバクテリオファージまたは単にファージという。 1952年、アメリカの[[w:アルフレッド・ハーシー|アルフレッド・ハーシー]]と[[w:マーサ・チェイス|マーサ・チェイス]]は、 T2ファージというファージの一種のウイルスを用いて[[w:ハーシーとチェイスの実験|実験]]を行った。 T2ファージは細菌に寄生して増殖するウイルスであるバクテリオファージの一種であり、 ほぼタンパク質とDNAからできている。T2ファージの頭部の中にDNAが含まれる。それ以外の外殻(がいかく)はタンパク質で出来ている。 彼らは、放射性同位体の<sup>35</sup>S(硫黄の放射性同位体)および<sup>32</sup>P(リンの放射性同位体)を目印として用い、硫黄をふくむタンパク質には<sup>35</sup>Sで目印をつけ、<sup>32</sup>PでDNAに目印をつけた。DNAは P(リン)をふくむがS(硫黄)をふくまない。彼らの実際の実験では、タンパク質に目印をつけた実験と、DNAに目印をつけた実験とは、それぞれ別に行った。 {{-}} [[File:ハーシーとチェイスの実験.svg|thumb|800px|ハーシーとチェイスの実験]] 実験では、それらの放射性同位体をもつT2ファージを大腸菌に感染させ、さらにミキサーで撹拌し、遠心分離器で大腸菌の沈殿と、上澄みに分けた。 大腸菌からは、<sup>32</sup>Pが多く検出され、あまり<sup>35</sup>Sは検出されなかった。このことからT2ファージのDNAが大腸菌に進入したと結論付けた。また、上澄みからはT2ファージのタンパク質が確認された。つまり上澄みはT2ファージの外殻をふくんでいる。 さらに、この大腸菌からは、20~30分後、子ファージが出てきた。子ファージには<sup>35</sup>Sは検出されなかった。 これによって、DNAが遺伝物質であることが証明された。 {{-}} === その他コラム === :※ メセルソンとスタールの実験が、第一学習社の教科書で紹介されている。当wikiでは『[[高等学校生物/生物I/細胞の増殖]]』で説明してあるので、本ページ『遺伝情報とDNA』での説明は省略する。 == 参考: 染色体の構造 == 染色体の構造については、ヒストンと言う球状のタンパク質が幾つもあり、そのヒストンに繊維状のDNAが巻きつくような形で、染色体が出来ている。 == 参考文献 == * 田中隆荘ほか『高等学校生物I』第一学習社、2004年2月10日発行、pp.110-154 * [https://web.archive.org/web/20141016171612/http://www.nhk.or.jp/kokokoza/library/2013/tv/seibutsu/ 『NHK高校講座 生物』第16-21回] * [http://www.weblio.jp/cat/academic/sbtgy 生物学用語辞典 - Weblio 学問] [[Category:高等学校教育|生1いてん]] [[Category:生物学|高1いてん]]
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高等学校理科 生物基礎/細胞とエネルギー
高等学校生物 > 生物I > 細胞とエネルギー 呼吸や消化など、生体内で行われる化学反応をまとめて代謝(たいしゃ、metabolism)という。 細胞内でのエネルギーのやりとりには、仲立ちとしてATP( アデノシン三リン酸(あでのしん さんりんさん)、adenosine triphosphate)が用いられる。 ATPの構造は、ADP(アデノシン二リン酸)という物質にリン酸が結合した構造である。 ADPにリン酸を結合させる際、エネルギーが必要になる。結合によって合成されたATPは安定であり、エネルギーを蓄えることができる。そして異化によってATPのリン酸結合が切れてADPとリン酸に分解される際に、エネルギーを放出する。 呼吸など異化(いか)の際に、ADPとリン酸からATPを合成している(「異化」については、のちの節で後述する。)。 ATPは、アデノシンという物質に、直列に3つのリン酸がついている。ATPでのリン酸どうしの結合のことを高エネルギーリン酸結合といい、リン酸間の結合が切れるときにエネルギーを放出する。 しばしば、ATPは「エネルギーの通貨」に例えられる。 アデノシンの構造は、アデニンという塩基にリボースという糖が結合したものである。 分解されたADPは、再利用され、呼吸(こきゅう、respiration)によって再びATPに合成されることが可能である。 ATPのエネルギーの利用先は、生体物質の合成のほかにも、筋肉の収縮や、ホタルの発光などにも、ATPのエネルギーは用いられている。 代謝のうち、複雑な物質を分化してエネルギーを取り出すことを異化(いか、catabolism)という。呼吸は異化であり、有機物を分解して水と炭素にしている。 いっぽう、代謝のうち、合成する反応のことを同化(どうか、anabolism)という。同化の目的は、たとえばエネルギーを蓄えたり、あるいは体を構成する物質を生産するために行われる。例として、光合成における糖の合成は、同化である。 ふつう同化では、簡単な構造の物質を材料に、複雑な構造の物質が作られる。エネルギーが同化をするために必要である。したがって反応に用いたエネルギの一部は、合成した物質に吸収されている。 同化によって合成物に吸収されたエネルギーを取り出して使うには、呼吸などの異化を行って分解する必要がある。 植物のように、外界から水H2Oや二酸化炭素CO2などの無機物および、光などのエネルギーだけを取り入れて、生存できる生物を独立栄養生物(どくりつえいようせいぶつ、autotroph)という。 植物は、光合成によって無機物を炭酸同化できるので、独立栄養生物である。 一方、ウシなどの草食動物のように植物など他の独立栄養生物を食す必要のある生物や、ライオンやトラなどの肉食動物のように草食動物を食べる必要があったりと、ともかく他の独立栄養生物を直接的・間接的に食す必要のある生物を従属栄養生物(じゅうぞくえいようせいぶつ、heterotroph)という。いわゆる動物は、肉食動物も草食動物も、ともに、多くの動物は従属栄養生物である。 従属栄養生物も炭酸同化や窒素同化などの同化を行っているが、それら従属栄養生物の行う同化のもとになる材料の物質は、有機物であって無機物でない。 デンプン(starch)の分解には、硫酸水溶液などの強酸中で100°C以上の高温で分解するという方法がある。しかし、だ液(saliva)は常温付近でデンプンを分解してマルトース(maltose、麦芽糖のこと)に変える。 特定の化学反応を促進し、自身は反応の前後で変化しない物質を触媒(しょくばい、catalyst)という。 生物の細胞内や細胞外で触媒として作用し、生物現象を維持している物質を酵素(こうそ、enzyme)と呼ぶ。酵素はすべて有機物であり、酵素の本体はタンパク質である。先ほど説明した、だ液にも、アミラーゼ(amylase)という酵素がふくまれている。 さて、例えば、過酸化水素水(H2O2)に二酸化マンガン(MnO2)を加えると、二酸化マンガンが触媒として作用し、水(H2O)と酸素(O2)が発生するが、 同様に、過酸化水素水に肝臓の細胞を加えると水と酸素が発生するのだが、この理由は細胞内に含まれるカタラーゼ(catalase)と呼ばれる酵素が触媒として作用して、過酸化水素を分解して水と酸素が発生するからである。 細胞外で働く酵素もある。 体外から摂取したデンプン(starch)やタンパク質(protein)は、そのままでは大きすぎて小腸の細胞に吸収できないため、 各消化器官から分泌される消化酵素によって、吸収しやすくなるように分解される。 デンプン(starch)は、唾液(だえき、saliva)に含まれるアミラーゼ(amylase)によって、マルトース(maltose)に分解される。 タンパク質(protein)は、胃液に含まれるペプシン(pepsin)によってペプトン(peptone)に、すい臓から分泌されるトリプシン(trypsin)によってさらに小さなアミノ酸(amino acids)に分解される。トリプシンはpH8付近が最適pH(optimum pH)である。 ヒトが持っている酵素の種類は数千種類といわれている。 酵素が作用する相手の物質のことを基質(きしつ)という。酵素はそれぞれ反応する相手の物質が決まっており、これを基質特異性という。二酸化マンガンや白金などの無機物質では、基質特異性は見られない。基質特異性の正体は、酵素を構成しているタンパク質の立体構造によるものである。酵素の各部のうち、その酵素が基質と結合する部位のことを活性部位あるいは活性中心という。酵素は活性部位で基質と結合する。 酵素は、酵素-基質複合体(こうそ-きしつ ふくごうたい)をつくって、基質に触媒としての働きをする。 このように酵素は細胞内や細胞外で作用することにより、生命現象を維持している。 多くの酵素は、常温の付近で働く。 また、70°C程度以上の湯などで高温で熱してしまった酵素は、触媒の働きを失ってしまう。高温で働きを失った酵素を低温に冷ましても、もう触媒の働きは戻らない。このように、酵素が触媒の働きを失ってしまい戻らないことを失活(しっかつ)という。 これは、酵素のタンパク質が高温によって乱され、タンパク質の構造が崩れてしまったからである。酵素に限らず、タマゴや肉なども、高温で熱してしまうと、冷ましても常温にしても、もう働きは復活しない。この理由も、タマゴや肉のタンパク質が崩れてしまったからである。このようにタンパク質が熱で変わってしまうことを熱変性(ねつへんせい)という。 酵素が良く働く温度は、35°C~40°Cくらいである場合が多い。酵素がもっとも良く温度のことを最適温度という。最適温度は酵素の種類ごとに違う。常温付近で、やや高めの温度が最適温度である。 いっぽう酸化マンガンなどの無機触媒では高温のほど反応速度が強く、無機触媒では最適温度は見られない。 酵素は、特定のpH(ペーハー、ピーエイチ)で良く働く。このpHのことを最適pHという。 たとえば、だ液にふくまれる酵素アミラーゼの最適pHは7付近である。だ液のpHは7である。胃液で働くペプシンの最適pHは2である。(ペプシンは、タンパク質を分解する酵素。) このように、酵素の最適pHは、その酵素が多く含まれる器官のpHに近い場合が多い。 すい液にふくまれる酵素リパーゼの最適pHは9であり、すい液のpHもややアルカリ性である。(リパーゼは脂肪を分解する酵素。) 実験として酵素濃度を一定にして、温度を一定にして、基質濃度を変えて実験すると、つぎのような結果が得られる。 ・基質濃度が低いとき、基質濃度に比例して反応速度が増える。 ・基質濃度が高い場合、酵素の数以上に基質があっても酵素-基質複合体ができすに効果がないので、基質濃度が低いときは、あまり反応速度は変わらず、反応速度はしだいに一定値になる。 そのほか、活性部位に基質以外の物質が結合すると、基質が酵素に結合できなくなる場合がある。阻害物質が酵素の活性物質をめぐって基質と競争していると見なして、このような現象のことを競争的阻害という。 阻害物質が活性物質以外の場所に結合しても、その結果、活性部位の構造が変わってしまう場合があり、そのため酵素-基質の結合を阻害する場合もある。このような、活性部位以外への阻害物質の結合による阻害を、非競争的阻害という。 ある種の酵素には、基質以外にも他の物質が必要な場合もある。このような酵素に協力している物質が有機物の場合で、その有機物が酵素に結合する場合、その有機物のことを補酵素(ほこうそ)という。補酵素は一般に低分子(=分子の大きさが小さい)であり、また酵素と分離しやすい。そのため半透膜(セロハンなど)を使って、補酵素を分離することができる。また、熱に対して、補酵素は、比較的、強い。 補酵素の代表的な例として、呼吸に関わる脱水素酵素の補酵素NADがある。脱水素酵素は、基質から水素を取り除く。NADとは「ニコチン・アミドアデニン・ジヌクレオチド」のこと。 脱水素酵素とNADは別の物質である。脱水素酵素とのNADという両方の物質があることで、NADが水素を受容できるようになるって、NADに水素水が結合しNADHに変わる。 酵素に協力している物質が金属または金属イオンなどで、有機物で無い場合もある。 (執筆準備中) 植物は光エネルギーにより、水と二酸化炭素から、グルコースを合成している。 これを光合成(photosynthesis)と呼ぶ。 光合成では、光合成の途中で光のエネルギーを使ってADPからATPを合成するが、光合成の後半の段階で植物はATPを分解してADPにして、植物はATPのエネルギーを使ってデンプンなどの有機物を合成している。 光合成を、化学式っぽく、まとめると、下記のようになる。 なお、光合成では一時的に葉緑体にデンプンが蓄えられるが、その後、デンプンがスクロース(ショ糖)などに分解されて維管束を通って、植物の各部位に運ばれ(「転流」という)、その各部位で消費されたり、またはデンプンに合成されて貯蔵されたりする。 葉緑体の内部の構造には、チラコイドという膜状の構造と、ストロマという無色の基質の構造がある。 チラコイドにある色素が光エネルギーを吸収する。この吸収のとき、特定の波長の光を吸収している。赤や青の光が葉緑体に吸収される。緑色の光は吸収しない。吸収しなかった波長の光は反射される。植物の緑色は、反射した光の色であり、光合成には使用していない光である。 吸収した光エネルギーで、ATPの合成やNADPHの合成を行っている(「NAD」とは「ニコチン アデニン ジヌクレオチド」のことである。)。 次の(1)~(3)の反応がチラコイドで行われる。 (4)の反応がストロマで行われる。 (1): 光化学反応 光エネルギの吸収は、色素のクロロフィルで吸収する。クロロフィルは活性化し、活性クロロフィルになる。クロロフィルの存在する場所は、チラコイドの膜である。 この反応には、光が当然に必要である。温度の影響をほとんど受けない。 (2): 水の分解とNADPHの生成 1の反応に伴って、活性クロロフィルから電子が飛び出す。水が分解され、酸素が発生するとともに、できた水素Hが、さらに水素イオンHと電子e に分解される。発生された酸素O2は、以降の反応では利用せず、このため酸素O2が排出される。 この反応でのHの分解から発生したe は、チラコイドの膜上で伝達され、最終的にHとともにNADPという物質にe は結合し、NADPHが生成する。 (3): ATPの合成 2の反応に伴って、ADPがリン酸化されATPが合成される。 (4): 二酸化炭素の固定 ストロマで、(3)の反応で作られたATPのエネルギーも利用して、いくつもの過程を経て、植物が気孔などを使って細胞外から取り入れた二酸化炭素から、有機物(グルコース C6H12O6 )を合成する。 生成された物質の一部が同じ物質のもどる反応経路になっており、カルビン・ベンソン回路という。 このカルビン・ベンソン回路の過程で、(3)の反応で作られたATPを用いている。 このカルビン・ベンソン回路の反応は、温度の影響を受ける。 (※ 光合成について、くわしくは生物IIで説明する。) そもそも「『呼吸』とは何か?、という問題があるが、検定教科書によって説明が違うので、呼吸とは何かについては、説明を後回しにしたい。 それよりも重要なこととして、 われわれ人間の呼吸では、エネルギー源として、おもにグルコース(C6H12O6)などの炭水化物を分解することにより、生命活動に必要なエネルギーを取り出している。このグルコースの分解反応で酸素が必要なため、人間は呼吸で酸素を取り入れている。呼吸によるグルコースの分解で、グルコースに蓄えられていたエネルギーを取り出しており、さまざまな生態活動のエネルギーになっている。 木材などの燃焼と、生物の呼吸は、酸素を使用する点と、エネルギーが放出される点では似ているが、しかし燃焼が急激に熱と光を放出してすぐに終わってしまうのに比べて、呼吸では段階的に分解することでエネルギーを取り出してATPにエネルギーを蓄えるという点で、燃焼と呼吸には違いがある。 なお、呼吸におけるグルコースのように、呼吸につかわれてエネルギーを取り出す元になっている物質を「呼吸基質」(こきゅう きしつ)という(※ 啓林館の教科書で「呼吸基質」の紹介が見られるが、他社の教科書で見られず、あまり重要視されて無い用語である。)。 人間や魚類の呼吸は、細胞での酸素を用いる呼吸のためであり、このときの細胞での酸素を吸って二酸化炭素をはきだす行為を呼吸(こきゅう)という。 細胞での呼吸によるグルコースの分解は、おもにミトコンドリアで行われている。 そのため、ミトコンドリアを持たない微生物では、呼吸の仕組みが、人間や魚類などとは違っている。 酵母菌(こうぼきん)のアルコール発酵での化学反応式は、まずグルコースC6H12O6からピルビン酸C3H4O3に分解される。この、グルコースからピルビン酸を得る過程を解糖系(かいとうけい、glycolysis)という。解糖系でATPが2分子つくられる。そしてピルビン酸が、無酸素の状態では酵素デカルボキシラーゼによってアセトアルデヒドCH3CHOによって分解され、そのアセトアルデヒドがNADHという物質によってエタノールC2H5OHへと変えられる。 まとめると、アルコール発酵の反応式は、次の式である。 グルコース1分子あたりATPが2分子できる。アルコール発酵のATPは解糖系に由来しており、それ以降はATPを産生してない。 解糖系による、グルコースからピルビン酸ができる反応は、嫌気生物に限らず、ほとんどすべての生物の呼吸で行われている。(※ そのため、ピルビン酸は呼吸の学習における重要物質である。) 乳酸発酵(にゅうさんはっこう)では、まずグルコースC6H12O6が解糖系によって、ピルビン酸へと分解され、このときATPが2分子できる。そしてピルビン酸がNADHによって乳酸:C3H6O3に変えられる。 酢酸菌(さくさんきん)は、 酸素O2を用いて、エタノールを酢酸CH3COOH に変える。 酢酸発酵では酸素を用いるため、一般的な無酸素の発酵とは区別して、酸化発酵とよぶ。 酢酸発酵のとき、酢酸のほかに水ができる。 呼吸は細胞質基質とミトコンドリアで起こる。とくにミトコンドリアを中心に、呼吸によって多くのATPが合成される。 1分子のグルコースが、2分子のピルビン酸(C3H4O3)にまで分解される。この反応は細胞質基質で行われる。酵素を必要としない。ATPを2分子、生成する。反応の途中でATPを2分子消費するが、4分子のATPを生成するので、差し引き2分子のATPを生成する。 グルコースは、まずATP2分子によってリン酸化されフルクトース二リン酸(C6化合物)になる。 フルクトース二リン酸が二分して、グリセルアルデヒドリン酸(C3化合物)の二分子ができる。 グリセルアルデヒドリン酸が、いくつかの反応を経て、ピルビン酸になる。この間の反応で、電子eとプロトンHが生じて、補酵素NADに渡されNADHになる。ここで生じたNADHはミトコンドリアに入り、あとの電子伝達系で利用される。また、ATPが4分子できる。よって、差し引きグルコース1分子につき、2分子ATPが、解糖系で生じる。 ピルビン酸が、ミトコンドリア内に入り、ミトコンドリアのマトリックスという内膜にある酵素で、ピルビン酸がコエンザイムA(CoA)と結合してアセチルCoA(活性酢酸)というC2化合物になり、段階的に分解される。二酸化炭素が、ピルビン酸がアセチルCoAになる際に生じる。 アセチルCoA以降の反応図は回路上であって、回路のはじめにクエン酸(citric acid)が生じることから、クエン酸回路(Citric acid cycle)という。 と変化していく。(「C6」とはC6化合物のこと。C5とはC5化合物のこと。C4も同様にC4化合物のこと。) このクエン酸回路の過程でATPが2分子できる。また、電子が放出される。 C2化合物のアセチルCoAがC6化合物のクエン酸に変化する際、クエン際回路の最後のオキサロ酢酸(C4化合物)と化合するので、炭素の収支が合う。クエン酸回路では、脱炭酸酵素や脱水素酵素の働きで、クエン酸は変化していく。 クエン酸回路で、コハク酸(succinate)からフマル酸になる際に発生する水素は、補酵素FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)が受け取り、FADH2になる。 コハク酸以外での脱水素反応では、NADが水素を受け取っている。(「NAD」とは「ニコチン アデニン ジヌクレオチド」のことである。) ミトコンドリアの内膜にシトクロム(cytochrome)というタンパク質がいくつもあり、このシトクロムは電子を受け渡しできる。解糖系やクエン酸回路で生じたNADHやFADH2から、電子eと水素イオンHが分離し、電子はシトクロムに渡される。そしてシトクロムどうしで電子を受け渡す。このとき、Hが、いったんマトリックスから膜間にくみ出され、それから水素イオンの濃度勾配に従ってATP合成酵素を通ってマトリックス側に戻る。このHがATP合成酵素を通る際のエネルギーを利用して、ADPからATPが生成される。最終的に生成するATPの数は、グルコース1分子あたりATPを最大で34分子を生じる(生物種によって生成数が異なる)。 これらの反応ではNADHなどが酸化される反応が元になってATPを生成しているので、一連の反応を酸化的リン酸化(oxidative phosphorylation)という。シトクロムのことをチトクロームともいう。 電子eは、最終的に酸素原子に渡され、酸化酵素の働きで水素イオンと反応し水になる。この水の生成反応のときの反応エネルギーを用いて、マトリックスの水素が膜間へと運ばれており、さきほど述べたようにATPが合成されている。 呼吸でのATPの収支は、グルコース1分子あたり解糖系で2分子のATP、クエン酸回路で2分子ATP、電子伝達系で最大34分子ATPであり、合計で最大38分子のATPになる。
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32, "tag": "p", "text": "酵素に協力している物質が金属または金属イオンなどで、有機物で無い場合もある。", "title": "酵素" }, { "paragraph_id": 33, "tag": "p", "text": "(執筆準備中)", "title": "酵素" }, { "paragraph_id": 34, "tag": "p", "text": "", "title": "酵素" }, { "paragraph_id": 35, "tag": "p", "text": "植物は光エネルギーにより、水と二酸化炭素から、グルコースを合成している。 これを光合成(photosynthesis)と呼ぶ。", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 36, "tag": "p", "text": "光合成では、光合成の途中で光のエネルギーを使ってADPからATPを合成するが、光合成の後半の段階で植物はATPを分解してADPにして、植物はATPのエネルギーを使ってデンプンなどの有機物を合成している。", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 37, "tag": "p", "text": "光合成を、化学式っぽく、まとめると、下記のようになる。", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 38, "tag": "p", "text": "なお、光合成では一時的に葉緑体にデンプンが蓄えられるが、その後、デンプンがスクロース(ショ糖)などに分解されて維管束を通って、植物の各部位に運ばれ(「転流」という)、その各部位で消費されたり、またはデンプンに合成されて貯蔵されたりする。", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 39, "tag": "p", "text": "", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 40, "tag": "p", "text": "葉緑体の内部の構造には、チラコイドという膜状の構造と、ストロマという無色の基質の構造がある。", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 41, "tag": "p", "text": "チラコイドにある色素が光エネルギーを吸収する。この吸収のとき、特定の波長の光を吸収している。赤や青の光が葉緑体に吸収される。緑色の光は吸収しない。吸収しなかった波長の光は反射される。植物の緑色は、反射した光の色であり、光合成には使用していない光である。", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 42, "tag": "p", "text": "吸収した光エネルギーで、ATPの合成やNADPHの合成を行っている(「NAD」とは「ニコチン アデニン ジヌクレオチド」のことである。)。", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 43, "tag": "p", "text": "次の(1)~(3)の反応がチラコイドで行われる。 (4)の反応がストロマで行われる。", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 44, "tag": "p", "text": "(1): 光化学反応 光エネルギの吸収は、色素のクロロフィルで吸収する。クロロフィルは活性化し、活性クロロフィルになる。クロロフィルの存在する場所は、チラコイドの膜である。", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 45, "tag": "p", "text": "この反応には、光が当然に必要である。温度の影響をほとんど受けない。", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 46, "tag": "p", "text": "(2): 水の分解とNADPHの生成 1の反応に伴って、活性クロロフィルから電子が飛び出す。水が分解され、酸素が発生するとともに、できた水素Hが、さらに水素イオンHと電子e に分解される。発生された酸素O2は、以降の反応では利用せず、このため酸素O2が排出される。", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 47, "tag": "p", "text": "この反応でのHの分解から発生したe は、チラコイドの膜上で伝達され、最終的にHとともにNADPという物質にe は結合し、NADPHが生成する。", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 48, "tag": "p", "text": "(3): ATPの合成 2の反応に伴って、ADPがリン酸化されATPが合成される。", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 49, "tag": "p", "text": "(4): 二酸化炭素の固定 ストロマで、(3)の反応で作られたATPのエネルギーも利用して、いくつもの過程を経て、植物が気孔などを使って細胞外から取り入れた二酸化炭素から、有機物(グルコース C6H12O6 )を合成する。", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 50, "tag": "p", "text": "生成された物質の一部が同じ物質のもどる反応経路になっており、カルビン・ベンソン回路という。 このカルビン・ベンソン回路の過程で、(3)の反応で作られたATPを用いている。", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 51, "tag": "p", "text": "このカルビン・ベンソン回路の反応は、温度の影響を受ける。", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 52, "tag": "p", "text": "(※ 光合成について、くわしくは生物IIで説明する。)", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 53, "tag": "p", "text": "", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 54, "tag": "p", "text": "そもそも「『呼吸』とは何か?、という問題があるが、検定教科書によって説明が違うので、呼吸とは何かについては、説明を後回しにしたい。", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 55, "tag": "p", "text": "それよりも重要なこととして、", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 56, "tag": "p", "text": "われわれ人間の呼吸では、エネルギー源として、おもにグルコース(C6H12O6)などの炭水化物を分解することにより、生命活動に必要なエネルギーを取り出している。このグルコースの分解反応で酸素が必要なため、人間は呼吸で酸素を取り入れている。呼吸によるグルコースの分解で、グルコースに蓄えられていたエネルギーを取り出しており、さまざまな生態活動のエネルギーになっている。", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 57, "tag": "p", "text": "木材などの燃焼と、生物の呼吸は、酸素を使用する点と、エネルギーが放出される点では似ているが、しかし燃焼が急激に熱と光を放出してすぐに終わってしまうのに比べて、呼吸では段階的に分解することでエネルギーを取り出してATPにエネルギーを蓄えるという点で、燃焼と呼吸には違いがある。", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 58, "tag": "p", "text": "なお、呼吸におけるグルコースのように、呼吸につかわれてエネルギーを取り出す元になっている物質を「呼吸基質」(こきゅう きしつ)という(※ 啓林館の教科書で「呼吸基質」の紹介が見られるが、他社の教科書で見られず、あまり重要視されて無い用語である。)。", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 59, "tag": "p", "text": "人間や魚類の呼吸は、細胞での酸素を用いる呼吸のためであり、このときの細胞での酸素を吸って二酸化炭素をはきだす行為を呼吸(こきゅう)という。", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 60, "tag": "p", "text": "細胞での呼吸によるグルコースの分解は、おもにミトコンドリアで行われている。", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 61, "tag": "p", "text": "そのため、ミトコンドリアを持たない微生物では、呼吸の仕組みが、人間や魚類などとは違っている。", "title": "光合成と呼吸" }, { "paragraph_id": 62, "tag": "p", "text": "", "title": "※ 発展" }, { "paragraph_id": 63, "tag": "p", "text": "酵母菌(こうぼきん)のアルコール発酵での化学反応式は、まずグルコースC6H12O6からピルビン酸C3H4O3に分解される。この、グルコースからピルビン酸を得る過程を解糖系(かいとうけい、glycolysis)という。解糖系でATPが2分子つくられる。そしてピルビン酸が、無酸素の状態では酵素デカルボキシラーゼによってアセトアルデヒドCH3CHOによって分解され、そのアセトアルデヒドがNADHという物質によってエタノールC2H5OHへと変えられる。", "title": "※ 発展" }, { "paragraph_id": 64, "tag": "p", "text": "まとめると、アルコール発酵の反応式は、次の式である。", "title": "※ 発展" }, { "paragraph_id": 65, "tag": "p", "text": "グルコース1分子あたりATPが2分子できる。アルコール発酵のATPは解糖系に由来しており、それ以降はATPを産生してない。", "title": "※ 発展" }, { "paragraph_id": 66, "tag": "p", "text": "解糖系による、グルコースからピルビン酸ができる反応は、嫌気生物に限らず、ほとんどすべての生物の呼吸で行われている。(※ そのため、ピルビン酸は呼吸の学習における重要物質である。)", "title": "※ 発展" }, { "paragraph_id": 67, "tag": "p", "text": "乳酸発酵(にゅうさんはっこう)では、まずグルコースC6H12O6が解糖系によって、ピルビン酸へと分解され、このときATPが2分子できる。そしてピルビン酸がNADHによって乳酸:C3H6O3に変えられる。", "title": "※ 発展" }, { "paragraph_id": 68, "tag": "p", "text": "酢酸菌(さくさんきん)は、 酸素O2を用いて、エタノールを酢酸CH3COOH に変える。", "title": "※ 発展" }, { "paragraph_id": 69, "tag": "p", "text": "酢酸発酵では酸素を用いるため、一般的な無酸素の発酵とは区別して、酸化発酵とよぶ。", "title": "※ 発展" }, { "paragraph_id": 70, "tag": "p", "text": "酢酸発酵のとき、酢酸のほかに水ができる。", "title": "※ 発展" }, { "paragraph_id": 71, "tag": "p", "text": "呼吸は細胞質基質とミトコンドリアで起こる。とくにミトコンドリアを中心に、呼吸によって多くのATPが合成される。", "title": "発展:呼吸の仕組み" }, { "paragraph_id": 72, "tag": "p", "text": "1分子のグルコースが、2分子のピルビン酸(C3H4O3)にまで分解される。この反応は細胞質基質で行われる。酵素を必要としない。ATPを2分子、生成する。反応の途中でATPを2分子消費するが、4分子のATPを生成するので、差し引き2分子のATPを生成する。", "title": "発展:呼吸の仕組み" }, { "paragraph_id": 73, "tag": "p", "text": "グルコースは、まずATP2分子によってリン酸化されフルクトース二リン酸(C6化合物)になる。", "title": "発展:呼吸の仕組み" }, { "paragraph_id": 74, "tag": "p", "text": "フルクトース二リン酸が二分して、グリセルアルデヒドリン酸(C3化合物)の二分子ができる。", "title": "発展:呼吸の仕組み" }, { "paragraph_id": 75, "tag": "p", "text": "グリセルアルデヒドリン酸が、いくつかの反応を経て、ピルビン酸になる。この間の反応で、電子eとプロトンHが生じて、補酵素NADに渡されNADHになる。ここで生じたNADHはミトコンドリアに入り、あとの電子伝達系で利用される。また、ATPが4分子できる。よって、差し引きグルコース1分子につき、2分子ATPが、解糖系で生じる。", "title": "発展:呼吸の仕組み" }, { "paragraph_id": 76, "tag": "p", "text": "ピルビン酸が、ミトコンドリア内に入り、ミトコンドリアのマトリックスという内膜にある酵素で、ピルビン酸がコエンザイムA(CoA)と結合してアセチルCoA(活性酢酸)というC2化合物になり、段階的に分解される。二酸化炭素が、ピルビン酸がアセチルCoAになる際に生じる。 アセチルCoA以降の反応図は回路上であって、回路のはじめにクエン酸(citric acid)が生じることから、クエン酸回路(Citric acid cycle)という。", "title": "発展:呼吸の仕組み" }, { "paragraph_id": 77, "tag": "p", "text": "と変化していく。(「C6」とはC6化合物のこと。C5とはC5化合物のこと。C4も同様にC4化合物のこと。) このクエン酸回路の過程でATPが2分子できる。また、電子が放出される。", "title": "発展:呼吸の仕組み" }, { "paragraph_id": 78, "tag": "p", "text": "C2化合物のアセチルCoAがC6化合物のクエン酸に変化する際、クエン際回路の最後のオキサロ酢酸(C4化合物)と化合するので、炭素の収支が合う。クエン酸回路では、脱炭酸酵素や脱水素酵素の働きで、クエン酸は変化していく。", "title": "発展:呼吸の仕組み" }, { "paragraph_id": 79, "tag": "p", "text": "クエン酸回路で、コハク酸(succinate)からフマル酸になる際に発生する水素は、補酵素FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)が受け取り、FADH2になる。 コハク酸以外での脱水素反応では、NADが水素を受け取っている。(「NAD」とは「ニコチン アデニン ジヌクレオチド」のことである。)", "title": "発展:呼吸の仕組み" }, { "paragraph_id": 80, "tag": "p", "text": "ミトコンドリアの内膜にシトクロム(cytochrome)というタンパク質がいくつもあり、このシトクロムは電子を受け渡しできる。解糖系やクエン酸回路で生じたNADHやFADH2から、電子eと水素イオンHが分離し、電子はシトクロムに渡される。そしてシトクロムどうしで電子を受け渡す。このとき、Hが、いったんマトリックスから膜間にくみ出され、それから水素イオンの濃度勾配に従ってATP合成酵素を通ってマトリックス側に戻る。このHがATP合成酵素を通る際のエネルギーを利用して、ADPからATPが生成される。最終的に生成するATPの数は、グルコース1分子あたりATPを最大で34分子を生じる(生物種によって生成数が異なる)。 これらの反応ではNADHなどが酸化される反応が元になってATPを生成しているので、一連の反応を酸化的リン酸化(oxidative phosphorylation)という。シトクロムのことをチトクロームともいう。", "title": "発展:呼吸の仕組み" }, { "paragraph_id": 81, "tag": "p", "text": "電子eは、最終的に酸素原子に渡され、酸化酵素の働きで水素イオンと反応し水になる。この水の生成反応のときの反応エネルギーを用いて、マトリックスの水素が膜間へと運ばれており、さきほど述べたようにATPが合成されている。", "title": "発展:呼吸の仕組み" }, { "paragraph_id": 82, "tag": "p", "text": "呼吸でのATPの収支は、グルコース1分子あたり解糖系で2分子のATP、クエン酸回路で2分子ATP、電子伝達系で最大34分子ATPであり、合計で最大38分子のATPになる。", "title": "発展:呼吸の仕組み" } ]
高等学校生物 > 生物I > 細胞とエネルギー
<small> [[高等学校生物]] > 生物I > 細胞とエネルギー </small> == 代謝とATP == 呼吸や消化など、生体内で行われる化学反応をまとめて'''代謝'''(たいしゃ、metabolism)という。 === ATP === [[File:ATP模式図.svg|thumb|400px|ATP]] [[File:ADP模式図.svg|thumb|300px|ADP]] 細胞内でのエネルギーのやりとりには、仲立ちとして'''ATP'''( '''アデノシン三リン酸'''(あでのしん さんりんさん)、adenosine triphosphate)が用いられる。 ATPの構造は、'''ADP'''('''アデノシン二リン酸''')という物質に'''リン酸'''が結合した構造である。 ADPにリン酸を結合させる際、エネルギーが必要になる。結合によって合成されたATPは安定であり、エネルギーを蓄えることができる。そして異化によってATPのリン酸結合が切れてADPとリン酸に分解される際に、エネルギーを放出する。 呼吸など異化(いか)の際に、ADPとリン酸からATPを合成している(「異化」については、のちの節で後述する。)。 ATPは、アデノシンという物質に、直列に3つのリン酸がついている。ATPでのリン酸どうしの結合のことを'''高エネルギーリン酸結合'''といい、リン酸間の結合が切れるときにエネルギーを放出する。 しばしば、ATPは「エネルギーの通貨」に例えられる。 アデノシンの構造は、アデニンという塩基にリボースという糖が結合したものである。 分解されたADPは、再利用され、呼吸(こきゅう、respiration)によって再びATPに合成されることが可能である。 ATPのエネルギーの利用先は、生体物質の合成のほかにも、筋肉の収縮や、ホタルの発光などにも、ATPのエネルギーは用いられている。 [[File:Atpadp.jpg|thumb|300px|center]] === ※ 参考 === ==== 異化(いか)と同化(どうか) ==== [[File:異化と同化.svg|thumb|400px|同化と異化。]] :※ 検定教科書ではATPの単元よりも前にあるが、しかし学問的にATPの理論と比べて異化・同化の理論は発展性が明らかに乏しく、そのためwikibooksでは紹介を後回しにした。また、東京書籍の生物基礎の教科書では、もはや異化・同化の用語が無く、単元自体が無い。かつて1990年代は、高校生物Iでよく教えていた用語であった。 代謝のうち、複雑な物質を分化してエネルギーを取り出すことを'''異化'''(いか、catabolism)という。呼吸は異化であり、有機物を分解して水と炭素にしている。 いっぽう、代謝のうち、合成する反応のことを'''同化'''(どうか、anabolism)という。同化の目的は、たとえばエネルギーを蓄えたり、あるいは体を構成する物質を生産するために行われる。例として、光合成における糖の合成は、同化である。 ふつう同化では、簡単な構造の物質を材料に、複雑な構造の物質が作られる。エネルギーが同化をするために必要である。したがって反応に用いたエネルギの一部は、合成した物質に吸収されている。 同化によって合成物に吸収されたエネルギーを取り出して使うには、呼吸などの異化を行って分解する必要がある。 :(※ 範囲外: ) 肉体への合成・蓄積反応を「同化」というのは日常語では聞きなれないが、同化の英語の anabolism アナボリズムを考えれば、スポーツのドーピングの筋肉増強剤でアナボリック・ステロイドとかあるように、覚えやすいだろうか。 ==== 独立栄養生物と従属栄養生物 ==== :※ 啓林館などの生物基礎の教科書で紹介されているが、他社の教科書で記述が見当たらず、事実上の専門生物おくりの単元。 植物のように、外界から水H<sub>2</sub>Oや二酸化炭素CO<sub>2</sub>などの無機物および、光などのエネルギーだけを取り入れて、生存できる生物を'''独立栄養生物'''(どくりつえいようせいぶつ、autotroph)という。 植物は、光合成によって無機物を炭酸同化できるので、独立栄養生物である。 一方、ウシなどの草食動物のように植物など他の独立栄養生物を食す必要のある生物や、ライオンやトラなどの肉食動物のように草食動物を食べる必要があったりと、ともかく他の独立栄養生物を直接的・間接的に食す必要のある生物を'''従属栄養生物'''(じゅうぞくえいようせいぶつ、heterotroph)という。いわゆる動物は、肉食動物も草食動物も、ともに、多くの動物は従属栄養生物である。 従属栄養生物も炭酸同化や窒素同化などの同化を行っているが、それら従属栄養生物の行う同化のもとになる材料の物質は、有機物であって無機物でない。 ==== 発展:筋肉とクレアチンリン酸 ==== == 酵素 == [[File:酵素と活性化エネルギー.svg|thumb|300px|酵素と活性化エネルギー。物質が化学反応をするときに超える必要のあるエネルギーのことを活性化エネルギー(かっせいかエネルギー)という。通常は安定な物質では、この活性化エネルギーがあるため、その物質は安定してられる。]] [[File:酵素と最適pH.svg|thumb|300px|酵素と最適pH]] デンプン(starch)の分解には、硫酸水溶液などの強酸中で100℃以上の高温で分解するという方法がある。しかし、だ液(saliva)は常温付近でデンプンを分解してマルトース(maltose、麦芽糖のこと)に変える。 特定の化学反応を促進し、自身は反応の前後で変化しない物質を触媒(しょくばい、catalyst)という。 生物の細胞内や細胞外で触媒として作用し、生物現象を維持している物質を'''酵素'''(こうそ、enzyme)と呼ぶ。酵素はすべて有機物であり、酵素の本体はタンパク質である。先ほど説明した、だ液にも、アミラーゼ(amylase)という酵素がふくまれている。 さて、例えば、過酸化水素水(H<sub>2</sub>O<sub>2</sub>)に二酸化マンガン(MnO<sub>2</sub>)を加えると、二酸化マンガンが触媒として作用し、水(H<sub>2</sub>O)と酸素(O<sub>2</sub>)が発生するが、 同様に、過酸化水素水に肝臓の細胞を加えると水と酸素が発生するのだが、この理由は細胞内に含まれる'''カタラーゼ'''(catalase)と呼ばれる酵素が触媒として作用して、過酸化水素を分解して水と酸素が発生するからである。 細胞外で働く酵素もある。 体外から摂取したデンプン(starch)やタンパク質(protein)は、そのままでは大きすぎて小腸の細胞に吸収できないため、 各消化器官から分泌される消化酵素によって、吸収しやすくなるように分解される。 デンプン(starch)は、唾液(だえき、saliva)に含まれるアミラーゼ(amylase)によって、マルトース(maltose)に分解される。 タンパク質(protein)は、胃液に含まれるペプシン(pepsin)によってペプトン(peptone)に、すい臓から分泌されるトリプシン(trypsin)によってさらに小さなアミノ酸(amino acids)に分解される。トリプシンはpH8付近が最適pH(optimum pH)である。 ヒトが持っている酵素の種類は数千種類といわれている。 酵素が作用する相手の物質のことを'''基質'''(きしつ)という。酵素はそれぞれ反応する相手の物質が決まっており、これを'''基質特異性'''という。二酸化マンガンや白金などの無機物質では、基質特異性は見られない。基質特異性の正体は、酵素を構成しているタンパク質の立体構造によるものである。酵素の各部のうち、その酵素が基質と結合する部位のことを'''活性部位'''あるいは'''活性中心'''という。酵素は活性部位で基質と結合する。 酵素は、'''酵素-基質複合体'''(こうそ-きしつ ふくごうたい)をつくって、基質に触媒としての働きをする。 [[File:酵素基質複合体 模式図.svg|thumb|600px|center|酵素基質複合体の模式図]] このように酵素は細胞内や細胞外で作用することにより、生命現象を維持している。 多くの酵素は、常温の付近で働く。 また、70℃程度以上の湯などで高温で熱してしまった酵素は、触媒の働きを失ってしまう。高温で働きを失った酵素を低温に冷ましても、もう触媒の働きは戻らない。このように、酵素が触媒の働きを失ってしまい戻らないことを'''失活'''(しっかつ)という。 これは、酵素のタンパク質が高温によって乱され、タンパク質の構造が崩れてしまったからである。酵素に限らず、タマゴや肉なども、高温で熱してしまうと、冷ましても常温にしても、もう働きは復活しない。この理由も、タマゴや肉のタンパク質が崩れてしまったからである。このようにタンパク質が熱で変わってしまうことを'''熱変性'''(ねつへんせい)という。 [[File:酵素の反応速度と温度.svg|thumb|300px|酵素の反応速度と温度]] 酵素が良く働く温度は、35℃~40℃くらいである場合が多い。酵素がもっとも良く温度のことを'''最適温度'''という。最適温度は酵素の種類ごとに違う。常温付近で、やや高めの温度が最適温度である。 いっぽう酸化マンガンなどの無機触媒では高温のほど反応速度が強く、無機触媒では最適温度は見られない。 酵素は、特定のpH(ペーハー、ピーエイチ)で良く働く。このpHのことを'''最適pH'''という。 たとえば、だ液にふくまれる酵素アミラーゼの最適pHは7付近である。だ液のpHは7である。胃液で働くペプシンの最適pHは2である。(ペプシンは、タンパク質を分解する酵素。) このように、酵素の最適pHは、その酵素が多く含まれる器官のpHに近い場合が多い。 すい液にふくまれる酵素リパーゼの最適pHは9であり、すい液のpHもややアルカリ性である。(リパーゼは脂肪を分解する酵素。) 実験として酵素濃度を一定にして、温度を一定にして、基質濃度を変えて実験すると、つぎのような結果が得られる。 [[File:酵素の基質濃度と反応速度.svg|thumb|300px|left|酵素の基質濃度と反応速度]] ・基質濃度が低いとき、基質濃度に比例して反応速度が増える。 ・基質濃度が高い場合、酵素の数以上に基質があっても酵素-基質複合体ができすに効果がないので、基質濃度が低いときは、あまり反応速度は変わらず、反応速度はしだいに一定値になる。 [[File:酵素の基質濃度と反応速度 模式図.svg|thumb|400px|center|酵素の数以上に基質があっても、酵素と結合できないので、基質が分解されない。]] そのほか、活性部位に基質以外の物質が結合すると、基質が酵素に結合できなくなる場合がある。阻害物質が酵素の活性物質をめぐって基質と競争していると見なして、このような現象のことを競争的阻害という。 * やや発展 : 非競争的阻害 阻害物質が活性物質以外の場所に結合しても、その結果、活性部位の構造が変わってしまう場合があり、そのため酵素-基質の結合を阻害する場合もある。このような、活性部位以外への阻害物質の結合による阻害を、非競争的阻害という。 * 補酵素 ある種の酵素には、基質以外にも他の物質が必要な場合もある。このような酵素に協力している物質が有機物の場合で、その有機物が酵素に結合する場合、その有機物のことを補酵素(ほこうそ)という。補酵素は一般に低分子(=分子の大きさが小さい)であり、また酵素と分離しやすい。そのため半透膜(セロハンなど)を使って、補酵素を分離することができる。また、熱に対して、補酵素は、比較的、強い。 補酵素の代表的な例として、呼吸に関わる脱水素酵素の補酵素NAD<sup>+</sup>がある。脱水素酵素は、基質から水素を取り除く。NADとは「ニコチン・アミドアデニン・ジヌクレオチド」のこと。 脱水素酵素とNADは別の物質である。脱水素酵素とのNADという両方の物質があることで、NADが水素を受容できるようになるって、NADに水素水が結合しNADHに変わる。 酵素に協力している物質が金属または金属イオンなどで、有機物で無い場合もある。 * フィードバック調節 (執筆準備中) [[File:Catalase_Structure.png|thumb|right|320px|'''カタラーゼの構造''']] {{-}} == 光合成と呼吸 == === 光合成(同化) === 植物は光エネルギーにより、水と二酸化炭素から、グルコースを合成している。 これを'''光合成'''(photosynthesis)と呼ぶ。 :※ 「グルコ-ス」とは、ブドウ糖のこと。 :主に化学の分野では「グルコース」と言う。 :高校と大学の生物学では、化学などの用法にあわせてだろうか、「グルコース」という。 :なおグリコーゲンとグルコースとは別物。 :またなお、大学でも医学では、「ブドウ糖」(Grape sugar)と日本では言う。 光合成では、光合成の途中で光のエネルギーを使ってADPからATPを合成するが、光合成の後半の段階で植物はATPを分解してADPにして、植物はATPのエネルギーを使ってデンプンなどの有機物を合成している。 光合成を、化学式っぽく、まとめると、下記のようになる。 :<big>CO<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>O + 光エネルギー → 有機物 + O<sub>2</sub></big> ::※ 上記の化学式では係数は考慮してないので、必要に応じて適する係数を使うこと。 なお、光合成では一時的に葉緑体にデンプンが蓄えられるが、その後、デンプンがスクロース(ショ糖)などに分解されて維管束を通って、植物の各部位に運ばれ(「転流」という)、その各部位で消費されたり、またはデンプンに合成されて貯蔵されたりする。 ==== (※ 発展: )光合成の反応過程 ==== :※ 検定教科書ではコラム形式の発展的話題だが、多くの教科書会社の『生物基礎』教科書で採用されている話題であり、事実上は生物基礎の範囲内の話題になっている。 [[File:光合成のしくみ.svg|thumb|900px|光合成のしくみ<br />(※ くわしくは生物IIで説明する。)]] {{-}} [[ファイル:Thylakoid.png|thumb|450px|チラコイドは、葉緑体の中にある。]] 葉緑体の内部の構造には、'''チラコイド'''という膜状の構造と、'''ストロマ'''という無色の基質の構造がある。 チラコイドにある色素が光エネルギーを吸収する。この吸収のとき、特定の波長の光を吸収している。赤や青の光が葉緑体に吸収される。緑色の光は吸収しない。吸収しなかった波長の光は反射される。植物の緑色は、反射した光の色であり、光合成には使用していない光である。 吸収した光エネルギーで、ATPの合成やNADPHの合成を行っている(「NAD」とは「ニコチン アデニン ジヌクレオチド」のことである。)。 次の(1)~(3)の反応がチラコイドで行われる。 (4)の反応がストロマで行われる。 (1):  光化学反応<br /> 光エネルギの吸収は、色素の'''クロロフィル'''で吸収する。クロロフィルは活性化し、活性クロロフィルになる。クロロフィルの存在する場所は、チラコイドの膜である。 この反応には、光が当然に必要である。温度の影響をほとんど受けない。 (2):  水の分解とNADPHの生成<br /> 1の反応に伴って、'''活性クロロフィル'''から電子が飛び出す。水が分解され、酸素が発生するとともに、できた水素Hが、さらに水素イオンH<sup>+</sup>と電子e<sup>-</sup> に分解される。発生された酸素O<sub>2</sub>は、以降の反応では利用せず、このため酸素O<sub>2</sub>が排出される。 この反応でのHの分解から発生したe<sup>-</sup> は、チラコイドの膜上で伝達され、最終的にHとともにNADP<sup>+</sup>という物質にe<sup>-</sup> は結合し、NADPHが生成する。 (3):  ATPの合成<br /> 2の反応に伴って、ADPがリン酸化されATPが合成される。 (4):  二酸化炭素の固定<br /> ストロマで、(3)の反応で作られたATPのエネルギーも利用して、いくつもの過程を経て、植物が気孔などを使って細胞外から取り入れた二酸化炭素から、有機物(グルコース C<sub>6</sub>H<sub>12</sub>O<sub>6</sub> )を合成する。 生成された物質の一部が同じ物質のもどる反応経路になっており、'''カルビン・ベンソン回路'''という。 このカルビン・ベンソン回路の過程で、(3)の反応で作られたATPを用いている。 このカルビン・ベンソン回路の反応は、温度の影響を受ける。 (※ 光合成について、くわしくは生物IIで説明する。) ---- === 呼吸(異化) === :(※ 2015年からの新課程では用語の言い換えがあり、「好気呼吸」→「呼吸」、「嫌気呼吸」→「発酵」「解糖」と言い換え。「好気呼吸」および「嫌気呼吸」の用語は教科書では用いられないことになっている。しかし、医学書などの専門書では、2015年を過ぎた現代でも、まだ「嫌気」などの用語が残っている。 :しかし、「嫌気呼吸」の用語は医学書などでは見当たらない。酸素がなくても生きられる種類の微生物について「嫌気性の微生物」などの用法が医学書などで見受けられる。検定教科書でも、「嫌気性の細菌」などの用法が見られる(数研出版の『生物基礎』など)。 :このため、本wikibooks本ページの教科書本文では、「好気呼吸」「嫌気呼吸」の用語は用いない。 そもそも「『呼吸』とは何か?、という問題があるが、検定教科書によって説明が違うので、呼吸とは何かについては、説明を後回しにしたい。 それよりも重要なこととして、 :「呼吸」では、酸素を使用する。 :「呼吸」では、エネルギー源としてグルコース(ブドウ糖)を分解するが、タンパク質や脂肪を分解する場合も「呼吸」という(※ 啓林館の教科書で、タンパク質の分解なども呼吸という見解)。 :「呼吸」の結果、その生体内でATPが合成される。 : われわれ人間の呼吸では、エネルギー源として、おもにグルコース(C<sub>6</sub>H<sub>12</sub>O<sub>6</sub>)などの炭水化物を分解することにより、生命活動に必要なエネルギーを取り出している。このグルコースの分解反応で酸素が必要なため、人間は呼吸で酸素を取り入れている。呼吸によるグルコースの分解で、グルコースに蓄えられていたエネルギーを取り出しており、さまざまな生態活動のエネルギーになっている。 木材などの燃焼と、生物の呼吸は、酸素を使用する点と、エネルギーが放出される点では似ているが、しかし燃焼が急激に熱と光を放出してすぐに終わってしまうのに比べて、呼吸では段階的に分解することでエネルギーを取り出してATPにエネルギーを蓄えるという点で、燃焼と呼吸には違いがある。 なお、呼吸におけるグルコースのように、呼吸につかわれてエネルギーを取り出す元になっている物質を「呼吸基質」(こきゅう きしつ)という(※ 啓林館の教科書で「呼吸基質」の紹介が見られるが、他社の教科書で見られず、あまり重要視されて無い用語である。)。 人間や魚類の呼吸は、細胞での酸素を用いる呼吸のためであり、このときの細胞での酸素を吸って二酸化炭素をはきだす行為を'''呼吸'''(こきゅう)という。 細胞での呼吸によるグルコースの分解は、おもにミトコンドリアで行われている。 そのため、ミトコンドリアを持たない微生物では、呼吸の仕組みが、人間や魚類などとは違っている。 == ※ 発展 == === 発酵 === :※ 検定教科書ではコラム形式の発展的話題だが、多くの教科書会社の『生物基礎』教科書で採用されている話題であり、事実上は生物基礎の範囲内の話題になっている。 {{コラム|発酵| 細菌やカビなどの一部の微生物には 、必ずしも酸素を使わなくてもグルコースなどの炭水化物を分解できる生物がいる。酵母菌や乳酸菌は、そのような菌である。酵母菌によるアルコール発酵や乳酸菌による乳酸発酵などの発酵は、これらの菌が生存のために栄養から必要なエネルギーを得るために化学反応を行った結果であり、酵母菌や乳酸菌の発酵では酸素を用いていない。 このような、酸素を使わないでグルコースなどの有機物を分解する活動は、'''発酵'''という。 酵母菌(こうぼきん)が、ワインなどのエタノールを作る醸造(じょうぞう)の反応も、発酵である。酵母菌は、グルコースを分解して、エタノールとともにATPを合成して,また二酸化炭素を排出している。ちなみに、パンを膨らませるイースト菌も、じつは酵母菌の一種である(※ 数研出版の教科書で「パンを膨らませる」「酵母」という言い方をしている)。(※ パンが膨らむのは、二酸化炭素によるもの。) :※ アルコール発酵の二酸化炭素の生成がそれほど重要か? と思うかもしれないが、2017年センター試験『生物』の追試験に出題されている。 化学式ぽく整理すると、係数を省略すればアルコール発酵の式は ::グルコース → エタノール + 二酸化炭素 + ATP のようになる。 酵母菌は、酸素がある状況下では呼吸を行うが、酸素が無い状況下で、グルコースのある状況では酵母菌は発酵を行い、発酵の結果、エタノールとともにATPを合成する。 また、乳酸菌(にゅうさんきん)が、チーズやヨーグルトなどを作る反応も、発酵である。乳酸菌も、グルコースを分解してチーズなどを作るとともに、ATPを合成している。 化学式ぽく整理すると、係数を省略すれば、乳酸発酵の式は ::グルコース → 乳酸 + ATP のようになる。 酵母菌も乳酸菌も、発酵の結果としてATPを合成している。 なお、酸素の無い環境のことを「嫌気」(けんき)または「嫌気的」(けんきてき)などという。いっぽう、酸素のある環境のことを「好気」(こうき)または「好気的」という。(センター試験などに出題されている。) 「嫌気」という言い方を使うなら、アルコール発酵は、グルコースなどの有機物が嫌気的な条件のもとでアルコールに分解されることが発酵である、と言える。 乳酸菌については、乳酸発酵は嫌気の状況下でも好気の状況下でも行われる。(※ 乳酸菌の好気での行動がそれほど重要か? と思うかもしれないが、2017年センター試験『生物』の追試験に出題されている。) :(※ 範囲外: )ネット上には、間違いとして、酸素があると死んでしまう菌のことを「嫌気的」な生物などと言ってる人もいるが、しかし、それは間違いである。酸素があると死んでしまう菌のことは、「偏性嫌気性」(へんせい けんきせい)という。いっぽう、酸素があっても生きられる菌であるが、酸素が無くても生きられる菌のことは「通性嫌気性」(つうせい けんきせい)という、 呼吸と比べると、発酵では、同じ量のグルコースを分解した際に得られるATPの量が発酵では少なく、発酵では得られるATPの量が(呼吸で得られるATPの量の)約20分の1の量である。 :(※ 範囲外:)酸素が少ない環境、あるいは酸素が無い環境でも、エネルギー源となる有機物があれば、発酵をする菌は生きられる。 :(※ 範囲外:)日常語において「発酵」(はっこう)と「腐敗」(ふはい)の区別は、ある微生物の呼吸の結果の生産物が、人間によって健康的な生産物の場合が「発酵」で、有害な生産物の場合が「腐敗」(ふはい)である。つまり「発酵」と「腐敗」の分類は、人間の都合による。 ※ 専門『生物』科目で細かいことを習う。 }} ==== アルコール発酵 ==== :※ 数研の教科書で、下記のような詳細を説明している。 酵母菌(こうぼきん)のアルコール発酵での化学反応式は、まずグルコースC<sub>6</sub>H<sub>12</sub>O<sub>6</sub>から'''ピルビン酸'''C<sub>3</sub>H<sub>4</sub>O<sub>3</sub>に分解される。この、グルコースからピルビン酸を得る過程を'''解糖系'''(かいとうけい、glycolysis)という。解糖系でATPが2分子つくられる。そしてピルビン酸が、無酸素の状態では酵素デカルボキシラーゼによってアセトアルデヒドCH<sub>3</sub>CHOによって分解され、そのアセトアルデヒドがNADHという物質によってエタノールC<sub>2</sub>H<sub>5</sub>OHへと変えられる。 :'''解糖系'''  <big>(C<sub>6</sub>H<sub>12</sub>O<sub>6</sub>) → 2C<sub>3</sub>H<sub>4</sub>O<sub>3</sub> + 4H + 2ATP</big> :それ以降  <big>2C<sub>3</sub>H<sub>4</sub>O<sub>3</sub> + 4H→2C<sub>2</sub>H<sub>5</sub>OH + 2CO<sub>2</sub> </big> まとめると、アルコール発酵の反応式は、次の式である。 : <big>C<sub>6</sub>H<sub>12</sub>O<sub>6</sub> → 2C<sub>2</sub>H<sub>5</sub>OH + 2CO<sub>2</sub> + 2ATP</big> グルコース1分子あたりATPが2分子できる。アルコール発酵のATPは解糖系に由来しており、それ以降はATPを産生してない。 解糖系による、グルコースからピルビン酸ができる反応は、嫌気生物に限らず、ほとんどすべての生物の呼吸で行われている。(※ そのため、ピルビン酸は呼吸の学習における重要物質である。) ==== 乳酸発酵 ==== :※ 数研の教科書で、下記のような詳細を説明している。 乳酸発酵(にゅうさんはっこう)では、まずグルコースC<sub>6</sub>H<sub>12</sub>O<sub>6</sub>が解糖系によって、ピルビン酸へと分解され、このときATPが2分子できる。そしてピルビン酸がNADHによって乳酸:C<sub>3</sub>H<sub>6</sub>O<sub>3</sub>に変えられる。 : <big>C<sub>6</sub>H<sub>12</sub>O<sub>6</sub> → 2C<sub>3</sub>H<sub>6</sub>O<sub>3</sub> + 2ATP</big> ==== ※ 範囲外 :酢酸発酵 ==== :※ 『生物基礎』科目では酢酸発酵を扱わない。 酢酸菌(さくさんきん)は、 酸素O<sub>2</sub>を用いて、エタノールを酢酸CH<sub>3</sub>COOH に変える。 : <big>C<sub>2</sub>H<sub>5</sub>OH + O<sub>2</sub> → CH<sub>3</sub>COOH + H<sub>2</sub>O</big> '''酢酸発酵では酸素を用いる'''ため、一般的な無酸素の発酵とは区別して、酸化発酵とよぶ。 酢酸発酵のとき、酢酸のほかに水ができる。 == 発展:呼吸の仕組み == :※ 検定教科書ではコラム形式の発展的話題だが、多くの教科書会社の『生物基礎』教科書で採用されている話題であり、事実上は生物基礎の範囲内の話題になっている。 :『生物基礎』の検定教科書では下記ほど細かくなく、下記は旧『生物I』用のものであるが、いちいち書き直すのがメンドウなので、そのまま掲載。なので高校生は、高校1年の段階では、下記内容の暗記の必要は無い。 [[ファイル:Ja-CellRespiration.svg|thumb|700px|right|解糖系とクエン酸回路。]] 呼吸は細胞質基質とミトコンドリアで起こる。とくにミトコンドリアを中心に、呼吸によって多くのATPが合成される。 * 解糖系 1分子のグルコースが、2分子のピルビン酸(C<sub>3</sub>H<sub>4</sub>O<sub>3</sub>)にまで分解される。この反応は細胞質基質で行われる。酵素を必要としない。ATPを2分子、生成する。反応の途中でATPを2分子消費するが、4分子のATPを生成するので、差し引き2分子のATPを生成する。 グルコースは、まずATP2分子によってリン酸化されフルクトース二リン酸(C<sub>6</sub>化合物)になる。 フルクトース二リン酸が二分して、グリセルアルデヒドリン酸(C<sub>3</sub>化合物)の二分子ができる。 グリセルアルデヒドリン酸が、いくつかの反応を経て、ピルビン酸になる。この間の反応で、電子e<sup>-</sup>とプロトンH<sup>+</sup>が生じて、補酵素NADに渡されNADHになる。ここで生じたNADHはミトコンドリアに入り、あとの電子伝達系で利用される。また、ATPが4分子できる。よって、差し引きグルコース1分子につき、2分子ATPが、解糖系で生じる。 * クエン酸回路 ピルビン酸が、ミトコンドリア内に入り、ミトコンドリアのマトリックスという内膜にある酵素で、ピルビン酸がコエンザイムA(CoA)と結合してアセチルCoA(活性酢酸)というC2化合物になり、段階的に分解される。二酸化炭素が、ピルビン酸がアセチルCoAになる際に生じる。 アセチルCoA以降の反応図は回路上であって、回路のはじめにクエン酸(citric acid)が生じることから、'''クエン酸回路'''(Citric acid cycle)という。 :クエン酸(C6)→ケトグルタル酸(C5)→コハク酸(C4)→フマル酸(C4)→リンゴ酸(C4)→オキサロ酢酸(C4)→クエン酸 と変化していく。(「C6」とはC6化合物のこと。C5とはC5化合物のこと。C4も同様にC4化合物のこと。) このクエン酸回路の過程でATPが2分子できる。また、電子が放出される。 C2化合物のアセチルCoAがC6化合物のクエン酸に変化する際、クエン際回路の最後のオキサロ酢酸(C4化合物)と化合するので、炭素の収支が合う。クエン酸回路では、脱炭酸酵素や脱水素酵素の働きで、クエン酸は変化していく。 クエン酸回路で、コハク酸(succinate)からフマル酸になる際に発生する水素は、補酵素FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)が受け取り、FADH<sub>2</sub>になる。 コハク酸以外での脱水素反応では、NADが水素を受け取っている。(「NAD」とは「ニコチン アデニン ジヌクレオチド」のことである。) * 電子伝達系(Electron transport chain) ミトコンドリアの内膜に'''シトクロム'''(cytochrome)というタンパク質がいくつもあり、このシトクロムは電子を受け渡しできる。解糖系やクエン酸回路で生じたNADHやFADH2から、電子e<sup>-</sup>と水素イオンH<sup>+</sup>が分離し、電子はシトクロムに渡される。そしてシトクロムどうしで電子を受け渡す。このとき、H<sup>+</sup>が、いったんマトリックスから膜間にくみ出され、それから水素イオンの濃度勾配に従ってATP合成酵素を通ってマトリックス側に戻る。このH<sup>+</sup>が'''ATP合成酵素'''を通る際のエネルギーを利用して、ADPからATPが生成される。最終的に生成するATPの数は、グルコース1分子あたりATPを最大で34分子を生じる(生物種によって生成数が異なる)。 これらの反応ではNADHなどが酸化される反応が元になってATPを生成しているので、一連の反応を'''酸化的リン酸化'''(oxidative phosphorylation)という。シトクロムのことをチトクロームともいう。 電子e<sup>-</sup>は、最終的に酸素原子に渡され、酸化酵素の働きで水素イオンと反応し水になる。この水の生成反応のときの反応エネルギーを用いて、マトリックスの水素が膜間へと運ばれており、さきほど述べたようにATPが合成されている。 呼吸でのATPの収支は、グルコース1分子あたり解糖系で2分子のATP、クエン酸回路で2分子ATP、電子伝達系で最大34分子ATPであり、合計で最大38分子のATPになる。 [[Category:高等学校教育|生1さいほう]] [[Category:生物学|高1さいほう]]
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2022-07-06T22:48:20Z
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制御と振動の数学
制御>制御序論>はじめに
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制御>制御序論>はじめに 第一類
制御>制御序論>[[制御システム/はじめに|はじめに]] *[[制御と振動の数学/第一類|第一類]] [[カテゴリ:工学]] [[カテゴリ:数学]]
2018-12-12T11:58:24Z
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制御と振動の数学/第一類
未解決残課題
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演算子法の誕生 Laplace 変換 Laplace 変換による解の吟味 複素数値関数の Laplace 変換 連立微分方程式の解法 付録・部分分数展開 付録・Hurwitz の定理 未解決残課題 制御と振動の数学/第一類/Laplace 変換/Laplace 変換の定義とその基本的性質/合成積の Laplace 変換/例19(iii) 制御と振動の数学/第一類/Laplace 変換による解の吟味/初期値問題の解の一意性/一般の 2 階の微分方程式の場合/例73 制御と振動の数学/第一類/Laplace 変換による解の吟味/微分不等式と比較定理/例75 制御と振動の数学/第一類/複素数値関数の Laplace 変換/Laplace 変換/微分方程式の解法/例94 制御と振動の数学/第一類/複素数値関数の Laplace 変換/解の漸近的挙動(安定論)/安定の定義と定理/式4.13b 制御と振動の数学/第一類/複素数値関数の Laplace 変換/解の漸近的挙動(安定論)/Hurwitzの定理/例99 制御と振動の数学/第一類/連立微分方程式の解法/例題による考察/同次微分方程式/例107 制御と振動の数学/第一類/連立微分方程式の解法/連立微分方程式の解法/ − 1 の原像/ − 1 の原像/例116
*[[制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生|演算子法の誕生]] *[[制御と振動の数学/第一類/Laplace 変換|Laplace 変換]] *[[制御と振動の数学/第一類/Laplace 変換による解の吟味|Laplace 変換による解の吟味]] *[[制御と振動の数学/第一類/複素数値関数の Laplace 変換|複素数値関数の Laplace 変換]] *[[制御と振動の数学/第一類/連立微分方程式の解法|連立微分方程式の解法]] *[[制御と振動の数学/第一類/付録・部分分数展開|付録・部分分数展開]] *[[制御と振動の数学/第一類/付録・Hurwitz の定理|付録・Hurwitz の定理]] 未解決残課題 *[[制御と振動の数学/第一類/Laplace 変換/Laplace 変換の定義とその基本的性質/合成積の Laplace 変換#ex:19|制御と振動の数学/第一類/Laplace 変換/Laplace 変換の定義とその基本的性質/合成積の Laplace 変換/例19(iii)]] *[[制御と振動の数学/第一類/Laplace 変換による解の吟味/初期値問題の解の一意性/一般の 2 階の微分方程式の場合#ex:73|制御と振動の数学/第一類/Laplace 変換による解の吟味/初期値問題の解の一意性/一般の 2 階の微分方程式の場合/例73]] *[[制御と振動の数学/第一類/Laplace 変換による解の吟味/微分不等式と比較定理#ex:75|制御と振動の数学/第一類/Laplace 変換による解の吟味/微分不等式と比較定理/例75]] *[[制御と振動の数学/第一類/複素数値関数の Laplace 変換/Laplace 変換/微分方程式の解法#ex:94|制御と振動の数学/第一類/複素数値関数の Laplace 変換/Laplace 変換/微分方程式の解法/例94]] *[[制御と振動の数学/第一類/複素数値関数の Laplace 変換/解の漸近的挙動(安定論)/安定の定義と定理#eq:4.13b|制御と振動の数学/第一類/複素数値関数の Laplace 変換/解の漸近的挙動(安定論)/安定の定義と定理/式4.13b]] *[[制御と振動の数学/第一類/複素数値関数の Laplace 変換/解の漸近的挙動(安定論)/Hurwitzの定理#ex:99|制御と振動の数学/第一類/複素数値関数の Laplace 変換/解の漸近的挙動(安定論)/Hurwitzの定理/例99]] *[[制御と振動の数学/第一類/連立微分方程式の解法/例題による考察/同次微分方程式#ex:107|制御と振動の数学/第一類/連立微分方程式の解法/例題による考察/同次微分方程式/例107]] *[[制御と振動の数学/第一類/連立微分方程式の解法/連立微分方程式の解法/(sI-A)^-1の原像/(sI-A)^-1の原像#ex:116|制御と振動の数学/第一類/連立微分方程式の解法/連立微分方程式の解法/<math>(sI-A)^{-1}</math>の原像/<math>(sI-A)^{-1}</math>の原像/例116]] [[カテゴリ:数学]]
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2022-11-25T10:35:13Z
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制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生
演算子法は技術者の創った数学である. その創始者 Oliver Heaviside(1850 - 1925) は英国の電気数学者であった. 彼は微分方程式やある種の関数方程式の簡便な機械的解法を求めて,演算子法を考案した. Heaviside がどこから着想を得たかを私は知らない. こうでもあったかと想像をたくましくしたのがこの章である. したがって,これは演算子法誕生の歴史というよりは,歴史小説である.あるいは推理小説といった方が適切かもしれない.
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演算子法は技術者の創った数学である. その創始者 Oliver Heaviside(1850 - 1925) は英国の電気数学者であった. 彼は微分方程式やある種の関数方程式の簡便な機械的解法を求めて,演算子法を考案した. Heaviside がどこから着想を得たかを私は知らない. こうでもあったかと想像をたくましくしたのがこの章である. したがって,これは演算子法誕生の歴史というよりは,歴史小説である.あるいは推理小説といった方が適切かもしれない. ある思いつき f = e a t の場合 演算子法の完成 演算子法の合理化 Mikusiński の演算子法 ↑ ↑
[[w:%E6%BC%94%E7%AE%97%E5%AD%90%E6%B3%95|演算子法]]は技術者の創った数学である. その創始者 [[w:%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%98%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%89|Oliver Heaviside(1850 - 1925)]] は英国の電気数学者<ref>[[w:%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%81%AE%E6%96%B9%E7%A8%8B%E5%BC%8F|マクスウェルの方程式]]を今日我々が知る形に整理したのは Heaviside である.</ref>であった. 彼は微分方程式やある種の関数方程式の簡便な機械的解法を求めて,演算子法を考案した. Heaviside がどこから着想を得たかを私は知らない. こうでもあったかと想像をたくましくしたのがこの章である<ref>いわゆる「山辺の方法」を含む.この「山辺」なる人物が誰なのかはよくわからない.</ref>. したがって,これは演算子法誕生の歴史というよりは,歴史小説である.あるいは推理小説といった方が適切かもしれない. *[[制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/ある思いつき|ある思いつき]] *[[制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/指数関数の場合|<math>f(t)=e^{at}</math> の場合]] *[[制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/演算子法の完成|演算子法の完成]] *[[制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/演算子法の合理化|演算子法の合理化]] *[[制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/Mikusiński の演算子法|Mikusiński の演算子法]] <references /> [[カテゴリ:微分方程式]]
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2022-11-23T17:01:26Z
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制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/ある思いつき
まず 1 階の微分方程式 を解くことを考えよう.ここに a {\displaystyle a} は定数とする.いま, とおくと,式(1.1)は, すなわち と書くことことができる.ここで p {\displaystyle p} を普通の数のように考えることができるものと仮定して, p + a {\displaystyle p+a} で割ると, となる.そこでなんらかの方法で割り算が実行できて,簡単に解が求まれば好都合である.しばらく厳密な論理性の追求はあとまわしにし, 正しい解が得られればよいと割り切って,自由奔放に考えていこう. 例1 {\displaystyle \quad } この場合, p {\displaystyle p} を用いて x {\displaystyle x} を表すと, となる. p {\displaystyle p} が微分であることを念頭において,小学校以来おなじみの割り算を筆算で実行しよう. t 2 t − 1 1 + p ) t 2 3 t t 2 2 t t t + 1 − 1 − 1 0 {\displaystyle {\begin{array}{lcl}&&t^{2}&t&-1\\\hline 1+p&)&t^{2}&3t&\\&&t^{2}&2t&\\\hline &&&t&\\&&&t&+1\\\hline &&&&-1\\&&&&-1\\\hline &&&&0\\\end{array}}} と割り切れ,商 を得る.上の割り算の手順は次の通りである.まず t 2 {\displaystyle t^{2}} を 1 {\displaystyle 1} で割ると t 2 {\displaystyle t^{2}} が立つ. そこで, t 2 {\displaystyle t^{2}} に 1 + p {\displaystyle 1+p} をかけて, と計算する. p {\displaystyle p} は微分だから、 p ⋅ t 2 = 2 t {\displaystyle p\cdot t^{2}=2t} .被除数 t 2 + 3 t {\displaystyle t^{2}+3t} から上式をを引くと, となる.次に t {\displaystyle t} を 1 {\displaystyle 1} で割ると t {\displaystyle t} が立つ.これに ( 1 + p ) {\displaystyle (1+p)} をかけ, t + 1 {\displaystyle t+1} を得る. t {\displaystyle t} からこれを引いて − 1 {\displaystyle -1} を得る. ⋯ {\displaystyle \cdots } という通常の手順に従えばよいのである. このようにして求めた商,式(1.3)が 式(1.2)の解である保証はない.それゆえ吟味が必要である. よって間違いなく,式(1.2)の解である.初期値は x ( 0 ) = − 1 {\displaystyle x(0)=-1} となっている. 例2 {\displaystyle \quad } を上の方法で解き,それが解であることを確かめよ. 解答例 {\displaystyle \quad } t 3 − 12 t + 36 1 + 3 p + 2 p 2 ) t 3 + 9 t 2 t 3 + 9 t + 12 t − 12 t − 12 t − 36 + 36 + 36 0 {\displaystyle {\begin{array}{lcl}&&t^{3}&&-12t&+36\\\hline 1+3p+2p^{2}&)&t^{3}&+9t^{2}&\\&&t^{3}&+9t&+12t\\\hline &&&&-12t\\&&&&-12t&-36\\\hline &&&&&+36\\&&&&&+36\\\hline &&&&&0\\\end{array}}} ( t 3 + 9 t 2 ) / ( 1 + 3 p + 2 p 2 ) = t 3 ⋯ ⋯ − 12 t {\displaystyle (t^{3}+9t^{2})/(1+3p+2p^{2})=t^{3}\cdots \cdots -12t} − 12 t / ( 1 + 3 p + 2 p 2 ) = − 12 t ⋯ ⋯ 36 {\displaystyle -12t/(1+3p+2p^{2})=-12t\cdots \cdots 36} 36 / ( 1 + 3 p + 2 p 2 ) = 36 ⋯ ⋯ 0 {\displaystyle 36/(1+3p+2p^{2})=36\cdots \cdots 0} ∴ x = t 3 − 12 t + 36 {\displaystyle \therefore x=t^{3}-12t+36} 次に検算を実施する。 x = t 3 − 12 t + 36 {\displaystyle x=t^{3}-12t+36} のとき、 すなわち x = t 3 − 12 t + 36 {\displaystyle x=t^{3}-12t+36} は 2 d 2 x d t 2 + 3 d x d t + x = t 3 + 9 t 2 {\displaystyle 2{\frac {d^{2}x}{dt^{2}}}+3{\frac {dx}{dt}}+x=t^{3}+9t^{2}} の解のひとつ. 例1では,除数が 1 + p {\displaystyle 1+p} であった.定数 1 {\displaystyle 1} があるため,割り算が簡単になった. そこで定数項の欠けた次の例を考えてみよう. 例3 {\displaystyle \quad } p = d d t , p 2 = d 2 d t 2 {\displaystyle p={\frac {d}{dt}},\quad p^{2}={\frac {d^{2}}{dt^{2}}}} とおけば, となるから,割り算を実行すると, t 3 3 t 2 2 − t p + p 2 ) t 2 3 t t 2 2 t t t 1 − 1 − 1 0 {\displaystyle {\begin{array}{lcl}&&{\frac {t^{3}}{3}}&{\frac {t^{2}}{2}}&-t\\\hline p+p^{2}&)&t^{2}&3t&\\&&t^{2}&2t&\\\hline &&&t&\\&&&t&\ 1\\\hline &&&&-1\\&&&&-1\\\hline &&&&\ \ 0\\\end{array}}} ( t 2 + 3 t ) / ( p + p 2 ) = t 3 3 ⋯ ⋯ t {\displaystyle (t^{2}+3t)/(p+p^{2})={\frac {t^{3}}{3}}\cdots \cdots t} t / ( p + p 2 ) = t 2 2 ⋯ ⋯ − 1 {\displaystyle t/(p+p^{2})={\frac 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{\displaystyle {\begin{array}{lcl}&&{\frac {t^{3}}{3}}&{\frac {t^{2}}{2}}&-t&\ \ 1\\\hline 1+p&)&{\frac {t^{3}}{3}}&{\frac {3t^{2}}{2}}&&\\&&t^{2}&t^{2}&&\\\hline &&&{\frac {t^{2}}{2}}&&\\&&&{\frac {t^{2}}{2}}&\ \ t&\\\hline &&&&-t&\\&&&&-t&-1\\\hline &&&&&\ \ \ 1\\&&&&&\ \ \ 1\\\hline &&&&&\ \ \ 0\end{array}}} ( t 3 3 + 3 t 2 2 ) / ( 1 + p ) = t 3 3 ⋯ ⋯ t 2 2 {\displaystyle \left({\frac {t^{3}}{3}}+{\frac {3t^{2}}{2}}\right)/(1+p)={\frac {t^{3}}{3}}\cdots \cdots {\frac {t^{2}}{2}}} ( t 2 2 ) / ( 1 + p ) = t 2 2 ⋯ ⋯ − t {\displaystyle \left({\frac {t^{2}}{2}}\right)/(1+p)={\frac {t^{2}}{2}}\cdots \cdots -t} − t / ( 1 + p ) = − t ⋯ ⋯ 1 {\displaystyle -t/(1+p)=-t\cdots \cdots 1} 1 / ( 1 + p ) = 1 ⋯ ⋯ 0 {\displaystyle 1/(1+p)=1\cdots \cdots 0} よって, を得る.これは前に述べたものと定数 + 1 {\displaystyle +1} だけ異なっているが,やはり解であることは験算するまでもなく明らかである. ただし,初期値は x ( 0 ) = 1 , x ′ ( 0 ) = − 1 {\displaystyle x(0)=1,x'(0)=-1} である.定数の差は不定積分に伴う積分定数のとり方に依存する.同じ解が欲しければ, としておけばよい.積分定数の選び方によって解が異なるということは,欠陥ではなく長所である.色々と異なる初期値を持った解が得られることを示唆しているからである. 我々の前途に光明を投じてくれているのである. 例4 {\displaystyle \quad } を上述の方法で解いたとき,常に割り切れ,その積が解となっていることを示せ.
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==§1== まず 1 階の微分方程式 {{制御と振動の数学/equation|<math>\frac{dx}{dt} + ax = f(t)</math>}} を解くことを考えよう.ここに <math>a</math> は定数とする.いま, {{制御と振動の数学/equation|<math>p := \frac{d}{dt}</math><ref> 記号 <math>:=</math> は左辺を右辺で定義することを表す. </ref> |tag=(1.1)|label=eq:1.1}} とおくと,式[[制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/ある思いつき#eq1.1|(1.1)]]は, {{制御と振動の数学/equation|<math>px + ax = f(t)</math>}} すなわち {{制御と振動の数学/equation|<math>(p + a)x = f(t)</math>}} と書くことことができる.ここで <math>p</math> を普通の数のように考えることができるものと仮定して,<math>p + a</math> で割ると, {{制御と振動の数学/equation|<math>x = \frac{f(t)}{p + a}</math>}} となる.そこでなんらかの方法で割り算が実行できて,簡単に解が求まれば好都合である.しばらく厳密な論理性の追求はあとまわしにし, 正しい解が得られればよいと割り切って,自由奔放に考えていこう. <!-- ex:001:start--> <div id="ex:1"> <strong>例1</strong><math>\quad</math> {{制御と振動の数学/equation|<math>\frac{dx}{dt} + x = t^2 + 3t</math>|tag=(1.2)|label=eq:1.2}} <!-- ex:001:end--> この場合,<math>p</math> を用いて <math>x</math> を表すと, {{制御と振動の数学/equation|<math>x = \frac{t^2 + 3t}{p + 1}</math>}} となる.<math>p</math> が微分であることを念頭において,小学校以来おなじみの割り算を筆算で実行しよう. <math> \begin{array}{lcl} & & t^2 & t & -1 \\ \hline 1 + p & ) & t^2 & 3t & \\ & & t^2 & 2t & \\ \hline & & & t & \\ & & & t & +1 \\ \hline & & & & -1 \\ & & & & -1 \\ \hline & & & & 0 \\ \end{array} </math> {{制御と振動の数学/equation|<math>(t^2 + 3t) / (1 + p) = (t^2 + t -1) \cdots\cdots 0</math>}} と割り切れ,商 {{制御と振動の数学/equation|<math>x = t^2 + t -1</math>|tag=(1.3)|label=eq:1.3}} を得る.上の割り算の手順は次の通りである.まず <math>t^2</math> を <math>1</math> で割ると <math>t^2</math> が立つ. そこで,<math>t^2</math> に <math>1 + p</math> をかけて, {{制御と振動の数学/equation|<math>(1 + p)t^2 = t^2 + 2t</math>}} と計算する.<math>p</math> は微分だから、<math>p\cdot t^2 = 2t</math>.被除数 <math>t^2 + 3t</math> から上式をを引くと, {{制御と振動の数学/equation|<math>(t^2 + 3t) - (t^2 + 2t) = t</math>}} となる.次に <math>t</math> を <math>1</math> で割ると <math>t</math> が立つ.これに <math>(1 + p)</math> をかけ,<math>t + 1</math> を得る. <math>t</math> からこれを引いて <math>-1</math> を得る.<math>\cdots</math> という通常の手順に従えばよいのである. このようにして求めた商,式[[制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/ある思いつき#eq1.3|(1.3)]]が 式[[制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/ある思いつき#eq1.2|(1.2)]]の解である保証はない.それゆえ吟味が必要である. {{制御と振動の数学/equation|<math>x = t^2 + t - 1</math>}} {{制御と振動の数学/equation|<math>x' = 2t + 1</math>}} {{制御と振動の数学/equation|<math>x + x'= t^2 + 3t</math>}} よって間違いなく,式[[制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/ある思いつき#eq1.2|(1.2)]]の解である.初期値は <math>x(0) = -1</math> となっている. <!-- ex:002:start--> <div id="ex:2"> <strong>例2</strong><math>\quad</math> {{制御と振動の数学/equation|<math>2\frac{d^2 x}{dt^2} + 3\frac{dx}{dt} + x = t^3 + 9t^2</math>}} を上の方法で解き,それが解であることを確かめよ. <strong>解答例</strong><math>\quad</math> <math> \begin{array}{lcl} & & t^3 & & -12t & +36 \\ \hline 1 + 3p + 2p^2 & ) & t^3 & +9t^2 & \\ & & t^3 & +9t & +12t \\ \hline & & & & -12t \\ & & & & -12t & -36 \\ \hline & & & & & +36 \\ & & & & & +36 \\ \hline & & & & & 0 \\ \end{array} </math> <math>(t^3 + 9t^2) / (1 + 3p + 2p^2) = t^3 \cdots\cdots -12t</math> <math>-12t / (1 + 3p + 2p^2) = -12t \cdots\cdots 36</math> <math>36 / (1 + 3p + 2p^2) = 36 \cdots\cdots 0</math> <math>\therefore x = t^3 -12t + 36</math><br /><br /> 次に検算を実施する。<br /> <math>x = t^3 - 12t + 36</math> のとき、<br /> :<math>x' = 3t^2 -12</math> :<math>x'' = 6t</math> :<math>\therefore 2x'' + 3x' + x = 2\cdot 6t + 3(3t^2 - 12) + (t^3 - 12t + 36)</math> :<math>= {\cancel{12t}} + 9t^2 {\cancel{-36}} + t^3 {\cancel{-12t}} +{\cancel{36}}</math> :<math>= t^3 + 9t^2</math> すなわち <math>x = t^3 -12t + 36</math><br />は<br /><math>2\frac{d^2 x}{dt^2} + 3\frac{dx}{dt} + x = t^3 + 9t^2</math><br /> の解のひとつ. <!-- ex:002:end --> ==§2== [[制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/ある思いつき#ex:1|例1]]では,除数が <math>1 + p</math> であった.定数 <math>1</math> があるため,割り算が簡単になった. そこで定数項の欠けた次の例を考えてみよう. <!-- ex:003:start--> <div id="ex:3"> <strong>例3</strong><math>\quad</math> {{制御と振動の数学/equation|<math>\frac{d^2x}{dt^2} + \frac{dx}{dt} = t^2 + 3t</math>}} <!-- ex:003:end--> <math>p = \frac{d}{dt}, \quad p^2 = \frac{d^2}{dt^2}</math> とおけば, {{制御と振動の数学/equation|<math>(p^2 + p)x = t^2 + 3t</math>}} となるから,割り算を実行すると, <math> \begin{array}{lcl} & & \frac{t^3}{3} & \frac{t^2}{2} & -t \\ \hline p + p^2 & ) & t^2 & 3t & \\ & & t^2 & 2t & \\ \hline & & & t & \\ & & & t & \ 1 \\ \hline & & & & -1 \\ & & & & -1 \\ \hline & & & & \ \ 0 \\ \end{array} </math> <math>(t^2 + 3t) / (p + p^2) = \frac{t^3}{3} \cdots\cdots t</math> <math>t / (p + p^2) = \frac{t^2}{2} \cdots\cdots -1</math> <math>-1 / (p + p^2) = -t \cdots\cdots 0</math> <math>x = \frac{t^3}{3} + \frac{t^2}{2} - t</math> となる.手順は次のとおりである.<math>t^2</math> を <math>p</math> で割るというのは,<math>p</math> を掛けると <math>t^2</math> となる式を求めるということであるから, <math>p</math> が微分演算であることを思い出すと,答えとして <math>\frac{t^3}{3}</math> を得る.次に, {{制御と振動の数学/equation|<math>(p + p^2)\frac{t^3}{3} = t^2 + 2t</math>}} を被除数 <math>t^2 + 3t</math> から引き,<math>t</math> を得る.<math>t</math> を <math>p</math> で割ると,上と同様に考えて,<math>\frac{t^2}{2}</math> となる. 以下同様. <strong>験算</strong> {{制御と振動の数学/equation|<math>x = \frac{t^3}{3} + \frac{t^2}{2} - t</math>}} {{制御と振動の数学/equation|<math>x' = t^2 + t - 1</math>}} {{制御と振動の数学/equation|<math>x'' = 2t + 1</math>}} {{制御と振動の数学/equation|<math>x' + x'' = t^2 + 3t</math>}} 今度もうまくいった.初期値は <math>x(0) = 0, x'(0) = -1</math> である. ==§3== [[制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/ある思いつき#ex:3|例3]]の計算の中で,<math>p</math> で割るという演算を抜き出してみると, {{制御と振動の数学/equation|<math>\frac{1}{p}\cdot t^2 = \frac{t^3}{3}</math>}} {{制御と振動の数学/equation|<math>\frac{1}{p}\cdot t = \frac{t^2}{2}</math>}} {{制御と振動の数学/equation|<math>\cdots\cdots</math>}} である.これらの事実から次のことが分かる.<math>p</math> で割るということは,積分する(あるいは原始関数を求める)ということにほかならぬ.つまり, {{制御と振動の数学/equation|<math>\frac{1}{p} := \int dt</math>|tag=(1.4)|label=eq:1.4}} を意味することが分かる. このことを念頭において,[[制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/ある思いつき#ex:3|例3]]の計算を次のように少し修正してみよう. 積分を先にすませておくのである. {{制御と振動の数学/equation|<math>x = \frac{t^2 + 3t}{p + p^2} = \frac{1}{1 + p} \left\{ \frac{1}{p} (t^2 + 3t) \right\}</math>}} {{制御と振動の数学/equation|<math>= \frac{1}{1 + p} \cdot \left\{ \frac{t^3}{3} + \frac{3t^2}{2} \right\}</math>}} と変形しておいてから,割り算を実行する. <math> \begin{array}{lcl} & & \frac{t^3}{3} & \frac{t^2}{2} & -t & \ \ 1 \\ \hline 1 + p & ) & \frac{t^3}{3} & \frac{3t^2}{2} & & \\ & & t^2 & t^2 & & \\ \hline & & & \frac{t^2}{2} & & \\ & & & \frac{t^2}{2} & \ \ t & \\ \hline & & & & -t & \\ & & & & -t & -1 \\ \hline & & & & & \ \ \ 1 \\ & & & & & \ \ \ 1 \\ \hline & & & & & \ \ \ 0 \end{array} </math> <math>\left( \frac{t^3}{3} + \frac{3t^2}{2} \right) / (1 + p) = \frac{t^3}{3} \cdots\cdots \frac{t^2}{2}</math> <math>\left( \frac{t^2}{2} \right) / (1 + p) = \frac{t^2}{2} \cdots\cdots -t</math> <math>-t / (1 + p) = -t \cdots\cdots 1</math> <math>1 / (1 + p) = 1 \cdots\cdots 0</math> よって, {{制御と振動の数学/equation|<math>x = \frac{t^3}{3} + \frac{t^2}{2} - t + 1</math>}} を得る.これは[[制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/ある思いつき#ex:3|前に述べたもの]]と定数 <math>+1</math> だけ異なっているが,やはり解であることは験算するまでもなく明らかである. ただし,初期値は <math>x(0) = 1, x'(0) = -1</math> である.定数の差は不定積分に伴う積分定数のとり方に依存する.同じ解が欲しければ, {{制御と振動の数学/equation|<math>\frac{1}{p}(t^2 + 3t) = \frac{t^3}{3} + \frac{3t^2}{2} - 1</math>}} としておけばよい.積分定数の選び方によって解が異なるということは,欠陥ではなく長所である.色々と異なる初期値を持った解が得られることを示唆しているからである. 我々の前途に光明を投じてくれているのである. <!-- ex:004:start--> <div id="ex4"> <strong>例4</strong><math>\quad</math> {{制御と振動の数学/equation|<math>a_n\frac{d^n x}{dt^n} + a_{n-1}\frac{d^{n-1} x}{dt^{n-1}} + a_{n-2}\frac{d^{n-2} x}{dt^{n-2}} + \cdots + a_0x = f(t)</math>}} を上述の方法で解いたとき,常に割り切れ,その積が解となっていることを示せ. <!-- ex:004:end--> <references /> [[カテゴリ:微分方程式]]
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2022-11-23T17:00:21Z
[ "テンプレート:制御と振動の数学/equation" ]
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高等学校 物理基礎
合成速度と相対速度 力学 (2024-03-10) 以下は旧課程版(力学の未完成部分)。 熱 (2015-07-10) 電気と磁気 (2016-01-23) 物理には、専門用語以外にも独特の言い回しが存在する。慣れないうちは分かりにくいかもしれないので、ここで補足しておく。 「質量は無視できる」という意味。「軽い糸」「軽い動滑車」などのように言う。 「摩擦は無視できる」の意味。「なめらかな面」「なめらかな滑車」など。 「摩擦がある」の意味。「粗い面」などのように用いる。
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{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|pagename=物理基礎|frame=1|small=1}} :* 物理の教科書へのリンク → [[高等学校 物理]] ---- == 1編 物体の運動とエネルギー == === 1章 直線運動の世界 === [[高等学校 物理基礎/合成速度と相対速度|合成速度と相対速度]] ==力学== [[高等学校物理基礎/力学|力学]]{{進捗|75%|2024-03-10}} 以下は旧課程版([[高等学校物理基礎/力学|力学]]の未完成部分)。 #[[高等学校物理/物理I/運動とエネルギー/運動の法則|運動の法則]]{{進捗|50%|2015-07-10}} #[[高等学校物理/物理I/運動とエネルギー/仕事とエネルギー|仕事と力学的エネルギー]]{{進捗|50%|2015-07-18}} ==熱== [[高等学校物理基礎/熱|熱]]{{進捗|25%|2015-07-10}} ==波動== #[[高等学校物理基礎/波動|波]] #[[高等学校物理基礎/波動|音]] ==電磁気== [[高等学校物理基礎/電気と磁気|電気と磁気]]{{進捗|75%|2016-01-23}} ==エネルギー== #[[高等学校 物理基礎/エネルギー|エネルギー]] == 放射線 == #[[高等学校 物理基礎/放射線|放射線]] == 資料 == === 数学の知識 === *[[高等学校 物理基礎/物理のための数学|物理基礎のための数学]] === 物理定数 === {| class="wikitable" |+ 物理定数 |- ! 物理量 !! 概数値 !! 詳しい値 |- | 標準重力加速度 || 9.8 m/s<sup>2</sup> || 9.80665 m/s<sup>2</sup> |- | 絶対零度 || -273 ℃(=0 K) || -273.15 ℃ |- | 熱の仕事当量 || 4.19 J/cal || 4.18605 J/cal |- | アボガドロ定数 || 6.02×10<sup>23</sup> /mol || 6.02214179×10<sup>23</sup> /mol |- | 理想気体の体積(0℃, 1気圧) || 2.24×10<sup>-2</sup> m<sup>3</sup>/mol || 2.2413996×10<sup>-2</sup> m<sup>3</sup>/mol |- | 気体定数 || 8.31 J/(mol・K) || 8.314472 J/(mol・K) |- | 乾燥空気中の音の速さ(0℃) || 331.5 m/s || 331.4 5m/s |- | 真空中の光の速さ || 3.00×10<sup>8</sup> m/s || 2.99792458×10<sup>8</sup> m/s |- | 電気素量 || 1.60×10<sup>-19</sup> C|| 1.602176487×10<sup>-19</sup> C |- | 電子の質量 || 9.11×10<sup>-31</sup> kg|| 9.10938215×10<sup>-31</sup> kg |} === 物理独特の言い回し === 物理には、専門用語以外にも独特の言い回しが存在する。慣れないうちは分かりにくいかもしれないので、ここで補足しておく。 *軽い 「質量は無視できる」という意味。「軽い糸」「軽い動滑車」などのように言う。 *なめらか 「摩擦は無視できる」の意味。「なめらかな面」「なめらかな滑車」など。 *粗い 「摩擦がある」の意味。「粗い面」などのように用いる。 [[category:理科教育|こうとうかつこうふつりきそ]] [[category:高校理科|ふつりきそ]] [[category:物理基礎|*]]
2018-12-13T13:30:09Z
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[ "テンプレート:Pathnav", "テンプレート:進捗" ]
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高等学校物理基礎/力学
小学校・中学校・高等学校の学習>高等学校の学習>高等学校理科 物理基礎 直線上を物体が運動するとき,直線に沿って座標軸( x {\displaystyle x} 軸)をとることで物体の位置(英: position)を表せる。物体の位置変化を変位(英: displacement)といい,時刻 t 1 , t 2 ( t 1 < t 2 ) {\displaystyle t_{1},\ t_{2}\ (t_{1}<t_{2})} 〔単位:s(秒)〕における物体の位置がそれぞれ x 1 , x 2 {\displaystyle x_{1},\ x_{2}} 〔単位:m(メートル)〕であるとき,変位 Δ x {\displaystyle {\mathit {\Delta }}x} は であり。変位の大きさが2点間距離を表し,正負の符号が移動方向を表す。 物体が運動するとき, その移動距離を経過時間で割ったもの, すなわち単位時間あたりの移動距離を速さ(英: speed)という。速さにおいては向きを考えない。運動している物体の移動距離を s {\displaystyle s} , 経過時間を Δ t {\displaystyle {\mathit {\Delta }}t} とすると, 物体の速さ v {\displaystyle v} は次のように表される。 速さの単位は時間と距離の単位によって決まる。よく用いられるのは, m/s(メートル毎秒)である。また, 日常生活では距離の単位をkm(キロメートル), 時間の単位をh(時)とするkm/h(キロメートル毎時)もよく使われる。 速さが同じでも向きが異ならば異なる方向に進む。運動の様子を知るには速さだけでなく向きも考えねばならない。速さに向きの要素を加えたもの,すなわち単位時間あたりの変位を速度(英: velocity)という。たとえば、西へ走る40km/hの車Aと東へ走る40km/hの車Bは速さは等しいが、向きは反対である。このことを表すために正負の記号を利用する。つまり、西を正・東を負とするとAの速度は+40km/h, Bの速度は-40km/hと表記できる。 このように大きさと向きを持つ量をベクトル(英: vector, 独: Vektor)といい, その記号は v → {\displaystyle {\vec {v}}} と書く。ただし, 先ほどのように直線上(1次元)においては速度の値に±が書かれている場合には矢印を省略して単に v {\displaystyle v} と書いてもよい。逆に,速さのように大きさのみを持つ量をスカラー(英: scalar)という。 なお,平面(2次元)・空間(3次元)上の運動や高度な運動の表し方等は後程説明する。 時刻 t 1 {\displaystyle t_{1}} [s]における位置を x 1 {\displaystyle x_{1}} [m], 時刻 t 2 {\displaystyle t_{2}} [s]における位置を x 2 {\displaystyle x_{2}} [m](ただし t 1 < t 2 {\displaystyle t_{1}<t_{2}} )としたとき, 位置の変位は x 2 − x 1 = Δ x {\displaystyle x_{2}-x_{1}={\mathit {\Delta }}x} , 経過時間は t 2 − t 1 = Δ t {\displaystyle t_{2}-t_{1}={\mathit {\Delta }}t} で表される。このとき, (1.2)はある区間における単位時間あたりの変位を表している。こうして求められる速度を平均速度 v ̄ {\displaystyle {\bar {v}}} (バーvと読む)という。なお,(1.1)で得られた速さも経過時間における平均の速さである。 このとき Δ t {\displaystyle {\mathit {\Delta }}t} の値を極めて小さくする(すなわち t 2 {\displaystyle t_{2}} を限りなく t 1 {\displaystyle t_{1}} に近づける)と平均速度 v ̄ {\displaystyle {\bar {v}}} は時刻 t 1 {\displaystyle t_{1}} における瞬間速度を表す。時刻 t {\displaystyle t} における瞬間速度 v {\displaystyle v} は以下のように位置 x {\displaystyle x} の一階微分で求められる。 普通,速度(速さ)は瞬間速度(速さ)をさす。自動車などの速度計に代表される速さの測定器で表示される数値は瞬間の速さである。 一直線上を一定の速さで進む運動を等速直線運動(英: linear motion of uniform speed)あるいは等速度運動(英: motion of uniform velecity)という。時刻 t {\displaystyle t} において時刻 t = 0 {\displaystyle t=0} に位置 x 0 {\displaystyle x_{0}} から + x {\displaystyle +x} 方向に速度 v {\displaystyle v} で等速直線運動した物体の位置 x {\displaystyle x} は となる。この初期位置 x 0 {\displaystyle x_{0}} は初期条件(英: initial condition)である。なお,変位 Δ x = x − x 0 {\displaystyle {\mathit {\Delta }}x=x-x_{0}} とおくと 流れるプールや動く歩道(エスカレーター)を想像すると,流れに乗って動くときと流れに逆らって動くときでは感覚が違うであろう。動く歩道上を(動く歩道の進行方向と同じ向きに)歩く人の速さは,静止歩道上に歩く人の速さよりも大きくなる。これは歩行速度に動く歩道の速度が加わるからである。 船が川の流れに対して平行に進んでいる場合を考える。静水中の船の速度を v 1 {\displaystyle v_{1}} ,地面に対する川の水の流れの速度を v 2 {\displaystyle v_{2}} とするとき,地面に対する船の速度 v {\displaystyle v} は次式で表される。 物体の速度 v {\displaystyle v} が上式のように表されるとき,速度 v {\displaystyle v} を v 1 {\displaystyle v_{1}} と v 2 {\displaystyle v_{2}} との合成速度といい,合成速度を求めることを速度の合成という。直線上の運動では,どの向きを正とするかを考えてから速度の和を取る。 水が流れている川の上を横切ろうとする船を考える。流水中でも静水中と同じ出力で船が動く場合,静水中での速度が v 1 → {\displaystyle {\vec {v_{1}}}} の船が水の流れる速度が v 2 → {\displaystyle {\vec {v_{2}}}} である川の上を横切るとき,地面に対する船の速度 v {\displaystyle v} は次式で表される。 右図のように,川の流れの速さのぶんだけ船は下流に流される。よって,合成速度の向きは図のように斜めの方向になる。 (1.3)は速度 v → {\displaystyle {\overrightarrow {v}}} を速度 v 1 → , v 2 → {\displaystyle {\vec {v_{1}}},\ {\vec {v_{2}}}} に分ける式と考えることもできる。このような見方を速度の分解といい,分解された速度 v 1 → , v 2 → {\displaystyle {\vec {v_{1}}},\ {\vec {v_{2}}}} を分速度という。 2次元において,速度 v → {\displaystyle {\overrightarrow {v}}} をたがいに垂直な座標軸である x {\displaystyle x} 軸, y {\displaystyle y} 軸方向へ分解し,それぞれの分速度を v x → , v y → {\displaystyle {\vec {v_{x}}},\ {\vec {v_{y}}}} とする。分速度 v x → , v y → {\displaystyle {\vec {v_{x}}},\ {\vec {v_{y}}}} の大きさに座標軸の向きを表す正負の符号をつけたものを, v → {\displaystyle {\overrightarrow {v}}} の x {\displaystyle x} 成分, y {\displaystyle y} 成分といい,それぞれ v x , v y {\displaystyle v_{x},\ v_{y}} とすると, v → = ( v x , v y ) {\displaystyle {\overrightarrow {v}}=(v_{x},\ v_{y})} と表せる。このとき, v → {\displaystyle {\overrightarrow {v}}} の大きさ(速さ)を v , v → {\displaystyle v,{\overrightarrow {v}}} と x {\displaystyle x} 軸とのなす角を θ {\displaystyle \theta } とすると 動く物体Aから観測した他の物体Bの速度のことを,Aに対するBの相対速度(英: relative velocity)という。観測者の速度が基準である。 動いている電車の中に観測者がおり,外は雨が降っているとする。電車の中の観測者から見て,雨の速度はどう見えるか? 雨の方向と電車の動く方向とが違う為,ベクトルで考える必要がある。 電車の速度を v A → {\displaystyle {\overrightarrow {v_{\text{A}}}}} とし,雨の速度(つまり雨の落下速度)を v B → {\displaystyle {\overrightarrow {v_{\text{B}}}}} とする。この関係をベクトルで表記すると 速度のグラフの傾き,ある瞬間の速度の増減の度合い,すなわち,単位時間あたりの速度変化を加速度(英: acceleration)〔単位:m/s 2 {\displaystyle ^{2}} (メートル毎秒毎秒)〕という。 時刻 t 1 {\displaystyle t_{1}} での速度を v 1 {\displaystyle v_{1}} ,時刻 t 2 {\displaystyle t_{2}} での速度を v 2 {\displaystyle v_{2}} とした場合,単位時間当たりの速度の変化量を表す平均加速度 a ̄ {\displaystyle {\bar {a}}} は次式で表される。 このとき Δ t {\displaystyle {\mathit {\Delta }}t} の値を極めて小さくする(すなわち t 2 {\displaystyle t_{2}} を限りなく t 1 {\displaystyle t_{1}} に近づける)と平均加速度 a ̄ {\displaystyle {\bar {a}}} は時刻 t 1 {\displaystyle t_{1}} における瞬間加速度を表す。普通,加速度は瞬間加速度をさす。時刻 t {\displaystyle t} における(瞬間)加速度 a {\displaystyle a} は以下のように速度 v {\displaystyle v} の一階微分又は位置 x {\displaystyle x} の二階微分で求められる。 滑らかな斜面上で物体を静かに放すと物体は一定加速度で直線運動する。このような運動を等加速度直線運動(英: linear motion of uniform acceleration)という。 加速度 a {\displaystyle a} で等加速度直線運動をしている物体を考える。時刻 t {\displaystyle t} における速度 v {\displaystyle v} は となる。さらに,時刻 t {\displaystyle t} における物体の位置 x {\displaystyle x} は となる。これら初速度 v 0 {\displaystyle v_{0}} ,初期位置 x 0 {\displaystyle x_{0}} は初期条件である。 また,(1.5)を変形すると が得られ,これを(1.6)に代入すると が得られる。なお,変位 Δ x = x − x 0 {\displaystyle {\mathit {\Delta }}x=x-x_{0}} とおくと,(1.6), (1.7)は に変形できる。 時刻 t {\displaystyle t} における位置は2次元においては r → ( t ) = ( x ( t ) , y ( t ) ) {\displaystyle {\overrightarrow {r}}(t)=(x(t),\ y(t))} ,3次元においては r → ( t ) = ( x ( t ) , y ( t ) , z ( t ) ) {\displaystyle {\overrightarrow {r}}(t)=(x(t),\ y(t),\ z(t))} と定義される( ( t ) {\displaystyle (t)} は時刻 t {\displaystyle t} の関数であることを表す)。以下では主に3次元の場合を中心に説明する。 時刻 t {\displaystyle t} における位置は r → ( t ) = ( x ( t ) , y ( t ) , z ( t ) ) {\displaystyle {\overrightarrow {r}}(t)=(x(t),\ y(t),\ z(t))} ,微小時間 Δ t {\displaystyle {\mathit {\Delta }}t} 間の変位は Δ r → = r → ( t + Δ t ) − r → ( t ) = ( Δ x , Δ y , Δ z ) {\displaystyle {\mathit {\Delta }}{\overrightarrow {r}}={\overrightarrow {r}}(t+{\mathit {\Delta }}t)-{\overrightarrow {r}}(t)=({\mathit {\Delta }}x,\ {\mathit {\Delta }}y,\ {\mathit {\Delta }}z)} と定義される。このとき を Δ t {\displaystyle {\mathit {\Delta }}t} 間の平均速度, Δ t → 0 {\displaystyle {\mathit {\Delta }}t\to 0} の極限 を時刻 t {\displaystyle t} での(瞬間)速度という。なお,時刻 t {\displaystyle t} での速さ(速度の大きさ)は この場合も,速度から位置が求まり,各成分毎に が成り立ち,これらをベクトルを用いてひとまとめにして任意の時刻 t {\displaystyle t} における位置 が求められる。 また, を Δ t {\displaystyle {\mathit {\Delta }}t} 間の平均加速度, Δ t → 0 {\displaystyle {\mathit {\Delta }}t\to 0} の極限 を時刻 t {\displaystyle t} での(瞬間)加速度という。 この場合も,加速度から速度が求まり,各成分毎に が成り立ち,これらをベクトルを用いてひとまとめにして任意の時刻 t {\displaystyle t} における速度 が求められる。なお,これら初期条件 r → ( 0 ) , v → ( 0 ) {\displaystyle {\overrightarrow {r}}(0),{\overrightarrow {v}}(0)} の値を初期値という。 特に,加速度一定のときの運動は等加速度運動(英: motion of uniform acceleration)といわれ,上記の公式(1.11, 9)はそれぞれ となる。 重力だけが働いて初速度0で落下する運動を自由落下という。 鉛直下向きに y {\displaystyle y} 軸をとり,投げ下ろした時刻を t = 0 {\displaystyle t=0} として,物体を投げ下ろした位置を y 0 {\displaystyle y_{0}} ,初速度の大きさを v 0 {\displaystyle v_{0}} ,時刻 t {\displaystyle t} における物体の速度を v {\displaystyle v} ,位置を y {\displaystyle y} とすると,加速度は重力加速度 g {\displaystyle g} であるから が得られる。なお,物体の初速度の大きさ v 0 = 0 {\displaystyle v_{0}=0} ,すなわち物体が前述の自由落下運動をするとき,上3式は となり,自由落下の式が得られる。 鉛直上向きに y {\displaystyle y} 軸をとり,投げ上げた時刻を t = 0 {\displaystyle t=0} として,物体を投げ上げた位置を y 0 {\displaystyle y_{0}} ,初速度の大きさを v 0 {\displaystyle v_{0}} ,時刻 t {\displaystyle t} における物体の速度を v {\displaystyle v} ,位置を y {\displaystyle y} とすると,加速度は重力加速度 − g {\displaystyle -g} であるから が得られる。 物体をある高さから水平方向に投げ出すことを水平投射という。 物体を水平方向に初速度の大きさ v 0 {\displaystyle v_{0}} で投げ出したときの運動を考える。初速度の向きに x {\displaystyle x} 軸,鉛直下向きに y {\displaystyle y} 軸をとり,時刻 t {\displaystyle t} における物体の位置を r → ( t ) = ( x ( t ) , y ( t ) ) {\displaystyle {\overrightarrow {r}}(t)=(x(t),\ y(t))} ,速度を v → ( t ) = ( v x ( t ) , v y ( t ) ) {\displaystyle {\overrightarrow {v}}(t)=(v_{x}(t),\ v_{y}(t))} とする。物体を投げ出した時刻を t = 0 {\displaystyle t=0} ,物体を投げ出した位置を r → ( 0 ) = ( 0 , 0 ) {\displaystyle {\overrightarrow {r}}(0)=(0,\ 0)} とする。初速度 v → ( 0 ) = ( v 0 , 0 ) {\displaystyle {\overrightarrow {v}}(0)=(v_{0},\ 0)} である。 x {\displaystyle x} 軸方向には正の向きに速さ v 0 {\displaystyle v_{0}} の等速度運動, y {\displaystyle y} 軸方向には初速度0,正の向きに加速度 g {\displaystyle g} の等加速度運動をするから,時刻 t {\displaystyle t} における物体の加速度 a → = ( d v x d t , d v y d t ) {\displaystyle {\overrightarrow {a}}=\left({\frac {dv_{x}}{dt}},\ {\frac {dv_{y}}{dt}}\right)} は したがって,(1.12)より これを(1.9)に代入すると 以上より となる。(1.13)より となり,(1.14)に代入すると が得られる。 物体を斜め向きに投げ出すことを斜方投射という。 図のように物体を初速度の大きさ v 0 {\displaystyle v_{0}} で斜め上向きに投げ出す場合を考える。初速度の水平成分の向きに x {\displaystyle x} 軸,鉛直上向きに y {\displaystyle y} 軸をとり,時刻 t {\displaystyle t} における物体の位置を r → ( t ) = ( x ( t ) , y ( t ) ) {\displaystyle {\overrightarrow {r}}(t)=(x(t),\ y(t))} ,速度を v → ( t ) = ( v x ( t ) , v y ( t ) ) {\displaystyle {\overrightarrow {v}}(t)=(v_{x}(t),\ v_{y}(t))} とする。物体を投げ出した時刻を t = 0 {\displaystyle t=0} ,物体を投げ出した位置を r → ( 0 ) = ( 0 , 0 ) {\displaystyle {\overrightarrow {r}}(0)=(0,\ 0)} とする。初速度 v → ( 0 ) = ( v 0 cos θ , v 0 sin θ ) {\displaystyle {\overrightarrow {v}}(0)=(v_{0}\cos \theta ,\ v_{0}\sin \theta )} である。 x {\displaystyle x} 軸方向には正の向きに速さ v 0 cos θ {\displaystyle v_{0}\cos \theta } の等速度運動, y {\displaystyle y} 軸方向には初速度 v 0 sin θ {\displaystyle v_{0}\sin \theta } ,加速度 − g {\displaystyle -g} の等加速度運動をするから,時刻 t {\displaystyle t} における物体の加速度 a → = ( d v x d t , d v y d t ) {\displaystyle {\overrightarrow {a}}=\left({\frac {dv_{x}}{dt}},\ {\frac {dv_{y}}{dt}}\right)} は したがって,(1.12)より これを(1.9)に代入すると 以上より となる。(1.16)より となり,(1.17)に代入すると が得られる。 (1.15), (1.18)より水平投射された物体や斜方投射された物体の軌跡は放物線になることがわかる。このような運動を放物運動という。 物理において,力とは物体を変形させたり物体の速度を変えたりする働きのことである。力の働きは,大きさ・向き・作用点の3つで決まり,これらを力の3要素という。力の大きさの単位にはニュートン(N)を用いる。 なお,本頁では都合上,重力・張力・抗力・弾性力などの力については「様々な力と運動」の節で,作用・反作用については「運動の法則」の節で扱う。 1物体にいくつかの力が同時に働くとき,それらの力を合わせた働きをする1つの力を考えることができる。この力を合力といい,合力を求めることを力の合成という。 同一作用線上の同じ向き,又は逆向きの2力 F 1 → , F 2 → {\displaystyle {\vec {F_{1}}},\ {\vec {F_{2}}}} の合力 F → {\displaystyle {\overrightarrow {F}}} の大きさはそれぞれの力の大きさの和や差で求められる。また,異なる方向に働く2力 F 1 → , F 2 → {\displaystyle {\vec {F_{1}}},\ {\vec {F_{2}}}} の合力 F → {\displaystyle {\overrightarrow {F}}} は2力のベクトルを隣合う2辺とする平行四辺形の対角線の矢印に一致する。これを力の平行四辺形の法則といい,このように求めた2力 F 1 → , F 2 → {\displaystyle {\vec {F_{1}}},\ {\vec {F_{2}}}} の合力 F → {\displaystyle {\overrightarrow {F}}} は次式で表される。 1力をそれと同じ働きをするいくつかの力の組に分けることができる。これを力の分解といい,分けられたそれぞれの力を分力という。 力の平行四辺形の法則を用いて,1力 F → {\displaystyle {\overrightarrow {F}}} は任意方向の2力に分解できる。これを繰り返すと,1力を任意方向のいくつかの力に分解できる。力を分解する場合,互いに垂直な2方向に分解することが多い。力 F → {\displaystyle {\overrightarrow {F}}} を x {\displaystyle x} 軸, y {\displaystyle y} 軸の二方向に分解し,それぞれの分力を F x → , F y → {\displaystyle {\vec {F_{x}}},\ {\vec {F_{y}}}} とする。これらの大きさの向きを表す正負の符号をつけたものを, F → {\displaystyle {\overrightarrow {F}}} の x {\displaystyle x} 成分, y {\displaystyle y} 成分といい,それぞれ F x , F y {\displaystyle F_{x},\ F_{y}} と表す。このとき, F → {\displaystyle {\overrightarrow {F}}} の大きさを F , F → {\displaystyle F,\ {\overrightarrow {F}}} と x {\displaystyle x} 軸とのなす角を θ {\displaystyle \theta } とすると 物体に2力 F 1 → , F 2 → {\displaystyle {\vec {F_{1}}},\ {\vec {F_{2}}}} が働いてつり合うとき,2力は同一作用線上にあり,大きさが等しく逆向きであるから このことから,2力がつり合うときは,2力の合力は 0 → {\displaystyle {\overrightarrow {0}}} であることがわかる。 物体に力が働かぬか,又は力がつりあっているとき,その物体は静止又は等速直線運動を続ける。これを慣性の法則と呼ぶ。 質量 m {\displaystyle m} の物体に働く外力の和が F → {\displaystyle {\overrightarrow {F}}} のとき,物体に生ずる加速度を a → {\displaystyle {\overrightarrow {a}}} とすると,次の運動方程式が成り立つ。 なお,(1.4)をを用いて,運動方程式は とも表される。 2物体A, Bが互いに力を及ぼしあっている(相互作用をしている)とき, として が成り立つ。つまり,AがBに及ぼす力とBがAに及ぼす力は大きさが等しくて向きが逆である。 物理量はすべて,基準量の何倍かを表す数値に単位記号を付けて表す。即ち次の関係がある。 力学ではMKS単位系が用いられており,長さはm(メートル),質量はkg(キログラム),時間はs(秒)を基本単位として定めている。この3単位に物理学など科学分野や技術分野で用いられる4単位(電流はA(アンペア),温度はK(ケルビン),物質量はmol(モル),光度はcd(カンデラ))を加えた合計7単位を基本単位として定めたのが国際単位系(SI)である。また,基本単位から導かれる単位を誘導単位(組立単位)とよぶ。 地球上の全物体には,地球が鉛直下向きに引く力,重力が働いている。質量を m {\displaystyle m} 〔kg〕,重力加速度の大きさを g {\displaystyle g} 〔m/s 2 {\displaystyle ^{2}} 〕,重力の大きさ(重さないし重量)を W {\displaystyle W} 〔N〕とすると,(2.1)より となる。つまり,重力の大きさは質量に比例し,質量 m {\displaystyle m} 〔kg〕の物体に働く重力の大きさ W {\displaystyle W} 〔N〕は m g {\displaystyle mg} 〔N〕である。地球上において重力加速度の大きさ g {\displaystyle g} は約9.8m/s 2 {\displaystyle ^{2}} なので,質量1kgの物体に働く重力の大きさは約9.8Nである。なお,重力加速度の大きさは惑星によっても異なるし,同じ惑星においても緯度により若干変わる。 (2.3)より質量は物体に力が働いた場合の加速度の生じにくさ,即ち慣性の大きさを表す量(慣性質量)であることが分かる。質量は物体固有の量であり,場所によらない。質量の単位である1kgは,国際度量衡局にある国際キログラム原器の質量と定められていたが,2019年5月からプランク定数とよばれる普遍的な定数に基づく定義へと変更された。 糸の張力や面の抗力といわれる力は構成している分子間力の合力であるが,通常は伸びぬ糸の張力や固い面が接している物体に及ぼす抗力等は束縛力(拘束力)とよばれ,その大きさは束縛条件(拘束条件)を使って運動方程式を解いてみねば分からぬ未知数として扱われる。 図1のように質量 m {\displaystyle m} の物体に鉛直下向きに重力 m g {\displaystyle mg} ,鉛直上向きに伸び縮みのない糸が物体を引く力(張力) T {\displaystyle T} が働いており,物体の加速度を鉛直上向きに a {\displaystyle a} とすると,運動方程式は 続いて,図2のように水平でなめらかな机上に質量 M {\displaystyle M} の台車があり,その台車に質量の無視できる糸がつながれ,滑車を介して糸の先に質量 m {\displaystyle m} の小物体が吊り下げられている場合を考えよう。台車の加速度の大きさを a {\displaystyle a} とおくと,束縛条件より小物体の加速度の大きさも a {\displaystyle a} である。台車が受ける垂直抗力の大きさを N {\displaystyle N} とおくと,台車の運動方程式は(上段が水平方向,下段が鉛直方向) 小物体の運動方程式は(鉛直方向) ( ∗ ) + ( ∗ ∗ ) {\displaystyle (*)+(**)} より ( ∗ ) {\displaystyle (*)} に代入 右図のように質量の無視できる糸の両端に質量 m 1 {\displaystyle m_{1}} と質量 m 2 {\displaystyle m_{2}} の2物体が滑車を介して吊り下げられている場合を考える(ただし m 1 > m 2 {\displaystyle m_{1}>m_{2}} )。重力加速度を g {\displaystyle g} とすると,質量 m 1 {\displaystyle m_{1}} の物体には鉛直下向きに重力 W 1 = m 1 g {\displaystyle W_{1}=m_{1}g} ,質量 m 2 {\displaystyle m_{2}} の物体には鉛直下向きに重力 W 2 = m 2 g {\displaystyle W_{2}=m_{2}g} が働いている。質量 m 1 {\displaystyle m_{1}} の物体の加速度の大きさを a {\displaystyle a} ,質量 m 2 {\displaystyle m_{2}} の物体の加速度の大きさを a ′ {\displaystyle a'} (一応説明のため),糸の張力の大きさを T {\displaystyle T} とおくと,2物体の鉛直方向の運動方程式は 束縛条件は ( ★ ) {\displaystyle (\bigstar )} より,質量 m 2 {\displaystyle m_{2}} の物体の加速度の大きさは a {\displaystyle a} である(実際はこの程度の束縛条件は自明で最初から a {\displaystyle a} としてしまって構わない)。よって, ( ◻ ) {\displaystyle (\square )} は ( △ ) + ( ◻ ) ′ {\displaystyle (\triangle )+(\square )'} より ( △ ) {\displaystyle (\triangle )} に代入 面や線に沿って運動する物体に面又は線が及ぼす力を面又は線の抗力という。抗力の面に垂直な成分或いは法線方向の分力を垂直抗力,面に平行な成分或いは接線方向の分力を摩擦力という。 静止摩擦力は,静止している物体を外から引く力に応じてその大きさを変化させ,摩擦がなかったならば物体が行うであろう運動を妨げる向きに働く。その最大値を最大静止摩擦力或いは最大摩擦力といい,最大摩擦力の大きさは垂直抗力に比例することが分かっている。静止摩擦力,最大摩擦力の大きさをそれぞれ F , F m a x {\displaystyle F,\ F_{\mathrm {max} }} ,静止摩擦係数を μ {\displaystyle \mu } ,垂直抗力の大きさを N {\displaystyle N} とおくと 物体に働く外力が最大摩擦力を越えると,動摩擦力が働く。動摩擦力は物体の運動を妨げる向きに働き,その大きさは垂直抗力に比例する。動摩擦力を F ′ {\displaystyle F'} ,動摩擦係数を μ ′ {\displaystyle \mu '} とおくと なお,動摩擦係数は静止摩擦係数より小さい,即ち動摩擦力は最大摩擦力より小さいことが分かっている。 ばねに何も力が加わっていないときのばねの長さをばねの自然長という。一端を固定したばねの他端にばねが伸びる方向に力を加えるとばねは伸び,逆にばねが縮む方向に力を加えるとばねは縮む。その際ばねは自然長に戻ろうとする性質があり,このような力を加えたときに生じた変形が力を加えるのを止めると元に戻る性質を弾性(英: elasticity)という。この弾性に基づいて生ずる力を弾性力(英: elastic force)という。ばね弾性力はばねの両端で,自然長に向かう向きに働き,その大きさはばねが自然長から伸び縮みした距離に比例しこれをフックの法則(英: Hooke's law)という。ばねが伸びる方向に x {\displaystyle x} 軸をとり,ばねの自然長の位置を原点にし,ばねの位置を x {\displaystyle x} 〔m〕,ばね定数を k {\displaystyle k} 〔N/m〕とすると,ばねの弾性力 F {\displaystyle F} 〔N〕は なお,これは復元力ともよばれる。また,ばねの伸び縮みがあまりにも大きくなるとこれは成り立たなくなる。 物理では,物体に力を加えて動かしたとき,力は物体に対して「仕事をした」という。 1次元空間( x {\displaystyle x} 軸上)の運動を考える。運動方程式 に v = d x d t {\displaystyle v={\frac {dx}{dt}}} を掛けて 両辺を t = t 1 {\displaystyle t=t_{1}} から t = t 2 {\displaystyle t=t_{2}} まで積分すると 時刻 t = t 1 {\displaystyle t=t_{1}} のとき v = v 1 , x = x 1 {\displaystyle v=v_{1},\ x=x_{1}} ,時刻 t = t 2 {\displaystyle t=t_{2}} のとき v = v 2 , x = x 2 {\displaystyle v=v_{2},\ x=x_{2}} と考えて t t 1 → t 2 v v 1 → v 2 x x 1 → x 2 {\displaystyle {\begin{array}{c|c}t&t_{1}\to t_{2}\\\hline v&v_{1}\to v_{2}\\\hline x&x_{1}\to x_{2}\\\end{array}}} とすると この 1 2 m v 2 {\displaystyle {\frac {1}{2}}mv^{2}} を運動エネルギー(英: kinetic energy)という。特に,力 F {\displaystyle F} が一定のとき (3.1)の右辺は力 F {\displaystyle F} のした仕事を表している。ゆえに(1次元においては)運動エネルギー変化は仕事に等しいという因果関係が分かる。 まず力 F → {\displaystyle {\overrightarrow {F}}} が一定の場合を考える。時刻 t {\displaystyle t} において速度 v → ( t ) {\displaystyle {\overrightarrow {v}}(t)} で運動する質量 m {\displaystyle m} の物体の運動方程式 これと(1.12)より時刻 0 ∼ t {\displaystyle 0\sim t} における運動エネルギー変化はこの間の物体の変位を Δ r → = r → ( t ) − r → ( 0 ) {\displaystyle {\mathit {\Delta }}{\overrightarrow {r}}={\overrightarrow {r}}(t)-{\overrightarrow {r}}(0)} として ここで F → {\displaystyle {\overrightarrow {F}}} と Δ r → {\displaystyle {\mathit {\Delta }}{\overrightarrow {r}}} とのなす角を θ {\displaystyle \theta } とすると,この間に力 F → {\displaystyle {\overrightarrow {F}}} がした仕事 W {\displaystyle W} は と与えられる。なお仕事の単位はJ=N・mである(ジュール)。 仕事が始点と終点のみで決まり,経路によらぬ力を保存力(英: conservative force)(例:重力,弾性力,万有引力,静電気力等),その他の力(仕事が経路による力)を非保存力(例:摩擦力等)という。 保存力の場合,始点 r 0 → {\displaystyle {\vec {r_{0}}}} を決めるとその始点 r 0 → {\displaystyle {\vec {r_{0}}}} を基準とした終点 r → {\displaystyle {\overrightarrow {r}}} での保存力 f C → {\displaystyle {\vec {f_{\mathrm {C} }}}} の位置エネルギー(英: potential energy) U ( r → ) {\displaystyle U({\overrightarrow {r}})} が決まる。 鉛直上方に y {\displaystyle y} 軸をとり, y = 0 {\displaystyle y=0} の点を基準とした y = h {\displaystyle y=h} での質量 m {\displaystyle m} の物体の位置エネルギー U {\displaystyle U} は,重力加速度を g {\displaystyle g} とすると,重力は − m g {\displaystyle -mg} であるから また,時刻 t {\displaystyle t} において y = y ( t ) {\displaystyle y=y(t)} の位置にある質量 m {\displaystyle m} の物体の時刻 t = 0 {\displaystyle t=0} から t = t {\displaystyle t=t} までの位置エネルギー変化 Δ U {\displaystyle {\mathit {\Delta }}U} は,重力加速度を g {\displaystyle g} とすると 右図のように壁に取付けられたばね定数 k {\displaystyle k} のばねにつながれた質量 m {\displaystyle m} の物体において,水平方向右向きに x {\displaystyle x} 軸をとり,ばねの長さが自然長のときの物体の位置を原点とする。物体が x {\displaystyle x} の位置にあるとき,運動方程式 よって,原点を基準とした位置 x {\displaystyle x} での物体の位置エネルギー U {\displaystyle U} は なお,この弾性力による位置エネルギーを弾性エネルギー(英: elastic energy)ともいう。また,時刻 t {\displaystyle t} において x = x ( t ) {\displaystyle x=x(t)} の位置にある質量 m {\displaystyle m} の物体の時刻 t = 0 {\displaystyle t=0} から t = t {\displaystyle t=t} までの位置エネルギー(弾性エネルギー)変化 Δ U {\displaystyle {\mathit {\Delta }}U} は 運動エネルギーと位置エネルギーの和を力学的エネルギー(英: mechanical energy)という。運動エネルギー,位置エネルギー,力学エネルギーをそれぞれ K , U , E {\displaystyle K,\ U,\ E} とおくと 右図のように質量 m {\displaystyle m} の物体を地上からの高さ h 2 {\displaystyle h_{2}} から高さ h 1 {\displaystyle h_{1}} まで落下させるとする。物体には鉛直下向きに重力 m g {\displaystyle mg} (保存力)が働いている。(3.1a)より 上式の同値変形後の式を見ると, h 1 {\displaystyle h_{1}} 地点での物体の運動エネルギーと位置エネルギーの和が h 2 {\displaystyle h_{2}} 地点での物体の運動エネルギーと位置エネルギ-の和が等しい,すなわち保存力場での質点の運動は力学的エネルギーが一定であることが分かる。 これを力学的エネルギー保存則(英: law of conservation of mechanical energy)という。
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "小学校・中学校・高等学校の学習>高等学校の学習>高等学校理科 物理基礎", "title": "" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "直線上を物体が運動するとき,直線に沿って座標軸( x {\\displaystyle x} 軸)をとることで物体の位置(英: position)を表せる。物体の位置変化を変位(英: displacement)といい,時刻 t 1 , t 2 ( t 1 < t 2 ) {\\displaystyle t_{1},\\ t_{2}\\ (t_{1}<t_{2})} 〔単位:s(秒)〕における物体の位置がそれぞれ x 1 , x 2 {\\displaystyle x_{1},\\ x_{2}} 〔単位:m(メートル)〕であるとき,変位 Δ x {\\displaystyle {\\mathit {\\Delta }}x} は", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "であり。変位の大きさが2点間距離を表し,正負の符号が移動方向を表す。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "物体が運動するとき, その移動距離を経過時間で割ったもの, すなわち単位時間あたりの移動距離を速さ(英: speed)という。速さにおいては向きを考えない。運動している物体の移動距離を s {\\displaystyle s} , 経過時間を Δ t {\\displaystyle {\\mathit {\\Delta }}t} とすると, 物体の速さ v {\\displaystyle v} は次のように表される。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "速さの単位は時間と距離の単位によって決まる。よく用いられるのは, m/s(メートル毎秒)である。また, 日常生活では距離の単位をkm(キロメートル), 時間の単位をh(時)とするkm/h(キロメートル毎時)もよく使われる。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "速さが同じでも向きが異ならば異なる方向に進む。運動の様子を知るには速さだけでなく向きも考えねばならない。速さに向きの要素を加えたもの,すなわち単位時間あたりの変位を速度(英: velocity)という。たとえば、西へ走る40km/hの車Aと東へ走る40km/hの車Bは速さは等しいが、向きは反対である。このことを表すために正負の記号を利用する。つまり、西を正・東を負とするとAの速度は+40km/h, Bの速度は-40km/hと表記できる。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "このように大きさと向きを持つ量をベクトル(英: vector, 独: Vektor)といい, その記号は v → {\\displaystyle {\\vec {v}}} と書く。ただし, 先ほどのように直線上(1次元)においては速度の値に±が書かれている場合には矢印を省略して単に v {\\displaystyle v} と書いてもよい。逆に,速さのように大きさのみを持つ量をスカラー(英: scalar)という。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "なお,平面(2次元)・空間(3次元)上の運動や高度な運動の表し方等は後程説明する。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "時刻 t 1 {\\displaystyle t_{1}} [s]における位置を x 1 {\\displaystyle x_{1}} [m], 時刻 t 2 {\\displaystyle t_{2}} [s]における位置を x 2 {\\displaystyle x_{2}} [m](ただし t 1 < t 2 {\\displaystyle t_{1}<t_{2}} )としたとき, 位置の変位は x 2 − x 1 = Δ x {\\displaystyle x_{2}-x_{1}={\\mathit {\\Delta }}x} , 経過時間は t 2 − t 1 = Δ t {\\displaystyle t_{2}-t_{1}={\\mathit {\\Delta }}t} で表される。このとき,", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "(1.2)はある区間における単位時間あたりの変位を表している。こうして求められる速度を平均速度 v ̄ {\\displaystyle {\\bar {v}}} (バーvと読む)という。なお,(1.1)で得られた速さも経過時間における平均の速さである。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 10, "tag": "p", "text": "このとき Δ t {\\displaystyle {\\mathit {\\Delta }}t} の値を極めて小さくする(すなわち t 2 {\\displaystyle t_{2}} を限りなく t 1 {\\displaystyle t_{1}} に近づける)と平均速度 v ̄ {\\displaystyle {\\bar {v}}} は時刻 t 1 {\\displaystyle t_{1}} における瞬間速度を表す。時刻 t {\\displaystyle t} における瞬間速度 v {\\displaystyle v} は以下のように位置 x {\\displaystyle x} の一階微分で求められる。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 11, "tag": "p", "text": "普通,速度(速さ)は瞬間速度(速さ)をさす。自動車などの速度計に代表される速さの測定器で表示される数値は瞬間の速さである。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 12, "tag": "p", "text": "一直線上を一定の速さで進む運動を等速直線運動(英: linear motion of uniform speed)あるいは等速度運動(英: motion of uniform velecity)という。時刻 t {\\displaystyle t} において時刻 t = 0 {\\displaystyle t=0} に位置 x 0 {\\displaystyle x_{0}} から + x {\\displaystyle +x} 方向に速度 v {\\displaystyle v} で等速直線運動した物体の位置 x {\\displaystyle x} は", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 13, "tag": "p", "text": "となる。この初期位置 x 0 {\\displaystyle x_{0}} は初期条件(英: initial condition)である。なお,変位 Δ x = x − x 0 {\\displaystyle {\\mathit {\\Delta }}x=x-x_{0}} とおくと", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 14, "tag": "p", "text": "流れるプールや動く歩道(エスカレーター)を想像すると,流れに乗って動くときと流れに逆らって動くときでは感覚が違うであろう。動く歩道上を(動く歩道の進行方向と同じ向きに)歩く人の速さは,静止歩道上に歩く人の速さよりも大きくなる。これは歩行速度に動く歩道の速度が加わるからである。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 15, "tag": "p", "text": "船が川の流れに対して平行に進んでいる場合を考える。静水中の船の速度を v 1 {\\displaystyle v_{1}} ,地面に対する川の水の流れの速度を v 2 {\\displaystyle v_{2}} とするとき,地面に対する船の速度 v {\\displaystyle v} は次式で表される。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 16, "tag": "p", "text": "物体の速度 v {\\displaystyle v} が上式のように表されるとき,速度 v {\\displaystyle v} を v 1 {\\displaystyle v_{1}} と v 2 {\\displaystyle v_{2}} との合成速度といい,合成速度を求めることを速度の合成という。直線上の運動では,どの向きを正とするかを考えてから速度の和を取る。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 17, "tag": "p", "text": "水が流れている川の上を横切ろうとする船を考える。流水中でも静水中と同じ出力で船が動く場合,静水中での速度が v 1 → {\\displaystyle {\\vec {v_{1}}}} の船が水の流れる速度が v 2 → {\\displaystyle {\\vec {v_{2}}}} である川の上を横切るとき,地面に対する船の速度 v {\\displaystyle v} は次式で表される。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 18, "tag": "p", "text": "右図のように,川の流れの速さのぶんだけ船は下流に流される。よって,合成速度の向きは図のように斜めの方向になる。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 19, "tag": "p", "text": "(1.3)は速度 v → {\\displaystyle {\\overrightarrow {v}}} を速度 v 1 → , v 2 → {\\displaystyle {\\vec {v_{1}}},\\ {\\vec {v_{2}}}} に分ける式と考えることもできる。このような見方を速度の分解といい,分解された速度 v 1 → , v 2 → {\\displaystyle {\\vec {v_{1}}},\\ {\\vec {v_{2}}}} を分速度という。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 20, "tag": "p", "text": "2次元において,速度 v → {\\displaystyle {\\overrightarrow {v}}} をたがいに垂直な座標軸である x {\\displaystyle x} 軸, y {\\displaystyle y} 軸方向へ分解し,それぞれの分速度を v x → , v y → {\\displaystyle {\\vec {v_{x}}},\\ {\\vec {v_{y}}}} とする。分速度 v x → , v y → {\\displaystyle {\\vec {v_{x}}},\\ {\\vec {v_{y}}}} の大きさに座標軸の向きを表す正負の符号をつけたものを, v → {\\displaystyle {\\overrightarrow {v}}} の x {\\displaystyle x} 成分, y {\\displaystyle y} 成分といい,それぞれ v x , v y {\\displaystyle v_{x},\\ v_{y}} とすると, v → = ( v x , v y ) {\\displaystyle {\\overrightarrow {v}}=(v_{x},\\ v_{y})} と表せる。このとき, v → {\\displaystyle {\\overrightarrow {v}}} の大きさ(速さ)を v , v → {\\displaystyle v,{\\overrightarrow {v}}} と x {\\displaystyle x} 軸とのなす角を θ {\\displaystyle \\theta } とすると", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 21, "tag": "p", "text": "動く物体Aから観測した他の物体Bの速度のことを,Aに対するBの相対速度(英: relative velocity)という。観測者の速度が基準である。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 22, "tag": "p", "text": "動いている電車の中に観測者がおり,外は雨が降っているとする。電車の中の観測者から見て,雨の速度はどう見えるか? 雨の方向と電車の動く方向とが違う為,ベクトルで考える必要がある。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 23, "tag": "p", "text": "電車の速度を v A → {\\displaystyle {\\overrightarrow {v_{\\text{A}}}}} とし,雨の速度(つまり雨の落下速度)を v B → {\\displaystyle {\\overrightarrow {v_{\\text{B}}}}} とする。この関係をベクトルで表記すると", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 24, "tag": "p", "text": "速度のグラフの傾き,ある瞬間の速度の増減の度合い,すなわち,単位時間あたりの速度変化を加速度(英: acceleration)〔単位:m/s 2 {\\displaystyle ^{2}} (メートル毎秒毎秒)〕という。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 25, "tag": "p", "text": "時刻 t 1 {\\displaystyle t_{1}} での速度を v 1 {\\displaystyle v_{1}} ,時刻 t 2 {\\displaystyle t_{2}} での速度を v 2 {\\displaystyle v_{2}} とした場合,単位時間当たりの速度の変化量を表す平均加速度 a ̄ {\\displaystyle {\\bar {a}}} は次式で表される。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 26, "tag": "p", "text": "このとき Δ t {\\displaystyle {\\mathit {\\Delta }}t} の値を極めて小さくする(すなわち t 2 {\\displaystyle t_{2}} を限りなく t 1 {\\displaystyle t_{1}} に近づける)と平均加速度 a ̄ {\\displaystyle {\\bar {a}}} は時刻 t 1 {\\displaystyle t_{1}} における瞬間加速度を表す。普通,加速度は瞬間加速度をさす。時刻 t {\\displaystyle t} における(瞬間)加速度 a {\\displaystyle a} は以下のように速度 v {\\displaystyle v} の一階微分又は位置 x {\\displaystyle x} の二階微分で求められる。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 27, "tag": "p", "text": "滑らかな斜面上で物体を静かに放すと物体は一定加速度で直線運動する。このような運動を等加速度直線運動(英: linear motion of uniform acceleration)という。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 28, "tag": "p", "text": "加速度 a {\\displaystyle a} で等加速度直線運動をしている物体を考える。時刻 t {\\displaystyle t} における速度 v {\\displaystyle v} は", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 29, "tag": "p", "text": "となる。さらに,時刻 t {\\displaystyle t} における物体の位置 x {\\displaystyle x} は", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 30, "tag": "p", "text": "となる。これら初速度 v 0 {\\displaystyle v_{0}} ,初期位置 x 0 {\\displaystyle x_{0}} は初期条件である。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 31, "tag": "p", "text": "また,(1.5)を変形すると", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 32, "tag": "p", "text": "が得られ,これを(1.6)に代入すると", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 33, "tag": "p", "text": "が得られる。なお,変位 Δ x = x − x 0 {\\displaystyle {\\mathit {\\Delta }}x=x-x_{0}} とおくと,(1.6), (1.7)は", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 34, "tag": "p", "text": "に変形できる。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 35, "tag": "p", "text": "時刻 t {\\displaystyle t} における位置は2次元においては r → ( t ) = ( x ( t ) , y ( t ) ) {\\displaystyle {\\overrightarrow {r}}(t)=(x(t),\\ y(t))} ,3次元においては r → ( t ) = ( x ( t ) , y ( t ) , z ( t ) ) {\\displaystyle {\\overrightarrow {r}}(t)=(x(t),\\ y(t),\\ z(t))} と定義される( ( t ) {\\displaystyle (t)} は時刻 t {\\displaystyle t} の関数であることを表す)。以下では主に3次元の場合を中心に説明する。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 36, "tag": "p", "text": "時刻 t {\\displaystyle t} における位置は r → ( t ) = ( x ( t ) , y ( t ) , z ( t ) ) {\\displaystyle {\\overrightarrow {r}}(t)=(x(t),\\ y(t),\\ z(t))} ,微小時間 Δ t {\\displaystyle {\\mathit {\\Delta }}t} 間の変位は Δ r → = r → ( t + Δ t ) − r → ( t ) = ( Δ x , Δ y , Δ z ) {\\displaystyle {\\mathit {\\Delta }}{\\overrightarrow {r}}={\\overrightarrow {r}}(t+{\\mathit {\\Delta }}t)-{\\overrightarrow {r}}(t)=({\\mathit {\\Delta }}x,\\ {\\mathit {\\Delta }}y,\\ {\\mathit {\\Delta }}z)} と定義される。このとき", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 37, "tag": "p", "text": "を Δ t {\\displaystyle {\\mathit {\\Delta }}t} 間の平均速度, Δ t → 0 {\\displaystyle {\\mathit {\\Delta }}t\\to 0} の極限", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 38, "tag": "p", "text": "を時刻 t {\\displaystyle t} での(瞬間)速度という。なお,時刻 t {\\displaystyle t} での速さ(速度の大きさ)は", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 39, "tag": "p", "text": "この場合も,速度から位置が求まり,各成分毎に", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 40, "tag": "p", "text": "が成り立ち,これらをベクトルを用いてひとまとめにして任意の時刻 t {\\displaystyle t} における位置", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 41, "tag": "p", "text": "が求められる。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 42, "tag": "p", "text": "また,", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 43, "tag": "p", "text": "を Δ t {\\displaystyle {\\mathit {\\Delta }}t} 間の平均加速度, Δ t → 0 {\\displaystyle {\\mathit {\\Delta }}t\\to 0} の極限", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 44, "tag": "p", "text": "を時刻 t {\\displaystyle t} での(瞬間)加速度という。 この場合も,加速度から速度が求まり,各成分毎に", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 45, "tag": "p", "text": "が成り立ち,これらをベクトルを用いてひとまとめにして任意の時刻 t {\\displaystyle t} における速度", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 46, "tag": "p", "text": "が求められる。なお,これら初期条件 r → ( 0 ) , v → ( 0 ) {\\displaystyle {\\overrightarrow {r}}(0),{\\overrightarrow {v}}(0)} の値を初期値という。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 47, "tag": "p", "text": "特に,加速度一定のときの運動は等加速度運動(英: motion of uniform acceleration)といわれ,上記の公式(1.11, 9)はそれぞれ", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 48, "tag": "p", "text": "となる。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 49, "tag": "p", "text": "重力だけが働いて初速度0で落下する運動を自由落下という。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 50, "tag": "p", "text": "鉛直下向きに y {\\displaystyle y} 軸をとり,投げ下ろした時刻を t = 0 {\\displaystyle t=0} として,物体を投げ下ろした位置を y 0 {\\displaystyle y_{0}} ,初速度の大きさを v 0 {\\displaystyle v_{0}} ,時刻 t {\\displaystyle t} における物体の速度を v {\\displaystyle v} ,位置を y {\\displaystyle y} とすると,加速度は重力加速度 g {\\displaystyle g} であるから", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 51, "tag": "p", "text": "が得られる。なお,物体の初速度の大きさ v 0 = 0 {\\displaystyle v_{0}=0} ,すなわち物体が前述の自由落下運動をするとき,上3式は", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 52, "tag": "p", "text": "となり,自由落下の式が得られる。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 53, "tag": "p", "text": "鉛直上向きに y {\\displaystyle y} 軸をとり,投げ上げた時刻を t = 0 {\\displaystyle t=0} として,物体を投げ上げた位置を y 0 {\\displaystyle y_{0}} ,初速度の大きさを v 0 {\\displaystyle v_{0}} ,時刻 t {\\displaystyle t} における物体の速度を v {\\displaystyle v} ,位置を y {\\displaystyle y} とすると,加速度は重力加速度 − g {\\displaystyle -g} であるから", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 54, "tag": "p", "text": "が得られる。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 55, "tag": "p", "text": "物体をある高さから水平方向に投げ出すことを水平投射という。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 56, "tag": "p", "text": "物体を水平方向に初速度の大きさ v 0 {\\displaystyle v_{0}} で投げ出したときの運動を考える。初速度の向きに x {\\displaystyle x} 軸,鉛直下向きに y {\\displaystyle y} 軸をとり,時刻 t {\\displaystyle t} における物体の位置を r → ( t ) = ( x ( t ) , y ( t ) ) {\\displaystyle {\\overrightarrow {r}}(t)=(x(t),\\ y(t))} ,速度を v → ( t ) = ( v x ( t ) , v y ( t ) ) {\\displaystyle {\\overrightarrow {v}}(t)=(v_{x}(t),\\ v_{y}(t))} とする。物体を投げ出した時刻を t = 0 {\\displaystyle t=0} ,物体を投げ出した位置を r → ( 0 ) = ( 0 , 0 ) {\\displaystyle {\\overrightarrow {r}}(0)=(0,\\ 0)} とする。初速度 v → ( 0 ) = ( v 0 , 0 ) {\\displaystyle {\\overrightarrow {v}}(0)=(v_{0},\\ 0)} である。 x {\\displaystyle x} 軸方向には正の向きに速さ v 0 {\\displaystyle v_{0}} の等速度運動, y {\\displaystyle y} 軸方向には初速度0,正の向きに加速度 g {\\displaystyle g} の等加速度運動をするから,時刻 t {\\displaystyle t} における物体の加速度 a → = ( d v x d t , d v y d t ) {\\displaystyle {\\overrightarrow {a}}=\\left({\\frac {dv_{x}}{dt}},\\ {\\frac {dv_{y}}{dt}}\\right)} は", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 57, "tag": "p", "text": "したがって,(1.12)より", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 58, "tag": "p", "text": "これを(1.9)に代入すると", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 59, "tag": "p", "text": "以上より", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 60, "tag": "p", "text": "となる。(1.13)より", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 61, "tag": "p", "text": "となり,(1.14)に代入すると", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 62, "tag": "p", "text": "が得られる。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 63, "tag": "p", "text": "物体を斜め向きに投げ出すことを斜方投射という。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 64, "tag": "p", "text": "図のように物体を初速度の大きさ v 0 {\\displaystyle v_{0}} で斜め上向きに投げ出す場合を考える。初速度の水平成分の向きに x {\\displaystyle x} 軸,鉛直上向きに y {\\displaystyle y} 軸をとり,時刻 t {\\displaystyle t} における物体の位置を r → ( t ) = ( x ( t ) , y ( t ) ) {\\displaystyle {\\overrightarrow {r}}(t)=(x(t),\\ y(t))} ,速度を v → ( t ) = ( v x ( t ) , v y ( t ) ) {\\displaystyle {\\overrightarrow {v}}(t)=(v_{x}(t),\\ v_{y}(t))} とする。物体を投げ出した時刻を t = 0 {\\displaystyle t=0} ,物体を投げ出した位置を r → ( 0 ) = ( 0 , 0 ) {\\displaystyle {\\overrightarrow {r}}(0)=(0,\\ 0)} とする。初速度 v → ( 0 ) = ( v 0 cos θ , v 0 sin θ ) {\\displaystyle {\\overrightarrow {v}}(0)=(v_{0}\\cos \\theta ,\\ v_{0}\\sin \\theta )} である。 x {\\displaystyle x} 軸方向には正の向きに速さ v 0 cos θ {\\displaystyle v_{0}\\cos \\theta } の等速度運動, y {\\displaystyle y} 軸方向には初速度 v 0 sin θ {\\displaystyle v_{0}\\sin \\theta } ,加速度 − g {\\displaystyle -g} の等加速度運動をするから,時刻 t {\\displaystyle t} における物体の加速度 a → = ( d v x d t , d v y d t ) {\\displaystyle {\\overrightarrow {a}}=\\left({\\frac {dv_{x}}{dt}},\\ {\\frac {dv_{y}}{dt}}\\right)} は", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 65, "tag": "p", "text": "したがって,(1.12)より", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 66, "tag": "p", "text": "これを(1.9)に代入すると", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 67, "tag": "p", "text": "以上より", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 68, "tag": "p", "text": "となる。(1.16)より", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 69, "tag": "p", "text": "となり,(1.17)に代入すると", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 70, "tag": "p", "text": "が得られる。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 71, "tag": "p", "text": "(1.15), (1.18)より水平投射された物体や斜方投射された物体の軌跡は放物線になることがわかる。このような運動を放物運動という。", "title": "位置と変位" }, { "paragraph_id": 72, "tag": "p", "text": "物理において,力とは物体を変形させたり物体の速度を変えたりする働きのことである。力の働きは,大きさ・向き・作用点の3つで決まり,これらを力の3要素という。力の大きさの単位にはニュートン(N)を用いる。", "title": "力" }, { "paragraph_id": 73, "tag": "p", "text": "なお,本頁では都合上,重力・張力・抗力・弾性力などの力については「様々な力と運動」の節で,作用・反作用については「運動の法則」の節で扱う。", "title": "力" }, { "paragraph_id": 74, "tag": "p", "text": "1物体にいくつかの力が同時に働くとき,それらの力を合わせた働きをする1つの力を考えることができる。この力を合力といい,合力を求めることを力の合成という。", "title": "力" }, { "paragraph_id": 75, "tag": "p", "text": "同一作用線上の同じ向き,又は逆向きの2力 F 1 → , F 2 → {\\displaystyle {\\vec {F_{1}}},\\ {\\vec {F_{2}}}} の合力 F → {\\displaystyle {\\overrightarrow {F}}} の大きさはそれぞれの力の大きさの和や差で求められる。また,異なる方向に働く2力 F 1 → , F 2 → {\\displaystyle {\\vec {F_{1}}},\\ {\\vec {F_{2}}}} の合力 F → {\\displaystyle {\\overrightarrow {F}}} は2力のベクトルを隣合う2辺とする平行四辺形の対角線の矢印に一致する。これを力の平行四辺形の法則といい,このように求めた2力 F 1 → , F 2 → {\\displaystyle {\\vec {F_{1}}},\\ {\\vec {F_{2}}}} の合力 F → {\\displaystyle {\\overrightarrow {F}}} は次式で表される。", "title": "力" }, { "paragraph_id": 76, "tag": "p", "text": "1力をそれと同じ働きをするいくつかの力の組に分けることができる。これを力の分解といい,分けられたそれぞれの力を分力という。", "title": "力" }, { "paragraph_id": 77, "tag": "p", "text": "力の平行四辺形の法則を用いて,1力 F → {\\displaystyle {\\overrightarrow {F}}} は任意方向の2力に分解できる。これを繰り返すと,1力を任意方向のいくつかの力に分解できる。力を分解する場合,互いに垂直な2方向に分解することが多い。力 F → {\\displaystyle {\\overrightarrow {F}}} を x {\\displaystyle x} 軸, y {\\displaystyle y} 軸の二方向に分解し,それぞれの分力を F x → , F y → {\\displaystyle {\\vec {F_{x}}},\\ {\\vec {F_{y}}}} とする。これらの大きさの向きを表す正負の符号をつけたものを, F → {\\displaystyle {\\overrightarrow {F}}} の x {\\displaystyle x} 成分, y {\\displaystyle y} 成分といい,それぞれ F x , F y {\\displaystyle F_{x},\\ F_{y}} と表す。このとき, F → {\\displaystyle {\\overrightarrow {F}}} の大きさを F , F → {\\displaystyle F,\\ {\\overrightarrow {F}}} と x {\\displaystyle x} 軸とのなす角を θ {\\displaystyle \\theta } とすると", "title": "力" }, { "paragraph_id": 78, "tag": "p", "text": "物体に2力 F 1 → , F 2 → {\\displaystyle {\\vec {F_{1}}},\\ {\\vec {F_{2}}}} が働いてつり合うとき,2力は同一作用線上にあり,大きさが等しく逆向きであるから", "title": "力" }, { "paragraph_id": 79, "tag": "p", "text": "このことから,2力がつり合うときは,2力の合力は 0 → {\\displaystyle {\\overrightarrow {0}}} であることがわかる。", "title": "力" }, { "paragraph_id": 80, "tag": "p", "text": "物体に力が働かぬか,又は力がつりあっているとき,その物体は静止又は等速直線運動を続ける。これを慣性の法則と呼ぶ。", "title": "力" }, { "paragraph_id": 81, "tag": "p", "text": "質量 m {\\displaystyle m} の物体に働く外力の和が F → {\\displaystyle {\\overrightarrow {F}}} のとき,物体に生ずる加速度を a → {\\displaystyle {\\overrightarrow {a}}} とすると,次の運動方程式が成り立つ。", "title": "力" }, { "paragraph_id": 82, "tag": "p", "text": "なお,(1.4)をを用いて,運動方程式は", "title": "力" }, { "paragraph_id": 83, "tag": "p", "text": "とも表される。", "title": "力" }, { "paragraph_id": 84, "tag": "p", "text": "2物体A, Bが互いに力を及ぼしあっている(相互作用をしている)とき,", "title": "力" }, { "paragraph_id": 85, "tag": "p", "text": "として", "title": "力" }, { "paragraph_id": 86, "tag": "p", "text": "が成り立つ。つまり,AがBに及ぼす力とBがAに及ぼす力は大きさが等しくて向きが逆である。", "title": "力" }, { "paragraph_id": 87, "tag": "p", "text": "物理量はすべて,基準量の何倍かを表す数値に単位記号を付けて表す。即ち次の関係がある。", "title": "力" }, { "paragraph_id": 88, "tag": "p", "text": "力学ではMKS単位系が用いられており,長さはm(メートル),質量はkg(キログラム),時間はs(秒)を基本単位として定めている。この3単位に物理学など科学分野や技術分野で用いられる4単位(電流はA(アンペア),温度はK(ケルビン),物質量はmol(モル),光度はcd(カンデラ))を加えた合計7単位を基本単位として定めたのが国際単位系(SI)である。また,基本単位から導かれる単位を誘導単位(組立単位)とよぶ。", "title": "力" }, { "paragraph_id": 89, "tag": "p", "text": "地球上の全物体には,地球が鉛直下向きに引く力,重力が働いている。質量を m {\\displaystyle m} 〔kg〕,重力加速度の大きさを g {\\displaystyle g} 〔m/s 2 {\\displaystyle ^{2}} 〕,重力の大きさ(重さないし重量)を W {\\displaystyle W} 〔N〕とすると,(2.1)より", "title": "力" }, { "paragraph_id": 90, "tag": "p", "text": "となる。つまり,重力の大きさは質量に比例し,質量 m {\\displaystyle m} 〔kg〕の物体に働く重力の大きさ W {\\displaystyle W} 〔N〕は m g {\\displaystyle mg} 〔N〕である。地球上において重力加速度の大きさ g {\\displaystyle g} は約9.8m/s 2 {\\displaystyle ^{2}} なので,質量1kgの物体に働く重力の大きさは約9.8Nである。なお,重力加速度の大きさは惑星によっても異なるし,同じ惑星においても緯度により若干変わる。", "title": "力" }, { "paragraph_id": 91, "tag": "p", "text": "(2.3)より質量は物体に力が働いた場合の加速度の生じにくさ,即ち慣性の大きさを表す量(慣性質量)であることが分かる。質量は物体固有の量であり,場所によらない。質量の単位である1kgは,国際度量衡局にある国際キログラム原器の質量と定められていたが,2019年5月からプランク定数とよばれる普遍的な定数に基づく定義へと変更された。", "title": "力" }, { "paragraph_id": 92, "tag": "p", "text": "糸の張力や面の抗力といわれる力は構成している分子間力の合力であるが,通常は伸びぬ糸の張力や固い面が接している物体に及ぼす抗力等は束縛力(拘束力)とよばれ,その大きさは束縛条件(拘束条件)を使って運動方程式を解いてみねば分からぬ未知数として扱われる。", "title": "力" }, { "paragraph_id": 93, "tag": "p", "text": "図1のように質量 m {\\displaystyle m} の物体に鉛直下向きに重力 m g {\\displaystyle mg} ,鉛直上向きに伸び縮みのない糸が物体を引く力(張力) T {\\displaystyle T} が働いており,物体の加速度を鉛直上向きに a {\\displaystyle a} とすると,運動方程式は", "title": "力" }, { "paragraph_id": 94, "tag": "p", "text": "続いて,図2のように水平でなめらかな机上に質量 M {\\displaystyle M} の台車があり,その台車に質量の無視できる糸がつながれ,滑車を介して糸の先に質量 m {\\displaystyle m} の小物体が吊り下げられている場合を考えよう。台車の加速度の大きさを a {\\displaystyle a} とおくと,束縛条件より小物体の加速度の大きさも a {\\displaystyle a} である。台車が受ける垂直抗力の大きさを N {\\displaystyle N} とおくと,台車の運動方程式は(上段が水平方向,下段が鉛直方向)", "title": "力" }, { "paragraph_id": 95, "tag": "p", "text": "小物体の運動方程式は(鉛直方向)", "title": "力" }, { "paragraph_id": 96, "tag": "p", "text": "( ∗ ) + ( ∗ ∗ ) {\\displaystyle (*)+(**)} より", "title": "力" }, { "paragraph_id": 97, "tag": "p", "text": "( ∗ ) {\\displaystyle (*)} に代入", "title": "力" }, { "paragraph_id": 98, "tag": "p", "text": "右図のように質量の無視できる糸の両端に質量 m 1 {\\displaystyle m_{1}} と質量 m 2 {\\displaystyle m_{2}} の2物体が滑車を介して吊り下げられている場合を考える(ただし m 1 > m 2 {\\displaystyle m_{1}>m_{2}} )。重力加速度を g {\\displaystyle g} とすると,質量 m 1 {\\displaystyle m_{1}} の物体には鉛直下向きに重力 W 1 = m 1 g {\\displaystyle W_{1}=m_{1}g} ,質量 m 2 {\\displaystyle m_{2}} の物体には鉛直下向きに重力 W 2 = m 2 g {\\displaystyle W_{2}=m_{2}g} が働いている。質量 m 1 {\\displaystyle m_{1}} の物体の加速度の大きさを a {\\displaystyle a} ,質量 m 2 {\\displaystyle m_{2}} の物体の加速度の大きさを a ′ {\\displaystyle a'} (一応説明のため),糸の張力の大きさを T {\\displaystyle T} とおくと,2物体の鉛直方向の運動方程式は", "title": "力" }, { "paragraph_id": 99, "tag": "p", "text": "束縛条件は", "title": "力" }, { "paragraph_id": 100, "tag": "p", "text": "( ★ ) {\\displaystyle (\\bigstar )} より,質量 m 2 {\\displaystyle m_{2}} の物体の加速度の大きさは a {\\displaystyle a} である(実際はこの程度の束縛条件は自明で最初から a {\\displaystyle a} としてしまって構わない)。よって, ( ◻ ) {\\displaystyle (\\square )} は", "title": "力" }, { "paragraph_id": 101, "tag": "p", "text": "( △ ) + ( ◻ ) ′ {\\displaystyle (\\triangle )+(\\square )'} より", "title": "力" }, { "paragraph_id": 102, "tag": "p", "text": "( △ ) {\\displaystyle (\\triangle )} に代入", "title": "力" }, { "paragraph_id": 103, "tag": "p", "text": "面や線に沿って運動する物体に面又は線が及ぼす力を面又は線の抗力という。抗力の面に垂直な成分或いは法線方向の分力を垂直抗力,面に平行な成分或いは接線方向の分力を摩擦力という。", "title": "力" }, { "paragraph_id": 104, "tag": "p", "text": "静止摩擦力は,静止している物体を外から引く力に応じてその大きさを変化させ,摩擦がなかったならば物体が行うであろう運動を妨げる向きに働く。その最大値を最大静止摩擦力或いは最大摩擦力といい,最大摩擦力の大きさは垂直抗力に比例することが分かっている。静止摩擦力,最大摩擦力の大きさをそれぞれ F , F m a x {\\displaystyle F,\\ F_{\\mathrm {max} }} ,静止摩擦係数を μ {\\displaystyle \\mu } ,垂直抗力の大きさを N {\\displaystyle N} とおくと", "title": "力" }, { "paragraph_id": 105, "tag": "p", "text": "物体に働く外力が最大摩擦力を越えると,動摩擦力が働く。動摩擦力は物体の運動を妨げる向きに働き,その大きさは垂直抗力に比例する。動摩擦力を F ′ {\\displaystyle F'} ,動摩擦係数を μ ′ {\\displaystyle \\mu '} とおくと", "title": "力" }, { "paragraph_id": 106, "tag": "p", "text": "なお,動摩擦係数は静止摩擦係数より小さい,即ち動摩擦力は最大摩擦力より小さいことが分かっている。", "title": "力" }, { "paragraph_id": 107, "tag": "p", "text": "ばねに何も力が加わっていないときのばねの長さをばねの自然長という。一端を固定したばねの他端にばねが伸びる方向に力を加えるとばねは伸び,逆にばねが縮む方向に力を加えるとばねは縮む。その際ばねは自然長に戻ろうとする性質があり,このような力を加えたときに生じた変形が力を加えるのを止めると元に戻る性質を弾性(英: elasticity)という。この弾性に基づいて生ずる力を弾性力(英: elastic force)という。ばね弾性力はばねの両端で,自然長に向かう向きに働き,その大きさはばねが自然長から伸び縮みした距離に比例しこれをフックの法則(英: Hooke's law)という。ばねが伸びる方向に x {\\displaystyle x} 軸をとり,ばねの自然長の位置を原点にし,ばねの位置を x {\\displaystyle x} 〔m〕,ばね定数を k {\\displaystyle k} 〔N/m〕とすると,ばねの弾性力 F {\\displaystyle F} 〔N〕は", "title": "力" }, { "paragraph_id": 108, "tag": "p", "text": "なお,これは復元力ともよばれる。また,ばねの伸び縮みがあまりにも大きくなるとこれは成り立たなくなる。", "title": "力" }, { "paragraph_id": 109, "tag": "p", "text": "物理では,物体に力を加えて動かしたとき,力は物体に対して「仕事をした」という。", "title": "仕事" }, { "paragraph_id": 110, "tag": "p", "text": "1次元空間( x {\\displaystyle x} 軸上)の運動を考える。運動方程式", "title": "仕事" }, { "paragraph_id": 111, "tag": "p", "text": "に v = d x d t {\\displaystyle v={\\frac {dx}{dt}}} を掛けて", "title": "仕事" }, { "paragraph_id": 112, "tag": "p", "text": "両辺を t = t 1 {\\displaystyle t=t_{1}} から t = t 2 {\\displaystyle t=t_{2}} まで積分すると", "title": "仕事" }, { "paragraph_id": 113, "tag": "p", "text": "時刻 t = t 1 {\\displaystyle t=t_{1}} のとき v = v 1 , x = x 1 {\\displaystyle v=v_{1},\\ x=x_{1}} ,時刻 t = t 2 {\\displaystyle t=t_{2}} のとき v = v 2 , x = x 2 {\\displaystyle v=v_{2},\\ x=x_{2}} と考えて t t 1 → t 2 v v 1 → v 2 x x 1 → x 2 {\\displaystyle {\\begin{array}{c|c}t&t_{1}\\to t_{2}\\\\\\hline v&v_{1}\\to v_{2}\\\\\\hline x&x_{1}\\to x_{2}\\\\\\end{array}}} とすると", "title": "仕事" }, { "paragraph_id": 114, "tag": "p", "text": "この 1 2 m v 2 {\\displaystyle {\\frac {1}{2}}mv^{2}} を運動エネルギー(英: kinetic energy)という。特に,力 F {\\displaystyle F} が一定のとき", "title": "仕事" }, { "paragraph_id": 115, "tag": "p", "text": "(3.1)の右辺は力 F {\\displaystyle F} のした仕事を表している。ゆえに(1次元においては)運動エネルギー変化は仕事に等しいという因果関係が分かる。", "title": "仕事" }, { "paragraph_id": 116, "tag": "p", "text": "まず力 F → {\\displaystyle {\\overrightarrow {F}}} が一定の場合を考える。時刻 t {\\displaystyle t} において速度 v → ( t ) {\\displaystyle {\\overrightarrow {v}}(t)} で運動する質量 m {\\displaystyle m} の物体の運動方程式", "title": "仕事" }, { "paragraph_id": 117, "tag": "p", "text": "これと(1.12)より時刻 0 ∼ t {\\displaystyle 0\\sim t} における運動エネルギー変化はこの間の物体の変位を Δ r → = r → ( t ) − r → ( 0 ) {\\displaystyle {\\mathit {\\Delta }}{\\overrightarrow {r}}={\\overrightarrow {r}}(t)-{\\overrightarrow {r}}(0)} として", "title": "仕事" }, { "paragraph_id": 118, "tag": "p", "text": "ここで F → {\\displaystyle {\\overrightarrow {F}}} と Δ r → {\\displaystyle {\\mathit {\\Delta }}{\\overrightarrow {r}}} とのなす角を θ {\\displaystyle \\theta } とすると,この間に力 F → {\\displaystyle {\\overrightarrow {F}}} がした仕事 W {\\displaystyle W} は", "title": "仕事" }, { "paragraph_id": 119, "tag": "p", "text": "と与えられる。なお仕事の単位はJ=N・mである(ジュール)。", "title": "仕事" }, { "paragraph_id": 120, "tag": "p", "text": "仕事が始点と終点のみで決まり,経路によらぬ力を保存力(英: conservative force)(例:重力,弾性力,万有引力,静電気力等),その他の力(仕事が経路による力)を非保存力(例:摩擦力等)という。 保存力の場合,始点 r 0 → {\\displaystyle {\\vec {r_{0}}}} を決めるとその始点 r 0 → {\\displaystyle {\\vec {r_{0}}}} を基準とした終点 r → {\\displaystyle {\\overrightarrow {r}}} での保存力 f C → {\\displaystyle {\\vec {f_{\\mathrm {C} }}}} の位置エネルギー(英: potential energy) U ( r → ) {\\displaystyle U({\\overrightarrow {r}})} が決まる。", "title": "仕事" }, { "paragraph_id": 121, "tag": "p", "text": "鉛直上方に y {\\displaystyle y} 軸をとり, y = 0 {\\displaystyle y=0} の点を基準とした y = h {\\displaystyle y=h} での質量 m {\\displaystyle m} の物体の位置エネルギー U {\\displaystyle U} は,重力加速度を g {\\displaystyle g} とすると,重力は − m g {\\displaystyle -mg} であるから", "title": "仕事" }, { "paragraph_id": 122, "tag": "p", "text": "また,時刻 t {\\displaystyle t} において y = y ( t ) {\\displaystyle y=y(t)} の位置にある質量 m {\\displaystyle m} の物体の時刻 t = 0 {\\displaystyle t=0} から t = t {\\displaystyle t=t} までの位置エネルギー変化 Δ U {\\displaystyle {\\mathit {\\Delta }}U} は,重力加速度を g {\\displaystyle g} とすると", "title": "仕事" }, { "paragraph_id": 123, "tag": "p", "text": "右図のように壁に取付けられたばね定数 k {\\displaystyle k} のばねにつながれた質量 m {\\displaystyle m} の物体において,水平方向右向きに x {\\displaystyle x} 軸をとり,ばねの長さが自然長のときの物体の位置を原点とする。物体が x {\\displaystyle x} の位置にあるとき,運動方程式", "title": "仕事" }, { "paragraph_id": 124, "tag": "p", "text": "よって,原点を基準とした位置 x {\\displaystyle x} での物体の位置エネルギー U {\\displaystyle U} は", "title": "仕事" }, { "paragraph_id": 125, "tag": "p", "text": "なお,この弾性力による位置エネルギーを弾性エネルギー(英: elastic energy)ともいう。また,時刻 t {\\displaystyle t} において x = x ( t ) {\\displaystyle x=x(t)} の位置にある質量 m {\\displaystyle m} の物体の時刻 t = 0 {\\displaystyle t=0} から t = t {\\displaystyle t=t} までの位置エネルギー(弾性エネルギー)変化 Δ U {\\displaystyle {\\mathit {\\Delta }}U} は", "title": "仕事" }, { "paragraph_id": 126, "tag": "p", "text": "運動エネルギーと位置エネルギーの和を力学的エネルギー(英: mechanical energy)という。運動エネルギー,位置エネルギー,力学エネルギーをそれぞれ K , U , E {\\displaystyle K,\\ U,\\ E} とおくと", "title": "仕事" }, { "paragraph_id": 127, "tag": "p", "text": "右図のように質量 m {\\displaystyle m} の物体を地上からの高さ h 2 {\\displaystyle h_{2}} から高さ h 1 {\\displaystyle h_{1}} まで落下させるとする。物体には鉛直下向きに重力 m g {\\displaystyle mg} (保存力)が働いている。(3.1a)より", "title": "仕事" }, { "paragraph_id": 128, "tag": "p", "text": "上式の同値変形後の式を見ると, h 1 {\\displaystyle h_{1}} 地点での物体の運動エネルギーと位置エネルギーの和が h 2 {\\displaystyle h_{2}} 地点での物体の運動エネルギーと位置エネルギ-の和が等しい,すなわち保存力場での質点の運動は力学的エネルギーが一定であることが分かる。", "title": "仕事" }, { "paragraph_id": 129, "tag": "p", "text": "これを力学的エネルギー保存則(英: law of conservation of mechanical energy)という。", "title": "仕事" } ]
小学校・中学校・高等学校の学習>高等学校の学習>高等学校理科 物理基礎
<small> [[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校理科 物理基礎]] </small> =物体の運動= ==位置と変位== [[File:高校物理I 等速直線運動 平均の速度.svg|thumb|280px|変位]] 直線上を物体が運動するとき,直線に沿って座標軸(<math>x</math>軸)をとることで物体の'''位置'''({{Lang-en-short|position}})を表せる。物体の位置変化を'''変位'''({{Lang-en-short|displacement}})といい,時刻<math>t_1,\ t_2\ (t_1<t_2)</math>〔単位:s(秒)〕における物体の位置がそれぞれ<math>x_1,\ x_2</math>〔単位:m(メートル)〕であるとき,変位<math>\mathit{\Delta}x</math>は :<math>\mathit{\Delta}x=x_2-x_1</math> であり。変位の大きさが2点間距離を表し,正負の符号が移動方向を表す。 ==速度== ===速さ=== 物体が運動するとき, その移動距離を経過時間で割ったもの, すなわち単位時間あたりの移動距離を'''速さ'''({{Lang-en-short|speed}})という。速さにおいては向きを考えない。運動している物体の移動距離を<math>s</math>, 経過時間を<math>\mathit{\Delta}t</math>とすると, 物体の速さ<math>v</math>は次のように表される。 :<math>v = s \div \mathit{\Delta}t=\frac{s}{\mathit{\Delta}t}</math>. (1.1) 速さの単位は時間と距離の単位によって決まる。よく用いられるのは, m/s(メートル毎秒)である。また, 日常生活では距離の単位をkm(キロメートル), 時間の単位をh(時)とするkm/h(キロメートル毎時)もよく使われる。 ===速度=== 速さが同じでも向きが異ならば異なる方向に進む。運動の様子を知るには速さだけでなく向きも考えねばならない。速さに向きの要素を加えたもの,すなわち単位時間あたりの変位を'''速度'''({{Lang-en-short|velocity}})という。たとえば、西へ走る40㎞/hの車Aと東へ走る40㎞/hの車Bは速さは等しいが、向きは反対である。このことを表すために正負の記号を利用する。つまり、西を正・東を負とするとAの速度は+40㎞/h, Bの速度は-40㎞/hと表記できる。 このように大きさと向きを持つ量を'''ベクトル'''({{Lang-en-short|vector}}, 独: Vektor)といい, その記号は<math>\vec{v}</math>と書く。ただし, 先ほどのように直線上(1次元)においては速度の値に±が書かれている場合には矢印を省略して単に<math>v</math>と書いてもよい。逆に,速さのように大きさのみを持つ量を'''スカラー'''({{Lang-en-short|scalar}})という。 なお,平面(2次元)・空間(3次元)上の運動や高度な運動の表し方等は後程説明する。 ===平均速度と瞬間速度=== [[File:平均速度と瞬間速度.svg|thumb|300px|平均速度と瞬間速度]] 時刻<math>t_1</math>[s]における位置を<math>x_1</math>[m], 時刻<math>t_2</math>[s]における位置を<math>x_2</math>[m](ただし<math> t_1<t_2 </math>)としたとき, 位置の変位は<math>x_2 - x_1 = \mathit{\Delta}x</math>, 経過時間は<math>t_2 - t_1 = \mathit{\Delta}t</math>で表される。このとき, :<math>\bar v = \frac{x_2 - x_1}{t_2 - t_1} =\frac{\mathit{\Delta}x}{\mathit{\Delta}t}</math>. (1.2) (1.2)はある区間における単位時間あたりの変位を表している。こうして求められる速度を'''平均速度'''<math>\bar v</math>(バーvと読む)という。なお,(1.1)で得られた速さも経過時間における平均の速さである。 このとき<math>\mathit{\Delta}t</math>の値を極めて小さくする(すなわち<math>t_2</math>を限りなく<math>t_1</math>に近づける)と平均速度<math>\bar v</math>は時刻<math>t_1</math>における'''瞬間速度'''を表す。時刻<math>t</math>における瞬間速度<math>v</math>は以下のように位置<math>x</math>の一階微分で求められる。 :<math>v =\lim_{\mathit{\Delta}t\to 0}\frac{\mathit{\Delta}x}{\mathit{\Delta}t} =\frac{dx}{dt}</math>. 普通,速度(速さ)は瞬間速度(速さ)をさす。自動車などの速度計に代表される速さの測定器で表示される数値は瞬間の速さである。 ===等速直線運動=== <gallery widths=300px heights=250px> File:等速直線運動 x-t.svg|等速直線運動 x-t グラフ File:等速直線運動 v-t.svg|等速直線運動 v-t グラフ </gallery> 一直線上を一定の速さで進む運動を'''等速直線運動'''({{Lang-en-short|linear motion of uniform speed}})あるいは'''等速度運動'''({{Lang-en-short|motion of uniform velecity}})という。時刻<math>t</math>において時刻<math>t = 0</math>に位置<math>x_0</math>から<math>+ x</math>方向に速度<math>v</math>で等速直線運動した物体の位置<math>x</math>は :<math>x =x_0+\int _0^t vdt = x_0 + vt</math> となる。この初期位置<math>x_0</math>は'''初期条件'''({{Lang-en-short|initial condition}})である。なお,変位<math>\mathit{\Delta}x = x - x_0</math>とおくと :<math>\mathit{\Delta}x = vt</math>. ===速度の合成と分解=== 流れるプールや動く歩道(エスカレーター)を想像すると,流れに乗って動くときと流れに逆らって動くときでは感覚が違うであろう。動く歩道上を(動く歩道の進行方向と同じ向きに)歩く人の速さは,静止歩道上に歩く人の速さよりも大きくなる。これは歩行速度に動く歩道の速度が加わるからである。 ====直線上での速度の合成==== 船が川の流れに対して平行に進んでいる場合を考える。静水中の船の速度を<math>v_1</math>,地面に対する川の水の流れの速度を<math>v_2</math>とするとき,地面に対する船の速度<math>v</math>は次式で表される。 :<math>v = v_1 + v_2</math>. 物体の速度<math>v</math>が上式のように表されるとき,速度<math>v</math>を<math>v_1</math>と<math>v_2</math>との'''合成速度'''といい,合成速度を求めることを'''速度の合成'''という。直線上の運動では,どの向きを正とするかを考えてから速度の和を取る。 ====平面上(2次元)での速度の合成==== [[File:速度の合成 川を横切る船.svg|thumb|280px|速度の合成]] 水が流れている川の上を横切ろうとする船を考える。流水中でも静水中と同じ出力で船が動く場合,静水中での速度が<math>\vec{v_1}</math>の船が水の流れる速度が<math>\vec{v_2}</math>である川の上を横切るとき,地面に対する船の速度<math>v</math>は次式で表される。 :<math>\overrightarrow v = \vec{v_1}+\vec{v_2}</math>. (1.3) 右図のように,川の流れの速さのぶんだけ船は下流に流される。よって,合成速度の向きは図のように斜めの方向になる。 ====速度の分解==== (1.3)は速度<math>\overrightarrow v</math>を速度<math>\vec{v_1},\ \vec{v_2}</math>に分ける式と考えることもできる。このような見方を'''速度の分解'''といい,分解された速度<math>\vec{v_1},\ \vec{v_2}</math>を'''分速度'''という。 2次元において,速度<math>\overrightarrow v</math>をたがいに垂直な座標軸である<math>x</math>軸,<math>y</math>軸方向へ分解し,それぞれの分速度を<math>\vec{v_x},\ \vec{v_y}</math>とする。分速度<math>\vec{v_x},\ \vec{v_y}</math>の大きさに座標軸の向きを表す正負の符号をつけたものを,<math>\overrightarrow v</math>の<math>x</math>成分,<math>y</math>成分といい,それぞれ<math>v_x,\ v_y</math>とすると,<math>\overrightarrow v =(v_x,\ v_y)</math>と表せる。このとき,<math>\overrightarrow v</math>の大きさ(速さ)を<math>v, \overrightarrow v</math>と<math>x</math>軸とのなす角を<math>\theta</math>とすると :<math>v_x = v\cos \theta,\ v_y = v\sin \theta,\ v = \sqrt{{v_x}^2 + {v_y}^2}</math>. ===相対速度=== [[File:相対速度 電車の中から見た場合.svg|thumb|280px|相対速度 電車の中から見た場合]] 動く物体Aから観測した他の物体Bの速度のことを,'''Aに対するBの相対速度'''({{Lang-en-short|relative velocity}})という。観測者の速度が基準である。 動いている電車の中に観測者がおり,外は雨が降っているとする。電車の中の観測者から見て,雨の速度はどう見えるか? 雨の方向と電車の動く方向とが違う為,ベクトルで考える必要がある。 電車の速度を<math>\overrightarrow{v_\text{A}}</math>とし,雨の速度(つまり雨の落下速度)を<math>\overrightarrow{v_\text{B}}</math> とする。この関係をベクトルで表記すると :<math>\overrightarrow{v_\text{AB}} = \overrightarrow{v_\text{B}} - \overrightarrow{v_\text{A}}</math>. ==加速度== [[File:瞬間の加速度.svg|thumb|300px|平均加速度と瞬間加速度]] 速度のグラフの傾き,ある瞬間の速度の増減の度合い,すなわち,単位時間あたりの速度変化を'''加速度'''({{Lang-en-short|acceleration}})〔単位:m/s<math>^2</math>(メートル毎秒毎秒)〕という。 時刻<math>t_1</math>での速度を<math>v_1</math>,時刻<math>t_2</math>での速度を<math>v_2</math>とした場合,単位時間当たりの速度の変化量を表す'''平均加速度'''<math>\bar a</math>は次式で表される。 :<math>\bar a= \frac{v_2 - v_1}{t_2-t_1}= \frac{\mathit{\Delta}v}{\mathit{\Delta} t}</math>. このとき<math>\mathit{\Delta}t</math>の値を極めて小さくする(すなわち<math>t_2</math>を限りなく<math>t_1</math>に近づける)と平均加速度<math>\bar a</math>は時刻<math>t_1</math>における'''瞬間加速度'''を表す。普通,加速度は瞬間加速度をさす。時刻<math>t</math>における(瞬間)加速度<math>a</math>は以下のように速度<math>v</math>の一階微分又は位置<math>x</math>の二階微分で求められる。 :<math>a =\lim_{\mathit{\Delta}t\to 0}\frac{\mathit{\Delta}v}{\mathit{\Delta}t} =\frac{dv}{dt}= \frac{d^2 x}{dt^2}</math>. (1.4) ===等加速度直線運動=== 滑らかな斜面上で物体を静かに放すと物体は一定加速度で直線運動する。このような運動を'''等加速度直線運動'''({{Lang-en-short|linear motion of uniform acceleration}})という。 加速度<math>a</math>で等加速度直線運動をしている物体を考える。時刻<math>t</math>における速度<math>v</math>は :<math>v =v_0+\int _0^t adt = v_0 + at</math> (1.5) となる。さらに,時刻<math>t</math>における物体の位置<math>x</math>は :<math>x =x_0+\int _0^t vdt =x_0+\int _0^t (v_0 + at)dt = x_0 + v_0 t + \frac{1}{2} at^2</math> (1.6) となる。これら初速度<math>v_0</math>,初期位置<math>x_0</math>は初期条件である。 また,(1.5)を変形すると :<math>t =\frac{v - v_0}{a}</math> が得られ,これを(1.6)に代入すると :<math>x = x_0 + v_0 \frac{v - v_0}{a} + \frac{1}{2} a\left(\frac{v - v_0}{a}\right)^2 \quad\therefore v^2 - v_0^2 = 2a(x - x_0)</math> (1.7) が得られる。なお,変位<math>\mathit{\Delta}x = x - x_0</math>とおくと,(1.6), (1.7)は :<math>\mathit{\Delta}x = v_0 t + \frac{1}{2} at^2</math> :<math>v^2 - v_0^2 = 2a\mathit{\Delta}x</math> に変形できる。 ===2次元・3次元における位置・速度・加速度=== 時刻<math>t</math>における位置は2次元においては<math>\overrightarrow r(t)=(x(t),\ y(t))</math>,3次元においては<math>\overrightarrow r(t)=(x(t),\ y(t),\ z(t))</math>と定義される(<math>(t)</math>は時刻<math>t</math>の関数であることを表す)。以下では主に3次元の場合を中心に説明する。 時刻<math>t</math>における位置は<math>\overrightarrow r(t)=(x(t),\ y(t),\ z(t))</math>,微小時間<math>\mathit{\Delta}t</math>間の変位は<math>\mathit{\Delta}\overrightarrow r =\overrightarrow r(t +\mathit{\Delta}t)-\overrightarrow r(t)=(\mathit{\Delta}x,\ \mathit{\Delta}y,\ \mathit{\Delta}z)</math>と定義される。このとき :<math>\bar \overrightarrow v =\frac{\overrightarrow r(t +\mathit{\Delta}t)-\overrightarrow r(t)}{\mathit{\Delta}t}=\frac{\mathit{\Delta}\overrightarrow r}{\mathit{\Delta}t}</math> を<math>\mathit{\Delta}t</math>間の平均速度,<math>\mathit{\Delta}t\to 0</math>の極限 :<math>\overrightarrow v(t)=\lim_{\mathit{\Delta}t\to 0}\frac{\overrightarrow r(t +\mathit{\Delta}t)-\overrightarrow r(t)}{\mathit{\Delta}t}=\frac{d\overrightarrow r(t)}{dt}=\left(\frac{dx(t)}{dt},\ \frac{dy(t)}{dt},\ \frac{dz(t)}{dt}\right)=(v_x(t),\ v_y(t),\ v_z(t))</math> (1.8) を時刻<math>t</math>での(瞬間)速度という。なお,時刻<math>t</math>での速さ(速度の大きさ)は :<math>v =|\overrightarrow v|=\sqrt{{v_x}^2 +{v_y}^2 +{v_z}^2}</math>. この場合も,速度から位置が求まり,各成分毎に :<math>x(t)= x(0)+\int _0 ^t v_x(t)dt</math> :<math>y(t)= y(0)+\int _0 ^t v_y(t)dt</math> :<math>z(t)= z(0)+\int _0 ^t v_z(t)dt</math> が成り立ち,これらをベクトルを用いてひとまとめにして任意の時刻<math>t</math>における位置 :<math>\overrightarrow r(t)=\overrightarrow r(0)+\int _0 ^t\overrightarrow v(t)dt</math> (1.9) が求められる。 また, :<math>\bar \overrightarrow a =\frac{\overrightarrow v(t +\mathit{\Delta}t)-\overrightarrow v(t)}{\mathit{\Delta}t}=\frac{\mathit{\Delta}\overrightarrow v}{\mathit{\Delta}t}</math> (<math>\mathit{\Delta}\overrightarrow v</math>は微小時間<math>\mathit{\Delta}t</math>間の速度変化) を<math>\mathit{\Delta}t</math>間の平均加速度,<math>\mathit{\Delta}t\to 0</math>の極限 :<math>\begin{align}\overrightarrow a(t)=\lim_{\mathit{\Delta}t\to 0}\frac{\overrightarrow v(t +\mathit{\Delta}t)-\overrightarrow v(t)}{\mathit{\Delta}t}& =\frac{d\overrightarrow v(t)}{dt}=\left(\frac{dv_x(t)}{dt},\ \frac{dv_y(t)}{dt},\ \frac{dv_z(t)}{dt}\right)\\ & =\frac{d^2\overrightarrow r(t)}{dt^2}=\left(\frac{d^2x(t)}{dt^2},\ \frac{d^2y(t)}{dt^2},\ \frac{d^2z(t)}{dt^2}\right)\end{align}</math> (1.10) を時刻<math>t</math>での(瞬間)加速度という。 この場合も,加速度から速度が求まり,各成分毎に :<math>v_x(t)=v_x(0)+\int _0 ^t\frac{dv_x(t)}{dt}dt</math> :<math>v_y(t)=v_y(0)+\int _0 ^t\frac{dv_y(t)}{dt}dt</math> :<math>v_z(t)=v_z(0)+\int _0 ^t\frac{dv_z(t)}{dt}dt</math> が成り立ち,これらをベクトルを用いてひとまとめにして任意の時刻<math>t</math>における速度 :<math>\overrightarrow v(t)=\overrightarrow v(0)+\int _0 ^t\overrightarrow a(t)dt</math> (1.11) が求められる。なお,これら初期条件<math>\overrightarrow r(0), \overrightarrow v(0)</math>の値を初期値という。 特に,加速度一定のときの運動は'''等加速度運動'''({{Lang-en-short|motion of uniform acceleration}})といわれ,上記の公式(1.11, 9)はそれぞれ :<math>\begin{cases}\overrightarrow v(t)=\overrightarrow v(0)+\int _0 ^t\overrightarrow adt=\overrightarrow v(0)+\overrightarrow at \\ \overrightarrow r(t)=\overrightarrow r(0)+\int _0 ^t(\overrightarrow v(0)+\overrightarrow at)dt =\overrightarrow r(0)+\overrightarrow v(0)t +\frac{1}{2}\overrightarrow at^2\end{cases}</math> (1.12) となる。 ==落体の運動== ===自由落下=== 重力だけが働いて初速度0で落下する運動を'''自由落下'''という。 ===鉛直投射=== ====鉛直投げ下ろし==== 鉛直下向きに<math>y</math>軸をとり,投げ下ろした時刻を<math>t = 0</math>として,物体を投げ下ろした位置を<math>y_0</math>,初速度の大きさを<math>v_0</math>,時刻<math>t</math>における物体の速度を<math>v</math>,位置を<math>y</math>とすると,加速度は重力加速度<math>g</math>であるから :<math>v = v_0 + gt</math> :<math>y = y_0 + v_0 t + \frac{1}{2} gt^2</math> :<math>v^2 - v_0^2 = 2g(y - y_0)</math> が得られる。なお,物体の初速度の大きさ<math>v_0 = 0</math>,すなわち物体が前述の'''自由落下'''運動をするとき,上3式は :<math>v = gt</math> :<math>y = y_0 + \frac{1}{2} gt^2</math> :<math>v^2 = 2g(y - y_0)</math> となり,自由落下の式が得られる。 ====鉛直投げ上げ==== 鉛直上向きに<math>y</math>軸をとり,投げ上げた時刻を<math>t = 0</math>として,物体を投げ上げた位置を<math>y_0</math>,初速度の大きさを<math>v_0</math>,時刻<math>t</math>における物体の速度を<math>v</math>,位置を<math>y</math>とすると,加速度は重力加速度<math>-g</math>であるから :<math>v = v_0 - gt</math> :<math>y = y_0 + v_0 t - \frac{1}{2} gt^2</math> :<math>v^2 - v_0^2 = -2g(y - y_0)</math> が得られる。 ===水平投射=== 物体をある高さから水平方向に投げ出すことを'''水平投射'''という。 物体を水平方向に初速度の大きさ<math>v_0</math>で投げ出したときの運動を考える。初速度の向きに<math>x</math>軸,鉛直下向きに<math>y</math>軸をとり,時刻<math>t</math>における物体の位置を<math>\overrightarrow r(t)=(x(t),\ y(t))</math>,速度を<math>\overrightarrow v(t)=(v_x(t),\ v_y(t))</math>とする。物体を投げ出した時刻を<math>t = 0</math>,物体を投げ出した位置を<math>\overrightarrow r(0)=(0,\ 0)</math>とする。初速度<math>\overrightarrow v(0)=(v_0,\ 0)</math>である。<math>x</math>軸方向には正の向きに速さ<math>v_0</math>の等速度運動,<math>y</math>軸方向には初速度0,正の向きに加速度<math>g</math>の等加速度運動をするから,時刻<math>t</math>における物体の加速度<math>\overrightarrow a =\left(\frac{dv_x}{dt},\ \frac{dv_y}{dt}\right)</math>は :<math>\overrightarrow a =(0,\ g)</math>. したがって,(1.12)より :<math>\overrightarrow v(t)=\overrightarrow v(0)+\int _0 ^t\overrightarrow adt =(v_0,\ gt).\ \left(\because v_x(t)= v_0 +\int _0 ^t 0dt = v_0,\ v_y(t)= 0 +\int _0 ^t gdt = gt\right)</math> これを(1.9)に代入すると :<math>\overrightarrow r(t)=\overrightarrow r(0)+\int _0 ^t\overrightarrow v(t)dt =\left(v_0t,\ \frac{1}{2}gt^2\right).\ \left(\because x(t)= 0 +\int _0 ^t v_0dt =v_0t,\ y(t)= 0 +\int _0 ^t gtdt =\frac{1}{2}gt^2\right)</math> 以上より :<math>v_x = v_0</math> :<math>v_y = gt</math> :<math>x = v_0t</math> (1.13) :<math>y =\frac{1}{2}gt^2</math> (1.14) となる。(1.13)より :<math>t =\frac{x}{v_0}</math> となり,(1.14)に代入すると :<math>y =\frac{1}{2}g\left(\frac{x}{v_0}\right)^2 =\frac{gx^2}{2v_0^2}</math> (1.15) が得られる。 ===斜方投射=== [[File:斜方投射の運動.svg|thumb|400px|斜方投射]] 物体を斜め向きに投げ出すことを'''斜方投射'''という。 図のように物体を初速度の大きさ<math>v_0</math>で斜め上向きに投げ出す場合を考える。初速度の水平成分の向きに<math>x</math>軸,鉛直上向きに<math>y</math>軸をとり,時刻<math>t</math>における物体の位置を<math>\overrightarrow r(t)=(x(t),\ y(t))</math>,速度を<math>\overrightarrow v(t)=(v_x(t),\ v_y(t))</math>とする。物体を投げ出した時刻を<math>t = 0</math>,物体を投げ出した位置を<math>\overrightarrow r(0)=(0,\ 0)</math>とする。初速度<math>\overrightarrow v(0)=(v_0\cos\theta,\ v_0\sin\theta)</math>である。<math>x</math>軸方向には正の向きに速さ<math>v_0\cos\theta</math>の等速度運動,<math>y</math>軸方向には初速度<math>v_0\sin\theta</math>,加速度<math>-g</math>の等加速度運動をするから,時刻<math>t</math>における物体の加速度<math>\overrightarrow a =\left(\frac{dv_x}{dt},\ \frac{dv_y}{dt}\right)</math>は :<math>\overrightarrow a =(0,\ -g)</math>. したがって,(1.12)より :<math>\overrightarrow v(t)=\overrightarrow v(0)+\int _0 ^t\overrightarrow adt =(v_0\cos\theta,\ v_0\sin\theta - gt).\ \left(\because\begin{array}{lcl}v_x(t)= v_0\cos\theta +\int _0 ^t 0dt =v_0\cos\theta, \\ v_y(t)= v_0\sin\theta -\int _0 ^t gdt = v_0\sin\theta - gt\end{array}\right)</math> これを(1.9)に代入すると :<math>\overrightarrow r(t)=\overrightarrow r(0)+\int _0 ^t\overrightarrow v(t)dt =\left(v_0t\cos\theta,\ v_0t\sin\theta -\frac{1}{2}gt^2\right).\ \left(\because\begin{array}{lcl}x(t)= 0 +\int _0 ^t v_0\cos\theta dt = v_0t\cos\theta, \\ y(t)= 0 +\int _0 ^t(v_0\sin\theta - gt)dt = v_0t\sin\theta -\frac{1}{2}gt^2\end{array}\right)</math> 以上より :<math>v_x = v_0\cos\theta</math> :<math>v_y = v_0\sin\theta -gt</math> :<math>x = v_0t\cos\theta</math> (1.16) :<math>y = v_0t\sin\theta -\frac{1}{2}gt^2</math> (1.17) となる。(1.16)より :<math>t =\frac{x}{v_0\cos\theta}</math> となり,(1.17)に代入すると :<math>y = v_0\frac{x}{v_0\cos\theta}\sin\theta -\frac{1}{2}g\left(\frac{x}{v_0\cos\theta}\right)^2 = x\tan\theta -\frac{gx^2}{2(v_0\cos\theta)^2}</math> (1.18) が得られる。 (1.15), (1.18)より水平投射された物体や斜方投射された物体の軌跡は放物線になることがわかる。このような運動を'''放物運動'''という。 =力と運動= ==力== 物理において,'''力とは物体を変形させたり物体の速度を変えたりする働き'''のことである。力の働きは,大きさ・向き・作用点の3つで決まり,これらを力の3要素という。力の大きさの単位にはニュートン(N)を用いる。 なお,本頁では都合上,重力・張力・抗力・弾性力などの力については「様々な力と運動」の節で,作用・反作用については「運動の法則」の節で扱う。 ===力の合成と分解=== [[File:Vector parallelogram.PNG|right|200px|thumb|ある物体に向きの違う力<math>F_1</math>(青矢印)と力<math>F_2</math>(青矢印)を加えると物体に加わる合力は図のような(<math>F_1,\ F_2</math>を辺とする)平行四辺形の対角線の向きになる。]] ====力の合成==== 1物体にいくつかの力が同時に働くとき,それらの力を合わせた働きをする1つの力を考えることができる。この力を'''合力'''といい,合力を求めることを'''力の合成'''という。 同一作用線上の同じ向き,又は逆向きの2力<math>\vec{F_1},\ \vec{F_2}</math>の合力<math>\overrightarrow F</math>の大きさはそれぞれの力の大きさの和や差で求められる。また,異なる方向に働く2力<math>\vec{F_1},\ \vec{F_2}</math>の合力<math>\overrightarrow F</math>は2力のベクトルを隣合う2辺とする平行四辺形の対角線の矢印に一致する。これを力の平行四辺形の法則といい,このように求めた2力<math>\vec{F_1},\ \vec{F_2}</math>の合力<math>\overrightarrow F</math>は次式で表される。 :<math>\overrightarrow F =\vec{F_1}+\vec{F_2}</math>. ====力の分解==== [[File:2力の分解.svg|thumb|200px|2力の分解]] 1力をそれと同じ働きをするいくつかの力の組に分けることができる。これを'''力の分解'''といい,分けられたそれぞれの力を'''分力'''という。 力の平行四辺形の法則を用いて,1力<math>\overrightarrow F</math>は任意方向の2力に分解できる。これを繰り返すと,1力を任意方向のいくつかの力に分解できる。力を分解する場合,互いに垂直な2方向に分解することが多い。力<math>\overrightarrow F</math>を<math>x</math>軸,<math>y</math>軸の二方向に分解し,それぞれの分力を<math>\vec{F_x},\ \vec{F_y}</math>とする。これらの大きさの向きを表す正負の符号をつけたものを,<math>\overrightarrow F</math>の<math>x</math>成分,<math>y</math>成分といい,それぞれ<math>F_x,\ F_y</math>と表す。このとき,<math>\overrightarrow F</math>の大きさを<math>F,\ \overrightarrow F</math>と<math>x</math>軸とのなす角を<math>\theta</math>とすると :<math>F_x = F\cos\theta,\ F_y = F\sin\theta,\ F =\sqrt{{F_x}^2 +{F_y}^2}</math>. ===力のつり合い=== ====2力のつり合い==== [[File:2力のつりあい.svg|thumb|300px|2力のつりあい]] 物体に2力<math>\vec{F_1},\ \vec{F_2}</math>が働いてつり合うとき,2力は同一作用線上にあり,大きさが等しく逆向きであるから :<math>\vec{F_1}+\vec{F_2}=\overrightarrow 0</math>. このことから,2力がつり合うときは,2力の合力は<math>\overrightarrow 0</math>であることがわかる。 ==運動の法則== ===運動の第1法則 慣性の法則=== 物体に力が働かぬか,又は力がつりあっているとき,その物体は静止又は等速直線運動を続ける。これを'''慣性の法則'''と呼ぶ。 ===運動の第2法則 運動の法則=== 質量<math>m</math>の物体に働く外力の和が<math>\overrightarrow F</math>のとき,物体に生ずる加速度を<math>\overrightarrow a</math>とすると,次の運動方程式が成り立つ。 :<math>m \overrightarrow a = \overrightarrow F.\ (\Leftrightarrow\overrightarrow F = m \overrightarrow a)</math> (2.1) なお,(1.4)をを用いて,運動方程式は :<math>m\frac{d\overrightarrow v}{dt} = \overrightarrow F</math> (2.1)<math>'</math> :<math>m\frac{d^2 \overrightarrow r}{dt^2} = \overrightarrow F</math> (2.1)<math>''</math> とも表される。 ===運動の第3法則 作用・反作用の法則=== 2物体A, Bが互いに力を及ぼしあっている(相互作用をしている)とき, :<math>f_\mathrm{AB} =</math>BがAに及ぼす力 :<math>f_\mathrm{BA} =</math>AがBに及ぼす力 として :<math>f_\mathrm{AB} = -f_\mathrm{BA}</math> (2.2) が成り立つ。つまり,AがBに及ぼす力とBがAに及ぼす力は大きさが等しくて向きが逆である。 ===単位と次元=== ====単位==== 物理量はすべて,基準量の何倍かを表す数値に単位記号を付けて表す。即ち次の関係がある。 :物理量=数値×単位. 力学では'''MKS単位系'''が用いられており,長さはm(メートル),質量はkg(キログラム),時間はs(秒)を'''基本単位'''として定めている。この3単位に物理学など科学分野や技術分野で用いられる4単位(電流はA(アンペア),温度はK(ケルビン),物質量はmol(モル),光度はcd(カンデラ))を加えた合計7単位を基本単位として定めたのが'''国際単位系'''('''SI''')である。また,基本単位から導かれる単位を'''誘導単位'''('''組立単位''')とよぶ。 ==様々な力と運動== [[File:National prototype kilogram K20 replica.jpg|thumb|キログラム原器。米国で保管されているキログラム原器の複製品の画像。フランスの国際キログラム原器と共通化している。]] ===重力=== 地球上の全物体には,地球が鉛直下向きに引く力,'''重力'''が働いている。質量を<math>m</math>〔kg〕,重力加速度の大きさを<math>g</math>〔m/s<math>^2</math>〕,重力の大きさ('''重さ'''ないし'''重量''')を<math>W</math>〔N〕とすると,(2.1)より :<math>mg = W \quad\therefore W = mg</math> (2.3) となる。つまり,重力の大きさは質量に比例し,質量<math>m</math>〔kg〕の物体に働く重力の大きさ<math>W</math>〔N〕は<math>mg</math>〔N〕である。地球上において重力加速度の大きさ<math>g</math>は約9.8m/s<math>^2</math>なので,質量1kgの物体に働く重力の大きさは約9.8Nである。なお,重力加速度の大きさは惑星によっても異なるし,同じ惑星においても緯度により若干変わる。 ====質量==== (2.3)より'''質量'''は物体に力が働いた場合の加速度の生じにくさ,即ち'''慣性の大きさを表す量'''('''慣性質量''')であることが分かる。質量は物体固有の量であり,場所によらない。質量の単位である1kgは,国際度量衡局にある国際キログラム原器の質量と定められていたが,2019年5月からプランク定数とよばれる普遍的な定数に基づく定義へと変更された。 ===束縛力=== 糸の'''張力'''や面の'''抗力'''といわれる力は構成している分子間力の合力であるが,通常は伸びぬ糸の張力や固い面が接している物体に及ぼす抗力等は束縛力(拘束力)とよばれ,その大きさは束縛条件(拘束条件)を使って運動方程式を解いてみねば分からぬ未知数として扱われる。 ====張力==== [[File:おもりの引き上げ.svg|thumb|150px|図1]][[File:糸でつながれた2物体 解法.svg|thumb|200px|図2]] 図1のように質量<math>m</math>の物体に鉛直下向きに重力<math>mg</math>,鉛直上向きに伸び縮みのない糸が物体を引く力(張力)<math>T</math>が働いており,物体の加速度を鉛直上向きに<math>a</math>とすると,運動方程式は :<math>ma = T-mg</math>. 続いて,図2のように水平でなめらかな机上に質量<math>M</math>の台車があり,その台車に質量の無視できる糸がつながれ,滑車を介して糸の先に質量<math>m</math>の小物体が吊り下げられている場合を考えよう。台車の加速度の大きさを<math>a</math>とおくと,束縛条件より小物体の加速度の大きさも<math>a</math>である。台車が受ける垂直抗力の大きさを<math>N</math>とおくと,台車の運動方程式は(上段が水平方向,下段が鉛直方向) :<math>\begin{cases} Ma = T\;\cdots\cdots (*) \\ M\cdot 0 = Mg - N\quad\therefore N = Mg.\end{cases}</math> 小物体の運動方程式は(鉛直方向) :<math>ma = mg -T.\cdots(**)</math> <math>(*)+(**)</math>より :<math>(M + m)a = mg \quad\therefore a =\frac{m}{M + m}g</math>. <math>(*)</math>に代入 :<math>M\frac{m}{M + m}g = T \quad\therefore T =\frac{Mm}{M + m}g</math>. =====アトウッドの器械===== [[File:Atwood.svg|right|thumb|200px|アトウッドの器械で吊り下げられている2物体に対する自由体図([[:en:free body diagram]])。]] 右図のように質量の無視できる糸の両端に質量<math>m_1</math>と質量<math>m_2</math>の2物体が滑車を介して吊り下げられている場合を考える(ただし<math>m_1 > m_2</math>)。重力加速度を<math>g</math>とすると,質量<math>m_1</math>の物体には鉛直下向きに重力<math>W_1 = m_1g</math>,質量<math>m_2</math>の物体には鉛直下向きに重力<math>W_2 = m_2g</math>が働いている。質量<math>m_1</math>の物体の加速度の大きさを<math>a</math>,質量<math>m_2</math>の物体の加速度の大きさを<math>a'</math>(一応説明のため),糸の張力の大きさを<math>T</math>とおくと,2物体の鉛直方向の運動方程式は :<math>m_1a = m_1g - T\cdots\cdots(\triangle)</math> :<math>m_2a' = T - m_2g\quad\cdots(\square)</math> 束縛条件は :<math>a = a'.\qquad\qquad\cdots\cdots(\bigstar)</math> <math>(\bigstar)</math>より,質量<math>m_2</math>の物体の加速度の大きさは<math>a</math>である(実際はこの程度の束縛条件は自明で最初から<math>a</math>としてしまって構わない)。よって,<math>(\square)</math>は :<math>m_2a = T - m_2g.\quad\cdots(\square)'</math> <math>(\triangle)+(\square)'</math>より :<math>(m_1 + m_2)a =(m_1 - m_2)g\quad\therefore a =\frac{m_1 - m_2}{m_1 + m_2}g</math>. <math>(\triangle)</math>に代入 :<math>m_1\frac{m_1 - m_2}{m_1 + m_2}g= m_1g - T\Longleftrightarrow T = 2\frac{m_1m_2}{m_1 + m_2}g</math>. ====抗力==== [[File:静止摩擦の初等力学.svg|thumb|250px|静止摩擦力と抗力]] 面や線に沿って運動する物体に面又は線が及ぼす力を面又は線の'''抗力'''という。抗力の面に垂直な成分或いは法線方向の分力を'''垂直抗力''',面に平行な成分或いは接線方向の分力を'''摩擦力'''という。 =====静止摩擦力===== '''静止摩擦力'''は,静止している物体を外から引く力に応じてその大きさを変化させ,摩擦がなかったならば物体が行うであろう運動を妨げる向きに働く。その最大値を'''最大静止摩擦力'''或いは'''最大摩擦力'''といい,最大摩擦力の大きさは垂直抗力に比例することが分かっている。静止摩擦力,最大摩擦力の大きさをそれぞれ<math>F,\ F_\mathrm{max}</math>,静止摩擦係数を<math>\mu</math>,垂直抗力の大きさを<math>N</math>とおくと :<math>F\leqq F_\mathrm{max}=\mu N</math>. =====動摩擦力===== [[File:動摩擦の模式図.svg|thumb|250px|動摩擦力]][[File:引く力と動摩擦.svg|thumb|right|250px|物体を引く力と、摩擦力との関係]] 物体に働く外力が最大摩擦力を越えると,動摩擦力が働く。動摩擦力は物体の運動を妨げる向きに働き,その大きさは垂直抗力に比例する。動摩擦力を<math>F'</math>,動摩擦係数を<math>\mu'</math>とおくと :<math>F'=\mu'N</math>. なお,動摩擦係数は静止摩擦係数より小さい,即ち動摩擦力は最大摩擦力より小さいことが分かっている。 ===弾性力=== {| |[[File:ばねの自然長 縦.svg|thumb|200px|フックの法則]] |[[File:ばねの自然長 横.svg|thumb|200px|フックの法則]] |[[File:フックの法則 直線の範囲.svg|thumb|200px|フックの法則]] |} ばねに何も力が加わっていないときのばねの長さをばねの'''自然長'''という。一端を固定したばねの他端にばねが伸びる方向に力を加えるとばねは伸び,逆にばねが縮む方向に力を加えるとばねは縮む。その際ばねは自然長に戻ろうとする性質があり,このような力を加えたときに生じた変形が力を加えるのを止めると元に戻る性質を'''弾性'''({{Lang-en-short|elasticity}})という。この弾性に基づいて生ずる力を'''弾性力'''({{Lang-en-short|elastic force}})という。ばね弾性力はばねの両端で,自然長に向かう向きに働き,その大きさはばねが自然長から伸び縮みした距離に比例しこれを'''フックの法則'''({{Lang-en-short|Hooke's law}})という。ばねが伸びる方向に<math>x</math>軸をとり,ばねの自然長の位置を原点にし,ばねの位置を<math>x</math>〔m〕,ばね定数を<math>k</math>〔N/m〕とすると,ばねの弾性力<math>F</math>〔N〕は :<math>F=-kx</math>. なお,これは'''復元力'''ともよばれる。また,ばねの伸び縮みがあまりにも大きくなるとこれは成り立たなくなる。 =仕事とエネルギー= ==仕事== 物理では,'''物体に力を加えて動かしたとき,力は物体に対して'''「'''仕事をした'''」という。 ==運動エネルギー== ===運動エネルギーと仕事(1次元)=== 1次元空間(<math>x</math>軸上)の運動を考える。運動方程式 :<math>m\frac{dv}{dt}= F</math> (2.1)<math>'</math> に<math>v =\frac{dx}{dt}</math>を掛けて :<math>mv\frac{dv}{dt}= F\frac{dx}{dt}</math>. 両辺を<math>t = t_1</math>から<math>t = t_2</math>まで積分すると :<math>\int _{t_1}^{t_2}mv\frac{dv}{dt}dt =\int _{t_1}^{t_2}F\frac{dx}{dt}dt\quad\therefore\int _{t_1}^{t_2}mvdv =\int _{t_1}^{t_2}Fdx</math>. 時刻<math>t = t_1</math>のとき<math>v = v_1,\ x = x_1</math>,時刻<math>t = t_2</math>のとき<math>v = v_2,\ x = x_2</math>と考えて<math>\begin{array}{c|c}t & t_1\to t_2 \\ \hline v & v_1\to v_2 \\ \hline x & x_1\to x_2 \\ \end{array}</math>とすると :<math>\int _{v_1}^{v_2}mvdv =\int _{x_1}^{x_2}Fdx\quad\therefore\frac{1}{2}m{v_2}^2 -\frac{1}{2}m{v_1}^2 =\int _{x_1}^{x_2}Fdx</math>. (3.1)(注:<math>F</math>は一定とは限らぬから右辺は積分実行できない) この<math>\frac{1}{2}mv^2</math>を'''運動エネルギー'''({{Lang-en-short|kinetic energy}})という。特に,力<math>F</math>が一定のとき :<math>\frac{1}{2}m{v_2}^2 -\frac{1}{2}m{v_1}^2 =F(x_2-x_1)</math>. (3.1a) (3.1)の右辺は力<math>F</math>のした仕事を表している。ゆえに(1次元においては)'''運動エネルギー変化は仕事に等しい'''という因果関係が分かる。 ===運動エネルギーと仕事(2・3次元)=== ====力が一定の場合==== [[File:斜めの力の仕事.svg|thumb|300px|力の向きと動かす向きが違う場合]] まず力<math>\overrightarrow F</math>が一定の場合を考える。時刻<math>t</math>において速度<math>\overrightarrow v(t)</math>で運動する質量<math>m</math>の物体の運動方程式 :<math>m\frac{d\overrightarrow v(t)}{dt}=\overrightarrow F\quad\therefore \frac{d\overrightarrow v(t)}{dt}=\frac{\overrightarrow F}{m}=</math>一定. これと(1.12)より時刻<math>0\sim t</math>における運動エネルギー変化はこの間の物体の変位を<math>\mathit{\Delta}\overrightarrow r=\overrightarrow r(t)-\overrightarrow r(0)</math>として :<math>\begin{align}\frac{1}{2}m\overrightarrow v(t)^2-\frac{1}{2}m\overrightarrow v(0)^2 & =\frac{1}{2}m\left(\overrightarrow v(0)+\int_0^t\frac{d\overrightarrow v(t)}{dt}dt\right)^2-\frac{1}{2}m\overrightarrow v(0)^2 \\ & =\frac{1}{2}m\left\{2\overrightarrow v(0)\frac{d\overrightarrow v(t)}{dt}t+\left(\frac{d\overrightarrow v(t)}{dt}t\right)^2\right\} \\ & =m\frac{d\overrightarrow v(t)}{dt}\cdot\left(\overrightarrow v(0)t+\frac{1}{2}\frac{d\overrightarrow v(t)}{dt}t^2\right) \\ & =m\frac{d\overrightarrow v(t)}{dt}\cdot(\overrightarrow r(t)-\overrightarrow r(0))=\overrightarrow F\cdot\mathit{\Delta}\overrightarrow r.\ (3.2)\end{align}</math> ここで<math>\overrightarrow F</math>と<math>\mathit{\Delta}\overrightarrow r</math>とのなす角を<math>\theta</math>とすると,この間に力<math>\overrightarrow F</math>がした仕事<math>W</math>は :<math>W=\overrightarrow F\cdot\mathit{\Delta}\overrightarrow r=|\overrightarrow F||\mathit{\Delta}\overrightarrow r|\cos\theta</math> (3.2a) と与えられる。なお仕事の単位はJ=N・mである(ジュール)。 ==位置エネルギー== 仕事が始点と終点のみで決まり,経路によらぬ力を'''保存力'''({{Lang-en-short|conservative force}})(例:重力,弾性力,万有引力,静電気力等),その他の力(仕事が経路による力)を'''非保存力'''(例:摩擦力等)という。 保存力の場合,始点<math>\vec{r_0}</math>を決めるとその始点<math>\vec{r_0}</math>を基準とした終点<math>\overrightarrow r</math>での保存力<math>\vec{f_\mathrm{C}}</math>の'''位置エネルギー'''({{Lang-en-short|potential energy}})<math>U(\overrightarrow r)</math>が決まる。 :<math>U(\overrightarrow r)=-\int_\vec{r_0}^\overrightarrow r \vec{f_\mathrm{C}}\cdot d\overrightarrow r</math>. (3.3) ===重力による位置エネルギー=== 鉛直上方に<math>y</math>軸をとり,<math>y=0</math>の点を基準とした<math>y=h</math>での質量<math>m</math>の物体の位置エネルギー<math>U</math>は,重力加速度を<math>g</math>とすると,重力は<math>-mg</math>であるから :<math>U=-\int_0^h (-mg)dy=mgh</math>. (3.4) また,時刻<math>t</math>において<math>y=y(t)</math>の位置にある質量<math>m</math>の物体の時刻<math>t=0</math>から<math>t=t</math>までの位置エネルギー変化<math>\mathit{\Delta}U</math>は,重力加速度を<math>g</math>とすると :<math>\mathit{\Delta}U=-\int_{y(0)}^{y(t)}(-mg)dy=mg(y(t)-y(0))</math>. (3.4a) ===弾性力による位置エネルギー=== [[File:弾性力と位置エネルギー.svg|thumb|200px|弾性力と位置エネルギー]][[File:弾性エネルギーの差.svg|thumb|200px|弾性エネルギーの差]] 右図のように壁に取付けられたばね定数<math>k</math>のばねにつながれた質量<math>m</math>の物体において,水平方向右向きに<math>x</math>軸をとり,ばねの長さが自然長のときの物体の位置を原点とする。物体が<math>x</math>の位置にあるとき,運動方程式 :<math>m\frac{d^2x}{dt^2}=-kx</math>. よって,原点を基準とした位置<math>x</math>での物体の位置エネルギー<math>U</math>は :<math>U=-\int_0^x (-kx)dx=\frac{1}{2}kx^2</math>. (3.5) なお,この弾性力による位置エネルギーを'''弾性エネルギー'''({{Lang-en-short|elastic energy}})ともいう。また,時刻<math>t</math>において<math>x=x(t)</math>の位置にある質量<math>m</math>の物体の時刻<math>t=0</math>から<math>t=t</math>までの位置エネルギー(弾性エネルギー)変化<math>\mathit{\Delta}U</math>は :<math>\mathit{\Delta}U=-\int_{t_1}^{t_2}(-kx(t))dx=\frac{1}{2}kx(t_2)^2-\frac{1}{2}x(t_1)^2</math>. (3.5a) ==力学的エネルギー保存== [[File:力学的エネルギー 鉛直落下.svg|thumb|250px|落下運動と力学的エネルギー]] 運動エネルギーと位置エネルギーの和を'''力学的エネルギー'''({{Lang-en-short|mechanical energy}})という。運動エネルギー,位置エネルギー,力学エネルギーをそれぞれ<math>K,\ U,\ E</math>とおくと :<math>E=K+U</math>. (3.6) 右図のように質量<math>m</math>の物体を地上からの高さ<math>h_2</math>から高さ<math>h_1</math>まで落下させるとする。物体には鉛直下向きに重力<math>mg</math>(保存力)が働いている。(3.1a)より :<math>\frac{1}{2}m{v_1}^2-\frac{1}{2}m{v_2}^2=-mg(h_1-h_2)\iff \frac{1}{2}m{v_1}^2+mgh_1=\frac{1}{2}m{v_2}^2+mgh_2</math>. 上式の同値変形後の式を見ると,<math>h_1</math>地点での物体の運動エネルギーと位置エネルギーの和が<math>h_2</math>地点での物体の運動エネルギーと位置エネルギ-の和が等しい,すなわち'''保存力場での質点の運動は力学的エネルギーが一定'''であることが分かる。 :<math>E=K+U=</math>一定.(3.7) これを'''力学的エネルギー保存則'''({{Lang-en-short|law of conservation of mechanical energy}})という。 [[category:物理基礎|りきかく]] [[カテゴリ:力学]]
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一般力学/ベクトルの乗法
§3 ベクトルの乗法 二つのベクトル A , B {\displaystyle \mathbf {A} ,\mathbf {B} } の積を定義するのに,加え算の場合から類推される A x B x , A x B y {\displaystyle A_{x}B_{x},A_{x}B_{y}} というような単なる成分の積は,座標系の取り方によりその値を異にし,一定の幾何学的意味を有するものとならない.そこで,これらを組み合わせて ∑ x , y , z c i j A i B j {\displaystyle \sum _{x,y,z}c_{ij}A_{i}B_{j}} の形のもので,定まった幾何学的意味を有するものを作り,かつこれに対して数の掛け算に関する諸法則がなるべく満足させられるようなものを求める.この条件に適うものは次の二つである. (i) スカラー積 {\displaystyle \quad } 二つのベクトル A , B {\displaystyle \mathbf {A} ,\mathbf {B} } から一つのスカラーを積として作り出す算法をスカラー積といい, 積を A B , A ⋅ B , ( A , B ) {\displaystyle \mathbf {A} \mathbf {B} ,\mathbf {A} \cdot \mathbf {B} ,(\mathbf {A} ,\mathbf {B} )} などと記す.その定義は A , B {\displaystyle \mathbf {A} ,\mathbf {B} } の間の角を θ {\displaystyle \theta } として, 即ち一方のベクトルの大きさに他方のベクトルのその上への射影を掛けたものである. この定義からスカラー乗法に対して数の掛け算と類似な関係 が成り立つことがわかる.(最後のものの左辺は | A | {\displaystyle |\mathbf {A} |} に B + C {\displaystyle \mathbf {B} +\mathbf {C} } の上への射影を掛けたもので,これが右辺に等しいことは作図すれば明瞭である). 数の場合と違うのは A B = 0 {\displaystyle \mathbf {A} \mathbf {B} =0} なるときは A = 0 , B = 0 {\displaystyle \mathbf {A} =0,\mathbf {B} =0} のほかに A ⊥ B {\displaystyle \mathbf {A} \bot \mathbf {B} } でもよいこと,除法が一義的に可能でないことなどである. A = B {\displaystyle \mathbf {A} =\mathbf {B} } なるときには, A A = A 2 {\displaystyle \mathbf {A} \mathbf {A} =\mathbf {A} ^{2}} は A 2 {\displaystyle A^{2}} ,即ちベクトルの大きさの二乗に等しい. 基本ベクトルは大きさが 1 {\displaystyle 1} で,かつ互いに垂直であるから,その間に次の関係がある: よって A B = ( A x i + A y j + A z k ) ( B x i + B y j + B z k ) {\displaystyle \mathbf {A} \mathbf {B} =(A_{x}\mathbf {i} +A_{y}\mathbf {j} +A_{z}\mathbf {k} )(B_{x}\mathbf {i} +B_{y}\mathbf {j} +B_{z}\mathbf {k} )} を(3.2),(3.3)の関係を用いてほぐせば, 特に A , B {\displaystyle \mathbf {A} ,\mathbf {B} } がどちらも単位ベクトルであるときには A B = cos θ {\displaystyle \mathbf {A} \mathbf {B} =\cos \theta } であるから, ただし λ , μ , ν ; λ ′ , μ ′ , ν ′ {\displaystyle \lambda ,\mu ,\nu ;\lambda ',\mu ',\nu '} はそれぞれ A , B {\displaystyle \mathbf {A} ,\mathbf {B} } の成分,即ちその方向余弦である. また或るベクトル A {\displaystyle \mathbf {A} } の単位ベクトル e ( λ , μ , ν ) {\displaystyle \mathbf {e} (\lambda ,\mu ,\nu )} の方向への射影は, A {\displaystyle \mathbf {A} } と e {\displaystyle \mathbf {e} } との間の角を θ {\displaystyle \theta } とすれば, で与えられる. (ii) ベクトル積 {\displaystyle \quad } 二つのベクトル A = O A → , B = O B → {\displaystyle \mathbf {A} ={\vec {\mathrm {OA} }},\mathbf {B} ={\vec {\mathrm {OB} }}} により定められる平行四辺形 O A B C {\displaystyle \mathrm {OABC} } の代表ベクトル C {\displaystyle \mathbf {C} } を A , B {\displaystyle \mathbf {A} ,\mathbf {B} } のベクトル積と呼び, A × B , A ∧ B , [ A , B ] {\displaystyle \mathbf {A} \times \mathbf {B} ,\mathbf {A} \wedge \mathbf {B} ,[\mathbf {A} ,\mathbf {B} ]} などと記す.従ってその大きさは 方向は A , B {\displaystyle \mathbf {A} ,\mathbf {B} } に垂直,向きは A {\displaystyle \mathbf {A} } を B {\displaystyle \mathbf {B} } へ( π {\displaystyle \pi } > より小さい角で)まわしたとき,右ネジの進む向きである.この定義から次の関係が証明される. (iii)三つのベクトルの積 {\displaystyle \quad }
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§3 ベクトルの乗法 二つのベクトル A , B の積を定義するのに,加え算の場合から類推される A x B x , A x B y というような単なる成分の積は,座標系の取り方によりその値を異にし,一定の幾何学的意味を有するものとならない.そこで,これらを組み合わせて ∑ x , y , z c i j A i B j の形のもので,定まった幾何学的意味を有するものを作り,かつこれに対して数の掛け算に関する諸法則がなるべく満足させられるようなものを求める.この条件に適うものは次の二つである.
<!-- <div id="ベクトルの乗法"> <div id="ベクトルの積"> --> <strong>§3 ベクトルの乗法</strong> 二つの[[一般力学/ベクトル#ベクトル|ベクトル]] <math>\mathbf{A}, \mathbf{B}</math> の積を定義するのに,加え算の場合から類推される <math>A_xB_x, A_xB_y</math> というような単なる[[一般力学/ベクトル#ベクトルの成分|成分]]の積は,座標系の取り方によりその値を異にし,一定の幾何学的意味を有するものとならない.そこで,これらを組み合わせて <math> \sum_{x, y, z}c_{ij}A_iB_j</math> の形のもので,定まった幾何学的意味を有するものを作り,かつこれに対して数の掛け算に関する諸法則がなるべく満足させられるようなものを求める.この条件に適うものは次の二つである<ref> ここでは結果だけを示したが,上のような[[一般力学/ベクトル#ベクトルの成分|ベクトル成分]]の[[双一次形式]]で一定の幾何学的意味(座標系の取り方に無関係な意味)を有する量を求めることは三次元回転群の表現論を用いれば最も簡単に解決される. </ref>. <div id="スカラー積"> (i) <strong>スカラー積</strong><math>\quad</math> 二つのベクトル <math>\mathbf{A}, \mathbf{B}</math> から一つの[[一般力学/ベクトル#スカラー量|スカラー]]を積として作り出す算法を'''スカラー積'''といい, 積を <math>\mathbf{A}\mathbf{B}, \mathbf{A}\cdot\mathbf{B}, (\mathbf{A}, \mathbf{B})</math> などと記す.その定義は <math>\mathbf{A}, \mathbf{B}</math>の間の角を <math>\theta</math> として, {{一般力学/equation|<math>\mathbf{A}\mathbf{B} = AB\cos\theta</math>|tag=(3.1)|label=eq:3.1}} 即ち<ins>一方の[[一般力学/ベクトル#ベクトルの大きさ|ベクトルの大きさ]]に他方の[[一般力学/ベクトル#ベクトル|ベクトル]]のその上への射影を掛けたもの</ins>である. この定義から[[一般力学/ベクトルの乗法#スカラー積|スカラー乗法]]に対して数の掛け算と類似な関係 {{一般力学/equation|<math>\mathbf{A}\mathbf{B}=\mathbf{B}\mathbf{A}, \quad (c\mathbf{A})\mathbf{B}= \mathbf{A}(c\mathbf{B}) = c\mathbf{A}\mathbf{B}, \quad \mathbf{A}(\mathbf{B} + \mathbf{C}) = \mathbf{A}\mathbf{B} + \mathbf{A}\mathbf{C}</math>|tag=(3.2)|label=eq:3.2}} が成り立つことがわかる.(最後のものの左辺は <math>|\mathbf{A}|</math> に <math>\mathbf{B} + \mathbf{C}</math> の上への射影を掛けたもので,これが右辺に等しいことは作図すれば明瞭である). 数の場合と違うのは <math>\mathbf{A}\mathbf{B} = 0</math> なるときは <math>\mathbf{A} = 0, \mathbf{B} = 0</math> のほかに <math>\mathbf{A}\bot\mathbf{B}</math> でもよいこと,除法が一義的に可能でないことなどである. <math>\mathbf{A} = \mathbf{B}</math> なるときには,<math>\mathbf{A}\mathbf{A} = \mathbf{A}^2</math> は <math>A^2</math>,即ち[[一般力学/ベクトル#ベクトルの大きさ|ベクトルの大きさ]]の二乗に等しい. [[一般力学/ベクトルの加法#基本ベクトル|基本ベクトル]]は[[一般力学/ベクトル#ベクトルの大きさ|大きさ]]が <math>1</math> で,かつ互いに垂直であるから,その間に次の関係がある: {{一般力学/equation|<math>\mathbf{i}^2 = \mathbf{j}^2 = \mathbf{k}^2 = 1, \quad \mathbf{i}\mathbf{j} = \mathbf{j}\mathbf{k} = \mathbf{k}\mathbf{i} = 0</math>|tag=(3.3)|label=eq:3.3}} よって <math>\mathbf{A}\mathbf{B} = (A_x\mathbf{i} + A_y\mathbf{j} + A_z\mathbf{k})(B_x\mathbf{i} + B_y\mathbf{j} + B_z\mathbf{k})</math> を[[一般力学/ベクトルの乗法#eq3.2|(3.2)]],[[一般力学/ベクトルの乗法#eq3.3|(3.3)]]の関係を用いてほぐせば, {{一般力学/equation|<math>\mathbf{A}\mathbf{B} = A_x B_x + A_y B_y + A_z B_z</math>.|tag=(3.4)|label=eq:3.4}} 特に <math>\mathbf{A}, \mathbf{B}</math> がどちらも[[一般力学/ベクトル#単位ベクトル|単位ベクトル]]であるときには <math>\mathbf{A}\mathbf{B} = \cos\theta</math> であるから, {{一般力学/equation|<math>\cos\theta = \lambda\lambda' + \mu\mu' + \nu\nu'</math>|tag=(3.5)|label=eq:3.5}} ただし <math>\lambda, \mu, \nu; \lambda', \mu', \nu'</math> はそれぞれ <math>\mathbf{A}, \mathbf{B}</math> の成分,即ちその[[一般力学/ベクトル#方向余弦|方向余弦]]である. また或る[[一般力学/ベクトル#ベクトル|ベクトル]] <math>\mathbf{A}</math> の[[一般力学/ベクトル#単位ベクトル|単位ベクトル]] <math>\mathbf{e}(\lambda, \mu, \nu)</math> の[[一般力学/ベクトル#ベクトルの方向|方向]]への射影は,<math>\mathbf{A}</math> と <math>\mathbf{e}</math> との間の角を <math>\theta</math> とすれば, {{一般力学/equation|<math>A\cos\theta = \mathbf{A}\mathbf{e} = A_x\lambda + A_y\mu + A_z\nu</math>|tag=(3.6)|label=eq:3.6}} で与えられる. <div id="ベクトル積"> (ii) <strong>ベクトル積</strong><math>\quad</math> 二つの[[一般力学/ベクトル#ベクトル|ベクトル]] <math>\mathbf{A} = \vec{\mathrm{OA}}, \mathbf{B} = \vec{\mathrm{OB}}</math> により定められる平行四辺形 <math>\mathrm{OABC}</math> の[[一般力学/ベクトル#代表ベクトル|代表ベクトル]] <math>\mathbf{C}</math> を <math>\mathbf{A}, \mathbf{B}</math> の<strong>ベクトル積</strong>と呼び,<math>\mathbf{A} \times \mathbf{B}, \mathbf{A} \wedge \mathbf{B}, [\mathbf{A}, \mathbf{B}]</math> などと記す.従ってその[[一般力学/ベクトル#ベクトルの大きさ|大きさ]]は {{一般力学/equation|<math>|\mathbf{A} \times \mathbf{B}| = AB\sin\theta</math>}}, [[一般力学/ベクトル#ベクトルの方向|方向]]は <math>\mathbf{A}, \mathbf{B}</math> に垂直,向きは <math>\mathbf{A}</math> を <math>\mathbf{B}</math> へ(<math>\pi</math>> より小さい角で)まわしたとき,右ネジの進む向きである.この定義から次の関係が証明される. (iii)<strong>三つのベクトルの積</strong><math>\quad</math> {{DEFAULTSORT:いつはんりきかくへくとるのしようほう}} [[カテゴリ:一般力学|へくとるのしようほう]] [[Category:ベクトル]]
2018-12-15T07:53:15Z
2024-03-16T05:48:10Z
[ "テンプレート:一般力学/equation" ]
https://ja.wikibooks.org/wiki/%E4%B8%80%E8%88%AC%E5%8A%9B%E5%AD%A6/%E3%83%99%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%AB%E3%81%AE%E4%B9%97%E6%B3%95
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線型代数学/行列と行列式/第三類/外積
内積があるのなら外積があってもいいのでは,と思っている人もいることだろう. 単に「外積」と呼ばれることもある,3次元実数ベクトルについての外積,すなわち「ベクトル積」を紹介する. 定義3 外積 R 3 {\displaystyle R^{3}} のベクトル a → = ( a b c ) {\displaystyle {\vec {a}}=\left({\begin{array}{c}a\\b\\c\end{array}}\right)} , b → = ( x y z ) {\displaystyle {\vec {b}}=\left({\begin{array}{c}x\\y\\z\end{array}}\right)} に関して、 a → × b → {\displaystyle {\vec {a}}\times {\vec {b}}} を次で定める. a → × b → = ( b z − c y c x − a z a y − b x ) {\displaystyle {\vec {a}}\times {\vec {b}}=\left({\begin{array}{c}bz-cy\\cx-az\\ay-bx\end{array}}\right)} ベクトル積は 3 次元ベクトルの場合のみについて定義される演算である。 定義のとおりだが、実際の計算は図に示したように第 1 成分を下に付け加え, ×の形に積を取り,使っていない成分に押し込むという感じで技化しておくとよい. ベクトル積に関して次の計算法則が成り立つ. 交換法則が成り立たないことに注意する. a → × b → {\displaystyle {\vec {a}}\times {\vec {b}}} で a → {\displaystyle {\vec {a}}} と b → {\displaystyle {\vec {b}}} を入れ替えると,符号が逆になる. 定理4 ベクトル積の計算法則 (1) a → × b → = − ( b → × a → ) {\displaystyle {\vec {a}}\times {\vec {b}}=-({\vec {b}}\times {\vec {a}})} (2) k ( a → × b → ) = ( k a → ) × b → = a → × ( k b → ) {\displaystyle k({\vec {a}}\times {\vec {b}})=(k{\vec {a}})\times {\vec {b}}={\vec {a}}\times (k{\vec {b}})} (3) a → × ( b → + c → ) = a → × b → + a → × c → {\displaystyle {\vec {a}}\times ({\vec {b}}+{\vec {c}})={\vec {a}}\times {\vec {b}}+{\vec {a}}\times {\vec {c}}} (4) ( a → + b → ) × c → = a → × c → + b → × c → {\displaystyle ({\vec {a}}+{\vec {b}})\times {\vec {c}}={\vec {a}}\times {\vec {c}}+{\vec {b}}\times {\vec {c}}} 証明 (1) a → = ( a b c ) {\displaystyle {\vec {a}}=\left({\begin{array}{c}a\\b\\c\end{array}}\right)} , b → = ( x y z ) {\displaystyle {\vec {b}}=\left({\begin{array}{c}x\\y\\z\end{array}}\right)} にて b → × a → = ( y c − z b z a − x c x b − y a ) = ( − ( b z − c y ) − ( c x − a z ) − ( a y − b x ) ) = − ( b z − c y c x − a z a y − b x ) = − a → × b → {\displaystyle {\vec {b}}\times {\vec {a}}=\left({\begin{array}{c}yc-zb\\za-xc\\xb-ya\end{array}}\right)=\left({\begin{array}{c}-(bz-cy)\\-(cx-az)\\-(ay-bx)\end{array}}\right)=-\left({\begin{array}{c}bz-cy\\cx-az\\ay-bx\end{array}}\right)=-{\vec {a}}\times {\vec {b}}} . (2) k ( a → × b → ) = ( k ( b z − c y ) k ( c x − a z ) k ( a y − b x ) ) = ( k b z − k c y k c x − k a z k a y − k b x ) = ( ( k b ) z − ( k c ) y ( k c ) x − ( k a ) z ( k a ) y − ( k b ) x ) = ( k a → ) × b → {\displaystyle k({\vec {a}}\times {\vec {b}})=\left({\begin{array}{c}k(bz-cy)\\k(cx-az)\\k(ay-bx)\end{array}}\right)=\left({\begin{array}{c}kbz-kcy\\kcx-kaz\\kay-kbx\end{array}}\right)=\left({\begin{array}{c}(kb)z-(kc)y\\(kc)x-(ka)z\\(ka)y-(kb)x\end{array}}\right)=(k{\vec {a}})\times {\vec {b}}} . 同様に k ( a → × b → ) = ( k b z − k c y k c x − k a z k a y − k b x ) = ( b ( k z ) − c ( k y ) c ( k x ) − a ( k z ) a ( k y ) − b ( k x ) ) = a → × ( k b → ) {\displaystyle k({\vec {a}}\times {\vec {b}})=\left({\begin{array}{c}kbz-kcy\\kcx-kaz\\kay-kbx\end{array}}\right)=\left({\begin{array}{c}b(kz)-c(ky)\\c(kx)-a(kz)\\a(ky)-b(kx)\end{array}}\right)={\vec {a}}\times (k{\vec {b}})} . (3) a → = ( a 1 a 2 a 3 ) {\displaystyle {\vec {a}}=\left({\begin{array}{c}a_{1}\\a_{2}\\a_{3}\end{array}}\right)} , b → = ( b 1 b 2 b 3 ) {\displaystyle {\vec {b}}=\left({\begin{array}{c}b_{1}\\b_{2}\\b_{3}\end{array}}\right)} , c → = ( c 1 c 2 c 3 ) {\displaystyle {\vec {c}}=\left({\begin{array}{c}c_{1}\\c_{2}\\c_{3}\end{array}}\right)} にて a → × ( b → + c → ) = ( a 1 a 2 a 3 ) × ( b 1 + c 1 b 2 + c 2 b 3 + c 3 ) = ( a 2 ( b 3 + c 3 ) − a 3 ( b 2 + c 2 ) a 3 ( b 1 + c 1 ) − a 1 ( b 3 + c 3 ) a 1 ( b 2 + c 2 ) − a 2 ( b 1 + c 1 ) ) = ( a 2 b 3 + a 2 c 3 − a 3 b 2 − a 3 c 2 a 3 b 1 + a 3 c 1 − a 1 b 3 − a 1 c 3 a 1 b 2 + a 1 c 2 − a 2 b 1 − a 2 c 1 ) {\displaystyle {\vec {a}}\times ({\vec {b}}+{\vec {c}})=\left({\begin{array}{c}a_{1}\\a_{2}\\a_{3}\end{array}}\right)\times \left({\begin{array}{c}b_{1}+c_{1}\\b_{2}+c_{2}\\b_{3}+c_{3}\end{array}}\right)=\left({\begin{array}{c}a_{2}(b_{3}+c_{3})-a_{3}(b_{2}+c_{2})\\a_{3}(b_{1}+c_{1})-a_{1}(b_{3}+c_{3})\\a_{1}(b_{2}+c_{2})-a_{2}(b_{1}+c_{1})\end{array}}\right)=\left({\begin{array}{c}a_{2}b_{3}+a_{2}c_{3}-a_{3}b_{2}-a_{3}c_{2}\\a_{3}b_{1}+a_{3}c_{1}-a_{1}b_{3}-a_{1}c_{3}\\a_{1}b_{2}+a_{1}c_{2}-a_{2}b_{1}-a_{2}c_{1}\end{array}}\right)} = ( a 2 b 3 − a 3 b 2 + a 2 c 3 − a 3 c 2 a 3 b 1 − a 1 b 3 + a 3 c 1 − a 1 c 3 a 1 b 2 − a 2 b 1 + a 1 c 2 − a 2 c 1 ) = ( a 2 b 3 − a 3 b 2 a 3 b 1 − a 1 b 3 a 1 b 2 − a 2 b 1 ) + ( a 2 c 3 − a 3 c 2 a 3 c 1 − a 1 c 3 a 1 c 2 − a 2 c 1 ) = a → × b → + a → × c → {\displaystyle =\left({\begin{array}{c}a_{2}b_{3}-a_{3}b_{2}+a_{2}c_{3}-a_{3}c_{2}\\a_{3}b_{1}-a_{1}b_{3}+a_{3}c_{1}-a_{1}c_{3}\\a_{1}b_{2}-a_{2}b_{1}+a_{1}c_{2}-a_{2}c_{1}\end{array}}\right)=\left({\begin{array}{c}a_{2}b_{3}-a_{3}b_{2}\\a_{3}b_{1}-a_{1}b_{3}\\a_{1}b_{2}-a_{2}b_{1}\end{array}}\right)+\left({\begin{array}{c}a_{2}c_{3}-a_{3}c_{2}\\a_{3}c_{1}-a_{1}c_{3}\\a_{1}c_{2}-a_{2}c_{1}\end{array}}\right)={\vec {a}}\times {\vec {b}}+{\vec {a}}\times {\vec {c}}} . (4) ( a → + b → ) × c → = − c → × ( a → + b → ) = − ( c → × a → + c → × b → ) = − ( − a → × c → − b → × c → ) = a → × c → + b → × c → {\displaystyle ({\vec {a}}+{\vec {b}})\times {\vec {c}}=-{\vec {c}}\times ({\vec {a}}+{\vec {b}})=-({\vec {c}}\times {\vec {a}}+{\vec {c}}\times {\vec {b}})=-(-{\vec {a}}\times {\vec {c}}-{\vec {b}}\times {\vec {c}})={\vec {a}}\times {\vec {c}}+{\vec {b}}\times {\vec {c}}} ◼ {\displaystyle \blacksquare } 2次元ベクトル,3次元ベクトルの内積は,図形的な解釈が可能であった. ベクトル積が図形的には何を表しているかを紹介する. 定理5 ベクトル積の意味 (1) a → × b → {\displaystyle {\vec {a}}\times {\vec {b}}} は, a → {\displaystyle {\vec {a}}} , b → {\displaystyle {\vec {b}}} の両方と直交する. (2) a → {\displaystyle {\vec {a}}} と b → {\displaystyle {\vec {b}}} が張る平行四辺形の面積 S {\displaystyle S} は, S = | a → × b → | {\displaystyle S=|{\vec {a}}\times {\vec {b}}|} (3) a → {\displaystyle {\vec {a}}} , b → {\displaystyle {\vec {b}}} , c → {\displaystyle {\vec {c}}} が張る平行六面体の体積 V {\displaystyle V} は, V = | ( a → × b → ) ⋅ c → | {\displaystyle V=|({\vec {a}}\times {\vec {b}})\cdot {\vec {c}}|} 証明 a → = O A → = ( a b c ) {\displaystyle {\vec {a}}={\vec {OA}}=\left({\begin{array}{c}a\\b\\c\end{array}}\right)} , b → = O B → = ( x y z ) {\displaystyle {\vec {b}}={\vec {OB}}=\left({\begin{array}{c}x\\y\\z\end{array}}\right)} とする. (1) a → {\displaystyle {\vec {a}}} と a → × b → {\displaystyle {\vec {a}}\times {\vec {b}}} の内積をとる. a → ⋅ ( a → × b → ) = ( a b c ) ⋅ ( b z − c y c x − a z a y − b x ) = a ( b z − c y ) + b ( c x − a z ) + c ( a y − b x ) = a b z − a c y + b c x − a b z + a c y − b c x {\displaystyle {\vec {a}}\cdot ({\vec {a}}\times {\vec {b}})=\left({\begin{array}{c}a\\b\\c\end{array}}\right)\cdot \left({\begin{array}{c}bz-cy\\cx-az\\ay-bx\end{array}}\right)=a(bz-cy)+b(cx-az)+c(ay-bx)=abz-acy+bcx-abz+acy-bcx} = a b z − a c y + b c x − a b z + a c y − b c x = 0 {\displaystyle ={\cancel {\color {red}abz}}-{\cancel {\color {blue}acy}}+{\cancel {\color {green}bcx}}-{\cancel {\color {red}abz}}+{\cancel {\color {blue}acy}}-{\cancel {\color {green}bcx}}=0} . 同様に b → ⋅ ( a → × b → ) = ( x y z ) ⋅ ( b z − c y c x − a z a y − b x ) = x ( b z − c y ) + y ( c x − a z ) + z ( a y − b x ) = b x z − c x y + c x y − a y z + a y z − b x z {\displaystyle {\vec {b}}\cdot ({\vec {a}}\times {\vec {b}})=\left({\begin{array}{c}x\\y\\z\end{array}}\right)\cdot \left({\begin{array}{c}bz-cy\\cx-az\\ay-bx\end{array}}\right)=x(bz-cy)+y(cx-az)+z(ay-bx)=bxz-cxy+cxy-ayz+ayz-bxz} = b x z − c x y + c x y − a y z + a y z − b x z = 0 {\displaystyle ={\cancel {\color {red}bxz}}-{\cancel {\color {blue}cxy}}+{\cancel {\color {blue}cxy}}-{\cancel {\color {green}ayz}}+{\cancel {\color {green}ayz}}-{\cancel {\color {red}bxz}}=0} . よって, a → × b → {\displaystyle {\vec {a}}\times {\vec {b}}} は a → {\displaystyle {\vec {a}}} , b → {\displaystyle {\vec {b}}} の両方と直交する. (2) a → {\displaystyle {\vec {a}}} , b → {\displaystyle {\vec {b}}} のなす角を θ {\displaystyle \theta } とすると,内積の性質より, | a → | | b → | cos θ = a → ⋅ b → = a x + b y + c z {\displaystyle |{\vec {a}}||{\vec {b}}|\cos \theta ={\vec {a}}\cdot {\vec {b}}=ax+by+cz} O A {\displaystyle \mathrm {OA} } を底辺としたときの B {\displaystyle \mathrm {B} } の高さを h {\displaystyle h} とすると, S = O A × h = | a → | | b → | sin θ ( ∵ h = | b → | sin θ ) {\displaystyle S=\mathrm {OA} \times h=|{\vec {a}}||{\vec {b}}|\sin \theta (\because h=|{\vec {b}}|\sin \theta )} と表されるので, S 2 = | a → | 2 | b → | 2 sin 2 θ = | a → | 2 | b → | 2 ( 1 − cos 2 θ ) = | a → | 2 | b → | 2 − | a → | 2 | b → | 2 cos 2 θ {\displaystyle S^{2}=|{\vec {a}}|^{2}|{\vec {b}}|^{2}\sin ^{2}\theta =|{\vec {a}}|^{2}|{\vec {b}}|^{2}(1-\cos ^{2}\theta )=|{\vec {a}}|^{2}|{\vec {b}}|^{2}-|{\vec {a}}|^{2}|{\vec {b}}|^{2}\cos ^{2}\theta } | a → | 2 | b → | 2 cos 2 θ = ( a → ⋅ b → ) 2 = ( a x + b y + c z ) 2 {\displaystyle |{\vec {a}}|^{2}|{\vec {b}}|^{2}\cos ^{2}\theta =({\vec {a}}\cdot {\vec {b}})^{2}=(ax+by+cz)^{2}} ,また | a → | 2 | b → | 2 = ( a 2 + b 2 + c 2 ) ( x 2 + y 2 + z 2 ) {\displaystyle |{\vec {a}}|^{2}|{\vec {b}}|^{2}=(a^{2}+b^{2}+c^{2})(x^{2}+y^{2}+z^{2})} だから, S 2 = ( a 2 + b 2 + c 2 ) ( x 2 + y 2 + z 2 ) − ( a x + b y + c z ) 2 {\displaystyle S^{2}=(a^{2}+b^{2}+c^{2})(x^{2}+y^{2}+z^{2})-(ax+by+cz)^{2}} = a 2 x 2 + a 2 y 2 + a 2 z 2 + b 2 x 2 + b 2 y 2 + b 2 z 2 + c 2 x 2 + c 2 y 2 + c 2 z 2 − ( a 2 x 2 + a b x y + a c x z + a b x y + b 2 y 2 + b c y z + a c x z + b c y z + c 2 z 2 ) {\displaystyle =a^{2}x^{2}+a^{2}y^{2}+a^{2}z^{2}+b^{2}x^{2}+b^{2}y^{2}+b^{2}z^{2}+c^{2}x^{2}+c^{2}y^{2}+c^{2}z^{2}-(a^{2}x^{2}+abxy+acxz+abxy+b^{2}y^{2}+bcyz+acxz+bcyz+c^{2}z^{2})} = a 2 x 2 + a 2 y 2 + a 2 z 2 + b 2 x 2 + b 2 y 2 + b 2 z 2 + c 2 x 2 + c 2 y 2 + c 2 z 2 − ( a 2 x 2 + a b x y + a c x z + a b x y + b 2 y 2 + b c y z + a c x z + b c y z + c 2 z 2 ) {\displaystyle ={\cancel {\color {red}a^{2}x^{2}}}+a^{2}y^{2}+a^{2}z^{2}+b^{2}x^{2}+{\cancel {\color {blue}b^{2}y^{2}}}+b^{2}z^{2}+c^{2}x^{2}+c^{2}y^{2}+{\cancel {\color {green}c^{2}z^{2}}}-({\cancel {\color {red}a^{2}x^{2}}}+abxy+acxz+abxy+{\cancel {\color {blue}b^{2}y^{2}}}+bcyz+acxz+bcyz+{\cancel {\color {green}c^{2}z^{2}}})} = a 2 y 2 + a 2 z 2 + b 2 x 2 + b 2 z 2 + c 2 x 2 + c 2 y 2 − ( a b x y + a c x z + a b x y + b c y z + a c x z + b c y z ) {\displaystyle ={\color {red}a^{2}y^{2}}+{\color {blue}a^{2}z^{2}}+{\color {red}b^{2}x^{2}}+{\color {green}b^{2}z^{2}}+{\color {blue}c^{2}x^{2}}+{\color {green}c^{2}y^{2}}-({\color {red}abxy}+{\color {blue}acxz}+{\color {red}abxy}+{\color {green}bcyz}+{\color {blue}acxz}+{\color {green}bcyz})} = ( b 2 z 2 − 2 b c y z + c 2 y 2 ) + ( c 2 x 2 − 2 a c x z + a 2 z 2 ) + ( a 2 y 2 − 2 a b x y + b 2 x 2 ) {\displaystyle =(b^{2}z^{2}-2bcyz+c^{2}y^{2})+(c^{2}x^{2}-2acxz+a^{2}z^{2})+(a^{2}y^{2}-2abxy+b^{2}x^{2})} = ( b z − c y ) 2 + ( c x − a z ) 2 + ( a y − b x ) 2 {\displaystyle =(bz-cy)^{2}+(cx-az)^{2}+(ay-bx)^{2}} = | a → × b → | 2 {\displaystyle =|{\vec {a}}\times {\vec {b}}|^{2}} なぜならば | a → × b → | 2 = ( a → × b → ) ⋅ ( a → × b → ) = ( b z − c y c x − a z a y − b x ) ⋅ ( b z − c y c x − a z a y − b x ) = ( b z − c y ) 2 + ( c x − a z ) 2 + ( a y − b x ) 2 {\displaystyle |{\vec {a}}\times {\vec {b}}|^{2}=({\vec {a}}\times {\vec {b}})\cdot ({\vec {a}}\times {\vec {b}})=\left({\begin{array}{c}bz-cy\\cx-az\\ay-bx\end{array}}\right)\cdot \left({\begin{array}{c}bz-cy\\cx-az\\ay-bx\end{array}}\right)=(bz-cy)^{2}+(cx-az)^{2}+(ay-bx)^{2}} よって, S = | a → × b → | {\displaystyle S=|{\vec {a}}\times {\vec {b}}|} (3) c → = O C {\displaystyle {\vec {c}}=\mathrm {OC} } とする. a → {\displaystyle {\vec {a}}} , b → {\displaystyle {\vec {b}}} が張る平面を平行四辺形の底面としてみたときの C {\displaystyle \mathrm {C} } の高さを l {\displaystyle l} , a → × b → {\displaystyle {\vec {a}}\times {\vec {b}}} と c → {\displaystyle {\vec {c}}} のなす角を φ {\displaystyle \varphi } とすると, a → × b → {\displaystyle {\vec {a}}\times {\vec {b}}} は a → {\displaystyle {\vec {a}}} , b → {\displaystyle {\vec {b}}} が張る平行四辺形に垂直なので, l = | O C cos φ | = | c → | ⋅ | cos φ | {\displaystyle l=|\mathrm {OC} \cos \varphi |=|{\vec {c}}|\cdot |\cos \varphi |} だから, V = S l = | a → × b → | ⋅ | c → | ⋅ | cos φ | = | | a → × b → | ⋅ | c → | ⋅ cos φ | = | ( a → × b → ) ⋅ c → | {\displaystyle V=Sl=|{\vec {a}}\times {\vec {b}}|\cdot |{\vec {c}}|\cdot |\cos \varphi |=\left||{\vec {a}}\times {\vec {b}}|\cdot |{\vec {c}}|\cdot \cos \varphi \right|=\left|({\vec {a}}\times {\vec {b}})\cdot {\vec {c}}\right|} . ◼ {\displaystyle \blacksquare } 演習1. {\displaystyle \quad } a → = ( 1 − 3 2 ) {\displaystyle {\vec {a}}=\left({\begin{array}{c}1\\-3\\2\end{array}}\right)} , b → = ( 2 − 2 3 ) {\displaystyle {\vec {b}}=\left({\begin{array}{c}2\\-2\\3\end{array}}\right)} , c → = ( − 1 − 1 0 ) {\displaystyle {\vec {c}}=\left({\begin{array}{c}-1\\-1\\0\end{array}}\right)} のとき, (1) a → × b → , ( a → × b → ) ⋅ c → {\displaystyle {\vec {a}}\times {\vec {b}},({\vec {a}}\times {\vec {b}})\cdot {\vec {c}}} を求めよ. (2) a → , b → {\displaystyle {\vec {a}},{\vec {b}}} の両方と直交する単位ベクトルを求めよ. (3) O A → = a → , O B → = b → , O C → = c → {\displaystyle {\vec {\mathrm {OA} }}={\vec {a}},{\vec {\mathrm {OB} }}={\vec {b}},{\vec {\mathrm {OC} }}={\vec {c}}} とするとき,三角錐 O − A B C {\displaystyle \mathrm {O-ABC} } の体積を求めよ. 解答例 (1) a → × b → = ( 1 − 3 2 ) × ( 2 − 2 3 ) = ( ( − 3 ) ⋅ 3 − 2 ⋅ ( − 2 ) 2 ⋅ 2 − 1 ⋅ 3 1 ⋅ ( − 2 ) − ( − 3 ) ⋅ 2 ) = ( − 5 1 4 ) {\displaystyle {\vec {a}}\times {\vec {b}}=\left({\begin{array}{c}1\\-3\\2\end{array}}\right)\times \left({\begin{array}{c}2\\-2\\3\end{array}}\right)=\left({\begin{array}{c}(-3)\cdot 3-2\cdot (-2)\\2\cdot 2-1\cdot 3\\1\cdot (-2)-(-3)\cdot 2\end{array}}\right)=\left({\begin{array}{c}-5\\1\\4\end{array}}\right)} . ( a → × b → ) ⋅ c → = ( − 5 1 4 ) ⋅ ( − 1 − 1 0 ) = − 5 ⋅ ( − 1 ) + 1 ⋅ ( − 1 ) + 4 ⋅ 0 = 4 {\displaystyle ({\vec {a}}\times {\vec {b}})\cdot {\vec {c}}=\left({\begin{array}{c}-5\\1\\4\end{array}}\right)\cdot \left({\begin{array}{c}-1\\-1\\0\end{array}}\right)=-5\cdot (-1)+1\cdot (-1)+4\cdot 0=4} . (2) a → × b → {\displaystyle {\vec {a}}\times {\vec {b}}} は a → {\displaystyle {\vec {a}}} と b → {\displaystyle {\vec {b}}} に垂直なので, d → = a → × b → {\displaystyle {\vec {d}}={\vec {a}}\times {\vec {b}}} を単位化する. ± 1 | d → | d → = ± 1 ( − 5 ) 2 + 1 2 + 4 2 {\displaystyle \pm {\frac {1}{|{\vec {d}}|}}{\vec {d}}=\pm {\frac {1}{\sqrt {(-5)^{2}+1^{2}+4^{2}}}}} ( − 5 1 4 ) = ± 1 42 ( − 5 1 4 ) {\displaystyle \left({\begin{array}{c}-5\\1\\4\end{array}}\right)=\pm {\frac {1}{\sqrt {42}}}\left({\begin{array}{c}-5\\1\\4\end{array}}\right)} .(解となるベクトルは二つ) (3) a → , b → , c → {\displaystyle {\vec {a}},{\vec {b}},{\vec {c}}} が張る平行六面体の体積 V {\displaystyle V} は, V = | ( a → × b → ) ⋅ c → = | 4 | = 4 {\displaystyle V=|({\vec {a}}\times {\vec {b}})\cdot {\vec {c}}=|4|=4} a → , b → {\displaystyle {\vec {a}},{\vec {b}}} が張る平行四辺形の面積を S {\displaystyle S} , a → , b → {\displaystyle {\vec {a}},{\vec {b}}} が張る平行四辺形を底面として見たときの平行六面体の高さを h {\displaystyle h} とすると V = S h {\displaystyle V=Sh} であり, (三角錐 O − A B C {\displaystyle \mathrm {O-ABC} } の体積) = 1 3 ( 1 2 S ) h = 1 6 V = 4 6 = 2 3 {\displaystyle ={\frac {1}{3}}\left({\frac {1}{2}}S\right)h={\frac {1}{6}}V={\frac {4}{6}}={\frac {2}{3}}} . ◼ {\displaystyle \blacksquare }
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "内積があるのなら外積があってもいいのでは,と思っている人もいることだろう. 単に「外積」と呼ばれることもある,3次元実数ベクトルについての外積,すなわち「ベクトル積」を紹介する.", "title": "" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "定義3 外積", "title": "" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "R 3 {\\displaystyle R^{3}} のベクトル a → = ( a b c ) {\\displaystyle {\\vec {a}}=\\left({\\begin{array}{c}a\\\\b\\\\c\\end{array}}\\right)} , b → = ( x y z ) {\\displaystyle {\\vec {b}}=\\left({\\begin{array}{c}x\\\\y\\\\z\\end{array}}\\right)} に関して、 a → × b → {\\displaystyle {\\vec {a}}\\times {\\vec {b}}} を次で定める.", "title": "" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "a → × b → = ( b z − c y c x − a z a y − b x ) {\\displaystyle {\\vec {a}}\\times {\\vec {b}}=\\left({\\begin{array}{c}bz-cy\\\\cx-az\\\\ay-bx\\end{array}}\\right)}", "title": "" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "", "title": "" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "ベクトル積は 3 次元ベクトルの場合のみについて定義される演算である。", "title": "" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "定義のとおりだが、実際の計算は図に示したように第 1 成分を下に付け加え, ×の形に積を取り,使っていない成分に押し込むという感じで技化しておくとよい.", "title": "" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "ベクトル積に関して次の計算法則が成り立つ. 交換法則が成り立たないことに注意する. a → × b → {\\displaystyle {\\vec {a}}\\times {\\vec {b}}} で a → {\\displaystyle {\\vec {a}}} と b → {\\displaystyle {\\vec {b}}} を入れ替えると,符号が逆になる.", "title": "" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "定理4 ベクトル積の計算法則", "title": "" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "(1) a → × b → = − ( b → × a → ) {\\displaystyle {\\vec {a}}\\times {\\vec {b}}=-({\\vec {b}}\\times {\\vec {a}})}", "title": "" }, { "paragraph_id": 10, "tag": "p", "text": "(2) k ( a → × b → ) = ( k a → ) × b → = a → × ( k b → ) {\\displaystyle k({\\vec {a}}\\times {\\vec {b}})=(k{\\vec {a}})\\times {\\vec {b}}={\\vec {a}}\\times (k{\\vec {b}})}", "title": "" }, { "paragraph_id": 11, "tag": "p", "text": "(3) a → × ( b → + c → ) = a → × b → + a → × c → {\\displaystyle {\\vec {a}}\\times ({\\vec {b}}+{\\vec {c}})={\\vec {a}}\\times {\\vec {b}}+{\\vec {a}}\\times {\\vec {c}}}", "title": "" }, { "paragraph_id": 12, "tag": "p", "text": "(4) ( a → + b → ) × c → = a → × c → + b → × c → {\\displaystyle ({\\vec {a}}+{\\vec {b}})\\times {\\vec {c}}={\\vec {a}}\\times {\\vec {c}}+{\\vec {b}}\\times {\\vec {c}}}", "title": "" }, { "paragraph_id": 13, "tag": "p", "text": "証明", "title": "" }, { "paragraph_id": 14, "tag": "p", "text": "(1)", "title": "" }, { "paragraph_id": 15, "tag": "p", "text": "a → = ( a b c ) {\\displaystyle {\\vec {a}}=\\left({\\begin{array}{c}a\\\\b\\\\c\\end{array}}\\right)} , b → = ( x y z ) {\\displaystyle {\\vec {b}}=\\left({\\begin{array}{c}x\\\\y\\\\z\\end{array}}\\right)} にて b → × a → = ( y c − z b z a − x c x b − y a ) = ( − ( b z − c y ) − ( c x − a z ) − ( a y − b x ) ) = − ( b z − c y c x − a z a y − b x ) = − a → × b → {\\displaystyle {\\vec {b}}\\times {\\vec {a}}=\\left({\\begin{array}{c}yc-zb\\\\za-xc\\\\xb-ya\\end{array}}\\right)=\\left({\\begin{array}{c}-(bz-cy)\\\\-(cx-az)\\\\-(ay-bx)\\end{array}}\\right)=-\\left({\\begin{array}{c}bz-cy\\\\cx-az\\\\ay-bx\\end{array}}\\right)=-{\\vec {a}}\\times {\\vec {b}}} .", "title": "" }, { "paragraph_id": 16, "tag": "p", "text": "(2)", "title": "" }, { "paragraph_id": 17, "tag": "p", "text": "k ( a → × b → ) = ( k ( b z − c y ) k ( c x − a z ) k ( a y − b x ) ) = ( k b z − k c y k c x − k a z k a y − k b x ) = ( ( k b ) z − ( k c ) y ( k c ) x − ( k a ) z ( k a ) y − ( k b ) x ) = ( k a → ) × b → {\\displaystyle k({\\vec {a}}\\times {\\vec {b}})=\\left({\\begin{array}{c}k(bz-cy)\\\\k(cx-az)\\\\k(ay-bx)\\end{array}}\\right)=\\left({\\begin{array}{c}kbz-kcy\\\\kcx-kaz\\\\kay-kbx\\end{array}}\\right)=\\left({\\begin{array}{c}(kb)z-(kc)y\\\\(kc)x-(ka)z\\\\(ka)y-(kb)x\\end{array}}\\right)=(k{\\vec {a}})\\times {\\vec {b}}} .", "title": "" }, { "paragraph_id": 18, "tag": "p", "text": "同様に k ( a → × b → ) = ( k b z − k c y k c x − k a z k a y − k b x ) = ( b ( k z ) − c ( k y ) c ( k x ) − a ( k z ) a ( k y ) − b ( k x ) ) = a → × ( k b → ) {\\displaystyle k({\\vec {a}}\\times {\\vec {b}})=\\left({\\begin{array}{c}kbz-kcy\\\\kcx-kaz\\\\kay-kbx\\end{array}}\\right)=\\left({\\begin{array}{c}b(kz)-c(ky)\\\\c(kx)-a(kz)\\\\a(ky)-b(kx)\\end{array}}\\right)={\\vec {a}}\\times (k{\\vec {b}})} .", "title": "" }, { "paragraph_id": 19, "tag": "p", "text": "(3)", "title": "" }, { "paragraph_id": 20, "tag": "p", "text": "a → = ( a 1 a 2 a 3 ) {\\displaystyle {\\vec {a}}=\\left({\\begin{array}{c}a_{1}\\\\a_{2}\\\\a_{3}\\end{array}}\\right)} , b → = ( b 1 b 2 b 3 ) {\\displaystyle {\\vec {b}}=\\left({\\begin{array}{c}b_{1}\\\\b_{2}\\\\b_{3}\\end{array}}\\right)} , c → = ( c 1 c 2 c 3 ) {\\displaystyle {\\vec {c}}=\\left({\\begin{array}{c}c_{1}\\\\c_{2}\\\\c_{3}\\end{array}}\\right)} にて", "title": "" }, { "paragraph_id": 21, "tag": "p", "text": "a → × ( b → + c → ) = ( a 1 a 2 a 3 ) × ( b 1 + c 1 b 2 + c 2 b 3 + c 3 ) = ( a 2 ( b 3 + c 3 ) − a 3 ( b 2 + c 2 ) a 3 ( b 1 + c 1 ) − a 1 ( b 3 + c 3 ) a 1 ( b 2 + c 2 ) − a 2 ( b 1 + c 1 ) ) = ( a 2 b 3 + a 2 c 3 − a 3 b 2 − a 3 c 2 a 3 b 1 + a 3 c 1 − a 1 b 3 − a 1 c 3 a 1 b 2 + a 1 c 2 − a 2 b 1 − a 2 c 1 ) {\\displaystyle {\\vec {a}}\\times ({\\vec {b}}+{\\vec {c}})=\\left({\\begin{array}{c}a_{1}\\\\a_{2}\\\\a_{3}\\end{array}}\\right)\\times \\left({\\begin{array}{c}b_{1}+c_{1}\\\\b_{2}+c_{2}\\\\b_{3}+c_{3}\\end{array}}\\right)=\\left({\\begin{array}{c}a_{2}(b_{3}+c_{3})-a_{3}(b_{2}+c_{2})\\\\a_{3}(b_{1}+c_{1})-a_{1}(b_{3}+c_{3})\\\\a_{1}(b_{2}+c_{2})-a_{2}(b_{1}+c_{1})\\end{array}}\\right)=\\left({\\begin{array}{c}a_{2}b_{3}+a_{2}c_{3}-a_{3}b_{2}-a_{3}c_{2}\\\\a_{3}b_{1}+a_{3}c_{1}-a_{1}b_{3}-a_{1}c_{3}\\\\a_{1}b_{2}+a_{1}c_{2}-a_{2}b_{1}-a_{2}c_{1}\\end{array}}\\right)}", "title": "" }, { "paragraph_id": 22, "tag": "p", "text": "= ( a 2 b 3 − a 3 b 2 + a 2 c 3 − a 3 c 2 a 3 b 1 − a 1 b 3 + a 3 c 1 − a 1 c 3 a 1 b 2 − a 2 b 1 + a 1 c 2 − a 2 c 1 ) = ( a 2 b 3 − a 3 b 2 a 3 b 1 − a 1 b 3 a 1 b 2 − a 2 b 1 ) + ( a 2 c 3 − a 3 c 2 a 3 c 1 − a 1 c 3 a 1 c 2 − a 2 c 1 ) = a → × b → + a → × c → {\\displaystyle =\\left({\\begin{array}{c}a_{2}b_{3}-a_{3}b_{2}+a_{2}c_{3}-a_{3}c_{2}\\\\a_{3}b_{1}-a_{1}b_{3}+a_{3}c_{1}-a_{1}c_{3}\\\\a_{1}b_{2}-a_{2}b_{1}+a_{1}c_{2}-a_{2}c_{1}\\end{array}}\\right)=\\left({\\begin{array}{c}a_{2}b_{3}-a_{3}b_{2}\\\\a_{3}b_{1}-a_{1}b_{3}\\\\a_{1}b_{2}-a_{2}b_{1}\\end{array}}\\right)+\\left({\\begin{array}{c}a_{2}c_{3}-a_{3}c_{2}\\\\a_{3}c_{1}-a_{1}c_{3}\\\\a_{1}c_{2}-a_{2}c_{1}\\end{array}}\\right)={\\vec {a}}\\times {\\vec {b}}+{\\vec {a}}\\times {\\vec {c}}} .", "title": "" }, { "paragraph_id": 23, "tag": "p", "text": "(4)", "title": "" }, { "paragraph_id": 24, "tag": "p", "text": "( a → + b → ) × c → = − c → × ( a → + b → ) = − ( c → × a → + c → × b → ) = − ( − a → × c → − b → × c → ) = a → × c → + b → × c → {\\displaystyle ({\\vec {a}}+{\\vec {b}})\\times {\\vec {c}}=-{\\vec {c}}\\times ({\\vec {a}}+{\\vec {b}})=-({\\vec {c}}\\times {\\vec {a}}+{\\vec {c}}\\times {\\vec {b}})=-(-{\\vec {a}}\\times {\\vec {c}}-{\\vec {b}}\\times {\\vec {c}})={\\vec {a}}\\times {\\vec {c}}+{\\vec {b}}\\times {\\vec {c}}}", "title": "" }, { "paragraph_id": 25, "tag": "p", "text": "◼ {\\displaystyle \\blacksquare }", "title": "" }, { "paragraph_id": 26, "tag": "p", "text": "2次元ベクトル,3次元ベクトルの内積は,図形的な解釈が可能であった. ベクトル積が図形的には何を表しているかを紹介する.", "title": "" }, { "paragraph_id": 27, "tag": "p", "text": "定理5 ベクトル積の意味", "title": "" }, { "paragraph_id": 28, "tag": "p", "text": "(1) a → × b → {\\displaystyle {\\vec {a}}\\times {\\vec {b}}} は, a → {\\displaystyle {\\vec {a}}} , b → {\\displaystyle {\\vec {b}}} の両方と直交する.", "title": "" }, { "paragraph_id": 29, "tag": "p", "text": "(2) a → {\\displaystyle {\\vec {a}}} と b → {\\displaystyle {\\vec {b}}} が張る平行四辺形の面積 S {\\displaystyle S} は, S = | a → × b → | {\\displaystyle S=|{\\vec {a}}\\times {\\vec {b}}|}", "title": "" }, { "paragraph_id": 30, "tag": "p", "text": "(3) a → {\\displaystyle {\\vec {a}}} , b → {\\displaystyle {\\vec {b}}} , c → {\\displaystyle {\\vec {c}}} が張る平行六面体の体積 V {\\displaystyle V} は, V = | ( a → × b → ) ⋅ c → | {\\displaystyle V=|({\\vec {a}}\\times {\\vec {b}})\\cdot {\\vec {c}}|}", "title": "" }, { "paragraph_id": 31, "tag": "p", "text": "証明", "title": "" }, { "paragraph_id": 32, "tag": "p", "text": "a → = O A → = ( a b c ) {\\displaystyle {\\vec {a}}={\\vec {OA}}=\\left({\\begin{array}{c}a\\\\b\\\\c\\end{array}}\\right)} , b → = O B → = ( x y z ) {\\displaystyle {\\vec {b}}={\\vec {OB}}=\\left({\\begin{array}{c}x\\\\y\\\\z\\end{array}}\\right)} とする.", "title": "" }, { "paragraph_id": 33, "tag": "p", "text": "(1)", "title": "" }, { "paragraph_id": 34, "tag": "p", "text": "a → {\\displaystyle {\\vec {a}}} と a → × b → {\\displaystyle {\\vec {a}}\\times {\\vec {b}}} の内積をとる.", "title": "" }, { "paragraph_id": 35, "tag": "p", "text": "a → ⋅ ( a → × b → ) = ( a b c ) ⋅ ( b z − c y c x − a z a y − b x ) = a ( b z − c y ) + b ( c x − a z ) + c ( a y − b x ) = a b z − a c y + b c x − a b z + a c y − b c x {\\displaystyle {\\vec {a}}\\cdot ({\\vec {a}}\\times {\\vec {b}})=\\left({\\begin{array}{c}a\\\\b\\\\c\\end{array}}\\right)\\cdot \\left({\\begin{array}{c}bz-cy\\\\cx-az\\\\ay-bx\\end{array}}\\right)=a(bz-cy)+b(cx-az)+c(ay-bx)=abz-acy+bcx-abz+acy-bcx} = a b z − a c y + b c x − a b z + a c y − b c x = 0 {\\displaystyle ={\\cancel {\\color {red}abz}}-{\\cancel {\\color {blue}acy}}+{\\cancel {\\color {green}bcx}}-{\\cancel {\\color {red}abz}}+{\\cancel {\\color {blue}acy}}-{\\cancel {\\color {green}bcx}}=0} .", "title": "" }, { "paragraph_id": 36, "tag": "p", "text": "同様に", "title": "" }, { "paragraph_id": 37, "tag": "p", "text": "b → ⋅ ( a → × b → ) = ( x y z ) ⋅ ( b z − c y c x − a z a y − b x ) = x ( b z − c y ) + y ( c x − a z ) + z ( a y − b x ) = b x z − c x y + c x y − a y z + a y z − b x z {\\displaystyle {\\vec {b}}\\cdot ({\\vec {a}}\\times {\\vec {b}})=\\left({\\begin{array}{c}x\\\\y\\\\z\\end{array}}\\right)\\cdot \\left({\\begin{array}{c}bz-cy\\\\cx-az\\\\ay-bx\\end{array}}\\right)=x(bz-cy)+y(cx-az)+z(ay-bx)=bxz-cxy+cxy-ayz+ayz-bxz} = b x z − c x y + c x y − a y z + a y z − b x z = 0 {\\displaystyle ={\\cancel {\\color {red}bxz}}-{\\cancel {\\color {blue}cxy}}+{\\cancel {\\color {blue}cxy}}-{\\cancel {\\color {green}ayz}}+{\\cancel {\\color {green}ayz}}-{\\cancel {\\color {red}bxz}}=0} .", "title": "" }, { "paragraph_id": 38, "tag": "p", "text": "よって, a → × b → {\\displaystyle {\\vec {a}}\\times {\\vec {b}}} は a → {\\displaystyle {\\vec {a}}} , b → {\\displaystyle {\\vec {b}}} の両方と直交する.", "title": "" }, { "paragraph_id": 39, "tag": "p", "text": "(2)", "title": "" }, { "paragraph_id": 40, "tag": "p", "text": "a → {\\displaystyle {\\vec {a}}} , b → {\\displaystyle {\\vec {b}}} のなす角を θ {\\displaystyle \\theta } とすると,内積の性質より,", "title": "" }, { "paragraph_id": 41, "tag": "p", "text": "| a → | | b → | cos θ = a → ⋅ b → = a x + b y + c z {\\displaystyle |{\\vec {a}}||{\\vec {b}}|\\cos \\theta ={\\vec {a}}\\cdot {\\vec {b}}=ax+by+cz}", "title": "" }, { "paragraph_id": 42, "tag": "p", "text": "O A {\\displaystyle \\mathrm {OA} } を底辺としたときの B {\\displaystyle \\mathrm {B} } の高さを h {\\displaystyle h} とすると,", "title": "" }, { "paragraph_id": 43, "tag": "p", "text": "S = O A × h = | a → | | b → | sin θ ( ∵ h = | b → | sin θ ) {\\displaystyle S=\\mathrm {OA} \\times h=|{\\vec {a}}||{\\vec {b}}|\\sin \\theta (\\because h=|{\\vec {b}}|\\sin \\theta )}", "title": "" }, { "paragraph_id": 44, "tag": "p", "text": "と表されるので,", "title": "" }, { "paragraph_id": 45, "tag": "p", "text": "S 2 = | a → | 2 | b → | 2 sin 2 θ = | a → | 2 | b → | 2 ( 1 − cos 2 θ ) = | a → | 2 | b → | 2 − | a → | 2 | b → | 2 cos 2 θ {\\displaystyle S^{2}=|{\\vec {a}}|^{2}|{\\vec {b}}|^{2}\\sin ^{2}\\theta =|{\\vec {a}}|^{2}|{\\vec {b}}|^{2}(1-\\cos ^{2}\\theta )=|{\\vec {a}}|^{2}|{\\vec {b}}|^{2}-|{\\vec {a}}|^{2}|{\\vec {b}}|^{2}\\cos ^{2}\\theta }", "title": "" }, { "paragraph_id": 46, "tag": "p", "text": "| a → | 2 | b → | 2 cos 2 θ = ( a → ⋅ b → ) 2 = ( a x + b y + c z ) 2 {\\displaystyle |{\\vec {a}}|^{2}|{\\vec {b}}|^{2}\\cos ^{2}\\theta =({\\vec {a}}\\cdot {\\vec {b}})^{2}=(ax+by+cz)^{2}} ,また | a → | 2 | b → | 2 = ( a 2 + b 2 + c 2 ) ( x 2 + y 2 + z 2 ) {\\displaystyle |{\\vec {a}}|^{2}|{\\vec {b}}|^{2}=(a^{2}+b^{2}+c^{2})(x^{2}+y^{2}+z^{2})} だから,", "title": "" }, { "paragraph_id": 47, "tag": "p", "text": "S 2 = ( a 2 + b 2 + c 2 ) ( x 2 + y 2 + z 2 ) − ( a x + b y + c z ) 2 {\\displaystyle S^{2}=(a^{2}+b^{2}+c^{2})(x^{2}+y^{2}+z^{2})-(ax+by+cz)^{2}}", "title": "" }, { "paragraph_id": 48, "tag": "p", "text": "= a 2 x 2 + a 2 y 2 + a 2 z 2 + b 2 x 2 + b 2 y 2 + b 2 z 2 + c 2 x 2 + c 2 y 2 + c 2 z 2 − ( a 2 x 2 + a b x y + a c x z + a b x y + b 2 y 2 + b c y z + a c x z + b c y z + c 2 z 2 ) {\\displaystyle =a^{2}x^{2}+a^{2}y^{2}+a^{2}z^{2}+b^{2}x^{2}+b^{2}y^{2}+b^{2}z^{2}+c^{2}x^{2}+c^{2}y^{2}+c^{2}z^{2}-(a^{2}x^{2}+abxy+acxz+abxy+b^{2}y^{2}+bcyz+acxz+bcyz+c^{2}z^{2})}", "title": "" }, { "paragraph_id": 49, "tag": "p", "text": "= a 2 x 2 + a 2 y 2 + a 2 z 2 + b 2 x 2 + b 2 y 2 + b 2 z 2 + c 2 x 2 + c 2 y 2 + c 2 z 2 − ( a 2 x 2 + a b x y + a c x z + a b x y + b 2 y 2 + b c y z + a c x z + b c y z + c 2 z 2 ) {\\displaystyle ={\\cancel {\\color {red}a^{2}x^{2}}}+a^{2}y^{2}+a^{2}z^{2}+b^{2}x^{2}+{\\cancel {\\color {blue}b^{2}y^{2}}}+b^{2}z^{2}+c^{2}x^{2}+c^{2}y^{2}+{\\cancel {\\color {green}c^{2}z^{2}}}-({\\cancel {\\color {red}a^{2}x^{2}}}+abxy+acxz+abxy+{\\cancel {\\color {blue}b^{2}y^{2}}}+bcyz+acxz+bcyz+{\\cancel {\\color {green}c^{2}z^{2}}})}", "title": "" }, { "paragraph_id": 50, "tag": "p", "text": "= a 2 y 2 + a 2 z 2 + b 2 x 2 + b 2 z 2 + c 2 x 2 + c 2 y 2 − ( a b x y + a c x z + a b x y + b c y z + a c x z + b c y z ) {\\displaystyle ={\\color {red}a^{2}y^{2}}+{\\color {blue}a^{2}z^{2}}+{\\color {red}b^{2}x^{2}}+{\\color {green}b^{2}z^{2}}+{\\color {blue}c^{2}x^{2}}+{\\color {green}c^{2}y^{2}}-({\\color {red}abxy}+{\\color {blue}acxz}+{\\color {red}abxy}+{\\color {green}bcyz}+{\\color {blue}acxz}+{\\color {green}bcyz})}", "title": "" }, { "paragraph_id": 51, "tag": "p", "text": "= ( b 2 z 2 − 2 b c y z + c 2 y 2 ) + ( c 2 x 2 − 2 a c x z + a 2 z 2 ) + ( a 2 y 2 − 2 a b x y + b 2 x 2 ) {\\displaystyle =(b^{2}z^{2}-2bcyz+c^{2}y^{2})+(c^{2}x^{2}-2acxz+a^{2}z^{2})+(a^{2}y^{2}-2abxy+b^{2}x^{2})}", "title": "" }, { "paragraph_id": 52, "tag": "p", "text": "= ( b z − c y ) 2 + ( c x − a z ) 2 + ( a y − b x ) 2 {\\displaystyle =(bz-cy)^{2}+(cx-az)^{2}+(ay-bx)^{2}}", "title": "" }, { "paragraph_id": 53, "tag": "p", "text": "= | a → × b → | 2 {\\displaystyle =|{\\vec {a}}\\times {\\vec {b}}|^{2}}", "title": "" }, { "paragraph_id": 54, "tag": "p", "text": "なぜならば | a → × b → | 2 = ( a → × b → ) ⋅ ( a → × b → ) = ( b z − c y c x − a z a y − b x ) ⋅ ( b z − c y c x − a z a y − b x ) = ( b z − c y ) 2 + ( c x − a z ) 2 + ( a y − b x ) 2 {\\displaystyle |{\\vec {a}}\\times {\\vec {b}}|^{2}=({\\vec {a}}\\times {\\vec {b}})\\cdot ({\\vec {a}}\\times {\\vec {b}})=\\left({\\begin{array}{c}bz-cy\\\\cx-az\\\\ay-bx\\end{array}}\\right)\\cdot \\left({\\begin{array}{c}bz-cy\\\\cx-az\\\\ay-bx\\end{array}}\\right)=(bz-cy)^{2}+(cx-az)^{2}+(ay-bx)^{2}}", "title": "" }, { "paragraph_id": 55, "tag": "p", "text": "よって, S = | a → × b → | {\\displaystyle S=|{\\vec {a}}\\times {\\vec {b}}|}", "title": "" }, { "paragraph_id": 56, "tag": "p", "text": "(3) c → = O C {\\displaystyle {\\vec {c}}=\\mathrm {OC} } とする. a → {\\displaystyle {\\vec {a}}} , b → {\\displaystyle {\\vec {b}}} が張る平面を平行四辺形の底面としてみたときの C {\\displaystyle \\mathrm {C} } の高さを l {\\displaystyle l} , a → × b → {\\displaystyle {\\vec {a}}\\times {\\vec {b}}} と c → {\\displaystyle {\\vec {c}}} のなす角を φ {\\displaystyle \\varphi } とすると,", "title": "" }, { "paragraph_id": 57, "tag": "p", "text": "a → × b → {\\displaystyle {\\vec {a}}\\times {\\vec {b}}} は a → {\\displaystyle {\\vec {a}}} , b → {\\displaystyle {\\vec {b}}} が張る平行四辺形に垂直なので,", "title": "" }, { "paragraph_id": 58, "tag": "p", "text": "l = | O C cos φ | = | c → | ⋅ | cos φ | {\\displaystyle l=|\\mathrm {OC} \\cos \\varphi |=|{\\vec {c}}|\\cdot |\\cos \\varphi |} だから,", "title": "" }, { "paragraph_id": 59, "tag": "p", "text": "V = S l = | a → × b → | ⋅ | c → | ⋅ | cos φ | = | | a → × b → | ⋅ | c → | ⋅ cos φ | = | ( a → × b → ) ⋅ c → | {\\displaystyle V=Sl=|{\\vec {a}}\\times {\\vec {b}}|\\cdot |{\\vec {c}}|\\cdot |\\cos \\varphi |=\\left||{\\vec {a}}\\times {\\vec {b}}|\\cdot |{\\vec {c}}|\\cdot \\cos \\varphi \\right|=\\left|({\\vec {a}}\\times {\\vec {b}})\\cdot {\\vec {c}}\\right|} .", "title": "" }, { "paragraph_id": 60, "tag": "p", "text": "◼ {\\displaystyle \\blacksquare }", "title": "" }, { "paragraph_id": 61, "tag": "p", "text": "", "title": "" }, { "paragraph_id": 62, "tag": "p", "text": "演習1. {\\displaystyle \\quad }", "title": "" }, { "paragraph_id": 63, "tag": "p", "text": "a → = ( 1 − 3 2 ) {\\displaystyle {\\vec {a}}=\\left({\\begin{array}{c}1\\\\-3\\\\2\\end{array}}\\right)} , b → = ( 2 − 2 3 ) {\\displaystyle {\\vec {b}}=\\left({\\begin{array}{c}2\\\\-2\\\\3\\end{array}}\\right)} , c → = ( − 1 − 1 0 ) {\\displaystyle {\\vec {c}}=\\left({\\begin{array}{c}-1\\\\-1\\\\0\\end{array}}\\right)} のとき,", "title": "" }, { "paragraph_id": 64, "tag": "p", "text": "(1) a → × b → , ( a → × b → ) ⋅ c → {\\displaystyle {\\vec {a}}\\times {\\vec {b}},({\\vec {a}}\\times {\\vec {b}})\\cdot {\\vec {c}}} を求めよ.", "title": "" }, { "paragraph_id": 65, "tag": "p", "text": "(2) a → , b → {\\displaystyle {\\vec {a}},{\\vec {b}}} の両方と直交する単位ベクトルを求めよ.", "title": "" }, { "paragraph_id": 66, "tag": "p", "text": "(3) O A → = a → , O B → = b → , O C → = c → {\\displaystyle {\\vec {\\mathrm {OA} }}={\\vec {a}},{\\vec {\\mathrm {OB} }}={\\vec {b}},{\\vec {\\mathrm {OC} }}={\\vec {c}}} とするとき,三角錐 O − A B C {\\displaystyle \\mathrm {O-ABC} } の体積を求めよ.", "title": "" }, { "paragraph_id": 67, "tag": "p", "text": "解答例", "title": "" }, { "paragraph_id": 68, "tag": "p", "text": "(1) a → × b → = ( 1 − 3 2 ) × ( 2 − 2 3 ) = ( ( − 3 ) ⋅ 3 − 2 ⋅ ( − 2 ) 2 ⋅ 2 − 1 ⋅ 3 1 ⋅ ( − 2 ) − ( − 3 ) ⋅ 2 ) = ( − 5 1 4 ) {\\displaystyle {\\vec {a}}\\times {\\vec {b}}=\\left({\\begin{array}{c}1\\\\-3\\\\2\\end{array}}\\right)\\times \\left({\\begin{array}{c}2\\\\-2\\\\3\\end{array}}\\right)=\\left({\\begin{array}{c}(-3)\\cdot 3-2\\cdot (-2)\\\\2\\cdot 2-1\\cdot 3\\\\1\\cdot (-2)-(-3)\\cdot 2\\end{array}}\\right)=\\left({\\begin{array}{c}-5\\\\1\\\\4\\end{array}}\\right)} .", "title": "" }, { "paragraph_id": 69, "tag": "p", "text": "( a → × b → ) ⋅ c → = ( − 5 1 4 ) ⋅ ( − 1 − 1 0 ) = − 5 ⋅ ( − 1 ) + 1 ⋅ ( − 1 ) + 4 ⋅ 0 = 4 {\\displaystyle ({\\vec {a}}\\times {\\vec {b}})\\cdot {\\vec {c}}=\\left({\\begin{array}{c}-5\\\\1\\\\4\\end{array}}\\right)\\cdot \\left({\\begin{array}{c}-1\\\\-1\\\\0\\end{array}}\\right)=-5\\cdot (-1)+1\\cdot (-1)+4\\cdot 0=4} .", "title": "" }, { "paragraph_id": 70, "tag": "p", "text": "(2) a → × b → {\\displaystyle {\\vec {a}}\\times {\\vec {b}}} は a → {\\displaystyle {\\vec {a}}} と b → {\\displaystyle {\\vec {b}}} に垂直なので, d → = a → × b → {\\displaystyle {\\vec {d}}={\\vec {a}}\\times {\\vec {b}}} を単位化する.", "title": "" }, { "paragraph_id": 71, "tag": "p", "text": "± 1 | d → | d → = ± 1 ( − 5 ) 2 + 1 2 + 4 2 {\\displaystyle \\pm {\\frac {1}{|{\\vec {d}}|}}{\\vec {d}}=\\pm {\\frac {1}{\\sqrt {(-5)^{2}+1^{2}+4^{2}}}}} ( − 5 1 4 ) = ± 1 42 ( − 5 1 4 ) {\\displaystyle \\left({\\begin{array}{c}-5\\\\1\\\\4\\end{array}}\\right)=\\pm {\\frac {1}{\\sqrt {42}}}\\left({\\begin{array}{c}-5\\\\1\\\\4\\end{array}}\\right)} .(解となるベクトルは二つ)", "title": "" }, { "paragraph_id": 72, "tag": "p", "text": "(3) a → , b → , c → {\\displaystyle {\\vec {a}},{\\vec {b}},{\\vec {c}}} が張る平行六面体の体積 V {\\displaystyle V} は,", "title": "" }, { "paragraph_id": 73, "tag": "p", "text": "V = | ( a → × b → ) ⋅ c → = | 4 | = 4 {\\displaystyle V=|({\\vec {a}}\\times {\\vec {b}})\\cdot {\\vec {c}}=|4|=4}", "title": "" }, { "paragraph_id": 74, "tag": "p", "text": "a → , b → {\\displaystyle {\\vec {a}},{\\vec {b}}} が張る平行四辺形の面積を S {\\displaystyle S} , a → , b → {\\displaystyle {\\vec {a}},{\\vec {b}}} が張る平行四辺形を底面として見たときの平行六面体の高さを h {\\displaystyle h} とすると V = S h {\\displaystyle V=Sh} であり,", "title": "" }, { "paragraph_id": 75, "tag": "p", "text": "(三角錐 O − A B C {\\displaystyle \\mathrm {O-ABC} } の体積) = 1 3 ( 1 2 S ) h = 1 6 V = 4 6 = 2 3 {\\displaystyle ={\\frac {1}{3}}\\left({\\frac {1}{2}}S\\right)h={\\frac {1}{6}}V={\\frac {4}{6}}={\\frac {2}{3}}} .", "title": "" }, { "paragraph_id": 76, "tag": "p", "text": "◼ {\\displaystyle \\blacksquare }", "title": "" } ]
内積があるのなら外積があってもいいのでは,と思っている人もいることだろう. 単に「外積」と呼ばれることもある,3次元実数ベクトルについての外積,すなわち「ベクトル積」を紹介する. 定義3 外積 R 3 のベクトル a → = , b → = に関して、 a → × b → を次で定める. a → × b → = ベクトル積は 3 次元ベクトルの場合のみについて定義される演算である。 定義のとおりだが、実際の計算は図に示したように第 1 成分を下に付け加え, ×の形に積を取り,使っていない成分に押し込むという感じで技化しておくとよい. ベクトル積に関して次の計算法則が成り立つ. 交換法則が成り立たないことに注意する. a → × b → で a → と b → を入れ替えると,符号が逆になる. 定理4 ベクトル積の計算法則 (1) a → × b → = − (2) k = × b → = a → × (3) a → × = a → × b → + a → × c → (4) × c → = a → × c → + b → × c → 証明 (1) a → = , b → = にて b → × a → = = = − = − a → × b → . (2) k = = = = × b → . 同様に k = = = a → × . (3) a → = , b → = , c → = にて a → × = × = = = = + = a → × b → + a → × c → . (4) × c → = − c → × = − = − = a → × c → + b → × c → ◼ 2次元ベクトル,3次元ベクトルの内積は,図形的な解釈が可能であった. ベクトル積が図形的には何を表しているかを紹介する. 定理5 ベクトル積の意味 (1) a → × b → は, a → , b → の両方と直交する. (2) a → と b → が張る平行四辺形の面積 S は, S = | a → × b → | (3) a → , b → , c → が張る平行六面体の体積 V は, V = | ⋅ c → | 証明 a → = O A → = , b → = O B → = とする. (1) a → と a → × b → の内積をとる. a → ⋅ = ⋅ = a + b + c = a b z − a c y + b c x − a b z + a c y − b c x = a b z − a c y + b c x − a b z + a c y − b c x = 0 . 同様に b → ⋅ = ⋅ = x + y + z = b x z − c x y + c x y − a y z + a y z − b x z = b x z − c x y + c x y − a y z + a y z − b x z = 0 . よって, a → × b → は a → , b → の両方と直交する. (2) a → , b → のなす角を θ とすると,内積の性質より, | a → | | b → | cos ⁡ θ = a → ⋅ b → = a x + b y + c z O A を底辺としたときの B の高さを h とすると, S = O A × h = | a → | | b → | sin ⁡ θ と表されるので, S 2 = | a → | 2 | b → | 2 sin 2 ⁡ θ = | a → | 2 | b → | 2 = | a → | 2 | b → | 2 − | a → | 2 | b → | 2 cos 2 ⁡ θ | a → | 2 | b → | 2 cos 2 ⁡ θ = 2 = 2 ,また | a → | 2 | b → | 2 = だから, S 2 = − 2 = a 2 x 2 + a 2 y 2 + a 2 z 2 + b 2 x 2 + b 2 y 2 + b 2 z 2 + c 2 x 2 + c 2 y 2 + c 2 z 2 − = a 2 x 2 + a 2 y 2 + a 2 z 2 + b 2 x 2 + b 2 y 2 + b 2 z 2 + c 2 x 2 + c 2 y 2 + c 2 z 2 − = a 2 y 2 + a 2 z 2 + b 2 x 2 + b 2 z 2 + c 2 x 2 + c 2 y 2 − = + + = 2 + 2 + 2 = | a → × b → | 2 なぜならば | a → × b → | 2 = ⋅ = ⋅ = 2 + 2 + 2 よって, S = | a → × b → | (3) c → = O C とする. a → , b → が張る平面を平行四辺形の底面としてみたときの C の高さを l , a → × b → と c → のなす角を φ とすると, a → × b → は a → , b → が張る平行四辺形に垂直なので, l = | O C cos ⁡ φ | = | c → | ⋅ | cos ⁡ φ | だから, V = S l = | a → × b → | ⋅ | c → | ⋅ | cos ⁡ φ | = | | a → × b → | ⋅ | c → | ⋅ cos ⁡ φ | = | ⋅ c → | . ◼
内積があるのなら外積があってもいいのでは,と思っている人もいることだろう. 単に「外積」と呼ばれることもある,3次元実数ベクトルについての外積,すなわち「ベクトル積」を紹介する. <!-- def:003:start --> <strong>定義3</strong> <strong>外積</strong> <math>R^3</math>のベクトル <math>\vec{a} = \left( \begin{array}{c} a \\ b \\ c \end{array} \right) </math> , <math>\vec{b} = \left( \begin{array}{c} x \\ y \\ z \end{array} \right) </math> に関して、<math>\vec{a} \times \vec{b}</math> を次で定める. <math>\vec{a} \times \vec{b} = \left( \begin{array}{c} bz-cy \\ cx-az \\ ay-bx \end{array} \right) </math> [[File:Example.jpg|border|]] ベクトル積は 3 次元ベクトルの場合のみについて定義される演算である。 定義のとおりだが、実際の計算は図に示したように第 1 成分を下に付け加え, ×の形に積を取り,使っていない成分に押し込むという感じで技化しておくとよい. ベクトル積に関して次の計算法則が成り立つ. 交換法則が成り立たないことに注意する. <math>\vec{a} \times \vec{b}</math> で <math>\vec{a}</math> と <math>\vec{b}</math> を入れ替えると,符号が逆になる. <!-- th:004:start --> <strong>定理4</strong> <strong>ベクトル積の計算法則</strong> (1) <math> \vec{a} \times \vec{b} = -(\vec{b} \times \vec{a})</math> (2) <math>k(\vec{a} \times \vec{b}) = (k\vec{a}) \times \vec{b} = \vec{a} \times (k\vec{b})</math> (3) <math>\vec{a} \times (\vec{b} + \vec{c}) = \vec{a} \times \vec{b} + \vec{a} \times \vec{c}</math> (4) <math>(\vec{a} + \vec{b}) \times \vec{c} = \vec{a} \times \vec{c} + \vec{b} \times \vec{c}</math> <strong>証明</strong> (1) <math>\vec{a} = \left( \begin{array}{c} a \\ b \\ c \end{array} \right) </math> , <math>\vec{b} = \left( \begin{array}{c} x \\ y \\ z \end{array} \right) </math> にて <math>\vec{b} \times \vec{a} = \left( \begin{array}{c} yc-zb \\ za-xc \\ xb-ya \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} -(bz-cy) \\ -(cx-az) \\ -(ay-bx) \end{array} \right) = - \left( \begin{array}{c} bz-cy \\ cx-az \\ ay-bx \end{array} \right) = -\vec{a} \times \vec{b}</math>. (2) <math>k(\vec{a} \times \vec{b}) = \left( \begin{array}{c} k(bz-cy) \\ k(cx-az) \\ k(ay-bx) \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} kbz-kcy \\ kcx-kaz \\ kay-kbx \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} (kb)z-(kc)y \\ (kc)x-(ka)z \\ (ka)y-(kb)x \end{array} \right) = (k\vec{a}) \times \vec{b}</math>. 同様に <math>k(\vec{a} \times \vec{b}) = \left( \begin{array}{c} kbz-kcy \\ kcx-kaz \\ kay-kbx \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} b(kz)-c(ky) \\ c(kx)-a(kz) \\ a(ky)-b(kx) \end{array} \right) = \vec{a} \times (k\vec{b})</math>. (3) <math>\vec{a} = \left( \begin{array}{c} a_1 \\ a_2 \\ a_3 \end{array} \right) </math> , <math>\vec{b} = \left( \begin{array}{c} b_1 \\ b_2 \\ b_3 \end{array} \right) </math> , <math>\vec{c} = \left( \begin{array}{c} c_1 \\ c_2 \\ c_3 \end{array} \right) </math> にて <math>\vec{a} \times (\vec{b} + \vec{c}) = \left( \begin{array}{c} a_1 \\ a_2 \\ a_3 \end{array} \right) \times \left( \begin{array}{c} b_1 + c_1 \\ b_2 + c_2 \\ b_3 + c_3 \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} a_2(b_3 + c_3) - a_3(b_2 + c_2) \\ a_3(b_1 + c_1) - a_1(b_3 + c_3) \\ a_1(b_2 + c_2) - a_2(b_1 + c_1) \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} a_2b_3 + a_2c_3 - a_3b_2 - a_3c_2 \\ a_3b_1 + a_3c_1 - a_1b_3 - a_1c_3 \\ a_1b_2 + a_1c_2 - a_2b_1 - a_2c_1 \end{array} \right)</math> <math>= \left( \begin{array}{c} a_2b_3 - a_3b_2 + a_2c_3 - a_3c_2 \\ a_3b_1 - a_1b_3 + a_3c_1 - a_1c_3 \\ a_1b_2 - a_2b_1 + a_1c_2 - a_2c_1 \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} a_2b_3 - a_3b_2 \\ a_3b_1 - a_1b_3 \\ a_1b_2 - a_2b_1 \end{array} \right) + \left( \begin{array}{c} a_2c_3 - a_3c_2 \\ a_3c_1 - a_1c_3 \\ a_1c_2 - a_2c_1 \end{array} \right) = \vec{a} \times \vec{b} + \vec{a} \times \vec{c}</math>. (4) <math> (\vec{a} + \vec{b}) \times \vec{c} = - \vec{c} \times (\vec{a} + \vec{b}) = - (\vec{c} \times \vec{a} + \vec{c} \times \vec{b}) = - ( -\vec{a} \times \vec{c} - \vec{b} \times \vec{c} ) = \vec{a} \times \vec{c} + \vec{b} \times \vec{c} </math> <math>\blacksquare</math> <!-- th:004:end --> 2次元ベクトル,3次元ベクトルの内積は,図形的な解釈が可能であった. ベクトル積が図形的には何を表しているかを紹介する. <!-- th:005:start --> <strong>定理5</strong> <strong>ベクトル積の意味</strong> (1) <math>\vec{a} \times \vec{b}</math> は,<math>\vec{a}</math>,<math>\vec{b}</math> の両方と直交する. (2) <math>\vec{a}</math> と <math>\vec{b}</math> が張る平行四辺形の面積 <math>S</math> は,<math>S = |\vec{a} \times \vec{b}|</math> (3) <math>\vec{a}</math>,<math>\vec{b}</math>,<math>\vec{c}</math> が張る平行六面体の体積 <math>V</math> は,<math>V = |(\vec{a} \times \vec{b})\cdot \vec{c}|</math> <strong>証明</strong> <math>\vec{a} = \vec{OA} = \left( \begin{array}{c} a \\ b \\ c \end{array} \right) </math>, <math>\vec{b} = \vec{OB} = \left( \begin{array}{c} x \\ y \\ z \end{array} \right) </math> とする. (1) <math>\vec{a}</math> と <math>\vec{a} \times \vec{b}</math> の内積をとる. <math>\vec{a} \cdot (\vec{a} \times \vec{b}) = \left( \begin{array}{c} a \\ b \\ c \end{array} \right)\cdot \left( \begin{array}{c} bz - cy \\ cx - az \\ ay - bx \end{array} \right) = a(bz - cy) + b(cx - az) + c(ay - bx) = abz -acy + bcx -abz +acy - bcx</math><br /> <math>= {\cancel{\color{red}abz}} - {\cancel{\color{blue} acy}} + \cancel{\color{green} bcx} - {\cancel{\color{red}abz}} + {\cancel{\color{blue}acy}} - \cancel{\color{green}bcx} = 0</math>. 同様に <math>\vec{b} \cdot (\vec{a} \times \vec{b}) = \left( \begin{array}{c} x \\ y \\ z \end{array} \right)\cdot \left( \begin{array}{c} bz - cy \\ cx - az \\ ay - bx \end{array} \right) = x(bz - cy) + y(cx - az) + z(ay - bx) = bxz - cxy + cxy - ayz + ayz - bxz</math><br /> <math>= \cancel{\color{red}bxz} - \cancel{\color{blue}cxy} + \cancel{\color{blue}cxy} - \cancel{\color{green}ayz} + \cancel{\color{green}ayz} - \cancel{\color{red}bxz} = 0</math>. よって,<math>\vec{a} \times \vec{b}</math> は <math>\vec{a}</math>,<math>\vec{b}</math> の両方と直交する. (2) <math>\vec{a}</math>,<math>\vec{b}</math> のなす角を <math>\theta</math> とすると,内積の性質より, <math>|\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta = \vec{a}\cdot\vec{b} = ax + by + cz</math> <math>\mathrm{OA}</math> を底辺としたときの <math>\mathrm{B}</math> の高さを <math>h</math> とすると, <math>S = \mathrm{OA} \times h = |\vec{a}||\vec{b}|\sin\theta(\because h = |\vec{b}|\sin\theta)</math> と表されるので, <math>S^2 = |\vec{a}|^2 |\vec{b}|^2 \sin^2 \theta = |\vec{a}|^2 |\vec{b}|^2 (1 - \cos^2 \theta) = |\vec{a}|^2 |\vec{b}|^2 - |\vec{a}|^2 |\vec{b}|^2 \cos^2 \theta</math> <math>|\vec{a}|^2 |\vec{b}|^2 \cos^2 \theta = (\vec{a}\cdot\vec{b})^2 = (ax + by + cz)^2</math>,また <math>|\vec{a}|^2 |\vec{b}|^2 = (a^2 + b^2 + c^2)(x^2 + y^2 + z^2)</math> だから, <math>S^2 = (a^2 + b^2 + c^2)(x^2 + y^2 + z^2) - (ax + by + cz)^2</math> <math>= a^2x^2 + a^2y^2 + a^2z^2 + b^2x^2 + b^2y^2 + b^2z^2 + c^2x^2 + c^2y^2 + c^2z^2 - ( a^2x^2 + abxy + acxz + abxy + b^2y^2 + bcyz + acxz + bcyz + c^2z^2)</math><br /> <math>= {\cancel{\color{red}a^2x^2}} + a^2y^2 + a^2z^2 + b^2x^2 + {\cancel{\color{blue}b^2y^2}} + b^2z^2 + c^2x^2 + c^2y^2 + {\cancel{\color{green}c^2z^2}} - ( {\cancel{\color{red}a^2x^2}} + abxy + acxz + abxy + {\cancel{\color{blue}b^2y^2}} + bcyz + acxz + bcyz + {\cancel{\color{green}c^2z^2}})</math><br /> <math>= {\color{red}a^2y^2} + {\color{blue}a^2z^2} + {\color{red}b^2x^2} + {\color{green}b^2z^2} + {\color{blue}c^2x^2} + {\color{green}c^2y^2} - ({\color{red}abxy} + {\color{blue}acxz} + {\color{red}abxy} + {\color{green}bcyz} + {\color{blue}acxz} + {\color{green}bcyz})</math><br /> <math>= (b^2z^2 -2bcyz + c^2y^2) + (c^2x^2 - 2acxz + a^2z^2) + (a^2y^2 -2abxy + b^2x^2)</math> <math>=(bz-cy)^2 + (cx - az)^2 + (ay - bx)^2</math> <math>=|\vec{a} \times \vec{b}|^2</math> なぜならば <math>|\vec{a} \times \vec{b}|^2 = (\vec{a} \times \vec{b})\cdot(\vec{a} \times \vec{b}) = \left( \begin{array}{c} bz-cy \\ cx-az \\ ay-bx \end{array} \right)\cdot \left( \begin{array}{c} bz - cy \\ cx - az \\ ay - bx \end{array} \right) = (bz-cy)^2 + (cx - az)^2 + (ay - bx)^2 </math> よって,<math>S = |\vec{a} \times \vec{b}|</math> (3) <math>\vec{c} = \mathrm{OC}</math> とする. <math>\vec{a}</math>,<math>\vec{b}</math> が張る平面を平行四辺形の底面としてみたときの <math>\mathrm{C}</math> の高さを <math>l</math>, <math>\vec{a} \times \vec{b}</math> と <math>\vec{c}</math> のなす角を <math>\varphi</math> とすると, <math>\vec{a} \times \vec{b}</math> は <math>\vec{a}</math>,<math>\vec{b}</math> が張る平行四辺形に垂直なので, <math>l = |\mathrm{OC} \cos \varphi | = |\vec{c}| \cdot |\cos \varphi|</math> だから, <math>V = Sl = |\vec{a} \times \vec{b}| \cdot |\vec{c}| \cdot |\cos \varphi| = \left | |\vec{a} \times \vec{b}| \cdot |\vec{c}| \cdot \cos \varphi \right | = \left |(\vec{a} \times \vec{b}) \cdot \vec{c} \right | </math>. <math>\blacksquare</math> <!-- th:005:end --> <!-- ex:001:start--> <div id="ex:1"> <strong>演習1.</strong><math>\quad</math> <math>\vec{a} = \left( \begin{array}{c} 1 \\ -3 \\ 2 \end{array} \right) </math> , <math>\vec{b} = \left( \begin{array}{c} 2 \\ -2 \\ 3 \end{array} \right) </math> , <math>\vec{c} = \left( \begin{array}{c} -1 \\ -1 \\ 0 \end{array} \right) </math> のとき, (1) <math>\vec{a} \times \vec{b}, (\vec{a} \times \vec{b}) \cdot \vec{c}</math> を求めよ. (2) <math>\vec{a}, \vec{b}</math> の両方と直交する単位ベクトルを求めよ. (3) <math>\vec{\mathrm{OA}} = \vec{a}, \vec{\mathrm{OB}} = \vec{b}, \vec{\mathrm{OC}} = \vec{c}</math> とするとき,三角錐 <math>\mathrm{O-ABC}</math> の体積を求めよ. <strong>解答例</strong> (1) <math>\vec{a} \times \vec{b} = \left( \begin{array}{c} 1 \\ -3 \\ 2 \end{array} \right) \times \left( \begin{array}{c} 2 \\ -2 \\ 3 \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} (-3) \cdot 3 - 2 \cdot (-2) \\ 2 \cdot 2 - 1 \cdot 3 \\ 1 \cdot(-2) - (-3) \cdot 2 \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} -5 \\ 1 \\ 4 \end{array} \right) </math>. <math>(\vec{a} \times \vec{b}) \cdot \vec{c} = \left( \begin{array}{c} -5 \\ 1 \\ 4 \end{array} \right) \cdot \left( \begin{array}{c} -1 \\ -1 \\ 0 \end{array} \right) = -5\cdot(-1) + 1 \cdot (-1) + 4 \cdot 0 = 4 </math>. (2) <math>\vec{a} \times \vec{b}</math> は <math>\vec{a}</math> と <math>\vec{b}</math> に垂直なので,<math>\vec{d} = \vec{a} \times \vec{b}</math> を単位化する. <math>\pm \frac{1}{|\vec{d}|} \vec{d} = \pm \frac{1}{\sqrt{(-5)^2 + 1^2 + 4^2}}</math> <math> \left( \begin{array}{c} -5 \\ 1 \\ 4 \end{array} \right) = \pm \frac{1}{\sqrt{42}} \left( \begin{array}{c} -5 \\ 1 \\ 4 \end{array} \right) </math>.(解となるベクトルは二つ) (3) <math>\vec{a}, \vec{b}, \vec{c}</math> が張る平行六面体の体積 <math>V</math> は, <math>V = |(\vec{a} \times \vec{b}) \cdot \vec{c} = |4| = 4</math> <math>\vec{a}, \vec{b}</math> が張る平行四辺形の面積を <math>S</math>,<math>\vec{a}, \vec{b}</math> が張る平行四辺形を底面として見たときの平行六面体の高さを <math>h</math> とすると <math>V = Sh</math> であり, (三角錐 <math>\mathrm{O-ABC}</math> の体積)<math> = \frac{1}{3} \left ( \frac{1}{2} S \right) h = \frac{1}{6}V = \frac{4}{6} = \frac{2}{3}</math>. <math>\blacksquare</math> <!-- ex:001:end--> [[カテゴリ:線形代数学]]
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2022-11-22T17:06:20Z
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公認会計士試験/平成30年第II回短答式/財務会計論/問題10
次の〔資料I〕および〔資料II〕に基づき,X1 年度(X1 年4 月1 日〜X2 年3 月31 日)の個別株主資本等変動計算書に記載される金額に関する以下の記述のうち,最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,計算結果に端数が生じる場合,百万円未満を四捨五入すること。(8点) 〔資料I〕 1.X1 年6 月の株主総会において,次の事項を決議し,それぞれ会計処理を行った。 2.X1 年度における新株予約権に関連する会計処理は,次のとおりである。 3.X1 年度において,自己株式400 百万円を取得し,そのうち300 百万円を350 百万円で処分した。 4.X1 年度におけるその他有価証券の変動は,次のとおりである。 5.X1 年度の当期純利益は1,700 百万円になった。なお,当該金額には,上記1.〜4.の取引を正しく会計処理した結果も含まれている。 6.税効果会計適用上の法定実効税率は,前期末も当期末も40 %である。 〔資料II〕 前期末の個別貸借対照表(単位:百万円)は以下のとおりである。 1.その他資本剰余金当期変動額合計△350 百万円,株主資本当期変動額合計1,850百万円,純資産当期末残高25,140 百万円。 2.その他利益剰余金当期変動額合計1,040 百万円,株主資本当期変動額合計1,850百万円,純資産当期末残高25,040 百万円。 3.資本剰余金当期変動額合計250 百万円,株主資本当期変動額合計2,050 百万円,純資産当期末残高25,240 百万円。 4.利益剰余金当期変動額合計1,100 百万円,株主資本当期変動額合計1,850 百万円,純資産当期末残高25,100 百万円。 5.資本剰余金当期変動額合計200 百万円,株主資本当期変動額合計1,800 百万円,純資産当期末残高24,990 百万円。 6.利益剰余金当期変動額合計1,100 百万円,株主資本当期変動額合計1,850 百万円,純資産当期末残高25,160 百万円。 (注) △の数値は減少を表す。 2
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "次の〔資料I〕および〔資料II〕に基づき,X1 年度(X1 年4 月1 日〜X2 年3 月31 日)の個別株主資本等変動計算書に記載される金額に関する以下の記述のうち,最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,計算結果に端数が生じる場合,百万円未満を四捨五入すること。(8点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "〔資料I〕", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "1.X1 年6 月の株主総会において,次の事項を決議し,それぞれ会計処理を行った。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "2.X1 年度における新株予約権に関連する会計処理は,次のとおりである。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "3.X1 年度において,自己株式400 百万円を取得し,そのうち300 百万円を350 百万円で処分した。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "4.X1 年度におけるその他有価証券の変動は,次のとおりである。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "5.X1 年度の当期純利益は1,700 百万円になった。なお,当該金額には,上記1.〜4.の取引を正しく会計処理した結果も含まれている。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "6.税効果会計適用上の法定実効税率は,前期末も当期末も40 %である。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "〔資料II〕", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "前期末の個別貸借対照表(単位:百万円)は以下のとおりである。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 10, "tag": "p", "text": "1.その他資本剰余金当期変動額合計△350 百万円,株主資本当期変動額合計1,850百万円,純資産当期末残高25,140 百万円。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 11, "tag": "p", "text": "2.その他利益剰余金当期変動額合計1,040 百万円,株主資本当期変動額合計1,850百万円,純資産当期末残高25,040 百万円。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 12, "tag": "p", "text": "3.資本剰余金当期変動額合計250 百万円,株主資本当期変動額合計2,050 百万円,純資産当期末残高25,240 百万円。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 13, "tag": "p", "text": "4.利益剰余金当期変動額合計1,100 百万円,株主資本当期変動額合計1,850 百万円,純資産当期末残高25,100 百万円。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 14, "tag": "p", "text": "5.資本剰余金当期変動額合計200 百万円,株主資本当期変動額合計1,800 百万円,純資産当期末残高24,990 百万円。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 15, "tag": "p", "text": "6.利益剰余金当期変動額合計1,100 百万円,株主資本当期変動額合計1,850 百万円,純資産当期末残高25,160 百万円。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 16, "tag": "p", "text": "(注) △の数値は減少を表す。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 17, "tag": "p", "text": "2", "title": "正解" } ]
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: [[../問題9|←前の問題]] : [[../問題11|次の問題→]] == 問題 ==  次の〔資料I〕および〔資料II〕に基づき,X1 年度(X1 年4 月1 日〜X2 年3 月31 日)の個別株主資本等変動計算書に記載される金額に関する以下の記述のうち,最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,計算結果に端数が生じる場合,百万円未満を四捨五入すること。(8点) 〔'''資料I'''〕 1.X1 年6 月の株主総会において,次の事項を決議し,それぞれ会計処理を行った。 :(1) 繰越利益剰余金からの現金配当600 百万円。 :(2) その他資本剰余金からの現金配当400 百万円。 :(3) 会社法に基づく法定準備金への組入れ。 2.X1 年度における新株予約権に関連する会計処理は,次のとおりである。 :(1) 新株予約権の行使に伴う新株の発行により1,000 百万円の払い込みを受け,権利行使された新株予約権200百万円との合計額のうち,会社法が定める最低額を資本金とした。 :(2) 新株予約権100 百万円が行使されずに行使期限が到来したため,全額失効の会計処理を行った。 3.X1 年度において,自己株式400 百万円を取得し,そのうち300 百万円を350 百万円で処分した。 4.X1 年度におけるその他有価証券の変動は,次のとおりである。 :(1) 期首においてその他有価証券の一部(帳簿価額2,000 百万円)を2,100 百万円で売却し,投資有価証券売却益100 百万円を計上した。当該有価証券は前期末に時価評価の対象となっていた。 :(2) 期末時点で保有しているその他有価証券について,純資産の部に直接計上されたその他有価証券評価差額金の増加額は150 百万円である。 5.X1 年度の当期純利益は1,700 百万円になった。なお,当該金額には,上記1.〜4.の取引を正しく会計処理した結果も含まれている。 6.税効果会計適用上の法定実効税率は,前期末も当期末も40 %である。 〔'''資料II'''〕  前期末の個別貸借対照表(単位:百万円)は以下のとおりである。 {| |+'''<u>個別貸借対照表(抜粋)</u>'''(X1年3月31日) |純資産の部 | |- |I 株主資本 | |- | 1 資本金 |15,000 |- | 2 資本剰余金 | |- |  (1) 資本準備金 |2,000 |- |  (2) その他資本剰余金 |900 |- |        資本剰余金合計 |2,900 |- | 3 利益剰余金 | |- |  (1) 利益準備金 |800 |- |  (2) その他利益剰余金 | |- |      繰越利益剰余金 |4,100 |- |        利益剰余金合計 |4,900 |- |        株主資本合計 |22,800 |- |II 評価・換算差額等 | |- |   その他有価証券評価差額金 |300 |- |III 新株予約権 |300 |- |        純資産合計 |23,400 |} 1.その他資本剰余金当期変動額合計△350 百万円,株主資本当期変動額合計1,850百万円,純資産当期末残高25,140 百万円。 2.その他利益剰余金当期変動額合計1,040 百万円,株主資本当期変動額合計1,850百万円,純資産当期末残高25,040 百万円。 3.資本剰余金当期変動額合計250 百万円,株主資本当期変動額合計2,050 百万円,純資産当期末残高25,240 百万円。 4.利益剰余金当期変動額合計1,100 百万円,株主資本当期変動額合計1,850 百万円,純資産当期末残高25,100 百万円。 5.資本剰余金当期変動額合計200 百万円,株主資本当期変動額合計1,800 百万円,純資産当期末残高24,990 百万円。 6.利益剰余金当期変動額合計1,100 百万円,株主資本当期変動額合計1,850 百万円,純資産当期末残高25,160 百万円。 (注) △の数値は減少を表す。 == 正解 == 2 == 解説 == === 仕訳 === {| | colspan="6" |剰余金の配当 |- |(借) |繰越利益剰余金 |660 |(貸) |利益準備金 |60 |- | | | | |未払配当金 |600 |- |(借) |その他資本剰余金 |440 |(貸) |資本準備金 |40 |- | | | | |未払配当金 |400 |- | colspan="6" |新株予約権の権利行使 |- |(借) |新株予約権 |200 |(貸) |資本金 |600 |- | |現金預金 |1,000 | |資本準備金 |600 |- | colspan="6" |新株予約権失効 |- |(借) |新株予約権 |100 |(貸) |新株予約権戻入益 |100 |- | colspan="6" |自己株式取得 |- |(借) |自己株式 |400 |(貸) |現金預金 |400 |- | colspan="6" |自己株式処分 |- |(借) |現金預金 |350 |(貸) |自己株式 |300 |- | | | | |その他資本剰余金 |50 |- | colspan="6" |その他有価証券の売却 |- |(借) |繰延税金負債 |40 |(貸) |投資有価証券売却益 |100 |- | |その他有価証券評価差額金 |60 | | | |- | colspan="6" |その他有価証券の期末時価評価 |- |(借) |その他有価証券 |250 |(貸) |繰延税金負債 |100 |- | | | | |その他有価証券評価差額金 |150 |- | colspan="6" |当期純利益 |- |(借) |損益 |1,700 |(貸) |繰越利益剰余金 |1,700 |} === X2年3月31日の個別貸借対照表(抜粋) === {| |純資産の部 | |- |I 株主資本 | |- | 1 資本金 |15,600 |- | 2 資本剰余金 | |- |  (1) 資本準備金 |2,640 |- |  (2) その他資本剰余金 |510 |- |        資本剰余金合計 |3,150 |- | 3 利益剰余金 | |- |  (1) 利益準備金 |860 |- |  (2) その他利益剰余金 | |- |      繰越利益剰余金 |5,140 |- |        利益剰余金合計 |6,000 |- | 4 自己株式 |△100 |- |        株主資本合計 |24,650 |- |II 評価・換算差額等 | |- |   その他有価証券評価差額金 |390 |- |III 新株予約権 |- |- |        純資産合計 |25,040 |} : [[../問題9|←前の問題]] : [[../問題11|次の問題→]] [[カテゴリ:財務会計]]
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2022-11-28T16:33:59Z
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公認会計士試験/平成30年第II回短答式/管理会計論/問題15
分権化組織と管理会計に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) ア.事業部制組織は,社内カンパニー制よりもさらに分権化を進め業績を向上させる組織を企図したものであり,投資権限が与えられインベストメント・センターと呼ばれる。 イ.企業の組織は,全体目標の達成に最適となるように階層化が行われている。比較的小規模であるか,製品や地域の多様性が低い場合には職能別組織が適合し,比較的大規模であるか,製品や顧客の多様性が高い場合には事業部制組織が適合する。 ウ.アメーバ経営では,ミニ・プロフィット・センターの管理において,アメーバ単位ごとに財務会計に準じた損益計算が行われる。したがって,例えば材料をアメーバ単位が引き取っただけでは費用計上されず,損益計算上では当該単位での在庫として計上される。 エ.組織の分権化の程度が高まるにつれて,マネジメント・コントロールがより一層重要になってくる。すなわち,経営管理者は,マネジメント・コントロールによって,業務に必要な情報の伝達,目標の設定,業績の測定・評価を行い,組織構成員を組織の戦略遂行に向かわせるように影響を与える。 5 ア.事業部制組織社内カンパニー制は,社内カンパニー制事業部制組織よりもさらに分権化を進め業績を向上させる組織を企図したものであり,投資権限が与えられインベストメント・センターと呼ばれる。 ウ.アメーバ経営では,ミニ・プロフィット・センターの管理において,アメーバ単位ごとに財務会計に準じた損益計算が行われる。したがって,例えば材料をアメーバ単位が引き取っただけでは費用計上されずされ,損益計算上では当該単位での在庫として計上されるされない。
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: [[../問題14|←前の問題]] : [[../問題16|次の問題→]] == 問題 ==  分権化組織と管理会計に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.事業部制組織は,社内カンパニー制よりもさらに分権化を進め業績を向上させる組織を企図したものであり,投資権限が与えられインベストメント・センターと呼ばれる。 イ.企業の組織は,全体目標の達成に最適となるように階層化が行われている。比較的小規模であるか,製品や地域の多様性が低い場合には職能別組織が適合し,比較的大規模であるか,製品や顧客の多様性が高い場合には事業部制組織が適合する。 ウ.アメーバ経営では,ミニ・プロフィット・センターの管理において,アメーバ単位ごとに財務会計に準じた損益計算が行われる。したがって,例えば材料をアメーバ単位が引き取っただけでは費用計上されず,損益計算上では当該単位での在庫として計上される。 エ.組織の分権化の程度が高まるにつれて,マネジメント・コントロールがより一層重要になってくる。すなわち,経営管理者は,マネジメント・コントロールによって,業務に必要な情報の伝達,目標の設定,業績の測定・評価を行い,組織構成員を組織の戦略遂行に向かわせるように影響を与える。 </div> <div style="column-count:6;"> : 1.アイ : 2.アウ : 3.アエ : 4.イウ : 5.イエ : 6.ウエ </div> == 正解 == 5 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.<del>事業部制組織</del><ins>社内カンパニー制</ins>は,<del>社内カンパニー制</del><ins>事業部制組織</ins>よりもさらに分権化を進め業績を向上させる組織を企図したものであり,投資権限が与えられインベストメント・センターと呼ばれる。 ウ.アメーバ経営では,ミニ・プロフィット・センターの管理において,アメーバ単位ごとに財務会計に準じた損益計算が行われる。したがって,例えば材料をアメーバ単位が引き取っただけで<del>は</del>費用計上<del>されず</del><ins>され</ins>,損益計算上では当該単位での在庫として計上<del>される</del><ins>されない</ins>。 </div> : [[../問題14|←前の問題]] : [[../問題16|次の問題→]] [[カテゴリ:管理会計]]
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2022-11-28T16:27:21Z
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24,788
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/管理会計論/問題13
原価管理に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) ア.原価企画を総合的利益管理活動として行う場合,中期経営計画から導かれる製品別の目標利益を達成する活動として行われる。 イ.商品企画段階に行われる1st Look VE の開始後に,開発・設計段階に行われる2ndLook VE が開始されるが, 1st Look VE と2nd Look VE を行うタイミングは一部重なる。 ウ.コスト・テーブルとは,加工方法や加工精度,あるいは材料の使用量や部品の生産量などに対応させて発生する原価を見積もり,それを図表にまとめたものである。 エ.テアダウンは,自社の既存モデルの製品を分解して,その機能や原価を分析する手法である。 2 イ.商品企画段階に行われる1st Look VE0 Look VEの開始後に,開発・設計段階に行われる2nd Look VE1st Look VEが開始されるが,1st Look VE0 Look VEと2nd Look VE1st Look VEを行うタイミングは一部重なる。 エ.テアダウンは,自社他社の既存モデルの製品を分解して,その機能や原価を分析する手法である。
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "原価管理に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.原価企画を総合的利益管理活動として行う場合,中期経営計画から導かれる製品別の目標利益を達成する活動として行われる。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.商品企画段階に行われる1st Look VE の開始後に,開発・設計段階に行われる2ndLook VE が開始されるが, 1st Look VE と2nd Look VE を行うタイミングは一部重なる。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.コスト・テーブルとは,加工方法や加工精度,あるいは材料の使用量や部品の生産量などに対応させて発生する原価を見積もり,それを図表にまとめたものである。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.テアダウンは,自社の既存モデルの製品を分解して,その機能や原価を分析する手法である。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "2", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "イ.商品企画段階に行われる1st Look VE0 Look VEの開始後に,開発・設計段階に行われる2nd Look VE1st Look VEが開始されるが,1st Look VE0 Look VEと2nd Look VE1st Look VEを行うタイミングは一部重なる。", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "エ.テアダウンは,自社他社の既存モデルの製品を分解して,その機能や原価を分析する手法である。", "title": "解説" } ]
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: [[../問題12|←前の問題]] : [[../問題14|次の問題→]] == 問題 ==  原価管理に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.原価企画を総合的利益管理活動として行う場合,中期経営計画から導かれる製品別の目標利益を達成する活動として行われる。 イ.商品企画段階に行われる1st Look VE の開始後に,開発・設計段階に行われる2ndLook VE が開始されるが, 1st Look VE と2nd Look VE を行うタイミングは一部重なる。 ウ.コスト・テーブルとは,加工方法や加工精度,あるいは材料の使用量や部品の生産量などに対応させて発生する原価を見積もり,それを図表にまとめたものである。 エ.テアダウンは,自社の既存モデルの製品を分解して,その機能や原価を分析する手法である。 </div> <div style="column-count:6;"> : 1.アイ : 2.アウ : 3.アエ : 4.イウ : 5.イエ : 6.ウエ </div> == 正解 == 2 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> イ.商品企画段階に行われる<del>1st Look VE</del><ins>0 Look VE</ins>の開始後に,開発・設計段階に行われる<del>2nd Look VE</del><ins>1st Look VE</ins>が開始されるが,<del>1st Look VE</del><ins>0 Look VE</ins>と<del>2nd Look VE</del><ins>1st Look VE</ins>を行うタイミングは一部重なる。 エ.テアダウンは,<del>自社</del><ins>他社</ins>の既存モデルの製品を分解して,その機能や原価を分析する手法である。 </div> : [[../問題12|←前の問題]] : [[../問題14|次の問題→]] [[カテゴリ:管理会計]]
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2022-11-28T16:27:14Z
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公認会計士試験/平成30年第II回短答式/管理会計論/問題11
短期利益計画に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) ア.多品種製品のCVP 分析における固定費は,個別固定費と各製品品種に共通に発生する共通固定費からなり,共通固定費の場合,どの品種にどれだけ必要とされるかを正しく計算することは不可能である。 イ.限界利益率,損益分岐点比率,安全余裕率,経営レバレッジ係数は,CVP 分析において用いられる指標である。 ウ.CVP 分析は,原価を変動費と固定費に分解する直接原価計算方式により行うが,原価を直接費と間接費に分類する全部原価計算方式によりCVP 分析を行う場合は,原価・営業量・利益の関係について正確な予測ができない。 エ.短期利益計画では,単年度の利益目標を設定するためにCVP 分析の手法を用いて各種の数値目標を策定する。一方,中長期経営計画では,期間が数年に及び不確実性が高いので数値目標を策定することはない。 1 ウ.CVP 分析は,原価を変動費と固定費に分解する直接原価計算方式により行うが,原価を直接費と間接費製造原価,販売費,一般管理費といった職能別に分類する全部原価計算方式によりCVP 分析を行う場合は,原価・営業量・利益の関係について正確な予測ができない。 エ.短期利益計画では,単年度の利益目標を設定するためにCVP 分析の手法を用いて各種の数値目標を策定する。一方,中長期経営計画では,期間が数年に及び不確実性が高いのでが数値目標を策定することはない。
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: [[../問題10|←前の問題]] : [[../問題12|次の問題→]] == 問題 ==  短期利益計画に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.多品種製品のCVP 分析における固定費は,個別固定費と各製品品種に共通に発生する共通固定費からなり,共通固定費の場合,どの品種にどれだけ必要とされるかを正しく計算することは不可能である。 イ.限界利益率,損益分岐点比率,安全余裕率,経営レバレッジ係数は,CVP 分析において用いられる指標である。 ウ.CVP 分析は,原価を変動費と固定費に分解する直接原価計算方式により行うが,原価を直接費と間接費に分類する全部原価計算方式によりCVP 分析を行う場合は,原価・営業量・利益の関係について正確な予測ができない。 エ.短期利益計画では,単年度の利益目標を設定するためにCVP 分析の手法を用いて各種の数値目標を策定する。一方,中長期経営計画では,期間が数年に及び不確実性が高いので数値目標を策定することはない。 </div> <div style="column-count:6;"> : 1.アイ : 2.アウ : 3.アエ : 4.イウ : 5.イエ : 6.ウエ </div> == 正解 == 1 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ウ.CVP 分析は,原価を変動費と固定費に分解する直接原価計算方式により行うが,原価を<del>直接費と間接費</del><ins>製造原価,販売費,一般管理費といった職能別</ins>に分類する全部原価計算方式によりCVP 分析を行う場合は,原価・営業量・利益の関係について正確な予測ができない。 エ.短期利益計画では,単年度の利益目標を設定するためにCVP 分析の手法を用いて各種の数値目標を策定する。<del>一方,</del>中長期経営計画では,期間が数年に及び不確実性が高い<del>ので</del><ins>が</ins>数値目標を策定する<del>ことはない</del>。 </div> : [[../問題10|←前の問題]] : [[../問題12|次の問題→]] [[カテゴリ:管理会計]]
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2022-11-28T16:27:07Z
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24,790
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/管理会計論/問題9
管理会計の基礎知識に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) ア.管理会計においては,外部報告ではなく内部管理を目的とし,有用性の観点が重視されるため,財務会計的な解釈や技法が適用されることは認められない。 イ.財務諸表分析は,数値や比率の「比較」によって行われるが,財務諸表の実際の数値を使って分析する手法を外部分析といい,財務諸表上のある項目と他の項目との比率を求め,それを使って分析する手法を比率分析という。 ウ.バランスト・スコアカードは,非財務情報が将来的な財務成果に結び付くという因果関係が識別可能であるので,それはマネジメント・コントロールの技法の一つである。 エ.ロワー・レベルの管理者だけでなく,現場の従業員が利益責任を負うことがあるが,これは管理会計の範囲内の考え方である。 6 ア.管理会計においては,外部報告ではなく内部管理を目的とし,有用性の観点が重視されるため,財務会計的な解釈や技法が適用されることは認められないも認められる。 イ.財務諸表分析は,数値や比率の「比較」によって行われるが,財務諸表の実際の数値を使って分析する手法を外部分析実数分析といい,財務諸表上のある項目と他の項目との比率を求め,それを使って分析する手法を比率分析という。
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2022-11-28T16:28:47Z
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24,792
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/管理会計論/問題1
次の記述のうち,我が国の「原価計算基準」に照らして正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) ア.費目別計算においては,原価要素を,原則として,形態別分類を基礎とし,これを直接費と間接費に大別し,さらに必要に応じ機能別分類を加味して原価を分類する。費目別計算において一定期間における原価要素の発生を測定するに当たり,予定価格等を適用する場合には,これをその適用される期間における標準価格にできる限り近似させ,価格差異をなるべく僅少にするように定める。 イ.直接材料費,補助材料費等であって出入記録を行う材料に関する原価は,各種の材料につき原価計算期間における実際の消費量に,その消費価格を乗じて計算する。材料の実際の消費量は,原則として継続記録法によって計算する。材料の消費価格は,原則として購入原価をもって計算する。材料の消費価格は必要ある場合には,予定価格等をもって計算することができる。 ウ.直接賃金等であって,作業時間又は作業量の測定を行う労務費は,実際の作業時間又は作業量に賃率を乗じて計算する。賃率は,実際の個別賃率又は工場全体について計算した総平均賃率による。平均賃率は,必要ある場合には,予定平均賃率をもって計算することができる。間接労務費は,原則として当該原価計算期間の負担に属する要支払額をもって計算する。 エ.経費は,原則として当該原価計算期間の実際の発生額をもって計算する。ただし,必要ある場合には,予定価格又は予定額をもって計算することができる。数か月分を一時に総括的に計算し又は支払う経費については,これを月割り計算する。消費量を計量できる経費については,その実際消費量に基づいて計算する。 5 ア.費目別計算においては,原価要素を,原則として,形態別分類を基礎とし,これを直接費と間接費に大別し,さらに必要に応じ機能別分類を加味して原価を分類する。費目別計算において一定期間における原価要素の発生を測定するに当たり,予定価格等を適用する場合には,これをその適用される期間における標準価格実際価格にできる限り近似させ,価格差異をなるべく僅少にするように定める。原価計算基準一〇,一四 イ.直接材料費,補助材料費等であって出入記録を行う材料に関する原価は,各種の材料につき原価計算期間における実際の消費量に,その消費価格を乗じて計算する。材料の実際の消費量は,原則として継続記録法によって計算する。材料の消費価格は,原則として購入原価をもって計算する。材料の消費価格は必要ある場合には,予定価格等をもって計算することができる。原価計算基準一一(一)~(三) ウ.直接賃金等であって,作業時間又は作業量の測定を行う労務費は,実際の作業時間又は作業量に賃率を乗じて計算する。賃率は,実際の個別賃率又は工場全体について計算した総平均賃率,職場もしくは作業区分ごとの平均賃率による。平均賃率は,必要ある場合には,予定平均賃率をもって計算することができる。間接労務費は,原則として当該原価計算期間の負担に属する要支払額をもって計算する。原価計算基準一二(一) エ.経費は,原則として当該原価計算期間の実際の発生額をもって計算する。ただし,必要ある場合には,予定価格又は予定額をもって計算することができる。数か月分を一時に総括的に計算し又は支払う経費については,これを月割り計算する。消費量を計量できる経費については,その実際消費量に基づいて計算する。原価計算基準一三
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "次の記述のうち,我が国の「原価計算基準」に照らして正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.費目別計算においては,原価要素を,原則として,形態別分類を基礎とし,これを直接費と間接費に大別し,さらに必要に応じ機能別分類を加味して原価を分類する。費目別計算において一定期間における原価要素の発生を測定するに当たり,予定価格等を適用する場合には,これをその適用される期間における標準価格にできる限り近似させ,価格差異をなるべく僅少にするように定める。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.直接材料費,補助材料費等であって出入記録を行う材料に関する原価は,各種の材料につき原価計算期間における実際の消費量に,その消費価格を乗じて計算する。材料の実際の消費量は,原則として継続記録法によって計算する。材料の消費価格は,原則として購入原価をもって計算する。材料の消費価格は必要ある場合には,予定価格等をもって計算することができる。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.直接賃金等であって,作業時間又は作業量の測定を行う労務費は,実際の作業時間又は作業量に賃率を乗じて計算する。賃率は,実際の個別賃率又は工場全体について計算した総平均賃率による。平均賃率は,必要ある場合には,予定平均賃率をもって計算することができる。間接労務費は,原則として当該原価計算期間の負担に属する要支払額をもって計算する。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.経費は,原則として当該原価計算期間の実際の発生額をもって計算する。ただし,必要ある場合には,予定価格又は予定額をもって計算することができる。数か月分を一時に総括的に計算し又は支払う経費については,これを月割り計算する。消費量を計量できる経費については,その実際消費量に基づいて計算する。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "5", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.費目別計算においては,原価要素を,原則として,形態別分類を基礎とし,これを直接費と間接費に大別し,さらに必要に応じ機能別分類を加味して原価を分類する。費目別計算において一定期間における原価要素の発生を測定するに当たり,予定価格等を適用する場合には,これをその適用される期間における標準価格実際価格にできる限り近似させ,価格差異をなるべく僅少にするように定める。原価計算基準一〇,一四", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.直接材料費,補助材料費等であって出入記録を行う材料に関する原価は,各種の材料につき原価計算期間における実際の消費量に,その消費価格を乗じて計算する。材料の実際の消費量は,原則として継続記録法によって計算する。材料の消費価格は,原則として購入原価をもって計算する。材料の消費価格は必要ある場合には,予定価格等をもって計算することができる。原価計算基準一一(一)~(三)", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.直接賃金等であって,作業時間又は作業量の測定を行う労務費は,実際の作業時間又は作業量に賃率を乗じて計算する。賃率は,実際の個別賃率又は工場全体について計算した総平均賃率,職場もしくは作業区分ごとの平均賃率による。平均賃率は,必要ある場合には,予定平均賃率をもって計算することができる。間接労務費は,原則として当該原価計算期間の負担に属する要支払額をもって計算する。原価計算基準一二(一)", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.経費は,原則として当該原価計算期間の実際の発生額をもって計算する。ただし,必要ある場合には,予定価格又は予定額をもって計算することができる。数か月分を一時に総括的に計算し又は支払う経費については,これを月割り計算する。消費量を計量できる経費については,その実際消費量に基づいて計算する。原価計算基準一三", "title": "解説" } ]
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:[[../問題2|次の問題→]] == 問題 ==  次の記述のうち,我が国の「原価計算基準」に照らして正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.費目別計算においては,原価要素を,原則として,形態別分類を基礎とし,これを直接費と間接費に大別し,さらに必要に応じ機能別分類を加味して原価を分類する。費目別計算において一定期間における原価要素の発生を測定するに当たり,予定価格等を適用する場合には,これをその適用される期間における標準価格にできる限り近似させ,価格差異をなるべく僅少にするように定める。 イ.直接材料費,補助材料費等であって出入記録を行う材料に関する原価は,各種の材料につき原価計算期間における実際の消費量に,その消費価格を乗じて計算する。材料の実際の消費量は,原則として継続記録法によって計算する。材料の消費価格は,原則として購入原価をもって計算する。材料の消費価格は必要ある場合には,予定価格等をもって計算することができる。 ウ.直接賃金等であって,作業時間又は作業量の測定を行う労務費は,実際の作業時間又は作業量に賃率を乗じて計算する。賃率は,実際の個別賃率又は工場全体について計算した総平均賃率による。平均賃率は,必要ある場合には,予定平均賃率をもって計算することができる。間接労務費は,原則として当該原価計算期間の負担に属する要支払額をもって計算する。 エ.経費は,原則として当該原価計算期間の実際の発生額をもって計算する。ただし,必要ある場合には,予定価格又は予定額をもって計算することができる。数か月分を一時に総括的に計算し又は支払う経費については,これを月割り計算する。消費量を計量できる経費については,その実際消費量に基づいて計算する。 </div> <div style="column-count:6;"> #アイ #アウ #アエ #イウ #イエ #ウエ </div> == 正解== 5 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.費目別計算においては,原価要素を,原則として,形態別分類を基礎とし,これを直接費と間接費に大別し,さらに必要に応じ機能別分類を加味して原価を分類する。費目別計算において一定期間における原価要素の発生を測定するに当たり,予定価格等を適用する場合には,これをその適用される期間における<del>標準価格</del><ins>実際価格</ins>にできる限り近似させ,価格差異をなるべく僅少にするように定める。<ins>原価計算基準一〇,一四</ins> イ.直接材料費,補助材料費等であって出入記録を行う材料に関する原価は,各種の材料につき原価計算期間における実際の消費量に,その消費価格を乗じて計算する。材料の実際の消費量は,原則として継続記録法によって計算する。材料の消費価格は,原則として購入原価をもって計算する。材料の消費価格は必要ある場合には,予定価格等をもって計算することができる。<ins>原価計算基準一一(一)~(三)</ins> ウ.直接賃金等であって,作業時間又は作業量の測定を行う労務費は,実際の作業時間又は作業量に賃率を乗じて計算する。賃率は,実際の個別賃率又は<del>工場全体について計算した総平均賃率</del><ins>,職場もしくは作業区分ごとの平均賃率</ins>による。平均賃率は,必要ある場合には,予定平均賃率をもって計算することができる。間接労務費は,原則として当該原価計算期間の負担に属する要支払額をもって計算する。<ins>原価計算基準一二(一)</ins> エ.経費は,原則として当該原価計算期間の実際の発生額をもって計算する。ただし,必要ある場合には,予定価格又は予定額をもって計算することができる。数か月分を一時に総括的に計算し又は支払う経費については,これを月割り計算する。消費量を計量できる経費については,その実際消費量に基づいて計算する。<ins>原価計算基準一三</ins> </div> == 参照基準 == * [[費目別計算における原価要素の分類|原価計算基準一〇]] * [[材料費計算|原価計算基準一一]] * [[労務費計算|原価計算基準一二]] * [[経費計算|原価計算基準一三]] * [[費用別計算における予定価格等の適用|原価計算基準一四]] :[[../問題2|次の問題→]] [[カテゴリ:管理会計]]
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2022-11-28T16:26:58Z
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24,793
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/管理会計論/問題3
製造間接費とその配賦方法に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) ア.直接費と間接費の分類は製品との関連における分類であり,製品に対する原価の発生が,一定単位の製品の生成に関して直接的に認識・把握できるかどうかによって,直接費と間接費とに分けられる。 イ.コスト・プールとは,製造間接費に含まれる様々な原価要素をグループにまとめたものである。正確な製造間接費の配賦を行うためには,コスト・プールに均質的な原価要素を集計する必要がある。我が国の「原価計算基準」では,部門をコスト・プールとして用いるため,正確な配賦計算を行うことができない。 ウ.製造間接費の配賦基準としては,便益基準,因果基準,負担能力基準があるが,因果基準が最も優れた配賦基準であり,我が国の「原価計算基準」では因果基準に基づく配賦基準を採用しなければならない。 エ.部門別計算において,必ずしも全ての製造費用を部門別に計算する必要はない。部門に集計する原価要素の範囲は,製品原価の正確な計算および原価管理の必要によってこれを定める。 3 ア.直接費と間接費の分類は製品との関連における分類であり,製品に対する原価の発生が,一定単位の製品の生成に関して直接的に認識・把握できるかどうかによって,直接費と間接費とに分けられる。原価計算基準八(三) イ.コスト・プールとは,製造間接費に含まれる様々な原価要素をグループにまとめたものである。正確な製造間接費の配賦を行うためには,コスト・プールに均質的な原価要素を集計する必要がある。我が国の「原価計算基準」では,部門をコスト・プールとして用いるため,正確な配賦計算を行うことができないできる。原価計算基準一六,一八(二),三三(五) ウ.製造間接費の配賦基準としては,便益基準,因果基準,負担能力基準があるが,因果基準が最も優れた配賦基準でありあるが,我が国の「原価計算基準」では因果基準に基づく配賦基準を採用しなければならないわけではない。原価計算基準三三(五) エ.部門別計算において,必ずしも全ての製造費用を部門別に計算する必要はない。部門に集計する原価要素の範囲は,製品原価の正確な計算および原価管理の必要によってこれを定める。原価計算基準一八(一)
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "製造間接費とその配賦方法に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.直接費と間接費の分類は製品との関連における分類であり,製品に対する原価の発生が,一定単位の製品の生成に関して直接的に認識・把握できるかどうかによって,直接費と間接費とに分けられる。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.コスト・プールとは,製造間接費に含まれる様々な原価要素をグループにまとめたものである。正確な製造間接費の配賦を行うためには,コスト・プールに均質的な原価要素を集計する必要がある。我が国の「原価計算基準」では,部門をコスト・プールとして用いるため,正確な配賦計算を行うことができない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.製造間接費の配賦基準としては,便益基準,因果基準,負担能力基準があるが,因果基準が最も優れた配賦基準であり,我が国の「原価計算基準」では因果基準に基づく配賦基準を採用しなければならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.部門別計算において,必ずしも全ての製造費用を部門別に計算する必要はない。部門に集計する原価要素の範囲は,製品原価の正確な計算および原価管理の必要によってこれを定める。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "3", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.直接費と間接費の分類は製品との関連における分類であり,製品に対する原価の発生が,一定単位の製品の生成に関して直接的に認識・把握できるかどうかによって,直接費と間接費とに分けられる。原価計算基準八(三)", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.コスト・プールとは,製造間接費に含まれる様々な原価要素をグループにまとめたものである。正確な製造間接費の配賦を行うためには,コスト・プールに均質的な原価要素を集計する必要がある。我が国の「原価計算基準」では,部門をコスト・プールとして用いるため,正確な配賦計算を行うことができないできる。原価計算基準一六,一八(二),三三(五)", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.製造間接費の配賦基準としては,便益基準,因果基準,負担能力基準があるが,因果基準が最も優れた配賦基準でありあるが,我が国の「原価計算基準」では因果基準に基づく配賦基準を採用しなければならないわけではない。原価計算基準三三(五)", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.部門別計算において,必ずしも全ての製造費用を部門別に計算する必要はない。部門に集計する原価要素の範囲は,製品原価の正確な計算および原価管理の必要によってこれを定める。原価計算基準一八(一)", "title": "解説" } ]
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:[[../問題2|←前の問題]] :[[../問題4|次の問題→]] == 問題 ==  製造間接費とその配賦方法に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.直接費と間接費の分類は製品との関連における分類であり,製品に対する原価の発生が,一定単位の製品の生成に関して直接的に認識・把握できるかどうかによって,直接費と間接費とに分けられる。 イ.コスト・プールとは,製造間接費に含まれる様々な原価要素をグループにまとめたものである。正確な製造間接費の配賦を行うためには,コスト・プールに均質的な原価要素を集計する必要がある。我が国の「原価計算基準」では,部門をコスト・プールとして用いるため,正確な配賦計算を行うことができない。 ウ.製造間接費の配賦基準としては,便益基準,因果基準,負担能力基準があるが,因果基準が最も優れた配賦基準であり,我が国の「原価計算基準」では因果基準に基づく配賦基準を採用しなければならない。 エ.部門別計算において,必ずしも全ての製造費用を部門別に計算する必要はない。部門に集計する原価要素の範囲は,製品原価の正確な計算および原価管理の必要によってこれを定める。 </div> <div style="column-count:6;"> :1.アイ :2.アウ :3.アエ :4.イウ :5.イエ :6.ウエ </div> == 正解 == 3 == 解説 == ア.直接費と間接費の分類は製品との関連における分類であり,製品に対する原価の発生が,一定単位の製品の生成に関して直接的に認識・把握できるかどうかによって,直接費と間接費とに分けられる。<ins>原価計算基準八(三)</ins> イ.コスト・プールとは,製造間接費に含まれる様々な原価要素をグループにまとめたものである。正確な製造間接費の配賦を行うためには,コスト・プールに均質的な原価要素を集計する必要がある。我が国の「原価計算基準」では,部門をコスト・プールとして用いるため,正確な配賦計算を行うことが<del>できない</del><ins>できる</ins>。<ins>原価計算基準一六,一八(二),三三(五)</ins> ウ.製造間接費の配賦基準としては,便益基準,因果基準,負担能力基準があるが,因果基準が最も優れた配賦基準で<del>あり</del><ins>あるが</ins>,我が国の「原価計算基準」では因果基準に基づく配賦基準を採用しなければならない<ins>わけではない</ins>。<ins>原価計算基準三三(五)</ins> エ.部門別計算において,必ずしも全ての製造費用を部門別に計算する必要はない。部門に集計する原価要素の範囲は,製品原価の正確な計算および原価管理の必要によってこれを定める。<ins>原価計算基準一八(一)</ins> == 参考基準 == ;原価計算基準 : 八 [[製造原価要素の分類基準]](三) : 一六 [[原価部門の設定]] : 一八 [[部門別計算の手続]](一)(二) : 三三 [[間接費の配賦]](五) :[[../問題2|←前の問題]] :[[../問題4|次の問題→]] [[カテゴリ:管理会計]]
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%85%AC%E8%AA%8D%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%A3%AB%E8%A9%A6%E9%A8%93/%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B4%E7%AC%ACII%E5%9B%9E%E7%9F%AD%E7%AD%94%E5%BC%8F/%E7%AE%A1%E7%90%86%E4%BC%9A%E8%A8%88%E8%AB%96/%E5%95%8F%E9%A1%8C3
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公認会計士試験/平成30年第II回短答式/管理会計論/問題5
次の記述のうち,我が国の「原価計算基準」に照らして正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) ア.組別総合原価計算では,まず,一期間の製造費用を組直接費と組間接費又は原料費と加工費とに分け,個別原価計算に準じて組直接費又は原料費は,各組の製品に賦課し,組間接費又は加工費は,適当な配賦基準により各組に配賦する。次いで,一期間における組別の製造費用と期首仕掛品原価とを,当期における組別の完成品とその期末仕掛品とに分割することにより,当期における組別の完成品総合原価を計算する。 イ.連産品の価額は,連産品の正常市価等を基準として定めた等価係数に基づき,一期間の総合原価を連産品にあん分して計算する。この場合,連産品で,加工の上売却できるものは,加工製品の見積売却価額から加工費の見積額を控除した額をもって,その正常市価とみなし,等価係数算定の基礎とする。ただし,必要ある場合には,連産品の一種又は数種の価額を副産物に準じて計算し,これを一期間の総合原価から控除した額をもって,他の連産品の価額とすることができる。 ウ.同一工程から生産される複数製品が連産品の場合,総合原価は,分離点における連産品の正常市価に数量を乗じた金額に基づいてあん分される。分離点以降固有の原価の発生がなく連産品の正常市価が異なる場合,連産品ごとの売上総利益率は同じにならない。 エ.主産物の製造過程から副産物が生じる場合には,その価額を算定して,これを主産物の総合原価から控除する。副産物が軽微な場合には,これを売却して得た収入を主産物の総合原価から控除しなければならない。 1 ア.組別総合原価計算では,まず,一期間の製造費用を組直接費と組間接費又は原料費と加工費とに分け,個別原価計算に準じて組直接費又は原料費は,各組の製品に賦課し,組間接費又は加工費は,適当な配賦基準により各組に配賦する。次いで,一期間における組別の製造費用と期首仕掛品原価とを,当期における組別の完成品とその期末仕掛品とに分割することにより,当期における組別の完成品総合原価を計算する。原価計算基準二三 イ.連産品の価額は,連産品の正常市価等を基準として定めた等価係数に基づき,一期間の総合原価を連産品にあん分して計算する。この場合,連産品で,加工の上売却できるものは,加工製品の見積売却価額から加工費の見積額を控除した額をもって,その正常市価とみなし,等価係数算定の基礎とする。ただし,必要ある場合には,連産品の一種又は数種の価額を副産物に準じて計算し,これを一期間の総合原価から控除した額をもって,他の連産品の価額とすることができる。原価計算基準二九 ウ.同一工程から生産される複数製品が連産品の場合,総合原価は,分離点における連産品の正常市価に数量を乗じた金額に基づいてあん分される。分離点以降固有の原価の発生がなく連産品の正常市価が異なる場合,連産品ごとの売上総利益率は同じにならないなる。原価計算基準二九 エ.主産物の製造過程から副産物が生じる場合には,その価額を算定して,これを主産物の総合原価から控除する。副産物が軽微な場合には,これを売却して得た収入を主産物の総合原価から控除しなければならない原価計算外の収益とすることができる。原価計算基準二八
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "次の記述のうち,我が国の「原価計算基準」に照らして正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.組別総合原価計算では,まず,一期間の製造費用を組直接費と組間接費又は原料費と加工費とに分け,個別原価計算に準じて組直接費又は原料費は,各組の製品に賦課し,組間接費又は加工費は,適当な配賦基準により各組に配賦する。次いで,一期間における組別の製造費用と期首仕掛品原価とを,当期における組別の完成品とその期末仕掛品とに分割することにより,当期における組別の完成品総合原価を計算する。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.連産品の価額は,連産品の正常市価等を基準として定めた等価係数に基づき,一期間の総合原価を連産品にあん分して計算する。この場合,連産品で,加工の上売却できるものは,加工製品の見積売却価額から加工費の見積額を控除した額をもって,その正常市価とみなし,等価係数算定の基礎とする。ただし,必要ある場合には,連産品の一種又は数種の価額を副産物に準じて計算し,これを一期間の総合原価から控除した額をもって,他の連産品の価額とすることができる。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.同一工程から生産される複数製品が連産品の場合,総合原価は,分離点における連産品の正常市価に数量を乗じた金額に基づいてあん分される。分離点以降固有の原価の発生がなく連産品の正常市価が異なる場合,連産品ごとの売上総利益率は同じにならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.主産物の製造過程から副産物が生じる場合には,その価額を算定して,これを主産物の総合原価から控除する。副産物が軽微な場合には,これを売却して得た収入を主産物の総合原価から控除しなければならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "1", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.組別総合原価計算では,まず,一期間の製造費用を組直接費と組間接費又は原料費と加工費とに分け,個別原価計算に準じて組直接費又は原料費は,各組の製品に賦課し,組間接費又は加工費は,適当な配賦基準により各組に配賦する。次いで,一期間における組別の製造費用と期首仕掛品原価とを,当期における組別の完成品とその期末仕掛品とに分割することにより,当期における組別の完成品総合原価を計算する。原価計算基準二三", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.連産品の価額は,連産品の正常市価等を基準として定めた等価係数に基づき,一期間の総合原価を連産品にあん分して計算する。この場合,連産品で,加工の上売却できるものは,加工製品の見積売却価額から加工費の見積額を控除した額をもって,その正常市価とみなし,等価係数算定の基礎とする。ただし,必要ある場合には,連産品の一種又は数種の価額を副産物に準じて計算し,これを一期間の総合原価から控除した額をもって,他の連産品の価額とすることができる。原価計算基準二九", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.同一工程から生産される複数製品が連産品の場合,総合原価は,分離点における連産品の正常市価に数量を乗じた金額に基づいてあん分される。分離点以降固有の原価の発生がなく連産品の正常市価が異なる場合,連産品ごとの売上総利益率は同じにならないなる。原価計算基準二九", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.主産物の製造過程から副産物が生じる場合には,その価額を算定して,これを主産物の総合原価から控除する。副産物が軽微な場合には,これを売却して得た収入を主産物の総合原価から控除しなければならない原価計算外の収益とすることができる。原価計算基準二八", "title": "解説" } ]
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:[[../問題4|←前の問題]] :[[../問題6|次の問題→]] == 問題 ==  次の記述のうち,我が国の「原価計算基準」に照らして正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.組別総合原価計算では,まず,一期間の製造費用を組直接費と組間接費又は原料費と加工費とに分け,個別原価計算に準じて組直接費又は原料費は,各組の製品に賦課し,組間接費又は加工費は,適当な配賦基準により各組に配賦する。次いで,一期間における組別の製造費用と期首仕掛品原価とを,当期における組別の完成品とその期末仕掛品とに分割することにより,当期における組別の完成品総合原価を計算する。 イ.連産品の価額は,連産品の正常市価等を基準として定めた等価係数に基づき,一期間の総合原価を連産品にあん分して計算する。この場合,連産品で,加工の上売却できるものは,加工製品の見積売却価額から加工費の見積額を控除した額をもって,その正常市価とみなし,等価係数算定の基礎とする。ただし,必要ある場合には,連産品の一種又は数種の価額を副産物に準じて計算し,これを一期間の総合原価から控除した額をもって,他の連産品の価額とすることができる。 ウ.同一工程から生産される複数製品が連産品の場合,総合原価は,分離点における連産品の正常市価に数量を乗じた金額に基づいてあん分される。分離点以降固有の原価の発生がなく連産品の正常市価が異なる場合,連産品ごとの売上総利益率は同じにならない。 エ.主産物の製造過程から副産物が生じる場合には,その価額を算定して,これを主産物の総合原価から控除する。副産物が軽微な場合には,これを売却して得た収入を主産物の総合原価から控除しなければならない。 </div> <div style="column-count:6;"> :1.アイ :2.アウ :3.アエ :4.イウ :5.イエ :6.ウエ </div> == 正解 == 1 == 解説 == ア.組別総合原価計算では,まず,一期間の製造費用を組直接費と組間接費又は原料費と加工費とに分け,個別原価計算に準じて組直接費又は原料費は,各組の製品に賦課し,組間接費又は加工費は,適当な配賦基準により各組に配賦する。次いで,一期間における組別の製造費用と期首仕掛品原価とを,当期における組別の完成品とその期末仕掛品とに分割することにより,当期における組別の完成品総合原価を計算する。<ins>原価計算基準二三</ins> イ.連産品の価額は,連産品の正常市価等を基準として定めた等価係数に基づき,一期間の総合原価を連産品にあん分して計算する。この場合,連産品で,加工の上売却できるものは,加工製品の見積売却価額から加工費の見積額を控除した額をもって,その正常市価とみなし,等価係数算定の基礎とする。ただし,必要ある場合には,連産品の一種又は数種の価額を副産物に準じて計算し,これを一期間の総合原価から控除した額をもって,他の連産品の価額とすることができる。<ins>原価計算基準二九</ins> ウ.同一工程から生産される複数製品が連産品の場合,総合原価は,分離点における連産品の正常市価に数量を乗じた金額に基づいてあん分される。分離点以降固有の原価の発生がなく連産品の正常市価が異なる場合,連産品ごとの売上総利益率は同じに<del>ならない</del><ins>なる</ins>。<ins>原価計算基準二九</ins> エ.主産物の製造過程から副産物が生じる場合には,その価額を算定して,これを主産物の総合原価から控除する。副産物が軽微な場合には,これを売却して得た収入を<del>主産物の総合原価から控除しなければならない</del><ins>原価計算外の収益とすることができる</ins>。<ins>原価計算基準二八</ins> == 参考基準 == ;原価計算基準 : 二三 [[組別総合原価計算]] : 二八 [[副産物等の処理と評価]] : 二九 [[連産品の計算]] :[[../問題4|←前の問題]] :[[../問題6|次の問題→]] [[カテゴリ:管理会計]]
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2022-11-28T16:28:34Z
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公認会計士試験/平成30年第II回短答式/管理会計論/問題7
次の記述のうち,我が国の「原価計算基準」に照らして正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) ア.標準原価とは,財貨の消費量を科学的,統計的調査に基づいて能率の尺度となるように予定し,かつ,予定価格又は正常価格をもって計算した原価をいう。この場合,能率の尺度としての標準とは,その標準が適用される期間において達成されるべき原価の目標を意味する。標準原価計算制度において用いられる標準原価は,現実的標準原価又は正常原価である。 イ.正常原価とは,経営における異常な状態を排除し,経営活動に関する比較的長期にわたる過去の実際数値を統計的に平準化し,これに将来のすう勢を加味した正常能率,正常操業度および正常価格に基づいて決定される原価をいう。正常原価は,経済状態の安定している場合に,たな卸資産価額の算定および予算編成のために用いられる。 ウ.標準直接労務費は,直接作業の区分ごとに,製品単位当たりの直接作業の標準時間と標準賃率とを定め,両者を乗じて算定する。標準直接作業時間については,製品の生産に必要な作業の種類別,使用機械工具,作業の方法および順序,各作業に従事する労働の等級等を定め,作業研究,時間研究その他経営の実情に応ずる科学的,統計的調査により製品単位当たりの各区分作業の標準時間を定める。標準時間は,通常生ずると認められる程度の疲労,身体的必要,手待等の時間的余裕を含まない。 エ.部門別製造間接費予算は,固定予算又は変動予算として設定する。変動予算の算定を実査法による場合には,一定の基準となる操業度を中心として,予期される範囲内の種々の操業度を,一定間隔に設け,各操業度に応ずる複数の製造間接費予算をあらかじめ算定列記する。 3 ア.標準原価とは,財貨の消費量を科学的,統計的調査に基づいて能率の尺度となるように予定し,かつ,予定価格又は正常価格をもって計算した原価をいう。この場合,能率の尺度としての標準とは,その標準が適用される期間において達成されるべき原価の目標を意味する。標準原価計算制度において用いられる標準原価は,現実的標準原価又は正常原価である。原価計算基準四(一)2 イ.正常原価とは,経営における異常な状態を排除し,経営活動に関する比較的長期にわたる過去の実際数値を統計的に平準化し,これに将来のすう勢を加味した正常能率,正常操業度および正常価格に基づいて決定される原価をいう。正常原価は,経済状態の安定している場合に,たな卸資産価額の算定および予算編成のためにのために最も適するのみでなく,原価管理のための標準としても用いられる。原価計算基準四(一)2 ウ.標準直接労務費は,直接作業の区分ごとに,製品単位当たりの直接作業の標準時間と標準賃率とを定め,両者を乗じて算定する。標準直接作業時間については,製品の生産に必要な作業の種類別,使用機械工具,作業の方法および順序,各作業に従事する労働の等級等を定め,作業研究,時間研究その他経営の実情に応ずる科学的,統計的調査により製品単位当たりの各区分作業の標準時間を定める。標準時間は,通常生ずると認められる程度の疲労,身体的必要,手待等の時間的余裕を含まない含む。原価計算基準四一(二)1,2 エ.部門別製造間接費予算は,固定予算又は変動予算として設定する。変動予算の算定を実査法による場合には,一定の基準となる操業度を中心として,予期される範囲内の種々の操業度を,一定間隔に設け,各操業度に応ずる複数の製造間接費予算をあらかじめ算定列記する。原価計算基準四一(三)2(1)
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "次の記述のうち,我が国の「原価計算基準」に照らして正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.標準原価とは,財貨の消費量を科学的,統計的調査に基づいて能率の尺度となるように予定し,かつ,予定価格又は正常価格をもって計算した原価をいう。この場合,能率の尺度としての標準とは,その標準が適用される期間において達成されるべき原価の目標を意味する。標準原価計算制度において用いられる標準原価は,現実的標準原価又は正常原価である。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.正常原価とは,経営における異常な状態を排除し,経営活動に関する比較的長期にわたる過去の実際数値を統計的に平準化し,これに将来のすう勢を加味した正常能率,正常操業度および正常価格に基づいて決定される原価をいう。正常原価は,経済状態の安定している場合に,たな卸資産価額の算定および予算編成のために用いられる。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.標準直接労務費は,直接作業の区分ごとに,製品単位当たりの直接作業の標準時間と標準賃率とを定め,両者を乗じて算定する。標準直接作業時間については,製品の生産に必要な作業の種類別,使用機械工具,作業の方法および順序,各作業に従事する労働の等級等を定め,作業研究,時間研究その他経営の実情に応ずる科学的,統計的調査により製品単位当たりの各区分作業の標準時間を定める。標準時間は,通常生ずると認められる程度の疲労,身体的必要,手待等の時間的余裕を含まない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.部門別製造間接費予算は,固定予算又は変動予算として設定する。変動予算の算定を実査法による場合には,一定の基準となる操業度を中心として,予期される範囲内の種々の操業度を,一定間隔に設け,各操業度に応ずる複数の製造間接費予算をあらかじめ算定列記する。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "3", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.標準原価とは,財貨の消費量を科学的,統計的調査に基づいて能率の尺度となるように予定し,かつ,予定価格又は正常価格をもって計算した原価をいう。この場合,能率の尺度としての標準とは,その標準が適用される期間において達成されるべき原価の目標を意味する。標準原価計算制度において用いられる標準原価は,現実的標準原価又は正常原価である。原価計算基準四(一)2", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.正常原価とは,経営における異常な状態を排除し,経営活動に関する比較的長期にわたる過去の実際数値を統計的に平準化し,これに将来のすう勢を加味した正常能率,正常操業度および正常価格に基づいて決定される原価をいう。正常原価は,経済状態の安定している場合に,たな卸資産価額の算定および予算編成のためにのために最も適するのみでなく,原価管理のための標準としても用いられる。原価計算基準四(一)2", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.標準直接労務費は,直接作業の区分ごとに,製品単位当たりの直接作業の標準時間と標準賃率とを定め,両者を乗じて算定する。標準直接作業時間については,製品の生産に必要な作業の種類別,使用機械工具,作業の方法および順序,各作業に従事する労働の等級等を定め,作業研究,時間研究その他経営の実情に応ずる科学的,統計的調査により製品単位当たりの各区分作業の標準時間を定める。標準時間は,通常生ずると認められる程度の疲労,身体的必要,手待等の時間的余裕を含まない含む。原価計算基準四一(二)1,2", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.部門別製造間接費予算は,固定予算又は変動予算として設定する。変動予算の算定を実査法による場合には,一定の基準となる操業度を中心として,予期される範囲内の種々の操業度を,一定間隔に設け,各操業度に応ずる複数の製造間接費予算をあらかじめ算定列記する。原価計算基準四一(三)2(1)", "title": "解説" } ]
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:[[../問題6|←前の問題]] :[[../問題8|次の問題→]] == 問題 ==  次の記述のうち,我が国の「原価計算基準」に照らして正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.標準原価とは,財貨の消費量を科学的,統計的調査に基づいて能率の尺度となるように予定し,かつ,予定価格又は正常価格をもって計算した原価をいう。この場合,能率の尺度としての標準とは,その標準が適用される期間において達成されるべき原価の目標を意味する。標準原価計算制度において用いられる標準原価は,現実的標準原価又は正常原価である。 イ.正常原価とは,経営における異常な状態を排除し,経営活動に関する比較的長期にわたる過去の実際数値を統計的に平準化し,これに将来のすう勢を加味した正常能率,正常操業度および正常価格に基づいて決定される原価をいう。正常原価は,経済状態の安定している場合に,たな卸資産価額の算定および予算編成のために用いられる。 ウ.標準直接労務費は,直接作業の区分ごとに,製品単位当たりの直接作業の標準時間と標準賃率とを定め,両者を乗じて算定する。標準直接作業時間については,製品の生産に必要な作業の種類別,使用機械工具,作業の方法および順序,各作業に従事する労働の等級等を定め,作業研究,時間研究その他経営の実情に応ずる科学的,統計的調査により製品単位当たりの各区分作業の標準時間を定める。標準時間は,通常生ずると認められる程度の疲労,身体的必要,手待等の時間的余裕を含まない。 エ.部門別製造間接費予算は,固定予算又は変動予算として設定する。変動予算の算定を実査法による場合には,一定の基準となる操業度を中心として,予期される範囲内の種々の操業度を,一定間隔に設け,各操業度に応ずる複数の製造間接費予算をあらかじめ算定列記する。 </div> <div style="column-count:6;"> :1.アイ :2.アウ :3.アエ :4.イウ :5.イエ :6.ウエ </div> == 正解 == 3 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.標準原価とは,財貨の消費量を科学的,統計的調査に基づいて能率の尺度となるように予定し,かつ,予定価格又は正常価格をもって計算した原価をいう。この場合,能率の尺度としての標準とは,その標準が適用される期間において達成されるべき原価の目標を意味する。標準原価計算制度において用いられる標準原価は,現実的標準原価又は正常原価である。<ins>原価計算基準四(一)2</ins> イ.正常原価とは,経営における異常な状態を排除し,経営活動に関する比較的長期にわたる過去の実際数値を統計的に平準化し,これに将来のすう勢を加味した正常能率,正常操業度および正常価格に基づいて決定される原価をいう。正常原価は,経済状態の安定している場合に,たな卸資産価額の算定<del>および予算編成のために</del><ins>のために最も適するのみでなく,'''原価管理'''のための標準としても</ins>用いられる。<ins>原価計算基準四(一)2</ins> ウ.標準直接労務費は,直接作業の区分ごとに,製品単位当たりの直接作業の標準時間と標準賃率とを定め,両者を乗じて算定する。標準直接作業時間については,製品の生産に必要な作業の種類別,使用機械工具,作業の方法および順序,各作業に従事する労働の等級等を定め,作業研究,時間研究その他経営の実情に応ずる科学的,統計的調査により製品単位当たりの各区分作業の標準時間を定める。標準時間は,通常生ずると認められる程度の疲労,身体的必要,手待等の時間的余裕を<del>含まない</del><ins>含む</ins>。<ins>原価計算基準四一(二)1,2</ins> エ.部門別製造間接費予算は,固定予算又は変動予算として設定する。変動予算の算定を実査法による場合には,一定の基準となる操業度を中心として,予期される範囲内の種々の操業度を,一定間隔に設け,各操業度に応ずる複数の製造間接費予算をあらかじめ算定列記する。<ins>原価計算基準四一(三)2(1)</ins> </div> == 参考基準 == ;原価計算基準 : 四 [[原価の諸概念]] : 四一 [[標準原価の算定]] :[[../問題6|←前の問題]] :[[../問題8|次の問題→]] [[カテゴリ:管理会計]]
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2022-11-28T16:28:40Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%85%AC%E8%AA%8D%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%A3%AB%E8%A9%A6%E9%A8%93/%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B4%E7%AC%ACII%E5%9B%9E%E7%9F%AD%E7%AD%94%E5%BC%8F/%E7%AE%A1%E7%90%86%E4%BC%9A%E8%A8%88%E8%AB%96/%E5%95%8F%E9%A1%8C7
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公認会計士試験/平成30年第II回短答式/財務会計論/問題1
会計公準の意義と役割に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) ア.会計公準は,会計理論や会計実務の基礎的な前提をなすものである。したがって,個 別の会計基準の具体的内容を直接制約するものではない。 イ.貨幣的測定の公準は,会計における測定は貨幣額を用いて行うことを要請した公準である。したがって,この公準に従う場合,貨幣額で客観的に測定することができないものは,たとえそれが企業活動のために重要な役割を果たす要素であっても,原則として会計の測定の対象とすることはできない。 ウ.企業実体の公準は,会計が行われる場を確定する公準であり,会計単位の公準と呼ばれることもある。したがって,連結財務諸表に関する会計基準において親会社説が採用されているのは,企業実体の公準の適用例とみなされる。 エ.継続企業の公準は,企業が半永久的に存在することを仮定した上で会計を行うことを要請した公準である。したがって,期間を人為的に区切って実施される期間損益計算は,継続企業の公準とは異なる前提に基づいている。 1 ウ.企業実体の公準は,会計が行われる場を確定する公準であり,会計単位の公準と呼ばれることもある。したがって,連結財務諸表に関する会計基準において親会社説が採用されているのは,企業実体の公準の適用例とみなされる。親会社説も経済的単一体説も企業実体の公準を前提としている。 エ.継続企業の公準は,企業が半永久的に存在することを仮定した上で会計を行うことを要請した公準である。したがって,期間を人為的に区切って実施される期間損益計算は,継続企業の公準とは異なる前提に基づいている。
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "会計公準の意義と役割に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.会計公準は,会計理論や会計実務の基礎的な前提をなすものである。したがって,個 別の会計基準の具体的内容を直接制約するものではない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.貨幣的測定の公準は,会計における測定は貨幣額を用いて行うことを要請した公準である。したがって,この公準に従う場合,貨幣額で客観的に測定することができないものは,たとえそれが企業活動のために重要な役割を果たす要素であっても,原則として会計の測定の対象とすることはできない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.企業実体の公準は,会計が行われる場を確定する公準であり,会計単位の公準と呼ばれることもある。したがって,連結財務諸表に関する会計基準において親会社説が採用されているのは,企業実体の公準の適用例とみなされる。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.継続企業の公準は,企業が半永久的に存在することを仮定した上で会計を行うことを要請した公準である。したがって,期間を人為的に区切って実施される期間損益計算は,継続企業の公準とは異なる前提に基づいている。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "1", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ウ.企業実体の公準は,会計が行われる場を確定する公準であり,会計単位の公準と呼ばれることもある。したがって,連結財務諸表に関する会計基準において親会社説が採用されているのは,企業実体の公準の適用例とみなされる。親会社説も経済的単一体説も企業実体の公準を前提としている。", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "エ.継続企業の公準は,企業が半永久的に存在することを仮定した上で会計を行うことを要請した公準である。したがって,期間を人為的に区切って実施される期間損益計算は,継続企業の公準とは異なる前提に基づいている。", "title": "解説" } ]
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: ←前の問題 : [[../問題2|次の問題→]] == 問題 ==  会計公準の意義と役割に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.会計公準は,会計理論や会計実務の基礎的な前提をなすものである。したがって,個 別の会計基準の具体的内容を直接制約するものではない。 イ.貨幣的測定の公準は,会計における測定は貨幣額を用いて行うことを要請した公準である。したがって,この公準に従う場合,貨幣額で客観的に測定することができないものは,たとえそれが企業活動のために重要な役割を果たす要素であっても,原則として会計の測定の対象とすることはできない。 ウ.企業実体の公準は,会計が行われる場を確定する公準であり,会計単位の公準と呼ばれることもある。したがって,連結財務諸表に関する会計基準において親会社説が採用されているのは,企業実体の公準の適用例とみなされる。 エ.継続企業の公準は,企業が半永久的に存在することを仮定した上で会計を行うことを要請した公準である。したがって,期間を人為的に区切って実施される期間損益計算は,継続企業の公準とは異なる前提に基づいている。 </div> <div style="column-count:6;"> :1. アイ :2. アウ :3. アエ :4. イウ :5. イエ :6. ウエ </div> == 正解 == 1 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ウ.企業実体の公準は,会計が行われる場を確定する公準であり,会計単位の公準と呼ばれることもある。<del>したがって,連結財務諸表に関する会計基準において親会社説が採用されているのは,企業実体の公準の適用例とみなされる。</del><ins>親会社説も経済的単一体説も企業実体の公準を前提としている。</ins> エ.継続企業の公準は,企業が半永久的に存在することを仮定した上で会計を行うことを要請した公準である。したがって,期間を人為的に区切って実施される期間損益計算は,継続企業の公準<del>とは異なる前提</del>に基づいている。 </div> : ←前の問題 : [[../問題2|次の問題→]] [[カテゴリ:財務会計]]
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2022-11-28T16:33:55Z
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制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/指数関数の場合
前節の思いつきが成功したのは,割り算が常に割り切れたからである. 割り切れたのは f ( t ) {\displaystyle f(t)} が t {\displaystyle t} の多項式であったからで, f ( t ) {\displaystyle f(t)} を何回か微分すれば必ず 0 {\displaystyle 0} となることが保証されているからにほかならない. そこで,何回微分しても決して 0 {\displaystyle 0} にならない指数関数を f ( t ) {\displaystyle f(t)} に選んでみよう. 例5 {\displaystyle \quad } 例によって p = d d t {\displaystyle p={\frac {d}{dt}}} とおくと となる.この割り算を実行しよう. e a t − a e a t a 2 e a t − a 3 e a t ⋯ 1 + p ) e a t e a t a e a t − a e a t − a e a t − a 2 e a t + a 2 e a t + a 2 e a t a 3 e a t − a 3 e a t − a 3 e a t − a 4 e a t a 4 e a t {\displaystyle {\begin{array}{lcl}&&e^{at}&-ae^{at}&a^{2}e^{at}&-a^{3}e^{at}&\cdots \\\hline 1+p&)&e^{at}&&&&\\&&e^{at}&ae^{at}&&&\\\hline &&&-ae^{at}&&&\\&&&-ae^{at}&-a^{2}e^{at}&&\\\hline &&&&+a^{2}e^{at}&&\\&&&&+a^{2}e^{at}&a^{3}e~{at}&\\\hline &&&&&-a^{3}e^{at}&\\&&&&&-a^{3}e^{at}&-a^{4}e^{at}\\\hline &&&&&&a^{4}e^{at}\\\end{array}}} e a t / ( 1 + p ) = e a t ⋯ ⋯ − a e a t {\displaystyle e^{at}/(1+p)=e^{at}\cdots \cdots -ae^{at}} − a e a t / ( 1 + p ) = − a e a t ⋯ ⋯ a 2 e a t {\displaystyle -ae^{at}/(1+p)=-ae^{at}\cdots \cdots a^{2}e^{at}} a 2 e a t / ( 1 + p ) = a 2 e a t ⋯ ⋯ − a 3 e a t {\displaystyle a^{2}e^{at}/(1+p)=a^{2}e^{at}\cdots \cdots -a^{3}e^{at}} − a 3 e a t / ( 1 + p ) = − a 3 e a t ⋯ ⋯ a 4 e a t {\displaystyle -a^{3}e^{at}/(1+p)=-a^{3}e^{at}\cdots \cdots a^{4}e^{at}} これはいつまでたっても割り切れない.しかしここで諦めては長蛇を逸する. そこで n {\displaystyle n} 回,上の演算を実行すると, を得る.したがって, ならば,無限回の施行の後, となって割り切れる.このとき商は, となる. 験算 よって,この x ( t ) {\displaystyle x(t)} は,初期条件 x ( 0 ) = 1 1 + a {\displaystyle x(0)={\frac {1}{1+a}}} をみたす解であることが分かった. 上で行った験算は, | a | < 1 {\displaystyle |a|<1} でなくても, x ( t ) {\displaystyle x(t)} が正しい解を与えることを示している.そこで, の場合にも,正しいを解が得られるように工夫してみよう. p {\displaystyle p} で割るということは,積分するということであった. e a t {\displaystyle e^{at}} を積分すれば e a t a {\displaystyle {\frac {e^{at}}{a}}} となる. 1 a {\displaystyle {\frac {1}{a}}} のベキ級数は | a | > 1 {\displaystyle |a|>1} で収束する. そこで割り算を少し変形して、次のように p {\displaystyle p} から先に割っていこう. 1 a e a t − 1 a 2 e a t 1 a 3 e a t ⋯ p + 1 ) e a t e a t 1 a e a t − 1 a e a t − 1 a e a t − 1 a 2 e a t + 1 a 2 e a t + 1 a 2 e a t 1 a 3 e a t − 1 a 3 e a t {\displaystyle {\begin{array}{lcl}&&{\frac {1}{a}}e^{at}&-{\frac {1}{a^{2}}}e^{at}&{\frac {1}{a^{3}}}e^{at}&&\cdots \\\hline p+1&)&e^{at}&&&&\\&&e^{at}&{\frac {1}{a}}e^{at}&&&\\\hline &&&-{\frac {1}{a}}e^{at}&&&\\&&&-{\frac {1}{a}}e^{at}&-{\frac {1}{a^{2}}}e^{at}&&\\\hline &&&&+{\frac {1}{a^{2}}}e^{at}&&\\&&&&+{\frac {1}{a^{2}}}e^{at}&{\frac {1}{a^{3}}}e~{at}&\\\hline &&&&&-{\frac {1}{a^{3}}}e^{at}&\\\end{array}}} e a t ÷ ( p + 1 ) = 1 a e a t ⋯ ⋯ − 1 a e a t {\displaystyle e^{at}\div (p+1)={\frac {1}{a}}e^{at}\cdots \cdots -{\frac {1}{a}}e^{at}} − 1 a e a t ÷ ( p + 1 ) = − 1 a 2 e a t ⋯ ⋯ 1 a 2 e a t {\displaystyle -{\frac {1}{a}}e^{at}\div (p+1)=-{\frac {1}{a^{2}}}e^{at}\cdots \cdots {\frac {1}{a^{2}}}e^{at}} 1 a 2 e a t ÷ ( p + 1 ) = 1 a 3 e a t . . . . . {\displaystyle {\frac {1}{a^{2}}}e^{at}\div (p+1)={\frac {1}{a^{3}}}e^{at}.....} この演算を無限回続けると, | a | > 1 {\displaystyle |a|>1} であるから,商は収束して, となる. | a | = 1 {\displaystyle |a|=1} の場合の考察は後まわしにして,これら 2 種の計算法の検討をしておこう. 1 ∘ {\displaystyle 1^{\circ }} | a | < 1 {\displaystyle |a|<1} の場合 2 ∘ {\displaystyle 2^{\circ }} | a | > 1 {\displaystyle |a|>1} の場合 このように p {\displaystyle p} の関数を p {\displaystyle p} あるいは 1 p {\displaystyle {\frac {1}{p}}} で展開し, p {\displaystyle p} は微分, 1 p {\displaystyle {\frac {1}{p}}} は積分と考えて形式的に計算すると,正しい答に導かれる.例えば例1は となって同じ答を得る. 例6 {\displaystyle \quad } 1 p {\displaystyle {\frac {1}{p}}} で展開するとどうなるか. 解答例 {\displaystyle \quad } と項が無限に生成されてしまい,うまくいかない. 上に示した幾つかの例において,微分方程式の解は得られるには得られたが,まだ多くの問題点を残している. 手法のいかがわしさは暫くおくとしても,一つの方程式に対して一つの解しか得られず、任意の初期値を満たす解が得られないのは大きな欠陥である. このことは,次のような方程式 を取り扱うとき,深刻な問題となる.というのは,単に p = d d t {\displaystyle p={\frac {d}{dt}}} と置いたのでは, となって,得られた解 x ( t ) ≡ 0 {\displaystyle x(t)\equiv 0} は正しい解には違いないが,視察でも求まるつまらない解だからである. さて 1 p {\displaystyle {\frac {1}{p}}} を積分と考えることによって、色々な初期値が得られる可能性のあることを前に示唆しておいた. そこで,ひとまず (1.5) を 0 {\displaystyle 0} から t {\displaystyle t} で積分してみよう. を得る.そこで,積分は微分 p {\displaystyle p} の逆演算であるという考えを一方深めて,改めて, あるいは,もっと正確に, と定義しなおすことにしよう.そうすれば式 (1.6) は, となる.初期値 x ( 0 ) {\displaystyle x(0)} が入ってきたところが,単に d d t = p {\displaystyle {\frac {d}{dt}}=p} とおいた場合と根本的に異なっている. この式を x {\displaystyle x} について解き, これを 1 p {\displaystyle {\frac {1}{p}}} で展開すると, を得る. さてここで定義 (1.7) に戻り, 以下同様にして, が得られることに注意すると,式 (1.8) は となる.上の式の( )内は e a t {\displaystyle e^{at}} の Taylor 展開である.よって, を得る.これが式 (1.5) の正しい解であることは明らかである. どうやら我々は満足するべき解法にかなり近づいたようである.次節でもう少し掘り下げて考えてみよう.
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "前節の思いつきが成功したのは,割り算が常に割り切れたからである. 割り切れたのは f ( t ) {\\displaystyle f(t)} が t {\\displaystyle t} の多項式であったからで, f ( t ) {\\displaystyle f(t)} を何回か微分すれば必ず 0 {\\displaystyle 0} となることが保証されているからにほかならない. そこで,何回微分しても決して 0 {\\displaystyle 0} にならない指数関数を f ( t ) {\\displaystyle f(t)} に選んでみよう.", "title": "§1" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "例5 {\\displaystyle \\quad }", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "例によって p = d d t {\\displaystyle p={\\frac {d}{dt}}} とおくと", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "となる.この割り算を実行しよう.", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "e a t − a e a t a 2 e a t − a 3 e a t ⋯ 1 + p ) e a t e a t a e a t − a e a t − a e a t − a 2 e a t + a 2 e a t + a 2 e a t a 3 e a t − a 3 e a t − a 3 e a t − a 4 e a t a 4 e a t {\\displaystyle {\\begin{array}{lcl}&&e^{at}&-ae^{at}&a^{2}e^{at}&-a^{3}e^{at}&\\cdots \\\\\\hline 1+p&)&e^{at}&&&&\\\\&&e^{at}&ae^{at}&&&\\\\\\hline &&&-ae^{at}&&&\\\\&&&-ae^{at}&-a^{2}e^{at}&&\\\\\\hline &&&&+a^{2}e^{at}&&\\\\&&&&+a^{2}e^{at}&a^{3}e~{at}&\\\\\\hline &&&&&-a^{3}e^{at}&\\\\&&&&&-a^{3}e^{at}&-a^{4}e^{at}\\\\\\hline &&&&&&a^{4}e^{at}\\\\\\end{array}}}", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "e a t / ( 1 + p ) = e a t ⋯ ⋯ − a e a t {\\displaystyle e^{at}/(1+p)=e^{at}\\cdots \\cdots -ae^{at}}", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "− a e a t / ( 1 + p ) = − a e a t ⋯ ⋯ a 2 e a t {\\displaystyle -ae^{at}/(1+p)=-ae^{at}\\cdots \\cdots a^{2}e^{at}}", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "a 2 e a t / ( 1 + p ) = a 2 e a t ⋯ ⋯ − a 3 e a t {\\displaystyle a^{2}e^{at}/(1+p)=a^{2}e^{at}\\cdots \\cdots -a^{3}e^{at}}", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 10, "tag": "p", "text": "− a 3 e a t / ( 1 + p ) = − a 3 e a t ⋯ ⋯ a 4 e a t {\\displaystyle 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"paragraph_id": 20, "tag": "p", "text": "の場合にも,正しいを解が得られるように工夫してみよう. p {\\displaystyle p} で割るということは,積分するということであった. e a t {\\displaystyle e^{at}} を積分すれば e a t a {\\displaystyle {\\frac {e^{at}}{a}}} となる. 1 a {\\displaystyle {\\frac {1}{a}}} のベキ級数は | a | > 1 {\\displaystyle |a|>1} で収束する. そこで割り算を少し変形して、次のように p {\\displaystyle p} から先に割っていこう.", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 21, "tag": "p", "text": "1 a e a t − 1 a 2 e a t 1 a 3 e a t ⋯ p + 1 ) e a t e a t 1 a e a t − 1 a e a t − 1 a e a t − 1 a 2 e a t + 1 a 2 e a t + 1 a 2 e a t 1 a 3 e a t − 1 a 3 e a t {\\displaystyle {\\begin{array}{lcl}&&{\\frac {1}{a}}e^{at}&-{\\frac {1}{a^{2}}}e^{at}&{\\frac {1}{a^{3}}}e^{at}&&\\cdots \\\\\\hline p+1&)&e^{at}&&&&\\\\&&e^{at}&{\\frac {1}{a}}e^{at}&&&\\\\\\hline &&&-{\\frac {1}{a}}e^{at}&&&\\\\&&&-{\\frac {1}{a}}e^{at}&-{\\frac {1}{a^{2}}}e^{at}&&\\\\\\hline &&&&+{\\frac {1}{a^{2}}}e^{at}&&\\\\&&&&+{\\frac {1}{a^{2}}}e^{at}&{\\frac {1}{a^{3}}}e~{at}&\\\\\\hline &&&&&-{\\frac {1}{a^{3}}}e^{at}&\\\\\\end{array}}}", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 22, "tag": "p", "text": "e a t ÷ ( p + 1 ) = 1 a e a t ⋯ ⋯ − 1 a e a t {\\displaystyle e^{at}\\div (p+1)={\\frac {1}{a}}e^{at}\\cdots \\cdots -{\\frac {1}{a}}e^{at}}", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 23, "tag": "p", "text": "− 1 a e a t ÷ ( p + 1 ) = − 1 a 2 e a t ⋯ ⋯ 1 a 2 e a t {\\displaystyle -{\\frac {1}{a}}e^{at}\\div (p+1)=-{\\frac {1}{a^{2}}}e^{at}\\cdots \\cdots {\\frac {1}{a^{2}}}e^{at}}", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 24, "tag": "p", "text": "1 a 2 e a t ÷ ( p + 1 ) = 1 a 3 e a t . . . . . {\\displaystyle {\\frac {1}{a^{2}}}e^{at}\\div (p+1)={\\frac {1}{a^{3}}}e^{at}.....}", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 25, "tag": "p", "text": "この演算を無限回続けると, | a | > 1 {\\displaystyle |a|>1} であるから,商は収束して,", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 26, "tag": "p", "text": "となる.", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 27, "tag": "p", "text": "", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 28, "tag": "p", "text": "| a | = 1 {\\displaystyle |a|=1} の場合の考察は後まわしにして,これら 2 種の計算法の検討をしておこう.", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 29, "tag": "p", "text": "1 ∘ {\\displaystyle 1^{\\circ }} | a | < 1 {\\displaystyle |a|<1} の場合", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 30, "tag": "p", "text": "2 ∘ {\\displaystyle 2^{\\circ }} | a | > 1 {\\displaystyle |a|>1} の場合", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 31, "tag": "p", "text": "このように p {\\displaystyle p} の関数を p {\\displaystyle p} あるいは 1 p {\\displaystyle {\\frac {1}{p}}} で展開し, p {\\displaystyle p} は微分, 1 p {\\displaystyle {\\frac {1}{p}}} は積分と考えて形式的に計算すると,正しい答に導かれる.例えば例1は", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 32, "tag": "p", "text": "となって同じ答を得る.", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 33, "tag": "p", "text": "例6 {\\displaystyle \\quad } 1 p {\\displaystyle {\\frac {1}{p}}} で展開するとどうなるか.", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 34, "tag": "p", "text": "解答例 {\\displaystyle \\quad }", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 35, "tag": "p", "text": "と項が無限に生成されてしまい,うまくいかない.", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 36, "tag": "p", "text": "", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 37, "tag": "p", "text": "上に示した幾つかの例において,微分方程式の解は得られるには得られたが,まだ多くの問題点を残している. 手法のいかがわしさは暫くおくとしても,一つの方程式に対して一つの解しか得られず、任意の初期値を満たす解が得られないのは大きな欠陥である. このことは,次のような方程式", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 38, "tag": "p", "text": "を取り扱うとき,深刻な問題となる.というのは,単に p = d d t {\\displaystyle p={\\frac {d}{dt}}} と置いたのでは,", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 39, "tag": "p", "text": "となって,得られた解 x ( t ) ≡ 0 {\\displaystyle x(t)\\equiv 0} は正しい解には違いないが,視察でも求まるつまらない解だからである.", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 40, "tag": "p", "text": "さて 1 p {\\displaystyle {\\frac {1}{p}}} を積分と考えることによって、色々な初期値が得られる可能性のあることを前に示唆しておいた.", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 41, "tag": "p", "text": "そこで,ひとまず (1.5) を 0 {\\displaystyle 0} から t {\\displaystyle t} で積分してみよう.", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 42, "tag": "p", "text": "を得る.そこで,積分は微分 p {\\displaystyle p} の逆演算であるという考えを一方深めて,改めて,", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 43, "tag": "p", "text": "あるいは,もっと正確に,", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 44, "tag": "p", "text": "と定義しなおすことにしよう.そうすれば式 (1.6) は,", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 45, "tag": "p", "text": "となる.初期値 x ( 0 ) {\\displaystyle x(0)} が入ってきたところが,単に d d t = p {\\displaystyle {\\frac {d}{dt}}=p} とおいた場合と根本的に異なっている. この式を x {\\displaystyle x} について解き,", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 46, "tag": "p", "text": "これを 1 p {\\displaystyle {\\frac {1}{p}}} で展開すると,", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 47, "tag": "p", "text": "を得る. さてここで定義 (1.7) に戻り,", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 48, "tag": "p", "text": "以下同様にして,", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 49, "tag": "p", "text": "が得られることに注意すると,式 (1.8) は", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 50, "tag": "p", "text": "となる.上の式の( )内は e a t {\\displaystyle e^{at}} の Taylor 展開である.よって,", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 51, "tag": "p", "text": "を得る.これが式 (1.5) の正しい解であることは明らかである.", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 52, "tag": "p", "text": "どうやら我々は満足するべき解法にかなり近づいたようである.次節でもう少し掘り下げて考えてみよう.", "title": "§2" }, { "paragraph_id": 53, "tag": "p", "text": "", "title": "§2" } ]
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==§1== [[制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/ある思いつき|前節]]の思いつきが成功したのは,割り算が常に割り切れたからである. 割り切れたのは <math>f(t)</math> が <math>t</math> の多項式であったからで, <math>f(t)</math> を何回か微分すれば必ず <math>0</math> となることが保証されているからにほかならない. そこで,何回微分しても決して <math>0</math> にならない指数関数を <math>f(t)</math> に選んでみよう. <!-- ex:005:start--> <div id="ex:5"> <strong>例5</strong><math>\quad</math> {{制御と振動の数学/equation|<math> \frac{dx}{dt} + x = e^{at}</math>}} 例によって <math>p = \frac{d}{dt}</math> とおくと {{制御と振動の数学/equation|<math>px + x= e^{at}</math>}} {{制御と振動の数学/equation|<math>x = \frac{e^{at}}{p + 1}</math>}} となる.この割り算を実行しよう. <math> \begin{array}{lcl} & & e^{at} & -ae^{at} & a^2e^{at} & -a^3e^{at} & \cdots \\ \hline 1 + p & ) & e^{at} & & & & \\ & & e^{at} & ae^{at} & & & \\ \hline & & & -ae^{at} & & & \\ & & & -ae^{at} & -a^2e^{at} & & \\ \hline & & & & +a^2e^{at} & & \\ & & & & +a^2e^{at} & a^3e~{at} & \\ \hline & & & & & -a^3e^{at} & \\ & & & & & -a^3e^{at} & -a^4e^{at} \\ \hline & & & & & & a^4e^{at} \\ \end{array} </math> <math>e^{at} / (1 + p) = e^{at} \cdots\cdots -ae^{at}</math> <math>-ae^{at} / (1 + p) = -ae^{at} \cdots\cdots a^2 e^{at}</math> <math>a^2 e^{at} / (1 + p) = a^2 e^{at} \cdots\cdots -a^3 e^{at}</math> <math>-a^3 e^{at} / (1 + p) = -a^3 e^{at} \cdots\cdots a^4 e^{at}</math> <!-- ex:005:end--> これはいつまでたっても割り切れない.しかしここで諦めては長蛇を逸する. そこで <math>n</math> 回,上の演算を実行すると, {{制御と振動の数学/equation|商:<math> x_n(t) = \{ 1 - a + a^2 -a^3 + \cdots +(-1)^{n-1}a^{n-1} \} e^{at}</math>}} {{制御と振動の数学/equation|剰余:<math>r_n(t) = (-1)^n e^{at}</math>}} を得る.したがって, {{制御と振動の数学/equation|<math>|a| < 1</math>}} ならば,無限回の施行の後, {{制御と振動の数学/equation|<math>\lim_{n \to \infty}r_n(t) = 0</math>}} となって割り切れる.このとき商は, {{制御と振動の数学/equation|<math>x(t) = (1 - a + a^2 - a^3 + \cdots \cdots )e^{at} = \frac{e^{at}}{1 + a}</math>}} となる. <strong>験算</strong> {{制御と振動の数学/equation|<math>\frac{dx}{dt} + x = \frac{ae^{at}}{1 + a} + \frac{e^{at}}{1 + a} = e^{at}</math>}} よって,この <math>x(t)</math> は,初期条件 <math>x(0) = \frac{1}{1 + a}</math> をみたす解であることが分かった. ==§2== 上で行った験算は,<math>|a|<1 </math> でなくても,<math>x(t)</math> が正しい解を与えることを示している.そこで, {{制御と振動の数学/equation|<math>|a| > 1</math>}} の場合にも,正しいを解が得られるように工夫してみよう.<math>p</math> で割るということは,積分するということであった. <math>e^{at}</math> を積分すれば <math>\frac{e^{at}}{a}</math> となる.<math>\frac{1}{a}</math> のベキ級数は <math>|a| > 1</math> で収束する. そこで割り算を少し変形して、次のように <math>p</math> から先に割っていこう. <math> \begin{array}{lcl} & & \frac{1}{a}e^{at} & -\frac{1}{a^2}e^{at} & \frac{1}{a^3}e^{at} & & \cdots \\ \hline p + 1 & ) & e^{at} & & & & \\ & & e^{at} & \frac{1}{a}e^{at} & & & \\ \hline & & & -\frac{1}{a}e^{at} & & & \\ & & & -\frac{1}{a}e^{at} & -\frac{1}{a^2}e^{at} & & \\ \hline & & & & +\frac{1}{a^2}e^{at} & & \\ & & & & +\frac{1}{a^2}e^{at} & \frac{1}{a^3}e~{at} & \\ \hline & & & & & -\frac{1}{a^3}e^{at} & \\ \end{array} </math> <math>e^{at} \div (p + 1) = \frac{1}{a}e^{at} \cdots\cdots -\frac{1}{a}e^{at}</math> <math>-\frac{1}{a}e^{at} \div (p + 1) = -\frac{1}{a^2}e^{at} \cdots\cdots \frac{1}{a^2}e^{at}</math> <math>\frac{1}{a^2}e^{at} \div (p + 1) = \frac{1}{a^3}e^{at} .....</math> この演算を無限回続けると,<math>|a| > 1</math> であるから,商は収束して, {{制御と振動の数学/equation|<math>x(t) = \left( \frac{1}{a} - \frac{1}{a^2} + \frac{1}{a^3} - \frac{1}{a^4} \cdots\cdots\right) e^{at} = \frac{1 - (\frac{-1}{a})^n}{1 - (-\frac{1}{a})}\frac{1}{a}\cdot e^{at} = \frac{1}{1 + \frac{1}{a}} \frac{1}{a} \cdot e^{at}= \frac{a}{a + 1}\frac{1}{a} \cdot e^{at} = \frac{e^{at}}{1 + a}</math>}} となる. ==§3== <math>|a| = 1</math> の場合の考察は後まわしにして,これら 2 種の計算法の検討をしておこう. <math>1^\circ</math> <math>|a|<1</math> の場合 {{制御と振動の数学/equation|<math>x(t) = \frac{e^{at}}{1 + p} = \left( 1 - p + p^2 - p^3 + \cdots\right) e^{at} = \left(1 - a + a^2 - a^3 + \cdots\right)e^{at} = \frac{e^{at}}{1 + a}</math>}} <math>2^\circ</math> <math>|a|>1</math> の場合 {{制御と振動の数学/equation|<math>x(t) = \frac{e^{at}}{1 + p} = \left(\frac{1}{p} - \frac{1}{p^2} + \frac{1}{p^3} - \frac{1}{p^4} + \cdots\right)e^{at} = \left(\frac{1}{a} - \frac{1}{a^2} + \frac{1}{a^3} - \frac{1}{a^4} + \cdots\right)e^{at} = \frac{e^{at}}{1 + a}</math>}} このように <math>p</math> の関数を <math>p</math> あるいは <math>\frac{1}{p}</math> で展開し,<math>p</math> は微分,<math>\frac{1}{p}</math> は積分と考えて形式的に計算すると,正しい答に導かれる.例えば[[制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/ある思いつき#ex:1|例1]]は {{制御と振動の数学/equation|<math>\frac{t^2 + 3t}{p + 1} = (1 - p + p^2 - p^3 + \cdots)(t^2 + 3t) = (t^2 + 3t) - (2t + 3) + 2 = t^2 + t - 1</math>}} となって同じ答を得る. <!-- ex:006:start--> <div id="ex6"> <strong>例6</strong><math>\quad</math> <math>\frac{1}{p}</math> で展開するとどうなるか. <strong>解答例</strong><math>\quad</math> {{制御と振動の数学/equation|<math>\frac{t^2 + 3t}{p + 1} = \left(\frac{1}{p} - \frac{1}{p^2} + \frac{1}{p^3} - \frac{1}{p^4} + \cdots\right)(t^2 + 3t) = \left(\frac{t^3}{3} + \frac{3}{2}t^2\right) - \cdots\cdots</math>}} と項が無限に生成されてしまい,うまくいかない. <!-- ex:006:end--> ==§4== 上に示した幾つかの例において,微分方程式の解は得られるには得られたが,まだ多くの問題点を残している. 手法のいかがわしさは暫くおくとしても,一つの方程式に対して一つの解しか得られず、任意の初期値を満たす解が得られないのは大きな欠陥である. このことは,次のような方程式 {{制御と振動の数学/equation|<math>\frac{dx}{dt} - ax = 0</math>|tag=(1.5)|label=eq:1.5}} を取り扱うとき,深刻な問題となる.というのは,単に <math>p = \frac{d}{dt}</math> と置いたのでは, {{制御と振動の数学/equation|<math>px - ax = 0</math>}} {{制御と振動の数学/equation|<math>x = \frac{0}{p - a} = 0</math>}} となって,得られた解 <math>x(t) \equiv 0</math> は正しい解には違いないが,視察でも求まるつまらない解だからである. さて <math>\frac{1}{p}</math> を積分と考えることによって、色々な初期値が得られる可能性のあることを前に示唆しておいた. そこで,ひとまず [[制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/指数関数の場合#eq:1.5|(1.5)]] を <math>0</math> から <math>t</math> で積分してみよう. {{制御と振動の数学/equation|<math>x(t) - x(0) - \int_0^t a x(\tau) d\tau = 0</math>|tag=(1.6)|label=eq:1.6}} を得る.そこで,積分は微分 <math>p</math> の逆演算であるという考えを一方深めて,改めて, {{制御と振動の数学/equation|<math>\int_0^t dt =: \frac{1}{p}</math>}} あるいは,もっと正確に, {{制御と振動の数学/equation|<math>\int_0^t f(\tau)d\tau =: \frac{1}{p}f(t)</math>|tag=(1.7)|label=eq:1.7}} と定義しなおすことにしよう.そうすれば式 [[制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/指数関数の場合#eq:1.6|(1.6)]] は, {{制御と振動の数学/equation|<math>x - x(0) - \frac{a}{p}x = 0</math>}} となる.初期値 <math>x(0)</math> が入ってきたところが,単に <math>\frac{d}{dt}=p</math> とおいた場合と根本的に異なっている. この式を <math>x</math> について解き, {{制御と振動の数学/equation|<math>x = \frac{x(0)}{1 - \frac{a}{p}}</math>|label=eq:1.7b}} これを <math>\frac{1}{p}</math> で展開すると, {{制御と振動の数学/equation|<math>x = \left(1 + \frac{a}{p} + \frac{a^2}{p^2} + \frac{a^3}{p^3} + \cdots\right) x(0)</math><ref> 因数分解 <math>x^n - a^n = (x - a)(x^{n - 1} + ax^{n - 2} + a^2x^{n - 3} + \cdots + a^{n - 3}x^2 + a^{n - 2}x + a^{n - 1})</math> より <br /> <math>\frac{x^n - a^n}{x - a} = x^{n - 1} + ax^{n - 2} + a^2x^{n - 3} + \cdots + a^{n - 3}x^2 + a^{n - 2}x + a^{n - 1}</math><br /> 今 <math>x = 1</math>,<math>a</math> は公比で <math>|a| < 1</math> とすれば,右辺、初項 <math>1</math> 公比 <math>a</math> 等比級数の和は収束して その和は <math>\frac{1}{1 - a}</math>.ここでは形 <math>\frac{a}{p}</math> が「収束する条件を満たす」として上記の導出を逆方向に適用する. </ref>|tag=(1.8)|label=eq:1.8}} を得る. さてここで定義 [[制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/指数関数の場合#eq:1.7|(1.7)]] に戻り, {{制御と振動の数学/equation|<math>\frac{1}{p} = \frac{1}{p}\cdot 1 = \int_0^t d\tau = t</math>}} {{制御と振動の数学/equation|<math>\frac{1}{p^2} = \frac{1}{p}t = \int_0^t\tau d\tau = \frac{t^2}{2!}</math>}} 以下同様にして, {{制御と振動の数学/equation|<math>\frac{1}{p^n} = \frac{t^n}{n!}</math>|tag=(1.9)|label=eq:1.9}} が得られることに注意すると,式 [[制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/指数関数の場合#eq:1.8|(1.8)]] は {{制御と振動の数学/equation|<math>x(t) = \left ( 1 + at + \frac{a^2 t^2}{2!} + \frac{a^3 t^3}{3!} + \cdots \right ) x(0)</math>}} となる.上の式の( )内は <math>e^{at}</math> の [[w:%E3%83%86%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%83%BC%E5%B1%95%E9%96%8B|Taylor 展開]]である.よって, {{制御と振動の数学/equation|<math>x(t) = e^{at}x(0)</math>|label=eq:1.9b}} を得る.これが式 [[制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/指数関数の場合#eq:1.5|(1.5)]] の正しい解であることは明らかである. どうやら我々は満足するべき解法にかなり近づいたようである.次節でもう少し掘り下げて考えてみよう. <references /> [[カテゴリ:微分方程式]]
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2022-11-23T17:00:42Z
[ "テンプレート:制御と振動の数学/equation" ]
https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%88%B6%E5%BE%A1%E3%81%A8%E6%8C%AF%E5%8B%95%E3%81%AE%E6%95%B0%E5%AD%A6/%E7%AC%AC%E4%B8%80%E9%A1%9E/%E6%BC%94%E7%AE%97%E5%AD%90%E6%B3%95%E3%81%AE%E8%AA%95%E7%94%9F/%E6%8C%87%E6%95%B0%E9%96%A2%E6%95%B0%E3%81%AE%E5%A0%B4%E5%90%88
24,800
高等学校理科 生物基礎/血液とその循環
血液の成分には、液体成分である血しょう(けっしょう, plasma、血漿)と、有形成分である赤血球(erythrocyte)・白血球(leucocyte)・血小板(platelet)の血球(blood cell)がある。 血球には、酸素を運ぶ赤血球(erythrocyte)、体内に侵入した細菌・異物を排除する白血球(leucocyte)、血液を凝固させ止血する血小板(platelet)がある。有形成分が作られる場所については、ヒトの成人の場合、骨の内部にある骨髄(こつずい、bone marrow)で血液の有形成分が作られる。 血液が全身の細胞へ酸素や栄養分を送ることで、細胞は活動することができる。 血液の重さの約55%は血しょうの重さである。血しょうの主成分は水(約90%)であり、それに少量のタンパク質(約7%)やグルコース・タンパク質・脂質・無機塩類などが混ざっている。血しょうのタンパク質は、アルブミン(albumin)やグロブリン(globulin)などのタンパク質である。 組織液は、血しょうが毛細血管(もうさいけっかん、capillary)から染み出たものである。組織液の大部分は再び血管にもどる。 赤血球の形は、直径が約8μmの円盤状であり、中央がくぼんでいる。赤血球には核が無い。ヒトの成人の場合、血液1mmあたりの個数は、男子は500万個/mm、女子は450万個/mm。ヒトの赤血球の寿命は約120日である。古くなった赤血球は肝臓や ひ臓 で壊される。骨髄で赤血球は作られる。 赤血球にはヘモグロビン(hemoglobin)(化学式:Hb と表記)という赤い色素タンパク質が多量に含まれている。このへモグロビンが肺で酸素O2と結合して酸素を運搬する役目を持ち、全身に酸素を運んでいる。ヘモグロビンは鉄(Fe)をふくんでいる。 ヘモグロビンは、酸素濃度が高いと、酸素と結合して酸素ヘモグロビン(HbO2)となる。 また、酸素濃度が低いと、酸素と分離しヘモグロビンに戻る。 このようにして、酸素濃度の高い肺で酸素を受け取り、 酸素濃度の低い組織へ酸素を運ぶ。 植物では、(そもそも植物に赤血球はないし、)植物はヘモグロビンを持ってない。(※ 検定教科書には無いが、センター試験にこういう選択肢が出る。2017年の生物基礎の本試験。) イカなど、いくつかの動物では、銅 Cu をふくむタンパク質のヘモシアニン (Hemocyanin)が血液を介して酸素を運ぶ役目をしている動物もいる。ヘモシアニンをふくむ動物の血液は青い。この青色は銅イオンの色である。イカの青い筋は、このヘモシアニンの色である。(※ 参考文献: 文英堂『理解しやすい生物I・II』、2004年版、205ページ) ヘモシアニンをふくむ動物には、イカ・タコや貝などの軟体動物、エビ・カニなどの甲殻類に見られる。これらの動物(イカ、タコ、エビ、カニ)は、血しょう中にヘモシアニンを含んでいる。 人間の血液は、ヘモシアニンをふくまない。 酸素ヘモグロビンを多くふくみ酸素濃度の高い血液を動脈血(arterial blood)と呼ぶ。 ヘモグロビンを多くふくみ酸素濃度の低い血液を静脈血(venous blood)と呼ぶ。 白血球はヘモグロビンを持たない。白血球は核を持つ。リンパ球やマクロファージは白血球である。体内に侵入した細菌・異物を排除することに白血球は関わる。 血しょうの一部は組織へしみだして組織液になり、栄養分を供給し老廃物を受け取る。 組織液の大部分は血管へ戻り血液となり、一部はリンパ管へ入りリンパ液となる。 リンパ液はリンパ管を通り、鎖骨下静脈で血液と合流する。 血小板は血液の凝固に関わる。血小板は2μm~5μmほどであり、核を持たない。 血管などが傷つくと、まず傷口に血小板が集まる。そして繊維状のタンパク質であるフィブリンがいくつも生成し、フィブリンどうしと赤血球などの血球とが絡んで血ぺい(けっぺい)ができる。血ぺいが傷口をふさぐ。このような一連の反応を血液凝固反応という。 採血した血液を放置した場合でも、血ぺいが生じて、血ぺいが沈殿する。このときの上澄み液を血清(けっせい、serum)という。血清の色は、やや黄色がかっている。なお、注射した血清は数日すると抗体が無くなってしまい(※ チャート式生物)、また免疫記憶も生じないので(※ 東京書籍の生物基礎の教科書)、予防には役立たない。 傷口からトロンボプラスチンが出る。これが他の凝固因子や血しょう中のカルシウムイオンCaとともに、プロトロンビンというタンパク質に作用して、プロトロンビンがトロンビンという酵素になる。 トロンビンは、血しょうに溶けているフィブリノーゲンに作用して、フィブリノーゲンを繊維状のフィブリンに変える。このフィブリンが血球を絡めて血ぺい(けっぺい)をつくる。 血友病(けつゆうびょう)という出血しても止血が始まらない病気は、血液凝固に何らかの不具合があってフィブリンをつくれなくて起きる病気である。 血液は、心臓(heart)によって全身へ送られる。 ヒトの心臓は、右心房(right atrium)、右心室(right ventricle)、左心房(Left atrium)、左心室(Left ventricle)の4部分に分かれていて、2心房2心室である。ほ乳類の心臓は2心房2心室である。 心筋(cardiac muscle)という筋肉でできている。 弁によって血液の逆流を防いでいる。心臓のリズムは、右心房の上部にある洞房結節(どうぼうけっせつ)という特殊な筋肉の出す電気刺激によって作られる。 全身から送られた血液は、大静脈(vena cava)をとおり、右心房・右心室をとおり、肺動脈(pulmonary artery)をとおり肺へと送られる。 肺で酸素を受け取った血液は、肺静脈(pulmonary vein)をとおり、左心房・左心室をとおり、大動脈(aorta)をとおり全身へ送られる。 肺動脈・肺・肺静脈を通る血液の流れを肺循環(pulmonary circulation)と呼び、 大動脈・全身・大静脈を通る血液の流れを体循環(Systemic circulation)と呼ぶ。 バッタなど昆虫やエビなど無脊椎動物(invertebrate)の血管系は、毛細血管をもたない開放血管系(かいほうけっかんけい、open blood-vascular system)である。いっぽう、魚類(pisces)・ほ乳類(mammalia)など脊椎動物(vertebrate)は毛細血管(capillary)をもち、閉鎖血管系(へいさけっかんけい、closed blood-vascular system)である。
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=== 血液の働きとその循環 === [[画像:Red White Blood cells.jpg|thumb|right|320px|左から赤血球、血小板、白血球]] 血液の成分には、液体成分である'''血しょう(けっしょう, plasma、血漿)'''と、有形成分である'''赤血球'''(erythrocyte)・'''白血球'''(leucocyte)・'''血小板'''(platelet)の'''血球'''(blood cell)がある。 血球には、酸素を運ぶ'''赤血球'''(erythrocyte)、体内に侵入した細菌・異物を排除する'''白血球'''(leucocyte)、血液を凝固させ止血する'''血小板'''(platelet)がある。有形成分が作られる場所については、ヒトの成人の場合、骨の内部にある'''骨髄'''(こつずい、bone marrow)で血液の有形成分が作られる。 血液が全身の細胞へ酸素や栄養分を送ることで、細胞は活動することができる。 血液の重さの約55%は血しょうの重さである。血しょうの主成分は水(約90%)であり、それに少量のタンパク質(約7%)やグルコース・タンパク質・脂質・無機塩類などが混ざっている。血しょうのタンパク質は、アルブミン(albumin)やグロブリン(globulin)などのタンパク質である。 組織液は、血しょうが毛細血管(もうさいけっかん、capillary)から染み出たものである。組織液の大部分は再び血管にもどる。 {{-}} 赤血球の形は、直径が約8μmの円盤状であり、中央がくぼんでいる。赤血球には核が無い。ヒトの成人の場合、血液1mm<sup>3</sup>あたりの個数は、男子は500万個/mm<sup>3</sup>、女子は450万個/mm<sup>3</sup>。ヒトの赤血球の寿命は約120日である。古くなった赤血球は肝臓や ひ臓 で壊される。骨髄で赤血球は作られる。 赤血球には'''ヘモグロビン'''(hemoglobin)(化学式:'''Hb''' と表記)という赤い色素タンパク質が多量に含まれている。このへモグロビンが肺で酸素O<sub>2</sub>と結合して酸素を運搬する役目を持ち、全身に酸素を運んでいる。ヘモグロビンは鉄(Fe)をふくんでいる。 :(※ 範囲外: ) 脊椎動物(セキツイどうぶつ)は血液にヘモグロビンを含んでいる<ref>照井直人 著『はじめの一歩のイラスト生理学 改訂 第2版』、羊土社、2018年4月10日 第2版 第7刷発行、110ページ</ref>。 ヘモグロビンは、酸素濃度が高いと、酸素と結合して'''酸素ヘモグロビン'''('''HbO<sub>2</sub>''')となる。 また、酸素濃度が低いと、酸素と分離しヘモグロビンに戻る。 :Hb+O<sub>2</sub> <math>\leftrightarrows</math> HbO<sub>2</sub> このようにして、酸素濃度の高い肺で酸素を受け取り、 酸素濃度の低い組織へ酸素を運ぶ。 {{コラム|範囲外の話題いろいろ| :(※ 範囲外: ) 酸素ヘモグロビンのことを「酸素化ヘモグロビン」と書いても、正しい。(※ 参考文献: 医学書院『標準生理学 第8版』、695ページ、監修: 小澤 瀞司/福田 康一郎、発行:2015年8月1日。 参考文献『標準生理学』にて、「酸素化ヘモグロビン」と表記している。) なお、酸素とまったく結合していない状態のヘモグロビンのことを、脱酸素化ヘモグロビン(deoxyhemoglobin)という。(※ 参考文献: 医学書院『標準生理学 第8版』、695ページ、) :(※ 範囲外: ) 酸素と結合していない状態のヘモグロビンのことを「還元ヘモグロビン」と書いても正しい。つまり、脱酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンは同じである。「還元ヘモグロビン」もまた、正式な医学用語である。(※ 参考文献: 『標準病理学 第5版』373ページ、で「還元ヘモグロビン」の名称の記載を確認。) :(※ 範囲外: ) 一酸化炭素中毒や喫煙などのせいにより、一酸化炭素と結合してしまったヘモグロビンのことは、「一酸化炭素ヘモグロビン」などという。(※ 保健体育の検定教科書であつかう。第一学習社の保健体育の教科書などで紹介されている。) }} 植物では、(そもそも植物に赤血球はないし、)植物はヘモグロビンを持ってない。(※ 検定教科書には無いが、センター試験にこういう選択肢が出る。2017年の生物基礎の本試験。) * 酸素解離曲線(oxygen dissociation curve) [[File:酸素解離曲線.svg|thumb|500px|酸素解離曲線]] * 発展 イカとヘモシアニン :(※ 文英堂シグマベスト『理解しやすい生物I・II』で記述を確認。教科書範囲外かもしれないが、参考書などで扱われる話題。) イカなど、いくつかの動物では、銅 Cu をふくむタンパク質の'''ヘモシアニン''' (Hemocyanin)が血液を介して酸素を運ぶ役目をしている動物もいる。ヘモシアニンをふくむ動物の血液は青い。この青色は銅イオンの色である。イカの青い筋は、このヘモシアニンの色である。(※ 参考文献: 文英堂『理解しやすい生物I・II』、2004年版、205ページ) ヘモシアニンをふくむ動物には、イカ・タコや貝などの軟体動物、エビ・カニなどの甲殻類に見られる。これらの動物(イカ、タコ、エビ、カニ)は、血しょう中にヘモシアニンを含んでいる。 人間の血液は、ヘモシアニンをふくまない。 :(発展、終わり。) {{コラム|範囲外の話題いろいろ| :(※ 範囲外: ) 実は昆虫の多くも血液にヘモシアニンを含んでいる<ref>照井直人 著『はじめの一歩のイラスト生理学 改訂 第2版』、羊土社、2018年4月10日 第2版 第7刷発行、110ページ</ref>。なお、ミミズの血液はヘモグロビンである<ref>照井直人 著『はじめの一歩のイラスト生理学 改訂 第2版』、羊土社、2018年4月10日 第2版 第7刷発行、110ページ</ref>。またなお、ヘモシアニンの青い色は、酸化したときの色なので、イカやタコなどの死体などの血液が青い。新鮮なイカやタコの血液は、じつは青くなく、ほとんど透明でわずかに灰色がかっているように見える<ref>照井直人 著『はじめの一歩のイラスト生理学 改訂 第2版』、羊土社、2018年4月10日 第2版 第7刷発行、110ページ</ref>。 ::※ 参考書などでこういうヘモシアニンの色の真相に触れてないのは、おそらく、高校の段階では、銅イオン溶液の色などと関連づけて覚える必要もあるので、あえて透明な新鮮ヘモシアニン血液については触れないで置くという、教育的な配慮だろう。 ;ミミズの特殊性 ミミズと脊椎動物には、他にも共通点があり、ミミズも脊椎動物も、毛細血管をもつ(閉鎖血管系)。(※ 第一学習社の検定教科書 p.149 に記述アリ) いっぽう、昆虫とエビは毛細血管を持たない(開放血管系)。 ただし、下記のように相違点もある。 脊椎動物のヘモグロビンの場所は一般に赤血球であるが、しかしミミズのヘモグロビンの場所は血しょうである。 }} 酸素ヘモグロビンを多くふくみ酸素濃度の高い血液を'''動脈血'''(arterial blood)と呼ぶ。 ヘモグロビンを多くふくみ酸素濃度の低い血液を'''静脈血'''(venous blood)と呼ぶ。 白血球はヘモグロビンを持たない。白血球は核を持つ。リンパ球やマクロファージは白血球である。体内に侵入した細菌・異物を排除することに白血球は関わる。 血しょうの一部は組織へしみだして組織液になり、栄養分を供給し老廃物を受け取る。 組織液の大部分は血管へ戻り血液となり、一部はリンパ管へ入りリンパ液となる。 リンパ液はリンパ管を通り、鎖骨下静脈で血液と合流する。 === 血液の凝固 === [[File:血液の凝固と血清.svg|thumb|血液の凝固と血清]] 血小板は血液の凝固に関わる。血小板は2μm~5μmほどであり、核を持たない。 血管などが傷つくと、まず傷口に血小板が集まる。そして繊維状のタンパク質である'''フィブリン'''がいくつも生成し、フィブリンどうしと赤血球などの血球とが絡んで'''血ぺい'''(けっぺい)ができる。血ぺいが傷口をふさぐ。このような一連の反応を'''血液凝固反応'''という。 採血した血液を放置した場合でも、血ぺいが生じて、血ぺいが沈殿する。このときの上澄み液を'''血清'''(けっせい、serum)という。血清の色は、やや黄色がかっている。なお、注射した血清は数日すると抗体が無くなってしまい(※ チャート式生物)、また免疫記憶も生じないので(※ 東京書籍の生物基礎の教科書)、予防には役立たない。 {{-}} * 発展 血液凝固反応の仕組み [[File:Blood coagulation japanese.svg|thumb|800px|血液凝固のしくみ]] {{-}} 傷口から'''トロンボプラスチン'''が出る。これが他の凝固因子や血しょう中のカルシウムイオンCa<sup>2+</sup>とともに、'''プロトロンビン'''というタンパク質に作用して、プロトロンビンが'''トロンビン'''という酵素になる。 トロンビンは、血しょうに溶けている'''フィブリノーゲン'''に作用して、フィブリノーゲンを繊維状の'''フィブリン'''に変える。このフィブリンが血球を絡めて血ぺい(けっぺい)をつくる。 血友病(けつゆうびょう)という出血しても止血が始まらない病気は、血液凝固に何らかの不具合があってフィブリンをつくれなくて起きる病気である。 === 血液の循環 === [[画像:Diagram of the human heart (cropped) ja.svg|thumb|right|320px|ヒトの心臓の構造<br />血液の流れは白い矢印で示されている]] 血液は、心臓(heart)によって全身へ送られる。 ヒトの心臓は、右心房(right atrium)、右心室(right ventricle)、左心房(Left atrium)、左心室(Left ventricle)の4部分に分かれていて、'''2心房2心室'''である。ほ乳類の心臓は'''2心房2心室'''である。 '''心筋'''(cardiac muscle)という筋肉でできている。 弁によって血液の逆流を防いでいる。心臓のリズムは、右心房の上部にある'''洞房結節'''(どうぼうけっせつ)という特殊な筋肉の出す電気刺激によって作られる。 全身から送られた血液は、大静脈(vena cava)をとおり、右心房・右心室をとおり、肺動脈(pulmonary artery)をとおり肺へと送られる。 肺で酸素を受け取った血液は、肺静脈(pulmonary vein)をとおり、左心房・左心室をとおり、大動脈(aorta)をとおり全身へ送られる。 肺動脈・肺・肺静脈を通る血液の流れを'''肺循環'''(pulmonary circulation)と呼び、 大動脈・全身・大静脈を通る血液の流れを'''体循環'''(Systemic circulation)と呼ぶ。 {{-}} バッタなど昆虫やエビなど無脊椎動物(invertebrate)の血管系は、毛細血管をもたない'''開放血管系'''(かいほうけっかんけい、open blood-vascular system)である。いっぽう、魚類(pisces)・ほ乳類(mammalia)など脊椎動物(vertebrate)は毛細血管(capillary)をもち、'''閉鎖血管系'''(へいさけっかんけい、closed blood-vascular system)である。 == 参考文献・脚注など == [[カテゴリ:高校理科]]
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2022-11-25T05:38:02Z
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高等学校理科 生物基礎/体液
生物が、外部環境(external milieu)が変化しても、その内部環境(ないぶかんきょう、internal milieu)(別名:体内環境)を一定に保とうとする働きを恒常性(こうじょうせい、homeostasis)(ホメオスタシス)という。 ヒトの体温が平常では37°C付近なのもホメオスタシスの一例である。恒常性には、温度、浸透圧、養分、酸素などを一定に保とうとする働きがある。 多細胞の動物の内部環境では、細胞は血液や組織液などの体液(body fluid)で満たされている。 体液には、血管を流れる血液(blood)、細胞間を満たす組織液(interstitial fluid)、リンパ管を流れるリンパ液(lymph)がある。 ヒトの成人の場合、体重の約60%は水分である。(※ 東京書籍の教科書で紹介。)
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=== 体温の恒常性 === 生物が、'''外部環境'''(external milieu)が変化しても、その'''内部環境'''(ないぶかんきょう、internal milieu)(別名:'''体内環境''')を一定に保とうとする働きを'''恒常性'''(こうじょうせい、homeostasis)('''ホメオスタシス''')という。 ヒトの体温が平常では37℃付近なのもホメオスタシスの一例である。恒常性には、温度、浸透圧、養分、酸素などを一定に保とうとする働きがある。 == 体液とその恒常性 == 多細胞の動物の内部環境では、細胞は血液や組織液などの'''体液'''(body fluid)で満たされている。 体液には、血管を流れる'''血液'''(blood)、細胞間を満たす'''組織液'''(interstitial fluid)、リンパ管を流れる'''リンパ液'''(lymph)がある。 == 備考 == ヒトの成人の場合、体重の約60%は水分である。(※ 東京書籍の教科書で紹介。) [[カテゴリ:生物学]]
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2022-12-01T10:26:00Z
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高等学校理科 生物基礎/内臓と体内環境
肝臓(かんぞう、liver)は腹部の右上に位置する最も大きな臓器であり、ヒトの成人では1kg以上の重さがあり、約1200g~2000gである。肝小葉(かんしょうよう)という基本単位が約50万個、集まって、肝臓が出来ている。心臓から出た血液の約4分の1は、肝臓に入る。 肝臓の働きは、栄養分の貯蔵や分解、有害な物質の解毒、不要な物質を胆汁(たんじゅう、bile)として捨てる、などを行っている。 肝臓には肝動脈と肝静脈のほかに、腸からの静脈の血管である肝門脈(かんもんみゃく)が肝臓を通っている。 腸で吸収されたグルコースやアミノ酸などの栄養が肝門脈の中を流れる血液に含まれている。 グルコースの一部は肝臓でグリコーゲンへと合成され貯蔵される。グリコーゲンは必要に応じてグルコースに分解されて、エネルギー源として消費される。このようにして、血液中のグルコースの量や濃度(血糖値、血糖量)が、一定に保たれる。 肝臓では血しょうの主なタンパク質のアルブミン(albumin)を合成しており、また血しょう中の血液凝固に関するタンパク質であるフィブリノーゲンも肝臓で合成している。 タンパク質の合成にはアンモニアなど有害な物質が生成するが、肝臓はアンモニアを毒性の低い尿素(にょうそ)に変えている。尿素は腎臓(じんぞう)に集められ、膀胱(ぼうこう)を経て、尿道から体外へと排出される。 哺乳類や両生類では、アンモニアを尿素に変えてから排出する。なお、魚類は生成したアンモニアを直接、外部に放出している。まわりに水が多いため、アンモニアを直接排出しても害が少ないため、と考えられてる。鳥類やハ虫類では、尿素ではなく尿酸を合成しており、尿酸を排出する。鳥類とハ虫類とも、陸で生まれて、かたい卵で生まれる動物である。 そのほか有害な物質の解毒の例としては、アルコールを分解したりしている。 胆汁は肝臓で作られており、胆汁は胆管(bile duct)を通り、胆のう(gallbladder)へ貯蔵され、十二指腸(duodenum)へ分泌される。 胆汁は脂肪を消化吸収しやすくする。胆汁に消化酵素は含まれていない。胆汁は脂肪を小さな粒に変える。このように脂肪を小さな粒に変えることを乳化(にゅうか)という。 古くなった赤血球を破壊する。ヒトの胆汁中に含まれる色素のピリルビンは、古くなって破壊した赤血球に含まれていたヘモグロビンに由来している。便(大便)とともに、ピリルビンは排出される。 合成・分解など様々な化学反応が行われるため、反応熱が発生し、体温の維持にも役立っている。 ヒトなどの高等な動物の場合、腎臓(kidney)は左右一対で背側に位置し、 腎動脈(Renal artery)、腎静脈(renal vein)、輸尿管(ureter)が伸びている。 血液は腎動脈・腎臓・腎静脈を通り、 腎臓は血液中の不要な成分をろ過し尿として輸尿管・膀胱(ぼうこう、bladder)・尿道(にょうどう、urethra)を通り排出する。 腎臓にはネフロン(nephron)と呼ばれる構造上の単位があり、 ネフロンは腎小体(じんしょうたい、renal corpuscle、マルピーギ小体)と細尿管(さいにょうかん、尿細管、腎細管, renal tubule)からなり、 片方の腎臓あたり、ネフロンは約100万個ある。 腎小体は、毛細血管が球状に密集している糸球体(しきゅうたい、glomerulus)と、それを囲むボーマンのう(Bowman's capsule)からなる。 タンパク質以外の血漿は糸球体からボーマンのうに ろ過 されて 原尿(げんにょう、primary urine)となり、 原尿は細尿管で、水の再吸収と、グルコースや無機塩類などの必要な成分が再吸収される。(「再吸収」も用語) グルコースは、健康なら、すべて(100%)吸収される。これらの再吸収は、ATPのエネルギーを用いた能動輸送である。 グルコ-ス以外の、水や無機塩類の再吸収率は、体の状況に応じて再吸収率が調節されている。原則的に、血液の塩類濃度を一定に保とうとする方向に、水や塩類の再吸収率は調節されている。この再吸収率の調整の際、ホルモンが関わっている。 原尿は集合管(しゅうごうかん、collecting duct)を通り、ここで水分が再吸収される。ナトリウムイオンは、腎細管でほとんどが再吸収される。その結果、原尿のナトリウム濃度は低い。 そして原尿から水分が吸収されたことで、残された尿素などの老廃物や再吸収されなかったものが濃縮して尿(にょう、urine)となり、体外へ尿として排出される。なお尿素は肝臓で作られる。 ボーマンのう で こし出される原尿は、ヒトの成人男性では1日あたり約170Lもあるが、その大部分は再吸収されるので、最終的に対外に尿として排出される液量は1L~2Lほどになる。99%ほど濃縮されたことになる。 ヒトの原尿に、タンパク質は含まれない。(※ 2013年センター生物I本試験に出題。) ヒトの原尿にアミノ酸は含まれる(※ 東京書籍の検定教科書で確認)。 細尿管で再吸収される成分は、主に水とグルコースと無機塩類とアミノ酸など。グルコースはすべて再吸収される。 ※ 海水魚と淡水魚の体液の話題が、啓林館『生物基礎』と第一学習社『生物基礎』とで共通している話題である。 淡水魚と海水魚で、尿の生成のしくみが違う。なお淡水(たんすい)とは、川や湖のように、塩分をあまり含まない水のことである。海水は、淡水ではない。 海水と淡水では塩類濃度が違うので、尿の生成のしくみも違っていると考えられている。 海水魚では、体液の塩類濃度が海水よりも低いのが一般である(体液が低張液、海水が高張液)。そのため、浸透によって水分が海水に取られてしまう傾向にある。なので海水魚は対策として、体内の水分を確保するため、まず海水を飲んで塩ごと水分を補給し、そして、えら から塩分を排出することで、体内の水分を確保している。 海水魚の尿は、体液と塩類濃度が同じくらいの尿を、少量、排出する。なお、腎臓で尿を生成している。 淡水魚の場合、もし体内に水が侵入してしまうと、体内の塩分が失われてしまうので、なので淡水魚は、体内の塩分を失わせないために、淡水魚は水をほとんど飲まない。淡水魚の えら は、塩分を吸収しやすい特殊な作りになっている。 淡水魚の尿は、体液よりも塩類濃度のうすい尿を、多量、排出する。なお、腎臓で尿を生成している。 水分の補給は、海水だけを飲むのだが、余分な塩分を排出する塩類腺(えんるいせん)を持ち、塩類腺から、塩分のたかい液体を排出している。腺の場所はウミガメの場合、目のところに腺があるので、陸上で観察すると、あたかも涙を流しているように見える。 アホウドリなどの海鳥は、鼻のところに塩類腺(えんるいせん)を持つ。 多くの無脊椎動物では、海に暮らす動物の場合でも、いっぽう川に暮らす動物の場合でも、あまり塩類濃度の調節機構が発達していない。 例外的に、いくつかの生物では発達している。
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=== 肝臓とその働き === [[画像:Surface projections of the organs of the trunk.png|thumb|right|ヒトの肝臓(liver)、腎臓(kidney)]] 肝臓(かんぞう、liver)は腹部の右上に位置する最も大きな臓器であり、ヒトの成人では1kg以上の重さがあり、約1200g~2000gである。'''肝小葉'''(かんしょうよう)という基本単位が約50万個、集まって、肝臓が出来ている。心臓から出た血液の約4分の1は、肝臓に入る。 肝臓の働きは、栄養分の貯蔵や分解、有害な物質の解毒、不要な物質を胆汁(たんじゅう、bile)として捨てる、などを行っている。 肝臓には肝動脈と肝静脈のほかに、腸からの静脈の血管である'''肝門脈'''(かんもんみゃく)が肝臓を通っている。 腸で吸収されたグルコースやアミノ酸などの栄養が肝門脈の中を流れる血液に含まれている。 * 血糖値の調節 グルコースの一部は肝臓で'''グリコーゲン'''へと合成され貯蔵される。グリコーゲンは必要に応じてグルコースに分解されて、エネルギー源として消費される。このようにして、血液中のグルコースの量や濃度('''血糖値'''、血糖量)が、一定に保たれる。 * タンパク質の合成・分解 肝臓では血しょうの主なタンパク質の'''アルブミン'''(albumin)を合成しており、また血しょう中の血液凝固に関するタンパク質である'''フィブリノーゲン'''も肝臓で合成している。 * 尿素の合成 タンパク質の合成にはアンモニアなど有害な物質が生成するが、肝臓はアンモニアを毒性の低い'''尿素'''(にょうそ)に変えている。尿素は腎臓(じんぞう)に集められ、膀胱(ぼうこう)を経て、尿道から体外へと排出される。 哺乳類や両生類では、アンモニアを尿素に変えてから排出する。なお、魚類は生成したアンモニアを直接、外部に放出している。まわりに水が多いため、アンモニアを直接排出しても害が少ないため、と考えられてる。鳥類やハ虫類では、尿素ではなく尿酸を合成しており、尿酸を排出する。鳥類とハ虫類とも、陸で生まれて、かたい卵で生まれる動物である。 :(※ 範囲外: ) ただしヒトとチンパンジー、ゴリラは例外的であり、尿酸までしか分解できず、尿酸を尿とともに排泄している<ref>『なるほど なっとく! 病理学』、南山堂、2019年2月14日 2版1刷、90ページ</ref>。 :このため、病院の尿検査では、「尿酸値」などを測定する事になる。 * アルコールなどの分解 そのほか有害な物質の解毒の例としては、アルコールを分解したりしている。 * 胆汁 胆汁は肝臓で作られており、胆汁は胆管(bile duct)を通り、胆のう(gallbladder)へ貯蔵され、十二指腸(duodenum)へ分泌される。 胆汁は脂肪を消化吸収しやすくする。胆汁に消化酵素は含まれていない。胆汁は脂肪を小さな粒に変える。このように脂肪を小さな粒に変えることを'''乳化'''(にゅうか)という。 * 古くなった赤血球の破壊 古くなった赤血球を破壊する。ヒトの胆汁中に含まれる色素の'''ピリルビン'''は、古くなって破壊した赤血球に含まれていたヘモグロビンに由来している。便(大便)とともに、ピリルビンは排出される。 * 体温の維持 合成・分解など様々な化学反応が行われるため、反応熱が発生し、体温の維持にも役立っている。 === 腎臓とその働き === ==== 腎臓の構造 ==== <gallery widths="200px" heights="200px"> ファイル:Gray1120-kidneys.png|腎臓(kidney)<br />(※編集者へ あとで、他の簡略図に差し替えてください。) ファイル:Kidney PioM.png|腎臓の片側の模式図。 3.腎動脈 4.腎静脈 7.輸尿管 13.ネフロン <br />(※編集者へ あとで、他の簡略図に差し替えてください。) </gallery> ヒトなどの高等な動物の場合、腎臓(kidney)は左右一対で背側に位置し、 腎動脈(Renal artery)、腎静脈(renal vein)、輸尿管(ureter)が伸びている。 血液は腎動脈・腎臓・腎静脈を通り、 腎臓は血液中の不要な成分をろ過し尿として輸尿管・膀胱(ぼうこう、bladder)・尿道(にょうどう、urethra)を通り排出する。 [[File:Nephron illustration.svg|thumb|200px|ネフロン<br />1. 腎小体, 5~9あたりは集合管  赤い血管は動脈 青い血管は静脈。  図のように毛細血管が集合している。<br />(※編集者へ あとで、他の簡略図に差し替えてください。)]] 腎臓には'''ネフロン'''(nephron)と呼ばれる構造上の単位があり、 ネフロンは'''腎小体'''(じんしょうたい、renal corpuscle、マルピーギ小体)と'''細尿管'''(さいにょうかん、'''尿細管、腎細管''', renal tubule)からなり、 片方の腎臓あたり、ネフロンは約100万個ある。 腎小体は、毛細血管が球状に密集している'''糸球体'''(しきゅうたい、glomerulus)と、それを囲む'''ボーマンのう'''(Bowman's capsule)からなる。 {{-}} ==== 尿の生成のしくみ ==== [[File:腎臓の働きと再吸収.svg|thumb|500px|腎臓の働きと再吸収]] タンパク質以外の血漿は糸球体からボーマンのうに ろ過 されて 原尿(げんにょう、primary urine)となり、 原尿は細尿管で、水の'''再吸収'''と、グルコースや無機塩類などの必要な成分が'''再吸収'''される。(「再吸収」も用語) グルコースは、健康なら、すべて(100%)吸収される。これらの再吸収は、ATPのエネルギーを用いた'''能動輸送'''である。 グルコ-ス以外の、水や無機塩類の再吸収率は、体の状況に応じて再吸収率が調節されている。原則的に、血液の塩類濃度を一定に保とうとする方向に、水や塩類の再吸収率は調節されている。この再吸収率の調整の際、ホルモンが関わっている。 原尿は集合管(しゅうごうかん、collecting duct)を通り、ここで水分が再吸収される。ナトリウムイオンは、腎細管でほとんどが再吸収される。その結果、原尿のナトリウム濃度は低い。 そして原尿から水分が吸収されたことで、残された尿素などの老廃物や再吸収されなかったものが濃縮して'''尿'''(にょう、urine)となり、体外へ尿として排出される。なお尿素は肝臓で作られる。 ボーマンのう で こし出される原尿は、ヒトの成人男性では1日あたり約170Lもあるが、その大部分は再吸収されるので、最終的に対外に尿として排出される液量は1L~2Lほどになる。99%ほど濃縮されたことになる。 {{-}} == ※ 発展: 尿の成分 == ヒトの原尿に、タンパク質は含まれない。(※ 2013年センター生物I本試験に出題。) ヒトの原尿にアミノ酸は含まれる(※ 東京書籍の検定教科書で確認)。 細尿管で再吸収される成分は、主に水とグルコースと無機塩類とアミノ酸など。グルコースはすべて再吸収される。 == 発展: ヒト以外の尿について == :※ 人間以外の魚類などの体液や尿の生成については、啓林館と第一学習社が『生物基礎』で紹介しているが、他社が紹介しているので、wikibooksでは説明を省略。詳しくは専門『生物』で習う。かつての旧課程の生物Iでは、魚類などの尿についても範囲内だった。 === 水中生物の塩類濃度調節 === ==== 脊椎動物 ==== ===== 魚類 ===== ※ 海水魚と淡水魚の体液の話題が、啓林館『生物基礎』と第一学習社『生物基礎』とで共通している話題である。 淡水魚と海水魚で、尿の生成のしくみが違う。なお淡水(たんすい)とは、川や湖のように、塩分をあまり含まない水のことである。海水は、淡水ではない。 海水と淡水では塩類濃度が違うので、尿の生成のしくみも違っていると考えられている。 * 海水魚の場合 海水魚では、体液の塩類濃度が海水よりも低いのが一般である(体液が低張液、海水が高張液)。そのため、浸透によって水分が海水に取られてしまう傾向にある。なので海水魚は対策として、体内の水分を確保するため、まず海水を飲んで塩ごと水分を補給し、そして、えら から塩分を排出することで、体内の水分を確保している。 海水魚の尿は、体液と塩類濃度が同じくらいの尿を、少量、排出する。なお、腎臓で尿を生成している。 * 淡水魚の場合 淡水魚の場合、もし体内に水が侵入してしまうと、体内の塩分が失われてしまうので、なので淡水魚は、体内の塩分を失わせないために、淡水魚は水をほとんど飲まない。淡水魚の えら は、塩分を吸収しやすい特殊な作りになっている。 淡水魚の尿は、体液よりも塩類濃度のうすい尿を、多量、排出する。なお、腎臓で尿を生成している。 ===== そのほか ===== :※ 啓林館の教科書で紹介。 ---- * ウミガメの場合 水分の補給は、海水だけを飲むのだが、余分な塩分を排出する塩類腺(えんるいせん)を持ち、塩類腺から、塩分のたかい液体を排出している。腺の場所はウミガメの場合、目のところに腺があるので、陸上で観察すると、あたかも涙を流しているように見える。 * 海鳥 アホウドリなどの海鳥は、鼻のところに塩類腺(えんるいせん)を持つ。 ---- ==== 無脊椎動物の場合 ==== 多くの無脊椎動物では、海に暮らす動物の場合でも、いっぽう川に暮らす動物の場合でも、あまり塩類濃度の調節機構が発達していない。 例外的に、いくつかの生物では発達している。 :'''カニの場合''' :* モクズガニ ::川と海を行き来する。浸透圧の調節機構が発達している。 :* ケアシガニ ::外洋のみで暮らす。あまり塩類濃度の調節機構が発達していない。 :* ミドリイサ ガザミ (カニの一種) ::河口付近に生息。浸透圧の調節機構が発達している。 ---- :'''ゾウリムシの場合'''<br /> ::'''収縮胞'''で余分な水を排出する。ゾウリムシは淡水に住む。 ---- == 脚注 == [[カテゴリ:生物学]]
2018-12-21T03:35:43Z
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24,804
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/財務会計論/問題5
「企業会計原則」および「連続意見書」における固定資産に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) ア.売掛金,受取手形などの企業の主目的たる営業取引により発生した債権は,原則として,流動資産に属する。したがって,これらの債権のうち,破産債権,更生債権およびこれらに準ずる債権で1 年以内に回収されないことが明らかなものも,固定資産とせず,流動資産とする。 イ.固定資産は,有形固定資産,無形固定資産および投資その他の資産に区分しなければならない。子会社株式その他流動資産に属しない有価証券,出資金,長期貸付金並びに有形固定資産,無形固定資産および繰延資産に属するもの以外の長期資産は,投資その他の資産に属する。 ウ.固定資産を自家建設した場合には,適正な原価計算基準に従って製造原価を計算し,これに基づいて取得原価を計算しなければならない。その際には,建設に要する借入資本の利子で稼動前の期間に属するものは,これを取得原価に算入しなければならない。 エ.有形固定資産については,資産の取得原価をその耐用年数に配分するために,減価償却を行う。ただし,同種の物品が多数集まって一つの全体を構成し,老朽品の部分的取替を繰り返すことにより全体が維持されるような固定資産については,部分的取替に要する費用を収益的支出として処理する方法(取替法)を採用することができる。 5 ア.売掛金,受取手形などの企業の主目的たる営業取引により発生した債権は,原則として,流動資産に属する。したがって,これらの債権のうち,破産債権,更生債権およびこれらに準ずる債権で1 年以内に回収されないことが明らかなものもは,固定資産とせず,流動資産たる投資その他の資産に属するものとする。企業会計原則注解注16 イ.固定資産は,有形固定資産,無形固定資産および投資その他の資産に区分しなければならない。子会社株式その他流動資産に属しない有価証券,出資金,長期貸付金並びに有形固定資産,無形固定資産および繰延資産に属するもの以外の長期資産は,投資その他の資産に属する。企業会計原則第三・四(一)B ウ.固定資産を自家建設した場合には,適正な原価計算基準に従って製造原価を計算し,これに基づいて取得原価を計算しなければならない。その際には,建設に要する借入資本の利子で稼動前の期間に属するものは,これを取得原価に算入しなければならない。することができる。連続意見書第三第一・四2 エ.有形固定資産については,資産の取得原価をその耐用年数に配分するために,減価償却を行う。ただし,同種の物品が多数集まって一つの全体を構成し,老朽品の部分的取替を繰り返すことにより全体が維持されるような固定資産については,部分的取替に要する費用を収益的支出として処理する方法(取替法)を採用することができる。連続意見書第三第一・一,七,企業会計原則注解注20
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: [[../問題4|←前の問題]] : [[../問題6|次の問題→]] == 問題 ==  「企業会計原則」および「連続意見書」における固定資産に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.売掛金,受取手形などの企業の主目的たる営業取引により発生した債権は,原則として,流動資産に属する。したがって,これらの債権のうち,破産債権,更生債権およびこれらに準ずる債権で1 年以内に回収されないことが明らかなものも,固定資産とせず,流動資産とする。 イ.固定資産は,有形固定資産,無形固定資産および投資その他の資産に区分しなければならない。子会社株式その他流動資産に属しない有価証券,出資金,長期貸付金並びに有形固定資産,無形固定資産および繰延資産に属するもの以外の長期資産は,投資その他の資産に属する。 ウ.固定資産を自家建設した場合には,適正な原価計算基準に従って製造原価を計算し,これに基づいて取得原価を計算しなければならない。その際には,建設に要する借入資本の利子で稼動前の期間に属するものは,これを取得原価に算入しなければならない。 エ.有形固定資産については,資産の取得原価をその耐用年数に配分するために,減価償却を行う。ただし,同種の物品が多数集まって一つの全体を構成し,老朽品の部分的取替を繰り返すことにより全体が維持されるような固定資産については,部分的取替に要する費用を収益的支出として処理する方法(取替法)を採用することができる。 </div> <div style="column-count:6;"> #アイ #アウ #アエ #イウ #イエ #ウエ </div> == 正解 == 5 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.売掛金,受取手形などの企業の主目的たる営業取引により発生した債権は,原則として,流動資産に属する。したがって,これらの債権のうち,破産債権,更生債権およびこれらに準ずる債権で1 年以内に回収されないことが明らかなもの<del>も</del><ins>は</ins>,固定資産<del>とせず,流動資産</del><ins>たる投資その他の資産に属するもの</ins>とする。<ins>企業会計原則注解注16</ins> イ.固定資産は,有形固定資産,無形固定資産および投資その他の資産に区分しなければならない。子会社株式その他流動資産に属しない有価証券,出資金,長期貸付金並びに有形固定資産,無形固定資産および繰延資産に属するもの以外の長期資産は,投資その他の資産に属する。<ins>企業会計原則第三・四(一)B</ins> ウ.固定資産を自家建設した場合には,適正な原価計算基準に従って製造原価を計算し,これに基づいて取得原価を計算しなければならない。その際には,建設に要する借入資本の利子で稼動前の期間に属するものは,これを取得原価に算入<del>しなければならない。</del><ins>することができる。連続意見書第三第一・四2</ins> エ.有形固定資産については,資産の取得原価をその耐用年数に配分するために,減価償却を行う。ただし,同種の物品が多数集まって一つの全体を構成し,老朽品の部分的取替を繰り返すことにより全体が維持されるような固定資産については,部分的取替に要する費用を収益的支出として処理する方法(取替法)を採用することができる。<ins>連続意見書第三第一・一,七,企業会計原則注解注20</ins> </div> == 参照基準等 == * [[企業会計原則#B_固定資産の分類及び内容]] * [[企業会計原則注解]] * [http://gaap.edisc.jp/docs/01/08/ 企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書] : [[../問題4|←前の問題]] : [[../問題6|次の問題→]] [[カテゴリ:財務会計]]
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2022-11-28T16:36:08Z
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24,805
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/財務会計論/問題8
繰延資産に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。なお,「企業会計原則」および「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」に従うこと。(5 点) ア.「企業会計原則」では,将来の期間に影響する特定の費用は,貸借対照表に繰延資産として計上することができるとされているが,「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」では,株式交付費,社債発行費等(新株予約権の発行に係る費用を含む),創立費,開業費,開発費に限定されている。 イ.「研究開発費等に係る会計基準」の対象となる研究開発費については,発生時に費用処理しなければならないが,「企業会計原則」で示される開発費で,「研究開発費等に係る会計基準」の対象とならないものは,経常費の性格をもつ開発費も含め,繰延資産として計上できる。 ウ.社債発行費は,原則として,支出時に営業外費用として処理する。ただし,繰延資産に計上することもでき,この場合には,社債の償還までの期間にわたり利息法により償却しなければならない。なお,継続適用を条件として,定額法を採用することができる。 エ.創立費は,会社設立のために生じる会社の発起人に帰すべき費用であり,設立時における株主もその支出を許容していることから,資本取引としての性質を有する。仮に会社の負担に帰すべき費用であったとしても,その支出は主に会社設立前に生じるため,対応させ得る収益も存在しない。そのため,創立費を資本金または資本準備金から減額する方法や繰延資産として計上する方法が認められている。 2 ア.「企業会計原則」では,将来の期間に影響する特定の費用は,貸借対照表に繰延資産として計上することができるとされているが,「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」では,株式交付費,社債発行費等(新株予約権の発行に係る費用を含む),創立費,開業費,開発費に限定されている。企業会計原則第三・一D,繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い2(2) イ.「研究開発費等に係る会計基準」の対象となる研究開発費については,発生時に費用処理しなければならないが,「企業会計原則」で示される開発費で,「研究開発費等に係る会計基準」の対象とならないものは,経常費の性格をもつ開発費も含めを除き,繰延資産として計上できる。企業会計原則第三・四(一)C,繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い3(5) ウ.社債発行費は,原則として,支出時に営業外費用として処理する。ただし,繰延資産に計上することもでき,この場合には,社債の償還までの期間にわたり利息法により償却しなければならない。なお,継続適用を条件として,定額法を採用することができる。繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い3(2) エ.創立費は,会社設立のために生じる会社の発起人に帰すべき費用であり,設立時における株主もその支出を許容していることから,株主との間の資本取引としての性質を有するによって発生するものではない。仮に会社の負担に帰すべき費用であったとしても,その支出は主に会社設立前に生じるため,対応させ得る収益も存在しない。そのため,創立費を資本金または資本準備金から減額する方法や繰延資産として計上する方法が認められている。認められていない。繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い3(3)
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "繰延資産に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。なお,「企業会計原則」および「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」に従うこと。(5 点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.「企業会計原則」では,将来の期間に影響する特定の費用は,貸借対照表に繰延資産として計上することができるとされているが,「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」では,株式交付費,社債発行費等(新株予約権の発行に係る費用を含む),創立費,開業費,開発費に限定されている。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.「研究開発費等に係る会計基準」の対象となる研究開発費については,発生時に費用処理しなければならないが,「企業会計原則」で示される開発費で,「研究開発費等に係る会計基準」の対象とならないものは,経常費の性格をもつ開発費も含め,繰延資産として計上できる。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.社債発行費は,原則として,支出時に営業外費用として処理する。ただし,繰延資産に計上することもでき,この場合には,社債の償還までの期間にわたり利息法により償却しなければならない。なお,継続適用を条件として,定額法を採用することができる。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.創立費は,会社設立のために生じる会社の発起人に帰すべき費用であり,設立時における株主もその支出を許容していることから,資本取引としての性質を有する。仮に会社の負担に帰すべき費用であったとしても,その支出は主に会社設立前に生じるため,対応させ得る収益も存在しない。そのため,創立費を資本金または資本準備金から減額する方法や繰延資産として計上する方法が認められている。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "2", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.「企業会計原則」では,将来の期間に影響する特定の費用は,貸借対照表に繰延資産として計上することができるとされているが,「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」では,株式交付費,社債発行費等(新株予約権の発行に係る費用を含む),創立費,開業費,開発費に限定されている。企業会計原則第三・一D,繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い2(2)", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.「研究開発費等に係る会計基準」の対象となる研究開発費については,発生時に費用処理しなければならないが,「企業会計原則」で示される開発費で,「研究開発費等に係る会計基準」の対象とならないものは,経常費の性格をもつ開発費も含めを除き,繰延資産として計上できる。企業会計原則第三・四(一)C,繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い3(5)", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.社債発行費は,原則として,支出時に営業外費用として処理する。ただし,繰延資産に計上することもでき,この場合には,社債の償還までの期間にわたり利息法により償却しなければならない。なお,継続適用を条件として,定額法を採用することができる。繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い3(2)", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.創立費は,会社設立のために生じる会社の発起人に帰すべき費用であり,設立時における株主もその支出を許容していることから,株主との間の資本取引としての性質を有するによって発生するものではない。仮に会社の負担に帰すべき費用であったとしても,その支出は主に会社設立前に生じるため,対応させ得る収益も存在しない。そのため,創立費を資本金または資本準備金から減額する方法や繰延資産として計上する方法が認められている。認められていない。繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い3(3)", "title": "解説" } ]
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: [[../問題7|←前の問題]] : [[../問題9|次の問題→]] == 問題 ==  繰延資産に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。なお,「企業会計原則」および「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」に従うこと。(5 点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.「企業会計原則」では,将来の期間に影響する特定の費用は,貸借対照表に繰延資産として計上することができるとされているが,「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」では,株式交付費,社債発行費等(新株予約権の発行に係る費用を含む),創立費,開業費,開発費に限定されている。 イ.「研究開発費等に係る会計基準」の対象となる研究開発費については,発生時に費用処理しなければならないが,「企業会計原則」で示される開発費で,「研究開発費等に係る会計基準」の対象とならないものは,経常費の性格をもつ開発費も含め,繰延資産として計上できる。 ウ.社債発行費は,原則として,支出時に営業外費用として処理する。ただし,繰延資産に計上することもでき,この場合には,社債の償還までの期間にわたり利息法により償却しなければならない。なお,継続適用を条件として,定額法を採用することができる。 エ.創立費は,会社設立のために生じる会社の発起人に帰すべき費用であり,設立時における株主もその支出を許容していることから,資本取引としての性質を有する。仮に会社の負担に帰すべき費用であったとしても,その支出は主に会社設立前に生じるため,対応させ得る収益も存在しない。そのため,創立費を資本金または資本準備金から減額する方法や繰延資産として計上する方法が認められている。 </div> <div style="column-count:6;"> #アイ #アウ #アエ #イウ #イエ #ウエ </div> == 正解 == 2 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.「企業会計原則」では,将来の期間に影響する特定の費用は,貸借対照表に繰延資産として計上することができるとされているが,「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」では,株式交付費,社債発行費等(新株予約権の発行に係る費用を含む),創立費,開業費,開発費に限定されている。<ins>企業会計原則第三・一D,繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い2(2)</ins> イ.「研究開発費等に係る会計基準」の対象となる研究開発費については,発生時に費用処理しなければならないが,「企業会計原則」で示される開発費で,「研究開発費等に係る会計基準」の対象とならないものは,経常費の性格をもつ開発費<del>も含め</del><ins>を除き</ins>,繰延資産として計上できる。<ins>企業会計原則第三・四(一)C,繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い3(5)</ins> ウ.社債発行費は,原則として,支出時に営業外費用として処理する。ただし,繰延資産に計上することもでき,この場合には,社債の償還までの期間にわたり利息法により償却しなければならない。なお,継続適用を条件として,定額法を採用することができる。<ins>繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い3(2)</ins> エ.創立費は,<del>会社設立のために生じる会社の発起人に帰すべき費用であり,設立時における株主もその支出を許容していることから,</del><ins>株主との間の</ins>資本取引<del>としての性質を有する</del><ins>によって発生するものではない</ins>。仮に会社の負担に帰すべき費用であったとしても,その支出は主に会社設立前に生じるため,対応させ得る収益も存在しない。<del>そのため</del>,創立費を資本金または資本準備金から減額する方法や繰延資産として計上する方法が<del>認められている。</del><ins>認められていない。繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い3(3)</ins> </div> == 参照基準等 == * [[企業会計原則#D_繰延資産の計上]] * [https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/d_asset.pdf 繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い] : [[../問題7|←前の問題]] : [[../問題9|次の問題→]] [[カテゴリ:財務会計]]
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2022-11-28T16:36:18Z
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24,806
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/財務会計論/問題11
財務諸表の連携に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) ア.連結包括利益計算書における「親会社株主に係る包括利益」は,連結貸借対照表の純資産の部の包括利益累計額に含められて,次年度に繰り越される。 イ.間接法による連結キャッシュ・フロー計算書は,税金等調整前当期純利益から計算を始めることにより,連結損益計算書と関連付けられている。 ウ.連結キャッシュ・フロー計算書における「現金及び現金同等物」の期末残高と,連結貸借対照表上の「現金及び預金」などの科目別残高との関係について調整が必要な場合は,その調整を注記する。 エ.株主資本等変動計算書に記載されている項目を増減させる取引は,全て資本取引であり,その増減に伴う現金収支は,連結キャッシュ・フロー計算書の「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載される。 4 ア.連結包括利益計算書における「親会社株主に係る包括利益」のうち「親会社株主に帰属する当期純利益」は,連結貸借対照表の純資産の部の包括利益累計額株主資本(利益剰余金)に含められて,「親会社株主に係るその他の包括利益」は,連結貸借対照表の純資産の部のその他の包括利益累計額に含められて,次年度に繰り越される。包括利益の表示に関する会計基準6,27,貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針3 イ.間接法による連結キャッシュ・フロー計算書は,税金等調整前当期純利益から計算を始めることにより,連結損益計算書と関連付けられている。連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準第三・一2 ウ.連結キャッシュ・フロー計算書における「現金及び現金同等物」の期末残高と,連結貸借対照表上の「現金及び預金」などの科目別残高との関係について調整が必要な場合は,その調整を注記する。連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準の設定に関する意見書三2(2),連結キャッシュ・フロー計算書等の作成に関する実務指針2 エ.株主資本等変動計算書に記載されている項目を増減させる取引は,全て資本取引であり,のうち,利益剰余金は当期純利益によって変動するから,株主資本等変動計算書に記載されている項目を増減させる取引には資本取引だけでなく損益取引も含まれる。その増減に伴う現金収支は,連結キャッシュ・フロー計算書の「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分以外にも記載される。株主資本等変動計算書に関する会計基準7,連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準第二・二
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "財務諸表の連携に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.連結包括利益計算書における「親会社株主に係る包括利益」は,連結貸借対照表の純資産の部の包括利益累計額に含められて,次年度に繰り越される。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.間接法による連結キャッシュ・フロー計算書は,税金等調整前当期純利益から計算を始めることにより,連結損益計算書と関連付けられている。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.連結キャッシュ・フロー計算書における「現金及び現金同等物」の期末残高と,連結貸借対照表上の「現金及び預金」などの科目別残高との関係について調整が必要な場合は,その調整を注記する。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.株主資本等変動計算書に記載されている項目を増減させる取引は,全て資本取引であり,その増減に伴う現金収支は,連結キャッシュ・フロー計算書の「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載される。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "4", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.連結包括利益計算書における「親会社株主に係る包括利益」のうち「親会社株主に帰属する当期純利益」は,連結貸借対照表の純資産の部の包括利益累計額株主資本(利益剰余金)に含められて,「親会社株主に係るその他の包括利益」は,連結貸借対照表の純資産の部のその他の包括利益累計額に含められて,次年度に繰り越される。包括利益の表示に関する会計基準6,27,貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針3", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.間接法による連結キャッシュ・フロー計算書は,税金等調整前当期純利益から計算を始めることにより,連結損益計算書と関連付けられている。連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準第三・一2", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.連結キャッシュ・フロー計算書における「現金及び現金同等物」の期末残高と,連結貸借対照表上の「現金及び預金」などの科目別残高との関係について調整が必要な場合は,その調整を注記する。連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準の設定に関する意見書三2(2),連結キャッシュ・フロー計算書等の作成に関する実務指針2", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.株主資本等変動計算書に記載されている項目を増減させる取引は,全て資本取引であり,のうち,利益剰余金は当期純利益によって変動するから,株主資本等変動計算書に記載されている項目を増減させる取引には資本取引だけでなく損益取引も含まれる。その増減に伴う現金収支は,連結キャッシュ・フロー計算書の「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分以外にも記載される。株主資本等変動計算書に関する会計基準7,連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準第二・二", "title": "解説" } ]
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: [[../問題10|←前の問題]] : [[../問題12|次の問題→]] == 問題 ==  財務諸表の連携に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.連結包括利益計算書における「親会社株主に係る包括利益」は,連結貸借対照表の純資産の部の包括利益累計額に含められて,次年度に繰り越される。 イ.間接法による連結キャッシュ・フロー計算書は,税金等調整前当期純利益から計算を始めることにより,連結損益計算書と関連付けられている。 ウ.連結キャッシュ・フロー計算書における「現金及び現金同等物」の期末残高と,連結貸借対照表上の「現金及び預金」などの科目別残高との関係について調整が必要な場合は,その調整を注記する。 エ.株主資本等変動計算書に記載されている項目を増減させる取引は,全て資本取引であり,その増減に伴う現金収支は,連結キャッシュ・フロー計算書の「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載される。 </div> <div style="column-count:6;"> #アイ #アウ #アエ #イウ #イエ #ウエ </div> == 正解 == 4 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.連結包括利益計算書における「親会社株主に係る包括利益」<ins>のうち「親会社株主に帰属する当期純利益」</ins>は,連結貸借対照表の純資産の部の<del>包括利益累計額</del><ins>株主資本(利益剰余金)</ins>に含められて,<ins>「親会社株主に係るその他の包括利益」は,連結貸借対照表の純資産の部のその他の包括利益累計額に含められて,</ins>次年度に繰り越される。<ins>包括利益の表示に関する会計基準6,27,貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針3</ins> イ.間接法による連結キャッシュ・フロー計算書は,税金等調整前当期純利益から計算を始めることにより,連結損益計算書と関連付けられている。<ins>連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準第三・一2</ins> ウ.連結キャッシュ・フロー計算書における「現金及び現金同等物」の期末残高と,連結貸借対照表上の「現金及び預金」などの科目別残高との関係について調整が必要な場合は,その調整を注記する。<ins>連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準の設定に関する意見書三2(2),連結キャッシュ・フロー計算書等の作成に関する実務指針2</ins> エ.株主資本等変動計算書に記載されている項目<del>を増減させる取引は,全て資本取引であり,</del><ins>のうち,利益剰余金は当期純利益によって変動するから,株主資本等変動計算書に記載されている項目を増減させる取引には資本取引だけでなく損益取引も含まれる。</ins>その増減に伴う現金収支は,連結キャッシュ・フロー計算書の「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分<ins>以外</ins>に<ins>も</ins>記載される。<ins>株主資本等変動計算書に関する会計基準7,連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準第二・二</ins> </div> == 参照基準等 == * [https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/hyouji-hokatu_2012_1-1.pdf 包括利益の表示に関する会計基準] * [https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/20180216_11-2.pdf#page=4 貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針] * [https://www.fsa.go.jp/p_mof/singikai/kaikei/tosin/1a909b2.htm 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準] * [https://www.fsa.go.jp/p_mof/singikai/kaikei/tosin/1a909b1.htm 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準の設定に関する意見書] * [https://jicpa.or.jp/specialized_field/1214_2.html 連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針] * [https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/kaikei_1.pdf#page=3 株主資本等変動計算書に関する会計基準] : [[../問題10|←前の問題]] : [[../問題12|次の問題→]] [[カテゴリ:財務会計]]
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2022-11-28T16:34:02Z
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24,807
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/財務会計論/問題12
金融資産および金融負債の「発生または消滅の認識」に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) ア.有価証券の売買契約について,約定日から受渡日までの期間が通常の期間よりも長い場合,売買契約は先渡契約となる。この場合,有価証券の買手側は,約定日基準を採用しているか修正受渡日基準を採用しているかにかかわらず,受渡日まで先渡契約に係る正味の金融資産または金融負債のみを計上する。 イ.有価証券を消費貸借契約によって借り入れたとき,借手は当該有価証券を売却または担保という方法などで自由に処分する権利を有する。よって借入時において,借手側は,受け入れた有価証券を金融資産として,また,対応する返還義務を金融負債として,ともに時価で認識しなければならない。 ウ.金融資産の譲渡の際,譲渡人に買戻義務はなく,買戻権のみがある場合,譲受人は当該金融資産を自由に処分することができないので,支配は移転していないものとされる。ただし,買戻価格が固定価格で確定している場合には,譲受人は当該固定価格と同一の現金を獲得できることが明白であるので,支配は移転しているものとされる。 エ.金融資産を売却した直後に同一の金融資産を同一数量購入し,かつ,譲渡価格と購入価格が同一の場合,たとえ売却と購入が別々の契約であったとしても,金融資産の消滅の認識要件は満たさない。よって,この取引を金融資産の売買として処理することはできない。 4 ア.有価証券の売買契約について,約定日から受渡日までの期間が通常の期間よりも長い場合,売買契約は先渡契約となる。この場合,有価証券の買手側は,約定日基準を採用しているか修正受渡日基準を採用しているかにかかわらず,受渡日まで先渡契約に係る正味の金融資産または金融負債のみを計上する。金融商品会計に関する実務指針22,金融商品会計に関するQ&AQ3 イ.有価証券を消費貸借契約によって借り入れたとき,借手は当該有価証券を売却または担保という方法などで自由に処分する権利を有する。よって借入時において,借手側は,受け入れた有価証券を金融資産として,また,対応する返還義務を金融負債として,ともに時価で認識注記しなければならない。金融商品会計に関する実務指針27,77,241-2 ウ.金融資産の譲渡の際,譲渡人に買戻義務はなく,買戻権のみがある場合,譲受人は当該金融資産を自由に処分することができないので,支配は移転していないものとされる。ただし,買戻価格が固定価格で確定している場合には,譲受人は当該固定価格と同一の現金を獲得できることが明白であるので,支配は移転しているものとされる。譲渡金融資産が市場でいつでも取得することができるとき,又は買戻価格が買戻時の時価であるときは,当該金融資産に対する支配が移転している。他方,譲渡金融資産が市場で容易に取得できないもので,かつ,買戻価格が固定価格であるものは,当該金融資産に対する支配は移転していない。 金融商品会計に関する実務指針33,250,金融商品に関する会計基準9項(2) エ.金融資産を売却した直後に同一の金融資産を同一数量購入し,かつ,譲渡価格と購入価格が同一の場合,たとえ売却と購入が別々の契約であったとしても,金融資産の消滅の認識要件は満たさない。よって,この取引を金融資産の売買として処理することはできない。金融商品会計に関する実務指針42,金融商品に関する会計基準9項(3)
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "金融資産および金融負債の「発生または消滅の認識」に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.有価証券の売買契約について,約定日から受渡日までの期間が通常の期間よりも長い場合,売買契約は先渡契約となる。この場合,有価証券の買手側は,約定日基準を採用しているか修正受渡日基準を採用しているかにかかわらず,受渡日まで先渡契約に係る正味の金融資産または金融負債のみを計上する。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.有価証券を消費貸借契約によって借り入れたとき,借手は当該有価証券を売却または担保という方法などで自由に処分する権利を有する。よって借入時において,借手側は,受け入れた有価証券を金融資産として,また,対応する返還義務を金融負債として,ともに時価で認識しなければならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.金融資産の譲渡の際,譲渡人に買戻義務はなく,買戻権のみがある場合,譲受人は当該金融資産を自由に処分することができないので,支配は移転していないものとされる。ただし,買戻価格が固定価格で確定している場合には,譲受人は当該固定価格と同一の現金を獲得できることが明白であるので,支配は移転しているものとされる。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.金融資産を売却した直後に同一の金融資産を同一数量購入し,かつ,譲渡価格と購入価格が同一の場合,たとえ売却と購入が別々の契約であったとしても,金融資産の消滅の認識要件は満たさない。よって,この取引を金融資産の売買として処理することはできない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "4", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.有価証券の売買契約について,約定日から受渡日までの期間が通常の期間よりも長い場合,売買契約は先渡契約となる。この場合,有価証券の買手側は,約定日基準を採用しているか修正受渡日基準を採用しているかにかかわらず,受渡日まで先渡契約に係る正味の金融資産または金融負債のみを計上する。金融商品会計に関する実務指針22,金融商品会計に関するQ&AQ3", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.有価証券を消費貸借契約によって借り入れたとき,借手は当該有価証券を売却または担保という方法などで自由に処分する権利を有する。よって借入時において,借手側は,受け入れた有価証券を金融資産として,また,対応する返還義務を金融負債として,ともに時価で認識注記しなければならない。金融商品会計に関する実務指針27,77,241-2", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.金融資産の譲渡の際,譲渡人に買戻義務はなく,買戻権のみがある場合,譲受人は当該金融資産を自由に処分することができないので,支配は移転していないものとされる。ただし,買戻価格が固定価格で確定している場合には,譲受人は当該固定価格と同一の現金を獲得できることが明白であるので,支配は移転しているものとされる。譲渡金融資産が市場でいつでも取得することができるとき,又は買戻価格が買戻時の時価であるときは,当該金融資産に対する支配が移転している。他方,譲渡金融資産が市場で容易に取得できないもので,かつ,買戻価格が固定価格であるものは,当該金融資産に対する支配は移転していない。 金融商品会計に関する実務指針33,250,金融商品に関する会計基準9項(2)", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.金融資産を売却した直後に同一の金融資産を同一数量購入し,かつ,譲渡価格と購入価格が同一の場合,たとえ売却と購入が別々の契約であったとしても,金融資産の消滅の認識要件は満たさない。よって,この取引を金融資産の売買として処理することはできない。金融商品会計に関する実務指針42,金融商品に関する会計基準9項(3)", "title": "解説" } ]
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: [[../問題11|←前の問題]] : [[../問題13|次の問題→]] == 問題 ==  金融資産および金融負債の「発生または消滅の認識」に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.有価証券の売買契約について,約定日から受渡日までの期間が通常の期間よりも長い場合,売買契約は先渡契約となる。この場合,有価証券の買手側は,約定日基準を採用しているか修正受渡日基準を採用しているかにかかわらず,受渡日まで先渡契約に係る正味の金融資産または金融負債のみを計上する。 イ.有価証券を消費貸借契約によって借り入れたとき,借手は当該有価証券を売却または担保という方法などで自由に処分する権利を有する。よって借入時において,借手側は,受け入れた有価証券を金融資産として,また,対応する返還義務を金融負債として,ともに時価で認識しなければならない。 ウ.金融資産の譲渡の際,譲渡人に買戻義務はなく,買戻権のみがある場合,譲受人は当該金融資産を自由に処分することができないので,支配は移転していないものとされる。ただし,買戻価格が固定価格で確定している場合には,譲受人は当該固定価格と同一の現金を獲得できることが明白であるので,支配は移転しているものとされる。 エ.金融資産を売却した直後に同一の金融資産を同一数量購入し,かつ,譲渡価格と購入価格が同一の場合,たとえ売却と購入が別々の契約であったとしても,金融資産の消滅の認識要件は満たさない。よって,この取引を金融資産の売買として処理することはできない。 </div> <div style="column-count:6;"> #アイ #アウ #アエ #イウ #イエ #ウエ </div> == 正解 == 4 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.有価証券の売買契約について,約定日から受渡日までの期間が通常の期間よりも長い場合,売買契約は先渡契約となる。この場合,有価証券の買手側は,約定日基準を採用しているか修正受渡日基準を採用しているかにかかわらず,受渡日まで先渡契約に係る正味の金融資産または金融負債のみを計上する。<ins>金融商品会計に関する実務指針22,金融商品会計に関するQ&AQ3</ins> イ.有価証券を消費貸借契約によって借り入れたとき,借手は当該有価証券を売却または担保という方法などで自由に処分する権利を有する。よって借入時において,借手側は,受け入れた有価証券を金融資産として,また,対応する返還義務を金融負債として,ともに時価で<del>認識</del><ins>注記</ins>しなければならない。<ins>金融商品会計に関する実務指針27,77,241-2</ins> ウ.金融資産の譲渡の際,譲渡人に買戻義務はなく,買戻権のみがある場合,<del>譲受人は当該金融資産を自由に処分することができないので,支配は移転していないものとされる。ただし,買戻価格が固定価格で確定している場合には,譲受人は当該固定価格と同一の現金を獲得できることが明白であるので,支配は移転しているものとされる。</del><ins>譲渡金融資産が市場でいつでも取得することができるとき,又は買戻価格が買戻時の時価であるときは,当該金融資産に対する支配が移転している。他方,譲渡金融資産が市場で容易に取得できないもので,かつ,買戻価格が固定価格であるものは,当該金融資産に対する支配は移転していない。 金融商品会計に関する実務指針33,250,金融商品に関する会計基準9項(2)</ins> エ.金融資産を売却した直後に同一の金融資産を同一数量購入し,かつ,譲渡価格と購入価格が同一の場合,たとえ売却と購入が別々の契約であったとしても,金融資産の消滅の認識要件は満たさない。よって,この取引を金融資産の売買として処理することはできない。<ins>金融商品会計に関する実務指針42,金融商品に関する会計基準9項(3)</ins> </div> == 参照基準等 == * [https://jicpa.or.jp/specialized_field/20180219udt.html 金融商品会計に関する実務指針] * [https://jicpa.or.jp/specialized_field/14_34.html 金融商品会計に関するQ&A] * [https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/fv-kaiji.pdf#page=6 金融商品に関する会計基準] : [[../問題11|←前の問題]] : [[../問題13|次の問題→]] [[カテゴリ:財務会計]]
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24,808
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/財務会計論/問題14
「リース取引に関する会計基準」および同適用指針に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) ア.所有権移転外ファイナンス・リース取引における貸手の会計処理として認められている「売上高を計上せずに利息相当額を各期へ配分する方法」は,リース取引の性格の中でも金融取引の性格が強い場合を想定しており,リース料総額とリース物件の現金購入価額の差額が受取利息相当額として,リース期間にわたって計上される。 イ.所有権移転ファイナンス・リース取引における貸手の会計処理として認められている「リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」は,割賦販売における割賦基準の処理を想定しており,利息相当額は売上総利益としてリース期間にわたって計上される。 ウ.所有権移転ファイナンス・リース取引における貸手の会計処理として認められている「リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法」は,製造業等を営む企業が製品を販売する手法としてリース取引を利用する場合を想定しており,売上高と売上原価の差額全てが,リース開始初年度の損益に計上される。 エ.所有権移転外ファイナンス・リース取引において,貸手が「リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」で処理している場合,当該リース取引が中途解約されたときに受け取る規定損害金は,正常な営業取引の成果とはみなされないため,営業外収益として計上される。 1 ア.所有権移転外ファイナンス・リース取引における貸手の会計処理として認められている「売上高を計上せずに利息相当額を各期へ配分する方法」は,リース取引の性格の中でも金融取引の性格が強い場合を想定しており,リース料総額とリース物件の現金購入価額の差額が受取利息相当額として,リース期間にわたって計上される。リース取引に関する会計基準の適用指針51(3),122(3) イ.所有権移転ファイナンス・リース取引における貸手の会計処理として認められている「リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」は,割賦販売における割賦基準の処理を想定しており,利息相当額は売上総利益としてリース期間にわたって計上される。リース取引に関する会計基準の適用指針51(2),122(2) ウ.所有権移転ファイナンス・リース取引における貸手の会計処理として認められている「リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法」は,製造業等を営む企業が製品を販売する手法としてリース取引を利用する場合を想定しており,売上高と売上原価の差額全てが,リース開始初年度の損益に計上される。のうち,期末日後に対応する利益は繰り延べる。リース取引に関する会計基準の適用指針51(1),61,122(1) エ.所有権移転外ファイナンス・リース取引において,貸手が「リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」で処理している場合,当該リース取引が中途解約されたときに受け取る規定損害金は,正常な営業取引の成果とはみなされないため,営業外収益売上高として計上される。リース取引に関する会計基準の適用指針58(2)
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "「リース取引に関する会計基準」および同適用指針に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.所有権移転外ファイナンス・リース取引における貸手の会計処理として認められている「売上高を計上せずに利息相当額を各期へ配分する方法」は,リース取引の性格の中でも金融取引の性格が強い場合を想定しており,リース料総額とリース物件の現金購入価額の差額が受取利息相当額として,リース期間にわたって計上される。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.所有権移転ファイナンス・リース取引における貸手の会計処理として認められている「リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」は,割賦販売における割賦基準の処理を想定しており,利息相当額は売上総利益としてリース期間にわたって計上される。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.所有権移転ファイナンス・リース取引における貸手の会計処理として認められている「リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法」は,製造業等を営む企業が製品を販売する手法としてリース取引を利用する場合を想定しており,売上高と売上原価の差額全てが,リース開始初年度の損益に計上される。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.所有権移転外ファイナンス・リース取引において,貸手が「リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」で処理している場合,当該リース取引が中途解約されたときに受け取る規定損害金は,正常な営業取引の成果とはみなされないため,営業外収益として計上される。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "1", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.所有権移転外ファイナンス・リース取引における貸手の会計処理として認められている「売上高を計上せずに利息相当額を各期へ配分する方法」は,リース取引の性格の中でも金融取引の性格が強い場合を想定しており,リース料総額とリース物件の現金購入価額の差額が受取利息相当額として,リース期間にわたって計上される。リース取引に関する会計基準の適用指針51(3),122(3)", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.所有権移転ファイナンス・リース取引における貸手の会計処理として認められている「リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」は,割賦販売における割賦基準の処理を想定しており,利息相当額は売上総利益としてリース期間にわたって計上される。リース取引に関する会計基準の適用指針51(2),122(2)", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.所有権移転ファイナンス・リース取引における貸手の会計処理として認められている「リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法」は,製造業等を営む企業が製品を販売する手法としてリース取引を利用する場合を想定しており,売上高と売上原価の差額全てが,リース開始初年度の損益に計上される。のうち,期末日後に対応する利益は繰り延べる。リース取引に関する会計基準の適用指針51(1),61,122(1)", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.所有権移転外ファイナンス・リース取引において,貸手が「リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」で処理している場合,当該リース取引が中途解約されたときに受け取る規定損害金は,正常な営業取引の成果とはみなされないため,営業外収益売上高として計上される。リース取引に関する会計基準の適用指針58(2)", "title": "解説" } ]
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: [[../問題13|←前の問題]] : [[../問題15|次の問題→]] == 問題 ==  「リース取引に関する会計基準」および同適用指針に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.所有権移転外ファイナンス・リース取引における貸手の会計処理として認められている「売上高を計上せずに利息相当額を各期へ配分する方法」は,リース取引の性格の中でも金融取引の性格が強い場合を想定しており,リース料総額とリース物件の現金購入価額の差額が受取利息相当額として,リース期間にわたって計上される。 イ.所有権移転ファイナンス・リース取引における貸手の会計処理として認められている「リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」は,割賦販売における割賦基準の処理を想定しており,利息相当額は売上総利益としてリース期間にわたって計上される。 ウ.所有権移転ファイナンス・リース取引における貸手の会計処理として認められている「リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法」は,製造業等を営む企業が製品を販売する手法としてリース取引を利用する場合を想定しており,売上高と売上原価の差額全てが,リース開始初年度の損益に計上される。 エ.所有権移転外ファイナンス・リース取引において,貸手が「リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」で処理している場合,当該リース取引が中途解約されたときに受け取る規定損害金は,正常な営業取引の成果とはみなされないため,営業外収益として計上される。 </div> <div style="column-count:6;"> #アイ #アウ #アエ #イウ #イエ #ウエ </div> == 正解 == 1 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.所有権移転外ファイナンス・リース取引における貸手の会計処理として認められている「売上高を計上せずに利息相当額を各期へ配分する方法」は,リース取引の性格の中でも金融取引の性格が強い場合を想定しており,リース料総額とリース物件の現金購入価額の差額が受取利息相当額として,リース期間にわたって計上される。<ins>リース取引に関する会計基準の適用指針51(3),122(3)</ins> イ.所有権移転ファイナンス・リース取引における貸手の会計処理として認められている「リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」は,割賦販売における割賦基準の処理を想定しており,利息相当額は売上総利益としてリース期間にわたって計上される。<ins>リース取引に関する会計基準の適用指針51(2),122(2)</ins> ウ.所有権移転ファイナンス・リース取引における貸手の会計処理として認められている「リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法」は,製造業等を営む企業が製品を販売する手法としてリース取引を利用する場合を想定しており,売上高と売上原価の差額<del>全てが,リース開始初年度の損益に計上される。</del><ins>のうち,期末日後に対応する利益は繰り延べる。リース取引に関する会計基準の適用指針51(1),61,122(1)</ins> エ.所有権移転外ファイナンス・リース取引において,貸手が「リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」で処理している場合,当該リース取引が中途解約されたときに受け取る規定損害金は<del>,正常な営業取引の成果とはみなされないため,営業外収益</del><ins>売上高</ins>として計上される。<ins>リース取引に関する会計基準の適用指針58(2)</ins> </div> == 参照基準等 == * [https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/shihanki-s_9.pdf リース取引に関する会計基準の適用指針] : [[../問題13|←前の問題]] : [[../問題15|次の問題→]] [[カテゴリ:財務会計]]
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24,809
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/財務会計論/問題18
減損会計に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) ア.連結財務諸表は,企業集団に属する親会社および子会社が作成した個別財務諸表を基礎として作成されるが,連結財務諸表においては,減損損失を認識するかどうかの判定および減損損失の測定に際して,連結の見地から資産のグルーピングの単位が見直される場合がある。 イ.将来キャッシュ・フローの見積りに際しては,資産または資産グループの現在の使用状況および合理的な使用計画等を考慮する。そのため,例えば計画されていない事業の再編の結果として生ずる将来キャッシュ・フローは,見積りに含めてはならない。 ウ.使用価値の算定に際し,資産または資産グループに係る将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクは,将来キャッシュ・フローの見積りに反映させ,割引率は貨幣の時間価値を反映した利率としなければならない。 エ.のれんが認識される取引において,取得の対価が概ね独立して決定され,取得後も内部管理上独立した業績評価が行われる複数の事業が取得される場合には,当該のれんの減損処理は,原則として取得された複数の事業にのれんを加えたより大きな単位で行わなければならない。 1 ア.連結財務諸表は,企業集団に属する親会社および子会社が作成した個別財務諸表を基礎として作成されるが,連結財務諸表においては,減損損失を認識するかどうかの判定および減損損失の測定に際して,連結の見地から資産のグルーピングの単位が見直される場合がある。固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書四2(6)1,固定資産の減損に係る会計基準の適用指針10 イ.将来キャッシュ・フローの見積りに際しては,資産または資産グループの現在の使用状況および合理的な使用計画等を考慮する。そのため,例えば計画されていない事業の再編の結果として生ずる将来キャッシュ・フローは,見積りに含めてはならない。固定資産の減損に係る会計基準二4(2),注5 ウ.使用価値の算定に際し,資産または資産グループに係る将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクは,将来キャッシュ・フローの見積りに反映させ,割引率は貨幣の時間価値を反映した利率としなければならない。将来キャッシュ・フローの見積りと割引率のいずれかに反映させる。固定資産の減損に係る会計基準注6 エ.のれんが認識される取引において,取得の対価が概ね独立して決定され,取得後も内部管理上独立した業績評価が行われる複数の事業が取得される場合には,当該のれんの減損処理は,原則として取得された複数の事業にのれんを加えたより大きな単位で行わなければならない。のれんの帳簿価額を,先ず,のれんが認識された取引において取得された事業の単位に応じて,合理的な基準に基づき分割する。分割されたそれぞれののれんに減損の兆候がある場合に,減損損失を認識するかどうかの判定は,のれんが帰属する事業に関連する複数の資産グループにのれんを加えた,より大きな単位で行う。固定資産の減損に係る会計基準二8,固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書四2(8)12
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "減損会計に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.連結財務諸表は,企業集団に属する親会社および子会社が作成した個別財務諸表を基礎として作成されるが,連結財務諸表においては,減損損失を認識するかどうかの判定および減損損失の測定に際して,連結の見地から資産のグルーピングの単位が見直される場合がある。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.将来キャッシュ・フローの見積りに際しては,資産または資産グループの現在の使用状況および合理的な使用計画等を考慮する。そのため,例えば計画されていない事業の再編の結果として生ずる将来キャッシュ・フローは,見積りに含めてはならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.使用価値の算定に際し,資産または資産グループに係る将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクは,将来キャッシュ・フローの見積りに反映させ,割引率は貨幣の時間価値を反映した利率としなければならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.のれんが認識される取引において,取得の対価が概ね独立して決定され,取得後も内部管理上独立した業績評価が行われる複数の事業が取得される場合には,当該のれんの減損処理は,原則として取得された複数の事業にのれんを加えたより大きな単位で行わなければならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "1", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.連結財務諸表は,企業集団に属する親会社および子会社が作成した個別財務諸表を基礎として作成されるが,連結財務諸表においては,減損損失を認識するかどうかの判定および減損損失の測定に際して,連結の見地から資産のグルーピングの単位が見直される場合がある。固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書四2(6)1,固定資産の減損に係る会計基準の適用指針10", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.将来キャッシュ・フローの見積りに際しては,資産または資産グループの現在の使用状況および合理的な使用計画等を考慮する。そのため,例えば計画されていない事業の再編の結果として生ずる将来キャッシュ・フローは,見積りに含めてはならない。固定資産の減損に係る会計基準二4(2),注5", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.使用価値の算定に際し,資産または資産グループに係る将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクは,将来キャッシュ・フローの見積りに反映させ,割引率は貨幣の時間価値を反映した利率としなければならない。将来キャッシュ・フローの見積りと割引率のいずれかに反映させる。固定資産の減損に係る会計基準注6", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.のれんが認識される取引において,取得の対価が概ね独立して決定され,取得後も内部管理上独立した業績評価が行われる複数の事業が取得される場合には,当該のれんの減損処理は,原則として取得された複数の事業にのれんを加えたより大きな単位で行わなければならない。のれんの帳簿価額を,先ず,のれんが認識された取引において取得された事業の単位に応じて,合理的な基準に基づき分割する。分割されたそれぞれののれんに減損の兆候がある場合に,減損損失を認識するかどうかの判定は,のれんが帰属する事業に関連する複数の資産グループにのれんを加えた,より大きな単位で行う。固定資産の減損に係る会計基準二8,固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書四2(8)12", "title": "解説" } ]
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: [[../問題17|←前の問題]] : [[../問題19|次の問題→]] == 問題 ==  減損会計に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.連結財務諸表は,企業集団に属する親会社および子会社が作成した個別財務諸表を基礎として作成されるが,連結財務諸表においては,減損損失を認識するかどうかの判定および減損損失の測定に際して,連結の見地から資産のグルーピングの単位が見直される場合がある。 イ.将来キャッシュ・フローの見積りに際しては,資産または資産グループの現在の使用状況および合理的な使用計画等を考慮する。そのため,例えば計画されていない事業の再編の結果として生ずる将来キャッシュ・フローは,見積りに含めてはならない。 ウ.使用価値の算定に際し,資産または資産グループに係る将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクは,将来キャッシュ・フローの見積りに反映させ,割引率は貨幣の時間価値を反映した利率としなければならない。 エ.のれんが認識される取引において,取得の対価が概ね独立して決定され,取得後も内部管理上独立した業績評価が行われる複数の事業が取得される場合には,当該のれんの減損処理は,原則として取得された複数の事業にのれんを加えたより大きな単位で行わなければならない。 </div> <div style="column-count:6;"> #アイ #アウ #アエ #イウ #イエ #ウエ </div> == 正解 == 1 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.連結財務諸表は,企業集団に属する親会社および子会社が作成した個別財務諸表を基礎として作成されるが,連結財務諸表においては,減損損失を認識するかどうかの判定および減損損失の測定に際して,連結の見地から資産のグルーピングの単位が見直される場合がある。<ins>固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書四2(6)①,固定資産の減損に係る会計基準の適用指針10</ins> イ.将来キャッシュ・フローの見積りに際しては,資産または資産グループの現在の使用状況および合理的な使用計画等を考慮する。そのため,例えば計画されていない事業の再編の結果として生ずる将来キャッシュ・フローは,見積りに含めてはならない。<ins>固定資産の減損に係る会計基準二4(2),注5</ins> ウ.使用価値の算定に際し,資産または資産グループに係る将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクは,<del>将来キャッシュ・フローの見積りに反映させ,割引率は貨幣の時間価値を反映した利率としなければならない。</del><ins>将来キャッシュ・フローの見積りと割引率のいずれかに反映させる。固定資産の減損に係る会計基準注6</ins> エ.のれんが認識される取引において,取得の対価が概ね独立して決定され,取得後も内部管理上独立した業績評価が行われる複数の事業が取得される場合には,<del>当該のれんの減損処理は,原則として取得された複数の事業にのれんを加えたより大きな単位で行わなければならない。</del>のれんの帳簿価額を,先ず,のれんが認識された取引において取得された事業の単位に応じて,合理的な基準に基づき分割する。分割されたそれぞれののれんに減損の兆候がある場合に,減損損失を認識するかどうかの判定は,のれんが帰属する事業に関連する複数の資産グループにのれんを加えた,より大きな単位で行う。<ins>固定資産の減損に係る会計基準二8,固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書四2(8)①②</ins> </div> == 参照基準等 == * [http://financial.mook.to/ks/de.htm 固定資産の減損に係る会計基準] * [https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/impair_2_s.pdf#page=7 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針] : [[../問題17|←前の問題]] : [[../問題19|次の問題→]] [[カテゴリ:財務会計]]
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24,810
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/財務会計論/問題19
外貨換算会計に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) ア.外貨建債権債務および外国通貨の保有状況並びに決済方法等からみて,外貨建取引について当該取引発生時の外国通貨により記録することが合理的であると認められる場合には,取引発生時の外国通貨の額をもって記録することができる。 イ.在外支店と在外子会社はいずれも在外事業体であるという点で共通するため,これらの外貨表示財務諸表の換算については同一の換算方法が用いられる。 ウ.親会社が在外子会社を連結する場合,のれんは支配獲得時に外国通貨で把握し,毎期末の連結貸借対照表において外国通貨で把握されたのれんの期末残高を支配獲得時の為替相場により換算する。 エ.連結財務諸表において,在外子会社に対する持分への投資をヘッジ対象としたヘッジ手段から生じた為替換算差額は,為替換算調整勘定に含めて処理する方法を採用することができる。 3 ア.外貨建債権債務および外国通貨の保有状況並びに決済方法等からみて,外貨建取引について当該取引発生時の外国通貨により記録することが合理的であると認められる場合には,取引発生時の外国通貨の額をもって記録することができる。外貨建取引等会計処理基準注3 イ.在外支店と在外子会社はいずれも在外事業体であるという点で共通するため,これらの外貨表示財務諸表の換算については同一の換算方法が用いられる。が,在外支店の財務諸表の換算にはテンポラル法,在外子会社等の財務諸表の換算には決算日レート法が用いられる。外貨建取引等会計処理基準の改訂に関する意見書II2,3 ウ.親会社が在外子会社を連結する場合,のれんは支配獲得時に外国通貨で把握し,毎期末の連結貸借対照表において外国通貨で把握されたのれんの期末残高を支配獲得時決算時の為替相場により換算する。外貨建取引等の会計処理に関する実務指針40 エ.連結財務諸表において,在外子会社に対する持分への投資をヘッジ対象としたヘッジ手段から生じた為替換算差額は,為替換算調整勘定に含めて処理する方法を採用することができる。外貨建取引等会計処理基準注13
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "外貨換算会計に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.外貨建債権債務および外国通貨の保有状況並びに決済方法等からみて,外貨建取引について当該取引発生時の外国通貨により記録することが合理的であると認められる場合には,取引発生時の外国通貨の額をもって記録することができる。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.在外支店と在外子会社はいずれも在外事業体であるという点で共通するため,これらの外貨表示財務諸表の換算については同一の換算方法が用いられる。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.親会社が在外子会社を連結する場合,のれんは支配獲得時に外国通貨で把握し,毎期末の連結貸借対照表において外国通貨で把握されたのれんの期末残高を支配獲得時の為替相場により換算する。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.連結財務諸表において,在外子会社に対する持分への投資をヘッジ対象としたヘッジ手段から生じた為替換算差額は,為替換算調整勘定に含めて処理する方法を採用することができる。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "3", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.外貨建債権債務および外国通貨の保有状況並びに決済方法等からみて,外貨建取引について当該取引発生時の外国通貨により記録することが合理的であると認められる場合には,取引発生時の外国通貨の額をもって記録することができる。外貨建取引等会計処理基準注3", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.在外支店と在外子会社はいずれも在外事業体であるという点で共通するため,これらの外貨表示財務諸表の換算については同一の換算方法が用いられる。が,在外支店の財務諸表の換算にはテンポラル法,在外子会社等の財務諸表の換算には決算日レート法が用いられる。外貨建取引等会計処理基準の改訂に関する意見書II2,3", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.親会社が在外子会社を連結する場合,のれんは支配獲得時に外国通貨で把握し,毎期末の連結貸借対照表において外国通貨で把握されたのれんの期末残高を支配獲得時決算時の為替相場により換算する。外貨建取引等の会計処理に関する実務指針40", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.連結財務諸表において,在外子会社に対する持分への投資をヘッジ対象としたヘッジ手段から生じた為替換算差額は,為替換算調整勘定に含めて処理する方法を採用することができる。外貨建取引等会計処理基準注13", "title": "解説" } ]
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: [[../問題18|←前の問題]] : [[../問題20|次の問題→]] == 問題 ==  外貨換算会計に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.外貨建債権債務および外国通貨の保有状況並びに決済方法等からみて,外貨建取引について当該取引発生時の外国通貨により記録することが合理的であると認められる場合には,取引発生時の外国通貨の額をもって記録することができる。 イ.在外支店と在外子会社はいずれも在外事業体であるという点で共通するため,これらの外貨表示財務諸表の換算については同一の換算方法が用いられる。 ウ.親会社が在外子会社を連結する場合,のれんは支配獲得時に外国通貨で把握し,毎期末の連結貸借対照表において外国通貨で把握されたのれんの期末残高を支配獲得時の為替相場により換算する。 エ.連結財務諸表において,在外子会社に対する持分への投資をヘッジ対象としたヘッジ手段から生じた為替換算差額は,為替換算調整勘定に含めて処理する方法を採用することができる。 </div> <div style="column-count:6;"> #アイ #アウ #アエ #イウ #イエ #ウエ </div> == 正解 == 3 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.外貨建債権債務および外国通貨の保有状況並びに決済方法等からみて,外貨建取引について当該取引発生時の外国通貨により記録することが合理的であると認められる場合には,取引発生時の外国通貨の額をもって記録することができる。<ins>外貨建取引等会計処理基準注3</ins> イ.在外支店と在外子会社はいずれも在外事業体であるという点で共通する<del>ため,これらの外貨表示財務諸表の換算については同一の換算方法が用いられる。</del><ins>が,在外支店の財務諸表の換算にはテンポラル法,在外子会社等の財務諸表の換算には決算日レート法が用いられる。外貨建取引等会計処理基準の改訂に関する意見書II2,3</ins> ウ.親会社が在外子会社を連結する場合,のれんは支配獲得時に外国通貨で把握し,毎期末の連結貸借対照表において外国通貨で把握されたのれんの期末残高を<del>支配獲得時</del><ins>決算時</ins>の為替相場により換算する。<ins>外貨建取引等の会計処理に関する実務指針40</ins> エ.連結財務諸表において,在外子会社に対する持分への投資をヘッジ対象としたヘッジ手段から生じた為替換算差額は,為替換算調整勘定に含めて処理する方法を採用することができる。<ins>外貨建取引等会計処理基準注13</ins> </div> == 参照基準等 == * [https://www.fsa.go.jp/p_mof/singikai/kaikei/tosin/1a924c.htm 外貨建取引等会計処理基準] * [http://afujico.com/kaikei/gaika/h070526.htm 平成7年外貨建取引等会計処理基準の改訂に関する意見書] * [https://jicpa.or.jp/specialized_field/20180219udt.html 外貨建取引等の会計処理に関する実務指針] : [[../問題18|←前の問題]] : [[../問題20|次の問題→]] [[カテゴリ:財務会計]]
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2022-11-28T16:34:35Z
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24,811
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/財務会計論/問題22
企業結合における取得原価の算定に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(8点) ア.被取得企業を取得するに際して,将来の業績に依存する条件付取得対価がある場合には,その時価を支配獲得日において合理的に見積り,被取得企業の取得原価に含めなければならない。 イ.親会社が子会社に会社分割により事業を移転し,その対価として子会社株式のみを受け取る場合,親会社の個別財務諸表上,子会社株式の取得原価が移転事業に係る会社分割直前の適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて算定されるため移転損益が認識されないが,連結財務諸表上も,当該会社分割が子会社株式の追加取得に該当するため移転損益は認識されない。 ウ.株式交換が逆取得に該当する場合,被取得企業(完全親会社)の個別財務諸表において,取得企業(完全子会社)の株式の取得原価は,株式交換直前の適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて算定しなければならない。 エ.市場価格のある取得企業の株式が取得の対価として交付される場合には,被取得企業の取得原価は,原則として,企業結合に関する主要条件(交換比率など)が合意されて公表された日における株価を基礎として算定しなければならない。 4 ア.被取得企業を取得するに際して,将来の業績に依存する条件付取得対価がある場合には,その時価を支配獲得日において合理的に見積り,被取得企業の取得原価に含めなければならない。条件付取得対価の交付又は引渡しが確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、支払対価を取得原価として追加的に認識するとともに、のれん又は負ののれんを追加的に認識する。企業結合に関する会計基準27(1) イ.親会社が子会社に会社分割により事業を移転し,その対価として子会社株式のみを受け取る場合,親会社の個別財務諸表上,子会社株式の取得原価が移転事業に係る会社分割直前の適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて算定されるため移転損益が認識されないが,連結財務諸表上も,当該会社分割が子会社株式の追加取得に該当するため移転損益は認識されない。事業分離等に関する会計基準19,93,94,企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針226,229 ウ.株式交換が逆取得に該当する場合,被取得企業(完全親会社)の個別財務諸表において,取得企業(完全子会社)の株式の取得原価は,株式交換直前の適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて算定しなければならない。企業結合に関する会計基準36 エ.市場価格のある取得企業の株式が取得の対価として交付される場合には,被取得企業の取得原価は,原則として,企業結合に関する主要条件(交換比率など)が合意されて公表された日企業結合日における株価を基礎として算定しなければならない。企業結合に関する会計基準23,24
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "企業結合における取得原価の算定に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(8点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.被取得企業を取得するに際して,将来の業績に依存する条件付取得対価がある場合には,その時価を支配獲得日において合理的に見積り,被取得企業の取得原価に含めなければならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.親会社が子会社に会社分割により事業を移転し,その対価として子会社株式のみを受け取る場合,親会社の個別財務諸表上,子会社株式の取得原価が移転事業に係る会社分割直前の適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて算定されるため移転損益が認識されないが,連結財務諸表上も,当該会社分割が子会社株式の追加取得に該当するため移転損益は認識されない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.株式交換が逆取得に該当する場合,被取得企業(完全親会社)の個別財務諸表において,取得企業(完全子会社)の株式の取得原価は,株式交換直前の適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて算定しなければならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.市場価格のある取得企業の株式が取得の対価として交付される場合には,被取得企業の取得原価は,原則として,企業結合に関する主要条件(交換比率など)が合意されて公表された日における株価を基礎として算定しなければならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "4", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.被取得企業を取得するに際して,将来の業績に依存する条件付取得対価がある場合には,その時価を支配獲得日において合理的に見積り,被取得企業の取得原価に含めなければならない。条件付取得対価の交付又は引渡しが確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、支払対価を取得原価として追加的に認識するとともに、のれん又は負ののれんを追加的に認識する。企業結合に関する会計基準27(1)", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.親会社が子会社に会社分割により事業を移転し,その対価として子会社株式のみを受け取る場合,親会社の個別財務諸表上,子会社株式の取得原価が移転事業に係る会社分割直前の適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて算定されるため移転損益が認識されないが,連結財務諸表上も,当該会社分割が子会社株式の追加取得に該当するため移転損益は認識されない。事業分離等に関する会計基準19,93,94,企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針226,229", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.株式交換が逆取得に該当する場合,被取得企業(完全親会社)の個別財務諸表において,取得企業(完全子会社)の株式の取得原価は,株式交換直前の適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて算定しなければならない。企業結合に関する会計基準36", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.市場価格のある取得企業の株式が取得の対価として交付される場合には,被取得企業の取得原価は,原則として,企業結合に関する主要条件(交換比率など)が合意されて公表された日企業結合日における株価を基礎として算定しなければならない。企業結合に関する会計基準23,24", "title": "解説" } ]
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: [[../問題21|←前の問題]] : [[../問題23~28|次の問題→]] == 問題 ==  企業結合における取得原価の算定に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(8点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.被取得企業を取得するに際して,将来の業績に依存する条件付取得対価がある場合には,その時価を支配獲得日において合理的に見積り,被取得企業の取得原価に含めなければならない。 イ.親会社が子会社に会社分割により事業を移転し,その対価として子会社株式のみを受け取る場合,親会社の個別財務諸表上,子会社株式の取得原価が移転事業に係る会社分割直前の適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて算定されるため移転損益が認識されないが,連結財務諸表上も,当該会社分割が子会社株式の追加取得に該当するため移転損益は認識されない。 ウ.株式交換が逆取得に該当する場合,被取得企業(完全親会社)の個別財務諸表において,取得企業(完全子会社)の株式の取得原価は,株式交換直前の適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて算定しなければならない。 エ.市場価格のある取得企業の株式が取得の対価として交付される場合には,被取得企業の取得原価は,原則として,企業結合に関する主要条件(交換比率など)が合意されて公表された日における株価を基礎として算定しなければならない。 </div> <div style="column-count:6;"> #アイ #アウ #アエ #イウ #イエ #ウエ </div> == 正解 == 4 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.被取得企業を取得するに際して,将来の業績に依存する条件付取得対価がある場合には,<del>その時価を支配獲得日において合理的に見積り,被取得企業の取得原価に含めなければならない。</del><ins>条件付取得対価の交付又は引渡しが確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、支払対価を取得原価として追加的に認識するとともに、のれん又は負ののれんを追加的に認識する。企業結合に関する会計基準27(1)</ins> イ.親会社が子会社に会社分割により事業を移転し,その対価として子会社株式のみを受け取る場合,親会社の個別財務諸表上,子会社株式の取得原価が移転事業に係る会社分割直前の適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて算定されるため移転損益が認識されないが,連結財務諸表上も,当該会社分割が子会社株式の追加取得に該当するため移転損益は認識されない。<ins>事業分離等に関する会計基準19,93,94,企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針226,229</ins> ウ.株式交換が逆取得に該当する場合,被取得企業(完全親会社)の個別財務諸表において,取得企業(完全子会社)の株式の取得原価は,株式交換直前の適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて算定しなければならない。<ins>企業結合に関する会計基準36</ins> エ.市場価格のある取得企業の株式が取得の対価として交付される場合には,被取得企業の取得原価は,原則として,<del>企業結合に関する主要条件(交換比率など)が合意されて公表された日</del><ins>企業結合日</ins>における株価を基礎として算定しなければならない。<ins>企業結合に関する会計基準23,24</ins> </div> == 参照基準等 == * [https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/ketsugou_1.pdf 企業結合に関する会計基準] * [https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/ketsugou_6.pdf 事業分離等に関する会計基準] * [https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/20180216_12-2.pdf#page=75 企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針] : [[../問題21|←前の問題]] : [[../問題23~28|次の問題→]] [[カテゴリ:財務会計]]
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2022-11-28T16:35:35Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%85%AC%E8%AA%8D%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%A3%AB%E8%A9%A6%E9%A8%93/%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B4%E7%AC%ACII%E5%9B%9E%E7%9F%AD%E7%AD%94%E5%BC%8F/%E8%B2%A1%E5%8B%99%E4%BC%9A%E8%A8%88%E8%AB%96/%E5%95%8F%E9%A1%8C22
24,812
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/監査論/問題1
公認会計士監査制度の歴史に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。なお選択肢における年号及び年代は,正誤判断の対象外とする。(5点) ア.平成26 年の監査基準改訂において,監査人の意見表明について,従来の「適正性」に関する意見表明に加えて,「準拠性」に関する意見表明が導入された。この改訂により,財務諸表利用者のニーズに応じて,一般目的の財務諸表を対象とすれば「適正性」に関する意見表明に限られるが,特別目的の財務諸表については,これに追加して「準拠性」に関する意見表明も認められることとなった。 イ.昭和50 年代に公認会計士による中間財務諸表監査が開始された。当時設定された中間財務諸表監査基準において,監査人の意見表明は,中間財務諸表の「有用性」についてのものであり,その後の改訂を経て中間監査基準になっても,それが維持されて現在に至っている。 ウ.昭和50 年代に公認会計士による連結財務諸表の監査が開始された。その実施に伴い,個別財務諸表監査を前提とした従来の監査基準の実施基準及び報告基準について,連結財務諸表特有の監査手続や監査報告に関する規定が設けられる等,連結財務諸表監査に備えて見直され,その後の改訂を経て現在に至っている。 エ.平成20 年代に金融商品取引法の施行を受けて,四半期報告制度が実施された。それに対応して,公認会計士による四半期レビューが開始され,四半期財務諸表の「適正性」について消極的形式による結論が表明されるようになり,その後の改訂を経て現在に至っている。 5 ア.平成26 年の監査基準改訂において,監査人の意見表明について,従来の「適正性」に関する意見表明に加えて,「準拠性」に関する意見表明が導入された。この改訂により,財務諸表利用者のニーズに応じて,一般目的の財務諸表を対象とすれば「適正性」に関する意見表明に限られるが,と特別目的の財務諸表のいずれについてはも,これ「適正性」に追加して「準拠性」に関する意見表明も認められることとなった。平成26年監査基準の改訂について一1 イ.昭和50 年代に公認会計士による中間財務諸表監査が開始された。当時設定された中間財務諸表監査基準において,監査人の意見表明は,中間財務諸表の「有用性」についてのものであり,その後の改訂を経て中間監査基準になっても,それが維持されて現在に至っている。中間監査基準の設定について二4(2),昭和52年中間財務諸表監査基準第二2(1),中間監査基準第一 ウ.昭和50 年代に公認会計士による連結財務諸表の監査が開始された。その実施に伴い,個別財務諸表監査を前提とした従来の監査基準の実施基準及び報告基準実施準則及び報告準則について,連結財務諸表特有の監査手続や監査報告に関する規定が設けられる等,連結財務諸表監査に備えて見直され,その後の改訂を経て現在に至っている。平成3年にこの規定が削除され,平成14年に実施準則及び報告準則そのものが削除されたため,連結財務諸表特有の監査手続や監査報告に関する規定は現行基準には存在しない。昭和51年監査実施準則及び監査報告準則の改訂について,平成14年監査基準の改訂について二2 エ.平成20 年代に金融商品取引法の施行を受けて,四半期報告制度が実施された。それに対応して,公認会計士による四半期レビューが開始され,四半期財務諸表の「適正性」について消極的形式による結論が表明されるようになり,その後の改訂を経て現在に至っている。四半期レビュー基準の設定に関する意見書二1,3
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "公認会計士監査制度の歴史に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。なお選択肢における年号及び年代は,正誤判断の対象外とする。(5点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.平成26 年の監査基準改訂において,監査人の意見表明について,従来の「適正性」に関する意見表明に加えて,「準拠性」に関する意見表明が導入された。この改訂により,財務諸表利用者のニーズに応じて,一般目的の財務諸表を対象とすれば「適正性」に関する意見表明に限られるが,特別目的の財務諸表については,これに追加して「準拠性」に関する意見表明も認められることとなった。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.昭和50 年代に公認会計士による中間財務諸表監査が開始された。当時設定された中間財務諸表監査基準において,監査人の意見表明は,中間財務諸表の「有用性」についてのものであり,その後の改訂を経て中間監査基準になっても,それが維持されて現在に至っている。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.昭和50 年代に公認会計士による連結財務諸表の監査が開始された。その実施に伴い,個別財務諸表監査を前提とした従来の監査基準の実施基準及び報告基準について,連結財務諸表特有の監査手続や監査報告に関する規定が設けられる等,連結財務諸表監査に備えて見直され,その後の改訂を経て現在に至っている。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.平成20 年代に金融商品取引法の施行を受けて,四半期報告制度が実施された。それに対応して,公認会計士による四半期レビューが開始され,四半期財務諸表の「適正性」について消極的形式による結論が表明されるようになり,その後の改訂を経て現在に至っている。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "5", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.平成26 年の監査基準改訂において,監査人の意見表明について,従来の「適正性」に関する意見表明に加えて,「準拠性」に関する意見表明が導入された。この改訂により,財務諸表利用者のニーズに応じて,一般目的の財務諸表を対象とすれば「適正性」に関する意見表明に限られるが,と特別目的の財務諸表のいずれについてはも,これ「適正性」に追加して「準拠性」に関する意見表明も認められることとなった。平成26年監査基準の改訂について一1", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.昭和50 年代に公認会計士による中間財務諸表監査が開始された。当時設定された中間財務諸表監査基準において,監査人の意見表明は,中間財務諸表の「有用性」についてのものであり,その後の改訂を経て中間監査基準になっても,それが維持されて現在に至っている。中間監査基準の設定について二4(2),昭和52年中間財務諸表監査基準第二2(1),中間監査基準第一", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.昭和50 年代に公認会計士による連結財務諸表の監査が開始された。その実施に伴い,個別財務諸表監査を前提とした従来の監査基準の実施基準及び報告基準実施準則及び報告準則について,連結財務諸表特有の監査手続や監査報告に関する規定が設けられる等,連結財務諸表監査に備えて見直され,その後の改訂を経て現在に至っている。平成3年にこの規定が削除され,平成14年に実施準則及び報告準則そのものが削除されたため,連結財務諸表特有の監査手続や監査報告に関する規定は現行基準には存在しない。昭和51年監査実施準則及び監査報告準則の改訂について,平成14年監査基準の改訂について二2", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.平成20 年代に金融商品取引法の施行を受けて,四半期報告制度が実施された。それに対応して,公認会計士による四半期レビューが開始され,四半期財務諸表の「適正性」について消極的形式による結論が表明されるようになり,その後の改訂を経て現在に至っている。四半期レビュー基準の設定に関する意見書二1,3", "title": "解説" } ]
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: ←前の問題 : [[../問題2|次の問題→]] == 問題 ==  公認会計士監査制度の歴史に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。なお選択肢における年号及び年代は,正誤判断の対象外とする。(5点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.平成26 年の監査基準改訂において,監査人の意見表明について,従来の「適正性」に関する意見表明に加えて,「準拠性」に関する意見表明が導入された。この改訂により,財務諸表利用者のニーズに応じて,一般目的の財務諸表を対象とすれば「適正性」に関する意見表明に限られるが,特別目的の財務諸表については,これに追加して「準拠性」に関する意見表明も認められることとなった。 イ.昭和50 年代に公認会計士による中間財務諸表監査が開始された。当時設定された中間財務諸表監査基準において,監査人の意見表明は,中間財務諸表の「有用性」についてのものであり,その後の改訂を経て中間監査基準になっても,それが維持されて現在に至っている。 ウ.昭和50 年代に公認会計士による連結財務諸表の監査が開始された。その実施に伴い,個別財務諸表監査を前提とした従来の監査基準の実施基準及び報告基準について,連結財務諸表特有の監査手続や監査報告に関する規定が設けられる等,連結財務諸表監査に備えて見直され,その後の改訂を経て現在に至っている。 エ.平成20 年代に金融商品取引法の施行を受けて,四半期報告制度が実施された。それに対応して,公認会計士による四半期レビューが開始され,四半期財務諸表の「適正性」について消極的形式による結論が表明されるようになり,その後の改訂を経て現在に至っている。 </div> <div style="column-count:6;"> # アイ # アウ # アエ # イウ # イエ #ウエ </div> == 正解 == 5 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.平成26 年の監査基準改訂において,監査人の意見表明について,従来の「適正性」に関する意見表明に加えて,「準拠性」に関する意見表明が導入された。この改訂により,財務諸表利用者のニーズに応じて,一般目的の財務諸表<del>を対象とすれば「適正性」に関する意見表明に限られるが,</del><ins>と</ins>特別目的の財務諸表<ins>のいずれ</ins>について<del>は</del><ins>も</ins>,<del>これ</del><ins>「適正性」</ins>に追加して「準拠性」に関する意見表明も認められることとなった。<ins>平成26年監査基準の改訂について一1</ins> イ.昭和50 年代に公認会計士による中間財務諸表監査が開始された。当時設定された中間財務諸表監査基準において,監査人の意見表明は,中間財務諸表の「有用性」についてのものであり,その後の改訂を経て中間監査基準になっても,それが維持されて現在に至っている。<ins>中間監査基準の設定について二4(2),昭和52年中間財務諸表監査基準第二2(1),中間監査基準第一</ins> ウ.昭和50 年代に公認会計士による連結財務諸表の監査が開始された。その実施に伴い,個別財務諸表監査を前提とした従来の監査基準の<del>実施基準及び報告基準</del><ins>実施準則及び報告準則</ins>について,連結財務諸表特有の監査手続や監査報告に関する規定が設けられる等,連結財務諸表監査に備えて見直され,その後<del>の改訂を経て現在に至っている。</del><ins>平成3年にこの規定が削除され,平成14年に実施準則及び報告準則そのものが削除されたため,連結財務諸表特有の監査手続や監査報告に関する規定は現行基準には存在しない。昭和51年監査実施準則及び監査報告準則の改訂について,平成14年監査基準の改訂について二2</ins> エ.平成20 年代に金融商品取引法の施行を受けて,四半期報告制度が実施された。それに対応して,公認会計士による四半期レビューが開始され,四半期財務諸表の「適正性」について消極的形式による結論が表明されるようになり,その後の改訂を経て現在に至っている。<ins>四半期レビュー基準の設定に関する意見書二1,3</ins> </div> ; ウィキブキアンのコメント : 問題文中に「選択肢における年号及び年代は,正誤判断の対象外」とあることから,問題の難易度は低め == 参照基準 == * [https://www.fsa.go.jp/news/25/sonota/20140225-2/01.pdf#page=4 平成26年監査基準の改訂について] * [https://www.fsa.go.jp/p_mof/singikai/kaikei/tosin/1a911a2.htm 中間監査基準の設定について] * [http://gaap.edisc.jp/docs/01/29/ 中間監査基準] * [https://www.fsa.go.jp/p_mof/singikai/kaikei/tosin/1a911a4.htm 昭和52年中間財務諸表監査基準] * [http://afujico.com/kaikei/kansa/s510713.htm 昭和51年監査実施準則及び監査報告準則の改訂について] * [http://afujico.com/kaikei/kansa/h140125.htm 平成14年監査基準の改訂について] * [https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/tosin/20070327.pdf#page=4 四半期レビュー基準の設定について] : ←前の問題 : [[../問題2|次の問題→]] [[カテゴリ:会計監査]]
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2022-11-29T06:28:10Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%85%AC%E8%AA%8D%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%A3%AB%E8%A9%A6%E9%A8%93/%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B4%E7%AC%ACII%E5%9B%9E%E7%9F%AD%E7%AD%94%E5%BC%8F/%E7%9B%A3%E6%9F%BB%E8%AB%96/%E5%95%8F%E9%A1%8C1
24,814
卓球
1対1のシングルスと2対2のダブルスがある。 試合開始前に決定された一方のプレイヤーがサーバー、もう一人がレシーバーとなり、ゲームごとに交替する。サーバーはエンドライン(後述)の外から自分のコートと相手のコートの二箇所でバウンドするようにボールを打つ。レシーバーは相手のコートにのみ着地させる。サーバーもレシーバーも以降同様。お互いにラリーを続ける。 試合開始前に決定された一方の組のうちどちらかがサーバー、もう一つの組のどちらかがレシーバーとなる。サーバーはレシーバーに、レシーバーは相手チームのサーバーでもレシーバーでもないほう(以下パートナー)に返球し、そのパートナーは相手チームのパートナーに返球する・・・以降繰り返し。 具体的な例を示すと、(Aチーム・・・B選手とC選手、DチームはE選手とF選手) AチームのBさんがサーバーでDチームのE選手がレシーバーの場合 得点は、0のみ「ラブ」と数える。その他は英語で「ワン」「トゥー」と数えていく。審判は得点を述べる(後述)。一方が11点を取ると1ゲーム。5ゲームマッチなら、3ゲーム先取、3ゲームマッチなら2ゲーム先取すると勝ちである。ポイントが両者10点ずつになるとデュース(テンオールとは言わないことについても後述)となり、その後相手に1点差をつけ、そのままもう1点獲得した場合そのゲームを得るが、1点相手に取られた場合は再びデュースとなる。つまり、ゲームカウントが 10以降-10以降(左右同点) になると、そのゲームを得るためには2ポイント差をつけなければならない。なお、卓球では「セット」といわずに「ゲーム」というので注意。 フリーハンドの手のひらを開き、ボールを手のひらの上に静止させ真上に16センチメートル以上(目安はネットの高さ・15.24センチメートル)あげて下がってきたところを打つ。フリーハンドがエンドラインより後ろにあり、ボールはコートより高い位置ではじめる。手、体及び頭などで隠してはならない。基準はボールとネットの両端からなるトライアングルの中に障害物があってはならないというもの。ボールを打った後は一バウンド目で自分の側のコートに、二バウンド目で相手の側のコートに入る必要がある。ダブルスでは対角のコートに入らなければならない。ネットに掛かって相手のコートに入った場合はサーブはやり直しとなる。 以下の行為を行った場合、失点すなわち相手に点が入ることになる。テニスなどと異なり、一度のミスで失点となる。 審判は以下のことを行う。なお、多くの大会では試合に負けた人がそのあと一番早い試合の審判を務める。 ラケットにはシェークハンド(セークハンド・ツェークハンドとも書かれる)とペンハンド(ペソホルダーとも書かれる)がある。シェークハンドはその名の通り握手するような持ち方で手のひらでグリップ(持ち手)を包み込むようにする。ペンホルダーもその名の通りペンを使うように持ち、表面を親指と人差し指で、裏面をその他の三本で持つ。 ボールは直径4センチ重さ2.7グラム、セルロイド製かプラスチック製、色はオレンジ、又は光沢のない白と規定されている。
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スポーツ > 卓球
{{Wikipedia}} *[[スポーツ]] > 卓球 == ルール == 1対1の'''シングルス'''と2対2の'''ダブルス'''がある。 === シングルス === 試合開始前に決定された一方のプレイヤーが'''サーバー'''、もう一人が'''レシーバー'''となり、ゲームごとに交替する。サーバーはエンドライン(後述)の外から自分のコートと相手のコートの二箇所でバウンドするようにボールを打つ。レシーバーは相手のコートに'''のみ'''着地させる。サーバーもレシーバーも以降同様。お互いにラリーを続ける。 === ダブルス === 試合開始前に決定された一方の組のうちどちらかが'''サーバー'''、もう一つの組のどちらかが'''レシーバー'''となる。サーバーはレシーバーに、レシーバーは相手チームのサーバーでもレシーバーでもないほう(以下パートナー)に返球し、そのパートナーは相手チームのパートナーに返球する・・・以降繰り返し。 具体的な例を示すと、(Aチーム・・・B選手とC選手、DチームはE選手とF選手) AチームのBさんがサーバーでDチームのE選手がレシーバーの場合 # B選手がサーブをする # E選手がレシーブを打つ # B選手が右後ろに下がり、C選手がE選手のレシーブを返球する # B選手が元の位置に戻りC選手が右後ろに下がる # E選手が右後ろに下がり、F選手がC選手の打ったボールを返球する # E選手が元の位置に戻りF選手が右後ろに下がる # B選手がF選手の打ったボールを返球する # E選手がB選手の打ったボールを返球する # 3に戻る(以降繰り返し) === 失点 === * サーブに失敗したとき。サーブのルールについては後述。 * サーブ以外でボールを打った後の一バウンド目が相手のコートに入らなかったとき * 打たれたボールに触れられなかったとき * 利き手'''以外の'''手(以下フリーハンド)で台に触れたとき * その他失点となるルール違反に抵触したとき 得点は、0のみ「ラブ」と数える。その他は英語で「ワン」「トゥー」と数えていく。審判は得点を述べる(後述)。一方が11点を取ると1[[ゲーム]]。5ゲームマッチなら、3ゲーム先取、3ゲームマッチなら2ゲーム先取すると勝ちである。ポイントが両者10点ずつになるとデュース(テンオールとは言わないことについても後述)となり、その後相手に1点差をつけ、そのままもう1点獲得した場合そのゲームを得るが、1点相手に取られた場合は再びデュースとなる。つまり、ゲームカウントが 10以降-10以降(左右同点) になると、そのゲームを得るためには2ポイント差をつけなければならない。なお、卓球では「セット」といわずに「ゲーム」というので注意。 === サーブ === フリーハンドの手のひらを開き、ボールを'''手のひらの上に静止させ真上に16センチメートル以上(目安はネットの高さ・15.24センチメートル)'''あげて'''下がってきたところ'''を打つ。フリーハンドがエンドラインより後ろにあり、ボールはコートより高い位置ではじめる。手、体及び頭などで隠してはならない。基準はボールとネットの両端からなるトライアングルの中に障害物があってはならないというもの。ボールを打った後は一バウンド目で自分の側のコートに、二バウンド目で相手の側のコートに入る必要がある。ダブルスでは対角のコートに入らなければならない。ネットに掛かって相手のコートに入った場合はサーブはやり直しとなる。 以下の行為を行った場合、失点すなわち相手に点が入ることになる。テニスなどと異なり、一度のミスで失点となる。 *トスの前にボールを持つ手を一時停止させない *トスを上げる際にボールの高さが台の面より低い *トスを上げる際にボールが、エンドラインの後ろにない。すなわち台上やサイドラインの外側である *サーブを打つ前にボールを手に握る、ボールが背中に隠れるなどして、レシーバーからボールが見えない状態になる *サーブを打つ前にラケットがレシーバーから見えない状態になる *トスでボールを投げ上げる高さが16センチメートルに満たない *トスで投げ上げた球が最高点に達する前に打つ *インパクト時のボールの高さが卓球台の面より低い *インパクト時のボールの水平位置がエンドラインの後ろにない。すなわち台上やサイドラインの外側である *打ったボールの一バウンド目が自分のコートに入らない *打ったボールがネットにかかり、自分の側へ戻ってくる *打ったボールの二バウンド目が相手のコートに入らない *ダブルスで打ったボールの一バウンド目が自分のコートの右半分にバウンドしない。もしくは二バウンド目が相手のコートの対角に入らない。 == 審判 == 審判は以下のことを行う。なお、多くの大会では試合に負けた人がそのあと一番早い試合の審判を務める。 # 「○○ヴァーサス△△(逆でも可),ファースト(セカンド・・・ファイナル)ゲーム,△△トゥサーブ,ラブオール(0対0の意味)(○○にはレシーバーの名前が、△△にはサーバーの名前が入る)」といいサーバー側へ軽く腕を伸ばす。 # 得点をとったら「ワン・ラブ(1対0の意味)」といい得点した側の腕を挙げる(ひじを曲げて)。ただし、同点になった場合「トゥー・オール(2対2の意味)」という(もちろん腕は同様)。 # 1ゲーム終了したら「イレブン・エイト(11対8だったら),ゲームトゥ○○」という。 # マッチ終了の際「イレブン・ナイン(11対9だったら),ゲームアンドマッチトゥ○○」といい、勝者側に斜めで手を挙げる。 == 技 == * [[w:スマッシュ]] * [[w:ドライブ]] * [[w:カット]] == 類 == ラケットには'''シェークハンド'''(セークハンド・ツェークハンドとも書かれる)と'''ペンハンド'''(ペソホルダーとも書かれる)がある。シェークハンドはその名の通り握手するような持ち方で手のひらでグリップ(持ち手)を包み込むようにする。ペンホルダーもその名の通りペンを使うように持ち、表面を親指と人差し指で、裏面をその他の三本で持つ。 ボールは直径4センチ重さ2.7グラム、セルロイド製かプラスチック製、色はオレンジ、又は光沢のない白と規定されている。 [[Category:スポーツ|たつきゆう]]
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2020-02-16T03:06:25Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%8D%93%E7%90%83
24,819
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/監査論/問題2
監査人の職業倫理及び独立性に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) ア.監査チーム及び審査担当者が従うべき職業倫理に関する規定は,日本公認会計士協会が公表する会則,倫理規則,独立性に関する指針,利益相反に関する指針及びその他の倫理に関する規定のみである。 イ.監査責任者は,監査業務の全ての局面において,監査チームのメンバーが監査事務所の定める職業倫理の遵守に関する方針及び手続を遵守していない形跡がないかについて留意し,遵守していないことに気付いたときは,監査を速やかに中止しなければならない。 ウ.監査人の独立性は,監査業務の主要な担当者の長期間の関与によって生じる馴れ合いによって阻害される可能性があり,それに対するセーフガードの例として,主要な担当者のローテーションやより深度のある監査業務の審査の実施が挙げられる。 エ.監査責任者は,監査業務の契約の新規締結又は更新を行うに当たって,依頼されている業務が監査の前提条件を満たしているかだけではなく,監査実施者が独立性や職業的専門家としての能力を含む職業倫理に関する規定を遵守できるかという判断をしなければならない。 6 ア.監査チーム及び審査担当者が従うべき職業倫理に関する規定は,公認会計士法・同施行令・同施行規則,日本公認会計士協会が公表する会則,倫理規則,独立性に関する指針,利益相反に関する指針及びその他の倫理に関する規定のみである。から構成される。品基報1号監査事務所における品質管理11項(10),監基報220監査業務における品質管理6項(8) イ.監査責任者は,監査業務の全ての局面において,監査チームのメンバーが監査事務所の定める職業倫理の遵守に関する方針及び手続を遵守していない形跡がないかについて留意し,遵守していないことに気付いたときは,監査を速やかに中止しなければならない。適切な者へ専門的な見解の問合せを行うなどの適切な対応をとらなければならない。監基報220監査業務における品質管理8項9項 ウ.監査人の独立性は,監査業務の主要な担当者の長期間の関与によって生じる馴れ合いによって阻害される可能性があり,それに対するセーフガードの例として,主要な担当者のローテーションやより深度のある監査業務の審査の実施が挙げられる。品基報1号監査事務所における品質管理A13項 エ.監査責任者は,監査業務の契約の新規締結又は更新を行うに当たって,依頼されている業務が監査の前提条件を満たしているかだけではなく,監査実施者が独立性や職業的専門家としての能力を含む職業倫理に関する規定を遵守できるかという判断をしなければならない。監基報210監査業務の契約条件の合意2項(1),監基報220監査業務における品質管理11項A7項,品基報1号監査事務所における品質管理25項
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "監査人の職業倫理及び独立性に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.監査チーム及び審査担当者が従うべき職業倫理に関する規定は,日本公認会計士協会が公表する会則,倫理規則,独立性に関する指針,利益相反に関する指針及びその他の倫理に関する規定のみである。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.監査責任者は,監査業務の全ての局面において,監査チームのメンバーが監査事務所の定める職業倫理の遵守に関する方針及び手続を遵守していない形跡がないかについて留意し,遵守していないことに気付いたときは,監査を速やかに中止しなければならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.監査人の独立性は,監査業務の主要な担当者の長期間の関与によって生じる馴れ合いによって阻害される可能性があり,それに対するセーフガードの例として,主要な担当者のローテーションやより深度のある監査業務の審査の実施が挙げられる。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.監査責任者は,監査業務の契約の新規締結又は更新を行うに当たって,依頼されている業務が監査の前提条件を満たしているかだけではなく,監査実施者が独立性や職業的専門家としての能力を含む職業倫理に関する規定を遵守できるかという判断をしなければならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "6", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.監査チーム及び審査担当者が従うべき職業倫理に関する規定は,公認会計士法・同施行令・同施行規則,日本公認会計士協会が公表する会則,倫理規則,独立性に関する指針,利益相反に関する指針及びその他の倫理に関する規定のみである。から構成される。品基報1号監査事務所における品質管理11項(10),監基報220監査業務における品質管理6項(8)", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.監査責任者は,監査業務の全ての局面において,監査チームのメンバーが監査事務所の定める職業倫理の遵守に関する方針及び手続を遵守していない形跡がないかについて留意し,遵守していないことに気付いたときは,監査を速やかに中止しなければならない。適切な者へ専門的な見解の問合せを行うなどの適切な対応をとらなければならない。監基報220監査業務における品質管理8項9項", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.監査人の独立性は,監査業務の主要な担当者の長期間の関与によって生じる馴れ合いによって阻害される可能性があり,それに対するセーフガードの例として,主要な担当者のローテーションやより深度のある監査業務の審査の実施が挙げられる。品基報1号監査事務所における品質管理A13項", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.監査責任者は,監査業務の契約の新規締結又は更新を行うに当たって,依頼されている業務が監査の前提条件を満たしているかだけではなく,監査実施者が独立性や職業的専門家としての能力を含む職業倫理に関する規定を遵守できるかという判断をしなければならない。監基報210監査業務の契約条件の合意2項(1),監基報220監査業務における品質管理11項A7項,品基報1号監査事務所における品質管理25項", "title": "解説" } ]
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: [[../問題1|←前の問題]] : [[../問題3|次の問題→]] == 問題 ==  監査人の職業倫理及び独立性に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.監査チーム及び審査担当者が従うべき職業倫理に関する規定は,日本公認会計士協会が公表する会則,倫理規則,独立性に関する指針,利益相反に関する指針及びその他の倫理に関する規定のみである。 イ.監査責任者は,監査業務の全ての局面において,監査チームのメンバーが監査事務所の定める職業倫理の遵守に関する方針及び手続を遵守していない形跡がないかについて留意し,遵守していないことに気付いたときは,監査を速やかに中止しなければならない。 ウ.監査人の独立性は,監査業務の主要な担当者の長期間の関与によって生じる馴れ合いによって阻害される可能性があり,それに対するセーフガードの例として,主要な担当者のローテーションやより深度のある監査業務の審査の実施が挙げられる。 エ.監査責任者は,監査業務の契約の新規締結又は更新を行うに当たって,依頼されている業務が監査の前提条件を満たしているかだけではなく,監査実施者が独立性や職業的専門家としての能力を含む職業倫理に関する規定を遵守できるかという判断をしなければならない。 </div> <div style="column-count:6;"> # アイ # アウ # アエ # イウ # イエ #ウエ </div> == 正解 == 6 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.監査チーム及び審査担当者が従うべき職業倫理に関する規定は,<ins>公認会計士法・同施行令・同施行規則,</ins>日本公認会計士協会が公表する会則,倫理規則,独立性に関する指針,利益相反に関する指針及びその他の倫理に関する規定<del>のみである。</del><ins>から構成される。品基報1号監査事務所における品質管理11項(10),監基報220監査業務における品質管理6項(8)</ins> イ.監査責任者は,監査業務の全ての局面において,監査チームのメンバーが監査事務所の定める職業倫理の遵守に関する方針及び手続を遵守していない形跡がないかについて留意し,遵守していないことに気付いたときは,<del>監査を速やかに中止しなければならない。</del><ins>適切な者へ専門的な見解の問合せを行うなどの適切な対応をとらなければならない。監基報220監査業務における品質管理8項9項</ins> ウ.監査人の独立性は,監査業務の主要な担当者の長期間の関与によって生じる馴れ合いによって阻害される可能性があり,それに対するセーフガードの例として,主要な担当者のローテーションやより深度のある監査業務の審査の実施が挙げられる。<ins>品基報1号監査事務所における品質管理A13項</ins> エ.監査責任者は,監査業務の契約の新規締結又は更新を行うに当たって,依頼されている業務が監査の前提条件を満たしているかだけではなく,監査実施者が独立性や職業的専門家としての能力を含む職業倫理に関する規定を遵守できるかという判断をしなければならない。<ins>監基報210監査業務の契約条件の合意2項(1),監基報220監査業務における品質管理11項A7項,品基報1号監査事務所における品質管理25項</ins> </div> == 参照基準 == * [https://jicpa.or.jp/specialized_field/260_2.html 品質管理基準委員会報告書及び監査基準委員会報告書] : [[../問題1|←前の問題]] : [[../問題3|次の問題→]] [[カテゴリ:会計監査]]
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2022-11-29T06:29:31Z
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高等学校化学I/その他
センター試験などの大学入試などから、教科書では習わなくても、下記のような知識を知ってることが前提になっている。 いちおう、日常生活であつかうことの多い物質を検定教科書で教えることになっているが、ページ数の事情などがあり、検定教科書では会社ごとに説明してなかったりする。 なお、資料集や参考書にも書いてあるので、いちいちセンター過去問を教科書代わりに読む必要は無い。 (家庭用のガスで「プロパンガス」とか言われるように、)そもそもプロパンは燃焼する。(プロパンの燃焼熱の計算が、2017年のセンター『化学』追試験で出た。) メタンやエタンやプロパンの燃焼熱の計算とか、よく入試に出やすい。 エチレン C2H4 も燃焼する。(※ 2013年センター試験の化学Iの本試験で、エチレンの燃焼熱の計算が出題。) 炭素や黒鉛は火をつけるなどすれば燃えるが、ダイヤモンドやフラーレンも燃焼する。(※ 2009年センター化学Iの本試験で燃焼熱の計算が出題。) ビタミンC(アスコルビン酸)は、還元性が高いので、飲料品などで酸化防止剤として使われる。 緑茶飲料などに、よくビタミンCが酸化防止剤として加えられている。 なお、菓子などの食品にある「食べられません」とか書いてある酸化防止剤の中身は、主に鉄粉である。(※ 参考文献: 中学2年の理科の検定教科書で、大日本図書(教科書会社)の検定教科書に書いてある) 鉄のほうが酸化しやすいので、身代わりとして鉄を酸化させることにより、食品本体の酸化をふせいでいる。なお、鉄なので、けっして電子レンジに入れないように、器をつける必要がある。 塩化カルシウム CaCl2は、空気中などの水分を吸収するので、除湿財や乾燥剤としても(塩化カルシウムは)用いられる。 乾燥剤は、このほかにもシリカゲル、塩化カルシウムなどがある。(2010年センター試験で、乾燥剤に用いられる物質を問う出題あり。) シリカゲルとは、ケイ酸 H2SiO3 を加熱乾燥したもの。 塩化カルシウムは中性の乾燥剤である。 また、塩基性の乾燥剤として、酸化カルシウム、ソーダ石灰、がある。 ソーダ石灰とは酸化カルシウム CaO と水酸化ナトリウム NaOH の混合物のこと。ソーダ石灰を得るには、酸化カルシウムを濃い水酸化ナトリウム溶液にしみこませて、これを焼いて加熱乾燥させる。塩基性なので、酸性物質の乾燥には、用いられない。 アンモニアの発生の実験で、よくソーダ石灰が用いられる。 なお、アンモニアの実験では、塩化カルシウムは反応してしまうので用いることができない。 このほか、酸性の乾燥剤として、十酸化四リン、濃硫酸、などの乾燥剤がある。塩基性の材料の乾燥では、これら酸性の乾燥剤は用いられない。 ナトリウム Na の炎色反応は黄色である。(※ なので、ときどき台所のガスレンジで塩に引火したとき、黄色の炎がでるわけだ。) アンモニアは肥料の原料としても用いられる。(※ 世間では、よく「窒素肥料」などとも言いますね。) 「ケイ酸塩工業」という語彙。
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センター試験などの大学入試などから、教科書では習わなくても、下記のような知識を知ってることが前提になっている。 いちおう、日常生活であつかうことの多い物質を検定教科書で教えることになっているが、ページ数の事情などがあり、検定教科書では会社ごとに説明してなかったりする。 なお、資料集や参考書にも書いてあるので、いちいちセンター過去問を教科書代わりに読む必要は無い。
センター試験などの大学入試などから、教科書では習わなくても、下記のような知識を知ってることが前提になっている。 いちおう、日常生活であつかうことの多い物質を検定教科書で教えることになっているが、ページ数の事情などがあり、検定教科書では会社ごとに説明してなかったりする。 なお、資料集や参考書にも書いてあるので、いちいちセンター過去問を教科書代わりに読む必要は無い。 ---- == 内容 == ;ガスの燃焼 (家庭用のガスで「プロパンガス」とか言われるように、)そもそもプロパンは燃焼する。(プロパンの燃焼熱の計算が、2017年のセンター『化学』追試験で出た。) :※ 資格試験とかで、ガスを扱う工業系の資格試験で、よくガスの燃焼熱の計算とか出ます。 メタンやエタンやプロパンの燃焼熱の計算とか、よく入試に出やすい。 エチレン C<sub>2</sub>H<sub>4</sub> も燃焼する。(※ 2013年センター試験の化学Iの本試験で、エチレンの燃焼熱の計算が出題。) ;ダイヤモンドなどの燃焼 炭素や黒鉛は火をつけるなどすれば燃えるが、ダイヤモンドやフラーレンも燃焼する。(※ 2009年センター化学Iの本試験で燃焼熱の計算が出題。) ;ビタミンCの還元作用 ビタミンC(アスコルビン酸)は、還元性が高いので、飲料品などで酸化防止剤として使われる。 :※ 検定教科書だと、有機化合物と酸化還元の両方の知識が必要であるという事情があり、いちぶの出版社の教科書でしか説明してなかったりする。 緑茶飲料などに、よくビタミンCが酸化防止剤として加えられている。 ;※ 備考: なお、菓子などの食品にある「食べられません」とか書いてある酸化防止剤の中身は、主に鉄粉である。(※ 参考文献: 中学2年の理科の検定教科書で、大日本図書(教科書会社)の検定教科書に書いてある) 鉄のほうが酸化しやすいので、身代わりとして鉄を酸化させることにより、食品本体の酸化をふせいでいる。なお、鉄なので、けっして電子レンジに入れないように、器をつける必要がある。 ;乾燥剤 塩化カルシウム CaCl<sub>2</sub>は、空気中などの水分を吸収するので、除湿財や乾燥剤としても(塩化カルシウムは)用いられる。 乾燥剤は、このほかにもシリカゲル、塩化カルシウムなどがある。(2010年センター試験で、乾燥剤に用いられる物質を問う出題あり。) シリカゲルとは、ケイ酸 H{{sub|2}}SiO{{sub|3}} を加熱乾燥したもの。 塩化カルシウムは中性の乾燥剤である。 また、塩基性の乾燥剤として、酸化カルシウム、ソーダ石灰、がある。 ソーダ石灰とは酸化カルシウム CaO と水酸化ナトリウム NaOH の混合物のこと。ソーダ石灰を得るには、酸化カルシウムを濃い水酸化ナトリウム溶液にしみこませて、これを焼いて加熱乾燥させる。塩基性なので、酸性物質の乾燥には、用いられない。 アンモニアの発生の実験で、よくソーダ石灰が用いられる。 なお、アンモニアの実験では、塩化カルシウムは反応してしまうので用いることができない。 このほか、酸性の乾燥剤として、十酸化四リン、濃硫酸、などの乾燥剤がある。塩基性の材料の乾燥では、これら酸性の乾燥剤は用いられない。 ;炎色反応 ナトリウム Na の炎色反応は黄色である。(※ なので、ときどき台所のガスレンジで塩に引火したとき、黄色の炎がでるわけだ。) ;肥料 アンモニアは肥料の原料としても用いられる。(※ 世間では、よく「窒素肥料」などとも言いますね。) ;語彙 「ケイ酸塩工業」という語彙。 [[カテゴリ:高等学校化学]]
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2022-11-25T04:07:48Z
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24,821
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/監査論/問題3
公認会計士法に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) ア.公認会計士は,やむを得ない事情があると認められるなどの例外的な場合を除き,監査証明業務を行った翌会計期間の終了日まで,被監査会社の親会社,連結子会社,持分法適用の非連結子会社,関連会社及び親会社の他の連結子会社の役員になることはできない。 イ.公認会計士法に定める大規模監査法人では,業務執行社員のみではなく,監査証明業務の審査に関与し,最も重要な責任を有する者もローテーションの対象となる。 ウ.公認会計士は,大会社等の財務書類について監査証明業務を行う際に監査法人と共同監査を行っている場合において,当該監査法人が解散したことにより共同で当該業務を行うことができなくなったときには,新たに公認会計士又は監査法人を選任して,共同監査を行わなければならない。 エ.全ての有限責任監査法人は,計算書類を作成しなければならず,当該計算書類については,特別の利害関係のない公認会計士又は監査法人の監査報告書を添付しなければならない。 1 ア.公認会計士は,やむを得ない事情があると認められるなどの例外的な場合を除き,監査証明業務を行った翌会計期間の終了日まで,被監査会社の親会社,連結子会社,持分法適用の非連結子会社,関連会社及び親会社の他の連結子会社の役員になることはできない。公認会計士法28条の2,同施行規則13条1項 イ.公認会計士法に定める大規模監査法人では,業務執行社員のみではなく,監査証明業務の審査に関与し,最も重要な責任を有する者もローテーションの対象となる。公認会計士法34条の11の4,同施行規則23条2号 ウ.公認会計士は,大会社等の財務書類について監査証明業務を行う際に監査法人と共同監査を行っている場合において,当該監査法人が解散したことにより共同で当該業務を行うことができなくなったときには,新たに公認会計士又は監査法人を選任して,共同監査を行わなければならない。やむを得ない事情に該当するため,単独監査を行うことができる。公認会計士法24条の4,同施行規則11条4号 エ.全ての有限責任監査法人は,計算書類を作成しなければならず,収益の額が10億円以上の場合,当該計算書類については,特別の利害関係のない公認会計士又は監査法人の監査報告書を添付しなければならない。公認会計士法34条の32第1項,同施行令24条
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "公認会計士法に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.公認会計士は,やむを得ない事情があると認められるなどの例外的な場合を除き,監査証明業務を行った翌会計期間の終了日まで,被監査会社の親会社,連結子会社,持分法適用の非連結子会社,関連会社及び親会社の他の連結子会社の役員になることはできない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.公認会計士法に定める大規模監査法人では,業務執行社員のみではなく,監査証明業務の審査に関与し,最も重要な責任を有する者もローテーションの対象となる。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.公認会計士は,大会社等の財務書類について監査証明業務を行う際に監査法人と共同監査を行っている場合において,当該監査法人が解散したことにより共同で当該業務を行うことができなくなったときには,新たに公認会計士又は監査法人を選任して,共同監査を行わなければならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.全ての有限責任監査法人は,計算書類を作成しなければならず,当該計算書類については,特別の利害関係のない公認会計士又は監査法人の監査報告書を添付しなければならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "1", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.公認会計士は,やむを得ない事情があると認められるなどの例外的な場合を除き,監査証明業務を行った翌会計期間の終了日まで,被監査会社の親会社,連結子会社,持分法適用の非連結子会社,関連会社及び親会社の他の連結子会社の役員になることはできない。公認会計士法28条の2,同施行規則13条1項", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.公認会計士法に定める大規模監査法人では,業務執行社員のみではなく,監査証明業務の審査に関与し,最も重要な責任を有する者もローテーションの対象となる。公認会計士法34条の11の4,同施行規則23条2号", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.公認会計士は,大会社等の財務書類について監査証明業務を行う際に監査法人と共同監査を行っている場合において,当該監査法人が解散したことにより共同で当該業務を行うことができなくなったときには,新たに公認会計士又は監査法人を選任して,共同監査を行わなければならない。やむを得ない事情に該当するため,単独監査を行うことができる。公認会計士法24条の4,同施行規則11条4号", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.全ての有限責任監査法人は,計算書類を作成しなければならず,収益の額が10億円以上の場合,当該計算書類については,特別の利害関係のない公認会計士又は監査法人の監査報告書を添付しなければならない。公認会計士法34条の32第1項,同施行令24条", "title": "解説" } ]
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: [[../問題2|←前の問題]] : [[../問題4|次の問題→]] == 問題 ==  公認会計士法に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.公認会計士は,やむを得ない事情があると認められるなどの例外的な場合を除き,監査証明業務を行った翌会計期間の終了日まで,被監査会社の親会社,連結子会社,持分法適用の非連結子会社,関連会社及び親会社の他の連結子会社の役員になることはできない。 イ.公認会計士法に定める大規模監査法人では,業務執行社員のみではなく,監査証明業務の審査に関与し,最も重要な責任を有する者もローテーションの対象となる。 ウ.公認会計士は,大会社等の財務書類について監査証明業務を行う際に監査法人と共同監査を行っている場合において,当該監査法人が解散したことにより共同で当該業務を行うことができなくなったときには,新たに公認会計士又は監査法人を選任して,共同監査を行わなければならない。 エ.全ての有限責任監査法人は,計算書類を作成しなければならず,当該計算書類については,特別の利害関係のない公認会計士又は監査法人の監査報告書を添付しなければならない。 </div> <div style="column-count:6;"> # アイ # アウ # アエ # イウ # イエ #ウエ </div> == 正解 == 1 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.公認会計士は,やむを得ない事情があると認められるなどの例外的な場合を除き,監査証明業務を行った翌会計期間の終了日まで,被監査会社の親会社,連結子会社,持分法適用の非連結子会社,関連会社及び親会社の他の連結子会社の役員になることはできない。<ins>公認会計士法28条の2,同施行規則13条1項</ins> イ.公認会計士法に定める大規模監査法人では,業務執行社員のみではなく,監査証明業務の審査に関与し,最も重要な責任を有する者もローテーションの対象となる。<ins>公認会計士法34条の11の4,同施行規則23条2号</ins> ウ.公認会計士は,大会社等の財務書類について監査証明業務を行う際に監査法人と共同監査を行っている場合において,当該監査法人が解散したことにより共同で当該業務を行うことができなくなったときには,<del>新たに公認会計士又は監査法人を選任して,共同監査を行わなければならない。</del><ins>やむを得ない事情に該当するため,単独監査を行うことができる。公認会計士法24条の4,同施行規則11条4号</ins> エ.全ての有限責任監査法人は,計算書類を作成しなければならず,<ins>収益の額が10億円以上の場合,</ins>当該計算書類については,特別の利害関係のない公認会計士又は監査法人の監査報告書を添付しなければならない。<ins>公認会計士法34条の32第1項,同施行令24条</ins> </div> == 参照基準 == * [http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=323AC0000000103_20160401_426AC0000000069&openerCode=1 公認会計士法] * [http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=419M60000002081 公認会計士法施行規則] * [http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=327CO0000000343 公認会計士法施行令] : [[../問題2|←前の問題]] : [[../問題4|次の問題→]] [[カテゴリ:会計監査]]
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2022-11-29T06:29:37Z
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24,822
高等学校政治経済/その他
政治資金規正法は、企業や団体による政治献金を認めている。(※ 2016年センター政治経済の追試験で出題) 政治資金規正法は、政治献金そのものを禁止してはない。政治資金規正法では、政治家個人および政治家個人の資金管理団体への献金が禁止されているのであり、政党への献金は認められている。 「管理通貨制度」という用語の意味は、実質的には、「金本位制でない」という意味である。(※ センター過去問。) 歴史的経緯として、第二次大戦後に、アメリカなどで金本位制が廃止されて、諸国が「管理通貨制度」に移行したので、そういう意味になっている。 「ノンバンク」、「コール市場」とか、センター試験 2010年『政治・経済』本試験で出題。 憲法などの保障する「通信の秘密」には、郵便などの信書の秘密だけでなく、電信・電話の秘密も入る、というのが定説になっている。(※ センター 2009年、本試験) 帝国書院「公共」の教科書にて、「共有地の悲劇」の説明で、「ただ乗り」の批判。公共財や環境問題などを例に説明。 「共有地の悲劇」のほか、「囚人のジレンマ」や「思考実験」も帝国書院の見本サイトで発見。 帝国書院「公共」にエンゲル係数の説明あり。機会費用の説明あり。 帝国書院および第一学習社の教科書では、トレードオフと関係づけて「機会費用」の概念も教えている。 商業高校の教科書だがビジネス基礎では、「機会費用」と「トレードオフ」を関連づけて教えている。 実教出版『ビジネス基礎』の教科書では とのこと。 後半の「より良い選択をするように努めなければなりません」はビジネス上の都合であるので従う必要は無いかもしれない。 とりあえず、前半部の「どちらか」~「機会費用と言います」までは普通科高校でも通用するだろう。 実教出版の公共の教科書で、傍注で「連座制」の解説がある。 「公判前整理手続」とか「法テラス」とか、「裁判外紛争解決手続」(ADR)とか、第一学習社の検定教科書のコラムにある。 ※ 法テラスについて、NHK教育の政治経済では、社会権などと関連づけて紹介されている。 ※ なお、新科目「公共」のwiki教科書で、すでに法テラスは紹介済み。 ※ 過去、ADRの教科書を高校生むけに書いたような記憶があるが、検索しても見つからない。記憶違いか、それとも誰かが削除したのか・・・。 なお、公判前整理手続きは刑事事件における制度。 公判前整理手続きがあることで、裁判員の負担が軽くなる。(NHK教育の政治経済「第10回 裁判所と司法」の見解) 最高裁判所『公判前整理手続について』 Q この公判前整理手続とは,どのような手 続ですか。 A 最初の公判期日の前に,裁判所,検察官, 弁護人が,争点を明確にした上,これを判 断するための証拠を厳選し,審理計画を立 てることを目的とする手続です。 これまでの刑事裁判,特に争点が複雑な 事件などでは,大量の書類を証拠として採 用したり,また,証人に対しても長時間に わたり詳細な尋問を行った上,裁判官がこ れらの書類や証人尋問の記録(調書)を読 み込んで判断をするという審理が少なくあ りませんでした。 しかし,裁判員の負担を考えると,大量 の証拠を読んでもらうことや,長時間にわ たる詳細な証人尋問を行うことは現実的で はありません。 そこで, 裁判員裁判では, 法廷での審理を見聞きするだけで争点に対 する判断ができるような審理をすることに なります。そのためには,争点を判決する に当たって真に必要なものとした上で,こ を証明するための証拠を最良のものに厳 選することが必要です。このような考えか ら,裁判員裁判ではすべての事件で公判前 整理手続を行わなければならないとされて います。 また,公判前整理手続の中であらかじめ 訴訟の準備を行うことができるため,公判 が始まってからは,連日的に開廷すること が可能になり,多くの裁判員裁判は数日で 終わると見込まれています。 連帯保証人の制度とか、現代社会の教科書で紹介されていたことがある。 なお、(現社の教科書では説明していないですが、)もし専門書で保証人の制度について詳しく調べたい場合、おもに民法の専門書を調べることになります。もし将来に必要になった場合、ご参考に。 2022年、企業の「貸借対照表」(たいしゃく たいしょうひょう)や「損益計算書」(そんえき けいさんしょ)の紹介などが、帝国書院の「公共」教科書にある。(さすがに「公共」では用語の紹介と見本のみ。断じて商業高校みたいに通年で簿記を練習するわけではない。)第一学習社の教科書にも、貸借対照表がある。 帝国書院の検定教科書には無い用語ですが、貸借対照表や損益計算書などをまとめて「複式簿記」(ふくしき ぼき)あるいは単に「簿記」(ぼき)と言います。もし将来的に専門書で貸借対照表などについて調べる必要のある場合、「複式簿記」などの題名の書籍を買えばいいわけです。 なお、貸借対照表の左側は資産の運用先が書かれ、右側にはその資産の調達方法が書かれる。「自己資本比率」などいくつかの会計指標も、この貸借対照表あるいはその他の簿記の帳簿などを基に算出することができる。たとえば「自己資本比率」の場合なら、 自己資本比率=純資産÷総資産 なので、つまり貸借対照表にある「純資産」の金額を、同じく貸借対照表にある「総資産」で割り算すれば簡単に求められる。 小切手や約束手形の写真が、第一学習社『政治経済』の教科書にある。 ちなみに銀行を使って小切手や手形の支払いをするときは、(普通預金ではなく)当座預金で支払いをする。(※ 第一学習社の『現代社会』の教科書で、そこまで説明している。) ポピュリズム ポピュリズム(大衆迎合主義、「迎合」は「げいごう」と読む)とは、一般に、大衆を扇動して、既存の支配層を権力から追い落とそうとするような政治手法のことである。 日本の高校参考書では(文英堂シグマベスト政治経済、清水書院『現代社会ライブラリーにようこそ 2017-18』)、よく小泉純一郎を例に、ポピュリズムを説明する。 政治的無関心者のこと そのほか、AI(人工知能)。なども、現代の情報化社会では話題です。
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== 未分類 == 政治資金規正法は、企業や団体による政治献金を'''認めている'''。(※ 2016年センター政治経済の追試験で出題) 政治資金規正法は、政治献金そのものを禁止してはない。政治資金規正法では、政治家個人および政治家個人の資金管理団体への献金が禁止されているのであり、政党への献金は認められている。 「管理通貨制度」という用語の意味は、実質的には、「金本位制でない」という意味である。(※ センター過去問。) 歴史的経緯として、第二次大戦後に、アメリカなどで金本位制が廃止されて、諸国が「管理通貨制度」に移行したので、そういう意味になっている。 「ノンバンク」、「コール市場」とか、センター試験 2010年『政治・経済』本試験で出題。 憲法などの保障する「通信の秘密」には、郵便などの信書の秘密だけでなく、電信・電話の秘密も入る、というのが定説になっている。(※ センター 2009年、本試験) 帝国書院「公共」の教科書にて、「共有地の悲劇」の説明で、「ただ乗り」の批判。公共財や環境問題などを例に説明。 「共有地の悲劇」のほか、「囚人のジレンマ」や「思考実験」も帝国書院の見本サイトで発見<ref>[https://www.teikokushoin.co.jp/files/product1/06%E9%AB%98%20%E5%86%85%E5%AE%B9%E8%A7%A3%E8%AA%AC%E8%B3%87%E6%96%99/06%E5%85%AC%E5%85%B1_%E5%86%85%E5%AE%B9%E8%A7%A3%E8%AA%AC%E8%B3%87%E6%96%99.pdf 05新公共総合特色書.indd - 06公共_内容解説資料.pdf ]</ref>。 帝国書院「公共」にエンゲル係数の説明あり。機会費用の説明あり。 帝国書院および第一学習社の教科書では、トレードオフと関係づけて「機会費用」の概念も教えている<ref>[https://www.teikokushoin.co.jp/files/product1/06%E9%AB%98%20%E5%86%85%E5%AE%B9%E8%A7%A3%E8%AA%AC%E8%B3%87%E6%96%99/06%E5%85%AC%E5%85%B1_%E5%86%85%E5%AE%B9%E8%A7%A3%E8%AA%AC%E8%B3%87%E6%96%99.pdf 05新公共総合特色書.indd - 06公共_内容解説資料.pdf ]</ref>。 :※ 読者も帝国書院や第一学習社の教科書のように、決して断片的に用語を覚えるのではなく、そうではなくて似たような概念を関連づけて覚えることで、自身の思考力を高めるようにしよう。 :※ 第一学習社のほうは政治経済の教科書を確認。 商業高校の教科書だがビジネス基礎では、「機会費用」と「トレードオフ」を関連づけて教えている。 実教出版『ビジネス基礎』の教科書では <pre> どちらか一方を選択すれば、もう一方をあきらめなければならない状態を、トレード・オフ( trade-off )と言います。 また選択しなかったもう一方の選択肢を選んだときに得られるであろう価値、つまり、トレード・オフによってあきらめなければならない価値を、機会費用(oppotunity cost)と言います。 何かを選択する際は、あらゆる選択肢について、「直接的に支払う費用」と「機会費用」という二つの費用を考慮し、より良い選択をするように努めなければなりません。 </pre> とのこと<ref> [https://www.jikkyo.co.jp/material/dbook/R5_shougyo1_20220404/?pNo=12 実教出版『令和5年度用 ビジネス基礎ダイジェスト版 ]</ref>。 後半の「より良い選択をするように努めなければなりません」はビジネス上の都合であるので従う必要は無いかもしれない。 とりあえず、前半部の「どちらか」~「機会費用と言います」までは普通科高校でも通用するだろう。 実教出版の公共の教科書で、傍注で「連座制」の解説がある<ref>[https://www.jikkyo.co.jp/correction/pdf_r04/chireki/chirekiR4_704_04.pdf ] 2023年8月11日に確認.</ref>。 == 司法制度改革 == 「公判前整理手続」とか「法テラス」とか、「裁判外紛争解決手続」(ADR)とか、第一学習社の検定教科書のコラムにある。 ※ 法テラスについて、NHK教育の政治経済では、社会権などと関連づけて紹介されている<ref>[https://www2.nhk.or.jp/kokokoza/watch/?das_id=D0022130110_00000 (動画) 藤井剛 『第6回 新しい人権 | 政治・経済 | 高校講座』、NHK、放送日:5月13日 ]</ref>。 ※ なお、新科目「公共」のwiki教科書で、すでに法テラスは紹介済み。 ※ 過去、ADRの教科書を高校生むけに書いたような記憶があるが、検索しても見つからない。記憶違いか、それとも誰かが削除したのか・・・。 :→書いたのは民事調停だった([[高等学校商業 経済活動と法/紛争の予防と解決]])。ADRは調停の一種のようなもの。 なお、公判前整理手続きは刑事事件における制度。 公判前整理手続きがあることで、裁判員の負担が軽くなる。(NHK教育の政治経済「第10回 裁判所と司法」の見解) [https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/20903007.pdf 最高裁判所『公判前整理手続について』 ] <blockquote> Q この公判前整理手続とは,どのような手 続ですか。 A 最初の公判期日の前に,裁判所,検察官, 弁護人が,争点を明確にした上,これを判 断するための証拠を厳選し,審理計画を立 てることを目的とする手続です。 </blockquote> <blockquote> これまでの刑事裁判,特に争点が複雑な 事件などでは,大量の書類を証拠として採 用したり,また,証人に対しても長時間に わたり詳細な尋問を行った上,裁判官がこ れらの書類や証人尋問の記録(調書)を読 み込んで判断をするという審理が少なくあ りませんでした。 しかし,裁判員の負担を考えると,大量 の証拠を読んでもらうことや,長時間にわ たる詳細な証人尋問を行うことは現実的で はありません。 そこで, 裁判員裁判では, 法廷での審理を見聞きするだけで争点に対 する判断ができるような審理をすることに なります。そのためには,争点を判決する に当たって真に必要なものとした上で,こ を証明するための証拠を最良のものに厳 選することが必要です。このような考えか ら,裁判員裁判ではすべての事件で公判前 整理手続を行わなければならないとされて います。 また,公判前整理手続の中であらかじめ 訴訟の準備を行うことができるため,公判 が始まってからは,連日的に開廷すること が可能になり,多くの裁判員裁判は数日で 終わると見込まれています。 </blockquote> == ビジネス実務的なこと == 連帯保証人の制度とか、現代社会の教科書で紹介されていたことがある。 なお、(現社の教科書では説明していないですが、)もし専門書で保証人の制度について詳しく調べたい場合、おもに民法の専門書を調べることになります。もし将来に必要になった場合、ご参考に。 2022年、企業の「貸借対照表」(たいしゃく たいしょうひょう)や「損益計算書」(そんえき けいさんしょ)の紹介などが、帝国書院の「公共」教科書にある。(さすがに「公共」では用語の紹介と見本のみ。断じて商業高校みたいに通年で簿記を練習するわけではない。)第一学習社の教科書にも、貸借対照表がある。 帝国書院の検定教科書には無い用語ですが、貸借対照表や損益計算書などをまとめて「複式簿記」(ふくしき ぼき)あるいは単に「簿記」(ぼき)と言います。もし将来的に専門書で貸借対照表などについて調べる必要のある場合、「複式簿記」などの題名の書籍を買えばいいわけです。 :※ 第一学習社のwebサイトによると、「新学習指導要領解説」によると(いつの「新」だか分からないが)、企業会計の役割を明記するように要求されているようです。 なお、貸借対照表の左側は資産の運用先が書かれ、右側にはその資産の調達方法が書かれる。「自己資本比率」などいくつかの会計指標も、この貸借対照表あるいはその他の簿記の帳簿などを基に算出することができる。たとえば「自己資本比率」の場合なら、 自己資本比率=純資産÷総資産 なので、つまり貸借対照表にある「純資産」の金額を、同じく貸借対照表にある「総資産」で割り算すれば簡単に求められる。 小切手や約束手形の写真が、第一学習社『政治経済』の教科書にある。 ちなみに銀行を使って小切手や手形の支払いをするときは、(普通預金ではなく)当座預金で支払いをする。(※ 第一学習社の『現代社会』の教科書で、そこまで説明している。) == 参考書にある語句 == '''ポピュリズム''' ポピュリズム(大衆迎合主義、「迎合」は「げいごう」と読む)とは、一般に、大衆を扇動して、既存の支配層を権力から追い落とそうとするような政治手法のことである。 日本の高校参考書では(文英堂シグマベスト政治経済、清水書院『現代社会ライブラリーにようこそ 2017-18』)、よく小泉純一郎を例に、ポピュリズムを説明する。 * '''フィスカル=アパシー''' 政治的無関心者のこと {{コラム|1=資源の「希少性」|2= :※ 文部科学省の指導要領解説でも定めている。<ref>https://www.mext.go.jp/content/20211102-mxt_kyoiku02-100002620_04.pdf 文部科学省 著『高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 公民編 』、平成 30 年 7 月、P.129] で「(エ)(1)のアの(イ)については,分業と交換,希少性などに関する小・中学校社会科及び「公共」の学習との関連性に留意して指導すること。」</ref> :※ NHK教育の'''高校'''『政治経済』が「'''希少性'''」を紹介しています。[https://www2.nhk.or.jp/kokokoza/watch/?das_id=D0022130122_00000 『第2章 現代の経済 第1節 現代の資本主義経済 第18回 資本主義体制の成立と発展』放送日:9月2日、 3:00 あたり ] :※ 中学教科書で東京書籍が、資源の「希少性」の話をしています(ネット画像で確認)。 :※ ただし教育出版が中学公民で「希少性」の話をしているっぽい<ref>[ https://www.kyoiku-shuppan.co.jp/r3chuu/komin/files/komin_point2.pdf 教育出版 " komin_point2.pdf " ]</ref>。日本文教出版が金融の単元で、「希少性」を使って「語ってみよう」みたいなカリキュラムを提案してる<ref>[https://www.nichibun-g.co.jp/textbooks/c-shakai/koumin/download/r3/r3_c-shakai_kou_naiyo.pdf 日本文教出版 "r3_c-shakai_kou_naiyo.pdf" ]</ref>。 (※高校の範囲) たとえば、空気は通常、取引されません。これは、普通の場所には、空気がほぼ無尽蔵にあふれているからです(NHK教育の見解)。 経済学では、基本的には、人間たちの欲求の量に対して、資源の量が限られているという、「資源の希少性」(しげんのきしょうせい)(※経済用語)という事実が、経済学の大きな原理のひとつだと考えられています<ref>[https://www.teikokushoin.co.jp/files/product1/06%E9%AB%98%20%E5%86%85%E5%AE%B9%E8%A7%A3%E8%AA%AC%E8%B3%87%E6%96%99/06%E5%85%AC%E5%85%B1_%E5%86%85%E5%AE%B9%E8%A7%A3%E8%AA%AC%E8%B3%87%E6%96%99.pdf 05新公共総合特色書.indd - 06公共_内容解説資料.pdf ]</ref>。なお、「資源の希少性」での「資源」とは石油とか水とかだけではなく、土地や労働なども含みます。お金を含める場合もあります。要するに、人間が経済活動を行うのに必要なものすべてです。 「希少」とは、稀(まれ)で「少ない」というような意味です。たとえば「希少価値」(きしょうかち)という言葉は、数が少ないものほど珍しいので価値が高くなる、というような意味です。 (※ 中学の範囲)なお、世間一般では水よりダイヤモンドのほうが貴重ですが、しかし砂漠の真ん中でのどが渇いてに死にそうなときは水のほうが大事なように、時と場合によって希少性は変わります。(東京書籍) 「需要と供給」との違いとして、「希少性」は、「求める量」と「実際の量」との関係です(※ 中学の東京書籍)。 (文脈は違いますが)日本文教出版が、「税収には希少性が」あると言っており、そのため「際限なく歳出を増やすことはできない」と言ってます<ref>[https://www.nichibun-g.co.jp/textbooks/c-shakai/koumin/download/r3/r3_c-shakai_kou_naiyo.pdf 日本文教出版、"r3_c-shakai_kou_naiyo.pdf " 、パンフレット p.13]</ref>。(なお、少数意見の尊重の文脈で、そう言っている。少数意見の尊重とは、少数派の意見に従うという意味ではなく、少数派の意見にも耳を傾けことで、より良い提案を考えることだと、日本文教出版は述べている) 税金で買う対象の物質やサービスに希少性があるので、結局は税収にも「希少性」が生じてしまいます。これが現実です。 }} == ※ 高校の公共のコラムなど == === サブスクリプションやAIなど === ==== ※ 編集者への注意書き ==== :※ 「[[高等学校公共|公共]]」のwikibooks教科書がまだ途中で大幅に未完成なので、政治経済の科目を間借りします。 :※ 公共の教科書が完成して下記の内容が反映されるまで、こちら政治経済のページからは消さないでください。もし消してしまうと、wikibooks内検索で探せなくなってしまうので、出典などを探しなおす手間が発生してしまい、編集作業が大幅に後戻りをしてしまいます。 :※ 「現代社会」科目はwikibooksでは1ページしかないので、そちらには保管しません(wikibooks現代社会だと、コラム的な話題と本文とを分離しづらくなってしまうので)。 ==== 本論 ==== {{コラム|ソフトウェアの定額サービス化の傾向| むかし、ソフトウェアは1度買えば、壊れないかぎりは、ずっと使い続けることができる販売の形態が主流でした。 しかし近年、ネットサービスなどの多くは、利用期間の長さに応じてお金を払う定額制になっています。月額料金など、期間限定でまとめて料金を払う仕組みであり、これを「サブスクリプション」と言います<ref>[https://www.teikokushoin.co.jp/files/product1/06%E9%AB%98%20%E5%86%85%E5%AE%B9%E8%A7%A3%E8%AA%AC%E8%B3%87%E6%96%99/06%E5%85%AC%E5%85%B1_%E5%86%85%E5%AE%B9%E8%A7%A3%E8%AA%AC%E8%B3%87%E6%96%99.pdf 帝国書院『05新公共総合特色書.indd - 06公共_内容解説資料.pdf』 ]</ref>。 ::※ 高校の帝国書院の教科書では、ネットフリックスの写真が、サブスクのコラムで写っています。 }} そのほか、'''AI'''('''人工知能''')<ref>[https://www.teikokushoin.co.jp/files/product1/06%E9%AB%98%20%E5%86%85%E5%AE%B9%E8%A7%A3%E8%AA%AC%E8%B3%87%E6%96%99/06%E5%85%AC%E5%85%B1_%E5%86%85%E5%AE%B9%E8%A7%A3%E8%AA%AC%E8%B3%87%E6%96%99.pdf 帝国書院『05新公共総合特色書.indd - 06公共_内容解説資料.pdf』 ]</ref>。なども、現代の情報化社会では話題です。 :※ 中学公民なので、技術的な話題には入らず、用語の紹介だけにしておきます。 :※ 従来の『政治経済』とは異なり、このようにICT的なことも公共では教えます。 == 参考文献 == [[カテゴリ:高等学校教育|政]]
2018-12-25T03:40:00Z
2024-03-02T19:10:07Z
[ "テンプレート:コラム" ]
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聖書ヘブライ語入門/前置詞(1)/練習/解答
(1) 1. あなた様は私どもの中でイスラエルの君です。 2. (この)預言者の言葉は(その)祭司の言葉よりよい。 3. ダビデの息子アブサロムに美しい妹がいて、その名をタマルという。 4. まっすぐな人々には知恵は金銀より尊い。 5. 彼の父の家には奴隷がたくさん居る。 6. 私は彼らからずいぶん遠い所にいる。 7. 我ヤハウェは汝に対し神である。 (2) א.חׇכָם הָעֶבֶד מֵהַמֶּלֶךְ ב. לִי בֵּן וּבַת ג.בַּגָּן הַזֶּה עֵצִים רַבִּים ד. קְטַנָּה אִמִּי מֵאָבִי ה. קְשֵׁה־עׂרֶף הַנַּעַר לְאָבִיהוּ ו. בְּבֵית הַמֶּלֶךְ אֲמָהוֹת יָפוֹת
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(1) 1. あなた様は私どもの中でイスラエルの君です。 2. (この)預言者の言葉は(その)祭司の言葉よりよい。 3. ダビデの息子アブサロムに美しい妹がいて、その名をタマルという。 4. まっすぐな人々には知恵は金銀より尊い。 5. 彼の父の家には奴隷がたくさん居る。 6. 私は彼らからずいぶん遠い所にいる。 7. 我ヤハウェは汝に対し神である。 (2) א.חׇכָם הָעֶבֶד מֵהַמֶּלֶךְ ב. לִי בֵּן וּבַת ג.בַּגָּן הַזֶּה עֵצִים רַבִּים ד. קְטַנָּה אִמִּי מֵאָבִי ה. קְשֵׁה־עׂרֶף הַנַּעַר לְאָבִיהוּ ו. בְּבֵית הַמֶּלֶךְ אֲמָהוֹת יָפוֹת
(1) 1. あなた様は私どもの中でイスラエルの君です。 2. (この)預言者の言葉は(その)祭司の言葉よりよい。 3. ダビデの息子アブサロムに美しい妹がいて、その名をタマルという。 4. まっすぐな人々には知恵は金銀より尊い。 5. 彼の父の家には奴隷がたくさん居る。 6. 私は彼らからずいぶん遠い所にいる。 7. 我ヤハウェは汝に対し神である。 (2) א.חׇכָם הָעֶבֶד מֵהַמֶּלֶךְ ב. לִי בֵּן וּבַת ג.בַּגָּן הַזֶּה עֵצִים רַבִּים ד. קְטַנָּה אִמִּי מֵאָבִי ה. קְשֵׁה־עׂרֶף הַנַּעַר לְאָבִיהוּ ו. בְּבֵית הַמֶּלֶךְ אֲמָהוֹת יָפוֹת [[カテゴリ:聖書ヘブライ語]]
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2022-11-22T17:11:40Z
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公認会計士試験/平成30年第II回短答式/監査論/問題4
金融商品取引法監査制度に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) ア.有価証券報告書の訂正報告書に含まれる連結財務諸表及び財務諸表には,公認会計士又は監査法人の監査証明が必要である。 イ.内部統制報告書の訂正報告書には,公認会計士又は監査法人の監査証明が必要である。 ウ.有価証券報告書の提出義務がある会社が発行する臨時報告書には,その記載内容に関して,公認会計士又は監査法人の監査証明が必要となる場合がある。 エ.内部統制報告書には,一定の条件を満たした新規上場会社の場合を除き,公認会計士又は監査法人の監査証明が必要である。 3 ア.有価証券報告書の訂正報告書に含まれる連結財務諸表及び財務諸表には,公認会計士又は監査法人の監査証明が必要である。金商法193条の2第1項,財務諸表等の監査証明に関する内閣府令1条15号 イ.内部統制報告書の訂正報告書には,公認会計士又は監査法人の監査証明が必要である。ない。内部統制府令ガイドライン1章1-1 ウ.有価証券報告書の提出義務がある会社が発行する臨時報告書には,その記載内容に関して,公認会計士又は監査法人の監査証明が必要となる場合がある。はない。金商法24条の5第4項,財務諸表等の監査証明に関する内閣府令1条 エ.内部統制報告書には,一定の条件を満たした新規上場会社の場合を除き,公認会計士又は監査法人の監査証明が必要である。金商法193条の2第2項4号
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: [[../問題3|←前の問題]] : [[../問題5|次の問題→]] == 問題 ==  金融商品取引法監査制度に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.有価証券報告書の訂正報告書に含まれる連結財務諸表及び財務諸表には,公認会計士又は監査法人の監査証明が必要である。 イ.内部統制報告書の訂正報告書には,公認会計士又は監査法人の監査証明が必要である。 ウ.有価証券報告書の提出義務がある会社が発行する臨時報告書には,その記載内容に関して,公認会計士又は監査法人の監査証明が必要となる場合がある。 エ.内部統制報告書には,一定の条件を満たした新規上場会社の場合を除き,公認会計士又は監査法人の監査証明が必要である。 </div> <div style="column-count:6;"> # アイ # アウ # アエ # イウ # イエ #ウエ </div> == 正解 == 3 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.有価証券報告書の訂正報告書に含まれる連結財務諸表及び財務諸表には,公認会計士又は監査法人の監査証明が必要である。<ins>金商法193条の2第1項,財務諸表等の監査証明に関する内閣府令1条15号</ins> イ.内部統制報告書の訂正報告書には,公認会計士又は監査法人の監査証明が必要<del>である。</del><ins>ない。内部統制府令ガイドライン1章1-1</ins> ウ.有価証券報告書の提出義務がある会社が発行する臨時報告書には,その記載内容に関して,公認会計士又は監査法人の監査証明が必要となる場合<del>がある。</del><ins>はない。金商法24条の5第4項,財務諸表等の監査証明に関する内閣府令1条</ins> エ.内部統制報告書には,一定の条件を満たした新規上場会社の場合を除き,公認会計士又は監査法人の監査証明が必要である。<ins>金商法193条の2第2項4号</ins> </div> == 参照基準 == * [http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=323AC0000000025_20180401_429AC0000000037&openerCode=1#6243 金融商品取引法] * [http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=332M50000040012 財務諸表等の監査証明に関する内閣府令] * [https://www.fsa.go.jp/common/law/kaiji/13.pdf 内部統制府令ガイドライン] : [[../問題3|←前の問題]] : [[../問題5|次の問題→]] [[カテゴリ:会計監査]]
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2022-11-29T06:29:39Z
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24,825
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/監査論/問題5
会社法上の監査役に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) ア.監査役会が設置されている取締役会設置会社の監査役は,法令又は定款に違反する事実があると自らが認めるときに,その旨を当該取締役会設置会社の監査役会には報告しなければならないが,取締役会には報告しなくてよい。 イ.会計参与が設置されていない監査役設置会社が,その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めていないときは,当該監査役設置会社の監査役は,当該監査役設置会社の取締役の職務の執行を監査する。 ウ.監査役が設置されている株式会社が,その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めていないときに,当該株式会社の監査役が,当該株式会社の子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる場合がある。 エ.公開会社でないところの,会計監査人及び監査役会が設置されていない監査役設置会社が,その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めているときに,当該監査役設置会社の監査役が,当該監査役設置会社が作成した事業報告を監査する権限がないことを明らかにした監査報告を,作成しなくてよい場合がある。 4 ア.監査役会が設置されている取締役会設置会社の監査役は,法令又は定款に違反する事実があると自らが認めるときに,その旨を当該取締役会設置会社の監査役会取締役会には報告しなければならないが,取締役会には報告しなくてよい。会社法382条 イ.会計参与が設置されていない監査役設置会社が,その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めていないときは,当該監査役設置会社の監査役は,当該監査役設置会社の取締役の職務の執行を監査する。会社法381条1項 ウ.監査役が設置されている株式会社が,その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めていないときに,当該株式会社の監査役が,当該株式会社の子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる場合がある。会社法381条3項 エ.公開会社でないところの,会計監査人及び監査役会が設置されていない監査役設置会社が,その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めているときに,当該監査役設置会社の監査役が,当該監査役設置会社が作成した事業報告を監査する権限がないことを明らかにした監査報告を,作成しなくてよい場合がある。はない。会社法389条2項,同施行規則129条2項
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "会社法上の監査役に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.監査役会が設置されている取締役会設置会社の監査役は,法令又は定款に違反する事実があると自らが認めるときに,その旨を当該取締役会設置会社の監査役会には報告しなければならないが,取締役会には報告しなくてよい。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.会計参与が設置されていない監査役設置会社が,その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めていないときは,当該監査役設置会社の監査役は,当該監査役設置会社の取締役の職務の執行を監査する。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.監査役が設置されている株式会社が,その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めていないときに,当該株式会社の監査役が,当該株式会社の子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる場合がある。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.公開会社でないところの,会計監査人及び監査役会が設置されていない監査役設置会社が,その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めているときに,当該監査役設置会社の監査役が,当該監査役設置会社が作成した事業報告を監査する権限がないことを明らかにした監査報告を,作成しなくてよい場合がある。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "4", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.監査役会が設置されている取締役会設置会社の監査役は,法令又は定款に違反する事実があると自らが認めるときに,その旨を当該取締役会設置会社の監査役会取締役会には報告しなければならないが,取締役会には報告しなくてよい。会社法382条", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.会計参与が設置されていない監査役設置会社が,その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めていないときは,当該監査役設置会社の監査役は,当該監査役設置会社の取締役の職務の執行を監査する。会社法381条1項", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.監査役が設置されている株式会社が,その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めていないときに,当該株式会社の監査役が,当該株式会社の子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる場合がある。会社法381条3項", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.公開会社でないところの,会計監査人及び監査役会が設置されていない監査役設置会社が,その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めているときに,当該監査役設置会社の監査役が,当該監査役設置会社が作成した事業報告を監査する権限がないことを明らかにした監査報告を,作成しなくてよい場合がある。はない。会社法389条2項,同施行規則129条2項", "title": "解説" } ]
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: [[../問題4|←前の問題]] : [[../問題6|次の問題→]] == 問題 ==  会社法上の監査役に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.監査役会が設置されている取締役会設置会社の監査役は,法令又は定款に違反する事実があると自らが認めるときに,その旨を当該取締役会設置会社の監査役会には報告しなければならないが,取締役会には報告しなくてよい。 イ.会計参与が設置されていない監査役設置会社が,その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めていないときは,当該監査役設置会社の監査役は,当該監査役設置会社の取締役の職務の執行を監査する。 ウ.監査役が設置されている株式会社が,その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めていないときに,当該株式会社の監査役が,当該株式会社の子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる場合がある。 エ.公開会社でないところの,会計監査人及び監査役会が設置されていない監査役設置会社が,その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めているときに,当該監査役設置会社の監査役が,当該監査役設置会社が作成した事業報告を監査する権限がないことを明らかにした監査報告を,作成しなくてよい場合がある。 </div> <div style="column-count:6;"> # アイ # アウ # アエ # イウ # イエ #ウエ </div> == 正解 == 4 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.監査役会が設置されている取締役会設置会社の監査役は,法令又は定款に違反する事実があると自らが認めるときに,その旨を当該取締役会設置会社の<del>監査役会</del><ins>取締役会</ins>には報告しなければならない<del>が,取締役会には報告しなくてよい</del>。<ins>会社法382条</ins> イ.会計参与が設置されていない監査役設置会社が,その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めていないときは,当該監査役設置会社の監査役は,当該監査役設置会社の取締役の職務の執行を監査する。<ins>会社法381条1項</ins> ウ.監査役が設置されている株式会社が,その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めていないときに,当該株式会社の監査役が,当該株式会社の子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる場合がある。<ins>会社法381条3項</ins> エ.公開会社でないところの,会計監査人及び監査役会が設置されていない監査役設置会社が,その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めているときに,当該監査役設置会社の監査役が,当該監査役設置会社が作成した事業報告を監査する権限がないことを明らかにした監査報告を,作成しなくてよい場合<del>がある。</del><ins>はない。会社法389条2項,同施行規則129条2項</ins> </div> == 参照基準 == * [http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=417AC0000000086 会社法] * [http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=418M60000010012_20180326_430M60000010005&openerCode=1 会社法施行規則] : [[../問題4|←前の問題]] : [[../問題6|次の問題→]] [[カテゴリ:会計監査]]
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公認会計士試験/平成30年第II回短答式/監査論/問題6
会社法上の会計監査人に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) ア.指名委員会等設置会社の会計監査人が欠けた場合に,当該指名委員会等設置会社の監査委員会が,当該指名委員会等設置会社の一時会計監査人の職務を行うべき者を,選任しなければならないことがある。 イ.指名委員会等設置会社の会計監査人は,当該指名委員会等設置会社の執行役に対して,会計に関する報告を求めることはできるが,取締役に対して会計に関する報告を求めることはできない。 ウ.監査役及び会計監査人が設置されている株式会社の会計監査人は,その職務を行うに当たって,当該株式会社の取締役だけでなく,監査役も使用してはならない。 エ.監査役及び会計監査人が設置されている株式会社が作成した事業報告及びその附属明細書が,当該株式会社の監査役だけでなく,会計監査人の監査を受けなければならない場合がある。 2 ア.指名委員会等設置会社の会計監査人が欠けた場合に,当該指名委員会等設置会社の監査委員会が,当該指名委員会等設置会社の一時会計監査人の職務を行うべき者を,選任しなければならないことがある。会社法346条4項8項 イ.指名委員会等設置会社の会計監査人は,当該指名委員会等設置会社の執行役および取締役に対して,会計に関する報告を求めることはできるが,取締役に対して会計に関する報告を求めることはできない。会社法396条2項6項 ウ.監査役及び会計監査人が設置されている株式会社の会計監査人は,その職務を行うに当たって,当該株式会社の取締役だけでなく,監査役も使用してはならない。会社法396条5項2号 エ.監査役及び会計監査人が設置されている株式会社が作成した事業報告及びその附属明細書が,当該株式会社の監査役だけでなく,会計監査人の監査を受けなければならない場合がある。はない。会社法396条1項,436条2項2号
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "会社法上の会計監査人に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.指名委員会等設置会社の会計監査人が欠けた場合に,当該指名委員会等設置会社の監査委員会が,当該指名委員会等設置会社の一時会計監査人の職務を行うべき者を,選任しなければならないことがある。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.指名委員会等設置会社の会計監査人は,当該指名委員会等設置会社の執行役に対して,会計に関する報告を求めることはできるが,取締役に対して会計に関する報告を求めることはできない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.監査役及び会計監査人が設置されている株式会社の会計監査人は,その職務を行うに当たって,当該株式会社の取締役だけでなく,監査役も使用してはならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.監査役及び会計監査人が設置されている株式会社が作成した事業報告及びその附属明細書が,当該株式会社の監査役だけでなく,会計監査人の監査を受けなければならない場合がある。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "2", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.指名委員会等設置会社の会計監査人が欠けた場合に,当該指名委員会等設置会社の監査委員会が,当該指名委員会等設置会社の一時会計監査人の職務を行うべき者を,選任しなければならないことがある。会社法346条4項8項", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.指名委員会等設置会社の会計監査人は,当該指名委員会等設置会社の執行役および取締役に対して,会計に関する報告を求めることはできるが,取締役に対して会計に関する報告を求めることはできない。会社法396条2項6項", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.監査役及び会計監査人が設置されている株式会社の会計監査人は,その職務を行うに当たって,当該株式会社の取締役だけでなく,監査役も使用してはならない。会社法396条5項2号", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.監査役及び会計監査人が設置されている株式会社が作成した事業報告及びその附属明細書が,当該株式会社の監査役だけでなく,会計監査人の監査を受けなければならない場合がある。はない。会社法396条1項,436条2項2号", "title": "解説" } ]
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: [[../問題5|←前の問題]] : [[../問題7|次の問題→]] == 問題 ==  会社法上の会計監査人に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.指名委員会等設置会社の会計監査人が欠けた場合に,当該指名委員会等設置会社の監査委員会が,当該指名委員会等設置会社の一時会計監査人の職務を行うべき者を,選任しなければならないことがある。 イ.指名委員会等設置会社の会計監査人は,当該指名委員会等設置会社の執行役に対して,会計に関する報告を求めることはできるが,取締役に対して会計に関する報告を求めることはできない。 ウ.監査役及び会計監査人が設置されている株式会社の会計監査人は,その職務を行うに当たって,当該株式会社の取締役だけでなく,監査役も使用してはならない。 エ.監査役及び会計監査人が設置されている株式会社が作成した事業報告及びその附属明細書が,当該株式会社の監査役だけでなく,会計監査人の監査を受けなければならない場合がある。 </div> <div style="column-count:6;"> # アイ # アウ # アエ # イウ # イエ # ウエ </div> == 正解 == 2 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.指名委員会等設置会社の会計監査人が欠けた場合に,当該指名委員会等設置会社の監査委員会が,当該指名委員会等設置会社の一時会計監査人の職務を行うべき者を,選任しなければならないことがある。<ins>会社法346条4項8項</ins> イ.指名委員会等設置会社の会計監査人は,当該指名委員会等設置会社の執行役<ins>および取締役</ins>に対して,会計に関する報告を求めることはできる<del>が,取締役に対して会計に関する報告を求めることはできない。</del><ins>会社法396条2項6項</ins> ウ.監査役及び会計監査人が設置されている株式会社の会計監査人は,その職務を行うに当たって,当該株式会社の取締役だけでなく,監査役も使用してはならない。<ins>会社法396条5項2号</ins> エ.監査役及び会計監査人が設置されている株式会社が作成した事業報告及びその附属明細書が,当該株式会社の監査役だけでなく,会計監査人の監査を受けなければならない場合<del>がある。</del><ins>はない。会社法396条1項,436条2項2号</ins> </div> == 参照基準 == * [http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=417AC0000000086 会社法] : [[../問題5|←前の問題]] : [[../問題7|次の問題→]] [[カテゴリ:会計監査]]
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公認会計士試験/平成30年第II回短答式/監査論/問題7
四半期レビューに関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) ア.監査人は,一事業年度に複数回実施する四半期レビューにおいて,それぞれ四半期レビュー計画を策定するが,これらの各四半期レビュー計画の内容を事業年度の途中で修正することはない。 イ.監査人は,年度の財務諸表の監査において得た企業及び企業環境の理解等を考慮して四半期レビュー計画を策定し,これに基づき,質問,分析的手続その他の四半期レビュー手続を実施しなければならない。 ウ.監査人は,四半期レビューにおいて,他の監査人によって行われた四半期レビュー等の結果を利用することはあるが,専門家の業務や内部監査の結果を利用することはない。 エ.監査人は,結論の表明に先立ち審査を受けなければならないが,監査事務所は,四半期レビュー業務の品質が合理的に確保される範囲において,四半期レビュー業務に係る審査の方法,内容等を柔軟に定めることができる。 5 ア.監査人は,一事業年度に複数回実施する四半期レビューにおいて,それぞれ四半期レビュー計画を策定するが,。年度の財務諸表の監査を実施する過程において,四半期レビュー計画の前提とした重要な虚偽表示のリスクの評価を変更した場合や特別な検討を必要とするリスクがあると判断した場合には,その変更等が四半期レビュー計画に与える影響を検討し,必要であればこれらの各四半期レビュー計画の内容を事業年度の途中で修正することはない。四半期レビュー基準第二実施基準2,監査保証実務委員会報告83号18項 イ.監査人は,年度の財務諸表の監査において得た企業及び企業環境の理解等を考慮して四半期レビュー計画を策定し,これに基づき,質問,分析的手続その他の四半期レビュー手続を実施しなければならない。四半期レビュー基準第二実施基準2,3,監査保証実務委員会報告83号21項,四半期レビュー基準の設定について二2 ウ.監査人は,四半期レビューにおいて,他の監査人によって行われた四半期レビューや専門家の業務,内部監査等の結果を利用することはあるが,専門家の業務や内部監査の結果を利用することはない。 エ.監査人は,結論の表明に先立ち審査を受けなければならないが,監査事務所は,四半期レビュー業務の品質が合理的に確保される範囲において,四半期レビュー業務に係る審査の方法,内容等を柔軟に定めることができる。四半期レビュー基準第三報告基準2,監査保証実務委員会報告83号96項,品質管理基準委員会報告書1号A41項
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "四半期レビューに関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.監査人は,一事業年度に複数回実施する四半期レビューにおいて,それぞれ四半期レビュー計画を策定するが,これらの各四半期レビュー計画の内容を事業年度の途中で修正することはない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.監査人は,年度の財務諸表の監査において得た企業及び企業環境の理解等を考慮して四半期レビュー計画を策定し,これに基づき,質問,分析的手続その他の四半期レビュー手続を実施しなければならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.監査人は,四半期レビューにおいて,他の監査人によって行われた四半期レビュー等の結果を利用することはあるが,専門家の業務や内部監査の結果を利用することはない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.監査人は,結論の表明に先立ち審査を受けなければならないが,監査事務所は,四半期レビュー業務の品質が合理的に確保される範囲において,四半期レビュー業務に係る審査の方法,内容等を柔軟に定めることができる。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "5", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.監査人は,一事業年度に複数回実施する四半期レビューにおいて,それぞれ四半期レビュー計画を策定するが,。年度の財務諸表の監査を実施する過程において,四半期レビュー計画の前提とした重要な虚偽表示のリスクの評価を変更した場合や特別な検討を必要とするリスクがあると判断した場合には,その変更等が四半期レビュー計画に与える影響を検討し,必要であればこれらの各四半期レビュー計画の内容を事業年度の途中で修正することはない。四半期レビュー基準第二実施基準2,監査保証実務委員会報告83号18項", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.監査人は,年度の財務諸表の監査において得た企業及び企業環境の理解等を考慮して四半期レビュー計画を策定し,これに基づき,質問,分析的手続その他の四半期レビュー手続を実施しなければならない。四半期レビュー基準第二実施基準2,3,監査保証実務委員会報告83号21項,四半期レビュー基準の設定について二2", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.監査人は,四半期レビューにおいて,他の監査人によって行われた四半期レビューや専門家の業務,内部監査等の結果を利用することはあるが,専門家の業務や内部監査の結果を利用することはない。", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.監査人は,結論の表明に先立ち審査を受けなければならないが,監査事務所は,四半期レビュー業務の品質が合理的に確保される範囲において,四半期レビュー業務に係る審査の方法,内容等を柔軟に定めることができる。四半期レビュー基準第三報告基準2,監査保証実務委員会報告83号96項,品質管理基準委員会報告書1号A41項", "title": "解説" } ]
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: [[../問題6|←前の問題]] : [[../問題8|次の問題→]] == 問題 ==  四半期レビューに関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.監査人は,一事業年度に複数回実施する四半期レビューにおいて,それぞれ四半期レビュー計画を策定するが,これらの各四半期レビュー計画の内容を事業年度の途中で修正することはない。 イ.監査人は,年度の財務諸表の監査において得た企業及び企業環境の理解等を考慮して四半期レビュー計画を策定し,これに基づき,質問,分析的手続その他の四半期レビュー手続を実施しなければならない。 ウ.監査人は,四半期レビューにおいて,他の監査人によって行われた四半期レビュー等の結果を利用することはあるが,専門家の業務や内部監査の結果を利用することはない。 エ.監査人は,結論の表明に先立ち審査を受けなければならないが,監査事務所は,四半期レビュー業務の品質が合理的に確保される範囲において,四半期レビュー業務に係る審査の方法,内容等を柔軟に定めることができる。 </div> <div style="column-count:6;"> # アイ # アウ # アエ # イウ # イエ # ウエ </div> == 正解 == 5 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.監査人は,一事業年度に複数回実施する四半期レビューにおいて,それぞれ四半期レビュー計画を策定する<del>が,</del><ins>。年度の財務諸表の監査を実施する過程において,四半期レビュー計画の前提とした重要な虚偽表示のリスクの評価を変更した場合や特別な検討を必要とするリスクがあると判断した場合には,その変更等が四半期レビュー計画に与える影響を検討し,必要であれば</ins>これらの各四半期レビュー計画の内容を事業年度の途中で修正する<del>ことはない</del>。<ins>四半期レビュー基準第二実施基準2,監査保証実務委員会報告83号18項</ins> イ.監査人は,年度の財務諸表の監査において得た企業及び企業環境の理解等を考慮して四半期レビュー計画を策定し,これに基づき,質問,分析的手続その他の四半期レビュー手続を実施しなければならない。<ins>四半期レビュー基準第二実施基準2,3,監査保証実務委員会報告83号21項,四半期レビュー基準の設定について二2</ins> ウ.監査人は,四半期レビューにおいて,他の監査人によって行われた四半期レビュー<ins>や専門家の業務,内部監査</ins>等の結果を利用することはある<del>が,専門家の業務や内部監査の結果を利用することはない</del>。 エ.監査人は,結論の表明に先立ち審査を受けなければならないが,監査事務所は,四半期レビュー業務の品質が合理的に確保される範囲において,四半期レビュー業務に係る審査の方法,内容等を柔軟に定めることができる。<ins>四半期レビュー基準第三報告基準2,監査保証実務委員会報告83号96項,品質管理基準委員会報告書1号A41項</ins> </div> == 参照基準 == * [https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/tosin/20110701/01.pdf#page=19 四半期レビュー基準] * [https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/tosin/20070327.pdf 四半期レビューの設定について] * [https://jicpa.or.jp/specialized_field/260_2.html 品基報1号 監査事務所における品質管理] * [https://jicpa.or.jp/specialized_field/20160226afc.html 監査・保証実務委員会報告第83号 四半期レビューに関する実務指針] : [[../問題6|←前の問題]] : [[../問題8|次の問題→]] [[カテゴリ:会計監査]]
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2022-11-29T06:29:51Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%85%AC%E8%AA%8D%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%A3%AB%E8%A9%A6%E9%A8%93/%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B4%E7%AC%ACII%E5%9B%9E%E7%9F%AD%E7%AD%94%E5%BC%8F/%E7%9B%A3%E6%9F%BB%E8%AB%96/%E5%95%8F%E9%A1%8C7
24,828
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/監査論/問題8
内部統制監査に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) ア.監査人は,内部統制監査業務について,関係法令に規定する身分的,経済的利害関係を有してはならず,一定の非監査業務との同時提供が制限されている。したがって,監査人が,内部統制監査を実施する前の,内部統制構築等の段階で,経営者等と意見交換を行ってはならない。 イ.監査人は,在外子会社の他の監査人の監査結果を利用する旨を内部統制監査報告書に別途記載することによって,当該監査結果を利用することができる。 ウ.監査人は,業務プロセスに係る内部統制の不備が発見された場合,当該不備がどの勘定科目にどの範囲で影響を及ぼすかを検討し,当該影響の発生可能性を検討するが,それには当該不備が財務報告に及ぼす潜在的な影響額も含まれる。 エ.監査人は,前年度において,内部統制の評価結果が有効であった業務プロセスに係る内部統制の運用状況の評価に当たっては,当該業務プロセスに係る内部統制の整備状況に重要な変更がないなど新たに確認すべき事項がない場合,経営者が評価において選択したサンプル及びその評価結果を利用することができる。 6 ア.監査人は,内部統制監査業務について,関係法令に規定する身分的,経済的利害関係を有してはならず,一定の非監査業務との同時提供が制限されている。したがって,監査人が,内部統制監査を実施する前の,内部統制構築等の段階で,経営者等と意見交換を行ってはならない。しかしながら,内部統制の構築等の段階において,経営者等と必要に応じ意見交換を行い,内部統制の構築等に係る作業や決定は,監査人によってではなく,あくまで企業・経営者によって行われるとの前提の下で,有効な内部統制の構築等に向けて適切な指摘を行うことを妨げるものではない。 財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準III2,同基準平成23年改訂前文二(1),監査・保証実務委員会報告82号51項 イ.監査人は,在外子会社の他の監査人の監査結果を利用する旨を内部統制監査報告書に別途記載することによって,当該監査結果を利用することができるが,内部統制監査報告書に特段の記載は行わず,自らの責任において監査意見を表明する。監査・保証実務委員会報告82号246項 ウ.監査人は,業務プロセスに係る内部統制の不備が発見された場合,当該不備がどの勘定科目にどの範囲で影響を及ぼすかを検討し,当該影響の発生可能性を検討するが,それには当該不備が財務報告に及ぼす潜在的な影響額も含まれる。財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準III4(2)4イロハ,監査・保証実務委員会報告82号196項198項 エ.監査人は,前年度において,内部統制の評価結果が有効であった業務プロセスに係る内部統制の運用状況の評価に当たっては,当該業務プロセスに係る内部統制の整備状況に重要な変更がないなど新たに確認すべき事項がない場合,経営者が評価において選択したサンプル及びその評価結果を利用することができる。財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準III4(2)1ロa,監査・保証実務委員会報告82号240項
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "内部統制監査に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.監査人は,内部統制監査業務について,関係法令に規定する身分的,経済的利害関係を有してはならず,一定の非監査業務との同時提供が制限されている。したがって,監査人が,内部統制監査を実施する前の,内部統制構築等の段階で,経営者等と意見交換を行ってはならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.監査人は,在外子会社の他の監査人の監査結果を利用する旨を内部統制監査報告書に別途記載することによって,当該監査結果を利用することができる。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.監査人は,業務プロセスに係る内部統制の不備が発見された場合,当該不備がどの勘定科目にどの範囲で影響を及ぼすかを検討し,当該影響の発生可能性を検討するが,それには当該不備が財務報告に及ぼす潜在的な影響額も含まれる。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.監査人は,前年度において,内部統制の評価結果が有効であった業務プロセスに係る内部統制の運用状況の評価に当たっては,当該業務プロセスに係る内部統制の整備状況に重要な変更がないなど新たに確認すべき事項がない場合,経営者が評価において選択したサンプル及びその評価結果を利用することができる。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "6", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.監査人は,内部統制監査業務について,関係法令に規定する身分的,経済的利害関係を有してはならず,一定の非監査業務との同時提供が制限されている。したがって,監査人が,内部統制監査を実施する前の,内部統制構築等の段階で,経営者等と意見交換を行ってはならない。しかしながら,内部統制の構築等の段階において,経営者等と必要に応じ意見交換を行い,内部統制の構築等に係る作業や決定は,監査人によってではなく,あくまで企業・経営者によって行われるとの前提の下で,有効な内部統制の構築等に向けて適切な指摘を行うことを妨げるものではない。 財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準III2,同基準平成23年改訂前文二(1),監査・保証実務委員会報告82号51項", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.監査人は,在外子会社の他の監査人の監査結果を利用する旨を内部統制監査報告書に別途記載することによって,当該監査結果を利用することができるが,内部統制監査報告書に特段の記載は行わず,自らの責任において監査意見を表明する。監査・保証実務委員会報告82号246項", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.監査人は,業務プロセスに係る内部統制の不備が発見された場合,当該不備がどの勘定科目にどの範囲で影響を及ぼすかを検討し,当該影響の発生可能性を検討するが,それには当該不備が財務報告に及ぼす潜在的な影響額も含まれる。財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準III4(2)4イロハ,監査・保証実務委員会報告82号196項198項", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.監査人は,前年度において,内部統制の評価結果が有効であった業務プロセスに係る内部統制の運用状況の評価に当たっては,当該業務プロセスに係る内部統制の整備状況に重要な変更がないなど新たに確認すべき事項がない場合,経営者が評価において選択したサンプル及びその評価結果を利用することができる。財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準III4(2)1ロa,監査・保証実務委員会報告82号240項", "title": "解説" } ]
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: [[../問題7|←前の問題]] : [[../問題9|次の問題→]] == 問題 ==  内部統制監査に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.監査人は,内部統制監査業務について,関係法令に規定する身分的,経済的利害関係を有してはならず,一定の非監査業務との同時提供が制限されている。したがって,監査人が,内部統制監査を実施する前の,内部統制構築等の段階で,経営者等と意見交換を行ってはならない。 イ.監査人は,在外子会社の他の監査人の監査結果を利用する旨を内部統制監査報告書に別途記載することによって,当該監査結果を利用することができる。 ウ.監査人は,業務プロセスに係る内部統制の不備が発見された場合,当該不備がどの勘定科目にどの範囲で影響を及ぼすかを検討し,当該影響の発生可能性を検討するが,それには当該不備が財務報告に及ぼす潜在的な影響額も含まれる。 エ.監査人は,前年度において,内部統制の評価結果が有効であった業務プロセスに係る内部統制の運用状況の評価に当たっては,当該業務プロセスに係る内部統制の整備状況に重要な変更がないなど新たに確認すべき事項がない場合,経営者が評価において選択したサンプル及びその評価結果を利用することができる。 </div> <div style="column-count:6;"> # アイ # アウ # アエ # イウ # イエ # ウエ </div> == 正解 == 6 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.監査人は,内部統制監査業務について,関係法令に規定する身分的,経済的利害関係を有してはならず,一定の非監査業務との同時提供が制限されている。<del>したがって,監査人が,内部統制監査を実施する前の,内部統制構築等の段階で,経営者等と意見交換を行ってはならない。</del><ins>しかしながら,内部統制の構築等の段階において,経営者等と必要に応じ意見交換を行い,内部統制の構築等に係る作業や決定は,監査人によってではなく,あくまで企業・経営者によって行われるとの前提の下で,有効な内部統制の構築等に向けて適切な指摘を行うことを妨げるものではない。 財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準III2,同基準平成23年改訂前文二(1),監査・保証実務委員会報告82号51項</ins> イ.監査人は,在外子会社の他の監査人の監査結果を<del>利用する旨を内部統制監査報告書に別途記載することによって,当該監査結果を</del>利用することができる<ins>が,内部統制監査報告書に特段の記載は行わず,自らの責任において監査意見を表明する</ins>。<ins>監査・保証実務委員会報告82号246項</ins> ウ.監査人は,業務プロセスに係る内部統制の不備が発見された場合,当該不備がどの勘定科目にどの範囲で影響を及ぼすかを検討し,当該影響の発生可能性を検討するが,それには当該不備が財務報告に及ぼす潜在的な影響額も含まれる。<ins>財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準III4(2)④イロハ,監査・保証実務委員会報告82号196項198項</ins> エ.監査人は,前年度において,内部統制の評価結果が有効であった業務プロセスに係る内部統制の運用状況の評価に当たっては,当該業務プロセスに係る内部統制の整備状況に重要な変更がないなど新たに確認すべき事項がない場合,経営者が評価において選択したサンプル及びその評価結果を利用することができる。<ins>財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準III4(2)①ロa,監査・保証実務委員会報告82号240項</ins> </div> == 参照基準 == * [https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/tosin/20110330/01.pdf 財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準] * [https://jicpa.or.jp/specialized_field/82_7.html 監査・保証実務委員会報告第82号「財務報告に係る内部統制の監査に関する 実務上の取扱い」] : [[../問題7|←前の問題]] : [[../問題9|次の問題→]] [[カテゴリ:会計監査]]
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公認会計士試験/平成30年第II回短答式/監査論/問題9
監査の品質管理に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) ア.監査に関する品質管理基準は,監査基準とともに一般に公正妥当と認められる監査の基準を構成し,監査基準と一体となって適用されるものであり,財務諸表の監査を実施する監査事務所及び監査実施者に,監査業務の質を合理的に確保することを求めるものである。 イ.監査事務所は,品質管理のシステムの整備及び運用に関する責任者を明確にしなければならないが,当該責任者は,不正リスクに関する品質管理の責任者を兼ねることはできない。 ウ.監査事務所は,関与先との契約の新規の締結又は更新に当たり,関与先の誠実性に疑念を抱いた場合には,十分な専門要員が存在している場合を除き,当該関与先と契約の新規の締結又は更新を行ってはならない。 エ.監査事務所は,監査人の交代に関する監査業務の引継についての方針及び手続を定めなければならないが,これらには,前任の監査事務所となる場合及び後任の監査事務所となる場合の双方を含めなければならない。 3 ア.監査に関する品質管理基準は,監査基準とともに一般に公正妥当と認められる監査の基準を構成し,監査基準と一体となって適用されるものであり,財務諸表の監査を実施する監査事務所及び監査実施者に,監査業務の質を合理的に確保することを求めるものである。監査に関する品質管理基準一,同設定前文二 イ.監査事務所は,品質管理のシステムの整備及び運用に関する責任者を明確にしなければならないが,当該責任者は,不正リスクに関する品質管理の責任者を兼ねることはできない。がある。品質管理基準委員会報告書1号FA6-2項 ウ.監査事務所は,関与先との契約の新規の締結又は更新に当たり,関与先の誠実性に疑念を抱いた場合には,十分な専門要員が存在している場合を除き概念的枠組みアプローチおよびセーフガードによっても阻害要因の重要性の程度を許容可能な水準にまで軽減できないならば,当該関与先と契約の新規の締結又は更新を行ってはならない。品質管理基準委員会報告書1号25項(3)26項(3),倫理規則14条1項,同注解12 エ.監査事務所は,監査人の交代に関する監査業務の引継についての方針及び手続を定めなければならないが,これらには,前任の監査事務所となる場合及び後任の監査事務所となる場合の双方を含めなければならない。品質管理基準委員会報告書1号59項
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "監査の品質管理に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.監査に関する品質管理基準は,監査基準とともに一般に公正妥当と認められる監査の基準を構成し,監査基準と一体となって適用されるものであり,財務諸表の監査を実施する監査事務所及び監査実施者に,監査業務の質を合理的に確保することを求めるものである。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.監査事務所は,品質管理のシステムの整備及び運用に関する責任者を明確にしなければならないが,当該責任者は,不正リスクに関する品質管理の責任者を兼ねることはできない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.監査事務所は,関与先との契約の新規の締結又は更新に当たり,関与先の誠実性に疑念を抱いた場合には,十分な専門要員が存在している場合を除き,当該関与先と契約の新規の締結又は更新を行ってはならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.監査事務所は,監査人の交代に関する監査業務の引継についての方針及び手続を定めなければならないが,これらには,前任の監査事務所となる場合及び後任の監査事務所となる場合の双方を含めなければならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "3", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.監査に関する品質管理基準は,監査基準とともに一般に公正妥当と認められる監査の基準を構成し,監査基準と一体となって適用されるものであり,財務諸表の監査を実施する監査事務所及び監査実施者に,監査業務の質を合理的に確保することを求めるものである。監査に関する品質管理基準一,同設定前文二", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.監査事務所は,品質管理のシステムの整備及び運用に関する責任者を明確にしなければならないが,当該責任者は,不正リスクに関する品質管理の責任者を兼ねることはできない。がある。品質管理基準委員会報告書1号FA6-2項", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.監査事務所は,関与先との契約の新規の締結又は更新に当たり,関与先の誠実性に疑念を抱いた場合には,十分な専門要員が存在している場合を除き概念的枠組みアプローチおよびセーフガードによっても阻害要因の重要性の程度を許容可能な水準にまで軽減できないならば,当該関与先と契約の新規の締結又は更新を行ってはならない。品質管理基準委員会報告書1号25項(3)26項(3),倫理規則14条1項,同注解12", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.監査事務所は,監査人の交代に関する監査業務の引継についての方針及び手続を定めなければならないが,これらには,前任の監査事務所となる場合及び後任の監査事務所となる場合の双方を含めなければならない。品質管理基準委員会報告書1号59項", "title": "解説" } ]
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: [[../問題8|←前の問題]] : [[../問題10|次の問題→]] == 問題 ==  監査の品質管理に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.監査に関する品質管理基準は,監査基準とともに一般に公正妥当と認められる監査の基準を構成し,監査基準と一体となって適用されるものであり,財務諸表の監査を実施する監査事務所及び監査実施者に,監査業務の質を合理的に確保することを求めるものである。 イ.監査事務所は,品質管理のシステムの整備及び運用に関する責任者を明確にしなければならないが,当該責任者は,不正リスクに関する品質管理の責任者を兼ねることはできない。 ウ.監査事務所は,関与先との契約の新規の締結又は更新に当たり,関与先の誠実性に疑念を抱いた場合には,十分な専門要員が存在している場合を除き,当該関与先と契約の新規の締結又は更新を行ってはならない。 エ.監査事務所は,監査人の交代に関する監査業務の引継についての方針及び手続を定めなければならないが,これらには,前任の監査事務所となる場合及び後任の監査事務所となる場合の双方を含めなければならない。 </div> <div style="column-count:6;"> # アイ # アウ # アエ # イウ # イエ # ウエ </div> == 正解 == 3 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.監査に関する品質管理基準は,監査基準とともに一般に公正妥当と認められる監査の基準を構成し,監査基準と一体となって適用されるものであり,財務諸表の監査を実施する監査事務所及び監査実施者に,監査業務の質を合理的に確保することを求めるものである。<ins>監査に関する品質管理基準一,同設定前文二</ins> イ.監査事務所は,品質管理のシステムの整備及び運用に関する責任者を明確にしなければならないが,当該責任者は,不正リスクに関する品質管理の責任者を兼ねること<del>はできない。</del><ins>がある。品質管理基準委員会報告書1号FA6-2項</ins> ウ.監査事務所は,関与先との契約の新規の締結又は更新に当たり,関与先の誠実性に疑念を抱いた場合には,<del>十分な専門要員が存在している場合を除き</del><ins>概念的枠組みアプローチおよびセーフガードによっても阻害要因の重要性の程度を許容可能な水準にまで軽減できないならば</ins>,当該関与先と契約の新規の締結又は更新を行ってはならない。<ins>品質管理基準委員会報告書1号25項(3)26項(3),倫理規則14条1項,同注解12</ins> エ.監査事務所は,監査人の交代に関する監査業務の引継についての方針及び手続を定めなければならないが,これらには,前任の監査事務所となる場合及び後任の監査事務所となる場合の双方を含めなければならない。<ins>品質管理基準委員会報告書1号59項</ins> </div> == 参照基準 == * [https://www.fsa.go.jp/news/newsj/17/singi/f-20051028-8/03.pdf 監査に関する品質管理基準] * [https://jicpa.or.jp/specialized_field/260_2.html 品質管理基準委員会報告書1号監査事務所における品質管理] * [https://jicpa.or.jp/about/activity/self-regulatory/criterion/ethics/ 倫理規則] : [[../問題8|←前の問題]] : [[../問題10|次の問題→]] [[カテゴリ:会計監査]]
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2022-11-29T06:29:57Z
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公認会計士試験/平成30年第II回短答式/監査論/問題10
「財務情報等に係る保証業務の概念的枠組みに関する意見書」における保証業務に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) ア.業務実施者が作成した保証報告書を利用する者が,当該業務実施者になることはないが,主題に責任を負う者になることはある。 イ.業務実施者が,合理的保証業務ではなく,限定的保証業務を実施する場合に,自らが実施すべき手続,実施の時期及び範囲の決定についての責任を負わないことがある。 ウ.主題に責任を負う者が,主題情報を自己の責任において想定利用者に提示しない場合に,業務実施者は,当該主題それ自体に対する想定利用者の信頼の程度を高めることには責任を負うが,当該主題それ自体には責任を負わない。 エ.主題に責任を負う者が,主題情報を自己の責任において想定利用者に提示しない場合に,業務実施者が,直接に当該主題について,消極的形式によって結論を報告することはあるが,積極的形式によって結論を報告することはない。 2 ア.業務実施者が作成した保証報告書を利用する者が,当該業務実施者になることはないが,主題に責任を負う者になることはある。財務情報等に係る保証業務の概念的枠組みに関する意見書四2,4 イ.業務実施者が,合理的保証業務ではなく,限定的保証業務を実施する場合に,自らが実施すべき手続,実施の時期及び範囲の決定についての責任を負わないことがある。有する。財務情報等に係る保証業務の概念的枠組みに関する意見書二3(3),四2 ウ.主題に責任を負う者が,主題情報を自己の責任において想定利用者に提示しない場合(ダイレクト・レポーティングの場合)に,業務実施者は,当該主題それ自体に対する想定利用者の信頼の程度を高めることには責任を負うが,当該主題それ自体には責任を負わない。財務情報等に係る保証業務の概念的枠組みに関する意見書二2(1) エ.主題に責任を負う者が,主題情報を自己の責任において想定利用者に提示しない場合に,業務実施者が,直接に当該主題について,積極的形式または消極的形式によって結論を報告することはあるが,積極的形式によって結論を報告することはない。財務情報等に係る保証業務の概念的枠組みに関する意見書八2(3)
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "「財務情報等に係る保証業務の概念的枠組みに関する意見書」における保証業務に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.業務実施者が作成した保証報告書を利用する者が,当該業務実施者になることはないが,主題に責任を負う者になることはある。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.業務実施者が,合理的保証業務ではなく,限定的保証業務を実施する場合に,自らが実施すべき手続,実施の時期及び範囲の決定についての責任を負わないことがある。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.主題に責任を負う者が,主題情報を自己の責任において想定利用者に提示しない場合に,業務実施者は,当該主題それ自体に対する想定利用者の信頼の程度を高めることには責任を負うが,当該主題それ自体には責任を負わない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.主題に責任を負う者が,主題情報を自己の責任において想定利用者に提示しない場合に,業務実施者が,直接に当該主題について,消極的形式によって結論を報告することはあるが,積極的形式によって結論を報告することはない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "2", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.業務実施者が作成した保証報告書を利用する者が,当該業務実施者になることはないが,主題に責任を負う者になることはある。財務情報等に係る保証業務の概念的枠組みに関する意見書四2,4", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.業務実施者が,合理的保証業務ではなく,限定的保証業務を実施する場合に,自らが実施すべき手続,実施の時期及び範囲の決定についての責任を負わないことがある。有する。財務情報等に係る保証業務の概念的枠組みに関する意見書二3(3),四2", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.主題に責任を負う者が,主題情報を自己の責任において想定利用者に提示しない場合(ダイレクト・レポーティングの場合)に,業務実施者は,当該主題それ自体に対する想定利用者の信頼の程度を高めることには責任を負うが,当該主題それ自体には責任を負わない。財務情報等に係る保証業務の概念的枠組みに関する意見書二2(1)", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.主題に責任を負う者が,主題情報を自己の責任において想定利用者に提示しない場合に,業務実施者が,直接に当該主題について,積極的形式または消極的形式によって結論を報告することはあるが,積極的形式によって結論を報告することはない。財務情報等に係る保証業務の概念的枠組みに関する意見書八2(3)", "title": "解説" } ]
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: [[../問題9|←前の問題]] : [[../問題11|次の問題→]] == 問題 == 「財務情報等に係る保証業務の概念的枠組みに関する意見書」における保証業務に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.業務実施者が作成した保証報告書を利用する者が,当該業務実施者になることはないが,主題に責任を負う者になることはある。 イ.業務実施者が,合理的保証業務ではなく,限定的保証業務を実施する場合に,自らが実施すべき手続,実施の時期及び範囲の決定についての責任を負わないことがある。 ウ.主題に責任を負う者が,主題情報を自己の責任において想定利用者に提示しない場合に,業務実施者は,当該主題それ自体に対する想定利用者の信頼の程度を高めることには責任を負うが,当該主題それ自体には責任を負わない。 エ.主題に責任を負う者が,主題情報を自己の責任において想定利用者に提示しない場合に,業務実施者が,直接に当該主題について,消極的形式によって結論を報告することはあるが,積極的形式によって結論を報告することはない。 </div> <div style="column-count:6;"> # アイ # アウ # アエ # イウ # イエ # ウエ </div> == 正解 == 2 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.業務実施者が作成した保証報告書を利用する者が,当該業務実施者になることはないが,主題に責任を負う者になることはある。<ins>財務情報等に係る保証業務の概念的枠組みに関する意見書四2,4</ins> イ.業務実施者が,合理的保証業務ではなく,限定的保証業務を実施する場合に,自らが実施すべき手続,実施の時期及び範囲の決定についての責任を<del>負わないことがある。</del><ins>有する。財務情報等に係る保証業務の概念的枠組みに関する意見書二3(3),四2</ins> ウ.主題に責任を負う者が,主題情報を自己の責任において想定利用者に提示しない場合<ins>(ダイレクト・レポーティングの場合)</ins>に,業務実施者は,当該主題それ自体に対する想定利用者の信頼の程度を高めることには責任を負うが,当該主題それ自体には責任を負わない。<ins>財務情報等に係る保証業務の概念的枠組みに関する意見書二2(1)</ins> エ.主題に責任を負う者が,主題情報を自己の責任において想定利用者に提示しない場合に,業務実施者が,直接に当該主題について,<ins>積極的形式または</ins>消極的形式によって結論を報告する<del>ことはあるが,積極的形式によって結論を報告することはない</del>。<ins>財務情報等に係る保証業務の概念的枠組みに関する意見書八2(3)</ins> </div> == 参照基準 == * [https://www.fsa.go.jp/news/newsj/16/singi/f-20041129-1/01.pdf 財務情報等に係る保証業務の概念的枠組みに関する意見書] : [[../問題9|←前の問題]] : [[../問題11|次の問題→]] [[カテゴリ:会計監査]]
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2022-11-29T06:28:17Z
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公認会計士試験/平成30年第II回短答式/監査論/問題11
監査基準第二「一般基準」に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) ア.監査人は,前年度の監査において,経営者,取締役及び監査役等は誠実であるという心証を得ており,当該心証を監査調書に記載していても,それによって当年度の監査において保持すべき監査人の職業的懐疑心の程度を軽減することはできない。 イ.監査人は,職業的専門家としての正当な注意を払い,懐疑心を保持して監査を行わなければならないが,財務諸表全体に関連する不正リスクが識別されない場合には,実施する監査手続の種類,実施の時期及び範囲の決定に当たって,企業が想定しない要素を監査計画に組み込まなくてもよい。 ウ.監査人は,監査を行うに当たって,自らの組織として監査業務の質を確保しなければならないが,他の監査人の監査結果を利用するに当たっては,当該他の監査人の監査業務の質の確保まで要求されるわけではない。 エ.監査人が監査の過程において被監査会社の不正を識別した場合,被監査会社の監査役等の同意を得ることなく規制当局に当該事実を報告することは守秘義務違反である。 1 ア.監査人は,前年度の監査において,経営者,取締役及び監査役等は誠実であるという心証を得ており,当該心証を監査調書に記載していても,それによって当年度の監査において保持すべき監査人の職業的懐疑心の程度を軽減することはできない。監査基準委員会報告書200 A21項 イ.監査人は,職業的専門家としての正当な注意を払い,懐疑心を保持して監査を行わなければならないが,財務諸表全体に関連する不正リスクが識別されない場合には,実施する監査手続の種類,実施の時期及び範囲の決定に当たって,企業が想定しない要素を監査計画に組み込まなくてもよい。監査における不正リスク対応基準第二6,監査基準委員会報告書240第28項(3) ウ.監査人は,監査を行うに当たって,自らの組織として監査業務の質を確保しなければならないが,他の監査人の監査結果を利用するに当たっては,当該他の監査人の監査業務の質の確保まで要求されるわけではない。また,監査業務の質の確保は,他の監査人の監査結果の利用などに関しても同様に求められるものである。監査基準第三実施基準四1,同基準平成14年改訂前文三2(6),監査基準委員会報告書600第4項 エ.監査人が監査の過程において被監査会社の不正を識別した場合,被監査会社の監査役等の同意を得ることなく規制当局に当該事実を報告することは,守秘義務の解除が法令等によって要求されているという正当な理由があるため,守秘義務違反である。ではない。倫理規則6条8項二ハ,監査基準委員会報告書240第42項,金商法193条の3)
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "監査基準第二「一般基準」に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.監査人は,前年度の監査において,経営者,取締役及び監査役等は誠実であるという心証を得ており,当該心証を監査調書に記載していても,それによって当年度の監査において保持すべき監査人の職業的懐疑心の程度を軽減することはできない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.監査人は,職業的専門家としての正当な注意を払い,懐疑心を保持して監査を行わなければならないが,財務諸表全体に関連する不正リスクが識別されない場合には,実施する監査手続の種類,実施の時期及び範囲の決定に当たって,企業が想定しない要素を監査計画に組み込まなくてもよい。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.監査人は,監査を行うに当たって,自らの組織として監査業務の質を確保しなければならないが,他の監査人の監査結果を利用するに当たっては,当該他の監査人の監査業務の質の確保まで要求されるわけではない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.監査人が監査の過程において被監査会社の不正を識別した場合,被監査会社の監査役等の同意を得ることなく規制当局に当該事実を報告することは守秘義務違反である。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "1", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.監査人は,前年度の監査において,経営者,取締役及び監査役等は誠実であるという心証を得ており,当該心証を監査調書に記載していても,それによって当年度の監査において保持すべき監査人の職業的懐疑心の程度を軽減することはできない。監査基準委員会報告書200 A21項", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.監査人は,職業的専門家としての正当な注意を払い,懐疑心を保持して監査を行わなければならないが,財務諸表全体に関連する不正リスクが識別されない場合には,実施する監査手続の種類,実施の時期及び範囲の決定に当たって,企業が想定しない要素を監査計画に組み込まなくてもよい。監査における不正リスク対応基準第二6,監査基準委員会報告書240第28項(3)", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.監査人は,監査を行うに当たって,自らの組織として監査業務の質を確保しなければならないが,他の監査人の監査結果を利用するに当たっては,当該他の監査人の監査業務の質の確保まで要求されるわけではない。また,監査業務の質の確保は,他の監査人の監査結果の利用などに関しても同様に求められるものである。監査基準第三実施基準四1,同基準平成14年改訂前文三2(6),監査基準委員会報告書600第4項", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.監査人が監査の過程において被監査会社の不正を識別した場合,被監査会社の監査役等の同意を得ることなく規制当局に当該事実を報告することは,守秘義務の解除が法令等によって要求されているという正当な理由があるため,守秘義務違反である。ではない。倫理規則6条8項二ハ,監査基準委員会報告書240第42項,金商法193条の3)", "title": "解説" } ]
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: [[../問題10|←前の問題]] : [[../問題12|次の問題→]] == 問題 ==  監査基準第二「一般基準」に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.監査人は,前年度の監査において,経営者,取締役及び監査役等は誠実であるという心証を得ており,当該心証を監査調書に記載していても,それによって当年度の監査において保持すべき監査人の職業的懐疑心の程度を軽減することはできない。 イ.監査人は,職業的専門家としての正当な注意を払い,懐疑心を保持して監査を行わなければならないが,財務諸表全体に関連する不正リスクが識別されない場合には,実施する監査手続の種類,実施の時期及び範囲の決定に当たって,企業が想定しない要素を監査計画に組み込まなくてもよい。 ウ.監査人は,監査を行うに当たって,自らの組織として監査業務の質を確保しなければならないが,他の監査人の監査結果を利用するに当たっては,当該他の監査人の監査業務の質の確保まで要求されるわけではない。 エ.監査人が監査の過程において被監査会社の不正を識別した場合,被監査会社の監査役等の同意を得ることなく規制当局に当該事実を報告することは守秘義務違反である。 </div> <div style="column-count:6;"> # アイ # アウ # アエ # イウ # イエ # ウエ </div> == 正解 == 1 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.監査人は,前年度の監査において,経営者,取締役及び監査役等は誠実であるという心証を得ており,当該心証を監査調書に記載していても,それによって当年度の監査において保持すべき監査人の職業的懐疑心の程度を軽減することはできない。<ins>監査基準委員会報告書200 A21項</ins> イ.監査人は,職業的専門家としての正当な注意を払い,懐疑心を保持して監査を行わなければならないが,財務諸表全体に関連する不正リスクが識別されない場合には,実施する監査手続の種類,実施の時期及び範囲の決定に当たって,企業が想定しない要素を監査計画に組み込まなくてもよい。<ins>監査における不正リスク対応基準第二6,監査基準委員会報告書240第28項(3)</ins> ウ.監査人は,監査を行うに当たって,自らの組織として監査業務の質を確保しなければならない<del>が,他の監査人の監査結果を利用するに当たっては,当該他の監査人の監査業務の質の確保まで要求されるわけではない</del>。<ins>また,監査業務の質の確保は,他の監査人の監査結果の利用などに関しても同様に求められるものである。監査基準第三実施基準四1,同基準平成14年改訂前文三2(6),監査基準委員会報告書600第4項</ins> エ.監査人が監査の過程において被監査会社の不正を識別した場合,被監査会社の監査役等の同意を得ることなく規制当局に当該事実を報告することは,<ins>守秘義務の解除が法令等によって要求されているという正当な理由があるため,</ins>守秘義務違反<del>である。</del><ins>ではない。倫理規則6条8項二ハ,監査基準委員会報告書240第42項,金商法193条の3)</ins> </div> == 参照基準 == * [https://jicpa.or.jp/specialized_field/260_2.html 監基報200 財務諸表監査における総括的な目的,監基報600 グループ監査] * [https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/tosin/20130314/01.pdf 不正リスク対応基準] * [https://jicpa.or.jp/specialized_field/250_1.html 監査基準委員会報告書240「財務諸表監査における不正」] * [https://www.fsa.go.jp/news/25/sonota/20140225-2/01.pdf 監査基準] * [https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/tosin/f-20020125-1.pdf#page=6 監査基準平成14年改訂前文] * [https://jicpa.or.jp/about/activity/self-regulatory/criterion/ethics/ 倫理規則] * [http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=323AC0000000025_20180401_429AC0000000037&openerCode=1 金融商品取引法] : [[../問題10|←前の問題]] : [[../問題12|次の問題→]] [[カテゴリ:会計監査]]
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公認会計士試験/平成30年第II回短答式/監査論/問題12
監査調書に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) ア.監査調書は,監査人の責任において監査人自身が実施した作業に基づいて作成されるものであるため,内部監査人の特定の作業を利用する場合であっても内部監査人の作業に関して記載する必要はない。 イ.監査人は,監査手続により入手した重要な監査証拠について監査調書に記載するのであって,監査証拠の全てを記載するわけではない。 ウ.監査人は,監査における作業の判断の質を自らあるいは組織的に管理するために監査調書を作成することが不可欠であるが,必ずしも紙媒体により保存する必要はない。 エ.監査人は,重要な事項に関する結論を形成する過程で矛盾した情報を識別した場合には,矛盾した情報に対する監査人の対応については文書化しなければならないが,矛盾の原因となった不正確な文書や修正前の文書を必ずしも残す必要はない。 6 ア.監査調書は,監査人の責任において監査人自身が実施した作業に基づいて作成されるものであるため,内部監査人の特定の作業を利用する場合であっても内部監査人の作業に関して記載する必要はない。内部監査人の作業の適切性の評価に関する結論及び実施した監査手続を監査調書に記載しなければならない。監査基準委員会報告書610第12項 イ.監査人は,監査手続により入手した重要な監査証拠について監査調書に記載するのであって,監査証拠の全てを記載するわけではない。監査調書は,経験豊富な監査人が以前に当該監査に関与していなくとも監査手続やその結果などについて理解できるように,作成しなければならないから,重要な監査証拠に限って監査調書に記載するわけではない。監査基準委員会報告書230第5項(1),7項,監査基準委員会報告書500第4項(2) ウ.監査人は,監査における作業の判断の質を自らあるいは組織的に管理するために監査調書を作成することが不可欠であるが,必ずしも紙媒体により保存する必要はない。監査基準委員会報告書230第5項(2),A3項,監査基準平成14年改訂前文三2(5) エ.監査人は,重要な事項に関する結論を形成する過程で矛盾した情報を識別した場合には,矛盾した情報に対する監査人の対応については文書化しなければならないが,矛盾の原因となった不正確な文書や修正前の文書を必ずしも残す必要はない。監査基準委員会報告書230第10項A15項
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "監査調書に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.監査調書は,監査人の責任において監査人自身が実施した作業に基づいて作成されるものであるため,内部監査人の特定の作業を利用する場合であっても内部監査人の作業に関して記載する必要はない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.監査人は,監査手続により入手した重要な監査証拠について監査調書に記載するのであって,監査証拠の全てを記載するわけではない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.監査人は,監査における作業の判断の質を自らあるいは組織的に管理するために監査調書を作成することが不可欠であるが,必ずしも紙媒体により保存する必要はない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.監査人は,重要な事項に関する結論を形成する過程で矛盾した情報を識別した場合には,矛盾した情報に対する監査人の対応については文書化しなければならないが,矛盾の原因となった不正確な文書や修正前の文書を必ずしも残す必要はない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "6", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.監査調書は,監査人の責任において監査人自身が実施した作業に基づいて作成されるものであるため,内部監査人の特定の作業を利用する場合であっても内部監査人の作業に関して記載する必要はない。内部監査人の作業の適切性の評価に関する結論及び実施した監査手続を監査調書に記載しなければならない。監査基準委員会報告書610第12項", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.監査人は,監査手続により入手した重要な監査証拠について監査調書に記載するのであって,監査証拠の全てを記載するわけではない。監査調書は,経験豊富な監査人が以前に当該監査に関与していなくとも監査手続やその結果などについて理解できるように,作成しなければならないから,重要な監査証拠に限って監査調書に記載するわけではない。監査基準委員会報告書230第5項(1),7項,監査基準委員会報告書500第4項(2)", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.監査人は,監査における作業の判断の質を自らあるいは組織的に管理するために監査調書を作成することが不可欠であるが,必ずしも紙媒体により保存する必要はない。監査基準委員会報告書230第5項(2),A3項,監査基準平成14年改訂前文三2(5)", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.監査人は,重要な事項に関する結論を形成する過程で矛盾した情報を識別した場合には,矛盾した情報に対する監査人の対応については文書化しなければならないが,矛盾の原因となった不正確な文書や修正前の文書を必ずしも残す必要はない。監査基準委員会報告書230第10項A15項", "title": "解説" } ]
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: [[../問題11|←前の問題]] : [[../問題13|次の問題→]] == 問題 ==  監査調書に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.監査調書は,監査人の責任において監査人自身が実施した作業に基づいて作成されるものであるため,内部監査人の特定の作業を利用する場合であっても内部監査人の作業に関して記載する必要はない。 イ.監査人は,監査手続により入手した重要な監査証拠について監査調書に記載するのであって,監査証拠の全てを記載するわけではない。 ウ.監査人は,監査における作業の判断の質を自らあるいは組織的に管理するために監査調書を作成することが不可欠であるが,必ずしも紙媒体により保存する必要はない。 エ.監査人は,重要な事項に関する結論を形成する過程で矛盾した情報を識別した場合には,矛盾した情報に対する監査人の対応については文書化しなければならないが,矛盾の原因となった不正確な文書や修正前の文書を必ずしも残す必要はない。 </div> <div style="column-count:6;"> # アイ # アウ # アエ # イウ # イエ # ウエ </div> == 正解 == 6 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.監査調書は,監査人の責任において監査人自身が実施した作業に基づいて作成されるものであるため,内部監査人の特定の作業を利用する場合<del>であっても内部監査人の作業に関して記載する必要はない。</del><ins>内部監査人の作業の適切性の評価に関する結論及び実施した監査手続を監査調書に記載しなければならない。監査基準委員会報告書610第12項</ins> イ.監査人は,監査手続により入手した<del>重要な</del>監査証拠について監査調書に記載する<del>のであって,監査証拠の全てを記載するわけではない</del>。<ins>監査調書は,経験豊富な監査人が以前に当該監査に関与していなくとも監査手続やその結果などについて理解できるように,作成しなければならないから,重要な監査証拠に限って監査調書に記載するわけではない。監査基準委員会報告書230第5項(1),7項,監査基準委員会報告書500第4項(2)</ins> ウ.監査人は,監査における作業の判断の質を自らあるいは組織的に管理するために監査調書を作成することが不可欠であるが,必ずしも紙媒体により保存する必要はない。<ins>監査基準委員会報告書230第5項(2),A3項,監査基準平成14年改訂前文三2(5)</ins> エ.監査人は,重要な事項に関する結論を形成する過程で矛盾した情報を識別した場合には,矛盾した情報に対する監査人の対応については文書化しなければならないが,矛盾の原因となった不正確な文書や修正前の文書を必ずしも残す必要はない。<ins>監査基準委員会報告書230第10項A15項</ins> </div> ; ウィキブキアンのコメント : 監査調書と監査報告書を混同しないこと : 選択肢イは監査基準委員会報告書230A2項(4)から正解と解釈可能ではないか<ref>[https://www.youtube.com/watch?v=vWugiVMuSP4 【LEC会計士】平成30年第Ⅱ回 解答速報 解説動画 監査論 - YouTube] 35分24秒</ref>? == 参照基準 == * [https://jicpa.or.jp/specialized_field/260_2.html 監基報610 内部監査の利用,監基報230 監査調書] * [https://jicpa.or.jp/specialized_field/250_1.html 監査基準委員会報告書500「監査証拠」] * [https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/tosin/f-20020125-1.pdf#page=8 監査基準平成14年改訂前文] : [[../問題11|←前の問題]] : [[../問題13|次の問題→]] [[カテゴリ:会計監査]]
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24,833
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/監査論/問題13
リスク評価及び評価したリスクへの対応に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) ア.監査人は,リスク評価の過程で識別した重要な虚偽表示リスクについて,当該リスクに関連する内部統制の影響を考慮して,特別な検討を必要とするリスクであるかどうかを決定しなければならない。 イ.被監査会社がその業務の一部を外部に委託している場合,監査人は,受託会社が提供する業務に関する十分な理解を被監査会社から得られなかったときは,受託会社に往査して必要な情報を入手するための手続を実施することもある。 ウ.監査人の実証手続によって発見された重要な虚偽表示は,内部統制の重要な不備の存在を示唆する。したがって,実証手続によって虚偽表示が発見されていないことは,検討対象となっているアサーションに関連する内部統制が有効であることの監査証拠となる。 エ.監査人は,明らかに僅少であるものを除き,監査の過程で識別した虚偽表示を集計する必要があり,その集計した全ての虚偽表示について適切な階層の経営者に適時に報告し,なおかつ,これらの虚偽表示を修正するよう求めなければならない。 5 ア.監査人は,リスク評価の過程で識別した重要な虚偽表示リスクについて,当該リスクに関連する内部統制の影響を考慮してしないで,特別な検討を必要とするリスクであるかどうかを決定しなければならない。監査基準委員会報告書315第26項 イ.被監査会社がその業務の一部を外部に委託している場合,監査人は,受託会社が提供する業務に関する十分な理解を被監査会社から得られなかったときは,受託会社に往査して必要な情報を入手するための手続を実施することもある。監査基準委員会報告書402第11項(3) ウ.監査人は,監査人の実証手続によって発見された重要な虚偽表示は,内部統制の重要な不備の存在を示唆するかどうかを評価しなければならない。。したがってなお,実証手続によって虚偽表示が発見されていないことは,検討対象となっているアサーションに関連する内部統制が有効であることの監査証拠となる。とはならない。監査基準委員会報告書330第15項 エ.監査人は,明らかに僅少であるものを除き,監査の過程で識別した虚偽表示を集計する必要があり,その集計した全ての虚偽表示について適切な階層の経営者に適時に報告し,なおかつ,これらの虚偽表示を修正するよう求めなければならない。監査基準委員会報告書450第4項7項
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "リスク評価及び評価したリスクへの対応に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.監査人は,リスク評価の過程で識別した重要な虚偽表示リスクについて,当該リスクに関連する内部統制の影響を考慮して,特別な検討を必要とするリスクであるかどうかを決定しなければならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.被監査会社がその業務の一部を外部に委託している場合,監査人は,受託会社が提供する業務に関する十分な理解を被監査会社から得られなかったときは,受託会社に往査して必要な情報を入手するための手続を実施することもある。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.監査人の実証手続によって発見された重要な虚偽表示は,内部統制の重要な不備の存在を示唆する。したがって,実証手続によって虚偽表示が発見されていないことは,検討対象となっているアサーションに関連する内部統制が有効であることの監査証拠となる。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.監査人は,明らかに僅少であるものを除き,監査の過程で識別した虚偽表示を集計する必要があり,その集計した全ての虚偽表示について適切な階層の経営者に適時に報告し,なおかつ,これらの虚偽表示を修正するよう求めなければならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "5", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.監査人は,リスク評価の過程で識別した重要な虚偽表示リスクについて,当該リスクに関連する内部統制の影響を考慮してしないで,特別な検討を必要とするリスクであるかどうかを決定しなければならない。監査基準委員会報告書315第26項", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.被監査会社がその業務の一部を外部に委託している場合,監査人は,受託会社が提供する業務に関する十分な理解を被監査会社から得られなかったときは,受託会社に往査して必要な情報を入手するための手続を実施することもある。監査基準委員会報告書402第11項(3)", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.監査人は,監査人の実証手続によって発見された重要な虚偽表示は,内部統制の重要な不備の存在を示唆するかどうかを評価しなければならない。。したがってなお,実証手続によって虚偽表示が発見されていないことは,検討対象となっているアサーションに関連する内部統制が有効であることの監査証拠となる。とはならない。監査基準委員会報告書330第15項", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.監査人は,明らかに僅少であるものを除き,監査の過程で識別した虚偽表示を集計する必要があり,その集計した全ての虚偽表示について適切な階層の経営者に適時に報告し,なおかつ,これらの虚偽表示を修正するよう求めなければならない。監査基準委員会報告書450第4項7項", "title": "解説" } ]
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: [[../問題12|←前の問題]] : [[../問題14|次の問題→]] == 問題 ==  リスク評価及び評価したリスクへの対応に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.監査人は,リスク評価の過程で識別した重要な虚偽表示リスクについて,当該リスクに関連する内部統制の影響を考慮して,特別な検討を必要とするリスクであるかどうかを決定しなければならない。 イ.被監査会社がその業務の一部を外部に委託している場合,監査人は,受託会社が提供する業務に関する十分な理解を被監査会社から得られなかったときは,受託会社に往査して必要な情報を入手するための手続を実施することもある。 ウ.監査人の実証手続によって発見された重要な虚偽表示は,内部統制の重要な不備の存在を示唆する。したがって,実証手続によって虚偽表示が発見されていないことは,検討対象となっているアサーションに関連する内部統制が有効であることの監査証拠となる。 エ.監査人は,明らかに僅少であるものを除き,監査の過程で識別した虚偽表示を集計する必要があり,その集計した全ての虚偽表示について適切な階層の経営者に適時に報告し,なおかつ,これらの虚偽表示を修正するよう求めなければならない。 </div> <div style="column-count:6;"> # アイ # アウ # アエ # イウ # イエ # ウエ </div> == 正解 == 5 == 解説 == <div style="text-indent:-1em;margin-left:1em;"> ア.監査人は,リスク評価の過程で識別した重要な虚偽表示リスクについて,当該リスクに関連する内部統制の影響を考慮<del>して</del><ins>しないで</ins>,特別な検討を必要とするリスクであるかどうかを決定しなければならない。<ins>監査基準委員会報告書315第26項</ins> イ.被監査会社がその業務の一部を外部に委託している場合,監査人は,受託会社が提供する業務に関する十分な理解を被監査会社から得られなかったときは,受託会社に往査して必要な情報を入手するための手続を実施することもある。<ins>監査基準委員会報告書402第11項(3)</ins> ウ.<ins>監査人は,</ins>監査人の実証手続によって発見された重要な虚偽表示は,内部統制の重要な不備の存在を示唆する<ins>かどうかを評価しなければならない。</ins>。<del>したがって</del><ins>なお</ins>,実証手続によって虚偽表示が発見されていないことは,検討対象となっているアサーションに関連する内部統制が有効であることの監査証拠<del>となる。</del><ins>とはならない。監査基準委員会報告書330第15項</ins> エ.監査人は,明らかに僅少であるものを除き,監査の過程で識別した虚偽表示を集計する必要があり,その集計した全ての虚偽表示について適切な階層の経営者に適時に報告し,なおかつ,これらの虚偽表示を修正するよう求めなければならない。<ins>監査基準委員会報告書450第4項7項</ins> </div> == 参照基準 == * [https://jicpa.or.jp/specialized_field/260_2.html 監基報315 企業及び企業環境の理解を通じた重要な虚偽表示リスクの識別と評価,監基報402 業務を委託している企業の監査上の考慮事項,監基報450 監査の過程で識別した虚偽表示の評価] * [https://jicpa.or.jp/specialized_field/post_1690.html 監基報330 評価したリスクに対応する監査人の手続] : [[../問題12|←前の問題]] : [[../問題14|次の問題→]] [[カテゴリ:会計監査]]
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2022-11-29T06:28:28Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%85%AC%E8%AA%8D%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%A3%AB%E8%A9%A6%E9%A8%93/%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B4%E7%AC%ACII%E5%9B%9E%E7%9F%AD%E7%AD%94%E5%BC%8F/%E7%9B%A3%E6%9F%BB%E8%AB%96/%E5%95%8F%E9%A1%8C13
24,834
公認会計士試験/平成30年第II回短答式/監査論/問題14
監査計画に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点) ア.監査計画には,監査業務に対する監査の基本的な方針の策定と詳細な監査計画の作成が含まれるが,両者は相互に密接に関連するものであり,監査人は,監査の基本的な方針が詳細な監査計画を作成するための指針となるように策定しなければならない。 イ.監査は,監査経験や洞察力を十分に有する監査責任者の責任の下で行われるため,監査責任者自らが監査計画を他の監査チームメンバーに頼らず策定し,当該監査計画を監査チームの主要メンバーに伝達しなければならない。 ウ.監査人は,監査の基本的な方針を策定する際に重要性の基準値を決定しなければならないが,この重要性の基準値は,財務諸表における未修正の虚偽表示と未発見の虚偽表示を考慮して,手続実施上の重要性と一致させる必要がある。 エ.経営者に監査手続を容易に予測されることにより監査の有効性が阻害されてしまうことがあるため,監査の有効性を損なわないための配慮は必要であるが,監査人は監査計画の内容について経営者と協議することがある。 3 ア.監査計画には,監査業務に対する監査の基本的な方針の策定と詳細な監査計画の作成が含まれるが,両者は相互に密接に関連するものであり,監査人は,監査の基本的な方針が詳細な監査計画を作成するための指針となるように策定しなければならない。監査基準委員会報告書300第6項A10項 イ.監査は,監査経験や洞察力を十分に有する監査責任者の責任の下で行われるため,監査責任者自らが監査計画を他の監査チームメンバーに頼らず策定し,当該監査計画を監査チームの主要メンバーに伝達しなければならない。監査責任者と監査チームの主要メンバーは,監査計画の策定に参画しなければならない。これには,監査チーム内の討議を計画し参加することを含む。監査基準委員会報告書300第4項 ウ.監査人は,監査の基本的な方針を策定する際に重要性の基準値を決定しなければならないが,この重要性の基準値は,財務諸表における未修正の虚偽表示と未発見の虚偽表示を考慮して,手続実施上の重要性と一致させる必要がある。。手続実施上の重要性は重要性の基準値より低い金額として設定する。監査基準委員会報告書320第8項(3) エ.経営者に監査手続を容易に予測されることにより監査の有効性が阻害されてしまうことがあるため,監査の有効性を損なわないための配慮は必要であるが,監査人は監査計画の内容について経営者と協議することがある。監査基準委員会報告書300A3項
[ { "paragraph_id": 0, "tag": "p", "text": "監査計画に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5点)", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 1, "tag": "p", "text": "ア.監査計画には,監査業務に対する監査の基本的な方針の策定と詳細な監査計画の作成が含まれるが,両者は相互に密接に関連するものであり,監査人は,監査の基本的な方針が詳細な監査計画を作成するための指針となるように策定しなければならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 2, "tag": "p", "text": "イ.監査は,監査経験や洞察力を十分に有する監査責任者の責任の下で行われるため,監査責任者自らが監査計画を他の監査チームメンバーに頼らず策定し,当該監査計画を監査チームの主要メンバーに伝達しなければならない。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 3, "tag": "p", "text": "ウ.監査人は,監査の基本的な方針を策定する際に重要性の基準値を決定しなければならないが,この重要性の基準値は,財務諸表における未修正の虚偽表示と未発見の虚偽表示を考慮して,手続実施上の重要性と一致させる必要がある。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 4, "tag": "p", "text": "エ.経営者に監査手続を容易に予測されることにより監査の有効性が阻害されてしまうことがあるため,監査の有効性を損なわないための配慮は必要であるが,監査人は監査計画の内容について経営者と協議することがある。", "title": "問題" }, { "paragraph_id": 5, "tag": "p", "text": "3", "title": "正解" }, { "paragraph_id": 6, "tag": "p", "text": "ア.監査計画には,監査業務に対する監査の基本的な方針の策定と詳細な監査計画の作成が含まれるが,両者は相互に密接に関連するものであり,監査人は,監査の基本的な方針が詳細な監査計画を作成するための指針となるように策定しなければならない。監査基準委員会報告書300第6項A10項", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 7, "tag": "p", "text": "イ.監査は,監査経験や洞察力を十分に有する監査責任者の責任の下で行われるため,監査責任者自らが監査計画を他の監査チームメンバーに頼らず策定し,当該監査計画を監査チームの主要メンバーに伝達しなければならない。監査責任者と監査チームの主要メンバーは,監査計画の策定に参画しなければならない。これには,監査チーム内の討議を計画し参加することを含む。監査基準委員会報告書300第4項", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 8, "tag": "p", "text": "ウ.監査人は,監査の基本的な方針を策定する際に重要性の基準値を決定しなければならないが,この重要性の基準値は,財務諸表における未修正の虚偽表示と未発見の虚偽表示を考慮して,手続実施上の重要性と一致させる必要がある。。手続実施上の重要性は重要性の基準値より低い金額として設定する。監査基準委員会報告書320第8項(3)", "title": "解説" }, { "paragraph_id": 9, "tag": "p", "text": "エ.経営者に監査手続を容易に予測されることにより監査の有効性が阻害されてしまうことがあるため,監査の有効性を損なわないための配慮は必要であるが,監査人は監査計画の内容について経営者と協議することがある。監査基準委員会報告書300A3項", "title": "解説" } ]
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2022-11-29T06:28:31Z
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https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%85%AC%E8%AA%8D%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%A3%AB%E8%A9%A6%E9%A8%93/%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B4%E7%AC%ACII%E5%9B%9E%E7%9F%AD%E7%AD%94%E5%BC%8F/%E7%9B%A3%E6%9F%BB%E8%AB%96/%E5%95%8F%E9%A1%8C14